○
市吉参考人 福祉ワーカーズグループ「
とも」の代表をしております
市吉と申します。
このような場で非営利団体の試みを、
意見を述べさせていただく
機会を得ましたことをまずお礼申し上げたいと思います。
なぜワーカーズ・コレクティブで
在宅支援をやろうと考えたのかについては、もういろいろな方の話から
社会背景というのは御紹介されていますので省きたいと思いますが、私自身は、十年前にしゅうとめを、一年半寝たきりで、家庭で
介護いたしました。専業主婦が親を見ていく場合に公的援助というのが全くなかったということです。そのことから、私は、これから先の私たちの未来を考えたときに、何らかの形で
仕組みをつくっていかないと私たちの老後が悲惨になるというふうに考えました。
これまでの日本型
福祉は、
家族におんぶする、そういうのが普通だというふうに考えてきました。
現実には、それは非常に難しいことで、物理的に成立をしない
状況になっています。私たちが安心して暮らせる町づくりには、市民参加型
福祉が不可欠だと思いました。私たちに今できることを、今やれる
人たちがやれるスタイルで参加して、私たちが望ましいと考えていることを実際やってみる、そして超
高齢社会に備えたいと考えました。
私は、グリーンコープ生協という生協活動の中で獲得してきた日々の助け合いを生かして、
地域で
ともに支え合う参加型
福祉のあり方をつくっていきたい、共助の
仕組みをつくり出したいと考えました。そして、それを継続していくために、ボランティアではなく、協同互助、相互連帯で利用者の
立場で考え、納得できる
負担で、営利を目的とせず仕事化し、継続化して
支援をやっていきたいというふうに考えて
実践しています。
私たちのこれまでの家庭
生活での能力や
生活技術を
世代を超えて役立てていきたいということで、パンフレットにもありますように「赤ちゃんからおとしよりまで」、
ともに生きていく時代をつくっていきたいと考えました。家事や育児、
介護、これまでアンペイドワークとして
評価を得なかったことを仕事化したいというふうに考えました。
働き方も、だれかに指示や命令されて雇用された関係で働くのではなく、営利を目的とせず、自主
運営、自主管理で新しい働き方をつくり出したいというふうに試みています。
だれかにしてもらうのではなく、広く薄くだれもが参加し、みずから支えていく
福祉が今後必要ではないかというふうに思っています。もちろん、公助が要らないというわけではありません。公助があって自助があって、そして共助の
仕組みが必要だということです。
福祉ワーカーズグループ「
とも」の
実践から、
資料も使いながら説明を少ししていきたいと思います。
私が
実践してみて、今一番考えていることは、
行政の公的
サービス、そういう
立場の方の御
発言も続きましたが、どのように違いがあるかというのを御紹介したいと思います。
まず、私たちの
支援には、赤ちゃんから
高齢者まで、年齢制限、利用回数の制限がないということです。
公的
介護の
ヘルパーというのは、例えば家事
支援ということで設定された週二回は家事
支援しかいたしません。それから、
介護というふうに決められて入られた
ヘルパーは
介護しかやれないという
仕組みになっています。こういう分野は縦割りになっています。それから、ほとんどの方がこういう
状況に陥るのですが、昼間独居
老人、三
世代同居であるけれども共稼ぎである、昼間は
高齢者のみになるという家庭は、現在では
福祉サービスの対象外です。共稼ぎで
高齢者を見ている家庭は、ほとんど現在の
福祉サービスは対象にならないというのが
現実です。
私たちは、そのあたりを、親を見ながら頑張っている、働いている
人たちを
支援していきたいというふうに考えました。現在、公的にはそれらの
サービスはほとんど、
食事サービスとかいうのも対象外になっていて、利用できておりません。
福祉サービスが現在どういうふうにあるかというと、それはそれなりにはあるのですが、ほとんど縦割りということです。そして、申請をしまして早くて三週間、大体一カ月後に
ヘルパー派遣というのは始まります。
施設に入ったくても順番待ちで、亡くなるのを待っているというのが
現実です。あすからお願いしたい、倒れてどうしようもないというようなところにほとんど公的
サービスは役立たないと言い切ってもいいのではないかと思います。
私たちのところでは、電話で相談がありましたら、
