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1997-04-16 第140回国会 衆議院 厚生委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月十六日(水曜日)     午前十時四分開議  出席委員   委員長 町村 信孝君    理事 佐藤 剛男君 理事 住  博司君    理事 津島 雄二君 理事 長勢 甚遠君    理事 岡田 克也君 理事 山本 孝史君    理事 五島 正規君 理事 児玉 健次君       安倍 晋三君    江渡 聡徳君       大石 秀政君    大村 秀章君       奥山 茂彦君    嘉数 知賢君       桜井 郁三君    下地 幹郎君       鈴木 俊一君    田村 憲久君       根本  匠君    能勢 和子君       林  幹雄君    桧田  仁君       山下 徳夫君    青山 二三君       井上 喜一君    大口 善徳君       鴨下 一郎君    佐々木洋平君       坂口  力君    福島  豊君       桝屋 敬悟君    矢上 雅義君       山中 燁子君    吉田 幸弘君       米津 等史君    家西  悟君       石毛 鍈子君    中桐 伸五君       瀬古由起子君    保坂 展人君       望月 義夫君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小泉純一郎君  出席政府委員         厚生政務次官  鈴木 俊一君         厚生大臣官房長 近藤純五郎君         厚生大臣官房総         務審議官    中西 明典君         厚生省健康政策         局長      谷  修一君         厚生省保健医療         局長      小林 秀資君         厚生省薬務局長 丸山 晴男君         厚生省老人保健         福祉局長    羽毛田信吾君         厚生省保険局長 高木 俊明君         社会保険庁運営         部長      真野  章君  委員外出席者         厚生委員会調査         室長      市川  喬君     ――――――――――――― 委員の異動四月十六日  辞任         補欠選任   伊吹 文明君     林  幹雄君   松本  純君     下地 幹郎君   吉田 幸弘君     山中 燁子君   枝野 幸男君     中桐 伸五君   中川 智子君     保坂 展人君   土屋 品子君     望月 義夫君 同日  辞任         補欠選任   下地 幹郎君     松本  純君   林  幹雄君     大石 秀政君   山中 燁子君     佐々木洋平君   中桐 伸五君     枝野 幸男君   保坂 展人君     中川 智子君   望月 義夫君     土屋 品子君 同日  辞任         補欠選任   大石 秀政君     伊吹 文明君   佐々木洋平君     吉田 幸弘君     ―――――――――――――四月十六日  医療保険制度改悪反対医療の充実に関する  請願佐々木陸海紹介)(第一九五五号)  同(平賀高成紹介)(第一九五六号)  同(不破哲三紹介)(第一九五七号)  同(正森成二君紹介)(第一九五八号)  同(矢島恒夫紹介)(第一九五九号)  介護保障確立に関する請願金子満広紹介  )(第一九六〇号)  同(児玉健次紹介)(第一九六一号)  公的介護保障制度早期確立に関する請願(石  井郁子紹介)(第一九六二号)  同(志位和夫紹介)(第一九六三号)  同(松本善明紹介)(第一九六四号)  同(不破哲三紹介)(第二〇四七号)  厚生省汚職の糾明、医療保険改悪反対に関する  請願伊藤英成紹介)(第一九六五号)  同(大森猛紹介)(第一九六六号)  同(木島日出夫紹介)(第一九六七号)  同(児玉健次紹介)(第一九六八号)  同(穀田恵二紹介)(第一九六九号)  同(佐々木憲昭紹介)(第一九七〇号)  同(瀬古由起子紹介)(第一九七一号)  同(辻第一君紹介)(第一九七二号)  同(寺前巖紹介)(第一九七三号)  同(中路雅弘紹介)(第一九七四号)  同(中島武敏紹介)(第一九七五号)  同(春名直章紹介)(第一九七六号)  同(東中光雄紹介)(第一九七七号)  同(藤木洋子紹介)(第一九七八号)  同(藤田スミ紹介)(第一九七九号)  同(古堅実吉紹介)(第一九八〇号)  同(山原健二郎紹介)(第一九八一号)  同(吉井英勝紹介)(第一九八二号)  同(瀬古由起子紹介)(第二〇一四号)  同(木島日出夫紹介)(第二〇四八号)  同(志位和夫紹介)(第二〇四九号)  同(寺前巖紹介)(第二〇五〇号)  同(中路雅弘紹介)(第二〇五一号)  同(中島武敏紹介)(第二〇五二号)  同(東中光雄紹介)(第二〇五三号)  同(平賀高成紹介)(第二〇五四号)  同(藤木洋子紹介)(第二〇五五号)  同(正森成二君紹介)(第二〇五六号)  同(松本善明紹介)(第二〇五七号)  同(矢島恒夫紹介)(第二〇五八号)  国民健康保険制度抜本改革に関する請願(中  川昭一紹介)(第一九八三号)  同(鈴木恒夫紹介)(第二〇一五号)  同(中川昭一紹介)(第二〇一六号)  同(中川昭一紹介)(第二〇五九号)  同(中川昭一紹介)(第二〇八七号)  医療等の改善に関する請願今村雅弘紹介)  (第一九八四号)  同(岸田文雄紹介)(第一九八五号)  同(菅義偉君紹介)(第一九八六号)  同(中曽根康弘紹介)(第一九八七号)  同(原田昇左右紹介)(第二〇一七号)  同(田中眞紀子紹介)(第二〇六〇号)  同(日野市朗紹介)(第二〇六一号)  同(藤井孝男紹介)(第二〇八八号)  保険によるよい病院マッサージに関する請願  (青山二三紹介)(第一九八八号)  同(児玉健次紹介)(第一九八九号)  同(吉田幸弘紹介)(第二〇八九号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願青山  二三君紹介)(第一九九〇号)  同(井上喜一紹介)(第一九九一号)  同(石崎岳紹介)(第一九九二号)  同(今村雅弘紹介)(第一九九三号)  同(亀井久興紹介)(第一九九四号)  同(熊代昭彦紹介)(第一九九五号)  同(児玉健次紹介)(第一九九六号)  同(玉沢徳一郎紹介)(第一九九七号)  同(中馬弘毅紹介)(第一九九八号)  同(土肥隆一紹介)(第一九九九号)  同(林義郎紹介)(第二〇〇〇号)  同(井上喜一紹介)(第二〇一八号)  同(小沢辰男紹介)(第二〇一九号)  同(島聡紹介)(第二〇二〇号)  同(中西績介紹介)(第二〇二一号)  同(松下忠洋紹介)(第二〇二二号)  同(吉田幸弘紹介)(第二〇二三号)  同(井上喜一紹介)(第二〇六五号)  同(遠藤武彦紹介)(第二〇六六号)  同(越智伊平紹介)(第二〇六七号)  同(奥山茂彦紹介)(第二〇六八号)  同(鳩山由紀夫紹介)(第二〇六九号)  同(日野市朗紹介)(第二〇七〇号)  同(前原誠司紹介)(第二〇七一号)  同(柳沢伯夫君紹介)(第二〇七二号)  同(前島秀行紹介)(第二〇九一号)  医療保険制度改正早期実現に関する請願(岩  國哲人紹介)(第二〇四五号)  児童福祉法の理念に基づく保育の公的保障の拡  充に関する請願中島武敏紹介)(第二〇四 六号)  子供の性的搾取・虐待をなくすための立法措  置に関する請願石毛鍈子君紹介)(第二〇  六二号)  同(松本惟子君紹介)(第二〇六三号)  医療保険患者負担大幅引き上げ中止に関す  る請願前原誠司紹介)(第二〇六四号)  療術の法制化に関する請願大野由利子紹介  )(第二〇九〇号) は本委員会に付託された。     ―――――――――――――  本日の会議に付した案件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第三六号)      ――――◇―――――
  2. 町村信孝

    町村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤剛男君。
  3. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 自由民主党の佐藤剛男でございます。  本日は、こういう観点から質問をさせていただきたいと思います。その観点といいますのは、先日来、たしか五島委員から、特に薬の問題につきまして、医療費の中に占める薬の割合、それから製薬会社等々の問題について、私、間違えたらお許しいただきたいと思いますが、御指摘がありました。非常に興味深く聞いておったのでありますが、もう少し時間があれば、さらに深めたお話先生の立場からお聞きいたしたかったわけであります。私は、医薬については全くの素人でございますが、医療費のむだを極力省いていくということは、これはまず第一の基本ではないかと思うわけでございます。  という中で、治験というのですが、薬が世に出るまでの一つ過程でございます。その治験日本における現状、どうもこれでいいのかなという感じを私は持っております。  アメリカにおいては、FDAフードアンドドラッグアドミニストレーションという非常に立派な機構がございまして、そういう中で、エバリュエーション評価とかアセスメントとか、そういうものをやっている体制がございます。大体千四百人のスタッフがいるわけでございます。他面、日本の場合、担当部署は御承知のように厚生省業務局業務局の職員が百八十九人、審査課が四十三人、医薬品機構が三十六人、たかがと言ってはいけませんが、全部で七十九人という形で、中央薬事審議会というようなものを活用してやっているわけでありますが、私は、そこら辺が国際的な観点からも少しく問題があるのではないかということでございます。  それで、問題を申し上げます。何が問題があるのかということは、私は、日本医療水準というのは国際的にも認められた高いレベルにあると思っております。しかし、それにもかかわらず、現在の新薬あるいは新医療器材臨床治験あり方あるいはその内容、これは非常に、この点おしかりを受けるかもしれませんが、私の判断は、国際的に低い評価しか得ていないということで判断いたしているわけでございます。  そういう観点から、行政機構というのは、公社、公団、公庫を一緒にするだけの話じゃなくて、必要な部分においては強化をするということも必要でありますし、あるいは、今のままの体制でよくなければこれを変えるということが必要であろうと思います。そして、その観点に立つのは、これからの、薬が世に出るまでの、決めるまでの臨床、それから厚生省がやっております承認、そして販売後のチェック体制、こういうものがこれでいいのか、国際的にこれが通ずるのかということであります。  臨床治験をめぐって、国民の信頼を裏切る不幸な問題が幾つか発生しました。そして、現状のままだと、臨床治験について、新しい臨床治験という報告森亘先生座長のところから出まして、それを受けて厚生省が直しておるということを前提として私は物を言っているのでありますが、臨床治験空洞化が行われるのではないかという懸念でございます。  私が分析するところ、この不幸な問題の再発を防止することに非常にこだわりがあり過ぎるのではないか、そして規制が強化され過ぎているのではないか、治験の円滑な実施が困難にされているのではないかという気がいたすわけでございます。  まず第一の問題は、臨床試験承認というのが厚生省で行われております。そして、その試験というのは、当然、患者さんの了解をとりながら、薬を飲み、なにをするという、インフォームド・コンセントといいますか、そういう倫理というような問題があるわけでございます。そういうものを審査して、そしてやるというこの厚生省承認段階をさらに監督するような、アメリカにおけるFDAフードアンドドラッグアドミニストレーションのようなシステムになっていない、こういうところに一つの問題があるのではないだろうか。  今後の新薬とか新しい医療器材開発というのは、これは医療の進歩と国民福祉向上に大きく貢献するわけですから、開発のための臨床治験というのは不可欠であります。当然のことであります。しかし、世界的にもう実証済みの治療を早く受けることができるという体制づくりは、私は不可欠だと思う。  私は、スイスのガット委員会の議長などもやっておったのでありますが、そこで一時、ECから、日本医薬制度に関しますシステムは非常にトレードバリアである、貿易障害であるという指摘を受けたことを記憶します。これはECが、ガット二十三条一項で、日本のいろいろな規制というのはすべてガット違反であるということを十年前に提起したことがあるわけでございますが、そういう中で、一つECの言い分として、日本における新薬認可システムというものが、アメリカならアメリカでやったシステムがどうもそのまま受け入れられない、時間的にもギャップがある、なぜそういうふうな体制にあるのかということを指摘された記憶がございます。  私は、できるだけこういうふうな分野においては、世界的に認められているような薬というのは早く受け入れる、英語で言えばエビデンス・ベースド・メディシンというものでありますが、そういうものを受け入れる、そうすれば有効な薬のみが認可されるわけでありまして、薬剤費の削減というものが非常に可能になるのではないかと思うわけでございます。  今日の状況を見ますと、副作用はないけれども効果が不明で海外では認可されていない薬、この辺は少し後ほどお聞きしたいと思っておりますが、副作用はないが海外では認可されていない薬が多過ぎるのではないか、これが医療費有効利用になっていないのではないか、むだになっているのではないか、こういうことを感ずるわけでございます。  そこで、この問題につきまして、大臣は、日本臨床治験制度というものについて、今の制度仕組み等々どのような観点で御理解をせられ、そして、今後の医療制度全体の改革の中で、当然、薬漬けだ、検査漬けだと言われている問題は避けて通れないわけでございますから、それについてどのようなお考えであるかということをまず最初にお聞きいたしまして、これから逐次その問題の質問をさせていただきたいと思います。
  4. 丸山晴男

    丸山政府委員 最初に、現状と見直しの内容につきましての事務的な説明をさせていただきます。  先生お話しのとおり、我が国臨床治験につきましては、さまざまな論議あるいは事件を経て今日まで至っておりまして、概観いたしますと、特にいわゆる治験総括医師という、その分野専門先生製薬メーカーがお願いをして、非常に高度な専門性を持ったその先生が関係する専門医方々に呼びかけて治験実施する体制治験総括医師のもとにおける治験実施体制が行われてまいりまして、その結果、少数症例を多数の施設で集めるという傾向があったわけでございます。それが、国際的な水準で見ますと、データ科学性という点において、やや国際水準から見ていかがかという問題点指摘されておりました。  またもう一点、先生お話しのとおり、我が国被験者、新しい薬の治験を受ける方に、その治験実施する医師が、新しい治験中の薬である旨の説明をし、同意を取りつける、そのプロセスがいかがだったのかという議論もございまして、そういったような問題点を解決するために、医薬品安全性確保対策検討会というものを設置いたしまして、検討して、改正の中身を固め、昨年六月に成立いたしました薬事法改正でその改正をいたし、本年四月から実施にこぎつけておるところでございます。  この治験につきまして、欧米との治験水準の格差をなくしていくということで進んでまいっておりますけれども、これが治験空洞化というような事態をもたらすかどうかというお話もございました。  現在の我が国製薬産業は、徐々にではありますけれども、海外進出国際化を進めておりまして、その第一の足がかりは、欧州、米国における研究開発拠点をつくるということから始めている企業が多いように聞いております。研究開発拠点海外に持つことによりまして、いわば日米欧医薬品同時開発を進めるといったような戦略だろうと理解しておりますが、そういう点で考えますと、治験にいたしましても、いわば国際的に共通化された水準であることが大変必要であります。逆にまた、外資系企業にとりましても、欧米で使われた基礎的なデータ我が国でまた再現する必要があるというような問題になってまいります。現在、動物実験といったような基礎実験等につきましては、国際的に共通した資料を前提にし、その中で、人種差等がございますので、人に対する臨床試験につきましては、いわば日本人、日本に住んでいる方々についてやっていただくということで、徐々にではありますが、そういった申請データ国際共通化も進めております。  そういう意味で、欧米製薬企業日本への進出につきましても、現在、障壁という点につきましては、かつて指摘されたようなことは大分なくなっているのではないだろうかというようにも考えている次第でございます。
  5. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 業務局長、私、間違えたらお許しくださいよと言っておったのですが、私は、日本医療水準というのは立派な高いレベルにあると思います。しかし、現在の新薬あるいは新医療器材臨床治験あり方とか内容は国際的に低いのじゃないか、私はそういうエバリュエーションをしているのですが、それについてあなたはどう思われますか。
  6. 丸山晴男

    丸山政府委員 お尋ねの点につきましては、すべてがそうであるということではございませんけれども、ややもすれば、先ほど申し上げましたような、少数症例を多数の医療施設で集めてくることに伴う統計上の問題点という点あるいは治験過程における被験者に対する説明あり方という点につきまして、残念ながら、欧米水準から見るとまだそこに至っておらないという点も残っております。  ただ、逆に、そういう点については非常にきちっとやっている、こういったような治験も、最近でございますが、大分ふえてまいっているのも事実でございます。
  7. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 といいますのは、私がその問題を言おうとするのは、治験実施する日本医療機関、その受け入れ体制が十分に整備されていない。例えばアメリカだと、リサーチナースとか、そういう治験関係実質的スタッフが配置されておる。それから、医薬品情報管理なんというのもきちんとなされています。そういう面について、病院へ行ってごらんになるとわかりますが、極端に言いますと、ほとんどの病院では、治験実施医師が一人で臨床片手間に行っているのが現状じゃないか。それを私は問題にしている。それで、この問題は、片手間でどうというのじゃなくて、やっている人がもうくたびれ切ってしまっているのです。そういうことわかりませんか、局長。それについてコメントを。
  8. 丸山晴男

    丸山政府委員 現場の問題につきましては、先生お話しのとおりの面がございまして、我が国におきまして、どちらかといいますと、やや臨床試験治験の例が多いということも影響いたしまして、専門医の方が引き受ける治験の数が比較的多い。そういたしますと、お尋ねのとおり、それを支えるスタッフが、残念ながら、これは医療施設における医療行為ではありますけれども、その新しい治験に伴うさまざまの業務につきましてのアシスタントをするようなスタッフが必ずしも十分に整備されておらない。欧米ですと、リサーチナースその他、支援する体制がかなり整備されておりますが、それに比べますと、我が国の場合は、治験に参加する専門医の方のいわば頑張りによってやられているという面があることはよく承知をしているところでございます。
  9. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 森先生報告で、新しいGCPですね、新GCP、現在、治験総括医師廃止などというような形を新GCPというのはやろうとしていますね。そうでしょう。まずそれだけちょっと尋ねておきます。
  10. 丸山晴男

    丸山政府委員 新しいGCP治験実施基準につきましては、幾つかの改正内容がございまして、その一つは、今お話しのとおり、治験総括医師による実施体制を改めまして、治験を案施する製薬企業みずからの責任において治験計画を作成する、こういう内容でございます。
  11. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 ですから、そういう責任の中において、規制を強化してしまって、かえっておかしくしているのじゃないかという懸念を私は表明しておるのです。スタッフは少ない。先ほど言ったように、受け入れ機関の中においてリサーチナースもいない。実際にやろうとしている医師臨床片手間にやっている。くたびれてしまっておる。  こういう形の中で、治験というのは、臨床研究とか臨床試験に比べて規模が大きくて、そして、有益な新薬を世に送り出すという極めて大きな社会的意義を持っている分野なんだろうと私は思います。広く医療現場で利用されるまでの間には、限定された数の患者を対象とした臨床研究とか臨床試験というのが行われ、そして治験というのは行われなければならない。そういう面で、安全であるかどうかということで、今度は市場に出す前に厚生省承認があるわけだけれども、承認をした後でも――承認にはやはり限界がある。これは限界があるのでしょう。ですから、当然、法律的に言って、承認までの段階ではすべてを知り尽くすことができないから、医薬品の品質の有効性とか安全性について、開発して、それから治験から市販の後に厳しい監視をするというやり方になっておる。簡単には三段階ある。そうでしょう。  ですが、そういう中において、各段階におけるのはいいのだけれども、不幸な事件が起きたり何々してから直したいわゆる医薬品臨床試験実施に関する基準英語で言うとGCP、これについて、総括医師廃止をしたとか等々、いろいろな問題がありますが、何か規制ばかりかけてしまって、よくあることなんだけれども、消費者が騒ぎ出すと消費者行政というのはますます厳しくなって、安全面安全面と始まってしまうのですが、そういう面がいってしまって、現状は、私、将来を見ますと、被験者の問題はありますよ、被験者の権利とか安全という問題はまた後ほどお話を聞きたいけれども、国際的に評価されないような状況になっておる。  だから、私はガットの問題を取り上げた。ガットの問題でEC日本を、すべての日本やり方は、厚生省のやっている医薬審査というのはガット違反だと、二十三条一項で持ってきた。私は、弁護士の役割をやって、ああだこうだやった覚えがあるのです。あるから私は記憶しているのですが、そのときに、僕らが外交努力をした結果、幸いなことにECはこれを取り下げたのです。  私は、どこに一体ガット違反があるんだと言って、やったわけです。そうしたら、日本のすべての体質がおかしいんだと。系列化から始めて、今、日本アメリカとの間でやっている日米構造協議と同じことを言われたのですよ。ですから、ECが総論で持ってきて、アメリカ日本とが各論で今ストラクチュラル協議をやっているようなものですが、その中の大きな問題がこの医療の問題だった。そうだったのですよ。システムが違う、厳し過ぎる、アメリカでちゃんと治験を受けてアメリカ承認を受けたものがこっちでだめだとか、こういう形とか、時間が非常にかかるとか。  それで、幸いなことに取り下げた、二十三条一項のを。これは訴えなんですよ。提訴というのですよ。そして、パネルをやらないで済んだが、そのときに言っていた言葉は、この訴え冷蔵庫に入れたので、冷凍庫に入れたのじゃない、いつでも出せるんだと言って、やったわけです。冷蔵庫に入っている、冷凍庫じゃない。そして、そのところをECは持ち出さないで、アメリカECというのは根がジャガイモみたいに地下茎でくっついているわけだから、そうしたら今度はアメリカが、日本アメリカとの間の構造協議というのにかけて、今いろいろな問題をやっているのですよ。  ですから、そういうふうな問題であるから、私が今申し上げているのは、日本治験制度というのがやはり国際的にならなければいかぬ。一番の国際的というのは、アメリカやり方を、FDAフードアンドドラッグアドミニストレーションみたいな、御承知だと思いますが、そこには五つのセンターがあるのです。FDAのコミッショナーというシステムになっていまして、これは千四百人くらいの人たちがやっているのです。アメリカ日本というのは、人口は二対一ですよ。いいですか。今や臓器移植をやっているような、日本の人がアメリカへ行って臓器移植を受けるような時代ですよ。アメリカ人だ、日本人だといって、体質はそんなに変わりはせぬですよ。アメリカ人に効いた薬は、当然、日本の人にも効くのです。私は、そういう二重の手間暇というものは、それは省いてしまうことがインターナショナル・ハーモナイゼーションだろうと私は思っているわけでございます。  念のために言いますと、FDAの下には、生物製剤評価センター、医療評価センター、医療機器評価センター、食品安全センター、獣医薬品評価センターというのがあります。そして、そのセンターには、必要に応じてそれぞれの評価・研究部門が設けられています。そして、各部門には、専門的立場で、お医者さん、薬理学者、科学者、消費安全官、統計学者、法律家、こういうものが全部いるのです。そして、医薬品医療器材評価しているのです。  日本の場合は、私が教えていただいたあれでは、厚生省業務局は百八十九人、審査課は四十三人、そして中央薬事審議会が六百人か何かでやっているけれども、全然歯が立たぬですよ。そういう体制になっていない。  だから、私は、そういう意味において、このFDAというのを十分研究してやっていく必要があるのではないだろうかということを申し上げている。そして、同じような仕組みに持っていくことが、日本アメリカとのいろいろなトレードバリアの摩擦の部分についてもそうですし、これがまたすぐに、地下茎がつながっているのだから、日本ECとの問題になるわけだから。  行政改革というのは、事業団を二つを一つにするとか、省を二十二を半分にするとかという話じゃないのです。生首を飛ばすとかなんとかの話じゃなくて、問題は、余計なことをやらない、そしてむだを省く、省エネルギー、余計な仕事までやらぬ、必要ないものは手を抜く、行政が余計なお世話をしない、つかさつかさ主義に徹底する、そういうことが私は重要な問題だろうと思っております。  そういうことで、大臣FDAの問題を御検討いただけませんかということを申し上げようと思っておるのでありますが、今私が問題提起をいたしましたそういう治験の問題等につきまして、大臣の御答弁を賜れれば幸いでございます。
  12. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 そのような御批判、御指摘があるのは承知しております。  今後、アメリカFDA等の組織機構、審査体制等を参考にしながら日本体制改革していかなければならぬ、これからの大きな課題だと受けとめております。
  13. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 ありがとうございました。小泉大臣から、そのように、今後、FDA等を参考にしながら日本治験あり方体制について御検討されるという前向きのお話を賜りまして、ありがとうございました。  五島先生が、他日、薬の問題について、日本の製薬業界には格差があって、もうかっておるところは莫大にもうかっておる、そういう問題を言われたりしたわけでありますが、その薬漬けの部分を減少させるということがこの十五円の部分についておったりしているけれども、私は、そういう全体から直していかなければならない問題が根底にあるのじゃないか。それから、検査漬けという問題があります。  そこで、またここでありますが、一つは、カルテの開示についてできないか。例えば、メーカーがカルテの開示を求めたときに、これについて現在前向きに進められないわけでございますけれども、その点について厚生省はどのようにお考えか。
  14. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 一般論として、カルテの開示ということについてまず申しますと、これにつきましては、東京高裁や何かの判例もございまして、カルテの内容について患者の求めに応じて十分説明をするということについては、これは当然だ、ただ、カルテそのものを相手に見せてやるということまではやる必要はないのじゃないかというような判例もございます。  ただ、一般論として申しまして、レセプトを初めとして、もちろんカルテもそうでございますが、医療情報を広く患者さんに提供していくということは必要だという認識をしておりまして、このカルテの内容についての患者さんへの十分な説明ということも含めて、平成九年度、今年度に具体的な検討会をつくって検討したいというふうに思っております。  なお、今具体的なお話は、先生のは治験段階での問題でございまして、後ほどまた業務局長の方からお話があろうかと思いますが、私も、先ほど来引用されております森先生委員会での議論を何回か聞いておりました。その中で、結局、具体的にメーカーが患者さんの了解をどういうふうに得るのかというようなことについていろいろ議論があったというふうに記憶をしております。
  15. 丸山晴男

    丸山政府委員 治験におきます症例記録とカルテとの照合ということが課題になっておりまして、そのカルテとの関係でございますけれども、当然でございますが、患者のプライバシーにかかわることでございますので、医療機関としては……(佐藤(剛)委員「私は治験のカルテを聞いている」と呼ぶ)治験のカルテでございます。治験のときには、治験担当医師がカルテに基づいて症例記録をつくり、その症例記録が治験の資料として集大成をされます。したがって、その症例記録のもとになるカルテ、これと症例記録との照合の問題があるわけでございます。  このカルテの問題につきましては、患者のプライバシーにかかわるものでありますので、医師といたしましては、被験者の同意を得て、カルテとその症例記録との突き合わせにつきまして製薬企業が派遣した調査員に提示をする、こういうことになろうかと考えております。
  16. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 私が言っていることととんちんかんの答弁だから、それ以上入りませんが、GCP、グッド・クリニカル・プラクティス、新しいGCPそれから変わる前のGCP、根本的な違いを、局長、言ってください。
  17. 丸山晴男

    丸山政府委員 このたび改定されましたGCPは、日米欧三極の協議を経てつくられ、また、平成四年からできたGCPの一部改正でございますが、その改正の主な点は、治験総括医師制度廃止、それから被験者に対する説明と同意、インフォームド・コンセントの徹底、それから今話題になりました診療あるいはカルテにつきましてのモニタリングオーディト、要するに監査、こういう三点でございます。
  18. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 私は、新GCPの様子を少し見させていただきます。  そして、規制が厳しくなってしまって、将来、若手の研究者とか製薬会社にインピタスがなくなってしまうということでありますと、今の、改正しましたGCPというのは非常にできが悪い。私はできが悪いのではないかと見ているからそう言っているのですが、局長が、今のところはこうですといって、はっきりしたことを言わないから言うのですが、つまり、リサーチナースもいないわけでしょう、今の日本というのは。アメリカのようにはいないわけだ。それから、カルテの開示についても、今はっきりしたことを言っていなかったけれども、そうなっている。そうすると、職務を果たす人がゼロなんですよ、簡単に言いますと。実際には、多忙でくたびれてしまっている、疲れた医局員が夜遅く資料をとる、これが現場現状なんですよ。局長、少し夜でも行って、ちゃんと見ていらっしゃいよ。  私は、実際にやって関心を持って見ているからそういうことを言えるのです。前に申し上げたように、虎の門病院の今のところの千ベッドというもの、国家公務員の共済病院だから、私は現実にやっているからそういう問題について非常に関心を持っているのです、現場には。ただ、医薬とかなんとかにはトーシローですけれども、そういう面でのシステムについて関心を持っている。  今の日本治験システムはだめ、簡単に言いますと。それで、インターナショナルハーモナイゼーション、そっちの方ばかり三極だか何かやっていて、もとができていないのだから。私、言ったでしょう。これは、またECアメリカにやられるかもしれませんよ、ガット違反だといって。二十二条に基づく協議、二十三条一項で提訴すると。私は、実際のところで外交交渉をやって、それで要するに切った張ったやってきて、修羅場をくぐってきている。あなたはそういうことを現実にやっていないでしょう。  そういうふうな問題を考えないと、今すべてそうなのだから、臨床にしたって何にしたってそういう話になっているのだから。そういうものは早く手をつける、これが行政改革なのだから。そしてそれが、薬が安くなるのだから、余計なことに手を出さなければ。そういうことを考えてやる体制をとっていただきたい。いいですか。
  19. 丸山晴男

    丸山政府委員 治験を担当する医師の方を支える支援体制が、我が国の場合は大変弱体であるという点は御指摘のとおりでございまして、この体制の整備は重要な課題でございます。  それから、外国データの活用につきましては、これまでかなりやってまいりまして、現在では欧米諸国に理解をいただいているというところでございます。また、例えば用法、用量につきましては、吸収量、消化量等にやはり人種差等もございまして、我が国としてきちんとした臨床試験が必要であるということも、欧米諸国においてよく理解をされているところでございます。
  20. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 どうも私が見ていると、厚生省のところに置いておくと、本当の新薬開発なんてできなくなるのではないか。もう少し産業行政みたいな感じも考えて製薬の部分をやらないと、入ってくるものは入ってくるけれども、まともに輸出してきちんとする、そういう製薬の産業というのが必要なんです。それは、見ていて、確かに膨大なる利益を得ている部分というのもあるが、そういう部分はあるけれども、バランスを持った形にしないと。規制をやるとすると、規制がだあっと厳しくなってくる。日本というのはそういう姿なんだ、常にそうなんだ。空気が漂うのです。山本七平先生が「空気の研究」という本を書いている。今だってそうでしょう、政治改革、政治改革でもって空気が漂うのだから。今や行政改革の空気が漂っているんだ。同時に「水の研究」という本も書いている。だから、そういうときは水を差すというのですが、水を差す役割もする、そういうことでございます。  そういう意味で、今、業務局長が答弁されたが、リサーチナースだとかそういうシステムを、アメリカを勉強して、アメリカを見てきちっと、アメリカにでも行ってちょっと見ていらっしゃい。それでちゃんとやってもらいたい。そういうことをやることから、全体のものから医療制度改革というのがあるのです。一割を二割に上げればいいというものじゃない、十五円余計に取ればいいというものじゃない、そういうシステムを直してもらうということでやっていただきたいと思います。  時間が来ましたので、私は、これで終わりにします。
  21. 町村信孝

