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1997-02-19 第140回国会 衆議院 厚生委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年二月十九日(水曜日)     午後三時十七分開議 出席委員   委員長 町村 信孝君    理事 佐藤 剛男君 理事 住  博司君    理事 津島 雄二君 理事 長勢 甚遠君    理事 岡田 克也君 理事 山本 孝史君    理事 五島 正規君 理事 児玉 健次君       安倍 晋三君    伊吹 文明君       江渡 聡徳君    大村 秀章君       奥山 茂彦君    嘉数 知賢君       桜井 郁三君    鈴木 俊一君       田中 和徳君    田村 憲久君       根本  匠君    能勢 和子君       桧田  仁君    松本  純君       山下 徳夫君    青山 二三君       井上 喜一君    大口 善徳君       鴨下 一郎君    坂口  力君       福島  豊君    桝屋 敬悟君       矢上 雅義君    吉田 幸弘君       米津 等史君    家西  悟君       石毛 鍈子君    枝野 幸男君       瀬古由起子君    中川 智子君       土屋 品子君    土肥 隆一君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小泉純一郎君  出席政府委員         厚生政務次官  鈴木 俊一君         厚生大臣官房長 近藤純五郎君         厚生大臣官房総         務審議官    中西 明典君         厚生大臣官房審         議官      江利川 毅君         厚生省健康政策         局長      谷  修一君         厚生省保健医療         局長      小林 秀資君         厚生省生活衛生         局長      小野 昭雄君         厚生省薬務局長 丸山 晴男君         厚生省社会・援         護局長     亀田 克彦君         厚生省老人保健         福祉局長    羽毛田信吾君         厚生省保険局長 高木 俊明君         厚生省年金局長 矢野 朝水君         社会保険庁運営         部長      真野  章君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    加々見 隆君         会計検査院事務         総局第二局厚生 中村 修三君         検査第一課長         厚生委員会調査         室長      市川  喬君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十九日  辞任         補欠選任   松本  純君     田中 和徳君 同日  辞任         補欠選任   田中 和徳君     松本  純君     ――――――――――――― 二月十七日  戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する  法律案内閣提出第三七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月十七日  臓器移植に係る国民的合意の形成に関する陳情  書  (第三二号)  国立明石病院の存続と充実整備医療従事者  の確保に関する陳情書  (第三三号)  病原性大腸菌O-157対策に係る財政措置に  関する陳情書  (第三四号)  精神障害者福祉に関する陳情書  (第三五号)  精神障害者総合医療福祉施策に関する陳情書  (第三六号)  老人福祉施設理学療法士増員に関する陳情書  (第三 七号)  公的介護保険制度早期確立に関する陳情書外  十二件  (第三八号)  ホームヘルプサービス事業充実に関する陳情  書  (第三九号)  放課後児童対策事業充実に関する陳情書外一  件  (第四〇号)  母子保健事業移管に伴う支援対策拡充に関する  陳情書  (第四一号)  患者の立場に立った医療保険制度改革等に関す  る陳情書外一件  ( 第四二号)  医療保険老人保健等改悪中止に関する陳情  書外六件  (第四三号)  国民医療国民健康保険等充実拡充に関す  る陳情書外二件  (第四四  号)  厚生省福祉汚職事件真相究明に関する陳情書  外六件  (第四五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 町村信孝

    町村委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。根本匠君。
  3. 根本匠

    根本委員 自由民主党根本匠です。  私は、大臣所信への質疑といたしまして、行革の問題、特別養護老人ホームの問題、そして医療保険改革、この三点についてお伺いしたいと思います。  まず、行革でありますが、行政改革橋本内閣の最重要課題でありまして、改革と創造を内閣基本姿勢として、行政改革を含め六つの改革を今鋭意進めております。総理火だるまになってもやるとかたい決意で臨んでおりますが、小泉大臣におかれましては、所管厚生分野はもとより、行革の小泉として国民の期待は大変大きいものがあります。  就任早々大臣は、年金福祉事業団廃止を宣言されて、事務局に指示をいたしました。所管大臣所管する特殊法人廃止するということを指示するのは前代未聞のことでありまして、私も大変高く評価しております。  行政改革は、私は二つあると思います。中央省庁再編スリム化、そして、第二の予算と言われる財投を原資とする公団事業団特殊法人、さらに公益法人改革、これが二本の柱であると思います。  本来、民にゆだねられない公共的分野を官がやる、そして、官民グレーゾーンであっても官は民の補完に徹する、これが私は行政基本あり方だと思います。ただ、近年、官の担う分野が広がっておりまして、政策という形をとって、例えば新規施策遂行手段あるいは受け皿として、公団事業団特殊法人あるいは公益法人がその役割を担うという形でその現象が拡大しております。行政改革を進めるに当たっては、中央省庁再編とともに、特殊法人公益法人について、官の役割の総点検、見直し、そして、官民役割分担の再構築が必要だと思います。  これを受けまして、小泉大臣行革理念、哲学、そして厚生省行革小泉行革の考え方、どのように取り組むのか、これをお伺いしたいと思います。
  4. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 最初から大きな問題を取り上げられまして、もう手短にお話ししたいと思いますが、行政改革、これは、去年の総選挙におきましても、どの政党も公約に掲げた課題であります。一口に言えば、国民税金を真に必要なところだけに使おうということだと思うのであります。  皆さん、役人が多過ぎる、役所がやらなくてもいいことをしているのではないかということは言うのです。それだったらば、まず役所仕事を減らすべきだ。役人仕事を減らさないで役人だけ減らしたら、これは残った役人過重労働になってしまいます。やらなくてもいいところを役人がやっている、ここにむだな税金が使われていく。官業は民業の補完に徹すべしということはもう前から言われたことでありますが、これが徹底していない。まず、民間企業民間人にできることは、全部そういう仕事民間にやってもらおう、役所は手を引いていこうという観点が大事だと私は思います。  私は、今回、就任早々厚生省所管年金福祉事業団廃止を含めて見直しを指示しました。  年金福祉事業団仕事年金保険を掛けている人のために真に役立っているのか。年金を掛けている人にとってみれば、どういうサービスを一番要求するかと考えれば、老後に給付ができるだけ多いこと、また、現役世代の掛けている人にとってみれば保険料が一番安いこと、この二つサービスをやってくれればあとは必要ないと思うのであります。  ところが、年金福祉事業団は、そのお金を大規模保養地住宅融資に回している。大規模保養地融資投資して利益が上がってくるのか。全然上がってこない。住宅融資、これは本当に厚生省役人がやる仕事なのか。民間金融機関でもやっている。住宅金融公庫でもやっている。ほかの役所でも、あるいはほかの機関でもできるのではないのか。利益が上がって有利に運用されているのならまだいい。ところが、赤字を出している。こういうことは問題ではないのかなということで、私は、年金福祉事業団廃止を含めて見直しを打ち出しました。  もともと私が行政改革財政再建必要性を言っているのは、今年度も、また来年度も、国民税金の十六兆円を超える額が何の新規政策事業に使えないこと、これは当分続く、これをどう考えるのか。今年度審議している予算、来年度審議する本予算におきましても、社会保障年金医療、社会福祉含めて約十四兆五千億円、それを上回る十六兆円の額が、何の新規政策事業に使われないで、今までの借金の利払いに回っていってしまう、償還に回っていってしまう。もし十六兆円のお金新規政策事業に使えるのだったら、どんなにいろいろな事業ができるか。これが当分続くとなると、私は、これから容易ならざる事態だなと。  そういう中で、私は、増税による財政再建というのを避けなければいかぬ、国債発行をしてこれから若い世代にツケを残すことを避けなければならないというのだったらば、これは歳出削減を徹底するしかない。となると、国債費を除いて今一番お金が行っているところは、地方交付税福祉関係予算公共事業であります。これをカットしろ、削減しろといったって限度があります。数兆円の額を福祉でカットしろ、これは恐らく大反対が出るでしょう。公共事業、十兆円弱でありますけれども、これだって、二兆、三兆削減しろといったら、これは大変な反対が出るでしょう。限度がある。となれば、行政改革せざるを得ない。  まず、増税の前に、国債発行の前に考えることが、いろいろなことがあるのではないか。となると、特殊法人とか公益法人だけでは追っつかない。特殊法人投資融資している財政投融資制度根本的に見直せ、同時に、財政投融資制度資金を提供している厚生年金国民年金、あるいは郵貯、簡保、この入り口と、中間の財政投融資制度、出口の特殊法人、これを一体的に見直して初めて本格的な行財政改革ができるのではないかという観点から、かねがね私は郵政事業民営化を主張しているわけであります。  言うならば、できるだけこれからは、まず政府関係機関民営化できるところは全部探していこう。そうすることによって株式会社化して、株式を売却すればかなりの額が出てくる。増税の前に、国債発行の前にそのことを考えるべきではないかといえば、一番金目になる、株式会社化して最も大きな株式売却益の出るところといえば、郵政事業であります。もちろん、住都公団とか日本開発銀行とかあるでしょう。しかし、一番金目になりそうな政府関係機関のものといえば郵政事業でありますから、まずそこを民営化を考えることによって財投根本制度に入る、そして特殊法人の改廃につながってくるからと言っているのでありますが、これが今なかなか理解されない。ようやく最近……。  私は、去年の暮れから、大蔵省に対しまして、厚生年金国民年金、このお金財政投融資制度資金運用部に預託されているけれども全然有利に運用してくれないじゃないかということで、自主運用を主張しております。これも財投改革につながってくるからであります。  そういうことから、話すと長くなりますからもうやめますが、ともかく、これから、ことしじゅうに、旧国鉄清算事業団債務は、株を売っても土地を売っても、二十兆円以上の債務国民負担するということが決まっています、これをどうするかというのが大変大きな問題になる。財政投融資制度から旧国鉄清算事業団投資融資しているこの債務が二十兆円、国民負担するということが十年前に決まっていますから。この債務は、本来だったらば、年金を掛けている人、郵便貯金を預けている人、簡易保険に入っている人が負担しなければならない、財政投融資制度入り口なんですから。ところが、それができないから国民負担しなさいと言っているわけでしょう。この問題を考えると、財政投融資制度の本来の目的である、有利に確実に運用しなければならないという規定が既に破られている。だからこそ財投の問題を本格的に議論しなければ、ますます国民負担はふえていく。  そういう問題から私は行財政改革必要性を言っているのであって、厚生省所管大臣としても、必要でないところはどんどん手を引いていこう、なおかつ、厚生省仕事はこれからますますやらなければならない問題がたくさん出てくる、ということならば、むしろ、やらなければならない問題とやらなくていい問題をよく精査して、本来福祉のために全省一丸となってやるべきことに真剣に振り向けていくような体制をとるべきだということで、今いろいろ知恵を絞っているところでありますので、どうか、根本議員も、よろしく御理解と御指導をいただきたいと思います。(拍手
  5. 根本匠

    根本委員 大変な拍手が出ておりますけれども、行革は、二十一世紀を目前に控えた今、私も 待ったなしの課題だと思います。しかも、これは政治の強力なリーダーシップで実現すべきだと思います。ぜひ、小泉行革に大胆に取り組んでいただいて、我々もバックアップしていきたいと思います。  次に、特養の問題に移りたいと思います。  昨年の彩グループ厚生省を巻き込んだ特養をめぐる事件、これは現行福祉仕組みを悪用した許されない行為であります。しかも、福祉への信頼を損なう、福祉の最前線でまじめに働く福祉関係者を冒涜する悪行であります。  この事件を発端に、我々自由民主党で、特養などの福祉施設制度見直しについて小委員会を設置いたしました。そして、原因究明と十の提言を行いました。これを受けて、厚生省は一月末に改善措置をまとめております。  今回の事件は、一つ施設で丸投げにより利ざやを稼ぎ、しかも次々に施設建設するメカニズムが形成されたことによって生じたものであります。発注を含め法人運営を意のままにする法人理事長、そして法人認可補助金交付施設選定を行う権限を有する行政関係者、この両者が結託することによって可能となった特異な事件であります。ただし、一方では、多額借金を重ねながら次々と施設建設により利ざやを稼ぐ方式、これはいわば特養ネズミ講だと私は思いますが、これは早晩破綻する性格のものだったわけであります。  今回の事件契機に、特養制度仕組み運用実態現状、これを総点検して、この事件の特有の問題点あるいは特養全般に共通する問題点が明らかになりました。今回の改革ポイントは、私は四つぐらいあると思います。発注システム法人運営法人認可補助金交付施設選定融資等事業審査仕組みに関する分野、これが大きなポイントだと思いますが、この委員会において、この改善策ポイントを明らかにしていただきたいと思います。
  6. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 お答えをいたします。  今回のまことに遺憾な、私ども申しわけない事件を受けまして、先生お話のございましたように、特養整備の十項目の提言というようなことを内容としました、自由民主党社会部会社会福祉施設への補助金制度等見直し小委員会からの御報告をちょうだいをいたしました。私ども、その御指摘、御提言を踏まえながら、厚生省におきましても調査委員会をかねて設けております、この調査委員会におきまして、第一次報告を去る一月三十一日にとりまとめました。  その中におきまして、全国的に実態調査を行い、制度上の問題点を明らかにする、その上に立ちまして、今先生お尋ねのございました今後の改善策ということにつきまして、一つには、先生お話のございましたように、補助金交付対象施設選定につきまして、まず補助金を出す立場における国におきまして、国庫補助対象施設を決めていく場合の協議基準といったものを明確にする、それから、協議を国とされるその段階におきます都道府県段階での選定ということにつきましても、独断専行ということになりませんように合議制による選定を行うというようなことを中心といたしまして、補助金交付対象施設決定を明確化し、また透明化をするということが一つの柱でございます。  それから、これも先生の方から御指摘のございました建設工事契約等関係でございまして、その関係につきましては、今回の反省に立ちまして、都道府県公共工事に準じた形で、従来、社会福祉法人の場合にはやや緩やかになっておりましたけれども、各都道府県公共工事に準じた形での入札等の手続に従ってもらう。それから、まさに今回の事件で端的にその悪用をして利ざやを生み出す構造となりましたいわゆる一括下請、丸投げと言われているやり方につきましては、特別養護老人ホーム整備についてはこれを禁止をするということにいたしました。それが二点目でございます。  それから三点目は、これもお話のございました、社会福祉法人ないし施設運営という面での問題でございます。この面につきましては、例えば社会福祉法人理事の半数は地域の福祉関係者に入ってもらうというようなことで、幅広い関係者を求めることによりまして公正な社会福祉法人運営を確保するといったようなことを内容といたします社会福祉法人運営の問題。  こういったことを中心にいたしまして改善策をとりまとめ、今それぞれ制度改正に取り組むべく準備をいたしておるところでございます。
  7. 根本匠

    根本委員 ありがとうございました。  あともう一つ、今度の事件を通じて私も気になるのは、特養はもうかるのではないか、あるいは補助基準単価が高過ぎるのではないか、カットすべきだ、こんな議論がある点でありますが、この辺の認識についてお伺いいたします。
  8. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 お尋ねの、今回の事件契機にいたしまして、特養はもうかるのではないか、もうかればこそああいうことが起こったのではないかという御指摘を耳にするわけでありますけれども、私ども、今回の事件は、これも先生指摘ありましたように、国庫補助基準を上回る施設をつくる中で、いわゆる丸投げ等の手法によりまして多額利ざやを稼ぐという、いわば制度を悪用したケースであるというふうに考えております。  特別養護老人ホーム運営する民間の主体でございます社会福祉法人におきましては、本来、篤志家善意寄附というようなものに基づいて事業が行われるというような形を想定いたしておりまして、したがって、土地等寄附をするというようなことで、土地はまず法人側準備をしなければならない、それから、設置者の場合は、補助対象となります施設整備費の四分の一をみずから負担し、また、補助対象とならない施設整備を行う場合には丸々それが負担になってくるというような仕掛けの中でやっておるわけであります。もちろん地方公共団体による補助等はございますけれども、そもそも基本的にはもうかるような仕組みにはなっていないわけであります。  そして、今お話のございました単価の問題でございますけれども、特別養護老人ホーム補助基準単価につきましては、これはなかなか、それぞれ状況が違いますし、置かれたあれが違いますから、単純な比較はできませんけれども、病院でございますとか診療所あるいは事務所学校の校舎、こういったものにつきまして、一平米当たり契約価格というようなものを統計によって比べてみましても、決して高いということにはなっていないのでございます。  そして、むしろ各地方公共団体等からは、実勢価格に比べて補助単価の水準が低過ぎるということで、かねてよりその引き上げを大変要望されているという実態にございました。そういったところで、近年、実態調査等の結果を踏まえまして、むしろ平成八年度まで逐次その改善に努めてきたというのが今日までの歩みでございます。  しかしながら、いずれにいたしましても適正な価格でなければならない、これは非常に重要なことでございますので、平成九年度におきまして、改めて社会福祉施設建設単価につきまして実態調査を行うということを予定いたしております。これを踏まえまして、実態に合った、それはいわゆる高過ぎるというようなものでも低過ぎるというようなものでもない、過不足のない、実態に合った単価の設定が行われるように今後とも努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  9. 根本匠

    根本委員 私もそのとおりだと思うのですね。現行制度前提にすれば、制度的にもうかるはずはありませんし、平米当たり単価も、具体的な数字がありませんでしたけれども、事務所学校病院と比較しても、これは統計的に同じ構造のもの、低いという実態が出ていると思います。その意味では、まじめな特養運営している方々は苦労してやりくりしているのが現状だと思います。  今まであった、もうかるという議論は、これは私の考えでありますが、二つ前提を置けばあり得たのだろうと思います。例えば、国の補助に加えて公共団体上乗せ補助があって、本来、自己負担建設費でいえば二五%になるわけでありますが、地方公共団体上乗せ補助等により自己負担が全体の工事費の数%にとどまる、そのケース発注において今回の事件のようなことをやれば、結果的に自己負担なしで特養建設が可能であったという見方もできると思います。ただ、今回の改善措置によってこれからは不可能になる、こう私は思います。  むしろ問題なのは、今回の事件によって特養整備にブレーキがかかることでありまして、これは特養への信頼回復を急ぐとともに、介護保険を創設する前提として特養等社会福祉施設整備は急務であります。  私は、今後の特養整備あり方については二つ課題があると思います。  一つは、今お話にありましたように、土地無償で提供し、建設費の四分の一は自己負担という善意篤志家前提としたシステムで十分な福祉施設整備が可能なんだろうか。もう一点は、仮に可能としても、たまたま土地持ち篤志家がいるといういわば出物主義で、特養あるいはデイサービスセンターは中学校区に一カ所整備すると言っておりますので、社会福祉施設適正立地あるいは都市内の適正配置が可能か。私は、この二点が課題なんだろうと思います。  今後の介護の時代を展望すれば、特養デイサービスセンター、これらの社会福祉施設については、福祉インフラあるいは新社会資本として位置づけて、だれでも気軽にどこでも利用できる、こういう理念に立って、都市計画的視点も導入しながら都市内の適正配置あるいは立地を誘導すべきだろう、そういう政策手法が必要だと思います。また、用地については無償提供が原則でありますが、社会福祉施設都市内の適正配置観点から、例えば公共団体用地を確保して無償貸与して社会福祉法人施設運営する、あるいは土地区画整理を行う際に福祉施設用地を生み出すという多様な仕組みも必要だと思いますが、今後の特養整備あり方についてお伺いしたいと思います。簡潔にお願いします。
  10. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 お話しのとおり、今後の本格的な高齢社会の到来のために特別養護老人ホーム整備は大変重要でございます。そういったことから、今回の改善策にあわせまして、特別養護老人ホーム整備運営実態を解明し、社会福祉法人あり方あるいは社会福祉事業に対する補助制度あり方というところまでにわたって中長期的に検討しなければならないという宿題を私どもいただいておるというふうに考えております。  そういったことにつきまして、先生今御指摘のございましたような点も踏まえながら、今後さらに検討を続けていきたいというふうに思います。その際には、社会福祉施設配置計画当たりまして、都市計画との連携というような点につきましても、これは例えば省庁で申し上げれば建設省との協力をやりながら進めてまいりたいというふうに考えております。
  11. 根本匠

    根本委員 ゴールドプランによって量的整備は拡大してまいりましたが、これからは質の確保も必要だと思います。個々の施設の快適性という意味での質の確保と、もう一つは、全体の地域での施設利用の利便性という意味での質の確保、これからこの辺が必要になってくると思います。さらに法人運営についても、利用者の立場に立って法人の創意工夫が最大限生かせるように、こういうことも重要だと思います。  自民党の小委員会でも、特養制度改善あるいはフォローアップ、これは絶えずやっていきたいと思いますが、これからも今後の特養制度あり方についてさらに点検、フォローアップをして、特に法人運営あり方については、私は、最前線の現場の声をフィードバックさせてよりよい仕組みをつくり上げていく必要もあるだろうと思いますので、この辺は今後よろしくお願いしたいと思います。  最後に、医療保険制度改革に関連いたしまして、薬価基準の見直しの考え方について御質問いたします。  医療保険制度改革については、国民が必要な医療を安定的に受けられるようにする、こういう観点から、医療提供体制あるいは医療保険制度の抜本改革、これを早急に実現することが必要であります。診療報酬の見直しあるいは薬価基準の見直しを含む医療保険制度の抜本改革の方向については与党において一年以内に結論を出す、こうしておりますが、国民の皆さんに給付と負担見直しをお願いするためには、私も抜本改革、これが不可欠だと思います。  今度の制度改正においては、薬代について別途自己負担を導入するとしております。国際的に見ても高い薬剤費負担の削減あるいは高コスト構造の是正、これに取り組む必要があると思いますが、特に薬価基準の見直しをすべきだろうと思います。  日本の薬剤費全体が高い要因は、私は三点ぐらいあるのだろうと思います。一つは、保険制度に特有の問題、例えば重複受診、過剰受診、レセプト請求に伴う諸問題。二つ目は、薬の値段、新薬、特にゾロ新の値段が高い。三点は、薬価差の存在により、長く使われて薬価が安くなると値段の高い新薬にシフトするメカニズムが働いて薬剤費全体が高どまりするのではないか。  このような要因を踏まえますと、保険制度に特有の問題は別途対応することとして、薬価基準の見直しに当たっての基本課題、これは四つぐらいあるのだろうな、こう私は思っております。一つは、新薬の薬価、これはいわば公共料金ですから決定過程、内容透明化する。二つ目は、新薬、特にゾロ新の薬価を見直す。三つ目、薬価差については、合理的なものは適正な医療の技術料として評価しながら、縮小する。四点目は、これは一定の条件整備は必要でありますが、患者に薬を選択させる、西ドイツの参照価格制などを検討するということが挙げられると思います。ただ、ここで最もベースになるのは、保険制度と市場原理をどう調和させるか、あるいはどのように組み合わせるか、これが大きな命題だと思います。  これらの課題を踏まえて、これからの薬価基準の見直しの考え方、これをどう考えていくのか、これをお伺いしたいと思います。  多少長くなりますけれども、さらに補足的に言えば、薬価基準の見直しというのは、当然、全体の薬剤費の削減、抑制の観点から行う、これが基本でありますが、その際、あわせて、日本の医薬品産業の将来をどう展望していくのか、この視点も重要だと思います。  現在の日本の医薬品産業の現状、これはアメリカに比較しますと比較劣位産業になっておりますし、国内市場依存型の薬の輸入大国、これが現状であります。日本の医療は、医療アクセスは世界に冠たる水準ですが、基礎研究がアメリカに比較して弱い、こんな特徴もあります。  小泉大臣そして我々もかねてからやるべしといって取り組んでまいりました基礎研究への国家的投資、これは昨年から政治のリーダーシップによって科学技術創造立国を目指した基礎研究、これに思い切った投資をやることにいたしました。厚生省も、基礎研究予算として昨年は十億、ことしは三十億、基礎研究予算を組んでおります。これを有効に活用しながら、私は、高付加価値産業あるいは研究開発産業としての日本の医薬品産業、これは科学技術創造立国の一翼を担うべきだ。  その意味で、日本の医薬品産業の盛衰を規定しているのは具体的な政策手段、これは薬価基準と治験や承認審査のあり方、これが決めていくわけですから、薬価基準のこれからの見直しを行うに当たっては全体の薬剤費の適正化、削減、抑制をねらう、当然これが基本ですが、画期的新薬への高い評価など、医薬品産業の国際競争力の強化等の産業政策的視点も踏まえながら取り組むべきだと思いますが、薬価基準の見直し基本的考え方についてお伺いいたします。
  12. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 薬の問題につきましては、今先生の方からお話がございました問題に尽きると思います。まさに、薬価基準の問題もそういった意味では今先生お話しされましたような全体の項目についてきちっとした見通しと検討が必要であろうというふうに思っております。  ただ、私の方から医療保険の薬価基準のあり方という観点で申し上げますと、今御指摘の点に尽きますが、当面考えなければいけないのは、我が国の医療費に占める薬剤費の割合が諸外国に比べて依然として高いという問題、これは、薬の値段の問題と、薬が使い過ぎになっているのではないかという問題、これを掛け合わせたものが薬剤費のトータルになるわけでありますから、そういった視点で考えてみますと、この両面について保険サイドからはきちっとした対応をしていかなければいけないというふうに思っております。  薬の使い過ぎ、いわゆる量の問題でありますけれども、これはいろいろな角度がありますけれども、一つには、医療担当者それからまた患者サイド双方においても、薬に対するコスト意識なりというものを喚起するということもやはり一つの手段であろうというふうに思っております。  また、薬の値段の問題、これは薬価基準制度そのもののあり方の根幹にかかわる問題でありますから、これについては諸外国においてもいろいろなやり方をしております。そういった諸外国のシステム等を参考にしながら、そのいい面、悪い面、それぞれあるわけでありますが、我が国の実情に照らして最もふさわしい制度というものを根本的に考えていきたい、このように考えておる次第でございます。
  13. 根本匠

    根本委員 終わります。ありがとうございました。
  14. 町村信孝

    町村委員長 能勢和子君。
  15. 能勢和子

    ○能勢委員 自由民主党の能勢和子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  昨年末に、厚生省の准看護婦問題調査検討会が、長年の懸案でありました准看護婦問題に決着をつけ、准看護婦の養成を停止し、看護婦養成を一本化するという方向を示しました。これは看護の質の向上、ひいては日本の医療の水準の向上に大きく貢献したと評価するものでございます。  検討会の報告書では、准看護婦養成をストップする時期を二十一世紀の初頭のできるだけ早い時期としています。私は、二十一世紀の初めの年を、二〇〇一年という目標にしてほしいと思うわけでございます。この問題解決に対し、厚生大臣の御決意をお伺いしたいと思います。
  16. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 昨年の検討会で関係者が十分話し合っていただき、今言われた一定の方向が出されたということは大変私も意義が大きいと思います。この提言に沿ってできるだけ早い機会にこれが実現できるように厚生省としても全力を尽くしていきたい、そう思っています。
  17. 能勢和子

    ○能勢委員 ありがとうございました。  このように看護婦養成が統合されますと、現時点で既に四十万人の准看護婦の皆さんがいるわけですが、この准看護婦の四十万人をどのようにして看護婦にしていくか、これは教育の問題でございます。厚生省はどのようにお考えになっていらっしゃるかをお聞かせいただきたいと思います。
  18. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 今大臣の方からもお答え申しましたように、昨年の検討会での報告書の中では、二十一世紀初頭の早い時期をめどにして看護婦養成制度の統合を図るということが基本的なポイントだというふうに理解をしております。  この検討会の議論の過程の中でも、現在四十万人おられる准看護婦さんをどういうふうにしていくのか、これは准看護婦を廃止するとかそういうことで議論がされているわけではございませんで、基本的には看護の質を高めていく、その過程の中で准看護婦の養成をどういうふうにしていくかということでございますから、先ほど大臣から申し上げました統合ということの過程の中で現在おられる准看護婦さんについてどういう形でレベルアップをしていくのかということは、准看護婦の現在養成をされている方、それから現在の准看護婦の方、そういう方たちの御意見を聞きながらこれから詰めていかなければいけないと思っております。
  19. 能勢和子

    ○能勢委員 今局長さんからお話がありましたけれども、皆様方も御存じかどうかわかりませんが、看護婦、准看護婦と今二つの形の職種があるわけですけれども、この四十万人の皆さんが、准看養成を停止した場合、もう養成が終わるということになれば、現時点の准看護婦の皆さんをいかにして、資格がなくなるわけではありませんけれども、大変勉強して頑張っていきたい人たちもたくさんいるわけです。できるだけ多くの皆さんにそうした教育のチャンスが与えられますようによろしくお願いしたいと思います。  続きまして、次の質問に移りたいと思います。  先ほど来厚生大臣も申しておりました行革の問題もございますが、医療財政も大きな危機に立っていると思います。この状況下で、看護の質を高めることは、院内での二次感染や合併症の発症を防止し、患者の状況を踏まえた早期の家庭復帰や社会復帰のプログラムを作成するなど、結果的に患者本位の医療を提供しながら医療費を大きく節減できるという効果があるわけでございます。さらに、外国では既に、看護の質が上がれば入院期間が短縮するというふうな研究論文も出されているところでございます。私も臨床の場にいまして、本当に看護の質がよければ早く元気になってお帰りいただくということをたくさん経験しております。  そういう意味において、看護の質の向上を図るということは重要な課題だと考えています。そういう観点からぜひ厚生省のお考えを聞かせていただきたいと思います。     〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕
  20. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 看護婦の質を高めることによって例えば病院内での二次感染や合併症が予防されるとか、あるいは看護のチームが中心になって早期の社会復帰に対する計画を立てる、あるいは退院計画を立てるというようなことによって在院日数が短縮されるとか、結果として医療費が削減といいますか縮減されるといったような報告書が出されていることは承知をいたしております。  このことは看護の問題だけじゃなくて医療提供体制全般の問題にも関係するかと思いますが、特に今お触れになりました看護の質ということに関連いたしましては、ことしの四月から、例えば従来のカリキュラムについて見直しをして、在宅看護あるいは精神看護というようなものをカリキュラムの中に加えるとか、あるいは単位制を導入するとか、また保健婦、看護婦、助産婦の養成課程を合わせた統合カリキュラムといったようなものを提示するといったようなことも含めたカリキュラムの見直しを行うことにいたしております。  また、あわせて施設基準につきましても平成九年の四月から改正をすることにいたしておりますが、その中では、特に専任教員の配置基準の見直しということで、従来の専任教員の数を専門領域ごとにふやすといったような措置をとることといたしております。
  21. 能勢和子