状況を判断した上で即
支援態勢に入ります。例えば、きょう電話があって、あしたからお願いしたいというのにこたえているということです。
そして、
介護支援センターが私たちの
支援を求めてこられるケースが非常にふえております。全介抱が必要な方というのは、本来は二十四時間必要だと思うのですが、公的な
サービスは、日曜祭日はお休みになります。私たちは、日曜祭日に非常に
需要が高いという
現実を持っています。今度の五月の連休はどうやって頼まれている
内容をこなしていこうかというぐらいに
需要が高まります。そういうふうに、公的なところはお休みが労働条件というあたりから当然あるわけですが、私どもにはそこが、すき間を埋めていく共助の
仕組みとしては問われているような気がします。
まして、もう
一つの、出生率が非常に減っているというあたりでは、ほとんど今は、公的な
サービスというのは保育所があるだけで、子育て
支援をしておりません。私たちは、出産後の
ケアというのも毎月必ず二件ほど、継続して子育て
支援で産後のお手伝いをしております。
行政の
福祉サービスとの違いは、最も違うと思っているところは、
行政は、今の暮らしができない人を助けるのであって、私たちは、いかに今の
生活の質を
向上させるかというところで
ケアプランを立てているというところが違います。
現在、私たちのメンバーは、私のグループでは二十六名でやっております。これまで提供した
サービスの
内容というのは
資料の二枚目につけていますが、具体的にどういうものをやっているかというと、家事
支援の単純なのは割に少ないです。
介護というのが非常に
需要としては多いのですが、
介護も今の
行政の
サービスの
メニューでは週に何回というふうに制限されますので、その公的
サービスの合間に私どもが
ケアに入るという
状況になっております。具体的な例については、具体的に、現在三月時点で
サービスをしておりますのを別紙
資料でつけておりますので、ごらんいただきたいと思います。
特質的なところでいうと、年齢制限というのは私たちの
支援にはありませんので、五十代で倒れた方とかいうのは今の
高齢者福祉の対象外になりますので、そのあたりの
支援とかいうのが非常に困っていらっしゃる
現実があります。そういう
状況で
支援をしております。
事業実績としては、
資料の一番上につけておりますが、「
とも」の設立から、六月二十二日に設立して十カ月足らずで、現在二千四百九十二時間
支援をしているということです。
ケア内容については、家事
サービスが十九件、
介護サービスが二十三件、家事と
介護の混入が二十四件、託児
関連が七件、産前産後が十六件、その他が七件ということで現在やっております。
そういうやり方の中で利用者の方からはどのように
評価されているかというと、一人一人の利用者の
状況や希望に沿った形で、自立や意欲を大切にしながら柔軟な
サービスを提供できているということで、非常に
評価を受けております。
ワーカーとして働いている者は、ワーカーになってよかった。人間的な生き方と労働が一致している、たくさんの人との出会いの中で自分たち自身も高められている、育っている。
地域住民として、住んでいる町を住みたい町にしていく町づくりに参加しているというのが実感できる。シャドーワークの再
評価ということで、命にかかわる分野で仕事をしている。家庭内でどれほど頑張っても一円の
評価にもなりませんでしたが、今私たちは、一時間七百円、九百円、時間外で一時間千五十円、千三百五十円と二通りの値段で引き受けております。育児、
介護、家事というのを責任を持ってやるということは非常に大変ですけれども、やりがいのある仕事だというふうに思っています。
民間非営利団体の市民参加型
福祉の経済比較というのは、別表五枚目につけております。これは後で十分見ていただければいいと思います。ワーカーズ連絡会という、現在十六団体、グリーンコープ生協
関連のワーカーズ・コレクティブについての数字もつけております。それも後ほど見ていただいたらと思います。
自主
運営・自主管理で私たちの望む暮らしを
地域で継続できるように
支援する、そのためには、非営利で、運動に近い事業体としてやっていくことがとても必要だと思います。
福祉サービスを利用者の
立場でどう組み立てていくかというのがとても大事だと思います。
グリーンコープの
実践でいいますと、十六グループ、現在、三月時点でありますが、四百九人のメンバーが、総
