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1997-04-09 第140回国会 衆議院 厚生委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月九日(水曜日)     午前十一時一分開議 出席委員   委員長 町村 信孝君    理事 佐藤 剛男君 理事 住  博司君    理事 津島 雄二君 理事 岡田 克也君    理事 山本 孝史君 理事 五島 正規君    理事 児玉 健次君       安倍 晋三君    伊吹 文明君       江渡 聡徳君    大村 秀章君       奥山 茂彦君    桜井 郁三君       鈴木 俊一君    田村 憲久君       根本  匠君    能勢 和子君       桧田  仁君    松本  純君       青山 二三君    井上 喜一君       大口 善徳君    鴨下 一郎君       坂口  力君    福島  豊君       桝屋 敬悟君    矢上 雅義君       吉田 幸弘君    米津 等史君       家西  悟君    石毛 鍈子君       枝野 幸男君    瀬古由起子君       中川 智子君    土屋 品子君       土肥 隆一君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小泉純一郎君  出席政府委員         厚生政務次官  鈴木 俊一君         厚生大臣官房長 近藤純五郎君         厚生大臣官房総         務審議官    中西 明典君         厚生省健康政策         局長      谷  修一君         厚生省保健医療         局長      小林 秀資君         厚生省薬務局長 丸山 晴男君         厚生省老人保健         福祉局長    羽毛田信吾君         厚生省保険局長 高木 俊明君  委員外出席者         防衛庁教育訓練         局衛生課長   加藤 恒生君         文部省高等教育         局医学教育課長 寺脇  研君         厚生大臣官房障         害保健福祉部長 篠崎 英夫君         自治省財政局準         公営企業室長  門山 泰明君         厚生委員会調査         室長      市川  喬君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第三六号)      ――――◇―――――
  2. 町村信孝

    町村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安倍晋三君。
  3. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 自由民主党の安倍晋三であります。  私は、健康保険法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。  今回の法改正は、いわゆる政管健保平成五年から赤字に転落をし、いよいよ本年立ち行かなくなるという状況の中で、この保険仕組みを何とか守らなければいけない、そのために新たな国民の御負担お願いするということでこの改正案をまとめたわけであります。しかしながら、ただ目前の問題に対処するためだけに国民の皆様に新たな御負担お願いしていいわけではないわけであります。  現在、我が国国民保険制度というのは世界に冠たる仕組みである、私はこういうふうに思っております。だれでも、どこでも、良質な医療提供を受けることができる、この仕組みを、少子高齢化社会到来の中で、二十一世紀にもしっかりとした形で守っていかなければいけないわけであります。まさに命と健康の安全保障である、私はこのように思っております。そのために、二十一世紀に向かってしっかりとした抜本的な改革を行わなければいけないわけであります。  医療供給体制、そしてまた保険体制、この両面から大きな改革を行うことによってこの仕組みをしっかりと守っていく、そのことを抜きにこの改正をするわけにはいかない、我が党もそう考えてきたわけであります。ですから、与党三党におきまして、医療制度改革基本的な考え方をまとめ、そして、まとめたと同時にこの法案を提出したわけであります。そういう意味におきまして、抜本的な改革とこの法案はまさに一体のものである、私はこのように考えているわけでございます。  この法改正と、そして与党三党でまとめたこの改革基本的な考え方、その関係について厚生大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  4. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 今回御審議いただきます医療保険制度改正法案、この中においての案というのは十分でないということから、与党関係者の間でいろいろ基本的な改革問題が議論されたわけであります。そうした中で、今回、基本的な考え方として出された案というものを我々は尊重して、今後、総合的な改革に結びつけていきたいと思っております。  もちろん、今回の法改正案与党医療改革に対する基本的考えはどうかというお尋ねですが、私は、与党改革案、いわゆる基本的な考え方、これに向けて、医療提供体制そして診療報酬薬価基準老人保健制度、すべて見直ししなきゃならない、そういう考えでおります。  そして、今回の案が出たからこそ、これだけでは不十分だ、より基本的な構造的な改革に踏み込むべきではないかという考えを、私は、今回の法案は促進したと思います。でありますから、今回の改革案は第一段階であり、より根本的な改革に向けて、積極的な検討を進めていきたいと思います。
  5. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 ただいまの大臣の御答弁の中でも、今回の法改正医療制度の抜本的な改革第一歩であるというお話でありました。まだまだ本来やらなければならないことはたくさんあるわけでございますし、与党三党でまとめたこの基本的な考え方も、まさにこれはベースであって、これから成案を得るために努力をしていかなければいけない、私はこのように考えております。  一方、橋本内閣におきまして、財政構造改革原則というのを策定いたしたわけであります。その中には、「今世紀中の三年間を「集中改革期間」とする。歳出改革と縮減は、「一切の聖域なし」とする。」ということも定めてあります。それと同時に、「政策的経費である一般歳出を対九年度比マイナスとする。」ということも決定いたしております。  さらに、「国民負担率財政赤字を含む)が五十パーセントを超えない財政運営を行う。」ということも決定いたしております。我が国のこの国民負担率も、国民負担率だけでは三八・二%でありますが、国と地方の赤字分を合わせればもう既に四五・二%になっているわけでありまして、もう後がなくなっているのも現実であります。  他方社会保障給付におきましては、年金におきましても、あるいは医療制度介護基盤整備につきましても、今後、少子高齢化社会の中でますます政策的な需要はふえていくわけであります。必ず右肩上がりになっていく人口の構成になっていく、しかし、それと同時に、この財政構造改革も行っていかなければならない、その中で答えを見つけていくということであります。効率的な運営あるいはしっかりとむだを省いていくということは当然でありますが、と同時に、これは給付負担そのものを今後は見直していかざるを得ない、そういう問題にもぶつかってくるわけであります。  この医療制度の抜本的な改革も、当然、社会保障制度構造改革の中に位置づけられなければいけない、私はこのように考えているわけでございますが、この社会保障構造改革、どのように位置づけていくべきであるかということは、今後、この医療制度改革していく上でも大変大きな命題になってくる、私はこのように思うわけでございますが、厚生大臣の、この社会保障制度構造改革、どうするべきであるかということを、どのようなイメージと哲学を持っておられるのか、お伺いしたいと思います。
  6. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 医療給付にしても年金給付にしても介護給付にしても、給付は多ければ多いほどいい、負担は少なければ少ないほどいい、これはだれもが考えることであります。我々も、できたらそうしたい。しかし、給付の陰には、だれかが負担しなきやその給付は受けられない、これがより厳しく問い直されるのがこれからの社会保障制度ではないかと思っております。  そういう中で、一切の聖域なしこ  今まで、前年度に比べて何でも公費をふやせというのが、国民も政界も当然視していた傾向があると思います。しかし、今回、橋本内閣が打ち出した財政構造改革原則は、十年度予算は一切の聖域なしに九年度予算からマイナスにする。これは口では言っていますけれども、いざ各論に入ると容易なことではない。まして社会保障制度、これまで給付は多ければ多いほどいいということで、それじゃ増税しましょうかというと、増税に反発が出るということで増税しない。何をしてきたか。赤字国債をふやしてきた。そういう中で、気がついてみたらこの借金の返済に、孫子の代が苦しむどころじゃない、現在の納税者が苦しんでいる状況になって、より根本的な改革に踏み込まなきゃならないというのが現状だと思います。  そういう中にあって、国民負担率は将来五〇%を超えないという中で、効率的な社会保障制度をどうあるべきか。医療だけではありません。年金においても、これからそのような給付負担の均衡をどうやって図っていくかという問題が今後大きな問題になると思いますし、まず、今回の医療保険改革についても、当然、今までの負担で済むのだろうかということから今回の改正案お願いしているわけでありまして、私としては、経済成長を図るために、そしてその経済成長の成果を福祉充実に回すためにも、何としてでも国民負担重税感のないような、軽減をして、経済活性化をしていきたい。その経済活性化福祉充実に充てたいということに基本的な視点を持つならば、私は、給付負担両面で同時に見直す。  そして、負担というものは、現世代が税金で負担するのか、社会保険負担するのか、受益負担するのか、若い世代がどの程度負担していくのか、そういう総合的な視点を持って、これからの社会保障制度公費をいたずらにふやすことができない中でのむだはなかったか、効率的な社会保障制度の構築に全力を傾けていきたいと思います。
  7. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 社会保障におきまして、高い給付を保障するのであれば、当然、高い負担も覚悟しなければいけないわけでありまして、高福祉・低負担というのは、実はその負担を次の世代に先送りしているということであります。ですから、社会保障給付こそ今我々が負担をしていかなければいけない問題である、私はこういうふうに考えております。そういう中におきまして、今度の法改正でありますが、この法改正は、先ほども大臣がおっしゃったように、医療制度の抜本的な改革第一歩でもあるということでもあります。そういう意味におきまして、負担給付の問題を考えたときに、患者コスト意識を持っていくということも大変大切な要素になっていくのだ、こういうふうに思っております。  今回の法改正に当たりましては、定率でいくべきか定額でいくべきかという大きな議論がありました。結局、法改正に当たりましては、老人医療費につきましては定額、さらに、薬の一部負担につきましても定額という考え方をとったわけであります。しかし、コスト意識を持つためには、やはり定率でないとなかなかコスト意識に至るというのは難しいのではないか、このようにも私は考えるわけであります。  しかし、他方老人皆さん負担が急激に上がることを我々も避けなければいけない、激変緩和考えていかなければいけない、そういう悩みの中で今回の法改正ということになったわけでありますが、将来において定率をどのように考えるべきか、厚生省の見解をお伺いしたいと思います。
  8. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 今回の一部負担の改定に当たりまして、お年寄りについては定額という形、薬剤についてはこれも定額という形でお願いをしたわけでありますが、この一部負担考え方定率定額、それぞれ考え方があろうと思います。  基本はやはり、受益負担の公平をどう図るか、そのために応分の御負担をどうお願いするかということだろうと思います。確かに、先生指摘のとおり、コスト意識を喚起するというような観点からしますと、かかった費用に対して定率を御負担いただく方がはっきりとしてくるわけでございますけれども、一方また、わかりやすさ、あるいはまた負担が過重にならないようにというような点等々の問題がございます。  ただ、現在御審議いただいております介護保険、これにつきましては、定率の一部負担お願いすることになっておるわけでありまして、そういった点等々を踏まえてみますと、仕組みはともかくといたしまして、今後、やはり定率負担お願いするということも視野に入れながら検討していく必要があるというふうに考えております。
  9. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 今回の法改正の中身に入っていきたいと思います。  今回の法改正の中で、先ほど私が御質問をしたことにもかかわってくるわけでありますが、薬剤につきましては、定率負担ではなくて、一日一種類十五円ということになっております。薬について、どれぐらい使っているかというのをコスト意識として持つためには、一日一種類十五円ということでは、一体どれぐらい薬を使っているかというのはわからないわけであります。何種類使ったかということについてはわかるわけでありますが、どれぐらいの量の薬を使っているか、一種類をたくさんの量を使っても十五円ですから、そういう意味において、むしろこれはアクセスチャージみたいなものだという意見もあるわけでありますが、この十五円の意味をどのように理解したらいいのか、お答えいただきたいと思います。
  10. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 今回、薬につきましては、  一日一種類十五円を御負担いだだくということでお願いしているわけであります。  御承知のとおり、我が国におきましては、薬のシェアが非常に高いということがございます。これは、一つには、いわゆる多剤投与と言われる、薬がたくさん投与されているのではないかということ、もう一つには、値段の高い新薬にシフトするというようなことからそういうような現象が起きているのではないかということが言われるわけでありますけれども、今回の一日一種類十五円ということでお願いしておりますのは、薬の多剤投与に対する歯どめというものをねらいにしてお願いしているわけでございます。  この十五円という金額でございますけれども、これは、お年寄り薬剤費の一種類一日分の現在の平均額が約百五十円程度でございます。その一割ということで十五円をお願いした、こういうようなことでございます。
  11. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 この十五円の根拠の一つ多剤投与を抑止するというお話でありました。確かに、私ども患者として薬をもらうときに、何か薬が多いなという漠然とした感じを受けることも事実でありますし、そう思っている人も多いのだと思います。  しかし、多剤投与に対しての反論として、九六年の国民生活白書に引用されました大阪府保険医協会資料によりますと、決して多剤投与をしていない、量として。これは薬剤に使った金額平均薬価で割って量を出したという数字なわけでありますが、これは世界平均値を一とした場合に、日本は大体〇・九二、フランスは極端に多くて二・四九でありまして、アメリカは〇・五四と大変低いわけであります。そういう数字も出てまいりまして、これはむしろ、使った量ではなくて薬価そのものが高いのではないかという反論もありますが、その反論に対してどのように考えておられるかをお聞かせいただきたいと思います。
  12. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 我が国は薬のシェアが非常に高い原因一つとして、どこの国と比較するかということはございますけれどもヨーロッパ等と比較しましても、一処方当たり薬剤数が比較的多いという調査もございます。この薬剤シェアが非常に高いというものの中には、まさに薬剤使用量価格両方の問題があるわけでございまして、そういった意味では、使用量だけではなくて、価格の方が問題であるという御指摘、これもございます。  両方を解決していかなければ、このシェアの引き下げということにはならないというふうに思いますけれども薬剤の多用という面については、今回お願いしているような形での一部負担ということで、私どもとしては歯どめをねらいにしたいというふうに考えておるわけでありますし、それから、高い薬の値段という問題について、やはりこれは薬価基準制度そのものを抜本的に見直さなければ解決がなかなか難しいのではないかというふうに考えておりまして、引き続き、この薬価基準制度の抜本的な見直し改革というものに取り組んでいく、このように考えております。
  13. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 薬価基準見直しにつきましては、後ほど改めて質問をさせていただきたいと思うわけであります。  今回の一種類十五円につきまして、例えば現役世代、お年寄りではなくて現役世代皆さんは、組合健保あるいは政管健保であれば二割、国保であれば三割負担をするわけでありますが、その中には当然、薬代も入っているわけであります。使った薬代の三割もその中に入っている。そこでコスト意識は私はわかるのではないかという気がするわけでありますが、さらにそれプラス十五円を取るということになりますと、これは二重に取っているではないかという批判国民の中に根強くあるのも事実であります。  ですから、この二割、三割、両方取る。一番最初の案では、いわゆるワン、ツー、スリーという中では、薬剤については別途三割取るということになっておりました。それであれば、二割、三割、一定な、さらにそれとは別に三割があるということであればわかりやすいわけでありますが、二割、三割で、それは薬剤にもかかっていて、それの外でまた一種類十五円取っていくということについては、これは、こっちでも払っているのに何とこっちでも払うのかという反論国民の中にはあります。  先ほどおっしゃった、これは多剤服用の抑制ではないかという御意見もちろんあると思いますが、その整合性についてお伺いしたいと思います。
  14. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 先生指摘のとおり、今回の薬の一部負担、これは定額ということでございますので、若人の定率負担定額負担という格好の組み合わせの中で、薬については二重負担になっているのではないかという御批判があることは私ども十分承知をしております。  これは、私どもとしてはこのように考えておるわけでございまして、従来の定率の一部負担、これはまさに受益負担の公平というような観点から応分の御負担お願いしているという考え方でございます。今回の薬の一部負担、これにつきましては、それとは別途に、薬剤適正化ということに資するために、薬剤に着目した御負担を上乗せするというような格好お願いしておるわけでございます。  言うなれば重ねもちのような格好になるわけでございますけれども、それぞれのもちは別々のものである、こんなふうなことで考えておりまして、そういった意味では、二重負担というようなことではなくして、それぞれの一部負担の趣旨にのっとりましてお願いをしておる、このように考えておるわけでございます。
  15. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 それでは、薬価基準見直しについてお伺いをさせていただきたいと思います。  今回の与党三党の医療制度の抜本的な改革基本的な考え方の中でも、薬価基準見直しということをうたっているわけであります。この現在の薬価制度は、いろいろな問題点を含んでいるわけでありますが、最終的に消費をする患者さんと製薬会社の間において薬価を決めていくマーケットを形成するということではなくて、その中間の、それを使用するいわゆるお医者様と製薬会社薬価はまた別途決まりますけれども、実際のマーケットはそこでさらに決まっていくものという、普通のマーケットとは違う制度になっているということであります。そこも問題点が出てくる原因一つになっているわけであります。また、薬価基準そのものも、先ほど局長がおっしゃったように、高どまりしていくという形になっているのも事実であります。  そういう中において、こうすればいいじゃないかといういろいろな案が出て、具体的な案も出てきているわけでございます。その中の一つが、ドイツが導入をしている参照価格制度という制度でございます。これは、ある程度高い薬にするか、長い間ずっと使われている一流メーカーの薬だから多少高い、しかし、これは後発新薬だけれども、何となく信頼性というか、そのメーカーが余り有名なメーカーではないし、使われた期間が短いから安い、どっちかは患者の意思で決めさせるという、非常に荒っぽく言えばそんな感じ制度でありますが、この制度を導入するべきではないかという意見も一部には強くあるようでございます。そうすれば、またこれは健康保険のこの制度も変えていかなければいけないわけでありますが、それについて厚生省はどんな考えを持っているか、お伺いしたいと思います。
  16. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 現在の薬価基準制度、これの最大の問題点とされておりますのが、いわゆる公定価格制度ではないかというふうに思います。物の値段をどういう格好で決めていくのかということになるわけでありますが、私どもとしましては、この薬価基準制度見直しに当たっては、薬の価格については市場取引実勢にゆだねていく、これを原則考えていくべきではないかというふうに考えております。  そういった中で、先生指摘のとおり、ドイツでは参照価格制度というのを取り入れております。あるいは、フランスあたりでは償還払いというような形もございます。これらそれぞれ具体的に、それでは我が国に一番合った形でどういうふうな形の制度考えていくべきなのか、これが基本になるわけでありますが、その基本は、冒頭申し上げたようなことで、薬の値段公定価格というものを改めて市場取引実勢にゆだねる、こういうふうな視点から、それに立って、我が国に最もふさわしいような薬の、保険から払う基準なり償還額というものを考えていくのが適当ではないか、こんなふうに考えております。
  17. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 医療保険審議会資料によりますと、現在、薬の中に占める長期収載品シェアは五五・五%、約四兆円規模だということであります。そのうち、先発医薬品が全体の二割の一兆四千億円を占めている、こういうことであります。  この長期収載品について、先発はまだ十分に開発費を回収をしていない、十年間で切れるわけでありますが、しかし、まだ最初開発費を十分に回収していないというところもあるでしょうし、また、十年間使われたという、これは、安全性は十分に確保されているからそれだけその価値が高いという意味もあるのでしょうけれども、ある程度の水準にまとまっているわけであります。その段階で、後発医薬品が出てくるわけでありますが、これは三分の一とか四分の一、かなり安い価格であるにもかかわらず、どうしても十年間使っているという安心感と、さらに、それは大手の製薬メーカーが開発しているということも相まって高い薬を使う、さらには、薬価差も大きいということもあって、どうしてもそっちになっていくという傾向があるわけでありまして、そして、ただいま申し上げましたように、長期収載品シェアは大変高い。  そういうことであれば、ここにメスを入れれば大きな効果が得られるのではないか、そんなように思うわけでありますが、保険医協会の主張の中で、長期収載品目一般名収載について考えるべきではないかという意見が出ております。他方製薬メーカーに言わせれば、もしそうなってしまったら、これは新たに新しい薬を開発するよりも、十年たったらそこで後発の薬を考えた方がいいだろう、いわゆるゾロを考えた方がいいだろうということになってきてしまって、メーカー開発意欲を著しく損ない、ひいては競争力も失われるという意見もあるわけであります。  この長期収載品目一般名収載、これはかなり効果があると私は思うわけであります。しかし、産業政策的にはどうかという考え方もあります。厚生省のお考えをお伺いしたいと思います。
  18. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 長期収載医薬品の改善は、中医協でもこれまでも議論がなされております。そういった中で、長期収載医薬品について一般名収載にしてはどうかということが一つの方法論として挙がっておるわけであります。ただ、これについては、先生指摘のとおり、功罪それぞれございます。しかし、この長期収載品目についての改善というものは、これは急がれるのではないかというふうに思っております。そういった意味で、中医協でも引き続き御議論をいただく必要があるというふうに私ども考えております。
  19. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 また、いわゆる薬価差でありますが、薬価差は約一兆円ぐらいある、このように言われておりまして、それが国民全体の、薬に対する不透明感、薬価基準を決めるに当たって不透明ではないかという大きな批判の根拠にもなっているのだ、こういうふうに思います。  しかし、この薬価差の一兆円がそのままお医者様の懐に入っているわけではなくて、その根底には、現在の診療報酬が果たして適正であるかどうかということにもなってくるのだと思います。その薬価差の一部は、例えば病院の修理の方にも回っているわけでありますし、そういう観点から、薬価差を適正にすると同時に、診療報酬における技術料を適正に評価するべきだという声も強くあるわけでありますが、そこのところをどのように考えておられるか、お伺いしたいと思います。
  20. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 薬価差の問題、これは、公定価格を決めているということから、この薬価差というのを全くゼロにするというふうなことは現実問題としてどうしても難しいわけであります。ただ、やはりこの薬価差に依存したような経営というのは好ましくないというふうに私ども考えております。そういった意味では、まさに御指摘のとおり、この診療報酬において技術料というものをきちっと評価し、そして、それを適正に支払うということが基本だろうというふうに思っております。  これまでも、診療報酬改定の都度、この技術料の適正な評価ということが常に検討され、そしてまた、それに向けての改正がなされてきたというふうに考えておりますけれども、今後、診療報酬体系そのものの抜本的な見直しをやっていくに当たって、この医療担当者の技術料というものをきちっと評価していく、これが基本であるというふうに考えております。
  21. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 先ほど大臣もおっしゃったわけでありますが、今後の社会保障考えるときに、ある程度の負担は当然覚悟しなければならない、そういうお話でございますし、私もそのとおりだと思うわけであります。しかし、その前提は、しっかりと情報が公開をされているということであると思います。ですから、薬価については特にしっかりとした情報の公開がなされなければいけないわけでありますし、また、薬の効用についてもしっかりと情報が公開をされていかなければいけない、こんなように思っております。  それと同時に、薬だけではなくて、医療における情報公開というのも大変重要になってくる、私はこういうふうに思うわけであります。医療情報システムを、医療の情報を公開するシステムをつくっていかなければいけないわけでありますし、また他方医療機関あるいはお医者さんの評価についてもしっかりと国民が知ることができるようなシステムをつくっていく必要がある、こんなように考えております。  与党の今度の基本的な考え方の中にもそのことは盛られているわけでありますが、どういうシステムをつくっていくということを考えておられるか、お話をしていただきたいと思います。
  22. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 医療についての情報公開、それから医療の評価ということについてお尋ねでございます。  まず、医療におきます情報公開という観点からは、カルテ内容の開示あるいは診療情報の有効活用ということについて、今後、積極的に進めていかなければいけないというふうに認識をしております。  この問題につきまして、特にカルテ内容の開示あるいはそれに基づく情報公開ということにつきましては、診療情報の活用に関する検討会、これは仮称でございますが、これを九年度できるだけ早い時期に設置いたしまして、診療情報の活用の方策あるいはどういう点に留意すべきかというようなことについて検討していきたいというふうに考えております。  なお、病院の機能評価ということにつきましては、第三者によります病院の機能評価を行っていくということから、財団法人日本医療機能評価機構におきまして、平成七年度、八年度、いわゆる試行事業をやってまいりました。その結果を受けまして、九年度から評価事業というものを本格的に開始することにいたしております。  この評価結果の情報公開ということにつきましては、現在、この機構におきまして検討が行われておりますけれども厚生省といたしましては、評価を受けた医療機関の医療の質の向上に対する意欲を最大限尊重する、また、地域住民に対しまして医療情報をできるだけ提供していくという方向で検討していく必要があるというふうに認識をしております。
  23. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 今、病院の機能評価またはカルテの開示ということについてお話をいただきました。  病院の機能評価も当然大変大切なことではあるわけでありますが、この中で、ただいま言及されましたカルテの開示というのは、カルテはだれのものかといえば、これは病院と医者のものだということになると思うわけであります。  しかし、患者というのは一つの病院だけでは不安になることもあります。幾つかの病院に、いろいろな先生にかかるということも当然あるわけであります。しかし、例えば、カルテをコピーしてくださいと言っても、断られる場合の方が多いのだと思います。私もそういう経験があります。ですから、嫌な検査も二回、三回しなければいけない。今までやったカルテがあれば、それを基礎にまた別のお医者さんであっても新たな医療行為ができるわけでありますし、むしろ、あった方が適切な医療行為ができるということになってくると思うのです。そういう不満は強いのではないか、私はこのように思うわけであります。  再度、このカルテの情報開示ということについて、今後どういう方針を持っておられるか、お伺いしたいと思います。
  24. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 今先生お話ございましたように、カルテというものがだれのものか、あるいは開示をする義務なり規定があるかどうかということにつきましては、まず、患者に対するカルテの開示についての現時点での規定はございません。幾つかの学説あるいは判例がございますけれども、今までの事例によりますと、患者の閲覧請求権というものは否定をされているというようなことがございます。  ただ、そのことをもって医師が患者に対して内容を説明しなくていいという意味ではなくて、カルテそのものを開示するかどうかということについては否定をされているとか、いろいろな学説があるということでございます。  一方、患者に対してカルテを開示すべきという考え方と、例えばがんですとか精神障害といったような場合に、病名の告知ということが患者に悪影響を及ぼす可能性があるといったようなことから、一律に義務づけをするということには問題があるというような考え方もございます。  ただ、先ほどもちょっと申しましたように、医療におきます情報公開という観点からは、カルテ内容について患者に十分に説明をしていくということは必要だというふうに思います。そういう意味から、先ほどもちょっと申しましたような、専門家によります検討会を設置して、診療情報の活用の方策また留意すべき点について幅広く検討していただきたいというふうに考えております。
  25. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 時間もだんだんなくなってまいりましたので、最後の質問にしたい、こういうふうに思います。  今後、少子高齢化社会はますます進んでいくわけでありまして、そのことを前提に医療保険制度考えなければいけないということの中で今度の改正案もあるわけでありますが、医療保険制度の中における高齢者をどのように位置づけていくかということが極めて重要になってくる、こういうふうに私は思うわけであります。  高齢者の医療保険で見るという側面、医療保険という側面と福祉という側面があるのだと思います。今まで、高齢者については千二十円で、あとはすべて保険公費で持つという考え方は、福祉という側面が強く出ているのだと思います。しかし、今後は、果たしてそれでやっていけるかどうかということも、大きな問題点として我々政治家が考えていかざるを得ない、こういうふうに思います。  そういう中で、この老人保健制度をどのように今後位置づけていくか、あるいは、場合によってはこれは抜本的に改革をしていくべきものであるのかどうか、また、お年寄りの皆様にもさらに御負担ということで、どういう形の負担お願いするかということもあわせてお伺いしたいと思うわけであります。  また、現在、この委員会においても、介護保険制度を導入するということで法案の審議をしております。この介護保険制度の中におきましては、利用者は一割の負担ということになっているわけでありまして、そことの整合性も当然考えていかなければいけない、私はこのようにも思うわけでありますが、厚生大臣に、この老人の保健制度医療保険制度についてどのような構想を持っておられるか、お伺いしたいと思います。
  26. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 今までですと、高齢者は社会に貢献した役割から、高齢者になったらできるだけ負担は少なくする、ある時期においては無料でもいいではないか。しかしながら、結局、高齢者の医療費等を支えるのは若い世代である。これからの長寿社会を考えますと、高齢者の数も率もどんどんふえてまいります。それにつれて、今の制度を前提としていく限り、若い世代負担はますます大きくなっていく。となると、世代間の問題はどうなのか。  確かに、一時期は高齢者は経済的にも弱者であった。しかし、最近、病気にかかる割合ははるかに高齢者が多いのは事実でありますが、果たしてすべてが経済的弱者であろうかというと、必ずしもそうではない。お互い、この健康保険制度というものを維持していくためには、それぞれが給付を受ける、または負担をするという関係から、負担をする方の立場も考えようということで、高齢者だからといって負担は現状程度でいいではないかということではこの制度の維持が難しくなってきたということから、私は、この老人保健制度全体の抜本的な改善策を講じなければならないという議論が多くなってきたと思うのであります。  そういう視点を踏まえまして、私どもは、若い世代、高齢者の世代、この給付負担の公平をどうやって図っていくか、そして、何よりもこの健康保険制度を安定的に運営していかなければならない、そして、どういう制度であろうとも、社会保険料を負担する、そして税金を投入する、なおかつ医療サービスを受ける側の負担、この組み合わせをどうやって国民の理解を得ながら図っていくか、これに向けて今後構造的な改革に踏み込みたいと思いますので、より基本的な抜本的な改革が必要ではないか。  そういう中にあって、今、与党医療制度に対する基本的な改革の方向が出てきましたから、その方向を踏まえまして、根本的な改善策に踏み込んでいきたいと思っております。
  27. 安倍晋三

    安倍(晋)委員 ありがとうございました。これで私の質問を終わります。
  28. 町村信孝

    町村委員長 松本純君。
  29. 松本純

    ○松本(純)委員 まず初めに、薬剤負担の新設について幾つか御質問させていただきます。  初めの質問は、今回の改正によって、新たに薬剤負担患者負担として課せられることになります。老人定額、若人の定率の自己負担と合わせるとかなりの患者負担の引き上げとなりますが、政府管掌健康保険等の財源が窮迫しており、ある程度の患者の自己負担の引き上げもやむを得ないところにあると思っております。しかしながら、さらなる軽減策を検討する余地はないのかどうか。  また、定額定率の自己負担への薬剤負担の上乗せ、いわゆる二重負担でありますが、薬剤一日一種十五円の考え方等は患者にとってわかりにくいとの声もあります。その一方、医療機関の窓口事務も相当のものとなるとの指摘もあり、このような指摘に対してどのように対処されるおつもりなのか、まずお尋ねをいたします。
  30. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 患者の一部負担考え方としましては、これは受益負担の公平というものを図っていく、そのために応分の御負担をいただくということが一つ基本にございます。それからまた、お年寄りと若人の場合、世代間の負担の公平、こういったものに対する配慮ということを今回考えておるわけであります。  今回の一部負担お願いしておりますもう一つの背景としまして、やはり医療保険財政が非常に窮迫している、そういった中での財政の効果というものについても配慮せざるを得なかったという問題がございます。  そういった中で、新たに薬剤の一部負担お願いすることにしておるわけでありますけれども、これは、我が国薬剤シェアが非常に高い、そういった中の一つ多剤投与という問題がございます。これについての歯どめといいますか、適正化ということを一つ考えておるわけでございまして、そういった意味で、今回新たに、このような形で御負担お願いしているわけでございます。  若人の場合には、ベースに定率負担がございますので、定率負担薬剤定額負担の組み合わせになるということから、二重負担ではないかという御指摘があることは承知をいたしております。  ただ、これは、従来の一部負担につきましては、受益負担の公平という格好お願いをしておりますし、今回の薬剤に係る一部負担は、それに加えて、別途、薬剤適正化というものに着目してお願いをしているわけでございまして、そういった意味では、それぞれ、趣旨、目的を異にしてお願いしているということでございます。  それからまた、この負担額につきましては、お年寄りについて薬剤費が一日一種類おおむね百五十円程度ということでございますので、その一割相当額ということで一種類一日十五円ということでお願いをしたわけでございます。  今回の薬剤負担の導入に伴いまして、医療機関の事務も非常に煩雑であるという御指摘がございます。これにつきましては、新しい一部負担というものを導入させていただくということになりますので、これまでに比べますと、医療機関サイドの事務負担が現在に比べるとふえることはどうしても避けられないわけでございますけれども、私どもとしましても、医療機関もさることながら、患者さんにとっても、できるだけそういう事務的な御負担というものが軽減されるように、いろいろな面での工夫をしていかなければならないというふうに考えております。
  31. 松本純

    ○松本(純)委員 一日一種十五円案の場合、二百五円以下については一種類とみなすとされておりますが、十五円という半端な単価や、二百五円以下は何種類あっても一種類とみなすことの意味について、医療現場で国民に説明することは、今御説明はいただきながらも、大変困難なことだと思っております。  また、二百五円以下は何種類あっても一種類とみなすという考え方に従って患者負担の計算をすることは、医療機関、薬局にとって大変な事務量となることが予想されております。特に二百五円の中では、コンピューターでの計算をしていくにも、その組み合わせをどうするかというようなことによって、そのシステムそのものも立ち上げがしにくいというようなこともお伺いをしているところであります。  そこで、多剤投与の抑制という意味はよく理解できるわけでありますが、一日一種類という考え方を尊重するとして、例えば一日一種類十五円を十円に引き下げることはできないでしょうか。そして、そのかわりに、この二百五円以下を一種類とみなすルールをやめる。  こんなことをすることによりまして、一つには、一処方当たり種類数は平均四ないし五種類と言われておりまして、一日当たりの患者負担は五十円程度に軽減ができます。二つ目として、一日五十円という考え方も一部にありますが、これだと五十円以下の薬剤の場合、患者負担を取り過ぎになるということもありますが、一種類十円ということで取り過ぎを避けるということもできます。三つ目に、十円という丸い数字で、国民にも説明しやすい、また、計算しやすいということにもなります。四つ目として、二百五円を廃止することで、国民に説明がしやすい、そんな状況をつくることができます。さらに五つ目として、二百五円がなくなることで、医療機関、薬局の窓口での患者負担の計算事務も大幅に軽減できる等々。  一部では二百五円がまた不正請求の温床とも言われていると仄聞をしているところであり、これはぜひ検討すべきことと思っておりますが、どのように考えられるか、お尋ねをします。
  32. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 何点かございますが、まず一つには、今の十五円という金額よりも十円という方がわかりやすいではないかというお尋ねでございます。  確かに、十五円より十円の方がわかりやすいという面がございますけれども、問題は、今回の健康保険法等医療保険改正お願いするに当たりまして一部負担金額等を設定した考え方、これは、先ほど申し上げましたように、お年寄りの一種類一日の平均的な薬代が百五十円程度である、それのおおむね一割程度ということで計算をさせていただいております。と同時に、財政が非常に窮迫しております制度におきまして、この財政的な効果というものも、これも無視できないという問題がございます。そういった意味で、これをさらに十円に軽減していくということは、財政的な意味での問題というものを生じることになりますので、これはなかなか難しいというふうに考えざるを得ないと思います。  それからもう一点は、一日分の薬価の合計額が二百五円以下の場合については種類数にかかわらず一種類として計算をする、この取り扱いでございます。  これにつきましては、現在の診療報酬におきましても、このような調剤の数え方をしております。合計数が二百五円以下の場合については、これは一種類というふうな請求上の取り扱いをさせていただいておりまして、それとの関係で、今回の種類の数え方につきましてもこれに合わせた形にさせていただいたわけであります。  これを廃止して、二百五円以下の場合でもそれぞれの種類に応じて一部負担お願いするという考え方もそれはあり得るのでありますけれども、我々としては、現行の制度仕組みに乗っかった形での方法の方が関係者も理解しやすいのではないかというふうな配慮等がございまして、このような形にさせていただいておるわけでございます。  今回、新たに御負担お願いする制度を設けるわけでありますから、そういった意味では、なかなかわかりにくいということがあろうかと思いますけれども、私どもとしては、今回の改正の趣旨を十分御説明を申し上げ、御理解を賜りたいというふうに思っておりますし、また、医療機関等の事務的な負担というものもできるだけ軽減するように工夫をしてまいりたい、このように考えておりますので、御理解を賜りたいと思います。
  33. 松本純

