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1997-05-26 第140回国会 衆議院 決算委員会第三分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会平成九年五月十五日(木曜日)委員会 において、設置することに決した。 五月二十三日  本分科員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。       菅  義偉君    浜田 靖一君       原田 義昭君    上田 清司君       草川 昭三君    渡辺  周君 五月二十三日  上田清司君が委員長指名で、主査選任され  た。 ───────────────────── 平成九年五月二十六日(月曜日)     午前九時開議  出席分科員    主 査 上田 清司君       小此木八郎君    田中 和徳君       浜田 靖一君    草川 昭三君       肥田美代子君    兼務 滝   実君 兼務 大野由利子君    兼務 太田 昭宏君 兼務 田中 慶秋君    兼務 原口 一博君 兼務 正森 成二君  出席国務大臣         農林水産大臣  藤本 孝雄君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     白川 勝彦君  出席政府委員         警察庁長官官房         長       野田  健君         警察庁長官官房         総務審議官   金重 凱之君         経済企画政務次         官       河本 三郎君         経済企画庁長官         官房長     竹島 一彦君         経済企画庁国民         生活局長    井出 亜夫君         経済企画庁物価         局長      河出 英治君         経済企画庁調査         局長      中名生 隆君         農林水産大臣官         房長      堤  英隆君         農林水産省経済         局長      熊澤 英昭君         農林水産省構造         改善局長    山本  徹君         農林水産省農産         園芸局長    高木  賢君         農林水産省食品         流通局長    本田 浩次君         水産庁長官   嶌田 道夫君         通商産業政務次         官       石原 伸晃君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       今野 秀洋君         通商産業大臣官         房審議官    安達 俊雄君         通商産業省生活         産業局長    村田 成二君         資源エネルギー         庁長官事務代理 太田信一郎君         中小企業庁計画         部長      田島 秀雄君         中小企業庁長規         模企業部長   篠原  徹君         自治大臣官房長 谷合 靖夫君         自治省行政局長 松本 英昭君         自治省行政局公         務員部長    芳山 達郎君         自治省財政局長 二橋 正弘君         自治省税務局長 湊  和夫君  分科員外出席者         外務省アジア局         中国課長    佐藤 重和君         大蔵省主計局司         計課長     田頭 基典君         厚生省健康政策         局計画課長   田中喜代史君         厚生省健康政策         局指導課長   上田  茂君         厚生省生活衛生         局水道環境部計         画課長     磯部 文雄君         厚生省薬務局企         画課長     吉武 民樹君         厚生省保険局医         療課長     今田 寛睦君         農林水産省畜産         局畜産経営課長 西尾 吉昭君         資源エネルギー         庁公益事業部業         務課長     染川 弘文君         建設省都市局都         市政策課長   中島 正弘君         会計検査院事務         総長官房審議官 関本 匡邦君         会計検査院事務         総長官房審議官 山崎彌代一君         会計検査院事務         総長官房審議官 増田 裕夫君         会計検査院事務         総局第一局長  深田 烝治君         会計検査院事務         総局第四局長  小川 光吉君         会計検査院事務         総局第五局長  森下 伸昭君         農林漁業金融公         庫総裁     鶴岡 俊彦君         中小企業金融公         庫総裁     角谷 正彦君         公営企業金融公         庫総裁     花岡 圭三君         中小企業信用保         険公庫総裁   神谷 和男君         決算委員会調査         室長      天野  進君     ───────────── 分科員の異動 五月二十六日  辞任         補欠選任   菅  義偉君     小此木八郎君   原田 義昭君     田中 和徳君   渡辺  周君     肥田美代子君 同日  辞任         補欠選任   小此木八郎君     菅  義偉君   田中 和徳君     原田 義昭君   肥田美代子君     石井 紘基君 同日  辞任         補欠選任   石井 紘基君     渡辺  周君 同日  第二分科員滝実君、大野由利子君、太田昭宏  君、田中慶秋君、原口一博君及び正森成二君が  本分科兼務となった。     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成年度一般会計歳入歳出決算  平成年度特別会計歳入歳出決算  平成年度国税収納金整理資金受払計算書  平成年度政府関係機関決算書  平成年度国有財産増減及び現在額総計算書  平成年度国有財産無償貸付状況計算書  平成年度一般会計歳入歳出決算  平成年度特別会計歳入歳出決算  平成年度国税収納金整理資金受払計算書  平成年度政府関係機関決算書  平成年度国有財産増減及び現在額総計算書  平成年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府警察庁経済企画庁)、農林水産省  所管農林漁業金融公庫通商産業省所管、中  小企業金融公庫中小企業信用保険公庫自治  省所管及び公営企業金融公庫〕      ────◇─────
  2. 上田清司

    上田主査 これより決算委員会第三分科会を開会いたします。  私、上田清司ですが、本分科会主査を務めることになりました。よろしくお願いいたします。  本分科会は、総理府警察庁経済企画庁科学技術庁)、農林水産省所管農林漁業金融公庫通商産業省所管中小企業金融公庫中小企業信用保険公庫自治省所管及び公営企業金融公庫についての審査を行うことになっております。  なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に、決算概要説明会計検査院検査概要説明及び会計検査院指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。  平成年度決算外二件及び平成年度決算外二件中、本日は、総理府経済企画庁警察庁)、自治省所管公営企業金融公庫通商産業省所管中小企業金融公庫中小企業信用保険公庫農林水産省所管及び農林漁業金融公庫について審査を行います。     〔主査退席浜田(靖)主査代理着席
  3. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 これより通商産業省所管中小企業金融公庫及び中小企業信用保険公庫について審査を行います。  まず、概要説明を聴取いたします。石原通商産業政務次官
  4. 石原伸晃

    石原(伸)政府委員 平成年度及び平成年度通商産業省所管決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  初めに、平成年度決算概要でありますが、まず、一般会計について申し上げます。  通商産業省主管歳入でありますが、歳入予算額百六十七億円余に対し、収納済み歳入額は百八十六億円余であり、差し引き十九億円余の増加となっております。  次に、通商産業省所管歳出でありますが、歳出予算現額九千七百十七億円余に対し、支出済み歳出額は九千五百三億円余でありまして、その差額二百十四億円余のうち、翌年度へ繰り越しました額は九十三億円余であり、不用となりました額は百二十一億円余であります。  次に、特別会計について申し上げます。  第一に、電源開発促進対策特別会計でありますが、収納済み歳入額は五千八百六十億円余であり、支出済み歳出額は三千六百二十億円余でありまして、その差額二千二百三十九億円余のうち、翌年度へ繰り越しました額は三百二十七億円余であり、剰余金は一千九百十二億円余であります。  第二に、石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計でありますが、収納済み歳入額は八千七百二十二億円余であり、支出済み歳出額は五千四百九十八億円余でありまして、その差額三千二百二十四億円余のうち、翌年度へ繰り越しました額は一千四百億円余であり、剰余金は一千八百二十三億円余であります。  第三に、アルコール専売事業特別会計でありますが、収納済み歳入額は四百四十五億円余であり、支出済み歳出額は二百七十九億円余であります。  第四に、貿易保険特別会計でありますが、収納済み歳入額は七千八百九十億円余であり、支出済み歳出額は七千八百八十七億円余であります。  第五に、特許特別会計でありますが、収納済み歳入額は九百三十四億円余であり、支出済み歳出額は六百八十四億円余でありまして、その差額二百四十九億円余は、全額剰余金であります。  次に、平成年度決算概要でありますが、歳入予算額百六十六億円余に対し、収納済み歳入額は二百二十一億円余であり、差し引き五十四億円余の増加となっております。  次に、通商産業省所管歳出でありますが、歳出予算現額一兆四千四百三十三億円余に対し、支出済み歳出額は一兆三千八百五十五億円余でありまして、その差額五百七十七億円余のうち、翌年度へ繰り越しました額は三百五億円余であり、不用となりました額は二百七十一億円余であります。  次に、特別会計について申し上げます。  第一に、電源開発促進対策特別会計でありますが、収納済み歳入額は五千七百八十七億円余であり、支出済み歳出額は三千五百八十二億円余でありまして、その差額二千二百四億円余のうち、翌年度へ繰り越しました額は三百三十二億円余であり、剰余金は一千八百七十二億円余であります。  第二に、石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計でありますが、収納済み歳入額は九千二百六億円余であり、支出済み歳出額は五千五百五十二億円余でありまして、その差額三千六百五十三億円余のうち、翌年度へ繰り越しました額は一千五百八億円余であり、剰余金は二千百四十四億円余であります。  第三に、アルコール専売事業特別会計でありますが、収納済み歳入額は四百五十七億円余であり、支出済み歳出額は二百九十七億円余であります。  第四に、貿易保険特別会計でありますが、収納済み歳入額は七千三十一億円余であり、支出済み歳出額は七千二十八億円余であります。  第五に、特許特別会計でありますが、収納済み歳入額は一千八十億円であり、支出済み歳出額は六百九十億円余でありまして、その差額三百八十九億円余は、全額剰余金であります。  以上をもちまして、平成年度及び平成年度における通商産業省所管一般会計及び特別会計決算概要に関する御説明を終わります。
  5. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 次に、会計検査院検査概要説明を聴取いたします。会計検査院森下第五局長
  6. 森下伸昭

    森下会計検査院説明員 平成年度通商産業省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項五件であります。  これらはいずれも、補助金原資とする中小企業設備近代化資金貸し付けにおいて、借り主が、設備都道府県無断で賃貸または売却したり、設備貸付対象事業費より低額で設置したりなどしていて、補助目的に沿わない結果になっていたものであります。  次に、平成年度通商産業省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項四件であります。  これらはいずれも、補助金原資とする中小企業設備近代化資金貸し付けにおいて、借り主が、設備貸付対象事業費より低額で設置していたり、設備都道府県無断で賃貸したりなどしていて、補助目的に沿わない結果になっていたものであります。  以上、簡単でございますが説明を終わります。  中小企業金融公庫について御説明を申し上げます。  平成年度中小企業金融公庫決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。  次に、平成年度中小企業金融公庫決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。  中小企業信用保険公庫について御説明申し上げます。  平成年度中小企業信用保険公庫決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。  次に、平成年度中小企業信用保険公庫決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  7. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 ただいまの会計検査院指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。石原通商産業政務次官
  8. 石原伸晃

    石原(伸)政府委員 平成年度及び平成年度決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾に存じております。  これらの指摘事項につきましては、直ちにその是正の措置を講じたところであり、今後このような御指摘を受けることのないよう一層努力をいたしたいと存じます。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  9. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 この際、お諮りいたします。  お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────    平成年度歳入歳出決算概要説明書                 通商産業省  平成年度通商産業省所管歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入歳出決算につきまして、御説明いたします。  通商産業省主管歳入につきましては、歳入予算額は百六十七億三百四十五万円余であります。  これに対しまして、収納済歳入額は百八十六億六千四百万円余でありまして、これを歳入予算額と比較いたしますと十九億六千五十五万円余の増加となっております。  これは、アルコール専売事業特別会計からの納付金が予定より多かったこと等の理由によるものであります。  次に、通商産業省所管歳出につきましては、当初予算額は八千九百八十六億三千七百二万円余でありますが、予算補正追加額五百五十六億七百万円、予算補正修正減少額百七十一億七千五百十三万円余、総理府及び文部省所管から移し替えを受けた額百十二億七千七百二十五万円余、前年度からの繰越額二百三十四億四千七百六万円余の増減がありましたので、歳出予算現額は九千七百十七億九千三百二十万円余となっております。  これに対しまして、支出済歳出額は九千五百三億一千七百四十四万円余でありまして、これと歳出予算現額との差額は二百十四億七千五百七十六万円余となっております。  この差額のうち、翌年度へ繰り越しました額は、九十三億三千五百九十六万円余でありまして、不用となりました額は百二十一億三千九百七十九万円余となっております。  六年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  第一に、エネルギー対策費であります。その支出済歳出額は五千百二十五億三千九百七十四万円余でありまして、その主なものにつきまして御説明いたします。  まず、石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計への繰入れに必要な経費であります。  この経費は、エネルギー対策緊要性にかんがみ、石油安定供給確保の観点から、石油資源開発及び石油備蓄増強等事業並びに石油代替エネルギー対策、省エネルギー対策等地球環境問題に対応したエネルギー政策の展開を図るための施策の財源に充てるため、一般会計から同特別会計石油及びエネルギー需給構造高度化勘定へ繰入れるためのものでありまして、五千百十億円を支出いたしました。  次に、新エネルギー技術関係経費及び省エネルギー技術関係経費であります。この経費は、石炭液化技術開発を始めとする石炭エネルギー等の新エネルギー技術及び廃熱有効利用技術開発を始めとする先導的基盤的省エネルギー等省エネルギー技術研究開発を行うためのものでありまして、合わせて六億六千三百四十四万円余を支出いたしました。  第二に、中小企業対策費であります。その支出済歳出額は千六百一億六千七百六十万円余でありまして、その主なものにつきまして御説明いたします。  まず、中小企業事業団事業運営経費であります。この経費は、中小企業構造高度化を促進するために必要な指導資金の貸付け及び共済等事業を行うための出資金及び補助金でありまして、四百二十八億九十五万円余を支出いたしました。  なお、同事業団が行った貸付事業の実績は、一般高度化事業資金百九十六件、特定高度化事業資金二百四十六件、特別広域高度化資金十六件等であります。  次に、小規模事業対策費であります。その支出済額は三百十四億三百六十万円余でありまして、この経費により商工会、商工会議所等小規模事業者に対して、五百七十六万件余の経営指導、相談を行いました。  次に、中小企業金融公庫補給金であります。この経費は、中小企業金融公庫の業務の円滑な運営に資するために要した経費であり、二百八十億五千六百万円を支出いたしました。  次に、中小企業近代化促進費であります。その支出済額は百六十八億四千六百四十二万円余でありまして、設備近代化補助金六億三千八百三十五万円余、機械類貸与補助金十一億三千五百二万円余等支出いたしました。  次に、中小企業金融公庫等出資であります。この経費は、中小企業金融公庫及び商工組合中央金庫が行う中小企業金融の拡充を図るための出資に要した経費であり、百五億円を支出いたしました。  次に、中小企業指導事業費であります。その支出済額は百四億八千四百九十七万円余でありまして、診断指導技術指導及び研究促進等事業の一層の強化を図っております。  このほか、組織化対策費六十四億三千四百九十七万円余、信用保証協会基金補助金三十二億五千万円、小企業等経営改善資金貸付金三十億円等を支出いたしました。  第三に、科学技術振興費であります。その支出済歳出額は七百五十四億一千十四万円余でありまして、その主なものにつきまして御説明いたします。  まず、各省試験研究機関経費であります。この経費は、通商産業省試験研究機関試験研究、管理、運営研究施設及び設備整備等に要した経費でありまして、特別研究費試験研究施設及び設備整備費等合わせて五百九十一億七千三十五万円余を支出いたしました。  次に、科学技術振興調整費であります。この経費は、科学技術会議の方針に沿って、科学技術振興に必要な重要研究業務総合推進調整を図るために要した経費でありまして、二十三億二千八万円余を支出いたしました。  次に、科学技術研究費補助金委託費等であります。この経費は、科学技術振興を図るため、多数部門の協力を要する総合的試験研究及び各種試験研究に共通する基礎的試験研究の助成並びに各種技術開発に対する民間研究助成等に要した経費でありまして、二十一億五千二十九万円余を支出いたしました。  次に、電子計算機産業振興対策費であります。この経費は、我が国電子計算機産業技術力の向上並びに振興を図るため、新しい理論・技術に基づいたリアル・ワールド・コンピューティングの研究開発を行うためのものでありまして、十億六千八百六十六万円余を支出いたしました。  このほか、大型工業技術関係経費五億五千五十九万円余、海洋開発関係経費二億九千三百七十一万円余、宇宙開発関係経費六千九百四十二万円余等支出いたしました。  第四に、公共事業関係費であります。その支出済歳出額は二百五十五億八千九百二十三万円余でありまして、その主なものは、工業用水道事業費補助であります。その支出済額は、二百五十二億 七千三百五十二万円余でありまして、この経費により、地方公共団体において継続事業七十三箇所、新規事業五箇所の工事を、水資源開発公団において継続事業六箇所の工事を実施いたしました。  第五に、経済協力費であります。その支出済歳出額は二百七十七億八百七万円余でありまして、その主なものにつきまして御説明いたします。  まず、海外開発計画調査事業費であります。この経費発展途上国における鉱工業、資源等の分野における開発計画を策定するための調査等技術協力関係団体に委託して行うためのものでありまして、九十八億二千七十三万円余を支出いたしました。  次に、海外技術者受入等研修事業費であります。この経費は、発展途上国に対する経済協力を推進するため、経済協力関係団体が行う海外技術者受入等研修事業等に対する補助でありまして、六十二億九千三百五十三万円余を支出いたしました。  次に、繰り越し及び不用について御説明いたします。  翌年度へ繰り越しました経費のうち主なものは、公共事業関係費のうち工業用水道施設災害復旧事業費の四十億六千八百六十七万円余でありまして、計画に関する諸条件等により、年度内に支出を完了することができなかったため、これを翌年度に繰り越したものであります。  また、不用額を生じました経費のうち主なものは、中小企業対策費九十六億五千三百一万円余でありまして、用地取得難航等により、商業基盤施設整備費補助金を要することが少なかったこと等により不用となったものであります。  以上をもちまして、通商産業省所管一般会計歳入歳出決算に関する御説明を終わります。  次に、通商産業省所管の各特別会計平成年度決算につきまして御説明いたします。  第一に、電源開発促進対策特別会計であります。  電源立地勘定につきましては、収納済歳入額は三千百九十五億九千四百九十四万円余、支出済歳出額は一千五百五十二億二千五十万円余であります。収納済歳入額支出済歳出額との差額は一千六百四十三億七千四百四十三万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は百十一億六千百四十七万円余、剰余金は一千五百三十二億一千二百九十六万円余となっております。  六年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  電源立地対策費でありますが、この経費は、電源立地地域における公共用施設整備 電源立地促進のための特別対策事業電源立地地域における安全対策等推進等に必要な事業費に充てるため、地方公共団体等に対して交付するためのものでありまして、一千五百四十一億一千六百六十五万円余を支出いたしました。  電源多様化勘定につきましては、収納済歳入額は二千六百六十四億五千五百四十六万円余、支出済歳出額は二千六十八億五千百二十八万円余であります。収納済歳入額支出済歳出額との差額は五百九十六億四百十七万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は二百十五億六千六百万円余、剰余金は三百八十億三千八百十七万円余となっております。  六年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  電源多様化対策費でありますが、この経費は、水力・地熱資源の開発石炭火力発電所の公害防止技術の実証、太陽光発電などの新エネルギー技術開発、原子力発電推進のための技術開発等の施策を行うためのものでありまして、二千三十五億五千百四十一万円余を支出いたしました。  第二に、石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計であります。  石炭勘定につきましては、収納済歳入額は一千二百九十八億七千五百五十六万円余、支出済歳出額は八百八十四億七千五百七十四万円余であります。収納済歳入額支出済歳出額との差額は四百十三億九千九百八十一万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は二百七億四千六百六十七万円余、剰余金は二百六億五千三百十四万円余となっております。  六年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  まず、石炭鉱業合理化安定対策費であります。この経費は、新エネルギー・産業技術総合開発機構が行う炭鉱の整理事業に対する補助及び同機構が行う経営改善資金の貸付け、貯炭管理制度のための補給並びに石炭鉱業の生産体制の改善、経理の改善、保安の確保等の施策を実施するためのものでありまして、百五十五億四千二百八十一万円余を支出いたしました。  次に、鉱害対策費であります。この経費は、石炭鉱害事業団に対する鉱害復旧事業資金補助及び同事業団が行う鉱害復旧事業のための事務費等交付金の交付等を行うためのものでありまして、四百五十億七千五十二万円余を支出いたしました。  次に、産炭地域振興対策費であります。この経費は、産炭地域において鉱工業等の振興に必要な業務を行う地域振興整備公団に対する出資、石炭鉱業の終閉山により財政状況が悪化している産炭地域市町村に対する交付金の交付及び産炭地域小水系用水の開発事業等の施策を行うためのものでありまして、百十四億一千八百十一万円余を支出いたしました。  石油及びエネルギー需給構造高度化勘定につきましては、収納済歳入額は七千四百二十三億七千二百三十五万円余、支出済歳出額は四千六百十三億六千四百三十五万円余であります。収納済歳入額支出済歳出額との差額は二千八百十億八百万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は一千百九十三億一千百九十万円余、剰余金は一千六百十六億九千六百十万円余となっております。  六年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  まず、石油安定供給対策費であります。この経費は、石油公団が行う石油及び可燃性天然ガスの探鉱等に対する投融資及び公団備蓄事業等に充てるための同公団への出資、同公団に対する交付金の交付、石油備蓄の増強等の施策を行うためのものでありまして、三千六百十五億九千六百三十万円余を支出いたしました。  次に、石油生産流適合理化対策費であります。この経費は、石油の生産の合理化を図るための石油精製合理化対策事業及び石油の流適合理化を図るための石油製品需給適正化調査等の施策を行うためのものでありまして、百九十七億九千九百二十五万円余を支出いたしました。  次に、エネルギー需給構造高度化対策費であります。この経費は、新エネルギー・産業技術総合開発機構が行う海外炭の開発可能性調査、ソーラーシステム等普及促進、天然ガス導入促進、石炭液化等の石油代替エネルギー技術開発、地域省エネルギーシステム形成促進、エネルギーの使用の合理化を図るための関係技術実用化開発等の施策を行うためのものでありまして、七百八十九億三千二百四十七万円余を支出いたしました。  第三に、アルコール専売事業特別会計であります。収納済歳入額は四百四十五億八千八十六万円余、支出済歳出額は二百七十九億九百四十七万円余であります。  この会計の損益計算上の利益は百六十一億三千四百二十三万円余でありまして、期末資産の減少相当額五億七千十九万円余がありましたので、合計百六十七億四百四十二万円余を一般会計に納付いたしました。  第四に、貿易保険特別会計であります。収納済歳入額は七千八百九十億一千五百三十三万円余、支出済歳出額は七千八百八十七億三千八百二十五万円余であります。  六年度における保険引受件数は五十五万件余、その保険金額は十九兆三千五百九十二億円余でありまして、前年度に対し四千六十億円余の減少となっております。  第五に、特許特別会計であります。収納済歳入額は九百三十四億五千八百三十四万円余、支出済歳出額は六百八十四億六千十三万円余であります。収納済歳入額支出済歳出額との差額は二百四十九億九千八百二十一万円余でありまして、全額剰余金となっております。  以上をもちまして、平成年度における通商産業省所管一般会計及び特別会計決算に関する御説明を終わります。     …………………………………    平成年度決算通商産業省についての検査の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  平成年度通商産業省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項五件であります。  検査報告番号一三五号から一三九号までの五件は、中小企業設備近代化資金の貸付けが不当と認められるものであります。  この資金貸付事業は、都道府県が、国の補助金と自己資金等によって資金を造成し、設備の近代化に必要な資金の調達が困難な中小企業者に対して、設備の設置に必要な資金の額の二分の一以内の額を、原則として五年以内の償還期間で、無利子で貸し付けるものであります。  本院がその貸付けの適否について調査いたしましたところ、 (一) 設置した設備を賃貸又は売却しようとする場合には、都道府県知事の承認を受けることが貸付けの条件となっているのに、設備を県に無断で賃貸又は売却しているものに貸し付けていたものが二件、 (二) 貸付けの対象となる設備については、その代金のうち都道府県からの貸付金相当額を貸付年度中又は貸付金受領後一月以内に支払うことが条件となっているのに、支払期限までに支払いが完了していないものに貸し付けていたものが一件、 (三) 中小企業者が貸付けの対象となった事業費より低額で設備を設置しているのに、貸付対象事業費どおりの価格で設置したとして貸し付けていたものが二件、 ありました。  これらはいずれも本資金の貸付けとして適切を欠いており、ひいては補助の目的に沿わない結果になっていると認められたものであります。  以上をもって概要説明を終わります。     …………………………………    平成年度歳入歳出決算    会計検査院指摘に対して講じた措置の説    明                 通商産業省  平成年度決算検査報告において掲記されております中小企業設備近代化資金の貸付けにつきましては、その適正な運用を図るため、都道府県に対し、借受申請者に対する説明会の充実、事前調査及び完了検査を適正に行うよう会議等の場を通じ十分指導してきたところでありますが、なお御指摘のような事態を生じたことは、誠に遺憾に存じております。  御指摘を受けた事項につきましては、指摘金額全額を県の特別会計に繰上償還させており、また、今回御指摘を受けた県に対しては、今後かかる事例が再び生じることのないよう厳に注意をいたしました。  今後、本資金の貸付けに当たっては、借受申請者に対する本制度の趣旨の周知徹底、事前審査の充実、完了検査マニュアルに沿った完了検査の一層の徹底、不適正な利用者を効果的に排除するための施策の充実等不当貸付防止体制のより一層の適正化を図るよう指導・監督を強化するとともに、貸付担当者に対する研修の充実を図り、このような御指摘を受けることのないよう、さらに努力をいたしたいと存じます。     ─────────────    平成年度の業務の概況について              中小企業金融公庫  平成年度における中小企業金融公庫の業務について御説明申し上げます。   一、当公庫の平成年度貸付計画は、二兆八千五百二十五億円と定められました。  これに対し、中小企業者に対しては、一兆八千八百八十九億三千百四十二万円の貸付を行ったほか、設備貸与機関に対しては、三百一億三千二百九万円の貸付を行い、総額では、一兆九千百九十億六千三百五十一万円の貸付実績となりました。  中小企業者に対する貸付契約額のうち、設備資金は四十五・八パーセントに相当する八千四百十六億一千三百八十一万円、運転資金は五十四・二パーセントに相当する九千九百五十八億二千六百六十一万円となっており、また、直接貸付は七十二・八パーセントに相当する一兆三千三百八十三億五千二十万円(二万二千二百五十九件)、代理貸付は二十七・二パーセントに相当する四千九百九十億九千二十二万円(一万五千四百十二件)となっております。  なお、平成年度末における総貸付残高は、八兆八千九百三十四億九千六百七十一万円余となっております。  貸付金の延滞状況につきましては、平成年度末におきまして弁済期限を六カ月以上経過して延滞となっている貸付の元金残高は、一千六百四十五億八千五百五十八万円余でありまして、このうち一年以上のものは、一千四百億六千八百三十九万円余、総貸付残高の一・六パーセントとなっております。   二、平成年度の融資に当たりましては、経営環境の変化に対応しようとする中小企業者はもとより、積極果敢に新たな事業展開を図ろうとしている中小企業者の支援・育成に必要な資金に積極的に対応してまいりました。  特に、中小企業者の経営の安定を図るために必要な資金、新分野への進出及び海外における事業の開始のために必要な資金、新技術等の事業化のために必要な資金、兵庫県南部地震等の罹災に伴う災害復旧のための資金など中小企業者のニーズに対しきめ細かい配慮を払ってまいりました。  また、中小企業近代化促進法に基づく構造改善事業に必要な資金、流通機構の近代化・合理化のために必要な資金及び産業公害の防止、産業安全の確保等のために必要な資金についても引き続き配慮してまいりました。   三、次に、当公庫の平成年度の収入、支出決算及び損益計算について申し上げます。  収入、支出決算について申し上げますと、貸付金利息等収入済額は、五千三十三億八千五百三十四万円余、支払利息等支出済額は、五千二百二十億三百三十七万円余となりました。  損益計算について申し上げますと、貸付金利息等の総益金は、五千百三十四億八千三百二十二万円余、借入金利息、事務費、業務委託費等の総損金は、五千百三十四億八千三百二十二万円余となりました。この結果、利益金は生じなかったので、国庫納付はいたしませんでした。  以上をもちまして、平成年度における中小企業金融公庫の業務の概況について、御説明を終わります。                  以上     ─────────────    平成年度業務概況           中小企業信用保険公庫  中小企業信用保険公庫平成年度の業務の概況につきまして、御説明申し上げます。  平成年度におきましては、国の一般会計から中小企業信用保事業の円滑な運営を図るための原資として、中小企業信用保険準備基金百四十六億円、信用保証協会の保証活動の円滑化を図るための原資として、融資基金百九十五億円、合計三百四十一億円の出資が行われました。  まず、中小企業信用保事業についてみますと、公庫が全国五十二の信用保証協会との間に締結いたしました保険契約に基づく保険引受は、件数で百二十五万七千件余、金額で十一兆八千七百十六億五千三百二十万円余になっており、これを前年度に比較いたしますと、金額で三パーセントの減少となっております。  この結果、平成年度末の保険引受残高は、件数で三百三十七万八千件余、金額で三十三兆四百五十億四百四十二万円余となっております。  なお、中小企業信用保険保険金の支払いは二千四百四十二億五千四百九十万円余になりまして、これを前年度に比較いたしますと、九パーセントの増加となっております。  信用保証協会に対する融資事業につきましては、平成年度に国の一般会計から新たに出資されました百九十五億円及び既往の貸付に係る回収金等五千百六十八億九千二百万円、合計五千三百六十三億九千二百万円をもちまして、四千六百七億四千百万円の貸付けを行いました。  この結果、平成年度末における貸付残高は五千七百二十億四千九百万円となっております。  機械類信用保険事業につきましては、公庫が機械類のリース業者等との間に締結いたしました保険契約に基づく保険引受は、件数で二十六万九千件余、金額で一兆二千六百九十六億五千五百九十八万円余となっており、これを前年度に比較いたしますと、金額で六パーセントの増加となっております。  この結果、平成年度末の保険引受残高は、件数で百二十万一千件余、金額で七兆三千三百五十二億一千九百九十八万円余となっております。  なお、機械類信用保険保険金の支払いは百十二億二千八百三十一万円余になりまして、これを前年度に比較いたしますと、一パーセントの増加となっております。  次に収入支出及び損益の概況について申し上げます。  まず、収入、支出について申し上げますと、収入済額は二千五百三十八億七千九百九十九万円余、支出済額は二千六百十二億九千九百五十六万円余でありまして、差し引き七十四億一千九百五十七万円余の支出超過となっております。  損益計算につきましては、さらに支払備金等の整理を行いました結果、総利益は六千七百七十億七千五百万円余、総損失は六千七百九十五億八千四百五十六万円余となり、差し引き二十五億九百五十六万円余の損失金を生じましたが、これは機械類信用保険特別勘定の損失金によるものであります。  この損失金は、機械類信用保険法の規定に基づき十億八千八百五十一万円余は同勘定の積立金を取りまし、残額十四億二千百五万円余は損失の繰越しとして整理いたしました。  以上、簡単ではございますが、平成年度の業務の概況につきまして、御説明申し上げた次第でございます。     ─────────────    平成年度歳入歳出決算概要説明書                 通商産業省  平成年度通商産業省所管歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入歳出決算につきまして、御説明いたします。  通商産業省主管歳入につきましては、歳入予算額は百六十六億五千百四十六万円余であります。  これに対しまして、収納済歳入額は二百二十一億三千百四十万円余でありまして、これを歳入予算額と比較いたしますと五十四億七千九百九十四万円余の増加となっております。  これは、アルコール専売事業特別会計決算上の利益が予定より多かったこと等の理由によるものであります。  次に、通商産業省所管歳出につきましては、当初予算額は九千二十七億九千六百五十六万円余でありますが、予算補正追加額五千三百三十八億一千四百九十二万円余、予算補正修正減少額百三十一億九千三百六十六万円余、総理府及び文部省所管から移し替えを受けた額百五億六千八百三十七万円余、前年度からの繰越額九十三億三千五百九十六万円余の増減がありましたので、歳出予算現額は一兆四千四百三十三億二千二百十六万円余となっております。  これに対しまして、支出済歳出額は一兆三千八百五十五億九千九百五十八万円余でありまして、これと歳出予算現額との差額は五百七十七億二千二百五十七万円余となっております。  この差額のうち、翌年度へ繰り越しました額は、三百五億九千二百三十万円余でありまして、不用となりました額は二百七十一億三千二十七万円余となっております。  七年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  第一に、エネルギー対策費であります。その支出済歳出額は五千百二十五億九千六十五万円余でありまして、その主なものにつきまして御説明いたします。  まず、石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計への繰入れに必要な経費であります。  この経費は、エネルギー対策緊要性にかんがみ、石油安定供給確保の観点から、石油資源開発及び石油備蓄増強等事業並びに石油代替エネルギー対策、省エネルギー対策等地球環境問題に対応したエネルギー政策の展開を図るための施策の財源に充てるため、一般会計から同特別会計石油及びエネルギー需給構造高度化勘定へ繰入れるためのものでありまして、五千百十億円を支出いたしました。  次に、新エネルギー技術関係経費及び省エネルギー技術関係経費であります。この経費は、石炭液化技術開発を始めとする石炭エネルギー等の新エネルギー技術及びエネルギー材料の高機能化技術を始めとする先導的基盤的省エネルギー等省エネルギー技術研究開発を行うためのものでありまして、合わせて六億一千八百九十九万円余を支出いたしました。  第二に、中小企業対策費であります。その支出済歳出額は三千七百二十二億四千百五十五万円余でありまして、その主なものにつきまして御説明いたします。  まず、中小企業事業団事業運営経費であります。この経費は、中小企業構造高度化を促進するために必要な指導資金の貸付け及び共済等事業を行うための出資金及び補助金でありまして、一千百五億七千九百十七万円余を支出いたしました。  なお、同事業団が行った貸付事業の実績は、一般高度化事業資金百三十五件、特定高度化事業資金二百五十五件、特別広域高度化資金十三件等であります。  次に、中小企業金融公庫補給金であります。この経費は、中小企業金融公庫の業務の円滑な運営に資するために要した経費であり、九百六十七億六千七百万円を支出いたしました。  次に、中小企業金融公庫等出資であります。この経費は、中小企業金融公庫及び商工組合中央金庫が行う中小企業金融の拡充を図るための出資に要した経費であり、九百三十三億七千万円を支出いたしました。  次に、中小企業近代化促進費であります。その支出済額は百六十四億八千五百七十一万円余でありまして、設備近代化補助金四億一千九百七十二万円余、機械類貸与補助金八億六百七十二万円余等支出いたしました。  次に、小規模事業対策費であります。その支出済額は百六十二億二千六十二万円余でありまして、この経費により商工会、商工会議所等小規模事業者に対して、五百七十八万件余の経営指導、相談を行いました。  次に、中小企業指導事業費であります。その支出済額は百二十億四千百四十七万円余でありまして、診断指導技術指導及び研究促進等事業の一層の強化を図っております。  このほか、信用保証協会基金補助金百十三億円、組織化対策費五十八億八千八百六十七万円余、小企業等経営改善資金融資制度四十億八千七百万円等を支出いたしました。  第三に、科学技術振興費であります。その支出済歳出額は一千二百五十一億四千三百十六万円余でありまして、その主なものにつきまして御説明いたします。  まず、各省試験研究機関経費であります。この経費は、通商産業省試験研究機関試験研究、管理、運営研究施設及び設備整備等に要した経費でありまして、特別研究費試験研究施設及び設備整備費等合わせて七百三十二億六千百三十六万円余を支出いたしました。  次に、その他の経費であります。この経費は、産・学・官及び内外の緊密な協力体制の下で、新エネルギー・産業技術総合開発機構が行う産業技術基盤研究開発等を推進させるための同機構に対する出資、工業標準化の推進等に要した経費でありまして、四百四十二億三千五百六十六万円余を支出いたしました。  次に、科学技術振興調整費であります。この経費は、科学技術会議の方針に沿って、科学技術振興に必要な重要研究業務総合推進調整を図るために要した経費でありまして、二十七億八千七百四十万円余を支出いたしました。  次に、科学技術研究費補助金委託費等であります。この経費は、科学技術振興を図るため、多数部門の協力を要する総合的試験研究及び各種試験研究に共通する基礎的試験研究の助成並びに各種技術開発に対する民間研究助成等に要した経費でありまして、二十億三千六百四万円余を支出いたしました。  次に、産業技術基盤関係経費であります。この経費は、我が国経済社会の発展の中核となる基礎的独創的研究開発及び国民的要請の大きな技術課題について、研究開発を推進するために要した経費でありまして、十四億五百四万円余を支出いたしました。  このほか、電子計算機産業振興対策費十億六千八百五十四万円余、海洋開発関係経費二億七千七百九十万円余及び宇宙開発関係経費七千百十八万円余を支出いたしました。  第四に、経済協力費であります。その支出済歳出額は二百八十七億六千五百二十九万円余でありまして、その主なものにつきまして御説明いたします。  まず、海外開発計画調査事業費であります。この経費は、発展途上国における鉱工業、資源等の分野における開発計画を策定するための調査等技術協力関係団体に委託して行うためのものでありまして、百四億五千七百四十四万円余を支出いたしました。  次に、海外技術者受入等研修事業費であります。この経費は、発展途上国に対する経済協力を推進するため、経済協力関係団体が行う海外技術者受入等研修事業等に対する補助でありまして、六十七億四千百二十五万円余を支出いたしました。  第五に、公共事業関係費であります。その支出済歳出額は百九十四億三千四百九万円余でありまして、その主なものは、工業用水道事業費補助であります。その支出済額は、百八十二億八千六十七万円余でありまして、この経費により、地方公共団体において継続事業六十九箇所、新規事業十八箇所の工事を、水資源開発公団において継続事業六箇所の工事を実施いたしました。  次に、繰り越し及び不用について御説明いたします。  翌年度へ繰り越しました経費のうち主なものは、科学技術振興費のうち工業技術試験研究所施設費の百三十九億二千七十二万円余でありまして、設計に関する諸条件等により、年度内に支出を完了することができなかったため、これを翌年度に繰り越したものであります。  また、不用額を生じました経費のうち主なものは、中小企業対策費百六十八億一千四百五十八万円余でありまして、用地取得難航等により、商業基盤施設整備費補助金を要することが少なかったこと等により不用となったものであります。  以上をもちまして、通商産業省所管一般会計歳入歳出決算に関する御説明を終わります。  次に、通商産業省所管の各特別会計平成年度決算につきまして御説明いたします。  第一に、電源開発促進対策特別会計であります。  電源立地勘定につきましては、収納済歳入額は二千九百十五億九千九百八十九万円余、支出済歳出額は一千五百八十億一千七百九十五万円余であります。収納済歳入額支出済歳出額との差額は一千三百三十五億八千百九十三万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は百十二億六千八百二十九万円余、剰余金は一千二百二十三億一千三百六十四万円余となっております。  七年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  電源立地対策費でありますが、この経費は、電源立地地域における公共用施設整備電源立地促進のための特別対策事業電源立地地域における安全対策等推進等に必要な事業費に充てるため、地方公共団体等に対して交付するためのものでありまして、一千五百六十八億八千四百十八万円余を支出いたしました。  電源多様化勘定につきましては、収納済歳入額は二千八百七十一億二千百三十八万円余、支出済歳出額は二千二億一千七百三万円余であります。収納済歳入額支出済歳出額との差額は八百六十九億四百三十四万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は二百十九億九千六百三十八万円余、剰余金は六百四十九億七百九十六万円余となっております。  七年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  電源多様化対策費でありますが、この経費は、水力・地熱資源の開発石炭火力発電所の公害防止技術の実証、太陽光発電などの新エネルギー技術開発、原子力発電推進のための技術開発等の施策を行うためのものでありまして、一千九百六十七億三千七百十一万円余を支出いたしました。  第二に、石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計であります。  石炭勘定につきましては、収納済歳入額は一千二百四十二億百三十七万円余、支出済歳出額は九百二十三億六千七百九十二万円余であります。収納済歳入額支出済歳出額との差額は三百十八億三千三百四十五万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は百六十八億二千四百五十二万円余、剰余金は百五十億八百九十二万円余となっております。  七年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  まず、石炭鉱業合理化安定対策費であります。この経費は、新エネルギー・産業技術総合開発機構が行う炭鉱の整理事業に対する補助及び同機構が行う貯炭管理制度のための補給並びに石炭鉱業の生産体制の改善、経理の改善、保安の確保等の施策を実施するためのものでありまして、百五十四億八千二十三万円余を支出いたしました。  次に、鉱害対策費であります。この経費は、石炭鉱害事業団に対する鉱害復旧事業資金補助及び同事業団が行う鉱害復旧事業のための事務費等交付金の交付等を行うためのものでありまして、四百九十億二千二百二十万円余を支出いたしました。  次に、産炭地域振興対策費であります。この経費は一産炭地域において鉱工業等の振興に必要な業務を行う地域振興整備公団に対する出資、石炭鉱業の終閉山により財政状況が悪化している産炭地域市町村等に対する交付金の交付及び産炭地域小水系用水の開発事業等の施策を行うためのものでありまして、百十三億三十四万円余を支出いたしました。  石油及びエネルギー需給構造高度化勘定につきましては、収納済歳入額は七千九百六十四億三千五百五十八万円余、支出済歳出額は四千六百二十九億一千七百十四万円余であります。収納済歳入額支出済歳出額との差額は三千三百三十五億一千八百四十四万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は一千三百四十億七千七十三万円余、剰余金は一千九百九十四億四千七百七十一万円余となっております。  七年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  まず、石油安定供給対策費であります。この経費は、石油公団が行う石油及び可燃性天然ガスの探鉱等に対する投融資及び公団備蓄事業等に充てるための同公団への出資、同公団に対する交付金の交付、石油備蓄の増強等の施策を行うためのものでありまして、三千五百六十七億二千二百四十三万円余を支出いたしました。  次に、石油生産流適合理化対策費であります。この経費は、石油の生産の合理化を図るための石油精製合理化対策事業及び石油の流適合理化を図るための石油製品需給適正化調査等の施策を行うためのものでありまして、二百二十二億九千百五万円余を支出いたしました。  次に、エネルギー需給構造高度化対策費であります。この経費は、新エネルギー・産業技術総合開発機構が行う海外炭の開発可能性調査、ソーラーシステム等普及促進、天然ガス導入促進、石炭液化等の石油代替エネルギー技術開発、地域省エネルギーシステム形成促進、エネルギーの使用の合理化を図るための関係技術実用化開発等の施策を行うためのものでありまして、八百二十八億九千七百六十七万円余を支出いたしました。  第三に、アルコール専売事業特別会計であります。収納済歳入額は四百五十七億七百十六万円余、支出済歳出額は二百九十七億一千二百七十二万円余であります。  この会計の損益計算上の利益は百七十四億六千八百四十九万円余でありまして、期末資産の増加相当額十一億三千七百五万円余を控除した残額百六十三億三千百四十四万円余を一般会計に納付いたしました。  第四に、貿易保険特別会計であります。収納済歳入額は七千三十一億百六十八万円余、支出済歳出額は七千二十八億一千六百四十二万円余であります。  七年度における保険引受件数は四十八万件余、その保険金額は十六兆八千八百二十億円余でありまして、前年度に対し二兆四千七百七十二億円余の減少となっております。  第五に、特許特別会計であります。収納済歳入額は一千八十億四千四百三十六万円余、支出済歳出額は六百九十億九千六百六十万円余であります。収納済歳入額支出済歳出額との差額は三百八十九億四千七百七十六万円余でありまして、全額剰余金となっております。  以上をもちまして、平成年度における通商産業省所管一般会計及び特別会計決算に関する御説明を終わります。  何とぞ、よろしくご審議のほどお願い申し上げます。     …………………………………    平成年度決算通商産業省についての検査の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  平成年度通商産業省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項四件であります。  検査報告番号一五九号から一六二号までの四件は、中小企業設備近代化資金の貸付けが不当と認められるものであります。  この資金貸付事業は、都道府県が、国の補助金と自己資金等によって資金を造成し、設備の近代化に必要な資金の調達が困難な中小企業者に対して、設備の設置に必要な資金の額の二分の一以内の額を、原則として五年以内の償還期間で、無利子で貸し付けるものであります。  本院がその貸付けの適否について調査いたしましたところ、 (一) 中小企業者が貸付けの対象となった事業費より低額で設備を設置しているのに、貸付対象事業費どおりの価格で設置したとして貸し付けていたものが二件、 (二) 設置した設備を賃貸しようとする場合には、都道府県知事の承認を受けることが貸付けの条件となっているのに、設備都道府県に無断で賃貸しているものに貸し付けていたものが一件、 (三) 中小企業金融公庫から貸付けを受けていた中小企業者に同一設備を対象に重複して貸し付けていたものが一件、 ありました。  これらはいずれも本資金の貸付けとして適切を欠いており、ひいては補助の目的に沿わない結果になっていると認められたものであります。  以上をもって概要説明を終わります。     …………………………………    平成年度歳入歳出決算    会計検査院指摘に対して講じた措置説明                 通商産業省  平成年度決算検査報告において掲記されております中小企業設備近代化資金の貸付けにつきましては、その適正な運用を図るため、都道府県に対し、借受申請者に対する説明会の充実、事前調査及び完了検査を適正に行うよう会議等の場を通じ十分指導してきたところでありますが、なお御指摘のような事態を生じたことは、誠に遺憾に存じております。  御指摘を受けた事項につきましては、指摘金額全額を都県の特別会計に繰上償還させており、また、今回御指摘を受けた都県に対しては、今後かかる事例が再び生じることのないよう厳に注意をいたしました。  今後、本資金の貸付けに当たっては、借受申請者に対する本制度の趣旨の周知徹底、事前審査の充実、完了検査マニュアルに沿った完了検査の一層の徹底、不適正な利用者を効果的に排除するための施策の徹底強化等不当貸付防止体制のより一層の適正化を図るよう指導・監督を強化するとともに、貸付担当者に対する研修の充実を図り、このような御指摘を受けることのないよう、さらに努力をいたしたいと存じます。     ─────────────    平成年度の業務の概況について              中小企業金融公庫  平成年度における中小企業金融公庫の業務について御説明申し上げます。   一、当公庫の平成年度貸付計画は、二兆八千五百二十五億円と定められました。  これに対し、中小企業者に対しては、一兆七千八十五億八千百二十五万円の貸付を行ったほか、設備貸与機関に対しては、二百八十六億一千二百九十四万円余、また、中小企業投資育成株式会社に対しては、一億円の貸付を行い、総額では、一兆七千三百七十二億九千四百十九万円余の貸付実績となりました。  中小企業者に対する貸付契約額のうち、設備資金は三十七・五パーセントに相当する六千五百八十億三千八百七十九万円余、運転資金は六十二・五パーセントに相当する一兆九百五十八億三千七百二十五万円余となっており、また、直接貸付は八十・八パーセントに相当する一兆四千百七十五億八千六百五十万円(二万二千六百四十件)、代理貸付は十九・二パーセントに相当する三千三百六十二億八千九百五十五万円(一万一千七百三十五件)となっております。  なお、平成年度末における総貸付残高は、七兆七千八百九十四億四百四十三万円余となっております。  貸付金の延滞状況につきましては、平成年度末におきまして弁済期限を六カ月以上経過して延滞となっている貸付の元金残高は、一千八百七十四億五千三百二十五万円余でありまして、このうち一年以上のものは、一千五百七十八億七百二十六万円余、総貸付残高の二・〇パーセントとなっております。   二、平成年度の融資に当たりましては、政府の緊急円高・経済対策及び経済対策を受け、経営環境の変化に対応しようとする中小企業者はもとより、積極果敢に新たな事業展開を図ろうとしている中小企業者の支援・育成に必要な資金に積極的に対応してまいりました。  特に、新技術等の事業化等創造的事業活動のために必要な資金、兵庫県南部地震の罹災に伴う災害復旧のための資金、中小企業者の経営の安定を図るために必要な資金、新分野への進出等積極的な事業展開を行うために必要な資金など中小企業者のニーズに対しきめ細かい配慮を払ってまいりました。  また、中小企業近代化促進法に基づく構造改善事業に必要な資金、流通機構の近代化・合理化のために必要な資金及び産業公害の防止、産業安全の確保等のために必要な資金についても引き続き配慮してまいりました。   三、次に、当公庫の平成年度の収入、支出決算及び損益計算について申し上げます。  収入、支出決算について申し上げますと、貸付金利息等収入済額は、四千九百七十八億四千二百二十九万円余、支払利息等支出済額は、四千五百二十一億四千九百三十万円余となりました。  損益計算について申し上げますと、貸付金利息等の総益金は、五千十三億二千八百二十一万円余、借入金利息、事務費、業務委託費等の総損金は、五千十三億二千八百二十一万円余となりました。この結果、利益金は生じなかったので、国庫納付はいたしませんでした。  以上をもちまして、平成年度における中小企業金融公庫の業務の概況について、御説明を終わります。                   以 上     ─────────────    平成年度業務概況            中小企業信用保険公庫  中小企業信用保険公庫平成年度の業務の概況につきまして、御説明申し上げます。  平成年度におきましては、国の一般会計から中小企業信用保事業の円滑な運営を図るための原資として、中小企業信用保険準備基金三百三十五億円、信用保証協会の保証活動の円滑化を図るための原資として、融資基金八百十億円、合計一千百四十五億円の出資が行われました。  まず、中小企業信用保事業についてみますと、公庫が全国五十二の信用保証協会との間に締結いたしました保険契約に基づく保険引受は、件数で百三十三万六千件余、金額で十二兆七千九百八十七億四千九百十九万円余になっており、これを前年度に比較いたしますと、金額で七パーセントの増加となっております。  この結果、平成年度末の保険引受残高は、件数で三百五十七万二千件余、金額で三十五兆二千百九十七億七千百三十四万円余となっております。  なお、中小企業信用保険保険金の支払いは二千六百六十一億四百六十五万円余になりまして、これを前年度に比較いたしますと、八パーセントの増加となっております。  信用保証協会に対する融資事業につきましては、平成年度に国の一般会計から新たに出資されました八百十億円及び既往の貸付に係る回収金等五千六百七十一億六千万円、合計六千四百八十一億六千万円をもちまして、五千六百八十二億九千七百万円の貸付けを行いました。  この結果、平成年度末における貸付残高は六千四百八十八億三千七百万円となっております。  機械類信用保険事業につきましては、公庫が機械類のリース業者等との間に締結いたしました保険契約に基づく保険引受は、件数で二十九万八千件余、金額で一兆三千二百六十八億二千五百九万円余となっており、これを前年度に比較いたしますと、金額で四パーセントの増加となっております。  この結果、平成年度末の保険引受残高は、件数で百二十三万五千件余、金額で七兆一千七百十九億三千七百三万円余となっております。  なお、機械類信用保険保険金の支払いは百二十三億一千三百一万円余になりまして、これを前年度に比較いたしますと、九パーセントの増加となっております。  次に収入支出及び損益の概況について申し上げます。  まず、収入、支出について申し上げますと、収入済額は二千五百十五億一千五百九十万円余、支出済額は二千八百四十八億四千九百五十万円余でありまして、差し引き三百三十三億三千三百五十九万円余の支出超過となっております。  損益計算につきましては、さらに支払備金等の整理を行いました結果、総利益は六千六百九十七億二千五百四十一万円余、総損失は六千七百二十七億一千三百十七万円余となり、差し引き二十九億八千七百七十六万円余の損失金を生じましたが、これは機械類信用保険特別勘定の損失金によるものであります。  この損失金は、機械類信用保険法の規定に基づき、損失の繰越しとして整理いたしました。  以上、簡単ではございますが、平成年度の業務の概況につきまして、御説明申し上げた次第でございます。     ─────────────
  11. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 以上をもちまして通商産業省所管中小企業金融公庫及び中小企業信用保険公庫説明は終わりました。     ─────────────
  12. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。太田昭宏君。
  13. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 おはようございます。  昨年の秋ごろから特に、再生紙の原料となる古紙のだぶつきが目立っておりまして、古紙価格が暴落していることが最近大きな問題となっております。これをこのまま放置しておきますと、回収業者の生活が破壊されることはもちろんでありますし、現実に今そうしたことで大変困っていらっしゃる。もっと言いますと、このまま半年も続きますと回収業者がいなくなってしまう、こういう心配もある。もっと言いますと、古紙のリサイクルシステムが崩壊をする、そして問屋には余剰古紙があふれてしまう。大変な問題になっているわけです。  先日、これはかなり報道されているわけなんですが、テレビの放映を見ましても、通産省の人が話をしておりましたが、需要供給のバランスが崩れていて現状ではいかんともしがたいと。それはほかがカットされてその部分だけでそう言っているのでしょうけれども、困っている人から見ると何と冷たい発言かな、こういうような状況であろうというように思います。  私は、ぜひとも、通産省あるいは厚生省、環境庁、全部そうですが、省庁が力を注いで、新しいリサイクルシステム、ある水準を保ちながら一つのサイクルというのが回転するようにしていただきたいというふうに思っております。  まず、現状をどういうふうに掌握されていらっしゃるのか。古紙余剰量が全国で五十万トンとも七十万トンとも、こういうわけなんですが、正確な数値がどうなっているのか。昨年、一昨年に比べてどうなっているのか。何を余剰と考えていらっしゃるのか。この辺についてお聞きしたいと思います。
  14. 村田成二