    ○能勢委員 ありがとうございました。  私どもも、今、日進月歩の医学とあわせて、患者さんの、心まで見るという中に、教育の統合、そしてまた質の高い教育ということで、そうした予算等の措置もぜひお願いしたいと思っておるものでございます。本年度、看護教育研修予算を少しばかり、三百万ほどつきましたが、大して、私はそれは一カ所に対してですかというふうな質問を申し上げたことがあるわけですけれども、ぜひそうした研修資金の方もよろしくお願いしたいと思っております。  続きまして、今度は介護についてお尋ねしたいと思います。  いよいよ介護保険がこの国会で通った場合、介護保険の重要なねらいの一つには、総合的な……(発言する者あり)通っていませんが、そのことが今課題になっておるわけですね。その前提のもとに、平成十二年から実施される場合を考えましたときに、この介護保険の重要なねらいの一つは、総合的な介護サービスが利用できることだというふうに考えております。どのようにそれを保障していくか、大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  22. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 今までですと、保健医療サービス福祉サービス、両方受けなければならない場合でも、どこに行ったらいいか。一カ所じゃ済まない、病院に行ったり役所に行ったり。しかしながら、今回の介護保険制度を導入することによって、どのようなサービスが必要かというのは窓ローカ所に行けば、訪問看護にしてもホームヘルプサービスにしても、こういうサービスがありますよと、利用者にとってみれば一カ所で済む。そして、いろいろなサービス段階的に自分である程度選べるという制度になっておりますから、むしろ、総合的なサービスを受けるという点についてはこの制度を導入することによって格段に進歩するのじゃないか。  最初は不十分であっても、なおかつ民間サービスも歓迎する予定でおりますので、競争することによってより一層サービス充実していくということも期待しております。
  23. 能勢和子

    ○能勢委員 ありがとうございました。  今回の介護保険の重要なねらいの一つが総合的な介護サービスをするということでありますけれども、ぜひそれの実現に全力をかけていただきたいと思っております。  続きまして、同じくこの介護保険制度を導入するに当たって、保険あってサービスなしというようにならないようにどのように介護サービスの基盤を整備していくか、そのようなことを教えていただきたいと思います。
  24. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 介護保険制度を円滑に導入するという観点からも、介護サービスの基盤整備を確実に進めていくことが重要であることはお話しのとおりでございます。  このため、平成十二年度からの介護保険の実施でございますので、これに向けまして、全国の地方自治体が必要なニーズを踏まえて作成をいたしました老人保健福祉計画の集大成でございます新ゴールドプランを着実にまず推進するということで、今年度も所要の予算を計上していただいておるところでございます。  あわせまして、在宅サービスを初めといたします介護サービス基盤の整備がおくれておりますような地域におきましてこれを重点的にやるということで、いろいろな意味での格差是正ということに取り組みますとともに、在宅サービス中心にいたしまして、いろいろな既存施設あるいは既存資源、公立学校や何かの空き地だとかそういったことも含めました既存資源の活用でありますとか、あるいは民間活力の導入といったような多様な手段を活用することによりまして、サービス基盤の整備を積極的に進めてまいりたいというふうに思っております。  さらに、介護保険制度が導入をされました暁には、各市町村サービスの必要量を踏まえまして介護保険事業計画という形で新たな基盤整備計画を作成するという制度になっておりますので、これに基づきまして、引き続きサービス基盤を計画的に整備していくということで取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  25. 能勢和子

    ○能勢委員 ありがとうございました。  この制度は、新しく入るについて、全国民的な課題でございますので、ぜひともそうした整備をきちっとした中で、保険をかけたけれども後はサービスがなかったということがないように頑張っていかなければならないと考えています。  さらに、介護保険制度は、在宅看護といいますか在宅介護を重視する考え方に基づいているわけですが、現在、市町村間には住民が実際に利用できる在宅サービスの種類やサービスの質とか量に大変格差があるというふうに言われます。制度導入までにこのような格差の是正をどのように行うのかということも聞かせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  26. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 今後、介護サービス基盤を整備するに当たりまして、やはりできるだけ住みなれた家庭や地域で生活を送れるようにという観点から、在宅重視の考え方を基本に進めていかなければならないというふうに思います。  それを進めますために、今お話のございましたように、在宅サービスの基盤の整備がおくれているというような地域につきましては、やはり重点的にやっていかなければならない。それは量的な面におきましても、いろいろな工夫という意味でも、そういうことをしていかなければならないと思います。それで、その過程におきまして、それぞれの地域ごとに、なぜその対策がおくれておるかということにつきまして、今まで以上にその分析でありますとか地方公共団体との十分な意思疎通をして、老人保健福祉計画に定められました目標値が達成できるように年次計画の策定などの取り組みを改めて求めていくということが必要になるだろうというふうに思います。  それから、これを進めていきます場合にいろいろな工夫というものがやはり必要であるというふうに思いまして、平成九年度の予算におきまして今御提案を申し上げておりますのは、例えば、地域におきます在宅介護支援センターを核にいたしまして、ホームヘルプサービスあるいは訪問看護サービス、こういったものを二十四時間体制で一体的に提供できるような体制づくりを進める。あるいは、公衆浴場とか公民館等の既存施設を活用いたしまして、出前型と申しますか、サテライト型デイサービス事業という形で、小規模な、きめ細かなデイサービス事業が展開できるというようなやり方を工夫する。あるいは、痴呆性老人向けのグループホームといったようなものを導入していくというようなことで、地域の実情を踏まえましたきめ細かなサービス体制整備というようなことにつきましてもあわせて進めてまいらなければならないというふうに考えておるところでございます。
  27. 能勢和子

    ○能勢委員 本当にきめ細かなサービスが大変大事になってまいりますけれども、現在の状況、大変厳しいものがあります。  というのは、そうした迅速なサービス提供が行えるようになりますときに、要介護認定とか、あるいはサービスの利用調整等はだれがすれば一番いいのかということになるわけですけれども、いろいろな問題をはらみました中で、介護問題でございますので、利用者に常に接触している看護職員、看護婦等が、この認定の判定、査定、こういうものはぜひ看護婦にゆだねられるべきであろうと思いますけれども、それについていかがでございましょうか。(発言する者あり)
  28. 江利川毅

    ○江利川政府委員 介護保険法案におきましては、介護の申請がありますと、その申請者の自宅に訪問調査をしまして心身の状況を確認する、そしてまた主治医の意見を聞きまして、そういうものを踏まえて介護認定審査会の意見を聞きまして、市町村が要介護を認定するということになっているわけでございます。このうちの訪問調査につきましては、介護サービスの計画を策定する事業者等に委託をすることができるということになっております。  また、要介護認定されました後、介護サービスを利用するという段になりますとケアプランをつくることになるわけでありますが、それもまた事業者が関係の利用調整を行うというようなことになっているわけでございます。  こうした要介護認定のための訪問調査であるとか利用調整等につきましては、御指摘の看護婦さんも含めまして、保健、医療福祉の現場の専門職の方々に担っていただくことが適当であろうというふうに考えているところでございます。
  29. 能勢和子

    ○能勢委員 ありがとうございました。  あちこちで看護婦のみということについて声が聞こえてまいりますけれども、患者さんの一番身近にいて、しかも介護とか看護についての専門家であるのは看護職であろうと思います。もちろんいろいろな専門職があるわけですけれども、その中のコーディネートをできるのが、私たち、本当に患者さんのそばにいる者がわかるのかなというふうな感じできております。  続きまして、今度は問題を変えまして少子問題について。  高齢問題に加えて少子問題が大変社会問題となっておるのは御承知のとおりでありますが、この少子化問題にかかわりますときに、厚生省でもこの問題が出てきます、あるいは労働省でも出てきます、建設省でも出てくるというふうに各省庁に大変関連してくるわけですけれども、関係省庁等は連携して取り組むことが大変大事であろうと思います。今後、関係省庁との連携をどのように取り組むお考えかということについて、大臣お尋ねしたいと思います。
  30. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 この少子化の問題は一様ではないと思います。意見も、今さまざまな議論が出ています。そして今後、少子化のもたらす影響というのは将来の社会保障制度に深刻な影響を与えていきますから、我々も大変関心を持って、今後、各省庁並びに各界の意見を聞いていかなければいかぬと思っております。  また、人口問題審議会等それぞれ議論いただきますが、当面としては、お子さんを育てる環境をどうやって整備していくかということが大事ですし、いかに少子化の問題が深刻でも、この傾向が本当に将来ずっと続くのかというのもまだはっきりわかりません。五十年後には大変な事態になると言いますが、戦後から五十年たって今の事態も想像できなかったわけですから、これから五十年後の将来、この傾向が本当に続いていくのかどうかもまだわかりません。  そういう点もありますから、厚生省だけの問題ではありません。各界各層、各省庁と連携をとりながらこの少子化問題に当たっていきたい、そう思っております。
  31. 能勢和子

    ○能勢委員 ありがとうございました。  ぜひ各関係省庁、各関係団体等の情報を踏まえながら、私たちもこれについて、女性はみんな、一人二人、二人は子供を産まなければならないというふうに進めなければならないというふうに思っております。  最後の質問となりましたけれども、これは意見として聞いていただきたいと思っております。  現在、精神科のソーシャルワーカーの資格化について再浮上しておりますけれども、これは既に十年前から取り組まれ、附帯決議されているということでございます。これは保助看法についても規則の一部解除もなく名称の独占にとどめるなど、その取り組みに対しまして評価しているものでございます。  しかるに、精神科の臨床には、PSWのみならず、さまざまな役割分担の中に専門の医療スタッフがいるわけです。しかし、看護婦にしましても、作業療法士にしましても、薬剤師にしましても、管理栄養士等の医療スタッフのどの人をとってみても、国家試験は領域で選んでおりません。どこで勤務してもその資格を通しているわけでございます。  仮に精神科領域を例にとってみましても、当然、一般科とは違った精神領域の専門的な知識や専門的な技術、態度が求められます。現時点では、医師は、条件を満たしておれば精神保健指定医という認定がございます。今回、ケースワーカーが精神科の専門ケースワーカーとして国家資格となるのであれば、当然、看護婦、作業療法士等も精神科専門看護婦、精神科専門作業療法士といった資格認定制度を考えていただかなければならないというふうに思うわけでございます。  これはまだまだ問題を呼ぶと思いますけれども、今回のソーシャルワーカーについて、十年間討議を重ねて、附帯条件で今回上がってきているということにつきましては、私も承知いたしましたし、納得しているところでございます。その近寄りといいますか、その努力といいますか、取り組みについては、本当に保助看法をさわらなくて、きちっとした形で、名称独占でよかったなと思っているわけですけれども、現在、臨床の場を考えますと、そこにだけそうした専門者が出てきている。看護婦も薬剤師も、みんなそれぞれの精神科領域の専門的な知識を大変求められるけれども、資格においては、どこでも通用する看護婦と薬剤師であるということになってきます。ぜひこれについてお考え願いたいと思っています。  以上でございます。ありがとうございました。
  32. 佐藤剛男

