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1997-04-22 第140回国会 衆議院 環境委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月二十二日(火曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 佐藤謙一郎君    理事 杉浦 正健君 理事 萩山 教嚴君    理事 村上誠一郎君 理事 持永 和見君    理事 長内 順一君 理事 田端 正広君    理事 小林  守君 理事 藤木 洋子君       大野 松茂君    河野 太郎君       桜井 郁三君    桜田 義孝君       鈴木 恒夫君    砂田 圭佑君       園田 修光君    目片  信君       大野由利子君    武山百合子君       中村 鏡一君    並木 正芳君       松崎 公昭君    桑原  豊君       秋葉 忠利君    土井たか子君  出席国務大臣         内閣総理大臣  橋本龍太郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石井 道子君  出席政府委員         環境政務次官  鈴木 恒夫君         環境庁長官官房         長       岡田 康彦君         環境庁企画調整         局長      田中 健次君         環境庁企画調整         局地球環境部長 浜中 裕徳君         環境庁自然保護         局長      澤村  宏君         環境庁大気保全         局長      野村  瞭君         環境庁水質保全         局長      渡辺 好明君  委員外出席者         厚生省生活衛生         局水道環境部環         境整備課長   三本木 徹君         厚生省生活衛生         局水道環境部環         境整備課産業廃         棄物対策室長  仁井 正夫君         資源エネルギー         庁公益事業部発         電課長     真木 浩之君         建設省河川局開         発課長     竹村公太郎君         環境委員会調査         室長      鳥越 善弘君     ————————————— 委員の異動 四月二十二日  辞任         補欠選任   奥山 茂彦君     園田 修光君   辻元 清美君     秋葉 忠利君 同日  辞任         補欠選任   秋葉 忠利君     土井たか子君     ————————————— 本日の会議に付した案件  環境影響評価法案内閣提出第七八号)  派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 佐藤謙一郎

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出環境影響評価法案を議題といたします。  この際、昨二十一日、本案審査のため京都府に委員を派遣いたしましたので、派遣委員からの報告は、便宜私からいたします。  派遣委員は、団長として私、佐藤謙一郎と、持永和見君、田端正広君、藤木洋子さん、大野松茂君、奥山茂彦君、砂田圭佑君、目片信君、大野由利子さん、武山百合子さん、桑原豊君、辻元清美さんの十二名でありました。  現地における会議は、京都宝ヶ池プリンスホテルにおいて開催し、まず私から、派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事順序等を含めてあいさつを行った後、意見陳述者より意見を聴取し、これに対し各委員より熱心な質疑が行われました。  意見陳述者は、中央環境審議会企画政策部会長森嶌昭夫君、環境総合研究所所長環境行政改革フォーラム代表幹事青山貞一君、京都大学大学院理学研究科教授京都大学総合博物館長河野昭一君、全国公害弁護団連絡会議事務局長弁護士村松昭夫君、名古屋大学名誉教授島津康男君の五名でありました。  以下、その陳述内容につきまして、簡単に御報告申し上げますと、中央環境審議会における主要な論点及び検討経緯並びに法案に対する見解、環境庁長官意見形成に当たっての第三者的な審査機関設置必要性本法拘束力を持った実体法的性格とする必要性、透明で公正な実効ある制度とするための住民参加の位置づけ、身近な自然環境保全環境影響評価あり方等について、それぞれの立場から、意見、要望が述べられました。  次いで、各委員から陳述者に対し、環境庁長官意見形成のための第三者機関設置必要性とそのあり方事業実施後の事後調査あり方対象事業の選定に関する住民参加必要性許認可決定過程における透明性の確保、情報公開必要性公開を妨げる要因等の諸問題について質疑が行われ、滞りなくすべての議事を終了いたしました。  以上が会議の概要でありますが、議事内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。  なお、今回の会議の開催につきましては、地元関係者を初め、多数の方々に多大の御協力をいただきました。ここに深く感謝の意を表し、報告を終わります。  お諮りいたします。  現地における会議記録が後ほどでき次第、本日の会議録に参照掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐藤謙一郎

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     —————————————     〔会議記録は本号(その二)に掲載〕     —————————————
  4. 佐藤謙一郎

    佐藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長内順一君。
  5. 長内順一

    長内委員 おはようございます。新進党の長内順一でございます。  今回の環境アセスメント法案につきましては、先日、趣旨説明に対する質問を本会議場でさせていただきまして、きょう、なおかつ一部確認をしたい部分がございまして質問をさせていただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。  まず、率直に申し上げますけれども、今回の法案、大変御努力されて、内容的には評価される部分が非常にたくさんあるというふうに私も思っております。しかしながら、一部、特に地域の声だとかそれから自治体の声、こういうものをどういうふうに受けとめていくのかという点につきましては、私は考えるべきものがあるのではないか、こんなふうに思っているところでございます。  初めに、政令市の件についてお尋ねをしたいと思うわけでございます。  政令都市につきましては、御存じのように、いろいろな制度都道府県と同じような格付にあるのではないか、私はこんなふうに思っております。ところが、今回の法案の中では、この政令市市長意見は直接事業者の方に述べることができない、こういう形になっているわけでございます。私なんか地元が札幌市という政令都市なものですからこだわるわけではございませんけれども、政令市自体が国から機関委任を受けている仕事というのは非常に広く、またその責務というものは重いものがあると感じ取っております。  そんな中で、やはり環境保全のために政令市も一生懸命取り組んでいるわけですから、従前どおり都道府県知事同格事業者に直接意見を述べられる、そういう場が私はぜひとも必要と考えるわけでございまして、この点につきまして、まずお伺いをいたしたいと思います。
  6. 田中健次

    田中(健)政府委員 政令指定都市事業者に対して直接意見を述べることにしてはどうかという御質問でございますけれども、事業者側から見ますと、行政意見はできるだけ集約をされて述べられることが望ましいということがございます。また、法案対象といたします事業は広域的な環境影響が懸念されるものでございまして、広域的な環境行政に責任を有しております都道府県知事地方公共団体レベル意見を取りまとめるということが適当であるということで、原案のようなことにしておるわけでございます。  お話にございましたように、政令指定都市に係ります地方自治法大都市特例がございますけれども、都道府県の行う市民の日常生活に直接関連を有します社会福祉事務等大都市に移譲をしているものでございまして、今回の法案のように、知事市町村長の両者の意見を聞くこととしている仕組み大都市特例はなじまないということでございまして、こういう理由によりまして、その他の一般市町村と同様に、都道府県知事市町村長意見を聞いて事業者意見を述べる仕組みとしたものでございます。  都道府県知事事業者意見を述べるに当たりましては、御案内のとおり、法案上「市町村長意見を勘案する」ということになっておるところでございまして、市町村長意見地域の実情を踏まえた貴重な意見として取り扱われるというふうな仕組みにはなっておることを、御理解をいただきたいと思います。
  7. 長内順一

    長内委員 御回答はそういう視点もあろうかと思いますが、実際にはどうなんですか、一般市町村から見たら、大変狭い地域というような今お話ございましたけれども、私なんかは政令市というのは、人口だけではなくて、面積的にもかなり広いものがあるというふうに考えてございまして、どこから考えても、従来の仕事を見ておりましても、知事政令市市長というのは同格でほとんど話をしております。それが、地域の開発だとか保全だとか、こういう問題について一々知事を通さなければならないということはまことにいずい状態になるのではないかな、この辺についてはさらに御検討をお願いしたい、こんなふうに思います。  ちょっと時間の関係もありますので、進みたいと思います。  それから次に、今申し上げましたように、都道府県知事準備書段階意見を述べられる、こういうふうに法案の二十条の第一項ではなっております。ただ、ここで問題になるのは、「政令で定める期間」というふうになってございます。これなんかは、私はもっと柔軟に対応していただきたい。  例えば、閣議アセスで申しますと、これなんかは三カ月、いわゆる九十日間しか時間がないわけですよ。これは、意見を述べよといっても非常に検討期間が短過ぎる。したがって、本当にまじめにこの問題に対して意見を言いたいといった場合、期間としては例えば三カ月なんというのはないような期間でございまして、改めて、この知事意見を申し出る期間、例えば知事の方から延長などの話があった場合それに応じるとか、もっとやわらかく考えるべきであると思いますけれども、この点についてはいかがでございましょうか。
  8. 田中健次

    田中(健)政府委員 本法は、国が関与をいたします大規模事業について、全国どこでも同じ手続環境影響評価が行われることが適当であるという考えでございまして、また、そういうことで、地域によって手続内容が異なる場合には隣接県で手続の進行が異なるおそれが生ずるなどございまして、弊害がいろいろあるというふうに考えております。  したがいまして、知事意見提出期間については、政令によりましてやはり統一的期間を定めることが適当だというふうなことでございまして、政令でその期間を定めるということにいたしておるところでございます。  それで、知事意見提出期間につきましては、先生お話ございましたように、これまでの閣議決定によります要綱の運用実態、それから、地方公共団体制度がございますけれども、これの運用実態等を考慮いたしまして、政令において適切な期間を定めていきたいというふうに考えております。繰り返しますけれども、本法手続法を定めるということでございまして、手続等につきましては統一的な期間にいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  9. 長内順一

    長内委員 今も地域お話がありましたけれども、私のところは北海道なんですが、実際に意見を述べよと言われて、条例では審議会なんかをやります。それから、それに基づいて、現地がどうなっているか調査をするわけですね。半年は雪で埋まっているわけですよ。そうなると、三カ月の間に、今、これから期間については考えていただけるというお話でございますが、雪の下に埋まっている状況では決められた期間の中で現地調査はできません。したがいまして、この期間については十分考慮していただくよう改めてお願いをしたいと思います。  それから、続きまして、一つアセスメントが終わる、ところがなかなか事業に着工できないというケースがあろうかと思います。この場合の対応ということを、私は、柔軟にそして積極的に考えるべきであろうと思います。  例えば、最近になりまして、諫早湾の干拓の問題だとか、それから中海の問題だとか、また、北海道におきましては千歳川の放水路だとか、士幌鉄道の問題だとか、ナキウサギがいるということでなかなか進まないわけですが、かなり前に事業計画されていて、これが何らかの理由で実現していない、着工していない、こういうものについては、時がどんどんたっているわけですから、これは改めてアセスメントをし直すといいますか、踏み込んでするというようなことも必要だ、こんなふうに私は考えておりますが、いかがでございますか。
  10. 田中健次

    田中(健)政府委員 本法案は、環境影響評価の結果を許認可等に反映させる仕組みでございまして、環境影響評価手続が終わりました後、許認可等がなされた事業につきましては、事業実施に対するその許認可等が見直される場合はともかくといたしまして、環境影響評価を再実施をするということを一律に法律上の義務として課することはなかなか難しいのではないかというふうに考えております。  また、環境状況変化当該事業者以外の特定の者の行為によることが明らかな場合があるなど、事業者に再実施を義務づけるということは必ずしも合理的とは考えられない場合もあるわけでございます。  そうしたことで、この法案におきましては、一定の場合を特定をして必ず再実施をするということを義務づけるということまではいたしておりませんで、事業者が再実施できる旨の規定を置くことによりまして、実質上、適切に再実施が行われるように措置をいたしたものでございます。
  11. 長内順一

    長内委員 ちょっと長官、「時」のアセスメントという言葉、聞いたことあるでしょうか。あるか、ないかで結構ですけれども。もし聞いたことがあれば、御感想なんかもちょっといただきたいと思います。突然で済みません。
  12. 石井道子

    石井国務大臣 今まではちょっと聞いたことがございませんでした。
  13. 長内順一

    長内委員 ごもっともだと思います。  これはローカル版でありまして、実は北海道で、自然ということを非常に大事に考えてございまして、その中で今私が申し上げましたようなさまざまな事情から事業が停滞したり、それから時間が非常にかかり過ぎるといった場合の施策に、時の流れという一つ物差し、客観的な物差し、つまり時代変化を踏まえて事業を再評価していこう、こういうことを今施策として盛り込んでいるわけであります。  私、行政というのは非常にまじめな取り組みをしていると思うのですよ、基本的には。ですから、その基本には、何か間違いを起こしちゃいけないだとか間違いがあってはいけないだとか、こういう思いがありまして、それが逆に、一度始めた事業は何としてでも貫徹するというような姿勢があるのではないかな。私は、間違いが許されないというその観念が、事業の先送りだとか、それから硬直的な物の考えに、大変失礼な言い方になりますが、つながっていくのではないかな。これからは、間違いはある。間違いがあるというよりも、時代のバックグラウンドがどんどん変わってくれば、それに応じた形の事業評価をすべきである、こんなふうにも考えておるわけであります。  そんな意味では、今の局長答弁、もう一度。例えば東京なんかは、あれは事業から五年ですか、五年たったら見直すだとか、具体的に踏み込んでございますね。期間を設定するだとか、それから、環境庁長官意見を述べて、これについては非常に長くかかっている、したがって、そろそろ見直しをしてもいいんじゃないかなとか、そういう措置があってしかるべきじゃないか、固定的に考えることはないというふうに思いますが、局長、いかがですか。短目にお願いします。
  14. 田中健次

    田中(健)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたが、私どもといたしましては、先生指摘のように、環境状況の著しい変化といった条件をアセス実施後の経過年数で定型的に判断するのは非常に難しい、こういうふうに考えております。したがいまして、その間に環境状況がいろいろ変わってきた、あるいは予測の前提が崩れておるかもわからない、こういうときには事業者が再実施できる旨の規定を置いておるところでございます。  御指摘の「時」のアセスお話、これは、先生お話ございましたが、環境状態変化というだけではなくて、社会的状況必要性変化等を踏まえた、施策そのものの再評価のことではないかというふうに考えられるわけでございます。こうした場合には、基本的には、それぞれの事業を所掌いたします主務省庁において判断されるべきことではないのかな、こういう考えがいたします。
  15. 長内順一

    長内委員 局長、そうなんです。これは施策についてなんですが、私が申し上げているのは、環境影響評価についてもそういう視点を取り入れるべきである、一度やったとしても、時代がもう十年も十五年もたてば、周りの地形も変われば経済の状況も変われば人の流れも変わる、その中でやはり柔軟に対応する、そういう必要があるのではないか、このような視点で申し上げましたので、御了解というか、御理解をいただきたいというふうに思います。  それでは、あと、実はこの間の本会議でも伺った点でございますが、端的にお答えいただきたいと思います。  今の環境影響評価がずっと段階を追って今回されるようになってございますけれども、今、海外ではそれよりももっと先進的な、計画段階だとか構想段階でこのアセスメントをきちっとやっていこう、特に政府の行う事業についてはこれはしっかりやっていかなければならない、こんな方向にあるというふうに伺っております。  俗に言うSEA、戦略的環境アセスメントというのでしょうか、これについて先般代表質問環境庁長官にお伺いいたしましたところ、やはり国際的な動向だとか、それから我が国状況をしっかり踏まえた上でこれについては積極的に取り組んでいくんだ、こういう力強い御答弁をいただきました。  これは具体的に長官にお伺いしたいんですが、今後どのような形で取り組んでいかれるのか、お示しをいただきたいと思います。
  16. 石井道子

    石井国務大臣 環境基本法第十九条におきまして、国は、環境影響を及ぼすと認められる施策を策定、実施するに当たっては、環境保全について配慮することとされております。そして、個別の事業計画実施に枠組みを与える政府計画政策につきましても、環境保全上の配慮が必要であると考えております。  このたびの法案におきましては、我が国の過去の実績などを踏まえまして、港湾における土地利用等のマスタープランであります港湾計画についてのアセスメントを盛り込んだところでございますが、今後、中央環境審議会の答申に従いまして、国際的な動向我が国での現状を踏まえて、政府計画政策についてのアセスメント手続等あり方について具体的に検討を進めていく所存でございます。
  17. 長内順一

    長内委員 具体的に検討ということでありますから、このようなことも含めて、やはりまだまだこの環境アセスメント法律の中身についてこれからも十分議論をし、そして本当に純粋な気持ちでこの環境アセスメント法案が、要するに社会の中で信頼をかち得て、そしてこれからの次世代へ向かって環境保全していく有効な手段になり得るようさらに御尽力をお願いしたい、こんなふうに考えるものでございます。  それでは、もう総理もお見えになりましたので、次の質問にちょっと入りたいと思います。  実は、ダイオキシンの件について、残った時間わずかでございますが、触れてみたいと思います。総理のお時間がありますので、答弁は、済みませんが、簡単に、端的にひとつお願いしたいと思います。  四月の十一日に、例のあのダイオキシン発生の源と言われております一般廃棄物焼却施設、一千八百五十四施設調査報告が行われているわけでございます。これは厚生省暫定基準八十ナノグラム以上のものについて調査を行っているわけでございますが、この調査の結果について若干伺いたいと思います。  報告されているその施設が、一千八百五十四施設報告を求めているのに対して、わずか六二%の一千百五十施設しか回答がない。私は、この問題につきましては非常に重要な問題だというふうに考えておりまして、この数字というのはまことに低調な、ひょっとしたらダイオキシンの問題について意識が非常に低いんではないだろうか、こんな点を懸念をしているわけでございます。そこで、厚生省としてこの数字、どのように御判断されているのか。  それからもう一つ、千八百五十四施設について調査をしておりまして、残り七百四施設回答がありません。これはどういうことなのか。今言ったような意識の低さなのか。私は、この都道府県について、一体どこの都道府県回答がないのか、これについてもお示しをいただきたいと思います。
  18. 三本木徹

    三本木説明員 調査のおくれている理由でございますけれども、ダイオキシン類測定分析には高度な機材及び熟練した人員を必要とするため、測定が可能な分析機関の数が少なく、また、測定に時間を要することから測定がおくれているのではないかと認識しております。  厚生省といたしましては、いまだ報告のない施設につきましては、早急に測定報告するよう県を通じて市町村を指導しているところでありまして、今後とも引き続き強力に指導してまいりたいと考えております。  なお、都道府県単位での報告の少ないところという御指摘でございますけれども、一応すべての都道府県において未報告施設は残っております。県によりましては報告した率が少し差はございますけれども、残っております。したがいまして、いまだ報告のない施設につきましては、早急に測定報告するようあわせて指導していきたいと考えております。
  19. 長内順一

    長内委員 やはりこのダイオキシンについての、私も今まで認識が非常に薄くて、この問題に対しての関心度というのは低かったなというふうに自省をしておりますけれども、御案内のように、ダイオキシンというのは全く自然界には存在しない化学物質で、人類がつくり出した最強最悪の毒物とも言われているわけであります。これはサリンの二倍だとかというふうにも伺っております。  極めてショッキングな事例としては、あのベトナム戦争枯れ葉剤としてまかれた。ドクちゃん、ベトちゃんのあの姿を見れば、本当に重大なことだなという意識に立つわけでありますけれども、私は、今回のことで、人間の命だとかそういうものと、それから、何というんですか、焼却施設に対するコスト、これをはかりにかけるような状況ではならないというふうに思うわけですよ。だから、そんな意味からしますと、もっと強力に何がどうなっているのかしっかり調査する必要があるのではないか、こんなふうに思います。  そこで、今回の調査、総点検調査といいながら、なぜ一般廃棄物公共施設だけで調査をされたのか。例えば学校だとか病院だとか、ほかにも民間施設がございます。それからさらに、産業廃棄物施設、これなんかは実際に相当の量のダイオキシン発生しているという報告もあるわけでございまして、そんな意味では、総点検と言うからにはこういうところもきちっと調査すべきだというふうに考えますが、いかがですか。
  20. 三本木徹

    三本木説明員 ダイオキシン発生源といたしましては、市町村が設置するごみ焼却施設以外にも数多くあるというふうには承知しておりますけれども、実際のダイオキシン発生量を見てみますと、この市町村ごみ焼却施設から八割ないし九割が排出されているのではないかというふうに言われております。そういう意味で、優先的にその実態を把握するために、市町村ごみ焼却施設対象調査実施をお願いしたところでございます。  当然でございますが、この状況を踏まえた上で、御指摘のその他の焼却炉についても、今後その対策について検討してまいることとしております。  なお、産業廃棄物焼却炉におきます焼却量というのは、この都市ごみ焼却炉に比べますと極めてわずかであるということもございますが、地域状況では、産業廃棄物施設が集中しているという問題もございますので、そういうことも踏まえた上で、この実態について、今後の対策について十分検討してまいりたいと考えております。
  21. 長内順一

    長内委員 実際に、例えば埼玉県の所沢市、あそこでは市で条例をこの間つくりましたね。これはほとんど産業廃棄物ですよ。だから、産廃施設というのは少ないとおっしゃっているけれども、私、先ほど言いましたように、この単位を見ますと非常によくわかるのですが、例えば、基準でいきますと、〇・一ナノグラムだとかピコグラムだとか、もう一グラムの何兆分の一、何十億分の一という単位で基準をこしらえているではありませんか。これはいかに猛毒性の高いものかという裏づけになると思います。  そんな意味では、今おっしゃったように、早急に総合的なダイオキシン実態調査を私はやるべきだ、こんなふうに思いますが、もう一度お願いしたいと思います。
  22. 三本木徹

    三本木説明員 一般廃棄物ごみ焼却施設につきましては、現在その対策を至急立てるということもしております。それから、産業廃棄物焼却炉については、実態のみならず、既に、規制をするべく今作業をしております。その点だけ御報告させていただきたいと思います。
  23. 長内順一

    長内委員 この手のいろいろな法案、例えば環境庁においては大気汚染防止法、それから厚生省におきましては廃棄物処理法ですか、こういう中において基準だとか何かが決められておりますけれども、これが法律によって規制されているという事実はありません。  時間の関係もありますので、最後に、この問題について、私は、これから法的規制も含めて取り組んでいくべき、こんなふうに考えておりますが、それぞれの省庁からの御答弁をいただいて終わりたいと思います。
  24. 野村瞭

    ○野村(瞭)政府委員 環境庁といたしましても、ダイオキシンの問題は、国民の健康への影響を未然に防止するという観点から対策を急がなければならないという認識をいたしておるところでございます。  昨年の五月に有識者から構成される検討会を設けまして、ダイオキシン対策のあり方について鋭意検討を進めているところでございます。この検討会の最終報告は近々取りまとめられる予定でございますが、今後検討会の成果を踏まえまして、御指摘のありました規制的措置の導入も含めまして排出対策を早期に講じてまいりたい、そのように考えております。
  25. 三本木徹

    三本木説明員 廃棄物処理法で規制するための基準の策定作業に今入っております。
  26. 長内順一

    長内委員 終わります。
  27. 佐藤謙一郎

    佐藤委員長 これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田端正広君。
  28. 田端正広

    田端委員 新進党の田端正広でございます。  総理には大変お忙しい中御出席いただきまして、まことにありがとうございます。一時間という非常に制約された総理のお時間でございますが、中身の濃い議論をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  橋本総理環境問題には大変造詣の深い政治家だと私も認識しておりまして、そしてまた、今回のこの環境影響評価法案の国会提出に際しては、大変御尽力いただいたというふうに理解をしております。  そういう意味では、ことしは十二月に京都で地球温暖化防止第三回締約国会議というものが行われるわけでありまして、日本の役割というものも大変大きいものがあろうかと。実は昨日、我々委員会も、京都において、そういう意味を込めて地方公聴会を開かせていただきましたけれども、そういった意味で、私は、また、六月の国連の環境特別総会には総理にも御出席いただいて、日本の環境行政に対する姿勢というものを明確に示していただければという思いもしております。  そういう意味では、ことしは日本にとって環境元年に当たるのではないか、今回のアセス法のことも思い、そういうことを感じるわけでございますが、それにしても、今回、この法案が果たしてどうだったのかという、ちょっと遅過ぎたのじゃないか、そういう気もいたします。  その上でお伺いいたしますが、この二十年来の課題がここで大きく解決されようとしていますけれども、OECD加盟国の中で最後になったというのは大変不名誉だと思います。ここで一気に、そういう環境先進国への日本というものを総理の手で切り開くのだ、そういう御決意をぜひ示していただければ、こう思いますが、いかがでしょう。
  29. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 環境影響評価制度というものに対してそれだけのウエートを置いた御意見をいただいたことにはお礼を申し上げます。  そして、今私は、実は非常に思い出深く拝聴しておりましたのが、昭和四十五年秋のいわゆる公害国会と言われました国会、私は厚生省の政務次官として、本委員会におきましても答弁側に回っておりました。  そして、今そこに土井先生がおられますけれども、土井先生のもとで副議長を務めておられた鯨岡さんが環境庁長官の際に、本当に閣内で孤軍奮闘されて、前回廃案になりました環境影響評価制度というものを閣議決定し、国会に提出にこぎつけられた。しかし、残念ながら、それが審議されないままに解散によって廃案になった。  そして、その後どうするかを本当にこの委員会を主軸とした各党の関係者も真剣な相談をした中から、その鯨岡案として——鯨岡案ではありません、政府案でありますけれども、鯨岡さんが努力して提案された法律案を現実の制度として各産業界にはめ込んでしまえ、そして実績をつくることの方が先だ、そのような思いから、閣議にこれをルールとして確認をさせた上で、それ以来今日まで環境影響評価制度というものを閣議決定のまま実績を積み重ねてきました。  それだけに、今回中央環境審議会の答申を受け、同時に、それ以来の実績を踏まえてこの法案が作成をされましたこと、これは着実に、これは政府だけではなく産業界自身も努力をされた結果でありますけれども、地方自治体等々、さまざまな角度からの努力が積み重ねられ、環境影響評価制度というものを実行してきた、積み重ねてきた成果として、私は、ここまでよく来たと率直に思います。  そして、これで本案が衆参両院においてお認めをいただけますならば、次のステップに踏み出すことができる、今そのような思いでおります。
  30. 田端正広

    田端委員 ぜひその次のステップへ、大きく二十一世紀に向けて進んでいっていただきたい、こう思います。  ところで、今回のアセス法になぜ発電所を一本化しなかったのだろう、こういう思いがいたします。そういう意味では国民にとって非常に不可解である。  この法律には二つの特例が明記されています。その一つは、発電所について、第五十九条において「この法律及び電気事業法の定めるところによる。」こうなっていて、電事法に非常に重きを置いている、それが一点です。  第二点は、放射性物質の適用除外ということが、第五十二条において「この法律規定は、放射性物質による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染については、適用しない。」こういう表現になっております。  つまり、発電所は通産省の所管であり、原子力関係については科学技術庁である、こういうことかと思いますけれども、しかし私は、本来なら、環境問題という大きい立場からいけば、いずれもこのアセス法の中に一本化すべきであったのではないか、こういう思いもするわけです。少なくとも発電所については統一法とすべきじゃなかったかと。  環境保全ということについては、国境ということは、境目ということはないわけでございますし、また、縦割り行政とかそういうことは超越しなきゃならない問題だ、こう思うわけですが、総理、いかがでございましょう。
  31. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 大変乱暴な、ちょっと図面から遠くてお見受けづらいかもしれません。この図面を見ながら申し上げますと、この黒く網をかけております部分、これは今回のアセスメント法では入っておらない、しかし、現在、電気事業法に基づいて発電所のアセスとして既に定着した仕組み部分であります。言いかえれば、環境影響評価制度というものをそれぞれの仕組みとして実行するようになりましてから、発電所についてはそれだけの厳しいチェックというものが行われてまいりました。  そして、過去二十年間と答弁書にはなっておりますけれども、電源立地を円滑化していきますために、通産主導の省議アセス制度というものの中で、手続の各段階から国が監督指導をしながら仕組みをつくり上げてきた。そして、それが定着をし、民間事業者の個別事業が同時にその電力の安定供給という国の施策に強いかかわりを持つ大変特殊な性格を持っているということもあったのでありましょう、従来からそれだけの厳しいチェックというものが現実に行われてきたわけであります。  仮に今回の環境影響評価法案手続だけで終わりといたしますと、この網かけの部分は現在よりも軽くなるという結果を生じます。これは、果たして一体いかがなものだろう。当初、何か両省が縄張り争いをしているというような話が聞こえまして、両方を呼んで聞きましたときに私が感じたのは、そういうことでありました。  ですから、実は環境影響評価法案手続に加えて、電気事業法をこの際改正する、そして、今までは省議アセスという実行上の制度で行ってきたその手続をきちんと法案に明記することによって、手続の各段階で国が関与をするという特例をつくりました。  言いかえれば、これは電源立地に関して従来から行ってまいりました環境アセスメントの手法、その部分で今回の環境影響評価法からは外れている部分を電気事業法に明記したということであります。  その意味では、私は、こうした特例ではありますが、当然のことながら、発電所というものも環境影響評価法案対象事業一つでありまして、この環境影響評価法案に定める各種の指針あるいは手続はきちんと適用されるものでありますから、十分なアセスメントが行えるものだと思っております。  それから、原子力についてのお話がございましたけれども、これは、私どもちょうど野党になりました直後に環境基本法の御審議が本委員会で行われましたとき、私は野党の政調会長として質問に立ったわけでありますが、その環境基本法の十三条の中で、「放射性物質による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染の防止のための措置については、原子力基本法その他の関係法律で定める」、環境基本法そのものに実はこの規定がございます。そして、原子力基本法を中心とする体系で、やはり我々は放射性物質による汚染というものは対応すべきものだ、そして、その点においての法的な対応というものは既にできておることから、本法対象から適用除外という措置をとったと承知をしています。
  32. 田端正広

    田端委員 総理お話を聞いていますと、やはり縦割りというものが基本にどうもおありになるのかな、そういう感じがしてなりません。  今回の動燃の相次ぐ事故というものを見てみますと、国民は環境問題に非常に不安を持っているわけですが、総理は、この動燃事故に対して、動燃という言葉は聞きたくもない、何かこういうふうにこの前おっしゃっていたようですけれども、それは確かにそういういら立ちをお持ちかと思いますが、そういう気持ちはむしろ国民の方がもっと何倍も強いわけであります。  プルトニウムの再利用についての東海事業所の火災爆発事故では、もう連日、新聞に報道されていますけれども、組織ぐるみで虚偽の報告をした、隠ぺい工作をやっている、こういうことでもあり、また、二年前でしたか、「もんじゅ」のときにもうそが発覚した、そして今回また、「ふげん」についてはやはり重水漏れの通報を怠っていた、しかも、よく調べてみたら過去五年間で十八回も通報をしていなかった、こういうことであります。こういうことは、私は、地元の住民に対しても、地方自治体に対しても、非常に無視した事件である、こういう思いがしてなりません。  そういう意味から、この事件をどう教訓としてとらえるかということになりますと、今回のアセス法に照らして考えてみますと、地方自治体が直接、事業者に対して、事前においてもあるいは事後においても指導ということができなければ、同じようなたぐいの虚偽報告あるいは事件、事故がその他の環境問題においても起こる可能性がある、こういうふうに思うわけです。だから、私は、現場を一番知っているのが地方自治体ですから、地方自治体の機能というものをやはり生かす、そういう行政というものが必要ではないか。  今回、科学技術庁が動燃幹部を原子炉等規制法違反ということで告発されました。しかし、私は、これは非常に納得できない。それは、よく考えてみたら、科学技術庁の中にといいますか、そのもとに特殊法人の動燃があるわけで、監督官庁として、親が子供の責任を訴えているような、そういう感じがしてなりません。総理という立場からすれば孫のような立場になるんじゃないかな、こう思うわけでございまして、国民としたら非常に納得のしがたいところであります。  私は、この地球上での最大の環境破壊というのは放射能汚染である、こういうふうに思いますし、それはもうほとんどの国民がそう思っている、こう思います。そういう意味で、今回の事件というものを総理はどうお考えになっているのか、科学技術庁だから今回のアセス法と関係ない、そういうことで済むんだろうか。  それからもう一点、仮に、この原子力関係は科技庁の所管だから環境庁は関係ない、そういうことを続けていきますと、こういう大きな事件に対する、事故に対する事後の調査、フォローアップといいますか、その辺のところの考え方等にも非常にかかわってくる問題であります。したがって、環境影響評価の予測ということは大事なんですが、予測以上に、また事後の調査、フォローアップも大事であるということも同じことだと思います。  今回の事故は、そういう意味では、事後のクロスチェックの機関がない、だから私は、思い切って、環境庁が放射能関係をクロスチェックできるような、そういう体制を考えたらどうかと思いますが、いかがでございましょうか。
  33. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 まず、縦割り行政ではないかと言われましたけれども、先ほど私は、環境基本法の第十三条、「放射性物質による大気の汚染等の防止」、これが成立をした時点、我々は野党でありましたがとお断りを申し上げて御答弁を申し上げております。  同時に、それでは今電力に課しておると同じアセスメントを他の部分にも適用する必要があるかといえば、私は不必要なアセスまで課す必要はないと思います。その意味では、そういった縦割りというような御批判を受けることは、私、この問題については大変心外です。  その上で、私は今度の動燃の一連の行動というものに対して、怒り、情けないという思いを通り過ぎて、本当に何遍も何遍も、一日に五遍も六遍も記者から同じことを聞かれれば、もう聞きたくないと言いたくなる気持ちもおわかりがいただけると思うのです。そしてしかも、それが虚偽の報告、虚偽の報告、虚偽の報告という積み重ねであれば、怒り心頭に発する気持ちもおわかりがいただけると思います。  そして、私の立場から本当に冷静に申し上げますならば、「もんじゅ」の事故が起こりましたとき、動燃は虚偽の報告というものがいかに事態を深刻にするかを学んだはずであります。そして、情報を秘匿することがどれほど影響を大きくするかも学んだはずであります。  そして、それを反省した中から円卓会議のようなアイデアも出てき、そしてある程度の信頼を回復しかかったところで、今度は東海村の事件が起きました。そして、低レベル放射性廃棄物の固化体に処理をする部分での、最初は火災発生からでありますけれども、その火災の消火確認といったことから、放射性物質の漏れの問題から、次から次へと、報告おくれと称するのか、それを隠ぺいしたというのかわかりませんが、そういう報告が相次ぎました。  昨日は決算委員会で答弁をしております。そして、この問題に入ろうとする直前に、新たに内部の作業員が靴底に放射性物質を付着させて出てきたという報告がありました。本当にいいかげんにしてくれと言いたくなる気持ちもおわかりがいただけると思います。  そして、科学技術庁自身が、自分たちだけの力では国民の信頼を取り戻すことはできないだろうということから、まさに第三者的なグループをつくり、徹底的に今この解明に入るということで、昨日からその状況がスタートをいたしました。ここからどのような厳しいお答えが出てくるかわかりません。しかし、その外部的なチェックというものの結果を私どもは大変重く受けとめてまいりたいと思いますし、その上で動燃事業団というものをどう処置していくかについても結論を出さなければならないと思っております。  そして、私は、本当にこうした原子力施設の事故の情報伝達あるいは原因究明というものについて、これはその自治体への通報、内閣への通報も、例えば「ふげん」のケースはやはり丸一日おくれでありました。そういう状況、当然のことながら一般常識からいっても敏速に行動すべきものだと思いますけれども、この究明にはやはり私は専門的な知識が必要だと思いますし、現在の組織とするならば、科学技術庁の担当者ということになりましょうが、それ以外の外部の方々にもお力を拝借することで、私は、今後、正確かつ迅速な情報伝達、そして公開というものにさらに万全を期すようにしたいと思います。  それ以上に、こうした信じられないような事故を拡大していく動燃の体質というものそのものを変えていきたいと考えております。
  34. 田端正広