  22. 奥山茂彦

    奥山委員 自由民主党の奥山でございます。  本格的な質問をさせてもらうのは今回が初めてでありますので、質問が的を射ているかどうかわかりませんが、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。  戦後五十年余りたちまして、日本人の平均寿命が、男性は七十六歳から七十七歳、そして女性は八十一歳を大幅に超えたわけであります。短期間における平均寿命の延びというものは、まさに世界でもトップではなかろうかというふうに言われておるわけでありまして、それだけいろいろな意味で日本人の健康が大きく改善をされた、こういうことになるわけでありますが、その一方において、巨大な医療費がずっと投入されてきたわけであります。そして、この平均寿命が世界でトップ水準になるということのかわりに、膨大な医療費が、そのツケが回ってきたわけであります。  そこで、今日の日本の健康保険制度、これが制度として固まってきて、その伸びがGNPの伸びを大幅にずっとこの十数年上回る、こういう状態になって、しかも、今日、景気の伸びが非常に鈍い状態の中で、医療費だけがどんどんと伸びてきて、そして制度として固まってしまっておるので、いわゆる金属疲労と申しますか、財政的な、その医療費の伸びの流れが今もってとめられない、こういうふうな状況が今日生まれておるわけであります。  こういう中で、今回の医療保険制度改革のその冒頭で、  我が国医療保険制度は、昭和三十六年に国民保険制度が整い、以後、医学の進歩を踏まえた良質な医療を全ての国民に提供し、高額な医療に伴う費用負担から家計を守る制度として、国民生活に不可欠な機能を果たしてきた。 こういうふうにうたっておるわけであります。  しかし、今日の医療制度改革において、年々増大する老人医療費を中心として、このままでは保険制度はすべてが崩壊をしてしまう、その中で、特に老人の入院あるいは外来費あるいは薬剤費等の負担を国民の皆さんにお願いしようとするものでありますが、その改正が一時しのぎの場当たり的なものであっては、国民は納得してくれないわけであります。そのためには、将来における我が国医療制度において抜本的な改革国民に示していかなければならないわけであります。  四月七日に、与党医療保険制度改革協議会がまとめたその基本的な考え方が示されたわけでありますが、私は、この与党案を考慮しながら、政府や厚生省の考え方を聞いてまいりたいと思います。  そこで、橋本内閣は、六つの改革を現在進めようとされておりますが、その中でも特に大きな柱となる社会保障制度改革では、今後もふえ続ける福祉と医療費に思い切ったメスを入れ、その増嵩を抑制していかなければならないわけであります。金属疲労を起こしているという状態になっている今日の医療制度改革し、また一方において、政府の財政的な、五百兆を超えるというその負担も含んで、今日、国民負担率が五〇%を超えるということが絶対にないように、今ここで社会保障の構造改革にどのように取り組んでいかれるのでしょうか。まず、これからお尋ねをしていきたいと思います。
  23. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 基本的に、私は、日本医療制度も、日本が見習ってきたイギリスやヨーロッパの社会保障制度に比べて遜色のない水準になってきたと思います。  人間社会の難しさは、一つの目標に達すると、当初予想しなかった弊害が出てくる。いい例が、人生五十年、長生きできる社会にしようといって、戦後、みんな努力してまいりました。おかげさまで、今や、御指摘のように、日本は世界一長生きできる国になりました。しかし、同時に、長生きだけすればいいというものじゃない、どうせ長生きするのだったらば元気で長生きしたいという新たな問題が起こっております。戦後は、食うものに困った。栄養失調で亡くなる方がたくさんあった。今では、栄養をとり過ぎて病気なる人が多くなってきた。一つの目標を達するこうしてまた新たな矛盾が出てまいります。  日本医療制度、だれでも軽い負担で良質な医療サービスが受けられる、患者さんもお医者さんを選ぶことができる 病院を選ぶことができる、この制度のよさはたくさんあります。そういう中にあって、やはり財源の問題も出てまいりました。そして、このような社会保障制度が充実してきたのも経済成長があったればこそであります。この社会保障のみならず医療制度におきましても、今までのとおりでもうもたないなということが出てきたからこそ、今あらゆる構造改革の問題が出てきたと思います  そういう中にあって、余り国民に対しても、また企業に対しても負担を過重にすると、経済成長がおろそかになって社会福祉の充実もできないということから、これから将来、国民負担率を五〇%を超えないようにしようという中であらゆる構造改革をしなきゃならないということから、医療制度もこれから総合的に見直していかなきゃならないということで、今回は、法案をお願いしているのは、まず第一段階として、この医療保険制度を、財政を安定的に運営していかないと医療保険制度そのものが壊れてしまうということから、今まで若い世代が保険を支えている、高齢者だからといって若い世代に比べて今までのように軽い負担でいいのだろうか、やはり保険制度を安定的に運営しなきゃいかぬということで相応の御負担をいただこうという形で、今回、今までに比べれば負担を多くするような法案をお願いしております。  これはまず第一段階でありまして、今後、これからの医療提供体制、さらには今まで言った出来高払い制度等、治療すればするほど、検査すればするほど、薬を投ずれば投ずるほど、治療をよくすればするほど費用がかかってくるという制度は、基本的にはいいと思うのでありますけれども、それで弊害も出ておりますから、そういう方向、診療報酬体系等も見直して、それから、薬の問題も出てまいりましたが、そういうような総合的な見直しを今後していかなきゃならない。  しかし、当面、この財政を安定的にしようということで、今回、段階的な法案をお願いしているわけでありまして、今回の法案、これで必ずしも事足れりとするものではありません。これから総合的な改革に向けて改革を進めていかなきゃならない中での段階的な一つの案であるということを御理解いただきたいと思います。
  24. 奥山茂彦

    奥山委員 今、厚生大臣が、今回の改革はまず第一段階ということで位置づけようとされておるわけでありますけれども、これからやはり、今回こうして特に老人医療を中心としてその負担を国民にお願いするということになってくると、少なくとも、二十一世紀を迎えるに当たって、具体的に何年ごろにはどういうふうな改革を進めていくか、こういったことを示していく必要があるのではなかろうかと思います。そういったスケジュール的なものを今厚生省の方で考えておられるのか、その辺についてもお尋ねしたいのです。
  25. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 医療保険制度改革の基本は、先ほど冒頭に先生がおっしゃいましたように、これからの時代に向けて、経済の伸びと医療費の伸びとのギャップをどういうふうに考えていくべきなのか、やはりこれが最大の問題だろう。そういった中で、高齢化社会、それから子供が少なくなる社会、そういうようなものも踏まえたときに、現役の世代とお年寄りの世代との負担の公平をどう図っていくか、これはやはり大きな問題だろうというふうに思います。  そういった中で、私どもとしては、今回、現行制度そのものが倒れてしまってはこれは元も子もないわけでありますから、そういった意味で、現行制度の運営の安定ということをまずお願いをし、そして、今回お願いしている改正案が成立いたしましたら、できるだけ速やかに厚生省としての具体的な改正内容というものを、改革案というものを国民に示していく必要があるだろう。  そして、これはやはり、具体的な案でありますから、それぞれいろいろな利害がぶつかりますし、いろいろな御意見があるはずであります。そういった中で、私どもとして、もちろん、一つの案に絞るということだけではなくて、複数なりの案というものも考えていくべきだというふうに思っておりまして、そういった意味では、幅広く国民の皆様方の御意見なりをお聞きし、そして幅広い合意の形成に向けて努力をしなきゃいけない。  そして、それとあわせまして、国会におかれては医療保険制度改革協議会でも精力的に具体的な案というものを検討してしくということでございますから、私どもとしては、そういった協議会の検討の内容等々も見まして、そして厚生省としての案というものもぶつけ、最終的には、それらの調和がとれる格好のものとして成案を得て、所要の改正、物によっては、これはもう当然そうなると思いますが、また制度改革をお願いしていく、それを私どもとしてはこの二十一世紀までに何としてもやらなきゃいけない、そういうふうに考えております。
  26. 奥山茂彦

    奥山委員 先日からの与党の協議では、一応、政党側として一定の案を国民に示したわけであります。しかしながら、政府としても、今回の医療保険制度改正に伴ってそれなりのものを出していかなければならないのじゃないかというふうに思います。ただ二十一世紀までに改革します、具体的な案を出しますと言うだけではなかなか承知してもらえないと思うのですが、その辺についてもう一度お尋ねをしたいと思うのです。
  27. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 この法案が成立した後、できるだけ速やかに、この国会での御議論も踏まえて、医療提供体制そして診療報酬体系、薬価基準の見直し等、抜本的な改革案について厚生省は案をまとめたいと思います。当然、並行して、今、与党で協議していただいている――必ずしも与党だけじゃありません。何か、民主党も参加していただくということでありますので、与党にはこだわりませんけれども、国会の中でも並行して議論していただくでしょう。  どっちが先になるかわかりませんが、厚生省としても、できるだけ速やかに案をまとめて、国会の議員の方々あるいは国民の各層に御批判を仰ぎたい、そして、まとまった段階から法案として国会に提出していきたいというふうに考えております。
  28. 奥山茂彦

    奥山委員 与党側、あるいはまたこれから政党の組み合わせがいろいろ変わることも十分考えられますし、今回の国会審議を通じても、賛否両論、各党によっていろいろ変わってくるかと思いますが、今回、与党側が一応示した基本的な方針、これはマスコミの方からはかなり厳しい批判があるのは承知をしておりますけれども、ひとつ厚生省としても早期に国民に示す必要があるのではないかというふうに思います。  そこで、具体的なことで聞いてまいりたいと思います。  一つは、今、介護保険法案が一方で審議されておるわけであります。介護と医療を基本的に分けていく、これをしていかなければならないわけでありますが、その中で、必ずしも定義がはっきりしないわけでありますけれども、いわゆる社会的入院と言われている長期入院、あるいは、医療をもうほとんど受ける必要がないにもかかわらず病院にそのまま入っている人が一体どのくらいおられるのかという質問を前に私はどこかでやったことがあるのですけれども、それについては具体的な数字がなかなか出てこないわけであります。今回、こういった介護と医療という問題を考えるときには、どうしてもこの問題はきちっと精査をしていかなければならないと思いますので、その辺についてはどのような考え方を持ってこれから対処していかれるのか。  あわせて、今の日本の薬価が高いということは、これまでもいろいろな委員を通じて何回も何回も出ておるわけであります。こういう薬価が高いということと、それから現在、大学病院等が特に薬代等が非常に高い。特に大学病院だけに限らず、自治体病院もそうでありますけれども、非常に薬代の割合が高い。特に欧米諸国に比べても日本の薬代が非常に高いということで、この方面において思い切ったメスを加えていかなければならない。そういう中で、厚生大臣も、具体的にそういう方面にメスを加えていきたいということを先日からもおっしゃっておられるわけであります。  そこで、一つは、公立病院等が非常に経営効率が悪い、こういうことがかねてから言われて、国立病院の統廃合等がいろいろ言われる中で、こういう病院経営にもメスを加えていかなければならない。その中で、薬価の問題も大きいわけでありますけれども、同時に、こういう公立病院の経営にもこれからメスを加えていかぬと保険制度の費用の押し上げに大きな要素をなしてくると思いますので、そういう点についてもあわせてお尋ねをしたいのです。
  29. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 まず、社会的入院についてのお尋ねについてお答えを申し上げたいと存じます。  長期に入院をなさっておられる高齢者の方々の中には、先生指摘のとおり、病状が既に安定しまして、入院治療に重点を置きましたサービスよりも、むしろ介護といった側面に重点を置いたサービスが適切であるという方々がおられまして、その方々が、現在、受け皿となります施設あるいは施策が十分でないというようなことからやむを得ず病院に入院しておられるということで、このことにつきましては、患者本人の適切な処遇という面からも、また、医療費の効率的な使用という面からも問題が多いわけであります。こういったことから、いわゆる社会的入院というものにつきまして解消ということは、私どもも一つの重要な課題だというふうに考えております。  その数字が現在どのくらいあるかということにつきましては、これは、それぞれが介護を理由とする入院かどうかといういわば個別の判定の問題になりますので、これを総体の数字として申し上げるのはなかなか難しいのでございますけれども、そういう意味からいえば仮にということにはなるわけでありますけれども、現在、一般病棟に六カ月以上御入院をなさっておられる高齢者の方々のうちで、これはごく一部の地方団体でのサンプル調査をいたしましたところで、その三分の二ぐらいが今申し上げているようないわゆる社会的入院ということに当たるのではないかという結果も出ておりますので、そこを当てはめて考えますというと、約十万人という数字が社会的入院ということで一応出てくるわけであります。ただし、今申し上げました、制約のついた仮の数字でございます。  いずれにしましても、こういった社会的入院と言われる方々につきましては、これはやむを得ずそうなっておるという側面がありますので、基本的な取り組みといたしましては、先生もお挙げになりましたように、介護保険制度を創設することによって、在宅・施設サービスを一元的に提供することによってその解消を図っていく、また、特別養護老人ホーム等の施設の整備あるいはホームヘルパー等の在宅・施設のサービス、こういった介護サービスを充実することによってその解消を図っていく、あるいは診療報酬の面で、長期療養に対する診療報酬の適正な評価というようなことを通じてその解消を図っていくということで、やはり私どもとしても、社会的入院の解消を図っていく、そのためにも介護保険制度の創設ということをお願いしているということになろうかと思います。よろしくお願いいたします。     〔委員長退席、住委員長代理着席〕
  30. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 公的な病院を含めた病院経営の問題の御指摘でございましたが、我が国医療機関における機能の連携とか機能分担とか、そういった面が必ずしも十分進んでいるということではないというふうにも思いますし、そういった意味で、まず、こういった医療機関における機能分担なり連携というものを、そしてまた適正な配置というものをどう進めていくかというのが一つあろうかと思います。それと同時に、そういった中で、これまでも進めてきておりますけれども、例えばベッド数の適正化というようなものがやはり要るだろうと思います。  要するに、医療費との関係で見るならば、いわゆる医療提供体制が過剰になっておりますと、どうしてもそれが医療費を押し上げる要因に現実になります。ですから、そういった意味での適正な規模なり適正な配置ということが今後大きな課題になりますし、それを進めていくということがまず第一義的には大事なことだろうと思います。  またもう一つ病院経営という面で考えますと、やはり我が国における病院に対する支払いのあり方。とりわけ、病院の費用の六割は人件費であります。そういった中で、通常の企業のように、経営の合理化といってもなかなか難しい面があることも事実であります。しかし、そういった中でできるだけの経営の合理化というものは進めていかなければならない。  それと同時に、現在の診療報酬の支払い方、これはとりわけ薬の差益に依存し過ぎているのではないかということがよく言われますけれども、やはりその根っこには、診療報酬体系そのもののあり方が問題であるというふうに思います。とりわけ医療担当者の技術料、こういったものをきちっと見ていくということが基本であります。  それから同時に、医療経営の投資的な費用、いわゆるキャピタルコストと言われておりますが、こういったものについてもどういう格好できちんと見ていくべきなのか。  こういったものが確立しませんと、病院の経営というものは、仮に全体の適正な配置なり役割分担というものをきちっとしたとしてもうまくいかないわけでありますから、そういった面の配慮といいますか、対策というものは不可欠であります。  そういった意味で、病院のハード面における全体の整備と同時に、医療経営に対する診療報酬の評価といったものをきちんとやっていく、そして、むだのない体制というものをつくっていくことがこれからの時代にやはり重要であるというふうに思っております。
  31. 奥山茂彦

    奥山委員 後で質問をさせてもらおうと思ったことが先に少しばかり出たわけでありますけれども、この間も地元へ帰りまして、私の地元のお医者さんといろいろ話をしておりました。そこで言われていることは、今は医者の技術の評価が非常に低い、そういう不満がお医者さんの間でかなり強いわけでありまして、それが、現在、薬価差益があるということは結局そちらの方で技術料の低いところを埋めておるような、必ずしもそういうはっきりした話はなかったわけですけれども、そういうふうな意見が出されたわけであります。これが医療現場の実態ではなかろうかと思います。  毎年、技術料は少しずつ改善されてはきておるのですけれども、実際には、諸外国と比べてもやはり低いというふうなことになっておる。医療現場がそういう収入という面から見るといびつな状態になっておるように思います。そういった改善はどうしてもしてほしいという強い希望を我々も聞いてきたわけでありますが、この辺についてももう一度お尋ねしたいのです。
  32. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 医療の基本は、お医者様が患者さんに対して、きちっとした、時間をかけながら要望にこたえられるような医療を提供するということだろうと思います。そういった意味で、患者さん側も、現行の制度が三時間も待って三分ぐらいしか診てもらえないというような不満の意見が出ております。こういったものも、まず医療経営の安定ということがないとできませんし、基本はまさに、医療担当者の技術料というものをきちっと評価していく、そういった中で適切な医療をやっていくということが基本でありますから、まさに先生指摘のとおり、これからの診療報酬体系のあり方というのはそこが中心になるだろうというふうに思います。
  33. 奥山茂彦

    奥山委員 今回の与党の協議の中ででも、特に医師会の方との協議が一方においてなされる中で一番問題になったのが、いわゆる定額払い制度実施できるかどうか。これまでは出来高払いということで、戦後五十年余り今日の日本医療制度の質を高めてきた、その中ではこの出来高払いというものもかなり大きな役割を果たしてきたと思うのです。  しかし、この制度をこのままずっと続けてまいりますと、日本の経済の伸びよりもはるかに医療費の伸びがどんどん上回っていくということになってくるわけでありまして、そういった点で、出来高払いと定額払い制度をうまく組み合わせていってはどうか、こういうふうな案が出されているわけでありますけれども、こういった点についてはこれからどういう取り組みをされていかれるのでしょうか。
  34. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 保険からの支払いの支払い方の問題でありますけれども、やはりそれは、患者さんのそれぞれの心身の特性に合った治療が受けられるような、それにかなった形での支払い方というのが一番いいわけであります。そういった意味で、これまでも、出来高払い制を基本としておりますけれども、例えば慢性期の医療とか集中治療室における医療とか、そういったことについては定額払いというものも導入してきております。  今後、そういった方向を踏まえつつ、さらにこの出来高払いの長所、定額払いなり包括払いの長所というものを生かして、それを組み合わせていくということが恐らく最善の方策だろうということは疑いのないところだと思います。  その際に、一つには、病院と診療所という格好があるわけでありますが、そういった医療機関の形態に着目した考え方というものがあろうと思いますし、また、入院と外来といったような医療機関サイドの受け入れ機能といった観点からの考え方というものもあろうと思いますし、あるいはまた急性期と慢性期の医療、いわゆる患者の症状に着目した適切な支払い方というものもあろうと思います。  こういうふうな幅広い角度から、だけれども、そのベースとしては、我が国医療提供体制をどういうふうにしていくのか、それとの裏腹の問題として最善の組み合わせというものをどう考えていくのか、それが基本だというふうに思っております。
  35. 奥山茂彦

    奥山委員 これについては、これは非常に難しい問題ですから、日本医療制度を根本的に変える問題ですから、具体的な案はそうは簡単に固まらないと思いますけれども、やはり医療費の伸びを日本の経済の伸びに合わせてやっていかなければならぬし、それが経済の伸びを上回るということであっては、日本医療制度というものはこのまま水膨れして、やがて今日の保険制度が崩壊をしてしまうということになりますので、その辺については厚生省としても真剣にひとつ取り組んでいただきたいと思います。  そこで、高額医療の問題でひとつお尋ねをしたいのです。  先日から、健康保険組合連合会が、高額医療が昨年は三十万件を超えたということでありまして、しかも、その最高額は一件当たり二千九十六万円ということで初めて二千万円台を超えた、こういうふうなことが出ておるわけであります。まして、まだ行方はわかりませんけれども、もし臓器移植ということが実施されるということになりますと、この一件当たりの、特に心臓手術などは二千万円を全部超える、こういうふうな状態になってくるわけであります。これが保険組合の負担に全部はね返ってくる、こういうことになるわけであります。  もちろん、これは一般財政からの補助等もいろいろあるわけでありますけれども、こういった高額医療の現在の仕組みというものもこれから検討し、いろいろその中でまた改正をしていかなければならない問題点もたくさんあるように思います。この辺については、今どんなお考えを持っておられるのか。
  36. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 医療保険制度というのは、まさに、疾病で多額な出費を強いられた場合に、それをみんなでカバーし合おうというのが原点であります。そういった意味では、現行の医療保険制度におきましては、一部負担という制度がありますけれども、高額療養費制度ということで、一月六万三千六百円まで負担すればあとは保険で償還をする、そういった仕組みになっている。  一方、医療の技術の進歩あるいは国民医療に対する要求といいますか、考え方と申しますか、そういった中で、一言で言ってしまえば非常に金がかかる医療というものが出てきていることも事実でありますし、先般の発表された資料も、まさにそういった面では相当な費用がかかっておる。一月二千万円以上もかかるというようなケースがある。  しかし、これが、結果的には命が助かったかというと、大部分は不幸にして亡くなられた方が多かった。それで、とりわけ末期医療といいますか、そういったときに非常に多額の費用が費やされておる。この辺のところをどういうふうに考えるべきなのか、これをいわゆる公的な医療保険の中でどこまでを見ていくべきなのか、あるいは末期医療あり方そのものを考えていくべきなのではないかという問題だろうと思います。  やはりこれは、それぞれの個人の死生観なり家族の御希望なり、非常に難しい問題があるわけで、まさにこういった面について、これからの医療保険制度の抜本的な改革に当たっては、この問題も一つの大きなテーマとして国民的にきちんと議論する必要があるのではないか、私はそのように考えております。
  37. 奥山茂彦

    奥山委員 それから、私たちはよく自分たちのかかりつけのお医者さんに行くわけでありますが、長い間つき合いをしておっても、どうしても午前中に行くとお年寄りが物すごくたくさん待っておられるということで、結局は、余りお医者さんと話もできない。ささっと診て、はい、では薬を出しておきますから、こういうことでいつも終わってしまうわけであります。私らはあえて、どうですか、どんな状態ですかということを聞くわけなんですけれども、普通はほとんど、聞くこともできないし、また、お医者さんの方からも具体的な説明もない状態なんです。  だから、インフォームド・コンセント、できる限り説明を十分にして患者の不安を除いてあげるようにということで、今回の改革の中でも文章としてうたわれておるわけでありますけれども、実態がなかなか、一方において、説明できにくいような雰囲気が今実際には現場ではあるわけです。その辺を根本的に変えていかなければならないかと思いますが、その辺はどういうふうな指導をこれからされていかれるのか、お尋ねしたいと思います。
  38. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 今先生お話ありましたように、お医者さんの方が患者さんによく説明をするということが医療の基本だというふうに思います。今回、医療法の中で、医療側が患者さんに十分理解されるような言葉で説明をするということについて、努力規定でございますが、そういう規定を盛り込んでおります。  おっしゃるように、一朝一夕に、一気に進むということはなかなか難しいと思いますけれども、これを第一歩として、十分な説明をするということについて、これができるだけ定着するように、またあわせて、患者側も、自分も医療に参加をしているのだというような意識をこれによって持っていただくように、そういう契機にしていきたいというふうに思います。  先ほど来それに関連してお触れになっている、結局、長時間待たされて診療時間が短いということ、これは、先ほど厚生大臣もおっしゃいました、自由に医療機関が選べるということとの裏腹の関係でもございますけれども、医療提供体制の中でもかかりつけ医というものをまず第一線の医療機関として位置づける、そのためにはかかりつけ医の支援をしなければいけませんけれども、かかりつけ医に対する住民の方々の信頼回復なり、あるいは活性化ということもまたあわせて必要なのではないかというふうに考えております。
  39. 奥山茂彦

    奥山委員 もう時間もありませんので、最後にもう一問だけお尋ねをします。  今回の制度改正、負担の適正化の中ででも、お年寄りにできる限り負担もしてもらう、こういうふうになされて、そしてまた、我々もいろいろな高齢者の集まりに参りましても、年寄りだけを特別扱いにしてもらわぬでもいい、負担できる限りは我々も負担をしましょう、こういうふうな声も我々のところへはよく来るわけであります。  これからの医療制度全般の中で、特に今日の保険制度の中で、若い人にますますその負担が重くなっていく。そういう中で、一つは、やはり高齢者にも所得のある方にはそれなりの負担を求めていくということと、それからもう一つは、老人保健制度を別建て方式にしてはどうか、こういうふうなことも与党協議の中でうたわれておるわけであります。こういう点についてこれからどういうふうな、特に老人保健制度の今後のあり方を示してもらいたいと思います。
  40. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 今後の老人保健制度、老人医療あり方につきましては、先般も与党の基本方針が出たわけでございます。私どもとしましても、二〇〇〇年をめどに改革が実現をするように、審議会等の御議論も踏まえまして今後進めてまいりたい。  その中で、お話のございましたように、高齢者の方々につきましても、その経済的な状況の変化というようなことも踏まえまして、今後におきましては制度の支え手としての側面を持っていただいて、そういったことを考えながら、今後ふえていくであろう老人医療費を世代間の中でどのように公平に負担をしていくかという視点も大事だというふうに思っております。  もう一方において、当然、お年寄りの方々につきましては、病気になりやすい等の心身の特性もございますから、そういったことをも配慮しながら、今後の負担の公平、そして、高齢者を自立した存在として考えて、相応の負担というものも考えていっていただくという中で具体的な成案を考えていきたい。  その中の具体論としまして、今お話のございましたような、独立の保険制度をつくるという案も有力な案としてございます。またそのほかに、与党の案の中でも御提示をいただきましたような、今のそれぞれの保険集団のいわばOBをもずっと見ていくというようなやり方の案もその中に出ております。こういったもの全体を含めまして、その利害得失、そして、どういう形で皆さんが納得して負担をしていただけるかというようなことも踏まえながら今後検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  41. 奥山茂彦

    奥山委員 ありがとうございました。これで終わらせてもらいます。
  42. 住博司

    ○住委員長代理 次に、江渡聡徳君。
  43. 江渡聡徳

    ○江渡委員 自由民主党の江渡聡徳でございます。  今回の健康保険法等の一部を改正する法律案に関しまして、幾つかの観点から御質問させていただきたいと思っておるわけでございます。  今回の医療保険改革は、私自身、行財政改革の第一歩であると考えておるわけでございますけれども、その位置づけにつきまして大臣はいかがお考えでございましょうか、お尋ねしたいと思っております。
  44. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 総合的な見直しをしなくてはいけないという多くの方々の意見を踏まえまして今回まとめた案は、御指摘のとおり、まず第一歩である。こういう案が出てきたからこそ、これでは不十分である、もっと改革すべきだという声がたくさん上がってきたと思います。  そして、抜本的な改革がなければこのような案は認められないという声がありますけれども、その一番の問題点は、患者にしわ寄せするな、患者負担がきつ過ぎるという批判が多い。しかし、私は、今回、高齢者に対して月千二十円を、一回五百円、四回まで、二千円以上は五回行っても六回行っても変わらないという案は、どのような改革案が出てもこの程度の負担は避けられない、抜本改革をしたからこのような負担はもっと軽減しますという案はあり得ないと思っております。  そういう意味において、第一段階であり、ぜひとも必要な案だと思っております。
  45. 江渡聡徳

    ○江渡委員 ありがとうございます。  医療保険を初めとする厚生行政各分野におきまして、大臣は、取り組むべき行財政改革の基本的な方向性というものについてはいかがお考えでしょうか、お聞かせいただきたいと思っております。
  46. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 行財政改革において基本的な方向というのは、まず、国民負担をそれほど重くしない。当面の大きな目標は、国民負担五〇%を超えないようにするということの中で、あらゆる構造改革に取り組まなくてはいけない。  そういう中にあって、社会保障制度におきましても、いろいろな国民の連帯感、支えようということによって、我々は、年金制度においても医療制度においても恩恵を受けております。  こういう負担と給付の問題、これをどのように均衡を図っていくかということが欠かせない視点だと思いますし、そして、行政改革、財政改革の中では国がどこまでやる必要があるのか。民間の活力をどうやって発揮していこうか。民間経済の発展なくして経済成長はありません。経済成長なくして福祉の充実はあり得ない。ということから考えて、負担というものを考えなければならない。給付は多ければ多いほどいいのです。しかしながら、その給付を支える、負担する立場の人も考えなければいけないとなると、給付と負担のバランスを図っていく。  同時に、国なり役所というのは、民間がどうしてもやらない、しかし、これは国民生活にどうしても必要なんだというところにとどめるべきだ。国がやらなくても民間がやっているという面からはどんどん手を引いていくべきだということが私は大事だと。  特に今、国民の中には、むだが多いのではないか、役人が多過ぎるのではないかという声があります。私は、役人を減らすのだったらば、役人の仕事を減らさないと役人を減らすことはできないと思います。仕事は、あれもやりなさい、これもやりなさい、どんどん仕事をふやすような要求をしておいて役人を減らしたら、残った役人は過重労働で死んでしまいますよということから、私は、まず役人を減らすのだったら、役人がやらないことをしている面があるのではないか、役人の仕事は減らしていく、そして、その分野、民間がやるのだったら民間にやってもらう。  今までは、官は民の補完だ、役所がやるのは公共的な分野に限られていたといいますが、現在は、民間人も民間企業も公共的な分野にどんどん入ってきています。民間のやることは公共的でないなんという時代ではないです。むしろ、民間人が今まで役所がやってきたような仕事もやっているということから考えて、私は、民間企業が公共的な分野に入りたいというのだったらどんどん入ってもらうということによって、役所の仕事を減らすことによって、効率的な、そして民間活力が発揮できるような体制をとっていくことによって福祉の充実を図るべきではないかと思います。
  47. 江渡聡徳

    ○江渡委員 大臣、御答弁ありがとうございます。特に、二十一世紀におきましての社会保障制度を堅持するという上でも、大臣の御努力を期待したいと思っております。  今回の改正におきまして、多くの先生方から薬価の問題がかなり大きく取り上げられているわけでございますけれども、現状では、新薬シフトによって薬剤費負担が高くなっているという面があります。これを是正するために、厚生省は、医薬品の価格を市場実勢にゆだねるという原則に立って薬価基準制度を見直すというふうに答弁されているわけでございますけれども、仮に市場実勢価格に応じて単純に医療保険から償還する仕組みにしてしまいますと、償還価格というのはある意味では高どまりし、薬剤費負担の増加に歯どめをかけることにはならないのではないかというふうな考え方もできるわけでございますが、その点についてお答えいただきたいと思います。
  48. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 現状の薬価基準制度、これはいわゆる公定価格を決めている制度だと思います。この公定価格を決めているためにいろいろな弊害が起きているということではないか。この薬価基準制度あり方というものも、薬の供給の実態なり医療機関の実態なり、そういったものと切り離しては考えられないわけでありまして、そういった意味では、何か学問的にこれが絶対的に正しいというような制度というのは私はあり得ないというふうに思っております。  そこで、我が国の今の医薬品の供給の実態ということを踏まえた場合に、公定価格を決めるというような時代ではもうないのではないか、むしろ、市場取引の実勢というものを信頼し、そして、それに乗っかった保険でのカバーすべき範囲というものを考えていく、そういうふうな仕組みの方が、我が国のこれからの実態の中ではより効率的で、しかも、むだのない薬の使用という方向に行くのではないか、こういうふうに思っておるわけであります。  そういった中で、償還を仮にした場合に価格が逆に高どまりするのではないかという御指摘でありますが、これは現実論として、制度を考える際に、そういった懸念のないように制度というものを考えていく。ですから、そういった意味で、我が国の実態を背景として、今御指摘のようなことがないように制度設計というものを考えていく、そういう知恵を出していく、私はそういうことではないかというふうに思っております。
  49. 江渡聡徳

    ○江渡委員 今お答えがありましたように、薬剤費負担が増加にならないような形で努力していただきたいと思っておるわけでございます。  先ほどの佐藤先生の御質問にも関連すると思っておりますけれども、既に承認されている医薬品であって、諸外国では認められているわけですけれども、日本では認められていない効能を有する、そういう薬があるわけでございます。  例えば、日本承認されております精神分裂病の治療薬ゾテピンや抗てんかん薬クロナゼパムは、うつ病の薬としては認められていないわけですけれども、うつ病にもよく効くというふうに言われているわけです。ですから、こうした効能を有する医薬品としても使用できるように、厚生省側としてメーカーに対し、臨床試験実施したりとか、あるいは承認申請を行わせる等の対策というのは講じられないものでしょうか。
  50. 丸山晴男

    丸山政府委員 先生お尋ねの件でございますけれども、特に、対象となる患者数の少ない適応範囲を拡大するという問題がよく問題になりまして、そういう場合には、必ずしも製薬企業のイニシアチブがとりにくいということで、厚生省としても、適応範囲の拡大を行って、臨床現場で使用できるようにする必要があると考えております。  特に優先審査の適用あるいは審査に際しての国内外の既存データの有効活用というふうなこともやっているところでございますけれども、当然ながら、有効範囲の拡大につきましては、未知の分野でございますので、十分な安全性の審査が必要であるということと、それから、一義的には、適応症の追加については申請をする製薬企業の判断がまずあるということもございまして、今日まで来ておるところでございます。  なお、今お話しの二つの医薬品につきましては、うつ病というよりも、恐らく躁状態を鎮静化するような効能だろうかと思っておりますが、欧米の適応範囲等も確認しながら検討してまいりたいと考えております。     〔住委員長代理退席、委員長着席〕
  51. 江渡聡徳

    ○江渡委員 先ほども佐藤先生からもお話がありましたけれども、できるだけ日本でもいろいろな形でこういう効能の部分に対してもお考えいただきまして、患者さん等に広く適用できるような形で考えていただければありがたいと思っておるわけでございます。  続きまして、診療報酬のことについてお聞かせいただきたいと思うわけです。  先ほど奥山先生からもちょっと質問があったと思うわけですけれども、来年度以降の診療報酬改定について、今後、中医協でも審議されることになると思っておるわけでございますけれども、大事なことは、医師あるいは歯科医師の技術料というものが適正に評価されることであると私は思っております。この辺につきまして、大臣はいかがお考えでしょうか。
  52. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 技術料を適正に評価する、これは大変大事なことだと思いまして、今後の医療改革の中でもそれは大きな課題であり、その面に配慮して改革をしていかなきゃならないと思っております。
  53. 江渡聡徳

    ○江渡委員 同じ診療報酬のことに関してですけれども、現在、医師と歯科医師との間の診療報酬の格差というのは、私は結構あるなというふうに思っております。少なくとも歯科医師の技術料につきまして、私は医師並みに引き上げるべきではないかなと思っておるわけですけれども、その辺、厚生省としてはいかがお考えでしょうか。
  54. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 現在の診療報酬上の医師と歯科医師の格差の問題でございますけれども、医科と歯科、それぞれの診療領域の違いが当然あるわけであります。そういった中で最もふさわしい形の診療報酬というものを考える。これはやはり、それぞれ、医科、歯科、バランスのとれたものでなきゃならないというふうに思っております。  そういった面で考えますと、現行制度も、医科と歯科とは点数表そのものが別建てになっております。現在、初診料それから再診料は医科と歯科と違っておりまして、例えば平成九年、現在で見ますと、初診料は医科が二百五十点、歯科が百七十五点、再診料は医科が七十点、歯科が三十六点、こういうふうになっておるわけでございますけれども、やはりこれは、それぞれの診療内容の違いというものを考慮しなきゃいけないということで、それぞれこういった点数が設定されているということであります。  しかし、手術とか検査とか、そういった医科、歯科それぞれ同一の行為を行っているもの、これについては現在も同じ評価を行っておりまして、そういった面では差がないわけであります。  この診療報酬の点数というのは、技術の評価ということが基本でありますが、と同時に、やはりこれは医療費の配分の問題でもあります。そういった意味で、それぞれの診療行為の内容に応じて適正な形で現在決められておる、このように理解をしております。
  55. 江渡聡徳

