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1997-04-25 第140回国会 衆議院 厚生委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月二十五日(金曜日)     午前十時四分開議 出席委員   委員長 町村 信孝君    理事 佐藤 剛男君 理事 住  博司君    理事 津島 雄二君 理事 長勢 甚遠君    理事 岡田 克也君 理事 山本 孝史君    理事 五島 正規君 理事 児玉 健次君       安倍 晋三君    伊吹 文明君       江渡 聡徳君    大村 秀章君       奥山 茂彦君    嘉数 知賢君       桜井 郁三君    鈴木 俊一君       田村 憲久君    根本  匠君       能勢 和子君    桧田  仁君       松本  純君    山下 徳夫君       青山 二三君    井上 喜一君       大口 善徳君    鴨下 一郎君       坂口  力君    福島  豊君       桝屋 敬悟君    矢上 雅義君       吉田 幸弘君    米津 等史君       家西  悟君    石毛 鍈子君       枝野 幸男君    瀬古由起子君       中川 智子君    土屋 品子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小泉純一郎君  出席政府委員         厚生政務次官  鈴木 俊一君         厚生大臣官房長 近藤純五郎君         厚生大臣官房総         務審議官    中西 明典君         厚生省健康政策         局長      谷  修一君         厚生省保健医療         局長      小林 秀資君         厚生省薬務局長 丸山 晴男君         厚生省老人保健         福祉局長    羽毛田信吾君         厚生省保険局長 高木 俊明君         厚生省年金局長 矢野 朝水君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      飯原 一樹君         文部省高等教育         局医学教育課長 寺脇  研君         厚生委員会調査         室長      市川  喬君     ――――――――――――― 四月二十五日  児童福祉法の理念に基づく保育公的保障の拡  充に関する請願石井郁子紹介)(第二二四  七号)  医療保険制度改悪反対医療充実に関する  請願瀬古由起子紹介)(第二二四八号)  同(辻第一君紹介)(第二二四九号)  同(寺前巖紹介)(第二二五〇号)  同(春名直章紹介)(第二二五一号)  同(東中光雄紹介)(第二二五二号)  同(藤田スミ紹介)(第二二五三号)  同(古堅実吉紹介)(第二二五四号)  同(正森成二君紹介)(第二二五五号)  介護保障確立に関する請願不破哲三紹介  )(第二二五六号)  同(児玉健次紹介)(第二三二四号)  公的介護保障制度早期確立に関する請願(金  子満広紹介)(第二二五七号)  同(志位和夫紹介)(第二二五八号)  同(瀬古由起子紹介)(第二二五九号)  同(辻第一君紹介)(第二二六〇号)  同(藤木洋子紹介)(第二二六一号)  同(松本善明紹介)(第二二六二号)  同(穀田恵二紹介)(第二三二五号)  同(中島武敏紹介)(第二三二六号)  厚生省汚職の糾明、医療保険改悪反対に関する  請願石井郁子紹介)(第二二六三号)  同(大森猛紹介)(第二二六四号)  同(金子満広紹介)(第二二六五号)  同(木島日出夫紹介)(第二二六六号)  同(児玉健次紹介)(第二二六七号)  同(穀田恵二紹介)(第二二六八号)  同(佐々木憲昭紹介)(第二二六九号)  同(志位和夫紹介)(第二二七〇号)  同(中路雅弘紹介)(第二二七一号)  同(中島武敏紹介)(第二二七二号)  同(平賀高成紹介)(第二二七三号)  同(不破哲三紹介)(第二二七四号)  同(藤木洋子紹介)(第二二七五号)  同(松本善明紹介)(第二二七六号)  同(山原健二郎紹介)(第二二七七号)  同(吉井英勝紹介)(第二二七八号)  同(松沢成文紹介)(第二三一〇号)  同(石井郁子紹介)(第二三二七号)  同(大森猛紹介)(第二三二八号)  同(金子満広紹介)(第二三二九号)  同(木島日出夫紹介)(第二三三〇号)  同(児玉健次紹介)(第二三三一号)  同(穀田恵二紹介)(第二三三二号)  同(佐々木憲昭紹介)(第二三三三号)  同(佐々木陸海紹介)(第二三三四号)  同(志位和夫紹介)(第二三三五号)  同(瀬古由起子紹介)(第二三三六号)  同(田中慶秋紹介)(第二三三七号)  同(辻第一君紹介)(第二三三八号)  同(寺前巖紹介)(第二三三九号)  同(中路雅弘紹介)(第二三四〇号)  同(中島武敏紹介)(第二三四一号)  同(春名直章紹介)(第二三四二号)  同(東中光雄紹介)(第二三四三号)  同(平賀高成紹介)(第二三四四号)  同(不破哲三紹介)(第二三四五号)  同(藤木洋子紹介)(第二三四六号)  同(藤田スミ紹介)(第二三四七号)  同(古堅実吉紹介)(第二三四八号)  同(正森成二君紹介)(第二三四九号)  同(松本善明紹介)(第二三五〇号)  同(矢島恒夫紹介)(第二三五一号)  同(山原健二郎紹介)(第二三五二号)  同(吉井英勝紹介)(第二三五三号)  同(東中光雄紹介)(第二四〇〇号)  子供の性的搾取・虐待をなくすための立法措置  に関する請願肥田美代子紹介)(第二二七  九号)  保険によるよい病院マッサージに関する請願  (五島正規紹介)(第二二八〇号)  医療保険改悪反対建設国保組合の国の定率補  助削減反対に関する請願佐々木陸海紹介)  (第二二八一号)  同(矢島恒夫紹介)(第二二八二号)  療術の法制化に関する請願末松義規紹介)  (第二二八三号)  同(末松義規紹介)(第二三〇〇号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願(大畠  章宏君紹介)(第二二八四号)  同(五島正規紹介)(第二二八五号)  同(前原誠司紹介)(第二二八六号)  同(五島正規紹介)(第二三〇一号)  同(小野晋也君紹介)(第二三一四号)  同(河井克行紹介)(第二三一五号)  同(小野晋也君紹介)(第二三五四号)  国民健康保険制度抜本改革に関する請願(横  内正明紹介)(第二二九八号)  医療等改善に関する請願横内正明紹介)  (第二二九九号)  同(臼井日出男紹介)(第二三一一号)  同(高橋一郎紹介)(第二三一二号)  同(畑英次郎紹介)(第二三一三号)  同(野中広務紹介)(第二四〇一号)  医療保険制度改悪反対医療制度抜本的改  革に関する請願海部俊樹紹介)(第二三〇  七号)  同(赤松広隆紹介)(第二四〇二号)  障害者プラン拡充具体的推進に関する請願  (児玉健次紹介)(第二三〇八号)  同(住博司紹介)(第二三〇九号)  重度戦傷病者と妻の援護に関する請願浜田靖  一君紹介)(第二三一六号)  同(塚原俊平紹介)(第二三五八号)  公的介護保障早期確立に関する請願瀬古由  起子紹介)(第二三五五号)  同(平賀高成紹介)(第二三五六号)  同(松本善明紹介)(第二三五七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月二十五日  脳死及び臓器移植に関する陳情書外四件  (第二二一  号)  医療費負担増の凍結と抜本的医療保険制度改革  に関する陳情書外九件  (第二二二号)  国民医療拡充医療保険制度改革に関する陳  情書外五件  (第二二三号)  医療保険制度患者自己負担増反対に関する陳  情書外五件  (第二二四号)  生活保護受給者に対する医療券方式医療証方  式へ改善に関する陳情書  (第二二五号)  リフト付福祉バス運行事業に対する国庫補助制  度の見直しに関する陳情書  (第二二六号)  乳幼児の医療無料化に関する陳情書外四件  (第二二七号)  成人歯科検診事業充実に関する陳情書外三件  (第二二八号)  国民本位介護保険制度導入に関する陳情書  外三件  (第二二九号)  老人医療費拠出金算定における老人加入率の上  限枠の撤廃に関する陳情書  (第二三〇号)  特別養護老人ホームの設置の認可に関する陳情  書  (第二三一号)  少子化社会への対応に関する陳情書  (  第二三二号)  児童福祉法改正に関する陳情書外一件  (第二三三号)  放課後児童対策事業法制化に関する陳情書  (第二三四号)  母子保健事業等事務委譲に伴う財政支援措置  に関する陳情書  (第二三五号)  保育所保育料の免除に対する助成制度の創設  に関する陳情書  (第二三六号)  遺伝子組みかえ食品の安全性の確認、表示の義  務づけに関する陳情書  (第二三七号)  脳死段階カニューレ挿入等臓器移植に伴う  法的整備に関する陳情書  (第二六五号)  は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第三六号)      ――――◇―――――
  2. 町村信孝

    町村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。根本匠君。
  3. 根本匠

    根本委員 自由民主党の根本匠であります。  私は、健保法改正について何点かお伺いしたいと思います。  私は、社会保障制度構造改革、これは早急に進めなければならないと思っております。特に医療については、制度基本から見直して抜本的な改革をしなければならないと思います。  日本医療は、国民保険のもとで、だれもが、いつでも、どこでも安心して適切な医療を受けられる体制、この医療へのアクセスは、日本は諸外国から比べても大変高い水準になっております。ただ、高齢化進行によりまして、医療費は毎年六%前後ふえる、一兆円を超える規模で増加しておりますが、これに対して国民所得伸びは一%にとどまっておりますから、国民経済医療費伸びの乖離によって、医療保険制度は深刻な赤字体質になっております。これは一時的な問題ではなくて、構造的な問題であると私は思っております。  小泉大臣は、今国会質疑の中で、たびたび、今後どのような医療保険構造改革を行うとしても今回程度患者負担見直しは必要だと答弁されておられます。これから、中長期的な観点からの制度改正必要性、これを改めてお伺いしたいと思います。  今回の制度改正、これは、国民経済成長率の低下あるいは人口高齢化などの構造的な要因変化による、将来を見据えますとやむを得ない改正だと思います。  政策はやはりそのときそのときの大前提があると私は思いますが、この医療保険制度の沿革を振り返りますと、いつ老人医療無料化がなされたか。これは、昭和四十八年に老人医療無料化がなされました。昭和四十八年までは国保の本人三割負担となっていたわけでありますが、地方自治体が無料化等を推し進める中で、老人医療費は国費で負担分を賄うということで導入をいたしました。  その前提は、私は三点あったと思います。  一つは、当時は、四十八年ですから、一〇%の高度経済成長時代で、きょうよりもあすが豊かになる、こんな時代でありました。経済成長の果実で福祉充実しよう、これがその当時の、制度導入時点経済前提でありました。  もう一点は、人口構成高齢化比率。これは、当時は四・六%でありますから、現在に比べて非常に高齢化の率が低い。  それからもう一点は、その当時の高齢者負担能力老齢福祉年金受給者で見ますと、月五千円の老齢福祉年金受給者、これは四百二十九万人おりました。これは当時の六十五歳以上人口八百十六万人の五二・五%。これが老齢福祉年金受給者でありましたから、その意味では、老後の所得保障としての年金、これはこの四十八年当時はまだ現在のように成熟してはいなかった、つまり、高齢者負担能力が現在に比べると乏しかった。  こういう三つの前提条件の中で、四十八年に老人医療自己負担無料化というものがなされております。  その後、日本経済は、一次、二次のオイルショックを経て、高度成長から安定成長、そして低成長へと経済成長率が鈍化してまいりましたから、五十七年に老人保健法を施行して、老人拠出金制度と一部負担導入しております。この当時の経済成長は、高度成長のときの一〇%から五%経済と低下しておりますし、高齢化進行度合いも、四・六%からこの時点で六・一%、高齢化進行しつつあった。こういう中で、老人拠出金制度と一部負担、これを導入しております。  それで、今回の大改正になるわけでありますが、今回、長期的構造要因がどうなったかという前提を見ますと、成長率、これは当時の一〇%経済成長からこの五年、実質ゼロ成長、名目で一、二%の成長となっておりますから、要は、経済基本になる成長率経済構造が大きく変わった。  もう一つは、高齢化が、当時は四・六%でありましたが、平成七年で九・五%、高齢化の率が二倍になっております。しかも、高齢化要因だけで国民医療費は一・五%年々増加する。  もう一つ深刻なのは、今回の新しい人口推計の中で、少子化がさらに進みます。となりますと、人口推計見直しによって、年金保険料も、ピークの保険料率、これが二九・八%から三四%、五ポイントも保険料負担が高まることが想定される。  今、こういう状況の中で医療費を見ますと、一般歳出の一五%、六兆円超で、これは防衛費を超えるわけですから、その意味では、国民の健康の安全保障費が非常に財政的に厳しくなってきている、こういう状況だと思います。こういう状況の中で、今回の制度改正をやらなければ破局のシナリオに突入していくのだろう、こう私は思っております。  その意味で、今回の制度改正をしなければ医療保険財政は今後どうなると予想しているのか。そして、今回の制度改正でどの程度改善するのか。ここは大臣にお伺いしたいわけでありますが、要は、中長期的な観点から財政見通しを含めての制度改正必要性を改めてお伺いいたします。
  4. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 今、昭和四十八年当時からの状況お話ありましたけれども、当時の状況と現在の状況とはがらりと変わってまいりました。  昭和四十八年当時の高齢者医療無料化というのは、財政的にも余裕があった、そして多くの高齢者も望んだ、政治的にもそれが可能だったということで実現できたと思います。しかしながら、高度成長も現在では望めなくなった。加えて、産業構造も大きく変化し、人口構成も、これからを展望するとますます高齢者がふえる。なおかつ、少子化の傾向が続いていくという状況になり、同時に、社会保障制度医療だけでなくて、年金等そのほかの制度も整備されてきました。  こういう状況を考えますと、これから財政的に余裕がないとなりますと、これは、医療を支えることを考えましても、まず公費、税金と社会保険料受益者負担、この場合は患者負担でありますけれども、この組み合わせをどう国民の御理解を得ながら均衡を図っていくかということが大事だと思います。  当面においては、財政の深刻な逼迫状況医療保険制度を支えていくためにも、安定的運営をするためにも、財政が破綻しておくことを放置することはできないということで、今までの患者に対する負担引き上げざるを得ないということで法案を今御審議いただいているわけですが、私は、財政状況厳しい中といって、患者にばかり負担をお願いしていくというのもこれまた限界があると思っております。  やはり高度成長から低成長、そして社会保障制度においても、ヨーロッパに追いつき追い越そうという目標を一応達して、それぞれの制度も、我々が見本としてきたヨーロッパ水準に遜色ない程度になってきた。人口構造もこれから高齢者が格段にふえていくということを考えますと、時期的にも、根本的な総合的な改革に踏み切らなきゃならない時期にもう来ていると思います。  今回はその第一段階として、患者皆さん方にも御負担をいただくわけでありますが、これからは、医療提供体制、さらに、今回の委員会でもいろいろ御意見が出ております診療報酬の問題、薬価基準の問題含めて、限られた医療資源、限られた財源、これをどうして、世代間のそれほどの不公平なく、お互いこの医療保険制度を支え合っていくかという視点がぜひとも必要であるということから、今回の案は第一段階であり、いずれ、この法律が成立し次第できるだけ早く、今国会、特に本委員会で出た議論を踏まえてすべての面から洗い直して、総合的な抜本改革に踏み切る案をできるだけ早く厚生省としてもまとめて、国民批判また委員皆様方批判に供したい。そういう中で御理解を得ながら、今回の法案の成立に対してぜひとも御協力をいただきたいと思います。
  5. 根本匠

    根本委員 私も、医療構造改革、これは徹底的に進めなければならないと思いますが、経済成長率の鈍化や高齢化進行を考えると、確かに、ある程度患者負担はやむを得ないものと思います。  ただ、問題は、高齢者負担能力であります。  今、例えば世帯一人当たり所得で見ますと、二十九歳以下は百九十一万円、七十歳以上は百八十六万円。年金成熟化によりまして、例えば年金受給者で見ますと、厚生年金は、昭和四十八年の七十九万人から平成七年度は六百五十九万人、国民年金は、昭和四十八年の七十九万人から現在千百四十二万人、一方、先ほど申し上げた老齢福祉年金受給者は、四十八年当時の四百二十九万人から五十三万人に減っておりまして、この受給者比率は四十八年当時の五二・五%から二・九%と低下しております。  その意味で、四十八年当時と比べますと、年金成熟化もありまして、この間の日本所得が豊かになったという今の水準を反映して、全般的には高齢者負担能力は確かに高まっていると私も思います。  ただ、問題は、七十歳以上の負担能力、これについてはばらつき格差がある。例えば二十代のばらつきと比べると、七十歳以上の方が、それまでの累積ですからばらつきがあるのですね。  それからもう一つは、高齢者に、患者負担を求める場合に、医療サービス、つまり、受益に応じた対価とはいいながら、この医療サービス受益というのは言ってみればマイナス受益のようなもので、要は、患者は不本意ながら受けるサービスに対しての対価、こういう医療サービス独特の、効用があってお金を払うというよりは、マイナス効用、負の効用を除去するような、マイナス受益に対する負担ですから、ここが、ある意味でやや逆進的な性格サービス性格上持つ。  こういうところで、高齢者あるいは弱者に対して負担させるのはけしからぬ、こんな議論が出てくるのだと思うのですね。その意味では、低所得者配慮すべきだと私は思いますが、この点についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  6. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 今回の高齢者につきましての一部負担引き上げでございますけれども、極めて厳しい医療保険財政状況を踏まえまして、医療保険制度を安定的に運営していくためには、御案内のとおり、若年の方々につきましても一割から二割の引き上げをお願いいたしたわけであります。したがいまして、高齢者方々につきましても、今先生お挙げになりましたような経済状況等変化というものがございます、そういったものを踏まえまして、応分の御負担をいただき、そのことよって世代間の負担の公平を図り、みんなで医療保険を支えていくということで、基本的には今回の御負担をお願いせざるを得ないし、また、そういう意味で御負担をいただけるのではないかというふうに思っております。  しかしながら、お話のございましたように、低所得者方々をどうするかという問題がございます。これにつきましても、一人当たりの可処分所得という側面で見ますと、その水準、あるいは今ばらつきお話ございましたが、分布という面でもそれほど大きな差がないこともまた事実でございますけれども、若干やはり低所得の方が多いというような側面もございます。  したがいまして、入院の一部負担金につきましては、やはり外来に比べましてどうしても高額になりますから、今回の改正案では、低所得方々につきましては、一日について一般方々の半分ということで五百円というような配慮をやっておるところでございます。  また、外来の一部負担につきましても、これは、全体につきまして、一回五百円を四回を上限にするというような形にしておりますし、薬剤費一部負担金につきましては、一種類一日分につき十五円、これは若人と一緒でございますが、こういったふうにしておりますので、外来につきましては、そういった意味合いからいけば、低所得者方々を含めまして、いわゆる過大な負担ということにはならないのではないかというふうに考えております。  御負担をお願いすることは大変心苦しいことではございますけれども、今のような形で配慮をしておりますので、御理解を賜れるのではないかというふうに考えておるところでございます。
  7. 根本匠

    根本委員 理念的に言いますと、保険というのは応能負担だし、患者負担定率にすれば受益に応じた負担ということになりますし、定額ということになるとこれは福祉だということになるのだと思うのですね。その意味では、今回の案は、受益に応じた負担福祉の要素を加味して配慮した、こんな性格ですね。  次に、もう一つ、諸外国高齢者医療がどうなっているのか、特に高齢者と若い人で保険料給付率格差をつけているのかどうか、諸外国の事例を教えてください。
  8. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 私ども、諸外国の全体の状況を完全に把握しているということにはあるいはならないかもしれませんけれども、先進主要国につきまして承知をしておる限りで申し上げれば、日本制度以外で、まず高齢者のための独自の制度を設けておるのはアメリカだけであります。アメリカの場合には、御案内のとおり、実は皆保険ではなくて、むしろお年寄りと低所得方々のための保険がそれぞれある、あとは民間保険というのが基本的な姿になってございます。  他は、いわゆる若人老人も共通の制度に入っておられるというまず基本がございまして、それで幾つかの例で見てみますというと、例えばイギリスの場合でございますと、今お尋ねの若人なり高齢者の場合につきましては、国民保健サービスでやるわけでありますけれども、保険料給付率とも、いわゆるその差というものを設けているというふうにはなっていないというふうに承知をしております。  それから、ドイツフランスでございますけれども、これも高齢者対象とする特別の制度ということにはなっておりませんで、被用者でございますれば、退職後も退職前の制度継続加入をするというような形になってございます。その給付率につきましては、ドイツフランスとも若人基本的には同じだというふうに承知をしております。保険料につきましては、ドイツでは、一般の被保険者平均保険料率と同程度に設定をされておりますが、フランスの場合には、若人に比べて高齢者保険料負担が若干軽くなっているようでございます。  アメリカは、今申し上げましたように、メディケアと言われる、六十五歳以上の高齢者あるいは障害者対象とした公的な医療保障制度がございますが、保険料につきましては、メディケアの中には二つございまして、入院医療サービス等対象としますパートAにつきましては、被用者に対するいわゆる社会保障税という形で賄われておりますので、それによって負担が行われている。また、外来サービス等を対象としますパートBと言われる部分につきましては、加入者の保険料と連邦政府あるいは州政府の一般財源で賄われております。これは先ほど申し上げましたように、若人との比較というのは、そもそも若人一般的には制度がございませんのであれになっておりませんけれども、そんな感じになっております。給付率につきましては、それぞれ一定の一部負担等を入れながらやっているというのが実態でございます。  以上でございます。
  9. 根本匠

    根本委員 老人保険制度については後ほどまたお伺いしますが、要は、日本医療保険制度、これは高齢者に優しい制度になっていて、医療へのアクセス、これは世界に冠たる水準になっております。これからも高齢者について優しいということを基本にしながら、高度経済成長前提にした制度人口高齢化も加わって限界を来しておりますから、これは低成長高齢化に対応したシステムにこれからソフトランディングしていく必要があると思います。  次に、また大臣にお伺いしたいと思いますが、今回、財政構造改革の中で、三年間はとにかく集中改革期間だ、一切の聖域なしだ、こういう方針が出されております。医療費年金というのはどうしても自然増でふえざるを得ない部分がありまして、これは非常に厳しい状況にありますが、この問題について大臣の取り組む決意をお伺いしたいと思います。
  10. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 財政構造改革会議におきましても、一切の聖域なしに、前年度マイナス予算を組むという大方針で当面やるということになっております。  私も先日、その会議に出席いたしまして、社会保障関係も一切の聖域なしでやるという方針だけれども、これは他の予算と違って、年金にしても医療にしても、あるいは介護にしても、すぐ削れるものではない。特に制度というのは長年かかって築き上げてきたものだし、当然、一つの約束のもとに負担なり給付の関係ができているということを考えますと、今回、社会保障関係というのは、十年度予算を九年度予算に比べてマイナスにするということになりますと、これは大変な大変革になってしまう。黙っていても八千億円程度、十年度予算は九年度予算に比べて増加していく。というのは、年金にしても、これは年金をもらう方が確実にふえてきます。これを減らすなんというのはとてもできない。医療においても、高齢者医療費というのは、高齢者がふえるわけですから黙っていてもふえていく。それを削るということは当然また法律改正しなければならない。そのためには、すぐ法案をつくって十年度からというわけにはいきませんよ。その点をよく考えてほしいということを私は強く述べたわけであります。  しかしながら、今回の医療保険改正の中で申し上げましたように、患者負担がもうこれ以上できないから、それは税金をもっと投入してくれ、あるいは社会保険料をもっと上げてくれということも、これはなかなか国民理解を得られないという中で、私どもは根本的な改革に踏み切らなければならないだろう。財源が限られている、そういう中でお互い有効な手だてを考えようということで進めているのであって、私としては、この医療保険法が成立して抜本的な改革案を示したとしても、すぐまた十年度予算に、九年度予算からマイナスということは、これは非常に困難である、しかしながら、将来に向けて余分な税金を投入しないような、そして必要な治療ができるような医療保険制度を考えていきたい、そのためには時間がかかりますよ、できるだけ早くやるにしても時間がかかりますよということで、社会保障構造改革に取り組む決意はお話ししたわけであります。  ともかく、今回の改正案が完全だとは思っておりません。不十分な点がたくさんあるということは否定いたしませんが、構造的な、総合的な改革をこれから示すにしても、このまま財政状況を悪化させて果たしてこの医療保険制度がもつのかなという点も御理解いただいて、何とかこの法案を早期に成立していただき、そしてこれからのあるべき姿についても早急に御議論をいただきたいという考えで取り組んでいきたいと思います。
  11. 根本匠

    根本委員 大臣のリーダーシップに期待しますとともに、我々も政治家として、これは腹を据えて取り組んでいかなければならないと思います。  次に、これからの制度抜本改革について幾つかお伺いしたいと思います。  まず、老人保健制度老人医療の給付と負担見直し観点からお伺いしたいと思います。  老人医療費平成七年度で八・九兆円、医療費全体の三分の一になっておりますし、高齢者一人当たり医療費は七十二万円で、七十歳以下の皆さんの医療費の平均の五倍になっております。当然、高齢化進行によって医療費負担、これは今後も急速に増大してまいります。各医療保険制度財政が厳しい要因一つは、老人保健制度のもとでの老人医療拠出金の負担、これが重い、これが非常に厳しい要因になっております。  それで、こういう状況を踏まえまして、私は、年金医療、介護の三つの保険、介護はこれからでありますが、これらの理念の整理、それと、医療については、現役世代高齢者世代との負担のバランス、もう一点は給付と負担の明確化、これが必要だと思います。  具体的に言いますと、理念的に整理をすれば、年金世代間扶養、これが年金性格。介護は、今回の介護保険法案は、相互扶助プラス世代間扶養、これの組み合わせ。医療は、相互扶助プラス世代間扶養。こういう性格づけになっておりますが、年金、介護との整合性に配慮しながら、老人保健制度については相互扶助と世代間扶養、要は高齢者と現役世代との負担のバランス、もう一点は給付と負担がより明確で関係者の理解が得られやすい制度とする必要があると思いますが、給付と負担のあり方について、理念と、具体的にどのようなことをお考えか、お伺いいたします。
  12. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 先生御指摘のとおり、老人医療制度の抜本的な改革は、今取り組みます医療保険制度改革の大きな柱でございます。  その中におきまして、老人医療保険制度を今後進めていくときにどのような視点に立って改革を行っていくかということでございますけれども、まず一つは、今後の高齢者医療保険制度を考えます場合に、先ほど来先生から経済的な状況についてのお話もございました、また、これを支える世代についてのお話もございましたけれども、今後におきましては、やはり高齢者御自身も、社会保障の受け手という側面だけではなくて、社会保障をみずから支える、そういった自立した存在としてとらえるということの中で、応分の負担もちょうだいするということで制度を仕組んでいく必要があるというふうに考えております。  しかしながら、今後の高齢化の一層の進展というようなことを考えますと、増大いたします老人医療費のすべてを高齢者自身の自助努力あるいは高齢者自身の相互扶助ということで賄うことは、これはできません。したがいまして、何らかの形での広く若年者世代を含めた支援、いわば世代間扶養、世代間の助け合いという側面制度の中に仕組んでいかなければならないと思います。  したがいまして、高齢者の社会経済状況あるいは人口構成変化等も踏まえながら、世代間の負担の公平が図られるような制度にしていかなければならないだろうというふうに考えております。  その際に、議員御指摘のとおり、高齢者の給付と負担の関係が明確となるような仕組みにすること、これは大変な重要な要素だというふうに考えておりますし、また、世代間の負担の公平、あるいは介護保険との整合性を含めました社会保障全体の中での整合性というようなことを十分含めまして、そういった点について国民理解が得られるように具体論を詰めていきたい、早急に詰めてお示しをできるように考えていきたいというのが今の取り組みでございます。
  13. 根本匠

    根本委員 もう一点、保険集団のあり方について質問いたします。  昭和三十六年に始まった国民保険体制のもとで、現在では約五千三百の保険集団があります。政府管掌保険あるいは組合管掌健康保険、共済、国民健康保険、現在の保険集団、いろいろなタイプあるいはいろいろな種類があるわけですが、産業構造変化高齢化進行、こういうことの中で、現在の社会経済システムには必ずしも適合してないのではないのだろうかと思われます。  年金も、財政単位を大きくする、いわば年金財政の一元化の方向の中で見直しをいたしましたが、この保険集団、医療保険保険集団についても、保険者規模の適正化あるいは被用者間の財政調整、これも含めて、保険集団のあり方について抜本的に見直す必要があるのではないかと思いますが、どう思われるでしょう。
  14. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 昭和三十六年にいわゆる国民健康保険が強制適用になり、国民保険が実現されたわけであります。それから三十年以上たつわけでありまして、その間、御指摘のとおり、産業構造も大きく変わっていますし、それに伴って就業構造も非常に変化している、それからまた高齢化が急速に進行してきている。そういった意味では、医療保険を取り巻く社会経済環境というのは大きく変わっております。そういった中で、これからの、二十一世紀を見据えながら、新しい時代にふさわしい医療保険制度、皆保険制度というものをどう維持していくか、これが基本だと思います。  そういった意味では、現在の保険集団、このあり方、この見直しというのは、これは避けて通れない。とりわけ国民健康保険、これは大変厳しい状況に置かれておりますし、そういった意味で、この見直しというものを今回の抜本改正においても中心課題として取り組んでいかなければならないというふうに思っております。  その際の方向として、一つには、医療保険制度でございますから制度の安定ということがございますし、それから、負担と給付との公平という観点というのが大事じゃないかというふうに思います。それからまた、これまでの長い歴史の中の医療保険制度、皆保険制度でありますから、そういった沿革というものも踏まえなきゃいけないだろうというふうに思っております。これらを総合的に考えながら、従来の保険集団というものでいいのかというと、これは必ずしもこれからの時代に適合しないと思います。そういった意味で、やはり根本的な見直しというものが必要であるというふうに考えております。
  15. 根本匠