    田端委員 いずれにしても、私は地元という現場というものをもう少し大事にした行政というものが大事だろう。特に、環境というのはもっと機能的に地方自治体と連絡をとり合うことが大事だろう、こう思います。  その意味で申し上げますが、今回の法律と各自治体の条例との関係でありますけれども、自治体の中にはすぐれた先駆的な条例や要綱というものもたくさんあるわけでありまして、また経験とか実績とか、そういうものも地方自治体の中にたくさんあるわけであります。  そういう意味で、この法律と条例がどういう関係になるのかということになりますと、先日来の議論だと、国の法律は大規模な事業であって、その他小さいものについては自治体でやるんだ、こういうことであります。この法律の六十条の中には、「この法律規定に反しないものに限る。」こうなっていますけれども、それでは公聴会など条例でやっていたことができなくなってしまいます。  私の地元大阪に関西新空港がございますが、関空の第一期の工事は、当時はまだ省議アセスもなくて、大阪府の要綱でやっているわけです。それを見ますと、知事の主催の公聴会を三回もやっていますし、それから事業者の説明会も五回、その他大阪府の評価委員会が延べ六十二回も開かれています。関係市町村は十三市町村がありまして、準備書の提出から知事意見の提出に六カ月半の時間をかけている。  第一期のときはそうであったのですが、今回第二期事業ということになりますと、仮にこのアセス法が適用されるとどういうことになるかといいますと、公聴会が開催できなくなる。この法律の二十条第一項で、「政令で定める期間内に、」という時間的制約をしているために、いろいろな意見を聞く時間が非常に困難になってしまう、こういうふうになります。  私は、そういう意味では、非常に後退したことになりはしないかという心配をしているわけです。現場を知っている地方自治体の主体性を小さくするものになってしまって、また地方分権推進という今の流れからいっても逆行することになるのではないか、こういう思いがしておりますが、いかがでございましょうか。
  35. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 上乗せ横出しというのは、昭和四十五年の公害国会でも随分議論になり、法律と条例の関係等、厄介な議論をした記憶を持っております。ただ、私は、今お話しになられましたことは、必ずしもそうはならないのではないかと思います。というのは、この法案環境影響評価準備書を作成する前の手続として、新たに、環境影響評価手続を必要とするかどうかを個別の事業ごとに判断するスクリーニングの手続、また調査などの項目を地方公共団体や住民などの意見を伺って選定する手続、スコーピングを導入する。現在の地方公共団体が設けておられる制度と比較いたしましても、大半の場所に比べては、私は充実した内容になっていると思います。  同時に、手続を踏む各段階におきまして、地方公共団体意見は十分反映される仕組みになっていますが、例えばそこで意見を、見解を述べられる知事さんが、御自分の意見形成をするために例えば公聴会あるいは審査会等の手続をお踏みになる。この法律に違反しない限り、当該地方公共団体における手続というものは条例によって定められるわけでありまして、知事さんが自分の意見を形成する前に公聴会をおやりになる、これを妨害してはいないと私は思います。ですから、地方公共団体自身の工夫によって、この部分は十分に御意見は入れていけるのではないでしょうか。  こうした点を考えますと、私は地方の実情に即して十分なアセスメントが行える仕組みになっていると考えておりますし、地方制度で、今我々が環境庁からもらっております資料を見ていきますと、例えば、スクリーニングは法案で導入しましたけれども、地方の制度で取り入れられているというところはないと思います。スコーピングは幾つかの例があります。それぞれを見ましたとき、私は、現行の各地方自治体のお持ちの制度に対しても、それを妨害するものではない、むしろこれを活用することが可能だ、そのように思います。
  36. 田端正広

    田端委員 時間が来ましたのでこれで終わりますが、まだまだこの問題には、情報公開の問題とか住民参加の問題とか、あるいは代替案の問題とか、いろいろな問題が残っているかと思いますので、またの機会に議論させていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  37. 佐藤謙一郎

    佐藤委員長 小林守君。
  38. 小林守

    ○小林(守)委員 民主党の小林でございます。  総理には、大変お忙しい中、本委員会に御出席をいただきましたことを感謝申し上げたいと思います。  まず最初に、今国会で廃棄物処理法の改正法案が参議院先議で可決され、今、衆議院の方に送られているところでございますけれども、五年を経過した廃掃法の大改正後の今回の改正では、特に、五年前にも大きな論議を呼んだ問題で先送りになった、いわゆる不法投棄の原状回復措置の法制化の問題でありますが、今度の廃掃法の改正では、この原状回復措置が法制化されることになりました。そういう点では大変大きな意義を持っているというふうに評価をしているところであります。  もちろん、不法投棄対策として、原状回復措置のほかに、すべての産業廃棄物にマニフェスト、いわゆる伝票、積み荷伝票をつけさせるというようなことや罰則の強化など、不法投棄対策全般にわたっての強化、改正が含まれているわけですけれども、原状回復措置について、これは、環境汚染問題という観点からするならば、厚生省所管の問題というよりはすぐれて環境庁所管の問題だろう、このように考えているところでありまして、この不法投棄によって環境汚染が拡大するというようなことについては、何としてでも早急に防除したり除去しなければならない、このようなことになろうかと思います。  そういうことで、実はきょう、厚生省の方からも答弁という形で、出席をいただいているわけですけれども、総理の御見識の深さ、そして長い間の取り組みの経験等も踏まえまして、差し支えなければ総理の方からすべて答弁していただくとありがたいと思うのです。  現在未解決の不法投棄事件等についてどのように解決していくのか。法で原状回復措置がとられるけれども、今日まで既に不法投棄事件で放置されている問題については新しい法の適用にはならないということがあろうかと思います。  その辺について、現在未解決の不法投棄事件についてどのように解決をしていくのか、まず最初にそれをお聞きしておきたいと思います。
  39. 仁井正夫

    ○仁井説明員 お答えいたします。  今回の廃掃法の改正案におきまして、お話ございましたように、原状回復のための制度は改正法の施行後のものが対象でございます。法施行以前の、現在問題になっているようなものは対象にはならないものでございますので、これらにつきましては、個別の事案ごとの事情に応じて適切に対処してまいりたいと考えております。
  40. 小林守

    ○小林(守)委員 既に不法投棄されている大変な大きな問題については個別に対応していくというようなお話でございます。  そこで総理にお聞きしたいと思います。  新聞報道等でちょっと見たのですが、昨年の十二月に高松地裁の判決がございまして、香川県の土庄町の豊島の産廃の不法投棄問題について、総理が高松市にいらっしゃったときに、記者会見で何らかの措置をとっていきたいというような姿勢を示されて、その後、公害等調整委員会に持ち込まれた事案について、一定の解決の方向を模索しているというような報道もいただいているわけであります。  高松地裁判決では、廃棄物の島外撤去、そして住民等に対する慰謝料の支払いというような判決が出ておるのです。これらについて、総理の方の指導もあったと思いますけれども、一定の解決の方向が見出されているというようなことについて、総理の方から御答弁いただきたいと思います。
  41. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私の郷里は岡山県でありまして、ちょうどお向かいの話でありますから、この豊島の不法投棄の問題というのは、まだそう世間に報道されます前から地域の問題として時々耳に入り、懸念をしている問題でありました。ところがそれがだんだん深刻化し、今、議員をして質問をせしめる、それだけ大きな問題になりましたことを本当に申しわけなく思っておりますし、特に、ある意味では象徴的な重みを持ってしまいましただけに、この豊島の問題というのはできるだけ早く解決することが必要だと考えております。  そして、それに対し国も何らかのお手伝いができるかということが聞かれ、でき得る限りの協力は惜しまないということを、これは個人の立場でありましたけれども、申し上げたことは確かにございました。  今、公害等調整委員会のもとで鋭意調停が進められておりますのは議員御指摘のとおりでありますが、関係者間で合意がされました場合、廃棄物の溶融処理などを行う施設の整備につきまして国としても必要な支援をしていきたい、現時点においてそのような考え方でこれに対処しております。
  42. 小林守

    ○小林(守)委員 何らかの、溶融化施設とか、そういう形での一定の無害化のための施設をつくって、いわゆる不法投棄されたものについて解決をしていこうというような努力だと思いますが、これについて事業主体が、当然、これは香川県になるのだろうというふうに思うのですね。それで一定のそういう形がとられたとしても、その後、第二次産廃というのですか、一定のものが必ずできてくるわけですね。それが全部、例えば骨材とか道路の基盤材に使えるということであればいいのですけれども、一定の廃棄物は必ず、無害化されたとしても残ると思うのですね。この辺について、どこへどう島外撤去するのかどうか、そこら辺の問題。  それから、香川県の財政負担についてはどうなのかというような問題についてはまだ明らかになっていないのではないか、このように思うのですが、総理、いかがでしょうか。
  43. 仁井正夫

    ○仁井説明員 事務的な部分を御説明申し上げます。  豊島に残された廃棄物をどうするかということで、先ほど総理の方から御答弁ございましたように、今、県それから公害調停の申請人、それから公調委事務局といった三者で精力的な調整が進められております。そこでは、九年度どういうプラントをつくっていくかといったような調査を進めていく。  それで、その調査の過程で、どういった再利用ができるか、あるいは、残された処分しなければいけない残渣物がどういったものが出てくるかというのが、いろいろな処理方式によって明らかになってくるかと思います。それで、その中で一定のものが選択されて、そのときに残されたものについてどうするかというのは、またそこの申請人あるいは県との間で協議の上決められるものと考えております。
  44. 小林守

    ○小林(守)委員 個別的な対応しか法的には難しいと思うのですが、各省庁にわたる問題がほかにもいろいろあります。  例えば、福島県のいわき市の常磐炭鉱跡地にドラム缶四万五千本の廃油が不法投棄されている問題についても、現在、福島県等で対策中だというふうに思います。もちろん、これは基本的には廃棄した事業者に責任をとらせるのが当然なんですが、その事業者がわからなくなってしまったり、また支払い能力というか負担能力が全くないというような状況の場合はどうにもならぬという問題があって、しかしながら、環境汚染は進んでいくという形の中で、原状回復措置で法的に何とかしようということになったわけでありますけれども、このようにもう既に大規模に行われてしまった問題については、個別的に何らかの知恵を出して取り組んでいかないとどうにもならぬというふうな問題だろうというふうに思います。きょうは問題点の指摘にとどめます。  実は、環境影響評価法についても、先ほど長内理事の方からもありましたけれども、いわゆる大規模な開発事業等で、住民の反対運動などもあったり、いろいろな問題があって事業が未着工、休止状態にある事業についても、既に閣議アセスの決定後の事業ということになるならば、新しい法律の適用はないんですね。さかのぼって新しい法律によって環境影響評価を行うということについては、これは法的に難しいというふうになるわけですね。  たまたま楚辺通信所の問題ではさかのぼってやったではないかというような問題があるわけですけれども、法的な問題ではなくて、環境の問題についてはやはり政治の決断で、また国みずからが事業者なわけですから、国の責任で、少なくとも新しい環境課題である生物の多様性とか生態系の保全とか、こういう項目については、領域については、その時点ではなかったものなんです。しかし、国際的にそういうものがはっきりと大事なんだという認識が高まって、一定に定着したわけでありますから、それらについての法律が今できる。そうすると、それがなかった時点、そういう認識がなかった時点の問題について、環境は客観的なものですからどんどん変化する。法律の問題ではないわけでありまして、そういう点で、私は、必要な大規模の事業、例えば、二十年以上も未着工、事業休止状態にある干拓事業とかそれからダムの事業とかスーパー林道とか、こういう問題については、私は、遡及させて、法的に遡及するのではなくて、それに準じた個別的な対策が求められているのではないか、このように考えております。  先ほどありました、北海道の「時」のアセスという考え方は、社会経済情勢の変化ということによって、そういう調査項目でその事業必要性とか意義について見直しをしようということなんだというふうに思いますが、これについては、主務省庁が行うということの意味はよくわかっております。  しかし、環境行政の中でも項目が変わってきている。さっきも言ったように、生態系の保全や生物の多様性という観点から、例えば諫早湾の干拓事業については見直してはどうかということは、あり得るわけですね。できるわけでありますから、政治の決断で中海の問題、諫早湾の干拓の問題について、社会経済情勢の変化という観点ももちろんありますけれども、しかし、環境項目としての生態系や生物の多様性という観点での見直しを政治の決断ですべきではないか、このように思うのですが、総理、いかがでしょうか。
  45. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 おっしゃること、全く私理解ができないと言うつもりはありません。殊に、幾つか例示で挙げられましたようなものの中には、現実に私自身がその現地を知っておるものもございます。  ただ、やはり、着工済みの事業に、既往にさかのぼって、事業着手前の環境配慮手続というものを行うということは、私は、それは既に難しい問題になっているだろうと思います。ですから、例えば、事業実施が決定されているけれどもまだ着工されていない、これは当然ながら、私は、法の手続によってアセス手続実施できるわけでありますし、そういう意味では、事案によりまして、アセス手続を行うことが必要な事業について対応できる規定がないとは言えないと思うのです。  ただ、その上で、着工してしまっているもの、これについて環境影響評価制度になじむかといえば、確かになじみがたい。ですから、事業着手後の場合、逆に、環境影響評価制度とは別の観点から、必要に応じてその環境状況変化を、例えばモニタリングしてみる、そういった、事案それぞれについて適切な環境配慮が行えるような努力というものは私も必要だろうと思いますが、環境影響評価制度そのものを当てはめるというのには、私は多少問題があろうと思います。
  46. 小林守

    ○小林(守)委員 必ずしも、環境影響評価を適用するのではなくて、それに準じた、またこういうものが必要ではないかというようなことについて、個別にやはりやる必要があるのではないかということを申し上げさせていただきまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  47. 佐藤謙一郎

  48. 藤木洋子

    藤木委員 日本共産党の藤木洋子でございます。質問をさせていただく機会をいただきましたので、早速お尋ねをしたいと思います。  ことしの十二月、二〇〇〇年以降の各国の二酸化炭素削減目標を決める気候変動枠組み条約の第三回締約国会議京都で行われ、日本は議長国としてそのリーダーシップが問われているところです。ところが、このCO2の排出量が、炭素換算にいたしますと約八千四百万トンという最も多い発電所事業が、エネルギーの安定供給という名のもとに、結果的にCO2排出量の削減を無視した長期エネルギー需給見通しや電源開発基本計画などの国のエネルギー計画に組み込まれております。  実際、九六年秋に開催をされました第百三十三回電源開発調整審議会では、約四百万キロワットという世界でも有数規模の上越火力発電所の立地が、CO2排出問題について議論をされずに承認されております。さらに、私の地元の神戸市では、今建設計画を進めております神戸製鋼所、これは二基で百四十万キロワットの石炭火力発電所でございます。また、和歌山県御坊市に建設計画を進めている関西電力の方は、四基で四百四十万キロワットの、オリマルジョンを燃料とする御坊第二発電所も、CO2排出問題についてはほとんど議論されずに計画が進んでおります。  これではとても、二〇〇〇年のCO2排出水準を九〇年の水準に安定させる、こういう九二年の国際公約は守れないと思うわけです。  そこで、総理にお伺いをいたしますが、CO2削減のためにも、長期エネルギー需給見通しや電源開発基本計画などの政策計画について、中環審答申でも指摘しておりますように、早期に環境影響評価制度評価対象とすべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  49. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 確かに、今議員が御指摘になりましたように、我が国は気候変動枠組み条約第三回締約国会議議長国として、本年十二月にはこの総会を運営しなければなりません。そして、その時点において、現在、九〇年レベルまで確実に我々は目標達成が可能であると言い切るだけの自信は、私自身にもありません。  そして、我々としては、その状況の中で、何とかこの目標に到達したいと考えておりますし、同時に、それが持続可能な開発と両立し得る環境というものの中で達成されることを求めております。  そして、そういう視点からまいりましたとき、我が国におきまして、国内のかつて主力でありました水力発電については、既に開発の限界に達しております。そして、石炭火力から石油火力への切りかえの中で、火力発電のウエートというものもなおある程度のウエートはふえつつありますから、これは将来を考えますと、化石燃料のこの地球そのものに残存する量の計算からいきましても、将来必ず、非常に厳しい情勢を迎えることになります。  そして、我が国の国内を見ますとき、二回のオイルショックをくぐり抜けてまいります間に、我が国の産業あるいは一般社会におきます省エネの努力というものは、相当程度、他国に比して厳しくこれは進められてまいりました。その上で、現在エネルギー使用量は依然としてふえ続けております。特に電力においてであります。  そして、その場合に、我々は今、原子力にかわる十分な能力を持つ他のエネルギー源を持っておりません。実験的に風力あるいは潮汐発電、地熱発電等々、さまざまなものが言われますし、テストプラントから多少大きなものまで今できつつある状況はありますけれども、原子力エネルギーというものにとって、例えばCO2とか、そういう問題になりました場合には、非常にこれはきれいなエネルギーということが言えます。しかし、非常な危険をもたらす可能性を持ち、安全性の上にも安全性を追求しなければならないものであることはまた言うまでもありません。そして今日、動燃の一連の事態が不信感を募らせていることも事実であります。  そうなりました場合に、果たしてそれだけ国民に省エネをお願いをし、エネルギー使用の水準を下げることは可能か。例えば、欧米に比して冷房の使用量の大きい日本は、ピーク時における発生電力を非常に高く必要といたしますし、それは全体のコストを割高にしている問題点でもあります。  我々は、今まさにそうした意味で、的確な内容の情報を、この変動枠組み条約に基づく情報の送付というものの中でも行わなければならない、事務局に送らなければならないということで、今後、取りまとめを急いでいる状況の中でありますが、これには相当国民にも御協力をいただかなければならない部分を持っている、私はそのように感じております。
  50. 藤木洋子

    藤木委員 しかし、原子力発電所は、「もんじゅ」だとか動燃事故でもわかりますように、いまだ安全性が確認をされてはおりませんし、事故が起きたら地球的規模で大変な影響を与えるということになるわけですから、これ以上の建設をすべきではないと思いますし、上位計画政策における環境への影響評価は、将来的な問題ではなくて、速やかに盛り込んでいただくことが必要だというふうに思っております。  時間がありませんが、もう一つ伺いたいと思います。  総理は、発電所アセスにつきまして、中環審答申を受ける際、森嶌部会長の、統一的枠組みとは別の意見があることに対し、多くの委員が懸念を持っていると伝えられておりました。きのうの公聴会におきましてもリアルにそのことを私は伺ってきたところですけれども、本会議答弁で、また委員会での答弁で、首相は、国の施策との関係が強いので特例を持ったというふうに述べておられます。  しかし、国との関係が強いからといって、環境影響評価制度の中で通産省の権限を強めて環境庁長官意見を低めるということは本末転倒だと思うわけです。森嶌部会長がたびたび強調しておられますように、環境アセスを骨抜きにするものでしかないと思うわけですね。  この法案で、環境庁長官意見は主務大臣の環境影響評価書の審査に際して行われますけれども、電気事業法改正法案では、通産大臣の環境影響評価準備書の審査に際して行われることになっております。さらに通産大臣は、評価書の審査で変更命令ができたり、罰則を担保にしているわけですけれども、これでは発電所アセスについて環境庁長官意見が十分考慮された規定とは言えない、それどころか、通産省の一層の権限強化になると思うわけです。  そこで、通産省と電気事業者が一体となった環境影響評価にならないように、環境保全に責任を持つ環境庁長官意見を十分尊重する規定にする、あるいは公正な審査を行う第三者機関を設置すべきだと思うのですが、その点いかがでしょうか。
  51. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 先ほどもお目にかけたところでありますが、現行、発電所のアセスというものがどのように行われているか、そしてその中で新たに今御審議をいただいております環境影響評価制度の中に取り込まれていない仕組み部分を、この網がけでお示しをしております。  そうすると、これは現在環境アセスメント実施している、その中身の方が、御審議をいただいている環境影響評価制度よりも、発電所に関しては厳しい部分であります。その厳しい部分を残してチェックをしようとするのがなぜ骨抜きになるのでしょう。環境影響評価制度として御審議をいただいているものに、発電所というものの持つ特殊な重みというものを、そのためにつけてあります現在行っている制度、それを緩めるということがいかなる意味を持つのか、私にはどうも、議員の御意見がもう一つ理解をし切れないでおります。  また、不必要な、あるいはこの電源立地の際にあわせて、他のすべてのものに必要とされないアセスメント手続を置くことは、事態を複雑にするだけだと私は思います。  ですから、環境影響評価制度の上に、まさに電力というものの持つ、発電所というものの持つ、現在既に行っている環境影響評価手続をきちんと法的に位置づける、それが間違っているとは私は思いません。  そして、環境庁長官の御意見というものは、環境保全行政を総合的に推進する責任を有しておられ、また、関係行政機関の環境保全に関する事務の総合調整を行う立場から述べられるものでありますから、免許等を行う者が十分慎重にこれは受けとめて意見を述べるべきものと思います。また、免許などの審査に際しての環境保全に関する審査、この場合におきましても、環境庁長官が述べた意見内容というものは十分審査に生かされ、反映されると私は思いますし、それが無視されたとき、それは世論を敵に回すという決断をする以外にないような話、環境庁長官意見というものはそれだけの重さを持っているものだと私は思っております。
  52. 藤木洋子

    藤木委員 これで終わりますけれども、環境庁長官意見は十分尊重していただきたいと思います。  私が申し上げたのは、電力九社に十人もの通産省の高級官僚が天下りをしている、こういう関係の中で、果たして公正な審査ができるであろうかということに疑問を持つわけでございます。公正な第三者機関の設置が必要だということを重ねて申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
  53. 佐藤謙一郎

  54. 秋葉忠利

    秋葉委員 社会民主党の秋葉でございます。  このアセス法案ですけれども、八一年、鯨岡兵輔環境庁長官のときに御努力が始まったというふうに理解をしております。ようやく法案が出てきたかという思いがあって、一方ではよかったという思いがあるのですけれども、同時に、欧米の水準には達していないという批判もございます。  橋本総理はかねてから環境の問題に非常にコミットしてこられた。事実、恐らく大蔵大臣のときだったと思いますが、環境についての法案ではなかったのですけれども、その中で環境の問題について答弁席から情熱を持って語られる総理の御答弁を聞いて、私は非常に感動した記憶がございます。その立場から考えると、半分は残念だという気持ち、もっと厳しい欧米レベルのアセス法がつくれたらいいなという気持ちは恐らくおありだと思うのです。  こうして総理みずからこの委員会できちんとした姿勢を示したいというところにかなりの熱意が私は感じられるわけですけれども、総理御自身のお考えとして、このアセス法案基本的な考え方として、例えば開発と環境というふうに対立関係でとらえた場合に、環境が優位に立つのだ、そういう原則を認める、その方向をはっきりさせたものなんだ、この法案では環境の立場から言えばまだ一〇〇%十分ではないけれども、環境優位の原則を立てるつもりなんだ、そういう認識でこのアセス法をとらえていらっしゃるのかどうか、まず総理のお考えを伺いたいと思います。
  55. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 秋葉さんとは前にも議論したことがありますだけに、あれ、どこで道が少し違ってしまったかなと、実は今御質問を聞きながら思いました。  というのは、我々、環境社会活動というもの、社会経済活動というもの、どちらかがどちらに優先するという考え方をとるべきではないと思っています。言いかえれば、まさに持続可能な開発というリオ環境サミットのときの一つのスローガン、私はこれが本当に実際をよくあらわした言葉だと思っているのです。まさに持続可能な開発、その持続というのは、今我々が地球上に持つ環境であり、自然であり、こうしたものを保ち続けることを可能にし、その中での開発、そんな意味でしょう。  そして、この環境基本法の中にも、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会を構築していく、これが基本理念として位置づけられております。  まさに私は、現在御審議をいただいておりますこの法案、今、議員も鯨岡さん以来と言われました。私は与党の中で鯨岡さんが提出される法案に提出するまでかかわっておりましたので、もっと長い思いがしますけれども、環境保全行政というものを推進していくために、そしてその後のまさにリオ・サミットその他の環境についての概念を踏まえてつくられた法律、そのように考えております。
  56. 秋葉忠利

    秋葉委員 現実の社会の中では、おっしゃるように持続可能な開発、その中に環境と開発との調和ある妥協点といいますか、あるいはその調和する姿を具体的に探索するというのが、もちろん一応の筋を通した表現の方法だと思います。しかし、現実問題として、環境考え方とそれから開発という考え方が、利害関係において真っ正面からぶつかるということもまた現実でございます。  そこで、そういった場合に、それは個々の場合にはいろいろな妥協点の探り方というのがあると思いますけれども、一般論として、基本的な哲学として、その両者をうまく調和させるための総理基本的なスタンスといいますか、哲学といいますか、そのあたりはどういうふうにお考えになっているのでしょうか。
  57. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 これ、役所流の答弁に自分流を加えてみようかと、一瞬いたずらをする気が起きたのですけれども。  私、本当に開発と環境というものを対立させてしまってはいけない、そのためにこそ、実はアセスメント法の役割がある。言いかえれば、環境保全に関して適正な配慮がきちんと行われ、その上で開発が行われるという、それを担保するためにこの法律があるのだと私思うのです。  実は、私がちょっと一つ引いてみたいなと思いました例は、その場合の環境への配慮というものがいわば机の上における頭の体操ではいけないということなんです。そういう例は今まで実は過去に幾つもございました。  割合に大きな移動の行われている例えば野生の猿の群れがいる。そこに道路を掘り込みでつくる。そして、人間としては一生懸命猿に協力をするつもりで、猿のための歩道橋を用意する。しかも、そこに草を張り、そして時には栗をまく。結果として、そこは猿の一番要警戒地帯となり、群れは分断される。こういう例もございました。  あるいは、非常に注意深くしたつもりの道路が冬場凍結をし、その凍結を防ぐために地下を深く掘り、水脈を切り、その水脈の下にある原生植物が全滅した。  これはいずれも、デスクプランとしては非常に当時として先見的な研究の上につくられたものばかりであります。言いかえれば、私は、まさに環境保全に関して適切な配慮をする、そのための環境影響評価法案だと申し上げましたけれども、その影響評価がデスクプランであってはいけない、いかに専門家の知識をそこに反映したものとして評価がなされ、それが後に生かされるか、すべてはそこにかかるのではないか、そのように思います。
  58. 秋葉忠利

    秋葉委員 今の例にしても、大変深い意味を持つ例だと思います。  その具体的な例のもう一つなんですが、アセスをしてもしなくても、事後的にやはり問題があるというようなことが生じるケースがございます。  私が現在考えておりますのは、例えば諫早湾の干拓の問題なんですけれども、ムツゴロウが絶滅してしまうということが言われております。これは事後的に、アセス段階では十分に措置ができなかったけれども、もう既に干拓の事業は始まっているけれども、しかし、環境の面から考えて、これを中止するようなことを当然考えてもいい事例ではないかと思います。  その点について総理のお考えを伺いたいのですが、私は、干拓事業を中止すべき理由として三つ考えてきましたので、申し上げたいのですが、一つは、ムツゴロウが絶滅するということ。これは先日の新聞でも、総理も御心配なさっているということを読んで大変うれしく思いました。  それから二番目には、農水省の中間報告というのが、これが隠されていた文書なんですが、最近出てまいりまして、この文書によると、所期の目的、これは防災のために干拓をするということになっていますが、所期の目的が全く達成されないということがはっきりといたしております。  それから第三番目の理由として、これは昭和天皇の歌なんですけれども、こういうのがございます。題として「有明の干拓を憂えて」という前書きがついていて、「めずらしき海蝸牛も海茸もほろびゆく日のなかれといのる」、こういう気持ちを表明した歌がございます。祈るという言葉を使った歌はこの一首だけだ、昭和天皇はたくさん歌をお詠みになりましたけれども、その中でもこの一首だけだということを聞いております。これは日本の自然を愛する多くの国民の気持ちでもあると思います。  このほかにも理由はありますけれども、この三つの理由があれば、私は、この干拓事業について早急に見直しをする十分な理由たり得るのではないかと考えておりますけれども、例えばこういった事後的な問題について総理としてどうお考えになるか。特に諫早湾の問題については、総理としてここでイニシアチブをとって再検討するというような方向を打ち出していただけるものかどうか、伺いたいと思います。
  59. 石井道子

    石井国務大臣 諫早湾の干拓事業につきましての経緯についてお答えをしたいと思います。  この事業につきましては長い経緯がございます。公有水面埋立法に基づく環境影響評価につきましては、環境庁といたしまして昭和六十三年と平成四年に意見を述べてまいりました。そして、先月、三月の十二日でございますが、現時点での環境保全対策の進捗状況や締め切り後の水質予測を踏まえまして、入念的に配慮すべき事項について、農林水産省及び地元長崎県に申し入れているところでございます。
  60. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 実は、私自身、自分の目で一度見たいと思いながら、その干拓の行われます前から今日まで、実は諫早という場所を存じません。そのために、自分の目で見た上での意見を申し上げることはできませんけれども、今環境庁長官の述べられましたことに一つ私がつけ加えるとすれば、洪水調節の意味があるという説明を以前に受けておりました。そうしますと、これは全く実は違った視点でチェックをしなければならないもの、そういう点ではこの問題は私はなお不勉強でありまして、的確な意見を申し上げるだけの知識を現在持っておりません。申しわけありません。
  61. 秋葉忠利

    秋葉委員 ありがとうございました。資料等もお届けいたしますので、よろしく御検討のほどお願いいたします。  質問を終わります。
  62. 佐藤謙一郎

    佐藤委員長 これにて内閣総理大臣に対する質疑は終了いたしました。  質疑を続行いたします。杉浦正健君。
  63. 杉浦正健

    ○杉浦委員 杉浦正健でございます。  この環境アセスメント法案の審議に入りまして、もう二十時間近く審議が進んでおるわけであります。申すまでもなく、この環境アセスメント法案が成立すればと申しますか、ぜひとも成立させたいと願っておりますし、そうなると信じておりますが、そうなりますと、これまでの我が国環境アセスメントの歴史の一つの大きな区切りとなるものであることは申すまでもございません。また、我が国環境行政環境を守っていく、よくしていくという歴史の中でも画期的なものになるだろう、第一歩になるというふうに確信いたしておるところでございます。これは議論に参加されている同僚各議員が異口同音に申されておったことでもございます。  振り返ってみますと、環境問題というのは、公害という言葉が出てまいりました昭和三十年代の終わりから四十年代の初めごろにさかのぼるわけでありますけれども、アセスメントにつきましては、四十年代後半ぐらいでございましょうか、まず地方自治体による環境アセスから出発しておると伺っておるところでございます。条例とか要綱を制定されて取り組まれたというのがスタートであります。  昭和四十七年に閣議了解がなされて、政府レベルでの本格的な取り組みが始まりました。そして、再三触れられておりますが、総理も申されましたが、昭和五十六年には、廃案になりましたけれども、環境アセスメント法案が提出をされ、国会で審議をされました。廃案にはなりましたが、その法案を受けまして閣議アセスが昭和五十九年ですか、スタートいたしました。省議アセスその他法令によるアセスも続きまして、そして平成六年には環境基本計画が決まる。環境行政の前進にとって、それぞれ時期を画してまいったわけであります。  そういった、今まで法律によらない環境アセスメントにつきまして統一的な原理原則を打ち立てるというこの環境アセスメント法の制定であります。この法律が早く成立をして、二十一世紀に向かっていいスタートを切るようになることを切に願っておる次第であります。  本委員会において、質疑は、一つ法案としては異例に属する二十二時間の質疑時間、そして公聴会も昨日京都で行われました。また、総理の御出席をいただいて一時間質疑を行うということになったわけであります。  私は、全部の委員の方の議論を拝聴したわけではありませんが、ほぼ詳細にわたって質疑が出尽くしておる感がいたすわけであります。パーフェクトな案とは必ずしも言えない、人間のやることですからそういうものではございましょうが、この委員会における質疑を踏まえて、環境庁の方で十分な運用を図っていただけるものと期待いたしておるわけであります。  まず、環境庁長官の御所見を最初にお伺いいたしたいと存じます。
  64. 石井道子

    石井国務大臣 ただいま委員が御指摘なさいましたように、環境アセスメント制度は、大変長い経緯がございまして、さまざまな方々が御苦労し、御努力をされ、今日に至っているわけでございます。そして、このたびようやく法制化が具体化をしてまいったわけでございまして、大変長い時間をかけまして、いろいろと慎重に審議を行っていただいているところでもございます。  この環境アセスメント制度につきましては、今までの経験、経緯を踏まえまして、事業者または国民、国、そして地方公共団体というような、立場の異なる広範な主体の役割と行動のルールを定めたものであると思います。  そして、この制度が適切にかつ円滑に実施されて、事業についての環境保全の適正な配慮が確保されるためには、制度の趣旨をそれぞれの主体が正しく理解をしていただくとともに、それぞれに期待される役割を十分に果たしていただくことが非常に重要なことであると考えております。  環境庁といたしましては、このような環境影響評価制度の趣旨が正しく理解されますように、周知徹底を図れるように、制度の普及啓発に努めてまいりたいと思っております。
  65. 杉浦正健

    ○杉浦委員 総理もおっしゃっておられましたし、長官からも同じような御趣旨のお話があったわけであります。  お伺いしたい点は他の委員がもう全部聞いておられますので、私、いただいた時間、少しアセスメントからはみ出すかと思いますが、環境行政と申しますか、環境問題一般にまで広げた形で質疑をさせていただきたいと思います。長官も、役所の用意されたのは少しわきに置かれて問答をさせていただければと思っておるわけであります。  まず、私の政治の師匠でございまして、私の大恩人でもある福田赳夫先生の本から引用させていただきたいと思いますが、福田先生がお亡くなりになる直前に「回顧九十年」という本を出版されております。まとまった先生の残されたものはこれしかないわけでありますが、あるいは長官もお読みになったかもしれません。その中で、福田先生はこういうふうに言っておられます。ある意味では福田先生の遺言と言ってもいいこの本のエッセンスと申しますか、私どもに対する最後のメッセージと言ってもいい文でございますので、全文を紹介させていただきたいと思います。   あと六年たつと、二十一世紀である。今は二十世紀と二十一世紀との節目にいるわけだが、私はこの節目が人類始まって以来の変わり目になるだろう、と考えている。 この本の出版は一九九五年三月十四日であります。   二十世紀は大変な変化のある世紀だった。新エネルギーの開発、科学技術の発展と相まって、物質文化、つまり人間の物質的側面において大変革が起こった。これは特に経済発展において顕著で、GNPでいうと実に十五倍の大発展を遂げた。人類始まって以来の経済繁栄である。   人々の暮らしも革命的に改善され、地球上挙げての大量消費社会が出現した。しかし、物質文化が目覚ましく発展した結果、「作りましょう、使いましょう、捨てましょう」、これが当然の世の中になってしまったわけだ。地球上に存在するありとあらゆるものを使い荒らし、捨て散らすことに何の不安も感じず、それが当たり前だという気持ちでわれわれは今日に至った。   いまやその「栄光の二十世紀」が終わり、新しい世紀が始まろうとしている。私は二十一世紀について、ものすごく悲観的に考えている。   経済発展、生活の改善とは裏腹に、地球上のありとあらゆるものを荒らしまくったツケを払わなくてはならない段階がやってくる。資源、エネルギー、生活環境はことごとく悪化していき、このままで推移すると人類の生存すら危ぶまれる事態にならないとも限らないからである。つまりわれわれはこれから先、人類の存亡をかけて二十一世紀を考えなければならないのだ。  私は、この部分が福田先生の我々に残されたメッセージといいますか遺言だ、こう思っておるわけでありますが、私自身は福田先生ほど物すごく悲観的には考えておりません、もちろん楽観もしておりませんが。  この福田先生の遺言と申しますか、そういうふうにならないような二十一世紀にしなければならない、その橋渡しをしなければならないと思っておるわけでございますが、長官の御感想はいかがでございましょうか。
  66. 石井道子

    石井国務大臣 ただいま、政治家として、総理をされ、そして大先輩としての福田先生の大変貴重なお話を聞かせていただきまして、改めて、そのすばらしい先見性とそして適切な御判断、そのことに深く感動したところでございます。  日本の戦後五十年以上たちました中で、とかく経済、産業発展ということにとらわれ過ぎまして、大量生産、大量消費、大量廃棄という生活が当たり前のような形で、日本人はその恩恵をこうむってきたというふうにも思いますが、しかしこれは、今の時代、これは日本に限らず地球規模で、限りある資源を大切に使用していく、利用していくということ、そして、自然環境などにつきましても、一度破壊されたものをもとに復することは大変な労力と資金が必要でありますし、それも不可能な分野が多いわけでございますから、そういう点で、今この時代に、我々が今までの問題を反省をして、そして来るべき子供や孫の時代によい環境を残していかなければならないという重大な使命があると私は考えております。  そんなことで、これからも、環境の問題というのは、今すぐに結果が出るとか人体に影響がすぐあらわれるというふうなことではないだけに、非常に慎重に、かつ先見性を持って、科学的な知見をもとにした対策が必要でございますので、環境庁という立場におきましては、そのことを重要視して、そして取り組んでいかなければならないと改めて覚悟を新たにしているところでございます。
  67. 杉浦正健

