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1997-04-22 第140回国会 衆議院 厚生委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月二十二日(火曜日)    午前九時二分開議出席委員   委員長 町村 信孝君    理事 佐藤 剛男君 理事 住  博司君    理事 津島 雄二君 理事 長勢 甚遠君    理事 岡田 克也君 理事 山本 孝史君    理事 五島 正規君 理事 児玉 健次君       安倍 晋三君    伊吹 文明君       江渡 聡徳君    大村 秀章君       奥山 茂彦君    嘉数 知賢君       桜井 郁三君    鈴木 俊一君       田村 憲久君    根本  匠君       能勢 和子君    桧田  仁君       松本  純君    青山 二三君       井上 喜一君    大口 善徳君       鴨下 一郎君    坂口  力君       福島  豊君    桝屋 敬悟君       矢上 雅義君    吉田 幸弘君       米津 等史君    家西  悟君       石毛 鍈子君    枝野 幸男君       瀬古由起子君    中川 智子君       土屋 品子君    土肥 隆一君  出席政府委員         厚生政務次官  鈴木 俊一君  委員外出席者         参  考  人         (山形最上町         長)      中村  仁君         参  考  人         (日本労働組合         総連合会事務局         長)      鷲尾 悦也君         参  考  人         (日本医師会副         会長)     糸氏 英吉君         参  考  人         (一橋大学名誉         教授)         (国立社会保障・         人口問題研究所         所長)     塩野谷祐一君         参  考  人         (日本経営者団         体連盟社会保障         特別委員会医療         政策研究部会部         会長)     若杉 史夫君         参  考  人         (慶應義塾大学         医学部教授)  池上 直己君         参  考  人         (全日本民主医         療機関連合会事         務局長)    八田 英之君         参  考  人         (千葉大学法経         学部経済学科助         教授)     広井 良典君         厚生委員会調査         室長      市川  喬君     ――――――――――――― 四月二十二日  重度戦傷病者と妻の援護に関する請願大野功  統君紹介)(第二一一一号)  同(大野功統紹介)(第二一九四号)  児童福祉法理念に基づく保育の公的保障の拡  充に関する請願石井郁子紹介)(第二一一  二号)  難病のための新国立病院リューマチ科及び  プール療法に関する請願児玉健次紹介)(  第二一一三号)  同(瀬古由起子紹介)(第二一一四号)  厚生省汚職の糾明、医療保険改悪反対に関する  請願石井郁子紹介)(第二一一五号)  同(石井郁子紹介)(第二一五八号)  同(大森猛紹介)(第二一五九号)  同(金子満広紹介)(第一二六〇号)  同(木島日出夫紹介)(第一二六一号)  同(児玉健次紹介)(第二一六二号)  同(穀田恵二紹介)(第二一六三号)  同(佐々木憲昭紹介)(第二一六四号)  同(佐々木陸海紹介)(第二一六五号)  同(志位和夫紹介)(第二一六六号)  同(瀬古由起子紹介)(第二一六七号)  同(辻第一君紹介)(第二一六八号)  同(寺前巖紹介)(第二一六九号)  同(中路雅弘紹介)(第二一七〇号)  同(中島武敏紹介)(第二一七一号)  同(春名直章紹介)(第二一七二号)  同(東中光雄紹介)(第二一七三号)  同(平賀高成紹介)(第二一七四号)  同(不破哲三紹介)(第二一七五号)  同(藤木洋子紹介)(第二一七六号)  同(藤田スミ紹介)(第二一七七号)  同(古堅実吉紹介)(第二一七八号)  同(正森成二君紹介)(第二一七九号)  同(松本善明紹介)(第二一八〇号)  同(矢島恒夫紹介)(第二一八一号)  同(山原健二郎紹介)(第二一八二号)  同(吉井英勝紹介)(第二一八三号)  同(志位和夫紹介)(第二二二八号)  国民健康保険制度抜本改革に関する請願(中  川昭一紹介)(第二一一六号)  同(中川昭一紹介)(第二一八四号)  同(福永信彦紹介)(第二二二九号)  医療等の改善に関する請願畑英次郎紹介)  (第二一一七号)  同(愛野興一郎紹介)(第二一八五号)  同(小澤潔紹介)(第二一八六号)  同(畑英次郎紹介)(第二一八七号)  同(平沼赳夫紹介)(第二一八八号)  同(瓦力紹介)(第二二三〇号)  子供の性的搾取・虐待をなくすための立法措置  に関する請願石井郁子紹介)(第二一一八  号)  療術の法制化に関する請願秋葉忠利紹介)  (第二一一九号)  同(河村建夫紹介)(第二一二〇号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願金子  一義君紹介)(第二一二一号)  同(萩野浩基紹介)(第二一二二号)  同(森田一紹介)(第二一二三号)  同(愛野興一郎紹介)(第二一九〇号)  同(河村たかし紹介)(第二一九一号)  同(塚原俊平紹介)(第二一九二号)  同(中野寛成紹介)(第二一九三号)  同(愛野興一郎紹介)(第二二三二号)  同(臼井日出男紹介)(第二二三三号)  同(菊池福治郎紹介)(第二二三四号)  同(中野正志君紹介)(第二二三五号)  同(野田毅紹介)(第二二三六号)  介護保障確立に関する請願穀田恵二紹介  )(第二一四八号)  同(寺前巖紹介)(第二一四九号)  公的介護保障制度早期確立に関する請願(石  井郁子紹介)(第二一五〇号)  同(辻第一君紹介)(第二一五一号)  同(春名直章紹介)(第二一五二号)  同(東中光雄紹介)(第二一五三号)  同(藤木洋子紹介)(第二一五四号)  同(藤田スミ紹介)(第二一五五号)  同(正森成二君紹介)(第二一五六号)  同(山原健二郎紹介)(第二一五七号)  同(志位和夫紹介)(第二二二七号)  山西省残留犠牲者救済措置に関する請願(石  井一君紹介)(第二一八九号)  医療保障充実介護保障制度確立に関する  請願志位和夫紹介)(第二二二六号)  医療保険制度改悪反対公的介護保障確立に  関する請願木島日出夫紹介)(第二二三一  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第三六号)      ――――◇―――――
  2. 町村信孝

    町村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人から意見を聴取することにいたしております。  ただいま御出席参考人は、山形最上町長中村仁君、日本労働組合連合会事務局長鷲尾悦也君、日本医師会会長糸英吉君、一橋大学名誉教授国立社会保障人口問題研究所所長塩野谷祐一君、日本経営者団体連盟社会保障特別委員会医療政策研究部会部会長若杉史夫君、慶応義塾大学医学部教授池上直己君、全日本民主医療機関連合会事務局長八田英之君、千葉大学法経学部経済学科助教授広井良典君、以上八名の方々であります。  参考人方々には、大変御多用中にもかかわりませず御出席をいただきましたこと、委員一同を代表いたしまして心より御礼を申し上げます。本当にありがとうございます。どうぞ、きょうは、本法律案につきまして、忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いを申し上げます。  次に、議事の順序について申し上げます。  最初に、参考人皆様方から御意見をそれぞれ、大変短くて恐縮でありますが、十分程度お述べいただきました後、委員より質疑を行うことになっておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。  なお、御発言は着席のままお願いをいたします。  それでは、最初中村仁君から御意見をお述べいただきたいと思います。
  3. 中村仁

    中村参考人 ただいま御紹介いただきました最上町長中村でございます。  先生方に前もってお配りをいたしております資料の一ページをごらんのとおり、最上町は、人口一万三千人の、山形北東部に位置する町でございます。  私は、昭和四十五年に町長に就任して以来二十八年間、類似市町村との格差解消と、健康にまさる幸せなしを町づくり基本理念といたしまして、心身とも健やかな明るい町づくりを理想といたしまして、国保運営を初め、老人保健施設等施設整備保健事業充実など、いろいろな仕事に携わってまいりました。  さて、医療保険改革についての意見を申し上げます。  我が国医療保険制度は、国民保険が達成された昭和三十六年以来、各制度とも苦しい経営を続けつつも次第に発展し、現在では、国民の中に定着し、必要不可欠な制度として大きな役割を果たしてきております。  私も、昭和十三年に国保制度が発足しましてからちょうど六十年になりますが、二十一年に収入役に就任して以来、ずっと国保に携わってまいりました。創設当時のことを思い出しますと、感慨ひとしおのものがあるわけでございます。今後とも、我が国医療保険制度を安定して存続させていくことは大変重要なことと信じております。  こうした中にありまして、国保制度国民保険制度最後のとりでともいうべき制度であり、保険グループを形成しにくい経済的弱者を被保険者の中に多く抱えておるわけであります。  具体的に申し上げますと、国保世帯主の四〇%以上が年金受給者中心とする無職世帯であり、老人保健制度医療給付対象者である七十歳以上の方々が実に二〇%以上を占めている現状にあるわけであります。この結果、各市町村国保財政が継続的に非常に苦しい状況に置かれていることは御承知のとおりであります。国庫補助のほかに、多くの市町村におきましては、一般会計からの多額の資金投入を余儀なくされている状況にあります。  私は、国保事業を預かる市町村長の一人として、かねてから、全国市長会なり全国町村会ともども医療保険制度を抜本的に改革することが必要であることを主張してまいりました。  今回の法案については、患者の一部負担をふやすことだけの内容であるとの批判もあるようでございますが、末端の町行政を担う者としまして、そして住民立場及び保険者立場として、増大する医療費を目の当たりにすれば、医療保険制度の安定のために当面やむを得ない措置と考えるものでございます。医療保険の財政的な崩壊によって国民保険体制が崩れるようなことは決して許してはなりません。また、今回の法案には、保険基盤安定制度国庫負担段階的復元を初めとする国保財政安定化のための改正案が盛り込まれております。  したがいまして、この法案が一日も早く、速やかに成立するよう希望いたすものであります。  次に、今後の医療保険制度抜本改革を進める観点から申し上げたいと思います。  国保制度固有の問題としまして個別にお願いをしたい事項もありますが、本日は、医療保険制度の全般的な問題に絞って何点か意見を申し上げます。  まず第一は、高齢者医療制度の問題であります。  現在の老人医療費は、一人当たりで若い人の五倍の費用がかかっております。人間が年をとるに従って病気がちになることは当然のことであり、老人医療にある程度のお金がかかることはやむを得ないことではあります。しかし、我が国のこれからの高齢者の急増を考えますと、何としても老人医療効率化を図り、老人医療費の増加を最小限に抑えることが必要であろうと思います。  具体的な方法といたしましては、まず、老人には慢性疾患が多いことから、いわゆる出来高払いを改め、病気の種類に応じた定額払い的なものにするなど、老人医療の特性に合わせまして、現行診療報酬方式をより合理的なものに変えていく必要があろうと思います。  また、給付負担関係についても、若い人と老人との均衡を考えますと問題があるのではないかと思います。  若い人が老人相当部分医療費を、拠出金であれ国庫負担金であれ支えていかねば、老人医療制度は成り立たないことは当然のことであります。しかし、若い人の側から見ますと、高い医療費老人にも応分の負担をしてもらわないと、若い人との間における負担面において不公平感が生ずることになります。特に高齢者を多く抱えている国保にあっては、保険料負担高齢者以外の若い働き盛りの層に集中することが多く、これが国保保険料が高いと一般的に言われている原因にもなっているものと思います。  したがって、低所得者に配慮しつつ負担の公平を図る必要があり、若人を含む国民全体が納得する給付負担のバランスがとれた仕組みにしなければならないと考えます。  さらに、老人が健康で過ごせるように、予防的な活動を拡充していくべきではないかと思っています。  我が町の保健事業内容につきましては、お配りしました資料をごらんください。国保市町村経営主体であることから、従来から、さまざまな保健事業を積極的に展開しております。今後、保健事業をさらに拡充していくことが、結果として、医療費増大を防ぐことにつながるものと考えております。  今後検討される高齢者医療制度国保制度関係でありますが、国保制度老人の多くを抱えている現状にあります。我が町を例に申し上げますと、山村地帯町村の共通の悩みでありますが、国保保険者が年々減少する傾向をたどっております。全人口に占める国保保険者割合は四一%、なかんずく老人割合が二三%、若年者割合は七七%ですが、年々、老人の占める割合が増加している傾向にあるわけであります。  医療保険審議会においては、高齢者位置づけに関して四つの案が示されているようでありますが、いずれの案をとるにしても、現行国保制度運営に多大の影響を及ぼすわけであります。我が国国民保険制度を堅持するためには、今後とも国保制度は必要不可欠な制度であります。どうか、高齢者位置づけあり方などの見直しに当たっては、地域高齢者の健康と福祉を守り、また、保険者として国保事業運営を預かっている市町村長の意向を取り入れ、国保財政安定化を念頭に置くようお願い申し上げるものでございます。  第二に、医療提供体制の問題であります。  一般的には、病床数医師数医療費の大小と密接に関連していると言われており、医療提供体制あり方国保財政の面からも重要であるわけであります。ただし、地域ごとに見れば、医療機関等が足らないところもあれば、過剰なところもあるのが実態であります。このようなことに配慮して、病床数が過大と考えられる地域は減らし、少ない地域はふやすことを真剣に考える必要があろうと思います。  なお、国保直診施設におきまして地域医療を提供している市町村も数多くあり、我が町では、最上町立病院中心となって、民間の医療機関と連携を図りながら、地域住民に対する医療の確保や健康づくりを実践いたしてきております。  また、私どもの地方は八市町村で構成されておるわけでございますが、保健医療福祉広域化共同化を推進いたしております。我が町の施設は、隣接する大蔵村とか舟形町との共同化を実践しております。  第三は、薬の問題であります。  この問題につきましては、薬価基準の問題もあるようでございますが、何らかの方法で、薬のもらい過ぎ、使い過ぎを改めていただきたいと思います。このため、薬に着目した一部負担を設けることによりコスト意識の喚起を図ることは一つの方策であると思います。  薬の話ではございませんが、我が町では、観光地でもありますので、全国で三番目に美化条例を制定し、空き缶一つ捨てても五万円の罰金を科したり、たとえ町立病院であっても、ごみを出すときは、事業用ごみにつきましてはお金を払うことにいたしております。いわゆる有料といたしておるものであります。おかげさまで、町はとてもきれいになり、県内町村からも注目をされておるわけでございます。これからの低成長時代には、何でもただという意識は改めなければなりません。  また、医療提供体制見直しの一環としまして、医薬分業一つの有力な手段ではないかと考えます。  今回の医療保険制度改革により、将来にわたり安定した医療保険制度になることを期待するものでございます。  以上、甚だ簡単ではございますが、私の意見陳述といたします。(拍手
  4. 町村信孝