ケア時間二万四千二百三十八時間、今年度においては
支援をしております。家事
支援が主になっています。
「
とも」では、実績を積み上げて、
行政の委託事業を引き受けたいというふうに考えています。
参加型
福祉の拠点づくりでは、できればミニ・
デイサービスをやりたい、そしてグループホームにつないでいきたいというふうに考えて、私どもでも、家を使っていいという場所を提供してくださる方がやっと見つかったという
状況です。
公的
介護保険の対象にぜひなりたい。厚生省の試案に担い手としてワーカーズ・コレクティブが文字としても初めて登場しました。これからの日本の経済は右上がりの時代はあり得ない、高度経済成長がもう望めないとすればどうしていくのかというのを考えたいというふうに思います。
保険で応分の
負担はすべきだと思っていますが、
負担に見合う具体的な計画の明示と、運用の情報公開をぜひやってほしいと思います、私たちがお金を出すのですから。
社会的入院の解消を進めるためにも、
在宅支援の確立と
福祉施設の
基盤確立が不可欠だというふうに考えます。
そして、現物の
サービス給付が原則で、お金での
現金給付は
家族介護の押しつけになるのではないかというふうに恐れています。
家族介護は
社会的入院がふえるというふうに私たちは見ています。
現実、担い切れないのに、お金を少しもらったって見れないという
現実の中では、結局、今の
老人の意識というあたりから考えても、
老人施設に入るのではなく入院したいという選択がふえて、結果的には
医療費がどんどんふえて、それが税金の
負担ということで私たちにはね返ってくるようなおそれを持っています。
サービスの
給付については、利用者の声を反映するシステムと、選択ができることというのが不可欠だと考えます。
高齢者介護・
自立支援システム研究会の提言は、そのあたりではきっちり提言されているというふうに考えます。要
介護の身でも、住みなれた家で
ひとり暮らしができる二十四時間対応の
介護サービスというのがこれからは問われていきます。車いすになっても外出できて好きな買い物ができる、そのような自立
生活を
支援する
介護というのがこれからの課題だというふうに思います。
サービス供給主体についてですが、ワーカーズ・コレクティブなどの民間非営利団体の活用をぜひ考えていただきたい。市民参加型
福祉の促進をどのように皆さんは考えていただけるかがこれからの大きな課題だというふうに思います。
ワーカーズ・コレクティブのコーディネート機能への公的
支援をぜひお願いしたい。現在、私は、こういう事業をしているのに自宅を利用しています。私の一カ月の手当というのは、非営利団体ということですので、一万円でやっています。一日ではないのです、一カ月の手当が一万円という中でこういう事業をやっているのです。皆さんの金銭感覚とは随分違うと思いますけれども。そのあたりは、やってみてなかなかに大変です。でも、これだけのことをやっているわけですから、ぜひそのあたりを活用していただきたいと思います。
要
介護認定、
ケアマネジメントについて。
公平な基準の認定、現場で一体的に迅速に、専門家だけではなく、私たちみたいな、専門家ではないけれども専門的にやっている、そういう市民参加の
制度化をぜひ
検討いただきたいと思います。これまでのワーカーズの経験と実績を活用すべきだと思います。
ケアマネジメントも、
介護サービスを自分で決定する
高齢者が
サービスに関して十分な知識を持たないことや、だんだん高齢でぼけてきたりすると自己決定が無理な場合が出てきます。それは十分考えられることです。日常的に
支援を継続している私たちが、家庭に入って見えているところで、ワーカーズの特にコーディネートをしているワーカーを、これからそういう
ケアマネジメントや認定の場に登用していただくことが、一番実用的でお金がかからず、なおかつ、大勢の方が求められるものに近い
ケアが保障できるのではないかというふうに思います。
行政の公的
福祉、
家族の自助努力を縦糸と考えたら、
福祉ワーカーズによる助け合いは横糸として、できるだけ小さな編み目をつくって編み込みながら、私たちが望む細やかな、
最後まで人権が尊重されて、生きていてよかったと言えるような参加型
地域福祉を考えていきたいというふうに思います。
以上、時間が来ましたので、残念ですけれども、もうちょっとしゃべらせていただきたかったと思います。(
拍手)