    ○江渡委員 国民の保健衛生あるいは健康管理等の観点から考えた場合、私自身は、歯科医師の役割というのはかなり重要な部分を担っているのではないかなと思っておるわけです。ですからこそ、したがって、予防医療観点ということから考えても、歯科医師の診療報酬上の評価というものを向上させる必要があると私は考えております。もう一度、その辺につきましてもお答えいただきたいと思います。
  56. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 歯科におけるそういった意味での国民の保健衛生なり予防医療なり健康管理といった面は、比較的、医科と比べますと余り声高に言われない面があります。しかし、私どもは、これは非常に大事であるというふうな認識を持っておる、これは当然のことだと思っております。  そういった意味では、例えば、先般の、四月の診療報酬改定におきましても、小児の齲蝕発生の抑制というようなことから、これまでの小児の齲蝕治療後における継続管理という面について新たに特定療養費というふうな仕組みを設けるとか、歯科口腔衛生指導料の点数を引き上げるとか、そういった予防医療なり健康管理といった面に配慮した対応というものを講じてきているつもりでございます。  これからも、診療報酬上の評価におきましても、そういった面での国民のニーズなり期待というものを十分踏まえながらきちんとした対応なり評価をしていく必要がある、こういうふうな認識を持っております。
  57. 江渡聡徳

    ○江渡委員 ありがとうございます。  歯科の部分のことに対してもう少し聞きたいと思っているのですけれども、時間の関係もありますので、診療報酬の改定のところにおきましては十分御配慮のほどをよろしくお願いしたいと思います。  平成六年の健保法改正時におきまして、付添看護というものが廃止されたわけでございますけれども、医療現場ではやはり必要であるという声が結構高うございます。実際上におきましても、家族や身内ということで付添婦を今なお活用しているケースが見受けられるわけですけれども、このような実態を踏まえまして、付添婦の弾力的な活用というのを図るべきではないのかなと私は考えておりますが、いかがお考えでしょうか。
  58. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 付添婦の廃止というのは、平成六年の健康保険法の改正時に廃止を行うことにしたわけでありますけれども、そういった意味では、現在は、まだ切りかえ時期、過渡的な状況にあるというふうに思っております。  ただ、これは、我が国の入院医療というものを考えた場合の質的な面というものが考慮され、また、社会実態に照らして、しかも、これからの高齢社会というものを考えてみた場合に、従来のような格好の院内の付添婦というような形がいいのかどうかという問題が大きく提起されたということであろうと思います。これは一つには、個人が付添婦の方をお願いするということに伴う経済的な負担、これは大変なものがございます。ですから、そういった意味での国民の声というものは非常に強うございます。  もちろん医療機関サイドから見れば、確かに、個人の患者さん方がそれぞれ御自分の身の回りのお世話をしていただけるような付添婦の方を雇っていただければ、その分だけ人手という意味では助かるという面がありますから、そういった点での御不満というのはあるいはあるのかもしれません。  しかし、私は、広い意味での医療の向上、それから国民の期待ということを考えますと、本来、個人個人が医療機関の中で付添婦さんをお願いするというようなあり方ではなくて、それは当然、看護なり介護の供給の中身として医療機関サイドできちっと整備されていくということが望ましいというふうにも思いますし、それが我が国医療のこれからの近代化、質の充実ということにつながるというふうに思っております。  そういった中で、看護婦さんたちが大変重い負担を強いられている、仕事の面で、労働の面で非常にきつくなってしまうということのないように、そういった意味では看護体制なりそういったものに対するあり方評価の問題というふうに考えていくべきであって、それぞれの個人の患者さんが相対で付添婦さんをお願いするというふうな仕組みというのは、これは改めていくことが適当であり、平成六年のこの改正というのは、私は、これからの行くべき道であるというふうに思っております。
  59. 江渡聡徳

    ○江渡委員 付添婦というものを廃止したとしても、現在の看護婦数では必要な看護を確保することがかなり困難ではないのかなと私は思っています。また、今後、介護保険法が施行された場合に、さらに看護婦等が今まで以上に必要になると思っております。このような看護婦等の需給についてはどのようにお考えでしょうか。
  60. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 看護婦の需給につきましては、平成三年十二月に、看護職員の需給見通しというものをつくりまして、平成十二年に百十五万九千人ということで需給が均衡するというふうにされております。  看護職員の確保対策そのものにつきましては、平成四年に制定されました看護婦等の人材確保の促進に関する法律並びにその法律に基づきます基本指針というものが出されておりますが、それに基づきまして、離職の防止、具体的には院内保育所の整備ですとか、それから、養成力の強化、養成施設をふやしていくというような、そういったような総合的な施策を行ってきております。  それで、先ほど申しましたこの需給見通しについてでございますが、平成七年の末現在で、この需給見通しを上回る供給がなされておりまして、現在のところ、この需給見通しを上回って順調に供給がなされるというような状況でございまして、恐らく、地域的ないろいろなバランスはあるにしても、全体としては必要な看護婦数というものは確保されていくのじゃないかというふうに考えております。
  61. 江渡聡徳

    ○江渡委員 そう言いながら、特に地方におきましては、なかなかスムーズにいっていないというような実態もあるわけでございまして、やはりそういうようなところも考慮に入れていただきたいと思っております。  特に、高齢者医療を充実させる観点ということから考えていきまして、看護婦等の資質の向上というのはかなり必要なことだと思っております。この資質の向上ということにどのように取り組んでいかれるのかということを大臣にちょっとお伺いしたいと思います。
  62. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 高齢者医療を充実させる、あるいは、先ほどもちょっとお触れになりました介護保険が始まるというようなことに関連いたしまして、ことしの四月から、看護婦養成施設のカリキュラム、教育内容改正をいたしまして、特に在宅看護あるいは高齢者看護等に対する新たなカリキュラムを充実させるということをいたしました。  また、訪問看護婦の養成ということにつきましても、講習会をやっておりましたが、この講習時間を充実させる、内容を充実させるというようなことをいたしておりまして、今後とも、そういうことも含めまして、看護職員の資質の向上ということに努めてまいりたいと考えております。
  63. 江渡聡徳

    ○江渡委員 特に、平成十二年から介護保険法案が施行されるという予定になっているわけでございますけれども、看護婦さんの資質の充実のために努力していただきたいと思っております。  続きまして、現在、国立病院におきます看護婦数は適正だと言われておりますけれども、果たして現実はいかがなものでございましょうか。
  64. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 国立病院・療養所につきましては、現状の厳しい定員事情、それから限られた増員要求枠の中で、緊急性、必要性の観点から優先度を勘案いたしまして、国立病院の担うべき医療に必要な人員の確保をやっているところでございます。  看護婦につきましては、医療法における必要数が、国立病院の場合、八千五百九人に対しまして、配置していますのが一万四千四百九十一人、それから国立療養所では、必要人員九千六百八十六人に対して配置人員は一万七千八百二十四人ということで、医療法上でいきますと標準は十分満たしておるわけでありますけれども、二・八体制ということをきちんとやるべきだと従来から言われておりまして、これにつきましては、今のところ、人数はちょっと省略しますが、達成率が約九四%ということでございまして、今後とも努力していかなくちゃいけないなと思っておるところであります。
  65. 江渡聡徳

    ○江渡委員 続きまして、薬剤師さんの関係に対してちょっとお聞きしていきたいと思います。  特に、この四月から、改正薬剤師法の、薬剤師の患者に対する情報提供義務というものが実施されたわけでございますけれども、先般の医療費の改定では、老人医療におきまして健康手帳への薬剤名の記載を点数化するなど、厚生省もかなり力を入れているようでございます。  ところで、多数の外来患者を抱えていまして、また、入院患者に対する情報提供ということも考えていきますと、私自身、病院におきますこの情報提供義務の徹底というものは困難な部分が多いのではないかなと思っておりますけれども、国立病院における患者に対する薬剤師の情報提供というものはどのような形で実施するよう指導されたのでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
  66. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 今先生がおっしゃられましたように、薬剤師さんによる薬剤の情報提供義務というのをきちっとやって患者サービスに努めていくことは大変重要だということでございまして、私ども国立病院関係でいきますと、毎年二月に国立病院・療養所院長会議、その後、担当者会議というのを開いておりまして、毎年毎年、そういうことの必要なことについての周知徹底は行っております。  その中で、今回の薬剤の情報提供というのは、診療報酬上も非常に評価をされておるところでございまして、病院の経営上も私ども大変重要と考えて、十分教育をしているつもりであります。
  67. 江渡聡徳

    ○江渡委員 現在、調剤数八十につきまして薬剤師一人とされているわけでございますけれども、国立病院のうち、薬剤師数がこの基準を満足している病院はどれだけあるのでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
  68. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 薬剤師の従業員数の標準を満たしているかという御質問でございますが、国立病院は九十カ所のうち十四カ所、国立療養所では百三十一カ所のうち十四カ所、ナショナルセンターについては六カ所中三カ所が標準を満たしておるということでございます。
  69. 江渡聡徳

    ○江渡委員 薬剤師法の情報提供義務というのは、当然、入院患者に対しましても含まれるわけでございまして、今のような状況ですと、果たして入院や外来の患者に対して薬剤師法における情報提供義務というのは果たせるのでしょうか、お聞かせください。
  70. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 今、情報提供が十分果たせるかという御質問ですけれども、私たちは、先ほど申しましたように、苦しい定員事情の中で、今は医療法でつくられている基準に合わせてどうかということを見ているわけでありますけれども、もう一つ医薬分業というのがありまして、医薬分業をすることによって、医師が処方せんを書けば、病院の薬局の中を通らずに、実際には町の薬局でお薬がいただけるということですから、そのことによって、薬剤師さんが病棟に回るということができるようになるわけであります。  そういう意味では、私ども病院としては、分業ということで、特に医薬面分業という形の推進を一生懸命図り、また、機械化によります省力化を図ることによって、人手不足であっても患者さんサービスが落ちないようにということに努力をいたしておるところであります。
  71. 江渡聡徳

    ○江渡委員 ありがとうございます。  薬剤法の情報提供義務を徹底するためには、病院薬剤師数を増強するか、あるいは国立病院も院外処方せんの発行を思い切って進めるということが不可欠ではないかなというふうに思っているわけでございますけれども、しかし、なかなかそういうようなところが思うようにいっていないという病院もあるかに聞いております。  特に、ある県の国立病院なんかですと、医局や薬剤部、ともに院外処方せんの発行に踏み切ろうとして検討したわけですけれども、事務部門から強い反対の声が出て、なかなか思うようにいっていないというところもあるかに聞いております。こういうようなことを考えていった場合に、厚生省としても、今お答えがあったような形で、できるだけ医薬分業を進めるような形でもっともっと努力していただきたいと思っております。  時間が来ましたので、あと二、三点、質問したかったわけですけれども、次の機会にさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。終わらせていただきます。
  72. 町村信孝

    町村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二分休憩      ――――◇―――――     午後一時五分開議
  73. 町村信孝

    町村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。大口善徳君。
  74. 大口善徳

    ○大口委員 今回の健保法の改正につきましては、医保審の答申書も、「時的な財政対策との色彩が濃い。制度の総合的な改革に向けての取り組みが十分でなく誠に遺憾である。」と異例のコメントを出しているわけであります。今回、モデルケース一つとってみましても、サラリーマンの外来は二倍以上、七十歳以上の高齢者については二.四五倍以上ということで、これは非常に大きな負担を国民に強いるものであります。  でありますから、私は、これは順序が逆ではないか、こう思うのですね。厚生省は、まず赤字を埋めてください、その後で制度改正をやりますと。しかし、それではただ食いされる可能性があるわけです。まずは改正をして、そして、これだけ費用がかかりますという形で御負担をお願いする、これが筋ではないか、そう思うわけでございます。  そういう点で、大臣は、この法案が出たから改革論議が活発になったのだと言いますが、その前に財政が厳しい、それで法案を出さざるを得なくなった、そういう非常に受動的な態度ではなかったのかなと私は思うのです。そうではなくて、むしろ積極的に改革まで踏み込んでいくということであるべきだと思います。これにつきましては答弁は求めませんが、私の意見を表明させていただきたいと思います。  今回の改革につきまして、これは財政構造改革五原則、今政府の方で企画委員会を連日やっております。高齢化のピーク時において財政赤字を含む国民負担率が五〇%を超えない、そういう財政運営を行う、こういう原則を立てたわけであります。  昨年十一月十九日の社会保障関係審議会会長会議の「社会保障構造改革の方向」、この中でも、  国民所得の伸び率が低い場合に仮に社会保障の見直しのみで国民負担率を将来とも五〇%以下にとどめるとするならば、医療及び年金を中心に、現行制度のままとした場合に比べ、今後中長期的に二割以上の給付の効率化、適正化が必要となることもあり得る。 こういうことで、二割以上の給付の効率化、適正化ということに言及しております。  このことにつきまして、五〇%に抑えていく場合の医療、年金についての給付率につきまして、大臣はいかが考えておられるか、お聞きしたいと思います。
  75. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 国民負担率を五〇%を超えないようにしていこうという総論の中で推し進めていくと、年金にしても、医療にしても、そのほかの制度についても、かなり切り込まないと無理だと思います。それが二割切り込むかどうかというのは今後やってみなきゃなりませんが、現状を維持したままに置いていくと、これは確実に五〇%を超える。その辺をどうやって調整していくかがこれから大変厄介な問題になると思っています。
  76. 大口善徳

    ○大口委員 そうしますと、目安というか数値目標といいますか、それはどうお考えになっていますか。
  77. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 我々としては、五〇%を超えないという方向でやってみたいと思います。しかし、そのときに国民がどう判断するか、それは、出てからの反応を見ないとわかりません。  五〇%を超えないことについて、今、みんな賛成であります。社会保険料もこれよりふえるのは嫌だ、増税も嫌だ、赤字国債も嫌だという形では、みんな賛成しているわけです。しかし、そうなるとこうなりますよという案を出してみて、これはとんでもない、もっと負担を多くしてくれ、あるいは個人負担は嫌だから増税もオーケーという形になるのか、それはやってみないとわかりません。
  78. 大口善徳

    ○大口委員 国民負担率というのはいろいろな議論がございます。一人一人が個人的に負担する、家族が負担するというのがいいのか、あるいは公でやった方がいいのかとかいうことも含めて、この議論はしていかなきゃいけないと思います。  そこで、今回、前の委員からも今お話がありました医療保険制度改革につきまして、スケジュール等についていろいろ議論がございました。大臣も、四月十四日の記者会見におきまして、医療費の出来高払いの見直し、薬価基準の市場原理導入などの抜本的な改革をことしじゅうに出すと、新聞記事にも出ております。  そこで、特に三本柱といいますか、もちろん医療提供体制ということもあるわけですけれども、診療報酬体系の見直し、薬価制度の見直し、そしてまた老人保健制度改革、この三本柱につきまして、一つずつお伺いしたいと思います。  まずは、老人保健制度改革。  これは、拠出制度が今本当に破綻の状況になっておる、非常に深刻な状況であるわけです。そういう中で、介護保険というものが出されました。介護保険におきましては、六十五歳以上、四十歳から六十四歳という年齢区分、それから保険料と公費を五対五、それで自己負担を一割、こういうことになっておるわけですけれども、老人保健というものを医療と福祉と総合的に整合性をとっていかなければいけない、これは大臣のお考えでありますけれども、この年齢区分あるいは保険料、公費、そして自己負担、こういうこととの整合性というのをどうお考えでしょうか。
  79. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 介護保険制度がこれから今国会で法案が成立すれば、十二年度を目指してその整備を進めていかなきゃなりません。その時点において、医療、福祉、介護、それぞれ連携をとりながら、整合性を持った改革をしていかなきゃならないという点を考えますと、医療の面においても今のままでいいとは私は思っていませんから、老人保健制度におきましても、このままの制度で、拠出制度でもつかどうかというと疑問に思っています。  そういうことから、私は、介護と医療と整合性のとれたような改革を考えてみたいな、そういう線で具体案をこの法案が通ってからできるだけ早い機会にまとめてみたいなと思っております。
  80. 大口善徳

    ○大口委員 そこで、自己負担の定率制につきましては答弁をされておりますけれども、年齢区分ですとか保険料とか公費についてのバランスといいますか、これをどう考えておられますか。
  81. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 老人医療制度を今後どのような形で抜本的に改正していくか、これからの審議にまつ部分が多いわけでございますけれども、全体として言えば、今大臣もお答えをしましたように、介護保険制度との整合性をとって考えていくということになりますけれども、その中で、整合性というのは言ってみればまさにそれぞれの間の調和、バランスのとれたということでございますから、医療とか介護の性格によって、例えば対象年齢等についてどう考えていくかというのは、おのずとそこは直ちに同一年齢にするというようなことにはならないと思います。そこらは全体をもう一回よく考えて、医療というもののニーズ、介護というもののニーズ、それから、いわば高齢に伴うニーズというものがどのようになるかということをも考えながらやっていく、そういうことが必要であろうというふうに思います。  しかし、いずれにしましても、そういったことをも含めて、介護保険との整合性ということを十分考えながら、財源につきましても同様の考え方に立って、これから十分検討していきたいというふうに考えております。
  82. 大口善徳

    ○大口委員 診療報酬体系の見直しについては、大臣もいろいろと答弁をされております。定額制と出来高払い制を組み合わせる、また、慢性的なものと急性的なものに分けるとか、いろいろな基準を出しておられます。そのことについては、大臣からこれから積極的に発信をしていただきたいと思います。年金のことは大蔵大臣が小泉大臣に先駆けていろいろ提案しておるようでございますけれども、もっと小泉大臣の方から積極的に主張していただきたい、私はこう思っております。  そして、薬価制度につきましては、今も政府委員の方から話がありましたが、今、公定価格制度でありますけれども、これはもう自由価格制度にするのだ、そして弊害についてはいろいろ考えるということで、公定価格制度をもうやめて自由価格制度にするのだということについてはいかがでしょうか。
  83. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 自由価格というのはその定義によって違ってくると思いますけれども、今の薬価基準が公定制である、これについての批判が本委員会でも非常に多いということから、少なくとも今後の薬価基準の見直しについては市場取引の実勢にゆだねるという原則に立ちたい。  そして、どの点まで保険で償還するかというのは、これまた大事な問題ですから、全部自由にするということとは限らない、ある線で公的関与もすることが必要だと思います。しかしながら、薬の一個一個を決めていくという問題について、余りにも問題が多いものですから、原則としては市場取引の実勢にゆだねるという方向で見直しをやっていきたいと考えております。
  84. 大口善徳

    ○大口委員 今回の健保法の改正の前の平成四年の改正のときは、ちょうど平成三年度が三千七百四十七億円、政管健保は黒字であったわけです。平成三年度は黒字であって、平成五年度は九百三十五億円の赤字になっております。平成四年に健保法の改正をしたわけです。このときに、保険料率を千分の八十四から千分の八十二、そして国庫補助率を一六・四%から一三%、こういうふうに下げたわけです。  そのことは「社会保険旬報」の中に解説も載っておりまして、そしてそこで、当時の保険局企画課長であられました高木局長がインタビューに答えておりまして、なぜこんなスムーズに通ったのかということに対して、「国庫補助率の検討規定を明文化したのは当然かもしれません。」こういうことで、国庫補助率の検討規定、こういうものを載せた。  この江見さんの解説の中にも、中でも注目されるのは、(3)の「中期的財政運営の安定が確保される範囲内での保険料率及び国庫補助率の調整」である。実際には前述のように保険料率も国庫補助率も引下げられるが、国庫補助率の引下げは財源捻出と結びつくものであり、そのことを納得してもらうために、傍点の「範囲内での」という歯止め措置を設け、そのような範囲をこえる事態が生じた場合は、それに対処(たとえば国庫補助率を復元)することを「調整」と表現している。 こういうことで、「中長期的財政運営の安定が確保される範囲内」、だから、それが確保されない場合は、保険料もそうですが、国庫補助率の復元、こういうことの含みが設けてあるから改正ができたのだ。  ですから、セットではないか。そういうことからいきますと、今回、保険料だけ上げて、国庫補助率は戻さないというのはおかしいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  85. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 私も、そういう意味では、ちょうどその改正に企画課長として携わったわけであります。  そのときは経済状況が随分違っておりまして、そういった中で、政管健保について、医療保険は短期保険ということで、単年度収支ということを見ながら常にやってきた。しかし、医療保険についても、むしろもうちょっと中期的な視点から財政の運営を考えるべきではないか。ちょうど、財政状況が非常によくなって、たしか一兆円以上の剰余金が積み立てられておった。これを活用して、景気の悪いときはその剰余金で穴埋めして、そして景気がよくなればまたその剰余金を積んでおくというようなことで、五年程度の中期的なタームの間は保険料も上げないような、むしろ景気が悪いときこそ保険料を上げないような仕組みというものが正しいのではないかということで導入させていただいたわけであります。  そのときに、全体の制度間のバランス、これは政管健保、組合健保、共済組合も含めまして各制度間のバランス、負担のバランス等々を勘案し、そして国庫補助率については、一般の被保険者については当時一六・四%でございましたけれども、一三%に下げてバランスを図った。その国庫補助金が、そこで千億ちょっとでしたか、要するに当然節減できるわけでありますが、それについては、当時、診療報酬の改定の問題がございまして、とりわけマンパワーの強化、看護婦さんの、看護体制の強化ということが大変な大きな課題でありました。そういった意味で、診療報酬もそれを手当てするために引き上げなきゃならなかった。その国庫補助金の浮いた分というのはそちらの方に使わせてもらったというのが当時の状況であります。  これは当時の経済状況の中で私は最善の改正を提案したというふうに考えておりますけれども、今回の改正におきましては、そういう意味では状況が非常に悪化しておりまして、まさに制度の崩壊を招きかねないほど財政状況が険悪化しているわけであります。そういった中で、これは政管健保の財政だけではありません。もう一方、一般会計の方も大変な財政構造の悪化、そういったような意味で、医療に対する国の負担というものをどこまで入れられるかという問題が当面の問題としてはあると思います。  今回、そういった意味で、この国庫補助率についてはこのままにさせていただいて、保険料率の引き上げをお願いしておりますけれども、現在の医療費に対する国庫補助のウエートというのは、これはもう大変なものでありまして、平成九年度で見ましても、今回の制度改正前提としたとしても六兆六千億からの巨額な国庫負担を行っているわけであります。この巨額な国庫負担に、さらにまた政管健保の国庫補助率を引き上げをして、そして国庫負担をふやすということは、今の我が国の一般会計の財政が許さないという状況にもあるわけであります。この点については、医療保険審議会の昨年の建議の中でもお触れになっておられまして、国とか地方の財政構造は非常に悪化している、そういった現状の中では公費を、国庫負担をふやしていくことについては限界があるというふうに医療保険審議会も認識を示しておるわけであります。  そういうようなことで、今回、国庫補助率の方は据え置いておるわけでありますが、そもそも医療保険制度の中で、これは保険制度でやっておるわけでありますから、そういった中でこの国庫補助というものをどの程度にすべきか、これは昔から非常に議論があります。これについて、今回の全体的な抜本改革の中においても一つの大きな課題として検討し、答えを出さなきゃいかぬと思っておりますが、現下の状況については今申し上げたようなことでございますので、御理解を賜りたいと思います。
  86. 大口善徳

    ○大口委員 当時の立法、国会の考え方ではセットだと思っていたと思うのですね。だから、すんなりと予算の前に決まったわけであります。ですから、そういう点では、この対応というのは立法に対して非常に不信感を抱かせるものじゃないかな、そういうふうに私は思っております。  次に、薬剤一日一種類十五円、こういうことであるわけですけれども、私、この薬剤一種類十五円ということを現場のお医者さん等に聞きますと、非常に疑問だと。  一つは、十五円払うわけです、せっかく十五円払うわけですから、できればブランド物の高薬価の方がいいとかいうことで、十五円払う以上は高いものを、いいものを出してくれ、こういう傾向になってくるのじゃないか。そういうふうな高薬価シフトになってきやしないか。  それから、お医者さんの方で、あそこは薬が高い、自己負担が高い、ふえちゃうということを気にして、二百五円以下という組み合わせ、これに相当煩わしさが出てくる、あるいは事務の煩雑さがあるということで、非常に評判が悪いのですね。  ですから、こういう現場の混乱ということを立法においては考えていかなきゃいけない。その点についてはいかがでしょうか。
  87. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 今回、薬について新たに御負担をいただくということになりますと、当然、医療機関サイドでその分をお支払いする格好になりますから、医療機関サイドは、従来の一部負担に加えて、今回、薬についてもお支払いいただく、そういった意味では従来に比べれば手間暇がかかる、これは私は当然そうだと思います。  ただ、今回の薬の一部負担をお願いしている趣旨は、我が国国民医療費に占める薬のシェアというのがなかなか下がらない、そういった中で、一つにはやはり薬剤の多剤使用という問題があります。もちろん、もう一つには高薬価シフトの問題もございます。そういった意味で、今回の一部負担は薬剤の多剤使用というものについての歯どめになるのではないかということでお願いしているわけであります。  そういった意味で、本来、薬については、効き目が同じであれば、できるだけ患者さんの負担の少ない薬がお医者さんの方から処方されるということが望ましいというふうに私は思っておるわけですが、今回、一部負担するから高い薬をいただきたいというふうなことが本当に起こるのかどうか、ちょっと私もにわかにはそうなのかなというふうには思いませんけれども、しかし、手間暇については、これはいろいろな工夫をしてできるだけ医療機関の事務量の負担がふえないようにしていかなきゃいけない、このように考えております。
  88. 大口善徳

    ○大口委員 これは、よく薬の中身を見ておられますよ。特に御老人の方は、どういうメーカーの、有名なメーカーの薬かどうかというのをよく見ています。番号が振っていない、そういう薬だってあるわけですね。普通はブランドのマークが入って、番号もついているのがあるのですけれども、安い薬だとそういうものがない薬もあるようであります。よく見ているのですよ。そうすると、どうしても高薬価の方に進みますよ。それがやはり患者の心理だと思うのです。そういう心理をわかっていないということは、非常に想像力が不足している、現場のことをわかっていない、私はこう思うわけであります。  それから、薬剤使用の適正化ということで、長期収載医薬品の一般名収載、価格を一本化する。このことは、厳しいこの財政の中で、本当はこれをばんとすぐに打ち出せばもっと財政負担は軽くできるのじゃないか、こう思っているわけです。しかし、中医協では検討中、こういうことで、非常に財政への危機感があるということなんだけれども、こういうことをきちっとやらない。銘柄別の薬価制度というものをいまだに堅持している。これもおかしいのじゃないかな、こう思うわけです。ここは指摘だけにとどめておきます。  そこで、薬価基準の問題、公定価格の問題、そしてまた新薬承認審査基準といいますか手続の問題。  これが日本製薬メーカーに対して非常に過保護であり、護送船団方式であったために、製薬メーカーが健全に育っていない。厳しい競争にさらされていなきゃどうなるかということになりますと、これは国際化の中で衰退していくのが目に見えておるのです。この医薬品という我々の今、健康にかかわることについて、それを日本製薬メーカーがしっかりと、これはレベルも最高のレベルに、そしてまた経営体質もきちっとしたものにしていかないと、我々も安心していられないわけであります。  そういう点で、米問題等、いろいろ、価格の公定によって、国が決めることによって保護されていった、それが今崩壊しつつある、こういう状況の中で、日本製薬メーカーというのはどういうレベルなのかということなんですね。  これは、日経新聞にはこういうふうに出ております。医療問題新政策研究会では、世界で使われる医薬品で治療実績の高いAランクの品目数、アメリカが二十八、ドイツが十一、日本はわずか二。それから、厚生省によると、売上高上位二十五品目のうち日本は三品目しかない。  それから、メーカーの新薬承認がされるわけですが、その九割方は、輸入品と、それから効果が先発品と大きく変わらないような改良型の新薬、こういうことで、開発する意欲といいますか、開発力を強めていこうという企業は育っていない、こういう状況でありますが、これに対する認識。  それから、ことし七月に日米欧でもって国際会議がベルギーで開かれる。そこで、新薬承認審査基準の統一ということで会議を開かれ、これで治験の手法というものが欧米とで統一されることになりますと、海外承認された薬というのはすぐ日本に導入できるようになる。これを業界は黒船の襲来だ、こう言われておるわけでございますけれども、こういう状態になったときに国際競争に参加できるのは日本国内では四社か五社であろう、こういうようなことを業界のトップクラスも言っておるわけでございます。  そういう点で、今の日本製薬メーカー状況、これから、それこそ黒船襲来じゃないですけれども、国際競争が非常に高まっていく、その中でどれだけ新薬開発力をつけていくのか。そうなってきますと、製薬業界の再編、そういうことまで視野に入れてきちっとやっていかないと大変なことになる、こう思うわけです。  ですから、今、薬価の問題、そしてまた承認基準の問題ということが垣根が外れできますと、本当にそれが現実のものになってくる、こう思うわけですが、この点についてお伺いしたいと思います。
  89. 丸山晴男

    丸山政府委員 何点かのお話でございますので、区切りまして考えを御説明させていただきたいと存じますが、まず、日本製薬企業開発力についてでございます。  先生、世界上位二十五品目中三品目しかないというふうにお話してございますが、私ども、逆に、やっとその三品目は世界で評価され、売れるような薬が出てきた、こういうふうに考えております。これは、四十年代から本格的な開発が始まったわけでございまして、それまでの日本の製薬業界の開発力をこれまで高めてきた端緒であるというふうに考えております。  それで、四社か五社しか国際的にも生き残れないのではないかというお話でございますが、今、総じて考えまして、国際競争力をつけるべく、いわば日米欧三極での研究開発体制をとっていくといったような戦略で新薬開発に臨んでいるメーカーは、恐らく一けただろうと思っております。  それから、それ以外のメーカーにつきましては、特定の医療分野における特殊な医薬品に集中した新薬開発を行うことによりまして国民医療にとって必要な医薬品の供給をしていこう、こういう戦略を持っている会社、これが比較的多うございます。  それから、それ以外の会社は、ゼネリック、後発のメーカーでございます。残念ながら、我が国の後発業界はやや売り逃げをするとかいったような批判がございまして、先発についていって、売れるところだけ売って、終わったら逃げてしまうというような批判がございまして、国際的に見て諸外国のゼネリック業界が持っているような十分な評価を必ずしも持っておらないのが実情でございますが、最近は逆に、長く使う、値段はそう高くないけれども安定した医薬品に対するニードも出てまいっておりますので、ゼネリック業界を欧米並みに育てていくということも大事な要素と考えております。  それから、第二点目の、国際的な承認基準の統一といったような国際会議というお話でございます。  これは、日米欧三極で、貿易摩擦といったような反省に立ちまして、規制当局と開発サイドが合同で会しまして、できるだけ承認審査資料の調和を図っていこう、こういうことで、一九八九年から日米EU医薬品規制ハーモナイゼーション国際会議、ICHということで会議が始められまして、品質に関する分野安全性に関する動物実験分野臨床試験に関する分野などについての四十ほどの課題が取り上げられ、かなりの分野についての合意が見られておるところでございます。  本年七月、ベルギーにおきまして第四回目の全体会議、国際会議が開催の予定でございますが、そこにおきます関心テーマの一つは、今お話し海外臨床データの受け入れの問題でございます。これは、当然ながら人種差の違い等もございますが、他面、同じような試験をダブってやることもいかがかというふうな面もございまして、海外で行われる臨床データの受け入れのあり方について検討し、できれば合意をしていこうといったような協議がされる予定でございます。  このようなことでございますけれども、欧米企業におきましては、我が国の大手企業企業規模をはるかに上回る大きな企業が、しかも次々と合併をして世界第一位とか第三位の企業が誕生じ、その規模の利益を得まして巨大な研究投資を行い、新薬開発にチャレンジしているということも事実でございますが、その恩恵を逆にまた我が国としても受けていくという要素もございますし、また、そのような外資系企業も、日本の国内で日本企業と対等に競争条件を持っていくといったようなことも進んでおるわけでございます。  そういったことに対しましてはそれなりの評価をしながら、また、この医薬品産業は、いわば知識集約型の、我が国としても大変重要な産業でございますので、雇用の確保あるいは地域における優良な地場産業という位置づけもございますので、安定的また活発な企業活動が行われるように、私どもとしても支援をしてまいりたいと考えております。
  90. 大口善徳

    ○大口委員 国が余り関与し過ぎると、本当に企業というものは競争力を失う。特にこういう医薬関係というのは競争が激しいわけでありますから、そういう点で、今回の薬価の基準を見直していくという中で、こういう製薬業界の競争力との関係もきちっと考えますと、もう待ったなしである、こういうふうに思うわけです。  このあたり、大臣、お願いします。
  91. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 薬というのはみんな多かれ少なかれ利用して恩恵を受けていると思うのですが、私も先年、製薬業界を視察して、よくここまでやっているなと。恐らく実験段階を見たら、目を背けたくなるような場面もあるわけです。そういう嫌な仕事にかかずらわっているから、我々は何げなく薬の恩恵にあずかっている。薬を開発するまでの実験段階、製薬業界の努力も大変だったと思いますよ。こういう努力というものがそれぞれの会社でなされて、激しい競争が行われている。  そして、日本の製薬業界の利益率が高いという御批判が、本委員会、予算委員会でもたくさんありました。確かにそういう面もあると思いますが、欧米の製薬業界は日本よりもっと上げている。そして、研究開発投資というのは、これは莫大なものである。研究開発投資があるからこそいろいろないい薬が出てくるのも事実だと思います。  そういう両面から考えて、そういう中にあっても薬価基準というのは問題があるということで見直しますが、同時に、その競争の中で利益を上げてもらって、研究開発投資をしてもらって、よりよい薬を開発してもらって、国民の健康に寄与してもらいたい。そういう視点もこれからの改革に大変重要だと思っております。
  92. 大口善徳