    根本委員 この問題については、これからもじっくりと議論していきたいと思います。  次に、薬剤費の問題についてお伺いいたします。  今の医療はいろいろな問題を抱えるわけでありますが、この委員会でもたびたび質疑に出ておりますように、特に早急な対応をすべきなのは、これは薬剤費の問題であります。医療費に占める薬剤費は二八%になっておりますし、一人当たり薬剤費も国際的に比べて高い。医療費の効率化の観点から、薬剤使用の適正化、薬剤全体の問題、早急に是正に取り組まなければなりません。  今回の改正で、薬代を別途負担する、しかも一種類当たり十五円とした、まずこの理由をお伺いしたいと思います。
  16. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 今回の改正案で、薬につきまして、一日一種類十五円ということで御負担をお願いしているわけであります。  この制度をお願いしております趣旨と申しますか理由でありますけれども、今先生御指摘のとおり、我が国の国民医療費に占める薬剤の割合、これがずっと高どまりをしておるという状況が見られます。  この原因としては、いろいろあると思いますけれども、大きくは、一つは、我が国の場合は薬の使用量が非常に多いのではないかということが諸外国と比べてございます。それからまた、我が国の薬価基準制度のもとにおきまして、いわゆる公定価格というのを定めているもとにおきまして、新薬にシフトしていく、比較的値段の高い新薬にシフトしていくという傾向がある。そういったことからなかなか薬剤の割合というものが下がらないというふうに考えておるわけであります。  そういった中で、薬剤使用の適正化ということが、医療費の効率的な使用という観点からも、また、患者の健康という観点からも重要であろうというふうに考えておるわけであります。そういうようなことで、薬剤の適正化、とりわけ量的な面における歯どめと申しますか、そういった意味で今回の形のような一部負担をお願いしたわけであります。  と同時に、今回の改正というのは、現下の医療保険財政の大変な窮迫状況、これをまず安定化させる必要がある、そういったものと同時に抜本的な改革というものをやっていく、こういうふうに考えておるわけでありまして、そういった意味からしますと、あわせて受益負担の公平というような角度から、財政的な効果というものも考えてこのたびの一部負担をお願いしている、こういうような考え方でございます。     〔委員長退席、住委員長代理着席〕
  17. 根本匠

    根本委員 この薬剤費十五円の一部負担の問題点は、もうたびたび出てきているのでしょうけれども、問題は、医療というものは、ほかの財とかサービスと異なって、いわば最終消費者に消費者主権がないのですね。消費者主権がない。患者はほとんど薬は選択できない、薬は医者が処方しますから。その意味で、薬の抑制効果というところには、私は疑問符がつくのですよ。  それから一方で、医療の現場で窓口が非常に煩雑になるとか、あるいは二百五円以下という問題もあるし、患者の待ち時間も長くなる、こういう見えざる社会的なコストがこれを導入することによって出てくるという指摘があります。  その意味では、財政負担という問題もこれは背景にありますが、こういう問題のときには、具体的な政策手段、政策措置の問題点、課題、こういうものを十分吟味しながらやる必要があると思うのですね。  その意味で、いわゆるこの薬剤費負担の問題については、額とか区分がわかりやすく簡便な方法、あるいは場合によっては患者負担の緩和ということもあるかもしれませんが、もう少しこの点については別な方法、改善すべきであると私は考えますけれども、どうでしょうか。
  18. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 制度というのは、これはどの制度も共通だと思いますけれども、できるだけわかりやすくて簡便な方がいい、それからまた、こういった事務的な手続においても、医療機関サイドそれから患者さんの方もできるだけその負担が重くない方がよろしい、こういうふうに考えておるわけであります。  ただ、今回の一部負担導入は、先ほど申し上げたような趣旨でございますけれども、薬の一部負担というのは現在ないわけでありますから、そういった意味で、新たに薬剤に着目した負担をしていただくという意味では、これまでに比べてどうしても医療機関サイドの事務負担というのはやはりふえてくる、また、患者さん側においても、それに伴う波及的な負担なり手間暇というものがかからざるを得ない、これは避けられないというふうに思っております。  ただ、そういった中でも、現行制度の中でできるだけこういった負担というものが軽減されるような工夫というものが必要だというふうに考えております。そういった意味で、この事務負担を軽減するための工夫というものは、これは私ども、やっていく方向で検討いたしております。  また、そもそも、今回のやり方そのものを見直してはどうかという御指摘、御批判があるのも存じ上げておりますし、そういった意味では、この委員会の中におきましてもいろいろ御議論が出ておりますし、この審議を通じてできるだけ合理的な方向というものが見出せるならば、それも一つの考え方ではないかというふうに思っております。
  19. 根本匠

    根本委員 私も、こういう問題は、最前線の現場でどうなるかということも含めながら、現場で社会的コストが膨らんで、結果的に診療報酬で見るみたいなことになってはいかぬということで、この問題については引き続き、今、与党でも検討しておりますが、検討していきたいと思います。  もう一つ日本の全体の薬剤費が高い要因、これは、P掛けるQ、要は価格か量か、価格と量の組み合わせで高くなるわけですね。今の薬剤使用量が多いというように、多剤投与や重複受診、あるいは薬剤の使用量そのものが多い、こういう問題もありますし、それから、全体の薬剤費が高い要因、これはもう既にいろいろと出ておりますが、現行の薬価基準のもとで、そもそも新薬というかゾロ新の値段が高いのではないか、あるいは、薬価差益があるものだから高薬価シフトというものが内在的にメカニズムとして組み込まれてしまって、それで、幾ら薬価基準を切り下げても、薬価を切り下げても全体として高どまる、こういう問題点があるわけですね。  私も、この問題の解決のためには、現行の薬価基準前提にすれば、要は最初の新薬の値段の設定、特にゾロ新の値段の設定、こういうところの見直しが必要だし、あるいは、最初の値段というのは一種の公定価格、公共料金ですから、この決定過程を透明化する、あるいは薬価差益を適正な技術料としてカウントしながら薬価差益をなくしていく、あるいは定額化、薬の包括化を導入していく、これを拡大していく、こういうことが薬価基準制度前提にすれば改善案としてあると思っておりますが、さらに議論がもう今はどっと進んでおりまして、現行の薬価基準根本的に見直して、市場の自由な取引にゆだねるという原則でやりましようと。  それで、ドイツの参照価格制、これが論点になっております。厚生省も、今回の委員会議論の中でも、ドイツの参照価格制が参考になり得る、こんな答弁をされておりますが、その参照価格制導入の考え方、これを少し聞きたいと思います。  ドイツでは、外来は参照価格制、入院は包括化、こういう組み立てですね。日本も、入院の慢性疾患、これは今、一部、薬の包括化というのが導入されておりますが、日本で参照価格制を導入する場合のイメージ、考え方、これをどうお考えか。
  20. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 保険で償還する薬の値段といいますか基準といいますか、これは、一義的にこれが正しいとかそういうものはあるわけじゃないというふうに私は思っております。やはり、マーケットの状況なり薬の供給の実態なり、あるいはそれを使用する医療機関サイドのビヘービアなり、そういったものの中で一番むだのない、そしてまた効率的な、合理的な仕組みというものを考えていくということなんだろうと思います。  そういった中で、現行の我が国の薬価基準制度というものを見た場合にどうかということになるわけでありますが、先ほど来御指摘がございますようないろいろな問題を抱えておる。とりわけ、現在の我が国の経済状況の中で公定価格を定めるというシステムがいいのか、そこのところがやはり根本的な問題だというふうに思っております。  やはり私は、この薬につきましても、市場取引の実勢にゆだねて、そしてそれを基本にして、保険でどこまで見るべきかということを考えていく方が非常に透明でありますし、また、適正な価格の形成というものが促されるのではないか。もちろんその前提として、取引の近代化とかいろいろな要素はございます。それらを当然あわせて改善を求めていかなければならないわけでありますけれども、薬の価格の決め方としては、そういった決まり方が適当である、こういうふうに考えておるわけでございます。そういった意味で、今回、抜本的な改革見直しに当たっては、この薬価基準制度というものをそういう方向で見直しをしたい、こういうことであります。  そういった中で、既にヨーロッパにおける、特にドイツを中心としていわゆる参照価格制というものが導入されております。もちろん、そういった中でいろいろな試行錯誤がございますから、そういったものを参考にし、そして、我が国に一番ふさわしいような仕組みというものを我々の頭で考えていく、これが必要だというふうに考えております。  その際、ドイツでは、外来薬局で支給される場合について、この薬剤について参照価格制ということになっておりますから、入院の場合については、これはむしろ包括払い、薬は包括払いという格好を基本にしておりますので、その辺のところがストレートに我が国に当てはまるかどうかという問題がございますけれども、方向としては、今回の抜本的な見直し中で、あわせて診療報酬体系の見直し、とりわけ、そういった中で包括払いなり定額払いというものをもっと活用していったらどうかという御指摘が出ているわけでありまして、そういった意味で、この我が国における入院外来診療報酬のあり方、これとの関連において結論を出していくべきだというふうに考えておるわけであります。  いずれにしても、薬の価格については、市場取引の実勢を尊重して、そしてそれを保険の中に組み入れていく、そういったシステムにしてまいりたいというふうに考えております。
  21. 根本匠

    根本委員 それでは、参照価格制について二点ほど、さらに質問を続けます。  参照価格制の前提は、患者が薬を選べることだと思うのですね。その意味では、これから薬剤師の役割が非常に大きくなると私は思います。ドイツでは医薬分業が一〇〇%でありますから、市場の自由な取引にゆだねる、あるいは市場メカニズムを効率的に働かせようとすれば、つまり、市場メカニズムが効率的に働くという視点でとらえれば、患者の薬の適正な選択、これが何よりも重要になるわけですが、その場合に、医薬分業の推進など、要は薬の情報提供、この分野での市場条件をどう整備するか、これが一点、大事だと思うのですね。  それからもう一つ、参照価格制ですから、当然、一定の額しか保険の方で見ませんよ、こうなりますから、これは後発医薬品と先発医薬品の競争が出てくるわけでありますが、そのときに大事なのは、これも先発品と後発品のイコールフッティングというのは大事ですから、後発医薬品については安定供給、品質の確保、そして薬というのは情報ですから、この点をきちんと整備してあげないと公正な本当の市場にはならない。  ですから、この二点についての考え方、これをお聞きいたします。
  22. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 この医薬分業というのは、それぞれの国の医なり医薬なりの医療の歴史と非常に密接に絡んでおる。私は、そういった意味では、医薬分業という言葉自体は極めて日本的だという気がいたしております。ヨーロッパの場合は、医と医薬というのがもともと別のものとして、それぞれ専門的なものとして発達してきたというのがベースにあろうかと思います。我が国の場合は、そういった意味で、また違った医療の文化というものを持ってきたという中で、医と医薬というものはそれぞれの専門的な領域から適正な仕組みになる方が国民医療の確保にとってふさわしいという観点で、この医薬分業というものが推進されているというふうに理解をしております。  そういった中で、まさに先生御指摘のとおり、この前提条件の、また環境の整備ということが非常に大事でありますし、それが整い、そしてまたそれが国民に本当に理解され、医薬分業というものが非常にこれは大事なものであるという実感として感じられるようなものでない限りはなかなか普及しないというふうに私は理解しております。  そういった意味で、後発品を含めた薬の安定的な供給が確保される、それからまた同時に、何よりも情報の提供というものがシステマチックに行われる、確実にそれが消費者から喜ばれるようなものとしてわかりやすく提供される、そういったものをきちんと整備していくことが大前提だというふうに思っておりますし、そういった方向に向けて我々としては環境を整えていく努力をしていきたいというふうに考えております。
  23. 根本匠

    根本委員 先発品と後発品の問題でもう一つ。  これは、この後、医薬品産業の科学技術創造立国の観点からの質問を少ししたいと思いますが、後発品というのは国内市場依存型の産業になるわけですね。もう一方で、日本は薬の輸入大国ですから、これからの国際競争あるいは将来の新産業、新分野のイメージを考えると、医薬品メーカーというのは、研究開発型、高付加価値産業ですから、国際競争の中で頑張ってもらうということも必要だと思うのですね。その意味では、画期的新薬について参照価格制でどう取り扱うのか、この点、どうお考えでしょうか。
  24. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 今後、そこのところは大いに検討しなければいけない課題の一つであります。  ドイツの場合は、まさに特許期間中の医薬品については、これは参照価格制から除外して、いわゆる自由価格といいますか、そういう格好で保険で償還しているというやり方をとっております。そういった中において、それはそれなりに価格の面で適正な価格形成になっているのかという問題があるようでございますけれども、この医薬品産業の中において、世界で競争にたえ得るような、そういったものが我が国においてもどんどん開発される必要がある、そういった開発の支障になるような、阻害要因になるようなことになってはこれはいけないというふうに思っておりますので、その辺の、まさに画期的な新薬の開発というものも促され、そしてまた適正な医療保険サイドの薬価の値段なり供給というものが確保される、その辺の両方の調和をどう図るかという点で今後検討していきたいというふうに考えております。
  25. 根本匠

    根本委員 もう一点、漢方薬の取り扱いについてお伺いします。  市場原理を導入して市場を活性化させる、これは大事だと思いますが、医療の質の確保、これもあわせて重要だと思うのですね。  それで、最近、漢方の有用性、評価が高まっておりますが、漢方薬についていろいろな話題が出ておりますけれども、医療保険で今後どのように取り扱うのか、この点、答えてください。
  26. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 今、漢方薬の有効性というものが医療機関サイドにおいても非常に高まっておるということが一方ございます。それから一方で、まさに先生がおっしゃいましたようなことに関連しますが、この漢方薬がどうも保険から除外されるのではないか、いわゆる保険適用にならないのではないかというようなうわさも耳に入ってまいります。これは、現在、私どもとして、漢方薬を保険適用外にするということについて議論しているわけではありませんし、そういうふうに決めているわけではございません。まさに漢方薬も薬として今後どういうふうな位置づけをしていくべきなのかという問題はございますけれども、保険から適用除外をするということが決められているわけではありません。  ただ、どうしてそんなようなうわさが立つのかなということを考えてみますと、昨年の十一月二十七日に、医療保険審議会の建議書が出ておるわけでございます。そういった議論の中におきまして、市販されている薬、それと類似した医薬品、これは現在保険適用になっているものがあるわけでありますが、それと現実に薬局で市販されている一般用医薬品との関係で、こちらの方は患者さんなり国民の方で自由に薬局で購入しているわけですが、同じようなものが、片一方は保険適用され、片一方は全額自分で薬局から求める、その辺のところはどうなんだろうかという議論がございました。  それについては、今後、患者負担の公平性というような観点も踏まえて引き続き検討していくべきだ、こんなふうな方向が出されたわけでありまして、それとの関連で漢方薬についてもそういったようなことが流布されているのかなというふうに思いますけれども、この漢方薬の扱いについては今後の検討課題ということでございまして、今はっきりした結論が出ているわけではございません。
  27. 根本匠

    根本委員 それでは最後に、ちょっと時間もなくなりましたので、簡潔にお答えいただきたいと思います。  今、薬の問題、いろいろ取り上げてまいりました。薬剤使用の適正化や効率化あるいは薬剤費コストの抑制、これは必要だと思います。ただ同時に、もう一つ考えなければならないのは、日本における画期的新薬の開発の促進、長期的な観点から、薬の輸入大国の我が国において研究開発型あるいは高付加価値産業、この医薬品産業を長い意味でどのように発展させるか、これも大事だと思うのですね。  今、特に科学技術創造立国という体系の中で、医薬品産業は研究開発型産業の最たるものですから、これを厚生省としてどう考えていくのか。いわば医療版科学技術創造立国のシナリオ、全体の政策体系の構築、そういう視点が大事だと思います。  その意味で、基礎研究予算に思い切った国費投入、昨年十億、ことし四十億、提案募集型で基礎研究を重視しましょう。我が国は、医療アクセスは非常にすぐれておりますが、基礎研究のところが弱い分野だったので、これは画期的なことでもあります。数年前からこの科学技術予算に重点を置いてやってまいりましたので、この基礎研究予算はスタートしたばかりですが、既存の出融資制度、これらも含めて現状評価、これを答えていただきたい。時間がありませんので簡潔に。
  28. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 基礎研究費につきましては、平成八年度から、エイズ、がん、脳・神経、免疫疾患、治療機器について公募を行いましたところ、大変多数の応募がありまして、十七課題の採択を行ったわけであります。多数の応募があったということは、期待の大きさを反映しておりますし、この選定に当たりましても、保健医療分野の予防・治療研究の推進の上で基礎研究が大変重要な役割を担うという評価を受けているところでございます。本年度は二十九億円の予算によりまして、幅広い研究課題の募集を行う予定にしております。  また、出融資制度につきましては、昭和六十二年から今まで十四の研究会社を設立いたしまして、二百八十の特許申請がなされ、その一部については企業からの引き合いがされております。着実に成果が上がっているものと判断しておりまして、画期的な医薬品の開発を推進するために有効に機能しているものと考えるところであります。  今後とも、これらの制度について有効な活用を図ってまいりたいと考えております。
  29. 根本匠

    根本委員 私も、そこのところの有効な活用というのが大事だと思うのですね。  実は、基礎研究予算で一件当たり一億円の予算がぽんとつきます、非常に研究が活性化される、これは非常に大事なんですが、厚生省の担う生命科学、ライフサイエンス分野は二十一世紀の大きなフロンティアですから、私は、この基礎研究予算を非常に大切にして、これを将来の画期的な医薬品、医療機器を生み出すような政策体系、つまり、そういう視点で常に取り組んでいかないと、ただ基礎研究をやりましただけでは困ると思うのですね。  その意味で、私は、基礎研究から将来の画期的新薬につなげていくためには、産官学の連携のあり方というのも大事だし、これは兼業規制の緩和等も図られておりますが、それから実際に応用研究、新薬開発、そのときに今までは薬価基準というものがあってそれで決まっていましたから、要は日本の場合は薬価と治験のあり方で産業の盛衰が決まっておりましたので、今回は市場の実勢にゆだねるということになりますので、これは市場条件の活性化という点では非常にいいと思うのですね。  ここで大事なのは、基礎研究予算を思い切ってやりました、これを将来の新産業、新分野にどう結びつけていくのかという政策的な枠組みづくり、これが大事だと思いますし、今回の参照価格制の導入で、これからの薬産業を考えた場合に、恐らく先発品メーカー、つまり輸出型の先発品メーカー、研究開発を志向するメーカー群と、国内市場依存型のジェネリックメーカー群、これがある程度二極分化していくのかなと思いますが、最後に小泉大臣にお伺いしたいと思います。  私は、その意味では、医療版科学技術創造立国という大きな政策的視点で、基礎研究も含めてこれからの産業ビジョンあるいは政策体系の組み立て、これが大事だと思いますが、大臣の御答弁をお伺いしたいと思います。
  30. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 医薬品産業、これは日本にとりましても大変重要な産業だと思います。国際的に通用する薬を開発する、国内的にもできるだけ安い薬を供給する、さらにこれは知識集約産業ですから、今後、日本の科学技術研究という観点、医学の日進月歩の進歩状況、こういうことからできるだけ基礎研究等支援策を講じていきたいと思っております。
  31. 根本匠

