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1997-04-23 第140回国会 衆議院 厚生委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月二十三日(水曜日)     午前九時開議 出席委員   委員長 町村 信孝君    理事 佐藤 剛男君 理事 住  博司君    理事 津島 雄二君 理事 長勢 甚遠君    理事 岡田 克也君 理事 山本 孝史君    理事 五島 正規君 理事 児玉 健次君       安倍 晋三君    伊吹 文明君       江渡 聡徳君    奥山 茂彦君       阪上 善秀君    桜井 郁三君       下村 博文君    鈴木 俊一君       田村 憲久君    棚橋 泰文君       根本  匠君    能勢 和子君       桧田  仁君    松本  純君       青山 二三君    井上 喜一君       大口 善徳君    鴨下 一郎君       坂口  力君    福島  豊君       桝屋 敬悟君    矢上 雅義君       吉田 幸弘君    米津 等史君       家西  悟君    石毛 鍈子君       枝野 幸男君    金田 誠一君       肥田美代子君    瀬古由起子君       中川 智子君    土屋 品子君       土肥 隆一君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小泉純一郎君  出席政府委員         厚生政務次官  鈴木 俊一君         厚生大臣官房長 近藤純五郎君         厚生省健康政策         局長      谷  修一君         厚生省保健医療         局長      小林 秀資君         厚生省薬務局長 丸山 晴男君         厚生省保険局長 高木 俊明君  委員外出席者         文部省高等教育         局医学教育課長 寺脇  研君         厚生委員会調査         室長      市川  喬君     ――――――――――――― 委員の異動 四月二十三日  辞任        補欠選任   大村 秀章君    棚橋 泰文君   嘉数 知賢君    下村 博文君   家西  悟君    金田 誠一君   石毛 鍈子君    肥田美代子君 同日  辞任        補欠選任   下村 博文君    阪上 善秀君   棚橋 泰文君    大村 秀章君   金田 誠一君    家西  悟君   肥田美代子君    石毛 鍈子君 同日  辞任        補欠選任   阪上 善秀君    嘉数 知賢君     ―――――――――――――  本日の会議に付した案件   健康保険法等の一部を改正する法律案内閣   提出第三六号)      ――――◇―――――
  2. 町村信孝

    町村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鴨下一郎君。
  3. 鴨下一郎

    鴨下委員 おはようございます。大臣、早朝から大変御苦労さまでございます。  きょうは、質問の冒頭に、ここ数日、マスコミ等報道されておりますクロイツフェルト・ヤコブ病のことについて、まず質問をさせていただきたいと思います。  九六年の五月に、厚生省は、ヤコブ病研究班設置して、過去十年間の発生状況調査しました。そのときに、八月の結果として、ヤコブ病のうち二十八人が、実は輸入した硬膜を移植した患者さんが感染をしている疑いが強い、こういうような研究班報告を受けたというふうな報道がありました。厚生省はそのときに、硬膜をドイツから輸入した業者説明を聞きまして、現在は滅菌処理がなされて安全と考えられると判断して特別な対策をとらなかった、しかし、九七年三月、本年の三月の末にWHO報告をしまして、二十四―二十六日の専門家会議の中で厚生省とは反対の見解が示されて、移植用硬膜を使用しないようにというような緊急の勧告を受け、それを受けまして厚生省は、三月二十八日になって急速回収命令を出すというようなことになった、こういうような報道がありました。  これにつきまして、まず事実であるのか、もし事実であるとすれば、例えば研究班を九六年五月に設置したときの趣旨と、そして、それに伴って報告を受けたわけですけれども、その報告を受けた後になぜ緊急に対応しなかったのか、このことにつきまして御見解をいただきたいと思います。
  4. 丸山晴男

    丸山政府委員 今先生お尋ね研究班設置につきましては、昨年、イギリスで狂牛病由来の新変異性ヤコブ病症例が当時十例ほど発見されたという報道がされまして、それを受けまして、職が国におきますヤコブ病についての緊急調査が必要だということでスタートしたわけでございます。その調査の過程におきまして、輸入によりさすヒト乾燥硬膜移植手術を受けた方の中で発症患者の数が二十八例、あるいはそのプラスアルファということで出てまいりまして、ヒト膜移植ヤコブ病発生との関係について関心が持たれたわけでございます。  これにつきましては、その後に、十年ほど前でございますが、アルカリ処理というヤコブ病発生の原因となる病原物質を不活化する処理工程が導入をされておりまして、一規定のナトリウム溶液に一時間処理するということで不活化されるということでございます。これにつきまして、ハムスターによる動物実験等がありまして、アルカリ処理されたヒト硬膜につきましては臨床的には安全である、こういう見解といいますか評価がされ、ただし、アルカリ処理を導入する以前の製品使用しないことが望ましいということで、既に使用期限は切れておりますけれども、情報提供をするとともに、医療機関にないことを確認させる必要がある、こういったような指示を受けまして、その後、その硬膜の利用状況といいますか、使用関係確認し、その時点におきましては、当然でございますけれども、アルカリ処理されない硬膜はないということが確認されました。  そういうようなことを受けまして、さらにその後、中央薬事審議会関係部会におきましても同じような議論をいただきまして、現在のデータプロセスあるいは製造メーカーからの説明による限り、不活化処理をされておるヒト乾燥硬膜は臨床的には安全と考えられるけれども、今後さらに安全性を高めるために、ドナー選択強化あるいは移植例追跡調査実施、必要な情報収集に努めることが必要である、こういったような結論をいただいてきたわけでございます。  その後、本年三月二十四日から二十六日までの、お話がございました、WHOにおきます十五カ国五十名のヤコブ病専門家の会合におきまして、世界的に症例が蓄積されたという疫学的な評価に基づきまして、アルカリ処理されたヒト乾燥硬膜につきまして、これは当然ですが、硬膜移植に代替する治療法があるということを踏まえて使用をしないようにといった勧告がなされました。その後、全国の病院診療所に、使用しない旨の緊急連絡をファクスでいたしまして、また、輸入販売業者に対しまして出荷停止回収を行うように緊急命令を発したというところでございます。
  5. 鴨下一郎

    鴨下委員 事実関係はそうなんでしょうけれども、そうしますと、ヤコブ病研究班設置目的は、むしろ狂牛病からの発症があり得るというようなことを含めた目的だったわけですね。
  6. 丸山晴男

    丸山政府委員 さようでございます。  我が国では現在、英国で発見されたような狂牛病由来の新変異性ヤコブ病患者発症確認されないという調査結果になっております。
  7. 鴨下一郎

    鴨下委員 そこで疫学調査をしたら、いわゆる硬膜移植ヤコブ病が発生しているというようなことの因果関係がある程度わかってきたというようなことだったのでしょうけれども、結果的に今年のWHO勧告を受けて緊急の回収命令をした、こういうことであれば、その後の対応なんですが、例えばこういうようなヤコブ病発症し得る硬膜を輸入していた業者が悪いのか、それとも厚生省監督責任があったのか、それから、二十八人というふうに言われていますけれども、現実にはもっと多いようなことも伺っておりますので、こういうような方々に対する今後の対応をどうするのか、このことについてお伺いをいたします。
  8. 丸山晴男

    丸山政府委員 緊急調査班の第二次報告によりまして、四十三人の、ヤコブ病発症者の中でヒト乾燥硬膜移植手術を受けた方がおられるということが判明し、うち一例は手術発症の間に時間が短いことから硬膜移植との関係がないというふうにされまして、結局、四十二例の方につきまして硬膜移植との関係があるのではないかといったような報告でございます。  このうち、一九八八年にアルカリ処理という病原菌の不活化処理工程が導入された硬膜の供給が始まりましたが、その供給が始まる前に手術を受けた方が四十例でございまして、残る二例の方につきましては一九八九年それから九一年、それで一九八九年の方は、残念ながら、回収漏れといいますか、医療機関にあった、アルカリ処理されない、不活化処理されないヒト乾燥硬膜を使った手術をされたようでございます。九一年に手術をされた方につきましては、アルカリ処理された硬膜を使われたのか、あるいはアルカリ処理されない硬膜を使われたのか、いまだ不明でございます。  今後の対応につきましては、特に八九年の手術を受けた方から、国や製造輸入販売業者病院等に対する訴訟も提起されておりますので、国といたしましては、事実関係を解明しながら対応してまいりたい、責任を持ってきちんと対応してまいりたいと考えております。
  9. 鴨下一郎

    鴨下委員 HIVのときの非加熱製剤と同じ轍を踏まないように、緊急かつ慎重に、素早く対応していただきたい、このことをお願い申し上げたいと思います。  次に、先般、私が質問の中で、医療費の中で薬剤費の割合が非常に多いというようなことを申し上げました。厚生省は、薬価を切り下げしていっているにもかかわらず全体的な薬剤費は下がってこない、こういうようなことで、その要因としては二つある、一つ薬剤の全体的な使用量が増加している、もう一つは高薬価新薬シフトが働いている、この二つが大きな要因でなかなか薬剤費が下がってこないのだ、こういうようなお答えをいただきました。  それでは、なぜ高薬価新薬シフトになっていくのかというようなことなんですが、私は、その先般の質問の中でも、例えば抗生剤のようなもの、これが用法、用量が変化して、薬の剤型が多少変わったものが新薬として高い薬価がついてまた再登場してくる、いわゆるマイナーチェンジの薬があたかも新薬のような形で登場してくる、こういうようなことについて質問をしたわけでありますが、このマイナーチェンジ新薬薬価決め方そのものに問題があるのではないか、こういうふうに考えているわけですけれども、いわゆるマイナーチェンジ新薬薬価決め方そのものについて厚生省はどうお考えになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  10. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 新薬薬価決め方ルールでありますけれども、これは、中医協において御議論いただきましてこのルールを決めていただいておるわけでありまして、それは、類似薬がある場合には、類似薬効比較方式といいますか、類似薬効比較して新薬値段を決めるというやり方一つであります。それからもう一つは、類似薬がない場合、これは原価計算方式ということで、原価計算に基づいて新薬値段を決めております。  ただいまのような形で新しく出てきた場合は、これは類似薬効があるケースというふうに考えられますから、そういった意味では、この類似薬効を選定いたしまして、そしてそれとの比較の上において薬価を決めておる、このようなやり方をさせていただいております。
  11. 鴨下一郎

    鴨下委員 類似薬効比較方式の中の類似薬効比較する場合、どういう基準でその対照薬といいますか、それを選ぶことになっているのですか。
  12. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 対照薬の選び方でありますけれども、これは、薬価基準に既に収載されているいわゆる既収載品目、この中から、効能あるいは効果、これを基本にしまして、主要な薬理作用それからまた化学構造、いわゆる成分とか組成ということになろうと思いますが、こういった面から見て類似した品目を選定する、こういうようなやり方でやっております。
  13. 鴨下一郎

    鴨下委員 それはメーカーが選ぶのですか、それとも行政側が選ぶのですか、その類似薬効
  14. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 薬価を定めておりますのは、これは公定価格でありますから、そういった意味では、これは行政サイドが選定し決定するわけでありますが、現実には、メーカーがそれぞれ希望薬価というようなものを出してまいりますから、そういった中で、メーカーサイド自体もこの薬とおおむね同じような価格というものを希望するというようなことで、メーカーサイドもそういうような意味ではそれぞれ選定をして申請してくるというケースがほとんどでありますけれども、決定いたしますのは、これは役所サイドでそれを決定する、こういう形になります。
  15. 鴨下一郎

    鴨下委員 ここに「希望薬価申請資料」というのがありまして、これは薬効比較方式の場合の申請資料の書式なんですが、その中にメーカーが幾つか類似薬効の薬を例示して、この薬は一日の薬価がこのくらいだ、だからそれに見合う薬価はこのくらいで希望しますというような、こういう申請書を出すことになっているのですけれども、これは事実ですか。
  16. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 そのようなやり方をさせていただいております。
  17. 鴨下一郎

    鴨下委員 そうしますと、例えば先ほどから申し上げているようなマイナーチェンジをして、我々から見れば決して新薬とは思えないような薬についても、こういうふうにメーカーの方が、あたかも、所要のプロセスを経て、新薬でございますというようなことで申請してきた場合に、この薬価についてはどういうような行政側の言ってみれば判断評価というのがあるのでしょうか。
  18. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 まず、新薬かどうかという問題があるわけでありますけれども、これは薬事審議会の審査をクリアしたものが出てまいります。そういった意味で、まず薬事審議会において新薬ということで認められたものが保険適用申請に上がってくる、こういう形になるわけでありまして、そういった意味で、新薬かどうかというのをメーカー判断するということではありませんで、所定の審議会の手続を経たものが新薬という形で認められ、そしてそれが今度は医療保険の方の収載申請になってくる、こんなふうな段取りになります。
  19. 鴨下一郎

    鴨下委員 なぜこういう質問をしているかといいますと、結果的に本当にささいなマイナーチェンジで、いかにも新薬というような形で登場してくるものですから、ある種、厚生省の方は、薬価を切り下げてできるだけ薬剤費を減らそうという努力は片やしているのですが、片一方では、使えなくなった薬を少しマイナーチェンジしてまた新薬としてこういうふうに申請してくれば、それなりの評価を受けないで、厳しい評価を受けないでまた高い薬価の薬が市場に出てきてしまう。こういうことを際限なくずっと、ここもう十年、二十年やっているわけですから、この辺について、何らかの歯どめをしていかないと、幾ら頑張っても、薬価差を幾ら切っても、最終的に新薬というような形での登場というのはなかなか防げないだろう、こういうふうに私は思っているので、その点についての厳しい評価というのをどういうふうに下していったらいいのか、この辺についての考えをいただきたいと思います。
  20. 丸山晴男

    丸山政府委員 お話でございますが、製剤的に工夫をしたりして新薬になるという事例につきまして、これは有効性とか効能効果既承認医薬品と同じでありましても、例えば製剤的な工夫をいたしまして、経口薬経皮吸収剤とすることによりますと副作用の軽減が図れる、あるいは徐放性製剤、ゆっくり効いてくるということで逆に投与回数を減らせる、あるいは剤型を新しくしまして患者の飲み忘れを防ぐといったような改良がされるようなものにつきましては、医療上のメリットが審査されまして、新医薬品として承認をされているというところでございます。  一般に、いわゆる先発薬に対しまして少し改良した医薬品供給といいますか、製造承認というプロセスにつきましては、経過的に見まして、例えば同時期に数社の開発がされまして、それが最終の治験が終わりまして承認申請に至る時期がその数社の間でずれてきたということで、ほぼ同じような医薬品ではございますけれども、いわば先発メーカーとしての承認申請をするというケースが間々ございます。  それから、類似薬につきまして、ある意味先発だけを承認する、要するに一社の製品だけを承認するのが妥当かどうかという問題につきましては、安定供給という点からしますと、ある程度の医薬品については何社か、要するに数種類の医薬品の併存が望ましい。また、それが同時に、ある程度の適正な競争によりまして価格上のメリット薬価の引き下げということも出てくる。そういったようなこともありまして、その先発医薬品一社あるいは一種類だけの承認が最もベストだというところには必ずしもいかないのだろうかというふうにも考えております。
  21. 鴨下一郎

