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1997-03-17 第140回国会 衆議院 建設委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年三月十七日(月曜日)    午前九時四分開議 出席委員   委員長 市川 雄一君    理事 赤城 徳彦君 理事 遠藤 利明君    理事田野瀬良太郎君 理事 中島洋次郎君    理事 太田 昭宏君 理事 増田 敏男君    理事 石井 紘基君 理事 中島 武敏君       井奥 貞雄君    金子原二郎君       佐藤 静雄君    高市 早苗君       橘 康太郎君    谷畑  孝君       玉沢徳一郎君    東家 嘉幸君       中山 利生君    萩山 教嚴君       松本 和那君    茂木 敏充君       赤羽 一嘉君    赤松 正雄君       岩浅 嘉仁君    岡島 正之君       武山百合子君    西野  陽君       山本 幸三君    鰐淵 俊之君       葉山  峻君    山本 譲司君       辻  第一君    中西 績介君  出席国務大臣         建 設 大 臣 亀井 静香君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 伊藤 公介君  出席政府委員         国土政務次官  井奥 貞雄君         国土庁長官官房         長       近藤 茂夫君         国土庁土地局長 窪田  武君         国土庁地方振興         局長      鈴木 正明君         建設政務次官  佐藤 静雄君         建設大臣官房長 小野 邦久君         建設省建設経済         局長      小鷲  茂君         建設省都市局長 木下 博夫君         建設省道路局長 佐藤 信彦君         建設省住宅局長 小川 忠男君  委員外出席者         総務庁行政監察         局監察官    鎌田 英幸君         大蔵省主税局税         制第一課長   伏見 泰治君         大蔵省銀行局特         別金融課長   佐藤 隆文君         自治省税務局府         県税課長    石田 直裕君         自治省税務局固         定資産税課長  片山 善博君         会計検査院事務         総局第三局建設         検査第一課長  岡部 茂一君         住宅金融公庫総         裁       高橋  進君         建設委員会調査         室長      白兼 保彦君     ――――――――――――― 委員の異動 三月十七日  辞任         補欠選任   金子原二郎君     茂木 敏充君   蓮実  進君     橘 康太郎君   樽床 伸二君     赤松 正雄君   西野  陽君     鰐淵 俊之君 同日  辞任         補欠選任   橘 康太郎君     蓮実  進君   茂木 敏充君     金子原二郎君   赤松 正雄君     武山百合子君   鰐淵 俊之君     西野  陽君 同日  辞任         補欠選任   武山百合子君     樽床 伸二君     ――――――――――――― 二月二十八日  住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案(内  閣提出第一三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十二日  道路網整備及び道路特定財源の確保に関する  陳情書  (第一一六号)  首都圏中央連絡自動車道建設促進に関する陳  情書  (第一一七号)  中部縦貫自動車道整備促進に関する陳情書  (第一一八号)  日本海国土軸及び日本中央横断軸形成に関す  る陳情書  (第一一九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際観光文化都市整備のための財政上の措置  等に関する法律の一部を改正する法律案起草の  件  特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法  の一部を改正する法律案起草の件  住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案(内  閣提出第一三号)      ――――◇―――――
  2. 市川雄一

    市川委員長 これより会議を開きます。  国際観光文化都市整備のための財政上の措置等に関する法律の一部を改正する法律案起草の件並びに特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。  両件につきましては、先般来の理事会等におきまして御協議を願ってまいりましたが、お手元に配付してありますとおりの草案が作成されました。  まず、国際観光文化都市整備のための財政上の措置等に関する法律の一部を改正する法律案起草案趣旨につきまして、委員長から御説明申し上げます。  国際観光文化都市整備のための財政上の措置等に関する法律は、国際観光文化都市にふさわしい良好な都市環境形成を図り、あわせて国際文化の交流に寄与することを目的として、昭和五十二年六月、建設委員長提案により、十年間の時限法として制定され、昭和六十二年に期限延長が行われて現在に至っているところであります。  法制定以来、約二十年にわたって事業が実施されてきたことにより、都市公園、下水道、道路等整備水準は着実に向上してまいりましたが、いまだ十分とは言えない現状にあります。  また、近年、我が国の国際化がますます進展し、国民生活水準向上と余暇時間の増大が図られる中で、国内外観光客の受け入れの促進利便性向上を図るためには、今後とも施設整備中心とした観光文化振興対策を強力に実施することが必要であります。  以上の観点から、本案は、所期目的の完全な達成を図るため、現行法有効期限をさらに十年間延長して、平成十九年三月三十一日までとするものであります。  以上が、本法草案趣旨説明であります。     ―――――――――――――国際観光文化都市整備のための財政上の措置   等に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     ―――――――――――――
  3. 市川雄一

    市川委員長 これより採決いたします。  国際観光文化都市整備のための財政上の措置等に関する法律の一部を改正する法律案起草の件につきましては、お手元に配付いたしております草案を本委員会成案とし、これを委員会提出法律案と決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  4. 市川雄一

    市川委員長 起立総員。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  5. 市川雄一

    市川委員長 次に、特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案起草案趣旨につきまして、委員長から御説明申し上げます。  特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法は、特殊土壌地帯の保全と農業生産力向上を図ることを目的として、昭和二十七年四月、議員立法により五年間の時限法として制定され、以後八度にわたり期限延長のための一部改正が行われ、これにより特殊土壌地帯の治山、河川改修、砂防、かんがい排水農道整備農用地開発などの対策事業が実施されてまいりました。  今日まで四十五年間にわたるこれらの対策事業により、特殊土壌地帯における災害防除農業振興の両面において顕著な進歩改善がなされ、地域住民生活向上に多大な貢献をなしてきたところでありますが、同地帯現状は必ずしも満足すべき状態にあるとは言えないのであります。  すなわち、今なお対策を必要とする地域が数多く残されており、加えて、近年における都市化の進展による災害の態様の変化農業をめぐる国内外情勢変化対応して、新たに取り組むべき課題も多く生じてきております。  これらの課題対応し、特殊土壌地帯振興を図っていくためには、引き続き強力に事業を推進していく必要があります。  以上の観点から、本案は、所期目的の完全な達成を図るため、現行法有効期限をさらに五年間延長して、平成十四年三月三十一日までとするものであります。  以上が、本法草案趣旨説明であります。     ―――――――――――――  特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法   の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     ―――――――――――――
  6. 市川雄一

    市川委員長 この際、本起草案につきまして、衆議院規則第四十八条の二の規定により、内閣の意見を聴取いたします。伊藤国土庁長官
  7. 伊藤公介

    伊藤国務大臣 本法律案の御提案に当たり、委員長及び委員各位の払われた御努力こ深く敬意を表するものであります。  政府としては、特殊土壌地帯現状にかんがみ、本法律案については特に異存はないところであります。この法案が可決をされた暁には、国土庁といたしましては、関係省庁と連携を図りながら、その適切な運用に努め、特殊土壌地帯対策を一層推進してまいる所存であります。  委員長を初め、委員各位の御指導、御協力を引き続きよろしくお願いをいたします。
  8. 市川雄一

    市川委員長 これより採決いたします。  特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案起草の件につきましては、お手元に配付いたしております草案を本委員会成案とし、これを委員会提出法律案と決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  9. 市川雄一

    市川委員長 起立総員。よって、そのように決しました。  なお、ただいま決定いたしました両法律案提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 市川雄一

    市川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ――――◇―――――
  11. 市川雄一

    市川委員長 次に、内閣提出住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。亀井建設大臣。     ―――――――――――――  住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     ―――――――――――――
  12. 亀井静香

    亀井国務大臣 ただいま議題となりました住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  住宅金融公庫は、従来から、国民住宅建設等に必要な資金を融通することにより国民住生活の安定に大きく寄与してきたところでありますが、長寿社会への対応を図る等の政策課題に的確にこたえ、良質な住宅ストック形成及び活用促進していくためには、公庫融資制度について諸般の改善措置を講ずることが必要であります。また、近年の金融情勢変化対応するため、現下の財政状況を考慮しつつ、公庫が引き続き安定的に資金を融通していくための措置を講ずることが必要であります。  この法律案は、このような観点から、今国会に提出された平成九年度予算案に盛り込まれている良質な住宅ストック形成及び活用を誘導する金利体系への転換、補給金平準化を行うための特別損失金による繰り延べ制度改正等所要改正を行うものであります。  次に、その要旨を御説明申し上げます。  第一に、既存住宅融資につきまして、平成九年三月三十一日が適用期限とされている特定既存住宅に対する優遇措置を恒久化し、高齢者に配慮した住宅等の良質な既存住宅に対して優遇する金利体系とする等の改善をすることとしております。  第二に、住宅改良融資につきまして、高齢者に配慮した住宅等とするための改良工事に対して金利を優遇する金利体系とすることとしております。  第三に、公庫に一時的に発生する余裕金につきまして、その運用対象を拡大することとしております。  第四に、近年の繰り上げ償還の急増により必要となる補給金平準化を行うため、特別損失金による繰り延べ制度改正することとしております。  その他、これらに関連いたしまして所要規定整備を行うこととしております。  以上が、この法律案提案理由及びその要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願いを申し上げます。
  13. 市川雄一

    市川委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  14. 市川雄一

    市川委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高市早苗さん。
  15. 高市早苗

    高市委員 高市早苗でございます。  まず、建設大臣に、住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案についてお尋ねをいたします。  昨年の公庫法改正におきましては個人住宅のうち新築住宅対象とし、今回の改正では既存住宅及び住宅改良対象といたしておりますけれども、いずれも、規模を重視した融資体系から、良質な住宅をふやすという政策誘導重視体系への移行という目的が非常に明確で、これはよく理解できるところであります。  省エネ住宅災害に強い住宅はもちろん、高齢化社会において二世帯住宅親孝行住宅の普及は、広く国民の求めるところとなっていると思いますし、公的融資に当たっての設計審査や建築に当たっての現場審査は、施工者に対して、補強材の強化、手抜き防止等心理的効果もあるはずですから、幾ら低金利時代にありましても、資金供給面以外の機能では民間公的住宅金融に代替できないものもあると思います。これは今後の行政改革議論の中で軽視できない点だと感じております。  二月七日の衆議院予算委員会で、三塚大蔵大臣住宅金融公庫について、第一線から撤退して民間に任せたらどうかとの声もある、個人としても民業補完の大原則を踏まえなければいけない時代が来たと思うと発言をされましたが、建設大臣は、住宅金融公庫機能について、民間で代替できることできないことについてどうお考えか。また、住宅金融市場においての直接融資のみでなく、政策目的に合致した民間住宅ローン保証や買い取りなどで参入する方法等もあると思うのですけれども、今後の公庫のあり方についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  16. 亀井静香

    亀井国務大臣 大蔵大臣委員会で御答弁されたことを私も聞いておりますけれども、別に大蔵省指導がすべて悪かったからそういう形になったとまでは私言いませんけれども民間金融機関が、必要なところに必要な資金をきちんと融資をするマナーをとってきたかどうかということにつきましては、大変私は疑問があると思うわけであります。好況時においては産業資本への資金供給ということに極端に偏っておったという今までの歴史もあるわけでございますから、そういう意味では、中あるいは低所得者住宅資金需要に対して、民間金融機関がきっちりとこれが対応できるかということになりますと、私は別に性悪説をとるわけじゃございませんけれども、やはり国としてのきっちりとした責任を持った対応が今なお必要である、私はこのように考えます。  ただ、委員も御指摘でございますように、将来、融資対象融資内容その他につきましては、もっと重点化をしていく必要がある、このように考えております。そういう点は、中低所得者層に思い切って絞っていくということが一つの方向でもあろうかと思っております。
  17. 高市早苗

    高市委員 あくまでも公庫民業補完政策誘導に徹するべきだ、民業圧迫というものは避けるべきであると私は思っております。  住宅金融公庫発行の「つみたてくん」という住宅債券は、本来住宅取得を予定している人が資金をためるためのものなんですけれども使途住宅購入に限定されないために、最も有利な金融商品として雑誌に紹介されたこともございました。  昨年七月二十二日の読売新聞の紙上で、高橋進住宅金融公庫総裁が「「高金利商品」などと紹介されて人気が出ているのは問題で、住宅取得以外の使途が多くを占めるようなら何らかの対策考える。」と言っておられましたけれども、その後、対策は講じられましたでしょうか。また、公庫の仕事の中で、民業圧迫可能性を感じる業務はほかにございますでしょうか。これは、住宅金融公庫総裁お願いをいたします。
  18. 高橋進

    高橋説明員 今委員の御指摘のありました「つみたてくん」、これは元来計画的に住宅を取得する人に便宜のようにという趣旨のもとで発足して、今も、右肩上がりがなかなかない中で、給料も余り上がらないという方が計画的にやる意味で、非常に意味のある制度だと思っています。  ただ、おっしゃいますように、ほかの市場金利に比べまして、公庫基準金利基準として設定しておりますので、高目に設定した。そういうことで、今おっしゃいましたように、金融商品として御利用される向きもなしとしない、やはりこれは一つの問題だと思っております。  これにつきましては、国の建設省大蔵省とも御相談いたしまして、来年度からは、そういった住宅取得以外の使途目的に利用されにくいように、市場各種金融商品長期国債でありますとか利付金融債割引金融債等とのバランスをとって利回りを決めるようにいたしたいというふうに考えております。  なお、もう一つ民間を圧迫するような点はないかということでございますが、これは私どもも、民間住宅金融との役割分担というものを考えてやっておるつもりでございます。一時期、経済対策融資額も非常にアップいたしました。経済対策として非常に効果があったと私は思いますが、その結果として、民間住宅金融が出ようとしたときに、その余地が比較的少なくなったという問題もあろうかと思います。  そういった点も考えまして、私ども融資額の設定については、民間との役割考えながら、適切なものにしてまいりたいと考えております。
  19. 高市早苗

    高市委員 もう一度、住宅金融公庫総裁お願いしたいのですが、九三年から住宅金融公庫で始められましたゆとり償還の件が、九八年ショックということで最近週刊誌でも取り上げられております。これは、最初の五年の返済額が低く設定されるかわりに六年目からは返済額が上昇するというもので、その六年目が来年に当たりまして、最大一〇八%のアップのケースがあるというふうに雑誌には指摘されておりました。  当時、公庫融資の要件であります月額支払い額の五倍の月収につきまして、支払い金額の低い最初の五年間の月額基準に審査してしまったということと、借り手が見込んでいた不動産価格の上昇や給料アップというものの当てが外れたことで、来年から自己破産者がふえるのではないか、そういった懸念があるようでございます。  来年からゆとり償還制度の一部見直しもされるということで、内容も伺っておりますけれども、九三年当時に融資を受けた方たちの返済見込み及び返済不能者への対策をお聞かせいただきたいと思います。
  20. 高橋進

    高橋説明員 おっしゃいますように、ゆとり償還につきまして、九三年、四年の間は、その前にあったステップ償還という言葉を使っておりましたが、同じような制度をさらに当初の五年間の返済額を低くするようなことに変更いたしました。それが平成十年度から、ちょうど六年目になって、多くお返しになる人がぶつかるようになります。  そこで、急に上がることで返済が問題ではないかという点でございますが、その心配なしといたしません。私どもといたしましては、そういう方につきましては、今から、来年度からはこういう額になりますよということも十分お示しして御準備いただくということもいたしますと同時に、実際に返済が非常に苦しい方につきましては、その後の返済条件についても、いろいろ返済仕方等についてきめ細かな御相談に応じてまいりたいと考えております。
  21. 高市早苗

    高市委員 今から示しても、なかなか気がつかなかった人なんか来年から大変だと思いますので、広報活動等々も含めて、よろしくお願いしたいと思います。  それから、あと一点、住宅金融公庫法ですが、肝心の政策誘導機能効果のほどというものをチェックさせていただきたいのですけれども、昨年の新築住宅対象とした改正後、住宅質的向上ということで、確実に効果が上がったかどうかということなんです。  例えば、高齢者用住宅でしたら、ふろ場に手すり一個つけるだけで基準金利が適用されるというのでは、基本的には何にもならないように思うのですけれども、具体的な実績として例をお示しいただきたいと思います。
  22. 小川忠男

    小川政府委員 お答えいたします。  昨年改正いただきました金融公庫法の新しい金利体系でございますが、昨年の十月から施行させていただいております。  金融公庫、一年を四回に分けて募集を行っております。したがいまして、昨年の新しい体系によります最初募集は、十一月二十七日から十二月十日までのいわゆる第三回の受け付けが新しい体系での募集でございました。それにつきまして、現在、申し込みを受理した上で、設計審査を行いつつあるというふうな状況でございます。  正確な分析はこの設計審査の結果を待ってということになると思いますが、現場での感触の報告でございますが、大体半数を超える程度の方々が新しい金利体系基準金利基準に合致しているのではないかというふうなことでございますので、私ども、当初予想したよりははるかに新しい基準設計なり施工をしていただいているというふうな感じで受けとめております。
  23. 高市早苗

    高市委員 少し話題をかえまして、公共事業について建設大臣にお伺いしたいと思います。  大臣は二月十八日の記者会見で、公共事業コスト削減に関連しまして、工事現場で発見された遺跡文化財が研究に値するものなのかどうかを見きわめる調査が画一化されていないか、今のように一年も二年もかかるという状況コストアップに影響を与えていると発言されたと伺っております。  私の地元奈良県のように、掘ったら遺跡が出てしまう地域では、まさに地主泣かせ、業者泣かせの問題で、遺跡は日本人すべての貴重な財産ではありますが、一方で、社会資本整備企業誘致の足かせにもなっております。  大臣は、文化庁文化財調査迅速化を求めるお考えと聞いておりますけれども、この点について、文化庁との話し合いは既になさったのかどうか、また文化財調査に時間がかかる原因というのは何だとお考えなのか、また改善の見通しはあるのかどうか、以上三点、お伺いしたいと思います。
  24. 小鷲茂

    ○小鷲政府委員 まず、私から事務的な状況について御説明をさせていただきたいと思います。  御指摘のありましたように、公共事業を初めといたします建設省所管事業を執行いたしますると埋蔵文化財の問題にぶち当たるわけでございまして、現在全国で行われております発掘調査の五三・八%、これは件数でございます、金額でいいますると七五・三%、これを私ども事業関係ということでやらせていただいておるわけでございます。現実に、発掘調査に大変時間がかかるということが、一方では、公共事業の執行に当たりまして、いろいろな面で問題が起こってまいっております。  最近も、大臣の御指示で、公共事業コスト削減に取り組め。しかし、建設工事自体コスト削減に限界がございますので、事業を執行いたします場合のいろいろな手続あるいは調査、こういったものについてメスを入れろ、こういうことでございまして、この文化財の問題もその一つ問題点として、昨年来、鋭意文化庁協議を進めてまいってきております。  具体的に申し上げますると、双方の課長レベルでございますが、協議会を組織いたしまして、この場を中心にいたしまして議論をしているわけでございます。  これまでの議論の結果、大きく分けますると、問題は二つに分けられるのではないかというふうに考えておりまして、一つは、体制の問題でございます。  体制の問題といいまするのは、都道府県、市町村の教育委員会が担当いたすわけでございますが、教育委員会相互間で十分な連絡体制が必ずしもとられていない場合があるということが一つ。もう‘つは、現場発掘調査を指揮監督いたしまする専門の調査員の方が数が少ない、あるいはまた偏在をしておる、こういった問題があるようでございます。  それから、大きな二つ目の問題といたしましては、発掘調査方法自体について、もう少し効率化が図れないかという問題があるようでございます。  具体的に申し上げますると、発掘する範囲のとり方が必ずしも統一的でない。あるいはまた、費用負担がどのくらいかかるのか、時間がどのくらいかかるのかということをあらかじめ見通すわけでございますが、その見通しが必ずしも的確でないといったような問題。さらには、露天で発掘いたしますので天候に非常に左右されるということがございますが、これを何とか天候に左右されずに発掘を進めるやり方はないものかといったようないろいろな問題点が浮かび上がってきております。  ただいま申し上げましたように、体制一つとりましても、すぐ解決がっくという問題ではなくて、かなり時間をかけて対応していかなければならないという問題もございまするけれども、問題意識につきましては幸いにして双方一致をしかかっておりますので、なるべく早く具体的な対応策について詰めをしてまいりまして実施に移りたい、かように考えておる次第でございます。
  25. 亀井静香

    亀井国務大臣 この問題は、コスト削減にとっては現実的に大きな阻害要因になっているということで、私、事務局に精力的に取り組ませております。我々の祖先にとっても、自分たちの生活した跡が自分たちの子孫の快適な生活を阻害しておるということは、本意なことではないと私は思います。  そういう意味で、今局長が申しましたけれども、もちろん文化財は大事にしなければならぬわけでありますが、調査、発掘方法その他について、もっと合理的に進めるように、我々として今後とも努力をしてまいりたいと思います。
  26. 高市早苗

    高市委員 ありがとうございます。  今の文化財調査にも関係する件で、地元のことでちょっと恐縮なのですけれども、高規格幹線道路整備による交流ネットワークの形成ということで、大臣は所信表明で決意を語っていただいておりますが、京都市から奈良県を通って和歌山市に至ります延長百二十キロメートルの高規格幹線道路でございます京奈和自動車道も、この文化財の問題で、木津南から奈良の区間であります大和北道路がまだ事業化に至っておりません。  昨年四月二十四日の本委員会におきまして、橋本道路局長から、平成八年度中には比較ルートを決定し、文化庁とも十分な調整を図っていきたい、こういった御答弁をいただき、中尾建設大臣からも、高市委員の納得いくような方向に一刻も早くやっていくとお約束いただいたのですけれども、ちょっとおくれているような気がするのですが、現状と比較ルート決定の時期的な見通しをお聞かせいただきたいと思います。
  27. 佐藤信彦