    ○松本(純)委員 ただいまの二百五円についても、これは、金額、一種類にするということだけではなくて、薬品名の記載省略というようなところも問題点になるところであり、例えば、処方せんがその薬剤の流通を一部証明するという能力がそこにあると見るのであれば、そこに薬品名が省略されずに一品一品がきちんと記載される、そしてその単価がきちんと計算されるということによって、全体の薬剤費の抑えということには大きな効果があると私は考えておるところでありまして、どうぞ今後も検討していただきたいと要望をさせていただきたいと思います。  次に、今後の医療保険改革についてお尋ねをいたします。  医療費の約三〇%を占める薬剤費の節減合理化は、今後の医療保険改革の大きな目標の一つであります。今回の健保法の改正においても薬剤負担の引き上げが提案されておりますが、患者負担の引き上げはあくまで当面の施策であり、抜本的な薬剤費対策が必要であることは論をまたないところであります。  薬剤給付のあり方については、フランスの償還制、ドイツの参照価格制など幾つかの案が挙げられていますが、これまでの薬剤費適正化の議論は、次の点で議論が上滑りしていると思えてなりません。  第一に、償還制にしても参照価格制にしても、外国で実施されているというだけで、どのような制度なのか、ほとんど詳細がわからないままに、同床異夢の状態で議論がなされている状況であります。  したがって、これらの制度はどのようなメリット・デメリットがあるのか、我が国国民性や医療慣行になじむものなのか、ほとんど議論されないままに、とにかく今の薬価基準制度が悪い、これらの制度ならすべてが解決されるかのごとく主張する向きもあります。  第二に、薬剤費適正化の議論が余りに財政的な視点からの議論に偏り過ぎているのではないでしょうか。  薬剤について考えるとき、まず考慮すべきは、薬剤の有効かつ安全な使用の確保、そして薬剤の効率的な使用の推進の二つの点です。その結果として、薬剤の使用が合理化され、薬剤費の節減につながる施策こそ模索すべきことと思います。そうでなければ、ただいたずらに薬剤費を抑制し、必要な医薬品も使用せず、結果的に病気をこじらせ、余計な医療費の出費となることにもなりかねません。医薬品についての今日の課題は、薬剤費適正化とともに、薬剤使用の適正化であるはずであります。  そこで、質問いたしますが、医療保険審議会は、平成八年六月二十一日に、「今後の国民医療医療保険制度改革のあり方について」と題する第二次報告を出していますが、いわゆる償還制等についてもその中に上がっております。医療保険審議会には、平成七年度、薬価基準問題や薬剤給付のあり方について審議するために医薬品専門部会が設けられたと伺っておりますが、償還制、参照価格制についてどのような審議がなされたのか、その内容について御説明をお願いいたします。     〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕
  34. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 医薬品については、先生指摘のとおり、まさに使用の適正化ということが基本でありますし、それに当たっては、有効性あるいは安全性ということが基本になる、これは申すまでもないというふうに私ども考えております。  そこで、医療保険審議会医薬品専門部会についてのお尋ねでございますけれども平成六年の十一月から平成八年の十一月にかけまして、この専門部会において、医薬品に係ります保険給付のあり方について専門的な視点から検討が行われております。そういった中で、参照価格制度それからまた償還制度について具体的に検討がなされております。  その際の、まず参照価格制度ということについての意味合いでありますけれども資料に基づいて申し上げますと、医療機関等に保険償還する価格の上限を設定する、その上限額を超える部分は全額患者負担とする、こういったふうな考え方基本にして御議論がなされております。  それからまた、償還制度の意義づけとしましては、薬剤費について患者が一たん医療機関等に全額を払う、そして保険者が患者の請求に応じて償還する、こういうふうな考え方をベースとして御議論がなされております。  それぞれ、やはりメリット・デメリットというものがあるということで議論がなされております。  参照価格制度についてでありますけれども、当時の議論の概要を申し上げますと、一つには、同種あるいは同一の効能がある薬につきまして、廉価な薬、安い薬を使用することによって、医療費の節約が可能であるというふうなことが一つ挙げられております。ただし、実際には、後発品に対するイメージや信用をいかに確保するかが課題であるというふうな御議論がございます。一方、ドイツの例におきましても、ドイツの場合には参照価格制度を導入しておりますけれども、参照価格を設定しない品目がございます。そういった品目へのシフトが生じ、薬剤費の節減効果というものも短期間にとどまっているのではないか、また、参照価格制度等の導入によりましてメーカーの改良型の新薬開発志向が高まっている、こういうふうなことが御議論されております。  それからまた、償還制度につきましては、患者コスト意識を向上させるためには償還制度の導入というものも一つの方策であるという御意見がございますし、一方、償還制度というのは、実際上は、所得の低い、いわゆる貧しい層の方々の受診抑制につながるおそれがあるのではないか、また、医薬品の適正使用という観点からは有効とは考えられないのではないかというふうなことで、それぞれメリット・デメリットにつきまして御議論をいただいておるわけでございます。
  35. 松本純

    ○松本(純)委員 償還制、参照価格制については十分な議論がなされているというところにはまだ至っていないと思うわけでありまして、言葉だけがひとり歩きしているのではないかなというようなことで心配をしているところであります。  そこで、保険局長にお尋ねをしたいのでありますが、医療保険審議会に提出した資料の中で、厚生省は償還制、参照価格制について挙げている以上、これらの制度についての厚生省としてのある程度の構想があると思いますが、それがどのようなものか、簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  36. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 現在の薬価基準制度そのものの抜本的な見直し、これはまさに同時並行的に、あるいは今後精力的に取り組んでいかなければならないわけでございます。  そういった中で、我々は、今いろいろな角度から検討しておりますけれども、やはり基本につきましては、現在の公定価格制度というものを改めていく必要があるのではないか、薬の値段については市場の実勢にゆだねて、そして、それを基本として保険でカバーしていく範囲あるいは基準というものを考えていくことが適当なのではないか、こういうふうな視点一つ持ちまして検討いたしております。なおいろいろな考え方があろうと思います。私どもとしましても、今後さらに具体的に詰めていかなければならない、このように考えております。
  37. 松本純

    ○松本(純)委員 厚生省の構想では、償還制となった場合、償還額の算定根拠はどこに求めるのか、また、薬剤ごとの償還率はどのようにして定めるのか、お考えがあればお教えをいただきたいと思います。
  38. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 厚生省として、償還制を採用するということを決めたわけでございません。  ちなみに、外国の例で御説明をさせていただきたいと思いますが、償還制を導入しておりますのがフランスでございます。フランスの場合には、償還率あるいは償還額、この設定は二段階で構成をいたしておるわけであります。  まず一つには、医師会、薬剤師会、疾病保険金庫、医薬品製造団体の推薦者、医薬品分野における学識経験者、関係省庁の行政官等から構成されます情報公開委員会というものを設けております。ここで、既存の類似薬との治療上の利点を比較したり、医療経済評価等につきまして評価するという格好一つ段階であります。  それから、その次のステップといたしまして、経済委員会というものを設けております。この構成メンバーは、経済・財務、社会保障、保健、産業、こういった各省を代表する委員で構成されておりまして、この経済委員会におきまして、情報公開委員会の中の評価を踏まえ、企業の設備投資状況とか輸出販売の可能性、そういったものを総合的に考慮して償還額を決定しているというふうになっております。  また、フランスにおける個別の医薬品の償還率でございますけれども、まず一つは、治療に不可欠で特に高価な医薬品については一〇〇%償還するということでございます。また、一般薬剤については六五%を償還するということでございます。それからまた、軽症の疾患の治療に用いる薬剤については三五%を償還する。さらには、ビタミン剤等は給付の必要性に乏しいというような考え方に立っておるようでございまして、こういった薬剤については償還率ゼロということでいわゆる保険給付外、こんなふうな基準を設定して実際に行われております。
  39. 松本純

    ○松本(純)委員 償還制や参照価格制とする場合、薬価差益を解消するために、薬価基準を廃止し自由価格制にしたらどうかという御意見があります。自由価格制とは、医療機関が仕入れ価格に自由にマージンを乗せて売ってよい、すなわち、医療機関に医薬品の販売を認めることと同義になります。  自由価格制にしたら、医療機関の薬剤収益への依存は改善すると思われますか。あるいは、医療機関の薬剤収益依存がむしろさらに大きなものになるのではないかとの心配もありますが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  40. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 現在の薬価基準制度の一番大きな問題としては、公定価格であるということ、そういった中で、医薬品の供給についてはむしろ過当競争ぎみであるという問題があろうと思います。そういった中で、適正な医薬品価格というものをどういうふうな格好で形成していっていただくのが一番いいのかということになりますと、私どもとしては、やはり市場の流通の実勢にゆだねるというのを基本にすべきであろうというふうに考えておるわけであります。  確かに、そういった自由価格制といった場合には、先生指摘のような問題点を懸念する向きもございます。しかし、現在の公定価格制のもとにおける薬価差の問題等々に伴う弊害、こういったものの是正ということを考えますと、現行の薬価基準制度ではやはり難しいのではないかというふうに考えざるを得ないわけであります。  先生指摘のような問題等々をも踏まえながら、適正な薬価、薬の値段というものをどういうふうな格好で形成していくのがいいのかということについて、外国の状況等も十分踏まえながら、我が国の実態に合った適正な方式というものを考えていくということではないかというふうに考えております。
  41. 松本純

    ○松本(純)委員 現在、ヨーロッパで、我が国のように薬価基準制度を持つ国はどこなのか、また、自由価格制で非分業の国はあるのか、確認をさせてください。
  42. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 いわゆる薬価基準制度我が国と全く同じ薬価基準制度ということでありませんけれども保険で償還する基準というものを公定しているという意味では、フランス医薬品価格を公定している国ということで一般的には挙げられているわけであります。  フランス以外の主な欧米諸国を見ますと、医薬品価格につきましては、これは公定しませんで、いわゆる自由価格制を採用いたしております。そして、これら自由価格制を採用している国につきましては、いずれの国におきましても完全な医薬分業という形をとっております。
  43. 松本純

    ○松本(純)委員 自由価格制とし、なおかつ医療機関の薬価依存からの脱却を図るというのであれば、まさに、物と技術を分離する医薬分業しかないのではないかと思うわけであります。その意味で、与党協議会の基本方針でも医薬分業の推進をすべきとしておりますが、厚生省としてはどのように受けとめておられるのか、お尋ねをいたします。
  44. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 厚生省としましては、これまでも、医薬分業というものを推進していくべきであるということで力を入れておるわけでございます。  これは単に保険財政だけの問題ではありませんで、薬剤の重複投与、飲み合わせ等に伴う副作用の問題、こういった問題に対する防止というような効果、それから、そもそも医師と薬剤師がそれぞれの専門性を発揮して良質で適正な薬物治療を行う、そういうような視点で、かかりつけ薬局を中心とした医薬分業というものを推進していくことが望ましいということで考えておりまして、そういった考え方については今後とも推進していく必要があるというふうに考えております。
  45. 松本純

    ○松本(純)委員 医薬分業とは、薬物医療の公開であるとも言えます。医師は、処方せんによって処方薬を公開することになるので、処方には慎重になります。一方、患者の側も処方薬を知らされることにより、例えば薬剤の重複使用を避けることも可能となります。また、患者が複数受診した場合、かかりつけ薬局を持つことで、重複投薬のチェックや相互作用のチェックが可能となり、薬剤使用のむだの排除や薬剤使用の適正化が期待できるのです。  また、医薬分業では、医師は、一種類しか処方しなくても十種類処方しても処方せん料は一定でありますから、必要最小限の処方に取り組む環境ができ上がります。したがって、医薬分業では薬剤使用の節減が期待できるのであります。現に、厚生省平成三年に実施した非分業と分業した場合の医療費を比較した調査でも、長野県の上田市、東京都大田区蒲田のような面分業の地域では明らかに薬剤費が節減されております。要は、面分業で適正な医薬分業を推進することが重要であります。  そこで、今回、与党協議会の医療制度改革基本方針において、医薬分業の推進が取り上げられたところでありますが、これまで歴代の厚生大臣が、国会の答弁において、医薬分業を推進する旨を御答弁されてきました。しかし、厚生省内の医薬分業への取り組みを見ると、業務局がこれを所管し、主として受け入れ体制の整備という形の施策に限られ、医療政策としての医薬分業に対する基本姿勢が全く見えないと言っても過言ではないと思います。  今国会に上程されている医療法改正案において、ようやく医薬分業が医療計画の必要記載事項とされ、医療行政の中に初めて医薬分業が取り上げられることとなりました。今後、医療行政は医薬分業にどのように取り組んでいかれるつもりか、健康政策局長にお聞きをしたいと思います。また、特に医療計画への医薬分業の記載についてはどのような内容を想定されているのか、いま一度お尋ねをいたします。
  46. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 医薬分業の推進ということにつきましては、厚生省全体としての姿勢は、先ほど保険局長からお答えがあったとおりだと認識をしております。  今先生お話のございました、医薬分業についての医療法の一部を改正する法律案の中での位置づけでございますが、この改正案の中では、地域医療の体系的な整備を図るということから、地域医療計画の機能の見直し充実ということを考えております。具体的には、二次医療圏ごとに病院、診療所、薬局その他の医療施設の整備目標というものを必ず記載するということにいたしております。医薬分業ということにつきましては、今申し上げました病院、診療所と薬局との機能の分担あるいは業務の連携ということの中で位置づけられるというふうに考えております。  医療計画に記載する部分になります医薬分業の具体的な内容、これは基本的には医療計画を作成いたします都道府県において決められることでございますけれども改正医療法施行の際、医療計画の作成指針として厚生省考え方を示したいというふうに考えております。  指針の内容といたしましては、これから詰める、検討するわけでございますけれども、例えば、かかりつけ薬局の整備ですとか、医薬分業を推進するに当たりまして必要でございます処方せん応需体制の整備といったようなことについて指針の中に盛り込むということになるのではないかというふうに思います。具体的なことは、今後具体的に検討していくというふうに考えております。
  47. 松本純

    ○松本(純)委員 医療保険診療報酬の中で、包括点数制の採用が進んでおります。包括制は、医療機関にコスト意識を持たせ、過剰な診療や投薬を抑制するという点で効果を上げているとされていますが、どのような効果を示す資料があるのか、お示しいただきたいと思います。
  48. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 若干古い資料で恐縮でございますけれども平成二年度に実施いたしました調査がございます。これは、老人の入院医療管理承認病院実態調査ということでやったものでございます。  この結果によりますと、老人医療におきますいわゆる包括払い、これを採用いたしました医療機関における調査でございますけれども、日常生活動作能力を損なうことなく、検査、投薬、注射、これらの件数及び点数の減少が認められた、こういった調査報告がございます。
  49. 松本純

    ○松本(純)委員 私の手元にも厚生省からいただいた資料がありますが、実は平成二年度の調査という大変古い資料で驚いているところであります。最近のものはないのか、改めて確認をさせて いただきます。  いずれにいたしましても、単に医療機関のコストに対する薬剤比率が下がったというだけで薬剤使用の適正化が進んだと言えるのかどうか。言えるとしたら、どのような評価からそう言えるのか、教えていただきたい。  また、大変古い資料とおっしゃいました厚生省資料によれば、入院医療管理承認病院実態調査の結果では投薬が三四%減ったとしておりますが、これはそれだけむだな投薬が行われていたということにつながってしまうのかどうか、あわせてお尋ねをいたします。
  50. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 平成二年度に実施しましたこの調査は、老人医療老人病棟入院医療管理料というものを新たに導入しよう、そういった際にその効果を調査したものでございます。  今回、実はこれらについては継続的な調査がございませんので、これまで実施してまいりました包括制導入に伴う効果、こういったものの検証をきちっとする必要があるだろうということで、平成九年度に新しく予算がつきまして、そして、新たな包括点数のあり方というものを検討する際の基礎資料にしたいということで、平成九年度に調査研究を実施いたしたい、こういうふうに考えております。  この平成二年の調査において、今先生指摘のような形で医療機関の薬剤比率が減少した、これをどういうふうに見るかということでありますけれども、大方の見方といたしまして、当時、これらの結果については、薬剤使用量の減少あるいは比較的薬価の低い薬剤の使用への切りかえによって、医療機関みずから、経営努力といいますか、経営に資するようなビヘービアというものがとられたのではないかというふうに言われておるわけであります。
  51. 松本純

    ○松本(純)委員 例えば、老人保健施設は定額制で薬剤比率が低いと言われていますが、入所する前に病院から医薬品患者に交付されており、その薬を持って老人保健施設に入っているから薬が少なく済んでいるのだというように言われている例も聞いております。その費用は、結局は健康保険で請求されていることになってしまうわけであります。  また、介護保険制度の審議におきまして、私は、療養型病床群の例を挙げて、包括点数制が医療内容の質の低下をもたらすのではないかとの疑問を呈したところでありますが、与党協議会の基本方針でも、定額制による粗診粗療対策に配慮すべきであるとしております。厚生省はこれまでにどのような対策を講じてきたのか、お伺いをします。  さらに、米国では疾病ごとのDRGを策定した上で包括制としていると聞いております。包括制下の医療機関の機能を十分評価する体制ができていない状況で包括制を進めようとすることは問題があるのではないかとも思っているところでありますが、所感をお尋ねいたします。
  52. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 これまで、包括制を導入するに当たりまして、医療内容の質が低下すること、これを最も懸念しなければならないということでやってまいりました。  そういった際の一つの問題として、包括化したときの包括点数といいますか、これが、従来出来高払いで行われていた場合の点数との間で余りにもバランスを失しているということになると、従来に比べて粗診粗療というようなことに結びつきやすいという問題があろうかと思います。  それからまた、これを導入するに当たっては、例えば必要な看護体制あるいは医療機器、こういった周辺の施設基準といったものもきちんと備えているかどうか、そういったような配慮というものも必要だということで、それらの点について十分配慮しながらこの包括制というものを導入してきたというふうに考えておるわけであります。  そうは申しましても、医療の質を低下させない、低下しないようにする歯どめの最大のものは、医療内容につきまして、患者に対する情報の提供、情報の公開ということが最も大切だろうというふうに思っております。これから、これは包括制だけではありませんけれども医療につきましての情報の提供、情報の公開、こういったものについて積極的に努力をしていく必要があるというふうに考えております。     〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕
  53. 松本純

    ○松本(純)委員 質問がまだ幾つか残っているのでありますが、時間の関係もありまして、薬剤師教育の六年制について最後にお尋ねをさせていただきたいと思います。  ことしの一月十三日の読売新聞に興味のある記事が紹介されています。アメリカのギャラップという世論調査機関のアンケート調査で、アメリカの主な職業二十六種類について最も尊敬されている職業は何かという調査をしたところ、薬剤師がトップだったというものであります。  一方、欧米で広く読まれています「スクリプト」という製薬産業界紙で、この五年ないし十年以内に、イギリスでは薬剤師に処方権を認めていくことになるであろうという記事が掲載されております。なお、アメリカでは既に十六州で、薬剤師に条件つきながら処方権を認めているという情報もあります。  このようなことがなぜ欧米では起こり得るのか。医薬品の使用ということを国家がきちんと考え薬剤師という医薬品専門職能を大事に考えているからではないでしょうか。したがって、欧米はもちろん日本以外のほとんどの国が、薬剤師の教育年限は五年ないし六年となっております。アメリカでは八年という州もあります。翻って我が国では、薬剤師は四年の教育のままとなっております。  さきに厚生省は、薬剤師養成問題検討委員会が薬剤師教育について報告を出し、今世紀末までには薬剤師教育六年を実現すべきと報告しました。ところが、文部省の薬学教育の改善に関する調査協力者会議は、現行四年の学部カリキュラムの改善を進めるという報告をまとめ、学部改善の方向として、東大薬学部の古賀薬学部長を座長として学部カリキュラムの改善案をまとめられました。各薬科大学は、今、この文部省の協力者会議の方針に従って実習の強化等改善に努力しているとのことであります。  しかし、文部省の協力者会議がまとめたこのいわゆる古賀レポートについて、現場の薬学教育関係者は、とても四年でできるものではないと言っています。薬学者として必要な基礎薬学を修め、その上に医療薬学を修めるとしたら、薬剤師教育六年制がどうしても必要というのが関係者の本音であると聞いております。  薬剤師教育六年制をできるだけ早い時期に実現するよう、新しい時代を迎える変革のとき、今こそ作業を開始すべきときではないかと思っておるところでありますが、厚生大臣並びに文部省医学教育課長の見解をお伺いさせていただきます。
  54. 寺脇研

    ○寺脇説明員 文部省といたしましては、薬剤師の資質向上を図りますために薬学教育の改善を進めますことは、極めて重要なことであると認識をいたしております。  このために、薬学系の大学院の拡充整備ということで量的にも質的にも積極的な整備を進めておるわけでございまして、平成九年度にも国立で三つの大学の大学院の整備を行ったところでございます。また、先ほどございましたようなレポートの結果等を見まして、学部段階での抜本的なカリキュラム改革、中でも実習の重視というような考え方でカリキュラム改革を促進しておるところでございます。また、病院等での実務実習の充実方策でございますとか、学校を出た後の生涯研修の充実方策等につきましても、現在、厚生省薬剤師会等関係団体との間で協議の場を設けまして、総体的にどうあるべきかというような検討をあわせ進めておるところでございます。  そういった総合的な検討の中から、大学における学部教育の内容及び年限というような問題も今後議論が深まっていくというふうに考えておりまして、引き続きまして、厚生省及び関係団体との密接な連携のもとに、あるべき薬学教育の姿につきまして、研究、改善をさせていただきたいと存じます。
  55. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 薬剤師の方の資質向上ということで、薬剤師教育六年制というのは大変重要な問題でございます。  当面、大学四年制に大学院二年制を加味いたしまして、その中に六カ月以上の実務実習を加えるという構想で、その具体化について文部省を初め関係者と協議を進めてまいっております。  現在、大学院の拡充あるいは医療現場での実務研修の受け入れ体制の整備ということにつきまして、厚生省といたしましても、特にこの四月、本年度からは、免許取得後の一年間の実務研修事業も始まっております。引き続きまして、関係者との合意形成を図りながら、この問題の推進を図ってまいりたいと考えております。
  56. 松本純

    ○松本(純)委員 以上で終了いたします。ありがとうございました。
  57. 町村信孝

    町村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十一分休憩      ――――◇―――――     午後一時二分開議
  58. 町村信孝

    町村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。能勢和子君。
  59. 能勢和子

    ○能勢委員 自民党の能勢和子でございます。  このたびの健康保険法等改正につきまして、質問をさせていただきます。  私ども国民は、ひとしく健康保険の恩恵を受けて、余りにもその恩恵が大きいがために、余り認識もなく、本当に気安く健康を守ってきたという現状もあると思います。しかるに、気がついてみますと、財政が大変緊迫状況、非常に厳しい財政状況になっておるということであります。  それを考えますときに、今回の一部負担の上昇は、国民の皆様に御理解をいただき、納得していただかなければならない数字だと考えております。もっと突っ込んで申しますならば、私たちは自分の健康は自分で守るのだという自覚がなければ、本当に進まないわけであります。そういう意味で、今回の二割負担あるいは一割負担等々の上げ幅につきましては、何としても国民の良識ある判断で理解を求めたいと思っているところであります。  そして、医療保険制度におきまして、私たちが思いますのは、もっと突っ込んで申しますならば、病気の予防あるいは健康教育、健康増進、そういう観点から、この保険制度の中にこうした内容をも含めることはできないのだろうか、こういう予防医学についても触れていただきたい、取り組んでいただきたいと思うわけでございます。  そしてまた、そうした病気にならないための対策、そういうものについて、まさに私ども、保健婦、助産婦あるいは看護婦等々の職が担うべき役割だと思っておりますし、また、そういう責務が我々看護職にあるのだろうというふうに思っております。  それにつきまして、厚生大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思うわけでございます。
  60. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 御説のとおりだと思います。どえなにいいお医者さん、どんなにいい薬があっても、本人自身が健康管理に配慮しない限り、健康維持とか健康増進というのは図られないと思います。  予防は治療にまさるということは大変重要な点でありまして、そういう観点から、健康に対する日ごろの国民の関心を高めるためにいろいろな活動が必要ではないか。特に、食生活、運動、休養、これは私は健康の基本的な三原則だと思います。どうやって正しい、適切な食生活を日々維持していくか、そして、適度の運動、十分な休養、これがあって初めて健康の維持なり増進が図られる。あくまでもそういう基本的観念のもとにお医者さんや薬があるという観念を国民一人一人が持つことによってより健康な生活が送れるのではないか、そういう活動に対しては厚生省も今後とも積極的に対応していきたいと思います。
  61. 能勢和子

    ○能勢委員 厚生大臣もちろん健康増進、わかっていただいておるわけですが、これを、健康保険法といいますか、こうした医療保険制度の中にもぜひそうした位置づけもつけていただきたいと思うわけでございますが、いかがでしょうか。
  62. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 現在のいわゆる医療保険制度、健康保険制度の中でも、いわゆる保健事業というものがございます。これがまさに、健康教育、健康相談、健康診査、こういった健康増進のための各種事業をやっておるわけであります。こういった事業について、これからますます重要になってくると思いますし、そういった意味で、こういうような事業というものが広く、しかも効果的に行われるように私どもとしても考えていかなければならない、このように思っております。
  63. 能勢和子

    ○能勢委員 今回の保険法の改正の中で、老人保健制度等の改革段階的に取り組んでいかなければならないわけですけれども、その中で私が一番気になりますのは、世代間の負担の格差、公平感といいますか、若い人たちに、自分たちにばかり負担がかかるということを思っているわけですが、そういうことのないように我々はしていかなければならないというふうに思うわけです。  特に、老人医療の無料の問題も過去にありましたけれども、確かに老人、高齢者は身体的には弱者でありましょう。しかしながら、必ずしも経済的弱者でないということを私たちは認識しなければならないと思うわけであります。  データを見ましても、平成七年国民生活基礎調査の中にも、これはもちろん世帯主の年齢階級別に見た一世帯当たりの収入でありますが、三十歳代と六十歳代、七十歳代とを比べてみても、決して差があるものではありませんし、預貯金等にいたしましても、これは平成六年度の調査でありますけれども、三十歳代の預貯金と七十歳代の預貯金を比べた場合でも、三十歳未満が五百万以下でありますのに対し、六十歳以上、七十歳以上は、二千万余の預貯金がある、負債は逆に少ないというデータが出ております。  ここらも、すべての老人ということではありませんので、もちろん厳しい老人もあります。しかしながら、それは若い人にもあるわけでありますので、世代間における負担の不公平感は絶対あってはならない、本当に公平でなければならないというふうに思うわけであります。  そういう意味で、老人医療の、過去の無料から、今回、一律幾らというのが出ておりますけれども、このあたりもぜひ組み合わせの中に、むしろ、若い人たちが厳しい、子供を育てていかなければならないという支出も大きい状況にあるわけでありますので、必ずしも老人だけが弱いということではないということを考えていただきたい。公平に配慮すべきという考えを私は持っております。今回の老人に係る負担見直しの趣旨はいかがであったのか、あわせてそのあたりのお考えを聞かせていただきたいと思います。
  64. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 増加し続けます老人医療費、現在、その財源の多くを現役世代に依存しておることは御案内のとおりでございます。  そうした中で、今回、老人患者一部負担金を見直すことにいたしましたけれども、これにつきましては、先生今御指摘のございましたように、現在の高齢者の方々の社会経済状況は、いろいろな指標を見ましても、現役世代、若い世代と遜色のないところにだんだん行っておられるということも踏まえまして、一方において、非常に増大し続けます老人医療費をどう負担し合うかという観点から、今御案内の世代間の負担の公平という観点を考慮いたしまして、そのことによって医療保険財政を安定させるということで、今回はお年寄りにも応分の御負担お願いするという観点からこの改正お願いするものでございます。
  65. 能勢和子

    ○能勢委員 皆様の中にも戦後の厳しい時代を過ごした方もいらっしゃいますけれども、大変厳しい状況からしますと、今は皆保険、この恩恵はす ごいものがあると思います。また、医療のフリーアクセスが保障されておりますので、どこにいても、そうした健康管理について、医療機関にかかることもできますし、本当に感謝を忘れてしまっておる我々があるわけです。そんな中で、気がついてみると、他の国に類を見ないほどの世界一の長寿社会ができ上がったわけであります。これは大変喜ばしいことであるわけです。  しかしながら、一方におきましては、私たち国民患者になったときに、大病院志向とか、あちこちかかるはしご受診とか、あるいはまた社会的入院という形で医療財政を非常に圧迫してきている現状、まさに医療費の不合理な増大というのが起こってきているわけです。  これにつきまして、何としても取り組んでいかなければならないわけですけれども、これは医療機関と、国民といいますか我々患者、双方の協力によって解決していかなければならない、まさに医療のあり方について構造的な改革を本当に抜本的にしていかなければならないと思うわけであります。まさに、橋本総理の六大改革の中に、社会保障についても聖域はないのだとおっしゃっておりますように、私たちも、医療のあり方について構造的な改革を進めていくべきだと考えております。厚生大臣、その取り組みについていかがお考えか、教えていただきたいと思います。
  66. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 我が国医療制度が、今日、患者さんが自由に医療機関を選択できるということは、大方の意見として、高い評価を受けていると思います。しかし、反面、自由に病院を選ぶことができるということから、大病院集中の傾向が強まったり、あるいははしご受診とか、今言われたような話、マイナスの面も一部に出ているのは事実であります。  そういうことから、これから地域のかかりつけ医の機能を強化していくことが必要ではないか、同時に、診療所、病院との役割分担も必要ではないかという点が今後改革の中で当然出てきます。そういう面において、制度と、それからお医者さん自身の、かかりつけ医がやはり地域で信頼されるような医療技術、医療活動をしてもらわないと、この傾向というのはなかなか変わらないと思います。  今、いい制度と受けとめられている、だれでもが自由に医療機関を選ぶというのをこのままどんどん放置していいかという点も含めまして医療提供体制、そして、第一線のかかりつけ医の機能の強化と各医療機関の機能分担も含めて、今後の改革に取り組んでいかなければならないと考えております。
  67. 能勢和子

    ○能勢委員 今、厚生大臣がおっしゃいましたように、地域医療支援病院の制度化等も大変大事になってくると思いますし、また、高齢社会を迎えましたときに、すべての方が施設とか病院に入った場合を想定しますと、どのホテルも全部老人病院にしても追いつかないと思います。そうしますと、どうしても在宅医療を進めていかなければならない。皆様が施設なり病院へ入ってしまったら、もうパンク状態になる。そのためには、どうしても今後私たちは在宅ケアを推進していきたいというふうに考えておるわけです。  先駆的には、訪問看護ステーション等ができまして、大変効果を上げている、地域の住民の皆様に喜んでいただいているという状況をたくさん把握しております。そういう訪問看護ステーションが大変動いていき出したわけです。これはまさに、在宅ケアを進めていくためには大事な分野だと思います。  しかしながら、そうした在宅ケアを進めていくためには、特に訪問看護等につきましては、今、看護職プラスいわゆる医療マンパワーによって行われておるわけであります。その医療のマンパワーを本当に質のいい形にしていくために、養成、質の向上のために、これは取り組んでいかなければいけない課題だと思います。それについて、厚生省のお考え、どういう形でいくか、教えていただきたいと思います。
  68. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 高齢化社会を迎えて、在宅ケアを充実していかなければいけない。また、今お触れになりましたように、訪問看護ステーションに代表されるような、主として看護職を中心としたマンパワーといいますか、人材の養成ということでございます。  看護職員の養成ということ、あるいは確保ということにつきましては、御承知のように、看護婦等の人材確保の促進に関する法律に基づきまして、看護職員の再就業の促進あるいは離職の防止といったような総合的な施策を行ってきております。今後予想されます訪問看護あるいは在宅ケアに必要な需要を見込んでも、現時点では、恐らく看護職員の確保というものは順調に進むのではないかというふうに考えております。  また、その質の向上ということに関連いたしまして、訪問看護への需要に対応できる資質の高い看護職員を養成するということで、ことしの四月から、養成所のカリキュラムを改正いたしまして、特に在宅看護あるいは訪問看護といったような観点からのカリキュラムの改正をしたところでございまして、こういうようなことをあわせまして、資質の高い看護職員の養成ということに努めてまいりたいと考えております。
  69. 能勢和子

