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1997-06-10 第140回国会 衆議院 決算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月十日(火曜日)     午前九時三十三分開議 出席委員   委員長 草川 昭三君    理事 栗本慎一郎君 理事 高市 早苗君    理事 根本  匠君 理事 浜田 靖一君    理事 上田 清司君 理事 大口 善徳君    理事 辻  一彦君       熊谷 市雄君    河野 太郎君       佐藤  勉君    新藤 義孝君       滝   実君    原田 義昭君       柳本 卓治君    山口 泰明君       西村 章三君    生方 幸夫君       木島日出夫君    佐々木憲昭君       前田 武志君    武村 正義君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      土志田征一君         外務政務次官  高村 正彦君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    朝海 和夫君         外務省欧亜局長 浦部 和好君         外務省経済協力         局長      畠中  篤君         運輸省海上技術         安全局長    山本  孝君  委員外出席者         大蔵大臣官房審         議官      井川 紀道君         大蔵省主計局司         計課長     田頭 基典君         運輸省運輸政策         局次長     小幡 政人君         会計検査院事務         総局第一局長  深田 烝治君         参  考  人         (海外経済協力         基金総裁)   西垣  昭君         参  考  人         (海外経済協力         基金理事)   清川 佑二君         決算委員会調査         室長      天野  進君     ───────────── 委員の異動 六月十日  辞任         補欠選任   田邉 國男君     河野 太郎君   佐々木憲昭君     木島日出夫君 同日  辞任         補欠選任   河野 太郎君     田邊 國男君   木島日出夫君     佐々木憲昭君     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成年度一般会計歳入歳出決算  平成年度特別会計歳入歳出決算  平成年度国税収納金整理資金受払計算書  平成年度政府関係機関決算書  平成年度国有財産増減及び現在額総計算書  平成年度国有財産無償貸付状況計算書  平成年度一般会計歳入歳出決算  平成年度特別会計歳入歳出決算  平成年度国税収納金整理資金受払計算書  平成年度政府関係機関決算書  平成年度国有財産増減及び現在額総計算書  平成年度国有財産無償貸付状況計算書      ────◇─────
  2. 草川昭三

    草川委員長 これより会議を開きます。  平成年度決算外二件及び平成年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、各件に関し、ODA問題等について重点事項審査を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河野太郎君。
  3. 河野太郎

    河野(太)委員 自由民主党の河野太郎でございます。  ODAに関係しました諸件について、大蔵省並び外務省にお伺いをさせていただきたいと思います。  来年度以降、このODA関係予算は、財政歳出削減ということから一〇%程度削減をしていくということでございますので、今までどういうような形でこれが使われていたのかということを少し教えていただいて、これからの参考にさせていただきたいと思います。  まず、ODAの中で大きな額を占めているものの中に、国際金融機関への拠出金というものがあると思います。世銀あるいはアジア開発銀行その他に対しまして、義務的に出しているもの、あるいは任意拠出金を出しているもの等あると思いますが、それぞれの国際開発金融機関に対しまして、この該当年次について、日本政府はそれぞれ任意拠出金あるいは補充拠出金と呼ばれているものをどの程度拠出していたのかをまずお伺いさせていただきたいと思います。
  4. 井川紀道

    井川説明員 お答えいたします。  ただいまの御質問の中で、国際金融機関に対しまして我が国が、任意といいますかボランタリー拠出する金額はどのくらいかという御質問がございましたので、お答えしたいと思います。  世界銀行あるいはアジア開発銀行等国際金融機関に対しまして、日本特別基金先方ではトラストファンドと呼んでおりますけれども、これによって拠出する金額は、九五年度が三百七十二億円、九六年度が三百七十七億円、そして九七年度が三百六十七億円になっております。  これ以外に、義務的という御指摘を受けましたけれども、多国間の増資交渉によります合意に基づく財源補充がございまして、これに基づきます拠出金につきましては、現金によるものが九五年度が四十九億円、九六年度が五億円、九七年度が五十億円でございます。また、これ以外に出資国債等による出資部分がございまして、これにつきましては九五年度に二千八百六十二億円、九六年度には三百六十九億円、九七年度には二千三百八十五億円となっております。
  5. 河野太郎

    河野(太)委員 そのボランタリー拠出した分について、どの開発機関に幾ら拠出したのか、内容を細かく教えていただきたいと思います。
  6. 井川紀道

    井川説明員 お答えいたします。  九七年度平成年度予算額について申し上げたいと思います。  アジア開発銀行に対しましては百五億円、それから世界銀行国際復興開発銀行と呼ばれていますけれども世界銀行に対しましては、四捨五入いたしますけれども、百九十六億円の拠出を行っております。  それ以外のところについて見ますと、ラ米対象といたします米州開発銀行に対する拠出金といたしまして、約二十三億円を予算措置いたしております。
  7. 河野太郎

    河野(太)委員 ここで言われている任意拠出金ボランタリー拠出金というのは、すべてジャパンファンドあるいはジャパン・スペシャルファンドと呼ばれているものと理解してよろしいでしょうか。
  8. 井川紀道

    井川説明員 基本的には、大宗は日本特別基金でございます。ごく例外的でございますけれどもアジア開発銀行研究あるいは研修のためのADBインスティチュートというのを設立することにいたしておりますけれども、この分が昨年度で十五億円、今年度で二十億円の予算措置をいたしております。それ以外のものにつきましては、おおむね日本特別基金ということでございます。
  9. 河野太郎

    河野(太)委員 このジャパンファンドあるいはジャパン・スペシャルファンドと言われているものがどういうものなのか、その性格と、どういうことに主に使われているのかということを御説明いただきたいと思います。
  10. 井川紀道

    井川説明員 日本特別基金につきましてどういうものに使われているかと申し上げますと、沿革的に申し上げてもそうでございますし、今でも一番大きな部分を占めておりますのは、世界銀行を初めといたします国際開発金融機関プロジェクトの立案、設計あるいはマスタープランの作成等基礎調査に対する技術支援、これが主役でございます。  世界銀行あるいはアジア開発銀行が、効率的、効果的な開発支援を行っていくためには、何といいましても、その川上と申しますか、プロジェクト形成段階できちっとした調査、準備を整えるということが最も望まれるわけでございます。それから、あとこういったものを通じまして、日本が特に力を入れていきたい地域あるいは分野にこれらの機関融資活動を、誘導すると申しますか奨励する、こういったような意味合いがあるかと思います。  それから二番目の柱といたしまして、主として途上国政府職員対象といたしました奨学金がございます。  それから三番目といたしまして、こういった機関日本人コンサルタントの雇用を促進する目的でのコンサルタントトラストファンドがございます。  それ以外のところを申し上げますと、日本研究者あるいは世銀等機関交流等目的といたしました共同研究支援のために使われております。  よく開発援助担当者が言及いたしますのは、世界銀行で「東アジアの奇跡」レポートをまとめたと。これが、一言で申しますと、日本流あるいはアジア流開発考え方世銀に植えつける結果になったと高く評価されているところではないかと思います。
  11. 河野太郎

    河野(太)委員 この世銀あるいはアジ銀を初めとする国際開発金融機関ジャパンファンドですが、これを使う使い方を決めるのはだれなのか。その決定権は各金融機関にあるのか、それとも日本政府使い方に、決定に関与することができるのでしょうか。
  12. 井川紀道

    井川説明員 これは日本拠出するお金でございますから、使途につきましては、日本側国際開発金融機関との間であらかじめ、こういった用途に使ってほしい、こういう分野にこのくらい金額を充ててほしい、こういう話し合いをして、そこでの合意に基づいてお金が使われておるわけでございます。  ただ、個別具体的な内容につきましては、各年度ごとにこれらの国際金融機関事務局の方から、世銀の場合ですと半年ごと、あるいはアジア開発銀行の場合ですと四半期ごとに、使途につきましての取り決めといいますか了解に基づきまして、こういうものに使いたいという申し出がございます。それを私ども理事室を通じまして受け取りまして、大蔵省において検討の上、最終的に配分する金額決定していただく、こういう手続を踏んでおります。
  13. 河野太郎

    河野(太)委員 このジャパン・スペシャルファンドが、日本の力を入れている地域に誘導をする、あるいは途上国政府職員に対する奨学金を出す、そういった目的が含まれているということであれば、開発金融機関日本政府が、この方面に、あるいはこういう目的でという協議を一々しなければいけないこのジャパン・スペシャルファンドというものを使うよりも、ダイレクトに各国日本政府が、それじゃその国の政府職員奨学金に幾ら出しましょうという交渉をやってしまう、あるいは二国間のODA日本の力の入れている地域にふやす、そういう直接的なやり方の方が、アドミニストレーションの経費もかかりませんし、むしろダイレクトに日本意思を反映させることができる、そういうことが可能なのではないかと思うのですが、わざわざこういうジャパン・スペシャルファンドというものをつくって、そこを経由させて、しかも日本政策に従ってこの金を使うという、入り組んだ方法をとっているようにも思えるのですが、この理由はどういうことでしょうか。
  14. 井川紀道

    井川説明員 各国とも、ODAにつきましては、バイでやる部分マルチでやる部分がございます。日本の場合には、最近の年度をとりますと、平均いたしましてODAの中の二八%がマルチ資金でございます。  二国間でやった方がより効率的というところもあるかとは思いますけれどもマルチ機関の場合には、中立性を保てる、あるいは環境、食糧、人口問題といったグローバルな問題に対してすぐれた知見を有する、世界銀行の場合ですと六千人程度職員がいて日ごろから研さんを積んでいるわけですが、こういうノウハウなり知識を十分活用しながら全体としてバランスのとれたODAを実施していく、こういう中で、アジ銀あるいは世界銀行に対する日本特別基金が有効に使われるということではないかと思っております。各機関にはそれぞれ地域に密着したノウハウなり知見がございますので、こういったものを活用しながら、全体として日本ODA効率性あるいは効果を高めていくことではないかと思っております。
  15. 河野太郎

    河野(太)委員 今のお話の中に、マルチ機関中立性が高いというようなお話がございましたが、日本の国家のお金を使う、国策を反映させるためには、中立性云々の必要が本当にあるのか。むしろ中立てなくとも、日本のやりたい政策を強引に進める、日本の国益に合致する方向へ進めるべきであって、中立性云々ということが本当にこの際必要なのかどうかというのは、少し疑問なところもございます。  もう一つマルチ機関は大変高い知識、見識を持っているんだというお話でございました。MDB国際開発金融機関、その他例えば国連関係機関等あると思いますが、先進諸外国を見ておりますと、国連等機関に対する拠出金の方がMDBに対する拠出金よりも多くなっております。ところが、日本マルチに対するお金使い方を見ておりますと、先ほど二八%がマルチというお話がございましたが、二二%がMDB、わずか六%が国連等機関でございます。もし高度な知見を有するところにお金を出すのだということであれば、金融機関に出すよりも国連に付随する専門機関お金を出していくということが、その知見を有するところへ出すのだといういわば筋であるように思いますが、日本だけ先進国の中で際立ってMDBに出す拠出金の比率が高いというのは、一体どういうことなんでしょうか。それと先ほど先進的な知見のあるところに出すんだということは、少し矛盾しているような気がいたしますが。
  16. 井川紀道

    井川説明員 お答えいたします。  先ほど来から、世界銀行あるいはアジア開発銀行、それぞれ知見のあるところに一定拠出をする、あるいは増資に応じていくということが全体として日本ODA効率あるいは効果あるものたらしめるという話をさせていただきました。  もう一つ、こういった国際開発金融機関の大きなメリットとして最近特に注目されておりますのは、世界的に見てどうもODA流れというのは横ばいないし微増の傾向である、こういう中で、民間資金流入を促さなければいけないという視点でございます。ODAが過去六年間横ばいの中、民間資金途上国に五倍ぐらいふえております。こういった中で、世銀あるいはアジア開発銀行の持っています、マルチ機関ならでは触媒効果といいますか、民間投資促進効果と申しますか、こういったところが非常に注目されております。  それからもう一つ世界銀行あるいはアジア開発銀行の場合に、最近これも強調されておりますけれども、その国に対しまして国別戦略をきちっとつくるということで、非常に理にかなったといいますか、効率性の高い国別戦略を考えた上で、セクターごとにどのような融資の配分をするかというようなことが非常に力説されております。  もちろん、国別戦略につきましては、とりわけアジア主要国につきまして我が国外務省を初め各実施機関も力を入れてやってきているところでございますけれども先ほど申しましたように、日本ODAに携わっている人員が少ないということが常日ごろ言われてきましたけれども、全世界をカバーする、人数的に見ましてもすぐれた専門家を多数抱える、こういった機関活動を積極的に生かしていく、日本が積極的な貢献をすることによって発言力をつけていくということが、むしろ全体として、日本流考え方世界銀行あるいはアジア開発銀行の日常の業務運営に生かしてもらえる結果になるかと思っております。
  17. 河野太郎

