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1997-05-06 第140回国会 衆議院 行政改革に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年五月六日(火曜日)     午前十時開議  出席委員   委員長 綿貫 民輔君    理事 自見庄三郎君 理事 野呂田芳成君    理事 谷津 義男君 理事 柳沢 伯夫君    理事 鹿野 道彦君 理事 中井  洽君    理事 枝野 幸男君 理事 松本 善明君       赤城 徳彦君    臼井日出男君       大原 一三君    金田 英行君       熊代 昭彦君    杉浦 正健君       谷  洋一君    戸井田 徹君       中山 利生君    福田 康夫君       船田  元君    山口 俊一君       山本 公一君    伊藤 達也君       石田幸四郎君    今井  宏君       倉田 栄喜君    斉藤 鉄夫君       鈴木 淑夫君    富田 茂之君       永井 英慈君    西田  猛君       増田 敏男君    安住  淳君       池田 元久君    末松 義規君       木島日出夫君    畠山健治郎君       前田 武志君    土屋 品子君  出席国務大臣         内閣総理大臣  橋本龍太郎君         大 蔵 大 臣 三塚  博君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)梶山 静六君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 武藤 嘉文君  出席政府委員         内閣審議官   畠中誠二郎君         内閣審議官   白須 光美君         総務庁長官官房         長       西村 正紀君         総務庁行政管理         局長      陶山  晧君         北海道開発庁総         務監理官    松川 隆志君         防衛庁防衛局長 秋山 昌廣君         法務省民事局長 濱崎 恭生君         外務省総合外交         政策局長    川島  裕君         外務省北米局長 折田 正樹君         大蔵大臣官房金         融検査部長   中川 隆進君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         大蔵省証券局長 長野 厖士君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         大蔵省銀行局保         険部長     福田  誠君         大蔵省国際金融         局長      榊原 英資君         証券取引等監視         委員会事務局長 若林 勝三君         農林水産政務次         官       保利 耕輔君         農林水産省経済         局長      熊澤 英昭君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君         建設省建設経済         局長      小鷲  茂君         自治省行政局長 松本 英昭君         自治省行政局選         挙部長     牧之内隆久君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行理事)本間 忠世君         特別委員会第三         調査室長    田中 達郎君     ───────────── 委員の異動 四月二十五日  辞任         補欠選任   石垣 一夫君     倉田 栄喜君 五月六日  辞任         補欠選任   大原 一三君     戸井田 徹君   宮本 一三君     鈴木 淑夫君   北村 哲男君     池田 元久君 同日  辞任         補欠選任   戸井田 徹君     大原 一三君   鈴木 淑夫君     宮本 一三君   池田 元久君     北村 哲男君     ───────────── 四月二十五日  地方分権推進に関する陳情書外十一件  (第二六一号)  国民年金社会保険行政における地方事務官制  の廃止と地方移管に関する陳情書外十三件  (第二六二号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  金融監督庁設置法案内閣提出第六六号)  金融監督庁設置法施行に伴う関係法律整備  に関する法律案内閣提出第六七号)      ────◇─────
  2. 綿貫民輔

    綿貫委員長 これより会議を開きます。  内閣提出金融監督庁設置法案及び金融監督庁設置法施行に伴う関係法律整備に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柳沢伯夫君
  3. 柳沢伯夫

    柳沢委員 いよいよ金融監督庁設置法関係の二法案審議連休明け早々から始まりました。  これは、考えてみますと、世間でもよく言われておりますように、橋本行革の中での行政組織改革のいわばはしりとしての位置づけにされているところでございます。そういう意味で、この法案の帰趨あるいはこの役所ができた場合の制度運用には、多大な国民的関心も当然寄せられておるという状況かというふうに思います。  そういうようなことで、大変恐縮でございましたけれども、総理までも煩わせまして、以下この法案の概略につきまして、基本的なところにつきまして御質問させていただきたい、このように思う次第でございます。  まず冒頭、今回の金融監督庁設置は、現行金融監督行政あるいは金融行政システムといったようなものにつきまして、どこに一体問題があったと認識されたか、さらに、その問題をどのようにこの新しい制度によって解決しようとしておられるか、この点につきまして、改めてここで明らかにしていただきたい。総理にお願い申し上げます。
  4. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 あるいは私が承知する以前からそうした検討というものは大蔵省内においてなされていたのかもしれませんが、ちょうど平成三年の春、まだ湾岸戦争が終結する前であったと思いますが、そのころから大蔵省の内部におきまして、国際金融銀行証券、この三局を通じた組織改革というものが議論をされておったことを私は記憶いたしております。  そして、その時点におきまして考えられておりましたものは、従来の業態間の垣根がだんだん低くなるにつれて現行制度実態に合わなくなるのではないか、まさに企画部分検査あるいは監督部分をどう整理していけばいいのか、そしてその中に、国際金融局及び当時の記憶では財務官室機能というものをどう組み合わせればいいのか、そのような議論が真剣になされておりました。  ところが、それから間もなく証券金融不祥事が発生いたしまして、そうした悠長な検討を許す状況ではなくなりまして、その結果として、御承知のように、証券取引等監視委員会が生まれてきたわけであります。  ところが、その後におきまして、我が国金融機関の抱える不良資産というものが非常に問題になってくる。そして、その不良資産の処理をいかにしていくかという中から大変さまざまな角度の論議が出てまいりました。特に、昨年、象徴的に突破口としてとらえた住専の問題、これを初めとする金融機関不良債権問題というものが、まさに国民各層から金融行政に対して極めて厳しい御批判を生むもとになりました。  そして、従来の護送船団方式と言われる行政あり方、これは確かに一時期非常に有効な手法であったことを私は認めております。その上で、それが現実に十分にワークしているのか、あるいはそれが温床となってこうした問題を生んだのではないか、こうした極めて厳しい御批判を浴びる局面となり、激動する時代の変化に的確に対応しながら、国民に信頼される金融行政というものをもう一度確立し直す必要性に迫られる、そうした状態になりました。  このような視点の中から金融行政あり方を抜本的に見直しながら、デリバティブ等業態間にまたがる金融サービスの出現でありますとか、あるいは金融市場グローバル化、こうした新たな課題にも的確に対応できるように、そして自己責任原則を徹底することとともに、市場規律の十分な発揮を基軸とする透明かつ公正な行政を行っていくことが極めて必要と改めて認識をしてまいりました。  今回の金融行政機構改革は、民間金融機関などに対する検査監督という執行面機能総理府設置金融監督庁が担い、企画立案という政策面機能大蔵省が分担する、こうした仕組みをとっておりまして、市場規律基軸とした透明かつ公正な金融行政への転換に資するもの、そのように思い、御審議をお願い申し上げている次第であります。
  5. 柳沢伯夫

    柳沢委員 今総理から、この法案提出に至るまでのいわば長い道のりのお話を、大変行き渡った御説明として承りました。私もそのとおりだと思います。  昨今、金融が大変グローバル化している、あるいはユニバーサル化しているというような流れの中で、どの国でも実は金融監督あり方というのが動揺しているというか、どこに一番ベストの解答があるかということで、実は模索が重ねられているということでございます。  と同時に、我が国では最近一番厳しい形で金融機関不良資産問題というものが、住専問題を一番の典型としてこれが噴き出ました。これに対して、国民の側からは金融監督行政がこれでいいかという疑問が厳しく投げかけられて、それのいわば答えとして、今日こういう議論になっておるということであるわけでございます。  実はこの問題につきましては、党内に、これは総理よく御存じのとおりでございますが、私もその末席に加えていただいたのですが、議論をさせていただいた機会がございました。このときは、二つの主張がある意味で非常に強く対立したと言ってよろしかろうと思うわけであります。  一つは、今回、橋本行革で我々はこれから大いに行政組織改革をしていくわけですが、今総理のお言葉にもありましたように、中央官庁仕事というのは、これは議院内閣制の必然的な結果でもあるのですが、立法を補佐するいわば企画立案部門と、本当行政プロパー、つまり制度なり法律なりをそのとおり、言われたとおり実施していく執行業務とが混然一体になっているわけでございます。  これを、やはり企画立案執行業務は分離しないと、これからの日本行政改革行政組織改革行政組織スリム化肥大化をとめる、あるいは強大に過ぎる、あるいは裁量が行き過ぎている、こういうようなことをルール化していこう、もっと透明なルールに基づいた行政にしていこうというときには、これは企画立案とを執行から分離した方がいいじゃないか、これが一つの切り口になっていることは、総理に恐れ多くこんなことは言うまでもないことであるわけです。  それで、なぜこの二つが融合すると肥大化するというダイナミックスが生まれてくるかといえば、これは非常に簡単で、仕事をつくり出す人と仕事をやる人が一緒の人になってしまったら、しかも、それは仕事をやりたい人、性格的にやりたいやりたいの一点張り、つまり権限を拡張することを是とする役所方々、これはある意味で善意ではあるわけですけれども、そうなれば、これはいとも簡単に仕事がふえていってしまう、行政組織としても肥大化してしまうということは当然の結果でございます。  実は、そういう日本行政組織の中でも非常に例外的なものもありまして、私がかつて奉職した大蔵省でも、税については、主税局という企画立案をするところと国税庁という執行をするところとを完全に分離して仕事をしております。  それでも、実は私自身が経験したことでございますけれども、執行当局からはしょっちゅう、こういうふうに改善してくれ、こういうふうにした方が自分たち仕事がやりやすいのだ、特に徴収方面で、課税の面ではなくて徴収業務についてそういう意向が非常に強く出ます。これに対して、我々主税局におったときの経験では、そうみだりに彼らに権限を与えて肥大化していくことはできないのだということで、ある種の緊張関係を持って仕事をさせていただいた、こういうことがございます。  それからもう一つ、強大化するという面についてどういうことがあるかというと、現在の行政庁というのは裁量権がすごい多いわけです。極論すると、本当はこれはやってはならぬことだと我々学生時代に教わったのですが、行政は、実施法がなければ、行政作用法というものがなければ行政権限というのは執行できないのだというふうになっているはずなんですが、実は現実にはそうなっていない。  設置法だけで、つまり、こういう問題を所掌しますよということだけで、問題が起こるとそれに対処してしまう。実施法は何もない。予算措置だなどという言葉もあるくらいで、予算だけで対処してしまう、そういうこともあるわけでございます。  MOF担などというような言葉世間に広まったわけですが、MOF担などというものがどうして存在したかといえば、これは、透明なルール、公開されたルール仕事が行われていない、執行が大きな裁量を背景にして行われている、だから実際の執行官の顔色までうかがわなきゃならぬというようなことでMOF担というものが発生してきた、こういう面もあったということを私は指摘しておきたいわけでございます。したがって、今度も、そういうことで企画立案執行とを分離すべきである、こういう意見が非常に強く出たわけであります。  ところが一方、これに対しては、実は、ちょっと待ちなさい、住専問題あるいは不良債権問題の発生というのも現在の日本金融行政の非常に大きな問題である、その個別具体的な問題がどうして発生したかというプロセス、メカニズムに着目すれば、企画立案執行との間に癒着があったからというよりも、執行の中の監督検査の間にむしろ癒着があったからこういうことになったのではないか、こういう議論があったのでございます。  つまり、監督としてそこにどういう是正命令なりなんなりが出るかということに対して、それをおもんばかる余り検査の結果までゆがめてしまう、こういうことが現実にあったというふうにも取りざたされたこともあるわけです。  例えば兵銀のケースでいいますと、兵銀最後中間報告中間決算の数字では、不良債権は六百九億円という段階がございました。それが現実破綻した後幾らになったかといえば、もう御案内のようにほぼ一兆五千億になった。六百九億円とか多く見積もっても千億台の話が、十倍にも、この場合には二十五倍ですけれども、そんなにまでなる。  これはいろいろ、現実にランニングコンサーンとしてやっている場合と現実破綻をした場合とは、それは違うでしょう。しかし、それにしても、この検査の結果と実態というものには違いが多過ぎはしないか、こういう議論であります。太平洋銀行の場合も、二百五十六億円が二千六百五十億円に破綻後なった、こういうことです。  これは監督のことをおもんぱかって、もし本当検査結果をストレートに上げてしまったら物すごい厳しい監督命令を出さざるを得ないのじゃないか、もう少しこれを何とかそれ以外の方法で生かせられないかというように、いわば検査の結果というものがやや監督をおもんぱかってゆがめられたことはありはしないか、こういうことでございます。そういうようなことで問題が先送りされて、だんだんだんだん問題が大きくなっていってしまったというプロセスはなかったかということを私どもは大いに議論をさせていただきました。  しかし、結論としては、検査はやはり監督の手段である、検査監督とは一体であるべきである、そしてまた、先ほど冒頭言った、今度の橋本行革行政組織に加えるメス、それは企画立案執行とを分けるという原則なんだからこの原則を適用しょうじゃないか、そういうふうな結論になったということで、現実に今日の法案もそのラインで出されているわけでございます。  しかし、それにしても、この党内議論を、これから大蔵大臣、また総務庁長官あるいは官房長官といった方々運用をされるわけですけれども、ここはやはり我々の議論をこれからの運用において生かしていっていただきたいということを私は申させていただきたいというふうに思うのでございます。  それはどういうことかというと、まず第一に、とにかく執行部門が新しく仕事をつくり出すというようなことは、断じてこれは避けなければいけない。仕事をつくるのはあくまでも企画立案、もっと言ったら政治です。政治以外には、執行仕事を新しくつくり出すなどということは、金輪際これはやってはならないことである。  それからもう一つは、ルールであります。執行部門が大きな裁量を持つときにはろくなことはない。やはりもっと細かに、執行本当企画立案部門が決めたルールをただ適用するのみ、それを忠実に適用する、そういうことに専念していただきたいと我々は思うのでございます。  そういうことを考えますと、現今、金融界信用リスター信用リスクにつきましては、これは資産分類というものが一番大事なんですが、資産分類も、大蔵省資産分類もあれば会計検査院の資産分類もまた公表されているというようなことでございますけれども、この不良資産分類というようなものについても、やはり共通のしっかりしたものをもう一回定め直していただく必要があるのじゃないか、こう思います。  それからもう一つ、これまでの金融機関と違って、信用リスクのほかに、大きな市場商品を扱っている、いわゆるデリバティブでございますが、そういう市場リスクという問題もございまして、この市場リスクの評価を一体どういうふうにしていくかという大きな問題がございます。これについては、BISでもお手上げ、BIS共通の世界のルールはつくれません、それぞれのところでお願いしますというのが現在段階でございますが、こうしたことについてもやはりしっかりしたルール企画立案部門で決めていただいて、それを忠実に執行するという体制をぜひとっていただきたい。それから、早期是正措置も同様でございます。  要すれば、我々、お医者さんにかかる場合、検査に回されるわけですが、検査医というのは、正しく検査をして、検査の結果を上げるということであって、処方せんを書く診断のお医者さんがどういうふうに思うだろうかなどということを考えて検査の結果を適当にしてしまうということは許されないわけでございまして、検査検査だ。したがって、私申し上げたいのは、できれば監督検査を内部的にもある種緊張関係を持ったような組織立てにできないだろうかということをいまだに思っておる次第でございます。  それから最後に、非常に金融は専門的になっておりますから、特に新しいデリバティブBIS国際決済銀行でも共通ルールを定めることは難しいというようなことで手を上げているような問題に切り込んでいかなければならないというのがこれからの金融監督行政でございますので、十分に専門的知識の蓄積に努めていただきたい。  以上でございます。これは要望でございますので、御答弁は結構でございます。  それから、二番目の質問は、金融監督庁による監督業務日本銀行による考査業務との関係についてお尋ねをいたしたいと思います。この関係をどのようにお考えでしょうか、大蔵大臣、お願いします。
  6. 武藤敏郎

    武藤政府委員 まず、民間金融機関等に対します検査でございますけれども、これは、政府が、経済国民生活に重大な悪影響を及ぼすことのないように、預金者保護信用秩序維持等を図ることを目的といたしまして、法律に基づいて行政権限を行使するという性格のものと考えております。  これに対しまして日本銀行考査は、御承知のとおり、あくまでも取引先金融機関との契約に基づいて行われるものでございまして、例えば対象日銀との取引のある金融機関に限定されるとか、いろいろな性格相違に基づく現実の取り扱いの相違がございます。  そういうことで、この日本銀行考査行政検査というものは基本的に違うものというふうに考えております。
  7. 柳沢伯夫

    柳沢委員 質的な、定性的な分析をすれば、今武藤審議官がおっしゃられたとおりでございます。私も完全に同意をいたすわけです。  ところが、民間の声を聞くと、全銀協の会長、橋本さんも、ぜひ考査検査一緒にやってくれないかということを要望されております。私は新聞記事でしか読んでおりませんが。しかし、そういう公式発言以外にも、ぜひ一緒にやってもらいたい、次から次へ同じようなことを検査しに来られたのでは民間の対応も二重になって大変なんですよという、ごく現実的な要望なのですけれども、それが一つあります。  それからもう一つは、要員の問題です。  先ほど私ちょっと触れましたように、これからの金融検査というのは、これまでのように信用リスクの面だけ見ていればいいという検査ではありません。これまでは検査に行ったって、資産だけ見ていればいいんですね。資産を見て、そして資産健全性が負債に見合っているかどうかということだけに集中してこれを検査していればよかった。  ところが、恐らくこれからの金融機関を考える場合には、デリバティブというか、利ざやを稼ぐような金融活動以外に市場商品を大きく扱って、そこから利益を得なければどんどんどんどん日本銀行は、総体としてアメリカ等に今劣後しているわけですが、その原因はそこにあるわけですね。市場商品を、すべてとは言いません、トップランクで頑張っている日本銀行もいますが、総じて言えば、日本金融機関というのはその辺に弱い。  というようなことで、これからそこを強くしてもらうということも今回の行政改革目的なのですけれども、そういうことを考えたときに、検査要員というのは本当に十分なんだろうか。これは、だれが考えても十分とは言えない。これは一般的に、今行政改革の中におりますから、今ここで人数をふやしてくれと言うのはなかなか難しいでしょうけれども、アメリカの場合には、関係大臣承知のとおり、何千人という単位でございますね。  我々はそのエピソードも聞きました。新しい商品を次々に金融機関は出しますから、マンツーマンで張りついて、そして新しい商品をある機関が出したといったら、あれはどういう商品ですかということをその場で聞かなければ、随分おくれてしまって、検査の能力が、資格がそもそもなくなってしまうというような事態を金融検査実態として我々は聞かされておるわけでございます。そういうようなことを考えますと、日本銀行考査要員政府が持っている要員を活用しない手はないというふうに私は思うわけでございます。  そこで、また党内議論でどういう議論をしたかということを申し上げるわけですが、これは内々の議論でございましたけれども、我々は、今度新しくできる金融監督庁日銀考査部門を統合しようかと思ったのです。そのぐらい思いました。それでなければ要員の確保はできないではないか。しかし、それでも不足だ。それからまた、場合によっては公認会計士を部外から、テンポラリー雇用関係をつくって応援をしてもらう、そういうこともあり得べしだというふうに思ったわけでございます。そういう議論もあったということで御紹介をさせていただくわけです。  それから、時に、日本銀行政府監督行政部門を統合してしまったらどうかというような議論をする人もいるように報道あたりで聞くわけでございます。  これは、私は先ほど武藤審議官の御答弁にも賛成をしたわけでございますけれども、日本銀行というのは公権力の主体じゃないのですね。つまり、あくまでも契約ベースでいきますから、ユニバーサルに彼らの権力というか彼らの検査対象というものが当然行き渡るという性質のものではありません。契約があってこそ初めてそのお取引先に対して検査を申し出るという性格のものでございます。  そこで、日本銀行へこの業務を統合するというのは、これは全く尾っぽが犬を振るみたいな話でありまして、日本銀行自体を変質させてしまう。行政機関にしてしまうということならばいざ知らず、日本銀行の立場を今のようなある種特殊法人という立場に置いておく限り、この議論というのは不可能である、私はこのように思っております。  それからもう一つは、先ほどもちょっと申しましたように、今世界は金融が猛烈に動いていますから、それに対する行政あり方というのも物すごく動いているのです。その動いている中で、これに対しての分析というものは学会でもいろいろ行われているようでございますけれども、リスクが大きくなった。  したがって、今までのように、日銀特融のようなああいうラストリゾート、最後のよりどころとして中央銀行が面倒を見るということだけで、金融界が仲間内だけで問題を処理するということはほとんどできないねというところへ来ているのです。したがって、むしろ世界の潮流は、政府監督権こそ強化すべきである。  それはどうしてかというと、預金保険機構にしろ何にしろ、最後はやはり財政資金なんですね。したがって、最後は財政資金に面倒を見てもらわなければいけないのだから、これは政府監督権にやはり大きな力を与える以外にはないではないか。巨額な損失が出たときに仲間内だけでとてもそういうことはできないというようなことになっておりまして、現在の潮流は、今私が言ったように、政府監督権の強化であるというふうに見ておるわけでございます。  それからもう一つは、検査目的でございます。  この検査目的についても、今までは、預金者保護でございます、これで、一刀流で済んでまいりました。しかし、最近はもっともっと金融の分析も進みまして、やはり金融機関の一番大事なところというのは、預金者というのは、ペイオフされるというようなことになってくれば、これは余り大きな声では言えないかもしれませんが、どちらかというとそのウエートは低くなってくる。ペイオフで、預金者もある程度覚悟しなければならない。すると、金融システムの一番大事な、守らなければならぬコアは何だといったら、これは決済システムなんだ。決済システムが当てにならなくなったら資本主義経済が動いていきませんよ、こういうところへ来ました。  さらに私が驚いたのは、こういうこともございました。フランス銀行に行ったときでございますけれども、フランス銀行で、あなたのところの検査目的は何ですかと聞いたら、何と、これから金利政策を大いにやっていきます、したがって金融検査でもって各金融機関がどのくらいの低金利に耐えられるか、どのくらいの高金利に耐えられるか、いわば金利水準との関係で損益分岐点を探るのが、知っておくのが金融検査目的です、こういうふうに述懐されました。私は初めてのことでしたからかなり驚いたのでございますけれども、どうやらこれも私が驚いたのが遅きに失しているわけで、もう共通の理解ということになっているようです。  ということを考えますと、金利政策との関係で損益分岐点を把握するということになると、これも一般に言われていることですが、日本銀行がもしそういうことで検査をするということになりますと、日本銀行はどうしても低金利政策に引っ張られるというのですね。低金利政策に引っ張られる。利益相反が起こるのです。  それはどうしてかというと、日本銀行だって、銀行をつぶして自分がラストリゾートとして特融か何かしなければならぬというのは嫌なんですね。そういうようなことで、この新しい金融検査目的を考えますと、中央銀行による検査というのは非常に難しい立場に立たされたのですよ。こういう議論も実はあるわけでございます。  そんなことでございますので、私は、今回の我々の案が非常にいいというふうには思うのでございます。しかしそれにしても、先ほど言ったように、民間の負担のことを考えたり要員のことを考えたりしますと、日本銀行考査部門と新しい政府監督行政との連携というものはよほど密にして、余分な負担を民間にかけない、それから要員を、違う組織ではあるけれどもある意味で一体的に見て、そしてこの限られた要員を目いっぱい効率的に使っていく、こういう考え方がなければならないのではないか、このように思う次第でございます。  あと、質問を用意させていただいて事前に御通告もいたしているわけでございますけれども、次の関連質問の方もございますので、最後に、金融と財政の分離論というものについて触れさせていただきたい、このように思います。  これは、総理、ちょっと御不快のようでございますので、どなたでも結構ですが、大蔵大臣金融と財政の分離論というものがございますので、これについてどのようにお考えになっていらっしゃるか、改めて御答弁をいただければと思います。
  8. 三塚博

    ○三塚国務大臣 かねがねの課題でございます。与党三党の一年間の検討の結果の提言の中にも、このあり方を十二分に検討して進めるべきだ、こういうことであります。既に、橋本首相が会長の行政改革会議の中でも、本件の問題については、どうすべきかということの中で、思い切った行政改革を視点に御審議をいただいておると聞いておるところであります。九兆とも十一兆とも言われる昨今の審議の中身でございます。  その中で、大くくりでどう進めるかということに私どもは最大の関心を持って見ておるということでございます。決められたことに忠実に取り組むというのが今日の内閣の姿勢でございます。財政、金融を担当する大臣としても、そのことには何らの異論がございません。  そういう中で、財政、金融は、公権力の法律の定めるところによって行う財政。金融も、ただいま御指摘のように、検査部門も法定によってこれを行う。それは預金者保護であり、金融秩序の維持に通ずるという大目的がございます。そういう点で企画立案部門執行部門とはおのずから違ってまいるわけでございますが、最終的には、大きな目標を達成するという意味で、全体的な調整、調和の中でこれが行われてこそ初めて、財政、金融の安定的な運用というものが期せられるのではないかということでございます。論議の方向を見定めながら対応していくわけでございます。  私は、理想的には車の両輪として、主体性を保ちながら両々相まちまして、先ほど来の、一本化、一体化検査の御指摘もございましたが、これも国民に対する責任ということであれば、金融システム改革が既に進みつつある昨今でありますから、その方向で行かれるものと御期待を申し上げております。
  9. 柳沢伯夫