    ○杉浦委員 大変すばらしい御答弁、ありがとうございます。  福田先生の言われる二十世紀の産業、科学技術の大発展、それによってもたらされた豊かな生活、そういう生活を、地球全体でいうと、エンジョイされない開発途上国も随分あるわけでありますが、少なくとも日本についてはすばらしいものがあったわけでございます。それによって私どもが得たものも多いわけでありますが、また失ったものも非常に多いわけであります。  本委員会における議論の中でも、そういった点に触れられたお話が幾つかありました。  私が拝聴しただけでも、砂田委員——砂田委員は私より一年先輩でありますが、お生まれが早いという意味でありますけれども、幼いころの明石の海のことを触れておられました。私も、あそこで一夏海水浴を楽しんだ人間でありますので、昭和三十三年でありますが、よく知っております。  また、武山議員でございますか、武山議員はうんとお若いわけでありますが、どぶ川、汚れた空気の中で育った、非常に悪い環境の中で幼いころを過ごされたというような、そういう思いから、いい環境を子孫に残そうというお気持ちを吐露しておられましたが、いろいろと感じるところがあったわけであります。  私自身は、砂田議員と同じように、豊かな豊葦原瑞穂の国の田園の中でばっこしながら育ったわけでございます。往時を思い起こしますと、今の環境と比べますと、比較にならないすばらしいいい自然の中で育ったものだ、こう思っております。  小学校唱歌というのを持ってきたのですが、本当に、今の子供たちは知らない、知ることのできない状況でありまして、かわいそうだと思います。  「春の小川」、これは大正元年に作詞作曲の曲であります。御存じの方も多いと思いますが、   春の小川は さらさら流る。   岸のすみれや れんげの花に、   匂いめでたく 色うつくしく   咲けよ咲けよと ささやく如く。   春の小川は さらさら流る。   蝦やめだかや 小鮒の群に、   今日も一日 ひなたに出でて   遊べ遊べと ささやく如く。 と続いていくわけですが、小川は水量も豊富でしたし、本当にこの歌にあるように春にさらさら流れておりましたが、今は春には水はありません。かんがい排水が発達しておって、もう乾田になっております。小川どころか、三面張りのコンクリートで水もない、本当にミゼラブルな川であります。この歌のとおりの小川を子供たちに残せるだろうか、じくじたるものがあるわけでございます。  環境庁長官、女性に年齢を聞くのは大変失礼なことだということは重々承知しておりますが、しかし、ほぼ私と世代は違わないようにお見受けいたしますのですが、長官は、どのようなところにお生まれになり、お育ちになり、どのような環境の中で成長されたのか、そして、それに比べられて、これからの環境行政、今、長にいらっしゃるわけですが、どういう思いでいらっしゃるか、お考えと申しますか、お気持ちを伺いたいと思います。
  68. 石井道子

    石井国務大臣 「春の小川」の歌、思わず何か口ずさみたくなるような感じでございました。  私は、埼玉県の所沢市に生まれまして、武蔵野の大変自然豊かな、そういう環境でもありましたし、しかし、東京に近いわけですから、かなり都会化してきたというふうな傾向が見えておりました。お嫁に行った先が飯能でございまして、これはまた緑と清流に恵まれましたすばらしい自然環境の中で過ごしてまいったわけでございます。  そのような中で、やはり最近の状況というものは、所沢は、やはりダイオキシンなどの問題で大変今苦労しておりますし、開発が非常に進んでおりまして、人口も、私がおりましたときの六倍以上になっているというふうな状態になっておりますから、さまざまな都市問題も抱えております。  そして、飯能市は、割合、開発を控えていた市でございまして、まだそういう点では自然環境に恵まれました土地でございまして、久しぶりに家の方に戻りますと、おいしい空気を吸わせていただいたり、緑と清流に親しんでくるというふうな状況でもあります。  そういうふうな中で、やはりこれからも環境保全に対する行政の果たす役割というものが大変重要であるというふうに考えておりますので、最近は市民とか国民レベルでの環境に対する考え方も随分変わってきたというふうにも受けとめておりますし、関心が高まってまいりました。  ですから、今までの、環境を汚染したり環境破壊をされました、そういうことを、この際、これから十分に取り戻していくような行政が必要になってくるというふうに考えております。そのために、やはり国政レベルにおいても、また、地方公共団体、また市民レベルにおきましての十分な連携の中で、よい環境保全のための政策が充実することを願っております。
  69. 杉浦正健

    ○杉浦委員 私は、サラリーマン時代につくったうちが川越でございまして、所沢も飯能も、ゴルフで最近はよく行くんですが、よく存じておりますが、私の学生時代、昭和二十八年から三十二年までのころは、中央線も、高円寺過ぎて吉祥寺あたりに行きますと、一面武蔵野でしたね。雑木林がずっとあって、本当に、いわゆる武蔵野という感じでありました。私が川越に移ったのは昭和四十年代前半なんですが、そのころは、所沢、狭山、飯能もそうですが、武蔵野の名残がずっと北の方に伸びておりまして、すばらしい雑木林が当時はありました。今はほとんどありません。これは先生御存じのとおりです。何とか武蔵野の情景が残らないものかなと思いながらサラリーマン時代、過ごしたわけでありますし、今もその思いは強くございます。  その武蔵野雑木林が、最近、新聞報道等によると、産廃の処理場になって大変な状態だ。これは長官も御存じだと思いますが、山林というのは、厄介なことに、調整区域でも市街化区域でもない、大部分白地であります。だから、所有者が提供すれば入り込める、一面厄介な存在でありますけれども、そんなことで問題になっているように聞いております。産廃処理法、今度厳しくなりましたから、そのあたりきちっと運用をしていただいて、私どもの身の回りにある自然、歴史的なものを含めて何とか後世に残していきたいものだなという思いは人一倍強くあるわけであります。  失ったものに、ほかにもたくさんありますけれども、私は、心、豊かな心があるのではないか。子供たちが悪い環境の中で育つわけですから、私どもの子供のころのように、学校から帰ってくるとかばんをほっぽり出して走り回る、村じゅうの悪餓鬼が集まって山野を跋渉するというようなことは今できません。川では泳げない、もう泳ぐのはプールしかだめだ。あれやっちゃいけない、自動車が危ない。僕らのころは自動車はありませんでした。ダットサンの三輪車が来てガソリンのにおいを振りまいていくと、ああ、これが文明の薫りだというわけで、後ろをついて走ったものでありますが、今は危なくて道路を歩くのも難しい、通学生はみんなヘルメットをかぶって歩いております。戦闘軍団じゃないかと思ったりするわけでありますが、そういう情緒のない中で成長している子供たちはかわいそうだと思います。  いじめの問題、いじめで死ぬ子が出ました。昔からもいじめはあったし、これからも人間社会がある限りいじめはなくならないとは思うんですが、いじめられて死ぬ子がいる、死ぬぐらいいじめる子がいる、これが一番の問題だろうと思うんです。私らのころは、けんかしても、けんかなれしておりますので、ここまでやればけがをするとか手心を加えながらけんかしたものでありますが、今の子たちはブレーキがきかない。心の病にかかっているとしか思えない。そのはしりが私どものふるさと西尾でございました。  このいじめが起こったのは、新開発、宅地造成をした新しい土地であります。周りは田園であります。在のところ、そこでは問題は今でも起こらないと思いますが、新開発の宅造地域で起こった。しかも、一部上場会社、トヨタ系の会社、名前は出しませんが、いじめた方が、ある社でいじめられた方がある社の子供だというような状態のもとで発生したわけであります。  そこは私の選挙区でありますので、よく出かけるところでありますが、片や田園風景がある、片や宅地造成された、まあウサギ小屋というよりはちょっといいですけれども、家が密集している地域、いかにも不自然な環境の中で起こった事件であります。子供たちの心に異変が起こっているのではないかというふうに感じる次第でございます。  日本の文化は木と紙の文化ですから、すぐ燃えますし、壊されます。ヨーロッパは石の文化、こう言われるわけですけれども、文化財、貴重なもの、そういったものが開発とともにどんどん壊されていく。私どもの地元にも古い家並み、江戸時代の情緒を残すようなところも多々あったわけですが、開発とともにそういうものがどんどんなくなっていく。何とかああいうものは残せないだろうか、そういう思いが一方ある反面、開発の名のもとにそういうものがなくなっていく、無念な思いを時々するわけでございます。  失ったもの、ほかにもあるかもしれませんが、それに比べまして得たものも多かった。あのころの生活に比べますと、衣食住、全面にわたって、あのころの状態からすると極楽のような生活をしているのじゃないかと思うのです。  子供の時代は、着るものなんかは本当にすってんてんで、私のうちは父は教員をしていましたが、安月給で、小さな農家に生まれ育ったのですけれども、衣類をお金を出して買うなんということはできませんでした。うちに機がありまして、おばあさんが機織りをする。今にすると高級品かもしれない、ホームスパンのもの。綿は栽培する、種を自分でとって、打ってもらうのは外へ出しますが、それを糸に紡いで、織って、その布で衣類をつくる、そういうことでございました。  それに比べれば、今は、子供一人分だけでたんすがいっぱいになるくらい衣類があるわけであります。それにまだ買いたいと言うから、もとのを出して着ろと言っても、いや今はこういうのがはやっているからと言われて、買ってやっている甘い親でありますけれども、豊かさという点ではもう想像を絶するものがあります。  食べ物もそうであります。世界じゅうの食べ物がお金さえ出せば手に入る。ぜいたくな時代になりました。私らの小さいころは、食べ物を残すとおばあさんや親たちにしかられました。我々の田舎では、もったいないということをおとましいと言うのですが、おとましい、おとましいといってしかられた。今でもその癖がついて食べ物を残さないものですから、太りぎみで困るのですけれども、それに比べると今の子供たちは、食べ残すのは平気、どんどん捨てる、そういうぜいたく過ぎる生活。閻魔様に地獄に行ったらしかられるのじゃないか、こう思うわけでありますが、豊かさであります。  住については言うに及びません。僕らの方では、家に二台、三台車があるのが普通の家庭であります。電気製品が普及したことは言うに及ばず。交通にしても、新幹線あり、飛行機あり。この間、秋田県の選挙の応援に行ってきましたが、朝七時の飛行機に乗って、八時にはもう秋田に着く。一日走り回って、夕方の飛行機で名古屋へ戻る。夕方の地元の会合に三つばかり顔を出す。昔の人から見たら何をやっているかというくらい、そんなことができる世の中になったわけであります。私のふるさとは東海道五十三次の宿が岡崎、藤川とありますが、東京—大阪も一月ぐらいかかって片道歩いたという時代に比べますと、隔世の感があると思うわけでございます。  ちょっと演説してしまって済みませんが、長官にお伺いしたい前提で言っておりますが、そういったすばらしい高度の生活を手に入れた反面、それを得たために生じた副産物、先ほど来議論になっておりますが、廃棄物。一般廃棄物産業廃棄物、原子力廃棄物、その処理で頭を痛めておる。水は汚れる、空気は汚れる、その対策で七転八倒する。今地球的規模で、COP3が開かれる、開かなきゃならないようなひどい状態に相なっておるわけでございます。福田先生が申されたとおりの状況ではないでしょうか。  それから、これから二十一世紀に向けまして取り組んでいかなきゃいけないということを考えますと、長官にお伺いしたいのは、今行政改革が問題になっていますね。省庁の再編成、視野に入っております。いろいろ議論が行われております。あるいは環境庁にも、政府行政改革委員会等の方からもいろいろお話があったかもしれませんが、こういう事態に立ち向かっていく体制として、じゃ、今の環境庁、調整官庁でありますが、これで本当にいいのだろうかというふうにいつも思うのですね。再編成の結果、環境庁がなくなるかもしれない。それは、環境庁という役所がなくなる、なくならないの次元はさておきまして、こういう問題に国としてあるいは地球的規模でも取り組んでいく、そういう国内の体制をつくるために一体我々は何をしなきゃいかぬか、こういうことは真剣に考えなきゃいけないときではないだろうか、こう思っております。  環境庁の御意見をお伺いする前に私なりの考えを申しますと、私個人の考えでありますが、環境というものの根本というのは、やはり治山治水だろう、山を治め、水を治めることが基本だろう、こう思います。  例えば私どものふるさとのちょっと山の中に入っても、水量は減っているのです。原因を聞きますと、山林が荒廃している、だから間伐ができない。広葉樹林の自然林ですと、保水力があるわけですね。ところが、戦後木を切りまくった、要するに家がないですから。その結果、植林に変わりました。人工林が相当多いでしょう。三分の二ぐらい人工林じゃないでしょうか。これは間伐をし、下枝を切らないと、日が入らなくなって、下に草が生えないのですね。だから雨が降ってもすぐ流れる。だから、雨の直後は水量が多いですが、しばらくたつとがくっと水量が減って、冬になるともうちょろちょろになる、こういう状況であります。  つまり、山を治めませんと水が治まらない。ところが、山は林野庁、環境庁の国立公園もありますが、大部分は林野庁だ、治水は河川局だ、建設省だ、こういうことであります。  上下水道、これも大事でありますが、上水道は厚生省、下水道に至っては、建設省の流域下水道もあれば、農水省の集落排水もあり、厚生省の合併浄化槽あり、三省に分かれてやっておるということであります。  廃棄物の処理も、一般廃棄物は地方自治体、産廃は民間、民間任せと言ったら失礼ですが、原子力は今問題になっております動燃でやるというようなことで、統一された体制ではないわけであります。  そういった環境をよくする行政の推進を一元的にやらなきゃいかぬ。そうしない限り、調整だけで、どうぞ自由にという状態では、抜本的な解決に向かえないのじゃないかというのが私の考えでございます。  産業政策にいたしましても、根本は省エネルギーでございましょう。それから、先ほど総理もおっしゃっていましたが、エネルギーもやはり化石燃料から太陽エネルギーとか。水力はもう限界、化石エネルギーは問題を起こす。とすれば、太陽光だとか、原子力をきちっとしてやるとか、あるいは核融合とか、要するに環境影響、負荷を与えないエネルギーを開発していかなきゃならない。  それから廃棄物処理について、同時にやらなければいけないのはリサイクルでありましょう。リサイクル社会をつくっていかなきゃならない。一元的な行政の推進が不可欠だろうと私は思っておるわけであります。  今般の行政改革論議でも、どういうふうになるか、いろいろと論議されておるわけですが、環境庁がなくなるか、そういう次元の話じゃなくて、ひとつそういう環境問題に国として基本的に取り組んでいける体制をつくっていかなければならぬと思うわけでありますが、長官の御意見はいかがでございましょうか。
  70. 石井道子

    石井国務大臣 さまざまな問題について今御指摘をいただいたわけでございますが、環境問題を考えるときには環境庁が主体的にリーダーシップをとってやらなければならないという建前はありますけれども、現在のところ、調整官庁であるということで、一部国立公園などに対する事業費はありますが、ほとんどそのような自由予算もない、そういう点では非常に窮屈な予算の中で、できるだけ最大の効果を上げるように努力をしてきていると思います。  林野の問題、御指摘がありましたけれども、この問題も最近は、林野事業が赤字でどうしようもないので、むしろ山林林野の問題は、その持っております公益的性格、そういうものを生かす意味環境庁の方がいいのではないか、そういうふうな御意見も出ていると聞いております。  山林の持つ公益的な性格といいますと、水資源の涵養というふうな点がありますし、緑の保全という点がありますし、大変重要な意味を持っておりますが、今までのいろいろな時代流れの中で、山仕事をする方がだんだんいなくなってしまう、手入れが不十分であるというふうな状況が随分長く続いております。ですから、山が荒れるということになってきているわけでございますが、それはまた、木材の需要供給のバランスがよくないというふうな点がありますし、価格の問題もあろうかと思いますが、輸入材が非常に普及してしまっているという点があります。  さまざまなそのような政策の問題もありますけれども、これから、やはり環境庁としてもう一つ、公害の防止、予防という点と、また水の問題、大気の問題、そして特に最近は地球温暖化に関係をいたしまして具体的な取り組みが大変重要になってまいりました。そういう点では、環境行政というものは、昔と違いまして非常にその重要性が高まっていると思います。  今、行政改革ということで、各省庁の統廃合の問題もいろいろ議論をされている最中でございますので、その結論についてはまだこれから先のことになると思いますけれども、その中で、やはり長い間活動してまいりました役所の機能、機関、あるいは公益法人とかそういうふうなものも、不要になったものについては当然これは整理をすべき問題であろうと思いますし、また、各省庁間でのいろいろな連携が必要な部分もありますから、できるだけむだのない効率的な行政改革をすべきであるというふうに思います。  環境行政につきましては、日本は大変今までおくれてきたと思います。今度の環境アセスメント法案につきましても、OECD諸国で最後になってしまった、これから本格的に環境行政に取り組まなければならないという日本の状態でございますから、これはもう決しておろそかにすべきことではありませんし、むしろ、環境行政というものを重視をして、それを充実させていく日本の状態であろうというふうに思います。  ですから、これは環境庁とか役所のことではなくて、環境行政が、幅広く国民のために、また地球規模での環境保全のために十分機能が発揮できるような仕組みを、これから大いに議論をして考えていただきたいと思っております。
  71. 杉浦正健

    ○杉浦委員 全く同感でございます。  私も、具体的な詳しいところまで正確に理解しているとはまだ言えないと思いますけれども、先進諸国の行政の中における環境の地位というのは、日本よりはるかに高いようですね。何とか環境省とか生活環境省だとか環境保護省だとか、要するに、環境の問題を中心に据えた生活、そういう仕組みに大体先進国はなっておられるのじゃないかという印象を受けておるのです。まだ本格的に調べたわけじゃありませんですけれども。これから二十一世紀に向けてアセスメントは、遅まきでありますが、行政の執行体制としてもそういう方向に向かうべきではなかろうか。  だから、行革論議は受けて立って、農水省に林野をよこせ、建設省に河川をよこせ、厚生省、ここに厚生省出身の人もいるけれども、水道環境部はこっちへよこせ。それから、合併浄化槽はどこでやっているの。水道環境部ですか。それもこっちへよこせということで、全員集合で組み立てるということを前向きに考えていただければと、個人的な意見でありますが、思っている次第であります。  ついでだから申しますけれども、環境部会長にさせていただいて、昨年の暮れ以来、環境庁の方と随分おつき合いが深くなってまいった。随分議論もしておりますが、環境庁の方々、私がつき合っているのは課長補佐から上ぐらいの方でありますが、議論していて感じることは、局長さんとか課長さん、要するに、よその省から来られた方は各省で第一線でやった御経験があるからさほど違和感はないのですけれども、プロパーで上がってきている環境庁の人たちと議論しておると、何といいましょうか、調整官庁の限界なんでしょうか、要するに、現場のことがわからない。意見を言うにしても、例えば道路のことについて意見を言う場合でも、道路局へ行って道路の仕事をやっていたらそういう言い方をしないんじゃないかなと感じることが間々ございました。  そういう意味でも、環境庁がどういう形になるかは別にして、単なる調整官庁に甘んじるのじゃなくて、事業を、国立公園なんかやっていますが、直接やる官庁にならないと、出される意見も適切なものにならないのじゃないか。  例えば、アセスメント法では、環境庁長官意見というのは、これは大きな役割を果たしますね。そういう場合に、本当に環境を守る、環境をよくする、そういう視点から適切な意見が出されないと、大体、立案するのは事務当局で立案されるわけですから、そういう深い理解を事務当局で持ってもらわなければ困ると思うのです。  持続可能な発展という言葉がありますけれども、開発と自然の保護とは両立しないわけで、しかも一方で、開発はやらないといかぬ。それは我々が生きていく以上、一面の環境破壊はやむを得ない面があるわけでありますが、それとの両立をどうやってやっていくかという見地から申しますと、やはり役所の第一線の方々が、第一線の仕事のいろいろな問題についての理解を持たれることが必要なのじゃないかというふうに思いますし、それは反対される方は一人もいないだろうと思うけれども、その点において、もう少し現場に対する理解がほしいなと感じることがございますので、一言申し添える次第であります。  この間、鈴木政務次官に言ったのですが、プロパーの人を少し他の官庁へ出したらどうか。よそから来ても、まあ課長補佐になるまで何年ぐらいかかるのですか。十五年ぐらいかかるのですか、プロパーの人が課長補佐になるまでに何年ぐらいかかりますか。そして、課長になるまでに何年ぐらいかかりますか。
  72. 田中健次

    田中(健)政府委員 お答え申し上げます。  いわゆるキャリアで入りまして、課長補佐になるのは入省七、八年、それから、課長に昇進するのが十五、六年か、もっとそれ以上かかると思います。
  73. 杉浦正健

    ○杉浦委員 それでしたら、課長になる人については、例えば建設、農林、運輸、厚生も行かねばいかぬな。四カ所行くとあれかもしれぬが、少なくとも、そのうち二つか三つぐらいは二年か三年行ってこないと課長になれないぐらいになっているのかしら、今。
  74. 田中健次

    田中(健)政府委員 官房長がお答えすればいいようなテーマでございますけれども、ちょっとおりませんので、私の方からお答えいたしますが、環境庁も、おっしゃるように調整官庁でございますが、できるだけ若い時代に他省庁を経験をするということで、これは事務官、技官、両方を含めまして他省庁との人事交流をできるだけやるようにいたしておりますし、また、御批判がございますけれども、自治体の第一線の現場の行政もできるだけ経験するようにということで、そういう努力もいたしているところでございます。
  75. 杉浦正健

    ○杉浦委員 ぜひとも今までに倍するぐらいのあれで交流をしていただきたい。私の地元の問題で御相談したときも、いろいろ感じまして、地元の首長さんたちは皆言っていますよ、環境庁は金はないけれども口だけ出す役所だ。いい意味じゃありませんからね。  要するに、地元は開発をやっていますから、これをやっちゃいかぬと言われると、おれらどうしたらいいんだ、彼らは真剣に悩むわけです。それに対して、環境保護一点でもう融通がきかない。僕の地元だけでも幾つか言えますけれども、そういうところが第一線の方にはありまして、だから、県だけではなくて市町村とか、あるいは、動燃なんかも出しなさいよ、若手を。勉強してもらう、経験を積んでもらうということをぜひとも前向きに検討していただきたい、こう思います。  時間がだんだんなくなってきましたが、アセスメント法のことを何も言わないとおしかりを受けるかもしれませんので、一、二点お伺いいたします。  御承知と思いますけれども、自民党が党議決定の過程で、総務会でアウトになりかかりまして、皆さん御苦労いただいたということを御記憶だろうと思います。その自民党総務会での懸念と申しますか、もちろん結果的にはほとんど大部分が誤解に基づくものだったわけでありますけれども、懸念された点は、大きく言って二点だったと思うのです。  一つは、基本的に国がもう少し責任を持つ、これは抽象的ですが、持つような形でなければいかぬのではないか。これは抽象的ですからおきますが、もう一つは、主として今、世間では、原発の反対運動が場所によっては熾烈なわけですけれども、そういった事業の可否についての、反対するのも自由なんですが、そういうものにアセスメントというものが利用されるのではないか。アセスメントというのは、要するに、可否そのものについて決めるわけでも何でもないわけで、環境についての評価をやるわけだけれども、その手続そのものがそういう反対運動に逆用されてしまうのではないかというところからの御懸念が一番強かったのではないかと思うわけでございます。  具体的に言えば、これまでの閣議アセスでございますと、意見を出せる人の範囲は関係地域の住民ということだったわけでありますが、今度のアセスではどなたでも——あ、終わっちゃったですか。済みません。皆さんよく御存じですからあれですが、もう結論は出ていることでありますから、そういった懸念が出されたわけでありますが、時間がなくなりましたのでやめますけれども、そういった、可否ではなくて評価のための意見の聴取だということで御理解を賜ったわけでありますが、それだけ念を押させていただきたいと思います。
  76. 田中健次

    田中(健)政府委員 今先生からお話がございましたような御懸念に対しまして、私どもは、法案の中で、環境保全の観点からの意見を聴取するもの、それから文書で出していただく、あるいは意見を出していただく期間も限る、こういうことで、いろいろ配慮はいたしておるつもりでございますけれども、非常に重要な点でございますので、この法律の成立の暁には、できるだけその辺の趣旨を国民に徹底するようにPRに努めていきたいというふうに考えております。
  77. 杉浦正健

    ○杉浦委員 以上で終わります。
  78. 佐藤謙一郎

  79. 大野由利子

    大野(由)委員 今、杉浦委員質疑を聞いておりまして、私も子供のころに、トンボやチョウを追いかけて野や山を駆け回ったことを思い出しながら、本当に何とも言えない牧歌的な思いで質疑を聞かせていただいたわけでございます。それに比べて今の子供たち、特に、都会の子供たちは本当にかわいそうだなと思いながら、本当に、何としても持続可能な社会環境というものを守っていかないと大変なことになるな、環境庁を初め、環境に携わる私どもの役割は非常に大きいのではないか、そういう思いで質疑を聞かせていただきました。  まず初めに、事後アセス、フォローアップのことについて伺わせていただきたいわけです。  事後アセスとか事業着手後の調査、このように言われているわけでございますが、従来のアセスは予測や評価をしますけれども評価のしっ放しで、そしてそれがどうだったかというようなフォローが行われていない、事後検証が行われてこなかったことが大きな課題でございます。  環境アセスは、あくまで予測でございます。不確定な不確実要因がたくさんあるわけでございますし、技術力もまだまだ未熟で、十分なアセスができない、予測が外れるというような場合も多々あるわけでございます。コンピューターシミュレーション等々も、ちょっとしたことで大きく結果が違ってくる、予測が変わってくる、こういうふうなこともありまして、事後の、事業着手後、また完成後、供用後のアセスというものが大変大切でございまして、次回からの類似の事業に対する環境アセスの技術向上にも資することになるのではないか、このように思っております。  中環審の答申にも、「評価後の調査等は、予測の不確実性を補うものであるので、環境影響評価制度の中に位置づけることが適当である。」このように書かれているわけですが、どのように位置づけられているか、御答弁をお願いいたします。
  80. 田中健次

    田中(健)政府委員 事後アセスのことでございますけれども、法案の十四条の一項七号のハでございますが、「環境保全のための措置が将来判明すべき環境状況に応じて講ずるものである場合には、当該環境状況の把握のための措置」、これを準備書に記載させる、こういうことでございます。  この趣旨は、新規あるいは未検証の技術や手法を用いるような場合など、アセス実施した時点では予測の不確実性が残り、それによって重大な環境影響が生じるおそれがある場合等におきましては、「将来判明すべき環境状況」、すなわち事業者環境影響の重大性や不確実性の程度に応じて事後に実施した調査の結果に基づきまして、事業者が適切な環境保全上の措置を講ずることが適当でございまして、そのような場合に、事後の環境状況を把握するために行う調査について、準備書の記載事項とするものでございまして、こうして事後のフォローアップをしていく、こういうことでございます。
  81. 大野由利子

    大野(由)委員 石井環境庁長官に伺いたいのですが、今、御説明いただきましたこのハの文章なのですが、実は私何回もこれを読みました。何回も読んで、私は頭が悪いのかなと思って、自信をなくしたといいますか、私は法律家ではございませんので、なかなか理解が難しいのかもしれませんが、この文章を読んで、今局長答弁なさったようなことが理解できるかどうか、伺いたいのです。  「口に掲げる措置」つまり「環境保全のための措置が将来判明すべき環境状況に応じて講ずるものである場合には、当該環境状況の把握のための措置」、これが事後アセス、また事業着手後の調査をやりなさいよということを言っているのかどうか。そういうふうに読めますか、長官の御意見を伺いたいと思います。
  82. 石井道子

    石井国務大臣 ちょっと読むとなかなかわかりづらい文章ですけれども、やはり法律というのは正確を期す必要がありますし、このような表現になったものと思います。
  83. 大野由利子

    大野(由)委員 これが今まで行われてきたものであれば、多少わかりづらくても理解される、このように思うわけですが、この事後アセスというか、こういうものは従来行われてきてなかったわけですね。従来行われてきてなかったものが法律の中に書かれる。その法律は読んでもわからない、そういう法律であったのでは、とてもじゃないですけれども、これは新規立法、これから法律をつくろうというわけですから、読んでわからないような法律を今からつくるというのは、こんなナンセンスなことはないんじゃないか。既にあるものというんじゃないんです。今から立法しようというんですから、だれが読んでも理解できる、日本語がわかる人ならわかる、そういう法律にすべきじゃないか、このように思いますが、環境庁の御意見を伺いたいと思います。
  84. 田中健次

    田中(健)政府委員 おっしゃいますように、この事後アセス、今の閣議要綱の制度にはございません。それから、地方ではこういう制度をやっているところもあるわけでございます。  これは、ただいま大臣から答弁を申し上げましたが、法制的にいろいろ詰めまして、紛れのない正確な表現をするということで、法制局審査等を経まして、こういう表現になったわけでございます。中身は御説明を申し上げたようなことでございまして、非常におわかりづらいということでおしかりをちょうだいをいたしておりますが、法制的に詰めた結果の表現でございまして、ぜひその辺は御理解をいただきたいと思います。  私どもといたしましては、そうした点につきましては、今後、この法案が成立をいたしました暁には、いろいろとその辺の説明を十分やっていきたいというふうに考えております。
  85. 大野由利子

    大野(由)委員 今局長答弁があったわけですが、私は、今から立法するわけでございますので、これはぜひもう少し補足するなりなんなりして、だれが読んでも理解できる、そういう法律にすべきだ。これは今から立法するのに、読んでわからない、これはもう本当にあえてわからないようにしたんじゃないか、このように勘ぐりたくなるわけでございますけれども。  もう一回確認いたしますが、ここのハに書いてあることは、要するにどうなんでしょう。中環審の答申の中にこういう文章がありますね。評価後の調査の必要な項目、範囲、調査方法、期間等については、個別事業ごとに異なるので、準備書評価書に記載することとし、個別にその内容を審査する仕組みが大切であるというようなことも書いてあるんですが、要するに、事後にこういう調査をしなさいというか、するというような、そういう内容を書きなさいという意味なんでしょうか、これは。
  86. 田中健次

    田中(健)政府委員 今先生がおしゃったような趣旨でございます。
  87. 大野由利子

    大野(由)委員 じゃ、事後にこういう検査をしなさい、その検査をきちっと実行に移すかどうかということは、どこに書かれておりますでしょうか。
  88. 田中健次

    田中(健)政府委員 法律の三十八条でございまして、「事業者は、評価書に記載されているところにより、環境保全についての適正な配慮をして当該対象事業実施するようにしなければならない。」この三十八条でこれを実行するということが義務づけられている、こういうことでございます。
  89. 大野由利子

    大野(由)委員 この事後アセスの結果というものは、公表が義務づけられているんでしょうか。事後アセスをやって、検査項目、こういう数値が出てきたという、その事後アセスの結果は、公表が義務づけられているんでしょうか。
  90. 田中健次

    田中(健)政府委員 公表に関することも評価書に書いていただきますので、そこでそういうふうに触れられますと、事後も公表される、こういうことになろうかと思います。
  91. 大野由利子

    大野(由)委員 じゃ、その評価書の中に事後の調査を公表すると書いてなければ公表されない、そういうことになるわけですか。
  92. 田中健次

    田中(健)政府委員 建前はそういうことでございますけれども、私どもといたしましては、環境庁長官意見あるいは主務大臣の審査等もございますので、そのプロセスでそういう事柄は担保されるのではないか、こういうふうに思います。
  93. 大野由利子

    大野(由)委員 立法の段階で建前と本音なんか、どう考えても理解できないような答弁であったわけですけれども、そのように建前と本音を推察をしなければならないというような、そういう法律であってはならない。だれが読んでもこうとしか理解できないという、そういう法律をつくらないと意味がないわけでございます。  また、事後アセスをやっても、公表しなければ、その結果このアセスが正しかったのかどうなのかという判断もつかないわけですね。ですから、これはもうどう考えても公表を義務づける、そういう内容にすべきではないか、このように思いますが、御意見を伺いたいと思います。
  94. 田中健次

    田中(健)政府委員 先ほどから申し上げておりますように、どういう内容で、どういう調査をして、それでどういう公表の仕方をするかということを、私どものいろいろなチェックの過程でそういうことになるようにやっていきたいということで御理解をいただきたいと思います。
  95. 大野由利子

    大野(由)委員 それは、じゃ政省令に書かれるということでしょうか。
  96. 田中健次

    田中(健)政府委員 いろいろな審査の過程でやっていくことになりますので、その辺は今後いろいろ検討いたしたいと思います。
  97. 大野由利子

    大野(由)委員 ということは、政省令に書かないということなんでしょうか。
  98. 田中健次

    田中(健)政府委員 政省令事項になるか通知になるか、いろいろ検討をいたしたいと思います。
  99. 大野由利子

    大野(由)委員 法案の立法の審議の段階でその辺が決まっていないというようでは話にならないんじゃないか、私はこのように思います。環境庁のその辺の姿勢、どう対応されるのか、明確な対応を伺いたい。私、午後にも質問するようになっておりますので、もう一回このことを答弁を伺いたいと思います。  それで、事後アセスを行わなかったら法律違反になるかどうか伺いたいと思います。
  100. 田中健次

    田中(健)政府委員 ケースによっていろいろあろうかと思います。事後調査の必要なものにつきましては、環境庁長官意見あるいは主務大臣の審査の過程でいろいろその辺の指示は意見として申し上げますし、また、場合によっては、許認可の際に横断条項によりまして付款をつけるということも可能でございます。付款をつけて必ず守らせるということもケースとしてあろうかと思いますので、そういうことで御理解をいただきたいと思います。
  101. 大野由利子

    大野(由)委員 じゃ、事後アセスのことが評価書の中に書かれてなかったら許認可がおりない、事後アセスはやるべきである、法律には書いてないけれども、評価書の中にきちっと書かれているかどうかを確認をする、その上で許認可をおろす、そういうことでしょうか。
  102. 田中健次

    田中(健)政府委員 ケースによっては、そういう手順を踏んで付款をつけてやらせる、こういうことになろうかと思います。
  103. 大野由利子

    大野(由)委員 じゃ、そうならない場合はどういう場合があるか伺いたいと思います。
  104. 田中健次

    田中(健)政府委員 逆の話になりますが、必要な場合にそういうことをやるわけでございまして、不明確性が少ないとか、その必要がないときにはそこまでやる必要がないということで御理解をいただきたいと思います。
  105. 大野由利子

    大野(由)委員 どういう場合が必要で、どういう場合が必要でないか伺いたいと思います。
  106. 田中健次

    田中(健)政府委員 アセスメント評価の手法等は非常に科学的な知見によるものでございます。いろいろな手法等がございますし、どれを選択するかということもあろうかと思います。そういうことで、ケースによって違うわけでございまして、それはケース・バイ・ケースで、ケースごとに判断をしていくということになろうと思います。
  107. 大野由利子

    大野(由)委員 じゃ、それはどなたが判断されるんでしょうか。環境庁長官が判断されるのか、主務官庁が判断されるのか、事業者が判断されるのか。また、その判断の材料になる基準みたいなものはだれが発表されるのか。
  108. 田中健次

    田中(健)政府委員 準備書なり評価書はその事業を行う事業者が作成をするものでございますから、まず事業者においてそういう判断をいたします。それを、いろいろ意見を聞くということで、知事なり私どもの環境庁長官なりあるいは許認可の主務大臣がそれぞれの立場で判断をしていくというプロセスを経るわけでございます。
  109. 大野由利子

    大野(由)委員 いろいろ大変しつこいと思われたかもしれませんが、事業を進めたいばかりに恣意的なアセスをするという人が出てくる可能性もあるわけです。そういう意味で、私は、法律をつくる段階で、そういうことがなされないように未然の防止をきちっとしておかなければいけないのではないか。事業主が、実際の請け負う業者とそのアセスをやる業者がもう一体になって、同じ業者がやるという場合も往々にしてあるようでございまして、自分が事業を進める上において、工事を進める上において、仕事が進みやすいようにアセスをアワセメントで、ちょっと違ったデータが出たらそれはみんなはしょってしまってというような、そういうようなことが行われたのではどうしようもない。そういうことが行われないように、やはりきちっと事後のアセスも義務づける。  もちろん事前の予測と事後は必ずしも一致しないと思います。それは予測は予測ですから必ずしも一致しないと思いますが、明らかに悪質な場合、明らかにこれは手を加えて、出てきたデータを改ざんしたとか、そういうふうな場合はきちっと罰則を設けるとか、そういう悪質な業者は、百万や二百万の罰金じゃどうしようもないわけでして、名前を公表して、そういう人が仕事をするのはなかなか難しくなるとかというような何らかの措置考えないと、事業者にとって気に入られるようなアセスをする、事業者にとって甘いアセスをする人が事業者にとってはありがたいというか、そういう人がわかりやすく言うと商売繁盛するというか、そういうふうなアセスであっては、形ばかり整えたって中身はどうしようもない。  もうそれこそ、試験問題をつくって、そして自分で解答して、自分で採点してと、そういうふうにアセスがいろいろ言われているわけでございますが、そういうことを未然に防止する措置が必要ではないか、このように思いますが、御意見を伺いたいと思います。
  110. 田中健次

    田中(健)政府委員 法案におきましては、予測評価の結果あるいは基本的なデータ等を準備書等に的確に記載をいたしまして、公表をさせるということを基本としておるところでございます。また、地方公共団体あるいは住民等の意見に対します事業者の見解を準備書に記載をいたしまして、これを公表させまして、これをもとに審査が行われるということにしております。こうしたことで、事業者としても、こういう公表のプロセス、あるいはデータをできるだけ出すということでございますので、事業者としても真摯な対応が求められるということでございます。  長官意見あるいは主務大臣の審査等もあるわけでございまして、このように透明性が確保される仕組みとしておるというふうに私どもは考えておりまして、先生がおっしゃいますような恣意的な、虚偽の予測がなされるということは、私どもは、考えられないのではないかというふうに考えております。  そういうことで、御指摘のような制裁措置がなくても環境保全上の配慮は確保されるものと思っておりますが、もし仮にそういうひどいケースがあった場合には、これは横断条項もございますから、許認可そのものに響いてくる問題になろうかと思います。許認可そのものが取り消しとか、そういうことまで進む可能性もありますので、私どもといたしましては、事業者はそれが一番怖いわけでございますから、そういうことで、そういう虚偽の予測がまかり通るということはないものというふうに思っております。(発言する者あり)
  111. 大野由利子