    ○能勢委員 今申しましたように、そうした在宅で高齢社会に対応していく形の訪問看護がある一方、特定機能病院といって、この間から非常に問題になっております高度の医療を行う病院があります。そういう中でまた個々の医療の質の向上を図っていくためにも、医療機関における看護職員のそうした教育の充実が大変大事になってくるという面があるわけです。  前回のときも、私も質問に立ちましたけれども一つの病院を想像していただいたらわかると思いますけれども、数の上でも、病院の中で看護職が一番多いわけであります。というのは、患者さんの最もそばにいて援助をし、一日も早い社会復帰を願い、看護計画を立て、動いていく中で、看護の質が上がることによって、本当にそうした早期社会復帰ができる体制というのがあるわけであります。  しかし、病院経営の立場に立ちますと、看護婦さんをたくさん雇うということが診療報酬面でどのように評価されるかということがまたあるわけです。看護職員をたくさん雇って、今、診療報酬体系は昔の基準看護と新看護体系というのがあるわけですけれども、新看護体系で二・五対一というふうに看護職をふやせば収入はふえるけれども、人件費等々での出ていくバランスが、たくさん入れることが必ずしも収入につながらないという逆転現象等も起こっているわけなんです。私たちは質の高い、質と量との両方の確保に努力するわけでありますけれども、その辺で、診療報酬の面でどのように今後取り組むのか、教えていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  70. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 これからますます高齢化になっていくわけでありますから、そういった中で看護婦さんの役割というのは非常に重要なものがある、そういった意味でますます内容の充実を図っていかなければいけないというふうに思います。  これまでも、そういった意味では、我が国医療機関における看護体制というのは非常に手薄なのではないかというようなことから、その充実に努力をしてきたつもりであります。現実には、平成六年の十月から、いわゆる新看護体系ということで、医療機関の中ではきちっとした専門職の看護婦さんが患者さんをケアしていくということが大事だということで、患者二人に対して看護要員一人を配置する二対一までの体制の評価というものを行うようにしたわけであります。  今後、こういった看護婦さんを初めとする医療スタッフの、いわゆる技術料ということになろうと思いますが、この技術料というものをきちっと評価していくことが、新しい時代に向けた医療機能の発揮に向けて非常に重要なことだというふうに思いますし、これからの診療報酬体系のあり方というのは、そういった技術料の評価というものを重点的に考えていくという方向でいくべきだというふうに私ども考えております。
  71. 能勢和子

    ○能勢委員 あわせて、その技術料と同時に、例えば手術に向かいます患者さんに対して、私たちは手術に立ち向かう力を呼び起こすといいますか、そういうふうに患者さんにかかわります技術料と表現したらいいのかどうかわかりませんが、術前に対するそうした看護といいますか、しっかりと手術に立ち向かっていただくための心の準備等々にかかわります。そうしたものの評価をどのようにしていくかということがあるわけですけれども、目に見えないそうした技術といいますか、心の技術といいますか、そういうものも大変あるわけでございます。そこらについても、ぜひともまた何らかの形で……。  手術のみならず、あるいは死に向かう患者さんに対しても最後の最後まで、人間らしく亡くなっていくための最期のかかわりもまさに看護が行うわけでありまして、医師から見放されてしまった患者さんに対しても、なお私たちは最後の最後までかかわるエネルギーというのがまさに看護であろうと思っているわけですけれども、そのあたりがなかなか評価として出にくいという部分があるわけですね。そこらもぜひ考えていただきたいと思うわけであります。  そしてまた、現在、医療費を緊迫させている材料の中には、長期入院ということが大変大きな問題になっております。これらにかかわりましても、本当にチーム医療でなければ、もちろん看護職だけでもできません、医師だけでもできません。先ほど薬剤師さんの意見も出ておりましたけれども、まさにチーム医療でなければ進まないという部分があるわけです。  こういうふうに、長期入院の是正を図るためには、本当にチーム医療、その中でもとりわけ患者さんのサイドにあって、二十四時間体制で、しかも二対一の割合で我々は見ていくわけでありますので、社会復帰といいますか、長期入院を是正するためにも大変なエネルギーを使うわけでありますけれども、そこらあたりでも何か厚生省のお考えがありましたら、お聞かせいただきたいと思います。
  72. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 長期入院の是正という観点からも、チーム医療といいますか、とりわけ看護婦さんの役割というのが非常に重要であるというふうに考えております。  これに対する診療報酬上の裏打ちということが重要なわけでありますが、平成九年四月、ことしの四月の診療報酬改定におきまして、そういった意味で二つの新しい料金体系を設けました。  それは、一つが入院診療計画加算であります。これは、入院の早期から、医師それから看護婦さん等の関係職種の方々が共同で診療計画というものを策定していただくということでございます。まさにそういった意味ではチーム医療ということになろうと思いますが、患者さんに対してその情報を提供していく、そしてこれに対する診療報酬上の評価を行う、こういうことが導入されました。  それからもう一つが、退院指導料というものを新たに充実いたしました。これは、特に看護婦さんが中心になって、関係職種の方々が共同して退院後に必要な在宅サービス、こういったものをきちっと見ていこう、そのための療養計画というものを策定する、そしてそれに従って指導していく、こういったいわゆるチーム医療に対しまして、診療報酬上も新たな視点から評価をする。  こんなふうなことで、私ども、方向としては診療報酬の中でこういった方向というものを取り入れていく、こういうような流れで考えております。
  73. 能勢和子

    ○能勢委員 ありがとうございました。  最後に、もう時間がありませんので、意見だけ述べさせていただきたいと思うのです。  まさに私たちも自分の健康を守るのだけれども、国としても本当に良質な医療提供するということがもちろん大事であります。そのためには、医療提供体制診療報酬体系、そういうものがきちっとならなければいけない。  今問題になっておりますのが薬剤であります。薬剤についての薬価差の問題、高薬価シフトの問題等が指摘されているところであります。今回、こうして私たち国民も一部負担を増額していくわけでありますので、どの目から見ても納得のいく制度といいますか、特に薬価基準制度見直し等も含めて、信頼のおける医療体制をつくっていくのが我々の役目かなと思っております。  厚生省が本当に国民からの信頼を回復するためにも、私たちも力を合わせて納得のいく制度を、そして、国民にも今回の値上げをしなければならないいきさつについてもきちっと説明をしていく、私たちも納得して説明していくという体制をとっていきたいというふうに思っております。  以上であります。
  74. 町村信孝

    町村委員長 鴨下一郎君。
  75. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 新進党の鴨下一郎でございます。  きょうは、医療費の問題というようなことで、私は、冒頭にまず大臣にお伺いしたいのです。  今、日本の医療費は、OECD諸国に比較してみますと、一人当たりの医療費は第三位です。ただ、これを対GDP比でいいますと七・二八%で、十八位に位置しているわけで、アメリカが一四・一二%、カナダは一〇・二三%というようなことであります。ということは、対GDPに関して見ますと決して高くない。全体的な医療費そのものの大きさとしては、日本は、国民みんなが一生懸命働いてきて豊かになったわけですけれども、その豊かになった分を医療の分野で恩恵を受ける、こういうような意味においては、決してそう多くはないというふうなことも言えるのじゃないかと思いますが、大臣に、その辺のところで、医療というのはどのくらいの規模が適正なのかというようなことについての御見解をまず教えていただきたいと思います。
  76. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 今の制度を前提にしていくと、欧米と違って日本は高齢化社会に進んでいく度合いが非常に速い。当然、医療費、高齢者の医療費は若い人の医療費に比べて大変大きなものがあります。これは、だんだん医療費がふえていくという傾向は否定できないところだと思います。  そういう中で、これから公費をどの程度導入していこうかという議論もあると思いますが、結局のところ、経済成長を図るためには、国民の働く意欲、企業のやる意欲、これを阻害すると、経済成長を生む金の卵を欲しがるばかりで、その金の卵を産む鳥を強くしない限りは、私は福祉充実はできないと思います。  その経済成長を図りながら福祉充実を図るということから、今、大方の意見として、国民負担率を将来五〇%を超えないようにしようという中で医療社会保障制度考えていく必要があるということで、今回、高齢者に対しまして若干の負担増をお願いいたしましたけれども、高齢者は医療給付を受けるだけではない、むしろ医療給付を受けると同時に、ある面においては、お互いこの社会保障制度を支える立場にもなってもらうような自立策を講ずることはできないか。私は、自立と連帯、こういう面から給付負担の均衡をどうやって図っていくかということから医療の問題なり社会保障の問題をとらえていく必要があるのではないかと思います。
  77. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 要するに、今の医療というパイの大きさが日本の経済に見合ったものなのか、それとも少し過大になっているのかというようなことについてのお答えをいただきたかったのです。  そして私は、今申し上げたOECDの諸国との関連でいいますと、日本の場合は非常に公的セクターが大きい部分なんですが、もっと、例えば民間の部分、それからその受益負担の部分、特にアメニティー部分については、民間の参入を許していくとかというような形で医療のパイを大きくしていく、こういうようなことがいいのではないか、こういうふうに思って伺ったわけであります。ですから、もう一度その辺のことについて。
  78. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 それは、まさに国民の選択の問題だと思います。どの分野のサービスを期待するか、どの程度の負担でサービスを受けられるかという問題に帰すると思います。  しかしながら、この自由市場経済の中で、医療は統制経済であります。その点、統制経済の中でどうやって国民の選択度を広げるか、そして公費以外の医療サービスにどういう形で民間が参入していくか、また、国民がよりよい給付を受けるためにはどの程度の負担をする覚悟があるか、その問題がありますから、私は、どの程度がいいか、過大か過小か、適当か適当でないかというのは、これから、その人によって違いますから、そういう中であって、公費をどのぐらい投入するかという問題とは連動してくると思いますけれども医療費全体としてはこれはふえていくと思います。その中で、公費負担をどの程度まで認めていくかというのは、まさに国民の選択の問題だと私は思います。
  79. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 要するに、ある規模というものを厚生省なり政府なりが設定してあって、それに対して今は過大になっているから抑制しようとか、多少その負担をふやしてももう少しサービスを充実していくのがいいのだ、こういう長期的なビジョンに立って、例えば、今回の医療保険改正についても国民負担お願いするわけですから、そうすると、結果的にその負担に見合うようなサービスをきちんと提供しますよ、むだ遣いをやめますよというようなことを示しながら、なおかつこのぐらいのものは提供しますということを、そして、経済に見合ってこのぐらいの大きさの医療がとれればもうそれでいいのだ、そういうようなことの大筋の厚生省なり大臣なりのお考えがなければ最初の議論が始まらないわけでありまして、そういうことなんですけれども……。
  80. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 だからこそ今、今回の改正案を提出して、医療提供体制診療報酬体系、薬価基準を根本的に見直そうということを進めているわけであります。
  81. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 それは、現状は足らなくなっているということはよくわかります。ですから、それを泥縄式にやっていくのか、それともこのぐらいの負担をしても規模を広げていっていいのか、この辺のところの議論が本来この厚生委員会の中でもっとされるべきだというふうに思います。  時間もありませんので、次に行かせていただきますが、そういうようなことで医療費の赤字は紛れもない事実であるわけでありまして、その解消手段として、今回は患者負担増を求める改正法案が今こうして論議されているわけです。  今回の医療保険改正の中で、特に政管健保の財政状況については、平成九年から十一年の三年程度は赤字は今回の改正で解消できるが、平成十二年にはまた赤字になってしまう。こういうような言ってみればつけ焼き刃的な対応で、三年後までに本当の意味での抜本的な改革構造改革をきちんとしなければいけないのだろうと思いますが、残されている猶予は三年しかないというような認識の上で、抜本的な改革というのをどういうふうにやっていくお考えなのかを伺いたいと思います。
  82. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 今回の医療保険制度を成立させていただいた後、二〇〇〇年を目途に、今言った医療提供体制診療報酬体系、薬価基準等の抜本的な見直しをするべく準備をしたいと思いますが、私は、この医療制度改革、抜本的な改革をしたからもう全部いいかというと、そういう問題でもないと思います。これは、どこの国の制度も、何年かたてばまた改善しなければならない点が出てくると思います。しかし、少なくとも今言われているような基本的な矛盾点、問題点というのは、ほとんどがこの十数年来議論してきたことばかりであります。そういう中での構造的な問題に手をつけようという機運が出てきたということは、私はいいことだと思います。  いずれにおいても、ともかくここを直さなければだめだ、ここを改善しなければだめだという点、基本的な問題について手をつけようという決意を固めたわけでありますから、これは各党各会派、それぞれ御意見があると思いますが、今後とも、この法案が成立した後も、真剣な議論が必要であり、真剣な具体策を提案する準備を厚生省はしていかなければならないと思います。
  83. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 私も、抜本的な改革をするということについては全くそのとおりだと思いますし、大臣はよくおっしゃいますけれども、どんなに抜本的な改革をしても、今の負担国民に申し上げるということはこれはもうしようがないのだと。どんなに、何をやろうが、このぐらいの負担はしようがないのだ、こういうようなことなんだろうと思います。ところが、政管健保が三年後にはまた赤字になってしまう。  そういうようなことでいえば、いわば政治がこの抜本改革をしていくための残された時間というのはあと三年しかない。この三年の中に、本当の意味で、これだけのむだを省きました、これだけ効率のいい、そして質の高い医療提供できる体制をつくりました、このことがきちんとでき上がらなければいけない。そういう意味で、大臣がおっしゃる、負担を押しつけて、しかしこの負担に見合うだけのすばらしい医療提供します、こういうようなことを、三年の後には国民に対して具体的な方策としてお見せしなければいけない。  これは、今月の七日の午前に、国会内で、与党医療保険制度改革協議会、その中で医療制度改革基本方針が正式に決められたということらしいのです、これは私たちはマスコミでしか伺っていませんけれども。  その中で、診療報酬の支払い方式についても、例えば定額制だとか何かを導入した方がより医療費削減に寄与するのだというようなことだとか、それから自己負担の部分で、薬の負担で一剤十五円というような負担がこれから導入されるわけですけれども、こういうことについての、例えば薬剤費の削減のためのさまざまな抜本的な改革、この辺のところが不十分のまま終わったというような報道なんですが、実は私もそういうふうに思っているのです。  そういうようなことですけれども、三年しか猶予がないというような段階で、今、与党のまとめたこの案で本当にいけますかというようなことで、厚生省はこの案にどういうふうなお立場をとって、さらに、どういうふうに実現していけるのか、このことについてお伺いをしたいと思います。
  84. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 三年の間にまとめなければいかぬと思います。そして、具体的な案が出ないからこそ、方向は出ているわけですから、具体案づくりは厚生省が責任を持ってやらなければいかぬ。今言った薬価基準見直しあるいは出来高払い診療報酬定額・包括払い等の問題、これについても具体案を今後示さなければいかぬ。  そういう意味において、私は、今回、具体案が出なかったということの方がむしろよかったのではないかと。基本的方向が出た、その中でいろいろな選択肢があります。厚生省考えるのも、私は一案とは限らないと思います。国民に選択肢を示すという点から見て、むしろ、きっちりとした細かい具体案が出ないで方向を示したということは、その方向の中でやるということですから、私はかえってよかったのではないかと思っております。
  85. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 方向を示す、十年先のことだったらいいのですが、先ほど申し上げているように三年ぐらいの猶予しかないのです。その中でやるためには、もう具体的な案が出てこなければ、今から実行したって三年後に実現するというのはなかなか難しいわけですから、大臣おっしゃるように悠長にやっていても、それは大臣のお年だったら逃げ切れてしまうかもわからないけれども、我々は非常に深刻ですよ。国民医療を背負っていかなければいけない、これから三十年、四十年生きるわけですから。ですから、この三年、四年が本当に勝負なんです。その間に具体的に何をしていくかというのは極めて重要な問題ですので、一つ、二つ、私なりに、具体的なこととして何をやるべきかという話を申し上げていきたいと思います。  一つは、不透明な薬価基準制度にどう切り込んでいくかということです。  これも、市場原理の原則を唱えるというような抽象的な表現に与党の協議会の中では結論づけられているわけです。ところが、国民医療費に占める薬剤費の割合は約三割、それを素通りして医療保険制度改革はあり得ないというような観点から、厚生省薬剤使用の適正化のためにいろいろな取り組みをしてきました。  例えば、これで申し上げますと、「薬価差の縮小と薬価適正化」というようなことで、薬価差の縮小、これは平成四年から。それから新医薬品薬価算定方式の適正化、ゾロ新の価格を抑制していこうというのはそれなりの意味があると思います。それから、薬価の再算定ルールの明確化、内外価格差是正のルールの明確化。もう一つ大きな柱として「診療報酬上の措置」、薬剤費を含めた包括化の推進その他。それからもう一つは「適正な医薬分業の推進」。  こういうようなことで、薬剤費の比率を下げていこう、トータルのコストを下げていこう、こういうような取り組みをずっとしてきたわけでありますけれども、現実にはなかなか減っていないというのが今の数字なんですね。  今回、苦しいから十五円の負担も含めて改正をしていこうというようなことになったわけですけれども、この薬剤比率を減らしていく基本的な戦略というのを厚生省はどうお考えになっているのか、教えていただきたいと思います。
  86. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 これまでも、御指摘のとおり、薬剤比率を適正化していく必要があるということでいろいろな手だてを講じてきました。当初はいわゆるバルクライン方式というやり方、それが今はRゾーンという格好になり、そして、そのRの幅も徐々に縮小していく、こういうやり方で来たわけでありますが、長年の期間を見ますと、若干比率は下がっておりますけれども、それほど目に見えるような形では下がっていない。  これは、どういうやり方をするかという場合に、現在の薬価基準という、いわゆる公定価格制というものがある限りにおいては、どうしてもそこに市場の取引の価格との間にギャップが出る、それがいわゆる薬価差という形で、それが医療機関の経営の原資になっていく、こういうふうな形の悪循環というものはなかなか断ち切ることができていないというふうに思います。やはりこういった薬価差というものを是正し、そして医療機関の経営については適正な評価をする、とりわけ技術料の問題あるいはキャピタルコストの問題、こういったものを適正に評価していく、こういった方向を目指すべきだというふうに思うわけであります。  そういった意味では、まず、この薬価基準に見られる公定価格制度というものを市場の取引の実勢価格に見合った形の基準に改めていく必要があるのではないか、そういった中でこの薬剤の使用というもの、シェアの是正を図っていくということが根本的な課題ではないかというふうに思っておるわけでございます。それと同時に、やはり薬についてのコスト意識といったものも患者さん側にも持っていただく必要がある、このように考えているわけでございます。
  87. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 薬価切り下げが薬剤費の比率を下げることに本当に寄与したのかどうかということについて、私は今の答弁の中からは理解できないのです。  今までの流れとしては、昭和五十九年の一六・六%の薬価基準の切り下げを含めて、昭和六十三年に一〇・二%、平成二年に九・二%と、一年に一六%も切り下げたりなんかしてきたわけです。結果的には、五十九年の二八・六%切り下げたときから、そのときの薬剤比率が三〇・九%、そして、それからざっと平均薬価の切り下げの幅を足していくと六〇%ぐらい切り下げているにもかかわらず、現実には、平成七年には二八・〇%と、薬剤比率は余り変わってないのです。それは一体どういうことなのか。  それからもう一つ薬剤比率の国際的な比較でいいますと、これは平成五年ですが、日本は二九・五%、フランスが一九・九%、ドイツが一七・一%、こういうように約一〇%ぐらい、ほかから比べると多いのです。  そうすると、私は、薬剤というのは約八兆円の公共事業だと思っているのですけれども、その公共事業を約三割切り下げられると相当のお金が浮いてくる、こういうふうに考えているのですが、薬価切り下げによって医療費全体の中で薬価の占める割合が本当に下がってきたのかどうかということについて、トータルの薬剤費そのものがどういうふうに経過して、下がったのかどうか、そして、薬価切り下げという政策が、これは薬価差を取るというお医者さんサイドにとってみたら非常に大きな影響のある政策だったのですが、トータルの医療費のコストを下げるという意味でこの政策が本当に有効に機能したのかどうか、この辺のところのアセスメントについて厚生省のお考えを伺わせていただきたいと思います。
  88. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 経年的に見る限りにおいては、薬剤費の比率というのはそれほど目に見える形では下がっていないわけであります。ですから、そういった意味では、現在の薬価基準のあり方そのものをやはり見直していくことが必要であるということであります。  この薬のシェアが下がっていない、これだけの大幅な薬価改定の引き下げをしてきたにもかかわらず下がっていないということについて、もう一つ新薬の方にシフトしていっているという要因が指摘されているわけであります。  そういったようなことでトータルの薬のシェアというものが下がっていないということでありますから、この辺のところは、やはり制度を根本的に改めていくということがないとなかなか適正化というものは進まないだろうというふうに思っております。
  89. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 私も、結果的に薬剤費が下がらなかったという一番の大きな原因は、新薬に対するシフトだろうと思うのですね。でも、これは言ってみれば、業界の方から見れば、薬価がどんどん切り下げられてしまって結果的に損益分岐点を切るような薬価基準になってしまえば、これはもうどうしようもないわけですから、そうすると、何とか生き延びるために、新薬を開発して、そしてそれなりの高薬価をつけていただいて、それでまた生き延びるというような、こういう生き残り策をずっとしてきたわけですよ。  私たち、それを非常にある意味で矛盾に満ちたものとして眺めてきたわけですけれども、例えば一つの薬の薬価を切り下げると、医者にとっては薬価差がなくなるということで薬を使う魅力がなくなります。前に私はその質問をしたら、かの岡光局長が、いや、薬価で薬を選ぶのじゃないのだ、医者は薬価で選ぶのじゃなくて薬効で選ぶのだと。もっともなことを言うなというふうに思っていたのですけれども、そういう意味でいいますとそのとおりなんですが、差益を取るというようなことも含めて、ある種経済原理の中で開業医も生きているわけですから、そうすると、同じ薬効だったら薬価差の出るものを使っていこうというのは、これは現実なんですね。その現実を直視しないで、薬価を切り下げていって、そして新しい新薬を出していくというような、こういうようなメーカーの生き残り策と厚生省薬価のあり方というこの中で、薬価を一生懸命切り下げてきたにもかかわらず薬剤費が減らなかった、こういうようなことになっているのだろうと思います。  私は、ある一つの薬をずっとフォローしているのですけれども、これは固有名詞を出すとお気の毒なのでS製薬とでもしておきましょう。S製薬の例えばセフェム系の抗生剤の薬価の推移をずっと追ってみたのです。これは発売年月が七〇年の五月の薬なんですが、そのときに薬価が三百六十七円五十銭ついているのですね。それが薬価の切り下げでだんだん安くなってきます。そして、七八年の二月には二百二十円五十銭になっているのです。そうすると、メーカーもだんだんたまらなくなってきます。  そうすると次に、今度はその薬を多少モデルチェンジしまして、中身は変わらないのです、ただ一日三回から四回飲む薬を二回飲む、いわばロングアクティングのものにモデルチェンジします。これはマイナーチェンジです。四つのドアの自動車を二つのドアにしたぐらいのマイナーチェンジです。形はほとんど変わらない。その薬を出して、七八年の二月に四百三十五円五十銭の薬価をもらっているのですね。その薬で、やれやれ、乗りかえてほっとしてやっていきますけれども、八八年には、四百三十五円だった薬が百七十一円まで切り下げられてしまった。さあ大変だというので、今度はいわば化学的なカメの子のところの一部の組成を変えて、また新規な薬を開発しました。  そして、その薬を、今度は二百五十ミリを一日分三で飲めるような薬で、二百四十五円十銭で、これは八一年の六月に開発している。ところが、その薬も今度は八八年には百三十六円になってしまいました。これもマイナーチェンジの薬です。今度は、自動車でいえば、ドアをフォードアからツードアにしたのじゃなくて、フロントグリルとそれからヘッドライトの一部を改造して、エンジンの容量をちょっと上げたぐらいの、そういうようなモデルチェンジです。でも、外見からしたらほとんど変わらない。そういうような薬が出てきて、ところが、八八年には百三十六円になってしまったので、今度はまたそのフォードアだった自動車をツードアにして、今度はロングアクティングということで、八八年に二百六円九十銭という薬価をつけて、そして来ている。  一番最初に出たモデルの薬は、九七年の四月には三十七円四十銭まで下がってしまっているのです。もう使えないのですよ、こういう薬は。ただ、いわゆる抗菌、薬効のことでいいますと、ばい菌というのはそんなに、十年や二十年で性質がそうそう変わってくるものじゃありません。ですから、おできだとか風邪だとか肺炎だとかには、その三十七円の薬だって効くのです。ところが、損益分岐点を切っている薬だったら、メーカーもつくらないし、それからお医者さんも使わない。ところが、薬としてはまだ使える。自動車でいえば、まだ乗れる自動車なのにスクラップにしなければいけなくなる。こういうもったいないことをやっているわけです。それが新薬シフトの本質なんですよ。  だから、新薬シフトはある意味メーカーの生き残り策、これはメーカーとしてはしようがないです。一生懸命やらなければ、新しい薬を開発しなければ、三十七円の薬を売っていたって、十分の一に切り下げられてしまった薬を売ったってなかなかそれで生き残るわけにいきませんから。だから、結果的には厚生省薬価のつけ方に問題があるというふうに私は考えているのです。  さきに、約二年前に井出大臣のときにも同じような質問を申し上げたのですけれども、そのときにも、損益分岐点を切らない、そして経済原理に乗ったところで薬価をとどめることによって、医者は、もう十年も二十年も使いなれていて副作用も作用も熟知しているいい薬、そしてメーカーも、開発は開発で頑張るけれども、画期的新薬でない、マイナーチェンジの薬を次から次へと泥縄式につくっていくことによる、そういう労力じゃなくて、新規の、画期的な新薬をつくるためにエネルギーを注ぐべきです。ただ生き残り策のために、薬価がどんどん切り下げられていくために薬を開発せざるを得ない、そのために莫大な開発費がかかるのです。そして、いろいろな治験でさまざまな問題が起きる。  今、こういうような弊害の中で薬剤の、薬価のあり方というのがあるのだということを指摘したいと思いますが、大臣、感想を。
  90. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 極めてわかりやすく説明していただきまして、参考になりました。そういう御批判があるからこそ、根本的な薬価基準見直しをしなきゃいかぬと。ある程度、この基準を決めれば、当然、薬価の差は出てきます。それと、現実に一々一万点以上の薬価を決める作業も私は大変だと思いますね。この膨大なエネルギー、細かい作業、そういう労力に比べて、実際、薬価を決めると、今のような、国民からも批判がある。  ですから、今後は、そのような今までの薬価の算定の仕方に批判があったわけですから、そのような批判にこたえ得るような改善策をどうやって講じていくか、国民批判に耐え得るような薬価基準見直しを行っていきたいと思います。
  91. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 一剤について十五円という負担、これは、先ほど自民党の委員の方から十円にしたらどうかというような提案もあったわけでありまして、決まったわけじゃないのでしょうけれども、十五円という負担国民お願いする、こういうような法案なんですから、医療費のむだ遣い、その中の一つに今言った薬価新薬シフトのメカニズムがあるわけですから、ぜひその辺のことは三年間のうちにやらなければ国民は怒ると思います。ぜひよろしくお願いいたします。  それから、ついでに、これは御答弁いただかなくても結構なんですが、今は何か景気はいいようだというようなことを経済企画庁は言っていますけれども、現実は非常に景気が悪くて株価も低迷しているわけですけれども、唯一景気がいいのは薬剤メーカーなんですね。  私はいろいろと調べていて驚いたのですけれども、例えば売り上げの経常利益率が一五・六七%で、その前の年が一四・四五%、他の産業より圧倒的に経営状態がよろしいのです。例えば、全産業の経常利益率は二・五九%、製造業が三・八〇%、食品が三・三五%、繊維が二・八七%というように、ほかから比べたら三倍から五倍ぐらいの大変な景気がいい産業なんです。  それで、先ほども申し上げましたように、私は、この薬剤メーカー医薬品産業というのは、厚生行政、薬価に守られた八兆円の公共事業だと思っているのです。  この前、あるニュースで、離島につり橋をかけた、百何十億かかった、そこに住んでいる方々は百何十人しかいないで、頭割りすると一人一億円の負担をかけて橋をかけた、そこに耕運機が走っている、こういうような絵が出ていました。  そういうことが税金のむだ遣いというような形で絵になるのですけれども、薬というのは、一剤、余り効かないけれどもよく売れる薬をうまく開発しますと、二百兆円、三百兆円の巨大なマーケットがあるわけです。ところが、それは、薬として飲んでしまえば、あとは体の中にしみ込んで、最後にはおしっことうんちになって出ていってしまうわけですから、目に見えないのですよ、どこにむだがあるのか。ですから、行政、そして私たちがしっかりと監視しないと、これはどこにそのむだ遣いがあるのかというのはわからない。八兆円の公共事業だというふうに思って、目に見えない公共事業をどう管理するのか、これが医療費をむだに使わない大きな一つの理由だろうと思いますので、ぜひその辺は大臣含めて厚生省皆さんもしっかりと頭に銘記していただきたい、こういうふうに思うわけであります。  それから、もう一つの柱として医薬分業があります。  薬剤をできるだけ少なく使っていこう、それから、医者が差益を取りにくいように処方せんだけにして、あとの部分は薬局にお任せしようというのが医薬分業です。そしてそれは、ある意味薬剤費適正化のための医薬分業でもあったわけですけれども、現在でいうと、平成六年、全国平均が約一八・一%、そして、この院内処方と院外処方せん一回当たりの薬剤費の比較というものを厚生省が出していますけれども平成六年では、お医者さんが勝手に院内で処方したときが三千三百四十三円、院外処方をした場合が二千六百二十七円で、院内の七八・六%だ、ですから差し引き七百十六円のお得になっていますというふうに言っているわけですけれども、私はそれだけじゃないと思うのです。  薬局を経営していかなければいけません。それから、薬剤師さんも食べていかなければいけません。そういうようなことでいいますと、全体的なトータルコストからいいますと、院内と院外の言ってみれば経済的な効果として医療費削減にこの医薬分業が本当に寄与しているのかどうか、このことについて厚生省のお考え、そして、どれだけの経済的メリットがあったのかというのを数字があればお示しいただきたいと思います。
  92. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 この医薬分業の問題、これは、厚生省としては医薬分業を推進しておるわけであります。これは、いわゆる保険経済という面が一つありますけれども、やはり本質的には、医薬分業ということによって、医師それから薬剤師それぞれが専門領域について専門的な知識というものを生かしていく、そういった中で適正な薬の投与あるいはまた安全な薬剤の管理、こういったものが図られるということが基本だろうと思います。  そこで、今お尋ねの件は、むしろ保険財政なりそういった面からどうかということでございますけれども先生が挙げられました厚生省資料では、まさに、処方一回当たりの薬剤料について院内投薬と院外投薬、いわゆる医薬分業の場合とを比較した場合には、その差が七百十六円、平成六年で見ますと七百十六円ほど院外処方の方が安かった、医薬分業の方が安かった、こういうふうな結果が出ております。  ただ、薬局の投資コストとか、そういったトータルコストで比較してみた場合はどうかというお尋ねでございますけれども、そのトータルコストでの比較した資料というものは私ども実は作成しておりませんので、そういう観点から比較したものは今までございません。
  93. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 通告の中で、私はそういう意図でお願いしたので、後日また質問させていただきますので、ぜひその観点お願いしたいと思います。  それから、もう一つ重要な話は、医療費を削減していくという意味で、私も医者だったので、今でも医者ですけれども、医師数を減らしていかないと医療費をトータルで抑えていくのはなかなか大変だというような考え方があります。  例えば国民医療総合対策本部の中間報告で、病院勤務医一人増加当たり年八千万円、開業医一人増加当たり約六千万円の医療費の増加がある。現在は医科大学は八十校、卒業者数は毎年約八千人であるというようなことなんですが、実際に私も調べてみましたし、厚生省の統計にもありますけれども、例えば、地域別でいっても十万人に対して医師数が低いところ、百人規模のところですと埼玉県や千葉県あたりです。もちろん高齢化率だとか何かの問題はあると思いますが、要するに、お医者さんが少ない地域ほど一人当たりの医療費は少ないのです。  というようなことでいいますと、お医者さんは、それなりにきちんと生活をして、そして看護婦さんを雇い、それなりの設備投資をして、医療を地域の中できちんと経営していかなければいけません。そうすると、出来高払いの中では一生懸命頑張らなければいけなくなる。普通の経済原理とは別に、医者をたくさんつくれば結果的にその分だけ需要がふえてしまう、こういうような不思議なメカニズムの中に医療というのはあるのですね。  そうすると、私は、ある程度お医者さんの数というのをこれからきちんと管理していかなければいけないのだろうと思いますけれども厚生省は適正な医師の数、それから、それをどういうふうにコントロールしようとしているのか、このことについての御見解をお伺いしたいと思います。
  94. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 今お話ございましたように、医師数と医療費ということについて、私どもがまとめました資料の中でも、かなり高い相関があるというふうに認識をしています。  まず、適正な医師数がどれぐらいかということでございますが、平成六年に、必要医師数と供給医師数についての予測といいますか、推計をしております。その中では、若干先でございますが、平成三十七年における医師の必要数ということで、上位、中位、下位、三とおりの推計をしております。その範囲の中では、大体二十五万人から三十万人というような推計をしております。ただ、この推計そのものにつきましては、その際の専門家の意見としても、今後の幾つかの前提条件を置いているわけでございますので、今後の医師の需要、特に例えば産業医ですとか学校医といったような新たな活躍をする場、それから国民の保健医療サービスに対する需要の増加、そういうようなことを勘案した上で改めてこの需給の見直し、特に必要数の見直しを行う必要があるということでございまして、私どもとしては、平成九年度に今までの推計を見直した新しい需給の推計を行いたいというふうに思っております。  それから、供給過剰になる医師についてどのような対策があるかということでございますが、御承知のように、現在までのところ、医学部の入学定員の削減ということはやってまいりましたけれども、目標であります一〇%ということにはまだ達しておりません。国立大学それから公立大学、私立大学を含めまして七・八%というのが実態でございまして、この問題につきましては、引き続き私どもとしても関係省庁あるいは関係者に医学部の入学定員の削減ということは働きかけをしていきたいというふうに思っております。
  95. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 大臣、ここは非常に重要なところなのでよくお聞きいただきたいのです。健政局長がおっしゃっていたことはそのとおりなんですけれども、医学部というのは厚生省ではなくて文部省なんですね。ですから、さっき答弁の中で関係省庁を含めていろいろとお願いしたいというような趣旨のお答えがありましたけれども、そのとおりで、卒業して医師国家試験に通った人たちの後の面倒は厚生省が見るのですが、そこまでの養成の部分は文部省なものですから、この二つが本当の意味で連携をきちんととらないと、医学部というのは一年に入ったら六年間かかって初めて医師国家試験に受験資格ができるわけですので、今、対策をやって入り口を閉めても六年間は八千人の卒業生が出続けるわけです。そうすると、平成十二年にはもう既に医師過剰になるというふうに厚生省はおっしゃっているわけですから、今、入り口を多少閉めてもなかなかうまくいかない。トータルの定員を一〇%削減しようと思ったというふうにおっしゃっていましたけれども、それがなかなか今うまくいっていないのです。  きょう文部省にも来ていただいていますので文部省にもお伺いしたいのですが、今、医師数を減らすというような長期的な戦略に立って、それについて文部省はどう考えて、そして現状はどうなっているのか、それから、国公私立別の現在の状況、そして今後はどのように計画をしているのか、さらに、厚生省との連携はどういうふうにとっているのか、ここまでお伺いをしたいと思います。
  96. 寺脇研