    柳沢委員 これにつきましても、実は党内でこの金融監督行政を論議するときにも大変大きな議論をさせていただきました。私個人も、なかなかこの問題は問題が大きくて、今すぐ結論をどちらにするかということについては思い悩んで議論に参加をしておった、こういう次第でございます。  ちなみに、大蔵省の失敗ということが非常に最近マスコミ等でも言われますし、また、我々同僚議員の中でもそういう議論がたくさん行われているわけでございますけれども、私は、ざっと考えてみまして、三つぐらい大蔵省の失敗と言われている現象はあるかな、こう思っております。  一つは、やはり日本金融・資本市場の整備がおくれた。ロンドンそれからニューヨークで、せっかく東京を二十四時間の、時間系列の中では東京に非常に期待するところが世界の金融・資本市場として大きいわけなんですね。これは日本がどうこうというのじゃなくて、日本が置かれている時間帯がそういう立場を求められているということがあるわけですが、そういうものに十分こたえられていないじゃないか。  むしろ、それよりももうちょっと時間的なずれもあるシンガポールだとか、そういうようなところにそういう機能を頼まなくちゃならなくなってしまうというのはおかしいじゃないか。これは世界がそういうことを言うに至っているということで、まことにこの面の立ちおくれというのは問題だというふうに、これは認めざるを得ないと思います。  それから第二番目が、バブルを引き起こしたじゃないか、こういうことでございます。  それから第三番目が、昨今の銀行証券、保険の破綻あるいは不祥事といったようなもの、その中で公務員の規律、倫理が問われるような事案も散見されるというようなことで、これらが大蔵省に対する不信ということで非常に大きく取り上げられたことだったかなと思うわけでございます。  しかし、私は、この中で金融、財政のあり方との関連で申しますと、やはり一番大きな問題はバブルの問題だった、このように言っていいかと思うんですね。  バブルがなぜ生まれたかということの中で、私も、日本銀行の当局者、個人的にも知っておる、尊敬する先輩でございますので、それを打ち明けられたことがあるわけです。プラザ合意後の円高不況を克服するのに、もう少し財政が一緒にやってくれたらこんなことにならなかったのに、あのときに財政から完全に拒否をされてしまって、財政政策の出動を拒絶されてしまって、金融だけで頑張らなくちゃならなかった、これがやはりバブルを生んだとおれは思うから、これからの参考にしてくれなどというような個人的な話も私自身聞いておるわけでございます。  しかし、これはある意味でそういうことも確かであると思います。ただ、もう一つの反面、私は、このバブルを生んだ財政と金融の確執のほかにもあるということを忘れてはならないということを党内で往時に論じさせていただいた。  それはどういうことかというと、日本銀行金融政策をもってしても、通常の物価水準は何ら変わらない、安定している。資産価値だけが、資産の価額だけが物すごく高騰してしまった。これが日本銀行金融政策の本当に取り組むべき対象であろうか、この議論であります。  幾ら日本銀行が、大蔵省が財政政策の出動を渋って日本銀行だけがこれに取り組まされたと言っても、もし本当に一方で物価水準がどんどん高騰していったら、恐らくあんな金融緩和政策はやらなかっただろうと思うんです。なぜやったのか。それは、一般の物価は極めて安定だった、上がつたのは資産価値だけだった、資産価額だけだった。いまだに、この問題について日本銀行は責任を持つ問題なのですかと聞いたら、彼らの中のオピニオンリーダーの本を読んでみても、我々の責任ではありませんと言っているんです。資産価額の上下というのは日本銀行金融政策の対象ではありません、こういうことをはっきりその著書で書いておられます。  ですから、日本銀行金融政策を非常に尊重すればあのバブルは起きなかったのかというと、そんなことはないんです。じゃ、どうしたらいいか  といったら、だれも解答を持っていないんです。世の中のことで解答が全部あるなどということを考えるのは本当に愚かだと、いっか私はここである政府委員から言われたことがありますけれども、そのとおりなんです。この問題は解けない。  したがって、このバブルの責任は大蔵省が財政政策を渋ったことにある、日本銀行金融政策に過大な負担を課したことにある、ということだけで今度の金融と財政の関係等について論じたら大きな誤りになるんですということは言っておかなきゃいけない、こういうことで、私はそのことを非常に強く申したのでございます。私に結論があるかといったら、先ほど言ったように結論はありません。  それともう一つ、注意をしなければならないのは長期資金市場です。これは、私も少しばかりアメリカにおりまして、債券市場をずっと見た。そのことばかりやった人間なんですけれども、債券の相場、債券の利回りなどというものは、およそ中央銀行、連銀の金融政策のらち外ですね。これは、まさに債券の需給関係とそれから人々の持っているインフレに対する期待、インフレ期待というふうに言うのですけれども、それだけで決まっているというのが実情でありまして、中央銀行金融政策というのは、直接的、間接的といえども多分ほとんど機能しないのですね。  だから、金融政策というと、長期資金市場も短期資金市場も同じように日本銀行がこれを操作できる、政策展開できるなどというようなことをみんな考えがちなんですけれども、そうではないのではないか。とすると、どちらの方に長期資本市場の需給関係なんかは大きく影響されるかというと、やはり財政政策なんですよ。財政がどれだけ国債を出すかの方にはるかに大きく長期資本市場、長期資金市場は影響されるということは否めません。これをどう考えるか。  それから、言うまでもないことですけれども、国際金融市場国際金融問題というのは、これは非常に財政とかかわりがある分野でございます。  そういうように、バブルにおける日本銀行機能の限界、さらに長期資金市場の問題、さらには国際金融市場の問題、これらのことを考えますときに、本当に今のバブルは、大蔵省が財政政策を大事にし、日銀にすべてを押しつけたからこういうことが起こった、だからこれらを分離しなければ正しい解答を得られないというようなことはやや短絡的な議論ではないのかということを私自身考えて、今この問題に皆さんと一緒に取り組もう、こう考えているということを申し上げさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。
  10. 綿貫民輔

    綿貫委員長 この際、金田英行君から関連質疑の申し出があります。柳沢君の持ち時間の範囲内においてこれを許します。金田英行君。
  11. 金田英行

    ○金田(英)委員 自民党の金田英行でございます。柳沢先生の関連質問をさせていただきます。  冒頭、委員長にお願いがございますが、質問の便宜のために資料を用意しておりますので、配付の御許可をいただきたいと思います。  本当にお忙しい中、総理初め四大臣に、まさに内閣の中枢の四大臣に貴重なお時間を割いていただきまして、ありがとうございます。  まさに今この行政改革は、百年に一度あるか二百年に一度あるかというような日本の将来の発展を左右する大きな改革であります。どうしてもこの改革は我々なし遂げなければならない、そういう重要な時期にかかわっているんだということで、私も、一党員でありますが、身震いをするような緊張と興奮を覚えておるわけでございます。  それにつきまして、各野党あるいは各党から、これから一年かかって行革の素案をつくるんだ、実行案をつくるんだというようなことはおかしいじゃないか、過去、行革審の答申だとか臨調の答申だとかいろいろな提案が行われているんだよ、今さらさらに時間をかけて実行案をつくるというのはやる気がないんじゃないかというようなことを言われておるわけであります。  しかし、今まで、確かに過去、三十年代からいろいろな行革についての答申や意見が具申されて今日に至っているわけでありますが、それら種々の意見についてどれを実行するかということは、まさに必要な時間、何をやるか、それからどれが国民のコンセンサスなのか、そして何をこそやらなければならないのかという選択、そして熟慮というものにどうしても時間がかかるというふうに思うわけでございます。そういう意味で、残された時間、質問をさせていただきます。  まず、当委員会に託されております金融監督庁設置について一、二お伺いさせていただきますが、本会議でも議論のありましたように、これは金融監督庁が何をやるにも、例えば業務停止命令をかけるにしても何をするにしても、大蔵大臣と協議しなければならないではないか、ある意味で見れば、大蔵省総理府に別家をつくるような話であって、大蔵省の焼け太りの議論になるじゃないかというような御質問もありました。  また二点目として、我々、行政改革の素案をつくるということでいろいろと検討をしている課題の中に、イギリスのエージェンシーということ、計画と企画、そして実施という形に分けて、実施部隊についてはエージェンシー化してその効率的な運用を図っていくんだということが構想されているわけなんですけれども、この金融監督庁についても同じような考え方、軌を一にする案だというふうに思って賛同しておるわけでございますが、この焼け太りではないかというようなことについて、大蔵省の焼け太りにすぎないのではないかというような反論につきまして、主務官庁であります内閣官房長官、梶山長官の御意見をお伺いしたいと思います。
  12. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 主務大臣ではありますが、実はその内容をほとんど知らないのが現実でございます。  委員御指摘のように、住専問題に端を発して、この大蔵、これでは相まかりならぬというところがこの問題の、発足のいわば動機であったわけであります。その中で出された幾つかの案は、いずれにしても、今までの企画立案部門検査監督機能、一定のわらじを履いちゃいけないという、その厳然とした思いがそれぞれにあったから、この金融監督庁をつくることになったわけであります。  特に与党三党の中では、九月案、十二月案、それぞれ表から見ると若干後退されたとはいいますが、成熟をされた与党の案が出てまいったわけであります。今つくっているのは、いわばその限界をどこにするか、権限をどこまでにするかという、例えがいいかどうかはわかりませんが、うちを建ててその中にどういう機能と人材を配置するか、これからがいわば勝負どきであります。形の上では皆さん方の要請をされたものができ上がったわけであります。  ただ、いずれにしても、行政改革の中で無制限に人材を、職員を投入するわけにはまいりません。その意味で考えますと、私は、もう結論になるかもしれませんが、この長官にだれを選ぶか、そしてどういう運営をするかというのが今後の金融監督庁のいわば死命を左右する問題ではないかと思います。焼け太りと見るかあるいは纂奪をされたと見るかは、その長官やその他の運営の方法によって異なるものと思いますので、必ずしも焼け太りとも思いませんが、圧倒的に大蔵省をつぶそうという案でもないということを御理解をいただきたい。
  13. 金田英行

    ○金田(英)委員 大蔵省の問題につきましては、これからさらに行政改革の中で、予算編成権、主として主計局の機能を官邸に移すべきではないかとか、いろいろ改革の中で議論されているわけでありまして、大蔵省の焼け太りになるのかならないのかというのは将来的な検討を待たなければならないという気もするわけでございますが、この点について、大蔵大臣の御意見がございましたらお伺いしたいのですが。
  14. 三塚博

    ○三塚国務大臣 もう金田議員も、万般のことを知って御質問であります。  焼け太りなどということが当てはまるようなことではありません。住専問題に発しました金融不安、不良債権等の問題、これを解決して、日本金融システムが安定していかなければならない。こういうことの中で三党が、先ほども申し上げましたが、一年にわたりまして今後のあるべき姿の協議をいたし、最終的に十二月二十四日取りまとめが行われたところでございます。  機構改革は、その機構がこの国とこの国民とに少なくとも安定をもたらす、こういう基本がなければならぬわけでございますから、三党の協議も万般から行われておるという意味で、このことを内閣として首相の指示に従い取り組んでおるところ、金融システム改革がまたしかり、行革がまたしかり、財政再建がまたしかり、こういうことでございます。定められたことをしっかりとやることにより、日本政府国民の期待にこたえる仕事を担当し効果を出す、こういうことであるわけでございますから、焼け太りの効能、是非を論ずる時期ではございません。
  15. 金田英行

    ○金田(英)委員 それでは、これから行われる行政改革、まさに橋本行革ビジョンの実行、実施案というのがこれから出てくるわけでありますが、私も、二十三年間の公務員生活を通じて、国の行政機関の矛盾あるいは不都合、そういったことについてそれぞれ所感、感慨を持っております。そういったことで、ざっとグランドデザインと申しますか、どんな形になっているのかということについて、私なりの所見を申し述べながら、委員会の御批判、御叱正を賜りたいというふうに思います。  配付資料の図−1でございますが、現行というのは、まず政府レベルで中央省庁がありまして、その下に、ブロックレベルということで、東北ブロックだとか九州ブロックだとかということで各省の地方支分部局が配置されているわけであります。そしてまた、この地方支分部局の下に都道府県レベルで各省の出先というのがございます。そしてまた、市町村レベルにも各省の出先というのがあります。そして、それとは別に、都道府県と市町村というような地方公共団体というのが配置されているわけであります。こういった現行行政機構に何らかの形で手をつけなければ中央集権体制は直らないのではないかというふうに感じているものでございます。  具体的に申しますと、市町村レベルで各省の出先が全国津々浦々に配置されているわけであります。私の地元に近い旭川というところに行きますと、国の出先機関を訪問するのにやたらに時間がかかる。何十という出先機関をあいさつ回りしないとだめだという形になっているわけであります。開発建設部、建設、農林、運輸の出先がございます。また農業事務所、河川事務所、建設事務所というのもあります。また労働省の出先の労働基準監督署だとか職業安定所だとかというのもありますし、林野庁の出先の営林支局というのもございますし、登記所というようなところもありますし、財務事務所というのもあるわけでございます。  各省は、全国津々浦々に市町村レベルに至るまで国家公務員を配置して、その業務執行しているわけであります。ですから、地方公共団体は自分たちの市町村域内で行われる行政についてほとんど決定することができない、そういうような内容になっているのが今の行政機構だというふうに思うわけであります。  行政需要が一体どこでつくられているか。各市町村が要望しているものがどんどん上がって行政需要が構成されて、それに基づいて予算要求がされている、世間はそう考えておりますが、実際は違います。各省がその行政需要を霞が関でつくっているわけであります。昨年の五%増で要求してこいというふうに言いますと、各省の市町村レベルの現場出先から、五%増の予算要求というものがさっと一週間で上がってくるわけであります。そういった形の中で、霞が関がこの国の行政需要をつくり出している。何も市町村の出先機関あるいは住民の皆さん方が行政需要をつくり出しているわけではないというふうな実態になっているわけであります。  ですから、市町村が国に陳情に来るときに、何を陳情したらいいかわからないという市町村がたくさんあるわけであります。ですから、国の出先に行って、国に、大蔵省に何を要求しているのですかということを聞いて、ああ、それだったらこういう要求を、陳情をやってくださいというような形で、市町村長は要求書を地方の出先機関につくってもらって中央に陳情に来るというのが残念ながら実態でございます。  これからの行政改革を考えていくときに、市町村の行政需要、本当に欲しいものを予算要求させるというような新しい行政組織をつくるならば、このような全国津々浦々に配置されている国家公務員というのを新しい市町村の中に組み込まなければならないのではないか。ある市町村は林野行政を大切にしたい、ある市町村は社会福祉を大切にしたい、そういった地域の各個の多様な価値に基づいてそれを素直に吸い込んであげる、本当にそういった予算要求体制をつくらなければ、シーリングというものは絶対なくならない、なくすることができないというふうに私は思っているわけであります。  ちなみに、各省の出先、市町村レベルの出先というようなことで、登記所の例についてお尋ねしたいと思います。法務省民事局長おられると思うのですが、全国津々浦々に登記所という、国の法務事務官を配置して登記の事務を行っているわけであります。  一方、戸籍事務というのがありまして、戸籍事務というのもこれまた法務省の仕事であります。出生だとか死亡だとか婚姻だとか離婚だとか、そういった国民の権利義務にかかわる重要なことを市町村に機関委任事務、まだ固有事務になっていませんが、そういった形で法務省の仕事を市町村に機関委任しているわけであります。  登記という事務もまた国民の権利義務に重要な影響の及ぶ仕事であることは理解するわけですが、全部法務事務官を、市町村二つか三つぐらいに一つずつですが、配置しているわけであります。何と、この登記所に配置されている国家公務員は約一方になんなんとするわけでありますが、こういったものもやはり市町村に機関委任すべきでないのかと私は思っているわけであります。  とにかく、行政改革の中で登記所の統廃合を進めているわけですから、私の選挙区に至っては、統廃合されまして、泊まりがけでないと登記所には行けないというような方に、行政サービスを向上する上からも、固定資産税の評価、固定資産税の納付を命じたり、あるいは土地区画調整だとか、そういったことを市町村がやっていて、むしろ市町村の方がその区域内の不動産登記あるいは法人登記については詳しい知識を持っているわけであります。  そういった中で、こういった各省の市町村レベルの出先は新しい市町村に組み込むことが絶対必要だというふうに思っておるわけですが、これは、戸籍業務と比べてどうしても国がみずからやらなければならないというふうに、この前の行政改革会議に登記事務のエージェンシー化を問うたときに、何だ、そんなのは重要な事務だから国みずからやらなければならないという御回答だったようでありますが、その点について、民事局長の御所見を承りたいと思います。
  16. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 お答え申し上げます。  御案内のとおり、法務局におきましては、登記だけではなくて、供託、戸籍、国籍などの民事法務に関する多くの事務、さらには、加えて訟務の事務あるいは人権擁護の事務などを総合的に扱っているわけでございます。  法務局におけるこれらの事務は、大変複雑困難な法的判断を必要とするということのほか、その事務量は大変多いわけでございます。ただいま登記のために一万人弱の職員を配置しているという御指摘でございましたが、しかしながら、その陣容におきましても、国民に対する関係で必ずしも十分なサービスができていないという面もございます。そういう中で、その適正なかつ効率的な運営を図るべく、例えば登記事務のコンピューターネットワーク化を推進するなどして、そういった体制のもとで効率的な事務処理に努めているところでございます。  これを市町村に行わせるという御指摘でございますが、そういうことになりますと、現行の体制よりもさらに分散された機構のもとで処理されることになるわけでございまして、効率的な運用が果たして可能かどうか。あるいは、そういった業務を遂行するために必要ないろいろな多数の法令がございますが、そういった法令について知識を持つ職員をどのように養成すべきか。さらには、今申しましたコンピューターシステムの推進ということの関係においてどういうふうに整合性を確保していくかといったような問題があるというふうに考えているところでございます。
  17. 金田英行

    ○金田(英)委員 なかなか納得できないのですが、とにかく行政スリム化、簡素効率化のためにやるべきことは血を出してもやるという姿勢でなければこの行革は成功いたしません。  この現行改革という図11の図を見て、今新聞紙上をにぎわしているのは、残念ながら、政府レベルの中央省庁を、二十二ある中央省庁を半減させる、十一程度に縮減する、大くくりにするということぐらいであります。しかし、このことにつきましては、例えば民主党の菅党首に至っては、事務次官が二十二人が十一人に減るだけではないのか、そういう改革ではまかりならぬというような主張をしていると伺っております。  確かに、事務次官が減ることはそのとおりでございますが、中央省庁が大くくりになるということが縦割り行政の弊害を大幅に除去することになるという絶大な効果をもたらすものでございます。二十二が十一になれば縦割り行政の弊害は半減するわけであります。また、中央省庁を統廃合することによって、その地方支分部局、親が一緒になったから下も一緒になるといういろいろな効果をもたらすわけであります。  確かに、この中央省庁は、国家公務員の配置人数から見ますと、中央省庁にはわずか四%ぐらいの国家公務員しか配置されておりません。その九六%、ほとんどが地方支分部局以下に国家公務員が配置されているわけであります。スリムな簡素的な行政改革をしようというようなことであれば、この地方支分部局以下の統廃合が是が非でも必要になってまいります。  ですから、新しい都道府県という形で、都道府県レベルの行政については総合的な行政が展開できるような、その域内の国家公務員については都道府県に吸収するというような、あるいは市町村レベル内では市町村に統合するというような改革を是が非でもこれから鋭意進めていかなければならないものではないかと考えている次第であります。  恐縮ですが、図12につきまして、道州図というのがございます。この道州図というのは、衆議院選挙の比例区のブロック割りに若干の手を加えただけの道州図であります。沖縄は九州ブロックから独立させて一つの道州とさせていただいておりますし、また東京と南関東ブロックにつきましては、これは飛び地になっておりますので、東京・南関東地区、東京にも田舎が欲しいだろうというようなことで東京・南関東ブロックということでまとめた十一の道州の図でございます。  いろいろな多様な価値に基づいて個性ある地域づくりをこれから展開していくというような場合に、どうしても四十七の都道府県では余りにも猫の額みたいでぐあいが悪いというふうな形で、道州論というのが巷間盛んに言われておるわけであります。九州の平松知事は九州府構想ということを掲げておりますし、中山太郎先生は近畿の府県連合構想というのを打ち出しておられます。四十七都道府県では余りにも狭過ぎて、広域行政あるいは交通体系がどうなのかとか、あるいは国の行政の受け皿、権限移譲の受け皿としては余りにも狭過ぎるということが実態であります。どうしても県が中央の受け皿たり得ないというのが実態であります。  また実態面で見てみましても、各中央省庁は都道府県に、地方に権限移譲することに極めて厳しい抵抗を示しておるわけであります。というのは、都道府県というのは残念ながら自治省の出先機関にしかすぎないではないか、自治省の言いなりになる都道府県だというような考え方があるわけであります。そういったところに、運輸省の権限を都道府県に移す、あるいは農林省の権限を都道府県に移すということは到底難しいのであります。  そういった中で、国の機関としてブロックごとに道州庁をつくる。そしてこの道州庁の長官は、私の考えでいけば公選ではなくて官選とする。東京に行かなくても、仙台や広島や福岡に行けばすべてのことが完結するというような体制をつくらなければならない。  しかし、この道州庁をどうやってつくるかというのは次の図−3でございますが、既に各省は地方支分部局というのをブロックごとに配置しているわけでありまして、行政監察局だとか法務局だとか財務局だとか通商産業局だとか運輸局だとか地方建設局、営林局、いろいろな各省の出先がブロックごとに配置されているわけであります。  こういったものを全部結わえよう、そして総合行政機関にしようというようなことがどうしても考えられないのかどうか。そうすることによって、総合行政機関としてのブロックの国の機関ができ上がる。決して新しくつくるわけではなくて、今あるものを結わえるだけだ。そういった中で道州庁というのが設置されるというふうに思うわけであります。決して屋上屋を重ねることにはならないのであります。  この道州庁に結わえることについては各都道府県に異論があろうかと思います。我々の都道府県に権限を移譲しないで、道州庁に全部権限移譲をするというのはおかしいじゃないかという形で、おれに移譲せいという意見が出てくるやもしれません。しかし、現状の中央省庁が権限を移譲するとすれば、都道府県よりも、自分の部下が配置されている道州庁にだったら安んじて権限を移譲することができるというようなことになるわけであります。  そういったことで、この道州庁の人事あるいはこの道州庁の業務運営については、その道州を構成する都道府県知事が何らかの形で関与できるようにするという道も、地方分権を進める上からも何とか考えられるはずだというふうに思うわけであります。  この点につきまして、我々行政改革、地方分権を論ずるときに、国の権限を地方におろすんだ、二層制がいいか三層制がいいかということがとみに党内議論をされているところであります。この点についての所見が自治省にありましたら、お尋ねしたいと思います。
  18. 松本英昭

    松本政府委員 お答え申し上げます。  御提案の道州制構想でございますけれども、これは、主として国の行政機関あり方、そして国の行政機関と中央省庁との権限の配分のあり方の問題と承っております。そういう意味におきましては、住民の選挙で選ばれました議会それから長を持ちます地方制度とは、またこれ別の視点のものかとは思います。しかし、今委員御指摘のように、機関の統合等の問題におきまして、あるいはまた国の機関との関係におきまして、地方制度と極めて深い関連を有するものでございまして、それ自体自治制度と両立しないというものではないと私どもも思っております。  しかしながら、ただいま委員も御指摘になりましたように、地方分権というものは、やはり公選の議会と長を持ちます自治組織権限を移譲していくというのが本筋ではなかろうかというのも私どもの率直な感想でございます。
  19. 金田英行

    ○金田(英)委員 確かに、道州庁、こんな形で現状ある地方支分部局を統合することによって、新しい形の、一歩地方分権に進んだ形の行政機構が展望できるということを話させていただきましたけれども、中央省庁は勝手に自分の出先をつくっているわけであります。自治省には地方の出先がございません。そして厚生省にも地方の出先がございません。しかし、市町村まで細かく配置している役所もまたこれあります。こういった各省てんでんばらばらに出先をつくっている、その考え方を統一的に見直すことが今回の行政改革の中でどうしても取り上げていかなければならない課題の一つではないかというふうに考えております。  御意見はないことにしまして、次の図14について若干御説明申し上げたい、質問申し上げたいと思います。  これは、北海道の図であります。今中央省庁で地域に特化した役所というのが二つあります。沖縄開発庁と北海道開発庁であります。武藤長官におかれましては、就任早々、たびたび行革の答申で統合が叫ばれていた北海道開発庁がまだあるのかと発言した経緯があったかと思いますが、やはり沖縄と北海道は特別な、特殊な地域でございます。  沖縄につきましては、まだ復帰間もないということと、特措法等々、また県民所得もまだ本州府県に追いついていないというような特殊地域でもあって、特別な地域として配慮していかなければならない面も多々あるわけであります。また、では北海道はどうなのかということであります。北海道はあそこまで開発が進んだから、もう本州府県並みでいいのではないかという御意見もあるのも私も承知しております。  そこで、北海道はどうなのかということでありますが、北海道は余りにも広過ぎるわけであります。東北六県と新潟県、あるいはまた九州、四国と山口県というような膨大な面積を有しているところでございます。ですから、本州並みになるというのであれば、あの北海道を何らかの形で本州並みに分県していただかなければ、本州並みになるわけにはいかぬぞというのが私の意見であります。  そういった中で、北海道議会が開かれるというようなことになりますと、北海道議会議員は、函館空港から、女満別空港から、稚内空港からあるいは帯広空港からという形で、議会のために札幌に集まるわけであります。どこの県で、県庁所在地に行くのに飛行機で行くという県があるのですか。まさにこの北海道が蝦夷でなく本州府県並みになるためには、どうしても同郷意識を持てる一つの文化圏というものにつくりかえなければなりません。  明治時代に、北海道が三県に分かれていたときがありました。この図は、道央県、これは札幌に県庁所在地を置く、小選挙区でいえば一区から五区までと九区であります。そして道南県、これは函館に県庁所在地を置く、北海道小選挙区は八区が該当するわけであります。道北県というのは、旭川を県庁所在地とし、小選挙区は六、七そして十区でございます。道東県は、第十一から十三までの小選挙区であります。  こんな形で分けますと、道央県は約三百万人、道北県は百十二万人、道南県は五十三万人、道東県は百万人、面積においても人口においても内地府県に匹敵する、見劣りのしない県が誕生するわけであります。特別扱いにしない、それは、ただ単に北海道開発庁をなくすれば特別扱いにならないということにはならないわけであります。  ちなみに、自治省にお尋ねしますけれども、北海道をこのような四つの県に分けたとしまして、平成七年の国勢調査において、各県それぞれの衆参の議員数の増減について計算したものがあると思いますが、それについての御回答をいただきたいというふうに思います。
  20. 牧之内隆久

    ○牧之内政府委員 仮に、北海道を四つの県にお話のありましたような線引きで分ける、分県をするということが仮定をされました場合に、現行の衆議院の小選挙区定数三百を前提にいたしまして、また各県一人均等配分ということを前提にいたしまして試算をいたしますと、道央県は七、道北県は三、道南県は二、道東県は三、全体で十五となるところでございます。同じように参議院の選挙区選挙について試算をいたしますと、道央県は四、道北県が二、道南県二、道東県二となるところでございます。
  21. 金田英行