    鴨下委員 私たちは、今、いかに医療費を減らしてむだ遣いを減らして、結果的に患者さん、そして国民負担を減らしていこうか、こういうような議論をしているわけでありますから、むだな薬が余計に入ってくるというようなことは避けなければいけないことなんですよ。ですから、そこの仕切りをきちんとしていただかないと。だって、現実には、私は八兆円の公共事業だと言っているのですが、八兆円の公共事業がちっとも減ってこない。結果的に、それはメーカーが、非常に収益率の高いメーカーが多い、ほかのところから比べたら株価だって下がらない、そういうような形で、ある種の保護されているような製剤メーカーがたくさんあるわけです。ですから、そこにお金が流れるのではなくて、国民負担を減らすためにどう工夫するのか、このことの観点新薬考えていただきたいと思うのです。  原価算定方式類似薬効比較方式二つの方法があると思いますが、先般、同僚の岡田委員質問をした中にもお答えいただいているのですが、この原価算定方式類似薬効方式二つ新薬がどんな比率でここ五年間ぐらい出てきているのかということをお答えいただけますか。
  22. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 平成四年五月から平成九年二月の約五年間をとってみますと、成分数で二百十四成分品目数で四百十品目新薬薬価基準に収載されております。  その中で、類似薬効比較方式によって算定されました新薬が、成分数では百八十八成分品目数では三百八十一品目ということでございます。率で見てみますと、成分では約八七・九%、品目では九二・九%が類似薬効比較方式で算定されたものでございます。残りの、原価計算方式により算定された新薬は、成分数で二十六成分、一二・一%、それから品目数で二十九品目、七・一%、このようになっております。
  23. 鴨下一郎

    鴨下委員 今までの議論の中で、いわゆるマイナーチェンジの薬は類似薬効比較方式で出てきた新薬だという、必ずしも全部がそうとは言いませんが、多くはそういうことなので、ここら辺の、九二・九%もあるマイナーチェンジもしくは非常に近い薬効のものが市場に既に出回っているようなものについては、行政として入り口を多少狭くしませんと、いつになったって薬剤費は減ってこない、こういうようなことを指摘させていただきたいと思います。  それからもう一つは、今度は類似薬効でなく原価算定方式の方なんですが、これは要するに類似薬効がないということですから、画期的新薬が多いということでよろしいのですか。
  24. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 必ずしもそういうわけではありません。要するに、先ほど申し上げたような薬理作用成分等々が類似したものが適当なものがないということでありまして、原価計算方式で算定されるものが画期的なものばかりであるというわけではございません。
  25. 鴨下一郎

    鴨下委員 原価算定方式の中では研究開発費だとか何かがその中に入ってくるのだろうと思いますけれども、今回、厚生省GCP、要するに治験やり方について非常に厳しく、まあ厳しくというか、今までは多少甘かったものですからむしろ欧米並みにしたわけでありますが、これは結果的に研究開発費、もしくは、例えばフェーズⅡ、フェーズⅢをやっていくときに脱落していくケースもふえてくるわけで、結果的に歩どまりが悪くなるということも含めて、研究開発費がかさむということにもなりかねないのだろうと思いますけれども、その辺については私の考えでよろしいのですか。
  26. 丸山晴男

    丸山政府委員 治験実施基準GCP基準につきましては、この四月から、人権保護の点あるいはデータ信頼性向上を図る観点からの強化がされております。  したがいまして、一つ一つ症例について見ますれば、治験にこれまで以上の時間やコストがかかるという面もございますけれども、他方で、今お話しのフェーズⅡからフェーズⅢへの段階での脱落というのは、実は開発企業にとりましてはなかなか判断のしにくい問題で、ややもすれば開発見通しのないままフェーズⅢに持っていく可能性もあるわけですけれども、逆に、今回、治験実施段階からの相談体制を確立いたしまして、開発の将来性につきましても比較的率直な相談をしていくということによりまして、むしろ早い段階から医薬品開発見通しを立てるというメリット考えられます。  それから、我が国では一つ施設での症例数が少なくて、大変数多くの医療施設の参加を得て治験実施されておりますけれども、これは統計上の確認という点でいきますと評価均一性確認が困難であるということで、我が国治験が少し水準がいかがかという問題点として指摘をされておりますことから、今後はより少ない施設必要症例数を確保するということで、二重盲検試験におきましても、統計処理が可能な対応をしていくということによりまして、必ずしも数多く症例を集めなくても対応できる、こういった面がございます。  また、現在、海外における治験相互利用といったような議論も進んでおりまして、国際的に通用する治験実施することによりまして、海外における再度の治験を行う必要が減ってくるということでのコストの節減ということも期待ができるわけでございます。  したがいまして、GCP基準強化によりましてコストがかかる面もある反面、コストを節減できるという面もございまして、必ずしも一概に大幅にコストが上がるだろうというふうには考えておらない状態でございます。
  27. 鴨下一郎

    鴨下委員 国内で開発する原価算定方式ケースについては多少コストがかさむということでいいのだろうと思いますが、私はきょうは、一義的に医療費を削減する意味で、新薬は、画期的新薬は結構なんですけれども、この前の議論にあったように、結核抗生剤ができて圧倒的に結核療養費が下がった、こういうようなこともありますから、いい薬が出れば医療費が下がることもあり得ます。ただ、そうでなく、例えばマイナーチェンジしたような薬に高い薬価をつけるというようなことを際限なく繰り返していれば、これはいつまでたっても国民医療費負担が減らない、このことの論点から申し上げているわけです。  そのときに、メーカーは、今のこの環境の中ですと、とにかく新しい薬をつくらないことには薬価がどんどん下がっていって、損益分岐点を切るような製品がふえてしまえば、それはメーカーそのものの死活問題になりますから、多少開発費のリスクを考えても開発をしていくわけです。結果的に、GCPがきつくなるというようなことはコストが高い薬をつくらざるを得なくなる。そういう意味で、私は、だからといってそれはいけないと言っていないのですよ、そういうときに行政側の窓口を狭くしておきませんと、今までどおりに薬をどんどん認可してしまえば高い薬が必然的に認可されていくというようなことになるので、この辺の仕切りをきちんとしていただきたい。  こういうことで、時間も余りありませんので、大臣、新規参入の薬については、これはかなり吟味しないとむだになってしまうようなことがあるのです。今までごく当たり前にある薬にほんのちょっと変わってたまたま名前だけ違う薬が登場しているだけで、それに高い薬価をつけるということは、国民医療費むだ遣いになる。このことについて、例えば、多少マイナーチェンジで、いかにもメーカー新薬開発しましたよというようなケースについても、これはゾロ新扱いにするぐらいの勇断が必要なんだろうと思います。医療費削減、薬剤費を減らしていくのだというような意味においては、これをやらないとうまくいかないのです。ですから、そのことについて大臣の御意見をいただきたいと思います。
  28. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 薬価の算定基準について、現行制度ではもう限界があるのではないかと、この委員会におきましても各委員から御指摘もございました。今のお話を伺っておりましても、現行方式での価格設定については無理がきているなという感じを持っておりますので、この法案が成立次第できるだけ早く、本委員会等での御議論を踏まえて、根本的な薬価基準の見直し、いわゆる市場取引の実勢にゆだねるという原則に立って抜本的な薬価基準の見直しをするべきだなというふうに感じております。
  29. 鴨下一郎

    鴨下委員 その中で比較行政サイドでやれる話というのが、今言ったように、マイナーチェンジした、あたかも新薬のごときゾロ新について参入規制をするというような、これは行政判断でできるわけですから、ぜひそのことについては厳しくやっていただきたい、このことをお願いいたしたいと思います。  それからもう一つ、今、新薬をつくっていく上で盲点になっているのは、有用性が高いというようなことで新薬が登場するのですが、実は、有用性というのは有効性安全性を総合的に加味して判断するわけです。そうすると、例えば、有効性というのは薬の効き目です。効き目は多少落ちても副作用がないという安全性が高ければ、トータルの有用性という意味ではまあよかろう、こういうような形で新薬が登場してくるのですけれども、医者からいえば、多少副作用のあるような薬の方が効き目はいい、切れ味はいい薬です。ですから、そういう意味で、効き目は悪いけれども副作用のないというのは、これは薬にも何にもならないようなものなんですね。これが実は市場の中で非常に大きく出回ってしまっている。  このことについて一つ典型的な話をさせていただきたいと思うのですが、もういいのでしょうね、有名な話ですから名前も出しますけれども、クレスチンという制がん剤があります。黒い粉薬で、我々がなめてみても何となくぼそぼそしていて飲みにくい粉薬なんですが、これが実は、民間療法でもがんによく効くと言われているサルノコシカケ、あれから抽出した多糖体なんですが、いかにも最初は効くような雰囲気で登場してきて、一九七六年に厚生省の認可を受けて、翌七七年には年商で大体百五十億売ったのですね。そしてその後に、五十四年が三百億、五十五年が四百二十億、その後ふえていって、五十八年が五百十六億、五十九年も同様に五百十六億、六十年も同じです。六十一年が五百二十八億で、次に六十二年が五百十六億。年間に五百億以上ですよ。有用性は高いのかもわからないけれども、クレスチンが効いてがんが治ったという話は余り聞いたことがないのです。  そういう薬なんですが、これは非常に医者の心理を得ていまして、がんというのはなかなかいい薬がありません。ですから、なかなか治りません。だからといってきつい副作用のある薬を使いますと、髪の毛が抜けたり、えらい嘔吐だとか何かがあって副作用が強いというので、どうせ最後まで余り有効な手だてがないのだったらクレスチンでも飲ませておこうか、こういうようなことで爆発的に売れた薬なんですよ。それで、実はその後、再評価を六十二年にしまして、またさらに平成元年にはゾロが出てきまして、結果的に、今は年間で大体七十五億ぐらいの売り上げなんです。  そうやって考えてみますと、私は、これは厚生省が再評価するというのはそれなりに、余り効き目がないということで再評価になったのだろうと思います。現実に、薬の再評価前には、「効能効果」に、「消化器癌(胃癌、食道癌、結腸・直腸癌)、肺癌、乳癌」に効きますということになっているのですが、再評価後は、「胃癌患者及び結腸・直腸癌患者における化学療法との併用による生存期間の延長」「小細胞肺癌に対する化学療法等との併用による奏効期間の延長」と、何だかわけのわからぬ効能になってきたわけですね。  そういうようなことでいいますと、厚生省が新しい薬を認可していくというのは、五百億ものお金が出ていくわけです。例えば、橋だとかダムだとかつくって、そして、ダムにひび割れがあって水がたまらないとか、橋が道路として使えない、車が走れないような道路をつくるようなものなんですよ、新しい薬でも効かない薬というのは。私は、これを厳重に審査をしていかないといけないのだろうと思います。毎年五百億もの言ってみればむだ遣いだったのかどうかはいろいろな学者の議論にまちたいと思いますけれども、薬効評価をもっと厳しくやっていくべきだろうと思いますし、このクレスチンに関して、年間五百億ずつ十年ぐらい使ってしまった、このことについての御意見をいただきたいと思います。
  30. 丸山晴男

    丸山政府委員 制がん剤、抗悪性腫瘍剤につきましては、関係学会の判定基準、それまでの腫瘍縮小効果が二五%以上というものが、昭和六十一年に、腫瘍縮小が五〇%以上でかつ四週間持続というように判定基準の改正がありまして、それを受けまして再評価をしたところでございます。  再評価結果につきましては、今先生お話しのとおりでございまして、乳がん等については有効性確認できず削除し、胃がん等一部の効能については化学療法剤との併用によって有効性確認できるということでございますが、特に、有効性の中で延命効果、生存期間の延長ということが認められましたので、これが再評価結果として、いわば主たる効能効果としての確認をされたところでございます。腫瘍縮小効果という効果というよりも、がん患者の方の延命効果効果的だということが主たる内容でございました。  当時の使用額並びに現在の使用額は、先生お話しのとおりでございます。
  31. 鴨下一郎

    鴨下委員 大臣、今の話を聞いて御所見をいただきたいと思うのですが、薬というのは目に見えませんから、そして、がんの薬というのは、大概の薬は、結果的に、残念ながらがんで亡くなっていってしまうわけで、効いたんだか効かないんだかという評価がわからないうちに皆さんお亡くなりになってしまう。ですから、よほど行政側が目を光らせていないと、効かない薬を使い続けてしまうというようなことにもなりかねませんので、五百億使っていたというようなことについての所見をいただきたいと思います。
  32. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 難しい問題だと思いますが、毒にも薬にもならない薬というのはやはりあるのじゃないですかね。精神的に安定する、これを飲んでいると何か効くような気がするという薬も中にはあるのじゃないか。  医者にしても、決して効かないわけじゃないということは、効いているともとれますし、もともとこの薬を投与していなかったら生存期間が短くなったのだけれども延びたとか、そういう理由もあると思えますし、どの程度本当に効く薬か、効かない薬か、医者の中でも、がんになって薬を飲む必要はないと言う人もいますから、その辺はもう専門的な判断、専門家に任せるしかない。  しかし、そんなに効かないけれども悪いこともないということで、こう伸びていったのだと思いますけれども、そういう点も含めて、この薬価基準を見直さなければいかぬなと考えます。
  33. 鴨下一郎