    町村委員長 どうもありがとうございました。  次に、鷲尾悦也君にお願いいたします。
  5. 鷲尾悦也

    鷲尾参考人 御紹介賜りました連合鷲尾でございます。  陳述に当たりまして、お手元に、連合がまとめております福祉社会保障政策全体についてのペーパーをお出ししておりますので、御参照願いたいと思います。  今回の医療制度医療保険制度改革に対しまして、幾つかの点を指摘させていただきたいと思います。  御案内のように、現在の医療制度の問題は、我が国経済社会構造変化、いわゆる少子・高齢化の一層の進行、日本経済成熟化などというような動向を踏まえますと、これまでのように、単に負担増だけでは対応できなくなることは明白であります。現在提出されている政府案でも、三年後には各制度とも再び赤字になるのではないか、このようなことが言われているわけであります。  したがいまして、私は、医療制度を小手先の費用問題に矮小化することなく、二十一世紀の超高齢社会においても必要かつ良質な医療が保障できるように、今から医療制度全体の見直し改革を講じていくことを何よりも優先すべきだと思います。  そして、費用問題についても、これらの改革方向と将来、最低でも二〇一〇年、あるいは二〇二〇年、二〇三〇年ということを頭に置きながら費用見通しをつくり、保険料、公費、患者負担の組み合わせを含めて国民的な合意形成を図るべきだ、このように考えているわけでございます。  しかも、新たな費用負担国民に要請するに当たりましては、負担増先行ではなく、具体的な改革の姿を明示することが最低限の要件であるということを特に強調したいと思います。私どもも、一切の負担がノーということではなく、こうした改革方向を示すことによって国民負担を求めるということが重要なのではないかと思います。  具体的に、医療制度の三つの改革課題について、連合考え方を述べたいと思います。  まず第一番目には、医療提供制度抜本的見直し課題であります。  これについては、これまでも随分議論がございました。私どもは、健康相談を含むプライマリー・ヘルスケアを担う診療所と二次、三次医療を担う病院との機能分担制度上明確にすることをこれまで求めてまいりました。これまでこうしたことが問題視されていながら実現できなかった最大の要因は、それぞれの機能制度化されていないまま放置されてきたところにあるのではないかと思います。  御案内のように、診療所は十九床までは自由に開設でき、劣悪な医療環境のもとで長期間入院している実態も多くあります。一方、病院の外来が三時間待ち三分診療にもかかわらず、患者の大病院志向は改まっていないわけでありまして、全体的には大変非効率的な供給システムと言わざるを得ないわけであります。  このような実態改革し、医療機関のそれぞれに期待されています機能に特化できるよう、診療報酬の抜本的な見直しとあわせて新たな提供制度を構築していくべきであると思います。  第二番目には、医療保険制度改革課題であります。  連合がこの課題について提起したいのは、保険集団あり方機能、そして薬価基準を含む診療報酬制度の抜本的な見直しについてであります。  保険者が果たすべき機能は、まず第一に、加入者に必要かつ適切な医療サービスを保障することであります。第二番目に、医療機関情報も含め、適切な情報加入者に提供することであります。第三の究極の機能として、保険集団医療機関に対して請求された診療報酬を支払うだけではなく、支払うべき報酬について医療提供側と交渉し、契約できるシステムを目指すべきであると考えます。  こうした観点から現状を見ますと、保険者が約五千もの小集団に分立していることは大いに問題ありと言わざるを得ないわけでありまして、規模の適正化の面からも見直しを進める必要があるのではないかと考えております。  我が国医療費のむだ、非効率の元凶は、出来高払い診療報酬制度にあると認識しております。この方式のもとでは医療提供側による需要誘発は避けられなく、公定薬価制度による薬価差益医療費膨張に拍車をかけているということはいわば常識になっているのではないかと思います。諸外国では、御案内のように、疾患ごとあるいは治療群ごと包括的支払い制度が主流になりつつあるわけでありまして、我が国もこの方式中心とした支払い制度に転換する必要があるのではないかと思っております。  さらに、我が国診療報酬にはランニングコストキャピタルコストの区別がなく、薬価差益によって投資的費用を賄っているという医療提供側の主張も仄聞するわけであります。公定薬価制度を廃止した上で、薬価差益の一部については投資的費用として診療報酬にきちんと位置づけるということを検討しなければいけないのではないかと思っております。  第三番目には、高齢者医療保険制度上の位置づけであります。  高齢者医療費増大に伴いまして、老人保健制度への拠出金のウエートが年々高まり、結果的には医療保険自律的運営を損ねる事態が拡大しているわけでありまして、私ども連合は、被用者健保制度を抜本的に改革し、現行老人保健制度を廃止するように提起しているわけであります。  その基本的な考え方は、給付負担関係を明確にしながら加入者相互リスク分散を図る公的医療保険制度の内部に高齢者をきちんと位置づけるということが大事じゃないか、このように考えております。フランスやドイツなど、日本と同様に社会保険制度をとる各国がそうでありますように、退職サラリーマンについても、現役と同様に被用者保険制度の被保険者として継続し得るシステムを構築すべきではないか、このように考えているところでございます。  具体的には、すべての退職高齢者対象とした退職者健康保険創設を提言としてまとめたところであります。この中で、退職者健保給付負担については健康保険法一般ルールを基本的には適用し、退職高齢者保険料事業主負担当分については被用者健保全体で負担する仕組みを提起しているわけでありまして、ぜひこの制度について御検討願いたいと思います。  最後に、繰り返しになりますが、医療制度改革具体像を示した上で費用負担について合意を求めていくことでなければ国民の理解と納得は得られない、こういうふうに考えているわけでありまして、ぜひ、国会審議を通じ、与野党がこうした観点に立った論議と合意を図っていくことを強く要請して、私の発言を終わりたいと思います。  ありがとうございました。(拍手
  6. 町村信孝

    町村委員長 鷲尾さん、どうもありがとうございました。  次に、糸氏英吉君にお願いいたします。
  7. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 日本医師会を代表して、一言述べさせていただきます。  基本的な考え方でございますが、我が国医療保険制度は、国民保険制度創設されてからもう三十五年という長い月日がたちまして、今や世界で最もすぐれた制度として高い評価を受けていることは御存じのとおりでございます。しかし、高齢化が急速に進み、労働人口が減少し、しかも経済成長が鈍化する中で、この皆保険制度を引き続き堅持して、適切な医療、良質な医療国民に提供していくためには、かなりの財源の確保と、今の制度についても多くの改革がなされるべきであると認識しております。いずれにいたしましても、高齢社会の活性を引き続き維持していくためには、その基盤となる国民すべての健康、特に老人の健康の保障は何にも増して優先されるべきであるというふうに考えております。  二十一世紀に向けての医療構造改革に当たっては、現行制度のメリットは十分に生かし、デメリットは極力排除して前向きに取り組まねばならない、かように考えております。  そこで、現行制度のメリットとしては、第一に、国民医療機関選択の自由が保障されているということ、第二に、貧富の差なくだれもが適切な医療が受けられるということ、第三には、健康指標、すなわち、長寿とか乳児死亡率が世界最高のレベルに達している割に、国際的に見ても、国民医療費の対GDP比がイギリス並みにかなり低いレベルに抑制されているということ、などでございます。  一方、これに反して、現行制度のデメリットとしては、第一に、医療情報の不足によって国民の適切な医療へのアクセスが阻害され、これが医療効率化を妨げていることであります。  第二に、医療の専門化が進み過ぎ、全人的な医療が欠如していることを考えなくてはいけません。  また、問題の医薬品でございますが、医療における物の価格が公定価格として異常に高く設定され、医療費のむだの最大の原因となっていることでございます。  特に医薬品については、その使い過ぎが医師に対して言われておりますが、それは全く否定するものではございませんけれども、一方、それ以上に、薬剤費の高騰というのは、これは薬剤の価格設定にもっとメスを入れるべきだと我々は考えております。  例えば、トリルダンというアレルギーの薬がございますが、これはイギリスでは十五円、日本では百七十一円。それから、リスモダンという薬、これも、イギリスでは十四円が日本では九十円。それから、肝がん、C型肝炎に使うインターフェロンという薬がございますが、これがイギリスでは九千円、日本では二万八千六百十円。それから、オムニパークという造影剤ですが、イギリスでは五千二百円、日本では実に二万二千四百円。  こういった我が国の薬剤費の著しく高い設定ということにもう少し注目していただきたい。このことと薬の使い過ぎということは分けて考えていかないといけないのではないかというふうに考えています。  これに反して、医師、看護婦等の技術評価というのは非常に低く公定されておりまして、これが薬価差依存の診療報酬体系をやまなくしているということに注目していただきたい、かように思うわけであります。  さらに、保険者集団の乱立と保険料の目的外使用が進む中で、国民にとってもよりよい保険者選択の自由が全くないということも問題であります。  さて、抜本的改革の具体的な方法としては、まず、医療提供体制の問題がございます。  医療提供体制については、医療情報の開示促進としては、まず、医師や医療機関情報をもっと開示しなくちゃいけない。それから、患者さんとのインフォームド・コンセントを定着化させること、患者さんのプライバシーに配慮した患者情報を開示すること、医療情報ネットワークの構築などが考えられます。  また、医療機関機能と役割の分担を目指して、開業医のかかりつけ医機能充実させ、プライマリーケア体制を地域で推進することであります。次に、診療所病院、また病院では公的と私的、さらに急性期と慢性期について、それぞれの役割分担を明らかにしていくべきであります。また、地域にあってプライマリーケアを支援する病院の育成を目指さねばなりません。  次に、今の医療保険制度改革について申し上げます。  私どもは、新しい高齢者医療保険制度創設を目指しております。この制度は、高齢者全員を被保険者といたします。高齢者からは保険料を新たに徴収いたします。現行拠出金制度を徐々に廃止していきます。都道府県を保険者とします。当分、拠出全廃止による不足分は全額国庫負担とするということであります。将来的には、現役世代の医療保険料の積立基金が成熟すれば、これを国庫にかわって流用し、国庫支出の縮小を次第に図っていくというものであります。そのほか、とりあえず要介護者は現行老人保健から介護保険適用へとスリム化していきます。それから、終末医療あり方については、国民合意を得るようにして合理化を図っていかねばならないと思います。  次に、一般医療保険制度抜本改革としては、まず、一般医療は原則すべて保険料で賄うという原則を打ち立てたいと思います。そして、従来の老人拠出金を老後に備え別個に積み立てて基金化いたします。国民健康保険は都道府県単位の保険者に再編成し、健康保険組合も再編成して機能効率化を図ります。将来的には、国保、政管健保などは地域保険として統合し、一本化を図るようにしたいと考えております。  最後に、診療報酬体系の改革でございます。  基本的には、物と技術の分離を進めます。すなわち、医師技術の適正評価によって薬価差依存の現行診療報酬体系を速やかに解消させます。入院医療については、ドクター・フィーとホスピタル・フィーの分離を図っていきます。  次に、医療機能に対応した診療報酬の評価としては、医療の二極化を図り、慢性期医療については包括化を進め、急性期医療については出来高払いを堅持する方向で検討いたします。かかりつけ医の機能や外来でのプライマリーケア機能をより適正に評価していきます。また、病院については、その本来の入院機能紹介外来機能を今以上に高く評価することとします。  次に、支払い方式の検討でありますが、外国では、疾患別定額支払い方式とか総予算方式とか総額請負方式などいろいろございますが、医療は医師と患者との信頼関係こそ最もその意義が高いわけでございまして、このような観点から、このような制度の導入については、医療内容、特にコスト、アクセス、アウトカムの評価を十分に検証し、慎重に対応すべきであると考えております。医療財政の効率化のみを優先させることは問題であり、患者本位の立場こそ、何にも増して尊重されねばならないと考えております。  最後に、薬価基準制度改革でございますが、当面の改革としては、薬価差の縮小化を図りつつ、同時に医療技術の評価を高めることで医業経営のバランスを図ります。また、長期収載品目の薬価引き下げを行い、薬剤費の大幅な節減を図ります。薬剤管理コストの評価を早急に定めねばなりません。一方、安価な後発品目をもっと普及させ、薬剤費節減にもっと国も努力すべきであると考えております。  さて、今回、改革協議会の基本方針が示されましたが、国としての改革をやり遂げるという強い意気込み、国民関係者を引っ張っていくという情熱といったものがいま一つ伝わってこないのが残念であります。特に、今後の少子・高齢社会における国の負担国民保険料負担、それから患者さんの負担、この三つの財政負担あり方を一体今後どうするのかということについても速やかな国民合意がなされねばならないのに、この面の論議が完全にこの基本方針では欠落しているのは残念であります。さらに、深刻な少子化時代の到来を迎えて、老人だけではなく、子供の医療保険給付あり方についても全く言及していないのは遺憾であります。  国民から見ると、今回はやたらと患者負担増のみが前面に押し出されて、患者老人いじめに終始しているという感が強いわけでありますが、厚生省や大蔵省も、今回の事態がもう既に六、七年前から予測されていたにもかかわらず、全く手をつけずに放置してきた責任は重大であります。私どもは、せめて老人の外来患者のこれ以上の負担増はぜひやめていただきたいということを願っておるわけでございます。  以上で終わります。(拍手
  8. 町村信孝

    町村委員長 糸氏さん、どうもありがとうございました。  次に、塩野谷祐一君にお願いいたします。
  9. 塩野谷祐一

    ○塩野谷参考人 皆様が国会審議中の貴重な時間を割き、私に意見を述べる機会を与えてくださったことに感謝いたします。  私は、医療制度において何ら特定の利害関係を持たず、専ら国民立場に立って発言をしたいと思います。  私は、過去二年近くにわたり、医療保険審議会において、医療保険制度改革の検討にかかわってまいりました。審議会は、破綻に直面している医療保険制度の抜本的な改革のために、あらゆる問題点を検討し、その結果を昨年十一月二十七日付の建議書にまとめ、厚生大臣に提出いたしました。  建議書は「今後の医療保険制度あり方と平成九年改正について」と題するものでありますが、単に医療保険制度だけでなく、医療提供体制をも含む医療制度の全体について、総合的かつ段階的な一連の構造改革を実施すると同時に、当面の財政危機を克服するために平成九年改正を行うよう提言したものであります。  医療保険審議会は、利害関係者を含み、若干の点について意見は分かれたものの、医療保険制度あり方を基本的な問題点のすべてにわたって明らかにいたしました。したがって、私は、今国会に提出されている健康保険法改正案を評価するに当たっても、建議書に盛られた考え方に沿って考えることが適切であると考えます。  今回の政府の改正案は、一部負担保険料率の引き上げなど負担増中心としています。今日、これについて一般に言われていることは、医療制度の抜本的な構造改革なしに国民負担増を強いるのは納得できないということであります。私もこの意見はまことにもっともな正論であると考えます。しかし、そうかといって、負担増に反対し、改正案を否定することは正しくないと考えます。  このことの理由を説明します。  医療サービスは、人間の健康と生命を守るという意味で、最も価値の高い財であります。しかも、医学・医療技術の進歩は目覚ましく、これまで治療法のなかった病気が治癒されていき、生命のフロンティアが拡大していくという意味で、医療は人類にとって夢と希望にあふれた成長産業であります。成長産業であればこそ、国全体の医療費が急速なスピードで成長するのは当然のことであります。医療制度の基本的なジレンマというのは、こういう成長産業を、自由な市場においてではなく、公的な社会保障制度の中で運営しなければならないということにあります。  公的な制度の中で医療運営するということは、医療がただだということではありません。病気になるリスクに備えて国民保険料をプールし、病気になった人の治療費に充てる、皆で負担する、そういう仕組みがとられているわけです。この制度が成り立つためには、医療費の支出が賄えるように収入が確保されていなければなりません。  ところが、医療の価格は技術進歩によってますます高くなり、高齢化によって医療を必要とする老人はますます増加し、しかも、高齢者一人当たりの医療費は若者一人当たりの五倍もかかるということから、医療費は経済とは無関係に右肩上がりに上昇していきます。一方、それを賄う国民の拠出は、経済成長の鈍化、現役の勤労世代の相対的縮小によって、医療費の支出の伸びに追いつきません。その結果、医療保険制度の財政的破綻が生ずるわけであります。  要するに、リスクを防衛する保険制度において、事故の確率が高くなると同時に、事故の金額が高くなっているわけです。したがって、一方で、拠出の負担をふやすことが必要であり、他方で、医療費そのものの支出を節約するよう改革をすることが必要であります。  今日、最も重要なことは、医療が希少な経済資源を使う活動であるということの認識であります。人々の無限に近いニーズを満たすために使える資源は限られています。そこで、人間の生命にかかわる優先度の高いニーズを満たそうとするのであれば、当然、それに向けるべき資源の負担をふやさなければならないわけであります。同時に、そのようにますます重くなる負担によって確保される貴重な資源を使う医療提供者は、ますます効率的な使い方をしなければならないのであります。医療効率化の根本問題は、一方で、医療提供者の側の出来高払い制を見直すことであり、他方で、患者の側のコスト意識の向上であります。  したがって、今日、医療改革課題は、一方で、医療効率化を図ること、他方で、負担増を図ることであります。負担増も構造改革もともに、方程式の両側であって、必要であります。構造改革をすれば負担増はなくなるというものでもないし、負担増をすれば構造改革をしなくてもいいというものでもない。どちらもやらなければならない。それほど我々は深刻な事態にあるのであります。  先ほど指摘しましたように、医療の構造改革がないまま負担増を求めることは納得できないという意見が世で多く行われております。こうした意見は、一見したところ、もっともらしく見えます。しかし、実は大きな危険を含んでいます。負担増に反対し、構造改革を行うべしという声にだれもが賛成するのは、その改革の中身が明らかにされていない段階での総論賛成であって、負担増に対しては各論反対をしているということを意味するからであります。いかなる改革をしようとも痛みが伴うということから明らかなように、いざ改革を具体化しようとすれば、各論反対が必ずあらわれてくるわけであります。当面の財政危機を克服するために、負担増を図りつつ、改革にそれを確実にリンクしていくことが必要であります。改革負担増はともに不可分であります。  具体的に、改正案について意見を申し上げます。  第一に、高齢者患者負担につきましては、医療保険審議会の建議書は、一割ないし二割の定率負担を多数意見として提言しました。未曾有の高齢化社会の到来を前にして、高齢世代と現役世代との負担の公平を図ることなしには、医療保険制度の維持は不可能であります。老人一部負担の定率化はその意味で象徴的な意味を持つものであって、政府案がこれを採用せず、依然として高齢者優遇の差別を残したことは遺憾であります。  第二に、薬剤給付につきましては、審議会は、これを給付外にすること、あるいは三割ないし五割の患者負担とすることを多数意見として提言しました。しかるに、政府は、薬剤一種類につき一日十五円という案を出しております。本来、薬剤の適正使用のためには、薬価差益を生む現行薬価基準制度改革することが先決であります。もし改革前において高薬価シフトを阻止しようとするならば、審議会の提案の方が有効であると考えます。  今回の改正案に含まれていない問題について、最後に二点、要望を申し上げます。  第一に、私は、平成九年改正は、政府案におけるように一部負担保険料などの引き上げという財政対策だけでなく、法改正を伴わずに直ちに行政的に実施することのできる各種の施策、これを含むべきであるというふうに考えます。審議会の建議書において整理したように、必要病床数あり方見直し、医師の需給関係見直しなど、医療提供体制にかかわる多数の細かな問題がありますが、決して軽視すべきものではありません。政府は、これらを一連の財政対策とリンクして実施すべきであります。  第二に、平成九年改正はあくまでも医療保険制度の抜本的改革の第一段階でありますから、政府は、一定期間内に医療提供体制診療報酬体系、薬価制度老人保健制度などの具体的改革を策定することをはっきりと宣言すべきであります。これらはもちろん若干の時間がかかりますけれども、これを必ずなし遂げるために、政府は時間的スケジュールを明らかにすべきであります。  以上の二点を付加することによって、今回の改正案を、事実上、改革の第一段階として位置づけることができると思います。  改正案につきましては、これ以上後退することなしに成立することを希望し、改正案に賛成します。  ありがとうございました。(拍手
  10. 町村信孝