    ○金田(英)委員 このように分県しますと、ただいま自治省の選挙部長からお話がありましたとおり、衆議院議員では、現在の十三の小選挙区が、各県別に今ありましたけれども、十五の小選挙区に二つふえるわけでありまして、参議院議員に至っては、現在の四人の定数が何と十人に増加するわけであります。決して総数をふやしての話でなくて、全道的にそういった形になる。  北海道は全国ただ一つ道州制をとっている地域でございます。府県並みになれということについてそれなりの御理解と、その特殊事情について御理解いただけるのであれば、この行政改革について一生懸命に取り組むことについてはやぶさかではありませんけれども、決してそんな、府県と同じになれという単純なものではないぞというようなことで所見の一端をお話しさせていただいた次第であります。  ちなみに、道州制がいいか都道府県体制がいいかという議論が、これからの行政改革を論ずるときにいろいろ出てくるはずであります。県という単位はどうしても必要な単位なんだ、戦国時代からその文化、例えば会津精神だとか葉隠魂だとか津軽弁だとか栃木弁だとか、一つ共通の生活の母体として破壊することのできないような単位になっているのではないだろうか、いろいろな説がございます。  県を廃止して道州庁をつくればそれでいいんだという議論があると思いますが、私は、今までの日本の歴史とその文化形成、その地域地域の文化形成、そして郷土意識、住んでいる人たちの意識というものを考えてみると、県という単位は、古来ずっと伝統のあるもので、どうしても破壊できない、そういう単位であるなということに思いをいたすものであります。そういった県が廃止できないのであれば、ただひとり北海道が道州制をとっていることについて、いろいろな改革の灯が当てられてしかるべきだというふうに思う次第でございます。  図15について若干御説明をさせていただきたいと思います。  今、党本部において政府金融機関の整理統合ということの検討が行われておりまして、第一次として若干の特殊法人の整理統合が行われております。我々自由民主党が何としてもこの行政改革は成功させなければならない、橋本行革を成功させなければならないという有志が相集いまして、政府金融機関の整理統合に関する議員研究会という会を設立させていろいろな検討を進めている、その検討過程の中の一つのイメージ図でございます。  一番下には、北東公庫から沖縄公庫、国金、環衛、農林漁業、中小企業、住宅金融、開発銀行、公営企業金融公庫、日本輸出入銀行。そして、民営化のところに商工中金だとか中小企業信用保険公庫なんというのが書いてありますが、政府金融機関というのは十二あるわけでありますが、これらにつきまして、民間金融と相当重複しているという実態があります。果たして政府が財投の金ないしはそういった金を政策金融として貸し付けをする必要があるのか、もはやそういったものは民間金融に任せておいていいのではないかという部分が相当数ございます。  例えば電力会社に開銀が一生懸命多大の融資をしているとか、航空会社に機材調達の資金を融資しているとか、そういったものはもはや国がみずからの政策金融としてやらなくても、民間金融には十分な力がついている、そういった部分でありまして、こういった政府金融機関スリム化する、民間に任せるところは任せるというスリム化が必要でございます。  それからまた、総合化を図るということでございますが、総合化というのは、各省庁がそれぞれに政策金融機関を持っているわけであります。農林省についていえば農林漁業金融、それから建設省は住宅金融日本開銀というのは大蔵省、あるいは環衛公庫、そういった分野別に各省庁が政府金融機関を持っているわけでありまして、こういった分野別になっている政策金融機関を総合化する。民間金融機関は、既に銀行などでは総合的にどんな部門にも金を貸しているわけでありまして、こういったものを総合化を図る。  そうすると、総合化を図りますと、やたらに大きな組織になってしまいますので、ではどう分けるかということで、それを地域別に改組しよう。この図では、ちなみに、北東日本公庫、中央日本公庫それから西南日本公庫と三つに分けているのですが、研究会の中でも、これはブロックごとにやってもいいのではないか、数は少しふえるのだけれども、これからの地方分権の時代を考えていくときには、やはり地域の開発のために総合的なブロックごとの政策金融機関があってもいいではないかというような、この組みかえを地域ごとに行う必要がある。それから海外公庫、民営化等々の改組をいたします。  また一方、政府金融機関とは別に、特殊法人の中で、財投のお金について融資を行っている特殊法人というのがあります。図のトラックの荷台に載っているものがそれでありますが、約四十近くの融資を行っている特殊法人があります。これらの特殊法人の融資業務をそれぞれに、政府金融機関四つ、日本を三つに分けているのですが、ブロックごとに分けても結構です、こういったところに融資業務を、地域振興公団の一部だとか環境事業団の一部だとか、その地域部分についてこういった形で整理統合を行うことによって、融資を行っている特殊法人についても相当整理ができるなというふうな感じでこの種の検討を行っているわけであります。  これからいろいろと政府金融機関について、第一弾、第二弾というような形で将来展望を踏まえた政府金融機関の大改革案が必要になってくるはずでございますが、こんな形の検討もぜひともしていただけないものかというふうに思うわけであります。そんなことを考えているわけであります。  ちょっと時間がありますので、図11について再度お話をさせていただきたいと思います。  この「新たな都道府県」、「新たな市町村」、こういった都道府県をつくった場合に、各省の出先とか各省の市町村レベルの出先を統合すると、国家公務員はおおよそ三分の二が地方公務員に移行するという結果になると思います。ですから、その人件費の負担をどうするかというような問題が出ると思いますが、これについては、それの対策というような形で、一定の期間についての人件費について都道府県の財政に配慮するとか、あるいは地方と国との業務分担の見直し、そういったものをやっていかなければならないと思うわけであります。  それで、あらゆる改革がこれから進んでまいります。教育改革の問題もあります。行政改革も、抜本的な改革をどうしても自民党は血を出してもやっていかなければならないと思います。本当橋本行革、まさに橋本総理の強いリーダーシップがなければこの行革はどうしても成功いたしません。  最後になりますが、橋本総理大臣がまさに民族の浮沈をかけた行政改革行政組織制度疲労を何とかしてこの改革で再びよみがえらせなければならないという、この改革に取り組んでいる橋本総理大臣のこれに対する御決意のほどを御披露いただきまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
  22. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 我々は、今、金融監督庁の御審議をいただき、既に機構を含めた行政改革というものをスタートさせております。これを、例えば行政の仕組みについて金融監督庁だけで終わらせることができるかといえば、できるはずはありません。すべての問題がそうでありまして、全力を挙げて進めてまいらなければなりません。今、議員のお考えも大変興味深く拝聴いたしておりました。  そして、先ほどの自治省の答弁に議員は意見を述べられませんでしたけれども、私、ちょっと気になりますのは、先ほどの自治省の答弁の中で、各省庁の権限を地方に分与していく、これが議員の道州庁というお考えに対しての部分だったと思いますが、本来ならそれは自治省に集約されるべきものというような発言があったように思います。  各省庁の権限を自治省に集中するのであれば、自治省が大きくなりはいたしましても、国と地方の関係に変わりは出ないわけでありまして、私は、この答弁は少なくとも私の考えている方向には反するもの、そう感じておりましたので、この点は、一点申し添えさせていただきたいと存じます。
  23. 金田英行

    ○金田(英)委員 ありがとうございました。質問を終わります。     ─────────────
  24. 綿貫民輔

    綿貫委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となっております両案審査のため、本日、参考人として日本銀行理事本間忠世君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 綿貫民輔

    綿貫委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────
  26. 綿貫民輔

    綿貫委員長 次に、鈴木淑夫君。
  27. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 新進党の鈴木淑夫でございます。  金融監督庁設置法案について質問をさせていただきますが、その前に、総理、米国、オーストラリアそれからニュージーランドの御出張、まことに御苦労さまでございました。また、三塚大蔵大臣も、G7、まことに御苦労さまでございました。そのことについて、ちょっとだけ最初に質問させていただきます。  実は私も、総理、蔵相がお帰りになりました直後の四月二十八日から五月三日までワシントンに滞在をいたしました。新進党の訪米議員団の一員として参ったわけでございますが、この滞在期間中に、財務省、連銀等の政府関係者あるいは議会の関係者にお会いいたしましたし、また、民間の、共和党系、民主党系、それからもう一つ国際関係の三つのシンクタンクを回って、意見交換をしてまいりました。  そこで共通に出ておりました懸念、コンサーンと彼らは言いますが、懸念は、言うまでもないことでありますが、日本が円安による貿易収支、経常収支の黒字拡大によって景気の回復を図ろうとしているのではないかという懸念でございました。  これは、新聞報道によれば、クリントンから総理への親書にもそういう懸念の表明があったということでございますし、また、首脳会談でもそういう懸念が出たというふうに報道されておりました。それからG7では、共同声明の中に、日本については円安による黒字拡大で景気回復をさせてはいけないんだというようなことがはっきり書かれております。しかし、率直に言って、私が回ったところ、政府関係者、議会関係者、民間エコノミストすべてがその懸念を持っているわけでございますね。  それで、覚えていらっしゃいますでしょうか、ちょうど三カ月前の予算委員会、この同じところで、三塚蔵相が二月のG7からお帰りになった直後に、二月の初めです、三カ月前、私はもう既にそのことを指摘申し上げております。ここに議事録がございます。あの時点で、私は、黒字が拡大し始めている、今まで縮んできた黒字が再拡大に転じたではないか、この一つの原因は円安であるし、その円安の背景には、非常に緊縮的な、財政赤字縮小を目指す予算とそれから長期金融緩和、超低金利の金融政策のポリシーミックスがあるということを御指摘申し上げたのであります。  その時点では、榊原国金局長は、いや、黒字は拡大していないということを前年同期比でおっしゃった。私は、そうじゃないよ、季節調整済みで見てごらんなさい、去年の一−三、四−六が黒字のボトムであって、七−九以降拡大していますよと。それから、その後発表になったGDP統計でも、去年の七−九と十−十二は外需がプラスの寄与をしているわけですね。去年の、最新の数字、十−十二月期、年率換算三・九%も成長したと言っていますが、実は外需がそのうちの一・六%も寄与しているのですね。  こういうことを向こうの人は見ておりますから、当然懸念を表明するわけです。私も、やはり日本人でありますから、何とか弁護をしたいという気持ちもありまして、政府関係者、議会関係者、民間人に対してこういうことを言ったのですね。私が承知している限りでは、橋本総理もあるいは橋本内閣も、わざと円安にして黒字を拡大させて景気を回復させようという意図、インテンションは決して持っていないということを私は一生懸命申しました。日本はそういう意図を持っていないと。  ところが、連中と議論していくと、どうしても、意図は持っていないと言うが、やっている政策ははっきりそっちの方向を向いているじゃないかと、三カ月前に私がここで言ったことと同じことを言われちゃうのですね。言われますと、私も、いやあ、実はそうだなと言わざるを得ないところがあるのですよ。  いいですか、ここからは質問になりますよ。九兆円の国民負担増を含んで財政赤字を縮小させる財政政策と、超低金利政策、できればもっと金利を下げたいという金融政策をミックスいたしますと、これは、経済学の教科書からいって、どうしたって円安、黒字拡大になるんですよ。その点について、総理あるいは三塚蔵相、どうやって言い逃れといいますか、説明をされましたのでしょうか。
  28. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 プロ中のプロに言い逃れをするつもりはございません。その上で、私は、クリントン大統領から確かにそうした議論を受けましたときに、二つの点を申しました。  経常収支の黒字で議論するのをよそうじゃないか、問題は貿易・サービス収支だ。その受取配当まで足し算されて、それが拡大するのはけしからぬと言われるなら、それは投資をやめろということか。これは乱暴な言い分でありますけれども、実は、一つ議論として貿易・サービス収支で議論をしようではないか、これが一点であります。そして、その傾向値を、もらっていきました資料をそのまま英文に訳したものを持ってまいりましたので、そういう資料を渡しながら、私自身の議論の補強をいたしました。これが一点であります。  それから、今、はしなくも議員も同様のことを言っていただいた。これは私は感謝をいたしますけれども、為替の水準について、円安という言葉を使われたが、我々はドル高を使いたい。なぜなら、円・マルクの関係は、たしか七十三・幾らかまで来たところでほぼ横並びだと思います。ここしばらくの間、改善をしてきているはずであります。それから、ドル・マルクは、円・ドル同様に、ドルが強含んでおります。マルクは、多少円に対して弱含みといったところでしょうか。実はきょうの数字を知りませんので、でしょうかという疑問符をつけさせていただきます。  そうした中で為替の水準を論ずるとすれば、いいことではありませんけれども論ずるとすれば、むしろドル高ととらえるべきではないのか。まあ、数日後に大蔵大臣がG7で見える、ルービン長官とプロの議論をやってもらおう、そのときに使う数字はこういう数字だが、我々は、アメリカ側も十分注意をしてもらうことによって、今あなたが懸念をされるような、大幅な黒字を拡大させることはない。まさに私の言い分は以上のような議論でありました。
  29. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 今二つ説明したとおっしゃいますが、まず第一の点は、貿易・サービス収支だけで見ろという議論は、私は無理があると思いますよ。だって、GDPの成長に対する外需の寄与度というときは、これは所得のところを除きますけれども、全体のGNPの議論のときは、向こうから投資の収益が入ってくる、それをトータルしたもので国際間のお金の受け払いは決まるわけですよ。かつてイギリスが、物すごい投資をして金利収入が多くなったときは、貿易・サービスのところでは赤字を出してやって、バランスさせていっているのですね。  ですから、私は、それでクリントン大統領が引っ込んだのかどうか知りませんが、これはエコノミスト同士の議論では、所得収支のところ、つまり、投資のリターンのところは別よという議論はなかなか通らないというふうに思います。その分だけ貿易・サービスのところが縮んでトータル  でバランスさせていかなければ、世界のバランス、マージャンみたいに、合計すればゼロでやっているのですから、これはやはり諸外国に依存した成長ということになってしまうと思いますね。(橋本内閣総理大臣「それはおかしいと思うな。積極的な投資に対して投資益が返ってくるのは当然なんで、議論すべきは貿易・サービス収支ですよ」と呼ぶ)いやいや……。  それからもう一つの、これはドル高だ。確かにそういう面はありますが、しかし、一時七十九円七十五銭まで行ったところから一時百二十七円まで行ったこの円安の割合は、同じ期間のドイツ・マルクに比べれば、倍近く大きく円安に振れています。だから、ある時期だけ見て同じようだと言ったらいけないので、この二年間ずっと見てくれば、これは円安であって、マルク安よりはるかに大きく円安であります。しかし、総理はそうやって答弁されたということでありますが、今言いましたように、これは専門家同士の議論をしていたら、それでは通らない。  特に問題なのは、さっきから言っているポリシーミックス、あのポリシーミックスではどうしたって経常収支の黒字拡大、円安になるということであります。よくマンデル・フレミング・モデルというのを使って説明しますが、そんなものを持ってこなくても、財政の赤字を縮めますと、他の条件が一定なら国内の貯蓄超過が大きくなりますでしょう。だから、これを民間投資がうわっと出てきて全部吸収してくれれば、外需のところは動きませんよ。だけれども、一方では、黒字縮小と低金利と二つ重なれば円安になりますから、どうしたって貯蓄超過部分は、一部は国内の投資拡大で吸収されていくけれども、一部はどうしたって黒字の拡大になるのですよ。  私、総理も三塚蔵相もゴルフはきっとお上手に違いないと思ったので、お二方のことを言っているんじゃないのですが、私は、その議論で詰められたときに、こういうことを申し上げたのです。決してお二方のことを言ったんじゃないのですが。  例えばゴルフで、あのグリーンに向かっておれは打っているんだと言っておる。本当日本政府はあのグリーンをねらって打っているんだ、黒字拡大させて景気回復させようなんて思ってないんだと。しかし、どうも客観的なスタンスを見ると、グリーンの方向を向いてない、それはポリシーミックスからいって。そういうポリシーミックスをして、おれはグリーンをねらっているんだと言ったって、スタンスがグリーンの方向を向いてないで打つのですから、あれはうそをついているなということになりかねない。  私は、一生懸命、うそをついているんじゃないと言いましたけれども、こういうことを続けておりますと、だんだんと海外での日本経済政策あるいは政府の言い方に対する信認に響きやしないかということを私は非常に心配しているものであります。  特に、これから四−六にはゼロ成長かマイナス成長になるかもしれないですね。こういう中で、せっかくG7の声明をお出しになったのに、円安はちっとも改まらない。恐らくこの四−六は、はっきりと外需が引っ張る形、それでもプラス成長にならないような格好になるんじゃないでしょうか。それで、そういう数字がどんどん出てくるのが八月、九月です。そのころに、海外から、あなたは意図してないと言うが、結果がこうじゃないか、結果がこうだったらあなたはうそをついているんじゃないのみたいなことになりゃせぬかということを非常に私は心配しているものでございます。蔵相、いかがでございますか、G7の雰囲気を踏まえて。
  30. 三塚博

    ○三塚国務大臣 総理から首脳会談の模様をお話しになりました。それを引き受けまして、日米蔵相会議、日独蔵相会議そしてG7の会議、もちろん、各国中銀の総裁が出ておりました。私は、日米、日独におきましても、我が国経済の今日の置かれておる現況、諸改革断行の経過をお話し申し上げました。同時に、各指標を提示いたしました。  既に、クリントン・橋本会談におきまして、日本の経常収支は経常収支としつつも、貿易・サービス収支という要素を十二分に加味していかなければならない、こういうことで、底流の理解は基本的に得られたと私は聞いております。しかし、具体的に大蔵大臣同士で話し合ってもらおう、こういうことでございますから、図に基づき、また数字に基づきまして申し上げました。  ただいまの状況というものは、決して意図的なものではございませんで、全く短期的なものであり、消費税二%アップによる影響もこれあり、第一・四半期は、緩やかでありますけれども、確実に民需主導、内需拡大の方向に我が国経済が進んでおりますから、短期的視点で見ていただかないで、これを中期で見てください、年度後半には確実にその成果があらわれると思う、それは、経済構造改革は断行をされております、金融システムは御案内のとおり、財政構造改革も着実に進んでおります、それは首脳会談でも開陳をされたところである、こう申し上げ、基本的な理解を得たと思います。  ルービンさんからではなく、副長官から、経済学説という意味で、簡単な、さらりとした御意見がありました。これに対して、私は再び貿易収支と所得収支の関連についてお話を申し上げました。それで、それをもっていけば、ただいまの状況についての御理解が進むはず、短期で物を見てここでやり合うということはいかがなものでしょうかと。  それで、我が国は、先進諸国、G7の中で一歩おくれてスタートを切った感はありますが、着実にその実効を上げつつありますから、格段の協調と理解を得たいということで、経済学説は経済学説として、我が方には加藤財務官、榊原局長がおるし、サマーズさんも世界的な経済学者のお一人ですから、ひとつスタッフ同士で、学説の調整、そして生きた経済、マクロ経済という形の中で、各国の経済の安定成長に向けての努力、こういうものを総合判断をしながらお取り組みをいただきますことが大事ではないのでしょうかと。  ドイツの蔵相も、ティートマイヤーさんも、基本的に、それを頑張れ、我が国も今頑張っておる、今日のレートの問題についても、安定の方向で努力をしようではないかと。  G7の会議におきまして、そのレートの問題について、内容は一々申し上げませんが、真剣な論議の中で、ベルリン声明、申し合わせを上回る共同声明を出させていただきました。  要すれば、ベルリン合意を再確認する大前提で、これに加えて、昨今の状況を見るに当たり、ファンダメンタルズからの相当程度の乖離は望ましくない、甚深な意味、おわかりのとおりであります。大きな対外不均衡の再来に結びつくような為替相場は避けることが重要である、これは一致であります。そして、適切な対応措置をとる、こういうことであります。  日本政府として、また大蔵大臣としても、既に円安懸念は表明をいたしました。これ以上のことが起きるとすれば断固たる措置をとる、こう申し上げておるわけでございます。その辺も、日独、日米の会談もさることながら、G7会議におきましても申し上げ、各国はお互い協調の中で取り組もう、こういうことで共同声明が発せられたわけでございますから、私は、為替は安定していくものと思いますし、仮に程度を超えるものであれば断固たる措置は協調の中で行われていく、こう思っております。
  31. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 いろいろ御苦労さまでございました。  サマーズ副長官は、ハーバード大学の教授のころから、私、友人でございます。ですから、いつも意見を交換しております。電話でも話をする機会がございます。サマーズ副長官がさらりとおっしゃったということですが、そのさらりの内容は、大体私は見当がつきます。それは、サマーズさんは経済学者ですから、さっき言ったポリシーミックスをとれば、これは円安と経常収支の黒字拡大の方向へ行くよ、幾らこっちのグリーンをねらって打っているんだと意図を強調したって、スタンスはこっちを向いているよ、これをサマーズさんが恐らくおっしゃっていると思うのですね。  それでもう一つ、貿易・サービス収支で黒字が出ているが、これは余り拡大していません。ところが、黒字ですから、これを投資していくわけです。そうすると、今度は投資から上がってくる所得収支がどんどん黒字拡大するわけですね。それで、両方合わせたら黒字拡大です。だけれども、中身を見たら所得収支だからいいんだよというのは、もう一度言っておきますが、通用しませんよ。  だって、世界からそれだけ所得を吸い上げて、それが拡大していることと同じじゃないですか。政治的に言うと、総理アメリカが非常に気にするのは、貿易・サービス収支、特に日米間のところを気にするのですね。ここはごまかせるかもしれない。だけれども、世界から見て、日本が外需依存型で景気を回復させているという、この事実はごまかしがきかないということであります。  さて、これを余り長くやっていてもなんでございますので、私、一つだけ、もう一度言っておきますが、私は意図は疑っておりませんが、客観的なスタンスがこっちを向いていますから、あと三カ月たってお困りになるかもしれませんぞということだけ申し上げておきます用意図に反して円安が直らない、黒字が拡大して外需主導型の成長という形が、七−九、十−十二に続いて、一−三はそれほどでもないと思いますね、四−六、七−九に出てくるというふうに私はにらんでおりますから、そのときに日本の信用失墜にならないように。  これはアメリカの連中がみんな口をそろえて言っていたことですが、財政再建は大事だが短期と長期とを間違えるな、長期的には財政再建は一番大事だが、短期的には財政再建を急ぎ過ぎると逆に財政再建をアンダーマインする、下から崩す。これは、私もそれから新進党も、経済再建なくして財政再建なしという形で、短期的に余り財政再建を急ぎ過ぎると財政再建がかえってだめになるということをあらゆる機会に申し上げておりますが、同じことをアメリカの人たちが言っております。何かございましたら、どうぞ。
  32. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほど日米首脳会談の議論を聞かれましたから、まさに議員もお認めになりましたように、アメリカの一番気にする形で私は日本の主張をいたしました。ただし、その時点で、私は、四−六から七−九に向けて全く問題がないなどということは申しておりません。そして、そういうためにも、あなた方は余り気がついていないが、同時期に編成した平成八年度の補正予算の効果というものが尾を引いてくる、そういうものも計算に入れて議論してもらいたい、いずれにしても、ショートレンジで、その幅が拡大したしないで日米間の経済論争は避けてもらいたい、我々は中期的に必ずこれを安定させ、縮小させていくんだから、これが私の議論であります。  そして、大変恐縮でありますが、クリントンさんも私も学者ではありませんし、細部の議論に入らなかった。それがもし御不満であればおわびをいたしますけれども、政治家同士の議論として、学説を争ったわけではございません。
  33. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 私は、何度も申しますが、日本政府が信用を失墜することを最も心配しているのであります。  今、総理平成八年の補正予算の効果も出てきている……(橋本内閣総理大臣「いや、出てくる」と呼ぶ)これから出てくる、ずっと波及していきますが、それはそうだと思うのですが、平成八年の補正予算というのは公共投資ですよね。公共投資の効果については、それがずっと出てくると思うのは極めてケインジアン的な発想であって、ケインズ経済政策を批判する立場からいいますと、きびすを接して九兆円の国民負担増をやったらその効果は出ないというのがケインズ批判のポイントなんですね。  つまり、増税に備えて限界消費性向が下がっちゃうよということです。だから、増税予告つきの公共投資拡大なんというのは乗数効果が極めて低い。それに気がつかないで、いつでも公共投資をやれば一定の乗数効果で拡張効果が出ると思っているのがケインズの間違いなんですよ。  そうでなくて、政府は増税予告つきの公共投資をおやりになったのですから、ブレーキとアクセルを一遍に踏むようなことをやったのですから、これでは、私は、本年度、平成八年度の公共投資拡大の効果が思ったように出てくるとはとても思いません、増税が続いてきているのですから。これは、増税に備えて限界消費性向は下がっちゃいますね。  だから、その点でも、ただ、これは極めて専門的な議論でございますからもうこれ以上申しませんが、私は、あの平成八年度の補正予算は、増税予告つき公共投資拡大というケインズ政策が最も批判されるようなやり方をしておりますので、余りこの効果は期待しておりません。それより、国民は、九兆円の負担増に備えた行動を今とっておるというふうに思います。  さて、昼前の時間が余りないのでございますが、問題の金融監督庁設置法案に入らせていただきたいというふうに思います。  金融監督庁大蔵省から切り離してつくる以上、今まで大蔵省が財政政策とともに金融行政全体を掌握していたことによって何か不都合があったから、金融行政の中の検査監督を切り離そうということであろうと思うのですが、総務庁長官にお尋ねしてもよろしいでしょうか。どういう不都合があったという認識で切り離すことにされたのでありますか。
  34. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私の直接の所管ではございませんが、いろいろ話を聞いている中では、やはり住専問題その他日本金融機関に対する大変な信頼の失墜ということから、金融政策について、あるいは金融行政について、検査監督部門だけは独立すべきであるという考え方でお話がありまして、私も、それで結構でございますと申し上げたわけであります。
  35. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 住専問題その他とおっしゃいましたが、実はたくさんあると思うのですね。  総理にお伺いしていいでしょうか。  大蔵省が財政政策とともに金融行政全体を掌握したことによってどういう不都合があるので切り離すのでございますか。
  36. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 直接的には、私は、議員が当選をされました昨年の衆議院選の前、まさに一国会が住専国会と言われるぐらい住専についての議論が行われ、その中で大蔵省金融監督行政というものが極めて厳しい批判を浴び、これを切り離すべきという御意見が与野党の中からほうはいとして起きたことだと思います。  その上で、多少振り返らせていただきたいと存じますけれども、ちょうど平成三年の春ぐらいであったと思います、まだ湾岸戦争が終結しておらない当時から、議員も民間のお立場で御承知でありましたように、大蔵省の中において証券金融あるいは保険といった分野の垣根がだんだん低くなっていく状況を見据えて、銀行局、証券局そして国際金融局を改めるべき時期が来たのではないかということから議論が行われていたことを御記憶であると存じます。  ところが、非常に残念でありましたけれども、この議論がほとんど表に出ない間に、御承知のような証券金融不祥事というものが発生いたしました。そして、むしろそのとき証券という部分世間の関心が集まり、証券監督監視体制というものから、非常に大きな御論議の末に現在の仕組み、証券監視委が生まれたわけであります。そして、これが生まれました結果として、その時点で既に反省材料として、いわゆる護送船団方式という、過去にはそれなりの役割を果たしてきたものが既に行政の手法として限界に達していることが明らかになっておりました。  その反省の上に立って、私は、住専の論議というものも、答弁に当たります政府側の私どもも、また与野党の当時のメンバーも御議論をいただいたと存じますが、その中から出てまいりましたものが、従来の金融政策というもの、あるいは金融行政の中で、政策決定過程あるいはそのルールの適用等に不透明な部分がある、透明性を欠いている、こうした点を中心として極めて厳しい御批判を受け、これを受けて金融行政機構改革に踏み切った次第であります。  そして、その御論議の中から、民間金融機関等に対します検査監督という執行面機能金融監督庁に、企画立案という政策面機能大蔵省が分担する、市場規律基軸とした透明であり公正な金融行政への転換の方向にこれをもって資するもの、そのように考えております。
  37. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 総理のお話のとおり、住専問題の処理の中で、大蔵省がこれまでやってきた金融行政に対する非常な批判が高まって、それがきっかけで大蔵省から検査監督を切り離してこういう監督庁をつくろうという話になっていったということは、私も承知しております。  そのとおりだろうと思いますが、もう少し突っ込んでみると、住専問題の大きな根っこ、住専だけではなくてほかの金融機関破綻共通する大きな根っこは、不良債権の処理がおくれて不良債権が非常に大きくなってしまったということだと思うのです。私は、不良債権の処理がおくれた、そのために不良債権が大きくなってしまったというところに大蔵省金融行政を持っていたことの欠陥の一つが出ているというふうに思いますが、いかがですか。  もう少し理由を言いましょう。  いろいろな理由があると思うのですが、よく指摘されることは、不良債権の処理をどんどん急がせると、無税償却でどんどんやらせるのは嫌だという税務当局の意図が働く。あるいは、もう一挙償却したいから赤字を出してしまいますというようなことに対しても、法人税の税収が減りますから嫌がる。九二年あたりには、大銀行は、これはえらいことになったと思って償却を急ぎたがったのを、そういう税収確保の観点もあってとめた。  これは「NHKスペシャル」でやったからごらんになったかもしれません。もう周知の事実ですが、急いで不良債権を赤字を出してでも償却する、どんどん無税償却でできる範囲を拡大したいし、有税でもいい、赤字を出してもいい、やってしまいたいというのをとめたのは、背後に税務当局を持っていた大蔵省金融行政当局であった。これはもう国民周知の事実だと思います。  これなんかが、一緒にしておいたことの欠点の一つだと私は思いますが、いかがでございましょうか。
  38. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、そういう見方をなさる方があることも承知をいたしております。しかし、もしそういう形で議論を展開し、責任を問うといたしますなら、私は、やはりバブルの発生から崩壊に至るプロセスの中で、当時は私どもも酔っておりました。そして、そのバブルというものの中で、国会におきましても、ごく先見性のある方々からいろいろな問題は提起をされていなかったと私は決して申しません。しかし、そのバブルの方向の中で論議が交わされておりましたことを私は振り返りましたときに、別に大蔵省をかばうつもりはありません、しかし、大蔵省だけが悪かったと言えば済むのかといえば、私には疑問がございますし、当時、報告等情報開示に必ずしも積極的ではありませんでした証券金融業界というものにも責めを負ってもらうものはあると私は考えております。
  39. 綿貫民輔