    河野(太)委員 途上国に対する資金流入触媒効果というようなお話がございましたが、そういうことであれば、投資に対する保険ですとか、そういった民間資金流入させる枠組みを守っていく機関にもっともっとお金を導入すべきではないか、開発銀行そのものお金を出すよりも、むしろそういうフレームワークをつくっていくことが必要なのではないかと思います。どうも資金流入政策流れが合致しているようになかなか思えないのです。  もう一つアジア開発銀行ジャパン・スペシャルファンドについて少しお伺いをさせていただきたいと思います。  ジャパン・スペシャルファンド中身を見ておりますと、随分とアジ銀のこのJSFに対して拠出をしております。毎年百億円近いお金を出して、その総額は最近の五カ年間で大体五百億円、これがスタートいたしました一九八八年から見ますと、六百億円を超える額がございます。  ところが、この中で実際に使われている、あるいはコミットされている金額は非常に低いことになっております。最近の五年間の額だけを見ても七割程度しか使われていない。三割はアジ銀の中で遊んでいる。八八年度からのトータルの数字アジア開発銀行のところに載っておりますが、これを見ますと、ほぼ半分程度は使われていないというのが実情だと思います。こうした資金を遊ばせているようなところに引き続き拠出を続けているのはいかがなものかというのが一つ。  日本とこのアジア開発銀行の間に取り決めがありまして、余っているお金投資に回しましょう、この投資から上がる収益の一部はアジア開発銀行の直接経費に流用してもいいという、日本アジア開発銀行取り決めがあるということになっております。そうすると、このジャパン・スペシャルファンドというのはアジ銀の直接経費をサポートするためのお金なのかということにもなると思うのですが、一体どういう直接経費をこの投資収益負担をしているのか。  それから、これだけのお金JSFの中に寝ているわけでございますが、これについて大蔵省はどのようにお考えなのかということをお伺いさせていただきたいと思います。
  18. 井川紀道

    井川説明員 ただいま議員の方から御指摘があった数字はそのとおりでございまして、アジア開発銀行の場合には、五年間で約五百億円弱のコミットをいたしておりますが、その中で現実に使用されたものが三百五十億円程度でございます。  これはなぜかと申しますと、一つには、既に承認されていますがいまだ実際に、ディスバースといいますか支出が起こっていない部分がかなりございます。それから、プロジェクト性格によっては二年、三年かかるものがございます。この場合に、三年にわたって技術支援が必要になるわけでございますけれども、とりあえず一年分につきまして承認あるいは支出が行われている、こういうものがございます。  ただ、議員指摘のように、アジア開発銀行の場合には、拠出当初、消化がなかなか追いつかなかったという点もございます。ただ、最近は非常に消化が進んできております。  それから、二番目に御指摘の、この収益部分が直接の経費に使われているのではないか、どういうことでこういうふうになっているのだという御指摘でございます。これにつきましては、中身を調べさせていただきたいと思いますが、私の理解するところでは、こういったジャパン・スペシャルファンド、こういう技術支援使用につきましては、日本ファンド使用に絡む人件費といいますか、あるいは直接的な費用につきましても拠出する側の方で出しているという慣行があるかと思います。例えば、アジア開発銀行がUNDPから、こういったトラストファンドといいますか、拠出を受ける場合には、一定割合人件費相当部分先方負担してもらうという取り決めになっております。  この点は、また後日調べまして御報告させていただきたいと思います。
  19. 河野太郎

    河野(太)委員 その点は後日御回答いただければと思います。  もう一つIDAがございますが、先般のIDA増資、第十一次増資だったと思いますが、その中で、アメリカがこれまでIDAに対して、分担金を決められていたにもかかわらず出資をしてこなかった、増資をしてこなかったという事実がございます。先般のIDA増資の際に、アメリカIDA増資初年度分を免除する、そのかわりこれまでの払い残しを全部払えというような取り決めができて、アメリカは第十一次増資初年度分を一切払わなかったということがあるかと思います。アメリカは今、IDAだけではなくて、例えば国連に対する分担金も支払っていない部分がかなりあると思いますが、国連の方のアメリカ分担金取り扱いとこのIDAアメリカ増資分取り扱いは、かなりリンクするところがあるのではないかと思います。  IDAアメリカ拠出金初年度分を棒引きした、その際に、大蔵省外務省の間でどういう話し合いがあって、IDAへのアメリカ拠出金を一年分削除することに日本が同意したのか、また、それが国連アメリカ分担金の出す出さないということにどういう影響があるという御判断があったのか、大蔵省の御見解外務省の御見解をお伺いしたいと思います。
  20. 井川紀道

    井川説明員 議員指摘のとおり、第二世銀と言われます国際開発協会、この増資が昨年まとまっておりますけれども、三年間を対象といたしまして、初年度につきましては米国は参加いたしておりません。  これにつきましては、暫定信託基金と呼ばれておりまして、アメリカは参加しない、そのかわりアメリカは、この暫定信託基金にかかわるプロジェクト入札から締め出されるといいますか、入札には参加できない、こういう取り決めになっております。  この間の交渉につきましては、アメリカマルチ機関に対してなかなか支払いに応じない、アリアが生じているという問題は、主要国の大きな懸案事でございまして、こういったことにつきましても、私ども、折に触れて外務省にもお話をしていたかと思います。正式には、増資交渉がまとまりまして、各国負担割合総務会決定されますけれども、この間の手続といたしまして、私どもは「外務省とも協議した上、総務投票を行っております。  ただ、アメリカアリアの問題につきましては、国際開発金融機関を担当いたしておりますグループの中でも、アメリカに是正を求める、圧力をかけるということをたびたびいたしまして、その成果でもあったかと思いますけれども、ことしの二月にクリントン大統領一般教書演説を行いまして、米国は、世銀等国際金融機関や、それからもう一つ改革されつつある国連に対する延滞、いわゆるアリアでございますけれども延滞は支払わなければならないということを、一般教書の中で機関名に言及いたしまして発言いたしております。  以上でございます。
  21. 畠中篤

    畠中(篤)政府委員 国連の方の分担金アメリカの未払いの問題は、大変大きな問題として国連でいろいろ議論が進められておりますけれども、私ども日本の方も、しかるべくハイレベルでアメリカに対して問題提起をしております。  詳細は私どもは主管でございませんので承知しておりませんけれども先ほど大蔵省からも説明がありましたように、最近は、国連改革状況を見ながらやはり払うべきところは払う方向検討が進められておる。これは、一つは、国連のいろいろな機関改革が進みつつありますけれども、それと連携させながら議論が進められておると承知しております。
  22. 河野太郎

    河野(太)委員 大蔵省の方から、IDA総務投票の前に外務省と話をしたということでございますが、総務投票の直前に外務省に話をして外務省がこれはだめだと言ったところで、今まで日本が加わって枠組みを決めてきて、それの最終決定の前に日本が前言を翻して、やはりこの枠組みは受け入れられないというような投票総務会で行うとすれば、逆に、今度は日本が信用を失うことになるわけで、外務省あるいは関係省庁にその時点大蔵省が話を持ちかけても、その時点決定が覆るということは事実上なしのではないでしょうか。そうすると、それは、外交二元化で行っていることになるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  23. 井川紀道

    井川説明員 アメリカが、国連あるいは世界銀行に対して約束どおり支払いを行っていない、それが過去たまっているものですから新しい増資にはなかなか応じない、結果的に第二世銀の場合に一年目に穴があいてしまった、こういうような状況につきましては、こういう問題でいろいろ頭を抱えているというような話はいろいろな機会に、正式にひざ詰め談判ということではございませんけれども外務省の方にも、私ども折に触れてお話ししていると思いますし、いろいろな情報交換の場もございます。  こういった意味で、正式に合い議とか協議ということではないかとは思いますけれども外務省とは、できるだけ多くの問題につきまして意思疎通を行っているところでございます。
  24. 河野太郎

    河野(太)委員 今、大蔵省からそういったお答えをいただきましたが、外務省はそう思われておりますでしょうか。
  25. 畠中篤

    畠中(篤)政府委員 我が国ODAをめぐります意思決定は政府として統一的にされるべきだということを考えておりまして、今後とも、開発金融機関につきます意思決定につきましても、大蔵省との情報交換意思疎通をよくしてまいりたい、そう思っております。
  26. 河野太郎

    河野(太)委員 外務省は、情報交換が今のレベルで十分だとお考えでしょうか。
  27. 畠中篤

    畠中(篤)政府委員 率直に申しまして、改善すべき点はあろうかと思っております。
  28. 河野太郎

    河野(太)委員 質疑の時間が残り少なくなってまいりましたので、最後に一つだけお伺いをさせていただいて、終わりにしたいと思います。  世銀に関しまして、これまで、歴代総裁はアメリカが輩出しておりますが、分担金負担していない国が総裁を独占するということはいかがなものかと思います。何も日本がとるべきだということを主張するつもりはございませんが、むしろこの際、次の総裁はアメリカ以外の国から出すことを考えてもいいのではないかと思います。大蔵省並び外務省の御見解はいかがでございましょうか。
  29. 井川紀道

    井川説明員 大蔵省といたしましても、アメリカ国連にしろあるいは世界銀行にしろ、こういつた重要な国際機関に対する拠出を、渋るというかアリアとして払っていない、こういうことを続けている限り、例えば、一般の投票権のシェア、こういうものも下げろという議論が出てまいりますし、あるいはシニアな人事、世界銀行では総裁がおりますしアジア開発銀行では副総裁がおりますが、こういうところの大事にもやがては影響してくるよ、こういったような話は折に触れていたしております。  きょう先生の方からそういう御指摘があったということをも、何らかの形で伝えたいと思っております。
  30. 畠中篤

    畠中(篤)政府委員 アメリカ開発問題に対します関与の仕方につきましては、先生御指摘のように、若干好ましくないような面もございますけれども、やはり開発問題を考えてまいりますときに、アメリカの強い関与を今後とも引き出していくということは、一つ重要なことだと考えております。  そういうことと、それから各機関の長をどういうふうに選んでまいりますかということにつきましては、いろいろな要素を考えながら今後判断していくべき問題かと思っております。
  31. 河野太郎

    河野(太)委員 時間になりましたので、ここで終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  32. 草川昭三

    草川委員長 大蔵省井川議官にちょっとお願いがあります。本日はODAの集中でございますので、先ほど河野太郎委員質問に対して後刻調査をしてお答えしたいということについては、各委員にもわかるように後刻報告をお願いを申し上げておきます。  次に、上田清司君。
  33. 上田清司

    ○上田(清)委員 質疑の前に、たまたま今回、日程上次官対応ということになりましたが、確かに大物次官ではありますが、決算委員会の慣例になってもいけませんので、委員長並びに与党におかれましては、決算委員会の重要性と権威を守るためにも、このことはきちんと今後の委員会並びに理事会の中で引き継ぎ事項として約束していただきたいことを、まず委員長にお願いを申し上げます。
  34. 草川昭三

    草川委員長 よくわかりました。十分また理事会で相談の上 対処したいと思します。
  35. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございます。  それでは早速ですけれども、さきに私、二月六日の予算委員会、あるいは三月十二日の大蔵委員会で、ODA絡みのプロジェクトについていささか質疑をしております。また、参議院で、外務委員会で高野博師参議院議員が同様の趣旨に沿った形で質疑を行わせていただいておりますので、その件について御質問をまずさせていただきたいと思います。  特に、私が質問しなかった、日盛産業にかかわる中国養鰻事業の第四次で十億五千万の融資資金が回収困難に陥ってしまったということについて、これは国民の税金をお預かりしてODAを推進していくという立場からすると極めて残念なことでございますので、まず、この十億五千万をなぜ回収ができなかったのか、なぜそういう形になったのか、お伺いしたいと思います。
  36. 西垣昭

    ○西垣参考人 お答えいたします。  中国の養鰻事業に対する案件、私ども海外投融資と申しておりますが、今回収につきまして大変苦労しております第四次も含めまして、四回行っております。  このいずれもが、日本の日盛産業という会社が中心になってやっている事業でございます。一次から三次までの分につきましては、日盛産業が経営が破綻したために、その後、シラスの買い付け資金が十分でないとかいろいろな事情がありまして必ずしも事業はうまくいっておりませんが、資金の回収は全部終わりまして、三件とも保証人等から回収をしたところでございます。  四番目の柏塘事業につきましては、前三件と同じように慎重に審査をした上で融資決定したわけでございますが、融資を行った後、その工事が完全に終わる前に日盛産業の経営が破綻をいたしまして、その事業が進まない、こういうような状況になりました。現在、我々としては、関係者が破綻をしたからといって直ちに回収というのではなくて、何とかその事業ができるように、相手方とも相談をし、関係者とも相談をし、相当の努力をしたわけでございますが、それがうまくいかなかったということもございまして、回収にこれから専念しようということでいろいろやっているところでございます。まことに残念でございます。
  37. 上田清司