    大野(由)委員 今動燃のことを考えるとそんな楽観主義ではいけないという声がございましたけれども、私もそのとおりではないかと思います。  公告縦覧の期間が一カ月、意見を聴取する期間が二週間、こういう短い期間の中で、そのデータが正しいかどうかというようなことをチェックをすることはほとんど不可能ではないか、このように思っております。  そういう意味で、当然いろいろな場合があり得るということを想定した上で取りかからないと、私は、法律としては正確を期す法律にはならないのではないか、このように思いますので、その点もぜひ御検討をお願いをしたい、このように思っております。  もし予測が外れた場合は、事業者の責任で環境保全対策を講じなければいけない、そういう義務がある、このようにこれはなっているのでしょうか、どうでしょうか。
  112. 田中健次

    田中(健)政府委員 先ほどから申し上げておりますように、評価書にそういう今後の不確実性を担保するための事後アセスを書くわけでございますから、それを実行する過程でそういうケースになりますと、それぞれ事業者の方で責任も持ってそれに対応していただくということになるものでございます。
  113. 大野由利子

    大野(由)委員 先ほどの事後アセスなのですが、その事業者評価書の記載内容に従って実施する、これが通常であり適当かと思いますが、場合によっては地方公共団体実施していますモニタリング等々を活用する場合もあろうかと思います。  例えば、道路の場合、その大気汚染がどうか、NOxがどうかというような場合、地方公共団体実施しているモニタリングでもってそれを集めて、その調査データをもとにして事後アセスの参考にするという場合があり得るかと思うのですが、この地方公共団体のモニタリングをどのように活用することを考えていらっしゃるか、または、それを法律の中ではどのように位置づけていらっしゃるのか、どのように連携をとろうとされているのか、その辺を伺いたいと思います。
  114. 田中健次

    田中(健)政府委員 この法律は、事業実施するまでのアセスメント手続を定めるものでございます。そういうことで、事後のフォローアップにつきましても事前に準備書なり評価書に書かせてやっていく、こういう仕組みにしておるわけでございます。  先生お話ございましたように、事後のフォローアップで、我々もやっておりますけれども、自治体等がやっておりますモニタリングを活用する、これは当然そういうこともあるわけでございますし、当然活用していくことでございますけれども、この辺につきましては、この法律の趣旨から見て、この法律の中にはそういう整理まではいたしておりません。
  115. 大野由利子

    大野(由)委員 この辺も、では私は、環境庁、今後の課題としてぜひ御検討をお願いをしたい。  結局、事業前のアセスは一生懸命手続法として行われるわけですが、その後の手続というものも、いろいろなケースがあろうかと思いますが、私は、この辺がちょっと十分流れてないのじゃないか、この辺もやはりきちっとフォローをする必要があろうか、このように思いますので、どう地方のモニタリング等々と連携をとって、そして総合プレーでやっていくかという、そういう仕組みもきちっと環境庁がリーダーシップをとってやっていただきたい、このように思います。  それから、事業者事業を終わったときに、他の主体に事業が引き継がれるという場合があろうかと思うのですが、そういうときに、事後の調査がスムーズに行われるように協力を要請するということもあろうかと思います。次の事業の人が協力をしてくれなければ、事後アセスも十分できないということもあろうかと思うのですが、この点についてはどのように考えていらっしゃるか、伺いたいと思います。
  116. 田中健次

    田中(健)政府委員 途中で事業が、別の人が事業主になるということもございますので、そういうことにつきましても、評価書の中で書かせるというふうなことで対応をいたしたいと考えております。
  117. 大野由利子

    大野(由)委員 質問時間が終了したようでございますので、続きは午後、本会議後にやらせていただきます。
  118. 佐藤謙一郎

    佐藤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十六分休憩      ————◇—————     午後二時五十九分開議
  119. 佐藤謙一郎

    佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。大野由利子さん。
  120. 大野由利子

    大野(由)委員 環境アセスメント法の審議も約二十時間に及ぶようになりまして、昨日は、京都で地方公聴会、各意見陳述者の方から大変示唆に富むお話を聞かせていただくことができました。また、きょう午前中は、橋本総理に御出席をいただきまして、約一時間いろいろ質疑をさせていただくことができまして、この二十時間の質疑を通しまして、この法案に対する各党の委員の皆様の御質問、御意見を伺いながら、大変共通したところがあるな、このように思って私も聞かせていただいた次第でございます。各党の各委員の皆さんが御質問なさった共通したところをもう一度ちょっと整理をいたしまして、若干重複するかと思いますが、質問をさせていただきたい、このように思っております。  この法案の十九ページを見ていただきたいと思います。法案の十九ページの例の第十四条、「準備書の作成」のところでございます。  この七のロのところ、中環審の答申の中に、代替案、複数案を検討する、このように書かれているけれども、法案の中にはどのように生かされておりますか、このように質問をしたところ、十四条の七のロにこれはあります、そういう回答でございました。「環境保全のための措置(当該措置を講ずることとするに至った検討状況を含む。)」ここに複数案の検討ということが含まれております、こういう御答弁であったわけでございますので、もう一度確認をさせていただきたいと思います。この「当該措置」の下に「当該措置以外の環境保全のための措置についての検討状況その他の当該措置」というふうに加えるとまずいかどうか、都合の悪いことがあるかどうか。  もう一度申しますが、要するに、ここは複数案ということでございます。複数案の検討はここに入っているということでございましたので、簡単に言いますと、当該措置を講ずることとするに至った複数案の検討状況を含むということでございますが、別の表現をいたしますと、「当該措置以外の環境保全のための措置」、ここに、案以外の、別の案という意味ですね、「当該措置以外の環境保全のための措置についての検討状況その他の当該措置」、このようにしたら何か不都合があるかどうか、伺いたいと思います。
  121. 田中健次

    田中(健)政府委員 先生今おっしゃいましたけれども、ここの読み方は広く読めるわけでございまして、「当該措置を講ずることとするに至った検討状況」ですから、いろいろなことを検討したことが含まれると思いますから、おっしゃるような趣旨はこの原文でよろしいかと思います。
  122. 大野由利子

    大野(由)委員 私の質問は、私の言ったようにすると不都合があるかどうかということを伺っているわけでございます。当初案でいいというのが今の局長答弁だったと思うのですが、当初案でいいかもしれませんが、私の言った案にするとまずいところがあるかどうか、まずいところがあればこういう理由があってまずい、それを言っていただきたいと思います。
  123. 田中健次

    田中(健)政府委員 条文のことでございますから、急にいいか悪いかと言われてもなかなか難しいことでございますけれども、先生おっしゃったような趣旨は、幅広くここで「検討状況」ということで入りますので、そういうことで、いいか悪いかという判断はこれまた慎重に、表現の問題ですからやらないといけませんけれども、御趣旨はこれでいいということでございますので、そういうことで御理解をいただきたいと思います。
  124. 大野由利子

    大野(由)委員 じゃ、もう一回確認をさせていただきますが、いいかどうかは言えない、しかし、まずいわけではない、そういうことでしょうか。
  125. 田中健次

    田中(健)政府委員 原案が要を得ていると思いますので、どちらかというと、くどくなってまずいような気がいたします。
  126. 大野由利子

    大野(由)委員 これは条文上、これがこういう法規上まずいというわけでなければいいわけですか。内容がまずいわけですか。それとも、文章が、急に言われてこれがいいかどうかよくわからないということなんでしょうか。どちらなんでしょう。
  127. 田中健次

    田中(健)政府委員 繰り返しになりますけれども、私どもとしては、この表現で事足りているというふうに考える次第でございます。どうぞ御理解をいただきたいと思います。
  128. 大野由利子

    大野(由)委員 私の質問に答えていただいてないんじゃないかと思います。  局長のおっしゃった、もとの案がいいか悪いかという、私はそういう質問をしているのではありませんで、私の言った案がまずいかどうか、これでは困る、いけないということなのかどうなのか、そういうことを質問をさせていただいているわけでございますが、明快にここの部分がまずい、ここがおかしいという答弁があったわけではございませんので、私はこれは検討に値する、そのように受け取らせていただきたい、このように思います。  じゃ、もっと本当は伺いたいのですが、時間もございませんので、次の質問に行かせていただきます。  二十七ページをあけていただきたいと思います、法案の二十七ページ。ここの二十三条に「環境庁長官意見」が出ております。  これも今回の質疑中、委員会の間に何度も各委員の中から出てきた質問でございます。環境庁長官が、評価書について意見を書面により述べることができる、これが明示されているわけですが、環境庁長官はだれに、どなたに相談をして意見を述べることができるのか。こういうようなときに、専門家の意見を聞いたり、いろいろな方の御意見を聞いて、環境庁長官がその上で最終的に書面により意見を述べることができる、そういうふうに解釈していいんだ、そういう答弁だったわけですが、ここの第二項に、「環境庁長官は、前項の意見を述べようとするときは、あらかじめ中央環境審議会意見を聞くことができる。」このように入れるとまずいかどうかを伺わせていただきたいと思います。  聞かなければいけないんじゃないのです。聞くことができる、必要に応じてです。必要なければ聞かなくてもいいのですが、必要を感じたときには、「あらかじめ中央環境審議会意見を聞くことができる。」これが二十三条の二項に入ってまずいかどうかを伺いたいと思います。
  129. 田中健次

    田中(健)政府委員 環境影響評価の審査に当たって、外部の専門家の知識経験を活用する、まさにこれは有効でございまして、私どもとしても、こうした専門家の知識経験を十分に活用して審査に当たるべくいろいろやっていきたいと思っておりますが、今先生の御提言でございました審議会意見を聞くことができる、これは環境庁長官の諮問機関でございまして、必要に応じて意見を聞くことができる、そういう法制度になっておりまして、わざわざここに明記する必要はないというふうに考えます。
  130. 大野由利子

    大野(由)委員 じゃ、聞いてはいけないわけではないわけですよね。今までも聞いていらっしゃることがあるということであれば、聞くことができると入れたら不都合があるわけではない。今までもやっていらっしゃることだから、あえて入れることはないという御答弁であったのだと思いますが、入れたら不都合があるというわけではないという答弁だったかと思いますが、それでよろしいのでしょうか。確認をさせていただきたいと思います。
  131. 田中健次

    田中(健)政府委員 入れる必要性は全然ないということでございます。
  132. 大野由利子

    大野(由)委員 じゃ、入れる必要性がないということは、環境庁長官中央環境審議会意見を聞いてはいけないということなんでしょうか。
  133. 田中健次

    田中(健)政府委員 ほかの法律中央環境審議会の設置の根拠がございまして、そこで、必要に応じいつでも長官は諮問したり意見を聞いたりできるようになっておりますので、そういう意味から、わざわざここにそういう規定を載っける必要はないというふうに申し上げている次第でございます。
  134. 大野由利子

    大野(由)委員 この環境アセスメント法はアセスメント法で完結をした法案にするべきだ。大変重要な法案でございます。ですから、ほかのところにあるからここに書かなくていいということは理由にならないのではないか、このように思います。  そういった意味で、聞かなければならないとなりますとこれはまずい、必ず聞かなきゃいけないとなるとまずいでしょうが、聞くことができる、必要に応じて聞くことができるとなれば、既にそのように行われているわけでございますから、何らそういう文章が入ったから当初の法案の趣旨が変わってしまうということはないのではないか、このように思いますが、重ねて伺いたいと思います。
  135. 田中健次

    田中(健)政府委員 仮に、聞くことができるというふうに二項で明文で書きますと、この反対解釈といたしまして、そうするとほかには聞けないというふうな反対解釈をされる、誤解を生むおそれもございまして、やはりそういうことは入れない方がいいというふうに私どもは考えます。
  136. 大野由利子

    大野(由)委員 じゃ、「中央環境審議会等」と、「等」というのを入れれば、中央環境審議会以外に聞こうと思ったら聞くこともできる。じゃ、「等」を入れたらどうでしょうか。
  137. 田中健次

    田中(健)政府委員 明文を入れなくても、当然環境庁長官が意思決定の際にいろいろと専門的な知識を活用してやれるわけですから、そういう意味で入れる必要性は私どもはないというふうに考えておりますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
  138. 大野由利子

    大野(由)委員 私は必要があるかないかを伺っているのではありませんで、入れるとまずいところがあるかどうか、入れると困るのかどうか、入れると不都合なのかどうかということを聞いているわけでございます。
  139. 田中健次

    田中(健)政府委員 法律はできるだけ国民のためにも簡明な方がいい、わかりやすい方がいいということでございますので、必要でないものをわざわざ入れる必要はないというふうに考えます。
  140. 大野由利子

    大野(由)委員 それは、こちらが言いたい言葉でございます。  法律はできるだけどなたが見てもわかりやすくする必要があります。大変重要な環境アセスメント法でございますので、この法律を見ただけで完結をして、環境アセスメントのことがわかる、理解できる、そういうふうにする必要があると思いますので、この文章を入れて不都合がなければ、入れておく方がより丁寧であり親切ではないか、ぜひこのことは要望をさせていただきたい、このように思います。  続いて、七十四ページをあけていただきたい、このように思います。七十四ページの六十条のところでございます。これも、この委員会で何度も各委員から御指摘がございました。この法律が通ったときに、条例で既に先駆的にやっている地方の自治体のアセスを縛ることになるのではないかという、いろいろなそういう質問がございました。  そのときの御答弁の中に、都道府県知事意見を述べるときに都道府県知事が参考にできるようものをやるのは何ら差し支えがない、そういう御答弁であった、そのように認識をしておりますが、この六十条の第二号の中の一番最初の頭のところに、「当該地方公共団体における公聴会の開催等」を入れて、その後この「第二種事業」に続くわけですね。「当該地方公共団体における公聴会の開催等、第二種事業又は対象事業に係る環境影響評価についての当該地方公共団体における手続に関する事項」、こういうふうに、地方公共団体が既に実施しております公聴会の開催等はこの法律に反しないものに限り認められるのだ、そういう答弁だったわけですが、この文章を入れて何か不都合があるかどうか、伺いたいと思います。
  141. 田中健次

    田中(健)政府委員 これまでもしばしば御答弁を申し上げてきましたとおり、この法律規定に反しない限り、地方で一定の手続を置くということは当然可能なわけでございますけれども、それをどうするかというのは地方公共団体の判断でございまして、ここに一々例示を挙げることは必要ないのではないかというふうに考えております。
  142. 大野由利子

    大野(由)委員 既に、地方公共団体で公聴会とかいろいろ審査会を設けているところがあるわけですね。これがこの法律規定に反するものか反しないものなのか、そういう疑問が地方公共団体は常にあるわけでございます。ですから、たくさん例示を挙げるのは難しいかもしれませんが、一番地方自治体の皆さんが聞きたい、その筆頭は、公聴会を開くことがこの法律に反するのか反しないのかということなんですね。  もう一回尋ねますが、地方公共団体の人が公聴会を開いて、その公聴会の意見でもって各都道府県知事意見を述べる際に参考にすることは、これは構わないわけですよね。
  143. 田中健次

    田中(健)政府委員 可能でございます。
  144. 大野由利子

    大野(由)委員 可能であれば、入れたらまずいですか。
  145. 田中健次

    田中(健)政府委員 どのような手法をとるかというのは自治体の判断でございまして、予断を与えるような例示は必要ないのではないかというふうに考えますし、例示を出しますとまた限定的に解されるおそれもございます。  そういうことで、私どもといたしましては、本法が成立の暁にはそうした趣旨の徹底を自治体にもいたしまして、自治体にも十分御理解をいただく、こういう手段をとりたいと思います。それで十分趣旨は達成できるというふうに考えますので、御理解をいただきたいと思います。
  146. 大野由利子

    大野(由)委員 私は、できるだけ法律を見て理解できる、一々行政指導しなければ理解できないというものであってはいけない、このように思うわけでございます。そういう意味で、載っけちゃまずいのでなければ掲載をして、より明確にするということが必要ではないか、このように思うわけでございます。  これから、住民参加とか情報公開というのが、この環境アセスのある面では一番大事な要素にもなってまいります。そういうことを考えましたときに、これを一つだけ例に挙げることが誤解を生んだり、紛らわしかったり、いろいろ不都合があればやめるべきでございますが、別に何ら不都合がないということであれば載っけた方がいいんじゃないか。もう一度、不都合があるかどうかだけ伺いたいと思います。
  147. 田中健次

    田中(健)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、誤解を生むおそれもございますし、そういうことで芳しくないというふうに考えます。
  148. 大野由利子

    大野(由)委員 誤解を生むのは、載っていない方が誤解を生むんじゃないか、ない方が誤解を生む、そのように思うんですね。もともとの案に入っていないわけですから、今ある人もやらない方がいいんじゃないか、新たにつくる人も、新たに条例にするところもない方がいいんじゃないか、このように思うわけでございますから、公聴会を設置しなきゃいけないという文章じゃなくて、公聴会を設置することは、決してこの法律規定に反しないものだという、そういう意味での例示でございますので、私は、誤解を生むんじゃなくて、むしろ誤解を生まないためにこの最小限の例示は必要ではないか、このように思います。  時間がございませんので、次へもう一つ行かせていただきたいんですが、八十三ページの附則がございます。この中に、「この法律の施行後十年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加える」、このようにございます。  今大変な、スピードの速い時代でございます。十年なんというと、いかんせん本当に余りにも遠い先になってしまう。そういう意味で、この十年を五年に改めるべきではないかと思いますが、御見解を伺いたいと思います。
  149. 田中健次

    田中(健)政府委員 この附則の七条でございますけれども、新たに国民に負担を課す法案につきましては、政府の方針として、こういう規定を置くということになっております。  それで、十年ということでございますけれども、このアセスメント制度と申しますのは、調査等を要する期間を含めまして、一連の手続になるわけでございます。そうしたことで非常に短期間に、短くいっても三年ぐらいはかかる。長い場合には、アセスメント調査に着手をしてから評価が終わるまで、五年以上の歳月がかかるということでございます。  したがいまして、この制度を、施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるということで、施行の状況についてそれを把握するためには、やはり一定の実績の積み重ねを見るということで、十年というのはどうしても必要だというふうに私どもは考えておる次第でございます。  しかし、制度の適切な運用という観点では、逐次制度運用状況点検をいたしまして、例えば内外の科学的知見の集積状況を踏まえて技術指針等を見直すなど、運用の改善が行えるところは行ってまいるというのは当然でございますけれども、制度そのものを洗い直して検討を加えるというにはやはり十年ぐらいの実績は必要だということで、十年としているところでございまして、ぜひこの点も御理解を賜りたいと思います。
  150. 大野由利子

    大野(由)委員 十年というのは余りにも長過ぎるのではないか。五年ぐらいでぜひ見直していただきたい。そうすべきではないかということを要望させていただきたいと思います。  あと、十八ページの十三条のところを見ていただきたいのでございますが、午前中、私も、事後アセスがこの法律の中に余り明記がされてないのではないかということを質問をさせていただきました。それで、この十三条に、環境影響評価実施の中で、環境庁長官は、いろいろ行政機関の長と協議して、基本的事項を公表するものとする、このようにありますが、この基本的事項というのはどういうものを想定していらっしゃるか、伺いたいと思います。
  151. 田中健次

    田中(健)政府委員 環境影響評価の項目等の選定のための指針といたしまして、基本的には、標準的な事業形態を想定をいたしまして、標準的に必要と考えられる項目及び手法を示した上で、事業の特性あるいは地域環境状況等を考慮して、項目の、手法の追加やあるいは重点化、または簡略化等の選定の考え方を定めるわけでございます。  私ども、基本的事項におきましては、各事業の種類ごとの標準的な事業形態を想定をいたしまして、当該対象事業実施に係る工事、あるいは工事が完了した後の土地または……(大野(由)委員「済みません、簡単にお願いします」と呼ぶ)はい。工作物の存在、あるいは、土地または工作物において行われることが予定されておる事業活動その他の人の活動、それぞれの標準的な項目を示すということでございます。  また、環境基本法の成立を踏まえまして、従来の公害七要素、あるいは自然の五要素という環境評価の項目を、環境質それから生物の多様性、人と自然との触れ合いとして再編をいたしまして、それぞれの事業実施による負荷の発生との関係から項目が選定されるようにその考え方を示すということで、いろいろございますけれども、項目の選定、あるいは指針をつくるための一番の根本になる事項につきまして定める、これが基本的事項でございます。
  152. 大野由利子

    大野(由)委員 今御答弁いただきましたけれども、ぜひここのところに、私が午前中に質問をさせていただきました、事後調査を行うことということをこの主務省令の中にぜひ明記をしていただきたい。いろいろ今おっしゃった調査項目、どういう調査項目があるかとか、技術指針とかというのがこの主務省令に書かれるんだと思いますが、ここに事後調査を行うこと、その結果を公表すること、また、そういう事後調査を行わなかったときはどうするのか、そういう措置、こういうものをぜひ主務省令に加えていただきたい、このように思うわけですが、御見解を伺いたいと思います。
  153. 田中健次

    田中(健)政府委員 おっしゃるような点につきましては、十二条の主務省令の中に加えて示していきたいというふうに考えております。
  154. 大野由利子

    大野(由)委員 じゃ、十二条ですね。(田中(健)政府委員「はい」と呼ぶ)じゃ、十二条の主務省令の中に入ると。十三条じゃなくて十二条。
  155. 田中健次

    田中(健)政府委員 十三条がその基本になりまして、十二条の主務省令の中に加えていきたい、こういうふうに考えております。
  156. 大野由利子

    大野(由)委員 時間がなくなってきたので、ちょっと最後、固めて一つだけ質問をさせていただきたいのですが、環境アセスメント法が手続法として成立をいたしまして形が整いましても、実際のアセスメントがどのように行われるかということがきっちりしていないと、非常に心配な面がございます。  それで、今すぐは無理だとは思いますが、ぜひ資料要求をお願いしたいと思うのです。  今まで閣議アセスで行われました環境アセスメントの中で、指名競争入札で行われたのが何件、特命随意契約が何件、一般競争入札が何件あったのかということをぜひ教えていただきたい。昔のことはわからないということであれば、資料が残っていますこの五年間で結構でございます。また、一回でも入札に参加した会社数がどれだけあるか、また、一回でも受注した会社数はどれだけあるかという、この辺の資料をぜひお願いをしたい。  どうしてこういう質問をするかと申しますと、私は、今回環境アセスメント法で丸投げをする業者が出てくるのじゃないか、この法律でそれが禁じられているのか、禁じられているとはとても思えないものですから。あの埼玉の特養ホームで、国から県から補助金を受けながら、工事を全部丸投げして、一割、二割、何割も中間搾取をした、そういう業者がございました。それが厚生官僚のトップの大きな不祥事とのつながりも生んだ、こういうことでもございます。  私は、この環境アセスメント法がこれからそういう不祥事の温床にならないためにも、丸投げを禁止するということをどういうふうにしてなさろうとしているのか、また実際にどういう形で契約後はいろいろなされているのかということを調べてみたい、知りたい、そういう思いがあるものですから、この資料要求と丸投げ禁止に対して、丸投げをどういうふうに考えていらっしゃるのかだけは答弁をお願いしたいと思います。
  157. 田中健次

    田中(健)政府委員 この閣議要綱に基づきますアセスメント制度、これは各主務官庁の方で実施をされておるわけでございまして、そのアセスのやり方等につきましては、これは、みずからやるか、あるいはコンサルタント業者に委託するか、どのように業者と契約をしておるかということは、事業者の判断でございまして、関係各省庁がやっている問題でございます。  私どもとしては、そうしたことでそのデータ等はつかんでおりませんが、果たして各省庁でも事業者がやっている事柄について掌握しているかどうかわかりませんけれども、先生のお尋ねでございますので、調べてみることにいたしたいと思います。  それから、丸投げというふうなお話がございましたけれども、先般来御説明をいたしますとおり、このアセスメント制度で、準備書なりあるいは評価書等につきまして公告縦覧をする、あるいは基礎的なデータ等できるだけ情報公開をする、こういうふうなシステムを取り入れておりまして、各事業者あるいは委託を受けて調査をするところも真摯に対応する必要があるわけでございます。  私どもとしては、そういう丸投げのもたらす弊害みたいなことはないであろう、こういうふうに思っておりますが、いずれにいたしましても、そのアセスメントをやる技術なりあるいは能力の向上というのは非常に大切な問題でございますので、アセスメントを行う事業者の資質向上にも今後とも努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  158. 大野由利子

    大野(由)委員 あと、電事法絡みで御質問をさせていただきたいと思って、通産省からも来ていただいていたのですが、済みません、時間が来ましたので、これで終了させていただきます。ありがとうございました。
  159. 佐藤謙一郎

  160. 河野太郎

    河野(太)委員 河野太郎でございます。  質問を始める前に、一言長官に申し上げておかなければいけないことがございます。  前回の環境アセスについての質問の中で、中環審の議事録のことについていろいろ申し上げました。その後、ほかの審議会議事録を見ますと、中環審の議事録というのはそんなに悪いものでもないということに気づきました。大分いろいろ申し上げましたけれども、ほかの審議会議事録と比べると、中環審の議事録はそんなに悪いものではないということで、一言おわびを申し上げたいと思います。  ただ、その中で、そんなに悪いものでもないのですが、それをさらによくしていただきたいということで、まず、幾つかそれに関するフォローから始めさせていただきます。  中環審の中に議事運営規則というのがあることを発見いたしまして、それの第十条に「審議会、部会、小委員会及び専門委員会の議事については、会議録を調製し、会議の概要を記載しておかなければならない。」という一項がございます。この同じ第十条に基づいて中環審の第二十五回から三十八回までの議事録がつくられたのだと思いますが、そうしますと、やはりこの十一月の十九日から十二月の六日まで行われた小委員会の議事録というのが、ほかの会合の議事録と比べると大変簡潔である、手抜きであると言ってもいいのかもわかりませんが、同じ第十条に基づいてつくられている割には、第三十三回までと第三十五回以降の議事録と、第三十四回に当たるのでしょうか、この小委員会の議事録の内容の差が激しいように思われますが、これは、何か環境庁の方で意図することがあってこういうことになったのでしょうか。
  161. 田中健次

    田中(健)政府委員 平成七年九月の閣議決定、「審議会等の透明化、見直し等について」におきまして、「会議又は議事録を非公開とする場合は、その理由を必ず明示することとし、議事要旨を原則公開とする。」こういうことになっております。御指摘中央環境審議会企画政策部会の環境影響評価委員会につきましては、「部会の答申又は意見具申の案文の検討を行う会議」に該当するものといたしまして、会議が非公開とされ、会議の概要につきましても会議要旨として公開をいたした、こういう次第でございます。
  162. 河野太郎

    河野(太)委員 この中環審の会合を公開にするか、あるいは非公開でやるかという基準は一体何であったのか、それからもう一つは、このたたき台をつくるというのはかなり大事な会合だと思うのですが、それだけが今回非公開になったというのはどういうことなのか、お尋ねさせてください。
  163. 田中健次

    田中(健)政府委員 企画政策部会の公開に関する決定ということで、平成八年の四月十二日に企画政策部会長が何点か決定をいたしておりますが、その中で「会議公開」というところで、「部会の答申又は意見具申の案文の検討を行う会議については、「公開することにより、公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがある場合」に該当するので、非公開とする。」こういうふうに決定をしているところでございまして、これに従いまして非公開となった、こういうことでございます。
  164. 河野太郎

    河野(太)委員 こうした案文の取りまとめをしているときに、周りに人がいてはやりにくいということがあるのかもわかりません。それはそういうことが考えられると思いますが、そうした場合でも、中でどういう意見が闘わされたのか、だれがどういう意味の発言をしてこういうふうになったのかということは、法律の原案にもなる答申をつくっている大事な場所でございますから、その場は原則非公開でも構いませんが、その中身については、どなたがどういうことをおっしゃったのか、やはり公開をしていかなければいけないのではないかと思います。そうしたことも公開できないような場で物事が決まっていき、あるいはそれをベースに法律がつくられていくというのは、民主主義の原則に、根本に反するのではないかという気が私はいたします。  今後とも、そうした場合が非公開になるということはあり得るかもしれませんが、そうした場合においても、議事録はきちんと発言者の名前を入れて公開をしていく方向でぜひとも御検討を進めていただきたいのですが、いかがでございましょうか。
  165. 田中健次

    田中(健)政府委員 審議会の具体的な運営に関する事項につきましては、審議会の各委員の御判断あるいは部会長の御決定によるもの、これは先ほどから申し上げておりますけれども、先生の御指摘の点につきまして、機会をとらえまして部会長にお伝えをいたしたいと思います。
  166. 河野太郎

    河野(太)委員 立法府が法律の審議をするときに審議の中身が全くわからないということでは、私どもも責任を持って審議をすることができません。もし、実際に審議会の部会長の一存でというようなことであれば、これは、議員立法ででも、そうしたものを公開せよという法律をつくって進めていかなければいけないのではないかと私は思います。  この辺のことはこれまでにさせていただきまして、行政手続法とこの環境アセスメント法案の絡みについて、少しお伺いをさせていただきたいと思います。  環境アセスメントというのは、これまで法律の根拠がなく、閣議あるいは省議によってこういうことをやろうということが決められていて、皆それに従ってやってきたわけでございます。ところが、こうした行政指導については、行政手続法ができましたから拘束力がない、いわば、環境アセスメント法案が、そうした環境アセスメントを行うための根拠になる法律がないと、閣議アセス、省議アセスといえども拘束力を持たないというのが現状ではないかと思います。  そうした意味で、この環境アセスメント法案というのは非常に大事な法案で、これはもうなるべく早く成立をさせなければいけない。今いろいろ議論をしている法律が必ずしも一〇〇%全員の人間を満足させるものではないのかもしれませんが、少なくとも、現状、考え得る中で、法律を成立させるという観点から見ると、この原案が一番成立に近い文面ではないかと私は思っております。  そういう意味で、この法律を一日でも早く通過させることが私はいいことだと思いますが、仮に、この法律が通らない、あるいは、そのような何かの事態があって、環境アセスメント法案がない場合に、行政手続法との関連で、閣議アセス、省議アセスの持つ、閣議あるいは省議で決めたことの持つ拘束力というのがどうなるのか、確認をさせていただきたいと思います。
  167. 田中健次

    田中(健)政府委員 行政手続法におきましては、事業者行政指導に従わなくても不利益な取り扱いを受けないということが明確にされております。したがいまして、仮に事業者行政指導に従わなかった場合、当該事業者には何らの不利益は与えられないということになりまして、この場合、指導に従う事業者との間で著しい不公平が生ずる、こういうことになります。このような状況を防止をしまして、制度の安定性を維持するためには、環境影響評価を法的な拘束力を有する制度とすることが必要でございます。  それからまた、行政指導の結果を許認可に反映させるということの限界も、行政手続法の制定に伴い明確とされております。すなわち、許認可の審査基準において環境保全に係る事項に触れられていない場合、許認可基準に環境に関することがない場合、許認可の審査に際して環境影響評価の結果に配慮をすることはできないこととされておるところでございます。したがいまして、許認可を初めとする行政上の判断に確実に反映させるためには、法律によります制度化を行いまして、許認可法の審査基準にかかわらず、環境影響評価の結果によっては許認可を行わない旨の規定を織り込むことが必要でございます。  このように、行政指導によります環境影響評価制度の限界が明確になっておりまして、環境影響評価制度法律によって行うことが求められておる、こういう状況にあるわけでございます。
  168. 河野太郎

    河野(太)委員 ありがとうございます。  この環境アセス法案が通りますと、日本という国全体に網がかかるわけでございますが、これがない場合には、それぞれの地方自治体がいろいろな条例その他でアセスをやろうということにしていると思います。もし行政指導が通用しないのであるということになりまして、仮に環境アセスメント法案という根拠になる法律もないということになりますと、地方自治体が条例その他でアセスメントをやりなさいという形で網をかけている地域というのは、全国で大体どれぐらいになるものでしょうか。
  169. 田中健次

    田中(健)政府委員 全国アセスメント制度を何らかの形で行っているのは五十一団体ございますが、その中で、条例をもって行っているところが七つでございまして、残りの四十四がこういう要綱という形で、行政指導で行っている、こういう状況でございます。
  170. 河野太郎

    河野(太)委員 ありがとうございます。  そういう状況をお聞きしますと、やはりこの法律を何が何でも成立させていかなければいけないのだと思います。  少し先へ進めさせていただきますが、この環境アセスメント法案一つの特徴が、全国どこでも同じ手続アセスメントをやるんだということであるかと思います。その全国どこでも同じ手続ということで本当にいいのかどうか、少し私は疑問を持っているんです。例えば、国立公園の中ですとか風致地区の中というようなところが、そうでないところと同じ手続で進められて、同じ手続アセスメントを進めていって本当にいいものかどうか、少し疑問があるんですが、そのあたりについてはいかがでしょうか。
  171. 田中健次

    田中(健)政府委員 環境影響評価制度が、立場の異なります広範な主体の役割と行動のルールを定めるものである、こういうことにかんがみまして、この法案では、環境影響評価に関します手続の順序でありますとか方法でありますとか期間等を統一的に定めまして、その実施事業者に義務づける、こういうことにいたしているところでございます。  御指摘がございましたように、国立公園のような地域につきましては、地域環境の特性として把握をされているものでございまして、スコーピングの手続あるいは環境影響評価実施等におきまして、環境影響評価の項目並びに調査、予測、評価の手法、あるいは環境保全対策の検討内容、こういうところに国立公園のような地域の特殊性が反映される、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  172. 河野太郎

    河野(太)委員 ありがとうございます。  きょうは通産省の方から発電課長がお見えですので、少し発電所に関するアセスメントについてお伺いをさせていただきたいと思います。  通産省の省議で決まっているアセスメントだと思いますが、発電所に関するアセスにかかる費用が地域によって違うということです。一件当たり大体二十億円から六十億円という費用がかかっている。そして、この二十億から六十億円という費用は、実は諸外国が発電所をつくるときのアセスメントに要する費用の十倍から数十倍というコストだということを伺っておりますが、一つは、こうした多額のコストをアセスにかけて、発電コスト、電力のコストにどの程度影響があるのでしょうか。
  173. 真木浩之

    ○真木説明員 アセスメントに要する費用でございますが、ただいま先生御説明ございましたように、発電所の種類でございますとか、あるいは使います燃料、それから地域の特性によって幅がございますが、二十億から六十億というのが実情でございます。  全体に占めるコストということでございますが、これも発電所によってさまざまでございます。数百万キロワットの発電所でございますと数千億の建設費がかかります。したがいまして、数千億の数十億、こういうオーダーでございます。
  174. 河野太郎

    河野(太)委員 そうすると、それだけの費用を投入してもコストにははね返っていないということなんだろうと思いますが、逆に申しますと、これだけのお金をかけて発電所アセスをやる以上、何らかのメリットがあると思うのですが、具体的にこれだけの、諸外国の数十倍という費用をかけて、しかも環境アセスメント法案一本ではなくて電事法を改正して、二本立てとまではいきませんけれども一本立て半で引き続きやっていくわけでございますが、こうしたやり方をすることにどんなメリットがあるのでしょうか。
  175. 真木浩之

    ○真木説明員 諸外国と比べまして多額の費用をかけているということでございますが、費用の中身を見ますと、環境アセスメントをする際にバックグラウンドの調査というのが必ず必要になるわけでございますけれども、この環境現況調査に多くの費用をかけております。大気汚染でございますと、一年間を通じて風況、風速ですとか風向きを調べたり、あるいは発電所の場合には温排水というのが出ますが、それの拡散予測をするために海況の状況を、船を出して数十方キロにわたる海面で調査を行う必要があるわけでございます。  また、予測評価におきましても、諸外国と比べまして予測評価を行います範囲が広くなっておりますし、また予測評価の手法そのものにつきましても、例えば諸外国では計算だけで済ませておりますのを、日本では風洞実験やあるいは水理模型実験などの実験をあわせて行って確認をしているというような状況でございます。  なぜそういう精度の高いものをやっているのかということでございますが、日本は国土が狭くて人口が密集しておるところでございます。電源立地が大変いろいろな意味で難航しておりますが、その中の一つとして、環境保全に万全を期すということが地元からも求められているものでございます。電源立地に万全を期して、発電所の立地に遺漏なきを期すために十分なアセスメントをするための費用を投じているということかと思います。
  176. 河野太郎