    鴨下委員 厚生大臣のお言葉とも思えないような、毒にも薬にもならない薬もあってもいいのじゃないかと。そのとおりなんですけれども、特に、高い薬価のついている薬の方が、プラシーボ効果といいまして、偽薬効果はあるのですよ。ですから、この薬は高くていい薬だよと言うと、何の効果もない薬でも、七割ぐらいの人が効いたような気がするのです。  これはそうなんですが、ただ、私たちは、医療費をどうしようかというような議論をしているわけですから、それはそれぞれのお医者さんの能力と判断に任せればいい話で、効かない薬を市場にのさばらせておく、このことについては、厚生省は厳に監視をしていただきたいというふうに思います。  もう一つ、高額医療費の問題について伺いたいと思います。  最近、健保連からの報告の中で、一カ月に二百万円以上かかった方々は、七五年度には二百三十八件にすぎなかったが、その後は年を追うごとに急増して、八七年には一万件を超えて、九三年には二万件を超えて、九六年度は過去最高の二万九千件に達した、この中でも、一千万円以上の超高額医療費が六十七件あった、さらに、五百万円以上の件数も大幅にふえて、医療費の高額化の傾向がより顕著になった、こういうような報告をされているわけですね。  その高額医療費のベスト百をずっと眺めてみますと、一つは緊急の循環器疾患の手術だとか何かなんですが、もう一つは白血病、それから、がんの末期の患者さんの治療に当たっているわけで、この高額医療費が非常に高くなってきた原因の一つとして、終末医療をどうするのか、いわゆるターミナルケアをどうするのかというようなことの議論をきちんと深めていかなければいけないのだなと思います。  とかく専門病院の若いお医者さんたちは、ある意味で、もう回復の見込みのない終末期のがんの患者さんに対しても、非常に攻撃的な、いわば九回裏の奇跡の逆転をねらったような治療を続けていって、その結果、だれも幸せにならない。患者さんは、副作用であえいで、苦しんで、尊厳を失って、さまざまな管を体じゅうにつながれて、そして医者は、そういうような治療をするのが至上命令だというふうに思って頑張る。家族は、こんなに医者が一生懸命やってくれるのだから、患者さんはもうぼろぼろになっているのだけれども、先生、もうやめてくださいと言えない状況で、ただただおろおろする。そして、結果的に医療費だけが非常にはね上がる。こういうようなことにもなっているわけであります。  私は、その辺のところを、これからの医療の中では、がんで亡くなる方というのは大体十八万人から十九万人ですか、そのくらいいらっしゃるわけで、そういうような方々に対して最後まで回復を願っての治療を続けるというのが果たしていいのだろうか、こういうふうな疑問を常に感じています。いわば、回復を信じて治療するのがキュアですけれども、そうではなくて、苦痛を和らげて、そして、ある種生活の質を高めるようなケアに切りかえる瞬間、そういうターニングポイントというのが治療の中であるのだろうと私は思うのです。それをしませんと、末期患者に対して、えらい薬を投入して、物すごいインテンシブな治療をして、結果的に余りいい結果が出ない、こういうようなことにもなりかねません。  時間もなくなってしまいましたので、一つ二つ、まとめて質問をさせていただきますが、そういう意味で、医学の卒後教育の中でも、キュアからケアへ切りかえるような治療をどういうふうに教育の中に盛り込んでいくのか。  それから、結果的には、緩和ケアに対しての、例えば保険の十分な手当てがないとか、緩和ケアをやっているような人たちに対しての社会的な評価がいま一つだというようなことも含めて、私は、最終的にはどなたも、どんないい治療を受けても寿命は終わるわけですから、そうすると、ある程度、非常に攻撃的な治療をするべきときと、それから、そうでない、むしろその後の生活の質を高めるための治療を続けていく、こういうようなことの切りかえを、厚生省の方も、こういうふうにあるべきというようなガイドラインのようなものを出すべきだと思いますが、その辺についてのお答えをいただきたいと思います。
  34. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 何点かお尋ねがございましたけれども、まず一つは、医師の卒後教育において、末期医療の問題、あるいはキュアからケアというようなことについて、十分教育をすべきではないかというお話がございました。  これは、基本的には先生おっしゃるとおりだと思います。  卒後教育の中でも、末期医療について、精神的なケア、特に身体的苦痛の除去ですとかホスピスの問題、あるいは死への対応というようなことについては研修目標の中にも入れておりますけれども、特に死というものについてどういうように医療従事者として対応していくかというようなことについては、今後とも、卒後臨床研修の中でもできるだけ取り入れていくように関係者にお願いをしていきたいというふうに思っております。  それから、キュアからケアヘのガイドラインというようなことでございましたけれども、確かに先生おっしゃるような意味での、末期がん患者に対する治療というのはそういう観点もあろうかと思いますが、しかし、一律に国がガイドラインを決めるというようなことになじむのかどうか。  私どもとしては、まず、末期がん患者については、苦痛などの緩和あるいは精神的なケアに重点を置いた医療ということをできるだけ推進していく、また、そのためにもしそういう指針というようなことが必要であるならば、当面は専門の医学界等での取り組みに期待をするということがいいのではないかというふうに思っております。  また、緩和ケアの問題につきましては、いわゆる緩和ケア病棟についての診療報酬上の手当てが既になされておりますが、今後、そういうようなことも充実をされていくのではないかというふうに期待をしております。
  35. 鴨下一郎

    鴨下委員 患者さんのQOLを高めるというような意味において、私は、ターミナルのときにどうあるべきかというのは、厚生省がそれなりの指針を示すべきだと思うのです。皮肉な言い方ですけれども、脳死を法律で決めるわけですから、そのくらい強烈なことをやるわけだから、むしろ医学界にそれをゆだねるのではなくて、今局長いみじくも言っていたけれども、ターミナルケアについては医学界に任せます、それで脳死の判定については法律で決めますというのは、これはちょっと論理矛盾だと思います。  ただ、そのことは別として、QOLを高めるという意味において必ず患者さんのためになることですから、ガイドライン等についてお上で決めていただかないと医者は動かないという発想がまだ、小林局長もこの前答弁なさっていた中にありましたので、私はそれをすることが患者さんを安らかに送ることにもなるのだろうというふうに思っておりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。  時間もなくなりましたのでここで終わりたいと思いますが、医療費を削減するというような観点から、そしてなおかつ、患者さんに対して温かい医療を提供するという意味からも、ぜひターミナルについてのあり方、これからさらに詳しくまた伺わせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  36. 町村信孝

    町村委員長 米津等史君。
  37. 米津等史

    ○米津委員 新進党の米津でございます。  私は、まず初めに、社会保障制度の構造改革に取り組む政府の基本的な考え方について御質問をさせていただきたいと思います。  少子・高齢化が急速に進行している我が国においては、医療、年金、介護などに要する社会保障経費が今後も急速に拡大していくことが予想されており、このままでは急増する社会保障経費を国民負担し切れなくなるのではないかというふうな不安が現実のものとなっております。社会保障制度を維持発展させていくためには、その基礎となる財政基盤が必要不可欠であり、その基盤を確かなものとするためには、大胆かつ抜本的な改革を実行することが必要であります。  そこで、昨年十一月十九日に、社会保障関係審議会会長会議において、「社会保障構造改革の方向」が取りまとめられました。この中で、「社会保障の役割を再確認しつつ、二十一世紀に向けてその構造を見直すべき時期にきており、今後、国民の合意に基づく選択の下、社会保障構造改革を着実に進めていく必要がある。」というふうに指摘されております。  ところが、今回、政府から提出された健康保険法等の一部を改正する法律案、これは社会保障制度の構造改革からはほど遠いというふうに思わざるを得ません。  そこで、お伺いいたしますが、今回の改正を行わず、現行の制度のまま継続した場合、政府管掌健康保険、組合管掌健康保険、国民健康保険、この平成九年度の財政収支はどのようになるのか、お伺いしたいと思います。
  38. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 今回お願いしております医療保険制度の改革の位置づけでありますが、これはまさに先生今御指摘いただいたとおり、二十一世紀に向けて社会保障制度を根本的に改革しなければいけない、その大きな柱が年金であり、医療保険制度である。この医療保険制度の抜本的な改革、これは避けて通れないわけでありまして、そういった意味で、私ども、抜本的な改革に取り組んでいくということを前提に考えておるわけでありまして、ただ、現下の医療保険制度の財政状況、これが非常に窮迫しておるものですから、まず最初に医療保険制度の財政の運営を安定化させる、これが何よりも緊急であろうということでございまして、そういった意味でこのたびの改正をお願いしておるわけであります。  そこで、お尋ねの、今回のこの改正を行わずにいた場合の各制度の財政がどういうふうな状況になるかということでありますけれども、平成九年度で試算いたしますと、この改正法は平成九年の五月実施ということでお願いしておりますが、仮にこれを行わなかった場合、平成九年度は政管健保で八千三百十億円ほどの赤字が見込まれるというふうに見通しております。  それから、組合管掌健康保険でありますが、組合管掌健康保険の場合は約千八百からの健康保険組合がございまして、それぞれの健康保険組合の保険料というのはそれぞれの組合で決めるということになっておるわけでありますので、政府管掌健康保険のように一律に決まるわけではありません。  そこで、一定の前提を置いて推計をさせていただかざるを得ないわけでありますが、政府管掌健康保険はこのたび千分の八十二の保険料率を千分の八十六に引き上げさせていただきたいということでお願いしております。この引き上げ率といいますか、八十二から八十六に引き上げるその引き上げ率を組合健保においても同じように引き上げたというふうに仮定しての計算でありますが、現下においては、そこのところは現行のままということでありますから、今のままでいきますと四千五百億の赤字が見込まれております。これが、各健保組合、平成九年度保険料率を引き上げるということがあれば変わってきますが、一応これは現行のままという場合で四千五百億ということであります。  それから、国民健康保険についても、やはり約三千三百の市町村がそれぞれ運営しておりまして、保険料、保険税はそれぞれが決めることになっております。したがいまして、これも現行の保険料なり保険税というものを引き上げなかったとした場合、現行のまま据え置いたという前提で見通しますと、二千六百七十億の赤字ということでございます。  これが制度改正をしなかった場合の大幅な赤字ということで、今の推計をいたしております。
  39. 米津等史

    ○米津委員 ありがとうございました。  それでは、今回の改正を行った場合、政府管掌健康保険、組合管掌健康保険、国民健康保険の財政収支がどのようになるのかということと、また、それぞれの制度が赤字に転落するのは大体何年ぐらいを見込んでいらっしゃいますか。
  40. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 今回お願いしております改正法案、これは九年の五月実施でお願いしておりますけれども、仮に五月実施でこのまま見込んだ場合ということで申し上げますと、政管健保は、平成九年度で約五億円ほどの黒字ということで見込んでおります。  組合管掌健康保険の場合は、ただいま申し上げましたようなことで、政府管掌健康保険の引き上げ率と同じような率で引き上げが全体として行われたというふうに仮定いたしますと、平成九年度で約二千百四十億円の黒字ということで推計をいたしております。  それから、国民健康保険につきましても、政府管掌健康保険と同じような率で全体として保険料、保険税の改定が行われたというふうに前提いたしますと、平成九年度で百八十億円の黒字ということで見込んでおります。  これはあくまでも、保険料なり保険税が、ただいま申し上げましたような形で全体として国民健康保険なり組合管掌健康保険が引き上げが行われたということが前提であります。そこは一定の仮定がございます。  それからまた、赤字にいつ転落をするのかということでありますが、政府管掌健康保険で見てみますと、現在のままでは、平成十年度から五十億の赤字が既に発生をいたします。平成十一年度には二千四十億の赤字というふうに見込んでおりまして、そういった意味で見てみますと、積立金等々をやりくりして何とかしのげる限度というのは平成十一年度までかなということでございます。  組合管掌健康保険それから国民健康保険につきましては、これは、その後、保険料なりをどういうふうな形で手当てしていくかということの関連がございますので、余り正確に申し上げると誤解を生むというふうに思いますから大ざっぱに申し上げますと、組合管掌健康保険の方は、それでもこの両三年ぐらいは一応同じように推移できるのかな、若干保険料を上げるということを前提としますと、今度の制度改正をやれば何とか黒字でいけるかな、国民健康保険になりますと、これは一両年で非常に財政が厳しくなる、こんなふうな見込みを立てております。
  41. 米津等史

    ○米津委員 私も昨年までサラリーマンをやっていましたので、民間会社におりますと、これぐらいの、二、三年ですぐに行き詰まってしまうというふうなことになりますと、抜本的な改革が提案されないと、一般の会社では、常務会ではこういう計画は通らないなというふうなことですので、そうやって考えますと、なるべく早くに抜本的な改革を御提示いただかないと、なかなか国民の方々も御理解いただけないのではないかなというふうに思います。  また、ことしの一月二十七日に、医療保険審議会会長から厚生大臣あての答申書において、  当審議会は、今後の医療保険制度のあり方について、ほぼ二年間にわたり検討を行い、昨年十一月二十七日の建議書において、二十一世紀初頭に目指すべき医療保険制度に向けて、医療提供体制及び医療保険制度全般の総合的かつ段階的な改革を実施すべきであり、その第一段階として平成九年改正を行うよう提言したところである。これに対し、今回の改正案は一部負担や保険料率の引上げなど負担増が中心であり、一時的な財政対策との色彩が濃い。制度の総合的な改革に向けての取り組みが十分でなく誠に遺憾である。 というふうになっております。  同時に、老人保健福祉審議会、社会保障制度審議会それぞれの審議会からも同様の指摘がなされております。  そこで、お聞きしたいのですが、昨年の十一月二十七日の医療保険審議会の建議書を受けて政府で検討を行ったことと思いますけれども、医療提供体制及び医療保険制度全般の総合的な改革についてどのような検討を行ったのか、お伺いしたいと思います。
  42. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 昨年の十一月二十七日に医療保険審議会から建議をいただいたわけであります。その中身を、若干長くなりますが、御説明させていただきますと、これは、全体的な今後の医療保険制度の抜本的な改革、これは医療提供体制、医療保険制度両面にわたる抜本的な改革、その基本的な方向について提言が一つございます。それともう一つ、「平成九年改正について」ということで、まず平成九年に取り組むべきことというのが提言されております。  私どもとしては、これからの医療保険制度の抜本的な改革、これはまさに医療提供体制、医療保険制度両面にわたって、この基本的な方向というものも参考にしながら早急に具体案というものをお示ししていかなければいけないというふうに考えておるわけでありますが、平成九年に改正すべきあるいは取り組むべきこととして医療保険審議会で建議いただいた内容については、これもかなり多岐にわたっております。  大きな項目について申し上げますと、一つには、医療の質の向上と効率化を図るという視点から、医療機関の機能分担と連携の強化、あるいは薬剤使用の適正化等を図る、こういった指摘がございます。それからまた、診療報酬体系の見直しに向けた調査研究等に取り組むことというのがございます。  これらについては、例えば医療機関の機能分担と連携の強化という面につきましては、これは、現在国会で御審議いただいております医療法の改正案がございますが、この中におきましても、かかりつけ医機能を支援するための地域医療支援病院の制度化というものをお願いしております。ですから、そういった意味で、この医療保険の改革は患者負担の引き上げと保険料率の引き上げという格好で負担増を求めるものばかりではないかということで御指摘いただくのですが、そういった問題についても一方で着実に進めさせていただいている面がございます。  それからまた、診療報酬体系の見直しに向けた調査研究等に取り組むことというのがございます。これについては、入院医療費につきまして疾患別の定額払い方式、アメリカではDRGと呼んでおりますが、これを国立病院等において試行するというのを平成九年度に行うことにいたしております。現在、そのための準備を進めておりますけれども、そういった取り組みも行っておるわけでございます。  それからまたもう一つ、これがむしろ今回の法律案に盛り込まれている内容ということになるわけでありますが、医療保険制度の運営の安定化を図る観点から政府管掌健康保険の財政運営の収支均衡、世代間の負担の公平等の観点からの給付と負担の見直しを行うことというのがございます。  ただ、これについては、医療保険審議会の多数意見と申しますか主な意見というのは、老人について、定額でお願いするというよりも定率負担を導入すべきである、それから、薬剤についても、同じように定率負担というふうな考え方を基軸にいたしております。  ただ、今回、私どもが御提案しておりますのは定額負担でお願いしておりますから、そういった面では、医療保険審議会の建議の、むしろ少数意見として書かれている部分を今回御提案している格好になっておりますけれども、しかし、この建議の中で御指摘されている趣旨については、まさに、今回の医療保険改革をお願いしている、これはそれにのっとった形でお願いしているというふうに考えております。  それから、いろいろございますけれども、主なものとしてはそういったものを中心に平成九年は行うべきであるということが書いてございますし、そのほか、全体的に抜本的な改革に向けた取り組みというものを進めていくということをベースとしておりますので、これらを踏まえて、これから我々としては引き続き検討をし、できるだけ早く成案を得て、国民の皆様方の選択、御批判に供したい、このように考えております。
  43. 米津等史

    ○米津委員 医療保険制度の抜本的な改革案を今後速やかにお示しになる場合に、国民にその選択をゆだねるような、そういう柔軟でなおかつ謙虚な姿勢で取り組んでいただきたいと思いますけれども、厚生大臣の御所見を伺いたいと思います。
  44. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 今までの御議論を踏まえ、なおかつ、審議会等の建議もございます。今後、この法案が成立次第できるだけ速やかに、そういう意見、御批判を踏まえて、抜本的な改革案をぜひとも厚生省でまとめて、その案を国民に十分考えてもらう期間をつくりたい。また、いろいろな識者から批判を仰ぐ、そういう場を提供して、じっくりと国民の意見を聞く機会と時間を設けたいと思っております。
  45. 米津等史