    ○上田(清)委員 今回の第四次の柏塘養鰻事業に関しては、今までは、日盛産業に一度資金融資して、そして日盛産業を通じて現地法人に運転資金を貸し付けていくというような、そういう形をとった嫌いがあったと思いますが、今度は現地法人にそのまま融資をする、そしてその保証に日盛産業が立つという形をとっております。  日盛産業が極めて財務内容が悪化しつつある中で、そういう保証会社としてなり得たのかという疑念が私にはございますし、なおかつ、このプロジェクトにも中国銀行の保証をつけておられたわけでございますが、保証状こそ取得されましたけれども、まさしく有効条件を満たさないままでしたので、結局この中国銀行の保証状は意味をなさないものとして今回のプロジェクトは終わっていますから、前回の一、二、三と比べて──一、二、三も破綻したわけですけれども、たまたま各銀行が保証しておりましたので資金だけは回収できたという、そういう経緯がございますから、私から見れば、財務内容が悪化した日盛産業を保証につける、しかもやはり中国の銀行そのものも状況からしてどうも臭い、したがって条件をつけて、条件を満たさなければこれは有効でないという形をとっておった経緯があると思っておりますが、この点については、総裁、いかがですか。
  38. 西垣昭

    ○西垣参考人 先ほども申しましたように、この第四件につきましての貸し付けを決定いたしましたときは、日盛産業は現に事業をやっておりまして、私どもはそんな危険な状態であるというふうには思っていなかったわけでございます。  それから、貸し付けに当たりましては、必要な担保をとるということで、中国銀行の保証を取りつけるということを前提にいたしましてこの貸し付けを決定したわけでございます。  ただ、残念なことに、実際に資金を相手方、借入人に渡したときにはその保証状がとられてなかった、これはまことに遺憾でございますが、そういう事情がございまして、今回収に苦労している、本当に残念でございます。
  39. 上田清司

    ○上田(清)委員 なぜ保証状がとれなかったんでしょうか。
  40. 西垣昭

    ○西垣参考人 基金の事務分掌、これは内部規定でございますが、資金を支払うときは、当該部課が責任を持って保証状その他の担保が確実であるかどうかということをチェックをした上で、資金を支払う部局に対して支払ってくれるようにという連絡をするわけでございます。ところが、たまたま本件につきましては、相手方が事業を急いでいるという事情を尊重したのだと思います。それから、中国銀行から保証状が必ずとれます、北京の政府あるいは計画委員会からの手続がおくれているけれども必ずとれますというふうなことを言われて、それを信用して出してしまった、保証状が到着するのがおくれたということでございます。  そういう事情でありまして、私どももびっくりしたのでございますが、保証状が来る前に資金流れていったということが事実でございます。
  41. 上田清司

    ○上田(清)委員 それではおかしいじゃないですか。普通の貸し借りで、保証状が後で届きますからお金を貸してくださいと言って貸す銀行なんかないですよ、そういう金融機関は。これは重大なミスではありませんか。  OECFが日盛産業の保証をとったのが九四年三月三十日、中国銀行の保証状を取得したのが六月十三日、このときには中国銀行は有効条件をつけていましたから、実態的にはこの保証状も有効ではなかったわけですよ。いわんや、今総裁のお話しされたように、後で届くから、事業を急いでいるから、ぽんとお金を出しましたというような話で世の中通りますか。これは重大な責任ですよ。御返事ください。
  42. 西垣昭

    ○西垣参考人 本件につきましては、私どももびっくりしているような扱いがなされたということでございまして、委員が言われるように、普通ならこんなことは起きなかったはずだ、そのとおりだと思います。
  43. 上田清司

    ○上田(清)委員 では、総裁、内部について、この案件が出てきて、それなりの部署、部課、それぞれラインがあって、最後に役員内で案件処理をされたと思うのですが、それについての内部でのきちっとした処分なりなんなり、やっていらっしゃるのですか。
  44. 西垣昭

    ○西垣参考人 先ほどから申しましたように、貸し付けを決定したときの処理としては、私どもは内部で検討をし、こういう種類の案件につきましては、担当部局、関係部局と合い議をしながら、さらに役員のところまで上げて稟議書決裁をして決定をするわけでございますが、十分な手続を経ているわけでございます。  それから、続きまして、さっきも申し上げましたが、資金を支払うときは、これは事実行為の確認でございますので、担当部の判断で確認が行われれば、資金を支払うところへそういう連絡をするということで処理がされたわけです。  しかし、きちっとやっているかという点につきましてお答えいたしますと、私どもはそれを調べつつ、何とかこの事業が現地においては、そういう不測の事態が起きたにもかかわらずうまくいくように、これは相手国の市のいわば法人がかんでいる事業でもありますし、国際協力の観点からも、直ちに回収するというのではなくて、その事業が何とかうまく立ち行くようにということも考えながらいろいろと対策を講じた しかしそれがうまくいかなかった。残念ながらうまくいかない、今もうまくいくという見通しが立たないわけでございます。  そこで、今、回収に当たっている。回収に当たる回収の仕方としては、相手方に直ちに弁済するように督促する、それから保証人等についても保証の実行を求める、こういうことをしているわけでございます。  さらに、どうしてこういうことが起きたかということにつきましても事実を究明しなければならないということで、検査院にも御報告をし、それから主務官庁である経済企画庁にも御報告しまして、検査院の検査に協力しつつ、私どもも事実を少しでも明らかにしていきたいということで努力をしているところであります。  その事実関係が明らかになったところで、私どもとしては責任問題についてもはっきりさせる必要があるだろう、こういうふうに思っております。
  45. 上田清司

    ○上田(清)委員 必ずしも私の質問に対してはお答えになっていないような気がいたします。  問題は、先ほど、どうしてこんなになったか驚いたと、まさしく、いみじくも総裁が申されましたように、本来ならば保証状をとって貸し付けるというのが普通なんですね。相手側がおくれているからといって安易に貸し付けてはいけない。事実、一次、二次、三次、破綻したけれども、それぞれ保証をとっていたので回収ができて、まあもちろん、相手側銀行に迷惑をかけて、どっちがよかったかわかりません、ゼロサムの世界ですから。逆に日本の信用を落としたかもしれませんけれども。それはそれとして、帳じりだけは合った。  今回に関して言えば、保証状を取りつけない前に貸し付けたというところが問題なんですね。この点は大変な、事務的なミスという問題じゃなくて、基本的なセオリーがあるわけでしょう、貸し付けに。それを無視されているわけじゃないですか。なぜ無視ができたのですか、それは。国際交流。それもいいでしょう。そういう話だったら山ほどありますよ。  日盛産業という一つの私企業の交流ですよ、これは。極めて個人的な私企業の利益追求に対して、しかし海外に対する技術移転やそういうさまざまな効果を考えて、それから基金としての立場からすれば、若干リスクがあってもこれから発展可能なさまざまな海外の動きに対しても勇気を持ってあえて育てる意味で出されるということですから、それはそれでいいのです、失敗しても。しかし、失敗しても最小限度の形をとるためにいろいろなセオリーがあるのに、なぜセオリーが無視されて、保証状が後になって来たというのです か。この点については、明確に御答弁されていませんよ。
  46. 西垣昭

    ○西垣参考人 先ほども申しましたように、まことに意外な扱いがなされた、我々のルールにも反する扱いがなされた、なぜそうなったのかという点を明らかにしたいと思って、私どもも努力しております。そして、この点につきましては、会計検査院にも、監督官庁にも隠し立てをしないで報告をしながら事実の究明に努めているところであります。
  47. 上田清司

    ○上田(清)委員 事実解明もいいのですけれども、貸し付けられたのは九四年の段階ですから、融資決定されたのは。それで六月の時点で保証状。もう九四年からの話で、しかも、この日盛産業関係は九五年の十一月に破産宣告を一回やっているわけですから、もうあれから今日まで二年、三年たっていて、今ごろ事実の解明なんて言って、そんなのんきなことを言っていいのですか。国民はそういうことでは満足しませんよ。  個人商店でやってない、大変優秀な方々がいらっしゃる海外経済協力基金で、そのときの手違いを今解明しておりますなんて、そんなばかな話がありますか。どういう手違いがあったのか今すぐ出してくださいよ。言わなければもう審議できないよ。
  48. 西垣昭

    ○西垣参考人 私も、極力早くということで部下も督励して事実究明に努めてきたつもりでおります。  ただ、先ほども申しましたように、この事業は経済協力事業でありまして、広東省の中国法人がかんでいる話でもあります。しかも、農民に雇用機会を与える、養鰻を通じて輸出もふえる、これがうまくいくならば、日盛産業が仮に経営が破綻してもそれなりの効果が上がるということもありまして、相手方との話に随分時間がかかってしまったということはまことに残念でありますけれども、事実はそういうことであります。  そして、それがうまくいく見通しが立たなくなってきたところで、これはもう事業がどうなろうと回収に努めなくてはいけないということで、その事実究明にかかってきているわけでありますが、これはもう本当に非難されても、私もある程度同感でありますので、時間がかかり過ぎてはいかぬな、こういうことであります。  ただ、今検査院も検査に入っておられますので、検査院の検査の前に我々が勝手に結論を出してしまうのもいかがかな、検査院の検査と並行して私どもも実態究明の作業を進めていくのがよろしいのじゃないかな、しかも、おくれるおくれるということでありますけれども、それがおくれることによって実損が広がるという心配もまずないわけでありまして、そういうタイミングを考えながら、とにかく隠し立てをしないで事実を明らかにしていきたい、そういうふうに思っております。
  49. 上田清司

    ○上田(清)委員 全然答えになっていないし、検査院が今検査しているので並行して、先走るのはいかがなものかなんというような妙なことを言っておられますけれども、これは内部の問題なんですから、まずは内部でさっと処理をしていい問題なんです。全然論点が違うことを言っておられますよ。  それでは経済企画庁、このことに関してどういう御判断をされているのですか。今の質疑を聞いた上で、きちっと答弁してください。
  50. 土志田征一

    ○土志田政府委員 お答えを申し上げます。  既に、今御議論いただいております柏塘事業について、貸付資金でございますけれども、現下の客観情勢にかんがみまして十億五千万円全額の回収は困難な状況にあるというふうに、海外経済協力基金から報告を受けているところでございます。  私どもといたしましても、第一次からの全体の事業につきまして九五年十一月に問題が生じているという報告を受けたわけでございます。その後、既に総裁からもお答えがありましたけれども、まず事業実施に向けた再建努力に全力を注いでほしい、それから、あわせて債権保全策を速やかに検討するということ、さらに再発防止策を強化してほしい、こういったことを指示してきたところでございます。  柏塘事業につきましては、今お話がございましたように、その経緯についてさらに内部で調査をしているということでございますので、経済企画庁といたしましても、その結果に応じて報告を受けて、適切な指導をしてまいりたいというふうに考えております。
  51. 上田清司

    ○上田(清)委員 そういうありきたりの答弁じゃ、だめ。中国の銀行の保証状をとらずに融資したということの問題について私はずっと今総裁と論議していたのだから。監督官庁としてどうしたのですか、それは。
  52. 土志田征一

    ○土志田政府委員 お答えを申し上げます。  その点につきましては、その経緯について基金の内部できちんと調査をするということでございますので、それを受けて適切に指導してまいりたいというふうに考えております。
  53. 上田清司

    ○上田(清)委員 今意見を聞いておりますのは、保証状をつけずに貸し付けをやったことの行為について是なのか非なのかということを聞いているのですよ。
  54. 土志田征一

    ○土志田政府委員 お答えをいたします。  その経緯についてそれぞれ詳しい事情を聞いてまいりませんと 一般論として是非ということはないと思っております。ただ、実際の結果から見ると私どもから見ましても残念なことであるというふうに思っておりますので、十分調査をして、それに応じて適切に指導してまいりたいというふうに考えております。
  55. 上田清司

    ○上田(清)委員 局長、土志田局長もこれは重大な罪があるのですよ、監督官庁として。保証状もつけずに貸し付けを先にやって、後で出しますからと言ってそれで安易こ十億五千万貸せる、こんなプロジェクトがどこにありますか。それについて、今から内部で調査した結果を聞いて判断しますなんてのんきなことを言っているけれども、監督責任を果たしてないじゃないですか。総裁の発言にも私は不満ですね。  委員長、これじゃ審議できません。今の話を聞いてもわかるでしょう。驚きました。今やっているところです、何年前の話だと。会計検査院の調査を並行してしなければ答えられない、こんな答弁がありますか。国会軽視も甚だしい。これはもう審議ストップですよ。
  56. 草川昭三

    草川委員長 経済企画庁土志田調整局長、再答弁。
  57. 土志田征一

    ○土志田政府委員 海外経済協力基金は、一方におきまして経済協力を担当する、他方におきまして金融機関として貸し付けを行う、両方の性格を持っているわけでございます。その使命を果たすために海外投融資に対する貸し付けを行っているわけでございます。  今御指摘のような点、実際の貸し付けに当たっての状況、そういった点はきちっと業務方法書その他に基づいて進められているというふうに考えておるわけでございますが、本件のような事態が生じたということについては、内容をよく調査した上できちっと対応していきたいというふうに考えておりますし、従来から会計検査院にも報告するように指示をしたところでございます。
  58. 上田清司