    ○村田政府委員 先生御指摘のように、古紙の問題、雑誌古紙を中心に非常に困難な問題を惹起しておるわけでございます。  今御指摘のどの程度の余剰になっているかという点でございますけれども、残念ながら、古紙の余剰状況について私ども正確な統計はないわけでございます。ただ、推しはかるべき数字として申し上げますと、例えば昨年十二月末の全国の古紙在庫でございますが、メーカーレベルにおきましては大体八十五万トンぐらい、これは古紙再生促進センターというところが調べたものでございますが、そういう数字がございます。  それからまた、関東が特に問題になっておりますけれども、関東の製紙原料の商工組合が調べたところでございますが、これは関東で大体三十二社ぐらいございますが、問屋在庫が十一万トンぐらいということになっております。ただ、先生御指摘のように、市中その他にいろいろあふれ返っているという問題がございまして、これは特に紙の需給が随分変動しております。  そういった意味合いにおきまして、九六年年央ぐらいからどんどん積み上がってきておるわけでございますが、古紙業界、関係業界筋の話を総合いたしますと、現在、先生御指摘のように五十から七十万トンぐらいの過剰在庫があるのではないかというふうに言われておりまして、私どもも、特に雑誌古紙を中心にかなり積み上がっているという認識でございます。
  15. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 回収業者が卸売業者に引き渡す古紙価格が暴落をしている。一日トラックで集めても油代にもならないというようなことです。よく考えてみると、行政が全部やるというようなことであれば相当な予算がかかるわけですけれども、相当これに助けられているというふうに考えることもできると思います。  現在、回収業者から卸問屋というところへの引き渡し価格がどうなっているか。私が製本とかあるいはまた回収業者等を調べてみますと、新聞ですと七円が四円ぐらい、段ボールですと八円が四円ぐらい、雑誌が二円から今はゼロというようなことで、昨年に比べますと大変、三円から四円下落をしている。切りつけが五円から二円、アートが八円から三円、マニラが五円から〇・五円、特切りが五円から二円、色上が五円から一円。キロ単位でいいますとこういうような状況では、このまま続くと、先ほど私が申し上げたように業者が倒れてしまうというようなことがあろうと思います。そうするとシステム自体が大変な混乱に陥る上に、これはもう成り立たなくなってしまう。  雑誌の回収が停止されている自治体がかなり出てきておりまして、今、雑誌は引き取りませんということがビラでまかれたりしているというようなことが東京では特にあるわけです。  そんなことで、私の地元の板橋でも、毎週出しているあれですが、一面のトップのところで「再生品使ってはじめてリサイクル」、こういうようなことで区も挙げて努力をしているというような状況もあります。  ぜひともこの辺は、これは政務次官、政治的な配慮と思いますが、集めること自体はリサイクルで非常にいいわけですから、何とか早急に何らかの手を打つという努力をしていただきたいと思います。これは漠然とした話になりますが、姿勢だけお伺いしたいと思います。
  16. 石原伸晃

    石原(伸)政府委員 太田委員御指摘のとおり、この古紙の回収の問題、実は私の自宅の近くにも直納業者ですか問屋さんですか、ございまして、そこに倉庫がついておるのですが、今非常に山積みになっております。また、新聞等でも報道されておりまして、この問題は非常に重要な問題であると考えておることは、役所の方もそのとおりでございます。  そして、今リサイクルの問題について御指摘があったわけでございます。古紙の回収量というものが、国民の皆様方の サイクル意識の向上により、またふえてきてしまったといったような問題もございまして、先生の御指摘は十分に拝聴に値する御指摘でございますので、役所の方でも十分検討して、地元でそのような活動があるということもお聞きしましたので、取り組ませていただきたい、こんなふうに考えております。
  17. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 今回このように至った原因についてどのように認識をしているか。リサイクル意識の向上初めいろいろなことがあると思いますが、通産省として、何が原因でこうなったのかという認識をお聞きしたいと思います。
  18. 村田成二

    ○村田政府委員 先ほど先生、古紙、中でもすそ物三品と言われております新聞、雑誌、段ボール古紙以外に、いろいろ上物と言われておりますものの価格にも言及いただきましたけれども、中心は多分このすそ物三品だと思っております。  この新聞、雑誌、段ボール古紙というのは大半が段ボール原紙などの板紙の原料として使われるわけでございますけれども、板紙の需要自体が、省包装などいろいろな問題がございまして、全国的に見て伸び悩んでいるというのが、まず基本的に需要サイドとしてございます。  一方、古紙の供給サイドでございますけれども、先生も御指摘のように、国民のリサイクル意識、皆さんの意識が非常に高まっているということもございますし、それから自治体によりましては、いろいろな廃棄物の関係もございまして、古紙回収へのいろいろな助成制度というものも導入されつつある、こういうこともございます。  それからまた、特に雑誌古紙その他が問題になっております東京都につきましては、御案内のように、昨年十二月に事業系廃棄物の有料化ということが実施されました。そういったこともございまして、総体的に古紙の回収量といいますか古紙の供給量というものが増加しているわけでございます。  こういった需要と供給の関係というものによりまして、全体として大きく供給過剰になってきているというふうに私どもとしては認識いたしているところでございます。
  19. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 そのとおりでしょう。  私は、今お触れになりませんでしたが、容器包装リサイクル法、この影響が今回明確にあると思います。これがリサイクル意識を喚起した、それは当然のことなんですが、それ以上に、この法律の中で、地方自治体には収集義務というものがある。  これは容器包装ということなんですけれども、リサイクル意識というものが高まることはもちろんのこと、単に容器包装ということでなくて、具体的にごみの全分野にわたって、分別回収とかあるいは補助金を出すとかいうような具体的動きがあったわけですから、全体的にこれが促進されるという方向に動いた。これはいいことなんです。  いいことなんですけれども、これが四月一日から施行されるということで、昨年から明確にそれに対応した動きがあって、東京都の今の事業用のごみの有料化というような影響もあると思いますけれども、ごみの減量化や紙のリサイクルの動きが加速をしたし、特に集団回収に金を出すとか補助金を出すとなれば、当然多く集めようとします。ある区では、一キロ当たり九円も補てんして、ギブアップして撤退をするというような動きもあります。  厚生省の所轄になるかと思いますけれども、例えば清掃工場をつくるときに、リサイクル率を高めた方がよく頑張った自治体と見られて補助金が多いのではないか、こういうような気持ちも地方自治体の方にはないとは言えない、全部とは言いませんけれども。行政責任というものが今回の事態には伴っている。集めることは悪いことではないわけですから、こうしたことも含めて、総合的にバランスをとるという施策を政府として何らかの形でとるべきではないか、こういうふうに思いますけれども、いかがですか。
  20. 村田成二

    ○村田政府委員 おっしゃるとおり、リサイクル意識が高まること自体非常に大事な話でございますし、政府としては、むしろこういったリサイクル意識の向上を前提として、それにどういうふうなシステムとして、社会システムなり経済システムをきちんと整合できるようにどう持っていけるかという点を考えるべきだというふうに思っております。  先生には後手だというふうにおしかりを受けるかもしれませんけれども、私どもといたしましても、この古紙の問題、先ほどすそ物三品目と申し上げましたけれども、特に問題になっておりますのは雑誌古紙でございます。この雑誌古紙だけを取り上げて対策を講ずること自体が非常に難しい。したがって、古紙全体として、回っていく中でどういうふうな問題解決ができるだろうかという視点で取り組む必要があるというふうに考えているわけでございます。  そういった観点から、実はまだ開催していないのでございますけれども、古紙再生促進センターという財団法人がございますけれども、この古紙の問題には地方自治体も関係業界も需要供給両業界もいろいろ関係しております。そういった関係者がそれぞれ知恵を出し合って、どういうふうな対応が可能であるか、それぞれが求めている対応がどういうふうに整合的に解決し得るであろうか、こういう議論をまずは徹底的にしてもらいたい、こういうことで、実は今月の二十八日に第一回会合が開かれるわけでございますが、こういった関係者間の議論を通じまして、どういう方向というものが、政府として、あるいは民間の役割として、あるいは自治体の役割として考えられるだろうか。これは、短期、中期、長期というふうにフェーズを分けまして議論をし、整理をしていきたい、こういうふうに考えております。
  21. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 今出た財団法人の古紙再生促進センター、これがこういうときにこそもっと働くべきであろう。歴史を見ると、何か頑張れないような事情があったようなことも私はちょっと聞いておりますけれども、二十八日にあるということなんですけれども、今こそここが活性化されて大いに頑張るということ、また、ここがある程度の軸になったり情報を提供したりというようなこと、あるいは今こういうことをやっているというようなさまざまなことを具体的に国民に示していく、あるいは関係業者にも通知をする。できるだけここは濃密な論議をしていかなくちゃいけないし、また論議だけじゃなくて、私は、結論を一つ一つ早急に出すということに努力をしていただきたい。  古紙再生促進センターの活性化ということで、もう一言お願いします。
  22. 村田成二

    ○村田政府委員 このセンター自体、四十九年に設立されまして以来、古紙の需給、価格についてのいろいろな調査ですとかあるいは再生紙の利用についての広報活動をやってきているわけでございますけれども、特に最近では、古紙をどういうふうに新規用途に充てていったらいいかというための調査研究にも重点を置いているところでございます。  この古紙の問題というのは、先生よく御案内だと思いますけれども、必ずしも供給サイドだけ、需要サイドだけで対応できない問題がございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、こういった古紙再生促進センターのもとに、需要供給両業界、それから自治体、いろいろな関係者に入っていただきまして、できるものから実現していく、ないしは、中期的なものであっても、技術開発でありましても、やるべきことについてどんどん手をつけていくということをここで議論し、結論として出してもらいたい。  それからまた、私どももここに任せ切りにするわけではございません。関係のところも含めまして、関係省庁、関係自治体と一緒になって、こういった議論の成果というものをきちんとフォローしていきたい、実現していきたい、かように思っております。
  23. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 リサイクル56、私はこれの実現への方向性が非常に弱いと思います。通産、厚生からも資料をいただいたのですが、九一年五二・三%、九二年五二・六%、九三年五三・一%、九四年五三・五%、九五年五三・三%、九六年五三・六%、伸びていない。これを伸びているというふうに言うのかどうか。やはり伸びていない。  なぜ伸びていないのか。伸びていなければどういうふうにこれを実現できるように持っていけばいいのか。単なる目標値になっているけれども、私は達成へのパンチ力が非常に弱いと思います。このリサイクル56というものを私は大いに推進していただきたい。答弁をお願いします。
  24. 村田成二

    ○村田政府委員 結論的に申し上げますと、リサイクル56、二〇〇〇年に五六%という古紙利用率を達成する、私どもとしましては全力を挙げて取り組みたい、かように思っております。  ただ、余計なことを申し上げさせていただきますと、先生もよく御案内のように、この日本の五三%台の古紙利用率というのは、世界的に見ますと、ドイツを除きまして世界で最高水準でございます。そういった観点から見ましても、現在、わずかなパーセントポイントに見えますけれども、上昇させていくというのはなかなか大変なことではないかという意識は持っております。  では、具体的にどこからどういうふうに手をつけていったらいいのかということでございますが、御案内のように、印刷情報用紙につきましては十数%、トイレットペーパーにつきましては六割近く古紙を利用しているわけでございますけれども、古紙のうち上質のものをみんな利用しているわけでございます。問題になっております雑誌古紙みたいなものにつきまして、果たしてどこまで原料として使い得るのかということにつきましては、一方的に利用率を設定する等々だけではうまくいかない面がある。やはり市場の問題があるわけでございます。  しかし、こういった印刷情報用紙やトイレットペーパーなどの分野におきまして、さはさりながら、一歩でも二歩でも古紙の利用率を高めていくということは必要でございまして、既に製紙メーカーへの指導ですとかあるいは税制上の恩典措置だとかということを設けておりますけれども、さらに、今申し上げました市場サイド、ユーザーサイドの問題もございますから、いろいろなPR事業も含めまして総合的な対策というものを考えていく必要がある。そうしないとなかなか五六%には達成できないという厳しい認識は持っております。
  25. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 その問題、具体論に入りますけれども、民間の方でも非常に努力をしている、私はそう思うのですね。  では、どうやったら古紙の利用がふえるのか。紙の生産は、九六年三千万トン。その中で古紙は千六百万トンぐらい使われているわけなんですが、特に印刷情報用紙が千五十六万トン、これだけ生産されている。しかし、古紙の混入率というのは一七・七%にすぎない。結局、生産という面から見ると、段ボールなどの板紙には多く使われているが、印刷情報用紙になかなか使われていない。この一千万トン、ここにどれだけ使われるかということが一つのポイントだろうというふうに思いますね。  それから、古紙の種類ということからいえば、いわゆる牛乳パックとかあるいは製本会社で断裁した切りくずなど、いわゆる上物が使われている。今局長のおっしゃったとおりです。それが、段ボールの古紙とか新聞とかあるいは雑誌が敬遠されないで使われていくという方策をどうやってとるのかということが一番の焦点だろうと私は思います。  二つ申し上げますと、一つは、現場で聞いてみると、残本雑誌は板紙にしかならないと頭から決めてかかる必要は全くない。例えば、今本屋さんが非常に少なくなっている。かなりコンビニとかそういうところに本が出ている。大体同じ種類のものが同じように残本雑誌として出てくる、全部とは言いませんが。そういうような、本なら本がどういうふうに戻ってくるかということを考えると、戻るようなそういう本に背のりのカットとかバーコードに紙生産者名を入れさせるなどの努力をしているというところも随分あるみたいですね。  ですから、全部それを使うというのじゃなくて、今の本というのがどういう経路で新しい流れになっているかというようなこともよく受けとめて、あるいは脱墨によって、板紙に回る残本雑誌を印刷情報用紙として再生する方法というようなことも研究されているわけで、その辺のところに焦点をある程度合わせてやる必要があるし、そして返ってくる残本雑誌についてはある程度統一されているわけですから、それをどういうふうに回収していくかという努力というものが一つの大きなポイントだろう、こう私は思いますが、どうですか。
  26. 村田成二

    ○村田政府委員 先生おっしゃいましたように、確かに雑誌古紙が板紙にしかならないと決めつけるのはいかがかと私も思っております。できる限りの可能性を追求すべきでありましょうし、先生おっしゃいましたように、残本雑誌の実際の流れというものは現に変わりつつあるというところを踏まえて、現実的にどう対応すべきかということも大事かと思います。  ただ残念ながら、今までのところ、私どもでそういった実態を正確に把握していないという面もございますし、それから関係者間でもそこらが十分認識されていないということもございますので、先ほど申し上げましたような検討会等々の場におきましても、先生御指摘のような点をきちっと勉強いたしまして、どういう対策をとり得るか、そういった実際の流れに即した現実的な対応策というのがどこまでできるかというあたりをこれから勉強していきたい、こういうように思います。
  27. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 今のは、私現場から聞いてきた話でもありますし、ぜひともこれは検討していただきたい。  これは十八日の日経ですか、ある製紙会社が古紙一〇〇%の汎用印刷用紙というようなことでいろいろ今研究をしている。これはちょっとコストが高くなるという嫌いもあるらしいのですが、その辺も税制的なこととかいろいろなことも配慮をする中で、新しい回収システムということに寄与するようにあわせて努力をしていただきたいと私は思います。  それから、トイレットペーパーに古紙を使った方がいいということ。ところが、現実には汚いとか色が悪いとか衛生的じゃないとかいろいろなことがあったり、あるトイレットの会社によると、再生用紙は使わない方がいいみたいなことを書いているところがあるようで、その辺も注意というか指導をする必要があろうというふうに私は思いますので、それはひとつよろしくお願いします。  それで、私は、トイレットペーパーは原則古紙を使うという方向を強力に打ち出していただきたい。数値的に見ますと、衛生用紙の生産量が百六十四万トン、トイレットペーパーに八十五万トン。その八十五万トンのうち古紙が六七%。トイレットペーパー以外のところで、ティッシュ五十四万トン、タオル九万トンというようなことがある。衛生面からいいますと、医療用とか口をふくとかいろいろなことならば、再生紙については抵抗があるということはわかるけれども、しかし、トイレットペーパーは全部再生紙を使いましようという方向を出すべきだ。  そうしますと、八十五万トンの六七%が古紙ですから、残った三三%、実に二十八万トンが数字の上では利用できるという形になるわけで、冒頭に申し上げました五十万トンとか七十万トンのうち、トイレットペーパーに使いましようと言うだけでこれはかなり大きな影響があるというふうに思いますが、これはぜひとも検討してください。
  28. 村田成二

    ○村田政府委員 先生御指摘のトイレットペーパーでございますけれども、御案内のように、現在六七%の古紙利用がされているわけでございますが、この大部分がある意味で質のいい古紙を使っているわけでございます。白い色というものを出すという観点から、そういった質のいいものを使っているわけでございます。  これを、雑誌古紙を含めてどこまで古紙利用率というものを上げられるかということになりますと、これまたなかなか難しい。御案内のように、色の問題、手ざわりの問題等々、いろいろ難しい問題が出てくるわけでございます。ただ、こういった消費者、需要者にとってちょっといろいろ微妙な性格の製品でございますので、必ずしも政府として全面的に、これはもう再生紙以外は原料に使ってはいかぬというところまで声を大にして叫ぶのがいいのかどうか。むしろ、そういった雰囲気というものを政府も各市民も一緒になってどうつくっていくかという努力の方が大事かもしれない、こういうふうに私ども思っております。  先生御案内と思いますが、例えば雑誌古紙なんかも、トイレットペーパーにはならなくても落とし紙なんかの原料として使っている例もございます。こういったいろいろな工夫もしながら、国民の意識としてどういうふうに資源というものを有効利用していくか。そのためには、古紙でつくられたトイレットペーパー、若干色なりなんなりが悪くても、これを使っているということがむしろ国民としての誇りになっていく、あるいは社会に対する積極的な貢献として意識されていく、そういった方向での文化といいますか、大げさな言葉を使って大変僭越でございますが、そういったものをつくっていくということが大事かと思っておりまして、私どもそういう意識を持って取り組んでいきたい、かように思っております。
  29. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 局長おっしゃるように、まさにそうした雰囲気をつくるというこの作業は勇気を持って、こういうような新聞もそうですし、一般のものもそうですし、記事を扱うということもそうだし、いろいろな角度で大いに推進をしていただきたいというふうに私は思います。  東京都が先月、通産大臣に緊急要望を行った。結論だけ申し上げますと、例えば、学校の教科書に古紙を使いましょう、あるいははがきに古紙を使いましょう。あるいは、まず国や関係機関で、東京都では積極的にそうした方向に向けて行っているわけなんです。私は通産省の人から古紙を使った通産省のペーパーをいただきました。だけれども、これは通産だけでなくあらゆるところで、厚生、環境、全省庁にわたるのです。  ぜひとも、教科書への古紙利用、はがきへの古紙利用、さらに、先駆けて各省庁が使っている紙製品の古紙利用について、通産、厚生、環境庁等々がリーダーシップをとってやるべきだ。この三点について、いかがでしょうか。
  30. 村田成二

    ○村田政府委員 教科書とはがきとそれから官公庁で利用しているペーパーについてでございますが、教科書につきましては、文部省を中心としまして関係のところで今検討をされているところでございます。  ただ、教科書となりますと、ある意味で非常に神経を使う部分もございまして、例えば、ちょっとした汚れが入っていると小数点に見間違えられるとかいろいろな議論がございまして、なかなか簡単にいかない面がございます。  ただ、私どもとしましては、できるだけ教科書なんかには古紙を使ってもらいたい、かように思っております。ただ、今の供給過剰対策に直に寄与するかどうか、これは古紙の種類もございますからなかなか難しい問題がございますが、はがきを含めましてぜひとも取り組んでいただきたいというのが私どもの基本的な立場でございます。ただ、それぞれのまた難しさがございますから、私どもは、そこは議論を尽くしたい、こういうように思っております。  それから官公庁等々の紙製品でございますが、御案内のように、平成七年で申し上げますと、コピー用紙で九〇%、封筒だと九六%、それからトイレットペーパー一〇〇%、実は古紙が入ったものを使っているところでございます。それ以外にもいろいろあろうかと思いますが、できるだけ各省あるいは関係自治体に呼びかけまして古紙利用率を高めていく。これは、毎年の省エネルギー・省資源会議でも既にやっていることでございますが、今後ともその努力を続けたい、かように思っております。
  31. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 厚生省、来ておりますか。一言。
  32. 磯部文雄

    ○磯部説明員 先生御指摘のとおり、古紙余剰問題は、廃棄物の減量化あるいはリサイクルの推進の観点からも非常に重要な問題だと考えております。この解決のためには、その需要の拡大が重要と認識しているところでございます。  厚生省におきましては、平成七年に閣議決定されました率先実行計画を踏まえまして、先ほどもお話がありましたが、従来から庁内で使用するトイレットペーパーには一〇〇%の古紙を使用しておりますが、さらに再生紙の利用に積極的に取り組むために、今回またコピー用紙及び事務用封筒につきましても一〇〇%の再生紙の利用を徹底する方向で、これまで以上に再生紙の利用に取り組んでまいりたいと考えております。
  33. 太田昭宏

    太田(昭)分科員 そのほか、紙以外にも使うというような努力も含めて、ぜひとも全力で取り組んでいただきたいことを要望しまして、質問を終わります。
  34. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 これにて太田昭宏君の質疑は終了いたしました。  次に、滝実君。
  35. 滝実

    ○滝分科員 自由民主党の滝実でございます。  まず最初に、私も環境問題に関連しまして二つほどお尋ねを申し上げたいと思います。  現在、地球温暖化対策、こういうことで世界的な規模でいろいろなことが展開されようといたしておりまして、ことしの十二月には我が国でも京都で地球温暖化対策の世界会議が開かれる、こういうようなことでございますので、それなりに、この問題についての国民的な認識を高めるちょうどいい機会だと思っているわけでございますけれども、先日来、日刊紙に出てきた問題の中から、若干危惧していることにつきまして申し上げたいと思うのです。  その一つは、太陽熱温水器がございます。かつては相当これが国民の間に浸透いたしましたし、特にオイルショックを受けて、かなり太陽熱利用というものが国民の間にいわば認識をされた時代があるのでございますけれども、どうもこの問題も現在下火になっているのではないだろうか、こういう感じがいたします。  町を歩いていますと、昔はかなり民家の屋根の上に温水器が載っていたものでございますけれども、最近はこの姿が少なくなってきた、こういうようなことがあるわけでございますけれども、最近、この太陽熱温水器に関連いたしまして、某企業が訪問販売に関連いたしまして、相当無理な売り込みをしているというようなことで、通産省が行政的な処分と申しますか、指示をお出しになった、こういうふうに出ておるのでございますけれども、これに関連しまして、通産省の指示の内容と申しますか、その辺の事情をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  36. 今野秀洋

    ○今野政府委員 朝日ソーラー株式会社に対します指示について御報告申し上げます。  これは、本年五月二十二日付で朝日ソーラー株式会社に対して行った指示でございまして、行政処分でございまして、同社によります販売活動中に訪問販売法に違反する行為があったということでございます。  例えば販売の勧誘に当たって不実のことを告げる。例えば、宣伝のために半額にすると言って、よく調べたら半額ではなかったとか、あるいはガス会社の者ですと言ってドアをあけさせる等々の事例が報告されておりますけれども、このような不実のことを告げる。あるいは、相手方に迷惑を覚えさせるような仕方で勧誘を行う。これは、夜中、早朝あるいは長時間居座るといったような勧誘の仕方等々が報告されております。  こういうことがございましたために、取引の公正及び消費者利益の保護を図るという観点から、販売活動の是正を指示したものでございます。  したがいまして、製品そのものにつきましては何ら問題視したものではございませんで、その製品のよしあし、信頼性とは全く関係のないものでございます。  当省といたしましては、今回の行政処分によりまして、同社の販売行為の適正化が図られるものというふうに認識しているところでございます。
  37. 滝実

    ○滝分科員 ありがとうございました。  これに関連いたしまして、少し全体的な話をお伺いしたいのでございますけれども、製品そのものには問題ない、ただ、その売り込みの仕方に非常に、ある意味では多少というか大いに問題があった、こういうことでございますけれども、全体として、この太陽熱利用の温水器の普及状況と申しますか、現在の販売状況というのは昔に比べてふえているのか減っているのか、その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
  38. 村田成二

    ○村田政府委員 私どもとしまして正確な数字を持ち合わせているわけではございませんが、一つの参考になる数字といたしまして、社団法人の日本住宅設備システム協会というところが統計をとっている数字でございます。  結論から申し上げますと、年間の出荷台数を見てみますと、一九八〇年にピークでございました。その後、大分減ってまいりました。一九八〇年代に八十万台でございましたけれども、最近に至りましては十数万台というオーダーになっております。ただ、ここ四、五年の間は徐々にまた回復しつつある、微々たるものでございますが、そういう傾向でございます。
  39. 滝実

    ○滝分科員 結局は、最初に申し上げましたように、ひところは大変屋根の上の温水器が目立った時代があるのでございますけれども、どうも最近はその辺が少なくなってきた、そういうようなことを背景にして、この朝日ソーラーもかなり無理をして販売に走ったんじゃなかろうかな、こういう感じを受けるわけでございます。  通産省からお聞きいたしておりますところによりますと、朝日ソーラーそのものは最近販売がふえている、こういうようなことをお聞きするものですから、全体として下火の中で、企業自体がいわば大手の面目にかけて相当無理な売り込みをしてきたんじゃなかろうかな、こういう感じがいたすわけでございます。  そこで、これもお聞きしたいのでございますけれども、要は、全体の統計数字を見てまいりますと、現在の段階では民生部門の温暖化対策が必ずしも実績が上がっていない、その中で太陽熱利用が相当に悪い、こういうようなことが統計的に出ているように思うのでございますけれども、私は、これからの環境問題を考えるに当たっては、もう少し、大きなことを言えば、いわば人類挙げて太陽熱利用に取り組むべきじゃなかろうかな、こういう感じがいたします。  石油ショックの時代にこの問題が大変国民の間に認識を深めたのは、何といっても燃料がない、石油が高い、こういう時代背景にあったのでございますけれども、その後二回のオイルショックを経験いたしますと、エネルギー問題はまだ大丈夫だ、こういう意識もするものですから、どうも最近はその辺のところが低調になってきている、こう思うのでございますけれども、通産省におかれましては、供給側の立場からこの辺のところをもう少し旗振り役をお進めになる必要があるんじゃないかと思うのでございますけれども、御所見を伺わせていただきたいと思います。
  40. 太田信一郎

    太田(信)政府委員 滝先生の御質問にお答えいたします。  民生用の分野における省エネルギーというのは、大変重要でございまして、エネルギーセキュリティー、安定供給の確保、あるいは御指摘のありました地球環境保護の観点から、ぜひとも進めていかなくちゃいかぬというふうに思っております。  最近の状況でございますけれども、例えば九五年度を見ますと、民生用の最終エネルギー消費全体が三%のところ、五%ぐらい伸びておるということで、これは国民のライフスタイルが快適化志向ということで非常に変化していることを反映しているということだと思うんですが、こういう分野における対策を強化していかなくちゃいかぬということで、実はことし四月に、民生分野も含めた新たな省エネルギー対策を盛り込んだ、二〇〇〇年に向けた総合的な省エネルギー対策ということを総合エネルギー対策推進閣僚会議で決定したところでございます。  具体的には、高断熱住宅の普及を図るため誘導的な基準を設けるとか、あるいは今九品目ほどいわゆる省エネ法に基づいて対象機種になっているものに新たに冷蔵庫を加えるとか、あるいは国民のライフスタイルの省エネ化を促進するために、いろいろな省エネルギーの取り組みについての事例集を作成、配布する等広報対策を強化するということ等、六十六項目にわたって対策を講じているところでございます。  御指摘の太陽熱の利用でございますが、実は今国会でいわゆる新エネ利用促進法というものを成立させていただきました。六月中には施行したいと思っております。これは、コスト的にもう一歩たつと射程距離にあるような太陽光とか、あるいは風力とか、そういうものについて事業者の努力を促す、応援するということでございます。太陽熱温水器については、御案内のように、コスト的にはまさにマーケットで自立化しているところでございます。  こういうものを含めて、新エネ法の利用も含めて、我々、いわゆる省エネあるいは再生エネルギーの利用の促進につながることを期待しております。繰り返しになりますけれども、太陽熱温水器についてはマーケットで自立化しておりますので、その市場の中で円滑に普及が進むことを私どもとしては期待しているところでございます。
  41. 滝実

    ○滝分科員 一番最初に、当決算委員会第三分科会におきまして、古紙の利用の問題につきまして質疑があったのでございますけれども、現在、消費者レベルの話といたしましては、各地域の生活学校が環境問題について熱心に取り組んでいるのでございます。その取り組みの第一点が実は古紙の回収問題、それからその利用問題、それからいわば自動車のCO2ガスの規制の問題、こういうことを中心にして地域の生活学校が取り組んでいるのでございますけれども、この太陽熱利用でございますとかそういった点についての取り組みがどうも薄いのでございますね。  地球温暖化問題、環境問題ということから申しますと、供給サイドもそれなりの対応が必要でございますけれども、やはり消費者サイドもそういうようなことで旗を振る必要があるんだろう。これは、消費者サイドの話は通産省とは違いますけれども、そういう観点から、供給サイド、消費者サイド相まった運動と申しますか、意識改革が必要だろう、こういうふうに考えておりますので、その辺のところはよろしくお願い申し上げたいと思います。  次に、同じく最近の問題として二十四時間ぶろの衛生対策の問題がございました。安全面からいうと、二十四時間ぶろというのはそれなりに問題があるやに昨年来報道されているわけでございますけれども、通産省がこの衛生問題の検討専門家会議を招集して、そこでいろいろ衛生的な観点からの検討が進められてきた、こういうふうにお聞きしておりますので、その辺の事情をお聞かせいただきたいと思います。
  42. 村田成二

    ○村田政府委員 先生御指摘のように、二十四時間ぶろにかかわります問題につきましては、昨年の暮れになりまして、レジオネラ菌が増殖するのではないか等々の問題がいろいろと指摘され始めたわけでございます。  こういった状況を受けまして、私どもとしましては、衛生上の観点から、専門家の方にお集まりいただきまして、数回にわたりましてこの問題についての検討をいただきました。その結果、五月二十二日に専門家会議としての所見が取りまとめられて発表されたところでございます。  中身につきましては、詳細は省略させていただきますが、ポイントだけ申し上げますと、一つは、レジオネラ菌が二十四時間ぶろの浴槽中に繁殖する、そして存在するその量と人が肺炎等々に感染するといり関係を学術的な因果関係としてきちっと説明する、どういうふうな濃度であれば具体的にどういう症状を呈する、病気にかかるということをきちっとした数値で示すことは難しい、これが第一点でございます。  ただ、しかしながら、二十四時間ぶろそれ自体、生物浄化槽という浄化装置を持っておりますけれども、これは、レジオネラ菌ばかりではなしに、緑膿菌その他細菌一般の定着、増殖源になる可能性が非常に高い、これが第二点でございます。  したがいまして、第三点、結論でございますけれども、専門家会議としましては、可能な限りこのレジオネラ属菌を不検出、検出されないという管理レベルをメーカーサイドで目指すことが必要である、かつ、これを実際に家庭に導入しましたときに、家庭で使用しますときに、その性能を最適な状況に保つためのいろいろな諸条件、消毒方法ですとか消毒効果ですとか、そういった諸条件につきましてメーカーは客観的な情報を消費者に対して提供する必要がある、これが専門家会議の結論であったわけでございます。  簡単でございますが、以上でございます。
  43. 滝実

    ○滝分科員 通産省が早速この安全問題について取り上げられて専門家の意見をお取りまとめになった、その素早さには大変敬服をいたしておるわけでございます。ぜひこの専門家の検討結果を踏まえた対応が各メーカーによってとられることが望まれるわけでございます。  問題は、私は、安全対策と並んで環境問題から一、二、通産省が御承知の範囲内で御意見を承りたいと思うのでございます。  二十四時間ぶろの宣伝文句には、料金も安いと書いてあるんです。一日二百円、一月にすると六千円ぐらいになるのでしょうかね、ふろだけで。それを高いと考えるか、便利な割には安いと考えるかは、それぞれの利用者の判断でございますからあれなんでございますけれども、一日わずか二百円で快適な暮らしができる、しかも、今局長さんからお答えになったように、循環方式でございますから手間が要らない、こういうようなことなんでございます。  実際問題として、環境問題から考えた場合に、二十四時間ぶろというのは、皆さん、必要性があってこういうような新商品が出てきたと思うのでございますけれども、環境問題からいくと、二百円に象徴されますように、省エネルギーという点から果たして通産省はどうお考えになっているのか、この辺のところをお聞かせいただきたい。  それから、この装置の耐用年数、一般的に今まで生活学校なんかで取り上げてきた流れから申しますと、ふろの水はとにかく毎日取りかえなさい、しかも四時間置いて乾かしなさい、そうしませんと装置の耐用年数が短くなりますよ、また衛生的にも問題があります、こういうことを生活学校ではやってきたようでございますね。要するに、あるとき突然ふろを沸かさなければいかぬということで、ふろの水を抜いてまたすぐに入れて沸かす、こういうような生活態度はいけないのだ、こういうことを地域の生活学校ではやってきたようなのです。  そういうことを考えますと、エネルギー、燃料の消費量の問題、装置の耐用年数の問題、そういうような観点から、通産省はどうお考えになっているかをお聞かせいただきたいと思うのです。
  44. 村田成二

    ○村田政府委員 実は、私ども、仮の試算でもできないかということで、エネルギーが、通常のふろの場合と二十四時間ぶろの場合とどういうふうに比較できるだろうかと勉強してみたのでございますが、結論から申し上げますと、残念ながら、入浴といいますのは、御案内のように、入浴方法ですとか、あるいは機器の性能をどういうふうに設定するかとか、二十四時間ぶろでいきますとどんな頻度で水を取りかえるのか、いろいろなことによりまして左右されますものですから、正確にトータルのエネルギーなり環境負荷というものをどういうふうに判断したらいいかというところを計算することはなかなか難しいという結論でございます。  ただ、一般的に、衛生上の問題にも絡みますけれども、先生御指摘になられました、ふろの水は毎日かえろとか、あるいは四時間置いた上で水を張れ、そういったことは、ちょっと私どもとしていいか悪いかということを言及するのは適切ではないと思うのでございますが、全体といたしまして、エネルギー、環境問題の観点から、民生用のエネルギーは特に大きく伸びつつある、今後とも伸びるだろうという中で、それぞれの消費機器あるいは生活それ自体を、どういうふうな形できちんとエネルギー、環境問題を意識しながら効率性に向けて持っていくか、消費者サイドも行政機関もそういった意識で、全体として、この啓発あるいは実体の行動というものをとっていく必要があろうかと思います。  個々の機器につきましてどうであるかというところは、政府として、これにコメントすること、論評することは適切でないと思いますが、今申し上げましたような全体的な推進策あるいは対策の中で、民生用のエネルギーの使用合理化、環境負荷の低減ということを図っていくことが必要だろうというふうに考えております。
  45. 滝実

    ○滝分科員 ただいまの御意見、もっともだと私も存じます。  いずれにいたしましても、快適な生活をする、こういう観点からの新商品ですから、それなりの意味があるだろうと思うのでございます。問題は、衛生面での安全性、あるいは省エネルギーという観点からの努力、そういうようなことを、通産省を通じまして、メーカー側にもさらに働きかけをお願いいたしたいというふうに存じております。  次に、地域の商店街の活性化について御意見をお聞かせいただきたいと思います。  各地に商店街が、それなりに今までは地域のにぎわいをつくってまいりましたけれども、全国共通の悩みとして、今までの商店街をこれからどうするのだ、こういうことが大問題になってきていることは御案内のとおりでございます。  今まで地域の商店街の活性化対策として中小企業庁はかなりの力を入れてこられたわけでございますし、その一つには、アーケード街をつくって、要するに快適な商店街、天候に左右されない商店街、こういうことでそれなりの成功をおさめてきたわけでございますけれども、現在になって、よく考えてまいりますと、どうもこのアーケードの商店街そのものが郊外への大型店の進出を促進してきたのではないだろうかなという反省もこの商店街自身にあるわけでございます。  アーケードの商店街の基本的な悩みは、駐車場に苦労する、こういうことがその副産物として必ず出てくるものですから、アーケード街にすることによって駐車場問題をますます浮き彫りにしてきた、こういうようなことだと思うのでございます。  通産省では、特にこのアーケード街のみならず、中心市街地のいわば活性化の問題として新しい取り組みをされようといたしておるようでございますけれども、中心市街地ということでの活性化対策をどういう方向で打ち出そうとされているのか、その辺の事情をお聞かせいただきたいと思います。
  46. 石原伸晃

    石原(伸)政府委員 滝委員御指摘のとおり、今、大都会あるいは地方の中核都市を問わず、商店街の活性化という問題が大きなテーマに浮上してきていると思います。  これまでも、政府といたしましては、今滝委員御指摘いただいたように、アーケードあるいは共通カードをつくろうというところにはそういうものの援助、いろいろなことをやってまいりましたけれども、消費者ニーズの大きな変化や大型店進出というような大きな環境の変化によって、今商店街を取り巻く環境というのが大変厳しくなっているという認識ではまさに一致していると思います。  そんなとき、今回、滝委員の御指摘は、町の再開発とあわせてこの商店街の活性化というものをやっていくべきではないかといりよりな御指摘と拝聴させていただいたわけでございますけれども、そんなときには、駐車場スペースを十分に確保できるような援助というものもこれからやっていかなければなりませんし、そういうものに対して補助や無利子の援助あるいは各種の支援活動をして、これからもより一段と使い勝手のいいものにしていく、そういうことが大切ではないかと考えております。  また、滝委員も御存じのことだと思いますけれども、五月十六日には、「経済構造の変革と創造のための行動計画」において、各省庁が連帯いたしまして、新たに中心市街地の活性化のための総合的な対策を推進すべきであると定められました。中心市街地の商店街の商業集積の活性化に、通産省、中小企業庁としても、建設省、自治省と密接に連絡をとりつつ、十年度の予算で具体化を目指して頑張っていきたい、こんなふうに考えております。
  47. 滝実

    ○滝分科員 ただいま政務次官が中心市街地の新しい生き方についての抱負をお述べいただきまして、本当にありがたいことだと思っております。  つきましては、いわば再開発というのは難問題というか、どこの地域も大事業になることは必定でございます。その際に、従来の道路の両側の商店街を整備するのとはわけが違うという問題があろうかと思うのです。  従来でございますと、中小企業の補助金にいたしましても、スポーツ施設を組み込むときにはそれを助成するのだとか、あるいは集会施設もその中の一つでありますとか、あるいはアーケード街もその商店街の振興助成金の中でやれます、こういうことでございましたけれども、恐らくこのアーケード街、そういう縦に長い商店街を再開発するということになりますと、単純に公共的な部分だけを助成するということだけでは片がつかない問題があるのじゃなかろうかな。  それから、問題は、仮に再開発ビルに全部に入ってもらうということにしますと、これはどこへ入るかですったもんだの大騒動になることは必定でございますので、私は、そういうようなことを予測した助成措置ということを新たに開発していただきませんと、抽象的には大変結構な方向づけだということはだれしも異論がないと思うのでございますけれども、具体的にどうするかという段になると、大変な問題になってくるというふうに思います。今度の場合は、いわば関係各省手を携えての連合組織で取り組まれる、こういうことでございますので、その辺のところにつきましてもよろしくお願いを申し上げたいと存じます。  時間が参りましたので、これにつきまして、もう一遍その辺のところの決意のほどをお聞かせいただいて、質問を終わりたいと思います。
  48. 石原伸晃

    石原(伸)政府委員 滝委員御指摘の点を十分に配慮いたしまして、自治省、建設省、中小企業庁一丸となってこの問題の解決に取り組まさせていただきたいと思います。
  49. 滝実

    ○滝分科員 ありがとうございました。終わります。
  50. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 これにて滝実君の質疑は終了いたしました。  次に、田中和徳君。
  51. 田中和徳

    田中(和)分科員 自由民主党の田中和徳でございます。  少子・高齢化や情報通信革命の進展、経済のグローバル化など、近年の我が国の経済社会情勢の変化には目覚ましいものがあります。このことは流通業界にとっても例外ではありません。  女性の社会進出や国民の行動時間の変化、余暇志向の強まりなどは消費行動の多様化を生んでおります。モータリゼーションの進展により、人々が車で気軽に買い物に出かけられるようになり、消費者の行動範囲が格段に広がっただけでなく、週末のまとめ買いで用を足すというアメリカ型の消費者も急速にふえたのであります。また、規制緩和という世界的な潮流の中、無印ブランドといった低価格商品も出現するなど、昨今の価格破壊現象にはすさまじいものがあります。  こうした急激な環境の変化は、特に既存の中小小売業者の肩に重荷としてのしかかっておりますが、過去三回にわたる大店法の規制緩和は、そのことにさらに拍車をかけてしまいました。  例えば、私の地元川崎市について見ると、従業者が一人から四人の商店数が、平成三年から平成六年までの三年間に、約七千九百店から六千九百店へと大きく減少しております。また同様に、従業員規模が一人から四人の小売業の従業者数についても、一万九千人から約一万六千人へと大幅に減少しました。さらに、同規模の小売業の年間販売額を見ると、三千二百億円から二千五百億円にまで激減をしております。  霞が関の中央官庁にいて統計の数字を見ただけでは、既存商店街の小売業にかかわる人たちのせつない気持ちまではわからないのではないかと私も心配しているところであります。  私は、地元で数多くの商店街の顧問を務めております。総会などの会合で顔を合わせるたびに、商店主から、何とか助けてほしい、政治は私たちを見捨てるのかと、みんなもう殺気立っておりまして、まともに目を合わせられないようなときもあるわけであります。  大店法については、本年度中にさらなる見直しを行うべく、政府の審議会で検討が開始されましたけれども、過去の改正の反省点を明確にし、今度こそは中小小売業者の立場や既存商店街の振興という視点にも十分配慮した見直しになることを強く要望するものであります。  以上の考えに立ち、大店法の見直しや商店街の振興策について幾つかお伺いしてまいりますので、明快な答弁をよろしくお願いしたいと思います。  まず、過去三回の大店法改正における規制緩和の影響について、通産省はどのように評価をしているのか、お伺いをいたします。取ってつけたような答弁ではなくて、私が先ほど指摘したような既存商店街や中小小売業の深刻な状況も頭に入れた上で、真剣にお答えいただければと思います。よろしくお願いいたします。
  52. 石原伸晃

    石原(伸)政府委員 田中委員の、まさに地元を歩かれ、そして政治家としての大変重要な問題意識を拝聴させていただきましたので、私の方からお答えをさせていただきたいと思います。  我が国の流通業を取り巻く大きな変化というものについては、ただいま田中委員が御指摘いただいたように、モータリゼーションの進展あるいは消費者の行動範囲の変化、またアメリカ型の生活パターン、消費者の行動パターンの変化と、そしてさらに三度にわたる大店法の規制緩和というもの、これの複合要因によって大きくこの商店街の現状があるのではないかと、私もまさに同感でございます。  そんな中で、この大店法の規制緩和の結果だけを取り上げましてどういう影響があったのかというのは、逆にこれだけ複合要因があるわけでございますから、分析するのは非常に難しいのではないかと思います。  しかし、そんな中、田中委員から御指摘いただきましたように、従業員数で一人から四人のいわゆる小零細のところでは、お地元の地域でお店が千店も減り、従業員も三千人も減ってしまいますし、売り上げで七百億円も減ってしまう。これと同じような全国レベルの数字をちょっと調べてみましたが、これにあわせまして、平成年度までの過去十年間で見ますと、大型店の出店の届け出数というものは五百二十七件から二千二百六十件、およそ四倍になっている、これはやはり一つの影響の結果ではないかと私は思います。  それに対しまして、一方、商店数、これは全国ベースでございますけれども、残念ながら商業統計が三年に一遍ということで、ことしの六月一日に調査をして新しい結果が出てくるので、平成三年と平成六年の調査の結果で調べてみましたけれども、従業員が一人から四人のいわゆる小零細の中小店舗というものは、百二十七万軒から百十四万軒、一〇%減っております。この数字も田中委員のお地元と一致するのではないかと思います。  一方、従業員が五十人以上のいわゆる大型店でございますけれども、これは平成三年と平成六年を比べまして、八千軒から一万軒、二千軒ふえて二三%増になっている、このところにも、実はこの影響を見ることができるのではないかと思います。  雇用者数につきましては、三千人の方が減少というお話でございましたけれども、全国で見ますと、この零細小売店の雇用者数の減少というものは二百八十一万人が二百五十万人、一一・二%の減少。全体としての雇用者数の増加を見ますと、これは大型店というものが進出したことによって七百万人から七百三十八万人の増加、雇用の面では、この大型店というものがある程度の雇用を賄っているということがうかがえるのではないかと思います。  そして、今まさにこの大店法の見直しというものが審議会で議論され、規制緩和の前倒しで今年度中に結論を得るということになっておりますが、この見直しに当たりましては、やはり田中委員御指摘のとおりに、これからの地域コミュニティーとしての商店街のあり方、四月に取りまとめさせていただきました中小企業白書の中で、調査結果を私も読んだのですが、地域住民の方は、最寄り品についてはやはり便利なところで買いたい、そして町の商店街については、これからは地域のコミュニティーとしてその役割を担ってもらいたい、イベントもやっていただきたい、こういうアンケート結果が出ております。  私どもが日ごろ感じていますように、町の商店街は衰退の一途をたどるしかないという考えではなくて、周りに住んでいらっしゃる方は、これからの高齢化社会は、やはりモータリゼーションが幾ら発達しても、八十歳を過ぎて郊外に買い物に行くということはできないということを十分皆さんが認識されて、そういうアンケートの結果が私は出ているのだと思います。  このアンケートの結果、そしてまた田中委員御指摘の点を今回は十分に配慮をいたしまして、この大店法の見直し並びにこれからの中小企業そして商店、零細企業の活性化策というものをしっかりとつくっていかなければならない、それにまた取り組ませていただきたい、こんなふうに考えております。
  53. 田中和徳

    田中(和)分科員 石原政務次官、御答弁ありがとうございました。  大店法の改正で大規模小売店舗が急増したことにより消費者の利便性が増すなど、プラス効果があったということは確かだと思います。雇用の面でも大変な成果が上がっていることも数字が示すとおりであります。しかし、消費者は同時に地域の住民でもあることに注意する必要があると思います。今、石原政務次官からも地域コミュニティーの大切さというお話がございましたけれども、まさしくそこにこれからの重要な部分があるのではないかと思います。もう消費者のメリットのみならず地域の住民として享受する利益も加味して、総合的に考える必要があるのではないかと思っております。  商店街が伝統的に蓄積し、担ってきた信用や人間関係などの社会的役割を考えると、高齢者ケアの拠点として、人と人との触れ合いを大事にする地域の商店街と連携していくことが、これからの高齢化施策にとっても不可欠だと思います。さらに、治安維持機能だとか防災機能、青少年の教育機能など、歴史と文化を大切にしながら、郷土愛に徹して、商店街が地域社会の中で担ってきた伝統的な役割は、枚挙にいとまがありません。  こうした商店街の機能が失われ、国民が地域住民としてのメリットを喪失することになってもよいのか、このことこそ現時点で政策上からも十分に検討する必要があると思います。  また、各店舗の方々は、過去長い間にわたって地域社会や行政に対して、地域団体の役員を積極的に引き受けるなど多くの貢献を果たしてきました。消費者メリットだとか経済のグローバル化だといった一言で片づけて、情の通わない弱肉強食の社会を醸成してしまって、国の宝ともいうべきそういったかけがえのない人々を犠牲にしたのでは、政治や行政に対する不信を生みかねません。  商店街が地域社会の中で果たしてきた役割を政府はどのように評価しているのか、また、今後も引き続きその役割が不可欠であると認識しておられるのか、もう一度御確認をさせていただきたいと思います。さらに、夢も希望もない状況からは後継者が育ちません。後継者の育成についても、どう考えているのか、ひとつお答えをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  54. 篠原徹

    ○篠原政府委員 先生御指摘ございましたとおり、小売業につきましては、社会システムの中で消費者との接点としての役割を果たす存在だというふうに私ども考えております。かかる観点から見ますと、国民生活を豊かなものにするためには、消費者のニーズにこたえる選択肢といたしまして、多様な業態、商業集積がそれぞれの役割を果たしていくことが肝要かと考えております。  特に、商店街及びそれを支えます中小小売商業者につきましては、まず第一に、地域密着性を生かしまして、消費者ニーズに対応したきめ細かなサービスを提供する役割、第二に、地域文化の保存、伝承などを通じた町づくりの担い手としての役割、第三に、自動車などを利用できない高齢者や身体障害者にとりましても貴重と言えます、徒歩で利用可能な購買機会を提供する役割、また第四に、持ち前の企業家精神や機動性の発揮によりますニュービジネスの苗床としての役割、さらに最後に、全国約百五十万店、約六百万人の従業者の生活の場、雇用の担い手としての役割といったさまざまな重要な役割を担っているものと認識いたしております。  今後とも、商店街がこうした役割を着実に果たしていくように努力してまいりたいというふうに考えております。  また、後継者の問題でございます。  御指摘のとおり、現在商店街では、多くの方々、特に高齢の経営者にとりまして、後継者問題というのが非常に大きな問題になっておることは私どもも十分認識しておりまして、これにつきましては、地域の商店街振興組合あるいは商工会議所、商工会等々を通じたいろいろな普及啓発活動あるいは勉強会等々を通じまして努力しているところでございますけれども、今般の審議会におきましても、そういった面も含めまして十分検討を続けてまいりたいと思っております。
  55. 田中和徳