    ○大口委員 次に、医療機関評価についてお伺いしたいと思います。  今回、財団法人日本医療機能評価機構が発足しました。これは厚生省の所管の財団であります。これにつきまして、設置の目的それから事業内容。それから、いろいろな医療情報といいますか、医療機関の情報というのは提供者の側に偏っていて、患者の方はその情報を非常に受け取りにくくなっている。そういう点では、こういう機能の評価機構というのができて、それから情報公開されて、その情報に従ってその機能に合った選択ができる。こういう点では、情報公開、この評価の公開ということも非常に大事であり、そういうことについても厚生省は視野に置いているのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  93. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 病院機能評価についての設立の目的ほか二点についてお尋ねがございました。  まず、病院機能評価につきましては、もともとは昭和六十二年ごろに自己評価をするのだということで始まったわけでございますが、その後、関係者の中で、やはり第三者による中立的といいますか、あるいは学術的な観点評価をするということから、第三者機関による評価ということで、平成七年に財団法人として日本医療機能評価機構が設立をされました。  具体的な事業といたしましては、医療機関、これはもちろん医療機関側の希望によって評価を行うわけでございますが、希望する医療機関に調査員が出向きまして、二泊三日あるいは三泊四日で、具体的な評価項目に沿った書面審査、それから面接あるいは実地調査等を行うということでございます。  それで、この事業そのものは、平成七年度、八年度にいわゆる試行調査といいますかトライアルを行いまして、全国の百五十病院ぐらいを対象にして試行調査を行いまして、その結果をもとにして最終的な評価項目というものを決定いたしました。平成九年度から全国の病院を対象にして評価をするということでございますが、したがって、九年度から本格的な事業を展開していくということでございます。  この評価結果についての情報公開ということは、現在、この機構においてどういうふうにやるかということで検討されておりますけれども、私ども厚生省としては、今先生お話しになったような観点、それから地域の方にできるだけ医療情報を提供していくという観点から、情報をできるだけ公開していくということで検討することが必要だというふうに認識をしております。
  94. 大口善徳

    ○大口委員 その中で知りたいことというのは、治療実績といいますか、これが知りたいことの一つになっていると私は思うのです。ところが、今、治療実績というものについては評価の対象になっていないということであります。  これは、例えば、死亡率が高くなる、そうすると評価は低くなるので逆選択が起こるということを言っておるわけですけれども、そういう逆選択をした場合はまたマイナス点にするとかいう形で工夫すればいい。患者の皆さんが知りたいことというのは治療実績、これは外せないと思うのですけれども、その点はどうでしょうか。
  95. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 現在やろうとしております評価の項目は、先ほども言いましたように、平成七年度、八年度の運用調査に基づいて財団が決定をしております。  治療成績ということにつきましては、どういう形で評価をするのか、医療行為の中身そのものを客観的に評価を行うという手法がまだ確立されていないのじゃないかというようなことで、医療行為そのものについての評価は、現在の中では入っておりません。  ただ、それにつきましては、今後の課題としてはそういうことも視野に入れて検討していく必要があるというふうに考えております。
  96. 大口善徳

    ○大口委員 次に、終末期の医療について。  今、新聞各紙でいろいろ連載をしております。臓器移植・脳死等の問題もありまして、生命倫理そしてまた患者の自己決定権、こういうようなこと、また、いろいろ事件があったりしていろいろ議論もされております。  そういう中で、日本尊厳死協会というようなものは、尊厳死、これを登録していこうという運動があったり、あるいは日本緩和医療学会というのが発足をしたりということで、今まで日本医療界というのは延命治療至上主義であったわけでありますけれども、治すことに専念する余り、痛みを和らげることに重点を置く緩和ケアが後回しになっていた、こういう面がございます。私の地元、静岡新聞も、「いのち満ちて」というようなことでずっとホスピスの連載をして、私もそれを読んでおるわけでありますけれども、こういう緩和医療について大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  97. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 末期医療について、これはどういう方がいいかというのは、個人それぞれの人生観なり死生観なり違いますから一概には言えないと思います。しかし、人間として、できれば痛みのない安らかな死を迎えたいというのは共通していると思うのであります。  そういう中にあって、どこまで治療すればいいか。今の脳死の問題もいろいろ議論されております。そういう中で、たとえ患者さん本人が植物状態になったらばどうか殺してくださいと言ったって、それは、お医者さんとしてはそういうことはできないと思いますし、どこまで家族が、それではもういいですからと言えるかというのは、これまた難しい問題です。  私は、この末期医療というのは本当に難しい問題だと思います。自分としては、もし死期がわかれば余計な治療はしてもらいたくないというのが私個人の考え方であります。できるだけ痛みのない、余計な治療をしてもらわないで早く死にたいなというのは私の個人的考えであって、これをみんなに押しつけるわけにいきません。御本人と家族との問題で、その辺は今後もっと議論を重ねていく必要があるのではないかと思います。
  98. 大口善徳

    ○大口委員 これはいろいろな人生観、死生観ということで、個人によって違うと思うのですね。ただ、自分がどういう死に方をするのか、どういう場所で死にたいのかということに対する選択権といいますか、これをきちっと国としても考えていく、これはやはり人間の尊厳にとって非常に大事なことであると思います。  そういう点で、現行の医療保険における緩和ケアはどうなっているのか。それから、ホスピスというのは、今、日本で六十施設ぐらいあるようですけれども、みんなカンパをしたりして、つくる運動をしたりというようなところもございます。募金運動をやったりしておるところもございます。そういう点で、医療現場でどうこれを普及させていくのか、国としてどう対応していくのか。そしてまた、在宅で最期を迎えたいということについては、在宅システム。また、大学においては、講座というのは日本にはございませんけれども、医学教育の場においてこの緩和ケアをどう取り上げていくか。このあたりについてお伺いしたいと思います。
  99. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 緩和ケアについて、現行の医療保険制度上どういうふうな取り扱いになっているかという最初お尋ねにお答えしたいと思います。  緩和ケアにつきましては、医療保険の診療報酬におきまして、単なる延命治療ということではなくて、患者さんの苦痛の緩和あるいは精神的なケア、こういった点に重点を置いた適切な末期医療といいますか、これが受けられなければならない、こんなふうな考え方に立ちまして、緩和ケア病棟の施設基準というものを示しまして、この施設基準に沿ったものを緩和ケア病棟という形に認め、そしてこれに対しては緩和ケア病棟入院料というものをセットいたしております。そして、この緩和ケア病棟にふさわしい入院医療に対して診療報酬上の評価をしておるということでございます。  ただ、これはまだまだ途上段階にありまして、平成七年七月の段階で、ちょっと古い数字でございますけれども、全体としては十九の保険医療機関がこの緩和ケア病棟を持っておる、こういう状況でございます。
  100. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 医療現場に対する啓蒙普及ということにつきましては、末期医療についての意識調査というものを平成四年に一回行いまして、そういう結果をもとにして、現場医師あるいは看護婦等に対する講習会等を行っております。なお、今年度、末期医療についての特に医療従事者を対象にした意識等について調査を行いたいと考えております。  また、医学教育の場等に対する対応でございますが、厚生省におきましては、医師の国家試験の出題基準の中に、あるいは卒後臨床研修の中での研修すべき事項の中にこの末期医療に関連した幾つかの項目を盛り込んでおります。なお、この医師の養成課程におきます問題につきましては、機会あるごとに文部省に対しても医学教育の中での取り上げということについてお願いをしているところでございます。
  101. 大口善徳

    ○大口委員 次に、最近問題になっておりますヒト硬膜移植について、クロイツフェルト・ヤコブ症との関係についてお伺いをしたいと思います。  滋賀県の女性が八九年に脳外科手術でヒト乾燥硬膜移植というものを受けた。それによってこのヤコブ症にかかった。今、厚生省あるいは薬品メーカーに対して訴訟が起こされているということでございます。  これについて、一九八七年にFDAで警告文書がドイツのメーカーに対して出されていた。このことについて、厚生省は、その八七年当時、それを知っていたのか知っていないのか。今、調査中だそうでございます。ただ、その報告は受けていなかった、こういうことのようです。しかしながら、こういうことは非常に重大なことですし、また、このヒト乾燥硬膜というものは、この納入業者がアルカリ処理をした、そのことの報告も認証機関に、厚生省にされていないということで、また再び薬害エイズのようなことの繰り返しにならないか、非常に心配をしておるわけでございます。そういう点で、FDAの情報がなぜ入らなかったのか、これも検証しなければいけないと思います。  また、厚生省の対応についてでありますけれども、昨年、研究班というのをつくって調査した。そういうことで八百三十二人のうち四十三人がこの移植を受けてヤコブ症にかかった、こういうことでございます。こういうことについてどう対応したのか。  今回、WHOがこの硬膜の使用中止勧告を出した。それでその後、回収命令とかというものを三月二十八日に出しているわけですけれども、このWHOにおいても、五十例中、日本が二十八例あった。もちろん、これは集中調査を日本がしたために半分以上が日本の例であったということなんでしょうけれども、こういうことについてもっと早いアクションが起こせなかったのか。  それから、今回、薬事法の七十七条の四の二、そして施行規則六十四条の五の二において報告義務というのを設けたわけですけれども、これは行政処分の対象にはなっても罰則がない、こういうことですね。こういうことがまた諸外国で起こったら情報というのはきちっと入る仕組みになるのか、このあたりについても疑問がございます。この各点についてお伺いしたいと思います。
  102. 丸山晴男

    丸山政府委員 クロイツフェルト・ヤコブ病の関係で、ヒト乾燥硬膜を移植された患者さんにクロイツフェルト・ヤコブ病が発症したということに関しましての幾つかのお話でございます。FDAの勧告があったのは知らなかったのか、あるいはその後どういう対応をしたのかということ、また、WHOの勧告への対応ということについて幾つかのお尋ねがございましたので、お答えをさせていただきます。  まず、八九年に滋賀県内の女性患者に、未処理、アルカリ処理という不活化処理がされておらないヒト乾燥硬膜を使用された模様でございますが、この結果、クロイツフェルト・ヤコブ病が発症したということにつきましての状況でございますけれども、現在、我が国報告されております移植例はお話にございますように四十三例ございますが、このうちの四十一例は一九八八年に我が国に病原体不活化処理がなされた製品が導入される前の手術例でございまして、この滋賀県内の女性患者の方につきましても、この未処理品が使われたケースというふうに考えております。  この当時の状況がどうであったかという点でございますけれども、一九八七年に世界で初めての症例、硬膜移植によるヤコブ病発症例が米国で初めて報告された、こういう段階でございます。その第一症例を受けまして、FDAが硬膜の廃棄を警告いたしておりますけれども、この警告内容は、当時流通していたすべての製品を廃棄あるいは回収するようにといったようなものではなくて、病原体に汚染された可能性のある一部のロットについての廃棄を勧告したということであります。  また、硬膜の原産国でありますドイツにおきましても、この不活化処理導入当時、アルカリ処理しておらない硬膜の回収を行っていなかった、こういう状況でございまして、こういったような状況の中で、八九年に、そのアルカリ処理をされておらないヒト乾燥硬膜の使用によりまして今のような被害が出た、こういうことでございます。  それから、FDAの勧告があったということでございますけれども、一九八七年当時、クロイツフェルト・ヤコブ病は病原体が未知の一種の感染症として認知をされておりましたけれども、当時の薬事法施行規則では副作用についての報告義務のみ課しておりまして、感染症に関しての報告義務がなかったわけでございます。これは、先般の昨年六月に成立しました薬事法改正によりまして報告義務が発生をいたしたわけでございますけれども、当時は報告義務がなかったということでございます。  このような硬膜移植によりますヤコブ病の発生ということにつきましての対応でございますが、昨年度に実施されましたクロイツフェルト・ヤコブ病に関する緊急調査、この中で多数の症例が発見されたわけでございますが、この実施過程で把握された症例、発症者のうちにヒト乾燥硬膜の移植例があるということが確認されたために、中央薬事審議会に特別部会を設けまして、昨年の六月と八月に安全性評価についての御論議をいただき、その時点におきましては、ドナー選択基準あるいは製造管理の徹底について販売業者に改めて指示を行い、その後、本年の三月二十四日から二十六日まで、WHOにおきまして十五カ国五十名の専門家の方の会合が開催されまして、このヤコブ病等に関する医薬品医療用具などの安全対策について論議された結果、ヒト硬膜については今後使用しないようにという勧告がなされました。  この勧告自身は、アルカリ処理されたヒト乾燥硬膜自体の安全性が否定されたというものではなくて、世界的に症例が蓄積されたことの疫学的評価に基づいてということでございますが、ヒト乾燥硬膜の移植については代替する治療があることを踏まえてこの使用中止の勧告がなされ、私ども厚生省では、この勧告を受けまして、直ちに、使用しないように緊急に全医療施設に連絡をし、また、輸入販売業者に対しまして、出荷の停止、回収、それから輸入販売業者を通しまして納入機関に対する使用停止の連絡を行うように徹底を図っておるところでございます。  最後に、この感染症の報告について、法制化されたにもかかわらず罰則をかけなかった理由についてお尋ねがございました。  平成八年の薬事法改正におきまして、副作用のみならず、感染症の発生についても広く報告の義務を課したところでございますけれども、いわば副作用の疑いがある場合の報告ということで、対象範囲をかなり広目にとっておるところでございます。  この報告の対象範囲を広目にとるということとの関連、また、この副作用の疑いがあるということを知ったときに報告をするわけですが、その報告をしないという義務違反の時期をどのように特定するか、あるいは副作用情報につきましては、医薬情報担当者が医療機関から情報を受け、それをその製薬メーカー内部の学術情報部で内容を受けとめて私どもへ報告をする、こういう段取りでございますが、その際の報告をしない義務違反の主体をどのように特定するかという問題もありまして、法案作成過程段階で法務省とも協議しながら、罰則をかけるということは無理がある、むしろ罰則のない義務ということで幅広い情報の収集を可能にすることが適当だ、こういったような検討の結果、罰則の対象にはしなかったものでございます。
  103. 大口善徳

    ○大口委員 八七年のFDAのことについては、今、省内において、訴訟もあるので調査をしておるようですから、その調査の結果がわかりましたら発表をお願いしたいと思います。  次に、歯科問題についてお伺いします。  医科と歯科の格差の是正ということで、私も昨年二月の予算委員会の第四分科会において、医科、歯科の格差是正について、保険局長は、総合的に感染防止策については考えなければならない、初診料の動きとあわせて特別の配慮が必要という答弁をしております。  それで、平成八年四月の社会保険診療報酬改定では、院内感染対策に取り組んでいる病院に所定点数に加算が認められていますが、歯科医療機関については一般的な院内感染への配慮はなされなかった。無症候性のキャリアはかなり多く、歯科の場合は、ドクターだけでなく歯科衛生士、歯科助手、技工士などパラデンタルスタッフにも感染の危険性が高いわけです。なおかつ、観血的処置が多くて、ウイルスが唾液に含まれるというようなことを考えますと、医科よりも肝炎への感染率は高いということで、水平感染を防ぐために全患者に配慮しなければいけない。意識が高い、あるところでは、私が聞きましたところ、院内感染対策ということで設備投資で三百万から四百万かかっている、こういうことでありますが、これは自己努力だけでは限界があるわけであります。そういうことで、歯科医療機関における一般的な院内感染対策への支援措置は重要であり、医科と歯科の初診料、再診料の格差是正の動きとあわせて特別の配慮が私は不可欠であると思います。  それから二番目に、総義歯等の不採算についてですが、平成二年四月に、当時の津島厚生大臣に提出されている日本補綴歯科学会の診療並びに技工行為に関するアンケート調査があります。調査は、補綴診療行為の適正な評価を得るため、大学の講座と臨床医、十年以上と十年未満の臨床医のそれぞれの立場において、タイムスタディーの形で集約し、正確な判断基準を示した調査報告であります。  特に、この総義歯に関して指摘するのであれば、この調査報告は、六十三年の時点で、上下二つで九万四千七百五十円であり、十年経過した現行の保険点数で、引き上げがあったものの上下二つで六万五千九百七十円、六九・六二%、約七割の評価しか得ていない現状であります。  当時の日本補綴歯科学会会長は、「この調査での評価を現行の保険診療報酬と対比してもまったく適切さをかくものである。」と見解を示しており、この総義歯の不採算の実態が学問的にも指摘されています。これについては大臣に見解をお伺いしたいと思います。  そしてまた同様に、鋳造冠ブリッジにおいて、このような歯科補綴診療での不採算状態が解消されない中、昨年の改定で、製作後二年の責任を規定し、補綴の維持管理料を選択すると、二年以内に再作成する場合は無料で作成しなければいけない、選択しなければ従来の半額で作成するという厳しい規制がある。これは本末転倒で、歯科補綴診療の不採算解消が大前提でなければいけない。医学的に適切な医療行為患者に対して行い、それが適正に評価されているならばまだ理解できるのですが、依然として不十分なまま一方的に製作物責任とペナルティーを歯科医療に押しつけている結果になっています。  一例を挙げれば、同日の行為で冠を除去して土台のメタルコアも除去した場合、冠の除去の保険点数は認められていない。きちんとしたものを作成するには丁寧にしないとできないのに、頻度が高く時間がかかる治療行為が評価されていない矛盾を感じることが多いわけです。これでは、保険の歯科補綴診療がますます困難となり、歯科保険医の診療労働意欲を低下させ、年金生活者の歯のないお年寄りの患者の方に負担の重い自由診療を増大させる傾向が強くなり、いずれ保険医療に対する患者の不満を増大させかねない。  そういうことで、高齢者の健康の維持のためにも重要な治療である総義歯や鋳造冠などの歯科補綴診療の不採算問題が指摘されて十五年になるわけですけれども、高齢者が安心して入れ歯をつくれるようにすべきであるということについて、お考えいかん。  そして最後に、特定療養費についてですが、これは金属床による総義歯の特定療養費の費用総額は約二十億円で、歯科医療全体に占める割合は〇・〇八%と低い。それで、総義歯全体に占める金属床義歯の頻度は約五%、サービス提供を希望する患者は限定されています。金属床による総義歯の特定療養費は、差額徴収の過ちを繰り返すもので、医療現場は矛盾と混乱が起きやすいわけです。  そういう点で、患者の給付格差をなくすために、行政に提出した、金属床の総義歯を保険で全額給付すべきという意見もあるわけですけれども、むしろこの制度は、患者間の医療格差を生み、経済力による不公平を招くもので、需要の増大も望めない、そういう点で、医療現場の混乱を是正する観点からも早急に撤廃すべきであるというふうに考えるわけです。この点についてのお考えをお聞きしたい。
  104. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 まず、歯科医療機関における院内感染の対応ということであります。  これは、平成八年度の診療報酬の改定の際も、初診料あるいは再診料の引き上げという格好で対応させていただいたわけでありますけれども、この歯科診療における院内感染防止、これは非常に大事なものでありますから、今後、診療報酬の中においても、中医協における議論を踏まえながら、きちっとした対応を図っていかなければいけないというふうに思っております。  それから、総義歯の不採算の問題、これは歯医者さん方にかねてから非常に不満の高いところでございます。  特に、これからは高齢者が非常にふえてくる、そういった中で総義歯の方もふえてくるわけであります。問題は、保険財源というものをどういうふうな形で歯科の場合にも適正に配分していくのか、この問題をきちっとしないとなかなかこの問題は解決できないだろうというふうに思っております。  それからまた、先ほどの金属床の総義歯の問題、これもいろいろ現場において意見が出ておるという先生の御指摘でございますけれども、これらの問題も含めて、これからの高齢社会における適切な歯科医療といいますか、総義歯の問題を含めて、どういう形で保険でカバーしていくべきなのか、この辺のところは今後検討させていただきたいと思います。
  105. 大口善徳

    ○大口委員 以上で終わります。
  106. 町村信孝

    町村委員長 桝屋敬悟君。
  107. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 大変にお疲れのこととは存じますが、引き続き、医療保険制度健康保険法等の一部を改正する法律案について質疑をさせていただきたいと思います。  先ほど同僚の大口議員の方から何点か議論があったことをなぞりながら、さらに議論を深めさせていただきたい、このように思っております。  私は、前回の健康保険法の改正、前回は、先ほども議論が出ておりましたけれども、患者さんの食事の負担をお願いして、その費用については、付添看護の廃止ということで院内の看護・介護体制を充実するという改正、これが非常に心に残っておりまして、あのときも、食を負担いただくということについては大変に悩んだことを思い出しながら、本日、この席に立たせていただいております。  いみじくもあのときに、現場でドクターとお話をしておりまして、食の部分の負担をお願いするということは、まさにタコの足の最後に残った一本の足を食べることだ、もう足はないよ、次の足はどうするのだろう、これは胴体を食べるしかないというような議論をしながら、あの平成六年の改正をやったわけでありますが、既に今回のこの健康保険法の一部を改正する法律案、私はただいま野党でありますから、与党のように早く情報はいただきませんでしたけれども、いろいろな資料を目の当たりにしまして、もう既にそのときが来たのかと。  健保財政、政管健保を中心に大変な厳しい財政状況を目の当たりにしたわけでありまして、先ほどから議論が出ております、タコの足を一本ずつ食べていくようなことではなくて、一日も早く本当に抜本的な、二十一世紀へ向かった改革に着手をしなければならない、こんな思いをいたしながら議論をさせていただこう、こんなふうに思っております。そういう意味では、私は、常に視点を国民の目に置いて、この委員会でも議論をしたいと思うわけであります。  最初に、そもそも論でお尋ねをしたいことがございます。実は、私も与党にいたときに気にはなっておったのですが、すっと通り過ぎたテーマでありまして、今回、国庫補助の繰り延べのお金があるということを、本日の議論は政管健保だけで結構なんですが、累積が五千五百九十六億円、これは平成八年度一次補正で千五百四十三億処理を済ませていますから、残った金額が五千五百九十六億円ということであります。これは一体何なのかというのは、国民の皆さんにはわかりにくい話でありまして、国庫補助の繰り延べということは、そもそも行財政上どういう性格を持つものなのか、借金なのかどうなのか。五千五百九十六億円、現在まで累積をしておりますこの国庫補助の繰り延べの性格をまずわかりやすく御説明を賜りたいと思います。
  108. 真野章

    ○真野政府委員 政管健保の国庫負担は、先生承知のとおり、医療給付費等の一定割合というふうに法律上決められております。それを、過去、昭和六十年度から平成元年度まで、それから平成五年度と六年度、七回にわたりまして、本来、国庫負担として健康勘定が受け入れるべき額から一定額を減額して受け入れをしてきたということでございます。  例えば、一番最近の平成六年度の例で申し上げますと、平成六年度における財政運営のための国債整理基金に充てるべき資金の繰入れの特例等に関する法律という法律によりまして、平成六年度であれば、本来、国庫負担補助として一般会計から健康勘定が受けるべき額から、この平成六年度の場合は千二百億円でございますが、千二百億円を控除して受け入れをしたということでございまして、いわば国庫負担の繰り入れを繰り延べた、先へ延ばしたという格好になっております。  その繰り入れの額に対しましては、同じ法律におきまして、繰り延べた額と、それから、その繰り入れの特例がとられなかったとした場合に当該健康勘定で生じたと見込まれます運用収入に相当する額、いわば利子相当でございますが、これを一般会計から健康勘定にまた将来繰り入れてもらう、それについては、政管健保の適正な運営が確保されるよう各年度における健康勘定の収支の状況等を勘案して、予算の定めるところにより繰り入れるという格好になっているわけでございます。
  109. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 まだよくわからぬのですが、そもそも、政管健保だけで結構なんですが、政管健保は、給付費に対する国庫補助割合が法律で恐らく決まっているのだろうと思います。これは私も確認をいたしました。これは負担ではなくて補助ですね。この補助、先ほど千分の百六十四が百三十になったという、こういう御説明も聞いておったわけでありますが、それが法律で定められていますね。法定の補助だと思います。これを、さっき言いましたように、当該年度で入れるべきお金を先延ばしするための特別法をつくって処理をした、こういうふうに理解をしてよろしいですか。
  110. 真野章

    ○真野政府委員 そのとおりでございます。
  111. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 そうしますと、特別法では繰り延べたそのお金については、さっき御説明がありましたけれども、いつまでに入れるとか、期限等はないわけですね。要するに、国の財政あるいは健保財政の状況等を勘案して予算の範囲の中で行う、こういうふうに理解をしてよろしいのですか。
  112. 真野章

    ○真野政府委員 そのとおりでございます。
  113. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 ここが、私は性格としてよくわからないし、国民もよくわからないだろうと思うのですね。大体、人からお金を借りるときは、一筆とって、いつまでに返しますという必ず念書ぐらい書いてやるわけでありますが、それは今の特例法の話を聞いて私も理解をしたわけでありますが、それはあくまでももろもろの国家財政全体あるいは健保財政の状況を見て判断をするということでありますから、いつこれが整理されるものかわからないわけであります。そこが非常に心配であります。  それでもう一点、あわせてお尋ねするのですが、私も、現場のお医者さんの皆さんからよく聞くのですけれども、政管健保の今の繰り延べ額という表現と、それから棚上げ債務、これは一兆四千億ぐらいあるのじゃないかという話も聞きまして、これはまたでかい話でありまして、この棚上げ一兆四千億というのは何なのか、ちょっと御教示をいただきたいと思います。
  114. 真野章