    ○米津委員 私は、医療保険制度なり医療のあり方を変革していくためには、まず国民の声を本当に率直に聞いていただくということと、国民負担するだけ負担させられているという感覚を少しでも払拭していく努力が必要だと思います。そこで、医療サービスの質、これを正しく評価するということがまず第一歩ではないかなというふうに考えております。  そこで、お伺いいたしますが、昨日発売の一部週刊誌にも取り上げられておりましたけれども、財団法人日本医療機能評価機構において、病院のどのような機能をどのように評価しているのかということについてお伺いをしたいと思います。
  46. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 財団法人であります日本医療機能評価機構は、医療施設の機能につきまして、学術的な観点、かつまた中立的な立場で評価をするということで平成七年に設立をされております。  病院のどのような機能をどういうふうに評価していくかということでございますが、まず、評価の方法といたしましては、一つは、あらかじめ財団の方が指定をしました事項について病院が作成をしていただく書類に基づいて行う書面審査、それから、評価調査者が病院に出向いて調査をする訪問審査、この二つによって行われます。その結果を最終的にはこの機構の中にあります評価委員会において評価する、それぞれの病院ごとに評価するというものでございます。  具体的に、評価をする内容でございますが、ごく大きな項目で申しますと、一般病院と精神病院二つに分かれますけれども、共通のものとしては、一つは、病院の運営の考え方、特に基本方針ですとか患者の権利の尊重とか職員への教育というような問題。二番目として、地域ニーズの反映という形で、救急医療、他施設との連携といったようなことが十分行われているかどうか。三番目として、診療の質の確保ということで、診療を支える各部門の機能が十分であるかどうか、あるいは安全対策等が十分であるかどうかというような問題。四番目として、看護の問題でございますが、看護ケアの状況あるいは職員の能力開発といったような広く看護全体の問題。五番目として、患者の満足あるいは患者に対して安心が十分に与えられているかどうか、あるいはプライバシーが保護されているかどうかといったようなこと。それから六番目としては、病院の経営状況等でございます。  なお、精神病院については、そのほかに、精神病院におきます患者保護あるいは行動制限などの管理体制を評価するというようなことになっております。
  47. 米津等史

    ○米津委員 それでは、現在までに幾つの病院がその評価を受け、また、その結果が公表されているのかどうか、お伺いしたいと思います。
  48. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 先ほど申しましたように、平成七年にこの財団が設立されまして、七年度、八年度は、今申し上げたような評価項目、それから、評価をどういうふうにやるのかというようなことについて、全国百四十三の病院を対象にしていわゆる運用調査を行いました。  これら百四十三の病院はいろいろな意味で協力をしていただいて、データの収集に協力をしていただいたということでございますので、そういう意味では、この百四十三の病院はまだ正式な評価をしたということではございません。本格的な評価そのものは今年度から行うということでございますので、今年度から新たにスタートをするということでございます。  なお、この結果につきましては、どういうふうな形で公表するかということについてはこの財団において現在検討されておりますけれども、私どもとしては、医療機関の情報をできる限り地域の方に提供していくという方向で検討がされるべきだというふうに考えております。
  49. 米津等史

    ○米津委員 ちなみに、全国の病院数と、それから、これから五年間ぐらいで何病院ぐらい評価をしていくのかというのを、具体的にお持ちであればお聞かせいただきたいと思います。  加えて、アメリカでは手術の成功率や完全治癒率なども医療機関ごとに公表されているというふうに聞いております。日本医療機能評価機構においても、このような点まで踏み込んだ評価を行い、今後、情報公開していくべきだと考えますが、いかがでございましょうか。
  50. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 今のところの予定では、九年度に約二百四十ぐらい、五年間で大体千二百ぐらいの予定をしております。  それから、アメリカでのお話がございましたが、手術の成功率あるいは患者の治癒率というようなことにつきましては、医師が行う医療行為そのものをどうやって客観的に評価するのかという手法が必ずしもまだ確立されていないのじゃないかということで、現在、そういったようなことは、この評価項目の個々の中には、公表するというようなことは考えられていないわけでございますが、こういうようなことについてどういうふうに評価をしていくかというのは今後の課題だというふうに認識をしております。
  51. 米津等史

    ○米津委員 厚生白書にも述べられているように、今後、医療サービスの評価が大変重要になってくると私は思います。したがって、このような評価は公益法人が行うのではやはり限界がありますので、行政権限で行い、行政責任を持って公表をしていくのが適当ではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  52. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 もともとこの評価というのは、昭和六十二年ごろに、病院がそれぞれみずから評価をするということから、いわゆる評価のマニュアルというか項目をまとめまして、それでスタートをした、ただ、どうもやはり自分たちだけではどうかということで、第三者による機能評価をやっていくべきだということで、先ほど申し上げたようなことでスタートしたわけでございます。  そういう意味では、第三者機関として、できるだけ学術性あるいは中立性を保持した形でやっていこうということでございまして、諸外国などでも既にこういうことをやっております。やり方はいろいろございますが、アメリカあるいはオーストラリア等につきましても、いずれも同様な、政府機関ではないところが実施をしているということでございます。  そういう意味で、私どもとしては、役所側が行政権限でこれを一方的に行うということではなく、基本的な考え方としては、病院みずからの努力によって機能の改善をする、それを公益法人が支援していくという立場で進めていくのが適切なのではないかというふうに考えております。
  53. 米津等史

    ○米津委員 医療サービスの質の評価というのは大変難しい課題だと思うのですけれども、ぜひ今後もやっていただかないと、さらなる向上への基本となりますので、積極的に取り組んでいただきたいと思います。  次に、医療サービスの質について御質問いたします。  医療に関する情報公開を求めていく声が非常に多くなってきております。その第一歩がレセプトやカルテの情報公開というふうに言われておりますが、患者本人や家族は、当然、どのような医療を受けたのか、そして、その結果どのくらいの医療費がかかっているのかを知る権利があると思います。レセプトやカルテの情報公開を速やかに実施すべきだというふうに私は考えておりますが、そのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  54. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 まず、レセプトについてでございますが、これは積極的に推進をすべきだという指摘がございます。ただ、一方、がんの告知や何かがされていない場合には慎重に対応すべきじゃないかという指摘もございますので、どういう形で対応することが適切か、その方法も含めて現在検討を急いでいるところでございまして、前向きに取り組んでまいりたいというふうに考えております。  また、カルテの開示につきましては、これにつきましても、患者に対してすべて開示をすべきだという考え方と、病名の告知が患者に悪影響を及ぼす可能性があるのじゃないか、したがって、一律に義務づけをするということには問題があるのじゃないかという考え方がございますが、いずれにしても、カルテ等の内容について患者さんの方に十分に知らせていくということは必要だと思いますので、今年度、このカルテ等の診療情報をどういうふうに患者さんとの関係で活用していくかということについて、検討の場を設けまして検討していくことにしております。
  55. 米津等史

    ○米津委員 その検討をするときにも、医療サービスの質を高めるために、従来までのようなワンパターンな質的向上のための指導ではなく、非常に多様化した患者のニーズに対応できるような質的向上をぜひ図っていただきたいというふうに思います。  そこで、まず、現在進められている国立病院の民営化を含めた再編成についてお伺いしたいと思いますが、現状と今後の方針についてお答えいただきたいと思います。
  56. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 まず、国立病院の再編成について、厚生省当局が考えていないわけではございません。現在やっていることをまず申し上げたいと存じます。  国立病院・療養所は、がん、循環器病等に対する高度先駆的医療、政策医療ですね、それから臨床研究、教育研修の役割を果たすことといたしておりまして、基本的・一般的医療の提供は他の医療機関にゆだねることにいたしております。  このため、国立医療機関として果たすべき役割を適切に遂行できない施設などにつきましては、従来から、再編成の対象として統廃合及び民間に対する経営移譲を進めてきたところであります。  昭和六十一年に実は計画をつくっておりまして、当時、二百三十九の国立病院・療養所がありましたが、これを約三一%減、七十四カ所を減らして百六十五にするという計画で進めております。ただ、統廃合につきましても地域の問題がいろいろありますし、経営移譲にしても、経営を引き受けられるところがないとこれはできません。そういうことから大変難航をいたしております。  そういうことで、引き受けがより有利になるようにということで、この再編成の推進につきましては、昨年の再編成特別措置法の改正によりまして、移譲先の範囲の拡大等再編成を一層推進するための条件整備が図られたところでございます。最近は、その影響を受けましてやっとこの再編成が進む兆しが出始めておりまして、我々としては一生懸命やっておるところでございます。  最近の動きでいきますと、本年の二月に、国立塩原温泉病院を栃木県医師会に移譲することができました。また、国立篠山病院の兵庫医科大学附属病院への移譲については、現在、両者で調整をしておるところでございます。
  57. 米津等史

    ○米津委員 国立病院の民営化を含めた再編成については、単なる財政対策としてではなく、やはり医療サービスの質の向上を目指した部分的な市場原理の導入という観点から積極的に御検討いただきたいと思います。  特に、一般的な観点から申し上げますと、国立病院というのは、例えば一般病院があいている時間帯に通院できない人たちを対象とした、時間帯を少しずらしたような外来診療をしていただくとか、あるいは三時間待ちの診療三分といった状況じゃなく、待ち時間なしの完全予約制を一部で導入するとか、そういったことが非常に強いニーズとしていろいろなところで言われておりますけれども、そういうようなことについての御検討もされていらっしゃるのでしょうか。
  58. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 やはり国民生活水準が非常に上がってきておりますし、また、国民の価値観もいろいろ多様化しておりますから、そういった中で、医療に対する国民の要求というのは大きく変わってきておると思います。それに対して的確に対応していくというのは非常に大事なことであります。もう一方、医療の公共性の問題とか効率性の問題とか、こういった面も見過ごすことができないというふうに思います。  この辺のところの調和を図りながら、どういうふうに適切な医療というものが提供されるべきかということになるわけですが、現在でも、例えば特定療養費制度というような、現行の公的保険の中でもそういう仕組みを導入しまして、患者さんが夜間等の診療時間外、通常の診療時間とは違った夜間等の診療を希望した場合、あるいはまた待ち時間を極力少なくして十分な診療時間を確保するというような場合、これらについては、医療機関のそういう届け出に基づきましていわゆる予約診療、そういったようなものもできるような格好になっております。その場合には、医療機関が特別な料金を患者さんから徴収できるというようなこともやっております。  それからまた、高度先進医療のようなものについては、その基礎的な部分は医療保険で見ますけれども、そこから超えた分についてはそれぞれ患者さんに負担していただくような格好で対応するというようなこと、あるいは特別の病室に入るといった場合には、基礎的なところは保険から出ますが、そこから先については患者さんに御負担いだだくというようなことで、それぞれの需要に応じた多様化というものを進めておるところでありますけれども、この辺は、今後、公的な医療保険制度がどこまでカバーすべきかという問題との関連において詰めていかなければならぬ課題だろうというふうに思っております。
  59. 米津等史

    ○米津委員 ぜひ、身近なところから本当に変わってきたというふうに実感できるような改革を、小泉大臣のリーダーシップのもとに早期に図っていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  60. 町村信孝

  61. 肥田美代子

    ○肥田委員 民主党の肥田美代子でございます。  議題となっております健康保険法等の改正案に関連しまして質問いたします。  御承知のように、議院証言法第四条は、業務上知り得た他人の秘密について宣誓や証言または書類の提出を拒むことができる職業として、医師、歯科医師、助産婦、看護婦などを明記しております。ところが、不思議なことに薬剤師という文字がどこを探してもないのですね。これは驚くべきことだと思いまして、薬剤師さんが患者さんの服用しておられる薬の名前を人に漏らすことが許される、そういうことは到底考えられないわけでございます。そこで、私は、この議院証言法の第四条に薬剤師の三文字を入れていただくべく、議会制度協議会の方にお願いいたしております。  実は、薬剤師が医療の従事者として法律の中に明記されたのもほんの数年前でございます。この国ではどうして薬剤師職能がこんなに軽んじられているのだろうと常々思っておりましたが、このたびの法改正のきっかけになった健康保険の破産状態が実は薬の部分に大きな原因があることが明らかになり、この委員会でも薬に関する議論が沸騰しております。私は、このごろひそかに思っているのでございますが、今こそ薬剤師さん、出番ですよ、もっとしっかりしてください、そういう気持ちでおります。そういう気持ちできようは質問させていただきたいと思っております。  つい最近、薬事工業生産動態調査から算出した医薬品の販売高と医療保険の診療報酬から調査した薬剤費との間に一兆六千億円もの差異が出たという新聞報道がございました。また、厚生省調査でも、五千三百億円の差異があったと発表されております。これは新聞報道でございますが、この巨額の差異が出てくる原因は不正請求なのか誤差なのか、どちらなんでしょう。
  62. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 正確を期する意味で、ちょっと前置きを申し述べさせていただきたいと思います。  平成九年四月十日付の新聞の記事で、「医療保険薬剤費 五千三百億円支払い超過」というようなことが某日刊紙に記事として出たわけであります。そのことであろうと思いますが、これはその前に、実は、ことしの三月四日付のこれも他のある新聞の中で、ある一定の計算方法で計算してみると多額の差額が出るというような、記事といいますか、QアンドAのような格好でありますが、そういったようなものが掲載されました。  そこで、与党で構成しております医療保険制度改革協議会、この中で、この三月四日付の新聞の内容というものはこれが一体どんな計算になるのかということで、そこら辺のところを厚生省としても整理してみてほしい、こういう要請がございまして、厚生省としては、この新聞記事で指摘されているような考え方に基づいて機械的に計算をしてみた、こういうことであります。それがこの四月十日付の新聞に載った、こういうことじゃないかというふうに思います。  そこで、これはどんな機械的計算をしたのかと申しますと、まず、保険給付の薬剤費を推計いたしました。これは、平成七年度の国民医療費の見込み額、これが二十七兆二千億ということで公表しておりますが、これの中で、平成七年社会医療診療行為別調査、これは厚生省で発表しております統計でありますけれども、この中の薬剤比率、これが二八%ということになっておりまして、そうしますと、二十七兆二千億円の二八%ということで、七兆六千億ということになります。この七兆六千億が保険給付の薬剤費であるというふうにまず推計をいたしました。  そこで今度、それじゃ実際に生産額等がどうなっているのかというこっちになるわけでありますが、生産ベースでの薬剤総額というものを調べる必要がある。これは、平成七年薬事工業生産動態統計、これも厚生省で発表しておりますが、これをもとに推計をいたしました。この中に、医療医薬品の国内出荷金額というのがございます。これが五兆五千億円でございます。  さらに、流通過程でのコストとしまして、卸業者のマージン、これを二千二億円というふうに見込みました。これは、平成七年度、社団法人の日本医薬品卸業連合会が調べております売買差益率、これが三・九%程度ということでございますので、それらに基づきまして二千二百億円という卸業者のマージンを計算いたしました。  それからもう一つ、いわゆる薬価差の問題であります。薬価差につきましては、これは、平成八年四月の薬価改定において、その改定率が六・八%、それから算定上の一定価格幅、いわゆるR幅と言っておりますが、これは一一%になりますので、それらから推計しました薬価差率を一七・八%というふうに計算をいたしました。それを掛けてみますと、一兆三千五百億ということになります。  そこで、最初の七兆六千億から、まず生産ベースの薬剤総額である五兆五千億を引きまして、さらに、流通過程での卸業者のマージン二千二百億を引く、それから、薬価差益について一兆三千五百億を引きますと、残りが五千三百億、こういうような数字になったということでございます。  この五千三百億というのをどういうふうに見るかということでございますけれども、これは、私が一々データを申し上げたとおりでございますけれども、それぞれの用途といいますか、目的に応じた各統計資料でございます。そういった意味では、それぞれの目的に応じた統計資料でございます、調査資料でございますから、まず、調査の時期とか調査期間、あるいは調査対象とか、それから、悉皆調査でない場合には抽出率等のいわゆる調査方法が異なっている、そういった問題がございます。それからまた、推計値の誤差というものも必ずしもそれぞれ明らかにはなっておりません。そういった意味では、ただいま申し上げたような機械的な算術計算をするとこの差額が出てまいりますけれども、その差額というものの中身が何なのかというのは、それぞれの個別の目的に沿った調査データを駆使した格好で算術計算をしたものですから、私ども、その要因というのは必ずしも明確に説明することは不可能だというふうに思っております。
  63. 肥田美代子