    町村委員長 塩野谷先生、どうもありがとうございました。  次に、若杉史夫君にお願いいたします。
  11. 若杉史夫

    若杉参考人 ただいま御紹介いただきました日経連の若杉でございます。  国会の諸先生方には、日ごろから日経連の活動に深い御理解を賜っております。この機会をおかりいたしまして、厚くお礼申し上げます。  本日は、医療保険制度改革に関しまして、民間企業と申しますか、経済界の立場から発言させていただきたいと存じます。  戦後、我が国の企業は、貿易や資本の自由化、石油ショック、急激な円高などの相次ぐ環境変化を労使の協力と努力の積み重ねによって乗り越え、日本経済の発展を支えてきたのであります。  しかし、現在、我が国の企業は、諸外国に比べて著しい高コスト構造のために国際競争力は弱まり、生産拠点は海外へ次々と移転し、日本の産業の空洞化が進行し、国内における雇用の場が失われつつあります。  御高承のとおり、日本経済は今や低成長に転じ、国民所得の伸びも低迷しておりまして、この基調は今後長期化するものと考えられます。  一方、出生率の低下、後期高年齢者の増加など、少子・高齢社会が予想をはるかに超えて急速に進行しております。厚生省の新将来人口推計によれば、二〇五〇年の六十五歳以上人口の比率は三二・三%と、前回推計の二八・二%よりもさらに上回る見込みであります。  また、国、地方の長期債務残高は本年度末には四百七十六兆円に達する見込みであるなど、我が国財政はまさに危機的状況にあり、財政改革国民課題となっております。  現在の財政状況は土光臨調時よりもはるかに悪く、政府は財政危機を訴えております。これ以上、子孫に負の遺産をツケ回さず、問題を先送りしないために、今こそ抜本的な行財政改革の断行が必要であると考えます。  特に社会保障費は、現行制度を変えない限り、ふえ続ける傾向にあります。我が国では、法人税が約十四兆円であるのに対し、社会保障費用事業主負担額は二十八ないし二十九兆円にも達しているという試算もあります。事業主が払っている社会保険料負担の方がはるかに大きいのであります。  今後、少子化、高齢化の進展により、我が国の社会保障費が急増していきますと、企業は社会保障コストの負担増で活力を失い、また、企業で働く現役世代の人々の生活も税と社会保険料の重圧で苦しくなり、日本経済を支える民間企業は衰退の一途をたどることは明らかであります。  橋本内閣は、六大改革一つとして、社会保障構造改革の必要性をうたっております。その中でも、医療保険制度の抜本的改革は何をおいても急がなければならない最重要課題であります。改革に当たっては、良質かつ適切な医療と、健全な医療保険財政の両立を図ることが最大のポイントになろうかと存じます。  そこで、社会保障構造改革の基本的な方向あり方、さらに、老人保健制度診療報酬体系、薬価基準制度医療提供体制改革についての日経連の考え方を述べた後、今回の改正案に対する考え方を述べたいと存じます。  日経連では、昨年秋に、社会保障構造改革医療制度改革についての二つの提言を行いました。これらの中で、社会保障改革を重要項目として取り上げ、国民負担率は五〇ないし四五%以下を目指すべきと訴えました。これは、若い世代の負担や企業の活力に配慮し、国の活力維持のために必要であると考えたからであります。  日経連の社会保障構造改革の基本的なスタンスは、次の三点であります。  第一に、これまでの高度成長適合型の制度から、低成長にも対応可能な制度の構築を目指すこと、第二に、大きな政府を見直し、小さな政府の実現を目指すこと、第三に、高福祉・高負担見直し、自助、共助、公助の三者のバランスのとれた中福祉・中負担の実現を目指すことであります。  小さな政府を目指す私たちは、今後、公助は相対的に低下し、自助努力や共助のウエートを高めざるを得ないと考えております。  特に、医療についての基本的な考え方は、国民一人一人のセルフケアの観点を重視すること、どこまでを保険給付対象とするか、公的な保険給付の範囲の見直しを進めること、そして、効率化による医療費の削減と医療の質的向上を図るため、情報開示の促進、民間活力を含めた競争原理の導入、医療の高コスト体質の原因となっているコスト意識の欠如を改めていくことなどが重要でございます。  医療費の増加要因として特に問題なのは、老人医療費の急増です。  そこで、まず、老人保健制度については、現行拠出金制度は現役世代に極めて重い負担がかかるシステムであり、その拠出金増が被用者保険の構造的な財政赤字の主因となっております。現行の不合理な仕組みを廃止し、これにかわる新しい高齢者医療仕組みを早急に創設しなければなりません。日経連では、この問題についても検討中で、この秋をめどに結論を出したいと考えています。  第二に、診療報酬体系についてですが、現行出来高払い制には、過剰診療、過剰投薬、過剰検査等々のいろいろな問題点が指摘されています。医療のむだを排除するためにも、現行出来高払い制の見直しは不可欠と考えます。  現在、一部の医療行為について、包括化が医療機関の選択などによって行われていますが、当面、選択制でない全面的な包括化に移行するとともに、近い将来、フランスの償還払い制やイギリスの請負制等を導入すべく、速やかに検討を開始する必要があります。  第三に、薬価基準制度についてですが、我が国では医療費の中で薬剤費が非常に高く、約三割も占めています。また、薬価差益の存在が過剰投薬を生み出しており、この問題にメスを入れることが必要です。当面、薬剤の患者負担や薬価算定方式を見直すとともに、薬価差が生じない仕組みや薬価差を縮小する方策の検討など、薬価基準制度の廃止を含めた抜本改革に直ちに着手しなければならないと考えます。  この問題は、医療機関が薬を使えば使うほど潤い、また、患者自身が、コスト意識の欠如により、出された薬を幾らでも受け取る現行医療保険制度仕組みそのものに起因した問題であり、制度そのものの根本的な改革が必要であると考えます。  第四に、医療提供体制見直しについては、供給を絞ることが必要です。具体的には、医系大学の入学定員削減、保険医の抑制、ベッド数の抑制が必要です。また、外来患者病院集中といった非効率を是正するために、診療所病院機能分担や、かかりつけ医の導入が必要と考えます。  そして、これらの医療制度全般にわたる抜本改革の検討に当たっては、数値的な目標を設定し、かつ、年次計画を立て、あるいは期限を切って解決していくような手法をとるべきと考えます。  次に、今回の医療保険制度改正案についての見解を述べます。  さきに述べた日経連の基本的なスタンスから見ますと、今回の改正案は、評価できる点もありますが、幾つかの問題点があります。  一つは、今回の改正案は、抜本改革方向性が明らかでなく、改革に向けての取り組みとしては不十分なものと言わざるを得ません。先ほど述べたような医療制度全般にわたる総合的な抜本改革に向けて、早く大きな第一歩を踏み出す必要があると考えます。  二つ目に、老人患者負担について、定率制が導入されず定額制が継続されたことは問題であります。受益に応じた定率制を導入すべきで、それにより、患者診療側の双方にコスト意識が働き、過剰な診療、投薬、検査などの医療のむだが解消され、医療費そのものの効率化につながります。そして、これは国民全体の負担を軽くします。  三つ目は、薬剤負担の問題です。私もメンバーの一員となっておりますが、昨年の医療保険審議会の建議での多数意見は、薬剤の患者負担給付除外ないしは定率三ないし五割とするものでしたが、与党調整の過程で、診療側の理解が得られないとして、一日一種類十五円の案が作成されたと聞いています。今回の案は、薬剤に着目した改革の第一歩として評価できます。ところが、一部に、これをさらに後退させ、薬剤負担を圧縮させようとする動きがあります。私たちは、後退には反対であります。  四つ目に、政府管掌健康保険保険料率を過去最高を超えて大幅に引き上げることは容認しがたいことです。現下の厳しい経済環境の中では、中小企業には景気回復の実感は全くなく、このような保険料アップにはたえられないと考えます。  五つ目は、改正案について、一部に、患者負担引き上げ反対、当面の負担増の先送りなどの意見があります。今回の改正案は、当面する医療保険の財政危機を乗り切るための必要最小限の応急措置であり、今後どのような改革を行う場合でも、今回程度の患者負担増は避けられないものと考えます。改正案内容がこれ以上後退することになれば、医療保険財政の危機は深刻なものとなります。  以上、今回の改正案の問題点を申し上げましたが、この案の成立がおくれるとすると、まことにゆゆしき状況になります。改正案の早期成立に向けて最大限の努力を講じていただきたくお願いいたします。  最後に、政府は、国民医療費の伸びを国民所得の伸びの範囲内とするとの目標を堅持するという方針が出されています。日経連は、この考え方に全面的に賛成であります。  もし、医療制度抜本改革がとんざするということになれば、それに続く、公的年金等の改革を含む社会保障構造改革を初め、経済構造改革、財政改革などの六つの大改革の達成が危うくなるのではないでしょうか。  御清聴ありがとうございました。(拍手
  12. 町村信孝

    町村委員長 若杉さん、どうもありがとうございました。  次に、池上直己君にお願いいたします。
  13. 池上直己

    池上参考人 慶応大学の池上でございます。  本日は、参考人としてこういう機会をいただきまして、ありがとうございます。  私の意見を集約したものとしまして、事務局で御用意いただきました、日本経済新聞の三月三日の「経済教室」のコピーをお配りいたしましたので、きょうお話ししますのは大体その要旨に沿ってでございますので、機会がございましたらお読みいただければ幸いでございます。  私は、全くの私人として、医療についての基本的な考え方を申し上げたいと思います。そして、特に三つの問題を提起したいと思います。その第一は保険者の問題、第二は患者の自己負担の問題、第三は包括化の問題、以上の三点について順に申し上げていきたいと思います。  それでは、まず第一の保険者の問題でございます。  所得水準も、病気にかかる確率もそれぞれ大きく異なる五千以上の保険者に、現在、日本人は加盟しております。それを反映しまして、保険料率、すなわち収入に占める医療保険料の割合、あるいは給付水準も異なる。したがいまして、こうした保険料率も給付水準も異なる中で個別の保険者の赤字、黒字を論じるのは本来おかしな問題でございまして、どの程度の保険料率が適当であって、どの程度の給付が適当であるか、それについての議論なしに赤字、黒字を論じるのは順序が逆ではないかと思います。  しかしながら、こうした状況の中でも一応公平なサービスが可能でありますのは、診療報酬という公定料金による統一的な支払い、すべての保険者に適用され、すべての医療機関に適用されるというこの公定料金の制度と、それから一般財源からの補てん、すなわち財政力の弱い保険者に対する一般財源からの補てん、それから保険者間の財政調整、すなわち老人保健法に見られますような財政調整というのが柱となって、この五千の保険者の中でも一応公平な体制が成立しているわけです。  そこで、今後の医療保険改革を考える場合に、今よりも格差を拡大する方向にあるのか、あるいは公平性を高めるのか、これが一つの今後の試金石となると思います。もし公平性を高めるのであれば、保険者を統合するか、保険者間の財政調整を高めるか、あるいは一般財源をふやすか、この三つの選択肢があるかと思います。  さて、その中で緊切的な問題として、政管健保の保険料が上がって、それに対して被保険者あるいは企業の負担が非常に大きくなることが心配されておりますけれども、実は、政管健保に関しましては、昭和四十八年に国庫負担の定率化が導入されました際には、保険料を上げた場合にはそれに連動して国庫負担割合も上げるということが約束されたのではないかと記憶しております。そういたしますと、保険料が今回上がるのであれば、それに連動して国庫負担も上げる必要があるのではないかと考えております。  次に、二番目の患者の自己負担の問題について考えていきたいと思います。  まず、私は、患者の受診時の自己負担は最も逆進性の高い税金と考えます。つまりこれは、サービスに対して払うというのは、レストランやホテルのサービスと違いまして、不本意ながら受けるサービスでありまして、その不本意ながら受けるサービスに対して負担を強いるということは、非常に逆進性の高い税金と同等であると考えております。  そして、患者コスト意識を持たせるということがその論拠となっておりますが、患者に決められるのは受診するか否かでありまして、それ以後の医療費は医師の判断で決まっております。したがって、例えば医療費を事後的に通知しても、それは、コスト意識ではなく、罪責感を持たせるだけだと考えております。  しかも、この患者の自己負担をふやしたとしても、財政効果は余りないと私は考えております。と申しますのは、医療費というのは、ごく一部の患者医療費の大半を占めているという現状がありまして、例えば、高額療養費制度という制度がございまして、毎月の自己負担額が六万三千六百円を超えますと、全額、保険から賄われる仕組みになります。それはごく一部の患者でございますけれども医療費ベースではそれは三割に達するわけでございます。  それから、よくコスト意識を持たせるということが言われておりますけれどもコスト意識というのは、自分の収入と、どのくらい病気が継続してコストを負担するかによって大きく変わるわけでございますから、コスト意識を真に持たせるためには、高額所得者ほど自己負担の金額を多くする必要があるわけです。ところが、高額所得者は高額の保険料を支払っているわけですので、そうなりますと、高額所得者は、多額の保険料を払った上、いざ患者として受診したときには自己負担額も多く払わなければいけないという意味で、別な意味での不公平が生じるのではないかと考えております。  そこで、最後の、第三の包括化の問題について触れていきたいと思います。  私は、包括化は薬剤の不相応な使用に対する最も有効な方法と考えております。しかしながら、包括化になりますと、医師にとってはできるだけサービスを提供しないことがよいことになりますので、今では、こんなに薬をもらったということが言われますけれども、もし包括化が実現したら、あの医者からは全く薬をもらえなかったということが問題になるかもしれないと思います。したがいまして、包括化を導入するのであれば、チェック機能とセットとして考える必要があると思います。  そうなりますと、チェック機能がどういう形でなら合理的に導入できるかということが問題になると思いますけれども、私は、病院組織として実績の評価しやすいところから包括化を導入するべきだと考えております。その代表的なところの、公的病院中心とした高次医療を提供する病院から包括化を導入していく。病院ごとに、入院一日当たり、外来一回当たりの包括料金を設定していくことが適当だと思います。そして、あらかじめ都道府県単位で合意した実績に応じてその料金を改定していく。つまり、医療というのは、なかなか医師の行動を変えることも患者の行動を変えることも難しいわけですので、実績を踏まえて変えていくことが妥当だと思います。  したがいまして、その包括料金というのは、例えばその病院の入院一日当たりの料金が三万円だったら三万円から出発する、外来が八千円だったら八千円から出発する。そして、その業績がよければそれを高目に改定しますし、業績が悪ければ低目に改定していく。あわせて、補助金もそれに対して連動させていく。  業績とは何かと申しますと、コストのかかるものはすべてが含まれます。例えば手術の件数であるとか、かかりつけ医への紹介、今いる患者紹介していく、これを逆紹介と申しますけれども、そのように、コストのかかる患者を抱えれば抱えるほど業績としては満足することになります。その一方においては、コストがかかりますので、効率化が達成されるわけです。  そして、このように各病院ごとに包括料金を決めていきますと、今、沈滞化しております地域医療計画を活性化し、その医療計画に基づいた施設整備を行うことができますので、資本コストという面においても適正な配分が可能になるかと思います。そして、今、国で一律的に設定される診療報酬を、都道府県レベルでこれらの病院については決めることになります。そして、実績の目標も決めることになりますので、地方の時代にふさわしい分権的な構造だと考えております。  以上、意見を申し上げさせていただきました。  御清聴ありがとうございました。(拍手
  14. 町村信孝