    河野(太)委員 審議会議事録の中に、通産省の発電所アセスをやってどんな効果があるのか、その中で、SOx、NOxの数値が諸外国と比べて低いというような意見が出され、それに対して委員の方から、それはそのアセスをやったからというよりも脱硫装置その他の設備がいいからではないか、そういう指摘があって、電事連の出席者の方が、まさに御指摘のとおりでありというような発言をされております。本当に通産省の発電所アセスだけを別建てにしてやった方がいいのか、あるいは環境アセスメント法案の中に一本立てにして、その分の費用をもっとそうした公害防止装置の方に使った方がいいのか、そのあたりはいかがでしょうか。
  177. 真木浩之

    ○真木説明員 SOxのキロワットアワー当たりの排出量が諸外国の二十四分の一、NOxにつきましては八分の一ということでございますが、これは日本の環境基準そのものが諸外国より厳しいという事実が一つございますが、それに加えまして、事業者が自主的努力によりまして極力基準を下回るようにしているものでございます。そのために最新鋭の、高性能の脱硫装置、脱硝装置をつけているわけでございますが、そういうものを設置する必要性検討するために十分なアセスメントが必要であるということでございます。
  178. 河野太郎

    河野(太)委員 数十億という費用をかけて、特にその発電所アセスを別にする根拠が本当にあるのかどうか、ちょっと今の答弁ではよくわかりませんが、今後もこうした数十億という費用をかけたアセスをやり続けるつもりでしょうか。
  179. 真木浩之

    ○真木説明員 環境保全対策に万全を期しますために必要な調査というのは実施をしていく必要があるかと思いますが、片や日本の電気料金、諸外国と比べまして高いという指摘もございます。費用の低減にも努めていく必要があろうかと思います。  新しいこの法制化のもとにおきます制度考えますと、スコーピング手続というのが導入されておりますけれども、地域環境特性を踏まえて、その地域において重要な環境要素というのを判断しながら調査項目についてウエートづけをしていくというものでございますが、こういうことによりまして重点的な調査が可能になる、あるいは新しい予測評価技術を開発し全体の予測評価の効率化を図ること、あるいは環境情報の収集整理を行いまして、それを事業者に提供することなどによりまして、全体のコストの低減が期待されるのではないかというふうに考えております。
  180. 河野太郎

    河野(太)委員 今までのよいところは無理に削る必要はないと思いますが、やはり諸外国と比べて数十倍もコストがかかっているというのは、余り正常なことだとはとても思えません。少しそのあたりの規制緩和、できるところはしていただいて、それと、日本でこういうコストが諸外国より数十倍かかっているというと、すぐ官庁の場合は天下り先が何か絡んでいるのではないかとか、そういうあらぬ誤解を、私はあらぬ誤解だと思いますけれども、あらぬ誤解を受けないとも限りませんので、そのあたりの見直しを一度徹底的にやっていただきたいと思います。  もう一つ、IPPの十五万キロワット以下のものは今度の電事法の改正でも対象にならないということになっておりますが、本当に万全を期すということであれば、そうしたものも対象に加えていくべきではないのでしょうか。発電所だけは特別に発電所アセスをやって数十億のコストをかけるのであれば、発電所に関しては規模で切ることなく、火力発電所はすべて入れる。現に原子力発電所は規模に関係なく全部対象になっていると思うのですが、そういうことであれば、SOx、NOxを出しやすい火力発電所はすべて規模にかかわらず入れていくというのが筋ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  181. 真木浩之

    ○真木説明員 現在発電所のアセスメント対象としております発電所は、ただいま御説明いただきましたが、原子力はすべて、火力は十五万キロワット以上、これはIPPも含んでおります、それから、水力は三万キロワット以上、地熱は一万キロワット以上ということでございます。  今回御審議をいただいております案では、必ずアセスメントをするもの、これは一定規模以上のものでございます、それから、小規模のものについてはアセスメントをしないでいい、それから、真ん中のものについては、スクリーニングという制度によりまして、これは第二種事業ということになるわけでございますけれども、個々の発電所ごとに本格的なアセスが必要かどうか判断をするという制度を、手続を新しく導入することとなっているわけでございます。  したがいまして、十五万キロワット以上の火力発電所、IPPも含めましてでございますが、この規模をどこでどう切るかということはこれからの検討事項でございますけれども、十五万キロワットぎりぎりのIPPの入札が昨年の入札で幾つか出てきておりますので、これが環境に悪影響を与えることのないように、適切な第二種事業の設定というものも今後検討してまいりたいというふうに思っております。
  182. 河野太郎

    河野(太)委員 おっしゃることはよくわかるのですが、私の質問の答えになっていないのではないかと思います。  本当に発電所アセスだけ別建てでやるのであれば、なぜ火力発電所を規模で切らなければいけないという必然性があるのでしょうか。火力発電所は原子力と同じようにすべて環境アセス対象であると言ってしまえばこうした問題はなくなりますし、十四・七だか十四・九という規模の発電所でアセスをくぐり抜けようという動きも最初から抑えることができるわけですから、ここで新しくルールをつくるのであれば、最初から火力発電所はすべて対象だと言ってしまえば事業者の方にもくぐり抜けようなどという意識も出ないわけですし、どうしてそういう規模に下限を設けるのか、私はちょっと理解に苦しむのですが、その辺の御説明をお願いいたします。
  183. 真木浩之

    ○真木説明員 発電所につきましては、これまでも行政指導で環境アセスメントを一定規模以上のものについて実施してきているわけでございます。アセスメントをやらないものについて、環境上野放しということではございませんで、大気汚染防止法なり水質汚濁防止法なりそれぞれの公害防止の法律規定に基づきまして、これは電気事業法の中でチェックをされているものでございます。  アセスメントというのは、大規模なもので、環境に大きな影響が出ると思われるものについて、住民の意見を聞いたり、知事意見を聞いたり、さまざまな手続を経ながら環境面から万全を期していくという制度でございますので、余り小さいものについてまで同様の義務を課す必要はないのではないかというふうに考えております。現在ございます各種公害関係規制法で環境保全は図られるのではないかと考えているところでございます。
  184. 河野太郎

    河野(太)委員 前回もお伺いをいたしましたが、通産省は、発電所だけは、最初は環境アセスメント法案の中に入れないというお考えで、いろいろあるうちに、半分ぐらい環境アセスメント法案にも入るよというようなことになりました。この間の経緯が、環境庁と通産省の間でどのような話し合いが行われ、どういう妥協が行われたのかを少し御説明いただきたいと思います。環境庁の方からでも通産省の方からでも構いませんので、よろしくお願いいたします。
  185. 田中健次

    田中(健)政府委員 発電所の取り扱いにつきましては、実効のある制度とするためにどのような制度が適切か、こういう観点から、通産省と調整を行ってきたところでございます。  具体的に申しますと、環境庁といたしましては、発電所についてもほかの事業と同様に統一法の枠組みの中に位置づけた上で、事業の特殊性に応じて手続の特例が必要であればこれを検討する、こういうスタンスで調整を行ってきたものでございます。  その結果、本年二月十日の中央環境審議会の答申や、あるいは二月十二日の衆議院予算委員会におきます総理大臣の答弁に従いまして、発電所を環境影響評価法案対象事業とした上で、環境影響評価法案に基づく一般原則を発電所に適用いたしまして、ほかの事業と異なる特別な手続を電気事業法の方で規定する、こういうふうになったものでございます。  したがいまして、私どもは、調整の結果そうなったわけでございまして、そういう調整方針をもとに調整をしたわけでございます。まあ妥協したということは、認識をいたしておりません。
  186. 真木浩之

    ○真木説明員 調整の経過につきまして環境庁の方から御答弁ございましたけれども、これまで発電所と他の事業は違う手続アセスメント実施してきております。  発電所は省議アセスによります手続でございますし、その他の事業閣議アセスでございます。発電所の省議アセスにつきましては、準備書段階から国が関与し、工事計画の認可に反映するなど、閣議アセスとは別の体系でアセスメントを二十年間実施してきた歴史があるわけでございます。  今回の法制化に当たりましては、環境影響評価法案及び電気事業法の改正法案は、現在まで行政指導で行ってまいりました閣議アセスと省議アセスの体系をベースにアセスメントを法制化しようとするものでございます。これは、理由は、前回も御説明いたしましたが、既に定着した制度でございますし、電気事業法と発電所のアセスメントは一体的に運用してきた、こういうようなことでございますが、このように手続の異なる別体系の制度をいかなる形で法制化するかということについて、立法技術上の問題などもあり、政府部内で調整をいたしました結果、一般原則は統一法に、発電所の特例部分は電気事業法にという整理となったわけでございます。
  187. 河野太郎

    河野(太)委員 どうも環境に関する法律をいろいろ見ておりますと、行政府の中の対立が非常に多い。その行政府の中の対立がどういうふうに解決をされていったのか、我々立法府にいる人間には全くわからないところで行われ、それが結局どういうことであったのか、とうとう最後まで御答弁を聞いてもよくわからないことが非常に多いようでございます。  これからは、こうした環境に関する問題というのは、行政府の、閣法任せにするのではなくて、立法府がイニシアチブをとって積極的に進めていく、そういうことにしておかないと、いつまでたっても何だかわからないように行政府の中の妥協策が出てきて、それで終わってしまう、そんなことで環境に関する国の方針が決まってしまっていいのか、私は非常に疑問を持っております。  この問題もそうですし、これから大きなテーマになってきます地球の温暖化などという問題は、それこそ我々の次の世代の人間に対するものでありますから、立法府の人間がもう少しきちっとした理念を持って、こうあるべきだという理想に向かっての法律づくり、政策づくりというのをやっていかなければいけないのではないかと思います。今ある目先のことをどう解決するかという妥協でこうした環境に関する政策を決めていくことは、そろそろやめていかなければいけないのではないか。できれば環境庁長官にもっともっと政治的なリーダーシップを発揮していっていただきたいと思います。  時間が余りなくなりましたので、一つだけお伺いをいたします。  この環境アセスメント法案がつくられまして、実際に物事が動いていきますと、NGOというのが大変大きな力を発揮するのではないか。また、そういう環境に関するNGOが大きな力を発揮してくれなければ困ることもいろいろ出てくると思います。今こうした環境問題を取り扱っているNGO、グリーンピースのようなものから小さい地域のものまでいろいろなものがあると思いますが、環境庁はこのNGOに対してどういう意識をお持ちなのかということを、まずお伺いさせていただきたいと思います。
  188. 田中健次

    田中(健)政府委員 環境基本計画におきましても、持続可能な社会の実現のためにすべての主体の参加をその長期目標の一つに掲げまして、特に草の根の活動を行う非営利の民間団体の役割の重要性を明記をいたしております。  環境庁といたしましても、そうした環境基本計画の趣旨を踏まえまして、環境NGOの活動をできるだけ充実をさせたいということで、そういう基本的な考え方のもとにいろいろな施策をやっております。環境NGOへの地球環境基金による活動資金の助成であるとか、あるいは、地球環境のパートナーシッププラザという拠点をつくりましてNGOの方々の情報提供や交流の場にするとか、あるいは、環境カウンセラーの登録制度というのをつくりまして市民活動に対しますアドバイスを行う専門的な人材の確保とかあるいは育成など、環境NGOの活動を支援しているところでございまして、今後とも、そうしたことでこのような施策を充実してまいりたいというふうに思っておるところでございます。
  189. 河野太郎

    河野(太)委員 NGOの中には、環境庁の方針あるいは政府の方針と必ずしも一致した動きをするものでないところもいろいろあるかと思いますが、そうしたNGOも、広く地球のため、環境のためを思っていろいろな活動をされていることだと思います。そうしたNGOまで含め、ぜひ環境庁の方でできる支援をしていただきたい、そうしたNGOがいろいろな情報の発信をするところもぜひお手伝いをいただきたいと思います。  いろいろ質問をさせていただきましたが、私はこの環境アセスメント法案の原案に大変に賛成でございます。できるだけ早いうちに、この法律に基づいて環境アセスメントが行われる、そういう時期が来ることを待ち望んでいることをつけ加えて、質問とさせていただきます。  どうもありがとうございました。
  190. 佐藤謙一郎

    佐藤委員長 小林守君。
  191. 小林守

    ○小林(守)委員 引き続き質問を継続させていただきたいと思います。  きょうは、何か地球環境の日だそうであります。アースデーというようなことだそうでありまして、今日まで環境影響評価法案の審議も随分深まってはきたというふうに思いますし、また、本日は総理も出席をされました。また昨日は、委員会で京都における地方公聴会もなされたわけでありまして、そういう点では、それぞれの考え方、そしていろんな提言等についても、環境庁の方でも相当認識が深まってきているのではないかというふうに期待をしているところであります。しかしながら、まだまだ何か答弁内容は、一歩踏み込んだ、今日までの議論の経過を踏まえたものとしてではなくて、当初から考えられていた一定の法文の解釈とか、この線でいこうというように固めてしまったものについては一歩も譲らないというような姿勢が見られて、非常に残念な感じがいたします。  やはり基本的に、論議を通してそれぞれの考え方が深まり高まっていく、そしてよりよいものにしていこうというような姿勢がないと、委員会の審議も空洞化、形骸化してしまうということになるわけでありまして、どうか、いわゆる閣法であるというような観点からだけではなく、与党の提案であるから何としてでも守り抜くみたいな発想がもしあるとするならば、そうではない、環境影響評価法案という中身からいってもまさに人類にかかわる問題であるという観点に立って、よりいいものを、地球環境に果たす日本の役割とか、我々地球上に住む一人一人の人間の責任というような観点に立って、ただ単なる国会における与党野党の問題とか政治的な枠組みの問題とか、そういうものではないんだということで、ぜひ、議論がさらに深まり、高まり、よりいいものをつくっていくという姿勢に基本的に立ち返って、もう一度質問をしたいものだなというふうに思っているところであります。  それで、まず、前回積み残した幾つかの質問について継続をさせていただきます。  法案の第四条第二項、三項にかかわるスクリーニング手続についてでありますけれども、この第四条におきましては、都道府県知事意見を求めるというふうになっております。基本的には、それぞれの委員指摘をされてまいりましたけれども、できるならば市町村長及び住民の意見制度的に求められる形になっているべきではないか、このように考えているわけであります。  なぜ市町村長や住民の意見が——例えば準備書やスコーピングの段階では住民の意見、それから都道府県知事市町村長意見を聞いて意見を述べるという形になっておりますけれども、このスクリーニング段階では都道府県知事だけになっているのですね。そこが、例えば市町村の方々から、市町村の長の立場の方々から極めて強く不満が出ている。特に、政令市の方からはこの点について強い問題提起がなされている現状にあるわけでありますが、この件について再度御答弁をいただきたいというふうに思います。
  192. 田中健次

    田中(健)政府委員 スクリーニングは、事業の種類及び規模、それから事業実施予定地とその周辺の環境状況等から、方法書以降の手続が要るかどうかを判断するものでございます。これは、できる限り客観的な基準をあらかじめ定めることによりまして、相当程度類型化をして判断することが可能というふうに考えております。  このために、判定基準につきましては、環境庁長官基本的事項を定めますとともに、主務大臣がこれを定めるに当たりましては環境庁長官に協議することといたしまして、基準の客観化を図るということといたしておるところでございます。  判定基準に基づく判定に必要な情報といたしましては、例えば自然環境の復元が著しく困難な地域の有無であるとか、あるいは生活環境保全上特に配慮を要する地域の有無など、地域基本的な情報を想定いたしております。  したがいまして、都道府県知事が有しております地域の主要な情報がありますと、これで判定は十分適正になされるもの、こういう考えによりまして都道府県知事意見を徴するというふうにしておりまして、市町村長や、あるいは一般意見を聞く手続を設ける必要性は、スクリーニングにつきましては必要性は薄いというふうに考えておる次第でございます。
  193. 小林守

    ○小林(守)委員 必要性が薄いというふうに考えられているということなのですが、少なくとも当事者の方からは、ぜひ入れてくれ、入れるべきだという問題提起が強くなされているわけですね。そういう観点に立つならば、入れて不都合があるのかどうか、これを逆に聞きたいというふうに思います。
  194. 田中健次

    田中(健)政府委員 私どもといたしましては、先ほど申しましたように、スクリーニングをする際に必要な環境情報等は都道府県知事が持っておるということで、都道府県知事意見を聞けば十分だということで、市町村長意見を法的に聞くような制度にはいたしておりません。都道府県知事が判断をいたしまして、適宜市町村長等の意見を聞くということは差し支えないわけでございます。  そういうことで、スクリーニングにつきましては、わざわざ市町村長意見を聞くという規定は必要でないというふうに判断をいたしておるところでございまして、ぜひ御理解を賜りたいと存じます。
  195. 小林守

    ○小林(守)委員 地方自治制度の問題にもかかわる、認識にかかわる問題になろうかと思うのですが、まず、住民の生活とか健康、環境保全、これに第一義的に責任があるのは基礎自治体、市町村であるというふうに私は認識しておりますし、また法的にもこれは間違いないことになっております。都道府県の役割というのは、これも自治法上にあることでありますが、基本的には広域的な行政分野、市町村ではカバーし切れない広域的な行政分野を担当するということ。それからもう一つは、市町村の補完をする補完機能がありますね。広域行政機能と補完機能、これが都道府県の役割になっているはずであります。  それから、その際、都道府県市町村に対してどういうかかわり方があるかというと、当然のことながら、現行法でもいわゆる指導監督の立場にあるのではないのです。基本的には技術的助言と情報提供というのが、都道府県市町村に対する関与のあり方基本になっています。これは現行法でもそうなのです。  しかし、何となく、上級機関が市町村に対して指導助言をするみたいな感覚が非常に残っているというふうに、これは現実にあるわけであります。これは国と都道府県市町村との関係が、いわゆる地方自治という流れにあっても、戦後一貫して、戦前の体制である国の出先機関であるというような位置づけ、いわゆる機関委任事務、国の機関であるというような位置づけに沿って、機関委任事務というものがかなりの部分ウエートを占めているのです。これが国と都道府県との関係都道府県市町村との関係を、上下関係というか、指導助言関係に置かしめているというふうに思うのですね。  その流れを断ち切って、新しい地域主権というか、地方分権の時代を開いていこうというのが今日のまさに地方分権推進委員会が鋭意取り組んでいるところの課題であって、その辺を踏まえて考えていかなければならない。  何度も言いますように、この流れの中では、少なくとも明確に、保護と依存の関係とか上意下達の関係とか、そういうものではなくて、まさに対等な関係であるということ、それからお互いに協力し合っていく関係であるということ、住民のためにお互いに協力し合っていくという関係を新たに構築する必要があるわけであります。  そういう観点に立った場合、今度のアセスメント法に見られる国と地方団体との関係、県と市町村との関係については、余りにも今日までの自治体の歴史的な、精神的な取り組みの実績を無にするような視点からの、現行法体系の機関委任事務体制の枠の中での発想になっているのではないか、そういうふうに私は思うわけであります。  その辺の認識について、極めて不満でありますし、特に政令市、そのほかにもちろん中核市とか広域連合という地方制度も出てきているわけでありますが、少なくとも政令市市長さんについては、知事に準ずる役割は一定程度果たしているわけですが、市町村市長に当たるわけですね。市町村市長に当たるわけです、政令市長というのは、規模的には。権限的にも都道府県知事に匹敵するくらいの役割を果たすわけですけれども、しかし、自治法上の位置づけとすれば市町村長市長に当たるわけであります。少なくともそこに「市町村長」というものを入れることによって、政令市長等の歴史的な取り組みの実績、そして誇り、これもあると思います、これをしっかりと受けとめていけることではないか。少なくともスクリーニング段階においても「市町村長」という言葉を、「知事及び市町村長」というふうに「及び市町村長」という形を入れることによって、問題を緩和できるのではないかというふうに思うのですが、いかがでしょう。
  196. 田中健次

    田中(健)政府委員 環境行政におきましては、地域環境保全に責任を有する地方公共団体の取り組みが重要でございまして、歴史的にも先行的な役割を果たしてきたものでございまして、こうした環境影響評価に関する取り組みにつきましても、環境保全を促進するものとして私どもは評価をしてきたものでございます。  それで今回の法制化に当たりましては、このような地方公共団体の取り組みを踏まえまして、地域の実情に応じ環境影響評価が行える仕組みとしておるところでございます。  それからまた、都道府県市町村関係につきましては、先生からも先ほど来お話がございますように、都道府県は広域的な見地からの役割、それから市町村はよりきめ細かな、地域に密着した役割を担うという役割分担の考え方に基づく仕組みでございまして、私どもといたしましても、この法律を立案する過程で、知事市町村長の間に上位下位の位置づけをしているものでは決してございません。  そういう前提には立っておりますけれども、私どもといたしましては、事業者側から見ますと、行政意見はできるだけ集約をされることが望ましいということもございますし、また法案対象といたします事業は広域的な環境影響が懸念される大規模な事業でございまして、広域的な環境行政に責任を有する都道府県知事地方公共団体レベル意見を取りまとめることが適当というふうに考えておる次第でございます。  ちなみに、環境基本法におきましても、都道府県は、広域にわたる施策実施それから市町村が行う施策の総合調整を行うということにされておるところでございます。  そういうことで、私どもといたしましては、このアセスメント制度が、国の立場から見て一定の水準の環境影響評価を確保する必要がある大規模事業に限り、それは非常に大きな影響環境に及ぼす、広域的な環境行政にかかわってくるということで、そういうことから、都道府県知事にいろいろと意見の取りまとめ等をお願いする構成にした次第でございまして、ぜひ御理解をいただきたいと存じます。
  197. 小林守

    ○小林(守)委員 可能ならば、やはり市町村長まで入れていただければより国民的な合意形成がしやすいというふうに、今、御理解をいただきたいと言われましたが、やはり入れておく必要があるのではないか、私はこのように考えております。  それで、同じ議論をしてもいたし方ございません。いわゆる国と地方との関係でもいろいろな議論がなされてきているわけですが、別の聞き方で尋ねたいと思います。  地方公共団体の先進的な条例とか要綱、今度の法律はそういうものをしっかりと受けとめて生かしていくような仕組みになっているのだと、これは運用にもかかわりますが、その辺を断言できるかどうか、お聞きしたいと思います。  というのは、きょうの新聞に、東京都は条例で計画アセスをやるみたいなことが報道されました。それから、もちろん北海道では「時」のアセスというような概念で、条例で、みずからの許認可にかかわること、それから都道府県北海道なら北海道の道の事業として行う決定をした事業で、住民等の反対運動等があってもう十年や二十年経過してしまって未着工の状態にある事業、これについては、社会経済の変化を見て、その必要性や意義について見直しをするのだ、そういう「時」のアセスをやるというような決定がなされたようであります。  少なくともこの法案には含まれていない、より一歩進んだものではないかというふうに私は見ているわけですけれども、そういう自治体の先進的な条例とか要綱について、重なることはないはずでありますけれども、国の法律は国の対象事業でやるわけです。条例の対象となるようなものについて、国の法律がそれをより生かしていく、よりしっかりと支えていくようなものとして、そういう仕組みになっているということ、それを担保するのは、私はこれからの行政指導というか運用でしかないのだろうと思えてなりません。  そんなことで、環境庁の方の考え方について、今後の運用も含めた大枠の話で、余り細かい詰めをしてもいい答えが出そうもありませんので、とにかく先進的な条例や要綱、そういう自治体の実績とか経験というものは生かされる方向での法案なんだ、法案仕組みなんだということを断言していただければありがたいというふうに思います。
  198. 田中健次

    田中(健)政府委員 私ども、既に地方公共団体で広範に環境影響評価に関する施策実施をされていることにかんがみまして、今回の立案に当たりましては大規模で国の関与のあるものに限定をいたしまして、それ以外のものにつきましては、これまでの実績等を踏まえて、地方公共団体の判断でアセスメントをやっていただく、こういう仕組みにしておるところでございます。  それから、今回の立案に当たりましては、地方公共団体がほとんど実施をしておりません、スクリーニングは実施をしているところは皆無でございますし、スコーピングもそう多くはございません、そうしたスクリーニングやスコーピングの制度を導入いたしまして、それから、事後フォローアップと申しますか、そういう点も導入をいたしまして、既存の地方公共団体制度に比較いたしましても遜色のないものにしておるところでございます。地方がやっておる制度を、いいところはいろいろと取り入れて制度の構成をしたつもりでございます。  しかし、先生お話ございましたように、時のアセスの問題であるとか、あるいはまた東京都が一部導入を考えておりますような戦略的環境アセスメント、こういう問題、これにつきましては、特に後者の点につきましては中央環境審議会でもいろいろ御議論をされておりますけれども、今回の法案では取り入れるところまでは至っておりません。  ということで、先進的な自治体が今後そういうところに先鞭をつける、こういうこともございまして、私どもといたしましては、今後とも、地方の動き等も参考にしながら、制度を改善するところがあればさらにそれを取り入れていきたい。こういうことで、地方とは今後とも連携をとりながらやっていきたいというふうに思っております。
  199. 小林守

    ○小林(守)委員 わかりました。では、そういう方向で、少し踏み込んだ発言になったかな、答弁になったのかなというふうに受けとめさせていただきます。  次に、法案の中の四十七条、四十八条にかかわりますが、港湾法にかかわる港湾環境影響評価関係です。  非常に難しい読みかえ規定みたいな条文ですから、どこがどうなっているのか、よく対照してみないとわかりませんけれども、大体読んだ限りでは、スクリーニングとかスコーピングの手続がなく、これはいきなり準備書からアセス手続が始まっているというふうに理解していいのかどうか。もしそうだとすれば、その理由は何なのか、お聞かせいただきたいと思います。
  200. 田中健次

    田中(健)政府委員 港湾計画に関する御質問でございますが、まず、スクリーニング手続につきましては、港湾計画段階では事業イメージがはっきりと固まっておりませんで、調査実施する前に港湾計画ごとの環境影響の差異をきめ細かく判断するということは困難でございます。  それから、地域特性につきましても、同じ臨海部ということでありますことから、個別判断の余地を残す必要性に乏しい。こういうことから、港湾計画アセスにおきましてはスクリーニング手続を行いませんで、港湾計画段階で一定の事業イメージが固まる埋め立て等に着目をして、定型的に判断をするということにしたものでございます。  それから、スコーピング手続につきましても、同様に港湾計画段階では事業イメージがまだ固まらないこと。それから、港湾計画に定められます事項はおおむね各港湾計画を通じて共通をいたしておりまして、ほかの事業の場合のように個別事業による差異は少ない。こういうことから、調査の項目及び手法についても技術指針において相当定型的にこれを定めることができる。こういうことからスコーピングの手続を省略をしたものでございます。  なお、この場合におきましても、港湾管理者自身が、調査の項目それから手法の選定を技術指針に定めるところにより行うことといたしておりますために、これによりまして調査等が不十分になるということではないと考えております。
  201. 小林守

    ○小林(守)委員 それでは、確認の意味も含めまして、今度の法四十七条、四十八条というのは、従来行われてきた要綱アセスですね、閣議アセス、これと同じなのでしょうか、それとも新たなものが入っているのでしょうか。例えば、フォローアップだけが新しいとかそういうことなのでしょうか。その辺についてお聞きいたします。
  202. 田中健次

    田中(健)政府委員 これまで港湾アセスは、閣議要綱でございませんで、港湾法に基づいてやってきていたわけでございますけれども、今回、この私どもの環境影響評価制度ができ上がりますので、この制度にのっかってアセスメントを行う、こういうことでございます。手続は私どもの法案にのっかるということでございますが、その中で、今申しましたように、港湾計画あるいは港湾事業の特殊性からスクリーニングとスコーピングは省略をする、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  203. 小林守

    ○小林(守)委員 港湾法に基づいて行ってきたアセスを今度の法案にのせてやるのだということなのですが、そうしますると、従来の港湾法に基づく港湾アセスで、環境影響評価法案、今度の法案で新しくなったもの、新たに加わったものというのは幾つかあるのですか。
  204. 田中健次

    田中(健)政府委員 特に変わる点といたしましては、これまでの港湾法によりますと、住民意見というのを聞くようになっておりませんでした。今回は、こうしたことで一般意見を聞くということになろうと思います。
  205. 小林守

    ○小林(守)委員 今のお答えにあったように、何ともお粗末な話ですよ。港湾法に基づく環境アセスというのは住民の意見を聞かなかったという話ですから、いかにおくれておったかというようなことを実感いたしておるわけであります。  それらも含めて、とにかく運輸省とちょっと詰めた話はしてきているのだろうと思いますが、私の印象を申し上げさせていただきますると、運輸省とのお話とか、それから通産省との電事法との絡みとか、そのほか都市計画法で建設省との話とか、省庁間の横のあれについては、今度の法案については非常に主務大臣の意向というのですか、縦割り的なもので何とか位置づけをすればいいというような傾向が見られる。  しかし逆に、縦の問題、いわゆる国と地方との関係についてはかなり意図的に、強圧的とは言いませんけれども、かなり縛りをかけるような意識が強く働いているのではないか、横には非常に遠慮しがちで、自治体に対してはかなり強い姿勢で臨んでいるのではないかという印象を持たざるを得なかったのですが、その辺については明確に否定していただけますか。
  206. 田中健次

    田中(健)政府委員 今回の法案では、自治体の意見も十分お聞きをして環境の配慮につなげていくということにいたしておりまして、そういうことで、地方にも十分配慮をしているということを御理解を賜りたいと思います。
  207. 小林守

    ○小林(守)委員 それでは次の問題に移ります。  法第十三条の問題であります。スクリーニング基準とかスコーピングの項目、調査手法等について各主務大臣が指針を定めるわけですけれども、その指針を定めるための基本的な事項について環境庁長官が定めて公表するというように法第十三条でなっております。これは既に質問があったかと思いますけれども、基本的な事項を定めて各主務大臣が指針を出す、その手続ですね、これはどのようなやり方で行われるのかということでございます。
  208. 田中健次

    田中(健)政府委員 御指摘基本的事項の策定につきましては、本法案が制定をされますと、公布の日から六カ月以内に環境庁長官が、主務大臣など関係する行政機関の長に協議をいたしまして定めることとなっておりまして、環境庁といたしましては、これまでの閣議決定要綱に基づくアセスメントや、あるいは地方公共団体の取り組み等を踏まえながらこれまでの調査研究の成果を活用する、こうしたこととともに、さらに幅広く専門家等の知識を活用するなどによりまして、その基本的事項が科学的かつ合理的なものになるように努めていきたいというふうに考えております。
  209. 小林守

    ○小林(守)委員 先ほど大野委員さんの方からも、それに続いて、その際、中央環境審議会等に諮問して意見を聞いてはどうか、こういう形での法文化はできないのかというような問題提起もございました。その議論を繰り返す必要もないかと思いますが、いずれにしても、幅広い、必要に応じて専門家やそういう審議会等の意見も聞けるという仕組みにはなっているということですね。  そういうことですから、ぜひその権威あるものとしての、問題は第三者性なのですよ。要は、省庁のいろいろなあつれきの中で、基本的なそういう科学的、客観的な中立的な意見というか考え方、所見、見識というものがねじ曲げられてしまうことを皆さん恐れているのだと思うのです。  そういうことで、そのための突っかい棒として、いろいろなところに、逆に言えば根を張ってしまいなさい、そのことによっていろいろな風が吹いたとしても倒れないで立っているということをやはり環境庁に期待しているわけですから、その辺を酌み取っていただいて、運用の上でその方がやりいいというのであれば、確かにわざわざ限定するような列記の仕方は得策ではないのではないかなということも理解できます。そういうことで趣旨を酌み取っていただいて、ぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。  次に、今日、住民からいろいろ相談を受けたり聞かれたりする環境問題の中では、いわゆる超高圧送電線の問題、電磁波の健康影響の問題について、非常に偏ったと言っていいかどうかわかりませんが、科学的知見が明確でないにもかかわらず、おそれがあるというような段階で非常にあおり立てるような動きがあるのも私は問題だというふうに思っております。  しかしながら、いずれにしても、電磁波の健康への影響については、どうも科学的知見というものがまだ解明されていないというようなことなのですが、解明されてはいないけれども、現実に百万ボルトの送電線がつくられているということも現実であります。そういうことなどについて、環境庁としてはどのように考えているのか。一つは送電線の問題。  もう一つは、焼却場等の周辺におけるダイオキシンの問題です。非常に調査もされたわけでありますけれども、中間処理施設、いわゆる焼却施設等における周辺のダイオキシンの汚染の問題、これについてどのように環境評価の項目として取り扱っていくのか、そして、今後これらについて科学的知見を深める、高める意味でどのような研究や調査がなされようとしているのか、その辺の取り組みの状況をお聞かせいただきたいと思います。
  210. 田中健次

    田中(健)政府委員 お尋ねがございました電磁波それからダイオキシンについてでございますけれども、これらの人体への影響等を含めた問題につきましては、それぞれ必要な研究等を進めておりまして、特にダイオキシンにつきましては、先般中間報告を出しまして、環境庁としての基準をお示しをしたところでございまして、今後とも大気汚染防止法等の規制法律の中でいろいろ対策を進めていく、こういうことになっております。  このアセス法の中の位置づけについて御説明を申し上げますと、何度も申し上げておりますように、中環審の答申を踏まえまして、本法案では、規模が大きくて環境影響の程度が著しいものとなるおそれがありまして、なおかつ国が実施をし、あるいは許認可等を行う事業、これらを対象事業として選定することといたしております。  お尋ねの超高圧送電あるいは廃棄物の中間処理施設につきましては、いずれも比較的小規模な施設でございまして、これらの観点から、現時点ではこのアセスメント法の対象には想定をいたしておりません。  御指摘の電磁波あるいはダイオキシンの問題につきましては、先ほども申し上げましたように、環境庁といたしましては、個別の環境保全施策として現在取り組みを進めているところでございまして、その枠組みで適切な対応がなされるというふうに考えておるところでございます。
  211. 小林守

    ○小林(守)委員 超高圧送電線の施設が比較的小規模な施設とはとても思えないのですよね。首都圏を取り巻いて、また大都市を取り巻いて百万ボルトの超高圧の送電線のネットワークが今つくられようとしているわけでありますし、その一定の地域だけだと確かに小規模なというか面積的にはあれかもしれませんが、かなりの長距離にわたってネットワーク的につくられているわけでありますし、必ずしも小規模という量の問題でアセス対象にするかしないかの判断をすべきではない問題ではないかなというふうに思えてなりません。  これらについては、今後とも私自身も勉強しながら取り組んでいきたいなというふうに思っておりますけれども、今お話があったような量的な問題でこれを項目の対象外にするということについては、今ちょっと疑問を感じております。  それで、次に移りたいと思います。  要は、住民と事業者との関係という観点に立ってこの法案を見詰めてみたいと思うのですが、基本的に住民というのは、今直接参加というものを非常に望んでいると思うのですね。そういう点では、市民の自立化というか自己意識、自己決定とか、そういう考え方が非常に強まってきている。それはそれで大変いいことであるし、すばらしいことだと思いますが、みずからのライフスタイルにおいても、みずからの生活環境を決めていくことについても、みずからが行政、政治に参加したい、意見をきちっと言っていきたい、そういうことが非常に強まってきていると思います。  これは市民社会の成熟化というふうに言っていいと思いますし、民主主義の成熟化と言っていいことなのかもしれません。そういう点で、こういうあらゆる問題、環境影響の問題等については、住民が、直接行政事業者と議論をしたい、討論をしたいと望んでいるのですね。  そういう観点に立って、ただ単に時間がかかって困るとか、よくわからないのに素人考えをどんどん言われても困るとか、そういうような守りの姿勢ではなくて、積極的に参加する場をつくっていくことによって、逆に言えば市民は自己責任を持たなければならぬという状態になるわけでありますから、そういう点で、よらしむべし、知らしむべからずというような上意下達の民主主義ではなくて、いわゆる対等な議論の上に立って、自己責任をそれぞれが持っていくという市民社会をつくっていくことが大事なのだろうというふうに思います。  そういう点で、この法案の中で、法律上公聴会の開催は可能かどうか。これは、主催がどういう場合だったら可能だというように考えられるか。法文上はそれを義務化することは困難だというような今までの議論の成果だったわけでありますから、一応それを認識した上での話なのですが、では、こういうやり方だったら可能ですよ、こういう方法だったら可能ですよというようなことを示してもらえないものかどうか、お聞きしたいと思います。
  212. 田中健次