    佐藤(信彦)政府委員 京奈和自動車道でございますが、京都市から奈良市を経て和歌山市に行きます百二十キロの高規格幹線道路でございます。  これはいろいろ事業化区間とかございますが、このうち、御指摘の木津町から大和郡山市の間、これは大和北道路というふうに命名しておりますが、奈良市の中心市街地を初めといたしまして、周辺に点在します平城宮跡、ウワナベ古墳、コナベ古墳等、極めて重要な文化財があるとともに、法華寺集落などのルート選定上配慮すべきものが非常にございます。周辺の土地利用とか埋蔵文化財等の分布状況等の調査を進めるとともに、これらの文化財の保護、景観の保全等に配慮しながら、概略の比較ルートの検討を進めてきているところでございます。  これまでの検討結果でございますが、大和北道路の比較ルートにつきましては、大まかに三ルート出てきております。一つのルートは奈良バイパスの西側を通過するルート、二番目のルートとしましては奈良バイパスに沿って特別史跡である平城宮跡付近を通過するルート、三番目には奈良バイパスの東側を通過するルート、そういった三点になっております。  そういった三ルートでございますが、最終的な比較ルートの決定に当たりましては、文化財保護の観点から、その分布状況とか重要度を踏まえた上で文化庁とも十分に調整を行うことが必要と考えておりまして、現在、奈良県及び奈良県の教育委員会の協力をいただきながら調査を進めているところでございます。  当初、平成八年度中にこれらの調査を終了いたしまして、引き続き文化庁との調整に着手したいというふうに考えておりましたが、各所におきます散在する膨大な資料の収集、それから内容の分析、評価が従来よりもかなり重要度の高いものもあるやに伺っております。そういったことで、当初の時間よりも少々上回るといった傾向になってきております。  ですが、今後とも奈良県及び関係機関と協力しながら、文化財の保護と景観の保全等に十分に配慮しました路線の検討を行いまして、可能な限り早期に比較ルートを決定し、文化庁等と協議を進められるよう努力していきたいというふうに思っております。
  28. 高市早苗

    高市委員 ことし中とか言っていただきたかったのですが、どうかよろしくお願いいたします。  最後に、公共事業削減論といったものが最近マ スコミでも主流となっているように思います。公共事業悪者論と言っても言い過ぎではないと思うのですけれども、しかし、日本の都市基盤施設、こういったものの整備状況は決して十分なものとは言えません。下水道の普及率、イギリスが九六%、ドイツで九〇%、フランス七八%、こういった数字に対して、日本では五四%、ちなみに私の地元は四八・八%といったようなところですし、国道でも、バスがすれ違える七メートル以上の道路がフランスやアメリカが八割、七割といった状況であるのに対して、日本が二四・二%と聞いております。  また、今後、安全で美しい町づくりのための電線共同溝事業ですとか、高齢者や障害者に優しいバリアフリーの歩道ですとか、交通渋滞、次の世代の産業育成に貢献するITSの実用化ですとか、こういったものは日本の場合は今のうちにやっておかなければ、世界一のスピードで高齢化が進展しておりますし、今やらなければならない事業としての時代の要請があると私は考えます。また、公共事業にかかわる産業のすそ野というのは非常に広いものですから、景気対策上の効果ももちろんあると考えております。  こういったことに対してなんですが、大臣は、最近取りざたされていますこの公共事業削減論についてどうお考えか。それからまた、公共事業の意義や必要性について、国民にかなりバランスよく広報していく必要があると思うのですけれども、この点についてのお考えをお伺いしたい。  それから、公共事業のコストを縮減しながら、質を維持する必要性を非常に強く感ずるのです。実はつい先日、ゼネコン数社の役員と話をしていましたら、住都公団の仕事なんかもらっても大変な損になる、三割は現場で持ち出しというありさまだ、正直なところ壁なんかも素材の質を落として対応せざるを得ない、今現在建てているものがこんな状況では、せりかく町づくりをしても十年後はスラム化するんじゃないか、こういう恐ろしい話まで出ておりまして、もし現場状況がこんなことでございましたら、せっかく住宅金融公庫法改正して質の向上ということを言いましても、社会資本全体ということを考えますと底抜けになってしまうというような気がいたしますので、最後には、そのコストダウンの社会的要請の中でなお質を維持していくためにどういう手段をお考えか。  以上、お伺いいたします。
  29. 亀井静香

    亀井国務大臣 委員から、今極めて大事な問題点を御提起いただいております。  御指摘のように、分野によって違いますが、先進諸国こ比べまして日本の社会資本整備は平均すると半分程度かなというレベルであろうかと思います。大都会においてはもういいじゃないかという議論もありますが、東京都あたりにいたしましても、あかずの踏切、道路としての効用がほとんど損なわれているようなものが大変あることも御承知のとおりであります。高速道路といいますけれども、あれは車を拘束している道路であって速いという道路ではない、そういうことが常態化もしておるわけであります。地方に参りますと、今御指摘のように下水道の問題もございます。  基本的に社会資本整備は、そのときの経済事情がどうある、あるいは財政事情がどうあるということをもちろん勘案してやらなければなりませんけれども、これらの事業はすべて多年度にわたるものでありまして、単年度で完成できるものではありません。そういう意味では、子々孫々のためにも、今我々が毎日の生活の中でぜいたくをしないでつましくする努力をしながらでもお金を捻出をして、おくれておる社会資本整備をする義務が我々にはあると私は思います。どうも最近はその本質を見誤った議論が非常に横行しておるのじゃないかなということは、もう本当に心配でならないわけであります。  また、コスト削減議論にいたしましても、総理からも強い指示が、数値目標まで出せというような指示があります。橋本総理も、かつては日米自動車交渉で、アメリカから数値目標をつくれというので無理難題を出されまして、難渋された御経験もございますけれども、私は、できることなら数値目標を設定をしてやった方が気合いが入りますからいいとは思いますけれども、しかし、建設コストを構成しておる要素は多岐、多方面にわたっております。契約法だとかあるいは設計建設省独自でやれる面もあるわけでありますが、随意契約でやっておるわけじゃございませんから、資材の単価をどこまで落とすことができるかという形になりますと、今の契約方法のままでやれる範囲というのは自由主義経済界においては極めて限られる、私はこのように思いますし、先ほど文化庁の話、あるいは警察が使用許可を出すのに一月も二月もかけているような状況なり、そういうものをきっちりとやってくれない限り、建設省だけの努力で一〇%とか一五%削減できますなんという大見えを切れる状況ではございません。  やはり質の問題もあるのです。どの委員会でも耐震性ということも強く言われるわけでもあります。そうしたものをきっちりし、また蒲原沢のああした事故もございましたけれども、防災的な配慮をきっちりとした工事をやっていくには、これは単価が上がるわけでございまして、そういうことを考える。あるいは下請、孫請の働く方々の労働条件をこれ以上切り下げ、切り込まない、そのためにはどうすればいいかという問題もあるわけでありまして、これをすぱっと一割あるいは一割五分というようなことで公共事業は執行できるものではないと私は思っております。
  30. 高市早苗

    高市委員 どうもありがとうございました。終わります。
  31. 市川雄一

    市川委員長 山本幸三君。
  32. 山本幸三

    山本(幸)委員 新進党の山本幸三です。  私は、住宅金融公庫法改正に絡みまして、住宅政策、そして住宅金融公庫の特に特別損失の問題、それから住宅に絡みます土地税制の問題についてお伺いしたいと思いますが、国土庁長官にわざわざ出席していただきましたので、建設大臣、大変申しわけないのですが、ちょっと先に土地税制の方からやらせていただきたいと思います。  住宅をうまくつくっていく、特に都心で高度利用を進めていかなければいけないというのが政府の基本的な政策の方向だと私は理解しておりますけれども、そのためにいろいろな施策を講じておるわけですね。今度の新しい新土地政策要綱にも入っておりますし、あるいは高層住宅をつくるためのいろいろな関係法令もつくったりしました。  そういう政策を一方で進めながら、税制上から見ると非常に反対のことをやっている。つまり、政策のやっていることが逆方向を向いているということがかなりあるんじゃないかなということを私はずっと考えておりました。特に、土地税制の中で、地価税を初め、幾つかの住宅あるいは都市計画関連の税制ですね。  まず最初に、地価税の問題についてお伺いしたいと思います。  この地価税というのがどうしてできたのか私はよくわからないのですけれども、ずっと、できたときの経緯等を調べてみますと、あのバブルがあって、何とか地価を抑制しなければいかぬということで、寄ってたかって考えられることをやったということですね。その中で地価税というのは一つの大きなキーポイントになりましたけれども、この地価税というのは一体どういう効果を持つのかということで、私は何度かこの建設委員会でもお伺いいたしました。  そのときに私が指摘したのは、地価税の効果というのは幾つかあるけれども一つは、地価を抑制するかということになれば、これは地価を抑制する。つまり、将来の収益がその地価税の負担分だけ減りますから、地価というのは、その土地を利用することによって生まれる将来収益が還元されて地価になるわけですから、その意味では当然地価は抑制される、これは確かですね。  ところが、今度住宅開発に関して考えると、では住宅開発は早められるのかおくらされるのかということになると、これは私はおくらされるというように思います。  それからもう一つは、では住宅開発をするときに、低層の住宅開発が進められるか、あるいは高層住宅、高度利用が進められるかということを考えると、これもどうも経済効果としては、こういう地価税のような保有税をばっとかけると高度利用が阻害されるというように私は理解しているのですけれども、この点について国土庁長官、どういうふうにお考えでしょうか。
  33. 伊藤公介

    伊藤国務大臣 御案内のとおり、新しい要綱で示した方針は、地価の抑制から有効利用への転換ということを新しい方針として決めさせていただいたわけでございます。  これは、委員指摘のように、地価税を含めて保有税を、土地を有効利用するときに税制をどう考えるかというのは大変重要な視点だと思いますが、バブル時期のようなああいう状況があって、特に当時、いろいろな調査の結果、非常に遊休地が多い、土地の投機のための土地を持っている、それでそれがなかなか有効に利用されていない、ただただ遊休地を持っている、そういうものに対しては保有税によって有効利用させよう、こういうことであったというふうに思います。  しかし、御案内のとおり、状況が大きく変化をしてまいりました。状況が変われば当然それに対する政策も変えていかなければなりません。  皆さんのいろいろな御指摘の中で、平成八年度の税制改正の中でも地価税を〇・三%から〇・一五%に半分にする、あるいはまた譲渡益課税もかなり軽減をされることになりました。また、平成九年度の改正の中でも各般の検討を加え、また皆さんのいろいろな御指摘もいただきながら、登録免許税であるとか不動産取得税であるとか、そうしたことも税制改正を今進めているところでございます。  いろいろ状況の大きな変化の中で、土地の有効利用に向けて、当然土地税制は非常に大きな要素を含んでおりますので、総合的に検討していかなければならないと思っておりますし、特に御指摘をいただいております地価税については、既に軽減をされてきたところでございますけれども、今後も総合的に検討していくべきではないかというふうに私自身も思っております。
  34. 山本幸三

    山本(幸)委員 最初におっしゃった、保有税をかけると、例えば遊休地だったものが有効に利用されるようになるだろう、恐らくそういう考えで地価税なりを導入したと思うのですけれども、どうしてそういうふうこなるのですか。
  35. 伊藤公介

    伊藤国務大臣 今申し上げましたように、そのときの土地をめぐる経済状況というものによっていろいろな考え方が変わっていくであろうというふうに思っているわけでありますが、ただ土地を持っている、利用していない土地を持っているという者に保有税がかけられる、地価税がかけられるということになれば、それは非常に重税になるわけですから、それは有効利用するために手放しをするということにもなるし、あるいは持っているならば、それを高度に有効に利用するということに転換をしていかなければならない、そういう趣旨であろうというふうに思います。
  36. 山本幸三

    山本(幸)委員 そこがちょっと基本的に違うのですね。  大変恐縮ですけれども委員長のお許しを得て資料を配らせていただいたと思いますが、この右側のところの図Ⅱというものなのですが、地価税のような土地保有税がかかったときに、ではそういう有効利用が進むか、開発が進められるかどうかというと、経済効果は、実はそうじゃないのです。  なぜそうかというと、これは、遊休地なんかを利用するときに住宅開発をする、そうすると必ず、土地造成とかあるいは建設という転換費用、コストがかかるわけですね。このコストをCというふうに、その遊休地を住宅にかえるというふうに転換するための費用がかかります。  それで、この土地開発をやったときに、では将来の収益は何かというと、地代収入ですね。その土地を住宅として開発した、その住宅から地代収入が得られるから将来の地代収入がある。この将来の地代収入というのは、日本経済がどんどんマイナスになっていくなら別ですけれども、一応順調に成長するということを念頭に置けば、将来的には地代収益というのは少なくとも上がっていく、これが自然ですね。  地代収入をこれはqtと書いていますが、このTの時期には中というもので、そういう感じで右上がりの曲線で地代収入というのは考えられる。  それで、こういう状況があったときに、では今からその土地開発をするかどうかというのは、まず保有税がかかっていないときの土地開発はどこで進むかというと、このqtの曲線と、転換費用であるCに対する利子率iを掛けたiC、これが一致するところで決まるのですね。  なぜそうかというと、もし転換しないとすれば、そのときにはCというコストを負担しなくて済むわけですから、そのコストを負担しないで済んだら、それはほかの用途に使えるから、その期、その一期分だけではにという収益は上がるわけですね。そのかわり、地代は得られませんから、住宅が貸せないのですから地代が上がりませんから、qtという地代収益はなくなる。それで、もしiCというのが高ければ、よりこれはおくらされるようになるから、そのバランスをとって、結局一致するところで、そこで住宅開発をしましょうという話になる。  保有税がかかるとこれはどう変わるかというと、保有税がかかるということは、これはもうよく御承知のように、いわゆる機会費用たる利子率の分に保有税分が上がった、つまりiのところがiプラスτという保有税率を掛けた分だけがかかってくる。  これは上の方の式で、もう大変恐縮ですので言いませんけれども、保有税率がかかるということは割引率がその分上がるということなのですね。したがって、地価も下がる。その割引率が上がるということはiがiプラスτになる。これはこういう状況のもとでもし保有税がかかりますと、iCのところでqtの曲線と一致するものだったものが(iプラスτ)Cダッシュつまり少し上に上がったところで横に進めたところで一致して、ここで住宅開発が進むのですね。  つまり、時間的な経過からいえば、これは当初の保有税がないときに比べて、保有税がかかるとおくれるのです。これが保有税の持つ開発のタイミングに対する経済的な効果だと私は思うのですね。  なぜ、そうじゃないという議論が行われるかというと、学者でも言っている人が何人かいまして、野口悠紀雄さんとかそういう人が言っていますが、彼らの書いている論文を読みますと、基本的に条件が限定されていまして、一つはこのCというのが存在しない、転換費用等は存在しないという前提で議論している。それからもう一つは、もし開発するために土地を売ったときに、その土地を売る譲渡価格というのは、これはもう保有税に関係なく決まった値段で売れるという前提なのですね。これがそういう保有税がかかったら有効利用が進むということを主張している学者たちに共通する理屈なのですね。  だけれども、現実的には、保有税がかかると将来収益は必ず減ってしまうわけですから、それを割り引いた地価は一瞬にして下がるわけです。もし土地を持っている、遊休地を持っている人が保有税がかからないときと同じ価格で売れるのだったら、売るのですよ。そうじゃない。保有税がかかった瞬間に将来収益を計算して、あっという間にその地価の値段は下がってしまう。だから、そこが違う。  ところが、みんな錯覚していて、保有税がかかっても依然として従来の価格で売れると思っているから、重税になるから売った方がもうかるということでそういう議論をするのですね。私はそういうふうに思うのですけれども、いかがですか。
  37. 伊藤公介

    伊藤国務大臣 山本委員、さすがに極めて理論的に御指摘をいただきました。  私は、今御指摘をいただきましたことは、ある一面でまさに正しいと思います。しかし、要はこ の土地の所有をしている人の立場で物を考える場合と、いわゆる業者が新しく土地を購入してそれを有効に利用していく、そういう言ってみれば開発者の立場で考えた場合、多分それぞれ判断が違うのだろうというふうに思います。  しかし、いずれにいたしましても、結論的に言えば、土地の所有者の立場に立てば、これは地価税がかかる、保有税がかかれば、持ち切れないとか、あるいは持っているものは有効に高度利用しなければならぬ、こう判断をすると思いますし、しかし今御指摘をいただきましたように、開発者の立場からいえば、確かに保有コストがかかるわけですから、最終的にはコストが高くなる、そういうことになるといわゆる結果として有効利用が難しくなるということにもなろうかと思います。  したがって、私は、こうした土地をめぐる経済が非常に大きく変化をしていく中で総合的に判断をすべきだ、そのことによって、皆さんのいろいろな御努力をいただいて、平成八年度にも地価税を半分にした、なおいろいろな御指摘や御意見があることも私自身もよく承知をしております。  これから、ちょうど今、建設大臣の非常に積極的な御発言をいただいて、大きな反響を呼んでおります容積の見直しなどと総合して、土地がただ動くということだけではなくて、本当に必要な人に、また必要なときに有効に利用されるということを税制を含めて総合的に私どもは判断をし、新しいそうした方向を進めていかなければならないというふうに考えております。
  38. 山本幸三

    山本(幸)委員 長官、大変ポイントの指摘をされたのですね。私が説明したこれはそのとおりだと思うのですが、おっしゃったように、幾つかの不備があるとそううまくいかない。  その不備があるというのはどういう不備があるときかというと、金融市場が貸し手と借り手のバランスがとれていないときですね。つまり、情報が完全ではない、そういうときには所有している人が開発する人と同じような金融条件になりませんから、そのときにはおっしゃったようなことが起こってくる可能性がある。  あるいは、相続税が累進構造になっているということがまた一つありまして、保有税がかかって相続財産として下がりますと、その分相続税で得しますから、そっちの方がいい、有効利用云々を考える必要がなくなるというインセンティブが働く、そういうことがある。  そういう意味で、資金市場が完全ではないという条件が整ったときには、長官のおっしゃるようなことが起こってくるのですね。  ただし、そのときの問題は、それは結局のところ、相続税なりそういう保有税を払うファイナンスができないという人の問題になってくるわけですから、それは恐らく、土地を持っていてもそういう資金繰りがうまくつかないような、土地を持っているけれども苦しい人ということになる。その場合には、そういう保有税を払わなければいけない、あるいは相続税のことを考えなければいけないということで、切り売りすることになる。これは、大幅な開発という形でどっと大量に土地が出るというわけではありません。恐らくその分だけ切り売りしていくということになりますから、これ自体は細かい土地がふえていくだけの話であって、本当に開発するという立場からは好ましいことではない。  したがって、そういう問題は起こるのだけれども、しかし、本当のまともな解決方法というのは、そういう情報を完全にするとか資金市場をもっと有効にするとかいうことじゃないと、確かに土地を出してこようというふうになるけれども、逆にそれは切り売りした細かな、細切れの土地しか出てこないということになる。そういうことがもちろんあるわけですね。  私は、保有税の意味を全然ないとは決して思いません。それなりに意味がある。最初に申し上げたように、地価を下げるという意味では非常に効果がある。あるいは、保有税というのは、一律にかかるとこれは資源配分をゆがめません。したがって、一律に保有税をかけて、その土地から出てくる収益に課税して、その収益でもって社会資本開発をするという仕組みを考えるならば、これは経済的に非常に合理的で、むしろ大いにやらなければいけないことだと思っています。  したがって、一律にかかるような固定資産税について、もしそういうことを進めていくなら、それはそれなりに意味があると思っていますが、問題は、保有税というのはそういう一律にかかるときに意味があるのであって、どれかを取り上げてかけてしまう、あるいはどれかを取り上げて安くしてしまう、そうした途端に、この保有税の持つ意味というのがなくなってしまうのです。  もう余り言いませんけれども、例えば保有税、固定資産税、農地の方が低くなっていますね。これは、何が起こっているかというと、この下の図でわかるように、本来農地と宅地開発がバランスがとれるところが、日本の場合は、農地に特別の優遇措置を講じているために、必要以上に農地がふえる、そういう効果が固定資産税を農地と宅地で変えていることによって起こっているわけですね。  したがって、今、米が過剰だとかなんとか言っていますけれども、これは、税制上そういう政策をとっているだけの話であって、本来のバランスすべき均衡というよりは、農地が異常に多いということになっている。これは、そういう保有税の本来持っている効果をあらわさせていないということによって起こっているわけですね。  それと同じように、地価税は、これは全部にかかっていれば問題ないのです。ところが、ある特定の土地にだけかかっている。しかも、ではその土地は遊休地かというと、私はそうじゃないと思うのですね。不動産会社とか銀行とか大企業とか、そういうむしろ有効に利用されているところにかかっている。そしてこれは、そのときの最初の保有者に対して一瞬にして異常な負担を負わせる話になる。  その結果、さっき申し上げたように、土地の有効利用が、開発がおくれるとか、あるいは最初のときに申し上げましたけれども、例えば開発するときに二戸建てがふえる。一戸建てが選択されるか、高層住宅が選択されるかというと、二戸建てが選択されてしまうのです。  なぜならば、割引率が上がるということですから、早く回収した方が得になる。そのためには、安く早くやれる一戸建ての方を選ぶインセンティブが働くのですね。高層住宅は、その収益が上がる期間が長くなりますから、結局それは選択されない。その結果、長期的には、土地の有効利用、高層住宅自体が阻害されるという効果を持っている。  したがって、私は、この地価税というのは、一部のものに対してはかけて、資源配分をゆがめて、そして、その土地に対する、こういう本来政府が一生懸命やらなければいかぬと言っている有効利用自体を阻害している。その意味からいえば、私は、こんなものは存在意義がない。  もし本当に地価を抑制するということであれば、一律に保有税を上げる、固定資産税の評価額を一律に上げるというようなやり方でやれば、それはそれでもう全部できてしまう。しかも、資源の配分をむだにしない。有効利用自体の問題についてもあるけれども、しかし、それは一律にかかるから、この地価税のような特別の問題は起こらないと思うのですね。  その意味で、私は、地価税は、まず保有税自体のいいところというものが損なわれていて、しかもこういう阻害要因があるという意味で、全く理解に苦しむ税金で早く撤廃すべきだと思いますけれども、その点についていかがですか。
  39. 窪田武