    町村委員長 池上先生、どうもありがとうございました。  次に、八田英之君にお願いいたします。
  15. 八田英之

    八田参考人 全日本民医連の八田でございます。  私は、いつでも、どこでも、だれでも、親切でよい医療をということを掲げまして、医療の実践と社会保障充実の運動を進めてきました民医連の一員として、健康保険法等の一部を改正する法律案の撤回を願って意見を述べます。  第一に、この法律案は、過酷な患者国民への負担を強いるものであります。  医療保険改悪反対の運動を進める私たちのところには、無数の人々から、痛切な、患者負担増をやめてくださいという声が寄せられております。「年寄りははよ死ねということや」「飯抜いて医者にかかって死ぬか、飯食うて医者にかからんと死ぬか」、京都の患者さんの声であります。「私は、月二度、神経内科に通院しています。また、今後、歯科、婦人科、泌尿器科に通院または入院の予定です。しかし、負担増が押しつけられれば、受診すらやめてしまうかもしれません。もしかしたら、命にかかわる病気かもしれません。日本は二十七歳の私を殺すのですか。」、札幌市豊平区の方です。  お配りしました資料は、私たちに寄せられた声のごく一部であります。言われたまま書いておりますので、議員の皆様にはお読みになりにくいところがあるかもしれませんが、どうか御一読いただきたいと思います。  総額二兆円の患者負担強化は、新聞でも「こんなに国民負担増ばかり求めている法案は、長い医療保険の歴史でも珍しい」、朝日、九七年四月十六日、と指摘されています。今、年金を受けている人の六割が、自分の年金では一カ月入院したときの自己負担分を払えないというのは、やはり過酷と言わねばなりません。  政府は、「低い患者の自己負担」、九六年財政構造白書、と言われますが、それには統計上の問題があるのではないでしょうか。国民医療費からは、高額の負担がしばしば問題となる老人病院のお世話料や、今、医療保険対象である老人保健施設や訪問看護ステーションの利用料などは外されております。医療経済研究機構の推計によれば、国民医療費では一一・八%である患者負担は、国民医療支出では二四%に達しています。今でも約四分の一を占める患者医療費負担をさらに引き上げることは、保険の空洞化につながり、病人が患者になれないという事態を一層激しくする、すなわち、大変な受診抑制を引き起こすものであります。それは、医療経営にも甚大な打撃となるでありましょう。  第二に、患者負担強化によって医療費の抑制を図ろうとすることは、かかりやすさという日本医療の長所を否定し、ひいては国民の健康にも医療保険財政にもマイナスになると考えます。  保険証一枚でどの医療機関にもかかれるというアクセスのよさと、医療従事者の献身が、少ない医療費で、平均寿命世界一、乳幼児死亡率世界最低という到達をつくったことは、「日本医療と欧米の医療の比較」、「厚生の指標」九〇年三月号、という厚生省の方の書かれた論文にも明らかなところであります。また、最近の「老人医療費の日米比較研究」によっても、六十五歳以上の人口一人当たりの年間費用で、アメリカは施設ケアで日本の三・五倍、外来ではほぼ同じ、ただし、外来受療日数は日本がアメリカの三・七倍という報告があります。すなわち、お年寄りが気軽に受診できることによって医療費の伸びが抑えられているという面もあるのではないでしょうか。早期発見、早期治療を妨げる患者負担強化は、角を矯めて牛を殺すことになりかねません。  第三に、医療保険財政の対策としても当を得ないものであります。  保険財政が赤字となった要因の一つは、国の負担を減らし続けたことであります。そのために、一九八〇年度で三〇・四%であった国庫負担割合は、一九九三年度には二三・七%に低下いたしました。一兆六千億円に達する削減額であります。さらに、政管健保への国庫補助金が一兆円ほど繰り延べられたままです。これらをもとに戻すだけでも患者負担増は必要ありません。  国の財政も赤字だからと政府が言うのであれば、その原因が問われねばなりません。そもそも、不要不急の土木を起こしたり、軍備増強を図るのと、国民の命と健康のいずれを重視し、優先するのかの問題であると考えます。国がむだ遣いをして、国民にツケを回すのはやめてくれというのが国民的な感情ではないでしょうか。  日本医療費は、一人当たりで見てもアメリカの半分であり、世界的に見ても安いと考えますが、その中にもむだはあります。世界一高いという薬代と治療材料などの問題です。高薬価の問題にメスを入れねばならないことが共通の認識になってきたことは結構でありますが、それなら、なぜ、患者負担を強いる前に薬価やペースメーカーなどの値段を下げないのでしょうか。なぜ、製薬メーカーなどの政治献金を禁止しないのでしょうか。「薬価が一円違うだけで、薬によっては年間数億円も利益に差が出る。企業としては厚生省に影響力を持つ政治家に取り入らざるを得ない」、毎日新聞、九六年九月二十七日、というのでは、到底、国民患者負担増を納得できません。また、汚職事件の直後に、高級官僚の天下りや企業との癒着にメスを入れないままで国民負担増を要求されても、受け入れがたいものがあります。  第四に、患者負担増に対する国民的批判に対して、医療改革をするから認めてほしいという主張があります。消費税のときと同じ論理でありますが、逆さまではないでしょうか。まず政府がやるべきことをやってから国民負担を求めるべきであります。  その上、医療改革の中身が問題であります。保険給付の範囲の限定、混合診療、定額制医療、償還制などの薬の保険外し、医療供給体制の縮小など、伝えられるところでは、国民患者にさらなる負担を課し、医療の水準と国民の健康を悪化させ、お金のある人とない人は医療においても差別されることになる、医療福祉の分野さえもが営利市場化されるのではないかとの危惧を持たざるを得ません。医療保障理念のない、財政対策の見地のみからの改革は改悪にしかならないと考えます。  定額制についてだけ述べます。  定額制を全否定するものではありませんが、定額制を拡大すれば医療費が抑制されるという発想には種々の疑問があります。差し当たり、DRGを行っているアメリカで、「人口一人当たり医療費の年齢による上昇カーブが日本より急であること及び死亡者に投入される医療費はアメリカの方が大きいこと」、「高齢者保健医療の日米比較」(その二)、「厚生の指標」九六年八月、を指摘させていただきます。  高齢化社会の進行などで、高薬価などのむだを省いたとしても、医療費、社会保障費はある程度伸びていくかもしれません。しかし、それは、日本の社会が安定し、国民が安心して生活を、老後を送るために不可欠の費用であります。すなわち、言いかえれば、国民総生産に不可欠のコストであり、それゆえ、日本国憲法によって社会保障の責任を負う国と、生産の利益が帰属する企業によって基本的に負担すべきものであると考えます。国家財政のあり方国民生活本位に切りかえていくことで、この費用を賄い、充実していくことは可能でありましょう。さらに、日本は諸外国に比してむしろ企業の社会保障負担が少ないことを考慮すべきであります。大企業のメガコンペティションのために医療や社会保障を切り縮めることには、国民は同意できないと考えます。  この医療改悪法案に反対する署名は千三百万人を超えております。「消費税の上に医者にもかかれなくするのか」というのは、決してオーバーな表現ではありません。また、一部の団体の意見でもありません。国民の切実な願いにこたえて本法律案を撤回することを再度訴えまして、発言といたします。(拍手
  16. 町村信孝

    町村委員長 どうもありがとうございました。  次に、広井良典君にお願いいたします。
  17. 広井良典

    広井参考人 千葉大学法経学部の広井でございます。  私は、医療経済及び社会保障を専門とする研究者としての中立的な観点から、医療保険改革について私見を申し述べたいと思います。  今回の健康保険法の改正が、これから行うべき医療の構造改革の前の、当面の対症療法以上のものでないことは言うまでもありません。ドイツの例に例えれば、ドイツは、まず一九八九年に医療改革法を実施した後、九三年に医療構造法という法律を実施に移し、構造改革につなげていきました。今回の我が国の法改正は、ドイツでいえば第一段階に相当するものであり、改革への入り口にすぎません。医療そのものの中身にメスを入れた構造改革につなげていけるか否かにすべてがかかっていると言えるかと思います。  そのような視点から、今後の医療改革において特に重要と思われる点について、四点に絞ってお話し申し上げたいと思います。  第一の点は、情報開示と競争原理の導入という点であります。  国民は、今回の自己負担引き上げに対してかなり大きな不満を持っていると思います。それは、引き上げそれ自体の問題もさることながら、それ以上に、自分の受けている医療内容がわからぬまま負担だけが引き上げられることへの不満であると思います。  現在の我が国医療には、いわばブラックボックスとしての医療という言葉が最もよく当てはまる状況にあると思います。プロフェッショナル・フリーダムの名のもとで、我が国医療は、中身をうかがい知ることのできないブラックボックスのようなものとして存在してきました。そのため、診療行為そのものについても、いわゆる標準化が全く図られておらず、同じ病気であっても、受ける医療内容、例えば投薬内容や手術の頻度などについて、医療機関地域によるばらつきが極めて大きい状況にあります。  アメリカの医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」の編集長であったアーノルド・レルマンは、九〇年代の医療はアセスメントとアカウンタビリティーの時代、つまり、評価と透明性の時代であると述べました。こうした中、各国では医療の技術評価と情報開示ということが強力に進められており、日本だけが世界の動きから取り残されていると言っても過言ではありません。  このように、情報と選択ということがこれからの医療の基本的な方向ですが、とはいえ、個々の患者には、医療機関を選択するための十分な情報も、また、それを評価し判断するノウハウもないのが実際です。医療機関に対して、個人としての患者は非常に無力な存在であるのが現実であると思います。  ここで重要となるのが保険者の役割であります。すなわち、個々の患者にかわって医療機関診療内容についての立ち入った情報を収集し、医療機関を評価、選定するというのが保険者に求められています。実のところ、保険者には、レセプトという形で医療機関診療内容についての膨大な情報が入ってまいります。そうしたレセプトをデータベース化し、分析を行えば、極端に過剰な投薬や検査を行っている医療機関などは直ちにわかることになります。ところが、現在の我が国制度では、保険者には医療機関を独自に選択する権利も、診療報酬を交渉する権利も一切与えられておらず、国による画一的な規制が行われています。  私は、具体的な改革案として、保険者の行動の規制緩和を図り、保険者情報データに基づき医療機関を選定できる仕組みを導入し、医療に競争原理を取り入れることを提案したいと思います。このように保険者の活動の自律度を高め、医療における情報の流通と競争を図っていくのが構造改革の基本であると思います。こうした医療への競争原理ないし市場原理の導入は、アメリカ、イギリス、ドイツ、オランダ、スウェーデン等各国で既に進んでおり、世界的な医療改革の潮流であるということを強調しておきたいと思います。  こうした提案は、経済団体や消費者団体等では強く支持されておりますが、医療界の方で抵抗を示される方は多くおられます。しかしながら、私の印象では、自分のところの医療に大変自信を持っておられる医師の方々はむしろ積極的な賛意を示してくださいます。現在の医療費の配分では、スタッフを抑えて投薬や検査を過剰に行う医療機関の収益率が高いという構造になっております。私は、我が国医療機関や病床の数が際立って多く、供給過剰ぎみである中、こうした競争原理、市場原理の導入は、本当に良質な医療機関が潤うという点でも効果を持つものと確信しています。  次に、第二点として、医療費の配分と診療報酬について申し述べます。  今回の医療制度改革の基本方針では、プライマリーケアの促進が強調されておりますが、我が国医療は、国際的に見ると、むしろ十分過ぎるほど、プライマリーケアに優先的に資源配分が行われてきているのが実情です。これは、現在の我が国診療報酬がもともと診療所ないし開業医をモデルにしてつくられたこととも関係しており、また、開業医と勤務医の所得水準の差を見てもはっきりしております。むしろ日本において医療費が十分に配分されていないのは、病院の入院部門や高度医療、チーム医療などであり、医療機関の収支を部門別に見ると、これらの部門は完全な赤字部門となっております。  診療報酬改革は、こうした現状認識に立って行われるべきものと考えます。具体的には、まず定額制の導入は避けられませんが、そもそも定額制は診療行為が定型的なところになじむのであり、公的病院や高次機能病院への導入には疑問があります。まず課題は、診療所の定額制ないし総枠規制だと考えます。諸外国を見ましても、診療所診療報酬出来高払いで青天井であるのはもはや日本だけの状況になっております。続いて、高次機能病院を除く急性期病院について、DRG等のきめ細かな定額制を導入していくべきものと考えます。  また、診療報酬に関しては、その内容もさることながら、決め方のプロセスを改革する必要があり、具体的には、中医協のメンバー構成を見直すことが必要と思います。現在は医療費の三割もが公費でありますので、単に診療側と支払い側で決めるというものではなく、国民全体にかかわる問題として、公益委員の数を例えば八名に増員するといったことを行う必要があるのではないかと思います。また、医療費の配分の公平化の観点から、公的病院や高次機能病院の代表も入るべきものと考えます。  第三に、老人保健制度についてであります。  結論だけ申し上げれば、介護とあわせて、税を財源とする独立の制度とするのが妥当と考えております。医療費が五倍も違う老人若年者を同じ保険制度に入れるのは無理があり、また、老人医療と介護は別制度で分けることができないからであります。現在の我が国制度は、制度の微修正を重ねてきたために、保険と税とがいわば混然一体となり、保険といいながらかえって給付負担関係が不明瞭、不透明な制度となっておりますので、保険と税の峻別を図っていくというのが基本になると考えます。老人医療の部分は保険料負担が減る分増税ということになりますが、老人医療費が趨勢的にふえていくこと自体は避けられないことですので、負担増という話を避けるのではなく、正面から問うべきだと考えます。  最後に、第四点として、医療保険改革論議の中ではほぼ全く出てまいりませんが、私は、日本医療政策に最も欠けているのは医療技術政策だと考えております。  我が国の医学・生命科学研究予算はアメリカのそれの実質約一七%にしかすぎず、先進諸国の中で最も低い水準となっています。これでは良質の医療国民に提供することはできません。また、抗生物質の開発が結核の医療費を激減させた例などに見られますように、医療技術の革新は中長期的には医療費の削減にも大きな効果を持ちます。例えば医療費の少なくとも一%は医学・生命科学研究に充てるなど、目前の抑制策のみを考えるのではなく、国家百年の長期的な視点に立った対応が必要ではないかと強く感じております。  最後に、今回の自己負担引き上げ自体はやむを得ないと考えますが、冒頭申し上げましたように、これは対症療法であり、今申し上げましたような構造改革に確実につなげていくということが何よりの課題と考える次第です。  どうもありがとうございました。(拍手
  18. 町村信孝

    町村委員長 どうもありがとうございました。  以上で各参考人方々の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  19. 町村信孝

    町村委員長 これより委員からの質疑を行います。  質疑につきましては、理事会の協議によりまして、一回の発言時間が三分以内となっておりますので、委員各位の御協力をお願いいたします。  なお、質疑のある委員は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。また、発言の際は、所属会派及び氏名をお告げいただき、御意見をお伺いする参考人の方を御指名願います。  なお、前回の例で、一遍に全員の方々からという質問のやり方がありましたが、あれはちょっと御容赦をいただきたいと思います。  それでは、質疑のある委員は挙手をお願いいたします。  それでは、自民党の奥山さん、どうぞ。
  20. 奥山茂彦

    ○奥山委員 自民党の奥山でございます。  初めに、最上町長さんにお尋ねをしたいと思います。  健康保険制度でいろいろ苦労をされておられると思います。先ほど聞かせていただきますと、高齢者人口割合が二三%になっておるということですが、国保の財政はどのようになっておるか。それから、隣接町村といろいろ連携されてということなんですが、我々、広域行政をこれからどんどん進めていかなければならないというふうに思いますが、それのメリット・デメリットを具体的に示してもらえればありがたいと思うのです。  それから、糸氏先生と池上先生が先ほど医療費の、我々も特に出来高払い制度がもう既に限界にあるというふうに聞いておるわけでありますが、与党の協議会の中ででも、出来高払いと定額制をうまく組み合わせてこれからの医療を考えていかざるを得ないというふうに言っておるわけでありますが、この組み合わせをどのような形でされるのが一番いいか。我々もいろいろ苦労しておるのですが、先ほど池上先生の方からは少しそういう話も出たわけですが、その辺についてお尋ねをしたいのです。
  21. 町村信孝