    ○真野政府委員 今のは政管健保、厚生保険特別会計の健康勘定が、いわば一般会計に貸しているという部分でございますが、今の先生質問の部分は、実は今度は逆でございまして、先生も御承知のとおり、政管健保が過去三K赤字の一つと言われておりました時代に、毎年、財政的に赤字を計上しておりました。その赤字につきましては、当然、特別会計でございますので、健康勘定が資金運用部からの借入金で賄っていくということを繰り返しておりました。それが昭和四十八年まで続いておりまして、昭和四十八年に健康保険法の大改正をしていただきましたときに、それまでたまっておりました、いわゆる厚生保険特別会計の健康勘定の資金運用部に対する借金、この部分を棚上げしていただくということをいたしました。  それから、昭和五十九年にもう一度、健康保険法の大改正をしていただきましたが、その当時、日雇健康保険は別制度でございました。これも大変な累積の赤字を抱えておりまして、昭和五十九年の健康保険法の改正によりまして、現在のように、日雇健保を政管健保に統合するという法律改正をしていただきまして、そのときに、日雇健保が持っておりました累積債務も同様に棚上げをしていただくということをいたしました。この合計額は、八年度の見込み額で約一兆五千億弱ということになっております。  この累積債務につきましては、厚生保険特別会計法によりまして、昭和四十八年以前に健康勘定において生じたる損失の額、それから日雇労働者健康保険事業に係る損失に相当する額、いわゆる、当時、健康勘定が持っておりました借金、それから日雇勘定が持っておりました借金の額、それからその借入金に生じます利息、これを一般会計からの繰り入れで返済をしていくことができるという改正をしていただきました。  この問題につきましては、従来より私ども、当然、一般会計で補てんをしていただくというふうにお願いをいたしておりますし、財政当局の方も、従来から国会でそういうふうに御答弁をしていただいておりまして、その方針には変更はないというふうに聞いておりますし、また、そのままですと、当然のことながら、毎年利息が発生をいたしまして、特会の方の借金、いわゆる累積債務がふえるということになりますが、これにつきましては、平成四年度以降、それぞれ単年度に生じます発生利息相当分を一般会計から繰り入れをしていただいておりまして、この累積債務額は先ほど申し上げました八年度末の一兆五千億弱、これは平成四年度以降ふえていないという状況でございます。
  115. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 よくわかりました。一兆四千億の話は、政管健保の立場に立つと余りしない方がいいかなという気もいたしまして、よく理解をした上でちょっと横へ置いて、それで、先ほどの五千五百九十六億円の話なんですが、これは、この前からこの委員会に丹呉主計官にもおいでいただいて、誠意を持ってどうのこうのという話で、この委員会の審議を聞いていると、何か本当に整理していただくような印象を受けるわけであります。しかし、実は、まことに厳しい言い方をすれば、先ほどの特例法の書きぶりではありませんけれども、政府全体の財政状況等を考えますと、これは簡単に返していただけるようなものじゃないのじゃないか、こういうふうにも思うわけであります。  それで、先ほど大口議員の議論の中でも、国庫補助率を昔の百六十四、そこへ戻したらどうだという議論もありましたけれども、それはとんでもない、今のこの状況の中では無理だという話もありました。であるとするならば、ある意味では、この繰り延べの額なんというのは、私もちょっと数字をいろいろはじいてみましたけれども、例えば平成五年から最近はやっていますけれども、千三百億繰り延べているわけでありまして、変な話、実質補助率はその分減っているわけでありまして、計算すると、それこそ一〇%程度になるわけであります。  私は、こういう状況の中で、大臣も、これは大蔵にしっかり求めますと、大蔵省の主計官も、誠意を持ってと言っていますけれども、このお金なんというのは整理できる話じゃないのじゃないかと。いや、無理ですよと正直に国民に申し上げるべきじゃないかと。こんなものを期待しながら、ずっと今から議論をしますけれども、国民負担が云々という話になったときには、私は、大変に厳しい、なかなか国民に理解はできない状況になるのじゃないかという気がいたします。  そういう意味では、確かに医保審の建議書あたりでも「適切な措置」という表現はございますけれども、大臣、これは、いや、簡単には返らないよということではないかというふうに私は理解をしております。むしろ、返してもらえるのであれば、私は、補助率を変えた方がいい、これを大蔵にお願いした方がいいというふうに思っているわけでありますが、本当のところ、どういうことなのか、もう一回、大臣お話をお伺いしたいと思います。
  116. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 返してもらうのは容易ではないという財政状況はわかっております。今の議論でありましたように、やりくり算段してきたのですね。そしてその都度、特別会計だろうが一般会計だろうが同じ金じゃないか、国民に負担をお願いするよりも税金でやった方が楽だという形で、ある方から借りたり貸したりしてきた。それで今回も、今までは赤字だった場合は一般会計から借りている、今度は黒字だったから一般会計から貸してくれという形でやってきた。というのは、赤字国債を発行してはいかぬ。赤字国債を発行してはいかぬとなったら、同じ金なんだから、余っているところ、貸してくれと。  いい例が赤字国債ですよ。今まで赤字国債というのは特例公債という、これは自民党単独政権時代は、野党は全部反対しました。対決法案でした。建設国債なら、道路や橋や公園や、後の世代が使えるけれども、赤字国債はただツケを若い世代に回すだけだから絶対いかぬということで、対決法案だったのです。財政法に認められていない。だから、特別に例外で一年限りしか発行しませんという形で赤字国債を出していたのですよ。怖いのはこれであります。今、特別に例外で一年限りではない。毎年出してしまって、通例になってしまっているのです。この恐ろしさ。こういう状況から、今回、赤字国債はどうしてももうこれ以上発行してはいかぬ、ふやしてはいかぬ、むしろ減らさなければならないという観点から、それじゃ金が足りない、やることはたくさんある、それで借りてきたと思うのです。  しかし、こういう問題を放置していいとは思いません。そして、今、もうどうにもならない借金財政、赤字国債の利払いを返すために赤字国債を発行してもまだ追いつかないような状況になって、行政改革、財政改革をやらなければいかぬという状況になっております。難しいのはわかっておりますけれども、今まで我々の来た道を反省して、本当にどんどん若い世代、子の世代にこのツケを回していって我々はいいのだろうかということから、これから真剣に取り組んでいかなければならない。  容易ではありませんけれども、私は、国庫負担をふやすということも、これは増税か赤字国債につながってくるわけですから、これも難しいという状況でありますが、やはり法本来の趣旨というものに立ち返って、返すべきものは返してもらうということで、強く大蔵省に要求をしていきたいと思います。
  117. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 複雑な気持ちで、今大臣お話を聞いておりました。平成八年度第一次補正千五百四十三億は、大臣は誠心誠意本来の趣旨に立ち返って要求をしていくというお話でもございましたけれども、いみじくもこの千五百四十三億の動きを見ますと、平成八年十一月二十七日の医保審の建議書、「現下の国の財政状況の厳しさを踏まえた上で、可能な限り適切な措置を考えるべきである。」こういう建議書が出て、何か千五百四十三億、とんとついて、それじゃこれからもつくのかといったら、これはまあ恐らくわからぬでしょう。本当にいろいろな団体を納得させるためだけに一次補正千五百四十三億ついて、後はわからぬよという、これもまた中途半端な話だなという気がしております。もちろん大臣は、一生懸命やる、こうおっしゃっているわけでありますが、私は、もうこれは大きな整理をどこかですべきじゃないか、むしろ国庫補助率あたりの本義にしっかりと入った方がいい、このように感じているわけであります。  ただ、大臣がおっしゃいましたもろもろの改革への熱意といいますか、その思いというのは十分理解ができるわけでありまして、本日の本題に入りたいわけでありますが、今回、先ほど申し上げた医保審の建議書も踏まえて、改革の第一歩に着手をされるということであります。  これも私は国民の立場に立って議論をしたいと思うのですが、今回、先ほど大口議員からも話がありましたが、手法が違うのじゃないか、順番が逆じゃないか、本当にその改革というものがしつかり見えていない中で国民の負担だけふえるという、こういう思いといいますか、気持ちというのはどうも払拭できないということの指摘がありました。それは、例えばこの医保審の建議書を見ましても、私は従来から、現在の医療の高コスト構造、ここにやはり手をつけなければならぬだろうというふうに思いました。先ほどのタコの足の話じゃありませんが、やらざるを得ない。それは私どもも同じ思いであります。  そういう意味では、現在の我が国医療の高コスト構造、例えば医師数あるいは病床数の増加の問題、これもこの委員会で既に議論がありました。しかし、国立大学を初めなかなか手がついていない、こういう実態も話があったわけであります。あるいは、社会的入院が大きな問題になっている、あるいは、高額の医療機器がいたずらに配置されている、それが高コストになっているというような問題でありますとか、先ほどから議論が出ている高薬剤費の実態、こうした問題はいずれも待ったなしで手をつけなければならぬだろう、このように私は思うわけであります。  建議書にも、今回の改革前提となっております建議書には、「医療保険制度全般の改革に着手するとともに、当面の財政危機を克服していくことが必要」だ。「着手するとともに」、こういうことでありますが、しかし実際に、これから第一段階、第二段階でやっていくのだという御説明を私は何度も承りましたけれども、第一段階を見ますと、いずれも、見直しに着手、検討に着手と。実際に本当の改革の第一歩に手をつけるかというと、そうではなくて、いろいろな問題があるから見直しに着手をします、検討に着手しますという、もちろん片や介護保険が横たわっているからやむを得ない部分もあるわけでありますが、どう見ても国民からは、患者の負担だけは確実に手がついた、それ以外は全部検討開始、見直し開始ということではないのか。その改革が確実に始まったという実感は国民の目から見てどうも見えない、こういう指摘もあるのではなかろうか、このように思うわけであります。  そういう意味で、ちょっと一つ一つ議論をさせていただきたいのでありますが、医師数の増加であります。  これも、厚生委員会で、同僚の鴨下先生も話をされておられました。私も現場でいろいろ実態を聞きましたら、本当に今、私がこの前見に行った地域でもお医者さんが大変にふえておりまして、ある新興団地ではどっと開業医がふえて、ある開業医では一日十人も患者が来ない。したがって、しっかりした治療ができる。しっかりしたというのは濃厚診療でありまして、十人の患者さんではそれはいろいろなことができるだろう、こう思うわけであります。  したがって、私は、これは勇気を持って発言しなければならぬことではあるわけでありますが、お医者さんというのは、数が今どんどんふえている、なかなか整理ができない、これは――これも、この建議書を見ますと、第一段階は病床数、医師数等の見直しに着手であります。  私、一番気になっているのは、国民の目から見ると本当に改革が進んでいるのかどうかということでありますから、どうでしょう、お医者さん一人当たりの国民医療費のこの十年ぐらいの推移を比較すると、国民医療費をお医者さんの頭数全部で割りますと大体どういう数字になっているのか。私は、恐らく余り数字は変わらないのではないか、お一人のドクターがいらっしゃればそれだけの医療費がかかっておるのではないか、こうも考えるわけでありますが、この十年ぐらいの推移をまず御説明いただきたいと思うわけであります。
  118. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 十年というよりも、昭和六十年と直近の平成六年ということで計算させていただきました。これは、国民医療費をお医者さんの、あるいは歯科医師の数で割り戻してみたわけであります。  そうしますと、昭和六十年で見ますと、医師一人当たりの医療費が七千七百万円という数字が出ております。それに対しまして平成六年、同じように割り戻してみますと、医師一人当たりの医療費が一億二百万円ということでございます。歯科医師で見ますと、六十年が二千六百万円、平成六年が二千九百万円ということであります。これを合算いたしますと、医師、歯科医師合計してみた場合には、一人当たり、六十年が六千四百万円、平成六年が八千三百万円という格好になっておりまして、その増加率を見ますと、医師一人当たりの医療費が三二%、歯科医師一人当たりの医療費が一二%、合計したもので見ると三〇%増加をしております。  ただ、お尋ねにはございませんが、御参考までに申し上げますと、昭和六十年から平成六年までの間、国民所得の方を見てみますと、国民所得の総額では四三%伸びております。一人当たりの国民所得に直しますと三九%伸びておりますから、そういうものとの比較においてこの医師一人当たりの医療費をどう考えるべきか、こういうことではないかと思います。
  119. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 ありがとうございます。乱暴な質問で大変恐縮でございました。しかしながら、数字をお示しいただきました、十年前が大体八千万ぐらいですか、今が一億一千万ぐらいですか、トータルで見まして三〇%ぐらい伸びている、当然ながら国民所得も伸びているわけでありますから、この伸びをどう見るかというのはもちろん議論がたくさんあるだろうと思います。  ただ、私は、直観で見ると、お医者さん一人いらっしゃると一億ぐらいのお金が国民医療費としてふえるのだろう、乱暴な言い方でありますが、そんなに、十年たっても、お医者さん一人いればそれだけ医療費はかかる、やはり需要が供給を生むという実態があるのかなと。  したがって、先ほどの、私が会った地域のお医者さんも言っておりました。ここでこれだけ同業者がたくさんいるのだったら、ちゃんと事前に言っておいてくれれば私も来なかった、こんなにお医者さんが多いところとは思わなかった、こう言っておられまして、そういう意味では、開業のドクターのコーディネートといいますか、地域戦略というのは必要なのだろう。地域の病床数というのはあるわけでありますが、開業医さんのそういう実態ということも感じた次第であります。どうか、この部分についても、直ちに着手できるようなそういうお取り組みをお願い申し上げたい、このように思うわけであります。もちろん、今の医療費については、当然ながらどんどん医療技術が発達しておりまして医療費がふえておるということもあるだろうということは十分認識をした上で、粗い意見を申し上げました。  それから、先ほど議論が出ておりました社会的入院。これも、この建議書の中にも、社会的入院が問題だというのはいつも出るのです。社会的入院というのは実態はどうなのかという議論を今まで私も何度もしてきましたけれども、なかなかこれも数字が出ないわけであります。それで、平成元年からゴールドプランを実施してまいりました。今回の介護保険も、それから医療保険も、今回の健康保険制度改正もそうでありますが、社会的入院を何とか是正したいという、これはやはり医療の高コスト構造の大きな要因だろうと私は思っております。そういうように建議書も認識をされている。  元年からゴールドプランが始まりまして、随分来たわけですね。私は、社会的入院というのは変わっているのだろうと。特養は二十九万床、今はもっと多いのですか、老健も二十八万床、こういうことがどんどん進んできています。公的介護保険制度が始まろうとしております、まあ始まるかどうかわかりません。それでももうここまで来たわけでありますから、どのぐらい社会的入院の実態が変わっているのか。  先ほど十万という数字がありました。私は、ちなみに以前から自分の頭の中にあるのは、長期入院患者は二十八万とか三十万という数字を聞いておりましたが、先ほど羽毛田局長の御説明は十万人、こういう話がありました。どちらでも結構でございます、元年からの推移をどのように厚生省として認識しておられるのか、お尋ねしたいと思います。
  120. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 いわゆる社会的入院ということで呼ばれております、高齢者の方々の介護を理由といたしまする一般病院への入院というものでございますけれども、先ほどもお答えを申し上げましたように、介護を理由とする入院であるかどうかということにつきましては、個々に見てまいりませんとなかなか難しいということで、直接に数字的にお示しをするということがなかなか困難でございますが、そういう意味では、これをうかがわせるということで今のお尋ねにお答えを申し上げたいと存じます。  平成元年と直近との比較ということでございましたけれども、患者調査で見てみたいと思いますけれども、これは三年ごとになっておりますので平成二年と直近の平成五年で見ますというと、例えば、六十五歳以上で六カ月以上入院をしておられる患者数、これはもう端的に全部ひっくるめた患者数でございますけれども、その推移ということで見ますというと、平成二年は二十九万六千人でございました。それが平成五年には二十七万六千人ということで、着実に減ってきておるということで、もちろん、その中にはいわゆる治療も必要で長期にわたって入院されておられる方もございますから、傾向をうかがっていただくということにとどまりますが、そういう傾向になっております。  このことは、そのほかの、一件当たりの老人の入院の場合の日数がどう推移しているかということでもやはり着実に減ってきておる。あるいは、入院の受診率がどうなっているかということにつきましても、やはり着実に下がってきております。  そういうことの中から、受け皿の整備等を通じて、そういった老人の方々の長期入院ということについての是正という方向に実態は向かっているのであろうというふうに考えておりますし、そのことの延長線上で介護保険をつくることによって、さらにそのことをきちっと受けとめていけるように持っていきたいというふうに考えておるわけでございます。   〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕
  121. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 平成二年が二十九万六千人、平成五年が二十七万六千人、二万人減ったということですか。したがって、一割まではいかないが、着実に二年から五年に至る経過としては減っておる、こういうことですね。  これは、この数字を聞いて私も安心をいたしましたけれども、せっかくゴールドプランをここまで進めてきて着実な成果が出なければならぬだろう、こう思っておるのでありますが、ただ、今、羽毛田局長からもお話がありましたように、受け皿ということでは、大きくこの部分に手が入るということは、これからの新しい介護システム、これが必要だということでありまして、そこは理解ができますが、社会的入院の実態は、徐々にではあるけれども、四年間で一割弱ぐらい減りつつある、こういうことでありますから、この部分はある程度着手をしておるのかな、こういうふうに理解はするわけであります。今までいろいろな取り組みがあったのだろう。ただ、現場で、実態として、病院にいられないというので地域に帰ってしまって十分なサービスが受けられなくて大変苦しんでおられる、こういう実態も逆にあるわけでありまして、そういう意味で、我々も新しい介護システムの必要性は十分認識をしているわけであります。  さて、大臣、今二つお話を伺いました。社会的入院については着実に動いておるという話ではあったわけでありますが、先ほどの建議書、私、色を塗ってきたのでありますが、いずれにしても、介護保険が動かなければどうにもならぬという問題が一つあります。ただ、これは平成十二年以降であります。それから社会的入院の解消も、そういう意味では実際に本当に動き出すのは介護保険から。それから、関係医療機関の体系化の推進、これも正直言って介護保険マターだと私は思います。それから、病床数、医師数の適正化の推進、これも第二段階で着手、当面は病床数、医師数の見直しに着手ということで、どうもこの一覧表を見ると、すべてが当面は見直し、見直し開始、患者負担だけとりあえず、これも大変な出来事でありますが、薬剤だけ別にして患者負担が導入されるという新しい制度だけ着手されるというイメージに見えてならないわけであります。  この前から大臣は大変な決意をお述べになっておられますけれども、私は、こうした高コスト構造に本当に手をつけるという決意をぜひお持ちいただきたい、それを国民訴えていただきたい、このように思うわけでありますが、いかがでしょうか。
  122. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 去年の十月の総選挙では、すべての政党が行政改革、財政再建を掲げたと言ってもいいくらいであります。それは、今まで何とかなるだろうということでツケを先送りしてきた、ようやく、もう何ともならないなということに気がついてきたからだと思います。  この医療改革もそうだと思います。今まで十数年来、ここが問題だ、あそこが問題だ、ほとんど言われていることばかりであります。しかしながら、患者さんに負担をお願いするのは、これは反発を買うな、そして、いろいろな利害団体があります、何とかなるだろう、やりくりしていこう、気がついてみたらもう何ともならぬなというこの財政状況の逼迫。  そういうことから、見直ししよう、検討しようという段階ではない、早急に本格的な案をまとめなければならないという段階に来ておりますから、今言われておりますようなそれぞれ見直し、検討状況をすべて洗い直しまして、今回の法案は、確かに患者さんに、特に高齢者の皆さんだけではございません、健保に入っている方も一割から二割にお願いしますけれども、患者さんに対する、あるいは被保険者に対する負担だけお願いしているのではもうだめだぞ、もっともとのところにメスを入れるということでありますので、私は、この法案が成立すれば、できるだけ速やかに、今言った検討、見直しを踏まえて実際の具体案を取りまとめる。今年度中にということで言っていますけれども、私は、できるだけ早い段階厚生省案というものを国民の前に提示したいと思います。そして、それを審議会なり各政党なりに協議をいただく、御批判をいただく、そして、御理解を得られるならば国会にその法案を提出したいという段階を考えております。
  123. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 ことし、できるだけ早い機会にということでありますから、我が新進党も、いつ案を提示いただいても議論ができるようにしっかりと準備をしてまいりたい、このように思うわけであります。  さてそこで、先ほども申し上げた高コスト構造の中で、一つ、薬剤の問題は先ほどから随分議論が出ております。この委員会以外でも、きょうも冗談みたいに、どこかで、別のところで議論をやっているのじゃないかという議論がありましたが、いろいろな新聞報道を見ると、今回の政府案、一日一種類十五円、これに対していろいろな議論もあるようでありますが、最初に一点、我が国の高薬剤費の原因は一体何なのか。  これもよく言われることでありますが、よく聞く話は、使用量が多い、薬漬けという話があるわけでありますが、ここが本当にどうなのかというのは随分私も悩んでおります。使用量が多いのか、あるいは薬価が、単価が高いのか、両方なのか、どっちなのか。それによって改革をどうするのかということは変わってくるわけでありまして、高薬剤費、薬剤比率が三割近い、各国に比べて非常に高いという状況はよくわかるわけでありますが、その原因というのは一体どっちなのか、あるいは両方なのか。その点についてはどういう認識なのか、改めて御見解を伺いたいと思います。
  124. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 国民医療費に占めるシェア、これが諸外国と比べて薬の割合が日本は高い、ここから出発するわけでありますけれども、その原因は何か。これはまさに今先生指摘のとおり、薬の値段が高いのじゃないかということも言われております。これは、国際比較をしたときにやはり日本の薬は高いのではないか。  ただ、これは、比較の仕方によりまして、我が国で通常使われている薬を比較した場合と国際的に使われている薬を比較した場合とありまして、我が国で通常使われている薬を比較しますと、これはやはり高いという数字が出ておるわけでありますが、国際的に使われている薬で比較しますと、もちろん高いものもあれば低いものもある、それほど目立たないというような統計もあります。  いずれにしても、全体的なシェアは諸外国に比べると高い。その原因としては、一つは、薬をたくさん使っている、いわゆる多剤併用というふうな、薬の使用量がふえているのではないかということが言われるわけです。それからもう一つが、高薬価の薬の方にシフトする、要するに高価な新薬の方に移行する傾向がある。この二つが言われております。  実はこれは、専門家の方の研究によりますと、これは一件当たりの入院外の薬剤費の増加要因を分析したものでございます。今のところこのぐらいしか持ち合わせばありませんが、これは昭和五十四年を基準といたしまして平成五年の状況と比較したわけであります。そういうふうな比較で見ますと、多剤投与、いわゆる使用量と高薬価シフト、これはウエートとして大体半々である、半分半分ぐらいじゃないか、そんなような研究がございます。
  125. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 これはなかなか国際比較というのは難しいと思うのですけれども、我が国の多剤投与と高薬価、この二つだろう、こういうお話もあったわけでありますが、多剤投与というのは、これは本当に薬の使用量が多いという検証というのはされているのですか。これは国際比較の数字が、私もいろいろ見させていただいているのですが、明確にないのではないかという気もするのですが、いかがでしょうか。
  126. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 今申し上げました専門家の研究でありますけれども、これは、一件当たりのいわゆる入院外、外来の薬剤費の増加、五十四年から平成五年にかけてだんだんふえているわけですが、金額ベースでふえているわけですが、そのふえている要因を分析したものでありまして、薬剤の使用量がふえているということと、高価な新薬にシフトしているその割合をずっと見たものでありまして、それでいきますと、大体半分ずつぐらい影響している、こういうことであります。
  127. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 いずれにしても、我が国の薬剤比率は極めて高い。ただ、私は、もう一度、国際比較をもっとしっかりしてみる必要があるのではないかと。  既に厚生省におかれても御認識だと思いますが、既に厚生白書等に載っておりますデータもあるようでありまして、我が国はむしろ、使用量が多いというよりも薬剤そのもの、単価が高いのだというデータもあるようであります。私は、自分自身もこれは十分研究をしなきゃならぬと思っているのでありますが、しかし、今、高木局長おっしゃるように、この二つが大きな要因であるということは疑いのない事実だろうと思います。  そういう意味で、今回、一度過去にやったことがありますが、薬剤を別にして患者負担を導入する、一日一種類十五円、こういうことが入ってくるわけであります。これはまさに多剤投与の部分に対応する一つ改革というふうに考えてよろしいのですか。
  128. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 正確に申し上げれば、今回の非常に窮迫した財政状況医療保険制度における財政状況をどういう格好で安定を図るかといった場合に、患者さんの一部負担をお願いする、それから保険料率の引き上げをお願いするという形でお願いしているわけでありますけれども、患者さんの一部負担をお願いするに当たりまして、いわゆる通常の、従来の一部負担の割合を高めるというのが一つありますのと、もう一つは、薬の使用量が多いという問題、この点については医療保険審議会の建議においても指摘されております。医療保険審議会の建議におけるむしろ多数意見といいますかメーンの意見としては、定率で、あるいは薬については給付除外という形でというようなことが建議されているわけであります。  それらをもとにして、今回、政府の案ということで提案しておりますが、昨年の予算編成の過程におきまして、定率制という形でいくべきなのか、あるいは薬についても定額で、とりわけお年寄りの負担ということで、両方ともお年寄りの場合は定額でというふうにいくべきなのか、その辺かなり議論がありました。  最終的には、政府・与党として原案のような形でお願いしたわけでありますが、薬については、むしろ現在の薬のシェアをもうちょっとやはり下げていきたい、そのためには、薬に対するコスト意識といいますか、こういったものを持っていただく。もちろん、医療機関側からすれば、それは間接的な格好でお願いするような形になるわけでありますが、そういった格好でこの薬の負担を設けさせていただいた。  今回の薬の負担の仕方、一種類一日十五円というやり方でありますから、そういった意味では、むしろ多剤投与というものに対するコスト意識というものは、これはやはり歯どめになるのではないか、こういうことであります。ただ、高薬価シフトというものをこのやり方で防止できるか、これはストレートには働かないのじゃないか、こんなふうに思っております。
  129. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 今の高木局長の御説明を聞きながら、きのうの新聞ですか、この委員会とは別のところでまたこの部分がしっかり与党の中で議論されているようでありまして、その中で、一日一種類十五円というこの政府案に対して、薬剤費が二百五円以上の場合は五十円を患者から徴収するとした案もある、これが何かすごく有力なような話の記事が出ておりました。  それで、この二百五円というのはまさに診療報酬の請求時の一つの合理化の部分でございますが、薬剤費が二百五円以上の場合は五十円を患者から徴収するというこの考え方は、今局長がおっしゃった、いわゆる高薬価へのシフトを何とかとどめよう、こういうことでは大きな力を発揮するわけでしょうか、影響をちょっとお聞きしたいと思います。この案がもしあればですよ。新聞に出ておりましたから、お聞きするわけであります。
  130. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 これは、私どもは原案でお願いしているわけでありますから、そういった意味では、仮定の御質問ということでお答えさせていただくということになりますが、いろいろと影響は大きいと思いますので、余り歯切れよくは申し上げられないと思います。  やはりこれは、当委員会でもそういうふうな御質問はございました。それはまさに、今回の政府案では高薬価シフトというものにはきかないのじゃないか、そしてまた、現在の薬剤比率が下がらないというのは高薬価シフトのため、そっちのウエートが高いのではないか、そういうふうな御認識で御質問されていたと思います。  私どもとしては、確かに、今回の私どもの案では高薬価シフトということについてはストレートにはきかないというふうに思っています。私どもとして、高薬価シフトの問題というのは、これはそもそも現在の薬価基準制度あり方に根差す現象であるというふうに考えておるものですから、そういった意味で、やはり薬価基準制度の抜本的な見直しの中でやっていかないと本格的な是正策にはならないだろう、こんな認識を持っておるのであります。  ただ、そういった中でこの一部負担をお願いするわけでありますから、この一部負担によって本当にそういった効果というものが発揮できるのであれば、それも一つの考え方ではないか、こんなふうに考えておるわけであります。
  131. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 ありがとうございます。  非常に答えにくい質問で恐縮であったわけでありますが、しかし、いずれにしても、今回の高薬剤費対策、多剤投与とそれから高薬価へのシフト、確かにこの二つの要因があるわけでありますから、改革の第一歩、特に患者負担をお願いをするということであるのであれば、私はやはり少しでも目的に即したあり方にすべきではないかと。(発言する者あり)  ただ、定率という声も今ありましたけれども、この二百五円が私は前へひとり歩きするのではないかという大変危惧をしておりまして、一点申し上げるのですけれども、現場の声で、例えば高血圧によく効くACE阻害剤なんかは、一錠が百二十二円、二錠となるとどうしても二百四十四円、二百五円を超えてしまう。そうすると、なかなか難しい問題が出てまいります。  したがって、高薬価ではなくして安い方へ、安い薬をできるだけ使おうというふうに思ったとしても実際にそういう薬がない事例もあるのだろうと思うのです。そういう意味では、今局長いみじくも言われた、薬価基準そのものをきちっと現場の実態に応じて整理をしないと、これは切った張ったの世界で十五円か二百五円か五十円かなんという話でぽんと決められたのではたまらないのじゃないかという気も私はしております。  そういう意味では、今回の十五円の部分も、シミュレーションしますといろいろな事例が出るわけでありますから、現場のドクターなんというのは、私もびっくりしましたけれども、通常の開業医さんであれば、七割、八割はお年寄りの方なんですね、ほとんど老人医療で営業されておられるという実態があるわけでありますから、特に慢性病の治療、薬というものを私はしっかりとシミュレーションをしていただきたい、その上で議論をお願い申し上げたいというふうに思うわけであります。特に糖尿病、高脂血症、高血圧あたりの治療実態というものを十分勘案して、慎重な議論を私はお願いしたい。  そういう意味では、定率という声も先ほどありましたけれども、私自身は、ひとつドイツがやっている参照価格というありようというのも、建議でも議論があったようでありますけれども、大変に有効な手段ではないか、こう思っておるわけでありますが、参照価格というのは具体的に我が国でやるとすればどういう形になるのか、時間もありませんから、ちょっとかいつまんでお教えいただきたいと思います。
  132. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 参照価格方式というのはドイツが先駆けで始めたわけでありますが、我が国の場合、これは大臣からも何度も御答弁申し上げているように、現在の薬価基準制度は公定価格という格好を定めていることが、薬価差の問題を初めとして、あるいは高薬価シフトの問題を初めとしていろいろと弊害が生じておる。したがって、これを是正していくとすれば、この公定価格というものをやめて、そして市場取引の実勢の中で薬の値段というものが決まっていくのが望ましいのではないか。  問題は、その後、それでは医療保険でどこまで薬について見るべきなのか、こういう問題だと思います。その際には、医療保険で全く見ないというのもそれは片一方にあると思いますし、医療保険で全額償還をするという、フランスのように償還をしていくというやり方もあると思いますし、あるいは一定の償還基準、上限基準というようなものを設けまして、そこの範囲ならば、その値段以下のものなら医療保険で全部払いますよ、そのかわりそれから超えた部分については自己負担なりでお願いしますよというようなやり方もあろうと思います。  いずれにしても、医療保険でどこまでカバーすべきなのか、その基準というのはつくらないといけない。また、その基準のつくり方というのは、例えば新薬シフトとかそのほかの、あるいは高どまりとかいうようなことがないような工夫、知恵を出さなければいけない、そういうことだと思います。したがって、参照価格といっても、これは言葉だけがひとり歩きするという傾向がありますから、やり方はいろいろ工夫があるだろう、こんなふうに思っております。
  133. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 もう一点だけ。お答えしにくいかもしれませんが、先ほどの二百五円以上は五十円という、これはマスコミの記事に出ておったのですが、この場合は、例のお年寄りの実効負担率五・五%が八・八%になるという話も伺いましたが、この二百五円で五十円という場合はどれぐらいの経済効果になるのか、試算はされておられますか。実効負担率でもし計算されておられればちょっとお示しいただきたいと思います。
  134. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 二百五円以下の取り方をどうするのかということはちょっとあれなんですが、二百五円以下は取らないとした場合にはかなり影響が大きいのじゃないかというふうに思いますから、そういう意味では相当、財政効果という面で考えるとこれはなかなか厳しいことになると思いますが、具体的なそういう計算をしておりません。
  135. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 それは、なかなかお答えできないと思います。今後また議論の中でお尋ねをしたいと思います。  いずれにしても、今回、多くの国民は今のような厳しい健保財政の中で、負担というものは多くの方がある意味では覚悟しておられるわけでありますが、しかし、片や消費税の引き上げ、そして介護保険の負担増というような話になりますと、本当に負担はふえたけれども何ら実態は変わらないということを一番恐れておられます。どうか、そうした具体的な着手に鋭意御努力をいただきたい。  負担という観点で申し上げますと、現場国民の声は、先ほどからも議論が出ておりましたけれども、お年寄りは大変金を持っておるという議論だけではなくして、お年寄りの収入というのは大変にむらがある。たくさんお金を持っている人と、ない人と、二極分化ぐらいの状況でございます。私は、そういう意味では、患者負担を考えますと、実効負担率八・八%という話がありまして、これは世代間のバランスがとれたのだという御説明も伺っておりますけれども、これが一〇%を超えるような事態は何としても現時点では避けなければならぬだろう、こんなふうに実は思いながら今も研究をさせていただいている次第でございます。  そういう意味で、今回、本当に一歩でも二歩でも着手できるように、これからまだいろいろな曲折があるわけでありますから、取り組みをお願いしまして、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  136. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員長代理 坂口力君。
  137. 坂口力

    ○坂口委員 大臣、大変お疲れと思いますが、何となく顔色がこちら側から見ますと青く見えまして、質問させていただくのもいささか気にかかりますけれども、引き続きまして質問をさせていただきたいと思います。  多くの皆さんからさまざまな角度からの御質問がございまして、私のお聞きするところがもうなくなってきた感もございます。(発言する者あり)いや、そうではありませんで、お聞きすることはいろいろとあることはあるわけでございますが、重なることをひとつお許しいただきたいと思います。  大臣は、一昨日でございましたか、年金のことに触れられまして、六十五歳支給ということに今なっておりますけれども、六十五歳では済まないのだろうという意味の御発言をなさったというふうに新聞は伝えております。改正いたしましたのがたしか一九九四年でございましたか、それで、二〇〇一年から引き上げを開始して二〇一三年に六十五歳完了、こういうスケジュールだったというふうに記憶をいたしております。まだ始まっていないので、これからいよいよ六十五歳への引き上げが始まるわけでございますが、その始まる前に、いや、六十五歳ではどうも済まないらしいということをおっしゃるのは小泉厚生大臣らしいと思うわけでございます。  厚生大臣がそうおっしゃるのは、これは二〇一三年に六十五歳まで一遍引き上げて、それでもいけないからその後さらにまた引き上げなければならないだろうという意味なんでしょうか。それとも、今、二〇〇一年から二〇一三年までの間に六十五歳へ引き上げるのを、それをもう少し早めてと申しますか、その計画を少し変更せざるを得ないのではないかということを念頭に置いておっしゃったのでしょうか。ちょっとその辺のところをお聞かせいただきたい。     〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕
  138. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 今週の月曜日、財政構造改革会議の企画委員会でしたか、そこに呼ばれまして、社会保障の問題、いろいろ議論されました。その中で今の年金の話が出まして、私が言わんとしているところは、社会保障費用、年金にしても医療にしても介護にしても福祉にしても、ほとんど削るところはありませんよ、むしろふやせという声の方が大きいのですよ、しかしながら、どうしても国民負担率を将来五〇%を超えないということを貫くならば当然思い切ったことをやらなければならないのだ、そして、やったとしても十年度予算にはきいてきませんということを話したのです。  例えて言うならば、年金も今の制度でいくのだったらば、二〇二五年あたりには今の保険料が倍になりますよ、一七%だから三四%になる。これは本当にサラリーマンの皆さん、オーケーするかどうか。この負担が嫌だというのだったらば、給付を下げるか支給開始年齢をおくらせるか、どっちかしかないのではないのか、とり得る選択として。給付を下げるのは嫌だといったらば、それは支給開始年齢をおくらせるしかないだろう。ただし、これは、今言ったように、六十歳から六十五歳へ支給開始年齢を引き上げるというのも平成六年にやっと決まって、二〇一三年に六十五歳になるのです、その後の話ですということを言ったのです。  ところが、新聞に出ると、あたかも今、六十五歳ではなくて、またこれを見直して、さらに、六十六歳か七歳かわかりませんけれども、繰り上げをやると出ている。前提が全然報道されていないというのは、私は心外だったのです。  それは、医療保険においてもそうです。今せっかくこの法案をお願いしている。来年、抜本的改革案を出す。出すとして、そんなに予算をカットできるような案はできませんよ。いかに社会保障関係の費用を削るのが難しいかということを言いたかったわけであります。ただし、余りにもどうだ、どうだと聞くものですから、そういう選択がありますというところが、新聞の記事に、六十五歳からさらに繰り上げという記事が出たわけであります。その点、御理解いただきたいと思います。
  139. 坂口力