    ○肥田委員 人の質問をはっきり聞いてほしいのですけれども。私は、経過についてお聞きしたのじゃなくて、この数値をどう思われるかと言ったのですね。そうしたら、最後に、明確にわからないと。それだけのお答えをいただくために、私は五分何秒か損をしましたので、もう一度はっきりお願いします。
  64. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 その前提を申し上げないと、非常にわかりにくいというふうに思ったものですから申し上げたわけでありまして、結論的には今申し上げたようなことでございます。
  65. 肥田美代子

    ○肥田委員 五千三百億円がわからないという答えでいいのでしょうか。私は、それを大変疑問に感じるのです。確かに、いろいろな数値がいろいろなところから出てきたというふうにおっしゃいましたけれども、五千三百億円というのは千円、二千円じゃないのですね。  ですから、これは誤差の範囲とおっしゃるならそれで結構です。そしてまた、不正請求だというふうに何となく感じられているならそれで結構ですけれども、わからないという答えはどうなんでしょうね。もう一度お願いします。
  66. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 こういった数字というのは非常に重要な意味を持ちますから、きちんとした内容がわからない以上は、やはりこれはわからないと申し上げざるを得ないと思います。
  67. 肥田美代子

    ○肥田委員 これ以上やり合っても時間のロスですので、次に進みます。  今回の改正案では、薬剤費負担、一日一種類十五円については、二百五円以下は幾種類使っても一種類とするとされておりますけれども、二百五円以下は記載省略をしている根拠についておっしゃってください。
  68. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 今回の一部負担をお願いするに当たりまして、一日一種類につき十五円ということでお願いをしておるわけであります。この一部負担をお願いする際のやり方としまして、現状の診療報酬における請求のシステムなり請求行為というものを踏まえた形で計算していくというのが最も関係者の間でも理解しやすいということで考えたわけであります。  それで、現在は、一日一剤の薬価が二百五円以下の場合については、これはいわゆる一種類、複数の種類がありましても一種類という形で計算をされております。これは、診療報酬の請求事務の簡素化という視点から、これまで、二百五円以下の場合にはレセプト上は薬剤名と投与量の記載というものを省略することとしている、できることになっているわけであります。  それで、この二百五円以下という二百五円というのは、平成六年四月から二百五円以下というふうになりまして、それ以前は百七十五円以下というようなことになっておりました。これは、平成六年四月の診療報酬改定におきまして、いわゆる多剤投与、この当時は、一回の処方で十種類以上の投薬が行われる場合につきましては、全体の薬剤料を一割カットする、それから処方せん料が減額される、こういったようなルールが導入されまして、一方で、その多剤投与に対する歯どめの措置というものが導入されたわけであります。  現在は、これが十種類から八種類以上の場合ということでバーが高くなったわけでありますが、これについて全体の薬価を一割カットする、こういうふうになっております。さらに、ことしの四月の改定によりまして、処方料についても減額するというルールを導入いたしております。  そういうようなことで、多剤投与の抑制措置を一方でとるとともに、レセプトの請求事務の簡素化という視点も踏まえて、二百五円以下についてはただいま申し上げたような請求方式をとっておる、それに乗っかった形でこのたびの一部負担をお願いしている、こういうようなことでございます。
  69. 肥田美代子

    ○肥田委員 政府のお役人にこういうことを申し上げるのは大変失礼なんですけれども、私が質問したことは、記載省略をしている根拠は何ですか、それだけなんですよ。余りたくさんお答えになっていただいても、私はお尋ねしておりませんので、もう少し簡略にお願いいたします。  一日一剤二百五円以下はレセプトに記載しないでもいいとされているために、例えば五十円の薬剤を二百円として請求することができるわけですね。このところをどうやってチェックしていらっしゃいますか。
  70. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 五十円の薬を二百五円で請求するということは、これはできません。これは、トータルが二百五円以下の薬剤については、先ほど申し上げたようなことで、その薬剤名とか投与量の記載が省略されているということでございます。
  71. 肥田美代子

    ○肥田委員 二十七兆二千億円の医療費の中で薬剤費の占める割合は二八%、七兆六千億円ですね。一日一剤二百五円以下の薬はその中の三六・六%を占めております。七兆六千億円に三六・六%を掛けますと、二兆七千八百十六億円となります。つまり、これほど膨大な薬剤費がノーチェックだということになりますけれども、事務の煩雑さを解消するためという理由だけで、ノーチェックのこの金額は通る数字だと思われますか。大臣、お答えいただけませんでしょうか。
  72. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 現在の医療保険における請求のボリュームなんでありますけれども、いわゆるレセプト、これは件数にしますと、社会保険の方で年間約七億万枚ございます。それから、国民健康保険も合わせますと十一億万枚にも相当します。これを一件一件、内容を審査してお支払いをしている、こういうような格好になっておるわけでありますし、各医療機関もそれぞれ、請求に当たっては詳細な内容を記載して請求するようなシステムになっている。この簡素化というのは、医療保険制度を維持していく上において一つの重要なポイントだろうと私は思います。もちろん、そういった中で不正請求ということは防止しなければいけないことは当然でありますけれども、やはりその辺の調和というものをどの辺で図っていくべきなのかということではないかというふうに思っております。
  73. 肥田美代子

    ○肥田委員 現在、保険財政は、単年度で、政府管掌健康保険が四千九百六十九億円、組合管掌健康保険が千二百二十二億円、国民健康保険が千六十九億円、合わせて約七千三百億円の赤字でございます。この赤字のために患者薬剤の窓口負担を値上げするという法改正でございます。しかし、一方で、これほどの膨大なノーチェックの薬剤費があるということを私は申し上げまして、次の質問に移りたいと思います。  先ほど大変丁寧に説明いただきました新聞の記事の関連でございますけれども、この膨大な薬剤費の一部が医療機関の不正請求ではないかというふうに疑惑が生まれております。これは、私、医療機関にとっても大変に不名誉なことだと思います。  記載省略を廃止すべきであると私は思います。今局長は、事務の簡素化のためにすべきじゃないとおっしゃいましたけれども、これはお互い意見が違うわけですが、大臣はどう感じられます。
  74. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 この膨大な作業量をどうやって細かく一々やればいいのか。一方においては、細かくすればするほど費用にしても大変な額がかかってくる。その点、どうするかというのは、これから大事な検討課題だと私は思っております。
  75. 肥田美代子

    ○肥田委員 我が国の医薬分業は、明治八年の医制でもうたわれ、建前としては法律にも明記されております。戦後の医薬分業の推進は、医師が薬を売って経済的利益を上げることに反発するGHQの医療政策の柱とされ、そのGHQのもとで、一九五一年、臨時医薬制度調査会は、一九五三年から医薬分業を実施するという方針を出し、これを受けて厚生省は、薬事法、医師法、歯科医師法を改正するいわゆる医薬分業法を国会に提出しました。しかし、法案の骨抜きを図る政治的な動きが強まり、一九五五年には、処方せんを交付しなくてもいい場合として、「暗示的効果を期待する場合」など八項目が追加され、強制医薬分業は完全に挫折いたしました。薬剤師法改正でインフォームド・コンセントの義務が課せられる時代にあって、私は、この特例につきましては、むしろこれは逆行するものではないかと思うわけです。  「暗示的効果を期待」という条文はなじむものでないという観点から申し上げるのですが、医師法二十二条のただし書きからこの部分を削除するお気持ちはないかどうか、お尋ねしたいと思います。
  76. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 医師法二十二条に言います「暗示的効果」というものを医療の場においてどう考えるかということだろうと思いますが、患者に一律にその治療内容をすべて、この暗示的効果が期待される場合も話してしまうということであるならば、医療側からも、また患者さんの側から見てもいろいろ不都合な場合があり得るのじゃないかということで、現時点でこれを削除することは考えておりません。
  77. 肥田美代子

    ○肥田委員 G7に参加している国で分業していない国はどこですか。
  78. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 済みません。今御質問がよく聞き取れなかったので、もう一度お願いします。
  79. 肥田美代子

    ○肥田委員 G7の国で医薬分業していない国はどこですか。
  80. 丸山晴男

    丸山政府委員 日本以外ございません。日本では、現在、二割程度でございます。
  81. 肥田美代子

    ○肥田委員 アジアにおいても、台湾、韓国、中国ということになりますが、日本も今、医薬分業が完全にできているかどうかは別の議論がありますけれども、私はやはり、G7の中でこれほど日本がおくれているということについて、大変恥ずかしいと思っております。  それで、厚生省はこれまでの答弁で、医薬分業が進まないのは受け皿がないからだというふうにおっしゃっています。私が先ほど医薬分業の挫折の経過に触れましたが、医師法では、医薬分業を定めながら、ただし書きで法律を骨抜きにしている。明治から数えて百二十年、戦後も五十年間、医薬分業問題に対して常にあいまいな態度をとってきたのは厚生省じゃないかと思うわけです。その結果、薬剤費医療費の三割に膨らみ、国民医療不信が募る結果となっております。医薬分業の受け皿がないのであれば、厚生省責任を持って計画的に受け皿をつくるべきだと私は思っております。厚生大臣も医薬分業は推進すべきだと幾度も答弁していらっしゃいます。しかし、現在の任意分業には限界が来ていると思います。  処方せんが来るのを信じて努力しているA薬局の場合でございますけれども、わずか一日四、五枚の処方せん、金額にして四千円から五千円ですね。その処方せんに応じるために二百種類の備蓄薬を持たなければいけない。一種類一万円としましても二百万円の備蓄薬が必要でございます。先発メーカーの薬は百錠単位、ゾロでも千錠単位ですね。この単位包装を開封しますと返品が不可能になる。そうしますと、有効期限が切れた薬を不良在庫として抱え込んでしまう。病院と特別な関係を結んでいる門前薬局以外は、普通の薬局は、まさにこういう待ちの状態なんですね。  受け皿づくりと処方せん発行は、私は車の両輪だと思うわけです。医薬分業の推進を主張する厚生大臣のお考えを実効あるものにするためには、関係団体や都道府県に対しても処方せん発行の指導をきちっとやっていくべきだと思いますけれども、いかがですか。
  82. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 医薬分業そのものは、厚生省としても推進をしていくべきものということで、従来から関係方面にも指導し、また、その重要性は強調をしてきたところでございます。  この医薬分業の推進ということに関しましては、今回御審議をいただいている医療法の改正の中でも、医療圏ごとに病院診療所、薬局その他の連携を図るということの中で、医薬分業の推進ということをさらに具体的にそれぞれの地域で目標を定めるというような、機能の連携という形の中で目標を定めるというような形でやっていきたいと考えております。
  83. 肥田美代子

    ○肥田委員 厚生省平成元年から国立病院実施していらっしゃる処方せん発行のモデル事業の進捗状況を見ましても、やはり大きな格差が目立つわけです。  それで、国立大学の附属病院についても、きょうは文部省に来ていただいておりますのでお尋ねしますけれども、東大病院の発行数は九〇%ですが、ちなみに阪大病院の処方せん発行は何%ですか。
  84. 寺脇研

    ○寺脇説明員 大阪大学附属病院におきます院外処方せんの発行率は、平成七年度の数字でございますが、二・五%でございます。
  85. 肥田美代子

    ○肥田委員 それは何か深いわけがあるわけですか。
  86. 寺脇研

    ○寺脇説明員 この理由でございますけれども、大阪大学附属病院は、平成五年の九月に、従来の大阪の市街の真っただ中にございました中之島地区から千里の現在地に新築、移転をされたわけでございます。この機会に大型コンピューターを利用いたしましたオーダリングシステムを導入したことがございまして、薬の受け取りの待ち時間が、旧病院のときには薬をお渡しするのに一時間から一時間半ぐらいかかっておったわけでございますが、オーダリングシステムの利用によりまして十分ぐらいで薬をお受け取りいただけるようになったわけでございます。  また、郊外という立地条件、また病院の構内にまでバスが走っておりまして、すぐバスに乗ってお帰りになれるというような状態の中で、患者さんの側から病院で薬を受け取りたいという御希望が非常に多くなっているという結果がこの数字になっておるわけでございます。
  87. 肥田美代子

    ○肥田委員 厚生省にお願いしたいのですけれども、せめて国立病院から、きちっと何年後には何%出しますという数値目標を出していただかないと、先ほど申しましたように、薬局はずっと待っているのです、ひたすら待っているのです。ですから、お願いします、車の両輪の片方の輪をしっかりと回していただきたい。  ですから、今もし御答弁いただけるならば、せめて国立病院から、あとは公立、順々にですけれども、何年後に何%ぐらいにはしたいという厚生省の御意向がありましたら、お話しください。
  88. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 つい先ごろの四月十八日にも岡田委員から御質問がありましてお答えをいたしましたが、目標を完全に実施をしろ、こういう厳しい御意見をいただきまして、その際、厚生大臣から、国立病院は率先垂範して医薬分業を推進していく体制をとっていくべきと考えているとお答えいたしました。  私どもは、大臣がそうおっしゃられているので、もっと力を入れようということで、今モデル病院でやっているところのうち、七〇%やると一応完全分業という考え方をしているのですが、そこに至っていないのが三十八のうち二十九ございます。これに対して、なぜ進んでいないのか、なぜ七〇まで上げられないのかということの調査を、その推進を図るべきだという意味で急速始めたところでございます。その結果と、実際に地域を見てみないとわからない面がございますので、それを見た段階で、もう少し時間をいただいて、数字を出せるよう努力をしてみたいと思っています。
  89. 肥田美代子

    ○肥田委員 最後にいたします。  大変積極的な御意見、ありがとうございました。大臣、それを受けまして、大臣として積極的にやるぞという頑張りのお言葉をいただきたいと思います。お願いします。
  90. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 日本の国民考え方もG7の国とは違いがあると思いますね。どちらかといえば患者さん自身も、お医者さんからじかにもらいたい、また別に足を運んで薬局に行くのも面倒だという考えもあるのだと思います。脳死の問題につきましてもG7の国と日本の国と随分国民性が違うように、お医者さんは、どちらかというと、薬もくれるかもしれないけれども、毒もくれるのじゃないかという欧米人の考え方もあった、そういうところから医薬分業が進んだという話もある人から聞きました。ただ、日本人は、お医者さんは決してそんなことはしない、むしろ薬局に行くよりもお医者さんの手からじかにもらった方が安心だという、非常にお医者さんを信頼している国民性もあるということが、医薬分業が欧米と違ってなかなか進まないという背景にあるのじゃないかという話も聞いたことがあります。  いずれにしても、今、医薬分業を進めていくという体制を厚生省はとっておりますので、できるだけ欧米水準に追いつくように、今後鋭意努力をしていきたいと思います。
  91. 肥田美代子