    田中(和)分科員 通産省の考えはわかりました。ぜひとも、言葉だけでなく血を通わせ、そして将来を見据えて真剣に努力していくよう期待したいと思いますし、私も非力ながら全力で御協力を申し上げたいと思っております。喫緊の課題として、商店街の衰退が地域全体の崩壊につながるという事態を回避するために、大店法の見直しや商店街振興策、町づくりのための諸施策を的確に打ち出していく必要があるわけであります。  私の地元川崎市のある地域では、大型店がほんの数キロの範囲内に三つも四つも乱立して、さらに新店舗進出が発表され、周辺の商店街のみならず地域住民からも、交通渋滞や環境破壊の原因になると、非難ごうごうの状況にあります。今夜も、夜八時から大型店出店対策協議会の会合が開かれます。大型店の出店によりまして、周辺の商店街がまず先に壊滅的な状況となって、その後大型店同士が熾烈な戦いの結果共倒れとなり、地域社会の崩壊を生むという、ほかの地域でも一部そのような地域があるわけでありますけれども、最悪のシナリオにならないかと私自身大変真剣に危惧をしておるところでございます。  また、目と鼻の先に大型店がひしめくという状況は、商圏拡大目当ての単なる陣取り合戦でしかないように私たちの目にも映るところであります。大型店と中小小売店が競争するからこそプラス効果が得られるのであって、中小小売店そっちのけの大型店同士の縄張り獲得合戦のような不毛な争いを放置すべきではないと私は思っております。  今のままでは、消費者、中小小売業者、大型店すべてに、それぞれ不信感が募ってマイナスとなるだけでなく、戦い済んで日が暮れて、地域社会が滅んでしまう、こういうことになりかねないのであります。適正な数の大型店が中小小売店と共存共栄し、地域社会への貢献も視野に入れて企業活動を行うというのが当然理想であります。  自由競争社会の中で、地域社会とどういうかかわり合いをするかということは経営者のモラルの問題であるといえばそれまででございますけれども、適正な企業活動が行われるように支援し、時には必要最小限度の指導や規制をかけていくのが政府の使命ではないかとも私は考えております。  大店法の緩和の背景と歩みを考えると、日米構造協議での、日本の小売市場が閉鎖的なのは大店法があるためだ、こういうアメリカの主張に配慮したものであり、グローバルスタンダードという考え方を盾にした外圧に押されたものだ、このように言える一面もあるのではないかとも思います。  しかし、本当に小売業分野での規制緩和が世界の共通の流れなのか、私は、一例を示してみたいと思います。  昨日、日刊紙でも、各国の大型店を制限する法律について取り上げられております。フランスのロワイエ法は、一定以上の売り場面積を持つ小売店舗の出店を許可制にしていますが、九六年に大幅に規制を強め、許可の必要な売り場面積を三百平方メートル以上へと強化している。ドイツでは、景観を維持するために、連邦建築法で建物の大きさや入り口の広さ、外観などを厳しく制限し、その上、郊外でも一定以上の建築物は市町村の認可が必要になっている。イギリスでは、広い敷地を必要とする郊外型大型店が田園地帯に出店するのを制限する政策をとり始めた。  イギリスやドイツの事例は、通産省が取り扱う分野以外の視点での規制だとは思いますけれども、フランスのロワイエ法は、まさに大店法と同様の規制でありまして、通産省が当然参考にして、今後の大店法見直しに当たるべきものとも考えます。世界各国での規制強化を今後の大店法見直しの際にどのように考慮し参考にするのか、今の時点での政府の考え方をお伺いしておきたいと思います。
  56. 今野秀洋

    ○今野政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生から御指摘ございましたように、先進主要国それぞれ、歴史的事情あるいは流通業を取り巻く環境はさまざまではございますけれども、いろいろな形の規制、ルールが定められておるところでございます。  フランスにつきましては、ただいまお話ございましたように、ロワイエ法という法律によりまして大型店の出店の規制が行われております。このほど、これがラファラン法という法律によって改正をされまして、規制が強化されております。例えば、規制対象となります店舗の面積でございますけれども、従来、都市の規模によりまして一千平方メートルないし千五百平方メートル以上となっておりましたが、改正後は三百平方メートル以上の店舗について規制をかけるということになっております。また、この許可を行う際の審査委員会の構成及び投票方法等についても改定が行われておるところでございます。  一方、イギリスでございますけれども、イギリスにおきましては逆に規制が緩和されているところもございまして、一九九四年に日曜営業禁止、これが解除されております。これは、日曜営業法というものが九四年に発効いたしまして、すべての店が日曜日にも六時間を上限として営業できるようにするといったような緩和もなされております。他方、このイギリスにおきましても、出店につきましては、郊外店の出店を厳しくする方向のガイダンスの改定が九六年六月になされているところでございます。ドイツにおきましても、閉店時間法がございますけれども、これが昨年緩和されてきております。  このように、欧州各国におきましても、規制のあり方についてさまざまな動きがございます。また、その結果としての大型店舗の展開の状況というものも、国によって大分違っております。  冒頭例示いたしましたフランスでございますけれども、大型店の販売額の割合、これは日本に比べてもむしろ高いというデータも報告されております。手元にありますデータでございますと、五百平方メートル以上の大型店の割合、日本では二九%強でございますけれども、フランスの場合には、これは四百平方メートル以上のデータしかございませんけれども、五二%を超えておるといったような数字も報告されておるところでございます。  いずれにいたしましても、このたび産業構造審議会の流通部会及び中小企業政策審議会の流通小委員会、この合同会議におきまして、大店法の制度見直しの作業を開始したところでございますけれども、こういった作業のプロセスにおきましては、海外調査団を派遣いたしまして、最新時点での諸外国の規制のあり方というものをよく把握し、これを参考にしたいと考えておるところでございます。
  57. 田中和徳

    田中(和)分科員 各国事情はそれぞれ複雑に違いもありますけれども、いずれにしても、既存の商店街あるいは一定の小売業界の維持育成というものについては努力をしているという現実があるわけでありまして、こういう面でまたひとつ御配慮を願いたいと思っております。  地域の中で大規模店や中小小売店がどのような役割をそれぞれ担っていくかは、住みよい町づくりを実現するためには極めて重要な課題であります。通産省は、これらの小売業者が地域社会の中で果たす役割を踏まえて、どのような状況が理想なのか、どんな町づくりを行おうと考えているのか、ひとつ簡潔に御答弁をいただければと思っております。時間の関係もありますので、よろしくお願いいたします。
  58. 今野秀洋

    ○今野政府委員 中小小売店、これはきめ細やかなサービスがございます。大型店は、一方豊富な品ぞろえがございます。それぞれ重要な役割を果たしているわけでございます。  このような観点から、現在、一例を申し上げますと、通産省では特定商業集積法という法律によりまして、大型店と中小小売店との共存共栄による商業振興を目指した政策を展開しているところでございます。それにはタイプが三つございますけれども、大きなタイプとして申しますと、一つは地域商業活性化型というものでございまして、大型店と中小店双方が入居するショッピングセンタータイプのものでございます。失礼しました、これが高度商業集積型と申すものでございます。  地域商業活性化型と申しますのは、地元の中小店が主体となりまして商店街の活性化を公共事業と同時実施で行うものでございます。これを合わせまして、現在まで四十五市町村の基本構想の承認が行われているところでございます。  またさらに、平成年度からは、中心市街地において大型店と中小店との共存共栄を図ることを目的といたしました中心市街地活性化型の親類型を設けたところでございます。  今後とも、関係省庁との連携のもとに、この町づくりの観点を含めた商業集積支援策を講じてまいりたいと考えております。
  59. 田中和徳

    田中(和)分科員 先ほど滝委員からも御質問があったところに私もちょっと言及させていただいて、建設省から御答弁をいただきたいと思っていますけれども、先般閣議決定された「経済構造の変革と創造のための行動計画」にも中心市街地の活性化が盛り込まれております。自民党としても、先日、中心市街地再活性化調査会を立ち上げて、商業、業務、交通、居住などの各施設が集積している都市の中心市街地について、地域経済を支える拠点として再構築し、魅力ある事業環境の創出を図っていく、そのようなこととしているところであります。  そこで、建設省にお伺いをしておきたいと思いますが、都市のにぎわいを維持し都市機能強化を図るため、道路や駐車場などの交通基盤の強化によってアクセスを改善し、また地域コミュニティーの活性化を図るための具体的な支援を充実させるべきと思いますが、今後予算措置も含めてどのようこお考えか、確認をしておきたいと思います。
  60. 中島正弘

    ○中島説明員 お答え申し上げます。  御指摘の中心市街地の対策と申しますのは、お話もありましたように、象徴的には商店街の問題でもあるわけでありますが、より広く、町づくり全体の問題というふうに思っております。  取り上げて言えば、例えば人口の減少、あわせて進行する高齢化の問題でありますとか、あるいは無計画に存在します低・未利用地、空き店舗のような問題でありますとか、あるいはいろいろな機能が郊外に散ってしまうというような都市構造そのものの問題と思っておりまして、御指摘のありましたように、もう一度町中とか都心をどうやってつくるかという観点から、都市政策という立場でもいろいろな政策を組み立て直してみたい、こういうふうに思っております。  そのときに、委員御指摘になりましたようないろいろな要素があるわけでありますが、一つは交通の問題、この現象の起こってまいりました一つの背景として、モータリゼーションといいますか、車社会に都市の構造をどうつくるかというのが背景にあるわけでございまして、車の需要にどう対応するかというのが一つの大きな課題だと思っております。  従来からも、端的には、駐車場をちゃんとつくる、あるいは、街路をちゃんとつくってアメニティーの高い交通環境を用意するなど、考えてきたわけでありますが、今後とも、そういった施策を今度はよりもう少し広く考えて、都市全体の交通の体系をつくる中でどうしたらいいのかというようなことを考えてみたいと思っております。  具体的に申しますと、例えばトランジットモール、ヨーロッパでいろいろとあるようでございますが、ある程度面的な範囲で、外側に駐車場をつくって中に車を入れないとか、あるいはもう一つは、公共交通といいますか、路面電車のようなもの、ああいったものをどうとらえるか、そういったことも視野に入れて、都市構造の中で車社会に対応した都心の交通体系というのをもう一度考えてみたい、このように思っております。ひとつよろしくお願いいたします。     〔浜田(靖)主査代理退席、主査着席〕
  61. 田中和徳

    田中(和)分科員 時間が参りましたので、最後に、石原政務次官にもう一度御答弁をお願いして終わりにしたいと思います。  簡単に申し上げますと、今首都圏の、あるいは近畿圏もそうであるかもしれませんけれども、商店街は、実は不満というよりも、もう先に進んで怨念が渦巻いている、これが現実の姿だと思うのです。本当に厳しい状況にあります。そういう中で、先生も二十一世紀をしょって立つ政治家として大変期待されておる一人でございますけれども、既存の商店街、日本的な商業スタイル、地域スタイルというものがやはり重要だと思うわけでございまして、ぜひ先生の御見解を最後に承りまして、終わらせていただきたいと思います。  政務次官、どうぞよろしくお願いいたします。
  62. 石原伸晃

    石原(伸)政府委員 田中委員御指摘のとおりだと思います。  町の担い手、そして地域コミュニティーの担い手、文化的なことまで言及させていただきますと、みこしを出すのも、実は商店街の人たちがいなくなると日本のみこしも出なくなるような現実、通産省としても、本当に小さな予算の中で精いっぱい、平成年度も百六十三億円ぐらいを支出してきたのですが、厳しい財政事情ですけれども、やはりめり張りのついた予算というもので財政的な支援もさせていただきたいと思います。  また、先ほど滝委員にもお答えしましたように、建設省、自治省と協力して、そこに人が住んで初めてその商店街が繁栄するわけですから、こういう部分に十分配慮して、この大店法の議論も、審議会の意見を十分拝聴しながら、決めますのは各党、そして委員会でございますので、その部分でしっかりと取り組ませていただきたいということを申し述べさせていただきたいと思います。
  63. 田中和徳

    田中(和)分科員 終わらせていただきます。ありがとうございました。
  64. 上田清司

    上田主査 これにて田中和徳君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして通商産業省所管中小企業金融公庫及び中小企業信用保険公庫の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  65. 上田清司

    上田主査 これより経済企画庁所管について審査を行います。  まず、概要説明を聴取いたします。河本経済企画政務次官。
  66. 河本三郎

    ○河本政府委員 おはようございます。  平成年度及び七年度における経済企画庁歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、平成年度の当初歳出予算額は五百五十七億千九百八十一万円余でありましたが、予算補正修正減少額五億千五百十六万円余、予算移しかえ減少額六億八千三百十七万円を減少いたしますと、平成年度歳出予算現額は五百四十五億二千百四十八万円余となります。  これに対しまして、支出済み歳出額は五百四十二億二千六百七十七万円余であり、歳出予算現額との差額二億九千四百七十一万円余は不用となった額であります。  次に、平成年度における経済企画庁歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、平成年度の当初歳出予算額は五百六十八億五千二百三十五万円余でありましたが、予算補正修正減少額千七百四十三万円余、予算移しかえ減少額六億七千六百二十三万円余を減少いたしますと、平成年度歳出予算現額は五百六十一億五千八百六十七万円余となります。  これに対しまして、支出済み歳出額は五百五十八億七千六百三十六万円余であり、歳出予算現額との差額二億八千二百三十一万円余は不用となった額であります。  以上、平成年度及び七年度経済企画庁歳出決算概要を御説明いたしました。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  67. 上田清司

    上田主査 次に、会計検査院検査概要説明を聴取いたします。会計検査院深田第一局長
  68. 深田烝治

    ○深田会計検査院説明員 平成年度経済企画庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。  次に、平成年度経済企画庁決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。  これは、経済企画庁が十六都道府県に委託して実施している法人企業動向調査に関して、法人の担当者が統計調査に習熟していることなどから、都道府県が調査員に調査票を配付、回収させる方法で調査しなくても特段の支障はなく、実際にもほとんどの法人に対して郵送により調査を行っていたのに、この実態が積算に反映されていなかったため、委託費が割高となっておりました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。  以上、簡単でございますが、説明を終わります。
  69. 上田清司

    上田主査 ただいまの会計検査院指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。河本経済企画政務次官。
  70. 河本三郎

    ○河本政府委員 平成年度決算検査報告において掲記されております処置済み事項につきましては、会計検査院の御指摘に基づき、平成八年十月に、法人企業動向調査の調査方法を郵送調査に統一し、委託費の積算が適切に行われるよう調査の手引及び委託費算定基準を改正し、平成年度の委託契約から適用することとする処置を講じたところであります。  今後とも、委託業務の適切な運用を図ってまいる所存でございます。
  71. 上田清司

    上田主査 この際、お諮りいたします。  お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  72. 上田清司

    上田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────    平成年度総理府経済企画庁所管一般会計決算に関する概要説明                 経済企画庁  平成年度における経済企画庁歳出決算につきまして、その概要を御説明申しあげます。  まず、平成年度の当初歳出予算額は、五五七億一、九八一万円余でありましたが、予算補正修正減少額五億一、五一六万円余、予算移替減少額六億八、三一七万円を減少いたしますと、平成年度歳出予算現額は、五四五億二、一四八万円余となります。  これに対しまして支出済歳出額は、五四二億二、六七七万円余であり、歳出予算現額との差額二億九、四七一万円余は不用となった額であります。  次に、支出済歳出額のおもな内訳は、経済企画庁九九億八、〇二八万円余、海外経済協力基金交付金四二八億一八二万円余、国民生活安定対策等経済政策推進費五億一一五万円余、経済研究所九億二、一六九万円余等であります。  また、不用額のおもなものは、経済企画庁について、人件費を要することが少なかったこと等によるものであります。  以上、平成年度経済企画庁歳出決算概要を御説明いたしました。  何とぞよろしく、御審議のほどお願いいたします。     ─────────────    平成年度総理府経済企画庁所管一般会計決算に関する概要説明                 経済企画庁  平成年度における経済企画庁歳出決算につきまして、その概要を御説明申しあげます。  まず、平成年度の当初歳出予算額は、五六八億五、二三五万円余でありましたが、予算補正修正減少額一、七四三万円余、予算移替減少額六億七、六二三万円余を減少いたしますと、平成年度歳出予算現額は、五六一億五、八六七万円余となります。  これに対しまして支出済歳出額は、五五八億七、六三六万円余であり、歳出予算現額との差額二億八、二三一万円余は不用となった額であります。  次に、支出済歳出額のおもな内訳は、経済企画庁一〇九億二、〇三七万円余、海外経済協力基金交付金四三五億二、七八〇万円余、国民生活安定対策等経済政策推進費四億九、五一五万円余、経済研究所九億一、五八九万円余等であります。  また、不用額のおもなものは、経済企画庁について、人件費を要することが少なかったこと等によるものであります。  以上、平成年度経済企画庁歳出決算概要を御説明いたしました。  何とぞよろしく、御審議のほどお願いいたします。     …………………………………    平成年度決算経済企画庁についての検査の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  平成年度経済企画庁決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。  これは、景気動向調査委託契約における法人企業動向調査に要する経費の積算に関するものであります。法人企業動向調査に要する経費については、調査対象法人の七五%に相当する法人については調査員調査を、残りの二五%に相当する法人については郵送調査を実施することとして経費を積算しておりましたが、ほとんどの調査対象法人において郵送調査で行われていると認められましたので、当局の見解をただしましたところ、経済企画庁では、八年十月に、法人企業動向調査の調査方法を郵送調査に統一し、委託費算定基準等を改正する処置を講じたものであります。  以上、簡単でございますが説明を終わります。
  73. 上田清司

    上田主査 以上をもちまして経済企画庁所管説明は終わりました。
  74. 上田清司

    上田主査 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。小此木八郎君。
  75. 小此木八郎

    ○小此木分科員 おはようございます。自由民主党の小此木八郎でございます。  本日は、尊敬します河本三郎経企庁政務次官に質問をさせていただく場を与えていただきまして、まことに光栄でございます。  景気問題を中心に質問をさせていただきたいと思いますが、きょう、私は、この質問が終わりましてから、早速、地元が横浜なものですから、小さなミニ懇談会がございまして、質問してきたことを皆さんにわかりやすく説明しなければいけませんけれども、本当に簡単なようで難しい問題だと思いますが、経済企画庁というところは一体何をするところか、この辺から次官にひとつお聞きしたいというふうに思います。ぜひわかりやすくお願いいたします。     〔主査退席浜田(靖)主査代理着席
  76. 河本三郎

    ○河本政府委員 おはようございます。  我が国の経済運営のかじ取りを通じて、いささかでも国民生活の充実向上のためにお役に立ちたいというところが経済企画庁でございます。
  77. 小此木八郎

    ○小此木分科員 そのとおりであって、いろいろな経済、今非常に悪いというのが町の実感でありまして、こういったところのいろいろな計画をされる、企画をされる、景気を浮揚させるためにそういうような計画をされる。私たちももちろん、地元に帰り、あるいは国を行脚し、そういったところを皆さんにお訴えしなければいけないわけでありますけれども、経企庁といたしましても、ぜひ実態に基づいた形でこれからもさらに国民の皆さんにわかりやすいような説明に努めていただきたいということをまず申し上げたいというふうに思います。  続いて、日本の経済は、バブル経済と言われたものの崩壊後、六回にわたる経済対策などの効果もありまして、一九九三年十月を底に景気の回復局面に移行いたしました。回復のテンポが緩やかだったとはいえ、着実にその回復の足取りをたどり、ついに岩戸景気を超えて戦後三番目の長さになったそうであります。これは私も資料で見たところでありますけれども、私が地元に帰りまして、実際に町を歩いていろいろな方々の声を聞いてみると、そのような実感が得られない、これは私たち政治家すべてが感じているところであろうかと思います。   一つに、私が常に重要視しておりますことは、産業の空洞化ということが言われます。これは、ここ数年ずっと議論の対象になっているところであると思いますが、これまでは、景気のよかったときというのはやはり中小企業が物すごく努力をしていた、あるいは中小企業に仕事があったというふうに思います。しかし、今こういうような状況で、力のある会社、大きな企業というものが、日本よりは人件費の安いあるいは税金の安い海外にその資本をどんどん移してしまっている。よって、その大きな企業から仕事を受けていた中小企業の仕事がどんどん減っている。私たちが声を聞くのに、小此木さん、もう本当に仕事がないのだというようなことをお会いするたびに言われるというところが一つの問題になっていると思います。  力のある、あるいは余裕のある、やる気のある企業というものがどんどん海外に移ってしまっている。ですから、私は、この一つの解決策といたしまして、大きな企業あるいはお金持ちと言ってもいいのでしょうか、そういったところから税金によってふんだくるというような形ではなくて、ぜひ、その分、経済社会の中でお金を使ってもらう、あるいは日本の中小企業の人たちにどんどん仕事をふやしていただく、これは税金のシステム全体を変えていかなければいけない問題でありますから、ちょっと今回の質問の趣旨とは違っているかもしれませんけれども、今後、政務次官とも、政府という立場ではなくて、政治家としてこの問題は議論をしていきたいというふうに思います。  ともかく、このデータ上の数字と町の人たちの実感との乖離というものがあります。その乖離について経企庁はどのようにとらえているのかを次官にお伺いしたいと思います。
  78. 河本三郎

    ○河本政府委員 小此木先生御指摘の、データでは回復をしているが実感ではそれが感じられないということで、ずれが、乖離があるのではないかという御指摘でございますが、少しデータを御説明させていただきたいと思います。  まず、最近の経済の動向でございますが、需要面では、設備投資も回復傾向にございます。また、消費税率が引き上げられたということでその変動もございますが、個人消費も回復しているという数字が出ております。さらには、住宅建設も引き続き高い水準で推移をしておりますし、減少傾向でございました純輸出もおおむね横ばいで推移をしているということで、つまりこのような需要動向を背景に、生産は増加傾向にある、このように認識、理解をしております。  ただ、雇用は、完全失業率三・二%という高い数値を示しておりますが、これも改善傾向にある、このようになっております。  そこで、そのずれは一体どのように考えておるのかということでございますが、今回の景気の回復局面においては、いわゆるバブル期の過大な投資によります過剰設備の調整がおくれた、長引いたということと、それから二番目に、企業、金融機関等が多額な不良債権を抱え込んだ、そして急激な円高が進行したということもございます。そういうところが、景気回復のテンポが過去の回復期と比べて極めて緩やかではないか、このようにとらえておりますし、回復感が乏しい背景になった、このように痛感をいたしております。  ただ、三月のDIも、注目すべき一致指数、これは七カ月連続で五〇%を超えております。反面、先行指数は三カ月連続で五〇%を下回っておりますが、これは消費税率引き上げに伴うことを皆様が先取りした数値だ、このように認識をいたしております。  いずれにいたしましても、我が国の景気は緩やかに回復基調にある、こういう認識でございます。
  79. 小此木八郎

    ○小此木分科員 消費税のことを言われましたけれども、ことしの四月一日から消費税率が三%から五%に引き上げられました。税率引き上げ前の駆け込み需要というプラス面を御指摘いただきましたけれども、その反動の影響もこれは大きかった、これが問題になっているということも聞きます。  そこで、消費税率引き上げに伴う経済全般及び物価の影響について、もう少し詳しくお伺いをいたしたいと思います。
  80. 中名生隆

    ○中名生政府委員 お答え申し上げます。  消費税率の変更に伴って経済にどういう影響を与えているかという点でございますけれども、最初に需要の面についての影響ということで申し上げますと、一番大きく影響が出ているのは何と申しましても個人消費でございます。  個人消費につきましては、自動車の販売については、昨年の末から、新車が出てきたということもありまして二けた台の伸びになっておりまして、これは、年が明けて駆け込み需要もあって三月までは二けた台という高い販売が続いたわけでございます。  それから、そのほかの商品につきましては、消費税率の引き上げに伴う駆け込みというのは三月の前半までは大きくは見られませんでした。しかしながら、三月の後半と申しますか、とりわけ月の最後の三日間に、家電製品でありますとか、高額な商品でありますとか、家具でありますとか、かなり広範なもので消費税率の引き上げ前の需要というのがございました。  そういうことから、百貨店の売り上げで申しますと、前年同月で約二割の増加、それからスーパーにつきましても、一けたではありますけれども高い増加という形になりました。したがって、総務庁の方で出しております家計調査で見ましても、三月の実質消費支出といいますのは、五・八%の増加という高い増加になりました。  それで、委員がお尋ねのように、その反動が四月にどういうふうに出てくるかということでございますけれども、これは、まだ全体の統計が発表になったものが限られておりますけれすも、例えば車の販売で申し上げますと、四月は一四%のマイナスということになっております。それから、デパートの売り上げにつきましては、協会の方の数字がきょうの午後に発表になりますけれども、地区別にわかっているところで申し上げますと、東京が一四・四%のマイナス、それから大阪が一六・一%のマイナスということで、三月に駆け込み需要があった分は四月にその反動があらわれてきているというのが現状でございます。  ただし、この影響がどのくらい続くのかということで、私ども、少し前にいろいろヒアリング調査をいたしました。その結果では、多くの企業の関係の方々というのは、大体四-六月まででその反動減というのは影響が出切るのではないかということを言っておられる、こういう状況でございます。  そういう意味では、確かに個人消費は、消費税率の改定前に駆け込みがあって、その反動というのが現在出ておりますけれども、それが長く続くという状況ではない。ある意味では、昨年来予想されていた範囲の中にとどまっているというふうに私どもは考えております。  それからもう一つ、需要面で消費税率改定の影響が出ておりますのは住宅建設でございます。これは、実はこの三月ではなくて、昨年の秋に既に影響が出ておるわけでございます。住宅建設の場合には、昨年の九月までに契約を済ませたものについては一その住宅の引き渡しが四月以降になっても従来の三%の消費税率が適用されるということで、昨年の九月までに住宅の建設というのが促進をされました。  したがって、私ども、住宅の着工ベースでいろいろ統計を見ておりますけれども、昨年の十月に、着工ベースでは最も高い、年率で申し上げますと百八十二万戸という高度成長期並みの数字になりました。その後は当然そこから減ってきておりますけれども、一番新しい三月の数字で申し上げまして、住宅の建設が年率換算で百四十八万戸ということで、これはレベルとしてはまだ高いということで、消費税率の変更前の駆け込み、それからその反動がございましたけれども、住宅建設というのも三月現在でなおレベルとしては高い状況にあるということでございます。  それから、消費税率の影響ということになりますと、今申し上げましたような駆け込みとその反動ということのほかに、もちろん一回限りのものであっても消費税率の変更に伴って物価水準が上がりますから、それが実質の消費に何がしかの影響を与えるということがございますけれども、これについてはもう少し全体の数字が明らかになってみないと、どの程度の影響かというのがわからないと考えております。  それからもう一つは、物価面にどういう影響を与えているかということでございます。物価面につきましては、結論的には国内卸売物価、消費者物価ともほぼ適正な転嫁がされて、それに伴う物価の上昇がございましたが、基調としては安定をしているということだろうと思います。  具体的な数字で申し上げますと、四月の国内卸売物価は、前年同月比、前月比とも一・九%の上昇ということでございましたので、これは二%の消費税率アップにほぼ見合った動きということだろうと思います。  それから、消費者物価につきましては、これはまだ全国の数字が発表になっておりませんので、東京都区部の中旬速報値でございますけれども、四月に前月比で一・二%の上昇ということですから、消費者物価についても適正な範囲内で転嫁がされている、基調としては安定をしている、そういう状況だというふうに考えております。
  81. 小此木八郎

    ○小此木分科員 引き続き消費税関連ですけれども、消費税導入の際にも問題になりました税率引き上げに伴う便乗値上げですが、今回どのような状況か、それに対しての対応も簡単にお答えいただければと思います。
  82. 河出英治

    ○河出政府委員 今先生おっしゃいましたように、消費税率引き上げに伴いましていわゆる便乗値上げ的な行為が発生することは、物価、国民生活に好ましくない影響を与えるというふうに認識をしております。  経済企画庁といたしましては、関係省庁と協力をしながら、物価モニター等によりますところの価格動向の調査、監視、あるいは消費者等への積極的な情報提供、あるいは物価ダイヤル等によりますところの消費者からの問い合わせ、相談体制の整備、こういったことを通じまして、便乗値上げ的な動きの抑制に努めてきたところでございます。  実際の物価への影響でございますけれども、先ほど調査局長が御説明いたしましたように、消費者物価、卸売物価への影響は予想された範囲内にとどまっているものでございます。その他、物価ダイヤル等に寄せられました意見、あるいは私どもが行いました物価モニター調査の結果、こういったものから総合的に判断をいたしますと、便乗値上げ的な行為はごく一部の事業者に限られておりまして、全体としてはおおむね適正な転嫁が行われているものというふうに考えているところでございます。  今後とも、便乗値上げ的行為を抑制するために所要の体制をとってまいりたいと思っております。
  83. 小此木八郎

    ○小此木分科員 ありがとうございました。  続いて、先ほども申し上げました日本の産業の空洞化、その問題自体が本当に深刻になっております。この原因といたしましては、先ほど私が申し上げました日本の税制のシステム、これは非常に深く私も問題視しておりますけれども、その他で、急激な円高や、人件費、公共料金、地価等が諸外国に比べて大変に高いものとなっているということが挙げられています。  現在、さまざまな分野で規制緩和が進んでおり、需給調整を撤廃したり、今までの料金制度を見直すなどの動きが始まってきております。これにより競争が進んでサービスの向上や料金の引き下げなどの効果が期待されるということでありますが、この問題も一方で、今まで規制によって守られてきた側といいますか、そういう商売が成り立っていた方々、つまりこれも中小企業の皆さんになるわけでありますけれども、そういう立場の方々の認識が、こういう規制緩和というものに対して、まだまだ対応し切れていないのではないか。ぜひこれは、政府といたしましても、経企庁といたしましても、こういったところの意識づけ、訴えというのを、我々も含めてやっていかなければならないというふうに思います。  まさにこういったことが進んでおるのが実態でありますが、この中で私は特に電気料金のことについて質問をさせていただきたいと思います。  五月十六日、経済構造の変革と創造のための行動計画というものが閣議決定されました。この計画を踏まえた今後の電気事業のあり方が電力料金にどのような影響を与えるかをお伺いしたいと思います。
  84. 染川弘文

    ○染川説明員 お答えいたします。  今月十六日に閣議決定されましたところの経済構造の変革と創造のための行動計画におきましては、我が国の電力のコストを中長期的に低減していく基盤を確立するために、大きく分けまして次の三つについて取り組むことといたしております。  一番目は、負荷率の改善でございます。負荷率と申しますのは、ざっと申しまして、電力事業の稼働率ともいうべき言葉でございますが、この負荷率一%の改善は電力コストを一%削減する効果を有しております。  負荷率改善の対策を策定するため、電力会社はもとより、電気の需要家あるいはビル建築の関係者、メーカーといったところがどういう取り組みを行うべきかという点についてめどを立てますとともに、これら具体策の検討とあわせまして、今後どこまで負荷率を改善できるか、本年末までにその目標を設定することといたしております。  第二に、独立発電事業者、IPPの活用。これは電力会社以外の事業者が電気を起こして電力会社に電気を卸すという事業体でございます。昨年、初めての電力会社による入札ということで、独立発電事業者の活用が始まったところでございますが、このIPPの平均落札価格は電力会社自身が行う発電コストよりも二割前後低かったわけでございます。このため、電力会社をしてこのIPPを可能な限り活用するよう、電力会社に要請しようとしております。  第三に、電気事業者による効率化の加速と資機材の調達の効率化あるいは修繕費の見直し等、事業者によりますところの効率化努力の取り組みを促すということにしております。  それから第二番目に、電気事業におけるさらなる競争原理の導入の見地から、海外の規制制度改革の実態も踏まえつつ、我が国の電気事業の供給システムについて見直しを行うこととしております。  具体的には、一年以内をめどに電力供給システムの見直しを行い、そのあり方について合意形成を図る。その際、電源構成のベストミックスに留意しつつ、発電事業分野において電源開発株式会社やIPPが対等な条件で競争できる制度のあり方等について検討する。次に、供給信頼度等と事業の効率化との関係について考え方を整理しつつ、本年末をめどに、今後の電力の流通設備形成、これは送電、配電、変電といった分野でございますが、流通設備形成のあり方について結論を得ようとしております。  最後に、具体的な電気料金のことでございます。こういった対策を背景といたしまして、既に多くの電気事業者は来年のできるだけ早い時期での料金改定を表明しておるところでございますが、以上の方策によりまして先々国際的に遜色のないコスト水準となっていくことの基盤が形成されることを踏まえまして、二〇〇〇年に再度の料金改定の申請が行われることを期待しておるわけでございます。
  85. 小此木八郎

    ○小此木分科員 続いて、別件を二、三お伺いいたします。  製造物責任法、いわゆるPL法が平成七年の七月一日から施行されています。自己責任の原則のもとで、製品事故の被害者の救済を容易にする同法が現在どのように適用されているかを経済企画庁にお伺いいたします。  また、PL法施行に基づいてそれぞれの企業がどのような取り組みを行ってきたかを具体的な例を挙げてちょっと説明をいただければと思います。
  86. 井出亜夫

    ○井出政府委員 お答えを申し上げます。  一昨年の七月から製造物責任法が施行されたわけでございますけれども、国民生活センターでございますとかあるいは都道府県の消費生活センター、こういうところに寄せられました相談あるいは苦情の件数というものは、施行の前に比べますと、おおむね二倍ぐらいになっております。これは、一つは、法施行による消費者の製品の安全問題に対する意識というものが非常に高まっているということの証左ではないかと考えております。これらの相談あるいは苦情の事例というものにつきましては、消費生活センター等の相談対応という事業によりまして着実に処理されているというところでございます  それから、一方、事業者の側につきましてでございますけれども、製品の安全性確保のために、より安全性を高めた商品の開発ですとかあるいは表示、取扱説明書、そういうふうなものにつきまして大変充実を図ってきているということが見受けられます。と同時に、それぞれの業界の中におきまして、業界全体としてこの問題に対応するという意味での委員会をつくるというふうなこともやっておりまして、業界のサイドにおいても積極的な対応というものを行われている。製造物責任法導入の効果というものはこういうところでもあらわれているのかなというふうに認識をしております。  経済企画庁といたしましては、今後とも、国民生活センターあるいは都道府県等の消費生活センターというところにおきます原因究明体制の充実強化、それから各種相談への対応、あるいは都道府県の自主的な裁判外紛争処理と申しますか、そういう紛争処理体制の整備に対する支援、さらには消費者の安全教育というものを一層充実させることによりまして、総合的な消費者被害の防止・救済策というものを進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  87. 小此木八郎

    ○小此木分科員 それでは、最後にいたしたいと思いますが、これは通告をいたしていないと思いますけれども、日本が世界第二位の経済大国に成長をいたしまして、これからのいわゆる開発途上国への経済援助は、国際的な役割でますます重責を担っている日本にとって、外交政策の重要な柱であるというふうに思っておりますが、それに大きな役割を果たしてきたのが日本輸出入銀行と海外経済協力基金であると思います。  特に海外経済協力基金については、日本輸出入銀行や一般の金融機関などからの通常の条件による融資条件では賄い切れない出資目的として設立された特殊法人でありますが、行政改革の流れを受けて一九九九年をめどに統合が予定されているというふうに聞いております。海外経済協力基金についてどのようなお考えをお持ちなのか、この統合についてはどのように次官御自身がお考えかをぜひお聞かせいただきたいと思います。
  88. 河本三郎

    ○河本政府委員 海外経済協力基金の性格でございますが、発展途上地域の産業の開発並びに経済の安定のために不可欠な極めて重要な資金である、こう認識をしております。その金融については、長期、低利でございます。  そして、御指摘がございましたように、九五年の三月に、政府系金融機関の見直しの一環として九九年をめどに統合されると決定されております。経企庁のODAとそれから輸出入銀行のアンタイドローンというものを統合するわけでございますが、その評価につきましては、援助とビジネスが果たしてなじむのかというようなことも聞いておりますが、それぞれのさまざまな方が評価をされておりますので、私としては、一つの英断ではなかったか、このように考えております。  以上でございます。
  89. 小此木八郎

    ○小此木分科員 経済企画庁政務次官のこれからのますますの御活躍と経済企画庁のそれぞれの皆さんのこれからの国民に対する役割を期待いたしまして、終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  90. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 これにて小此木八郎君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして経済企画庁所管の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  91. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 これより警察庁所管について審査を行います。  まず、概要説明を聴取いたします。白川国家公安委員会委員長
  92. 白川勝彦

    ○白川国務大臣 平成年度及び平成年度警察庁関係の歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、平成年度歳出予算現額は二千四百四十五億一千五百六万円余でありまして、支出済み歳出額は二千四百十一億百十四万円余であります。  この差額三十四億一千三百九十二万円余のうち、翌年度へ繰り越した額は二十一億九千五百四十八万円余であります。  また、不用となった額は十二億一千八百四十三万円余であります。  続きまして、平成年度歳出予算現額は三千六百四十二億四千二百四十三万円余でありまして、支出済み歳出額は三千五百八十億四千百七十二万円余であります。  この差額六十二億七十一万円余のうち、翌年度へ繰り越した額は三十億七千二百八十八万円余であります。  また、不用となった額は三十一億二千七百八十二万円余であります。  以上、警察庁関係の歳出決算について御説明申し上げました。何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  93. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 次に、会計検査院検査概要説明を聴取いたします。会計検査院深田第一局長
  94. 深田烝治

    ○深田会計検査院説明員 平成年度警察庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。  次に、平成年度警察庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  95. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 この際、お諮りいたします。  お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────    平成年度総理府所管組織警察庁一般会計決算に関する概要説明                 警 察 庁  平成年度警察庁関係の歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  平成年度歳出予算現額は、二、四四五億一、五〇六万円余でありまして、支出済歳出額は、二、四一一億一一四万円余であります。  この差額三四億一、三九二万円余のうち、翌年度へ繰り越した額は、二一億九、五四八万円余であります。これは、設計に関する諸条件により工事等が遅延したため、年度支出を完了することができなかったものであります。  また、不用となった額は、一二億一、八四三万円余であります。これは、退職者が少なかったので、退職手当を要することが少なかったこと等のためであります。次に、支出済歳出額の主な費途について、その大略を御説明申し上げます。  第一に、警察庁経費として一、四五五億三、〇八七万円余を支出いたしました。これは、警察庁自体の経費及び都道府県警察に要する経費のうち警察法の規定に基づき国庫が支弁する経費として支出したものであります。  第二に、千葉県警察新東京国際空港警備隊の経費として九八億九、三〇四万円余を支出いたしました。これは、千葉県警察新東京国際空港警備隊が新東京国際空港に係る警備活動を実施するために要する経費として支出したものであります。  第三に、科学警察研究所の経費として一三億一、六一七万円余を支出いたしました。これは、科学捜査、防犯及び交通についての研究、調査等のための経費として支出したものであります。  第四に、皇宮警察本部の経費として七七億六、三七五万円余を支出いたしました。これは、皇宮警察の職員の給与、皇居の警備、行幸啓の護衛等のための経費として支出したものであります。  第五に、警察庁施設費として二二一億七、三二八万円余を支出いたしました。これは、警察庁関係の施設を整備するための経費として支出したものであります。  第六に、都道府県警察費補助経費として五四〇億三、七一八万円余を支出いたしました。これは、警察法に定めるところにより、都道府県警察に要する経費の一部を補助する経費として支出したものであります。  第七に、他省庁からの予算の移替えを受けた経費は、科学技術庁からの科学技術振興調整費として四、〇八八万円余、同じく、国立機関原子力試験研究費として六五二万円余、環境庁からの国立機関公害防止等試験研究費として一、三二四万円余、国土庁からの災害対策総合推進調整費として七七九万円余、同じく、国土総合開発事業調整費として三億一、八三七万円余をそれぞれ支出したものであります。  以上、警察庁関係の歳出決算について御説明申し上げました。何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。     ─────────────    平成年度総理府所管組織警察庁一般会計決算に関する概要説明                 警 察 庁  平成年度警察庁関係の歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  平成年度歳出予算現額は、三、六四二億四、二四三万円余でありまして、支出済歳出額は、三、五八〇億四、一七二万円余であります。  この差額六二億七一万円余のうち、翌年度へ繰り越した額は、三〇億七、二八八万円余であります。これは、設計に関する諸条件により工事等が遅延したため、年度支出を完了することができなかったものであります。  また、不用となった額は、三一億二、七八二万円余であります。これは、退職者が少なかったので、退職手当を要することが少なかったこと等のためであります。次に、支出済歳出額の主な費途について、その大略を御説明申し上げます。  第一に、警察庁経費として二、〇五九億七、六八一万円余を支出いたしました。これは、警察庁自体の経費及び都道府県警察に要する経費のうち警察法の規定に基づき国庫が支弁する経費として支出したものであります。  第二に、千葉県警察新東京国際空港警備隊の経費として一〇〇億七、六二二万円余を支出いたしました。これは、千葉県警察新東京国際空港警備隊が新東京国際空港に係る警備活動を実施するために要する経費として支出したものであります。  第三に、船舶建造費として五億四、八九一万円余を支出いたしました。これは、警察活動に必要な警察用船舶の建造に要する経費として支出したものであります。  第四に、科学警察研究所の経費として二六億二、七二二万円余を支出いたしました。これは、科学捜査、防犯及び交通についての研究、調査等のための経費として支出したものであります。  第五に、皇宮警察本部の経費として八〇億二、三四九万円余を支出いたしました。これは、皇宮警察の職員の給与、皇居の警備、行幸啓の護衛等のための経費として支出したものであります。  第六に、警察庁施設費として六七五億九、二四一万円余を支出いたしました。これは、警察庁関係の施設を整備するための経費として支出したものであります。  第七に、都道府県警察費補助経費として六三〇億二、〇四三万円余を支出いたしました。これは、警察法に定めるところにより、都道府県警察に要する経費の一部を補助する経費として支出したものであります。  第八に、他省庁からの予算の移替えを受けた経費は、科学技術庁からの科学技術振興調整費として四、三一七万円余、同じく、国立機関原子力試験研究費として八五四万円余、環境庁からの国立機関公害防止等試験研究費として一、六八三万円余、国土庁からの災害対策総合推進調整費として七八三万円余、同じく、第四次全国総合開発計画推進調査費として一、〇七八万円余、同じく、国土総合開発事業調整費として八、九一〇万円余をそれぞれ支出したものであります。  以上、警察庁関係の歳出決算について御説明申し上げました。何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  97. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 以上をもちまして警察庁所管説明は終わりました。  これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、警察庁所管については終了いたしました。     ─────────────
  98. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 これより自治省所管公営企業金融公庫について審査を行います。  まず、概要説明を聴取いたします。白川自治大臣。
  99. 白川勝彦

    ○白川国務大臣 平成年度及び平成年度における自治省所管決算につきまして、概要を御説明申し上げます。  まず、平成年度でございます。  一般会計歳出決算につきましては、歳出予算現額は、当初予算額十二兆八千二百七十億百二十五万円余、予算補正追加額三百十二億四千四百五十二万円余、予算補正修正減少額七千二百八億四千六百五十一万円余、総理府所管から移しかえを受けた額三千二百八十三万円、前年度繰越額九十一億二千七百九十一万円余、予備費使用額十四億九千二百三十八万円余、合計十二兆一千四百八十億五千二百三十九万円でありまして、これに対し、支出済み歳出額は十二兆一千四百十八億七千六百二万円余で、差額六十一億七千六百三十六万円余を生じましたが、この差額のうち、翌年度繰越額は五十四億一千五百五十三万円余、不用額は七億六千八十三万円余であります。  次に、平成年度特別会計決算につきまして御説明を申し上げます。  自治省関係の特別会計といたしましては、交付税及び譲与税配付金特別会計がありますが、この特別会計には、交付税及び譲与税配付金勘定と交通安全対策特別交付金勘定を設けております。  まず、交付税及び譲与税配付金勘定につきましては、歳入予算額は二十一兆八千四百七十三億四千四百三十一万円余でありまして、これに対し、収納済み歳入額は二十一兆九千三百八億五千四百六十八万円余となっております。  また、歳出予算現額は二十一兆四千五百八十四億九千六百三十八万円余でありまして、これに対し、支出済み歳出額は二十一兆四千四百十七億二千二百三十九万円余、不用額は百六十七億七千三百九十九万円余であります。  次に、交通安全対策特別交付金勘定につきましては、歳入予算額は九百八十二億九千九百四十三万円余でありまして、これに対し、収納済み歳入額は九百四十五億三千二百七十九万円余となっております。  また、歳出予算現額は九百三億四千百六十九万円余でありまして、これに対し、支出済み歳出額は八百七十八億四千六百十八万円余、不用額は二十四億九千五百五十一万円余であります。  続きまして、平成年度でございます。  一般会計歳出決算につきましては、歳出予算現額は、当初予算額十三兆三千七百七十億五千八百七十万円余、予算補正追加額六百六十一億五千九百五十万円余、予算補正修正減少額九千五百十六億七千九十九万円余、総理府所管から移しかえを受けた額六千三百七十九万円余、前年度繰越額五十四億一千五百五十三万円余、予備費使用額十億三百三十八万円余、合計十二兆四千九百八十億二千九百九十四万円余でありまして、これに対し、支出済み歳出額は十二兆四千七百五十二億九百五十三万円余で、差額二百二十八億二千四十万円余を生じましたが、この差額のうち、翌年度繰越額は百四十一億一千八十万円余、不用額は八十七億九百六十万円余であります。  次に、平成年度特別会計決算につきまして御説明を申し上げます。  まず、交付税及び譲与税配付金勘定につきましては、歳入予算額は二十六兆三千七百七十億九千二百三十四万円余でありまして、これに対し、収納済み歳入額は二十六兆四千九百十三億五千四十二万円余となっております。  また、歳出予算現額は二十五兆九千三百四十四億五千七十五万円余でありまして、これに対し、支出済み歳出額は二十五兆八千百六十億一千百七十三万円余、不用額は千百八十四億三千九百一万円余であります。  次に、交通安全対策特別交付金勘定につきましては、歳入予算額は九百七十九億六千五百四十七万円余でありまして、これに対し、収納済み歳入額は九百五十三億二千九百四十二万円余となっております。  また、歳出予算現額は九百億二千四百八十万円余でありまして、これに対し、支出済み歳出額は八百七十九億九千三百六十万円余、不用額は二十億三千百十九万円余であります。  次に、平成年度及び平成年度一般会計及び特別会計における主な事項につきましては、お手元に配付してある資料のとおりでありますが、委員各位のお許しを得まして御説明を省略させていただきたいと存じます。  何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  100. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 次に、会計検査院検査概要説明を聴取いたします。会計検査院深田第一局長
  101. 深田烝治

    ○深田会計検査院説明員 平成年度自治省の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。  次に、平成年度自治省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。  これは、国会議員の選挙等の委託事務において、投票所入場券を郵送するに当たって、あらかじめ受取人の住所等の郵便番号ごとに区分することなどにより、郵便料金の割引を受けることができたのに、自治省において割引制度の活用について指導が十分でなかったなどのため、百十市町村に対する委託費が不経済となっておりました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。  以上、簡単でございますが、説明を終わります。  次いで、平成年度公営企業金融公庫決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。  また、平成年度公営企業金融公庫決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  102. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 ただいまの会計検査院指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。白川自治大臣。
  103. 白川勝彦