    ○窪田政府委員 お答えします。  地価税は、既に御案内のとおり、土地の毎年の資産価値の変動に応じた適切な負担を求めるというために導入されたわけでございますが、この税の仕組みとして、特に基礎控除の観点から、資本金が一兆円超の法人の場合には十億円相当の土地を持っている方でないとかからないという格好になっておりますので、そういう意味では、ある一 定の大きな法人、あるいは大きな土地を持っておられる法人という方がかかっているというのは、御案内のとおりでございます。  これにつきましては、平成八年の税制改正におきまして、先ほど大臣の方から、〇・三から〇・一五%に引き下げたと同時に、平成九年からの措置として、資本金が十億円超の法人については五億円、一億円から十億円の法人については八億円ということで、今までは十億円だったものをそれよりも土地の保有高が少ない法人についても課税するということで、その意味では多少なりとも特定の法人からというのを薄く、広くしたという方向で改正が行われているところでございまして、そのやり方につきましても、先ほど大臣から申し上げたとおり、来年度以降の税制のいろいろな見直しの中で検討していくものと思われます。
  40. 山本幸三

    山本(幸)委員 どういうところがかかっていて、それをどれぐらい軽減したか、そんなことを聞いているのじゃないのですね。そもそも地価税というのは、保有税にはいろいろな特質がある。保有税自体の特質で、マイナスのところもあるけれども、しかし地価抑制というものもある。しかし、その保有税の特性を生かすためには一律にかからなければ意味がない。これを特別なものに、選んでねらい撃ちしてかけると、これは弊害以外の何物でもない、そういうことを言ったのですね。それについて、そういうふうに思わないんですか、何か意義があるなり思っているんですかということなんですよ。どうですか。
  41. 伊藤公介

    伊藤国務大臣 実は、この新土地保有税を導入しよう、その時期に、ちょうど私は国土庁の政務次官をやっておりました。いろいろな役所の皆さんと検討したときに、またいろいろな調査もいたしました。このときに、たしかシンガポールの土地税制であるとか、各国の土地税制も、現地に調査に行ってもまいりました。  そういう中で、遊休地が非常にある、しかもその遊休地は、大手の方々が近いうちに利用するという目的がないまま土地投機目的のような形で非常に遊休地があるという調査の結果がございました。そういうことが土地ブームといいますか、そういうものに大きな影響がある。やはりそこには保有税をきちっとかけて、そして有効利用に踏み切っていくべきだという声が非常に強かったわけであります。.  先ほども申し上げましたように、そうした土地をめぐる経済の大きな変動の中で、この保有税、地価税というものも検討され、新土地保有税なども検討されてきたところでございますけれども状況は、御案内のとおり、大変大きく変化をしてまいりました。  そうした中で、今委員指摘をいただいている点も、私は非常に重要な視点だと思っているわけでございまして、それは既にかなりの部分で手直しをされてまいりました。土地ブームの以前の状況に、税制というものもかなり手直しをされてきているわけでございますが、今後は、土地税制だけでなくて、土地税制というか、新しい住宅、豊かな住環境を一人一人の国民がどう確保できるか、あるいはまた、国の政治がそうした方向にしっかりとした指針を示せるかという検討の中で、平成十年度に向かって私たちは新たな検討もしていかなければならない、また、総合的に判断もしていかなければならない。  再び土地ブームのようなことが起こらないように、一方ではしっかりそうした将来の視点を考えながら、同時にまた、今申し上げたような、ちょうど東京オリンピック前後につくられた住宅・都市整備公団のいわゆる大都市に住んでいる人々の住宅は、あのバブルがありましたけれども、何の影響もなしに、全く同じ住宅の中でじっと生活をしてきていることも現実であります。  そうした人々に、もう一部屋、もう二部屋広い住宅を、そしてまたヨーロッパのような緑豊かな自然の中に住めるような、そういう住宅環境というものを提供するのは政治の仕事だ、私はそう考えているところでございまして、特に建設大臣は、そうした視点から新たな容積の見直しなど大胆な提言をしていただいているところでございます。勤労者の多くの人々が住宅というものに対しては非常に重要な関心を持っている、しかも一千二百兆円という貯蓄率を考えましたときに、私たちは新しい方向をしっかり示していかなければならないのではないかというふうにも考えておりまして、山本委員の御指摘は重々私どもも理解ができるところでございますので、私たちは、平成十年度に向けての総合的な検討の中で、そうした御意見というものもしっかり受けとめさせていただきたいと思っております。
  42. 山本幸三

    山本(幸)委員 最後に検討していただくというごとですからぜひお願いしたいと思いますが、最初におっしゃったシンガポール云々で見られて、法人が遊休地を持っているから、これを出させるために保有税をかければいいというのは、それは私が最初説明したように、そういうふうにならない。  それは、そういう議論が成り立ち得るのは、開発費用というのがないという前提が一つ。それから、地価が、保有税がないときと保有税がかかったときで同じ値段で売れるという前提があれば出すけれども、そうじゃなくなる、したがってそんなことはないということをひとつ御理解いただいた上で、ぜひ来年の税制改正で撤廃していただくものだと思っていますので、よろしくお願いしたいと思います。  それから、同じように住宅開発とかで問題になるのは、そのほかの税制で、固定資産税や都市計画税で建物部分にかかっているところですね。これは明らかにそういう住宅なり高層建築なりの上物の投資を阻害する、高度利用を阻害するのですね。  これは私は、保有税というものは土地自体にかかれば十分であって、それを今度建物までかけていくということは非常におかしいし、政策効果も逆行するというふうに思いますが、この固定資産税、都市計画税、建物部分については、廃止するなり思い切って下げるなりの考えはありませんか。
  43. 小川忠男

    小川政府委員 非常に実務的なお答えで恐縮でございますけれども、一般的には、住宅行政を預かる私どもの立場といたしましては、上物についての税については軽減をお願いする立場にあろうかと思います。  ただ、実態を申し上げますと、例えば新築住宅につきましては、固定資産税でございますが、現行でもかなりの軽減措置が既に講じられております。例えば、百二十平米相当ではございますが、当初三年間、既に二分の一になっております。また、新築中高層の耐火住宅につきましては、それが五年間二分の一というふうな形で軽減措置が講ぜられております。また、平成九年度につきましては、固定資産税の評価がえというふうなこともございまして、現実の課税額というのはさらに下がるであろうというふうな感じを持っております。  以上でございます。
  44. 山本幸三

    山本(幸)委員 自治省の見解はどうですか。
  45. 片山善博

    ○片山説明員 先ほど建設省の方からお答えになったのが基本でございますが、平成六年の税制改正におきまして、土地につきましてかなり評価額が上がりました。それに伴いまして負担調整措置を講じましたが、それでも土地の税負担はある程度上がるという状況になりました。  そこで、土地と家屋を総合的に考えまして、土地が少し重課になるのであれば家屋を少し軽減しようということで、平成六年度の税制改正では、家屋の耐用年数を短縮いたしましたり、それからこれは非木造家屋だけでございますが、初期減価と申しまして、新築分を供用した場合には、初年度から一割減価をするという制度がございましたが、この年から二割減価をする、こういうことにしておりますし、それから、すべての在来分の家屋、既存の家屋でありますが、これは三%減価をする、こういう家屋の税負担の軽減措置を講じております。  これは、平成六年度のみならず、平成九年度以 降も続けることにいたしておりますので、必ずしも委員の御指摘になりましたような観点を直接の目的にして行ったわけではないと思いますが、結果的には土地がやや重課になり、家屋がその分軽減される、こういうことをやっておるところでございます。
  46. 山本幸三

    山本(幸)委員 建物を高層で建てて有効利用すれば収益が上がりますから、必ず土地に、地価に反映するのですね。したがって、地価のところで見ておけば十分なんですよ。むしろ、有効利用させるんだったら、そういう上物の負担をなくして、どんどん有効利用を進めさせて、そしてその価値は地価にすべて反映するから、それは固定資産税で一律にかけるというのが弊害をなくす一番いいやり方だと私は経済学的に思うのですね。  したがって、建物部分に固定資産税を、保有税をかけるというのは理論的に理解できない。むしろこれは撤廃すべき、あるいは全部が無理ならノミナルぐらいにすべきだというふうに思いますけれども建設省、もう一度、どうですか。
  47. 小鷲茂

    ○小鷲政府委員 建設経済局長でございまして、実は不動産行政を預かっておりますので、ディベロッパーの皆さんがどういう見方をしているかということを御紹介したいと思います。実は、全部ではございませんが、先生がおっしゃるのと同じようなことを主張される業界の方がいらっしゃいます。つまり、立派なものを建てれば建てるほど税が高くなるというのは政策的に見て逆なのではないかという指摘を実は受けております。  これは先刻御承知でございますが、税というのはそもそも税収を上げるための手段でございますので、税の公平というような税本来の論理があるのではないかというふうに思いますが、一方では、先生御指摘のとおり、いろいろ政策面にも影響を及ぼしますものですから、一つの御指摘なのではないかなというふうに私どもでは受けとめております。具体的にどうするこうするということについては、私どもまだはっきりとした結論を持っておりませんけれども一つの見方であるということは認識しておりますので、十分研究してまいりたいと考えております。
  48. 山本幸三

    山本(幸)委員 税の公平の話は、これは地価税のときもそうなんですけれども、これはちょっと議論をおかしくするのですね。  税の公平というのは個人の所得のレベルで考える話でありまして、法人税のところ、地価税なんか特に法人課税こなっていますから、そういうところで公平なんて考えたってこれは意味がない。税の公平を考えるのだったら個人所得税のところで考えないとおかしいので、公平の話は個人所得税の話ですべきであって、こういうところではこの話はできないというふうに思います。そのことを指摘し、検討をしていただくということですから、大いに期待したいと思います。  それからもう一つ、そのほかに土地取引税で印紙税とか登録免許税とか不動産取得税があるわけです。これはかなり軽減してきていると言っていますが、要するにこういう税金は、基本的に譲渡所得税と同じように、なるべく土地を持っておこうというロックイン効果を持つわけですね。譲渡所得税と違うのは、その税額がキャピタルゲインの額と対応しておりませんから、キャピタルゲインが小さいときの土地の売却の方が相対的に不利になるという効果を持っている。そのことはキャピタルゲインが小さいような取引を阻害する、中古住宅市場なんかを阻害するというような非効率を招いている。  アメリカの場合は、私はアメリカに住んだことがあるのですけれども、転勤をするときは大体古い家は売って、そして転勤したところで新しい家を買ってということを何度も繰り返す。これがアメリカ人の生活におけるライフスタイルですね。これがなかなか日本ではできない。いろいろなことがありますが、一つの大きな阻害要因は、取引するたびに税金がどんどんかかってくるということが中古住宅発展の阻害要因になっている。  そういう意味で、後からの住宅政策と絡みますけれども、日本の住宅政策を考えていく上で、中古住宅というのはまさにこれから重視していかなければいけないと思っていますが、そういうものを阻害するような要因はできるだけ外さなければいかぬ。その意味で、こういう印紙税、登録免許税、不動産取得税なんというのは私はない方がいいと思いますけれども、これについていかがでしょうか。
  49. 伏見泰治

    ○伏見説明員 御指摘のございました国税関係ですと、登録免許税と印紙税があろうかと思います。  土地に係る税制でございますが、当然、今御指摘がございましたように、不動産の取得の関係あるいは保有の関係、それから譲渡の関係、現在、各段階に当たりまして税制がございます。これらにつきましては、常にいわば総合的な観点から議論をされていくべきものだろうと思います。  これまでの税制改革時においてもそれぞれの時点で議論がされておりますが、最近におきましては登録免許税、土地に係る分につきまして平成八年度、それからこれは現在参議院の方で御審議されるところでございますけれども土地に係る登録免許税についての軽減の議論、それから今年度、九年度税制改正におきましては特に家屋に係る分、土地住宅税制の見直しという視点から家屋についての税率、これも軽減してございますが、さらに軽減措置を講ずるといった点の提案をさせていただいているところでございます。また、印紙税につきましても、今回不動産等の売買契約証書に係る分についての軽減を御提案させていただいているところでございます。  いずれにしましても、全体的に総合的な議論が必要であろうというふうに思っております。
  50. 石田直裕

    ○石田説明員 不動産取得税でございますけれども、私どもとしても不動産流通をできる限り阻害することのないよう、例えば住宅用の土地の取得につきましては二戸当たり実質二百平米までは非課税とするなど、さまざまな負担調整措置を講じておるところでございます。  また、宅地等の取得につきましては、固定資産税の評価がえを踏まえまして平成六年から、例えば平成八年につきましては評価額の二分の一とするという特例措置を講じておりますけれども、現下の土地取引の状況等を総合的に勘案いたしまして、大都市では九年の評価がえによりまして相当評価額が下がるということになっておりますけれども平成九年から平成十一年までにおきましても引き続き、課税標準を価格の二分の一とする特例措置等を講じてまいりたいというふうに考えております。
  51. 山本幸三

    山本(幸)委員 いろいろこういうふうに軽減している云々という話で、いろいろ努力していることはわかりますけれども、一体日本の住宅政策をどうするかとか、あるいはそういう税金が持つ経済効果が本来政府が持っておる政策目的に対してどうかということをもっと押さえて、そして思い切ってやらないと、本当に税制自体が世の中をおかしくしてしまうところが出てくるのじゃないかというふうに思っているのですね。  私は、主税局の連中が頑張っていることは十分承知しますけれども、残念ながら経済効果の点についての理解が少し不足しているのじゃないかなというふうな気がしております。  建設大臣、何か一言ございますか。
  52. 亀井静香

    亀井国務大臣 日本は資本主義経済でありますけれども考えてみますと地本主義と言っていい側面があると思います。そういう意味で、土地の流動化が経済の活性化にとって極めて重要な要素であると考えております。そういう意味では、土地の流動化を阻害をするような税制については、今日この時点に思い切った見直しをすべきだ。  委員におかれましても、後輩をよく御指導いただきたい。
  53. 山本幸三

    山本(幸)委員 建設大臣の御決意をお聞きして大変心強く思いました。お互いに大いに努力したいと思っております。  それでは、税制は終わりますので、どうぞ……。  それでは、話を住宅政策あるいは住宅金融公庫の問題に移らせていただきたいと思います。  まず、日本の基本的な住宅政策についてお伺いしたいのですけれども、過去のいろいろな経緯とかはもう結構ですが、私の理解では、ポイントは、日本の戦後の住宅不足の状況を回避して、それぞれ居住空間を確保しなければいけないという観点があって、いろいろな政策をとってきました。  その中で、私の理解では、いわゆる低所得者層向けにはこれは公営住宅対応する、公営住宅をつくってそういう方々には住んでいただくように、これは国なり地方自治体がやる。それから、それより少し所得の高い層を念頭に置いて公団が住宅をつくって、これを分譲あるいは賃貸で提供する。それから、公団に並ぶか、あるいはそれ以上上の人で自分で住宅が持てる、そういう階層の人に対しては、これは金融面あるいは税制面で面倒見ましようということで住宅金融公庫というものがあった。そういうふうに役割分担が行われているのじゃないかと思っておりますけれども、この点はいかがですか。
  54. 亀井静香

    亀井国務大臣 低所得者層は一生涯公営住宅に入っておれなんという気持ちは、私は全然ございません。低所得者であってもやはり自分の持ち家を持てるような、そういう社会を目指さなければならないと私は思います。  戦後の住宅政策の歴史は、委員指摘のように、低所得者あるいは中所得者に対して住宅を供給するというのが住宅公団あるいは公営住宅の責務であったと思います。また、住宅金融公庫もどちらかというと、やはりそうした中所得者あるいは低所得者、そのあたりの住宅需要に対して資金を供給をするという性格が強かったと思います。  ただ、社会経済の変遷の中で、民間の金融機関あるいはディベロッパーが大きく育った中で、そうした官と民との役割分担というのが今変化を来しておる、このように考えております。
  55. 山本幸三

    山本(幸)委員 ちょっと私の理解と違って、住宅金融公庫の場合でも低所得者、中所得者、それも対象になっているのだということですが、では大臣、その場合の低所得者というのはどれぐらいを考えておられるのですか。
  56. 小川忠男

    小川政府委員 お答えいたします。  一般的に、非常に持ち家志向の強い日本の現状において、画一的な数字でお答えするのは難しいと思いますが、たまたま手元にございます資料で申し上げますと、所得分位の二から三、年収に置き直しまして四百四万円から七百四十万円に相当すると思いますが、この方々が全金融公庫の、マンション関係でございますが、購入でお貸しした方々のうちの六割が所得分位の二から三に分布いたしております。
  57. 山本幸三

    山本(幸)委員 住宅金融公庫の資料によりますと、公庫融資を利用する場合の取得可能世帯の必要年収がありますけれども、これが五百五十八万円ですね。つまり、五百六十万円以上ぐらいじゃないと持ち家というのは持てない、公庫融資対象、取得可能世帯に入らないということですね。つまり、年収五百六十万以上の世帯が住宅金融公庫対象になっている、それ以下の世帯というのは対象じゃない。私は、低所得者というのは、それ以下の世帯が低所得者ぐらいじゃないかなと思うのですけれども、この点は大臣、違いますか。
  58. 小川忠男

    小川政府委員 金融公庫融資する場合の審査といたしましては、月々の返済額が年収の何%であるかというふうなことで基準にいたしておるわけでございます。今先生おっしゃいました五百数十万円というふうな数字でございますが、現実問題といたしまして、すべてを融資に頼って家をつくるわけではなくて、それなりの頭金があるとか、あるいは親から何がしかの援助があるということが現実でございまして、先ほど申し上げたのは、そういうことをすべてのみ込んだ上で、結果として収入分位二から三の方々が六割を占めておるという結果になっておる、こういうふうに申し上げたわけでございます。  大臣の差し入れがございましたので、もう少し詳しく、第一分位、四百四万円未満でございますが、この方々がマンション購入の五・五%でございます。それから第二分位、これは年収にしまして四百四万円から五百七十三万円でございますが、この方々が二九・三%。それから第三分位、五百七十三万円から七百四十万円、この方々が三〇・八%。それで、先ほど申し上げましたのは、二と三を合計いたしまして六〇%、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  59. 山本幸三

    山本(幸)委員 四百四万円未満の方が五・五%ということですが、こういう方々は、融資をする場合には御両親の年収も加えて考える、そういう形で融資を受けているということですか。
  60. 小川忠男

    小川政府委員 公庫が貸す場合には、金融公庫がお貸しする額がその方々の年収によって返済可能かどうかというふうなことでございます。
  61. 山本幸三

    山本(幸)委員 わかりました。いずれにしても、最低四百万円ぐらい、それ未満でどれだけの金額を借りておられる方がいるのかわかりませんけれども、基本的に考えると、四百万円以上ぐらいの年収が大体金融公庫対象になっているというふうな感じですね。  そのことは、ある意味でいうと課税最低限以上ですよね。課税最低限に達しない人は基本的にそういう住宅を、持ち家を持とうということがなかなか難しいというように私は理解しますけれども、そういう理解でいいですか。
  62. 小川忠男

    小川政府委員 住宅局長の立場としてお答えするのはなかなか難しい問題だろうと思います。といいますのは、先ほど大臣もお答えされましたように、やはり持ち家が欲しい方々に対しては、できる限りの応援をしてお持ちいただくというのが一つ考え方としてございます。したがいまして、年収という一つの要素だけをとって、これから上はオーケーだけれども、これから下は政策の対象にしないというふうにドライに割り切ることについては、いささかちゅうちょを覚えます。
  63. 山本幸三

    山本(幸)委員 立場上そういうことだと思いますが、大体そんな感じだというふうに理解します。  それから、さっきの住宅政策に戻りますけれども、そんな公営住宅、公団あるいは住宅金融公庫でやってきました。今、では量的にはどうかというと、住宅の戸数は約四千六百万戸ぐらいになった。日本の世帯は四千百万ぐらいですから、そうすると、もう既に住宅というのは日本の世帯数より五百万オーバーしている。つまり、量的にはもう十分に満たされる住宅事情になってきた。あとはもっと広い家が欲しいとか、もっと高級なところが欲しいとかいうような話になるのですけれども、こういう状況にかんがみて、住宅政策、恐らくこれからそろそろ変えなければいけないのじゃないか。  特に住宅金融公庫の場合は、金融ですから、民間との競合関係があります。その意味で、住宅金融公庫のあり方というものを、先ほども大臣お答えになりましたけれども、そろそろ変えていかなければならないという点もあると思いますけれども、こういう量的に満たされて、これからの住宅政策はどういうふうになるのかということについて、いかがでしょうか。
  64. 亀井静香

    亀井国務大臣 絶対的な量的には満たされつつあるということは委員の御指摘のとおりであると思いますが、一つは、先ほども申し上げましたけれども、中低所得者層の持ち家についての欲求というのは強いわけでありまして、やはりこれをどう満たしていくかということが一つの今後の住宅政策の方向であろう、低所得者層は一生涯公営住宅に住んでおればいいというわけにはまいらない、私はこのように思います。それが一つ。  もう一つは、外国の居住空間、生活環境に比べまして、我が国の住宅そのもの、あるいは住宅環境そのものが極めて低劣のレベルであります。これをどう引き上げていくかということが大きな課題である、このように考えております。
  65. 山本幸三

    山本(幸)委員 その気持ちはよくわかります。中低所得者も持ち家を持ちたい場合には、これを助けるべきだ。ただ、現実問題として、持ち家というのはやはりそれなりの負担がかかりますから、ただ融資するだけでもできないのですね。そこのところのバランスが非常に難しいところがあ る。  それから、外国に比べて質が劣っている。私もそのように思います、外国で生活した経験から見て。なぜそうなのだろうかと思うのですが、これは一つの仮説ですけれども、やはり住宅金融公庫というのが住宅をつくる場合の一つの必須条件みたいになって、そして公社、公団住宅、あるいは住宅金融公庫が大体想定する基準、そういうものにのっとった住宅ばかりができた。結局のところ、二LDKとかいうのが始まって、三LDK、四LDKという、居間が一つあって、それから和室が一つあって、寝室が幾つかあるというような形の、定型化したような住宅がもう日本全国に広まってしまった。このことが、まさに住宅の質が非常に多様化しないことになったのじゃないかなという気がしてならないのですね。  もっと自由で、やりたい放題やっても大丈夫ですよというようなことが、どうしても政策的な要素を含んだ公的な金融ですから、なかなか好き勝手に、幾らでも広くてもいいですよというわけにはいかない。そんなところがあったような気がするのですが、その点についてはどうですか。
  66. 小川忠男

