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1997-04-30 第140回国会 衆議院 厚生委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月三十日(水曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員   委員長 町村 信孝君    理事 佐藤 剛男君 理事 住  博司君    理事 津島 雄二君 理事 長勢 甚遠君    理事 岡田 克也君 理事 山本 孝史君    理事 五島 正規君 理事 児玉 健次君       伊吹 文明君    石原 伸晃君       江渡 聡徳君    奥山 茂彦君       嘉数 知賢君    桜井 郁三君       桜田 義孝君    鈴木 俊一君       田村 憲久君    根本  匠君       能勢 和子君    松本  純君       山下 徳夫君    渡辺 喜美君       青山 二三君    井上 喜一君       大口 善徳君    鴨下 一郎君       田中 慶秋君    福島  豊君       桝屋 敬悟君    矢上 雅義君       吉田 幸弘君    米津 等史君       石毛 鍈子君    枝野 幸男君       瀬古由起子君    中川 智子君       望月 義夫君    土肥 隆一君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小泉純一郎君  出席政府委員         厚生政務次官  鈴木 俊一君         厚生大臣官房長 近藤純五郎君         厚生大臣官房総         務審議官    中西 明典君         厚生省健康政策         局長      谷  修一君         厚生省保険医療         局長      小林 秀資君         厚生省薬務局長 丸山 晴男君         厚生省老人保健         福祉局長    羽毛田信吾君         厚生省児童家庭         局長      横田 吉男君         厚生省保険局長 高木 俊明君         社会保険庁運営         部長      真野  章君  委員外出席者         文部省高等教育         局医学教育課長 寺脇  研君         労働省労働基準         局賃金時間部賃         金課長     小泉万里子君         厚生委員会調査         室長      市川  喬君     ――――――――――――― 委員の異動 四月三十日  辞任         補欠選任   安倍 晋三君     石原 伸晃君   大村 秀章君     渡辺 喜美君   桧田  仁君     桜田 義孝君   坂口  力君     田中 慶秋君   土屋 品子君     望月 義夫君 同日  辞任         補欠選任   石原 伸晃君     安倍 晋三君   桜田 義孝君     桧田  仁君   渡辺 喜美君     大村 秀章君   田中 慶秋君     坂口  力君   望月 義夫君     土屋 品子君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第三六号)      ――――◇―――――
  2. 町村信孝

    町村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松本純君。
  3. 松本純

    松本(純)委員 医療保険財政を再建するためには、一定患者負担の引き上げということについてはやむを得ないところもあり、それだけにぜひとも国民理解をしっかりと得ることができるような、そんな考え方議論を進めていかなければならないと思っております。特に、一種十五円というような考え方の中にもさまざまな要素が含まれておりまして、さらにこれがわかりやすい方向になるように御検討をも重ねていただければと思っておるところであります。  そこで、お尋ねをいたします。  今回の政府案では、一日の薬剤費二百五円以下の場合は一種類とするとされておりますが、例えば、A薬一日三回食後服用、一日分百五十円、B薬一日三回食後服用、一日分百二十円、C薬一日三回食後服用、一日分五十円、D薬一日二回朝夜、食後服用、一日分八十円、そしてE薬一日二回朝夜、食後服用、一日分百円、このような処方で五種類内服薬を十日分いただいたという状況の中で、この一日の薬価が五百円であったといたします。このような場合、薬剤負担が幾らになるのか、まずお尋ねをさせていただきたいと思います。
  4. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 ただいまのケースで一部負担計算する場合、まず二つのポイントがございます。  まず一つが、内服薬について、服用時点が同時で服用回数が同じ薬剤、まずこれをくくる必要があるわけでありまして、今のお話ですと、A薬B薬C薬は一日二回食後服用ということでございますから、これがまずワングループという格好になります。それから、D薬E薬は一日二回朝夜、食後服用ということでございますので、これでワングループになるということでございます。  その次のチェックポイントとしましては、それぞれのグループが二百五円以下かどうかということがあります。逆に言えば、二百五円を超えるかどうかということであります。  そこで、A薬B薬C薬を合計いたしますと、百五十円、百二十円、五十円ということでございますから三百二十円ということになりますので、これは二百五円を超えるということになるわけでございます。そうすると、A薬B薬C薬それぞれが一種類ずつということになりますから、いわゆる三種類ということで、ここの部分で十五円掛ける三種類ということで四十五円ということになるわけであります。それから、D薬E薬を合計いたしますと百八十円ということでありますから、これは二百五円以下ということになります。したがって、二百五円以下の場合には一種類ということで計算いたしますので、D薬E薬はまとめて一種類、こういうことになります。したがって、これは十五円を御負担いただくということになります。  それに日数、十日分をいただくということでございますので、整理いたしますと、まず、A、B、Cについては三種類ということになりますから、これについては十五円掛ける三種類ということで四十五円、それが十日分ということでございますから四百五十円ということになるわけであります。それから、D薬E薬につきましては、これは二百五円以下になりますから、一種類ということになりますので十五円、それの十日分でございますから百五十円ということになります。そうしますと、四百五十円プラス百五十円ということでございますから、A、B、C、D、E、これだけいただいた場合には一部負担が六百円、こういう計算になります。
  5. 松本純

    松本(純)委員 ただいま御答弁いただいたように、たった五つの、五種類の薬を説明するにもこれだけの時間がかかるということにもなるわけであります。  このような処方の場合、患者さんは多分単純に、薬の種類が五種類ですから、五種類掛ける十五円掛ける十日イコール七百五十円、このように考えるのではないかと思うのでありますが、ただいまのお答えのように、そう単純ではないわけであります。  一日の薬剤費二百五円以下の場合というのは、一日一剤の薬剤費が二百五円以下の場合ということで理解をしていかなければならないわけであります。この場合、本来、A、B、Cで一剤ですが、二百五円を超えているので三種類というような考え方になります。一方、DとEは二百五円以下なので一剤すなわち一種類となり、結局、今のお答えのとおり、四種類掛ける十五円掛ける十日イコール六百円ということになるわけでありますが、患者さんは、同時服用されるものは一剤としてくくられるということなどについては全くわからないと思うのであります。  実際の現場では、内服薬のほかに頓服薬外用薬が入るなど、もっと複雑でさまざまな処方組み合わせが考えられますので、医療機関窓口での患者に対する説明はまことに大変なことになると思います。  薬剤負担についての患者に対する説明に時間を費やし、肝心の薬の副作用等についての説明がおろそかになってしまいましたら、これは元も子もないことになってしまいます。このことについての御見解を承れれば幸いでございます。
  6. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 今回、薬について新たに一部負担をお願いしておりますのは、これはやはり薬の適正使用ということを促したいということでお願いしているわけでございます。  そういった中で、できるだけ簡素な制度が望ましいわけでございますけれども、定額負担というようなことで、また、レセプト請求上の煩雑さというものをできるだけ簡素化するということで、二百五円以下については現在も一種類というふうな数え方をしていること等々の中で考えますと、今回のような案も一つ考え方であろうということで御提案しているわけでございますけれども、御指摘のとおり、なれるまではなかなか患者さんになじみにくいという問題があることは事実であります。  ただ、医療の世界の場合、これは通常の商品とちょっと違いまして、剤という考え方あるいは一方で種類というような考え方もございますし、そういった中で適正な御負担をお願いするというような制約の中ではこのような形もやむを得ないというふうに思っておりますけれども、この案が成立いたしましたならば、実際の施行に当たりましては混乱がないように、そしてまた、まさに薬についての、副作用を初めとする薬そのものに対する説明ということが一番大事でありますから、そういったものがこの一部負担計算のために制約されてしまうということのないように、関係者の御理解、それから制度の趣旨、こういったものについての理解というものを深めるべく努力をしていきたいというふうに考えております。
  7. 松本純

    松本(純)委員 二百五円以下一種類とするとの考え方は、患者負担をできるだけ軽減するための措置として評価できると思いますが、一方、薬剤負担国民からわかりにくいものとしてしまうおそれがあります。  二百五円以下一種類とみなすこととしたことで、二百五円以下の処方頻度はどれぐらいあり、財源的にはどれぐらいの軽減になっているのでしょうか。厚生省資料をお持ちのことと思いますので、お尋ねをいたします。
  8. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 二百五円の問題につきましては、これは現行のいわゆるレセプト記載簡略化というような観点で定められておるわけでございまして、いわゆる一剤二百五円を超える場合については、それぞれの薬剤名あるいは投与量というものをレセプト摘要欄記載していただく、こういう取り決めになっておりますけれども、二百五円以下の薬剤につきましては、それぞれの薬剤名なり投与量というものをレセプト記載する必要がないということになっております。したがって、一剤が二百五円以下の薬剤につきましては、使われている薬剤種類数というのを現在のレセプトの中で把握するのは困難だというような問題がございます。  今回の、一剤が二百五円以下の薬剤を一種類とみなすという取り扱いでありますが、二百五円以下の薬剤を一種類とみなすという取り扱いのシェアがどのくらいかということで、これは統計がとれるわけでありまして、それをとりますと、全体の薬剤延べ投薬回数に占める割合というのは大体六割程度というふうに計算をいたしております。  冒頭申し上げましたように、一剤が二百五円以下の中でくくられている薬剤種類数というものの把握ができませんので、そういう意味で、それに伴う財政効果のところは計算が不可能な状態になっております。
  9. 松本純

    松本(純)委員 なかなかつかみにくいということであるわけでありますが、これは基本的には財政効果根拠そのものにもかかわる部分であろうと思いますので、ぜひともさらに御調査、御検討いただければと思っておりますし、また、その数字、わかり次第お教えをいただきたいと思っているところであります。  現実には、「平成六年社会医療診療行為別調査 薬剤使用状況の概要」という資料厚生省大臣官房統計情報部から出ておりますが、その資料一つに、薬剤点数構成割合の中で、二百五円以下が八三・一%、薬価不明のもので一二六・六%、あとはそれ以上の点数というようなことで記載がされている資料が出ているわけなんですが、もしも、この数字のとおり、二百五円以下が大変幅広いところに影響するのであれば、そこに負担を課するも、あるいは逆に負担をなくするにしても、大変大きな影響のある部分になろうかと思っております。  この二百五円というくくりについても、当日、診療を受けてカルテに書かれた薬剤数というものと、実際に請求を出す際のレセプトに書かれて記載省略がされるものと、これは別の問題だと私は思うわけです。記載省略部分は今までどおり継続されて問題のないことと思いますが、それ以上に、カルテ上にはその薬剤名は書かれるはずでありますから、その数を数えるということは可能なことであって、もしも、幅広く薄く取ろう、負担をしていただこうということであれば、その一種類当たりの単価を少なくして、幅広く協力をしていただくということも一つ考え方として大変重要ではないかと私は思っておるところであります。  患者負担は、基本的に、できるだけわかりやすいものとすることが必要だと思います。それと同時に、医療機関保険薬局窓口では、まだコンピューターを使用していないところも多いわけでありますから、できるだけ医療機関窓口計算事務が煩雑なものとならないようにするべきとも考えているところでありますが、どのようにお考えか、お答えください。
  10. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 医療機関窓口事務について、かなりコンピューターが導入されておるわけでありますが、現在、医科では、病院で九二%の施設が入っておりますし、診療所では五七%、約六割弱の施設が導入しております。ただ、それ以外の病院診療所については入っていないというわけであります。仮にコンピューターが導入されていたとしても、できるだけ医療機関窓口事務負担というのは軽い方が望ましいわけでございまして、そういった意味では、仮に制度が導入されるにしても、できるだけ事務簡素化という努力はしなければいけないというふうに考えております。
  11. 松本純

    松本(純)委員 ありがとうございました。  それでは、次の質問で、薬剤費適正化包括制についてお尋ねをいたします。  薬剤費適正化包括制については、先般の厚生委員会で、私は、包括制により医療の質が低下してしまった例として、ある療養型病床群病院でせっかく始まった病院薬剤師による入院患者に対する服薬指導薬剤管理などの業務病院経営者が中止してしまったという例があったことを指摘しました。その後、それは包括の対象から外されることとなり、改善されました。  厚生省は、病棟での医薬品の適正使用推進を目的として、入院患者に対する服薬指導薬剤管理医師への情報提供活動を奨励してこられました。その結果、病院薬剤師病棟での薬剤管理業務は次第に活発になりつつあり、医師などや患者さんからは評価されています。しかし、今年度、国立病院などの十病院で行われる包括制モデル事業では、手術、麻酔以外の点数はすべて包括点数とするということですが、そのような包括制が将来実施されるとすれば、病院経営者が収益上の理由からその芽を摘んでしまいかねないと懸念されておりますが、いかがでしょうか。
  12. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 病院薬剤師によります病棟での薬学的な管理指導、これは非常に重要でありまして、昭和六十三年の診療報酬の改定のときから、診療報酬上、評価をしてきているということでございます。これは、今後とも、その重要性にかんがみて奨励していくべきものであるというふうに考えております。  こういった問題と、入院なりに当たりまして薬剤費を含めた包括化の問題、これはやはりそれぞれ別に考えるべきだろうというふうに考えておりまして、そういった包括化の中でこういった薬学的な管理指導というものが推進されるということも重要でありますし、そういった意味で、この包括化医療内容を悪くしてしまう、要するに、粗診粗療ということが言われますけれども、そういったようなものを含めて、そういうことにならないような工夫、これも組み合わせの中で考えていかなければならないというふうに思っております。  単に経済的なメリットだけ、あるいはデメリットだけで全体の行動パターンというものが決まってしまうということのないように、この導入等に当たっては慎重な検討というものが必要であるというふうに考えておりますし、本件のようなケースについて、これが包括化の弊害として廃止されてしまうというようなことがないようにしていかなければならないというふうに考えております。
  13. 松本純

    松本(純)委員 この国会でも包括点数制を支持する声が多いようですが、ただ単に、出来高払いが悪い、包括にすればすべてよしというものではないと思います。  先日の質問に際し、厚生省に、包括制でどのような効果があったのかデータを示してほしいとお願いしましたが、平成二年の資料しかない、しかもそれは、単に数字的に薬剤仕入れ代金検査費用が少なくなっているというもので、医療の質が上がったのか下がったのか、分析されたものではありませんでした。包括制という制度は、診療報酬請求に当たっても、例えば使用した薬剤名など何ら医療内容記載する必要はないため、全くのブラックボックス状態で、外からはその実態がわからなくなってしまうという側面を持っています。  先ほどの病院薬剤師業務だけでなく、医療関係者医療の質を上げようとするせっかくの努力活動を抑え込んでしまうことのないよう、包括制検討する際にはメリットデメリットについての慎重な検討工夫が必要であると思いますが、いかがでしょうか。
  14. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 包括制に伴うメリットなりデメリット、これは一般的に言われている問題がございますけれども、具体的には、先ほど先生指摘のとおり、平成二年に、老人医療の分野で導入された、この報告がございます。この後、さらにフォローをして、やはりきちっとした包括評価というものをしていかなければいけないというふうに考えております。  ただ、包括制という場合でも、これまでも御答弁申し上げてきましたように、出来高払いとの組み合わせとか、そういったことを考えながら、医療機関なり医療機能に最もふさわしい支払い方というものを考えていく必要があるというふうに考えております。そういった中のベースとしては、それぞれの医療機関医療担当者が、単に経済的な問題だけで行動するということではなくて、患者さんの立場に立ったよい医療提供する、そういった考え方のもとで診療を行っていただかないと、どんな制度を導入してもうまくはいかないと思います。  ただ、制度を考える場合においても、そういった医療担当者の善意だけでは動きませんから、より好ましい医療提供されるような仕組みというものをいろいろな組み合わせの中から考えていかなければいけないというふうに考えております。
  15. 松本純

    松本(純)委員 厚生省は、平成四年に、看護婦業務見直しに関する調査研究を実施されたとお聞きしております。その事業の中で、病棟での薬剤管理看護部から薬剤部に移管した結果、看護婦さんが看護に専念できるようになるとともに、病棟における薬剤在庫量薬剤費の節約に成果を得たとの報告があると聞いております。  先般の厚生委員会で、江渡議員質問された国立病院における病院薬剤師の員数について、国立病院基準どおり薬剤師配置されているのは、九十病院のうちわずか十四病院であるとのことでした。小林局長は、医薬分業推進等によって対処したいとの御答弁をされておりましたが、それはそれで大いに推進していただきたいと思っておりますが、それだけでなく、薬剤師法によって義務づけられた患者に対する薬剤情報提供や、先ほど申し上げましたように、薬剤費の節減にもつながる病棟における薬剤管理強化するために、適正な薬剤師数の確保を図るべきと思います。  国立病院は、医療のセンターとしての機能があるとともに、地域医療支援の中核となるところと考えます。現在進められている国立病院の統合再編成の中で、薬剤師数配置充実を図るべきと考えますが、いかがでありましょうか。
  16. 小林秀資

    小林(秀)政府委員 先生御存じのように、国立病院療養所は全国に二百三十九ございますが、これが本来の国立にふさわしい役割を果たす、そういうことから、今、再編成合理化を進めておるところであります。  そして、この再編成合理化基本指針につきましては、昭和六十年三月につくったのでありますが、「再編成合理化推進によって生じた定員等の余裕については、必要に応じ医療スタッフを中心に再配置するなど、それによって国立病院療養所機能強化を図るものとする。」こういうふうに書かれておりまして、この指針にのっとって進めておるところでございます。  ただ、現在の大変厳しい定員事情ということから、直ちに薬剤師の増員を行うというのは大変難しいのでありますけれども、再編成合理化を通じて、薬剤師を初めとする医療関係職種配置については、その充実に引き続き努めてまいりたいと思っております。  特に、薬剤師皆さん方には病棟での薬剤業務というのが大変ふえてきていますし、もう一方では、この委員会でも先生方に厳しく御指導いただいています院外処方せんの発行ということで、薬剤師さんそのもの病院業務というものも大変変わってきておる、それから、機械化も進めていくということで、それらのことを総合的に見て、今後とも一生懸命充実してまいりたいと思っております。
  17. 松本純

    松本(純)委員 それでは、最後に一つ質問をさせていただきたいのですが、薬剤師教育強化という問題であります。  いろいろ議論のなされているところでありますが、大学関係者は、文部省補助金を握られておりまして、本当は六年制を希望しているのだがなかなか主張できないと言っているとも言われております。かつて薬剤師教育の六年制への延長に消極的であった何人かの薬学関係者が、六年制の実現を期待する見解業界新聞等に寄せています。その中で、文部省担当官がある会議でもう六年制についての議論は決着したと発言したとして、嘆いているものがあります。  しかし、先般の文教委員会で、小杉文部大臣は、六年制も含めて検討したいと御答弁されたとお伺いをしております。文部省におけるその後の検討をお伺いしたいこととあわせまして、文部省の御方針もあって、今、医療薬学修士課程の拡充が進められております。そこで、例えば、薬剤師教育の六年制の実現には一定の期間が必要であるとするなら、まず薬剤師国家試験受験資格を六年とし、修士課程修了者とするなどの方法もあります。これなら厚生省が所管する薬剤師法を改正することだけで可能なのですが、このような考え方も含めて、早急な薬剤師教育の改善について検討をお願いしたいと思うのであります。この点については、厚生大臣お尋ねできれば幸いでございます。  以上です。よろしくお願いします。
  18. 寺脇研

    寺脇説明員 薬学教育年限の問題でございますが、この事柄は、最初に年限ありきということではなくて、どういう教育が必要なのかということを詰めていくところから進めなければならないと考えておるわけでございます。  そういう意味で、現在はいわゆる古賀レポートというものの中で、四年間の中でこれぐらいできるのじゃないかというようなことでやっておるわけでございますが、御指摘のように、これについてはそれじゃ無理なんじゃないかというような声等もあることは十分承知をいたしております。  そこで、やるべきことがどれだけあるのか、それをやるにはどれだけの年限がかかるのかということをもう一度不断に見直しをしてまいってあるべき姿を見ていく、その中の選択肢として年限が延びるということもあるという考え方検討させていただいておるところでございます。
  19. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 今後、医薬分業を進めていくということを考えますと、医薬品の専門家である薬剤師の資質向上というのは不可欠だと私も考えております。この六年制の問題は、文部省とも協議しなければなりませんので、この点についてはよく協議して、今後検討を進めていきたいと思います。
  20. 松本純

    松本(純)委員 終わります。
  21. 町村信孝

    町村委員長 桜井郁三君。
  22. 桜井郁三

    ○桜井(郁)委員 自民党の桜井郁三でございます。  健康保険法等の一部を改正する法律案について御質問をさせていただきます。  今回の制度改正は、医療保険財政の当面の危機を乗り切るものであるが、厚生省の試算では、今回の改正によって医療保険財政平成十一年度までしかもたないと説明されております。所得の伸びと関係なく伸び続ける医療費は、医療保険制度の財政を圧迫し、このままでは安定的な保険体制が築けなくなり、まさに深刻な状況であると思うわけであります。医療保険制度が安定的に運営されて、本格的な高齢化社会が到来する二十一世紀にあってこそ、すべての国民が安心して医療を受けることができる体制が確保されることが重要であると考えるわけであります。このためにも、二十一世紀にたえ得る医療保険制度としていくために制度の構造的改革を強力に推進していただかなければならないと思うわけであります。  医療保険制度の構造改革を行っていく前提として、なぜ国民医療費がこれほどまでに伸び続けてきたのか、その原因を押さえていく必要があると思います。医療費が伸びてきた原因をどのように分析しておりますのか、お伺いをしたいと思うわけであります。
  23. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 我が国の国民医療費の伸びでありますけれども、例えば平成六年度と七年度と比べてみますと、六年度が実績で二十五兆八千億円、七年度は、推計でございますけれども、二十七兆二千億円程度になるだろうというふうに見込んでおるわけであります。近年の傾向としましては、毎年約一兆円程度の規模で増大し続けているというのが実情でございます。  それで、問題は、この増加要因がどういうものがあるのかということでありますけれども、平成六年の国民医療費について分析してみますと、前年に比べまして五・九%増加をいたしております。  その内容としましては、人口の高齢化に伴ってどうしても医療費が伸びるわけでありますが、この高齢化に伴うものとして、そのうち一・五%ほどあるだろうというふうに見込んでおります。それから、人口がこの間ふえておりまして、人口増によるものが〇・二%ということで考えております。それからまた、診療報酬の改定等がございましたので、これに伴うものが一・九五%ということでございます。残りが約二二%程度残るのでありますが、この辺がこれまでも計数的にその要因を分析するのはなかなか難しいという内容なんでありますけれども、この内容として考えられますのは、一つには、医療サービスの内容充実してきている、それに伴って医療費が増嵩するというのがあろうと思います。  例えば看護体制の強化とか、そういうのが各病院で図られできますと、当然、それに伴う医療支出というのは増加いたしますので、医療費の伸びに結びつく。あるいはまた、医療内容が高度化していっているわけでありますが、医療内容の高度化に伴いまして、医療費というものが従来以上にかさんでくるということがございます。それから、末期医療などを見ますと、非常に高額のレセプトが増加しているということが指摘をされております。こういったものに伴う医療費の押し上げというものもあるだろうというふうに思います。それからまた、医療費に占める薬剤の比率というのがなかなか下がらないという問題がございまして、そういった中でこの医療費全体を押し上げているという問題等々がございます。  これらの内容が私ども考えられる要因として考えておりますが、それでは、それぞれについてどれだけのウエートで入っているのかということは、ちょっとまだ分析ができておりません。
  24. 桜井郁三

    ○桜井(郁)委員 ありがとうございました。  医療体制の内容充実だとか高度化によって医療費が伸びておるというようなお話があったわけでございますけれども、今、一カ月に二千万を超えるような高額な医療費もあると聞いておるわけであります。このような高額な医療費のあり方を考えていく上でも検討課題の一つではないかと思いますが、高額医療費はどのようなものなのか、もう一度詳しくお伺いをしたいというふうに思っております。
  25. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 医療保険制度、これは保険制度でございますから、最もリスクの大きい場合にそれをカバーするというシステムが一番望ましいわけでありますけれども、一方、今御指摘のとおり、一カ月二千万円を超えるような高額な医療費の支払いもございます。これは特に終末期の.ケースについて高額医療費が増加しているということが報告をされておるわけでありますけれども、先般、平成八年度の高額レセプト上位十位の診療行為別の点数割合というものが、健保連で調べたものが発表されておりますけれども、これらを見てみますと、心臓関係の手術に伴うもの等々、さまざまなものがございますが、いずれも、一カ月後あるいは数カ月後に死亡しているケースが非常に多うございます。こういった終末期というか末期医療のあり方、こういったものについては、やはりこれは死生観なり人生観というものと非常に関連するわけでありますけれども、この辺のところのあり方というものを国民的にきちんと合意を見ていく、そういったことも非常に重要だろうというふうに思っております。  それで、こういったような高額医療費の要因が例えば出来高払い制のもとでこういうようなことが起こってきているということであるとすれば、その辺の改善なりの工夫も必要だというふうに思いますし、この辺の非常に高額な医療のあり方というのは、この医療保険制度を考える上において裏腹の問題として考えていかなければならない。しかし、これはやはり、国民がどう考えるかという問題に帰着するわけでありますから、医療保険財政という面で考えれば、できるだけ高額な医療というものが改善されるのが望ましいのでありますが、しかし、患者さんあるいは家族の側に立った場合にどの程度までそういったケースについて納得が得られるかという問題もございますし、なかなか難しい問題であろうかというふうに思っております。
  26. 桜井郁三

    ○桜井(郁)委員 医療保険制度の運営を考えていく上で、医療費の伸びを抑えていくことが大前提であると、今の御答弁でもあったわけでございます。医療保険制度は、被保険者、保険者、医療提供者を主体として制度が成り立っているのでありますが、危機的状況にある医療保険制度を立て直していくためには、それぞれの主体となっている人たちが自分の責任と義務を果たしていく必要があると考えるわけでございます。そこで、構造改革を推進すべきという立場に立って、医療保険制度にかかわる人たちが今後ますますそれぞれの役割を果たしていく必要があると思うわけであります。  まず、診療を受ける患者医療提供する医療機関との関係についてお伺いをいたします。  医療保険では、患者は保険料や病院窓口での一部負担を払っておりますが、医療保険に限らず税金などの支払いでもそう思うのでありますが、税金や保険を支払っている人々にとって、そのお金がどこに使われているのか、また、制度の仕組みがどうなっているのか、よくわかっていないのであります。負担する人々にとっては、制度も複雑でなかなかわかりにくいのが現状であると思うわけであります。医療保険財政が苦しい中、保険料や一部負担金を支払っている患者の側にもわかりやすい医療提供していく必要があると思うわけであります。医療は高度に専門的な分野であり、自分がどのような診療を受けているのか、正しい診療なのか、回復に向かっているのかなと、患者自身にはわからないことが多いのであります。こういった患者の不安がいわゆるはしご受診を生じさせている面も否定できず、結果として医療費を押し上げていく面もあると思うわけであります。  そこで、医師は、患者に対して、診療の中身をよく説明し、情報を積極的に提供して、患者の不安を取り除いていく必要があるのではないかと思いますが、このような対策をどうしておられるのか、お伺いをしたいと思うわけであります。
  27. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 今お触れになりましたように、医療提供するに当たって、医療提供する側と受ける側の患者さんとの間の信頼関係に基づいて提供されるということが基本だと思いますし、また、その前提として、患者の方の不安を軽減できるよう、患者への適切な説明が行われるということが重要だと思っております。  現在御審議中の医療法の一部を改正する法律案におきましても、医療提供側が医療提供するに当たって、適切な説明を行い、患者理解を得るよう努める旨の努力規定を盛り込んだところでございます。こういうことを通じまして、医療従事者側からの医療提供に当たっての患者への適切な説明ということが今後一層推進されるとともに、またあわせて患者側からも、医師を初めとする医療提供側に情報提供を求めていくということが必要だというふうに考えております。
  28. 桜井郁三