    ○坂口委員 私も上げることを今直ちに肯定するわけではございませんが、大臣医療保険の問題を審議をしておりますときに年金のお話に触れられたということは、私は意義があると思っているわけです。  というのは、社会保障の問題全体として年金、医療、福祉を考えていかなければならないわけでありますから、今まで、ややもいたしますと、年金は年金、医療医療、そして福祉は福祉というふうに、厚生省の中でも、どちらかというと縦割りでそれぞれが進んできた感がございます。だから、医療のことをやりますときには、先日来からもいろいろと意見が出ておりますが、現在のお年寄りはかなり裕福になっております、年金も充実をしております、したがって、多少の医療の負担はやむを得ないのではないでしょうか、こういう御意見も出ております。私は、それをすべて否定はいたしません。ある程度、私は理解をしているつもりでございます。  しかし、医療の話でそういう話が出ております一方で、今度は、頼りにいたします年金は引き下げますよという話になってこざるを得ないわけで、年齢を引き上げるということ、あるいは額を引き下げるということになるのか、年金の改革に着手をしなければならないということが一方ではあるわけでありますから、医療のことをこれから話を進めていきます場合に、医療と、そして車の両輪であります年金、ちょっと福祉は横に置くにしましても、年金と医療だけは車の両輪として非常に影響し合うことでありますので、将来、年金はこういたします、医療はこのようになりますというような形で議論を進めていくのが私は順当だろうというふうに思うのです。  ですから、医療の議論が進んでおります最中に大臣が年金のことに触れられたということは、内容は別にいたしましても、触れられたということには私は意義があると思っているわけでございます。  そうした意味で、私は、医療保険が今回俎上に上げられましたけれども、医療保険改正案ができるにつきまして、そうしたことが厚生省の中でいろいろと議論をされて出てきたものなのか、あるいは、そうしたことは抜きにして、とにかく医療保険、今足りないからこれを何とかしてほしいというので医療保険分野だけを見て出てきたものなのか、そこのところが実は知りたいわけであります。  厚生省の中では、総合的に検討される場所もあるのだというふうに思いますが、そうした中で、今回は介護の問題もありますから、介護の問題あるいは年金の問題、それから医療の問題等々も含めて総ざらい、これからの社会保障がどうなっていくのかという将来展望を、アウトラインですね、細かいことまではなかなかわからない点もありますけれども、アウトライン、その辺のところの議論があって出てきたものなのか、そうでないのかということをちょっとお聞きしたい。
  140. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 橋本総理が打ち出した財政構造改革五原則、この原則を貫いていきますと、十年度予算というのは、今は九年度ですから、九年度予算よりマイナスにするというのですから、そういう中で、年金も医療も福祉もすべて総合的に見直さざるを得ないというのが現状です。  そして、私がおととい、月曜日、説明した中にも、皆さん、総論は全部賛成しているのですけれども、いかに社会保障関係は難しいかというのは、今の制度をやっていきますと、厚生省関係予算は年金も医療も福祉も含めまして、約八千億円、十年度予算は伸びるのです。年金の受給者はふえます。黙っていたって、何の制度改正しなくたって、高齢者がふえるのですから、当然、年金の受給者はふえていきます。これはもう法律で手当てされていますから、必ず、黙っていても出ていきます。医療もそうです。高齢者がふえます。当然、大体予想できます。医療も伸びます。介護も伸びていきます。すべて、黙っていても約八千億円、十年度予算はふえますよ。これをマイナスにしていくというのはどれほど困難を伴うかということを私は説明したのです。  しかし、もう増税もいけません、借金も若い世代にツケを残してはいけませんというのだったらば、根本的な制度改革をやらないといかぬ。ほかのこともあります。私は、社会保障だけオーケーして、ほかの分野で総論を貫かない限り、これは納得ができない。やるのだったら、一緒にやってくださいということを言いたかったわけであります。しかし、あくまでもその総論を貫くなら非常な覚悟が必要だという状況を私はお話しして、あの会議は終わったわけでありますが、今後とも議論を重ねていきます。  そういう中で、今言った、年金の話も出ましたけれども、当然、医療の話も出ています。福祉の話も出ています。ただ、新聞に報じられたのは、年金の問題がかなり大きく取り上げられましたけれども、総合的にこれから厚生省としても見直していかなければならないと思います。
  141. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。  年金の問題ももちろん出ているでしょうし、医療の問題も出ているし、福祉の問題も出ているだろうというふうに思いますが、それが有機的な結合の中でどうなるかという議論がされているかどうかということが大事だろうと思うのです。個々ばらばらに、年金は年金、医療医療として議論をされていたのでは、これは、そういう時代は過ぎたのではないか、やはり総合的に見なきゃならない時代に来ているのではないだろうか。縦割り行政とよく言われますけれども、厚生省も、ややもいたしますと、どうも年金は年金、医療医療として別々にやっている嫌いがありますから、そういう別々ではなくて総合的にひとつやってくださいよ、やっていますかということを私はお尋ねしたがったわけでございます。大臣の熱意でいささか押された感じはございますけれども、私の趣旨はそういうことでございます。  さて、今大臣の方から抜本改正が必要だということを熱っぽくおっしゃったわけで、まさしくそのとおりなんですが、熱っぽく言われたその抜本的な改正が、実は今回のこの法改正に間に合わなかった。何度かここで御指摘があったように、多くの皆さんが指摘をしておりますように、順序が逆になった。将来像をどうするかということに対するアウトライン、その計画なるものが明確にならずに、今起こっていることのその障子の破れをつづるようなことが先行している。現在のこの第一歩が、将来目指す抜本改正のための第一歩になっているのか、あるいは逆方向の一歩になっているのか、それではわからぬではないかという議論が今出ているわけであります。  本当に今やっていることが第一歩になっているのなら、それはいい。将来像を見てその第一歩なら、それはいい。しかし、将来像はまだわからぬというのであれば、今回のこの案は逆の方向を向いた一歩かもしらぬ。それだったら後退ではないか。だから、この際にそこは明確にすべきではないかという議論が先日来続いておりますし、私もそう思う一人であります。  この問題は大きな問題でもありますから、そんなに具体的に微に入り細にわたって、決定したものを示さなくても私はいいと思うのです。医療保険なら医療保険の今後のあり方について、どういう方向のものを示していくかということぐらいは示さなきゃならぬだろう。それも示さなくて、今回の改正案を通してくださいよというのは、いささか虫がよ過ぎるという気がするわけであります。  医療保険改正ということになりますと、選択肢はそんなにたくさんあるわけではありません。厚生省から出しておみえになりますものを拝見いたしましても、あるいはまた諸外国におきます医療制度を逐一見てみましても、これはそんなに選択肢があるわけではありません。せいぜい二つか三つある中でどれを選ぶかということになるのだろうというふうに思います。  昔から言われてきましたように、日本医療制度を全部一つにまとめてしまって、いわゆる一本化をして、そしていくのだという説もありますし、これも一つの方法としてはあるのだろうというふうに私は思います。しかし、それをやろうと思いますと、それじゃ税の捕捉は大丈夫か、そこがきちっとできないことにはこの一本化というのはうまくいかないではないかという意見が前々からありましたし、現在もあります。これも、一本化するためにはそこをどう解決するかということがやはり前提としてありますから、これはなかなか大変な問題を含んでいることも事実であります。  それからもう一つは、現在の保険制度でお年寄りを全部、お年を召されても全部それを見る、突き抜ける、それぞれの保険で最後まで見るというのも一つの案として浮上しているわけであります。いわゆる突き抜け型と申しますか、最後まで見るというのも一つの道。これはそれなりに説得力のある案でございますし、ドイツあたりはその案でいっておるわけでございますが、しかし、これでいこうと思いますと、健保組合なども、大きい健保組合はいいわけですが、小さな健保組合はそれでもつのかという問題がありますから、少なくとも健保組合ならば健保組合の中の統廃合の問題をどうするかという問題がついて回るわけであります。  もう一つは、与党三党の合意の中にも出てまいりますけれども、高齢者の問題は別枠で、高齢者保険なら高齢者保険をつくる、あるいは保険でなくて一般財源から出す場合もあるでしょうし、とにかく高齢医療制度というものをつくる、そして若い人たちの保険は今までどおりにする。そのかわりに、今までのように、若い人たちの、いわゆる勤労者の皆さん方への保険は、今まで国から出しておりました援助は、それはもうできませんよ、若い人は若い人でやってくださいよ、そのかわりにそれを高齢者に回しますというような案が幾つかありますし、そのまたバリエーションも幾つかあるのだろうというふうに思います。  ざっと挙げまして、こうした方向性がこれから考える方向性としてはあるのであって、それ以外の特別な方向というのはなかなか見つかりにくいと思うわけですね。選ぶ選択肢というのはもう出尽くしていると私は思うのですね。だから、これからの医療保険の方向性をどうするのかということぐらいは決めないといけない。それはもう決断さえすれば幾らでも決められる段階に来ている、決断力があるかどうかというところにかかっているというふうに私は思うわけでございます。  この法案を審議するに当たり、そしてこの法案を通過させるに当たり、やはりここをきちっとけじめをつけないといけない。これは厚生省に課せられた最大の課題であると同時に、また、この委員会に課せられた最大の課題でもあると思います。私は、最も専門家であります厚生省が、我々はこう思うというのを出してもらうのが一番いいのだろうというふうに思いますが、しかし、それができないのだったら、やはりこの委員会で、ここに一番専門家の皆さんがお寄りになっているのですから、ひとつ我々で出そうということで、それは出してもらうというのも一つの方法ではないか。これは委員長にお願いをして、委員長を中心にして取りまとめをしていただくのが一つの方法ではないかと思うのです。余りわからない幹事長だとか政審会長がどこかでごそごそやっておったってまとまるわけがない。これはやはり専門家がまとめなければいけないと私は思うわけでございます。  そうした意見を申し上げて、ひとつ大臣の御意見を承りたい。
  142. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 昨年暮れ、今回の改正案をまとめるに当たりまして、いかに、多くの意見、合意をとりながらまとめていくのが難しいかということを痛感いたしました。すっきりした案、合理的な案を出そうとしますと、必ず一方で反対論が出ます。あちらを立てなきゃいかぬ、こちらを立てなきゃいかぬとなると、これはいわゆる抜本的な案というのはなかなか出しにくいなと。いろいろな方面の御理解を得ながらまとめていく苦労を痛感したわけです。  そのいい例が、端的に言いますと、審議会の答申は、高齢者からも定率で負担を取れというのが多数意見でありました。しかし、いざ出てきた今回の案は定額でございます。しかも、薬剤一種一日十五円取るという皆さんから御批判を浴びている案を出しておりますけれども、これが与党の中では妥当であろう、関係者もこうだろうということでまとまった案を出したわけであります。  しかし、私は、今回の案というのは、そういう今までの取りまとめの経緯の中で、これで事足れりとしてはいかぬなと、まさに抜本改革のための案であると。そして、専門家でありますから何よりも坂口先生よく御存じだと思いますけれども、今までいろいろ言われた案を、この法案が成立次第、私は、今回は厚生省責任を持って案を出さなきゃいけないと思っております。  それは、今までの国会の議論を踏まえて、できるだけ国民全体の理解を得られるような案をまず厚生省責任を持って出してみたい。そういう中で、委員会で御審議いただく、審議会で御審議いただく、あるいは与党で御審議いただく。できるだけ皆さんに議論していただくための具体案を、一つの案とはこれはまだ言えませんが、出して、そして多くの国民の批判に耐え得るような案にまとめていただくよう国会議員の皆さんに御議論いただくという形で、今、省内の準備体制を整えていきたいというふうに考えております。
  143. 坂口力

    ○坂口委員 あちらを立てればこちらが立たずというのは、この法案が通っても通らなくても変わらないわけでありまして、それはもういつまでもつきまとうことは事実でございます。  したがって、どうせそれはつきまとうわけでありますし、厚生省の皆さんの頭の中では、これが一番いいというのはもう既に頭の中に描かれていることも事実だろうと思いますし、そういうことを考えますと、この法律をつくってしまってから、それから出しますというのはいささかひきょうであって、その前に、どうせどちらかから反対が来ることは事実でありますけれども、そこはもう勇気を出してきちっと示すということが信義ではないか、こう私は思います。  与党三党の医療制度改革の基本方針というのを拝見させていただきました。私は、少しは前進するのだろうかなと実は期待をしていたわけでございますが、この中の医療保険制度、それから高齢者医療のところを見ましても、やはりこれもはっきりしないわけでございます。  「医療提供体制改革」に「医療機関の機能分担と連携」というところがございまして、そこに「医療機関の機能分担や連携を進め、かかりつけ医機能を重視し、患者が必要な場合にふさわしい医療機関にかかるという流れをつくる。」これもちょっとわかりにくいのですが、「このため、医療保険の面からも必要な措置を講ずる。」こういうことが書かれてありまして、これはちょっとどういう意味なのか、なかなかわかりにくい。  それから、「医療保険制度改革」のところを見ましても、「老人医療費は、医療費全体の三分の一を占め、三十年後には二分の一を占めると言われる中で、抜本改革の最大の課題である。」これはまあ最大の課題であることはもう言わずもがなでありまして、その最大の課題をどうするかということはやはり書いてない。  こういうことを見ますと、こういう漠とした中で、そして国民の皆さんにだけ具体的にこれだけお願いしますよというのは、やはりどう考えても納得がいかないというふうに言われる方が、それは正しい、説得力がある、そのとおりと言わざるを得ないわけであります。我々も決して逃げるつもりはありません。皆さんと一緒にこれは乗り越えなければならない山だというふうに思っております。  私も医師会に半分足を入れておりますので、それはそれなりにいろいろの意見も承っておりますけれども、しかし、それとこれとは違うわけでございます。先ほど定率制という話が飛びましたけれども、やはり定率制ぐらいは導入しないといけない、そうしないとやはり前に進まない、私はそう思っているわけでありまして、医師会の先生方に対しましても、あれもいけない、これもいけないというのはもはや通用しない、そんな時代ではない、定率制でどこがいけないのですか、こう言って、先日来、会いながら説得をしているわけでございます。  皆さんも、決定をするにつきましては、いろいろの意見があってそれは大変だろうというふうに思いますが、しかし、それは、この法案の後先、関係のない話であります。後になりましたらその攻撃が、あるいはいろいろの意見が弱まるのかといえば、決してそうではありません。それならば、国民の皆さん方に納得をしてもらうように、まず先に示すということがやはり信頼回復のために大事ではないかというふうに思います。  あるいは、現在の健保財政が非常に厳しいことは私もよく理解ができますし、このままでいいと思ってはおりません。早く何とかしなければならないというふうに私も思います。しかし、二、三カ月これがおくれたからといって、そう大きな傷になるわけではない。たとえこの法案を通すのが二、三カ月おくれたとしても、その間に示すべきものは示すということが私は先決ではないかというふうに思います。もう一度、その辺についての御答弁をいただきたいと思います。
  144. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 順序が逆ではないかという御指摘だと思うのでありますが、今回の案を出す前に抜本的改革案なり方向を示せということだと思いますが、私は、今の定率制の問題にしても、今回の案は患者さんに負担をしわ寄せしているからいかぬという批判がかなり多い。しかし、抜本的な案を出したとしても、今よりも軽くなるということは私はないと思います。定率であろうが、診療報酬の改革をしても、薬価基準を見直しても、患者さんにも応分の負担をしてもらわなければならない。今の批判の多くは、患者の負担が多過ぎて困ると。しかし、抜本的な改革を、これから厚生省が案を出します、そして国会で審議いただいてまとまる案を出したとしても、今よりも負担が軽くなるということは私はないと思っています。だから、今の反対でも、患者の負担が多過ぎるのじゃないかということだったらば、私はどんな改革も出せない、それを御理解いただきたい。  今のは最低限の、患者さんに御負担をお願いする案だと私は思っています。それは抜本改革を妨げるものにならない。このような不十分なものではいけないから、抜本改革を進めようという形にぜひしていかなければならぬし、必ずそうします。その辺をぜひとも御理解いただきたいと思います。
  145. 坂口力

    ○坂口委員 私も、負担が多いとか少ないとかいうことを申し上げているわけではありません。それは少ないにこしたことはありませんけれども、現在の状況を考えましたときに、応分の御負担をいただかなければならないことになるだろう、そう思っております。  しかし、負担の多い少ないよりも、その前に、その内容を納得してもらえるかどうかということが先だと私は思うわけです。こういうことになるから、こういう計画だから我々はこの案を出さざるを得ない、そして皆さん方に納得をしてもらう、それなら納得できるということになるのではないかというふうに私は思うのです。それを、全体像を示さずに負担のところだけを先に示すものですから、多い少ないよりも、納得できない、そういうことに今はなっている。だから、ここを、患者の皆さん方はもちろんのこと、国民全体に納得のできるようにしてくれ、これでは納得がいかぬではないかというのが多くの皆さんの意見でありますから、これはやはり納得のいく説明をする義務がある、そこを私は申し上げているわけであります。  そのためには、やはり手順がある、順序がある。示すべき順序がある。薬の問題、後でまたやりたいと思いますけれども、薬の問題にいたしましても、医療機関幾つかの種類を出す。その多い少ないはそれはあるでしょう。だけれども、医療機関がたくさん出すからといって、患者さんの方がなぜそれを負担しなければならないのか、ここも私はいささか脇に落ちないところでございます。出すのは医療機関だ、たくさん薬を出してくれと頼んだわけではないわけで、その負担がなぜすべて患者さんなのか、この辺のところもやはり十分な説明の必要なところになってくる。  その細かなところは別にいたしまして、一番基本となりますところ、先ほどから何度か言っていますように、将来のあるべき姿、少なくともこの方向に行きます、西に行くのか東に行くのか、それもわからずに新幹線に乗ってくれと言っても、それは乗れません、こういうことではないですか。だからそこは、西に行くか東に行くかぐらいのことは今ぴしっとすべきだ。それを決めずに新幹線に乗れというのは無理だ、私はそれは当然の御意見というふうに思います。  ですから、いつまでもこのままでということは私も言っていない。それが一カ月なのか、二カ月なのか、三カ月なのか、知りませんけれども、その方向性を示すぐらいのことは、そう長くかかるわけではないわけでありますから、それだけ先にお出しをいただいてはどうですか、そしてその後でこの案をお願いしますと言ったらどうですか、こう私は申し上げているわけでございます。  くどいようでございますけれども、ここは国民の皆さん方に納得してもらえるかどうかの一番のポイントでございますので、もう一遍だけお聞きをしておきたいと思います。
  146. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 そのような議論が再三行われておりましたので、我々厚生省としては、基本方針を既に出しております。今回の法案を出したからこそ、薬価基準も抜本的に見直します、診療報酬体系、出来高払い制度も定額を組み合わせます、医療提供体制も見直しますと。既に抜本的方向は明示しています。方向だけはもう明示しているわけですから、あとどういう選択をとるかというのは委員が御指摘のとおりであります。長年議論してきたことです。どれを選択するか、決断するのです。  そして、今これをやらなかったら、結局また赤字国債発行しかないのです。これをどう考えるのか。また借金をしなければならないのか。それはとれないということで、今回の案を出しているわけであります。既にどういう方向がいいかということはそれぞれの委員指摘しておりますから、その意見の中でできるだけ国民の理解が得られるような選択肢を提示したいというふうに考えております。
  147. 坂口力

    ○坂口委員 大臣と私の間でそんなに大きな意見の違いがあるとは思いません。しかし、話が、順序が逆になっている、裏表になっているだけでございます。  大臣は、今回出されたこの法案は、だから具体案を出した、こうおっしゃいますけれども、確かに具体案を出されましたけれども、基本を明確にせずにこの具体案を出されたから私は言っているわけで、この具体案を出すのだったら、こちらの方に行きますよということを言うのだったら、さらにその行き着くところ、目標値、こちらの方向に向かって行きますよということをなぜ先に言わないのですか、そう私は言っているわけでありまして、そこが私と大臣と、大臣はわかっていてそこを、ごまかしていると言うと言葉が悪いのですけれども、言い逃れているのだろうというふうに思いますが、そこが、私は十分に理解をしてもらいたい。  一遍この法案を出されたのですから、それはメンツにかけてもこの法案を引っ込めるということは、それはできないのでしょう。そのことは私もわかります。しかし、この法案を出す以上は、この法案のさらに行く先を明確にすることもあわせて行うことが必要ではないですかと、こちらも随分これは折れた話であります。人によりましたら、おまえは何とだらしのない質問をしているのだといって怒られるぐらい私は折れた話をしているわけでございます。  だけれども、大臣は、それでもなおかつ、その先のことをやります、これが通ったらやりますと。いや、通ったらやりますじゃなしに、通る前にそれを示さないことには国民に納得をしてもらえないということを私は再三申し上げているわけで、ここはひとつ宿題にしておきます。これをやっておりましたらいつまでたちましても終わりませんので、これは終わったと思わないでください。これは一遍お預けにさせていただきます。  さて、もう一つは薬の問題でございます。  先ほどからもいろいろ話が出ました。オリジナルとゾロの話も先日来たくさん出ております。医療従事者がいろいろおっしゃるのは、日本の薬というのは新薬がすべて高い、それで本当に使いたい薬というのがだんだんと消えていく。懐かしのメロディーじゃありませんけれども、それぞれの先生方は、過去に使った薬の中で、あの薬だけは忘れられないという思い出の薬というのを二つ三つ皆持っておみえになるわけです。あれはいい薬だった、あれがもう一遍あったら、こう思われるような薬があるわけなんです。皆お持ちになっているのです。一遍、診療してみえる先生方に投票してもらって、十傑を決めて、リバイバルで復活してもらったらいいと私は思うのですけれども、患者さんには本当によく効いた、副作用もないし本当によかった、そういういい薬があるわけです。  だけれども、そういう薬がじきに消えていくわけです。安くなるものですから、それを使うに使えなくなっていって、そしてもう製造されなくなっていってしまう、こういう薬がある。片や、それにかわって、作用はそれほどではないけれども、高い新薬が次々と出てくる。これが、日本医療の中で薬に対する医療費がかさんでいきました根本だと思うのです。  厚生省は全体の医療費の中で薬代がたくさんかかる、かかると言いますけれども、そのもとはといえば厚生省がつくったのです。だれがつくったのでもないのですよ。厚生省がその基本をつくった。その基本に乗っかってやったらこの結果になったわけでありまして、私は、そこは厚生省も反省をしてもらいたいと思うわけです。いや、厚生省だけ責めるのは酷かもしれません。日本医療全体が、薬をたくさん使うというしきたりみたいなもの、そういう習慣みたいなものがあることも事実です。薬をたくさん出す医療機関がよくはやる、薬を出さない医療機関ははやらない、そういうことはたくさんあるわけでございます。  かつて、私も診療所に勤めたことがございます。まだ卒業いたしまして間もなくでございましたけれども、ある診療所に、勤めさせられたと言うと大変言葉は悪うございますけれども、行ってこいと言われまして山の中の診療所に行きました。薬はできるだけ使わないでおこうと思いまして使わなかったら、ある日、村長さんに呼び出されまして、坂口さん、もう少し薬を使ってくれと。なぜですかと言ったら、今度の先生は薬をくれないとみんなが文句を言っている、そして、薬を使ってもらわないことには診療所の経営もなかなか難しい、済まないけれども、もう少し、効いても効かなくてもいいからと。私は忘れられません。その村長さんが言いました言葉を今も覚えております。効いても効かなくてもいいから済まぬけれども使ってくれ、こう言われたことを今も覚えております。いや、そんなこと言ったってと、私も若かったものですから反発いたしましたけれども。  やはり、薬を使う医師というのは患者の皆さん方から非常に喜ばれる。病院の中でも、薬をたくさん出す医師と出さない医師とがありましたら、薬をたくさん出す医師の日の外来は満杯になる。これは事実でございます。そういう患者さん側の、国民の側のニーズといいますか習性もありますから、すべて厚生省のせいとまでは私は言いませんけれども、しかし、厚生省が、現在の状況を生み出すそういう保険点数のあり方をしてきたことも事実でございます。  それで、一種類十五円どうしようこうしようといったって、それはその基本のところを直さないとこれはならないわけで、先ほど局長さんもお話しになりましたが、基本のところを直さないとこれはいけないわけで、たとえ十五円にしようと二十円にしようと、やはり薬がたくさん出るところは出るのではないかというふうに私は思います。そして、そういうふうに使ってくれる先生のところに多くの患者さんがやはり寄るのではないかという気が私はいたします。ですから、十五円つければ、あるいは二十円つければ、あるいは丸めて五十円にすればそれで済むというふうな簡単なものではないというふうに思います。  そこで、この薬の問題は、新薬をなぜそんなに高くするのか。オリジナルだといいますけれども、その日本のオリジナルがすべて本当のオリジナルかといえば、そうじやありません。ほとんどのものは、外国のどこかで出ていたものを、それを少し変えて日本に一番先に入れた、一番先に日本でつくったというのがオリジナル、そういうオリジナルが多いわけであります。だから、言ってみればそれもゾロです。世界の単位で見たらそれもゾロです。そしてまた、それに連なるゾロゾロが出てくる、こういうことになるのだろうというふうに思います。ですから、私は、新薬といっても、本当に開発された新薬と、そうでない、どこかを少し変えた新薬、そうしたものとはおのずから違うという気がいたします。  これは、もう時効になる話ですから薬の名前を申し上げてもいいと思いますが、アリナミンという薬がございました。これは、B1に、ある物質をくっつけてアリナミンという薬にしたわけです。B1はもともとあったものでありますから、それに、ある物質をくっつけてアリナミンという薬をつくった。今までのB1は飲みましてもなかなか吸収されない、たくさん飲んでも吸収されない、しかし、このアリナミンはそれが何倍も吸収されるようになった。だから、今までありましたB1に何かをくっつけることによって非常に吸収をよくする、付加価値を高める、そういう薬ができたわけであります。これなんかは、初めからつくった薬ではありませんけれども、日本の薬としては非常にいい薬、オリジナルに近い薬だと私は思うのですが、ちょっと変えただけというのがかなりたくさんある。そうした問題を厚生省の方はよく考えて薬の行政をやっていただかないといけないのではないかなというふうに私は思っております。  それで、今回の一種類十五円というこの決め方については私も納得しかねる一人でありまして、それならば、それこそ定率でいった方がまだいいと私も思う一人でございます。ぜひ、その辺のところにつきましても御検討をいただきたいと思います。  それからもう一つは、定額制と出来高払い制の問題が議論されております。  これも、各国の医療制度を詳細に見てみますと、定額制をとっておる国もありますし、出来高払い制をとっている国もあります。しかし、定額制をとっております国も、純然たる定額制かと思いますと、中をよく見ますと、さまざまな出来高払い制を加味した定額制を取り入れている。出来高払い制の国が全部純然たる出来高払い制かといいますと、そうではなくて、定額制を巧みに取り入れた出来高払い制をとっている。だから、言葉は定額制と出来高払い制と両極端のように書いてはありますけれども、中身はどちらがどちらかわからないような状態になっている国々がかなり多い。  そういう状況でありますし、私は、日本のこれからのこの制度を考えていきますときにも、一〇〇%定額制とか一〇〇%出来高払い制というのはこれはなかなか難しい、それを維持することは難しい、これはいろいろの組み合わせによっていかなきゃならないだろうというふうに思います。  その中で、技術の評価というのはどちらかといえば出来高払い制が向いているわけです。それに対して、施設関連経費といいますか、そうしたものを見ていくというのは定額制が向いているわけであります。施設関連経費をどう補てんしていくかというようなものは、これは定額制が向いているわけであります。その辺のところをどのように組み合わせていくかということが大事になります。こうしたことをひとつ十分に考慮して決定をするときには決定をしていただきたい、私は要望をしておきたいと思います。  あと五分になりましたので、そうしたことを主張いたしまして、そして、これらのことを含めてどうするかということをもう一遍お答えいただきたいと思います。
  148. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 今の御意見にありましたように、両方のよさ、また両方の欠点があるのは事実であります。しかしながら、今まで長く言われてきたことでありますので、出来高払い制度と定額・包括払い制度のよさを引き出せるような組み合わせをぜひとも考えて具体案を示したいと思っております。
  149. 坂口力

    ○坂口委員 もう一つだけつけ加えさせていただきたいと思いますが、薬の中でも漢方薬系統のものがございます。ややもいたしますと、これは保険を切られそうになるわけでございますが、だんだんと漢方薬に対する大学あたりの取り組みも多くなってまいりまして、大学の中で漢方薬の講座を持つようになりましたところ、漢方薬の外来を持つようになりましたところがふえてまいりました。また、漢方薬を使います一般診療機関もふえてまいりました。それも小さな診療機関ではなくて、公的な病院でかなりふえてきているわけでございます。そして、その人たちに聞きますと、漢方薬というのは非常に安くつく、ぜひこれは今後も拡大をしていきたいという気持ちの人が多いわけでございます。また、効果も非常に大きいというふうに言われる方がふえてきております。  ですから、これからの薬事行政の中で、漢方薬の問題も、漢方薬はもう切っていこうというような単純なことではなくて、やはり必要なものは取り入れていくということをぜひお願いしたい、これが一つの要望でございます。  それから、やり方によっては医療費をもっと抑えることができるのに、保険点数はその逆をいっているようなケースがあります。  先日もある大学の先生に私のところにお見えをいただきまして話を伺いました。それは、腎臓に対する治療の仕方でございます。腎機能が低下をしてもとに戻らなくなりますと腎透析を行わなければならなくなる。御承知のように、透析を行うようになりますと多額の医療費がかかるわけでございます。しかし、その大学の教授は、食事療法で腎臓の治療をしておみえになるわけでございます。別に難しいことではありません。低たんぱくと低食塩の療法で進めておみえになる。これで腎透析を受けずに済む人がたくさんいる。あるいは、受けなければならないけれども、それをうんとおくらすことが、四年も五年もおくらすことができるという人がたくさんいる。  ところが、その治療をやりますと、今の保険点数では月に千円ぐらいにしかならない。だから、大学病院だからやれるけれども、一般の病院で私と同じことをやれと言われたらやっていけません、だから、そんなにたくさん保険点数をつけてくれとは言いませんけれども、そういう治療方法で多額の医療費が要らないようにするためにはそれ相応の保険点数をつけてほしい、私は大学病院におりますから別にどうこうありません、しかしこういう治療を普及するためにはどうしてもしてほしいというお話がございました。そういうことは、やはり取り入れていただきたいと思うわけでございます。  さらにもう一つは、ドイツなどでも、クナイプ療法と申しまして非常に保養地療法を行っておるわけでございます。そして、できる限り治療を受けなくてもいいように、予防にこれ努めているわけでございます。そうしたことはやはり日本ももっと取り入れて、保養地医療などはうんとやっていいのではないか。  これは私が以前に触れましたけれども、厚生省日本健康開発財団を設立いたしまして、そこでクアハウスの名前だけは取り入れまして、そして温泉療法みたいなことをやっておりますけれども、これは医療とは全然かかわりのないことであります。そんなことをやっておりましてはいけません。そして、ドイツから、我々のやっておることと全然違うことを同じ名前でやっておるといって抗議を受けるというようなことが起こっているわけでありますので、そんなことではいけません。もう少しこれは考え直してもらいたいと思います。  以上、いろいろなことを申しましたけれども、そうした予防医学、あるいはまたそんなに多くの医療費を使わなくてもいいようになるような治療方法、そうしたことに対してもっと目を向ける、そういう努力がやはり必要ではないかということを指摘いたしまして、終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  150. 町村信孝

    町村委員長 石毛 子さん。
  151. 石毛えい子

    石毛委員 質問に立つまで待たせていただいた私も大分待ちくたびれたという思いがいたしますので、大臣ほか皆様も大変お疲れだと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。  まず最初に、今まで多くの委員の皆様が問題にしてこられましたが、私も、医療構造改革に関連しまして、確認の意味での質問を一点だけさせていただきたいと思います。  これまでのところで、薬価基準あり方ですとか診療報酬制度などについては多くの意見が出されましたし、あるいは病院医療機関の情報公開についても論議がなされましたけれども、具体的な方策はいろいろ検討の余地があると思いますが、医療における消費者としての患者の選択権と申しましょうか、あるいは被保険者としての医療保険制度への参加といった視点につきましてどのようにお考えになられますか、大臣にもう一度総括的な御所見をお伺いしたいと思います。
  152. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 患者さんを消費者という立場に置きかえてみると、今まではあらゆる産業において、どちらかといえば消費者よりも生産者重視の立場に立っていた、これからは消費者に対していかに配慮していくか、むしろ重視していくかというのが、今、経済界全体の一つの動きだと思います。  当然、生産者あって消費者あり、消費者あって生産者ありの立場なんですが、石油一つとってみても、かつては生産者が絶大な権力といいますか力を握っていて、値段も思うまま、そのいい例が石油危機であります。しかし、石油危機後はむしろ消費国の立場が非常に強くなって、必ずしも生産者の言うことを聞かなくなってきたという事態を見ても、医療の場においても、お医者さん、当然大事でありますけれども、患者さんの立場、消費者の立場、いろいろ情報を提供して、お医者さんと患者さんがお互い説明と合意ができるような環境を整えていくことがこれからの医療改革においてもぜひとも必要だと思います。
  153. 石毛えい子

    石毛委員 ありがとうございます。医療従事者の専門家の皆様、そして患者消費者、それから被保険者が、率直な表現を使わせていただきますと、対等に制度の運営に参画できるような、そういう方向で、医療構造改革においても大胆な政策の方向性の追求をぜひお願いしたいと思います。  それでは、具体的な質問に入らせていただきたいと思います。  四月五日の日経新聞を拝見しますと、奈良県の情報公開審査会が保険医療機関患者数や保険点数を記した一覧表の公開を答申したというふうに報道されております。この一覧表は、記事によりますと、厚生省保険局長の指導大綱に基づいて、都道府県が医療機関の診療報酬請求を適正にするために作成したものというふうに伺っております。奈良県の場合は固有名詞を伏せて開示というふうに新聞報道では出ておりますけれども、この辺の工夫は必要かと思いますが、奈良県だけではなく、各都道府県で保険医療機関についての情報公開をしていただきますと、それぞれ医療機関の皆様の医療費に対する御判断もしやすくなるといいましょうか、そして、今、消費者という表現を使わせていただきましたけれども、患者消費者としても、それを公にしていただければ一定の判断をさせていただける、そういう情報として意味があるというふうに思います。  この際、厚生省として、各都道府県について、今申し上げました情報を公開されるお考えがあるかどうか、私はしていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  154. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 医療機関に関する情報の提供といいますか、これは非常に重要なことでありますし、また、この委員会でもいろいろ御指摘がこれまでもあったところであります。  問題は、どういうふうな情報を消費者である患者さんに提供していくのがいいのかという、その中身の問題ではないかというふうに思います。当然、医療機関患者さんとの信頼関係という問題もございますし、そういった中で、いたずらに摩擦を起こすような格好は、これは必ずしも好ましくないであろう、しかし、患者さんに対する選択権なり、医療機関の情報の提供というものをやっていくということは、これは基本論として私ども今後大いに進めていくべき分野だと思っております。  ただ、今回のこのケースにつきまして、提供していくことはどうかなということについては、これはもっとよく検討させていただかなければいけないと思っております。  と申しますのは、このデータというのは、医療機関のいわゆる保険診療についての御理解を賜るという意味で、あるいはまた、保険診療に当たっての不当不正な請求や何かに対して監査とか指導というようなやり方はありますが、これはそういったものではありませんで、要するに、機械的に当該都道府県において上位八%に相当する、比較的高い請求をしている医療機関データをとっているということでありまして、それは必ずしも不当とか不正とかいうこととは何も関係ありません。  したがって、それぞれ医療機関において適正な診療をなされた上でそういうケースがありますし、そういった意味では、これは集団的個別指導という、何か非常に奇妙な呼び方で言っておるのですが、基本的にはやはり保険診療でございますから、保険のルールなり、そういったものに対する御理解を賜るというような趣旨で進めているものであります。  そういった意味で、今回のような、データをそのまま、そのままと申しますのは、もちろん医療機関の名前とかそういうのを伏せるにしましてもこういうものを出すということが、私は患者さんにとって有力な情報になるのかなというふうに思いますし、むしろ、医療機関サイドにとってはかなり誤解を生むようなことにもなりかねませんし、これはやはり慎重に考えさせていただきたいと思います。  基本論としては、今後、必要な医療機関の情報というものは患者である消費者が知り得る状況というものを広げていくべきである、このように考えております。
  155. 石毛えい子

    石毛委員 私ももちろん、その上位八%ないしは新聞報道では上位二四%というふうに書いてありますけれども、そこの範囲に入る部分が不当であるなどというふうに申し上げるつもりはございません。要するに、合理性があるかどうかという判断がなされればよろしいわけだというふうに、一言で要約して申し上げれば、そういうふうに思います。ですから、不当を洗い出すためにといいますよりは、あらゆるたくさんの情報を得て、そして、私たち消費者患者としましても学習をしながら、保険制度に対してどういう理解をし、そしてどういう医療に対する消費行動をとるかという意味では、抽象的な表現になりますけれども、大切なポイントになるのだというふうに思います。  私は、実際にはこの内容を存じませんので、今局長がおっしゃられましたことに対して具体的に反論をさせていただくような素材はございませんので、ぜひ、どういうものであるかということを私も勉強させていただきたいと思いますので、一件、件名を外しても結構ですから、こういうものであるということをお教えいただければありがたいと思いますけれども、その点はいかがでございましょうか。
  156. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 後日、御説明させていただきたいと思います。
  157. 石毛えい子

    石毛委員 ありがとうございます。それでは、この件に関しましてはよろしくお願いいたします。  少し角度を変えて質問をさせていただきたいと思いますけれども、今、私は、情報公開というのは、何のテーマに関して情報公開をするかということがおっしゃられるとおりに大変重要だと思いますけれども、情報公開が必要であるというふうに思いますのは、私どもの事務室で、都道府県別の医療費の地域格差につきまして、大変概略的な方法かもしれませんけれども、高齢化率ですとか受診率ですとか、あるいは医療従事者数ですとか、幾つかのファクターによりまして、医療費の高低を分析してみました。それがどのくらいの精度があるかというのは論点になるかと思いますけれども、なかなか興味深い。今の日本状況では、高齢化率が高いということが必ずしも医療費増には結びつかないというようなことがございます、これからはまたわかりませんけれども。  それで、大分以前から、医療費は西高東低だというのは、これは非常に有名な表現だと思いますけれども、では、なぜそうなっているかというようなことも、綿密な分析を踏まえて説明をされたことがないのではないかというふうに私は受けとめているのです。そういうことも含めまして、今、医療費の増大ということが大きな政策的テーマになっているわけですから、やはりきちっとした分析を踏まえて、医療費増嵩、今までの審議では、薬価の問題が大きく出てまいりましたけれども、そこを明らかにしていく必要があるのではないか。その大切な方法として、さまざまな情報を公開していただくということが、これは一般論でございますけれども、大変重要ではないかということを申し上げたかったわけでございます。
  158. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 実は、そういった医療費の分析と申しますか、比較的わかりやすく分析したものとして、私ども、医療費マップのようなものをつくっております。これは先生方にまで行き渡っていないとすればまことに申しわけないのですが、そういったものを、また後日、先ほどの件とあわせてお届けしたいと思っております。
  159. 石毛えい子