    ○寺脇説明員 医師数の削減の問題に関連いたしまして、大学の医学部の入学定員をどのようにするかということにつきましては、厚生省でいろいろな御検討がなされたことを受けまして、文部省といたしましても、昭和六十一年から六十二年にかけまして専門家会議を設けまして、一〇%の削減が必要であるという考えに立っておるところでございます。  これに伴いまして、逐次削減をしてまいりまして、国立大学につきましては目標をやや上回ります一〇・五%の削減を達成したところでございますけれども、公立大学につきましては〇・八%、私立大学につきましては五・一%というのが現在のところの定員削減の状況でございまして、トータルをいたしますと、先ほど健康政策局長からございましたように、削減率は七・七%というような状態でございます。  これにつきまして文部省はどのように考えるかという御指摘でございますけれども、引き続きまして、私どもといたしましては、いまだ達成されていない公立大学、私立大学にそういった目標について十分努力をしていただけるようにお願いをしてまいるということがあろうと思います。また、医学教育の入り口から出口までのあり方につきまして、御指摘ございましたように、厚生省と密接な連携のもとに、どのような医師養成が必要なのかということをもう一度抜本的に考え直してまいらなければならないと考えておるわけでございます。  例えば、今までは、医学部に入りますとほとんど自動的に六年間進級をしてまいりまして、最後に国家試験を受けるというような形になっておるわけでございますが、最近、各大学でも、その六年の学部教育の中できちんとチェックをしていって、漫然と六年間出ていって国家試験を受けるというのではなしに、途中でいろいろな形でのチェックというか、単位認定等に非常に厳正に当たっていくというような考え方もございます。また、これはまた今後検討してまいらなければなりませんけれども、医学部を卒業したら必ず全員医師になるという進路でどうなのかというような議論もございます。  そういったことを踏まえまして、入り口から出口までに至ります医師養成のあり方を、数的つまり量的にも、質的にもとのような形にしていくかということにつきましては、厚生省あるいは医師会等の関係団体とも十分御相談をさせていただきまして、文部省といたしましても積極的に議論を進めさせていただきたいと存じます。
  97. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 今、入学はとりあえず枠はなかなか難しいですよ、途中で落ちこぼれていく人たちもいるかもわからないからそれも臨んでいます、そして、最終的に国家試験のところでもっと絞り込めば医師の定数は絞れるじゃないかというようなことなんですけれども、それは入り口を狭められないというようなことの裏返しのお答えなんだろうというふうに思います。  その中で、私は文部省にもう一度お伺いしたいのだけれども、どうして公立はそんなにうまくいかないのですか、そのことを一言だけお願いします。
  98. 寺脇研

    ○寺脇説明員 公立大学につきましても、文部省といたしましてはお願いはしてまいっておるわけでございますけれども、御指摘のとおり、実態が全く進んでいないわけでございます。  この理由についてでございますが、公立大学というのがそもそも規模的に非常に小さいということでございます。入学定員が六十人というような大学がございます。六十人のところが二大学、八十人のところが三大学、百名のところが三大学というようなことでございまして、六十名の定数のところが非常に規模的に小さいということで難しいというようなこともございます。  また、地域医療を担っている、県民の県民のための大学というような認識も非常に強いわけでございまして、地元の方々の御意向というようなこともあろうと存じまして、そういう意味で入学定員の削減が進展していないわけでございます。  文部省といたしましては、機会をとらまえましては、各大学に、そういった国立の達成状況あるいは私立でもこれだけの達成状況にあるということでお願いをしておるわけでございますが、今申し上げましたような理由から難しいものがあるのではないかと考える次第でございます。
  99. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 あとは文部省所管ではない医学部が幾つかございます。例えば自治省がかかわっているところで自治医大があります。それから労働省がかかわるところで産業医大、それから防衛医大があります。  それぞれ御答弁をいただきたいと思うのですが、自治医大は僻地医療等について実際に従事するお医者さんを養成していくというようなことなんだろうと思いますけれども、その経営についての例えば各自治体からの負担金、それから卒後の進路、十年たった後の動向について、自治医大そして防衛医大それぞれお答えをいただきたいと思います。
  100. 門山泰明

    ○門山説明員 自治医科大学のお尋ねにつきまして、お答えさせていただきます。  まず、自治医科大学を卒業いたしました学生の進路でございますが、平成八年三月までの卒業生、千九百六十七名でございます。このうち、研修中の者などを除きます千五百十四名が第一線で医師として勤務しているわけでございます。  このうち、平成八年の七月現在でございますが、九年間の義務年限中の者五百八十二名ございますけれども、これはすべて、それぞれ都道府県知事が指定いたします公的医療機関等で勤務いたしております。このうち四百五十二名が僻地等の勤務となっております。  二点目に、義務年限が終了いたしました者でございますが、義務年限が終了いたしました後につきましてはそれぞれの選択ではございますが、それにもかかわりませず、義務年限終了した者で医師として勤務、開業しております者が九百三十二名、このうち六百八十七名が引き続き出身都道府県内で勤務、開業しておりまして、僻地などで勤務、開業いたしておられる方が二百七十一名というふうに承知いたしております。  それから、自治体からの負担等につきましてのお尋ねでございますが、自治医科大学は私立の大学でございますので私立大学等経常費補助金等もいただいておりますが、都道府県の負担金といたしましては、平成七年度、各都道府県一億二千七百万円ずつ、合計で約五十九億円の負担をいただいているところでございます。  以上でございます。
  101. 加藤恒生

    ○加藤説明員 防衛医科大学校の学生の医学教育に要した費用でございますが、防衛医科大学校におきます学生の養成に直接必要な維持的経費及び教育訓練等を内容といたしますいわゆる活動的経費を対象にして算出いたしますと、平成九年度は一人当たり年間約一千五百万円かかっております。一人当たりの年間でございます。  防衛医科大学校卒業医官の状況でございますが、これは平成八年十二月三十一日現在の数字でありますけれども、防衛医科大学校におきましては、これまでに第十七期生まで一千百七十八名が卒業いたしました。そのうち一千百七十二名が自衛官として任用をされましたが、これまで防衛庁側の慰留、説得にもかかわらず三百六十六人が家庭の事情その他の理由から退職をしているという状況でございます。
  102. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 時間がなくなってしまいましたので、本当はもっといろいろと伺いたい部分があるのですが、大臣、最後に、重要なことは、今、防衛医大も自治医大も、そして文部省も各公立医大も含めて、私立医大もそうですけれども、それぞれの論理があるのです。そして、それぞれ、学生が減るということは大学にとっては非常に痛手ですし、それから、卒業生をどんどん出していくということが学校が盛り上がっていくということになりますから、減らしたくないですよ。でも、ことし八千人入学すれば、医師国家試験というのは資格試験ですから、定員何名と決まっているわけではありません。そうすると、みんな一生懸命勉強したら合格させざるを得ないわけですよ。ということは、医師がどんどんふえていくということになります。  そして、最後にもう一度繰り返しますけれども、今の時点で病院勤務医が一人増加当たり八千万円、開業医一人増加当たり約六千万円の医療費の増加があるというのです。そういうことを考えますと、やはり私は、文部省にもできない、防衛庁にもできない、それから自治省にもできない、労働省にもできない、ある意味で卒後のすべての部分を生涯面倒を見る厚生省がこの部分についてはイニシアチブをとって、最終的に医師の定数、そして適正な定数のあり方ということを、ぜひ厚生省そして厚生大臣がイニシアチブをとっていただいてコントロールしていただきたい、このことをお願い申し上げたいとともに、御見解をいただきたいと思います。
  103. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 医師数が多ければ多いで、また問題は出てくる。しかし、日本人というのは、これは大したものだなという一面もある。というのは、二十年前ですか、田中内閣のときに、医師が少ないからふやそうということで、二十年間で目的を達してしまったのですね。その目的を達すると、今度は別の弊害、問題点が出てきた。今、逆の、今度は減らそうとしている。ふやすよりは減らす方が、これは大変だ。どっちが大変だというとわかりませんけれども両方大変だと思うのですけれども、一方の目的は達して、今度は逆の方向をやろうとしている。  それだけに、普通の経済でありますと、供給側がふえると値段は下がるのですけれども、今指摘されたように、医療関係はむしろ医師がふえると医療費がふえていくという、これは非常に自由経済の中での公共経済、統制経済の難しさがありますが、厚生省としては医師数を一〇%削減しようという計画で今までやってきたわけでありまして、その目標を達成しているのは今のところ国立大学だけでありますが、今後とも、その目標に沿って関係省庁と連絡をとりながら鋭意検討を進めていきたいと思います。
  104. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 ぜひそのことを、厚生大臣が郵政三事業の民営化とともに絶大なリーダーシップをとっていただきたい、このことをお願い申し上げまして、質問を終わります。
  105. 町村信孝

    町村委員長 青山二三さん。
  106. 青山二三

    ○青山(二)委員 新進党の青山二三でございます。  今は、医者の立場ということで大変専門的なお話がございましたが、私は、国民を代弁して、また主婦を代弁して、ただいま上程されております健康保険法等の一部を改正する法律案について質問をさせていただきたいと思います。  二十一世紀の日本は、超高齢化社会を迎え、出生率の低下に伴い社会保障も深刻な事態にならざるを得なくなっております。当然、二十一世紀医療保険制度社会保障全体の改革の中で考えていくべきものでございます。問題は、どういう形の社会保障改革するかということであろうかと思います。そして、その選択は国民自身の意思によるものでなければいけないと思っております。  そこで、まず初めに、二十一世紀医療保険制度のあり方を大臣はどのように考えておられますでしょうか。
  107. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 今まで国民保険制度で、医療制度がここまで発展してきたわけであります。そして、目標としていました長生きできる社会にしようという目標は達成することができた。今や、日本は世界一長生きできる国になりました。これは、医療保険制度と無縁ではないと思います。お医者さんの力、また薬剤関係の力、看護婦さんの力、それぞれたくさん、いろいろあると思いますが、ともかく戦後一貫して何とか長生きできる社会にしようという目標は達した。  そういう中にあって、今いろいろな、目標を達成すると別の矛盾が出てきております。今回、医療制度基本的にはいい医療制度だけれども、今言ったような給付負担考えるとこれ以上若い世代負担を押しつけることはできないということから、いろいろな改革が叫ばれております。  そういう中にあって、今、いろいろな批判を受けとめまして、今までの医療提供体制、そして、出来高払い制度のよさも十分ありますけれども、この出来高払い制度一本でいいのかという、包括払い制度を加味すべしという意見もあります。診療報酬体系の問題、それと同時に薬価基準薬価基準の算定方式にしてもこれほどの問題点指摘されております。  そのような全般的な問題点を総合的に見直して、そして、患者負担がなければ国民負担がないかというと、そうじゃないのですね、この医療の問題は。患者さんが負担しなければどこかで、保険料か税金で負担しなければならない。そういう点を含めまして、どの程度の負担ならば国民は了承してくれるのだろうか、また、どの程度の給付国民は望んでいるのだろうか。給付負担、そしてだれがどこで負担してどういう人がその給付を受けるのか、そういう視点を見詰めながら、私は、今や総合的に見直す時期に来ている、二〇〇〇年を目指して今回は第一段階第一歩改革でございますが、二〇〇〇年を目指して今言ったような総合的な構造改革をする必要があると認識しております。
  108. 青山二三

    ○青山(二)委員 大臣のお考えは大変わかりました。  そして、先ほど来問題になっております医療費でございますけれども、本当にこの医療保険財政を圧迫いたしておりますのは医療費でございます。今回、この医療費のむだや非効率性にメスを入れないで安易にそのツケを高齢者とか患者負担増に押しつけた、こういうことでございまして、国民感情からも容認できるものではないと思っております。その場しのぎや小手先だけの改革でお茶を濁すやり方はもう限界に来ていると思うのでございます。  今回の改正案は、財政事情を優先した一時しのぎの行きようです。国民に安易な負担増を押しつけるものでありまして、長期展望を見据えた改革案とはなっておりません。  今回は、サラリーマンなど加入者本人の医療負担を現在の一割から二割に引き上げる、二つ目が、七十歳以上の高齢者の外来自己負担を現在の月額千二十円から一回五百円にする、そして、外来で受け取る薬について一種類ごとに一日分について十五円、先ほど来問題が出ておりますけれども、十五円を徴収する、そして、政府管掌健康保険保険料率を八・二%から八・六%に引き上げるなどということが柱になっていますけれども、今回の改革案平均的なモデルケースに当てはめますと、サラリーマンの場合では現在の二・四五倍、七十歳の高齢者の場合約二・八二倍へとアップすることになります。  医療機関のサービスが向上するというわけでもなく、また、中身が改められるわけでもなく、一気に三倍近い負担増を患者に押しつけるということになっておりまして、私たちの目から見ると、どこが改革なんだと言いたいぐらいでございます。こうした余りにも安易に患者負担増を押しつけるということは納得がいきません。  そして、先ほど来お話が出ておりますけれども、こういう一時しのぎの改革をいたしましても、政管健保は二〇〇〇年に底をついて破綻する、このように言われております。今回の改正案では三年後にはまた財政的な危機に陥りまして患者負担増を迫らざるを得ない、こういうふうな状況が目に見えているわけでございます。  厚生省は、短期的な改革案でなく、中長期的な改革ビジョン、具体的なスケジュールを政府方針として国民の前に明らかにして、そして理解を求めていく必要があると思うわけでございますが、今後の取り組みはどのように予定されておりますか、お伺いをいたします。
  109. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 患者負担の増加をお願いするというのは、私は、安易なことではないと思います。苦痛を伴うものであります、政治家にとって、政党にとって。だからこそ、今まで公費を投入して若い世代にツケを回してきて、これだけ借金財政になってしまった。むしろ、借金することの方が私は安易なことだったと思います。それで立ち行かなくなってきた、これからの若い人の負担はどうなるのか、倍になってしまうじゃないか、大変だということで今回改革をしなきゃならない。  国民健康保険に入っている方は三割負担している。健保は二割が本則だけれども、一割にとどめてきた。そして高齢者に対しては、額にすれば一割もないけれども一月千二十円。これではもう、我々のような五十を過ぎた人はいいですけれども、四十以下の人は、今後、高齢者がふえる中で、これから倍以上の負担にたえ切れるか、これはもたないだろうということで、いよいよ本格的な改革に踏み込まなければならないのが現在の置かれた状況だと思います。  そういう点から、今言った、患者さんに負担お願いする。特に高齢者に対しては、これからますます高齢者の医療は増大していくという中にあっては、先ほどの議論にありましたように、高齢者だからといって必ずしも経済的弱者ではないのではないか、お互い、給付を受けるだけでなくて、医療を支える側にも回ってもらおうということで、今回の医療費の負担お願いしているわけであります。  もちろん、これだけで済むと思っておりません。今言った、患者さんに負担を押しつけるというのは、むしろ、政治家の立場から見れば、赤字国債を発行するよりも苦しい。安易な方法というのは、今回の法案を廃案にして、患者さんの負担を上げない、また借金しましょう、この方が安易だと私は思います。  しかし、こうなったら大変な無責任な、若い世代に残す、だからこれはもう許されないということで、今回の改正案を契機にして、第一歩として、今言ったような構造的な改革に早急に取り組みたい、今年度中にある程度の姿を厚生省国民に示さなければいかぬと私は思っております。
  110. 青山二三

    ○青山(二)委員 大臣はそのようにおっしゃいますけれども国民の目から見れば、本当に負担を押しつけられている、消費税は五%になるわ、特別減税は打ち切られるわ、その上医療費まで上げられてはたまらない、こんな思いの国民が多いということをひとつ覚えておいていただきたいと思います。  確かに、日本の医療保険制度は、病気やけがをした場合、だれもが費用を心配せずに治療を受けられる、そういう社会保障制度として大きな役割を果たしてまいりました。しかしながら、ここに来て医療費は高齢化や診療費の引き上げなどで急速に膨張いたしておりまして、医療保険の財政はもはや限界に達しております。  厚生省は、高齢化の進展と医療費の上昇の影響をもろに受けたのが財政悪化の大きな要因としておりますけれども医療保険が深刻な状況に陥る前の一九六〇年代から七〇年代にかけましては、他国もうらやむ高度成長を続けておりました。そして、その当時から将来の高齢社会の到来は予見されていたはずでございます。顧みますれば、財政的危機は早期にあらわれていたと見るべきでございます。  そして、六二年度には、被用者保険と比べて低所得者の加入率が多い政管健保、国保にその傾向が顕著にあらわれ、六四年度には政管健保で三百二十五億の赤字を出しております。この事態に国は基本的矛盾を自覚しつつも、国庫補助、保険料率の引き上げという暫定的な措置で対応いたしておりまして、この方法が常習化していったとも思われます。  そして、七〇年代のオイルショック以降は、経済が安定成長に入るとともに、医療保険財政の根本的見直しが叫ばれつつ、つい最近まで、その根本的あるいは抜本的見直しといいながら、これが暫定的な見直しということになって今日に至っているのが現状だと思います。さらに、この十年、患者負担引き上げ以外の各種の改革が繰り返し論議されていたにもかかわらず、先送りされてきたのが実情でございます。  介護基盤を整えつつあった西洋を手本にいたしまして、財政的に余裕のあった当時から、特別養護老人ホーム設置やホームヘルパーの育成など、高齢者介護を進める社会基盤の整備をなぜ進めてこなかったのか。進めておけば、少なくとも現在のように深刻な医療保険危機を招くことはなかったのではないかと、私は残念でなりません。  そうした意味からすれば、患者負担を柱とした今回の改正案は、国民生活に背を向けた失政のツケを国民が負わされようとしていると言えるのではないかと私は考えるのでございますが、大臣、いかがでしょうか。
  111. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 失政のツケはどうかというお尋ねだと思いますが、高度経済成長が続いていれば、このような医療費は、経済成長の伸びに合わせて医療費の伸びがおさまっていたと思うのであります。しかし、医療費の伸びは経済成長以上にふえていくというそういう情勢の中で、今後、高度成長が見込まれるかというと必ずしもそうではない。  そして、これからの医療制度のあり方というのがいろいろ問題が噴出してきたわけでありますので、失政のツケはいずれ我々が負わなければならない。役人でもない、国民でもないとなると、結局これを決めてきたのは政治家、政党ですから、政党は真剣にこの問題を考えなければいかぬ。  そういうことから、もう安易に国民に対して、一方だけに、患者側だけに負担お願いするわけにはいかぬだろうということで総合的な見直しが今始まったわけでありますので、失政のツケの責任をとるというのだったらば、できるだけ早くこの現在の制度改革するために、全政党が努力を傾けていかなければいかぬ、そういうことによって、失政と言われていますが、今までの矛盾点の解決に努力を傾注していきたいと私は思います。
  112. 青山二三

    ○青山(二)委員 ぜひよろしくお願いいたします。  医療保険制度構造改革考えるときに、現在ふえ続けているこの医療費をどうするかが問題なわけでございます。これを国民負担するのか、あるいはリストラによってカバーするのか、そのことを考えていかなければならないわけでございます。どのような方法をとるにいたしましても、その際に重要なことは、第一に、医療保険制度の徹底した効率化を図ることに尽きると思うのであります。  ところが、今回の改正案では、第一に考えられなければならないこの制度の効率化を先送りした内容となっております。これでは国民からは到底理解が得られないということは明らかでございます。負担だけがふえ続けるならば、社会の活力がそがれるのは目に見えております。そうならないうちに、老人保健制度の抜本改革、そして社会的入院の解消、薬価基準制度見直し医療機関の機能分担による医療の効率化などを早急に解決しなければならない。今、そういう問題が山積いたしております。先ほど大臣がおっしゃいましたように、いずれも痛みを伴うものでございますが、それを乗り越えずして未来の展望はない、このように思っております。今回の医療保険の抜本改革、すなわち医療費抑制に向けた構造改革を先送りした理由をお尋ねしたいのでございます。
  113. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 今回お願いしております制度改正でございますけれども、これはもう待ったなしで構造的な改革をやっていかなければならない。また、やっていくということを背景として、第一段階としてお願いをしているわけであります。  それはなぜかということなわけでありますけれども、現下の医療保険制度、この財政状況は非常に危機的な状況にございます。これをこのまま放置して抜本的な改革をやっていくというには余りにも、制度そのものを崩壊に導くことになるというふうに思います。  したがって、まず現行制度の財政の安定を図りつつ、そして、その根本的な構造改革というものを実施していくということであろうと思います。そして、この根本的な構造改革、この視点は、まさに先生が今御指摘がございましたそれらの点を踏まえた改革でなければならないというふうに思っております。  まさにそういった機運が今出てきておると思いますし、また先般、与党における協議会においても改革基本指針というものが取りまとめられたわけでありますし、そういった基本指針を踏まえながら、この今回の改正というものを経まして、私どもとしても、具体的な案を厚生省として提案していく、策定していく、そして国民の選択を求めていく、これが必要だろうというふうに考えております。  そういう意味では、決してこの構造改革というものを先送りしてしまうという考えはございませんで、一歩一歩実施をしていく、しかしながら、現在の医療保険制度の窮迫した財政状況、これを何とか安定化しなければいけないということでお願いしているわけでございます。
  114. 青山二三

    ○青山(二)委員 そういうふうに改革を進めていく中で、やはりどうしても一つ考えていただかなければ困ることがございます。  最近の国民生活基礎調査や全国消費実態調査などを見ますと、高齢者は必ずしも社会的あるいは経済的弱者ではないということが一部に指摘されております。しかし、わずかな公的年金だけが頼りの高齢者が多数いる現実であるということも忘れてはならないと思います。高齢世帯の場合、全世帯に比べて所得の低い層の割合が高く、いわば持てる者と持たざる者の格差が今大きくなっております。そこで、そういう高齢者には特に細かな配慮が必要だと思うのでございます。  そこで、特にわずかな年金で暮らしているひとり暮らしの女性の場合などは、経済的にも社会的にも大変な状況があると考えられます。今回の改正にいたしましても、所得の特に低い高齢者に対する何らかの軽減措置を考えるべきではないかと思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
  115. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 今回、老人保健法におきましても、高齢者の方々にも応分負担お願いするということで、先ほど来の御議論のようにお願いをしておるわけでございますけれども、高齢者の社会経済的な地位ということからいいますと、先生今お挙げになりましたけれども、一人当たりの可処分所得等で見ますと、その分布等も含めまして、若人世代と本当に大変劣っている状態にあるかというと、そうではないというのが実態であろうかと思います。もちろん、そうした中にも、若人も同様でございますけれども、低所得の方というのはおられます。そうした方々に対してどういう配慮をしていくかということになろうかと思います。  今回の改正案におきましては、低所得者の方々の入院一部負担金につきましては、一日につき五百円という形で、一般の負担額の半額というような形での配慮をしておりますことは御案内のとおりでございます。この点、入院につきましては、どうしても絶対額としてケースによりまして費用が高くなりがちでございますから、そのような配慮をさせていただきました。  なお、外来の一部負担金につきましては、一回が五百円、薬剤一部負担金については、一種類一日分について十五円と設定をしたところでございますけれども、外来の一部負担金については四回という制限もあれしておりますところもございまして、低所得の方を含めまして無理なく御負担をいただけるのではないかということで御提案を申し上げている次第でございます。
  116. 青山二三

    ○青山(二)委員 医療費の問題でございますけれども、先ほど来議論がございましたけれども医療費がだんだんふえていく、この医療費の増加に対して抜本的なメスが入れられなければならないと思います。  とりわけ重要なのが薬価の問題でございます。十年間の国民医療費を見ますと、その増加に比例して薬剤費が三〇%前後で推移しております。これは先ほど話題になったところでございますが、この危機的な状況にある医療保険の財政悪化の原因がこの薬剤費であることはもう間違いないのではないかと思うわけでございます。  一九九五年の厚生省調査によりますと、日本の総医療費二十四兆三千四百億円のうち薬剤費が七兆八千二十九億円、二九・一%、ところが、アメリカは一一・三%、イギリスは一六・四%となっております。つまり、日本はアメリカやイギリスに比べまして二倍から三倍と、異常なまでに薬剤費の占める割合が高くなっているわけでございますが、この原因をどのように分析しておられますでしょうか。
  117. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 確かに、諸外国と比べますと、日本の医療費に占める薬剤費の割合というのは非常に高いという、これは統計的にもはっきりあらわれておるわけであります。一方、薬価については、これはおおむね二年に一回、薬価改定というのが行われ、一貫して引き下げられてきておるわけでありますが、薬剤比率はほとんど変わらない。  これは一体どういうことなのかということがいつも問題になるわけでありますけれども一つには、いわゆる新薬シフトと言われる現象でありますが、医療機関において処方されます医薬品が新しい薬へ切りかわっていく、そういった傾向があるということがございます。その背景にはやはり薬価差の問題があるというふうに言われておるわけであります。それからまた、薬剤使用量そのものについてもふえているということが、研究者の調査研究によりますとそういう報告をいただいております。  大きくは、新薬シフトの問題、それから、薬剤そのものの使用が我が国の場合には多いのではないか、この二つの要因が主なものであろうというふうに考えております。
  118. 青山二三

    ○青山(二)委員 薬剤の大量使用ということで、もう一つの理由といたしまして、薬好きの国民性とよく言われますけれども、こういうことが指摘されております。すなわち、薬剤をもらって初めて診療を受けた、そういうことが患者には多いということでございます。さらに、医療保険の適用で窓口支払い額が低いとか、あるいは副作用などの医療の情報が不足している、こういうことがそれに拍車をかけているのではないかと思っております。  しかしながら、薬好きと言われる国民性は、やはり医療機関が患者に大量の薬を与えるということに起因していると考えます。すなわち、薬好きではなくて薬漬けにされる、こんな感じではないかと思うのですけれども、こうした現状をどのように把握しておられますでしょうか。
  119. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 我が国の場合、非常に薬好きの国民性ということがよく言われるわけでありますけれども、だからといって、薬が多用されているという確実な裏づけ、実証的な裏づけがあるわけではございませんが、一般的によく言われますのは、お医者様に行った場合に、何か薬をいただかないとどうも満足できないというような声がないわけではありません。それはやはり国民みずから考えていかなければいけない問題だというふうに思います。  ただ、薬の使用量が多いということ、これも事実でありまして、これはそういった面の裏返しの問題もあるのかもしれませんけれども、一方では、現在の一部負担の問題、先生指摘がございましたけれども、こういった問題、あるいはまた薬価差に伴う問題、薬価基準のあり方の問題、そういった問題もあるわけでありまして、やはりそれらを総合的に解決していかないと、なかなか薬の使用の適正化というのは進まないだろうというふうに考えております。
  120. 青山二三

    ○青山(二)委員 ちょっと大臣がお席を離れましたので問題が前後いたしますが、ちょっと見ていただきたいものがございます。  それは、きのう国会の事務所にこんなものが送られてまいりまして、何かと思ってびっくりしてあけてみましたら、これは地元の足利市に住んでいる方で、お名前は書いていないのですけれども、あるお年寄りが病院からいただいてきたお薬、飲んだ後、もう飲み切れなくなって捨てようかなと思ったのを、ちょうどそういう場面に出会ったために持ってきて、それで、何かのお役に立てばということで送ってきたわけなんですね。  お役に立てばといっても、こんなの恐ろしくて飲めません。お年寄りにいただいたものはお年寄りのもので、リサイクルも何もできないわけですね。これは、二年間でいただいて、余ったのを置いておいたわけなんですけれども、実態がこれなんですね。  本当にたくさんのお薬が窓口で出されている。薬漬けにされている。そして、薬好きになっている。こういう実態をもう変えないと、医療費は上がる一方でございます。十五円で取っても、もっともっと抜本的な改革をしなければいけないのではないかと私は思っておりますけれども大臣、これをごらんになっていかがでしょうか。
  121. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 その袋、全部が薬ですか。(青山(二)委員「はい」と呼ぶ)こちらの方で、二年間じゃまだ少ないのじゃないかという声も聞こえるぐらい、一週間でもそのぐらいもらう人もいるというような話が町の中では流布されております。これは、出来高払い制度のいい面があるのですけれども制度一つの悪い面が出ているのじゃないか。  というのは、出来高払い制度というのは、検査すればするほど、薬を投与すればするほど報酬になりますから、それは、薬をたくさん上げれば患者さんは喜ぶ。飲む飲まないは別にして安心する。そして、医療機関の収入になる。  そういうことから、私は、これからの改革については、出来高払い制度、それは必要な治療を全部できますからいいわけですが、利に走ると、不必要な検査なり、不必要な治療なり、不必要な薬まで上げてしまって、それが国民負担にはね返ってくるということになりますから、それを改善するために、今、包括払い制度を導入したらどうか。一定の費用のもとで、後はその費用の中で必要な検査も治療も薬の投与も行うというので、どちらも一長一短あります。  出来高払い制度は、もう必要な治療は全部できるからこれはいいというのと、包括払い制度は、一定の額をやって、後はそれ以内でやりなさいとなると、今度は、薬の過剰投与とか不必要な検査はなくなるかもしれないけれども、それでは本当に必要な治療がおろそかになるのじゃないかという懸念もあります。  しかしながら、今言った、今まで長年やってきた出来高払い制度主流のこの方法に対して、弊害を直す面において、包括払い制度定額払い制度も加味すべきじゃないかという議論がありますので、私としては、できれば、出来高払い制度のよさと包括払い制度のよさを組み合わせて、何とか今の問題点を是正するような方法がないか、組み合わせがないか、そういう点を考えながら具体的な改善策を講じていきたいと思います。
  122. 青山二三

    ○青山(二)委員 薬漬けの問題になりますけれども、解消策といたしましては、厚生省はほぼ二年ごとに薬価基準を引き下げているということは承知いたしました。医療機関が医薬品の卸業者と自由な競争価格がある以上は、どうしても薬価差が生じてくるわけでございます。厚生省は、平成八年にはゾロ新等の薬価設定ルールを抜本的に改めております。薬価差の縮小は、平成三年度では二三%、五年には二〇%、七年には一八%、八年には一四%というふうに徐々に縮まってきているとはいえ、まだまだこれでは不十分だと思っております。  厚生省は、平成九年度に新たな方針への転換を含めた薬価基準制度の抜本的見直しに取り組む、このようにおっしゃっておりますけれども、具体的な方策についてお伺いしたいと思います。
  123. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 薬価差の問題については、これまでもバルクライン方式の時代からずっと問題になってきて、そして、Rゾーンの方式に今改まったわけでありますが、これも一定の薬価差というものをある意味では認めた形のシステムでもありますし、このRの幅というのをずっと少なくしていくことによって、そこを縮めていこうという考え方で導入されてきたわけでありますが、しかしやはり、薬の全体のシェアというのは変わらない。そういうような中で、やはり根本的に薬価基準制度そのものを見直さなければ、この問題というのはもう解決しないというふうに私ども認識しております。  そういった意味で、この薬価基準制度の抜本的な見直しというのを早急に着手する必要があるというふうに考えておるわけであります。  その最大の考え方と申しますか、基本的な考え方と申しますのは、薬の価格というものを公定しているというところに一つの矛盾点があるわけでありまして、そういった意味で、この薬の価格というものを市場取引実勢にゆだねる、これを基本としながら保険で償還すべき適正な基準というものを考えていく、こういうやり方が一番いいのではないかという考え方を持っております。  ただ、これも細部にわたって詰めていかなきゃなりません。我が国医療保険制度あるいは我が国医療実態に合った仕組みにしないといけませんので、そういった意味では、諸外国の実例といったものも参考にしながら最もふさわしい制度というものを考えていきたい、このように考えております。
  124. 青山二三

    ○青山(二)委員 薬剤費の比率でございますけれども、同じ病気にかかっても、地域によって大きな格差が見られるということがあるのですね。  九三年五月のレセプト調査、四都道府県のこの調査によりますと、風邪のケースで、薬剤費が最も高いところは四千円、低いところは千二百円で、三・三倍もの開きがある。そして、薬剤比率は一番高いところで四八・二%にも達している。ちょっと不思議な現象だと思うのですけれども、関西では、医者は薬を出したがり、患者は薬を多くもらいたがる、こんなことが言われているということでございますけれども、この調査でも、こうした傾向がはっきり裏づけられたということになりますね。  これはまさしく医療費と同様の傾向を示しております。なぜ、同じ疾病にもかかわらず、このように薬剤比率の地域格差が見られるのか。この点について、どのように分析をされますでしょうか、また、厚生省としてはどのような指導をなされているのか、お伺いをいたします。
  125. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 地域格差の問題でありますけれども、これは薬剤比率だけではなくて、医療費そのものについてもかなりの地域格差がございます。例えば、山形県とか長野県とか比較的低い県と、関西の方の比較的高い県とはかなり大きな開きがございます。それとこの薬剤比率というのはかなり相関関係がある、そんなように見ておるわけであります。  これは、医療というのも一つの大きく言えば文化の反映というふうにも言えますし、また、県民性の反映というものもあろうと思いますけれども、これが医学上当然許される、あるいは必要とされる範囲内の、許容される範囲内の格差なのかどうかというのが大きな問題であろうと思いますけれども、やはり私どもとしては、これが各地域におけるお医者様なり医療機関のビヘービアとして余りにも大きな格差があるということについては必ずしも適当であるというふうには思っておりません。  ただ、これは一つだけの病気を見て単純には評価できない面がございますので、九三年五月分のレセプトを四都道府県について調べてみた結果、このようなことが見られるということでございますので、もっと総合的に分析をしていかないと、短兵急には結論を出すというわけにいきませんけれども、余りにも地域間格差が大きいということについては、私どもとしても、これは問題ではないか、そしてまた、その格差の是正を図っていく方向というものを考えていかなければいけないのではないか、こんなふうに考えておるわけでございます。
  126. 青山二三