    ○佐藤(剛)委員長代理 御意見ということで、答弁は結構ですね。
  33. 能勢和子

    ○能勢委員 はい、結構です。  ありがとうございました。
  34. 佐藤剛男

    ○佐藤(剛)委員長代理 山本孝史君。
  35. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 新進党の山本孝史でございます。  戦後五十年、時代や社会の変化を受けて、日本の社会保障は今構造改革が求められております。早急にその道筋を示すべきだというふうに思いますけれども、その方向性については、答えは一つではない。党派を超えた、あるいは与野党の垣根を超えての議論をぜひしていかなければいけないというふうに思っておりますし、お役所の皆さんがお決めになる、あるいは審議会がお決めになるということではなくて、政治の判断あるいは決断が必要な問題がこの社会保障構造改革の中に山積をしておるというふうに思います。そういう点で、連日の審議で大変お疲れの中申しわけございませんけれども、ぜひ小泉厚生大臣の御見識をお聞かせいただきたいというふうに思っております。  まず、将来の社会保障構造についてでございますけれども、介護保険あるいは医療保険の改正をこの社会保障構造改革の第一歩だというふうに位置づけておられる。  低経済成長構造となりまして、従来の順調な経済発展をしているときには表に出てこなかった問題が噴き出してきている。あるいは、総理予算委員会の中でお話しになりましたように、これほど極端な少子化というのは予想していなかった。こうした社会構造の変化あるいは社会経済条件の変化に伴って、社会保障制度も当然そのパラダイムを変えていくべきではないかというふうに思うわけです。  日本の社会保障構造は、英国のビバリッジ報告を受けて、社会保険中心にやってまいりました。しかし、今申し上げたような大きな社会の地殻変動を受けている中において、小手先の手直しをするのではなくて、制度そのものの改革をするべきではないだろうか。少なくとも、謙虚に現在の制度を検証し直すことが必要ではないだろうか。更地の上に新しい家を建てるというような議論はしても仕方がないというような御意見もありますけれども、私はやはり、この戦後五十年の中で、ぜひやるべきことはやらなければいけない、検証し直さなければいけないというふうに思っているのですが、大臣はどんなふうにお考えでございましょうか。
  36. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 戦後五十年たって、あらゆる制度根本的な見直しが迫られているという考えは、私も賛成であります。  当然、社会福祉制度、これは多くの国民がその充実を願っていますし、政治家としても、福祉国家の建設がどの政治家も大きな目標であるということは昔も今も変わらないと思うのであります。  そういう中で、いろいろ福祉制度充実させてきても新たな問題が出てきている。特に、できるだけ給付は多ければいいのはどの国民も願っているところだと思います。しかし、その給付をだれが負担するのかとなると、これまた大きな抵抗が出るのも事実であります。  そういう点から、これから福祉社会保障ということを考えますと、年金にしても医療にしても、これから御審議をいただく介護にしても、すべて給付と負担の問題を考えないとやっていけません。そういうことから、今後御議論いただきますが、どこまで公費を投入して、どこまで自分で負担してもらうかという点が、どのような制度充実させるにしても出てくる問題であります。  当委員会におきましても、今後、税がいいのか、社会保険がいいのか、あるいは自己努力がいいのか、いろいろ出てくると思いますけれども、この組み合わせをどうやって適正に持っていくか。これは議論議論を重ねて、できるだけ多数の国民が理解を得られるような形に私は持っていきたい。  これだという完全策はないと思います。どういう制度をつくるにしましても、まあこの辺だろうという合意を得るための議論は重要である。そういう点につきまして、当委員会でも、専門家の議員が多いわけでありますので、率直に意見を交換して、よりよい制度を目指していきたい、そう思っております。
  37. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 大臣、昨日の坂口議員の予算委員会での質問に、年金医療も税と保険でやっているのだから、介護の問題も国民の納得を得るにはやはり保険方式の方が理解を得やすいのではないかとお答えになっています。あるいは、税も保険も受益者負担も導入してバランスのとれた制度とすれば理解は得やすいのではないかというふうにもおっしゃっておられるのです。  でも、思うのですけれども、老人保健の拠出金制度に見られるように、税も保険も受益者負担もごちゃごちゃに投入しているがゆえに、受益と負担関係がはっきり見えてこないという大きな問題になっていると思うのですね。  老人医療などを見ても、保険制度を通じて所得の移転というものが行われている。それは、リスクに備えるという社会保険本来の原理から離れた考え方がその中に入っているのではないだろうか。あるいは受益者負担という部分も、出来高払いの医療保険制度であれば、一割受益者負担をすればその十倍が医療費の総額であるという形で、これはわかりやすい、あるいは医療費の総額を知っていただくためにもいい制度だというふうに皆さんおっしゃっているわけだけれども、今度の介護保険の場合は、出来高払いではなくて上限が決まっているわけですから、この上限が決まっている介護保険という同じ保険という名前を持っている中において、同じように受益者負担という制度を持ってくるのは、医療保険の一割負担介護保険の一割負担とは意味合いは全く違うというふうに私は思うのですね。  そういうようないろいろな問題点を御承知の上で、重ねての質問ですけれども、厚生大臣としては税も保険も受益者負担も、申しわけありません、ごちゃまぜにして社会保障の財源を確保していこうというふうにお考えになっておられるのか、そこをもう一度お聞かせいただきたいと思います。
  38. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 税だけでやるということになりますと、それじゃどこまで最低限度サービスをするかというところも大きな問題になってきます。あとは、よりよいサービスを求めるのなら自分でやりなさいということになっていくと思うのでありますが、自分はこれだけ負担しているのだからこの程度のサービスを受けようということを考えますと、年金医療も今、日本は税と保険と両方でやっています。新しい制度を導入する場合に、だれでも今後年をとれば、自分が介護を受けなくても家族のだれかは密接にかかわってくる可能性は高いと私は思うのであります。  そういう意味において、当面、初めての制度でありますので、今までの年金医療も税と保険でやっている、この介護も税と保険でかなりの民間参入も促している、一歩一歩サービス充実が図られるような保険と税の組み合わせの方がよりよい理解が得られるのじゃないかということで、私は、最初の導入の問題であるだけに、なおかつ日本は今まで保険方式を年金医療もやってきたわけでありますので、その方が直接、税だけでやるよりも理解が得られやすいのではないかというふうに考えております。
  39. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 介護保険議論のときに再び議論をしないといけないと思うのですけれども。  それでは聞き方を変えて、こういう質問通告はしていないので申しわけありませんけれども、今、介護保険保険論者と言われている人たちが、実は従来、税方式がいいのじゃないかと言っていた。ある方なんかはきっちり本の中で、消費税で取るのが一番いいのだ、でも消費税の議論はなかなか大変なので、そこは取り切れないから保険という制度を持ってきたのですというふうにお書きになっている方も実はおられるのですね。大臣も同じお考えですか。
  40. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 言い方を変えますと、それじゃ、税でやれという人はどこで増税するのかとはっきり言っていただきたい。ところが、言う人はいない。  確かに、税だけでやるとなったらば、この今の御時世で三%から五%に引き上げるのでさえこれだけの反対であります。これを税だけでやるのだったらば、今の保険制度を導入しないよりももっと低いサービスしか提供でき得ないという点もあると思います。  だから、私は、これから社会福祉制度充実を図っていく場合に、初めて消費税が導入された場合も、消費税は全部福祉に使えという議論がさんざん行われました。今回も、この介護保険制度を導入するに当たって消費税でやれという議論が出てきたのも承知しております。しかし、これだけ税の問題について、もう新たな負担は嫌だというそういう情勢を考えるならば、一歩ずつ税と保険を組み合わせて今後考えていく方が国民の理解を得られやすいのじゃないか。  確かに、年金にしても医療にしても介護にしても、それじゃどこまで税で負担するのかという点はこれから大きな問題になってくると思います。
  41. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 おいおい我が党の委員議論をしたいというテーマだと思いますので、私、いっぱい聞きたいことがありますので、済みません。  ただ、一点だけ申し上げておきたいのは、保険保険の原理というものがあるのではないか、税は税というものの性格があるのではないか、そこをごっちゃにしてしまって、そこに受益者負担というものを持ってきて、大臣、三つでバランスをとりながらとおっしゃっているけれども、識者に言わせればそんなにきれいな枠組みは絵にはかけませんよとおっしゃるのだけれども、新しい介護保険制度というものをつくるのであれば、この五十年間やってきた社会保険中心の日本の社会保障制度構造改革するのだというのであれば、この点をもう一度議論し直してやっていかないといけないのではないかというふうに私は思うのです。ということでお聞きをしています。  ただ、医療保険年金制度としてはかなり継ぎはぎだらけの制度になっている、この点はお認めになると思うのです。特に各保険制度間、これは年金医療保険もそうですけれども、各保険制度間でかなり大きな格差が出てきている。これが国民にとっては、給付と負担という関係からすると大きなふんまんになっているというふうにも思うわけですね。ただ、各制度の発足の経緯というものもありますし、労使間の交渉でそういうふうに決まっているという推移もある、そういうことも認めますけれども、公費負担というものを絡めて考えていく中においては、負担と給付の関係、特に世代間あるいは同世代間においても公正さというものはやはり求めていきたいというふうに思うわけです。  古証文を出してきて申しわけありません。大臣は、平成元年六月二十日の参議院の社会労働委員会で、制度間格差、一元化についての質問に、各保険制度間で給付と負担の不公平というものがありますし、これも将来一元化に向けて給付と負担のバランスをとっていく必要があるというふうにお答えになっておられるわけです。  そこで、医療保険あるいは年金制度制度間の格差というものについてどのようにお考えなのか、この一元化というものについてどのようにお考えなのか、この二点についてお聞かせをいただきたいと思います。大臣、お願いします、大臣が御答弁になったことですから。
  42. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 その答弁の姿勢は今も変わっておりません。できるだけ公平化を図っていきたいというふうに今でも考えております。
  43. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 かつての委員会審議の附帯決議の大体どこを見ても、この一元化というものを常に言い続けてきているというか、院としては決議をして、その都度、大臣としては、善処しますというお答えでずっと来ている話なんですね。  今もお話しになったように、態度は変わっていないというのであれば、今回の新しい制度をつくっていくという中において、あるいは社会保障構造改革をするとおっしゃっておられる中においては、一元化という問題について、平成元年の話ではありますけれども、そこから九年間ですか変わっていないのであれば、ぜひその姿勢で取り組みをしていただきたい。  その中で、社会保障というのは世帯単位ではなくて個人単位で考えていく時代ではないかというふうに常にこれも言われてきて、総理予算委員会の中でそのようにおっしゃっておられるわけですね。それに関連して思うのですけれども、社会保障制度における被扶養者の扱いというものをどういうふうに考えていくのか。  例えば厚生年金の場合に、被用者の妻、いわゆる第三号被保険者は年金権は保障されていますけれども、実際の年金保険料は夫が入っている被用者年金の方で払っていますので、妻は払わなくていい。でも一方で、フルタイムで働いておられる同じような立場の方はちゃんとお払いになっている。こういう不公平があるがゆえに、女性が家庭にとどまってしまったり、あるいはこれ以上働かないようにという意味でパート労働でとめておられるというような傾向も出ているわけですね。あるいは医療保険制度においても、高齢の被扶養者、おじいちゃん、おばあちゃんを一体だれがどの保険で見るかによって、全然これは考え方が違ってくるというか負担の割合が全部違うわけですね。  こういう社会保障制度における制度間の被扶養者の扱いにばらつきがあるということについて、今後修正をしていこうと思われるのか、あるいはこれは仕方がないというふうに思っておられるのか、その点はどうなんでしょうか。
  44. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 率直に言うと、両方ありますね。仕方がないという面もあります。  今言ったように、医療保険なんかの場合は、それじゃ個人負担にするとお子さんはどうするのかとか、あるいは所得のない被扶養者はどうなるのかとか、そういう点もありますし、年金の場合でも、夫も妻も働いているところと働いていないところもある。いろいろありますから、この議論は今後もやはり続けていく必要がある。  どっちがいいか、世帯単位がいいか個人単位がいいか、今結論を出すのはっきかねています、率直に言いますと。一長一短があるのじゃないか。しかしながら、どの制度に入ってもできるだけ公平な給付と負担あり方は進めていくべきではないか、そういうふうに私は思っております。
  45. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 多分これは社会の受けとめ方が違うと思うのですけれども、私は、非常に異動というものが激しくなる社会になっていくのだろう。それは職業間の異動というのもかなり激しいものが出てくるのではないか。  私はかつて議員になる前は働いていて政管健保で厚生年金、今議員になっていますから国民健康保険国民年金。それで、うちの家内も働いていたりすると、その都度、国保に入ったりいろいろする、あるいは私の立場によって妻の立場も変わる。かなり頭がこんがらがるわけですね。  それで、子供さんに払えと言っているわけではない。年金も学生に払えという話に今なっているわけですけれども、所得のない人に払ってくれと言っていることではなくて、年金権も一人一人に確保するのだ、あるいは一人一人で、働いている人と働いていない人、奥さんが働くか働かないかが違うことによって負担が違ってくるという部分は大いに考えていかなければいけないのじゃないか、今、医療保険の抜本改革医療保険議論も次に続いてくるわけですけれども、お年寄りの医療費というか、お年寄りのその保険料をだれが払うのか、だれが払うかによってそこによって差が出てくるという考え方はやはりおかしいのではないかというふうに思うわけですね。  繰り返しになりますけれども、今の政府・与党が社会保障構造改革をやるのだとおっしゃっておられるのが、単に介護保険を導入して、平成十一年の年金改正で、財政再計算でまた負担を出すというだけじゃなくて、本当に改革をやるとおっしゃるのであれば、制度に手をつけない改革というのはあり得ないのじゃないかというふうに思っているわけです。  そういう意味で、こういうふうないろいろな差があるということについて、確かにどっちにするのか判断は難しいのだけれども、だから、冒頭申し上げたように政治家の判断が要るのであって、大臣のお考えが要るのじゃないか。大臣が迷っておられるということであるならば、これは日本の国としても迷っているということになりませんか。
  46. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 この社会保障制度というのはなぜ一挙に手がつけられないかというと、長い将来にわたって計画を組んで、期待権を与えてやっていくわけですね。一挙に変えられない面がたくさんある。年金にしてもそうです。医療にしても老人保健にしても健保にしても国保にしても、それぞれ負担の割合も違いますけれども、できるだけ公平にありたいということで今着実に、段階的に進めているわけですが、そういう中にあって、一挙に全部、高齢者も若い人も全部ならすとなると、これまた大変に高齢者に負担がいくという新たな問題も出てくる。結局、あれがいい、これがいいと言いながら、一つの解決策が出てくるとそうだという声にならないところが、この医療保険にしても介護にしても年金にしても難しいところだと思うのです。  今回、案を出しました。いろいろな利害関係者がいます。調整に調整を重ねていくということになると、確かに抜本的な改革論者から見ると生ぬるいという批判は甘んじて受けなければならない。しかし、そういう難しい調整の過程で批判されながらも、まとまった案が出てきたということによってこれだけ議論できるわけです。だから、この今政府が出した案に批判される方も、それでは、自分はこう思うけれども、党内でまとめるとなると、これまた大変な御苦労をされると思います。自分はこう思うけれども、同じ党内でも、これではいかぬよという声が必ず出てくるわけです。  そういういろいろな意見を聞きながら、今後とも、年金にしても医療にしても介護にしても、多くの国民が関心を持ち、これから福祉国家を充実させていくということを考えれば真正面から取り組まなければならない問題でありますので、まず今回、介護にしても医療にしても、ようやく案をまとめて政府は出しました。これに向けて抜本策なり改善策なりを議論することによって私は一歩一歩進んでいくのじゃないかなと。  このいろいろな制度について、私は、これでもういいのだという案はないと思うのです。まず導入することによって新しい問題が出てくる、それで改善を重ねていくという方法を、まず今回の段階的な一次的な案で議論を巻き起こして、将来のよりよい制度につなげていきたいと思っております。     〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕
  47. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 大臣の意気込みもよくわかりますし、お考えもわかるのですけれども、一遍導入をしてしまうとなかなか変えられないということも事実であって、これから先何十年にわたって我々だけじゃなくて子孫にも保険料負担を求めていくような形なわけですから、何度も議論する、議論するとおっしゃっているので、これは委員会の方の姿勢だと思いますけれども、ぜひ十分な審議時間をとっていただいて徹底的に議論をさせていただきたい。ことし通さないと間に合わないのだという言い方はぜひやめていただいて、徹底した議論をさせていただきたいというふうに思います。  今お話の中にありました高齢者の問題ですけれども、高齢者のその経済状況について、かなり二分化が進んでいく、お金持ちの人と、かなりそうでない人という形に多分なっていくのだろうと思うのです。そのときに、お金を持っておられる高齢者に対しては、年金社会保障費の給付というものについて、現役世代負担を軽減するためにも何らかの制限を加えるべきではないだろうかという声がきっと出てくるし、また実際、市民の中にあるわけですけれども、こういう考え方については厚生省はどういうふうにお考えなんでしょうか。
  48. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 これはまだはっきり結論が出ていないと思うのですが、私は、ある程度の制限はいいのじゃないかなと個人的に思っております、程度によりますけれども。特に、これから年金を受ける方がふえていきますし、かなりの高額者でも使いようがないお金をもらってもどうなるのかなということも出てきますから、どこに線を引くかというのはこれからの議論の余地があると思いますけれども、高額者についてはある程度の制限は設けてもいいのではないかな、私はそう思っております。
  49. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 例えば今、介護保険は普遍的な制度ですとおっしゃっておられるわけですね。だから、その普遍性というのを片一方で言いながら、片一方で応能負担というか、そういう資産に応じてという話をするとなかなかこれは難しいと思うのです。一般の庶民の感情の部分と、あるいはその制度としての仕組みをどうするかという部分との、大臣おっしゃったように線引きの部分だと思いますけれども、今後我々が議論する上で、どういうふうに厚生省がお考えなのかというのを聞かせておいていただきたいと思ったのでお聞きをしました。  もう一点、先ほど羽毛田老人保健福祉局長の御答弁の中で地域間格差の問題がありましたけれども、負担においても、あるいは給付の部分においても地域間格差というのが現にある、今後ともに多分あるのだろう。全国一律が望ましいというふうに常に言われるわけですけれども、例えば市町村の財政能力あるいはその首長さんのやる気等によって、さらにはその地域の特性みたいなものが生かされてくると、住んでいる場所によって福祉にかかわる格差というのがかなり大きく出てくるだろう。実際、今、国内でも、福祉移民というような形で住所地を移しておられる方が随分おられる。  こういう意味で、どうなんでしょうか、確かに全国一律が望ましいのだけれども、今のゴールドプランがいわばナショナルミニマムのような形で、最低限あそこまでは各市町村平成十二年までにやってくださいということでやっているわけですけれども、それでもなおかつ福祉における格差というのは生じるだろう。これは仕方がないというふうに受けとめるのか、あるいは、例えば東京でいえば介護手当、随分高額の介護手当が出ていますけれども、そういう介護手当はやめてほしいというような形になるのか、その辺の整理はどういうふうに厚生省はお考えでございますか。
  50. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 施設整備費や運営に国が二分の一を補助しているというそういう状況では、ある程度地域によって均衡のとれたサービスがなされるのが望ましいと考えているのですが、一定の水準を得た後では各市町村が、余裕があればもっとサービスをやるという市町村が出てきてもいいと私は思うのであります。  しかし、余りかけ離れて、片一方ではすばらしいというか望ましいサービスが行き届いている、片一方では全然足りないという点が出てくるのも好ましくない。厚生省としては、そういうむしろおくれた地域にはやはり重点的に目配りする必要がある、その上のサービスは市町村がどんどん競争していくというのがいいのではないかな、そう私は思っております。
  51. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 今、おくれた地域にはとおっしゃって、例えば介護保険なら介護保険議論のときになるのですけれども、ゴールドプランの達成は必ずやってほしいということで、まだ達成のできていないところにはできるだけ早くやっていただく、そのためには施設整備費ということで重点的におろすという形はあると思うのですね。それでゴールドプランが一応の整備をされた、そこでいわばナショナルミニマム的な最低限の整備ができた、あとは運営だというような部分になってきたときに、さらにこの先は、かなり市町村において違う金額で落ちていくのですか。すなわち、格差をそこから生じさせないような形でいくのか、あるいは格差は認めるというお考えなのか、その辺はどうなんですか。
  52. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 介護サービス基盤あるいは介護サービスの給付そのものが一定の水準を得た上で、それぞれの地域における格差と申しますか、あるいはその地域における事情、あるいは地域における首長さんの熱意といったようなものによる差というものがあっていいのかということにつきましては、今回の介護保険制度におきましても、いわば地域における特別給付という形での対応というものは一応考えるようにいたしております。  ただし、そこは、財源という意味で申し上げれば、全国民で集めたような財源をそこに使うということになれば、みずからの意思でみずからの自治体のいわば住民の負担においておやりになる分にはそういうことになるわけですけれども、ほかの地域でいわば集められた保険が、その地域が意欲的なためにそこに入っていく、そこに上乗せに入っていくということについては、今のようなことからいうと納得が得られないのだと思いますので、やはりいわゆる特別の給付という形で保険者ごとにやられるものについてはその保険者の財源をもってやるということになってくるだろうということで一応制度を今考えているところでございます。
  53. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 医療保険について、これもまだ法案が付託されておりませんので本番での議論になるのだと思いますけれども、二点ほど御確認をさせていただきたいのです。  国民医療費の伸びを国民所得の伸びの範囲内に抑えるということを一つ政策目標としてこられたというふうに思います。厚生省は今後もこの目標を掲げていくお考えなのか、この点はどうでしょうか。
  54. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 この目標を掲げてきましたけれども、現実には私は難しいと思います。こういう低成長になってくると、そういう目標があっても、近い将来、国民所得の伸びよりも医療費の伸びの方が全然大きいというのはだれが見ても明らかな状況だと思うのです。  そういう目標があるということを見ながらも、できるだけ国民負担というものを考えながら調整していくということが必要ではないか。厳密に国民所得の伸び以内に医療費を抑えるというのはやはり難しいということを私は認めざるを得ないと思います。
  55. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 現実問題として難しい、経済成長がだんだん低下してきていますから難しい、高齢化が進んでいくから当然医療費の方が上がりが激しいだろう、それは現実問題としてそういう見込みだと思うのですけれども、一応政策目標として、確かにこの下に下げるのだということは目標として掲げてこられたけれども、では、逆に言えば、できるだけ近づけようとしておられるのか、あるいは下がらなくてもそれと同じぐらいのラインにしようというお考えなのか、この辺はどうなんですか。
  56. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 この目標自体、やはり経済の伸びと医療費の伸びとのバランスの問題になるわけでありますが、結局それは、国民医療負担、これが過重になることを避けようということで設定してきた目標だというふうに思います。  そういうことを考えますと、これからますます高齢化社会の中で国民負担というものをできるだけ適正なものにしていく必要が出てくるわけでありますから、そういった意味で、厳密に経済の伸びの範囲内にとどめていくということはなかなか難しいとしても、やはりこの目標に沿って今後の医療費の安定化というものを図っていくべきではないかというふうに考えております。
  57. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 局長、重ねてお尋ねしますけれども、平成四年度から七年度まで、国民所得の対前年度の伸びは平均一%だったかと思うのですけれども、国民医療費は五・七%だったというふうに思います。大変大きな格差になっている。これは財政制度審議会の資料の中にそういうふうに書いてありました。  今の話の中でいくと、例えば国民医療費の伸びを経済の伸びと見比べながらとは言わなくても、では、逆に言えば、国民医療費の伸びを対前年度で何%以下ぐらいに抑えようというような数値的な目標はお考えになるのですか。
  58. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 この平成に入ってからの経済の不況というもの、これはかなり厳しいものがあるわけでありまして、そういった中で、医療費の伸びは従来と同じぐらいのレベルで伸びておる、そういった意味では近年におけるギャップというのは相当大きいわけであります。  この医療保険制度の財政運営をどういうふうに考えるのかというのがもう一つあると思いますが、これは、平成四年の医療保険制度、健康保険制度の改正の際に、いわゆる中期的な財政運営というものを考えていくべきではないかということで、現在の健康保険法の中に、五年程度の中期的なタームで財政というものを考えていったらいいのではないか。そういった中で、景気のいいときと景気の悪いときは当然あるわけでありまして、そういうような状況を見た場合、医療費はおおむね景気の変動に余り影響されない。そうしますと、景気のいいときにはむしろ剰余金が出る、それから景気の悪いときにはマイナスが立つということになるわけですが、それらを五年ぐらいの中期的なタームで見た場合におおむね均衡を図るような保険料率なり、そういったものを見通しながら運営をしていくのが適当ではないか、こういう仕組みにしていただいておるわけであります。  ただ、昨今の経済が非常に落ち込んでしまったというようなことから、そういうような運営がうまくいかなかった、そのために今日の健康保険の大幅な赤字という状況になっているわけですが、経済の基調というものがこれからもう少しよくなっていくだろうというふうに思いますし、そういった中で、医療費との間では当然ギャップは出ると思います。  やはり今回の制度改正もそうでありますけれども、老人保健制度を含めて、現行医療保険制度そのものについても、その辺の調和が図れるようなシステム改善していこう、そういうことでありまして、具体的に何%でおさめるとか、そういった目標を今の段階で持っているわけではございません。
  59. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 よくわかりました。  大臣、もう一つ医療保険関係お尋ねなんですけれども、公的な医療保険の給付対象を見直して、公的な医療保険は基礎的な医療サービスの給付に限ったらいいのではないか、それ以上のものについては多様な選択肢の中から患者自身が選んでいただければいいのだ、建議書の中でも例えば風邪とかは保険の対象外にするとかというような言い方もありましたけれども、こういう考え方にはくみするお立場なんでしょうか。
  60. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 公的な医療については、今後とも適切な医療が施されるような体制を残しておきたい。そして、どこが要らない給付か、どこが要る給付かという選別は、私は現実に難しいのではないか。これは、中には、風邪なんかは給付から外せばいいのではないかとか、あるいは特別な問題については保険から外せばいいのではないかという議論がありますけれども、この点はもうちょっと議論が必要ではないかな。実際の問題として、適切な医療ということを考えると、公的給付を外すというのは大変難しい問題だというふうに考えています。
  61. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 歳出削減で聖域をつくらないという政府のお立場のようなので、医療保険の給付についても聖域を設けずにチェックをされるのかなというふうにも思いました。  医療保険の中で現金給付をしている部分の見直しも私は必要だというふうに思っているのですけれども、これも医療保険制度の中で、法案審議の中でもう少し議論を深めさせていただきたい。でも、今のお答えの中でいけば否定的なお考えだというふうにお受けとめをさせていただきました。  一点、質問通告しておりませんで申しわけありませんけれども、新しくできます医療保険構造改革審議会という形になるわけですが、この審議会の議論は公開でしょうか、あるいは議事録は名前を入れて公開をいただけるのでしょうか。
  62. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 今回改革をお願いしている中で、余り目立ちませんけれども、審議会を改組して新しく、仮称でありますけれども、医療保険構造改革審議会というようなものをつくり、そして抜本的に対応していきたい、こういうふうに考えておるわけです。これは、従来のいわゆるそれぞれの利害を背負った形の委員の方々で御議論いただくというのにはどうしても限界があるわけでありますから、そういった意味で、相当国民的な視点で御議論をいただく必要があるだろう、こういうふうに考えておるわけであります。  委員会の構成等については、もちろんこれからのお話でありますけれども、こういった新しいシステムの中で、そして国民的な議論をお願いしたいというふうに考えておるわけでありますから、そういった意味では、議論についてはできるだけ世の中に公開していくような方向で考えるべきだろうと思います。  ただ、どこまで氏名を、例えば議事録等についてもどこまで氏名を具体的に載せてやっていくのか等々については、新しくできます審議会の中で御決定いただくというのがやはり一番民主的なルールだろうと思いますし、私どもとしては、広く国民的な御議論をお願いするという意味では、公開してもたえられるだけの見識のある方々に参画をいただきたいと思っておりますが、これは審議会でお決めいただくのが一番ふさわしいのではないか、このように思っております。
  63. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 高木局長、審議会にお入りになる方は当然見識がおありになるわけであって、その方たちの顔ぶれを見て公開するしないという話じゃない話でしょう。要は、新しい負担を求めていくという形の中においてはまさに国民的な議論が必要である。審議会の最後の結論だけが出てくるのではなくて、どういう議論があったのかということは、氏名の公開はなかなかお立場がそれぞれおありになるから難しいのかもしれないけれども、単にマスコミ用のブリーフ、概要だけが出てくるのではなくて、せめて議事録は、名前の部分は議論があるとして、私はお出しをいただきたい。そうでないと、三年先の新たな、本当の抜本的な医療保険改革というものにはかなり無理が出てくるのじゃないか。  大臣、どうなんでしょうか、大臣はどういうお考えでしょうか。
  64. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 これは、私は原則として公開すべきだと思います。結論だけじゃない、審議の過程が大事だ、そう思っております。
  65. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 ぜひその方向でお願いをいたしたいと思います。そうでないと国民がついていけないというふうに思います。  年金の問題です。  大変広範囲にわたって申しわけありませんけれども、年金の問題として、予算委員会でも取り上げられておりました社会保障・人口問題研究所が出しました「日本の将来推計人口」、ここでかなり人口構造が変わっていくということが明らかになったわけであります。社会保障、特に年金に対してこの将来推計人口に示されているデータでどのような影響が出てくるのであろうか、大変心配をしているのです。  そこで、お尋ねをいたします。最終保険料率は相当程度上昇すると見込まれるというふうに厚生省の資料にお書きでございますけれども、最終保険料率はどの程度になるというふうにおっしゃっておられるのか、前提条件を込めてぜひお知らせをいただきたいと思います。
  66. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 現在の公的年金制度というのは、御存じのとおり、完全積立方式にはよっておりませんで、世代間の扶養という要素が非常に強くなっているわけでございます。したがいまして、出生率が将来どうなるかということが非常に年金の将来にとりまして大きな影響を与えるわけでございます。  今回、新しい人口推計が示されましたけれども、現在の年金財政につきましては、実は平成六年に改正をいたしまして、そのときは平成四年の人口推計に基づいて年金財政が設計されたわけでございまして、そのときは、御存じのとおり、将来人口推計、一・八に回復をする、こういう前提に立っておったわけですね。したがいまして、今回それが一・六一ということで、将来人口、出生率が非常に低下する、こういうことでございますので、現在、これがどのような具体的な影響を与えるのか、保険料にどのくらいはね返るのかということを試算しておりまして、いずれ近い機会に公表したいと考えております。
  67. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 重ねてで済みません。近い将来とはいつごろになるのでしょうか。コンピューターの計算はいつごろ終わりますか。一円単位の話でなくていいわけであって……。
  68. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 そんなに遠いことを考えておるわけじゃございませんで、三月中ぐらいには出せるようにしたい、努力したいと思います。
  69. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 ぜひよろしくお願いいたします。  もう一つ、細かな質問で申しわけありませんけれども、今の保険料率でもし据え置いたとすれば、将来の給付額というのはどの程度になるというふうに見込まれるのでしょうか。今のこの新しい人口推計を前提に考えたときに、これはどのぐらいの割合になるものなんですか。
  70. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 これは現在、御存じのとおり、労使で一七・三五%ということに厚生年金保険料はなっておるわけでございますけれども、これを据え置くということになりますと、これはあくまで平成四年の人口推計を前提ということでございまして、これを前提といたしましてこの保険料率を一七・三五%の水準に据え置いた、こういう仮定を置きますと、将来の給付水準というのは現行の約三分の二程度になるのじゃないかということを考えております。
  71. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 現行の水準、金額でいきますと幾らになりますでしょうか。今の水準は幾らで、それの三分の二になるという数字、金額の方を教えていただけますか。
  72. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 現在の年金水準というのは、平成六年改正によりますと、四十年加入、こういうケースですけれども、夫分、妻分合わせまして合計が月額約二十三万ということになっておりまして、この二十三万の三分の二程度になるのじゃないか、こう見込まれるわけでございます。
  73. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 細かな数字で済みません。二十三万円というのは、今働いておられる方たちの平均の賃金水準からいくとどの程度になっていると考えていいのですか。
  74. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 これは、現役男子の平均標準報酬月額が三十四万ということでございまして、これを前提にしているわけでございます。
  75. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 ちょっと計算機を持っていませんので、そうすると、三十四万円というものがあって、そのうちの二十三万円を今もらっている、その二十三万円のさらに三分の二ぐらいになるだろうという計算ですよね。半分ぐらいになるという感じでございますか。わかりました。  それで、いずれにしても年金改革の先延ばしというのはどうしても高くついてくるだろう、平成十一年の再計算ではありますけれども、今からやはり方向性を考えていかないといけないのではないかと思うわけですね。  そういう意味で、今回の将来推計人口が出ましたので、三月いっぱいでコンピューターを回していただくという形なわけですけれども、いろいろ考え方があると思うので、ここも議論だと思うのですね。それぞれ人によって違ってくる。私は、実は今の保険料率を据え置いてもいいのじゃないかというようにも思うのですけれども、大臣としては――今後いろいろなやり方がある。今後も保険料率を上げていくのだという形もあれば、あるいは給付水準を下げるのだという形もある。支給開始年齢を、今六十五になりましたけれども、さらに六十七に下げるとか、諸外国並みのことも考えられる。あるいは保険料率を据え置く。いろいろな選択肢が多分出てくると思うのですけれども、厚生省あるいは大臣としては、その辺はどの辺で見切りをつけて考えておられますでしょうか。
  76. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 年金の場合は、給付水準をどうするか、保険料負担をどうするか、支給開始年齢をどうするか、公費をどの程度にするか、この組み合わせしかないと思いますね。  今の少子化の傾向、働く世代の動向を考える、と、このままの給付水準、支給開始年齢を維持するとなると、若い人の負担と企業の負担が大変重くなる。ということは、経済成長を図らないと福祉充実はできません。経済成長を考えると、働く世代負担とか企業の負担をこれ以上求めていくとなると金の卵が死んでしまうことにもなりかねない。ということを考えますと、私は、現在の保険制度を維持していくのだったらば、ある程度給付水準を下げるしかないのだなと。これ以上給付を上げるとなったら若い世代が悲鳴を上げるのじゃないか、あるいは、もうこんな増税は嫌だという形で逆に経済成長を阻害する要因にもなってくるのじゃないかと。  ですから、時間をかけて、どの程度の給付が適切か、負担が適切かというのは大変大事な問題になってくると思います。今大体、給付が現役の七割ぐらいですか、このままの負担だと五割になってしまうということになりますけれども、何割がいいかという問題は別ですけれども、ある程度給付を下げるのがいいか、支給開始年齢を上げるのがいいか、負担を引き上げるのがいいか、税を投入するのがいいかというのは、今後、年金制度改革を考える場合に、どれもこれもいい話題ではありませんけれども、避けては通れない課題ではないかなと思っております。
  77. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 やはり避けて通れない課題だと思うのですね。その意味でも、国会でいろいろ審議をして、こういう考え方もあるじゃないか、こういう考え方もあるじゃないかと、これは自民党だからあるいは新進党だからという与野党の話ではなくて、議員一人一人が国民の代表として判断をしていかなければいけない問題だと思います。  今のお話を聞いておりましても、結局、話はもとに戻っていく。基礎年金の部分の国庫負担率を幾らにするのだという話も含めて、年金制度そのものが、従来のような積立型ではなくて、完全に賦課方式になってきている。五十年の中において制度は完全に変質しているわけですね。そういう意味において、消費税の部分も含めて、税でいくのか、保険料でいくのかというあたりはやはり議論をしないと、実は年金の話でも議論をしないと私はいけないと思う。従来から保険でやってきたのだから引き続き保険でやっていけばいいじゃないかという話は、私は、ちょっと無責任、結果としてそうであったとしても、議論そのものはやはり要るというふうに思っています。そういう意味で、ぜひ今後とも議論をさせていただきたいというふうに思います。  時間の関係がありますので、年金福祉事業団のことで、予算委員会で余り御質問がなくて、きょう初めてあったのかなというような感じもします。  先ほど大臣のお考えはよくわかりましたので、お聞きする前に、一つは、事務方で結構ですが、この年金福祉事業団自主運用平成七年度末で一兆円の赤字になっているというふうに思いますが、平成八年度の自主運用事業の収支の見込みはどうなっているでしょうか。
  78. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 現在まだ年度途中でございまして、これは例年、三月末時点で締めて、七月ぐらいに一般に公表しているわけでございます。何分、相場が毎日非常に変動しておりまして、現在の時点で幾らの赤字なり黒字なりということは申し上げられないわけでございまして、そこは御容赦いただきたいと思います。
  79. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 承服できません。今、もう二月半ばですよ。ずっとこの間までやってきて、今から大きな変動要因が起こるということはあり得ないと思う。だから、少なくともこれぐらいの赤字は出るはずだというのは見込みとしてお持ちだと思います。それがなかったら、私は余りにも運用がずさんだというふうに思いますけれども、お答えください。
  80. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 これは、相場環境を見ますと、平成八年度、必ずしもよくないわけでございまして、低金利が引き続き続いておる、それから株式市場が年明けからまた一段と下がっておる、こういう厳しい状況があるわけでございます。  ただ、一方では、外物といいますか、外国株、外国債券、こういったものは非常に順調でございまして、そういうものを差し引きましてどうなるかというのは現時点ではなかなか具体的に申し上げられないのですけれども、ただ、状況といたしましては、かなりの借り入れコスト、これは資金運用部から資金を借りて運用しているわけでございまして、借り入れコストの方は七年なり十年なりの長期固定金利でございまして、なかなか下がらないということが一方でございますので、赤字になるということは現時点でも言えるかと思いますけれども、具体的な赤字の額につきましては、これは年度途中でございまして、現時点では確かなことは申し上げられないということでございます。
  81. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 どこまでいっても、私は今の答弁には承服できません。  大臣お尋ねなんですけれども、財政投融資制度そのものの見直しに絡んで、年金自主運用をもっとふやすべきだという御主張を新聞で見るわけですね。これは年金福祉事業団の話でありますけれども、事務方は極めてずさんな運用をして、今一体どのぐらい赤字になっているのか、損しているのか得しているのかわからない。こういう状況の中で、一番最初に根本先生の御質問に対してお答えになったように、年金保険者に戻ってくるための自主運用をやっているはずなのに、これは残念ながら運悪く赤字が出た。しかし、そこの自主運用をもっと大きくやっていきたいとおっしゃっておられると、私は、こういう状況の中では国民は納得しないと思いますよ。だから、私は、そこをやはりはっきりしていただけるような数字を出すべきだというふうに思いますけれども、大臣はどういうふうに思われますか。
  82. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 この年金の問題は大変重要な問題で、行財政改革の本質にかかわってくる問題だと思うのです。  私自身、年金自主運用を大蔵省に求めておりますが、今の低金利の時代で自主運用をしても、そんなに有利であるとは思わない。むしろ資金運用部に預けた方が、金利は高いのですから、有利にできるのです。しかし、その問題よりも、本質的に、今まで長年やってきた財政投融資制度というのが、年金資金と郵貯の資金、簡保の資金を一緒に扱って、これを有利に確実に運用しなければならないと言っているこの制度の矛盾になぜ気づかないのかということを言いたいのです。  本来、年金を預けている人から見れば、有利に運用してくれた方がいいわけです。郵便貯金に預けている人から見れば、これも高い金利で預かってもらった方がいいということでやってきたわけです。ところが、住宅金融公庫とか特殊法人の借り手から見れば、低い金利の方がいいわけです。その負担は税で、どんどん膨らんできている。  ですから、本来、郵貯というのは国家の信用があるわけですから、預託金利は一番低くていいのです。そうすると、税の負担もなくて、住宅金融公庫初め国民金融公庫も低い金利で借りられるのです。ところが、高い金利の方がいい、年金もある、高くしてきた、そのツケが今どっさり来ている。  本来、年金は高く運用しなければならない。郵貯の預託金は低い方が国民的経済にとってプラスなんです。それを一緒に扱ってきた矛盾が今、財政投融資で出てきている。たまたま今まで金利が高かった、国債の表面利率も高かったからいい。こういう段階に来て、この矛盾が出てきた段階で、私はこれをもっと下げろと。しかも、年金福祉事業団みたいにやらなくていいことをやっている。厚生大臣になったのもめぐり合わせだな、できるところからやろうということで、この年金を有利に運用しなければならない、この問題が大きく全体の行財政改革、財政投融資に絡んでいるからこそ、単に年金を有利に運用するために自主運用を主張しているのじゃない、根本的な制度の矛盾をはらんだものをもっと公にさらして、議論してもらって、これから行政改革、財政改革に取り組まないと、とんでもない負担を現世代も将来世代も負うことになる、それを避ける手だてを真剣に考えるべきじゃないかということで、年金福祉事業団のあえて廃止と。  今、預託金利、つい先ほども大蔵大臣から何とかならないかという電話がありました。何とかならない、だめだと言って返事しておきましたけれども、この矛盾はだんだん拡大していけばもっと国民が気づいてきて、本質的な行財政改革につなげていければなと私は思っております。
  83. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 連日の審議の中で大変お疲れの中、一問一問に御丁寧にお答えをいただきましてありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いします。  質問を終わります。
  84. 町村信孝