    小川政府委員 今先生御指摘の点は、金融公庫がいろいろな意味融資基準といいますか住宅設計上の基準をある意味でま押しつけて、それが一つのステレオタイプになって、似たり寄ったりの住宅をというふうな御指摘かと思います。  確かに、金融公庫融資のための基準を設けております。ただ、私どもの感じでは、やはり住宅の質が極めて悪かった時期にその機能をむしろ高める方向で大いに機能した。といいますのは、公庫基準といいますものは、基礎的な寝室ですとか性能についての基本的な条件でございまして、住宅そのものの外観だとか、あるいはより高次な機能についてコントロールするというふうな力は実はほとんどございません。  その意味では若干先生のお感じとは違うのですが、住宅の選択の多様性というふうな点においては、恐らくはかの国に比べまして、私ども日本の方がはるかに選択の可能性は高いと思います。  といいますのは、在来の軸組みの柱があって壁があるというふうな木造軸組み工法のほかに、最近ごらんいただきますと、恐らく、世界各国のありとあらゆる様式の住宅が雪崩を打って日本のマーケットで競合している。それについて、現在の基準法、住宅政策はすべてを許容しているというふうな状況でございます。  その意味では、住宅がどれもこれもというふうなのは私も印象としては持っておりますが、金融公庫融資に由来しているというふうなことではなくて、ただ一言で言えま、戦後のバラックから立ち上がった今までのプロセスがやはり総体的には貧しかったというふうなことに起因するのかな。その意味では、これからの住宅政策というのは、いろいろな意味で、質あるいは環境との関連における質等々、これを目指すべきであろう。ようやくその段階に来たのかなというのが率直な印象でございます。
  67. 山本幸三

    山本(幸)委員 住宅政策の最後にちょっとお伺いしたいのですけれども、日本のサラリーマンは、大体平均して約三百六十万円の借金を抱えている。これが住宅ローンを組んでいる世帯になりますとぐっと上がりまして、平均して九百九十九万円、約一千万円の借金を抱えているというデータが出ています。  こういう状況で、その借金は何かというと住宅ローン関連。ある人に言わせると、住宅金融公庫中心住宅ローンを組んで、そしてサラリーマン生活というのを送っていく。それを返していくというのがサラリーマン生活の一生のやっていることになる。つまり、ローンの上に寝ているというような感じで人生設計が行われる。サラリーマンになると、その子供たちもまた同じように住宅ローンを組んで、そしてそれを営々と払っていくという感じの人生を送るようになる。  問題は、では、そういうローンを組んだ人がちゃんと払っていけるようになるかどうかということ、これは一に経済、収入がどれだけ伸びるかということにかかっているわけですね。かつてのように成長しているときには全然心配なかった。バブルの時期には、九〇年、バブルの最後ですけれども、これでもう大体年収は名目で六%ぐらい伸びていました。  ところが、御承知のように、九三年からゼロ%台成長になって、昨年では三%台、今年度は二・五ぐらい、政府見通しぐらいいきそうですが、来年度は消費税の引き上げ等があってまた落ちそうだ。  そういう人生設計の中で、年収がどれぐらい伸びなければいけないかというのを計算しますと、大体年収が毎年五%ぐらい伸びればこれは十分に余裕を持って人生設計というのはできる。だけれども、ゼロ%は当然だめですが、二%前後がぎりぎりの線ですね。二%以下になると、むしろ借金で首が回らなくなる可能性が将来に起こってくる。そういう状況ですね。  あとは、一にこれからの日本経済がどう成長するかにもかかるわけですが、自分が成長してサラリーマンになって、そして三十過ぎたらマンションなり住宅を購入して、そしてその借金を払っていくということを毎世代毎世代繰り返していくということによる日本人のライフスタイルとは何だろうかというふうに思うのですね。  日本の住宅の寿命というのは、建設白書によれば二十三年ぐらいですか、ある座談会のあれでは十八年ぐらいだと言っていました。アメリカが四十年以上、イギリスに至っては六十年から七十年。それぐらい寿命があるのに、日本では二十年前後で住宅の寿命は切れてしまって、したがって、また新しくやっていかなければいかぬという人生になっている。これは、何とかならないのかなというふうに思うのですね。  やはり、住宅というのは、アメリカ人やイギリス人が考えているような、住宅をつくるというのは一世一代の大事業であって、そしてそれは、おやじと相談し、あるいは子供たちとも相談して、三世代ぐらいにわたって使えるような住宅をしっかりつくる、そういう感覚でつくる。  あるいは、ちゃんとつくった住宅があって、それを各世代は、さっき申し上げたように、当面は中古でいい、あるいは賃貸でいい。だれでもが持ち家を持って、そしてそういうローンの上に寝ているような人生を送るのじゃなくて、若いときは都心に近いところで賃貸でいいじゃないか。あるいは安く手に入る中古住宅、そういうものがあっていいじゃないかというようなことを、むしろこれからの住宅政策として考えるべきじゃないかなというように思うのですね。したがって、これからはむしろ、日本の場合、中古住宅とか賃貸住宅を重視すべき政策をとるべきじゃないかな。  残念ながら、今までの日本の住宅政策は、圧倒的に持ち家を優遇していますね。これは、住宅金融公庫もそう。もちろん中古住宅もありますけれども、これは主流ではない。やはり新築の住宅を持つ、しかも持ち家でやる場合にこれを金融面で手厚く面倒を見る。  あるいは減税政策もそうですね、住宅ローン減税今七千八百九十億円ということですが、これはすべて持ち家に適用される。そうすると、賃貸住宅、賃貸で生活設計をしようという人に対しては、税制面からも金融面からもほとんど優遇措置がない。そのことが日本の住宅市場を非常にゆがめているし、外国では若いときはそんな金かけないで賃貸でやっておいて、そして今度はおやじが亡くなったらそこに戻って住むとか、そういうことを人生設計として考えるにもかかわらず、これができないでいる。  このことはどうですか、今後の住宅政策として、減税政策あるいは住宅金融の面からも賃貸住宅、そういうものを重視していくような政策は考えないんでしょうか。
  68. 亀井静香

    亀井国務大臣 私先日ニュージーランドにちょっと行ってまいりまして、あそこでの住宅事情をいろいろ若干の耳学問をしてまいりましたけれども、あそこでは割と多いのが、今委員が御指摘のように、一生涯同じ家を所有するということじゃ なくて、家族が多いときには大きな住宅に入る、子供たちが独立し三人だけになってくると規模の小さいところに移っていくというようなそういう考え方が主流なようです。  委員指摘のように、日本の場合は、一方、核家族化が進んでおるわけですね。ですから、子供と一緒に住むのは広い部屋でなけりゃいかぬといってローンを苦労して立てて大きなマンションなりそういうものを買った。ところが、子供はお嫁さんをもらうと一緒に住んでくれない、出ていってしまって、また老夫婦二人になって、二人が死んだときに子供がその家に帰ってくるみたいな状況が相当広まっておるわけでありまして、そういう意味では、委員がちょっと前の質問の中でも書っておられましたけれども一つの固定した、一生涯同じところに住むというんではなくて、どんどん住みかえていくというようなことが私はあっていいんじゃないか。  今の社会がそういう方向に変わってきておるという状況を踏まえた住宅政策、それには土地あるいは家屋の流動化ということに対しての税制上の、委員指摘のような問題とか総合的に検討をしていく必要がある、このように考えております。
  69. 山本幸三

    山本(幸)委員 ぜひそういうふうにお願いしたいと思います。恐らく借地借家法の関係も出てくるでしょうし、あるいは減税政策そのものにも関係すると思いますけれども、やはり負担だけ抱えて一生送るというんじゃなくて、ぜひ、海外で可能なようなことができるようにお願いしたいと思います。  次に、それじゃ、今回の法案の私は最大の問題と思っている特別損失の問題についてお伺いしたいと思いますけれども住宅金融公庫というのがそれなりに頑張ってきたというのはよくわかります。持ち家を持ちたいという人に必要な資金を供給してきた。そしてこれを財政融資制度のもとで運用してきた。  ただ問題は、その際に、住宅金融公庫から融資を受ける人はこれはもううれしいに違いない。私だってぜひ利用したいと思うし、そういう個人のレベルでは、低い金利で貸してくれるというのはこれほどうれしいことはない。  しかし、その負担がどこに行っているかというのは大きな問題ですね。その金利の差額は補給金という形で一般会計、税金からこれを補てんするということになっている。今や毎年四千億円以上の補給金住宅金融公庫に出される。  それで終わっているかと思っていたら、とてもそれじゃ足りないというものが出てきて、これは毎年一般会計から繰り入れてもらう金額を一挙に上げるわけにはいかないんで、その部分を特別損失という何かわけのわからない名前をつけて、そしてこれを将来の負担として繰り延べていく、隠れ借金として将来に置いておきましようという形にする。このことが本当にいいのかどうかということなんですね。  これは考えてみると、確かに融資を受ける人は利益を得ている。しかし、住宅は一たんつくってしまえば自分の私有財になるんですね。自分の財産、私有財になる。この自分の私有財になる財産を、大きな利便が出る、利益が出る根本は、税金という負担においてなる。これは特別損失という形で繰り延べれば将来の税金に繰り延べていくんですから、将来の税金の引き上げにつながる話ですね。(発言する者あり)  つまり言いかえれば、国民全体の負担において住宅金融公庫融資を受けた個人の私有財を持つということについてこれを優遇するという政策ですね。これが本当に望ましいんだろうか。先ほどもちょっと議論したように、住宅金融公庫融資を受ける人は大体課税最低限以上の人ですね。これは特別損失で繰り延べていったら、将来の税収引き上げなきゃいけない。これは消費税の引き上げにつながるような話になる。消費税の引き上げというのは、これはまさに課税最低限以下の人も負担するという議論、だれでもがやってきた議論ですね。  もしこのことを国民が本当に知っていたら、これを選択するだろうかというのが私の従来からの疑問なんです。私は政治家になるまではこのことを知りませんでした。住宅金融公庫がそんなに赤字で、その負担を国民の税金に負わせて、しかもそれを将来的に繰り延べていくということをやってきていたということを知りませんでした。  もしこれをずるずる続けていくというようなことになると、これは大変なことですね。やはり将来の消費税の引き上げにつながるような話を平気でやっている。しかも、その行くところは個人の私有財の取得に当たるような話だ。  そこで私は三年前から、前回の特別損失の議論が出たときに同じように取り上げまして、これは問題だ、したがって、もう今後はぜひこれを続けないようにしてもらいたいといって修正案も個人的には準備したんですが、合意が得られずにできませんでした。附帯決議ということになって、それなりに検討するということになっておりましたけれども、またこれが違う形で出てきた。どうしても私はこれには納得できない。  前回のときにあれだけ議論があったのに、どうしてそれなりの手を打たなかったのか。もし打てないとすれば、それは住宅金融公庫のシステムそのものに構造的な問題があると言わざるを得ない。これにメスを入れなければ、日本の財政あるいは国民の将来の負担はどうなるんだろうかという問題意識を持っているわけですね。  まず最初に会計上の問題についてお伺いしたいと思いますけれども、まず総務庁にお伺いしたいんですが、総務庁は今度公社公団の財務諸表の公表に関する法律案というのを出しますが、その基本的な考え公庫公団が会計処理をするときにどういうふうにやるべきだと考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  70. 鎌田英幸

    ○鎌田説明員 お答えいたします。  特殊法人の財務内容等の公開につきましては、昨年末に行政改革プログラムを決定しておりまして、今後、民間部門の水準以上にディスクロージャーをするという努力をしていくこととしております。  このため御指摘法律案を提出いたしておりまして、特殊法人の財務内容を明らかにする書類につきまして、これを作成する、それから公開していく、こういうルールを法律で定めていく、こういう考えでございます。  その公開対象になります特殊法人の財務諸表でございますけれども、これにつきましては、先生御指摘のように、当然のことながら民間部門と共通の言語と申しますか、企業会計原則に沿ったようなものでなければ国民の理解を促進するものにはならない。しかし一方で、特殊法人の業務は利益の追求を原則とするものでもございませんし、さまざまな業務を行っておりますので、そのまま当てはまるというものでもないという事情にございます。  この点につきましては、臨調、行革審でもっとに指摘がされておりまして、企業会計原則に沿った処理を行うようという提言が行われております。これを踏まえまして、当庁といたしましても行政監察を過去にやっておりまして、企業会計原則に沿った統一的なルールをつくって特殊法人の財務処理を進めるよう、こういうことを申しておりました。  これを受けまして、財政審の方で特殊法人の会計処理基準、こういうものをつくっておりまして、これに沿って特殊法人の財務諸表の作成が進められているところでございます。これを土台にしまして、今回の法律案でディスクロージャーを一層推進していこう、こういう考え方でございます。
  71. 山本幸三

    山本(幸)委員 つまり、基本的には企業会計原則にのっとる、しかし特殊法人として特殊な事情もある場合があるので、特殊法人等会計処理基準というのがつくられているということですね。しかし、特殊法人等会計処理基準、これを見ましてもそう変なことを書いてない。まさに、基本的に企業会計原則にのっとるような話を書いておるわ けですね。  その中で、「損益計算書の内容」のところで書いておるのですけれども、「すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割り当てられるように処理するものとする。」そう書いてある。これは企業会計原則の基本ですね。出た収入と費用は、その期間に正しく割り当てて処理しなければいかぬと書いてある。  ところが、この特別損失というのはそうではないのですね。これはまさに特殊法人等会計処理基準に反するのじゃないですか。これはどうですか。総務庁でも会計検査院でもいいですよ。
  72. 小川忠男

    小川政府委員 基本的には先ほどお答えになったとおりだと私は思いますが、金融公庫特別損失金の経理処理について一言御説明させていただきますと、貸借対照表上でございますが、通常は資本の部に損失金というのは計上されるわけでございますが、金融公庫特別損失金につきましては、ただいま御審議いただいていることでもおわかりなように、一たん特別損失として計上はいたしますが、後年度の政府からの補てんが法律上明定されている、時期は若干ずれますが必ず補てんされるというふうなことが法律上はっきりしているというふうなことでございますので、貸借対照表上は資産の部に計上して処理をしているというふうな扱いをさせていただいております。
  73. 山本幸三

    山本(幸)委員 そんなものは企業会計原則にないのですよ。しかも、まさに特別損失というのをつくって、本来損失というのは資本のマイナスに計上すべきですね、これを資産に計上している。企業会計では繰延資産というのがもちろんありますが、それは既に支出された費用について、しかしその利益が将来数期間にわたって起こるときに、そういう場合に特別に限定して計上されることが許される。  しかし、それ以外は損失というのは出たときにはっきり示しておかなければ、この企業体は一体どういう状況かというのがわからない。将来政府が補てんしてくれるという約束をしていますよといったって、これは、ではいつどれだけ出すかということも、金額を決めていないで言っているわけですね。  そうすると、金融公庫は一体どれだけの損失をその期に生じて、どういう対応をしなければいけないのかということがわからない。これは企業体だったら、こんなことはできませんよ、そんなばかなことは。企業だったら、その期に起こった損失はその期に処理するか、できなければ、欠損金として出て引当金が足りなければ資本金で手を打つか、それができなければ倒産ですよ。  この金融公庫の経理というものが全くわからない形で、しかも将来政府が約束してくれているからいいのですというような形で、会計処理できると思うのですか。こんなわけのわからない、金融公庫の実態を示さないような会計処理なんというのは、企業会計原則云々、特殊法人等会計処理基準以前の問題ではないかと私は思いますけれども、どうですか。
  74. 小川忠男

    小川政府委員 先ほどのお答えに一点補足させていただきたいと思いますが、単に政府が後年度に補てんすることを約束しているというふうなことだけではなくて、例えば、もし法律をお認めいただきますと、平成九年度、来年度に何がしかの予算計上を、特損として計上させていただきたいと思いますが、その補てんは、制度平成十五年度から十八年度にかけて繰り戻す、補てんをするというふうな形で法律、政令体系で約束をする、こういうふうな形になっております。
  75. 山本幸三

    山本(幸)委員 十五年から十八年に分けてしますと言ったって、十五年に幾ら、十六年に幾ら、そんなことは今書いてないわけでしょう。そんな会計処理なんてあり得ないのです。費用は、あるいは収入は、出たときに計上すると書いてあるのですよ、会計処理基準に。それに違反しているじゃないですか。これはどうするのですか。  会計検査院はこんな処理でいいのですか。
  76. 岡部茂一

    ○岡部会計検査院説明員 お答えいたします。  住宅金融公庫が行っております特別損失処理につきましては、住宅金融公庫法附則第十四項の規定によるものと理解しております。この特別損失処理につきましては、特殊法人等会計処理基準におきます「特定事業を営む法人に対する基準の取扱い」に該当するものと考えられ、会計検査院としては、こういった処理をすることによって直ちに違法、不当あるいは不都合な事態が生じているとは考えておりません。  ただ、この特別損失処理につきましては、一般的に言いましてわかりにくいということもございまして、毎年度本院が作成しております決算検査報告の決算概要の記述におきまして、特別損失金説明を行っているところでございます。
  77. 山本幸三

    山本(幸)委員 「特定事業を営む法人に対する基準の取扱い」と書いてあるのですが、だけれども、会計処理というのは、その企業の実態を正確にあらわすことができなければ何の意味もないのですね。そのためのディスクロージャーであり、そのための財務諸表でしょう。  法律でそういう何かの取り決めがあるにしても、少なくとも、その年の費用と収入は幾らだ、何年度には幾らだ、そういうことがはっきりわからなければ、これは住宅金融公庫が本当に健全な企業体であるのか、あるいはどこでおかしくなっているのか、判断できないのですよ。  ところが、今の附則の決め方というのはそうじゃないのですね。この決め方も実は問題がある。本来は、平成七年度、八年度に大量の償還が起こってきて、償還が起こってきたということは、貸付金利がかつての高いものから低いものに変わってしまったということでしょう。したがって利息収入が減って、しかし負担の方は依然として減らないという形になった。本来は減ってもしかるべきだけれども、減らないという形になっている。  これは、その期その期にやっていけば、当然収入と費用が起こって欠損金という形で出てくるはずですね。しかしそれを、いや、この部分は大き過ぎることがわかっているから、計算上一つの計算式をつくって、この部分だけはちょっと違う取り扱いにしましょう。それは将来面倒を見るということだけ書いておけば、資産の部に計上して、貸借対照表上そうしていけばいいやという形でやっていくわけですけれども、これは本当に実態を示していることにならないのです。  こんなことは早くやめないと、まさに金融自由化なんて言って、ビッグパンなんて言っていますけれども、これは、まともな公認会計士が見たり、アメリカのそういう企業人が来て財務諸表を見たら、何だ、全然わからないじゃないか、そんなことやっているのか、一体日本のそういう金融システムというのは何だという話になってしまうのですね。  これは、今後はもうこんなことをしないというようなあれはできませんか、もう時間がなくなってしまったのですけれども
  78. 小川忠男

    小川政府委員 金融公庫の特別欠損金制度、予算計上上やむを得ない措置だとは思いますが、極めて特異な制度であることは重々承知いたしております。  また、今回お願いしております特損の改正に当たりまして、予算制度上も、資金の調達方法等も含めましてかなり大規模な予算上の対応措置というふうなものも現在講じさせていただいております。したがいまして、現段階での推計では、よほど特異な状況が生じない限り、お約束の五年もすれば特別損失金制度というふうなものは基本的には解消できる方向になるのではないかと現段階では私どもは思っております。
  79. 山本幸三

    山本(幸)委員 時間がなくなって恐縮なんですが、一言だけ申しておきたいと思います。  こういうそもそも会計処理上も非常に問題がある、これは本来ならば会計原則上許されない処理だ。それが一つ。  それからもう一つは、こういう特別損失を繰り延べるということは、これは隠れ借金をつくっているということですから、法律で書いてあるから隠れ借金じゃないと言っていますが、今負担を先 延べにしているのは隠れ借金そのものだと思いますが、しかもそれは将来の税金の引き上げにつながるような話だ、消費税の引き上げにつながるような話だ。つまり、国民全体の負担で私有財を購入することを優遇するという考え方、これも一つ非常に問題がある。  そうして、やはりここのところは、最終的には財投制度との関係でそうせざるを得ない。住宅金融公庫のローンの最大の問題は、長期固定ですから、必ず期限前返済のリスクがあるということなんですね。これに対する対応をきちっとしてこなかったからこんなものになった……
  80. 市川雄一

    市川委員長 山本幸三君に申し上げます。  質疑時間が終わっております。手短にお願いいたします。
  81. 山本幸三

    山本(幸)委員 申しわけありません。  したがって、例えばアメリカだったら、これを証券化するような形でこういう問題を解決するんですね。だから、ぜひ知恵を出して、そういう問題が起こらないようにしてもらいたいし、特別損失というものは二度と繰り返さないということをぜひお願いして、質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  82. 市川雄一