    根本委員 ありがとうございました。
  32. 住博司

    ○住委員長代理 山本孝史君。
  33. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 新進党の山本孝史でございます。  昨日、通称としては臓器移植法、本名、脳死法が衆議院を通過いたしたというふうに思っておりますが、健康保険について質問する前に、少し審議の中ではっきりしなかった点がありますので、再度確認をさせていただきたいと思います。  まず、大臣にお伺いをいたします。  脳死判定後の保険からの医療費の給付ということについて、枝野議員の質問で、「当分の間、」というのは本当に当分の間で、短い期間で打ち切られるというふうに思う方が自然じゃないかという質問がございまして、大臣はそれに対して、中山案によれば脳死だといっても絶対に生き返らないのですから、どんな治療をやったって、本来だったら、普通だったらその治療をする必要はない、私はそう思いますけれどもいかがでしょうかと、脳死判定後は治療費の給付はあり得ないという認識をお示してございます。  附則の中で、健康保険等は脳死判定後も「当分の間、」給付を続けるというふうになっておりますけれども、この「当分の間、」とはいつまでをいうのか、あるいは給付を本来すべきでないというふうにお考えになっておられるのか、当分の間は続けるとしても何を基準として「当分の間、」が終わったというふうに見るのか、御認識をお伺いいたしたいと思います。
  34. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 「当分の間、」という言葉は非常に便利な言葉で、期間を何カ月とか何年とか区切らないで、いろいろな状況を見ながら決めるという、極めてあいまいといえばあいまいなんですが、大事なことは、この脳死法につきましては、脳死状態から心臓死に至る間でまだ生き返る可能性があると思っている方が国民の間にはいる、しかしながら、脳死状態から生き返ることは絶対にないのだということをまだわかっていない、国民が。  そういう状況において、脳死だけれどもまだ心臓が動いているから生きているのじゃないか、ぜひとも治療を続けてくれと言う家族がいるのは当然でしょう。しかしながら、お医者さんが脳死状態と言えばこれはもう絶対生き返らないのだ、もう結構です、普通は私は常識的にはそうなると思うのです。その常識的な判断が定着するまで咲脳死になっても家族ができるだけの治療をしてくださいと言えば、お医者さんはすると私は思いますよ。それがまた「当分の間、」じゃないのか。私は、脳死になったらば絶対に生き返ることはないというのを国民がみんなわかれば、そういうむだなことはしないのではないか、そう思います。
  35. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 医療現場において、家族が、脳死だと言われて、では結構ですというふうな状況が広くなるまでこの「当分の間、」というのは続くのだという御認識。ただ、大臣の御認識としては、脳死なんだから、そこで死体に対して治療をすることはあり得ないという、基本的な医学的な認識という部分をお示しになったということですね。
  36. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 しかし、脳死になっているけれども、家族が、いや、これはまだ死じゃない、心臓死までやってくれと言う家族もいないとは言えない。私だったら、常識的に考えて、それではもう結構ですと言う家族の方が圧倒的に多いのではないかというふうに思うのです。
  37. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 そこで、問題になるのは、今おっしゃっている家族と医師の関係の中での話になりますけれども、お医者さんが患者の家族の思いを受けて、臨床的に脳死となってもそのまま心臓死まで待ってもよいという御認識だと思いますが、このように厚生省の側としても理解をしておられるのか、私たちはそう理解をしてよろしいのでしょうか。
  38. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 脳死判定後の処置のことでございましょうか。申し訳ございません。質問がちょっとはっきりわかりませんでしたので、もう一遍お願いします。
  39. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 お医者さんが家族の思いを受けて、臨床的にはもう脳死になっているのだけれども、脳死判定をしないでそのまま心臓死まで待ってもよい、医者がそういう行為をとることを厚生省としてはお認めをされるのですかということです。
  40. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 患者が臨床的に脳死と考えられる状態になったと判断される場合、医師が脳死と診断することについては、前々からも御答弁を申し上げておりますように、医療行為の一環として通常行われることになるものと考えております。  しかしながら、個々の医療行為については個別的に判断されるものでありまして、脳死の判定を行うことについて、厚生省としては、一律にしなければならないものというような性格のものとは考えておりません。
  41. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 お医者さんの判断に任せるという見解ですね。  もう一点、お伺いをします。  医師が脳死判定を行う場合は家族に必ず説明をする、すなわち、家族への説明なしに脳死判定はしてはいけません、また、家族が納得しなければ脳死判定はできないのだ、このように理解をしてよろしいですか。
  42. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 実際の脳死の判定に当たりましては、家族に対して脳死判定について理解が得られるよう必要な説明を行うことがぜひとも必要と考えておりまして、説明が行われないまま脳死判定が行われるものとは考えておりません。
  43. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 ありがとうございました。  参議院でまた質疑が続くと思いますけれども、政省令についてほとんど議論ができませんでした。時間が短いので、国会の意思というのが今の段階厚生省は多分おわかりになっていないと思います。参議院でやっていただきたいと思いますが、一点だけ再度申し上げておけば、諸外国脳死立法をするときの理屈は二つあります。一つ臓器移植のため、もう一つ医療費を削減するためという形で脳死立法が諸外国でされているのが普通でございます。  したがって、今回成立を願っておられる中山案がそうした医療費削減の方向に使われていくということのないように私はひたすら願っておりますし、もう一つ思っておりますのは、国内で米軍基地からの臓器提供が行われるというふうに理解をしておりますけれども、その米軍からの臓器の提供行為というものが余り政治的な道具に使われないようにというふうにも私は心配しておりますので、その点、ぜひお含みおきをいただきたいというふうに思います。  健康保険法の審議が続いておりますが、与党協議がまとまらないので、私たちの質問のしようがないというか、大変に苦慮しておりますけれども、薬剤の一部負担制度について、きょうは中心的にお伺いをさせていただきたいと思います。  何人かの先生、お触れてございますけれども、かつて薬剤の自己負担制度昭和四十二年から四十四年にかけて二年間導入をされました。健保国会で大変に荒れた国会で、強行採決、徹夜国会の連続、あるいは牛歩という中で、社会党の委員長、書記長辞任、あるいは正副議長辞任というような荒れた国会でございました。記録を見ておりましたら、社会労働委員会で、社会党の委員の質問中に打ち切り動議が出されましたけれども、お出しになったのは橋本龍太郎先生だったという記録も出てまいります。鈴木先生のお父様のお名前も出てまいります。そういう時代でございます。  当時の状況は、政管健保の財政状況が極めて累積赤字が多くて、一年間の給付費の半分ぐらいが赤字になっていたという状況の中で、この被保険者本人の外来薬剤の一日一剤十五円という今と同じ形が、本人だけですけれども、自己負担が設けられた。この薬剤費の一部負担制度というのを一遍やっているわけですから、そこの状況を十分検証すべきだというふうに私は思うのですね。  そこで、何点かお伺いしたいのですけれども、この四十二年から四十四年にかけての薬剤費の一部負担制度、そのねらいが何であったのか、それを今どういうふうに評価しておられるのか、お聞きをしたいと思います。
  44. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 いわゆる健保特例法と言われた法律で、薬剤の一部負担が行われました。これはもう三十年前になるわけでありますから、その当時の記録を見て、その中でその趣旨等を考えていくということになるわけでありますが、当時の記録等によりますと、その際に行われた薬剤一部負担、これはまさに政管健保が大変に保険財政が厳しい状況になっておった、そういう中での財政的な立て直しをしなければいけない、そのころからいわゆる抜本改革という言葉が出てきたというふうに理解しておりますが、そういう中でございましたので、やはり財政的な側面からの対策ということで、しかも、当面の対策ということでこの措置が講ぜられたというふうに記録されております。  そのときは、この薬剤の一部負担だけではありませんで、初診料等の見直し、そういったものとの抱き合わせの中で政管健保の財政改善を図る、そういうような視点からこれが行われ、一定の効果があったというふうに理解しております。
  45. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 赤字を抱えている保険財政上の対策として、薬代の自己負担をお願いするという形で導入をされた。今の状況と大変よく似ている状況だったというふうに思うのですけれども、こういう薬代の一部負担をするということで起きてくる影響といいますか、効果が二つあると思うのですね。  一つは、被保険者が病院に行く受診行動に何らかの影響が起きてくるのではないか、いわゆる受診抑制になるのではないかということが常に言われてきた。もう一つは、お医者さんの方の投薬行為に何らかの影響があるのではないか。今回も、多剤投与がなくなるのではないかというふうにおっしゃっておられますけれども、その二点について、当時の状況がどうだったのかということをお伺いをしたいのです。  まず、四十二年から四十四年にかけてのこの薬剤費の一部負担によって受診抑制はあったというふうに見ておられるのか、どうでしょうか。
  46. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 この薬剤の一部負担導入されたのが昭和四十二年の十月からということでございまして、そういった意味で、この十月を挾んだ前後一年間の受診状況というものを検証してございます。  これで見てみますと、この十月、前の一年間でありますから昭和四十一年の十月から昭和四十二年の九月という期間、それから後の方は四十二年の十月から四十三年の九月、こういうような期間において比較をしてみたものであります。この間の政府管掌健康保険の被保険者本人、これは被保険者本人についての一部負担でございましたので、被保険者本人の入院外の一人当たりの年間レセプト件数というものを比較してみました。  そうしますと、改正前が一人当たり年間平均四・九二件、レセプトの件数として四・九二件という数字になります。導入された後は四・六六件ということになっておりますから、レセプトの件数で見ますと、割合としては五・二%程度下がっております。そういうことに照らしてみますと、やはり受診の動向に一定の影響があったというふうに見ております。
  47. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 あったか、なかったかという話がいろいろ出てくるのですけれども、四十二年―四十四年のその二年間の時限立法で、四十四年のときに、もう一度二年間の延長をしてほしいという話があって、結局つぶれるわけですけれども、その二年間の延長のときに、社会保険審議会なりで恐らく二年間の協議が随分されたと思うのですね。そこの中で、この二年間の経過を見てみてさらに引き延ばすのがいいのか悪いのかという議論を多分しておられると思うのですけれども、そういった記録は何か残っていないのですか。
  48. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 審議会の議事録等、これはかなり、もう三十年以上前になりますから、現在も保存されているかどうかちょっと正確に確認してございません。ただ、ちょうど私はそのころ保険局におりまして、ちょうどそこにぶつかったものですから、状況はよく見ております。     〔住委員長代理退席、委員長着席〕
  49. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 では、当時のことをよく御存じの高木局長としても、当時は受診抑制があっただろうというふうに御認識をしておられるか。
  50. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 受診抑制という言葉の問題でありますが、こういったものを導入することによって適正な薬の使用というものの促進を促すという面があると思いますし、あるいはまた、そういった中で、患者さんも適正な受診ということに心がけるという面もあったと思いますから、受診抑制という言葉が必ずしも適当かどうか、ここは、そういうような意味では、受診抑制というふうな考え方は私どもはとっておりません。
  51. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 言葉としての使い方が難しいとは思うのですけれども、当時の状況を残しているものは何かないかということで、国会図書館に文献等を一生懸命調べていただきまして、「健康保険」という雑誌の六九年七月号で、「薬剤費一部負担制度の現実的効果」という、厚生年金基金連合会の理事長ですけれども、小山進次郎さんが文章を残しておられる。  その中で、二年間の特例をさらに延長することの「可否を審議する、社会保険審議会の審議において、この点はすこぶる入念に、かつ、熱情をこめて行なわれた。」その結果として、「その結論を一言に要約すれば、」これは小山さんの要約ですけれども、「その結論を一言に要約すれば、「この制度によって、被保険者の受療が若干なりとも抑制された、という事実は認められない」」というふうに書いておられるのですね。  当時の状況、三十年前の話ですし、薬剤の一部負担だけではなくて、ほかの制度改正も行われていますから、なかなかその一部負担だけの効果を見るのは難しいのでしょうけれども、今おっしゃったように、そういう患者さんの病院に行く行為というものに対して、こういう一部負担というものが若干なりとも影響があるのだというお答えだったと思うのですね。  もう一つの問題ですけれども、お医者さんの方の投薬行為というものについて、当時のこの二年間の特例措置において何らかの影響があったということでしょうか、そこを教えてください。
  52. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 これは当然のことなんですが、これから申し上げることも関連します。前提として、これが直接的に影響があったのかどうかということは、これはだれもわからないということが前提であります。ですから、最初の患者さんの行動についても、言うなれば、客観的にそういうレセプトの件数を比較してみるとそういうことであった。そこのところは、まず前提条件として御理解いただきたいと思います。  そういった意味で、今度、お医者さんの方の投薬行為についてどうなのかということでありますが、これも、直接的にそうかということは、これはわからないわけでありまして、ただ、先ほどと同じように、昭和四十二年の十月に導入された前後における医療費に占める投薬の薬剤比率というものを見てみるとということで御説明申し上げたいと思います。  前は、昭和四十二年の五月診療分、一カ月であります、五月診療分のレセプト、それから、後の方は、昭和四十三年の五月診療分の政管健保の入院外のレセプトを見まして、その医療費に占める投薬の薬剤比率の割合というものを比較してみました。  そうしますと、昭和四十二年の五月診療分、いわゆる導入前でありますが、この割合は五四・七%でございます。それに対して、昭和四十三年五月診療分、これは導入後でありますが、五〇・一%になっております。そういう意味では、四・六ポイント落ちております。  ただ、この際に注意しなければいけませんのは、昭和四十二年の十月に薬価改定が行われておりまして、医療費ベースで薬価基準が四・三%引き下がっております。ですから、そういうことで考えますと、四・六%下がったと申しましても、薬価基準の改定で四・三%下がっておりますから、その部分というものを考慮しないといけないだろうというふうに思うわけであります。  ただ、それを考慮しても、四・六と四・三ですから四・六の方が大きいわけでありますから、そういう点で考えますと、やはり医師の投薬行為にある程度変化があったというふうに見るのかな、こんなふうに考えております。
  53. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 今のお答えを素直に聞いていると、お医者さんの投薬行為への影響よりは患者本人への影響の方がはるかに大きいという感じで聞こえてしまうのですけれども。  先ほど引用したこの同じ雑誌論文の中で、同じように外来の一日当たりの金額の変動を年次を追って見てみましたという表が実はあります。「政管健保一日当り金額の年度別推移(入院外)」ですけれども、被保険者と被扶養者と両方で見ていって、三十六年から四十年にかけては、対前年度比で、被保険者は本人二割ずつ上昇していきます。ところが、ここは多分、高度経済成長下で、多剤投与の傾向が随分強くなった時期だろうというふうに小山さんも書いておられますけれども、被保険者本人と被扶養者の間に、被扶養者は実はそう伸びていないのですね、一割ちょっとしかいかない。だから、被扶養者というものと健保本人というものに対してのお医者さんの医療行為は明らかに違ったというふうに思うわけです。  一部負担制度の実施を契機として、外来一日当たりの金額の上昇率で、この四十二年のところから、健保本人の一日当たり金額が対前年度比でがたっと実は下がります。一〇%ほど低下をするのです。だから、この薬剤負担というあたりがお医者さんの医療行為にはかなり大きく影響したのではないかというのが小山さんの見解なんですね。これが前回の導入の評価だというふうに思うのです。  大変にお答えしにくい質問かもしれませんが、この四十二年から四十四年のものをさらに二年間延長しようとした、そこは評価をしたから延長しようとしたのだと思うのですけれども、残念ながらといいましょうか、薬剤の自己負担制度は四十四年の延長のときに廃止になりました。これはなぜ廃止になってしまったのでしょうか。
  54. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 当時は、いわゆる健保国会と言われて、そういう意味では、この健保法改正ということになりますと与野党は対決をするという、常に対決法案という形でございました。  この特例法が二年の時限立法でありましたから、四十四年、それの延長ということを政府として提案させていただいたわけでありますけれども、結果的には、国会修正ということで、薬剤の一部負担については廃止をするという形になったわけであります。と同時に、いわゆる本人の一部負担というものが制度的に盛り込まれたという格好になったわけでありまして、私、当時の最後の衆議院の本会議の採決状況を今でも覚えておりますが、明け方五時ごろ、大変な状況の中でこれが可決をされたのを覚えております。  それは、総合的な議論の中でこういうふうな結論が出されたというふうに、これはもう国会の中での意思でございますので、そういうふうに理解しております。
  55. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 大変都合がよろしくと言ったら語弊がありますけれども、高木さんが当時のことをよく御記憶なので聞いていてもわかりやすいのですけれども、本当はやはり、二年間の特例で終わるのじゃなくて、薬剤の自己負担制度というものは続けたかったというのが当時の状況なんでしょうか。
  56. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 薬剤の使用が我が国の場合に非常に多いということについては、やはり当時から非常に問題になっていたわけであります。その適正化というものを図る一つの方法としてこの薬剤の一部負担というのが出てきたと思います。それと同時に、このとき初めての試みだったわけでありますが、先ほど申し上げた政管健保の大変な財政状況の中でありますから、財政効果としてもやはり一定のポジションを占めるだけのものでありました。  そういうようなことからしますと、薬剤の適正な使用というものを促すというような政策的な意図からすると、やはり政府としてはこれをさらに延長していただきたいというのが当時の状況だったと思います。
  57. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 三十年前の話も今の状況も余り変わっていないというか、結局、政治の側がいろいろ意見を言って、本当の政策の選択につながらないという状況だったのかなというふうに実は思っているのですね。  四十四年の七月八日に社会労働委員会が、特例を延ばすのか延ばさないのかということで、参考人を呼んで審議をしています。日本医師会の常任理事の小池さんという方、健保連の副会長の加藤さん、それから横浜市大教授の小山さん、医事評論家の水野肇さんという方たちが、二年間の経過を見ながらどういうふうにこの薬剤の一部負担制度を評価したらいいのかということで、参考人として御意見をお述べになっておる。  日本医師会は、反対です、この制度は大変に受診抑制につながるものだからやめていただきたいと言っております。健保連は、賛成をしております。こういう形を何とか抜本改革につなげていくべきだということで、健保連は賛成をしている。横浜市大の小山教授は、客観的な立場から見て早く抜本改革をしないといけない、こういう薬剤費負担制度というのは余りいい制度ではないけれども、早く改革につなげてほしいということをこの中でおっしゃっておった。全く同じ言葉が今の状況の中にも当てはまるのかなというふうにも思っているわけですね。  それで、今度は今回の改正案についてお聞きをしたいと思いますけれども、薬剤の患者負担導入がやはり同じように盛り込まれている。今回の場合は、もちろん財政効果は同じように考えておられるというふうに思いますけれども、ここのところは、今回のねらいをもう一度おっしゃってください。
  58. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 今回の薬剤の一部負担をお願いしておりますのは、これは我が国の国民医療費に占める薬剤のシェアがなかなか減らないという問題の中で、その要因というのは、いろいろありますけれども、やはり大きく言えば二つだろうと。一つが、薬剤の使用が相変わらず多いという問題があります。それからまた、現行の薬価基準制度のもとにおいてはいわゆる高価な新薬にシフトする傾向がある。この二つが大きな要因だというふうに思います。  そういった中で、この薬剤使用の適正化というものを図っていくというのは、これはやはり大きな課題であるというふうに考えております。その際、薬剤の使用量というものにもつと何とか歯どめがきかないだろうかというような意味で、今回の一部負担一つの効果というものが発揮できるのではないか。もちろん、医療機関のビヘービアについては間接的になるかもしれませんが、そういった効果というものが期待できるのではないかというのが一つございます。  一方、高薬価シフトの問題、これは今回の政府で御提案しておりますやり方の場合、それをねらいとした格好でストレートにきくということではないというふうに私どもも思っております。この問題というのは、公定価格を定めている薬価基準制度のあり方そのものにやはり大きくは起因をしている。  もちろんそれだけではありませんで、いわゆる医療機関サイドのブランド志向というような問題があります。それは、その薬に対するアフターサービスとか、信頼性とか安全性に対する問題とか、あるいは情報の提供とか、そういったもろもろの要因がありますから、単にブランド志向と言うと何か余り適切な言葉ではないかもしれませんが、そういったことから新薬が使われるという傾向があるという面もございます。  一方、薬価差というものが、高価な医薬品ほど絶対額としては大きくなります。そういった意味で、そちらの方を経済的な効果として求める、そういった傾向というものも無視できない、そのために新薬シフトになっているのではないかという要因も指摘されております。  この辺のところはやはり薬価基準制度そのものを改めなければ根本的な解決にはならないというふうに思っておるわけでありまして、そういった意味で、私どもとしては、今回の改正に引き続きまして、薬価基準それから診療報酬体系の抜本的な改革というものを早急に実施をする、その具体案というものをできるだけ早くお示しをしたい、こういうふうに考えておりまして、今回の改正だけですべてが完結するということではございません。  そういったような今後の抜本的な改革をにらみながら、今回の薬剤の適正使用という面についての一つ改善策になるのではないかということでお願いしていると同時に、もう一つは、窮迫した財政状況というものをにらんだときに、この安定を図るためには、やはり一定の財政効果というものも考え合わせた上で今回のような一部負担をお願いしておるわけでございます。
  59. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 局長は今までの御答弁をひっくるめてもう一度御答弁されたというふうに思うのですけれども、財政効果としては一定のものがあるだろう、それはあると思います。多剤投与の歯どめになるのではないか、薬の適正使用になるのではないかという期待をしていると。ただ、実際の財政上の問題についても、新薬シフトをおさめることには、やめさせることにはストレートには寄与しないので、そこは本来的には薬価基準制度の抜本的な改革をしないことには、このやり方ではだめなんだということだと思うのですね。  おっしゃっているように、薬剤偏重になっている今の医療体制を抜本的に変えないことにはだめなので、こういう患者負担をさせるということで適正化を求めていくというのは極めてまずいやり方ではないか。それは四十四年のときも同じ指摘がされているわけです。  ただ、総理が本会議で、「一部負担は、」「無理のない適正なものであると考えており、今回の改正により国民の必要な受診が抑制されるとは考えておりません。」という御答弁をされておられるのですね。このとおりに、四十二年から四十四年にかけては若干の受診抑制になっているということが今から見るとある、しかし今は、受診抑制されるとは考えていないという逆の答弁が実はあります。  ただ、受診抑制がこの程度でおさまるのであればそれは極めていい制度ではないか、すなわち、多剤投与をとめるということも一つの必要なことなんだから、いいことなんだから、この制度はずっと続けていけばいいという声も出てくるのではないかと思うのですけれども、そこはどうでしょうか。
  60. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 一部負担の仕組みとしてどういう仕組みが一番いいのかということは、これはいろいろな御意見があろうと思います。  やはり医療費を賄うシステムとしては、これはもう申すまでもなく、保険制度においては、第一義的には保険料、それからまた、政管健保の場合あるいは国民健康保険の場合ですと公費負担というのが入っております。それから患者負担、こういうことで制度を賄っておるわけでありますから、そのバランスをどういうふうに図っていくかというのを、まずマクロ的には一つきちっとした議論をしていかなければいけないだろうと思いますし、それも、どの時代でも絶対的な基準というものはないと思います。国民の生活水準なり所得水準なり、いろいろな要因の中でそういったものがやはり見直され、定められるわけでありますから。  そういった意味で、今回の薬の一部負担、これも現行の制度前提としてお願いしているわけでありますから、これが、例えば薬価基準制度を廃止して新たな仕組みになった場合に、同じようにこの一部負担というものを引き続きやっていくのがいいのか、あるいは、それは先ほど申し上げたような角度からの、薬の適正使用というふうなことに資するようなシステムに抜本的になった場合に両方残す必要があるのか、そういった議論だろうと思います。  ですから、そういった意味で、未来永劫これが必要だというものでもないと思いますし、全体の医療保険制度財政の安定、それからまた薬の適正な使用といった政策的な目的、そういったものに照らして今後見直しが常に必要ですし、また、そういった観点からの検討というものが必要だというふうに考えております。
  61. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 結局、改革の原案待ちということになるのですね、今のお話を聞いていても。ちゃんとした薬価制度の抜本的な改革が行われて、そこで多剤投与の部分も、薬の適正使用の部分もやれるのであれば、この患者負担という形での制度はなくなってもいいだろう、ただ、ここはここでやはりある意味で多剤投与をとめる効果があるのだ、こっち側の本改革の中で多剤投与をとめる効果がなければ、この薬剤の一部負担という制度も引き続き持っていくのだというような、両方の意味合いに今聞こえるのです。  だから、これは、財政効果として、今どうしようもないので当面の緊急避難策としてこの薬剤の一部負担制度を持ってきたという答弁も出てきますので、そういう側面はあるのでしょうね。だけれども、それをずっと続けていこうというふうにお考えなのか、あるいは本格的な改革をこっちでやったときには、この制度は余りいい制度じゃないからもうやめようというふうに思っておられるのか、その辺がちょっとよくわからないので、もう一遍お願いします。
  62. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 はっきり申し上げまして、現段階において、そこの結論を持っているわけではありません。まさに、薬価基準制度そのものの見直しをしていく、それとの兼ね合いの中でそこは判断していくべきものだというふうに考えております。  これは、制度が違いますから必ずしも直接的に比較できるわけではありませんが、例えばドイツの場合、これは参照価格制を採用しております。それで、一定の償還基準というものを設けて、そして、それを超えるものについては患者さんが薬について負担をするという格好をとっておりますが、あわせて、別途、薬に対する一部負担というものも設けております。そういう例もありますし、参照価格制だけで薬に対する別途の負担というものを設けていない国もございますし、そこら辺は国によっても違いますから、そういった状況等もやはり念頭に置きながら考えていくのじゃないかと思います。
  63. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 方向性が決まっていないから、当面のことしの財政対策としても、薬剤の自己負担という形の、非常に取りやすいところに着目してやっておられて、改革案が出てくればまたその中で考え直していくというのは、これは改革案をまとめるのが遅いというか、まず、そういう案があって、この厚生委員会で審議して、それではこれをどうしようかという話になるのが段取りで、そこはやはり順番が違うのですね。だから、ここで幾ら審議していても、将来こういう姿になるのだからという話が次に出てくると、それではこの自己負担制度というのは一体何だったのだというふうにしか考えられないのです。  一月三十日の全国保険国民年金主管課長事務打ち合わせで、佐々木社会保険庁長官は、当面の財政危機の回避を図ることが改革を進めていくためには必要なので、こういう負担をお願いしたいという形でおっしゃっておられるのです。だから、当面の財政危機を回避するための方策でしかないのですね。ですから、そこのところが、きっちりとした政策的な目標が、目的があってこの薬剤の一部負担制度も入れられたのかどうかというあたりが、私は極めて疑問だというふうに思っています。  それで、なぜ十五円かという議論の中で、百五十円の一割だから十五円だということでずっとおっしゃっていますけれども、そうすると、薬代の一割の負担をお願いするのだということで、ここで一割という数字が出てくるわけですね。そうすると、これは、全体で高齢者の方たちにも一割を負担してもらおうということの、一種、一つの布石のような形、導入部分になっているのかなというふうにも受けとめられるのですけれども、老人保健との整合性、今度の介護保険制度が入ってくると、やはりこの一割という部分が整合性という形でどうしても出てくるわけですね。  これは大臣にもお伺いをもう一度したいのですけれども、介護保険導入時には整合性のとれた改革を視野に入れて検討をし直すのだというふうにおっしゃっておられる。このときの整合性という言葉は、介護保険で一割の自己負担だということがあるわけですから、医療保険高齢者は一割の負担をお願いするのだということを暗におっしゃっておられるのかなというふうにも思うのですけれども、お考えはそういうことなんでしょうか。
  64. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 将来、今の財政状況、この赤字国債、高齢者がふえる、若い世代保険料がふえる、そういう中で、高齢者だけ特別扱いといいますか、特別に軽い負担でこの医療保険財政がもっかというと、なかなかそうにも思えない。国民健康保険は三割負担をしていただいている、健保の方は二割負担していただいているという中にあって、私は、高齢者についても一割程度負担というのは当然視野に入れていいのではないかというふうに考えております、将来の問題として。
  65. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 それで、その将来なんですね。将来というときの時間的な設定として、介護保険導入時にはというふうに御答弁されているので、平成十二年の、今から三年先の介護保険導入時、今法案ができればですけれども、導入時のところで医療保険の中においても老人に一割の負担というものをお願いするのだというお考えに固まっておられるのかということなんです。
  66. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 固まっているかどうかはともかく、その介護保険導入時においては、医療保険制度改革においても、かなり総合的な、抜本的な改革の方向が示されているような案を出したいと思っています。その中においては、私は、高齢者においても一割程度負担、どういう方法があるか、まだこれから検討中でありますが、一割程度負担はお願いせざるを得ないな、そう考えています。
  67. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 それで、高木局長、今大臣がそういう御答弁なんですけれども、そうすると、今回の薬剤の一部負担制度というものは、三年先の平成十二年のところ、介護保険導入並びに医療保険抜本的改革のなし遂げられたときはなくなる制度なんですか。
  68. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 現在お願いしているのは定額でお願いしておりますから、そういった意味で、介護保険導入時は、これは介護保険定率で今お願いしておりますが、それまで三年しかありませんが、医療保険についても抜本的な案、厚生省としてきちっとした案というものをやはり国民に示していかなきゃいけない。そういったことで、その案というものを示したときには、これは二〇〇〇年には実施できるような形で我々は努力しなきゃいけないだろうというふうに思いますし、そういった中で、いや、やはりそれは医療保険と介護保険とは別だという議論とか、いろいろな議論があろうと思います。  しかし、厚生省としては、そこはきちっと見識のある案を示していきたい、こういうふうに考えておりますから、そういった中で、やはり定率ということが世代間の負担の公平も含めて医療保険制度のあり方として最もふさわしいという案をまとめた場合には、現在の制度というのは当然のことながらなくなる、こういうことだと思います。
  69. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 その良識ある医療保険制度改革案の提出の時期なんですけれども、いろいろとお聞きしておりますと、与党の協議、あるいは民主党もお入りになっての協議がどこまでいってもまとまらないという状況で、きのうの夜も何かおやりになったと、けさも朝のニュースを見ても、まだまとまらないというふうに言っていましたけれども、与党は与党として、あるいは民主党は民主党さんのお立場としていいですけれども、政府としてちゃんとした案は一体いつ出していただけるのでしょうか。
  70. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 政府案として出すためには、当然、与党と協議して、閣議決定がなされると思います。それには相当時間がかかる。しかしながら、その前に、厚生省案としてはそれよりはるか前に出したいと思っております。
  71. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 恐れ入ります。その時期はいつを想定しておられるのでしょうか。
  72. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 この法案が成立し次第、できるだけ速やかに出したいと思っています。
  73. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 法案の成立前にお出しになるのが筋ではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
  74. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 三十年間かかってもできなかったのです。すぐ出すのは、法案成立前に出すのは困難です。
  75. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 三十年にわたってできなかったことはよくわかっているのです。きょう私が御質問申し上げているように、四十二年から四十四年当時の中で出てくる議論が、同じ議論が結局繰り返されている。そこのところで、結局は、申しわけないけれども、今もそうでしょうけれども、当時の自民党と日本医師会等のいろいろな政治的な動きの中で、社会保険審議会等が出してくる案と全く違う案が出てくるという形できているわけですね。四十二年のときもそうでした。今回もそうですね。そういう状況の中で、与党は与党のお立場としてお考えになるのでしょう。でも、三十年かかって出ないものが、健康保険法が成立したらなぜすぐ出るのですか。そんなような程度のものであるならば、今お出しになるべきじゃないですか。
  76. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 この三十年間の経緯、本法案を出した昨年来の与党内初め審議会、また野党の御意見を踏まえて、いかに医療保険医療制度改革案が難しいか。あちらを立てればこちらが立たず、こちらを立てればあちらが立たず、片一方では賛成、片一方では反対、どんな案を出しても賛否両論出る、そういう経緯を踏まえて、これではいかぬなと。  今までの経験も踏まえまして、厚生省としては、総点検の意味厚生省案としての見識ある具体案を提示して、それを国民の前に批判に供したい、いわば今までの三十年間の総決算としての反省を含めた案を出したいなと思っております。
  77. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 大臣の決意のほどは重々にお承りをしております。  ただ、国民負担を求めるという法案の審議をする中で、議院内閣制ですから与党の皆さんの御意見も聞かなければいけないということもよくわかります。しかしながら、まず法案を通せ、通せばすぐに厚生省としての考え方を出すという言い方は、いかにもこれは国会を軽視している言い方であるというふうに私は思います。そういう中で審議をしろというのがどだい無理な話。そもそも、審議に入るのも、与党がまとまらないからということで審議が始まらなかった。こういう形になってきているということは、基本的な審議ができないというふうに私は思います。強く抗議を申し上げます。  もう一点、大臣にお伺いをしたいのですけれども、議事録をずっと読み返しておりますと、この程度負担ならよいのではないかというお言葉がずっと出てくるのですね。四十二年当時の厚生大臣は坊秀男先生ですけれども、坊先生も同じように、この程度負担だったらいいのではないかというお言葉が、ずっと三十年間、実は繰り返されてきた。この程度とおっしゃっているときの厚生大臣の感覚としては、この程度はどの程度なんでしょうか。
  78. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 程度というのは、これまたあいまいな言葉でありますけれども、そのときの状況によって違ってきますね。  それは、今、国民健康保険に入っている人は三割負担しておられる。健保に入っている方は一割から二割にしていただく。今、高齢者は定額ですけれども、これは一割にもなっていない。今回の千二十円を一回五百円、薬剤一種類一日十五円というのも一割に満たないというのだったらば、まさにこの程度ならいいのではないかと。一割に満たない、今、定額の案にしても。この程度というのは決して過重とは私は思えない。  負担する側の立場を考えれば、この医療保険というのは、医療サービスを受ける、給付だけじゃない、この給付を受けるために必ず負担している人はどこかでいるのだということを考えるのだったらば、それじゃ、この負担が嫌だというのだったらば、また保険料を上げるのですか、増税するのですか、若い人にツケを回すのですかという選択肢しかないのだったらば、ある程度、利益を受ける、医療サービスを受ける方も、ほかが負担を考えれば、まだ一割に満たない負担はこの程度ということが言えるのじゃないでしょうか。
  79. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 というお聞きをしましたのも、今回、一回五百円、月四回までという言い方になって、一つ五百円玉を持っていけばいいじゃないかという感覚で、この程度というのは人によって程度が違います。自分のお財布の中に入っている金額によってその程度というのは恐らく違うのだろうと思います。  そのときに、どうも五百円玉一つ持っていく程度のものだったらというふうな感覚の程度と聞こえていたのですね。では、五百円玉が二つになつても千円程度という話になって、程度というのに限りがない話になるから、基本として、大臣の金銭感覚というわけではありませんけれども、どの程度という意味でおっしゃっておられるのかなと思っていたのです。  今、確かに負担と給付の問題がありますから、いい給付ばかりという形にはならない、負担というものは当然伴ってくる。しかし、その中で考えていけば、一割、まさに一割程度負担であるならば負担をしていただくのは無理のない範囲だという御認識なんですよね。重ねてで申しわけありません、そういうことでよろしいのでしょうか。
  80. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 私の考えとしては、一割程度負担、これは過重な負担とは言えない、そう思っております。
  81. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 という意味合いで、ぜひ早く良識ある厚生省案、良識ある与党の案をお出しをいただいて、実際の改革案のたたき台もないままに審議をするという形は大変に不自然でございますので、そういう案をお出しになってからもう一度、一からこの健康保険の審議というのはやらさせていただきたいというふうに思います。  それで、もう一点ぜひお伺いをしておきたいと思っているのですけれども、私は、国民としては負担をするのはやぶさかではないと思っています。そのときはそれなりのサービスが提供されるということが前提だと思いますけれども、医療の質という問題がもっと議論されてしかるべきではないかというふうに思っているのです。  時間の関係で少し質問を飛ばしますけれども、医療技術は正当に評価されるべきだというふうに思います。現場の先生方にお伺いをしても、やはり医師の技術料が診療報酬上で極めて低く見られているのではないかという御指摘をいつもいただきます。  きのう、いろいろと厚生省の方にお伺いをしたら、医師の技術料だけで診療報酬を見ているのではなくて、入院料とかすべてのものを合算する中で、この診療報酬の中での医師の技術料というのを見ているのだという御説明でございましたけれども、私は、もう一遍ちゃんと原価計算をし直して技術料を適正に設定すべきではないかというふうに思うのですけれども、そういうお考えは厚生省にはありませんでしょうか。
  82. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 この診療報酬の問題というのは、医療行為に対して保険サイドがどういう形で公平に、言うなれば支払うのがいいのかという観点でできているのだと思います。そういった中で、医療担当者の技術料というものの評価をもっとしていくべきだ、これはもう昔からまさにそういうような方向で、診療報酬改定の際にはそういう方向を踏まえて常に医療担当者の技術料の評価ということを重点に改正がなされてきたというふうに思います。その積み重ねが今日の診療報酬点数表の形でできているというふうに思うわけであります。  それで、これは原価計算といってもなかなか難しい。要するに、技術料というのは一体何だということ自体も非常に難しい問題ではないかと思います。そういった意味では、それぞれの手技や何か、例えば手術とかそういうものについては、それぞれの相対的な難易度のもとに定められたりしてきておりますが、全部がそれで定められるかというとなかなか難しい面もある。  それから、現実の医療機関においてはいろいろな診療科がございます。いろいろな診療科が、特定の診療科は特別の高い収入になり、特定の診療科はそういった意味では相対的には余り支払いが行われないという格好というものも避けなければいけない。  ですから、ある程度そこら辺、それぞれの医療担当者がこの診療報酬というもので医療機関の経営をし、あるいは生計を立てておるわけでありますから、そういったもののバランスというものも図っていかなければならない。  一方、医療行為そのものも非常に複雑多岐になってきている。そういった中での大変な苦労の積み重ねといいますか、それの集大成が今の診療報酬点数表にあらわれているのだと思います。  そこら辺を今後どうしていくのか。そこら辺のところは、診療報酬体系の抜本的な改革という、一言で申し上げると非常に簡単なんですが、それはそれは、この診療報酬を個別個別にどうするのかという非常に難しい問題がございます。今、DRGというのがアメリカでは行われているということが一口で言われておりますけれども、アメリカのDRGの導入までの研究期間というのは、大学で相当長期にわたった積み重ねがあった上での話であります。  そういった意味では、総論としては、医療担当者の技術料というものをきちんと評価し、それからまた、医療経営の投資的費用の評価というものもきちんとやっていく、それを総合的にきちんとしたものとして検討していかなきゃならない、こういうことで申し上げておるわけでありますけれども、実際にこれをきちっとしたものをつくっていくということになりますと、やはり非常に難しいものがありますし、原価計算で一つ一つ積み上げるということであっても、一体原価というのは何かということにもなろうと思います。その辺のところは、やはりこれから相当なエネルギーをかけて合理的なものをつくっていかなきゃいけないと思います。  ただ、我が国の現状というのは、技術といわゆるキャピタルコストとの関係がどうも診療報酬点数の中では非常にはっきりしない。中には技術を中心に書いてあるものもあるし、そうじゃないところもある。というふうなことで、その辺のところのあり方というのはやはり問題ではないかというふうに言われておるわけであります。  それからまた、薬価基準のもとで薬価差というものが生まれている、これが医療機関の経営原資として使われている、これは事実であります。  そういった意味で、診療報酬のこの体系を見直し、点数というものを考え直すときに、現実に経営原資となっているこの薬価差、これをどういう形で技術料に転嫁していくのか、評価していくのか、それらの問題もあろうと思いますし、そういった意味では、方向としては、全く、技術料を適正に評価していくということについては私どももそういうふうに考えておりますけれども、現実に具体的な手法としてどうやっていくのかというのは、これはもっと相当なエネルギーで検討していかなきゃいけないというふうに思っております。
  83. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 難しい課題であることは私も理解しますけれども、着手していかないと結局は同じことの繰り返しになって、抜本改革にはつながらないというか、抜本改革はできないということだ、そういうふうにおっしゃっていることと同じになってしまいますので、そこら辺は、病院経営というものを成り立たせる上でずっと言われ続けてきている、やはり物じゃなくて、ちゃんと技術というか人を中心に評価をするのだという形に変えていかないと無理ですし、薬価差益あるいは診療報酬の部分でうまく病院経営を全部やっていきなさいというようなことをやると、当然、もうけの方というか、一定のもうけを出さなきゃいけない方に走っていくわけですから、必ずしもいい医療というものにはならないというふうに思うわけですね。やはり医療の質を上げていくためにも、ここをもう一度しっかりとした見直しをしていただきたい。  結局、手術をしても、手術料の評価が少ないから、それじゃ入院料で賄おうということになれば、入院が長期化していくわけですし、それは今の医療政策とは違う方向に行ってしまうわけですから、根本のところをもう一遍見直しをしていただきたいと思います。  もう一点、ぜひこういうのは国立病院の中でいろいろとやっていただきたいのですね。今度、定額払い方式を試験的に実施するというふうにもおっしゃっておられますけれども、定額払いということになれば、当然、医療の標準化というものを考えなければいけない。今御答弁でお触れになったように、アメリカあたりでは患者の性別とか年齢別に四百六十七の疾病の類型ごとに価格を決めていくというような見直しをしているわけですね。私立の病院にそういうことをやれといってもなかなか難しいでしょうから、やはり国立病院が率先して、そういう医療の標準化というもの、虫垂炎の手術ならこういう形で何日の入院だとか、こういう病気であればこういうのが標準ですというガイドラインをぜひつくっていただきたいというふうに思いますけれども、どうでしょうか。
  84. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 これは、今回の法律改正というような意味での法律改正を要しませんので、余り目立たないのですが、今回の制度改革、抜本的な改革に向けた第一歩ということでお願いしております。  と同時に、法律改正ではありませんが、行政的にはそういった抜本的な改革に向けたいろいろな施策というものを推し進めていく、その中の一つが、まさに今御指摘のとおり、本年度から国立病院等につきまして、ここをベースにして、いわゆる急性期の入院医療に対する疾患別の一件当たりの定額払い方式の試行ということを行うことにしております。  その考え方というのは、一つが診療内容の合理化、それから医療の質の確保、それからまた病院経営の合理化、こういったようなことに資するような基礎資料というものをきちっと集積していく必要がある。その資料と現行の出来高制との比較をすることによって、そのすぐれたところを生かし、むだなところを合理化していく。こういうような資料に供しよう、こういうことで、国立病院それから公的病院、これを使いまして、その辺のところをやっていこうということであります。  そういった中で、まさに今先生御指摘のとおり、標準的な医療というものは一体どういうものなのかを考える際の関連資料というものも集積されてくるというふうに思っております。  そういった意味で、私どもとしては、今年度からこのような試行というものをやって、適切なデータの集積をし、それを現実の行政の中に今後生かしていかなきゃならない、このように考えております。
  85. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 ありがとうございました。  ぜひ、厚生省としての健康保険改革案というものを、項目の羅列だけではなくて、検討しますという言葉の羅列だけではなくて、しっかりとした案を早急にお出しをいただきたいということをもう一度お願いして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  86. 町村信孝