    田中(健)政府委員 法案の六十条におきましては、都道府県知事環境保全の見地からの意見を形成するに当たり、法の規定に反しない限りにおいて公聴会あるいは審査会の開催を妨げるものではないということは、これまで御答弁申し上げてきたところでございます。  一般的に言いまして、条例の規定と本法案関係につきましては、ほかの先生方からいろいろと御質問を受けましたけれども、これは事案に即しまして慎重な検討を要するわけでございますが、事業者に対しまして公聴会に出席して住民と討論することを義務づけることは、これは基本的に困難であるというふうに考えております。しかし、事業者が任意に公聴会等に出席をして、住民等と討論を行うこと自体を妨げるものではないというふうに考えております。  それから、準備書内容について正しい理解を促進するということのために説明会を開催することといたしておりますけれども、説明会におきましては、一般的に、事業者による説明とそれから質疑応答が行われているものと考えております。  いずれにいたしましても、法制度運用に当たりましては、以上のような制度の趣旨につきまして、適切に周知を図っていくことが大切だというふうに考えております。
  213. 小林守

    ○小林(守)委員 次に、先ほどの質問にもかかわりますが、できるだけ住民に情報公開、情報開示を積極的にして、そして参加を求めていく、打って出る姿勢というのですか、そういうことによって、行政に対する信頼とか、それからみずからの誤りを正していく、直していくということも、行政は勇気を持ってやるべき時代が来ているのだろうというふうに思うのですね。  そういうことで、実は、アメリカの例では、各省庁は簡易アセスとか準備書が作成された、こういうものを官報に掲載することをやっているようです。それから、新聞とかマスコミを利用して、一般への周知を徹底させている。さらに、主要な環境保護団体とか住民運動団体とか、それらについては、一つの団体リスト、メーリングリストというのだそうですが、そういうリストをつくっておいて、そして説明会とか、それから準備書評価書を送付してやるとか、そういう形で、逆にぜひ意見を出してくださいと求めているというような、セミのアセスをやっているんだと思います。  そういう点で、どうも民主主義的な市民社会というのがまだ未成熟なのかなと思わざるを得ない、非常に偏った、反対運動一点張りの運動のものもあるわけでありますが、しかし、市民運動団体などでも随分、政策提言的な市民運動に変わりつつあると思うのです。  そういうことを考えるならば、やはりこっちもそろそろ打って出ていく時代が来ているのではないか、このように思いますし、また、その姿勢が、政策提言の運動に市民団体が変わっていくことではないのかな、このように考えられるわけなんですが、これらについては長官の方の御所見を伺えればと思います。
  214. 石井道子

    石井国務大臣 NGOや住民、市民の参加につきましては、委員指摘のとおりであると思います。  法案におきましては、事業者が法的義務として周知を行うべき地域的範囲は限定する必要があるとの中央環境審議会の答申を踏まえまして、準備書等についての公告や縦覧については、関係地域内で行うということにしているわけでございます。  また、アセスメントに関する情報基盤の整備という観点から、環境庁におきましては、過去の環境影響評価事例など、環境影響評価に関する情報をインターネットを通じて提供するということなども行います。そして、情報提供のあり方検討にも着手をしているところでございまして、これを踏まえて、適切な情報提供に努めてまいりたいと思っております。  特定の個人や団体のみを対象に情報を送付するような周知方法をとることは、我が国にはなじまないのではないかというふうに考えております。
  215. 小林守

    ○小林(守)委員 それでは、今の御答弁流れというか、発展という形になろうかと思うのですが、環境庁もさまざまな情報に関する集積を行って、国民に対するインターネットを通しての情報提供とか開示を行っていきたいというような御答弁がございましたが、情報の開示と住民の参加というのが、やはりいい環境アセス制度を実現していくためのキーワードというか、まさに柱だと思うのですね。そういう点で、それらの取り組みをより強化していくというふうにお願いしたいと思います。  また、その考え方の中で、中環審の答申の十一番目、項目立てが十一番のところに「環境影響評価を支える基盤の整備」というところがございまして、その中では、「事業者による適切な環境影響評価実施、住民等の適切な意見の形成などのためには、国及び地方公共団体による情報の収集・提供が重要である。このため、国が中心となって、生物の分布等環境の現況に関する情報、調査予測等の技術手法に関する情報、評価書及び評価後の調査等の結果を含む環境影響評価の事例に関する情報、関連する情報に関する情報源情報等を組織的に収集・整理・提供することが適当である。」  そのほか、まだずっと続くのですけれども、この環境アセス制度を支えるインフラの整備という観点から、環境影響評価の情報センターみたいなものをやはり別にきちっとつくることによって、環境庁の職員の中でそれをやるとなると容易でない、今でも人数が、体制が整わない状況にあるわけでありますから、少なくとも新しい制度のもとできちっと情報センター的なものをつくって、住民が広く専門的、技術的な勉強というか知見が得られる、そして、住民が意見を述べるときに、情報がいつでもつかめるというような状態を可能にしておくということが大事なのではないかなと私は思うのですね。  そういうことで、おそれとか不安とか感情的なとか、そういう意見ではない、きちっと知見に基づく、自分の経験に基づく意見がそれぞれの地域の事情とか、それぞれの人生経験とか、そういう中から出てくるような基盤がつくられるべきだと思うのです。  そういう点で、情報センターというものを環境庁の中ではなくて、やはり外にきちっとつくって住民にサービスをする、国民にサービスをできる、そういう体制をつくる必要があるのではないか。中環審の中では情報センターをつくれとは言っておりませんが、こういうことをやれる機能を持ったものをつくるとなったら、これは情報センターしかないのではないかというふうに思えてなりません。そんなことで、今後の課題になりますけれども、ぜひ構想していただければいいのではないかなというふうに思います。  実は、一昨日、私は足尾の松木沢というところに行ってまいりまして、ボランティア団体の皆さん方と一緒に植樹を行ってまいりました。首都圏から、新聞報道だけで六百人の方が参加されました。本当に、六百人が二時間ぐらいでミズナラとかダケカンバとか、そういう木の小さい苗を植えたのですけれども、シカに食われないようにビニールパイプみたいなものをかぶせてきたのですが、それでも二千本近いものがあっという間に植えられました。  六百人の人が山に、一メーター五十ぐらいの間隔で作業をするわけなんですが、結果的に見ると、二千本近く植えても、足尾の広大な荒廃した山では、こんなちょこっとしたところなんですよ。そこに植えてきて、立松和平さんが参加されていまして、ほんのわずかなデモンストレーションにすぎないけれども、参加者の皆さん方の心の中に緑の木を植えたというふうに御理解いただければ、すべての人々に、うちへ帰ったらば、隣近所の人にも緑の木を心の中に植えてほしいというようなお話をしておりましたけれども、大変印象的でございました。  足尾の亜硫酸ガスの煙害によって、また、坑木のために、銅をとる坑道を支える坑木というのですが、そのために松の木をすごく切ったのですね。乱伐をしました。それから山火事もあったのですね。そんなことが重なって、松の木の茂る大変な美しい渓谷が、まさに日本のグランドキャニオンと言われるような荒廃したむき出しの地域に変わったわけです。しかし、国や栃木県の努力によって、全く表土が流出して岩石が露出したところに、緑を復活させるために、四十年間かかってようやく木が植えられるようになったのですね。  まず、土をつくらなければだめなんです。土をつくって、それからその土が一定の堆積を持って、そして木を植えていかなかったらば、幾ら植えてもすぐにだめになってしまうわけですね。そういうことで、土をつくるのに四十年かかるそうです。  そこに初めて木を植えようというような運動が今できるようになったということですから、大変な努力をして、国有林野事業、財政的には大変厳しいのですが、私は、全くプラスにならない、経済効果を生まない、環境保全のために、緑を回復するために一生懸命金を使ってやっているわけですけれども、やはりあそこに参加していただければ、むだじゃないというふうに思いますし、これは赤字になるのは当たり前だ、そういうふうに思いますよ。  そんなことも含めていろいろ勉強になりましたが、例えば足尾とか、これは手前みそになりますからそれだけのことじゃないのですが、例えば水俣とか、そういう地域のさまざまな歴史的な経験、そしてそれを回復するための努力、そういうものの知恵とか工夫とか科学的な知見とか、そういうものを集積していくようなものを全国的にネットして、中央に環境庁との関係団体として情報センターがあれば、この問題についてはどこへ聞けという形になるのではないかと思います。  一時期フィリピンに日本のODAで発電所を贈ったのですけれども、その発電所の流出物に脱硫装置をつけないのですね、あれは。結局その辺の基準がないものだから、日本はそれをつけることでODAを見ているのですけれども、実際はつけないでやってしまう。そうすると煙害というものが起こって、やはりフィリピンの住民がその問題を提起して、日本に見に来た。日本の足尾を見に来たということで案内したことがあるのですが、そんなことで、アジアの人たちに対してもこの情報の集積というのは大きな貢献をすることができる、私はこのように思っております。  そんなことで、最後に、時間が参りましたので、大臣の所見を伺って終わりにしたいと思います。
  216. 石井道子

    石井国務大臣 先ほど委員が御指摘されました情報の提供という点につきましては、アセスメントが適切に円滑に行われるためには大変重要なことであると思いますし、そして環境庁におきまして今まで取り組んでまいりましたことは、平成六年度から調査を開始しているわけでございますが、本格的な実施に向けた調査実施ということで、環境影響評価情報支援ネットワーク事業というものを始めております。そして、平成十年度から具体的な運用を開始するというふうになっているわけでございます。  この事業につきましても、過去の環境影響評価事例や調査等の技術的な手法に関する情報をインターネットなどを通して提供するというふうなことも行うわけでございまして、情報提供のあり方検討に前向きに着手をしているわけでございますので、今後とも御支援のほどよろしくお願い申し上げます。  また、今まで日本が経験をしてまいりました水俣の問題、それから足尾銅山の問題、さまざまな公害にやられました経験というものは、公害対策先進国として、これは途上国の公害対策、環境保全対策に対して十分に生かしていく必要があると思いますし、ODAの関係もありますけれども、その中でさらに前向きに取り組んでいくべきであるというふうに考えております。
  217. 小林守

    ○小林(守)委員 終わります。
  218. 佐藤謙一郎

  219. 藤木洋子

    藤木委員 きょうは、環境影響評価法案につきまして、発電所問題に関連をしてお伺いをしたいと思います。  御坊の火力発電所から二十五キロも離れた田辺市などで、和歌山県特産の梅に五万本近くの梅枯れの被害が起こっております。被害農家の人たちは、御坊火力発電所以外には考えられないと言っているわけですね。関西電力では、最近までは発電所によるものではないとしてまいりましたけれども、つい最近になりまして和歌山県が審査結果を出し、梅の立ち枯れの原因をさらに究明するよう関西電力に要請をしたため、JA紀南と関西電力が梅生育障害について共同研究をすることに合意をしております。  環境庁も国立環境研究所などで大気汚染による立ち枯れの研究を進めてこられましたけれども、これだけの大量の梅の立ち枯れが発生しているわけですから、農水省などとも連携をして、発電所による梅などへの影響について研究をしてはいかがかというふうに思っておりますが、環境庁、いかがでございましょうか。
  220. 野村瞭

    ○野村(瞭)政府委員 お答えを申し上げます。  まず、一般論からお話し申し上げたいわけでございますが、御質問のような固定発生源から排出される大気汚染物質の広域拡散や、その過程における化学変化の問題につきましては、SOxでありますとかNOxに関して大気汚染の拡散のシミュレーションモデルが確立されておりまして、かなりの精度で大気汚染の予測が可能でございます。  環境影響評価におきましても、このようなシミュレーションモデルによりまして大気汚染予測が行われているところでございます。また、光化学オキシダントにつきましても、環境庁におきまして関東地域対象として広域的な光化学大気汚染の発生予測のシステムを開発をいたしておりまして、これによりまして予測を行っているところでございます。さらに、酸性雨の長距離の移動の予測モデルにつきましても現在開発を進めているところでございます。  具体的な問題として梅枯れのお話がございましたけれども、これと大気汚染の関連性につきましては、和歌山県等の調査によりますと、梅枯れが大気汚染の影響で生じたとする、科学的な知見という意味からすれば、現在のところは得られていないと私ども承知をいたしておるところでございます。
  221. 藤木洋子

    藤木委員 私がお伺いをしたのは、農水省と共同で調査をされるということが必要ではないかということを伺ったわけですけれども、そういったことで御準備をなさっていないというのは、今のところそんなことは考えていらっしゃらないというふうに受け取るしかないのでございましょうか。  環境庁の研究発表では、大気汚染物質の長距離移動による化学変化、今もおっしゃっていましたけれども、酸性雨であるとか霧であるとかオキシダント、またオゾンとなって樹木に影響し、立ち枯れの要因となっているとしておられます。発電所の場合、煙突が高くなればなるほど、遠く三十六キロメートルまでダイレクトに硫黄酸化物や窒素酸化物、ばいじんが落ちてまいります。当然途中で化学変化を起こしますから、酸性霧であるとかオゾンとなって梅の木に影響を与える可能性があるというふうに思うのですね。  今、その因果関係についてはわかっていないかのようにおっしゃっていましたけれども、これまでの調査段階でどの程度までわかっているのでしょうか。お答えいただきたいと思います。
  222. 野村瞭

    ○野村(瞭)政府委員 先ほどお答え申しましたように、調査自体は関西電力と和歌山県が共同して当たっておりまして、現在のところ、関西電力からの大気汚染と梅枯れとの関係については、積極的にこれを認めるような科学的データが出ていないというように承知をしております。なお、いろいろとまだ解明されていない問題等もありますので、引き続き調査を続けるというように聞いております。  私どもは、直接的にはこの実態把握についてはタッチをしておりませんので、そういうことで、地元からのデータ等をいろいろ聞きまして必要なアドバイス等を与えていきたいというように考えておるところでございます。
  223. 藤木洋子

    藤木委員 しかし、資源エネルギー長官通達の発電所の立地に関する環境影響調査要綱の中では、硫黄酸化物、窒素酸化物、それから浮遊粒子状物質または浮遊粉じん、これについては規定がございますけれども、酸性霧だとかオゾンなど化学変化による広域汚染についての調査はないというふうに思うのでございます。これですと、影響の正確な評価はできないのではないかと考えます。  この法案によりますと、事業者が方法書案を作成し、都道府県知事意見を有する者の意見を聞いて方法書の決定を行うけれども、その際、発電所計画に合った効率的な調査項目等が設定されることになっております。発電所の場合、現状の局地汚染を想定した調査ではなく、化学変化による広域汚染の調査も項目に入れる必要があるというふうに思いますけれども、環境庁、いかがでございましょうか。
  224. 田中健次

    田中(健)政府委員 御指摘の複合汚染による影響につきましては、今後の研究課題でございますけれども、現時点では、そのメカニズム等が未解明でございまして、予測手法につきましても未確立である、こういうことから、個々の汚染物質に関する評価とは別個の項目として選定するということは、非常に困難な場合が多いというふうに考えております。
  225. 藤木洋子

    藤木委員 私は、それはやはりおかしいと思うのですね。まだ解明されていないようなことは項目にのせられない。のせられないものは、環境にどれだけ影響を与えているかということの評価をやらなくてもいいということにはならないと思います。  さらに、アセス対象地域ですけれども、大気汚染の影響は半径三十五キロメートル圏にまで及んでおりますけれども、説明会の実施地域は、建設地の御坊市と隣接四町だけになっております。これでは、三十五キロ圏の紀伊田辺市などの十六市町村長地域住民の意見は全く無視されることになってしまうのではないかと思います。  この法案では、意見を有する者が意見を述べ、環境影響を受ける範囲を地域基準で定めるとしていますけれども、当然、発電所の場合、煙突の高さなどから三十五キロ圏の市町村もその範囲に入ることになるというふうに私は思うのですけれども、環境庁の方はどのようにお考えでしょうか。
  226. 田中健次

    田中(健)政府委員 関係地域の基準は、個々の事業内容等に応じて、その実施環境に及ぼす範囲が適正に定められるものとなるように、それぞれの事業種の特性を勘案して定めることになります。  特に、準備書段階におきましては、調査等の結果に応じて、具体的に環境への影響が及ぶと考えられる範囲が定められるような基準とすることを想定しておりまして、煙突から排出をされます大気汚染物質によります環境影響についての調査等の結果を踏まえまして関係地域が定められる、こういうことになりますから、先生のおっしゃるような高煙突の場合には、それが及ぶ範囲が関係地域になるというふうなことで設定をしていきたいというふうに考えております。
  227. 藤木洋子

    藤木委員 そうですね。ぜひそうでなければならないというふうに思っております。  そこで、御坊ですけれども、御坊では、これまで、窒素酸化物などの測定器は、御坊市とその周辺に設置をされただけでございました。梅被害問題が発生して初めて被害地域近くに数カ所設置するようになりました。また、硫黄分〇・一%の原油を使っているということを理由に脱硫装置もつけてはおりません。しかし、硫黄分の排出量は、絶えず公害防止協定値に最も近い値で排出をされておりまして、年間排出量も九五年度で千八百四十四トンと大きいものになっております。  公害防止協定では最新で最高の対策を約束しているわけですから、脱硫装置をつけるべきだと思うのですけれども、これは所管である通産省にお伺いをしたいと思います。いかがでしょうか。
  228. 真木浩之

    ○真木説明員 御坊火力発電所につきまして、使っております燃料でございますが、ただいま御指摘ございましたように、〇・一%の低硫黄の重原油を使用しております。窒素酸化物、ばいじんにつきましては、排煙脱硝装置、電気集じん機等を用いて除去をしているところでございます。  こうした公害防止対策をとることによりまして、硫黄酸化物の排出量で見ますと、大気汚染防止法の排出基準の三十分の一というレベルになっておりまして、他の発電所と比べましても遜色のないものになっております。  さらに、御坊発電所の周辺地域の大気環境濃度でございますが、これは運転開始前後、継続をいたしまして測定をしておりますけれども、環境基準を下回る低濃度となっておりまして、現在の大気汚染防止対策は妥当なものであると考えているところでございます。
  229. 藤木洋子

    藤木委員 環境基準を下回るものであって、心配するものではないと言われるところでそういう被害が出ているわけですから、基準そのものの見直しが必要だということをみずから告白をしている、私にはそういう内容に聞こえて仕方がありません。  今、史上最悪の燃料と呼ばれる、原油の硫黄分が実に現在の約三十倍、窒素分にいたしますと約五倍含まれているオリマルジョンを使用する御坊の第二発電所の計画が進められております。今の発電所からは、九五年度で、硫黄酸化物千八百四十四トン、これは四トン車に積みますと四百六十一台分になるのですよね、窒素酸化物が四百二十九トン排出されております。第二発電所の計画では、硫黄酸化物が四千五百トン、窒素酸化物が二千六十五トンということになっておりますから、硫黄酸化物が二・四倍、窒素酸化物になりますと実に四・八倍も排出されることになっているわけです。これでは一挙に梅の被害が拡大するおそれがございます。  ですから、梅被害の原因でないことが実証されるまで御坊第二発電所の計画は進めるべきではないと思うのですが、これは、通産省、環境庁、それぞれにお答えをいただきたいと思います。まず通産省からお答えください。
  230. 真木浩之

    ○真木説明員 御坊第二発電所は、御指摘のとおりオリマルジョンを使用する発電所でございますが、この計画につきましては、現在通産省で環境審査中でございます。  大気汚染防止法の排出基準あるいは当該地域環境基準、または事業者の自主的な硫黄酸化物、窒素酸化物などの低減努力を踏まえまして、適正な環境保全対策がとられているかどうかという観点から、環境保全影響がないかどうかという点について慎重に審査をしてまいりたいと考えております。
  231. 田中健次

    田中(健)政府委員 御坊第二火力発電所につきましては、現在地元で調整が進められておる、今通産省でも慎重に審査をしている、こういうところでございまして、今後、経済企画庁から電源開発調整審議会において本発電所を電源開発基本計画に組み入れたい旨の協議がございますと、環境庁といたしましては、梅枯れの件も含めまして、慎重に審査の上、環境保全の観点から必要な意見を述べることとしておるところでございます。
  232. 藤木洋子

    藤木委員 本当にここのところは大切なところだというふうに思いますね。ですから、慎重だけではなくて、やはり梅枯れの原因がそれが原因ではなかったのだということが明らかにならない限り、これにゴーサインを出すわけにはいかないということを重ねて申し上げたいと思います。  今回の法案では、許認可権者は、許認可の基準を満たしていても、環境保全の結果の判断に基づいて許認可等を拒否する処分を行うことができるとしております。梅被害の原因が発電所ではないということが実証されない環境影響評価では、許認可ができないのではないでしょうか。環境庁、その点はどのような御認識でしょうか。
  233. 田中健次

    田中(健)政府委員 今回、私どもの法律では、横断条項を設けまして、それぞれの事業の免許の要件とともに環境保全上の配慮等を総合的に判断をして許認可を決める、こういうことになっておりまして、このケースにつきまして具体的に申し上げるわけにはまいりませんけれども、一般論としては総合的に判断をする、こういう仕組みになっておるところでございます。  法が成立をいたしますと、この発電所につきましては、横断条項ではなくて電気事業法の方ですべて判断をされる、許認可の判断は電気事業法ですべて判断される、こういう仕組みになっております。
  234. 藤木洋子

    藤木委員 それでは本当に実効ある措置がとれるかどうか極めて心配だと言わなければなりません。  そこで、隣接四町では、有権者の過半数が計画の撤回を求める署名に同意をしております。また、田辺市、南部川村では、第一火電の公害防止施設改善、第二火電の延期を求める署名が圧倒的住民の賛同を受けております。さらに、田辺市、上富田町、白浜町、南部町、南部川村、湯浅町などの議会では、意見書が採択をされております。昨年末には、約四万人の反対署名が県知事に提出をされております。  こうした住民の納得のないまま、電源開発調整審議会での電源開発基本計画に組み入れるという決定を強行すべきではないというふうに思いますけれども、こちらは通産省にお伺いいたします。いかがでしょうか。
  235. 真木浩之

    ○真木説明員 第二御坊発電所の電調審の上程につきまして、関係者の間で調整が行われているところでございますけれども、電源立地の推進に当たりましては、地元の住民の方々の理解を得るということが不可欠でございます。具体的には、地元知事意見を聞くということで、通産省としては、知事意見を踏まえて対処しているものでございます。  この梅の問題につきましても、地元和歌山県でもいろいろと検討されているというふうに聞いておりますが、最終的には、知事は周辺住民の意見について適切に勘案した上で回答をされるものと考えておりまして、ただいまの御指摘にございました周辺住民を含めた地元住民の意見が適切に反映されていくものと考えているところでございます。
  236. 藤木洋子

    藤木委員 知事が周辺住民の意見をいろいろと勘案して態度を決めるだろうというお話でしたけれども、現在のところは、知事さんはこれに対してはやってもいいということはおっしゃってないわけですよね。今すぐやるわけにはいかない、そういうお立場に立っておられるわけです。公害のもとになる硫黄酸化物だとか窒素酸化物を大量に出して、オゾン層の破壊や地球温暖化につながる二酸化炭素を大量に出す御坊第二発電所の計画は許可すべきではないということを重ねて申し上げまして、次の質問に移ります。  次は、琵琶湖の問題との関連で質問をさせていただきたいと思います。  琵琶湖の総合開発事業というのは、環境影響評価がなされなかった巨大開発でございます。ですから、琵琶湖をめぐるさまざまな問題が生じておりまして、特に、琵琶湖の周辺開発と琵琶湖の水質悪化の問題が特徴的でございます。  そこで伺いますが、ことし三月に発表されました滋賀県、京都府の「琵琶湖に係る湖沼水質保全計画」では、琵琶湖の北湖、南湖の水質の状況につきまして、いずれの計画においても水質目標値の達成には至らなかった。水質保全施策の効果が水質向上に反映されない原因については、今後十分調査検証する必要がある。とりわけ、北湖の水質が改善されない傾向が継続していることから、原因を解明するための調査検討実施するとしています。  そこで、まず、この平成十二年度までの目標値は、北湖、COD二・六、全窒素〇・三一、南湖、COD三・七となっておりますけれども、これは全燐以外のすべての項目について平成七年度よりも目標を緩和しております。緩くしております。これは、計画がスタートをいたしました平成二年の現状とほとんど同じ数値になっているわけです。  計画がスタートしたときより悪くなっている現状を見ますと、第三次計画の目標値は第二次よりもっと厳しく設定すべきではなかったのか、私にはそのように思えるのですが、環境庁の御見解はいかがでしょうか。
  237. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 琵琶湖は、近畿圏の水がめでございまして、大変重要な湖でございます。  これまで、先生指摘ありましたように、大変な水質改善努力もされてきたわけですけれども、御指摘のとおり、なかなかはかばかしくなっておりません。数字も引用されましたけれども、確かに、環境基準に比べましても目標値に比べましても相当状況がよくない。しかも、このよくないといいますか、その乖離が年々大きくなっているというのは事実でございます。  私ども、昨年度第三期の保全計画を立てましたけれども、その中で、できるだけ現実的に達成が可能な、目の前にある目標ということで滋賀県とも話をいたしました。  それから、また後ほどお話し申し上げたいと思いますけれども、この琵琶湖の場合には、何といいましょうか、汚濁の原因が産業系、あるいは畜産系といったものよりは生活系のもの、あるいは汚染源が特定できないような、そういうものから出てきているところが多いわけでございます。  今回の三期計画におきましては、こうした状況も踏まえまして、例えば、ヨシといった植生を活用した浄化機能の向上、それから、水田その他農地の水の循環を重視した調整、さらには、余呉湖のように上流のダムについて曝気をしてから琵琶湖に流すといった新しい施策が盛り込まれております。  目標を確かに下げたわけでございますけれども、着実にそれが達成されますように努力をいたしたいし、滋賀県を応援もしたいと考えております。
  238. 藤木洋子

    藤木委員 目標を下げれば達成できるということではなくて、遠く開いているからこそ一生懸命やらなければならないということでございまして、その下げたことに安心をするわけじゃないでしょうけれども、それならいつでもできそうな気がしてやらないということでは困ると思うのですね。  また、水質保全施策の推進によりまして琵琶湖への汚濁負荷量というのが減少傾向にあるにもかかわらず、水質保全施策の効果が水質向上に反映されていない原因については、今後十分調査検証する必要がある、このように申しまして、計画を達成できなかった理由に原因不明ということを強調しております。今、局長は、原因はさまざまあるというようなことをおっしゃいましたけれども、ここでは原因不明ということになっているんです。地元滋賀県では、未解明のメカニズム、こういうことまで言われております。  確かに、北湖のCODと全窒素が年々ふえ続けているという現象は、北湖の溶存酸素量の低下あるいは生物層の変化、アオコ、ピコプランクトンの発生という現象と相まって、ゆゆしき事態でございます。私、実際行ってまいりましたけれども、見た目よりもはるかに汚染されているといいますか、汚れているわけです。また、最近、滋賀県の琵琶湖研究所では、琵琶湖の貧酸素化、富栄養化を裏づける糸状細菌、チオプローカというふうに伺ってまいりましたけれども、そういう新種のバクテリアを北湖の湖底で発見したということも公表しておられます。  しかし、原因不明だから、あるいは未解明のメカニズムがあるからといって、計画目標値を緩くするのはやむを得ないということで容認をすべきではないと思うわけです。環境庁の御見解を重ねて伺いたいと思います。
  239. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 未解明のままほっておくというふうに私の答弁がとられますと、ちょっと私の説明が不足していたかと思うのですけれども、実は環境庁も研究会を設けまして、非特定汚染源の原因なり現状の把握と、それに対してどういう対策を打つべきかというのをこの二カ年連続してやっております。そういう中で、メカニズムをできるだけ早期に解明をして、対処をしていきたいというふうに考えているわけでございます。  汚染源が特定できないというふうに申し上げましたけれども、引き算でいけば、産業系が大体二割ぐらい、畜産、水産系が三%ぐらい、そして生活系が二八%、残りが農地とか市街地、アスファルトの上を水が流れていくというふうなことでございますので、なかなか対策の打ちづらいのが生活系と農地、市街地の四九%、合わせますとこれが七〇%以上になりますので、そういうものについて、具体的にどういう対策が打てるかということを研究もいたしまして、対応していきたいというふうに思っております。  ちょっとつけ加えさせていただきますと、滋賀県は、今年度から琵琶湖環境部という部をおつくりになりまして、これまでの環境、公害だけではなくて、土木あるいは森林の整備、そういうものも琵琶湖環境部の中に一緒に入れて、全体として琵琶湖の水質をよくしようという対策を講ずることにしております。私ども、大賛成で、それを大いにバックアップしていきたいと考えております。
  240. 藤木洋子

    藤木委員 この間、琵琶湖や内湖の埋め立てと、今もおっしゃいましたけれども、アスファルト化をしたので汚れたというような話がありましたけれども、私も実際行って、どんなふうになっているのか見てまいりました。琵琶湖だとか内湖の埋め立てとなぎさ線の破壊、それから中小河川の改修で、三面張りと申しますか、三方が全部コンクリート化されているというものだとか、土地改良による用排水の分離、ダム等による森林の水源機能の消失、こういったことによって、河川や田の環境が大きく改変をされております。自然の浄化機能が大きく破壊をされているということを感じないわけにはまいりませんでした。  今まで、上流で発生をした汚濁負荷というものは、琵琶湖に達するまでの間、自然の浄化機能によって削減をされてまいりましたし、湖内に流入しても、水際のヨシの地帯で自然浄化をされてきておりました。ところが、それが破壊されて、浄化機能がなくなったために、発生した汚濁は途中でもう浄化されなくなってしまうということになっているわけです。これは環境影響評価を行わなかった琵琶総による生態系の破壊、鉄とコンクリートで固めたことがCODの悪化をさせたのではないかということが言えると思います。  北湖のCODの上昇は、負荷が削減をされたけれどもCODが増加をしたというのではなくて、下水整備だとか一生懸命やっておられるわけですけれども、環境保全のためにやっている施策というのが開発に追いつかない、それで結局負荷が上回ったという、そういう現象ではないかというふうに私は考えておりますが、環境庁はどのようにお考えでしょうか。
  241. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 確かに、御指摘のとおり、開発といいますか、周辺の整備と環境浄化機能が、環境浄化機能の方が上回っていれば水がきれいになるわけでございますけれども、やはりあの便利な地域でございますので、そうした開発がやや環境整備を上回るスピードであったという点は否めないわけでございますけれども、そこに人も住んでいるわけでございます。  ですから、私どもは、そういう点で環境への負荷が少なくなりますように、どちらかといいますと、これまでは下水道の整備あるいは排水規制その他の規制的手法でやってまいりましたけれども、この三期対策におきましては、今、先生から御指摘もございましたけれども、そういった物理的、規制的手法にとどまらず、先ほど申し上げた植生を使った浄化、あるいは透水性の舗装に切りかえていく、さらには、上流のダムにおいては曝気をするというふうなことで、極力水がゆっくり流れて、そしてきれいなものが注ぎ込むというふうなところに力を入れていきたいと考えているわけでございます。  今回、この国会に建設省が河川法の改正も提案をしておられます。環境一つの目的とする、それから河川の整備計画の中でできるだけ三面張りの川を自然に近い状態に戻そうというふうなことも言われておりますので、私どもとしてはそれをバックアップをしていきたいというふうに考えております。
  242. 藤木洋子

    藤木委員 滋賀県の資料でも、湖岸堤であるとか管理用道路等の施工によりまして、湖辺の琵琶湖らしい自然の原風景というものが随分影響を受けております。ヨシ地も失われて、水ヨシだけでも九ヘクタール以上消失するなど、湖辺の植生にも影響を与えております。また、土地改良事業によるため池や水路などの用排水系の変化、河川事業に係る護岸工事の施工方法など、一見これは石積みであるかのように見えるのですが、そばへ行ってみますと、全部その間はコンクリートでつないでいるというような方法だとか、そこに生息していた生物の生態系に対して影響を与えているということが資料としても出ているわけです。実際、私見てまいりまして、そのとおりだということを確認してまいりました。  今回の法案では、大規模対象事業についての環境影響評価手続規定されていますけれども、琵琶湖に対する総合的な事業計画のような計画、また、政策などへの手続規定をされてございません。琵琶湖の水質悪化の状況を見ましても、上位計画である総合計画政策について、やはりこれも環境影響評価対象になるように早急に盛り込むべきだと思うのですけれども、これは環境庁長官にお答えをいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  243. 石井道子

    石井国務大臣 今般の法案につきましては、我が国の過去の実績などを踏まえまして、港湾における土地利用等のマスタープランである港湾計画についてのアセスメントを盛り込んだところでございまして、今後、中央環境審議会の答申に従いまして、国際的な動向我が国での現状を踏まえて、政府計画政策についてのアセスメント手続等あり方について具体的に検討を進めていく所存でございます。
  244. 藤木洋子

    藤木委員 できるだけ、将来的にではなく、それをぐっと現実に近づけていただきたいということを申し上げたいと思います。  また、湖沼法では、水質改善対策を行って、改善できない場合には、濃度規制ではなくCODの総量規制をすることができるとしております。CODを抑制するためには、CODの総量規制を実施すべきです。確かに、土壌を破壊したことが自然の浄化を失わせたことの影響は大きいわけですから、土壌の浄化力を回復する、それはそれで大切であります。しかし、それが回復するまでCODの上昇を抑制できないというのでは、いつまでたってもCODの計画目標値を達成できないのではないかと思います。CODの総量規制を実施すべきではないでしょうか。環境庁、その点はどうでしょう。
  245. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 御指摘のとおり、湖沼法の中で総量規制という手法があることは事実でございます。ただ、現在のところ、先ほど申し上げましたようにその汚濁のソースが生活系あるいは農地、市街地等で七割というふうな状況でございますので、直ちに総量規制ということがなじまない側面を持っております。私ども、現在水質汚濁防止法に基づいて排水規制をこの琵琶湖でやっておりますし、湖沼法の中で排出負荷量という濃度ではなくて物量そのものの規制も実施をしております。  それに加えまして、今回の三次計画の中で滋賀県が相当思い切った上乗せ、横出しをしておりますので、こういう現実的な施策実施状況を見ながらまたそういった点を考えていきたいというふうに思います。
  246. 藤木洋子

    藤木委員 一生懸命努力をしていてもそれが防ぎ切れないからこそ総量規制が必要だというふうに思うわけですね。  さらに、土壌を破壊し、自然の浄化力を失わせるような八つもの巨大ダムなどの大プロジェクトの問題があると思います。  琵琶総の第三次計画では、六カ所のダムの総貯水量が一億九千九百六十万トン、これで事業費は五・三倍に伸びております。そのうち総貯水量一億五千万トンという近畿最大の丹生ダムは貯水用ダムでございまして、水の入れかえ率が悪いために富栄養化する可能性が非常に高いものです。雪解け水を結局ここでカットいたしますので、北湖の汚染が一気に進むおそれがございます。琵琶湖周辺の雪解け水は湖の富栄養化を防止し、北湖への酸素を供給するのに役立っていると指摘されてまいりました。その雪解け水を渇水対策に使うというのですから、二重の意味環境への影響、特に北湖に及ぼす影響が大きいと思うわけです。  さきにも述べましたように、北湖では平成六年以来アオコが発生しておりますし、北湖の湖底の溶存酸素は長期的に減少して、最近では一時的ではあっても無酸素状態、こういう発生も確認をされているところです。  琵琶湖周辺に八つもの巨大ダムをつくることは、琵琶湖の水質、特に北湖の水質に大きな影響を与えることになると思いますけれども、いかがでしょうか。環境庁に先にお答えをいただきたいと思うのです。
  247. 田中健次

    田中(健)政府委員 今お話のございましたダム等につきましては、現在建設省で作業を進めておられるものと思われます。  私どもにつきましては、まだその辺の情報等を受けておりませんので、何とも具体的なお答えはできない状態でございます。
  248. 藤木洋子

    藤木委員 それでは、続いてしばらく質問をお聞きください。後で建設省にもお尋ねしてまいります。  建設省近畿地建が作成いたしました丹生ダムの環境影響評価書では、ダム下流において水質上特に影響のないものと考えられることから、ダム下流の生物化学的酸素要求量、BODについての予測は行わないとして、ダム完成後、富栄養化現象が発生する可能性は低いとしておられます。  しかし、滋賀県知事意見にもございますように、水深の深い既設のダム湖においても現に赤潮等の富栄養化現象が生じている事例があるとして、貯水池の水質変化に伴う下流のBODの変化について明らかにされたいと述べているように、富栄養化と水質汚濁が少ないとは思えません。  そこで、建設省にお尋ねをいたします。果たして影響を与えないということを断言してしまってよろしいのでしょうか。
  249. 竹村公太郎