    市川委員長 石井紘基君。
  83. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 住宅金融公庫について、今山本委員から大変本質的な問題があるという指摘がありました。私も同様に考えるものであります。  今、財投借り入れの残高は、御案内のように六十四兆円、平成九年の資金計画としては、財投及び簡保等からの借入金が約十一兆、貸付予定が十一兆一千億、貸し付けに対する回収金が四兆八千億、借入金の償還が四兆九千億ということで、大体こういう構造になっておる。  さらに、平成九年の事業収支の予定については、収入が三兆六千三百億、このうちには補給金の四千四百億も含まれる。一方、支出は三兆八千七百億。支出から収入を引くと、二千四百億の不足。さらに、平成九年の政府予算における補給金等の措置額は、申し上げましたように四千四百億。同じく特別損失金の計上額が二千七十七億。  さて一方、平成九年末に予定されている特別損失金の累計額は六千七百十億円。そこで、国民負担という意味では、つまりこの六千七百十億、補給金を除いた損失の金額です。  しかし、これだけかということでありますが、もっとある。平成十年以降十三年までの間に見込まれるところの特別損失金は、さらに二千八百億円残っている。さらにこれに加えて金利の、本改正案で予定されているところの向こう十一年間繰り延べによる金利の増加分が約千二百億円を下らないであろう。これは、今の議論にもありましたようにはっきりしない数字でありますが、千二百億を下らない。  したがって、現時点で算出される損失の総額は幾らになるかといいますと、平成十三年までに返済されるはずになっているところの旧特別損失を除いても八千八百億円、ざっと九千億円である。九千億円の損失ということになりますと、これは例えば四人一家族とすると、その一家族当たりの金額は三万円である。  この上、少なくとも十一年間にわたって各年度に必要となる政府補給金、この金額は各年度四千五百億円を下らない数字になる。四千五百億円ということは、これは先ほどの例でいいますと一家族当たり一万五千円になる。この最初の方の特別損失金、これはローンの利用者のための負担ではないということを申し添えたいと思います。  ざっと以上のような構造になっているわけでありますが、この点について間違いがございますか。
  84. 小川忠男

    小川政府委員 いろいろな数字を御指摘いただきました。基本的には先生のおっしゃるとおりだと思います。  改めて若干の数字だけ確認的に申し上げますと、平成九年度、来年度でございますが、新制度、今回お願いいたします特別損失金一千二百六億円でございます。それから、従来の制度がございます。この従来の制度によります特損計上額は八百七十一億円でございます。合計二千七十七億円の特損を予定しております。  それから、先生もお触れになりましたが、今までの年度末の特別損失金の累積残高でございますが、御指摘のとおり六千七百十億円というふうな状況になっております。  それから、九年度以降の、今後の合計額でございますが、今回お願いいたします特別損失金の今後五年間の予算計上予定額、これはあくまで予算でございますから状況によって多少ぶれることはあろうかと思いますが、約四千億円程度かなというふうな形で予定いたしております。それから、従来制度、これはあと三年で制度が終わります。したがいまして、今後三年間の合計として約工千三百億円、合計六千三百億円でございます。  それから、先生お触れになりました、これにさらに金利がつくであろうというふうなことでございます。おっしゃるとおりでございまして、今回創設いたします特別損失金について、これは平成十九年度までに繰り戻すというふうなことでございますが、今後十一年間というふうなことで計算いたしますと、金利の動向によっても違うのでございますが、一千二百億円くらいかなというふうな感じでございます。それから、従来の特損制度のものは、これは今後九年間でございますが、約一千三百億円、合計二千五百億円というふうな推計をいたしております。
  85. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 総計でどのぐらいになりますか。
  86. 小川忠男

    小川政府委員 総計の意味合いでございますが、恐らく私がお答えしました、平成九年度の二千億円余り、それから平成九年度以降の合計額の六千三百億円、それから金利としての二千五百億円、これがこの制度を動かすときの基本的な合計額だろうと思います。  ただ、今回の制度によって特別損失がどのくらい発生するのかというふうなことについて申し上げますと、平成八年度の繰り上げ償還額が確定しないことには断定的には申し上げにくいのでございますが、大ざっぱに見て約八千億円弱が特別損失の対象になるのかなというふうな感じでございます。
  87. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 そうおっしゃいますけれども、実質の特別損失額というのは、先ほど私が申し上げたとおりであります。  こうした事態に立ち至ったことについて、大臣、これはやむを得なかったことだというふうな御理解でしょうか。
  88. 亀井静香

    亀井国務大臣 恐らく委員もやむを得なかったというように御判断いただいておると私は思いますけれども住宅金融公庫は営利を目的とする金融機関ではございません。御案内のように、中低所得者住宅需要に対しまして、できるだけ低利の資金を中長期的こ供給していこうという使命を果たしてきたわけでございまして、いわゆる民間の金融機関のように営利を目的として活動してきたわけでもございませんし、その運営につきまして、住宅金融公庫自体の責めに帰すべき要因というのは非常に少ないと私は思います。  財投金利と市中金利の逆転現象が起きてきたことによって十兆円に上る繰り上げ償還というような事態も発生してきておる中で、財務の内容等が非常に苦しくなってきたということは御承知のとおりであります。  ただ、このたび財投が二・九から二・八に引き下げられましたけれども住宅金融公庫としては、これを従来どおり三二%に据え置くというような措置、これはユーザーの方々にとりましては非常にきついことかとは思いますけれども、そういう措置もとりまして、財務内容改善に鋭意努力をいたしておるところでございます。  なお、一言、私別にかぶせて言うわけではございませんけれども住宅金融公庫が税金の投入等によって維持されざるを得ない場面が出てくる、これについては、将来の国民の負担を含めておかしいじゃないかというようなやじを先ほど飛ばしておられましたので、そういう御判断もあろうかと思いますけれども、私は、やはりこれは所得政 策の一環であると割り切らざるを得ません。自前で持ち家を持てる、それがなかなかできない方々に対して国が住宅政策として援助をするということはやはりあって当然だ、私はこのように考えております。
  89. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 所得政策の一環である、そのこと自体については私も異論を差し挟むものではないわけであります。  なお、このような事態に立ち至ったのは住宅金融公庫の責めに帰すべき要素は少ないというふうにおっしゃられましたので、さらに幾つかの点について申し上げたいと思います。  平成七年から八年まで、今言われました利子率の変更によるところの約十五兆円の繰り上げ返済が出た。それを含めた特別損失の累計が、先ほど申し上げましたように、実質約九千億円に上っているということが明らかになったわけですが、今度は不良債権という問題がございます。  六カ月以上返済が滞っている延滞債権の件数、それから貸付残高は平成七年度末決算で幾らになっておりますでしょうか。
  90. 高橋進

    高橋説明員 後ほど詳しい数字を申し上げますが、千九百億円台だったと思います。
  91. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 件数と貸し付けの残高です。
  92. 高橋進

    高橋説明員 失礼いたしました。  長期割賦延滞件数は一万四千二百五件で、金額が今申し上げましたように千九百三十六億円でございます。
  93. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 一万四千二百五件ですか。(高橋説明員「はい」と呼ぶ)  こうした延滞債権というものが発生してきた原因というのはどこにあるのか、現在これはまだどんどんふえているのじゃないのでしょうか。
  94. 高橋進

    高橋説明員 一言申し上げますと、私ども融資先は、実際にお住まいになっている実住に対する融資でございます。そういう意味で、今、件数、金額というのは多うございますが、全体の中で占める割合と申しますのは率として〇・三%ぐらい、これはほかの政府関係機関あるいは一般の金融機関に比べましても非常に小さな数字ではございます。これは、先ほど申し上げましたように、実際にお住まいになっているということで、御利用された債務者の方は最後まで公庫には返していただくということで頑張っていただいているということが大きな要因かと思います。  ではありますが、経年的に見ますと、やはりこの件数というものは、次第に率というものは悪くなっておりまして、その原因は何かといえば、基本的には、経済状況が必ずしも上がっていない中で収入の増が少なくなっている、これがやはり一番大きな要因かと思います。
  95. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 あなた方が貸し付けている対象全体の中で、それはパーセンテージで言われたら〇・三%というのが出るかもしれないけれども、一万四千を超える人たちが六カ月以上金を返せなくて、ローンが返済できなくてもがいているということは大変なことじゃないのでしょうか。  それから、住宅金融公庫は、ゆとり返済とかいう商品、そういうパターンで貸し出しを行ってきていると思いますが、私に言わせれば、利用者から見たら、これはゆとりどころか、反対の、大変な、もがきローンとでも言った方がいいようなものではないかと思うのです。これは、六年目から返済額が急にはね上がってくる、最初の五年間は比較的軽くしてあって六年目からぐっと上がっていく、そういうものだそうでございます。  それが来年度、再来年度というふうにどんどん来るわけですが、大体五年ぐらい先の経済情勢、五年まで必要ないのですよ、実質は三年か四年先がどうなるかというような情勢変化にも対応できないということにこれはなるわけですね、このゆとり返済という制度で借りて返せないという人が相当予測されているわけですから。  こういうことを決めるのはだれがやるのですか。先ほどの延滞債権等とも含めて、こういうことについて公庫の方は責任はないのですか。
  96. 高橋進

    高橋説明員 今先生の御指摘ゆとり償還の問題、実は私ども深刻に受けとめております。  ただ、これは最初ステップ償還という名前で十年ぐらい前にできた制度でございますが、当初の趣旨は、将来の収入増が見込まれる、あるいはまた将来のほかの家計の部分が五年たったならば、子供さんの教育費がかからなくなるとか、そういった方にとって借りやすい制度ということでできておるわけでございます。  これにつきましては、私どもとしては、一方では債権管理の問題もございますが、一方ではできるだけ本当に必要な方にお借りしやすくするという役割も担っておるものでございますが、そういった制度をつくったわけでございます。  ただ、特に最近の収入が右肩上がりが期待できないような状況の中で六年目にぽんと返済金が上がるということは、私どもの債権管理の問題もさることながら、お借りになった方にとっても非常に厳しい、場合によっては不幸なことにもなりかねないということでございまして、私どもとしましては、まず十年以降になる方につきましては、先ほども申し上げましたように、十年以降に上がりますよということをできるだけ御認識いただくということ、それとまた、実際に返済が非常に難しくなった場合には返済条件などを御相談しながら変えていただくというような措置もとることにしております。  また、今後の問題といたしましては、一昨年あたりからやっておることでございますけれども、実際にお借りになる方にとって六年目からこういうようなことになる、そういったことを十分御認識いただいてお借りいただくように、また窓口でも、受託しております金融機関の銀行の皆さんにもお願いしまして、そういったことを十分御承知いただくようにお願いしております。
  97. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 なるべく私の発言時間よりも少な目に答弁をお願いします。  今のお話を聞いていますと、借りやすく、入り口は入りやすくして、中へ入ったらぎゅっと締まってしまう、そういうのはやはりどうもちょっとインチキくさいですね。  それと、返済の見通しが立たなくなって、さっきのは六カ月以上滞っているのですが、今度は保証協会等の代位弁済を受けるケースも相当ふえているように見受けるわけですが、これは平成七年、八年ぐらいでどのぐらいの件数、どのぐらいの金額があるのでしょうか。
  98. 高橋進

    高橋説明員 申しわけございません。ちょっと資料を用意いたしまして申し上げますが、この一、二年ふえております。
  99. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 では、先にほかのことを聞きます。  補給金と交付金というのは、建設省はどういう定義をしているのでしょうか。これは初めから仕分けされた数字で出てこないで予算が組まれる。それからまた、補給金あるいは交付金というのも、これは借り入れの利息と貸し出しの利息との差を埋める、そういうきちっとした数字を出して補給金としているわけでもない。交付金というのも、これは附則の十四項あたりに書いてあるのでしょうが、特別欠損に充てるといっても必ずしもその金額がそれに該当していないというふうに見受けるわけですが、この辺の定義といいますか、解釈といいますか、どういうふうになっているのでしょうか。
  100. 小川忠男

    小川政府委員 まず予算上の措置でございますが、いわゆる補給金と交付金は、予算上は区分して計上いたしております。それから、補給金につきましては、一般的に政策的に金利差を補てんする概念でございまして、交付金といいますのは、今御審議いただいております特別損失として計上したものを後年度に国庫が負担をする予算を交付金というふうに定義いたしております。
  101. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 九年度の予算の中で交付金というのは幾らになっていますか。
  102. 小川忠男

    小川政府委員 九年度の予算での補給金、交付金、総合計額は約四千四百億円でございますが、そのうち交付金、つまり既往の特別損失を繰り戻す、何年かたちましたのでお約束どおり交付金で計上する、この額が四百九十二億円でございま す。
  103. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 それで、その補給金というのが、利子の差によって生ずる穴埋めの数字と合っているのですか。
  104. 小川忠男

    小川政府委員 若干補足的に御説明させていただきたいのですが、先ほど一口に金利差と申し上げましたが、平成九年度の場合には、金利差にかがわるものは五千百九億円でございます。それから、業務委託費が五百九十五億円、貸付手数料が逆に三百億円マイナスになります。それから、公庫の事務費等々が三百二十七億円、それから先ほども議論がございましたが、既往の特損の借入金利、これが二百二十億円、等々を合計いたしまして四千四百億円、うち交付金が四百九十二億円というふうな積算になっております。
  105. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 そうした数字の出し方というのが、さっきも言ったように将来幾らになっていくかということがわからないけれども、現時点で算出される、予定される損失金というのはこのぐらいのものだということになっている。いずれにしても、もとがそうしたあいまいなわからないところからこうした数字だけを何か数字合わせみたいに合わせておられるわけです。  これに関連して、損失制度というような制度が相当以前から導入されてきたわけですが、損失金が出たら補給金をふやす、底なしに幾らでもつぎ込める、こういう制度にしたわけですね。しかし、それにしても、住宅政策としての金利負担の補給金と、それから経営の狂いによって生じてくる損失というものは、経営の狂いじゃないとおっしゃるかもしらぬけれども、しかし、損失金、いわば欠損なわけですから、これは経営の狂いから、あるいは政策の間違いから生じてくる以外にないわけでありまして、やはりこういうものはきちっと仕分けをして予算を組んでいかなければいけないのじゃないですか。
  106. 亀井静香

    亀井国務大臣 御案内のように、住宅金融公庫についてだけ特別な財投金利が設定されるわけではございませんし、日本経済全体の流れの中での市中金利です。これとの関係で、住宅金融公庫自体が独自にそうしたことについて調整できる範囲というのはほとんどない、私はこのように考えます。  そういうことでありますので、先ほども申し上げましたような、このたびのような財投金利が変更された場合においてもそうした貸出金利をあえて下げないというような措置もとりながら、限られた範囲の中でそうした財務内容改善努力をしておるというトータルのことをぜひひとつ委員に御理解を賜りたいと思います。住宅金融公庫自体が、金利面も含めまして、トータルな経営戦略を展開できない特殊法人であるということをぜひひとつ御理解賜りたいと思います。
  107. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 先ほどの数字わかりましたか。
  108. 高橋進

    高橋説明員 遅くなって申しわけございません。  保証協会の代位弁済件数でございますが、平成五年度八千二百五十三件、六年度八千百九十三件、七年度八千四百九十三件でございます。
  109. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 それから、金額はわからないのですか。
  110. 高橋進

    高橋説明員 金額はちょっと手元にございませんものですから、失礼します。
  111. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 大体八千件を超える代位弁済のケースが毎年平成五年度以降出ておるということですね。  もう一つちょっと伺っておきたいのですが、こうした大変な損失金を出している、そうしていろいろな政策がことごとく狂ってきて大変な事態になっているという中で、東京の後楽園に隣接したところに平成六年七月に、本社ビルが、超近代的な豪華ビルが建ったわけでありますね。地上十六階、地下二階。これは幾らかかったのですか。
  112. 高橋進

    高橋説明員 約百七十億円でございます。
  113. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 これを着工したのはバブルがほとんど崩壊した後じゃないのでしょうかね。それから、住宅金融公庫の職員の数というのは、平成七年で千百四十六人と書いてありますが、このうち地方の支店等に勤務されている方々が七百数十名おりまして、これを除きますと四百人そこそこの職員数ということになりますが、この十六階建てのビルというのは、これは何のために建てたのか、大変疑問になるところであります。それについては答弁、結構でございます。  住宅金融公庫の総裁に伺いたいのですが、今までいろいろな数字が明らかになってまいりましたけれども、こうしたあり方に公庫の総裁として全く疑問をお感じにならないか、あるいは何らかの責任というものをお感じにならないか、伺いたいと思います。
  114. 高橋進

    高橋説明員 このたびの、先ほどから御議論いただいております必要な補給金の量あるいは特別損失の問題、これは、基本的にはこれまでにない超低金利下のもので公的金融機関全般がこうむったものではございますけれども、私といたしましては非常に深刻に受けとめておるところでございます。  このたびのいろいろな国からの法律上の制度をぜひお願いしたいと思っておりますと同時に、私ども事業運営に当たる者といたしましても、いろいろな場面でできるだけ効率化ということを常に考えて、今後とも少しでもそういった財政に与える影響が少なくなるような措置を私ども考え、また国にもお願いしていかなきゃならないと思っております。
  115. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 ちょっとここで、いろいろな公庫の政策決定、方針決定というのは、大体公庫がやるのか、建設省がやるのか。例えば貸付利率の算出といいますか、このぐらいがいいんだ、今度はこういう利子に変更しようとか、そういう案というのはどちらが決めるのですか。
  116. 小川忠男

    小川政府委員 貸付金利につきましては、金融公庫が決めて大臣の認可というふうな形になっております。  それから、その他のいろいろな融資にかかわる政策あるいは制度、これについては、役所における意思決定のプロセスそのものの御質問でございますので非常に難しいと思いますが、一般的に申し上げますと、例えば来年度の予算について金融公庫の方でいろいろな知恵を出して住宅局の方にお持ちになります。それで住宅局といろいろ御相談しながら要求原案をまとめる。その過程においては、事柄によっては金融公庫が決定的にはイニシアチブを持つ場合もありますし、住宅局の方からお願いをするというケースもございます。  いずれにいたしましても、金融公庫建設省一つの案をまとめた上で、財政当局と交渉した上で最終的に政府としての政策が決まる、こういうふうな段取りかと思います。
  117. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 そういう利子を決めたり、あるいはセカンドハウスにも貸すようにしようとか、さまざまないわま一般の企業でいえば商品といいますかそうしたことを決めるのは、例えばセカンドハウスに貸すとかあるいは貸し出しの上限を二百四十平米に広げようとか、対象をどの辺に置こうかとか、あるいは貸出金額の幅を決めるとか、そういうようなものはどこがイニシアチブをとるのですか。
  118. 小川忠男

    小川政府委員 先ほどのお答えの繰り返しでまことに恐縮でございますが、個々の制度ができたときの経緯については、恐縮でございますが、私必ずしも詳しく存じ上げておりませんが、ただ、一般的に申し上げますと、政府としてお答えするとすれば、最終的には予算折衝を経て決める、こういうふうなことでございます。
  119. 亀井静香

    亀井国務大臣 金融公庫融資は、あくまでこれは政策融資でありますから、そういう面では、民間金融機関がやれるものについて縄張りを広げていく必要は、私は基本的に全然ない、このように考えております。  あくまで、特に中低所得者層住宅を取得する、しかも、できるだけ従来とは違った大型な、そうした住宅を取得していける、そういうための住宅金融を行うというのが今後の方向であると私は思いますから、セカンドハウスを取得する方向に広げていくとか、高額所得者住宅を取得する 場合にこれの融資をする、そういうことに広げていった場合は、先ほど来委員等からも御指摘ございますが、税金をつぎ込んでいくというようなことは、これはあってはならぬという形にもなってくるわけであります。  住宅金融公庫の将来について改革するという形で、建設省金融公庫両者でもう検討を始めておりますけれども、今申し上げましたような役割をきっちりと自覚した中で業務を効率化をしていくということでいきたい、こういうふうに考えています。
  120. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 どうも先ほどから聞いていますと、住宅金融公庫というのはこうした住宅金融公庫自体の方針決定についてもどれだけ権限を持っているのか、ほとんど住宅金融公庫というのは何もやっていないように思われますね、そうすると。  そこで、住宅金融公庫ではこういう立派なパンフレットを出していまして、「住まいと公庫」、こういうパンフレットがあって、この中に「ニーズに応じた豊富なメニューで明るい住まいづくりを」と書いてあるのです。  この中には何と、マイホーム新築、分譲住宅、田園住宅、リフォーム、財移住宅、市街地再開発等というようなさまざまな、あるいは中高層ビル、賃貸住宅、宅地造成、関連公共施設等、災害復興住宅住宅宅地債券、住宅融資保険、たくさんのメニューが積み上がっております。  同時に「”住まい”に関するあらゆるニーズに対応する公庫」、こういうページもありまして、この中には「設立以来平成八年三月末までの四十六年間に融資した実績は、戸数で千五百四十七万戸」「これは戦後建設された全住宅の約三〇%にあたる。」  こうしたことを誇りに思っていらっしゃいますか、総裁。
  121. 高橋進

    高橋説明員 誇りに思っております。  ただ、今までの公庫の果たした役割は非常に、私なりに、手前みそではありますが、重要な役割を果たしたと思います。ですが、これからは、いろいろな環境の変化の中で、今までどおりをすべて踏襲するということではなくて、効率ということも常に考えながら、また国民のニーズに対応したものにしてまいりたいと思っております。
  122. 市川雄一

    市川委員長 十二時からの参議院本会議建設大臣が出席いたしますので、午前中の質疑はここまでとし、持ち時間は午後に繰り延べることで御了承ください。  この際、休憩いたします。     午前十一時五十四分休憩      ――――◇―――――     午後零時四十七分開議
  123. 市川雄一