    町村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時七分休憩      ――――◇―――――     午後一時八分開議
  87. 町村信孝

    町村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。矢上雅義君。
  88. 矢上雅義

    ○矢上委員 新進党の矢上雅義でございます。  実は、きょう午前中、山本議員のお話を聞いておりまして、なるほどなと感じたことがございます。  例えて言いますと、商売でも、普通、品物を見せる前に代金を取るということはないわけでございます。例えば、食堂に入って、焼き魚定食頼むときも、普通はメニューに焼き魚定食と書いてあって、御丁寧に写真まで添えてございます。そして、一生懸命食べた上で、最後にお金を払う。中には、たちの悪い人がいて、ゴキブリが入っていたとか言って払わない人もおられますが、普通、社会の常識で考えると、品物を見てから、食べてから最後にお金を払うというのが一般の常識でございますので、なかなか今回の問題が答えが出づらいのはその辺にあるのではないかと思っております。  特に老人高齢化が進んできまして医療に金がかかる、金がかかるから、医療保険財政が厳しいから上げてくれという理屈はもっともでございますが、よくわかりますが、その前提として、それじゃどうして金が足りないのだとか、それじゃ私たちの目の前にどういうサービスがあるのだという、その前提となる将来的な計画が見えていない、そういうことではないかと思っております。  今回の抜本的改革の中身といいますと、まず、医療保険制度改革と同時に、負担の問題と逆の立場で、どういうサービスを受けられるか、医療提供体制をどう持っていくか、そういう面での改革も論じられるべきでございましたが、残念ながら、なかなかきちんとした形で見えておりません。  しかし、これまでの医療保険審議会の中で、例えば平成八年十一月二十七日、「今後の医療保険制度のあり方と平成九年改正について」の中で、「二十一世紀初頭に目指すべき医療保険制度の姿」として「医療機関の機能分担と連携の強化」という項目が挙がっております。具体的にどのような体系化を考えているのか、前回も質問いたしましたが、さらに具体的に大臣の方からお答えをいただきたいと思います。
  89. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 医療提供体制につきましては、今後、医療機関相互の適切な機能分担を図るとともに、その機能の連携を進めていくということが重要な課題だと認識しています。  一つには、まず、医療患者の身近な地域で提供されることが望ましいという観点から、かかりつけ医を地域におきます第一線の医療機関として位置づけるとともに、現在御審議をいただいております医療法の一部改正法案におきまして、かかりつけ医を支援するための地域医療支援病院の制度化ということを盛り込んでおります。  また、同様に医療法の一部改正の中に、地域医療計画の内容の充実を図るということから、従来、必ずしも必要的な記載事項ということではなくて任意の記載事項でございました、二次医療圏単位におきます医療機関の機能の分担あるいは整備の目標、特に介護保険との関係で見ますと、療養型病床群の整備の目標、あるいは今申しました地域医療支援病院の整備の目標、そういうようなことを記載してもらうという形で地域医療計画の充実を図るということを盛り込んでおりまして、そういったようなことを通じまして、医療機関の中の機能の明確化なり連携ということを図ってまいりたいと考えております。
  90. 矢上雅義

    ○矢上委員 確かに、身近なところでの治療を充実していきますと患者さん方も大変便利になりますが、しかし、現実には、三時間待ちの三分診療と小泉厚生大臣がおっしゃったように、大病院に集中する傾向がございます。幾らかかりつけ医を充実させていくのだといいましても、そもそも大病院に患者が集中する原因は何なのか、その辺をきちんと分析していかなければ答えは出ないと思います。  例えば、大病院の持つ魅力を分析して、その大病院の持つ魅力を超す何かをかかりつけ医が持つのか、もしくは大病院が持っていない魅力をかかりつけ医が持つことにするのか、いろいろな点でこの大病院に患者が集中する理由というものの分析が必要となってきますが、その辺について、分析等ございましたらお答えください。
  91. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 まず、大病院への集中ということについての分析ということでございますが、基本的には、一つは、患者医療機関を自由に選択できる、そういう制度でございますので、そのこと自体が、非常に高い評価は受けておりますが、また一方において、患者の大病院への集中といった問題があると思っております。  具体的な数字を若干申し上げさせていただきますが、平成七年に、社会福祉医療事業団が一般市民アンケート調査ということをやっております。  その中でも、今申し上げました医療サービスの供給の仕組み、いわゆるフリーアクセスということについては八五%ぐらいの人が高く評価をしております。高く評価あるいは評価できるという方が八五%を超えております。また、大病院指向の背景ということでは、だれもが、どこでも一定の負担の範囲内で医療機関にかかることができる仕組みが大病院に集中しているということについても、八〇%ぐらいの方がそのこと自体は認めておられます。  一方、体の不調などで医療機関にかかる場合にどういう選択をするかという形で聞きました内容で申しますと、まず地域の診療所などにかかるという方が五五%でございます。一方、初めから地域の大きな病院にかかる、あるいは初めから大学病院などの大きな病院にかかると答えられた方が一八%ぐらいおられます。  そういったような、初めから大きな病院を選ぶという回答をされた方のその理由を聞いてみますと、その方々のうちの四割が、検査あるいは治療の的確さ、また、二割ぐらいの方が、どういったような病気でも対応してくれるのではないかといったようなことを挙げておられます。
  92. 矢上雅義

    ○矢上委員 局長がおっしゃいましたように、どなたでもどこの病院を選んでいいわけですから、ある意味では人気のある病院に集まるわけで、御本人さんたちの自由で集まるわけですから、三時間待ちの三分診療というのも当然の結果かとも思えます。ただ、一カ所に集中すると、本来、その大病院できちんと診察してもらわなければならなかった人がきちんとした診療が受けられなくなるとか、弊害も出てくるかと思います。  ただ、今の大病院の魅力からいいますと、結局、検査を十分受けられる、また、その検査の結果、どんな治療でも、どんな病気でも対応できるのではないか、非常に魅力的ではございます。そういう魅力的な大病院に対して、きちんとしたかかりつけ医とはどういう対応をするべきなのか、あるべきかかりつけ医の姿とはいかなるものを想像しておられるのか。よろしくお願いします。
  93. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 かかりつけ医に一般患者さんから期待されていることというのは、先ほどもちょっと申しましたように、身近なところにある第一線の医療機関として、身近な医療について対応する、また、必要に応じて他の専門医あるいは病院へ紹介をしていくということが基本だろうと思っております。さらに、そういったようなかかりつけ医については、特に在宅の高齢者等に対する対応、また、在宅医療に積極的な役割を期待するということが大きいと思っております。  そういう中で、今後の方向としては、かかりつけ医というものが、みずから中心となって在宅医療をやるということだけではなくて、その地域の福祉サービスあるいは関連サービスの提供者とも連携して、患者の生活面全体におきます支援を積極的にやっていく、また、あわせて家族の健康診断と申しますか健康相談、そういうことをやることが期待されているというふうに考えております。
  94. 矢上雅義

    ○矢上委員 私も前回の質問で、ぜひ、かかりつけ医というものは、地域に密着して、家族に密着した在宅医療福祉、生活全体の支援を行うかかりつけ医であってほしいとお願いいたしましたが、その後、いろいろお医者さん方と懇談会を開きましたところ、若い診療所のお医者さんでも、特に都市部におきましては、新しい技術に挑戦したいとか、新しい高度な治療方法を自分もやってみたいと、非常に研究熱心な方がおられます。  一生懸命努力して患者さんに喜んでいただきたい、そういう思いがかかりつけ医にもある中で、私、逆に指摘されたのですけれども、日本の開業医の特質として、特に都市部においては非常に専門性が高い、その専門性の高さが今回のかかりつけ医制度の普及によって、いい部分が、いい面が殺されてしまうのではないか、そういう疑問をいただいております。  特に、大学卒業後の研修などで暗に言われるのが、高度な医療とか新しい医療は大学病院でやりますから、皆様方は新しいものにチャレンジすることは必要ありませんと暗に御指導をいただくこともある。そうなりますと、生かさず殺さず的な、学問としてというのですか、医学の発達という面から考えた場合に疑問があるのが一つと、また、患者さんの立場に立った場合に、よく話を聞いてくれるお医者さんだけれども、一芸に秀でた人でなければなかなか自分が積極的にそのかかりつけ医のところにかからない、そういう面もあるのではないかと思います。ただ人がいいだけではお医者さんは勤まりませんので、やはり人には負けないというある分野での腕と、そして、きちんと人の話も聞いて健康相談等にも応じてくれる、そのような非常に両極の世界でございますが、お医者さんたちも悩んでおられます。  そういう部分で、今後、医療機関の機能分化、連携の強化といいながらも、どのように具体的に支援していくのか、診療報酬の面等からもとのような支援措置を講じておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  95. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 まず、前段の方のお尋ねにお答えをさせていただきたいと思います。  確かに、一方において、お医者さんそのものは専門医志向というのが非常に強うございますから、大学病院なんかで一定の専門の分野を身につける、それをどこにいようとも一生生かしていきたいという考えはあると思います。そういう意味では、我が国のかかりつけ医、特に診療所の先生方がある意味では専門医的な技術なりなんなりを身につけておられるということは決して悪いことではないというふうに思います。  昨年の十一月に、国民医療総合政策会議の中間報告というのが出されておりますが、その中で、かかりつけ医機能の向上ということに関連いたしまして、専門医とか認定医の制度、これは現在、日本医学会を中心にした学会が独自の立場で専門医制度なり認定医制度というものをやっておられますが、これは必ずしも各学会において統一的な基準あるいは統一的な手続によって決められていない。むしろ、今後そのかかりつけ医が専門医として、先生がおっしゃったような意味での専門医、専門に偏るという意味ではなくて、専門医という面も住民にある程度わかるようにしていくということのためには、この認定医制度あるいは認定基準というものをもう少し明確化する、あるいは統一する、そして将来的にはそれが表示できるようにするというようなことも考えるべきではないかという御意見をいただいております。これにつきましては、現在、そういうような意見も含めて、この学会の方で検討していただいております。  また、かかりつけ医に対する支援ということにつきましては、先ほど言いました地域医療支援病院というものを中心にいたしまして、特に在宅医療に対する診療報酬上の手当ても含めた取り組み、それから病院のオープン化、もちろん全部というわけにはいきませんが、開放をして、かかりつけ医の方に利用していただく、また、高額医療機器の共同利用、広告規制の緩和を含みます住民への情報提供の推進といったようなことを今後とも進めてまいりたいと考えております。
  96. 矢上雅義

    ○矢上委員 谷局長がおっしゃったように、専門医、認定医を、きちんとその体制拡充していくというのは大事なことだと思っております。一生懸命勉強して技術を上げた、その努力に対する社会的評価がきちんとなされませんと、ただ原則どおりに単なる在宅医療福祉の相談役ですよという形になりますと、まるで産業医とか学校の保健婦さんみたいな形になってしまってやりがいかない、究極して言うとそういう形になると思います。きちんと社会的地位の評価を確立する手法を国の方からもバックアップすることと、また、前回も申しましたが、在宅医療福祉に対する評価だけでなく、健康相談また病気予防等の指導をした場合にもきちんと相談料等が評価される、そうでなければなかなか経済的にも地位が確立てきないのではないかと思っております。ぜひそのような両面の措置をお願いいたします。  続きまして、これは先ほどの話とダブるのですけれども、かかりつけ医というものは患者さんにとって身近な存在でございますが、適切な病院への紹介を行うという機能を担うことにより、患者さんの流れについていわば交通整理を行う重要な立場を担うことになります。一般的に、かかりつけ医にとりまして、最低限の範囲で総合的な診療を行う能力が求められるわけでございますが、今現在行われておられる大学卒業後の臨床研修等の今後の充実等についてはどう考えておられるのか、お伺いいたします。
  97. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 現在行われております臨床研修につきましては、その臨床研修目標におきまして、「臨床研修を通じ、総合的視野、創造力を身につける。」あるいは「患者の持つ問題を正しく把握し解決する能力を身につける。」等が掲げられております。具体的な内容といたしましては、基本的診療法、検査法、治療法等がございます。  こういったような目標あるいは考え方に沿いまして、特に厚生省として、この卒後の臨床研修については、幅広い経験がこの二年間の間で積めるように、ある特定の科だけで研修を行うということではなくて、総合診療方式と言っておりますが、ローテーションを行う、内科、外科を中心にして多くの科でローテーションを行う総合診療方式というものの普及を図っております。  また、臨床研修施設は、基本的には臨床研修指定病院という形で、全国で大学病院以外に約三百カ所が指定されておりますが、特に最近では病院群ということで幾つかの病院が組んで臨床研修を行う。それで、その中に、専門病院だけではなしに、中小病院、診療所、老人保健施設、社会福祉施設等を研修施設群という形で位置づけて、できるだけいろいろな経験ができるようにするといったような施設の組み合わせということについても、関係の研修病院に対して、できるだけ取り入れるように指導をしているところでございます。
  98. 矢上雅義

    ○矢上委員 さらにこの件について御質問しますが、いろいろな研修を積んでいただいて、かかりつけ医を養成する、また、地域の支援病院、大病院等、それぞれ医療機関の機能を差別化していきますが、ただ、いろいろな地域によりましてまた概念が異なるものですから、患者さんたちが、自分はどういうところに行くべきなのか、かかりつけ医を選ぶにしても、それから、かかりつけ医から紹介されて行くにしても、果たして自分にふさわしい医療機関とは何なのかというのがこれから患者さんたちに広く知っていただかなければ、決してこの医療機関の機能分担というのはできないと思っております。  非常に体系化されるのですけれども、新しい体制ですから、その情報公開というのですか、患者さんに向けて、こういう機能を持っているのですよとどのように広報していかれるおつもりなのか、その施策についてお伺いいたします。
  99. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 今お触れになりましたように、医療機関のサービス内容あるいは機能ということについて、医療機関が積極的に出していく一つの方法としては広告というのがございます。ただ、この医療機関の広告というのは医療法において一定の制限が行われております。これは諸外国においても大体同じような考え方で行われているようでございますが、一方、近年、患者さんが主体的に自分の病状に合った適切な医療機関を選択することができるようにするということから、広告規制の緩和ということが求められております。  一昨年の十二月に、行政改革委員会が意見を出されておりますが、その中でも、  診療や治療行為といった医療の本体部分については、客観的であるべき広告にはなじまないが、医療機関が提供するそれ以外のサービス内容やその体制など、客観性・正確性を確保し得る事項は、広告できる事項として広く認めるべきである。 という指摘をいただいております。  こうした指摘も踏まえまして、現在提案させていただいております医療法の一部を改正する法律案の中でも、例えば「療養型病床群の有無」ですとか、今先生お触れになりました「紹介することができる他の病院又は診療所の名称」といったものを新たに広告し得る事項として規定をしておりますほか、今後、この法律が成立をさせていただいたという場合には、この法律の施行にあわせまして、例えば病床数ですとか病室の状況、職員の人数等を広告し得る事項として認められるよう検討を行いたいと思っております。
  100. 矢上雅義

    ○矢上委員 このあたりは、今おっしゃった内容、特に情報提供につきましてはきちんとやっていただきませんと、将来、新しい体制になったときに非常に混乱する結果となりますので、ぜひ御検討のほどよろしくお願いいたします。  続きまして、医療提供体制の中で、前回も行いました僻地医療の問題についてお尋ねいたします。  前回は時間がなかったものですから、私が一方的にしゃべる結果になってしまいまして、きちんとした討論ができませんでした。  特に日本の地形の特性として、離島、山間部などが多数存在する、そこに無医地区と呼ばれるものが多数存在する結果となっております。  まず、いわゆる無医地区と言われるものについて、現在どの程度存在しておるのか、無医地区の現状と僻地保健医療対策をどのように講じてきておられるのかについてお伺いいたします。
  101. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 無医地区につきましては、いわゆる無医地区の解消を図るということから、昭和三十一年から七次にわたります僻地保健医療計画というのを策定してまいりました。  その中で、無医地区の定義というものを一応決めております。医療機関のない地域で、おおむね半径四キロメートルの区域内に人口五十人以上が居住しているという地域で、容易に医療機関を利用することができない地区という形で定義をしております。この定義は、昭和三十年代から変わっておりません。  現時点で無医地区と定義される地区は、平成六年九月時点で九百九十七カ所でございます。この地区の数そのものは減少してきております。  特に、平成八年度から第八次の僻地保健医療計画というものを策定いたしまして、それぞれの地域の特性を生かした僻地保健医療対策を実施してきております。  具体的な内容を若干申し上げますと、僻地中核病院を中心にした医師の派遣事業あるいは診療等を行う、また、僻地診療所の設置あるいは僻地の特に医師の確保といったようなこと、それから、僻地におきます救急医療充実といったようなことを、この僻地中核病院並びに僻地診療所を中心にして第八次の僻地保健医療計画の中で実施しているところでございます。
  102. 矢上雅義

    ○矢上委員 確かに現在、平成八年から第八次対策をされておられますが、なかなか解決できないのが医師の確保の問題です。だれでも自分の住んでいる場所から離れて山間地とか離島にわざわざ行きたいという人はおられませんから、今後の僻地医療対策における課題の中で、特に医師の確保が最も重要な問題でございます。  前回、私は、例えば、将来開業するときに国の方が何らかの助成をするとか、また、そういう開業時の助成が無理であれば給料をいただいておる中から開業に向けての開業準備引当金みたいな形で控除できないか、そういう税制面での優遇措置を検討すべきではないかとお願いいたしました。前回は私が一方的に述べただけでございましたので、厚生省で今とっておられる医師の確保策について、具体的な施策等ございましたら御答弁いただきたいと思います。
  103. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 僻地におきます医師の確保の対策でございますが、先ほど申し上げたことと若干ダブりますけれども、僻地中核病院からの医師の派遣、あるいは僻地に勤務しようとされるお医者さんの就職の紹介あっせん事業、そういうようなことをやっております。  また、幾つかの中には、主としてこれは事業主体は都道府県でございますけれども、就職の紹介あっせん、それから、僻地を抱える都道府県単位に僻地勤務医師等確保協議会といったものをつくって、関係市町村あるいは医療機関、関係団体が情報交換をしながら医師の確保を図るといったような事業、それから、平成八年度からの第八次の僻地医療計画の中では、特に僻地診療所に勤務するお医者さんがなかなか休暇もとれない、お休みもとれないというようなことで、その間のかわりの医師の派遣を行うような医療機関を設定するといったようなことをやってきております。  これらの事業につきましては、具体的に第八次の計画をつくる際に僻地を多く抱える地方自治体の方々の御意見もいろいろ伺った上で、こういったような事業を現在行っているところでございます。
  104. 矢上雅義

    ○矢上委員 僻地に派遣されましたお医者さんの中で、悩みといいますか、お年寄りのひとり暮らしの方が多くてなかなか患者さんが診療所まで来られない、そこでお医者さんがよく巡回されます。その中で、お医者さんもひとりではやりにくいですから、看護婦さんの補助が欲しいとか、例えば運転手さんもつけてほしいとか、いろいろあると思います。  これは通告はしてございませんが、谷局長もお医者さんでございますので、現実、巡回診療というものの実態でスタッフ不足というものはいかなるものなのか、現状としてどのように把握されておられるか。私たち、代議士をしておりましても、秘書がおりませんとなかなか仕事もはかどりませんし、会合をずっと回るときも運転手さんがいないと、お酒を飲んでいますとアルコールですから捕まってしまいますので、そういう意味で、お医者さんが本当に働きやすい環境に今あるのか。谷局長の御経験とか御拝察されたところで結構でございますので、簡単に御答弁いただければと思います。
  105. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 僻地におられるお医者さんの悩みということについて何回か聞いたことがございますが、まず、若いお医者さんの場合には、研究ができない、あるいは仲間からおくれてしまうのじゃないか。それから、やや中年の方といいますか、四十代、五十代になりますと、子供の教育の問題。それから、さらに上になりますと、六十代以上になりますと、余り悩みがなくなるわけじゃないのですが、いろいろ今度は、町の町長さんとか助役さんとか、そういう方との人間関係というのが非常に逆に難しくなるといったようなことを伺ったことがあります。  今先生がお話しになったのはスタッフということでございますが、私どもが承知しています限りでは、医師、歯科医師の確保が一番難しいということでございまして、もちろん、その他の看護婦さんもある意味では都市部とは違っているとは思いますが、医師の確保が一番難しいというふうに認識しています。
  106. 矢上雅義

    ○矢上委員 率直にいろいろお話しいただいてありがとうございました。  実は、僻地というものをどうとらえるかですけれども、これは当たり前のことでして、大臣御存じのように、高齢化が進んでいるところでございます。その高齢化が進んでおるところにいきなりお医者さんとか歯医者さんをぽんと送り込んでもなかなか、そこでどうやってやっていったらいいのだろうか、先ほど言いましたスタッフの問題あと、施設の問題等ございます。  完全な僻地という定義の中にあえてつくる必要はないかもしれませんが、今回、公的介護保険制度をどうするかということで議論しております。いずれ公的介護制度というものが発足するとなれば、きちんとした福祉介護基盤整備の充実が図られるわけですが、せっかく山間地にブロックごとにいっぱい福祉施設をつくるのであれば、そこに僻地診療所と併設した福祉施設をつくると、相当お医者さんは楽になるのじゃないでしょうか。お医者さん、歯医者さんがひとりで赴任していかれても、そこには看護婦さんまた運転手さん、スタッフがおられますから、非常に身動きがとれる。  あと、先ほど谷局長がおっしゃったように休みがとれないとか、例えば、よく聞くところによりますと、二十四時間体制みたいにいつも患者さんから起こされる。しかし、僻地の患者さんというものは高齢の方が多いわけですから、本来は介護福祉施設とか福祉施設のスタッフで面倒を見れば済むことも多いと思うのですよ。いきなり何とかなりませんかと電話がかかってきたときに、まず介護の立場の方々がきちんと面倒を見られるところは見る、どうしても面倒を見られない医療の部分は先生にお任せする、そういう施設を複合化、併設化することによって、お医者さんの時間が自由にとれできますし、スタッフ不足も減少してくる。  これをちょうど公的介護制度充実とあわせて、厳密な僻地にとらわれるのではなく、その近隣にそういう施設をつくっていくということが無医地区を結果的に解消する決め手になるのではないかと思っておりますが、局長及びもし大臣も御意見がございましたら、よろしくお願いします。
  107. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 一つの案として大変参考にしてみたい、傾聴すべき御意見だと思います。
  108. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 若干、今大臣お話しになったことの現時点での補足をさせていただきます。  第八次の僻地保健医療計画の中でも、僻地診療所に例えば特別養護老人ホームを置く、あるいは老人保健施設を一緒に建てるといったようなことを盛り込んでおりまして、また、一部の地域では、もちろんこういうことは前からやっておられるところもあると思います。僻地が特に高齢化率が進んでいるということは事実でございますし、そういう意味からも、保健と医療福祉、こういうものが連携するような形での施設整備ということが今後ますます必要になってくるというふうに認識をしております。
  109. 矢上雅義

    ○矢上委員 せっかくの医療福祉の連携と言われている時代でございますので、財源も限られた中で、どうやって効率よく人と財源を使っていくかということで検討していただければと思っております。  続きまして、院内感染と、あと、施設の人員配置基準についての問題に移ります。  これも前回やらせていただきましたが、院内感染というものが新聞や週刊誌でたびたび取り上げられ、病気を治すために病院に入院したのに、病院で病気をもらって不幸な結果になったと本末転倒な事態が起きております。病院には確かに体の弱い方が入っておられて、あらゆる病原菌がございますから、考えられることではございますが、しかし、こういう結果をできるだけ防ぐという意味で質問させていただきたいと思います。  まず、院内感染といってもいろいろ定義、種類がございますので、院内感染等の定義及び院内感染の中で重大なケース等についての事例及び感染経路についてお聞きしたいと思います。
  110. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 院内感染の定義でございますが、これは、以前、厚生省内で設けました専門家会議において、「入院患者が原疾患とは別に、院内で新たに罹患した感染症、または医療従事者が病院内において罹患した感染症」というふうに定義をされております。  具体的に院内感染で問題になる病気でございますが、これはいろいろあろうかと思いますが、特に最近多く注目されているのは、一つはMRSA、メチシリン耐性ブドウ球菌、それから肝炎ウイルスがあるというふうに考えております。  MRSAにつきましては、医療従事者あるいは患者さんの手指などを介した感染が問題になっている。また、肝炎ウイルス、特に我が国の場合にはB型肝炎が問題になっておりますが、これは、使用後の注射針等によって誤って医療従事者等が感染するといったような事例が多いというように聞いております。
  111. 矢上雅義

    ○矢上委員 今挙げられたMRSAとか肝炎ウイルスについて、ここに黄色い冊子がございますが、「院内感染対策ポケットマニュアル」というのが、これは厚生省から監修で出されております。これは一般論しか書いてございませんので、各病院、具体的なケースで拘束力があるわけではございませんが、こういう冊子の配布等を含めて、院内感染の予防策としてどのような具体的な取り組みをされておられるのか、お聞きいたします。
  112. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 院内感染につきましては、特にMRSAが平成四年から五年にかけて福祉施設等を中心にして問題になったことを契機にいたしまして、それまでの院内感染対策というものを見直しまして、院内感染の総合対策という形で平成五年の一月に取りまとめたものを、各都道府県を通じて医療機関に指導をいたしました。  具体的な内容としては、抗生物質の適正な使用、特に抗生物質を使用する際には感受性の試験を行うとか、必要最小限の期間に投与する、それから、手洗いの励行、清掃等院内の環境整備、医療従事者に対する院内感染に関する教育、そういうようなことを通知いたしました。また、自動手洗い器、自動手指消毒器の設置についての補助を交付するとか、先ほど申しました、院内感染に関する医療従事者に対する研修あるいは教育の実施、そういうようなことを実施しているところでございます。  また、肝炎ウイルスにつきましては、特に感染の危険性の高い医療従事者に対しまして、B型肝炎ワクチンによる予防を行うということで、医療機関の従事者に対して指導をしているところでございます。
  113. 矢上雅義

    ○矢上委員 今の答弁によりますと、きちんと指導は通知されておる、いろいろな対策を立ててくださいということで。ただ、以前から申しますように、病院における人員配置基準がきちんと守られておりませんと、やはりその衛生指導がおろそかになる。  特に、いつも問題として挙げますが、付き添いさんが廃止されましたことから、今、夜の介護というのですか、結果的に、介護をする方は看護婦さんが二名から三名でやっておられます。以前ですと、付き添いさんがちゃんとついておって、床ずれが起きないように寝返りを打たせたり、おしめがぬれておったら取りかえたりとかしておりますが、今現実、病棟で夜二人の看護婦さんが走り回っておられますと、なかなか床ずれを防ぐことができずに、体が少しずつ傷がついて腐っていく。しかも、昔だったら頻繁に付き添いさんたちがおしめをかえていたのが、大便、小便出したまま、以前だったら二回、三回できたところが一回しかできない。  そういう非衛生的な立場に置かれておるということは間違いない事実であると思っております。そういう傷口ができ、非衛生的な中で、先ほど申されたように、MRSAというものは手とか足とかの指にふだんからすみついておるばい菌でございます。それがうつる危険性があるのではないか。  私は、もう絶えず言うのですけれども、人員配置基準と院内感染との何らかの関連性をきちんと把握してほしいということをお願いいたしたいと思います。  また、この人員配置基準についてでございますが、四月四日の朝日、読売で、これは調査中でございますので、ある大阪の病院で、人員配置基準が不正にごまかされておったのではないかという事件がございます。またもう一つ、サンデー毎日にも、ある病院の職員さんの数が足りなかったのではないかと。  特に、四月十二日の読売新聞の記事によりますと、ちょっと読みますけれども、「大阪府は看護料を不正に請求していたとして不正請求分の返還を求めることを決めた。」その中で、  病院が提出した名簿にある看護職員計約三百三十人について、郵送で個別調査した結果、回答があった約百人のうち四十人以上が勤務したことがなかったり退職したりしていることを確認。あて先不明で調査書が戻ってきたり、未回答も約二百人に上った。 物すごい数の未回答があって、回答があった中でも、働いていない、そういう状況、ちょっと異常じゃないかと思っております。  この辺について御見解等いただければと思っております。
  114. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 今お触れになりました大阪の三病院のことでございますが、昨年の暮れ以降、医療法あるいは健康保険法、それから精神保健法、生活保護法等に基づきまして、大阪府それから厚生省が合同で、四度にわたります監視、調査を実施しております。  この結果につきましては、現在、大阪府及び大阪市におきまして取りまとめ中でございますけれども、医療従事者が不足しているという報告も受けておりまして、この三病院に対して早急に改善の指導を行うよう、大阪府及び大阪市に指示をしております。  具体的には、まず、新規入院患者を抑制するということ、それから、もし従事者が不足しているのであれば、その不足をした従事者に合った形での入院患者にするといったようなことも含めて、先ほど言いましたように、大阪府及び大阪市が指導するように、国からも通知を出しております。  これら三病院につきましては、先ほど申しましたように、医療法以外、医療保険法、各法に基づく立入検査を行ったところでございますので、今後の対応といたしましては、大阪府及び大阪市の調査結果の取りまとめを待って、厳正に対処をしていく必要があるというふうに考えております。
  115. 矢上雅義