    ○桜井(郁)委員 大病院患者が集中する傾向が強い現状において、三時間待ちの三分診療というようなことが言われておりますが、診療所病院がそれぞれの機能を生かし、相互に連携を図り、まず身近で第一次的なところ、すなわち開業医などで診療してもらい、症状に応じて二次的な高度医療機関へかかるようにするなど役割分担が明確になれば、このような弊害は少なくなるのではないかと思いますが、どうお考えでしょうか。
  29. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 我が国の場合、いわゆる三時間待ち三分診療ということが言われております。このことは、背景としては、患者さん側が受診をする医療機関を自由に選択できる、そういう制度のもとで結果的に大病院への患者集中が生じているというふうに考えております。  この問題を解消するためには、今お話ございましたように、まず身近な開業医あるいは診療所にかかる、それから症状に応じて専門医療機関に紹介をするといったような、病院診療所機能の連携あるいは分担ということを明確化していくことが必要だと考えております。  そういうようなことから、まずかかりつけ医を地域におきます第一線の医療機関として位置づける、それを支援する医療機関として、医療法の一部改正案の中にも盛り込んでおりますが、地域医療支援病院制度化をする、また、現在の地域医療計画というものを見直しをいたしまして、二次医療圏ごとに、地域医療支援病院の整備の目標あるいは療養型病床群の整備の目標等、それぞれの医療機関機能を考慮した医療施設の整備の目標を定めていく、こういったような内容を盛り込んでいるところでございます。  また、かかりつけ医を第一線の医療機関として位置づけるということから、かかりつけ医に対する在宅医療への積極的な取り組み、あるいは広告規制の緩和を含めました住民あるいは患者さんへの情報提供推進といったような施策を進めてまいりたいと考えております。
  30. 桜井郁三

    ○桜井(郁)委員 現在、診療報酬上、患者への説明評価しているものはあるのでしょうか。また、そのようなものについて、今後、積極的に評価していくお考えはあるのかどうかをお伺いしたいと思います。
  31. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 診察とか診断行為というのは、いわゆるインフォームド・コンセントといいますか、説明と同意ということに基づいて行われているものでありますから、そういった意味では、まさに診療報酬というのは説明と同意というものをベースにしてでき上がっているものだというふうに考えております。  ただ、その中で明確に、こういうふうな説明をきちっとし、あるいはそれを文書できちんと保存するという場合については、診療報酬上も一定評価をしてお支払いをするというものが別途ございます。  それを申し上げますと、例えば長期入院の是正といったような趣旨から、入院中の患者さんに対しまして、医師看護婦等が連携をして、文書によって診療計画というものを説明する、またその場合には、入院時医学管理料というのがございますが、これを加算するといった制度一つございます。  それから退院後の問題として、退院後における保健医療‘福祉サービスというものをきちっと説明して適切な退院後の療養をしていただけるようにする、こういった場合に指導料というものを設けております。  それからまた、外来のケースで申し上げますと、薬剤使用の適正化というような観点から、投与した薬剤の名称あるいは効能・効果とか、あるいは副作用に関する情報の提供、こういったものをやった場合に薬剤情報提供料というようなものが算定できるようになっておりますし、また、輸血の際に、これは文書によりまして、輸血の必要性あるいは危険性等について説明を行った場合について、これも所定の点数というものを計算をするというようなやり方等々、そのほかにもございますけれども、そういった形で患者さんに対する適切な説明なり情報の提供というものを評価していくといったような点数のシステムというのが現在も盛り込まれているわけでございます。
  32. 桜井郁三

    ○桜井(郁)委員 次に、保険者の取り組みについてお伺いいたします。  医療保険制度医療費を支払っている保険者もその役割をきっちり果たしていく必要がありますが、厚生省として、今後、保険者に期待する役割は何かをお伺い申し上げます。
  33. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 医療保険制度における保険者の役割というのがこれからますます重要になってくるというふうに思っております。  そういった意味では、保険者と被保険者の関係において一つございます。これはやはり、保険者が被保険者の便宜というものを考慮していろいろな情報の提供をしていく、あるいは被保険者にかわって適切な医療機関等についての情報提供をしていくとか、被保険者の選択というものの幅が広がるような、そういった機能というものもこれからの保険者の機能として期待されるところではないかというふうにも思います。  それからまた、保険者と医療機関というサイドからの機能というものもあろうと思います。保険者と医療機関のかかわり、この辺のところも、今後、保険者の自律性それから医療機関との協調というようなものも考えて、被保険者に対して適切な情報なりサービスというものが提供されるようなことを考えていかなければいけないというふうに思っております。  現在は、そういった意味では、専らレセプトのチェックとか、そういった内容を保険者は一生懸命やっておりますけれども、さらには、この辺の連携なり協調というものを図っていく。それからまた、被保険者の健康づくりといいますか、そういった対策というものも積極的に進めていく。そういった意味でも、幅広い機能というものを発揮していただいて、そして、国民が、単に病気になった場合に医療を受けるだけではなくて、日ごろからの健康というものを大事にするというような側面というものが保険者に期待されるのではないかというふうに考えております。
  34. 桜井郁三

    ○桜井(郁)委員 医療保険制度の中での高齢者の増加についてお伺いをいたします。  医療費の増加の要因として、老人医療費の伸びが全体の伸びを押し上げているという状況がありますが、高齢者の割合が高まっていく中で、老人医療のあり方の検討は今後の医療保険制度を考えていく上で大変重要な柱であると思うわけであります。  そこで、老人医療費の将来推計をどのように見込んでいるのか、また、国民医療費に占める老人医療費の割合についてはどのようになっているのか、お伺いをいたします。
  35. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 お答えを申し上げます。  今先生指摘のとおり、今後の高齢者の増加によりまして、老人医療費の増加ということが医療保険の医療費を大きく押し上げる要因になっていることは間違いがございません。  現在、平成七年度の実績見込みで、老人医療費、約八・九兆円でございます。これが今後、過去の医療費の動向等を一応踏まえまして推計いたしますと、介護保険を導入するということを前提にいたしまして、平成十二年度では約十兆円、さらに、平成三十七年度でございますけれども、約五十二兆円になるものと推計いたしております。  この場合におきまして、国民医療費全体に占める割合でございますけれども、先ほど申し上げました数字で申し上げますと、平成十二年度約三〇%、これが、平成三十七年度までいきますと約五〇%の水準になるというふうに見込まれるところでございます。
  36. 桜井郁三

    ○桜井(郁)委員 医療保険制度の安定化を図っていく上でも、今後の老人医療のあり方を根本的に見直す時期に来ていると思います。与党の医療保険制度改革協議会でも取り上げておりますが、新たな老人医療制度のあり方としてどのような制度を考えられるのか、お伺いをしたいと思います。
  37. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 老人医療制度につきましては、その抜本的な改革が必要であることにつきましては、私どももそのような認識に立っております。  ただ、具体的にどのような制度にするかは、これから検討をさらに深めてまいらなければなりませんが、先ほど先生お挙げになりました与党の基本方針におきましても、一つは、高齢者と若年者におきます心身の特性の違いというようなことを重視いたします観点から、別建ての高齢者医療制度を創設する案というものが提言をされております。さらに、職域あるいは地域別の保険集団としての一体性というようなものを重視いたします観点から、退職後も高齢者が医療保険制度に引き続いて継続加入する案というようなものも提案をされております。こういったいろいろな案を視野に入れながら、いずれにしても、老人保健制度、抜本的な見直しが必要であるというふうに思っております。  したがいまして、政府といたしましては、こういった与党の基本方針も踏まえまして、今後におきましては、高齢者自身の自立した高齢者像というようなものを念頭に置きながら、今後ふえる老人医療費というようなものを世代間でどう負担し合っていくかというような負担の公平の観点、あるいは介護保険制度との整合性というようなことを踏まえながら、国民的な合意を得られる案が那辺にあるかということで、今後とも引き続き早急にその抜本的な改革に取り組んでまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  38. 桜井郁三

    ○桜井(郁)委員 医療保険制度におきましても、高齢者の割合がふえていく中で、被保険者を構成する集団として、高齢者をどのように位置づけていくのか、お伺いをしたいと思います。
  39. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 医療保険制度におきます高齢者のいわば位置づけについてのお尋ねでございます。  高齢者の場合、その健康面ということを考えてみますと、非常に慢性疾患、こういったものを抱える、そういった特性がございます。そういったことから、どうしても病気になりやすい、そういったような病気になる危険性というものが高いという一つの特色がございます。  しかしながら、一方において、今後、老人の方々の増加によりまして医療費が大変大きなものになってくる、それをどのように負担し合うかという観点が非常に大事になってくる。一方におきまして、経済面におきましては、年金の充実等もありまして、全般的には、若人世代との経済的な格差というようなものが余りない、遜色のない状態になりつつある。  そういったことを踏まえまして、今後におきましては、高齢者を一方的に社会保障制度のいわば受け手という側面だけではなくて、みずからをも社会保障を支える支え手という位置づけにしながら、今後の、これは医療保険に限らないと思いますけれども、社会保障制度全体の中ではそのような観点からの位置づけというものを考えていく必要があるであろう、こんなふうに考えておるところでございます。
  40. 桜井郁三

    ○桜井(郁)委員 最後に、二十一世紀に向けて医療保険制度を安定化させていくには、抜本的改革が不可欠であると思います。抜本改革に当たっては、医療保険制度を構成している、保険者、患者医療機関などでありますが、抜本改革をやっていく中でこれらの主体の責任と役割を再検証して、医療保険制度をみんなで支え合っていけるような形で改善をしていく必要があると思うわけであります。このような観点から、抜本改革に対する大臣の決意をお伺いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  41. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 御指摘のとおり、被保険者も、そして保険者も、医療機関も、お互いの役割と責任というものを自覚しながら、これから医療保険制度の抜本的改革に取り組んでいかなきゃならないと思います。  被保険者は、お互い助け合うという観点から保険料を出して、保険料を負担していただく、また保険者は、この保険制度を安定的に運用するためにはどうしたらいいか、より多くの努力をしていただく、さらに医療機関においても、その費用を効率的に使って、良質な医療提供していただくということで、被保険者も保険者も医療機関も、お互いの責任をどうやって分かち合いながらそれぞれの役割を果たしていくか、そういう観点から、私は抜本的な改革に早急に取り組んでいきたいと思います。
  42. 桜井郁三

    ○桜井(郁)委員 どうもありがとうございました。以上で終わらせていただきます。
  43. 町村信孝

    町村委員長 青山二三さん。
  44. 青山二三

    ○青山(二)委員 新進党の青山二三でございます。  早速、質問に入らせていただきます。  急速に少子・高齢化が進む中で、国民医療費が年々ふえ続け、二十七兆円にも上っております。国家予算の三分の一を超えるまでになってしまいました。これからの日本を考えましたときには、国として力を入れなければならないのは予防医学であり、病気にならないという健康対策を行う必要があると考えておりますので、今回は、予防という観点から質問をしてまいりたいと思っております。  現在、我が国の医療を見ますと、病気にさせない医療より、病気を治す医療に重点が置かれているように思います。予防医学ということが主流にはなっていないというふうに考えております。病気は進行すればするほど治療は難しくなりまして、高度な医療技術を要求され、当然、治療費もはね上がってまいります。高齢化が進んでいる我が国にとりましては、国民の健康保持増進、疾病予防といういわゆる第一次予防は大変に重要な課題であると考えております。予防を重視した医療体制の確立が今こそ求められ、これが医療費抑制の大きな柱になることは間違いないと思います。  厚生省も健康づくり対策として、アクティブ80ヘルスプランやさまざまな保健事業、寝たきり老人ゼロ作戦などの施策を行っているということを聞いております。こうした健康づくり対策の実施状況とその効果についてお伺いしたいと思います。
  45. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 先生お話のございましたとおり、今後の社会にとりまして、社会自身が明るく活力に満ちたものであるためにも、国民の健康づくりということが大変重要な課題でございます。また、医療という側面から見ましても、予防対策を推進することによりまして発病を防止し、あるいは早期発見によりまして重症化を防止する、あるいは国民御自身が健康への自覚を高めていただくというようなことは極めて大事な課題でございます。そのためには、必ずしも高齢になってからということではなくて、若いときからの予防あるいは健康維持ということについての事業は大変大事だというふうに思っております。  厚生省におきましては、国民全体を対象にした、今先生お挙げになりましたアクティブ80ヘルスプランというような形での第二次の国民健康づくりというようなことで、昭和六十三年から、栄養、運動、休養といったもののすべての面でのバランスのとれた健康な生活習慣の確立ということでいろいろの施策を展開いたしておりますし、また高齢者という側面では、寝たきりは予防できるという一つのスローガンのもとに、これを国民の間にも意識として浸透させていただくと同時に、高齢者が寝たきりにならないような体制を整備するということで、いわゆる新寝たきり老人ゼロ作戦ということで、地域におきますリハビリテーションでございますとか、あるいは脳卒中、骨折等の予防のための保健事業の展開でございますとか、そういった総合的な施策の展開を図ってきております。  そのほかにも、健康教育あるいは健康相談、健康診査というような形で総合的にこの取り組みをいたしておりますし、そのことによりまして、少しでも寝たきり等にならない、あるいはより健康でおられるという状態をつくるような努力をいたしてきておるところでございます。
  46. 青山二三

    ○青山(二)委員 わかりました。  平成六年度の国保医療費の地域差指数を見てみますと、全国で最も医療費の安いところは長野県であり、また、一人当たりの医療費を見てみますと、一番高い北海道の約半分であります。このような医療費の地域差はどうして起こるのか、その原因について分析をお伺いしたいと思います。  また、こうした医療費の地域差是正のために厚生省としては今までどのような努力をされ、また、どれほどの効果があったのか、お伺いをしたいと思います。
  47. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 全国的に見ますと、医療費の地域差というのはかなり顕著に見られるわけであります。これはいろいろな要因があるわけでありまして、そもそも医療というものに対する県民なり市民の物の考え方というのがベースにあるだろうと思います。  そのほか、医療提供体制、いわゆるお医者さんの数とか、人口当たりの医師数とか、人口当たりの病床数とか、そういった医療提供体制に伴う格差というものがあろうと思います。  それから、高齢者が多くなりますとどうしても医療費が高くなりますので、そういった意味で高齢者の割合、これがどうなのか、そういった影響もございます。必ずしもこれは高齢者が多いところが高いということにはなりませんで、一般的な要因としてはそういったものが挙げられるということでございます。  それからまた、医療担当者側における診療行為、それの違いということがございます。例えば、同じような疾病であっても薬の投与量が違うとか、あるいはまた、レセプト等を見てみますと、一般的に医療費の高い地域というのは同一人に対してもかなりたくさんの疾病といいますか複数疾病が記載される例が多いとか、そういった診療行為による違いというのがございます。  これらの要因というものを踏まえてこの地域格差というものをどういうふうに考えていくのかということでありますが、私は、基本的には、医療というものは一種の文化的な要素がございますから、そういった意味での格差というものは全くゼロになるということはないだろうというふうに思いますけれども、余り著しい格差ということは制度的にも是正がされるべきであろうというふうに思っております。  そういった中で、一つは、全国を通じた、ある程度医療行為に対する標準的な物の考え方というものが普及される必要があるのではないかというふうに思います。これまでの取り組みの中ではそういった意味では必ずしも十分ではありませんけれども、例えば老人について包括化を進めるとか定額払いを進めるとか、そういった一つ点数の組み立ての中でそのような考え方というものが入ってきているのじゃないかというふうな気もいたします。  それからまた、基本は、先生指摘のとおり、予防なり健康づくり、これが基本でございますので、健康づくり等の保健事業というものを積極的に推進していくことによって地域格差というものを是正していきたいということがございますし、また、医療提供体制においては、過剰なベッドとか過剰な医療担当者がいるというようなことが是正され、地域に一番ふさわしい適正な医療提供体制というものが確立されなければならない、そういった意味では、地域医療計画というものをきちんと整備していくということが一つ大きな要因としてございます。  それからまた、これは全体に共通するわけでありますけれども、そもそも各市町村なり地域の医療費の格差というものがこんなにあるということについて国民の皆様に知っていただく、そして、これについてみずから考えていただくということも大切であるというようなことで、各市町村別の医療費マップというようなものを発表いたしておりまして、そういった中で意識の啓発というようなものも進めておるわけでございます。  そんなに広い日本ではありませんから、余りにも格差があるということは好ましいことではないというふうにも思いますが、これはかなり総合的な対応をしていきませんとこれの是正というのはなかなか難しいのじゃないかというふうに思っておりますけれども、私どもとしてできるだけの努力を今後ともしてまいりたい、このように考えております。
  48. 青山二三

    ○青山(二)委員 しっかり努力をお願いいたしたいと思います。  医療費が最も安いと言われております長野県は、周囲を山に囲まれて、歩く機会が多くて、さらに、医療に対する県民の意識が非常に高いと言われております。これは健康であるための重要な要因の一つになろうかと思いますけれども、しかし、もっと重要な要因といたしましては、長野県は昔から一人一人の健康診断を重視していることであり、このことは予防医学の観点からいいましても見逃せない事実であると思うわけでございます。  健康診断の受診率についても地域差が非常にありまして、この受診率の低い地域ほど老人医療費が高いというような相関関係があるのではないか、こんなふうに思うわけでございますが、いかがでしょうか。
  49. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 今お話しのございましたように、健康診断の受診率と医療費の関係につきましては、いろいろな研究が行われております。必ずしも全国レベルでの、全国を全部調べたという形での研究報告は今のところございませんけれども、地域的なものを分析しました結果によりますと、先生指摘のとおり、健康診査の受診率あるいは保健サービスに力を入れている度合いというものが高いほど診療費は逆に低いという相関は、そういった研究報告でも幾つかそういう形で出ておるところでございます。  私どもも、そういう効果を考えまして、今後とも、健康診査の受診の向上に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  50. 青山二三

    ○青山(二)委員 そして、当然のことでありますけれども、保険者の収支の状況を見ますと、医療費が最も低い長野県は、赤字保険者は一つもありません。医療費の節約に大いに貢献していると言えるのではないでしょうか。医療費の支払いの少ない地域というのはそれだけ国庫補助も少なくて済むということにもなるわけでございますが、このように大変努力をし貢献をしている地域をどう評価されますでしょうか。ちょっと通告はしておりませんでしたけれども、大臣の方から一言御答弁をお願いいたします。
  51. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 地域において、医療費が低い、しかし元気で長生きだというところとそうでないところ、それぞれ参考にすべき点、いろいろあると思いますが、同時に、その地域の人の考え方の差もあるのじゃないでしょうか。  長野県と北海道の例がよく出されますが、今話されなかった中に、長野県は、亡くなるときに在宅で亡くなっている人が多いのですね。北海道は、亡くなるときに病院で亡くなっている方が多い。これは単なる療養費、医療費というだけでなくて、考え方の差もあるのじゃないか。というのは、長野県の方々は、むしろ自宅で親御さんに亡くなってもらった方が親孝行であるという意識が強いという方がおられます。北海道では、むしろ自宅に置いておくと粗末に扱っているのじゃないか、末期においては病院に預かってもらった方が親孝行ではないかという気持ちを持っている方が多いという方もおられますので、この地域差というのは参考にしなきゃなりませんが、これからもそのような元気な地域、そして医療費をかけていないという地域、いろいろ実情を調べまして、予防は治療にまさる、これはまさにそのとおりだと思います。そういう啓発運動にも大いに力を入れていきたいと考えます。
  52. 青山二三

    ○青山(二)委員 そこで、健康診断についてでございますが、受診したいときに最寄りの医療機関で手軽に受診ができる、その中身も効果的なものにしていただきたい、このように思うわけでございます。そして、健康診断の受診率の低い地域には特に重点的に対策を進めていただきたいと思うわけでございますけれども、この点はどのような努力をされておられますでしょうか。
  53. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 御指摘のとおり、健康診断の受診率にまだ格差がございます。したがいまして、現在、保健事業のいわゆる第三次計画を進めておるところでございますけれども、目標の受診率を定めまして、それぞれ市町村に目安となります基準をお示しして、いわば努力目標をまずお示しをしております。また、その努力目標に対してみずからの市町村がどういう位置づけにあるかということを知ってもらい、また、自覚を促すという意味から、これも実施状況を指標化しまして、健康マップというようなものをつくるようにしましてその自覚を促しております。もちろん、と同時に、健康診断だけではございませんけれども、そういった取り組みが健康あるいは医療の面でいかにいい効果をもたらすかということについてのPRも当然やっておるわけでありますが、そういった目標をつくって公表しているというのが一方にございます。  その一方、今先生からもお話しのございました、受けやすくするということをできるだけやっていくということが大事だと思います。そういったことから、利便性を向上するということで、例えば最寄りの医療機関で都合のいい日に健康診断を受けていただけるというような、個別健診といったようなやり方を促進する、あるいはがん検診車といった車を整備しまして、できるだけ受診しやすく、また、受診する機会が得やすいようにしていくという努力を一方において進めてまいっております。こういった方向で今後も普及を図ってまいりたいというふうに考えております。
  54. 青山二三

    ○青山(二)委員 幸せなことに、国会では、毎年四月ごろでございますか、国会議員に対しまして健康診断をしていただいております。私も、大変健康には自信がありますけれども、きちっと毎年受けておりまして、異常なしということで一年間の安心を手にするというようなことでございます。ですから、国会議員の健康診断の受診率もどれくらいかなということでお聞きしたいこともございましたけれども、これはなかなか調べられないということでございましたので、ちなみに、厚生大臣はどのように健康診断を受けられて、健康管理にはどのように注意を払っておられるのか、ちょっと参考までにお伺いしてみたいと思います。
  55. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 私も、健康診断というのは前にしたのですけれども、して、何か苦しい薬を飲まされて結果的に何でもないというとき、何かやって損したなという気分もあって、苦しんだだけということで、これじゃ、する必要ないのじゃないかというような観点で、そんなに自覚症状がなかったらばしないということで、このところ、健康診断してないのです。  そのかわり、予防は治療にまさるということで、一番注意しているのは、食生活、運動、休養、これが一番大事じゃないか。正しい食生活、バランスのとれた食生活とそれから適度な運動と十分な休養、これ三つ全部とれないのですけれども、これを配慮するだけでも違うのじゃないかということで、この三つの、運動、休養、食生活、これをできるだけ心がけて病気にならないようにしていこう、余り健康診断しないのですけれども、何か自覚症状が出てきたらしなきゃいかぬなと思っております。
  56. 青山二三

    ○青山(二)委員 やはり健康と命を守る厚生省でございますので、厚生大臣としても、国民への啓発ということからもしっかり健康診断を受けていただいて、元気でハードなスケジュールをこなしていただきたい、このように心から思う次第でございます。  それでは次に、骨粗鬆症対策についてお伺いをしたいと思います。  子供を産んだ女性は、男性よりも骨がもろくて、骨粗鬆症になる割合が大変高いと言われております。それをそのまま放置いたしますと、骨折もしやすく、その骨折が原因で寝たきりになるということが多いわけでございまして、それがまた大きな医療費の負担になっていくことを考えますと、特に予防対策が必要ではないかと思っております。  骨粗鬆症に対しまして厚生省としてはどのような対策を行っているのか、お伺いいたします。
  57. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 男性、女性を問わず、近年、カルシウムの摂取不足でございますとか、あるいは運動不足というようなことを背景にいたしまして、寝たきりの原因にもなります骨粗鬆症が大変問題になってきております。そうした中でも、特に女性の場合には、先生もお挙げになりましたような出産時あるいは育児時における問題等がございまして、特に高齢者における骨粗鬆症の問題が非常に大きいところでございます。  このような観点から、つとに老人保健法におきますいわゆる老人保健事業の一環として、骨粗鬆症に対しまする重点健康教育というようなことで施策を進めてまいっておりましたのですが、さらに平成七年度からは、骨粗鬆症の検診を保健事業の中に位置づけまして、いわゆる節目健診と申しておりますけれども、今先生もお挙げになりましたように女性の場合が非常に問題だということで、四十歳、五十歳の女性に対しまして検診を実施いたしております。さらに、十八歳から三十九歳、もうちょっと若い世代の方々につきましても、家庭の主婦等を対象にいたしました婦人の健康づくりの一環といたしましてモデル事業などを実施して、これも平成六年度から補助事業として骨粗鬆症の対策、検診に取り組んでおるわけでございます。
  58. 青山二三

    ○青山(二)委員 それでは、この骨粗鬆症対策もしっかり取り組んでいただきたいし、地方への普及も力を入れていただきたいと思います。  それでは、次の質問に移ります。  老人保健福祉審議会が出しました答申には、当面取り組む課題として、高齢者の健康づくりについては、医療費及び介護費用の効率化の観点からも、今まで以上に積極的に取り組む必要があると提言いたしております。具体的な取り組みとして、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション等、地域におけるリハビリテーション提供体制の整備を図ることということを挙げておりますが、この点につきましては、厚生省はどのような取り組みを行っておられますでしょうか、また、今後どのような体制の整備をお考えでしょうか。
  59. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 いわゆるリハビリテーションの充実につきましては、一方において、今後における要介護のお年寄りの方々に対する対策をどう打つかということと同時に、そうならないための重要な柱という意味でも、いわば車の両輪のごとく進めていかなければならない施策であるというふうに考えております。  そういった観点に立ちまして、これもいろいろな側面からアプローチをいたしておるわけでありますけれども、脳卒中のリハビリテーションあるいは機能維持期のリハビリテーションにつきまして、ある種の取扱要領、マニュアルをつくりまして、これによってそれぞれの現場でこれを担当していただいている方々にリハビリテーションの推進に資していただくというようなことを初めといたしまして、老人保健事業の中におきまして、機能訓練というものを一つ事業として取り上げております。こういった機能訓練の実施箇所数をふやしていく、あるいは、先ほどもございましたように、受けやすくするための送迎車というようなものを整備していく、それから診療報酬の側面におきましても、リハビリテーションの部分評価充実していくということを逐年実施いたしてきております。  そういった意味での医療機関におけるリハビリテーション体制を充実していくというようなことを進めてきておりますし、また、先生もお挙げになりました訪問してのリハビリテーション、いわゆる老人訪問リハビリテーションというような面での指導管理料といったようなものを設定し、あるいは訪問看護ステーション、これを早急に整備するということで大車輪で整備を進めております。  こういった形でのいわゆる在宅におけるリハビリテーションというものの充実というようなことを今日取り組んでおりますが、今申し上げましたような、もろもろのリハビリテーションに関する施策を今まで以上に力を入れてやっていかなければならないというふうに考えておるところでございます。
  60. 青山二三

    ○青山(二)委員 私の住んでおります栃木県は、きょう、渡辺先生、栃木県御出身でございまして、この委員会にもお見えになっておられますけれども、脳卒中の死亡率が大変高い、ワーストワンと言われるほど高いのでございます。これはやはり食生活、辛いものが好きだとか、昼と夜の気温の差が大変大きいというような、いろいろな原因があるわけでございまして、そういうことで、何とか脳卒中の死亡率を低くしなければならないというようなことで施策もとられております。  栃木県と栃木県病院協会が脳卒中による死亡率を減少させる事業といたしまして脳卒中防止研究事業というのを行っております。その一環といたしまして、平成七年から九年にかけて合計四回、県内の全病院を対象にいたしましてアンケート調査を行いました。そして、すべての脳卒中患者を集計し分析いたしましてわかりましたことは、患者のほぼ四分の一が寝たきり、患者の四分の一が車いす、四分の一が介助が必要、四分の一がひとり歩きが可能、こういう状態でございます。四回やりましたけれども、この黒い色が寝たきりになる患者でございまして、四回とも同じような結果が出ておりますので、ほぼ四分の一が寝たきりになる、このような調査結果でございます。  ですから、脳卒中患者を寝たきりにさせない、そういうことからも、どうしてもリハビリ施設の整備が必要になってくると思うわけでございまして、特に強く設置を要望したいわけでございますが、通告してございませんでしたけれども、大臣、いかがでしょうか。寝たきりと脳卒中とそしてリハビリという関係から見て、どのようにごらんになっておられますか。
  61. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 一定の地域に脳卒中が多いというのは、食生活にも随分関係があるのではないでしょうか。それと、寝たきりの方が多いというのも、リハビリによってはそういう状態から免れるということでありますので、まず食生活に日ごろの心がけを持っていただく、そして不幸にしてそういう病気に見舞われたときには、適切な治療とリハビリの体制を整えるということが重要だと考えます。
  62. 青山二三