    綿貫委員長 鈴木さん、じゃ、午後に。
  40. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 午前中の時間は終わりましたので、質疑を打ち切ります。
  41. 綿貫民輔

    綿貫委員長 午後二時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ────◇─────     午後二時四十三分開議
  42. 綿貫民輔

    綿貫委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鈴木淑夫君。
  43. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 それでは、昼食前に引き続きまして、質問を続けさせていただきます。  午前中の最後に、私はこういうことを質問したわけであります。つまり、大蔵省から金融監督庁を切り離す以上、今まで大蔵省が財政政策とともに金融行政全体を掌握していたことに何か不都合があったからに違いない、それは何かとお尋ねをしました。それに対して、例えば住専問題に見られるような金融監督行政の失敗と言うと言葉が強過ぎますが、それに対する大きな批判ということを総理、蔵相おっしゃったわけでございます。  私は、それに対して、より広く、不良債権処理がおくれて今日大問題になっていることも、やはり租税収入というものに対する配慮から無税償却の適用を厳格にしたから償却がおくれたという側面があるだろう、あるいは、やはり税収確保の観点から金融機関の赤字決算回避を指導したということがあるではないかということを指摘いたしました。  そこで終わりになったわけでありますが、私、さらに幾つか、大蔵省が財政政策と金融行政全般をともに握っていたことに伴う問題が起こってきたと思います。それこそが大蔵省から金融行政検査監督を切り離す最大の理由だと思うのですね。  幾つかといいますと、三番目になりますが、金融行政というのは、金融・資本市場あるいは金融システムの発展を促進するのが目的になっているわけですが、それがやはり税収確保の観点を優先したために制約されたということが明らかにあると思うのですね。  例えば、しばしば言われますように、有価証券取引税があるために日本での金融資本取引のコストが高いじゃないかとか、あるいは、先物の取引所税が日本にあるために、シンガポールにおける日本株の先物取引がどんどん発展してしまうじゃないかといった金融空洞化の問題。  それから二番目には、日本には印紙税というものがあって、これは相当な税収があるものですから、主税局としてはこの印紙税は大事なのだろうと思いますが、しかし、金融機関にしてみると、この印紙税というのはコストが高いものですから、これを回避するために、手形や何か使いませんで、当座貸し越しにシフトしているのですね。これもやはり、取り立てが面倒であったり、金融の効率を明らかに害していると思います。  それから三番目に、これは以前予算委員会で御指摘申し上げて、総理にも御興味をお示しいただいたわけでございますけれども、金利自由化はほとんど終わったと言われている中で、政府短期証券の金利だけが固定金利で出ていて、しかも、その固定金利、公定歩合のマイナス〇・一二五ですか、下というのが市場の均衡レートよりちょっと低いものだから、市場で買われない。そのために、日銀が売りオペをしない限り政府短期証券市場ができない。  しかし、政府短期証券市場のない金融・資本市場というのははっきり言って欠陥市場でありまして、円を外貨準備の中へ持とうとする外国の当局は、やはり短期の政府証券を持ちたがる、その場合、日本では短期国債しかない。そのマーケットは非常に小さいものですから、これが明らかに円の国際化を阻害している。  三つばかり私、例を挙げましたけれども、これもやはり、大蔵省の中に金融行政があるために、どうしても租税収入の確保という租税政策の方が金融・資本市場の発展あるいは金融システムの発展という政策目標に優先する傾向がこれまであったことの証左だと思います。これも、大蔵省から金融行政を切り離した方がいいじゃないかということの根拠になる。  それからさらに言えば、大和銀行事件に見られますような専門性の欠如であります。あれは、御承知のように、当時の銀行局長あるいは審議官もおられたのか、総務課長もおられたのか、銀行課長もおられたのか、詳しくは申しませんが、そろいもそろって皆さんが、ああいう不正事件が起きたときは、その起きた国の当局に対して一カ月以内に報告するという協約があることを御存じなかった。  まあ、人間だから知らないことはあってもいいが、四人だか何人だか知りませんが、銀行局のトップがそろいもそろってそれに気がつかない、これはもう金融行政銀行行政の専門性というものに対する配慮の欠けた人事をしていたと言われても仕方がないのだと思うのですね。やはり財政当局が金融行政を持っているための専門性の欠如と言わざるを得ません。  そもそも論でありますが、大体財政政策というのは、私どもは市場経済を中心に物事を考えていきますが、市場経済といえども市場の失敗というのがあるわけですね。所得分配が不公平になってしまうとか社会資本が不足してしまうとか、そういう市場経済の失敗に対して補うのが財政政策の基本的な役割であります。租税政策も所得分配、再分配するわけですし、公共投資も資源再配分するわけです。市場の失敗を補う、むしろ市場経済に介入していくのが財政政策なんですね。  それに対して、金融行政というのはまさに逆でありまして、市場経済のメカニズムがうまく働くように働くようにして、金融資本市場、金融システムを発達させるという役割を担っているわけです。だから、財政政策と金融行政というのは、市場経済に相対したときに、まさに正反対の役割、正反対の機能なんですね。  これを一つの省に置いておくから、その中でぐるぐる人事を回せば、市場経済に介入することが使命だと思っている財政関係の人が逆に市場機能を促進する方の四階に回されて、銀行局、証券局等に回されても、これは勝手が違っちゃうということが今まで大いにあったと思います。  以上、幾つか並べましたが、そちらの総理大蔵大臣からも御指摘のあった住専問題も含めて五つ、やはりこういうことがあったから、これはまずい、大蔵省から金融行政を切り離そうということになったんだと私は理解をしておりますし、恐らく総理あるいは四人の御出席いただいている閣僚の方のお考えもそうだと思いますが、武藤長官、その点確認させていただいてよろしゅうございますか。そういうことで銀行行政大蔵省から切り離して金融監督庁をつくるという理解でよろしゅうございますか。
  44. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これは、これからの行革の組織をつくっていくのにいかにするかというところで議論すべき問題だろうと私は思っております。当面のこの金融検査監督関係金融監督庁につきましては、これは、とりあえず現体制の中で、今いろいろ御指摘のありました点を踏まえてどうしていくかという、必ずしも完全な形ではなかろうと私は思っております。これから、行革会議でいろいろ中央省庁の統廃合をやっております中で、いろいろこの問題については、この件も含めて、二十一世紀の行政機構はどうあるべきかということでは、おのずから違った答えも出てくる可能性はあると私は思っております。  ただ、現時点では、例えば今お話のありましたように財政と金融を切り離してしまうとなりますと、例えばこの間ありましたG7蔵相会議などを見ましても、それじゃ蔵相会議には全く別の人間が行くということになりますと、これはなかなか今時点で急にそういうことができるんだろうかと思いますと、ここ数年間、いわゆる二十一世紀まであと四年間でございますから、四年間はこういう形でいくというのが私はいいのではなかろうか、こういうことで先ほど申し上げて、いろいろな問題がございましたけれども、私どももそれで結構でございますと申し上げたということでございます。
  45. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 ありがとうございました。  要するに、これは行政改革、特に中央省庁の再編整備の過渡期の姿という御見解でございますが、そういうふうに了解した上で、さらに質問させていただきます。  では、具体的に、検査監督機能を分離した、そして企画機能を残したわけでございますね。これによって、さっき御指摘のありました住専問題のような、ああいうことが起きなくなるという理屈を教えていただきたい。ああいう住専問題が起きたからこうしたんだとおっしゃるなら、どういう理屈で、金融行政の中の企画を残して検査監督を離したらああいう問題が将来起こらないと考えておられるのでしょうか。大蔵大臣、よろしゅうございましょうか。
  46. 三塚博

    ○三塚国務大臣 本件は、機能分担という言葉に尽きるのではないでしょうか。今まで大蔵省の中で金融当局、御案内のようなシステムで動いてまいりました。住専問題で御批判をいただいたこと、そのとおりでございます。そういう中にありましても、ベストの道を求めてやり来たったことだけは根底にあります。それが失敗だ、けしからぬという批判、さらに、もう少し強めればうまくいったのではないかというようなもろもろの案件。  しかし、本件は、最終的に三党の決定事項、それと総理提唱による、就任時、御指示をいただきました、日本金融システムの大改革を断行しようということで、御案内の三原則、グローバルスタンダード、国際基準に合う東京市場の今後の復活再生に向けて、増勢に向けての努力をというので、ありとあらゆるものをやってほしい、こういうことであります。金融関係審議会も、その後直ちに検討審議に入っていただいております。六月中旬には報告が出てまいります。  そういう中で、外為法改正、フロントランナーとして、来年の四月一日、国際基準にほぼ同様のものをもってまずスタートを切る、こういうことになっておるわけでございますから、そういう中で、三党の合意事項、いわゆる法に基づく企画立案、そして執行部隊としての新しい金融監督庁、これが両々相まっていくことによって金融システムの安定を期することだけは間違いがないと思っております。  G7の会議におきましても絶えずそのことが論議をされておりますし、鈴木議員御案内のとおり、他の六カ国は一体で運用をされておる。しかし、我が国は、住専を中心とする金融問題が起きたことにかんがみ、その批判にこたえて、よりよい形を求めてスタートを切った。しかしながら、本件は、政府機関、三条であり、こちらは本体の金融局、こういうことの中で分担し、機能分担を果たしていくことによって、両々相まって成果を上げる、こういうことです。  これが御承認をいただいて法律が成立するということでありますと、さらにそれが確かな足取りで前進をし、ただいま言われましたような御心配の数々は、それぞれの経過を経て解決をされていくものと考えております。
  47. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 どうもよくわからないところがありますね。  私が聞きましたのは、なぜ、このように検査監督大蔵省から分離し、企画大蔵省に残せば、住専問題で批判されたようなことが起きないのかというその理屈を聞いているのですね。ですから、三党合意だというのは全然理屈ではない、事実の指摘だけでございますし、諸外国の例といっても、そこの具体的な機能的な話のところを説明していただかないと、どうして住専問題からこういうことが出てきたか、国民は納得いかない、わからないと思いますね。私もそこのところをもう少しはっきりと御説明いただけないものかと思っているのですが、いかがでしょう。
  48. 三塚博

    ○三塚国務大臣 いや、わかっていただけないのは残念なんです。すべておわかりの鈴木経済学者議員が言われておるわけでありまして、ですから丁寧に申し上げました。各論にわたる部分政府委員からお願いしますから、どうぞ御承認ください。
  49. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 恐らくこの件は、総理が最高の責任者としてお考えのところがあろうかと思います。政府委員よりも総理の骨太の御説明をいただきたいと思います。
  50. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 事務的な問題点につきましては、事務当局からの補足をお許しいただきたいと存じます。  この住専問題が議論されましたとき、一番大きな問題の一つ、それは、農協系金融機関が、他の大蔵省直接所管の金融機関が住専に対する融資を総量規制によってその比率を下げつつある状況の中で、なぜ積み増していったのか、その問題点が一番根本ではないかという御指摘でありました。  そして、大蔵省内にあります金融行政というものが、まさにその企画立案検査監督機能一つのセクションで行っている。そしてそのために、自分のところの直轄している分野についてのチェックに心を奪われて、他の省庁所管の金融機能を有するところの状況の報告は受けていても、チェックまでの機能が働いていなかったのではないか。逆に言えば、大蔵省の中にあります金融機関に対し影響力を行使すると同等の影響力を他省庁主管の部分については行使でき得なかったのではないかという問題点でございました。  そしてその中から、国会における御論議としても、この部分に対する、改善と言うと少し言葉がやわらか過ぎるのかもしれません、組織の変更までを求める強い御意見が出てまいりました。  そして、今大蔵大臣から与党三党の合意ということを申し上げましたが、これは事実としてそのとおりでありまして、その国会としての御論議を踏まえて与党三党として議論をされました内容を我々は政府として重く受けとめてまいりました。  その上で、この案の中には二つのポイントがあろうと思います。  一つは、三条委員会として総理府の外局に設置する委員会、これは、独立した検査監督機能を有するという点で、従来の同じ局内における検査監督の機構とは全く質を異にしております。そして、他省庁に対する部分が共管であるという点では大蔵省の各局に検査監督機能がありました時代と同様に見えるかもしれませんが、この金融監督庁検査監督に特化した機能を持つ省庁であります。  従来の、むしろ各関係省庁、例えば農水省から自動的に送られてくる報告をそのままうのみにしているという組織とは状況が全く違うわけであります。当然ながら、そこに不審なものがありますならば、なお厳しく資料の要求をする等の対応をするでありましょう。恐らく私はそうなると思います。そして……(発言する者あり)一緒かどうかわかりません、やってみなければ。しかし、私どもはそうは考えておらない、変化を生ずると考えているということでありますし、この機構というものがワークすることによって、私は、企画立案検査監督を切り離して別の組織体系にしたことの意味は大きく出てくると存じます。  同時に、これが本当に生きるためには、まさに必要なのは、透明なルールづくりと情報開示というものがあわせ行われなければ機能を十分に発揮しない、これは当然の前提として申し上げておきたい。  冒頭の御質問にお答えをしたつもりでありますが、繰り返しこの点は強調いたしておきたいと思います。
  51. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 総理のお答えで、総理がどこを問題にしておられるかはかなりはっきりしたように思います。  それは、大蔵省が不動産融資規制の関係銀行が住専にそれ以上融資することに対してストップをかけた、そうしたら、農林系統金融機関の方からそのかわりに住専に向かって融資がどんどんふえてきた、これは農林系統金融機関監督している農林省と銀行監督している大蔵省の動作がばらばらだったからだ、今度金融監督庁にするとそれは一本になるから、そういう意味でああいうことは起きにくいだろうという意味だと私は解釈いたしました。  それは一つの説明ですが、総理も蔵相も御存じだと思いますが、あのとき農林系統金融機関は、金融機関貸し出しを放出することはできなかったんだと思うんですよ。それをあのとき大蔵省の指導があって、農林系統金融機関金融機関貸し出しの形で資金放出をして、それが住専に回り始めたんですね。私は、あれは明らかに大蔵省がかんでやったことだというふうに思います。  それから、不動産融資規制というのは企画ですよね。金融機関貸し出しという格好で、もう銀行から金が出ないから農林系統から出しなさい、こう言ったのは、あるいは悪い言葉で言えば、密室での不透明な行政指導ですよね。だから、ああいうことが起こらないとは言えないんですね、企画大蔵省に残していくわけですから。  ですから、総理の御説明で何を考えておられるか少しわかりましたが、これで、企画部門大蔵省に残して検査監督金融庁に移したからといって、ああいう問題、とにかく農林系統金融機関はずるずるずるずる住専のような危険なところへ貸し込んでしまう、銀行の方は大蔵省にストップをかけられているから住専に出さない、ああいうことが起きなくなるとは私は思いませんけれどもね。  そういうことがあったあげくの果てにあの住専処理案ですよね。あれは公的資金を農林系統金融機関の貯金支払い資金の不足分に入れたのではなくて、その前の段階で入れちゃいましたから、これはどこかの経営を助けたことになるじゃないかと言って批判されている。  私は、問題は、そういうふうにすべてが非常に恣意性の高い密室での行政指導で重要なところが動いていく、そういう金融行政を直すこと、これが中央省庁、特に大蔵省組織改革の最大のねらいでなきゃいけないと思うんですね。  組織いじりももちろん必要ですが、組織いじりは手段であって、目的は、金融行政というものを、従来のような密室で非常に恣意性の高い行政指導をやる姿から、事前に法律で明らかにしたルールに基づいて透明な形で検査をして、ルール違反をしているか、していないか見て、していれば、これまた決まった形で、ルールどおり、法律どおり、早期処理なり指導なりペナルティーなりをかけていく。  ですから、ケース・バイ・ケースで、密室の中で相談を受けて、不透明な形で必ずしもルールがはっきりしないところでやる、あれをやめましょうということこそが、金融行政改革の最終的な本当目的じゃないんでしょうか。いかがでしょうか。
  52. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 ですから私は、何よりの前提は、透明性の確保、情報開示ということが前提であるということを申し上げました。その上で私は、今の委員の組み立てられました推理をすべてそのままだと思っておりません、その住専に関するプロセスですね。  その上で、私はやはりどうしても、大蔵省自身が金融機関に対して企画立案検査監督機能を持っていた、その中で農林系の金融機関の住専に対する過重な貸し出しというものを、みずから見誤っていた責任と言ってはいけないのかもしれません、見誤っていた責任というものを何とか解決しょう、それが成功しなかった結果として、密室の談合といった御批判を受ける状態も生まれたと思います。  そして、逆に農水省の側から見るならば、検査監督権限大蔵省が持っていたではないか、そしてその経営資料というものは送付されていたではないか、当然ながら、そうした点について問題ありというならば、なぜ注意をしてくれなかったのかというような議論も成立したんだと思います。それだけに、私は、検査監督というものがこの金融監督庁に一元化されることにより、そういったもたれ合いというものはなくなると思うんです。  ですから、問題が全く皆無にできる、私はそれほどうぬぼれて物を申し上げるつもりはありません。しかし、少なくともこうした問題を発生させる可能性というものは従来に比べてはるかに減少すると思われ、しかも発見される確率も高くなり、その上で明るい場所において早い時期に解決策を講じることが可能になる、私はそう考えております。
  53. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 住専問題発生のプロセスについては少し意見が違うようですが、大蔵省から金融行政検査監督を切り離すことによって、少しはこういう行政の失敗のようなものが発生する可能性が低くなるだろうという意味では、それはそうかもしれませんが、繰り返して申し上げますけれども、大蔵省分割、組織いじりというものは言うまでもなく手段であって、目的金融行政の質的な改革ですよね。  これは、もう総理もそうだと今首を振っておられます。皆様に御賛同いただけると思いますが、一つは、いわゆる護送船団方式で丸抱えで来た金融行政というものを、金利についても、業態についても、商品開発についても規制緩和を進めていく、また、外為法改正で国際化をするというふうにして、透明な形で、市場にのっとった形の自由競争を大前提とした、保護するんじゃなくて、自由競争を大前提とした形に持っていくということと、それからもう一つは、総理、業法から市場法への移行という大きな流れがあるんだと思いますね。  銀行法、それから証取法、保険業法とか、とにかく縦割りの業法で今まで金融行政は業界を縛ってきたわけです。ところが、どんどん金融革新が進んでいきます、そして垣根も低くなっていきます。早い話が、定期預金あるいは普通預金と、証券会社が出しているマネー・マーケット・ファンド、MMFとどこが違うんだろう。さらには、日本では許されていないけれども、保険掛金をバックにした総合口座でも出してくれば、これは銀行がやっている総合口座とどこが違うのという話になってきます。  それをいつまでも業法で縦に割っているものですから、もう民間は困っちゃうわけですね。一々大蔵省にお伺いを立てて、これはやってようございますか、こういう商品を出してようございますか、こういうことをやったら業法に触れて、業態の垣根を飛び越えたといって怒られるのでございましょうか、全部お伺いを立てる形になります。  そうではなくて、総理もそれを考えておられると思いますけれども、これからの金融行政というのは、業態を横割りにした市場法、イギリスにある金融サービス法のような、ああいう市場法にして、市場法というのは中身は何かといえば、一つは、預金を取り扱っている銀行については、これは決済システムの一環ですから、ファイアウォールでしっかり囲んで、決済システムの安定を図るための預金者保護というのがあります。だけれども、あとは全部投資家保護ということで、どの業態共通になると思います。  それからさらに、不公正な取引というのは、どの業態だって不公正は不公正ですから、これについても横断的なものになるというふうに思うんですね。そういう方向へ動いていくということを頭に置いて金融行政組織改革を考えなきゃいけないというふうに私は思っております。  わざわざ日本銀行から本間理事に来ていただいておりますが、日本銀行は中央銀行としてもマーケットのど真ん中で仕事をしているわけですから、今私が申しました、業法から市場法へ変わっていく、それなしには金融業態の自由化、規制緩和あるいは商品開発の規制緩和というのは進まないし、いつまでたっても大蔵省にお伺いを立てなきゃいけない、あるいは金融監督庁にお伺いを立てなきゃいけないという形で、恣意性の高い行政が行われる、あるいは場合によっては密室での相談みたいな話になってしまうというふうに思うんですね。だから……(橋本内閣総理大臣「密室のというのは」と呼ぶ)密室という言葉はお嫌いなようですが、大和銀行事件なんか典型的な密室の話し合いでああいうとんでもないことをやらかしたわけでありますから。  それはともかくとして、本間理事、大きな流れとして、そしてそんな遠くない将来、市場法で業態横断的にルールを決めるという時代が世界の流れであるというふうに考えていいでしょうか。
  54. 本間忠世