    ○矢上委員 これに関連しての質問でございますが、こういう事件が起きたときに、テレビ、新聞で見るとぎょっとするわけですが、いろいろ話を聞くと、どこでも転がっていそうな話で、そうなると、一つ疑問が思い浮かぶのです。そもそも、法で決めておる人員配置基準が厳し過ぎてそれを達成するのが人材的に不可能なのか、または、人件費についてきちんと保険で面倒を見切れていないので置きたくても置けないのか。どちらが正しいかどうか、私もわかりません。  もう一回繰り返しますが、人員配置基準が厳し過ぎて結局人材不足であるのか、逆に、人員配置基準は正当であるけれども、人件費等の保障がきちんと保険で面倒を見切れていなくてこのような事件が起きるのか。これは通告はしておりませんので、今お答えできる範囲で結構でございます。どうお考えでしょうか。感想で結構です。
  116. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 病院におきます医療従事者の配置基準ということにつきましては、医療法の施行規則によって、医師、看護婦等について定められております。この基準そのものは、私どもは、厳し過ぎるということはないのではないかというふうに考えております。ただ、医療機関によっては、いろいろな事情で人が十分確保できない場合もあるというようなことはあろうかと思いますが、特に医師あるいは看護婦の人員の基準を満たすということにつきましては、医療監視等を通じまして指導しているところでございます。  なお、医療機関におきます人員配置の基準ということにつきましては、かなり以前に決められたものであるということもございまして、病院の機能によって見直しをしていく部分もあるのではないか。事実、御承知のように、老人病院ですとか療養型病症群等につきましては一般の病院と違った形で基準を設けているわけでございますので、そういう意味で、この人員基準そのもの全体の検討ということは、今年度、改めて行いたいというふうに考えております。
  117. 矢上雅義

    ○矢上委員 私が前回質問したときに、裏帳簿と表帳簿があって、もともと職員が足りないのに検査のときだけ人をどこからか借りてきてふやすということをお話ししました。ただ、厚生省が立入検査するときは、相手も人間ですから、ぱっと隠してしまいますので、厚生省の力だけでこれを一〇〇%なくすことはできないということは、私も重々承知しております。  ただ、あれから何日間かして、私もいろいろまた調べてみたら、ある知り合いの方が、つい何年か前に、高校生のとき、ある病院にバイトに行った。高校生ですよ。バイトで病院に行ったら、制服を貸してくれて着せられたら、白衣とナースキャップをかぶって、薬剤の準備までさせられたというのですよ。そういう実態というのは、幾ら皆さん方が逆立ちしてもわかるものではございません。私がもしそういう病院だったら、そういうことを隠しますから、絶対ばれません。それは事実ですね、相手も隠そうとするわけですから。警察ではないわけですから、隠そうと思えば幾らでも隠せます。  でも、そういう実態が、今までは一部の人しか知らなかったのが、こういう新聞、雑誌でたたかれるようになると多くの人が知ってきて、そうなると、詐欺じゃないかということになります。人をきちんと配置していないのに、ちゃんと人を配置しているかのごとく保険できちんと手当てしてもらうわけですから、一種の詐欺でございます。  そういう中で、看護婦の名義貸しの防止をいかにするか、また、アルバイトが看護婦に扮して医療行為に従事することをいかに排除するか、これはきちんと早目に対策を立てなければならないことではないかと思っております。  特に、私なんか思うのですけれども、羽田空港とか成田空港に、施設の中に入られる航空会社の職員の方とか清掃管理会社、警備会社の方は、きちんとここにセキュリティーカード、いわゆるアイデンティティーカードというのをつけておられます、会社の証明印と写真と姓名と。看護婦さんにも、国家試験に受かったときの免許証だけではなくて、きちんとそういうIDカード、つまり、いつも胸に差しておくカードを絶えず携帯させる、これは必ずしも無理なことではないと思っております。  例えば、今どき、自動車を運転するときに免許証を持っていなければ警察に捕まりますし、また、シートベルトをつけていないだけでも警察から罰金を取られます。そのくらいのことでもやられるのに、人の生命を預かる看護婦さんの身元が不正確で、この人は本物なのかどうか怪しみながら患者さんがかかるというのは非常に不自然でございます。  完璧に不正をなくすということまでできなかったとしても、身分証明書にかわるIDカードの胸への掲示などを、国が押しつける必要はございませんが、病院関係が、自主規制といいますか、きちんと自主的な立場でそういう施策を導入することも必要ではないかと思っています。  いろいろな間接的な条件をつけて取り締まっていきませんと、これはなかなか厚生省のお力だけでできるものではございませんし、また、これを放置しておきますと、そういう不正診療報酬の請求があるのを放置しておるということにもなりますし、しかも、どれだけの額の不正診療報酬が起きているかも把握できないわけです。その中で、一部自己負担、また、保険料率をこれだけ上げてくださいというのは、私は、なかなか納得できないと思っております。  ぜひ、その辺の事情を御配慮いただきまして、きちんとした不正防止、もしくはそういう不正防止をもっと根本的な部分で直さなければならないとするならば、人員配置基準の見直しとそれに対する診療報酬見直しも含めて御検討いただければと思っております。  最後の質問になりますが、局長及び大臣に御感想をいただければと思います。
  118. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 この一連の先生の御意見は、医療機関には不正がある、あるいはごまかしがある、そういう、まあ前提じゃないかもしれませんが、特に大阪の病院の議論を端緒にしてこういうお話に入っていったというふうに理解をしていますが、私どもの理解は、この大阪の病院というのは非常に異常なんじゃないか、これをもってすべての病院を論ずるというのはやはりちょっと行き過ぎなんじゃないかというような気がいたします。  ただ、そういう前提で、このIDカードということにつきましては、確かに一つのお考えかと思いますが、不正を前提にして、こういう不正がある、あるいはごまかしがあるということを前提にしてこのIDカード云々ということではなくて、患者サービスの向上という観点からそれぞれの医療機関がいろいろ工夫をして、かなりの医療機関が、写真が入っているかどうかはともかくとして、名札程度のものは、医師とか看護婦とか、あるいはレントゲン技師といったようなことも含めて名札をつけている病院がかなり多いのじゃないかと思いますが、そういうことでそれぞれの医療機関が工夫をしていくことなのではないかというふうに考えております。
  119. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 大阪の病院について、名前は具体名を挙げるのは控えますが、この問題については、私も、なぜこんなことが行われたのか、当初半信半疑だったわけです。そして、早急に調査を指示いたしましたけれども、調査をすればするほど驚くべき実態が明らかになってきた。厚生省だけではこれは調査できません。大阪府、関係者が直接にしなければいかぬ。実態を知るにつれて、私も唖然としている状態であります。  これから医療の信頼を確保するためにも、医療経営者が患者さん本位の立場に立つこと、医師の倫理、いろいろな問題があると思いますが、やはりひどい医療不信を買うような医師が存在したならば、これに対しては厳正な処分をするということも大事だと思います。  今言われたいろいろな御指摘も含めまして、厚生省としても今きちんと調査をしておりますし、調査の結果が出次第、厳正な処分をして、少しでも医療の信頼がかち得られるような努力を続けていきたいと思います。
  120. 矢上雅義

    ○矢上委員 どうもありがとうございました。
  121. 町村信孝

    町村委員長 福島豊君。
  122. 福島豊

    ○福島委員 大臣、大変に御苦労さまでございます。  ただいま大変ずさんな医療機関の話が出た後でございますので、なかなか質問しにくいなと思いながらも質問に立たせていただきました。通告はしておりませんが、極めて概略的な、概論的な話をまず冒頭大臣にお尋ねしたいと思っております。  医療行政というのは、医療というのを極めてマクロ的な立場でとらえて行うものであるというふうに思います。ただ、そのマクロ的な決定が医療の現場にはさまざまな形で影響を与える、それは必ずしも望ましくない影響を与えることがあるというふうに私は思います。  例えば、長期入院患者の問題がありましたときには、入院が長期にわたった場合には入院管理料ですか、これに逓減制を導入したわけでございます。確かに、経済的に考えると、長くなれば長くなるほど診療報酬を下げていく、それは効果があるのだろうと思いますけれども、現実に起こったことは長期入院患者の追い出しということでございます。どこに行くか行くあてもない重度の障害を持った患者さんが退院を迫られて、どうしたらいいだろうということで御相談に来られたこともしばしばあります。そういったところを踏まえて、マクロのことも考えていただかなければいかぬのじゃないかというのが、私が長い間ずっと感じていたことでございます。  医者の行動原理というのは、先ほどの話もございましたが、ああいう例は極めてまれであるというふうに私は思っております。むしろ、できるだけよい医療をしよう、できるだけよい治療をしようというのが基本的な行動原理だと私は思います。  ただ、よい医療をしよう、よい治療をしようとするとどうしてもコストがかさむということになります。コスト意識がなかなか働かないというのも現実だというふうに思っております。これだけ医療保険財政が厳しくなってきた状況の中では、確かにコストということは考えなければいかぬ。しかし、コストのことを考えるがゆえに医療の質というものをないがしろにする、顧みないということであってはならないというふうに私は思っております。  そしてまた、効率的な医療ということがよく言われるわけでございますが、この効率的な医療というものも、本来何が効率的なのか、その突っ込んだ議論というのはほとんどなされていないのではないかというような気もいたします。  この質の高い医療というのは一体何なのかということ、また、医療における効率性というのは一体何なのか、これは極めて基本的な事柄でございますので、大臣にお考えをお聞きしたいと思います。
  123. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 効率的な質の高い医療ということを一口に言うのは難しいと思いますが、お医者さんから見れば、この患者はどこが悪いのか、ぴたりと当てるというのは至難のわざだと思います。検査も、ここだけ検査すればいい、患者にとっても余計な検査をされない方が体は楽なんです。費用から見ても、必要な検査をすれば費用がかからない。  今の出来高払い制度ということからいえば、患者さんにとっても負担は軽いから、どこが悪いのか、悪いところを見過ごされるよりは、悪いところがないのを診てもらって完璧な検査をしてもらいたいという気持ちがある。費用はだれか見てくれる。自分が負担しなくても、保険に入っているから保険で見てくれる、あるいは税金で見てくれる。お医者さんの立場に立ってみても、診れば診るほど、ああ、いいお医者さんだという評価を得られるのだったらば、何も薬を上げない、検査もしないで、あなた、何も悪くないからどうぞ帰ってくださいと言うよりも、よく診察した人が親切な人だと思われれば、わかっていても、余計な検査でも余計な診療でもするかもしれない、悪く解釈すれば。こういうのが現実にあるわけです。  笑い話じゃありませんけれども、水虫なのにCTスキャンまで検査したというのがよく言われます。これは本当に笑い話だと思いますけれども、これはオーバーにしても、端的に、必要な検査でない、不必要な検査もしているのじゃないかという例え話だと私は受け取っております。  さらに、薬にしても、三日間しか飲まないのに一週間分、十日分、一月分くれれば、これは捨ててもだれも負担するのじゃないから、少なくもらうよりは多くもらった方が、むだになるのはわかっても安心だ、二度来る必要はないという気持ちもあるでしょう。  こういうことをする人がだれもいないというのだったらば、これは出来高払い制みたいなことが一番いいのです。ところが、現実には、必ずしもそういう方ばかりじゃない。お医者さんの中にもピンからキリまでありますから、自分のお金でないと思えば不必要なことでもするかもしれない。これは役所の予算でもそうですね。現ナマ渡されれば、むだとわかっても使っちゃうという気がある。ここがまた行政改革しなければならない点でありますけれども。  いい制度というのを入れると、一方では、必ずそのいい制度の中には短所がある。この出来高払い制度の矛盾、過剰検査、過剰投薬、過剰診療をなくすために、今、出来高払い制度だけでなくて定額・包括払い制度導入せいという声が出てきている。これは、一定の額でお医者さんに任せますよ、もう必要なだけやってくださいとなると、逆に、今言ったように、必要な薬もくれないかもしれない、必要な診察も検査もしてくれないかもしれないという不安が一方では出てくる。  どんな制度でも一長一短はあると思いますが、現実に効率的な質の高い制度すべてがやられればいいのですけれども、そこまでお医者さんも神様ではない。病名も、人間の社会です、どんなに科学が発達したって見過ごすような病気も出てきます。完璧を期すのは、期そうとする努力は当然ですけれども、どれも完全無欠なのはあり得ない。  そういう意味において、いい制度の中にも弊害点が出てきたならば、その弊害点を少しでも改める制度を考えるというのが現在の医療制度で大事なことではないか、そういう視点からできるだけいろいろな意見を聞きながら、今後、質の高い効率的な医療制度導入して、国民負担も軽くするような、そして、医療の質を落とさないような制度ができればなと考えております。
  124. 福島豊

    ○福島委員 大臣お話をお聞きしておりますと、要するに、むだな部分がある、それは出来高払いだからむだな部分が出てきているのだ、そのむだを切り詰めるためにはそこのところを改めなければいかぬという、せんじ詰めるとそういうことなのかなと思います。  それは、私の質問に余り十分にお答えいただけてないのかな、その中で成立する効率性というのは一体何なのか、その中で成立する医療の質というのは何なのか、そこのところまで議論を実は深めていただきたいというふうに私は思っております。  若干細かな話を、今、過剰診療、過剰投与等々のお話がございましたので、お聞きしたいと思っております。  まず、薬のことでございます。  先日の委員会でも、これだけたくさん余分な薬をもらって、送ってこられたという話がありました。私自身は非常に心外な思いがしたのも事実でございます。  日本国民医療費の二〇%、総診療点数中の三〇%を薬剤が占めているという状況のようでございます。よく言われますことは、これは諸外国に比較して高水準である、日本は薬を使い過ぎる、要らぬ薬も使っておるのだという議論があるわけです。高齢者医療においても、薬剤費というのは、その比重は若年者よりふえているわけでございまして、これをどうするのだということが議論になっている。今回の薬剤負担をしていただこうという話も、そこのところに淵源があるわけでございます。  この医薬品費が非常に水準が高いというのは、今まで委員会でいろいろな議論がありましたけれども、一つは薬価が高い、もう一つは薬剤をたくさん投与する多剤投与、せんじ詰めて言うと、この二つの側面があるというふうに思います。  この二つの点は、確かに現象面ではそのとおりであるというふうに思いますが、また、マスコミでも薬漬けと言われておりますけれども、しかし、それが経済的な動機だけから起こってきているのかどうか、ここのところはきちっと議論しなければいかぬと思うのです。出せば出すほどもうかるから出しているのか、出さなければならないから出しているのか、そういう患者さんが来るから出しているのか、ここのところの議論は全然ないわけなんですね。どうも、医者が勝手に出しておる、要らぬ薬をようけ出しておると言わんばかりの議論だというふうに私は思います。  例えば、厚生省が「薬剤使用状況の概要」というのをまとめておりますけれども、年齢階級別薬剤種類数、一件当たりの薬剤種類数は、十四歳までですと二・八七、十五歳から三十九歳ですと二・八一、四十歳から六十九歳だと三・〇七、七十歳から七十九歳が三・九〇、八十歳以上が四・一七、六種類以上投与している割合は、四十歳から六十九歳ですと一二・六%ですが、七十歳から七十九歳は二二・九%、八十歳以上では二六・八%と約二倍になります。  この年齢とともにふえるというのは、経済的な動機だけから医者が薬を投与するのでしょうか。そんなことはないと私は思います。最大の理由は、年をとればとるほど病気もふえる、多病、そしてまた愁訴もふえる、多愁訴、そういう状況があるから出さざるを得ないということがあるのだというふうに思います。  ですから、話を先に飛ばしますと、経済的な理由だけから出しているのでしたら、いろいろな経済の部分、お金の流れのところの蛇口を締めたらいいのでしょうけれども、そうじゃなくて医療上の必要があって出しているのでしたら、蛇口を締めるというのはどういうことになるのか、そこのところを実は考えていただきたいと私は思っているわけです。  お年寄りの患者さんは、私もたくさん診てまいりました。例えば、具体的なお話をしたいと思います。七十六歳、女性でございます。二十年来の高血圧を思っている。かなり血圧が高くて、一種類の薬だけではなかなかコントロールできないので、二種類の薬を投与している。肥満である。その肥満もあって、最近は血糖値も上がってきた。糖尿病だ。また、体が重たいということで、ひざは痛む、また、肩凝りもあるし、腰痛もある。あっちもこっちも痛い。また、頭がふわふわすることもしばしばあり、耳鳴りが始終やまない。昨年は一過性の脳虚血発作で倒れた。いつまた脳卒中を起こすかどうかわからない。胃のもたれもありまして、検査をすると、萎縮性の胃炎、逆流性の食道炎であった。慢性の便秘もあって、始終、排便では難渋している。  これは私の母の病像に非常に近いわけでございますが、こういう具体的な例があったとすると、そうしますと、高血圧にまず薬を二種類投与した。それから血糖が上がって糖尿病だ、食事療法がなかなかうまくいかない、やはり薬を出そうか、そして経口剤を出すとそこで三剤目になる。そしてまた、一過性の脳虚血発作を経ているため、脳卒中を起こしてはいかぬ、抗血小板剤を出した。耳鳴りがある、いつも耳の中でセミが鳴いているみたいだ、何とかしてくださいと言うのでお薬を出した。五剤になった。ひざも痛い、ひざが痛いのだから何とかしてください、今度は張り薬を出した。胃のもたれもある、そうしたら今度は何を出したかというと、消化管の運動の促進剤を出した。便秘もひどいので何とかなりませんか、便秘のお薬も出す。というように、あっという間に八種類ぐらいいってしまうわけです。  これが極めてポピュラーなパターンだと私は思います。元気な人もいますよ。でも、こういう多病の人もたくさんいるということは事実だと思うのです。  それじゃ、その多剤投与がけしからぬ、けしからぬというのは何を意味するのかというと、こういうような方であっても、あなたは薬を飲む必要なんかないです、便秘、もうちょっと我慢しなさい、耳鳴り、我慢しなさい、胃のもたれ、死にやしません、飲む必要ないのですというようなことを言わんとしているのではないかというふうに私は思うのですが、大臣、どうお考えですか。     〔委員長退席、住委員長代理着席〕
  125. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 それは、薬が必要な病気なのか、本人が不摂生をしているのか、両方あると思いますね。例えば、胃もたれとか便秘とかいうのは、普通の体である限り、胃もたれだったら食事をしなければいいのですね。薬飲むよりも、少し食を控えなさい、便秘だったら運動してもっと野菜、繊維のあるもの食べなさいとか、薬でない方法もたくさんあると私は思うのです。それを、二日酔いだから、酒は飲みたいので、薬くださいと。それだったらば、薬を上げない。酒をやめた方がはるかに体にいいわけです。そういう点もあると思いますよ。しかし、薬を上げなければどうしてもだめだと。  若い人なんて、私、最近びっくりしているのですけれども、運動してない人に限って、たまに日曜日、運動すると腹が痛い、足が痛い、いろいろな張り薬とかなんとかして、あんなのは、運動すれば筋肉がどこか痛くなるのは当たり前なんです。しばらくしていれば治っちゃう、何にもしないで、薬も飲まずに、張らなくても。それを知らない人がいる。運動して筋肉が痛むのは当たり前なんです。これは全然病気じゃない。そういう点もある。  それを見立てるのが私はお医者さんだと思うのです。こんなのは薬じゃないですよ、あなた、不摂生ですよ、薬なんか飲まなくて、食生活を直しなさいと言って治せれば、本人にとっても健康になるわけです。その辺を分けなければいかぬ。これは普通の不摂生じゃない、本当の病気だというなら薬を上げなければいけない。その見きわめをするのが名医とやぶ医者の違いじゃないでしょうか。
  126. 福島豊

    ○福島委員 それはもう大臣おっしゃるとおりでございまして、ただ、私、先ほど具体的な高齢者のイメージを挙げました。胃のもたれがある、酒の飲み過ぎではありません。高齢者が逆流性の食道炎、食道ヘルニアがありまして、逆流性の食道炎になるとか、そしてまた萎縮性の胃炎になるということは、極めてポピュラーな現象でございます。どこまでが加齢で、どこまでが疾病かということは、なかなか分けにくいのは事実です。それは別に不摂生からそういうことが起こるわけじゃない。  また、ひざの痛み、肥えているから悪いのだといえば肥えているから悪いのですけれども、しかし、やせようと思って運動すると、またひざの方がかえって悪くなる、悪循環があるわけです。また、そのひざ、膝関節の変化というのは、加齢による変化をベースにして膝関節症というのが起こってくるわけです。必ずしもこれは不摂生だ、あんた、自分が悪いのだという話もできない。年をとればとるほど便秘がふえるというのも事実です。いろいろと試してみても、なかなかうまくいかないということも当然ある。  ですから、病気でもないのに薬を出すのはやぷ医者だというのはそのとおりだ。ただ、大臣はお若いですから、あっちもこっちも悪くなったりということは余りないと思います。ただ、高齢の方であれば、私が今申し上げたような具体的なイメージというのは極めてポピュラーな現象としてある。その一つ一つがあなたの不摂生ですよということは言えない。  それじゃ、どうするのか。先ほども効率という話をしましたけれども、これは薬を投与しても別によくならない、若返るわけじゃありませんから。だから、そこに薬を投与するというのは実は効率のいい話じゃないと、どうも私はそんなふうに感じてしまうのですよ。どうするのですか、そういうふうに思っているのじゃないかと。ただ多剤投与、多剤投与と、経済的には確かにそういう話かもしれませんけれども、そういう高齢者の病状、それに合わせた医療というのは一体どういうものなのかということをきちっと考えて話が出てくるのであれば、まだいいと思うのです。そうじゃなくて、お金がこれだけかかって、これをこうしましょうという話の中で一律に議論するというのは、先ほども冒頭に申しましたように、医療の現場の感覚とマクロの話と随分ギャップがある、私はそんなふうに感じます。  次のお尋ねは、薬物療法というのはあくまで治療の一環だと思います。いろいろな治療があるわけです。一般療法もあります、薬物療法もある、手術もある、いろいろな治療がある。すべてそれは治療の一環だというふうに私は思います。どこからどこだけ分けるということはできない。その全体の医療に対して一部負担というのがあるのだというふうに私は思います。  それを、今回、なぜ薬物だけ、薬剤だけ取り分けて、そこに一部自己負担を新しく創設をするのかということについては、全く筋道が通らない話だ。あたかも薬物療法というのはほかの治療法とは全然別の世界の話である、そんなことを感じるわけですけれども、この点についてはどのようにお考えですか。
  127. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 個人個人の患者さんの病状な。個人個人の患者さんの症状に合わせた治療というのは、これはそれぞれ、まさに個人個人に相当違いがあると思いますし、それぞれしかるべき理由があって処方がなされていくというふうに、私どもそれは当然のことだと思っております。  この一部負担の問題、これはあくまでも医療保険制度の中で、どこまで受益を受ける方がその負担をし、そして、どういった視点からその負担を求めるのが政策目的等に照らして一番妥当なのか、そういうことではないかというふうに思います。  この医療保険制度というのは、これはもう申すまでもなく相扶共済の制度ですから、当然、医療費を使っている方がおられると同時に、負担しておられる方もおられる。それとのバランスといいますか、そういったものも考慮しませんと、こういった保険制度という経済的な保障制度というのはノーマルに機能しない面があると思います。  今回の薬に対する一部負担というのは、そういった意味では、我が国の医療費に占める薬のシェアというのは非常に高い、それがまたほとんど高どまりしていて下がらないということが指摘されているわけであります。そういった中で、この適正化というものも、これが非常に大事なことであるということも言われております。  現に、技術的な負担の仕方については異なっておりますけれども、昨年十一月に出されました医療保険審議会の建議書におきましても、薬に着目した一部負担導入というのが必要ではないかというふうに指摘されています。そのときは、薬についてもう医療保険の適用から外すという考え方から、さらには三割ないし五割ぐらいまで負担していただいてもいいのではないかというふうなところまで、この建議においては触れられているわけであります。もちろん、そういった中で、定率負担というのは適当ではないのではないか、むしろ定額負担の方が、特にお年寄りの場合にはふさわしいのではないかという意見も書かれておるわけであります。  しかし、いずれにしても、我が国の薬剤の使用の実態等にかんがみたときに、これに着目した一部負担導入というものも、これも合理性があるのではないかということでこの建議の中で触れられているのではないかというふうに思います。  私どもはやはり、今回お願いしておりますのは、そういった薬の使用の実態というものが適正化されていくということを期待をし、そしてこのたび、一種類一日十五円というような形での一部負担をお願いをした。それと同時に、医療保険制度というのは、これは経済保障の制度でありますから、そして今、その制度財政的に非常に窮迫している、そういった中で財政的な効果というものも当然考慮する必要があるわけでありまして、そういった点もにらんで今回の御負担をお願いした、こういうような考え方でございます。
  128. 福島豊

    ○福島委員 薬剤費の適正化をしなければいかぬ、そのためには別建てに薬剤に関する自己負担を設けなければいかぬ、せんじ詰めて言うとそういうことですね。  ちょっと通告していませんけれども、今の御答弁に対して、適正な薬剤費というのは何なのでしょう。
  129. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 患者さん一人一人に対してどういった薬を出すのがいいのか、そういう処方に係るものは、これはそれぞれの主治医の先生が専門性を持ってお決めになることだと思います。  問題は、それが積み重なって全体として見た場合に、我が国の医療費に占める薬のシェアというのは高い。これを、いやいや、決して高くないのだという御判断をなさるかどうかの問題というのはあると思います。しかし、諸外国に比べると少なくとも高いと、またこれは大方の方がそれを認めておられると思います。そういった背景はやはりそこに、不適正とは言いませんけれども、もっと薬の使い方の適正化を促すような、そういった余地というのはあるのではないかということをお考えになっているからこそ、医療費に占める薬のシェアというのが高いということを指摘されるのではないかというふうに思います。  ですから、私どもとしては、一人一人の患者さんに対してどれが適正かどうかということを申し上げているわけではありませんで、トータルとしての中でむだな部分があるとすれば、それが是正されることは望ましい、限られた医療費財源でありますから、それがさらにもっと本当に必要なところに手厚く分配される方が望ましい、そういうふうに考えるわけであります。そういったような視点から、医療費の適正化あるいは薬の適正使用というものが促されるような、そういった方向を政策的に目指すべきではないか、こういうような考え方でその言葉を使わせていただいているわけです。
  130. 福島豊

    ○福島委員 適正な薬剤費水準一つの大きな理由は、諸外国と比べてこの水準が高いというところにどうも論拠があるようでございますけれども、であるならば、また後ほど触れますけれども、諸外国と比較して、日本の薬剤の薬価の問題は、いろいろと今まで議論もされてきまして、高いものは下げなければいかぬということだと思います。同時に、その薬剤の使い方についても、諸外国を例として我々の日本の使い方についてもきちっと見直すべきだ、そのように今私は思っております。これはまた後ほど触れさせていただきたいと思っております。  次の御質問でございますけれども、個々の薬剤の使用、先ほど、あっという間にたくさんの薬を使うことになりますよというお話をいたしました。高齢者医療の領域で比較しましても、確かに今局長おっしゃられましたように、例えば薬剤数に限っても、欧米諸国の使用薬剤の種類数の方が少ない、そういうデータはあります。日本高齢者医療では薬剤を多用する傾向がある。これがなぜ起こるのかという質的な部分について私は考えてみたいと思うのです。  先ほども大臣からお話ありました、運動不足だったら運動しなさい、食事療法していないのだったら食事療法しなさいと。それはそのとおりなんだと私は思います。言ってみれば、そういう意味では総合的な治療、総合的なかかわりということを高齢者にはする必要がある、そう思います。  ただ、悲しいことに、日本医療の現状はどうか。三時間待って三分間診療と大臣がよく言われますけれども、しかし、医者の立場でいいますと、好きこのんで三分間しか診ないのではないのですね。ずらっと待っていますから、三分間で次々と診ていかないと一日たっても終わらないというような現状があるのですね。  それじゃ、三分間に一体何ができるか。先ほども言いましたように、一般療法、これは患者理解が不可欠です。ちゃんとお話をして、ちゃんと納得してもらわなければ、そのように、行動は変わらない。三分じゃ済みませんね。診察で一分、そして説明で一分、処方せんを書くので一分、一分ずつでも三分はすぐ済んでしまうわけでございまして、そういう中で、大臣さっきおっしゃられたような、一般療法をしっかりとやろうということ自体がなかなか許されていないのだと。それは、ある意味では、診療報酬の体系というのが技術料を非常に低く評価しているというようなところに私は淵源があると思います。そういう伝統の中でやっているわけですから、なかなか方向が変わらない。  ですから、見直すべきは、そういった一般療法なり、そしてまた食事療法なり、全体的な治療というようなものをきちっとやろうと思えば、やはりそれなりの、診療報酬の体系を変える必要があるということだと私は思います。  また、心理的な側面も大切ですね。お年寄りはあっちも痛い、こっちも痛い、いろいろなことがある。話を聞いてあげるだけでも治るということはありますね。話を聞いてあげるのは時間がかかる。ある老年医学といいますか心身医学の大家は、医者にかかる三分の一の方は大体心理的な病なんだと。薬は要らないという意味ですね。医師は最良の薬であるという言葉もありますけれども、日本医療の世界においては、最良の薬である医師の言葉というのが十分使えない、時間がない、そのかわりにお薬を与えるというようなことになってしまっているのじゃないかと私は感じます。  ですから、高齢者医療の多剤投与の傾向は確かにあると思います。確かにありますけれども、これは決して、経済的な動機から、ただ出せばもうかるから出しているのだということではない。その一つ一つの診療のシーンで、診療の場面で、訴えがあり、病気があるから出している。ただ、それ以外のアプローチの仕方も当然あるだろう。それは、一般療法であるかもしれない、食事療法であるかもしれない、そしてまたメンタルな部分でのケアであるかもしれない。そういうことをきちっとやれば、もっと薬を使わなくて済むような医療というのができる。これが私は実は本当の老人医療だというふうに思います。  老人医療というのは、昭和四十年代の初頭に、故沖中先生が提唱されて、幾つかの大学に老年医学教室というのができました。しかし、それから三十数年たちますけれども、老年科というのは欧米では確立した一つのエンティティーになっておりますけれども、日本では標榜科としても認められていない。そして、老年医学的な考え方というのはまさに日本には根づいていないのじゃないかというふうに思います。  そういう意味での医療のあり方の見直しということをまずやはりするべきなんじゃないか。そういう質的な転換を図って初めて、それで薬剤がどうなるのかということを見るべきなんじゃないか。ただ多いから困りますよと、自己負担という一種のペナルティーを加えて減らしますよという話は、マクロの話としてはわかるけれども、現場に行ってみたら大変だということにしかならないのじゃないか。患者さんも幸せじゃない、医者の側も余り幸せじゃない、そういうことになってしまうのじゃないかという危惧を私は抱いております。この点につきまして、大臣の御意見、御感想をお聞きできればと思います。
  131. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 三時間待って三分診療というのは、これは私は一つのごろ合わせといいますか、三時間待つのは本当でしょう。それで、実際は十分、十五分診ても、三時間と三の方がごろ合わせに都合がいいから、わかりやすいということで三分診療というのが言葉としてはやってきたのだと思いますよ。実際、三分程度患者さんを診られるわけないのですね。お医者さんの苦労は大変だと思います。  そういう中で、確かに大病院などは、三時間待つのは事実でも、実際の診療がゆっくり診てくれないという不満からこういう言葉が出てきたと思うのですが、これも医療のむだの一つと言えるかもしれません。本当は大病院に行かなくてもいい人が大病院に行ってしまう。近くのかかりつけの病院に、診療所に行けば済むにもかかわらず、やはり大病院の方がいいという気持ちを持って行く人が多いからこそそのような大病院集中で、本当に必要な患者さんがじっくり診てもらえないで、本来、大病院に行く必要のない人も診なければならないということから、こういう医療提供体制の流れも見直さなければいかぬという議論が出ているのだと思います。  今言った薬剤の負担においても、受診抑制とかいうばかりでなくて、結局のところ、医療保険制度というのは、すべての国民が、若い人も高齢者も、お互い支え合ってこの医療保険制度を維持発展させてきた。むしろ、若い人にとっては、お医者さんにかかる率は圧倒的に少ないけれども、保険料という負担で、負担が大変重くなっている。高齢者という理由だけで若い人ばかりに負担を押しつけていいのだろうか、これでは医療制度はもたないということから、給付と負担のバランスを図ろうということで、若い方にも御負担をいただくけれども、高齢者でも適切な負担をいただこうということで出てきたわけであります。  私は、薬剤だけの負担が必ずしも一つ負担のあり方として、しかも定額が、これが完全なんだとは思っておりません。負担のあり方については、定率という一定の、一割なり二割なりという負担の方法もあるでしょう。薬剤費も治療行為も検査も全部ひっくるめた負担のあり方もあるでしょう。しかしながら、いろいろ言われているように、むしろ日本人は薬が好きで薬を飲み過ぎるのじゃないか、あるいは薬剤の占める割合が多過ぎるということで、今の薬剤に対する負担というものを適当に考えていいのではないかということから、今回、定額で薬剤にも一日一種類十五円という案を出しておりますけれども、この負担のあり方については、私は、これが完全とは思っておりませんから、もしいい案があるのだったらば、その案に対して柔軟に対処していきたい。  ともかく、今の医療制度に全くむだがないとは私は言い切れないと思います。見直さなければならない点がたくさんある。それを、今後も総合的な改革を進めていく上でやっていかなければならぬ。  財政というものを考えると、これまた今いろいろ、政府案、御批判をいただいておりますけれども、かといって、それでは皆さんの政党がこれがいいという案を出していただかない。対案を出していただければ、それと比較検討して、ああ、ここを修正しよう、ここを取り入れようという案も出てくるのですけれども、対案を出してくれない。ここがいかぬ、あそこがいかぬと言って、何がいいのだと言ってくれないものですから、結局、まとまった案を出すのはこの政府案しかないじゃないですか。それじゃ、当面はこのまま何もできないとすると、また若い人に赤字国債でツケを回すのかというのも済まないということで案を出したわけですから。  私は、この案というものを総合的な案と思っていません。段階的な一部分の改正でありますけれども、この案を御審議いただき、そして成立し次第できるだけ速やかに、今までの三十数年にわたる御意見も踏まえ、また、本委員会での御意見を参考にしながら、本格的な、総合的な改革案を厚生省が責任を持って、国民批判に供することができるような案をまとめたいと思っておりますので、ぜひとも、今回の法案は第一段階の案として御理解をいただければと思います。
  132. 福島豊