    町村委員長 桝屋敬悟君。
  85. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 引き続き新進党から質疑をお願いを申し上げます。  私は、今の大臣と山本委員議論を聞いておりまして、ぜひ引き続き私も介護保険等の議論に参加したいという思いに駆られているわけでありますが、本日私に与えられました使命は、何といいましてもあの特別養護老人ホーム等に係ります、施設整備に係ります一連の不祥事、この問題をどうしてもこの厚生委員会でもやらせていただきたい、こういうことでございまして、お疲れのところ恐縮でございますが、よろしくお願いを申し上げます。  先ほど根本議員さんが議論をされておられるのを聞いておりまして、私もつくづくと思いをいたしたわけであります。すなわち、特別養護老人ホーム等がもうかるというような話をお出しになりました。そんなことはとんでもないという御説明もあったわけでありますが、本当に、今回の事件を通じて、特養等施設福祉施設がもうかるなんという話があること自体が私は大変な衝撃でありまして、だれが言っているのだろうということを随分私も憤りを持って考えました。そんな話があるはずがない。ところが、根本議員の方からいみじくも、特養はもうかるのじゃないかという話があるがどうかという話がありまして、根本議員に、一体だれが言っているのだと私は聞いてみたい心境なのであります。  自民党さんも相当調査をされたようでありますが、新進党におきましても、厚生省疑惑解明・改革プロジェクトチームをつくりまして鋭意検討しているわけでありますが、私どもの方はまだ終わっておりません。これからでありまして、しっかりと、介護保険議論と同時に、こういう問題は二度と起きないように私たちも汗を流していきたい、こう思うわけであります。  そこで、羽毛田局長に、質問通告をしておりませんが、先ほどの根本議員の話を聞いてどうしても聞きたいということでお尋ねするわけでありますが、特養がもうかるなんという話を一体だれがしているのですかね。一番もとはだれなのかというのを、もし御存じだったら教えていただけますか。わからなかったら結構です。
  86. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 私も具体的にだれそれからもうかるということを断定的に伺ったわけではありません。ただ、いろいろ報ぜられるところでは、少なくとも今回、いわゆる彩福祉グループがそういう形でもうけたのではないか、福祉でもうけたのではないかという形での報道なり、あるいはとらえる方なりというものを私もいわば肌で感じました。  しかし、あの彩福祉グループに限って申しましても、先生お話しのことに即して言えば、あれでやはり三十一億からの借金事業団にしているわけであります。したがって、それは当然、本来ならば返さなければならないですから、あれでももうけが出るわけはありませんので、私も、先ほど申させていただきましたように、もうかるなどということはないというふうに私どもも考えておりますということを申し上げさせていただいた次第でございます。
  87. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 私がお尋ねしたがったのは、だれが発信源なのかということをお聞きしたがったわけでありますが、私も、よもやそんな人がいるとは思っておりません。今局長から御説明がありましたように、実際にあの一連の事件を見てマスコミからそういう声が出たのかなと思っておりましたら、実際私どもも現場に入ってみまして、埼玉や山形に行きまして実際に特別委員会等も傍聴して、行ってみますと、言った人が現にいるのですよ。特養はもうかりますよ、老人マンションよりもよっぽどもうかりますよ、おやりになりませんか、こういうふうに言われた方が確かにいらっしゃる。その証言を聞いてまいりました。  どなたか御紹介しますと、今起訴されております茶谷さん。現実に私が証言として伺ったのは、あの北本特養、小山が最初に手がけた特養の初代園長さん。この人も疑われました。土地を提供して、どこかでどうかしているのじゃないかなんということを言われて、大変に被害をこうむって本当にかわいそうな目に遭っておられますが、この人の話を聞きますと、この人が北本市役所あるいは埼玉県庁へ同じ日に、午前中、市役所へ行って、午後、県庁へ行っているのです。県庁に行って、その場で、不思議なことに茶谷さんがいて、あなた、特養というのはもうかるんだ、シルバーマンションよりもうかるんですよ、ぜひ土地を提供されませんかと、こういう商売をされたわけであります。  私は、ここがまことに――恐らく私は局長御存じだろうと思います、この話は。それであえて、もちろんお立場から言えない気持ちもよくわかります。しかし、このことをとりましても、今回の一連の事件がいかに国民に与える大きな影響があったかということを思うわけであります。ましてやこの茶谷さん、衆議院の候補までおなりになって、幸いにも私どもの同僚が一緒に戦って勝つちゃったからよかったようなものの、政治とのかかわりも見えるわけでありますから。  現実にこの委員会の場で、そこへ大臣がいらっしゃって官僚がいらっしゃる、我々政治家がいる、みんな一生懸命議論しているように見えるけれども、おまえら、みんなでいいことをやっているのじゃないか、こういう国民の声が、本当に厳しい眼がこの委員会に寄せられているのだと私は思うわけでありまして、そんな思いから、幾つかこの一連の福祉特養等に係る問題について質問をさせていただきたい。  最初に、大臣お尋ねをしたいのですが、先ほども出ておりました行政改革との絡みでございます。  今回の事件の背景、単に厚生行政上の施設整備事務の不備というようなものが、もちろんそこにも幾つかの問題があったわけでありますが、私は、何といいましても、何でもかんでも中央で決定をしてしまう、こういうすべての権限を中央が持っているというような、我が国行政の長い歴史の中で培われてきた、そんなところに大きな問題があるのじゃないか。そんなところから天の声が聞こえてくるようなことが言われているわけでありますから。特に厚生行政だけではなくて、政府全体として、今回の事件も、大きな事件でありますから、教訓にしていただいて、特に地方分権、あるいは権限と財源を地方へ移譲するというようなことも含めて、この事件を本当に教訓にしていただいて、現在総理が取り組まれておられます行政改革会議の大事なポイントにしていただきたいと私は思うのでありますが、大臣としてどのように取り組まれているのか、最初にお伺いしたいと思います。
  88. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 行政改革というのは橋本内閣の最大の課題でありますし、また、地方分権の推進も同様であります。  今回の特養施設仕組みを悪用した厚生省不祥事に絡みましても、選定基準にしてももっと透明化せよとか、あるいは地方と国の役割、基準というものをもっと明確にせよという議論が出ました。その方向に沿って、この不祥事の反省をしながら、いろいろ今後とも改善措置を講じて、同時に、地方分権というのは別に厚生省だけの問題ではありません、国全体、内閣全体の問題でありますので、地方分権を進めていった方がこれからのいろいろな地域の住民の要望に対してもこたえられるのじゃないか。行政改革、地方分権の推進というものをあわせながら考えていく必要があるのじゃないかな、そう思っております。
  89. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 ちょっと具体的な話になって恐縮なんですけれども、私は今はどうであるかつぷさに承知をしているわけではありませんが、一連の施設整備の事務にいたしましても、特に私も現場に行って感じたのですが、法人認可あたりはもう現場におりてしまっている、県に皆任せているわけでありまして、ただ、施設整備については国庫補助金がありますから、恐らく、分厚い補助金の申請書を持って地方が一生懸命上がってきて、そして国からいろいろ指導を受けながらやっていくというような形がいまだにあるのではないか、私は、もうそんなものは現場に任せてしまって、現場に思い切り権限を任すというようなことも、先ほど大臣がおっしゃいましたように、仕事を離さない限り人は減らないわけでありますから、これからそうした思い切った改革行政事務の効率化と同時に取り組まなければならないのではないか、こう思うわけでありまして、ぜひそうした視点もこの行政改革の中にお入れいただきたいとお願いを申し上げたいと思います。  さて、厚生省では、昨年には関係職員の処分を行われまして、そして先ごろ、先ほどお話が出ました施設整備業務等の再点検のための調査委員会、この第一次報告書、もちろんこれは実態調査も行われた上で第一次報告書が出ているわけであります。そこで私は、まずこの報告書の概要を聞きたいというふうに思うわけであります。時間に限りがありますので、ポイントを絞ってお尋ねを申し上げたいと思います。  私の素朴な疑問は、あるいは私の固執しております疑問は、あのような事件が、大臣も去年の臨時国会から、あれは特殊な事例だ、めったにあることではないというふうにずっと言われてきているわけでありますが、同じような問題あるいは傾向や構造的な問題は少なからず全国的にあるのではないか、こういう大変な危機感を持って当たらなければいかぬと私は思っているわけでありますが、実態調査ではどういう結果になっているのか、特に法人運営あるいは工事契約上の実務についてどういうふうに実態を把握されたのか、それをまずお聞きしたいと思います。
  90. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 先生お話しの第一次報告を取りまとめるに当たりまして、全国の特別養護老人ホームを経営いたします社会福祉法人等に対しまして、業務の総点検という形で調査をいたしました。その中では、厚生省と大蔵省とが合同で、特別養護老人ホームの、これは平成六年一月以降に建設工事契約をしたものでございますけれども、こういった新設のものについて契約状況についても実地調査をするという形で、ある程度多角的な調査ということも、限られた時間ではございましたけれども、大車輪でやらせていただいたわけであります。  この結果、端的に申し上げまして、確かに、いろいろ法人運営上あるいは契約上につきましては問題点がやはり出てまいりました。そういう意味では、彩福祉グループによるああいうべらぼうな話というのは、これはいわば悪用した特異な事例と言わざるを得ないと思いますけれども、そういうことが起こらないようにするためには、今やられている法人運営なりあるいは契約についてのやり方なりというものについては、今まで以上にきちっとした、もっと適正化を図る余地があるというふうに思ったわけであります。  具体的に一、二申し上げさせていただきますと、法人運営ということで申し上げれば、地域代表という方々がおられない法人が五%弱ある、あるいは、理事会に出席をしておられない理事がおられる法人が八%程度あるというようなことでございました。  それから、都道府県等の監査におきまして施設整備運営に関する業務を行うような理事につきましては、業務運営にかかわるようなことをやっておられる理事さんについては過半数を超えてはならないということがございますけれども、これについてきちっと確認がされているかどうかという点については、これは九五%はされておりましたけれども、五%そういうことの確認がないものがある。  あるいは、利害関係のある理事の方が、例えば契約なんかをしますときに、理事会の決定をするときには議決には加わらないということで、これはそういうことにしているわけでありますけれども、これにつきましても、五%強の部分でそういう確認がなされていない部分がある。  さらに、工事契約の方の関係について申し上げますと、一般競争入札を実施したものが〇・五%、指名競争入札を実施したものが七三・四%、当初から随意契約によったものが一一・六%ということで、さらに、いわゆる丸投げ、一括下請という形のものが二件入っておるというようなことで、一括下請自体は建設業法で一定の条件のもとに認めていることではございますけれども、こういった点についてはあるいは甘い形でやられているのではないか、今の契約のやり方にしましても甘いやり方がされているのではないか、あるいは、私どもの方の法人のそういった契約についてのいわば指導自体が公共工事等に比べて甘いのではないかというような点についての反省というようなものが非常に必要な内容になっておったというふうに思います。  そういった点を踏まえまして、補助対象施設選定段階の適正化、透明化の問題、そういった工事等の契約の適正化の問題、それから社会福祉法人運営の適正化の問題、こういった点にわたっての報告をまとめ、それを実施に移していくようにいたしたというのが第一次報告に至る経過でございます。
  91. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 ありがとうございます。大体概要を伺いました。  最初に私申し上げたように、こうした彩のような問題はないにしろ、同じような傾向、危険性、そうした実態はないのか、こういうふうにお尋ねをいたしましたけれども、やはり、法人運営あるいは工事契約上の実務についても幾つかの問題点が出てきておる。これはまだ調査をする必要があるのかもしれませんが、いずれにしても、そうした観点から改善策をおまとめになったということでございます。  ちょっと気になりますのが、報告の中で、あの彩福祉グループが行った得意わざ、丸投げ、一括下請、もちろん今局長の方から、一定条件のもとではいいのだという話もありましたけれども、改善策の中ではこれは全面禁止ということでしょうから、恐らくあるべき姿としては、あってはならないものなのだろうというふうに私は理解をするわけでありますが、この一括下請、丸投げという事実が二件あったということでございまして、これも大変問題であります。  しかし、私もつぶさに伺いましたけれども、二件というのは、あくまでも把握をされている、現場に行って調査してみた結果、その法人が把握をしている数、下請の状況まで、通常の場合は元請だけで終わってしまうわけですけれども、その先の下請の状況まで法人が把握しているものについて調べたところ二件だというわけでありまして、把握していないものが三百七十九件お調べになったうち九十四件、二四%、約四分の一あるということでございまして、そこの実態はまだ不明なわけですね。  あったかないかわからない、多分ないのだろう、いや、ありませんよということなんでしょうが、私は、先ほどの茶谷さんの話じゃありませんけれども、厚生省の職員が直接かかわったという今回の事件、それを二度と起こさない、そういう御決意であるならば徹底的にうみは出すべきだ、こう思うわけでありまして、あたかも二件しかなかったなんというような、こんな姿勢ではなくて、まだ心配なところがある、徹底的に調べます、これは二次調査でやるのです、こういうことなのかどうか。  今後、二次調査も、最終報告もお出しになるというふうに思うのですが、これも大臣所信では、特養問題は一応整理がついた、後はその他の特養以外の施設について調査をして最終報告をされるというような大臣所信でありましたけれども、私は、整理がついていない、まだ徹底的に調査しなさい、する必要があるのではないか、こう感じているわけでありますが、その点はいかがでありましょうか。
  92. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 今般の実態調査の結果につきましては、概要、御報告申し上げたとおりでございますけれども、意図しましたところは、もう明らかに彩福祉グループでああいう事件が起こっておるわけでございますから、そういったことが特養整備をめぐって起こらないように、今後そういう防止策をきちっと立てるということを主眼にしてやったものでございます。  その結果、先ほども申し上げましたように、いろいろな問題点がやはり出てきた。したがって、それを踏まえまして、今後、むしろこれを改善策という形で具体化していくということがまず大事であろうというふうに思っております。  したがいまして、第一次の報告を一月末にまとめましたので、それを実施に移して、これを都道府県なり私ども自身なりの補助金の交付対象施設の決定の問題あるいは社会福祉法人運営の指導監督の問題あるいは契約に当たっての監視の問題、こういったところに実施に移していくということをまずこれからやっていくことが早急に求められているところだろうというふうに思っております。  そうしたことの中で、もう既に都道府県におきましてもそういったことを踏まえて独自に審査体制を強化していこうという動きもございますから、こういった実施に移す中で、その結果がどういうふうにあらわれてくるかということを見きわめていくということが今後においても大事であろうというふうに思っております。  また、そういった意味での効果のあらわれぐあい、あるいは今回の、実際にそういった把握をしてなかったがためにそこまではわからなかったという先生の御指摘の問題等も含めまして、各都道府県におきまして、この丸投げを含めました実態につきまして、監査を通じて、実態のさらなる把握なり改善の指導なりということを今後ともとらえてやっていくようにいたしたいというふうに思っております。
  93. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 まあ、お気持ちはわかります。将来へ向かってしっかりと改善策をというお気持ちはわかるわけでありますが、もう一回最初の話に戻りますが、ちょっと前までおたくの職員が、特養はもうかりまっせと、こう言われていたわけでありますから。ちょっと前であります。私は、そういう雰囲気が全国に蔓延しているのではないか、この際、本当に二度と起きないようにうみは出し尽くさなければいかぬ、こう思っておるわけであります。厚生省という立場では、全国に対して、今回は特にトップがかかわっているわけでありますから、地方と一緒になってしっかりとうみを出すと言ったって、何言ってるのだという厳しい反発もあるかもしれませんし、なかなか難しいのでありましょう。私ども新進党としても、プロジェクトでしっかりと調査をしていきたい。  そこで、ぜひ大臣にお願いなんですけれども、これは私も克明に調べましたが、調査をされています。その個票を私は開示をしていただきたい。私どもが心配なところは調査をしたい、こんなふうに思うわけでありまして、ぜひこの委員会の場に私はお示しをいただきたい。これをお願いしたいと思いますが、いかがでありますか。
  94. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 調査の実務に当たりましたので、私からお答えをさせていただきたいと思います。  今回の調査は、先ほど目的として申し上げましたように、今後の改善策を行うためのいわば素材を得る、その実態を把握するということを主眼にして調査をいたしました。調査当たりましては、いわば社会福祉法人個々に対して任意の協力を求めてやったわけであります。したがいまして、その際には個々の調査票というものについては公表をしないという前提調査をさせていただいた、そういうことで調査に応じていただいたということもございますので、今回の調査個票をそのまま開示するということにつきましては、それぞれのいわば集計をされた結果については先ほどかいつまんで申し上げましたけれども、出させていただくということについてはそのように対応させていただくことは可能でございますけれども、その調査結果の個票の開示につきましては、今申し上げました、実態調査を進めましたその際のいわば前提条件としてそのように相手側にも申し上げてやっておることでございますので、御勘弁を願いたいというふうに思います。
  95. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 今、実態調査をされた前提が、公表しないということを前提におやりになったということだから公表できないということなんでありましょうが、いやしくも社会福祉法人であります。本当に公益性を持った法人実態でありますから、私は、公表することに何ら問題はないだろう。恐らく多くの法人は、一生懸命おやりになっているところは、出してもらいたい、明らかにしてほしい、あんな悪いのは彩だけだ、こうみんな思っていますよ。ぜひ私は明らかにしていただきたい。できないのであれば、さっきの丸投げ二件というのは一体どこなのか、お示しいただけますか。
  96. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 今回の調査を今申し上げたような前提で進めているということから申し上げれば、その中にございますこの二件につきましても同様ということになるわけでありますけれども、そのうちの一件は、実は、今回の埼玉にかかわる事例の中で、既に県のレベルにおきまして明らかになって公表がされております。したがって、それについては申し上げることができますけれども、これは、いわゆる元請になりましてそのまま一括下請をした会社、例のジェイ・ダブリュー・エムでございました。  ただし、これは彩福祉グループの施設ではなくて、別の社会福祉法人の、つまり、小山がその法人の経営に参画をしていない別の法人の工事を請け負って丸投げをしているという実態でございました。このこと自体、丸投げによるどういう弊害が出ているか等の問題は当然ございますから、引き続きの監視は要ると思います。  あと一件につきましては、これは、いわゆる法人の経営者がその経営者の同族がやっている建設会社に元請をさせたというようなケースでは全くございませんで、したがって、ジェイ・ダブリュー・エムでもございませんで、法人運営とは全く関係のない工事会社が一括下請という形でおろしている、その手続に当たっては建設業法上の発注者の文書による同意というものがなされておるということで報告をいただいているものでございます。  ただし、これにつきましても、今後、先ほど先生の御指摘にもありましたように、私どもとしては一括下請というようなことを特別養護老人ホーム建設に関しては少なくともする必要はないだろうという踏み切りをしているわけでありますから、そういう意味においてよく調査をしなければならないというふうには思っております。
  97. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 ジェイ・ダブリュー・エムについては既にもう有名な名前でありますから、ここへすべて悪を押しつけるという、そんなイメージがどうも伝わってきてしようがないのでありますが、ぜひ大臣、お願いを申し上げたいと思います。  前提条件で、調査のときには公表しないと。私も文書を見せていただきました。実は、私どものプロジェクト、全国に展開をしておりまして、各県議会や市町村議会や現場での調査もやっているわけであります。そういう現場との情報交換をいたしますと、厚生省実態調査をされた、それはぜひ県段階でも見せてもらいたい、そうすれば、やはりこれはおかしいというのはすぐわかつちゃう、したがって、全部を公表するわけじゃないのですから、本当に一生懸命この問題に取り組むところについては見せていただいてもいいじゃないかと。そして、聞きましたら、いやいや、これは前提として、さっき言われた、公表しないということが前提だ、だから本当のことを書いてください、こういう文書が現場に行っているのですよ、公表しないから本当のことを書きなさいと。公表するのだったら本当のことは書かないのかもしれませんけれども、まことに国民の目から見ると不安になるわけであります。  新進党はこれからも、この問題はまだ終わっていません、取り組みます。どうか大臣にお願いをしたい。必要によっては、全部は我々も開示はしませんから、個別ケースついては情報公開に乗っていただきたい。お願い申し上げたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  98. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 今回の件は、公表しないという信頼関係があるものですから、それをまた公表するということは信頼関係を傷つけるから難しいと思うのでありますが、当然、公益法人ですので、問題があればそれぞれの都道府県レベルで調査をなされているところもあると思います。問題ごとに御意見を聞いて検討していきたいと思います。
  99. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 御協力いただけるかどうか、全く理解ができないわけでありますが、時間がありませんから次へ参ります。  今の局長の話の中で、丸投げもそうでありますが、法人運営実態、八%程度の法人において、これは数で二百ぐらいでございますが、理事会が形骸化している可能性があるというような、こんな御報告もありました。ここも大変に危惧を感じております。  私ども新進党のプロジェクトにも全国からいろいろな情報が寄せられております。その情報をずっとつぶさに見ますと、法人理事長あるいはその手が、これは私の施設なんだ、私の法人だというような、こういう考え違いをされて本当に恐意的な運営をされている、そして下の職員はみんな苦労をしている、こういう報告も伺っております。そうしたことを考えますと、やはり適正な運営を指導するためには、厚生省におかれましてもぜひ頑張っていただきたい。  ただ、さっきの大臣の話じゃないが、仕事をふやすとまた頭数もふやさなきゃいかぬということになるわけで、大変苦しい話でありますが、現在、厚生省におきましては、社会福祉法人指導監査指導要綱、いわゆる指導監査を県本庁あるいは県がやられているというふうに承知をいたしております。現場においては、施設法人の指導監査が行われております。しかしながら、これがどれだけ本当に現場の不祥事に対して効果を持っているのか、本当に指導が行き届いているのかということが大変気になるわけであります。  今回、私ども埼玉県本庁に行きましたら、県本庁の方が正直に言っておられました。十三人で千以上の法人施設を指導監査をしております、とても手が回りません、こういう率直なお話も伺ったわけであります。  それが証拠に、現に彩福祉グループについて、先ほど話が出ました北本特養には、北本特養平成六年の三月二十五日に開設しているのですが、そのすぐ直後に、平成六年の八月三日に指導監査に県が行かれています。同じく、吹上町にあります吹上苑、ここも、平成七年の三月一日に開設でありますが、すぐその直後、平成七年の六月八日に一般指導監査に入っているのです。県が監査に行っているのです。それで、今日の事態というのは全然何にも気がついていない。幾つかの指摘があったことは確認しました。法人運営が、理事に欠員があるよとか、どこの施設でもよくあるような一般的な指摘事項で終わっているわけです。今日の問題を把握するに至っていなかった。ここは大変に残念であります。  そういう意味で私は、まずお伺いしたいのは、埼玉県で、例の彩の問題は県が一般指導監査に入った、それで今日の問題を明らかにすることはできなかった、このことは承知しておられますか。
  100. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 残念ながら、今日の事態、ここまでになっているようなことにつきまして、県もそれが把握できなかった、国も同様にそこについて思いを至らぬまま補助金等を出してしまったというこの結果につきましては、私どもも十分責任を感じていますし、そういう意味での指導監査体制が十分であったかということにつきましては、私どもも反省をしなければならないというふうに思っております。  ただ、そこについて、今先生おっしゃったように、このあれのときになかなかそういう監査の体制充実ということが難しい、一方において人員をできるだけスリムな行政にしていくということの中で難しいということも事実でございますけれども、そうした中でどういうポイントを指導していくか、監査していくかというようなことにつきましては、もっと重点を置いた形に持っていかなければならないというふうに考えております。  そして、今回の改善策に即して具体的に申し上げれば、今までいわゆる措置費という形で運営費が流れているという側面から実は指導監査をいたしておりましたけれども、そういう意味では、施設整備が行われますと、施設整備が行われて一定期間たった後にむしろ行くというような形での監査をいたしておりましたけれども、今回の事態にかんがみまして、施設整備そのものについての補助金というもの、補助事業についても直接の指導監査の対象にするという形で、ここに少しウエートを置いた、めり張りのついた監査の方に持っていきたいというふうに思っておるところでございます。
  101. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 今の埼玉の事例、一般指導監査に行ったけれども実態を把握できなかった、今の今日の問題は発見できなかった、私、ここが本当に不思議な気が現場に行けば行くほどするわけですね。恐らく私はぴんときただろうと思いますけれども。これは本人に聞いてみないからわからないのですが、一般の感覚だったらわかるのですね。ところが、よくよく考えてみると、本庁の課長には茶谷さんがいるわけですから、どんなものが出てこようとどうにもならぬ、こういうことになるわけでありまして、現場に行った職員を責めるわけにはいかぬとそこは思います。  ただ、今局長、これから措置費だけではなくて、施設整備補助金の流れについてもやりますよ、こうおっしゃったけれども、大丈夫ですかね。ゴールドプランから特養はばんばん今できているでしょう。これもちょっと数をお示しいただきたいのですが、ゴールドプラン以来年間一万床ぐらいですか、もっと多いときは一万五千ぐらい、そうしますと二百から三百、全国で施設ができるわけでありまして、恐らく各県とも施設整備を担当しているのは一人か二人ですよ。それで必死になってやっている中で、果たして施設整備補助金まで手がつくのかという気がいたします。  そこでまずお聞きしたいのは、もともと今、法人監査、施設監査は年に一度やる、こういうことになっていますね。それで、これはどうなんですか、どのぐらいできているのですか。もちろん合理化されていると思います。そこは十分理解した上で聞くのですが、実際に現地へどのぐらい行っているのか。実施率、その辺の数字もお示しをいただきたいと思います。
  102. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 今ちょっと手元に端的な資料は持っておりませんけれども、やり方につきましては、年に一回、社会福祉法人へそれぞれ行くということを原則にしてやっております。  ただ、先生先ほど御指摘の点もかかわるわけですが、いわばぴんとくるというそこの部分というのは案外大事だというふうに思います。私どもも、それぞれベテランが県におられ、それぞれの現場をやっておられるわけですから、そのときにぴんとくるということで申し上げれば、そこのところの指導のやり方もめり張りをつけて、ずっと特に問題のない施設については例えば書類によってやる、しかし、これはちょっと重点的にやらなければならないというところについてはむしろ手厚くやるというような工夫というのはやはりやっていかなければならないであろうというふうに思っております。  ただ、そうはいっても、それがもともと悪意で妙なふうにゆがんでしまえば、これはもう何をか言わんやでございますけれども、そうでない限りは、そういったようなめり張りのついた監視というようなことも必要であろうというふうに思っております。
  103. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 今まさに局長の――局長、ちょっと私の顔を見て聞いていただけますか。一番大事な部分なんでありまして。  指導監査は、今回議論になっているように、社会福祉の各制度、これは国の通知、要綱に至るまで、私は確かに性善説で成り立っていたというふうに思います。今までも幾つか不祥事がありました、措置費の流用の問題とかいろいろなことがありましたけれども、基本的には悪用するような人はいないと性善説に立っていたわけでありますが、今回は厚生省のナンバーワンの事務次官がかかわり、しかも出向の課長がかかわり、しかも社会福祉法人をやっている、社会福祉事業をやっている人がかかわった、悪いことをやったわけでありますから、しかも前代未聞の、埼玉県で六つの施設をつくって十八億も抜くというような、十八億あったら、私の地元だったら施設二つできますよ。こんなことをやっているわけでありますから、現にあったということを前提に、私は、性善説だけではもうこれからは、例えば今後は介護保険をして介護保険福祉の業務が大幅に広がっていくというこういうことを考えますと、単に性善説だけではなくて、しっかりとした点検をしていただきたい、危機感を持ってやっていただきたい、悪いことをする人間はいるということも考えていただきたい、そこは抜本的に切りかえるべきであろう、このように思うわけであります。そういう意味で、私はぜひ合理的な運営をお願いしたい。  そこで、皆さん方がおまとめになった「今回の事件を踏まえた改善事項」、これはまことによくできているのですよ。さっき根本さんからも話がありましたけれども、一が「補助金交付対象施設決定方法の明確化」いわゆる入り口部分、どういう人に福祉事業をさせるかという問題。二番目が「公共工事に準じた建設工事契約の適正化」これは施工時の問題。それから三番目が「幅広い関係者の参画による公正な社会福祉法人運営の確保」これは、大変重要だから法人みずからがちゃんとしなさいよ、襟を正せ、こういう問題であります。入り口部分、そして施工の部分、そして法人もちゃんとしなさいよと。  大事なことは、あとは、チェックをすると悪いことをするやつがいるのだという前提のもとに、ワルは絶対許さぬぞというこういう厳しい姿勢が大事だと私は思うのです。そこはしっかりと、確かに職員の数に限りがある、その中で知恵を出して私は検討していただきたい。そのためには、「4.その他」としてちょこちょこっと②で「施設整備に関する国の監査の実施」なんというような整理の仕方をしていただきたくない。項目を一つ挙げて、チェックもきちっとするぞというものを内外に明らかにしてもらいたい。そういう姿勢が必要ではないか、このように私は思うわけであります。大臣、いかがでありましょう。
  104. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 私は、基本的に性善説をとりたいのです。  一番心配しているのは、こういう仕事に携わってくれる人は、篤志家であり、社会に貢献したいと思う人であろう、意欲のある人であろうという前提にやってきたのが、今回、そうでなかった、大変大きな問題を残したということで、もうかるのじゃないかとか、とんでもないやつがやっているのじゃないかというようなことを前提にすると、善意を期待しなきゃならない、そういうものがなえるということを私は恐れているのです。  私は、今回、厚生省調査委員会が決めた基準を守っていただくならば、また、適切な人がこの仕事に携わっていけるならば、申請者の選定手続もあります、まず間違いは起こらないと思っています。しかし、その上で、監視は必要だと思います。今言った御指摘も踏まえて、適切な監視はどうあるべきか。全部できっこないのです。たくさんある施設法人を、今言われた指摘を全部やれといったら、役人幾らふやしたってできっこないのです。その点も考えながら、まず善意を期待しながら、今までのこの善意を悪用した仕組みをどのような客観的な基準で正していくか。  私は、まず今回の調査委員会の出した結論を遵守してくれるならば二度と不祥事は起こらない、しかし、そういう中であえて万が一を考えて、適切な監査体制をどうしていくべきか、御意見を踏まえて十分心していかなきゃいかぬと思っております。
  105. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 今大臣お話をここでずっと聞いておりながら、前回の臨時国会で岡光さんを守られておられる大臣の姿がほうふつと思い出されたわけでありますけれども、大臣のお気持ちはわからないことはない。しかし、これからは、大臣福祉もどんどんと民間を参入させて新しいシステムを考えなきゃいかぬというときにありまして、やはり私は、ある意味の危機感もしっかりと持っていただく、悪は絶対に入れないというこの姿勢を一方ではしっかりと持っていただきたい。  そういう意味では、今一項自立でろと僕は申し上げましたけれども、具体的な例を申し上げます。埼玉へ行きまして、驚くべき事実を確認いたしました。  実は、さっき言いましたように、埼玉県本庁が彩に対して二つ法人には指導監査に行きました。行ったけれども、見つけられなかった。見つけられなかったということよりも、今日を予測できなかったわけであります。防ぐことができなかった。まあ、もう事件は進んでいたわけでありますけれども。そのときに、これは私は該当する市に行って聞いてきました。県本庁が指導監査にいついつ来ましたけれども、あのときにおたくは一緒に行かれたのでしょう、あんたらも見抜けなかったのか、こう聞きました。いや、それは知らなかった。うそを言っているかもしれません。うそを言っているかもしれませんが、県が来たということを全く認識がなかった。指導監査をやるときには、今の施設というのは特養で、一つだけではありません。必ずデイサービスがあり、ホームヘルパーがあり、ショートステイがあり、在宅三本と必ず密接に連携し、地域のまさに在宅福祉の拠点として運営されているわけでありますから、そういう意味では、県が指導監査に行くときには必ず市も来る、町村も来る、一緒になって、運営はうまくいっているのか、変なことはないのかといってやるのがごく当たり前だろう、こう私は思っているのですが、わかりません、北本では、いや全く知らなかった、こういうことであります。  こうした点も私は改善をしていただきたい。幾らでもそれは改善の余地があると思うわけでありまして、そういう部分も、厚生省みずからも、官僚みずからも襟を正すような項目を立てていただきたい。最終報告にはぜひ私はそうした項目も検討をいただきたい。お願い申し上げたいと思いますが、いかがでしょうか。
  106. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 今お話しの、指導監査の際に地元の市町村がこれに一緒になって指導監査に加わるということについてでございますけれども、現在は、御指摘ございましたように、必ずしもそういう建前になってございません。これは、建前で申し上げれば、都道府県は、施設開設の認可社会福祉法人認可をいたしておりますから、そういう意味で監督に入る立場でございますけれども、むしろ市町村は、そういう中で、先ほど措置費の使用ということを申し上げましたが、市町村自体が措置をしてその措置費をいわば使う立場ということで、そういう意味での指導監査を受ける立場にこの補助金の面ではなっているということがあって恐らくそういうふうにしているのだろうと思います。  しかしながら、先生お話もございましたように、監査を適正に実施をする、そして、そういう不適正なことが起こらないようにするために、いかに効果の上がる方法でそういうことをやるかという観点からすれば、確かにそういう点での工夫の余地はあるのかなという感じが改めていたしております。したがいまして、その市町村の協力というものをこういう施設の指導監査といったような側面でどういうふうにやっていくか、これから少し検討してみたいというふうに思っております。
  107. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 よろしくお願いいたします。  それで、さっき局長お話で、私、何か頭をごまかされたような気になっているのですが、今、特養あたりはゴールドプランでどんどんできているでしょう。恐らく、年間二百から三百でしょう。これをさっき言われた施設整備内容までチェックするということは、本当に可能なんですかね。実際どのぐらいやろうとされているのか、現実にどのぐらいできているのか、今後どのぐらいしようとされているのか、お伺いいたします。
  108. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 確かに,その全部の施設を、どんどんこれからふえていく、またふえていかなければならない特別養護老人ホームについて手薄な実態でやっていくということにつきましては、非常に困難がございます。そのためには、大臣もお答えを申し上げましたとおり、まずはそういう事態にならないように、言ってみれば、そういう前にきちっと善意が保たれるような方向に制度を仕掛けておくことが大事である。  先生、先ほどの位置づけのところで、あれが最後に来ているということについて御指摘がございましたけれども、そういう意味では、私ども、そういうことにならないように、そういうふうに陥らないための用心としての施策というものが大事であろうということで順序にはそういうふうにしました。しかし、それでもなおかつ、やはりきちっとした監査なり指導というものが大事であるということは論をまちません。  したがって、その際には、今の手薄な体制というものをどういうふうにしていくか。これはしょせん全部のものをシラミつぶしでやるような体制を組むということは無理でございますから、そこは工夫のところとして、現に問題のないものは現在でも書類で、二割ぐらいまでは書類でいいというようなやり方をしていまして、そのかわり、問題のあるところを重点にやるというようなやり方を現在でもやって、そのことによってむしろ問題のあるものの発見ということをスムーズにいくようにという工夫をいたしておりますから、そういった工夫の中で、今までも措置費という意味である程度たてば当然措置費の局面に移ってまいりますから、そういう意味で絶対数が今までの考え方よりもふえるわけではありませんけれども、早い段階で行くというところが今回のあれからいえば新しい業務になりますから、そのことによる業務量のこなし方につきましては工夫をしなければならないというふうに思っております。
  109. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 それともう一点。入り口部分、もちろんこれはやっていただきたい。ただ、私は、最後のフォローまできちっとやらなきゃいかぬということを今申し上げているわけでありますが、実際に現場の施設で、法人施設整備をしたときに一番プレッシャーになるのは、プレッシャーといいますか牽制になるのは、会計検査なんですね。これは実際によく言われていることであります。いいかげんなことをやると会検が来て補助金の返還までかかる、したがって、いいかげんなことはできないというようなことはよく言われるわけであります。  きょうは会計検査院に来ていただいていると思いますが、実際に社会福祉施設整備に関する会計検査は今どのように実施されているのか、会計検査院、お答えをいただきたいと思います。
  110. 中村修三

    ○中村会計検査院説明員 お答えいたします。  厚生省行政分野が広く、予算規模は膨大でございますので、厚生省補助金の会計実地検査では、補助金額が大きく、不適正な事態が見受けられるものに力を入れてきております。  特に、新ゴールドプランに関しましては、特別養護老人ホーム等の運営補助に重点を置いてきておりまして、毎年、不当事項を取り上げているほかに、昨年は、医師の人件費の算定及び入院患者の日用品費の支給等につきまして指摘をしておりまして、決算検査報告に処置済み事項として取り上げております。  そして、特別養護老人ホーム等の施設整備費補助につきましては、従来から実地検査を行ってきておりますけれども、検査の重点が運営補助にあったために、それほどは力点を置いていなかったというのが実情でございます。  今後、特別養護老人ホーム等の施設整備……(桝屋委員「その話はいいです」と呼ぶ)よろしいですか。
  111. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 これは、質問通告するときに、実態、数をお示しいただきたい、こうお願いしたのですが、数もちょっとよくわかりません、こういうお話でございますから、今の御回答のとおり、会計検査もどちらかというと運営費、措置費、それから、さっきの医師の人件費なんというのは、要するに、償還金の財源をどうしているか、変なことがありはしないか、恐らくこういうことだろうと思いますが、会計検査も恐らく最近は、これほどゴールドプランで施設整備がぼんぼん箱物が進む、整備が進む段階においてほとんど手をつけておられない。今、首を縦に振っておられますので、恐らくそういうことだろうと思います。  大臣、整理をしますと、今回の問題というのは、ある意味では起きるべくして起きた。もちろん、岡光さんや茶谷さんがいなきゃなかったかもしれませんけれども、今回の問題というのは、一つは、どんどんとゴールドプランが進んで施設整備が進む、倍々で予算がふえる、あるいは補正、経済対策ということで、大型経済対策で補正を組まれて駆け込み需要をどんどん拾っていくというような煩雑な事務と同時に、指導監査を聞けば、どちらかというと措置費の点検をされておられる。会計検査に聞けば、運営費の問題だ、措置費だ。箱物については本当にぱっくり行政の牽制システムがあいてしまった。あけたのじゃないかと思うぐらいあいているわけでありまして、これほど行政需要が大きくなっているところを手をつけない。恐らく、余り聞きますと、今からやろうと思ったところだ、こうおっしゃるかもしれませんが、私は、そうした中で、今回、まさに施設整備の適正化に目が向いてなかった、片方で施設はどんどんふえている、こういう現状の中で、ここにつけ込んだ不祥事だという整理ができると思うわけであります。  そういう意味では、再度お願いでありますが、入り口部分、それから施設整備の施工時の部分、法人みずからの適正化の努力の部分、もちろんそれは結構でございますけれども、効果的な、合理的な検証ということもぜひ、私は再度お願いをいたしますけれども、チェックをしていただきたい、そして、これだけ頑張っているのだということを、厚生省、胸を張って各自治体にもお示しをいただきたい、このように私は思うわけであります。  この問題ばかりやれませんで、この前、予算委員会で途中になってしまった問題、共同募金会の指定寄附の問題がございます。  ここもどうしても言わなきゃならぬわけでありまして、なぜ言わなきゃならぬかといいますと、さっきから言っていますように、施設整備の牽制システムがぽっくり穴があいてしまった。その中で、どうするべきかということを考えますと、いずれにしても補助金で、補助金やめろと私は思っているのですけれども、補助金施設整備をやる以上ぜひやっていただきたいことは、表の部分で補助金、これは国、県、市町村あるいは市町村の単独かさ上げの補助もあります。単独の助成の部分もあります。そういう表の部分の補助金の部分と、それから裏、どっちが裏か表かわかりませんが、それを表にしますと裏は事業団融資の部分、その法人借金をする、もう一つは指定寄附を受ける、そういうものを全部ひっくるめて初めて施設ができるわけでありまして、その全部を眺めてみて、この施設――しかも、時系的に見るとタイムラグが大分あるのです。その全体を眺めて、本当に適正なのか、妥当なのかということがわかるわけでありまして、こんなことまでやれないということでは困るわけであります。補助金でやる以上、その補助制度が適正に運営されていくかどうか、その全体像の中で点検をしなければいかぬ。  ところが、実際の現場では、施設整備の担当の課、事業団融資の課、共同募金会の指定寄附の審査の部分、みんなばらばらでありまして、全体像が見えないのです。その施設がどういう施設をつくろうとしているのか、審査が十分ではないという実態があるわけでありまして、こうしたことも私はぜひ点検をしていただきたい。そういう意味で、その端的な例として共同募金会の指定寄附の話を私は出しているわけであります。この辺は、局長、いかがでありましょうか。
  112. 亀田克彦