    ○白川国務大臣 ただいま説明がありました平成年度決算検査報告において掲記されております処置済み事項につきましては、会計検査院の御指摘に基づき、平成八年九月に都道府県に通達を発するなどして郵便料金の割引制度の周知を図るとともに、市区町村においてこれを活用するよう指導を行うなどの処置を講じたところであります。  今後とも、予算の効率的な執行について努力する所存であります。
  104. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 この際、お諮りいたします。  お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────    平成年度自治省所管決算概要説明                 自 治 省  平成年度における自治省所管決算につきまして、概要を御説明申し上げます。  一般会計歳出決算につきましては、歳出予算現額は、当初予算額十二兆八千二百七十億百二十五万円余、予算補正追加額三百十二億四千四百五十二万円余、予算補正修正減少額七千二百八億四千六百五十一万円余、総理府所管から移替を受けた額三千二百八十三万円、前年度繰越額九十一億二千七百九十一万円余、予備費使用額十四億九千二百三十八万円余、合計十二兆千四百八十億五千二百三十九万円でありまして、これに対し、支出済歳出額は十二兆千四百十八億七千六百二万円余で、差額六十一億七千六百三十六万円余を生じましたが、この差額のうち、翌年度繰越額は五十四億千五百五十三万円余、不用額は七億六千八十三万円余であります。  以下、支出済歳出額の主なものにつきまして、御説明を申し上げます。  まず、地方交付税交付金でありますが、歳出予算現額は十二兆六百八十七億千百六十九万円余、支出済歳出額は十二兆六百八十七億千百六十九万円余でありまして、全額支出済であります。この経費は、「交付税及び譲与税配付金特別会計法」に基づき、平成年度の所得税、法人税及び酒税の収入見込額のそれぞれ百分の三十二に相当する額、消費税の収入見込額のうち交付税及び譲与税配付金特別会計歳入となる消費譲与税分を除いた額の百分の二十四に相当する額並びにたばこ税の収入見込額の百分の二十五に相当する額の合算額に平成年度の地方交付税交付金の特例措置による額を加算した額を、交付税及び譲与税配付金特別会計の交付税及び譲与税配付金勘定へ繰り入れたものであります。  次に、地方債元利助成費でありますが、歳出予算現額は二十億四千七十九万円余、支出済歳出額は二十億三千六百九万円余、不用額は四百七十万円余となっておりまして、この経費は、新産業都市の建設及び工業整備特別地域等の整備に係る地方債の特別調整分に対する利子補給金として、道府県に対し、交付したものであります。  次に、地方公営企業助成費でありますが、歳出予算現額は百十七億二百七十七万円余、支出済歳出額は百十七億百八十三万円余、不用額は九十三万円余となっておりまして、この経費は、公営企業金融公庫の上水道事業等に係る貸付利率の引下げのための補給金として、同公庫に対し、交付したもの等であります。  次に、国有提供施設等所在市町村助成交付金でありますが、歳出予算現額は二百十五億五千万円、支出済歳出額は二百十五億五千万円でありまして、全額支出済であります。  次に、施設等所在市町村調整交付金でありますが、歳出予算現額は五十六億円、支出済歳出額は五十六億円でありまして、全額支出済であります。前述の経費及びこの経費は、米軍及び自衛隊が使用する国有提供施設等の所在する都及び市町村に対し、交付したものであります。  次に、消防防災施設等整備費でありますが、歳出予算現額は百六十八億三千百六十五万円余、支出済歳出額は百五十一億七千百九十万円余、翌年度繰越額は十一億二千六百四十六万円、不用額は五億三千三百二十九万円余となっておりまして、この経費は、消防防災施設等の整備に要する経費の一部を関係地方公共団体に対し、補助するために要したものであります。  以上が一般会計歳出決算概要であります。  次に、特別会計決算につきまして、御説明を申し上げます。  自治省関係の特別会計といたしましては、交付税及び譲与税配付金特別会計がありますが、この特別会計には、交付税及び譲与税配付金勘定と交通安全対策特別交付金勘定を設けております。  まず、交付税及び譲与税配付金勘定につきましては、歳入予算額は二十一兆八千四百七十三億四千四百三十一万円余でありまして、これに対し、収納済歳入額は二十一兆九千三百八億五千四百六十八万円余となっております。  また、歳出予算現額は二十一兆四千五百八十四億九千六百三十八万円余でありまして、これに対し、支出済歳出額は二十一兆四千四百十七億二千二百三十九万円余、不用額は百六十七億七千三百九十九万円余であります。  不用額を生じましたのは、一時借入金の利子の支払が少なかったこと等によるものであります。  支出済歳出額の主なものは、第一に、地方交付税交付金十五兆五千三百十九億五千四百十一万円でありまして、これは、地方団体の基準財政需要額が基準財政収入額を超える場合にその財源不足額に応じて必要な財源を、また災害その他特別な財政需要等に対し必要な財源を、それぞれ地方団体に交付したものであります。  第二に、地方譲与税譲与金一兆九千四十九億九千五百六十三万円余でありますが、これは、消費譲与税譲与金、地方道路譲与税譲与金、石油ガス譲与税譲与金、航空機燃料譲与税譲与金、自動車重量譲与税譲与金及び特別とん譲与税譲与金として、関係地方公共団体に譲与したものであります。  次に、交通安全対策特別交付金勘定につきましては、歳入予算額は九百八十二億九千九百四十三万円余でありまして、これに対し、収納済歳入額は九百四十五億三千二百七十九万円余となっております。  また、歳出予算現額は九百三億四千百六十九万円余でありまして、これに対し、支出済歳出額は八百七十八億四千六百十八万円余、不用額は二十四億九千五百五十一万円余であります。  支出済歳出額の主なものは、交通安全対策特別交付金八百四十九億二千六百二万円でありまして、これは道路交通安全施設の設置等の財源として、都道府県及び市町村に対し交付したものであります。  以上、平成年度自治省所管決算概要を御説明申し上げました。  なにとぞ、よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。     ─────────────    平成年度業務概況説明              公営企業金融公庫  公営企業金融公庫平成年度業務概況について御説明申し上げます。  平成年度における貸付計画額は当初一兆七千百三十三億円でありました。  これに対し貸付実行額は一兆九千二百二十億八百三十三万円であり、前年度と比較して十一パーセントの増になっております。  一方、この原資としては、公営企業債券の発行による収入等一兆九千二百二十億八百三十三万円を充てたのでございます。  なお、当年度における元利金の回収額は一兆六千百四十六億六千三百九十九万円余でありまして延滞となっているものはございません。  貸付実行額の内訳は、地方公共団体の営む上水道事業、下水道事業等に対するもの一兆千九百十四億九千百六十万円、公営住宅事業及び臨時地方道整備事業等に対するもの七千百三十四億三千九百八十万円、地方道路公社及び土地開発公社に対するもの百七十億七千六百九十三万円となっております。  以上により、当年度末における貸付残高は十六兆四千百七十五億六千五百三十五万円余になり、前年度末残高と比較して八パーセントの増になったのでございます。  また、農林漁業金融公庫から委託を受けて公有林整備事業及び草地開発事業に対し百四十七億九千二百七十万円の貸付けを実行しました。  このため、受託貸付の当年度末における貸付残高は四千百九十二億百二十三万円余になっております。  次に、当年度における公営企業債券の発行額は二兆五百六十二億六千五百二十二万円余でありまして、このうち公募債が一兆五千二百六十二億六千五百二十二万円余、縁故債が五千三百億円であります。  次に、公営企業健全化基金について申し上げますと、当年度における公営競技納付金の収入額四百七十九億五千六百四万円余を基金に充てました。一方、基金の運用益三百八十七億八千四百八万円余を当年度における地方債の利子の軽減に要する費用に充てました。  この結果、当年度末における基金総額は六千三百三十七億五千九百四十六万円余になりました。  次に、収入・支出の状況について申し上げますと、収入済額は収入予算額九千八百三十六億三千五百二十七万円余に対し九千八百十八億二千六百二十七万円余、支出済額支出予算額八千八百六十八億六千九百四十一万円余に対し八千六百四十六億五十八万円余でありました。  また、損益の状況でございますが、貸付金利息等の利益金総額九千八百二十八億百六十九万円余に対し、債券利息及び債券借換損失引当金繰入並びに事務費等の損失金総額九千六百二十九億五千六百六十七万円余でありまして、差し引き百九十八億四千五百二万円余を債券発行差金等の償却に充当いたしましたので、利益金は生じておりません。  以上、平成年度公営企業金融公庫業務の概況について御説明申し上げました。  何とぞよろしく御審議の程をお願いいたします。     ─────────────    平成年度自治省所管決算概要説明                 自 治 省  平成年度における自治省所管決算につきまして、概要を御説明申し上げます。  一般会計歳出決算につきましては、歳出予算現額は、当初予算額十三兆三千七百七十億五千八百七十万円余、予算補正追加額六百六十一億五千九百五十万円余、予算補正修正減少額九千五百十六億七千九十九万円余、総理府所管から移替を受けた額六千三百七十九万円余、前年度繰越額五十四億千五百五十三万円余、予備費使用額十億三百三十八万円余、合計十二兆四千九百八十億二千九百九十四万円余でありまして、これに対し、支出済歳出額は十二兆四千七百五十二億九百五十三万円余で、差額二百二十八億二千四十万円余を生じましたが、この差額のうち、翌年度繰越額は百四十一億千八十万円余、不用額は八十七億九百六十万円余であります。  以下、支出済歳出額の主なものにつきまして、御説明を申し上げます。  まず、地方交付税交付金でありますが、歳出予算現額は十二兆三千二十一億千四百七十五万円余、支出済歳出額は十二兆三千二十一億千四百七十五万円余でありまして、全額支出済であります。この経費は、「交付税及び譲与税配付金特別会計法」に基づき、平成年度の所得税、法人税及び酒税の収入見込額のそれぞれ百分の三十二に相当する額、消費税の収入見込額のうち交付税及び譲与税配付金特別会計歳入となる消費譲与税分を除いた額の百分の二十四に相当する額並びにたばこ税の収入見込額の百分の二十五に相当する額の合算額に平成年度の地方交付税に相当する金額を超えて繰り入れられた額を控除し平成年度の地方交付税交付金の特例措置による額を加算した額を、交付税及び譲与税配付金特別会計の交付税及び譲与税配付金勘定へ繰り入れたものであります。  次に、参議院議員通常選挙費でありますが、歳出予算現額は五百五十三億四千七百十四万円余、支出済歳出額は五百七億三千三百九十万円余、不用額は四十六億千三百二十三万円余となっておりまして、この経費は、参議院議員通常選挙の執行に要したものであります。  次に、政党助成費でありますが、歳出予算現額は三百十一億三千三百八十一万円余、支出済歳出額は三百四億千七百五十九万円余、不用額は七億千六百二十一万円余となっておりまして、この経費は、法人である政党に対し交付する政党交付金等に要したものであります。  次に、地方債元利助成費でありますが、歳出予算現額は十五億二千四百五十四万円余、支出済歳出額は十五億二千四十五万円余、不用額は四百八万円余となっておりまして、この経費は、新産業都市の建設及び工業整備特別地域等の整備に係る地方債の特別調整分に対する利子補給金として、道府県に対し、交付したものであります。  次に、地方公営企業助成費でありますが、歳出予算現額は百十八億千三百十三万円余、支出済歳出額は百十二億三百四十二万円余、翌年度繰越額は五億三千九百八十七万円余、不用額は六千九百八十三万円余となっておりまして、この経費は、公営企業金融公庫の上水道事業等に係る貸付利率の引下げのための補給金として、同公庫に対し、交付したもの等であります。  次に、国有提供施設等所在市町村助成交付金でありますが、歳出予算現額は二百二十三億五千万円、支出済歳出額は二百二十三億五千万円でありまして、全額支出済であります。  次に、施設等所在市町村調整交付金でありますが、歳出予算現額は五十八億円、支出済歳出額は五十八億円でありまして、全額支出済であります。前述の経費及びこの経費は、米軍及び自衛隊が使用する国有提供施設等の所在する都及び市町村に対し、交付したものであります。  次に、消防防災施設等整備費でありますが、歳出予算現額は四百三十億九千百二十六万円余、支出済歳出額は三百五億二千七百三十七万円余、翌年度繰越額は百三億九千五百二十九万円、不用額は二十一億六千八百六十万円余となっておりまして、この経費は、消防防災施設等の整備に要する経費の一部を関係地方公共団体に対し、補助するために要したものであります。  以上が一般会計歳出決算概要であります。  次に、特別会計決算につきまして、御説明を申し上げます。  自治省関係の特別会計といたしましては、交付税及び譲与税配付金特別会計がありますが、この特別会計には、交付税及び譲与税配付金勘定と交通安全対策特別交付金勘定を設けております。  まず、交付税及び譲与税配付金勘定につきましては、歳入予算額は二十六兆三千七百七十億九千二百三十四万円余でありまして、これに対し、収納済歳入額は二十六兆四千九百十三億五千四十二万円余となっております。  また、歳出予算現額は二十五兆九千三百四十四億五千七十五万円余でありまして、これに対し、支出済歳出額は二十五兆八千百六十億千百七十三万円余、不用額は千百八十四億三千九百一万円余であります。  不用額を生じましたのは、一時借入金の利子の支払が少なかったこと等によるものであります。  支出済歳出額の主なものは、第一に、地方交付税交付金十六兆千五百二十八億七千三百二十九万円余でありまして、これは、地方団体の基準財政需要額が基準財政収入額を超える場合にその財源不足額に応じて必要な財源を、また災害その他特別な財政需要等に対し必要な財源を、それぞれ地方団体に交付したものであります。  第二に、地方譲与税譲与金一兆九千三百九十三億四千九十一万円余でありますが、これは、消費譲与税譲与金、地方道路譲与税譲与金、石油ガス譲与税譲与金、航空機燃料譲与税譲与金、自動車重量譲与税譲与金及び特別とん譲与税譲与金として、関係地方公共団体に譲与したものであります。  次に、交通安全対策特別交付金勘定につきましては、歳入予算額は九百七十九億六千五百四十七万円余でありまして、これに対し、収納済歳入額は九百五十三億二千九百四十二万円余となっております。  また、歳出予算現額は九百億二千四百八十万円余でありまして、これに対し、支出済歳出額は八百七十九億九千三百六十万円余、不用額は二十億三千百十九万円余であります。  支出済歳出額の主なものは、交通安全対策特別交付金八百五十億四千八百三十七万円余でありまして、これは道路交通安全施設の設置等の財源として、都道府県及び市町村に対し交付したものであります。  以上、平成年度自治省所管決算概要を御説明申し上げました。  なにとぞ、よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。     …………………………………    平成年度決算自治省についての検査の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  平成年度自治省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。  これは、国会議員の選挙等の委託費の算定に関するものであります。この委託費は、国会議員の選挙等に関する事務の執行に要する経費地方公共団体に交付しているものであります。  この委託費のうち投票所入場券の配布に要する経費の算定において、投票所入場券の郵送について郵便料金の割引制度を活用することなどにより、委託費の節減を図る要があると認められましたので、当局の見解をただしましたところ、自治省では、八年九月に、都道府県に対して通達を発するなどして、割引制度についての周知を図り、これを活用するよう指導するとともに、割引制度の利用の実態等を適切に把握できるようにするため、委託費の算定に用いる資料の様式を整備するなどの処置を講じたものであります。  以上、簡単でございますが説明を終わります。     ─────────────    平成年度業務概況説明              公営企業金融公庫  公営企業金融公庫平成年度業務概況について御説明申し上げます。  平成年度における貸付計画額は当初一兆七千九百三十六億円でありました。  これに対し貸付実行額は一兆八千二百四億千七百二十万円であり、前年度と比較して五パーセントの減になっております。  一方、この原資としては、公営企業債券の発行による収入等一兆八千二百四億千七百二十万円を充てたのでございます。  なお、当年度における元利金の回収額は一兆六千八百八十三億六千九百九十二万円余でありまして延滞となっているものはございません。  貸付実行額の内訳は、地方公共団体の営む上水道事業、下水道事業等に対するもの一兆二千九百十四億二千七百七十万円、公営住宅事業及び臨時地方道整備事業等に対するもの五千百十四億四百十万円、地方道路公社及び土地開発公社に対するもの百七十五億八千五百四十万円となっております。  以上により、当年度末における貸付残高は十七兆五千四百億四千百四万円余になり、前年度末残高と比較して七パーセントの増になったのでございます。  また、農林漁業金融公庫から委託を受けて公有林整備事業及び草地開発事業に対し百四十六億三千四百十万円の貸付けを実行しました。  このため、受託貸付の当年度末における貸付残高は四千二百五十九億三千百十万円余になっております。  次に、当年度における公営企業債券の発行額は二兆三千三百二十五億二千百十一万円余でありまして、このうち公募債が一兆七千八百五億二千百十一万円余、縁故債が五千五百二十億円であります。  次に、公営企業健全化基金について申し上げますと、当年度における公営競技納付金の収入額四百四十八億二千八百十六万円余を基金に充てました。一方、基金の運用益三百九十八億六千六百八十三万円余を当年度における地方債の利子の軽減に要する費用に充てました。  この結果、当年度末における基金総額は六千七百八十五億八千七百六十三万円余になりました。  次に、収入・支出の状況について申し上げますと、収入済額は収入予算額一兆二百二十一億三千百七十六万円余に対し一兆二十一億六千五百七十九万円余、支出済額支出予算額八千九百八十四億八千五百六十万円余に対し八千七百八十億五千八百六十八万円余でありました。  また、損益の状況でございますが、貸付金利息等の利益金総額一兆三十二億八千五百二十七万円余に対し、債券利息及び債券借換損失引当金繰入並びに事務費等の損失金総額九千七百八十一億四十六万円余でありまして、差し引き二百五十一億八千四百八十万円余を債券発行差金等の償却に充当いたしましたので、利益金は生じておりません。  以上、平成年度公営企業金融公庫業務の概況について御説明申し上げました。  何とぞよろしく御審議の程をお願いいたします。     ─────────────
  106. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 以上をもちまして自治省所管公営企業金融公庫説明は終わりました。     ─────────────
  107. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。正森成二君。
  108. 正森成二

    ○正森分科員 私は、岡山県に設置されておりますチボリというレジャーランドの建設に絡んで質問をさせていただきたいと思います。  チボリというのは、言うまでもなく、白夜の国であるデンマークの首都のコペンハーゲンにございます。ここではレストラン、コンサートホール、野外ステージなどとともにスロットマシン、ミニカジノがあり、あるいはジェットコースター、バイキングシップなど各種遊技施設もありまして、すべて有料であります。開園時間は、例えば四月下旬から九月上旬では夜十二時までということで、主として大人の人が夜楽しむということになっております。  これを岡山県に持ってこようという仕掛け人になりました堀貞一郎という方がおられます。著書を書いておりますが、その中で「アルコール、ギャンブル、スリルランド、エンターテイメントを駆使し、一時の忘却をつくり出すシステム」である、こういうぐあいに言っております。ですから、これが地方自治法に言う公園とは相当性格の異なったレジャーランドであるということは、非常にはっきりした内容のものではなかろうかと私は思います。  そこで、これから伺わせていただきたいと思いますが、岡山県はレジャー施設運営目的とするチボリ・ジャパン株式会社との間に職員派遣協定を結びまして給与等を支払っていた、こういう件がございます。これにつきまして、昨年の九六年二月二十七日に、岡山地方裁判所はこれを違法として、チボリに対して金一億七千八百九十二万円余の支払いを命ずることを中心とする判決を言い渡しました。  この判決は、地方自治体が受けた判決としては非常に珍しい判決で、しかも相当理論的に整理がされております。ここに持ってまいりましたが、こういう相当分厚いものであります。質問時間が三十分ですから、そのさわりだけを、初めてお聞きになることであるかもしれない大臣に御理解いただけるように、要約させていただきます、大臣は法律家ですから。   岡山県は、チボリ公園事業を、本来は岡山県が直接行政施策として行うべき事務である地方自治法二条三項の「公園、緑地、劇場、音楽堂その他文化に関する施設」等を融合した拠点の設置を目的とした公共性の高い事業であるとし、被告会社については、営利企業ではあるものの、岡山県がなすべき公共的事業をいわば代行させるため岡山県の経費負担の節減並びに民間活力及び経営手法の導入の必要上設立したものとして、右事業の推進に当たっては、岡山県からの被告会社に対する事業費負担や助成金等の公的支援を惜しまない方針であり、その一環として、岡山県が同被告と密接な連絡調整等を維持する必要があることや、被告会社が設立後日が浅く、経営収入もなく、十分な人材も確保できていないことなどを理由に挙げ、右事業が軌道に乗るまでの措置として、被告会社へ岡山県職員を派遣して専らその業務に従事させるとともに、派遣職員の給与等を岡山県において支給し負担することとし、被告会社との間において、右趣旨の職員派遣協定を締結し、以後これを毎年更新し、別表のとおり平成二年二月二〇日から平成七年九月三〇日まで職員派遣及び給与等支給を継続してきた。   右職員派遣に際しては、手続上、職専免条例二条三号、職専免規則二条二号に基づいて、派遣を命ずる職員に予め職務専念義務の免除申請を提出させ、被告知事がそれを承認する方法がとられてきた。 こういう内容であります。  これに対して、裁判所はこう言っているのですね。   ところで、地方公務員法三五条は、職務専念義務を免れる場合として「条例に特別の定がある場合」と規定するのみで、格別の限定を付していないため、「特別の定」の内容については、条例制定権を有する地方公共団体に広範な裁量権が与えられていると解し得る余地もないではないが、前記のとおりの職務専念義務の趣旨や、公務員は公務に就いているからこそ公務員なのであるといった原則、その給与等が地方公共団体の住民の税負担等により賄われている事実等に照らすと、法律が定めた公務員の基本的規範である職務専念義務を条例により無限定に免除し得るとすることは不合理であるから、職員を地方公共団体以外(特に地方公共団体及び特定の公共的団体以外の団体)に派遣することを目的として、無限定に職務専念義務の免除規定を条例で制定し、或いは条例を解釈運用することは許されないものというべきである。 こういう一般的原則を言っております。その上でいろいろ事実を認定しまして、これは省略します。   前項認定の事実から明らかなように、被告会社は遊園地経営事業等を目的とする営利企業であり、いわゆる第三セクターとはいえ、その資本金に占める岡山県の出資比率は一六パーセント弱程度にとどまっており、地方自治法二四四条の二第三項、同法施行令一七三条の三、同法施行規則一七条により地方公共団体が公の施設の管理を委託することができる法人の要件にも該当しない。岡山県では、チボリ公園事業を、岡山県の都市施策、余暇施策、高齢化施策及び文化施策の一環として行われる県民共通の利益となる事業であり、その他の地域振興等の公の利益に資する極めて公共性の高い事業であると位置づけ、右事業が地方自治法二条三項の「公園、緑地、劇場、音楽堂その他文化に関する施設」等に関わる事業であるとし、被告会社に岡山県のなすべき公共的事業をいわば代行させているなどの理由を構えて、右事業を推進する被告会社に対し、岡山県からの事業費負担や助成金等の公的支援を惜しまない方針であるが、こうい言った上で、 被告会社の事業は、同法条項の一部に関係するとはいえ、営利目的であることにかわりはなく、出資金額を見るだけでも岡山県の支配関与の度合いがさほど高いとはいえないものであり、いずれ結果として地域振興その他の公の利益に関わってくる余地があるとしても、右事業内容そのものが、地方公共団体のなすべき事務と同視し得るといえるようなものでないことは明らかである。 こういうように明確に言った上、結論として、   以上の次第であるから、被告知事による被告会社への岡山県職員の派遣に伴う職務専念義務の免除措置は、解釈上、職専免条例二条三号、職専免規則二条二号、五号のいずれにも該当しないものというべきであり、地方公務員法三五条に反し違法である。 こう言って、   免除措置が違法である以上、これを取り消すなどの是正措置を講じた上でなければ、派遣職員に対する給与等支給は、法令上の根拠を欠くから許されないものと解すべきであり、右是正措置がない限り、右給与等支給のための公金支出は違法というべきである。 こう言っております。  要約したつもりですが、相当長くなりました。しかし、大分よくおわかりいただいたと思います。  同じように、埼玉県の上尾市が出資しました第三セクターに上尾都市開発株式会社というのがあります。そこにも、市の職員を派遣して給与を支払っていた件についても、浦和地方裁判所は、第三セクターに対し、派遣職員の給与分を不当利得として返還を命ずる同様の判決を下しております。  そこで、これから自治大臣等に伺いますが、自治省はこの判決の理由あるいは結論を当然是認すべきものであると私は思いますが、どのような見解を持っておられますか。
  109. 芳山達郎

    ○芳山政府委員 御指摘がありましたように、岡山地裁の判決でございますけれども、職務専念義務免除によって職員を県の出資する第三セクターの株式会社に派遣をする、そして給与は県が支給をしたという事案でございますが、本件派遣は職務専念義務を免除する場合には該当しない、地公法の三十五条に違反する、また県が当該職員の給与を負担したことは法令上の根拠を欠くという判決でございます。  この判決に対する自治省の考え方いかんというお尋ねでございますけれども、いずれにせよ、本件判決につきましては、現在被告側におきまして控訴をしてございます。裁判続行中でございます。そういうことから、本判決についての言及は差し控えさせていただきたいと思いますし、今後の訴訟の推移を十分見守ってまいりたいと考えております。
  110. 正森成二

    ○正森分科員 私の質問を多少誤解したかもしれませんが、私は判決の論評を求めているんじゃないんですね。判決にあらわれた考え方を自治省も同じように踏襲するのか、これは地方自治上の非常に重要な問題ですから、そういうことを聞いているので、あなたのその見解によると、県が控訴、上告すれば五年かかるか十年かかるかわからぬけれども、自治省は手をこまねいて何にもしない、論評は差し控える、指導助言もしないということになるんですか。  そうじゃないでしょうが。あなた方は既に一定のアクションを起こしているでしょう。  新聞によりますと、これは九六年四月五日の日経新聞ですが、自治省は、第三セクター派遣法案というのをつくって、第三セクターに派遣する職員については、これは給与を出してもよろしいというようにしようと思っていたところ、内閣法制局から、第三セクター会社は営利法人で公共性が薄い、だからこういう法案を出すのは見合わすべきであるという意見が述べられて、あなた方は第百三十六国会に提案するのを断念した。新聞に相当大きく出ていますよ。  最高裁の判決を待たずに、あなた方は既に一定のアクションを起こしているじゃないですか。そういうことを棚に上げて、あたかも判決の論評をやるみたいに、最高裁から出るまでは自治省はてれんと何にもしないんだ、そんな答弁がありますか。
  111. 芳山達郎

    ○芳山政府委員 一般論としまして、第三セクターに対して地方公共団体が職員を派遣するという場合、非常にさまざまな形態がございます。その派遣の形態、また当該第三セクターの形態も多様化しております。また、公務とその第三セクターの業務とのかかわり合いもさまざまでございまして、それぞれ個々具体的なケースに即して、これについて総合的に判断しなければならないと思っております。  御指摘のように、第三セクターに対する判決でございますけれども、地裁レベルまた高裁レベルで多岐にわたっておりまして、今先生御指摘にありましたチボリの地裁の判決ではそのとおりでございます。ただ、ほかの地裁の判決によりますと、当該法人の業務の公共性や派遣先での職務内容にかんがみて、また出資比率についても低いがゆえに職員を派遣し連絡調整をしなければならないというような論評から、派遣が適法であるとされた例もございます。また、行政の的確な遂行を図る見地からも、自治体との密接な連携を保つためからも、職員の派遣が合理的であるという裁判例もございます。  そういうことから、自治省におきましては、今御指摘ありましたように、職員の派遣について、いろいろの観点から、法的な側面を踏まえて現在いろいろの面で詰めて研究を深めておる段階でございまして、いずれにせよ、地方公共団体の職員の派遣については、財政運営通達等においても、適切、的確に、慎重に行うようにということで指導をしておるところでございます。
  112. 正森成二

    ○正森分科員 今判決の中でも、法と施行令と規則を引用しましたが、それを見ると、公共団体とか、あるいは出資金が二分の一以上とか、あるいは四分の一以上で役員が半分以上とか、いろいろ限定があって、それ以外のものに対しては非常に厳格な立場を講ずるようになっているはずであります。  そこで、次の問題に移らせていただきますが、自治省は、チボリ計画について、県が建設するチボリの基盤文化教養施設は公の施設であり、財産面から見れば行政財産である、こういう見解をとっているのではありませんか。
  113. 松本英昭

    ○松本政府委員 「公の施設」と申しますのは、地方自治法第二百四十四条におきまして、当該普通地方公共団体の住民の利用に供するための施設で、住民の福祉を増進する目的をもって普通地方公共団体が設ける施設ということとされております。そして、公の施設でありますれば、財産面からは行政財産であるということになるわけでございます。  問題は、公の施設であるか否かということにつきましては、当該施設の客観的な性格の上に、基本的には地方公共団体が公共の用に供する意思を有するか否かということにより決定されるものであります。したがいまして、同種の施設が公の施設となったりあるいは普通財産として取り扱われたりすることがあるものでございます。  特に、今問題になっておりますようなレジャー施設のたぐいにはそういうことが多々あるわけでございまして、岡山県におかれましても、チボリ公園の施設につきまして、この趣旨を御検討の上普通財産とする方向で対処されているものと考えております。  それで、そのことは当該地方公共団体の決定することでございますので、普通財産としての決定の方向で対処されるということについて、自治省として、それは不適当とかなんとかと言うことではないと思っております。
  114. 正森成二

    ○正森分科員 ちょっと後の方が聞こえなかったんですが、岡山県当局の判断というようなことも言われて、普通財産として供用するといいますか、使用させるということについて必ずしも了承してない、あるいは完全に同じ意見ではない、こう答えたんですか。
  115. 松本英昭

    ○松本政府委員 岡山県において御決定なさることでございまして、私どもとして、それが適当、不適当と言うつもりはございませんということでございます。
  116. 正森成二

    ○正森分科員 これから議論しますが、岡山県が決めれば何でもそれでいいので、違法や不当など、自治省がとやかく言うものではない、こういうことですか。つまり、地方自治体がやりたい放題で、どんなに裁判所でそれがおかしいと言われても、それは構わないという考えですか。  大体、あなたの部下だと思いますが、行政局行政課の行政第三係の人が、去年私の部屋へ来て言ったところでは、これは普通財産というようなものではない、公の施設で、しかも公用財産であるということを詳細にここに述べていますよ。現にそのときは、いろいろ問題があっても、県は、ここに資料がありますが、いわゆる裁判の準備書面の中で、これは公有財産であることはもちろんですが、その中に普通財産と公用財産があるのですが、その公用財産だということを一生懸命主張していたのですよ。  ところが、判決でころっと負けて、これは営利企業に使うものだというように言われた途端に、県委員会でいろいろの人から指摘をされると立場をころっと変えまして、現在の長野知事ではありませんが、縮めて言いますと、財産区分についての御質問でございますが、倉敷チボリ公園は、当初から、チボリ・ジャパン社が県の整備した施設を一体的に管理運営するということを前提として整備されているものでありまして、普通財産として貸し付けることが適当であると考えている次第であります、こういう答弁を、まだほかにいろいろありますが、二回も三回も繰り返しておる。  だから、当初は、非常に公共性が高い、本当は県が行うものを代行させておるのだ、裁判で堂々とこう言っておいて、ころっと負けたら、これは普通財産だという主張をしているのですよ。  人間としても、県は人間ではないけれども、言語道断、君子豹変というから、自分は君子だから構わぬと思っておるのかもしらぬけれども、こういうようなことが許されるのですか。それを自治省は、県がなさることだから、それは県がお決めになる、これでいいのですか。
  117. 松本英昭

    ○松本政府委員 財産の中に、これは公用財産として行政財産でなければならないというようなものもございます。例えば庁舎などはそういうたぐいのものでございます。そういうものもございますが、今申し上げましたように、レジャー施設などのような施設につきましては、これを公共用財産として直接住民の利便に供するかどうか、そのことについては地方公共団体において判断をされる余地があるわけでございます。  したがいまして、あくまでも当該地方公共団体がその管理の形態としてどういう形でこれを供するのがいいのか、そういうことを判断された上で普通財産として貸し付けという方向を選択されて、今その方向で対処されようとなされるものと考えておるところでございまして、当該施設の性格でもって直ちにすべての財産が行政財産である、あるいは普通財産であるというように区分し切れるものではないと考えておるところでございます。
  118. 正森成二

    ○正森分科員 今の答弁は非常におかしい。事実に合致しないのじゃないですか。  その管理運営の仕方で変わってくると言いますが、例えば岡山県にでも広島県にでもいっぱいありますが、例えば体育館をつくる、そのほかのいろいろな施設をつくって、建物は県がつくっておるけれども、その管理運営は地元の市町村がやるというような例はいっぱいありますよ。そういう場合には、これは公用財産だということは自明の理になっております。だから、管理運営で違ってくるというような、そういう言い方は不正確ではありませんか。  それからまた、もう一つ言わせていただきたいと思いますが、知事は今まで、県が本来やるべきことを代行させておる、だから、公有財産でしかも公用財産だということで、後でも述べますが、いっぱい財政的援助をやってきた。  ところが、それが、判決で負けて、一転して今度は普通財産だということになったとしますと、本件の責任がある長野士郎という人が「逐条 地方自治法」というのを書いているのです。膨大なこんな本で、私が当事者が書いているからどんな本かと思ってちょっと読んでみたら、地方自治法の二百三十八条の五のところの解説が書いてある。それを見ますと、普通財産について書いてありまして、「普通財産は、行政財産のように行政執行上の用具として直接使用されるべきものではなく、その経済的価値を保全発揮することにより、間接的に普通地方公共団体の行政に貢献せしめるため、原則として一般私法の適用を受けて管理処分されるべき性質のものである。」こういうようにはっきりと言っております。  それで、同じように、大臣はよく御存じでしょうが、有斐閣から出ている法律学全集があります。その「地方自治法」を見ますと、これは俵静夫教授のお書きになった部分ですが、その中で同じように普通財産についてこう言っております。「地方公共団体は、一般私人と同様の立場において普通財産を所有する。普通財産は、行政財産と異なり、直接行政上の目的に供するものではなく、主として経済的価値の保全発揮により、その管理処分から生じた収益を地方公共団体の財源に充て、間接に地方公共団体の行政に貢献せしめるため管理又は処分されるものであるから、原則として、一般私法の適用のもとに、これを貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、」等々ができる、こう書いてありますよ。  だから、普通財産なら余計、一般私法の私人間の資本主義社会における原則に基づいて、借りたらそれに匹敵するものをちゃんともらうということでなきやおかしいじゃないですか。  ところが、実際上は、今までやってきたことはどうかといえば、膨大な金を出しているのですよ。幾らでも例がありますが、ここに、資料をちょっと見ますと、県は建設費負担で既に百八十五億円出しておる。資本金が二十億、無利子融資が三十五億、開業前費用への補助として四十六億、借地料負担、これは黒字になるまでだというので二十年間とか二十三年間とかいろいろ計算の仕方があるが百三十八億円、駐車場をつくらなければならぬので五十億円、道路、デッキなど周辺整備四十五億、宣伝費、派遣職員給与等で四億、五百二十三億という数字が出ております。  こんなものを出して、それで普通財産だと。地方自治法二条に言う公園でもない、裁判所も明白に言っている。公用財産というよりまだおかしいじゃないですか、普通財産だということになれば。  自治大臣、頭だけで考えている官僚でなしに、政治家として答えていただきたい。いやいや、行政局長、要らぬこと答えなくていい、ろくなことを答えぬじゃないか、あなたは。それでも答えるのか。それじゃ答えろ。
  119. 松本英昭

    ○松本政府委員 先に私の方から説明させていただきますが、行政財産と普通財産の区別は、地方自治法二百三十八条において「行政財産とは、普通地方公共団体において公用又は公共用に供し、又は供することと決定した財産をいい、普通財産、とは、行政財産以外の一切の公有財産をいう。」ということになっております。したがいまして、普通財産の中には、例えば職員宿舎のように、これは別に経済的活動に供するものではございませんけれども、普通財産に区分する、行政財産として区分されないものは普通財産として区分するということにもなっているわけでございます。  先ほど申し上げましたように、先ほどのような施設、いわゆるレジャー施設などというのは、管理運用の形態というものをどういう形でするのが一番いいのかということを考えて、そして、先ほどの、みずから公共用に供するかどうかということを地方公共団体が決定されるわけでございまして、その方が全体としての福祉の向上に役立つということであるならば、それを普通財産として決定して貸し付けに供されるということはあり得ることではないだろうかと私ども考えているところでございます。
  120. 正森成二

    ○正森分科員 大臣、お答えください。今局長は何を言うたやらさっぱりわからぬ。
  121. 白川勝彦

    ○白川国務大臣 先ほどから正森委員の質問をずっと聞いておりまして、私は、今、本来ならば地方公共団体がやるべきことをいろいろな形態でやり、やっているし、またやらなければならないときなのだろうと思います。  と申しますのは、私もいろいろなところで知っておりますが、第三セクターというのがいろいろな形でできておりますが、それでも、ある面では何らかの意味で公が関与するためには窮屈だというのがあるわけでございます。委員御案内のとおり、三千三百の地方自治体のうち三分の一が過疎市町村でございまして、そういうところでいろいろな第三セクターがあるわけでございますが、過疎から何らかの意味での脱却を図りたいという試みの中でやっているわけでございます。そして、御案内のとおり、いろいろな公がなすべきことを、我々は民間でやれるものは民間でやってください、こういうことも指導もいたしております。  そういう中で、倉敷市というのは大変大きな市ではございますが、しかし、大きな市は市として、隣の岡山とかそういうところに比べて、自分たちの地域を発展させたいということで、たしか倉敷で今チボリ公園をやられていると思うのでございますが、その地域地域が、地域の町づくりの中で鋭意努力をしている中で、県とも一緒になってこういうことをしているということについて、私はそれぞれの地方自治体の御判断ということで差し支えないと思っております。  もう一つ申し上げたいことは、出資比率が少ない、これは、地方公共団体はそんなに金は出せないのでございます。ただ、事業執行させるためには公の方から出てきていただいて関与してもらうということで、出資比率は少なくても、全体として公が管理しているのだという色彩も出したいというところもあるわけでございます。  そういうことを含めますと、先ほど公務員部長が言いましたように、もう少し経過を見たいと私は思っております。
  122. 正森成二

    ○正森分科員 時間になりましたので、終わらせていただきますが、私は、もう少し経過を見るということでは手おくれになる。ここに朝日新聞五月二十三日付、ごらんになったと思いますが、「第三セクター方式のテーマパーク 七割が採算割れ状態」ということで詳しく資料が出ております。その中には、もう中止し、撤退したところの名前も具体的に出ております。  残念ながら時間が参りましたので、その要旨を申し上げるわけにはまいりませんが、岡山県があるいは倉敷市がやっているということで自治省がこれに追随するのではなしに、適切な法的な解釈、助言あるいは指導ということをするべきではないかというように指摘いたしまして、時間が参りましたので、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  123. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 これにて正森成二君の質疑は終了いたしました。  次に、肥田美代子君。
  124. 肥田美代子

    ○肥田分科員 民主党の肥田美代子でございます。どうぞよろしくお願いします。  私は、今国会で重要法案の一つとなっております医療保険法の改正問題に関連しまして、自治省並びに厚生省にお尋ねいたしたいと思います。  私は、健康保険財政がパンク状態に陥った最も大きな原因は、この国が医師と薬剤師の職能の特徴を生かし切れず、医師が薬を売り、自由裁量で利益を得ることができるという世にも不思議な、G7諸国からは冷笑を買うような、そういうシステムが今なお続いている、そういうところにあろうかと思っております。  健康保険法改正論議の中でも、与野党の協議の中でも、医薬分業という言葉が頻繁に聞かれるようになりましたが、既に五十年おくれの論議であります。しかし、この論議は明らかに時代の大きな流れ、国民のニーズを反映したものであると受けとめております。もちろん、医薬分業と一言で言いましても、医療機関から見れば、薬に依存した経営体質の転換を遂げなければならない、そういうこともございまして、利益擁護団体の圧力も勢いも強くなっているのでございます。  それでも、私どもが肝に銘じなければならないのは、飲み切れずに捨てるほどたくさんの薬を窓口でもらう国民の多くは、既に医薬分業を求めているということでございます。  厚生省は健康保険財政の危機を何とか打開しようと、患者の窓口負担という最も安易な方法で乗り切ろうとしているようですが、恐らくこの数年間で破綻することは目に見えております。しかし、厚生省もいろいろな方面からいろいろな圧力を受けながら、医薬分業に踏み切ろうと苦闘なさっておることは私も十分承知しております。しかし、医薬分業は、厚生省の孤独な闘いだけでどんなにしゃかりきになっても、成就できるほど生易しいものではないと思います。  自治体立病院の開設者であり、その経営と運営に責任を持つのは都道府県でありますが、その都道府県の監督官庁であり、人材の交流もある自治省からもまた大きなお力をおかりしたい、そう思っております。  自治省と厚生省は、およそ一億三千万人の健康と生命を守るために、医療、衛生行政の面では縦割り行政の壁を乗り越えてほしい、そんな切なる思いから私はきょう質問させていただきます。  まず、一つ目の質問でございますが、自治体立病院は地域医療の中核病院でございます。地域住民にとっては、ここは命をはぐくみ、命を預ける最も大切な場所です。その大切な場所の五二%が赤字経営に陥っていると聞いています。そこで、自治体立病院の経営状態、そして赤字経営になった原因、立て直しのための措置はどうなっているか、まずお伺いします。
  125. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 平成年度におきます公立病院事業、公営企業法を適用いたしております病院が九百九十ございますが、その経常収益は三兆七千三百億余、経常費用は三兆八千億余でございまして、経常の損益は七百六十四億円の赤字となっております。  今御指摘ございましたように、約半数、五二・六%の病院が赤字という厳しい経営状況にございます。しかしながら、この経営状況は平成年度平成年度の二カ年連続して赤字額が縮小いたしておりまして、関係者の努力によりまして収支の改善が図られている状況にございます。  自治体病院は、今お話もございましたように、高度医療あるいは救急医療、僻地医療等の不採算部門を受け持つということもございまして、経営は厳しいものがございますが、各病院にありましては、経費の節減合理化等、一層の経営努力が必要と考えております。  自治省といたしましても、この地域医療の確保と経営健全化のために必要な支援を行っているところでございまして、特に、平成年度から第四次病院事業経営健全化措置を実施しておりまして、これによりまして経営改善を図ることとした団体は、四十九団体になっております。これらの団体では、平成年度を初年度とするおおむね五カ年度以内を目途にした経営健全化計画をつくっておりまして、総額三百三十九億円の不良債務の解消を目指すという健全化に取り組んでおるところでございます。  なお、平成年度末の実施見込みでは、四つの事業が不良債務を解消して健全化計画を終了することになっております。これらに対しまして、私どもは必要な財政支援を行っているということでございます。
  126. 肥田美代子

    ○肥田分科員 自治体立病院の経営責任や医療従事者の採用、配置などの責任は、開設者である自治体自体にあるわけでございますけれども、自治体立病院には国の予算も投入されておりますし、医療法等の関連法も適用されるわけでございます。当然、どこかの中央省庁の監督、指導が必要になるわけですが、私の質問先と関連しますので、事前に厚生省、自治省の実務の方にお尋ねしましたところ、双方とも、これは私のところではないというふうにおっしゃって、担当領域が複雑だなということで私は面食らったわけでございます。  この分科会自治省所管でありますので、なるべく自治省にお答えいただきたいのですが、端的にお尋ねしますが、医療行政の面において、自治体立病院、診療所に国のレベルで監督、指導なさる立場にあるのは自治省ですか、厚生省ですか。
  127. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 私ども自治省といたしましては、自治体病院に対しましては、地方公営企業法等によりまして、財政運営上の観点から、必要な財政措置あるいは経営指導ということを行っておるわけでございまして、私どもは、そういう角度から自治体病院、公立病院に対する所管を行っておるということでございます。  事柄によりまして、自治省の方で所管をいたします分野と厚生省の方で所管をされます分野は当然あると思いますけれども、私どものかかわりは、今申しましたようなかかわりでございます。
  128. 肥田美代子

    ○肥田分科員 自治省は、都道府県立病院の経営分析の項目に薬品使用効率というのを挙げておられます。薬品の使用に関しても御指導なさっているようですが、その指導内容について教えてください。
  129. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 公立病院に限らずいろいろな設置主体ごとに病院がございますが、病院経営上の観点というのがあると思います。薬品の使用効率はどうなっているか、人件費はどうなっているか、原材料がどうなっているかという、いろいろな項目がございますが、そういうものの一つとして、いろいろな病院を通じて、薬品の使用の効率はどうなっておるかということを経営指導の一つの指標にしておるということでございます。
  130. 肥田美代子

    ○肥田分科員 自治省の地方公営企業年鑑によりますと、投薬薬品使用効率を算定する場合、投薬用薬品費が分母で薬品収入が分子となっております。これに百を乗じて使用効率の数値が出されております。すなわち、厚生省の用語で申しますと、これが薬価差益に当たるわけでございます。安い薬を仕入れれば仕入れるほど、投薬薬品使用効率、すなわち薬価差益が大きくなります。効率という言葉を使っていらっしゃる以上は、この薬価差益を生み出すよう指導しておられるのだと私は思いますが、これはまさに、今求められております世の中の流れと逆行するものだというふうに私は考えております。  現在、医療保険制度の改革論議で最大の問題となっておりますのが、まさに薬価差益の問題、この差益が医療費の中の薬剤費率を増大させ、また、多剤投薬による医薬品の副作用、そういうことの要因ともなっております。まさに薬価差益の解消が医療保険制度の改革の推進と切っても切り得ない関係にある、そういうふうに思います。もはや薬価差益に依存して病院経営を行う時代は過ぎた、そんな余裕は医療保険財政には残されていないというふうにも考えます。  そこで、自治省にお願いいたしたいことは、第四次病院事業健全化措置、その具体化においては、厚生省と連携しながら、自治体立病院が薬価差益に依存するのではなく、医薬分業を推進するよう御指導いただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  131. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 私どもは、先ほど申しましたように、公立病院に対しましては財政運営上の観点あるいは経営指導という観点からかかわりを持っておるわけでございます。  病院を経営していく上では、薬品に限らずいろいろな材料あるいは人件費、いろいろな費用の項目があるわけでございます。経営を診断していく場合には、それぞれの経営の経費を構成しておる費用ごとに、それに見合った、それに対応した診療収入がどういうことになっているか、あるいはそれが他の病院と比較してどうだろうか、他の病院といいますのは、他の公立もありますし、他の設立主体の場合もございます。私どもとしては、そういったことは当然比較しながら経営指導するということでございます。  今委員がお挙げになりましたそのことは、直接私どもの意図として、薬価差益の問題と直接リンクして私どもが考えているということではないということはぜひ御理解いただきたいと思います。  経営健全化に当たりましては、いろいろな専門的な角度からの分析が必要でございまして、そういう意味では、私どもも厚生省の方とはよく連絡をとらせていただき、また知恵もおかりしたいというふうに考えております。
  132. 肥田美代子

    ○肥田分科員 ことし四月一日実施の改正薬剤師法によりますと、薬剤師は、調剤した薬剤の適正な使用のために必要な情報を提供することが義務づけられております。すなわち、薬剤師は、一人一人の患者や看護に当たっている者に対して、薬の適正使用について説明しなければならない、そういう義務があるわけでございます。  そこでお伺いします。  現在、都道府県立病院における薬剤師の配置が、薬剤師は「調剤数八十又はその端数を増すごとに一」という医療法に定めた標準に到達しているかどうか、把握していらっしゃいますか。
  133. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 今お尋ねの薬剤師の配置基準は医療法に規定されている内容でございまして、先ほど申しましたような私どものかかわりでございますので、配置基準の充足状況の実態について把握はいたしておりません。
  134. 肥田美代子

    ○肥田分科員 把握されていないということでございますが、この問題はやはり医療法の実効性にかかわる問題でありますから、私は大変必要なことだと思うのですけれども、自治省、厚生省、どちらでも結構ですけれども、実態調査を検討していただけませんでしょうか。
  135. 上田茂

    上田説明員 都道府県立病院における薬剤師の配置状況につきましては、具体的な数値は把握していないところでございます。  なお、平成年度の医療監視結果によりますと、全国の病院のうち、五〇・八%の病院が医療法に基づく薬剤師の配置基準を遵守している状況でございます。
  136. 肥田美代子

    ○肥田分科員 全国とおっしゃいました。これは、自治体立病院としては数が挙がっていないということでございますか。
  137. 上田茂

    上田説明員 都道府県立病院につきましては、把握しておりません。
  138. 肥田美代子

    ○肥田分科員 今後、その実態調査を検討してくださいますか。
  139. 上田茂

    上田説明員 私ども、先ほど申し上げましたように、医療監視によりまして、薬剤師の配置、医療従事者の配置状況につきましては把握し、そして、その標準値に満たない病院に対しましては、それぞれ個別に指導を行っている状況でございます。
  140. 肥田美代子

    ○肥田分科員 ですから、もう一回確かめますけれども、自治体立病院についての実態調査についてはしないということでございますか。
  141. 上田茂

    上田説明員 ですから、今申し上げましたように、医療監視による指導によりまして、医療の適正な確保というような観点から、それぞれ個別に病院に対する指導を行っている状況でございます。
  142. 肥田美代子

    ○肥田分科員 結局、実態調査をしたくないということらしいです。この件に関しては、またこれから厚生省さんといろいろお話をしていきたいと思います。  次の質問に移ります。  現在、医療法改正案が国会に上程され審議されております。この改正案では、医師、薬剤師などの医療従事者に対して、インフォームド・コンセントの実践が求められております。厚生省は、院外処方せんの発行及び病院薬剤師の業務を入院患者に対する薬剤管理指導業務に移行させる、いわゆる臨床薬剤指導に取り組まれていると聞いております。  自治体病院で、薬剤師法で定められている薬剤情報の提供義務や、医薬品についてのインフォームド・コンセントを実施するためには、一つは、病院薬剤師の数をふやすこと、二つ目には、院外処方せんを発行することによって外来業務の軽減を図ることだと思っております。薬剤師の増加が人件費の面から困難であるとすれば、院外処方せんを発行して外来業務の軽減を図ることが現実的であろうと思います。  そうした点から、自治省は、赤字経営病院の健全化を指導する際、院外処方せんを出すことと臨床薬剤指導を行うべきではないかと思いますが、いかがですか。
  143. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 患者に対しまして適切な情報提供を行っていきますことは、病院経営の観点からも、また自治体病院という性格からも、積極的に取り組むべき問題であるというふうに考えております。  具体的に服薬の指導でございますとか情報提供をどのように進めていくかということにつきましては、各病院の置かれている条件等によっても異なってくると考えておりまして、これはひとり自治体病院だけの問題ではございませんので、病院全般について厚生省の方からも御指導があろうかと思います。また、経営上の観点も考慮しながら、それぞれの病院におきまして、適切に対応して努力されるものというふうに考えておるところでございます。
  144. 肥田美代子

    ○肥田分科員 これも自治体病院の経営に関連することでございます。薬剤師の薬剤指導は、薬剤管理指導料として認められておりますが、自治体病院の入院患者に対する薬剤指導業務はどの程度実施されているか、把握されていらっしゃいますか。
  145. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 病院経営の観点から、私どもといたしましても適正な診療報酬を確保するように指導いたしておりますが、今お挙げになりました薬剤管理指導がどの程度実施されているかということについては、私どもとしては承知いたしておりません。
  146. 肥田美代子

    ○肥田分科員 これも把握されていないようですが、これは診療報酬請求とも関連することでございまして、かなり大切なことなんですね。実施状況についてこれから調査をなさるおつもりはありませんか。
  147. 今田寛睦

    ○今田説明員 お尋ねの入院患者に対します薬剤指導業務でございますが、私ども保険局で調査をいたしておりまして、平成年度におきます社会医療診療行為別調査におきましては、国立、都道府県立といった病院の設立主体別ではなく、特定機能病院でありますとか精神病院、一般病院といった病院の種類別に算定状況を集計いたしております。  その結果によりますと、平成六年におきましては、全病院について見ますと、百五十万件の入院レセプト中約六万回、四%の薬剤管理指導料が算定をされておるところでございます。  なお、平成六年の十月現在で千八十の自治体病院があるわけでございますが、日本病院薬剤師会の調査によりますと、薬剤管理指導の施設基準、この基準に適合するということで、都道府県に県立または市町村立の病院として届け出られておりますのが百二十病院でございます。約一一%ということでございますが、その時点で、全病院におきます施設の届け出をしておるのが八・四%ということでございますので、平成六年におきましては、やや自治体病院が先行しているというふうなことが言えようかと思います。同じく平成九年にも、薬剤師会におきまして、届け出ておりますのが、今度は三百三十施設と、三倍にふえております。  一方で、全国全体で申し上げますと、平成九年およそ二八%ということで、これも若干自治体病院が先行しているということで、平成六年に比べまして約三倍程度にこれらの指導が行われているものと私どもは推定しております。
  148. 肥田美代子

    ○肥田分科員 医薬分業は、情報公開それから薬の適正使用、薬剤費の抑制という点から、現在大きな論議になっている医療構造改革の重要な柱であると思います。ほかの公的医療機関、例えば国立大学医学部の附属病院の院外処方せんの発行率は四十二病院で平均五〇・八%、国立病院は三割近い発行率となっております。つまり、設置主体別の調査が出ているわけです。  自治省あるいは厚生省は、都道府県、市町村立病院または診療所の院外処方せんの発行状況を把握していらっしゃいますか。
  149. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 自治省の方では、今の院外処方せんの発行状況は把握いたしておりません。
  150. 吉武民樹

    ○吉武説明員 先生お尋ねのいわゆる医薬分業率につきましては、外来患者の方々に対する薬剤の処方の総回数に対します院外処方せんの数という形で出しております。ただ、外来患者に対します薬剤の処方の総回数というのは、残念ながら統計資料上なかなか入手は困難でございまして、一定の推計を行いまして、院外処方せんにつきましては全体の数がわかっておりますので、それでいわば推計値としてお出しをしておる状態でございます。平成年度で申し上げますと、二〇・三%という形でございます。  御案内のとおり、我が国の場合には非常に多数の病院あるいは診療所がございますので、その実態を詳細に把握するというのは非常に難しい面がございますが、昨年の十月に私どもの統計情報部の方で実施をいたしております医療施設の静態調査の中で、処方せんの発行状況につきまして、一応調査対象は日本のすべての医療機関でございまして、個々に調査を行っておるところでございます。  昨年の十月に実施をいたしておりますので、ことしの秋ごろに、この調査結果につきまして解析をいたしまして公表という形になってまいりますので、その中で、今お話にございました設置主体別の分析についても、私ども、統計情報部と連携をとりながら検討してまいりたいというふうに考えております。
  151. 肥田美代子

    ○肥田分科員 設置主体別を出していらっしゃらなかったというのは、私、大変不自然なことだと思っておりますので、ぜひそれはきちんと出していただきたい。例えば、地方公営企業年鑑には全国の自治体病院の一日患者平均数でありますとか、職員一人当たりの診療収入まで把握されておりますから、これが出ないわけがないわけでございますから、早急に処方せん発行の調査結果を出していただきたい、そう思いますが、これは厚生省さんにお願いしていいのですか。
  152. 吉武民樹