    ○青山(二)委員 それでは、次の問題に移らせていただきます。  病院がお年寄りのサロンになっているということが、この委員会でもたびたび指摘をされておりました。元気なお年寄りは地域の活動に参加をいたしまして、ゲートボールなどのスポーツを楽しんでおりますが、余り元気でない、しかし病院にかかるほどでもない、そういうお年寄りのためには、やはり健康についていろいろ話し合えるような場所とか施設とか、身近なところにそういうものを提供する必要があると思います。そうした対策が病院のサロン化を防ぎ、高騰する老人医療費の抑制にもつながっていくと考えております。  お年寄りの医療費の自己負担をふやして病院へ行く回数を減らすという、そんなことを考えないでこうした対策を進めていただきたい、このように思うわけでございますが、御答弁をお願いいたします。
  63. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 先生指摘のいわゆる病院のサロン化というような現象につきましては、これは、それぞれのお年寄りの方々にはそれぞれの御事情もあると思いますし、広く言えば、お年寄りの方々の生きがいをどう考えるかというようなところまで及ぶ側面があるだろうと思います。  しかし、疾病という側面に限りましても、お年寄りの場合には、幾つかの病気をあわせ持っておられる、完全には治らない病気が多い、また、老い先ということを考えるというようなことを考えますと、やはりそういった心の面、体の面での特性ということを考えなければならないというふうに思います。そうしたことから、健康に対する漠然とした不安というようなものも非常にあるというふうに思います。そういったことが一面、頻回に医療機関を訪れられるということにもなってくるであろうというふうに思います。  このような観点に立ちますと、もちろん疾病対策を十分にやるということは大事でございますけれども、あわせまして、健康への不安をいかに取り除いていくか、解消していくかということが非常に大事だと思います。  そういった意味から、市町村が主体になりまして、これも老人保健法に基づく保健事業の一環といたしまして、健康教室というような形で健康教育、あるいは気軽にいろいろ健康について御相談をいただけるような窓口というようなものを開設するというようなことを健康相談事業として行っております。今後とも、これにつきまして充実を図っていくということで、老後における健康の保持、あるいは健康不安の解消というようなことに努力をしていきたいというふうに考えております。
  64. 青山二三

    ○青山(二)委員 高齢化社会の中で民間活力の利国策として大変注目されましたふるさと21健康長寿のまちづくり事業について伺ってみたいと思います。  この事業は、有料老人ホームの周辺に疾病予防運動センター、高齢者総合福祉センター、在宅介護サービスセンターの各施設をワンセットで設置するものでありまして、日ごろの健康管理から医療機能訓練、介護まで、高齢者が求めるサービスを苦労しないで受けられることができるというメリットがあると聞いておりますけれども、この事業内容、特徴、目的について御説明をいただきたいと思います。
  65. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 ふるさと21健康長寿のまちづくり事業という、いささか長い名前の事業でございますけれども、これにつきましては、先生もお挙げになりましたように、民間活力を活用いたしまして、高齢者の方々が、住みなれた地域で、健康で安心し、また生きがいを持って暮らせるような地域づくりをどのようにするか、そのために高齢者のための総合的な福祉施設の整備をいわば民間活力でしていこう、そのための支援をしようという枠組みでございます。法律ができておりまして、この法律に基づきまして、民間事業者に対しまする各種の支援措置を講じております。  お挙げになりましたように、民間事業者の方々が、疾病予防運動センター、高齢者総合福祉センター、在宅介護サービスセンターあるいは有料老人ホームといったようなものを一体的に、計画的に整備をされるというときには、その計画につきまして認定を受けまして、それに対しましては、税制上の優遇措置あるいはいわゆるNTTの無利子融資というような助成措置を通じまして、民間の方々がこういった取り組みをしていただくということで、お年寄りのためにいわば優しい、あるいはお年寄りにとって幸せな地域づくりを進めたいということで始めておる事業でございます。
  66. 青山二三

    ○青山(二)委員 この事業がスタートいたしまして、ことして八年目を迎えるというわけでございますけれども、現在、町づくりが完成いたしておりますのは、平成四年四月、奈良県に開設いたしました奈良ニッセイエデンの園と、ことし三月、千葉県の松戸市に開設しました松戸ニッセイエデンの園の二カ所だけでありまして、今後の予定といたしまして、愛知県、福岡県、兵庫県の三カ所だけというものでございますが、なかなか全国的な展開には至っていないというような状況が見受けられます。  この事業は、高齢者が健康で安心して生きがいを持って暮らせる地域社会の形成に役立つ上に、健康維持や疾病予防にも大変に有効であると考えます。高齢化社会の中で民間活力を生かすものとして注目された事業が、なぜ全国的な展開となっていないのか、その要因をどのように考えておられるのかをお伺いいたしたいと思います。また、全国的な展開は望めるのかどうか、その見通しについてもお伺いをしたいと思います。
  67. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 現状でございますけれども、先生今お挙げいただきましたけれども、この四月に、もう一つ、愛知県の豊田市でオープンをいたしましたから、ことしの四月現在で申し上げますと、全国で五施設が整備計画の認定を受けておりまして、うち三カ所が既に事業を開始したという状況になっております。それにしましても、最初の意気込みからすれば少ないではないかということになるのだろうと思います。  私ども、民間の活力を活用して、こういった面で生き生きした事業展開を図るということは大事だと思っておりますけれども、それが必ずしも今までに多くの事業が展開をされるという状況になっていない点につきましては、いろいろな要因はございますけれども、一つには、やはり経済状況というものが影を落としておると言わざるを得ないと思います。始めました八年前に比べまして、その後、バブル崩壊と言われるような景気後退局面に入ったというようなこともございまして、やや足踏み状態が続いたということは否めないところであろうと思います。  しかし、最近になりまして、若干再度盛り上がりが出てきておりまして、平成六年末でいきますと、第二号施設がようやく認定をされて、それ以降、今、五号施設まで続いて認定が行われるということで、先ほど五カ所と申し上げましたけれども、それがずっとだらだらではなくて、ここへ来てばたばたと事業が展開をされているという状況もございますので、こういったことを踏まえまして、今後、そういった面での事業展開というものがある程度見込めてくるのではないかなというふうに思います。  もちろん、これはかなりそれぞれに規模の大きい事業でございますから、それぞれの置かれた地域でのある程度の条件が整いませんとそう簡単にはできませんし、余り安易な計画でやって後に悔いを残すようなことがあってもなりませんから、そういう意味では、いい事業ではあっても、そういった今後への見通しというものが、それぞれの事業についてきちっとした見通しを立てるということは一面において大事であろうというふうに思いますので、促進はしてまいりたいと思いますが、慎重にそこらを考えながら進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  68. 青山二三

    ○青山(二)委員 バブルの崩壊等があって経済状況の思わしくない点がそうした全国的な展開にならないという原因であろうということでございますけれども、せっかくのすばらしいアイデア事業が全国的に展開されないということは大変もったいない話でございます。最低でも一万平方メートルを超える土地が必要だとか、この四つの施設がワンセットだとか、いろいろな規制がかかっておりまして、そういう点からしましても全国的に広がっていかない要因があろうかと思うわけでございます。  ですから、各施設ごとに定められている規制を少し緩和するとか、いろいろな見直しをするとかということで、さらなる展開を図っていただきたいと思うわけでございますので、もう一度、御所見をお伺いいたします。
  69. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 このふるさと21健康長寿のまちづくり事業は、本当にその地域の高齢者のため、あるいは高齢者のための優しい地域づくりのために役立つ事業であるためには、それなりに条件が整っているということは一面大事だと思います。しかし、一方において、それができるだけ多くの人々に使われる事業としていくためには、やはり普及という側面を考えていかなければならないというのは、先生が御指摘のとおりだろうと思います。  そのような観点に立ちまして、御指摘のございましたような施設の規模の規制等につきましては、今後、民間活力ということを考えたときに、余りにそこらをぎちぎちやり過ぎるということについては、事業展開を妨げるゆえんでもございますので、今後検討していかなければならない課題であろうというふうに考えておるところでございます。
  70. 青山二三

    ○青山(二)委員 よろしくお願いをいたします。  さて、今回の健康保険の改正案は、一気に三倍近い負担増を患者に強いる内容となっております。一番心配なのは、自己負担の引き上げによりまして受診抑制が起こり、早期発見がおくれ、早期治療がおくれる、そういうことにつながっていくと心配するわけでございます。予防医学を推進するという観点がらも、どうしても納得がいきません。  自己負担増による受診抑制についてはどのように分析をしているのか、お伺いをしたいと思います。
  71. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 今度の医療保険改革で、一部負担の増額をお願いしております。これは、現下の医療保険の各制度が非常に財政的に窮迫をしている、このまま放置をしておくと制度そのものの存続が危ぶまれるという状況になっているわけであります。そういった中で、引き続いて制度の抜本的な改革というものをやっていかなければならないわけでありまして、まさにこの制度の抜本的な改革を実施していくということを前提として今度の制度改正をお願いしているわけでございます。  そういった財政が非常に逼迫している中で、医療保険制度というのは相扶共済の制度でございますから、保険料を負担している方と医療を受ける方とおるわけでありますけれども、そういった中での受益と負担の公平という点についても配慮していかなければいけないという問題がございます。  とりわけ今回の改正におきましては、お年寄りについても相応の御負担をお願いするということでございます。現行に比べますと、現在が一月千二十円の一部負担が二千円、四回までということでありますから、一回五百円で二千円ということになりますし、それから、薬についても新たに御負担をお願いするということになるわけでありますけれども、これにつきましても、現役の世代、若い世代とお年寄りの世代との負担の公平、バランス、世代間を通じた負担の公平ということがやはり必要でありますし、とりわけ、これから高齢化社会に向かいまして、そういった考え方というものをきちっとしていく必要があるというふうに考えているわけであります。  そういった中で、適正な受診というものが阻害されるのではないかということが言われるわけでありますけれども、従来に比べますと一部負担がふえるわけですから、そういった面での制約というものがあろうと思いますけれども、私どもとしては、この程度の御負担はぜひお願いをしたい、そして、医療保険皆保険制度というものが健全に今後とも機能するためにはこの程度は必要最小限の御負担ではないかということでお願いをしておるわけでございまして、そういった意味では、適正な受診というものが阻害されるということはないであろうというふうに私ども考えております。
  72. 青山二三

    ○青山(二)委員 適正な受診が阻害されることはないというような御答弁でございましたけれども、患者の立場から考えますと、必要な受診というのは、病気だということがはっきりして自覚があればすぐ医者に診てもらおうということになりまして、これが必要な受診ということになるわけでございます。  しかし、ちょっと体調が悪い、病気であるかないかわからない、必要であるかないかわからない、その判断がつきにくいときに受診抑制が起こる。ましてや健康診断の受診率が低い、こういう現在を考えますと、ちょっと体が悪いなと思うときにすぐ医者に飛んでいく、我慢しないで、お金の心配もしないで飛んでいく、こういうことがやはり早期発見・早期治療につながって、そして、やがてそれが医療費の抑制につながっていくと私は考えるわけでございます。予防医学をもっと推進すべきという立場から考えますと、受診を抑制することになるであろう今回の法案に関しましてはどうしても納得ができません。大臣、いかがでしょうか。
  73. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 私は今までの負担がむしろ若い人に比べて軽過ぎだと思うのであります。若い方々は、自分は病気にならないけれども保険料を負担している、このまま高齢者がどんどんふえる、この給付と負担の均衡をどう図るかということで、国民健康保険に入っている方は三割負担している、若いサラリーマンの方々はこれから二割負担する、なおかつ保険料を負担していながら病院に行く機会は格段に低い、高齢者は一月千二十円払えば何回診てもいい、これでは保険がもたない。どこかが必ず負担するということを考えるならば、今、それでは高齢者の負担をそのままにしていくと国民負担がふえないのかというと、そうではありません。赤字国債、また若い人にツケを回すのか、増税か、保険料を上げるのか、企業が持つのか、どこかが負担する。  ということを考えるならば、今回、高齢者がこれからますますふえていく、若い世代と高齢者との世代間紛争が起こらないように、高齢者も適切な負担をお願いしようということで千二十円を一回五百円にする、四回までは二千円、それ以上は変わりませんよということで、私は決して過重な負担だとは思っていません。そして、自分の健康と命にかかわる問題です。一回五百円を納めるのが嫌で受診を抑制するという人はごくごくまれではないか、やはり自分の命と健康を考えるのだったらば、その程度の負担はしていただくというのは私はやむを得ないのではないかと考えます。
  74. 青山二三

    ○青山(二)委員 私は、毎日暗い思いがいたします。国会に、また自宅に、そして宿舎に、毎日毎日、おはがきが参りまして、もうこうなったら、こういう改悪をするんだったら、病気になっても医者に行かずに死んだ方がましだとか、本当にそういう声が文字を通して耳に入ってくるわけです。ですから、本当に大変な思いをしているそういう人たちのためにも、今回の改正案というのは大変こたえているという思いがするわけでございますので、今後とも、いろいろな修正とか、またいろいろな対応を考えていかなければならないのではないかと私は思うわけでございます。  それで、先日の四月十日の日経新聞でございますが、  九五年度に健康保険などの公的医療保険から病院診療所などに支払われた医薬品の代金が、同年度に実際に使われた薬剤費の推定額を五千三百億円程度上回っていたことが厚生省の調べで明らかになった。との報道がございました。これは前回も質問に出ておりましたが、その後調査をされたことと思いますけれども、この内容について、これまでわかったことをお聞かせいただきたいと思います。
  75. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 この記事の内容につきましては、当委員会におきましても御説明を申し上げてきたわけでございます。繰り返しになりますが、これは厚生省が何か初めてこういったものを明らかにしたということではありませんで、これは某新聞にこういうようなことが載ったということで、このような前提で計算した場合どうなるのかという医療保険制度改革協議会におけるお話がございましたので、それを試算してみた、こういうものでございます。  そこで、この計算に当たって用いた統計データは、これはデータの調査の目的とか趣旨はそれぞれ異にしておりますし、それから調査時期とか期間、あるいは調査対象とか抽出率等の調査方法などもそれぞれ異なっております。また、推計値の誤差についても明らかではない。こういったようなものでございまして、それぞれの異なる統計資料というものを合成してみた結果五千三百億円というのが出た、こういう性格のものでございます。  したがって、その額が何か支払い超過になっているとか、そういったような性格のものではありません。したがって、この五千三百億というのはそれぞれの異なるデータを並べてみた結果の差がこういうような額ということでありますので、その要因というものを解析するというようなことは、これは難しいといいますか困難であるということで考えております。
  76. 青山二三

    ○青山(二)委員 すると、四月十日の日経新聞が間違った報道をしていたということなんでしょうか。
  77. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 日経新聞が間違っていたということ等々ではありませんで、要するに、今申し上げたようなことで五千三百億が出ているということでありまして、その五千三百億というものほどうして出たのかということになりますと、それぞれの統計データを合成してみると五千三百億が出てきておるということでありまして、それではその五千三百億の中身について解析できるかというと、それは難しいということであります。ですから、それぞれの統計データを合成してみると五千三百億が出てきておるということは事実でありますから、その限りにおいては、間違いどかそういうことではございません。
  78. 青山二三

    ○青山(二)委員 この五千三百億円、五千三百万円ではありませんよ、五千三百億円と申しますのは、私の住んでおります栃木県の足利市の一年間の一般会計予算にも匹敵する莫大な金額なんですね。それで、寄せ合わせてみるとこんな大きな差が出てきたということは、どうしてもこれは理解に苦しむ点でございます。  今、患者負担をふやそうという、ましてや年金生活者で大変な暮らしをしている方からもお金をふやして取っていこうというときに、この莫大な五千三百億円、これがどうも合わないということは納得がいかないわけでございます。ですから、早急にもっと実態をお調べになるとか、何か、いろいろな資料を集めてこれを解明する方法はないのでしょうか。
  79. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 私どもとして、機械的に算術計算計算すると今申し上げたようなことになっているわけでありますが、当然のことながら、相当巨額な差でありますから、その原因というものがどうして発生してきたのかということについてはいろいろ検討はしてみたわけでありますけれども、これを根本的に解明するためには、入り口から出口まで系統的に同じ手法ですべてを調査するというようなことがなければ、これは実際問題として解明は不可能であるというふうに考えております。  それぞれのデータがそれぞれの調査目的なり趣旨というものを持っておりますので、それが共通した形のものということではありませんし、また、調査時点、時期の問題等も異にしておるというようなことがございますので、そもそも、こういうような形で算術計算をしてみたこと自体があるいは誤解を生むもとになってしまったのかもしれません。しかし、これは求めに応じてこういうような計算をしてみたらということでやっておりますので、私どもとしては、これそのものについて解明をしていくということは困難ではないかというふうに思っております。  むしろ、今後のいき方として、薬の値段なり、あるいは薬の生産と保険請求との関係なり、あるいは薬価差の問題等々、いろいろな問題が指摘されております。そのことが薬にまつわる不透明性というものであろうというふうに思いますし、そういった意味で、この薬価基準制度そのものにつきまして根本的に見直しをしそして、薬についての不透明性というものを払拭していく、制度的にもそういうものを確立していく、こういうことが重要であろうというふうに考えておりまして、まさにそういう方向でこれからの抜本的な改革に当たっては考えていきたい、このように考えております。
  80. 青山二三

    ○青山(二)委員 局長は、この問題を解明するのは大変困難だとおっしゃっておりますが、それでは、大臣の御所見はいかがでしょうか。
  81. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 統計というのは、調査対象とか標本とかによってそれぞれ違ってくると思いますが、現実の、実際に携わっている方から聞いてみると、この解明は困難だということであります。むしろ私は、今後、こういう不透明性がないような薬価基準を決めた方がいいのではないか、前向きに今のような制度を改めるという方向に持っていきたいと思います。
  82. 青山二三

    ○青山(二)委員 それでは、最後の質問になるわけでございますが、今回の改正案につきましては、国民の合意を形成する努力が余りにもなされていないと思うわけでございます。国民の合意を得るためには患者負担以外の制度改革への切り込みが必要であることは、もうだれの目にも明らかでございます。さらに、今後二十年間の高齢化率が一〇%程度上昇する、こういうことが予想されておりまして、経済成長も高成長は望めない、こういうことを考えますと、ここで本腰を入れた抜本対策を講じませんと、医療費の国民所得比は間違いなく急膨張しまして、国民生活にも大きな支障を来すことになりかねないのであります。  そこで、こうした抜本改革の道筋ができますまで改正は見送るべきであると考えますけれども、大臣の御所見はいかがでしょうか。
  83. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 だれでもこの国民皆保険制度を維持していこうと思っていると思います。保険に入っていると適切な医療が受けられる、この制度を安定的に運営していくためには、国民全部が給付を受けると同時に負担をしていくということでこの制度は成り立っていくわけでありますので、その給付と負担のあり方については、今後、国民各位の理解を得られるような格段の努力が必要だと思います。  そして、その給付と負担の均衡を図るためには、患者さんの負担、そして、若い人でもお年寄りでも払っていく保険料の負担、そして、公費、税金、また企業の負担、この組み合わせしかないわけですね。ということを考えますと、どこかの負担が重いから嫌だというと別のところにしわ寄せが来る。だれがどの程度適切な負担をして、また、よりよい給付を受けるかということを考える場合に、私は、今後、抜本的な改革が必要だと思っています。  今、本委員会で言われているように、出来高払い制度だけでいいのか、定額・包括払い制度をより拡大した方がいいのではないかという議論もあります。同時に、医療提供体制のあり方、さらには、薬剤費のかなり大きい費用というものを、薬価を決める基準というものを抜本的に見直したらいいのではないか、それらを総合的に見直す時期に来ていると私は思っております。  ただ、この総合的な見直しをするまで今回の改革はなしにしろという御意見でありますが、私は、この程度の負担で嫌だと言うのだったら総合的な改革はできないと思っています、率直に言うと。どんな改革をしてもこの程度の負担は必要だと思います。この程度の負担を回避して、それでは総合的な改革があり得るかというと、そうでない。どんな改革をしても今程度の負担は必要だ。でありますから、今後、この制度をやったとしても、総合的な改革には時間がかかります。その間、赤字財政を放置していくのか、それでは保険財政はもたない。総合的な改革をするにしても、来年度はできないと思います。時間がかかる。その間、保険財政の安定的運営を図るのも重要ではないか。  それぞれ不備な点、足らない点があると思いますが、私は、今回の案を段階的な案として御理解をいただき、できるだけ早く総合的な、抜本的な改革案をまとめて、皆さんの批判に供したいと思います。
  84. 青山二三

    ○青山(二)委員 時間が参りましたので終わりますけれども、私は、その道筋が反対だと申し上げているわけでございます。抜本改革をして法改正をすべし、このように思っておりますので、今後ともよろしくお願いをいたします。  大変ありがとうございました。
  85. 町村信孝

    町村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十分休憩      ――――◇―――――     午後一時三分開議
  86. 町村信孝

    町村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。大口善徳君。
  87. 大口善徳

    ○大口委員 新進党の大口でございます。  今、前の宵山委員からも御質問がありましたが、大臣の答弁にちょっと私は疑問に思うところがありましたので、そこからまずお伺いをさせていただきたいと思います。  私たちは、この抜本的な改革というのは、やはり財政的な危機、これが改革への圧力になる、こういうふうに考えております。今、非常に大変な状況であるということは、これは否定するものではありません。ですから、この財政的な危機というものを改革の圧力にして、そして抜本的改革を今やらなければ、またこの財政的な危機を一時しのぎ、三年間一時しのぎをしてということで抜本的改革がなされないのじゃないか。朝日新聞等でも指摘をされておりますけれども、そういうことが指摘をされております。  今回、今大臣が、来年度は抜本的改革ができない、こういう答弁がありましたけれども、しかし、本当にそれで国民が果たして負担増を納得していただけるのか。こう考えますと、これは例えば薬価の問題ですとか診療報酬の問題というのは、もう思い切ったことを来年には法案として通させる、そしてまた引き続き抜本的改革の第二弾を打っていく、それぐらい第一弾、第二弾という形で立て続けにやっていかなければ納得が得られないのじゃないか。そういう点では、今回、負担増ということよりも、まずは第一弾としては思い切った改革、それにセットして負担増を盛り込むというようなお考えはどうなのかということを私はまずお伺いしたいと思います。
  88. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 お気持ちはわかります、抜本的な改革をやれと。しかし、三十年間できなかったのですね。それも考えていただきたい。そして、財政的な逼迫状況だからこそ、抜本的改革をしなきゃならないという機運が出てきたと思うのです。不十分だといいながら、ともかくまとめた。このまとめた経緯を見ても、関係者の御努力、大変です。政党間においての意見の調整も、一方ならない御苦労をいただいた。  そういうことから、抜本的改革案をこの法案成立後直ちに厚生省が出したとしても、すぐ法案化するためには、国民理解を得なきゃなりませんから、早急に抜本改革案を厚生省案としてまとめたとしても法案化するまで一年間かかるのじゃないかという点を私は言ったわけであります、来年は無理だというのは。そして、抜本的改革案であればあるほど、各界各層の理解を得なきゃなりません。用意周到な準備が必要だと思います。案を出したから、ただこれに従えと言ったって、これは大変なことです。そういう意味において、私は、抜本的改革案をことし出したとしても、法案化するには少なくても、どんなに早くても一年かかるのじゃないか、そういう観点から、まずは段階的な今回の案を御協力いただきたいということでお話ししたわけであります。
  89. 大口善徳

    ○大口委員 今の大臣の御答弁では納得はできないのです。特に早く改革できるものもあると思うのです、性質によって。それから、若干時間のかかるものもあると思うのです。ですから、まず第一弾は一段ロケットをセットで出すべきだ、こう言っているのですよ。そこはどうですか。
  90. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 一段ロケットが今回の案であります。その辺を御理解いただきたいと思います。
  91. 大口善徳

    ○大口委員 全く納得できないわけでございますけれども。  また、今回の改革につきまして、非公式に四党協議が行われております。これは、国民の目から見て非常にわかりにくい。そして、成立を前提にして小手先のことをやる。例えば、今度、五月一日施行、これは不可能になりますので、その施行のことをどうしようか、また薬剤について、一日一種類十五円ということについてどうしようか、こういう小手先なことで、あとは、抜本的改革はその非公式の四党会議でどうなのかわからない、こういうことが国民にとって非常に見づらい、見えないことではないかと思うのですね。  何のために国会があり、何のために厚生委員会があるのか。この厚生委員会の土壌で、そして国民の本当に代表としての我々が、いろいろな考え方、これを闘わせていく、その中に私は本当の、社会保障制度の一番大事な医療保険制度の改革のスタート、また基本があるべきじゃないかと。ですから、私は、今の非公式な協議でもってどんどん進めていくというやり方は反対です。その点について、大臣のお考えはどうですか。
  92. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 議院内閣制、政党政治の民主主義下においては、それぞれ協議の場があると思います。当然、この委員会も協議の場であります。今回、与党三党そして民主党と非公式な協議が今始まっておりますが、各政党の内部においてもさまざまな意見が交錯している。その政党内を一つの意見にまとめていく努力も政党に期待されておりますが、その政党間で、政党内でまとめたものをさらに与党三党でまとめなければならない。この与党三党でまとめたものをさらに、今、これから民主党とも協議をしているという話を私は聞いております。当然、この協議の中では、本委員会での議論を踏まえた協議が行われていると私は理解しております。  この委員会でまとまればそれにこしたことはないのですが、各政党のよって立つ立場も違います。この委員会でまとめるといったって、これは現実の問題としてこの委員会でまとめるというのもなかなか難しいのではないか。私は、非公式の場で協議があってもいいのではないかなと。しかし、最終的に決めるのは本委員会であり、本会議でありますから、その点は、それぞれの場で議論がなされて、しかるべき結論が出されるということを私は期待しております。
  93. 大口善徳

    ○大口委員 こういう医療保険改革の問題といいますのは、これは本当に国民にとって極めて重大な問題であります。私も、災害対策基本法というのを災害対策委員会でやったときに、我が党は五つの修正案を出しまして、与党も新進党の案がいいだろうということで、結局、大幅な修正で法案が通った例がございました。災害対策基本法というのは、国民にとって非常に基本的な、生命と財産を守る大事な基本法であります。それと同じように、この法案というのはやはりきちっと委員会というところの中でやっていくべきではないか、そう考えております。  そこで、五月一日施行というのは不可能になりました。今後の対応についてはどう考えておりますか。
  94. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 きょうは四月三十日ですから、これは幾ら何でも五月一日を期待していると言えないのはわかっています。もう五月一日は不可能だと認めざるを得ません。しかし、できるだけ早期に成立させていただきたい、その努力に期待しているところであります。
  95. 大口善徳

    ○大口委員 それでは、次に、医薬分業についてお伺いしたいと思うのです。  分業元年、一九七四年から二十三年たつわけでございますが、その医薬分業が進んでいない。やっと二〇%台になった。そしてまた、地域によって非常に格差があるわけです。これは、平成七年でいきますと、佐賀県は五〇%近くにいっている。ところが、これは都道府県の名前は出しませんけれども、三%台しかいっていないところもあるわけです。こういうふうに都道府県別の医薬分業の進展度が全然違うということについてどういうふうに考えているのか、そしてまた、その中で面分業がどれぐらいの割合になっているのかというような分析についてお伺いしたいと思います。
  96. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 医薬分業の進展につきまして、お話しのとおり、大変進んでおるところは、分業率が五〇%近い県もございます。こういったような進展をしている地域におきましては、どうしてうまくいっているのかということでございますけれども、幾つかの事項がございまして、一つは、医療機関あるいは処方せん発行医の理解が進んでいる。また、応需側でございますが、地域の薬剤師会などに医薬分業に熱心な世話役、指導者の方がおられまして、備蓄の医薬品対策あるいは処方せん発行医療機関との協議、処方せん調剤実務に関する研修あるいは処方せんを受け取る患者さんへの普及啓発ということに取り組んでいるといったようなごとが挙げられているわけでございます。  分業が進んでおらない府県におきまして、本年度から、二次医療圏ごとに現状の分析をしながら、地域の実情に合わせて医薬分業の計画的な推進を支援することにしておりまして、これらの地域においても分業率の一層の向上を図ってまいりたいと考えております。  また、面分業につきましては、面分業といいますのは、いわゆる第二薬局あるいは門前薬局との対比で用いる言葉でございますけれども、処方せんを受け取った患者さんなどが、自由にかかりつけ薬局を選択することによりまして‘複数の医療機関からの処方せんを特定のそういったかかりつけ薬局などに持ち込める、こういうことを面分業と称しており、いわば理想的な分業の形態であると考えておりますけれども、この具体的な定義が面分業ということで必ずしもあるわけではございませんで、分業率との横並びで定量的に示すということは現在のところ困難だろうと考えております。
  97. 大口善徳