    ○亀田政府委員 先生から今お話ございましたように、確かに、国庫補助金それから事業団融資と指定寄附金、その審査の連携が現状十分ではない、こういう認識を私どもも持っております。  そういうことから、先般、調査委員会報告書が出たわけでございますが、この内容を踏まえまして、法人の設立認可の申請それから事業団融資申し込みの手続、この手続を早めまして、国庫補助協議の手続と申しますか審査と並行してやっていく、こういう形にしておるわけでございます。  先生指摘の指定寄附金でございますけれども、指定寄附金につきましても、今後、共同募金会におきまして、建設工事の契約手続等に関しまして都道府県と連携をしながらきちんとチェックをする、こういうふうにいたしておりますけれども、その都道府県と連携をとる際に、先生からお話ございましたように、国庫補助協議、あるいは事業団融資もございますけれども、その審査がどういう内容だったのかということをよく確かめて、それと合っているかどうかを確かめて共同募金会の方のチェックもする、こういうふうに共同募金会を指導していきたいというふうに考えております。
  113. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 この問題をやろうとしていつも時間がなくなるのでありますが、私は共募だけでやるのも難しいと思います。私は、これはやはり、施設整備全体を進める県というものをしっかりかませて全体を適正に運営するように、そんな体制をぜひ御検討いただきたい、お願いを申し上げたいと思います。  時間がなくなりましたけれども、最後に一点だけお願いをして終わりたいと思います。  この前も予算委員会大臣に若干申し上げました。共同募金の問題も今、検討いただくということでありますから結構でございますが、ぜひ、施設整備だけではなくて施設運営面も、病院給食の問題が出ましたけれども、同じように、今や特養にもどんどん病院給食の世界が入ろうとしています。今、六年度の状態で一割ぐらい、施設は給食業務を外注しています。病院の世界でしっかりとノウハウを得たその勢力がぐっと入ってきているわけでありまして、私は、今後、大変危惧を持っております。ある意味では、給食というのは施設でつくるのが一番いい、こう私は思っているわけでありまして、どうかそういう部分からの指定寄附なんかも、十分運営面も、全部が全部とは言いませんが、ぜひ私は適正化のための検討をお願い申し上げたい。羽毛田局長に最後にお願いを申し上げまして、御答弁があればお聞きしたいと思います。
  114. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 先生指摘のような面についても、これが適正に行われ、それが不当な利益を生むというような構造にならないという意味では、きちっとしてやっていかなければならないという点は私もそのとおりだろうと思います。  ただ、そういった特別養護老人ホームの給食というものをいわば民間に出してそれでいいものができるという状態ができれば、それを基本的に否定していくという必要はないのではなかろうかなというふうに思います。要は中身だろうというふうに思います。
  115. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  116. 町村信孝

    町村委員長 吉田幸弘君。
  117. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 私は、新進党の吉田幸弘でございます。  さきの総選挙においては、医療制度の抜本的改革を公約に当選させていただきました。今まで私は歯科医師をしておりまして、その経験を生かして本委員会にて質問をさせていただきたく存じます。  まず、医療制度改革について大臣お尋ねいたします。  現在、我が国の景気は低迷し、消費税の引き上げが行われる時期に、なぜ国民の大きな負担増加が見込まれる医療保険制度改革を強行するのか、その理由について明確なる御答弁をいただきたく存じます。
  118. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 現在の医療保険制度基本的によい制度だと思っています。国民保険制度、だれでもどこでも必要な医療が受けられるこの医療保険制度を安定的に運営していかなければならないということを考えた場合、財政問題、これが当然出てきます。今後とも安定的に運営するために、適切な医療国民に提供する場合にどの程度の負担が必要かということを考えた場合に、現在の給付と負担の問題というものは避けて通れないという観点から医療保険制度改革に取り組むことになったわけでありますが、確かに、現行制度から比べれば、これから御審議いただく医療保険制度の案というものは、受益者といいますか、患者さんが負担する面が多くなっております。しかし、これから高齢者、また若い世代と考えると、今回のかなりの患者負担になる案も、私はやむを得ない面があるのではないか。  また、これから構造的な改革を進める場合にも、一つの案を出したわけでありますので、薬価基準の問題においても、あるいは診療報酬制度の問題においても、その他地域の医療支援体制、病院あり方、いろいろな問題点が出てくると思いますけれども、そういう問題を議論する場合にも、一つのまとまった政府案を出して御議論いただくということは今後の総合的な改革に必ずつながるという観点から御審議をいただくことになったわけでありまして、これから行財政改革を進める場合において、どの政党も行政改革財政再建は必要だということになりますと、医療だから、年金だから、介護だから、福祉だからといって現状制度を維持するとなると大変な将来の負担になるということを考えて、今からやはり御審議いただこう、あるべき負担を御議論いただこうということで出した案でございます。  消費税の問題も絡んできますけれども、消費税の問題につきましても、四月から五%に上がってこれはまた負担になるといいますが、考えてみれば、もう先行して十一兆円の所得税、住民税の減税をしているわけですから、これは先に減税の恩恵を受けて、今また負担ということはどうかといいますけれども、ではこれを後どうやって財政再建するのかという問題も出てまいります。  そういう総合的な視点から今回の改革案を評価いただければなと思っております。     〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕
  119. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 確かにおっしゃることはよくわかるのですが、医療保険制度改革に伴って、今回の場合は本人の二割負担など患者負担の増加のために、いろいろな現象が出てくると思います。  例えば一つの例ですと、昭和五十九年にも見られたように、いわゆる患者のかかり控え、受診抑制というものが発生すると考えられますが、本当に必要な医療についてもこの受診抑制が生じるようでは医療政策としてどこかに問題があるのではないか。また、高額の医療負担となった場合、軽減策などどのような対策厚生省としてはお考えになっているのか、伺いたく存じます。
  120. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 今回の医療保険制度改革でありますが、これはこれから何としてもなし遂げなければならない制度全体の構造改革の第一歩というふうに考えておるわけであります。そういった状況なのでありますが、一方、現在の医療保険財政は非常に厳しい、制度そのものの存続ということを考えた場合にこのままではそれ自体が危ぶまれるというような状況でございます。  そういった中で今回の案を提案しているわけでありますけれども、内容的には一部負担の増額というようなことで、確かに痛みを伴う内容であります。そういった意味では国民の御理解を得なければいけないわけでありますが、ただ、この一部負担を考える場合に、医療財源というものをどういう格好で組み合わせていくかということになるわけであります。そういった中で、やはり現下の財政状況等々を踏まえた場合に、受益と負担の均衡の問題、それから現役世代とお年寄りとの負担の均衡の問題、それからまた医療にかかるコスト意識の酒養というような問題等々いろいろな意味合いがあるわけでありますけれども、そういった中で、今回、相当な一部負担の増額をお願いしているわけであります。  こういった中で、例えば先ほど五十九年の例をお話しございましたけれども、現在の医療保険制度は、これは保険証一枚で患者さんはある意味ではいろいろな医療機関に自由にかかれる、いわゆるフリーアクセスと言われているわけですが、これは非常にメリットも大きいわけでありますけれども、一方、そういう中でとかくむだが生じているというような面もあると言われておるわけであります。そういうような意味で、今回の一部負担の改正によりましてそういった面が是正されてくるということであればこれは適正化になるわけでありまして、そういった面で、私どもとしては、一部負担がふえますと当然それなりの適正化効果というものが出てくるというふうに考えております。  そういった意味では、必要な受診を抑制するというようなことを考えているわけではもちろんありませんで、今申し上げたようなことで、この一部負担の増額というのは、全体の医療費をどう負担するかという中でさらにまた医療費の適正化にも役に立つ、そういったような視点からお願いをしているということでございます。
  121. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 もう少し詳しく教えていただきたい部分があります。例えば、国民保険制度が制定されて、その中で疾病構造が大きく変わってきたと思うのです。当初はこういう病気が多かった、今はこういうことが予想される。ですから、受診抑制に関してはさほど気にもされていないのかもしれないです。また、受診抑制というものが発生しないのかもしれない。ですけれども、間違いなく患者負担というものはふえるわけであって、当初の五十九年と今の時点と比べると、マスコミ等の報道等も含めて、患者さんに対しての危機感というか圧迫感というか、そういうものがひしひしと伝わっているのが今の現状だと思うのです。  ですから、私は、先ほどお話しした最後の、高額な医療負担となった場合には果たしてどうするのだ。そこだけでも明確にしておかないと、例えば長期入院に陥った場合とか、特殊な疾病にかかった場合はそれに対して民間保険が、例えばがん保険がどうだとか、それに乗じて今いろいろな種類のものが出され始めようとしているわけです。ですから、国としてどういうことを考えているのかをもう少し明確に教えていただきたいと思います。
  122. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 今度の改正案の内容におきましても、例えば老人につきましては、今回、一部負担の引き上げを行っておりますが、外来については一回五百円、しかも四回に限りという格好にしておりますし、それからまた入院については、低所得者の方については引き続き軽減措置というものを講ずるというような形をとっております。  今委員指摘のとおり、高額な医療になった場合どうするのだということでございますけれども、これは現行制度の中におきましてもいわゆる高額療養費制度というのがございまして、一月当たり六万三千六百円ということで、それ以上かかった場合にはそれ以上の分については償還が行われるということで、一定の医療保険の範囲の中で負担軽減が行われるような、そういった仕組みをとっているわけでございまして、今度の制度改正におきましても、この仕組みというのは引き続き維持していくという前提で一部負担をお願いしているわけでございます。
  123. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 では、次の質問に参ります。  私は、先ほども申したとおり、歯科医師をしておりました。ちょうど大学院の研究のテーマが口腔生理学といって、全身機能と、かんだときの機能のかかわり合いについて研究をしておりました。  その中で、全身の疾患が、かみ合わせを直したり、また入れ歯を入れることによったり、そういうような口の中の治療をすることによって解決する例が多く報告されておるわけです。例えば、偏頭痛であったり腰痛であったり生理不順であったりまた、最近の報告では、入れ歯を入れてない人と入れ歯を入れた人、この集団を比べると、入れ歯を入れずに何も口に歯がない状態、これで入院をされている患者さんと、きちっと入れ歯をつくった患者さんと比べると、歯のある人、入れ歯のある人の方がアルツハイマー症になる可能性というか頻度が低いというような報告さえあります。ただ、このことに関しては、私ども、十年ほど前にちょうど研究を手がけたわけなんですけれども、明確なデータというか確証は現在得てはおりません。ただ、そういう傾向があるのじゃないか。また、かみ合わせを調整することによって運動機能が、運動能力が向上するのだ。  今までは、歯科医師というのは歯を抜いたり入れ歯をつくったり、ただ単にそれだけの医療分野を担っていたわけでありますけれども、ここ十年ぐらいは、本当に全身と極めて密接な関係がある、こういうようなことがわかってきたわけです。  このことについてですが、まず厚生省はこういう事実を認識されているのかどうか、そのことについてお伺いします。
  124. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 今の御質問でびっくりしたのですけれども、私、大臣になってからちょっと歯が痛くなったものですから、ある知っているところに行ったのですよ。そうしたら、今言った、かみ合わせが悪いのじゃないかと。頭が痛くてしようがない。この右の頭が痛くてしようがない。そして、今、歯科治療ではかみ合わせの問題に大変な研究をしているのだと。  何か、かみ合わせを変えるような器具をいただきましたよ。そうしたら、頭痛が確かに治ってきた。随分、歯のかみ合わせだけでほかの臓器というか、ほかの部分にも影響していくのだなというのを実感しました。歯の治療というのは、単に歯だけじゃない、体全体にかかってくるのだなと重要性を再認識した次第で、このかみ合わせの問題が他の臓器に与える影響というもので予算をいただいているとその歯医者さんは言っていましたよ。新しい予算がついたということであります。だから、その問題は厚生省もちゃんと認識しているからこそ予算をつけたのだと思います。
  125. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 どうもありがとうございます。歯科医師として非常に喜ばしいことで、大臣にももっともっとPRしていただきたくお願いいたします。  それで、確かに予算は研究の部分ではついております。今までは、歯科と医科と分けて物事を考えていたと思うのです。ところが、そういうような全身のかかわり合いということを論じていかなきゃいけない際に、どんなような連携をしたらいいか、要は歯科と医科の連携というものをどのようにお考えになっているのか。また、診療報酬についてはどのように評価するのか。  ただ、これは今大臣にしっかりと認識していただいたわけで、明確なお答えというよりは、今後ぜひとも考えていただきたいというだけで僕自身は満足しますが、とにかく大臣がおっしゃっていただいたことで、今後この件に関して前向きにぜひとも考えていただきたい、そう思います。答弁をお願いします。
  126. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 先ほど来お話のあります歯のかみ合わせと全身疾患との関係ということで、研究グループをつくりまして研究をしております。  先ほど大臣が既に経験済みだということでございまして、改めて研究をする必要はないのかもしれませんが、平成八年度から研究を始めておりまして、「口腔保健と全身的な健康状態の関係についての研究」ということで、具体的には、先ほど先生もちょっとおっしゃいましたような、かみ合わせの状態に起因する他臓器の異常に関する研究事業を開始いたしまして、これは歯科の関係者だけじゃなくて、医学の関係者を含めまして、幅広い研究組織を発足させたところでございます。具体的な研究内容としては、疫学とか臨床あるいは基礎の各分野からの研究が現在進められているところでございます。
  127. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 どうもありがとうございます。  この際、歯に関することばかりでお願いしたいのですが、最近、新聞紙上でもいろいろ取り上げられていますけれども、寝たきりのお年寄りが肺炎になるケースが非常に多い。このお年寄りの肺炎でよく見られるのが嚥下性の肺炎です。  嚥下性の肺炎というのは二つのタイプがあって、まず一つのタイプというのは、胃の中に入った食べ物が寝ている間に戻って、気管の中に入って急性肺炎を起こす例。そしてもう一つは、口の中に存在するばい菌、いわゆる口腔内常在菌、これを寝ている間に、知らないうちに唾液やたんなどと一緒に気管の中に入れ込んでしまう。  あるデータによると、この二つ目のタイプの、唾液によって気管の中に流れ込んでしまうことによる肺炎が実に全肺炎数の八割以上、ですから、寝ている人はいつも何か軽い慢性的な肺炎になっている、こういうような状態が起こると報告があります。  このところの新聞によりますと、これは名古屋の例なんですけれども、   橋本さんは「手いっぱいだと、歯のケアは、つい後回しにされて、おきざりにされるけれど、その結果肺炎になって、介護量も増えかねない。味わう楽しみは、人間として生きてることを感じる大事なことですよね」という。 この橋本さんというのは歯医者の先生なんですけれども、僕じゃないですけれども、この橋本さんという方がおっしゃっている。  ですから結局、歯のことは、歯科治療というものは体にかかわる、だけれども、さっきのことよりも実は今物すごく急いで対応しなければいけない、これはお年寄りの問題だと思います。  ですから、実際には、口腔内の清掃や、歯ブラシできれいに磨いてやる、あるいはバキュームで唾液を吸ってやる、こういうことをすると必ず肺炎が抑制できるのだ、こういうような報告があります。  また、この件について、マンパワーの不足という部分も言われております。衛生士であったり歯科医師であったり、また歯科助手であったり、そういうマンパワーの不足というものも現在問題にはなっております。  まず、このことに対して認識はしておられたのかどうか、そして、今後どのような取り組み方をしていただけるのか、この件に関して御答弁をお願いいたします。
  128. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 寝たきりになったお年寄りが、誤嚥ですとか、あるいは睡眠中に本人が気づかないうちにそういう誤燕をする、それによって肺炎を起こすというような報告があることは承知をしております。  厚生省におきましても、数年前から厚生科学研究費の中で、老年者の肺炎に関する研究の一環として口腔・咽頭の機能低下と肺炎の研究ということをやっておりまして、その中でもそういうことが指摘をされております。その予防には口腔内の清掃に努める口腔ケアが重要であるというようなことが指摘をされております。  歯科保健対策の一環として地域の歯科保健対策ということで昨年報告書をまとめていただいておりますが、それに沿って、今後そういうようなことについての啓蒙をやっていきたいというふうに思っております。また、これについての研究も今年度も継続をされておりますので、その成果を待って対応していきたいと思っております。
  129. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 その成果を待ってということなんですが、明らかにこのように新聞等で報じられておりまして、シンチグラフというか、そういうようなデータを追っかけていったり、現場の、一個人の医師、歯科医師は、間違いない、間違いないというか、きれいにすれば必ず抑制できる、こういうふうに申しております。ですから、報告を待つと同時にというか、もうあしたからでも考えていただいて、寝たきりのお年寄りの方が肺炎になるのを――この間もインフルエンザで多くの方がお亡くなりになりました。やはりお年寄りが多い。それは、慢性的な肺炎を持っているからじゃないかな、そこに乗っかる。ですから、できるだけ急いでこのことに対して考えていただきたく思います。  また、続けてなんですが、今審議されている介護保険システムの中に余り口腔ケアの問題が入ってきておりません。ですから、具体的な策としてどのような策を今後御検討いただけるかどうか、このことについて御答弁いただきたいと思います。
  130. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 先ほど私が申し上げましたことにちょっとつけ加えさせていただきますが、寝たきりの高齢者に対する歯科保健対策として、要介護歯科保健推進事業、あるいは老人保健法の訪問口腔衛生指導等で対応を図ってきております。  また、先ほど来先生お話にありますような、いわゆる要介護者あるいは高齢者に対する口腔ケアの重要性が認識されてきているということの中で、今後御審議をいただきます介護保険法案におきましても、介護を要する高齢者等についてのかかりつけ歯科医による口腔管理あるいは指導等のうち一定のものを給付の対象とするということで検討をしていきたいというふうに考えております。
  131. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 かかりつけ歯科医についてもう少し詳しく教えていただきたいのですが、現在、私は愛知県なんです。愛知県の場合と地方の場合、非常に大きな開きがあると思います。一般医科の場合のかかりつけ医と歯科の場合のかかりつけ歯科医、この違いというのを簡単で結構ですので御説明ください。
  132. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 かかりつけ医あるいはかかりつけ歯科医については、第一線でまずそこの地域の患者さんの医療あるいは保健指導を担当するということで、大病院なりあるいは専門機関に行く前に、いわゆるプライマリーケアとしての役割を果たすものだというふうに認識をしております。そういう意味で、かかりつけ医ないしはかかりつけ歯科医がまず最初に患者さんに接触をするという形が望ましいのではないかというふうに私どもは認識をしております。  特にかかりつけ歯科医の場合には、先ほど来お話のあるような、いわゆる保健指導あるいは口腔ケアというようなものにも重要なかかわりを持っていただくというようなことで、今先生おっしゃいましたかかりつけ医とはちょっと違った意味での重要性があるというふうに認識をしております。
  133. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 どうもありがとうございます。  このかかりつけ歯科医というものをしっかり認知させることによって、今まで僕がお話しさせていただいたことがうまくいくのじゃないか、そしてまた、需給のバランスも、ちょっと歯科医師が多いなんという話があるものですから、このかかりつけ歯科医というものがもう極めて重要なのだということを、私どもも声を大にして言います。また、歯科業界に対しても働きかけます。政府の方も、このかかりつけ歯科医というものの重要性をぜひとも広めていただきたく思います。  最後に、二十一世紀に向けて高齢者対策等いろいろな問題が山積みされておりますが、きょうの私の話で、歯科口腔領域の治療や管理が大切だということがおわかりいただけたかと思います。そこで、二十一世紀に向かっての歯科保健対策について、厚生大臣の所信を伺いたく存じます。
  134. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 今、厚生省としても八〇二〇運動を展開しておりますけれども、食べる喜びというのは人間の喜びの中でもう最大の喜びのうちに入る、そして食べること、これは健康につながる、そのためにはやはり歯が健康でなくてはいかぬということを考えますと、歯科治療の役割、歯科医師の役割というのは大変重要であり、まさに普通のお医者さんのかかりつけ医と同じように、歯科のかかりつけ医という機能あるいは今後の役割というものを当然重視していいのじゃないか、歯の健康というのは全身の健康に及んでくるという観点から歯科医の問題にも十分配慮していかなければならないだろう、そう感じております。
  135. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 どうもありがとうございました。これで終わります。
  136. 佐藤剛男

    ○佐藤(剛)委員長代理 米津等史君。
  137. 米津等史

    ○米津委員 新進党の米津等史でございます。  持ち時間三十分の中で、厚生省の危機管理について質問をさせていただきます。  先日の厚生大臣の所信表明の中にも健康危機という言葉があり、また、健康危機の管理については万全を尽くすというふうにおっしゃっておられました。具体的に平成九年度の厚生省予算案の概要を拝見いたしますと、感染症危機管理体制の整備や緊急時感染症対策充実という項目があり、具体的に予算措置がなされております。  しかしながら、危機管理に対する行政機関の体質がどのように改善されているのか、端的に申し上げますと、役所としての体質がいろいろな過去の事例に基づいてどのように改善されてきているのかというふうなことが大切なことではないかなというふうに考えます。  振り返ってみましても、阪神大震災、地下鉄のサリン事件、そして昨年のO157というふうなことで、国家的な危機管理能力が問われたというような事件が相次いで起こっております。これらの事件にどういうふうに対応するのかということが、やはり社会体制がとられている中でも、抜本的な改革行政機関の中でも必要ではないかというふうなことで、本日質問させていただきます。  まず大臣お尋ねいたします。危機管理についての厚生大臣としての基本的な考え方について、もう一度お尋ねしたいと思います。
  138. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 最近のO157の問題を見ても、これからどういう病気が入ってくるかわからない。あるいは、医学の進歩、医療の進歩によって、今までは伝染病だと思われているのがあるいは伝染病でないとか、まだいろいろな直さなければならない点もいろいろ法的にあるようであります。これから国の交流を考えても、外国との交流あるいは外国人との交流もますます深まっていくと必然的に開放的な体制になってきますから、今まで我々が予測しない、し得ない状態も起こってくる可能性が十分ある。  そういう面を考えまして、今までの問題というものをよく洗い直して、将来の国民の健康を守るという観点から検討していかなければならない。特に、ことしの一月ですか、危機管理に対する指針を出しまして、今後の健康の危機に対する管理を考えていく場合に十分な配慮をしたいということで出したわけでありまして、具体的な問題につきましては政府委員から答弁させたいと思います。
  139. 米津等史

    ○米津委員 具体的な内容について、私の方もお伺いしたいと思います。  まず、阪神大震災について振り返ってみますと、九五年に起きたわけですけれども、非常に多くの新聞が、海外からの支援、具体的には医療機関の応援体制ができているにもかかわらず、日本国内の体制が不備であったということで十分な活動をしていただけなく帰国いただいたというふうな事例が数多くございます。新聞の報道でもこれをかなり取り上げておりまして、特にスイス、フランス、アメリカなどは外交問題にもなりかけたというふうな状況でございますが、これらのことは医師法や薬事法の壁が非常に厚かったというふうにここでも書かれております。  もし、今、東京大震災を含めまして新たな災害が起きたときに、このような海外からの救助あるいは救援の活動があったときにどのように対応するのか、お聞かせいただきたいと思います。     〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕
  140. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 二年前の阪神・淡路大震災のときに、外国から医療チームの派遣申し出がございました。これら外国人医師の医療行為につきましては、先生御承知のように、現在の医師法では、我が国の国内において医療行為を行うためには我が国の医師国家試験に合格して厚生大臣の免許を得なければならないとなっているわけでございますが、あのような緊急事態において、被災者の生命あるいは身体を守るために緊急避難的に必要な医療行為を行うのは差し支えないというふうに判断をいたしまして、その時点で、地方自治体に対してその旨連絡をいたしました。結果的には、韓国、中国を初め、その当時把握いたしましたので十一カ国ぐらいから医師あるいは医療チームが現地において活動したというふうに承知をいたしております。  それで、先生の今のお話、今後こういうことがあったらということでございますが、私どもの考えとしては、仮に同じような状況になった場合には、その必要に応じて、さきの震災時と同様に対応していくというふうに考えております。
  141. 米津等史

    ○米津委員 次に、サリンについてお尋ねをいたします。  サリンにつきましては、やはり新聞報道によりますと、かなりサリンについての内容もマニュアルとして各都道府県に対して送付をしていたというふうなことが、厚生省の健康政策局で積極的にやっていただいているというふうなことが書かれておりますが、実際に「救急医学」という専門の学術誌によりますと、各種情報が病院へも全然もたらされなかった、したがって、現場の医師の対応に任せることになってしまったというふうなことが書かれております。  現実に、危機管理ということでマニュアルも備えていただいて充実しつつあると思いますけれども、これらが都道府県のみで、具体的に医療第一線に速やかに連絡がとれなかった、そのことによる不安が患者さんはもとより医療機関にも非常に多いと聞いております。これらについて、やはりサリンだけをとらえるわけではなく、新しいものが起きたときにどういうふうに予見し、予防し、それらを適切なタイミングで医療機関の第一線まで伝えるのかということが大切だと思います。  松本サリン事件においても、それから上九一色村の異臭事件においても、これらのことがかなり先に予見がされたと言われておりますけれども、これらの情報が何一つ十分に医療機関の前線に伝えられなかったゆえに東京都内のサリン事件でもかなり多くの犠牲者が出たというふうなことについて、厚生省としては具体的にどのような形の連絡経路を整備なさってきているのかということについてお聞きしたいと思います。
  142. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 いわゆる地下鉄サリン事件につきましては、午前八時過ぎに事件が発生をしたというふうに承知しておりますが、十時ごろに財団法人日本中毒情報センターに対して、まず最初、その当時はシアン化メチルに関する情報の提供を依頼いたしまして、その後、サリンに関する情報についても追加して依頼をいたしました。また、十一時半ごろでございますが、長野県並びに長野県医師会に対して松本サリン事件に関する関係資料を請求いたしまして、あわせて、昼ごろでございますが、救急医学会及び先ほど申しました日本中毒情報センターからサリンに関する情報を入手いたしまして、私どもといたしましては、直ちに東京都衛生局あるいは消防庁などにその資料を送付いたしました。また、近隣各県を通じて、特に重篤な医療を担当といたします救命救急センターに対して対応を依頼いたしたところでございます。  ただ、確かに、今から考えてみればそれが十分であったかどうか、反省をすべき点も多々あると思いますが、こういったような経験を踏まえまして、私どもとしては、感染症あるいは中毒症あるいは災害等の際には、できるだけ関係機関と連携して情報収集をして、それを都道府県あるいは関係団体を通じて医療機関あるいは保健所等への情報提供に努めていきたいというふうに考えておりますし、また、今後はインターネットといったようなものも利用しながら迅速な情報の提供ということに努めていきたいと思っております。
  143. 米津等史