    ○本間参考人 お答えをさせていただきたいと思います。  ただいま御質問をいただきました、これからの金融の大きな仕事あり方と、それからそれを受けとめます法律を中心とします枠組みのあり方、こういうことについて、どういうことを頭に置くことがこれからの日本金融業務というものを考える上で適当かつ望ましいか、こういうことであろうかと思います。  先生今お話しいただきましたように、これまでの日本金融システムは、金融業務を細かく区分をいたしまして、それぞれの業務を専門の金融業態にゆだねるということで、そうした業態ごとに規制とか監督とかの枠組みを設けてきたということに一つの特色があったと思います。  また、その金融業務のそれぞれの担い手と金融商品とを一体のものとしてこれを扱う、規定をする。その上で、担い手に対する規制とか監督とかということを通じまして、顧客の保護、この場合、顧客は預金者であり投資家であり契約者であるということでございますが、これを実現しようとしてきたということも一つの特色であるというふうに考えております。  これにはこれで、従来の金融システムには、その時代の背景の中で相応の意味を持ってきたというふうに思っております。戦後の復興期あるいは高度成長期には、資金の重点配分などの面で一定の役割を果たしてきたと思いますが、しかし、時代が変わりまして、先生おっしゃいますように、最近の金融技術のいろいろな発展とか利用者のニーズが多様化してくるというふうになりました中で、これまでの枠組みで、必ずしもその金融技術の取り込みとか効率的なサービスとかというものの提供が十分できるかというところが確かにあるように思います。海外でもそういう議論がいろいろございます。  そういう中で重要なことは、国民の多様なニーズに十分にこたえていくということでございまして、金融機関の活発な競争が促されて新しい金融サービスの開発とか提供が柔軟に行われるような、先生おっしゃる市場づくりというものを進めていくということだと思います。  そのためには、新しい枠組みといたしまして、金融サービス業全般に横断的に適用されるような顧客保護のための取引ルールをつくるということによって、幅広いその参入の条件を整え、そして、それと並行して思い切った規制の緩和・撤廃を図っていくということが、これからの方向性として大切なことなのではないかというふうに考えております。
  55. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 ありがとうございました。  総理、大きな方向として、今のようにはしの上げおろしまで指図するような業法ではなくて、業態横断的な市場法で市場のルールを決めて、このルールさえ守っていればみんな自由競争よ、活発にやりなさい、そのかわりルール違反があったら承知しないよ、それをチェックするために検査に入りますよ、こういう体制にいくんだというふうに理解してよろしゅうございましょうか。
  56. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 確かに、私は、これから先、金融システム改革というものを進めてまいりましてこれが一応完了した時点、そうしたときを考えてみますと、全く業態にとらわれない自由な市場参入というもの、また、恐らく現時点で想定できないような多種多様なサービスというものが考えられると思います。そうすると、これは確かに、市場に参加する方々に対して共通に適用される横断的なルールが必要だと言われるのは、私は議員の御意見、そのとおりだと思います。  その上で、これは、従来のように事務的な視点からこれを見ました場合に、私は、議員が言われたような市場法的なものをつくらなければならなくなるであろう、それもそう思います。  問題は、そこまで金融システム改革を進めた場合に、そして、自己責任原則というものが一方で確立をされる、一方で情報の公開と透明性のあるルールというものが確立をするという想定をしました場合に、それぞれの業界の従来までの仕組みも変わるはずでありますが、その中において、むしろ市場参加者の中における自主的なルールというものは生まれないんだろうか。現在と同じように、市場法といえども、やはり国が示すルールであります。それに頼らなければならない市場になるんだろうか。実は私は、そこのところがもう一つ自分で想定し切れておりません。  私が証券金融不祥事の際に学びましたこと、これは、官の立場でルールをつくり、それを細かく指導すればするほど、一たんそれをすり抜けようとする場合は極めて、円満に通り抜けるというのもおかしい、巧妙にそのすき間を縫うことが可能になる、結果としてはそれが非常に大きな事態を発生し得るということでありました。  そして、当時、証券行政に係る通達あるいは覚書というものが相当量ありましたものを、できる限り証券取引所または証券業協会の自主規制のルールに移しかえてもらい、どうしても必要なものを証券業法に取り入れるという対応をしたわけでありますが、私は、このシステム改革が完了した時点においては、恐らく大半のルールというものが変わると思うのです。  その場合に、法によって、市場法のような形、まさに議員は横断的な法体系を市場法的なという形容を使われたわけであります。確かにそういうものが必要になると思うのですが、それが法の仕組みとして担保されなければならないのか、あるいは再編整理が行われました新たな市場においての自主ルールとして育てていくべきものなのか、実は私はまだそこには判断を決め切れておりません。
  57. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 総理が将来の金融の姿として今頭に描いておられることをお話しいただきました。私は、基本的には全くそのとおりだろうと思っておりますので、大変うれしく思いました。  総理、そういう世界では、今総理が、どこまでを民間が決めて、どこまでを官が決めるんだろうかというところをちょっとまだ迷いがあるとおっしゃいましたね。  アメリカでは、御承知のように、グラス・スティーガル法で最初は銀行証券、厳しく分けられていたわけですね。それからあと、州際業務禁止といって、州をまたがっちゃいかぬなんというとんでもない煩わしいものがあった。それを民間は、やはり総理が今おっしゃったように、そういう法律を何とかすり抜けようとして、合法的な脱法行為を、どこか抜け道ないかと思ってやるわけですね、不便てしようがないですから。  それを官の方が見て、これは大きな時代の流れだ、法律の方が古臭いわ、これは規制緩和してやらなきゃいけないと思うとそれを追認するし、ここのループホールはふさがなかったら不公正だとか、何か差し支えがある、預金者保護、投資家保護上困るというとそれを禁止する法律を出すということの繰り返しで、アメリカはグラス・スティーガル法が事実上完全にもう形骸化してしまって、業際規制の緩和、それから州際規制も緩和してしまったのですね。  やはり日本もそうだと思うのです。基本は市場法。さっきから言っていますように、預金者保護と投資家保護、それから不公正な取引だめよということを基本にした市場ルールがある。これを守る限りはみんな自由よと言っておいて、何かとんでもないことをやり出したのがいたときに、それを検査で発見したときに、さあ、追認するか、これはいかぬ、ふさごうということかを決めていく、そういうことでいくのだろうというふうに思います。  そういうふうに思いますと、総理金融行政企画立案監督検査と分けますが、実はそういう世界では、監督というのは限りなく小さくなっていく。やはり企画立案ルールをきちっとつくる。そして、検査がそのルールを守っているかどうか見る。その結果、今みたいに、ループホールがここにあいていたよ、どうしましょうといったら、これは企画立案が考えるわけですね。だから、恣意性の高い監督という仕事は、金融行政の中で限りなく小さくなっていくんだと思うのです。そうお思いになりませんか。
  58. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これは専門家に答えてもらった方がいいのかもしれませんが、私は、そうしたシステム改革の後の、しかも、法によるものか、業界の中で自己責任原則をベースとしながら、投資家保護、預金者保護ということでの自主的なルールができるのか、それは別として、一つの横のルールができました段階においても、監督という機能は必ずしも議員が想定されるほど低下をするものではないように思います。ただ、これはあくまでも想定でありまして、私も絶対にそうだと言い切る自信があるわけではありません。  ただ、グラス・スティーガル法あるいは州間の移動を禁止したあの何とかいう法律、ちょっと名前は忘れました。たまたま私は、ウォルト・ディズニーの、ディズニー・プロに対しての敵対的買収がかけられました事件を興味を持って調べたことがございます。そうしますと、今議員のお言葉をそのまま使わせていただくならば、ループホールをいかにくぐり抜け、その敵対的買収を成功させるか、逆にそれを防衛するか、いろいろ大変興味深く読みました。  そうした中で、たまたま今私は議員の御質問を伺いながら、それをちょっと振り返って、何かこれに対するデータはないかと考えておりましたけれども、あれは後に幾つかの修正を関係法令にもたらした先例の一つになっているはずでありますが、私は、監督必要性というものが必ずしもそれほど減じたという印象は持ちませんでした。  そして、現時点のアメリカの諸制度の中で運営をされております実態を見ましても、確かに検査というものが非常にウエートを増すであろうことは、これは想定ができることでありますけれども、監督という機能がそれほど低下するとは実は私は考えておりません。
  59. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 この点は、総理と私の見解が違うところだというふうに思います。  私は、将来の姿を考えたときは、今はもう逆に、企画監督検査と比べたち監督が物すごく大きい。それも恣意的にやる監督なんですね。それで、将来はこの監督が限りなく小さくなっていって、企画検査がお互いに対話しながら進んでいく。つまり、検査をしたらこういうことがあったよ、どうしようか、ふさごうか、認めようかということで、企画検査の対話で進んでいくようになっていくというふうに思います。  なぜ私はこれを言っているかといいますと、ちょっとこの問題は一度横に置きますが、恐らく頭のいい総理はもう見当がついておられると思いますが、金融監督庁というのは将来、無用の長物とは言わぬが、あんな省庁を一つつくってしまって、これは何だ、監督だけなら日本銀行だってやれるね、監督だけだったらあんな省庁一つつくることはなかったねという世界に二〇〇一年以後なっていく可能性が非常に大きいと思うからです。  もう一つ、ちょっと今の問題を置きまして、二つ非常に大事な視点があるのですが、今の一つの視点、もう一つの視点は、最初に伺っておりましたように、財政政策というものと金融行政というものには、トレードオフの関係といいますか、利益相反といいますか、コンフリクト、矛盾が起きるわけですね。  武藤長官、やはり中央省庁の再編整理というときに、非常に大事なことは、私は二つではないかと思っています。一つは、今言ったような無用の長物とは言わないが、実はほかの省庁にくっつけてしまったって大丈夫なものを残しておかないで、数を減らしていく。ましてや、ここで一つつくってしまうなんという愚は犯さないというのが一つ原則だと思うのですね。それでもう一つは、今の政策の利益相反だと思います。  例えば、大蔵省の租税政策、所得再分配を主な目標としてやっている。それから支出政策、公共投資なら資源再配分、それ以外の、福祉政策ならこれも所得の再配分ですが、この財政政策といってくくられる租税政策や支出政策の間には、大きな利益相反は言うまでもなくないわけですね。  それから一方、金融検査監督金融行政というものと物価安定を目指す金融政策というものの間にも大きな利益相反はないわけです。だからこそ、各国の中央銀行はその政策目標に物価の安定と信用秩序の維持というのを掲げている。この信用秩序の維持というのはまさに検査監督目的ですから、この二つの間には利益相反はないんだと思うのですね。だから、この二つはくくれる。  だけれども、その一つを、例えば金融行政を財政政策の中へ入れておくと、さっきから私は五つぐらい例を挙げましたが、明らかな利益相反が出てしまう。  こういう二つの視点からの中央省庁の再編整理、一つは余計なものをつくらない、利益相反がなければ一つにくくる。もう一つは、利益相反があったら、これは離さなければいけない。こういう観点で中央省庁の整理再編を行っていくということについては、長官は御賛同いただけますでしょうか、いかがでございましょう。
  60. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 今、行革会議というのは全く結論というものは、いろいろマスコミは書いておりますけれども、私どもとしてはまだ結論を全く出していないわけでございまして、またこの七日から、初めて各省庁からいろいろヒアリングをしながら、そして一つの二十一世紀における国家機能あり方というのは総理が四つのくくりをしておっしゃっておられます。  私どもは、そういう国家機能あり方の中で、簡素でできるだけ効率のよい行政機構を、しかも透明性を確保される形の行政機構はどうあるべきなのかということは、実はこれから議論していくわけでございまして、余り私がここで個人的な見解を申し上げるということは、かえって私は、行革会議をこれからしていく上において大変誤解を招く、あるいは行革会議においていろいろフランクにそれぞれの委員の先生方におっしゃっていただくのをもし万が一にも阻害するようなことになってはいけないと思いますので、きょうの時点で二十一世紀における行政改革の方向というものはどうあるべきなのかと。  ただ、私ども、今お話しのように、一般論といたしましては、相反するようなものが同じ役所の中にあっていいのかどうか、こういうことだけは私は申し上げられると思います。
  61. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 大変慎重でいらっしゃいまして、お立場上あるいは無理はないかもしれませんが、しかし政策に利益相反があったら切り離すのだという点は御同意をいただけたと思います。その反対に、利益相反がなければくくっていって、なるべく省庁の数を減らすのだということも、恐らく御同意いただけるのではないかと思います。  この原則と、さっき申し上げた将来を考えると、金融行政の中の恣意的な監督という部分は非常に小さくなってしまう。検査企画が中心になるということ、この二つを合わせますと、私の頭に出てくる答えは、それなら金融監督庁なんというものをつくるな。大きな中央省庁再編、行革の流れの中で、何でそんなものを一つふやしてしまうのですか。  そんなことはしないで、検査、それに付随するぐっと小さくなった監督というのは、日本銀行にやらせたらいいではないですか。なぜなら、これは利益相反がないから。物価安定というものと信用秩序維持というのは、まさに物価安定のための金融政策のメカニズムというのは、安定した効率的な信用秩序金融システム、金融・資本市場を通じてこうやって波及していくわけですから、これはまさに補完し合う関係であって、この両方を中央銀行に持たせたらいいではないか。そうすれば一つ余計な中央省庁をつくらないで済むということではないかと思います。  こういう考え方についてどうお考えでしょうか。どうぞ武藤長官、今の続きであれでしたら。
  62. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど申し上げておりますように、二十一世紀からのものについては、まだ私がいろいろと申し上げるべき段階ではないわけでございますので。ただ、先ほど来お話し申し上げているように、きょうは全く違う財政、金融というお話がございましたが、一般論として、非常に相反するような目的を持った行政というものが一つ機関で行われているのはいかがなものか、こういうことを申し上げたわけでございます。  今、今度は検査監督という立場から、日銀大蔵省、あるいは今度の金融監督庁という関係でいろいろお話がございました。二十一世紀の問題として、またいろいろ私ども御議論させていただきますときには、十分そういう御意見も頭の中に入れながら議論をさせていただきたいと思います。
  63. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 総理、今の点について、もしはっきりした御意見をお持ちであれば、それとも、そんな話は初めて聞いたということであれば結構でございますが。
  64. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 総務庁長官答弁に多少補足をさせていただきたいと存じますが、私は、行政機関ではない日銀行政権限を持つということが日銀の中立性というものにとっていかなる影響を与えるだろうということを大変心配をいたします。  そして、私は、中央銀行としての日銀の独立性というものはできるだけきちんと担保したいと思う。そうすると、この金融監督庁の持ちますような検査機能監督機能というものを日銀が持ちますことは行政機能の一部を持つということになり、日銀行政機関性格を帯びてしまうことは賛成できないな、私はそういう感じで今の御意見を承っておりました。
  65. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 私ども新進党は、さっき申し上げました主に二つの理由で、金融監督庁というものは、大きな行政改革あるいは中央省庁再編の中で、後になって、しまったと思うような、無用の長物とは言いませんが、あんなものつくらなくてよかったねというものをつくる結果になるのではないかと思いますので、この金融監督庁設置法案には反対でございます。そのかわり、検査監督機能日本銀行考査と一本化する、ここには利益相反がないから一本化するということで、これは大蔵委員会ですが、日銀法の改正案についての修正案を出させていただきたいと思っています。  今総理がおっしゃった点、日本銀行行政機関じゃないじゃないか。これは認可法人でございます。その点を私どもはどういうふうにクリアしようとしているかといいますと、日本銀行の政策委員会を国家行政組織法上の三条機関にしよう、それならば大丈夫だというふうに思っております。  政策委員会を独立の行政委員会にする。こうなりますと、政策委員会大蔵省は対等の立場で相対します。その意味金融政策の独立性は強まります。しかし、内閣の中で総理大臣の指揮下に入るじゃないかと。それはそうですが、総理大臣は日本銀行の政策委員会に対して、今お出しの日銀法と同じように、政策の指示権は持たない、それから政策委員の首は切れない、この二つの担保が入っていれば、三条機関にすることによって日本銀行の、あるいは金融政策の、日本銀行というより金融政策の独立性は強まるので、総理がさっき御懸念されたような問題はクリアできると思っております。総理、いかがでしょうか。
  66. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これは、大変申しわけありませんけれども、私、いよいよ賛成できません。と申しますのは、日銀の現在御審議をいただいております法律、確かに、中立性を高めるために従来持っておりました政府機能を弱めております。そして、私はそれが正しい選択であったと思っております。  しかし、政策委員会が、現在御審議をいただいております日銀法の内容と異なり、全く独立した三条機関という形で日銀の中に位置づけられ、その行政委員会が例えば考査、あるいはこれにあわせて検査監督という機能を有するとすれば、その点は完全な行政機関であり、行政機関としての責任をとる組織になります。これは、御審議をいただいている日銀法において定めております日銀と全く性格を異にするものであります。  そして、そのような、政府が中央銀行のわき腹にくぼみをつくり、そこに手をかけて、日銀機能の一部を行政と混同して──混同はいけません、ちょっと訂正いたします、あわせて行使をするような仕組みは、私はむしろ非常に有害な結果を生じかねない危険性を持っているものだと思います。  そして、私は、日銀民間金融機関に対する検査監督という行政権限を行使する姿をとりました場合、政府として、その部分に対して政府一つ機関としての、独立性を持っておりましようとも政府行政機関としての対応をしなければならなくなるわけでありますから、これは中央銀行の中立性を侵す可能性の非常に多いもの。残念でありますが、私はこの点については議員の御意見に承服できません。
  67. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 もう少し正確に私言わなければいけなかったと思うのですが、もう一度言いますが、日本銀行の政策委員会が三条機関になると申し上げている。政策委員会のもとで認可法人として存在している日本銀行は、執行に当たるのですね。日本銀行全体が三条機関になるなどとは言っておりません。(橋本内閣総理大臣「いや、政策委員会と私は言っています」と呼ぶ)政策委員会だけです。日本銀行は、そのまま政策委員会の指揮下に入った認可法人になります。  ちょっとエージェンシーに似ていますけれども、こういう構造というのは、例えば、米国のワシントンDCにあります連邦準備制度理事会は、あれは政府機関です。ですから、グリーンスパンさんもそれ以外のガバナーも、みんな公務員並みの給料であります。ところが、あそこで決定した政策を執行しているニューヨーク連銀以下十二のローカルフェッドは、あれはみんな全額民間出資の株式会社の格好をとっておりまして、給料も一般の銀行の給料と同じ水準であります。ですから、政策決定のところだけを政府機関にする、そこに独立性を与えるということは米国に例がある。  そして、そうやって独立しているワシントンの連邦準備制度理事会は、御承知のようにマネーセンターバンクの検査監督権限を一手に握っております。アメリカは、御承知のようにいろいろなのがあって、それ以外の銀行についてはさまざまですが、事マネーセンターバンクについては連邦準備制度理事会が検査監督、それから中央銀行としての物価安定、両方の機能を果たしておるのですね。ですから、新進党が出そうとしている日本銀行法の改正案というものは、別に頭の中ででっち上げたものではない。ちゃんとアメリカに例があります。  それから、これは形は全然違いますが、中央銀行検査監督と物価安定と両方やっている例としては、今のアメリカのほか、英蘭銀行がありますね。英蘭銀行は、シティーの検査監督は一手に引き受けてやっております。もっとも、英蘭銀行は肝心の金融政策のところで大蔵省の指示権がかつてはあった。  でも、御承知だと思いますが、もしイギリスがマーストリヒト条約に従って欧州の通貨統合に加わるならば、この政府の指示権を抹消しなければ加われませんね。政府の指示権のついた中央銀行はヨーロッパ中央銀行システムに入れてやらないというのがマーストリヒト条約であります。ですからイギリスも、政府の指示権は、まだついているのか消したのか、ようわからぬようになっていますが、これはもし通貨統合に参加するなら消す。そうしますと、イギリスの中央銀行も物価安定と検査監督の両方を握っている中央銀行ということになります。  ドイツ、フランス、大陸は違っておりまして、大蔵省と中央銀行が両方で委員会みたいなものをつくって、その委員会検査監督の実権を握っているわけです。いろいろなタイプがあります。  繰り返して申し上げますけれども、自民党さんも私ども新進党も、中央省庁の整理合理化を進める、これが行革の大事な一つの柱だというふうに考えているわけですね。そういう考えでいった場合には、私どもは、この金融監督庁なんてつくると後でしまったということになるぞ、それぐらいなら一挙に検査監督日本銀行に一本化して、そのかわり政策委員会だけを三条機関とするという考えは十分考慮に値すると思っておりますので、あるいは総理はきょう初めてそういう考えをお聞きになったかもしれませんので、今後十分にそのメリット、それからもしデメリットもあればお考えいただいて、今の金融監督庁をつくってしまうということとの比較をしていただきたいというふうに思います。  よろしゅうございましょうか。何か御意見があればどうぞ。
  68. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 確かに、今議員の御提起されました問題は初めて私も承り、その上で私なりに感じていることを率直にお答えをさせていただいたことでありますから、十分検討はさせていただきます。  ただ、議員御自身が御説明をいただきましたように、英蘭銀行はまだマーストリヒト条約に入っておりませんので従来の形態を残しておりますこと、同時に、アメリカにおきましても準備制度理事会の持っております機能はマネーバンクにとどまる、その他に及んでいないという部分があることは、我々がこの金融監督庁の構想と違う部分として改めて確認を申し上げておきたいこと、そのように存じます。
  69. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 国によっていろいろ事情が違います。アメリカのような広いところでは、私はマネーセンターバンクだけ中央銀行が握っておるというのは一つの選択だなと思いますが、日本の場合は恐らく銀行、それから地銀、第二地銀、信金ぐらいまでは少なくとも日本銀行に統一して大丈夫だと思います。  それから、柳沢委員がさっきおっしゃったことに、ここでディベートできないのに批判するのはちょっとフェアでないかもしれないのですが、お許しいただけますか。柳沢委員は、これからの検査というのは大変だ、人手がかかるぞとおっしゃいました。それは、私は当面の検査はそうだと思うのですね。不良債権問題を抱えてもう大変であります。  それはそう思いますが、やはり総理の頭の中も三塚蔵相も、二段階論になっているのじゃないか、私もそうなのですが。今の金融ビッグバンをやって不良債権処理をしてという、戦争のような、シュトルム・ウント・ドランクのような時期がこれからまだ続くわけですね。この間は私は検査は大変だろうなと思います。それから、ぶっ倒れる銀行が出てきたときにさあどうするのだという、これも大変だと思います。これを乗り切るためにどうしようこうしようという問題と、それが一段落した後の、二〇〇一年を目標にしているわけですが、二〇〇一年以降の姿というのはちょっと違っているだろうと思うのですね。  二〇〇一年以降というのは、すなわち不良債権処理が終わって、金融ビッグバンも終わって、ようやく日本金融・資本市場に活性が出てきている、こういう状態を想定しますと、検査事務というのは、先ほど柳沢委員が言われたほどそんな膨大なものではないだろうというふうに思います。もちろん、大蔵省検査要員行政改革の一環として、そう言っては失礼ですが、そういう方は行政の縮小の一環としてやめるわけですが、それの再雇用の形で、恐らく日本銀行は専門的な能力を持っている人はもう喜んで中途採用していくぐらいのことは起きるだろうと思いますけれども、そんなに大変なことだとは思いません。  日本銀行考査というのは、契約に基づいて取引先金融機関資産内容は大丈夫かな、経営は大丈夫かなというのを見る。一方、大蔵省検査というのは、法令違反をチェックする。これは違うよといいますが、恐らく総理、蔵相御存じだと思いますが、やっている中身は実は全く同じようなことをやっております。ですから、日本銀行にできないという話ではないと私は思うのですね。統一してやることは可能だというふうに思っております。  歴史的に見ましても、実は日本銀行考査の歴史の方が長いのですね。大蔵省検査をやり、そして金融行政にこれだけ介入してきたのは、むしろ戦後であります。ですから、私ども新進党のこの案は、そういった点から日銀にはできまいということはなかろうというふうに思っております。  先ほどの二段階論で言いますと、シュトルム・ウント・ドランクと言ったら総理はお笑いになったけれども、まさにこれから数年はそうなのです。ですから本当は、そういうときに無用の長物をつくるような組織いじりをするよりも、大蔵省日本銀行が全能力を挙げて処理した方がいいのですね。それで着地点を決めておく。着地点として、金融監督庁なんかつくらないで、私どもが言っているような形で、省庁をふやさず、しかも大蔵の金融行政に対する批判にこたえる形で日銀法の改正をしていく。  そういう着地点を見詰めての作業は今からやらなければいけませんが、二段階の最初の方は実は組織いじりなんてやっている暇がないほど大変ではないかというふうに思っておりますが、蔵相いかがでいらっしゃいますか、これは相当大変な時期があと数年続くのだというふうに思いますが。
  70. 三塚博

    ○三塚国務大臣 金融監督庁という法律を、ただいまの国際金融を考え、日本金融システムの安定を考え、そして預金者保護を考えと、こういうあらゆる観点を考えながら本法案を提出させていただきました。  ですから、いろいろなことも想定をしながら、なおかつベストな選択として、また組織も三条として、またその責任者は内閣総理大臣として総理府にこれを置く、独立した機関として検査監督を行う。検査がないところに監督はございません。検査がないところに透明性もございません。そういうことの中で強力なものをつくり上げていかなければならない。御説のように日銀検査をゆだねたらどうだ、監督もゆだねたらどうだといいますけれども、やはり行政機関でなければなりませんし、法に基づいてこれを執行するということでございます。  さらに、物価安定を基本とする日銀、これに対しまして別途民間金融機関検査監督という強力な機能を持つということでありますと、まさに日銀が利益相反に陥って大変なことである、こう思います。法治国家の基本からいたしまして、行政の負う責任は峻厳厳正でなければなりません。そして、その大前提は透明性でなければならぬわけでございますから、首相及び総務庁長官が答えられたとおりでございます。  第二段階、第三段階、ビッグバンが成立した後存在しないのではないかといいますが、ビッグバンという垣根のないグローバルスタンダードで進む、まさにニューヨーク市場と同じ状況になる東京市場でございますから、それだけに、預金者保護金融システムという観点からいいますと、検査監督機能は独立して行うことの方が我が国金融政策の信認を高める基本的な路線ではないでしょうか。
  71. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 今の蔵相のお言葉の中で私は承服できないことが、大事なことが一つあります。それは、日本銀行検査監督を渡したときに、日本銀行の中で利益相反的なことが起きて日本銀行の独立性が侵されやせぬかとおっしゃった点であります。  さっきも申し上げましたように、どこの国も、先進国もあるいは途上国を指導するときも、中央銀行の政策目標は二つ、物価の安定と信用秩序維持です。信用秩序維持のための検査監督を中央銀行はやっているのです。そこに利益相反はありません、コンフリクトはありません。むしろ、物価安定の政策効果をきちっと浸透させるためにも、金融システムあるいは金融・資本市場の健全な発展また安定というものが必要なのであります。  もう一つ柳沢委員が先ほど言われたことで、私は違うと思っていることを申し上げておきたいと思います。  中央銀行あるいは日本銀行資産価格というものを政策の対象にしていないとさつきおっしゃいましたね。これは全くの事実誤認であります。まず一般論として、金利というのは何ですか。あれは資産価格ですよ。手形や債券の価格の逆数です。金利というのは資産の価格ですよ。為替相場というのは何ですか。これは資産の価格ですよ。それぞれの通貨という資産の価格ですよ。だから、地価とか株価とか為替相場とか金利とかいうのは、みんな資産の価格。  ノーベル賞をもらったジェームズ・トービンという大経済学者がいます。あの人の資産の一般均衡論的アプローチというのは、まさにこれですね。中央銀行が、ハイパワードマネー、ベースマネー、中央銀行だけが出す現金プラス中央銀行預け金、ここを調節することによって、金利が動くだけではない、すべての資産価格が変動する。資産価格の変動こそが金融政策の効果波及経路である。金融政策の最終目標はもちろん物価安定ですけれども、波及過程ではあらゆる資産価格が動くんだ。これはノーベル賞をもらったジェームズ・トービンの資産の一般均衡理論でありまして、経済学者の間ではこれは常識というか、当然前提になっているのですね。だから、中央銀行資産の価格を見ていないとか対象にしていないとかいったら、これは間違いです。  それから、もう一つ事実を言っておきますが、三重野前総裁は一九九二年十月の講演におきまして、これはバブルの発生と崩壊を十分反省した上かなと思いますが、中央銀行にとって資産価格というのはますます重要な、目配りしなければいけない対象である。これは最終的な政策目標であるとは決して言っていない、そんなことを言っている人はいません。地価や株価が最終的な政策目標だなんて言ったら笑われます。金利が最終的な政策目標だなんて言ったら笑われる。これはあくまでもインターメディェート・ターゲットとかオペレーティング・ターゲットというように、効果波及経路の途中にあるターゲットなんですね。最終は物価です。  ですから、柳沢委員がどんな本を読んだか存じ上げませんが、もしかするとそれは最終目標でないと書いてあったのじゃないですかね。最終目標ではないのですよ。だけれども、中央銀行は中間目標としては十分注意している。そのことは、日本銀行の場合も三重野総裁が九二年十月の講演ではっきり言っておりますし、その後も日本銀行の論文には頻繁に出てくることであります。ですから、資産価格の関係については、本来中央銀行あるいは日本銀行関係ないとか、あるいはそこに影響を与える能力がないとか、あるいは見ていないとかいう先ほどの指摘は、どうか総理、蔵相、総務長官、そうではないという認識をお持ちいただきたいと思いますが、蔵相いかがでございましょうか。
  72. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大蔵大臣にかわって私がお答えするのも大変申しわけないと思いますけれども、議員にも誤解がないようにお願いを申し上げたいと存じますのは、私は、先ほど議員の御意見を初めて伺い、検討はさせていただく、ただし意見が違うということを申し上げました。  そして、私が申し上げました内容は、後ほどお調べいただいても結構でありますけれども、日銀検査監督の能力がないと一言半句申しておりません。その上で、行政権限としての検査監督日銀が行うことの政策判断、可否、そして、政策委員会を三条機関にすることによってその問題は防げると議員は言われましたけれども、その場合におきましても、実施を行います部門がその日銀の内部部局でありますならば、日銀本体が、政策委員会の指示を受けたとはいいながら認可法人が行政権限、しかも、やはり検査監督というのは強大な行政権限だと私は思います。これを行使することの可否を論じたことでありまして、日銀本体に検査監督の能力のあるなしを問題にしての議論でないこと、これは三塚大蔵大臣武藤総務庁長官、私どもの一貫して申し上げておりますことでありますから、どうぞこの点は誤解がないようにお願いをいたしたいと存じます。  また、柳沢議員の発言について、これはでさましたら公開の御論争をどこかで願いたい。非常に、非常に興味深く拝聴させていただきます。
  73. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 今の総理がおっしゃった点は誤解がないようにいたします。  総理と私が明らかに食い違っているところは、私は、政策委員会を三条機関にして、その監督下に認可法人としての日本銀行の現業というか実際に動く部門を置くということで問題はなかろうと思っている、その点の意見が違うということであります。  委員長、時間になりましたので、これで質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  74. 綿貫民輔