    市川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。石井紘基君。
  124. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 先ほどは住宅金融公庫の業務というものが大変に広く広く広がっておるという話をしたところでありました。そして、こうした今の実態について、総裁の方からも誇りに思っておる、いいことをやってきているんだというお話が聞かれたかと思いますが、まあお役所でございますから、それぞれに与えられた職務、任務、この住宅金融公庫の使命というものに沿ってこれまで同じ穴を一生懸命深く深く掘ってこられたんだろうと思いますが、こうした中で、五十年近くたってきて、国の状況もあるいは公庫を取り巻く状況も大きく変化をしてきたわけであります。そして、公庫そのものの本来の使命についてもこのあたりで振り返ってみる必要があるときになったのではないかと思うわけであります。  住宅金融公庫法に何と書いてあったのか。その第一条には「国民大衆が健康で文化的な生活を営むに足る住宅建設及び購入に必要な資金で、銀行その他一般の金融機関が融通することを困難とするものを融通することを目的とする。」というふうに書かれているわけであります。  そして、当初の公庫融資対象につきましては、設立当初から、対象となる延べ床面積は百平米以下、対象物件は持ち家、資金使途は新築のみということで、その融資枠についても今日と比較するとはるかに小規模なものであったわけであります。  それが、まず一九九四年には床面積が百平米から一気に二百八十平米以下ということに広がった。あるいは、それと前後して、対象物件についても高規格住宅、これは八五年、セカンドハウス八七年、リフォーム七五年というふうに拡大をしてきたわけであります。  融資の限度額は、この最近の十年間だけをとってみても三倍に膨れ上がっている。今日では、上限はどのくらいになりますでしょうか、三千七百万円から四千万円近い、そういう金額を借りることができる、こういうふうになってきました。  そこで、第七期住宅建設五カ年計画ですか、この中には、これは昨年から始まったものでありますが、居住水準の目標というものが書いてありまして、平成十二年度において「住宅二戸当たりの平均床面積を約百平米とすることを目標として、」要するに、まだ三年ぐらい先の時点の目標として、床面積を百平米まで持っていこうという趣旨のことが書かれているのでありますが、住宅金融公庫は、既に九四年、平成六年に、何と二百八十平米までということで広げているわけであります。  こういうふうに、住宅金融公庫というものはそもそも特殊法人でありますから、そのときの政策目標に従って設置をされたはずなんです。戦後のこうした住宅不足の時代に、狭いほど安い金利で、低金利融資しようじゃないかということでやってきた。それが最近では、狭いほど低金利ではなくて、よい家ほど低金利にするんだというふうに変化をしている。こうしたことの背景にある社会的な状況変化とともに、この住金のそもそもの政策目標として当時つくられたその任務、役割、使命というものは、私は既に終わっていたのではないのかというふうに思うのであります。  特殊法人でありますから、特殊法人としての公庫は、設立当初に規定された対象床面積、対象物件、資金使途融資規模等に関する計画の規定は、まさに設立の目的内容上限定した、そうしたものであるというふうに基本的には私は解釈されるべきだろうと思うわけですね。  一々答弁を求めましても時間がかかりますので、次に移っていきたいと思いますが、民間金融機関は、こうした住宅融資事業について、これは民間で十分やれますよ、公庫より私たちの方がすぐれていますよ、そういうふうに言っているわけであります。  そこで、大蔵省に何点か伺いたいと思うのですが、九公庫、二銀行、政府系金融機関全体と、都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合等の民間銀行の規模、これについて比較をしてみたいと思うのですが、融資残高で見るのが一番見やすいかと思うのですが、例えば、民間の都市銀行の平均的な規模と住宅金融公庫の規模を比較したらどのくらいになるでしょうか。
  125. 佐藤隆文

    佐藤説明員 平成八年三月末の融資残高で比較いたしますと、住宅金融公庫融資残高が六十四兆七千三百六十二億ということでございます。  他方、御指摘のございました都市銀行でございますが、同じ八年三月末の融資残高、合計でとらえますと、二百七十七兆千三百四十三億円という規模でございます。
  126. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 その表を私はあらかじめ手元にいただいてあるわけでありますが、例えば、都市銀行の中のトップとか二番とか言うと支障があるかもしれませんので、まず一番規模の大きいところであっても貸出残高は三十六兆円台でありますが、それに対して、住宅金融公庫は六十四兆四千億、政府系金融機関の全体の貸出額は百三十二兆円、百三十数兆円という規模であります。このように、政府系の金融機関がそもそも我が国の金融事業全体の中で大きな位置を占めてしまうということについては、我が国は資本主義、自由経済の国でありますので、大変にこれ自体が大きな問題 である、このように思います。  政府系金融事業をどんどん、民間でできることが圧倒的でありますので、この大部分の事業を、私は、基本的な考えとしては、民間に移転をするべきである、このように思います。それについても答弁は結構でございます。  全銀協は、先ほど申し上げました点でありますが、平成八年四月に「公的金融システムの改革へ向けて」というパンフレットを出しております。全銀協、地方銀行協会、それぞれの民間金融団体がこうしたパンフレットを盛んに出しまして述べておりますことは、住宅金融分野については、全面的に民間対応可能であり、新規案件については民間が直接代替するというふうに述べております。  地方銀行協会におきましては、住宅金融公庫など政府系金融機関は、設立目的や本来の政策課題から離れて、それ自体の自己増殖の方向へ進みつつある、この結果、民業との役割分担が大きくゆがめられている。  さらに述べておりますことは、政府系金融機関は、戦後の復興期や高度経済成長期に、資金不足のため民間金融機関から融資を受けることが困難な企業や分野に資金を供給することを目的に相次いで設立されたが、高度成長の終えん等を背景とした金融環境の変化に伴い、十機関すべてにおいて、当初の設立意義が薄らいでいるか、または設立目的を逸脱した業務が行われている。しかも、住宅金融公庫は、貸し出しのほとんどが民間金融機関の代理貸し付けにより取り扱われているなど、民間金融機関の窓口を利用した代理貸し付けに頼っている状況にある。  また、全銀協におきましても同様でありまして、「公的金融システムの現状は、本来の役割を大きく逸脱し拡大を続け、「入口」「出口」双方において諸外国に例を見ない存在となっている。かつ、量の拡大が質を変えたと評されるように、現状の維持拡大がシステムの目的となっているかのような状況もみられる。民間金融が従来以上の役割機能を果たし得るようになってきた今日もなお、拡大を続けることは、本来の役割を超えた肥大化が依然として進行していることを示すものである。」  つまり、こうした民間金融機関は、言ってみれば、役所というものは、自分たちの商売のために民間を利用して、民間の窓口などを利用して、そして民間をいじめているんだ、自分たちは踏まれたりけられたりだということを言っているわけであります。  私は、この民間の金融機関の言うことには十分な根拠があるというふうに思っているわけであります。現に、貸付利子率を見ても、三年物とか五年物というものは公庫の利子率よりもはるかに安いし、そしてまた、十年というようなタームのもの、そうした商品もさまざまな工夫をもって新たに開発をされているわけであります。  そこで、あなたたちの仕事は大部分民間でやれるんじゃないですかと言うと、住宅金融公庫は恐らく、長期固定の低利の金利で貸せるのは住宅公庫をおいてありません、あるいはまた、そのほかのメリットもあるでしょう、例えば大きな住宅政策について誘導をしていく。  だけれども、これは別に金融公庫がなくたって、建設省がしっかりやっておられるわけでありますから、ほとんど関係ない話でありますが、この長期低利の固定金利、これがにしきの御旗のように言われるけれども、まさにこれが大きな原因でもって、今日、先ほど来私が出しているような、危機を通り過ごしてもう火だるまになったような状態、しかも、莫大な国民の負担、そして、ローンの利用者に対してまでも、先ほどの数字、不良債権とか、あるいは、払えなくてもう手を上げてしまった苦しんでいる人たちが何万人も出てきているという、そういう大きな迷惑をかけるという結果になってきているわけであります。  しかも、この損失金等については、非常に漠とした数字しか出し得ないし、損失金というものが毎年毎年積み重なってきている。この損失金ということだけを申し上げましても、毎年毎年、昭和六十一年からずっと、今日、九年まで、千八十四億、八百五十七億、千百四十七億、四百六十八億、九百三十一億、一千百八十九億、六百七十億、二百三十八億、三百八十九億、一千九十八億、九百八十三億、平成九年の予算には二千七十七億、こういうふうになってきている。  補給金についても、同じく、三千四百三十二、三四三九、三四三九、九五三二、三五三九、三七三九、どういうわけか三九、三九というのばかり続いていますけれども平成四年は三九三九、五年は四〇六五、四〇四五、四一九七、五二六六。こういうふうに、特別損失金、そして補給金というものが、年々歳々、例外なく積み重なってくる、こういう状態を招いている。  これはまさに、皆さんがおっしゃる、にしきの御旗にしている、私は唯一のと言ってもいいその皆さん方のメリットと言われている部分が、まさしく破綻したんだということをあらわしていると思うわけであります。  こういうことを無理に無理を重ねてやってきた。だって、現に三年先、五年先の経済情勢も的確につかんでいなかった。そういうことの積み重ねがああした不良債権や何かをどんどん出してくるということにもつながっているわけでありますから、そうした三十年、三十五年なんという長期の低利の固定ローンなんというものは、もともと不可能だったのだということが明らかになったわけですね。それをやるのだったら、もっと別の方法でやらなければならないということが明らかになったということを、はっきりと申し上げたいと思うのですね。  そこで、大蔵省の見解を伺いたいのですが、民間の金融機関は、民間住宅ローンを十分に、今の住宅金融公庫に負けず劣らず、さらに立派な形でやることができるのだ、こういうふうに言っているわけであります。大蔵省は、全銀協やら地方銀行協会やらのこうした主張について把握されておられますか。
  127. 佐藤隆文

    佐藤説明員 全銀協が民間金融機関のお立場でそういう提言をされていることは承知いたしております。
  128. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 内容も、ほぼ私が申し上げたとおりですか。
  129. 佐藤隆文

    佐藤説明員 先ほど御指摘いただいたような点が含まれておるというふうに理解しております。
  130. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 そこで、今後の住宅金融についてのあり方の議論も、盛んに民間においても行われているわけであります。例えば、住宅金融公庫の今の直接のローン貸し出しを、民間に移転をして民間にやらせる、それにかわって住宅金融公庫は、そうした住宅債権などの、あるいは住宅ローンの保証機関としての役割を果たすべきであろう。そうすると、民間でも、このローン債権というものを、政府機関の保証がつくことによって、さらにこれを市場化する、証券化する、そういうことに非常に役立つわけであります。  アメリカなどは、政府機関が保証機関となっておりまして、莫大な住宅債権というものがそのまま借金の形でもって国なり民間なりに残っていくのではなしに、それを市場でもって売り買いしていく、そういう中でもって借金にならずにむしろそれを運用できる、資産として活用することができる、そういう制度が全面的に展開をされているわけでありまして、我が国は、先ほど言いましたように、政府系の事業というものが余りにも多くなっておりまして、金融機関の規模というものが膨れ上がっております。  あるいはまた、財投、資金運用部というものの規模もとてつもなく巨大なものになっておりますために、国債や何かの市場なんかでも、非常に不可解な動きが外国から見れば出てくるということもあるわけでありまして、本当の市場経済、本当の市場の論理による金融という体制に持っていくためには、私は、こうした手法、考え方というものは――例の大和銀行の事件を見てもわかりますように、我が国は非常にこういう面でもっておくれているといいますか、むしろ封建的といいます か、国際市場の中でもって一人前扱いにならない、そういう状態になっているわけでありますから、こうした側面から考えてみても、やはり住宅金融公庫というのは主として保証を業務とする機関にしていく。  そして住宅政策については、さまざまな制度あるいは税制、あるいは補助もあっていいでしょう、そういう側面から充実をさせていくというふうな方向に、ぜひともこれは一歩踏み出すべきであるというふうに思うわけでございますが、大蔵省に、証券化あるいは住宅ローン保証、そうしたものの制度について、アメリカ等において展開をされていることを参考にしながら、御意見を伺いたいと思います。
  131. 佐藤隆文

    佐藤説明員 いわゆる住宅ローン債権の証券化についてでございますけれども、米国においてそのような手法がかなり使われているということは承知いたしております。  ただ、我が国の場合につきましては、そのような住宅ローン債権をプールした資産担保証券、MBSといった市場がまだ十分に育っていないというようなことがあって、証券化を通じて安定的な資金の確保が十分担保されるかどうかといった点が疑念としては残るということかと思います。  それから、保証につきましても、保証の場合ですと、融資の元本そのものは民間金融機関から提供されますので、長期の固定金利での資金供給が十分できるかどうか、それから、金融の繁閑に左右されない安定的な資金供給が可能かどうかといった問題が残ってくるのではないかという気がいたします。  ただ、いずれにいたしましても、住宅金融の証券化につきましては、今後取り組むべき重要な研究課題一つというふうに認識いたしておりますので、いわゆる金融システム改革の議論の中で、我が国金融市場全体を活性化させていかなくてはいかぬ、こういう議論の中で検討されていくことになるのではないかと思います。  いずれにいたしましても、政策金融というのは、政策的な意義が非常に高い、しかし民間金融だけでは十分に対応できない、こういう分野についていわば民間金融を補完するという立場から行われるものでございますので、時代の変遷によって政策的な必要性が薄らいできた、あるいは民間金融で十分に対応ができるようになってきた、こういう分野につきましては常時見直していくというのが基本であろうかと思います。  ちなみに、平成九年度におきまして、住宅公庫につきましての特別割り増し額の縮減あるいは低金利時の貸出金利の引き上げといったことを予定いたしておるわけでございまして、こういった措置もこのような考え方に沿ったものであろうかと思います。
  132. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 私は、直ちに全面的にそういう方向に転換しろと言っているわけじゃありませんで、そうした超長期の金融資市場整備とか育成、こういったものを図っていくという必要は、これは金融問題という側面からいっても非常に有意義なことであろうというふうに述べているわけであります。  日本総研というところがなかなか立派な報告を出しておりますので、ちょっと紹介をさせていただきますと、住宅金融公庫のローンの証券化ということが必要であるという点につきまして、一つは、民間の金融機関の住宅ローンの提供能力は、資産負債管理手法の高度化やさまざまな新商品開発によって向上している、これにもかかわらず、住宅金融公庫資金仲介形態がローン形態のままシェアを広げていることが、官が民の補完ではなく、競合する状態を生み出しているのだ、住専問題とか資本市場の未発達といった副作用もまた引き起こしているのだ。  それから第二には、我が国の不良債権問題の最終的解決を展望した場合でも、債権流動化市場の未発達がネックとなっているのだ、住宅金融の証券化を進めることが応用問題としての不良債権問題の流動化にもつながっていくのだ。  第三に、年金基金などの投資家には、長期かつ安定的な資金運用手段やあるいは金利リスクヘッジ手段としてのモーゲージ担保証券の運用のニーズが存在している。モーゲージ担保証券というのは不動産担保の住宅ローン債権を証券化していくということであります。  そして第四に、昨年集中した例の住宅金融公庫融資民間融資への借りかえ、ことしも集中しておりますが、これは公的金融部門が住宅金融に典型的な期限前償還のリスクをこうむっていると見ることができるのだ。要するにそういうことですね。こうしたリスクを取り出して、これを価格づけする、それで市場化することができるならば、公的金融のさらされるリスクを縮小して、資本市場の効率性をより高めることにも結びついていくというようなことであります。  私は、このように、もはや、このたまりにたまった損失金を将来にわたっていかに返済していくか、いかに国民の負担を調整していくかというような後ろ向きの議論、解決策じゃなくて、行政改革全体については大変積極的な建設大臣亀井大臣が、こうした住宅金融公庫のこれまでの経緯を振り返ってみて、この際、勇断をもって新たに将来に向かって大きく見直していく、そして将来の国民住生活のために、あるいは国全体のために役立つものにしていこうという前向きの姿勢をとられることについて私は確信をしながら、最後に亀井大臣住宅金融公庫の何らかの見直しという点についての御見解を伺いたいと思います。
  133. 亀井静香

    亀井国務大臣 先ほども申し上げましたけれども住宅金融公庫の果たしてきた役割、これを将来に向かってどう変えていくべきかということについては、私ども、また住宅金融公庫自体が強く認識をいたしておるところであります。  民間金融機関公庫の果たしておった役割まで将来果たせるような形で発展をしてくれることを私はこいねがうわけでありますが、ただ、先ほど全銀連、地銀等の意見書を読み上げられましたが、若干私は手前みその感がぬぐえないという印象も受けておるわけではございまして、民間金融機関が庶民のための資金供給についてどこまで社会的責任を果たそうという姿勢でおるのかということについて、私は、厳しく自己反省が必要である。住専問題においてもその実態も明らかにもなったわけでございます。  やはり資本主義社会におきまして強者と弱者の存在はあるわけでございまして、まあ中間層もおるわけでございますが、そうした層がやはりきっちりと住宅も取得ができていく。そのために政策金融等はやはり大きな役割を果たしておるという現実があるわけでございますから、将来の住宅金融公庫の方向といたしましては、そうした面について今後とも努力をしていく。  ただ、委員からも指摘がございましたけれども民間金融機関でやれる分野についてまでどんどん手を出していく必要はない、私はこのように考えております。
  134. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 ありがとうございました。期待したほどの画期的な答弁がまだ出ておりませんが、やはり問題が大きく噴き出していることは事実でありますので、ひとつ住宅金融公庫についても、道路公団やあるいは住都公団と同様に、多々ある改革すべき点について改革、見直しに取り組まれるよう、もう一言、御決意を最後に一言だけ伺います。
  135. 亀井静香

    亀井国務大臣 今申し上げましたように、改めるべき点は思い切って改めていく。しかしながら、先ほど申し上げましたように、政策金融の使命を果たさなくてもいいようなそういう社会に日本がなっていくかどうかにかかっておろうかと思います。  また、委員から具体的な御示唆も賜りたいと思います。
  136. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 どうもありがとうございました。
  137. 市川雄一

  138. 中島武敏

    中島(武)委員 私は、法案質疑に入る前に、今大問題になっておりますし、また緊急に伺わなければならない問題でありますので、関西地区の土 木業界の談合問題について初めに伺いたいと思っております。  公共事業が国政の上でも非常に大きな問題になっておりますし、総理も、公共投資計画そのものを見直すことを国会で答弁をしておられます。  こういうような中で、関西地区の公共工事をめぐって、大手ゼネコン各社による新たな談合組織ができたとか、あるいはまた関西地区の談合を取り仕切ってきたとされている西松建設の取締役相談役の平島栄氏が過去の談合の実態を暴露した資料を建設省と公正取引委員会に提出した、こういうことが報道されております。  平島氏は、談合にまつわる持論を展開した要望書というらしいのですけれども、これを建設大臣と伴事務次官に提出したと言われておりますけれども、これは事実であるかどうか、まず最初に伺います。
  139. 亀井静香

    亀井国務大臣 私が不在のところに、代理人と言われます弁護士が書類を置いていったということは事実でございます。
  140. 中島武敏

    中島(武)委員 書類を置いていったということになれば、大臣も事務次官も中身を見ていらっしゃるのじゃないかと思うのですけれども、その中には単に自分の見解を述べたりなんなりしているような要望ということだけではなくて、具体的な談合の実態を明らかにした資料も置いていったのでしょうか。
  141. 亀井静香

    亀井国務大臣 私もその書類には目を通しましたけれども、その書類だけで関西における公共事業の発注に関してどういう事実があったのかということを即断をいたすわけにはまいりません。
  142. 中島武敏

    中島(武)委員 即断できないというお話なんですが、もしこれが事実だとして、大変な中身のようなんです。私は報道でしかまだ知り得ていないのですけれども、昨年発注された八百七十二件の工事について百五十六社が談合した、こういうことを報道されているのですね。  これがもし事実だということになりますと、私はこれらの問題に随分携わってきたと申しますか、いろいろただしてきたことがあるのですけれども、私の経験からいいますと空前ですね。その規模からいって非常に空前のものと言わなければなりませんので、もしこういう談合のそういうものが出てきたら、それは当たっているかどうかということじゃなくて、私の承知している限りで言えば、談合情報対応マニュアル、これが建設省にありますね。これこ従って調査をしたかどうか、しているかどうかということを私は伺いたいのです。  私、このマニュアルを拝見しました。そうしますと、このマニュアルによりますと、契約締結後の場合も、公正取引委員会への通報とか、あるいは事情聴取を行い、その結果、談合の事実があったと認められる証拠を得た場合には、着工工事の進捗状況を考慮して、契約を解除するか否かを判断することなどを規定しているのですね。具体的なことをずっと書いてあります。  この点で私が聞きたいのは、ごらんになって、談合情報対応マニュアル、これに従って調査を始めていらっしゃるのかどうか、そこを伺いたいと思います。
  143. 亀井静香

    亀井国務大臣 私が不在中に持ってこられた書類だけをもって私は判断をしておるわけじゃございません。マスコミでもいろいろと報道されておる状況がございますから、徹底した調査を命じて、現在進行中でございます。その結果を踏まえまして、きっちりとした対応をいたしたいということでございます。
  144. 中島武敏

    中島(武)委員 後ろで手を挙げておられましたけれども、何か言うことありますか。――ありませんか。  大方のお答えはいただいたようには思うのですけれども、これは週刊ポストですけれども、この週刊ポストによりますと、平成九年度に発注する大型工事のリストが作成されている、それで七つのプロジェクトがあって、そしてその工法から予算額から、さらには発注時期まで記入している、こう言うのですね。これも調査対象になっているのかどうか。  私は、平成九年度といいますとまだ予算が成立していない、さあこんなことが本当にあるのか。それから、公共事業の個別の箇所の問題については、このことはたしか大臣も、こんなものはまだ発表してないと。当然これは決まってもいないし発表もできないわけですよね。  ところが、業者の方にだけは、これは建設省から漏れる以外にないのだと思うのですけれども、漏れたかのような書きっぷりですよ。もし、こんなことが事実だということになったら、それこそ政財官の癒着の典型と言わなければならない。  私は、そういう意味で、こういう問題も含めて調査対象にしておられるのかどうか、くどいようだけれども、もう一つ聞きたい。
  145. 亀井静香

    亀井国務大臣 先ほど申し上げましたように、マスコミに公共事業の執行をめぐってのいろいろな問題が出ておるわけでありますから、国民の方々も、その意味では私どもの執行についてのいろいろな意味での疑いの気持ちも、読まれた方は持っておられるというように思います。そういう意味では、私ども自身が直接徹底調査をいたしまして、真偽のほどを明らかにすることがまず前提である、このように考えております。
  146. 中島武敏

    中島(武)委員 では、次の問題に移ります。  住宅金融公庫の存在意義という問題なんですけれども、先ほどからもいろいろ質問、答弁もあったようですが、財界団体だとかあるいは銀行協会、こういうところから言ってきているのは、「公的金融の担当分野は、」「官民の役割分担の見直しを不断に図りつつ、極力縮小すべきである。」これは「公的金融システムの改革へ向けて」という全国銀行協会連合会の文書です。それから、民営化すべきだというような、民営化すべきというか民間がすべてをやればいいじゃないか、こういう意見も出ておりますけれども、この点についての大臣の見解をもう一度伺います。
  147. 亀井静香