    町村委員長 それでは、中村さん、糸氏さん、池上さん、この順序でお願いいたします。
  22. 中村仁

    中村参考人 私は、昭和十七年から国保に携わってまいりました。言うなれば、大変経験もしてまいったわけでございますが、その間、いろいろ国保制度についても紆余曲折があったわけです。  退職者医療制度なんか出た場合、大変苦労した、復活をするために国会に何回か陳情に参った経緯もあるわけです。  昭和十三年に国保制度が制定されまして、昭和十七年から携わった中で、当時は保険税ではなかったわけです。保険料であったわけです。したがって、認識が足りないといいますか、非常に収納率が悪いというようなことで、給付をするについて大変苦労した経緯がございました。  その後、昭和二十九年に町村合併をやって、ちょうど四十三年になりますけれども、その当時、村が大変貧乏だったものですから、合併条件の中で一番大変な問題は医療給付費を支払うということでございました、六カ月か七カ月ぐらいおくれておったわけですから。そんなことを考えまして、当時、私、収入役をやっておったのですが、町長と相談をいたしまして、約五百万の金をお借りしまして、そして支払いをした経緯がございます。  そんなことから、合併してよかったという声が出てきたわけでございますが、振り返ってみますというと、確かに保険制度はいろいろ紆余曲折はありました。さらにまた、試行錯誤もあったのではないかと思います。私自身の経験でございますけれども。  しかし、今の国保制度を見ますというと、その当時から比較しますと隔世の感があるわけですね。いろいろ進歩をしてきているわけでございます。そういう状況の中で、今のような高齢者を抱える状況下に変わってまいりまして、その支払いが年々増加の傾向にあります。老人医療の方が、逆にもう四%から五%ぐらい特別会計が多くなってきているわけです。  そういう状況の中で、どうしても一般会計の方から公費を投入しないというと収支のバランスがとれないという状況になっておるものですから、ある程度財調を持っておりますけれども、その財調も最近では底をつくような状況になってきております。しかも、最高限度額が五十三万にまた上がってきたわけですね。  それらを考えるというと、一般の社会保険、いわゆる政府管掌保険とのバランスの問題なんかもこれから考える必要があるのではないかな、そんな感じがするわけです。いずれにしましても、今の制度を基本にしながら、さらに改革を早くやっていただきたいということ。  それから同時に、各市町村がゴールドプランによって施設の整備なんかをやっているわけです。私の町の場合ですと、おかげさまで、厚生省あるいは県からの大変な御指導をいただきまして、一〇〇%完了したのではないかなというように思っております。  あとは、ソフト面をどうするかという問題なんですが、それらについては、いろいろ問題はありますけれども、従来から、私どもの町は豪雪地帯でもございますので、お互いが助け合わなくちゃ生きていかれないという地域でございますので、そういう点においては非常に恵まれた地域ではないかなというふうに思っております。  私に対して、最近、老人の方が、最上町に生まれてよかったなというように言われるようになってまいりました。私も長い間、行政に携わってまいりましたけれども福祉保健医療という三位一体のハード面の施設整備が全部終わったということが、住民そのものも大変感謝をしているのではないかなというようにも思っています。  しかし、これは金がかかるわけです。現に、私ども一般会計は今六十億です。特別会計を含めますと大体百二十億程度になるわけなんですが、病院から老人医療からいろいろなものを含めますと百二十億ぐらいになるのですが、その中で、保健医療福祉のエリア整備、この三つの拠点整備に対しては大体六十億ほど投下しました。それから、今度の集約化した保健医療福祉施設整備には大体六十億ぐらいかかっているわけです。したがって、百二十億ぐらいかかっているわけなんですが、一般会計の総予算が六十億ですから、相当莫大な経費を投入いたしたことになるわけでありますが、これは、国のいろいろな、福祉に対する施策の展開があるわけですから、それをうまく活用してそういう整備を終わったということになるわけです。  それを各町村がこれからやろうと思っても、私は、これはなかなか大変だろうと思います、特に財政が厳しくなってきているわけですから。私どもはいち早く、もう何十年前から気がついておったものですから、それをやったことが非常に注目されるようになったわけなんですが。  したがって、私はやはり、今どうしても車の時代でもございますので、できるならば類似町村との共同化医療費についても高額医療については共同化をしているわけですから、それと同じように、施設についても隣接町村との共同による使用ということをこれから積極的に展開すべきではないかなというふうに思っておりまして、現に、私どもはそういう方向で今進めております。
  23. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 ただいま御質問のありました出来高、定額制、この問題でございますけれども、私どもは、今の診療報酬点数をごらんになればわかると思いますが、現在、出来高、出来高といっても、これはよく見ますと診療行為別の定額制と言っていいのじゃないかというふうに考えております。十五年、二十年にわたる医療費抑制政策の中で、今の診療報酬点数はかなり細かいところまで定額制がしみ込んできております。  例えば胃がんの手術が、仮に二十万円なら二十万円という価格が点数で決まっている。これは、二、三時間で終わるものでも八時間以上かかっても、またその人数、難易度、そういうことにかかわらず、とにかく二十万円は二十万円という一つの決まった額になっております。また、診察料でも、仮に千円としますと、それは、三分、五分でも千円ならば、三十分、一時間かけて丁寧に診察してもそうでございます。  こういうように、個別のものを見ますと、その中は実際は定額で、その上の回数払いという形が出来高というような形になっておるわけです。  我々が、特に医療関係者が抵抗を示す最大の原因は、現在の包括払いというのは、はっきり申しまして、いい医療をできるだけ安く提供しろ、こういう話でございます。それが、できるだけ安くではなしに、いい医療を適正な価格で提供しろという、そういう包括制であれば我々も十分に検討はいたしますけれども、これだけ医学・医療が進歩し、人件費等の高騰するこの時代にあって、とにかく安ければいいのだ、しかも最高のものを出せ、こう言われましても、できないものはできないと申し上げるしか仕方ないわけでございます。それは、定額といっても、定額制度が適正な価格保障をきちっと計算のもとにやっていただければいいわけですが、従来の、厚生省がやってきたマルメといいますか、包括制というのは、非常に悪いイメージを与え続けてきた。そういうことから、我々医療関係者も、どうも定額というと、まず悪い、最高の医療を最低の価格でとにかく仕上げろと言われても、できないものはできないと申し上げるしかないわけです。  ですから、ただ、基本的には、定額になじむ部分となじまない部分がありまして、急性期医療については、これを定額に持っていくというのは、よほど周到な準備をしなくちゃいけないし、それなりの評価をしなくちゃいけないというふうに考えておりますけれども、慢性期疾患、特に老人医療については、これはやはり定額制のやり方も必要だろうというふうに考えております。  ただ、人間というのは品物とか道具ではございませんで、生きている限りはしょっちゅう状態が変わっていくわけですから、それに柔軟に対応できるような制度、あるいは包括制度の中に適切な出来高をオプションとしてつけていく、例えば八十歳の高齢の人がいざ肺炎にかかった場合はそれなりの医療が提供できるような、そういう柔軟な組み合わせというものは、少なくとも包括制の上にある程度の出来高のオプションをつくっていくということであれば、我々は、必ずしも定額制に反対するものではございませんし、それは、その病気の種類によって当てはめていくものは当てはめていくべきだ、かように考えております。  以上でございます。
  24. 池上直己

    池上参考人 包括化と出来高の組み合わせとしてどういうのが適当かという御質問かと思いましたので、それについてお答えしたいと思います。  まず第一に、私は、高次機能病院から包括制を導入するべきだと考えております。  それは、確かに高次機能病院のサービスは標準化されないことは事実でございますけれども、組織として包括制に対応できる体制があって、そして、サービスの内容を評価できる体制を整えやすいからであると考えております。  それからもう一つの理由は、高次医療ほど医師の裁量で圧縮可能な部分があると思いますし、特に医師教育、特に卒前卒後の医師の研修において医師にコスト意識を持たせることが重要であると考えておりまして、医師の研修というのは、今現在、高次機能病院中心に行っていますので、そこで包括制を導入された場合には、その波及効果はやがてすべての医師に浸透すると考えております。  それから、包括制というのは、評価とセットにしないと非常に危険でございますので、包括制を導入した際には、その包括料金を決めるのは、国のレベルではなく都道府県のレベルであるべきであると考えております。そして、医療の問題というのは非常に住民に身近な問題でございますので、このような国会の場ではなく、県議会レベルでのこのような議論、検討がしかるべきだと考えております。  それから、第二の問題としては、高齢者に対する包括制の導入というのは、これも進めるべきだと思います。  この問題に関しては、介護保険法が現在審議されておりますけれども、要介護度に応じて給付額が決まるということが導入されますと、それに対して介護サービスを提供する機関に対しても実質的な包括制が導入されると考えられますので、この問題は、むしろ介護保険との絡みでその介護部分については検討するべきだと考えております。  以上でございます。
  25. 町村信孝

    町村委員長 ありがとうございました。  岡田さん、五島さん、児玉さん、こんな順序でいきたいと思います。  どうぞ、岡田さん。
  26. 岡田克也

    ○岡田委員 新進党の岡田克也でございます。  まず、塩野谷委員にお聞きしたいと思います。  医療保険審議会の方で昨年の十一月にお考えをまとめてお出しになったわけですが、その中で、先ほどの御説明にもありますように、今回の改正についてのポイントは、一つ高齢者負担の問題、そしてもう一つは薬剤だったと思います。高齢者については、先ほど御説明のように、一から二割の定率負担ということでありましたが、現実には五百円、月四回ということで、基本的な考え方と違う政府の案になっているわけであります。薬剤についても、三から五割の定率負担というのは、それとは似ても似つかない形になってしまった。そういう意味では、医療保険審議会考え方というのはほとんど否定されたのではないかというふうに私には思えるわけであります。  かつ、その医療保険審議会の中で、いろいろ具体論についても、将来の改革方向について御議論され、おまとめになっている。かなり議論をされた結果だと思います。それと比べた場合に、今度の与党協議会の結果というのは、かなり後退した、抽象化されてしまったというふうに私には思えるわけで、そういう状況の中で本当にこれから構造改革ができるのだろうか、そういう疑問を持たざるを得ないわけであります。  今回の改正をしてしまえば、三年間何もやらないでまた三年後を迎えることになりかねないのではないか、そういう懸念をしておりますが、塩野谷委員としては、今のようなこういう政府案を通してしまって、それで構造改革が本当にこの三年間進んでいくというふうにお考えかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。  それから、鷲尾委員にお伺いいたします。  先ほどの御説明にもありましたように、基本的に、具体的な方向を示した上で負担増を求めていくというお考えだと思います。一年以内に具体案を出せというふうに連合は言っておられるわけですが、その際に、それでは一年間はどうするのか。現実に赤字は出てまいります。その点についてどうお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。  最後に、糸氏委員にお聞かせをいただきたいと思います。  先ほど、外来老人負担増、これ以上の負担増はだめだ、それは患者と医師との間の信頼関係をだめにするという趣旨の御発言があったようにお聞きをしておりますが、どうして、外来患者に対して例えば定率で、医療保険審議会の言っているような定率の負担を求めていった場合にそういう信頼関係が壊れることになるのか。例えば、お年寄りであっても、お店に行けばお金を出して物は買うわけであります。電車に乗っても電車賃は原則払うわけであります。そういう中で、なぜ、国がきちんと枠組みを決めて、その枠組みに従って定率なら定率の負担を求める際に、それが医師とお年寄りとの信頼関係を損なうことになるのか。その辺がよくわかりませんでしたので、ぜひ御説明をいただきたいと思います。  ちなみに、今提案中の介護保険法案も一割の負担を言っているわけでありまして、今のお話の延長線でいきますと、介護保険法案の一割負担もお年寄りとの信頼関係を壊してしまう、こういうことになるのかと思いますが、その点についてもあわせてお聞かせをいただきたいと思います。
  27. 町村信孝

    町村委員長 それでは、お三方、まず塩野谷さんからお願いします。
  28. 塩野谷祐一

    ○塩野谷参考人 先ほど、政府が提出している改正案自身は医療保険審議会の建議書の立場よりははるかに後退しているという意味で、遺憾であると申し上げました。これは、建議書を出した後、どういうふうに事態が進行したかといえば、それは政治プロセスの問題であって、ぜひ、後退をこれ以上しないよう、あるいは少なくとも建議書の線に戻るよう、皆様にこの場でむしろ私がお願いしたいことでございます。  それから、制度の抜本的な改革の方については、既に三党あるいは四党で議論が進められようとして、その問題点としては、老人保健制度とか薬価の問題あるいは診療報酬体系に取り組むということに合意がなされているようでございますので、ぜひ責任を持ってやっていただきたいというふうに思っております。  私は、制度というものは、出来高払いにせよ、患者のフリーアクセスにせよ、結構だ、いいものだと言われますけれども、決してそれ自身で評価されるべきものではなくて、どういう社会的、経済的状況のもとに置かれているかによって、その制度がいいか悪いかが評価されなければならないと思うわけです。  ですから、出来高払いとかフリーアクセスとか、これは立派な制度だから維持したいと言うけれども、それでは、それはどういう状況のもとでワーク、機能したのかといえば、非常に幸運なことに、高度成長によって保険料は非常に潤沢であったとか、医療をたくさん使う老人の数がそれほど多くなかった、そういういわば偶然的な状況のもとで、ある一つ制度が、出来高払いとかフリーアクセスというものがワークしたにすぎないわけであって、現在の経済あるいは人口の社会状況を考えれば、そういう制度というのは何の意味も持たなくなるわけであって、時代に応じた制度というものを考えなければいけないわけであって、かつてはこうであったとか、かつて国会でこう約束していたではないかというようなことは全く意味を持たないわけであって、絶えず制度というのは社会経済環境の中で見直していく、それが社会経済の進化、発展だというふうに私は思って  います。
  29. 鷲尾悦也