    ○肥田委員 ありがとうございます。終わります。
  92. 町村信孝

  93. 金田誠一

    金田(誠)委員 国民健康保険に関連しましてお尋ねをいたしたいと思います。  最近の市町村国保の保険料収納率、これは何%になっておりますでしょうか。その収納率が低下していることによって、一〇〇%収納の場合に比べると、金額としてはどの程度に上っているのか、減収額がどの程度に上っているのか、まずお聞かせいただきたいと思います。
  94. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 国民健康保険の平成七年度の保険料及び税の収納率でありますが、九三・三二%でございます。それで、いわゆるその差でありますが、これが約千八百十八億円ということでございます。
  95. 金田誠一

    金田(誠)委員 あらかじめ質問取りのときには申し上げていなかったので恐縮なんですが、もし数字がわかればなんですけれども、市町村で単費で国保会計に補てんをしている、単年度、単年度、補てんをしている部分があると思うのですが、そのトータル金額、御存じでしょうか。
  96. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 法律で繰り入れを義務づけているもの、これは除きまして、いわゆる赤字補てんのような格好で繰り入れている額が、これは平成六年度でございますけれども、これで見ますと二千五百八十五億円という格好になっております。
  97. 金田誠一

    金田(誠)委員 収納率の低下による分あるいは単独で補てんをしている分、合わせますと相当額に上っているわけでございますけれども、この金額のほかに、市町村保険者が被保険者として捕捉できないために保険料を賦課もできない、徴収もできないというのがあると思うのですね。この数はどのくらいに上っていて、その未収額はどのくらいになるかというのはわかりませんでしょうか。推測でもわかりませんでしょうか。
  98. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 これは実際、各市町村の担当職員の方々は非常にいろいろな御苦労をしながら、できるだけ漏れのないように被保険者を把握していく努力をされていらっしゃいます。ただ、それはなかなか限界があるわけであります。  制度論として申し上げますと、市町村に住所を有する方が当該市町村国民健康保険の被保険者ということでございますので、一番難しいのは、当該市町村に住所を有していない方、こういう方が実態上全くゼロということではないと思います。この方は、国保の被保険者とはならないわけであります。現実には、当該市町村の中にそういう方が全くいないかというと、実態上はいらっしゃると思います。  そういうふうなことで、住所を有していないということになりますと、いわゆる住民基本台帳法に基づいた届け出がありませんので、そういった意味では、どの程度いるかという御質問があるということでいろいろ考えてみたのでありますが、国会で申し上げられるような数字というものは、これはなかなか難しいということでございます。
  99. 金田誠一

    金田(誠)委員 私が問題だと思うのは、住民登録しておられない方もさることながら、それより以上に、被用者保険等の資格を喪失して自動的に市町村国保の被保険者ということになるわけでございますけれども、形式の上ではなっていても、現実に届け出をしていない方が一番問題だろうと思うわけでございます。そういう、被用者保険から国保に移ってきて、しかし届け出をしていないがために保険者も把握できない、保険料の賦課もできない、徴収もできないという方の数は推測でも出ているのかどうか。出ていなければ出ていないというお答えをいただければそれで結構だと思いますが、それが一つ。  あわせてお答えいただきたいと思うのですが、被用者保険の被保険者資格を喪失した場合、市町村国保の保険者がその被保険者を捕捉する方法は現在どのようになっていますでしょうか。明確な方法はないと私は思うのですが、いかがなものでしょうか。
  100. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 前段の御質問でありますが、これは結論としては把握しておりません。  後段の方の御質問でありますが、これは実際の実行上の問題としまして、被用者保険の資格を喪失した方、これに対しましては、事業主に対しまして、その喪失者の氏名、喪失年月日等々につきまして記載した連絡票といったものを市町村の方に出していただくような、そういった御協力というものを今お願いしております。これはあくまでもお願いをしているというベースでありますから、制度的には、御指摘のとおり、それぞれの制度がそれぞれ所定の届け出をしていただいて、そして被保険者になる、こういうふうな形をとっております。
  101. 金田誠一

    金田(誠)委員 現行の制度では、被用者保険から資格を喪失して必然的に市町村国保の被保険者になる者について、市町村国保の保険者がこれを制度的に捕捉する仕組みは存在しないという理解をしてよろしいでしょうか。
  102. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 現行の医療保険制度というものをどう理解するかという問題とも絡むと思うのですけれども、これは申すまでもなく社会保障制度ということで、言うならば国民の権利でもあり、また、そこに加入して相扶共済制度としての保険料を納めていただくというのも、これも権利と同時に保険料納付の義務がある、こういうふうな仕組みになっているというふうに思います。  そういった意味では、それぞれの制度につきまして、その対象者となる方についてはその制度を御理解いただいて、そして所定の手続をとっていただく。それは、例えば市町村に対する届け出義務というふうな形で課しておりますけれども、しかし、実際問題としては、国民一人一人の理解と、それからまた、それぞれの見識を持った行動にお願いするということにならざるを得ないのではないかというふうに思います。
  103. 金田誠一

    金田(誠)委員 所定の手続をとっていただければ捕捉できるのは当たり前のことでございまして、お尋ねしているのは、所定の手続をとっていただけなかった場合は、市町村の保険者が当該保険者の本来被保険者となるべき者を適正に把握する仕組みはできていないということで理解してよろしいかということを聞いたわけでして、イエスと言っていただければ結構でございます。
  104. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 ストレートにイエスというふうに申し上げるとちょっと誤解を生じるといけませんので、もうちょっとつけ加えさせていただきますと、基本的には、当該市町村に住民登録をしていらっしゃれば、これは国保の被保険者ですから、住民登録をされている限りにおいては、システム的にはそこのところについてのチェックというのはできる格好になっておると思います。例えば先ほどの被用者保険の資格喪失した方、これもチェックするということが全く制度的にできないというものではないと思いますけれども、ただ、それを実務的にどこまで完璧にやっていくべきなのか、こういう問題だろうというふうに思っ  ておるわけであります。
  105. 金田誠一

    金田(誠)委員 今の制度で、住民登録していればチェックできると。どうやってチェックしますか。一軒一軒戸別訪問して、おたくは政府管掌保険でしょうか、組合健保でしょうか、入っていれば保険証をお見せくださいということでもしますか。そういうおっしゃり方をされても、これは納得できないわけでございまして、そういうことをせいということですか、今の仕組みで住民登録していればチェックできるということは。局長はそういうことをおっしゃりたいわけですか。
  106. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 先ほど申し上げましたように、これは指導ベースというか、それぞれ事業主に対してそういうようなことをお願いしているわけでありますが、被用者保険の被保険者資格を喪失した場合についても連絡票というような形で市町村の方に連絡をしていただく、そういった努力をしておりますので、そういったようなものも含めてお話し申し上げたわけであります。
  107. 金田誠一

    金田(誠)委員 事業主なりにお願いしているのは、いつお願いいたしましたか。いつ、どういうふうにお願いして、その実行はどういうふうになっていますでしょうか。それが実行されているという前提でお答えをされているのでしょうか。その場しのぎのことを答えていただいてもしようがないのではないかと思うものですから、システムとして、制度として、現実に実務面で、市町村国保の保険者が被用者保険から資格を喪失した方を的確に把握するような仕組みにはなっていないということはお認めいただけるのではないですか。
  108. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 制度的にはそのとおりです。それぞれの制度がそれぞれ独立した形でできておりますので、おっしゃるとおりだと思います。
  109. 金田誠一

    金田(誠)委員 当たり前のことを答えていただくのに随分時間がかかったなと思うわけでございますけれども、そこで、そういう状態でいいのかどうかということをお聞きしたいわけでございます。  本来、市町村国保の被保険者であって、保険料が賦課されて保険料を納付しなければならない方が――保険者が一体だれが被保険者か把握することさえできない現在の状態、もちろんそういう状態ですから保険料の賦課もできない。そういう方々が何人いらっしゃって、賦課できない保険料というのがどの程度の金額に上っているか推測さえできないというお答えをいただいたわけですけれども、そういう状態を放置していていいのか。何らかの改善策を検討すべきだというふうに私は思いますが、厚生省はそう思いませんでしょうか。
  110. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 制度的にそこのところをどういう格好で確実に履行できるようにしていくかというのは、一つの検討の課題としてあろうかと思います。  現在のところは、制度的にはそれぞれ独立した制度でありますけれども、実行上の問題として、未加入者の早期適用ということについて努力をしていただいておりますけれども、そこら辺を制度的に完璧に、穴があかないような格好でやっていくことにいい方法があるかどうか。その辺のところはなかなか難しいと思いますけれども、いい方法があればお知恵を拝借いたしたいと思います。
  111. 金田誠一

    金田(誠)委員 これから介護保険、どうなるかわかりませんけれども、導入されれば国保の上に乗っかって保険料徴収がなされる。これから将来にわたってかなりの額になってくるのだろうと思うわけでございまして、そういうときに、だれが介護保険料、保険料も含めて納入をすべきなのか把握さえもできない状態というのは一日も早く改善をしておかなければならないと思うわけでございます。そういう認識は厚生省もお持ちだということは今理解をいたしました。  そこで、担当の方にも何度かお話を申し上げている点が実は二点ございます。こういうシステムをつくる以外に方法はないのではないかということで、私はいつも申し上げていることが二点あるのです。  その一つは、被用者保険の資格を喪失した場合、その被用者保険の保険者に対して、国保の保険者にその旨を通知する義務を課する。例えば、東京都千代田区に居住をしている、被用者保険の被保険者になっている方が会社をやめられた、そして組合健保の資格を喪失されたといった場合は、その組合健保の保険者に、千代田区長に対して何の何がしは何月何日付をもってその被保険者資格を喪失することになったという旨の通知義務を課するということが一つだと思います。  それともう一つは、その通知を受けて、その方が確実に千代田区なら千代田区に国保の被保険者としての登録をするかどうかというのは、これは疑問が残るわけでございますから、確実に千代田区なら千代田区に国保の被保険者として届け出をする、届け出を受理した後に、千代田区長からその組合健保なら組合健保に届け出を受理したという通知をさせる、その時点で組合健保の資格を喪失させる。被用者保険から国保、あるいは国保から被用者保険という形で切れ目のないようなシステムをつくることは、そう難しいことではない、多少の法改正なりで済むのではないか、こう私は思うわけです。  特に、介護保険を目前に控えているだけに、これは急がれるべきだと思うわけでございますけれども、この二点の制度につきまして、いかがお考えでしょうか。
  112. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 先生の御指摘は、介護保険をも念頭に置いた形でその辺のところをきちっと構築してはどうかという御提言でありまして、私ども、まさにそういった問題についてはきちんと検討していかなければいけないというふうに思っております。  ただ、それぞれについてやはり難しい問題等もございますので、十分検討しないといけないと思いますけれども、漏れのないような形でやっていきませんと、とりわけ負担という面で考えますと不公平が生ずる、あるいはまた実際に給付が必要になった場合に受けられないというようなことにもなりかねないということでありますから、そこら辺は、きちっとした制度の仕組みというのを考えていくということは重要であるというふうに考えております。     〔委員長退席、住委員長代理着席〕
  113. 金田誠一

    金田(誠)委員 かねがね、この件については質問もさせていただいておりますし、担当の方にも話をさせていただいているものですから、今回の、保険の制度改正に当たって何らかの手だてがされるのかなという期待を実は持っていたわけでございますけれども、何か介護保険絡みで考えられるのは短期保険証の強化であるとか、そういう視点からの対応だけのようでございまして、大変残念に思っておるわけでございます。  そこで、ただいま問題点については共通な認識に立ち得たのではないかな、こう理解をしたわけでございますけれども、要は、そうしたきちんとした把握が行われなければ、一方では、まじめに被保険者の届け出をして保険料を納入されている方が多数いらっしゃる、こちらの方が圧倒的に多いわけでございますけれども、いわば正直者がばかを見るような、そういう制度であってはならないということもあるわけでございまして、そういう視点も含めてぜひ早急に、法改正になるのか政令等で済むのかわかりませんけれども、しかるべく措置をとっていただきたいな、こう思うわけでございます。  これについて、例えば次期のこうした健康保険法等の改正に向けてそうした措置がとられるという方向などを明確にお示しいただければありがたいと思います。
  114. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 従来と違いまして、介護保険制度というのが導入される、しかも、介護保険制度というのは全国民がかかわる問題でありますから、そういった中で考えますと、先生御指摘のような仕組みというものはやはり非常に重要だろうと思います。  ただ、問題は、これも関係者にとってはかなり手間暇がかかることでございますから、そういった意味で、各保険者あるいは市町村の御理解と、そういったものに対する御要望というか、そういったものが高まることも条件の一つだと思いますし、その点も含めて、私どもとしても今後前向きに検討させていただきたいと思います。
  115. 金田誠一

    金田(誠)委員 最後のくだりがちょっと気になりまして、関係者の要望が高まることが条件だというおっしゃり方でございますけれども、市町村にしますと、この通知がきちっとされることは当然必要なことだと思うわけでございます。  しかし、被用者保険にとってみると、手間暇がかかるということと、今までは、自分の会社をやめられる、任意継続等の手続をとらなければその時点で資格喪失させて終わりだということで、あとは全部国保、すべての受け皿が国保なんですよ。こういう国保は、私に言わせると、すべての終末処理のようなことをさせられる状態で、非常に厳しい状態に置かれてきたなと思うわけでございます。  被用者保険と国保の利害というのはその面で相対立するといいますか、そういうことになるわけです。しかし、行政の立場としては、公平公正ということがまずは旨とされなければならない。利害が対立している間はできないというような、関係者の要望が高まるなんということは聞きようによってはそういうふうに聞こえてくるわけでございますけれども、そうであってはならないと思うわけでございます。  今までこうした非常に単純なことさえできなかったのは、被用者保険と国保の利害の対立といいますか、そこに根本的な問題があった。それを是認してかかった上では、百年河清を待つに等しい。一方では、介護保険の実施が目前に迫っている。仮にそれを抜きにしても、正直者がばかを見るといいますか、どこにも手続もせずに、保険料を納入せずに、そしていざ病気になったときに、そのときになってから市町村の窓口で保険証の交付を受ける。いわば火事になってから火災保険に入るようなものですね。そういう状態があるというのは御存じであって、今日まで来た。  私は、今指摘をして、考え方としては一致をしたと思うのですが、最終的なところで、その機運の高まり云々ということになりますと、また今の質問意味が何もなくなりかねないなという心配をいたしたものですから、時間がちょうどなくなりましたけれども、最終的にきちんとするのだという決意のほどをお示しいただければありがたいなと思います。
  116. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 これは、長年の制度の仕組みというものを変えていくわけですから、そういった意味での関係者の理解、認識の高まりというのはやはり不可欠だと思います。だけれども、行政として、先生が御指摘のような視点から公平公正な制度をつくるという意味で、私どもとしては、そういうような制度が確立されるように努力をいたしたいというふうに申し上げたいと思います。
  117. 金田誠一