    ○米津委員 今御答弁いただきましたが、その後のフォローということで、私も、実際に救援活動をいたしました消防庁あるいは自衛隊等にも問い合わせをしたのですけれども、確かにその時点でいろいろと打ち合わせ等には来ていただいた、しかしながら、その後の情報のフォローあるいは体系的な連絡事項の整備ということについての打ち合わせがまだなされていないというふうなことなので、ぜひ、こういう問題が起きたときの省庁の壁を超えた連絡体制の整備についてはなお一層努力をしていただきたいというふうに思っております。  続きまして、O157についてです。  このO157につきましても、大阪の堺市で大量に発生した際には風邪による腸炎というふうなことで、O157の感染による被害というふうなことには認定されておりませんでした。しかしながら、六年前には埼玉県の浦和市で幼稚園で集団感染しており、また、堺市で発生する一カ月前には岡山県の邑久町で発生をしたというふうに言われております。このときにも、厚生省の危機管理ということで、縦割り行政の弊害ということで、生活衛生局食品保健課が非常に積極的に動いたのだけれども、反対に保健医療局と壁があってうまく対応ができなかったというふうなことが非常に問題になったと思います。  今までもこういうような各部署による壁の厚さが非常に対応がおくれる要因になったというふうなことが取り上げられておりますけれども、これらについてもどのように改善されてきているのかという現状についてお尋ねしたいと思います。
  144. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 O157についてのお尋ねでございます。  御指摘のように、昨年、岡山県の邑久町でO157によります食中毒事件が発生をいたしました。厚生省といたしましては、不幸にも二名の方がお亡くなりになったというふうなこと、それからその規模が大きいこと等から、若干の経緯を申し上げますと、六月六日に、食中毒事故の発生防止の徹底につきまして都道府県等に通知をし、さらにその後、広島県などでも食中毒が起こったということから、六月十二日には、O157による食中毒予防に重点を置きました通知を出しますとともに、その通知に、今先生指摘のありました、平成二年に発生いたしました浦和市の幼稚園におきます集団下痢症を臨床面から検討した報告書、さらに溶血性尿毒症症候群に関します診断、治療の方法を示した報告書を添付いたしまして、各都道府県及び関係医療機関に対して通知をしたところでございます。  また、六月十四日には、二次感染のおそれがあるというふうな状況にかんがみまして、緊急に食品衛生調査会を開催いたしました。この検討結果を受けまして、六月十七日に、各都道府県医療機関、文部省に対しまして、正しい知識の普及や早期の検査を行うことが肝要である旨通知したところでございますし、さらに六月二十七日には、腸管出血性大腸菌に関する研究班を設置いたしまして、DNAパターン分析や検食の保存方法の検討等を含めた調査研究を開始したというのが経緯でございますが、大変不幸なことに、今御指摘のございましたように、堺市で大変多くの患者さんが発生をしたということ、それから、その後、盛岡市あるいは帯広市でも集団発生を見たということがございます。  一点、御理解を賜りたいと思いますのは、病原性大腸菌O157というのは、非常に少数の菌で発症をするということ、それから、体内に入ってから病気が起こるまでのいわゆる潜伐期間が一週間程度というふうに極めて長いというようなことがありまして、どの時点で、どういうプロセスで食品が汚染されたかを確定するのがなかなか難しいケースが多いということは御理解を賜りたいと思いますが、その後の堺市のケース等々から、私どもといたしましては、調理プロセスの衛生管理というものが一つ重要なかぎを握っているのではないかというふうなことを考えておりまして、今、この点につきましては、調査会の先生とも十分お諮りをしながらその徹底を図るべく検討をいたしているところでございます。
  145. 米津等史

    ○米津委員 今御答弁いただきましたが、例えば阪神大震災では、現行の法律の壁があったというふうにいろいろ言われておりましたし、またサリンでは、もしかしたら、つまり先を予見する能力がもう少しあれば、あるいは流れを把握する能力があればより少ない犠牲者で済んだのではないか、あるいはO157では、行政機関の縦割り状態が非常に問題になっているのではないかというこの体質についての指摘が非常に多くなってきております。  これは先ほど申し上げたとおりでございますけれども、この体質をやはり変えていかなければいけない。一つ一つの問題が発生したときに、随時に対応なさっていくのはいいのですけれども、やはりそれらを統合して、これからどういうような危機が予見されるのか、そして、それをどういうふうに予防するのか、そして、それをどういうふうにノウハウとして蓄積していくのかというふうなことを体制として、要は厚生省としてもっともっと整備していく必要があるのではないかなというふうに思います。  ここに厚生省が発足したときの記録がありますが、   厚生省は、昭和一三年陸軍の要請により設置された。戦後は、国の責任として新憲法二五条の生存権を保障する行政機関に脱皮。敗戦後の混乱と食糧事情の悪化のなかで、コレラ、腸チフス等の流行を終息させ、次いで結核の蔓延を防止し国民の健康な生活の確保の中心的な役割を担った。 というふうなことで厚生省役割が出ています。  私は一つお伺いしたいのですが、今現在、非常に多くの中国の密航者が日本に来ております。この中国の密航者が日本国内に上がるときに、海上保安庁あるいは所轄の警察の中で非常に取り調べ等起きておりますけれども、二、三、私が現地の保健所あるいは医療機関に問い合わせをしたときに、検疫について何も対応がとれていないというふうなことが指摘されておりますけれども、これ  についてはいかがでございましょうか。
  146. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 突然の御質問で驚いているのですが、検疫は、中国人の方が密航で入ってこられた場合には、私の方としては、当然、近くの検疫所の方に御連絡があって、そして検疫所の方の活動として行われているものと思っておりましたので、今そういう御情報でしたら、また再度確認してお答えをしたいと思います。
  147. 米津等史

    ○米津委員 中国人の方という区分けではなくて、要は日本に密航なさってくるというふうな方に対しては、私どもも、空港で税関あるいは入国管理というようなものの前にまず検疫所を通ってくるというふうなことで、検疫については非常に細心の注意を払わなくてはならないというふうに思っております。  したがいまして、中国人ということではなくて、最近非常に多くなっている密航について、私が聞いた範囲ですと、海上保安庁が海上において捕獲した場合に上陸した段階で所轄の警察署に渡す、所轄の警察署はパスポートの所持等を調べて法務省の入国管理の密入国の収容施設に入れるというふうなことで、特に下痢等の症状がなければ特段の検疫の体制がとれていないというふうに聞いております。  大切なのは、密航してくる人たちに対する検疫もそうですけれども、そういうことに対する関係行政機関に対する情報提供も非常に大切なのではないかなということは、海上保安官に対しても、あるいは警察官に対してもそれなりの情報が全く行ってなく、彼らは、きのう聞いた段階では、特に指導もないので自分たちの範囲の中で手を洗ってうがいをするぐらいであるというふうなことですので、ここら辺については細心の注意を払っていただきたいというふうに思います。  今後、北東アジア情勢が非常に不安になってくる中で、やはりいろいろな問題がありますけれども、この密航、難民問題についてぜひ積極的な取り組みをしていただきたいというふうに思います。これについて、大臣、いかがでございましょうか。
  148. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 私の経験からいきますと、私も、密航者が港に入ってきた時点について当たったことがあります。そのときは、警察の方で逮捕されて、そして警察から保健所に連絡が来て、検疫に連絡をとりましてきちっと対応いたした経験がございます。  そういうことからいいますと、日本の政府としてはちゃんと法律に書いてあることは適正にしているものと私は信じておりますけれども、先生が今おっしゃられましたので、よく調べて、もしそのようなことがあれば政府関係者よく協議をして、外国から入ってくる方々についても検疫をきちっと対応すべきだ、そういうことで対応したいと思っております。
  149. 米津等史

    ○米津委員 ありがとうございます。  最後ですけれども、やはりアメリカにおいても、この検疫を含めた感染症対策というのが国家の安全保障の最重要政策であるというふうなことで、非常に多くの予算、人、組織が整えられているというふうに言われております。したがいまして、日本においても、ここら辺についてはより強力にもう一回見直しをしていただいて体制の整備をしていただきたいというふうなことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  150. 町村信孝

    町村委員長 五島正規君。
  151. 五島正規

    ○五島委員 民主党の五島でございます。  大臣、大変お疲れだと思いますが、もうしばらく、先日の大臣の所信表明を中心にお伺いしたいと思います。  まず第一の問題といたしまして、先日の予算委員会でも質問させていただきました。これからは高齢社会が進んでくる、そして日本の財政の状況も大変厳しくなってくる、そういう状況の中で、社会保障を含めて聖域を設けずにもう一度見直していかなければいけない、そのことについてはそのとおりだというふうに思っています。そして、中でもこの社会保障につきましては、そのコストとしては、結果において、税と保険料、そしてそれを利用するいわゆる本人の応益負担部分、この三つによって賄われることは間違いございません。  そうした中で、今、例えば公的負担を五〇%に将来的にも抑制していきたいという議論が出てまいってきたわけです。これもまた私は当然だろうと。公的負担五〇%というのは、日本の国の経済活動に置きかえてみますと、国なり地方が行う公的な経済活動が五〇%という意味でもあるわけでございますから、私は、この公的負担を五〇%に抑制しなければいけないというのも、これもよく理解できる。  ただ、そういう時代を想定した場合に、これまでの、政府が行ってきた、あるいは地方自治体が行ってきた経済活動、その中には社会保障部分も入りますし、そのほかの部分も入ってくるわけですが、その比重というもの、そのシェアというものは必然的に変えていかないと大変なことになるのではないか。社会保障制度というものがそうした時代のある意味においてはセーフティーネットの役割を果たすとすれば、そういう時代においては、このセーフティーネットを余計きちっと張り、その網の目が余り大きくならないように努力していく必要があるのではないかというふうに思うわけです。  もちろん、その中における負担あり方がどうであるかということは改めて議論しなければいけないわけでございますが、社会保障にかかわるそういう経済活動全体のウエートが大きくなってくるということは当然だろうと思うわけでございますが、そのあたりについて余り議論がこれまでなかったように思うわけでございまして、その点について大臣がいかようにお考えなのかということをまずお伺いしたいと思います。
  152. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 国民負担といいますか、公的負担を高齢者が一番多くなるときにも何とか五〇%以下に抑える、その中でいかに福祉制度充実していくかという大変難しい目標に今我々は向かっていると思います。その中にあって、税と保険と受益者負担、この組み合わせを、今後、現代の世代と将来の世代という両方を考えながら進めていかなければならないということの中で、今社会保障制度改革に向かおうというのが橋本内閣課題であると私は認識しております。  今後とも今の制度を維持していく限り、年金にしても医療にしても、このまま進めていきますと五〇%の中で半分以上を社会保障だけで占めてしまう。あとの施策、教育にしても公共事業にしても、カットできるかというとこれまた大変至難のわざであるということから、あらゆる聖域なしに構造改革に進もう、行こうというのは、総論としてみんな賛成してくれると思うのです。いざ具体的段階になると、今回の介護保険法案にしても医療保険法案にしても、負担の多くなる問題については必ず過重負担だという批判が出てきます。  しかしながら、今回、こういうふうに出した、一つ負担を出した、これが本当に過重過ぎるのかどうかという点を議論することによって、私は、必ず構造改革に踏み込んでいかなければならないという議論が出てくると思います。その一歩として、今回の法案というものを、専門家、また見識の高い議員が当厚生委員会は多いわけですから、議論することによって着実な、総合的な改革に向けてスタートを切りたいと思いますので、十分な御審議をお願いしたいと思います。
  153. 五島正規

    ○五島委員 大臣の方から今回の問題にも話を進めていただいたわけでございますが、さまざまな御意見があるという前提のもとであったとしても、介護保険について、介護を社会化するということはこれまで制度としてはできてこなかった。結果的に、その制度の確立がおくれた結果として、社会的入院と言ったりするようなことの中で医療システムの中でも大変な混乱を起こしてきている、これは事実でございます。そういう意味においては、介護をどのように社会化していくかということを具体的に解決していこうというのがこの介護保険制度でございますし、また、医療保険の問題につきましても、このまま医療保険を放置するならば、この秋にも、少なくとも政管健保は支払いができなくなってくるという状況にある、これを何らかの形で解決しなければいけない、このことは明らかだ。  問題は、それをどのような切り口で解決していくかという問題だろうと思います。そういう意味におきましては、各審議会等々からも指摘されておりますように、では国民保険制度前提としてこの医療保険改革をどのように改定していくのか、今回の改定がその方向に沿ったものなのかどうか、あるいは、その方向に進めていくための激変緩和措置として評価ができるものなのかどうか、そこのところの点検がなされないといけないのだろうというふうに思っています。  ただ、残念ながら、医療保険の問題にいたしましても、どういうふうな内容医療保険を改定していこうとしているのか、実はこれは各審議会の段階ではもう五十九年改定のときからほぼ中身は出尽くしているわけでございますが、それを具体的にどのようなプログラムでやっていくのかということについては、まだ政府の方からも与党の方からも提示されておりません。我々は我々なりの意見がございますが、そうしたものが出されない限り、医療保険全体の改革の方向に今回政府がお出しになっているこの医療保険の改正案というものが沿うものであるのかどうか、その点検ができない、すなわち議論ができないというのが現状かと思います。  厚生省として、この医療保険基本的な抜本的改革の骨格をいつぐらいまでに示し、そして、それを遂行していくためのスケジュールをいつぐらいまでにお出しになる気があるのか、そのことについてまずお伺いしたいと思います。
  154. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 今後のスケジュールの問題でございます。  この医療保険改革につきましては、これまで約二年ぐらいかけまして医療保険審議会を中心に御議論いただいてきたわけでありますけれども、問題点はほぼ出尽くしているのだろうと思います。ただ問題は、その具体案になってきますと、やはりいろいろな考え方がありますし、とりわけ関係者の利害が非常に対立すると申しますか、なかなか一致を見にくいような問題がたくさんございます。そういった意味で、これからやらなければならないのは、まさにその具体案を提示し、そして、それについて国民的な視点からの御議論をいただく、そういうようなことだろうというふうに思っております。  そこで、今回の改正案でお願いしております中に、そういった意味での幅広い審議の場といたしまして、仮称でございますけれども、医療保険構造改革審議会というようなものをつくらせていただきたいという御提案をしているわけでございます。そういった中で幅広い御議論をお願いするということで考えておりますが、その際の行き方としまして、私どもとして、最も適当と考えられる案というものを、これが複数の案になる場合もあろうと思いますし、あるいは一つに絞られるということもあろうと思いますが、そういったものをつくっていって、そして、そういう審議会の場にお諮りしていくというような進め方になるのではないかというふうに考えております。  そういった意味では、私ども、今具体的な案を提示するという状況になっておりませんけれども、例えば薬の問題につきましても、具体的な内容について今私どもの中で鋭意検討を進めておりまして、できるだけ早くそういった案というものを出していきたいというふうに思っておりますし、また、与党の中におきましても、医療保険改革協議会をおつくりいただいて、今具体的な問題について検討をいただいておるわけでございます。そういった検討状況等々も踏まえまして私どもとしても具体的な提案をしていくような努力をいたしたい、このように考えております。
  155. 五島正規

    ○五島委員 介護を社会化していく、そのための介護保険平成十二年に実施というふうに考えて、そしてこの法案がもう既にこの国会に、この委員会に提案されているわけですね。  今政府が出されている医療保険改革案、私はあの数字は若干問題あると思っておりますが、しかし、政府の出された数字を見る限りにおいては、今回の医療費の改革をやっても三年しかもたないという内容になっています。三年しかもたない、すなわち平成十二年にはもうそれではだめですよという案を出しながら、抜本的な改革の方向を今議論している最中なんだという状況の中で、この間大臣が今回の健康保険の改正は抜本改革の第一歩だとおっしゃったわけですが、それが第一歩かどうかという評価のしようがないではないかというふうに思うわけでございます。  今、高木局長の方からもお話ありましたけれども、例えば、平成十二年になって介護保険を政府としてどうしても通したいと考えているのであれば、それじゃ、平成十二年になって介護保険が出れば、お年寄りの外来は介護保険では一割、入院で二割の負担になりますね。その段階において、制度間の整合をとるのか、とらずにおいておくのか、その辺はどうなのか、そういうふうなことも今回の状況の中で全然わかりません。  また、今回の改正案の中で、薬剤につきましても、一種類十五円というふうなあれが出てきています。しかし、これまで、この十二年間で、厚生省は薬価改定のたびに薬価の引き下げをして、本来の理論値で言うならば、薬価は十二年前の約二分の一になっていなければいけない。ところが、現実には薬価は全然下がっていない。それは、高価格医薬品に対してどんどんシフトがえが起こってきた結果であるということは厚生省もよく知っている。  薬価制度をどうするかという基本的な問題について、今回結論を出せないとしても、今回の改定が、この一種類十五円という本人負担のコストをとることによって、それじゃ薬価の高価格医薬品に対しての変遷というものを食いとめることができるのかどうか。それを食いとめられないとしたら、こんなことをやってみたところで、薬価には、トータルな医療費の中における薬価の比率については一切影響ないということになってくる。その辺についても全然検討のしようがない。  あるいは、これは大臣に答えてほしいわけですが、税と保険料と本人負担との関係の中で、医療保険から政府に対して現在もまだなお約八千億の貸しがある。ここまで医療保険が財政厳しくなってきた場合に、当然これは、もともとこれまで厚生省は何回もこの問題で委員会でも、保険の方で必要になれば必ず利息をつけて返してもらいますとおっしゃってきたわけです。そうだとすれば、この医療保険から貸しているお金を何年間で、少なくともこの厳しい三年間の間に完全に返済を求めるようなそういう処置がされるべきだと思うわけでございます。  もう一つつけ加えて申しますと、平成四年度の社会保険の引き下げの中で、社会保険料が千分の八十四から千分の八十二に引き下がった。そして、公費の負担を一六・四から一三に下げた。今回、千分の八十六に、公費負担分を全然動かせないままに動かすということに対してやはりかなりの抵抗がございます。  しかし、なぜそこのところに手をつけたのか。例えば、現在の社会保険料に対して言いますと、同じ年俸であったとしてもボーナスが多い分、すなわちボーナスとしての給付の多い人とそうでない人との間には保険料負担には大変な不公平がある。基本的に年俸に対して社会保険料を賦課していくことが正しいということであれば、何もそういうことをしなくても、例えば賞与部分に対して、現在千分の二十のボーナスを、そこのところを年俸賦課に近づけるような努力をしてでも保険料の収入増というものを図れたではないか。そういうふうなことを全然せずに、今回そういうふうにやられた。  その辺について、これからまだ抜本改革の方向を検討するのだと言いながら、そうしたものが検討されたのかされていないのかわからないままに医療保険の問題が提起されています。これでは本当に抜本改革になっていないのではないか、あるいは、大臣が言われたように、その第一歩というふうに評価できないのではないかというふうに思っているわけでございまして、この点は医療保険の審議の中でも十分にやらせていただきたいと思いますが、まずその点について大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
  156. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 今回の医療保険のまとめる過程で感じたことでありますが、民主主義で合意を得るのは大変難しい。そして、抜本的改革になっていないではないかという批判は甘んじて受けなければならない面が多いと思います。  審議会の答申も、定率制を導入せよという意見が多かったことは事実であります。しかし、いざ現実のことを考えると、国会の議員という中でも、党としても、高齢者に対して定率を導入せよという政党はありませんね。そして薬価についても、一種一日十五円では生ぬるいという意見もあります。あるいは逆に、何種類も服用する人がいるのだから、これは過重だという人もいます。薬価は定率を導入せよという方もおられます。どれをとってもまとまりきれない。  現に今、与党医療保険制度改革協議会での検討が始まっておりますが、この案をまとめる際に、ことしの三月末までに検討作業を進める、以下の点について協議するという十項目の検討事項が出ております。その中にも、「過剰な医療費の削減を図るために、出来高払い方式の診療報酬の見直しに着手する。」という項目が入っております。いざやってみて、本当にまとまってこれを、出来高払い制度を完全に変えるという案が出てくるかというと、私はそうは思わない。いかに困難な問題が山積しているか。  そういうことを考えると、今回、不完全だ、不十分だと言われながらも一つの案をまとめたわけであります。一回五百円、一種十五円、過重だと言いますけれども、私はそうは思いません。これからどのような抜本改革が出ようとも、この程度の負担は避けられないと思っております。定率を導入しようが、薬価基準を見直そうが、診療報酬を見直そうが、まずこの案というのは必ず構造的な改革につながる案だと思っております。ようやく困難なまとまりようがない案をまとめたのです。この御審議の中で、私はこれは完全だと思っていません。いろいろな議論を歓迎します。政党の中ではっきりした構造改革案を出すのだったら、私は厚生大臣としてそれに柔軟に対処したいと思います。ぜひとも議論をしていただきたい。  そして、政府管掌健保の国庫補助の繰り延べについても、私は大蔵省にはっきりとさらに強く要求していきます。その返済について計画的に返済せよ、これも大事な問題でありますので、財政を考えるのだったらば大蔵省も真剣に考えるべきだという観点から今後とも強く求めていきたいと思います。
  157. 五島正規

    ○五島委員 柔軟に対処されるというお話でございますので、我が党としてはこの問題についてぜひ提案をさせていただきたいというふうに思っております。  また、この問題と関連いたしまして、もう一つ申し上げておきたいと思うのですが、確かに医療保険が大変である。そして老人に対しても、先ほど申しましたように、平成十二年の段階でどうするのか。私は、そこに制度間の整合性がなければ、結果的に社会的入院というものが温存されてしまうというふうに考えています。それに対する激変緩和という形で今回の措置というのは位置づけられるものは位置づけられるというふうにも考えているわけですが、その際に、医療費が大変であるということだけの議論で進むのではなくて、例えば老人に対する医療に対し特別の配慮をして、本人所得がないとか少ないとかいうふうな問題も含めて処理されています。そうだとすれば、やはりこの際、子供に対する、特に乳幼児に対する医療についても老人医療と同じように、少なくとも老人医療を定率制にする段階においてはそれに横並びにしていくぐらいの配慮があってもいいのではないかというふうに思っておりますので、そのことも含めて、何か医療費が大変であるから給付の削減ということだけを考える、あるいは本人負担の増加ということだけを考えるのではなくて、もう少しバランスのいいものに変えていくという努力もぜひ検討しておいていただきたいというふうに思います。これについては今日の段階において答弁は結構でございます。  そしてもう一つ大臣の方にお伺いしておきたいと思いますが、介護保険制度についての審議入り、もうこの委員会に付託されているわけですから入らなければなりません。そして、介護保険の問題全体の議論はこれからなされるわけですが、議論に入るに当たってやはりどうしても心配なのは、平成十二年までに基盤整備ができるのか。  先ほども御指摘がございましたけれども、保険はできたが実際にサービスがないということになりますと、これは大変な問題だろうというふうに思います。まして、在宅の問題もさることながら、現在非常に多い問題として、特養その他に対する入所待ちという形でおられるお年寄りがたくさんおられます。こうした施設介護平成十二年から出発する。非常な英断というか、大変な思い切りようだなと思うわけですが、こういうふうな形で介護保険制度が出発されるわけですが、本当に今の新ゴールドプランだけで基盤整備が進むのだろうか。  今の財政が非常に厳しく、また、特養その他に対してのありようについて国民的批判も強い。その中にはやはり厚生省の例の岡光次官を含むもろもろの問題もこうしたことに対する社会の目を非常に厳しくしていることは御案内のとおりです。そういう状況の中で、この基盤整備、今のままで平成十二年までに整備できるというふうな自信があるのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  158. 羽毛田信吾

    羽毛田政府委員 先生お話しのとおり、この介護保険制度が出発をいたします平成十二年度に向けて、新ゴールドプランの着実な整備という中で必要な基盤整備を整えていかなければならないということは御指摘のとおりでございます。  したがいまして、特に今先生指摘のございました施設整備につきましては、特別養護老人ホーム、そして老人保健施設あるいは療養型病床群、療養型病床群については新ゴールドプランの枠組みからは外にある話でございますけれども、それらも含めまして施設サービス整備していくということに今まで以上に力を入れていかなければなりません。  しかし、今、在宅サービスが十分に整っていないがゆえに施設サービスの需要としてあるもの、これにつきましても在宅サービスを整えることによって在宅での受け入れが可能になってくるということは当然考えられるわけでありますから、そういう意味での在宅サービスを並行してやはり整備をしていかなければならない。その中には、新ゴールドプランの中でもまだ着実な整備という意味ではおくれている部分もございます。  予算につきましては、この厳しい中、相当思い切った予算をちょうだいいたしておりますので、そうした中で量的にも整備をしていかなければなりませんし、また在宅サービスにつきましては、先ほどもちょっとお答えをさせていただきましたが、サテライト型のデイサービスであるとか、そういったいろいろな工夫もしながら総合的に施設それから在宅を含んだサービス基盤の整備に努力をして、平成十二年度からスタートできるようにこれからも努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  159. 五島正規

    ○五島委員 在宅を進めていけば現在施設に入っておられる方が減っていく、それは高齢者の数がこれ以上増加しない前提であればそのとおりです。しかし、高齢社会になって高齢者がふえてくる、しかも、その中でいわゆる寝たきりの比率についてはこれからの措置によってかなり軽減できるにしても、やはり痴呆の問題等々考えますと、在宅を積極的に進めたとしても、そのことによって施設介護を必要とするそのボリュームとしては減るわけではありません。そこのところが、大幅に施設介護の比率を減らして在宅をふやしていかなければいけないということと、施設介護のボリュームが減ってくるということは別でございます。どう考えても、やはり施設介護についても高齢化が進んでくる中でボリュームもふえてくるということは覚悟しなければいけない。  そうした中において、この基盤整備をどうしていくのか。これは今の羽毛田局長の精神論だけでは、どうも介護保険ができたときに大変なことになるのではないか。もっと特養をふやしていくということでいくのか、あるいは例えば老健施設を滞在型まで含めて痴呆を対象としてそれの数をふやしていくとかいうふうなことを何らかの形でやっていかないと、これは平成十二年に介護保険ができたときに非常に問題になってきやしないか。あるいは、平成十二年にならないとしても、平成十五年ぐらいまでにどの辺まで整備していけるのか、その見通しをそろそろ示しながらでないとこの議論は非常に難しくなるのではないかと思いますので、その点についての御検討をお願いしておきたい。  今は厚生省がそうした形での次の案を持っておられるわけでもございませんし、そのことはよく承知しています。だから、今ここでどうなんだと言うつもりはございません。しかし、そこのところの検討を、これからの国の財政状況や市民の動向に沿うた形で議論するということをやるべきではないかということについて申し上げておきたいというふうに思います。その点について何か、羽毛田さん、ありますか。
  160. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 五島議員も介護の問題については前から深い関心を持ち、見識を持たれて、私も大臣になってから、かなり前から介護の問題について議論されている座談会等、論文等を拝見しております。非常に先見性のある、また将来の見通しに立った御議論をしていることに対して、私も大変教えられるところがあるのですが、今の問題は大変重要でありますし、これから在宅介護サービス充実させていかなければならないのですが、同時に、特養もふやします、老健施設もふやします、療養型病床群もふやします、そういうことの中に在宅サービス充実させていこう。できるだけ、この介護問題そして医療保険、連携をとっていかなければならない部分が多いものですから、御意見を真剣に受けとめまして、何とか、保険あってサービスなしの状況を改善するために全力を尽くしていきたいと思います。
  161. 五島正規

    ○五島委員 保険あって介護なしという状況はないように大臣が全力で頑張るという決意の表明でございますので、了とさせていただきたいと思います。  そこでもう一度、先ほどの医療保険の問題とも絡んでくるわけでございますが、今日の医療費の増加の中で、実は、老人医療の部分については二十年前の医療費の暴騰状況と非常に似ている。老人医療を除く医療費というのは、この二十年間、対GNPで見ますと、GNPの高い低いにかかわらず、大体三・五%前後ぐらいでかなりフラットに推移しているけれども、老人医療についていうと、薬剤費も検査費も大変高騰しているというのは、これは実態でございますね。この問題を含めて医療保険制度を考える場合に、老人医療をどうするのかというのは一つの大きな議論になってくると思うわけですが、そうした中で、一つの大事な点、今回、薬剤十五円という問題もありますので触れさせていただきたいと思うのですが、老人の医薬品について、やはりこれはちょっと検討すべきではないかというふうに思います。これは先ほど、薬の量が多い少ないという話で御指摘になったわけですが、私は必ずしもそれでは解決できない問題だろうと思います。  一つは、先ほど御返事なかったわけですが、高価格医薬品に対して薬価の改定のたびにどんどんスライドしてきているじゃないか、変わってきているじゃないか、シフトがえが起こってきているじゃないか、そこのところを抑制しない限りは、結果において間違いなく医療費の中における薬剤費そのものはふえていくわけでございますね。  この間のよく使われている代表的な薬を幾つか、例えば胃潰瘍の薬あるいはお年寄りによくある排尿障害の薬等々見てみますと、今大変な勢いでもって、一つの流行としてロング、すなわち一日一回飲めばよい薬、そのかわり、これまでの薬に比べると二倍、三倍するという薬に対してシフトがえが起こりつつありますね。高木さん、それはわかっているはずです。こういうふうなものをどのように阻止していくのですか。その薬でなければ治療できない、そういうふうな根拠があるのなら、それは当然制限すべきではない。だけれども、現実にはそうではなくて、高価格医薬品に対してどんどんシフトがえが起こっているじゃないですか。  例を挙げてもいいですよ、薬の名前まで挙げて。例えば胃潰瘍の薬にしても、かつて非常に問題として挙げられた、非常によく使い過ぎだと言われたお薬が、薬価の改定によって随分、その当時から比べると約半額にはなってきています。しかし、それにかわって新しい薬が出てきますと、それがその三倍、四倍のコストがつけば、そこに意味なくシフトがえしていっているじゃないですか。それが阻止できるような形で改正していかないと、あるいは仕組みを考えていかないと、結局、一種類十五円取って金は入ったけれども、薬剤費がそれによってもっと高くなって、結果においては保険その他としてはより厳しくなった。何で本人の負担を強いながらそういうことをしなければいかぬのか。負担がふえながら、医療保険制度全体にとっては何の役にも立たなかったということになりかねない。それをどう考えておられるか、お伺いしたいと思います。
  162. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 この問題は、まさに委員指摘のとおり、非常に大きな問題であるわけであります。実際に見てみますと、新薬登載後大体六一年ぐらいしますと使用頻度が非常に下がっていく、そして、古い薬から新しい薬へ移行する、いわゆる新薬シフトということが指摘されておりますし、また、データを見ますとそういう傾向があるわけであります。そしてまた、この新薬の価格の問題、これがまさに御指摘のとおりあるわけでありまして、どういう原因でそういうふうなシフトが起こるのか、そこのところが一番の問題でありますが、一つには薬価差の問題があるのではないかということが言われております。そういったような意味では、やはり現在の薬価基準のあり方そのものが問題であるというふうに私ども考えておりますし、また、その薬価の算定の仕方につきましても、透明性を確保していくべきであるという御指摘もございます。  そういうような問題について、やはり全体的な対応をしていかなければ、これはなかなか一つだけの原因では解決ができないというふうに思っておりますし、そういった意味で、今回の制度の全体的な見直し当たりまして、まさにまず薬価基準のあり方そのものについて根本的な見直しをしていかなければならない、こんなふうに考えております。
  163. 五島正規