    綿貫委員長 次に、池田元久君。
  75. 池田元久

    池田(元)委員 民主党の池田元久でございます。御苦労さまです。  時間が限られておりますので、早速始めたいと思うのですが、まず、この大蔵省改革金融行政改革は、橋本行革の第一弾と言われておりますが、それを検証する前に、財政と金融の役割をちょっと過去に照らして取り上げてみたいと思います。  私も少し体験したことなのですが、過去四半世紀の間、日本では狂乱インフレ、バブルとバブルの崩壊という大きな経済変動がありました。国民は大変な目に遭ったわけです。戦後経済史の二つの失政とも言われております。その際、財政と金融はその役割を果たしたかどうか、少し検討したいと思います。  一九七二年に発足いたしました田中内閣のときに狂乱インフレが起きたのですが、狂乱インフレは、大蔵省を支配したと言われる田中総理大臣、私も官邸周辺におりましたが、それに対して日銀は公定歩合の引き上げをなかなか言い出せなかった、そのために過剰流動性を生んだことが原因とされております。  また、一九八〇年代後半のバブルはどうか。プラザ合意というのがありましたね、一九八五年九月。その合意の後、八六年に入って円高不況の声が高まる中で、日銀はその年の一月、三月、四月と立て続けに公定歩合を引き下げました。利下げはさらに十一月、翌年八七年二月と続き、当時としては史上最低の二・五%という超低金利を記録したわけです。財政政策が発動されましたのは、既に景気が底入れをしていたとき、八六年十一月にもう底入れしたのですが、その後回復に向かい始めていた八七年五月のことでした。一九八七年二月の公定歩合の引き下げが大変問題があるわけです。この低金利が二年三カ月も据え置かれた、これが過剰流動性の垂れ流しを決定的なものにしたと言われております。  バブルの責任を一方的に日銀に押しつけるという見方もあります。先ほどの話を聞いておりますと、日銀も頼もしい、大蔵省もそうであってほしいと思うんですが、私は当時の話をしておるわけでありまして、日銀の責任という面もあるんですが、財政出動を渋り、金融政策にしわ寄せをした大蔵省の責任は大変大きいと思うんです。三塚大蔵大臣、この点何かコメントがございましたら、一言で結構です、お願いします。
  76. 三塚博

    ○三塚国務大臣 政策は、そのときの経済社会状況の中で行われるものであります。財政当局とすれば、これがベストだということを、検討の結果、選択をしまして行うことであります。いろいろの御批判は小生が負います。
  77. 池田元久

    池田(元)委員 大分前のことですから、率直に言っていただきたいと思うのですが。  過去、少なくとも四半世紀、景気対策として発動されました財政政策は、常に金融政策にツケを回してきたとさえ言われているわけです。今、何より必要なのは、財政機能金融機能を載然と分けて金融の独立性を高めることにあると私は思います。日銀だけではなく、政府の中にある金融部門も同じことです。  財政機能金融機能の分離について、総理大臣はいらっしゃらないか、大蔵大臣、お願いします。
  78. 三塚博

    ○三塚国務大臣 この問題は長くて新しい論議でございます。その都度、財政当局、大蔵大臣が申し上げてきておりますことは、分離をすることによって生ずる問題、すなわち経済の円滑かつ効率的運営に支障を来さないか、この点が一つあります。それと、G7等の国際会議の場において、我が国の国益確保という観点からマイナスにならないか。そして同時に、中央省庁の再編について、総合的な政策展開の観点から分野を大くくりにするという基本方針が出ておるわけでございまして、その辺との議論のかみ合わせをどうするのかという検討すべき課題がございます。  これらをしっかりと踏まえながら、中央省庁再編のあり方検討の一環として大所高所から十分に議論していく必要があると認識はいたしております。
  79. 池田元久

    池田(元)委員 金融機能の中に検査監督企画立案という部門があるとされております。その企画立案大蔵省に残したことについて若干触れてみたいと思います。  検査監督企画立案は、金融行政の一連の流れと言っていいと思いますが、この企画立案監督との関係はどのようにとらえるべきか、お考えを聞きたいと思います。
  80. 武藤敏郎

    武藤政府委員 金融行政をめぐるいろいろな批判がございますけれども、その批判の中に、検査の結果が監督に十分反映されていないのではないか、あるいは監督の都合で検査をゆがめているのではないかといったような批判もございます。また、企画立案、すなわちルールづくりが監督との関連でゆがめられているのではないか、監督の都合のいいようなルールしかつくらないのではないかといったような、さまざまな観点からさまざまな批判があるわけでございます。  しかし、いろいろな議論がございましたけれども、結論的には、検査監督企画立案というものの間に緊張関係といいますか、独立をさせて相互にチェックする、そういうシステムにしようというのが今回の位置づけであるというふうに考えております。
  81. 池田元久

    池田(元)委員 監督企画立案をそうはっきり明確に分離できますか。  随分、この一年間といいますか、大蔵省の思惑があって、どこにミシン目を入れるか、検査監督の間を分ける、監督企画立案の間を分ける、いろいろ思惑によって左右された部分もありますが、私は、そう明確には分離できないとは思います。もちろん、それぞれ、ファイアウォールといいますか、一つの中で分けるのは必要です。私は、むしろ検査監督企画立案という三部門、その金融部門と財政の間にこそ緊張関係が必要であると思います。  まず、企画立案大蔵省に残した理由についてお尋ねをしたいと思います。
  82. 武藤敏郎

    武藤政府委員 まず、企画立案検査監督をはっきり分けることができるかというお尋ねがございましたけれども、これは、法律上、監督は各条文に基づいて行うことになりますので、それぞれの法律の中にはっきりと定められているわけでございます。  したがいまして、まず監督企画立案を分けることはできるということを前提にお話を申し上げますと、先ほど申し上げましたとおり、検査監督という執行面機能、それから企画立案という政策面機能を異なる組織がお互い分担するということによって、先ほどから議論されております金融行政に対するさまざまな批判におこたえすることができる、すなわち、市場規律基軸とした透明かつ公正な金融行政の実現に資するだろう、こういう考え方に基づくものと理解しております。
  83. 池田元久

    池田(元)委員 大蔵省に残した理由を聞いているわけですから、正しく答えていただきたいと思います。  大蔵省が去年の十一月半ばに出した反論文書というのがあります。ちょっと有名ですね、これは。「企画立案検査及び監督機能間の緊密な連携が必要。一縦割り行政、二重行政の排除)」と書いてあります。「緊密な連携が必要。」と書いてあるんですよ。  それから、武藤さん今出てこられましたが、報道によりますと、十一月の二十日過ぎ、企画立案監督は川の流れのように一連のものだと述べています。このときはちょっと思惑があったと思いますから、多少は私もそれを差し引いて申し上げたいと思います。  また、与党合意がほぼ決着した去年の十二月二十三日、これは余り言いたくないんですが、大蔵省の首脳は、いっそのこと企画立案機能も移管して金融庁にしてもらった方がましだ、こういうふうに漏らしたというような記事も出ておりました。  橋本総理大臣、企画立案監督などと一緒でないと監督が働かないという理屈もある、僕もそう思うんですよね。そういうことを十二月二十日におっしゃったということも聞いております。(橋本内閣総理大臣「だれが」と呼ぶ)総理大臣。何か記者団に十分間ぐらい総理の方から積極的に話をされて、企画立案監督などと一緒でないと監督が働かないという理屈もあると述べたと言われております。まあ、御本人がおっしゃったことですから、御本人の言うことが正しいとは思うんですが。  私は、これを大蔵省に残した理由というのがよくわからないんですが、その辺、どうぞ。
  84. 三塚博

    ○三塚国務大臣 段々のお話でありますけれども、基本は与党三党金融改革提言、ここに原点があるわけであります。その原点のスタート台は、まさに住専を中心とする金融問題に対する反省の中から、預金者保護金融システムの安定ということに尽きようかと思います。  ここにそのときの最終的な、「改革について」とあるわけでございますが、その中で大所高所から勘案した結果、銀行局及び証券局は廃止し金融局として統合する、その前段に金融監督庁があります。政党政治でございますから、与党が一年近い期間にわたり精査をし立案をいたしたものは受けとめてまいる、こういうことであります。
  85. 池田元久

    池田(元)委員 経過を理由にしておっしゃることは、それはそれなりにあるでしょうが、私は、この機能を考えて、企画立案大蔵省に残した理由がいまだ不明確ですね。なぜ金融機能の一部である企画立案を残すのか。企画立案は、実際は金融機関の経営把握など日常の監督業務と密接に結びついているわけです。検査監督で集まる情報を企画立案に生かすことは必要なのです。分けた場合には二元的な行政になる。効率的な運営、そして専門性を高めるためにも、企画立案は新しい機関に移すべきだと私は思います。  では次に、今回、新監督庁の法案関係整備法、よく読んで、全部読んだわけではないのですが、検討してみましたら、いろいろ大蔵省の関与のケースが多い。それをちょっと取り上げてみたいと思います。  まず、資料要求権です。金融監督庁に対する大蔵省の関与はどうなっているかですが、大蔵大臣は、制度企画立案をするため必要としたときは、銀行、保険会社、証券会社などに対して資料の提出その他の協力を求めることができるというふうになっております。大蔵大臣はそればかりではなくというか、その前に金融監督庁の長官に対して必要な資料の提出を求めることができるということになっているわけでありまして、大蔵大臣金融監督庁の長官を差しおいて民間金融機関に直接資料要求をする権限は要らないはずですが、いかがでしょうか。
  86. 武藤敏郎

    武藤政府委員 委員御指摘のとおり、大蔵大臣は、まず第一次的には、長官に対しまして企画立案に必要なさまざまな資料の提出を求めることができる。その補完的手段といたしまして、特に必要な場合に限り、その必要の限度において資料の提出の協力を求めることができるという規定がございます。監督庁は検査監督の観点から資料を持っているわけでございますけれども、企画立案のために十分だという保証はございません。そこで、その限りにおいて直接協力を求めることができる、これは罰則の規定がない任意の協力でございますので、そういう補完的手段を限定的に認めるというふうにされておるわけでございます。
  87. 池田元久

    池田(元)委員 苦しい答弁でありまして、情報を提出させることで金融機関に対する実質的な支配力を持とう、そういうねらいがあるのだというほかの省庁の方の話の方がむしろ説得力があると私は思います。  次は、いろいろ大蔵大臣との協議というのが入っております。法律別に分けると大変なものですね、二十近くあります。長官は、銀行等の業務停止、免許の取り消しなどを行うことが信用秩序維持等に重大な影響を与えるおそれがあると認めるときはあらかじめ大蔵大臣と協議する。預金保険法の六十七条の二にも、金融機関破綻の際に預金保険機構の資金援助で機構の財務状況が著しく悪化するおそれがある場合、同様に長官は大蔵大臣との事前協議義務がある。また、日銀法の三十八条では、大蔵大臣は長官との協議に基づいて、日銀に対して金融機関への資金の貸し付け、つまり日銀特融などを要請することができると。  ここで言う、信用秩序維持等に重大な影響を与えるおそれがある、あるいは別のところでは、重大な支障を生じるおそれがある場合とは、何でしょうか。
  88. 武藤敏郎

    武藤政府委員 信用秩序の維持という中にはいろいろなものがございますけれども、金融の世界では、一つ金融機関破綻が一定の地域あるいは日本全体の信用不安になる可能性がある、おそれがあるわけでございます。そういう場合には、監督庁の長官が持っております監督権のみで十分に対応できるかどうかという問題がございます。企画立案権が大蔵大臣にありますことから、監督庁長官がみずから必要と判断した場合に限り、大蔵大臣に、信用秩序維持のために企画立案機能を使っていただけないか、あるいはこういうことができないかという協議をするというものでございまして、これはあくまでも長官の判断に基づくものでございます。
  89. 池田元久

    池田(元)委員 現在金融破綻が続いているわけですね。個別の破綻処理は金融監督庁が担当するというふうに法案の説明などではしているはずですが、この信用秩序に重大な影響を与えない破綻処理は余りないわけでしょう。実質的に大蔵大臣主導で破綻処理をすると言っていいと私は思います。  次に、法案を調べると、金融監督庁監督権は移るはずだと思ったのですが、違うのですね。大蔵省設置法では、証券業協会、証券投資信託協会、証券投資顧問業協会などと、さらに証券取引所、金融先物取引所の五分類については大蔵省監督権限が残っております。これはどうしてですか。
  90. 武藤敏郎

    武藤政府委員 監督庁は民間金融機関検査監督を行う、大蔵大臣がその金融制度企画立案を行うということになりますと、さまざまなものを制度企画立案に該当するのか監督に当たるのかというふうに区分して考える必要があるわけでございます。  御指摘の証券取引所、証券業協会等につきましては、証取法に基づきまして市場の自主ルールの設定等企画立案に関する部分がございます。そういう意味でこれを共管にしたということでございます。
  91. 池田元久

    池田(元)委員 業界の自主規制機関なのですね。そこではルールがあるわけですよ。そこでやらせればいいわけでしょう。そんな過剰な介入をする必要はありません。この業界の団体も、例えば全国投資顧問業協会連合会、こういった未成立なところまで共同で監督するというふうになっているわけですね。それからまたさらに、業界団体でも、より小さなといいますか、範囲の狭いといいますか、そこは大蔵省監督しないことになっています。しかし、証券業協会とか証券取引所の監督権は手放さない、こういうふうになっております。  また、預金保険機構についても、業務を三分類して監督庁と大蔵省が分担するということになっておりますが、これは少なくとも大蔵省監督庁の共管とすべきであると私は思います。  大蔵省には監督権限が残るわけです。ところが、監督庁には「金融機関の合併等の適格性の認定等を行うこと。」という個別の権限があるだけです。これは著しくバランスを欠くと私は思いますが、いかがでしょうか。
  92. 武藤敏郎

    武藤政府委員 預金保険制度と申しますのは、御承知のとおり、信用秩序維持のための基本的な枠組みでございます。したがいまして、個別の金融機関検査監督というものと性格が相当異なるものでございます。ただ、預金保険機構の中にも、個別の監督に関連するもの、すなわち特別資金援助の必要性の認定といったようなことは監督庁長官が行う、適格性の認定は監督庁長官が行う。ただし特別の資金援助、これは先ほど特別というのは申し上げましたが、先ほどのは一般的な適格性の認定、今これから申し上げるのは、特別の資金援助、すなわちペイオフコストを超えるような場合は、これはまさに臨時的に行われます企画立案機能と関連したものでございますから、これは共同して行う。  いろいろほかにもございますけれども、このように一つ一つを見て、企画立案に属するものか監督に属するものかというものを割り振っておるということでございます。
  93. 池田元久

    池田(元)委員 一つ一つを見まして私は言っているわけです。三分類して、監督庁の権限に属すること、大蔵省権限に属すること、共管に属すること、三つあるわけです。そうであれば、どうしてイーブンじゃないのですか。監督庁が当然共管すべきであると私は思います。全く論理的にも僕は破綻していると思いますね。どうしてそんなことになるか私は理解できない。  時間がありませんので、次に、共同省令の問題に進めたいと思います。  企画立案監督業務というのは実際は分けにくいのですよ、言葉で我々は言っておりますが。準備室はその切り分けに大変苦労したと苦労話も聞いております。私は、監督に関する省令は当然監督庁、つまり総理府令として定めるのが筋だと思います。それがすべて大蔵省との共同の省令になっているのですね。  こういった法令の話をするとちょっとわかりにくいと思うのですが、ちょっと調べてみますと、支店、営業所などの設置、変更、廃止についての認可も共同省令で定めるところにより判断するということになっています。支店の配置、変更、これも一々大蔵省の関与を許すわけですよ。どうですか、これ。また、休日、営業時間についても監督庁だけの権限じゃないのですよ。総理府令だけでなく大蔵省令で定める、共同省令で定めると。どうですか、これ。  またさらに、これは当然検査監督業務の範囲内だと思うのですが、業務報告書、中間業務報告書の記載事項や提出の期日まで大蔵省との共同省令で定める。法案作成作業には政治家が関与していないのですね。幾ら何でもこれはやり過ぎですね。いかがでしょうか。
  94. 畠中誠二郎

    ○畠中政府委員 お答え申し上げます。  共同省令に関するお尋ねでございますが、省令事項につきましては、制度企画立案の一環としての側面と監督の実施上の要領を規定するといった側面の双方があるということから、総理府令、大蔵省令の共同省令とすることにしたものでございます。
  95. 池田元久

    池田(元)委員 全くわからないですね。これはもう本当に、政治家の皆さんにここの部分は特にしっかりと考えていただきたいと思います。  それから、裁量行政の不透明さを排して、客観的な自己資本比率の基準に基づいて銀行への改善命令などを発動する早期是正措置、これは新しく導入するわけですね。これは監督庁の行政の基本任務になるはずです。ところが、この自己資本比率の基準も大蔵大臣一緒に定める、大蔵大臣と並列的に定めるということになっております。  本当に、ちょっと子細に検討しますと、大蔵省の関与が浮き彫りになってきます。先ほどから言っておりますように、大蔵省に一部監督権限が残ったこと、また民間金融機関金融監督庁長官を差しおいて直接資料要求をできること、さらには支店や営業時間、業務報告書の記載事項、提出期日まで大蔵省がくちばしを挟めることになっているわけです。これでは二元行政になるおそれが強い。企画立案というものを、先ほどから議論していることをそんなに明確に分けることはできないのです。それを盾に、口実に拡大解釈もされているのではないかと思うのですが、大蔵省権限を手放そうとしていない、手放そうとしなかったということがはっきり言えるのではないかと思います。  昨年暮れに与党三党合意をまとめた皆さんにこの部分は特に聞いてみたい。どうですか、支店や営業時間まで大蔵省の関与ができるというこの部分について、これは二元行政になるのじゃないですか。梶山官房長官にお尋ねしたいと思います。
  96. 畠中誠二郎

    ○畠中政府委員 省令につきましては、確かに委員御指摘のとおり、企画立案の一環としての側面が強いものと、監督の実務上の要領を定める面が強いものがあろうかと存じております。  しかしながら、例えば銀行法の場合、銀行業務範囲を定める省令というものがございます。これは銀行の付随業務として取得、譲渡するCDとかCP等の金銭債権の範囲を定めるものでございますが、これはどちらかといえば企画立案的側面が強いものでございます。一方、許認可の申請手続とか報告の様式等を規定する省令がございます。これは御指摘のとおり監督の実施上の要領を定める側面が強いものでございます。  それではなぜ共同省令にしたかということでございますが、先ほど申し上げましたように、企画立案の要素が強い省令でございましても、監督対象を定めるという面では監督の実施的な側面もございます。また、許認可の手続を定めるもの、報告の様式を定めるものにつきましても、銀行法全体の趣旨に適しているかどうかという面とか、一種の許認可の基準的な面もございますので、そういう面から、共通の、共同の要素があるということで共同省令ということにしたものでございます。
  97. 池田元久

    池田(元)委員 本当に過剰な関与の余地を残していると私は思います。  企画立案といいましても、金融制度の調査、企画立案、それから規則制定権、大まかに分けるとそんなふうに分かれます。規則制定権は、外国ではいわゆる制度企画と分けて監督機関が持っている場合もあるわけです。特に、今度の支店の配置とか営業時間を決めるとか、休日とか、そんなことは監督庁の仕事ですよ。ましてレポートの紙の様式まで大蔵省が関与する余地はないと私は思います。  次に、大蔵省の関与としては五番目ですが、地方の検査体制。三党合意では、地方の検査監督は既存の支分部局体制を活用する。法案では、金融監督庁は地方の金融機関監督にかかわる事務を財務局か財務支局に委任する、委任事務については長官は財務局長、支局長を指揮監督するというふうになっております。しかし、数からいうとこちらの方が多いのですね。任命権者は大蔵大臣です。これで金融監督庁の独立性が保てると思いますか。お尋ねしたいと思います。
  98. 畠中誠二郎

    ○畠中政府委員 委員御指摘のとおり、確かに財務局長、財務局職員の任命権者は大蔵大臣でございますが、金融機関検査監督という事務につきましては、金融監督庁長官から財務局長に委任し、その委任された範囲内では金融監督庁長官が直接に財務局長、支局長を指揮監督するということでございますので、その面では大蔵省から独立した仕事をやっておるということでございます。
  99. 池田元久

    池田(元)委員 以上、大蔵省の関与についてちょっと橋本総理大臣にお伺いしたいと思います。  結局、与党合意があって、立法作業は役所にゆだねたわけですね。その結果、法案としては大蔵省の関与がかなり前面に出てきた。まず民間金融機関に対する資料要求権、さらに大蔵大臣との協議、大蔵省には監督権限を一部残す、四番目は共同省令で、はしの上げ下げ、細かいことまで大蔵省がくちばしを入れるようになった、さらに地方の検査体制も、財務局や支局が独立させないで行う。  こういったことになると、あのときのそもそもの出発点、大蔵省改革、できるだけそこは裁然と分ける、しかも政治主導でやる、この辺いかがでしょうか。感想をお聞きしたいと思います。
  100. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今議員が御指摘を続けられました事項の中で、共同省令の中について私は十分熟知をしておりませんでしたので、この点は後で私自身が調べてみたいと思います。  ただ、その上で、最後に問題として指摘をされました財務局の組織を使うという点、これは私は、確かに日本でこういう例はございませんけれども、これから先我々が考えていく行政改革の中に、当然ながら考えられていくべき一つの姿だと思っております。  例えば、先日ブレア内閣が組閣をされ、大蔵大臣とともに閣内相としての大蔵大臣がございました。この場合、行政機構としての大蔵省一つでありますが、その二人目の閣内相という大蔵大臣、これは予算編成のみをほとんど主管し、その部分は二重構造で、二人の大蔵大臣一つの事務当局を指揮いたします。あるいは、よく例に挙げられますニュージーランドの場合、外務貿易省、外務大臣と貿易を主管する閣僚が複数で一つの事務組織を指揮しております。  私は、これから先考えていくべき一つ我が国行政あり方としても、こうしたものは考えていく余地のある手法ではないかと考えておりました。そして、その意味において、私はこのやり方をここで試してみたい、そして複数の指揮に応じて、一つの事務局がそれぞれ異なった性格で行動し得るかどうかを証明してみたい、そのような思いを持っております。
  101. 池田元久

    池田(元)委員 私も省庁の中にもおりましたけれども、一般的な事務では、それは総理のおっしゃることは一つの試みだと思いますけれども、事は金融検査ですからね、ちょっと違うと私は思うのです。  ちょっと時間もありませんので、話を進めたいと思います。保利政務次官、御苦労さまです。  今回の大蔵改革金融行政改革問題は、何といってもおととし末の住専の処理がきっかけだったと思うのです。不透明な金融行政が浮き彫りになりました。九〇年の銀行局長通達、それから九三年二月の大蔵と農水の両局長の覚書、密室の協議で処理が先送りになり、ついに一般会計から六千八百五十億円を投入することになった。  ここで、住専に五兆五千億円も貸し込んだ農協系の金融機関あり方をちょっと問題にしてみたいと思います。農協系金融機関のディスクロージャーというのは余り十分ではないと専ら言われておりますが、その検査機関は、農林中金は大蔵省、信連は農林省の地方農政局だと思います、これは新しい体制でも変わらないと思います。それを前提にお話をしたいと思うのですが、住専に三兆四千億円以上も貸し込んだ都道府県の信連に対する検査というのは厳密、適正に行われているのでしょうか。
  102. 熊澤英昭

    ○熊澤政府委員 お答え申し上げます。  信連の検査でございますけれども、御承知のとおり、農協系統……(池田(元)委員「簡潔に」と呼ぶ)はい。信用事業を含めて全般的な総合事業を行っておりますので、その一環として信用事業についても検査を行っております。信連につきましては、従来、先生御指摘のとおり、地方農政局におきまして約二年に一度検査を行っておりますが、最近の金融情勢の変化にかんがみまして、平成八年度からは毎年検査を行うということで検査の充実を図っているところでございます。
  103. 池田元久

    池田(元)委員 読売新聞が去年の二月、四十七信連の幹部や融資担当者に調査をした結果があります。八〇年末に大蔵と農水の担当局長の通達というものがあるわけですね。これは住専を金融機関と認めて融資の道を開いた、同時に、住専に融資する資金の使途は住宅や住宅用土地の取得目的に限るという、そういう通達でした。ところが、実際は四十七信連のうち四十五信連がこの使途を確認してなかったわけです。  また、信連には大体二年に一度のペースで、今はもっとだとおっしゃるのですが、農政局の立入調査が行われておりますが、信連の担当者の多くは、検査は保管中の借用証書が有効かどうかなどを調べるだけで、通達に関する質問はなかった、四十七のうち三十九信連が住専への融資の使途を確認する農政局、農林省の指導を受けたことはなかったと答えているわけです。これで農林省地方農政局の検査は厳正に行われていると言えるのでしょうか。
  104. 熊澤英昭