    金田(誠)委員 終わります。
  118. 住博司

    ○住委員長代理 瀬古由起子さん。
  119. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。  予防、早期発見・早期治療には、医療機関に気軽にかかれる制度というのが大変必要だというように思います。世界一の医療費抑制政策のもとで世界一の長寿国になったのは、皆保険制度と、諸外国に比べて劣悪な職員の配置基準だとか施設基準など、過酷な条件のもとで働く医療従事者の献身的な努力の結果であると思います。開業医など、身近にある医療機関の果たしてきた役割が大変重要だったというように私は思います。   そこで、厚生省の白書でも、厚生省自身が予防、早期発見・早期治療を国民に呼びかけているのですね。今回の受診抑制による八千五百億円にも上る窓口からの患者の締め出し、これはこれまでの方針の変更に当たると考えられるのでしょうか。いかがですか。
  120. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 国民が健康で病気にならないように生活する、これが一番幸せなことであることはもう間違いありません。そういった面で、健康に対する、予防なり健康づくりも含めたそういった対応というものは非常に重要である、これは申すまでもありませんし、ひいてはそのことが医療経済という面から見た場合には効率的であるということも、これは申すまでもないことであります。我々、そういった方向というものを今後も進めていくということは、これはやはり基本だろうと思います。  一方、医療保険制度の赤字の問題、これはまさに医療費の増嵩に対してどういう形で保障をしていくかという、医療保険というのは医療費保障の制度でありますが、それが現実にこのように大幅な赤字構造体質になっておる、これを改善していかなければならない、運営の安定を図っていかなければならない、これもまた現実の問題としてあるわけであります。  そういった中で、一部負担という形あるいは保険料という形で御負担をお願いするということは、これは、国民の所得水準とか生活水準とか、そういった中での相対的なものというふうなこともございますし、また、医療保険制度、皆保険制度というものをこれからも堅持していくかどうか、そういう問題等とも関連する問題でございます。  私どもとしては、現下の医療保険制度の構造的な赤字、これを安定化させ、さらには抜本的に今後の医療費の増嵩構造というものをできるだけ改善していく、こういう努力をしていく必要があるというふうに考えたときに、このたびのような御提案をしているわけでありまして、この早期発見・早期受診、そういったものに阻害をもたらすとか、そういうようなことで今回の改正をお願いしているわけではございません。
  121. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 今までの方針、これからも予防だとか早期発見・早期治療は進めていく、その方が実際には財政的にも効率的な面もあるというふうに言いながら、現実には、窓口から患者さんが、受診抑制が行われるわけで、私は、ここに明らかに矛盾があるというように思うわけです。本来なら、国民皆保険制度の果たしてきた役割や、こうした予防、早期発見・早期治療、こういうもので果たしてきた今日的な制度を、むしろ前進させていくという点での改善を図らなければならないというふうに私は思います。実際には、今、厚生省がやろうとしていることは逆行している。  二つ目に質問しますけれども、医療機関の側からお話しさせていただきたいと思うのです。  全国公私病院連盟資料によりますと、今、七割の病院が赤字状態になっているという報告がされています。厚生省が出してきています「医業等収益率の推移」、これを見ましても、医療機関の経営が年々大変になってきている状況もこの資料で明らかになっています。この上、政府の病床削減計画があります。また、入院医療の再編政策、さらに、一九九四年には付添看護制度が廃止されて、休止、廃院した病院がふえてきています。特に医療過疎地域は大変深刻だというのは、昨日の参考人の資料の中でも明らかになっておりました。  一九九三年に、保団連、開業医さんたちの団体が「開業医の実態・意識基礎調査」をしていますけれども、この調査によりますと、医業を身内で承継する、跡継ぎをする人がいるかどうか、このように尋ねますと、一応六割はいるのだけれども、「継がせたいが承諾しそうもない」「継がせたくない」、こういう人も四割前後に達しているという状況になっているわけですね。  そういう意味では、今、医療機関の経営が大変な状況の中で、この上、受診抑制による影響というのは、こうした病院を続けていこうという人たちに与える影響もかなり大きいというふうに思うわけですけれども、その点、今回の改定によって医療機関に与える影響額というのはどういうように考えてみえるでしょうか。
  122. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 今回の改正の考え方でありますけれども、これは、医療保険制度における給付と負担の見直しを通じて医療保険制度の財政の安定の確保を図りたい、図っていく、そういう趣旨があるわけでございます。  また、先般の医療保険審議会の建議等でも御指摘がありますけれども、我が国医療提供体制の状況、これをどう考えるかという問題がございます。これについては、この建議の中でも触れられておりますように、過剰病床の解消が必要である、それからまた、医師数の適正化など医療提供体制についても抜本的な改革が必要であるということが言われているわけであります。  そういった意味で、みんなが現状のままでうまくいくというような状況というものではなくなってきたのではないか、新しい時代に向けての効率的な、むだのない医療提供体制、もちろんそれは国民の要望するものにマッチしたものでなければいけないわけでありますけれども、やはり医療提供体制そのものについても根本的な改革が必要だ、こういう時期に来ていると思います。  そういった意味で、私どもとしては、医療提供体制、医療保険制度両面にわたる抜本的な改革、これからの高齢化社会というものを踏まえた抜本的な改革に取り組んでいこうというふうに考えておるわけであります。そういうふうな中での今回の改正ということでございます。  もちろん、今後、保険医療機関というものの経営が安定化されていくということは非常に大事でありますし、その辺の、医療提供体制の中で医療機関における経営の安定化の問題、これは診療報酬の問題とも密接に絡みます。したがって、今回、その面も含めて抜本的に取り組んでいく。  こういうふうに考えておるわけでございますので、新しい時代に向けた一つの過程において今回の改正をお願いしているというふうに御理解を賜りたいと思います。
  123. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 新しい時代に向けてということなんですけれども、今までの医療制度の果たしてきた役割も十分踏まえて進めていくということが大事だと思うのですね。そういう意味では、今お話がありましたように、今回、医療制度そのものの財政の安定の確保、これを図っていくということなんですが、実際には、患者さんが身近なところで病院にかかりにくくなってしまう、それから、病床数が今どんどん減ってきて医療機関も廃業する、町の真ん中でももう病院閉鎖という状況が生まれてきている。  こういう点でいいますと、医療制度の財政安定の確保と言うけれども、こういうような状況を進めていきますと、結局、医療保険制度の前提そのものが崩れていく、壊されていく。だから、安定化どころでないといいますか、そういう状態になっていくのではないか。そういう点では、厚生省が目指していく方向といいますか、本当に安心して気軽にかかれる医療をやるという体制から離れていくのではないかというように思うのですけれども、いかがでしょうか。     〔住委員長代理退席、委員長着席〕
  124. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 国民が安心して医療にかかれる、これがやはり大事であることは申すまでもありません。  問題は、そういった中で、全体のシステムとして、医療提供体制につきましても、それがむだのない、効率的なシステムということが必要だと思います。それは当然、それを維持する国民負担というものが伴うわけでありますから、合理的な負担でなければ国民も納得をしないわけであります。そういった意味で、現在の医療提供体制、これ自体も抜本的な見直しが必要であるというふうに、これは先ほど申し上げた関係審議会でも指摘されておりますし、また、当委員会においてもいろいろ広範にわたって御指摘を賜っているわけでございます。  そういった意味で、私どもは、国民にむだのない、そしてまた負担が過重にならない、かつ、適切な医療というものが受けられるような仕組み、しかもこれが、新しいこれからの高齢化社会、人口構造も変わります、そういった中でスムーズに、安定的に運営できるような制度、こういうものを求めていく、つくっていかなければいけない、こういうふうに考えているわけでございまして、今委員御指摘のような御懸念に対して、それを増幅するようなことを私ども考えているわけでは決してございませんので、御理解を賜りたいと思います。
  125. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 負担が合理的かどうかと言われるのですけれども、ここについては今まで委員会でも審議させていただいて、国民にとっても大変過酷な負担であるし、厚生省自身がむだのない、効率的なシステムと言うけれども、実際には本格的なところにメスが入れられていない問題点が幾つかあるということを、薬価の問題も含めて私たちは指摘してまいりました。  そこで、先ほど診療報酬の問題が出ましたけれども、これについても本格的なメスが入れられていないということについてお聞きしたいと思うのです。  診療報酬についても、薬とか物を用いた診療行為に対する評価は高いという面もありますけれども、一方、これはもう切実な声として出ておりますが、診察とか処方とか指導とか処置、こういう基本的な診療行為についての評価が大変低いという問題がありますね。結局、薬や高い医療機器を使用しないと採算がとれない、こういう構造的なゆがみが根本的な問題としてあるということが昨日の参考人質疑の中でも明らかになっています。  これは随分古いといいますか、第五十五回国会の社労委員会、一九六七年の薬剤負担十五円の導入の審議の際にもこの問題が出まして、このときに、当時の熊崎保険局長質問に答えてこういうふうに言っています。技術料の評価については欧米並みにする、こういうふうに答弁しているわけですね。  赤字を構造的につくり出している状態というのはわかっていながら三十年間も放置してきている、このことについて、まず、ゆがみを正すということが大事ではないか。欧米並み評価しますというのは一体いつからやるのですか。この点についてお答えをいただきましょう。
  126. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 技術料を重視した診療報酬体系でなければならない、これはもうかねてから言われていることであります。また、診療報酬の改正をやるたびにそういうような角度から検討が加えられ、そして、必ずしも関係者が十分納得されたということではないかもしれませんけれども、そういうような方向を踏まえながら診療報酬のこれまでの改正が行われてきた、これも事実でございます。  そういった中で今日のこの診療報酬の制度というものを持っているわけでありますけれども、やはり薬価基準制度、これが公定価格を定めているということから現実問題として多額の薬価差が生まれておる、これが医療機関にとっての重要な経営原資になっていることも事実だと思います。それらが一体となって医療機関の経営というものが行われているというふうに思いますけれども、そういう薬価差というものに依存したような形の診療報酬というのはやはり問題があるのではないかということ、これは私どもも十分そういうふうに考えております。  したがって、そういった意味では、今後、診療報酬の抜本的な見直し、それから薬価基準制度の抜本的な見直し、これはワンセットだと思います。そういった中で、医療担当者の技術料を重視した体系というものをつくっていかなければいけないというふうに思っております。そういった意味では、方向としては先生のおっしゃる方向とはそんなに変わらないと思います。  ただ、診療報酬の問題というのは、これは、国際比較でどうなのかという問題もございますけれども、それぞれの国によって制度がかなり違いますから単純な比較はなかなかできない。我が国の場合、現在の診療報酬点数表というものを見てみますと、トータルとして医療機関なり医療経営というものを評価している、そういった中で各診療科のバランスの問題とかそういったものを配慮しながらこの仕組みというのはできてきているというふうに思いますので、単純にこういうことの比較というのはなかなか難しいのではないかというふうにも思っておりますけれども、基本的な物の考え方は、結論的には、今先生のおっしゃるとおり、医療担当者の技術料というものを重視し、それからまたもう一つには、医療経営における投資的費用というものをどう評価していくか。今はそこが混然一体となっている面があるわけでありますから、そういったようなものについての評価もきちんと検討し、そして、すっきりした形のものにしていかなきゃいけないというふうに思っております。
  127. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 実際には、今言われたように、構造的なゆがみというものが、少しは改善されたといっても、事実上放置したような事態、特に技術料の評価の問題については、関係者から再三指摘されてきたけれども、放置されてきた状態だったというふうに思います。その点でも本格的な改善をしていただきたいというように思うわけです。  それで、薬の問題についても、平成七年三月に中医協が行いました「医療保険における薬剤評価等に関する海外調査報告書」によりますと、外来医療費に占める薬剤費の割合が、日本では四五・四%、フランスでは四四・六%、ドイツでは四四・一%と、ほぼ同水準であるということを指摘しております。しかも、イギリスやフランスでは医薬分業になっていますけれども、日本の外来医療費に占める薬剤費の比率というのは、いろいろな海外との条件の違いがありますけれども、決して高いとは言えないわけですね。  ところが、総医療費に占める薬剤費の割合になると二九・五%になって、どんとはね上がる。これは何が問題かといいますと、結局、理由は、医療の技術料が不当に低いか、それとも薬価が異常に高いか、こういうことがこの結果からもあらわれているというように思うのですけれども、この点ではいかがでしょうか。
  128. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 我が国国民医療費に占める薬剤費の比率がなかなか下がらない、この原因として、二つあるだろうというふうに私ども考えておるわけであります。一つが、薬の使用量が多いという問題があります。それからもう一つが、いわゆる高い新薬にシフトしていっているという問題。大きくはこの二つ要因ではないか。それの寄与率を専門家の研究で見ますと、大体同じぐらいというふうな研究が出ております。それで、それを改善するということが基本であるというふうに思っております。  ただ、そういった中で、先ほど外来の医療費に占める薬剤比率の問題がございましたけれども、やはり我が国の薬の使用量というのは多いのではないか。いわゆる薬好きの国民性というようなことを言われたりすることがあるのですが、やはり諸外国と比べると薬の使用量が多いというふうに思っております。  そういった意味で、できるだけ薬に依存しない、そういった診療報酬体系というものをきちんとつくっていかなきゃいけないというふうなことは、これは再三申し上げているとおり、私どもも目指す方向というふうに考えておりますし、それからまた、薬剤比率がなかなか下がらない要因については、これは現行の薬価基準制度そのものに原因がある、そういった面があるわけでありますから、この公定価格を定めている薬価基準制度というものも根本的に考え直さなきゃいけない、こういうふうに考えております。
  129. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 今、薬の使用量が多いという問題がありましたけれども、では、何を根拠に使用量が多いと言えるのかという問題なんですね。  資料を見てみますと、使用量が外国と比べて日本の場合は特別に多いというまともな資料が出てこないのです。厚生省の資料で見ますと、一処方当たりの薬剤数、比較はフランスとドイツがあるだけなんですけれども、フランスでは三・二種類出されている。ドイツは一・七種類です。日本は平均して三・二種類で、フランスと同じなんですね。  十六日に、我が党の児玉議員が、新薬シフトにメスを入れよということに対して、そのときにも保険局長は、問題は二つある、薬の使用量が多いということと新薬シフトだ、しかし、新薬シフトには余り期待できないというふうに答弁されているわけです。しかし、使用量が多いと言えるほどの調査や資料というものが実際にはないわけですね。ほとんどないと言っていいでしょう。  これについても、技術評価欧米並みに行われればさらに薬剤比率は大幅に下がる。薬価の異常に高い日本にあっても、外来の薬剤比率は諸外国に比べてそう高いというわけではないわけで、そういう面では、今回、外来に負担を求めて、一日一種類十五円の負担というのは大変問題がある。何だか、たくさんもらっている、もらっていると言って、それに負担をかける、これは事実ではないのではないかというふうに思いますけれども、一日一種類十五円の負担は検討し直すべきだというふうに考えますが、いかがですか。
  130. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 外来の薬剤比率の評価の問題でありますが、先ほどの先生が引用されました一九九三年の薬剤費に関する推計調査、イギリス一九九二年ということでございますけれども、これで見ますと、日本は四七・二%であります。それに対して、フランスはヨーロッパの中でも比較的高いと言われている国でありますが四四・六%、ドイツが四四・一%、イギリスが四一・六%。ですから、私どもはやはり、日本は決して少なくないというふうに思っております。  それからまた、これは専門家の研究なのでありますが、一件当たりの入院外の、いわゆる外来の薬剤費の増加要因というものを昭和五十四年を基準とした変化率ということで研究されたものがございますが、この中で指摘されておられますのは、薬価は一貫して引き下げられているけれども、延べ薬剤数の増加と高価格薬シフトによって薬剤費が増加しているのだ、こういうふうな結論を出していらっしゃいます。  そういったようなもの等々から私どもは申し上げているわけでありまして、我が国における薬剤のシェアというものは、やはり下がらないということでもありますし、また、諸外国に比べても決して少なくはないというふうに思っております。  そういった中で、今回の、薬に着目した一部負担をお願いし、そして、この是正、歯どめというものに寄与したい、させたいというふうに思っておるわけであります。また、それと同時に、これを、薬をもらっている人と、そうかかっていない人とのいわゆる受益と負担の公平というような観点からも御負担をお願いしたいということで考えておりまして、我が国の今の医療費構造といった面で考えますと、この薬剤の一部負担制度というものは私どもとしてはぜひとも御理解を賜りたいというふうに考えております。
  131. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 昨年の十二月に、この厚生委員会で、「患者の立場に立った医療保険制度改革に関する請願」というものが採択されております。その趣旨は、改正に当たっては「患者の早期治療を阻害するものとならないよう、かつ国民医療を守るため患者の立場に立った制度改正が行われるよう措置」せよ、こういうようになっているわけですね。  実際には、きのうの参考人質疑の中でも、薬をもらうという場合でも、これは別に患者が決めるわけじゃない、医師の方が処方するのだ、ところが患者に窓口で負担をかぶせるなんてとんでもない話だということも出ましたね。  同時に、この改定の問題も、もともと健康保険の一割負担、法定では二割ですけれども、導入された当時の昭和五十九年、百一国会で、当時の渡部恒三厚生大臣が、将来にわたって現在の保険料率の引き上げを行わないで済むような医療費の節減、適正化を図っていく、そういう答弁をしているわけです。  今回は、受診の抑制はやるわ、消費税を引き上げた上に保険料率まで上げる、この過酷な負担は、私は、明らかに厚生委員会で採択された内容とは全く反していると思うのです。  私、きょうここに持ってまいりましたけれども、住民の皆さんから医療費を上げないでほしいという声が毎日のように寄せられているわけですね。この点から見ても、国民の意思をきちんと尊重した立法府の決議、こういうものに沿って考えるべきだと思いますが、最後に、厚生大臣の御見解を伺いたいと思います。
  132. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 今のままでいいということになりますと、患者負担はこれ以上ふやすのは嫌だといいますと、結局、税金をもっと投ずるか、保険料をもっとふやすか。増税も嫌だというと、若い人に、もっと先にツケを送るかということになってしまうのですね。  だれでも、医療サービスを受けるのは、負担は低ければ低いほどいい、ただであればこしたことはない。しかし、この医療保険制度というのは、病気にならない人も保険料を納めていただく、いざなった場合はお互い助け合って、その保険料の中から負担し合うという制度であります。どこかでサービス、給付を受けている人はだれかがどこかで保険料で支えている。  ということを考えますと、今の保険制度を維持していくためには、これからますます高齢者の医療費が伸びる。高齢者はますますふえていく。負担する側の若い世代、これは少なくなっていく。今でさえも、納める保険料も上がっていく。給付も一割から二割に負担がふえる。それでは、高齢者だけ今のままの負担でいいかということになると、これも少しは考えてくださいと。世代間の助け合いということを考えると、国民健康保険に入っている方は三割負担している。健康保険に入っている人は、これからは二割負担していただく。高齢者ということで特別の配慮をして今まで一月千二十円ということでございましたけれども、今回、若干の負担をお願いしようということで、一回五百円、四回まで二千円、五回以上はもう要りませんという、この程度の負担は、私は許容していただけるのじゃないか。  そして、本委員会で出たいろいろな御批判を踏まえて、これから総合的な医療提供体制あるいは医療保険制度の抜本的な改革に取り組む。そして、取り組んで、いい案がまとまったとしても、私は、今の負担を下げるということはあり得ないと思います、それは人口構造を見ても。国民が増税を歓迎しない、保険料をもっと上げるということも、これも歓迎しないというのだったら、どの程度の負担が適正か、どの程度の給付まで適正か、負担と給付の公平、この観点から考えるならば、私は、今程度の患者負担がふえるというのは御理解をいただけないか、そう思っております。
  133. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 終わります。
  134. 町村信孝