    ○青山(二)委員 先ほど大臣も触れておられましたけれども、出来高払い制度、この出来高払い制度をとっている診療報酬制度についてちょっとお伺いしてみたいと思います。  薬や検査の数がふえるほど医療機関の収入がふえる仕組み、この医療費の支払い方法が医療費の大きな伸びになっておりまして、これが抑制できない原因になっているということは先ほど来のお話でもわかるわけでございます。しかしながら、私どもの知る限りにおきましては、今日まで実効ある改革が行われたということはまだ聞いておりません。これはいかなる理由によるものなんでしょうか、お答えいただきたいと思います。
  127. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 現在、保険診療に対して診療報酬をお支払いするわけでありますけれども、それについては、各医療機関から請求が行われ、それが社会保険診療報酬支払基金なり国保連合会を通じて行われるわけでありますが、そこにおいて、内容については審査をした上で支払いが行われているわけでございます。  そういった意味では、制度仕組みとしては、それぞれの医療機関が行った医療行為については、適正な審査というものを経た上で支払いが行われているということでございますので、この格差なりというものが直ちに不正不当であるということにはならないわけであります。  ただ、こういった格差が余りにも大きいというのはやはりいかがなものかというふうに思っておるのですが、制度仕組みの中では決してそれがノーチェックで支払われているというわけではございません。また、それらの支払基金等における審査基準というものも持ち合わせた上でやっておるわけでありますけれども、そういった中において一応許容されるということで現在支払われておりますけれども、それにしても差がかなり大き過ぎるな、こんなふうに考えております。
  128. 青山二三

    ○青山(二)委員 そこで、大量投与で問題になっておりますお年寄りの薬漬け、これを解消するということで導入されましたのが包括制であろうかと思います。その範囲も、高齢者の入院と外来と、小児科と人工透析の外来というふうに徐々に拡大はされてきていると思いますけれども、包括制導入の現状と、包括制の導入によって薬漬けや検査漬けの状況がどの程度まで改善されたのかをお伺いしたいと思います。
  129. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 これまでいわゆる包括払いあるいは定額払い制というものの導入が行われてきておりますけれども一つには、それぞれ患者の心身の特性に応じた評価をすべきものということで、老人医療の分野あるいは精神障害者等における慢性期の医療、こういったものについて導入が図られ、また、急性期の医療についても、例えば集中治療室における医療につきましても定額払いというものを導入してきております。  それで、平成二年に厚生省が、老人医療における包括払いを採用した医療機関、これを調査いたしたわけであります。それでいきますと、日常生活動作能力を損なうことがなく、検査、投薬、注射の件数あるいは点数、こういったものが今までよりも減少した、少なくなったという報告が出されております。  そういった意味で、これはその後の継続的な調査がございませんが、これで見ますと、やはり検査あるいは投薬等の適正化にこの包括払いなり定額払いというものが一定の効果があるものであるというふうに私ども考えております。  また、今後さらにこれらの評価というものをフォローしていくという意味で、平成九年度におきまして新たな調査を行うということで現在検討しておるところでございます。
  130. 青山二三

    ○青山(二)委員 今御答弁がございましたように、少しずつ結果が出てくるということでございますけれども、またその反面、こういうことで患者の処方される薬が必要以上に少なくなったり、また、治療が本当に余りされなくなるのではないか、こんな懸念もされるわけでございます。本来の医療の姿がゆがめられるのではないか、こんな思いもあるわけでございますが、そのあたりの御意見はいかがでしょうか。
  131. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 先ほども申しましたように、どの制度でも一長一短あるわけです。出来高払い制度のよさあるいは短所、包括払い制度の長所、短所。  その一長一短ある中で、最終的に大事な点は、医師の質も大事だと思いますね。医師の倫理観といいますか使命感とか、必要な治療をどの程度施すか。また、医師の技術にもかかってくる、どれが必要でどれが不必要か、いわゆる見立て。ある場合においては、全然薬を飲む必要がない、家に帰って寝ていなさいというのが一番いいかもしれないけれども患者さんにとってみれば、何だ、あのやぶ医者と思う患者さんもいるかもしれない。逆に、効かない薬をたくさんもらって安心して喜ぶ患者さんもいるかもしれない。それは実に難しい点であります。  今言った出来高払い制度にしても、定額・包括払い制度にしても、一長一短ありますが、出来高払い制度を続けてきた弊害点が目に見えてきましたから、もう少し包括払い制度を加えた方がいいのではないか、その意向に沿って、全部ではありませんが、出来高払い制度と包括払い制度のよさを両方組み合わせて、両方のよさが生かせるような措置をできるだけ懸命に実態調査をしながら今後の改革に生かしていきたいと思います。
  132. 青山二三

    ○青山(二)委員 そこで、今回の改正案でございますけれども医療保険審議会老人保健福祉審議会、社会保障制度審議会、この三つの審議会から医療保険構造改革を実施することを前提として了承するという注文つきの答申が出されております。特に医療保険審議会では、「今回の改正案は一部負担保険料率の引上げなど負担増が中心であり、一時的な財政対策との色彩が濃い。制度の総合的な改革に向けての取り組みが十分でなく誠に遺憾である。」と報告しているのであります。  国民の理解を得るには患者負担以外の制度改革への切り込みが必要であることはだれの目にも明らかでございます。こういう答申が出されておりますけれども、いかがでしょうか。
  133. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 答申の報告、それを我々は真摯に受けとめなければいけないと思います。今回の改正案で事足れりということではなく、むしろ、今回の改正案によっていろいろな問題点が浮かび上がってきたと思います。また、この改正案だけでは済まないという議論も出てきました。まずは、今回の改正案は第一段階の、第一歩の案である、この改正案によって今いろいろな抜本策が出てきましたから、その抜本策をできるだけ早急にまとめて、今後、二十一世紀に対処できるような医療保険制度改革医療提供体制の整備等、総合的な見直しを進めていくためにも、今回の改正案に対する御理解、御協力をいただければと思います。
  134. 青山二三

    ○青山(二)委員 一度できた制度というのは変えることは極めて難しいものでございます。ですから、改革は慎重に進めなければならないと思っております。  大事なのは、国民を置いてきぼりにして国や厚生省、審議会が勝手に決めるというのではなくて、国民にコンセンサスを求めた上で具体案を示さなければいけないと考えております。そのためには何よりも情報公開が必要でございまして、特に審議会の内容は公開すべきであると思っております。審議過程を公開しながら関係団体からの意見聴取や公聴会を積み重ねていけば、自己の利益ばかりに固執するという主張は次第に消えていくことと思います。今回の改正案につきましては、当面の財政危機回避のための急いだ改革とはいえ、国民の合意を形成する努力が余りにもなされていないと思うわけでございます。遠回りに見えても、国民的合意の形成が真の医療保険制度改革につながる近道ではないでしょうか。  大臣、今回の改正は本当に国民的な合意が得られているとお思いでしょうか、また、国民の合意形成のためにどのような努力を払ってこられたのか、お伺いしたいと思います。
  135. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 私は、この改正案をまとめる中で感じたのですが、いかに利害調整が難しいか。国民的合意を得ると言いながら、どういう案を出しても納得できない国民は出てくるわけです。そういう中で、いかに改革案を出そうか。今までもいろいろな改革案は出ながら、抜本的な改革策は講ずることはできなかった。これも、一つ意見を出すと賛否両論出てくる。反対の声、意見を聞けば無理押しできないなということのツケがたまってきたと私は思います。  しかしながら、こういう財政状況のもとにおいてはもう一刻も猶予ができないということで、今回、抜本的とは言えませんが、第一歩の案を出した。今後は、新しい審議会も設けられます。その審議会でのいろいろな議論を踏まえながら、我々厚生省としても、できれば国民の選択、判断の基準になるような案というものも、審議会の経過等を含めてできるだけ情報公開していかなければならないということで今準備を進めておりますので、多くの国民が積極的にこの医療制度改革に関心を持ってもらうような活動もしていく。あわせて、今までの審議の経過でも明らかなように、もうその場限りの改革案では済まないな、かなり長期的な批判に耐え得るような制度改革に踏み込まなければならないなという決意を固めておりますので、いろいろな審議、議論を踏まえまして、鋭意その国民的合意を得るような改革案づくりに全力を傾注していきたいと思います。
  136. 青山二三

    ○青山(二)委員 私の地元からこういうお薬が送られてくるばかりではなくて、きっと厚生委員会の皆さんも、この改革を何とか中止してほしいというようなことが手紙で来たりファクスで来たり、毎日のように来ております。  ですから、私は、とても今回の改正案国民に合意されているのではない、このように思っているわけでございます。まだまだいろいろな改正の余地もあろうかと思いますので、国民の声にもやはりしっかりと耳を傾けていただきたい。ただいま申し上げましたように、一たん導入された制度はなかなか変えることは難しい、このように思いますので、誤りのなきように大臣にもよろしくお願いしたいわけでございます。  そして、厚生省薬価差問題に関するプロジェクトチームの中間報告にございましたけれども、先進諸国で薬価差益が生じない原因として、入院医療は包括制、外来は完全医薬分業、そして薬局の薬剤費は公定マージンの上乗せ、こういうことなどを挙げております。  これは日本でも十分に実現可能であると思われるわけでございます。そのためにも最も緊急に取り組まなければならないのがこうした制度改革を阻む政官財の癒着構造の打破であると私は考えますけれども大臣のお考えをお伺いいたします。
  137. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 政治家とか政党に対してはいろいろな団体の働きかけがあります。いわゆる利益団体、特定団体、これは目に見えますから非常に強いように見えます。しかしながら、国民全体の数から比べればごく一部であります。  しかし、政治家と政党、気をつけなければならないのは、この目に見える利益団体の声が強いですから、投書とかファクスが送ってくるのはごく一部です。むしろ、物言わぬ多数の国民がいるということを我々は十分注意しなければならない。この医療改革社会保障制度改革でも、まさにそこが大事だと思います。今までの利害団体、これは国民のごく一部なんだな、むしろ物を言わぬ多数の国民がいるのだな、政治というのは、政党というのは最大多数の最大幸福を図るのが政治ではないかということで、我々は改革に向けて、一部利害団体の声に、耳を傾けるのはいいのですが、それに引きずられてはならない、特定のしがらみを打破する努力を我々は心しなければいかぬと思います。
  138. 青山二三

    ○青山(二)委員 その物を言わぬ国民こそ、高齢者であり、年金で生活をしているお年寄りなんでございます。そういうことをよくよくお考えになって、この改正案のきめ細かな検討をこれからもお願い申し上げまして、時間になりましたので、質問を終わらせていただきます。  大変にありがとうございました。
  139. 町村信孝

    町村委員長 矢上雅義君。
  140. 矢上雅義

    ○矢上委員 新進党の矢上雅義でございます。  今回、医療保険審議会の答申も受けましたが、平成八年の厚生白書におきましても、今後の医療体制について、また医療費の適正化について、結構詳しく述べておられます。  そこで、まず大臣に、今後の医療提供体制がどうあるべきか、そのことについて概略等をお聞きしたいと思います。
  141. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 今の日本の医療制度は、患者の立場に立ってみればかなり便利なんですね。病院は選べる、お医者さんも選べる。また、どの病院に行ったって、一回行こうが二回行こうが、医者を変えようが病院を変えようが自由だ。こういうことは確かに便利なんですが、それによって、今言ったような、何でもかんでも大病院へ行くと、本当に治療が必要な人が待たされて、大した治療の必要ない人でベッドが埋まってしまうとか待合室が埋まってしまう、いわゆる三時間待って三分診療しかできない、地域の診療所なり開業医のところへは行かなくなってしまって、風邪でもちょっとした軽い病気でも大病院へ行ってしまうというような弊害も出ております。  今後は、イギリスみたいに、病院へ行くには地域のお医者さんの推薦がなければいけませんよ、そこまでは今のこの病院が選択できる日本の国民はまだ合わないと思いますが、その医者と患者医療機関と患者の流れを現在のままにおいておいていいとは思っておりません。かかりつけ医、地域の支援病院、特定の大病院、そういう医療機関の役割分担、これについても、一つの流れといいますか、あるべき診療体制の役割づけというのが必要ではないか。  特に、地域にとってはかかりつけ医というのは大事である、そうすることによって大病院という機能も有効に働いてくるのではないかということでありますので、私どもとしては、かかりつけ医とか地域支援病院、この充実策を図って、今のような何でも大病院に集中するというような流れを変えていかなければならないなと。それが一つ医療提供体制改革にもつながりますから、かかりつけ医、地域支援病院、そして特定機能病院等、その病院間の役割分担というものにも配慮しながら医療提供体制改革に取り組んでいきたいと思います。
  142. 矢上雅義

    ○矢上委員 今、小泉大臣より、かかりつけ医を初めとした医療機関の役割分担をきちんと設定して、今まで野方図に動いておる患者の流れをきちんとした体系化された流れの中に乗せる、確かに大臣がおっしゃるように、そのことは非常に有意義であると思います。  そしてもう一つ、これに関連してですけれども、いろいろな病院を体系化しましても、それでは自分は一体どこに行けばいいのか。かかりつけ医にしても本当にその人が信頼できるかかりつけのお医者さんなのか、また、そこから紹介された病院がどういう機能を持つところなのか、自分にとってふさわしいのか、いろいろあると思います。どこを選択していいのか、上から体系化されましたと教えていただいても、果たして自分の病状とか自分の命までの価値観と合うのか、いろいろございます。  また、それと同様に、今、医療というものが科学としての医療として非常に最先端を走っております。しかし、科学としての医療が行き着けば行き着くほど、病気の原因はわかるが治療方法が確立されていないとか、例えばがんのように、治る見込みがないがんだとわかっていても、非常に副作用の強い薬を飲み続けて本人が苦しい思いをする、ここまで苦しい思いをするのだったら、もう自分は家に帰って死にたい、そういう方々もおられると思います。昔、やくざ映画なんかで、畳の上で死にたいという言葉がよく出てまいりますが、今、かたぎの人間でさえもなかなか畳の上で死なせてくれない、そういう状況でございます。  それはやはり、この科学としての医療と、介護福祉、つまりケアとしての医療の接点が非常に近づいてきて、もう本当に紙切れ一枚あるかないかぐらいの接点でございます。ちょっと飛び越えるとケアになる、ちょっと行くと今度はサイエンスになる。こういう非常に境界が不明確になってぶつかるような場面で、自分がどのような医療患者として求めていくべきか、また、自分にふさわしい医療機関とはどこなのか。  そういう意味で、医療機能評価、インフォームド・コンセントの推進が必要となってくると思いますが、厚生省としてはいかがお考えでしょうか。
  143. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 今お話のございました一つは、いわゆるインフォームド・コンセントということでございますが、医療というものは、患者の立場を尊重して、医療の受け手と医療の担い手との間の信頼関係に基づいて提供されるということが基本だと考えております。そういう意味におきましても、患者さんの方に十分な情報提供をするということが必要だと思います。医療法の一部を改正する法律案の中でも、医療の担い手は、医療提供するに当たり、適切な説明を行い、患者の理解を得るように努める旨の努力規定を盛り込んだところでございます。  また、もう一点の医療機能評価、病院の機能の評価ということにつきましては、学術的な観点あるいは中立的な立場で評価をするといったような意味合いで、平成七年に、日本医療機能評価機構というものが財団法人として設立されております。平成七年度と八年度、二年間にわたりまして全国の幾つかの病院を対象にした試行調査を行いまして、その結果をもとにいたしまして、今年度から本格的に評価事業を実施するということにいたしております。  なお、この調査結果の情報公開ということにつきましても、現在、この評価機構において検討がされているわけでございますが、厚生省としては、この結果について、できるだけ患者さんあるいは地域住民の方に公開をしていくという方向で検討が進められるものと期待をしております。
  144. 矢上雅義

    ○矢上委員 今、谷健康政策局長がおっしゃいました中で、医療機能の評価についてですが、その情報公開、自分の仕事を他人様から点数をつけてもらって、そしてそれを公表されるというのは、日本の伝統からするとなかなかなじみが少ないと思います。私の考え方では、将来的にはきちんと第三者から評価を受けるべきであると考えますが、しかし、すぐ定着てきるかどうか。  そういう意味で、実は、二年ほど前になりますが、標榜科目の規制緩和をしてほしい、そういうお願いをいたしました。おかげさまで、アレルギー科とか老人関係、そしてリューマチ等、標榜科目の規制緩和をしていただきました。そういう地道な積み重ねを今厚生省がしていただいておることには感謝いたします。  ただ、少なくとも、その情報公開というのがこれからの流れであり、避けられない流れでありますから、第三者の評価という軌道に乗せるのに大変厳しい評価のシステムでありますが、ぜひ努力して確実なものにしていただきたいと思っております。  続きまして、三番目の質問でございますが、患者の療養環境の整備についてお伺いします。  当然、患者の療養環境の整備は進めていくべきものでございますが、ここ数年の厚生省資料を見ますと、非常に表現があいまいなものがございます。一つの表現として、これから公的介護保険を前提にしていくので、つまり社会的入院が解消される、そこで、医療の現場においては急性期医療に対応したものにしていこうではないか、それがいわゆる療養環境の整備であるように書いてあるものもございますし、また逆に、人口の構造が高齢化しております、患者さんそのものが急性病ではなく慢性病の方の割合がふえておりますので、医療そのものが人口の高齢化に合わせて慢性病的なものに対応していくように変わっていくべきではないか、そういうことこそが療養環境の整備であると書いてあることもございます。  この辺の、患者の療養環境の整備というものが何を対象になされるべきものであり、何を行うのかが非常に不明確であると思います。そこのあたりを厚生省の方で御報告いだだきたいと思います。
  145. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 今先生お触れになりました療養環境の整備とか改善ということは、確かにいろいろな場面で使われております。  ただ、私どもなりに整理をいたしますと、一つは、療養環境の改善ないしは整備ということで、特に最近、医療提供体制の中で力を入れてまいりましたことの一つは、療養型病床群を整備していく、それによって、具体的には、一床当たりの病室面積を広げるとか、従来、病院にはなかった例えば談話室を設けるとか、そういったような形で進めてまいりました。  ただ、今先生もお触れになりましたけれども医療というものは慢性疾患だけを相手にするというものではないのじゃないか、やはり急性期の医療というものが、まあそれだけがすべてだとは思いませんけれども、急性期の患者さんに対応していくことが医療に求められている非常に重要な要素ではないかということが一方において最近ようやく再認識をされるようになってきたというふうに思います。再認識という言葉が適当かどうかはわかりませんが。  そういうことの中で、昨年の秋に、医療提供体制全般について医療保険との絡みも含めて議論していただきました国民医療総合政策会議の報告書の中でも、医療機関における療養環境ということで、従来、どちらかというと慢性疾患患者が入る施設を中心にして考えられてきたけれども、急性期医療を今後充実していくということから、例えば医療従事者の集中的な配置を図るとかあるいは個室化の推進といったようなことを進めていくことが必要なのではないかというようなことが盛り込まれておりまして、私どもとしては、そういう形の中で、今先生お触れになりました療養環境の改善、特に慢性期だけじゃなくて急性期医療ということも含めて対応していきたいと考えております。
  146. 矢上雅義

    ○矢上委員 施設面、いわゆるハード面についての整備の方向性はわかりましたが、もう一つ忘れてならないのが看護婦さんとか看護助手さんの問題だと思います。  先ほど能勢先生より、配置基準とかいろいろ出ましたね。例えば人員配置基準、看護婦さんを患者さん当たり何人置くか、四人に一人にするのか、二・五人に一人にするのか、そういう場合に看護を正当に評価するべきだという御意見がありました。  ただ、残念ながら、看護を正当に評価する以前の問題として、そもそも人を置いていないところがございます。はっきり申しますが、表の勤務表、裏の勤務表というのがあって、厚生省から監査に入るときには、日勤、夜勤、みんなかき集めて、足りないときはアルバイトも頼む。三つも四つも施設を持っておられるところはよその施設から人員を配置する。そして、それは絶対、厚生省の監査では表に出るわけはないと思います。これは厚生省の力だけで、国家権力だけで、地方自治体の力をかりたとしてもできるわけではないことでございます。この辺の人員配置基準がそもそも守られていない。  そうすると、結局、こういうことになると思います。少ない人間で保険点数でお金をいただく、そしてその利益で病院を増床する、そうするとまた患者さんの数がふえて、今度は少ない人間でまた働かせられる、そうすると、まじめにやっている病院は赤字になって、上手にごまかせる病院は、看護婦さんにしわ寄せがいくけれども、病院自体としては発展する。それが果たしてここで言う患者の療養環境の整備としてふさわしいものかどうか、厚生省の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  147. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 本来置くべき職員がいないということは、端的に申し上げて、決して好ましいことではないことだと思います。申し上げるまでもないことだと思いますが。  今先生、具体的な例として、医療監視の際にわからないのじゃないかというお話もございました。医療監視は、事実上は、私ども職員も参ることがありますけれども、大部分は都道府県の職員が医療監視を行っております。  なお、その際に、できる限り、例えば給与台帳ですとか、保険料の支払いの状況ですとか、そういうこととあわせてチェックするというようなことをやるように指導をいたしております。  また、例えば同一法人が開設する複数の医療機関について医療監視をするという際には同じ日に監視を行うといったようなことで、今後とも、不正の防止といいますか、そういうことを図ってまいりたいと考えております。
  148. 矢上雅義

    ○矢上委員 私が今指摘した事実は、私が独自に調査したわけではなくて、実は、去年ですか、平成八年の厚生白書に、「患者の療養環境の整備」の欄に「医療法に基づく医療従事者の人員配置基準の遵守を推進させること」と、正直に厚生省資料に書いてございます。それで、きのう気づきましてから、知り合いの看護婦さんにいろいろ電話してみましたら、よくわかりましたねということで、そういう御指摘を伺いました。  そこで、考えるのですけれども、私がかねて提唱しておることがございます。  特に夜になると、下の世話をする看護助手さんがいなくなりますから、看護婦さんが点滴したり注射を打ったり、下の世話をしたり、あと、例えば院内感染で非常に重度の人が隔離されております。その隔離病棟というか、隔離病室のところに看護婦さんが行くわけですけれども、五十人の病棟で看護婦さんが二人しかいない。その方が、下の世話をして、点滴をして、注射をして、院内感染の方のところに時々行かれると、隔離されたところに行くときにはマスクをして手袋をしてエプロンみたいなものをしてとマニュアルがございますが、お聞きをしたら、二人しかいないときはなかなか完全防御ができない、だから私たち、結局、手を抜くわけではないけれども、院内感染者と接触するときに手が回らないと。それが結果的には院内感染の拡大につながるのではないか、そういうおそれがあるのではないかと私は思っております。  ただ、福島県でありました介護保険の公聴会のときに、病院関係の方にその点を聞きましたら、家庭と同じように、幼稚園と同じように和気あいあいと人が集まるところには院内感染があって当然ではないでしょうか、そういうお答えをいただきました。看護婦さんに聞くと、私たちの行動が院内感染につながるのではないかという心配をされるのに、少し上のレベルの方にいくと、院内感染はまあしようがないのじゃないのとおっしゃいますが、情報公開が進む中で、院内感染の度合いというものも情報公開の要素の一つになってくるのではないかと思っております。  この人員配置の基準と衛生観念の向上というものは非常にリンクされており、しかも、厚生省の力だけで人員配置基準を統制することができないとすれば、やはり情報公開法の中で、この院内感染がこれから先どのようなレベルで上がっていくのか、相関関係をきちんと統計をとっていかれることが一つの人員配置基準のきっかけとなり、また、患者の療養環境の整備につながるのではないかと思っております。これは提言でございます。  続きまして四番ですけれども、救急医療体制、これは客観的にお答えください。  救急医療体制の地域的なバランスはとれているのか。つまり、過疎地に行けば行くほどお医者さんが少ない。また、救急医療センターもない。そうした場合に、今、医療の現場というのが、病院はたくさんある、お医者さんはたくさんあると言われておりますが、命に一番直結する救急医療の施設というものがある程度地域的に、全国的に統一した水準でなければ、どこに住むかによってその人の生き死ににかかわってまいります。  そういう点から、この救急医療体制の地域的なバランスがとれているか否か、また、もしバランスがとれていなければどのような対処がなされるべきか、厚生省にお聞きいたします。
  149. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 救急医療について、地域的なバランスがとれているかということでございますが、基本的な考え方として、救急医療については、昭和五十二年度から初期救急、二次救急、三次救急という形で整備をしてまいりました。それで、その限りにおきましては、ある程度、量的な整備というものはされてきたというふうに認識をしております。  ただ、今先生が若干お触れになりました僻地とかそういうところに行くと、都会地と全く同じ体制であるか、これはもう率直に申し上げて、違うと申し上げざるを得ないと思います。  ただ、救急医療体制については、基本的には二次医療圏を中心にして、病院群輪番制ですとか救急担当病院というものを決めて、毎日でなくても週のうち何日か、あるいは休日・夜間というような形で分担をしてやっていくという形で整備をしてきたところでございます。  ただ、救急医療ということに関係して申し上げますと、今の体制を含めて本当にこのままでいいのかどうか。特に昭和三十年代に設けられました救急告示病院制度というものがございますが、それと現在の二次救急体制なり三次救急体制との間にやや重複があるのではないか、あるいは整合性がとれていない部分があるのじゃないかといったような御指摘もありまして、現在、専門家に集まっていただいて、今後の救急医療体制ということについては、現状を踏まえて検討していただいているということでございます。
  150. 矢上雅義

    ○矢上委員 初期、二次、三次とありますね。例えば、過疎地に行きますと、病院とかが少ないですから、まず当番医に担ぎ込まれる。当番医に担ぎ込まれた後は、その先生がどういう状況か判断して、次の二次の病院に運ぶとか、本格的な救急医療センターに運び込むとか、いろいろな形があると思います。  例えば、東京とか横浜に行きますと、救急医療センターというのはすぐそばにありますから、直接運び込まれたり、当番の病院に運び込まれても、そこから搬送するのに十分とか二十分で行けるとかございます。しかし、僻地等になりますと、非常に交通の便が悪く、二十分以上、三十分、一時間かからないときちんとした救急医療センターに運べないとか、離島になりますと二時間、三時間とございます。  やはり救急医療施設をきちんと整えることができる地域とできない地域も当然ございますから、その辺の交通ネットワーク、飛行機、ヘリコプター、特にヘリポートの整備等を含めまして、例えば僻地に学校施設をつくるときにはヘリポートの充実も図ってもらうとか、きちんとそういう交通、つまり患者運搬と医療施設との連携をぜひ図っていただけるような努力をお願いいたします。  続きまして、次に、僻地医療対策そのものについてお聞きします。  これは大臣にお聞きすることでございますが、実は、山間地に行きますと、医者がいないために、そこの村の村長さんよりも高い給料を出してお医者さんを呼ぼうとしております。しかし、子供の教育の問題とか、医者として都会におった方が研修の機会があるものですから、お医者さんに高い給料を出してもなかなか来てくれない。そういう状況の中で、非常にお医者さんを獲得するのに各山間地では苦労しておられます。  そうなりますと、高い給料を出すだけでは来てくれない、研修の機会を与えるだけでは来てくれない、そのほかに何らかのインセンティブ、来てもらうための動機づけが必要になるのではないかと思っております。その辺の御見解について、大臣にお伺いいたします。     〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕
  151. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 都会に住んでいますと、お医者さんを選ぶことができる。何も恩恵ではないと思って当たり前のことが、僻地へ行くと、診てもらいたくてもお医者さんがいないという、世界に比べれば小さな日本と言われながらも、それだけの差がある。私は、僻地に行かれる医師に対しては優遇策がとられてしかるべきではないか、その優遇策の中で今言った点も検討していきたいと思います。
  152. 矢上雅義

    ○矢上委員 今、若いお医者さんでは、仮にお医者さんになっても、例えばお父さんが資産家であるとかお医者さんであるとか、開業医のところにでも婿養子に行かないと、医学部を出ても開業医になることができないとかよく言われております。  一つ考え方なんですけれども、大学を卒業されてある程度研修を積まれた方が、例えば僻地に、山間地にお医者さんとして行きます。普通であれば、そこの村から高い給料をその方に払って生活の面倒を見るような形になりますが、それでもなかなか来てくれない。そうなれば、一つのインセンティブとして、例えば僻地で十年間働いた後、ふるさとに戻るとか、東京に戻るとか、そういうときにその方が開業をされるとします。開業をされるときに何らかの資金的助成が行えないものか。  これは幾つかの考え方があると思います。例えば、十年間働いたら、退職金的な形でお金を出すのか、それとも、補助金的な形で開業時の資金助成をするのか、もしくは、高い給料を村からもらっているわけですから、税金を計算するときに開業準備引当金みたいな形で経費として認めるとか、そういう新しい仕組み考えて、十年たったらあなたにも開業をするチャンスが訪れますよ、全部お金を出してやるわけじゃないですよ、将来、十年頑張れば何百万か一千万でもたまるような仕組みですよ、そういう仕組みを、税制を利用した仕組みで行うのか、例えば僻地医療の医師確保の対策基金的なものを造成して開業時に資金を助成するとか、そういう新しい試みを、いきなりは財源の問題がありますから無理ですけれども考える必要があるのではないかと思っております。大臣、いかがお考えでしょうか。
  153. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 具体策は今局長から答弁させますが、僻地医療に行ってみようという意欲をかき立てるような、また、行ってもいいなというような奨励策がないか、いわゆる優遇策がないか、それは私は考えていいことではないか。具体的な方法はどうあるか、これは厚生省だけの問題ではありませんし、まして税制が絡んできますとほかの省の問題も絡んできますので、一つのそういう僻地の医師を確保するという観点から、私は何らかの優遇策があっていいなと思っております。  あとは局長に答弁させます。
  154. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 僻地における医師の確保ということで、幾つか具体的な御提案がございました。  僻地におきます医師の確保ということにつきましては、今、僻地医療対策の中で幾つかの支援を国としても都道府県と協力をしながらやっております。例えば、医師住居に対する整備ですとか、いわゆる地域中核病院から医師を派遣するとか、あるいは僻地に働いておられる医師が休暇をとるというような場合には協力病院から医師を派遣するとか、そういうことは従来からやっておりますが、今お話のございました、そこに働いておられる方が、将来、都会へといいますか、都市部へ帰るという際の対策というのは現在のところやっておりません。  今具体的なお話がございました。これは大臣からもお答えがございましたが、幾つかの提案について少し勉強をさせていただきたいというふうに思います。
  155. 矢上雅義

    ○矢上委員 先ほどの問題は各省庁にまたがりますので、今後の検討課題としてよろしくお願いいたします。  次に、先ほど来申しますように、サイエンスとしての医療からケアとしての医療が求められる。そうなりますと、当然、高齢化の進展に伴い、リハビリテーションの充実等を考えますと、理学療法士、作業療法士の人材確保が求められることになりますし、またさらに別の問題として、薬の副作用とか薬剤費の高騰を防ぐためにも、薬歴管理、服薬指導が十分にできるような、きちんと生活のケアができるような薬剤師の養成が求められると思います。  この二点について、つまり理学療法士、作業療法士の人材確保、そして薬剤師の資質向上についてどのような施策を講じられるか、お尋ねいたします。
  156. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 まず私の方から、理学療法士並びに作業療法士の確保について申し上げます。  理学療法士それから作業療法士につきましては、平成三年の夏に需給計画というものが策定されておりますが、それに基づきまして、その翌年度、平成四年度から、養成施設の新設あるいは定員増というものを図ってきております。  ことしの四月現在で、理学療法士につきましては三千二百八十八名、作業療法士につきましては二千五百四十名の定員を確保しておりまして、少なくとも、平成三年時点で策定されました養成施設の新設、必要な定員増というものは達成できたというふうに考えておりますが、今後また新たな、例えば介護保険法が施行されるに際しましては新たな需要というものが起きてくると思いますので、そういうことも踏まえて、引き続きこの確保のための対策というものはやっていきたいと考えております。
  157. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 後段の、薬剤師の資質向上並びに養成の問題でございます。  厚生省といたしましては、平成六年に、薬剤師の国家試験の出題基準を改定いたしまして、お尋ねございました薬歴管理あるいは服薬指導を含めた医療に関連した分野を重視するような内容に改めておりまして、平成八年の国家試験から実施をいたしております。  また、財団法人の日本薬剤師研修センターに委託いたしまして、地域における指導者育成ということで薬局・病院薬剤師指導者研修事業、あるいは本年度から免許取得直後の薬剤師を対象に病院、薬局における一年間の研修事業の実施を行っていただくことにしておりまして、また、その研修センター独自の事業といたしまして、実務研修事業、研修教材開発事業、研修認定薬剤制度等の実施をしていただいているところでございます。  また、本年四月から施行されました薬剤師法の改正におきましても、新たに、薬剤師に対しまして、調剤した薬剤の適正な使用のために必要な情報を提供することを義務づけたところでございます。  薬剤師の養成につきましても、薬学教育におきます医療薬学の充実あるいは大学における修学年限の延長等について、文部省初め関係者と協議を行っているところであります。  今後とも、関係行政機関、関係団体の協力を得ながら薬剤師の資質向上を図ってまいりたいと考えております。
  158. 矢上雅義

    ○矢上委員 特に、今御答弁なさった中で薬剤師等の資質向上の問題は、医療費の適正化というところにも結びついできますので、次の段階でまた質問させていただきます。  次に、先ほど申しました医療費の適正化質問に移らせていただきます。  まず第一番目に、今回、公的介護保険制度を検討しておりますが、これが通ることになりますと、将来、社会的入院が解消される、そうすると、社会的入院の解消により医療費の適正化にどのような影響、その金額とかを含めましてどのような影響を与えるか、お聞きいたしたいと思います。
  159. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 社会的入院の解消によります医療保険への影響についてのお尋ねでございます。  いわゆる社会的入院、介護を理由といたしまする高齢者の長期入院につきましては、私どもも、やはりこれは患者本人の適切な処遇という面からも、医療費の効率的な活用という面からも非常に問題だということで、その解消に努めてまいるということを政策の一つの方向にいたしております。  そうした中で、今回の介護保険制度の創設に伴いましてこういった社会的入院の解消を図っていくというのが一つの大きな方向になっております。もちろん、介護保険制度創設前におきましても、その間における特別養護老人ホームの整備あるいは在宅サービスの充実等の施策によりまして、順次そういった、いわゆる介護を理由として長期に一般病院に入院をされておられるというような事態について解消を図っていくという努力をするということでございます。  これにつきまして、それは、それぞれにどういう理由で長期入院になっているかということになるわけでございますから、これを個々に判定するというのはなかなか困難でございますけれども、一部の地域におきましての実態等から、仮に一般病棟に六カ月以上入院をしておられます高齢者の三分の二ぐらいがいわゆる社会的入院という形で、よりよき受け皿があればむしろそういった一般病棟ではなくて、そういった方面に移っていただいた方が患者さんにもいいし、医療費という面でもいいというふうになるといたしますというと、現在、その数が大体十万人ぐらいになります。医療費でいえば五千億円ぐらいになります。  これにつきまして、私どもの目標として言いますと、介護保険制度の創設、あるいは今申し上げましたそれに至るまでの間におきましても、在宅・施設サービス基盤の整備というようなことを通じまして、目標としては平成十二年度までにこうした状態を極力解消していくという目標でやっていきたいというふうに考えておりますし、そういったことを盛り込んで今後の医療保険制度についても考えていくという方向になろうかと思います。
  160. 矢上雅義