    ○熊澤政府委員 お答え申し上げます。  通達に関しての具体的な設問ということは確認できておりませんが、少なくとも私どもの信連に対する検査におきましては、具体的な貯金の適正な受け入れと処理、貸し付けの適正な審査あるいはそれの実行、さらには有価証券等の余裕金の運用、自己資本等財務基盤の充実、そういった点につきまして逐一確認をいたしまして、抽出作業による検査もございますけれども、そういった点で確認を行いまして、具体的な改善点を指摘するということで行っているところでございます。
  105. 池田元久

    池田(元)委員 去年の十二月、与党三党の幹事長、政策責任者がヒアリングを行った際、農水省は、今後は大蔵が検査監督を行っても構わないと言ったというふうにされておりますが、この真実を簡単に答えてください。
  106. 熊澤英昭

    ○熊澤政府委員 お答え申し上げます。  先生先ほど御指摘のとおり、従来、大蔵省とも協議の上、農林中金につきましては大蔵省、信連につきましては農林水産省が検査を行うということで実態として行ってまいりました。今後の検査の具体的なあり方につきましては、金融監督庁が発足して後に具体的なやり方について御相談し、緊密な連携のもとに実施するということになると思います。
  107. 池田元久

    池田(元)委員 私は、構わないと言った方が正しいとは思うのですが、農水省地方農政局が信連などを検査する理由というのは何でしょうか。端的にお答えいただきたいと思います。
  108. 熊澤英昭

    ○熊澤政府委員 お答え申し上げます。  農協系統の事業は、信用事業のほかに、農産物の販売、あるいは生産資材の購買、営農指導、あるいは組合員の福利厚生、そういったことを総合的に行っている事業体でございまして、そういう意味では、信用事業がその総合的な事業の中の重要な基幹的な柱であるということで、系統全般について、信用事業も含んで検査を行うというのが私どもの考え方でございます。
  109. 池田元久

    池田(元)委員 そういう立派な目的があることは私も認めます。それは、そういう目的検査をやればいいのですよ。それから、中央会の監査というのもあるわけですね。必ずしも検査一つ機関がやらなくても、性格の違う検査はあっていいわけですね。金融検査はちょっと性格が違うのですね。金融システムの安定化を図るためには、金融というのは相互の信用状況が連鎖的に動くというか、そういう仕組みです、どうしても金融機関相互の融資状況などを全体的に、一元的に把握する必要があるのです。ですから、別に農水省がそういう目的検査、監査をすることはいいと思います。しかし、金融検査はやはり全体に関連する話ですから、一元的に把握する必要があるということを強調したいと思います。  なぜそれほどまでに金融検査にこだわるのか、私はわからない。住専の反省もないのではないでしょうか。せっかくですから、保利政務次官、お願いします。
  110. 保利耕輔

    ○保利政府委員 確かに検査監督は大変難しい問題でありますし、こちらでも住専の問題をめぐっていろいろ論議が行われましたときに、随分とこの問題は考えさせられました。  しかし、この検査あり方については、今局長から御答弁申し上げましたとおり、農政上の各種の要請がある、その中の一つとして組合員の利益擁護というのがありますから、それは金融とも密接に絡んでくる。しかし、金融監督庁金融の専門家としてやはり見ていただく方が将来のためにもいいのではないか。当面の農政上の要請とそれから金融検査上の要請と両方合わせて、当面は共管でという三党の取り決めもございまして、このようになったものと心得ております。
  111. 池田元久

    池田(元)委員 当面はという答弁は了といたします。  先ほど言ったように、金融というのはそういう独自なシステムがありますから、相互連関的ですから、一元的に把握する必要がある。私は、業務の専門性、効率性、そして何より、今もおっしゃいましたが、農業者などの預金者保護のためには、労金やノンバンク、リース会社、これは労働省、通産省所管ですが、それらを含めて県の範囲を超えるものは新機関で一元的に検査する必要があると思います。  橋本総理大臣も去年十一月二十六日、マニラでの内政懇談会で、検査の一元化を示唆されたと聞いておりますが、お考えをお伺いしたいと思います。
  112. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今回、既にお読みをいただいておりますような内容になっておるわけでありますが、先ほども他の議員にお答えを申し上げましたように、この金融監督庁は、従来と異なりまして、まさに金融検査監督を専管する組織であります。そして、従来大蔵省が報告をそれぞれの省庁を経由して受理しておったのとは違い、全体を把握する上でその報告が不十分であれば、当然ながら調査をさらに行うといったことで状況を変えていく、私はそう信じているということを先ほども申し上げました。
  113. 池田元久

    池田(元)委員 最後に、一点だけ申し上げたいと思います。  私は、今度の大蔵改革については、財政機能金融機能の分離が最も重要であると思います。担当部門としては、財政は大蔵省金融行政は新しい機関、通貨管理は日銀という責任体制をとるのがいいのではないかと私は思っております。それから、金融検査の一元化は、今申し上げたとおり、当然これは必要です。  しかし、橋本行革の第一弾とされております大蔵省改革で、財政と金融の分離が達成されていない、不徹底であると言わざるを得ません。また、住専処理の反省がどこへやら、信連を含めて検査体制を一元化できない、現状のまま、これは大変おかしいですね。行革の第一弾と言うにしては、中身はどうなのかと私は思います。  私は、二十一世紀を目前にした今、霞が関の再生に向けて、またバブルの轍を踏まないように財政と金融の分離を完全に行う、そして検査を一元化するという対案を私たち民主党は今考えております。  橋本総理大臣、こういった私たちの考えに真剣に対応して、この今提案された法案を前進させるためのものとして、ぜひ御理解、賛同をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  114. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 政府政府として、この時点における最善の案と信ずるものを国会に提出し、御審議をいただいております。これは建前と本音とが、ある意味では、ないまぜになっていると言えるのかもしれません。  しかし、同時に、私は先ほど議員が提起をされました中で、省令、省令ということで御論議をいただきましたけれども、実は省令というのは法律が通ってからつくるわけでありますから、事務当局の諸君がそうしたことを考えているのだろう、よき御注意をいただいた。本当の省令をつくる時点で、御指摘をいただきましたうちの幾つかは我々としても不本意なものがありますので、そうした御意見をいただけたことは非常に幸いだと思っております。ありがとうございました。
  115. 池田元久

    池田(元)委員 どうもありがとうございました。
  116. 綿貫民輔

    綿貫委員長 次に、松本善明君。
  117. 松本善明

    松本(善)委員 金融監督庁の案件は、そうなっておりますが、きょうは行革特としては今国会初めての審議で、いわば総論中の総論というような程度にとどまるのかと思いますが、日米首脳会談の直後でもありますし、またこれは政治の根本にもかかわり、行政改革の基本方向にもかかわってきます。この問題から伺いたいと思います。  今回の日米首脳会談について、アメリカ日本問題専門家として著名なチャーマーズ・ジョンソン氏が、まるで自分の功績を報告に来た植民地の領主と宗主国の主君ですというようにこれを評しました。少なくも、沖縄問題を初め、日本国民の声をクリントン大統領に堂々と伝えるというようなものでなかったことは、報道から見れば、どこから見てもはっきりしているのではないかと思います。  そうした評価との関係で見逃すことのできないあなたのアメリカでの発言がありますので、質問をしたいと思います。  総理は、四月二十五日、ナショナルプレスクラブで演説をして、ガイドライン見直しに言及し、日米安保共同宣言を具体化するものとして、例えば不測の事態が生じた、或いは生じ得る場合に、具体的に日米間でいかなる対処が必要かを記述する「日米防衛協力のための指針」を現在米国と協力しつつ、今秋を目処に見直す作業を進めています。と述べられました。  不測の事態に備える日米の必要な対処が、ガイドラインの見直しについての総理の認識なのかどうかということをまず伺いたいと思います。
  118. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今そこまでせっかく御引用いただきましたのならば、そのすぐ後に、この見直しについては、国内的にも、また国際的にも高い透明性をもって議論していきたいと思います。と続いていることを私は確認をさせていただきたいと思います。
  119. 松本善明

    松本(善)委員 それは私も承知をしています。  しかし、基本的な認識が、これから議論は透明性を持ってやっていく、それはそれで結構です。それはそうですが、問題は、ナショナルプレスクラブで、ガイドラインの見直しの前提条件を不測の事態が発生あるいは発生するかもしれない場合と述べたのかということなんです。  日本政府日本国内では、問題となる日本周辺地域において発生し得る事態という場合であっても日本の平和と安全に重要な影響を与える場合と、前提を置いて説明してきたものであります。しかし、総理のナショナルプレスクラブでの演説は、日本の平和と安全に重要な影響を与える場合という前提すら取り払った説明になっている。  これでは、演説を聞いた二百人の聴衆は、見直されるガイドラインは、日本の平和と安全への影響と関係なく米軍の戦争に自衛隊が協力することを規定するものだと受け取ったと言わざるを得ないと思います。推敲に推敲を重ねたはずの演説で、なぜ最も問題となる部分を不測の事態という一般的な想定でガイドラインを説明したのか、そこがわからないのです。  そこの点を総理にはっきりお答えをいただきたい、こういうことであります。
  120. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 どう申し上げるべきなのか、あなたのおっしゃろうとすることがよくわからない部分があるんですが、私の申しましたことを、それではその少し前から続けてみましょう。   このような日米関係の基礎が、日米安保体制です。これは、冷戦期を通じて地域の安定と繁栄を支えてきました。冷戦後も朝鮮半島をはじめとする多くの不安定要素がある中で、その価値と役割は減ずるどころか、むしろ高まっていると考えます。日米安保の歴史を振り返ってみると、四十六年前、吉田茂総理が自由主義陣営との単独講和の道を選ぶことによってその礎を築き、御党はそのころ反対でおられたことを記憶をいたしております。  二十五年前、佐藤栄作総理が沖縄返還を実現しその体制を盤石にしました。そして昨年四月、私は、クリントン大統領との間で「日米安保共同宣言」を発表し、その意義を再確認するとともに、今委員が引用されたところが続きます。  そして、私が次に申しておりますことは、   ここで、沖縄の問題に触れなければなりません。沖縄は先の大戦で激しい陸戦の恐怖を経験しました。そして、十万人近くの住民の方々が犠牲となりました。その沖縄は、本土復帰が大幅に遅れ、また、日本国土面積全体のわずか〇・六%しかないところに在日米軍施設・区域の約七十五%が集中しており、住民の生活環境や意識に少なからぬ影響を及ぼしてきました。  それ故、沖縄県民の精神的、物理的負担をと、全体はこういう流れで流れておりますものの、一句だけを取り上げて御論議をいただくと、議員のような疑念も生ずるものなのかと今改めて感じております。  そして、申し添えるべきは、国内において正確な認識を踏まえて議論をしていただくことがこの指針の見直しについて必要であり、また、国民の御理解を得ながら政府間の作業を進めていくことが極めて重要であると考えておりますし、こうした観点から、今月中旬以降のしかるべき時点に、そのときまでの進捗状況及び検討内容を公表したいと考えておりますし、これも申し添えておることであります。
  121. 松本善明

    松本(善)委員 総理、流れということで、この私の問いにお答えになっていないんですよ。私が問題にしておりますのは、米軍に自衛隊が協力をするということについて、やはり国内では憲法との関係がありますから、いろいろな前提条件をつけて話しておられるんですよ。ところがアメリカでは前提条件をつけずに話す、これは一体どういうことを意味しているのかということを聞きたいわけです。  アメリカは、自衛隊の米軍協力に当たって、日本の平和と安全に影響を与える場合など、前提条件はつけられたくないと思います。世論調査でもいろいろそういうのが出ています。私は、総理の発言は結果的にこのアメリカの本音に沿ったものになったんじゃないか。  私が聞きたいのは、ナショナルプレスクラブでこう言ったのならば、クリントン大統領に対しても同じ発言をしていたのかどうか。また、ナショナルプレスクラブは、これまでも日本政府の方針や政策をアメリカ国民に説明する重要な舞台とされてきたんですね。そこで不測の事態が発生した場合に対する対応なんだというふうに言えば、それが日本政府の方針だというふうにアメリカの多くの人たちに受け取られる、当然だと思うんですね。これでいいのかどうかということを総理に伺っているんですよ。
  122. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変恐縮でありますが、現行憲法の枠内でということは、今までも私は繰り返し国会でも申し上げてまいりました。当然ながら、アメリカ側はその前提を承知した上で、アメリカ側としての協議事項を申し入れております。そして、その中身を五月の中旬以降公表すると言っております。その中に、あなたの御疑念を持たれるようなものはありません。
  123. 松本善明

    松本(善)委員 憲法上の問題があることは、国内ではいつも言われています。それは当然のことです。ところが、やはりアメリカへ行きますと、わかっているからということで言わないということでいいのだろうか。総理は、偶発的事件が発生するかもしれない場合まで含めたと。これはやはり訂正、何か善処をする、日本政府としてする必要があるんじゃないだろうか。私は率直に、このままだとアメリカに誤解を与えるんではないかということを心配いたしますので、それで伺いました。
  124. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 議員の御忠告は、議員御自身がそのように誤解をされるのであれば、アメリカ人もするであろうということであろうと存じます。しかし、五月中旬にガイドラインの見直し作業の中間公表をいたしました場合に、その御疑念は解けると存じます。
  125. 松本善明

    松本(善)委員 やはり行政改革そのものについても、アメリカのいろいろな要望関係してくる、それを総理の姿勢との関係で伺ったわけであります。私は、これはこれで終わりにしますが……(橋本内閣総理大臣「いや、どうぞお続けください」と呼ぶ)きょうはほかの問題もありますから。  結局、指針見直しの名のもとに、日本が攻撃されていない場合でもアメリカ日本が共同して軍事行動をとるという総理の本音が出たのではないだろうか。私は、これは憲法と違うんだということを指摘しておきますし、また、これと同じようにアメリカ経済要求に応じていれば、日本の財政破綻も再建の方向に持っていくことができない、行革も日本にとって必要な方向がゆがむということを指摘をした上で、金融不祥事についてお聞きをしようと思います。  最近の金融不祥事は、もうとどまるところを知らないと言っても決して言い過ぎではないと思います。二信組事件に始まり、住専、大和銀行、野村証券、日債銀、日産生命、一体大蔵省は何をやっていたんだ、事態を隠すことだけやっていたのではないかと言いたくなるぐらいであります。  このわずかの連休中の間にも、野村証券と同じような問題が、大和、山一、日興も同じように総会屋グループの親族企業に一任勘定で利益を供与していた疑いがあるとか、第一勧銀が無価値の担保で三十億をこの総会屋企業に融資をしていて回収不能のおそれがあるとか、北海道東北開発公庫の貸付残高の一五%に当たる二千三百億が不良債権化しているとか、新聞を読むのが本当に嫌になるぐらいにこの金融不祥事が相次いでいるわけです。学者の中では、理論的には金融恐慌だというふうに言ってもいいという人まであるという状況であります。  総理に総括的に伺いたいのでありますが、この金融監督庁ができればこういう不祥事はなくなるのですか。総理の認識としてはどういうふうにお考えになっていますか。
  126. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、金融監督庁をつくったから悪いことをする人間がゼロになるとは思いません。しかし、今のように発見がおくれたり、あるいは隠ぺい工作がされるのを気づかずにいたりということは、少なくとも相当程度防げるだけの働きをしてくれることを信じております。
  127. 松本善明

    松本(善)委員 総理の御答弁でも、これですっかり大丈夫だということではなく、相当程度と言われるのは、やはりこれだけでは十分ではないということの裏返しの御発言ではないかというふうに私は受け取れました。  少なくも、我が党が本会議で指摘をいたしましたように、公取型の三条委員会にするとか、監督庁の監督業務についての大蔵省の関与の問題とか、それから人事交流を遮断する問題とか、やはり監督をするならばもっと徹底した監督をするという問題があるはずです。私は、きょうは総論の程度の時間しかありませんので、さらに詰めてお聞きしようとも思いませんが、その点を指摘をした上で、ちょっと具体的な問題に入りたいと思います。  一番新しい日産生命についてでありますけれども、同社の債務超過は、総資産約二兆円の一割に匹敵する二千億円に上ると言われております。これは一九九五年九月の大蔵省の立入調査で明らかになっていたはずであります。米本社長の言うことによりますと、四年ぐらい前からそういう状態だったということであります。経営者、これを放置してきた大蔵省のモラルの荒廃は信じがたいほどであります。金融機関の公共性の認識など、つめの先ほども持ち合わせていないのではないかと思われるほどであります。  大蔵大臣大蔵省はなぜこれを放置してくるということになったのでしょうか。
  128. 三塚博

    ○三塚国務大臣 詳しくは部長から答弁させますが、放置したわけではございません。  バブル崩壊後、特に各金融機関についてチェックをし報告を求め、また検査をし、体制をとってきておる中でございましたが、さらに、日産生命も自力回復を目指して努力をしてきたことも事実でございます。このようなことでございますから御理解をください。必要があれば政府委員が申し上げます。
  129. 松本善明

    松本(善)委員 放置していたわけではないと言うのならば、知っていたのかということになるのですよ。知っていて、どうしてやらなかったのかということになります。  二十五日の午後の記者会見では、米本社長は債務超過をなぜ隠したかという問いに答えられませんでした。リアルにこれが報道されております。資産上の欠陥がある事実をオフバランスとしてほとんど公表しないで、契約者にも配当を出し続けた、この法律上の責任は一体どうなるのか。大蔵省は放置していたわけではないと言うなら、知っていたのか、知っていてなぜそれを何らかの処置をとらなかったのか。それらの点について大蔵大臣がやはりお答えになるべきだと思います。お聞きします。答えられなければやむを得ませんけれども。
  130. 福田誠

    福田(誠)政府委員 ただいま大臣から御答弁がございましたが、私どもは、平成七年九月の検査等による実態把握を通じまして、含み益の減少など資産内容が急激に悪化したことを確認いたしました。当局といたしましては、その検査以前の平成七年五月には、新規契約費の削減とか、安定的収益の確保等を柱とした収支改善計画を当社に作成させ、実施させていたところでございますし、さらに、検査結果を踏まえまして一層強く財務の改善を指導したところでございます。  その結果、平成七年度の決算では単年度収支において黒字を計上するなど、経営改善の効果も認められたところでございます。また、八年度からは一層のリストラによる事業費の圧縮、グループ企業支援による基金の増強、営業力の強化等を柱とする経営改善計画を策定させまして、その実行を求めたわけでございますが、この八年度末におきまして、市場金利の低下とさらなる株価の低下等の影響を吸収できずに、事業の継続が困難な状況に立ち至ったものでございます。  平成七年九月の時点におきましては残存する含み資産もあり、さらに経営改善計画も策定されておりましたので、経営努力による再建は可能と考えておったものでございます。
  131. 松本善明

    松本(善)委員 まだ詰めなければならぬ点がありますけれども、大蔵大臣に伺いたいのですが、大蔵大臣は、これは最初で最後の生保破綻だということを言ったということが報道されています。この発言は、体力の弱っている生保はほかにもあり、破綻は一社で終わるとは考えにくいという専門家の厳しい批判も受けております。  含み損益公表対象外の外国有価証券の昨年三月末の保有額が、大手中堅の生保十七社で七兆千七百六十二億円、この大半に含み損があると見られるというのが業界筋の見方であります。さらに、国内も含めた含み損益公表対象外有価証券の保有額は、約十六兆四千百六十四億円に上ると言われております。  大蔵大臣が最初で最後の生保破綻だと言ったのは、何か根拠があるのですか。
  132. 三塚博

    ○三塚国務大臣 報告はそういうことであります。  それで、ただいま保険部長言われましたとおり、日産生命にいたしましても、直前の検査においてそういうことであったわけでありますから、今後、残りの生保は既にリストラを進行しておりますし、不良資産の償却に最大の努力をいたしておる、そういう視点の基本的報告を受けて、そう申し上げました。
  133. 松本善明

    松本(善)委員 総理は戻ってこられないのですか。──ちょっとお待ちをしておりました。  実は今、大蔵大臣とやりとりをしておったのですが、要するに、日産生命の事態が非常にひどい事態だということと、大蔵大臣が最初で最後の生保破綻だと言ったけれども根拠があるのかということをお聞きしたら、それは、その報告がそうだったということであります。  私は、そこで総理にお聞きしたいのですが、まだ細かく詰める点がありますけれども、こういう事態から保険契約者だとか一般国民を守るには、こうしたことをやった者に対する厳しい法律上の責任を問うことが必要だと思いますし、また徹底した情報公開が必要だと思いますけれども、総理大臣はその点はどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  134. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 細かい点、事務方から補足をさせますけれども、日産生命に対しましては、大蔵省として従来から収支改善計画の策定を行わせるなど、できるだけの指導を行ってきたと聞いております。また、日産生命においても自主再建の努力を懸命に続けてきたが、八年度の株式投資の失敗もあり一先日、事業継続を断念したと聞いております。  業務及び財産の状況に関するディスクロージャーについては、従前よりその充実に努めてきたところでありますが、さらにその充実に努力させたいと思います。     〔委員長退席、野呂田委員長代理着席〕
  135. 松本善明

    松本(善)委員 総理、私のお聞きしたのは、こういうことをやった者に対して厳しい法律上の責任を問うことが必要ではないか、それから、情報公開が必要と思うが、それについてはどうお考えになるかということをお聞きをしたのであります。  それとあわせて私は、同じ関係がありますので、事務当局が答えるということも否定はしませんが、総理に伺っておきたいのは、それと同じような性質の問題が、野村証券の総会屋への利益提供事件で、VIP口座に中央省庁の現職官僚とOBが二百人以上含まれていたということが大きく報道をされています。当時の同社役員は、官僚に損はさせられない、転換社債などで優先的に割り当てたと言っているわけです。  こういうことも含めて、さっきの日産生命の問題も含めまして、真相を徹底的に明らかにするということが金融破綻を防ぐ上でもやはり必要なのじゃないか。これは細かい問題ではない、内閣としての姿勢の問題です。だから総理大臣に伺っているわけですが、総理にその点で重ねてお聞きしたいのです。
  136. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず、そのVIP口座というものが報道されておりますことは承知しておりますが、関係当局においてはこれを真摯に受けとめて適切に対応するものと思いますし、こうした事態が起こりましたことは非常に残念な、遺憾なことであります。  具体的な法令違反につきましては、独立して職権を行使する証券取引等監視委員会において厳正に対処されるものと考えておりますし、大蔵大臣は、監視委員会からの勧告を待ち、厳正な処分を行うものと考えております。  なお、事務当局から正確な事実の補足をしてもらいたいと思います。
  137. 福田誠

    福田(誠)政府委員 先ほどの責任論でございますが、日産生命の経営陣におきましては、経営責任をとりまして職を辞されるものと聞いております。  それから、ディスクロージャーの問題でございますが、御指摘のとおり、保険会社のディスクロージャーにつきましては大変重要でございまして、他の金融業等の業態とのバランスにも考慮しつつ、自主的に充実に努めてきているところでございます。  例えば、不良債権のディスクロージャーに関して見ますと、破綻先、延滞、金利減免あるいは経営支援先に関する債権、あるいは市場性のある有価証券の時価情報につきましても既に開示されておりまして、都銀等と全く同レベルにあると考えております。  なお、そもそも各社の財務内容につきましては、個別会社の事案でございまして、大蔵省として公表あるいは開示を義務づけることは適当でなく、各社が自発的、積極的に開示していく性格のものと考えております。これは、他業態にあっても同様の取り扱いでございます。  いずれにしましても、保険会社のディスクロージャーを充実させることは、保険会社経営の透明性を高め、市場規律により経営の自己規制を促すものでございますので、契約者の自己責任原則の確立のための基盤としても重要であると考えております。大蔵省としても、引き続きディスクロージャーの充実に向けて努力してまいりたいと存じます。
  138. 松本善明

    松本(善)委員 この問題で、野村証券の酒巻前社長は、総会屋への利益提供は個人ぐるみだと本院大蔵委員会参考人質疑で述べました。会社ぐるみの判断を固めて、関係者を告発するというふうになってきたということでありますが、酒巻氏はそうすると国会でうそをついたということになります。私は、酒巻英雄前野村証券社長を本委員会で証人喚問をすることを求めたいと思いますので、理事会で相談をしていただきたいと思います。
  139. 野呂田芳成

    ○野呂田委員長代理 時間が終了しましたが、今の件につきましては、後日理事会でお諮りしたいと思います。  答弁必要ですか。
  140. 松本善明

    松本(善)委員 それなら答弁してもらってもいいです。どうぞ。
  141. 若林勝三

    ○若林政府委員 先ほど御質問ございました野村のVIP口座に関する報道についてでございます。  いろいろな報道がなされておるわけでございますけれども、委員会といたしましては、強制調査により押収した物件について分析、検討をいたしておりまして、事実解明に今努めておるところでございますが、そういった中で証取法に触れるような行為があるということになれば、適切に対応することになるわけでございます。  VIP口座ということについてでございますけれども、こういう名前で呼ぶかどうかということは別にいたしまして、証券会社におきましては、顧客の口座につきましては、顧客の年齢とか職業とか取引状況とか、こういったものにつきまして、接客等に注意を要するというようなことでいろいろ分類と管理をしておるやに聞いております。  いずれにいたしましても、委員会としては、どういう分類がなされておるかという問題ではなく、個々の取引の中に違法なものがあれば、そういう問題について仮に違法なものがあれば、法の定めに従って適正に対処する、そういうことでございます。
  142. 松本善明

    松本(善)委員 終わります。
  143. 野呂田芳成

    ○野呂田委員長代理 畠山健治郎君。
  144. 畠山健治郎

    ○畠山委員 総理は、昨年の十一月に、フリー、フェア、グローバルを原則とした日本版のビッグバン構想を示されました。  そこで、まずお伺いいたしますが、この日本版ビッグバンというときの日本版とは一体何でしょうか、その範囲等について具体的に構想があればお示しいただきたいというふうに思います。
  145. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私自身、日本版ビッグバンという言葉を使ったことがありません。本日の御審議の中でも、金融システム改革と言い続けております。  私自身がこの金融システム改革大蔵大臣に指示いたしました中は、銀行から保険業まで含めました金融システム全体をカバーしたものとして指示をいたしました。  私が知る限りにおきまして、英国のビッグバンと言われますもの、これはロンドン証券取引所の閉鎖的、競争的慣行というものが独占禁止法違反として提訴をされましたことを直接のきっかけに、株式売買委託手数料の自由化などを内容として、一九八六年に実施をされました証券取引所を中心とする改革のことだと理解をいたしております。その意味では、より金融システム全般を対象とするという点で、より包括的なものと申し上げればよいのかもしれません。
  146. 畠山健治郎