    ○吉武説明員 今申し上げました、私どもの統計情報部の方で調査をいたしておりますのは、ただいま申しましたような全医療機関を対象とした調査でございます。昨年の十月の直前でございますけれども、十月に調査をいたしておりますので、九月の最終週におきます処方せんの発行状況につきまして、ただいま調査をいたしております。  したがいまして、年間の総数ではございませんけれども、そういう形で分析は可能になってくるのではないかというふうに思っております。これは指定統計でございますので、いずれ秋までにきちんとした手続を踏んで公表する形になりますので、その中で私どもとしても分析をしてみたいというふうに考えております。
  153. 肥田美代子

    ○肥田分科員 今、橋本内閣は火の玉になって改革を進めようとしておられます。その中でも医療制度の改革は大きな柱の一つでございます。私が最初に申し上げましたように、完全分業していないのはG7の中では日本のみ、アジアでも数少ない国の一つとなっております。そして、医薬分業は今や国民のニーズである、国会の審議を通してますます高まっていると私は感じております。そして今、自治体病院の分業率が実は低いということが各界から言われているわけですね。  それで、私は白川大臣に、閣僚のお一人として、そして政治家のお一人として、この医薬分業ということについてこれまで以上に深い御理解をいただきたいと思うわけですけれども、その辺の御感想、それから御決意をお伺いしたいと思います。
  154. 白川勝彦

    ○白川国務大臣 医療問題についてほとんど知識のない私が答えるにはちょっと難しい問題でありますが、ただ、今私は自治大臣といたしまして、この間ずっと行われております橋本総理を中心とする財政構造改革会議にずっと出ております。そして小泉厚生大臣にも二度にわたって来ていただきまして、財政構造を改革するためには医療の抜本的な見直しをしなければ、財政構造の面からも、もう医療費に財政が到底ついていけないということが明らかになってきております。そういう中で、多くの方々から薬価差益の問題等が出されております。  そういう中で、まさに財政構造改革は待ったなしてございますので、こういう問題について、今までタブーとされてきた問題にも率直に踏み込んでいって、先生が御指摘になられたようなことを含めて一つ一つ、近いうちに、厚生省だけではなくて政府全体あるいは政府・与党の中で解決が出されていくもの、こういうふうに承知しております。
  155. 肥田美代子

    ○肥田分科員 ありがとうございます。  厚生省、来ていただいておりますので、あともう一つ、厚生省さんに聞かせてください。  今回の医療法の改正で、知事が地域医療計画を立案する際に医薬分業計画を記載することになっております。厚生省は、都道府県に対して医薬分業、特に面分業を組み入れた地域計画づくりをどのように指導なさっていらっしゃるか、どのように指導なさるおつもりであるか伺いたいと思います。
  156. 田中喜代史

    田中説明員 地域医療計画の中でいわゆる医薬分業をどのよりに推進していくかというお尋ねかと思いますが、現在御審議いただいております改正医療法におきます医療計画の中では、地域医療の体系的整備を図りますために、二次医療圏ごとに、病院、診療所、薬局その他の医療に関する施設の相互の機能分担及び業務の連携等の事項を必ず記載するということにいたしておりまして、医薬分業につきましても、この中でその推進方策等が記載されることとなるものであります。  また、従来、医療計画の推進につきましては、国は各都道府県に対しまして、各医療圏ごとに関係行政機関、医療関係団体との協議の場を設けるなど、医療計画の推進を図るための体制づくりに努めるように指導してきたところでございます。  改正医療法に基づきます医療計画に記載された医薬分業につきましても、各都道府県においては、関係機関と調整を図りながら推進していくこととなると考えておるところでございます。
  157. 肥田美代子

    ○肥田分科員 最後になりましたが、自治体住民の大変身近な問題として、長崎県の諌早湾干拓問題がございます。生態系の保全を求める世論が高まっており、また、公共事業のあり方についても問題提起がされております。  個人的な御見解で結構でございます。大臣は諌早湾干拓事業そのものについてどのようなお考えをお持ちでいらっしゃいますか。これを質問の最後にいたしたいと思います。
  158. 白川勝彦

    ○白川国務大臣 これだけ国民からいろいろな議論がなされている中でございます。その中で、藤本農林水産大臣が事務当局と相談しながら政治生命をかけて真剣に取り組んでおる問題でございます。私は、現地の状況も知りません、また、所管外でございますので、個人的な見解も含めてコメントするつもりはございませんので、御了承いただきたいと思います。
  159. 肥田美代子

    ○肥田分科員 終わります。ありがとうございました。
  160. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 これにて肥田美代子君の質疑は終了いたしました。  次に、田中慶秋君。
  161. 田中慶秋

    田中(慶)分科員 新進党の田中慶秋です。  実はきょうは、農業問題を中心として、自治省初め農水省にその見解をお伺いしたがったわけでありますけれども、残念なことに農水大臣が出席をしていただけないということでございますので、その関係では農水省の皆さんには若干きつく質問をさせていただきたい、こんなふうに思っているわけであります。  一つは、今ウルグアイ・ラウンドという問題が大変脚光を浴びているわけでありますけれども、六兆百億、これが今後若干繰り延べされるのではないか、あるいは予算の中においても、今までは補正で組んでいたわけでありますけれども、これから本予算に、こういう問題もございます。  そこで、ウルグアイ・ラウンドそのものがこれから農業経営に占める割合、そしてまた、農業経営との関係をどのようにお考えになっているのか、まず冒頭にお伺いしたいと思います。
  162. 西尾吉昭

    ○西尾説明員 ウルグアイ・ラウンドのWTOで、米を除いてほかの農産物が一斉に関税化されました。相当の打撃を受けるわけでございますが、二年前に農林省は、新農政ということで力強い経営体を育成していくという方針を打ち出しました。したがって、ウルグアイ・ラウンドの対策といたしましては、その経営体の育成を加速させるという方針で今取り組んでおるところでございます。
  163. 田中慶秋

    田中(慶)分科員 今、ウルグアイ・ラウンドそのものが、米ではなく畜産を初めとする農畜産物に対する税の問題が述べられているわけであります。すなわち、この農業合意に基づく税制の関税強化という形の中で、畜産経営が非常に圧迫されている、これが現実であります。  都市農業における畜産というものは、ある面では食糧の供給源であるわけでありまして、特に養鶏であるとか、さらには肉牛であるとか、こういう形になっているわけであります。皆さんも御承知のように、牛肉の貿易摩擦という問題が一時あったわけでありますが、こういう問題を含めて、この日本の肉牛のあり方、すなわち、横浜が肉牛の発祥の地でもあるわけです。そして、アイスクリームも横浜でできました。しかし、現実には、今都市農業が大変衰退をしなければいけないというのは、農業政策そのものが間違っている、農業政策そのものが貧弱である、これが根拠になっているわけであります。その原因は、どちらかというと、税制そのものにあるということになっていくわけであります。  自治大臣、この税制の評価がえの問題も今議論をされているわけでありますけれども、例えば昭和四十五年の六月十日、新都市計画法、すなわち線引きという問題がされたわけであります。農業経営に当たっては、税制との問題、固定資産税との問題もありますから、農家の人たちは営農を希望するために当時はこの市街化調整を望んでいたにもかかわらず、現実には市街化になってしまった。その後、生産緑地という問題が具体的に整備をされているわけであります。  しかし、これも、農家の人たちが望んだにもかかわらず、バックグラウンドとして昔から日本の畜産、農業というのは、集落として家があって、その周りに家畜が飼われ、それが酪農という形態になっていたわけでありますが、家の周りというのは、御承知のように市街化となっているわけであります。市街化の中での農業経営というのは大変困難になってくるわけであります。  そんなことから、営農を希望する者、そしてこれからも続けたい人たち、その営農を希望する人たちに対して、今のような市街化における固定資産税ではなく、営農を希望する人たちには特別の固定資産税の配慮というものがあってしかるべきじゃないかな、私は、それがこれからの農業経営に対するある面での振興策になっていくだろうと思います。  大臣、どのようにお考えになりますか。
  164. 湊和夫

    ○湊政府委員 市街化区域におきます畜産経営につきましての固定資産税とのかかわりについてのお話でございますが、御承知のとおりのことでございますけれども、固定資産税そのものは、資産価値に応じてひとしく負担をいただくという形で構成されているわけでございます。今お話ございましたように、例えば市街化区域の線引きがあるかないか、あるいは農地法の適用を受けているかどうか、こういった観点は用途規制等の面で重要な点がございますので、当然のことながら市場の取引価格にも反映いたしますし、固定資産税の評価におきましても、そういった諸点を勘案しながら評価が行われてきているわけでございます。  そういった中で、おっしゃるように、結果として市街化区域の中で経営されます畜産の用地、例えば畜舎の用地等について申し上げますと、結局、一般の農地でございますとか生産緑地のような転用規制といった厳しい制限、あるいは三十年間の転用はできないといったような規制もかかっておりません。そういう観点からいたしますと、事評価の面で特別に他の土地と異なった事情があるということではございませんので、固定資産税の評価等において特別の扱いをすることは、制度としてはなかなか困難であろうかというふうに感じております。
  165. 田中慶秋

    田中(慶)分科員 都市における畜産というのは、現在大変厳しい環境にあるわけです。しかし、今のようなやり方をしていたのでは、畜産を業として認めないということと同じなのです。はっきり申し上げて、現在の土地税制そのものが、畜産業を営んでいても営まなくても税という形の中で用途によって容赦なく課税をされる、このこと自体が日本の農業そのものの根幹を揺るがしているのだと私は思っております。農業を営み、継続し、そしてそれをずっと希望する者にあっては、税の見直しをしてもいいのだろうと思います。  今一番問題になっているのは、都市における農業が税のために撤退をしなければいけないということが各地で起きているわけでありまして、やはり大臣の政治的な判断として、これから取り組んでいかなければいけない問題だろうと私は思っております。大臣、答弁をお願いいたします。
  166. 湊和夫

    ○湊政府委員 ただいま申し上げましたように、それぞれの土地の置かれた条件によりまして、評価の態様が異なっている、また異なった扱いをすべきものもあることは当然のことでございます。  先ほど申し上げましたように、土地の転用規制等の観点から、特に第一次産業の関係では、一般の農地でございますとか生産緑地については、当然のことながらそういった配慮が行われているわけでございますけれども、同じような資産価値として世の中で評価されるべきものについては、同じような税負担をいただくということが、やはり固定資産税のまさに基本の部分でございます。  全体としての固定資産税の負担が国民にとってどういった負担水準であるべきが望ましいか、こういった点については絶えず私どももチェックしていく必要があろうと考えておりますけれども、先ほど申し上げましたように、たまたまある土地について畜産業が営まれてきているということを取り上げて、格別の、取り扱いを異にした評価を行っていくということは、現在の固定資産税の考え方からすれば困難なことではなかろうかというふうに考えております。
  167. 田中慶秋

    田中(慶)分科員 私はあなたに質問しているのではないのです。大臣に、農業問題とこれからの営農問題を含めて税の問題をどう考えるかという質問をしているのですから、大臣、答弁してください。
  168. 白川勝彦

    ○白川国務大臣 田中委員のお気持ちはわからぬではありませんが、率直に申しまして、日本の農業は大変革のるつぼの中で、都市であろうが地方であろうが、それぞれ厳しい局面の中で頑張っているわけでございます。  そういう中で、市街化区域、しかも大都市の市街化区域の中において畜産を営むということは、それなりの御事情はあるのだろうと思うわけでございます。そして、それだけのメリットがあるから、多分都市においても畜産を営んでおられるという経過があると私は思います。例えば牛乳というようなものにつきましては、地方でやりましたら大変輸送費等がかかるわけでございますが、都市部で行われた場合は、逆に多数の消費者の方が近くにおるわけでございまして、多分販売その他の上でもかなり有利な面があろうかと思います。  いろいろな中で、畜産農家はそのような固定資産税上のデメリットはある、デメリットというか高い負担はあるけれども、しかし、ここにおいて営農するあるいは畜産を営むということの御計算をされた上でそのようなことをなされているのだろう、私はこう思います。ですから、農業振興というような問題を固定資産税の方に振られてきても、正直申し上げて、固定資産税を所管する自治省あるいはそれぞれの市町村にしてみたらつらい話だ、こう言わざるを得ません。
  169. 田中慶秋

    田中(慶)分科員 今、農業なり営んでいる人たちというのは、大臣が考えておるほど生易しいものではないのです。もう四十、五十、六十にして今さら職業の転換はできないのです。ですから、そういうものをずっと継続された中で農業を行っている、こういうことについても大臣は認識しなければいけないと思います。  もう一つは、例えば養鶏を営むための建物あるいは畜産を営むためのそれぞれの豚舎、牛舎等について、今までなぜ建築基準法が必要だったのですか。大臣の通達によってそれは今緩和はされておりますけれども、まだ全県下ばらばらです。建物が建つからそこは固定資産税が宅地並みになっている、こういう論法もあるのです。  いま少しそういう問題について、現状を調査をしながら、さらに今のようなファクターも加えながら、これからも営農を希望する人たちに対しては、固定資産税を初めとする税の仕組みというものの見直しがあって当然だと思います。取れるところから取ろうという発想ではだめだと思います。  やはりウルグアイ・ラウンドの問題だけではなくして、例えばこれからの日本の都市における農業をよく考えてください。まず一つは、生鮮食料品の供給の基地かもわかりません。あるいは災害時の避難場所にもなります。今環境問題がこれだけ問われているわけであります。環境に対する取り組みというものにも農業というのは貢献をしているわけです。  こういういろいろなファクターというものがあるわけでありますから、業としてこのことを認めている、行う以上は、それなりの取り組みが、すべてがオール・オア・ナッシングという形ではなくして、あるべきではないかな、僕はこんなふうに考えているわけでありまして、そのことを含めて、重ねて大臣の答弁を求めたいと思います。
  170. 白川勝彦

    ○白川国務大臣 それぞれのところで日本の農業は厳しい立場に立っておるわけでございます。そして、今委員がお触れになったのは、都市部の、特に市街化地域の中において畜産を営んでいる者の固定資産税負担が重い、これを自治省においてしかるべき措置を講じろ、こういうことでございます。  先ほども税務局長が答えましたとおり、農地として、高い税負担には耐えられない、したがって、農地としての課税をするということについては、一方では厳しい規制を甘受した上で、一方では他の住民の同意も得て、そこは農地並みの課税となっているわけでございます。  それが畜舎用地の場合は、そこのところに対する縛りがないということにつきまして、何らかの意味での明確な生産用地等の縛りが別途考えられるならば別でございますが、そういうことに関しては、それでは本当にその畜産農家の方々は応じてくださるのだろうか、また、生産緑地のような形、あるいは一般の農地のような形で、そこのところが外形として見分けられるのだろうか。  こういうことを含めて、この問題を固定資産税の問題で農地に、農業の対策を通して考えろということは、正直申しましてなかなかつらい側面があるということを私は申し上げているわけでございます。
  171. 田中慶秋

    田中(慶)分科員 平成八年二月十五日、これは、畜産用地等の固定資産税評価にかかわる自治省の指示というものが出ているわけでありますけれども、こういう一連のことも含めながら、もう少し実態に合った形の税というものがあるべきだと僕は思っております。  税は、今のように用途がこうだから云々という形ではないと思うのです。業を営んでいる以上、あるいは業ができなくなったら課税をたくさんしてもいい、私はそんなふうに思っているわけです。  例えば、畜産をしていれば、その周りには当然飼料として牧草を植えております。しかし、本来ならばそれは農地であるわけでありますけれども、周りでありますから雑種地になっている、こういう問題が、矛盾した部分がたくさんあるわけであります。  都市農業というものは、それだけ土地の評価というものがある面では高いということもありますけれども、自分たちがその業を望んでいる者、そういう問題についてはやはりもっと政策的に当然何かあるべきだろう。本来ならば、私は、この問題を農水大臣に質問しながら、そして自治大臣に詰めていきたかったわけでありますが、残念なことに農水大臣はほかに行かれておりますので、あなたの所管外かもわかりませんけれども、農業というものに対する理解というものをもっとそういう点ではしなければいけないだろう、私はそんなふうに思っているのです。  ですから、先ほど申し上げたように、一つの建物にしても、やっとここで通達が出て、しかし、これ自身も、まだまだ確認をとらなければ畜舎を建てるようなこともできないような、そういう行政機関もあるわけですから、こういう一連のことも含めて、これからの日本の農業というものを検討するに当たって、私は、もっともっと行政の立場で大臣みずからそういうことについて御研さんいただきたいと思っております。  なぜ私がそんなことを申し上げるかというと、お隣の中国では十二億の人口があって、日本の過去と同じような、少なくとも農業から工業化へ進んでいっております。今日本は、食糧はある面では中国に依存している部分もあるわけでありますが、三年、五年しますと食糧危機になり、そして、そのしわ寄せで日本の食糧危機という問題も当然心配されるわけでありまして、私は、今までの農業と違った形の政策がここで求められるのだろう、こんなふうに思っているから、都市農業というものをもっともっと検討していかなければいけないのじゃないかなと思います。  先ほど申し上げたように、私は、都市における農業というものは、あらゆることを含めてそのメリットというものが政策的に必要であろうと思っております。生産緑地だけの問題ではなくして、災害時の避難場所にもなり、あるいは自然環境の問題にもなる、あらゆる問題がそういう点で出てくるわけでありますから、そういうことを含めて、これは、固定資産税一律云々という、こんな形じゃなくして、細部にわたっての検討というものはやってできないことはない、大臣だったら私はできると思っておりますので、白川大臣がその辺もう少しフレキシブルにやっていただきたいと思います。
  172. 白川勝彦

    ○白川国務大臣 自由民主党の税制調査会で、昔、宅地並み課税ということが議論されたのを思い出しました。自由民主党は、どちらかというと、御案内のとおり、農村偏重型政党、農家偏重型政党ということでございまして、農家に甘い、こういうことが言われておりまして、その代表例がこの一般市街地における農地であったわけでございます。  というのは、農地という形で持っていれば非常に安い固定資産税で持っていられる、そして、土地がいいところで高くなったら売られる、こういう問題。そうでない人たちは高い固定資産税をずっと払っていなければいけない。これの均衡を考えなければならないというところで、客観的に、そしてある程度の農地を本当に農業を営むために持っているのであって、形だけではない、固定資産税負担を免れるためではないという者についてのみ、そういう面では宅地並み課税を免れることができるようになったわけでございます。  委員が先ほどからおっしゃっております、営農を、畜産等を営む意思がある、業を営む意思があるという者は何とかできないかというのは、人間の意思というのはまことにもって移ろいやすいものでございまして、それのみをもって、他の規制が何もないものを一般の農地というふうに扱えというのは、固定資産税を預かる我々の立場からいい、また先ほどの議論の意味からいったら、もう少し、自治省の方あるいは市町村の方に投げかけられても難しいところがある、こうたびたび申し上げているわけでございます。
  173. 田中慶秋

    田中(慶)分科員 限られた時間の中でのやりとりでありますけれども、しかし、大臣、こういうことをやっていたら、はっきり申し上げて後継者は育ちませんよ。日本の農業はおかしくなってしまいますよ。ですから、やはり公平な意味で、業を営む、こういうことについて私は申し上げているわけであります。  日本の文化、集落というものを含めて、例えば乳牛が子供を産むとき、二百頭、三百頭飼っていれば、うちの周りにいなければそういうものが現実できないのです。お産、子供の取り上げ、全然できなくなる、こんなことを含めながら、それなりの問題点があるわけです。今日本の農業をこのまま農水省にお任せしていたら、はっきり申し上げて農業は滅びます、農業をわかっていないのですから。  ですから、そういう問題を含めて、大変残念なことに私自身はそのような感覚で今申し上げているわけでありますので、どうかそういうことを含めながら、大臣も、単なるいわゆる税の固定資産税を課税する立場だけではなくして、そういう全体的な視野に立って物の判断をしていただきたい、こんなふうに思っております。  ところで、今度は大臣、あなたの分野になりますけれども、もう地方の時代、地方分権と言われて久しいわけであります。しかし、今のような地方の現状で地方分権が本当にできるのでしょうか、私はいささか疑問に思っております。これは自治大臣の所管でありますから、やはり、日本の二十一世紀の行政改革を初めとするこういう問題を考えたときに、今の三千三百余になっている地方自治体、このままでは日本の将来というものは、大変厳しい、負担ばかりといいますか、そういう問題ばかりがかかって、大変なことになっていくだろう。大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  174. 白川勝彦

    ○白川国務大臣 私どもも、四十年前におおむねできた現在の市町村の規模が、時代が移り、交通手段、情報手段等が発達をし、そしてもう地域の住民は、当時ならばあのくらいの規模の中で十分自足的に生活していたものが、もうほとんど、現在の町村を越えて、あるいは市町村を越えて現実に生活をしている、こういうことを見て、もう少し市町村合併がなされなければならないという認識は委員と同じでございます。  ただ、私は、現在、地方分権推進委員会が最後の第二次の指針勧告を出す、こういうところで、地方分権推進委員会の先生方がまさに具体的な各論において各省庁と議論している中で、現在のような体制の市町村に国の権限が移譲できるか、あるいは県の権限が今のような市町村に移譲できるかということが逆に言われていることに、私は残念ながら危惧をいたしているわけでございます。  例えば各種の革命等はどうして起きたかというならば、その当時、時のそれぞれの支配者は、一般民衆などにこんなことができるわけはない、これは特別に教育された特別な資質を持った私たちでなければならないのだというものを、当時の被支配階級と言われていた者がかち取ってきた、場合によっては分捕ってきたわけでございまして、私は、できるできないという問題は別として、地方が本来やるべきことは地方に権限を移譲すべきである、そのときにできるできないというのを前提にして議論をしないでほしいということを申し上げているわけでございます。  ただ、委員のおっしゃるとおり、いろいろなことを含めて、私は市町村合併を進めていかなければならぬという認識で、今まで自治省は、あくまでも自主的合併が必要である、したがって自治省の役割としては、機運の醸成ということに全力を尽くしてきたわけでございます。機運の醸成、先ほども業を営む気と言いましたが、気というのは空気でございまして、変わりますし、目に見えませんので、機運の醸成はもう十分、国会等でもこれだけ指摘されているのだから、第二段階に上がらなければならない。  直ちに市町村合併促進法というものを出せるかどうかはもう少し検討を要するところでありますが、なぜ四十数年余り合併が進まなかったのか、まず阻害要因を徹底的に洗い直せ、そして、今いろいろなところで市町村合併の機運が出てまいりますが、どういうメリットというか、どういうものがあるならば合併が進むのだろうか。こういうことを、それぞれの合併を考えていたりあるいは合併に戸惑っているところとヒアリングをしてみろということで、総務課長を長とする全局にまたがるプロジェクトチームをつくって、今鋭意作業を進めているところであります。  そう長い時間をかけないうちにこの検討結果を得て、次の第三段階、実際に市町村合併が進むような法の制定等に向かっていかなければならぬ、こう認識しているところでございます。
  175. 田中慶秋

    田中(慶)分科員 いずれにしても、高齢化が進み、少子化が進み、産業の空洞化という、このような大きなファクターを乗り越えて、二十一世紀を、豊かさを求めながら、享受をしていかなければいけないわけであります。そのときの障害となっている部分というのはやはり思い切ってやっていかなければいけないだろう。五百人の村に村長さんがいて助役さんがいて議会がある、これが本当にいいのだろうか。私は、その辺は当然、国民が行政に求めているリーダーシップではないかと思っております。  どうか、そういうことを含めながら、少なくとももう改革の時代は、ある面では今熟されているのだろう、むしろ、武力じゃないですけれども、思い切ったリーダーシップによって革命的な思想を求めてこの行政改革というものをしなければ、二十一世紀の日本は大変憂える状態になってくると思います。大臣はまだ若いのだし、まさしくリーダーシップを求められてそれにこたえられる大臣だと思っておりますので、どうか頑張っていただきたいと要望しておきたいと思います。  コメントがあるならば、ぜひしてください。
  176. 白川勝彦

    ○白川国務大臣 委員の御指摘をまた励みとしながら、私はもちろんでございますが、また自治省の若い課長諸君が先頭になって今その問題を真剣に考えております。必ず、いずれそう遠くないうちに自治省としての一つの研究の成果が得られ、これに基づいて施策を進めてまいるつもりでございます。
  177. 田中慶秋

    田中(慶)分科員 以上で終わります。ありがとうございました。
  178. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 これにて田中慶秋君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして自治省所管公営企業金融公庫の質疑は終了いたしました。  午後二時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時三分休憩      ────◇─────     午後二時開議
  179. 上田清司

    上田主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  これより農林水産省所管農林漁業金融公庫について審査を行います。  まず、概要説明を聴取いたします。藤本農林水産大臣
  180. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 平成年度及び七年度における農林水産省決算概要を御説明申し上げます。  最初に、六年度一般会計について申し上げます。  まず、一般会計歳入につきましては、歳入予算額四千六百七十九億八千七百万円余に対しまして、収納済み歳入額は五千三十六億八百万円余であり、差し引きいたしますと三百五十六億二千万円余の増加となっております。  次に、一般会計歳出につきましては、歳出予算現額五兆百三億七千三百万円余に対しまして、支出済み歳出額は四兆四千八百十二億二千四百万円余であり、この差額五千二百九十一億四千八百万円余につきましては、五千九十億五千三百万円余が翌年度へ繰り越した額であり、二百億九千五百万円余が不用となった額であります。  なお、その詳細及びこれらの施策の内容は、お手元の「平成年度農林水産省決算概要説明」に掲載いたしましたとおりであります。  次に、特別会計について申し上げます。  まず、食糧管理特別会計につきましては、国内米管理勘定等の七勘定を合わせて申し上げますと、収納済み歳入額は二兆三千五百九億五千二百万円余、支出済み歳出額は二兆三千二百九十七億八千七百万円余であり、差し引き二百十一億六千五百万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度歳入に繰り入れることといたしました。  このほか、農業共済再保険特別会計、森林保険特別会計、漁船再保険及漁業共済保険特別会計、農業経営基盤強化措置特別会計、国有林野事業特別会計及び国営土地改良事業特別会計がございますが、これら特別会計概要につきましても、お手元の資料に掲載いたしましたとおりであります。  以上をもちまして、平成年度における農林水産省決算概要に関する御説明を終わります。  引き続きまして、平成年度における農林水産省決算概要を御説明申し上げます。  最初に、一般会計について申し上げます。  まず、一般会計歳入につきましては、歳入予算額四千八百四十四億五千百万円余に対しまして、収納済み歳入額は四千八百七十六億五千二百万円余であり、差し引きいたしますと三十二億百万円余の増加となっております。  次に、一般会計歳出につきましては、歳出予算現額四兆九千三百十二億五千六百万円余に対しまして、支出済み歳出額は四兆一千九百五十四億二千百万円余であり、この差額七千三百五十八億三千五百万円余につきましては、六千八百八億五千七百万円余が翌年度へ繰り越した額であり、五百四十九億七千七百万円余が不用となった額であります。  なお、その詳細及びこれらの施策の内容は、お手元の「平成年度農林水産省所管一般会計及び特別会計決算に関する概要説明」に掲載いたしましたとおりであります。  次に、特別会計について申し上げます。  まず、食糧管理特別会計につきましては、国内米管理勘定等の七勘定を合わせて申し上げますと、収納済み歳入額は三兆四百十五億三千三百万円余、支出済み歳出額は三兆三百十一億八千五百万円余であり、差し引き百三億四千八百万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度歳入に繰り入れることといたしました。  このほか、農業共済再保険特別会計、森林保険特別会計、漁船再保険及漁業共済保険特別会計、農業経営基盤強化措置特別会計、国有林野事業特別会計及び国営土地改良事業特別会計がございますが、これら特別会計概要につきましても、お手元の資料に掲載いたしましたとおりであります。  以上をもちまして、平成年度及び七年度における農林水産省決算概要に関する御説明を終わります。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  181. 上田清司

    上田主査 次に、会計検査院検査概要説明を聴取いたします。会計検査院小川第四局長
  182. 小川光吉

    ○小川会計検査院説明員 平成年度農林水産省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項十三件、意見を表示しまたは処置を要求した事項三件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項三件であります。  まず、不当事項について御説明いたします。  検査報告番号一二二号は、水田農業確立対策推進事業におきまして、工事費の値引きを受けていたため、国庫補助対象事業費の精算が過大となっていたものであります。  検査報告番号一二三号から一二七号の五件は、広域営農団地農道整備事業等におきまして、設計が適切でなかったため橋脚等が不安定な状態になっているものであります。  検査報告番号一二八号は、畜産活性化総合対策事業におきまして、補助の対象とは認められない施設に係る設計費等を補助の対象としていたものであります。  検査報告番号一二九号は、新沿岸漁業構造改善事業(後期対策)におきまして、鋼管杭の設計が適切でなかったためカキ殻集積施設が不安定な状態になっているものであります。  検査報告番号一三〇号は、学校給食米飯導入促進事業におきまして、炊飯設備をリース契約により借り受けていたため、補助の対象とはならないものであります。  検査報告番号一三一号から一三四号の四件は、農業改良資金貸し付けにおきまして、貸付金額を過大に算定するなどしていたものであります。  次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。  その一は、沿岸漁業構造改善事業による施設の設置及び運営に関し、漁家の経費の節減や所得の向上に寄与しておらず、事業効果が十分に発現していない事態が見受けられ、水産庁に対して、効果的な事業の実施を図るよう是正改善の処置を要求したものであります。  その二は、肉豚に係る家畜共済事業運営に関し、共済金を支払った事故頭数等と実際の共済対象の死亡頭数等とが乖離しているなど適切でない事態が見受けられ、農林水産省に対して、共済事業運営の適正化を図るよう改善の処置を要求したものであります。  その三は、国有林野事業の素材生産及び造林の請負化に伴う社会保険料等に関し、保険に加入できない者に係る事業主負担額を含めて労務関係費として積算していたり、保険に加入すべき者等を加入させていないため、積算で見込んだ労務関係費がその効果を発現していなかったりしている事態が見受けられ、林野庁に対して、是正改善の処置の要求と改善の意見を表示したものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。  その一は、農業農村整備事業の実施における水道管等の移設補償費の算定に関し、具体的な定めをしていなかったなどのため、実際に要した移設工事費を上回る設計金額により補償費が算定され、交付されていましたので、これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。  その二は、国庫補助事業に係る食糧費の使用及び経理処理に関するものであります。  補助事業で行う土地改良事業等において、食糧費、中でも懇談会の経費について補助の対象の範囲を具体的に定めていなかったなどのため、使用された食糧費が事業の実施のために直接必要であるか否か判然としていなかったりしている事態が見受けられ、これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。  その三は、外国産米の港湾荷役業務における運搬費に関し、実際の使用車種のほとんどが十トン車のトラックであるのに、八トン車の運賃に基づく単価を定め適用していた事態が見受けられましたので、これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。  次に、平成年度農林水産省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項十三件、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項二件であります。  まず、不当事項について御説明いたします。  検査報告番号一四六号は、予防治山事業におきまして、法枠工費の積算を誤ったため、工事費が割高となっているものであります。  検査報告番号一四七号は、高品質生産流適合理化促進対策事業におきまして、工事費の値引きを受けていたため、国庫補助対象事業費の精算が過大となっているものであります。  検査報告番号一四八号は、新農業構造改善事業におきまして、補助事業で設置した運動広場施設の一部を無断で処分しているものであります。  検査報告番号一四九号は、広域営農団地農道整備事業におきまして、設計が適切でなかったため擁壁が不安定な状態になっているものであります。  検査報告番号一五〇号は、林業地域総合整備事業におきまして、設計が適切でなかったためパイプカルバートが不安定な状態になっているものであります。  検査報告番号一五一号は、森林災害復旧事業におきまして、補助金算定の基礎となる事業費が適正でなかったため、国庫補助対象事業費の精算が過大となっているものであります。  検査報告番号一五二号は、農地開発事業におきまして、設計が適切でなかったため洪水吐が不安定な状態になっているものであります。  検査報告番号一五三号から一五八号までの六件は、農業改良資金貸し付けにおきまして、借り受け者が貸付対象施設を県に無断で売却したり、施設等を貸付対象事業費より低額で設置または購入したりなどしていたものであります。  次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。  これは、漁港整備事業により造成した漁港施設用地等の利用及び管理に関するものであります。補助事業整備した漁港施設用地が長期間にわたり利用計画に沿って利用されていなかったり、プレジャーボート等が漁港区域内に無断で係留されていたりなどしている事態が見受けられましたので、水産庁に対し、改善の処置を要求いたしたものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。  その一は、果実価格が著しく下落した場合に農協等を通じて生産者補給金を交付する加工原料用果実価格安定対策事業において、生産者補給金の交付単価のもとになる平均取引価格の算定に当たり、果実加工業者から受領した奨励金等を加算していなかったり、販売代金から手数料等を差し引いて取引価格としていたため、補給金が過大に交付されていましたので、これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。  その二は、政府米の運送に使用するパレットに係る費用の算定に当たり、パレットの回送等の作業の実態を把握していなかったため、パレット回送料等の費用が不経済になっておりましたので、これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。  以上をもって概要説明を終わります。
  183. 上田清司

    上田主査 ただいまの会計検査院指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。藤本農林水産大臣
  184. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 会計検査院から御報告のありました平成年度決算検査報告に対しまして、農林水産省が講じた措置を御説明申し上げます。  予算の執行に当たりましては、常に効率的かつ厳正な処理に努力してまいりましたが、一部の事業について、御指摘を受けるような事態が生じましたことは、まことに遺憾であります。  不当事項として指摘を受けたものにつきましては、既に補助金等の返還または手直し工事を施工させるなどの措置を講じたところであります。  沿岸漁業構造改善事業による施設の設置及び運営を効果的に行うよう是正改善の処置を要求されたものにつきましては、都道府県等に対し事業実施計画の策定について指導を強化するなど施設の効果的な設置及び運営が図られるよう所要の措置を講じたところであります。  また、肉豚に係る家畜共済事業運営が適切に行われるよう改善の処置を要求されたものにつきましては、制度の見直しを行うとともに、農業共済組合等に対する指導監督体制を整備するなど所要の措置を講じたところであり、肉豚に係る家畜共済事業の適切な運営に努めてまいる所存であります。  さらに、国有林野事業の素材生産及び造林の請負化に関し、社会保険料等の積算を適切に行うよう是正改善の処置を要求され、及び社会保険等への加入の促進を図るよう改善の意見を表示されたものにつきましては、予定価格の積算方法の改正を行うとともに、林業事業体への指導を強化し、現場作業員の社会保険等への加入の促進が図られるよう所要の措置を講じたところであります。  引き続きまして、平成年度決算検査報告に対しまして、農林水産省が講じた措置を御説明申し上げます。  不当事項として指摘を受けたものにつきましては、既に補助金等の返還または手直し工事を施工させるなどの措置を講じているところであります。  漁港整備事業により造成した漁港施設用地等の利用及び管理を適正に行うことにより事業効果の発現が図られるよう改善の処置を要求されたものにつきましては、漁港管理者に対し、漁港施設用地等利用計画の策定について指導を強化するなど漁港施設用地等の適切な利用及び管理が図られるよう所要の措置を講じてまいる所存であります。  以上、会計検査院の御指摘に対しまして農林水産省が講じた措置説明を終わらせていただきますが、今後、このような事例の発生を未然に防止するため、指導監督の強化を図り、より一層、予算の適切な執行こ努めてまいる所存であります。
  185. 上田清司

    上田主査 先ほど、会計検査院の小川第四局長よりの説明で飛ばしたところがございますので、再度お願いいたします。
  186. 小川光吉

    ○小川会計検査院説明員 失礼いたしました。  平成年度農林漁業金融公庫決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項二件であります。  これらはいずれも、農林漁業構造改善事業推進資金貸し付けにおいて、借入者から事実と相違した内容の借り入れ申し込みや事業完成報告がされるなどしていたにもかかわらず、これに対する審査及び確認が適切でなかったなどのため、貸付金額を過大に算定するなどしていたものであります。  次に、平成年度農林漁業金融公庫決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項二件であります。  これらはいずれも、農地等取得資金等の貸し付けにおいて、貸し付けの対象とならない事業に対して貸し付けているなどしていたものであります。  以上、簡単でございますが、説明を終わります。
  187. 上田清司

    上田主査 次に、ただいまの会計検査院指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。鶴岡農林漁業金融公庫総裁。
  188. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡説明員 ただいま会計検査院から御報告のありましたことにつきまして、御説明を申し上げます。  当公庫の業務の遂行に当たりましては、常に適正な運用について鋭意努力してまいりましたが、平成年度及び平成年度決算検査報告におきまして、農林漁業構造改善事業推進資金等の貸し付けにつきまして不当事項として指摘を受けたものがありますことは、まことに遺憾に存じております。  指摘を受けました事項につきましては、直ちに適切な措置を講じましたが、今後、このような事態の発生を防止するとともに、当公庫に与えられた使命を果たすべく努めてまいる所存でございます。
  189. 上田清司

    上田主査 この際、お諮りいたします。  お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  190. 上田清司