    町村委員長 中川智子さん。
  135. 中川智子

    ○中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。  きょうは、私、この間ずっと情報公開とかインフォームド・コンセントとかという言葉が飛び交って、ここでは飛び交っているけれども、厚生省と市民とのずれというのがすごいな、どれぐらいその言葉が今の市民、選ぶ患者の方に浸透し、そういう言葉に対しての違和感を持っているか、市民がいかにそれを信じていないかというところがとても気になりますので、まず最初に、医療提供者の情報公開について伺わせていただきたいと思います。  今、すごく量はあるのですね、たくさん病院はあります。幾らでも、あっちの病院に行きたい、こっちの病院に行きたいと思ったら行けるのですけれども、その病院がどのような診察をしてくれるのか、どのような機能が備わっていて、そして、いわゆる看護体制というのはどうなっているのか、知るすべがない。ですから、知るすべがなければ、幾ら量があっても、患者としては選びようがないという現実があります。  例えば、一番最初に私が入院というのを経験したのが、健康だけが取り柄で生きてきましたので、出産でした。その出産のときに、どこに行ったらどのような、私自身が満足する、ある程度納得できる分娩体制があるのか、それすらもわからない。  ですから、今、情報を得るのはほとんど井戸端会議。井戸端会議というのは本当に大事なんですね。今は井戸がないものですから、公園に行って、公園デビューを果たした人たちがその公園情報を得る権利を獲得する。公園情報を得るにはまずデビューできなければいけないのですけれども、デビュー時点でデビューできない人がいっぱいいて、その人たちは本を読むしかないのですね。でも、その本というのは、いっぱい本は出ているのです、病院の選び方とか。だけれども、正確な情報じゃないのです。情報が多過ぎて、それでまた悩んでしまう。  だけれども、医療機関というのは、一度かかりますと、移るのにすごい勇気が要るのです。特に出産なんかになりますと、最初に行った病院で、五カ月になったからやはりあっちにということはとてもできないというのが現実です。ですから、最初の選択が誤っていたら、注射漬けになろうと、土日は先生が休みたいから予定日より三日早いけれども注射打って産ませちゃおうとかいうのはざらですし、私は自分で選びたい、私の自然な体のサイクルの中で子供を産みたいと思っても、どこでそのような分娩ができるのか、出産ができるのかという情報が得られません。  私は市民運動をやっていたときに、たくさん地域の情報誌をつくりました。いろいろなところに、医療機関にアンケートをお願いいたしましたけれども、アンケートに答えてくださる病院は、大体、二十軒出して、心あるお医者様一軒だけです。それが事実です。  そのときのアンケートに答えない理由の一つとしては、医師会の申し合わせがあって、うちがこんなにいいものをやっているよということは一切言えません、それが一番ですね。医師会からストップがかかる。もう一つは、医療法の六十九条に医業等に関する広告の制限というのがございまして、これがあるから、コマーシャルというか自分のところの情報提供はできないのだという、この二つが大きなネックになっています。  ですから、私たちはいつも後悔してしまうのですね。やはりあそこに行けば自分自身の体を傷つけずにもっといい医療が受けられたかな、あそこの病院に行っちゃったらもう死ぬまで出られないと言っているけれども本当かな、あっちの病院に行ったらがんが見つからなくてあの人は死んだらしいよとか、そういう話がすごく多いですね。  ですから、ぜひとも、情報公開というのはまず医師、医療機関患者の信頼関係を結ぶ第一だと思うのですけれども、厚生省、そして大臣に、この情報公開に対しての現実のいろいろなことをともかくお知らせください。情報公開がこんなにギャップがあるということの認識と、決心ですね、情報公開に対してこれからどのように取り組んでいこうとされるのか。まず厚生省にお伺いして、大臣。私は十五分しかないという悲しい運命をいつも背負っておりますので、よろしくお願いいたします。
  136. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 確かに、医療提供側がどちらかというと十分な情報を提供しない、あるいは患者さんに十分な説明をしないということが今まであったということは、すべてとは申しませんが、そのとおりだと思います。  今お話ございますように、やはり患者側が医療機関を選択するということから、例にも引かれました広告規制ということの緩和は求められていると思っています。行政改革委員会の意見の中でも、一昨年の十二月でございますが、診療や治療行為といった医療そのものについては、内容の評価が困難なので、客観的であるべき広告にはなじまないけれども、一方、客観性、正確性を確保し得る事項については幅広く広告事項として認めるべきだという意見をいただいております。  現在御審議をいただいております医療法の改正の中でも、広告し得る事項というものを規定しておりますが、これの緩和をするという形で御審議をお願いしているところでございまして、そういうことも含めて、今後、医療の現場においてできるだけ情報公開をする、あるいは十分な説明をしていくという考え方に沿って私どもとしても施策を進めてまいりたいと考えております。
  137. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 とかく同じ職業の人は、できるだけサービス競争を避けようとする傾向がどの職業にもありますね。国会議員の場合でも、現職優先となると、新規参入を、新人のサービス競争をできたら避けたいなという気持ちは結構存在していますね。医療間でも私はそうだと思うのです。弁護士の間でもそうだと思うのです。これは、どの職業にも、既得権を侵されたくないという気持ちが背景にはあると思います。  医療においても、今言った、医師会がアンケートに答えるなというのも、一つ病院がサービスをやる、そうしたらほかも追随しなければならない、また余計な労力がかかるのではないか、それよりは黙って患者さんが来てもらった方がいいという意識も、私は否定できないと思います。しかし、患者さんの立場に立ってみれば、これは、どういうお医者さんがいますか、どういう診療ができますかという情報を知りたいのは当然であります。  今後、過当競争なりを避けるための一つの規制だったと思いますけれども、患者さんがよりよい情報を得る、医療機関を選択できるよう規制は緩和していくべきだと私は思いますので、その線に沿って鋭意方法はないかと真剣に検討してみたいと思います。
  138. 中川智子

    ○中川(智)委員 局長が、そのような、患者が選択できないような情報公開システムが今まではあったとおっしゃられたのですけれども、今まではあったじゃなくて、もう今現実そのものが全く選べない、そのような認識で私は質問したのですけれども、もう一度、局長、現状認識に対して明確に御答弁をお願いします。
  139. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 今、大臣お話にもございましたけれども、医療提供側が患者に十分説明をするとかそういうことについての意識、また、率直に言って、私ども自身も、医療における情報公開、そういう観点からのいろいろな対応ということについては必ずしも十分ではなかった、そういうことで申し上げたつもりでございます。
  140. 中川智子

    ○中川(智)委員 情報公開に対しては、ともかくスタートですから、そこをきっちりやっていっていただかないと、これからの医療制度改革の中身を議論するときに国民がいつも置いてきぼりになる、不信感の中でどんどん負担がふえていく、私はそのように思っておりますので、次のときには具体的にもう少しちゃんとお答えを願いたい。漠然とし過ぎて、ちっともわかりません。  二番目に、これも本当に私の経験なんですが、親友の連れ合いが亡くなったのですけれども、そのときに、診察してもらったときには、肺炎のなりかけだからこの薬を飲んで家で寝てなさいと言われて、でも、飲んでも、しっかり寝ていてもちっとも病気がよくならない。三日目にまた病院に行って、そしてもう一度、様子がおかしいけれどもと言ったけれども、薬なんてすぐ効くものじゃない、だから寝てなさいと言われて、五日目に死んだのです。救急車で運ばれたときにはもう呼吸停止で、私はそのときにずっと彼女のそばに付き添っていて、最終的には、解剖してほしいということで解剖してもらいましたけれども、そうしたら肺炎なんて全然なくて、いわゆる全身がんだったのですね。脳から何からすべてがんでした。  それで、細胞検査も全部やってもらって死因はわかったのですけれども、病院に行って血液検査も受けられない、レントゲンだけさっと撮られて、家で寝かされて、そして死んでしまったときに、三歳と七歳の子供を抱えた彼女は、何なのこれは、あれだけ一生懸命病院に行ったのに、そのように言われて言われたとおりにしたのに死んでしまったというときに、私は、これは訴えるよりしようがないと思っていろいろなところに相談に行きました、弁護士にも。いろいろなところに行きましたが、今は訴えたって傷が深まるだけだ、ともかく忘れなさい、病院とけんかしたって負けるだけと。  そういうときに、私は、医療オンブズマン――もう全く泣き寝入りなんですね。その話はもうあちこちに転がっていて、弁護士に頼むとお金が高い。枝野さんなんか安くしてくれるかもわからないけれども、知っている人がいなければ。  そして、何度も何度も病院側に言いましたが、病院の先生は、まず救急のときに受けた先生、診察した先生、院長、全部、責任のなすり合いでした。それは市民病院でした。大きなシステムでした。そのときに、私は、こんな人たちがいっぱいいる、きっといると思ったのですね。ですから、何かシステムをつくりたい、制度をつくりたいと思って動きましたけれども、とうとうそれが現実にはできませんでした。  ですから、このたびのことでも、このような改革を進めるなら、ぜひとも医療オンブズマンという制度をこの改革の中でつくっていっていただいて、苦情の持って行き場のない、一生自分を責めてしまう遺族に対して、何か救われる道はないか、そこを厚生省はどのように考えていらっしゃるか、ぜひお伺いしたいと思います。
  141. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 今具体的にお話しになりましたような医療現場におきます患者さんあるいは住民の方からの苦情ということに関しましては、私どもは、現時点では、第一義的には都道府県の医療あるいは健康保険等の関係各課において対応するということで、従来から通知も出しております。そういう意味で、患者さんからの苦情等に対して、医療に対する信頼を損なうことのないような、そういう形で都道府県が対応するように従来から指導しているところでございます。
  142. 中川智子

    ○中川(智)委員 それでは、具体的に聞くのはちょっと申しわけないのですが、きのう一応質問はお出ししておいたので答えていただきたいのですが、それがどのような調査結果があるのか、そして、どのような苦情があってということはわかりますか。どのようにそれが機能しているか、みんなにとって救われる機能となっているかどうか、お願いします。
  143. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 今、各県ごとの対応についての細かい数字を持っておりませんので、後ほど御報告をさせていただきたいと思います。
  144. 中川智子

    ○中川(智)委員 それでは、その結果を見てまた質問したいのですけれども、もしもその結果に対してそのような機能が果たせていないならば、また新たなものを考える、御決意ぐらいで結構です。足は引っ張りまぜんから、ちょっと聞かせてください。
  145. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 大変申しわけございません。今、具体的な各県ごとの対応を持っておりませんので、それを見た上で判断をしたいと思います。
  146. 中川智子

    ○中川(智)委員 質問の時間があれですが、一分ほどお願いして、大臣は答弁の天才だと思いますので、今のことで大臣はどのようにお考えか、お気持ちを。
  147. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 やはり名医もいればやぶ医者もいるのですね。そういう被害を私もちょくちょく聞きます。健康診断を毎年やっている人も、診断を受けて翌年の診断を受ける前に、何ともないと言われたのにがんで死んだということをよく聞きます。何のための健康診断だったのだろうかというのはちょくちょくあります。  いかにお医者さんでもピンからキリがあるかということだと思いますけれども、もしそういう誤診なり納得できない医療行為がなされた場合に、患者の側に立ってしかるべき措置が講じられるような制度なり方法を、厚生省としても今後真剣に考えていくべきではないかな、そう思っております。
  148. 中川智子

    ○中川(智)委員 それじゃ、ぜひとも手をつないで一緒に頑張っていきましょう。ありがとうございました。
  149. 町村信孝

    町村委員長 次回は、来る二十五日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時九分散会