    鷲尾参考人 御指摘のように、構造改革、一年以内に案を出せ、その間は凍結しろ、こういう意見を申し上げておりますが、岡田先生御指摘のとおり、その間の赤字をどうするかという問題、今日のような財政状況の中で放置することはできない、こういう御意見は強いだろうと思います。  私どもは、緊急避難措置としての医療費に対する総枠予算の設定という方式を提言したいと思っております。  これは、御承知のとおり、現在、ドイツで、保険医である診療所について制度化されているものでありまして、細かい問題についてはもう少し研究してみなければいけないと思いますが、この医療費支払い方式は、各州ごとに設定されました医療費総額を各保険医ごとの診療報酬点数に応じて配分する方式というふうに聞いております。この制度ですと、診療報酬表に点数だけが示されて、年度末に、全保険医がその年度に得た総点数で総予算を割って点数単価が決まるという制度であります。  したがいまして、医療機関は実際の報酬額を把握できないわけで、必ずしも費用効率化のインセンティブが働かないなどという欠陥を持っているわけでありますが、日本の点数単価出来高支払い制度は、一単価十円と固定されておりますから、理論的には医療費総額が青天井になってしまう、こういうことになっておるわけであります。この出来高払いのもとでは医療供給者による需要誘発が避けられないことから、ドイツでは、御存じのように、今議論になっておりますように、疾患ごとあるいは治療群ごとの包括支払い制度の採用に向けた検討が進められているわけでありまして、私どもも、包括支払い制度の採用など抜本改革を要求しているわけでありまして、その間、ドイツ方式のような総予算枠による抑制というものを考えてみたらどうか。  あくまでも緊急避難的予算措置でありますが、来年度の医療費予算について、例えば対前年度比何%というふうに設定をいたします。九六年度の医療費改定は八年の四月実施でありますけれども、三・四%、医科が三・六%、歯科が二・二%、調剤が一・三%というふうに聞いておりますが、こうしたような数字を参考にしながら、対前年度比何%で総額を考えるということを設定いたしまして、年度末で締め切られる全医療機関の総点数で割って得られる一点単価で最終的に精算するということにしたらどうかなということでございます。これであれば医療費総額は抑制される。  確かに、医療側からの御意見はあるだろうと思いますけれども、これは、抜本改革をすることによって適正な医療費単価が決まるということでありますから、そうした過渡的な状況について容認をしていただければ、医療費改定の総額で抑制して、その分については医療機関も、その分の増収と言ったら変ですけれども、収入増が図られるということでありますから、そういうやり方もあるのじゃないかということであります。  年度末の精算というのは、一年で大変でありますので、月々、例えば一点単価九円で医療機関に概算払いをするというようなことで、後で精算するという方法も工夫としてあり得るのじゃないか、このように考えております。
  30. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 外来老人負担についてでございます。  医療保険審議会で、日本医師会は定額制で、ほかの方はほとんど定率制を主張されたということは、先ほど塩野谷先生おっしゃったとおりでございます。  なぜ日本医師会はそれほどまでに定額というものに固執するのかといいますと、理由は幾つかあるわけですが、一つは、基本的には、抜本改革というものをやりながらいずれは全保険制度を定率制に持っていくということ自体には、日本医師会は反対しているわけではないのです。ただ、それまでのプロセスとして、一挙に激変を行うということについては、老人は大変だということを一つ申し上げておきたい。  それと、定率制になりますと、従来と違いまして、その都度、医療費が幾らかかるかわからないというお年寄りに対する不安がございます。これが、ついもうやめておこうかということで受診のアクセスの低下につながっていく。そのことが病気の早期発見・早期治療というものをおくらせて、結局、重症化あるいは寝たきり老人という形へ悪化して、かえって結果的に医療費が高くつくのじゃないか、そういうことが一番心配されるわけです。  例えば、老人の定率を行った場合どうなるかと申しますと、老人で、もう死の段階を迎えているような重症者ほど、あるいは寝たきりで寝ている方、こういう方の医療費というのは大体最低十万円から二十万円くらいになると思うのですね。入院しなくても、訪問看護を受けたり訪問診察を受けて、在宅のケアを受けておる方は非常に高い医療費がつきます。また、外来でも、幾つもの病気を持っている方はあちこちの医療機関にかかっているということで、トータルで医療費はかなり高くなります。結局、高い医療費のかかる人ほど、定率ですとペナルティー的に余計払わなくてはいけないということになる。  例えば、私が往診しているある患者さんは、一カ月に、週に一回、ドクターが往診し、週二回、看護婦が訪問看護しますと、これは恐らく十四、五万円くらいになる。従来だったら千二十円で済んでいたものが、定率一割になりますと、一万四、五千円払わなくてはいけない。とたんに負担は十五倍になるわけですね。こういうことが現実に起こってくる。  そうすると、非常に、定率の負担というのが一挙に――徐々にいくのだったらいいですよ。一挙に、千円だったものがいきなり今度一万五千円というような、寝たきりの、しかも死を間近にしている人がおちおち寝てもおられない、看護婦さんにも来てもらえないというようなことになっていいのか。そういう制度というのは、一遍にそこへ持っていくのにはちょっと問題があるのではないか、もう少し段階を経て徐々にやっていくべきじゃないかということを申し上げて、私は、医療保険審議会で、定額制というものをぜひお願いしたい、定率制はできるだけ今回は勘弁してほしい、もう少し段階を経て徐々にそちらへ持っていくのはもちろん反対ではございません、そういう意味で申し上げておったわけでございます。  要は、お年寄りというのは、ちょっと最初に誤るとすぐに寝たきりになりますし、あれあれといううちに死んでしまうわけですね。そういうことで、若い人以上に早く受診させる、早くお医者さんに見せる、それによって寝たきりを少しでも防いでやる、あるいは、寝たきりになったら速やかに正常な状態へ何としてでも戻していくということが大事でございますので、そういう意味で、医療のアクセスというものを阻害するようなことはなるべく避けたいというのは、医療担当者としてのこれは本音でございます。  それで、介護保険が定率制じゃないかという話がございましたが、介護保険そのものは、これは定額でございます。したがって、そのうちの一割負担といっても、これは結局定額ということ、上がもう決まっているわけです。上が、介護保険の入院だったら幾らというふうに定額で決まっていますから、それの一割というのは当然定額になってくる。  ただ、今後、介護保険の審議の過程で一部出来高を認めていくのかどうか、そこの過程を見なければわかりませんが、いずれにしても、どこまでが介護で、どこまでが医療かということを分けていくのは恐らく困難になってくるだろうというふうに考えますし、将来的には一本にしなくちゃいけない。そういう意味で、負担についても、この定額というものと定率というものの整合性をどういうふうにとっていくかということを考えますと、一応、今回は定額という制度でいっておりますが、実質負担は一割の定率とほとんど変わらないし、恐らく、薬剤負担がもし入ってくれば、一割以上の大きい負担、場合によっては、我々の試算では三割程度の負担になりかねないというふうに思っております。  そういうことで、私たちがなぜ定額に固執し、定率を避けたかということについては、定率が全く頭から話にならないという意味ではございませんで、現在の状態からそっちの新しい制度へ移行する一つのプロセスとして、やはり激変緩和をとってほしいということで申し上げておるわけでございますので、御理解を賜りたいというふうに思います。
  31. 町村信孝

    町村委員長 ありがとうございました。  次に、五島さん。
  32. 五島正規

    ○五島委員 民主党の五島でございます。  まず、塩野谷先生にお伺いしたいわけでございます。  今先生、日本医療保険制度のこれまでの非常にうまくいってきた経過についても、偶然の所産という部分もあるという御指摘でございましたが、世界各国の医療保険制度と比較してみた場合に、日本医療費というのがイギリスと並んで非常に低く抑えられてきたことは事実でございますし、それから、イギリスのナショナル・ヘルス・サービスと比べましても、医療の普及という意味においては、日本の方がはるかに進んできている。また、イギリスが今日、二層制の、二つの医療制度と言われる、自費医療とナショナル.ヘルス・サービスという形の二つに分かれているという現状から見ても、これまでの日本医療制度というのは、それなりに他国に比べて評価できるものがあったのだろう。もちろん、急激な経済の低調と高齢化ということで、今日、それの維持が極めて厳しくなっているということは十分理解した上でございますが、他国に比べて非常にパフォーマンスのよかった最大の理由はどのようなところにあると先生はお考えか、お伺いしたいということが一点でございます。  もう一点は、先日の医療保険審議会におきましても御提言いただいたわけでございますが、その中で、私ども、不思議に思うわけでございますが、先ほど他の参考人の皆さんからも御指摘ございましたが、やはり日本の薬価そのものが余りにも高い。  日本で製造されてフランスに輸出されている、例えばメバロチンが、厚生省の例でも、フランスで売られている価格に比べて日本は二・七倍、日本で売って海外へ輸出した価格がそうだ。また、アメリカで製造され日本に輸入されております、例えばプロテアーゼ阻害剤などの新しいエイズの治療薬が三倍を超えている。  そういうふうな状況を見た場合に、日本の薬価というのは非常に高い。しかも、新薬の価格の決定が、ゾロ新が中心だということもありまして、ほとんど八〇%を超える分が同効薬価参考という形で新薬価が決まっていっている。そういう中で、構造的に極めて高い薬価が決められるその状況の中で、その負担の二割、三割を御本人に負担を願うということについては、これは大変問題があるのではないか。薬価の問題が大きな問題だということを理解しながらも、そこのところについてどういうふうにお考えなのか。  あわせて、今の診療報酬の世界の中において、医療の統制経済の世界の中におきまして、医療に要するキャピタルコストや一部のランニングコスト診療報酬措置されておりません。結果において企業努力という形で、さまざまな、薬価差益なり検査差益というところでこのキャピタルコストを担わなければいけないという現状があると思いますが、そこのところも御指摘のないままにおいて今回の答申をお出しになったわけですが、そのあたりについてどのようにお考えなのかというのをお伺いしたいと思います。  続きまして、池上先生と広井先生にお伺いしたいわけです。  今回、厚生省は、薬価の問題につきまして、一日一種類十五円というのを出してこられました。他のものであれば、本人の負担額というものは基本的に保険からの給付に置きかわる関係にあるはずでございます。しかし、薬剤に関してそういうことが言えるのか。  過去十二年間に薬価が五一%に下がったにもかかわらず薬剤比率が下がっていないということは、高価格医薬品に対するシフトがえによってそれが起こりませんでした。今回、負担を求めることによって高価格医薬品へのシフトがえというものがどういう形で起こるとお考えでしょうか。その辺が、もし、全く効果がない、従来の薬価の引き下げと同じようなことになってくるとすれば、負担はふえたが保険財政上は全く効果がないということになりかねないという心配を私は持っているわけでございますが、その辺についてどうお考えか、お伺いいたしたいと思います。  最後に、鷲尾さんと若杉さんに。  お触れにならなかったわけですが、今回の改正案の中におきましても、政管健保の保険料率が千分の八十二から八十六という提案がございます。もちろん、医療保険は税と保険料と自己負担ということで成り立つわけでございますから、保険料率の引き上げを否定するわけではございませんが、これから先のさまざまな、高齢化に要する医療費の問題を考えた場合に、早晩、保険料というのは年収に対する保険料賦課ということでないと、今日でも社会保険料負担が賞与の額によって大変大きな不公平になっております。そのことを考えますと、なぜ千分の八十六に引き上げるのか。  私は、特別保険料、この部分を引き上げていく、もちろんこの中には税を二〇%投入しているという問題の処理をどうするかという問題はありますが、この問題はきちっと議論して賞与部分に対する保険料率を引き上げていくというところを先行させてやるべきではないかと考えるわけでございますが、お二人のお考えをお伺いしたいと思います。
  33. 町村信孝

    町村委員長 五人の方々の御指名がありました。それでは、塩野谷さんからお願いいたします。
  34. 塩野谷祐一

    ○塩野谷参考人 日本医療制度と世界の医療制度との比較の上での評価をお尋ねになったわけですが、イギリスは世界の中でかなり低い医療、非常につつましやかに、そして厳しい統制のもとで、国家管理で行われております。その対極にあるものはアメリカのかなり自由な医療制度でありますけれども、そういうところでは非常に高い医療負担が生じてきます。  医療負担の程度を国際比較のような観点から見るといった場合に、我が国でもそうですけれども医療費国民所得といったような比率が使われますね。さらに、社会保障全体についていえば、税金、保険料などを足して国民負担率というような言葉がこの国にありますけれども、そういう国民所得、それから政府の福祉支出との比率というのは、これは経済成長に大きく依存しているわけであって、それが低くなるのは、つまり、医療費なんというのは、だれも好んでかかるものではありませんから、国民所得などとは無関係に右肩上がりにいくでしょう。だから、それを上回って経済が一〇%も伸びるようなところでは、国民所得に対する医療費というのが安定しているのは当然のことであって、それだから効率がいいと言うわけにはいかないわけでしょう。事実、経済が停滞するようになれば、それは大きな比率になってあらわれてくる。そういうことになるわけですから、その中身を、資源を医療に使う場合の効率性ということをかなり問題にしなければならないと思うわけです。  先ほど、私は方程式の両辺という言葉で、医療を賄う支出への拠出と医療にかかる費用、その両方をうまくコントロールしなければ、一方が大きくなり他方が小さいというのでは制度が成立しませんから、そういう意味で、負担と構造改革とは同時に考えなければならないと。  私も普通の言葉に従って負担と申しましたけれども負担というのは本来払うべきものでないものを無理やりに課せられているというような響きを持ちますけれども、本来、医療というのは自分にその便益が帰属するものであって、これは、政府でなければできない公共財の支出を負担する、そういうものと違って、めいめいに必ず帰属する便益が価格であって、市場で取引すれば何百万円、何千万円という医療費を自分で負担しなければならない、自分で払わなければならない、それが貴重な自分の生命に対する評価であるわけです。それを、そういうのは社会的に公正に欠けるから社会全体で面倒を見ようというのが社会保障の制度であるわけです。ですから、これは負担というよりも、本来国民がかかった場合に支払う、そういうものであって、ますますそれは高くなっていくし、それから、人口が減ることによって相対的に若い者の負担が厳しくなる。  そういう意味で、私は、制度運営の安定性ということに非常に重要な意味があるというふうに思っているわけであって、単に老人に対してそれが気の毒だからということより、それじゃもっと気の毒な若者とのバランスをどう考えるかという意味で、医療保険制度を世界的に見た場合に、公正という観点、それから効率という観点が両方うまくバランスするように考えなければならないというふうに思っているわけです。ぜひ、いろいろな制度の、局所に焦点を置くのではなく、全体の姿をとらえていただきたいというふうに思うわけです。  それから、薬価のことにちょっと触れますが、確かに日本の薬価が高いということで、それに対してパーセントを無条件に掛けるのはよくないのではないかという御指摘はおっしゃるとおりで、私は、本来的な改革薬価基準制度について行う、それが先決ですけれども、それに先立ってやらざるを得ない場合には、こういうコスト意識を持ってもらうような方式を導入せざるを得ないというふうに考えています。
  35. 町村信孝

    町村委員長 ありがとうございました。  質問もなかなか難しいのでありますが、御答弁はできるだけ簡潔にひとつよろしくお願いいたします。
  36. 池上直己

    池上参考人 薬剤に関しての問題で、確かに高価格シフト、つまり新薬にシフトするということは普遍的に見られる現象であるわけですけれども、新薬は従来の薬と比べて効能がすぐれているという前提で認められているわけでございます。それで、果たしてそうであるか。その新薬を保険で支払うことを認める、そのプロセスの透明化ということが必要であるし、その評価基準をもっと明確にすることが必要だと思いますけれども、ともかく現状ではそういう形で、新しい薬は古い薬と比べてよりすぐれているから、そういう新しい薬を使いたいと思うのは医師も患者も同じであるわけです。  それでは、どうして薬剤に対してこういった問題が特に問題になるかと申しますと、出来高払いといっても、現在は統制価格のもとでの出来高払いでありますので、その統制価格のもとでは、入院や手術はコストを圧縮できないものですからコスト割れになっている。一方、薬剤に関しては、コストといっても大部分が研究開発費ということでございますので、新しい製品の研究開発費に回すということでは被害を受けるわけですけれども、現在の開発が終了した新薬に関してはそのコストを明確に定義することが難しいものですから、実質的には医療機関に値引きされて売られているという現状がある。だからこそ、そこに薬価差というのが生まれて、その結果、高価格シフトということがますます盛んになっているのではないかと思います。  したがいまして、この問題の解決にはやはり包括化ということが必要ではないかと思いまして、薬剤だけに対して差益が生じるという構造を抜本的に改めるには包括制以外にはないと思いますけれども、包括制を導入するに当たっては、先ほど申したような点に十分留意する必要があると考えております。  以上でございます。
  37. 広井良典

    広井参考人 薬剤の一日一種類十五円の負担の点についてでございますが、私は、今回の自己負担拡大の中では、この薬剤の自己負担について、最も効果に疑問がある点でございます。  といいますのは、受診と違いまして、薬剤の投与を決めるのは専ら医療機関、医師の側でありますので、薬剤比率が高いという問題というのは、患者側ではなくて、専ら医療機関に問題があると思います。  したがいまして、そういった問題を自己負担拡大ということで対応するというのは本来からすればおかしいわけでございまして、別の対応を考える必要がある。むしろ、医師の投薬行動の問題でありますので、やはり定額制の拡大あるいは処方ガイドライン、こういった医療機関側に規制をかけるような手法をもって対応するのが本筋であろうと思います。  具体的には、我が国の薬剤比率、特に入院の薬剤比率が高いということ、それから外来については、薬剤に限らず外来医療費全体が大きいというのが諸外国と比べてもありますので、前者につきましては入院の定額制の拡大、後者の外来につきましては、先ほども申しましたような診療所等の定額制あるいは総枠規制、そういった手法をもって対応するのが本筋ではないかというふうに考えております。
  38. 鷲尾悦也

    鷲尾参考人 私は、保険料の支払いについて、基本的には年収ベースで徴収すべきだというふうに考えております。  とりわけ、日本の場合には大企業、中小企業との間の賃金の格差が大きいわけでありますけれども、その格差の主な部分というか、これは、月例賃金よりは賞与、ボーナスにおいて格差が大きいという実態にございます。したがいまして、不公平感ということを除去するためには、年収ベースが基本的にはよろしいかと思います。  ただ、なぜこれまで賞与、ボーナスで保険料を徴収しなかったかということを自分なりに考えますと、これは労使の間の話し合いで決まることでありますけれども、月例賃金に比べてボーナス、賞与というのは、賃金論なり賃金の性格論からいって、経営側は、変動すべき賃金支払い項目である、こういう主張でございまして、もしこれが大胆に大きく変動するということであれば、保険料徴収の安定性という意味からいうと大変問題がありまして、年次でしょっちゅう変わるというようなことになりますと、例えば、どういう報酬をもとにやるかということについて、前年度分で次の年を計算するというようなことになりますと、そこに変動が起こりますと本人の負担というのは過重になる危険性がある、こうした性格がありまして今までされなかったというふうに考えております。  ただ、厚生年金の議論のときに賞与から取るということが議論になりましたし、そういうふうに決まりました。そういう意味合いからいいますと、今後検討すべき課題だというふうに思いますし、その意味でいえば、賞与支払いの安定性という程度を見ながらやらなくてはいけない、こういうふうに考えております。ただ財源探しのためだけに賞与に目をつけるという安易な方法は避けるべきではないか、このように考えております。
  39. 若杉史夫