    ○五島委員 薬価差の話が出ましたけれども、それは違うのですよ。薬価差という話をすると、常にパーセントが出るわけですが、これはボリュームの問題なんです。  その辺では、具体的な事例を挙げますが、今、若い医者が盛んに使い出した消化性潰瘍用剤の薬として、オメプラゾールが物すごく出ていますね。これは、使い出したら大体六週間から八週間使わないといけない。一日一錠ですね。そして、一錠が二十ミリで、三百二十二円十銭ですね。どんな薬もR幅が一〇%から一五%くらいの間でしょう。そうだとしますと、オメプラゾンについても、新薬であったとしても、大体一錠についてその医療機関に三十二、三円くらいの薬価差があるということになるかと思います。  一方、非常に長く使われてきたタガメット、これは今一錠四十円ですね。一日に一回か二回飲む。八十円か百六十円ですね。あるいは、がスターにしてもそういうふうなものです。どんどん薬価は下がってきた。タガメットだとかガスターというようなものは下げてきました。そうすると、そういう薬からオメプラゾールの系統の薬に変わっていっている。別にどちらでないといけないという、そういう根拠があってではなくてやっている。  四十円の薬で、確かに一〇%の薬価差益が実際の流通コストの中で必要だからということであったとしても、四円ですね。だから、率ではなくてボリュームではないですか。それがどんどん変わっていけば、どちらも、タガメットで十五円取ろうが、オメプラゾールで十五円取ろうが、四十円の薬から三百二十二円の薬に変わってしまえば、何の足しにもならぬわけでしょう。そこのところをどう歯どめをかけるかというところを考えない限り、この十二年間、厚生省は失敗してきているのですよ。そのことを私は申し上げている。  それで、一体どういうふうにしようとしているのか。今回とりあえず金だけというけれども、私は、今回の措置が逆に高価格医薬品の方向に使用医薬品の変更を進めるだけになるのではないか、そうなれば結果的には大変なマイナスになるのではないかというふうにも心配しているわけなんですが、その辺、大丈夫ですか。
  164. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 まさに高価格医薬品にシフトしていくというそういった傾向、これは解明をして防いでいかなければいかぬわけでありますが、その原因が、本当に新しい薬が効き目があり、そしてそれを使うことが医療上適当であるということであれば、これはやむを得ないと思いますけれども、今回の一部負担の導入に当たって、必ずしも高価格医薬品ばかりにシフトしていくということにならないのではないかというのは、例えば、トータルとして二百五円以下の場合については、これは一種類とみなして十五円というふうなやり方もとっておりますし、そういうふうな中で考えますと、今回の一部負担あり方だけで高価格医薬品の方へのシフトを食いとめるということを目的としているわけではありませんけれども、これがゆえに高価格の方にシフトしていくということにはならないというふうに思っております。
  165. 五島正規

    ○五島委員 局長、後で問題になることは言わぬ方がいいと思いますよ。  二百五円以下というのは一調剤が二百五円以下の場合であって、二百五円を単位にしてやるというわけじゃないわけでしょう。二百五円を単位にして十五円ずつ取っていくということであればこれはまた全く別の話ですが、それでは今政府が出している案とはかなり違うのじゃないかと思います。ただ、時間がありませんので、これはまたこの法案が出てきたときの議論にしていきたいというふうに思います。  それからもう一つ、薬の問題で申し上げますと、お年寄りの薬について、本当にお年寄りに効くの、そこのところを一体検討していますかという問題がございます。  本来、老人保健というのは、保険者の保険者機能というものを発揮するのであれば、使われている薬について、若い人たちに効果があったとしても老人に効果があるかどうかということをきちっとデータとして出させた上で、その老人保健独自が認可していってもいいと思うわけですね。  合成ビタミンD剤、骨粗鬆症に対して大変な種類の薬、全部で四十八種類ぐらいの薬が出されています。価格も、同じ種類のものでありながら〇・五ガンマグラムであれば八十円から三十五円ぐらいまでの間、非常に格差あるわけですが、出ています。  問題は、非常に大量に一種類でも数百億と売れているこの合成ビタミンD剤、本当にお年寄りの骨粗鬆症に効いているの、それを本当に薬剤疫学として調査していますかということです。  もう一つは、これはたまたまきのう、日本の大手の製薬メーカーがおつくりになっているRADIARという、そういう活動のところでお配りになった資料を見させていただきました。これはアメリカの事例ですが、カルシウム拮抗剤の薬剤疫学をやっています。例えばニフェジピン。よく使われているので、議員の皆さん、もらえますから。商品名の代表でいえばアダラート、ヘルベッサーあるいはワソラン、こういう日本においては極めて一般的に使われている心臓や血圧の薬、こういうお薬が高齢者に対しては心筋梗塞を強める。肝不全の患者に使えば、それによる障害や被害が大きくなる。長期生存は使わない人に比べて劣る、使わない方がいい。六十七歳以上の人にこれを使えば消化器出血が起こってくる。発がん性はすべてにあった。いずれも危険率としてはコントロール群の一・六倍とか七倍とかいう差はありますが、そうびっくりするほど高い数字じゃありません。  これに対して日本のメーカー、それぞれ事例数が少ないとか、あるいはその検討についてはもっと症例を合わせて検討しないといけないというコメントはつけるのです。私もそうだった。外国でそういう調査があったからといって、それをうのみにしろという言うつもりは全くない。だけれども、物すごく日本で一般的に使われている。ここにも医者はたくさんおられますが、ヘルベッサーやアダラートやワソランを使ったことのない人というのはいないわけですね。そういうふうな一般的に使っている薬に対して、カルシウム拮抗剤は老人に使わない方がいいよというふうな研究論文が出ていて、それを日本の製薬メーカーも手にして検討している。  そうだとすれば、そこまで言うなら、なぜ日本で追試をさせないの。日本できちっとそれを追試をして、そして、それがどうなのか、あるいは出されている薬が本当にお年寄りに効くのかどうか、あるいはその使用される用量はどうなのか、そういうことをもう一度メーカーにやらせて、そのデータを公表させ、そして中央薬事審などにおいて検討すべきである。幸か不幸か、非常に高価格の薬価制度の中で、しかも、建て値制というものが入って各製薬メーカーとも経常利益一千億前後という大変な高利益を得ているわけですから、そのぐらいのことをメーカーの責任でやらせても構わないと思うわけですが、それについてどうですか。
  166. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 大変お詳しい先生の御質問ですので、基本的な考え方を中心にお答えをさせていただきたいと存じます。  特に、高齢者に対する医薬品の投与につきましては、先生おっしゃるとおりでありまして、高齢者の場合、どうしても生理機能の低下というのが見られるわけであります。例えば、胃腸の機能が低下しますと、当然、食べ物の吸収が悪いわけですが、医薬品の吸収も悪い。逆に、今お話しの肝機能あるいは腎機能の低下がありますと、排せつが悪くあるいは分解が悪いということで、むしろ医薬品が効き過ぎるということがございまして、高齢者に用いられる医薬品あるいは高齢者を対象とする医薬品の場合に、承認審査におきましても、用法、用量、有効性、安全性の評価法に関して特別な配慮が必要である、こういうことで、高齢者に使用される医薬品の臨床評価に関するガイドラインも定めて厳正な審査を実施をいたしておるところでございます。  このように、高齢者に用いられる可能性のある医薬品につきましては、承認に際しまして、添付文書の「使用上の注意」に「高齢者への投与」の項を設けまして、高齢者における具体的な用法、用量の調整の目安あるいは必要な注意を記載するように製薬企業に指導しているところでございますし、また、既に承認されております医薬品につきましても、承認後の一定の期間後に再審査を行っておりますが、それに際しまして、高齢者に対する使用成績調査などのデータを製薬企業に提出させまして、高齢者に使用される医薬品の有効性、安全性の見直しを行っているところでございます。  薬事法の改正も成立いたしまして、この四月からの施行を控えておるわけでございますけれども、医薬品の開発から承認審査、市販後に至るまで一貫して高齢者に対する薬効のきめ細かな評価を進めまして、高齢者に対する適正な医薬品の使用促進に努めてまいりたいと考えている次第でございます。
  167. 五島正規

    ○五島委員 いろいろおっしゃるけれども、本気でそれをやるのかどうかということです。これまで業務局、エイズの問題以来いろいろございました。ここで、本当にお年寄りの治療にその薬が役に立っているかどうかということを、製薬メーカーの手によってきちっと効果判定させるということを検討していただきたいというふうに思います  時間がございませんので、非常に大事な問題を抱えておりますので、次の質問に移らせていただきますが、一つは、伝染病予防法にかかわる問題でございます。  昨年、O157の問題で大変大きな問題になりました。今は冬でございますからこの問題はやや鎮静化していますが、常識的に言えば、またこれから夏になってきますと、必ずことしも出てくるのではなかろうかと心配されるわけでございますが、最近出てまいります数々の伝染病あるいは従来あった結核その他の伝染病にしても、その菌について言えば、多剤医薬品耐性等々で非常に検査が難しい状況になってきています。  こうした新たな伝染病の防止のためには、現在の技術面として、各都道府県、市町村の衛研が単独でやっていくということでは無理なのではないか、やはり全国二、三カ所ぐらいに拠点的なそういう検査施設整備し、そこに情報が集中できるシステムの中でやっていかないと対応し切れないのではないかというふうに思うわけです。  そうしますと、どうしてもこれまで伝染病予防法の関係で、伝染病はいわゆる地方の事務、地方自治体が第一義的に責任を負うべき義務になっているわけですが、その点も含めた、従来、厚生省の方も伝染病予防法の見直しをすると言っていたわけですが、そういう今の時代に対応した形で防疫活動というものを一体どういうシステムのもとでやるのか、また、これを一体いつぐらいまでにやっていくのか、計画を聞かせていただきたいと思います。昨年のO157の問題なんかも、ある面においては、それぞれの地域で、遺伝子的にO157をチェックしていくその能力の強弱みたいなものがなかったとは言えないというふうにも思われるわけでございまして、その辺についてどうお考えかお聞きしたいと思います。
  168. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 最近ではO157あるいはエボラ出血熱みたいに、今までではちょっと我々予想できなかったような伝染病もこれから予測しなければならない。同時に、結核みたいに一時はもう絶滅近いのじゃないかと思われたものも、最近ではまた、絶滅どころではない、むしろふえているというような状況を考えますと、この伝染病、感染症対策について全面的に見直すときに来ているのかなというふうに思います。  かつては伝染病と思われたのも現代の医学から見れば伝染病ではないというような面も出てきているやに聞いております。そういう点も含めまして、今、感染症の問題について見直しを進めていますが、できれば来年度、来年の通常国会を目指して法案を出せるように準備を進めていきたいというふうに考えております。
  169. 五島正規

    ○五島委員 ぜひその方向で検討していただきたいと思います。  最後に、ちょっと時間がございませんのでまとめて言わせていただきますが、エイズの治療体制について、厚生省、大変努力していただきました。ところが、昨年来非常に問題としてまいりました、特に難病中の難病といいますか、一つの象徴であるところのALSの問題、昨年の七月に、このALSに関しまして国立病院部の中におきまして一つ委員会がつくられました。しかし、結果において七月三十日に会合が開かれたままで、その後それがどうなったのか。どうも開かれていない。ALS医療推進協議会というのができたはずでございますが、それがいつの間にか、国立病院部の中のこれが何か消えているのではないかというふうに思われます。  ALSの医療をどうするか、何をどうするか、そういう研究は別の問題といたしまして、現実にALSの患者さんが医療の場からどんどん阻害され、国立病院からも阻害されているという事実はあるわけです。そしてその中で、人工呼吸器をつけることを医者の方から、つけない方がいいよ、言いかえれば、あなた、早く死んだ方が家族にとって幸せだよと言われているような事例まである。このALSの患者の治療について、あるいは患者のベッドについてどのように考えておられるのか。  来年度の予算を見せていただきました。障害者プランに対してかなり努力をされた形跡は認めます。ただ、この障害者プランを見まして、せっかく難病に取り組んでいただいたわけですが、ALSの患者の立場から見て、利用できる部分というのは何なのか。ヘルパーさんが増員される、そこのところだけかなということですね。難病医療の中においても、ALSの問題について何も触れられていません。このALS医療についてどのようにやろうとしているのか。  私は、国立病院基本的に政策医療をやればいいと思っています。ALSなんというのはまさに政策医療の最たるものです。それを締め出すような国立病院というのは、私はもうなくてもいいと思っています。そういう意味において、各国立病院の中で、一体どれぐらいの病院でALSの患者さんを引き受けられるのか、そしてどれぐらいのキャパシティーを持ってやっていくのか。これが一つ。  もう一つは、ALSの患者さんが在宅で酸素なんかで療養された場合に、二十四時間介護が必要です。そして、それは単に身体ヘルプだけでなくて、清拭の問題からもうあらゆる面においてそういう身体介護が必要になってまいります。これは障害者プランでやるのか、医療でやるのか、難病対策としてやっていくのか、どこでやるつもりなのか、そこのところを明らかにしていただきたいと思います。
  170. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 まず、国立病院の関連で申し上げたいと思います。  国立病院・療養所におきましては、昭和六十年に策定いたしました国立病院・療養所の再編成・合理化の基本方針に基づき、その果たすべき役割一つとして、原因の究明及び治療法の確立の急がれている難病等を克服する医療を実施いたしているところでございます。  ほかの議員さんのためにも少し説明しますと、ALSというのは筋萎縮性側索硬化症という病気でございまして、全国で患者数が約四千でございます。この患者さん方というのは、五十歳以後で発症いたしまして、原因もわからず治療法もない、そして、大体平均予後が三・五年から四年で亡くなられるという大変悲惨な病気でございます。  このALSの医療につきまして、政策医療の一環としてその医療の提供を国立病院・療養所でやっておりまして、平成八年十一月二十日現在二百六十人が入院いたしております。  ただ、ALSの医療につきましては、私ども厚生省の方で難病対策として今やっておりますが、この方々の医療の確保というのは地域との連携の確保というのが不可欠でありまして、この点を十分踏まえつつ、国立病院・療養所において引き続き積極的に対応していこう、このように思っております。  それで、難病対策としてやっていることを少し説明させていただきますと、まず都道府県に対する補助事業として、特定疾患治療研究事業による医療費の公費負担、二番目に、在宅で人工呼吸器を使用している患者用の緊急時ベッドの確保事業、それから三番目に訪問診療、四番目に医療相談という事業を行ってきております。また、本年一月から、市町村に対する補助事業として、新たに、患者の在宅での療養を支援するため、ホームヘルパーの派遣、短期入院、それから日常生活用具の給付を内容とする難病患者等居宅生活支援事業を開始いたしました。  そういうことで、難病の医療として、そしてまた福祉として、地域の中で何とか患者さんのケアを十分にやれるように今後も努力をしていこうと思っております。
  171. 五島正規

    ○五島委員 言葉を飾ったらいけませんよ、肝心な問題を話しているのなら。  現実問題として、ALSの患者さんに対して障害者プランの中でできていることもほとんどない。しかも、ALSの特徴として、仮に呼吸器をつけても、今、ALS協会の会長さんはそれで企業を経営しておられるわけですね。本人が動かせる部分というのはごくわずか、数ミリしか動けないにもかかわらず、それを使って必死になってコミュニケーションをとりながら企業をやっておられる。今世界で一番の頭脳と言われているホーキンスさんがそうですよね。わずかの残存能力を使って必死になってコミュニケーションをとりながら、さまざまなことをやっておられる。  そういう方に対してどのような形でもって医療なり介護をやられるのか。その制度は現在の難病対策の中で十分にできているのか。一体何人の方がすぐに訪問看護の形で生かしているのだ。清拭その他はどうしているのだ。家族が常時ついてやっている、家族は大変疲れている、だけれども、その家族には一瞬たりとも休息を与えることはできない、それをどうするのか。そういうことを問題として考えていって、現在の難病対策の中で、訪問看護からあるいはショートステイのベッドの確保まで地方に任せておくというのはできないのです。  今、国立病院がどんどんALSの患者を締め出された結果として、私どもの病院も引き受けていますよ。必死の思いでやっていますよ。しかし、特定の病院がボランティアと必死になってやっていく、そういうことではやり切れない病気なんですね。そのことをやっていくために、やはり国立病院としてはやるべきでしょう。筋ジスの病棟にALSの患者を入れてはならないという通達、まだ生きていますよね。  それで、このALSの患者さんをどこの国立病院も全部扱えとは言わない。しかし、国療を中心として各地域の中において、それぞれのキャパシティーの中でALSの患者さんをどれぐらい扱えるのか。あるいは、必要なときのショートステイとしてどれぐらい扱えるのか。在宅酸素等々でやっている人に対して、国療を中心としたところから地域の医療機関に対してどこまで丁寧に在宅看護や訪問医療について情報を提供し、その仲間づくりを国療が中心になってやっていくのか。その辺のところまでできない限りは、実はこのALSの患者さんは救われないのです。そういうことまでやるということについてできないのですか。できないのなら、そんな国立療養所は要らないじゃないですか。どうなんですか。
  172. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 現在、国立病院・療養所では、先ほど言いましたように、二百六十人の患者さん、病院の数にして七十施設で受け入れをいたしております。ただ、これが数として十分かどうかということが一つ問題になるわけでありますけれども、病院の方としては、今先生おっしゃられましたように、ALSの患者さんに対しては大変な人力が要るということは事実でございます。  そういうことから、個々の現場においてどういうことが行われたというのは、私たち東京に座っているものですから見るわけにいかないので、先生おっしゃられたとおり、こちらの方もよく観察をしていかなければならぬと思っておりますけれども、現場にはほかの患者さんもいらっしゃる、ALSだけの患者でほかの患者はほっておいていいということにもならないわけでありまして、そういう意味で、私は一生懸命やっているものと思っております。  ただ、今後の問題として、実態がどうなのかということをもう少し綿密に調査をしてみようと思っています。
  173. 五島正規

    ○五島委員 時間が来ましたのでこれで終わりますが、一言言っておきます。  ALSの患者さんについて本気でやるのなら、難病対策の一環として、そうした患者さんを配置しているところに対して別枠で、例えばヘルパーさんをふやすとかなんとかの処理をしないと病棟が回っていかないということを言っているのなら当たり前で、そのことがわかっているのなら、厚生省はちゃんとそういうことをしなさいということを申し上げているわけです。  終わります。
  174. 町村信孝

  175. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。  私は、障害者プランと施策の推進について質問をさせていただきます。  二〇〇二年度までに障害者施策の充実を図る国の障害者プランは、策定から二年目に入りました。このプランは総理府が取りまとめて推進してきたものですけれども、それだけに関係省庁の施策を総合的にまとめたものとして大変期待をされておりました。  ともあれ、一定の数値目標を掲げたのは実は厚生省ぐらいで、他の省庁の所管プランは全く不十分なものでした。障害者プランの作成の不十分なその現状総理府は今どのようにするつもりなのか。  また、もう一つの点は、障害者プランを作成する上で大変重要なことは、市町村の自治体の障害者計画がどうなっているか、これが大事なんですね。この策定指針では平成八年度までに終了ということでなっておりますけれども、各市町村の自治体の政策策定状況は一体どうなっているのか、その点について総理府にお聞きしたいと思います。
  176. 加々見隆

    ○加々見説明員 障害者プランですけれども、保健福祉を初めとしまして、雇用、教育、建設、交通等各般の施策を総合的、横断的に取り入れまして、数値目標を盛り込んで、平成八年度から十四年度までの七カ年計画として平成七年十二月に策定されております。  このプランでは、数値化した目標のほか、駅のバリアフリー化など行政サイドの努力のみでは達成が困難な事項ですとか、先端技術や情報処理技術の活用など、現時点ではその実用化、普及に確たる見通しをつけがたい事項、あるいは心のバリアの除去といいました数量化になじまない事項等も多数盛り込みまして、関係省庁一体となって総合的な障害者施策の推進を図ろうとしているものであります。  このプランの中でも、プランの進捗状況につきましては定期的にフォローアップし、社会経済情勢の変化等を踏まえまして、必要に応じプランの見直しを行うこととなっております。総理府としましても、関係省庁と連絡を密にしまして、進捗状況のフォローアップ、プランの具体化への取り組みを通しまして、ノーマライゼーションの理念の実現に向けてプランの着実な推進に努めてまいりたいと思っております。  また、障害者計画につきまして、地方の障害者計画の策定状況というお尋ねでございますけれども、障害者基本計画の策定につきましては、議員立法であります障害者基本法の第七条の二におきまして、政府には策定義務が、また地方公共団体には策定の努力義務が規定されております。平成八年四月末現在、昨年の四月末現在でございますが、総理府の調査によりますと、都道府県、指定都市ではすべて策定されておりますけれども、市町村では、策定済み市町村が三百三十四、策定中という市町村が五百三十一市町村となっております。  政府としましては、平成七年五月に市町村障害者計画策定指針を通知いたしまして、また、毎年度当初には策定状況の調査も実施いたしまして、策定の推進並びに策定内容充実に努めておるところでございます。また、各種会議においての意見交換とか策定依頼、さらに各種情報誌等におけるPRなどにも努めております。今後とも、あらゆる機会を活用しまして策定の推進に努めてまいりたいと思っております。
  177. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 確かに数量化できないものもありますけれども、しかし、厚生省以外はほとんど数量化されていないのですね。それでフォローアップといったって、そのままでしょう、出たまま。何フォローアップやっているのですか。全然されていないですね。少なくとも総理府がそれをまとめて横断的に総合的にやるというなら、もっとそれなりの努力をしてしかるべきだと思うのですね。  大体、市町村の障害者計画だって、策定したというのは一割でしょう。ゼロというところは七県もある。一つだけの自治体というところが十六県もあって、ほとんど進んでないのですよ。それを調整し、進めていくということだってやらなければいかぬと思うのですね。  私は、市町村で各自治体の長に直接その状況を聞いてまいりました。その中で出てきたのは、今言われましたように、市町村の場合は努力義務だ、だから、どうしても策定しなければいかぬとか、いつまでに策定しなければいかぬというふうに余り認識がない、そういう市町村も随分ありました。それから、実際には国に準じた目標をやるためには現行の市の財政基盤や現行補助制度ではもう無理だ、特に財政力の弱い自治体ですね。もう単独で対応はできないと率直に悲鳴を上げておりました。また、今、国が地方行革だとか自治体リストラだとかいっていろいろな補助金カットの問題が出てくる、そうすると逆に福祉行政が後退している、こういう問題も指摘されているわけですね。  国は計画をつくったと言いますけれども、七年間で一兆円ぐらいの予算なんです。国が出すのはその半分で五千億円でしょう。だから、結局、市町村のプランも進まないのは、国の財源、こういうものが全く不十分だ、そして地方行革福祉行政を後退させている、こういう問題に、市町村は国の姿勢をよく見てますよ。こういうところに問題があるのじゃないかというふうに思うのですが、厚生大臣、いかがでしょう。
  178. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 障害者問題のみならず、言われてみればみんな不十分なんですね。財源がないのです。これをどうするかということ、これから本当に大変な問題だと思いますが、この限られた財政状況の中で、不十分と言われながらも、障害者計画については一〇%以上、平成九年度予算で伸ばしたという点もやはり評価していただきたいなと。そして、市町村がそういう計画を立てていただいて、厚生省としてもその計画を支援していきたい、少しでも一歩一歩充実させていきたい、目標に沿ってこの目標が遂げられるように努力していきたい、そう思っております。
  179. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 お金がないと言いますけれども、私たちはもちろん、むだ遣いをちゃんとなくしなさいということを言っております。むだな公共事業を本当に見直すことだとか、アメリカのための軍事費をうんと減らすことだとか、医療の問題だって、先ほど出ておりましたけれども、薬にもっとメスを入れなさいということだって言っていますよ。そういうところについては目をつぶって、ともかく金がないと。しかし、計画だけはつくったといって市町村につくれつくれと言ったって、実際にお金がありませんよと言ったら、市町村は見ていますよね、国の姿勢を。だから進んでいない。確かに一〇%進めたといったって、絶対量がね。もう本当に障害者の問題は大変深刻な事態になっております。  私、なぜ緊急な事態になっているのかということをぜひ言いたいと思うのですけれども、昨年一月に埼玉県の秩父市で、御存じのように、六十五歳のお母さんと重度の障害を持つ三十六歳の長男が自宅で、浴槽の中で死亡するという事件ありましたね。もう二十年間も子供を見てきて、本当に疲れ果てたといいますか、こういう状態だったと思うのです。  実は、これは決して例外じゃない。先日、二月九日ですけれども、東京で、障害者を介護する家族の健康と人権を考えるシンポジウムというのが開かれたのです。ここで出されたことは本当に深刻な問題があったのですね。例えば大阪では、三千人の家族の健康と生活を実態調査したのですが、健康だと答えた方はわずか百二十五人、四%しかいない。もう体がみんなあちこち、障害者を抱えた家族が大変苦労しています。滋賀県では、病気や急用でも障害者を抱えた家族というのはかわってもらえないという人が二五%いるのです。自分が体が病気になったってかわってもらえない。家族でようやくかわってもらえるという方が六割なんです。七十歳以上の高齢者が障害者を介護している、こういう状態もあるわけですね。もう家族は極限状態にある、このようにアピールも出されているわけです。  これは厚生省報告が出されているようなので、ぜひ厚生大臣にお読みいただきたいと思うのですけれども、実際には、障害者を抱える家族の健康や生活実態厚生省はつかんでみえるのでしょうか。私は、本当に深刻な事態というのは、ちょっと一〇%進めたぞと言っておれないような事態だと思うので、ぜひ障害者の家族の健康や生活の実態調査をやるべきだというふうに思っているのですが、大臣、いかがでしょうか。
  180. 中西明典

    ○中西政府委員 確かに、議員おっしゃいますように、障害者を抱えた家族の介護の悩み、苦しみ、大変な事情があるというふうに認識しております。  それで、障害者プランにおきましても、ノーマライゼーションといいますか、在宅を基本としてできるだけ支援していこう、ホームヘルパーの増員あるいはデイサービスあるいはショートステイ、そうした三事業初め、これを各種施設がバックアップするという体制を築いていきたい、それによって障害者を持つ御家族の皆さんの負担をできるだけ軽減していきたいという方向で進んでいるところでございます。  そこで、家族等の実態についてでございますが、私どもとしましては、国民生活基礎調査や、今おっしゃいましたような、家族会でありますとかそういった民間の諸団体がおやりになっておられる調査により、部分的な形であるわけでありますが、把握はしてきております。それから、そうした御意見あるいは実態については、審議会の場に委員として代表の方が御参加いただいてお話を聞くなり、そうした場で実態把握に努めてきておるところでございまして、そうした実情というのは一般論としては承知しておるところでございます。
  181. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 私は、実情はもちろん聞いてみえるかもしれませんが、その緊急性というか、本当にもう極限状態というかぎりぎりのところなんだというところを、厚生省、認識弱いと思うのです。そういう意味では、ぜひ家族の実態調査を、今どういう事態にあるのかというのをやっていただきたいと思うのですけれども、大臣、いかがでしょう。大臣、お願いします。
  182. 中西明典

    ○中西政府委員 御承知のとおり、障害者御本人の、例えば身体障害者の調査でございますとか精神薄弱者の調査、知的障害者の調査をやってきておりまして、これらにつきましては、団体との間でその調査項目や調査手法について御相談しながらやってきておるところでございまして、そうした調査の中に、例えばそういった家族の状況について、先生がおっしゃるような形のものをそういうところに取り込めるかどうか、そういった点についてはまた今後の課題として検討していきたいと思います。
  183. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 大臣、どうですか、ぜひ家族の実態調査をしてほしいという声が本当にあるのですよ。
  184. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 私もたまに施設を視察に行ったり、あるいは知っている方がいるものですからいろいろな行事に参加したり、実情を見ていると、御家族の御苦労は大変ですよ。  その中で、最近は、障害者の参加をできるだけ社会が温かく受け入れていこうという雰囲気が出てきている中で、かなりいろいろな行事に障害者も参加して、家族も一緒に参加している。御苦労であると同時にほほ笑ましい姿も随所に見られるということは、今後とも障害者の完全参加に向けてだんだん社会も目覚めてきたというか、温かい雰囲気が出てきたなと思っているのですが、これから施策を進める上において、やはり調査というものが必要ですから、その実態調査に努力を続けていく必要がある、そう思っております。
  185. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 ぜひお願いしたいと思います。  では、具体的に施策がかみ合っていないという問題についてお聞きしたいと思うのですね。  今、障害者と家族が一番切実に求めているのは何か。例えば通所型の施設の増設とか補助の増額をうんとやってほしいというのが切実な声としてあるわけですね。  例えば小規模作業所の問題です。これが今現在ではもう四千カ所ぐらい、自治体が補助していないのを合わせますと五千カ所ぐらいあって、毎年三百ぐらいふえていっているわけですね。これは利用者が約六万六千人と言われておりますが、国の通所授産施設と比べましても約五倍です。認可施設が受け入れてくれない重度の障害者、どこにも行けない、そういう子供たちを今どんどん小規模作業所が受け入れているわけですね。無認可施設がこれだけどんどん設置されるというのは先進国の中でも例がないのです。それだけ本当に切実な問題になっているのです。  私、ちょっときょう持ってきたものがあって、ぜひ見ていただきたいと思って、委員長理事会で了解を得ましたので、よろしいでしょうか。
  186. 町村信孝

    町村委員長 はい、どうぞ。
  187. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 これは、名古屋の港区にあります共同作業所の子供たちがつくったタペストリーなんです。ともかく手にいっぱい絵の具をつけて、手が使えない子は足にも絵の具をつけて、これをクリスマスのためにつくった、こういうものなんです。もう毎日、子供たちがこれをつくるのに本当に苦労しながら、そしてそれが喜びになって、ともかくつくり上げたのです。こういう作業所が子供たちの生きがいの場になっているし、就労の場といいますか、就労といっても本当に重度の子供たちなんです。これを子供たちが厚生大臣にぜひ見てほしいということで、きょうこちらに持ってきたわけです。  こういうタペストリーがつくられているわけなんですが、小規模作業所への助成拡充という問題は障害者プランでは数値も示されていない。いろいろな数値が出されているのですが、これは数値がないのですね。一体どういうような位置づけで今考えてみえるのでしょうか、お聞きします。
  188. 中西明典