    ○上田(清)委員 それじゃ今の答弁はさっきの答弁と同じなんですよ。そうじやいけないと言っているのですよ。普通のルールを逸脱しているわけですよ。さっき総裁が言ったじゃないですか、自分で。総裁はもちろん大局的なお仕事が多いので、細かく御存じない部分があってあるいは違う答弁をなされたかもしれません、たまたま参議院で高野参議院議員が御質疑されたので相当それなりに把握されておると思いますが。  清川理事、この点について、総裁の発言の中で補足することがございますか。
  59. 清川佑二

    ○清川参考人 先ほど経済企画庁土志田局長からお話がありましたように、まず事実の解明ということは、当然第一でございます。したがいまして、これにつきましては私ども、発生と同時に経済企画庁、そしてまたその後会計検査院に私ども の方から御報告に行っているわけでございますが、しかし、それだけではいけないわけでございまして、その間にできることは何々かという点がもう一つございます。  そのような意味で、このような事態がさらに起きないような改善策をまず講ずるということでございまして、私ども、本件を契機といたしまして、幾つかの改善策を既に講じております。審査管理体制を強化する、そしてまた貸し付け実行手続を改善する、専決処理規程を改善する、このような形で再発が起きないようにまず行っているところでございます。  ただ、現在、事実を解明し、検査院の検査も受けているところでございますので、その結果を得て、監督官庁、経済企画庁の御指導、御指摘を厳正に踏まえて対応していくという並行的な処理を行っているところでございます。
  60. 上田清司

    ○上田(清)委員 外交、防衛は与野党ないので、与党の皆様方も各党の皆様方も今の論議を聞いておわかりいただけると思いますし、委員長もおわかりいただけると思いますが、肝心なところの論点をなかなか答えていただけません。ストップをするのは簡単かもしれませんが、若干あなた方のいいかげんさをほかのところからまた指摘させてもらいます。論点を少し──先ほどのなぜ保証状を後でとったのか、このことについてはちょっと横に置いておきます。  御承知のとおり、柏塘事業について、九五年の十一月に中間管理のミッションを現地に派遣して、九〇%完成しているという報告を出しておられます。ちょうどこれが一次、二次、三次の汕頭事業等の破産宣告のあった、和議申請を出して事実上日盛産業が倒産した時期です。九五年の十一月。一方では、柏塘事業で九〇%現地の状況ができている、中間管理のミッションがこういう報告をしている。そのときに、それ以前のやつは全部パアだという話が出ているときに、特別に対応を何かなされましたか、柏塘事業に関して。これは一、二、三がおかしい結果になってしまった、柏塘事業に関しても注意しなくちゃいけないな、そういう考え方を持ちましたか。私は持つのが当たり前と思うのですけれども。清川理事でも結構ですよ。
  61. 清川佑二

    ○清川参考人 お答え申し上げます。  九五年十一月に日盛産業が破綻をいたしました。日盛産業が専ら運転資金、そしてまた販売について担当をするということでございますので、この九五年十一月時、私どもはこの債権の回収という問題を直ちに考える事態になったわけでございます。  他方、この債権の回収に当たりまして、私ども、一括繰り上げ弁済をするその前に、何とかして事業が軌道に乗ることによって全体として回収できることにしてほしいものだ、このように考えまして、一緒に、兄弟会社でもあります東昇事業、東昇公司の株主の皆様方、これは中国の恵州の進出口公司、恵州市の事業でもありますが、あるいはまた、その他の事業者の株主の皆様方にも再三お願いいたしまして、何とかして事業が成り立ち、そして一括して回収できるように、そしてまた委員指摘の本件は、経済協力事業でもあり、何とかして、全体として、事業として生き長らえていく、そしてその過程で回収をしていく、このようなことを種々検討し、また実行してきたところでございます。  以上のようなことで、九五年十一月の和議の手続の開始に伴いまして、私どもは以上のような再建策を行ってきたところでございます。
  62. 上田清司

    ○上田(清)委員 柏塘事業についての見直しというのはあったのでしょうか。
  63. 清川佑二

    ○清川参考人 柏塘事業につきましては、設備が完成をするという段階でございますので、具体的に申しますと、養殖の池あるいは設備が完成しつつある、しかしながら、ウナギの稚魚でありますシラスを購入してそこで養殖事業を実際に行う、そしてこれを売ることによって収益を上げるという、その前の段階でございました。したがいまして、設備そのものはございますので、何とかしてこれが活用されるならば事業の再建ができる、このように考えたわけでございます。
  64. 上田清司

    ○上田(清)委員 私どもの記述の中では九五年十一月に九〇%完成ですが、施設は一〇〇%完成したのですか。
  65. 清川佑二

    ○清川参考人 柏塘事業の完成度におきましては、当初の計画の池でいいますと、約九割方、三十二の予定していた池のうち二十九までができ上がってきた、こういうような状態でございまして、一〇〇%完成という事態ではございませんでしたが、非常に完成に近い状態になっているという事態でございました。
  66. 上田清司

    ○上田(清)委員 現在もそのような状態ですね。
  67. 清川佑二

    ○清川参考人 現在もその状態のままに維持されております。
  68. 上田清司

    ○上田(清)委員 私が収集した情報の中では、水車もなければボイラーもないし発電機もないと聞いておりますが、これは事実ですか。
  69. 清川佑二

    ○清川参考人 先ほど池の関係でお答え申し上げましたが、まだ水車、ボイラーその他の設置が十分にできていない状態でございます。
  70. 上田清司

    ○上田(清)委員 そうしますと、要するに穴を掘ってコンクリートを埋めただけじゃないですか。十億五千万はどこに行ったのですか。その内訳について説明してください。
  71. 清川佑二

    ○清川参考人 柏塘の事業につきまして、九四年の三月に承諾をいたしまして、その後九四年の九月に現地に中間管理ミッションを基金から派遣したわけでございますが、現地で養鰻場の建設工事が開始されているということも確認されましたし、また、その後、工事の進捗が確認されております。先ほどお話し申し上げました九五年十一月に派遣した中間管理ミッションでは、養鰻池のほぼ九〇%が完成しているということを確認したと申し上げたわけでございます。  この資金使途につきましては、柏塘公司から基金の貸付資金は養鰻場の建設に使用されているという説明を受けておりますが、私ども九六年一月に現地に派遣したミッションによりますと、柏塘公司からは養鰻池の建設、養鰻池の関連施設、固定資産、土地使用権、そしてまた受取勘定、これはシラスの購入前払い金、こういったものの中に使われているという説明を受けているわけでございまして、以上のことから、私どもは、この貸付金はこの事業のために使用されているというふうに理解をいたしたわけでございます。  しかしながら、その後の事態の推移に応じまして、債権を回収するということに私どもは非常に意を払っているところでございます。  そのような観点から、この貸付資金がこの事業に使われているか否か、現在さらに確認をしているところでございまして、資金流れに関する資料につきましても、借り入れに対して資料の提出を求めているところでございます。現在まだ十分に得られておりませんので、引き続き、督促状を発出いたしまして提出をさらに求めている、このような状態でございます。
  72. 上田清司

    ○上田(清)委員 何度も申し上げておりますけれども、話の中身が主体的じゃないのですよ、こういう形でいろいろ使途されたというふうに理解しているとか。何を理解しているのですか。正か邪かということをきちっと把握しなくてはいけないのですよ、正しい、きちっとした使われ方をしているのかどうか。  第一、債権の保全と言っていますけれども、保全などできませんよ、土地の利用権などは。それから、コンクリートは今から売れるのですか。穴は売れるのですか。これは、もともとほとんど債権の保全などできない事業なのですよ。  シラスを、では、買ってどうしますか。皆さん育てて食べますか。そんなことはできないでしょう。  だから、これはもともと債権の保全などできない事業なのですよ。事実回収しているのだったら言ってくださいよ、幾らの金額でと。十億五千万のうち三〇%でも回収していますと言うのだったら、言えるのだったら言ってください、できないはずですから。この事業は回収ができないのです。だからこそ、保証をきちっとして、その事業目的がしっかりしているかどうかということを確認しなくてはいけないのに、保証など取りつけていないじゃないですか。  会計検査院、深田局長、どのような把握をされておりますか。
  73. 深田烝治

    ○深田会計検査院説明員 お答え申し上げます。  本件の柏塘養鰻事業につきましては、先ほどお話がございましたように、海外経済協力基金より、利息の支払いが滞っている、元本回収の見込みは難しい案件である、そういう報告を受けておりまして、私どもといたしましては、貸付契約の締結時から現在に至る事情につきまして、現在調査を実施しているところでございます。  今後とも、先生の御指摘も念頭に置きながら、調査を進めていきたいと思います。
  74. 上田清司

    ○上田(清)委員 これはどこの役所に聞いてもそうですけれども調査中ですとばかり言っていて、時間が過ぎてしまって、いつの間にか落選してしまったりして後を追っかける人がいなくなったりするのですよ。そういうのもあって困るのですけれども、私はしつこいから、そういうのは通用しませんから。ずっと落選しましたから、もう落選しませんから。  大蔵委員会でも、半年かけて銀行局長の答弁をひっくり返しているんです、私は。しつこいんですからね。だからだめなんです、そういう答弁じゃ。調査中、調査中、解明中なんて。ばかなことを言っちゃいけない。幾らだと思っているんだ、十億五千万を。そういう金額をへとも思わないような感覚になっているんですよ、皆さんが。だからそういうのんきなことを言っているんですよ、二年も三年もほったらかしにして。私は、これは審議に応じられません。  委員長、まことに恐縮ですけれども、総裁の答弁、会計検査院と並行してやらなくちゃいけないというのは、そんなことじゃどうにもなりません。
  75. 草川昭三

    草川委員長 今上田委員の御発言はもっともだと私も思います。それで、海外経済協力基金の対応あるいはまた経済企画庁の対応も非常に問題のある状況だと思います。それで、今ここで幾ら、押し問答というのですか、やりましても、事態の進展がないようでございますので、これは、後刻理事会において、この問題をどのように処置をするかということを改めて御相談を申し上げさせていただきたいと思います。  上田委員に申し上げますが、時間ももうございませんが、ほかの案件で御発言、御質問があれば、そちらに移っていただきたいと思います。
  76. 上田清司

    ○上田(清)委員 委員長の御配慮、栗本理事、大口理事の御配慮に感謝いたします。  それでは、残り時間も少ないのですが、いわゆる中国森ビルプロジェクトというもの、国際金融センター、上海のプロジェクトについて、同じようにこれも海外経済協力基金が日本法人に五十億出資するという案件でございますが、この点についてお伺いをしてみたいと思います。  もう中身については私なりに知っておりますので、的確に答えていただきたいと思いますが、まず出資総額は幾らになっているのか。現在二十六億ぐらいを出資されていると言っていますが、予定出資総額は幾らなのか。  それから、上海での上海環球金融中心投資株式会社、これが日本法人で、現地法人が上海環球金融中心有限公司、これでございますが、この中に、日本からの持ち出しはどのくらいになっているのか。  また、この件に関しては最初輸出入銀行に要請があったというふうに私は聞いておりますが、事前のレクの中では、事実関係を聞きましたら、皆さんの話だとそういう話はなかったというふうに聞いておりますけれども、この点についても、基金の方からきちっと説明をしていただきたいと思います。私がその後輸出入銀行に問い合わせたところ、お話があったというふうに承っておりますので、この点について食い違いがあるみたいですから。清川理事
  77. 清川佑二

    ○清川参考人 まず、上海金融センタービルについての出資の関係でございますが、この金融センタービル事業につきましては、中国に設立された上海環球金融中心有限公司によって実施するわけでございますが、これは、総額七百五十億円、う、ち出資二百五十億円、金融機関からの融資五百億円が予定されております。そして、この事業のために九五年七月に、資本金百二十四億円をもつて、日本からの投資会社である上海環球金融中心投資株式会社が日本法人として設立されまして、森ビルを中心に、主要銀行、保険、商社など、三十六企業が出資を行っております。  基金は、二十六億七千万円の出資を行っておりまずが、委員指摘のとおり、最終的には五十億円までの出資を承諾済みでございます。九五年七月及び九月に日本側投資会社へ既に支払った出資実行額の百二十三億八千万円のうち、百二十二億円は土地使用権の取得に充てられておりまして、現在、中国側による設計審査が行われているところでございます。
  78. 上田清司

    ○上田(清)委員 これは総裁にお聞きしたいと思いますが、出資決定の基本的な根拠について答弁を願いたいと思います。  それから、その根拠が正しいのかどうか。私、二月六日の予算委員会で、当時疋田会計検査官にちゃんと調べておくようにと)うことを言っておりましたので、総裁の答弁が正しいかどうか、深田第一局長にも御答弁をお願いしたいと思います。
  79. 西垣昭