    ○大口委員 分業率の上位五県、そしてまた下位五県について、どうして分業が進み、あるいは進んでいないのかということの分析について、今、一般的なことをおっしゃったわけでありますけれども、そういうふうにきっちりとした、例えば備蓄がきちっとしているとか、受け入れ体制があるとか、あるいは薬剤師関係が非常に熱心であるとか、こういうことについてしっかりと分析した上での今の答弁なんですか。
  98. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 これは、各都道府県の薬剤師会にとりまして大変大事な問題でございまして、当然、各都道府県ごとにかなり綿密に分析をいたしております。特に、医療機関もそうでありますけれども、休日・夜間の応需体制、これが一つの柱でございまして、地域薬局を輪番制にして対応するとか、あるいは地域の医療機関の当番医制といったようなものに合わせて薬局も対応するとか、その他、薬局店頭へ休日・夜間の対応を掲示するとかといったような工夫をしながら、具体的に、どういう場合でも応需体制ができる、こういう体制の整備が基本でございまして、医薬分業の基盤整備といたしましては、そういった備蓄体制と並んで、休日・夜間においても応需できるという体制をいかにつくっていくかということであろうかと思っております。  したがいまして、分業が進んでおります地域では、当然ながら、休日・夜間の当番医制に対応する形で地域薬局の対応もしておりますし、そういう意味では、分析をする場合に、そういった備蓄あるいは休日・夜間の応需体制がどうかという視点から分析することによりましてかなりのデータの整備を図っているところでございまして、私どもも、促進方協力してまいりたいと考えております。
  99. 大口善徳

    ○大口委員 大臣、もう二十三年たっているのですね、医薬分業ということを言ってから。  それで、全国で分析が十分なされていないと思うのですね。今、若干そういう話がございましたけれども、これはやはり、進んでいるところと進んでいないところの分析をしっかりした上で、これから医薬分業の計画というのも推進していくわけですから、全国的な調査をきちっとやるべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  100. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 医薬分業体制を整備、促進して いくためにも調査は必要だと思います。これからも、どうしたら国民理解を得ながら医療関係者医薬分業促進体制をとっていただけるか、積極的に対応をしていきたいと考えます。
  101. 大口善徳

    ○大口委員 また、医薬分業が進んでいるということと薬剤比率の関係、やはりこれについて調査をすべきであると思います。もちろん、医薬分業というのは薬剤費適正化だけではないわけでございますけれども、今、この点が非常に注目されているわけであります。昭和四十三年、上田市において研究があったり、あるいは平成三年に大田区など四地区で費用対効果についていろいろと調査をしておるわけでございますけれども、この点についてお伺いしたいと思います。
  102. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 医薬分業に伴う薬剤費の問題でありますけれども、医薬分業率の高い地域と余り進んでいない地域との薬剤費の比較、これは全国規模で比較したデータは現在ございません。しかし、これは、今後このデータというものをきちんと調査して、解析していく必要があるというふうに考えております。  ただ、これまで院内投薬の場合といわゆる医薬分業で院外投薬の場合、これを比較したデータはございまして、一回当たりの薬剤費につきまして平成六年のデータを見てみますと、院内投薬の場合が三千三百四十三円でございますが、院外投薬、薬局での院外投薬の場合は二千六百三十円ということでございまして、約七百円ほど院外投薬の方が金額が低い、こういうデータはございます。
  103. 大口善徳

    ○大口委員 これについても、しっかりこれから調査をしていただきたい、こう思っております。  一九九四年の八月から十月、千葉大学医学部の公衆衛生学教室ですか、ここで、「外来患者医薬分業に対する意識を規定する要因」という調査研究が出ております。  これを見ますと、その「結論」の部分で、「医薬分業によって自宅の近くの薬局で調剤を受けることができ、待ち時間の短縮がはかられれば、多くの患者に受け入れられることが示唆された。」また、「薬局・薬剤師に対しては薬の副作用、相互作用等の説明を希望するものが多く、薬歴管理服薬指導についての期待も大きい。」こういう条件整備をすれば、患者さんの方にとっても、これはかかりつけ薬局の方に流れていくということで、いい形に面分業が進んでいくと思うのですね。  そういう点でかかりつけ薬局、門前薬局ではない、第二薬局ではないかかりつけ薬局の推進、そして、それに対してどうこれを進めていくかというこの体制につきましてお伺いしたいと思います。
  104. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 かかりつけ薬局の推進のための支援体制でございますけれども、現在、薬局の受け入れ体制の整備の観点から、医薬分業推進支援センターの整備の補助などを行ってまいっております。また、診療報酬上も、かかりつけ薬局を中心とした面分業体制の推進薬剤師業務充実に資する評価を行っておるところでございます。  また、加えまして、本年度から、二次医療圏ごとの現状分析を踏まえまして、当該地域の実情に即した医薬分業の計画的な推進に係る都道府県の取り組みを支援する医薬分業計画策定事業を実施することにいたしております。二十余の都道府県を対象にする予定でございます。  こういったようなことによりまして、かかりつけ薬局の推進あるいは支援体制の充実を図ってまいりたいと考えております。
  105. 大口善徳

    ○大口委員 特に、二十四時間体制というのは、応需体制というのは非常に大事になってくると思います。そういう点で、調剤支援センターの充実を図っていかなければいけない、こういうふうに思います。  医薬情報につきまして、一つは、かかりつけ医やかかりつけ薬局にいろいろなことを気軽に聞いていくということが大事です。しかし、それがなかなか今進んでいないという状況のもとにおいて、医薬情報の提供体制というのは非常に大事になってくると思います。  それにつきましては、国そしてまた都道府県の薬剤師会でその対応をしておるわけでありますけれども、特に都道府県につきましては、薬剤師会で二十八センターあるわけですが、四十七都道府県全部そろってはおりません。また、国におきましては、そういう体制もあるわけでありますけれども、これが消費者くすり相談室という形で開設されておるわけですが、月曜日から金曜日、皆さんが働いているときで、祝祭日、年末年始がない、それから、午前九時から五時だということであるわけですね。  ですから、こういうことにつきましては、もっと積極的に医薬品の情報提供をしていく、そのために、大阪にもこういうセンターがないそうなんですけれども、全国一カ所だけじゃなくて、東と西ぐらいに置く、あるいは都道府県でまだ空白のところについては充実する、こういうようなことを考えるべきではないか、こう思っておるのですが、いかがでしょうか。
  106. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 先生お話しのとおり、医薬品の情報の提供というのは、医療機関におきます医師薬剤師の方を通じて、あるいは薬局におきます薬剤師の方を通じて患者さんあるいは消費者に提供されるのがまず原則でございますけれども、それを補って、消費者の皆さんからの薬相談に対応するということで、医薬品の適正使用という観点から、国あるいは都道府県薬剤師会がお話のような薬相談事業を実施をしておりまして、厚生省平成六年度から医薬品機構の薬相談事業に補助を行っております。  この医薬品機構の薬相談事業は、日本薬剤師会と日本製薬団体連合会の連携のもとに、どこに相談をすればよいかわからない一般消費者の第一義的な窓口として、可能な限りここで相談をしていただき回答していくという仕組みをとっておりまして、相談内容のうちで他の関係諸機関において対応することが適切なものについては、その機関の紹介を行っているというところでございます。  また、お話の都道府県の薬剤師会、二十八カ所ということでございますが、相談センターにおきましては、身近で相談ができるということで、消費者からの薬相談体制を整備いたしております。また、各製薬企業もそれぞれ相談窓口を設けておるわけでございますが、この中で、今お話しの医薬品機構の休日・時間外という点でございます。  現在までのところ、電話の自動メッセージによる受け付けを行っておりますけれども、休日・夜間の電話照会は必ずしも多くはないということでございます。恐らく、休日・夜間につきましては、緊急を要するということで、当番医あるいは開かれている薬局に相談するという事例が一般的だろうと考えておりますけれども、休日あるいは時間外への対応につきまして、ファクシミリあるいは電子メール等による時間外の相談を受け付けるといったようなことも可能でございますので、こういった点について検討してまいりたいと考えております。  また、二十八の都道府県薬剤師会の相談センター以外の活動につきましても、今後拡充をするように関係者へも働きかけをしてまいりたいと考えております。  また、医薬品の安全情報につきましては、消費者の方が直接アクセスできますような情報システムを、現在、医薬品機構に構築中でございます。これができますれば、消費者の方が気軽に医薬品の情報に接する機会になりますので、このような構築につきましても推進をしてまいりたいと考えております。
  107. 大口善徳

    ○大口委員 また、これは朝日新聞の朝刊の全国掲載ということで、日本薬剤師会におきまして、デット・ジ・アンサーズということで、薬剤師さんにいろいろと、例えばこの薬の名前は何か、何に効くのか、注意することは、副作用は、他の薬や食物との飲み合わせば、こういうことでデット・ジ・アンサーズということをやっと日本薬剤師会が新聞広告等で運動を始めた、こういうわけでございます。  これにつきましては、一九八三年にアメリカで、FDAが中心となってデット・ジ・アンサーズ・キャンペーンというのが、これがなされたわけであります。ソリブジンの事件等の問題もございますし、気軽に患者がお医者さんあるいは薬剤師さんに、この薬の名前は何なのか、副作用はどうなのか、飲み合わせばどうなのかということが聞けるような体制をつくらなければいけない、こう思っておるわけです。  それで、草川昭三議員が、これは八六年に質問主意書を送っております。それに対して回答が政府から寄せられているわけですけれども「同様な運動を実施することについては、医療機関等の理解と協力も必要であり、関係者の意見を参考にして慎重に検討してまいりたい。」こういうことが回答であるわけです。  八六年ですから、もう十一年たっている。十一年慎重に検討しておるわけでございますけれども、やはりこれは日本薬剤師会だけではなくて医師会が非常に大きな役割を果たしていかなければいけない。そういう点で、厚生省が中心になってこういうデット・ジ・アンサーズ・キャンペーンみたいな運動をしていくべきである、こういうふうに考えておるわけです。インフォームド・コンセントが非常に叫ばれておる、こういう状況でございます。この運動について、前向きな御答弁を大臣にお伺いしたいと思います。
  108. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 デット・ジ・アンサーズ・キャンペーン、答えをもらおう運動というのですか、どういう薬を使われているのか、患者さんにしてみればその答えが欲しい、よく説明してほしい。これは、インフォームド・コンセントの説明と同意、よく説明して同意を得てから治療をするというお医者さんと患者さんとの問題と軌を一にしていると思いますので、医療関係者患者との信頼関係を得る上においても大事なことだと思います。今後、このように、医療関係者患者さんとの信頼が確立されるような、このような運動に対して厚生省としても積極的に対応を進めていきたいと思います。
  109. 大口善徳

    ○大口委員 積極的にという、十一年待ったわけでございますけれども、具体的にはいつごろまでにこういう運動をやっていくということをお答え願えますか。
  110. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 今大臣から御答弁ございましたように、いわゆるアメリカが始めたデット・ジ・アンサーズ運動というのは、現在、薬剤師会が中心になってやっておりますけれども、むしろ医療提供者全体が患者さんに対して十分に説明をして理解を求めるというような観点から、できるだけわかりやすい情報の提供、そういうことから、今お話のございましたことについて具体的にどういうふうに広めていけばいいのか、積極的に検討いたします。
  111. 大口善徳

    ○大口委員 次に、薬価の問題について、高薬価というものが繁用されている、臨床効果が乏しいにもかかわらず高い薬価の医療品が繁用されている、こういう問題があります。この委員会におきましてもいろいろな事例が指摘をされております。  九一年七月二十九日付の「フォーチュン」で、日本で繁用されているけれどもアメリカでは許可されない薬の代表というようなことで、五つの例が出ておるわけであります。  そういう中で、例えばクレスチンというのは、もう今まで何回も名前が出てきましたが、これは七六年に許可をされて、八九年の再評価で単独使用の効果を否定、補助の補助という形になったわけでありますね。これは十三年も再評価までにかかっているわけです。その間、発売して四、五年で年商売り上げ五百億超、最高時が七百億、これは八七年、八八年の推定だそうですが、ちょうど再評価の前年まで七百億近く売っている。九〇年で何と二百億、九五年で九十億といまだに九十億近いわけでありますね。  こういうことで、医薬品の効果について、効果は乏しいのにかなりの売り上げが継続をしている。これは私は本当におかしいことではないか、こう思っておるわけですけれども、この点、いかがでしょうか。
  112. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 新たに承認された医薬品につきましては、承認までに相当な臨床試験をやっておりますけれども、承認までの治験には限りがありますことから、承認後一定期間が経過するまでに、その間に企業が実施した使用成績などに関する調査に基づきまして安全性、有効性を確認する再審査の仕組みが設けられております。  また、承認された医薬品が比較的長く使用された後、その時点におきます医学、薬学上の学問水準に基づいてその医薬品の有効性、安全性の見直しを行うということで、医療上の有用性を再確認する再評価制度も設けております。  これらの仕組みによりまして、提出された資料に基づき中央薬事審議会で専門的な審議、評価を行いまして、承認どおりの有用性を認めていくもの、あるいは承認事項の一部を変更して有用性を認めるもの、あるいは有用性が認められないものといったような三つのカテゴリーに分けて再審査、再評価を行って、その結果を公表いたしておるところでございます。  今お話ございました米国経済専門誌「フォーチュン」誌に掲載されました五医薬品につきましても、それぞれ再評価を指定し、あるいは再審査を終了し、その結果、有効性、安全性が確認されたということで、効能・効果の変更の必要がないというものもございますれば、今お話しのように、再評価の結果、一定の効能を削除したというものもございます。  いずれにいたしましても、これらにつきまして、再審査、再評価を厳正に行うことによりまして医薬品の有効性を確保してまいりたいと考えております。
  113. 大口善徳

    ○大口委員 また、前回、ゾロ品のゼネリックのことにつきまして議論がございました。このゾロ品といいますか、これに対する評価、いろいろあると思うわけでございますが、まず、このゼネリックというのは、これは全く効能が同じである、要するに生物学的な同等性、バイオアベラビリティーといいますか、これをきちっと評価することをしていかないと、ゾロ品に対する信頼性が確立てきないと思うのです。この点についてどう考えておりますか。
  114. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 後発品につきましては、先発品との有効成分、分量、用法・用量、効能・効果ということにつきまして同一性の調査を行いまして、同一性が確認された場合に承認をいたしておりますけれども、一方で、医学、薬学の学問水準の進歩に伴いまして、医薬品の溶出性試験を行うことによりまして製品間やロット間の同等性の確認をすることが可能になってまいったということで、また、医薬品の中で、長時間にわたって医薬品が持続的に放出されるように設計される錠剤、徐放剤と言っておりますが、あるいは水溶性の高分子物質で錠剤の表面を覆ったフィルムコーティング剤、こういったようなものが出てまいりまして、製品間あるいはロット間で溶出性に差が起こり得るのではないかという指摘もありますところから、今般、本年の二月にこれらの成分の一定部分を再評価に指定をいたし、この再評価によりまして、各医薬品につきまして溶出性試験の規格の整備を行いまして、品質とバイオアベラビリティー、生物学的な同等性の一層の確保に努めるということで確認のための試験を実施をいたしておるわけでございます。  要しますならば、同一性に基づいて承認をしておりますけれども、その後の学問水準の進歩に伴いましてより具体的な同一性の担保の仕組みが出てまいりますので、それらにつきましても同等性試験ということで試験を実施して同等性の確保に努めているというところでございます。
  115. 大口善徳

    ○大口委員 お医者さんの中にゾロ品を使うことについて抵抗を感じる方の中に、その同等性ということについての不安があるということで使われていないという面もございます。そういう点で、これは早急にきちっと安心してゾロ品も使えるということの体制というものを、今つくっておるようですから実施していただきたい、こう思っております。  次に、ゾロ品といいますか、後発品に対する医療経済上の評価について厚生省ではどういうふうに考えているのか。この後発品の使用に対して、例えば診療報酬あるいは薬価基準においてどういう施策を講じているのか、あるいは、これから後発品の使用推進、これを推進の方向で考えていくのか、そのあたりについてお伺いしたいと思います。
  116. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 医療保険の経済的な面ということで考えますと、有用性について同等であるならば、できるだけ安価な医薬品を使用していただきたいということであります。そういった意味では、有用性の同等な後発品の使用というものが拡大することが望ましいというふうに思っております。  ただ、現在の薬価基準上の後発品の取り扱いとしましては、これは後発品だけじゃなく先発品もそうでありますけれども、流通の実態ということに着目した形で薬価というものを改定してきておりますし、そういった中で、現実に後発の医薬品の価格というのが先発品に比べてかなり低く流通の過程において設定されてきているというようなことから、一般的には、後発品の医薬品の価格というのは、有用性が同等であっても低い価格がついているという実態がございます。  なお、一方、後発品の安定供給といった面の確保もこれは大事でありますから、そういった意味で、これまで本委員会でもいろいろ御議論がございましたけれども、二・五分の一以下にならないような下支えというふうな形の措置もとっておる、こんな状況でございます。
  117. 大口善徳

    ○大口委員 四月二十二日のこの委員会における公聴会におきまして、日本医師会副会長の糸氏さんからこういう趣旨のお話がありました。要するに、後発品と効力が同じでも、二十年たっても先発品は依然として高い、長期収載を見直すだけで七千億円も節約できる、こういうふうに日本医師会の副会長が言っているわけです。やはりこの高薬価が医療費のむだとなっている、この高薬価問題というものにメスを入れなければいけない。  そういうことで、例えば先発品の価格を後発品の価格まで下げた場合、どれぐらい薬剤費が削減されるのか、お伺いしたいと思います。
  118. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 これはあくまでも仮定計算でありますから、市場の実態というものに関係なく仮定計算というものをさせていただいたとした場合で申し上げますと、平成七年度におけるいわゆる薬剤費の総額が七兆六千億ということでございます。その中の約二割に相当する一兆五千億円、これが後発医薬品のある先発医薬品でございます。そうすると、この一兆五千億円というのは、これは後発医薬品がありますから、これをどこまで下げるか、こういうことになるわけでありますけれども、仮に先発医薬品を後発医薬品の最低価格まで引き下げたと仮定をしたといたしますと、大体三割程度の引き下げになるというふうに見込んでおります。そうすると、一兆五千億の三割ということでございますから、約四千五百億ということでございまして、今申し上げたような仮定に立てばこのような額が削減される、こういうことでございます。
  119. 大口善徳

    ○大口委員 そういうことで、後発品に近づけていけば相当の薬剤費の削減になるということが明らかになったわけでございます。  この後発品については、処方についてですけれども、一般名で処方すべきじゃないかな、私はこう思っておるわけであります。「診療報酬請求書等の記載要領等について」という中で、「医薬品名は、原則として薬価基準に記載されている名称」銘柄ですね、「を記載することとするが、一般名による記載でも差し支えない」、こうなっておりますけれども、もう処方の段階で一般名ということでいいのだというふうに、やはり処方についてはそういうあり方に改定をすべきではないかな、そういうふうに思うわけであります。
  120. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 まさに先生指摘のとおり、処方せんの記載上につきましては、銘柄名に加えて一般名でも差し支えないということになっております。  ただ、実際には一般名による処方というのは余り普及しておりません。これはやはり、医薬品の一般名になじみのない医師が少なくないということではないかというふうに言われておりますけれども、ただ、この問題につきましては、実は、中医協の中に置かれました診療報酬基本問題小委員会がございまして、ここで平成七年十一月に報告書が出されております。この報告書の中では、「一般名処方あるいは医師が特に当該銘柄に限定しない旨を指示する処方推進について検討する必要がある。」というふうに報告されております。そういった意味で、今後、この問題についても検討していく必要があるというふうに考えております。
  121. 大口善徳

    ○大口委員 いずれにしましても、ゾロ品を使う場合は、患者さんの意向といいますか選択権というものもあるわけですから、患者さんに対してインフォームド・コンセントをきちっとするということが前提ではありますが、そういう一般名による処方等も進めていくべきである、こういうふうに考えます。  次に、ゾロ新といいますか、若干成分を変えて新薬に近いものをぞろぞろつくっていくゾロ新についてでありますけれども、今回、平成九年三月二十七日の厚生省令二十八号で施行の新GCPということで、臨床試験が新たなやり方になったわけです。その中では、文書によるインフォームド・コンセントということがなされております。文書による説明、文書によって同意を得る。  こうやっていきますと、ゾロ新というのはほとんど新薬と変わらないということで、そういうこともきちっと説明していきますと、臨床試験に自分が協力する意味もないな、こういうふうに感ずるわけです。その点が本来のあり方ではないかと思うのです。この臨床試験をきちっとインフォームド・コンセントをすればゾロ新というのは余り出てこないのじゃないか、こう思うわけでございます。この点についてお伺いしたいと思います。
  122. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 お話しのとおりでございまして、本来的には、医療の現場で、例えばよく効く薬だけれども副作用が強いのでここは何とかならないだろうかとか、あるいは個人差がございますので、この薬は効かないけれども何かはかに効く薬がないかという現場からの声にも基づきまして、臨床試験という形で新しい薬の治験が実施されるのがいわば本来的な、理想的な姿であろうかと考えております。  今お話しのGCP、医薬品の臨床試験の実施の基準という省令でございますけれども、昨年六月に制定していただきました薬事法の改正の施行を本年四月からということで、その施行の一環といたしまして、医薬品の臨床試験の実施の基準の省令をこの四月から施行をいたしております。  この基準におきましては、治験に参加される被験者につきまして、治験を担当する医師から文書による説明を行っていただいた上で、文書による同意を得ていただくということにされておりまして、文書によるインフォームド・コンセントが法的に定められたというものでございます。  このような治験の実施基準によりまして、いわば被験者にとりまして治療上必要性の高い治験薬でなければ治験参加への同意が得られにくいのではないかということで、いわゆる今お話しの新規性の乏しいゾロ新につきましては、今後、治験の実施という面から困難になり、開発される可能性が少なくなるのではないかというふうに考えられている次第でございます。
  123. 大口善徳

    ○大口委員 この新GCPというのは、やはり厳格なる手続をして推進をいただきたいと思っております。  次に、薬の数についてお伺いをしたいと思うのです。  アメリカの医学教科書で「ドクターズルール四二五」というのがございます。その中に、四種類以上の投薬は医学知識の領域を超えるものである、こういうふうに記載がされているわけです。といいますのは、三種類とか四種類という副作用についての試験がなされていないということから、医学知識の領域を超えている、こういう話になるわけであります。前回も福島委員の方からもいろいろありました、薬の数につきましては。  これは平成七年の「高齢者における薬物療法のてびき」、これは厚生省、日本医師会において出されているわけでございますけれども、その中で、薬の種類につきまして、「できればすべてを五種類程度にとどめるべきである。薬剤種類の増加は、薬剤間の相互作用をきたし、それが重篤な疾患を併発することがあるからである。」ということで、厚生省へ日本医師会においては、すべてを五種類程度にとどめるべきだ、こういうふうな記述もあります。  今、厚生省は、八種類以上の投薬につきましては、薬剤料あるいは処方料の減額というものの対象としているわけでありますけれども、今後、この八種類以上ということについて、これをさらに削減していく方向を考えているのかどうか、お伺いしたいと思います。
  124. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 薬の投与というのは、これは本来、医師処方権に基づくものでありますから、そういった意味では、まさに先生が今お挙げになりました「高齢者における薬物療法のてびき」、これは厚生省と日本医師会の共編になっておりますが、この中にありますように、「できればすべてを五種類程度にとどめるべきである。」というふうに明確にこの中に書かれてございます。  そういった方向で各医師の方々も考えていっていただきたいというふうに思っているわけですが、一方、医療保険のサイドの中では、それぞれ多種類投与というものに対する一種の減額措置というものをこれまでも講じてきております。これは、これまで、平成四年の四月のときには、十種類以上の内服薬の投与を行った場合には薬剤料を一割減額する、こう定めておりましたけれども、これを昨今では、平成九年の四月の改定では、八種類以上の内服薬の投与を行った場合に一割を減額する、さらには処方料についても減額する、それから処方せん料についても減額するというような状況になってきております。  こういうふうなことで、できるだけ多種類投与というものはなくしていく方向が望ましいというふうに考えております。そういった意味では、医療保険制度の中においてもそのような方向を促すような措置というものが講じられることが望ましいというふうに考えておりまして、これについても、今後、そういう方向で検討をしていきたいというふうに考えております。
  125. 大口善徳

    ○大口委員 そういう方向でということは、八種類から七とか六の方に削減するということも考えておりますか。
  126. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 まさにそういうことでございます。もちろん、これは中医協等しかるべく診療担当者も交えた中での検討が必要でありますけれども、私どもとしてはそういうことを考えております。
  127. 大口善徳

    ○大口委員 次に、医療機器についてお伺いしたいのです。  ペースメーカー、PTCAバルーンカテーテル、冠動脈ステント、これが欧米に比べまして三倍から五倍高い、こう言われております。その理由は、ペースメーカーについては、過剰な規制だとか過剰なサービス、例えば、ペースメーカーを埋め込む手術に当たってペースメーカーの輸入代理店が立ち会いに来るというような、こういう過剰サービス等もあるようでございますが、これにつきまして、昨年、日経新聞で、十一月二十六日ですが、参照価格制度について考えている、こういうようなことが新聞では出ておりました。  そういうことで、医療機器の内外価格差の分析ということをしっかりしなければいけないと思います。そして、三倍から五倍というのはどんな理由があろうと異常である、そういうことから、分析をするとともに、例えばペースメーカーにつきましては、保険償還価格について、今、銘柄別で分類しておるようですけれども、これを機能別分類にするとか、あるいは参照価格制度について検討するとか、こういうこともやっていかなければいけないと思うのですが、いかがでございますか。
  128. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 まさにペースメーカーがとりわけ問題になっておるわけでありますけれども、内外価格差が非常に大きい、これがどういう理由から我が国の場合は非常に高いのかということについて、今、調査を進め分析をしているところであります。  その一つの要因として、やはり我が国における流通慣行の問題があると言われておりますし、今先生指摘のようなことで、例えばアフターサービスなりメンテナンスといったところについてもそれぞれメーカーの方にサービスを求めるとかいうことも言われております。  そういったそれぞれの流通慣行、それからまた購入者である医療機関サイドにおける対応の違いがどの辺にあるのか、そういった内容をきちんと分析しまして、そして、不適正なものについてはそこをまず正していかなければいけないだろう、そういう中で適正な流通価格というものが形成されなければいけないというふうに考えておりまして、まずその辺のところをきちっとやっていきたいということでございます。  そして、機能別の分類による償還価格を決めた方がいいのか、あるいはまた今御質問にございましたような参照価格、薬における参照価格のようなシステムがいいのか、その辺のところを、まずベースとなるペレスメーカーの価格そのものが適正であるということを前提にしませんと、どのようなシステムをとっても内外価格差というものは是正されませんから、まずその辺のところからやっていかなければいけないというふうに考えております。
  129. 大口善徳

    ○大口委員 もうこの問題は前々から言われていることで、このあたり、いつになったらペースメーカーが安くなるのか。それから、メンテナンスについては、別にメンテナンス契約を結べばいいわけですから、きちっとした明瞭な形でやらないと納得できないと思うのですね。ですから、参照価格制度導入なんというようなことが、厚生省は、あれは誤報だというようなことを言っておりましたけれども、明確な、いっどうするのかということ、調査してそれから検討しますではわからないわけですよ。これは本当に目に見える形でやるべきだと思うのです。どうですか。
  130. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 現在進めております実態調査につきましては、流通慣行の実態を把握することで進めておりますが、六月いっぱいにはめどを立てたいというふうに考えております。  今お話しの過剰サービスという面でございますけれども、例えばペースメーカーにとりましても、半年ごとに点検をするわけでありますけれども、その際に、残念ながら医療機関の中で点検が十分に対応できないという面もありまして、ペースメーカーの輸入販売業者がある意味で代行しているといいますか、そういった面も指摘をされております。そういった利用の実態等も踏まえまして、適正なあり方を検討していく必要があると考えております。
  131. 大口善徳