    ○福島委員 その全体像をまずお示しになっていただきたいというふうに私は思っております。  薬のことで引き続きお聞きいたします。  先日の委員会で、大臣は、毒だか薬だかわからないような薬というような御発言がありました。私は、欧米と比較して問題なのは、薬価が高いということも問題でございますけれども、毒だか薬だかよくわからないような薬があるということも大きな問題だ、使われているということも大きな問題だというふうに思います。  先日の鴨下委員が御指摘になりましたクレスチン、使われている間に一体幾らのお金がそこに投与されたのか、それだけのお金を使って国民がどれだけのメリットがあったのか、ほとんどなかったのじゃないか、そういう懸念があります。  これに対してはいろいろな批判があります。  例えば「薬害はなぜなくならないか」、こういう本ではどういうことが書かれているかといいますと、ぜんそくの治療についての薬が書いてあります。  たとえば喘息の薬は、一九九四年一年間に一六〇〇億円くらいつかわれていた。結構な額でございます。  そのうち、いわゆる抗アレルギー剤といわれるものに一三〇〇億円(八一%)をつかっていた。吸入の抗アレルギー剤であるクロモグリク酸は評価が確立し、欧米でもつかわれているが、日本ではこれをのぞくいわゆる経口抗アレルギー剤の売上総額が一一七〇億円(七三%)になる。欧米では、クロモグリク酸だけが抗アレルギー剤として正式に評価されているが、それにつかわれる額は喘息薬全体の一〇%未満にすぎず、喘息治療の大半は標準的な三種類の薬(テオフィリン系、アドレナリン系、吸入ステロイドホルモン剤)がほとんどをしめている。ところが、日本ではこの三種類につかう薬を欧米なみに消費し、そのうえ、その他の効果のはっきりしない抗アレルギー剤と称する薬に一一七〇億円ものむだ金をつかっているのだ。 先ほど局長は、欧米に比べて水準が高い、一つは薬価が高いと。これは今までの委員会での審議でも明らかになっています。  もう一つは、欧米では使わないような、効果がはっきりしない、効果がはっきりしないという言葉は極めてあいまいでございまして、承認の際には、確かに今までの薬と比べてこれだけメリットがありますよ、そういうデータはあるわけですけれども、しかし、臨床的に、総合的にといいますか、これは非常にあいまいな言い方になりますけれども、欧米では使われないようなそういう薬であっても日本では使われている、しかも、そのウエートが極めて大きい。  これだけではないと思います。いろいろな批判があります。  例えば、それ以外には脳代謝改善薬というのがあります。イデベノンという薬がある。これは「5年後の医薬品業界」という本でございますが、「九五年には三一〇億円の売上げがあった。」大変大きな額です。  前述の抗痴呆薬は、欧米では使われてはいない。アメリカの「医師机上辞典」や、アメリカ医師会が毎年発行している「アメリカ医師会医薬品評価」、またイギリスの「ミムス」にも、それらの名前は記載されていない。   また「フォーチュン」誌では(九一年七月)「これらのクスリは欧米で認可されることはないだろう」 というようなことが書いてある。これも総合すると大変な額になります。  ですから、欧米と比較して日本医療費が高い。薬剤費が高い。一つは、薬価を見直さなきゃいかぬ、これは今までの委員会議論でも明らかになってきたというふうに思います。そしてもう一つは、保険適用する薬について、薬価基準収載ですけれども、これをぜひ見直すべきじゃないか。本当にこの薬は価値があるのかないのか、それをはっきりさせた方がいい。お金だけかかって何の足しにもならないと言うと言い過ぎになりますけれども、そこのところの評価が実はぎちっとなされていないのじゃないか、そんなふうに思います。  先日、鴨下委員が指摘になりましたクレスチンは、再評価をされて評価が随分下がったということでございますが、もっともっと再評価をすべきなんじゃないか。この再評価について一体どうなっているのか、お聞きしたいと思います。
  133. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 医薬品が承認された後、一般に市場で使われまして、しばらくたちますと、当然ながら、その時点での医学、薬学の学問水準変化をしてまいります。したがいまして、医薬品の再評価は、その時点におきます医学、薬学の学問水準に基づきましてその医薬品の有効性、安全性見直しを行って、医療上の有用性を再確認するという制度でございます。  もう既に数次にわたる再評価を行いまして、例えば昭和四十二年以前の承認薬につきましては、すべての再評価を平成七年までに終えておりまして、有用性が認められるもの、あるいは承認事項の一部変更をして有用性が認められたもの、あるいは有用性が認められなかったもの、あるいは承認、再評価申請後に申請者が承認を整理したものといったようなことで、総合評価、判定をいたしているところでございます。  この再評価につきましては、厚生省におきまして文献調査を行いまして、医薬品の有効性や安全性について疑義を呈するような学術文献あるいは学会報告等がある場合に、中央薬事審議会の意見をお伺いしまして、再検討が必要であると判断された医薬品について再評価の指定をし、その医薬品の製造をしている企業に対して、新たな臨床試験成績など、その時点における必要な有効性、安全性に関する資料の提出を期限を定めて求めておるわけでございます。その結果、承認が一部変更される必要のあるもの、あるいは有用性が認められないもの、あるいは承認どおり有用性が認められるものというふうに分けまして、再評価結果を固めているというところでございます。     〔住委員長代理退席、委員長着席〕
  134. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 医療保険上の取り扱い、薬価基準上の取り扱いでありますけれども、これは、薬事法上の認可された医薬品、それを収載しているわけであります。私も、そういった意味では、実際に臨床に使われるようになった後もその有用性等について厳正な再評価が行われ、そしてまた、それが適切に行われていく必要があると思います。  そういった中で、残す値打ちのある薬を残し、そしてまだそういう有用性等が認められないものは、これは現在もそうでありますけれども、薬価基準に収載されているものについては直ちに薬価基準から削除する、こういう取り扱いをしておりますから、そういった意味では、この医薬品の再評価、これは非常に重要だと思います。これは、厳正かつ効率的かつ速やかに常に行われるべきであるというふうに思っております。
  135. 福島豊

    ○福島委員 中央薬事審議会に一体どの薬を再評価するということで提示するのか、これは、疑わしい、疑義を投げかけるような文献があった場合とか、ある意味では極めて不透明といいますか、恣意的な手続になっているのじゃないかというふうに私は思います。そういう意味では、そこのところの手続、これをきちっとしていただきたいと思いますし、また、ある意味では保険者のサイドが、この医薬品についてどうなのか、再評価はどうなのか、そういう提案をする権限といいますか、そういうものも与えるべきじゃないか、そんなふうにも思います。  それからもう一つは、有用性ということなんですが、これだけ医療費というものの増大ということが問題になっているときに、有用性の概念、これも見直す必要があるのじゃないかというふうに思います。  例えば、抗がん剤についてはこういうことが言われております。仮の目標と真の目標がある。例えば抗がん剤でありますと、抗がん剤が国から許可される場合にも、腫瘍が一時的に縮小することが確かめられていれば有用性があるということで済む。腫瘍がもとの半分の大きさになれば有用性があると認められている、そういうことなんではないかと思いますけれども、しかし、これは寿命が延びるということとイコールじゃないわけです。小さくなったということでして、これは一つの例でございますけれども、小さくなったから有効だ、有効だから保険でちゃんとお金も払う、だけれども寿命はちっとも延びない、もしそういうことであれば、その薬を保険で認める必要があるのかということですね。  例えば、一つの薬を導入すれば、百億なり二百億なりのお金がそこでかかるということになるわけですね。ただ、かけたからといって、それじゃ、がんの患者さんがそれを使って寿命が延びたかというと、トータルとして余り延びていない、変わらない。ということであれば、最初から認めない方がいいわけです。  先ほども効率という話をしましたけれども、医療の効率というのはまさにそういうところで図られなければいけない。一つ一つの薬剤でしたら、それが総合的にどういう影響があるのか、寿命が延びるのかどうなのか、クオリティー・オブ・ライフがよくなるのかならないのか。どうも重箱の隅の中で有用性というようなことを語っていても役に立たないのじゃないかという気持ちがするわけでございます。しかし、ここのところはなかなか、寿命がどうなるのかとか、脳卒中の発症率がどうなるのかとか、これは大変、時間のかかる、またお金のかかる調査になるということも事実だと思います。ただ、そういう仕組みをどこかでビルトインしないとこういう薬がどんどんふえてしまう、私はそういうことを懸念いたします。  一つの薬で百億とか二百億でしょう。十種類だったら二千億ぐらいにすぐなってしまうわけですね。ですから、大臣、何千億の単位といっても、ここのところの薬の収載を見直すというだけで、ある程度の額は出てくると私は思いますよ。その薬がなくたって日本人の全体の健康水準に余り影響がない、そういう薬はたくさんあると思います。まずそこのところをしっかりと見直さなければいかぬのじゃないか、私はそんなふうに感じております。  次に、定額制についてのお話をお聞きしたいと思っております。  与党の協議会の中で、定額制・包括払いの制度を積極的に導入しようというお話があるように伺っております。この点について、慢性疾患では定額制、定額・包括払いが一番いいのじゃないかという議論があるわけですけれども、今後、どういう形でそれを活用していくつもりか、お考えをお聞きしたいと思います。
  136. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 現行の診療報酬体系というのは、これは出来高払いを中心にしてできている。ただ、現在も定額払いなり包括払いというものが導入されていないわけではないわけです。しかし、定額払いのメリット、よさ、これも非常に大きいものがありますし、それからまた、出来高払いのメリットというものももちろんあるわけでありまして、その辺の組み合わせをどういうふうにしていくかということが最大の課題だろうと思います。  そういった中で、いろいろな切り口があり得ると思うのです。それを例えば入院外来というふうにまず大きく区切った場合に、入院というようなものについては、比較的定額払いあるいは包括払いという方向を目指すということも一つあろうと思います。諸外国はそういう方向を目指しておるわけであります。それから、外来につきましても、例えば慢性的な疾患であれば、むしろ包括払いという形の方がいいのではないかという問題もあろうと思います。そういった意味で、それぞれの、どういった切り口でそこのところを考えるかということで整理をしていくことになるのではないか。  そういった中で、やはり適切な医療が提供されるように基準というものを設定しなければいけない。要するに、定額払いといっても、どこまで支払う形にするのかという、その額の決め方が大きく成功するかどうかということに影響すると思います。ですから、その辺のところは相当幅広い議論をしないといけないと思いますけれども、まず、入院外来、あるいは病院と診療所とか、そういった切り口というものをきちんと整理して、そして、それぞれの医療行為の中で、それぞれのメリット・デメリット、適用したときにどれをそういう格好で定額払いなりにしていくのか、そんなようなアプローチをしていくことを考えております。
  137. 福島豊

    ○福島委員 概略お話ありましたが、包括払いということですと、どうしても患者にかけるコストをできるだけ低くしようというインセンティブがあるのは事実だと思います。できるだけ検査はしなければしない方がいい、薬を出さなければ出さない方がいい、そういうことになる。果たしてそれがいいのかどうかということなんですね。これは考え方の問題だというふうにも思います。  特に、高齢者は慢性疾患が多い、だからできるだけ包括払いの方がいいという議論がありますけれども、例えばイギリスの有名なブロックルハーストの教科書では、こんなふうに高齢者のことを記述しています。「患者は余りにも年をとり過ぎているという理由でこの精密検査が省略されるなら、誤診がなされ、その結果、患者の生活管理に多年にわたって重大な影響を及ぼすことになるでしょう。」  これは医学の教科書ですからこういう書き方をするのだと言われればそれまでなんですけれども、慢性疾患であってもさまざまな変化は当然ある。また、高齢者ですからがんを合併することは非常に多いわけでございまして、それは悪性腫瘍の合併という事態も当然出てくる。いろいろなことがあるわけですね。その中でどうするのかということなんですね。  例えば、胃が痛いという話があったとしますね。それは胃炎かもしれません。胃がんかもしれません。膵臓がんかもしれない。外から見たってわかりません。さわったってよくわかりません、よほど悪くならない限りは。一番簡単なのは、ああ、胃が痛いのですね、胃薬を出しましょうか、これが一番お金がかからない。差し当たっておさまった。だけれども、それがもし胃がんだったとする。ちょっと痛んだ時点で胃炎を併発して痛みがあったのかもしれない。検査をすれば胃がんというのが見つかって、治療をされる可能性は非常に高かった。ただ胃薬でだましだましやっているうちに進行がんになってしまって、あけたときには手おくれだったというような話も十分あり得るわけだと思います。  そこは考え方の問題なんです。そういうことをすることが効率的な話なのかどうなのか。余り効率的じゃないというふうにお答えになると思います。ただ、質の話をすると、そうした方が私は質の高い医療だというふうに思います。要は、そこでどちらを選ぶのか、国民がどちらを選ぶのかという話になろうかと思いますけれども、言われているように、定額払いということが決して医療の現場に幸せはもたらさないし、患者にとっても幸せをもたらさないのじゃないか、そんなふうにも私は思います。その点については、大臣、いかがお考えなんですか。
  138. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、出来高払い制度のよさも十分あります。定額払い制度の、今言ったような、必要な治療が行われないのではないかという危惧、欠点もあると思います。どっちの制度をとるにしても一長一短は出てくると思います。  しかしながら、現在、出来高払い制度の弊害が出てきているのも事実であります。これを補う形で、入院患者さんなり慢性的な疾患に対しては、一定の額で、その範囲内で、お医者さんの倫理性に期待しながら、必要な治療をしてください、適切な治療をしてください、粗診のないようにきちんとした治療が施されれば、患者さんにとっても、余計な検査もしないのだったら、体も楽であります。むだな薬をくれないのだったら、これは体のためにもいい。それはもう紙一重でありまして、人によって違ってくると思います。  しかし、それを、欠点を補い合う形で、両方のよさを発揮できる組み合わせがないかなということを考えるのが必要じゃないか、今の段階において。それを何とか我々としては考えてみたい。それは医者ですから、患者さんはお医者さんの言うことを信用します。どれが過剰でどれが粗療か、これはわからないのですよ。しかし、現実には、お医者さんも神様でありませんから、誤診という場合もあるでしょう。現に、先日、新聞で見てびっくりしましたけれども、便秘だったのをがんと言われて、手術したらがんじゃなかった、便秘だった。こういう驚くべき誤診もあるわけです。  だから、これはなかなか難しいのですけれども、出来高払い制度で、本当に不必要な治療なり検査をしないというお医者さんがすべてだったらば、こんな出来高払い制度の弊害なんてないはずです。定額払い制度でもいいと思うのであります。しかし、現実には、そういう制度ができればその制度の趣旨から外れて弊害も出てきますから、これからは今言われている弊害をなくす形で、私は、出来高払い制度と包括・定額払い制度の両方のよさが引き出せるような組み合わせをぜひとも考えてみたいなと。その案が出た時点でまた御批判を仰ぎたいと思っております。
  139. 福島豊

    ○福島委員 時間がなくなりましたので、最後に一点だけ御質問したいと思います。  老人医療費の増加が問題となっている。また、老人自己負担の拡大というのが必要だと言われているその理由は、若年者から所得の移転が高齢者の方に起こっているのだという議論だと思います。若年者に余り負担をさせてはいけない。ということであれば、私は、さまざまな社会保障制度、例えば年金も若年層から高齢者所得の移転が起こるシステムですから、この二つを制度間調整する必要があるのではないかというふうに思います。  例えば、入院している患者さんに対して年金の給付額を一定額減額するとか、そういうようなことも考えていいのではないか。それを医療保険の方に移す。  これはいろいろな議論が必要だと思います。もちろん、低年金の人にこういうことをするのは大変酷な話で、一定水準以上の年金の額の人でなければそういうことは考えてはならないのではないかとも思いますけれども、そういうことをしていかないと、なかなか一つの単線だけの話では財政的な問題というのは議論が深まっていかないのではないか、そんなふうにも思いまして、この点につきましてのお考えをお聞きしたいと思います。
  140. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 医療とか年金とかいろいろ制度があるわけでございまして、こういった制度の重複を排除する、これは非常に重要なポイントではなかろうかと思います。  それで、この点につきまして現在どうなっているかと申し上げますと、年金といいますのは、老齢ですとか障害ですとかそういった保険事故に該当する場合に、過去の加入期間に応じまして一律の所得保障をする、そして生活の基盤を支える、こういうことになっているわけでございます。一方、医療につきましては、受益者負担という観点から、適切な負担をしていただくということで調整を行っているわけでございます。  私どもとしましては、高齢者入院した場合、年金を減額する、これも一つの考え方ではございますけれども、むしろ入院の際に適切な負担をしていただく、こういうことの方がより適切ではないか、こう考えております。  いずれにいたしましても、これはいろいろ御議論のあるところですから、今後ともこういった問題については検討していきたい、こう思っております。
  141. 福島豊

    ○福島委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  142. 町村信孝

    町村委員長 家西悟君。
  143. 家西悟

    ○家西委員 質問に先立ちまして、委員長、できれば、私、座らせていただいて質疑させていただきたいのですけれども、よろしいでしょうか。
  144. 町村信孝

    町村委員長 どうぞ、おかけになってください。
  145. 家西悟

    ○家西委員 ありがとうございます。  まず、医療費自己負担についてお尋ねしたいと思います。  受益者負担という言葉がありますが、医療費負担の場合は、バスや地下鉄といった公共交通と違い、一般的な意味での受益者負担の概念は通用しないと思います。医療サービスを受ける場合の受益者負担をどう考えるか、お答えください。  また、社保本人負担率を二割にすることと現行国保三割負担との整合性をどうお考えなのか、お伺いいたします。
  146. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 先生御指摘のとおり、まさに、公共交通機関の料金、そういった面における受益者負担というものと医療保険における一部負担、この性格は、受益者負担といっても、その意味合いといいますか、これは違うと思います。  私どもが受益者負担ということで考えておりますのは、医療保険制度というのは、お互いに助け合って、いわゆる相扶共済の制度であります。そうすると、保険料を納めている方と医療を受けている方が当然いらっしゃるわけでありまして、そういった中で、保険給付を受けようとする方、受けておられる方と保険料という形で負担をしている方とのバランスといいますかその公平化といいますか、この水準をどこにするか、これはなかなか難しい問題がございますけれども、それぞれの医療保険制度財政状況によっても違うと思います。そういった意味での負担の公平という観点から、受益者負担というような考え方で、言葉を使わせていただいております。  それから、今、制度によって一部負担の割合が違っております。これは、健康保険制度ですと本人は一割、今回二割にお願いしておりますが、それから、国民健康保険は三割ということになっております。それで、この辺のところをどういうふうにしていくべきなのか。これは、私は、これからの医療保険制度保険集団というものをどう考えるのか、そういった中で、公平公正な負担の中でこの給付率というものを考えていくことではないかというふうに思っております。  今回の改正においては、健康保険につきましては、現行制度が本則上は本人二割、それに対して附則で現在一割という格好にしていただいているわけでございまして、そういった意味で、全体の窮迫した財政状況の中で考えますと、この本則に従った二割負担をお願いしたということでありまして、そういった意味では、この負担率につきましては、窮迫した医療保険財政の面に照らした形での御負担をお願いしているということでございます。
  147. 家西悟

    ○家西委員 私は、血友病患者として長期療養してきた一人として、医療費の問題については、私にとっては他人事ではなく、その点が大変気になっています。  毎月の高額療養費は、患者にとっても家族にとってもとても大きな負担になっています。例えば、手取りが月二十万の人だとして、六万三千六百円の自己負担、それが年に三回以上になれば三万七千二百円にはなりますが、それでも毎月支払わなければならないということになりましたら、実質の手取りは十六万二千八百円、そして、総務庁の家計調査によると、消費税アップが月平均五千六百円ということですから、十五万七千二百円がその人の実質の手取りというか、生活していく財源ということになると思うのですね。そして、病者というものはどうしても何らかの形で健康に障害があるわけで、まともな仕事というか、それほど健康に働いているわけじゃないので収入も厳しい。  そういう中でそういうような負担をしていかざるを得ないということについて、社会全体としてここはやはり助け合うことも必要だと思います。そして、どうか長期療養者の高額療養費の削減を考えていただきたい、病者に優しい社会に変えていっていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  148. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 まさに、今先生のおっしゃった点は、私どもも全く同感であります。  医療保険制度の中で、この高額療養費制度というのは、昭和四十八年ですか、導入されたわけでありますけれども、私は、この医療保険制度を、これは本当に必要なときに本当に機能する、そのかわり、それぞれ健康に留意して医療にかからないで済むようなことであるならば、そこのところはできるだけ一人一人が気をつけていく、そういうような土壌の上に制度というのはつくられていかなければならない。そうすると、この高額療養費制度というのは、本当に医療費負担で大変なケースについて一定の限度額で抑えようということでありますから、そういった意味では、まさにこの医療保険制度の本旨にかなうものだというふうに私は思っております。  そういった意味では、この高額療養費制度、現在六万三千六百円でありますけれども、例えば低所得の方についてはこれを三万五千四百円とか、疾病によっては一万円というような形でやっておりますけれども、この辺は、本当に医療を必要とする方ができるだけ負担を少なく、そして安心して医療を受けられるような制度、そういった制度というのをこれからの抜本改革に向けても基本とすべきではないかというふうに思っております。
  149. 家西悟

    ○家西委員 そういうふうに抜本改革の中ででも、高額療養費を毎月支払わなければならない長期療養者の人たちに対しての救済措置なり、そういうものをぜひとも考えていただきたいと思います。医療費をこういうふうに上げていくだけじゃなくて、そういう人たちに対しての削減措置というものもしっかりやっていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。  次の質問ですけれども、高額療養費の対象者にならないけれどもという人たち、例えば、今まで二万円の医療費がかかっていた患者は、今回の改正によって月四万円になる、さらに、薬剤費という形で千八百円の上乗せがあるということになると、それだけでもう既に三万七千二百円の額を超えて四万一千八百円という逆転現象が起こってくるということについて、そういう人たちに対しての何らかの措置はできないものかということをお尋ねしたいと思います。
  150. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 今度のお願いしております改正というのは、これはまさに、現下の医療保険制度財政状況、非常に窮迫した状況というものをまず立て直すことが緊急の課題である、そして、その安定を図りながら、同時に抜本的な改革を進めていかなきゃならない、そういうふうなことでお願いしておりますから、ある意味では、きめの細かい方策というものが十分配慮されている案であるというふうなことを考えてはおりません。  これから本格的な制度というものを、これから特に高齢化社会ということをにらんで、しかもまた子供が非常に少なくなっている、こういった世の中というのをにらんだときに、本当に医療の必要な方が安心して受けられるように、そのためには、やはりできるだけむだな医療費というのはこれは排除していった方がいい。それからまた、必要性という面での優先順位というものがあるいはあるかもしれない。非常に軽易な疾病については、これは場合によってはもうちょっとみんな自分で負担してもいいのじゃないかというような考え方もあろうと思います。そのかわり、本当に医療費が必要なところは保険できちんと支出していく。  そういうような制度のあり方もあろうと思います。まさに、そういうことをこれから大いに考え、そして、きちっとした見識のある案というものをつくっていくのではないか。しかし、それとて、いろいろな角度からの御議論があろうと思います。それらの御批判、御意見というものを幅広く受け入れながら、ベストの案、国民的に最も望ましい案というものをつくっていかなきゃならない。  しかし、基本はやはり、みんなが健康に気をつけて、できるだけ医療費を使わないように心がけるということがないと、これはどんな制度をつくってもうまくいかないというふうに私は思っております。
  151. 家西悟

    ○家西委員 それでは、薬剤費についてお尋ねします。  一種類十五円の患者負担を求めることは、インフォームド・コンセントが不十分な現状では、患者に薬の価格を知らせることにはつながらないと私は思います。  ここで一つの提案ですけれども、私は、医師が処方した薬を患者が飲まなかった場合、薬局へ戻せるシステムをつくるとかといった思い切った改革が必要だと思います。また、病院や薬局から出ている領収書も、現状では診療も薬剤も全く項目がないということについて、このようなことについて改革していくべきだと思うのですけれども、いかにお考えでしょうか。
  152. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 一番望ましいのは、インフォームド・コンセントがきちんと行われ、そして、医者と患者との間の信頼関係に基づいた治療行為が行われる、それから薬も出されるということが必要だし、また、それを目指すべきだというふうに私は思います。  しかし、現実には、かなりの薬をいただいて薬が残ってしまうということはよく耳にするわけでありますが、これを、余ったのであと引き取ってくださいというような形というのを導入するのは、これはなかなか現実論として難しいのではないかなという気もいたしております。  それからもう一つ、領収書なりにおける明細の問題でありますけれども、この問題につきましては、どの程度詳細な内容まで出してもらうのか、盛り込むべきなのかということについて、これは大いに検討しなきゃいけないというふうに思います。  一方、この領収書の発行というのも、医療機関なり医師との間の不信感、そういった中でできるだけ詳細なものを求めるということだとすれば、これは極めて不幸なことではないかというふうに思います。  ただ、一般的にお金を払う場合にはその内容というものをきちんと知らせるという、これは通常の商行為であれば当然のことでありますから、それに照らしたときに、どこまでが医療においても求められなきゃならないのかという問題だろうというふうに思いますし、そういった意味で、余り詳細なところまで常に出さなきゃいけないという形をとらなきゃいけないのかどうかということになりますと、そこは、私としては、やはり全体的な事務的な問題でのロスというようなことも伴いますから必ずしも適当であるというふうには思っておりませんが、ただ、患者さんが求めた場合には、それにこたえるだけのものをきちっと示すということは必要ではないかというふうに思っております。
  153. 家西悟

    ○家西委員 先ほど言いました、薬剤を返すというのも、処方されて、粉薬のようにいろいろな薬をまぜたらそれはもう無理ですけれども、一剤一剤パッキングされるというか、こういうような形の薬であったら、戻したって何ら問題はないと私は思うのですね。私は、そういうことをしていくことが医療改革一つにつながると思います。そうしないと、私も経験がありますけれども、一週間の風邪薬なりをもらって、一週間飲み続けるということはまずあり得ないのですね。三、四日飲めば大体元気になって、ああ、もうこれはいいやということでほかしていく人たちというのは結構いると思うのです。そういう形で戻すことによって少しは財政は潤うのじゃないかということを私は思うのですけれども、いかがでしょうか。
  154. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 お医者さんからいただいた薬を、飲まなかった分を返して、そのお金をまた返してもらうというその案というのは今初めて伺いまして、これは考えようによったはいい案だと、現実的にどうなるのか、検討させていただきたいと思います。
  155. 家西悟