    ○西垣参考人 本件につきましては、九四年六月に、森ビル子会社でありますフォレスト・オーバーシーズという会社から、事業計画書をもとに出資の要請を受けました。私どもは、九五年二月に現地審査を行いまして、九五年七月十一日に開かれた役員会に付議した上で、同年七月十九日に出資決定したわけでございます。  出資決定したときの考え方の根拠を申し上げますと、一つは、中国の開発政策への支援という点であります。この事業は、中国の国家プロジェクトであります上海市の浦東開発計画に貢献する重要事業であって、上海市政府から私ども基金に対して協力要請があり、また、上海市政府から強い支援表明が行われているということを確認しているものであります。  それから、この事業がいわゆる経済協力性が高いというふうに認識したことであります。本事業は、浦東の陸家嘴金融貿易区におきまして、外資系金融機関の受け入れが可能な同地区に不足している高規格のインテリジェントビルを建設することによりまして、金融センターの育成を促進し、浦東開発、上海の国際金融市場の整備、そして中国経済の発展に貢献する経済協力性を有するということが認められたわけであります。  それから第三に、ほかの資金ではなくてなぜOECFの、海外経済協力基金の出資が必要であるかという点でありますが、本事業は、投資規模が大きく資金回収に長期間を要する収益性の低い事業である、また、中国のカントリーリスクが高いために民間だけでは十分な出資を募ることができないという事実があったこと、実際、日系金融機関等の民間出資者は海外経済協力基金の出資参加を求めていたという事情がございました。これらを勘案いたしまして、出資決定をいたしたわけでございます。
  80. 深田烝治

    ○深田会計検査院説明員 お答えいたします。  本件出資につきましては、海外経済協力基金法二十条二号に定める基金の業務として実行されたもの、そういう報告を受けておりまして、海外経済協力基金の審査につきまして、特に検査報告に掲記するような事態はなかった次第でございます。  また、センターはいまだ建設に着工しておりませんので、その効果程度につきましては、旨及する段階に至っていない次第でございます。
  81. 上田清司

    ○上田(清)委員 総裁、収益性が低いと言っておられますが、収益性が低ければ、収益性が高くなるようなビルの方に乗っかればいいという感じがしますので、例えば四十階建てにするとかそういう考え方もあるでしょうし、それから、経済協力性が必要だということであれば、これはもうある意味では上海市政府絡みの大変な国家プロジェクトですので、そういう意味では、危険性がない、リスクの少ない事業だと私は思っていますから、必ずしもこの基金がやる仕事かなという疑問点を持っております。  この点については、また後日機会がありましたら論議をさせていただきたいと思いますが、いずれにしましても、極めて皆さん方の御答弁は生ぬるい。国民のお金を預かって、十億五千万円というお金が破綻しても、今調査中ですと言う、三年前の話を。そういうのんきなことを言っておられて国家公務員としての職責を果たせるのかという、私は大変疑問というよりも怒りを感じています。このことを強く言っておきます。  終わります。
  82. 草川昭三

    草川委員長 この際、委員長からも、海外経済協力基金あるいはまた経済企画庁の方にも申し上げておきますが、後日理事会で本問題について御相談をしますが、調査中という答弁の結果を速やかに決算委員会の方に報告されるよう、強く求めておきたいと思います。  次に、生方幸夫君。
  83. 生方幸夫

    ○生方委員 民主党の生方です。  外務省にきょうはお越しいただきまして、ODAの問題について御質問させていただきたいと思います。  まず、高村政務次官に、前回ペルー事件の際には、ペルーにまでお出ましいただきまして大変御苦労さまでございました。おかげさまで最小の被害と言っていいと思いますが、人質が無事救出されまして、次官がお出ましになった価値があったというふうに私も判断をいたしております。  そこで質問なんですが、ペルーには多分日本から非常に多額の経済援助が行われているのではないか、それにもかかわらずああした事件が起こってしまったことについての質問を私はしたいと思うのです。まず最初に、ペルーに対して日本からどのぐらいの経済援助が行われているのか、それはほかの国々に比べてどのぐらい規模が大きいのか、そこからお伺いをしていきたいと思います。
  84. 畠中篤

    畠中(篤)政府委員 我が国は、ペルーとの伝統的友好関係、約八万人の日系人、在留邦人の存在を踏まえまして、フジモリ政権下における九〇年以降、特に経済の持続的成長及び貧困撲滅への改革努力をしておられるのを高く評価いたしまして、国際社会と協調しながら積極的な協力を行っております。  我が国のペルーに対します経済協力は、民生向上のための上下水道整備、教育、保健医療等の社会分野での協力、かんがい施設整備、農業技術移転等の農業分野での協力、道路、港湾整備を中心としたインフラ整備の協力といった幅広い分野で実施しております。ペルーの経済発展及び貧困対策に貢献しておると考えております。  規模でございますが、最近三年間のペルーに対しますODA実績、九四年から九六年の実際に支出いたしました額は五十億円台から六十億円台で推移しております。  先進諸国のペルーに対します経済協力実績との比較におきます順位は、九三年はドイツが一位でございまして、日本は二位。九四年及び九五年は米国に次いで二位でございます。九六年の日本の実績は出ておりますが、まだほかの国の実績が集計できておりませんので、これはわかりません。
  85. 生方幸夫

    ○生方委員 五十億円、円でよろしいわけですか、ドルではなくて。五十億円から六十億円ですね。──はい、わかりました。  日本ODAについては、なかなか顔が見えないとか、具体的な、どこまでどういうふうに援助をしているのかよくわからないというようなことが言われておりますが、ペルーにおきましては、どのような陣容でこのODAに関連したサービスを提供しているのか。具体的なスタッフの数というもの、経済協力開発基金それから国際基金等を含めまして、どのぐらいのスタッフを抱えているのか、あるいは現地スタッフがどのぐらいの規模でおられるのか、その辺をちょっとお伺いしたいと思います。
  86. 畠中篤

    畠中(篤)政府委員 現在、ペルー国内におきます我が国の援助に直接かかわりますスタッフといたしましては、JICA事務所につきましては、職員六名、加えまして現地職員十名、計十六名。それから海外経済協力基金、OECFにつきましては、ペルーには事務所がございません。ブラジルのリオデジャネイロからカバーしておりまして、現地には、連絡員として現地職員一名を置いている状況でございます。
  87. 生方幸夫

    ○生方委員 これはもしわかったらで結構なんですけれども日本と同じような規模の援助をしておるドイツあるいはアメリカというのはどのぐらいのスタッフを抱えているのか、もしわかったら教えていただきたい。
  88. 畠中篤

    畠中(篤)政府委員 ただいま手元で正確な数字は持っておりませんが、我が国の場合には、今申し上げましたようにOECFの事務所はありませんけれども、円借款といった、額としては積み上がりますが、ほかの国は、借款というよりは技術協力あるいは無償資金協力ということで手間のかかる援助をしておりますので、スタッフは日本に比べてかなり多いと承知しております。
  89. 生方幸夫

    ○生方委員 今回のあの人質事件の際には青木大使の存在というものが非常に大きくクローズアップをされたんですけれども日本大使館がODAに関連して果たしている役割はどんなものであるのか、そこで大使が果たしている役割はどんなものであるのか、高村次官にお答えいただきたいと思います。
  90. 高村正彦

    ○高村政府委員 大使のODAにかかわる役割でありますが、一般的に言って、任国における経済協力のあり方及び協力案件の円滑かつ効果的実施のための方策について随時本省に意見を出す、あるいは任国において我が国の協力が効果的かつ適正に使用されているか否かその実態の把握に努める、任国における我が国ODAの紹介に努める、経済協力関係者の派遣に当たっては関係者の安全確保に留意する等でありまして、任国に対するODA実施に重要な役割を果たしているということでございます。
  91. 生方幸夫

    ○生方委員 今までのお話を伺ってみますと、日本は非常にペルーに対して大規模な経済援助を行っている。ペルーに日系の方も大変多いということで当然ペルー社会の経済の向上というものに貢献をしておるはずでございますね。それにもかかわらず、あの人質事件が起こった。報道を通じて見てみますと、どうも、日本の企業がペルーでODA絡みでもうけているのではないかというペルーの人たちの不満というものが、まあ直接ではないんですけれども、間接的にあの人質監禁事件につながったのではないかというような報道もなされております。  これは援助全般について言えることだと思うのですけれども、外国に支援をするわけですから、当然押しつけがましくなってはいけないんですけれども、適切な情報というのですか、日本はこういう目的でこういうふうに今援助を行っている、それについて今このような事態が起こっていて、貴国の経済状況はこのように改善した、あるいはよくなったというような情報を適宜出しておれば、あのような形で、人質をとって何十日間もそれを占拠し続けるというような事態が起こらなかったのではないかというふうに考えるのですが、高村次官、日本外務省を含めた広報体制というか、それは特にペルーにおいて十分であったのかどうかという点、それと、どういうふうにこれからしていかなければいけないのかというお考えをお伺いしたいと思います。
  92. 高村正彦

    ○高村政府委員 我が国ODAにかかわる日本企業の受注については公正な手続により行われておりまして、我が国政府としては、御指摘のような誤解を招くことがないように透明性の確保に努めているわけであります。  また、ペルーに対する我が国の協力は、ペルー政府だけでなく、広くペルー国民からも高い評価を受けていると認識をしているわけであります。 確かにMRTAはああいうことを起こしましたけれども、私は、そのMRTAを支える基盤というようなものはペルー国民の中にはほとんどなかったのではないかという認識はしております。  ODA広報は、国内のみならず被援助国においても広く実施していかなければならないのは御指摘のとおりだと思います。政府といたしましては、従来より、援助案件の引き渡し式や交換公文締結の機会をとらえて、我が国ODAについて積極的な広報を実施しております。また、右に加え、現地プレスを対象とする経済協力プロジェクト視察ツアーの実施あるいは被援助国の一般国民を対象とする現地語パンフレットの作成、さらには我が国経協案件におけるODAシンボルマークの貼付使用等を通じて、日本ODAを通じた積極的な国際貢献をアピールしているわけでありますが、十分かと言われれば、何事もこれで十分ということはないわけでありまして、今後ともさらに一層努力を継続していきたい、こういうふうに考えております。
  93. 生方幸夫

    ○生方委員 せっかくお金を出しておるのですから、それなりの効果ももちろんですけれども、それと同時に、外交という面からも、広報をぜひしっかりしていただきたい。十分ということはないのはよくわかりますが、十分に近づけるように努力をしていただきたいというふうに思います。  ペルー関係はこれで終わりまして、次に、北朝鮮の問題でちょっとお伺いをしたいのです。  北朝鮮の食糧事情、いろいろ情報が飛び交っておりまして、私どもも、実態がどうであるのか、なかなか把握をしづらいのですが、先ごろノドン・ミサイルが配備されたというような話も聞いておりますし、その食糧危機が政治危機に波及してそれが朝鮮半島の有事というものを引き起こすというようなことになりましたら、日本にも非常に多大な影響を与えると思いますので、まず、その食糧事情がどのようであるのかということを外務省はどのように把握しているのか、そこからお伺いしたいのです。
  94. 高村正彦

    ○高村政府委員 御指摘のように、北朝鮮における食糧事情についてはいろんな情報があるわけでありまして、もう危機的であるというようなところがら、大変ではあるがそれほどでもないというところまで、それぞれ権威のある情報があるわけでありますが、一般的に、困難であることは間違いない、こういう状況で、今後ともその動向には細心の注意を払っていく必要があると考えております。
  95. 生方幸夫

    ○生方委員 今は国交がない状態でございますが、隣国でございます。しかも、北朝鮮ないしは朝鮮半島から日本に来ている方たちもたくさんおるという歴史的な状況もございます。もし危機的な状況に近いものがあるのであれば、人道的立場から食糧援助をするべきであるというふうに私は考えるのですが、その辺、これからの計画というのですか、もっと実態をきちんと把握して、それなりの援助をするおつもりがあるのかどうか、今の時点でお答えできる範囲でお答えいただけたらと思います。
  96. 高村正彦

    ○高村政府委員 北朝鮮に対する人道支援につきましては、国連統一アピールの内容等を踏まえまして、種々の要素、日本と北朝鮮が関係するいろいろな要素があるわけでありますので、そういったことを考慮に入れて慎重に検討し、総合的に判断してまいりたい、こういうふうに思っております。
  97. 生方幸夫

    ○生方委員 もちろん、ノドン・ミサイルが実戦に配備されて我が国の方に向けられているということが事実であるとすれば、そうした国に対して食糧援助をするのはどうかというような問題が出てくるのは当然だと思いますが、そのノドン・ミサイルの実戦配備について、これは私、予算委員会の席でも久間防衛庁長官に聞いたことがあったのですが、あの時点では、はっきりしないということでした。最近の報道を見ますと、何基かが実戦配備されているというような報道も出ておるのですけれども外務省が把握されている事実というのは、どこまで把握されておるのでしょうか。
  98. 高村正彦

    ○高村政府委員 ノドン一号の開発状況あるいはその配備等についてでありますが、残念ながら、現在明確なことを言える段階にはないわけであります。北朝鮮のミサイル長射程化の研究開発が、我が国周辺のみならず、国際社会全体に不安定をもたらす要因であるということは強く懸念しているわけでありまして、今後とも、その動向について注意を払っていかなければいけない、こういうふうに考えております。
  99. 生方幸夫