    石毛委員 それでは、その点もぜひよろしくお願いいたします。  いずれにいたしましても、かなり総合的に判断をしていかなければならないテーマだと思いますので、構造改革をする前に構造的な分析がどれだけされているかというのは大変重要な点ではないか。何かとても失礼なことかもしれませんけれども、申し上げさせていただきたいというふうに思いました。  それでは、時間の都合もありますので、途中の質問を少し割愛させていただきまして、薬価について少しお伺いしたいと思いますけれども、よろしくお願いいたします。  私は、薬価につきまして、一貫して情報公開ということにこだわっているわけでございますけれども、今ずっとこの委員会で課題になっておりました、薬剤費が非常に多い、薬価が高いのではないか、薬剤投与量が多いのではないか、そういう議論がされてまいりましたけれども、それに関連しまして、薬剤費の支払いにつきまして、診療報酬の中での薬剤費の支払いシステムをもっと透明化していく必要があるのではないかということを申し上げたいと思います。  実は、本当に初歩的な方法かもしれませんけれども、厚生省で発表しておられます「薬剤使用状況の概要」を拝見しました。私は、これを拝見しまして、非常に驚きました。何に驚いたかといいますと、日本医療費の中で薬剤比率が高いというようなことはもう再々申されてまいりましたので繰り返しませんけれども、一種類二百五円以下の薬剤の使用率が非常に高いということに驚きました。  ちなみに、薬価階級別薬剤点数の構成割合というのでございますけれども、十五歳から三十九歳でも七九・四%、七十歳以上の高齢者の方になりますと、ほぼ八五%が一種類当たり二百五円以下の薬剤、しかも、その二百五円以下の薬剤の中で、薬価不明という、レセプトに記入されていて薬価が幾らだかわからないという割合が三五、六%あるという、そういうデータを拝見しております。  それで、その二百五円以下の薬剤については、名称とか数量を今の支払い請求事務では明らかにする必要がない、これはよろしゅうございますね。
  160. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 この概要のまとめ方が、実を言いますと、ここで御説明するとややこしくなるのでちょっと省きますが、コンシューマーの誤解を呼ぶような格好になっていまして、必ずしも適当でない面がございます。二百五円以下、これは薬価不明ということで三六・六%というトータールで出ておりますが、これはまさに、何種類出していても合計した薬価が二百五円以下であれば、ここに書いてある三六・六%に相当する形になっております。  これはどういうことかと申しますと、今先生指摘のとおり、診療報酬の請求に当たりまして、購入価格が二百五円以下の場合については、その薬の名前とか規格単位あるいは投与量を、摘要欄が請求書の中にあるのですが、ここに記載する必要がないということになっておるものですから、普通、そういった場合には薬価不明の分類に入ってしまうということでありまして、これはまさに請求書上の問題と裏腹の関係でこういう整理をされております。
  161. 石毛えい子

    石毛委員 その件に関しましては、そういう御説明をいただいたということにしまして、今申し上げましたのは点数の中での割合ですから、種類の中での割合というのとは若干違うと思いますけれども、点数の割合の中で二百五円以下が非常に多くて、しかも、それについて名称を書かなくてもいい、あるいは数量を書かなくてもいいという今の仕組みはやはり問題があるのではないか。  それに関連しまして、ぜひお教えいただきたいのは、この二百五円という金額で区切っている理由はどういうことなんでしょうかということが一つ。  それから、今の原案での一種類十五円というのは、私は賛成いたしかねますという立場でございますけれども、仮に一種類十五円ということ、あるいは薬価の一部負担が新しく導入されました場合には、今の、薬剤の名称を書かなくてもいいとか、量を書かなくてもいいとかというのは変わっていくのでしょうか、全部明らかにされていくということになるのでしょうか。
  162. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 最初に、二百五円というのがどういうような金額を意味するのかということでありますが、過去はもう少し低い金額でありました。これが今二百五円になっておりますけれども、これはひとえに、請求書、いわゆるレセプトの記載の簡素化といいますか、そういう角度から、中医協の中でこういうような御審議が行われ、二百五円というのが決まっておるということの経緯を申し上げさせていただきたいと思います。二百五円というのが、この額であるというのは、ちょっと私どもも、申しわけないのですが、実は現段階ではっきりしておりません。  それで、今度の一種類一日十五円という取り扱いが導入された場合に、二百五円以下の場合は何種類出ていても一種類という計算をすることになっておりますから、そういった意味では十五円負担いただく、一種類一日十五円負担していただくという格好になります。  それで、請求書の書き方については、今のところ、これを変えるという形は考えておりません。ただ、今後、仮に政府案が成立した場合に、非常に請求事務が煩雑である、あるいは徴収事務が煩雑であるという御批判もございますし、そういった中で工夫をしなければいけないという問題があるかもしれませんけれども、請求書の簡素化、請求に当たっての簡素化という観点で考えますと、このところは、今回仮に導入されても変わらないということになるのではないかと思います。
  163. 石毛えい子

    石毛委員 何種類出ていても一種類として扱って十五円ということでよろしいのですか。  そうすると、医療費として出てくる薬剤は、種類分だけ出てくるわけですね。患者さんの側の自己負担が、一種類として十五円だけですよということですね。それはある意味では、自己負担額を少なくするということの政策的な手だてかもしれませんけれども、何種類使っていてもということになりますと、種類はふえていくことになりませんか。それは病気に適切な薬というのが、質と量が何なのかという判断がありますから、そう軽々に言ってしまってはいけないのだと思いますけれども。ただ、種類も書かない、それから名前も書かないとかというふうになってくると、医療費としての薬剤費がふえていくということに対しては抑制力があるのでしょうか。
  164. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 今度の、薬で御負担いただく際の考え方とも絡みますけれども、それはもう一つには、まさに現在の請求上の取り扱いというものとの関係もやはり考えておかなきゃいけない、現在の請求上の取り扱いが、まさに二百五円以下である場合には今申し上げたような扱い方でやっておりますので、それに乗っかった形で今回の一部負担も計算する方が、少なくとも医療機関サイドにとってもわかりやすいのではないか、そういうような配慮でございます。
  165. 石毛えい子

    石毛委員 わかりやすいということは私も理解できます。ただ、そういう方法で果たして医療費全体の抑制効果になるのかどうかというのがいま一つ理解できません。  それは、二百五円以下の分が今までの薬剤費支出の実績からどういうふうに動くだろう、それから高薬価の場合に、今まで議論になっていましたように、市場価格を導入していった場合にどうなるだろうという、そうした全体像をもうちょっと示していただかないと、私の今の理解では、今までと同じような方式で、そこが、とても失礼な表現かもしれませんけれども、ブラックボックスに入っているのでしたらば、二百五円以下の薬剤費について薬剤費節減にはならないのではないか、ならないおそれがあるのではないかと言った方が正確かもしれませんけれども、そういう認識をせざるを得ないのですが、間違っていますでしょうか。
  166. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 薬の一部負担については、薬の適正使用ということに寄与できるようなシステムが一番いいわけでありまして、そういったやり方としてベストのものは何かということになるのですが、一方、現実に一部負担をいただくということになった場合の実務上の問題点等もやはり考慮しないといけないという問題がございます。  それから、これは薬剤費抑制というとちょっと言葉の使い方として、私どもはそういう言い方よりむしろ、いわゆる受益と負担の公平というのが一部負担のそもそもの基本論だと思います。そういった意味で、薬をいただいた場合に、それに対する、受益を受けたことに対する負担というのをお願いし、そのことがひいてはコスト意識というものにつながっていく、こういうような考え方をしておりまして、それによって何か薬剤費を抑制するというふうなストレートな言い方は私ども考えていないのですが、むしろ、コスト意識を持っていただくというような考え方なのでございます。
  167. 石毛えい子

    石毛委員 私の理解力が乏しいのでしょうか。  ちょっと話題を変えまして、この委員会でも議論になっていましたけれども、今、処方せん薬局に伺いますと、薬剤師さんが、それは二百五円以下であろうとなかろうと、こういうお薬を出しますというのを書いてくださいますよね。書いてくださるということは、二百五円以下についても薬の名称と、それから、どれだけの種類かというのは明らかにできるシステムになっているということですよね。そのことがはっきり、それこそ消費者である患者に理解されたときにコスト意識が出てくるわけですよね。  ですから、それは全面的に適用していただいて、請求のところもきちっとそこに出していただいて、そしてコスト意識が働いて、自分はこれほどの薬は要らないのではないかというふうになっていくときに初めて、薬に対するコンシューマーとしての、消費者の態度が形成され、決定されるということだと思うのですね。  ですから、私は、もう道の半分までは来ているのだと思いますから、あと一歩のところで、種類と名称を明らかにしていただいて、そして、失礼な表現だと困るのですけれども、不合理なと言ったらよろしいでしょうか、不合理な薬剤費が出ないように全体のシステムを整理するということが必要なのではないかということを私は考えましたということなんです。
  168. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 一方の実務上の請求行為というものをこちらに置いた場合には、まさに先生指摘のとおり、先生の御主張が極めて合理的であると思いますし、私もそう思いますが、もう一つ、現実に今、レセプトの請求というのをやっております。また、そういう請求行為の中で、二百五円以下の取り扱いというものをそういう格好で決めております。その決め方は、まさに請求行為における請求事務の簡素化ということでございます。我々は、そちらの方の要素も加味して考えていかなければならないというふうな判断をしておりまして、そういった意味で、まさに理論的な面からは先生の御指摘のとおりでありますけれども、実務上の面も考慮いたしますと、今回のような取り扱いが一番理解が得やすいのじゃないか、特にその請求行為をやっておる医療機関サイドにおいては。それで患者さんの方は、負担という面では、一種類ということになりますから、むしろ軽い負担になる。これは結局、トータルして二百五円以下というのは比較的低額の薬が出ているということでありますから。  そういった点を考えた場合に、請求事務、それからまた実際のコスト意識という面等々を加味しますと、このような考え方になっているわけでありまして、そういった意味では、必ずしも純理論的に歯切れがいい話ではないというふうに思いながら御説明しておるのですが、そういうことで御理解賜りたいと思います。
  169. 石毛えい子

    石毛委員 大変恐縮ですけれども、全体のシステムの簡素合理化、効率化がどういうふうになって、今局長がおっしゃられたように、どちらをとった方がパフォーマンスがいいかということをもう少し明らかにしていただかなければ、私は、理解いたしましたというふうには申し上げられませんので、そういうふうに御了解いただければと思います。  そして、もう時間もなくなりましたので、私の質問の最後の方の部分ですが、私は、高齢者医療に今限定して申し上げたいと思いますけれども、負担がふえていくという状況になっていくときに、もう一度、現代の社会で、高齢者の貧困という問題をどう考えるかということが重要なテーマになってきているのだろうというふうに思います。  御承知のように、高齢者の方の家族形態はひとり暮らしとか二人暮らしとか、高齢核家族と言われている家族が、大都市を中心にですがもう六割に近い、全体とすれば五割近い。ですから、経済的に、いや応なく自前で自分の生活を営まなければならない高齢者の方々が大変多くなっていて、今までのように息子夫婦とかに依存できるという、そういう状況とは変わってきている。  そういう中で、今の医療費にかかわる減免の基準というのは老齢福祉年金が一応基本になるわけですけれども、それでは大変低いのではないか。むしろ私は、減免の基準を思い切って、生活保護基準にはいろいろな生活費が含まれていますから、御存じのとおり生活保護には租税公課はないわけですから、そこぐらいまで引き上げるというようなことを、高齢者の方々の生活の実態を見詰めながら総体として見直すべき必要があるのではないか。それから、もしそれが無理であるなら、老齢福祉年金の水準、今七万円弱ぐらいですね、そこのあたりまで見直していく必要があるのではないか。  それは、扶養をどう見るかとか、さまざまな複雑な要因がかかわりますから単純には申せないと思いますけれども、いずれにしましても、医療費の自己負担の問題と、それから、高齢者の現在の経済力格差をどう見るかというのは、今、大変重要な問題として生起しているというふうに考えておりますけれども、この点に関しましては、どなたでも結構でございますからお答えをいただければと思います。
  170. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 今先生の方から、高齢者の置かれている社会経済状態等も勘案をして、例えば今回の老人保健の改正における負担といった面について特段の配慮をすべきではないかという御趣旨のお尋ねがございました。  高齢者の方々の一般的な経済状況につきましては、先般来お答えを申し上げておりますように、年金水準等の上昇によりまして若人とだんだん遜色のない水準になりつつございますし、それから、一人当たりの可処分所得等で見ましたばらつきと申しますか分布につきましても、若人の場合の分布とそれほど大きな差はないという状況になってきております。  しかしながら、お年寄りにつきましては、医療の面でいけば、非常に病気にかかりやすい、あるいは慢性化をたどりやすいというような要因もございますし、先生今おっしゃったように、ひとり暮らしの老人というようなことを考えますと、その置かれた境遇そのものが社会的に非常に心配が多いということもございます。しかし一面、若人は若人で、ちょうど子供たちを扶養しなければならぬというような世代にかかるときの経済的な負担というものもございますから、そこらは双方にやはり経済的な問題というのはあると思います。  そういう中で、今回の一部負担につきましては、若人の方々につきましても、御案内のように、これだけ医療費がふえてきた、その医療費のふえてきた大きなものは老人医療費でございますけれども、一割の負担を二割にお願いするということの中で、高齢者の方々にも、今申し上げましたような社会経済状態の変化というようなものも考えまして、世代間の負担の公平というような観点からもこの程度の御負担をお願いしたいということでお願いしているものでございます。その際も、若人と全く同じ負担という形にしませんで、一応今回のあれからいえば、若人の、現役世代の二割の半分の一割ぐらいを一つ水準にしながら、しかしそれも、さらに急激な負担増に伴う影響というものも考えて、総体でいえば八・八%という水準にとどめるというような形で今回お願いをいたしております。  したがいまして、こういう中での負担ということであれば、これは御負担をお願いをするに、それは負担でございますから決して気安くお願いをするという性格のものではございませんけれども、妥当なものではなかろうか。保険でございますから、それぞれの負担において賄われている制度ということを考えるならば、いけるのではないか。  そうした中で、そうしても例外的に配慮をするということで考えますと、現行制度でもやっておりますような、老齢福祉年金の受給者についての配慮というような形で現在やっています。ここらあたりが保険制度として対応できる一つの線ではなかろうかというふうに考えておりますし、また、外来につきましては四回というような形での制限もつけておりますので、こういったいろいろな配慮ということの中で対応していくというのが今回の考え方であり、また、保険制度を考えていきます場合に、そのくらいのところでお願いをするのが、厳しいことではございますけれども、妥当な水準ではなかろうか、こんなふうに考えて御提案を申し上げている次第でございます。
  171. 石毛えい子

    石毛委員 いずれにいたしましても、医療保険も社会保障制度でございますから、所得の再分配機能をどういうふうに考えるかというのは大変重要な課題としてあると思いますし、構造改革との連関の中にあるわけですから、ぜひこの点も――高齢者が負担をするということに対して、私は反対をしているわけではございません。どういう構造的な負担のあり方を見つけていくかということでこれからもっと論議をしていきたいということで申し上げましたので、御了解をいただきたいと思います。  質問を終わります。ありがとうございました。
  172. 町村信孝

    町村委員長 中桐伸五君。
  173. 中桐伸五

    中桐委員 中桐です。  私が用意した質問の前に、先ほどの石毛さんの質問に関連して、さらに前回ですか、五島議員が質問したこととの回答の点で、高木保険局長がお答えになったことで少し食い違いがあるのではないかと思うので、それをまずただしてから私の質問に入りたいと思うのです。  薬剤の負担の問題でありますが、一日三回食後に服用する二種類のAとBという薬が出て、その薬が、Aは胃薬としましょうか、Bは風邪薬としまして、Aは三種類の胃薬、Bは四種類の風邪薬といたします。しかも、Aが二百円の薬でBが合計五十円の薬としますと、先ほどの高木局長のお答えですと、AとBはいずれも二百五円以内であるから、一剤で考えて、それぞれ十五円ずつ負担をとる、つまり三十円というふうにお答えになったと思うのですが、五島議員の質問のときには、たしか、Aが三種類あるいはBが四種類ですから、七種類掛ける十五円で百五円というふうにお答えになったように思うのです。この点についてどのように考えたらよろしいのか。
  174. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 まず、剤と種類という、ここはとかく混乱しがちなのですが、今回は剤という考え方ではありませんで、種類。剤ということになりますと、例えば、一日三回飲む薬がある、それを二種類もらった、それからもう一方、一日二回飲んでくださいという薬を三種類もらったという場合、二剤ということになると思うのですね。今回は剤ということではありませんで、種類でありますから、今の一日三回飲む薬を二種類もらい、一日二回飲む薬を三種類もらえば五種類ということになりますから、一種類につき一日十五円掛ける。ただし、五島先生の御質問のときも、トータルとして二百五円以上になると思いますからということで申し上げたわけであります。ところが、価格が二百五円以下であれば、それは一種類という格好で計算するわけでございます。
  175. 中桐伸五

    中桐委員 わかりました。そのように理解して進めたいというふうに思います。  それでは、きょう私が用意した質問に移りたいと思います。  前回、衆議院の本会議で厚生大臣に質疑をさせていただきましたが、それに関連をいたしましてさらにもう少し詳しく質疑をしたいということが一つ。それから、今回の政府案は、あるいはこれから医療構造改革という形で進めていくにいたしましても、それぞれ国民各層に相当の自己負担等も考えていただかなければいけないということがこれあると思うのですが、その点について、私どもも医療構造改革の第一歩としてこの政府案を考えていきたいというふうに思うのですが、そういう意味でいいますと、国民各層に相当の負担をお願いするということをこれからも進めてまいらなければならないということになりますと、医療における信頼性を高めていくということ、あるいは医療サービスにおける、特に医者と患者の関係におきましては、どうしても医師患者という立場になりますと対等という関係がなかなかとりにくい、つまり、患者の立場になったときには相対的に対等になりにくいということがあると思うので、そういう意味からいいますと、患者あるいは医療サービスを受ける方々に対するサービスの向上、医療情報の透明性といいますか、そういったことは大変重要になってくると思うのですね。  その点で、まず第一点ですが、臨時国会に医療法の一部改正案が出されておりますが、この中に、医療従事者は適切な説明を行って、そして医療を受ける者の理解を得るということを、努力規定としてということはありますが、新たにこういう点を求めたということについては一歩前進だというふうに評価できます。しかし、かなり医師患者の間の密室性の高い、サービスの提供者とそれを受ける者との間の関係ということを考えたときに、この規定がどのような実効性を持って実行されるかということが重要な点になろうかと思います。  そういう点で、医療法の一部改正が通過した場合に、このような規定の医療法改定でどのようにインフォームド・コンセントが実効性を持って導入されるだろうかという点について、厚生大臣に御見解を伺いたいというふうに思います。
  176. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 今お触れになりましたように、医療法の一部を改正する法律案の中で、医療提供者あるいは医療の担い手は、医療を提供するに当たって、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努める旨の努力規定を位置づけております。医療従事者側からの情報提供ということが非常に大事だということは、この委員会でも再三御指摘をされておりますし、また、医療というものが患者との信頼関係に基づいて提供されるということが基本であるということも私ども認識をしています。  この努力規定ということによって実効性がどうかということが先生の直接のお尋ねでございました。私どもとしては、このことを規定することによって、今後、患者さんへの適切な説明が一層推進されるということ、それから一方、患者さん側からも、みずから医療に参加をするというのでしょうか、そういうような観点から、医師に積極的な情報提供を求める、そういう風潮といいますか、そういう行動がより積極的に現場において進むということを期待したいというふうに思っております。
  177. 中桐伸五

    中桐委員 これは健保連が調べたアンケート調査という限界はありますけれども、もう御存じだと思いますが、紹介しておきますと、病状とか治療について十分説明をしてもらえなかったと回答した回答者が四七・一%という結果が出ておりまして、これは二人に一人は十分に納得できていない。この十分ということがどの程度のものかというアンケートにつきもののあいまいなところはありますが、相当これは高い率だというふうに理解しなければいけないと思うのです。  そう考えますと、先ほどの政策局長のお答えは、期待したいということなんですが、私も期待したいのですが、やはりインフォームド・コンセントを担保できるシステムを工夫する必要があるのではないかと思うのですね。ただ法律で書いたのでいいかということでありまして、そこを少し議論したいというふうに思います。  その点との関連で、私の二つ目の質問とも関連がありますが、先ほど申し上げましたように、医者と患者の関係というのはどうも対等になりにくいわけです。そうかといって、訴訟というふうな形で、裁判というふうな形でいきなり医師患者のトラブルを処理するというのもいかがなものかというふうに思うわけです。  そこで、本会議で、患者の権利保障という点について厚生大臣に私は質疑をさせていただきましたところ、大臣から、これは正確に会議録を手にしておりませんのでアバウトでありますが、医療提供者と受ける者との信頼関係の向上にとって、この患者の権利保障というのが有効かどうか、今後慎重に検討していく旨答弁があったと思うのですが、この点についてさらにもう少し詳しく、これは私が大臣の答弁を受けたので、ぜひ大臣にそのあたりを伺いたいと思うのです。
  178. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 私は、患者の権利の保障というのは法律に明記した方がいいのかどうか。医者と患者というのはまさに信頼関係じゃないでしょうか。だからこそ、努力規定に私は意味があるのだと思うのです。  そして、患者にとっても医師にとってもさまざまです。患者は、努力規定がなくたって、堂々と医師に何でも聞いて説明を求める患者さんもおられるでしょうし、場合によっては、気が弱くて聞きたいことも聞けないという患者さんもおるでしょう。医師でも、非常に横柄な医師もいれば、本当に親切な、細やかな配慮をしてくれる医師もいる。場合によっては、医者はうそをつかなければならない場合がある。それは、がんの例なんか見れば明らかなように、絶対本人にはがんと言わないでくださいという家族はいまだに結構いる。患者は、どうしても本当のことを言ってくれと。医者は本当のことを言った方がいいのかうそを言った方がいいのか、これは本当に深刻な問題だと思います。  私は、患者の権利の保障ということは大変大事な問題でありますけれども、その前に説明と同意という、医師患者も信頼関係で、患者さんも医師に対して堂々と説明を求める、医師患者さんに対して丁寧に親切に説明するのが当たり前だという環境をまず整えていくのが今の時点ではいいのではないかな、そう思います。
  179. 中桐伸五

    中桐委員 私も、そういうことが、説明をして同意を得るという努力が、これは医者が怠慢であるかどうかという問題、ストレートの問題ではなくて、要するに三時間待ち三分診療という現状の問題があると思うので、そういう中で先ほどのアンケートにも出てきたような結果があると思うのですね。ですから、そこで患者の権利というものを行政とかあるいは社会のシステムの中でもう少しサポートする必要があるというふうに私は思うのですね。  というのは、私も医者の経験がありますから、これはやはり、患者の立場で医者と面しているときと、それから健康な状態で医者と話をしているときでは、全く違う関係が生じるわけですよね。ですから、そのことを考えたときに、先ほど私が申し上げましたように、裁判とかそういう形ではない、医療過誤、医療ミスに対する裁判という形ではない形で、何かのサポートを工夫してつくる必要があるのではないかというふうに私は思うわけです。  そこで、例えば医師法に明らかに規定されているようなことを違反しているとか、あるいは医療法に規定しているような内容を違反している、こういったことについてははっきりと摘発できると思うのですね。しかし、サービスが十分行われていない、誠実でない、先ほどの話ですね、そういうところは非常に難しいと思いますね。しかし、その場合にも、今の患者医師の関係というのはどうも対等になりにくいわけでありますから、そしてまた将来もこの対等というのはなかなか難しい問題ですから、非常に迅速に、しかも、余り摘発型ではない形で医者にも患者の不満の情報を提供できるような仕組み。例えば、Aさんという人が、あなたの説明は非常に不十分だと言って怒っているというふうな形で言いますと、これはAさんにも被害が及ぶかもしれませんし、医者の対応が何か変わってくるかもしれません。ですから、そこは、どこそこの人がというのではない形で、しかし、何かどうもインフォームド・コンセントに苦情が来ていますよというふうな形で、何件おたくはありましたよというふうな情報を提供する。そうすれば、少しインフォームド・コンセントを充実させようかという努力が始まるのではないかというふうなことですね。つまり、そういう仕組みをできるだけ早く導入することを考えたらどうかというのが私の考えです。  その中で、今、具体的にいろいろどういうシステム日本であるかということを考えてみますと、例えば具体的に国ということを考えてみますと、国立病院というのがあります。これは厚生省が直接責任を持って運営をしている。この国立病院医療サービスの中でもし苦情が発生した場合、その処理をどのような形でするかということを仮に考えてみる。そうした場合に、今、社会的システムとしては総務庁が行政相談委員というシステムを動かしている。これは約五千人少々の相談委員が全国におられる。平成七年度で見てみますと、すべての行政相談事案というのが十四万三千九百十五件ある。その中で、衛生行政といいましても、これは環境衛生とかあるいは保健医療、医事、薬事など非常に幅広い分野の相談を一まとめにして分類されているだけなので、具体的に医者と患者の間のどのような苦情が上がってきたかというのはわからないのです。しかし、大ざっぱに衛生行政に関しての苦情ということでいいますと、平成七年度に十四万三千九百十五件中八千四百六十三件あった。これはパーセントにすると五・九%、約六%ある。これが、全部医者と患者の間の苦情かどうかは、先ほどの統計のまとめ方の問題ですので定かにはわからない。  こういう行政相談というものがある中で、実は国立病院でもこの件数があったかもしれないのですが、わからない。それでは、そういう場合、行政相談委員と、国立病院の苦情処理システムというのですか、そういったものとの関係はいかがなものか、まずお聞きしたいと思います。     〔委員長退席、住委員長代理着席〕
  180. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 まず、国立病院に対する苦情ですが、先生がおっしゃられましたような苦情処理システムと言えるかどうかということについては内心じくじたるものがありますけれども、国立病院・療養所としては、医療機関に対する苦情というのは大変重要なことだと思っておりまして、実は投書箱を設置いたしております。そして、その苦情内容については各部門の責任者が適切に対応すると同時に、その苦情については全部、病院の管理者まで目を通すということにいたしておりますし、また、その投書者の名前がわかる、だれかと特定できる場合には、その方にも御返事をするという仕組みを持っておるところでございます。  それは病院へ直接苦情が来た場合ですが、今先生がおっしゃられましたように、行政相談委員の方に上がった苦情については、国立病院といって、国だから地方の苦情は受け付けませんなんということではなくて、それは地域医療としてやっているわけですから、その行政相談委員お話も、当然、管理者としては聞かせていただくわけでございます。  それで、今先生がおっしゃられましたように、医者と患者との関係は対等でない、そういう面があると思いますけれども、私ども国立病院といっても医療サービスをやっているところですから、患者さんが医療機関を自由に選択できるという社会では、これは病院のサービスとしては大変重要なことでございまして、実はことしの院長療養所長会議には政務次官にわざわざお出をいただきまして、医者の目の高さは患者の目の高さと合わせなさい、決して威張ってはいけませんよということを、政務次官からわざわざ院長に御注意を、お願いをいたしました。そして、そういうことをやっていただきました。  それから、今ここに持ってまいりましたのは「PS読本」という、ぺーシェント・サティスファクションを大事にするということで、これを私ども病院部の方で昨年の九月一日につくったわけですけれども、これをつくって各病院の職員全員に読ませているわけです。この中でいきますと、「医療とは本来、医療技術とともに安心と満足を提供するサービスでなければなりません。」ということを病院職員みんなに教えるようにしておりますし、それから第二章では「患者さんの不満を探る」ということで、病院の職員として患者さんに対応する、こういう個々の職員の教育に対しても一生懸命力を入れて、国立病院国民の皆さんに喜んでいただける医療機関になるように一生懸命努力をいたしております。
  181. 中桐伸五

    中桐委員 国立病院の方では大変努力をされているということはよくわかりました。  問題は、難しいのは、自治体病院は公立病院ですから、これも行政が、厚生省がおやりになっているような形でアクションを起こすことはできると思うのですが、これは各地方自治の中で行われていく新しいことであろうと思うのですが、一般の病院になると、厚生省がちょっとなかなかそこまではいけないという問題が、これは各国ともあるようであります。  さて、そこで問題ですが、社会保険システムはほぼ国の税を投入しているシステムとなっておりますから、自立しているところもありますが、多くは公的なシステムということになる。これから非常に厳しい状況の中で、何度も申し上げますが、自己負担は来るけれどもサービスが向上しないのでは困る。  そこで、そういう医療に対する透明性を高めたり、あるいはそのサービスの向上を促進するために、一般の病院も含めた何かシステムがあってもいいのではないか。これは、余り無理を言っているとも思えない。例えば、介護保険制度であれば国民健康保険都道府県連合会に苦情処理のようなものをつくるというふうなことが議論されておりますが、そのようなことから考えますと、やはりこれは、一般病院と被保険者の間にもそういうものがあってもいいのではないかと思います。その点で厚生省は、直下の国立病院というものとは違う工夫が要るとは思いますけれども、今後、どのようなことをこの点で考えようとされているか、お聞きしたいと思います。
  182. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 今お話ございました、国立病院以外の全国の医療機関における苦情といいますか、あるいはそういう問題事例というようなものを行政が把握するのかどうかということが一つあろうかと思います。  先生承知のように、かつて私ども、各県に、各県で医療一一〇番をつくれ、電話による相談を受け付けろという通知を出したことがございます。昭和六十年よりちょっと前の時代だったと思います。そのこと自体は、まだ通知としては生きているわけでございますが、ただ、各県それぞれいろいろな取り組みをしていると思いますけれども、私ども思いますに、基本的に、もし行政ということであれば、都道府県単位での医療主管あるいは医療保険主管の担当において、それぞれまず一義的に対応するのではないかというふうに思います。  ただ、一方、民間病院あるいは一般病院も含めてということであれば、一つは、病院関係団体が中心になってそういったような、国立病院等の例が紹介されましたけれども、そういうそれぞれの病院に、病院自身の対応としてやっていくということを働きかけるべきなのではないかというようにも思っております。
  183. 中桐伸五

    中桐委員 それは一つの前向きな方向性として大変重要だと思いますので、そういう方向でぜひ検討していただきたいと思います。  医療を提供する提供者側がそういうポジティブなアクションをするということが大変重要なことだと私は思います。それで、時間が余りありませんので、ポジティブアクションも含めて少し議論を進めていきたいというふうに思うのです。  先ほど厚生大臣も、信頼関係をより強化していく方が重要だと。これはポジティブなものをつくっていこうということですから、それが重要だということは私も同感であります。しかし、現に医療監視という形で、医療機関に対してベーシックな、基本的な監視が行われている。この医療監視に基づく結果を公表することも、情報公開としては一つの方法ではあると思う、これが必ずしも十分であるかどうかは別といたしまして。病院のサービスの質まで患者あるいは市民が評価できるかということになれば、これは十分これから検討が要るのだろうと思うのですが、しかし、いずれにしても、網羅的に医療機関に対する監視をしている。この結果をもとにして、ある研究会が、精神病院の事情について、例えば、常勤医者一人当たりのベッド数だとか、ベッド当たりの外来数であるとか、医者以外の従業員一人当たりのベッド数であるとか、そういったことをこういうグラフにして、しかも、年次でどういうふうに推移したかというようなデータをまとめている。これは、せっかくの情報ですから、一研究会がやるようなものではなくて、できれば行政でもってこういうことをやってもいいのではないかというふうに思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。
  184. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 医療監視につきましては、都道府県で、基本的にそれぞれの県が計画を立ててやっているということでございます。今先生がおっしゃいましたのは、それぞれの、一つ一つ病院についてその結果を公表するという趣旨だというふうに理解をしましたけれども、現在の医療監視そのものが、すべてを公表するという前提になっておりません。御承知のとおりでございます。  ただ、私どもとしては、医療監視を行った結果、不法あるいはまた不当な行為に関するもので特に必要と認められる場合については、平成三年に決められました情報公開基準というのがございますが、これに基づいて公開することもあり得るというふうに考えております。
  185. 中桐伸五

    中桐委員 さらに、その情報公開基準というものを、今後どういうふうに具体的に医療機関に関する情報として検討するかということを今後の課題としたいと思いますが、もし、今の医療法の枠内では公表が十分できないとするならば、これは医療法の改定も含めて、今後、どういう情報を提供するかというふうなことも検討してみる価値があるのではないかというふうに考えております。  また、これは別の質問者が質問されたことですが、日本医療機能評価機構という財団法人ができておるということもありますから、こういったところで、病院あるいは医療機関の機能評価をどういう点でやっていくかということを、適切な情報に関する研究を進めていただいて、そういう成果を今後の医療監視のようなものの中にも入れていただくとか、あるいは、専門家は専門家でないとわからないというところがあると思うので、そういう点での、専門家自身が、医療提供者自身が自分たちのサービスを自主的に評価していけるようなチェックポイントなりガイドラインなり参考資料なり、そういったものを厚生省にはぜひ今後検討してつくっていただくということをお願いいたしまして、時間が参りましたので、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  186. 住博司