    ○大口委員 何かそこら辺がペースメーカーはもうどんぶり勘定なわけですね、要するに。どういう項目にどういうお金がかかるのかということをきちっとして、透明化しないと納得できないと思います。  もう時間も少なくなってまいりました。次に、乳幼児の医療の助成の問題についてお伺いをしたいと思います。  乳幼児の医療の助成制度につきまして、これは地方単独事業でこの医療助成をやるわけでありますけれども、乳幼児の医療助成の実施市町村がどれくらいあって、その中で、現物支給方式ということで、そのまま助成を受けられて、あえて役所まで行って償還を受けなくていいというものから、償還払い方式という、こういう二つの方式があるわけです。それで、償還払い方式においては、これは市町村において国庫負担の減額措置は講じられていないわけですが、現物給付方式にしますと、国庫負担の減額がなされているわけです。いずれも乳幼児の医療の助成が行われているにもかかわらず、現物給付方式と償還方式でこれが異なっておる。  ですから、本当は便利なのは、一々市町村で償還を受けなくてもいいというのが、要するに現物給付の方が便利なわけであります。それが市町村によって異なるというのは、これは私はおかしいと思うのです。  中には、岩手県あるいは福井県のように、自動償還方式ということで、わざわざ市町村に行かなくてもいいという形のものを償還払いという形をとりながら工夫しているところもあるわけでございますけれども、このあたりのことについて、やはり現物給付にペナルティーを与えるようなこういうやり方は不当ではないか、私はこう思っておるわけです。  また、大阪府は通院には規定はないわけですね。通院には助成措置がないわけです。こういう場合と、それから助成措置がある場合でも償還払いの場合は、何ら国庫負担の減額に差別はしていないわけですね。  そういう点で、要するに、助成制度がないところ、それから償還払いのあるところ、現物給付のところによって、どうしてこういうようなペナルティーといいますか、扱い方を違えるのか、これは区別の根拠はない、こういうように私は思います。まずその点について、手短にお答えください。
  132. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 これは、国民健康保険の場合ということでありますが、乳幼児医療だからということではありませんで、まさにそれぞれの自治体が地方単独事業ということで、いわゆる医療保険の一部負担部分を助成している場合のケース、これに対する取り扱いでありますけれども、これは国民健康保険の法律に基づいて調整させていただいておるわけでありますけれども、そういった中で、こういうような助成措置を現物給付の形でした場合には、しない場合に比べると医療費がやはり余計使われる傾向がある、こういうような研究がございまして、そういった中で、実施している自治体と実施していない自治体との間のいわゆる国庫負担の公平というような観点から調整をさせていただいておるというのがまず一点でございます。  それから、償還払いと現物給付との取り扱いの違いでありますけれども、償還払いというのは、これは一たん窓口で自己負担分を支払いますから、その点が現物給付の場合とでは異なります。現物給付の場合には、窓口で一たんその一部負担を払わないということで、研究の結果によりますと、やはり医療費がその分だけふえるという傾向にあるというようなことから、それに着目して、現物給付で行っている場合には調整をさせていただいている、このような考え方でございます。
  133. 大口善徳

    ○大口委員 その助成をしていないところと、償還払いのところは区別はしていないわけですね。ペナルティーを科していないわけです。そういう点では非常に整合性に欠けるのじゃないかな、こう思っております。これは指摘にとどめておきます。  大臣は、参議院の厚生委員会におきまして、高齢者施策に比べ子供に対する施策の充実が不十分であったと感じている、こういうことで、少子化対策について、やはりこれから非常に大事になってくると思います。特に、将来の医療保険を支えるのは子供たちでございますので、子供たちについて医療保険上も配慮すべきである。  そういう点で、一部負担割合の軽減ですとか、あるいは無料化ということについてもうさんざん指摘をしておるわけでございますが、この点についてどうお考えですか。
  134. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 少子化対策については、医療の面だけでなく、ほかの問題も幅広く検討していただいていますし、少子化の原因というのは一様ではないと思います。さまざまな原因があるということで、これから少子化対策というのに対して、どういう原因からこのような少子化になっているのか、また、この対策に対してどのような手を打てばいいのかというのは、今後、いろいろな御意見を聞きながら、また審議会もございます、そういうような意見を聞きながら、しかるべき措置をとっていかなきゃならないと思いますが、医療の点について言えば、これは医療全体の中で解決していくべき問題ではないか。これからも、抜本的な改革案の中で、当然、高齢者と子供の対策も出てくると思います。その中で私は検討していきたいと考えております。
  135. 大口善徳

    ○大口委員 以上で終わります。
  136. 町村信孝

    町村委員長 桝屋敬悟君。
  137. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 引き続き質疑をさせていただきます。  大臣を初め、皆さん大変お疲れだろうと思います。先ほど廊下で伺いましたら、本日、国会で委員会をやっているのは当委員会だけのようでございまして、委員長初め、我が党の理事さん方の積極的な姿勢に心から感謝しつつ、質疑をさせていただきたいというふうに思います。  ただ、私、残念なのは、先ほど同僚の青山議員、それから大口議員からも話がありましたように、できますれば国民の前で本当の議論をしたい、こんな思いで、いたたまれない心境でございます。  本日の新聞を見ましても、与党の中で修正案が既に検討されておる、連休明けにはそれが出るとか出ないとか、こんな話でありまして、それではここで議論していることは一体何なのか、こういう思いにもなりまして、質問をしたくない、質疑もしたくないという思いがあるわけでありますが、先ほど大臣から、いや、ここの質疑の状況が議院内閣制のもとにおける各党の、非公式のと大臣は先ほどおっしゃいましたけれども、私は公式なんだろうと思うのですが、各党間の協議にまた影響を与えるのだ、こういうことでありますから、気を取り直して質疑をしようかという、こんな複雑な心境でございます。  本当は、この場に、ぜひ修正案の骨子や、少なくともポイントや、あるいは修正案に基づく影響がどういうものなのかということを、実は国民の前で議論したい、しなきゃならぬだろうと私は思っているわけであります。  漏れ聞くところによりますと、もう大体ポイントは、施行期日あるいは薬剤一部負担の手直しがどうなるかということではないかということも既に報道をされております。報道が正しいかどうかわかりません。そんな報道等を見ながら、私も大変に心を悩ませておるわけであります。  先ほど大臣が言われた、議院内閣制だから、当然、各党で、この委員会で全部調整できればいいのだけれども、それはなかなか難しいこともあって、なかなか難しいこともあるというのが実は問題だと思うのですが、当然そういうこともあるのだ、こういう御説明もいただきました。  しかし、いろいろな報道を見ますと、この国会、厚生委員会以外の場で協議されるということは、まさに利害関係であって、今まで続いてきた、まさにこの診療報酬をめぐる、医療保険制度をめぐる利害関係がそこでぶつかっておる。実は国民が一番見たいのはそこでありまして、この場で議事録に残してしっかりと議論をしなきゃいかぬ。議事録に残らないところでやらないと利害関係の調整はできないという大臣のさっきのお気持ちをそんたくすれば、恐らく私はそういうことではないかなというふうにも思うわけであります。  きょうの日経あたりにも、連休明けにはいろいろな案が出るだろうという背景の中に、もはや今のこの調整作業は、対戦カードは、自民党、社民党、さきがけの対立ではなくて、族族対決、細かく言えば、医系議員そして医師会連合軍対非医系議員だ、こんなことまで書かれているわけであります。私は、ここに書いてあることは、なるほどなと思いました。  それで、私は、きょうは厚生委員会で何をするのだろう、私はどっちの立場かなと思いながら、新進党ですから、蚊帳の外に外されていて、多少ふてくされて議論をしているわけかもしれませんが、そこは率直に認めつつも、関心を持ちながら見ているということも御理解をいただきたい。  そこで、ぜひお願いを申し上げたいのは、これは委員長にもお願いしたいのですけれども、修正案が出まして――さっき大臣は事細かに説明をされました。まず与党三党でやって、それから民主党のところに持っていかなきゃいかぬ、こう言われましたね。それからこの場でやるのだというと、手続が大分長いと思うのですけれども、よもや、連休明けに修正案がひょこつと出てきてすぐ採決というようなことは、委員長、これはやめていただきたい。ぜひお願い申し上げたい。  我々は、修正案の協議にすら入っていないわけであります。私にも多くの支持者がいるし、関心を持っている多くの国民がいらっしゃる。その方々にも御意見を伺わなきゃならぬし、党内でもしっかり議論をしなきゃならぬ。恐らく、いろいろなシミュレーションも必要だと思います。したがって、六日に修正案がすぐ出て、七日に採決なんということがないように、委員長、ぜひお願いを申し上げたいと思います。  ここまでお願いを申し上げて、だれにも聞けないわけでありますから、質疑に入りたいと思います。(発言する者あり)私も、ぜひ申し上げたい気持ちで、今申し上げているわけであります。  それで、私は、前々から思っておりましたけれども、医療保険システム上の政策決定プロセス――私も一時期、与党におりましたから、与党時代もよく言われたことであります。いやいや、先生、そこから先は中医協マターですよと。この中医協マターという言葉で、ほとんど自分の意見を届けられない、こんな世界があるのだということを感じたわけであります。  今回も、まさに、今まで三十年間、手がつけられなかったという話を大臣は盛んにされておられますけれども、私もそのとおりだろうと思います。それはやはり、改革というのは一気にやることも必要でありますが、時々の大きな問題をしっかりと議論しながら着実な改革をしていくということが必要だろうと私は思うわけでありまして、そういう意味では、社会保険医療協議会あるいは医保審の運営形態そのものに今の問題をきっちりと吸収をして、そして解決をしていくというプロセスがなかったのではないかというふうにも私は思うわけであります。特に、先ほど私が冒頭に申し上げたように、中医協マターだというこの一言で終わってしまうような、そんな中で、その中医協に声が届けられない、医療関係者やあるいは患者さんや消費者の声もあったのではないか、そういうことが本当に届いて議論されていたのか、とかく保険者側と医療の話し合いだけで終わっているというそういうことがあったのではないか、このようにいつも思っていたわけであります。  そういう意味では、私はやはり、医療保険システムの政策決定プロセス、これが極めて大事だろうというように思うわけで、今回、構造改革審議会なるものをおつくりになる、これは大変に賛成でありますけれども、この医療保険構造改革審議会、これと今までの中医協とか医保審とか、この関係はどうなるのか。私は、本当に問題がきちっと議論されて、解決の糸口が、解決の方向に向かって進んでいくような、そういう審議システムになっているのか、協議体制になっているのか、大変に気になるわけでありまして、そのあたりをまずお教えをいただきたいと思います。
  138. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 今度の改正案の中に、まさに、従来の医療保険審議会、老人保健福祉審議会、この二つの審議会を廃止いたしまして、新たに、仮称ではございますけれども、医療保険構造改革審議会を創設いたしたいということでお願いをしております。これはまさに、この医療保険制度というものが、関係者の利害というものだけじゃなくて、幅広く国民的な視点から議論されなければならない、また、そういった議論というものを国民の目にオープンの形で、開かれた形で議論が行われなければならない、このように考えたわけでございます。  そういった意味で、新しく設けようとしております審議会におきましては、審議は公開でかつ国民に開かれた形での審議をお願いしたいというふうに考えておりますし、それから、この審議会の委員の方々につきましても、そういった意味で幅広く国民的な視点から御議論をいただける方々にお願いしたいということでございます。  それからまた、審議に当たりまして、私どもとしては、審議会に案をおつくりいただくというよりも、厚生省としてきちっとした案をお示しをし、そしてそれに対して御批判、御意見をいただくというような進め方をすることがよろしいのではないかというふうな考え方に立っております。  また、中医協でございますけれども、これは従来どおり存続をいたします。中医協は、御承知のとおり、診療側、保険者、それから公益側ということで三者構成になっておりますし、公益の委員につきましては、国会での承認を得て任命をするという形になっておるわけでございます。そして、この中医協におきましては、診療報酬等についてその具体的な、専門的な内容について御議論をいただくというふうな形になるというふうに思っております。
  139. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 医療保険構造改革審議会、ここで、今の話を聞きますと、大臣がこの委員会で盛んに言われている、ともかくこの法案を通して、そして厚生省としての案をつくる、その案をこの審議会にかけて審議を図る、こういうことで理解をしてよろしいのですか。
  140. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 そのとおりです。
  141. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 そうしましたら、中医協は当然残るわけですね。それで、一番の問題は、この診療報酬をどうするかという、まさに金目の問題が一番大きいのだろうと私は思うのですが、これは大丈夫なんでしょうかね。一つの構造改革案ができる。恐らく、薬価の問題なんかでも、大きな構造改革ということで案ができてくる。それは、具体的にはまた中医協ということで診療報酬の改定の中で審議される。これは、思ったとおり改革はどんどん進んでいくという流れになるのですか。まさか、中医協でまた利害関係でつぶされるというようなことはないのですか。どうでしょう。
  142. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 それはやってみなきやわかりませんが、今までの改革の手法も内容も違ってくると思います。がらりと違ってくる。まず、厚生省が案を固めて出すということは今までできなかった、しなかった。それを今回やろうというのですから、そして、その案によって審議会が賛成するのか反対するのか、中医協の利害関係者が賛成するのか反対するのか、案によって違ってきますから、それは案を出してみないとわかりません。
  143. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 ここで大臣からやってみないとわからないと言われると、今までずっと厚生委員会で聞いてきた話、大臣の確かな決意というのは我々も感じているわけでありますが、ここで、やってみないとわからないと言われると甚だ心配になるわけであります。  今回の医療保険制度の改正、改革の第一歩だということでありまして、今回、週刊社会保障に各党の代表者の声がいろいろ出ておりますが、私は、社民党の上山先生あたりがおっしゃっている話は本当にそのとおりだと思うのです。  これは国民の声なんですが、何も社民党の先生の意見を紹介することはないのでありますが、余りにも同感したもので御紹介申し上げるのです。「本来ならばもっと早く改革に着手しなければならず、」これは大臣もおっしゃっているとおりです。「赤字の年にならないと着手しないという状況、赤字になると国民負担で埋めるという手法」、これがまさに今までの医療保険制度の改革。私は、この前、タコの足を一本ずつという話もいたしましたけれども、そういう意味では、私は確かに大臣の決意は買います。ぜひやっていただきたい。  それからでいいと私も思っているのですが、しかし、それが、大事な厚生省改革案が、できたものがまた骨抜きになって、今回の十五円がいい例であります。当初、ずっと我々は外野で見ていた。かなり激しい改革になるなと大変な危機感も持ったわけであります。大変緊張しておりましたけれども、出てきた案を見ると、まことにある意味ではいい落としどころといいますか、後で申し上げますけれども、私は、負担の限界のような中途半端な形になっているわけでありますから、そんなことがまた繰り返されるのではないかと。そうすると、本当に私は、大臣がいつも言われる抜本的な改革に着手するということがどういう形で担保されるのか、まことに国民の目から見ると心配だろうと思うわけであります。  どうか大臣、やってみなきやわからないと言われるそのお気持ちも理解できないことはないけれども、大変な利害関係の中で厚生省案を必ず達成していきます、やり抜いていきます、こういう御決意を私はもう一度いただきたい。お願い申し上げます。
  144. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 やってみなきやわからないと申し上げたのは、やってみた案がこれだけ批判を浴びているのです。各党がよかれ、利害関係者がよかれと思った案がこれだけ批判を受けているということを我々は反省しなきゃいかぬ。いかにこの医療保険改革というのは、あちら立てればこちらが立たず、こちら立てればあちらが立たずという問題かと。  今回、それぞれ、各党の意見の間においても意見が違っておりますが、同じ政党の内部の人間でも意見が違っております。そういう今までのいき方を含めて、まあこの辺でいいだろうという案は、今、委員会で審議されても、皆さん大変御批判をしております。今までのまとめてきた案、批判を受けた点、それをひっくるめて、批判にたえ得るような国民のための医療改革はないか、それを、厚生省が責任を持って案をまとめていきたいということを私は言っているわけであります。     〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕
  145. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 私は、大臣の今の御決意というのはこの委員会でも何度も聞きまして理解をしておりますが、お願いを申し上げたいのは、各党いろいろな意見が出たという、そういうことで、逆に言いますと、それこそ連立政権では何もできないということかも、そういうことにもなるわけでありまして、私が申し上げたいのは、政党よりもむしろまさに利害関係者、そしてその利害関係者が政治を動かして、それでこの大事な改革案がつぶされるようなことがあってはならぬ。本当にそこは勇気を持って、本当の改革にお取り組みをいただきたい。単なる利害関係で大事な改革が中途半端になることがないように、心からお願いを申し上げたいと思います。  さて、本当はもっと内容をやりたいのですが、私は修正案が大変気になりますので、ポイントをちょっとこの委員会でまだ余り出ていない、今回の医療保険制度の改革について議論をさせていただきたいと思います。  医療保険制度を改革しましたらいろいろな影響が出ます。私も与党時代に病院給食を始めたときに、大変に苦い経験をいたしました。  一つは、公費負担医療、公費医療と言われている医療がございます。生活保護、結核、精神、更生医療あるいは児童福祉法に基づく育成医療、こうしたものがあるわけでありますが、今回、当然ながら患者負担がふえるわけでありまして、私はまず気になるのは、今回の医療保険制度の改革に伴って、こうした国の責任において行われている公費医療制度、この枠組みが変わる、枠組みの変更をも検討されているということがあるのかないのか。多分ないのだろうと思うのですが、そこをまず確認させていただきたいと思います。
  146. 小林秀資

    小林(秀)政府委員 今回の健康保険法の改正に際しまして、公費負担制度の枠組みは変えないことといたしております。
  147. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 変わらないというふうに理解をしてよろしいですね。ありがとうございます。  そういたしますと、当然ながら、患者負担がふえる部分は公費医療として今後も公費助成の対象としていくということだろうと思います。そういたしますと、当然ながら国の予算も増額を見込まれているのだろうと思うのですが、ただいまの政府案で結構でございますが、政府原案、これが通るということになりますと、これが成立をすると、公費医療費の制度でどの程度の影響があるのかお示しをいただきたいと思います。生活保護は大体わかりますので、生活保護はないと思いますので、あと、できれば結核、精神、更生、育成医療、項目ごとにちょっと増加額だけ御教示いただければ幸いでございます。
  148. 小林秀資

    小林(秀)政府委員 例えば結核医療等の公費負担制度は、医療保険の自己負担当分を公費で負担する仕組みということになっているわけですから、公費負担額が増加することになるわけであります。  それで、今先生がおっしゃられたように、各予算でどうなったかということでございますが、まず九年度予算におきましては、全体として、国費としては約二百十億円の計上をいたしております。結核医療費ですと約五億円、精神保健で六十二億円、それから更生医療費、身体障害者保護費ですが三十六億円、育成医療が〇・一億円、ほかに特定疾患治療研究費という難病関係ですが三十億円、それから小児慢性が三億円等でございます。
  149. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 結核は五億、精神が六十二億、更生医療が三十六億、育成医療が〇・一億、それから特定疾患等が三十億、小慢が三億、これを足しますと二百十億ですか。二百十億になりますかね。
  150. 小林秀資

    小林(秀)政府委員 今、重立ったところを申し上げまして、トータルとして二百十億と申し上げたわけです。
  151. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 ありがとうございました。  それで、もう一点確認ですが、これは国費ベースでしょうか。例えば、地方まで入れた公費助成枠全体ではどのぐらいになるのかというのと、当初予算でちゃんとお組みになっているのかどうか、お教えいただきたいと思います。
  152. 小林秀資

    小林(秀)政府委員 国費として約二百十億円ということでございまして、地方自治体の分は資料がありませんので、ちょっとお答えできません。――当初予算に入っています。
  153. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 恐らく、結核とか精神なんというのは四分の三という補助負担率ではないかということを感じております。そういう意味では二百十億、これがもうちょっと、本当は公費全体では、もちろんこれは地方も含めて財政負担をされるのでしょうが、三百億に近いような数字になるかもしれませんし、わかりません。  片方で、今回、健康保険、政管健保の財政が大変厳しいということで患者負担をふやす、その分を今度は逆に公費負担では二、三百億、当然ながら国の負担もふえるということでありまして、私は、焦って負担増だけやるようなことはやめた方がいいのじゃないか、こう思っているわけであります。もうちょっと太い数字になるかと思いましたら、今回、これは前回の病院給食のように療養費の枠が変わるわけではありませんから高額療養の制度が生きているわけで、そんなに負担増はないということなんでしょう。  そこは理解をするわけでありますが、先ほど大口議員が議論をしておりました地方の単独制度で、国が医療保険制度を変えると、当然、地方も影響を受ける、これは地方のことだから国が関与することではない、多分こういう回答になると思うのでありますが、先ほどの大口議員の話ではありませんけれども、乳幼児の医療費助成制度、あるいは重度心身障害者の医療費の助成制度であったり、母子医療であったり、いろいろな角度で、福祉的要素で、各県それぞれが単独の医療費の助成制度をお持ちだろうと思います。実は、これも日本の医療、保健、福祉の仕組みの中で有効に機能しているわけであります。そこにも影響を与えるわけでありますから、地方単独でどのぐらい今回の医療保険制度の改正で影響があるのか、これは試算が難しいと思います。  それで、また国の責任でそれを試算しろということも無理がありますから私は伺いませんが、私は、恐らく重度障害者や母子あるいは乳幼児の医療費の助成制度というのはほとんどの県で実施されているのではないか、こう思っておるのでありますが、まず、その辺はいかがでしょうか。
  154. 小林秀資