    若杉参考人 今、鷲尾さんがおっしゃったこととほとんど同じですが、まず、月額給与と賞与の違いは、月額給与の方は大体安定しておるけれども、賞与はその時々の企業の業績が反映される、その度合いが大きいものですから、どうしても不安定になります。そういう意味で、保険料の財源としての不安定性ということがこれまで保険料対象としなかった大きな原因ではないかと思いますが、反面、賞与のウエートが企業間でかなり相違がある、年収トータルに比べて、給与だけをとった場合に公平性の見地から問題があるのではないかという御意見もあるわけでして、今後の検討課題として、賞与も含めた年収トータルを対象とするということもこれから考えていくべきであると思います。  以上です。
  40. 町村信孝

    町村委員長 ありがとうございました。  児玉さん、どうぞ。
  41. 児玉健次

    児玉委員 日本共産党の児玉健次です。  簡潔にお三方にお伺いしたいと思います。  糸氏参考人は、先ほど後発品の普及についてお触れになりました。非常に興味のある課題でして、そのあたり、そのことで国がどういう政策を提起することが必要かということについてお尋ねしたいと思います。  それから、八田参考人の御陳述の中で、高薬価へのメスの問題が非常に強調されました。しかも、それを先送りにするなという御指摘でした。今直ちにこの分野で着手するとすればどこが一番かなめかという点をお伺いしたいと思います。  そして、お二方に一つだけ共通の御質問をしたいのですが、四月一日から消費税が上がりました。今、日本病院の窓口への外来患者数、この点で変化があるかないかというのをお伺いしたいと思います。  最後に、池上参考人ですが、先ほど、昭和四十八年の政管健保における保険料率と国庫負担率の連動のことについてお話がありました。平成四年に、それまで国の負担が一六から二〇%だったものを暫定措置と称して一三%に下げて、附則ではっきり、今後、赤字が出て政管健保が困難になったとき、国は「所要の措置を講ずるものとする。」と明記しております。そのあたりについて、国に対する御意見があればお伺いしたいと思います。  以上です。
  42. 町村信孝

    町村委員長 それでは、糸氏さん、八田さん、池上さんの順でお願いします。
  43. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 お答えいたします。  後発品の問題でございますが、今の薬剤費の中で、先発品と後発品が同じ薬の効果があってこれほど値段の違うものはないわけでございまして、我々は、医療費節約の観点から、特に薬剤費節約の観点から考えますと、先発品が、もうパテントの期限も終わって十年、二十年たっても依然として高い値を維持するということについては問題でございます。それが発売して二十年たっても依然として百円とか百五十円とかいう値段がついている、しかも、後から出てきたゾロ品が実は三十円とか四十円で売られている、一体この価格差というのはどうするのだ。有名ブランド商品の名前だけで価格を維持するということは、私は、医療保険制度の中に参入する限り許されないと思うのです。  ですから、これの、いわゆる長期収載品目の見直しということを、これはおととしの暮れに中医協でもお願いしているわけです。全然実行されないですね。これはぜひ実行してほしい。これだけでも医療費が、恐らく七千億くらいは薬剤費については節約できるという見通しが立っております。しかし、なぜかこれは実現されていない。そして、今回のように患者負担というところが来たということについては、私は非常に残念だと思う。  また、国も、そういう後発品が安全で国が認めているわけなんですから、医療機関にもはっきりこれは安全だと。また、国がむしろ積極的に国立病院等でこれを使っていくというような、積極的なアピールもやはり国みずからがやらないと。ひどいのになりますと、国立研究所が、ゾロ品は品質的に問題があるということを、国自身の研究機関が出している。それをただしますと、国自身がそれを否定しないというような問題がございます。こういうようなことでは、後発品の普及というのは、とてもじゃないが進まないだろうというふうに考えております。  それから、消費税の問題につきましては、現在四月に入ったばかりでございますので、まだ我々としては結論は出ておりません。しかし、今度、消費税の問題については、我々は、結果として診療報酬が〇・三%くらい下げられたということは非常に残念に思っておりますけれども、これは大勢の赴くところ仕方ないということで思っておるわけで、どこへもふんまんを持っていくところがないというわけでございます。
  44. 八田英之

    八田参考人 今もお話がありましたが、以前は同一薬効のものは保険点数が同じでした。それが、銘柄別収載ということになりまして、大メーカーの薬がかなり高くなるという仕組みがずっと続いてきたわけであります。そういう点では、一定の時期に薬価をきちんと適正なものにしていくという仕組みというのは、十分に検討に値することではないかというように思います。  さらに、これも御指摘のあったところですけれども、新薬を採用していく、薬価を決めていく際の情報の公開、そして一定の時期ごとに再評価していくということなどを通じて、今もお話がありましたが、大きく薬価を下げて、薬の保険に占める比重を下げていくことが可能ではないかというように考えております。  四月一日、消費税が実施されて以降、私ども医療機関に入ってくるお話では、どうも全国的に患者さんが激減をしております。消費税が上がったので減ったのかという話ではなくて、それはよく御存じで、簡単に言いますと、どうも医療費負担も四月一日から上がったと思われた患者さんが相当おられまして、慌てて、まだ改悪されておりませんという看板を出した病院もございます。  私どもでは、慢性疾患患者さんについて、年間できちんとコントロールしていくということで、予約をとって、検査も適正な間隔ごとにとかいうふうにしているのですが、その予約の患者さんで一五%もおいでになっていない。電話をかけてみますと、十四日分の薬を二十八日というか一カ月に延ばして飲んでいますというような方が現にいらっしゃいます。だから、これは実際に改悪されたら大変だなというふうに思っております。
  45. 池上直己

    池上参考人 私の解釈しておりますところでは、昭和四十八年に、それまで政管健保に対する国庫負担というのは毎年の予算枠の中で決めていたわけですけれども、それを契機に定率を国庫から補助するようになった。それは、赤字だからその分を一般会計から補てんするという、そういう構造から脱皮することが目的であったというふうに記憶しております。したがって、これは、もし国庫負担率を上げるならそのときは保険料率も上げるという縛りをつけて、いわば痛み分けをするということが問題であったと思います。したがいまして、今回は保険料率が上がったわけですから、それに逆に連動して国庫負担割合もふえるのが筋ではないかと考えております。
  46. 町村信孝

    町村委員長 中川さん。
  47. 中川智子

    中川(智)委員 社会民主党・市民連合中川智子です。  お三方に質問したいのですけれども、まず糸氏参考人にお伺いしたいのです。  先ほどペーパーを読まれまして、何か連合の代表の方がお二人並んでいるような感じで、ペーパーの中身に関してはすごくすばらしいことだなと思ったのですけれども、あれはいわゆる医師会としての改革案で、そのぺ一パーを後でぜひともいただきたいなというお願いと同時に、あの中身に関して具体的に、医師会として、いつから、どのように、どこが責任を持って進めていくのか、もう少しペーパーに対することを質問させていただきます。具体的に、いつから、どのように、どこが責任を持ってあの中身に対して取り組んでいかれるのか、そのことを伺いたいと思います。  次に、広井参考人に伺いたいのです。  ずっと対症療法でやってきたという御発言は、全く同感でした。そして、医療の中身を患者はほとんど知らされていない、ブラックボックスであるということにもとても同感なんですけれども日本だけが今取り残されている状況というのがあるわけなんですけれども、海外の例で、その辺の評価と透明性に関してひとつ私たちに参考になるものがありましたら教えていただきたいと思います。  最後に、鷲尾参考人に伺いたいのです。  月千二十円が一回五百円になる。そして、病院老人のサロンになっている、サロン化しているというところで、そこのところを非常に問題にしてこの案が出てきたと私自身もすごく思っているのですけれども病院老人のサロンになっているということに対してどのようにお考えか、それが一回五百円でどう解決していくと思われるのか、そのことをお教えいただきたいと思います。  よろしくお願いいたします。
  48. 町村信孝

    町村委員長 糸氏さん、広井さん、鷲尾さんの順で、糸氏さんからお願いします。
  49. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 お答えいたします。  日本医師会医療保険改革案は、昨年、塩野谷会長のところでおまとめになった医療保険審議会の案が出ましたときに、同時並行的に日本医師会の案を出させていただいたということでございます。これは、日本医師会一つ考え方を、こういう考え方もあるのですよということをお示しするものでございまして、その後、我々の中でさらにいろいろ十分討議をして、よりいいものにということで少しずつは変わってきておりますが、現在、これを、医療保険制度改革協議会が政権与党の中で行われておりまして、この中にも我々の考え方をお示しして、御理解を得るように努力しております。  いずれにしても、政策実現をされるのは現在のここの厚生委員会先生方でございますので、各党にもお配りして、御理解を得るように努めたいというふうに考えております。  基本的には、これからの医療保険改革というのは、かみ砕いて言えば、薬価差の問題とか医療費のむだとか包括化、出来高払い、いろいろの問題がございますけれども、そういう中で、高齢社会、どんなに制度が変わっても国民がこれからよりいい医療を受けたいという素直な願い、それから、いつでもどこでも受けられるというアクセスの問題この二つはやはり充足していかなくてはいけないし、それには財政的な問題をどう解決していくかということになろうと思います。  まず財政はこれだけあるのだ、だからそれに従って制度を考えるという考え方なのか、まず国民はこうあるべきだと考えて、その上に、それならそれを段取りするにはどういう財政的な環境を整えるべきかという考え方、この二つの持っていきようがあるだろうと思います。  我々としては、二十一世紀の国民のニーズに従った医療保険制度はまずこうあるべきだ、それを支えるには財政の負担はどうするかということをその後で考えるべきだというふうに基本的には考えておりますが、いずれにしても、この厚生委員会先生方が、日医、日本医師会だけじゃなしに、連合とかいろいろな団体の御意見を聴取されて、そして決定されていくことと思いますので、我々もできるだけ我々のいいところを主張して今後お願いしていきたい、かように思っておるわけでございます。
  50. 広井良典

    広井参考人 医療の透明化や情報開示についての諸外国の例ということですけれども、これにつきましては、大きく政府あるいは国が主導で進めているところと、民間保険者レベルで進んでいるところの両方があると思います。  前者の、国レベルが主導で進めている典型的な例は例えばスウェーデンでございまして、スウェーデンは、SBUと言われる医療技術評価の大きな機関を政府が九〇年代に入りましてつくりまして、さまざまな医療技術の評価あるいはそれに基づく診療のガイドラインづくり、そういったものを医療機関国民に対して周知するということを推進しております。  片や、民間保険者が推進しているのはアメリカでありまして、保険者医療機関のさまざまなデータを集約いたしまして、例えば医療機関ごとの言うならば評価表のようなものをつくるわけでございますけれども、個々の病院医療機関診療内容あるいはその成果、それから患者の満足度等々といったもので、かなり詳細な項目にわたって医療機関を評定いたしまして、その結果がよくなければ契約の対象から除外するとか、被保険者に対して情報を提供するというような形を進めております。  それからドイツでも、昨年から保険者の選択制というような形で保険者機能強化が実施されましたけれども、そういった保険者機能を強化することで情報開示や競争原理の導入というものが各国で進んでいる状況であろうかと思います。  日本では、御案内のように、数秒で一枚のレセプトをチェックするというような状況でございますので、そこらあたりの医療内容に立ち入ったチェックというようなものも極めて進んでいないわけでございます。定額制を導入してもそれで解決するというわけではなくて、結局そうなると、医療機関は過少診療を行うというようなことで、さまざまな抜け道があるわけですので、やはりそういった形で、医療機関の行動様式が変わるような競争原理の導入とか情報開示というものを進めていかなければ真の解決にはならないのではないかというふうに考えております。
  51. 鷲尾悦也

    鷲尾参考人 老人方々病院をサロン化しているという問題でありますが、これは逆に言いますと、いつでも、どこでも、だれでもという医療の基本からいうと、日本医療制度の水準が大変高い、また、いつでも、だれでも、どこでもというものに非常にマッチしているということだろうと思うのです。  しかしながら、これは、名工が鍛えました名刀でまきを割るようなものでございまして、いかにも制度に適合していないものでございます。また、病院のサロン化が必ずしも老人の皆さん方のケアになっているかどうかということからいいますと、まきを割るのに名刀が機能を発揮するかどうかということと似たような話でございます。  したがいまして、冒頭の陳述でも申し上げましたように、私は、医療提供制度の抜本見直し課題というのは、医療機関ごとの機能分担制度上明確化して、それぞれのコストや患者さんへの対応というものを十分区別して考えるべきではないかと思います。  その意味で、診療所を家庭医として制度化をし、初期医療から高次医療に至る医療機関機能分担を明確にする、そして、いわばホームドクター的な、あるいは地域医療という中で老人の皆さん方のケアをするというような機能分化をすべきではないかと思います。また、健康相談や予防を含む初期医療を担う医師の養成を行って、そうした方々の相談に応じられるようにするということが中長期的な課題になるのではないか、このように考えます。  また、今国会でも介護保険の問題が提起されておりますが、介護と医療の問題の結合というのは、今国会でも、また今後とも検討されていくだろうというふうに思いますけれども、この検討について私どもは期待をするわけでございます。  以上でございます。
  52. 町村信孝

    町村委員長 ありがとうございました。  佐藤剛男さん。
  53. 佐藤剛男

    ○佐藤(剛)委員 自由民主党の佐藤剛男でございます。  本日は、参考人各位の有益なお話を賜りまして、また、質疑を通じましてさらに御意見を賜りまして、感謝申し上げます。特に、医師会副会長の糸氏先生におかれましては、介護保険の折にも御出席賜りまして、介護、福祉医療の問題点について有益なお話を賜ったわけでございます。  当委員会におきましては、医療改革、これからの問題ということを含めながら、そして介護保険という議論を通じても、いろいろな意見が健保改正問題について既に触れられてきたわけでございます。そして、そういう大きな観点と同時に、今や火事が燃え上がっているわけですね、本年の予算等々の状況を見ていますと。これはまず火事も消さなければいかぬ、しかし構造的にもやらなければいかぬ、こういう中で議論してまいりました。  そして、特にその中で薬価の問題というのが各委員から非常に、きょうも五島委員からの質問がございましたように、新薬が非常に高い、こういう形で、今回、薬価負担というものを自己負担にしたけれども、これがどのような効果があるのか。池上先生も、この中で、薬剤の追加負担の効果は未知数であるということをおっしゃっておられます。  そこで、私は、特に糸氏参考人にお話を伺いたいのですが、まず薬価の問題、それから今回の部分についての現場におけるいろいろな問題等を含めまして、御意見を賜りたい。  それから、池上先生は、自己負担増をやったからといって、効果というのは非常に疑問を提起しておられます。その理由としまして、老人に定額制が実質的に維持されている、あるいは、今回の改正を行っても医療費の六割は影響を受けないで、影響を受けるのは四割の話だという問題提起、あるいは高額療養費払いの制度があって、そういう自己負担増の効果に疑問を呈されているわけでございます。  それでお二人に、最初に糸氏参考人に薬価の問題、それから池上教授に、先生の言われている、自己負担増をやったからといっても効果は疑問だというのを、もう少し詳しくお話を聞かせていただけたらと思います。
  54. 町村信孝