    ○住委員長代理 児玉健次君。
  187. 児玉健次

    児玉委員 日本共産党の児玉健次です。  国民に二兆円の負担増を求めるこの重要な内容の法案審議を、私は、一つ一つ問題点を明らかにしていく、そういう立場で真剣な論議を進めていきたい、こう思います。  健康保険法に基づく審議ですから、私は、健康保険法そのものとの関連で一つ政府に確かめておきたいことがあります。一九八四年に健康保険の一割自己負担が導入された際、新たに附則六十三条が加えられました。そこではこう述べている。  政府は、新健保法施行後の医療費の動向、国民負担の推移、財政事情等各般の状況を勘案し、健康保険制度の全般に関する検討を行い、その結果に基づいて、社会保険各法に規定する被扶養者及び国民健康保険の被保険者の医療に係る給付の割合を百分の八十とするよう必要な措置を講ずるものとする。 と明記されています。  十三年ぶりの大きな改定を皆さんが提起されている。この提起されている案を皆さんが検討される過程で、今の点について検討されたか、されなかったか、その事実の有無を聞きたいと思います。
  188. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 まず、今回の改正に当たりまして、医療保険審議会でおおむね二年間にわたっていろいろ御審議が行われてまいりましたけれども、その建議が昨年十一月二十七日に出されております。そういった中で、このように建議がなされております。「今後、各制度を通じ適切な実効給付率とすることとし、法定給付率についても将来的に統一を目指す。」こういうふうな建議をいただいております。今回の改正は、抜本的な改革を今後引き続きやっていくということを前提にして、医療保険制度の財政の安定をまず図っていきたいということでお願いをしているわけでありますが、そういった意味では、この給付率の問題、これは審議会の中でも議論され、そして、建議でもただいま御紹介しましたような形でいただいておるわけであります。  ただ、こういうふうな状況の中であります。したがって、今回の改正にはもちろんこれが入っておりませんが、今後、抜本的な改革を進めていく中で、当然のことながら、高齢者の医療制度あり方、それからまた保険集団、とりわけ国民健康保険制度保険集団というもののあり方、これは検討をし、抜本的な見直しをしなければいけないというふうに思っております。そういった中で、財政的な問題等も踏まえながら、今後、どういう形でこの給付率を考えていくべきなのかということについて、検討をし、答えを出していかなければいけない、このように考えております。
  189. 児玉健次

    児玉委員 要は、今度の十三年ぶりの改革にあって、その問題は先に送ったということですね。  そこで言いたいのです。今、私たちが直面しているのは、健康保険財政をどうやって再建するか。私は、前回の質問のとき、あえて、どうやって民主的に再建するか、国民の立場で再建するか、これは可能だと。そして、その課題を先送りすることは許されないだろう、こう思っています。  「隗より始めよ」という言葉があります。何か大きな仕事をやろうとするとき、御本人が真っ先に、自分で何ができるかを真剣に検討しなければいけない。ところが、国保を例にとってみるとどうかというと、皆さんからいただいた資料によれば、九四年度の国保の赤字は千三百七十億円、九五年度、これは見込みですが、千六十九億円です。そして、今回、皆さんが健康保険の大きな国民負担増を押しつけるそのとき、「隗より始めよ」というのだけれども、政府自身は、国民健康保険について千三百七十億円、国庫負担を減じておりますね。これは九四年度の国保の赤字と同じですよ。赤字をどうやって埋めようかとするとき、そのとき国として何ができるか。財政状況はさまざまにあるけれども、しかし、その赤字を埋めるのを国民にすべてゆだねるというのでは、これは国民は全く納得しませんね。  けさの朝日新聞、なかなか興味ある記事が出ている。その多くの部分について私は必ずしも同感はしないけれども、しかし、その中でこう述べている。「こんなに国民に負担増ばかり求めている法案は、長い医療保険の歴史でも珍しい。」まさに珍しいと思うのです。  それで、この国民負担増を回避する道はどこにあるのか、そこをきょうは議論したいと思うのです。  まず第一に取り上げたいのが、薬剤負担を中心とする問題です。  厚生省がお出しになっているこの資料、もしこの案が実施されるとすればどうなるかという試算をなさっている。「老人」というのがあって、「同一保険医療機関に一か月に三・二回通院し、一回につき四種類の薬を六・七日分もらった場合」、「(老人の平均的な通院の場合)」と説明がつけてあります。現行であれば千二十円、改正案は定額負担千六百円。三・二回で千六百円というのはちょっと御愛きょうなんだけれども、三回か四回か、どっちかですね。そして、薬剤負担は「一五円×四種類×六・七日×三・二回」。二千八百八十円、二・八倍になりますね。  そこで、私がこれを見て真っ先に感じたことは何かというと、高齢者の健康保持の努力、通院をする、あるいは入院をする、健康保持の努力を投網のようにそのほとんど全部を捕捉するというところに今回の案の大きな特徴があります。  この新たな薬剤負担は、医療保険審議会が昨年十一月に出した建議書、さっきもちょっとその建議書のことがお話があったが、この建議書の五ページにある「患者医療機関の薬剤使用に係るコスト意識を涵養するため、」ここが根拠ですか、お尋ねします。
  190. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 薬剤負担を新たに設けることについて、これは、医療保険審議会の建議では、定率というのが多数意見でありました。もちろん、幅がありまして、薬剤を給付外とするというところから五割というような幅がありますけれども、コスト意識の涵養という、薬剤負担を求めるということについての御意見をいただいておりまして、今回、定額でお願いしておりますけれども、基本的な物の考え方はそのようなことでございます。
  191. 児玉健次

    児玉委員 その点なんですが、コスト意識の涵養、すなわち、薬をもらえば患者にとって費用がかさむ、それで幾らか手控える気持ち、それをどうやって涵養するかということだと私は読みます。  何が問題かといえば、薬を処方するのは医師であり医療機関ですね。もちろん、患者は希望を述べることはあるでしょう。私は北海道ですけれども、今度、ある知り合いの医師からすぐこう言われました。一週間分の薬を処方したら、恐らくある患者は、その薬を二週間にわたって量を減らして飲むだろう、物によってはそれで大きな影響が出ないものもあるけれども好ましいとは言えない、しかし、血中濃度を一定に維持するという種類の薬にとっては、患者が経済意識から一週間分を二週間分に延ばされたのでは、これは効果が上がらない、そのことが恐ろしい、そういうふうに述べております。  薬を処方するのが医師であり、その医師の側、医療機関の側の問題をこれは患者の側に転嫁するものではないか、私は、そのように理解せざるを得ません。これは、患者医師の信頼関係を損ね、国民医療不信をあおることにつながりはしないか、こう私は恐れます。  具体的に申しましょう。老人慢性疾患外来総合診療料、これが言ってみれば包括払いの一形態として今かなり、特に開業医の皆さんの中で広がっています、糖尿病や不整脈、肝疾患など。この包括払いの形態をとる場合に、その病院に今の糖尿病の患者が訪れた場合、一種類十五円を徴収いたしますか、徴収しませんか。
  192. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 老人慢性疾患外来総合診療料、これは一種の包括払いの格好でありますから、薬剤の費用もこの中に含まれた格好で医療機関は請求をする、こういうことでありますので、こういう包括払いについては外来の薬剤の一部負担は取らないという考え方でおります。
  193. 児玉健次

    児玉委員 同じ病気、例えば糖尿病で、出来高払いを選択されている医療機関に行った場合はどうなるでしょう。
  194. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 その場合には一部負担をしていただくということでございます。
  195. 児玉健次

    児玉委員 先ほどの、厚生省がなさった試算のケースを使いましょう。  その場合に、糖尿病の患者さんにとって、老人慢性疾患外来総合診療料、これを選択されているAという病院に行った場合に月千二百八十円の負担は必要ない。しかし、出来高払いを選択されているBという病院に行ったら、同じ病気で今度は千二百八十円徴収される。どうなっているのだというふうに思いますよ。どうです。
  196. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 包括払いの場合には、まさに薬も包括して支給される、そういった意味での、トータルとしての薬の適正化というものに資するものでありますので、そういったところの医療機関については、当然、今回の薬に着目した一部負担というのは取らない。ただ、出来高払いの場合は、これはいわゆる通常の診療行為に応じて請求する格好になっておりますから、こちらの方は一部負担をしていただくという格好、これはやはり支払い方式の多様化に伴う一つのケースということで考えております。
  197. 児玉健次

    児玉委員 その出来高払いと包括払いの問題は、この後、ぜひ真剣に論議したいと思うのです。  それで、今の問題に関連してなんですけれども、出来高払いを選ぶか包括払いを選ぶか、これはその医療機関の選択にゆだねられていますね。
  198. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 そのとおりでございます。
  199. 児玉健次

    児玉委員 いわゆる選択制が採用されている場合、出来高払いを選ぶか、それとも先ほどの外来総合診療料を選ぶか、この判断のときに、判断が文字どおり自由裁量でその医療機関に任せられているわけだから、どちらかに決定的に誘導するようなことがもしあるとすれば、それは選択制に値しませんね。その点はどうです。
  200. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 今回の措置は、そういった意味での医療機関患者を誘導するような措置を考えたものではありませんので、そういった意味で、私どもとしては今の選択制の上に乗っかった形で一部負担をお願いしている、このように考えております。
  201. 児玉健次

    児玉委員 非常にかみ合った議論になっているのですが、そこで、さっきのコスト意識の涵養の問題なんですよ。  結局、処方するのは医師なんです。そして、どちらを選ぶかも医療機関の側なんです。そして患者さんの方は糖尿病で、あのお医者さんと近しいからというのでそちらに行く、そしてそこで差が出てくる。そういう状況をつくっておいて、言ってみればコスト意識の涵養なんというのができるだろうか。ここを私は一つ厳しく指摘しておきたい。  そして、あえて医師医療機関の側から言いましょう。お年寄りというのはやはり生活が厳しい人が多いです。そして、良心的な医師であればあるだけ、この検査をすればこの患者にどれだけの負担をかけるか、この薬を投薬すればどういうことになるかということを一生懸命考えながら医療活動をなさっていますね。この案が仮に実現したとして、一種類十五円ということになる。そのとき医師は、自分の患者にこの月千二百八十円を負担させまいと思ったら、先ほどの包括払いの方を選ばざるを得なくなってしまう。患者のためと思ったらそっちの方に行ってしまう。これでは選択制が成り立たない、ここを私は一つ指摘しておきたいのです。  そして、もう一つ言いたいのは、本会議質問でも厚生大臣の御答弁がございましたが、なぜ十五円なのか。一種類平均百五十円、その一割の十五円を上乗せする、こういうふうに皆さんは言っていらっしゃる。日本医師会はこのことについてこう述べている。「患者はすでに二~三割の定率薬剤負担を受けており、その上今回更に投薬時負担を課すことは重複負担のそしりを免れないことになる。」私も同感ですね。この点、いかがです。
  202. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 まず、今の医療機関の選択の問題でありますが、先生の方は、包括払いを選択する医療機関と出来高払いを選択する医療機関の間で、どちらかが言うなればよりよい医療をしているとか、そういう価値観が入っていらっしゃるのだとすればちょっとあれなんですが、そうでないとすれば、やはりお年寄りの特性に応じた支払い方式というものを考えた場合に選択していらっしゃると思いますし、それからまた、まさに今先生がおっしゃったような、患者さんの状態をよく考えていただいて、そして不必要な、余計な、過剰な薬を投与しないとか、そういうふうなお医者さん方がたくさんいらっしゃる、また、そういう先生方ばかりであることを私どもはむしろ望んでおるわけであります。  ただ、残念ながら、今の我が国における医療費の中の薬のシェアというのはなかなか減らないというまたもう一方の現実がございます。そういった中で、薬の負担というのも一部負担でございますから、これは基本的には受益と負担の公平ということがベースにあるわけであります。そういった中で、さらに政策的な意味合いを込めて薬の適正化という観点からお願いをしている、こういうことでございますので、その点はちょっと御理解いただきたいと思います。  そこをベースにしてただいまの二重負担ではないかという、これはいろいろそういった御批判があることは承知をしております。これは、定率負担の上に定額をお願いしているというところから、どうしてもそういうふうな受けとめ方をされがちなんでありますが、私どもは、定率負担、これは従来からお願いしているわけですけれども、この定率負担というのは医療費全体に対するまさに受益と負担の公平という観点で御負担いただいておる。今回の定額負担は、一種の重ねもちと申しますか、それとは別途に、薬に着目して御負担をいただいているということでございまして、そういった意味で、物の考え方によっては二重負担ではないかという見方をされるかもしれませんが、私どもとしては、それぞれのもちは別のものであるというふうに考えておるわけであります。
  203. 児玉健次

    児玉委員 選択制の問題では、図らずも問題点がはっきりしてきたのだけれども、私は、包括制と出来高払いのどちらがいいかという議論を今はするつもりはないのです。概括的なことはいろいろ言われております。問題なのは、包括制のところでは外来の同じ疾病の患者からは取らない、出来高払いの方は取る、それは今度の措置が出てきたから生まれる矛盾であって、そういうことなんですよ。そういう矛盾を新たに生み出しているということを、これははっきりさせておきましょう。  それから、厚生省は今、図らずも重ねもちとおっしゃったけれども、我々が病院に行って請求書を見せてもらいますね。薬剤料、それに対してちゃんとしかるべき負担をしていますよ、今の健康保険制度はその仕組みだから。それに重ねて一種類十五円取るというのだから、それこそあなたが今おっしゃった質の異なるものを重ねる、完全にこれは納得できないと多くの人が考えるのは当然のことです。  それで、今度のこの問題を議論するとき、私は委員会でぜひ同僚の皆さんとも大いに議論をしたいのですが、お聞きですか、大いに議論をしたいのですが、薬が多過ぎるだとか、過剰診療だとかなんとかという場合に、確かに一部にそういう弊害があるでしょう。それに対しては、世論の批判と個別の是正措置で乗り越えることが完全に可能だと思います。  医師会の皆さんも、先ほどの「重複負担のそしりを免れない」、その前にかなり感情を込めて、「殆どの医師は、医師としての良心に従って、日常診療に於いて適正な投薬に努めており、いやしくも無駄な投薬、過剰投薬といった非難を受けることはない。」これはやはり全国の医師の気持ちだと思うのです。その気持ちを非常に率直にあらわされた投書を一つ、私は大臣に聞いてほしいのです。  二月の毎日新聞に載った投書なんですが、大阪府豊中市、内科開業医沢村昭彦、四十三歳、こう言っていますね。  薬剤費患者大幅負担増を盛り込んだ健康保険改正案が、国会で審議されることになった。内科医にとって薬の処方は、外科医におけるメスと同等の意味があることを理解してほしい。外科医のメスと内科医の薬というのは同じだと。  食事療法などで改善されない重症の高血圧や高脂血症の患者さんには、どうしても薬が必要になる。窓口負担が大きくなったばかりに治療を中断、心筋こうそくや脳卒中で倒れて高度医療が必要となり、かえってばく大な医療費が消費される懸念がある。  医療費に占める薬剤費の割合が約三割といわれ、薬漬けが目の敵にされる。 こう述べた上で、沢村医師は最後にこう言っていますね。  患者負担を強いる前に、薬剤の大幅な値下げを厚生省、関係機関にお願いしたい。 このお願いにこたえようじゃありませんか。どうですか。     〔住委員長代理退席、委員長着席〕
  204. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 その期待にこたえるべく、薬価基準の抜本的な見直しをできるだけ速やかにやっていきたいと思います。
  205. 児玉健次

    児玉委員 そこなんですね。先送りするか、それとも即刻、今直ちに着手するか。私たちが直ちにこの点で、もちろん若干の時間はかかりますよ、努力を開始すれば国民の負担増を回避することができる。そちらの方は二〇〇〇年の課題に先送りしておいて、とりあえず今は皆さん二兆円出してください。これは手順が逆だと思いますね。  それで、今の問題についてもう少し立ち入ってさらに議論をしたいのです。  この医療保険会計における最も巨大な浪費構造である薬価の問題、とりわけ新薬シフトをどうするか、先日議論いたしました。大臣とも一定のところでは意見が一致しました。それで、この新薬シフトに抜本的なメスを入れるということについては、ここ三日間の委員会審議の中でも各党の合意がほぼできていると思いますね。薬価一般でない、新薬シフトのところです。  二十七の自治体病院が九三年におまとめになった非常に有名な資料があります。病院の収益を損益割合で説明された、全国自治体病院協議会一九九三年、これを拝見すると、入院、外来、手術、放射線、リハビリ、給食、赤字の方にぐっと棒グラフが立っていますね。そして、黒字の方は、検査、そして薬剤。そこだけが黒字で立っています。ここに私は問題があると思う。  基準薬価と実際の取引価格の差が仮に一〇%だとしましょう。一万円の薬で一〇%引きであれば、いうところの薬価差は千円ですね。千円の薬の場合は百円です。だから一万円の方にシフトされていくのです。そこのところにどうしても今直ちにメスを入れていかなければいけない。  私たち日本共産党は、二月二十八日に医療保険改悪案に対する私たちの提案を出しました。その中で具体的にこう皆さんに問いかけております。「不当に低い医師・看護婦などの医療技術料を引き上げ、「薬価差益」に依存することなく安心して医療経営ができる措置をとること」これが新薬シフトを構造的になくしていく確かな筋道にならないか、こう考えています。日本共産党の提起についての厚生省のお考えを求めます。
  206. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 薬の医療費に占めるシェアが我が国は高い。その要因としては大きくは二つあるというふうに思っておるわけでありまして、一つは、薬の使用量が多いということであります。それからもう一つが、まさに高い新薬にシフトしている、こういうことであります。  きょうの委員会での御質問にもお答えしましたけれども、専門家が研究した例を御説明申し上げましたけれども、その寄与度合いというのはおおむねフィフティー・フィフティーだというふうに報告されております。そういった中で、今回の薬の一部負担、これが新薬シフトをストレートに阻止できるかというと、そこのところは私はそんなに大きく期待はできないと思っております。  この新薬シフトを解消するためには、まさに先生指摘のとおり、薬価差の問題がある。そして、率は同じであっても値段が高ければ絶対額は高くなる。やはりそこら辺のところを抜本的に直さないと、これは解決にはならないというふうに思います。  この原因というのはやはり公定価格というものを新薬に定めておるというところにあるわけでありまして、そういった意味で、これまでの薬の値段の決め方のルールというものを抜本的に変えなければいけない、それが私どもが考えている方向であります。  そういった意味で、これまでの薬の値段も決してルールなしでやってきたわけではありません。中医協の中で類似薬効方式なりあるいは原価計算方式という形で示された方式にのっとってやってきておるわけでありますが、それが我が国現状においては全体の医療をゆがめている、また、薬価差に依存した経営というのは好ましくない、これは我々も同じように考えております。  そういうようなことがないような健全な医療保険制度というものをどうつくるかというのが、我々、これからの課題であり、それを世の中に問うていきたい、このように考えております。
  207. 児玉健次

    児玉委員 薬価差、新薬シフト、そしてもちろん薬価一般の問題も大きくございます。  それで、私たちは、今度の通常国会の冒頭のところから、例えば一月二十三日の本会議で、二月四日の総括質問で、小泉大臣と私は二月十三日の同じく予算委員会でこの薬価の問題をどうするかと。一般的に述べているのじゃありません。開発費を含む製造原価を明らかにさせよう。そして流通経費。もちろん、企業が存続していくためには一定のマージンが必要でしょう。そういったものを製造メーカーに公表させて、それをもとに薬価を設定していく。こうしていけば明らかに浪費構造にメスが入る。二兆ないし三兆円のメスが入る。この点を議論したのは私で言えば二月十三日です。もう二カ月たっている。  その中で小泉厚生大臣は、私に、同時並行でやりましょう、委員の御意見、歓迎しますとあなたはおっしゃった。ところが、今あなたたちがなさろうとしているのは同時並行ではない。まず負担増を国民に求めておいて、そして、本来即刻着手すべき大きな課題については先送りする。これではあべこべじゃありませんか。いかがですか。
  208. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 私どもは、決してあべこべと思っていないわけなんです。というのは、今回の改正というのは、確かに、財政措置として現在の医療保険制度の運営の安定を図る、これがまず緊急な課題であるということでお願いをし、そしてまた同時に、抜本的な改革というものを前提にしてお願いをしているわけであります。  薬の値段につきましても、やはりルールというものがなければいけない。そして、これをルール抜きにばっさり切るというようなこと、これはやはり世の中の同意は得られないと思います。現在の薬価の問題、いろいろな問題が指摘されておりますけれども、これは、これまで中医協の中で決められた薬価の算定方式の一般ルールに従って算定してきているということであります。ただ、それでは個別の薬の値段についての透明性が発揮されてないじゃないか、この点について、我々は、やはり個別薬価についての決定の透明性というものを高めなければいけない、そのことはこれまでも申し上げてきたわけであります。  そういった意味で、現行の薬価基準、これは直ちに廃止するということにはなりませんから、当然、抜本的な案というものがきちっと認められた後の話になってまいるわけでありますから、そういった過程の中においても、その算定の根拠というものは透明化を図っていかなきゃいけない、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  209. 児玉健次

    児玉委員 それじゃ、時間ですから、その点は引き続き論議しましょう。
  210. 町村信孝

  211. 保坂展人

    保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  今現在、日本医療費は二十七兆円と、国民所得の伸びをはるかに上回り、毎年一兆円を超えるペースの増加ということはここでたびたび御指摘されていると思います。莫大な負担であり、そして今日、医療保険制度財政が大ピンチである、そこの構造的、危機的な赤字体質、これを変えなければいけないということは事実だと思います。  しかし、そこで私が思うのは、これだけの医療費が支出をされながら、長いこと苦労に満ちた人生を歩んでこられた、私どもの親たちの世代に当たるわけですけれども、人生の最終ラウンドで病に倒れて病院に入っていくというときに、果たして高度で充実した医療のケアが受けられているのかどうかというところを少し疑問に思うわけです。  ここで一冊の本を紹介したいと思うのですが、ちょうど一年ほど前に出た、朝日新聞の記者で生井久美子さんという方が書いた「付き添って」という本です。「明日はわが身の老人介護」、帯には「私を縛らないで!」というふうにあります。めくってみると、老人介護の二十四時間のルポルタージュが、例えば付き添いさんがベッドとベッドの間の冷たい床に寝る、そのところも記者は一緒に寝ながら、泊まりながらその実態を書いているわけですが、「地獄は死ぬ前にもあるね」というのが第一章の一番最初の見出しです。その中に、「私を縛らないで」という、ここの帯になっている記載がありまして、少し読んでみます。  老人介護の現場を訪ねて、お年寄りが縛られているのを何度も見た。縛っていたのは、付き添いさんだけではない。  都内の病院では看護婦さんが「点滴をする間、動くと危ないから固定している」と説明したが、終わったあともそのままだった。関東にある痴呆性老人の専門病棟では、車いすの女性(八〇)から「ねえちゃん、このひも、ほどいて」と頼まれた。見学者も多い有名な病院だ。ひもを外せないかと看護婦さんに尋ねると、「今度転んだら、骨折して寝たきりになるから。あなたが、これからここで、ずっと、看ていられるなら外してもいいわよ」といわれた。 と書いてあるわけなんです。  私は、この本を何度も涙ながらに読みながら、私ごとになりますけれども、五年ほど前に九十五歳で他界をした祖母のことを思い出しました。  実は、私の祖母は明治生まれであります。五年ほど前、九十五歳で亡くなったのですが、八十五歳のときに、お年寄りにありがちなんですが、転んで足腰を弱めて老人病院に入院いたしました。その病院、一室に四十から五十のベッドがあり、私ども家族が見舞いに行くと、必ず白いカーテンで一ベッドあるいはニベッドを囲ってある。今、危篤で亡くなりそうな方、あるいはもう既に亡くなった方のベッドなんですね。まさに人生の一番最後のその時間を、今度自分の番かなという形で過ごさなければいけない。  寝たきりの状態の中で祖母は二年過ごしたわけなんですけれども、もう後半になると意識がもうろうとして、家族の顔はわかりますけれども、妻の父親だとか、そういう人の顔はもうわからなくなって、歌舞伎の俳優と間違えたりというようなことがあって、本当に老人病院現状というのはどうにかできないのかということで、家族で相談をいたしまして、何度も何度もお願いをして、いわゆる特養ホーム、特別養護老人ホームに入れていただくことができたわけです。二年間寝たきりの後です。  その後どうなったかといいますと、すぐに車いすの生活になり、そして、非常に気骨のある人ですから、朝五時に起きて、バーにつかまって歩く練習をして、半年たたないうちに自力歩行ができたのです。そして七年間、俳句をつくったり、あるいはいろいろなサークル活動を楽しんだり、極めていい七年間を過ごしたということがあるのですね。  ですから、もしあそこで私たち家族があきらめて、もうこの病院しかないというふうに思って――もちろん見舞いにも来ない方もたくさんいるわけですね、そういう状態。この日本に希望の灯をともさなければいけない状態だと思います。  つまり、子供たちもいろいろな問題が今あります。先日、予算委員会では、小泉大臣に薬物依存の人たちのさまよっている魂の問題をお話ししましたけれども、こういった、大変な金額が使われているにもかかわらず、人生の最終盤で手と足を縛られて日々天井を見詰めているという状態、この現状について大臣の所感をまずお願いしたいと思います。
  212. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 そういう状況は、私も何度か見舞いに伺っているときに見ております。この人生最後の段階の治療をどうするか。また、病院での適切な治療なり介護ができないから、いろいろな社会的問題も起こっている。  そういうことから、今回、介護保険の導入やら医療制度改革をしなければならないということで、お互い長生きできる社会にしようという目標を達成した後の新たな問題点が出てきているわけですから、今後、その問題の対策はどうすべきか、今真剣に取り組んでいるところでありますので、この問題はすべての国民にかかってくる問題でありますので、多くの国民も関心を持っているでしょうし、我々政党、政治家もこの問題に真剣に取り組んでいかなければいけないと思います。
  213. 保坂展人

    保坂委員 大変な額の医療費が支出されて、その支出された医療費が、質として高度で、しかも心のこもった医療になって、そして病に伏したお年寄りも、またあるいは若くして病に倒れた方も、本当に最高の機会が与えられるというふうに必ずしもなっていないのじゃないかというふうに感じているところが今この論議の根底にあるように思います。  私たち社民党は、今回の医療保険制度改革する前提として、患者あるいはその家族、そして国民の立場で、つまりこの医療保険制度の大改革が必要であって、その改革によって財源をつくり出すことが前提だろう、この財源をつくり出すことともに国民の負担増ということが出てくるのはやむを得ない、しかし、国民の負担増の前にいわゆる制度改革による財源の捻出ということをたびたび訴えてきたところです。  厚生省の今回の健保法などの改正の論拠として、総合的、段階的な改革の第一段階として、当面の財政危機の回避というふうな言われ方をされていますけれども、九九年にはこの当面の回避も破綻をしてしまうということを御自身で認められているように、あくまでも一時的な避難にすぎない。となりますと、はっきり目に見えてくるのは国民負担であり、制度そのものの抜本的な改革の像が、イメージが見えてこないという、ここでやはり国民の批判や不信を招くのもいたし方ないのではないか、ここをやはりきちっとやらなければいけないということを申し上げたいと思います。政府案の諮問を受けた社会保障制度審議会でも、「緊急避難的な保険財政安定化策に偏っている。」という指摘があろうかと思います。  現在、はしご受診や薬価差益あるいは過剰検査などのむだが指摘されていますけれども、こういった背景には、国民医療内容の情報が十分説明されていない、そして国民あるいは患者、家族が理解をしていないという問題があるのではないかと思います。  例えば、患者が自分の受けた医療がどのような内容で、どのぐらいの費用がかかっているのかを知ることは、医療適正化の観点から重要だと思いますが、どのぐらいの保険者が被保険者、つまり加入者に医療費通知をしているのかという点についてお尋ねをしたいと思います。  さらに、医療機関の窓口でどの程度領収書が発行されているのか。領収書は発行されていると思うのですが、その明細、何にどのぐらいかかってこうであるという明細入りの領収書の発行をもっと促すべきではないかということも加えておきたいと思います。  医療の効率化のために、医療費通知や領収書の発行に限らず、医療機関の機能や保険点数の算定基準を透明に、だれもが、ああ、こうなっているのかとわかりやすく見えるカルテ、レセプトなどの原則的公開など、医療情報全般の積極的な公開が大変重要だと思うのですが、この点、厚生省の見解を伺いたいと思います。
  214. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 まず、今回の改正に関連してでありますけれども、まさに現在、非常に巨額の医療費が使われておる。その中のむだというものをきちっと排除して、そして特にこれからの高齢社会において、まさに先生が御指摘のような思いを持って、我々もきちんとした盤石の制度というものをつくっていかなければならない、そういうためには抜本的な改革が必須である、これが前提であります。  ただ、そういった中で、現在の医療保険制度の財政の窮迫というものを安定化しなければならないだろう。そのために、順序が逆だというおしかりはございますけれども、我々としては、抜本的な改革を当然やっていくことを前提として、そして、今回の改正をお願いしているということをまず申し上げたいと思います。  それから、医療費通知の問題あるいは領収書の問題がございました。  医療費通知については、これは医療費の中身をいわゆる被保険者に知らせて、一つには医療内容の透明化を図っていこう、もう一方には、これだけ医療費というものがかかっているという認識を持っていただこう、こういう適正化ということでやっておるわけであります。  現在、各制度ごとで実施状況には若干違いはありますけれども、政管健保、これは全部やっておりますし、それから健保組合、市町村国保、これもおおむね一〇〇%近く、若干、年度によって、コンピューターの故障や何かで実施できなかったとか、そういうトラブルのあるものはありますが、おおむね一〇〇%行われておると思います。ただ、国保組合、これは八割弱、あと二割ぐらいが実施されておりません。これは医師国保とか歯科医師国保等が入っておりまして、その辺のところの影響ではないかというふうに思います。  それから、領収書でありますけれども、これは必ずしも全医療機関について調査しておりませんので、正確な割合ということは申し上げにくいのでありますけれども、私どもの基本スタンスとしてお願いしておりますのは、医療費の内訳を記載した領収書を可能な限り出していただくように各医療機関に対して指導をし、お願いをしてきているわけであります。  カルテの開示なりレセプトの開示の問題がございましたけれども、これらの問題についても、レセプトについて申し上げるならば、本人なりの治療上の支障とか、あるいは疾病名等を知らせることが適当でないとか、そういったことがあればともかく、そうじゃない場合については、そういった内容についてもお求めがあればできるだけ知らせるような方向というものをとるべきであると私どもは考えておるわけでございます。
  215. 保坂展人

    保坂委員 それでは、時間が押し迫っていますので、再び小泉厚生大臣に伺いたいのです。  医療費のむだが指摘されている背景、先ほどの、しっくりこない、医療不信ということの背景には、たびたび指摘されているところの、診療報酬体系が出来高払いを基本としているところがやはり問題ではないかというふうに思うわけです。点数出来高払い方式のもとでは、医療費は青天井に膨らんでいくわけで、薬漬け検査漬け、社会的入院や不当な薬価差益の問題をこれは構造的に生み出しているのではないかというふうに私どもは考えます。これを見直し、この際、包括払い方式を積極的に導入すべきではないかという点について、小泉大臣の御決意を聞きたい。  加えて、国民に負担を求めていくのであれば、医療の効率化、むだなところを切り、改革の中で財源をつかみ出していく、これをしっかりやっていただく中で、国民の目から見てわかりやすい、開かれた医療にする必要があるのではないか。診療報酬体系や薬価基準の見直し、医療情報の積極的な開示など、医療不信が人生不信、ひいては社会不信、あるいは希望そのものが、希望の火が消えるということのないように、大臣の御決意を伺いたいと思います。
  216. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 出来高払い制度と包括・定額払い制度、これは一長一短あるわけでありますけれども、今お話しのように、本来、出来高払い制度のよさの面と、今言ったような過剰検査あるいは過剰診療、過剰投薬ということを考えますと、包括払い制度のよさも取り込むべきではないかという意見も各方面から出ております。すべて出来高払い制度をなくすということはできませんけれども、この出来高払い制度のよさと包括・定額払い制度のよさを組み合わせて、両方のよさが引き出せるような改善策、組み合わせ策をぜひともできるだけ早い機会に提示して国民の批判を仰ぎたいと思っております。  同時に、医療からくる人間同士の信頼感、人生最期のときを迎えて、どうやって死を迎えるかということと治療の問題、医療費の問題、かなり密接につながっているものですから、この問題にも取り組んで、薬価基準の見直しとあわせて、こういう問題にも深くメスを入れていかなければならない。  特に、最近の例でいいますと、一カ月で治療費が二千万円を超えるという例も出ております。そして、一カ月に一千万円を超える治療費が出ているのも少なくない。それだけの費用をかけたから健康になったかというとむしろ逆であるということを考えますと、この問題は大変深い問題である。何とかこういうような問題に国民の納得が得られるような具体的な改善策を出さなければいかぬ、それに向かって積極的に努力していきたいと思いますので、御協力、御理解をお願いしたいと思います。
  217. 保坂展人

    保坂委員 病院のベッドで最期を迎えるときに、生まれて、そして働いて、生きて本当によかったというふうな社会にしていくために、さらに奮闘をお願いして、私の質問を終えたいと思います。
  218. 町村信孝

    町村委員長 次回は、来る十八日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時九分散会