    小林(秀)政府委員 公費負担制度の多くのものは国及び都道府県、場合によっては市町村負担をすることになっております。外れるものは、例えば全額国庫負担でやっております原爆だとか、戦傷病者特別援護法に基づくものとか、そういうものがあるだけでして、あと多くのものは地方自治体の負担が大体国に並行してというのですか、四分の三とか四分の一とか、そういうふうになって、地方にもそれだけの予算が必要になるということであります。
  155. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 大臣、この話になると、いつも突然わけのわからぬ話になるのです。これは当然といえば当然なんですが、各地方の医療費の助成制度というのは、これはある意味では国の制度ではないし、逆に、先ほど高木局長の方からペナルティーの話が出ましたけれども、むしろペナルティーを議論しなければいけないぐらいに国の制度としての健康保険制度、これを、ある意味ではそのシステムそのものも、システムの立場からいくと余りうれしくない地方の制度でありますから、そこもよくわかるのでありますが、しかし、現実には、前回の病院給食費の自己負担導入の場合も各県でこれは金額が太かったのですね、高額療養費以外に病院給食を求めるということになりましたから。恐らくほとんどの県で、これは単独の医療費の助成制度の対象にしているのではないかと私は思うのですが、前回のときの記録は厚生省に残っておりますか、あの病院給食を導入したときに各県がどういうふうにしたのか。やや明確に、半分ぐらい外しましたよというふうな、こんなデータはお持ちですか、感触だけでも結構なんですが。
  156. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 病院給食費の自己負担の導入時の取り扱いですが、平成六年の十月時点で、入院時の食事に係る自己負担の助成を地方単独事業でやっておりました都道府県数が二十二でございます。これが現在では二十八になっております。なお、これは入院時と申しましても、重度心身障害者、乳幼児、それから母子家庭、こういったところに着目した入院時の食事代の助成。それから、高齢者の入院時の食事に係る助成というのをやっておる都道府県は一つ、現在一カ所でございます。そんな状況でございます。
  157. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 ありがとうございました。  前回の病院給食費の自己負担導入に伴う各県、各地方の単独の医療費の助成制度で、二十二が現在二十八になっておる。私は、もう目をつぶるだけで、この二十二が二十八になるそのさまといいますか、現場でどういう議論が行われ、どれほど難しいやりとりがあってこの二十八になっておるかということを痛いほど実は感ずるわけであります。  と申しますのは、やはりこうした制度を、地方単独の医療費の助成制度を導入すれば、必ずペナルティーといいますか、そうした制度もあるわけでありまして、地方自治体としては大変にお悩みになる。国との関係においても厳しい、苦しい思いをしながら、なおみずからの地域の住民の声としてそれはやらざるを得ないという、そんな苦渋の選択をそれぞれの地方がやりながら進んでいると思うのです。  大臣、私は何を申し上げたいかというと、本当に抜本的改革をきちっとやってくださいということを今申し上げているわけです。中途半端な改革をやられますと地方は大変なんであります。  例えば、県が持っている医療費の助成制度、前回の、まず病院給食をどうするか、医療費とは別枠の形で患者負担が導入された、これを福祉の措置として実施しているみずからの県の単独制度の対象にすべきかどうか、随分議論したと思います。それで、やはりニードがあるからやりましようということで踏み切った。今回は、今回の改革というのは薬の負担が新たに入ってきているな、これも当然ながら対象にしなきゃいかぬ、いや、対象にしようかどうしようかと。  国がパンクしているのと同じぐらいに、国の政管健保がパンクしているのと同じぐらいに各地方だって実は大変な、これはすぐ何億という金額になりますから、大変悩むと私は思うのです。やはり、国の制度は変わるから、それじゃ、それを補完する形で地方制度でどんどんやっていこうということだけでは各地方も済まなくなっている。地方も抜本的に改革をしたい、どうしたらいいか。  介護保険だって、あれは同じことなんです。多くの地方自治体が介護見舞金制度を持っている。いろいろな制度を持っています。介護保険が導入されたときに、それじゃ我が県はきちっとしましょうということを恐らく議論していると思います。それと同じように、医療保険制度だって、実は各地方は、きちっと将来を見据えた、我が県はこうするぞという展望を持ちたい、しかしながら、どうも話を聞くと、今回は改革の第一歩だ、三年後ぐらいにはまた何か、医保審の建議を見ても負担増の、患者負担のあり方についても抜本的に検討されるようだ、恐らくふえるのだろう、ちらっとかいま見えるのは定率負担という言葉すら見える、それじゃどうすればいいのか、そのときにやろうかというようなことで、地方は大変に苦しむわけであります。  したがって、私が申し上げたいのは、中途半端な改革を小出しにするのはもうまずい、将来を見据えて第一歩というのであれば、少なくとも将来のある程度の基本設計を引いた上で、こういう方向で行きますよ、大体それぐらいの合意ができた段階でまずはこれだけの負担増ですというふうにすれば、地方は何とか議論できる。それすらない。先ほど大臣の話じゃないけれども、やってみなければわかりませんというような、こういう状況で、それじゃ今年度のとりあえずの改革に対して我が地方はどうするのか、結論が出せないのです。  こういう状況もあるということを、大臣、ぜひ御理解をいただきたい。その上で私は、一日も早く抜本的な改革の道筋を示していただきたい。私も長い間、地方の自治体にいたものですから、そんな思いがいたします。大臣の御見解を伺いたいと思います。
  158. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 地方がどの程度自主性を発揮していくかということと関連してくると思いますが、地方は地方で、その財源状況、財政状況は違います。その中で、どの分野に地方の財政を優先順位をつけて使うかというのは、当然、地方に裁量権がありますから、国が一定の基準を示した中で、私は、地方が判断すべきものではないか。それに対して国はどういう一定の基準を設けるべきかということの問題でありますので、今の地方の実情ということも当然視野に入れてこれからの抜本改革案を検討していきたいというふうに考えます。
  159. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 私の気持ちは、多分、大臣も理解できているのだろうと思います。  地方の立場でいいますと、道筋をちゃんとつくってほしい、そして第一歩に取り組んでもらいたい、第一歩はやるけれどもそこから先はわからないよでは地方は動けませんよということでありますので、そういう意味では、私は、まさに着手は同時でなければならない、このことを申し上げているわけであります。大臣、どうか、今の私の気持ちをお酌み取りいただいて、地方が動いているのだということもひとつ十分頭に入れていただきたいと思います。お願いを申し上げます。  そこで、大臣、この前から厚生委員会でしょっちゅう議論していることなんですが、先ほどもおっしゃいました、青山議員への答弁だったと思いますが、この程度の負担は必要、どんな改革をしてもこれぐらいの負担はあるのだろうという話ですよね。そうすると、この程度の負担というのは、それじゃこれ以上の負担だったら、大臣としては、やはり今の段階で難しい、こういう御判断だということですか。  それともう一つ、この程度の負担というのは、この前から何度か、厚生委員会の質疑も読み直してみましたけれども、お年寄りの問題で、一割にも満たない負担なんだからこれは過重な負担ではないと思うというふうに御答弁されておられます。その場合の一割という目安がもう既に出ているわけでありますが、私は、ひょっとしたら定率という時代を見通しておられるのかな、こう思うのでありますが、この一割といった場合に、これは何に対して一割なのか、大臣のお気持ちをもう少しお教えいただきたいと思います。
  160. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 それは、今、医療費全体の額に対する、国民健康保険は三割、健保に入っている人はこれから一割から二割にする、高齢者は率じゃなくて額、定額になっているということでありますので、もし定率ということになれば、医療費全体に対して何割かというのがわかりやすいのではないかなと思っております。それは、医療費、別に区分しろという意見もありますけれども、わかりやすいということになると、医療費全体に対する一定の率というのがわかりやすい一つの基準かなというふうに考えています。
  161. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 わかりました。要するに実効負担率、かかった総医療費の中の負担割合ということだということですが、この程度の負担であればという議論をずつとされていますけれども、これ以上の負担、もっと言えば、一割を超えるような負担はやはり今の日本の国においては難しいという大臣のお気持ちですか。もうちょっとその辺のところを……。
  162. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 それは、基準の決め方によって、一割がいいのか二割がいいのか三割がいいのかによって違ってくると思います。今、国保は三割ですけれども、これだって、それじゃ全体を、国保も二割、健保も二割、高齢者も二割にしようという意見も一部にあるくらいですから、その場合どうするのか、それじゃ低所得者にどういう配慮をするのかという配慮の仕方によっても違ってくる。それは決め方によって、国民理解を得る度合いは一つの決め方によって全く違ってくると思います。
  163. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 大臣、話をころころ変えてもらっては困るのですよ。私、さっきから大臣の答弁を聞いておりましたけれども、何度も、この程度の負担であれば、お年寄りの場合ですよ、ほかのケースではありません。老人の場合に、一割にも満たないのだから、この程度の負担であれば過分な負担とは言えないのだということを何度も言われています。聞いている国民は、お年寄りであれば大体一割ぐらいであればまあ許される負担ではないかというふうに厚生大臣が言っているというふうに聞いていますよ。私は聞けると思う。私は、そういうお気持ちなのかということを確認しているわけです。
  164. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 私の率直な気持ちとして言えば、現在、定額ですけれども、お年寄りでも一割程度の負担は過重な負担ではないというふうに言っているのが今までの答弁の趣旨であります。
  165. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 そうすると、大臣、何度も恐縮なんですが、それを超える負担というのは、現状において、大臣の御見解としてはどうなんですか。いや、それはなかなか理解が難しいということなのか、適当でないという判断なのか、お考えがあれば。
  166. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 それは、今後、若い世代、高齢者、そして診療報酬とか薬価基準とか医療提供体制全体をひっくるめた中でどういう議論が出てくるか、その中で判断をさせていただきたいと思います。
  167. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 これ以上は禅問答になるような気がいたしますので申し上げませんが、私、ずっとこの委員会に参加して、大臣の答弁を聞いておりましたら、お年寄りの負担というのは、実効負担率、総医療費に占める患者負担、これは一割程度であるのだから、一割に満たないのだから過分な負担ではないということは、多くの国民が今回は聞いていますよということをまず申し上げておきたいと思います。  その上で、どうでしょうか、私も、いろいろなシミュレーションを実はしたいと思いながらまだできていない。修正案ができたら一気にやってみようと思っておるのですが、その時間を委員長ぜひ、委員長いらっしゃらないが、確保していただきたい、このことをお願い申し上げたいと思うのです。  実態の姿として、今回の改正案、政府原案では、これは一番心配なのは、重症の患者等で一割を超えるような場合、さっきの大臣の話の延長でいきましょう、実効負担率が一割を超えるようなケースというのは出てくる可能性があるのかないのか、ちょっと自分でもわかっていません。もしその辺のシミュレーションがあればお示しをいただきたいと思います。
  168. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 今回の改正案は、先ほどもお話のございましたとおり、定額でお年寄りの場合はやっております。したがいまして、これは定額ということに伴うことになるわけでありますけれども、医療費が多くなりましても、それに応じて負担がふえるという仕組みになっておりません。したがって、一般的に申し上げれば、重症者等で高額の医療費がかかったから、自己負担について、その負担額が一割をさらに超えていくというような事態はないものと思います。ただし、これは宿命なのでございますけれども、医療費がうんと少なくて済んでいるというような場合には、定額でございますから、逆にその部分のウエートが大きくなるということは、これはあるわけであります。それはもう、定額をとるか定率をとるかということについてのメリットデメリットという中にそういういわば宿命的なものが入っておるということであろうというふうに思います。
  169. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 それと、外来は大体理解できたのですが、入院の場合の低所得者の場合でありますと、定額負担一万五千円、これに病院給食という形になると思うのですが、こうした場合には、お年寄り、収入は随分幅があります。幅があるというよりも二極分化している。低所得世帯の人あるいは高額の収入の方、分かれているというふうに私は思っているのですが、この入院の場合の低所得者対策で一万五千円、これと病院給食を足しますね、そうしますと、お年寄りの現在の収入状況から見ると大体どの程度の割合になるのか、幅があると思いますが、お示しをいただきたい。
  170. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 低所得者の方々の場合には、先生今お話のございましたように、一日当たりを五百円にするのが原案になっておりますから、そうしますというと、一月丸々入って、御案内のとおり一万五千円ということであります。それに食費が入りますから、全体でいくと、一カ月の入院負担額が二万四千円になります。  これが、いわゆる低所得のお年寄りの方々の場合にどのぐらいの収入に対するウエートであるかという点でございますけれども、これにつきましては、今先生からもお話ございましたように、低所得者をどのようにとらえるかという問題がございます。  仮に、今の入院時の一部負担金減額対象者を低所得者としてとらえるといたしましても、その方々の場合に、それは、物差しはいわゆる老齢福祉年金ということであれしているわけでございますけれども、この人方にどのような収入があるかという統計はございませんし、また、その人方の収入状況もそれぞれでございますから、年金以外の収入もございましょうし、それから資産の状況等もございますので、ちょっと今、いわゆる低所得と言われる方々の中でどのような負担割合になるかということを数字的にお示しすることはなかなか難しいのでございますが、しかし、今の老齢福祉年金の額が三万三千五百円強ということでございますから、それから見ましても、今申し上げました二万四千円という額は、いわばその範囲内ではあるわけであります。  これとても、そういう老齢福祉年金をお持ちになっておられる方にとって楽であるというふうに申し上げるつもりは決してございませんけれども、ある意味からいえば、家庭で生活をしましても入院で生活しましても、必要な食費というようなものも込みにした数字でございますから、そういったものも考えれば、今回、お願いをできる額ではないかというふうに考えた次第でございます。
  171. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 ありがとうございます。  今回の案、私ども、政府原案しかまだ頭に入れておりませんから、今回のお年寄りの定額負担というのは、大臣とさっき随分議論させていただきましたが、ある意味では、根拠が余りはっきりしないけれども、本当に負担のぎりぎりの線かなというふうに私自身は感じているわけであります。しかし、先ほど大臣から話がありましたように、一割未満だからいい、ここから先ほどうなるか、これからの出てくる議論だ、こう言われました。私は恐らく、マスコミで言われているように、定率負担という話はあるのだろうと思うのです。  私は、昨日も自分の地元の医療機関に行って、お年寄りで、外来で本当に大変な医療費がかかっているケースを見せてくれ、どんなケースがあるのですかということで伺いました。そうしますと、本当に大変な金額になる外来でも、例えば前立腺がんという方のレセプトをちょっと見させていただいたわけでありますが、月のうち二回、三回の通院で点数にして一万三千、一万点を超えるようなケース、これがしかも薬剤費比率が極めて高い、こういうケースを幾つか見ました。  これは、高木局長はすぐ、その病院はおかしいのじゃないかというような顔を若干されているように思うわけでありますが、そうじゃなくて、本当に、いろいろなドクターとも相談しましたら、一つは、がんの薬というのは非常に高い、薬価が高いということが一番大きな原因のようでございます。薬剤比率、このケースで見まして、一月が、多い人は九割、八割というケースがあるわけでありまして、これがまあ実態かなと思ったわけであります。  そうしますと、こういうケースで定率負担を導入しますと、やはり大変な患者負担になる人が出てくる。特に今申し上げたような重症のがん患者のような方々、薬剤比率が大変高い。それは現状においてやむを得ない状況でございまして、何も乱給しているわけではない、むだな薬をどんどん使っているというケースではない、にもかかわらずそういう実態がある。したがって、私は、定率をもし導入すれば、やはり大変な負担増が出てくる人がいらっしゃるな、そういう方に対する手当ては必ず講じなければならぬな、こう思いながら実は帰ってきた次第でありまして、御報告だけさせていただきたいと思います。  さて、時間がありませんので、最後の話題にさせていただきたいと思うのですが、実は、医療保険制度における東洋医術の話、鍼灸マッサージの話であります。  これも、この機会に申し上げるのが適当かどうか、甚だ自分で悩みながらきょう話題を提供するわけでありますが、厚生行政の十年、二十年の流れを見ておりますと、少なくとも医療機関に限っただけでも、どうも西洋医学一辺倒といいますか、あるいはもっと言葉をかえていいますと、本当に今まで医療を底支えしてこられた方々を若干粗末にする嫌いがあるのではないか。それは、新しい改革の中でやむを得ないという言葉だけでは済ませてはいけないような、こんな世界があるような気がしてなりません。  その一つ病院に勤務するマッサージ師さんの方々であります。理学療法に従事されておられるわけでありますが、御承知のように、PT・OT制度昭和四十年に導入された、そして、当然ながら暫定措置もあって、力のある方はPT・OTさんにおなりになる道も開けておりましたけれども、正直申し上げて、病院にお勤めになるマッサージ師さん方というのは盲学校を出られた視覚障害者の方も多いわけでありまして、そういう方々が、当然、PT・OT制度の導入後、診療報酬上の評価というのは、あくまでもPT・OTの補完的な役割という位置づけをされているがために、実態として、以前は一万六千人ぐらい全国でいらっしゃったという話も聞いておりますが、今、団体の調査では一万人ぐらいになっているというような話を聞いております。  先ほど申し上げましたように、今まで長い間、PT・OT制度が導入される前は、理学療法に従事されてきた方々、消炎鎮痛を中心に本当にある意味では現場で喜ばれている方々であったわけでありますが、こういう方々が極めて劣悪な評価の中で病院を去らざるを得ないという、こういう声も聞いておるわけでありますが、こうした実情を厚生省は把握しておられますでしょうか。まず、状況をお聞きしたいと思います。
  172. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 医学医術というのは、これはまさに日進月歩の中で進んでおりますが、そういった中で、西洋医学それからまた東洋医学、それぞれがいい面を導入しながら進んでいるという面もございます。  今、マッサージ師のお話がございましたけれども、一確かにPTあるいはOTの制度が導入され、従来、特に地方の医療機関の場合に専らPT・OTが不足しておりましたから、それにかわる役割をマッサージ師が果たしていたということも、これも私も実態として承知しております。その後、OT・PTが数もふえてくる中で、またそういった専門的な職種というものの評価診療報酬の中でもきちんと高まってくる中で、やはりその辺のすみ分けというものが変わってきているということは、これはあろうと思います。  ただ、これが数字的にそれではどういうふうに変わってきているのかということになりますと、現在、そういった意味での実態調査というのはございませんので、はっきりしたところはわかりませんが、先ほどちょっとお話にございましたけれども、病院におけるあんま・マッサージ・指圧師の数、これを見てみますと、昭和五十五年ごろは約六千人ぐらいということでございます。これは医療施設調査病院報告によるわけでありますが。それが、平成二年では七千人程度までふえております。その後、徐々に減ってきておりまして、平成五年では六千八百人程度、こんなふうな数が数字的にはございます。  これらとOT・PTの関係をどう評価していくかということになりますと、はっきりしたことはわかりませんけれども、数字的にはその辺のところがこのマッサージ師等に対する実態でございます。
  173. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 局長、今お答えになったのは、私も初めて知った数字なんですが、昭和五十五年ぐらいには、医療機関病院にお勤めのマッサージ師さんは六千人ぐらいだった、それが、平成二年には七千人になり、平成五年には六千八百人になった、こういう理解でよろしいのですか。これは、はり、きゅう、マッサージの有資格者、病院にお勤めになっているという理解でいいのですか、本当ですか。
  174. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 ただいま申し上げましたのは、病院におけるあんま・マッサージ・指圧師の合計数でございます。
  175. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 ありがとうございます。  ちょっと私の認識が間違っていたのかもしれません。先ほど、私は、以前は一万六千人ぐらいいたのが今は一万人ぐらいじゃないかという、これは団体の皆さんの話でありますから、これはもちろん精査された数字ではないわけでありまして、今の数字を聞いて若干私の気持ちも変わったわけでありますけれども、さっきの局長の話じゃありませんが、PT・OTさんが足らない時代に医療の現場を支えてこられた、あるいはまた整形の現場で、消炎鎮痛の治療といいますか、マッサージ師さんの効果というのは大変に実情としては喜ばれているという話も聞いておりますから、私は、PT・OTさんとそのグループで、チームでということになるかもしれません、こういう方々の評価ということも必要なんじゃないか、こういうふうに思っておるわけであります。今の数字については、また事務局ともよく相談をさせていただきたいと思います。  もう一点、同じようなことが在宅の治療でもあるわけでありまして、病院ではなくて、鍼灸マッサージ師さんが開業されておられる。そういう方々が治療する場合に、これも現場の悩ましい声を聞いておるのですが、現行の健康保険法の適用の状況からいきますと、給付の対象からいきますと、お医者さんが同意書といいますか、同意をしたものだけが保険診療の対象になるというふうに理解をしておるのですが、どうも現場の声を聞きますと、これは鍼灸療養費の支給基準についての通達がいろいろあるようであります。  昭和四十二年の通達にある「医師による適当な治療手段のないもの」に対する解釈がありまして、  「医師による適当な治療手段のないもの」とは、保険医療機関における療養の給付を受けても所期の効果の得られなかったもの又はいままで受けた治療の経過からみて治療効果があらわれていないと判断された場合等をいう要するに、端的に言いますと、医師診療をあきらめて、ギブアップして、もうだめだというケースだけ通常の鍼灸マッサージ師さんの保険診療が認められるというような取り扱いがあるということで、以前は同意書だけでもよかったのだけれども、今は同意書だけではない、まさに医師が、主治医がギブアップしたというところまでいかないとなかなか保険診療の対象にしてもらえないという、こういう大変に悩ましい声を聞いております。  時間もありませんから、最後にまとめて申し上げますが、私は、こうした実情、病院においてもPT・OTさんを支えてこられたマッサージ師さん方が、多くの視覚障害者の方が病院を去っていかなければいかぬという悩ましい声を聞いておりますし、それから、今の、実際に鍼灸マッサージ院でも、お医者さんとの関係で、なかなか西洋医学の前に東洋医術というものが力を発揮できない。  大臣、今まさに二十一世紀に向かって医療費が、保険財政が大変厳しい、こういう状況でありますが、私は、これからの高齢化社会への対応、そうした中で本当に患者に喜んでいただける質の高い医療、保健、福祉というこの分野を進めていくのに、ある意味では、東洋医術の評価ということも再検討しなければならぬのじゃないか。これは医療だけじゃありません。福祉の現場においても、デイサービスセンターや老人保健の世界でも、このマッサージ師さん方の役割というのはあるのではないか。どうも今の医療の世界では、どこまでもお医者さんの、あるいはPT・OTさんの陰でしかない、こういう気がしてなりません。  改めて、私は、国民医療費の軽減にもつながる話ではないか、こういうふうに思いますので、ぜひこういう東洋医術の評価というものを、もう一度、大臣、お考えをいただきたい。今までの流れではなくて、新しい二十一世紀を展望する国民医療としてぜひ御検討いただきたいと思うわけでありますが、大臣の御所見を最後にお伺いしたいと思います。
  176. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 現代の西洋医学ではわからない点で効果を発揮している、はりやきゅうやマッサージもその一つだと思います。  私も今まで、はりなんというのはちょっとどうかなと思っていたのですよ、率直に言うと。あのはりを体に刺して血が出ない方がおかしい。ところが、ある人から、いいところがあるんだといって紹介されて、やってみた。確かに効果があるのですね。普通のお医者さん、整形外科に行ったって、レントゲンを撮ったって何にも悪いところがない、どこか痛い。しかしながら、薬も全然使わないけれども、マッサージなり、はりなり、あるいはカイロプラクティック、私、ファンなんですよ。  もう薬も飲まない、注射もしない、そして確かにやってもらった後は気分爽快、体にいいとわかっている、そういう、実際、効果は定かではないけれども、わかっている人はわかっているという治療法があるというので、東洋医学なんかも、私は、今後、学会等の動向も踏まえ、今後の医療とか治療に活用の仕方がないか、検討する必要があると思います。
  177. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 効果があるかないかというような、そういうことではなくて、私は本当に効果があるということで申し上げているわけでありますから、今の大臣は何かお話しし過ぎではないかという気がしますが、しかし、いずれにしてもそういう方々、いわゆる医業類似行為の方々も、これから高齢化社会の医療、保健、福祉の戦略に活用しなければならぬ時代が来るという意味で申し上げておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。
  178. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 いや、私は効果がないというのじゃないのです。効果は大いにあると言っているのです。だからこそ、活用の仕方を検討する必要があるのではないかと思います。
  179. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  180. 佐藤剛男

    ○佐藤(剛)委員長代理 五島正規君。
  181. 五島正規

    ○五島委員 この医療保険制度の改革についての審議もかなり議論を進めてまいりました。お互いにこの委員会の中におきましても、現行の医療保険制度の矛盾点、それを抜本的に改革しなければいけないこと、そして緊急に何らかの措置をしないと大変な状況になるということの認識はかなり深まってきたわけでございますが、我が党を含め各委員議論を聞いていましても、それでは政府の現在お出しになっている平成九年度の改革案が、そうした問題に対して、緊急性においても対応できるものであるという議論は全く出ておりません。どうも政府のお話を聞いていましても、大変頼りない。一体、我々は時間をつぶしているだけで、本当にこの緊急の状況に対して前に進んでいるのかどうかということに対して大変不安を感じている状況でございます。  そこで、もう一度、これまで議論してきた内容一定の繰り返しになるかと思いますが、改めてお伺いして確認しておきたいことが数多くございます。  この委員会の中におきましても、日本の医療制度の中でいわゆる薬の問題、薬価が高いとか使われ過ぎであるとか薬価差益であるとか、あるいは、先ほどは、何か根拠のない五千数百億円がどこかに消えたなんというような話が出てまいりました。そうした議論を踏まえまして、今回の政府のお出しになっておられる薬剤に対する費用の徴収、この目的は何なのか。すなわち、財政が厳しいので、薬剤費の一部を御本人の負担にお願いして、その分だけ医療給付を減らそうということでお出しになっているのかどうか。  これにつきましては、これまで薬価の引き下げをしても全く効果がなかったではないか、今回、一律に一剤から十五円の自己負担をちょうだいしても、結果においては、この薬価の高価格へのシフトがえがおさまらない限り、負担は間違いなくふえるけれども、それが薬剤費の抑制につながらないではないかという議論がございました。それに対してどうお考えなのか。  いま一つは、今回の薬剤に対する費用は、日本の薬剤に対する特徴として多剤投与ということがよく指摘されております。この多剤投与を抑制するためにこのような方法をお考えになったのか。  三つ目には、今私が申しました高価格薬品へのスライドが、この間、日本の薬剤比率を非常に高どまりさせてきた原因であると厚生省もおっしゃってきている。これを抑制する効果があると判断してお出しになってきているのか。そこのところを明確に御答弁願いたいと思います。     〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕
  182. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 今回、新たに薬剤費について一部負担をお願いしているわけでありますけれども、まず、この趣旨でございますけれども、我が国の医療費に占める薬剤のシェア、これがなかなか下がらないという現状がございます。そういった中で、大きくは二つの要因があるのではないかと考えておるわけでありまして、一つが薬の量、いわゆる多剤投与との関係で、使用量というものがふえているという問題が一つでございます。それからもう一つが、まさに高薬価の新薬にシフトしているためになかなかシェアが下がらない。この二つが大きな要因ではないかと考えております。  また、これらの寄与率といいますか、それらがどうなっているのかということでありますけれども、専門家に依頼した調査報告によりますと、このいわゆる多剤投与、量的なものと、高薬価の新薬へのシフト、これは大体半々ぐらいであるというふうな報告もいただいております。  そういった面に着目して、この薬剤使用の適正化ということを今後進めていかなければならない。こうした場合に、今回、薬剤についての一部負担をお願いしたわけでありますが、と同時に、窮迫する医療保険財政の面におきまして、やはり一定財政効果というものも考えた上でお願いをしているわけであります。  そこで、今回の薬剤の一部負担のやり方によりますと、いわゆる多剤投与に関しては、これはそれなりの一定の歯どめの効果を持つのではないかというふうに私どもは考えております。  ただ、高い新薬へのシフト、この問題については、これをストレートに今回の一部負担の課し方で歯どめとなるというふうには考えておりません。この高価格の新薬へのシフト、この問題というのは、一つには、現行の薬価基準制度における薬価差の問題、それからもう一つには、いわゆる医師処方に当たってのブランド志向と申しますか、またその裏腹の問題としましては薬に対する信頼性あるいは情報の提供、そういったようなものの裏返しの問題でなかなか低価格の薬価の方にいかないというような問題が指摘されておりまして、この問題は、やはり現行の公定価格を定めております薬価基準制度そのものを抜本的に改めていかないと根本的な解決にはならないのではないか、こんなふうに考えておるわけでございます。  もちろん、ただいま申し上げました多剤投与の問題、それからまた高薬価シフトの問題、それらの一定の歯どめの効果が持てるような一部負担の課し方、手法というものがあれば、私どもとしてはそういったものについての採用ということについてやぶさかではないわけでございます。
  183. 五島正規

    ○五島委員 多剤投与に対する抑制はあるが、高価格薬品に対するシフトがえに対する抑制効果は期待していない、ただし、それぞれの寄与率はフィフティー・フィフティーだとおっしゃいましたが、もう一つ、実はよく、薬がたくさん余って捨てている、あるいは、出された薬が飲み切れないままにそれぞれの患者さんの家の中にたまっている等々の指摘がございます。すなわち、不必要な長期投与ということも問題になっているわけですが、この部分については余り問題になるというふうにはお考えではないわけですね。
  184. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 多剤投与と申し上げましたのは、まさに薬の使い方が多いという意味で申し上げておりまして、その要因としては、非常にたくさんの種類の薬を出しているという要因もございますし、また、日数を非常に長期間出しているというふうな要因によって薬をたくさん使用するというケースがあると思います。  そういった意味では、日数あるいは種類、両方の側面を踏まえて、薬の使用量というものは多くなっておる、私どもとしてはこのように考えております。
  185. 五島正規

    ○五島委員 かなり問題がはっきりしてまいりました。  そうしますと、今回の改正の中で、もちろん、薬価制度の抜本的な改革は必要である、その前提は合意するわけでございますが、多剤投与、すなわち多種類の薬の投与、そして長期の投与、そして高価格薬品へのシフトがえ、それらに対してどのような効果的な抑制がかかるかというふうな方法を考えなければいけ衣いということになるかと思うわけです。  既に多剤投与の抑制については、診療報酬の中において、例えば、現在、八種類以上についてはペナルティーをかけるということで、いわゆる多種類の投与についてはそのような措置がとられているところでございますが、これについては全く効果が出ていないのかどうか、この方法ではだめだから今回のような方法をおとりになったのかどうか。  それからいま一つは、不必要に長期に薬が出ているという現状に対して、先日、医療課長とお話ししてみると、これは何らかの形で、例えば診療担当則の見直し等々の中において改善が図れることだというお話もちょっとお伺いしたわけですが、その辺については具体的にどのようにしておられるのか、お伺いしたいと思います。
  186. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 まず、現在、いわゆる多種類投与については、八種類以上について約一割薬剤費をカットする、減額をする、こういうやり方をしておりまして、その歯どめとしているわけでありますけれども、この効果については、申しわけありませんが、直接調査した結果がございません。  したがって、ここでそれがどの程度の効果を上げているのかというのを定量的にお示しするということができないのでありますが、こういった制度というものが導入され、その導入されるに当たっての中医協等における議論等々を踏まえて考えますと、これについては一定効果というものはあるということで実施をいたしておるわけでありますし、それは一定効果を上げているものというふうに私どもは期待をしております。
  187. 五島正規

    ○五島委員 こうした新しい行政措置がとられた場合に、そのことによって財政的な面においてどのような効果があったのかどうか、そして、そのことによって現場においてどのような問題が発生したのか、そこのところはきちっと点検する、あるいは総括する、そういうことなしに、同じような、多剤投与についてその効果がないとは言わないけれども、新しくまたより大きな負担患者に求める形で、多剤投与に対してより効果があるだろうという案を出してこられるということについては、全く理解できないわけでございます。  そういう意味においては、既にそのような措置がとられている以上、今回の改革においても、あるいは今回の制度の改正においても、より高価格薬品へのシフトがえ、これに対しては、これまで有効な行政措置をとってきていないわけですから、それに対する対応を中心に考えるべきではないかと思うわけですが、その辺、いかがですか。
  188. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 まず、今回の薬剤の一部負担でありますけれども、これについては、医療保険審議会における建議書の中でも、一定薬剤について一部負担を設けることが適当であるという建議をいただいております。ただ、その方法論につきましては、医療保険審議会の建議では、薬剤をむしろ医療保険の給付から除外をするという考え方から、薬剤については五割の定率負担にするというような考え方まで、かなり幅があるというふうに私は思います。  今回、私どもが提案いたしましたのは、定率負担という格好ではありませんで、薬剤につきましても定額負担という格好でお願いをしたわけでございます。そういった薬剤についての定額負担という方式でお願いをしたというようなことから、高薬価シフトということの歯どめとなるような仕組みというのはなかなか難しいということで、ストレートにはそれをねらいとした案という形にはなっていないわけでありまして、今回の薬剤の一部負担の方法について、これにかわる、しかも高薬価シフトというものも是正できるような、そういった案があれば、それは私どもとしても導入について決してやぶさかではない、このように考えております。
  189. 五島正規

    ○五島委員 厚生省の方がそう早々と、現状においては有効な手段がないと白旗を上げられたのでは困るわけで、白旗を上げられますと、国民が大変迷惑します。我々も、そこのところに対して非常に知恵を絞らなければいけないということで、さまざまな提案をさせてもらっているわけですが、そのことは後ほどまた触れるといたしまして、これまでも薬価が繰り返し引き下げられてきました。そして、この薬価の引き下げが、先ほどから議論しております使用薬品の高価格へのスライドによって効果がなかったという実態については、これはもう厚生省もそのようにおっしゃっているわけですから、そのとおりだと思います。そして、今回の改革もまた同じようなことになる危険性が大変大きい。  そこで、改めて御質問したいわけですが、例えば老人の入院医療における包括化、あるいは小児の外来における包括化というものが既に実施されています。これら、いわゆるマルメといいますか、包括医療というものが実施されることによって、医療費全体に占める薬剤比率というのは変化したのかどうか、また、患者さんの治療において、その包括化によって何らかの障害が出たというふうな報告があるのかどうか、いかがでしょうか。
  190. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 老人の入院医療包括化、あるいは小児の外来医療につきまして包括化を既に実施いたしておるわけでありますが、まず老人の入院医療包括化に関係しましては、ちょっと古いのですが、平成二年に導入したときの報告がございまして、これによりますと、いわゆる包括化と申しますのは入院医療管理料というものを採用した医療機関ということになるわけでありますが、これによりますと、日常勤作能力を損なうことなく、検査、投薬、注射の件数及び点数の減少が認められたというふうに報告を受けております。ということは、限られたデータでありますけれども、当時としては一定適正化なりの効果というものはあったのではないかというふうに考えております。  それから、その後、具体的に薬剤比率等がどう変わったかということについては、その後の調査がございませんので、今後、やはりこの面についてもきちんとしたフォローアップをしていかなければいけないというふうに考えております。  それから、小児の外来の包括化の方でございますが、これは平成八年の改定で導入されたということでございますので、その効果について把握するような状況にはまだございません。今後、これについても適切にやはりフォローアップしていく必要がある、このように考えております。
  191. 五島正規

    ○五島委員 治療における障害は発生したのですか。
  192. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 治療における障害があったということは聞いておりません。
  193. 五島正規