    ○矢上委員 補足してお聞きしますが、十万人で五千億円の社会的入院費が低減される、そうなりますと、仮に公的介護保険平成十二年度から始まるとすると、その明くる年ぐらいから五千億円ずつ財源が浮いてくるということになります。この五千億円という財源は、その浮かした部分は、将来の医療保険の一部負担金の引き上げを防ぐため、また、保険料率の引き上げを防ぐための財源として使われ得るのか、お考えをお聞きしたいと思います。
  161. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 前提として二点ございます。  一つは、今五千億と申し上げましたのは非常に粗い数字でございますし、それは介護保険ができて直ちにこうなるというものでもございませんし、それ以前においても、現在の制度下におきましても、そういったものを解消する努力という中で、先ほどの、施設サービスなり在宅サービスを充実する、そういったことの中で解消していかなければならないということも織り込んでおりますから、それが直ちに十二年度からなるものではないということが一つ。  それからもう一つは、今の五千億と申し上げました数字は、当然、今そういう人方が一般病院に入院をしておられるときの費用でございますから、今度、在宅サービスをする、あるいは介護保険によって介護施設になります新しい特別養護老人ホームに入っていただくということになれば、それは今度はそういった介護サービスとしての費用に振りかわっているものもございますから、そこはそれの費用として全体の中に入っております。  したがって、一般の病院に入っていることにより、よく言われていますように一人一月五十万、四十五万とか五十万かかると言われていますものが、介護サービス、例えば特別養護老人ホームへ入っていただければ二十数万という姿になる、あるいは在宅であれば多くても何万、こういうことになる、そういう形で、費用としては効率化はされますけれども、当然、介護費用という形でそれは使われるものはまた使われていくという姿になります。
  162. 矢上雅義

    ○矢上委員 羽毛田局長おっしゃるように、社会的入院がいわゆる公的介護福祉の部分に移りかわるわけですから、確かに全部が財源として移るわけではない。ただ少なくとも、浮くであろうというお金の使途はきちんと福祉施設の整備に回るとか、また、その部分で余った差額は医療保険の方に残して保険料率の負担の引き上げを回避するとか、一部負担金の引き上げを回避する方向に明確に使われることを望みます。  続きまして、医薬分業の問題に移りたいと思います。  医薬分業の本来の趣旨及び現状における問題点について簡潔にお伺いいたします。
  163. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 医薬分業でございますが、厚生省といたしまして、これまでも、複数の医療機関から薬剤が重複投薬されるとか、飲み合わせによります副作用を防ぐということで、医師と薬剤師がそれぞれの専門性を発揮して、良質で適正な薬物治療を行うために、かかりつけ薬局を中心とした医薬分業を推進してきたところでございます。  医薬分業につきましては、二度手間でありますとか、コストが上がるといったような指摘もございますけれども、反面、医薬分業が進展している地域におきましては薬剤費が減少したといった指摘もあるわけでございます。また、医薬分業の実施によりまして、患者の方への処方せんの交付がされますと、治療内容の情報開示が行われるということがありますとともに、患者の方の薬剤に対する理解が高まって、より質の高い薬物療法が可能になるというメリットが発揮されるという指摘がございます。  医薬分業の現状でございますけれども、近年着実に進展をしてまいっておりまして、平成七年度には分業率が二割を超えるに至っておりますけれども、欧米諸国はほぼ一〇〇%の医薬分業が行われておりまして、それに比べますと、いまだ十分な水準には達しておらないところでございます。  医薬分業の推進のために、処方せんの受け入れ体制の整備、国民への普及啓発あるいは薬局業務運営ガイドラインに基づきます薬局業務の適正化といったことを図ってまいりましたが、今後とも、地域の実情に応じました計画的な医薬分業の推進を支援することによりまして、かかりつけ薬局を中心とした面分業体制の定着が図られるように努力してまいりたいと考えております。
  164. 矢上雅義

    ○矢上委員 簡潔に医薬分業の趣旨を御答弁から拝察しますと、服用指導をきちんとする、薬歴管理をしっかりして、結果的に薬の適正使用、副作用を防ぐ、ある意味ではコスト抑制の意味もあるわけでございますが。  ただ、残念ながら、きちんとした統計は持っておりませんが、この医薬分業が始まってから多くの人々が、病院にかかるけれども、昔がよかった、何か少し金額が高いのじゃないか、昔は病院でもらっているときは二千五百円ぐらいで済んだような気がしたのだけれども、医薬分業が始まってから三千二、三百円、五百円払っているような気がすると。  それは、ある意味では勘違いかもしれません。昔に比べれば、前は三日ぐらいしか出さなかった薬を四日とか五日とか長期に出す傾向もありますから、その問題があって薬の値段が高いのかもしれません。ただ、はっきりとしたことはつかめませんが、医薬分業が始まってからどうも値段が上がったのじゃないか、おかしいな、本当にその抑制につながっているのか、また、果たして薬歴管理をきちんとしてくれているのか。  ここで興味深い統計があるのですが、処方薬の服用に対する指示の有無で、いつもあると答えておられる方が二四・七%です。説明があったりなかったりするという人が一七・八%で、聞けば教えてくれるが二二・三%。果たして、医薬分業が薬歴管理をするにふさわしい役割を果たしているのかどうか。  私、時々思うのですけれども、昔というか今も薬価差のことが言われておりますが、これからは薬局差益というのですか、薬剤の方はとことん落とされていっても、薬剤費のほかに、薬局でかかる調剤料、そして病院の先生が出してくれる処方料等かかります。変な言い方ですけれども薬価薬価と追いかけていって、ちょうどネズミを追いかけるように追いかけていって、しっぽをつかんで取り出してみたら、もうモグラに変わっておった、一体これは何なんだ。用心しなくてはいけないのは、薬価というのは、追いかければ追いかけるほど、にじみたいにどんどん逃げていきますし、形を変えて消えていくわけでございます。この薬価差というよりも薬局差益による、脱法行為とまでは言いませんが、形を変えた利益というものが出てくるのではないか。それが一点。  それと、特に副作用の防止の観点で思うのですけれども、薬局に行きますと、薬剤師の方がころころかわられます。若い方が多いですから、ちょこちょこ担当の方がやめたり新しく入ったりして。ずっと昔から顔見知りだったら、矢上さん、あなたはこの薬を飲んでいたからこの薬は飲まないように、AはいいけどBは飲んではいけません よとかおっしゃってくれますが、相手がかわりますと、向こうもそこまでわかりません。多分、昔の処方せんを調べて、さかのぼってまで手作業で薬歴管理をしてくれる人はいないと思います。  ですから、私は、食べ物の取り合わせと同じように、Aという薬はBという薬と併用すると副作用が起きるとか、そういう科学的資料があればコンピューターにインプットしておいて、共通項が見つかったときには自動的にコンピューターシステムで警告を出してくれる、そのような形まで薬局の中でOA化していきませんと、ただ機械的に出して終わり、結局最終的には、どの薬とどの薬を飲んで副作用が起きたかというのはその人が病気になってとか死んだりしなければわからない、後からでないとわからないのではないかという気がします。  今のコンピューターのシステムだったら、検索機能がついていますから、Aという薬はBという薬と取り合わせが悪い、Dという薬と取り合わせが悪いということをデータとして入れておいて、後から仮にその患者さんにDという薬が投与されることをコンピューターにインプットすると警告が出るようなシステムというのが必要ではないか。  ただ、これは私、理系ではありませんのでよくわかりませんが、そのくらいの薬歴管理は薬局の中でまず行うということが必要ではないかと思います。当然、薬局と薬局の間でもそれらが最終的にできれば一番ふさわしいのではないかと思っております。  続きまして、先ほど医療提供体制の体系化、機能化が出ておりましたので、そこに移ります。  診療所等と国立や大学、総合病院等との機能分担はどのような観点からなされるのか、大臣にお伺いいたしたいと思います。
  165. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 先ほど、一番最初先生の御質問の中で大臣がお答えをしたことに若干重複するかもしれませんが、やはり、現在の医療制度の中で、患者さんが医療機関を自由に選択できる、いわゆるフリーアクセスの制度というのが国民から非常に高く評価をされているというふうに考えます。ただ、その結果として、先ほどお話ございましたような幾つかの問題点指摘をされております。  基本的には、診療所と大病院の機能分担ということに関連しましては、診療所が地域におきますかかりつけ医としての位置づけを明確にする、また、それにあわせまして在宅医療に積極的に取り組んでいただくとか、そういうことも含めて、地域の中での活性化とかあるいは信頼回復ということが基本にあって、そのことを国民によく理解していただくということがまず第一歩ではないかというふうに考えております。
  166. 矢上雅義

    ○矢上委員 この診療所をいわゆるかかりつけ医と称することにします。かかりつけ医がどうあるべきかということについては、午前中から小泉厚生大臣がおっしゃっておりました、地域に家庭に、本当に住民に身近に接する形でのかかりつけ医がまず必要だということで。  私は思うのですけれども、かかりつけ医がどうあるべきか、繰り返し言いますが、小泉大臣も同じ考え方で、生活に、そして家庭にかかわっていくいわゆるケアとしての医療を、その最先端を診療所のかかりつけのお医者さんが持つ。  そうなりますと、大病院では三時間待って三分間診療と申しますが、それは診療所のかかりつけ医の方でも、その方の人格次第では同じことが起こり得ると思います。その方がぶっきらぼうな方で、しょっちゅう通っても三分ぐらいしか話を聞いてくれないとか、そういうお医者さんはこれから自然淘汰されるわけでございます。  しかし、昔のお医者さんみたいに、きちんと相手の身になって、立場になっていろいろ問診してくれるお医者さんが一生懸命やる、その地域のかかりつけ医として、カウンセリングとしての評価をどのように診療報酬体系の中で認めていくのか、それと同時に、高度の医療機関がきちんとした技術を習得するため、また、きちんとした高度な施設をつくるために投下した資本をいかに診療報酬体系の中で認めていくのか、この二つがこれからの医療提供体制の中での新しい診療報酬基準の見直すべき点だと思いますが、厚生省の方ではいかがお考えでしょうか。
  167. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 まさに診療報酬におきましても、それぞれの医療機関の機能あるいは医療機能にふさわしい診療報酬をつくっていかなければいけないということが基本だろうと思います。  これから高齢化が進むに従って、かかりつけ医、いわゆるプライマリーケアの機能、こういったものが非常に重要になってくるわけでありますから、そういった機能を重視した診療報酬の立て方というものが重要でありますし、それからまた病院については、医療担当者の技術料、医業経営の投資的費用、いわゆるキャピタルコストと言われるものでありますが、そういったものの評価というものをどういうふうにしていくのか、こういう点が非常に重要だろうというふうに思っております。
  168. 矢上雅義

    ○矢上委員 私、介護保険が議論されるときも、社会的入院は必ずしも悪いものではなく、正しい面も含むのだということを常に主張してまいりました。やはり診療所、かかりつけ医が自分たちの住んでいる場所、働く場所のそばにいて、その方に子供のころからお世話になって、また、そのかかりつけ医の息子さんに年をとってからお世話になって、結果的に社会的入院みたいな形になることもあるわけです。  そういう社会的入院がすべて悪いという意味ではなく、これを逆手にとるというわけではございませんが、社会的入院がなぜ今まであったのかということを前提にして、地域のお医者さんたちにも、これから地域とかかわって、ケアとしての医療を自分たちが担うのだという考えをしっかり持っていただくことが大事ではないかと思っております。そういう意識の改革がなければ、この医療提供体制の再編というものは難しいのではないかと思っております。どうか厚生省におきましても、医師会、関係団体との会合の際には、ぜひそういう点も御理解いただくような形で御指導いただければと思っております。  続きまして、将来、その社会的入院を福祉目的として発展的にさせる場合どうなるか、それについてお伺いいたします。  例えば、仮に百床ベッドがあったとして、そのうちの三十を療養型病床群のように老人の方を引き受けるベッドにしたとします。百のうち三十ですね。そして、この療養型病床群の三十ベッドを、将来きちんとした老人福祉施設としての機能を果たすように、三十ベッドを機能として独立させた場合に、百から三十を引きますと七十になります。百のうち七十がいわゆる急性期、慢性期のいわゆる医療のベッド、そして三十のベッドがいわゆる老人福祉的な病床です。  そういうことを前提に置いて、例えば、病床が過剰地域のところで、仮に将来に、一割とか二割、ベッド数を機械的に削減するとなった場合に、その対象となる数字はそもそもの百ベッドなのか、百から三十ベッド引いた七十ベッドになるのか、その辺のとらえ方次第では、かかりつけ医の持つ病床を福祉施設に転用できるか否か、その転用が促進できるか否かが変わってくると思います。ちょっと数式は面倒くさいですけれども考えをお聞きしたいと思います。
  169. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 ちょっと前提のとり方が、今先生がおっしゃったことは、百床の病院があって、そのうちの三十床は病院以外のものにする、それで七十床が病院だ、医療機関だということであれば、現行の医療計画あるいは病床規制ということはこの七十床にかかるというふうに理解をします。
  170. 矢上雅義

    ○矢上委員 済みません、私もこの辺がよくわからなくて。ただ、そうなりますと、地域の医療施設、地域の施設を福祉の施設として転用すれば、効率的に、早く量は達成される、そして、その後に質の改善も図るというのが、多分、小泉厚生大臣のこの間の答弁だったと思います。ですから、この病床のとらえ方をどうするかによって、地域のかかりつけ医の方がきちんと地域の福祉政策にかかわっていけるか、その大きな分岐点になるのではないかと思っております。ただ、私もこの病床の部分については勉強不足でございますので、今、質問がちょっと間違っておったらお許しください。  続きまして、別の問題でございますが、情報処理技術の活用について図ると書いてありますが、これは、一般的にICカードについての普及を図ることだと思います。  実は、こういう電子的に処理するカードというのが、御存じのように、NTTのテレホンカードもパチンコのプリペイドカードも全部、最初はセキュリティー上は万全だと言われておったものが、偽造が可能になって、今、大変な混乱になっております。このICカードを仮に普及させるとしても、そのセキュリティー対策をしっかりしませんと、例えば精神的な病を持つとか、いろいろな病が広く情報として漏れる場合もございます。そうなると、結婚するときに影響するとか、いろいろな病歴の情報が漏れることによって大変な影響を及ぼすこともありますので、この辺のセキュリティーの問題についてどのようにお考えか、厚生省にお聞きいたします。
  171. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 今、ICカードのセキュリティーのことでございますが、ちょっと前の御質問について、念のために申し上げておきます。  私が申し上げたのは、百床の病院のうちの三十床をいわゆる医療機関以外のものにするという理解でございますので、もしこれが、先生がお考えになっているような、例えば療養型病床群にするということであると、これは現行の医療計画の枠の中に入るということでございますので、若干補足をさせていただきます。  それで、ICカードについてのセキュリティーのことでございます。  私どもが理解している範囲では、このICカードというのは、例えば磁気テープによるカードなどと比べますと、ICカード自体にコンピューターが組み込まれているようなものだ、したがって、それ自体でセキュリティーの機能を持っているという意味においては、磁気テープのカードなどに比べれば、プライバシーの確保という観点からはすぐれているというふうに認識をしています。ただ、今後、ICカードが保健、医療あるいは福祉の分野でいろいろな使い方をされるということがございますので、このセキュリティーに関する研究開発というのはさらに進めていきたい。  幾つかの地域において、保健医療カードの中でのICカードのセキュリティーに関する研究開発というものもあわせて行ってきております。そういう意味で、かなり研究は進めておるつもりでございますし、また、ICカードの持っておる特性からセキュリティーということについては一定の評価ができるというふうには思いますが、プライバシーの保護という観点から、さらに必要な研究は進めなければいけないと思っております。
  172. 矢上雅義

    ○矢上委員 このICカードについては、偽造のおそれは磁気テープを利用したカードよりも少ないけれども、そこのICカードにだれがアクセスするか、アクセス権者の問題をその守秘義務の問題と絡めてきちんと整理しておくことと、また、アクセス権が認められたとしても、病歴まで認められるのか、薬歴管理をする程度まで認められるのか、その辺の仕分けもきちんとしておく必要が、守秘義務上問題となりますし、個人の人権上問題になるということで、お願いいたします。  最後に、時間がございませんので、これは要望にいたしますが、二つございます。  今、国立病院の再編成がされておりますが、身分の問題にもかかわりますので、なかなかこれが進んでおりません。そこで、私の提案でございますが、地方自治体の介護基盤整備の動きと絡めて、国立の病院等を地域の福祉ゾーンとして位置づけて、その広大な敷地、建物、人員をうまく福祉に活用していくということを自治体と積極的にやっていただければと思います。  実例として、自治体がオーケーを出して計画を組んだ、しかし、その用地を利用するに当たって、国有地だから地方自治体がちゃんと買ってもらわなければ困るとか、地方自治体の施設から国立病院の敷地に橋をかけるときに、勝手にそういうことをしてもらっては困るとか、非常にしゃくし定規な規定がございまして、国立病院を福祉ゾーンとして再活性化するという施策が行き詰まっております。この点が一つ。  それともう一つ、最近、国立病院の看護婦さんの二交代制ということが進めてこられておりますが、若い人は二交代制になった方がきちんと休みがとれるからうれしいとおっしゃるのですけれども、三十五歳以上の人は、やはり少しずつ体が痛くなります。そうすると、子供さんがおられるところは、二交代制だと家に帰る暇がなくて、夜帰って子供の世話をしてまた病院に行くことができないから働くことができなくなるのではないか。二十代の看護婦さんと、子供を持つ三十代の看護婦さん方で非常に意見が分かれておるところがございます。  ただ、残念ながら、これは本来ならどのような働き方をするかという選択ができればいいのですけれども、チーム医療ですから、うちの病院は二交代制、あなたの病院は三交代制となりますと、その融通がききません。ですから、もう一度、この点について現場の看護婦さん方の御意見を聞いていただきたいことが一つでございます。  そして最後に、医療保険の抜本改革と申しますが、本来、昭和三十六年の国民保険制度がなぜできたか、その辺の歴史をきちんと資料として後世に伝えていきませんと、本当に守るべき利益は何なのかがわからなくなると思います。  今、厚生省意見ですと、これからはバブルがはじけて大変厳しい経済が来る、何とかしなくてはいけないと言いながら、片方では、今のお年寄りの人たちはいい暮らしをしているじゃないかと。しかし、今はいい暮らしをしておりますけれども年金とか保険が破綻するように、五年後、十年後はサラリーマンの生活も年金者の生活も破綻するわけでございます。昭和恐慌のときと同じような状況が起きないとも限りませんので、なぜ国民保険が生まれたのかを……。  私は、十年ほど前、偶然、土地改良の換地の会合に行きました。区画整理、土地改良のときに土地を所有者同士交換します。そのときに、みんなで土地の登記簿を持っていきましたら、昭和の終わりごろですけれども、農地にお医者さんの名前で抵当権が設定されておるのですよ。これは何ですかと聞いたら、昔は保険がなかったからみんな借金して病院に通った、金が払えなくて土地に抵当権を設定した。しかし、それは財産があるからいい方で、そのとき聞いたお年寄りの人は、自分が子供のとき、自分と同じぐらいの年代の子が病院にかかれずに結局死んでしまって、ちょうどその部落の前に橋がありますけれども、親の背中にからわれて死亡届をするときに初めて病院に連れていってもらったと。  そういう歴史をきちんと、昔の資料をひもとけば残っているはずでございますから、きちんと厚生省の若い人たちにも見ていただくような資料をつくっていただくことを要望いたします。  これで質問を終わらせていただきます。
  173. 佐藤剛男

    ○佐藤(剛)委員長代理 次に、五島正規君。
  174. 五島正規

    ○五島委員 医療保険制度改革第一歩であるということで、朝から大臣のこの保険制度改正問題についてのお答えを聞いてまいりました。改めまして、この問題から少しお話を聞きたいと思います。  大臣は、今回政府がお出しになっておられますこの改正案保険制度の抜本改革第一歩である、こうおっしゃっているわけでございます。私は、改めて、これは本当に抜本改革第一歩なのか、それとも、健保財政の破綻という状況の中での緊急避難としての措置なのか、ここのところをはっきりとお聞きしておきたいというふうに思っています。  と申しますのは、先般、一月三十一日に出されました社会保障制度審議会の答申の中でも、「今回の諮問案は、いかにも拙速のきらいがあり、またその内容も、制度全般の総合的な改革の必要性に触れてはいるものの、当面の医療保険制度の財政危機を回避するための緊急避難的な保険財政安定化策に偏っている。」「当面の対応策が必要なことは理解するが、」「医療制度及び老人保健制度を含めた医療保障制度の「抜本的な改革」を行うべきである。」そして、「具体的な改革スケジュールを、政府の方針として早急に示すことが不可欠である。」このように指摘しておられます。  こうした制度審の御意見も踏まえて、今回の政府の案を医療保険制度の抜本的な改革第一歩として厚生省は位置づけておられるのか、それとも、緊急避難であり、そして、この緊急避難を出発として抜本改革をこれから一から検討するのだという立場にお立ちになっているのか、まずそこのところをお伺いしたいと思います。
  175. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 抜本的改革第一歩か、健保財政の緊急避難的な措置かということなんですが、率直に言って両方じゃないか、正直に言って両方の面がある。  緊急避難的だという批判をされている方の気持ちもわかります。しかし、だからこそ抜本改革の機運が出てきたということも否定できないと思います。私は両方じゃないかと思う。だからこそ抜本改革に踏み切らなければいかぬというふうに受けとめております。
  176. 五島正規

    ○五島委員 両方だとおっしゃる言い方の中には、実は緊急避難なんだという意思がにじんでいるように思うわけでございますが、これは非常に重要な問題でございます。  今、矢上委員の方からも御指摘ございましたように、日本の皆保険制度、これはやはり何としても維持していかなければいけない。しかし、その皆保険制度、お互いに老人保健制度を含めてつながっている中で、政管健保の財政的破綻という状況になったら皆保険制度が崩壊するかもしれない、その危機感は全委員が共通して持っている認識だと思います。したがって、何らかの形で皆保険制度を維持するための措置が必要であるということはよく理解できる。  しかし、これが緊急避難として抜本改革と切り離して議論するということであるならば、それはそれとしてできるだけ負担の大きくならないように、なおかつ、皆保険制度が維持できるような措置にとどめるべきだろう。  しかし、もし抜本改革であるとおっしゃるのであれば、そう一挙に改革が進むわけではない。制度審にも指摘されておりますように、一定のタイムスケジュールというのは必要でしょう。それに向けた、一定のそういう激変緩和の措置を織り込みながら目的地に向けて到達するような、それの第一歩としての位置づけが今回の政府の案の中に含まれているかどうか、その観点からの議論が必要だと思うわけです。  そういう意味では、大臣がこの点についてどの立場でこの委員会で議論を要請されているのか、政府は論議を求めておられるのか、そこのところ、局長、どういうことなんですか、もう一度改めてお聞きします。
  177. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 今回の改革の位置づけでありますけれども、これはやはり、現在の医療保険制度の財政的な窮迫、これをどういうふうに見るかということとも密接に絡んでいると思います。  これはやはり、経済の伸びと医療の伸びのギャップ、これがますますこれからの高齢化社会において開いてくるのではないか、あるいはその差というものは縮まらないのではないか、こういう問題がございます。ここをどうするのか、これがやはり根本的な医療保険制度制度運営の安定の、ここのところを解決しないと決着はっかない。ここのところをどうしていくのか、これを議論していくというのは一つの大きな抜本改革の課題だろうと思います。  それからもう一つ、昭和三十六年に国民保険制度が達成され、それから三十年以上経過しておるわけでありますけれども、その間における産業構造の変化は非常に大きなものがある、それからまた、それに伴う就業構造の変化も非常に大きなものがあるわけでありまして、そういった中で、当然それは、そういう就業構造等を基盤にしている医療保険制度保険集団の問題を初めとしてかなり変質を迫られておるという問題がございます。  それからまた、現行の医療保険制度においては、幾つかの大きなむだといいますか、非効率といいますか、そういったものが内在しているのではないかということがあるわけでありまして、それが、例えば診療報酬の問題あるいは薬価基準の問題、そういった問題の中で非常に顕在化してきているという問題があろうと思います。  これらの問題を、これからの二十一世紀高齢化社会を迎えるに当たりまして、今のうちに、この両三年のうちに解決していかなければいけない、これがまさに抜本改革の本格的な議論だろうと思います。しかし、これを後ろに抱えて現在の医療保険制度の財政状況を見た場合に、これは放置しておけない非常に危機的な状況にある、これも事実でございます。そういった意味で、この現下の放置できない医療保険制度状況というものの財政的な運営の安定というものを早急に確保する、これも非常に緊急の課題であります。  そういった意味で、まず現下の財政の安定というものを確保すると同時に、その背後に引き続きます抜本的な制度改革というものを進めていく、そういった意味ではこの両方の問題について取り組んでいくということになるのだろうと私は思います。だから、そういった意味大臣両面があるというふうに申し上げたというふうに理解しております。     〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕
  178. 五島正規

    ○五島委員 余り長い答弁は困るわけですが、要するに、抜本改革しなければいけないという状況認識については一致している、しかし、その具体的な内容ということにはまだお触れになっていないという状況だと思います。  そこで、抜本的に改革せざるを得ないというこの状況は共通するわけでございますが、その場合に、午前中からの議論を聞いておりまして、我が国医療保険制度、この保険制度を全体としてどう評価するのか、どうも政府の御意見がはっきりしないように思います。  長い間経過した制度ですから、数多くの問題点が浮き彫りにもなってまいりました。そして、高齢社会が進んでくる中において、非常に新たな変化を求められ、改革を必要とする状況になってきた。その現状認識については結構でございます。しかし、往々にして、厚生省の御意見等を聞いていますと、諸外国の医療保険制度我が国医療保険制度と比較してみた場合に、我が国医療保険制度というのは世界各国に比べてもこれまで非常にすぐれた制度としてきた、そこのところの認識をどうも失っておられるのかな、自信を失っておられるのかなという感じを私は持ちます。  例えば、これまで、GNPやナショナルインカムに対してこれほど低い率でもって、日本の医療が皆保険制度のもとにおいて提供されてきた。そして、その多くが、今日において新たな問題があるとしても、フリーアクセスの中において、諸外国、先進国においても今日なお見られるように、手術を受ける、処置を受ける、あるいは必要な検査を受けるために数カ月待たされるという状況が普通であるような医療制度に比べて、日本は、平均水準としては極めて高い医療が全国津々浦々まで普及してきている。そのことが結果において早期受診、早期治療に結びつき、非常に大きな成果を上げてきたと私は考えるわけでございますが、そうしたこれまでの医療保険制度そのものが日本において基本的にそれほど誤ってはいなかったのではないかというふうに思います。そこの議論がないために、それではこの制度の中においてどういう点が問題だったのかというのが浮き彫りになってこない。  先ほども薬価差益の問題についての御発言がございました。また、御答弁もございました。今、薬価差益というのが社会的に非常に大きな問題になっております。しかし、統制経済のもとにおいて医療運営されているわけでございますが、日本の医療のこの保険制度の中において、医療には当然キャピタルコストが必要でございます。このキャピタルコストは診療報酬の中にはございません。これは医療機関の経営努力としてやっていかなければいけない。それが結局、検査差益であり薬価差益としてあらわれてきているのだと思います。  そして、場合によっては、これもまた先ほど矢上委員等からの御指摘もございましたが、場合によっては医療の中におけるマンパワー不足という状況厚生省があえて黙認してきた。医療法の必要な人員に対して八割の人員を満たしておれば現実にはペナルティーを科さないままにきたというような状況の中で、そういう面まで厚生省が容認してきた。そういうふうな問題点が今日浮き彫りになってきています。  だからといって、これを技術料の上に上乗せすれば済むというものではないだろう。盲腸の手術代八万円を十二万円にすれば、その中にそういう形でキャピタルコストを含ませていけばそれで医療が正常化できる、もしそうであるならば、アメリカの医療制度はもっともっと効率のいいものになっているはずでございます。  そういう点から考えると、今日我々が変えなければいけない医療保険制度の、その長所と、それから、どこのところをどのように変えなければいけないかという基本的なところを、国民が話題にしているさまざまないわゆる制度疲労の問題はよくわかりますが、しかし、その根幹になるところを一体どのように整理するのか。  局長、キャピタルコストの問題を排除しては医療が成り立たないとすれば、一体、これは新たに診療報酬の中でキャピタルコストの診療報酬のコストを設けるのか、あるいは、今日のようにいわゆる経営努力としてそれぞれの医療機関の中でキャピタルコストを捻出させる方法をとっていくのか、あるいは統制経済から医療を外してしまうのか、どの辺を中心に改革考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  179. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 まさに今先生指摘の問題、これは非常に大きな問題だと思います。  そういった意味で、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、これからの医療の成長というものをどう考えるのか。私はやはり、これからの高齢化社会において、医療というのは高度成長産業だろうと思います。それに対して経済の伸びというのはそれほど大幅な伸びではないというふうに言われておりますし、私もそういうふうに思っております。  そうすると、そのギャップというものをどう考えるのか、これをだれがどういう形で負担していくのか、それは当然、医療経営の中におけるキャピタルコストの問題も入るわけでありまして、まさにそこのところをどういうふうにしていくのかというのは、国民的議論の中で決めていかなければならない問題だというふうに思います。それを引き続き経済の伸びの範囲内ですべて抑えてしまうのか、私は、なかなかそういうわけにはいかないのではないかというふうに思っております。
  180. 五島正規

    ○五島委員 きょうこの場で、それについての結論的なものを厚生省からお聞きしようとは思っていない。それは、これから議論しなければいけない問題なんです。  にもかかわらず、例えば薬価の問題が大きな問題だといった場合に、巷間、一五%の薬価差益というのが指摘されています。約一兆円から一兆二千億ぐらいが薬価差益としてある、それが医療全体に使われているキャピタルコストであるというふうに大体考えられています。そうだとすると、そういうものをどういうふうにあるべき姿に変えていくのか。そういうふうなものが基本的に見えていない中における今回の医療保険改革というのは、基本的には、やはりその議論をしていく時間を稼ぐための緊急避難だろうというふうに私としては考えざるを得ないと思います。そういう意味において、緊急避難なら緊急避難として論議をしていきたいと思うわけでございます。  そういう観点のもとで、今回、厚生省は、このままいったら大変だ、あるいは、今回の改正をしても三年しかこの保険制度はもたないのだという資料を出しておられます。「制度改正による政府管掌健康保険財政への効果」という資料をちょうだいいたしております。これは各種の審議会にも出された資料ですが、私は、これをよくお出しになったなと率直に言って思います。なぜならば、この政府がお出しになった資料を見てみますと、制度改正しても平成十二年度から政管健保赤字になるという資料です。  その中で、なぜなんだろうかと見てみますと、収入のところは従来どおりの保険料収入、支出の方には、平成十二年度で四千四百億、平成十三年度で四千七百四十億の介護納付金という項目が入ってきます。これは、介護保険に対して、現在議論されております介護保険は四十歳から六十四歳まで医療保険のシステムに応じて徴収することになっており、それを介護保険として出すということによる納付金なのだと思います。これは少なくとも、現在この院でこれまでも議論してまいりました介護保険の中では、新たに徴収することになったはずですね。ということは、それをもし支出としてこの保険支出の中に入れるとするならば、新たに医療保険のほかに介護保険として徴収したその財源が入ってこなければいけない。これは収入と支出がイコールなんです。  そうだとすると、収入のところだけをわざわざ削って、そして介護保険を導入してきたら四千四百億、四千七百四十億、新たに支出がふえる、そういう状況見通し表をおつくりになっている、この意味はどういうことなんですか。
  181. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 「政府管掌健康保険の財政状況の見通し」ということで、改正案を前提とした場合に、平成九年度から平成十三年度までの五年間の収支見通しを策定して、お示しして公表しております。  平成十二年度から介護保険が導入されるという前提のもとにこれをつくらせていただいておるわけであります。その際に、委員指摘のとおり、支出については介護納付金ということで四千四百億を計上いたしております。それに対しまして収入の方でございますけれども保険料収入と国庫補助がございまして、現在、一六・四%の国庫補助が行われているわけでありますが、この介護納付金に必要な国庫補助、これは金額として一兆七百八十億円を計上しておりますが、この中にカウントしております。積算をいたしております。この保険料収入の方、これは六兆七千六百五十億円ということでございますが、ここの部分については、明確に介護保険料という形のものとして上乗せした形ではこの中に盛り込ませておりません。  これは、推計上の一つの手法としてこういう格好でやらせていただきましたのは、一つには、介護保険法では、四十歳から六十四歳以下のいわゆる第二号被保険者、この方は、介護保険料と従来の医療保険の一般保険料を合算したものを負担する、こういうことになっておりまして、四十歳未満の方については、これは介護保険料の負担がありませんので一般保険料だけを負担する、こういうふうな仕組みになっておるということであります。  これをそれぞれ分けた形で、この保険料収入という形で計上するということをとらなかったわけでありますが、それはもう一つ、この介護保険ができますと、従来の政管健保負担しております老人保健の拠出金、これが減少いたすわけでございます。この減少分が、平成十二年度で見てみますと、三千七百三十億円ということで推計をしております。  このうち、いわゆる国庫補助を除いた保険料で負担する部分が三千百四十億。それから、今回の政管健保介護納付金の方でありますが、これが先ほど申し上げましたように四千四百億ということで、これは支出の方に計上しております。この四千四百億のうち、保険料が負担する部分、いわゆる国庫補助を除いた分が三千六百八十億ということで、この差が約五百四十億ということになるわけであります。  全体の平成十二年度における収支見通しというような観点考えますと、平成十二年度、現行のこの計算ではマイナスの四千三百六十億ほど赤字が出るという格好になっておるわけでありますけれども老人保健の拠出金の減少と介護納付金の増というものがおおむねとんとんぐらいであるというふうなことで、これはかなり、平成十二年というような状況における推計ということでもございますので、そのような考え方から今回のような形の推計、見通しを出させていただいたということでございますので、御理解いただきたいと思います。
  182. 五島正規