    ○生方委員 どちらが先であるのかは難しい問題なのでしょうけれども、まず、困っているのであればそれを助ける、助けた人に対していきなりミサイルを撃ち込むというようなことはないだろうというふうに思いますので、まず食糧援助ということができるのかどうかということをきっかけにして、ぜひ──私は話し合わないところで非常に緊張が高まるというような感じがいたしますので、これは向こう側から交渉を打ち切ったという事情は私も重々承知をしておりますけれども、何とか食糧ということをきっかけとして北朝鮮と対話の道を開くことが、ミサイル配備の実態がどうであるのかも含めて、あるいはそれがこちらに向けられないような外交努力という面からもぜひ必要だと思うのです。  その辺の観点からの、今の時点で非常に難しいのでしょうけれども 北朝鮮との対話の再開というものに向けて、この間も聞いたのですけれども、これからの、こんな努力をするとかこういう方向でいこうではないか、これはもちろん多国間の交渉というものがございますから日本だけで判断できるものではないと思いますが、高村次官のお考えがございましたら、お伺いしたいと思います。
  100. 高村正彦

    ○高村政府委員 当然のことでありますが、北朝鮮との間の対話まできるだけ保っていかなければいけない、こういうふうに思っております。そして、まさに食糧事情も危機的だということであれば、できるだけ、日本としても何とか支援できる、そういう状況をまた北朝鮮の側にもつくってもらいたいな、こういうふうなことも思っておりますし、そういうことも含めて対話をしていかなければいけないのではないかと思っております。
  101. 生方幸夫

    ○生方委員 大臣経験者の次官でおられるわけで、いわば外務大臣が二人いるようなものですから、ぜひ外務大臣の多忙のところを助けていただいて、高村次官も動いていただいて、ぜひ何とかその対話の道が開けるように御努力をしていただきたいというふうに要望申し上げます。  それでは次に、ODAに関連して質問を集中させていただきたいと思います。  日本ODA、額としてはもちろん世界一という額を誇っておるのですけれども先ほどのペルーでのこともございましたが、どうしてもお金を出すということに重点が置かれていて、人的面での援助あるいは広くソフト面での援助というものが足りないのではないかという指摘が、各方面からなされております。また、お金は出すのだけれども顔が見えないという意味で、日本の顔が見えないというようなことも言われております。せっかくあれだけの規模の援助をするわけですから、向こうに感謝されるようにこれは変えていかなければいけないというふうに私は考えております。  その顔が見えないとかソフト面での支援が足りないという原因の一つとして、ODA関連の省庁が非常に多岐にわたって、十九もの省庁に関連している、その指揮命令系統というのですかね、それが非常にばらばらであるというようなことがソフト面での支援の不足ということにつながっているのではないかというふうな指摘もなされております。  経団連が指摘をしましたように、これを一つにまとめて、国際協力庁、あるいはほかのお名前でも結構なんですけれども、そうした名前の一つの外局というものをつくった方がいいのではないかというような意見もあるわけです。縦割り行政の弊害をなくすというような意味で、その国際協力庁のようなものをつくるおつもりがあるのかどう か、高村次官にお伺いいたします。
  102. 高村正彦

    ○高村政府委員 行政改革のもと、ODA効率的、効果的実施に努力して質の改善に努めていくとの観点から、これまでも、円借款についての四省庁協議とか、あるいは技術協力についての十九省庁間の連絡会議の開催等、関係省庁間の連携等に努力してきたところでございますけれども関係省庁間の連携にはなお改善の余地があると思っております。今後とも、外務省と他省庁との連携、調整に向け、一層努力を強化していきたいと考えております。  経済協力は我が国にとって重要な外交の実施手段でありますし、我が国の安全と繁栄を確保するため不可欠なものでありますが、援助の効率化、効果的実施の観点から、援助関係省庁を一元化し、今御質問にあったような国際協力庁のような組織を設立するとすれば、外交政策との整合性が確保できるように、援助の政策方針が外交政策の重要な一環として決定される体制を確保する必要がある、こういうふうに考えているわけであります。  つけ加えますと、一元化したとしても、実際の援助の実施において、各分野における専門家の育成、適切なリクルート等の面から、依然として各省庁が有する人材、知見等を必要とする場合があることに変わりはない、こういうふうには思っております。
  103. 生方幸夫

    ○生方委員 海外援助の経験が長いアメリカとかドイツというのは、その専門の局をもちろん設けておりますよね。そこに専門のスタッフを集中しているということが、いわば質の高い援助というものにつながっているのじゃないかというふうに私は思います。  行政改革、もちろん行政改革で行政を簡素化するということは大事なんですけれども、必要な部分は、もしこれが本当に必要であるというのであれば、つくるのはこれはちゅうちょなさらないでつくっても、国民からの批判というよりは、むしろ、うん、当然そうであろうというようなことが出てくると私は思うのですね。だから、一言に何か新しい省庁をつくるのは全部だめだということではなくて、もう少し柔軟に。今次官もおっしゃいましたように、非常に重要ですね。  我が国は、防衛というか軍事力において世界的に貢献しようというのではなくて、経済の安定、発展ということにおいて世界の平和に貢献しようという国是もございますので、ぜひその国際協力庁、これは名前はどうでもいいのですけれども、一元化、縦割り行政の弊害ということが言われているわけでございますから、実質的にそれを直すような形、あるいは、そういうものをつくればそこに経済協力というか国際協力というものを専門にやってみたいというスタッフが集まるということ等を含めて、私はぜひ御検討をお願いしたい。重ねて、高村次官がもしこれから私がやってみようというような気があるのでしたら、ぜひその辺のお考えをもう一度、再度お伺いしたいと思います。
  104. 高村正彦

    ○高村政府委員 これは大きな問題でありまして、私の一存でできることでもありませんし、外務省だけでできる話でもないわけでありますが、そういった組織が外交政策を遂行する上での一体性を確保できるのであれば、検討する価値はあるのかなと、個人的に思っております。
  105. 生方幸夫

    ○生方委員 今の国際協力庁にも関連するのですけれども、そのソフト面での支援が足りないというようなことでも、ODAに関して基本原則はございますが、そのODAをどういう目的我が国はどういうふうにしていこうかという、その理想というのですか、そういうものがやや我々にはっきり見えないのではないかというような指摘もなされております。これも、いわばODAに関する基本法のようなものをつくってきっちりと考えを示す、法律でこういう考えでこうやるんだというようなことを示した方がいいのではないかというような指摘もなされております。そのODA基本法について高村次官はどのようにお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。
  106. 高村正彦

    ○高村政府委員 政府といたしましては、我が国ODAの理念が明確でないというような議論を踏まえまして、九二年に、政府開発援助、ODA大綱を定めて、我が国の国際貢献の重要な柱であるODAの基本理念や原則等を明らかにしたところでございます。  ODAは、外交政策の一環として、急激に変化する国際情勢に対応して実施する必要があるわけでありまして、その重要性及び機動性を損なわないよう留意する必要があるわけであります。ODAの基本法の制定は、援助を実施するに当たって必要な柔軟性、機動性を損ねかねないという面もあって適当ではないのではないか、こういうふうに考えております。  政府といたしましては、今後ともODA大綱を踏まえつつ、一層効果的、効率的な援助の実施に努めていく考えであります。
  107. 生方幸夫

    ○生方委員 次に移りますが、日本ODA、確かに額は多いのですけれども、有償援助が非常に多くて、無償援助が少ないということが指摘をされております。フランスとかドイツは無償援助がほとんどであって、有償援助というのはほとんどない。ほかの先進国でも、大体平均七七%は無償援助である。それに対して、日本の場合は四七%しか無償援助がないというような状況がございます。  これは当然、有償援助、円借款を与えるというのは、その与える外国のインフラ整備ということが非常に重要であるということで、どうしてもアジアに集中しがちでございました。アジアはもう既に、日本からの援助もございまして、経済的には発展をしていって、援助の中心というのはこれからアフリカとかそういう国々に移っていくというふうに私は考えております。  そうなりますと、当然貸し付けをして返してもらうという形の援助ではなくて、やはり無償援助という形で生活の質の向上を行うということが非常に大事であるというふうに私は考えておるのですけれども日本も他の先進諸国並みに無償援助の比率というものを引き上げていくおつもりがあるのかどうかを、高村次官にお伺いしたいと思います。
  108. 高村正彦

    ○高村政府委員 我が国は、開発途上国のおのおのの異なる発展段階に応じて、あるいはまた個々の援助案件の性格をも踏まえて、各種形態の援助を有機的、効果的に組み合わせて実施をしているわけであります。  具体的に言いますと、債務返済能力の低い後発開発途上国、LLDCでありますが、それに対する援助や経済的収益性の低い基礎生活分野の援助は無償援助を中心として、あるいはより経済力の大きい国に対する援助やより大規模な資金ニーズに対しては円借款を中心に対応しているわけであります。今後ともこのようなバランスに配慮しつつ、援助を実施していく所存でございます。  円借款につきましては、当該プロジェクト収益性、被援助国の経済情勢、債務負担能力等を踏まえて、金利の一層の引き下げを含めて、財政状況を踏まえつつ、可能な限り譲許性を高めるべく努力をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  109. 生方幸夫

    ○生方委員 御承知のように、金融の自由化ということがあって、民間の資金が潤沢に海外に流れるようになっている中で、政府が主導する円借款というものも位置づけがこれから変わっていかなければいけないのじゃないかというふうに思っております。一部には円借款も、金利は国によって違うということですが、違っても金利を払わなければいけないことは間違いないわけで、負担は大きいと思いますので、ほかの民間の金融機関資金援助ということと差別化するためにも、例えば金利がゼロの円借款というようなものも考えてもいいのではないかというような指摘もなされておるのですけれども、その辺について次官のお考えはどのようなものでございましょうか。
  110. 高村正彦

    ○高村政府委員 委員の御指摘は、もちろん検討すべき点である、こういうふうに思いますが、先ほど申し述べましたように、無償援助あるいは借款、それぞれの特性があるわけでありまして、そして特に経済インフラなんかの場合には、やはりそれが投資に見合うものである、あるいはその国の自助努力を促すという意味で、何が何でも無償がよくて借款がいけないというだけではないというふうに理解しております。
  111. 生方幸夫

    ○生方委員 これに関連するのですが、円借款を担当する海外経済協力基金と商業ベースの資金を担当する日本輸出入銀行を統合するのは、ちょっと分野が違い過ぎるのではないかというような指摘もなされておりますが、その統合についてそういう指摘があるということについて、次官はどのようにお考えになりますでしょうか。
  112. 高村正彦

    ○高村政府委員 そういう指摘あるいは批判があるということは私も重々承知しているわけでありますが、この政府ベースのODA実施機関であるOECFと準商業ベースの政府系金融機関である輸銀の統合に当たっては、ODAと非ODAの勘定区分等の明確化だとか、国際経済社会への機動的、効率的貢献のための執行体制の確立等を図ることが肝要でありますし、それがきっちりできればこの批判は当たらなかったということになるのではないか、こういうふうに思っております。
  113. 生方幸夫

    ○生方委員 先ほど来申し上げておりますように、人的援助というものが非常に重要であるということになりますと、今国会に出されましたNGOとの関連、協力というものが欠かせないというふうに私は考えております。日本のNGOは、他の先進国に比べれば非常にまだ進んでいないというふうに私は考えておりますが、ODAとの関連でNGOの育成というものについてどのようにお考えになっているのか、次官にお伺いいたします。
  114. 高村正彦

    ○高村政府委員 NGOによる海外援助活動は、草の根レベルでの直接の触れ合いによるきめの細かい対応を可能としているわけであります。政府としては、顔の見える援助を推進するとの観点から、NGOによるかかる海外援助活動を積極的に支援してきているところでございます。  平成年度我が国NGOに対する支援、育成の観点より導入したNGO事業補助金制度は、当初予算は約一億円であったわけでありますが、NGOに対する国民的関心の高まり及びNGOの活動の活発化を受けて拡充が図られ、ODA予算の伸び率が抑制されている中で、平成年度予算では十二億円となっているわけであります。また、国際協力事業団において人口分野等における我が国専門家を養成するための研修コースへの参加を得るなど、我が国NGOの人材育成面にも努めているところでございます。  政府といたしましては、今後とも、NGOを途上国開発に取り組むパートナーとして位置づけて、ODAの質の改善のためにも、NGOとの一層の連携強化に向けてNGOの人材育成に努めてまいりたい、そういうふうに考えております。
  115. 生方幸夫

    ○生方委員 NGOに関連をするのですが、青年海外協力隊員、私もアフリカとかアジアに行ってよくそういう方たちとお会いする機会があるのですが、彼らは非常に一生懸命やってくれているのですけれども、聞くところによりますと、一回青年海外協力隊員になって戻ってくるとなかなか就職の先がないということで、何年かしたらまた青年海外協力隊員として表へ出ていかなければいけないというような実態があるやに聞いております。彼らが最前線で頑張ってくれているがゆえに顔がやや見えてくるというようなところもあるわけで、その青年海外協力隊員にどのぐらいのどういうような処遇をしているのかということと、それから、戻ってきての再就職、それについて外務省はどのような援助をなさっているのか、そこをお伺いしたいと思います。
  116. 畠中篤