    上田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────    平成年度農林水産省決算概要説明                 農林水産省  平成年度における農林水産省歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  一般会計歳入につきましては、当初予算額は四千六百七十四億八千六百八十二万円余でありますが、予算補正追加額等五億七十九万円余の増加がありましたので、歳入予算額は四千六百七十九億八千七百六十二万円余となっております。  これに対し、収納済歳入額は五千三十六億八百五万円余であり、これを歳入予算額と比較いたしますと三百五十六億二千四十三万円余の増加となっております。これは、日本中央競馬会納付金が予定より多かったこと等の理由によるものであります。  次に、一般会計歳出につきましては、当初予算額は三兆四千二百七十五億一千三百二十一万円余でありますが、ウルグァイ・ラウンド農業合意関連対策のうち緊急に実施する必要があるものとして地方公共団体等が施行する農村整備事業事業費の一部補助に必要な経費等として予算補正追加額五千五百四十二億五千百六十八万円余、既定予算の節約等による予算補正修正減少額五百四億九千七百二十八万円余、北海道における農業生産基盤整備事業を実施するために必要な経費等について総理府所管等から移替えを受けた額四千八十五億六千五百十万円、前年度からの繰越額六千六百九億一千百五十六万円余、山林施設災害関連事業に必要な経費等として予備費九十六億二千九百三十一万円余の増減がありましたので、歳出予算現額は五兆百三億七千三百五十八万円余となっております。  これに対し、支出済歳出額は四兆四千八百十二億二千四百九十三万円余であり、これと歳出予算現額との差額は五千二百九十一億四千八百六十五万円余となっております。  この差額のうち、翌年度への繰越額は五千九十億五千三百三十二万円余であり、不用額は二百億九千五百三十二万円余となっております。  このほか、これら一般会計とは別に、大蔵省所管産業投資特別会計に係る支出済歳出額は十六億十四万円余となっております。  次に、農林水産省一般会計の主要経費支出実績について、御説明申し上げます。  第一に、社会保障関係費であります社会保険費につきましては、「農業者年金基金法」に基づく農業者年金事業の実施及び農業者離農給付金の支給等に要した費用として一千百三十二億五千五百二十九万円余の経費支出いたしました。  第二に、文教及び科学振興費であります科学技術振興費につきましては、農林水産業に関する試験研究及び試験研究機関の運営等に要した費用として八百八十六億一千五百十八万円余の経費支出いたしました。  第三に、公共事業関係費につきましては、総額で二兆七千九百四十八億四千四十三万円余の経費支出いたしました。  その内訳といたしまして、治山治水対策事業費につきましては、山地災害の防止、水資源のかん養等を図る治山事業並びに海岸保全施設の整備等により国土の保全を図る海岸事業等に要した費用として三千五百二十四億七千九百三十三万円余の経費支出いたしました。  港湾漁港空港整備事業費につきましては、我が国水産業の発展を図るため、その基盤である漁港施設の整備に要した費用として三千八十三億七千八百五十九万円余の経費支出いたしました。  農業農村整備事業費につきましては、農業の生産基盤の整備、農村の生活環境の整備及び農地等の保全管理のための整備に要した費用として一兆六千五百十六億一千八百十八万円余の経費支出いたしました。  林道工業用水等事業費につきましては、山村地域の基盤整備を図る林道事業並びに沿岸漁業の安定的な発展を図る沿岸漁場整備開発等の事業に要した費用として二千九百六十三億九千百七十四万円余の経費支出いたしました。  調整費等につきましては、国土の総合開発等の調整に要した費用として十五億七千二百五万円余の経費支出いたしました。  災害復旧等事業費につきましては、災害を受けた農業施設、山林施設及び漁港施設の復旧事業に要した費用として一千八百四十四億五十一万円余の経費支出いたしました。  第四に、経済協力費につきましては、我が国海外漁場の確保と国際漁業協力を一体的に推進するために要した費用として五十一億七千三百四十二万円余の経費支出いたしました。  第五に、食糧管理費につきましては、生産性の高い水田営農を推進するための費用並びに食糧管理特別会計の調整資金に充てること等のために要した費用として二千六百十四億九千四百十五万円余の経費支出いたしました。  第六に、その他の事項経費につきましては、農林水産本省等の一般行政に要した費用として一兆二千百七十八億四千六百四十四万円余の経費支出いたしました。  次に、本年度において実施した主な事業概要を施策別に御説明いたします。  第一に、国民生活に欠かせない食料を安定供給する担い手の育成に関しての事業概要であります。  まず、「新しい食料・農業・農村政策の方向」に沿って、経営感覚に優れた効率的・安定的な経営体が生産の相当部分を担う農業構造を実現するため、「農業経営基盤強化促進法」を柱として、法人化の推進、経営指導の強化等により農業経営体の経営体質の強化を図ったほか、関係機関の密接な連携の下に農地の利用集積活動を推進いたしました。  また、農家子弟以外の者も含め、次代の農業を担う意欲と経営能力に優れた青年農業者等を育成確保するため、新規就農者対策の充実を図りました。  さらに、「新政策」に示された政策課題の実現に資するため、魅力ある農業を実現するための生産基盤の整備、快適で美しい農村空間を形成するための総合的整備及び安全な国土の維持・形成に資するための整備を課題とする第四次土地改良長期計画に基づいて農業農村整備事業を着実かつ効率的に実施いたしました。  このほか、生産性の高い土地利用型農業の確立及び地域資源の整備・活用等による活力ある農村社会の建設のため、農業農村活性化農業構造改善事業等を実施いたしました。  第二に、国土を保全し自然環境を維持している中山間地域等の活性化に関しての事業概要であります。  まず、篤農家、指導者等の人材登録・あっせん、地域資源・作物別の優良事例の登録、提供等を行うセンターを全国段階に設置するとともに、特定農山村法に基づく「農林業等活性化基盤整備計画」に即して、地域の実情に応じた活動を支援するため市町村段階に資金を造成いたしました。  また、山村・過疎地域等における快適で活力ある地域づくりを推進するための事業を実施するほか、地域の立地条件に即した農業生産基盤、農村生活環境基盤等の総合的な整備を実施いたしました。  このほか、農林水産業の振興と併せ安定した就業機会の確保、都市と農山漁村との交流等を推進いたしました。  第三に、立ち遅れている農村地域の生活環境の整備等に関しての事業概要であります。  まず、生活環境整備の中でも都市と比較して立ち遅れている農村の生活環境基盤を整備し農村の生活の質的向上を図るため、農業集落排水事業、農道整備事業及び農村総合整備事業等を実施するとともに、農村景観や親水等にも配慮した整備を進め、豊かな農村空間の創出による活性化を図るため農村総合環境整備を実施いたしました。  また、生産基盤、生活環境等の整備と併せて景観形成、環境保全等に配慮した農山漁村の整備を行う美しいむらづくり特別対策を実施いたしました。  第四に、環境問題への積極的な対応と国際協力の推進に関しての事業概要であります。  まず、地球環境保全対策としましては、熱帯林保全対策として、熱帯林の保全・造成を推進するための開発途上国の林業技能者及び普及担当者の育成、さらに、持続的な農業・農村開発に必要な調査等を実施いたしました。  また、砂漠化防止対策として、東アフリカ地域等の基礎調査及び西アフリカ地域の実証調査を実施するとともに、地球温暖化対策として、温暖化が農林水産生態系に及ぼす影響の予測技術及び農業系から排出されるメタン等の実態把握と制御技術開発開発途上国における農業関連の温室効果ガス対策の策定についての助言、支援等を実施いたしました。  このほか、開発途上国の現状に即した農林水産業協力の一層の促進を図るため、中長期的な農林水産業協力の推進方策等の策定のための基礎調査等を実施するとともに、国際連合食糧農業機関のフィールドプロジェクト及び国際熱帯木材機関への拠出等国際機関を通じた協力を推進いたしました。  第五に、技術開発・普及による農業生産の効率化に関しての事業概要であります。  まず、農林水産業に関する重要課題に対応するため、冷害等異常気象に対応した研究、高生産性土地利用型農業技術の確立のための研究、地域の多様な農林水産業の展開に資するための研究、環境問題に対応した研究を実施いたしました。  また、農林水産業・食品産業等の生産性の飛躍的向上、農産物・食品の高付加価値化等を図るため、イネ・ゲノム解析研究をはじめとする基礎的・先導的研究を実施するとともに、DNA及びDNA情報を体系的に収集・蓄積・提供するDNAバンク事業の実施をはじめとする研究開発基盤の強化を図りました。  さらに、国際的な研究交流を推進するほか、民間及び都道府県研究開発に対する支援を実施いたしました。  これらの技術開発の成果等について農業者への普及等を図るため、協同農業普及事業等の効果的な推進を図りました。  また、農村地域等における情報交流を進めるため、各種情報システムの開発整備等を図りました。  このほか、農林水産業の構造等の実態を的確に把握し、農林水産行政の効率的かつ適正な推進に資するため、一九九五年農業センサスをはじめ、各種統計調査等を実施いたしました。  第六に、食生活の安全性確保・品質向上のための消費者行政サービスの充実に関しての事業概要であります。  まず、国民の健康で豊かな食生活を推進する観点から消費者への情報提供業務の充実、規格・表示の適正化等消費者対策を推進するとともに、牛乳・果実等の農水産物の消費拡大対策の推進を図りました。  また、農産物の価格については、需要の動向と生産性向上の成果をより的確に、かつ可能な限り反映し、農産物が国民の納得の得られる価格で安定的に供給されるよう努めました。  このほか、世界の農業・食料情勢の調査・分析等を行うとともに、飼料穀物等の備蓄対策を推進いたしました。  第七に、活力ある農業生産の展開に関しての事業概要であります。  まず、生産者・生産者団体の一層の主体的取組みを基礎に、地域の自主性の尊重を旨として、「新しい食料・農業・農村政策の方向」に示された基本方向に即し、水稲作・転作を通じた望ましい経営の育成を図りつつ、生産性の高い水田営農を推進するため、水田営農活性化対策を実施いたしました。  また、生産性の高い農業の実現、高品質な農産物の生産、環境保全に配慮した農業の展開等を図るため、二十一世紀に向けた先進的農業というべき効率的で環境にやさしく、かつ農業者にとって魅力ある生産活動を推進する先進的農業生産総合推進対策を地域の自主性と活力を基礎に総合的かつ計画的に実施いたしました。  さらに、牛肉の輸入自由化等に対処するため、肉用子牛生産安定等特別措置法に基づき、牛肉等の関税収入を財源とした肉用子牛等対策を引き続き実施するとともに、畜産活性化総合対策により、生産から流通・消費に至る各種事業を総合的に実施いたしました。  このほか、生産コストの節減等を図るため、革新的農業機械等の開発・実用化、広域的な農作業受委託を推進する農業機械銀行の育成、肥料の合理的な流通方式の推進等農業生産資材対策を実施いたしました。  第八に、食品関連産業の振興と輸出条件の整備に関しての事業概要であります。  まず、農業サイドと食品産業サイドとの連携の下、原料農産物の安定供給と利用の高度化等を図るため、食品産業原料対策を講じるほか、地域食品の高付加価値化による地域食品産業の高度化を図るため、加工施設の整備、市場開拓等を総合的に推進するとともに、地域食品のマーケティング力を強化するため、ふるさと食品の情報提供等を実施いたしました。  また、食品産業の体質と経営基盤の強化を図るため、食品産業における廃棄物再生利用技術等先端技術開発を進めるとともに、食品産業の大半を占める中小企業の技術水準の向上を図るため、汎用性の高い技術開発等を推進いたしました。  さらに、生鮮食料品等の流通の合理化を図るため、卸売市場の計画的整備を図るとともに、消費者ニーズの多様化・高度化、流通コストの上昇等に対処するため、食品流通の総合的な構造改善対策を推進いたしました。  このほか、我が国農林水産物の販路を拡大し、農山漁村の活性化等に資するため、輸出促進対策を推進いたしました。  第九に、農林漁業金融の充実に関しての事業概要であります。  農林漁業生産の経営構造の改善、基盤整備等の促進に資するため、農林漁業金融公庫資金、農業近代化資金等の各種制度資金について、所要の融資枠の確保、融資内容の充実を図るとともに、農業信用保証保険機能の充実を図りました。  第十に、緑豊かな森林の整備と山村地域の活性化に関しての事業概要であります。  まず、最近における山地災害の発生状況等を踏まえ、保安林整備臨時措置法を延長し、保安林の計画的整備を推進するとともに、第八次治山事業五箇年計画に基づき、治山事業を推進したほか、多様で質の高い森林の整備を図るため、森林整備事業計画に基づき、造林・林道事業を推進いたしました。  また、健全な森林の育成を図るための間伐総合対策を実施するとともに、松くい虫被害対策特別措置法に基づく総合的な松林保全対策、林野火災予防対策、緑化対策等を推進したほか、森林計画制度の適正運用の確保を図りました。  さらに、林業経営の体質強化と山村の活性化を図るため、林業の担い手の育成強化、高性能林業機械の開発、林業構造改善事業、特用林産の振興等を推進するとともに、地域の環境と調和した生産・生活基盤を整備する等住みよいむらづくりの推進を図りました。  また、木材の供給体制整備と木材産業の振興を図るため、木材の低コスト安定供給体制の整備等を推進するとともに、新たな用途への技術開発及び実証・普及等による木材需要の拡大等を推進いたしました。  さらに、国内の森林を守り育てるため、森林整備活性化資金を創設する等、林業金融制度の拡充を図りました。  このほか、国有林野事業については、国有林野事業改善特別措置法に基づき策定された「国有林野事業の改善に関する計画」に即して、経営改善を推進いたしました。  第十一に、国民に開かれた漁港・漁村の形成と豊かな海の保全に関しての事業概要であります。  まず、二十一世紀に向けた漁業生産基盤を整備するため、第九次漁港整備長期計画及び第四次沿岸漁場整備開発計画を新たに策定し、漁港漁村及び沿岸漁場の整備を推進するとともに、新沿岸・沖合域総合開発地域整備(新マリノベーション)構想の策定、むらづくり対策、漁村地域の活性化等の諸施策を講じたほか、沿岸漁業活性化構造改善事業、内水面活性化総合対策事業等を実施いたしました。  また、沿岸新時代に即応した我が国周辺水域の漁業振興を図るため、漁業資源の調査と海の生態系の把握を行うとともに、資源管理型漁業の定着化、栽培漁業・養殖業の振興、漁場環境保全対策等の諸施策を講じたほか、海面の合理的利用を推進いたしました。  さらに、海外漁場の確保を図るため、国際漁業協力の推進と国際漁業資源等の調査を実施したほか、漁業の合理化・近代化を推進するための技術開発と水産施策の基礎となる試験研究を推進・強化いたしました。  このほか、水産業・漁協の経営対策を講じるとともに、漁業就業者の育成確保、水産物の需給安定、流通・加工体制の整備等の諸施策を推進いたしました。  第十二に、ウルグァイ・ラウンド農業合意関連対策の着実な推進に関しての事業概要であります。  ウルグァイ・ラウンドの農業交渉の合意を受け、新たな国境措置の下で、新政策の方向に即した望ましい農業構造が早急に実現されるよう農業の体質強化を推進するための条件整備を実施しました。  第十三に、その他の重要施策に関しての事業概要であります。  まず、海岸事業については、第五次海岸事業五箇年計画に基づき、海岸保全区域における事業の実施を図りました。  また、災害対策については、農作物共済等の各共済に係る所要の共済掛金国庫負担金、農業共済再保険特別会計の農業勘定における平成年度の再保険金の支払財源の不足に充てるため借り入れた借入金の利子等を農業共済再保険特別会計に繰り入れたほか、農業共済団体の事務費等を助成し、農業災害補償制度の円滑な実施を図るとともに、災害営農資金等の利子補給に対する助成を図りました。  さらに、台風・豪雨及び阪神・淡路大震災等により被災した農地、農業用施設、山林施設、漁港施設等の災害復旧事業を実施いたしました。  このほか、農業団体の整備についても、農業委員会等に対して、引き続き助成等を行いました。  以上をもちまして、一般会計歳入歳出決算に関する御説明を終わります。  次に、各特別会計決算について御説明申し上げます。  第一に、食糧管理特別会計であります。国内米管理勘定等の七勘定を合わせて申し上げますと、収納済歳入額は二兆三千五百九億五千二百七十八万円余、支出済歳出額は二兆三千二百九十七億八千七百十六万円余でありまして、歳入歳出差引き二百十一億六千五百六十一万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度歳入に繰り入れることといたしました。また、このうち食糧管理勘定の損益計算上の損失は二千三百二十一億一千七百五十九万円余でありまして、調整資金を取りまして整理いたしました。  これにより、食糧管理法、農産物価格安定法及び飼料需給安定法に基づき、米、麦、でん粉、輸入飼料の買入れ、売渡し等を管理することにより価格の安定と国民食糧の確保を図り、国民経済の安定に資するための事業を実施いたしました。  第二に、農業共済再保険特別会計であります。農業勘定等の六勘定を合わせて申し上げますと、収納済歳入額は四千三百二十六億六千二百九十五万円余、支出済歳出額は四千七十五億七千三十五万円余であります。歳入歳出差引き二百五十億九千二百六十万円余のうち、翌年度へ繰り越す額百八十八億百二十五万円余を控除し、六十二億九千百三十四万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、それぞれ翌年度歳入に繰り入れ、又は積立金として積み立てること等といたしました。  これにより、農業災害補償法に基づき、国が農作物共済等の各共済についての再保険事業を行うことによって、農業経営の安定等を図るための農業共済事業の円滑な実施を図りました。  第三に、森林保険特別会計であります。収納済歳入額は百二十四億七千九十一万円余、支出済歳出額は二十三億三千五百七十三万円余であります。歳入歳出差引き百一億三千五百十八万円余のうち、翌年度へ繰り越す額九十億六千八百二十七万円余を控除し、十億六千六百九十一万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、積立金として積み立てることといたしました。  これにより、森林国営保険法に基づき、国が森林の火災、気象災及び噴火災を保険事故とする森林保険事業を行うことによって林業経営の安定を図るための事業を実施いたしました。  第四に、漁船再保険及漁業共済保険特別会計であります。漁船普通保険勘定等の五勘定を合わせて申し上げますと、収納済歳入額は五百六十二億三千六百六十四万円余、支出済歳出額は三百七十九億五千四百四十六万円余であります。歳入歳出差引き百八十二億八千二百十八万円余のうち、翌年度へ繰り越す額百九十七億七千五百八十五万円余を控除し、十四億九千三百六十七万円余の決算上の不足を生じました。この不足金は、法律の定めるところに従い、積立金から補足することといたしました。  これにより、漁船損害等補償法、漁船乗組員給予保険法及び漁業災害補償法に基づき、国が再保険及び保険事業を行うことによって漁業経営の安定に資するための事業を実施いたしました。  第五に、農業経営基盤強化措置特別会計であります。収納済歳入額は八百八十一億三百八十六万円余、支出済歳出額は二百四十億九千百二十六万円余でありまして、歳入歳出差引き六百四十億一千二百六十万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度歳入に繰り入れることといたしました。  これにより、農地法等の規定に基づき、国が自作農創設のために行う農地等の買収、売渡し等に関する事業、農地保有の合理化を促進するための事業に対する助成、農業改良資金助成法の規定に基づく農業改良資金貸付事業及び青年の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法の規定に基づく就農支援資金貸付事業を実施いたしました。  第六に、国有林野事業特別会計であります。国有林野事業勘定につきましては、収納済歳入額は五千六百七十八億三千三百九十八万円余、支出済歳出額は五千九百七十七億三千三百七十六万円余であります。この勘定の損益計算上の損失は一千二百四十二億四千六百九十一万円余でありまして、法律の定めるところに従い、損失の繰越しといたしました。治山勘定につきましては、収納済歳入額は三千七百四十億三千百四十七万円余、支出済歳出額は三千七百三十八億七千二百八十八万円余でありまして、歳入歳出差引き一億五千八百五十九万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度歳入に繰り入れることといたしました。  これにより、国有林野法に規定される国有林野の管理経営の事業及びその附帯業務に係る事業並びに治山事業の計画的推進を図る事業を実施いたしました。  第七に、国営土地改良事業特別会計であります。収納済歳入額は五千五百一億八千七百二十一万円余、支出済歳出額は五千三百八億二百五十四万円余でありまして、歳入歳出差引き百九十三億八千四百六十六万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度歳入に繰り入れることといたしました。  これにより、土地改良法に基づき、すべての国営土地改良事業、受託工事及び直轄調査に関する事業を実施いたしました。  以上をもちまして、平成年度農林水産省決算説明を終わります。  なにとぞ、よろしく御審議の程お願い申し上げます。     …………………………………    平成年度決算農林水産省についての検査の概要に関する主管局長説明                会計検査院  平成年度農林水産省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項十三件、意見を表示し又は処置を要求した事項三件及び本院の指摘に基づき当局において改善の措置を講じた事項三件であります。  まず、不当事項について御説明いたします。  検査報告番号一二二号は、茨城県行方郡潮来町の小泉第一転作組合が実施した水田農業確立対策推進事業におきまして、湿田の客土工事等について工事費の値引きを受けていたため、国庫補助対象事業費の精算が過大となっているものであります。  検査報告番号一二三号から一二五号までの三件は、群馬県が実施した広域営農団地農道整備事業におきまして、設計が適切でなかったため橋脚が不安定な状態になっているものであります。  検査報告番号一二六号は、長野県小県郡真田町が実施した農村総合整備モデル事業におきまして、設計が適切でなかったため橋脚が不安定な状態になっているものであります。  検査報告番号一二七号は、滋賀県高島郡マキノ町が実施した農業集落排水事業におきまして、設計が適切でなかったため汚水処理水槽の前処理室等が不安定な状態になっているものであります。  検査報告番号一二八号は、島根県大田市が実施した畜産活性化総合対策事業におきまして、補助の対象とは認められない施設に係る設計費等を補助の対象としていたものであります。  検査報告番号一二九号は、岡山県和気郡日生町の日生町漁業協同組合及び頭島漁業協同組合が実施した新沿岸漁業構造改善事業(後期対策)におきまして、鋼管杭の設計が適切でなかったため、かき殻集積施設が不安定な状態になっているものであります。  検査報告番号一三〇号は、長崎県長崎市の株式会社総合給食たけやが実施した学校給食米飯導入促進事業におきまして、炊飯設備をリース契約により借り受けていたため、補助の対象とはならないものであります。  検査報告番号一三一号から一三四号の四件は、農業改良資金の貸付けが不当と認められるものであります。  この資金貸付事業は、都道府県が農業者等における農業経営の改善等に必要な資金の貸付けを行うもので、その貸付けに必要な資金の三分の二を農林水産省が無利子で貸し付けているものでありますが、貸付けに当たり、借入者から事実と相違した内容の貸付申請書や事業実施報告書が提出されていたにもかかわらず、これに対する審査及び確認が適切でなかったなどのため、貸付金額を過大に算定するなどしていたものであります。  次に、意見を表示し又は措置を要求した事項について御説明いたします。  その一は、沿岸漁業構造改善事業による施設の措置及び運営に関するものであります。  水産庁では、沿岸漁業構造改善事業により水産物加工施設等を設置する漁業協同組合等に対し補助金を交付しております。これらの施設の中には、漁家の漁業経費の節減や所得の向上を図ることなどを目的とするものがあります。  本件事業について調査したところ、施設の運営経費が漁業経費の節減額や漁家所得の向上額等を上回っていたり、収支が赤字になっていて施設の運営を継続することが困難になっていたりなどしていて、漁家の経費の節減や所得の向上に寄与しておらず、事業効果が十分に発現していないと認められるものが十四道府県において見受けられました。  このような事態が生じているのは、水産庁において、企業経営的な観点から事業実施計画を十分審査したり、事業実施後において施設の運営状況を的確に把握したり、事業主体等に対して事業の内容等について十分検討させたりする体制が十分整っていなかったことによると認められました。  そこで、水産庁に対して、本件事業についての事前審査やフォローアップの体制を整備することにより、効果的な事業の実施を図るよう是正改善の処置を要求いたしたものであります。  その二は、肉豚に係る家畜共済事業の運営に関するものであります。  農林水産省では、農業災害補償法に基づき、農業者が不慮の事故によって受ける農作物の被災や家畜の死亡などの損失を補てんするため、農業共済組合等が行う共済事業の再保険を引き受けるとともに農業者の共済掛金の一部を負担するなどして農業災害補償制度を運営しております。  農業共済組合等が行う家畜共済事業のうち肉豚を対象とするものの共済の引受けは、農業者が組合等に対して、飼養している出生後第五十日から第八月の月の末日までの肉豚全頭を一体として共済への加入の申込みをし、組合等が審査し、承諾することによって成立することとなっております。  また、肉豚が死亡した場合、農業者は、これを組合等に通知し、組合等は現地において死亡した肉豚が引受けの対象となっているものかなとの確認をした後、共済金の額を算定し支払を行うこととなっております。  そこで、組合等の共済の引受けや共済事故の確認等が適切に行われ、制度が適正に運営されているかについて調査いたしました。  その結果、五、六両年度で九十八組合等において、共済の引受け及び共済事故の確認に当たり、共済対象の肉豚の頭数を肉豚の飼養場所で実際に確認していないため、共済引受頭数や共済金を支払った事故頭数と実際の共済対象の肉豚の頭数や死亡頭数とがかい離していて、適切でないと認められる事態が農業者四百二十人について見受けられました。  このような事態が生じているのは、農林水産省において、養豚経営の規模が拡大し一貫経営が増加するなどして飼養頭数の把握が困難となっているのに、これに対応した引受方法の見直しを行っていないこと、豚舎への立入りの容認など共済事業における農業者の義務や責任を明確にしていないこと、都道府県及び農業共済組合連合会において、組合等の引受審査、事故確認等の業務に対する指導・監督の体制が十分でないこと、組合等において、共済事業についての認識、理解が十分でなく、農業者に対して適切な指導を行っていないこと、不適切な事態に対して共済金の支払免責など厳格な処置を執っていなかったことなどによると認められました。  したがいまして、農林水産省において、頭数の把握が容易となるような引受方法に変更すること、農業者の義務や責任を明確にすること、都道府県等における組合等に対する指導・監督体制を整備すること、組合等における制度の理解や適正な業務の遂行に対する認識を深めること、農業者に対する制度の趣旨の徹底と共済金の支払免責規定の厳格な適用を指導することなどの適切な措置を講ずることにより、共済事業の運営の適正化を図るよう改善の処置を要求いたしたものであります。  その三は、国有林野事業の素材生産及び造林の請負化に伴う社会保険料等に関するものであります。  林野庁では、国有林野事業における素材生産及び造林の施行については、農林水産省が策定した経営改善計画により、昭和五十九年度以降、請負化を推進しております。  この請負化の担い手である林業事業体には零細な規模のものが多いことなどから、林業事業体の育成・強化のための諸施策の一環として、林業事業体が雇用している現場作業員の社会保険等への加入を促進して労働条件の改善を図っております。このため、素材生産事業及び造林事業の予定価格の積算に当たって、現場作業員に係る社会保険料等の事業主負担額については、現場作業員の全員が加入しているものとして、これを労務関係費として計上しております。  そこで、林業事業体に雇用されている現場作業員の社会保険等への加入状況等を検査いたしました。  その結果、百十事業体、四百九十九件の事業において、二つの不適切な事態が見受けられました。一つは社会保険に加入できない者に係る事業主負担額を含めて労務関係費として積算していた事態、二つめは事業体において、社会保険に加入すべき者等を加入させていないため、積算で見込んだ労務関係費がその効果を発現していない事態であります。  このような事態が生じた主な理由は、一の事態については、現場作業員の個別の加入状況を調査しないまま、全員が加入しているものとして労務関係費を積算することとしていたこと、二の事態については、林野庁において、社会保険等への加入の促進を実効あるものとするための具体的な方策を定めておらず、営林(支)局、営林署に対しても、現場作業員の雇用形態、年齢等についての実態把握を十分させていないこと、また、営林署において、事業体に対して、具体的に加入の促進を指導するなど実効ある措置が執られていないことであると認められました。  したがいまして、林野庁に対して、一の事態については、営林(支)局及び営林署に、各事業体の現場作業員の社会保険等への加入状況を的確に調査させ、加入の実態を把握させるとともに、これを労務関係費の積算に適切に反映させることにより、適用除外者等に係る事業主負担額を含めないようにさせるよう、会計検査院法第三十四条の規定により是正改善の処置を要求しました。また、二の事態については、社会保険へ加入すべき者等で未加入となっている者について、労働条件の改善を図るなどの方針に沿って加入が促進されるよう具体的な方策を定め、また、営林(支)局及び営林署で、関係行政機関との連携の下に、事業体を通じて現場作業員の社会保険等への加入を一層促進させるため指導を強化するよう同法第三十六条の規定により改善の意見を表示したものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。  その一は、農業農村整備事業の実施における水道管等の移設補償費の算定に関するものであります。  農林水産省では、土地改良法等に基づき、農業・農村の健全な発展を図ることを目的として、ほ場整備事業、農業集落排水事業等の農業農村整備事業を実施する都道府県、市町村等の事業主体に対し、事業の実施に要する経費の一部を補助することとしております。  そして、事業主体は、このような事業の実施に当たって、道路を掘削する際に、埋設されている水道管等が障害となる場合には、この水道管等を管理する水道事業者と協議するなどして、水道管等の移設に関する移設補償契約を締結し、水道補償費を支払うことになっております。  今回、補助対象経費として計上された水道補償費が適切に算定されているかについて調査しましたところ、事業主体では、水道事業者が設計図書に基づき算出した水道管等の移設工事費である設計金額を基として水道補償費を算定し、この金額により水道事業者と移設補償契約を締結して水道補償費を支払い、その全額を補助対象経費としておりました。  一方、水道事業者は、当該移設工事を実施するに当たって、この設計金額を基に予定価格を設定して競争入札等に付し、予定価格以下の落札価格等で契約していたため、その工事請負契約金額は、水道補償費の算定の基礎とした設計金額を下回っている状況となっておりました。  しかし、水道補償費は、事業の施行に伴い障害となる水道管等の機能回復に要する費用を補償するものであり、その補償に当たっては、実際に要した移設工事費である工事請負契約金額を基に算定した金額で補償すれば足りると認められ、そのようにすれば水道補償費を節減できたと認められました。この点について当局の見解をただしましたところ、農林水産省では、七年十一月に地方農政局等に対して通達を発し、都道府県等が支払う水道補償費は、工事請負契約金額に基づき算定した額によることとする処置を講じたものであります。  その二は、国庫補助事業に係る食糧費の使用及び経理処理に関するものであります。  農林水産省では、土地改良事業、治山事業、漁港修築事業等の公共事業を実施する都道府県に対し、国庫補助金を交付しております。  これらの公共事業に係る国庫補助対象事業費には、工事費のほか事務費が含まれており、事務費は、国庫補助事業の実施に直接必要な人件費、旅費及び庁費から構成されております。そして、この庁費の一部に食糧費が含まれておりまして、食糧費の使用範囲は、交付規則等によると、国庫補助事業の実施のために直接必要な場合に限るとされております。  しかしながら、食糧費が国庫補助事業補助目的に沿って適切こ使用されているか、経理処理は適切に行われているかという観点から経理関係書類等に基づき調査しましたところ、食糧費の使用が国庫補助事業の実施のために直接必要であるか否か判然としていなかったり、食糧費の経理処理が明確でなかったりなどしている事態が見受けられ、改善の要があると認められました。  この点について当局の見解をただしましたところ、農林水産省では、七年十一月に都道府県に対して通達を発するなどして、 (一) 用地買収交渉等国庫補助事業実施のため特に必要な場合の地元関係者、学識経験者等との懇談会を除いて、原則として懇談会の経費補助の対象としないこととするなど国庫補助の対象となる食糧費の範囲を具体的に定め、 (二) 食糧費の使途内訳について、農林水産省審査・確認の徹底を図ることとし、 (三) 都道府県に対し、①国庫補助対象事業費と単独事業費の経理を区分する、②経理関係書類に目的、内容、出席者の範囲等を明示する、③都道府県の会計機関において的確な審査・確認を行うよう指導し、 食糧費の使用及び経理処理を適切に行うよう処置を講じたものであります。  その三は、外国産米の港湾荷役業務における運搬費に関するものであります。  食糧庁では、平成五年産米の不作によりまして、五年十一月から六年八月にかけて、タイ、中国、アメリカ、オーストラリアの四箇国から計二百五十九万トンの外国産米の輸入を行いました。  この外国産米の輸入に係る業務には、外国産米を本船から岸壁に取卸し、これを岸壁から港頭倉庫まで運搬する港湾荷役業務があります。この港湾荷役業務のうち、岸壁から港頭倉庫までのトラックによる運搬費につきましては、一般区域貨物自動車運送事業運賃料金のうち、時間制運賃率表に掲載されている八トン車の運賃に基づいて定められていました。  一方、食糧庁では、国内産米や買い入れた外国産米を売却するなどのためにトラックにより運送する場合の運送費につきましては、より大型の十トン車の運賃に基づいて算定し支払っていました。そこで、港湾荷役業務における運搬費を算出する基となったトラックの車種等が運搬の実態と適合しているかなどの観点から調査しましたところ、今回の運搬に使用したトラックの車種の実績は、ほとんど十トン車となっている状況でありました。したがいまして、外国産米の港湾荷役業務における運搬作業につきましては、経済的となる十トン車の運賃に基づいて単価を定める要があると認められました。  この点について当局の見解をただしましたところ、食糧庁では、七年九月に、運搬費の単価をトラックによる運搬の実態に即したものに改め、同年九月以降締結する契約から適用することとする処置を講じたものであります。  なお、以上のほか、平成年度決算検査報告に掲記いたしましたように、国営木曽岬干拓事業により造成された干拓地について、及び平成年度決算検査報告に掲記いたしましたように、飼料用外国産小麦の売渡しによるふすまの増産について、それぞれ意見を表示し又は処置を要求いたしましたが、これらに対する農林水産省の処置状況についても掲記いたしました。  以上をもって概要説明を終わります。     ─────────────    平成年度農林漁業金融公庫業務概況              農林漁業金融公庫  平成年度における農林漁業金融公庫の業務の概況についてご説明申し上げます。  国においては、新農政の本格的な展開と、ガット・ウルグァイ・ラウンド農業合意成立に伴う今後の国際化の進展を踏まえた国内農業の体質強化等を図ることを基本として諸施策が展開されました。  こうした国の施策に即応して、当公庫は、業務の運営に当たりまして、関係機関との密接な連携のもとに、農林水産業の生産基盤の整備及び経営構造の改善のための融資を推進するとともに、多様化する資金需要に対応して、融資条件の改善を含め、融資の円滑化に配慮してまいりました。  平成年度における貸付計画について申し上げますと、貸付計画額は六千億円を予定いたしました。  これに対する貸付決定額は四千百五十五億三千五十七万円となり、前年度実績と比較して四百八十六億八千四百万円余の減少となりました。  この貸付決定額を、農業・林業・水産業に大別して申し上げますと 一、農業部門   二千五百七十億五千四百八十四万円余 二、林業部門   四百七十五億三千百六十三万円余 三、水産業部門  二百七十八億五千八百四十九万円 四、その他の部門 八百三十億八千五百五十九万円余 となりまして、農業部門が全体の六十一・九%を占めております。  次に、平成年度の貸付資金の交付額は四千七十二億三千二百二十三万円余となりまして、これに要した資金は、一般会計からの出資金四百八十九億円、資金運用部からの借入金二千三百二十五億円、簡易生命保険からの借入金二百六十五億円、農業経営基盤強化措置特別会計からの借入金七十二億五百二十万円余並びに貸付回収金等九百二十一億二千七百二万円余をもって充当いたしました。  この結果、平成年度末における貸付金残高は五兆九百十三億五千四百八十五万円余となりまして、前年度末残高に比べて一千五百二十七億二千二百九十二万円余の減少となりました。  貸付金の延滞状況につきましては、平成年度末におきまして、弁済期日から六か月以上経過した延滞貸付金残高は八百八十四億二千六十四万円余、このうち一年以上延滞のものは七百九十億六千百十四万円余となっております。  次に、平成年度における収入支出決算の状況についてご説明申し上げますと、収入済額は、収入予算額三千四百四十四億四千三百四万円余に対し三千四百四十一億六千五十九万円余となりました。  また、支出済額は、支出予算額三千五百九十二億一千三百五十四万円余に対し三千四百三億七千百四十九万円余となり、支出に対し収入が三十七億八千九百十万円余多くなっております。  最後に、平成年度における当公庫の損益計算の結果について申し上げますと、貸付金利息等の総利益は三千五百九十九億六千七百十三万円余、借入金利息等の総損失は三千五百九十九億六千七百十三万円余となり、利益と損失が同額となりましたため、利益金はなく、国庫納付はありませんでした。  これらの業務の遂行に当たりましては、常に適正な運用について、鋭意努力してまいりましたが、平成年度決算検査報告におきまして、農林漁業構造改善事業推進資金の貸付けにつきまして不当事項として指摘を受けたものがありますことは、誠に遺憾に存じております。指摘を受けました事項につきましては、直ちに適切な措置を講じましたが、今後、このような事態の発生を防止するため業務運営の適正化に一層努める所存であります。  以上が、平成年度における農林漁業金融公庫の業務の概況であります。何とぞよろしくご審議のほどお願いいたします。     …………………………………    平成年度決算農林漁業金融公庫についての検査の概要に関する主管局長説明                会計検査院  平成年度農林漁業金融公庫決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項二件であります。  検査報告番号二〇六号及び二〇七号の二件は、農林漁業構造改善事業推進資金の貸付けが不当と認められるものであります。  これらの資金貸付事業は、農林漁業者に対し、農林漁業の生産力の維持増進に必要な長期かつ低利の資金で、一般の金融機関から融通を受けることが困難な資金を直接又は金融機関に委託して貸し付けるものでありますが、貸付けに当たり、借入者から事実と相違した内容の借入申込みや事業完成報告がされるなどしていたにもかかわらず、これに対する審査及び確認が適切でなかったなどのため、貸付金額を過大に算定するなどしていたものであります。  以上、簡単でございますが説明を終わります。     ─────────────    平成年度農林水産省所管一般会計及び特別会計決算に関する概要説明                 農林水産省  平成年度における農林水産省歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  一般会計歳入につきましては、当初予算額は四、八一八億七、三三六万円でありますが、予算補正追加額等二五億七、七八九万円余の増加がありましたので、歳入予算額は四、八四四億五、一二五万円余となっております。  これに対し、収納済歳入額は四、八七六億五、二七三万円余であり、これを歳入予算額と比較いたしますと三二億一四八万円余の増加となっております。これは、日本中央競馬会の決算上の剰余金が予定より多かったこと等の理由によるものであります。  次に、一般会計歳出につきましては、当初予算額は三兆八一七億二、四七六万円余でありますが、経済対策の一環として内需の拡大を図るため地方公共団体等が施行する農村整備事業事業費の一部補助に必要な経費等として予算補正追加額九、七〇六億七、一一七万円余、既定予算の節約等による予算補正修正減少額三三七億九、三八一万円余、北海道における農業生産基盤整備事業を実施するために必要な経費等について総理府所管等から移替えを受けた額四、〇二〇億九、三〇九万円余、前年度からの繰越額五、〇九〇億五、三三二万円余、食品流通等対策に必要な経費等として予備費一五億七六九万円余の増減がありましたので、歳出予算現額は四兆九、三一二億五、六二三万円余となっております。  これに対し、支出済歳出額は四兆一、九五四億二、一一九万円余であり、これと歳出予算現額との差額は七、三五八億三、五〇三万円余となっております。  この差額のうち、翌年度への繰越額は六、八〇八億五、七二七万円余であり、不用額は五四九億七、七七六万円余となっております。  このほか、これら一般会計とは別に、大蔵省所管産業投資特別会計に係る支出済歳出額は一一九億七、四三八万円余となっております。  次に、農林水産省一般会計の主要経費支出実績について、御説明申し上げます。  第一に、社会保障関係費であります社会保険費につきましては、「農業者年金基金法」に基づく農業者年金事業の実施及び農業者離農給付金の支給等に要した費用として一、〇七二億七、七七〇万円余の経費支出いたしました。  第二に、文教及び科学振興費であります科学技術振興費につきましては、農林水産業に関する試験研究及び試験研究機関の運営等に要した費用として九五四億七、九七九万円余の経費支出いたしました。  第三に、公共事業関係費につきましては、総額で二兆四、七四一億六、三五九万円余の経費支出いたしました。  その内訳といたしまして、治山治水対策事業費につきましては、山地災害の防止、水資源のかん養等を図る治山事業、海岸保全施設の整備等により国土の保全を図る海岸事業等に要した費用として三、〇八〇億三、四八〇万円余の経費支出いたしました。  港湾漁港空港整備事業費につきましては、我が国水産業の発展を図るため、その基盤である漁港施設の整備に要した費用として二、七一〇億九、一一〇万円余の経費支出いたしました。  農業農村整備事業費につきましては、農業の生産基盤の整備、農村の生活環境の整備及び農地等の保全管理のための整備に要した費用として一兆四、八五七億九、二七八万円余の経費支出いたしました。  林道工業用水等事業費につきましては、山村地域の基盤整備を図る林道事業及び沿岸漁業の安定的な発展を図る沿岸漁場整備開発等の事業に要した費用として二、五六二億三、八二八万円余の経費支出いたしました。  調整費等につきましては、国土の総合開発等の調整に要した費用として五億三八一万円余の経費支出いたしました。  災害復旧等事業費につきましては、災害を受けた農業施設、山林施設及び漁港施設の復旧事業に要した費用として一、五二五億二七九万円余の経費支出いたしました。  第四に、経済協力費につきましては、我が国海外漁場の確保と国際漁業協力を一体的に推進するために要した費用として五一億七、一三二万円余の経費支出いたしました。  第五に、食糧管理費につきましては、生産性の高い水田営農を推進するための費用及び食糧管理特別会計の調整資金に充てること等のために要した費用として二、六八六億七、三七六万円余の経費支出いたしました。  第六に、その他の事項経費につきましては、農林水産本省等の一般行政に要した費用として一兆二、四四二億六、七〇三万円余の経費支出いたしました。  次に、本年度において実施した主な事業概要を施策別に御説明いたします。  第一に、ウルグァイ・ラウンド農業合意関連対策の着実な推進に関しての事業概要であります。  まず、効率的かつ安定的な農業経営が生産の大半を担う農業構造を実現するため、育成すべき農業経営への農地利用の集積、経営体の安定的な営農展開のための負債対策、土地改良負担金対策の推進を図るとともに、就農支援のための無利子資金の貸付けによる新規就農者の確保、国境措置の変更に伴う各作物の特色に応じた対策を実施いたしました。  また、効率的かつ安定的な農業経営による生産展開のための基礎的条件の整備を図るため、高生産性農業基盤の整備の重点的かつ加速的な推進を図るとともに、地域の農業生産の高度化等のための諸施設の整備を推進いたしました。  さらに、中山間地域等の農山村地域の活性化のため、新規作物の導入推進のための無利子資金の貸付け、生産基盤と生活環境の一体的整備、地域産品・地域資源等に関する情報の発信拠点の大都市における整備を図るとともに、農地保全活動を推進いたしました。  第二に、担い手に焦点を置いた効率的かつ安定的な農業経営の育成に関しての事業概要であります。  まず、農業経営基盤強化促進法に基づく基本構想の早期実現に向けた活動への支援、経営改善支援センターの機能の充実等のソフト事業を引き続き行うとともに、土地基盤や近代化施設等ハード面の整備等を行う農業経営基盤強化促進対策事業を新たに実施いたしました。  また、次代の農業を担う意欲と経営能力に優れた青年農業者を育成確保するための対策の充実強化を図りつつ、女性の地位向上、能力発揮等を一層推進するとともに、高齢者が健康的な生活を営み得るための環境整備及び能力を発揮できるようにするための条件整備等を実施いたしました。  さらに、「新しい食料・農業・農村政策の方向」に示された政策課題の実現に資するため、魅力ある農業を実現するための生産基盤の整備、快適で美しい農村空間を形成するための総合的整備及び安全な国土の維持・形成に資するための整備を課題とする第四次土地改良長期計画に基づいて農業農村整備事業を着実かつ効率的に実施いたしました。  また、経営体の育成強化を主要課題としつつ、広域にわたる地域間での連携の確立、新たな所得雇用機会の創出による農業経営の多角化の促進等多面的な視点から地域農業の基盤の確立を短期間で行う地域農業基盤確立農業構造改善事業を推進し、経営体等を核とした生産体制の確立、国際化の影響を強く受ける作物及び地域の特色を生かした多様な農業生産等を推進する農業生産体制強化総合推進対策を地域の自主性と活力を基礎に総合的に実施いたしました。  さらに、牛肉の輸入等需給事情の変化に対処するため、肉用子牛生産安定等特別措置法に基づき、牛肉等の関税収入を財源とした肉用子牛等対策を引き続き実施するとともに、畜産再編総合対策により、生産から流通・消費に至る各種事業を総合的に実施いたしました。  また、生産者・生産者団体の一層の主体的取組を基礎に、地域の自主性の尊重を旨として、「新しい食料・農業・農村政策の方向」に示された基本方向に即し、水稲作と転作を組み合わせた望ましい経営の育成を図りつつ、生産性の高い水田営農を推進するため、水田営農活性化対策を実施いたしました。  このほか、生産コストの節減等を図るため、革新的農業機械等の開発・実用化、広域的な農作業受委託を推進する農業機械銀行の育成、肥料の合理的な流通方式の推進等農業生産資材対策を実施いたしました。  第三に、農山漁村地域の活性化に関しての事業概要であります。  まず、山村等の振興を一層促進するため、山村等の多面的機能の発揮を通じ総合的視点に立った地域の活性化と定住の促進のための支援措置である山村振興等農林漁業特別対策事業を実施いたしました。  また、中山間地域総合整備事業については、従来の数集落を対象とする集落型に加え市町村全域から複数の市町村にまたがる地域を対象に地方単独事業とも連携しながら広域的な活性化を推進する広域連携型、高付加価値型農業の展開に必要な生産基盤の整備を単独でも実施できる生産基盤型を創設いたしました。  さらに、都市と比較して立ち遅れている農村の質的向上を図るため、農業集落排水事業、農道整備事業、農村総合整備事業等を実施いたしました。  このほか、環境と調和した豊かな地域づくりを進めるため、生態系の保全、景観を配慮した整備を行い、広域的な環境ネットワークを構築する総合型の農村自然環境整備事業を新たに実施いたしました。  第四に、新技術開発普及の推進等に関しての事業概要であります。  まず、農林水産業に関する重要課題に対応するため、生産現場に直結した新技術開発、生産性の飛躍的向上のための基盤技術開発、環境問題に対応した研究を実施いたしました。  また、農林水産業・食品産業等の生産性の飛躍的向上、農産物・食品の高付加価値化等を図るため、イネ・ゲノム解析研究をはじめとする基礎的・先導的研究を実施するとともに、DNA及びDNA情報を体系的に収集・蓄積・提供するDNAバンク事業の実施をはじめとする研究開発基盤の強化を図りました。  さらに、国際的な研究交流を推進するほか、民間及び都道府県研究開発に対する支援を実施いたしました。  これらの技術開発の成果等について農業者への普及等を図るため、協同農業普及事業等の効果的な推進を図りました。  また、農村地域等における情報交流を進めるため、各種情報システムの開発整備等を図りました。  このほか、農林水産業の構造等の実態を的確に把握し、農林水産行政の効率的かつ適正な推進に資するため、各種統計調査等を実施いたしました。  第五に、環境問題への積極的な対応と国際協力の推進に関しての事業概要であります。  まず、地球環境保全対策としましては、熱帯林保全対策として、焼畑移動耕作地域において住民による森林造成を促進するために必要な基礎調査等を実施するとともに、持続的な農業・農村開発に必要な調査等を実施いたしました。  また、砂漠化防止対策として、東アフリカ地域等の基礎調査及び西アフリカ地域の実証調査を実施するとともに、地球温暖化対策として、温暖化が農林水産生態系に及ぼす影響の予測技術及び農業系から排出されるメタン等の実態把握と制御技術開発、環境保全に配慮した土壌管理指針の策定等を実施いたしました。  このほか、開発途上国の現状に即した農林水産業協力の一層の促進を図るため、中長期的な農林水産業協力の推進方策等の策定のための基礎調査等を実施するとともに、国際連合食糧農業機関のフィールドプロジェクト及び国際熱帯木材機関への拠出等国際機関を通じた協力を推進いたしました。  第六に、食品加工・流通及び消費対策等の推進に関しての事業概要であります。  まず、食品産業の競争力の強化と国産農産物の利用拡大との両立を目指し、農業生産から加工、流通、消費までの食品の流れである「フードシステム」の全体としての高度化のための事業を実施いたしました。  また、食品産業の体質と経営基盤の強化を図るため、環境負荷の低減技術等先端技術開発を進めるとともに、食品産業の大半を占める中小企業の技術の向上を図るため、汎用性の高い技術開発を推進いたしました。  さらに、日付表示の点検指導の実施等、規格、表示の適正化の推進を図りました。  また、生鮮食料品等の流通の合理化を図るため、卸売市場の計画的整備を図るとともに、消費者ニーズの多様化、高度化、流通コストの上昇等に対処するため、食品流通の総合的な構造改善対策を推進いたしました。  このほか、我が国農林水産物の販路を拡大し、農山漁村の活性化等に資するため、輸出促進対策を推進するとともに、世界の農業・食料情勢の調査・分析等を行いました。  第七に、農林漁業金融の充実に関しての事業概要であります。  農林漁業生産の経営構造の改善、基盤整備等の促進に資するため、農林漁業金融公庫資金、農業近代化資金等の各種制度資金について、所要の融資枠の確保、融資内容の充実を図るとともに、農業信用保証保険機能の充実を図りました。  第八に、林業・木材産業の活性化と緑豊かな森林・山村の整備に関しての事業概要であります。  まず、木材需要の重要な部分を占める木造住宅建築において、木材供給の低コスト化を図るための総合対策を実施したほか、森林の流域管理システムを実行段階に移し、高生産性の林業を実現するため、林業施策の効率的かつ集中的な投入を行う流域林業総合推進対策を新たに実施するとともに、中山間において、林業・山村の活性化を図り、活力と魅力ある地域づくりを推進するため中山間地域林業山村活性化総合対策を実施いたしました。  また、多様で質の高い森林の整備を図るため、森林整備事業計画に基づき、造林・林道事業を推進したほか、第八次治山事業五箇年計画に基づき、治山事業を推進いたしました。  さらに、木材の有効な利用を推進するため、新たな用途への技術開発等を行うとともに、充実しつつある我が国人工林資源の有効利用を促進するため、品質の確保された木材製品の安定供給体制の整備等を図りました。  また、林業・山村の活性化を図るため、林業担い手の育成強化、高性能林業機械の開発、特用林産の振興、林業構造改善事業等を推進するとともに、交流・滞在活動基盤の整備等による活力ある住みよいむらづくりを推進いたしました。  さらに、健全な森林の育成を図るための間伐総合対策を実施するとともに、松くい虫被害対策特別措置法に基づく総合的な松林保全対策、林野火災対策、緑化対策等を推進したほか、森林計画制度の適正運用の確保を図りました。  このほか、国有林野事業については、国有林野事業改善特別措置法に基づき策定された「国有林野事業の改善に関する計画」に即して、経営改善を推進いたしました。  第九に、二十一世紀に向け新たなニーズに対応した水産業の振興と活力ある漁村の形成に関しての事業概要であります。  まず、漁業経営の改善合理化・体質の強化を図るため、漁業経営改善促進資金を創設する等、水産制度金融の拡充・強化を図るとともに、漁業生産構造の再編整備の促進、漁業災害補償制度等の充実、漁業・漁協経営基盤の強化等の諸施策を推進いたしました。  また、水産物の需要・価格の安定と流通・加工体制の整備を行うため、水産物調整保管事業について所要の改善を行ったほか、複数の漁協が連携して広域的に協力を行う体制を整備するとともに、水産物の利用動向の調査分析等を通じた消費拡大対策等を実施いたしました。  さらに、漁業生産基盤・漁村生活環境の整備と漁村の活性化を図るため、新マリノベーション構想を推進するとともに、漁港漁村の整備並びに沿岸漁場整備開発事業及び沿岸漁業構造改善事業を推進したほか、むらづくり対策、漁業の担い手の育成確保等の諸施策を講じました。  このほか、我が国周辺水域の持続的かつ高度な利用を図るため、資源調査を充実強化するとともに、資源管理型漁業の推進、栽培漁業、養殖業及び内水面漁業の振興、漁場環境保全対策等の諸施策を講じたほか、海外漁場の確保を図るための国際漁業協力と海洋水産資源の調査等の推進、漁業の合理化・近代化を推進するための技術開発と水産施策の基礎となる試験研究の推進・強化等を実施いたしました。  第十に、その他の重要施策に関しての事業概要であります。  まず、海岸事業については、第五次海岸事業五箇年計画に基づき、海岸保全区域における事業の実施を図りました。  また、災害対策については、農作物共済等の各共済に係る所要の共済掛金国庫負担金、農業共済再保険特別会計の農業勘定における平成年度の再保険金の支払財源の不足に充てるため借り入れた借入金の利子等を農業共済再保険特別会計に繰り入れたほか、農業共済団体の事務費等を助成し、農業災害補償制度の円滑な実施を図るとともに、災害営農資金等の利子補給に対する助成を図りました。  さらに、台風、豪雨、阪神・淡路大震災等により被災した農地、農業用施設、山林施設、漁港施設等の災害復旧事業を実施いたしました。  このほか、農業団体の整備についても、農業委員会等に対して、引き続き助成等を行いました。  以上をもちまして、一般会計歳入歳出決算に関する御説明を終わります。  次に、各特別会計決算について御説明申し上げます。  第一に、食糧管理特別会計であります。国内米管理勘定等の七勘定を合わせて申し上げますと、収納済歳入額は三兆四一五億三、三八九万円余、支出済歳出額は三兆三一一億八、五二九万円余でありまして、歳入歳出差引き一〇三億四、八五九万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度歳入に繰り入れることといたしました。また、このうち食糧管理勘定の損益計算上の損失は二、七五三億三七万円余でありまして、調整資金を取りまして整理いたしました。  これにより、食糧管理法、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律、農産物価格安定法及び飼料需給安定法に基づき、米、麦、でん粉、輸入飼料の買入れ、売渡し等を管理することにより価格の安定と国民食糧の確保を図り、国民経済の安定に資するための事業を実施いたしました。  第二に、農業共済再保険特別会計であります。農業勘定等の六勘定を合わせて申し上げますと、収納済歳入額は二、五四四億六、一八〇万円余、支出済歳出額は二、一八四億九、〇三三万円余であります。歳入歳出差引き三五九億七、一四六万円余のうち、翌年度へ繰り越す額二〇三億四、一五九万円余を控除し、一五六億二、九八六万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、それぞれ翌年度歳入に繰り入れ、又は積立金として積み立てること等といたしました。  これにより、農業災害補償法に基づき、国が農作物共済等の各共済についての再保険事業を行うことによって、農業経営の安定等を図るための農業共済事業の円滑な実施を図りました。  第三に、森林保険特別会計であります。収納済歳入額は一二二億三、二二四万円余、支出済歳出額は二九億三、九四〇万円余であります。歳入歳出差引き九二億九、二八四万円余のうち、翌年度へ繰り越す額八九億一、八三六万円を控除し、三億七、四四八万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、積立金として積み立てることといたしました。  これにより、森林国営保険法に基づき、国が森林の火災、気象災及び噴火災を保険事故とする森林保険事業を行うことによって林業経営の安定を図るための事業を実施いたしました。  第四に、漁船再保険及漁業共済保険特別会計であります。漁船普通保険勘定等の五勘定を合わせて申し上げますと、収納済歳入額は五〇〇億五、一九〇万円余、支出済歳出額は三〇八億五、八八三万円余であります。歳入歳出差引き一九一億九、三〇六万円余のうち、翌年度へ繰り越す額二二四億二、九九三万円余を控除し、三二億三、六八六万円余の決算上の不足を生じました。この不足金は、法律の定めるところに従い、積立金から補足することといたしました。  これにより、漁船損害等補償法、漁船乗組員給与保険法及び漁業災害補償法に基づき、国が再保険及び保険事業を行うことによって漁業経営の安定に資するための事業を実施いたしました。  第五に、農業経営基盤強化措置特別会計であります。収納済歳入額は一、〇二五億一、六四二万円余、支出済歳出額は三〇二億二、九二二万円余でありまして、歳入歳出差引き七二二億八、七二〇万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度歳入に繰り入れることといたしました。  これにより、農地法等の規定に基づき、国が自作農創設のために行う農地等の買収、売渡し等に関する事業、農地保有の合理化を促進するための事業に対する助成、農業改良資金助成法の規定に基づく農業改良資金貸付事業及び青年の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法の規定に基づく就農支援資金貸付事業を実施いたしました。  第六に、国有林野事業特別会計であります。国有林野事業勘定につきましては、収納済歳入額は五、三四四億九、〇七〇万円余、支出済歳出額は五、六四七億一、八一七万円余であります。この勘定の損益計算上の損失は一、三一七億六、三一九万円余でありまして、法律の定めるところに従い、損失の繰越しといたしました。治山勘定につきましては、収納済歳入額は二、六七八億九七七万円余、支出済歳出額は二、六七〇億六、一〇二万円余でありまして、歳入歳出差引き七億四、八七五万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度歳入に繰り入れることといたしました。  これにより、国有林野法に規定される国有林野の管理経営の事業及びその附帯業務に係る事業並びに治山事業の計画的推進を図る事業を実施いたしました。  第七に、国営土地改良事業特別会計であります。収納済歳入額は六、三八一億八、五九六万円余、支出済歳出額は六、一七八億一四万円余でありまして、歳入歳出差引き二〇三億八、五八二万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度歳入に繰り入れることといたしました。  これにより、土地改良法に基づき、すべての国営土地改良事業、受託工事及び直轄調査に関する事業を実施いたしました。  以上をもちまして、平成年度農林水産省決算説明を終わります。  何とぞ、よろしく御審議の程お願い申し上げます。     …………………………………    平成年度決算農林水産省についての検査の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  平成年度農林水産省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項十三件、意見を表示し又は処置を要求した事項一件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項二件であります。  まず、不当事項について御説明いたします。  検査報告番号一四六号は、秋田県が実施した予防治山事業におきまして、法枠工費の積算を誤ったため、工事費が割高となっているものであります。  検査報告番号一四七号は、山梨県中巨摩郡白根町の農事組合法人白根フラワーコーポラティブが実施した高品質生産流適合理化促進対策事業におきまして、共同栽培施設の設置工事について工事費の値引きを受けていたため、国庫補助対象事業費の精算が過大となっているものであります。  検査報告番号一四八号は、三重県員弁郡大安町が実施した新農業構造改善事業におきまして、補助事業で設置した運動広場施設の一部を無断で処分しているものであります。  検査報告番号一四九号は、徳島県が実施した広域営農団地農道整備事業におきまして、設計が適切でなかったため擁壁が不安定な状態になっているものであります。  検査報告番号一五〇号は、愛媛県東宇和郡野村町が実施した林業地域総合整備事業におきまして、設計が適切でなかったためパイプカルバートが不安定な状態になっているものであります。  検査報告番号一五一号は、大分県日田郡大山町の日田郡森林組合が実施した森林災害復旧事業におきまして、補助金算定の基礎となる事業費が適正でなかったため、国庫補助対象事業費の精算が過大となっているものであります。  検査報告番号一五二号は、鹿児島県が実施した農地開発事業におきまして、設計が適切でなかったため洪水吐が不安定な状態になっているものであります。  検査報告番号一五三号から一五八号までの六件は、農業改良資金の貸付けが不当と認められるものであります。  これらの資金貸付事業は、農林水産省が、農業者等における農業経営の改善等に必要な資金の貸付けを行う都道府県に対して、当該貸付けに必要な資金の三分の二を無利子で貸し付けるものでありますが、借受者が貸付対象施設を県に無断で売却したり、施設等を貸付対象事業費より低額で設置又は購入したりなどしていたものであります。  次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について御説明いたします。  これは、漁港整備事業により造成した漁港施設用地等の利用及び管理に関するものであります。  水産庁では、漁港の区域内において、防波堤、岸壁、泊地等の基本施設及び漁港施設用地等の機能施設の整備を補助事業等により実施しております。このうち、漁港施設用地の造成に当たっては、漁港管理者である地方公共団体は水産庁と協議して漁港施設用地の利用計画を策定することとされており、造成完了後はこの利用計画の定める目的に沿って利用しなければならないことなどとされております。また、プレジャーボート等の漁港の利用については、漁港管理者はその受入れ体制等を整備することとされております。  この漁港施設用地等を調査いたしましたところ、長期間にわたり利用計画に沿って利用されておらず、事業効果が発現していないと認められるものや、占用許可を受けられない者に占用許可を与えているなどしていて、補助の目的を達していないと認められるものが七十二漁港管理者が管理する百八十五漁港に係る用地三十二万余平方メートルで見受けられました。また、漁港区域内において、漁港管理者に無断でプレジャーボート等が係留されているなどしていて、漁港の管理が適切でないと認められるものが十五漁港管理者が管理する十八漁港(無断係留隻数千四百五十九隻)で見受けられました。  このような事態が生じているのは、①漁港管理者において、利用計画の策定に当たり、漁協等関係機関との調整が十分でなかったり、漁業情勢の変化等に対応して利用計画の見直しを行っていなかったこと、また、プレジャーボート等の受入れ体制の整備が十分でなかったこと、②水産庁において、利用計画の策定の協議に当たり、漁港施設用地の利用実態を確認し審査する体制及び指導が十分でなく、また、漁港の管理・使用状況について適時的確に把握し、指導する体制が十分でなかったことによると認められました。  そこで、水産庁に対して、利用計画の策定の協議に当たり、漁港施設用地の利用実態等について確認し、審査できる体制を整備するとともに、漁港の管理・使用状況について適時的確に把握し、漁港管理者を指導する体制を整備することなどにより、事業効果の発現が図られるよう改善の処置を要求いたしたものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。  その一は、加工原料用果実価格安定対策事業における平均取引価格の算定に関するものであります。この加工原料用果実価格安定対策事業とは、加工原料用果実の価格が著しく下落した場合に、各道府県の果実生産出荷安定基金協会が実施主体となって、農協等を通じて生産者補給金を交付するものでありますが、本件事業において、生産者補給金の交付単価の基になる平均取引価格に奨励金等及び手数料等を加算していないため、算定が適切に行われておらず生産者補給金が過大に交付されている事態が見受けられました。そしてこれは、農協等において県協会に報告すべき取引価格等の内容を十分理解していなかったり、県協会の審査・確認が十分でなかったことによるものと認められましたので、当局の見解をただしましたところ、農林水産省等では、八年十一月に通達を発し、県協会及び農協等に対して平均取引価格の趣旨を周知徹底させるとともに、果実加工業者からも取引価格等を報告させることとするなど県協会が取引価格等を正確に把握するための具体的な措置を定める処置を講じたものであります。  その二は、政府米の運送に使用するパレットに係る費用の算定方法に関するものであります。  食糧庁では、政府米の迅速かつ円滑な輸送・荷役を図るため、政府米をパレットと呼ばれる木製の荷台に積み上げ、そのままこれをフォークリフトにより鉄道コンテナ等に積み込んで、生産地から消費地まで一貫して輸送するパレット輸送を行っております。そして、このパレット輸送を行うために、運送業者は、事前に、政府米の到着地の倉庫から出発地の倉庫までパレットを回送しておくこととしております。  このパレットの回送作業について、食糧庁では、到着地の倉庫のパレットを、いったん集約倉庫に集め、その後に出発地の倉庫まで回送すると想定しており、また、使用するパレットは事前に損傷等について検査を受けることとしておりました。そして、上記の回送方法に基づいて、パレットに係る費用の算定を行っていました。  そこで、今回、このようなパレットに係る費用の算定に当たって想定しているパレットの回送作業が、実態と適合したものとなっているかなどの観点から調査を行いましたところ、パレットは、集約倉庫を経由することなく、直接出発地の倉庫に回送されていたり、また、パレット検査につきましても、枚数の確認と記録が行われている程度となっていたりしている状況でありました。したがいまして、パレットに係る費用の算定に当たりましては、このような実際には行われていない作業に係る費用を除き、実態に適合した経済的なものとなるよう改める要があると認められたものであります。  このような事態が生じていたのは、パレット回送作業の実態の把握が十分でなかったことによると認められましたので、当局の見解をただしましたところ、食糧庁では、八年九月及び十月に、契約単価をパレット回送作業の実態に適合したものに改めて、それぞれの月以降から行うパレット輸送について適用する処置を講じたものであります。  なお、以上のほか、平成年度決算検査報告に掲記いたしましたように、国営木曽岬干拓事業により造成された干拓地について、平成年度決算検査報告に掲記いたしましたように、飼料用外国産小麦の売渡しによるふすまの増産について、及び平成年度決算検査報告に掲記いたしましたように、沿岸漁業構造改善事業による施設の設置及び運営について及び肉豚に係る家畜共済事業の運営について並びに国有林野事業の素材生産及び造林の請負化に伴う社会保険料等について処置を要求し及び意見を表示いたしましたが、これらに対する農林水産省の処置状況についても掲記いたしました。  以上をもって概要説明を終わります。     ─────────────    平成年度農林漁業金融公庫業務概況              農林漁業金融公庫  平成年度における農林漁業金融公庫の業務の概況についてご説明申し上げます。  国においては、「新政策」の方向に沿って、わが国の農業、農村が二十一世紀に向け自立を遂げ、持続的に発展していくことができるよう、農業の体質強化と活力に満ちた農村地域の建設を図るため、所要の施策が積極的に推進されました。  こうした国の施策に即応して、当公庫は、業務の運営に当たりまして、関係機関との密接な連携の下に、農林水産業の生産基盤の整備及び経営構造の改善のための融資を推進するとともに、多様化する資金需要に対応して、融資条件の改善を含め、融資の円滑化に配慮してまいりました。  平成年度における貸付計画について申し上げますと、貸付計画額は六千億円を予定いたしました。  これに対する貸付決定額は四千七十八億四千百四十七万円余となり、前年度実績と比較して七十六億八千九百九万円余の減少となりました。  この貸付決定額を、農業・林業・漁業等に大別して申し上げますと 一、農業部門   二千六百三十一億八千二百二十九万円余 二、林業部門   四百八十六億二千九百九十五万円余 三、漁業部門   二百十六億七千二百六十六万円余 四、その他の部門 七百四十三億五千六百五十六万円余 となりまして、農業部門が全体の六十四・五%を占めております。  次に、平成年度の貸付資金の交付額は三千九百八十五億一千五百二十七万円余となりまして、これに要した資金は、一般会計からの出資金九十九億円、資金運用部からの借入金一千二百八十億円、簡易生命保険からの借入金百四十億円、農業経営基盤強化措置特別会計からの借入金百五億六千七百二万円余並びに貸付回収金等二千三百六十億四千八百二十五万円余をもって充当いたしました。  次に、平成年度末における貸付金残高は四兆七千四百八十九億四百二十七万円余となりまして、前年度末残高に比べて三千四百二十四億五千五十七万円余の減少となりました。  貸付金の延滞状況につきましては、平成年度末におきまして、弁済期日から六か月以上経過した延滞貸付金残高は八百八十八億六千七百九十三万円余、このうち一年以上延滞のものは八百二十六億九千六百四十七万円余となっております。  次に、平成年度における収入支出決算の状況についてご説明申し上げますと、収入済額は、収入予算額三千二百九十九億八千七百万円余に対し三千二百四十七億八千九百八十六万円余となりました。  また、支出済額は、支出予算額三千三百六十八億二千三百七十六万円に対し三千二百十億九千六百三十一万円余となり、支出に対し収入が三十六億九千三百五十五万円余多くなっております。  最後に、平成年度における当公庫の損益計算の結果について申し上げますと、貸付金利息等の総利益は三千三百五十五億七千百六十九万円余、借入金利息等の総損失は三千三百五十五億七千百六十九万円余となり、利益と損失が同額となりましたため、利益金は無く、国庫納付は有りませんでした。  これらの業務の遂行に当たりましては、常に適正な運用について、鋭意努力してまいりましたが、平成年度決算検査報告におきまして、農地等取得資金等の貸付けにつきまして不当事項として指摘を受けたものが有りますことは、誠に遺憾に存じております。指摘を受けました事項につきましては、直ちに適切な措置を講じましたが、今後、このような事態の発生を防止するとともに、当公庫に与えられた使命を果たすべく努めてまいる所存であります。  以上が、平成年度における農林漁業金融公庫の業務の概況であります。何とぞよろしくご審議のほどお願い申し上げます。     …………………………………    平成年度決算農林漁業金融公庫についての検査の概要に関する主管局長説明                 会計検査院  平成年度農林漁業金融公庫決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項二件であります。  検査報告番号二二〇号及び二二一号の二件は、農地等取得資金等の貸付けが不当と認められるものであります。  これらの資金貸付事業は、農林漁業者等に対し、農林漁業の生産力の維持増進に必要な長期かつ低利の資金で、一般の金融機関から融通を受けることが困難な資金を直接又は金融機関に委託して貸し付けるものでありますが、貸付けに当たり、借入者から事実と相違した内容の借入申込みや事業完成報告がされるなどしていたにもかかわらず、これに対する審査及び確認が適切でなかったなどのため、貸付けの対象とならない事業に対して貸し付けているなどしていたものであります。  以上、簡単ではございますが説明を終わります。     ─────────────
  191. 上田清司