    ○五島委員 そんなもの、理解できるわけないじゃないですか。  いいですか。保険料の収入の伸びも、平成九年度から十三年度まで大体コンスタントにやっている。国庫補助についても年間大体六百億ぐらいずつ伸びていく。これは別に、十一年、十二年、十三年と、変わっていませんよ。そういう形の中で保険料収入というものは大体コンスタントな形で数字的には推移をしている。支出のところで、平成十二年度になったら途端に四千四百億というのが入ってきて、そこで平成十一年に比べると介護保険ができたことによって政管健保は大幅な赤字になるという数字を出しているわけです。  なぜか。支出は入れたが、収入は入れないというようなばかな数字を出すからです。今の局長が言う言い方で、まだ決まっていないのだから収入に入れられないなら、支出は無理だよ。だめでしょう。介護保険が入ったことによるところの老人保健の拠出金やらその他の問題の計算がまだ十分にできないということで支出がはっきりしないというのであれば、それは収入を削る以上、支出も削っておけばいいのです。  それを、支出だけ入れておいて、見かけ上だけの赤字を大きくして示して、そして国民に危機感をあおろうなんというような、そういうふうな手法で今通るような状況ではない。こんなことをしなくても、現在の医療保険制度を変えない限りにおいてはもう今年度いっぱいぐらいで何ともならなくなるということは、これは数字の上ではっきりしているわけです。だから、そういうこけおどしみたいなことを行政がやっていて国民が納得するはずないのじゃないか、そういうやり方はもうやめてほしいということを申し上げておきます。  また、介護保険の導入によって、当然、老人保健で現在入院の患者さんが、療養型、老健施設あるいは介護力強化病院の患者さんが介護保険の対象に移ってまいります。あるいは、現在在宅で療養しておられる方々の中においても、介護の部分については介護保険に移っていきます。こういうふうなものについて、医療保険に及ぼす影響は保険局としてはどれくらいのものとして試算しておられるのか、その数字をちょっと教えてください。
  183. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 今先生お尋ねの数字につきまして、今回の、今保険局長がお答えを申し上げました数字のベースで申し上げたいと存じます。  先生指摘のとおり、介護保険法案におきましては、平成十二年度からは、現行の老人医療費のうちから老人保健施設あるいは療養型病床群の介護関係費用が介護保険制度に移るわけでございます。その意味から、医療保険制度への影響は平成十二年度以降においては当然生じてくるということで、先ほどお答えもございましたように、そのことによって新たに介護納付金というものが医療保険に出ると同時に、老人保健拠出金がその分だけ減少するという形になります。  その数字につきましては、今、老人保健制度の中でいわゆる介護相当部分の公費負担が二分の一でございますから、今度の介護保険制度も二分の一ですから、公費負担部分については同規模ということでいきますと、平成十二年度におきまして、医療保険制度全体で八百億円程度、介護納付金総額が老人保健拠出金の減少額を上回るということになります。したがって、その差は、一応今の見込み、先ほど申し上げた数字のベースで言えば、医療保険全体では八百億でございます。  内訳で申し上げますと、各制度の影響額ということで申し上げますと、これはもちろん保険料で賄う額といった方がよろしいと思いますのでいきますと、例えば、政管健保でございますと五百億円程度増になる、それから組合健保ですと四百億円程度の増になる、逆に国民健康保険につきましては二百億円程度の減になる、こんなふうに推計をいたしておるところでございます。
  184. 五島正規

    ○五島委員 平成十二年度から介護保険を導入するということを前提にして、そして、そういうふうな部分については保険料も新たに徴収するということで、拠出金の問題ではなくて給付費全体からいいますと置きかえにはなるわけですが、医療保険全体としてはかなり大きく改善されてくるわけでございます。  その場合に、平成十二年度に介護保険が導入されます。そうした場合、介護保険では外来の負担がお年寄りで一割、また、入院した場合にも食事その他を除いて一割ということになっています。今回、五百円、四回という定額負担というものが検討されているわけでございますが、問題は、あと三年、平成十二年の段階でこれをどうするのか。  すなわち、介護保険が導入された段階において、高齢者の負担というものが制度によって格差があるということになってくると、その制度の差によっていわゆる社会的入院というものが医療の中に温存される心配がある。激変緩和という意味において今回五百円、四回というのは私は了解しているわけですが、平成十二年の段階で、介護保険が導入されたときには、やはり老人医療についても介護保険等との整合性を持った定率制度に移していかざるを得ないのではないか。そのことを全く検討されていないのか、やはりそのことを前提に考えているのか。もう医療保険制度がここまで厳しいわけです。厚生省としてそこのところをどのように考えているのかということをきちっとお示しいただきたいと思うのですが、どうなんですか。
  185. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 介護保険制度が導入された時点で、今の状況そのままでいいとは思っておりません。当然、そのような整合性のとれた改革を視野に入れて今後検討していきたいと思います。
  186. 五島正規

    ○五島委員 まさにそうだと思うのですね。私は、そのことを今の段階で明確に言っておくということが非常に大事なことだろうというふうに思います。  また、今回、もう一つ改正案の中で、お年寄りの問題以外の問題に絡んでまいりますが、政管健保保険料を、本人八割に、要するに二割負担にするというふうに政府は出しておられます。これは、健保の本則で二割にするというのであれば、家族の負担についてはどうされるのか。  これを試算してみました。健保本則、本人を八割給付にしますと、平成十年のペースで計算しますと、一年間約七千五百十億円の保険料収入の増加になります。平成十二年で八千三百五十億の収入の増になります。  収入の増は多ければ多いほどいいということで、それだけで置いておかれるのか。私は、今回直ちに無理だとしても、平成十二年の段階では、家族の給付も八割にするというぐらいのことはやらないといけないのではないか。  平成十二年度の段階で、家族の給付を現在入院、外来ともに八割に政管健保をしていった場合に、二千七百億円の支出が増加します。それでも、その段階における、本人を八割にしての八千三百五十億の収入増との差額で五千六百五十億の収入増があるわけでございます。そういう点から見ますと、当然、家族の給付を八割にするということをセットにすることをひとつお考えいただけないかと思うのです。そうでないと、なぜ本人だけの負担がふえるのか理解できません。  また、老人医療定率にする段階において、介護保険と同じようにするということになりますと、お年寄りが九割給付になります。それが健保の本人や家族と差がついている理由は、高齢者の場合は余り所得もないということ、それから健康弱者が多いということから、そういうふうな社会的な支援が絡んでくるのだと思います。  しかし、そうだとするならば、子供はどうなんだ、赤ちゃんはどうなんだ、収入がないじゃないか。そうだとすると、せめて小学校へ入るまでの子供の――各自治体でそれぞれ努力してやっていますよ。やっていますが、保険制度として、平成十二年度で、小学校へ入るまでの子供の保険給付を九割給付したらどうだ。  全医療給付の増は千百億です。政管健保でふえてくる費用というものは五百億、組合保険でふえるのは三百億、国保でふえるのは二百億です。その他で約百億。あるいは、国庫全体の負担の増は二百億です。しかし、本人八割にすることによって八千三百五十億の収入がある中において、それぐらいのことを子育て世代、しかも、非常にこれから高齢社会になっていく中において御努力願わなければいけない若年世代に対して支援をしていくということがあってもいいのじゃないかと思うわけですが、その辺はどのようにお考えか。  これは、直ちに今回の改正でそうしろと言っているわけではありません。平成十二年度でということで、大臣の方が先ほど平成十二年度ではとおっしゃったので、あわせてそこも、政治家としてどう考えておられるか、ひとつお聞きしたいと思います。
  187. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 この給付率の問題というのは、これはまさに医療保険制度をどういうふうに構築するかという、まず基本的な問題の一つだろうと思います。  今までの我が国のこの給付率は、これはひとえに沿革的なものであると私は理解しております。もともと、この健康保険法の前身であります労働者保険法の時代は、家族は入っていなかったわけでありますし、それからまた、ホワイトカラーも入っていなかった。そういうようなところからずっと来て、国民健康保険ができ、それらの流れの中で、一時は、いわゆる給付の一元化ということで二割負担を各制度目指すという時期がございました。しかし、それが今日までこのような格差のある状態で来ておりますけれども、やはりこれは、制度全体をどういうふうに設計するのか、その裏腹として、当然、財政がこういうような給付率にした場合にもつのか、この負担との関係が裏腹の関係としてあると思います。  その辺は、この子供の問題も、これからの少子化の時代にどう考えるべきなのか。確かに、現在、いろいろやり方は違いますけれども、全都道府県が自治体の負担のもとにおいて子供の一部負担の減額という措置を講じております。講じておりますけれども、全国の制度としてその辺をどうしていくのか、これはやはり大きな問題だろうと思います。私は、この給付率の問題は、それを支える財源あるいは財政の問題の裏腹の問題として考えていかなければならないというふうに思っております。
  188. 五島正規

    ○五島委員 財政の問題との裏腹であるから、本人の負担が八千数百億も上がるのであれば、その分を回したらどうかと言っているわけです。そして、かつてはこれは勤労者保険であったという話は、今まさに国民保険制度の話をしているわけで、今日の時点でそういう答弁を保険局長から聞いたのではこれはたまらないというふうに思います。  そういう意味では、この問題、まだ数年間の間に煮詰めなければいけない問題ではございますが、私としては、子育て世代に対する支援として、本人負担の引き上げということを財源として当然それをやっていくべきだというふうに今後も要求していきたいということを申し上げておきたいと思います。  そして、いま一つ問題として、今回、医療保険審議会では、本人の政管健保保険料を千分の八十五に引き上げるということが答申されました。ところが、改正案では千分の八十六になっています。なぜ答申より千分の一上げたのか、その根拠は何なのかということが一つです。  それからもう一つは、将来的に高齢者の医療の問題等々を考えていった場合に、現行のような形での政管健保の徴収のシステムでいいのか。  現在、政管健保については、基本的にはボーナス以外のいわゆる標準月収に対する保険料でこの話は決まっています。そして、ボーナスに関しては、特別保険料という名目で千分の十が労使あるいは国庫の負担によって徴収されています。  同じ共働きの世帯で、年収が全く同額であって、例えば年収六百万、三百五十万と二百五十万という比較的所得の低い人たちであっても、その中でボーナスの占める部分、賞与の占める部分が四〇%の人と一〇%の人では保険料では十数万の差がございます。年収が千二百万という段階になりますと、社会保険料の負担は百万近く違ってくる。夫婦共稼ぎでですよ。それぐらいの違いが出てくる。こうした同じ制度の中における、同じ年収の中における不公平というのがございます。早晩やはり年収に対する保険料賦課というものにしていかざるを得ないのだろう。  そうだとするならば、今回の措置の中でも、なぜ標準月額に対する保険料の引き上げをされるのか、標準月額に対する保険料の引き上げではなくて特別保険料の引き上げではなぜだめなのか、そこのところが私には理解できません。  例えば、今回の措置の中で、政府案でやりますと、平成十年で二千九百四十億、平成十二年で三千九十億の保険料収入の増加になります。しかし、現在千分の十のいわゆるボーナスに係る保険料を仮に千分の四十に引き上げた場合、平成十年では三千七百七十億、二千九百四十億ですからそれよりもはるかに多くなります。平成十二年でも三千九百五十億ということで、はるかに保険料収入はふえてまいります。そこまで上げなくてもいいということであれば、もっと少ない引き上げということはあると思います。  なぜ、こうしたボーナス部分に対する保険料の引き上げをおやりにならないのか。これには七百億ぐらいの公費負担が入っているからそれはだめだというふうに大蔵省に言われたからできないのか。大蔵省にそんなこと言われるのなら、八千億の借金を早いこと返してくれということを強く言ってほしいと思うわけですが、その辺、どうでしょうか。
  189. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 まず、医療保険審議会の建議でございます。  先ほど先生、答申というふうにお話ございましたけれども、昨年の十一月二十七日に、医療保険審議会の建議をいただいております。この建議の中では、政管健保保険料率、過去最高が千分の八十五ということでありまして、その千分の八十五の最高料率程度はというふうな建議をいただいたわけでございます。  正式に政府案を諮問いたしましたときには千分の八十六で諮問を申し上げたわけでありますが、これは、政管健保全体の収支バランス、いわゆる一部負担、それからまた保険料の引き上げ、これらをあわせた収支バランスを考えてみた場合に、千分の八十五ではかなり大幅な赤字になってしまうということがございまして、千分の八十六ということでお願いをすることにしたわけであります。こういう格好でも、先ほどから御指摘がありますように、平成十二年、この三年間程度しかもたないという厳しい財政状況にあるわけでございます。  それから、ボーナス保険料の関係でございます。  現在は、一般保険料、これが千分の一が約七百億程度でございます。それに対してボーナスの特別保険料、これが千分の一が大体百二十億程度、ですから、ボーナス保険料をいただくということになりますと、一般保険料の千分の一に対して六分の一ぐらいの額という格好になりますが、このボーナス保険料を引き上げるべきかどうかということについては、やはり医療保険審議会の議論の中でもかなり賛否両論がありました。  そういう中で、今回の改正お願いするに当たりまして、一般保険料でお願いをすることにしたわけでありますけれども負担の公平という観点考えてみた場合に、ボーナスそれから通常の毎月の給与、両方を合わせた所得に対して御負担をいただくということが私どもとしては公平な負担ということにかなうのではないかというふうに考えておりますけれども、この辺については、それぞれ賛否両論あるところでありまして、さらに御議論をいただかなければならない部分ということで、今回、このような引き上げをお願いしたということでございます。
  190. 五島正規

    ○五島委員 賛否両論あるのは当たり前で、ボーナスが多い人は反対するだろうし、ボーナスの少ない人は賛成するのはわかり切っている。基本的には年収に対して保険料を取っていくという方向にいくのか、そうではないのか。もしこれが改革第一歩であるならば、今回の方法はその方向をあきらめられたという内容のものになっている、それはおかしいのではないかということを申し上げているわけです。  そういう意味では、この問題について賛否両論ありますというふうなことではなくて、厚生省としてはどちらをやっていくのかということについて、まだ詰まっていないということであれば、どうするのかということを早急に詰めていただきたいと思います。  時間がございませんので、次に行きます。  今回の政府案の中でも人気の一番悪いのは、薬剤種類十五円という、こいつだろうと思います。医療関係者以外の議員が圧倒的に多いわけですから、厚生省はこの仕組みを十分にお伝えしないと、後になってから恨まれるのは議員なんですね。  例えば、高血圧の薬でこれまで三種類の薬が出ていた。そして、その薬の費用の総額は二百五十円であった。二百二十円でもいいですよ、二百二十円であった。そこに風邪薬が追加された。服用も全部同時である。食後である。風邪薬の中には四種類の粉薬が入っていて、風邪薬そのものは足しても三十円ぐらいだ。だけれども、四種類の薬がついた。そうした場合、何種類の薬になりますか。足して七種類になるのですか、それとも高血圧その他の薬で三種類、それとも風邪薬まとめてそれを一種類とみなすのですか。そうではないでしょう。一剤単位でカウントするということになってレセプトの明細ということになってくると、そうなった途端に、風邪薬、全部足してたかだか三十円のものも、四種類の薬が入っているとしたらそれが六十円、そして残りの三種類については十五円ずつの四十五円、だから百五円というお金をもらうことになりますね。違いますか。
  191. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 今度、一日当たり一種類につき十五円という一部負担お願いするということでありますから、薬の種類ということを基本考えておるわけであります。トータルとして二百五円以上になるかどうかという細かい問題がありますが、今の場合ですと二百五円以上になりますから、三種類の薬と四種類の薬をいただくわけですから七種類になりますので、そういった意味では、一日につき一種類十五円ということですから七種類掛ける十五円、こういう格好になります。
  192. 五島正規

    ○五島委員 結局これは、医療関係者でさえ、通常医者が扱っている処方と違ったカウントをしているためにごまかされるわけです。これは基本的に、薬の単価関係なしに、散剤であろうと乳剤であろうと錠剤であろうと、状況によっては、使われている種類数が一種類十五円なんです。風邪薬というのは、散剤で通常四種類ぐらい入っています。そこから六十円取るということが、そのほかに何らかの疾病を持っていない人に関しては取らないけれども、取るということなんですね。そんなばかな制度ということに対して国民が怒っているのは当たり前だと私は思う。  しかも、そのことに対して、例えば薬剤の抑制に役に立っていると考えるのか。これまで十二年間で薬価は五一%引き下がった。本来なら引き下がっているけれども、現実には下がっていない。その大きな理由が高価格薬品へのシフトがえであったと厚生省自身が認めておられますね。今回も約四・五%の薬価の引き下げがありました。約三千五百億から四千億ぐらいでしょう。三千五百億ぐらいの薬価の引き下げをやっておられます。これは今年度はちょっとぐらいその分下がるかもわからぬけれども、来年、薬剤比率が下がってくる、総額が下がってくる自信は全くないはずです。  今、臨床現場においても、相も変わらずどんどん、名前は言いませんが、シフトがえが起こっています。百二十円とか百八十円ぐらいの薬が三百円台の薬にどんどん上がっている。先ほど鴨下先生指摘しておられましたが、ロングの薬へどんどん変わっている。日に二回飲んでいなければいけなかった薬を日に一回飲めばいいようにマイナーチェンジした薬、マイナーチェンジ一つすることによって二倍以上の薬価に、新薬価格をつけていますからどんどん上がっています。  そうしますと、一種類十五円という単価をつけてみて、例えばこれまで五十円の薬を出している、それを二百円の薬にシフトがえするというときに、どちらも十五円の負担という状況の中でシフトがえに対する抑制になりませんね。言いかえれば、処方する医者の方に何らコスト意識がない、そのことによって患者に迷惑をかけるかもしれないという判断をしなければいけない、そういういきさつ全然ない。これは、厚生省またこんなことして迷惑かけるね、一剤十五円なんてとんでもないのを取るんよ、私ら反対したんだけれどもねということで終わりなんです。シフトがえはおさまらない。  そうすると、今回、薬価を三千五百億引き下げて、それはほかの消費税対策で処置したわけですから、結果としては医療費はその分だけ、薬価が下がらなければ上がるわけですね。そういうことに対して、この一種類十五円というのが、いや、そうではない、薬剤費の引き下げに、シフトがえに対して効果があるのだとおっしゃるのであれば、証拠を出してほしい。今まで新薬は高くなければ売れないということで、どんどん高値についていっています。高い薬ほど、この日本の医療薬価制度の中ではよく売れるのです。そういう状況の中でそれをやっていけるのか。  ドイツでもイギリスでもフランスでも、この薬剤費の問題を考えた場合、いろいろな制度考えています。しかし、絞った結論は何かというと、長期収載については後発医薬品に主要な薬品をある程度シフトがえさせるということで薬剤比率を抑えるということしか結論は得られなかったのです。それが償還払いであり参照価格制度なんです。日本はそうではなしにやれるのだということで出しておられるのは、どういう理屈でできるのか、教えてください。
  193. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 我が国の場合に、医療費に占める薬のシェアが非常に高い。これは大きくは二つの理由があるだろうということで考えておるわけですが、一つは、いわゆる新薬シフトという問題、もう一つには、非常に多剤投与という傾向があるということがあろうかと思います。今回の一部負担によりまして、この多剤投与に対する歯どめということはできるのではないかというふうに思っております。  新薬シフトの問題というのは、現在の薬価基準制度に伴う薬価差の問題、高薬価ほど薬価差が大きいというような問題、こういった問題がやはり裏にあるわけでありまして、薬価基準制度の根本的な改革というものが高薬価シフトを是正するには必要である、このように考えたわけでございます。
  194. 五島正規

    ○五島委員 多剤投与を抑制するかもしれないとおっしゃいますが、例えば、先ほど例を挙げましたけれども、風邪薬でそれぞれの病院、胃薬でそれぞれの病院あるいは診療所が院内処方というのをおつくりになっています。結構それぞれよく効くのですね。古くからある局方品を中心にした薬というのはよく効いている。だけれども、やはり四種類くらいの散剤を使っている。四種類使って三十円の薬を出すよりは、患者さんに対する迷惑を考えれば、もう総合感冒薬みたいなものを一剤出して、それが二百円でもその方が患者に迷惑をかけないということになれば、それは多剤投与の防止どうのと言ってみたところで、これは全然効果が上がらないのじゃないですか。そんな多剤投与の問題については、既に厚生省は八種類以上の薬を出すなという形で診療報酬の中で縛っていっている。この方向で十分なのであって、今真剣に考えないといけないのは、高薬価医薬品へのシフトがえの問題でしょう。  それじゃ、もう一つ聞きます。  今、日本から海外に、例えばフランスに売られている薬、日本で非常によく売れている極めてすばらしい薬ですが、鴨下さんが薬の名前を言いませんでしたので、私も薬の名前を言いません。循環器、動脈硬化、高脂血症なんかに使われている薬で年間千四百億売れているという薬ですが、これは日本の国内価格フランス価格ではどうなのか。  あるいは逆に、アメリカからエイズのさまざまな治療薬、今、エイズの治療については三種混合ができ出して、アメリカでももうエイズは死なないと言われるほど画期的に治療は進んできました。そうした中でさまざまな、プロテアーゼ阻害剤とかAZTや3TCといったような薬の三種混合ということで使われ出しています。いずれも、日本では一錠千数百円する非常に高い薬です。それのアメリカの単価はどうなのか。  すなわち、アメリカから、外国から輸入している薬の、販売国と日本との薬価の市場価格差、あるいは日本で使われている薬で海外に売られている薬の価格の差、代表的な例を薬の名前を出してお調べいただいていると思うのですが、どうですか。
  195. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 内外価格差の問題でありますけれども最初の、高脂血症の治療薬、これはもう有名ですから名前も申し上げますと、メバロチンのことだろうと思います。これをアメリカあるいはフランス価格と比較しますと、我が国フランスの二・七倍ということでございます。それから、アメリカと比較しますとアメリカの一・一倍、これはおおむね同じぐらいかなという格好であります。  それからエイズの治療薬でございますけれども、これは、例えば昭和六十二年ごろ、最初のころに認可されたものと、ごく最近、この四月から認可いたしたものとでかなり価格の違いがあります。最初のころの、例えばジドブジンですと日本はアメリカの二・四倍になっておりますし、ジダノシンになりますと七・四倍という非常に高い価格になっています。先般新しく認可されましたインジナビルについては、アメリカの一・一倍ということで、おおむね同じぐらいの価格という形になっております。
  196. 五島正規

    ○五島委員 ですから、日本で開発されて、そして外国へ売られている、フランスで売られている、アメリカで売られている。なぜ、日本でつくられ外国に輸出されたものがフランスでは日本の方が二・七倍も高いのか。逆に海外で開発されて日本に輸入した場合も、やはり多くの主要薬品が三倍近い価格になっている。  市場価格でそうなっているのなら、これは需要と供給の関係ですから理解できないことはありません。これはすべて薬価制度のもとで公定価格として厚生省がお決めになっているのですよ。おかしいじゃないですか。  そういうものに対して今回の改正では手をつけていないですね。それはそうだと思いますよ。今までの薬価制度でいえば、メーカーは、新薬についても、薬価を高くしてもらえば高くしてもらうほど売れるのですから。安ければ売れないのですから。ですから、それを、その矛盾を正して、その部分においては、ほかの商品と同じように、同じような治療効果があるのであれば安い方がよく売れるという制度に持っていけるように今回の改正でもやるべきではないですか。  私は、厚生省の方に対して、例えばしかるべき価格、仮に、二百五円というのは現在レセプトの一つ基準点になっていますから二百五円でもいいですが、二百五円で、一日一剤について、一種類じゃございませんよ、一剤について五十円ぐらい取ったらどうなんだというふうな提案もしました。確かにそれによる本人負担額は、総額で見ますと、いわゆる保険収支への影響額は半分ぐらいでしょう。しかし、そのことによって高価格医薬品に対するスライドが抑制されるとすれば、現在の約三千数百億、あるいは高価格薬から低価格薬に対しての逆スライドが起こってくるとすれば、その方がはるかに財政効果が大きい。それを、現在のシステムを了として、その枠の中での財政効果あるいは本人負担の額だけを検討するというのは極めて問題がありはしないか。  まだほかにも幾つか質問したい点がございます。その点については引き続きこの委員会の中でもきちっと議論して、本当に次の制度をどうするのか、それに向けた第一歩として激変緩和という形でとりあえずやっていく。だけれども、政策目標としては何をどうしたいのか。自己負担の額がただふえればそれでいいと考えるのか、高価格医薬品へのスライドを抑え、そして低い薬価の薬がよく売れるというシステムをつくるという政策意図が見えるようにするのか、そこのところについては、十分にこれからも引き続き議論しないといけないことだろうと思います。  また、ほかにもいろいろございますが、それと関連して、保険者機能が弱過ぎる。とりわけ、羽毛田さんに悪いけれども老人保健というのは、これは制度という財布をつくっただけのものですね。  今問題にしましたからあわせて薬の問題で話ししますけれども、例えば、今、老人医療の中で盛んに活性ビタミンDというのがたくさん使われております。率直に言って、私どもの病院でも高齢者に使われています。しかし、活性ビタミンDというのは、例えば妊娠の前後あるいは更年期前後の女性の骨線維量の低下とかカルシウムの不足とかいうものに対して非常に効果がありますね。これを高齢者に使う目的は何なのか。  高齢者というのは、骨が少なくて困るのではなくて、骨ができ過ぎている障害の方が多いのです。そのためにさまざまな障害を起こしてくるのですね。ただ、関節その他が非常に磨耗してきます。そのための、弾力性維持のために、ある意味では、骨線維量の低下というのは生理的なものではないかとさえ言われている。とはいえ、高齢者に骨折が起こったら困る。骨折することによって寝たきりになることがよくある。だから、骨折の防止として、何となく、骨をしっかりさせればいいのじゃないかというところで投与されている。  だけれども、この薬に対して、それじゃ骨折の防止というところで高齢者に効果があるかどうか、治験はやっていますか。やっていないですよね。そうだとすると、何のために活性ビタミンD、若い人たちに使わせているから、老人保健はそのまま目をつぶって、はいよと言って使わせているのか。  それは、重複受診のチェックも必要です。あるいは二重投与のチェックも必要です。それにも増して、その前段階で、それぞれ、高齢者に必要な医療あるいは薬、どういう目的でその薬は使われていますか、使いますか、そういう意味で、老人保健としてその薬を保険給付の対象にするかどうか、その点まで科学的なきちっとしたデータをメーカーに求めていくというぐらいのことをしないと、これは、保険者機能は余りにもない、単なる財布だけで使い道はだれも決めておらぬと言われても仕方ないと私は思うのですけれども、どうでしょうか。
  197. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 御指摘の活性ビタミンDの薬でございますが、現在、我が国で二種類、二つの成分が医薬品として承認されておりまして、お話のとおり、骨粗鬆症に頻発する骨折予防のために投与されているというのが実態でございます。  これの長期投与試験がないのではないかというお尋ねでございましたけれども、これは既に長期投与試験がされておりまして、結論的には骨折予防が認められた。すなわち、このビタミンDを投与した群が、投与されない群と比べまして骨折発生率の低下が認められた、すなわち、骨折予防の効果が認められたという研究報告がされているところでございます。
  198. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 具体的に御指摘医薬品につきましては、今業務局長がお答えをしたとおりでございますけれども老人保健における保険者機能と申しますかのチェック機能につきましての御指摘でございます。  私どもとしましても、現在、いわゆるレセプト点検等を通じまして、あるいは、今回、健康手帳に薬の使用について書いていただくというようなことを通じまして、あるいは薬の使用についてのガイドライン等の指導を通じまして、薬を含めた適正な医療費の使われ方ということにつきましては現在の制度の中でもそれなりに努力をいたしてきております。  先生今おっしゃったこととの関係でいえば、現在、市町村のほか、一応、来ましたレセプト、それぞれの保険者にレセプトが返って、またその保険者がそのチェックをするというシステムのようになっておりますけれども、現在の制度仕組みとして、いわゆる給付について責任を持つ市町村といわば最後のツケを払う保険者とが一体でないというところからして、老人保健については、そういった払う人といわば使う人とが別であるがゆえにそこに甘い部分が出てくるのではないかという点は、非常に御指摘をいただいているところでございます。  そういった意味におきまして、この老人保健制度保険者なりあるいは保険仕組みをどういうふうにするかという、そのほかの論点ともあわせました抜本改正における一つの論点、検討事項として言えば、制度的にも検討していかなければならない部分は非常にあると思いますし、それまでの間におきましても、実際のところにおいてもっと努力をしなければならない要素もあると思いますので、今後ともそのようなことでやってまいりたいというふうに思っております。
  199. 五島正規

    ○五島委員 時間が来ましたのでこれで終わりますが、数多くの問題を持っているということで、厚生省の方も、この法案の出された内容に固執するのではなくて、もう少し柔軟に、やはり提案型の議論をするように進めていただきたいということをお願い申し上げまして、終わります。
  200. 町村信孝

    町村委員長 児玉健次君。
  201. 児玉健次

    ○児玉委員 日本共産党の児玉健次です。  ある国のある時期における国民医療がどのような状況になっているか、そのことを示す重要な一つの指標は国民平均寿命だと私は思っています。  一九四五年、太平洋戦争が終わった年、日本の男性の平均寿命は二十三・九歳でした。そして、女性は三十七・五歳でした。今考えると想像できません。なぜだろうか。もちろん戦争です。そして、極度の食糧不足、飢餓、医療の壊滅的な状況、それが男性二十三・九歳、女性三十七・五歳を生んだ。現在どうなっているか。九五年の資料、男性七十六・四歳、女性八十二・八歳、世界に誇るべき到達点だと思います。  何がこれをもたらしたか。もちろん半世紀以上にわたる平和です。何より平和です。そして、皆保険制度のもとでの医療の前進、世界でも一定のレベルに達している医療の技術水準、そして健康を守るための国民の努力、それによってもたらされたと私は確信しております。  そこで、今回の健康保険の改悪に伴う国民負担増、この負担増が現在の日本の医療状況を損なわないか、とりわけ国民の間に受診抑制、受診中断が広がりはしないか、私はそのことを懸念します。  昨日、本会議でもこのことについての議論がありました。必要な受診が抑制されるとは思わないという答えが飛び交った。そこで、私は言いたい。必要な受診であるか、不必要な受診であるか、だれがこれを判断するのですか。だれが判断するのか。  この点で、皆さん御存じだと思うけれども、少し古い時期ですが、一九八二年三月二十七日の予算委員会に、岩手県の沢内村の増田進先生が参考人としておいでになった。この時期までにもう十九年、院長をされ、そして重要なのは、沢内村の保健課長も兼任されていた。この方が今の問題について、患者の気持ちからこうおっしゃっている。患者が診療所に行く。「早く行けば何で来たと言われますし、遅けりゃ手おくれだと言われます。ちょうどいい時期がわかるのはこれは医者でございます」。僕はそう思う。必要な受診か不必要な受診か、これを判断できるのは医師です。そして、増田先生は続けてこう言うのです。「私が思いますのには、患者というのはもう医者と絶えず自由に接触できるというふうな体制が必要であります。」患者にとって、医者と絶えず自由に接触できるような体制が必要であります。傾聴に値する言葉だと思う。  今度の国民負担増はこの体制を損ないはしないか、厚生省、どうです。
  202. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 今日までの、昭和、戦後当初の平均寿命と現在の平均寿命を最初出されましたが、驚くべきほどの平均寿命の延び、長生きできる社会になったもろもろの原因等の指摘、同感するところ、全く多いわけであります。  そして、今の、必要な受診の問題につきましても、確かに患者さんにしてみれば、いつが必要かどうかというのはなかなか難しいでしょう。しかし、今回の医療保険改正にあって、私は、必要な受診が抑制されるというのではなく、むしろ、今後とも全体としていいと思われる医療保険制度国民保険制度を、過重な負担なく、適切な給付負担の均衡を図りながら維持していきたいという観点から今回の改正案お願いしているわけであります。  それぞれ御意見がございます。確かに、今までの月千二十円から一回五百円、五回以上行くと二千円以上は取らないといっても、何回も行っている人に比べれば千二十円から二千円になる、過重負担ではないかという意見もありますけれども、一方では、余り若い世代負担をかけられない、自分たちもこのぐらいの負担はいいではないかという声があるのも事実であります。  私は、全体的に言って、今回の改正案というのは、今後、抜本的な改革が必要でありますけれども、その第一歩として、基本的に、国民保険制度を安定的に運営したい、国民すべてが適切な負担のもとに適切な医療給付を受けたいという観点から導入したのでありまして、立場の違い、見解の違いはあると思いますが、その点は御理解をいただきたいと思います。
  203. 児玉健次

    ○児玉委員 今回の国民負担増がどのような影響を与えるか、厚生省から資料をいただいた。平成九年度五月実施という前提のペーパーです。医療保険医療費、現行二十七兆五千五百億円、そして、改正されたら二十六兆七千億円、その差がマイナス八千五百億円ですね。これだけ、言ってみれば患者が診療所に行くことをセーブするだろうということを、既に厚生省ははっきり盛り込んでいますね。  そこで、私は言いたいのです。今回のような大きな構造的改革、その前はいつだろうか。いろいろそれは議論があるでしょう。八四年の健康保険一割負担の導入、あのときの資料、これは社会保険庁の事業年報、それに出ています。政管健保本人、被保険者千人当たり十二カ月の診療件数です。軒並み全体で八・六%、入院八・九%、そして入院外人・三%、それぞれ落ちています。  その中で私が注目するのは、最も受診が減っているのは歯科ですよ。あの歯をがりがり削られるところに、好きで行く患者がいますか。私だったら行かない。よっぽど痛くなければ、できれば一日延ばしに延ばしたい。いろいろなことが言われているけれども、過剰診療というのが、私はその言葉について全く同意しないのだけれども、そういうことが一番適していない分野で九・九%落ちているのですよ。  時間もある、金もある人は、確かにちょっとした病気で大学まで行くかもしれない、遠くまで行くかもしれない。私たちは、はしご受診を擁護する立場では絶対にありません。医療保険を本当に適正に使うということが必要だと思っている。そういうとき、この負担増が八四年のときのような状況をさらに拡大してもたらされる危険性を、私はやはり指摘しないわけにいきません。  そして、そのことについて、先ほどの増田進先生はこう言っているのですね。田舎では、脳内出血とか末期がんの患者医療費の大半を食ってしまいます、そういう患者が減ったということで、御承知のように医療費が非常に下がった。  これを予算委員会で聞いた当時の森下元晴厚生大臣、私も存じておりますが、この森下厚生大臣は何と言ったか。「医療体制はかくあるべきである、」「私どももやれば全国的にそういうような医療体系ができるのではなかろうかということも実は考えております。」厚生省医療行政は、この立場に立つべきじゃないでしょうか。
  204. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 私もかつてその沢内村の内容について勉強したことがあります。岩手県の中に沢内村があるわけでありますけれども、岩手県の中で沢内村以外、それでは同じようなものが何でできないのだろうかという疑問を持ったことがございます。やはりこれは、そこに適正な人が得られたということが非常に大きいと思います。  私どもとしては、これから高齢化社会になればなるほどプライマリーケアというのが非常に重要でありますし、そういった意味では、まさに、先ほどお話がございましたような地域医療における方向というのは非常に大切なものである、これは今も変わらないと思います。
  205. 児玉健次