    畠中(篤)政府委員 青年協力隊は平成九年五月三十一日現在で、五十六カ国に対して二千二百六十九名派遣中でございます。予算につきましては、平成年度百九十二億七千六百万円を計上しております。  隊員の処遇につきましては、派遣中の海外手当といたしまして、派遣国によりまして若干の差はございますけれども、月平均で約三百八十米ドルを支給しております。そのほかに、退職、無職、または現職の場合でも、無給で参加される隊員につきましては、帰国後の社会復帰に必要な資金といたしまして、国内積立金を帰国時に一括支給する制度を有しております。なお、この現行支給額は、派遣中の場合には月額九万九千七百円、訓練期間中につきましては月額五万円ということでございます。  このほか、帰国隊員にかかわる進路対策として、帰国隊員に対する就職情報の提供や進路相談カウンセリングその他を実施しておりまして、平成年度の帰国隊員の再就職率、一年以内に就職ができた率は七八・七%でございます。
  117. 生方幸夫

    ○生方委員 七八・七%という数字が高いのか低いのか私よくわかりませんが、私が聞いたところでは、戻ってきて再就職する、これは気分的な問題も含めて非常に難しくて、また行ってしまうという方が多いのは、これは事実のようです。もちろん、何度も行っていただくことによって質が上がっていくわけですからいいと思うのですが、就職をしたいという人に対してはもう少しきちんとケアをしていただきたいというふうにお願いを申し上げます。  それからまた、青年海外協力隊員として企業からやはりもっと人を 専門家を含めた人を派遣する仕組みというものをつくっていけたらいいなというふうに思っているのですけれども、企業といっても、政府から企業に人を出してくれというようなお願いをするのはなかなか難しいわけで、人を出す場合の、いわばインセンティブを何か与える、それによって企業から人が派遣しやすいようになるというような形の援助をする必要があるというふうに私は考えるのですが、その辺については高村次官のお考えというのまいかがなものでございましょうか。
  118. 高村正彦

    ○高村政府委員 青年海外協力隊の事業は、開発途上地域の住民と一体となって当該地域の経済及び社会の発展に協力することを目的としており、我が国の顔が見える援助の典型の一つとして相手国から高い評価を受けていると認識しておりますが、まさに委員がおっしゃいますように、企業からの派遣、そういったことをまた得るために、我が国としても、隊員がその所属先の企業等に身分を保持したまま参加する際に人件費の一部を補てんする所属先補てんの制度を設ける、そういったこともやっておりますし、できるだけ企業等が隊員を出しやすくする環境づくりを行っているところであります。まだ十分でないかもしれませんが、今後とも引き続いて努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  119. 生方幸夫

    ○生方委員 これは、派遣先の国だけではなく、企業にとっても、そうした人材を送り出してまたその方たちが戻ってくるということは企業の活性化にもつながると思いますので、企業から人が派遣しやすいような仕組みというものを、ぜひ外務省の方でも考えていただいて実施していただきたいというふうにお願いを申し上げます。  最後に、ODA関連の予算が来年度は一〇%削減されるというような報道がなされております。これは一部には、ODAに関しては族議員がいないので、だれも応援団がいなかったので減ってしまったんだというような説もあるのですが、この一〇%削減ということについて、今の段階でどの部分をどのように削減するおつもりなのか、そこをお伺いしたいと思います。
  120. 高村正彦

    ○高村政府委員 委員には引き続いて、族議員じゃなくても応援団になっていただきたい、こう思うわけであります。  外務省としては、ODA予算が対前年度比初めてしかも大きなマイナスになることについて、大変厳しく受けとめているわけであります。ODAは、日本の国益の維持増進、安全保障の観点から極めて重要な施策であるとともに、我が国が平和国家として国際社会に積極的に貢献していく上で極めて重要な国際貢献の柱であるわけであります。財政構造改革会議後の臨時記者会見において、橋本総理は、ODAについては予算配分の重点化を通じてODA効果的な実施に努め、我が国の国際貢献の姿を損なうことがないよう万全を期していきたい、そういうような発言をされているわけであります。この趣旨を踏まえて、外務省としてはODA予算の形を考える場合に、一律一〇%削減ではなくて節減できる部分を重点的に抑制して、外交にできるだけ影響が出ないようにすべきであると考えております。  外務省としても、ODAについての改革を進めるとともに、限られた財源の中でODAを通じて国際社会に対する責任をできるだけ果たすよう努力してまいりたいと思いますし、顔の見える援助ということを重要に考えていきたいと思いますし、また削減するとすれば代替財源のあるところ、そういったところに切り込まざるを得ないのかな、そういうようなことも考えているわけであります。
  121. 生方幸夫

    ○生方委員 一〇%というのはかなりの額でございますので、援助されている国々がある程度当てにしている部分がなくなってしまって、その国に対する大きい影響が出るというようなことがあると、それは外交問題にもつながるおそれもございますので、ぜひその辺は配慮をしていただきながら、外務省にも頑張っていただきたいというふうに思います。  最後に、外務省ODAに関して量から質への転換というようなことをいろいろな文書の中で述べておりますが、これは言葉で言うのは非常に簡単なんですが、具体的には量から質への転換、援助を転換するということをどのように果たしていこうというふうにお考えになるのかを最後に聞きまして、私の質問を終わらせていただきます。
  122. 高村正彦

    ○高村政府委員 具体的に言えば、十分な事前調査政策協議等を通じて相手国の真の開発ニーズに即した案件を発掘、形成するとともに、案件実施後における評価、フォローアップの充実等に引き続き努めていきたいと思います。また、異なる援助スキーム間の連携、他の援助国や国際機関との協調、NGOや地方公共団体との連携強化、民間活力の活用等にも引き続き取り組んでまいりたい、こういうふうに思っています。  こういう観点から、去る四月に外務大臣の懇談会として二十一世紀に向けてのODA改革懇談会を設置し、ODA改革についての議論を行っていただいているところであります。今後、懇談会の報告をも踏まえつつ、ODAのさらなる質の向上に向けて努力を続けてまいりたい、こういうことでございます。
  123. 生方幸夫

    ○生方委員 どうもありがとうございました。
  124. 草川昭三

    草川委員長 次に、木島日出夫君。
  125. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  私からは、この一月に日本海で発生したナホトカ号の重油流出事故に絡んでお聞きしたいと思うのです。  事故発生から五カ月が経過しました。三国沖の船首部分も撤去されまして、また、海底に沈んでいる船尾部分についても、海洋科学技術センターのドルフィン3Kでビデオ撮影も行われております。この重大事故の原因につきましては、日本側、そしてまたロシア側、それぞれで調査が行われておりますし、また、日ロ両国協力して行う、そういう合意もしてあります。この事故原因調査の現状、今日までに明らかになったこと、そして今後の見通しについて、概要をまず御説明願いたい。
  126. 山本孝

    ○山本(孝)政府委員 事故原因調査我が国専門家委員会による進捗状況でございますが、先般、中間報告ということで概要を公表していただきました。  それによりますと、現在、科学技術庁のドルフィン3Kによります海底に沈んでいる船尾部分の撮影による映像、それから、ロシア側から提供してもらいました当初の設計図面、検査の履歴の概略と本船の航海時における積みつけの状況、さらに、ロシア側からの提供でもう一つ、ロシア側が事情聴取した乗組員の事情説明状況、それに、我が国の海上保安庁の説明内容の補足、当時の日本海の気象状況を観測した気象庁の観測データ、最後に、この中間報告の時点では漂着いたしました船首部分の表面に出ている部分並びに水中からの調査ということで衰耗状況の概略というものを調査して、これらをもとに中間報告という形で調査状況を明らかにしてございます。  さらにその後、船首部の引き上げを行い、解体所に運んだ後の詳細な調査というものが行われておりますが、この部分の解析結果については、まだ現時点では明らかになっておりません。現在解析中でございまして、七月末には何とか明らかにしたいということでございます。  中間報告の概略でございますが、ロシア側が当初考えたというか、伝えられております、何らかのものに衝突をした、それから、それに引き続いて爆発が起こった、こういうシナリオと、それから、我が方が一応想定しております、衰耗の状況とその当時の荷物の積みつけの状況、あるいは当時の海象からする船体にかかる力と船体自身が持つ強度との関係、これを重視する考え方と、それについての状況を報告したものがございます。中間報告の時点では、いずれの説についても断定するというような状況把握にはまだ至っておりません。  以上のような状況でございます。
  127. 木島日出夫

    ○木島委員 ナホトカ号の船齢は二十六年と聞いております。船体構造部材の衰耗状況や材料の特性についての調査状況、まだ解析中の部分もあるという答弁でありますが、今わかっている部分についてちょっと立ち入って御答弁願いたい。
  128. 山本孝

    ○山本(孝)政府委員 まず第一点、ナホトカ号の船首部の水中調査の結果の所見を申し述べます。  三月十八日に船首部の水中調査を行いました。また、五月八日と九日になりますが、船首部の詳細調査を行いました。これこよりまして、船首部分の構造部材の板の厚さ、板厚と申しますが、これに平均して二ないし三割の衰耗があったということが判明いたしております。この衰耗状況でございますが、同程度の船齢の船舶と比較するとやや衰耗が大きいかなというふうな状況だと専門家は見ているようでございます。  なお、この衰耗が今回の事故の直接的な原因であるか否かにつきましては、さらに定量的な分析を行っているところでございます。
  129. 木島日出夫

    ○木島委員 運輸省からいただいた「ナホトカ号事故原因調査の進捗と今後の予定について」と題するペーパーによりますと、今御答弁いただいた三月十八日に実施したサンプル調査、その結果が数字であらわされております。それによりますと、「船底外板で平均二三%、船側外板で平均二八%の衰耗が見られた。また、船側外板の水線近傍では三割を超える衰耗(最大五四%)が見られた。また、内部構造部材については、横桁の桁材で二三%、面材で八四%、縦通肋骨で四二%の衰耗が見られた。」  かなり具体的な数字が記載された報告書を私は受け取っているのですが、この数字自体は事実ですか。  そして、この衰耗のパーセントが出ているのですが、これは鋼板の厚さの減少率をあらわすものだとお聞きしてよろしいですか。
  130. 山本孝

    ○山本(孝)政府委員 ただいま先生の御指摘のありました衰耗状況の具体的なパーセントは、このようなものがあったのは事実でございます。  それから、板の厚さ、元厚を一〇〇とした場合にその減り分がどれぐらいであったかというものをあらわすパーセンテージでございます。
  131. 木島日出夫

    ○木島委員 鋼板のもとの厚さが一〇〇%として衰耗率が数字で出てくる。船側外板で平均二八%の衰耗、船底の外板で平均二三%の衰耗というのですから、すさまじい鉄板の減りぐあいだと思うのですね。  これはロシアの船でありますが、我が国の法令では、鋼板がどの程度の衰耗状況になると検査でチェックされるのか、チェックされて航行ができなくなるのか、我が国の法令の状況を教えてください。  ついでに、わかっていれば、ロシアの内規はどうなのか、国際的取り決めはどうなのか、教えていただきたい。
  132. 山本孝

    ○山本(孝)政府委員 我が国の基準でございますが、大型船舶につきましては、もとの厚さに対し二〇%プラス一ミリメーターという衰耗状況を、一応中心的な基準と考えております。場所によりまして、それ以上、三〇%というところもありますが、外板というところでいきますと二〇%プラス一ミリメートルということで、一応何かをしなければいけないかと考える第一の判断基準にしております。  それから、ロシアの基準でございますが、これは、ロシアの基準として特に私どもは承知しておりません。  それからさらに、国際的な取り決めてございますが、衰耗状況がどれぐらいになったら板を取りかえなければいけないといったような立ち入った国際的な統一基準はございません。  以上でございます。
  133. 木島日出夫

    ○木島委員 我が国の基準でも、一番船の安全にとって大事といいますか、そう言える外板につきましては、一番厳しい許容衰耗量というのを運輸省は設定しているわけですね。それが二〇%プラス一ミリだ。そのほかの部分については、元厚の二五%まで許容するとか、場所によっては、ハッチなんかは元厚の三〇%まで許容するとか、そういう許容限度を設けているようであります。  我が国の基準が、外板が二〇%摩耗したらもうそれはだめだとチェックされるという状況に比較しまして、運輸省の先ほどの答弁でも明らかにされたのですが、ロシア船籍タンカー・ナホトカ号の船側外板、平均二八%の衰耗、船底外板、平均二三%の衰耗、これはもうこの船が日本の船だったら走れない、航行できない、検査でチェックされるということを、まだほんの一部の調査でありますが、示していると思うのです。これはもう重大な数字が出てきたと受けとめなければいけないと思うわけであります。  そこで、このナホトカ号についての調査が今行われているのですが、日本側は、ナホトカ号の設計製造図面、それから、その後の修理経歴、これは全部入手しておるのでしょうか。
  134. 山本孝