    上田主査 以上をもちまして農林水産省所管農林漁業金融公庫説明は終わりました。     ─────────────
  192. 上田清司

    上田主査 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浜田靖一君。
  193. 浜田靖一

    浜田(靖)分科員 決算委員会分科会で質問をさせていただくわけでありますが、本日は農林水産大臣をお迎えして御質問をさせていただけるわけでございまして、大変うれしく思っております。  と申しますのも、近ごろの農林水産業に対する評価というのが、いろいろの意味で大変変わってきたような気がするわけでありまして、その意味では、逆に言えば、運送手段とか交通手段が非常に便利になったがゆえに、国内においてそういう農林水産業の産物を動かすよりも海外から入れた方が安価に入ってくるというような形の中で、どうしても国内の農林水産業に対する考え方が変わってしまったのかなという気がするわけであります。  そこで、きょうはまず最初に、大臣に、農林水産業の重要性といりものをいま一度ぜひアピールをしていただきたいなと思うわけでございます。  と申しますのも、国内では確かにそのような評価なのかもしれませんけれども、しかしながら、グローバルな意味で考えてみますと、世界の食糧というのは、人口問題を考えると、どうしてもこれは食糧が不足するのではないかという考え方もあるわけで、その意味では、農業そしてまた水産業というものの議論を避けて通るわけにはいかないのであります。林業ということになれば山の話になるわけでありますが、これも今いろいろな意味で、災害等そしてまた水の問題等でクローズアップされておる。これも事実なわけでありまして、今こそやはりここで農林水産業に対する正しい考え方、これからの方向というものをしっかり議論しないといけない。これから我が日本がしっかりと世界の中に地盤を築いて活躍するためには、まさにそういったものがなくてはならないと私は思うのであります。  ましてや、それだけ食糧が不足するということになれば、自分の国ぐらいは自分のところでとれるもので生活しろと言われかねないわけでございます。とすれば、今の農林水産業の現状というのはいかがなものかな。私も、少なからずこの分野の勉強をさせていただいた者とすれば、少々背筋の寒くなる思いもするわけでございまして、先進国の中において自給率が一〇〇%に到達してないのは我が日本だけでございます。  その意味においては、これは何らかの方策をということで、農林水産省も一生懸命になっていろいろな政策、新政策という考え方もしっかりと出されたわけであります。ただ、私は、少々残念というか、そのタイミングというのが何となく悪かったところもあるのかなというような気がするわけであります。  というのは、この新政策というのは、当然のごとく農業者の自主自立、産業としてしっかりとしたものをつくり上げていこうということで、いろいろ御批判の多かった食管法の問題等も改正をしつつ、新しい農業、そして担い手が多くできるように、そして農業所得が上がるようにという形で物事を考えてこられたと思うわけでありますが、しかしながら、世界の情勢からいえば、食糧が足りなくなるというようなことになれば、当然のごとく国がこれを管理せざるを得ない部分もあるのかなというような悩ましい部分が時代の流れとともに起こってきたような気がするわけであります。  その意味では、今農林水産業というものが重要であり、今だからこそ議論しなければならないその理由、そしてその必要性というものをぜひ大臣からお聞きをして、また多くの皆さん方にも御理解をしていただけるような形で残したいなということで、きょうあえてまず一番最初にその点を大臣にお伺いをしたいと思いますので、ぜひ大局的に思い切ってお話を願いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
  194. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 お答えを申し上げる前に、委員はかねがね農林水産行政の推進に非常に御理解いただいておりまして、御鞭撻をいただいておりますこと、この機会にお礼を申し上げたいと思います。  今、我が国の食糧の問題につきまして基本的な考え方をぜひ答えてもらいたい、こういうお話でございますが、一番わかりやすい話は、昨年の秋にローマで行われました食糧に関するローマ会議、世界食糧会議、ここに百八十数カ国の首脳が集まりまして、食糧の安全保障の問題について議論したわけでありますが、結論は、将来の食糧の需給の不確実性を考えますと、それぞれの国が資源を活用して食糧の増産を進めていく、努力をしていくということが結論であったわけであります。  委員も御承知のように、毎年一億人からの人口が世界ではふえておる。それに対して食糧の供給が十分に行われるかどうか、そういう不安はあるわけでありますし、また、一昨年の大阪におけるAPECでの結論も、東南アジアにおいては食糧人口、エネルギー、環境というものが今後非常に大きな問題になるという結論でもあったわけでございます。  私ども農林省の仕事というのは、国民の皆さん方に食糧を安定的に供給をする、しかも量だけではなくて質の面でも安全で良質な食糧を消費者に供給する、それから農村地域を住みやすく、地域の活性化を図っていくということ、これがやはり我々の大きな目標でもあるわけであります。  それから、委員先ほど触れられました食糧の生産の分業論といいますか、安い食糧を輸入したらいい、こういう食糧生産の分業論ということについては、今それを言っておる国は少なくなりました。ほとんど世界じゅうの大勢は、自国で自国民の必要とする食糧をできる限り生産をする、こういうところに向いておるわけでございますし、また我が国の場合には、先ほどお触れになられましたように、自給率が先進国で最低であるということも考えますと、これから我が国の食糧安全保障を考える場合に、食糧の自給率を高めて、またそのためにやる気のある農家と優良な農地を確保していくということが最も基本的な問題であるというふうに考えておるわけでございます。  どうぞこれからもよろしくお願い申し上げます。
  195. 浜田靖一

    浜田(靖)分科員 確かに今大臣がおっしゃられたように、私自身もこの問題を勉強させていただくにつれていろいろなことがわかってきたわけでございまして、その中で、やはり農業、漁業、林業も含めてその重要性というのは、まさに国が存立するための基盤をすべて兼ね備えているわけでございます。今はお金があるから物が海外から買える、しかしながら、じゃお金がなくなったら買えないんじゃないか、ましてや海外に物がなくなれば当然のごとく物は入ってこないということになるわけでありまして、その意味では、国民的な意識改革というものが行われない限りまさにこの問題を解決することはできないのではないかという気がいたしまして、その意味で、大臣に改めてそういう言わずもがなのことを今お話しになっていただいたわけでございます。  それを繰り返し問いかけなければなかなかわかっていただけないし、ましてや、今言いましたように、お金があればというようなところで、どうしても日本人自身が昔から持ってきた思いやりの精神とかそういうものがちょっと欠落してきて、自分さえよければいいと。  公共事業の関係でもそうですね。農業地域、農村地域そしてまた漁村地域というのは当然のごとく地方にあるわけでありますから、都市部の人から言わせれば、何だおまえ、そんなこと言ったって、公共事業だって我々の税金を田舎へ持っていっているだけの話ではないかというようなことに思われてしまう。  そして、今まで自由民主党も、確かに農業政策だとかそういうことを語ってはいるけれども、どうもそれが内向きな議論で、農業従事者に対する施策の説明だとかはあったかもしれないけれども、都市部の市民の方々に対しての農業のあり方とかそういうものの問いかけが少々少なかったのかなと。理解をしていただくためには、特に都市の方々にそういう理解を得なければ、なかなかこれはわかっていただけないのかなというような気がしておるわけでございまして、その意味では、まさに意識改革、農業、漁業、林業というのは、地域の人だけの問題ではなくて、都市部に住む方々の問題でもあるのだよという意識をもう一回持っていただかないといけないのではないかなと私は思うわけです。  そこで、農林水産省も、それこそこの農業というものをもう一回考え直そうということで、農業基本法を制定しようというようなお考えがあるやに聞いておりますけれども、この点について、今どのような場で御検討なされているのか、そしてまた、その基本法の考え方、基本コンセプトはどういうことなのか、今の進捗状況というか経過を少々教えていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
  196. 堤英隆

    ○堤政府委員 今委員御指摘のよりに、農業基本法につきましての見直しをいたしております。  これは、御案内のように昭和三十六年に農業基本法ができたわけでございますけれども、その後三十六年間経過をいたしております、その間の社会経済情勢の変化、それから国際化の進展ということにつきましては、大変目まぐるしいものがございます。そういう中で、先生御指摘のように、農業それから林業、水産業ともに、二十一世紀をこれから迎えるわけでございますが、そういう中で非常に重要な役割を果たしていく必要があるという認識をいたしております。  これは、農業問題でいえば食糧の安定供給、それから農村地域は、林業地域を含めまして、非常に広大な地域に及ぶわけでございますけれども、そういった意味では、国土の均衡ある発展といいますか、全体的な発展をどう図っていくかという問題にもかかわってきます。それから、森林・林業の問題につきましては、これはもう御指摘のように、まさに水資源を涵養するということの非常に大きな意味を持っているわけでございます。  食糧問題、それから農村がどうあるべきか、それから森林の持っております水資源その他の公益的機能、こういった問題は、まさに先生御指摘のように、決して農林漁業者だけの問題ではない。もちろんそういう方々に非常に深く関係してくるわけでございますけれども、そこで健全な活動が営まれることが即やはり国民全体の利益につながるのだ、これは食糧問題一つとってもそうでございますし、それから森林の整備をするということは、結局、下流域の国民の皆さんの生活それから工業の発展、そういうことに直結するのだ、そういった認識をこれから深めていただくということが非常に重要だという認識を私どもいたしております。  したがいまして、この農業基本法の見直しは、単に基本法の見直しというだけにとどまらず、農政全体の見直しということと同時に、今申し上げましたような農業や林業や水産業それから農山村が持っております役割、これが国民の皆様の生活に直結するのだ、そういうところを広く御理解していただく場として国民的な広い議論をやっていただきたい、そういうふうにしていきたいと思っております。  具体的には、今おっしゃいましたように、食糧をこれからどうやって供給していくのか、そのための担い手はどうあるべきなのか、従来、農林水産業者のための農政というふうに思われておりましたものを、消費者の視点といいますか国民の視点からどういうふうな切り込みをしたらいいのか、それからまさに農村がどういう役割を果たすべきか、そういったことで、広く食糧、農業、農村全体につきまして議論を深めていきたいということで、四月から、総理大臣の諮問を受けまして、食料・農業・農村基本問題調査会で議論を進めていただいているわけでございます。  この問題は、非常に重要な喫緊の課題でございますので、いたずらに時間をかけるということではなしに、できましたら本年中にこの基本問題調査会から第一次の基本的な考え方をいただき、最終的には、一年後、来年の夏ぐらいまでには最終的な答申をいただきまして、それで、新しい基本法の制定なり関係の法律、予算等につきまして鋭意私どもとしても汗をかいていきたい、こういうような検討の内容及びスケジュールの状況でございます。
  197. 浜田靖一

    浜田(靖)分科員 ありがとうございました。  それこそ、今ルーラルアメニティーというような言葉もございますし、いわゆる農村の位置づけというか、新たな方法で都市と農村とが一体化して価値観をお互いに見出していくというような考え方もあるようでございます。その意味では、まさに時宜を得たものだと私は思いますので、ぜひともいい形を、それでまたインパクトがあって、ついつい内向きに見られがちな我々の議論でございますので、もう少し都市部の方に働きかけをできるような形をとっていただけばなおいいかなと思うわけでございます。  農業のお話はこのぐらいにしまして、また私の方のテリトリーにちょっと入ってまいりますけれども、水産業の方に移らせていただきたいと思います。  今の水産業というのもまさに農業と同じでございまして、流通問題等も含めて大変厳しい状況にあるわけでございます。そして、昨年は皆さん方の御努力によりまして国連海洋法条約も締結をさせていただいたわけでございまして、その意味では、まさに水産業は大きく転換をする時期を迎えております。昨年は本当に農林水産省を挙げての御協力をいただいた。そしてまた水産業界も、それこそオール水産という言葉ができるぐらいに一致団結をして、これからの漁業というのは、資源管理型の漁業を目指して、二百海里をしっかりと引いて、今ある資源を大切に、また有効に使ってやっていこうという新しい考えのもとでの昨年の一つの活動があったように私は思うわけでございます。  そしてまた、農業で自給率のお話がございました。しかしながら、いろいろな環境面ですとかなんだとかを考えますと、水産というのも大変プラス効果が高くて、いろいろな飼料を使わなくて、まさに自然の中で発生するものを魚が食べて、それが大きくなって、それを人間が食べているわけでございます。その意味でいえば、我が国は四方を海に囲まれておりまして、昔から動物性たんぱく質を海に求めてきたわけでございますので、当然これをもっと有効に使いたいなということもあります。  ただ、現状からいえば、それをなりわいとしている水産業の方々は、なかなかこれで食えていない。そしてまた、議論の中にはなかなか水産という言葉が出てこない。いろいろな会議説明を聞いておりますと、農と林は結構長く農林水産省で御説明があるのですが、水産になるといきなり時間が短くなるということで、少々これは近ごろ水産も力が落ちてきて、漁師さんも自分だけ食えればいいという感覚の中で、どうもおとなしくなっているのではないかなと。  私は、地元ではこういうふうに若い人たちに言っているわけでございます。これは意識改革をせにゃいかぬ、自分たちが欲しいものは自分たちで手に入れるための努力をしなければならない、昔のようにトップダウンの形で上から何かが落ちてくるのを待っている時代は終わった、若い人たちは特にこれからはそういう意味での横のつながりをしっかりと持って、自分たちで必要なものを必要な分だけとれるような形を今後つくっていく必要があるのではないか、そういう話をして、そのためには漁業組合というのは重要だねと。  水産庁が今推し進められておる漁業組合の合併問題、これをするためには、まさに意識改革をしていかないと、年をとってもう後継者のいない方々は、いつやめるかというのがやはり勝負であります。ところが若い人たちは、これからも自分が長くこの職業を続けていきたいというもとで努力をしているわけですから、おのずとそこにギャップが生まれてきますから、どうしてもその点がうまくいかないわけでございます。  そのような点も含めて、これを全般的にしゃべると大変でございますけれども、今の水産業の現状というものを水産庁にお伺いをしたいということと、まさに農業基本法と同じように水産基本法というのもぜひ考えてみたらいかがかな、もう一回見直してみるのもいいのかなというような気がするわけでありますが、その点も含めて、あわせてお答え願えればと思いますので、よろしくお願いいたします。
  198. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 今お話がありましたように、我が国の水産業は、水産物の安定的な供給を通じまして、健康的で豊かな日本型の食生活の一翼を担うというほかに、地域におきます社会経済の発展に寄与するということで重要な役割を担っているわけでございます。  昨年、国連海洋法条約が我が国について発効いたしまして、本年一月からいわゆるTAC制度の運用が開始されるなど、我が国の水産業は新海洋秩序への移行という節目の時期を迎えております。水産庁におきましては、このような新たな海洋秩序のもとで、我が国の二百海里水域内の適切な資源管理、さらに、つくり育てる漁業の推進でありますとか流通加工、販売体制の整備、漁港、漁村の整備など、諸般の整備を積極的に推進していきたいというふうに考えております。  また、言われました基本法等の問題でございますけれども、まず漁業をめぐる状況といたしましては、漁業生産の減少でございますとか担い手の減少、さらに高齢化等の厳しい状況に直面しているわけでございます。このような中で、今後の水産業の方向を探るために、昨年来、関係者及び有識者から成ります水産政策検討会というのを設けまして、四つの小委員会に分けまして、現在我が国の水産業が直面する課題を中心に検討を行っているところでございまして、六月ごろに中間的な取りまとめを行いたいというふうに考えております。  さらに、この検討会の成果をも踏まえまして、本年夏には、これは仮称でございますけれども、水産基本政策検討会というようなものを設置いたしまして、新たな基本法の制定という問題も念頭に置きながら、基本的な施策、制度のあり方につきまして、各方面から幅広い御意見を伺いながら検討を深めてまいりたいというふうに考えております。
  199. 浜田靖一

    浜田(靖)分科員 そこで、昨年もその二百海里のことでいろいろ私らも勉強させていただいたわけでありますが、二百海里ということは資源管理ということでございますので、当然のごとく、二百海里を引いて、その中でTAC、漁獲可能量を設定するということになっておるわけでありますが、これがなかなか技術的にも浸透するまでには大変なことだと思うわけでございまして、漁業認可の問題ですとか漁業権の移転だとか、いろいろ県と国というようなことでかぶさり合ってくるところもありますので、その意味では、こういう時期だからこそ水産庁が前面に出て問題解決をしていかなければいけない点というのがたくさんあるような気がするわけであります。  この時代を迎えて、水産庁自身も組織というものを変えてきておるわけでございますけれども、しかし、その意味からすると、これは決して水産庁だけじゃないのかもしれない。確かに行政改革というような話が出てきますと、何か減らさなければいけないような話になるわけでありますが、しかしながら、そうではなくて、もっと前向きに、必要なものは必要であるという議論をしていかないといけないと私は思うのであります。  その意味で、まさにこの資源管理という大きな課題、二百海里時代を迎えて、水産庁はもっと組織強化をして、逆に言えば、全国津々浦々まで、微に入り細に入り説明のできるだけの能力を持った人間を地域に張りつけて、徹底した資源管理をやっていくのだという姿勢をどこかで見せない限りは、なかなかこれは末端まで浸透していかないのではないかという心配があるわけでありまして、この点についてぜひまた御意見をいただきたいと思うのであります。本当にこのままの組織体系でいいのかということについてお考えをお聞かせ願えればと思いますので、よろしくお願いいたします。
  200. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 今言われましたように、新しい海洋秩序のもとにおきます水産庁の役割でございますけれども、確かに言われますように、排他的な経済水域におきます資源管理でありますとか、その実効ある取り締まり体制を確立していくというようなことを考えますと、幅広い観点から水産行政の推進体制の再編整備を図る必要があるというふうに考えております。  このような考え方に立ちまして、現在、TAC制度の運営、漁業許可、漁業調整、漁業についての指導監督を一体的に所管いたします部門を設けたいと思っておりまして、これは仮称でございますけれども、資源管理部というようなものの設置を考えているところでございます。さらに、出先機関でございます漁業調整事務所につきまして、その取り締まり体制の強化を図ることもやはり新しい海洋秩序のもとにおいては必要でございます。これにつきましても強化を図りたいと考えております。さらに、我が国の二百海里水域内に視点を置きました漁業振興研究開発の一体的な推進を図りたいというふうに思っております。また、水産物の流通加工並びに漁業経営対策の分野に係る体制につきましても従来以上に強化したいということを考えております。  以上のような組織整備を行うことを考えておりまして、本年十月一日から施行するということを予定しております。
  201. 浜田靖一

    浜田(靖)分科員 これは今後も、これで組織改編をしたからいいということではなくて、ぜひとも前向きに、必要があればどんどん組織を変えて、今後の体制の強化というものを図っていただきたいなと思うわけでございます。  そして、今大変話題になっております公共事業の件でございますが、特に水産公共と言われる漁港関係に対する風当たりというのが大変厳しいわけであります。これは、農林水産関係の公共事業というのはよく言われるのですね、何かこの公共事業はむだじゃないかと。  しかしながら、そういう農業だとか漁業、林業の仕事というのは昔からずっと継続的にやってきているところがあるわけで、その時代の要請において公共事業としてつくったものがあるわけですね。それが今の時代になったら、漁港なんか特にそうなのですね。別に漁民がいなくなったわけじゃなくて、魚がいなくなって漁民が少なくなったり、船が少なくなったりするわけであって、むだであるという言い方をされると非常に困るのですね。その当時は必要だったのですね。だけれども、今になればそれが大分変わってきたよ、じゃという話で、これから考えましようという話をしているので、どうもそれを中心にして考えると、それを必要とするところと必要としないところを一緒くたにして全部判断されてしまうので非常に困るわけでございます。  その意味からして、この水産公共事業について、また水産庁から、じゃこれからそんなに水産公共というのは必要じゃないのかということを含めて、そうじゃないということで私は言ってもらいたいわけでありますけれども、ぜひともその点についてお答えをいただければと思います。
  202. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 今言われましたように、確かに公共事業でつくりました施設が、時代の趨勢、例えば北洋減船などで漁船が減船してしまったということで、漁港を利用する船が少なくなったというような事例もございます。  そういう意味で、確かに時代の趨勢との関係もございますけれども、ただ、水産の公共事業につきましては、先ほど来の話にございますように、昨年の国連海洋法条約の批准に伴いまして新たな海洋秩序のもとに現在入ったということの中で、我が国の二百海里内の資源管理を進めていくことが何よりも重要でございます。言うなれば、つくり育てる漁業及び資源管理型漁業のさらなる積極的な推進が求められているわけでございまして、そのためにも漁港、漁村、漁場等の整備を行います水産関係公共事業におきまして、これらニーズに的確に対応していくことが何よりも重要であるというふうに認識しております。  さらに、我が国の水産業、これは動物性たんぱく質の約四割を国民に供給している重要な産業でございます。さらに、漁村の約七割は条件不利地域に立地しておりまして、水産業が基幹産業といたしまして国土の均衡ある発展に寄与しているというのは事実でございます。  これらのことを考えますと、水産関係公共事業は、漁業の拠点となる漁港の整備、資源管理とつくり育てる漁業を推進する基盤の整備を通じまして、水産業の発展に大きく寄与しているわけでございます。今後とも、その着実な推進に努めていきたいというふうに考えております。よろしく御支援をお願いいたします。
  203. 浜田靖一

    浜田(靖)分科員 まさにそのとおりでありまして、我が地域でもいまだに公共下水道がない地域、そしてまた車が一台通れないよりな道路ということで、まだまだやってもらわなければならないものがあるわけでありまして、議論は議論として、国の財政というものも十分によくわかるのでございますが、ただ、それをただ単に数字合わせではなくて、そこを裏づける理論というのは一体何なのか、そして将来その点も含めてこれからは絶対ふやすのではないということではなくて、それこそ必要があればそれはやるのだという言質をとっていただいた中で、この公共事業の件に関してはぜひとも頑張ってやっていっていただきたいと思うのでございます。  そこで、二百海里の話が出ましたので、せっかくこの国連海洋法条約を締結して、二百海里を引くということになったわけですが、実際にこれは引いてみないと何も意味がないわけでございまして、その意味では、現在、日中、日韓の漁業交渉が行われております。今回の二百海里を引くに当たっては、西日本の漁民の方々にとっては非常に御無理を言って、それこそ御自分たちの考えによって、たとえ減船しても、自分たちの漁場が狭くなっても、やはりこの二百海里はしっかり引くべきだという決断をしていただいて今回の締結に至ったわけでございます。  その意味では、これをただ時間をかけて相手との交渉がうまくつくまでというような発想でやられたのでは、これはちょっと問題があるなと私自身も思いますし、我が党を中心にして三党合意の中で昨年、一年間の期間をもってこれは締結、二百海里を引くのだ、これは日中、日韓の漁業交渉の進捗いかんを問わず一年ということを言ったわけでございまして、その意味ではそろそろその時期が近づいてきておるわけでございます。  その点を今から水産庁にもお答えをいただきたいですし、外務省にもお聞きしたいのでありますが、これは水産庁の方にその進捗状況をお聞きして、外務省はこれに対してどうお考えになっているのかということも含めてお聞きをしたいと思いますので、よろしくお願いをする次第でございます。まず、水産庁からよろしくお願いいたします。
  204. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 日中、日韓の漁業交渉でございますけれども、中国、韓国との間で国連海洋法条約の趣旨に沿いました新たな日中、日韓の漁業協定を締結するということが、これはことし一月引きましたTAC制度の実効を期する面からも重要でございます。このようなことから、昨年からことしにかけまして、数回にわたりまして新たな漁業協定締結のための協議を行ってきたところでございます。  これまでの経緯を申しますと、日中間の協議におきましては、原則的に沿岸国主義にのっとった解決を目指して交渉の加速化を図るということとともに、日中間で境界画定が必要な水域がございますが、これらにつきましては、何らかの暫定的な考え方を導入するという大枠につきましてはほぼ確認しておりまして、現在、その具体的な内容につきまして積極的に検討しようということで意見の一致を見ているところでございます。これにつきましては、外務省ともども、水産庁といたしましていろいろ交渉を行っておるところでございます。  さらに、日韓間でございますけれども、国連海洋法条約の趣旨に沿いました協定を締結するということなど基本的なところでは幾つか意見の一致を見たところでございますけれども、一番の問題となります境界画定が必要な水域に係る問題につきましては、日本側は現実的かつ早期の解決を図るために暫定的な考え方に基づく解決を主張しているのに対しまして、韓国側は境界画定をまず行って問題を解決すべきであるという立場を主張しておりまして、これにつきましては意見が平行線になっているというような状況にございます。  水産庁といたしまして、今言われました与党三党合意並びに国会での決議でございますとか附帯決議がいろいろございますが、これらにつきましては非常に重く受けとめておりまして、日中、日韓間で今後さらに協議を行いまして、できるだけ早く新たな漁業協定の締結ができますよう努力していきたいというふうに考えておるところでございます。
  205. 佐藤重和

    ○佐藤説明員 外務省でございます。  日中、日韓の交渉の現状につきましては、ただいま水産庁長官から答弁申し上げたとおりでございますが、私ども外務省といたしましても、水産庁とともに政府一体となって、中国、韓国との交渉をできるだけ早くまとめるようにということで一生懸命やってきておるわけでございます。  まさに、新しい海洋法条約というものができました。それに基づいて、これまでの日中、日韓の漁業協定を新しい海洋秩序に即したものに直すということは、我が国にとっての至上命題でございますので、これはとにかく早くやらなければいかぬということで、これまでも首脳あるいは外務大臣レベルからも中国、韓国に対して何度となく申し入れを行い、そしてそれを踏まえまして交渉というものを続けてきておるわけでございます。  まさに今先生から御指摘がありましたように、与党の合意あるいは国会での決議、そして幅広く国内から非常に強い声、主張というものがあるわけでございますから、私どもとしても、これを延々といつまでも交渉を続けるということではございませんで、そうした我が国の立場というものを十分踏まえながら、できるだけ早く交渉がまとまりますように努力をしたいというふうに考えております。
  206. 浜田靖一

    浜田(靖)分科員 ありがとうございました。  まさに水産庁、外務省が一体となってこの交渉に取り組まれているのはわかっているわけでございますが、これは領海の問題を考えてしまうと、なかなか引けない。ただ、お互いに資源管理の面からは合意をしているということでございますので、領域、特に竹島、尖閣の話は共同水域にするとかいろいろなやり方があると思いますので、そういう形も含めて、ぜひとも一刻も早く二百海里の線引きができるように御努力を願いたいと思うわけでございます。  さてそこで、きょう私が一番お聞きをしたがった話題に入ってくるのでありますが、外務省と水産庁がまさに一体となって事に当たっておるのが捕鯨の問題でございます。  この捕鯨に関しまして、私も国会議員になってからでありますけれども大変勉強をさせていただいたわけです。いろいろな情報をお聞きしていますと、大変悩ましい状況が続いておりまして、大変長い時間、一方的にたたきのめされながらも一歩ずつ積み重ねてこられて、ようやく科学的根拠ということで日本の調査の積み重ねがついに一つの壁を破ったと私は評価をするところでございますし、ここまでよく頑張ってこられたなということでただただ感心をするわけであります。まさに外交というのはこういうことなのかなと。決してあきらめることなく少しずつ相手の論陣を破り、根拠を目の前に出して納得をさせていく。  ところが、この鯨の問題だけに関して言わせていただけると、これがもう感情問題になってくる。鯨は、確かに鯨の種によってはふえていないのもあるわけです。ところが、ミンククジラのようにもう七十六万頭も南半球にいると言われている鯨もありまして、これをいきなり、それは認めるけれどもとにかく鯨は一頭もとらせませんよというような感情的な議論になってくると、この交渉というものが大変難しくなってくる。そしてまた、いろいろな難癖をつけてくるということがあります。  この間、橋本総理大臣が我が国の伝統ある食文化である鯨の件をクリントン大統領にしっかりと言っていただいた、これは本当にすばらしいことだと思うわけでございます。なぜかというと、やはりこれからは日本の国民の世論というのがこの交渉には大変プラスになるんだろうなと思っております。それをすべて味方につけて、ほんの少しの、アリの一穴でもいい、何とか壁をこじあけていかなければいけないのじゃないかなというふうに思っておるわけでございます。  そして、皆さんの認識の中に、この鯨というのが昔はオキアミだけを食べているのかなと思いましたら、近ごろはそうではなくて魚を食べている、サケまで食べているというような調査の結果がある。しっかりと御努力によって調査ができてきているわけですね。DNA鑑定までして裏づけをなさってきているわけでございますけれども、まさにそういった努力の積み重ねがここまで来た。  このときに、いきなり国民的な関心ががたっと下がってきて──捕鯨再開の道、そこまではいかなくても、せめて世界各国にそれを認めさせる努力をなくしちゃいけないのじゃないかと思います。だんだん鯨を食べたことのない国民がふえてきているときでありますので、ここでひとつ鯨の問題というのはインパクトのあるものをつくっていかなければいかぬなということで、こういう本もいろいろ出ておりまして、細かく鯨のことをPRしてきている団体もあるわけであります。  それを踏まえた上で、今のIWCを含めた鯨を取り巻く現状というものをぜひとも水産庁長官にお答えいただきたいなと思います。
  207. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 まず、捕鯨をめぐる国際情勢でございますけれども、IWCが一九八二年に決定いたしました商業捕鯨のモラトリアム、これは現在も継続しているところでございますけれども、我が国が実施しております鯨の資源調査によりますデータの蓄積もございまして、科学的にはモラトリアムを見直す素地が固まりつつあるのではないかというふうに認識しているところでございます。  しかしながら、IWCにおきましては、捕鯨再開に反対の立場をとる国が、一九九二年に鯨資源の管理方式に関しまして、一たん完成いたしました改訂管理方式、これは資源を管理しながら捕獲する頭数を決める算定方式でございますが、この一たん完成しました改訂管理方式にさらに新たに違法操業の監視取り締まり制度の導入を提案するというようなことなどを行いまして、いろいろ当初の予定が進んでいないということもございます。さらに、一九九四年には南氷洋のサンクチュアリーを設定するなど、新たなハードルを次々と設けておりまして、商業捕鯨の再開には至っていないという状況にあるわけでございます。  特に、例えば昨年のIWCでイギリス代表は、科学的根拠のいかんにかかわらず捕鯨再開には反対であるというような趣旨の発言をしておりまして、このような、どちらかといいますと非常に科学的根拠と離れたような議論がIWCで多くあるわけでございます。さはさりながら、このような主張はイギリス内部におきましても、イギリス政府は科学的根拠を放棄して感情論へ移行しつつあるというようなイギリス内部での批判的な新聞記事も掲載され始めているというような状況にもなっておりまして、大体このイギリス代表のような主張はIWCでの主流にはなかなかなり得ないのではないかなというふうに考えています。  総じて言いますと、IWC全体で言いますと感情論がかなり主流を占めているとはいいますものの、加盟国が科学的な根拠を重視し始める傾向も見られておりまして、徐々に正常化に向かっていると考えていいのではないかというふうに思っております。
  208. 浜田靖一

    浜田(靖)分科員 島一雄コミッショナーがおっしゃっておられますけれども、お互いの文化の違いを認め合ってこそお互いに共生できるということもあるわけで、これだけお互いの文明を尊重し合いながら世界平和を目指してみんな頑張っているわけでありますので、まさにその底辺である食文化という点で、我が国の伝統ある文化というものを認めていただけないというのはどうも納得がいかないのでございます。  そしてまた、人間というのはそれこそ愚かなものであります。しかしながら、愚かなものであっても、この全世界の中において食物連鎖というものがあるとすれば、その頂点に立つのは人間であります。ただ一つの種だけを優遇してその食物連鎖の流れを変えるようなことがあってはならないと思うのであります。まさに自然の摂理の中でそういったものが行われている。それを人間が、鯨はかわいそうだ、かわいいから、頭がいいからといってそれだけを保護してしまうことによって、一つの体系が崩れる可能性もあるわけであります。  そしてその点を考えれば、当然のごとく我々は、使えるものは有効に使う。乱獲をしろとは言っていないわけであります。この捕鯨というのは、今の欧米各国が率先して捕鯨をやっていた時代がありまして、それは当然のごとく鯨油をとるためにやっておったわけであります。石油が見つかるまでは鯨油に対する依存率というのは高くて、まさに乱獲を繰り返してその種をなくしてきた。日本の場合には、これは食文化でありますので、皮から内臓から肉からすべて、特に日本の伝統文化である文楽のあの人形を操る糸というか、あれはセミクジラのひげを使って、これが伝統文化として残されておるのであります。そういった点も含めて、我々の鯨に対する思いと西欧各国における鯨への思いというのは違うわけであります。  ですから、その点を認識させていくための努力というのを今後積み重ねていかなければならないということになれば、必然的に、これは時間と情熱、そういうものがなくなったときにはこれはつぶされるわけでございますので、ぜひともそれはなくさないでいきたいと私自身は思っておりますし、国民にこれを喚起していかなければいけないと思っておりますので、ぜひとも水産庁にもそういう同じ認識を持っていただいた上でこの捕鯨の問題というものを考えていただきたいなと思うわけでございます。  そして、お聞きしますけれども、大変言いづらいかもしれませんけれども、捕鯨を再開するためのいわゆる努力に対して、予算的にはどのような形でやっておられるのかをお聞かせ願いたいと思います。
  209. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 まさしく資源の合理的利用という観点やまた食糧安全保障に関する問題、いろいろ考えますと、商業捕鯨の再開に向けてこれからますます努力していかなければいけないというふうに考えているわけでございます。  また、言われましたように、生態系の中でいたずらに特定の種のみを保護しますことはかえって生態系のバランスを崩す、さらには人類の食糧供給源であります海洋生物資源の、これは魚でございますが、減少を招くというようなことにもなるわけでございますので、そういう意味では、商業捕鯨の再開に向けまして今後とも努力していきたいというふうに考えております。  その一環といたしまして、鯨類の資源調査を実施いたしまして、科学的データの拡充を図っているところでございます。  これに要します予算でございますけれども、これにつきましては、鯨の資源量、分布等の科学調査の予算として約九億円程度を計上しておりますし、さらに、海外に対しまして我が国の主張を広めるための予算としまして約六千五百万円程度を現在措置しているわけでございます。これらの事業につきましては、今申しましたように、IWCで科学的な根拠を重視するためのデータを集めるための予算でございまして、非常に重要なものであるというふうに考えております。  さらに、先ほど申しましたように、IWCで科学的な根拠を重視し始める傾向が見え始めたことにかんがみますと、この事業の効果も相当上がってきているのではないかというふうに考えております。今後とも、これらの事業の一層の推進を図ることによりまして、商業捕鯨再開への国民の認識をさらに高めていきたいというふうに考えているところでございます。
  210. 浜田靖一

    浜田(靖)分科員 ぜひそういうことでお願いしたいわけでありまして、金額を言うといろいろな御批判もあったりしてなかなか難しいのだろうと思いますので、言わなくても結構ですが、できれば倍額になるようにまた努力していただきたいと思うわけでございます。  私は、その意味で、この鯨に関してはそういう思い入れを持って今後も頑張ってやっていきたいと思いますけれども、これは水産庁だけではなくて、農林水産省全体としてぜひとも考えていただきたいと思うわけであります。  この水産に対する思いというもの、やはりこれは農業と漁業とバランスよく開発していかないと、なかなか動物性たんぱく質も含めて摂取するのに大変だと思うわけでありまして、どっちかがつぶれればどっちかがおかしくなるということになってしまうような気がいたしますので、両方がお互いに伸びていけるような体制づくりをぜひしていただきたいなと思うわけでございます。  私、一時間も時間をいただいて、もうそろそろ時間の方もなくなってきましたけれども、その中で今一連の議論をさせていただいたのは、その意味で、食糧安全保障を考えたときには、やはりそういう一体感を持って農林水産省が、この間もちょっと建設省の方にも言わせていただいたのですが、ぜひ自分たちの事業に対して自信を持ってもらいたい。必要だからやっているのであって、要望があるからやっているのだということを忘れてほしくないわけであります。  というのは、これは長年にわたって地域の皆さん方が、これは言わずもがなでわかっていただけると思いますが、地域の方々がやはり歴史的な中でいろいろな経験をされてきて、どうしても必要だと思うものを国に陳情しているのだと私は思うわけであります。もしもそれが、地域の方々の意識を、要するにそういう要望を無視して、ただ単に大義、正論だけで、そういった主張を無視してまでも、そういう逆の主張の方が正しく見えてしまうようなことがあってはならないと思うので、ぜひとも一歩も下がらずに、必要だからやっているのですということで物事を進めていただきたい。  これは、長良川の堰の問題もありましたけれども、まさに先ほど来私が言っているのは、やはり我々は決して国を悪くするために努力しているわけではなくて、地域とそしてまた国がよくなるために、たとえいろいろな御批判を受けながらも皆さん方が頑張ってやってきているのだということをぜひはっきりと言っていただきたい。それを言わないからこそ、わけのわからない議論が出てきて、もっと政治がわかりづらくなって、政治がもっとパフォーマンスになってしまうような気がするわけであります。  当然のごとく、何か一つのことをやり遂げようとすれば、いろいろな考え方の方がいらっしゃるわけですから、それはいろいろな議論があっていいでしょう。しかしながら、やはりそれをやるからには、こういった気持ちでやったのだということを主張していくべきだと私は思うのであって、絶対にその点で屈することなく、皆さん方の事業を今後も推し進めていただきたい。多分、地元から要請のないものを役所がやるはずもないし、また我々も陳情に行かないと思うわけでございますので、ぜひともその点は自信を持って今後も仕事をしていっていただきたいと思います。  最後に、大臣からこの点についてもお考えをびしっと述べていただければと思いますので、それをお聞きして私の質問を終わりたいと思います。よろしくお願いいたします。
  211. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 食糧の問題は全国民的な問題でございまして、生産者だけの問題でもなければ消費者だけの問題でもございません。まさに委員が言われましたように、国民全体が関心を持ち、国民全体の関係する問題、そういう取り組み方が何よりも大事でございますし、今や国際化の時代でございますから、外国との関係もこれまた十分に考えて食糧を考えていかなければならぬと思っております。  先ほど言われましたように、我々は、国民の皆様方に対して安定的に食糧を供給し、また国土の保全という非常に大事な役割を果たすべく頑張っておるわけでございまして、言われますように、自信を持ってこのいろいろな施策を進めていかなければならぬというふうにかねがね思っておりました。今委員の大変な御激励をいただきまして、これからさらに使命の重さを痛感しながら頑張っていきたいというふうに考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
  212. 浜田靖一

    浜田(靖)分科員 大臣、大変ありがとうございました。今後とも御活躍を心からお祈りして、私の質問を終わりたいと思います。
  213. 上田清司

    上田主査 これにて浜田靖一君の質疑は終了いたしました。  次に、原口一博君。
  214. 原口一博

    原口分科員 新進党の原口一博でございます。  大臣並びに農水省の皆様に、特にUR対策についてお尋ねをしたいというふうに思います。  我が郷土の大先輩であります保利政務次官、私たちもその背中を見ながら育ってまいりました。今、ともすればすべての農業対策について大変な批判が沸き起こっていますが、しかし、私たちは、食糧、そして農村を守るという立場から、きょうは数点について大臣に御所見を、そして農水省に基本的な考え方をお尋ねしたいというふうに思います。  先ほど総理府のアンケート調査がございました。「食料・農業・農村の役割に関する世論調査」によると、将来の我が国の食糧事情について国民の約七割が不安を抱いているということでございます。また、我が国の食糧の生産、供給のあり方については、外国産より高くても生産コストを引き下げながらできる限り国内でつくる方がよいというふうに考えておられる方が八割以上を占めて います。  これは、平成五年の十一月の調査から比べると、平成八年の九月では約二〇%近く高くなって、そういう国民意識の変化がある。そして一方、国民は、農業、農村の有している国土保全、水資源の涵養等の機能を評価している。こうした国民の意識を踏まえた農業対策というものが必要であるというふうに私は思います。  さて、このウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策は、対策の三年目を迎えておりますが、所期の目的を達成するように、もう再評価を行う時期に来ているのではないか、そして問題点があれば見直すべきだというふうに思いますが、まず御所見をお伺いしたいというふうに思います。
  215. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 ウルグアイ・ラウンド対策は、御承知のように、ウルグアイ・ラウンドの農業合意を受けまして、その代償措置として、新しい環境のもとで足腰の強い我が国の農業をつくるべく対策を講じていく、その対策費でございます。  三年が経過したわけでございますが、この事業を進めながら、現場といいますか、いろいろと地元での意見は承っておるわけでございまして、今言われましたように、与党の方々と十分に相談をしながら、見直しを進めていくということにつきましては十分に考えておるところでございます。
  216. 原口一博

    原口分科員 この戦後五十年間、私たちは一回中央に財を集めて再分配をする、そして目の前にある東西冷戦の中での東側の脅威に備える、そういう所得の再分配の機能もあったというふうに私は思います。そして、ともすれば分配そのものが目的になりかねない、そういう事業もございました。  農林水産事業はその多くが、先ほどの質問にありましたように必要に迫られておつくりになったものであるというふうに思いますが、これからは、全国民的な合意を得るためには、アカウンタビリティー、つまりその予算を説明する、どういう効果があったのか、国民の生活あるいは農業、農村を守る、食糧を守る上でどれぐらいの効果があらわれたのか、そういったことまできっちり検証をしていく必要があるというふうに私は思うわけであります。  さて、ここで一つ心配なのは、UR対策予算について来年度予算においては全額当初予算で対応するという報道でございます。その場合私たちは、これからまた三年後には新たなガットの見直しが来る、農業情勢はますます厳しくなる、そういう中で、もしこのUR予算が当初予算でやられてしまうと全体のシーリングの枠から圧縮をされてしまうのではないか、そういう心配を持っておりますが、このことは杞憂なのか。  農家との約束において政府がなさいました、この六年間でウルグアイ・ラウンドの合意における影響を最小限にとどめていく、そして生産基盤を強くする、農家の負担を軽減してもっともっと農家が自信を持って農業にいそしんでいただけるような新たな環境をつくるということでこのUR対策があるというふうに私たちは思います。  しかし、報道を見る限りでありますが、当初の中にこれを入れられてしまうと、全体の財政構造改革の今の議論の中からこのUR対策費というものがねらい撃ちをされてしまう。大変にしわ寄せが来てしまうのではないか、そういう危惧を持っておるわけでございますが、このことについての御所見を述べていただければというふうに思います。
  217. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 今、財政構造改革問題で企画委員会、また三党調整会議が行われておりまして、いろいろな問題が洗い出されました。その中の一つに、農林水産省のウルグアイ・ラウンド対策費について、それを補正で計上するのかどうかという問題もまだ決まっていない、そういう状況であると承知をいたしております。ただ、新聞では数日来、補正で計上しない、対策費は補正計上はないというような記事がございます。しかし、私が申し上げましたように、まだそのようなことが決まった段階ではないというふうに承知をいたしております。  さらに、このウルグアイ・ラウンド対策費というのは、この対策費を決めました当時、従来の農林水産予算に支障を来さないように配慮をする、いわゆる別枠ということが与党三党口頭了解合意で行われたという経緯もあるわけでございまして、この経緯を十分に考え、なおかつその経緯の中でウルグアイ・ラウンド対策費の大部分は補正予算で計上措置した、それも経緯の中の事実であるわけでございますので、そういうことを踏まえて十分な予算措置が行われることが望ましいというふうに思っておるわけでございます。
  218. 原口一博

    原口分科員 大臣、前向きの答弁をいただきまして、本当にありがとうございます。今ここで大臣に頑張っていただきたいというふうに思います。  現に、前の村山総理大臣も、政府の統一見解として、きっちりUR対策という枠を確保しますよということを国会の中で答弁をされて、お約束をなさっているわけでございます。ただ、今の新聞の報道の中では、これをもう聖域扱いとはしない、あるいはこれも積極的に削っていくんだなどという話がある。このことは、やはり今の日本の農業が置かれた現状について認識を異にするものではないかというふうに私は思います。  特に、農業農村整備事業については平成十二年までの六カ年の対策でありました。こういう公共事業については二年間延長するということで調整をしているというふうな報道もございます。この対策によって工期を短縮して、もう実際に効果が出ていますね、一二%ぐらい短縮になっている。短縮して早く農家の皆さんに基盤をつくってもらおう、そして世界の農業と太刀打ちできるような農村をつくっていこうという方向と、二年間の延長という今議論されている方向は逆向きの方向なのですね。  それで、私も地元で農協青年部へ入っている。先日も八千袋の肥料を一緒に皆さんに配りました。十二人の農協青年部です。私たちのところは、医大の先生の数よりも農家の担い手の方がもう少ない、私の小さな町だけでも。そういう状況になっているということをぜひ私たちは皆さんにおわかりをいただきたいというふうに思います。  この農業農村整備事業、二年間延長するということで調整しているということでありますが、その場合、事業の進捗にどのような影響を与えるというふうに考えておられるのか。これは仮定の話でございますが、御答弁をお願いしたいというふうに思います。
  219. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 まだ決まったわけではございませんけれども、私どもとしては、そういった延長という考え方に対して、極力、六年六兆円の事業が完了するように要望しているわけでございます。  今、仮定の問題として、御指摘のように延長ということになりますと、当然のことながら、事業が完了の予定でございました地区についてこれが延びるという形になるわけでございますし、また、新しく事業の採択を予定していた地区の採択の年次が後におくれる、こういうことも生じてまいります。私どもとしては、ウルグアイ・ラウンド対策に与えられた予算を最大限に効率的に活用して、地域の農業の生産性の向上あるいは体質の強化に役立つように、事業効果の早期の発現に予算執行の面において最大限の努力をしてまいりたいと考えております。
  220. 原口一博

    原口分科員 大臣、ぜひ今農家が置かれた現状を踏まえて闘っていただきたい。それには与党も野党もない。私たちは、日本の食糧を守る、日本の安全を守る、その立場から、協力すべきところは協力をしていきたい、そのように考えております。  さて次に、農地の流動化対策についてお尋ねをいたします。  農地の流動化対策のこれまでの執行率については今どのぐらいになっているでしょうか、お答えをお願いいたします。
  221. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 ただいま御指摘のございました農地流動化関係の予算の執行率でございますけれども、平成年度で五三%、それから平成年度で、少し高くなっておりますけれども、五八%というような状況でございます。
  222. 原口一博