    ○竹村説明員 お答えいたします。  私ども河川管理者といたしましては、洪水だとか渇水の水の量の管理と同時に、水の質、すなわち河川の水質について重要な課題と認識してございます。  今御質問のございました丹生ダムは、琵琶湖に注ぐ高時川、姉川の沿岸の長浜市ほか一市七町の約五万人の方々を水害被害から守るということと同時に、大阪、阪神水道初め八十七万人の方々の飲み水の一部を供給するという目的で建設されております。  ダム湖の水質につきまして、現地の水質のデータをもとにしまして、私ども水質シミュレーションを実施し、これによって今先生指摘のようにダム湖の富栄養化の可能性は低いということを結論し、平成三年環境影響評価として公表したところございます。  ここでは水質シミュレーションの純技術的な具体的な内容は控えさせていただきますが、一つの指標としましては、水の回転率ということがわかりやすいのかなと思っております。琵琶湖が大体一年間に〇・二回、つまり五年に一回琵琶湖は入れかわるというような単純計算になります。今話題になっております丹生ダムは、一年間に一・八回の回転率になるかなと思っております。このように、回転率がダムの場合は琵琶湖に比べて非常に多いので、富栄養化は全くないということは私ども断言しておりませんで、その可能性は低いということで整理させております。  しかし、今後ダム建設におきまして水質の対策の万全を期するために、今後とも下流のBODも含めまして水質のデータの監視を継続し、必要であれば湖水の曝気装置等、湖水の水をきれいにし、琵琶湖に注ぐというようなことを私ども前向きに考え事業を進めていきたいと考えております。
  250. 藤木洋子

    藤木委員 少なくとも知事が要求していることについては真っすぐおこたえをいただきたい、それにこたえていただきたいというふうに思っております。  既に、今津町にある石田川ダムというのがございますけれども、これは富栄養化が進んでおりまして、昨年の夏にはアオコ現象も確認をされております。湖沼水質保全計画では、ダム湖などにおける水質保全対策として、県は、先ほどもおっしゃっていましたけれども、曝気循環だとかそれから植生の持つ自然浄化機能を活用して水質保全を図るとしております。しかし、これでは富栄養化の進行やアオコの発生をとどめることがとてもできないのですね。全く不十分な対策と言わなければなりませんけれども、環境庁、どのようにお考えでしょうか。
  251. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 湖沼法の中で水質保全計画を定めて、とにかくありとあらゆる手段を順次とっていくということで現状は対応していくことが現実的なのだろうと思います。  もちろん、今おっしゃいましたように、これまで大きな工作物を建てた結果水質が変わった、水量が変わったという部分については、そうすぐにそれが改善されるわけではございませんので、そこに注ぎ込む川あるいは水田その他の水につきまして個別の対策をそれぞれ積み重ねていくということで、もちろん下水道の整備事業はこれからも相当高い整備率、これは平成十二年で五九%というところを目指しておりますけれども、それ以外に先ほど申し上げました、なかなか汚染源、汚濁源が特定できないものについて、植生を利用したり、あるいは水田の農業、施肥、そういうものを変えたり、透水性の舗装にしたり、あるいは関係のところが寄り集まって、できるだけ汚濁したものを流さない、さらには県の条例その他で、排水規制について、上乗せ、横出しをするということで一歩一歩前に進めていくということが現実的だろうというふうに思っております。
  252. 藤木洋子

    藤木委員 地元では本当に涙ぐましい努力をやっております。そして言われることは、ダム建設などにあそこまでのお金を投じるのだったら、それと同じくらいのお金を投じて環境浄化のためにもひとつ力を入れてもらいたいものだ、こういう声を私は聞いてまいりました。  そもそも問題なのは、建設省近畿地建が作成をした丹生ダムの環境影響評価書では、下流への影響といっても、琵琶湖の環境、特に水質への影響という評価が全くなされていないという点でございます。  今回の法案では、主務大臣と環境庁長官が協議をして、影響の範囲を決める地域基準を作成することになっておりますけれども、ダム周辺の影響だけではなくて、下流の湖への影響、これも含めて評価するように決めるべきではないでしょうか。その点はいかがでしょうか。
  253. 田中健次

    田中(健)政府委員 現行のアセス制度におきまして、調査地域の範囲は、原則として対象事業実施により環境状態が一定以上変化する範囲を含む区域または環境が直接改変を受ける範囲とその周辺の区域、こうされているところでございます。  ダム事業につきましては、現行の技術指針におきまして、水質汚濁の調査対象区域には、水質、水位等に影響が及ぶと予想される下流の区域も含まれております。  本法におきましては、こうした考えを踏まえまして、事業の特性やあるいは対象項目に応じた適切な範囲が指針で定められますように私どもが基本的事項を定めますので、そうした方向で基本的事項を定めていき、指針に盛り込まれるようにしていきたいというふうに考えております。
  254. 藤木洋子

    藤木委員 そういったことが極めて不十分だという実例がこの琵琶湖の深刻な事態だというふうに思っております。  琵琶湖の周辺では今八つのダム建設が計画をされているわけですけれども、環境影響評価手続では、今おっしゃったように、評価は個々のダム計画について実施されることになりますね。影響は累積的に、流れ込む琵琶湖に与えることになるわけですから、琵琶湖はそれを一手に引き受けるといいますか、それを受けなければならない。こうした琵琶総の事業などで計画をされているダム建設などは、累積的影響について、予測や評価をきちんとやるべきだと思います。  さらに今回の法案は、国が行う対象事業について、主務大臣は環境保全について適正な配慮がなされることを確保するようにしなければならないというふうに規定をしております。今回の法案が適用されるならば、ダム計画についても、治水対策上必要という側面からだけで実施されるのではなくて、琵琶湖の環境保全に配慮されることを確保する観点から実施されるということになるのではないでしょうか。環境庁、いかがでしょう。
  255. 田中健次

    田中(健)政府委員 まず、複数のダムによる累積的な影響のお尋ねでございます。  本法案に基づきましてアセスメント実施をされる場合には、当該事業以外の他の事業によります環境影響につきましては、当該事業調査、予測をやる場合に、一般的にバックグラウンドとして、他の事業が及ぼしている状況というのが位置づけられるわけでございまして、そうした意味では評価に反映されているということになります。  また、複数の対象事業が相互に関連をして行われるという場合には、法律の五条二項、それから十四条二項におきまして、アセスメント手続をあわせて行うことができる、こういう規定が盛り込まれておりまして、こうした形では累積的、複合的な影響評価することも考えられるわけでございます。  なお、個々の事業レベルでの環境影響評価では、おっしゃるように、地域全体の将来の環境状況検討することに限界があるということから、先ほどもお尋ねがございましたが、国際的には政策計画段階からアセスを行う戦略的な環境アセスメント、SEAが検討されておりまして、先ほど大臣から御答弁申し上げましたが、これについても今後具体的に検討していきたい、こういうことでございます。  それから、ダムの建設に際しての横断条項についてのお尋ねでございます。  横断条項は、事業に係ります許認可等を定める法律環境保全の観点が含まれていない場合にも、その環境影響評価の結果を許認可に確実に反映させることができるように規定をしたものでございます。横断条項によりまして、私ども環境庁長官意見を勘案して述べられた主務大臣の意見が、評価書の記載事項とあわせまして審査されまして、その結果を踏まえて総合判断が行われるものでございます。  環境庁といたしましては、この規定によりまして環境保全上の適正な配慮が主務大臣の方においても行われて、環境への配慮が確保されるというふうに考えておる次第でございます。
  256. 藤木洋子

    藤木委員 そこのところがこれまでの閣議アセスと違った、この法案の前進面だというふうに私も思いますね。  ですから、全く不十分な環境対策を前提にしたダム建設、こういったものは琵琶湖の環境保全、特に琵琶湖の水質保全に極めて大きな影響を与えるものであって、計画の抜本的な見直しが必要だと思いますけれども、その辺は建設省、今までの話をお聞きになっていて、どのように見解をお持ちでしょうか、お聞かせください。
  257. 竹村公太郎

    ○竹村説明員 琵琶湖の周辺に幾つかのダムの計画がございます。先ほど私がお話し申し上げたのは、建設省が主務大臣として所管する水資源開発公団の事業でございます。  もう一つ、琵琶湖周辺で大戸川という、建設省が実施しているダムがございますが、これは琵琶湖に流入しないで直接外へ行ってしまうダムでございますので、残りは、滋賀県が実施してございます姉川ダム、北川第一、北川第二、栗栖ダム等の、周りが山で囲まれておりまして、大雨になると琵琶湖に一気に水が流れ出して、流域の方々が水害被害を常に受けていたということを受けて滋賀県が実施している事業でございます。そしてさらに、水辺環境だとか渇水で困っているときの水を用意しておこうという趣旨でございます。  各ダムは、それぞれ滋賀県の環境アセスメントの要綱に基づきまして環境影響評価実施しております。それぞれのダムでございますが、それぞれのダムごとに水の回転率またはさまざまなシミュレーションを実施して、下流への大きな影響があるかどうかということをきちんと評価して、大きな影響はないというような判断をした後に、またはもし大きな影響があれば対策をきちんと講じながらやっていくという、滋賀県としてのきちんとした行政実施されていると聞いてございます。  なお、そのほか、農水省所管の愛知川第二、これは一市八町の七千五百ヘクタールの農地の方々に対する農業用水の補給、あと関電の金居原発電所の、水を上げ下げする揚水発電所のプロジェクトがございますが、私ども河川管理者として、安全性だとか他の利水者に影響がないだろうかとか、そして河川環境への影響がどうなのだろうかという立場から、所要の、定められた手続の中で、関係事業主体と御議論をしながら、琵琶湖の環境保全にもきちんと立ち向かって前向きに対応してまいりたいと考えてございます。
  258. 藤木洋子

    藤木委員 今、ダムは前から計画をされていた古い計画などというのが見直しが始まっておりまして、ダムをつくることについては否定的な、そういう新しい時代に入ったというようなことも出ております。十分にそこのところは、ただ治山治水にはダムしかないといった考え方ではなくて、それこそ代替案を持って当たっていただきたい、代替案がこういうときに必要ではないかというふうに思います。  次に、時間もございませんけれども、イヌワシやクマタカが生息をしております、先ほどもお話がございました金居原揚水発電所も自然環境を破壊し、琵琶湖の水質に影響を及ぼすものでございます。金居原発電所は、原子力発電所の余剰電力の活用を目的に、上下のダムに各一千八百万トンを貯水いたしまして、最大二百二十八万キロワットを発電する日本最大級の揚水発電所計画でございます。  そこで、イヌワシ、クマタカの生息につきまして、関西電力は、滋賀県知事に対し、ダム建設による両種への影響はないという準備書を提出いたしました。しかし、準備書を審査する県の環境影響評価審査会の判断で、日本イヌワシ研究会が調査指導に当たって再調査をいたしました。その結果、ダム湖予定地から約五百メートルの地点にイヌワシの巣がございまして、約三十メートルの地点にはクマタカの巣が発見されております。  昨年八月に公表された環境庁の猛禽類保護マニュアルでは、イヌワシの営巣中心域というのは半径一・二キロメートル、クマタカの営巣中心域は半径五百メートル程度としております。ですから、当該区域の環境の改変というものは避ける必要がある、これに該当するわけです。ですから、この環境庁のマニュアルからいきましても、金居原発電所計画というものは、この区域は環境の改変を行うべきではない、そういうところに当たっていると思うのですけれども、環境庁、いかがでしょうか。
  259. 田中健次

    田中(健)政府委員 今お話がございましたが、金居原の発電所につきましては、平成六年の十月に事業者から滋賀県に対しまして準備書が提出されましたが、滋賀県の審査会からイヌワシ等の猛禽類の営巣地の確認が不十分、こういう指摘があったわけでございます。このために、改めてイヌワシ等については詳細調査を平成七年の二月から八年の一月の通年にわたって実施をして、営巣地についても位置を確認したところでございます。  環境庁におきます本案件に関する審査におきましては、これら通年調査を含めまして、三年半にわたるイヌワシ等の猛禽類の調査データをもとに慎重に審査をいたしました。  なお、電源開発調整審議会におきましては、環境庁といたしまして、原石山の位置の変更等、猛禽類の営巣等生息に影響を及ぼさないよう大幅な事業計画の変更を求めますとともに、工事中のモニタリングとその結果に基づく適切な対策を要請をいたしたところでございます。
  260. 藤木洋子

    藤木委員 そのとおりですね。それはぜひそのようにしていただかなければなりません。  特に三年間にわたってと言われましたけれども、繁殖期のデータがとれてないんですね。繁殖に失敗しているわけです。ですから、そういった不可欠な、どうしてもなければならないデータ、そういうものをきちんと調べもしないで、工事期における配慮の方法を示すことという知事意見書が公示をされまして、関西電力の見解書の中にも、工事対策は十分とるからということを記載したことで、知事が実は電調審で電源開発基本計画に金居原発電所計画を組み入れることに同意してしまいました。  しかし、イヌワシなどの生息に与える影響評価する繁殖活動期のデータの集積と解析というものは不可欠であるわけですから、十分な科学的調査実施しないまま発電所計画が承認されるということになりますと、これはとても十二分に環境影響評価が行われたとは言えないと思うわけです。ですから、環境庁がそういったことに対してきちんと意見を述べて、大きな変更を求められたというのは賢明なことであるというふうに思います。  もう時間がなくなりましたので、これで終わりますけれども、今もお話をさせていただきましたように、琵琶湖問題一つとりましても、一つ一つ事業だけでの環境アセスメントが求められているのではなくて、それが累積的あるいは総合的また複合的、こういった与える影響の大きさというものを十分認知をしていただいて、この法案をさらにそういう方向に前進をさせていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
  261. 佐藤謙一郎

  262. 秋葉忠利

    秋葉委員 社民党の秋葉でございます。大臣初め皆さん大変長時間の審議でお疲れだと思いますけれども、やはり非常に大切な法案であること、私が申し上げるまでもありません。ぜひ、最後の質問になりましたけれども、こちらも一生懸命質問いたしますので、どうか最後までおつき合いいただきたいと思います。  何点か、ともかく聞きたいことがたくさんありますので、できるだけ順序よく伺いたいと思います。まず最初に、この法案中央環境審議会の答申をもとにして法案ができているわけですけれども、どうもこの審議会の答申と現実の法案を比較してみますと、後退してしまったのではないか、そんな印象が否めない部分がございます。  それから、もう既にこういったアセス法というのは各国で制定されていることは皆さん御存じのとおりですけれども、そういった各国の制度と比べてみても、まだまだの点がたくさんあるのではないか。もちろん、長い時間を経て我が国でようやっと出された法案ですから、それなりに意味があると思いますけれども、環境を守るという立場、未来の世代に私たちの世代からのきちんとした環境を残すんだという立場から、少しでもいい法案をつくろうというのは、これは私たちの共通した目的ではないかと思います。  その立場から、何点か質問させていただきたいんですけれども、まず、私が、この中央環境審議会の答申の中にあって、法案の中から消えてしまった非常に残念だと思っていることの一つは、環境アセスメントを行う際に、複数案、代替案、その中には当然ゼロ代替といいますか、何も手をつけないという代替案も含めた、複数案をきちんと示した上でそれを比較検討するということが抜けております。  この点について、まず大臣に一般的な感想から伺いたいと思いますし、この後退の部分はどう評価していらっしゃるのか、それから、実は後退じゃないんだという解釈もあるようなんですけれども、もしそうであれば、なぜ、複数案の表現がなくなっているのに後退ではないと考えられるのか、そのあたりの御説明をお願いいたします。
  263. 石井道子

    石井国務大臣 環境アセスメント法案に対しましては、本委員会におきまして、大変慎重に審議を続けていただいております。  中央環境審議会の答申より後退しているのではないかという御指摘がありました。現行制度を見直すべき点を中心として、審議会におきましては、新しい制度が備えるべき基本原則として対象事業を拡大しております。また、スクリーニング、スコーピングの導入もいたしているわけでございますし、一般意見の提出機会の拡充を図り、そして環境基本法に対応した評価対象視点の見直しも盛り込まれておりますし、また事後のフォローアップの措置などが示されたわけでございます。この法案は、これらの基本的な原則について、法律として規定すべきものはすべて盛り込んだものとなっているわけでございます。  このほか、法案におきましては、環境庁長官や主務大臣等の意見を受けて事業者評価書を再検討する仕組み港湾計画に関する環境影響評価規定するなど、答申の趣旨に即してより充実した内容のものになっていると考えているところでございます。  代替案の検討につきましての御意見でございますが、諸外国では、環境への影響をできる限り回避して低減するという観点から、複数の案を比較検討する手法が用いられております。この場合の代替案とは、立地の代替のみならず、建造物の構造、配置のあり方、また環境保全施設、工事の方法等を含む幅広いものでございます。  このたびの中央環境審議会の答申におきましては、「複数案を比較検討したり、実行可能なより良い技術が取り入れられているかどうかを検討する手法を、わが国の状況に応じて導入していくことが適当である。」とされております。複数案の比較検討を含む環境保全対策の検討の過程を明らかにする枠組みとすることが適当であるとしているわけでございますし、本法案ではこれを受けて、準備書に、環境保全のための措置を講ずることとするに至った検討状況を記載させることといたしました。  御指摘の代替案、この問題につきましては、何もしない場合の大気汚染や水質汚濁のバックグラウンド濃度の推計とか、あるいは事業による環境改善効果を見るためのものでありまして、このような意味であれば、我が国でも実際の場で行われているところでもございます。  アセスメントは、事業実施についての意思決定がなされる前に、その意思決定に反映させるべき環境情報を形成するものでありまして、必要に応じて行われるバックグラウンドの推計も踏まえて適切な審査が行われ、その結果を踏まえつつ、許認可等を行う際に、事業実施するか否かに関する総合的な判断が適切に行われるものと考えております。
  264. 秋葉忠利

    秋葉委員 非常に詳細にお答えいただきましたけれども、結局のところ、代替案は出さないでもいいという結論だと思いますが、そこのところは非常に大きな問題があると私は思います。  環境影響評価で大切な点はたくさんありますけれども、これはやはり国民全体が、この環境影響評価、その調査の結果等を十分に理解した上で納得のいく結論が出されている、やはり納得するという点が非常に大切です。代替案を比較検討することの意味はいろいろありますけれども、その意味一つは、国民が十分にこの調査結果そして最終的な結論について納得をする上で一番理解しやすい方法であるという点があります。  そういったことで、諸外国でも、この代替案を必ず準備しなくてはいけない、代替案に従ってきちんとした調査を行うということになっていますけれども、それなしに、ほとんど比較の対象がなしに、一つの案について、ああでもないこうでもないという意見が幾ら集積されても、必ずしもそれが論理的にそして説得力ある結果にならないというのは、これまでの日本の実績を見ればはっきりとわかることです。  例えば、その違いがどこにあらわれているかといいますと、外国の例ですと、アセスを行った結果、環境影響評価を行った結果、事業が変更されたり、あるいは極端な場合には中止された事例がたくさんございます。こういった事例についてどの程度御存じなのか、環境庁の方から一応具体的なデータをお示しいただきたいと思います。
  265. 田中健次

    田中(健)政府委員 我が国制度、御案内のとおり、現行は閣議決定の要綱の制度でございまして、事業者調査等を終了いたしまして、環境保全上の検討を加えた後に初めて準備書が明らかになることもございまして、これまでは、アセスの結果、事業が中止となったという例は、私どもとしては日本では承知をいたしておりません。  しかしながら、事業計画を大きく変更した例といたしまして、先ほどお話がございました、猛禽類への影響を避けるため原石山等の位置を大幅に変更いたしました金居原の揚水発電所がございますし、また、トンネルの脱硝装置の設置を環境保全対策に追加をした高速横浜環状南線などが挙げられまして、また港湾計画アセスにおきましては、博多湾のアイランドシティー事業に見られますように、埋立地の位置、面積、形状等をかなり変更させた例も見られるところでございます。  諸外国におきましては、これまでもさまざまな事例が紹介されておりますが、環境庁が今回の法律改正に当たりましていろいろ実施をいたしました諸外国の調査におきましても、オランダの事例で、自然保護区域内の事業を中止をした事例、あるいは橋梁の建設をトンネルに変更した事例などが把握をされておるところでございます。
  266. 秋葉忠利

    秋葉委員 そういった事例をごらんになって、環境を守る上で事業を中止しなくてはならなかった、あるいは逆に考えますと、非常に重要な事業だからこそ計画があるわけですけれども、その重要な事業を中止しても環境を守るという環境の立場に立った姿勢が貫かれているというふうに私は感じるのです。それほど徹底したことを今回のアセス法に盛り込まなくても日本の環境を守れるんだという確信がどこかにおありになったと思うのですけれども、その確信の根拠をお聞かせください。
  267. 田中健次

    田中(健)政府委員 今回御提案をいたしております法律では、これまでの閣議要綱と違いまして、それぞれの事業許認可要件のほかに、環境保全上の配慮からも許認可に当たって総合的に判断をするという横断条項が入るわけでございます。  そういう横断条項によりまして、許認可に当たりまして条件をつけるとか、あるいは場合によっては事業の見直しを求めて許認可が出ないような判断も主務大臣の中で行う、こういうことにもつながるかと思います。私どもの環境庁長官意見を踏まえてそういう結果に至ることも、今回の法案では考えられるわけでございます。
  268. 秋葉忠利

    秋葉委員 それを聞いて大変安心いたしました。最終的には、事業中止というような諸外国で行われている一番極端なケースに至っても、環境を守るためにはそれが最善の選択肢であるという決定を下す用意がある、そのことを聞いて大変安心をいたしました。  しかし、残念ながら時は常に動いておりまして、外国の事例では、アセス段階だけではなくて既に事業が開始されている場合、事業がかなり進んでしまって、例えばダムが完成間近である、そういった状況においても、環境上の問題が発見された場合、これは人間のやることですから、どんなに万全を期しても、やはり後になってようやくわかってくるような事実というのも当然ございます。そういった場合に、事業が途中まで進行していてもこれを中止するといった例も随分たくさんございます。  例えば、アメリカが大変いい例ですけれども、アメリカのカリフォルニア州、オーバンダムというのがあります。このオーバンダムは、一九六〇年代、アメリカの開墾局、開拓局ともいいますけれども、その主導によって、アメリカン川という川、ここに多目的ダムとして建設が構想されましたけれども、一九七六年にこのダムサイトの下に二つの活断層が走っているということが発見されて、ダムの工事が中止されました。実はその後の曲折も大変おもしろいダムなんですけれども、例えばこういった環境上の問題が生じたことによって工事を建設途中で中止する、あるいは事業全体を放てきするといったことも行われております。  今回のアセス法案ではそこまでのことをお考えになっているのかどうか、お考えになっていないとしたらなぜなのか、そのあたりを伺いたいと思います。
  269. 田中健次

    田中(健)政府委員 今回のこの法案でございますけれども、事業者が大規模事業実施するに当たりまして、事前に環境への影響調査、予測、評価して、それを事業計画に反映させるという、事業に着手する前の環境影響のいろいろな手続等を定めるのが本法の目的でございます。  したがいまして、事業を着工した後の問題につきましてはこの法律の射程外の問題でございまして、事業着工後、先生お話にございました、ダムが活断層の上にある、こういう問題はそもそもその事業そのものの安全性の問題も絡んでくるかと思いますけれども、そうしたことで、事業着工後、環境上に問題がある場合には、環境行政、いろいろな環境行政がございます、自治体もやっておりますし、私どもも大気汚染防止法あるいは水質汚濁防止法でいろいろやっております。また、許認可大臣がその事業そのものを所管しておるということで、いろいろ判断をする立場にあろうかと思います。  したがいまして、事業実施後のいろいろな問題につきましては、この法律の範疇ではなくて、それぞれ主務大臣あるいは他の環境行政の範疇の中で対応すべきだということで整理をいたしております。
  270. 秋葉忠利

    秋葉委員 では、例えば活断層が、事業が始まって、ダムの建設が始まってから見つかったようなケースについては、環境行政の中でどういうやり方が担保されているのですか。
  271. 田中健次

    田中(健)政府委員 それは、ただいま申し上げましたように、その施設を建設するのが環境にどういう影響を及ぼすか、こういう視点からでございまして、その施設そのものを許認可しております事業実施官庁の方でその施設そのものの安全性その他の観点からいろいろ判断されていく問題だということを申し上げた次第でございます。
  272. 秋葉忠利

    秋葉委員 それは、このアセス法ができると、日本の環境庁は神様みたいに優秀だから絶対に誤りは犯さないということを宣言して、だから、あとは何もやらなくていいという意味なのか。あるいは、そういった誤りを発見して、例えばアセス段階では見つからなかった活断層が見つかった、仮にそういうことがあった場合に、それはもう管轄違いだから私たちは知りませんよというあしき官僚制度にのっとった発言なのか。  あるいは、現在ではそうなっているけれども、やはり環境上重要な問題が出てきた場合には、事業が始まってもやはり環境庁としては発言権を持つべきであるとお考えになって、これから例えばそういった法案を提案するとかあるいは最低限検討するとか、そういったいろいろな立場での御発言の可能性があるわけですが、どういった立場からお考えになっているのか、環境を守る立場だと思いますけれども、教えていただければ大変ありがたいと思います。
  273. 田中健次

    田中(健)政府委員 事業実施後に環境上の問題が出た場合でございますけれども、環境上の問題でありますれば、このアセス法の範疇でなくても、私ども環境行政を所管する立場から、いろいろなケースの場合にそれぞれの主務大臣に意見を申し上げたり御相談をする、こういう対応を行うことになろうかと思います。
  274. 秋葉忠利

    秋葉委員 それで十分であればこの法案だって要らないことになるわけですよ。だから、環境庁が既に万全の注意を払っていて、その場その場で最も適切な行動がとれるというのであれば、アセス法案がなくても環境庁は全くそれと同じことができるわけですから。にもかかわらず、アセス法案をつくったというのは、それを制度化しないと十分な担保が行われないということだと思います。  となると、やはり事業開始後の環境の問題についても同じような立法化が必要だと思いますけれども、最低限そういった方向で御検討いただけるものかどうか、お答えください。
  275. 田中健次

    田中(健)政府委員 先ほどから申し上げておりますように、事業実施後、環境上の問題が生じますと、いろいろな環境の規制法がございます、そうした手法を活用しながら適切に対応を図っていくということになろうと思います。
  276. 秋葉忠利

    秋葉委員 一点だけ、では伺います。  そういったさまざまな努力をする中で、活断層の上にダムがあったというような場合、当然事業の中止ということも可能ですね。
  277. 田中健次

    田中(健)政府委員 ただいまのケースは環境上の問題ではなくて安全性の問題だと思いますから、先ほど申し上げておりますように、主務大臣の方で適切に御判断をいただけるものというふうに考えます。
  278. 秋葉忠利

    秋葉委員 地殻の問題、言葉の遊びではないので、要するに、所管が違うと我々は知りませんというお答えになりますね、そうすると。非常に無責任。やはりすべての環境に関する項目についてきちんとした対応をしていただくのが環境庁だというふうに思っておりましたけれども、そういったあしき官僚制度がここで首を出すということについて大変驚いております。  残念ながら、時間がありませんので、次の問題に移ります。  事業開始前に行われるアセスメントの具体的なやり方ですけれども、今回の法案手続法ですから、具体的にどのような内容を持ったアセスメントが行われるかということ、これは全く法案とは違った次元の問題ですけれども、この具体的なやり方についてもさまざまな違いが、外国で標準的に行われているものと非常に大きな違いのあるところが特徴だと思います。  例えば、その中の一つとして私が申し上げたいのは、公聴会の制度、公聴会を開くことが義務づけられていない。やはり関心のある多くの方々の意見公開の場できちんと聞く、それについて公開の場で議論を行って、必要があれば再調査を行い、きちんとした納得のいく説明を専門家の方から出してもらう、そういった手続がやはりどうしても必要だと思いますけれども、公聴会が義務づけられていないという理由はどこにあるのでしょうか。
  279. 田中健次

    田中(健)政府委員 本法におきましては、環境保全上の意見を広く徴すということで、地域限定もいたしませんで、いろいろな人から環境保全上の意見を聞くということで、意見を聴取をすることになっております。これは決してその事業の賛否を問うものではございませんで、環境に関するいろいろな情報を広く集めるという視点意見を徴するということでございます。  法におきましては、事業者アセスメント内容につきまして、これからどういうことを調査するかということにつきまして説明会をするというのを事業者に義務づけておるところでございまして、説明会を開きましていろいろと説明をいたしまして、そこの場所で質疑も行われるものというふうに考えております。
  280. 秋葉忠利

    秋葉委員 環境庁のどなたか、例えばアメリカの議会における公聴会、実際にごらんになったことがおありでしょうか。
  281. 田中健次

    田中(健)政府委員 ちょっとそこまで存じておりません。
  282. 秋葉忠利

    秋葉委員 日本のさまざまな事業についての、官庁、これは自治体も含めて、お役所が開くいわゆる説明会とアメリカの議会の公聴会とは、どちらも言葉を使ってだれかが説明をして聞く、あるいは質問があるというようなところは似ていますけれども、その実質においてまるっきり性質が異なっております。公聴会がなぜ必要なのかということは、実際に公聴会を具体的に経験していただければ一番手っ取り早くわかるところだと思いますので、このアセス法をより十分に、より効果的に運用するためにも、ぜひアメリカ議会の公聴会をごらんになっていただきたいと思いますし、その上でこの運用に当たっていただければと思います。  やはり大事なのは、対等な立場に立つ、甲論乙駁といいますけれども、いろいろな立場の人たちが、その場で疑問点を出し合い、それに答え合い、そして知的なレベルにおいて十分な答えが得られないときには再調査を行うといったような形で、論理的、そして事実に基づき、かつ知的に満足のいく議論を行うという姿勢が貫かれているところだと思います。そのことをぜひお願いしたいと思います。
  283. 田中健次

    田中(健)政府委員 先ほど御説明申し上げた説明会でございますが、これは事業者に説明会を義務づけているということでございまして、この法律制度によりまして都道府県知事が自分の意見事業者に出すというときの知事意見形成の過程で公聴会なり審査会を開いて意見形成に資するという手法は十分可能でございまして、自治体によりましてはそういうことを踏むというところが相当あろうかと思います。
  284. 秋葉忠利

    秋葉委員 自発的に公聴会を開く都道府県があってもそれは特にとめはしないよぐらいの消極的な意味を持つかもしれませんけれども、それと、環境庁がアセス法を推進するに当たって、環境庁が主体になってきちんとした公聴会を開く、それを義務づける、そういった立場とは非常に距離があります。そこのところを申し上げているので、公聴会自体開いてもよいということになっているところは評価いたします。今までの行政あり方であれば、公聴会なんか開かせないというような条項が入っていてもおかしくはないわけですから、それは評価いたしますが、やはりもう一歩進んでそれを義務づけるというところまで踏み込まないと、私は、公平、公正、広く意見を求めるということはなかなかできないのではないかという気がいたします。  それから、具体的なアセスのやり方についてもう一点伺いたいのですけれども、具体的には、例えばドイツで行われている環境評価の方法の中で非常に重要なもの、それからこれはイギリスでも行われている、その他の国々でも行われているところですけれども、最終的に代替案を幾つかつくり、そしてその代替案の中の重要項目については数値化を行う。数値化を行うことによって、幾つかの代替案の中で、この項目についてはA案が一番いい、あるいは別の項目についてはB案の方がいいといったような形で整理をした上で、それを素人でもどのような評価が下されたのかということが十分にわかり、その上で決定にあるいは議論に参加できるというような方法をとっております。  ドイツでは、これはノルトライン・ウェストファーレン州のやり方というのが随分有名だというふうに理解をしておりますけれども、そういった数値化のところまで含めた具体的な環境影響評価を行おうとされているのかどうか、伺いたいと思います。
  285. 田中健次

    田中(健)政府委員 対象事業に係ります環境影響評価を適切に行うためには、調査、予測、それから評価を項目ごとに実施をいたしまして取りまとめますとともに、それらの結果を一覧できるように、対象事業に係る環境影響の総合的な評価ということで整理をすることにしております。それは、法律の十四条第一項七号のニでございます。これによりまして、全体としての環境影響を把握することができまして、適切な環境保全対策につながるとともに、住民等の理解の促進に役立つことが期待されるわけでございます。  なお、御指摘評価項目の順位づけとかあるいは評価の数値化につきまして、ドイツでやられているというふうなお話でございましたけれども、おのおのの項目におきます評価の性質やあるいは価値の置き方が異なる等、いろいろ検討すべき項目も多いわけでございまして、私どもといたしましては、現時点ではそうしたことの数値化の制度化というのはなかなか難しいのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  286. 秋葉忠利

    秋葉委員 それはあれですか、ノルトライン・ウェストファーレン州でどういうぐあいにこれが行われているかということを具体的に調べた上で、それはどうもなじまないという結論を下されたんでしょうか。
  287. 田中健次

    田中(健)政府委員 本制度を提案する前に何年かかけまして関係省庁一体となって研究をいたしまして、外国にも調査団を出しまして調査をいたしましたが、残念ながらその調査には私ども入っていなくて、その情報はつかんでおらないというのが状況でございます。
  288. 秋葉忠利

    秋葉委員 これは、別にここだけでやっている特別な方法ではなくて、世界的にかなり標準的にこういったことが行われているというふうに私は理解しております。ですから、最終的にどのような選択になろうと、やはりきちんとした調査を行った上で、仮に選択をしない場合には、なぜこういった例えば数値化を行わないのかということを、十分に納得のいく説明を加えて我々にも教えていただきたいと思います。  それから、次に参りますけれども、これに関連をいたしまして、結局、この環境影響評価調査をして、最終的な結論を下すのは、これはだれですか。
  289. 田中健次

    田中(健)政府委員 プロセスはいろいろございます。事業者準備書評価書をつくりまして、その間に自治体の意見も徴し、それから環境庁長官意見も出しまして、最終的には主務大臣が判断をするということでございます。当該事業許認可権を持っております主務大臣が、環境保全上の観点からの配慮も考慮をして許認可を決める、こういうことになります。
  290. 秋葉忠利

    秋葉委員 その以前の段階で、この評価書というのでしょうか、それを最終的に、これが評価の結論ですという決定を下すのは事業者ですか。
  291. 田中健次

    田中(健)政府委員 先ほど申しましたように、事業者準備書をつくり、いろいろと自治体あるいは一般の識者の意見を聞いて、それを公告縦覧をして、さらにそれを直して評価書までつくり上げて、評価書の段階環境庁長官意見を申して、主務大臣がさらに意見を出して、それに基づいて必要な修正があれば修正をして、そこで評価書ができ上がるわけでございます。そういうプロセスを経ますが、つくり上げる責任は事業者でございます。
  292. 秋葉忠利

    秋葉委員 その事業者のところに、やはりぜひ民の代表といいますか、専門家あるいは公平な第三者を最終決断の段階で加えるということが、私はこの環境影響評価を公平、公正に行う上で非常に大切だと思いますけれども、その点についてはいかがお考えでしょう。
  293. 田中健次

    田中(健)政府委員 プロセスを何度も御説明をいたしておりますが、その第三者の立場に当たるのが、私ども環境庁長官意見だと思います。そういうことでこの制度を仕組んでおりまして、環境庁長官が第三者的立場で意見を申し上げるということでございます。  長官意見の形成に当たりましては、いろいろと過去の蓄積、あるいは、場合によっては識者の意見も徴して意見を固める、こういうことでございます。
  294. 秋葉忠利

    秋葉委員 次の質問に移ります。  スクリーニングにおける評価規模についてです。第一種事業、これは無条件で行われるようですけれども、さらに、第二種事業、一定規模以上。この規模は政令で定めるということになっていますけれども、大体どの程度のものになるか。余りこの規模が大き過ぎるとほとんど網にひっかからないというような状況が生じるわけですから、この規模を定めるということがとても大切になってくると思いますけれども、大体どの程度の規模をお考えになっているのか、教えていただきたい。
  295. 田中健次

    田中(健)政府委員 おっしゃいますように、対象事業政令で定めることになりますけれども、第一種事業につきましては、現行の閣議アセス等の実績を踏まえまして、政令等によりまして定めるわけでございます。現行のアセス制度の規模が目安になるというふうに考えております。  それから、第二種事業につきましては、第一種事業に準ずる規模ということでございまして、それを目安に定めていくということになります。
  296. 秋葉忠利

    秋葉委員 そういたしますと、例えば事例を挙げますけれども、廃棄物処分場の場合には、アセス対象となる事業規模というのは三十ヘクタール以上ということですね。それで現在、これは環境影響評価制度総合研究会の報告資料をもとに計算をしてもらった結果なのですけれども、平均事業規模というのが大体一・五ヘクタールぐらいというふうに理解をしております。そうすると、この中で数字をずっと拾っていきますと、アセス対象となる件数の割合というのは、これは件数ベースですから面積ベースではありませんけれども、〇・三%になってしまう。こういった決め方で本当にアセスの効果が上がるというふうにお考えでしょうか。
  297. 田中健次