    ○山本(孝)政府委員 今回の事故原因究明調査目的というところからちょっと入らせていただきたいと思います、簡単にいきますので。  今回の事故原因究明調査の私どもの最終的な目的というのは、こういった同種の事故の再発防止対策を確立するということでございます。こういう認識で取り組んでおりますが、こういった考え方に基づきましてロシア側と共同して調査を行うということで、その検査記録についても、例えば、九三年にシンガポールの造船所で修理を行ったことなど、その概略を既にロシア側から入手しております。しかしながら、詳細な修理記録についてはまだ入手いたしておりません。  この事故原因究明と申しますのは、冒頭に言いました再発防止対策の確立という目的でございますが、この究明上、修理記録の入手というのは大変有用であるとは考えておりますが、既に、船首部の詳細な調査を通じまして所要のデータの入手が図られているということでございまして、これらのデータに基づき、事故再発防止に必要な対策を提示することは十分可能な状況であると考えております。
  135. 木島日出夫

    ○木島委員 それでは、ロシア側は昨年八月に定期検査をやったと言っておるようですが、その修理経歴は入手していますか。
  136. 山本孝

    ○山本(孝)政府委員 昨年八月に定期検査を行ったということは聞いておりますが、その内容については、詳細な報告は得ておりません。
  137. 木島日出夫

    ○木島委員 これは、地元の福井新聞等、既にマスコミ筋からも伝えられている事実でありますが、ロシア側は、昨年八月、定期検査を補修も含めて一カ月半やった、ナホトカ船舶補修工場でやったと言っているようであります。しかし、これは地元福井新聞のことしの三月二日付「重油汚染ロシアルポ「ナホトカ」の海」第四回目の連載記事でありますが、そのナホトカ船舶補修工場のマネジャーであるミハエル・アルヒビィエンコさんは、「昨年八月、ナホトカ号はドック入りしていたが、この時は検査でも補修でもなかった。スクリューに巻き付いたワイヤをはずしただけだ」と語った、こんな重大な報道もなされているわけであります。昨年八月です。  ロシア側は、一カ月半も補修をやったのだ、検査をやったのだと言っておるようでありますが、大変な食い違いであります。これは、ことし一月の事故の原因に決定的な影響を与えることにもなりかねない問題であります。  昨年八月の定期検査の状況がどうだったか、運輸省も外務省も、本当にしっかりと徹底した調査をすべきではないのでしょうか。
  138. 山本孝

    ○山本(孝)政府委員 お答えをいたします。  先ほど説明申し上げましたように、今回の事故原因究明調査というのを私どもがやっておりますのは、同種事故の再発防止対策というところを主眼に置いてやっております。一方、事故の原因究明調査というのは、いろいろなねらいというのが当然あり得るわけでございますが、このナホトカ号の事故原因について、例えば、私どもが事故再発防止対策の確立上必要としております内容は、個々の関係者がどのような責任があるのかといったような、その内容まで立ち至って追及するということまで行うというのを一義的な目的にはしておりません。  個々の関係者の責任関係に立ち入ったようなことをやらなくても、私どもの事故原因調査では、再発防止対策が十分に可能なところの原因は、今までの漂着した船首部の詳細な調査等、あるいはロシア側から提供していただいたもともとの設計図面とか積みつけ状況、あるいはその時点におきますところの気象、海象の状況、こういったところがら十分に解明が可能であると考えております。  こういった状況でございますので、先生の御指摘のような、だれが、何を行い、あるいは何を無視し、あるいは何を知らせなかったかといったような責任の所在の追及といったようなところまでは、私ども日本側の原因究明の範囲としては、私どもはそこまでは、まあ、ねらいとしていない、踏み入っていないということで、ロシア側もこの点については了解ということで協力をしてもらっております。
  139. 木島日出夫

    ○木島委員 とんでもない話じゃないんですか。  運輸省、あなた方が作成した「海洋汚染防止法の体系図」というものを今持っています。海洋汚染防止法、大事なのは「未然防止措置」と「事後措置」だとあります。「未然防止措置」で五項目挙がっています。五項目の中の大事な柱の一つに、「船舶等の構造・設備規制」という欄があります。それは、一つは「構造・設備の基準」、もう一つは「定期的検査の受検・証書の受有」。再発防止で決定的に大事な未然防止の中の「船舶等の構造・設備規制」、こうあなた方は位置づけているわけでしょう。  今、この事故で最大の問題になったのは、ロシアの老朽船が日本海を頻繁に航行しておる、その危険性が指摘されたわけでしょう。ロシアの老朽船がたくさんの重油を積んで日本海に入ってくるのを何とかチェックしないと、またこういう事故が起きるんじゃないかと指摘されているわけでしょう。  それで、先ほど指摘したように、案の定、調査の過程で、既に鋼板の損耗率が平均約三割にも達しておる、三分の一に鉄板の厚さが減っているという状況も出てきたわけでしょう。そうしますと、昨年八月にこのナホトカ号が船舶修理補修工場で補修も含めて検査をしたとか、九三年にシンガポールで補修をしたということを言っているようでありますが、本当に補修がされたのか、鉄板の取りかえがなされたのかどうなのか。事故原因を究明し、そしてそれを通じて二度と再びこんな事故が起きないようにする、そのための一番大事な柱じゃないんでしょうか。  全然運輸省はそういう調査をやる気がないんですか。おかしいんじゃないですか。
  140. 山本孝

    ○山本(孝)政府委員 私ども再発防止対策として必要であると考えておりますのは、先生が御指摘ございました、構造基準が基準として十分なものであるのか、また定期的な検査が十分に行われて補修もされているのかといったようなことを明らかにして、それが適切に行われるようにするということで進めておるのは、私どももそのような方向では進めております。このナホトカ号の事故原因の究明というところで、現在ロシア側から実際に提供を受けておりますもともとの設計状況とかそういったようなこと、これからまず見ていかないといけませんですが、実はこのナホトカ号の当初の設計は、我が国の現状のルールから照らしましても、十分に強度を有する設計がなされておるという状況でございます。  それは、先ほど来御指摘いただいております衰耗率との関係でいいますと、もとの板の厚さというのは、二十六年前の設計ですから、かなり現状の設計基準よりか厚目にといいますか、余裕を持った設計の部分もございます。そういったことからいきますと、現在の衰耗状況で残っている部分の強度がいかがであるのか、こういうことについては、なお解析を進めないときちんとした断定的な答えは出てこなしという状況でございます。  そういった点と、それから激しく衰耗している場所がございましたが、この場所が本当に今回の起こった事故のような態様にどれだけの重要な強度を分担している部分であるのか、こういったようなこともやはり詳細な分析をしないと、突き詰めて断定的に物を申すこともできない状況でございます。  そういったところからいいまして、私どもが目指しております原因究明は、もともと設計基準が正しく設定されているのかどうか、これが一点目ですが、これについては調査委員会の最終報告を待たないと何とも申し上げられませんが、この点についてはいわば国際的な常識の範疇にあるであろうということは、この時点で言い切るのは問題一がありますが、大きな問題かどうかという点はちょっとまだ言い切れない。要するに、問題は少なかったんではないかなという感じは持っております。  次、残る問題ですが、このような衰耗状況で、あのようなあらしの中で十分であったかなかったのかわからないまま走っていた、このことについては、もう既にこれは、それ自体は大変私どもが追及すべき問題、課題でございますので、この点を今追及しているわけです。  こういった状況に先立ちまして、こういった状況といいますのはこの原因究明が断定的に明らかになるような状況に先立ちまして、これまで得られましたこの事故の態様から考えてこの再発防止のために何をすべきか、これは仮にこの事故の原因がこの老朽船の衰耗によって起こされた事故とするという前提に立っての話ではございますが、既に、こういった事故防止のために国際的な枠組みの中で何をすべきかについて我が国政府はしかるべき提案を行い、現在、この検討を国際的な機関で前向きに進めてもらっているところでございまして、再発防止のために打つべき手は的確に全部打っておると考えております。  加えて、ちょっと最終的にもう一回申し上げたいと思いますが、この事故を起こした直接の原因者はだれであってどのような責めを負うべきかについては、私ども日本政府としてそこまで立ち入って追及するというのは、ちょっとまだそこまでは考えておりません。
  141. 木島日出夫

    ○木島委員 外務政務次官がおりますから、ちょっと所見をお聞きしたいのですが、昨年八月に本当にナホトカ号の定期検査がどのように行われたのか、三年前のシンガポールでの補修というのが本当にどのように行われたのか、大変な疑義が提起されているのです。日本政府としてロシア政府に対して、この辺についてしっかり調査をしてもらいたい、そしてまたしかるべき報告も求めるというのは、日本政府の立場として当たり前だと思うのですが、外務省としてそうやっていただけませんか。
  142. 高村正彦

    ○高村政府委員 双方で専門家が出て、当局間の会合が行われているわけでありまして、そしてその原因究明についていろいろなデータを、日本側とそしてロシア側が共有しなければいけない、そういう中で、日本側専門家がこういうデータが必要だというものについては、それを手に入れることに外務省として全面的な協力をしていきたい、こういうふうに考えております。
  143. 木島日出夫

    ○木島委員 今のわずかな私と運輸省とのやりとりの中でも、昨年八月の検査の状況について私のもっと調べるべきだという要求に対して、ああいう答弁でしょう。あれじゃだめだと思うのですよ。本当の調査はできないと思うのです。それを一言加えておきたいと思うのです。  ことしの二月十四日、私は予算委員会で、日本海をどのぐらいのタンカーが航行しているのか把握しているかという質問に対して、ほとんど把握してないという答弁でありました。その後運輸省は調査をされたようであります。どんな状況だったか、簡潔に報告を願いたい。
  144. 小幡政人

    ○小幡説明員 お答え申し上げます。  船舶保険会社ロイズの保有いたしますデータをもとに、各船舶の出発港と目的港から日本海を通航したものと推定されます総トン数五百トン以上の外航タンカーについて調査したところによりますと、一九九六年の一年間で 日本海を通航する外航タンカーは千八十七隻でございます。航海数で見てみますと、延べ九千七百七十一隻となっております。  このうち、日本の港に入出港することなく韓国やロシアの港に入出港するもの及び通過するだけのタンカーが、延べ四千八百八十二隻あると推定されます。ほぼ半数に上っておる状況でございます。
  145. 木島日出夫

    ○木島委員 国別について、簡単で結構ですから報告してください。
  146. 小幡政人

    ○小幡説明員 日本海を通航いたしますタンカーの隻数が、先ほど申し上げましたように九千七百七十一でございますが、このうち、一番多うございますのが韓国関係の隻数でございまして三千隻余り、それから次に多いのが日本でございまして二千七百隻余り、その次がロシアでございまして七百から八百程度、こういう内訳でございます。
  147. 木島日出夫

    ○木島委員 年間一万回ほど、タンカーが日本海を通航しているわけであります。  ことし七月に富山で、日本、ロシア、中国、韓国四カ国が一堂に会して第一回北西太平洋海洋汚染防除フォーラムが行われます。これは北西太平洋地域海行動計画、NOWPAPと言っておりますが、これの具体化のための非常に大事な機会であります。日本政府として、この大事な機会に、油流出事故緊急時の国家間協力体制の確立、それだけじゃなくて、タンカー事故、重油流出事故等を起こさない予防体制をどうこの日本海を取り巻く沿海諸国でつくり上げるかということが本当に大事だと思うのです。そういう観点から、外務省、運輸省がこの会議に臨む基本姿勢がどうなのか、最後にお伺いをしたい。  私からは、ぜひこの会議に、日本の港に寄港しないで通過するだけのタンカーであっても、こういう事故を起こしたわけでありますから、日本海に入ってくるタンカーの入ってくる日時、コース、船舶、積載油の状況などお互いに事前通告する、そういう枠組みを日、ロ、中、韓、北朝鮮、この五カ国であるいは四カ国でつくるべきではないか、そういうことをこの富山の第一回フォーラムで日本政府は提起すべきじゃないかと御提案も申し上げて、外務省と運輸省、この会議に臨む基本的なスタンス、御答弁願って終わります。
  148. 朝海和夫

    ○朝海政府委員 国連の環境計画のもとに、委員指摘の北西太平洋地域海計画がございまして、この地域海計画のもとでのフォーラムを七月に富山で開催することを考えておりまして、所要の準備を進めておるところでございます。  このフォーラムは、各国との情報交換促進を第一の目的とするものでございまして、今回の七月の会合では、油流出事故の再発防止であるとか、あるいは事故発生時の速やかな対応のための対策について関係国の間で話し合いたいと考えております。そうしまして、このフォーラムを通じて関係国の間での協力推進に努めてまいりたいと考えておるところでございます。
  149. 小幡政人

    ○小幡説明員 運輸省といたしましても、このナホトカの貴重な経験を報告する等によりまして、この第一回の会議で実働的な国際協力体制ができるように積極的に対応していきたいと思っております。
  150. 木島日出夫

    ○木島委員 終わります。しかし、地元から、さらに油回収船を日本海側にぜひ配備してもらいたいという強い要望もあることを運輸省もしっかり受けとめていただきたい。そしてまた、そういうことをすることがロシア、中国、北朝鮮に対しても本当に大事なことだということを外務省もしっかり認識してこの会議に臨んでいただきたいということを要望いたしまして、終わらせていただきます。
  151. 草川昭三

    草川委員長 次回は、来る十七日委員会を開会し、締めくくり総括質疑を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後零時十三分散会