    町村委員長 それでは、糸氏さん、池上さんの順でお願いします。
  55. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 お答えいたします。  薬価の問題でございますが、薬価の問題は二つの切り口があると思います。  一つは、先ほども話が出ておりますように、薬価の価格の設定の問題です。これが間違っているということが第一でございます。その次は、薬の乱用の問題です。この二つを分けて考えなくちゃいけないというふうに思っております。  私どもは、この薬の問題の八割は薬価設定にやはり問題があるのではないか、これにもつとメスを入れ、あるいは後発品をどんどん使用するということにすれば、今の薬剤費の節減はかなり効くというふうに思っております。  中には一部不心得な医療機関がないことはないでしょうけれども、薬の過剰使用という問題については、もちろん御指摘の面については我々も十分対処したい、かように考えておりますけれども、だからといって、患者さんに負担をかけてコスト意識を持たせていくということはわかるのですが、患者さんは自分で薬を五種類も八種類も、あるいは二種類であろうと、自分で自分の治療手段を決定するわけじゃないのですから、それを決定するのは医師でありますから、負担をかけたりペナルティーをかけるのだったら全部医者にかけたらいいというふうに私は思います。  これは正論ですよ。これは、私、医療保険審議会でも何回も申してきた。だから、むしろそういうむちゃくちゃな薬を出す医者をたたけ、患者をたたくなというのが私の基本的な考え方患者さんをたたいたって何の意味もないのですよ。非常に迷惑千万な話で、こういう悪い法律は私はつくるべきではないとさえ思っております。  むしろ、医者がむちゃくちゃな薬を出したらその診療費はもらえないとか、あるいは保険医をどうこうするとかいうぐらいの厳しい態度をとって当たり前ですよ、そんなことは。やるべきだと私は思うのです。だから、その当たり前のことを皆さんは当たり前に認めていくということが大事なんです。  そういう意味で、今の診療報酬でも、例えば八剤以上出したらあとの薬はこれだけしか払いませんという一つの堰があります。さらに今度は、審査委員会では、むちゃくちゃに薬を出しているところは薬代分を払わないというペナルティーがまたかかってきます。こういうペナルティーのかけ方をもっと厳しくするとか、強めていくということだったらわかるのですが、患者さんに、ようけもらったから、おまえ、ようけ金を出せというようなやり方は、どなたが考えたってこれは筋の通る話ではないと私は思いますし、余り意味のないことだと。  むしろ、医師に自覚を求めるということと、もう一つは、私はぜひここで言っておきたいのは、出来高払いで医者を信用しない方々が、それでは包括化で医者を信用できるのかと私は言いたいのです。同じことですよ。悪いことをする人はどっちへ行ったって悪いことをするのですよ。そこのところは、包括化をすれば出来高がなくなってすべての医師はいい医師になると、私はそう簡単にいかぬのじゃないかというふうに思っているのです。まあ、蛇足です。  以上でございます。
  56. 池上直己

    池上参考人 まず、自己負担について。医療費というのは、少数の者が医療費のかなりの部分を消費している。私が厚生省からの研究委託で行いました政管健保と国保のレセプトの分析を見ますと、今、必ずしも十分正確ではないですけれども、私の記憶しているところでは、レセプトベースの医療費の三分の二はレセプトの一割から出ているわけです。  したがいまして、そういう方に対しては、自己負担が定率でありますと非常に過重な負担になりますので、例えば、今でも、腎臓が悪くて透析を受けている方あるいは血友病の方というのは、定額の一万円の負担にとどまっている。そういう方に対して定率化にするべきだという声は全く起きていないと思います。  そういう状況でございますので、結局、毎月高額な自己負担になる方に対しては高額療養費制度があって、その高額療養費の対象となる医療が、患者さんの数としては非常に少ないですけれども医療費ベースでは三割に達している。ですから、その三割の方はどんなに定率を五割、六割にしても全く影響を受けないということを申し上げているわけです。残りあと三割の方については老人保健対象になりますので、薬剤は別としまして、医療費部分については実質定額が残りますので、そうなりますと、医療費全体の六割は、三割プラス三割で六割に関しては、自己負担割合を高めても全く影響を受けないです。残りの四割については確かに多少受けるかもしれませんけれども。  問題は、医療費が本当にかかるのは、風邪を引いたときに医師に行くか行かないかというよりも、コンスタントに何十万とかかる透析治療であるとか血友病の治療に対してかかって、これはいかんともしがたくどうしてもかかるわけです。  ですから、私は、自己負担というのは最も逆進性の高い税金であると申したのは、これは個人が確かに医療サービスの便益を受けることになりますけれども医療サービスを受けることが国民の憲法上保障されていることであれば、それに対して過剰な負担をするというのは筋違いであると考えております。したがいまして、そういう高額療養費の制度を残すなどの措置がある限り、自己負担というのは、財政効果というのは非常に限られていると申し上げたわけでございます。  以上でございます。
  57. 町村信孝

    町村委員長 坂口さん。
  58. 坂口力

    ○坂口委員 きょうは、参考人先生方にはどうもありがとうございます。お礼を申し上げたいと存じます。  新進党の坂口でございます。  鷲尾参考人と糸氏参考人、そして広井参考人のお三方にひとつお聞きをしたいと思います。  老人医療に対してでございますが、先ほど鷲尾参考人の方は、若いときに入っていた保険そのままで高齢者になりましても受けるという、突き抜け型と申しますか、そういう制度でどうだという御意見だったというふうに思います。これも一つの大きな有力な案だというふうに思うわけですが、その場合に、弱小健康保険があるわけで、保険の統合というものをどうしても考えないといけない。そこをどうしていったらいいというふうにお考えになっているのか。  それからもう一つ。これから雇用の流動化が、これは鷲尾さんのお立場からすればそんなに流動化しては困るというふうに思われるだろうと思いますが、まあ起こるのではないかというふうに思いますけれども、その流動化が起こりましたときに、若いときに入っていた保険というのは幾つかかわる可能性がございますが、その辺のところをどうお考えになっているのか、お聞きをしたいと思います。  それから、糸氏参考人の方には、先ほど、高齢者医療につきましては別枠と申しますか、分離型の保険と申しますか制度を御提案になりまして、これも一つの有力な案だというふうに思います。この場合には、先ほど保険制度の県単位の統合化のお話をされましたが、その県単位の保険制度の統合化を前提にした上でこの医療保険の分離型の形をおつくりになろうというふうにお考えになっているのか。しかし、それはそれとして、先にまずこの医療制度の分離型のところをつくろうというふうにお思いになっているのかということをお聞きしたいと思います。  そしてもう一つ、糸氏参考人にお聞きしたいのは、先ほどのお話で、財源的なものでございますが、最初は公的な分野を非常に多くして、将来的には保険の方を多くしていきたいというふうにおっしゃったようにお聞きしたわけでございますが、これは割合の問題で、そのどちらを多くするかという、いずれにしても両方を何らかの割合にしていく、こういうお考えなんでしょうか。ちょっとそこをお聞きしたいと思います。
  59. 町村信孝

    町村委員長 坂口先生、ほかにいろいろな方がいらっしゃるので、この程度でいいですか。済みません。  それでは、鷲尾さん、糸氏さん。
  60. 鷲尾悦也

    鷲尾参考人 私どもは、今御質問ございましたように、退職者の健康保険を、突き抜け型ということで提起をしています。具体的な考え方を申し上げますと、職域、地域を単位とする現行医療保険制度を維持しながら、退職高齢者についても職域の医療保険の被保険者とするということにしたいと思っております。  ただし、御指摘のように、被用者医療保険は政府管掌、組合管掌、共済組合に分立しておりまして、こうした実情からいいますと、この相互をもう少し統合しなければいけないというのは冒頭の陳述でも申し上げたわけでありますが、直ちにそういうことはできないということでありますので、今先生御指摘のように、突き抜け型になってしまいますと、個別の財政の問題とか、こういう問題が派生してくるだろうと思います。そのためには、現状を踏まえて、被用者健保全体と退職高齢者による疑似保険集団のようなものを想定いたしまして、そのトータルでもって集団内で同一のルールを適用したらどうか、健康保険法のルールを適用して、退職高齢者の実際の運用に対応するための退職者健康保険というものを創設したらどうかということであります。  その際に、被保険者の範囲は、被用者保険の被保険者であった者であって、必要加入期間などを決めて資格者を決める、そして、給付については健康保険法の定めによるということにいたします。保険料は、退職高齢者に係る保険料率は、疑似保険集団全体の給付総額から現行老人医療費に対する公費負担額を差し引いた額を全体の標準報酬総額で除して得られた率とする、退職者の標準報酬は年金支給額を基礎とするということにしてみたらどうかなというのが、私どもの仮の案でございます。  保険料のうち二分の一は被用者保険負担するということにする、こういうことにしたらどうかということでございます。いずれにしろ、今まででも被用者健保負担している部分があるわけでありますから、年金を標準報酬月額として、基礎として保険料を徴収した上で、その二分の一を被用者保険から負担するということにしたらどうかということでございます。  したがいまして、被用者健保負担額というのは、退職者健保保険料の二分の一相当額並びに給付費総額から退職者健保給付費を差し引いて得られる額を合わせた負担総額を標準報酬月額で按分した額を負担する、こういうことにしたらどうか、こういうふうに考えております。  これは、技術的にもいろいろ議論しなければいけない問題、たくさんあるのですけれども、こうした退職者健康保険制度をつくることによって、トータルの疑似集団ですから、先ほど御指摘のような流動化があったとしても、政府管掌に移る、あるいは組合健保に移るということでも、そのトータルでもって、年金を報酬月額にして保険料を支払いますから、その意味からいうと、労働力の移動というものにも十分対応できる、また、保険料の徴収というものも可能になるということで、応分の負担がそれぞれでき上がるのではないか、このように考えているところでございます。
  61. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 老人医療費について我々が考えているのは、これは現在まだあくまでシミュレーションの段階でございますけれども、少なくとも、現在、老人医療費というのはおおよそ八兆円くらいというふうに考えられております。現国会に出されております介護保険法が成立すれば、恐らく、この八兆円のうち約二兆円部分が介護保険に分離されていく。そうすると、あと残ったのは約六兆円。これはあくまでも単純な考え方ですが、わかりやすいように単純に申しますと、あと六兆円。それで、この六兆円を今後どうするか。もちろんこれはふえていく部分なんですが、この六兆円を今後どうするか。  我々としては、新しい抜本改革の中で、これからお年寄りの人口が千七百万にも千八百万にもなってくる、その中で保険料を払える能力のある人、これは年金の成熟化とともにかなりの人が払えると思うのですが、そういう方々にも老人保険料というものを設定して保険料を払ってもらう。仮に年間十万円ぐらいの保険料をもし負担されるとすれば、約一兆五、六千億円の老人保険料というものがこの中に出てくる。  それで、不足分については、これは従来、いわゆる若い人たちの拠出金で賄ってきたわけですから、この若い人たちの拠出金はこの際やめるということですので、当分は、ちょっと重荷になるだろうと思いますけれども、国にとりあえず出していただくという形でまずはスタートして、そして、そのかわり、今のあらゆるいろいろな保険制度の中で拠出金が軽減されますと、その分を保険料をなくするのではなしに、その分を自分の老後のためにある程度プールしていく。基金として、老齢医療基金というような形ででもそれをプールしていく。そして、自分が老人のお仲間入りしたときにそれを使っていくという形に、保険料を払いながら、一方、そのプールしたお金を使っていく、こういう形にすれば、景気の変動というものは余り関係なしにかなりスムーズにいくのじゃないか。  もちろん、細かい点についてはいろいろ考えなければいけませんが、大筋で言いますと、基本的には、我々が考えている高齢者医療保険というものは、なるべく老人方々そのものの保険料も出していただく、残りは国が出す。国もいつまでもそんなもの大変ですから、いずれは、この制度が成熟してきて、五年後、あるいは五年後を経過すればかなりの基金がたまってくると思います。これは、今の拠出金老人に出している分は現在年間約五兆円でございますから、こういうものがプールされていけば、それを国庫にかわって流用していくという形にすれば、割と、そう国庫負担をこれ以上ふやさずにいけるのではないかというふうに考えております。  一方、一般の医療保険につきましても、現在の保険システムだけでやっていくという考えでおりますから、今の政管とか組合とかいろいろございますが、これを将来的には、日本医師会がかねて武見先生のころから主張しておりますように、一本化して、統合一本化の道で一つの大きな集団をつくっていくというあり方の方がいいのではないかというふうに考えておるわけでございます。  以上です。
  62. 町村信孝

    町村委員長 ありがとうございました。  土肥さん。
  63. 土肥隆一

    ○土肥委員 もう時間がございませんので、端的に聞かせていただきます。  今回の医療保険制度の改正について、二十七兆円を超える額をどうするのだということについて、我々、厚生委員会あるいは政治家としても、将来の展望が全くないのですね。我々政治家は表へ出て説明をしなきゃいけませんので、説明のしようがない。二、三年はこの値上げでもつでしようというふうなことを言えば、おまえらは何をやっているのだと言われるわけです。特に、私は、薬剤の一点十五円というのがどうもわからない。こんな陳腐な案がどこから出てきたのだといつも思うのです。  そこで、広井先生に、学者として、この一点十五円を国民にどうやって我々は説明したらいいのですか、その辺の理論的根拠があるなら教えていただきたいと思います。それだけです。
  64. 広井良典

    広井参考人 これは、私、先ほども申しましたように、今回の自己負担引き上げの中では最も効果に疑問のある点であると思います。  ほかの、一割を二割ということにつきましては、受診行動というのは患者側の問題ですので、コスト意識を通じてということはわかるわけですが、先ほど申しましたように、薬剤投与は専ら医師が決めることになりますので、患者自己負担を通じて薬剤費を抑えようというのは、本来、裏口から攻めているようなことになるわけで、患者負担を転嫁しているようなことになりますので、私自身は、むしろ定額制とかガイドラインによって対応するべき問題で、ここの、薬剤だけを切り離した自己負担を通じての抑制というのは説明が非常につきかねるのではないかというふうに思っております。
  65. 土肥隆一

    ○土肥委員 では、先生は、やめた方がいいとおっしゃるわけですか。
  66. 広井良典

    広井参考人 自己負担の中では、これは最も問題がある点であろうと思います。
  67. 土肥隆一

    ○土肥委員 ありがとうございました。
  68. 町村信孝

    町村委員長 瀬古さん。
  69. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。  医療保険制度の安定性を確保するという点では、医療機関が安定して活動するということが大変大事だというふうに思っておりますが、今までのお話の中で、長い間、医療費の抑制といいますか、技術評価が大変低い問題だとか、医療機関が大変困難な状況にもなっているという問題も論議されております。特に、消費税の問題もありますし、そういうきちんとした評価がされてないということで、かなりの赤字を出している医療機関というのが多いということで、開業医さんなんかでも、後継者がなかなかいない問題だとか、深刻な問題があったり、ベッド数が減ってきたり、医療機関そのものが少なくなっているという状況があるわけですが、二人の方にお聞きしたいと思います。  糸氏さんと八田さん、その点はどのように、今回の改定によって一層困難にならないのかという点、お聞きしたいと思いますが、いかがでしょう。
  70. 町村信孝

    町村委員長 それでは、糸氏さん、八田さん、順次お願いします。
  71. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 まず、私からお答えします。  随分、医療機関のことを御心配いただきましてありがとうございます。  もう既に、国立・公立病院診療報酬をいただいて、さらに別途会計から一兆数千億円を投じてもなおかつ赤字だということは、どこか今の診療報酬はおかしい。我々、朝が来ると出来高払いと薬価差で随分たたかれておりますけれども、なくしてみたら一体どうなるかということは、診療所は何とか持ちこたえるかもわかりませんけれども病院はわずかなその薬価差が経営原資となっていることはもう厳然たる事実です。これを解決しない限り、幾ら言ってもこの問題は解決しない。  それは、まさに先生今御指摘のように、診療報酬の中での技術評価というのは余りにも惨たんたるものだということがやはりネックになっていると思いますので、医師や看護婦さんの技術料をもっと評価してほしい。  早い話が、例えば二百万円のペースメーカーを入れるのに、その技術料は幾らかというと十万円ちょっとなんですね。手術料を使って、ドクター、看護婦がかかって二百万円のものを入れるのにそうだ。一本五万円するインターフェロンを注射するのに技術料が百四十円だ。こういうむなしい現実が厳然としてある限り、なかなか、薬価差どうのこうの言われても、残念ながらその薬価差でもなめながらでないと生きていけないという現在の情けないこの医療機関の状態を御理解願いたいということでございます。
  72. 八田英之

    八田参考人 昨年の話でございますが、私ども地域病院を訪問したりしていろいろな医療問題の懇談をいたしますけれども、出かけていったら、その病院が閉鎖したり有床診療所になっていたりという例が随分とございました。特に県都の周辺のところの医療機関に多うございました。老人病院にもなれないという、今までいろいろな形で、あるときには盲腸の手術もするし、あるときにはお年寄りの入院も受け入れるしというような形で地域の多彩な要求にこたえてきた小病院が、今、非常に苦しい局面にあるということは間違いのないことだと思っております。  私どもはやはり、薬に頼らない経営、医師や看護婦さんが患者さんのために本当に一生懸命に働いて、それが報われるような経営にぜひしていただきたいし、患者さんの負担医療を抑制するということはそのまま医療経営にもマイナスに大きくはね返るものだと思っております。
  73. 町村信孝

    町村委員長 それでは、予定の時間が参りましたので、これにて参考人に対する質疑を終了いたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人の八名の皆様方におかれましては、長時間にわたりまして貴重な御意見を率直にお述べいただきましたことを、心から感謝を申し上げます。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)  次回は、明二十三日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時三分散会