    亀井国務大臣 先ほども他の委員の御質問に同様なことについてお答えをいたしましたが、住宅金融公庫が現時点あるいは近い将来において完全に役割を終える状況になるとは私は思っておりません。民間金融機関の能力、またモラルを含めまして、これが特に中低所得者層住宅に対する資金需要にきっちりと対応していけるという状況になれば別でありますけれども、最近のいろいろな状況から見まして、やはり国が政策としてそういうところに対しての資金をきっちりと供給をしていくという責任というのは現在もなおある、このように思います。  ただ、先ほど申し上げましたように、業務の中身において、やはり民間に渡すべきものは渡していくということが必要であると思います。
  148. 中島武敏

    中島(武)委員 この住宅金融公庫役割というのは、長期の安定的な資金を低利で提供するというところにあると思うのですね。そして、融資対象となる住宅の質の確保を図ってきた、ここがよい特徴だと思っているのですが、住宅の水準の向上に一定の役割を果たしてきた。  しかし、例えば、百七十五平米、坪数にしますと五十三坪ぐらいになりますか、これを超える住宅融資するというのは、本来これは融資すべき対象から逸脱しているのじゃないか、そういう批判もあるのですね。  大臣改善すべき中身というのは、何を具体的に考えておられるのか。今私が申し上げたような融資対象あるいは規模、こういうものをどうするかということが大事な一つだと思うのですけれども、ちょっとこの百七十五平米、この辺はいいということでしょうか。
  149. 亀井静香

    亀井国務大臣 私は、中低所得者層住宅を取得される場合においても、よくウサギ小屋だと言われておりますけれども、そうではなくて、所得の割にはやはり良質な大型なものを取得される、それの手助けを住宅金融公庫がやっていくということ、これが民間金融機関ではなかなかできない面であろうかと思いますから、今百七十五とおっしゃいましたけれども、そういう質の向上というようなことは、私は中低所得者層についてもねら っていいというように思います。
  150. 中島武敏

    中島(武)委員 局長に伺いたいのですけれども、これは融資対象の制限といいますか、限界といいますか、そういうものはあるのですか。
  151. 小川忠男

    小川政府委員 住宅の規模についての融資の制約といいますか、条件でございますが、現在は二百八十平米以上の住宅については一切お貸しをしないというふうな形になっております。  若干付言いたしますと、たびたび規模は拡大をしてきておりまして、つい最近では、平成五年の経済対策によって、それまでの二百四十から、プラス四十平米で結果として二百八十平米になったというふうないきさつがございます。
  152. 中島武敏

    中島(武)委員 収入は、千四百万円ですか。それで、これは個人の収入でしょうか、家族なんかの合算とか、どっちですか。
  153. 小川忠男

    小川政府委員 収入の計算は、借りる個人でございます。  それから、お貸しする場合の収入の上限でございますが、上限はございません。ただ、各年によって基準は違いますが、現段階では年収千四百四十二万円、これを境にいたしまして、これを超える方を俗に高額所得者というふうに認識した上で、金利を高く設定するという形で対応いたしております。
  154. 中島武敏

    中島(武)委員 その辺のところについて、規模それから年収、そういうものについて見直していこうというような考えはありますか。
  155. 小川忠男

    小川政府委員 先ほど大臣からお答えしたとおり、基本はやはり中低所得者だろうと思います。  ただ一方で、住宅政策として、住宅というのは個人住宅であると同時に、つくられれば社会的な資産になるというふうな性格もございますので、非常に難しい面はあろうかとは思いますが、先ほど景気対策の一環として拡大をしたと申し上げましたのも、では景気対策としてあえて出動する必要がなければ再度見直す可能性があるのかというふうなことも含みとしてございます。いずれにいたしましても、高額所得者あるいは大規模な住宅等々についてのありようについては、毎年の予算編成を通じながら、時々の状況をにらみながら検討すべきテーマだと思います。
  156. 中島武敏

    中島(武)委員 では次に、特別損失に対する補給金余裕金ですね。この問題について伺いたいと思うのですが、補給金は本来発生年度にちゃんと補給するというのが本当じゃないかと思うのですけれども、その点はいかがですか。
  157. 小川忠男

    小川政府委員 基本的には御指摘のとおりだろうと思います。当該年度に発生した補給金の必要額、これはできるならば当該年度ないしは予算の性格上翌年度には補給をする、これが本来の姿だろうと思います。  ただ、繰り返し御答弁申し上げておりますように、いろいろな事情で補給金の増減が極めて年によって激しいというふうなことを念頭に置きまして、できるだけ各年におきます予算計上額を平準化するというふうなことから、やむを得ない措置としてお認めいただいている、こういうふうに理解いたしております。
  158. 中島武敏

    中島(武)委員 利用者の一括返済、これが原因になって特別損失を大きく生み出すということになっているわけですけれども、一括返済が今後も増大することはありませんか。もしあるとすればこれまた大変なんですが、逆にお尋ねすると、増大しないという保証はあるのですか。
  159. 小川忠男

    小川政府委員 平成七年度の約十兆円、平成八年度の約五兆円の繰り上げ償還、当然昔の高い金利でお貸ししたものが、現時点では相対的に民間の方が安いというふうなことから、繰り上げ償還が発生したというふうなことでございますし、事実、十年たてば、御承知のように、住宅金融公庫補給金が切れますので、段階金利というふうな制度をとっております。したがいまして、繰り上げ償還の相当程度の方が段階金利が切れる前後に集中しているというふうなことでございます。  例えば、昭和六十一年にお貸ししたものは、多分今年度あたりに十年の補給金が切れます。そういうふうなことを念頭に置きますと、六十一年にお貸しした額の約半分が一年間で返済されたという事実はございます。  したがいまして、一〇〇%絶対大丈夫ということはもちろんあり得ないとは思いますが、一つには、段階金利制が繰り上げ償還の引き金になったというふうな点がございます。  それで、やや詳しく申し上げますと、現在の段階金利といいますのは、十年で補給金が切れたときに、十一年目以降の金利は、十年前の原資、財投の金利にスライドをする。つまり、現段階での金融情勢とは関係なく、十年前の財投金利にプラス〇・二%だったと思いますが、乗せた金利が十一年目以降の金利になる、割合硬直化した制度だったわけでございます。  それに対しまして、高金利の場合には、十年たった段階で改めて金利を設定し直す、その断面での金融情勢を踏まえて新しい金利を導入するという貸し出し条件を新たに設けました。それに連動いたしまして、資金運用部から公庫が財投を調達する場合にも二十数年の契約で長期資金を借り入れますが、金利は十年たった段階で改めて借り入れ条件を設定し直すというふうな形での借り入れ体系を今回導入しようと思います。  したがいまして、十年たった段階で、その断面におきます金利情勢金融情勢と乖離した融資条件あるいは資金調達条件が継続するという事態は基本的になくなるものと思います。したがいまして、そういうふうなことを講ずれば、相当程度といいますか、かなりの程度繰り上げ償還に対する誘因というのは除去できると思います。
  160. 中島武敏

    中島(武)委員 まあまあ大丈夫だ、こういう答弁のようなんですけれども、もう一つ伺います。  余裕金なんですけれども、これの有利な運用というのはリスクを伴いませんか。
  161. 小川忠男

    小川政府委員 余裕金運用でございますけれども、従来は国債等に限定されておったわけでございますが、銀行預金なんかでも運用したいというふうなことでございます。余裕金が発生するメカニズムと申しますのは、各金融機関には毎日、お客さんといいますか、お金を借りた方から返済金が参ります。それに対して、その金融機関が次にお貸しするときの差を計算いたしまして、足りないときには公庫の本店から資金が送られ、余っているときには公庫に送り戻される。そのプロセスの中において、公庫の本店の手元に若干の期間現金が滞留するという状況がございます。それを従来は国債等の運用に限定していたのをもう少し有利な形で運用できないかというふうなことでございますので、運転といいますか、運用自体は極めて短期間な運用であるというふうなこともございますので、御懸念のような事態はまずないだろうと思います。
  162. 中島武敏

    中島(武)委員 先ほどからお尋ねしてきた補給金必要額の発生年度に国が補給するということは、御答弁もありましたけれども、これはもう原則なんですね。今回の繰り延べ措置も、本来はやはりちゃんとそうでなきゃならないものなんですけれども、私たちがこの問題について、超低金利という状況のもとで利用者が選択した一括返済の急増という特殊な条件がやはりあったということですね。  それからもう一つは、やはり超低金利で、かつ、現在では貸付金利が財投金利を上回っていることから、こういう点については補給金の必要額というのが今後の融資についてはなくなる、あるいはいろいろ変動があったとしても減少は確実だというふうに思われますので、後年度に過重な負担となるおそれが少ないというのが、私たちもいろいろ議論してみたんですけれども、そう考えております。そういう点からいえば、補給金の増加分を二〇〇七年度までに繰り延べるというこの考え方は、了とできるかなというふうに私たちは思っております。  さて、次の問題に移りますが、公庫住宅融資保証協会、この問題について伺いたいのですが、これは、民間じゃなくてわざわざ財団法人で保証協会を設立した理由というのは、何なのでしょう
  163. 小川忠男

    小川政府委員 金融公庫融資をする際には、政府系金融機関として当然のことだろうと思いますが、確実な保証人がいるというふうなことを前提条件にいたしております。その場合の保証人というのは、一昔前ですと人的保証といいますか、保証人を立てるということが一般的でございますけれども、昨今の状況ではなかなか人的保証というのは煩わしい、あるいは面倒だというふうなことから、機関保証に頼る傾向がございます。  そういうふうな観点から、何らかの保証システムということの必要性があったわけだろうと思いますが、その際に、一つ考えておくべきことは、住宅金融公庫、現断面では六十数兆の貸出残高がございますし、六百万件に及んでおります。したがいまして、金融公庫融資だけで一つの保証に値する枠組みといいますか、グループを構成しておるという状況にございます。そういうこともございますので、ある意味では公庫の相互補助組織、扶助組織というと語弊がございますが、それで一つの保証システムをつくったというふうなことでございます。  また、現に手続が極めて簡単だというふうなこともございますので、通常の民間の保証に比べますと約半分の保証料でシステムを運営しているというのが現実でございます。ある意味では、ユーザーのための措置というふうにお考えいただきたいと思います。
  164. 中島武敏

    中島(武)委員 住宅金融公庫と今お尋ねした保証協会の役員で、政府、官庁からのいわゆる天下りの人がそれぞれ何人ぐらいいますか。
  165. 小川忠男

    小川政府委員 御質問の役員数でございますが、監事を含めて現在九名でございます。このうちの公務員歴のある方、合計七名でございます。
  166. 中島武敏

    中島(武)委員 保証協会の方はどうですか。
  167. 小川忠男

    小川政府委員 失礼いたしました。ただいま申し上げた九名、七名というのま、金融公庫の役員の構成でございます。  それから、保証協会でございますが、保証協会につきましては、非常勤の理事、監事を含めて現在十一名役員がおりますが、公務員歴のある者は合計四名でございます。
  168. 中島武敏

    中島(武)委員 もう一つ伺いますけれども公庫の総裁、それからまたは保証協会の理事長、それから副総裁または副理事長、それから理事、これの報酬は幾らになっておりますでしょうか。また、在職期間においての退職金はどうなっておりますでしょうか。
  169. 小川忠男

    小川政府委員 まず、金融公庫について申し上げたいと思いますが、総裁の年報酬額は約三千万円でございます。それから、副総裁は二千五百万円弱でございます。理事こよってま若干ぶれがございますが、二千万円前後でございます。  それから、退職金でございますが、これは昭和五十二年に閣議決定されました特殊法人の退職金制度に関する閣議決定、これに基づきまして統一的な支給割合、つまり、俸給月額に在職月数を掛けて、それに〇・三六という計数を掛けるという算式ではじいております。ちなみに、それを前提として機械的に一期分として総裁の退職金を計算いたしますと、二千六百万円余りになります。  それから、保証協会でございますが、理事長は俸給約二千七百万円でございます。副理事長については二千二百万円前後でございます。退職金については、俸給月額に百分の三十を掛け、それに在職月数を掛ける、こういうふうな算式のようでございます。
  170. 中島武敏

    中島(武)委員 保証協会の理事長、もう六年半勤めていらっしゃると思うのです。八年ちゃんと勤めると仮に仮定いたしまして、それから、その前は住宅金融公庫の総裁をやっておられて、その前は道路公団の副総裁をやっておられて、その前は国土庁の事務次官、そうなっているんですね。  それで、私、ちょっと退職金の計算をしてみたんです。そうしますと、六年半が八年勤められるとして三千八百万ですか。それから、公庫の総裁七年で、これが四千六百二十六万になりましょうか。それから、道路公団の副総裁のときの二年間は私十分わかっていないんですけれども、仮に一千万と置いてみますと、合わせますと九千四百二十六万になるんです、私の試算では。  私は、別に保証協会の理事長に個人的な恨みがあるわけでも何でもありませんよ。それから、総裁にも別に何の恨みもないんですけれども、ただ、考えなければいかぬと思っておりますのは何かというと、公庫には補給金が入っているわけですね。それから、保証協会は、利用者の保険料が原資ですよね。そうだということになってくると、いささかちょっと高いんじゃないかなという気が私はするんです。  こういう点での見直しというようなことなんかは、局長考えておりませんか、いろいろ言われているんだけれども。では、大臣から。
  171. 亀井静香

    亀井国務大臣 予算委員会初め各委員会で同様趣旨の御質問をよく受けるわけでありますが、私は、やはり基本は定年制をどう改革をしていくかということ、これをやらなければ、今の時代、かすみを食って生きるわけにはまいりませんから、どうしても特殊法人等がそうした受け皿にならざるを得ないという、これはいい悪いは別としまして、現実的な基盤があると思います。そういう意味で、やはりこの問題を抜きにして論ずるわけにはいかない。  それともう一つは、やはり、今から老齢化社会に入っていくわけですが、マンパワーをどう生かしていくか、それに対する遇し方の問題等もあると思います。民間における給与水準、退職金、このあたりと、公務員あるいは公務員の延長線上にある特殊法人のそうしたものが全く別な次元でというわけにいかない。もちろん、公務員になる場合は銭金が欲しくてなられたわけではありませんけれども、しかし、そうしたことはやはり配慮をしながら決めていかざるを得ないという面があろうかと思いますが、委員指摘のように、このたびの行革の中で、全体の中で、国民の目から見て妥当だという形でこれを検討することは当然だろうと思います。
  172. 中島武敏

    中島(武)委員 では、次の問題に移りますけれども、私は、公庫改善しなければならない点がいろいろあろうと思うのです。  大臣もいろいろ考えておられるようですけれども、利用者の滞納件数が大変増加しているんじゃないかと思うのですね。  総裁に伺いますけれども、私がもらった資料によりますと、九五年は一万四千二百五件、九四年の七千七百三十七件に比べますと、二倍近くにふえているわけですね。それから、融資保証協会の代位弁済の件数も大変増加しております。一九九〇年の件数は四千八百二十件ですか。金額三百六十七億五千二百万心これに比較して九五年は、件数で八千四百九十三件、金額にして千六十五億二千二百万ですかね。こういうふうに、件数で二倍、金額で三倍近い増加というふうこなっています。  私は、これはバブルがはじけた中で、公庫返済能力のない人にも貸し付けていることが顕在化してきたんじゃないかというふうに思うのですけれども、総裁は、これはどういうふうにお考えになっておられますか。
  173. 高橋進

    高橋説明員 結果として、そういう面があろうかと思います。今の延滞債権が増加しておりますのは、平成二年、三年、そういったころにお貸しした部分が相当多くなっておりまして、当時としてはまだ右肩上がりの収入も増すというような状況の中で借りていただいたという面がありましたのが、それがその後のバブルの崩壊といいますか、経済の非常に大きな変動によって返済能力がなくなってきた、そういう結果による面が確かにあろうかと思います。
  174. 中島武敏

    中島(武)委員 私どものところにも、こうした問題についていろいろの訴えがあるんです。  例えば、ちょっと具体的なことで申しますと、これはつい先ごろのことですけれども昭和五十八年に、住宅金融公庫それから年金福祉事業団から千四百万円借りたというのですね。それで、自己資金で五百万。合計一千九百万で建築した家について、途中で増築をするということで四百万円を銀行から借りて、支払いを続けていた。ところ が、どうも奥さんが支払いをしなかったらしくて、競売に付されてしまった。これは大変だというので、私どものところに言ってきたんですけれども、話を聞きますと、自分の家を競売で落とした不動産業者から、家を出ていってくれと言われてしまったというのですね。奥さんはどうかといったら、奥さんはきのう家出をしてしまって、事情がよくわからない、どうしたらよいか、こういう相談なんです。しかし、これは実際にいろいろあるんですね。決して、これは特殊な例ではないわけなんです。  私は、ここで特に総裁に聞きたいと思うのは、この例というのは、さっき言いましたように、昭和五十八年から約定支払いを続けてきたんです。約定支払いがおくれた段階で必ず、やはり本人によく面談をして、おくれていますよ、ちゃんとしっかりやってくださいということをきちんと説明するということが金融機関としては当然の義務じゃないかと私は思うのですね。  しかも、相談に来た人が言うには、おじさんと一緒に来たんです。それで、おくれている分を一括して返済する、そういうことはできる、こう言っているわけですよ。今までおくれているものをちゃんと返済できるという話をしているんですよ。だから、ちゃんと本人に面談して、注意を大いに喚起するということをやれば、問題は起きなかったんじゃないかと思うのですね。  それで、紋切り型に、六カ月過ぎると自動的に延滞扱いにして保証協会に回してしまう、これはどうかと私は思うんですよ。支払い能力がないと思ったら競売に付してしまう。私は、これは余りに無慈悲じゃないかという気がするのです、率直に言って。  こういう場合は、やはり六カ月というのをもっと延ばすとか、あるいは、困ったときには何か救済保証のような制度考えるとか、今ありませんね。だけれども、こういうものを考えるとか、そういうことが必要なのではないかなということをこのことについては大変思うのですね。どうでしょうか。
  175. 高橋進

    高橋説明員 今おっしゃられた事例のようなケース、全くないとは申せないと思います。本当に数多くの住宅金融機関に協力していただいて私どもの仕事をやっていただいておるのですが、非常に件数が多いために、従来、やはりどうしても若干機械的になって、そういったケースが出てくることもなかったとは申せないと思います。  それで、短期延滞、中期延滞、六カ月以上とありますけれども、最近、私どもとしては、おっしゃいますように、最初に延滞し始めた段階で、できるだけ御本人にお会いするなりして御相談する。特に三カ月延滞になったところで、まだその段階ではいろいろなことできめ細かくやればうまくできる場合があるものですから、できるだけそういう段階で御相談をする、できるだけ御本人にアプローチしてやるという方針にしております。  それでまたきちんと返済できないような場合には、そこは従来若干機械的になっていた点がありますけれども返済条件の変更についてもできるだけ柔軟にするように、これは私どももいろいろ考え、また住宅金融機関の皆さんにもシステムをいろいろ考えていただきまして、弾力的にやるようにしております。  今先生のおっしゃいましたような事例ができるだけなくなるように今後とも努力したいと思っています。
  176. 中島武敏

    中島(武)委員 総裁、もう一つ、貸し付けのときの審査がちょっとずさん過ぎるのではないかなという例も、また私は訴えを受けているのです。  これは、仮に女性のAさんといたしますけれども、このAさんは平成二年十一月に男性のBさんと結婚したのです。Aさんは結婚前、ある会社に勤務しておって、年収三百二十万円程度だった。結婚したら仕事をやめるということだったので退職をしたのです。夫のB氏は父親の建築設計事務所を手伝っていた。ところが、Aさんがよく知らない間に夫のB氏が家を建てるということになって、Aさんの年収の方が多いからというのでAさんが主債務者、B氏が連帯債務者ということで手続が進められたというのです。  それで、Aさんは手続のことは一切わからないからとはっきりしなかったのですけれども住宅金融公庫だけでは足りないということで、ある信用金庫から三百万円を二口借りることになった。Aさんは仕事をやめてB氏の実父の設計事務所を手伝うことになった。Aさんの話では、給料は全くもらっていなかったというのですね。  ところで、Aさんは平成八年四月にB氏と離婚した。離婚したときに、住宅金融公庫関係の支払いはすべてB氏が行うということだったけれども、最近、支払いがなされていないという連絡が来るようになった。ちょっとごちゃごちゃ言いましたけれども、こういうことなのです。  それで、これは何かというと、年収は三百二十万あっても、Aさんが仕事をやめるということになった状態で、もうやめるということはわかっているわけです。だから、そういう支払い能力のない人に貸した、ここが一番問題ではないかと私なんかは思うのですね。  そういう点では、やはり貸し付けのときに慎重な審査というものをもっときちんとやるべきではないかと思うのですね。方々から言われているのですけれども、どうも何か貸し過ぎでやられているという話をよく聞くのですよ。だから、こういう点ではやはり慎重にするということが必要ではないかと思うのですけれども、総裁、いかがですか。
  177. 高橋進

    高橋説明員 一般的に、申し込みされた方に収入証明を出してもらうのですが、それは前年度までなものですから、過去に収入があるとなかなかそこでチェックできないという問題が基本的にあるのでございますが、ただ、私どもとしては、原則的には名義人となっている御利用される方、御本人に必ず直接窓口にいらっしゃっていただくようにしておりますし、平成八年度以降は、金銭消費契約、正式な契約を結ぶときには御本人に来ていただく、そこで御本人に御了解のもとでということにしております。なお、そういったことをさらにきちんとしてまいりたいと思います。  また、一般的に審査というものはなかなか件数が多くて大変な面もあるのでございますが、できるだけ審査というものはきちんとやる。貸す親切と同時に、場合によっては貸さない親切ということもあり得るわけですから、そういった面できちんとやってまいりたいと思います。
  178. 中島武敏