    ○五島委員 まさに、そうしたこれまでの診療報酬の改正の中においても、薬剤の抑制について、薬価の引き下げ以外の方法によってより有効に処理できてきている部分がたくさんあるわけですね。平成二年から導入した制度効果判定を今までほっておかれたということについても、問題だ問題だと言.いながら、何に着目して厚生行政をやってこられたのかというふうに思うわけですが、そうした効果があった方法をどのように医療の制限にならないように広げていくかということがやはり科学的な行政だろうと思うのです。そういうことをしないままに、今回の思いつきのようなことをやられまして、八千数百億の患者負担国民負担が新たに生じる。そして、そのことがそのまま保険給付の減少につながってくるのであれば、これは負担の置きかえでございますから、その全体的なバランスの中において場合によっては容認できる部分もあるだろう。しかし、そこが全く関連しない危険性がある。となってくると、このような措置というのは、ただ患者さんに対して負担を求めるだけのことになって、その負担は何だったのかということに当然なるだろうと思うわけです。  そこで、さらにこの問題についてお伺いしたいと思うのですが、前回の委員会におきまして、児玉委員も御質問されましたが、御案内のように、現在の薬価の決定方式、原価方式をとるよりも、むしろ、いわゆる加重平均方式で決定している、あるいは、さらにその前の岡田委員質問に対しても、八十数%が、薬価の決定に対しては類似薬効参考値という形でもって決めていっている、すなわち、先発医薬品の価格が一たん決まると、あるいはそういうものが決まると、それを参考にしながらゾロ品は決めるし、また、新薬が出てきた場合には、必ずそれらの薬よりもそれを参考にしながら高いところに薬価を決めていくという、非常に政治的な、政治的といいますか、どう言うのですか、余り根拠のない薬価の決定の仕方をしているということが明らかになったわけでございます。  先発の薬品が非常に高く薬価が決められて、そして、その他の薬についてはそれを参考にしながら適当につけていくということになりますと、結果的には、いわゆる後発薬品までも人為的に高価格についていくということになるわけで、こうした高価格の薬価の決定というのは、これはだれでもない、厚生省自身が担わなければならない責任であります。  そこで、一つお伺いしたいわけですが、薬価をいわゆる加重平均方式でお決めになっている場合、これは恐らく国内での流通価格の加重平均でお決めになっていると思うわけですが、ある種の多くの薬は、日本から海外にも輸出されております。新薬には限りません。前回、私の質問で、日本にとっては非常に画期的な薬でございましたが、名前を申し上げますがメバロチンという薬、もう名前が出ましたので今回も使わせていただきますが、これが日本からフランスに輸出され、そして、フランスの流通価格は日本の流通価格の二・七分の一、約三分の一近い値段でフランスでは流通しているという厚生省の御返事でございました。  そうだとすると、この日本における薬価決定の中において、海外における流通価格もしくは輸出船積みの段階における船積み価格、この価格というものは、この加重平均値の中に入れておられるのか、入れておられないのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  194. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 現在の薬価の決め方、これは、新薬については、一つがいわゆる類似薬効比較方式、これが大部分でありますが、ということで決めておりまして、それから、類似薬のない場合には原価計算方式、こういうやり方をとっております。そして、一たん流通に供されたものについては、流通価格を調査いたしまして、そして、その加重平均に一定のR幅というものを乗せて決めておる、こういうやり方でございます。  その流通価格の調査は、これは国内価格だけしか調査をいたしておりません。この流通価格というのは、いわゆる卸売業者が医療機関等に対して販売する価格、いわゆる販売サイドの価格と医療機関サイドの購入価格、この両面から調査をいたしまして、そして、この薬価調査の結果に基づき加重平均値を出しておるということでございまして、そういった意味では、御質問のように、海外における流通価格というのは、この加重平均を計算する際には算定の基礎にはなっておりません。
  195. 五島正規

    ○五島委員 海外で流通されている価格は、その貨幣価値の格差もありますので現実的ではないにしても、輸出船積みの価格というもの、その量というもの、それが加重されていないということは、結果において、日本は非常に高い薬価だと言われておりますし、しかも、日本においては新薬の開発よりも薬剤の海外からの輸入が多いわけでございますが、日本だけが、この薬品の世界の中においては、極めて鎖国的、閉鎖的に高値安定の制度をおとりになってきたということになるわけですね。  その状況を放置したままで、国民に対して、薬剤費が高いから自己負担を求める、これはおかしいのではないですか。市場価格というけれども、その市場価格を厚生省の経済課自身がお決めになって、その範囲の中で調査をして、そこで非常に人為的に決めておられる数字である。そこを変えてしまえば、この価格というのは大きく変わるわけですよ。なぜそこを死守してまで国民にそういう負担を求めようということになるのか、御説明いただきたいと思います。
  196. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 この薬価の決め方につきましては、これまで、中医協における一般的なルールを決めていただき、そういった中で、先ほど申し上げたような形で決めておるわけでありますけれども、御指摘のとおり、内外価格差という点を考えますと、やはりこれは、高いものもあれば低いものもあるとよく言われますけれども、一般的には、内外価格差があるというふうに見ております。そういった意味では、現行のこの薬価の決め方のルールそのものがもう時代に合わなくなってきているのではないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。  そういった意味で、まさに、この医療保険制度の抜本的な改革、その中の大きな柱であります薬価基準制度そのものについて、今後は、市場取引の実勢というものを尊重して、そして、公定価格というものを廃止するという形のものにしていきたいというふうに考えておるわけでございまして、現行の制度というものをそのまま温存しながら進んでいくというよりは、むしろ、思い切って現行制度を改めていくという方向を私どもとしてはとってまいりたい、目指してまいりたいというふうに考えております。
  197. 五島正規

    ○五島委員 これらの見直しというのは、いわゆる抜本改革ができるまでやらないということではなくて、現行の制度の中でできる問題でございます。まず、厚生省は、そうした問題に対して具体的に取り組んでいただきたい。  また、今回の改正の中におきましても、先ほど来問題になっておりますように、多剤投与については、現行の診療報酬の改定の中において、その一定の制限方式というのが出てきている、これを一層きちっと強化していく、あるいは整理していくという方法があるでしょう。また、長期投与の問題につきましても、先日の御返事にもございましたように、そういうようなものは診療担当則そのものの中でそれを抑えていくということが可能であるとするならば、そこのところをやっていけばいい。  そうしますと、高価格医薬品に対するスライドをどう抑えていくのか。世界各国は、この薬剤費の問題について、やれ償還払い、参照価格制度、名前だけがこのごろ新聞に載るようになりましたけれども、やっていることは、後発医薬品でも安定できる薬が出てきた場合に後発医薬品にシフトがえを誘導しよう、そのことによって薬剤費全体のコストを下げようということでドイツもフランスもやってきたことは御承知のとおりです。そういうふうなことが、先駆的にも今回の改定の中でできるのではないか。  民主党は、例えば、一日一剤について、二百円を超える薬からはかなりの一日当たりの負担をちょうだいしても、二百円以下からはもう徴収しないという方法はあるだろう。そうした場合に、間違いなくいわゆるコスト意識というものが処方する医師のところに強烈に責任感として生まれてくる。患者さんに薬のコスト意識を持てというのは、これはむちゃな話です。そうしたところをきちっとしたような制度改革というものが現実に可能ではないかと思っています。  これは、各党におきましても、厚生省におきましても、決してどこどこの党が主張したのだからということではなくて、ぜひ真剣に御検討いただければ幸いだと思いますし、それがやはり国民にこたえる立場ではないかというふうに我々は思っております。  次に、今回の改正の中でいま一つ大きな問題点であります保険料の問題についてお伺いいたします。  現行の保険料というのは大変矛盾がございます。今回、千分の八十二から千分の八十六に引き上げようというのが政府の案でございます。そして、二〇〇〇年には介護保険が実施されるとしますと、四十歳以上の方々からは、さらに医療保険に上乗せする形でこの介護保険料を徴収することになっています。  もちろん、必要なコストというのは、税で御負担願うか、保険料で御負担願うか、あるいは自己負担で御負担願うか、その組み合わせしかないわけでございますから、必要な御負担というものは国民にお願いせざるを得ないということは重々わかっていますが、その中で大きな不公平があってはならないというふうに思います。  そういう意味で、念のためにお伺いしたいと思いますが、現在、賞与部分に係る特別保険料というのは千分の十になっています。一方、賞与を除く標準月収に対する保険料は千分の八十二、今度八十六に上がるということになっています。その場合に、例えば四人家族で、御夫婦で男女同じ収入と仮定しても結構でございますが、年収が六百万、千万あるいは一千二百万という世帯の場合に、現行の制度の中で、例えば賞与が年収全体の一〇%の方、あるいは賞与が年収全体の四〇%の方、そうした方々の場合の現実の保険料負担はどれぐらい差が出るのか、教えてください。
  198. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 まず、お示しの前提をもう一回繰り返させていただきますと、夫婦共働きの場合、例えば年収六百万という場合には、一人が三百万、三百万、こういうような仮定で計算をしてみました。  それでいきますと、まず、お一人三百万円で、年収お二人で六百万円だという場合でありますが、この場合には、お二人の保険料を合計したもの、これは賞与なしの場合で五十一万一千六百八十円でございます。それから、賞与が一〇%入っていたという場合には四十三万八千九百六十円でございます。それから、賞与が四〇%だった場合は三十一万九千六百円ということでございます。それぞれこの差が負担額として違ってまいるわけであります。  それから、年収が一千万円である、一人五百万円という場合でありますが、まず、賞与なしの場合、お二人で八十万六千八百八十円でございます。それから、賞与が一〇%のケースですと七十五万七千八百四十円でございます。それから、賞与が四〇%の場合は五十五万一千六百八十円になります。  それからまた、年収が千二百万円、お一人六百万円ずつ収入があるという場合で見ますと、賞与がない場合、九十八万四千円でございます。それから、賞与が一〇%ある場合が八十七万七千九百二十円、それから、賞与が四〇%あるという場合には六十三万八千四百円、こういうような保険料になります。
  199. 五島正規

    ○五島委員 もうこれは大変大きな格差でございまして、政管健保だけで、御夫婦で年収六百万、一人三百万の所得というのは決して所得の多い世帯ではございません。その方の場合に、賞与がない、いわゆる日給月給みたいな形で働いておられる方に比べて、賞与が四〇%ある世帯と比べますと十九万二千八十円、月額に直しまして約一万六千六円、いわゆる健康保険料の負担に格差が出てきます。  千二百万の、夫婦で六百万ずつの場合ですと、三十四万五千円ですか、ですから月額に直して三万円近い差が出てまいります。  同じ年収に対してこういうふうな社会保険料負担に格差が出てきます。そうであれば、今、お互いに、非常に各企業とも経営が厳しい。賃金も今年の春闘、余り上がっていないわけですね。もし年収を二十カ月に割って、そのうちの八カ月は年に四回なりに分けて賞与で払おう、そういうふうに労使間で合意が成立した場合、このような協定は合法ですか。
  200. 小泉万里子

    ○小泉説明員 お答え申し上げます。  賃金の計算の方法は、労使が十分に話し合って自主的に決めていただく事柄でございますので、お尋ねのような労使の取り決めは、基本的に有効なものであると考えております。
  201. 五島正規

    ○五島委員 そうなんですね。まさに現行の法律の中において、労使の間において、賃金上げられないよ、そうなら年俸をそのまま二十カ月に割って、八カ月は賞与にして払いましょう、それでも年俸は一緒だけれども、手取り額は少ない人でも月二十万円、少し中間管理職になってきて給与が多い人になってくると、月額、手取りで三万円違います。こういうふうなことは合法なわけです、言いかえれば。まさにこれは社会保険の制度の運営からいえば非常に危機的な状況になってくるのじゃないですか。これは何とかしないといけないのじゃないですか。どうお考えですか。
  202. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 この医療保険だけではありませんが、年金も関係いたしますけれども、賞与の取り扱いをどうすべきかという点については、かねてから議論がございます。  昨年の医療保険審議会の建議の中でも、この問題の指摘がありまして、このように書かれております。「保険料負担の公平化」というタイトルのもとにでありますが、「保険料の賦課方法については、賞与の支給が十分に定着し、その総収入に占める比重が増大していることなど報酬支払形態の多様化を踏まえ、公平の観点から見直す。」ということで建議が行われておりまして、まさに保険料というものの負担の公平化という観点は非常に重要でありますし、また、それぞれ保険料額もかなり高額になってまいりました。そういった意味で、ますます全体の収入に着目した保険料負担のあり方というものが今後の方向としてきちっとされるべきであるというふうに我々も考えております。
  203. 五島正規

    ○五島委員 将来的にそこが問題であるというところで御同意をいただいても、余りきょうあすの腹の足しにはならないわけでありまして。  今回の改正の中で、さらに標準月額に対する保険料が上がれば、逆に言えば格差は開いていくわけですね。年金であれば逆に、年金に賞与というのはないわけですから、議論があることは理解できるわけですが、医療費というのは、まさにそういうリスクの分散というところから考えれば、年収に対して賦課することを年金問題とあわせて議論しなければいけないということには合理性がないと思われます。  また、何もここで保険料率を引き上げなくても、まさにこうした特別保険料と言われております賞与分に対する保険料率、同率まで段階的に持っていくことによって、今回政府が提案されている額であるならば、例えば、現在千分の十の特別保険料を千分の四十に上げれば、政府が提案しておられる金額以上に保険料収入はふえるわけですね。なぜそれが、公平というのは結果公平という意味ではなくて、制度の運営におけるこういう大変な不公平性というものを残した上で、当面の改革だからという形で前に急ごうとしているのか。その辺、もう一度丁寧に話してください。
  204. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 賞与の取り扱い方、これはむしろ、医療保険の保険料の賦課基準として、いわゆる総報酬といいますか、そういう形をとるべきではないかという御主張だと思いますが、これは私どもとしても、保険料負担の公平という視点からやはりそういう方向をとることが望ましいというふうに考えております。  ただ、これにつきましては、先ほどの医療保険審議会における建議にございますように、方向としては示されております。これは医療保険審議会の中でもさまざまな御議論があったと聞いておりまして、そういった中で、平成九年に実施すべきものということで結論が得られ、合意が得られたという形にはなっていません。そういった意味では、この保険料の賦課標準をどうするかということについてはなお議論が必要であるというふうに考えたわけでございます。そういった意味で、今回の制度改革にのせるまでには至らなかった、こういうようなことでございます。
  205. 五島正規

    ○五島委員 審議会の結論に出なかった、だからできないということであれば、この保険料の引き上げにつきましても、医療保険審議会はたしか千分の八十五でございました。また、薬剤負担につきましても、定率負担ということでございました。そうした審議会の結論とおのずから行政、政治的な判断とは違うということでこの政府案は出されているものだと思いますが、なぜそこのところだけ審議会の意見を重視されるのか、私には理解できないところでございまして、ここのところは、やはり保険というものの財政というものを公平に維持し、そのことによって将来的な、介護保険やあるいは老人医療をどうするかというふうな問題につなげていくという非常に重要なところになってくると思います。そこのところをこういうふうなことのままで放置していいのかどうか、大臣、ちょっと御意見をちょうだいしたいと思います。
  206. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 ただいまの御指摘も含めて、審議会のいろいろな議論も賛否両論あったようであります。そしてまた、この医療保険と年金との関係もあるという議論もあります。今の御意見も踏まえまして、今回できませんでしたけれども、今後の抜本的な改革の中で検討をしていかなければならない問題だと認識しております。
  207. 五島正規

    ○五島委員 抜本的改革ということで長期に後延ばしするわけではなく、高齢化が進んでいるわけでございますから、この問題については必ず一定の結論を得るという決意でもってぜひ検討をお約束していただきたいというふうに思います。  そしてまた、今回の医療保険が非常に厳しい状況の中において、そのほかにも二、三御指摘申し上げたいところがございます。  例えば、政管健保事業というものも数多く行われています。果たして、この政管健保事業というものをこれまでと同じように政府管掌健康保険でやっていかなければいけないのかどうか。  例えば傷病手当金というのがございます。これはまさに、労働者保護の立法が不整備であったときに、健康保険の非常に大きな役割が傷病にかかった労働者の生活をどうするかということでございまして、御案内のように、かっては健康保険の支出の非常に大きな部分を占めておりました。しかし、今日におきましては、さまざまな、例えば雇用保険あるいは労災保険等の整備の中で、比較的そのウエートは小さくなってきておりますが、まだなお二千億を超える支出があると聞いております。  政管健保に加入しておられた労働者が退職をされるということがあります。そして、退職された後も、その事業主が負担しておられた保険料を含めて、いわゆる任意継続という制度が認められております。任意継続中の政管健保加入者、すなわち退職労働者でございますが、その方が病気にかかった場合、傷病手当は支払われますか、支払われませんか。
  208. 真野章

    ○真野政府委員 任意継続被保険者に対しましても、傷病手当金は支給されます。
  209. 五島正規

    ○五島委員 退職して、通常、年金生活に入っておられる労働者が、任意継続であるからといって、病気になれば傷病手当が支払われる。これは一つも、法律の条文を読んでおかしいと言っているわけではない。だけれども、実感的に言って、これはちょっとどうしてなんだろう。国保の場合はそうじゃないじゃないか、なぜ、政管健保、あるいは組合健保もそうかもわかりません、任意継続になった場合、傷病手当が支払われるのかという問題が当然あります。  また、最近では、数多くの職場の中において、互助組織みたいな形でもって、事業主が出したという形を表面上はとらずに二重給付になっているケースもふえています。それは当然、労働者と事業主との知恵の中でやられることですから、それは非難される内容ではありません。  しかし、いずれにしても、私の申し上げたいのは、この傷病手当を政管健保でこれからも払い続けていくということの合理性の問題でございます。むしろ、この傷病手当の問題については、厚生省が単独で云々できないということは重々理解するわけでございますが、基本的には雇用保険なり、そういうふうな保険のサイドに移して対応すべき内容ではないかなと思うわけですが、いかがでしょうか。
  210. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 現行の傷病手当金のあり方、確かに先生指摘のとおり、いろいろ問題があるというふうに思っております。  これは、病気に伴って仕事を休まざるを得ない、その間の所得保障をどうするか、こういったところからこういう給付が行われているわけでありますけれども、これを、例えば雇用保険の中で見るのがいいのか、どういった形で給付を行っていくのがいいのか、この辺のところについては、当然、厚生省だけではありませんから、関係省庁とも御相談しながら、一番効率的で、そしてむだのない方法というものを考えるべきである、また、そういう時期に来ているというふうに考えております。
  211. 五島正規

    ○五島委員 これはこの場での回答だけでなくて、社会保障制度全体の見直しというのは厚生省だけでやれる問題でない、多くの行政機関が協議して進めなければいけない問題でございますので、ぜひ協議を進める必要があるのではないかと思っています。  いま一つ、この政管健保が行っております事業の中で、いわゆる成人病検診というのがございます。金額としては非常に少なくて、五百数十億の規模での事業でございます。  問題は、この検診が、今日の政管健保財政が非常に厳しいということの中で、非常に多数の勤労者が、成人病検診の受診希望があるにもかかわらず、それが財政的理由で非常に抑制されてしまう、受診ができないという状況が起こっていることでございます。財政的にこうした成人病検診が十分できないけれども、しかし制度としてあるので、極めて制限された数だけは検診をやっていくことで、保険者としての予防給付といいますか、いわゆる早期発見のための保険者努力をしているという姿勢を示したいということなんだろうかなと想像します。  しかし、検診というのは、理屈の上からいって、数多くの検診が、一人当たり十年に一回とか二十年に一回しが受けられないような検診というのは検診とは言わないわけですね。検診というのは、まさに一年なり二年なりに一回、定期的に健康をチェックし、その過程の中における健康上の変化というものに基づく指導なり、あるいは早期の治療を受けることによって効果を発揮する。これは公衆衛生の立場からいえばイロハの問題で、厚生省も集団検診の意義というのは十分御承知のはずです。そうした検診という本来の目的から見た場合に、非常に財政の理由によって、何のためにやっているのかわからない内容に成人病検診はなりつつあると思われるわけでございます。  そうであるならば、例えばこの事業を、雇用労働者を対象にして行うわけでございますから、思い切って労働省管轄の労災事業に移管してはどうなのか。御案内のように、WHOとILOとの協議の中で、従来の労働災害という概念にかえて、ワークリレーテッド・ディジーズという形で、職業関連疾患に対する事業主の責務というところで、今日、国際的には労働衛生の世界はとらえられようとしています。言いかえれば、慢性疾患を持っている勤労者であったとしても、職場の中でいかに病状を悪化せずに、職場からほうり出されずにやっていくか、そのことに対して産業衛生は努力しろという形になってきているわけでございます。  そうだとしますと、まさに雇用労働者に対するそういう成人病検診というのは、労働者本人とあわせて、その労働者を雇用している事業主の利益でもあるわけでございますから、これを現在非常に財政的にゆとりのある労災保険に移して、この保険の枠というものを大幅に拡大するというやり方があってしかるべきだ。これは恐らく厚生委員会で言うのでなくて、労働委員会に持っていって主張しなければいけない内容ではないかと思うわけでございますが、やはりそれぐらいのことを厚生省のサイドからも労働省にお願いするというようなことがあってもいいのではないかと思うわけですが、いかがでしょうか。
  212. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 これはまさに受け手、労災でということになりますと、受け手の側の労働省の方の見解を聞かなければいけませんが、私どもとしては、まさに雇用労働者の成人病の検診、こういったものをやはり統一的に労災保険でやるというのも一つの方法だというふうに思っておりまして、そういった問題も内部的には検討させていただいておりますが、まさに労働委員会等においても御議論いただければというふうに思っております。
  213. 五島正規

    ○五島委員 もちろん議会の中においてもそういうふうなことの努力は必要でしょうが、やはりこの問題は社会保障全体の中における位置づけの問題として、省庁を超えた形の取り組みとして、あるいは制度間の中における再整理ということを含めたことがどうしても必要なんだということで、ぜひ取り組んでいただきたいというふうに思います。  以上、まだ幾つも今回の法案に対して指摘をしたいところがございますが、最後に、ちょっと私の持ち時間を残しますが、大臣にお伺いしたいと思うのです。  大臣は、今回の改正を第一段目のロケットにしたいとおっしゃっておられました。私も、時間的な状況からいえば、そうしないと大変なことが起とるのだろうというふうには理解します。  しかし、この第一段目のロケットにするためには、やはりもう少し物事が――政府はこの法案を出された、あるいは与党はどうなんだという立場を超えて、本当に問題となっているところは何なのかというのはこの委員会の審議の中でかなり明らかになってきた、そこのところを、やはり十のうち二でも三でもいいから切り込んでいくという改正でなければ、今回の改正というのは国民からは支持されないし、結果においては負担だけ残ってしまうという危険性が非常にあると思うわけですね。  そういう意味では、この今回の政府の御提案に対して、もう一度抜本的に見直して、そして議論するというふうにはならないものかどうか、御意見をお伺いしたいと思います。
  214. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 今回の改正案は、総合的な、抜本的な改革案への一つの段階的な案だと理解しておりますが、その中で、今の審議されております法案について、今、各政党間で改正の余地はないかという協議が行われていると聞いております。その辺を踏まえて、総合的な改革に結びつけるものがあれば柔軟に対処していきたいと考えております。
  215. 五島正規