    ○家西委員 それでは、次の質問に移らしていただきます。  今回の改革医療保険法の抜本改革につなげていくためにもう一度よく考えていただきたいと思いますけれども、まずやるべきことは医者と患者の意識改革、次に患者の権利を確立すること、そして社保、国保負担一元化と老保の抜本改革、こういう手順が必要だと私は思います。  具体的に申し上げますと、出来高払いの診療報酬体系を改革すること、参照価格制度導入を検討すること、医療における情報公開とインフォームド・コンセント、とりわけカルテとレセプトの患者帰属を目的に位置づけること、これらについて今後の取り組みについてどうお考えか、お尋ねいたします。
  156. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 医療保険サイドの問題として、まさに、最初に御指摘がございましたように、診療報酬における出来高払いのあり方、それからまた薬価基準制度のあり方、この問題がございます。  これはまさに引き続いてやらなければならない抜本改革の最優先の課題であるというふうに思っておりまして、まず、薬価基準制度については、従来の公定価格というものを廃止する、そして、市場取引の実勢にゆだねた形の制度に改めたいというふうに考えております。  ただ、これは、ドイツを初めとする諸外国でやっている参照価格制というのがありますけれども、これは参照価格制ということで一義的なものではありませんで、それぞれがそれぞれの国に合った形のやり方をとっている面がございます。ですから、そういった面で、公定価格を決めている現在の薬価基準制度というものを改めたいというふうに考えておりますが、市場の取引の実勢に合った形で薬の値段を決めていく、保険で見るべき範囲を決めていくというやり方をとった場合に、我が国に最もふさわしい形のやり方というものを考えたいというふうに考えておりますし、それからまた、画期的な新薬の開発といったものが阻害されることのないような、そういった方式というものを考えていかなければいけない。したがって、幅広い観点からの検討を踏まえた上で、具体的な案というものをお示ししていきたいというふうに考えております。  それからまた、診療報酬体系の問題につきましては、これは、出来高払い、定額・包括払い、それぞれの長所というものを生かした組み合わせ、あるいはそれぞれの長所を生かした、それぞれの機能に応じた対応ということを検討していかなければならない。これも抜本的に考えていかなければいけない。その中で、薬価差に依存した形での病院経営ということではなくて、医療担当者の技術料ということをきちっと評価した、そういったものにしていかなければならない。そういうような観点から、この診療報酬体系についても抜本的な見直しをしていきたいというふうに考えております。
  157. 家西悟

    ○家西委員 それでは、次の質問です。  これは四月二十二日の東京新聞ですけれども、それに、「人免疫グロブリン製剤回収」ということで日本製薬の商品の回収の記事が載っています。C型肝炎のウイルスの疑いということで、その製剤はエタノール処理によってウイルスの不活化をしているので、念のために回収をしたというふうに言っていますけれども、この件についてお尋ねしたいと思います。よろしくお願いいたします。
  158. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 御指摘の日本製薬株式会社による回収につきましては、国立感染症研究所が、かつての予研でございますが、C型肝炎ウイルスに関する精度の高い新たなPCR検査、改良PCR検査を開発して、今お話しの筋注用免疫グロブリン製剤に対して検査を実施しましたところ、同社製造の一ロットに陽性の疑いの高いものがあるという結果が得られたことによりまして、同社により自主回収がされたところであります。  この筋注用免疫グロブリン製剤につきましては、今お話しのように、その工程中にエタノール処理が含まれておりまして、その結果、C型肝炎ウイルスの不活化が期待されている、それから、PCR検査といいますのはC型肝炎ウイルスの遺伝子をねらい撃ちして増幅させる手法でございまして、不活化されたウイルスの断片をもとらえてしまう等々ございまして、仮に検査結果が陽性であったといたしましても直ちにC型肝炎の感染の危険があるとは考えられませんけれども、予防的な措置として、念のために製造業者による自主回収の実施がされたところでございます。  この措置につきましては、翌四月二十二日に中央薬事審議会の血液製剤調査会に報告して、その了解を得ているところでございます。     〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕
  159. 家西悟

    ○家西委員 エタノール処理でも、PCR法でやった場合、ウイルスのかけらとかそういったものが検出できた、だから回収したということを今言われたわけですね。ですけれども、PCR法で出るということは、ある種ウイルスなりの、エタノール処理でも不活化できないかもわからないから、危険性があるから回収するのだということととらえていいのですか。
  160. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 安全対策は、いわば幾ら講じても尽きるものではないという視点でございます。すなわち、従来は、筋注用免疫グロブリン製剤の安全確保につきましては、C型肝炎ウイルスのPCR検査により陰性の確認が行われてきたところでございますけれども、今回、感度の高い改良された試験法が開発されたということでありまして、今後は安全対策の一環として、一定の場合、改良PCR試験を実施して、仮に陽性のものがあった場合には回収、出荷停止の対策をとる、こういったようなことを当該日本製薬以外の各製造・輸入会社に対しても一般的な連絡として指示をしたところでございます。  今お話しの、PCR検査によって確認されたことが直ちに危険かどうかという点につきましては、先ほどの繰り返しになりますけれども、いわばC型肝炎ウイルスの遺伝子をねらい撃ちで増幅させる、その中には不活化されたウイルスの断片をも捕捉しているということ、それから、エタノール処理によりまして当然ながらC型肝炎ウイルスの不活化が期待されているということで、直ちに感染の危険があるとは考えておりません。また、これまで筋注用免疫グロブリン製剤によりますC型肝炎ウイルスの感染というのは一度も確認されたことはございません。  以上でございます。
  161. 家西悟

    ○家西委員 これは一九九五年八月から九六年八月までの一年間で五千七百四十四本当荷されて、千百の医療機関に出たわけですね。一応不活化されているから危険性はないけれども回収すると言いつつも、ほとんどはもう使用されていて残っていないのではないですか。いかがですか。
  162. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 現在、製品の回収中でございますが、今お話のありましたように、出荷数量は五千七百四十四本でございます。かなりの使用が見込まれておりますが、これにつきまして、いわば安全性を重視する立場から念のための自主回収ということでございます。もちろん、万々が一感染ということがありましたらば、これはゆゆしき問題でございまして、そういうことのないように、あるいは、現在残っているものにつきまして回収措置を進めているところでございます。
  163. 家西悟

    ○家西委員 疑わしいということで一応回収する以上は、使用された患者さんに告知すべきではないでしょうか。こういう回収品目を使ったかもしれない、だから今後気をつけていただきたいし、何か体調に変化を及ぼした場合には速やかに厚生省なりに連絡をいただきたいということを告知する義務があるのではないでしょうか。そうしないと、薬害エイズで起こった第四ルートと同じように、五年、十年経過後に何かがあるということになったときに、カルテがない、何も情報がないということになる可能性があるので、こういうことを私はしていただきたいと思うのですけれども、いかがですか。
  164. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 仮に血液製剤によりまして感染症が起きている疑いのある事例がある場合には、直ちに、そのロットの製造過程あるいは流通過程について把握を行いまして、使用された医療機関等への追跡調査を行う、また、回収、出荷停止等の指示を行いまして、被害拡大防止のため適切な対策をとるということでございます。本件につきましては、いわば感染の危険があるとは考えられませんけれども、あくまで予防的な措置として念のための自主回収という性格でございますので、御理解いただければと思います。
  165. 家西悟

    ○家西委員 予防的回収なら、それはやるべきではないのでしょうか。患者さんに対して告知をすべきであって、それが予防になるのではないでしょうか。薬害エイズのときも、当初は安全だと言い続けたのは厚生省ですよ。それと同じようなことにならないためにも、今ここで患者さんに対して告知をすべきだと思うのです。何かが起きたときに対応するのではなくて、今やらなければならないことだと私は思うのですけれども。
  166. 佐藤剛男

    ○佐藤(剛)委員長代理 明確に答えてください。
  167. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 端的に申しますならば、自主回収の必要性があるかどうかにつきましても疑わしい事例でございます。したがいまして、私どもとしては、念のための措置として残されたものの回収をするということで万全であると考えておる次第でございます。
  168. 家西悟

    ○家西委員 それはおかしいと思いますよ。全くおかしい理屈ですよ。回収しなくてもいいぐらいのものを回収するのだというなら、それは理屈に合わないですよ。大臣、どういうお考えですか。
  169. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 委員の言っているとおりだと思います。これは告知すべきだ。そのようにさせます。
  170. 家西悟

    ○家西委員 よろしくお願いいたします。  もう一問ありましたけれども、もうそろそろ時間が来ていますので私の質問は終わりますけれども、もう一問というのは、脳硬膜移植のヤコブ病の問題です。  これについても、厚生省は情報を知りながらやらなかったということの事実もありますね、情報を得ながら。当時の国立予防研究所のウイルス部の部長であった北村敬さんが、CDCの報告、CDCレポートを訳されて、それを厚生省にも渡しているはずなのに、それが生かされなかった。薬害の科学的情報が行政に生かされなかった構図は薬害エイズと全く同じだ、まことに残念だということまで言われていますけれども、この質問を最後にして、それなりのお答えをいただけないならまた次回に質問することにしまして、私の最後の質問とさせていただきます。
  171. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 英国で狂牛病由来の新変異型ヤコブ病の発症が報告されて以来、緊急調査に基づきまして万全の措置をとっておりますが、今お話しの件につきましては、ヒト乾燥硬膜の移植に関連してヤコブ病が発生したという世界で最初の症例が一九八七年に米国で出まして、FDAがその使われた硬膜と同じ時期に生産されたものについての廃棄の勧告をした、こういうことでございますが、これにつきまして、当時、厚生省の安全対策担当者がどのように認識をしていたのかにつきましては、現在、その後の手術によりまして発症された方からの訴訟が提起されておりまして、事実関係を精査中でございます。訴訟にも責任を持って対応していくということで臨んでおりますけれども、その対応も含めまして検討してまいりたいと考えております。
  172. 家西悟

    ○家西委員 情報を隠さないでまともに出していただきたい、情報公開をしていただきたいと思います。  以上で私の質問を終わります。
  173. 佐藤剛男

    ○佐藤(剛)委員長代理 枝野幸男君。
  174. 枝野幸男

    ○枝野委員 私からは、この医療保険改革に関連をいたしまして、現在の医療費総額の膨張について、どこで抑止できるのか、できないのかという観点からひとつ御質問をさせていただきたいと思います。  まずは、一昨日だったと思いますが、この厚生委員会質疑の中で、我が党の肥田美代子議員からの御質問にお答えをいただきまして、阪大病院の院外処方せんの発行率がわずか二・五%しかない、なぜなのかという問いに対して、阪大病院が千里に移転をする際に大型コンピューターによるオーダリングシステムを導入した結果、それまで何時間も待たないと病院では薬は受け取れなかったのがすぐに受け取れるようになった、その結果として院外処方せんを求める患者さんが少ないという趣旨の御答弁をいただきました。  まず、大蔵省においでいただいていると思いますが、この阪大病院のオーダリングシステム導入のための費用というものが幾らかかったのか、教えてください。
  175. 飯原一樹

    ○飯原説明員 お答え申し上げます。  阪大の移転に伴います新しいコンピューターの借料でございますが、年額三億五千八百万円、御参考までに、移転前は年額で一億四千二百万円でございます。
  176. 枝野幸男

    ○枝野委員 単純に考えましても年間二億の、公費という言い方をしていいのでしょうか、そういった費用を投じて、わざわざ院外処方せんを求めないような方向にしているわけになると思います。  厚生省としては、医薬分業を推進する、そのためには院外処方せんがふえるような努力をしていく。先日の肥田委員からの質問に対しても、特に国立病院が主導的に院外処方せんの発行がふえるように、医薬分業が進むようにという方向で努力をしているという趣旨の御答弁をいただいたと認識をいたしております。  阪大病院を所管する文部省にお答えをいただきますが、このシステムの導入というものは、厚生省が進めている医薬分業、院外処方せんをできるだけ多く出していこうという趣旨に逆行するのではないですか。
  177. 寺脇研

    ○寺脇説明員 医薬分業につきましては、患者さんに対する薬剤の重複投与の防止でございますとか適正な服薬指導等の観点から、文部省といたしましても重要と認識をいたしておりまして、国立大学附属病院につきましても、従来から院外処方せんの受け付け体制の整備や院外処方せんの発行を行っている旨の患者さんへの告知等に努めてまいりまして、国立大学附属病院全体で申しますと、平成五年度が三七・五%の発行率であったものが平成七年度には四九・八%にまで拡大をされておるわけでございまして、文部省といたしまして、この医薬分業の推進を図ってまいるという考え方は厚生省と全く同じでございます。
  178. 枝野幸男

    ○枝野委員 総論を聞いているのじゃなくて、阪大病院の話を伺っているのです。  二億円の金を使っているわけですよ。二億円の金を使って、早く出るから――それは、十分で出るのだったら病院で受け取ることを選択しますよ。新しいところに移ったのだから、郊外だから、なかなか病院の近くにいわゆる門前薬局が育たないとか存在していなかったとかということで、経過措置的に、あるいは誘致ということを、門前薬局の誘致ということをやっていいのかどうかわかりませんが、少なくとも条件整備をされるためのお金を使うならともかくとして、そんな毎年毎年二億も今までより余計に金かけて、むしろ院外処方せんの数が減るような方向に誘導しているというのは、金のむだ遣い以外に何かあるのですか。
  179. 寺脇研

    ○寺脇説明員 先ほど大蔵省の方から御答弁のございました全体の年額三億五千八百万円というのは、阪大病院全体のコンピューターシステム、医療情報システムと申しておりますけれども、業務の合理化、効率化、正確化を推進するという考え方で、例えば診療予約でございますとか料金計算、また検査、給食、薬剤各部門の管理システムというものをコンピューターで総合的に管理することによって、よりよい病院体制をつくっていこうというものでございます。その全体の経費が、移転前のコンピューターは一億四千二百万でできておったのでございますが、移転に際しまして全体をパワーアップいたしました関係で二億増の三徳五千八百万かかっているわけでございまして、薬剤の待ち時間を減らすためだけにやっているというのではない、全体の病院サービス、また患者さん方の便宜を図っていく、また正確な医療を行っていくための経費だと承知をいたしております。
  180. 枝野幸男

    ○枝野委員 それでは、大蔵省に伺いますが、そのまさに薬剤のオーダリングシステムの部分を入れなければどう金額が変わってくるのかという数字はわかりますか。
  181. 飯原一樹

    ○飯原説明員 御質問を受けましていろいろ検討してきたわけでございますが、なかなか分割をして幾らということは、数字をお示しするのは難しいということでございます。
  182. 枝野幸男

    ○枝野委員 しかし、少なくともそのシステムを入れなければもっと安い額になるだろうというのはお認めになりますか、幾らなのかはわからないけれども。
  183. 飯原一樹

    ○飯原説明員 御承知のように、同様のシステムがいろいろな大学病院に入っておりますので、システムとしてワンセットということでございますから、コンピューターの大きさ自体に、その部分を除いたからといって特段の大きな変化はないのではなかろうかということで、それほど大きな金額の差が出るものではないのではないかというふうに考えております。
  184. 枝野幸男

    ○枝野委員 今どきのコンピューターは、ハードの部分と同じぐらい、ソフトの部分の金がかかるのじゃないのですか。そこの額の話をやりとりしてもしようがないので、いずれにしても額は違うわけですよ。  それで、なおかつ大蔵省は、このコンピューターの話について、大蔵省に聞いたら数字が出てくるということは、これは大蔵省が査定しているのでしょうが、医薬分業の見地から矛盾をするのではないかというようなことは査定のところで考えませんでしたか。
  185. 飯原一樹

    ○飯原説明員 結果的に、国立大学病院の患者サービスが向上した結果、御指摘のような結果を招来したという点もあるかと存じます。  私どもといたしましては、行政サービス改善の立場も踏まえまして、査定に当たっては患者サービスの向上を第一に、医事事務の合理化、効率化を推進すべきという考え方に立っておりますが、他方、先ほど文部省からお答えもございましたとおり、医薬分業の観点も踏まえまして、そちらの方の、例えば文部省の方において、周辺の、患者さんへの周知徹底等にも積極的に対応して、他の各種の病院と比較いたしましても、国立大学病院の院外処方せん発行率は相対的に高いのではないかという認識を持っております。
  186. 枝野幸男

    ○枝野委員 相対的に高いのは当たり前ですよ。政府の方針として医薬分業を進めましようといったときに、自分のところで抱えている病院から先行するのは当たり前のことなので、少しばかり高いじゃ困るのですよ。  それから、今おっしゃられましたけれども、確かに、行政の一般の窓口サービスができるだけ効率的になって、短い時間でサービスを受けられるようにするというのは、もちろんそういうところに金を使ってもらわなければいけないのですが、医薬分業で院外処方せんをどんどん出しましょうという話は、少なくとも短期的な部分だけ、要するに一件一件だけとらえて一時的にとらえたときには、こんなもの、病院の窓口で薬をもらえた方が便利に決まっているのですよ。だけれども、いろいろな見地から考えて、医薬分業して院外処方せんにシフトしていきましようというのが政府の方針なんじゃないですか。ですから、そちらを優先して大蔵省は査定しないと、閣内不一致じゃないですか。そうなりませんか。
  187. 飯原一樹

    ○飯原説明員 御指摘のような事態になりました要因一つが、これは特殊な例と申し上げた方がよろしいかと思いますが、御承知のように、中之島の、古い、改築をしなければ到底使用にたえられないような状況の病院を郊外に移転して全く新築したということでございますから、すべて、内部のコンピューターも含めた建物、それから中にあるハード、ソフト全部を一新するという機会でございまして、その際には、患者さんへのサービスという観点も踏まえまして、その時点において最善のものを導入するということが大切なのではないかということでございます。  結果的にそういう事態になりましたが、いずれにいたしましても、院外処方せん発行率の向上を図るための施策も同時にとっておりますので、将来的にはまた院外処方せんの発行率が高くなっていくというふうに考えております。
  188. 枝野幸男

    ○枝野委員 今の理屈だと、これから例えば国立病院を改築することがあって、こういったシステムを全部入れかえるときには、今度と同じように、みんなどんどん、今まで一時間待たないと薬をもらえなかったのが五分か十分でもらえるようになって、その方が患者さんにとっては便利ですから、それで院外処方せんの発行率が二・五に下がってしまうというようなことがあっても構わないという御答弁になりますよ、今の御趣旨は。  これを聞いているのは、前回、肥田議員がお尋ねしたときに、そういう事情でコンピューターですぐ出るようになったからこんなに低いのですというお答えを政府としてしていらっしゃるからこういうふうにお尋ねをしているのです。逆じゃないですか、今の話は。こういったことは今後気をつけますという御答弁をいただかないと、話は進まないのじゃないですか。
  189. 寺脇研

    ○寺脇説明員 私どもとして、今の阪大の院外処方率が二・五%で構わないと思っているわけではないわけでございまして、院外処方率が向上いたしますように努力をしていくというのは、すべての大学病院で行っているところでございます。  実は、このオーダリングシステムというのは、四十二の国立大学病院がございますが、既に四十の病院に導入されているわけでございます。ですから、そういう意味で、オーダリングシステムで患者サービスの向上を図ると同時に院外処方をふやす努力をしていこうという結果で、先ほどの三七%から全体四九%に伸びたということでございます。  阪大につきましては、移転という特別な事情がございますものですから一時的に非常に下がったわけでございますけれども、先般の委員会では、急激に下がった理由という御質問だったというふうに承知をしたものでございますから、これが作用したのではないかと申し上げたわけでございまして、この状態でよしとしているわけではございません。特に阪大のように院外処方率の低い大学につきましては、さらに患者さんたちへの医薬分業のメリットの周知徹底、また、どちらでも選べる、院外処方でも十分サービスを行えますということを進めてまいりたいと思っております。  オーダリングシステムというのは、待ち時間を減らすだけでなしに、正確な処方をしていくことでございますとか、患者さんたちへの薬の処方歴をきちんとコンピューターの中で整理していって間違いがないようにしていくような、もちろん待ち時間を減らすためだけのオーダリングシステムでもございませんので、これを、サービス向上と同時に医薬分業の趣旨を徹底していくという方向で努力をさせていただきたいと存じます。
  190. 枝野幸男

    ○枝野委員 オーダリングシステムの趣旨も何か途中から変わってきているように聞き取れますし、なかなか御答弁に困っていらっしゃるようだなと思いますし、ここで大臣にちょっとお尋ねをさせていただきたいのです。  この話自体はそんな大きな話ではないのだと思います。確かに、コンピューターの費用がもしオーダリングシステムをやらなかったとして幾らになるのかといえば、そんな大きな額ではないでしょう。  ただ、この問題に限らず、医薬分業という見地からすれば、ある意味では、病院で薬を受け取るのが時間がかかって不便な方が医薬分業は進むわけです。ところが、行政サービスという点では、早く窓口で、病院で受け取れた方が行政サービスとしてはいいわけです。それは、それぞれの立場でそれぞれに一見矛盾するようなことになりかねないところというのは当然出てきてしまうわけです。  今回の話は、恐らく、今回質問させていただいたのでいろいろと言いわけをなさったでしょうが、矛盾をするという想定がなかなか文部省にも大蔵省にもなかったのだろうと思いますし、こういったところを、少し争点がずれますが、国務大臣として、そして行革の鬼にこれからますますなっていただかなければならない小泉国務大臣には、ぜひこういったところの意識を持っていただいて、片方で確かにプラスになる部分もあるのだけれども、片方にマイナス影響を与える、どうバランスをとるのか、それが省庁にまたがるときどうするのかという視点をぜひ持っていただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  191. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 この問題は、厚生省の医薬分業を推進するという趣旨を、文部省なり大蔵省なりがよく理解していなかったと私は考えています。省庁の縄張り意識を捨てて、医薬分業を進めるためにどうやって限られた財源を活用していくかという観点から考えると、これは若干問題があったなと。  確かに、患者さんにとってみれば、院外処方より院内処方の方が手間も省けますし、サービス向上という点から考えてみればその方が楽だと思います。しかし、そういう利点があったとしても、重複投与やもろもろの薬害防止等の観点から、日本でも医薬分業を進めようという結論が出たわけです。その方針にのっとって政府が向かっているということをもっと省庁の壁を超えて考えていかなければいかぬ。  まして国立病院であります。今までの御指摘も踏まえて、医薬分業推進のための予算を使った方がいいという観点から強く反省を促して、厚生省の目的の医薬分業推進体制のために、文部省も大蔵省も厚生省の方針に従ってもらうように強く指示したいと思います。
  192. 枝野幸男

    ○枝野委員 大変前向きの御答弁をいただきまして、感謝を申し上げます。一刻も早くこうした前向きの姿勢の方が総理大臣になっていただければなと思います。  次に、レセプトの審査についてお尋ねをさせていただきます。  レセプトの審査を行うのは紙でやっているようですけれども、医療の現場、各病院、診療機関の内側でのことを考えたときに、このレセプトを打ち出すといいますでしょうか、整理をするといいますでしょうか、そうしたところについてコンピューター化がされている状況というのはどうなっているのか、厚生省として把握をされておられますでしょうか。
  193. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 今、支払基金に診療報酬明細書、いわゆるレセプトを送って審査、支払いが行われるわけでありますが、病院で見てみますと、病院の中でいわゆるコンピューター処理をしている病院数が八千九百六ございまして、約九二%がそういうコンピューター処理をしております。診療所で見ますと、これが約四万三千診療所でやっておりまして、五六・九%という状況でありまして、これを全体で平均しますと、医療機関全体では約五万二千件、六〇・九%、これがそれぞれの医療機関で、自分のところでコンピューターを入れてレセプトの作成等をやっております。
  194. 枝野幸男

    ○枝野委員 一方、レセプト審査は電算化されていませんね。
  195. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 御指摘のとおり、レセプトを各医療機関は電算処理でつくっておりますけれども、実際に請求は、それを紙に打ち出しまして、そして紙で請求をいたしております。  ただ、このレセプトの電算処理システム、いわゆる磁気媒体に収録して審査、支払いの方に出していただく、このケースというのは、まだパイロットスタディーにとどまっておりまして、そういった意味では、現在、百四十六の医療機関しかこれに参加しておりませんから、ほとんど進んでいないというふうに申し上げてよろしいと思います。
  196. 枝野幸男

    ○枝野委員 これを電算化するといろいろなことが前へ進むのじゃないかなと思うのですね。  例えば、電算化しておけば統計もとりやすくなります。これはきっと統計はとってもいいのでしょう、プライバシーにかかわらない部分で統計をとっていくのは。そうすると、例えば、どんな薬がどんなふうに使われ方が伸びている、減っているとか、この委員会でもよく出ている、どこに金が行ってしまったかわからない話なんというのも、そう簡単には出てこなくなるのでしょう。あるいは、薬害エイズのときに、特に第四ルートで、カルテも何もなくなってしまったというような話があって、どこに第四ルートの患者さんがいるのかわからない、こういったものも、コンピューターで磁気ディスク一枚でとっておけば、いざというときに出荷ルートとかをそこからたどっていけるのではないかという話もあります。  レセプトの処理を全体として電算化するということは、医療費全体の削減、抑制、むだ遣いをチェックしていく、いろいろな意味で効果が出てくると思います。そうしたものをもっと積極的に進めていかない理由があるのでしょうか。
  197. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 このレセプトの電算化というのは、私は積極的に進めていくべきだと思っております。これはまさに、今委員御指摘のような統計的な問題をどう使うかとか、それはいろいろございますが、これについては、逆に、あらゆることがわかってしまうのは恐ろしいというようなことも、そういうような背景もあろうかと思いますから、そういった意味で、どういうふうにそれを使うかということについては、関係者の間での理解なり合意というのは、これは必要だと思いますけれども、それと同時に、現在、せっかくこういうコンピューター処理を各医療機関でやりながら、それをわざわざ紙に落として、そしてレセプトの枚数からしますと、支払基金だけでも七億件ある、それから国民健康保険も数えますと十一億件ある、これは大変な資源のむだ遣いでもあるわけでありますから、これは早急に電算化というものを実現しなきゃいけないというふうに私は考えております。
  198. 枝野幸男

    ○枝野委員 なかなか実態として大変な部分、一気に全部やるのが難しいのはよくわかっています。各診療機関でそれぞれ共通のソフトを持ってもらわなければいけないでしょうし、その導入の金も要るでしょう。それから、お医者さんお一人でやっている、特に年輩のお医者さんがやっているような診療所の中には、コンピューター化と言われても困りますよというところはたくさんあるでしょう。だから、一〇〇%一気にすぐにやろうというのはそう簡単にはいかないのだろうというのはよくわかっていますが、しかし、コンピューターで実際に現場では処理している話をコンピューターで扱えばいいじゃないかという部分は、そんなに大きな金をかけなくても政策誘導できるのじゃないかなと思うのです。  現時点で、その目標設定というか、計画の具体的なものがあるのかないのか、ないのだとしたら、それをおつくりになる予定はないのか、お聞かせください。
  199. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 私は、まさに委員の御指摘と同意見を持っております。  これはやはり、医療保険サイドで電算化を進めるよりも、これは民間の方が早くて、各医療機関にそれぞれのメーカーがプログラムをつくって売り込み、そしてそれが幅広く使われている。そういう中で、電算化、電算化と言っているうちにそっちの方がかなり進んでしまっている。それを電算化をしてやるためには、何か統一的なコードをつくらなきゃいかぬとか、あるいは受け手のプログラムを統一的につくらなきゃいけないとか、そういうふうに考えると、これはやはりなかなか進まないのだと思います。  私は、今後の行き方として、これはぜひ早急にその電算化を実現すべきである。そのためには、委員御指摘のとおり、一〇〇%電算化するということを一気に考える必要はない。これだけの医療機関がコンピューターを現に入れているわけですから、そういうような現状に照らして考えると、大部分はいわゆる審査の方との関係のプログラムが完成すればできるはずであります。  そういうことで考えたときに、これまでのレセプトの電算化のいわゆる計画、考え方、これがやはり実態に合わないのじゃないかというふうに私は思っております。しかし、技術的に本当にそれができるのか。要するに、もう既に多様なプログラムが市販されている中で、それを前提としたときに、どういう形でやれば、それが完璧なものであれば一本のプログラムということになるのでしょうけれども、そういうような多様なプログラムを前提にした上で電算化をするとしたらどうしたらいいのか。そういう角度から、これまでのレセプト電算化というものの計画の考え方、その発想の転換をしなければいけない。  そういった意味で、私は、このレセプト電算化を早急に実現するための再検討を今指示をし、実際に局の中で検討してもらっております。
  200. 枝野幸男

    ○枝野委員 私も、何か歳出削減ばかりいろいろなところで言っていて、新幹線はとめろ、愛知万博はとめろ、ウルグアイ・ラウンド対策費も減らせと、何でも減らせとばかり言っているのですが、この手の金というのは、少しぐらい先行投資で大きな金がかかってもいろいろな意味で効果の出てくるお金だと思いますので、少しぐらい金がかかるのだったらどんどん予算請求をして、急いで進めていただきたいというお願いをしておきたいと思います。  レセプトに関してもう一点だけ。  このレセプトの審査のあり方についていろいろな疑問の声が上がっています。今、このレセプトの審査をやっているのがほとんど医者じゃないか、医者の身内だけでやっているのじゃないかという批判があります。この実態についての認識をお話しください。
  201. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 請求明細書の審査、支払基金あるいは国保連合会の審査委員会でやっておるわけでありますが、これは医学内容をチェックするということになりますから、もちろん、計算ミスとかそういう事務的なものはそれぞれ支払基金なり連合会の職員が当然やっておるわけですけれども、医療行為の内容ということになるものですから、私はやはり、そこは専門的な医学知識を持った方がやることが適当であり、そういった意味では、医者の資格を持った方が審査委員になるということは、これは決して弊害のあることではないというふうに思います。  現在は、この法律、社会保険診療報酬支払基金法なり国民健康保険法の規定に従ってそういう形でやっておるわけでありますけれども、形としては、審査委員会というのは、診療担当者を代表する方、保険者を代表する方、学識経験者のこの三者構成という格好をとっておりますけれども、この三者構成はそれぞれの立場を代表する形で適正な医療保険の内容の審査をしておるわけでありまして、その審査の中身は専門的なものだと思いますから、そういった意味では、医者がそれに当たるということについては、私はそれは決して不合理ではないのではないかと思っております。
  202. 枝野幸男