    中島(武)委員 時間が迫ってきたようなので、最後にちょっと大臣に伺いたいと思うのです。  今の問題とも関連はするのですけれども公庫の貸し付けが急増しているのはいつからかと資料を見ますと、九三年からなんです。ここからがんがん貸し付けがふえてしまっている。これは、住宅政策ではなくて、景気対策としてこの問題を扱ったんじゃないか、だから住宅金融公庫の方でも貸し付けんかなということで無理な勧誘なんかもやる、今のお話のように、審査も余りやらないでずさんなものでもどんどん貸し付ける、こういうことがもたらした問題ではないかと私は思うのですね。  私は、そういう点では、住宅金融公庫融資というのはやはり住宅政策として、あるいは福祉政策としてこの問題を考えるべきであって、こういう景気対策として考えるというのは今改めなければならないところに来ているんじゃないかという気がするのです。公共事業が景気対策としていいのか悪いのかというのは、ことしも予算委員会で大分議論になっているところですよ。今やはり転機に来ている、本来のところへ返らなければいかぬのじゃないか、私はこういうことを考えるのですけれども大臣の見解を伺いたいと思います。
  179. 亀井静香

    亀井国務大臣 やはり中低所得者層等が住宅を取得したいという大変大きな熱望がございます。私どもは、それに対してできるだけこたえていくということでございまして、ただ、議員おっしゃるような反射的な効果として景気対策上の効果はあろうかと思います。
  180. 中島武敏

    中島(武)委員 もう時間が来たのですが、そこ のところはもう一回考え直さなければならぬところに来ているんじゃないかというのは私の率直な意見。それで、さっきから私が具体的な事実を申し上げましたけれども、そういうことを続けておりますと、陰で、陰でというか借りた人が泣かなければならないという事実も出てきてしまうのですよ。だから、そういう点もやはり十分考慮するということをすかっと言ってもらいたいな。
  181. 亀井静香

    亀井国務大臣 別に、民間金融機関ではございませんから、利益を上げることを目的に活動しておるわけではございません。先ほど申し上げましたような国民大衆、庶民の中から住宅を取得したいという熱望にこたえておるということでございます。
  182. 中島武敏

    中島(武)委員 終わります。
  183. 市川雄一

    市川委員長 中西績介君。
  184. 中西績介

    ○中西(績)委員 私は、制限された時間の中で、しかも多くの人が討論を経た後でございますので、大変制限された内容になってくるのですけれども、今いろいろ多くの皆さんから指摘もございましたけれども、この金融公庫の貸し出し、このことが戦後果たした役割等については評価しておるわけでありますけれども、今後どうするかという問題を迎えて、もう一度内容的に検証をしてみる必要があるんじゃないか、こういうことを考えまして、簡単に質問をしたいと思っています。  それで、大臣も申されましたけれども、一九五〇年に設立をされまして、国民に必要な資金融通などによりまして、国民住生活の安定あるいは社会福祉の増進等に寄与をしたということ、このことは評価いたします。そして、今、平成八年度から、また再び第七期住宅建設五カ年計画を策定をいたしまして進めようといたしておりますけれども、やはりここでも圧倒的に住宅公庫からの借入金、これを要請する人が多く占められておる。ということになってまいりますと、やはり依然として、先ほどから出ておる低所得階層を含め、中堅的なところまで含めまして、皆さんすべてがそういう要求があるということを示しておると思います。  ですから、このことはよくわかるのですが、戦後こうした住宅政策に果たした役割、ここいらをもう一遍私は総括的に検証する必要があると思いますけれども大臣、そうした点についての御見解をいただきたいと思います。
  185. 亀井静香

    亀井国務大臣 委員指摘のように、戦後の廃墟の中から、特にそうした中間層以下のところに対しての住宅資金の供給という面で大きな役割を果たしてきたと私は思いますし、現在なお金融公庫への申し込みの状況を見ますと、こうした層からの大きな資金需要があると思います。もしここから全面的に金融公庫は撤退をいたすということをいたしますと、これを、民間金融機関が貸し出し条件等を劣化させることなく、そうした階層に対して資金供給をし続けるであろうかということになりますと、私は、需給関係から申し上げましてもやはり心配がございます。  そういう意味では、そうした層に焦点を合わせて、しかも先ほどちょっと御意見もございましたけれども、ただ安かろう小さかろうということではなくて、若干、背伸びをするわけじゃございませんけれども、上質の住宅を、民間の金融機関を利用してではできない、若干それ以上の良質の住宅を求めていくことの手助けを住宅金融公庫がしていくという役割というのは今後ともあろうかと思います。  ただ、自分で民間から資金が調達をできる、自己資金でやれるというような層に対してまで手を伸ばしていく、またセカンドハウスまで無制限に手を伸ばしていくというようなことはやってはならない、国民の税金がつぎ込まれておるわけでありますから、そういう所得政策、所得の再配分的、そうした政策という性格はやはりきっちりと踏まえて今後進まなければならない、私はこのように考えております。
  186. 中西績介

    ○中西(績)委員 そこで、戦後長い間、いろいろその時期その時期に適応したかどうかはまた別にいたしまして、政策的に転換をしながらここまで継続をしてきたという経過があるわけでありますけれども、一九八二年に、昭和五十七年ですが、個人住宅について規模別金利制度を導入いたしまして、基準金利が適用されてきました。このときの一番大きな問題点は何であったか、この点お聞きします。
  187. 小川忠男

    小川政府委員 住宅政策も戦後いろいろな変遷を重ねてきたと思います。ごく初期の段階では、とにかく一戸でも多くの住宅をと、まず戸数が最優先された時期があったかと思います。それから、規模をできるだけ拡大したいというふうなことが政策の前面に出た時期がございます。今御指摘になりました一九八二年、昭和五十七年前後を振り返ってみますと、やはりかなりの勢いで規模が一般的に拡大しつつあったという背景がございますし、政策としても、それを基本的にバックアップしたいというふうな思いがございました。  そういう観点から公庫制度を見ますと、昭和五十一年までは、住宅は百二十平米までで頭打ち、それ以上の規模についてはお貸ししないという制度だったわけですが、五十一年から五十七年までの間は、百二十から百五十平米までの三十平米相当については財政融資資金並みの金利でお貸しするというふうな中間的な状況もございました。それを五十七年に、御指摘になりましたように、基本的に体系を改めまして、基準金利口、中間金利口、大型住宅金利口という形で三段階に規模を分けた上で政策誘導をしようというふうな体系に変更したわけでございます。  若干蛇足でございますが、昭和五十七年前後を振り返ってみますと、直前には百二十平米ちょっと前のところに貸し出しの山がある。といいますのは、逆に言いますと、百二十平米を超えると金利が高くなるということもあって、抑制的に百十九平米ぐらいで皆さん我慢されているという状況があったわけでございまして、その辺のところを少し根こそぎ、やはり規模の大きな方向に誘導したいという政策的背景から規模別金利を導入したというふうに理解いたしております。
  188. 中西績介

    ○中西(績)委員 それで、その後の九五年、平成七年ですが、住宅宅地審議会答申によりまして、規模が重視されておったものを政策的に誘導する、こういう方向に変わってきたわけですね。良質な住宅基準金利適用という金利体系をとってきたわけでありますけれども、先ほどから論議の中にもありますように、量的なもの、そしてさらに一定のところに参りまして、今度は質的なものに転換を求めていく、こういう形になって、特にまた昨年からは、バリアフリー型の住宅だとか省エネルギーあるいは耐久性等々いろいろなものを織り入れてやるようになってきたわけでありますけれども考えますと、住宅は、ここで量的なものは一応満たされたというように考えてよろしいかどうか、これが一つ。  もし、この問題が質へ転換するという最も大きな理由が、量的なものが満たされたということだけでなしに、他に何か大きな理由があるとするならばお答えいただきたいと思います。
  189. 小川忠男

    小川政府委員 量的に満たされたかどうかというふうなことでございますが、一般的には、確かに普通世帯数に対して住宅ストックの総数がかなり上回っているというふうな事実からして、量的には満たされたというふうな言い方をいたしております。  ただ、一つ御注意いただきたいのは、その量的に満たされたという住宅総数のうちの約一割、一〇%前後が、住宅とあえて言うべきなのかどうかというふうな言い方は若干局長としては行き過ぎかもしれませんが、狭過ぎる、ないしは古くて、壊されないまま放置してある、ないしは賃貸住宅としてお貸しするにはちょっと本格的な補修が必要だけれどもその金もないのでとりあえず募集しないままほうってあるというふうなのが一割近くを占めている。  したがいまして、統計的な意味では確かに充足はいたしたというふうなことになるのですが、住宅政策の面から見ると若干超えたという程度かなというのが率直なところでございます。  それからもう一つ政策転換の背景でございますが、今申し上げたような事実は片方にございますが、そうはいいながら、日本もやはり将来にわたる長期的なストックとしての住宅というふうなものをきちっと位置づけた上で政策を再構築すべき時期に来たというふうな思いは痛切にいたします。今までのように、日本の場合には平均寿命が二十六年くらいでしょうか、つくって二十六年すると建てかえという時期を迎えている。その意味では、つくっては壊し、壊してはっくるというふうなフローを中心とした供給構造だったと思いますが、そこはやはり、社会的な資産としてきちっとしたものを積み上げていくという時期にもうそろそろ入ったのだという思いはいたします。  そういうふうな観点から、まだ不十分だとは思いますが、昨年お願いいたしまして導入いたしました政策誘導型の金利体系、省エネでございますとかバリアフリーであるとか、あるいは耐久性の高い長持ちをする住宅、こういうものについて、政策上の優遇をするというふうな体系に踏み切らせていただいたわけでございます。
  190. 中西績介

    ○中西(績)委員 そこで、今お答えいただいた点について、ちょっと再度お聞きをしたいと思います。  先ほどの同僚の質問の中にございましたように、低所得者やあるいは中堅所得者の皆さんがこの制度を利用するという率が言われましたね。四百四万から五百七十二万が二九・三、五百七十三万から七百四十万が三〇・八というぐあいに利用者の率が言われておりました。今問題になっておるのは、質的にそしてまた面積的にもこれがどんどん向上していっておるわけでありますが、このパーセントからしますと、この程度の収入の方であっても、やはり依然としてローンを組みこれを利用する、こういう要求が強いということをこのことはある程度示しておると思うのです。  この点については、先ほどの論議の過程の中でちょっと出ましたように、今度は、延滞の部分が増加しておるということとあわせて、将来的なこの見通しというのはどう立てていけばいいのか、この点はどうなのでしょう。
  191. 小川忠男

    小川政府委員 金融公庫役割が主として中低所得者に対して安定的な資金を供給するというふうなことにあるのは、そのとおりだと思います。しかし一方で、やはり質の向上を目指すべきだというふうな点も、これまたあろうかと思います。  したがいまして、昨年の改正を事務的に若干敷衍いたしますと、基準金利の適用口を、従来百二十五平米でしょうか、それを百七十五平米までまずすそ野を拡大した上で、規模の大きい住宅という前提の上に、質のいいものについて基準金利口をというふうな形でセットいたしたわけでございます。  ただ、その場合に、私ども考えでは、質のいいものといいましても、それに伴って割り増し的な追加的に必要となる額というのは、恐らくそんなにけたの大きい額ではなくて、きちっとした物の考え方、生産体系というものさえきちっとすれば確保されるのではないかというふうな感じがいたしております。  それから、これは物すごく悩ましい問題なのですが、家をつくりたいという希望が非常に多いというふうな状況のもとで経済の状況はこうなった、先ほど来いろいろ御議論ございますように、延滞とか支払い不能というケースがふえつつあるというのもこれまた事実でございます。その辺の兼ね合いは非常に難しいのでございますが、やはり現実の貸し出しの面におきましては、いろいろと現場の第一線で、制度趣旨あるいは月々の返済額がこうなりますというふうな中長期的な数字をお示しした上で、十二分な御理解を得た上でお借りいただくという形を徹底するのが基本であろうかと思います。
  192. 中西績介

    ○中西(績)委員 そこで、そのように新築についてはそういう形でいろいろ手だてをしてきておる。今度は、今までの既存住宅まで拡大をするということになっていますね。ところが、先ほど言われましたように、日本の住宅というのは二十六年というのを平均的なものに見立てておるわけでありますから、そのときに、このような改造なりいろいろなことをすることによって、この二十六年にこだわるわけではないけれども、二十六年ということを言うから、私自身の自分の家、固定資産税がかからぬような家だけれども、二十八年たったけれども、そんなに悪くなっているとは思わないのですね。ですから、なぜこの二十六年という一つの周期的なものを考え、やるかということがちょっと私には納得できぬところがあるのです。  そうであれば、今言う改造だとかいろいろなことをすることによってまたこういう手だてをしていくということはわかりますけれども、年限が非常に短く区切られている中でこうした問題について取り上げていくということが果たして政策的に整合性があるかどうかということも含めて、どのようにお考えになっているかをちょっとお聞きしたい。
  193. 小川忠男

    小川政府委員 整合性と言われますとなかなか難しい面がございますが、二十六年というのは、統計的な数字として割り出したのが二十六年というふうなことでございます。  ただ、今回、既存住宅についても、質のいいものに切りかえる場合には基準金利口を適用したいということは、やはり、つくるだけが政策のすべてではなくて、今あるものをもう少しきちっと有効に利用していただくということもそれなりの政策的な評価、位置づけを与えたいということから、既存住宅対策として、今回、基準金利口というふうにお願いしたわけでございまして、根っこにはやはり、日本の住宅供給構造が明らかに新築優先に政策そのものが偏重していたというふうな反省がございます。やむを得なかったと言えばそれまででございますが、やはりもう少し、流通とかメンテナンスというふうなことにもきちっとした政策の光を与えたい。結果として、二十六年が、できれば三十年に、三十五年にという形になることを期待しているというふうなことでございます。
  194. 中西績介

    ○中西(績)委員 ですから、結局、繰り上げ償還がふえたということ、このことがやはりこの制度を取り入れる一つの大きな原因にもなっていると思うのですね、損失的なものをと。  そこで、時間がもうありませんから簡単にお答えいただきたいと思うのですけれども、既存のこの住宅あるいは住宅改良融資によりまして、新たな基準金利適用条件に適合する住宅の割合をこれからどの程度見込んでおられるか、これは建設省の方なりあるいは住宅金融公庫の方で試算か何かされておりますか。
  195. 高橋進

    高橋説明員 今まで、同じようなものについて、割り増し融資制度がございました。それをもとに推算しておりますけれども既存住宅ではおおむね五%ぐらい、住宅改良でおおむね一〇%強ぐらいではなかろうかと推定しております。
  196. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうしますと、住宅造あるいは改築を行う場合におきまして、公庫が定める住宅改良融資のこの基準金利適用条件に適合されるために、逆に今度はコストアップでもしないと合わなくなってしまうということもあるわけでありますけれども、どの程度その面は見込んでおりますか。
  197. 高橋進

    高橋説明員 これはケース・バイ・ケースでございますが、一般に標準的な住宅の場合ですと、バリアフリー化に改造しようという場合は三百万ぐらい、あるいは、省エネ断熱構造化工事をしますと四百万かかるという試算もございます。  ただ、それだけコストがかかるということではございますけれども、その結果として、先ほど先生がおっしゃった住宅の耐用年数なりといったものをアップするわけでございますので、そこを総合的にお考えいただければと思っております。
  198. 中西績介

    ○中西(績)委員 あと問題は、公庫融資手続の問題でありますけれども、従来から簡素化せよとかいろいろなことが取りざたされておりました。今度のこの既存住宅及びこの改良住宅、質を重視した金利体系の変更によりまして、貸し付け の予約までの審査期間が長くなるのじゃないかということを危惧しております。手続の簡素化に逆行するのじゃないかということを言う人がおるわけでありますけれども、この点についてはどうなのですか。
  199. 亀井静香

    亀井国務大臣 実は、私は住宅金融公庫の業務の中で一つ問題意識として強く持っておりますことは、委員おっしゃった手続の問題だと思うのです。住宅局にいたしましても、住宅金融公庫にいたしましても、いわば知恵を絞って政策誘導をしようとするわけでありますので、このようにやったらもっとうまく金を借りられますよ、そういう面で住宅の質とかあるいは高齢者に配慮をするとか、そうしたいわゆる選別をした融資をしていくということは政策融資でありますから当然だと思うわけでありますけれども、しかし、それをやればやるほど、この融資を受ける側からすれば非常に面倒くさい手続、資料等を要求をされるという非常に不便な面が出てまいります。  そこで私は、住宅局長にも指示をしておるわけでございますが、そうした政策誘導をするのは結構だけれども、受ける側が非常にしち面倒くさい手続なり資料を要求されるということについては、思い切ってこれを改善しろということを既に指示をして検討をやらせております。
  200. 高橋進

    高橋説明員 大臣の今おっしゃった方針のもとでやろうとしております。  ただ、一書補足させていただきますと、今年度から新しい金利体系になりまして、それで審査期間が長くなっているかどうかといいますと、これは今のところ長くなっているというふうには、若干のところは調べましたが、聞いておりません。  と申しますのは、先ほど申しましたように、今まで同じような割り増し融資制度があるものですから、地方公共団体も、それから業界の方もなれておられる。したがいまして、改良工事に、今度の新しい来年度のものについても審査期間が長くなるということはまずないのではなかろうかと思っております。
  201. 中西績介

    ○中西(績)委員 ぜひそうありたいと思います。  問題は、先ほどから指摘もございました特別損失のこの累計額が八年度末で五千億を超える見込みだと言われておりますけれども、今回のこの制度が拡充され、そして今後こうした損失額がどのように推移していくかということはこれからまた大きな課題になってくるわけですね。ですから、ここらについて、もしおわかりであれば発表していただきたいし、そして、特に特別損失が完全に整理され、そして皆さんにこうだから安心できるのですよと言われる年次的なものはどこら辺を指しておるか、いかがでしょうか。
  202. 小川忠男

    小川政府委員 今回、法案の審議をお願いいたします前提として、私ども幾つかの前提条件、仮定の条件を置いて試算した結果でございますが、今年度は特別損失の計上額二千七十七億円で予算上お願いしておりますが、平成十年度には一千五百億円余り、それから平成十一年度には千五百億円余り、平成十二年度、十三年度はそれぞれ八百七十億円、二百億円の特別損失の計上を予定いたしております。  平成十二年度に半減いたしますのは、従来の特別損失が平成十一年度で終了いたしますので、平成十二年度、十三年度は今お願いしております新しい制度だけが二カ年残るというふうなことでございますので、十一年度から十二年度に対しては損失額は激減いたします。  ただ、特別損失の計上は平成十三年度で終了いたしますが、それに対する交付金をもってその穴を補てんするというのが最終的には平成十九年度まで、制度上は補てんの予定をいたしております。その意味合いでは、最終的に今回の一連の特別損失制度、あるいはそれを補てんするというふうな制度が終了するのは、平成十九年度というふうに見通しを立てております。
  203. 中西績介

    ○中西(績)委員 今の説明をお聞きしておりますと、一応このようにして特別損失額が完全に整理される目標年次まで立てて試算をしておるということはわかりますが、問題は、今までの経過をずっと実証してまいりますと、やはりそのときそのときによって相当の経済的なもの、あるいは皆さんの要求の度合い、すべてが変わってくることによって、特に私は一番心配しておるのは、当初予算が五十万戸くらいのものが多いときには九十万戸倍まで膨れ上がっていく。要求があるからそれは当然だといえばそうだと思いますけれども、そういう見通しのないような無計画なものがどんどん入ってきてやられていったというところにまた問題があったのではないか、先ほどからいろいろ指摘をされておりますように。  そこで、私は、最後ですが、今まで増加していく補給金額を平準化することによって、先ほど言われるように、これを解決していこうというこのことは一応認めるにいたしましても、過去三回こうした延長措置がとられてきたという経過があるわけでありますから、こうしたことを考えてまいりますと、この際に、やはり融資制度そのものが今まで妥当であったかどうかというこうした問題を含んで、やはりここで明らかにしておく必要があるのではないか。それに沿って抜本的に見直しができるものかどうか。  さらにまた、この補給金額を安定化させることによって、さらにこうした政策的な住宅政策というものを発展をさせていくということにつながる可能性だってあるわけでありますから、ここらはやはり十分整理をした上で我々が認めるかどうかということにならぬと、今度のこのあり方というものが問題になるわけでありますから、ぜひ、もし変えなければならぬと思われるところがあるならば言っていただきたいし、そしてそれらをやはり一定の年次を追って改正をしていくなり、こうした計画をこれから立てようとするのかどうか、そうした面について、将来的な見通しも含めてお答えいただければと思います。
  204. 亀井静香

    亀井国務大臣 はっきり申し上げて非常に難しい御質問をいただいたわけでありますけれども住宅金融公庫民間の金融機関のような営利を目的として活動しておる団体でございますと、それなりの整理の仕方は私はあろうかと思いますけれども委員も御指摘のような政策金融を担当しておるわけでございます。その資金調達について現在のような市中金利と財投との間の乖離が生じておるというような状況において、今後どうした融資をやっていくのか。それには、これは財投の議論にまで入ってくるわけでございますが、調達金利をどうしていくのかという問題が生じてまいります。そうした中で、長期安定したそうした低金利を供給をしていくということについて、住宅金融公庫あるいは建設省自体ではどうにもならない大きな枠、これを今後政府全体としてどう考えていくかということであろうと思うのです。  やはり資金調達を、今財投という形の中でやっておるわけでございますが、それの運用等を含めましての総合的な検討がなければ、この問題については税金をつぎ込んでいくことは一切なくなりますというわけにはなかなかいかない面があろうかと思います。
  205. 中西績介

    ○中西(績)委員 時間が参りましたので終わりますけれども、今、指摘ございましたように、福祉を含んで政策的なものであるという観点からすれば、ある程度のいたし方ない面もございますけれども、先ほど言われておる財投問題からすべての問題、さらにまた情報公開も、会計画だとかいろいろな面で果たしていくということによって皆さんの信頼をかち得るということが今まで欠けておった面があるわけですから、ぜひこうした点について検討し直していただくということを付言いたしまして、終わります。
  206. 市川雄一

    市川委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  207. 市川雄一

    市川委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  住宅金融公庫法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  208. 市川雄一

    市川委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  209. 市川雄一

    市川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  210. 市川雄一

    市川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時四十二分散会      ――――◇―――――