    ○児玉委員 そこで、今提起されているこの国民負担増との関連で、医療保険財政をどのように民主的に再建するか、その筋道が立てばこの負担増は必要なくなります。  その点で、まず一つに絞って言いたいことは、国がなすべきことを行うことの重要性です。政管健保に限定したいのです。  御承知のように、中小企業の労働者が加入し、財政基盤が脆弱で、国が運営に対して責任を負っております。健康保険法の第七十条ノ三、そこに、「国庫ハ」、途中抜きますが、「政府ノ管掌スル健康保険事業ノ執行ニ要スル費用ノ中」「千分ノ百六十四乃至千分ノ二百ノ範囲内ニ於テ政令ヲ以テ定ムル割合ヲ乗ジテ得タル額ヲ補助ス」、一六%から二〇%を補助する、こう明記しております。現在、政管健保に対する国の補助率は何%でしょう。
  206. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 二種類ありまして、いわゆる若人といいますか、お年寄りを除いた分については一三%、それからお年寄りの分に係るものが一六・四%でございます。
  207. 児玉健次

    ○児玉委員 その問題で、厚生委員会は一九九二年の三月に、私も含めて非常に厳しい論議をいたしました。当時、政管健保は単年度の黒字が三千五百億円程度、そして積立金が、今考えると想像できませんが、一兆四千億と厚生省は述べておりました。覚えていらっしゃるでしょう。これを理由にして、単年度の黒字が三千五百億だ、法の本則で定める最低限度の補助率を一三%、今局長がおっしゃったその一三%に引き下げた。  そこで、私は聞きました。この健康保険法の本則の中に「剰余ヲ生ズルコト明トナリタルトキハ」という部分があって、加入者の保険料率を引き下げることによってその剰余を政管健保の加入者に還元するということが健康保険法の本則に明記されている、なぜそれをしなかったのか、こういうふうにも聞いた。三月十日の委員会で、万が一にも赤字になることはないと当時の山下厚生大臣や黒木局長は懸命に議論をされて、そしてこの引き下げを行おうとされた。そのとき、山下大臣、黒木局長は答弁で何と言ったか。「万一財政状況が悪化した場合の措置については、その事態に応じまして、必要に応じまして国庫補助の復元について検討させていただく、」こういうふうに明言された。  今、厚生省からいただいた資料によれば、政管健保赤字平成九年度推計八千三百十億、去年平成八年見込み四千九百六十九億、悔しいけれども見事な赤字ですね。そういうとき、この健康保険法の本則ではない、今言った厚生委員会の審議の結果つくられた附則の第六条、平成四年三月三十一日法律第七号第六条は何と言っているか。「政府は、この法律の施行後、政府の管掌する健康保険事業の中期的財政運営状況等を勘案し、必要があると認めるときは、新健保法附則第十二条の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」と明記しているではありませんか。これだけ赤字が出てきた、これは判断の問題ではなくて事実の問題なんだから、所要の措置を講じてはどうですか。
  208. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 今先生の御指摘の健保法の改正の時点、経済状況がかなり現在とは異にするわけでありますが、当時の状況からしますと、政管健保、一兆円以上の剰余金が出ておりました。そういった中で、医療保険は短期保険ということでありましたけれども経済の変動というものを想定した場合にある程度中期的な財政の運営を図ることが望ましいということで、その法律改正の際も中期財政運営という形を導入させていただいたわけでございます。それができたのは、まさに積立金が一兆円以上に及ぶ剰余金を生んでおったということでありまして、それをいわゆる事業運営安定資金という形で、収入が落ちたときにはそれを使い、そしてまた景気が回復したときにはそこに積み立てておく、こういうふうなことだったわけでありますが、その後、バブルの崩壊等を初めとして大変な不況が長期間続いた、当時予測し得なかった財政が続いたということが今日の大きな逆調を来しているということだと思います。  それで、その際に、当時引き下げた国庫補助をもとに戻すべきである、これも確かに一つの御意見だというふうに私は思います。ただ、現在の状況というのは、医療保険だけではなく、国家財政そのものも大変な厳しい状況になっておる。そういった中で、これからはまさにその財政構造の改革あるいは社会保障制度構造改革ということが叫ばれておるわけでありまして、アプリオリに国庫補助を引き上げていくというようなことはなかなか現下の状況の中では難しい、私どもはそのように考えております。
  209. 児玉健次

    ○児玉委員 アプリオリにというのは懐かしい言葉を聞きましたが、この議論をするとき、私が言った、国がなすべきことを行うことの重要性、政管健保の加入者にとって、今の局長の答えで納得するかどうか。  だって、これも厚生省からいただいた資料だけれども、今度の制度の実施による国庫負担への影響を見てみると、政府管掌健保についていえば三角印の八百七十億円ですね。八百七十億円、自分は身軽になっておいて、そして政管健保の組合員に対しては本人一割から二割、そして保険料率も先ほど議論があったように引き上げる、こういうのを私は逆さだと言うのです。  財政状況云々というのは当時議論しました。そのとき、山下さんも黒木局長も、五年間というスパンを設ければ、この判断に狂いはない、それで、「万一」という言葉まで使いつつ、先ほどの、「国庫補助の復元について検討させていただく、」と述べているわけですから、そこのところをきちっとやって、まずこの健康保険財政の赤字の一部について言えば、一定の見通しを持つ。もちろん、国保、組合健保などの国の補助をもとに戻せという主張を私はいたします。  一気にとは言いません。今の国の財政のことを考えれば、計画的、段階的に進めていく。きのうも小泉厚生大臣は、大蔵省がまだ政管に入れていない部分について厳しく要求していくとおっしゃった。当然のことです。そういう中で計画的、段階的に、あらゆる浪費の部分についてメスを入れながらなすべきことをなす。局長、どうです。そうすることが今求められていませんか。
  210. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 まさに御指摘のようなお考えも当然あるわけでありますけれども、やはり全体の国家の財政状況、それからまたもう一方の医療保険制度の財政状況、そういったものを考えた場合に、そのまさに構造的な改革というものを進めていかなければならないということだろうと思うわけであります。  そういった意味で、私どもとしては、今回の医療保険改革というのは、これは当面の財政の安定というのをまず図る、それと同時に構造的な改革というものを進めていく、そういった中で、国家財源をすべてつぎ込んでいくべきなのか、あるいは保険制度の中において保険料で制度運営というものをきちっとしていくべきなのか、そういった問題について総合的に検討していく、そのことが今回の制度改革のやはり本質的なところだろうというふうに思っております。  そういった意味で、今まさに赤字が出ているからそこを国庫で埋めていくというのは、これはむしろ全体の保険制度の中で、国庫なり保険料なり患者負担なり、そういったもののあるべき姿というものをきちっと踏まえた上で今後考えていかなければならないのではないか。それは、これまでの我が国経済成長を許していた環境とこれからの状況というのは相当大きく変わってくるわけですから、そういったものも展望しながらやはり考えていくべきだろう、このように考えておるところでございます。
  211. 児玉健次

    ○児玉委員 これは課題として提起をしておきましょう。この後、議論しましょう。  ただ、厚生省皆さんに、ここのところは誤解しないでほしいけれども、今私が述べたことは児玉議員の意見ではありませんよ。この健保法の附則第六条自身が法として求めていることなんだから、そのことに対する責任がどうかということが問われているのです。私は、そこのところを課題として一つ提起をしておきます。  次に、医療保険財政の赤字をどうやって直していくか。  けさからの議論でも、きのうの本会議質問でも、ほとんどすべての議員は薬価のことにお触れになりました。私は、当然のことだと思う。私たちも、この一月二十三日の本会議から、そして二月四日の予算委員会総括質問、私自身も加わって小泉厚生大臣と詰めた議論をしました。きょう私は、薬価一般について議論することは、時間の関係で後に回しましょう。  今、この薬価の問題で、日本のメーカーがどういう状況にあるか。和光経済研究所の研究レポートの中に、九六年三月期、一部上場の企業に限定して売上経常利益率を計算したところ、製造業は四・一二%、ところが製薬メーカーは一四・四五%です。実に三・五倍も、この長く続く不況の中で驚くべき利益を上げていますね。  それが何によってもたらされたかといえば、その多くは新薬です。先ほど薬の名前が出たから、私も一つだけ紹介しましょう。アレルギー疾患の新薬、トリルダンT60、売り上げ百九十億円、九四年度です。これは、日本とイギリスの価格を比較すれば、実に日本はイギリスの十一倍です。そういったものがこの一四・四五%という利益をもたらしている。  そこで、「医療白書」一九九六年版、厚生省の元幹部のお名前が随分この幹部のリストの中には出てくる医療経済研究機構、一九九六年版「医療白書」、これを拝見していて驚いたことがあります。それは何か。一九八〇年から九一年までの十二年間、厚生省はどのくらいの種類新薬を承認したか、百九十八件となっていますね。新薬の開発力がすぐれていると世界で定評のあるアメリカが百一件です。アメリカが百一件で、日本は百九十八件です。そして、ドイツは五十一件です。ドイツの約四倍です。  そこから直接的に、薬価一般は大いに議論をしたいけれども新薬シフトの問題についてのアプローチの道が出てくるのです。国民生活白書も紹介している、新薬の日本における異常な率の高さ、ドイツが一割であるのに対して日本は五割を占めている。その五割を占める新薬ドイツ並みに一割まで抑えていけば、これは浜先生の詳細な御著書がありますけれども、明らかに二兆円ないし三兆円の財源が生まれてくる数字の計算もあります。御批判があれば、またこの後議論をしたいと思います。  そこで、私が言いたいのは、アメリカの二倍に及び、世界全体の新薬、この間四百六十三点ですから、その中で日本だけで百九十八点、世界新薬全体の約四割を日本で新薬だと称して薬価を計算している。だれがこれを承認したのか、厚生省じゃありませんか。だれがこの価格で計算したのか、厚生省じゃありませんか。まずそこから手をつけるべきじゃないですか。どうです。
  212. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 予算委員会から、いろいろな議論、各委員からも各政党からも出てまいりました。私は、これからの抜本改革、特に薬価基準見直しについては、今言った御指摘、御批判も踏まえて、大して効き目も変わらないのに新薬に移行していく、先ほどの議論もありましたが、そういうことのないようにいい改革ができないかなと。市場取引実勢価格に合わせていくというようなドイツの、いろいろな方法もあります。各国の制度を参考にしながら、抜本的な薬価基準見直しに取り組んでいきたいと思います。
  213. 児玉健次

    ○児玉委員 抜本的、大賛成ですね。  それでは、その抜本的というときに、それが国民の立場から見て医療保険財政の赤字をなくしていくのに寄与するかどうかの視点が、一つは原価の透明化だと思いますね。これも予算委員会で十分議論をいたしました。もちろん、中には新薬というに値する新薬があるでしょう。そういう場合は、開発費、研究費なども含めてこれが透明化されていく、そこのところが基礎として押さえられなかったら、医療会計の赤字の削減にはつながっていきませんね。その点を皆さんが踏み切る意思があるかどうか。  既にこれまでの論議の中で、幾つかの審議会のメンバーが固定化している問題、そして会議録が公開されていない問題、流通過程の問題などについて皆さんはある決意を表明されています。それはそのとおり進めていただきたい。  しかし、何より肝心な点は、世界新薬の点数の四割を占める日本のこの状況を直ちに改める、そして開発費を含む原価を透明にしていく、そこではないかと思うのですけれども、いかがです。
  214. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 現在の薬価算定のルール、これは中医協の中で決めておるわけでありますが、一つには、類似薬効にのっとって決めるという考え方、もう一つは、類似のものがない場合には原価を積み上げて決める、これを原則的にやっておるわけであります。このルールはもう当然のことながら公表されております。  問題は、個別個別の薬の値段について、これは必ずしも従来公表されていないわけでありまして、私どもは、やはりこれについても、薬の透明化を図るという観点から公表の方向に行くべきであるというふうに考えております。ただ、問題は、原価といった場合に、当然、医療機関における、企業内におけるいろいろな資料、情報を聴取するわけでありますから、そういったものとの関係がやはりございます。  ただ、そもそも、現在の、類似薬効なりあるいは原価を積み上げて計算するこのやり方そのものが果たしていいのかどうか、私は、むしろそういう時期に来ているのだろうというふうに思います。先ほど御指摘ありましたように、我が国は非常にたくさんの新薬が毎年認可されておる。これはむしろ、いわゆる新薬シフトに見られますよう に、そういうような形で各メーカーも泳いでいかないと、なかなか企業としての採算性というものが成り立っていかないという面もあろうかと思います。その辺のところがある意味では裏腹の関係になっているというふうにも思いますし、そういうふうに考えますと、現在の、公定価格を定めておる、しかもこれが非常に不透明であると言われている、このやり方そのものをやはり根本的に改めていく、これが今後の方向ではないか、このように考えております。
  215. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 先生お話しの新薬の承認件数でございますが、恐らくあるいは事実と存じます。  ただ、私ども、別な統計を実は見ておりまして、ここ五年平均で、日本で承認した成分数、これは五年平均で三十五でございまして、米国は三十六、ドイツ四十二といったことで、大体欧米並みかなという印象を持っておったところでございまして、この統計と先生指摘の統計との比較もぜひさせていただきたいと思っております。  いずれにいたしましても、いわゆるゾロ新につきましては、平成八年から薬価の算定方式の見直しがされまして、また私ども、薬事法改正で、治験につきましては、被験者に対するインフォームド・コンセントを求めるということで、いわばゾロ新的な開発ができる環境は極めて厳しくなっております。したがって、そういったものの開発の減少ということは十分見込まれるだろうというふうに考えているところでございます。
  216. 児玉健次

    ○児玉委員 時間ですから終わりますが、何しろ、国民医療費二十七兆円、その中で薬が八兆、この前私が取り上げた医療機器、画像診断料が約四兆、その部分の浪費構造にメスを入れれば、今度の国民負担増は撤回することが可能ですね。その道を選ぼうではありませんか。  終わります。
  217. 町村信孝

    町村委員長 中川智子さん。
  218. 中川智子

    ○中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。  きょうは、大臣に、入り口のところの議論でいろいろと伺いたいことがございまして、ぜひともよろしくお願いいたします。  今回、特に老人医療費のところで、いわゆる市民生活を営んでいる私の近所のたくさんの人の話を聞いたり、その生活ぶりを見たときに、今までは、同居している老人の場合は、月に一回千二十円をお嫁さんからもらって、そしてそれにバス代とか、そのぐらいのお金を、大体千五百円ぐらいもらって病院に行けばよかった。でも、これからは、そのたびにお金をもらい、また、薬代が一剤十五円となると、その日に幾ら払うかわからない。そのような不安の中で、本当に病院に行く回数を減らすしかないんだねという声がたくさん聞こえできます。  月に千二十円プラス交通費が、行くたびに肩身の狭い思いをしてお金をもらっていく、そのようなお年寄り、高齢者の気持ちに対して、大臣のお考えといいますか、思いをちょっと聞かせてください。
  219. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 私は、千二十円から一回五百円、四回までが限度というのが過重負担か、自分の健康状態を考えてその医療サービスを受けるのがそれほど過重負担かというと、必ずしもそうでないのではないか。そして、低所得者に対しても配慮があります。  私は、そのような状況で、できれば、財源が豊かだったらば、それは、負担は低い方がいい。しかし、給付を受ける側が、一体その給付をだれが支えているのかということを考えた場合、月千二十円を一回五百円にして二千円までとするのは、それほど過重な負担だとは思えないのです。
  220. 中川智子

    ○中川(智)委員 私たちはまだ若いと言われるいわゆる中年層ですが、私たちベビーブーマーが高齢化社会を迎えるときに、さまざまなことで財政が全くパンクするかもしれないということの中での一つの歩みだとは思うのですけれども、私ども世代の人たちに、このたびの健保法の改正のことでいろいろな意見を聞きましたらば、今私たちは一生懸命働けるからそこの中で負担をして、年をとった後、安心して、体にがたが来るのが当たり前、生まれたときからずっと使っている機能が弱っていくのは当たり前で、そのときに、ああ、今まで払ったお金が年をとったらこうやって役立つと。  この間、大臣は、介護保険のところで、やはりお互いに助け合っていくというところでこの社会は成り立っているし、国民の良識がそれを支えているとおっしゃいましたが、若い人たちに、それほど不満があるのでしょうか。七十歳以上のお年寄りの人たちにこのような形で負担増をさせるほど、若い私たちの世代というのは不満を持っているのでしょうか。そのあたりのデータとか、そういうのをきっちり、国民世論をしっかりとっかんだ上の今回の改正なのか。  そのあたり、データとかそのようなことは結構ですので、大臣の感触として、本当に若い人の負担増というのがそれほど怒りになっているでしょうか。
  221. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 私は、若い人にもさまざまな考えがあると思いますが、今、それでは、今の高齢者の負担をそのままにして、増税、いいかという声はないと思います。では、社会保険負担、引き上げていいか、それもないと思います。では、赤字国債を発行してまた若い世代にツケを回せ、これもいかぬという声があります。そういう中での選択であります。御理解いただきたいと思います。
  222. 中川智子

    ○中川(智)委員 このたびの老人医療のところでは、むやみとお年寄りが病院に行くと、病院がサロン化している、また、もらった薬を捨てている人がいる、薬などが過剰に与えられて帰りのごみ箱の中に捨てる人もいる、それに対して、非常にもったいないとか、そういうふうなさまざまな声が聞こえてきましたが、私はやはり、今、お年寄りが身近に集まる場所もない。喫茶店に行ってしゃべるとかそのような形での、自由な発想といったらおかしいですけれども、お年寄りが病院に行く現実というのは、そのようなお年寄りのくつろげる場所が今は本当に病院なんですね。病院の待合所などでみんなおしゃべりして、そこで友達ができたり、そのようなところのことをお考えになったことはございますか、年寄りが病院に行くのをやめさせようみたいな意図が見え見えなんですけれども
  223. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 この病院のサロン化を何とか防ごうではないかということで、今皆さんが苦労しているのではないでしょうか。それは、地域の老人の生き方と、病院をサロン化しようというのとは全く別の問題だと私は思うのであります。
  224. 中川智子

    ○中川(智)委員 今のはちょっと発言に誤解があったと思うのですけれども、さまざまな縦の関係の中で、いろいろなそういうシステムが整ったときに、単にお年寄りが安易に病院に行ってということではなくて、本当に老人が今の社会の中で大事にされていない。子供たちが大事にされていないというところでやはり少子化に全然歯どめがかからなくて、子供を産みたくても産めない現実が一つある。そしてまた、お年寄りが大切にされていない現状の中で、お年寄りが行く場所が、そういうふうな病院の待合室のところで友達をつくったりおしゃべりしたりする。そのような矛盾に対して大臣はどのように考えていらっしゃるか、ちょっと伺いたかったのです。
  225. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 病院のサロン化を肯定したら、私は、医療改革はなし得ないのではないか。この病院のサロン化ということによって、それでは真に必要な医療行為ができなくなるという批判がまた多いのも事実であります。そして、診てもらわなくても病院に行こうということから、むだな医療があるのではないかという批判が起こっているのです。病院に行かなくてもいい人がなぜ病院に行くのか、これもやはり考えなければいけない問題ではないでしょうか。
  226. 中川智子

    ○中川(智)委員 病院がサロン化されていることを肯定しているわけではないのです。そのような形で、近所のそういうふうな病院にしか、しかという言葉はおかしいのですけれども、病院に行ってしまうような、地域のさまざまなお年寄りたちが集まる場所が非常に少ない。そしてまた、病気ではないのにただ単に病院に行っているということではなくて、やはりどこか悪いから行くのですけれども、それが、一回五百円にすれば行かなくなるのではないかという安易な発想に対しておかしいのではないかと言っているのです。
  227. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 いや、今最初の御質問は、五百円では行けないという質問だったのではないですか。千二十円だったら行けたけれども五百円にしたら行けないという質問で、私は、自分の健康を考えれば、それは五百円程度の負担はこれはお願いできないだろうかということを言ったのであって、その点と今の御質問、どうなんでしょうか。
  228. 中川智子

    ○中川(智)委員 いや、済みません。何かちょっと言いたいことが何かうまく言えなかったですね。今度、精査してきっちりと別な1精査という言葉を覚えたので一回使いたかったのです。どうも済みません。  それでは、きっちりした質問を次にいたします。  今回の改正案を見ていますと、すべて患者負担増でどうにか赤字を乗り切ろう、いわゆる緊急避難的な感じがいたします。厚生省がおっしゃるには、総合的かつ段階的な改革の第一段階として、当面の財政危機の回避を図るための改正というふうに書かれていますけれども厚生省の試算でも九九年には再び赤字に転落するというふうに予想されておりますね。この構造的な財政危機は負担増よりも、きょうの質問でも全部そこに集中していますけれども、先に抜本改革がぜひとも必要だと思うのですが、まず何から取り組むかということを、一番先にこれから取り組むというものを教えていただきたい。抜本改革のまず手始めに取り組むものをきっちりと聞かせていただきたいと思います。
  229. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 手始めに何かということよりも、先ほどお話ししましたように、薬価基準見直し一つであります。それから、診療報酬体系の見直し、出来高払い制度、包括・定額払い制度、これも一つであります。それから、医療提供体制、これの、かかりつけ医とか地域支援病院の役割分担の見方も一つであります。いろいろあります。どれを最初にやるかというのも含めて、これから抜本的改革に向けて検討を進めたいというふうに考えます。
  230. 中川智子

    ○中川(智)委員 今、やはり私どもは、ここで議論することというのは、まず国民の立場に立ってよりよい医療保険制度を確立しなければいけない、それが一番の基本だと思うのですけれども、この間、ずっと協議会で、もう二十三回以上協議してきたことはよく存じています。  でも、そこの場で、とても大きな力を持っている特定の団体、そのような方たちの意見がすごく大きく足かせになっていると私自身は思うのです。そのことに対して、このようなあいまいな表現しかできないのが残念なんですけれども、本当に国民の立場に立って……(発言する者あり)ええ、そうです。その医師会との関係、はっきり聞かせてください。大臣にも後をお願いします。
  231. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 この抜本的な改革、私も役所に入ってから三十年、やはり当時から抜本改革ということは言われていました。ついにここまで来たわけでありまして、ここまで来たというのはあれですが、要するに、もう待ったが許されない、もう新しい時代、新しく時代は変わっていく、そういうところに来たと思うのです。  そういった中で、長年の制度でありますから、それぞれ制度の中で、医療機関も、それからまた保険料を負担している国民サイドにおいても、現行の仕組みの中でいろいろな利害なりというものが当然伴います。しかし、そういったものを国民的な議論の中で一致点を見出して新しいものをつくっていくということだろうと思います。  そういった意味では、まさに今後の抜本改革、具体的な案というものを国民に明らかにし、幅広く議論を結集して、そして選択をしていただくような、そういう手法なり、この辺のところは非常に重要だと思います。それから、当然のことながら、国会の先生方の御理解、そしてまた、それをぜひともやっていかなければならないという強い御意向なり意思というものが、これがやはり大事だろうと思います。  やはり国民保険というものを今後とも維持していく、そのためには何としてもこれはなし遂げなければいけない、そういった中でよりよい医療制度というものをつくっていくわけですから、関係者の理解というものは私は得られるものであるというふうに思っております。
  232. 中川智子

    ○中川(智)委員 その特定の団体との、大臣はどうですか、とてもつらいですかしらね。ちょっと聞かせてください。
  233. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 私は、医療改革考える場合に、現場の声は聞かなければいかぬと思います。医師だろうが看護婦さんだろうが、あるいは薬剤師さんだろうが、現場の声はよく聞く。しかし、最終的に国民全体のためにどれがいいか、単に医師会だけの利害を考えるということは私のとる立場じゃない。当然、あらゆる利害関係者からは意見を聞きますけれども、どれがいいかということで、今までの、どの政党を支持しているか、支持していないか、そんなのには関係なく、どれが一番国民のためにいいか、そして国会議員、国民が納得を得る案になるか、その一点に絞って私は改革案をつくってみたいな、その意欲に燃えております。
  234. 中川智子

    ○中川(智)委員 もう今の言葉は、それじゃ徹底して皆さんに納得していただいてください。そうでないと本当に不安ですし、今回の改正は、一人一人の命がかかっている、このような大切な法案だと私は思っております。特定の団体に対してきっちりと胸を張って、嫌なときはノーと言う勇気を持っていただきたい、そのような大臣でいらっしゃることをとても私はうれしく思います。  それでは最後にもう一つ国民意見を広く聞くべきと今おっしゃいました。当然、地方公聴会、さまざまな現場の人の声、市民の声を聞くべきだと思います。これに対しては十分に時間をかけて審議する御決意があるのかどうか、最後に大臣に伺って終わります。
  235. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 十分時間をかけて理解を求める努力をしていきたいと思います。
  236. 中川智子

    ○中川(智)委員 ありがとうございました。もう結構です。
  237. 町村信孝

    町村委員長 土肥隆一君。
  238. 土肥隆一

    ○土肥委員 土肥隆一でございます。  あと十分ですから御辛抱いただきたいと思います。  私も二十七兆円の日本の医療財政についてこうあるべきだということは言いたいのですけれども、何しろ一番最後で十分しかありませんので、一点突破できょうはやらせていただきたいと思います。  今、医療界で一番重荷を持っている精神病の患者さんのことです。日本の医療で一番おくれている医療、これが精神病だと思います。  初めにちょっとお聞きしたいのですけれども、今、日本に精神病の患者さんは何人いらして、精神病院に何人入院していらして、そして、精神病患者さんの社会復帰施設と呼ばれる施設が何カ所、そして何人そこにおられるか、最新のデータをお知らせください。
  239. 篠崎英夫

    ○篠崎説明員 精神病の患者数でございますが、平成五年の厚生省患者調査によりますと約百五十七万人でございます。それから、精神病院の入院患者数でございますが、平成八年の厚生省病院報告速報版によりますと約三十四万人でございます。それから、社会復帰施設の数でございますが、平成七年の社会福祉施設調査によりますと約二百三十カ所、そこに入所されております精神障害者の数といいますと、同じく平成七年の社会福祉施設調査によりますと約三千三百人ということでございます。
  240. 土肥隆一

    ○土肥委員 患者さんが百五十七万人いる。そして、うち病院に三十四万人いらっしゃる。そうすると、残る百二十三万人はいわば社会に住んでおられるわけです。精神病という病を持ちながら社会で生きていらっしゃる。もちろん、三千三百人の社会復帰施設に住んでいらっしゃる方もいらっしゃいます。  さて、こうした精神病の患者さんの医療的あるいは社会的なバックアップ体制をどうするかということが最大の課題であるわけでありますけれども、そうした中で、今、精神保健福祉士という資格認定制度厚生省が作業を進めておられると聞いておりますが、本当でしょうか。
  241. 篠崎英夫

    ○篠崎説明員 厚生省におきましては、今先生指摘の、精神障害者の社会復帰を担う人材の国家資格化に向けまして、鋭意検討を進めているところでございます。
  242. 土肥隆一

    ○土肥委員 国家資格を精神保健福祉士という名前で与えようということです。要するに、精神病院等で働いていらっしゃるソーシャルワーカーの皆さんに国家資格を与えようというわけでございます。  これは、私も国会に参りまして以来、十年来、私はまだ八年ですけれども、十年来、この福祉の分野、特に社会福祉士、あるいは医療社会福祉士、あるいは精神社会福祉士、あるいはソーシャルワーカー協会でありますとか、看護協会でありますとか、医師会でありますとか、精神病院協会でありますとか、さまざまな団体が、この精神関係のソーシャルワーカーの資格認定についていろいろな御意見がございましたが、今申し上げました団体のすべては、現時点で、この新しい精神保健福祉士法の制定に賛成をしているのでしょうか、お尋ねいたします。
  243. 篠崎英夫

    ○篠崎説明員 一昨年から、今先生指摘のような関係の団体に入っていただいて検討会を進めておりまして、私どもの理解では、ほぼ各団体について合意が得られつつあるものというふうに考えております。
  244. 土肥隆一

    ○土肥委員 合意が得られつつあるということですが、公式に合意を得たのでしょうか。
  245. 篠崎英夫

    ○篠崎説明員 公式といいますと、それぞれの検討会に各関係団体から代表者の方に入っていただいておりまして、その方たちとのすり合わせ、それから、それぞれの団体で機関決定をしていただいているところもありますし、まだ機関決定はしていないけれども、幹部の方たちの了解を得られているというようなものもございます。
  246. 土肥隆一

    ○土肥委員 そうすると、今法案を出しますと、問題になる団体、協会がございますか。
  247. 篠崎英夫

    ○篠崎説明員 現在も鋭意、関係団体との意見の調整を進めておるところでございまして、幾つかの関係団体ではまだ調整中というところもあろうかと思います。
  248. 土肥隆一

    ○土肥委員 これらの調整がつかなくても出発なさるのでしょうか、どうでしょうか。
  249. 篠崎英夫

    ○篠崎説明員 国家資格化に向けましては、関係団体の合意といいますか御理解というのは非常に大事でございますので、私どももそういう調整がつき次第というふうに考えております。
  250. 土肥隆一

    ○土肥委員 私は、国家資格をそのPSWにお与えになることは結構だと思います。だけれども、これからこの日本の精神病の世界、精神病の患者さんたち、しかも百万人を超える皆さんが社会にいて、一体、特定の精神保健福祉士というものをつくって、その人たちが在宅の、社会にくまなくいらっしゃる皆さんにどんな手が差し伸べられるのか。こういう特定の資格をつくることによって、特定の人しかかかわれないような対応にならないだろうか。  精神病の患者さんはPSWしかだめですよというような世論を生み出したら、到底これは一万人や二万人では済まない話でありまして、しかも、PSWの人たちが資格を取ったとしても、やはり病院に勤務して賃金を得るわけでありまして、一般社会に出て何かやってくださいといったって、これは名称独占だけであって業務をやるわけじゃありませんから、そこには生きてこないのじゃないか。むしろ、介護保険も導入される、今後もこの社会福祉士、あるいはこのPSWを入れてもいいですよ、あらゆる福祉分野におる人たちが相互に交流して、そして、必要なところに必要な人が行かれるような非常に柔軟な制度にしておくべきだというふうに私は思うのであります。  そこで、PSWの人たちが仮に取得したときに、どういう分野で仕事をなさるのですか。
  251. 篠崎英夫

    ○篠崎説明員 日本PSW協会というのがございますが、そこの調べによりますと、精神病院で現に働いておられるPSWと言われる方々は約二千四百名おられます。それから、保健所ですとか精神保健福祉センターなどで現にPSWの仕事をされておられる方が二千三百人おられます。それから、社会復帰施設が二百人以上で、約五千人ということでございます。  精神病院の中におけるPSWの役割というのは、精神障害者を一日も早く社会復帰させるというのが主な仕事でございますが、全国に八百四十五カ所あります保健所におきましても精神保健相談というのを業務として掲げておりまして、精神保健の第一線機関として、保健所で今申し上げました約二千三百人の方々が働いておるという現況でございます。
  252. 土肥隆一

    ○土肥委員 仮に五千人としても、百三十万人からのお世話をすることは到底不可能でありますし、今おっしゃったのは、精神病院で働いて賃金を得る、行政の精神保健相談員をして賃金を得る。だけれども、独自に社会復帰施設を民間でつくりましたからPSWさん来てくださいといったって、賃金はどこも出てこないわけですね。ですから、これは、要するに特定の業種の特定の資格を与えることであって、日本の福祉全体の役には立たないと私は思います。  したがって、私は、この人たちが何をするかということをもっと議論したい。例えば、精神保健ですね。保健といったら保健婦さんだとか医療関係の業務でありまして、これは医療業務をやらないのですね。ですから、医療業務をやらないのに精神保健というようなことをつけていいのかどうかということも考えられます。  そういう意味で、私は、社会福祉士をベースにして、そして、その上に専門的な精神病の関係の訓練を受けてもらう、あるいは、医療ソーシャルワーカーであればそういう病院勤務の訓練を受けてもらうというような形で、社会福祉士がベースになるべきだというふうに思うのです。そうすれば、社会福祉士という資格を持っておれば、病院に行くときにはその特定の資格をもう一遍受ければいい。  ところが、このPSWの人は一たんPSWになってしまったら、もとの社会福祉士をやろうと思ったら、もう一遍、社会福祉士の試験を受けなければならない。こういうことですから、非常に硬直した関係になるわけであります。それは間違いないですね、今私が言ったこと。
  253. 篠崎英夫

    ○篠崎説明員 冒頭申し上げましたように、この資格化につきましては、一つは障害者プランでも述べられておりますが、現在の日本の精神医療をよくするためにぜひ必要な職種であるという観点から検討を進めておるところでございます。  そして、その検討を進めておりまして、先生の御指摘のような、社会福祉士とかそういう資格間の問題が出てまいります。それぞれの資格間の、それぞれといいましても、今一番国家資格になっておるのは社会福祉士でございますが、資格間の流動性等の問題につきましては、一部関係者からも御意見をいただいているところでございますが、先生の御指摘も踏まえて、福祉関係者等と鋭意調整を進めまして、調整がつき次第国会に法案を提出したい、このように考えておるところでございます。
  254. 土肥隆一

    ○土肥委員 最後にもう一問させてください。  今の社会福祉士及び介護福祉士法におきましても、第二条で、社会福祉士は何をするかというところで、「専門的知識及び技術をもつて、身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導」をする。  これにちゃんと精神障害も挙げてあるのです。それを改めて、病院にいるPSWが中心、そして行政の精神保健相談員、これも資格を認めましようというと、何か私、介護保険が導入されて、これから社会福祉士と言われる人が、社会的な生活を担っていく重要なマンパワーであるのに、そこに縦割り行政的な資格を与えるのは好ましくないのじゃないか、もう少し検討していただきたいということを申し上げて、質問を終わります。  ありがとうございました。
  255. 町村信孝

    町村委員長 次回は、来る十一日、委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十分散会