    ○五島委員 終わります。
  216. 町村信孝

  217. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。  私は、最初に、薬剤窓口一部負担について伺います。  今回提案されている薬剤負担については、現場ではその内容をフローチャート化しております。今お配りしている資料の表1でございます。これを見ていただきますと、実に複雑な内容になっております。これを窓口でこなすということになりますけれども、間違いございませんか。
  218. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 なかなか細かい資料で、ひょっとしたら間違いがあったら申しわけありませんが、私が事前にいただいてチェックいたしました限りにおいては、このような形になります。
  219. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 こんな複雑な内容でこの薬剤負担を実施するとすれば、事務量が増大して、外来の待ち時間も長くなる、そして窓口は混乱するというのはもう明らかだと思うのですね。余りにも現場の実情や事務量を無視したものだと関係者からも声が上がっております。  さらに、具体的な事例でお示ししたいと思います。ほんの少しの処方の違いで薬剤患者の一部負担が大きく変わるという事例でございます。手元の資料の表2をごらんください。  この表を見てみますと、パターンが三つになっております。この三つのパターンなんですけれども、一つは、パターンAというのは、五種類の薬を十四日分出して、患者の一部負担は千五十円になります。しかし、パターンBでは、日数、薬剤の中身は一緒で、処方は同じで、そして、ズファジランという薬ですけれども、これを一日二回から四回にふやすわけですね。そうしますと、四百二十円になってしまうわけです。パターンAよりも薬剤はふえるのに薬剤の一部負担は大幅減になる。さらに、パターンCをごらんいただきたいと思うのですけれども、これは、ビタメジンというのを一日三カプセルから一カプセルに減らすということになるのですね。その場合は、一部負担薬剤三百五十円になってしまう。処方の少しの違いだけで、千五十円になったり四百二十円になったり三百五十円になる、こんなにも薬剤患者負担が違ってくる。こんなケースがあるのでしょうか。
  220. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 まず、医師処方の問題があります。三つのケース処方がございますけれども、今回の薬剤の一部負担の方法論になるわけでありますけれども、その中における幾つかの前提条件があったわけでありますが、一つには、やはり医師処方というものを尊重して行う、これは当然のことであります。  それからまた、ここから技術論になりますけれども、十一億枚を超えるレセプト、その記載簡素化というのが現在行われておりますけれども、それがまさに一剤一日二百五円以下の場合についてはこれは一種類と扱う、こういうような取り扱い方になっております。  それからまた、もう一つには、定額の薬剤負担をお願いする、そういうふうなやり方でお願いをしているわけでございます。  そういった中で、やはり制度の中での処方の方法等によってこのような違いが生ずるということは起こり得るというふうに思っておりますが、これはただいまのような制約の中でこの薬剤の一部負担制度ということをお願いする中における限界であるということで御理解いただきたいと思います。
  221. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 本当にややこしい制度ですね。これを窓口計算して患者さんに負担していただくわけです。  次に、質問をいたしますけれども、服用時点が同じで、服用回数が同じ薬剤の一日分の薬価が二百五円を超える場合には、その中に含まれている一日当たりの薬価が十五円以下の薬剤でも十五円の負担になる。これは薬価基準に規定されている薬価よりも高い負担をさせるという点では水増しの負担というふうになりませんか。いかがでしょう。
  222. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 これは、今回の改正案が現行の取り扱いに乗っかった形でお願いをしているということがございます。  現行の取り扱いを御説明いたしますと、まさに服用時点が同じで、そして服用回数が同じである、いわゆる一剤ということでありますが、この場合には、一日薬価の合計額が十五円以下の場合については、診療報酬請求上、いわゆる一点ということですから、一日一種類十円ということになるわけであります。二百五円を超えるような場合については、その中に十五円以下の薬剤が含まれていましても、その薬剤については一日一種類十五円の負担ということでお願いしているわけでございます。  したがって、最初のケースのようなことで、薬価よりも大きな負担になるということは起こり得るわけでありますが、これはまさに現行の膨大な診療報酬請求の実務の簡素化というような視点から、いわゆる服用時点が同じで服用回数が同じである薬剤につきましては、これは各薬剤の薬価の合計額、それから投与日数を記載して薬剤料を請求するということを必要としないというようなことになっておる。そういうふうなことで、これはまさに実務上の問題、その結果、十五円以下については十円、こういうふうな形にさせていただいておるわけであります。  そういうような実務上の請求の実態にリンクした形でこの一部負担をお願いすることが、医療機関サイドにおいても、全体的にそんなことを言ってもわかりにくいじゃないかというふうにおしかりを受けておるのですが、少なくともその方がわかりやすいであろうということでお願いをしておりまして、甚だその辺のところはきちっとした制度からしますと矛盾点だと思いますけれども、そういう実務上の状況というものも念頭に置かざるを得ませんし、そういうことを考慮した場合に、このようなケースというのはまれでありますが出てくるということでございまして、そういうことで御理解を賜りたいと思います。
  223. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 実務上の問題といっても、一方で簡素化すれば、一方ではまた一層ややこしくなる、こういう状態ですね。  同時に、これは実務的な問題だけではなくて、一日当たりの薬価が十五円以下の薬剤でも十五円の負担になる。これは実務じゃなくて、水増しでこの差をいただいてしまおう、こういう発想だと思うのです。これがわかりやすいものになんてなるはずないです。実際に、こんなことを一々病院窓口医療機関患者さんに説明できる状況でしょうか。患者さんは、あるときにたくさん薬をふやしたら、実際にはこんなに安くなってしまったとか、こんなことは、もう患者さん自身が医療機関に不信を持つということは明らかになってくるわけですね。  午前中も、今も言われましたけれども、簡素なと言うのだけれども、実際には何が簡素な制度なんだということは、もうさんざん言われたとおりなんですけれども、大変問題があると思います。  同時に、窓口負担というものは、保険給付率に応じた一部負担も同時に取るわけで、二重負担ということで根本的には患者を納得させることはできないということも審議会の中でも明らかになっているのです。この委員会審議の中でも明らかになっております。  最近の報道によりますと、与党と民主党の皆さんが修正案としていろいろな論議がされております。実際には、受け取った薬剤の費用に分けて、また種類状況に応じて負担をさせるとか、いろいろな論議がされているようですけれども、これも、流れでいえば、患者薬剤費の二重負担という点では変わりがないと私は思うのですね。二十二日の参考人の意見聴取でも、薬剤投与を決めるのは専ら医療機関医師の側で、医療費に占める薬剤比率が高いのは患者側に問題があるのではない、それを患者の自己負担拡大で対応するのはおかしいという意見が出ましたよね。こういう意見が幾つか出されました。  この薬剤負担は、患者医療費抑制に協力しないという罰を与えるものじゃないか。薬剤費の十五円上乗せは、三十年前にちょうど二年間の時限立法として強行されましたけれども、結局、受診抑制を引き起こしたのです。痛ましい死亡事故まで生まれて、国民の怒りの中で、この三十年前の法律は廃止されたのです。この反省もなく、厚かましくまた導入するなんということは、本当に私は許せないと思っています。その気になれば、直ちに手をつけるべき薬価ですね。これには手をつけないで、患者負担だけ真っ先に押しつけるということは断じて認めるわけにはいかない、撤回すべきだというふうに思います。  次に、私は、経済的な弱者の配慮についてお聞きします。  差額ベッド代とか、おむつ代など、保険外負担は多額に上ります。さきの委員会審議の中で高木局長は、部屋代では特別室もあるわけで、患者の選択、ニーズにこたえたものもある、このように答弁されていますけれども、実際にはどうかといいますと、確かにそれは、一日何万円という差額ベッドに入っている人もあるでしょう。でも実際には、差額ベッド代を払わなければ入院できないという、こういうケースもふえてきております。そうなると、経済力の乏しい患者さんは入院できなくなる。ましてや、おむつ代ですけれども、おむつ代などは保険外負担ということで負担させられているわけですけれども、こんなのは保険で見るのが本来当然だと思うのですね。  今、付添看護制度が廃止されまして、またこれも委員会の審議の中で論議がありましたけれども、包括払い制度の中では、重い病状の人は入院できないという状況が生まれております。  国民年金の老齢年金受給権者が今千百四十万人で、その平均の年金月額というのは四万五千円、平均の年金月額を下回る者が六割弱になっている、こういう状況でしょう。その中で入院すると、今までだと、一部負担金が一日三百円で二カ月限度の現行制度があった。ところが、今回、容赦なくこれを廃止したのですね。一日五百円で限度なしでずっと取り続ける。さらに、医療費の伸びについてスライドさせるというわけですね。入院となれば、給食費の一部負担、一日三百円も払い続けなければならない。その上、保険外負担がかぶさってくる。もう、これでもか、これでもかという負担でしょう。  こういう今回の制度の改定によって、経済的な弱者への配慮がちゃんとできているのかという問題について、もう一度はっきりお答えいただきたいと思うのです。いかがでしょう。
  224. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 医療保険制度というのは、これはそれぞれ相扶共済の制度でありますから、当然、保険料を負担する方がおられますし、それから、当然また、必要な場合に給付を受けるということがあるわけでありますけれども、そこのやはり、保険料を負担している方と給付を受ける方、それぞれの負担の公平、また負担と給付の公平といったものについて配慮していくことがやはり大前提だろうというふうに思います。  現下の医療保険制度は、まさにそういった意味では大変な財政的な危機状況にあるわけでありまして、そういった中で、この皆保険制度というものをこれからもきちんと維持存続させていくということが必要であるというふうに考えておりますし、そのためには、制度の抜本的な改革ということを前提として、しかし、現下のこの窮迫した医療保険制度の運営というものの安定化を図るということは、これもまた急務でございます。  そういった意味で、今回の財政の運営の安定を図る上において、保険料の負担、それからまた患者さんにおいては給付と負担のバランス、こういったものをお願いしているわけでありまして、そういった中で、国民の経済力の向上等々に照らした場合に、今回の一部負担、もちろんできるだけ低い負担がいいわけでありますけれども、これからの少子・高齢化社会というものをにらんだ中において、世代間の負担ということも考えますと、この程度の御負担というものはお願いせざるを得ないということでございます。  もちろん、医療保険制度というのは、これはやはり、医療費の増嵩に対してそのリスクをきちんとカバーできる制度、これでなければならないことはもちろんであります。そういった意味では、まさに、これからの医療保険制度の抜本的な改革ということを考える際においては、そういった意味での負担と給付のあり方というものを根本的に考えなければいけないということで考えておりますので、今回の改正の趣旨を御理解いただきまして、一部負担についても御判断いただければと思います。
  225. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 到底理解できませんね。  実際には、財政的に危機的な状況だ、この保険財政がこういう状況だと言われているけれども、直ちにやるべきことはあるのですよ。それは、もう何度もこの委員会の中でも、高薬価の問題、もう本当に異常な高薬価についてメスを入れる問題や、国がちゃんと負担率を戻すと言っておきながら戻していない問題だとか、こういうやるべきことというか、すぐやるべきことはあるのです。それをほっておいて、社会保障制度である、医療制度である、こういう、弱者の人たちへの配慮がもう本当に容赦ないというか、このぐらいの負担で大丈夫だという、どこに大丈夫だという根拠があるのですか。  今見たら、病院なんか、実際には消費税の増税が四月一日から実施されて、まだ医療改悪がされていないのだけれども、薬代何とかしてもらえませんか、薬を減らしてもらえませんかという声が医療機関で、窓口で続いているというわけでしょう。患者さんがもう減っているというわけです。まだこの医療保険が改悪されていないのにというのも、論議がこの中でもありましたけれども、こういう実態の中で、いつまでも、給付と負担のバランスと言いながら、弱者に対する配慮がないという問題については、本当に私は、よくよく考えるべきだというふうに思いますね。  次の質問に移りたいと思います。  健保組合の九五年度の決算による組合健保の赤字は過去最大の千二百八十億円に上って、赤字組合も増加して六二・六%、このようになっています。六割超しているわけですね。それで、医療保険財政が悪化している原因は、先ほど私が述べましたように、高薬価の問題、また、高額医療機器や国庫負担金の相次ぐ削減、こういう問題が明らかになってきていますけれども、同時に、企業の無責任な雇用政策にも大きな原因があるというふうに私は思っているのです。  健保連は、九五年度の決算に当たってどういうことを言っているか。  一つは、労働者の標準報酬月額の伸びが、対前年度比で一・八六%と二年続きの一%台後半という大変低い伸びになっている。これは、政管健保では賃金の伸び率はさらに低くて、一%を割っているわけですけれども。  二つ目にはどう言っているかといいますと、被保険者である労働者の数が前年度から六万九千二百四十七人も減っている。前年度に引き続き二年連続の減少となり、減少幅は過去最高だ。労働者の数も減り、賃金もふえていない、こういう問題なんですね。経団連、財界、もう賃金を抑制し、リストラをどんどん行う、一方では海外での雇用を拡大しているという報告も出されております。  ここに健保財政悪化の理由の一つがあるというふうに私は思うわけです。これは健保連も言っている。この問題について、国民に責任を問うなんということはできるのか、責任の負担をかぶせることができるのかというように思うのですけれども、いかがでしょうか。
  226. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 医療保険制度の財政の悪化、これについて国民に責任を問うとかというような考え方を私どもとっておるわけではありませんし、また、今回の例えば薬の一部負担の創設についても、何か薬をもらうことに対してペナルティーを科すというふうな考え方をとっているわけではございません。厳然たる事実として医療保険財政というものが非常に窮迫した状態にある、こういった中でどういうふうにこの運営の安定というものをまず図るのか、こういうような角度で考えた場合に、やはりそれぞれ負担の公平というような視点を踏まえながら、この負担というものを分かち合わない限りは制度というものの安定を図れない、こういうふうに考えておるからでございます。  ただ、その際に、現在の医療保険制度というものがこのままでいいのか。これはやはり、国民皆保険が昭和三十六年に達成され、三十年以上時間がたっ中で、構造的な赤字要因、構造的な疲労というものが内在しておるというふうに認識をしておるわけであります。しかし、この制度というものは、なかなか改革に当たっては利害関係の対立する問題が多々ございます。そういう非常に難しい問題を抱えながら、しかしながら、この制度をこのままで維持していくことはできない、まさにこの少子・高齢社会に向けて盤石な制度というものをつくっていかなければいけない、そういった意味で、抜本的な改革を引き続きやっていくということを申し上げているわけでございます。  この健康保険組合の赤字の要因等々につきましても、これの最大の要因というのは、やはり経済が非常に低迷している、しかも、これが従来の景気循環とは違った新しい形での低迷ということではないかというふうに思います。そういうような中で医療費は、これは景気に関係なく、ある意味では一定の水準で伸びておる、このギャップというものが医療保険財政を窮迫させているということであるというふうに思うわけであります。  しかし、経済を医療保険がリードするということではないわけでありまして、やはり経済なり雇用の実態というものに乗っかってまさに社会保障制度たる医療保険制度があるわけでございますから、そういった意味で、この医療保険制度状況というものを私どもとしては直視をし、そして制度の運営の安定を図っていくということが急務である、このように考えているわけでございます。
  227. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 その薬剤負担がペナルティーを科すものでないといったって、実際には保険負担をちゃんと払っているわけですよ、薬剤費で。その上、またさらに窓口で別に取るというわけでしょう。これがペナルティーでなくて一体何かということなんですね。ちゃんと一部負担で払っているのにもう一度かけるなんということは、私は、ペナルティー以外にないというふうに思うのです。  実際には、構造的な赤字の問題についても私たちははっきり言っています。高薬価の問題、それから高い医療機器の問題、ここについてきちんとメスを入れれば二兆円以上の財源が生まれてくる、今回の改悪をやらなくて済むのだということもちゃんと言っているのですね。それを言って、やらなければいかぬと言いながら、まず、ともかく患者さんへの負担国民への負担と考える。  それは、あなたが今言われたように、利害関係の対立もあると。国民はみんな反対している、千三百万人以上の署名が今どんどん寄せられていて、お医者さんたちも反対している。一体だれの利害のためにこれはやるのだということです。利害といったら、製薬会社や医療機器メーカーの立場と、もちろん、高い薬価や医療機器にメスを入れるとなれば、それは製薬会社や医療機器メーカーの利益という点からいうと当然マイナスになるということだってあるでしょう。厚生省は一体どちらの立場に立っているのですか、対立があるといったって。ちゃんと国民の立場に立ってやるべきじゃないかと思うのですけれども、いかがでしょう。  さらにもう一点、経済が低迷していると言われたけれども、今、企業もいろいろなリストラをやっていますけれども、大企業のリストラ率というのは高いわけです。海外へどんどん、国内は首を切って外国で労働者をうんとふやしている。内部留保だってたっぷりため込んでいるのですね。そして、企業がもう言いたい放題でしょう。もうこれ以上負担できないと言って、一方では国民負担率はもっと上げようと言っている。こんなことは許されるだろうかと思うのですけれども、いかがでしょう。
  228. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 医療保険にしても、年金にしても、介護にしても、そのサービス、給付を受ける人と、その受ける背後には負担している人がいるということを我々は忘れてはいけないと思うのであります。若い方々は、自分は病気をしないけれども、保険料は高齢者以上に負担している。高齢者ということに対して特別の配慮があるからゆえに負担も軽いし、いざ給付を受ける場合も若い人よりも給付はいい。これからますます高齢者はふえてまいります。若い人は少なくなってくるというと、今の制度を放置しておきますと、若い人の負担というものはますます多くなる、これでお互いを助け合おうという皆保険制度が維持できるかという問題を抱えております。  確かに、薬剤負担、今回お願いしておりますけれども、手続は面倒だというならば、一律の、定率負担の方が手続は簡単なわけであります。共産党は、それじゃ定率負担、賛成するでしょうか、恐らく反対だと思いますね。ここが医療保険制度の難しいところなんですよ。簡単にしろといったら定率はもっと簡単ですよ、公平だといったら定率の方がもっと公平です。なぜそれを言わないのかというところに医療保険の改正案をまとめる難しさがあるのです。  そういう中で、我々は、経済の成長をしないと福祉の充実はできない。企業だって、余りの税の負担、保険料負担を言うならば、企業の存立を図れば、自分たちの企業の立ち行くためにもつと有利な場所やら有利な国へ移っていきます。我々は、福祉の充実を図るためにも、日本において企業が発展してもらわなきゃならない。多くの人を雇ってもらわなきゃならない。国民によい商品、よいサービスを提供してもらわなきゃならない。その環境があってこそ経済の発展ができる。経済の発展があるからこそ、その成果を福祉の充実に回すことができるということから、いかにこの社会保障の負担と給付はあるべきか。企業の発展を促して、その成果を福祉の充実に回すためにどのような環境を整えていくかということで、国民負担は五〇%を超えないようにこれから考えていかなきゃならないということになれば、社会保障にも、おのずから給付と負担、若い世代と高齢者の世代のお互いバランスのとれた負担と給付を考えていこうということから今回の案を出しているわけであります。  これから、今回の審議の間にいろいろ委員から出た御意見等を参考にしながら、より本格的な、総合的な改革案に着手する、今回はその段階的な案であるということを御理解いただきたいと思います。
  229. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 経済成長なくして福祉の充実はないというけれども、実際には、企業はどんどん首を切って、そして海外へ、雇用を拡大するということをやっているわけです。  今、経済成長をやった日本の国、実際には我が国は世界で第二の経済大国になっている。国民一人当たりのGDPでは世界一です。対外の純資産は、一九九五年度末で七十六兆円、ドイツの四倍、イギリスの八倍、五年連続世界一ですよ。貿易黒字も、一九九六年も九兆円を超えて世界一になっている。  この経済のある意味では広がりが本当に福祉の充実に生かされているのか。今のこの保険財政をどうもつのかということで、年寄りにはかけられない、若い人にはかけられない、国民にはかけられないのですね。そうすると、私は、経済力を持っている大企業なんかにもつと負担をしてもらうべきだというふうに思っているのです。  例えば、具体的な事例でお聞きしますけれども、日本の社会保障の給付費の中で、企業は、社会保障、医療費の費用負担を国際比較でどういうふうに持っていますか。
  230. 中西明典

    ○中西政府委員 社会保障制度におきます企業負担のあり方につきましては、それぞれの国の社会保障制度の仕組みによって当然異なってくるわけでございますが、OECDの統計によりますと、社会保険料中の事業負担分の対GDP比につきましては、一九九四年で、フランスが一一・八%、ドイツが七・八%、日本が五%、アメリカが三・七%、イギリスが三・四%という状況になってございます。日本がドイツ、フランスに比べて雇用主の社会保障負担が低いというのは、基本的には、国民所得あるいは国内総生産と比較しても大した変わりはないと思いますが、その中に占める社会保障給付費のウエートが相対的に低いというところから来るものでございます。  この理由は、いろいろ分析が必要だと思いますが、それらの国に比べて、日本がまだ高齢化率が少し低いという状況もありましょうし、そのほかに、年金の成熟度合いが違うとか、あるいはフランスやドイツにおきましては、年金の積立金が資産収入という格好で社会保障財源になるわけでございますが、積立金が日本に比べて非常に乏しいという状況もございましょうし、あるいはドイツやフランスの方が日本より失業保険給付、その面で非常に大きなお金を割いているといったような状況もあろうかと思います。  現状はそうしたことで、今現在、社会保障給付費のウエートが日本の方がドイツ、フランスに比べて低いので、結果として企業負担率は低くなっているというのが現状でございます。
  231. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 要するに、外国では企業対労働者の、例えば社会保険や年金の割合だって七対三、こういうふうにやっているところもたくさんあるわけです。日本は五対五でしょう。もちろん、私たちは中小企業に対する配慮は必要だと思うけれども、もっと企業にちゃんと、特に大企業に自覚と責任をはっきり持たせるべきだと思うのです。  社会保障についても、日本は経済力をうんと大きく引き伸ばしているのに、社会保障の費用は大変ひどい状況がある。企業負担もひどいけれども、全体だって、これは社会保障研究所の資料ですけれども、一九九二年でも日本は本当に最下位クラスですね、低い段階。医療費の対GDP比でも十八位ですよ。こういう状況になっている。  ですから、私は、こういう社会保障の割合を日本全体うんと引き上げて、そして同時に、企業に、特に大企業にその責任を果たしてもらう、こういう点で、医療保険のこういう財政赤字の問題についてもきちんとメスを入れていくということが大事だと思うのです。  今回の医療保険の改悪というのは、全くその方向とは逆行して、国民負担だけで乗り切る、こういう改悪案を断固撤回していただきたいと思います。  以上、質問を終わります。
  232. 町村信孝

    町村委員長 中川智子さん。
  233. 中川智子

    ○中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。  きょうは連休の真つただ中で、テレビを見ますと、厚生委員会だけでとても寂しいですけれども、一生懸命最後を締めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  ちょっと確認をいろいろしたいな、基本的なところで確認の作業を少しさせていただきたいと私自身思いまして、きょうは質問をさせていただきます。  このたびの医療保険制度改革は、介護保険法同様、今国会の大変重要な法案であるというふうに認識していますけれども、一番最初の確認、今もずっと審議されている中で、改革なくして負担増なしということをずっと言われ、また、そのような形でこの委員会が、言ってみれば粛々とという、粛々、特措法を思い出しますね、粛々とという形でやられていますが、改革なくして負担増なしというこの言葉が、しっかりと共通認識としてあるかどうか、その言葉をちょっと伺いたいのです。これは大臣。
  234. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 今回も改正案でありますから、当然、改革案なんです。このまま放置していくとますますツケを先に送っていくだけだ、これではならぬということで、今回、一定負担患者さんにお願いしていただくということでありますので、これがすべてとは言いません、第一段階だ、総合的な改革につなげていきたいという意味において第一歩の改革案であるということを御理解いただきたいと思います。
  235. 中川智子

    ○中川(智)委員 ツケが改革案の第一歩なんですか、負担が改革案の第一歩なんでしょうか。もう一度お願いします。
  236. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 今、患者さんに対する負担だけを言っていますけれども、患者さんに対する負担をなくすれば、それじゃどこが負担するのでしょうか。保険料を負担するのでしょうか、増税するのでしょうか、企業に負担させるのでしょうか、赤字国債を発行するのですか、何ら改革できない。  そういう意味において、私は、今回の患者さんに対する御負担一つの改革案であると。抜本的とは言いません、段階的な第一次の改革案だと。これでは事足れりとしませんから、今後、できるだけ速やかに根本的な、総合的な改革案に着手したい、そう考えております。
  237. 中川智子

    ○中川(智)委員 最初の約束は、抜本改革を国民にきっちり見せて、そして、それで補えない部分に対して国民負担をお願いするという、そのような形でスタートしたのではなかったでしょうか。
  238. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 それがいまだにできないのです。いかに難しいか。三十年来できなかった。去年の選挙から十二月の予算編成まで、時間が限られています。しかし、基本的方向を見せたい、三月末に政党で決めたいと言っていたのに、なおできない。いかに難しいか。  でありますから、私は今回、総合的な案ではありませんが、できるだけこの段階的な案を通していただきたい。そして、それが通り次第、厚生省が責任を持って、今までの利害関係に惑わされない、国民のためを思うような改革案を提示して、政党なり議員なり国民の批判に供するような案をつくりたい、そういう段階的な案であるということを御理解いただきたいと思います。
  239. 中川智子

    ○中川(智)委員 それでは、その三十年間、なぜできなかったのか。そしてまた今回、ツケをまず国民に負わせて、そしてまたできない、百年先もできない、いつも、難しい、できない、この繰り返しに対して、この三十年間の総括を小泉大臣は今どのように考えていらっしゃるか、お願いします。
  240. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 安易に若い世代にツケを送ろうという国債発行が限度に来たということが、改革をしなければならない大きな促進剤の一つになっていると私は思います。
  241. 中川智子

    ○中川(智)委員 こうなってくると、ちょっとだんだん……。  私は、この三十年間できなかった難しさというのを今直視して、その難しいことに切り込んでいく、具体的に、まず手始めに、難しいけれども、これからやっていくということを一つでもきっちり見せてからの国民負担でなければ絶対に国民は納得しないということで、この間ずっと議論しているのです。今のこの時点で、難しいけれども、まずツケをお願いして取り組んでいくという姿勢は買っても、それじゃ何からという明示がなければ、それは三十年間ずっとそれで繰り返されてきて、もう私たちは、言ってみれば、言葉は悪いですけれども、信じられないというところに立っております。もう少し具体的にお願いします。
  242. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 医療保険の抜本改革ということは、この三十年来言われてきております。やはり最大の問題は、医療保険制度の安定というものをどう図るかといった場合、医療費の伸びと経済の伸びとの調和をどう図るか、これが最大の問題だというふうに思います。  これまで経済は、我が国はかなり順調に伸びてまいりました。もちろん、景気の循環というのはありますから、その伸びについてはいいときと悪いときとありましたけれども、押しなべて申し上げるならば、比較的順調に伸びてきたというふうに言えると思います。一方、医療費でありますけれども、医療費につきましては、これはいろいろな要因がありますが、高齢化の問題あるいは医療技術の進歩の問題、医療内容充実の問題、そういった中で経済を上回る伸びが続いてきたということではないかと思います。  そして、そのギャップが常に赤字というような要因で医療保険財政というものを圧迫してきたということだと思います。そして、この赤字の処理ということが、ひとつ抜本改革というものを行わなければならないということであったと思います。  今日、そういった意味ではまさに経済の伸びが非常に停滞をし、そして、医療費は相変わらず経済の伸びに変わりなくかなり高い水準で伸びてきております。このギャップは従来にも増して大きなものがございます。そういった中で、このギャップというものをどう考えていくのか、これがまさに医療保険改革の基本ではないかというふうに思います。  これから高齢化社会に向けて、医療費というのは経済に比べますとかなり高い伸びをするというふうに私は見ております。一方、経済の方はこれまでのような高い伸びは期待できないというふうに言われておるわけであります。そうしたときに、そのギャップをどういうふうに埋めていくのか、そこの部分というものをどういうふうに負担していくのか、この問題はやはり根本的な問題ではないかと思います。抜本改革というのは、まさにそこをどうしていくのかということが抜本改革ではないかというふうに思います。  もちろん、現行の医療保険制度というものが制度的な、構造的な赤字要因になっているというのは、今申し上げたようなことが最大の課題であるというふうに思いますし、そういった中でむだがないかといえば、やはりいろいろなむだというものが決してないわけではない。そのむだというものを極力合理化していく、これが一つの抜本改革の課題であることは間違いありませんけれども、しかし、そのむだというものをかなりスリムにし合理化していったとしても、やはり経済の伸びと医療費の伸びのギャップ、これは残ると思います。そこをどうするか、これがまさにこれからの抜本改革ではないかというふうに思っております。
  243. 中川智子

    ○中川(智)委員 いや、それはよくわかっているのです。そのような分析とかではなくて、その抜本改革、その中身に対して、具体的にそれをやっていかないとますます赤字がふえていく。まず赤字を埋めて抜本改革に取り組むというのは本末転倒であるということで、ずっとこの間議論しているわけなんですね。ですから、今のお答えは、最後の、抜本改革に取り組むだけが私の質問に対するお答えであって、その答えの中身を私は知りたい。抜本改革そのものに対して、何から、どのように、いつごろということを伺いたいわけなんですが、ちょっと、スリムな時間でお願いします。
  244. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 御意見の趣旨はわかります。抜本改革をまずやってから今回の案を出せということだと思うのですが、そうなりますと、赤字をほっておく状況が続いてしまう。これも大変無責任なことでありまして、それはできないということで第一段階の案を出しました。しかし、総合的な、抜本的な改革案ではないという御批判がありますから、それにこたえて、この法案が成立次第できるだけ速やかに、抜本案を厚生省としてまとめて、国民に提示したいと思います。
  245. 中川智子

    ○中川(智)委員 それはどのような形での提示でしょうか。閣議決定でしょうか、委員会でのあれでしょうか。そこのところまで含めてお願いします。
  246. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 今まで三十年間にわたって委員会なり国会でできなかった案を、厚生省独自で責任を持って出したい。それをどう政党なり議員が判断するか。私は、今までのいき方、経緯、反省を込めて、厚生省独自の案をまとめてみたい。それを判断するのは、国会が決めることであります。
  247. 中川智子

    ○中川(智)委員 わかりました。  そうしたら、もう三十年間の総括をして、必ずそれを出していく、そのような受け取りでよろしいのですね。
  248. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 厚生省としては、責任を持って案をまとめたいと思います。しかし、最終的にこれを成立させるのは国会議員、政党の判断です。それは中身によっても違うでしょうが、私は、厚生省としては思い切った、踏み込んだ改正案をまとめて、あとは各党議員、国会の御審議にお任せしたいと思います。
  249. 中川智子

    ○中川(智)委員 わかりました。――わかったようなわからないような、わかりましたけれども。  次に、ちょっと確認したいことのもう一つなんですけれども、今審議している政府案について質問させていただきたいのですけれども、七十歳以上の利用者負担が、外来で月千二十円が一回につき五百円ということで提示されていますね。入院のところで伺いたいのですが、一日七百十円から千円、この千円の根拠をもう一度説明願いたいのです。
  250. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 七十歳以上の老人の方々の一部負担につきましては、若い人につきまして今回一割から二割の負担増をお願いするという中で、老人医療費が大変ふえているということで、全体として一割程度の水準というものを一つのめどにいたしまして、その中で、しかしお年寄りの場合には急激な負担増ということをできるだけ避けたいという配慮も働きまして、一割以内のところで、現在の七百十円から千円、外来につきましては御案内のように一月千二十円から一回五百円という形で、全体的にはそのような形の中での引き上げをお願いしたものでございます。
  251. 中川智子

    ○中川(智)委員 マスコミの報道にということを言われまして、何々新聞にこんなことが書いてあったなんというのは余り言いたくないのですが、何かこのごろ、情報はすごくマスコミから得られることが多くて、ちょっと伺いたいのです。  昨日の新聞報道の中に、いわゆる政府案は千円なんですけれども、入院の一日が、介護保険法の施行後をにらんで千八百円が浮上してきました。私、この千八百円という数字が何を根拠に浮上してきたかよくわからないのですが、御存じの方がいらしたら説明していただきたいのですが、ちょっとお願いします。
  252. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 私どもが関係しているということで誤解を持たれると困るので、ここは声高にまず申し上げた上で、これは想像になりますけれども、金額的に申し上げれば、ちょうど高齢者の入院全体の約一割相当は約千八百円ということですから、仮に千八百円というのがあるとすれば、そういうことは考えられるかもしれません。
  253. 中川智子

    ○中川(智)委員 介護保険法で千八百円の根拠というのは、私も、きのう、おととい、休みで暇だったものですから、いろいろ自分なりに計算してみたのです。そうしたら、療養型病床群の一カ月の入院費が大体平均四十四万円というところで計算すると、限りなく千八百円に近いなということを思ったのですが、介護保険で対象となるのは、いわゆる社会的入院療養型病床群を積算の根拠の一つにすべきではなくて、いわゆる特養、今一カ月平均二十八万円から三十万ですね、特養の入院費は。そうなりますと、そちらに合わせるべきだと思ったのですね。ですから、そういうふうに計算しますと大体一カ月千円弱というふうになるのですが、そういう計算を私なりにしてみたのですけれども、その辺の感想を聞かせていただきたいのです。.私がちょっときのう計算した、そういう介護保険との、合わせるべきは特養の方だと私は思っているのですが、どなたかちょっと、そういう計算をしたことに対しての感想で結構ですからお聞かせ願いたいのですけれども。
  254. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 行きがかり上、それじゃ私が代表してあれですが、千八百円という数字が何だろうというふうなお尋ねだったので、もしあるとすれば一割相当になりますよと申し上げたわけでありまして、これをどういう形でとるかというのはいろいろな考え方があろうと思います。
  255. 中川智子

    ○中川(智)委員 私もいろいろ計算してみたら、こういうときだけ一番上の部分に合わせるのだな、負担をするときの根拠として上に合わせるし、いつもは先取りなさらなくて、三十年のツケが今来たみたいな議論ですのに、こういうときはもう三年先の介護保険と合わせていろいろ千八百円という数字が出てきたのだな、やはり魑魅魍魎のおもしろい世界だなと思ったことを感想にしまして、どうも皆さん、連休中お疲れさまでした。もう一回、もっともっと審議を楽しくやっていきましょう。時間をとって頑張りましょう。  では、失礼いたします。ありがとうございました。
  256. 町村信孝

    町村委員長 次回は、来る五月六日火曜日午後二時三十分理事会、午後三時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十二分散会