    ○枝野委員 医療の中身として適正だったかどうかなんというのは、単純にすればそんな議論をするわけでしょうから、もちろん、お医者さんが中心になってというか、お医者さんがやらないとできない部分が大きいというのはよくわかります。だからといって、そこは医者以外の素人は口を出すなという話でもないのでしょう。専門家が議論の中心になるかもしれないけれども、むしろ、専門家だから見落とすような話が素人だからわかるという話も世の中たくさんあるわけです。それは、私も弁護士という専門職ですから、みずからを謙虚に省みながら、法律家だけで話していると間違えることもある、むしろ素人だからわかるということはあるわけです。  全部を素人にしろだなんて私も言うつもりはありませんが、必ずしも医者だけでまとまってやっていていいのかということについてまず疑問を呈させていただいた上で、もう一つ、今、三者構成とおっしゃった、診療機関の代表あるいは推薦による委員、これはちょっと聞くと、三者構成、なるほどなと私もずっと思っていました。だけれども、ちょっとよく考えてみると、これは上がってきたレセプトが適正なものかどうかをチェックするための審査委員ですね。要するに、いわゆる三者構成とかというのは、利害の対立する二つの立場があって、それぞれの利害の代表者が出てきて、第三者と合わせて三者構成、利害調整をする。これなら当事者の代表が出てくるのはわかります。  ただ、これは不正がないかどうか、おかしなことがないかどうかということをチェックする機関なわけですよ。チェックをされるのは診療機関ですよ、トータルとしての、全体としての。その診療機関側から代表者が出てきて三者構成でやるというのは、これは論理矛盾ではないですか。お医者さんたち、診療機関、おかしなことは大部分の人はやっていないだろうけれども、おかしなことがあるかもしれないからチェックしなければならない。だから、審査の人を置く。それを審査される側の診療機関の代表者あるいはそこの推薦された人が出てくるというのは、論理矛盾になりませんか。
  203. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 委員は具体的な事例として矛盾を感じていらっしゃるケースをお持ちなのかなとも思うのですが、そういったケースについて問題点があるということであれば、むしろお聞かせいただきたいのでありますけれども、この制度の仕組みという面で考えますと、医者といった場合に、それぞれの立場というものを代表する形での医者というのは、私はあり得ると思います。全部がそういう面では職業は同じであっても、それぞれの立場における立場というものを踏まえてそういう目で審査に当たる、そういったことを期待しているわけでありまして、もちろん個人個人の委員の方が適当かどうかという問題はありますけれども、制度としては、私は、これは論理矛盾ということではないのではないかと思います。
  204. 枝野幸男

    ○枝野委員 具体的な話でどうこうではなくて、理屈の問題としておかしいと私はむしろ申し上げたい。  別にお医者さんでいいのですよ。お医者さんが出てくることは、先ほど言ったとおり、全部ではおかしいのではないですか、素人も入れてくださいという話がポイントであって、学識経験者として医者が出てきてもいいし、保険者側という意味では、その中に医師の資格を持っている人が出てくる、それはそれで構わないわけです。  問題は、診療機関を代表する人が出てくる、診療側を代表する人が出てくるということがおかしい。つまり、診療機関のやったことが正しいのか、正しくないのかということをチェックするための審査委員会であるわけです。そこは、チェックされる側の外側の人たちでチェックすればいいわけです、そこに専門家がいれば。これは我々がよくやっている総務庁の行政監察局の話と一緒で、そこにチェックを受ける側の代表者が入っているということは、少なくとも理屈の上では、実態はやっているかどうかは別として、理屈の上では、審査される側の代表者を入れておいて、まあまあここのところは抑えてだなんという話をしていると外側から疑われても仕方がない構造ではないですか。第三者でチェックすればいい。逆に言えば、保険者が勝手に審査すればいいわけです。保険者保険を払う上で、診療機関のやったものは間違っていないのかどうかということをチェックするためのものなわけですから。余計な金を出さなくて済むようにするためのものなわけですから。  何でそこにチェックをされる側の代表者を加えて審査をしなければならないのか。意見を聞くことはあってもいいです。チェックの仕方について、診療機関側としてはこういうやり方でやってもらわないと事務的な作業が多過ぎて困るとか、意見を聞くのはわかります。チェックをする当事者にチェックされる側の代表者を入れるだなんという話はどう考えても論理矛盾だと思いませんか。
  205. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 現行法は、そういった意味では保険者の立場を代表する者も入っているわけで、それから学識経験者を代表する方が入っているわけで、問題は診療担当者というのはいかがなものか、こういう御指摘だと思います。  これは、私どもとしても、かなり古い法律でもありますから、この経緯をもうちょっと勉強させていただきたいと思います。それによって弊害が生じているということであれば、これはやはり問題だと思いますけれども、この辺のところはもうちょっと勉強させていただきたいと思います。
  206. 枝野幸男

    ○枝野委員 古い話だからということだけで、合理性がないことを合理的になるわけではないわけですから、そこは理屈の問題としておかしいではないか。理屈の問題としておかしいとなると、さっき言ったように、外から疑われても文句が言えないわけですから。  今現実に、このレセプト審査などについてはさまざまな形で批判を受けています。指摘を受けています。  私の手元には週刊ポストという週刊誌の連載記事で、第五弾ぐらいまで来ているようなんですけれども、「厚生官僚たちの「健保食いつぶし」行状」とか「まだある!厚生官僚「健保料食いつぶしテク」」「高級車供与、平日温泉ツアーばかりか健保料が厚生官僚「下半身接待」に使われている!」というような週刊誌の記事が連載でもうずっと追いかけています。  中身が全部正しいだろうということを言うつもりはありません。端的に言えば、この記事の中では民主党の対応もたたかれているのですけれども。逆に言えば、この中に書かれているいろいろな具体的な事実というもの、それが正しいかどうかは別として、挙がっているものに対しては、構造として、もう五回も週刊誌が続けて力を入れてやっている話です。国民のかなりの人が週刊ポストという雑誌を読んでいます。少なくともそれだけ読んでいる人は、ここに書いてあることの、どれぐらいの確率で信用しているかは別として、全部は正しいとは思わなくても、でもこの中の幾つかは正しいのだろうなという認識は多くの国民が持っていると思います。  そうした中で、例えば、診療報酬支払基金と厚生省とそして一部の悪いお医者さんが手を組んでおかしなことをやっているのではないかということが書かれているし、この報道だけではなく、いろいろなところでそういったものが書かれて疑われているという事実はあるわけです。週刊誌の記事なんかほっとけという話はあるかもしれませんが、しかし、こういった報道に対して、一個一個の事実、ないのだとしたら、具体的にこれはありません、こういう裏づけがありますとかという、具体的な証拠を挙げた反論を何らかの機会にする御予定、おつもりはありませんか。     〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕
  207. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 厚生省がこういう状態にありますから、週刊誌等でいろいろな問題について書かれるケースが非常に多い、これは我々としても非常に残念なことだと思いますし、それが事実であれば、これは遺憾なことだというふうに思っておりますが、ただ、週刊ポストにつきまして、最初に書かれたのからずっとたどってきて、つい最近の、一番最後にお挙げになった見出し等になってきますと、この辺は私はまともに取り上げるというつもりはありません。  ただ、支払基金なり健康保険組合連合会なり、そういった中で厚生省のOBなりが勤めていることも事実でありますし、それが外から見て非常に批判を浴びるような実態になっているとすれば、それはやはりきちっとした行動をとってもらわなければいけないわけでありますが、この週刊ポストの記事を一つ一つ事実関係を確認し、それについて役所の方がそれぞれ申し上げるというようなことは私は考えておりません。  ただ、支払基金制度のあり方なり、先ほどの電算化の問題もそうでありますし、そういったような問題について近代化を図り、そして、これも行政の一環というふうなシステムでありますから、また、医療保険制度の公平性、透明性、そういったものに対する国民の期待にこたえていかなければいけないという意味での行政的な改善努力、合理化ということは、私は進めていかなければいけないというふうに思っております。  そういった意味で、漫然とただ電算化という旗を掲げているだけで余り前に進まないということであるならば、原点に戻って、発想の転換をし、そして新しい視点から、とにかく現実的にそれを短期間で実施する、そういうふうな取り組みをしていく。そんなふうな覚悟でございますけれども、私どもは、やるべきことは、今申し上げたようなことが私どもの任務であり義務であるというふうに思っておりますので、この週刊ポストの内容をそれぞれチェックするということは、今のところ考えておりません。
  208. 枝野幸男

    ○枝野委員 時間ですので終わりますが、確かに、相手をするのもばかばかしい部分もあるのでしょう。だけれども、ちゃんと対応しなければならない中身、つまり、これが事実だとすれば、事実だけれどもこういう理由なんだ、あるいは、これは事実ではないということを対応しなければならない部分もあるというのも私は事実ではないかなと。きちんと対応すべきところについては対応していかないと、少なくとも放置をしていると、それは事実なのか、言いわけもできない状況なのかという疑いの目で、少なくともこの医療保険とかこういった部分については、今疑いの目で見られているという前提で、なおかつ、それで負担増をお願いをするということに対しては、かなり丁寧に、そういった批判記事に対して、事実と違うのだとしたら、そのことを説得をしていかなければならない、説明をしていかなければならないという責任を感じていただきたいということを申し上げて、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  209. 町村信孝

  210. 児玉健次

    児玉委員 日本共産党の児玉健次です。  これまでの質問でいわゆる新薬シフトの問題を取り上げてきましたが、きょうは、引き続き薬価の問題に触れたいと思います。  私がここに持っているのは、「保険薬事典」平成九年四月のものの百二十三ページです。いうところの先発薬品、「H2遮断剤」と書いてあって、「シメチジン細」「規格・単位二〇%一g」「標準用法用量一日四〇〇~八〇〇mg 一~四分服」、こう記入してあります。そして、その下に「シメチジン二〇%細粒―GE」、ゼネリック、後発品ですね、「二〇%一g 一日四〇〇~八〇〇mg一~四分服」、このように記載されてあります。  当然、この先発品とGEは、成分、薬効は同じですね。
  211. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 医薬品の先発品と後発品の関係につきましては、後発品は先発品と同一の内容であるということを着目して承認をされておりまして、したがって、同一のものでございます。
  212. 児玉健次

    児玉委員 ところが、薬価の方についていえば、先発品は三十九円八十銭、ゼネリックは十五円九十銭、ほぼ二・五分の一です。厚生省は、ゼネリックの価格が先発品の価格の二・五分の一より下がることがないように底を支えているのだ、こういうふうに説明をなさっている。  そこで、私はお聞きしたいのだけれども、この先発品とゼネリック、この場合はシメチジン、このことについて聞くと既に御連絡をしておるわけですが、この先発品とゼネリックの原価、流通経費、マージン、恐らく調べていらっしゃると思うので、それを答えていただきたいのです。
  213. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 通告をいただいておるとすればまことに申しわけございませんが、ちょっと手元で、その調査をしていないものですから、また後日、調査をしまして御報告させていただきたいと思います。
  214. 児玉健次

    児玉委員 私は、少なくとも、流通経費や一定のマージンについてはさまざまでしょうから、それも明らかにしていただきたいのだけれども、とりあえず原価についてははっきりさせていただきたいと思うのです。後日を待ちましょう。  そこで、これは小泉大臣とも若干の議論をしたいのですが、先発品が後発品の二・五倍の値段でおおむね収載されています。もし後発品が先発品の二・五分の一より高い価格が維持されていれば、それはゼネリックと言いませんね。そこで、私は、一般論を言うのですが、まさか先発品の原価が後発品の二・五倍ということは絶対ないと思うのです。  なぜかといえば、後発品は、他社の特許権を使用しているというハンディキャップを持っています。そして、生産量からいっても、これは丸山局長の参議院の答弁で明らかですが、全薬品の生産量の中で後発品は七%のシェアを持っている。七%といっても、これは相当なものですよ、八兆円の中の七%ですから。そういう状況のもとで、先発品に比べて後発品の方が生産量は当然少ないですね。そうすると、特許料は払わなければいけない、スケールメリットはない、そうなると、常識からいって、コストは、先発品の方が低く、後発品の方が高いはずです。それが二・五倍というのはこれはどういうことなんだ、いかがでしょうか。
  215. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 二・五倍というのは、言葉の使い方でありますが、ちょっと考え方について、誤解を生じるといけませんので、御説明させていただきます。  まず、この価格の決め方は、いわゆる先発品の実勢価格、これの最高価格、これは実勢価格でありますから市場に流通している価格、こういうふうにお考えいただきたいと思います。それと、後発品の実勢価格、これも市場で流通している価格でございます。これを比べますと、いわゆる後発品、ゼネリックの方は、先発品の最高価格に対しまして二・五分の一以下の価格で流通しているケースというのはあり得るわけです。それを逆から見ると上が二・五倍じゃないかとおっしゃるかもしれませんが、それはその逆でありまして、上の価格は実勢価格でありますし、それから、下の後発品のゼネリックの価格も、これも実勢価格、だけれども、流通の実態の中で、二・五倍、二・五分の一以下の価格で取引されている実態がある。この場合に、このゼネリックの方を、このままほっておきますとずっと落っこちていってしまいますから、これを二・五の格差までげたを履かせているような格好のルールになっておるということでございますので、そこは、正確にはそういうことで御説明させていただきたいと思います。
  216. 児玉健次

    児玉委員 厚生省の御説明がそのようなものだということは私も承知しております。  そこで、私が言っているのは、あなたは、いわゆる実勢価格、それも皆さんは加重平均でとっていらっしゃる、そこのところに着目して議論を展開されているのだけれども、私は、そこはそこで現在の薬価基準のもとでは確かに一つの基準ですよ、それが今の薬価基準の大きな問題ですが、それはちょっとさておいた議論をさっきからしているのです。  実勢価格の加重平均ではなく、原価が幾らになっているのか、製造原価が。その場合、新薬は、当然、開発に巨額の経費を必要とするでしょう。そして、開発にかかった経費について言えば、市販後の再審査もありますから、四年、六年、オーファンドラッグの場合は十年もその期間がある。そして、ゼネリックがこのような形で収載されるということは、先発権に伴うあれこれの経済的要素は消えて、対等の言ってみれば市場競争ができる状況になるからゼネリックは出てくるのじゃないですか。そうじゃないですか。ちょっとそこのところの、そうであるか違うか、その点だけ答えてください。
  217. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 まさにこれは商売ですから、当然、採算がとれることを前提にして生産しているのだと思います。もちろん、例外的なことで商売が行われることはないわけでありませんが、常識的に考えますとそういうことだと思います。それが同一価格であるから商売ができるという場合もあるでしょうし、価格が違うことによって商売ができるという場合があると思います。  そこを消費者、この医薬品の場合では医療機関ということになるわけでありますが、医療機関がそれぞれの薬の有用性なりその評価というものを御自分でいろいろ勉強されて、そして買っているわけですから、だからそういったマーケットの中でそれぞれゼネリックを開発して商売をしようというケースについては、それで商売が成り立つ、価格差があっても成り立つ、こういうことじゃないかというふうに思っております。
  218. 児玉健次

    児玉委員 私の理解厚生省理解と一致しているということは、今のお話でも確認できました。  そこで、病院が実際に購入する薬品の実勢価格、これを今まで私たちはどちらかというと議論対象にしてきたけれども、小泉厚生大臣とも私たちは予算委員会で何回か議論したけれども、薬価の透明性というとき、製造原価が幾らか、それにリーズナブルなマージン、そして流通経費、それらが上乗せされれば、私は、その値段で、その価格で薬価が決定されて、ある意味ではそれは一つの筋道として見えてくると思うのです。そして、そこのところをはっきりさせていけば、先発品も後発品も、二・五分の一の価格でともかく引き上げてあげる、下から支える、その必要もない、そのような状況にしていく。  そのためのかぎは、文字どおりその薬品の原価です。先発品であろうと後発品であろうと、薬効、成分に変わりがないということはもう自明のことなんですから、原価に着目して薬価を設定していく、そのことが八兆円という莫大な医療保険の浪費構造にメスを入れていく一つの重要な道筋だし、ひいてはこれは新薬シフトに対する大きな抑制要素になっていく、私はそう考えているのです。大臣、どうでしょう。
  219. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 私どもとして、現在の薬価基準のあり方、まさにその公定価格を決めているあり方、このルールというものが全く正しいというふうに考えているわけではありません。したがって、今度の抜本的な改革に当たっては、ここのところを思い切って改正していきたいということがまず前提であります。  ただ、現在のルールというのは、これは御承知のとおり、類似薬効がある場合は類似薬効比較対照ということで値決めをしておりますし、それから類似薬効が、類似品がない場合には原価計算、こういうようなルールでやらせていただいております。  しかし、これはどちらのやり方、とりわけ原価計算の方がより不透明感が強いというふうに受け取られているのではないかと私は思いますが、やはりこれは、公定価格を決めるという、こういうシステムにおいてはどうしても限界がある。それを例えばフランスのように、二つの委員会をきちっとセットしてそれでチェックするとか、そういった一定の透明性を高めるような仕組みをさらにつくっていくということでもない限り、私は、透明性の確保というのはなかなかできないと思います。  そこで、公定価格を決めながら、そういうふうなやり方も方法論としては私はあると思います。しかし、現在の医薬品の生産状況日本のマーケットの状況等々、それからまた医薬品の業界の状況等々に照らした場合に、そういうやり方でいくのか、やはりそこは、通常の商品がそうであるように、市場取引の実勢というものに着目して保険で償還する薬の価格を決めていく方が極めて透明だ、私どもとしてはこういうふうに考えて、抜本的な改革に当たってはそういう方向を基本としたい、こういうふうに申し上げているわけであります。
  220. 児玉健次

    児玉委員 先日、新薬シフトのときに、厚生省は、薬価について大きな改革をしていこうとするときに、幾つかの審議会があって、一定の手続が必要だし、期間も必要だ、こういうふうにお述べになった。それはそうかもしれません。私が今議論している問題は、言ってみれば即刻着手できる問題だと思うのです。  四月二十二日の参考人からの意見聴取をこの場で行ったとき、おいでいただいた糸氏参考人が陳述の中で、後発品の普及が今必要だ、そのことを強調されました。私は非常にその点に興味があったから、あえて糸氏参考人に、後発品を普及させていく上でどんな政策が必要なんだろうか、国に何ができるとあなたはお考えですかと聞いたら、そうしたら糸氏参考人は、厚生省に後発品を奨励してほしい、こういうふうにお述べになった。そして、国立病院からまず使うことについてもお述べになって、私はもうはっきり申しますけれども、国立病院の医師には医師としての裁量権がありますから、だから、この薬をおまえたちは使えというふうに行政権力で押しつけていくということについては、これは慎重でなければならぬ、そう思うのですけれども、しかし、薬効、成分が同一であれば、患者の利益という観点に立てば、そこを選ぶというのは自然の道理ですね。  そして、現場の意見を聞いてみました。以前は、後発品については安定供給上の問題があると言われたこともある。しかし、今、供給上で問題なのはむしろ大手のメーカーだ。十分な値段がつかなくなった薬品は遠慮会釈なしに生産ストップを通告してくる。むしろ、後発品のメーカーの方がその点で信頼性が持てる。そして錠剤、これは大臣もよく――私もけさも薬を飲んでいるわけだけれども、以前は後発品には刻印が打ってなかった。最近は錠剤に刻印を打つ後発品が多くなって、病院がいわゆる錠剤鑑別を行うとき、大手メーカーのものと一緒に使ってみて何ら遜色がない。  そうなると、糸氏参考人が言われるように、後発品を国としてオーソライズドし、そして国として普及していく、そのことは即刻できることだし、そして、それで明らかに薬剤についての支出はかなりの規模で減らすことができる。その道をぜひ私は厚生省にすぐ始めていただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  221. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 医療保険で支払う薬の値段につきましては、薬価基準ということで定めておるわけです。これはまさに公定価格であります。しかし、薬の流通、取引、医療機関と卸との取引等々は、これは自由経済市場で動いているわけであります。医療機関がどういう薬を買うかというのは、医療機関のそれぞれの選択、自由意思であります。それを、例えばゼネリックを役所が推奨していく。このゼネリックをつくっているのも、これは民間の企業であります。民間の企業でつくっている特定の商品を推奨していくということは、これはちょっと今の我が国の自由経済の中でとり得ないのじゃないかというふうに私は思いますが。
  222. 児玉健次

    児玉委員 この議論はまた続けてやりますが、大臣、ぜひこれをおわかりいただきたいのだけれども、実勢価格の加重平均というところに着目している、それが今の薬価基準一つのベースになっていますね。そこではなく、薬価を透明にするというとどこに着目すべきかというと、原価に着目をする。原価は、今の日本のさまざまな官庁の強力な調査力などからすれば、これを把握することは困難ではありません。そこのところに着目して、さっき言ったように、合理的なマージン、そして必要な流通経費等を加えて、そして薬価を設定していくということになれば、そうなれば医療保険会計からの薬剤費の支出というのは大幅に減っていく。  そこのところが中心であって、この前、参考人の意見聴取で、一種類について十五円乗せるとコスト意識が出るという問題が出たら、おいでになった参考人の中で、少なくとも直接医療の現場に参加されている医師その他の方々は、異口同音に、患者が薬の処方をするわけではない、処方をするのは医師なんだからそれは的外れだ、こういうふうにも述べていますね。  抜本改革抜本改革といって先送りするのでなく、今すぐできることをやって国民に対する負担増をぐっと軽減し、そして、私たちはこれは押しつけなくても済むだろうと思っているわけだけれども、そこのところに行く一つのささやかな具体案として、今の問題、どうでしょう。
  223. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 今回の患者負担増、また薬剤一種類十五円、この負担というのは、考えてみれば、この負担がなかったから国民負担がないとは言えないのです。それじゃ、今回、現行法どおりすると言ったらば、どこかが、だれかが負担しなければならない。結局、このままがいいと言ったら赤字国債でしょう。すると、また若い人にツケを回さなければならない、若い人が負担しなければならない。  でありますから、だれかがどこかで負担しなければならないということで、今回は、今の赤字国債をこれだけ発行している中でさらに赤字国債発行というわけにはいかぬ、増税もいかぬ、社会保険料負担をこのまままた若い人に押しつけるわけにはいかない、ある程度受益者負担といいますか、患者さんに負担をいただこうというのが今回の案であります。  そして、御指摘のように、薬価の問題、確かにあります。原価計算、この自由主義経済において原価計算が本当に透明にできるかというと、これはまた別問題であります。  私は、統制的な経済と市場経済とどっちが結果的に公正かというと、原価よりも大幅に利益が上がった製品ができると別の企業が同じような、これが高く売れている、これがもうかっているなら、必ずおれたちはもっと安くいい品ができるという自由競争で今の日本経済は発展してきた。いわば企業の競争、参入を阻害しない方が公正な値決めができるのではないか。  現に、同じものでも値段が違うものはたくさんあります。卑近な例で見れば、コーヒーなんて、一杯百五十円のところもあり、千円のところもある。大してコーヒーは違わないのにカップが高級だの、雰囲気がいいので同じコーヒーでも全然、もう何倍も差が、開きがある。  しかしながら、これはコーヒーと薬は違いますけれども、薬においても、こういう薬をつくるのだったらおれたちはもっと安くいい品をつくれるという企業の参入を促すことによって、これから薬価の基準を決める場合も市場の取引に任せよう、同じ薬効があるのだったらば安い薬の方がいいじゃないかというような基準算定ができないか。私は、そういう薬価基準見直しをぜひともこれからしてみたいな、その案をできるだけ速やかに、この法案が成立し次第、厚生省としてもまとめていきたいと思います。
  224. 児玉健次

    児玉委員 コーヒーは極めて趣味的ですけれども、薬の方は趣味で飲むわけでないので……。  それで、もう一つ言わなきゃいけないのは、浪費構造をどうやって国民の立場で民主的に立て直すか、そこが私は急務だと思う。そのことをやれば二兆円を押しつけなくていい。そして、その一つの道が、薬について言えば流通価格、実勢価格に着目するよりも原価に着目して、しかも市場原理を導入すればいいのだから、安い原価でつくれるような競争を保障していく。まあこの議論は続けてやりましょう。  もう一つ私が言いたいのは、議論の中で、医療保険における支出増加が出来高払いに原因があり、包括払いに切りかえるべきだという議論がございます。そのことについて、私は若干触れたい。  このことを論ずる場合、現在既に導入されている包括払い、それがどのような事態を生み出すかということに着目してみる必要があるのだろうと思うのです。その一例として、九〇年四月から実施された老人病院での入院医療管理料です、介護力強化病院等。これまた現場で聞くのですが、どうも最近、介護力強化病院で患者の選別をしている、軽症の方しかお受けしない、そういう声が広がっていますが、どうでしょう。
  225. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 私は直接は聞いておりませんけれども、まさに定額払いなり包括払いをした場合の、そういう格好に流れるとすれば弊害の一つだと思います。
  226. 児玉健次

    児玉委員 それを私は、財団法人医療科学研究所、九六年十一月、「医療と社会」、「入院医療管理料制度の薬剤に及ぼした影響に関する研究」、川渕孝一氏のものですね、これも事前に御連絡をしておりますが、これを拝見していて、川渕先生はA、B、C、Dと四つの病院を例に挙げられているのです。  そして、A病院についてこうおっしゃっているのです。「A病院ではあくまでも座位のとれる患者のみを受け入れ、寝たきり患者は原則として受け入れない。」こう書いていらっしゃいます。  B病院についていえば、「定額制病棟の入院患者の重症度は低く、ADLでみた患者の自立度は高い。これは、当該病棟への入院判定を行う際に、患者の選別が行われていることを示すものである。」川渕氏ははっきり書いていらっしゃいます。  C病院についていえば、「もともと積極的な治療を必要とはしない慢性期療養型の患者が多く入院しており、定額制への移行は診療体制に大きく影響するものではなかったことを意味している。」持って回った言い方ですけれども、積極的な治療を必要としない慢性型療養の患者が多いと。  D病院については、記述がございません。  四つの病院の中で三つがそういう形で選んでいる。ここに定額制の大きな問題がありはしないか。すなわち、月額幾らというふうに丸められたら、そのマルメの範囲でカバーできる患者は受け入れるけれども、そこを抜けてしまう部分についてお断りする。これはまずいですね。やはり出来高払いとの適切な組み合わせが必要だ。出来高払いを主軸にして、それに適切な包括払いを組み合わせていく。  外来でも私は言いたいのです。この前、外総診のことをちょっと議論したけれども、小児科外来包括化で、O157感染の診断治療、これがやはり現場で混乱を生み出しています。そして、ある小児科のお医者さんが、なぜ包括を選ばないかということでこうおっしゃっている。  患者を診断して心音で疑問がある。自分は心臓の専門でない。例えば、循環器の得意な、しかし多少遠方の開業の先生に心雑音の精査をお願いしたとする。しかし、その先生がもし包括制をとっていたらどうだろうか。私としては正直言って紹介を控える。  こうも言っておられるのですね。ここのところが私は包括制の持っている問題点だと思うのですが、いかがでしょう。
  227. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 我が国の医療保険の歴史の中で、いろいろな支払い方、それほど多様な支払い方があったわけではありませんけれども、最初のころは医師会との団体請負契約から始まりまして、今日までずっと来ている中で、現物出来高払いだけの支払い方では、単に医療経済という面だけじゃなくて、患者さんの治療あるいは患者さんのQOLなりの向上のためには、包括なり定額というような支払い方の方が望ましいのではないか。それは病院の機能によります。そういうふうな形で導入されたのが定額払いであり、包括払いである。また、例えば老人保健施設とか療養型病床群とか、そういったそれぞれの新しい機能を持たせた病院、病棟だと思います。  そういう中で、少なくとも大部分の医療機関は、本当に患者さんのQOLの向上のために最善の努力をされていると私は思います。しかし、今お話のございましたような、そういったような問題も全くないわけじゃないというふうに私は思います。しかし、医療というものはまさにマンパワーに負うわけでありますから、人間がいかに、どういう気持ちを持ってやるかということでこれは随分違ってくる。  そういった意味で、私どもとしては、医療に対する国民の信頼というものを高める意味でも、そういうような国民のひんしゅくを買うようなケースというものはあっては困ると思っておりますけれども、私は、大部分の先生方はそういうことはないと思っています。  ただ、そういうことが起こるのが、定額払いなり包括払いにした場合に、それが余りにも低い水準であるために相当無理をされてそういうふうなことにならざるを得ないとすれば、それはまさにその水準の決め方の問題だろうと思います。私は、定額払いと包括払い、これは確かに医療経済という面における効果というものも無視できませんけれども、やはり基本に据えるべきことは、必要なものは支払う、しかし、それだけのものは医療機関もサービスをきちんとする、これがないと、また、これを前提としない限りは、どんなやり方をやってもいろいろな問題が出てくると思います。
  228. 児玉健次

    児玉委員 この点もこの後議論していきたいのですが、最後の質問なんですが、やはり出来高払いというのが戦後の皆保険制度と相まって日本医療水準を支えている中心的な柱だったと思うのですね。診療報酬にはこれが最高というものはないでしょうから、ベターなものを選んでいかなければいけないのだけれども、出来高払いを主軸にしながら、包括払いが持っている医師の自由裁量権に対する制約、そしてコスト意識の導入と言いつつ、結局、費用の削減に目を奪われて粗診粗療につながる危険性が強い。  アメリカのDRGについて、PPSと組み合わせてというこのレポートを見ていると非常に興味があるのですけれども、どういうチェックをするかというとき、入院後六週間以内の死亡率がどうなっているか、再入院率はどうか。出来高払いだったらこんなことをチェックしませんよ。これはやはり包括払いの持っている問題点ですね。その点について伺って終わりたいと思います。
  229. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 出来高払いについても欠陥があると言われておりますように、包括払いが、これがもう万全であるということはないと思います。やはりそれぞれの疾病に応じて、あるいは病院機能に応じてふさわしいものがあるのだと思います。ですから、そういった意味で、その陥りがちな欠陥を是正するような仕組みというものをどうやって一緒にかませていくか、やはりこの知恵だと思います。
  230. 児玉健次

    児玉委員 それじゃ、原価を後ほど届けていただくことを期待して、終わります。
  231. 町村信孝

    町村委員長 次回は、来る三十日水曜日午前十時二十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十六分散会