    原口分科員 これについて、市町村等の関係者にその事業の理念やあるいは仕組み、これが必ずしも徹底をされているのではないのじゃないかというふうに思います。  また一方で、受け手の問題。私は、農家も今までのように個々、一戸一戸の農家が農業を担っていく、これも必要なことだというふうに思いますが、先日、ある農談会に行きましたら、経営主体として一人で肥料の知識も得なきゃいけない、農薬の知識も得なきゃいけない、経営の知識も得なきゃいけない、そういう中で、一戸一戸の農家がそれぞれの経営に努力をされているわけでありますが、やはり限りがあるのではないか。そういう中で、流動化対策の一方で、その受け手をどうやってつくっていくのか、農業法人をつくっていいくのか、本当の営農集団をつくっていくのか。  私も数万の後援会がございますが、毎年事故がある。そうすると、何千万という投資をして農地を保全していた、しかし、担い手が事故でもって体が動かなくなる、あるいは亡くなってしまうとなると、もうそこの農家はそれで生産手段すべてを失ってしまう。そういう中に今の農村の嫁不足の一端があるのではないか。隣にいる会社に勤めている方は、非常に福利厚生もしっかりしている、保障もしっかりしている。しかし、農家は、その柱である御主人やあるいは奥様が病気になってしまうと、もう次の生産手段を持たない。  こういう状況の中で、農地の流動化対策を進める上で、一方では、農家の経営形態をどうやっていくのか、このことが議論をされていかなければいけない、私はそのように考えておるわけでございますが、大臣、そして農水省として、どういうお考えをお持ちなのか、御所見をお尋ねしたいというふうに思います。
  223. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 今御指摘のようなケースは、これは家族農業経営といいますか、家族において中核的な農業者が一人いらっしゃるというような場合に、経営の将来に不安があるというような御指摘でございます。  それで、こういった問題もございますし、また、地域によって、個人の農業経営者を育てていこう、あるいは個人として、家族農業経営として農業経営をこれから展開したいというような気風、気持ちの強いところもございます。  また、そうではなくて、集落ぐるみ、地域ぐるみで農業に取り組んでいく。この場合には、当然役割分担して、中核的な作業の担い手としてのオペレーター、あるいは高齢化しておられる方については、そういった肉体的な条件も考えて補助的な作業、あぜの草刈りとか、苗の補植をするとか、あるいは防除とか、溝さらいとかいったようないろいろな補助的な作業をされるような方、あるいは農地の貸し手として農業以外の安定的な就業機会を求められるような方、それぞれが、地域において、地域の農業関係者の中の合意と理解と納得のもとで、その地域の農業における役割分担をして、全体としてその地域の高い農業生産を上げていくというような地域もあるかと思います。  また、これが一歩進んで、農業生産法人、これは、法人形態は現在、合名、合資、有限それから農事組合法人という四つの形態がございますけれども、こういった法人化を図ることによって、家計と農業経営の収支をきっちりと分離する、また農業従事者の雇用関係を近代化する、また特に、婦人の農業従事者が今数としては多いわけでございますけれども、婦人の農村地域における役割の明確化あるいは地位の向上、さらに農業の近代化、農業外部のいろいろな知恵、アイデアの導入等々のためにこの法人化というようなことも考えられるわけでございます。  いろいろな地域の農業経営のタイプや育成の方法があるかと思いますけれども、これは、それぞれ利害の得失があり、また地域における農業関係者、住民の方々の意識というものもあると思いますので、それぞれの地域に即した農業の担い手の育成ということについては、それぞれ地域の関係者が十分議論していただいて、その合意、理解、納得のもとに体質の強い農業の担い手を育てていただくことが適当であると思っております。
  224. 原口一博

    原口分科員 今おっしゃるように、やはり地域、地域によって随分違うのだというふうに思います。また、営農の形態も随分違います。本来であれば、農協が中心となってそういうものを育て上げていく必要があるわけであります。  しかし、私はこの間、これは他県の農協でございましたけれども、農協職員の雇用実態というのを見てまいりましたけれども、その実態についても、私が目にしたものは、必ずしも労働基準法やさまざまな国の法律に沿ったものではございませんでした。農家の中から農協に就業をしているという例もございます。ぜひ一度、農協の雇用形態というのが一体どういうふうになっているのか。  そして、農協がメディアではさまざまな批判を浴びますが、やはり何といっても営農の中心は農協であるというふうに思います。農協が本来の目的である営農指導、そして、三事業ございますけれども、そういう事業を農業、農村のためにできるような体質に変えていかなければいけない。我が県も今、県内一農協、新しい金融の自由化の中で、県内を一つの農協にして本当に農業をサポートできるような形に変えていこう。これには大きな痛みが伴いますけれども、しかし、もう待ったなしなんだ、地方でも改革が進んでおるところであります。  今、局長からお答えいただきましたけれども、新規の就農対策、この就農対策は、UR対策の中でも余り芳しくない。六年間の総貸付枠百九十四億円に対して、貸付実績というのは平成年度末までで七億円、実施率四%にすぎません。今はもうちょっと上がっているのだと思いますが、今どうなっているのか、貸付実績がこういう状況であるのはなぜなのか、その辺についてお尋ねをしたいというふうに思います。
  225. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 今御指摘の新規就農対策でございますけれども、こういった仕事は、いわゆる農業農村整備事業における圃場整備あるいは農協の集出荷施設をつくるようなハードの事業と違いまして、ソフトの事業でございます。これについて、これは新規の就農者の活動に対して支援するための貸付金でございまして、したがって、今全体として低金利、金余りの状況の中で、必ずしもこういった事業が対策の発足当時ほどに農業者にとって相対的に魅力があるものでなくなっているというのも現実でございますけれども、新規就農対策というのは大変重要な仕事でございます。  したがって、私ども、今御指摘事業でございますけれども、こういった貸し付け事業だけではなくて、農業農村整備事業あるいは構造改善事業、さらに先ほど御指摘のございました農地流動化対策事業等、ウルグアイ・ラウンド対策の中にいろいろな事業がございますけれども、この中でも、例えば圃場整備を行うことによって新しく農業に参入しようという担い手が農地を使いやすくする、このための条件整備をして、こういった担い手を育てるための農業、農村整備については、一般の助成、一般の圃場整備事業について補助率の点あるいは採択の条件の点でこれを有利にしたり、さらに構造改善事業における集出荷施設等についても、そういった担い手や新規就農者の育成に役立つというような、地域の農協組織等が事業主体となられる場合にこれを優先的に採択するというような形で、ハード事業、ソフト事業を通して、新規就農者また担い手の育成に努力しているところでございます。
  226. 原口一博

    原口分科員 努力されているのはわかるのです。ただ、やはり実態として実績が上がっていないところ、それは特に、もう時間があと五分になりましたのでこのことだけは申し上げたい、農家の負担軽減対策。  実際は、農地を流動化したい、あるいは場合によってはもう経営を閉じたい、ただ農協に莫大な借金があってやめるにやめられない。そういう中で、私は、今の負担軽減対策の対象の枠をもっとふやして、そして、私たちが農村を回っていると、例えばスーパーL資金なんというのは融資を受けるための手続が大変煩雑だ、大変なペーパーを出さないといけない。そういった手続の簡略化あるいは枠の拡大、そういうものが必要なんじゃないか。  新たに従来の負担を軽減してさらなる投資を可能にする、そういう人たちにも大事でしょうけれども、一方では、今までの負債をたくさん抱えている、そういう人たちに対してそれを軽減をしていく、この努力も必要なのではないかというふうに思います。  ぜひ柔軟な対応をしていただいて、そして、今我慢してください、年間一億ずつ人口はふえているのです、生産を放棄しないで今頑張っていれば目の前には光があるんだということを、ぜひ国としてお示しいただきたいというふうに思います。大臣の御決意をお伺いしたいというふうに思います。
  227. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 委員が言われますように、農業関係者が夢と希望を持って日本の農業の発展のために頑張っていく、こういうことが何よりも大事でございます。  我々としては、そのためにぜひ新しい農業基本法を制定いたしまして、これからの我が国の農業の方向、はっきり、きちっとした方向を打ち出しまして、農業関係者がまさに夢と希望を持って我が国の二十一世紀の農業に全力を挙げて頑張っていただけるように、そういう方向づけはこの一年、二年の間にさせていただいて、皆さんに大いに頑張っていただけるように持ってまいりたいというように考えております。
  228. 原口一博

    原口分科員 ぜひ負担軽減のことをもう少し枠を広げてやっていただきたい、そのお答えをいただきたいというふうに思います。
  229. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 私も委員と同感でございまして、いろいろ現場の意見を聞きますと、手続が非常に複雑であるとかまた保証人が二人要る問題であるとか、具体的に幾つか現場の話を聞きまして、私もよく承知いたしておりますので、委員と同じような考え方でこれから進んでまいりたいと思っております。
  230. 原口一博

    原口分科員 前向きの御答弁をいただいて、ありがとうございます。  あと二分になりましたので、最後に一点だけ、諌早湾の干拓の話をしたいと思います。  有明海はカキの葉一枚といいます。つまり、一潮でカキの葉一枚分の土が堆積いたします。ですから、私たちは宿命的に、ここを干拓しなければ防災も実が上がらないという状況にあります。  現に昭和三十二年には諫早大水害というものがあって、死者六百八十三人、行方不明七十七人、負傷者三千五百五十人、もう大きな大きな災害があった。そして近年、昭和五十七年には実に死者三人を出している。そういう状況の中でこの事業が行われているということをもっと強く言っていただきたい。  そして、もしこの水門をあけられたら、私たちは隣の佐賀県でありますけれども、一挙に水流がふえて漁場も荒らしてしまう。私たちは隣で、佐賀県はムツゴロウを食べているんですと、私たちだけが何かムツゴロウをいじめているような報道もされていますが、そうではない。私たちだって、生きているものを食べないで生きていけるんだったら、それが一番いい。自然を傷めないで生きていけるんだったら、それが一番いいんです。しかし、そうではない。  こんなに大きな人命を失った、その反省のもとにこの事業をやっているということをぜひ農水省としても、ともすればテレビ受けのするようなことだけが声高に言われてしまう、そのことを私たちは今非常に憂えています。国民の命を守る農水省として、大臣の御決意をさらにお伺いしまして、私の質問にかえさせていただきます。
  231. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 委員は地元でいらっしゃいますから、状況はよく御承知のとおりでございまして、あの諌早湾干拓事業につきましては、御承知のように長い歴史がございます。また、いろいろな関係者がいろいろな意見を持っておられたということも御承知のとおりでございます。  そういう賛成、反対の地元の意見がございましたけれども、あの三十二年の諌早大水害が起こりまして、今言われましたような大きな被害を受けて、そして全部の方がこの干拓事業をぜひ進めていかなければならぬと。それは、一つには防災対策、一つには干拓による優良農地を造成していく、こういう二つの目的で諌早湾干拓事業をぜひ進めてもらいたい。こういうことが地元の一致した要望として持ち上がり、また国営事業でございますけれども、我々農水省が勝手にこの事業を取り組んでおるわけではございませんで、地元の要望を十分お聞きをし、協議をし、合意をいただいて、そしてこの事業を進めておるわけでございます。  先般、潮受け堤防を完成いたしまして、その結果、その後約百五十数ミリの雨が降ったわけでございますけれども、従来であれば大変な洪水また水につかるというあの地域が、ほとんど水につからなかったというような防災効果もはっきり証明されておるわけでございますので、そういう防災効果を無にするような、水門をあけるというようなことは、農林水産省の最高責任者としては決してそういうことはできない、そのように申し上げているわけでございまして、これからもこの諌早湾の干拓事業を、地元の熱意を私ども十分に酌みながら進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  232. 原口一博

    原口分科員 ありがとうございます。終わります。
  233. 上田清司

    上田主査 これにて原口一博君の質疑は終了いたしました。  次に、滝実君。     〔主査退席浜田(靖)主査代理着席
  234. 滝実

    ○滝分科員 自由民主党の滝実でございます。  私の地元の地場産業と申しますか、そういうことの宣伝も兼ねまして、大変小さなことで恐縮なんでございますけれども、ショウガの話を一つ問題にいたしまして、農林省御当局の御意見を承りたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと存じます。  もともと奈良県は、実は数十年来ショウガの主産地でございまして、今から三十年、四十年前は、大和ショウガと称されまして、漬物用には大変良質なショウガを産出してまいりました。しかし、近郊農業でございますので、ショウガの値段が安くてはなかなか出荷できない、こういうこともございまして、数十年前までは奈良県各地域でつくっておりましたショウガも、その後、実際問題として出荷をするような量までできませんで、現在、県内ではほとんどショウガを産出していない、こういうようなことになっているのでございます。  しかし、その反面で、昔の名残で、ショウガの漬物は全国有数の産地でございまして、県別に分ければ恐らく全国一番か二番か、こういうような県でございますので、そういう意味で、ショウガの問題を取り上げさせていただきたいと存じます。  ところで、平成五年あるいは六年にかけましてショウガの輸入が大変急増をいたしました。そこで、ウルグアイ・ラウンドの協定の一環として、この急増した生ショウガに対しまして一般セーフガードを発動したらどうだろうか、こういうことがそれ以来言われてまいったわけでございまして、特にこの問題は平成七年から八年にかけて関心を集めたと思うのでございますけれども、その辺の経緯と、現在はどうなっているのか、この辺のところにつきましてまずお尋ねをいたしたいと存じます。
  235. 本田浩次

    ○本田政府委員 ショウガにつきましては、委員御指摘のとおり、平成五年以降輸入が急増いたしまして、平成六年に国産品価格が下落し、作付面積が大幅に減少するなど、国内産地への大きな影響を及ぼし、問題になったところでございます。  こうした輸入急増問題につきまして、一般セーフガードの政府調査開始について大蔵省、通産省などの関係省庁と私ども協議を進めてまいりますとともに、それと同時に、現実的な解決を図るという見地から、こうした協議にあわせまして中国との協議を進めてきたところでございます。  本年の一月に、日中両国の協議におきまして、中国側から輸出の自主管理を強化するという旨の一定の回答がございましたので、セーフガードの政府調査開始についての関係省庁との協議につきましては、ただいま一たん休止をしておりまして、中国側の対応を注視するということにしたところでございます。  この協議の結果を踏まえまして、中国側では、ショウガにつきましては、本年五月から輸出入商会によります輸出価格事前審査制度を実施しているところでございます。  また、私ども日本側といたしましても、中国側の自主管理措置の実施状況を確認いたしますために、輸入貿易管理令に基づきまして、六月一日から、輸入業者に対しまして、輸入数量、価格、輸出者名などを輸入後直ちに報告させることにしているところでございます。
  236. 滝実

    ○滝分科員 大変ありがとうございました。  今のお話では、急増したのは本来中国からの輸入物、こういうふうに聞かせていただきましたけれども、例えばタイとかインドネシアとか、そういうところからの生ショウガについての急増とか、そういうようなことは特に問題にはなっていないんでしょうか。その辺のところも確認をさせていただきたいと存じます。
  237. 本田浩次

    ○本田政府委員 ほとんど中国側でございまして、タイ、インドネシアからの輸入の急増が問題になっている実態はございません。
  238. 滝実

    ○滝分科員 そこで、次に、私どもの地元におきましては、地元で生のショウガを生産するということが数十年来行われてきていないのでございますけれども、お聞きしますと、国内ではわずかに四国あるいは九州で国内産のショウガが産出されているやに聞いているのでございます。その中心となる高知県のショウガも最近では大分産出量が減少している、こういうふうにお聞きしているんですけれども、その辺の状況は、もしおつかみでしたらお漏らしをいただきたいと思います。
  239. 本田浩次

    ○本田政府委員 国産の中心的な産地は高知県でございまして、国内生産のシェアの大体六割弱を占めてございます。第二位が熊本県でございまして、十数%といったところでございます。この二県で大体四分の三ほどを生産しているという状況でございます。  これまでの国内生産の推移でございますけれども、先ほども御説明いたしましたとおり、平成五年当時は大体五万トン弱の生産量でございましたけれども、六年、七年と輸入が急増したために、前年から三割ぐらいの減というような形で生産数量がかなり大幅に減少したという状況でございます。  平成七年から八年にかけましては、先ほど御説明いたしましたように、こうした中国側との協議その他もございまして、国内価格が昨年の秋ぐらいからかなり上昇してきておりまして、現在ではキロ五百円台になっている、こんなような状況がございます。  ことしの作付状況につきましては、若干の増加が見込まれるというように産地側からの聞き取り調査では私ども承知しておるところでございます。
  240. 滝実

    ○滝分科員 ありがとうございました。  さて、私どもの地元のショウガの特産物でございますけれども、ショウガの漬物、私どもの地元では国内産は全くと言っていいほど原料には使っておりません。価格が余りにも違いがあるものですから原料にならない、数十年来そういう状況が続いておるわけでございます。  では、原料をどうしているかと申しますと、奈良県の場合には、主としてタイ、補完的にインドネシアあるいはベトナム、そういうようなところから輸入をいたしております。その輸入の形態も、生ショウガあるいは低塩、ごく塩分の薄い漬物として輸入する場合、あるいは〇・五%の酢酸に漬けたもの、あるいは普通の塩漬け、こういうような三種類の輸入をしているわけでございますけれども、それぞれについて現在関税が違っているわけですね。  その辺の関税の違い、例えば最高の関税は現在一二%になっていると思うのでございますけれども、最高の関税が一二%、それから〇・五%の酢酸漬けにしたものが九%、それ以外の低塩あるいは生の場合には〇%、こういうことになっていると思うのでございますけれども、その辺のところの区別の考え方についてお聞かせをいただきたいと思うんです。
  241. 本田浩次

    ○本田政府委員 平均的な関税率の状況につきましては、例えば塩蔵ショウガにつきましては、平成六年のウルグアイ・ラウンド合意に基づきまして、平成年度から平成十二年度までの六年間におきまして、平成年度の一五%から段階的に引き下げて、平成十二年度の最終譲許率は九%にする、こういったことで逐次関税率を引き下げてきているところでございます。  ショウガの形態別、種類別の関税率の考え方でございますけれども、委員御指摘のとおり、用途や加工度に応じて関税率は決められております。一般的に、国内産業の保護の観点から、加工度の高いものについて高い関税率を設定している、こういった状況でございます。  先ほど申し上げました平成十二年度の最終譲許率でまいりますと、生鮮や加工度の低いものにつきましては二・五%、それから塩蔵品につきまして、先ほどお話ししましたとおり九%ということでございまして、酢調製品につきましては一二%程度になっている、こういう状況でございます。  また、中国を含む開発途上国につきましては、特別の便益を供与するために、無税などの低率の関税を適用しているものもございます。
  242. 滝実

    ○滝分科員 ありがとうございました。  問題は、国内の産業を保護するため、こういうようなことが関税設定の理由だろうというふうには思いますけれども、現在私どもの地元で輸入をいたしておりますショウガのそれぞれいろんな種類のものでも、現実には地元から業者が現地へ出向いていって、作付の指導あるいは加工の指導それから日本への送り出しの指導まで現地で全部やって日本へ入れてくる、こういうようなことでございます。そうしますと、特に私どもの方は全く国内産がないわけでございまして、現在、関税で守っていただくようなものはとつくの数十年前に滅びてしまったわけなものですから、関税で保護のしようがないという地域でございます。そういう地域から見ますと、現在残っている関税の率、何となく不合理に受け取れるわけでございます。  しかも、問題になりました平成五年から六年にかけて中国から急増したものも、その大半は恐らく生のショウガだということになりますと、もともと関税がかかっていないものですから、一般セーフガードの問題が出てきたぐらいでございますから、そうすると、現在二・五とか九とか一二とかという関税がありますけれども、どういう意味を持つのかなという感じを私どもの地元では持つのでございます。全国を押しなべて考えた場合には、それはどういう意味を持っているのか、もしわかればお知らせをいただきたいと思います。
  243. 本田浩次

    ○本田政府委員 一般的なお話でございますけれども、国内の漬物業者の皆さんは、国内産のショウガでございますとか輸入しました生鮮ショウガでありますとか、または委員御指摘のような加工度の低いものを国内で加工いたしまして最終の漬物製品として販売しておるところでございます。  例えばガリの原料になっております酢調製のショウガなどにつきましては、国産の加工向けの原料として輸入されているわけでございますけれども、場合によりますと、同時に、近年、海外におきましてもこの加工度が高められておりまして、最終漬物製品として輸入されるものも増大しているところでございます。  したがいまして、今後、このような最終製品の輸入漬物が国産品と競合して、国内の漬物産業に悪い影響を及ぼすという事態も心配されるわけでございます。したがいまして、こうした加工原料であると同時に、場合によりましたら最終の漬物にもなるというような酢調製のショウガなどもございますので、国内の漬物業者を保護するという意味からも、一定の関税率を設定しているというのが現在の私どもの考え方でございます。  なお、国内産のショウガにつきましては、多くは文字どおり生鮮で消費されているわけでございますけれども、国内産のショウガにつきましても、やはり一定量は漬物原料として使用しているのが実態でございます。
  244. 滝実

    ○滝分科員 私の聞いている範囲内では、昔は関税は、塩漬けの場合に一五%の関税から出発しているわけですね。それがその後において、〇・五%の酢酸に漬けたものは九%になった、こういうふうに聞いているのでございます。ただ、酢酸漬けのショウガも、関税が安いから無理して現地でもって酢酸を入れ込んだ漬物にして日本に輸入してくる、こういうようなこともやっているようでございます。  したがって、酢酸で漬けたものが最終製品ではございませんで、低い関税率を適用するための一つの方便としてやっているようにも聞いているのでございますけれども、実際問題として、その辺のところはどういうことなんでございましょうか。お聞かせをいただきたいと思います。
  245. 本田浩次

    ○本田政府委員 まさに漬物業界の皆様方は、消費者のニーズに沿うような形で、国産の生鮮のショウガを原料に使ったり、それから一定の加工をしたものを輸入して原料に使ったり、それぞれ工夫、努力を重ねられているというのが実態であるというふうに考えております。  いずれにいたしましても、ショウガにつきましては、できるだけ国内生産を育成していきますと同時に、漬物業界につきましても、原料が安定的に調達されて業界の振興発展が図られるように対応していきたいというふうに考えております。
  246. 滝実

    ○滝分科員 ありがとうございました。  くどいようでございますけれども、私どもの地元は、残念ながら農水省の保護に至るまでにショウガの生産が消滅した地域でございまして、そういう意味では何となく矛盾を感じるのでございますけれども、局長さんのおっしゃるように、一年でも早く低い関税率が適用されますように、将来に向かってそういうような方針をお持ちでございますから、できるだけそういうような方向で、少し早めてでも関税率を下げていく、こういうようなことをお願い申し上げたいと存じます。  それには、もちろん、現在減少したとはいえ、残っております高知とか、あるいは熊本とか長崎とか、国内産の産地もあるわけでございますので、その辺のところのショウガがどういう方向に出荷されているかということも御勘案の上、御配慮をいただければありがたいというふうに思います。  次に、環境問題で御意見をお伺いさせていただきたいと思うのでございます。  地球温暖化対策と申しますか、世界環境会議がことし十二月に京都で行われる、こういうようなことから、四月一日の閣僚会議で、西暦二〇〇〇年に向けた総合的な省エネルギー対策というようなことで政府の方針がまとめられておるわけでございますけれども、この中を詳細に検討いたしましても、農業に関するフレーズ、文句がどうも見当たらないわけでございます。別途農林省として、地球温暖化対策について当然取り組まれてきたと思うのでございますけれども、その辺の事情についてお聞かせをいただきたいと思います。
  247. 堤英隆

    ○堤政府委員 今御指摘の、四月一日に総合エネルギー対策推進閣僚会議において地球温暖化防止行動計画の目標達成のための一環という形でまとめられたところでございますが、これにつきましては、通産省の方にもいろいろお話を申し上げたわけでございますが、この中身が基本的には当面の新規施策といいますか、そういうことを中心に取りまとめられたということが一つございました。  それから一つは、農業につきましては、全体のエネルギー使用量のうち比較的割合が小さいということで、現在二%程度でございますが、そういうこともございまして、この計画にはのせてございませんが、しかし、私どもとしましては、今御指摘のように地球温暖化問題それから環境問題、エネルギー問題、これは食糧問題とともに二十一世紀に向けて非常に重要な課題だというふうに認識をいたしておりまして、そういう意味で、省エネルギーの推進それから石油代替エネルギーの開発利用ということで、私どもも積極的に取り組んでいかなければならない課題というふうに認識をいたしております。  そういう意味では、一つには、省エネルギー技術試験研究、それからこれを実用化するということの促進を現在やっております。それから二つ目には、地熱でありますとか太陽熱それから用排水、全国に用排水路がございますので、そういった用排水を利用いたしましたいわゆる中小水力等の自然エネルギーの活用、それから省エネルギー機械の導入そのものでございますけれども、こういった三つのタイプがそれぞれあるわけですから、こういうところにつきまして現在積極的に推進をいたしております。  それからまた、関係者に対しまして、今おっしゃいましたような状況の中で、省エネルギーということが非常に重要だという認識をさらに啓蒙普及といいますか、そういったことにつきましても、これは政府横断的な施策としてやっていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  248. 滝実

    ○滝分科員 農業全体で消費されるエネルギーは、我が国全体の中で三・三%ないし三・四%である、こういうようなことから、どうも農業関係の取り組みについては、多少大目に見ているところがあるのではないだろうかなという感じがするのですけれども、実際に消費者の、国民の立場から見ると、何となくちぐはぐな感じがいたすわけでございます。  もちろん、私の地元におきましても各種の温室栽培がございますから、余り大きなことは言えないのでございますけれども、それでも、相当寒冷地でもこのごろは温室のメロンをやったり、巨峰栽培を寒冷地でもって年二回収穫するようなことも盛んになってきておりますので、どうも一般国民としては何となくその辺のところが大丈夫だろうかな、こういう感じがありますので、どうか同じ温室栽培でもできるだけ省エネルギーになるような、そういうような開発を、農林省も当然お取り組みになっていると思いますけれども、よろしくお願いを申し上げたいと存じます。  それから三番目に、これは抽象的なことで恐縮なんでございますけれども、従来から各種の農林省の助成措置の中に、共同事業、農家が共同でやるあるいは組合をつくっておやりになる、そういう場合にはかなり手厚い各種の助成措置があるわけでございます。  例えばこれは私どもの地元でそういうことをささやいているわけでございますけれども、乾燥施設などを設置する場合でも、最近は大変巨大な乾燥施設が各地にでき上がっているわけでございますけれども、そういうことになりますと規模が大きいというメリットがあるのでございますけれども、逆に金がかかる。そういう中で、従来から農家が持っている規模の小さいごくささやかな乾燥施設を持ち寄って、それでもって、それをみんなが使えばかなり安上がりな農業ができ上がっていくんじゃないだろうかな。しかし、みんなで使うためには、そういうものを収容する共同施設が要る。そういうものに対してできるだけ助成をしてもらうようにお願いをしたい、こういう声が上がっているわけでございます。  もともとの感覚からいいますと、そういう共同施設をつくる場合には、中に組み込む施設、装置も新しくするというのが今までの常識なんだろうと思うのでございますけれども、中へ組み込むものはあちこちから手配してくる。建物だけでも助成するようなことは考えられないかというような声も出ているものですから、その辺の事情につきまして御当局の御意見を伺いたいと思います。
  249. 高木賢

    ○高木(賢)政府委員 農産物の乾燥調製施設などにつきまして共同利用を進めておりますのは、御案内のように、乾燥調製作業などの規模を拡大したりいたしまして生産の省力化あるいはコスト低減を図るということが主な目的でございまして、またあわせて農産物の品質向上あるいは販売ロットの拡大を図るというふうなことを目的として推進しているわけでございます。  この補助対象につきましては、このような事業目的が確実に達成されるということが必要でございますので、新品あるいは新設ということを原則としてはおりますけれども、御指摘のありましたように、事業費の低減という観点から、事業実施主体とか利用者の経済負担を軽くする、こういう観点から、既存の機械、施設の有効利用につきましても、これを認めまして推進しているところでございます。  ただし、共同利用施設としての実質を確保する必要がございますので、所有は個々人に属していて共同利用施設だというわけにはなかなかいきませんので、その事業主体が機械、施設を所有する、あるいは共同利用体制が整備されるということは、既存の機械、施設を利用するとした場合にも必要な要件ではないかというふうに考えております。  もちろん、そのほか、補助事業としての目的達成が可能であるとか、事業効果が得られるとか、あるいは既存の機械にも十分な耐用年数が残存しているとか、一般的なことはございますが、要は共同利用によって効率を上げようという趣旨にのっとったものであるかどうかということがポイントになるかと思いますし、形が新品であるか、ある程度使用したものかということはないというふうに考えております。
  250. 滝実

    ○滝分科員 今局長がお述べになりましたように、従来、国の助成措置、あるいは県でもそうでございますけれども、そういう場合には、どちらかというと大型化をして省力をする、あるいは効率的な農業経営に資する、こういうような観点で農林省もおやりになったと思いますし、大体各省押しなべてそういうような角度で今までは取り組んできたと思うのです。それは、日本の経済が規模拡大の方向に向かっている中において、何でも大きいことはいいことだ、こういうような一連の延長線の上でやってきたと思うのでございますけれども、やはりそうでもないという部分が今見直されてきているように思います。  そういう観点から、ただいまの局長さんの御答弁では、具体的な問題としてまたいろいろ検討に値する、こういうようなこともございましたものですから、この際、そういう日本の社会の変換期、どちらへ変換するのかよくわからないところもあるのでございますけれども、ぜひ改めてまた見直すことも必要じゃなかろうかなという感じがいたしますので、最後に、せっかく農林大臣おいででございますから、御感想だけをひとつお聞かせいただいて、質問を終わりたいと思います。
  251. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 ショウガの問題につきまして、私も四国でございますので、高知のことは若干承知をいたしておりますが、奈良県のことにつきましてはいろいろ勉強させていただきまして、なるほどなという点もございましたし、これから私もこの問題についていろいろ勉強したいなと思っております。  それから、先ほどの助成の問題については、これも現実の問題としてはケース・バイ・ケースで判断すべき問題で、私の香川県におきましては、非常に狭いところでございまして、大体補助の対象に届かない事由が多いわけでございまして、そういうことについては地元の方々もいろいろな不満を持っておることもよく承知いたしておりますので、その点につきましても勉強してみたいというふうに常々考えておりましたことを申し上げます。
  252. 滝実

    ○滝分科員 農林大臣の大変心強い御見解をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。  以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  253. 浜田靖一

    浜田(靖)主査代理 これにて滝実君の質疑は終了いたしました。  次に、大野由利子君。     〔浜田(靖)主査代理退席、主査着席〕
  254. 大野由利子

    ○大野(由)分科員 新進党の大野由利子でございます。  初めに、卸売市場の問題について質問をさせていただきたいと思います。  今、青果物の流通に関しまして、大量流通、大量消費、それから輸入農産物の急増、そしてまた市場外流通等々、大変な変化の波に洗われている、こういう状況でございます。消費者の口も肥えてまいりまして、味にうるさい消費者のニーズにこたえて、青果物の鮮度とか維持向上が大きな課題になっております。低温倉庫というものがぜひとも必要だ、この低温倉庫の整備が求められている、こういう状況でございます。  今、全国で中央卸売市場が八十八あるそうでございまして、そのうち東京都に中央卸売市場が十一、そのうち多摩地域にあるのがたった一つでございます。多摩地域は、今現在三百七十二万人の人口を抱えておりますが、三百七十二万人の人口に対して卸売市場がたった一つ、しかも多摩地域の南部、多摩ニュータウンにございまして、交通の利便性が悪いということもあって、余り取扱高も高くない。それに対して、東京二十三区内は大体平均八十万人の人口に対して卸売市場が一つ、多摩は三百七十万人に対して一つ、こういう状況になっているわけでございます。  そういうことで、農水省といたしましては、この青果物の流通を掌握され、そして管理監督の責任ある立場にいらっしゃると思うんですが、この問題についてどのように認識をしていらっしゃるか、こういう状況をどう思われるか、伺いたいと思います。
  255. 本田浩次

    ○本田政府委員 卸売市場につきましては、委員御案内のとおり、我が国の生鮮食料品等の流通におきまして、青果の八割、水産物の七割が卸売市場を経由するなど中心的な役割を果たしているところでございますが、同時に公正な価格形成の場として、川上の生産と川下の消費とを結びつける重要な役割を果たしているところでございます。  このために、私どもでは、卸売市場法に基づきまして、十年を見通して五年ごとに卸売市場整備基本方針というのを定めております。それから、これに基づきまして中央卸売市場整備計画を定めているところでございますが、御指摘のとおり、この計画に沿いまして、現在、中央卸売市場が八十八、地方卸売市場が千五百二十一、全国に配置されておりまして、こうした卸売市場を通じて生鮮食料品等の流通が担われている。しかも、こうした卸売市場整備基本方針なり市場整備計画に沿って計画的に卸売市場の整備を推進してきているところでございます。  現在は、平成八年三月に策定されました、平成年度を初年度といたしまして平成十七年度を目標年度とする第六次卸売市場整備基本方針におきまして、卸売市場の配置につきましては、流通網の整備が一応現在は図られている、全国的な配置は進展したという認識のもとに、今後は既設の中核的な中央卸売市場の再整備、機能の拡充、地方卸売市場の統合整備を基本として進めていくということにしているところでございます。  委員御指摘の東京三多摩地区の卸売市場の整備の問題でございますけれども、これは長年の経緯がございまして、国の中央卸売市場整備計画上の位置づけといたしまして、まず昭和四十七年の第一次の、先ほど御説明いたしました十年ごとに定められる卸売市場整備基本方針でありますとか卸売市場整備計画のことを申しているんですけれども、その昭和四十七年の第一次整備計画におきまして、三多摩地区における生鮮食料品の流通円滑化を図るために四市場の開設を位置づけまして、まず用地を確保した多摩ニュータウン市場、まさにこれが南部市場、多摩地区に一カ所だけあるという中央卸売市場でございますけれども、これが昭和五十八年に開設されたわけでございます。  ただ、残る三市場につきましては、用地取得の困難性など、実現の見通しが不確実でありましたことから、この中央卸売市場整備計画の段階におきまして、昭和六十一年の第四次整備計画において計画から除外された状況にございます。その後、第五次、現行の第六次整備計画におきましても、現在の段階では位置づけられていないという状況にございます。  それで、現在どういった状況にあるかということでございますけれども、三多摩地域の中央卸売市場の開設の問題につきましては、既存の地方卸売市場を統合の上、中央卸売市場を開設するという構想が現在多摩地域において検討されているというようにお聞きしているところでございます。  以上でございます。
  256. 大野由利子

    ○大野(由)分科員 今多摩地域の問題についてお伺いした状況ですが、平成七年の一月に、東京都は多摩地域青果卸売市場整備基本構想というものを策定をしております。この中で、多摩地区に新たに青果中央卸売市場を三カ所設置する。西部ブロック、八王子方面、八王子インターチェンジ北地区内の都有地を候補地とする。二番目は、北部ブロック、既存の東久留米卸売市場を中心に隣接民有地の取得により市場用地の拡張を行い、中央市場化を図る。三番目は中部ブロック。中部ブロックはちょっとまだ、地元自治体の理解と協力を得ながら引き続き候補地の選定に努める。こういう多摩地域青果卸売市場整備基本構想というものが発表になっております。  それで、平成八年の十一月に第六次市場整備計画を策定をしております、東京都は。この中で、多摩地区青果市場関係については平成七年一月に策定された基本構想において整備の方向が示されたところであるが、この基本構想で、新市場設置に当たって課題とされている入場業者の調整、交通アクセス、需要予測、事業採算性等について引き続き調査を行う、こういうふうになっているんですね。  今の局長の答弁だと、まるで完全に白紙になって、今ゼロみたいな、私、答弁を聞いていてそんな印象を受けたんですが、決してそうじゃないんですよね。  平成七年一月に基本構想を東京都は発表しております。それに続いて平成八年十一月に第六次市場整備計画を策定して、これは、この方向に向かってやるけれども、実際の事業決定の前にいろいろ引き続いて調査を行う、こういうことで、ちょっと今の答弁は違うんじゃないでしょうか。
  257. 本田浩次

    ○本田政府委員 先まど御説明いたしましたのは、現在の段階で、先生御指摘の、平成七年一月の多摩地域卸売市場整備基本構想というのがまとめられたというその段階まで御説明したところでございます。まさに、既存の地方卸売市場を統合の上、中央卸売市場を開設する構想があるとお聞きしておりますということでございます。  さらに、先生御指摘のとおり、平成八年十一月の東京都の第六次卸売市場整備計画におきましては、基本構想で課題とされておりました入場業者の調整、交通アクセス、需要予測、事業採算性等について引き続き調査を行い、条件の整ったところから取り組みを行うというふうにこの計画段階ではされたところでございます。  現在は、東京都でそうした位置づけの上で調査中であると私どもは承知しておりまして、東京都の計画にはまだ具体的に位置づけられていない段階であるというふうに承知をしております。
  258. 大野由利子

    ○大野(由)分科員 それで、この調査がどのように、どこまで今進んでいるのか、またいつごろまでに調査結果がまとまるのかについて伺いたいと思います。
  259. 上田清司

    上田主査 この際、政府委員に申し上げますが、限られた時間ですので、御親切にたくさん御説明いただくのはありがたいのですが、質疑者の趣旨に沿って簡単にお願いいたします。
  260. 本田浩次

    ○本田政府委員 東京都の現在の段階では、平成年度に調査をするということで、調査委託先、調査内容の詳細を検討を行っているところで、現在調査には着手していないという状況にあるというふうにお聞きしております。
  261. 大野由利子

    ○大野(由)分科員 東京都はかつて、民営の地方卸売市場に対して、二重の設備投資を防止するため市場の整備等を行わないこと、また東京都が中央卸売市場を設置した場合には都に迷惑をかけずに入場することというような行政指導を過去に行っておりまして、その旨の同意書まで提出をしている、こういう経緯がございます。こういう経緯の中で、今まだ調査が行われていないというのはどうなっているのかな、このように思うわけです。  聞くところによりますと、これは、私が非公式にちょっと聞いたのでは、新たに設置する中央卸売市場は、公式には三つつくるという方針のままなんですが、三つじゃなくて、もう一つに絞っちゃおうというような声が非公式ではありますが一部出ている、こういうことも耳にしております。  私は農水省の見解を伺いたいと思うんですが、ある程度効率を上げるために合併して大規模にするということは必要かと思うんですが、しかし多摩地域全体で一つというと、これは大変な交通渋滞も起こします。また、消費者や小売商の仕入れに行く人にとっても、これは大変な不便を生ずるわけでございます。多摩地域は、御存じのように、東西の道路も、新青梅街道にしても甲州街道にしても、一日じゅう渋滞している。南北はもっともっとひどい。あかずの踏切等々がございまして、非常に交通のひどいところでございます。こういう中で一つに絞るなどというのは到底考えられない、そういうふうに思うわけです。  卸売市場法では、人口二十万人以上の市と都道府県が開設できるというようになっているようでございますが、農水省としては、どれぐらいの規模で、どういうふうにするのが望ましいと思っていらっしゃるのか、伺いたいと思います。
  262. 本田浩次

    ○本田政府委員 私どもとしては、いずれにいたしましても、長年の経緯と沿革のある話でございますので、現在、東京都で具体的な調査を行って、その調査に基づく計画ができてまいりました時点で、現行の卸売市場整備基本方針の趣旨に基づいて適切に対応していきたいというふうに考えているところでございます。
  263. 大野由利子

    ○大野(由)分科員 これは非常に大きな三多摩格差の一つではないか、何とかこれは改善をしてもらいたいと思います。  もう一つ、私は農水省予算の使い方でちょっとマクロな印象を持っているのですが、産地の設備充実に、少しでも新鮮なものを短時間で送れるようにということで非常に努力をされてまいりました。農道空港ということで、トラックで消費地の東京へ送るよりも飛行機を使って生産物を送るというふうなこともなさってこられまして、この農道空港は採算にも合わないということで非常に批判も多くて、新設するのはもうやめられた、こういう状況のようでございます。  そんなことよりも、この消費地でいまだに低温倉庫もない、屋根だけしかない、産地から送ってこられた農産物も箱積みして日の当たるところに置いてある、こういうひどい卸売市場でございまして、産地の人からは、低温倉庫のないような民営の老朽化した卸売市場には自分たちのつくった大事な農産物を送れない、このように言われている状況なのですね。  そういう状況の中で、私は、もっと川上から川中、川下は通産省の担当かもしれませんが、農水省というのは、やはり卸まではきっちりと、もっと責任を持つべきではないか、産地の川上ばかり設備投資して充実したけれども、その後が全然流れが詰まっているというか、今、本当に惨たんたる状況ではないか、このように思っているのです。  年間の市場整備に大体百億円ぐらいの予算だと伺っているのですが、大型プロジェクトも非常に多いです。この市場の整備ということに対してもっときちっと予算をとって、そして、産地の設備投資はかなり充実してきているはずです。そっちは大きく予算を削ってでも消費地の方に充てるべきではないか、予算の配分を今までと大きく変えて考え直すべきときが来ている、このように思うのですが、大臣の御所見を伺いたい、このように思います。
  264. 本田浩次

    ○本田政府委員 先生御指摘のとおり、中央卸売市場の整備でございますとか地方卸売市場の整備につきましては、特に中央につきましては国費の助成が行われて施設整備が行われる、それから、地方につきましては公設の地方卸売市場を中心に財政上の支援措置が講じられているところでございます。  卸売市場は、先ほど御説明しましたとおり、生鮮食品流通の中核的な流通施設でございますので、財政的には大変厳しい状況のもとでございますけれども、特に、平成年度以降、通常の予算要求のほかにも、公共投資重点化枠でございますとか生活関連重点化枠などにおきましても予算確保を図ってきているところでございまして、今後とも、所要の予算確保に努力をしていきたいというふうに考えているところでございます。
  265. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 消費地の流通対策は極めて重要な問題であろうと思っております。委員の御指摘に対しましては、ケース・バイ・ケースの問題もございますので、具体的な問題がございましたらぜひおっしゃっていただいて、勉強してみたいと思っております。
  266. 大野由利子

    ○大野(由)分科員 よろしくお願いをいたします。  それで、全国に民営の地方卸売市場がたくさんございます。今、全体の二〇%の公設、公営の中央卸売市場で取扱高は五〇%、市場数では二〇%、そこに非常に手厚い助成が行われているのですね。民営の地方卸売市場は、数は八〇%で取扱高は五〇%、中身の仕事は同じような仕事をしているわけですが、これに対しては農水省の助成というか支援は非常に薄い、こういう状況なのです。  全国の民営の地方卸売市場の人が、せめて公設、公営並みの固定資産税等の非課税化の実現というものをお願いしたい、こういう要望をしている、そういう状況でございますが、これについて伺いたい。またあわせて、それ以外に農水省はどういう支援をこの民営地方卸売市場の地位向上のために考えていらっしゃるのかを伺いたい、こう思います。
  267. 本田浩次

    ○本田政府委員 卸売市場につきましては、まさに、八十八の大都市の中央卸売市場と千五百を超える地方卸売市場があるわけでございますが、地域の流通拠点となるのが公設の地方卸売市場で、それぞれの商地域の流通の網の目の役割を果たすのが民設の地方卸売市場だということで、これらが全体のネットワークを構築している、こういう状況になっているところでございます。  こうした中で、公設の地方卸売市場につきましては、市町村などの公的主体によって開設されて管理監督されますと同時に、施設整備に対する財政上の助成措置も講じられているところでございます。一方、民設の地方卸売市場につきましては、民間主体の開設でありまして、比較的その役割が地域限定的であるということもありまして、支援措置としては、主として融資と税制によって対応しております。  融資につきましては、農林漁業金融公庫の卸売市場近代化資金などを設けているところでございます。  一方、税制につきましては、地価税でございますとか特別土地保有税の非課税措置など、他の例えばチェーンストアなどの集配センターなどの類似施設に比べまして優遇しているところでありますと同時に、固定資産税につきましては、平成年度の見直しにおいて軽減幅が若干圧縮されたわけですけれども、特例措置が講ぜられているところでございまして、私どもとしては、特段の負担軽減を図っているというふうに考えているところでございます。
  268. 大野由利子

    ○大野(由)分科員 よろしくお願いします。消費地の青果について、ぜひいろいろ御支援をお願いしたい、このように思っております。  諌早湾の干拓事業についてもちょっと伺いたかったのですが、もう時間がございませんので省略させていただきまして、中海の干拓問題について質問させていただきます。  諌早湾の干拓事業については、例の水門が閉じられましてから大変なマスコミの話題になっております。もっと早くにどうしてこの問題提起ができなかったのか、私も大変そういうじくじたる思いをしておりまして、この諌早湾の失敗を中海で繰り返してはならない、中海はまだ間に合う、今からしっかり検討委員会を設置していただいて、本当に納得のいく事業を進めるのか、また事業を取りやめるのか、その辺をしっかり詰めていただきたい、そういう思いでちょっと質問をさせていただきたい。  私も、ことし三月に中海の現地を視察をさせていただきまして、この事業は本当に無理があるな、これはやめるべきだというふうなことをいろいろ痛感して帰ってきたわけでございます。  簡潔にお答えいただきたいのですけれども、本庄工区の干拓の目的をちょっと答えていただきたいのです。
  269. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 諫早湾につきましては、これは失敗ではございませんで、昭和二十八年ごろから、洪水……(大野(由)分科員「もう時間がないので結構です」と呼ぶ)私どもは、既定方針どおり一地元の強い要望に沿って着実に進めてまいりたいと思っております。  それから、本庄工区につきましては、これは、平たんで生産性の高い農地造成を目的にして事業を開始したものでございますが、現在休止中で、昨年、地元知事さんから事業再開の御要望がございましたが、これにつきましては、平成年度から二年間、中立的な立場で農業振興または水産振興等の面からさまざまな調査を行いまして、その結果に基づいて今後の事業の取り扱いを決めてまいることにいたしております。
  270. 大野由利子

    ○大野(由)分科員 今、一番の目的は農業振興だろうと思うのですが、中海で完成済みの四工区の農地が、もう御存じだと思います、売れ残っております。中海の干拓農地、弓浜工区は実に八六・三%売れ残っているのですね。彦名工区は八三・五%農地が売れ残っている。いずれも周辺農地に比べて高く、売り渡しの障害になっている、そういう状況でございます。そういう中で、本庄工区の干拓を進めたって、需要がないというのは目に見えるようにわかるわけでございます。  農業振興と、もう一つ畜産振興というものがあるようですが、その中身を詳しく伺うと、和牛とか島根牛とか、そういう畜産らしいのですが、そういう畜産というのは、放牧するわけじゃありませんから、牛舎の中で飼うわけです。狭い場所しか要らないのですね。ですから、こんな千六百ヘクタールほどの大変な広い農地を必要としない、そういう状況でございます。これもまた、いずれだんだん干拓の目的が途中で変わってくるというようなことがあってはいけないのじゃないか、このように思うのですね。  米子市の崎津というところで、やはり干拓したところが、崎津工業団地が、なかなか進出企業がないものですから、今度、場外馬券売り場を誘致しようという計画があるようでございますが、そういうようにどんどん目的が変わってくる。  岩國哲人先生も、きょう、新日本海新聞に書いていらっしゃるのですが、市農工商じゃないか。市農工商の市というのは行政の市です。農は農業の農。干拓事業としてスタートする、しかし入植が進まない。だから工で、工業団地と名づけた。でも、工業団地にも進出企業がない。だから商で、最後は馬券売り場でも誘致しよう。市農工商と、どんどんその目的が変わってくる。  干拓の目的が途中で変わるようであれば、これはもう一回国会審議にかけて、予算委員会にかけて、皆さんの了解を得るべき筋のものであって、いつの間にか干拓の目的が少しずつ変わっていくというようなものであってはならない、このように思うわけです。  今おっしゃったように、本庄工区はどうなのでしょう。農業と畜産だけでこんな広大な土地が要ると思っていらっしゃるのでしょうか。
  271. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 先ほど御指摘の中海の完了地区でございますけれども、これは完了地区が今五工区ございますけれども、約七四%が周辺農家に売り渡されておりまして、その他の土地についても、約一五%が周辺農家に貸し付けられております。したがって、約九割の農地が有効利用されており、残りの農地についても現在鋭意売り渡し、貸し付け等の努力を行っており、九割が有効利用されているという状況にございます。  本庄工区につきましては、これは農業的利用、地域の御要望等によりますと、生産性の高い野菜等の園芸作物、それから牧草等の植えつけのために生産性の高い平たんな農地が欲しいという要望に基づいてこの計画は策定されたものでございますけれども、いずれにいたしましても、今後二年間の中立的な調査によってこの取り扱いは決定することにいたしております。
  272. 大野由利子

    ○大野(由)分科員 ぜひ今おっしゃったように中立的な調査にしていただきたい、このように思うのです。この中立性に非常に私は疑問があるものですから。  パイプを通して漁業振興にどれだけ役立つかどうかという調査になっているのですが、パイプを北部承水路のみ通すというのじゃ、これは私はおかしいのじゃないかと思うのですね。北部承水路だけじゃなくて、きちっと森山堤防とか大海崎堤防にも通すべきじゃないかと思いますし、パイプも直径二メーターということですが、外径なのか内径なのか、そういうところもちょっと伺いたい、このように思います。
  273. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 今のパイプの件でございますけれども、これは森山堤、大海崎堤にもパイプを通せというような御指摘かと思いますが、ここは毎日道路に利用されておりまして、約一万台ぐらいの車両が通行しております。学童の貴重な交通路となっておりまして、北部承水路堤についても道路利用計画がございます。これは地域住民の大変強い要望でございまして、これを開削するというのは強い反対があり、またパイプにいたしましても、これは森山、大海崎堤とも現在一万台の車両が通行いたしておりますので、これの工事については大変強い地元の反対がございますので、そのようなことはできないと思っております。  それから、パイプの方式にいたしましたのは、水産の専門家の御意見等によりますと、開削と同じ成果が上がるということからこういう工法を今検討いたしておりまして、この工法こよりまして試験の成果が上がるような方法、また地元の合意の得られるような方法を現在検討中でございます。
  274. 大野由利子

    ○大野(由)分科員 もう時間がないのですが、魚は暗いところは余り通らないものですから、細いパイプですと本当の魚の流通の調査には適しない、そういう状況がございます。ですから、内径なのか外径なのか、それによっても大きく違ってくるわけでございますので、この点につきましても、初めに干拓ありきじゃなくて、ぜひしっかりした中立の調査を行っていただきたい。あわせて、行政側、住民側、専門家が一緒になった本当の中立の検討委員会をしっかりやっていただきたい。  もう一つ、島根県が推進しようとしているのは、何でも、今まで国がかけたお金も、もしこの工事を中断すると島根県がかぶらなければいけない、だから事業を中止することができないのだということが推進派の意見の一つになっております。こういう心配もかけたままでは、事業は前へ進むしかないというふうになってしまうわけでございますので、この辺についてもきちっとした中立の調査結果が出て、中立のちゃんとした結果が出るようにお願いをしたい。最後に答弁をいただきたいと思います。
  275. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 ただいま御指摘の調査につきましては、与党三党の合意がございます。これに沿って中立的にかつ成果の上がるような調査を考えておりますので、また、このパイプにつきましても、これは魚の生息状況、水産の振興の点から、十分な成果が得られるような方式をとりたいと考えております。  なお、負担金の清算の問題につきましては、これは制度上、国と県とで協議することになっておりますので、もし二年後、仮にこれがそういった廃止、清算という形になりますれば、国、県の間で協議をいたすことになっておりますが、これについてはあくまで二年間のいろいろな立場からの調査、中立的な調査検討の結果を待ちたいと思っております。
  276. 大野由利子

    ○大野(由)分科員 ありがとうございました。  検討委員会は設置するということでよかったのですね。それだけ。
  277. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 検討委員会につきましては、水産の検討委員会、これは近々国と県の段階につくる予定でございますし、また全体の検討委員会についても、これは調査検討の結果、推移を待って、中立的な立場の委員会を設置する予定でございます。
  278. 大野由利子

    ○大野(由)分科員 ありがとうございました。
  279. 上田清司

    上田主査 これにて大野由利子さんの質疑は終了いたしました。  次回は、明二十七日午前九時から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十九分散会