    ○畠山委員 規制緩和を含む経済社会の広範な領域の改革を含む構想、そうとでも受け取った方がいいのではないだろうかというふうに思っていますが、そうであるとするならば、ビッグバンが国民生活に及ぼす影響も極めて大きいものがあると考えます。  しかし、この間の政府の対応について、二つの点で十分見通せないものがあろうかと思っています。その一つは、租税問題かと思います。ビッグバンに対する今後の租税制度についてどのように構想を立てていらっしゃるのか、この点について総理並びに大蔵大臣の見解をお承りいたします。
  147. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これを指示いたしましたとき、私から申しました中身としては、こうした抜本的な金融市場改革にあわせて、金融関係税制について、公平、中立、簡素という基本理念及び課税の適正化の観点を踏まえ、税制全体の中で所要の検討を行うという形での指示をいたしました。例えば、国境を越える資金移動の自由化に伴いまして、実効性のある資料情報制度整備が当然のことながら必要になると思います。金融証券税制そのものは、今申し上げましたような基本原則を踏まえて、総合的な検討を進めていくべきものでありますけれども、そのためにもこうした資料情報制度整備を必要とする、これを早急に検討してもらい、所要の立法措置の準備を進めさせたい、そのように考えております。  また、例えば有価証券取引税のあり方につきましては、全体の進展状況などを考えながら、証券税制全体の中で本年末までに検討し、平成十年度税制改正において適切に対応したいと考えております。
  148. 薄井信明

    ○薄井政府委員 実務的なところについてだけ補足をさせていただきます。  今総理から御答弁申し上げたとおり、二面、問題に直面しているかと思います。  一つは、金融システムが変わるということで、それに適した金融証券税制にしなければいけないという点、それから、今までは外為法だとかあるいは業法によって、こういうことはできないということが決まっていたわけですけれども、それが自由にできるようになる。その中で適正、公平に課税しなければいけないということで、今までにないことをまたやっていただかなければいけない。総理が申し上げましたように、例えば資料情報については報告をしていただくという新しいことをお願いしなければいけない。こういう二面的な対応を時期を失することなくしてまいりたいと思っております。
  149. 畠山健治郎

    ○畠山委員 財政構造改革会議では、国民の租税負担率を今後五〇%程度におさめたいというような方向になっておるようでございますが、現行の負担率を考えますと相当な引き上げとなるわけでありまして、租税負担率はもちろんのこと、負担の公平さもますます重要な課題となるはずであります。  市場原理に基づくフリーな競争が進められるならば、その結果として生ずるキャピタルゲインなどの所得を公正に把握するためには、納番制による総合課税制度の導入が不可欠となろうかと思いますが、この点についての大蔵大臣の見解をお承りいたします。
  150. 三塚博

    ○三塚国務大臣 納番制度につきましては、それぞれ検討をされ、勉強をされておることは知っております。  利子や株式等の譲渡益に対しまして、現在の所得把握体制のもとにおける実質的な公平性の実現、経済活動等に対する中立性、制度の簡素性の観点から、総合的に勘案をして課税方式をただいまはとっておるところであります。  御指摘のような納番制度は、総合課税化を目指すものとの意見が基本にありますことは承知をいたしております。その基本的な仕組み等に対して、国民の理解を求める努力を続けなければなりませんが、国民の受けとめ方を十分に把握をしながら、プライバシー等の問題の検討とあわせまして、国際化、情報化の動きを踏まえながら、幅広い視点からの論議を進めていかなければならぬと思っておるところであります。
  151. 畠山健治郎

    ○畠山委員 この納番制問題の議論はかなり古くからやってきておるわけでありますが、なかなか政策日程には入ってこないこれまでの経過がございます。今度の財政構造改革会議、この辺、その政策日程で埋まっていくというような見通しも立てていいのでしょうか。どう理解したらいいでしょう。
  152. 三塚博

    ○三塚国務大臣 ただいまフリートーキングの段階にございます。と申しますのは、全体会議のもとにつくられました企画委員会でございます。これから論議を盛んにするという意味検討が進められると私は理解をいたしております。
  153. 畠山健治郎

    ○畠山委員 ビッグバンにかかわるもう一つの問題は、勤労者の雇用の問題についてでございます。少なくとも労働市場からすれば、はじかれる部分とそれから新規産業に吸収される部分とは必ずしもイコールフッティングとはならないと思いますし、また仮にそうなったとしても、タイムラグが生ずるはずであります。  具体的見通しと雇用対策について、総理並びに労働省の見解をお尋ねいたします。
  154. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今回の金融システム改革が、先ほど申し上げましたように、英国のケースとは相当異なっておりますだけに、その英国の例を必ずしも参考にしがたい部分があることは申し上げたとおりでありますが、私自身は、こうした改革というのは、我が国金融システム全体が活性化をしていく、当然ながら我が国経済に好ましい影響を与えていくというものであると考えております。  そして、イギリスの場合の数字を調べさせてみますと、間違いなしに金融関連部門そのもの自体で相当な雇用者数の増を見せております。例えば、一九八〇年の段階金融部門における関連部門の雇用者数は十六万六千九百人でございました。これが九〇年になりますと二十六万九千九百人、こうした伸びを示しているという実例はございます。ただ、この場合に、その金融システム改革に関連する部門だけでとらえるべきなのか、それによって活性化する経済全体が受けとめるその雇用増で見なければいけないのか、私は、これは本当は広く見る方が正しいと思います。  その上で、確かに、議員がちょっと触れられましたように、この実施のプロセスにおいて、雇用面への影響、マイナスの影響というものも当然考えられるべきことですし、それに対しての対応は考えていかなければなりません。そうした中で一番考えなければならないのは、その雇用問題というものが失業という形をできる限り経由せず円滑に行われる、そうしたことが必要になろうと存じます。  今後ともに、この金融システム改革の雇用への影響というものはそうした視点から注視してまいりますし、新たな雇用創出の支援、同時に、失業なき労働移動というものに対する支援など、積極的な雇用対策を推進していくことによって議員の提起された問題にはこたえてまいりたい、そのように思います。
  155. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 基本的に、ただいま総理からお答えがあったとおりでございます。  私どもといたしましては、できるだけタイムラグが少ないような方策が望ましいわけでございますが、現実になかなか厳しい事態も個別具体的にあるわけでございまして、そういう際には、できるだけ失業が出ないような形での雇用対策について、関係省庁あるいは関係団体、地方公共団体とも御相談しながら対処するということとあわせて、やむを得ざる失業、これが顕在化する場合には、雇用保険制度を活用して生活の安定を図るとともに、できるだけ本人の職業相談に応じながら、職業紹介に総力を挙げて努めるというようなことを基本にした対策をとってまいりたいというふうに思います。
  156. 畠山健治郎

    ○畠山委員 最後に、今回のG7につきましての、蔵相会議の共同声明についてお尋ねいたしたいと思います。  円安防止で先進国は合意したとしておりますが、残念ながら、市場は逆に円安の方向に振れておるわけであります。この点についての大蔵大臣の所見をまずお伺いいたしたいと思います。  それから第二点は、資産運用の失敗が、先ほども議論になりました今回の日産生命の債務超過の原因とされておりますが、株価の低迷はきょう、きのうの問題ではございません。この点では、大蔵省は根本的にアカウンタビリティーを欠いていると言わざるを得ないのではないか。この点についての大蔵大臣の見解をお承りしたいと思います。
  157. 三塚博

    ○三塚国務大臣 G7の会議の結果が円安に振れておるのではないかということでございますが、先ほどの報告によりますと、円高に振れてまいってきております。  G7の会議の共同発表、また、個々の大蔵大臣が記者団の質問に答えておるわけでございますが、報道の側がそれぞれの考え方で報道するものでありますから、正確に浸透するのには若干の時間を必要といたしております。浸透の時間をクリアいたしまして、ベルリン声明を極めて強めた形の共同声明でございましたから、着実に為替相場は安定の方向に向かうだろうと思っております。  また、株価の問題でありますが、私は、株価は市場に聞けと、記者さんに聞かれましてもそう申し上げてまいりました。ファンダメンタルズがそこに反映するであろうと。昨今の動きが二万円を超えるというところまで参りました。株ですからどうなるかわかりませんけれども、安定した方向が、市場、歓迎をしておるのかなというコメントだけ申し上げさせていただきます。     〔野呂田委員長代理退席、委員長着席〕
  158. 畠山健治郎

    ○畠山委員 時間になりました。終わります。ありがとうございました。
  159. 綿貫民輔

    綿貫委員長 次に、前田武志君。
  160. 前田武志

    ○前田(武)委員 金融システムの総括的な、全般的な改革金融・資本市場の改革、いわゆるビッグバンということでございますが、外為法の改正、そして今議題にしておる金融監督庁、そしてまた日銀法ということで、いよいよ対策も具体的に立てられて、今、国会で議論に入っておるわけでございます。  実は、先般、日米国会議員のラウンドテーブル、この交流でワシントンに行った機会に、アメリカから見て、米国から見てどういうふうに見えるのか、そんなことも多少勉強をしてまいりました。  ちなみにこの日米議員交流というのは、例の貿易摩擦のときを一つのきっしょとして、国会議員同士の交流をやらなきゃいかぬということで、八年来続いている、地味ではありますが、日米の国会議員レベルにおける理解増進という意味においては、我々大いにそれなりの役割を果たしてきたなという自負をしておるわけでございます。  そのときを利用して、たしかあれはリーチさんといいましたか、下院の銀行委員長ですね、アメリカ銀行法を今改正しようとしておりますが、この方と、それからニューヨーク・ウォールストリートに行って、ゴールドマン・サックスの会長、両者にお会いさせていただきました。  そういう機会を通して、米国のそういう関係の方から見ると、日本の市場はどういうことか。要するに、今、金融の総括的な、統合的な市場、あらゆるものを入れて、先ほど総理が御指摘になっていたようなことでございます、証券も保険も、あるいは不動産等の証券化を含めて、要するに市場の厚み、そして多様な商品あるいはそのプレーヤーがどんどん登場してくるという、言ってみれば、金融を先端とする市場が非常に大きく進化をし、拡大し、そして情報化していっている。そういう面から見ると、日本はそれにいささかおくれをとっているのではないのかというのが、まさしくそういう問題意識があるからこそこういう金融システム改革になったわけであります。  そういう中で、何といっても、米国等から見ていて、ここが日本の場合には片手落ちというか、市場が一つ欠落しているのではないかと言われるのが、よく言われるセキュリタイゼーションといいますか証券化、あらゆるものを証券化して、市場にのせて直接投資を呼び込んでくる、そういった面において非常におくれをとっているという指摘がございました。  そういったことでは、ちょうど時、G7があり、また総理が向こうでクリントンと会談をされた。そして、G7ではたしか内需拡大を確約されたわけでございます。そういう内需拡大、持続的な内需拡大というものがどんどん進むためには、何といっても、当該今この金融システムの改革を進めようとする上で、体力が脆弱になってきた日本金融システム、これは不良債権の問題であって、その辺について私は重点を置いてここでお聞きをしたい、こういうふうに思うのです。  と申しますのも、私は、実はこの問題についてはずっと今まで国会において議論をさせてきていただいておりまして、去年の住専国会においても、ここに議事録があるのですが、二月九日だったですか、この住専問題、不良債権問題というものは土地の問題であり、いかに流動化を図るかという問題であるという認識をしているというふうに総理からお答えをいただいた。私が一番最初にそれを引き出したのじゃないかな、こう思うわけでございますが、それ以来ずっと議論を重ねておるわけでございます。  そういった面で申しますと、土地の流動化については、たしか先般、外為法の改正のときに、私が本会議で太陽党を代表して代表質問させていただいたときに、やはりこの問題について触れさせていただきました。総理からも、まさしく政府がそれに取り組んでいるところだというお答えをいただいたわけであります。  そこで、その中の一つの例として、不動産特定共同事業法だったですか、これ自体も私どもも細川、羽田内閣のときに多少関連させていただいて、応援をしてきているわけでございますが、そういったものが一つのケースになると思いますが、そういう不動産の証券化の手法について、政府の方で今どういうような状況にあり、どういうふうに進めようとしておられるのか、まずお聞きをいたします。
  161. 山口公生

    山口政府委員 不動産関連の証券化問題というのは、御指摘のとおり、不良債権問題の解決のためにも大変重要なことだというふうに考えております。  せんだって、政府の方でいろいろな対策を講じ、取りまとめをしたわけでございますけれども、具体的に、まず、担保不動産そのものあるいは貸付債権の証券化を図ってみようということでいろいろなトライをしております。  証券化の具体的なスキームといたしまして、大きく言いますと、信託を活用する方法と、特別目的会社、SPCというものをつくって活用する方法の二通りがございます。  信託を活用する方法につきましては、不動産担保つきの事業ローンの信託受益権を有価証券に指定しまして、その取り扱いを、金融証券、両業界の相乗りで流通に参加させていくということが一つあります。  二つ目に、特別目的会社、SPCを活用する方法につきましては、その法的整備を含めまして、十年度の本格的導入に向けて進捗させることとしております。  さらに、それぞれにつきまして、損害保険会社の保障の活用などによりまして、商品の魅力を向上させることを提案しているわけでございます。  こうした努力を重ねますと、金融機関の資金調達の多様化や適切なリスク管理、投資家保護が図られていくものと考えており、これは結果として不動産関連の証券化につながっていくと考えております。
  162. 前田武志

    ○前田(武)委員 専門的にはそういうことであろうかと思うのですが、そのときに、ゴールドマン・サックスのアトキンソンさんという会長さんですが、要するに、RTCなんかは最終的には全部これは証券化して、実体経済の中で全部処理をしたということに対して、日本はそれが進んでいないところに大きな問題があるのじゃないか、これは国内でもよく指摘されることであります。  日米の違いもございます、もちろんそういったこともあるのですが、まさしく市場というところで直接投資等を呼び込んで、一千二百兆円という国民貯蓄というものをどういうふうに実体経済に入れていくかということが持続的な内需拡大ということについては一番大きな問題であるがゆえに、今政府がとっておられるのは、まさしく不良債権そのものについて、しかも担保不動産のあの不良債権をどうするかということで取り組んでおられるわけですが、むしろもっともっと大きく、正常な債権であったり、担保不動産であったり、それからまた不動産開発であったり、そういったもの自体をもっともっと証券化を進めて、一つ金融証券市場の中にどんどん取り入れて、そこに一千二百兆円というふうに考えるものですから、その辺についての、これはもう去年も総理にお考えを伺っておるのですが、そのときはまだちょっと幅が狭かったように思うのですが、総理の基本的なお考えをお聞きいたします。
  163. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これは、以前から議員御関心のテーマとして何回が御指摘をいただき、また、大変我々にも参考になる意見をこれまでもちょうだいをいたしました。  今、この担保不動産等の流動化総合対策、これは三月三十一日に決めたものでありますけれども、いろいろな角度から、まず第一に、権利関係の整理がある、あるいは虫食いとか不整形状態になっているその担保土地をどう有効利用するか、あるいは土地区画整理事業の弾力的な運用というものによる手法と、いろいろな議論をしてまいりました。同時に、もう一つの考え方として、国民生活に密着をした公共的な用地需要に活用していくにはどうすればいいのか。  そうした中で、担保不動産の証券化というものを議論してきたわけでありますけれども、そこに至りますにも、今局長から事務的にお答えをいたしました信託活用方式、あるいはSPC方式などの証券化のパッケージを実施していき、同時にその不良資産、特にこれは不良資産証券化に係る税制についての所要の措置を検討する必要があるだろう。  今そうしたことが問題になり、同時に、担保不動産の情報化の推進というものが大きな課題となりまして、基本的かつ総合的なその不動産のデータベースを確立するといった必要性、そして、当然のことながらこれは民間がどう取り組んでくれるかも大きな課題であります。  こうしたすべてを含みました担保不動産等流動化対策連絡会議、仮の名前でありますが、こうしたものを設置することを考えてまいりました。我々としては、まさに不良資産となった担保不動産のみではなく、むしろ、金融システム改革の考え方に沿いながら、規制緩和あるいは制度の見直しを行うなどの必要な施策の推進に努めていきたいと考えているテーマであります。
  164. 前田武志

    ○前田(武)委員 日が落ちてまいりまして、太陽党の時間が大分少なくなってまいりました。実は、もう少し税制等も聞きたかったのですが、薄井局長に去年も御指摘がありましたのでこれは割愛させていただいて、一つ指摘としては、その場合に、土地の税制というのが余りにもいろいろな税がかかり過ぎていて、もちろん、税の公正さとか公平性というようなことを言われるわけですが、それはむしろ金融商品であったりそれから証券であったり、そういったものとの公平性を考えるべきであろう、こういうふうに思うのですね。  そういうことも含めまして、最後総理の御決意を聞きたいわけでございますが、要するに、この金融監督庁等を通じて、日本金融市場の透明性、そういったものがどう確保されるのか、それを通じて市場の信頼性というものがどうなるのか、それが日本経済の成長性にもつながるのだというような言い方で、実はゴールドマン・サックスの何人かの方のお話はかなり厳しく、要するに、これだけグローバルな市場なのだから市場が判断するのだよ、信頼性のある市場であればちゃんと市場がこたえるのだ、こういうような言い方をされていました。また、リーチ委員長の方も、金融監督機関というのは、組織論以上に、その金融監督機関がいかに独立性を確保されているのが一番重要か、それを我々は見ているのだというような言い方をされている。  もうひっくるめて、要するに、先ほど来総理の御決意をお聞きしていて、そこは十分に総理の熱意は伝わるわけではありますが、いろいろなところでそこに対する疑念があるわけでございます。それは、やはり最後はそういう市場で判断されることになるがゆえに、最後に、総理にその辺についての御認識と御決意のほどをお聞きして終わります。
  165. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、そのアメリカ側でお会いいただいた皆さんは、大変いい問題点を指摘されたと思います。そして要するに、新たな施策、それに基づいて生まれる機構、これが信頼を得るか否か、それは市場での信頼性ということに係る、そのとおりだと私も思います。  そして、そういう意味では実は、さまざまな問題点を乗り越えながらここまで進んできているわけでありますけれども、日米を対比いたしましたとき、ややもするとアメリカ側の判断材料で抜ける部分がございます。それは、リスクマネーの供給というものに対し極めて積極的であり、同時に、業を起こす方々からすれば、一度失敗しても二度目のチャンスが必ず与えられる、そう確信して市場に向かえるアメリカの市場、一たん失敗をいたしますと二度目のチャンスがなかなか与えられない、またそのために新たな業が起こりにくいし、その一番必要なときにリスクマネーを供給する組織が非常に弱体であり、ある意味では政策的な金融対象としてでもリスクマネーの供給を考えなければならない日本と、この市場の性格の差がございます。  その上で、それぞれの国はそれぞれの国の市場に応じた設計をいたしておりますから、日本のこの組織というものをアメリカから見たとき、スタート時においてこれが機能するかどうかについて不安を持たれるのはある程度仕方がないかもしれません。  証券等監視委員会をスタートいたしますときにも、アメリカ国内におきましては、おざなりの組織ではないかといった批判が当時ございましたことを私は今も覚えております。そして、スタートの直前、新たに証券等監視委員会の事務局長になります予定の人間に対し、頼むから最初の一年間で、一つでもいい、きちんとした対応をしてくれ、それによって市場の信認が決まるのだと言って激励をしたことを今思い出しておりますが、私は、新しい組織というものは、大なり小なり同じような壁を越えていかなければならないものだと思います。  我々は、日本の市場、現時点において適合する組織形態を御審議をいただいておると自負しております。それが信頼性を持ち得るものになるかどうか、新たな組織をいかに活用し、その中から成果を上げていき得るか、またそれにふさわしい人材を起用し得るか、その責任は我々にあろうかと考えております。
  166. 前田武志

    ○前田(武)委員 終わります。
  167. 綿貫民輔

    綿貫委員長 次に、土屋品子君。
  168. 土屋品子

    ○土屋委員 21世紀の土屋品子でございます。  金融監督庁設置法案は、省庁再編成の先駆けであるとともに、橋本内閣が推進しています六つの改革のうちの金融システム改革の柱でございます。特に、二〇〇一年の金融システム改革として、金融市場の活性化、国際競争力の強化、市場のルールにのっとった透明度の高い公正な金融行政を早急に確立していかなければならないということはよく理解しております。そのためにも、信用秩序の維持とともに、自己責任原則の確立、ディスクロージャーの拡充、金融証券、保険にかかわる規制の緩和や撤廃に合わせて検査監督機能を強化する必要があると思います。  まず初めに、官房長官にお伺いしたいと思います。  金融監督庁検査部門は、現在の機構と比較した場合に、どのように変わるのでしょうか。また、現在の検査機関の問題点をどのように認識し、その問題点の解決のためにはどのような方策を講じていくつもりか、お伺いしたいと思います。
  169. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 金融監督庁においては、今までの大蔵省のいわば企画立案の分野と全く分離をいたしまして、検査監督の機構を別な機関に移したわけであります。裁然と分かれてやりますから、その機能は目立って私は充実をさせられる、こう考えております。
  170. 土屋品子

    ○土屋委員 分離するということでございますけれども、地方にある金融機関検査については現在の大蔵省の地方財務局が引き続き担当するということでございますので、財務局の検査部門については金融監督庁長官の直接の指揮命令に従って行動するわけですけれども、組織そして人事面は大蔵省に所属するということで、本法案でうたっている、金融企画立案部門を担当する大蔵省検査監督部門金融監督庁機能分担が十分に図れるものなのか、大蔵大臣にお伺いしたいと思います。  また同時に、官房長官にお伺いしたいと思いますが、検査機能を強化するためには、金融に通じた人材や高い専門性と責任を持って職務に当たる人材の育成、採用が必要と思われます。どのような方法で育成、採用していかれるのか。独立性を高めるためには、大蔵省を初め他省庁との人事の遮断についてはどのように考えているのか、具体的にお聞かせ願えればと思います。
  171. 三塚博

    ○三塚国務大臣 本件につきましては、御説のとおりです。専門官の養成が極めて重要でございます。直ちにそのことがこれからスタートを切ることは難しいわけでございまして、よって、地方財務局、検査監督を担当してまいりました専門官がおります。行政改革の今日の中において、財務局職員をして暫時金融監督庁長官のもとに帰属をさせながら全力を尽くす。相並行いたしまして専門官の養成、これは金融監督庁の長官の人事であろうと思っておるところであります。
  172. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 金融監督庁の大事については、任命権者たる長官の人事権が厳正に確保されることを当然の前提として、長官が判断により業務を的確に遂行して国民に信頼される金融行政を実施していく観点から、適切に人事権を行使し、望ましい人材を確保していくとともに優秀な人材を育成していくことは、委員御指摘のとおりであります。  金融監督庁大蔵省の間で人事交流を一般的に遮断するかどうかについては、こうした人材の養成等の観点のほか、省庁間の人事交流はいわゆる縦割り行政の是正にも資するといった観点等も十分に踏まえて行われるべきであります。  いずれにしろ、金融監督庁の大事については、金融監督庁長官が厳正に独立の人事権を行使して適切な人事を行っていくことになると考えております。
  173. 土屋品子

    ○土屋委員 ありがとうございます。官房長官の今おっしゃったように進めていただくようにお願いしたいと思います。  次に、今回の法案では、農林系金融機関や労働金庫、信販などがそれぞれ金融監督庁と各省庁との共管となっております。この点は、質問の中にも、皆様からも出ているかと思いますが、改めてもう一回質問させていただきますが、従来は大蔵大臣と各省大臣との共管であったものが、今回は内閣総理大臣と各省大臣との共管になるということでございます。しかし、先般の住専や不良債権の問題では、金融機関への監督が一元的に行われなかったことで、責任の所在が不明確になったり、情報の伝達が不十分になったりするなど、対応のおくれを余儀なくされたのではないかと思っております。また、共管する省庁同士の意見が必ずしも一致しなかったことも原因の一つではないかと考えております。  これらを考えた場合に、最終的な責任の所在と監督については金融監督庁に一元化されるべきではないのかと考えますが、いかがでございましょうか。また、共管となっている金融監督庁と各省との方針や意見がもし異なった場合はどのように対応されるのか、総理にお伺いいたしたいと思います。
  174. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 確かに、住専の問題が議論されましたとき、今議員から御指摘になりましたような疑念が本院においても随分強く打ち出されました。  そして、私は、それはやはり大蔵省が、みずから金融機関企画立案機能検査監督機能を持ち、そこに時間をある程度集中しながら、他省庁の所管部分から報告を求め、十分突き合わせの作業をしていなかった、そう言ってしまっては身もふたもありませんけれども、結果的にそういう批判を浴びてもしようがない事態というものがあの問題を起こしたと思っております。  同時に、そういう事態に気がつきましたときに、みずからがやはり金融機関企画立案機能を持って、検査監督と両方を持っているわけでありますから、その影響をどうすればいいか関係省庁で相談をしているうちにますます傷口を大きくした、こうした御指摘もあったと思います。  今回の場合に、実は大蔵省が抱えます金融機関も、他省庁が主管するそれぞれの金融機関、労金あるいは系統系金融機関あるいはノンバンクも同じ位置づけ、金融監督庁の立場から見れば同じことです。そして、問題を検査監督の中から洗い出しました場合に、あるいはそれでは不十分だと思いましたとき、一層集中した検査を行うといったことも当然行われるでしょう。そしてその上で、その問題をどう処理すればよいかということを対等の立場で議論をしていく。私は、状況実態として随分違っていくと思っております。  これは、型どおりにお答えをしますと、昨年末の与党合意におきまして「農協系統金融、労働金庫、ノンバンクなどを含めて一元化をはかり、新機関総理府に設置する。なお、農業行政、労働行政、通産行政等の観点があり、検査監督は引き続き農林水産省、労働省、通商産業省等との共管とする。」とされておりますということを申し上げるのが一番適切なのかもしれませんけれども、検査監督という業務を、この三条機関であります総理府の外庁としての金融監督庁が一元的に行い、同じ立場でそれぞれの機関に対応するということで、私は実態として大きく変化すると思っています。
  175. 土屋品子

    ○土屋委員 総理の今の答弁を聞きまして、総理が非常に確信を持ってこれを進めていらっしゃるということを私も受け取りましたので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。  昨年の十二月二十五日に閣議決定されました行政改革プログラムには、内外の経済社会情勢の展開を踏まえまして、新時代に対応できる簡素で効率的な行政の実現を目指すとしておりますが、確かに、金融検査監督部門大蔵省から分離し、総理府の外局の独立機関とすることは大変評価すべきことだと思います。しかし一方で、実態金融監督庁大蔵省と十分に機能が分担できていないようにも思えますが、本法案総理の掲げている行政改革の理念を十分に反映した法案であるということをぜひ遂行していただきたいということで、私の質問を終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  176. 綿貫民輔

    綿貫委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時九分散会