    ○中西政府委員 在宅の障害者が通所して作業を行ういわゆる小規模作業所につきましては、例えば保護者、家族の方々あるいはボランティアの方々、これが草の根的取り組みとして展開しておられる事業でございまして、非常にたくさんございますが、その形もさまざまなバラエティーがあるものというふうに考えております。  そうした草の根的に発生、発生といいますか組織される、そういった事業につきまして、上から旗を振って幾つつくっていこうという性格のものとはちょっとなじまないのじゃないか、整備目標の設定という形でやるべきものではないのじゃないかと。  障害者プランの中では、小規模作業所については、一つは、できるだけ永続的、安定的な方向に施設形態を移行していっていただくという観点から、一つは、授産施設の分場方式という形で施設の位置づけというのができないか、あるいは、デイサービス事業拡充、発展していただくという形で、施設そのものが末永く永続的に発展できるような形に結びついていく、こういうことをまず掲げた上で、その上で小規模作業所の今後の運営の安定化を図っていこう、そういう考え方でやつてきておるところでございます。
  189. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 もちろん、安定して継続的なものをつくっていくというのは大事だと思うのですよ。でも実際には、授産施設でいえば自分で通ってきてくださいとか、デイサービスは週二日しかないとか、重度の子供たちは通えないのですね。それで、やむを得ずお母さんたちが自分たちでつくって、市町村ももうとても見ていられないということで援助しているわけです。その費用も、これは名古屋の港区のしおかぜという作業所なんですが、名古屋市は九百五十万援助しています。それでも指導員のお給料は月十二万円ぐらいですね。バザーをやったり寄附を集めたりして、本当に苦労しているのですね。  でも、そういうところが今どんどん広がらざるを得ない。国はどうしているか。小規模作業所への援助はたった百十万です。年間ですよ、年間百十万。もう指導員の給料も出せないような状態でしょう。それについて、余りにもひど過ぎるというので、障害者団体の方も一致して作業所の補助金を上げてほしいと。また、どこかの団体の窓口を通さなければもらえないとか、もらっても、国のこの百十万のお金だって二年間くらいでもう打ち切りになったり、全然安定的じゃないのですね。  こういうことについてぜひもっと考えてもらいたいということで、実は、一九九五年の十一月に、日本身体障害者団体連合会とか全日本手をつなぐ育成会とか全国精神障害者家族会連合会、共同作業所全国連絡会の四団体が、どうしてもこの小規模作業所の問題について検討してもらいたいということで、その検討のための委員会をつくってほしいと障害者団体が一致して要望を出しているのですね。ぜひこのことについて、厚生省、真剣に検討していただきたいと思うのですけれども、いかがでしょう。
  190. 中西明典

    ○中西政府委員 小規模作業所につきましては、先ほど議員おっしゃいました団体を通じて助成を行っておるところでございまして、今次予算におきましても、千八百九十五カ所から二千二百四十四カ所、三百四十九カ所の増を図ることといたしております。今後とも、そうした障害者プラン、先ほど申し上げましたプランの趣旨に従って運営の安定化という形で努力していきたいというふうに考えております。  小規模作業所のあり方を含め、障害者プラン全体の進め方、そういった問題につきましては、厚生省内にそれぞれ審議会がございますので、そういった場を活用して議論していけばいいのじゃないかというふうに考えております。
  191. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 ぜひこの問題は、先ほど二千五百カ所と言ったけれども、もう五千カ所ぐらいに広がっていますし、実際には百十万程度ではとてもやり切れないという状態なんですね。障害者団体が一致してこれだけは検討してほしいと言っているわけですから、こういう声を聞かずに今あるのでやりますよなんて言ったら、障害者の声も聞かないでどんどん進めていく行政といったら、障害者プランをつくったって一体何の意味があるのかということになるわけですね。  せめて、障害者団体が一致してこれだけは検討してほしいということについて、ぜひこれは御検討願いたい。このための検討の会議の設置をぜひしてほしいということなんですけれども、厚生大臣、いかがでしょうか。
  192. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 検討を進めていきたいと思います。
  193. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 ありがとうございます。ぜひ御検討願いたいと思います。  次に、精神障害者の問題についてお聞きしたいと思うのです。  今、精神障害者の人権問題というのが大変大きな問題になってきております。二つの事例を御紹介したいと思うのです。  一つは、長野市にあります栗田病院というところなんですが、ここで院長が逮捕されたのですね。精神科です。四百万円を患者さんの通帳から引き出した詐欺の疑い、また五億円近くの脱税の疑いで逮捕された。  私ども日本共産党が、長野の県議会と木島日出夫議員が中に入りまして、調査に入ったのですね。それで、患者さんや家族からも随分切実な要望が出されておりました。真冬の寒い時期にも暖房が朝のわずかな時間しか入らないとか、病棟の電気は夕食時しかつけないとか、こういう告発が行われて、今それに対する改善を求めました。県も監査に入りまして、ようやく精神保健指定医による診察が行われるようになっております。これが長野県の例です。  それから、愛知県の瀬戸市というところ、私が住んでいるところなんですが、ここでは愛正病院という病院が、実は昨年、会計検査院が、ここの病院は医者と看護婦が必要な半分しか配置していない、それで本来請求できない食事療養の診療報酬を請求していたということで一億円近くの保険料の差額の返還を求められた、こういう事件がありました。  私も、これは調査してみましてびっくりしました。食事療養に関連して、それまでがまたひどかったと思うのですけれども、返還請求を受けたので患者の食事内容が極端にまた悪くなって、一月一日から三日間のお正月期間は一日二食になったというのですよ。  それで、これも私ぜひちょっと、また厚生大臣に差し上げますけれども、献立表を持ってきたのですが、朝十時にお雑煮を食べて三時に弁当だけとか、こういうのが三日間続きまして、一月四日には朝御飯はみそ汁とふりかけになったのですが、これも厳しい、監査でお金を返さなきゃいかぬというのでふりかけがなくなっちゃったとか、こういうのが現実に行われて、これは労働組合が、余りにもひどいというので県に指導を求めました。その労働組合はまたその労働組合員を解雇するというような大変ひどい状態になっておりますし、また、保護室というのがあるのですが、十五室に常に全員、満室になるために入れているとか、それから、生活保護の患者さんには保険のきかない薬剤や注射を私費で利用させて、日用品費は一月ジュース二本だけとか、こういうひどい状態が実はあるわけです。  私も精神病院に実は勤めていたのです。二十年前にこういうものがあって問題になったのですが、厚生省はこういうことについての報告を受けているでしょうか。
  194. 中西明典

    ○中西政府委員 一つは栗田病院でございますが、昨年の十一月、病院長の詐欺容疑による逮捕を契機といたしまして、長野県が精神保健福祉法に基づきまして数回立入調査を行ったところでございます。その結果、入院患者の処遇等に不適切な面があるということで、同法に基づきます改善命令を前提とした聴聞手続を進めた結果、これらの問題につきましては、その聴聞手続の過程で病院側が既に改善を行った、その後の県のチェックにおいても改善が図られているということが認められた、このような報告を受けております。  それから、もう一つの愛正病院につきましては、ことし一月、病院の労働組合から、入院患者の人権侵害につながるような文書、要請書が愛知県の方に提出されたことを受けまして、この二月でございますが、県の方が精神保健福祉法に基づく立入調査を行っております。現在、事実確認を行っておる、調査をやっておるというふうに報告を受けております。  いずれにいたしましても、精神病院における入院患者の処遇につきましては、これは精神保健法できちっと基準を定めているわけでありますし、その遵守が義務づけられるのは当然のことでございまして、これに反したような処遇があるということは、もしそういうことであれば、まことにゆゆしい話である、きちっとした監視指導をやっていかなければならないというふうに私どもは考えております。
  195. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 毎年、県なんかは監査するわけですよ。こういうところは実地指導をしているわけです。実際にはもう職員が半分しかいないということがわかっていながら何していたのかという問題があるわけですね。金さえ返してもらえばいいのか。そんなことないです。職員が半分しかいなきゃ、そこに患者さんの人権問題があるということはわかるはずですね。  私は、厚生省がこういう問題についてもきちっと見ておく必要があるし、この機会にぜひ精神病院実態調査もやってもらいたいと思うのです。もうこの人権問題は解決したということではないです。深刻な問題があります。  一つは、その中でとりわけ私は重大だなと思っているのは、要するにこれは民間病院に精神医療がほとんど任されているという問題なんですね。一割ぐらいしか公的な病床というのはないのです。ほとんど民間ですね。それで、お医者さんも看護婦さんも特別に精神科は少なくてもいい、こういう制度になっておりまして、それよりも半分ですから大変ひどい状態ですね。こういうことについても、私は、もっと国や、公的な責任というのは精神医療については考えるべきだ。  そして、入院がずっと長くなって復帰できないという状態もあるのです。そういう社会復帰の制度も大変おくれております。こういう点でも、厚生省は責任を持って、この精神医療改善について、患者さんの人権を守る立場からぜひお願いしたいというふうに思います。  有名な、精神医学の先駆者である東大医学部教授の呉秀三という人は、精神障害者はこの病にかかった不幸に加え、この国に生まれた二重の不幸を抱えている、こういうふうに言ったのですね。それは明治時代の話です。今、この国に生まれた不幸と言うのじゃなくて、どんなに障害が重くてもこの国に生まれた幸せと言えるような日本をつくるために、障害者施策の前進をこの精神医療の前進とともにぜひ御検討いただきたいと思いますけれども、最後に厚生大臣の明確な決意を伺って、終わりたいと思います。よろしくお願いします。
  196. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 精神病だろうとほかの病気だろうと、国立だからしっかりやる、民間だからだめだというふうには私はとりません。むしろ私は、民間にゆだねられるものは病院でもこれからは民間にやってもらうという環境を整えた方がいいという考えを持っている一人であります。要は人でありますから、虐待をやるというのは国立だろうが民間だろうがとんでもないことでありまして、その点については十分指導なり現状の把握というものを厚生省はふだんから注意しておかなければならぬなというふうに考えておりますが、今後の問題として今の御意見をしっかり参考にしていきたいと思っております。
  197. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 ありがとうございました。これで終わります。
  198. 町村信孝

    町村委員長 中川智子君。
  199. 中川智子

    ○中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。  皆様、あともう少しですから頑張ってまいりましょう。よろしくお願いします。  先般、小泉大臣の所信表明の中に「厚生行政は、国民の生命、健康や安全と直結するものであることを再認識し、健康危機の管理や対応に万全を尽くします。」というお言葉がありましたので、この言葉を受けて、きょうは遺伝子組み換え食品のことについて質問をしたいと思います。遺伝子組み換え農作物といいましても、私はこれに対して専門的な知識を持っているわけではなくて、本当に一般的な、常識的な質問になると思いますが、そこのところをお含みおき願って、よろしくお願いいたします。  質問をするに当たりまして、遺伝子組み換えに関する本を結構一生懸命読んでまいりましたが、驚くことに、この分野の研究開発は世界的にとても進んでいるのです。そして、アメリカ、カナダが世界をリードしているという状況があります。むしろ、経済大国と言われる我が国の研究規模はとても小さくて、基礎研究でもおくれをとっているというのが現状です。  我が国の基幹産業でありましたあの三井三池鉱山が百二十年余りにわたる歴史を閉じましたけれども、次の世紀、二十一世紀は、現在我々が想像できない新しい産業が興り、時代に取り残された産業は消えていくという運命になっていきます。  いわゆる遺伝子組み換え産業は、二十一世紀前半には世界的に高度成長して、我が国も数十兆円の市場規模に達するとさえ言われておりますが、私には、伝えられているほどこの産業の具体的なイメージがわかないわけなんですね。それは、本当に多くの人がそうだと思います。  それで、極めて広いすそ野を持つ産業になると予想されているこの遺伝子組み換え産業が、人類にとって明るい未来になるのか、それとも大変恐ろしい未来になるのか、そこが今はわかりません。ですから、まず初めに、厚生大臣としてではなく、二十一世紀前半の政治をリードされる、そのような政治家としての期待を大いに込めて、政治家小泉さんに、この次世紀の遺伝子組み換え産業というものに対しての感想というか、そのあたりをちょっとお伺いしたいのです。
  200. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 私も連日、時間があると厚生省の人から講義を受けているのです。この食品の問題、遺伝子組み換えの話も先日聞きました。  遺伝子組み換えというと、とんでもない変わった食品を我々は食べさせられるのかなと思ったのです。そうしたら、現実に進んでいる度合いはすごいですね。私の常識を超えていました。既に我々はもう食べているかもしれない。昔から、遺伝子組み換えと言わなくても、品種の改良とかいうことでかなりの技術が進んでいるようであります。  現在、この遺伝子組み換えによる食料というのは、欧州連合でも大変な議論を呼んでいるようであります。そして、アメリカ等でも進んでいますから、この問題についてはいやでも応でも関心を持たざるを得ない。特に、日本は食糧輸入大国です。消費者から見れば、これは遺伝子組み換えの食品なのかな、そうでないのかなとか、どういう手順でできたのかなといろいろ知りたいと思うのは当然であります。  規制緩和というのが今一つの流れになっていますが、昨日も首相官邸で行政改革推進本部の会議が行われまして、各代表から意見を聞きました。その中で、消費者科学連合かな、たしかその連合の代表が出てこられまして、御婦人ですけれども、この遺伝子組み換えの話が出ました。規制緩和の流れだけれども、食品の安全性には十分注意してもらいたい、また、消費者もいろいろな食品が選択できるように表示をしてもらいたいというような意見が出ました。  もっともだなと思っていますが、これは、日本はどっちかというと輸入国ですから……(中川一智)委員大臣、それはこれから質問しますので」と呼ぶ)ああ、そうですが。相手国の問題もあります。相手国にもそれをしてもらわないと、どれがどうかわからない。しかも、加工されたらなおわからない。そういう問題もありますから、日本としては、厚生省としても情報収集に努めて、この問題についてはしっかり対応していきたいなと。私自身も食品の安全には、これからの健康問題を考えると若い世代にも大変大きな影響を与えるものですから、十分な注意を厚生省も払うべきだ、そういうふうに思っております。
  201. 中川智子

    ○中川(智)委員 ありがとうございました。  後の質問の答えを、何かちょっと困ってしまいましたけれども、それじゃ、もう大臣にしばらく聞きませんからゆっくり休んでいてください。  今の大臣のお答えの中に、品種改良とかいろいろおっしゃられましたが、遺伝子組み換え食品というのは、自然界では決して生まれない、今までの自然の流れの中では決して生まれない食物だということをまず認識、既に認識されていらっしゃるでしょうけれども、そのことをまず確認をいただきたいのですね。  それを食べたからといって直ちに食中毒を起こすとかというものではないのですが、しかし、組み換え食品を食べることによって、人の大腸菌に取りつき、どのように変化していくのか、それが全くわからない。もしかしたら、生まれてくる子供に影響が出るのではないか、また、その子供の子供の遺伝子に影響が出てくるのじゃないかという不安がすごくあります。また、今のように全く情報が国民に知らされていない限りにおいて、不安だけがとても増大しているというのが現状です。  遺伝子組み換え食品を口にして絶対に安全だと言い切るには、やはり長いスパンで見なければならないし、たくさんのデータをそろえなければいけないということを本当に思うのですね。現段階でもう既に、昨年の九月にこれは厚生省がゴーをして、日本に入ってきています。ですから、今大臣おっしゃったように、もう食べているかもしれない。でも、絶対に安全だと言い切ることはできないと私自身、そしてたくさんの国民が今不安を持っていることに対してどのように考えていらっしゃるか、お答えをお願いします。
  202. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 大臣が大変広範な形で御答弁をされましたので、その中にあるいは包含される問題もあろうかとは思いますが、先生冒頭におっしゃいました、いわゆる遺伝子レベルの改変を伴う品種改良とでも言ってよろしいでしょうか、それには大きく分けて三つぐらいのカテゴリーがあるというふうに御認識をいただければと思う次第であります。  一つは、いわゆる交雑と言われまして、収量のたくさんとれる稲と寒さに強い稲を交配しまして、寒さに強くて収量がたくさんとれる稲に品種改良していくという、従来から、昔からやっている、これも遺伝子レベルの改変を伴う技術であります。それから、それ以外に、組織培養でありますとか胚培養といったようなレベルでの、遺伝子を少し換えていく形でのいわゆる品種改良技術がございます。それから三番目に、今先生指摘の、いわゆる遺伝子を組み換える、組み換えDNA技術というものが最近導入をされてきているわけでございます。  そこで、今お尋ねの安全性の問題でございます。  遺伝子組み換えの食品の安全性の評価につきましては、科学的な見地から、OECD、経済協力開発機構あるいは世界保健機関、WHO等、さまざまな機関におきまして、非常にたくさんの科学者が集まり、非常に精力的な議論を経まして、その評価の考え方が取りまとめられております。我が国におきましても、その考え方を踏まえまして、食品衛生調査会で専門的に御審議をいただきまして、平成八年二月に安全性評価指針を策定したところでございます。  この評価指針につきまして簡単に申し上げますと、遺伝子組み換え食品につきましては、既存の食品とその成分を比較いたしまして、たんぱく質等の食品成分の割合が同じ程度であるかどうか、それから、組み換えによりまして新たにアレルギーの原因になりますようなアレルゲンといったようなものがつくられていないかどうかなどを評価いたしまして、そういったことがなければ既存の食品と同程度の安全性が確保されているというふうにみなすものでございます。この評価指針に基づきまして、食品衛生調査会で個別の食品につきまして御審議をいただきまして、昨年九月に、大豆等七品目につきましてこれを確認したところでございます。  現在までの科学的な知見からは、今申し上げました、世界的に適用されております指針に沿ったものであれば安全性に問題はないものというふうに私ども考えてはおりますけれども、しかしながら、御指摘のように、遺伝子組み換え技術というのは高度な最先端技術でございまして、食品分野への応用経験が少ないものでございますので、厚生省としましては、今後とも、世界の最先端の知見を収集しながらその把握に努め、必要があれば、専門家の御検討を踏まえて対処してまいりたいと考えているところでございます。
  203. 中川智子

    ○中川(智)委員 今のお答えでしたら、今後とも研究していかなければいけない課題だ、研究していかなければいけないということもおっしゃっていまして、そうしたら、もう既に入っているというこの事態に対して、絶対に安全だという確証がないのにもう既に食物が入っているこの現実に対してどのようにお考えですか。
  204. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 大変お言葉ではございますが、安全性というのは、やはり絶対に安全という概念というのが存在するのかどうか、これは大変科学的に議論の多いところでございます。安全性というのは相対的なものではないかという御意見も非常にあるわけでございまして、既存食品の中におきましても、例えば普通のお米の中にも、体にアレルギーを持っておられる方に対しては自然の米は有害な作用を及ぼすものでございます。そういった例もございますので、絶対に安全ということは言い切れるわけではございませんが、現在の最新の科学的な知見のレベルにおいて既存食品と同等であるとみなして差し支えないということでございますので、そういった扱いになるということでございます。
  205. 中川智子

    ○中川(智)委員 OECDの実質同等性というところとか、海外の研究に依拠しているところが多くて、日本でそれを徹底的に、科学者そしてさまざまな機関を使っての安全性チェックということが、この間の資料を見ましても、とても不安だということをこの際申し上げておきます。  そして、今お言葉の中に、答弁の中に、絶対安全だということはないからそれに対してもうしようがない、それが、大臣の所信の中の国民の命を守る厚生行政として、絶対に安全じゃない、絶対に安全なものなんてあり得ないのだという、それは矛盾していないでしょうか。  これまでの薬害エイズにしてもそうですし、さまざまなことが後になって起こってくる。むしろこの遺伝子組み換え食品というのは、一たん野放しになればもう回収不可能なんです。生態系すべてを破壊してしまう、環境すべてを破壊してしまう未知のものなんです。それに対して、そのような短い期間で、また、海外のそのようなデータをもとにして、本当に絶対安全だということはないのだというようなところで、国民の命に一番かかわる食べ物、それに対してそのようなお言葉は、もう本当にますますきょうは不安を募らせてしまいました。もう一度、ちょっとお願いします。
  206. 町村信孝

    町村委員長 ちょっと皆さん、少し私語を慎んでください。
  207. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 多少言葉が足りなかった点があれば御容赦をいただきたいと思いますが、OECDの指針あるいはWHOでの指針等につきましては、これは我が国の基礎研究者等々の研究者も当然参加をいたしまして、共同作業で作成をしたものでございます。したがいまして、我が国が全くそれらを書き写したという意味ではないということでございますので、その点は御理解を賜りたいと思います。  ただ、冒頭お話もございましたように、遺伝子を組み換えました製品あるいは最先端の技術につきましては、どうしてもやはり、技術及びそれによってつくられました製品の評価につきましては、この技術が進んでおります欧米先進諸国の知見は大いに参考にすべきものということでありますが、それをうのみにするということではなくて、我が国におられます食品あるいはこの分野の最先端の専門家の御意見も十分聞いた上で私ども指針を策定したところでございます。
  208. 中川智子

    ○中川(智)委員 そうしたら、私は消費者運動のさまざまな人たちに意見を、この遺伝子組み換え食品について聞いてみました。そこでとても心配しているのは、この大豆、菜種そしてジャガイモ、そのようなものはそのまま遺伝子組み換え食品として私たちの前に登場するのではなくて、すべて姿を変えてやってきます。サラダ油ですとかコーンスターチですとか、今子供たちが大好きなポテトチップス、そのような形になってきて、まして大豆というのは日本人が毎日食するような納豆、豆腐、みそ、しょうゆ、そのような形になって私たちの前にあらわれてきて、これはほぼ毎日食するものです。これに対して、今厚生省は、表示を絶対にしてほしいという要望が多いのですけれども、表示もしない。これに対して、表示に前向きな御答弁をちょうだいしたいと思います。
  209. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 遺伝子組み換え食品に対しまして表示をしてほしいという御要望は、私どもにもおいでになっておられまして、いろいろお話を伺っているところでございます。  ただ、安全性といいますか、公衆衛生上、他の食品と同等かどうかということにつきましては、その手続、考え方、基本的な方針につきましては今私の方からお話を申し上げたとおりでありまして、現在までの時点におきまして、公衆衛生上、他の食品と特に区別しなければならないというふうにはなっておりませんので、食品衛生法上の表示を義務づけるということについては難しいというふうに考えております。  しかしながら、一方におきまして、消費者選択という視点から表示を義務づけるべきではないかという、これはちょっと食品衛生の、いわゆる公衆衛生的な観点とは違う観点で、消費者選択という観点から表示ということを考えるべきではないかという御議論がなされているということも承知をいたしておりまして、この表示につきましての議論は、例えばアメリカあるいはカナダでは表示義務の必要はないというふうな考えをとっておられますし、一方、EUにおかれましては、消費者要求の高まりから表示というものが必要ではないかということで、現在、EUにおきましてその細かい議論がなされているというふうにも聞いております。  また、国際的な機関といたしましてコーデックス委員会、FAOとWHOの合同食品規格委員会というのがございますが、このコーデックス委員会の食品表示部会におきましても、表示の必要性について議論がされているところでございまして、これも近々会議が開かれるということでございますので、そういった会議にも積極的に参加をいたしまして、表示の必要性、その考え方、その根拠等々につきまして十分な情報を収集することが必要でございますし、また、今先生指摘のように、いわゆる原料で入ってくる場合、あるいは半製品で入ってくる場合、製品で入ってくる場合、いろいろな場合があります。しかも、我が国は、例えばトウモロコシはほぼ一〇〇%食糧依存しておりますし、大豆も九九%近くは輸入に依存いたしておりますので、今後の我が国の食糧問題も含めまして、あるいは安全性、あるいは消費者選択という、どういう考え方でどう整理していくかということにつきましては、今盛んに行われております国際的な議論を踏まえながら対処してまいりたいというふうに考えております。
  210. 中川智子

    ○中川(智)委員 せめて選ぶ権利を保障していただきたいと思うのです。せめて選択する。この食べ物は遺伝子組み換えでもおいしかったら食べたいという人がいるかもわからない。そのような方には食べていただいて結構だと思うのですが、どうしても食べたくない、命を守るために食べたくないという人たちに対して選ぶ権利はぜひとも、それがまた法律がないとおっしゃるのであればその法律をつくればよろしいことでありますし、厚生省としてこの表示に関してはきっちりと近い将来お答えをいただきたいと思いますが、いつごろ結論が出ますかしら。時間がありませんから、よろしくお願いします。
  211. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 今御紹介申し上げましたように、国際的に相対立する議論が展開をされている分野でございます。そういったこと、あるいは非常にテクニカルにどうするか、あるいは安全性の観点からやるのか、消費者選択からやるのか、それから、食糧は世界の国境を越えて流通をしておりますから、そういったときに貿易との観点でどうなのか、多彩な議論があるというふうに聞いておりますので、今、いつごろをめどにということを申し上げることは大変難しいと考えておりますが、こういった問題の情報収集とその評価につきまして精力的に取り組んでまいりたいと思います。
  212. 中川智子

    ○中川(智)委員 もしもEUなんかで表示義務が徹底されてきますと、我が国は、おみそやしょうゆを年間に約二十七億円ぐらい輸出しているわけですね。海外の輸出向けに対しては表示をしなければ輸出できない、そして国内に向かっては表示はしないという非常にアンバランスな状態になりますので、この辺も考えてぜひとも前向きな御検討をお願いしたいと思います。  それと、私、学校給食の活動をずっとしてきたところから非常に不安を持っていますのは、もう既に学校給食のサラダ油なんかにこの遺伝子組み換えのコーンや大豆を原料の油が使われているのではないか。一部にそのような報道がありましたけれども、その事実についてお教え願いたいのですが、これはどうでしょうか。
  213. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 私ども所管は食品の衛生の確保でございまして、製造工程まで管理を、私ども所管をしているわけではございませんので、先生御質問の点については厚生省としては把握をいたしておりません。
  214. 中川智子

    ○中川(智)委員 はい、わかりました。それじゃ別のところで聞きます。  あと、私はヘビースモーカーなんですけれども、たばこにでも、吸い過ぎると健康に害がありますと書いてあります。ですから、ぜひともフェアにいっていただきたいということを申し添えます。  私は、台所からぽんとこの国会に参りましたので、ぜひとも子供や夫に安心して料理ができるような、そのような材料の提供を、厚生省としては国民の命を守るという見地からぜひともお願いしたいと思います。命を守ってください。  どうもありがとうございました。終わります。
  215. 町村信孝

    町村委員長 土肥隆一君。
  216. 土肥隆一

    ○土肥委員 土肥隆一です。  あと一分間辛抱していただきたい、このように思います。ちょっと延びるかもしれませんけれども、それは答弁がちょっと延びるということだと思います。  今回、厚生省施設整備業務等の再点検のための調査委員会第一次報告書をお出しになりました。私、これをじっくりと読ませていただいて、おっしゃっていることは全部正しい、ただし、このものを全国の福祉施設設置者あるいは施設長などに配ったら、もう民間福祉はやめようと言うのじゃないかと思います。そして、今や民間特養などはもうほとんど担っている今日、しかも介護保険が通りますと、やがて在宅福祉サービスの担い手にもなっていただかなきゃならない民間福祉、この文書を読んでおりましたら、私はこういうふうに考えました。  民間福祉をやれる人は、福祉を大変愛して情熱を持っておりながら、約千坪ぐらいの土地を持っており、そして施設整備費の四分の一を負担する財力があり、そしてさまざまな、これは市町村あるいは都道府県都道府県が特にそうでありますが、都道府県の厳しい行政指導を受けるのですよ。施設認可のときにそう簡単に、埼玉県みたいにすぐにはこれをくれないのです。そして、厚生省にも何度も頭を下げて、やっとこさ民間福祉法人を取ります。そして、一人では担い切れない場合には連帯保証人がついて、二億円なり三億円の保証人になります。贈与契約書を交わし、連帯保証人として所得証明書を出し、不動産登記簿謄本を出して、確定申告書の写しを出して、初めてあなたはこの法人のいわば保証人になれるということです。  大臣、これだけのハンディキャップを民間福祉法人に負わせて、最初から負わせて、そしてこの点検のとおりにやれ。何も不正をするということじゃないです。もうため息が出るのです。  ですから、このハンディキャップを少なくしてあげないと、下げてあげないとだめです。例えば土地代はどうでしょう。公費で持ったらどうです。あるいは、四分の一自己負担なんてけちくさいこと言わないで、せめて四分の一つまり施設設備費は全額公費でやると。それでも、土地千坪買えば、ちょっとした田舎でも二億円ぐらいするのです。それを二十年かけて――社会福祉医療事業団にまたこれは頭を下げまして、たくさんの書類を出しまして、やっと融資を受ける。だれがこんな苦労をして福祉をやりますか。  大臣、もっと民間福祉に希望を持たしてくださいよ。そして、過重な負担を負わせないでください。福祉をやって何の得があるのですか。金もうけできるはずがないのです。そういう中にあって、理事は全部ボランティアです。理事長もボランティアです。若干、民改費が本部経費に入りますけれども、それは理事会を開くときの交通費程度にしかならない。どうですか、大臣、答弁してください。
  217. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 先ほどと正反対議論が出てきたな。私も善意を信じたい、この仕事に携わる方の。言いましたように、本来、福祉事業とか教育事業というのは、熱意のある、善意のある方々が使命感を持ってやっていただく、それを国が支援するというのが一番いいと思います。しかし、その善意を信じて拡充したいというこの施設補助金制度を悪用した事件が出たために、善意を持ってやっている方に大変な支障を来しているということ、これは大いに反省しなければならない点でありますが、私は、規制も大事でありますけれども、そういう熱意のある方がやる気の失わないように運営面で十分配慮していかなければならないなと思っております。  確かに、今の厚生省調査委員会が出しました改善措置では生ぬるいという御意見が一方ではありますが、私は、この措置を遵守していく限り、熱意のある方がやっていただくならば今以上に健全な運営ができるのじゃないかなと思っておりますので、そういう点も十分配慮しながら、これからの整備拡充に多くの方々が熱意と意欲を持って取り組んでいただくように厚生省としても努力をしていきたいと思っております。
  218. 土肥隆一

    ○土肥委員 委員長、あと十秒下さい。いいですね。  善意というのも、もうちょっと飽和状態ですよ。善意でやってきました、だけれども、これだけ施設がふえ、成熟してまいりますと、情熱があって金があって財産があって、二十年間にわたって借金を返すために募金して回るというような人材はもうおりませんよ。ですから、善意とか国民の犠牲の上に成り立つような福祉はもう行き詰まってきていると思いますね。ですから、何とかここで四分の一の自己負担ないしは土地代は見てあげるぐらいの、どっちか判断できませんか。
  219. 小泉純一郎

    小泉国務大臣 一方では、今ではちょっと優遇し過ぎじゃないかとかという意見もあるものですから、その点はやはり両方の意見を参考にしながら適切な運営をしていかなければならぬなと思っております。
  220. 土肥隆一

    ○土肥委員 委員長、ありがとうございます。終わります。
  221. 町村信孝

    町村委員長 次回は、来る二十一日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時八分散会