    田中(健)政府委員 今回のこの制度におきましては、国の立場から見て一定水準の確保が必要となるようなものに環境影響評価を行う、そういう視点から対象を選定していくわけでございまして、そういう国の立場から見てアセスが必要だということで、非常に大規模で環境影響を及ぼすおそれが大きいもの、なおかつ国が直接事業を行うか許認可等に直接かかわっている、こういうことで対象を決めていくわけでございます。現行の閣議アセスでもほぼそういう形で行われておるわけでございまして、その規模以下の事業につきましては、これは地方がそれぞれいろいろな形で環境影響評価を行っておる、こういうことでございます。  そういうことで、国と地方の役割を分担をするという考えに基づいて整理をいたしておるわけでございまして、廃棄物処分場につきましても、非常に大規模なものについて国の立場からアセスをする必要のある規模の事業に集約をいたしまして、あとは自治体等の判断にゆだねる、こういうことに整理をいたしておるわけでございます。
  298. 秋葉忠利

    秋葉委員 もう一つ例を挙げますけれども、埋め立て、干拓、これは対象になるのが五十ヘクタール以上、平均事業規模三・五ヘクタール、アセス対象になるのは件数でいって〇・四%。国の基準とそれから地方自治体の基準とは違うということですけれども、それでは今の二つの件数について、地方自治体として具体的にアセスを行った件数、大ざっぱに言って大体どのくらいに上るのでしょうか。
  299. 田中健次

    田中(健)政府委員 申しわけございませんが、自治体の事業の詳細な結果については把握をいたしておりません。御容赦いただきたいと思います。お聞きいただきました結果につきましては、ただいまそういう数字を持ち合わせておりませんので、御容赦いただきたいと思います。
  300. 秋葉忠利

    秋葉委員 現在の日本の政治の仕組みから常識的に考えると、国でつくった基準以上、少なくとも今まで自治体で横出しあるいは上積みということをやる例というのはほとんどありません。仮に行われたとしても、これが、オーダーが変わるというような形で、突出した形での別基準をつくって調査を行う、評価を行うということは、常識的に考えられない話であります。  ですから、そのことは環境庁も十分御存じのはずですから、そういった常識的なことを考えれば、これでかなりの件数のアセスが、実は行われるべきであるにもかかわらず行われない現状があるというところ、私は、その点ぜひもう一度お考えの上、政令それから自治体に対するそれなりの行政指導ということが必要であればきちんとした措置をとっていただきたいというふうに思います。  時間がだんだんなくなってまいりましたので、現在私が問題提起をしているのは、このアセス法案ができて、それは皆さんの御苦労によってできたわけですけれども、その運用の仕方によって、あるいは法の制度的な整備が十分でないために、実は皆さんの善意が生かされないような状況がたくさんある。それは非常に残念であるという意味で、何とか皆さんの後押しをしようという意味で申し上げているわけでございますけれども、その具体的な例を幾つか申し上げたいと思います。  奥只見なのですけれども、これは主にイヌワシあるいはクマタカ、先ほどもこの問題についての質問藤木委員の方からありましたけれども、私が関心を持っているのは、奥只見の大鳥発電所、あるいはそれとすぐ近くにあります湯之谷揚水発電所、こういったところでの現在の事業に関連して、自然の保護が十分に行われていないのではないか、その点について伺いたいと思います。  まず最初ですけれども、こういった例えばイヌワシについて、あるいはクマタカについて、その他、例えばノスリという生物もあるのだそうですけれども、こういった生物の営巣地、巣がどこにあるかということは公表されていないということなのですけれども、その理由は何なのか。そして、これが公表されなくても環境影響はないのかどうか、簡単に御説明をお願いいたします。
  301. 澤村宏

    ○澤村政府委員 お答えを申し上げます。  一般的に、希少な猛禽類の営巣地などの情報を公開した場合におきましては、密猟のおそれがあるほか、カメラマンあるいは観察者等多数の人々が営巣地の近辺に集合することなどによりまして、猛禽類の繁殖を阻害することが懸念されております。  このため、昨年環境庁が公表いたしました「猛禽類保護の進め方」におきましては、希少な猛禽類の営巣地は原則として非公開とするとともに、調査結果を公表する場合には、営巣地などが特定されないように表現方法に十分配慮することが必要であるとしているところでございます。
  302. 秋葉忠利

    秋葉委員 そういう危険性は確かに存在すると思いますけれども、それと同時に、ぜひ伺いたいのは、環境庁の考え方では事業者は善意の人たちばかりでうそをつかない、あるいは事業を行う上でまずこういった生物の環境を守ることを第一義にしている、そういったふうにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
  303. 田中健次

    田中(健)政府委員 私どもといたしましては、事業者準備書なり評価書をつくる過程で、いろいろと関係者意見を聴取しながらやってまいりますし、それから、そのプロセスでその準備書評価書を公告縦覧をいたしまして、広く一般公開をいたしております。  そういうことで、そのデータ等も公開をされますので真摯な対応が求められるわけでございますし、また最終的には私どもの環境庁長官意見、それから主務大臣の審査等もございまして、その辺で十分担保できるものと考えております。
  304. 秋葉忠利

    秋葉委員 今いろいろな危険性があるから公表できない部分があると言って、そのすぐ後で公表しているから大丈夫ですという答えは、ちょっと両方一緒には受け取れないのですが、奥只見の場合ですと、仮に事業者の方が善意であっても、やはりこれは人間のやることですから、調査漏れがあったり、具体的に巣が発見されていなかったり、あるいは発見されていてもそれが事業者側からの調査には入っていないけれども具体的には悪影響をこうむっているということがきちんと報告されております。  何点か申し上げますけれども、例えば、調査工事開始後、二カ年連続でこの奥只見の大鳥発電所周辺地域ではイヌワシは繁殖に失敗しております。その理由として考えられるのは、例えば一九九四年の七月から十二月、イヌワシの巣をつくっている岩の巣下で昼夜発破工事が開始されていますけれども、その次の年の四月には繁殖に失敗しています。これはやはり因果関係があると見ることが当然だと思います。  その年、一九九五年の七月から九月の調査工事でこの岩の営巣が落下をして、結局、その際には、実は調査工事がそのすぐ後で中止になっているのですけれども、それは違法工事が行われているということが発覚したために中止になっている、そういう事実がございますし、一九九六年の一月から四月、このイヌワシは、巣が落ちてしまったために松の木に巣を移しましたけれども、そこでひなが凍死してしまって、繁殖は中断されてしまったということが知られております。  これもやはり自然を愛する人たちが一生懸命調査をしたわけですけれども、こういったことがあるわけですから、となると、事業者が、これは故意ではないかもしれませんけれども、既に調査工事の段階でかなり大規模な環境破壊を行ってしまった。意図的だとは申しませんけれども、事実としてそういうことがあるということはやはり重く受け取るべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  305. 田中健次

    田中(健)政府委員 先ほど自然保護局長が御答弁申し上げましたように、希少生物の保護ということでデータの公開、なかなか難しい点でございます。何とか工夫をしてそういうことに至らないようにやっていきたいと思います。御指摘の猛禽類については、必ずしも営巣地が特定されなくても、その行動範囲を示すことなどによりまして事業の把握ができるのではないかというふうに考えておりますけれども、私どもといたしましては、いろいろ工夫をいたしたいと思います。  例えば、審査等に当たりまして、営巣地の特定が必要な場合には、都道府県及び環境庁において、事業者から営巣地についての情報を聴取して、外部に公表しないことを前提に学識経験者等に御検討いただく、こういうこともあり得るのかなというふうに考えておりまして、今後いろいろな形で検討を進めていきたいと思います。
  306. 秋葉忠利

    秋葉委員 検討をするということは大変重要だと思います。ぜひやっていただきたいと思います。  もう一点、事業者がこういった調査をすることについての問題点を申し上げておきます。  例えば、ノスリの場合、これは湯之谷揚水発電計画の中ですけれども、ある地点にあるブナの木にノスリの営巣を確認しています。これは事業者がやっているのですけれども、同時に、ダム水没予定地のキタゴヨウの木のノスリの営巣を発見しておりません。  つまり、その水没地に巣があるということがわかって、それを仮に公表しないまでも、専門家が知ることになればダム工事は影響を受けるわけですから、そういう利害関係があれば、当然、これもまた私はあえて意図的にとは申しませんけれども、無意識下の力が働いて、自分たちの仕事がやりにくくなるような巣は、やはりこれは、フロイト流に言えば、見過ごしてしまうようなことになる。そこがやはり、事業者だけにこういった調査を頼る、事業者に頼って調査をやるということの非常に大きな危険性だと思います。  例えば第三者機関をきちんとつくってこういった調査を行うというようなことにしないと、今申し上げたような例はただ単にここの場所だけの問題ではなくて、普遍的な力によって生じる問題ですから、その点やはり大規模な改善を検討していただかないといけない点だと思いますけれども、いかがでしょうか。
  307. 田中健次

    田中(健)政府委員 希少動植物の保護というのは非常に重要でございますけれども、また、その手法その他も非常に難しいことでございます。そういうことで、私どもといたしましては、自然にかかわりますそうした問題について、法の成立の暁には指針をつくるということになってまいりますので、その段階でも十分検討してまいりたいと思います。  いずれにいたしましても、先ほどから申し上げておりますように、情報をそれぞれ適宜公開をしていくということでいろいろな客観的な意見も集まってくるわけでございまして、客観性、透明性も確保しながら制度を進めていくということと、もう一つは、調査等にかかわる人材の育成というものも非常に大切になってまいります。そうしたことで、人材の育成にも今後とも努めていきたいというふうに考えております。
  308. 秋葉忠利

    秋葉委員 今のお答えを一言で言うと、このアセス法が成立すれば、今私が指摘したような問題は起こらないということだととってよろしいのでしょうか。
  309. 田中健次

    田中(健)政府委員 できるだけ起こらないようにいろいろ工夫を重ねていきたいというふうに考えております。
  310. 秋葉忠利

    秋葉委員 現行法よりもアセス法の方が厳しいという立場だと思いますけれども、となると、別の問題が生じてくる。  これは新潟県で多くの市民たちの間の疑惑としてささやかれていることですけれども、今回のこの湯之谷あるいは大鳥といった場所、どうもこのアセス法ができる前に、法律が厳しくなる前に何とかすり抜けてしまおう、駆け込み調査をやってそれで通してしまおうというようなことが行われているからこんなにずさんになるのではないかという声がありますけれども、今のお答えだと、その声にどうもかなりの蓋然性を与えてしまうような気がいたします。現時点で、この法律ができる以前の時点で、やはり環境庁に、あるいはこの主管官庁である通産省に、もう一度この場所についての、イヌワシ、クマタカ等について守るための新たな再検討をぜひ早急にお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
  311. 田中健次

    田中(健)政府委員 湯之谷につきましては、これからアセスメントを行うというふうに聞いておるところでございまして、そうしたことで、しっかりとアセスメント環境庁としてはやっていきたい、通産省に意見も申し上げたい、こういうふうに思っております。
  312. 秋葉忠利

    秋葉委員 最後に、検討期間について伺いたいと思います。  附則七条、ここで検討時期として「施行後十年」というふうになっておりますけれども、ただいま私が提起いたしました問題、それから多くの委員指摘してまいりましたさまざまな問題、もう既にこの法律ができる以前からいろいろな問題のあることが十分御理解いただけると思います。私は、十年待つのではなくて、もう既に世界は大きく変わっているということを前に申しましたし、それから、環境に関心を持つこれだけ多くの環境委員会の委員がぜひ改善をしてほしいということを言っているわけですから、例えば三年なりあるいは五年、このアセス法が具体的に動き出し、そして皆さんの理想主義やあるいは情熱がまだ熱いうちにぜひ検討をしていただきたい。  この附則七条の十年を例えば三年あるいは五年に変えること、これは何とか皆さんの方でやってみましょうというふうに御検討いただけないでしょうか。
  313. 田中健次

    田中(健)政府委員 この附則七条の規定でございますが、これは、国民に対して新たな負担を課す制度を新しくつくるというときには、政府の方針に基づきまして、この制度そのものの存廃を見直すという意味も込めまして、こういう規定を置くということになっております。これは、ほかの制度でもすべてこういうシステムは導入をされておるわけでございます。  したがいまして、この制度そのものを根底から見直すというふうなことでこの条文は規定されておりまして、そうした意味からいきますと、アセスメントを行うのに短くて三年、長くて五年の期間がかかるわけでございまして、この法律の施行状況を見るにはやはり十年が必要だということでございます。  しかし、先生今おっしゃいましたように、日進月歩の科学技術でございまして、運用指針その他につきましても、その都度見直しが必要なことも出てまいります。そうした事柄につきましては、この間でありましても、私どもは積極的に見直して手直しを加えていくということは当然考えておるところでございます。
  314. 秋葉忠利

    秋葉委員 最後の御答弁、そういった考え方で、私たちもこの法案ができるだけよい運用がなされるように協力をしたいと思いますし、改善をするためにも皆さんと一緒になって頑張っていくという気持ちでございます。  大変いい御答弁をいただいた段階で、あと二、三分時間が残っていますけれども、大分夜も更けてまいりましたので、これで質問を終わりたいと思います。
  315. 佐藤謙一郎

    佐藤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。  次回は、来る二十五日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時十七分散会      ————◇—————   〔本号(その一)参照〕     —————————————    派遣委員京都府における意見聴取に    関する記録 一、期日    平成九年四月二十一日(月) 二、場所    京都宝ケ池プリンスホテル 三、意見を聴取した問題    環境影響評価法案内閣提出)について 四、出席者  (1) 派遣委員    座長 佐藤謙一郎君       大野 松茂君    奥山 茂彦君       砂田 圭佑君    目片  信君       持永 和見君    大野由利子君       田端 正広君    武山百合子君       桑原  豊君    藤木 洋子君       辻元 清美君  (2) 政府出席者         環境庁長官官房         長       岡田 康彦君         環境庁企画調整         局環境影響評価         課長      高部 正男君  (3) 意見陳述者         中央環境審議会         企画政策部会長 森嶌 昭夫君         環境総合研究所         所長         環境行政改革         フォーラム代表         幹事      青山 貞一君         京都大学大学院         理学研究科教授         京都大学総合博         物館長     河野 昭一君         全国公害弁護団         連絡会議事務局         長         弁  護  士 村松 昭夫君         名古屋大学名誉         教授      島津 康男君  (4) その他の出席者         環境委員会調査         室長      鳥越 善弘君      ————◇—————     午後一時十分開議
  316. 佐藤謙一郎

    ○佐藤座長 これより会議を開きます。  私は、衆議院環境委員長佐藤謙一郎でございます。  私がこの会議の座長を務めますので、よろしくお願いを申し上げます。  この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。  皆様御承知のとおり、当委員会におきましては、内閣提出環境影響評価法案の審査を行っているところでございますが、本日は、法案の審査に当たり、国民各界各層の皆様から御意見を聴取するため、当京都市におきましてこのような会議を催させていただいたところでございます。  御意見をお述べいただく方々には、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。  会議議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、座長の許可を得て発言していただきたいと存じます。  次に、議事の順序につきまして申し上げます。  最初に、意見陳述者の皆様から御意見をそれぞれ十五分程度お述べいただきました後、委員より質疑を行うことになっておりますので、よろしくお願いいたします。  それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。  出席委員は、自由民主党の持永和見君、大野松茂君、奥山茂彦君、砂田圭佑君、目片信君、続きまして、新進党の田端正広君、大野由利子さん、武山百合子さんであります。次に、民主党の桑原豊君、日本共産党の藤木洋子さん、社会民主党・市民連合の辻元清美さん、以上でございます。  次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。  中央環境審議会企画政策部会長の森嶌昭夫君、環境総合研究所所長環境行政改革フォーラム代表幹事の青山貞一君、京都大学大学院理学研究科教授京都大学総合博物館長の河野昭一君、全国公害弁護団連絡会議事務局長・弁護士の村松昭夫君、名古屋大学名誉教授の島津康男君、以上の方々でございます。  それでは、森嶌昭夫君から御意見をお述べいただきたいと存じます。
  317. 森嶌昭夫

    ○森嶌昭夫君 座長から発言を求められました森嶌でございます。  本日は、当委員会の地方公聴会で意見陳述の機会を与えられましたことをお礼申し上げます。  私は、環境アセスメントの答申を取りまとめました中央環境審議会企画政策部会の部会長をしておりますので、その観点から意見を述べさせていただきたいと思います。  まず、中環審の審議でございますが、平成八年六月二十八日に内閣総理大臣から今後の環境影響評価制度あり方につきまして諮問をされまして、平成九年二月十日に答申を発表いたしますまでに、四回の小委員会を含めまして、都合二十二回の部会での審議を行ってまいりました。部会の審議は、答申案の案文づくりと、それからその案文づくりの起草をいたしました小委員会を除きまして、すべて公開で行いました。  そして、審議におきましては、関係省庁、NGOなどを初めとする各方面からの意見聴取を行いますとともに、全国六カ所でのヒアリング、また郵便等による一般意見を受け付けるなどいたしまして、できるだけ広く国民各層からの意見をちょうだいしたわけであります。最終的には、地方ヒアリングも含めまして、五百十九件の意見をいただきました。  その寄せられた意見内容でございますけれども、主務官庁の一部あるいは事業者の一部には、環境アセスメントにつきましては、昭和五十九年の閣議決定によって環境影響評価実施要綱が定められて以来、実績も重ねており、既に三百四件のいわゆる閣議アセス実施されてきている、したがって、これまでの実績から、適切かつ十分なアセスが行われてきたという評価をいたしまして、そこで新たな制度を設ける必要はないのではないかという御意見もございました。また、新たな制度をつくることによって、事業が長期化し、あるいは不要なコストがかさむというようなことがあってはならないのではないかという御意見がございました。  しかし、その反面、意見のほとんどのもの、あるいは多くの意見と申しましてもよろしいのですが、多くの国民の意見におきましては、幾つかの点で現行のアセス制度は不十分であるという指摘がなされました。  まず、第一には、閣議アセスにおけるアセス対象事業の範囲が狭過ぎる、一部の事業しか閣議アセスが行われていないという点であります。  それから、第二には、アセス評価の項目でございますが、典型七公害あるいは一定の類型のものについての評価のみであって、今日、例えば生物多様性など、多くの項目でアセスを必要とするにもかかわらず、そうした評価項目がアセスの中に入っていない、評価項目が少な過ぎるという御指摘。  それから、三番目には、手続開始の時期でございますけれども、準備書の送付、公告に始まるアセスメント手続の開始の時期には、もう既に事業が相当程度進んでおり、住民が意見を述べてももはや後戻りができないという段階になっている、そのため、アセスをすべきところが、実際には、環境影響評価は重大でないという、いわゆるアワセメントになってしまうのではないかという御指摘がございました。  さらに、第四には、評価書を作成するに至るその基礎となる情報が住民に十分公開をされていない、また、アセスメント実施した実際の責任者がだれであるのか、どういう人がアセスをしたのかということについての情報が明らかでないという点。  それから、第五番目には、環境影響評価の結果が国の許認可と必ずしもリンクしていない、そこで、環境影響評価の結果を十分考慮して事業を開始する、つまり、事業開始の、あるいは許認可の要件とすべきであるという御指摘。  さらに、新しい制度をつくることによって、かえって現在地方公共団体実施しているアセスメント制度の足を引っ張ってしまうのではないかというような御意見もございました。  いろいろな御意見がございましたけれども、基本的には、現行の国の閣議アセス制度は十分でない、透明性が欠けている、そこで、わかりやすく、透明性の高いものとするために、法律によってアセスメント制度をつくる必要があるというのが大方の御意見でございました。  そこで、中央環境審議会の答申の結論を要約いたしますと、次のようなことになるかと思います。  まず第一に、現行制度を見直し、統一的で、透明性が保たれた、わかりやすい制度とするために、法律による制度とすべきである。  そういう前提のもとに、その法律が持つべき基本的なルールの何点かについて次に申しますと、まず、先ほどの、国民の批判にございましたところでありますが、できるだけ早い時期から住民等の意見を聞き、事業の方法等あるいは環境保全の方策について考慮に入れることができるように、調査開始の段階、つまりアセスメントのための調査をするその段階、あるいは場合にもよるでしょうけれども、できるだけ早い時期に手続を開始するようにするということであります。  第二には、対象事業を広げるということであります。  従来の閣議アセス対象事業のみならず、規模が小さくても地域状況によっては環境に対する影響が大きいというものもあり得るわけでありますから、そこで、そうしたものについて環境アセスをするかどうかということについて、いわゆるスクリーニングという制度を入れるということであります。  それから、原則の第三番目としましては、評価項目をできるだけ広くとるということであります。  しかし、他方で、画一的に全部の項目について評価をする必要がない場合もあります。環境状況であるとか地域状況、あるいは事業の性質によってそうしたこともあるわけでありますので、そこで、必要にして十分な評価の項目が何であるかということについて選定をする、スコーピングと申しますけれども、そういう手続を入れるべきであるということであります。  四番目には、評価の基準であります。  従来の閣議アセスにおきましては、環境基準等の行政目標をクリアすればそれで足りるというところがなかったわけではありませんけれども、それだけではなくて、既存の最善の技術、方法を用いて環境への負荷をできるだけ少なくしているかどうかなどについても、その意味では、必ずしも数量的な目標が立てられない分野においても、そうした環境負荷をできるだけ少なくするという観点から評価を行うべきである。  それから、五番目には、評価の結果を国の許認可等に、つまり事業の開始の可否にリンケージさせる、反映させるということをすべきであるという観点から、許認可の根拠法に環境に対する配慮をすべきであるというような規定がない場合でも、許認可に当たって環境への配慮をさせるように、いわゆる横断条項を設けるということを提案をしております。  そして、六番目には、予測の不確実性にかんがみまして、現在の科学技術をもっても環境アセスがすべて事前に明らかになるとは限らないところから、環境影響評価後のフォローアップという制度を導入をするということであります。  ただ、すべての事業についてそのフォローアップを要求する必要がない場合もありますので、予測が不確実であるなどの事情がある場合には、あらかじめ事業者評価書にその旨を記載をして、それを前提として評価結果を出させた上で、そうした記載に基づいて事業者にフォローアップを実施させるというような制度を入れるべきであるということにいたしました。  そしてまた、七番目には、住民の位置づけ、あるいは国民の位置づけでございますけれども、方法書であるとか準備書であるとか、こうした事業者の作成する書面に対して意見を述べるものといたしました。  これにつきましては、住民の同意を要するという国民の意見もなかったわけではございませんけれども、それでは何をもって同意とするのか。また、実際に環境保全の対策を実施する事業者がむしろ責任を負い、そして、それに対する許認可の官庁がそれをきちっと許認可を通じて遵守させるということで、むしろ、住民は十分に情報をとり、意見を述べるというふうに位置づけ、そしてこの法律は、いわゆる手続法と位置づけることが現状では適当ではないかということであります。  しかしながら、意見を述べることのできる住民の範囲等につきましては、従来の地域住民ということではなくて、全国どこからでも、また外国からでもいいのかもしれませんが、意見を持っている者はだれでも意見を述べることができるということにいたしました。  つまり、この制度手続評価は、事業を行う事業者の責任において行い、事業者は、住民、国民からの意見を十分に考慮して環境に配慮をするということでございます。  そして、八番目に、この制度ができますと、国の制度として、従来の環境アセスメントを、少なくとも対象事業については本法の定めるところによって一本化する、そこで行うわけでありますけれども、従来地方公共団体が行っていたアセスメントが先ほどのスクリーニング等によって取り込まれてくるという可能性がありますので、地方公共団体意見を十分に反映できるような仕組みにしておくということであります。  そこで、スクリーニング、あるいは最初の調査段階で出される方法書、それから準備書の各段階地方公共団体意見を述べ、事業者がそれに対する対応をしなければならないということにしております。また、その手続的なことを除いて、国の制度の中で意見を述べる場合にも、どのようにして意見を述べるかということについて条例で定めるということは全く妨げるべきではありませんし、また、国の制度にのってこない事業についてアセスメントが必要であるとする場合には、あるいは国の許認可等がかからないものにつきましては、これは、条例によって独自のものをつくるということについて、これも妨げるべきではないという見解であります。  さらに、九番目としましては、従来の閣議アセスでは、環境庁長官意見を述べたり、あるいは基本的方針を定めるということについて必ずしも明らかでない、あるいは制約があったところでありますけれども、各段階において、環境庁長官環境保全の立場から介入をするといいましょうか、意見を述べたり、あるいは基本事項を定めたりするというような権限を明らかにするということを明示をいたしました。  そして、最後に、ちょっと時間がたちましたので急ぎますが、法案についてでございます。まず、時期の点につきましては、法案の五条から十条ですが、「方法書の作成等」というところで、時期を従来の準備書よりも繰り上げていくという点につきましては、答申の考え方が盛られているというふうに評価しております。  それから、対象でございますが、これは四条でございますが、第二種事業というものを設けまして、第二種事業の判定を通じてスクリーニングを行うという点で、答申の基本的な考え方は入っているというふうに考えております。  それから、スコーピングにつきましては、十一条で評価項目を定めるということになっておりますので、スコーピングのアイデアもここに入っているというふうに評価しております。  評価基準につきましては、法案からは明らかではありませんけれども、今後、主務省令、あるいは主務省令をつくるに当たって、環境庁長官基本的事項を定めるなどの段階で盛り込まれるべきであると私は思いますし、現在の法案はそれを前提にした法案だというふうに考えております。  それから、横断条項につきましては、三十三条以下に規定がされております。  それから、フォローアップについても、条文としてはちょっとしか出ておりませんけれども、十四条一項七号ロ、ハに出ております。  国民の意見の反映も、方法書、準備書などの段階でそれぞれ意見を述べるということになっておりますが、具体的な述べ方等については、法律にはまだ規定をしておりませんで、総理府令等に書かれることになっております。これも、今の日本の法律の書き方からすればこういうことかと。一応そうした答申の方向が具体化されるように規定がなされているというふうに考えております。  それから、自治体の問題でありますけれども、これも、方法書、準備書の作成段階で自治体が意見を述べることができます。ただ、余りにも意見を述べる期間が短いと地方自治体としてはそれを十分にチェックをするということはできないわけですが、これも、現在の法案では政令で定めるということになっておりますので、中環審の委員としては、政令を定める際に、十分に現在の地方自治体におけるプラクティスなどを妨げることのないような期間の設定をすべきだというふうに考えております。  それから、環境庁長官の権限につきましても、スクリーニングあるいは方法書において、基本的事項を定めるについて発言を期待されておりますし、それから、評価書に対して主務官庁に対して意見を述べることができるというのが二十三条にございます。  以上のことから、私は、答申を出した者、私が出したわけではありませんが、中環審の部会で審議にかかわった者の立場から申しますと、まだ政令あるいは省令等が出ていないところでありますけれども、少なくとも現在の法律の枠組みにおいて、答申の示した具体的な方策が盛り込まれ得るというふうに考えておりまして、法案としては答申の趣旨を体しているのではないかというふうに評価をしております。  時間を超過いたしまして、どうも失礼をいたしました。
  318. 佐藤謙一郎

    ○佐藤座長 どうもありがとうございました。  次に、青山貞一君にお願いいたします。
  319. 青山貞一

    ○青山貞一君 青山でございます。  私の立場は、いわゆるNGO、それも専門家——環境政策環境アセスメント環境法、そういう分野におります専門家の中での立場を代表するといいますか、NGOからの発言になります。  実は、森嶌先生が企画部会長を務められます中央環境審議会の一連の公聴会、意見書、その他一連の手続の中で、私どもは最初からずっと意見書を出し、公聴会で発言し、かつ専門家六十名が集まりまして、三月二十二日、答申、それから法案がちょうど出始めたころでありますが、それにつきまして専門的な立場からレビューを行いました。  私自身、環境庁ができる前から実は環境アセスメントのコンサルタントをやっておりまして、環境庁ができた後、いわゆる計画アセスメントという政策を、当時三年間、約一億円の調査費を使いまして、アメリカに都合六回行くという中で、政策提言を環境庁にしてきました。そういうコンサルタントとしての立場が一つであります。もう一つは、今申し上げました、日本のこういう分野における専門家がつくりましたNGO、昨今行政改革がいろいろと叫ばれておりますが、環境行政に絞りましてその質、量、機能に提言するという、環境行政改革フォーラムというNGOの代表の立場。その二つの立場から、以下八項目につきまして、お手元の資料に沿って発言いたしたいと思います。  まず第一に、環境アセスメント法は、ただ公害の未然防止、自然環境保全にとどまらず、昨今問題になっております公共事業あり方にも大いに関係する法律だと私は理解しております。  私が最初に環境庁の仕事で十七、八年前アメリカに渡ったとき、ジャクソンという上院議員が議員立法で国家環境政策法、NEPAというのをつくったのですけれども、そのときのジャクソンの議員立法における趣旨は、政府政策形成の高いレベルに環境問題から光を当てることによって政策の実効性、透明性を高める、しかも、その過程に市民参加を導入する、その背後にあるものは情報公開であるというふうに言っていました。それは、公害問題、自然環境保全をはるかに超える視点であります。  それで言いますと、まず一つ目の、代替案の明確化。  森嶌先生環境庁が努力されました答申を見ますと、複数案という形で代替案という話が入っております。この代替案がなければアセスとは言えないというのが私どもの立場であります。  アメリカの法律に限らず、カナダ、オランダ、すべて先進国の先行する法律は、この代替案を必ず分析する、一つの案ではなく、複数の案を環境面から見て比較する、それによって、その計画事業の妥当性、必要性が検証されるという立場であります。実際、答申にもこれに近い表現がございました。  しかし、法案にはこれがございません。一条もしくは十四条、十四条というのはアセス準備書をつくる要件でありますが、そこに代替案の作成、分析というようなものを入れるべきだと私は思います。  次に、早期段階アセス。これは、先ほど私が申し上げました計画アセスメントがこれに相当するものであります。  個別の事業、例えば道路をつくる、橋をつくる、その場合の、早い段階という意味での早期段階が一点です。  もう一つは、今回の第一種、二種はわかりませんが、第一種はほとんどが個別事業であります。これに対しまして、例えば新全総、全国総合開発計画でありますとか、土地利用計画でありますとか、電源開発基本計画でありますとか、エネルギー長期需給見通し、このような日本全体を計画する広域的な、総合的な上位計画、これについても諸外国はアセスメント対象にしております。環境配慮の対象にしております。これが含まれないと、例えば、ことしこの京都で開催されますCOP3、地球温暖化のような場合は、発電所は一応対象に入りましたけれども、個々の発電所を対象にしても、日本全体として炭酸ガスがどうなるのだということが実はチェックできません。  そういう意味で、早期の意味は二つ。個々の事業の早い段階、もう一つは、総合計画、広域計画、上位計画に対して環境配慮をすべきだというふうに提言申し上げます。  三つ目。昨今、動燃事故で問題になっておりますように、原子力関連施設、発電所以外の電源開発関連施設、これの放射能漏れでありますとか情報開示をめぐりますさまざまな問題が起こっております。  今回のアセスメント法を見ますと、実は、発電所は、当初、通産省等が激しく抵抗いたしまして、個別法で対応するということでありましたが、最終的に統一法に含まれました。しかし、今私が申し上げました、動燃が所管するような事業に関しましては入っておりません。今、国民のニーズといいますか、こういう原子力開発に対する信頼性の揺るぎ、これを改善する意味でも、発電所以外の電源開発関連事業を含めるべきだと私は思います。  四つ目です。第三者審査の場の設置。  よく、アワセメントという表現とは別に、今のアセスメントは、事業者が自分で試験問題をつくり、自分で解答し、自分で採点する、まあ自画自賛というと言い過ぎかもしれませんけれども、事業者自身が、すべてその流れに沿って自己採点するというシステムになっております。  例えば、アメリカもこれに近いシステムでありますが、カナダ、オランダその他の国では、第三者的な審査の場が設けられております。私は、この審査の場がやはり必要だ。つまり、動燃事故その他、例えば長良川を見ても、事業者、例えば建設省、科学技術庁が自分のところでそれを評価して、仮に外からいろいろな意見をもらったといたしましても、それは意見にすぎないということでは、なかなかちゃんとしたチェックができない。ですから、第三者的な審査の場を明確に設けるべきだというふうに思います。  具体的な提言といたしましては、環境庁長官が要求する案件、全部の案件ですと数が多くなりますので、数は年間幾つというふうになるかもしれませんが、比較的大規模もしくは重要な案件につきまして、中環審の中にアセス審査部会をつくり、森嶌先生がやっていらしたような、公開の場で審査を行っていただきたいと思います。これは、何条というよりは、追加になります。  五番目。事後調査規定の明確化。  例えば本四連絡架橋。実は、本四連絡橋ができたときに、私どもが事後調査をやってみました。例えば長良川、これも建設省が後でやりました。当初アセスを行って調査、予測、評価しても、実際にでき上がるのは、その五年後、十年後、二十年後になります。そのときにいろいろな状況が変わっている。予測したときのアワセメントもあるだろう。実際、環境問題が発生するのは、工事を行い、物ができたときです。使ったときです。  それで、見ますと、確かに十四条に、専門家が見ても本当にわかるかわからないぐらいの規定として、この事後調査に類するものがあります。しかし、これでは事後調査規定にはなっておりません。かつ、その事後調査した結果を公表するともなっておりません。  つまり、答申ではかなりの部分をこの事後調査に充てられていたと思いますが、法案の中では事後調査が非常に軽視されている。場合によっては事業者がやってもいいというような話になっております。やった結果が公表されるかどうか、これではわかりません。  ですから、事後調査という項をはっきり起こしていただくとともに、その公表を明確にすべきだと思います。アセスが単に調査、予測、評価のしっ放しであれば、これは公共事業の暴走をチェックすることはできないと思います。  六つ目。環境庁長官意見透明性の確保。二十三条等になります。  これにつきましては、今回のアセス法及び答申の、最終的な、政府部内といいますか行政の中での審査の担保。これは、第三者機関がありませんので、免許、許認可問わず、環境庁長官の審査意見が各所管庁に行くことが最終的な担保になると思います。  そういう観点から法案を見てみますと、環境庁の長官意見というのは、私も環境庁の仕事をもうずっと長いことやっていますからよく知っているのですが、長官意見というのは、こういうA4の紙で、半ページぐらいに、何々に配慮されたいということであります。紙半ぺらです。  実は、その背後に、例えば、道路であれば建設省と環境庁、港湾であれば運輸省と環境庁で、実務レベルで、例えば課長補佐、審査官、お互いが相当ちょうちょうはっし議論を行います。その中で、どういう保全対策をとらせるか、どういう計画変更、設計変更にしてもらうかという議論がなされるわけです。  それで、長官意見が今のように上澄みだけが表に出るのであれば、従来と変わりません。そこで、これは情報公開法ができないと難しいという議論もあるかもしれませんが、その審査過程を文書に残す。微に入り細にわたりではなくとも、何月何日に建設省と環境庁の担当者、審査官が会ってこういうことを議論したという添付資料をつける。それを法案でやれれば一番いいわけです。そういうものを義務づけ、将来、情報公開法ができたときに、それがだれでも見られる。これで、審査過程が明確になり、かつ、例えば私がいたときの役人が人事異動しても、その人の名前が残っていれば、その人はある意味でそこでのやりとりについていい加減なことはできない、責任が明確になる、アカウンタビリティーが保てるというふうに思います。できれば今回の法案の中に、あったとき、その都度、一枚でも結構ですから文書に残すと。  環境庁の担当者に聞いてみましたけれども、今まではほとんど文書に残していない。建設省にも聞きましたけれども、文書に残していない。お互い、口頭でのやりとり、電話でのやりとりだと。これでは、長官意見として出てくるものだけでは、その審査過程はおよそ国民の前にアカウンタブルなものとしては示せないと思います。  七つ目。許認可への配慮の担保(法的統制措置の不備)。  これは手続法としての環境影響評価法案の限界かもしれません。つまり、個別許認可、道路でありますとか発電所でありますとか、個別の事業許認可、免許にどこまでアセスの結果が法的統制措置を持つかという話であります。  これに関しましては、個別の法律、例えば都市計画法でありますとか、電気事業法でありますとか、そういう法律の方を一部改正することにより受け皿をつくるということが今後残されます。しかし、アセス法の方でも、それへの橋渡しをもう少し踏み込んでいただきたい。  それから、これは私の指摘ではなく、ある法学者の指摘なのですが、経済的あるいは公共的利益のもとに環境保全が配慮されない。逆に言いますと、これは三十三条の二項というところにあるのですが、事業実施による利益と環境保全をあわせて判断するという項目が入っています。これはひょっとしますと、中央環境審議会の答申にはもちろんないと思いますし、この法案づくりの段階で急に入ったものだと私は理解しております。  ここで言う「利益」というのは、経済的利益あるいは公共的利益ということと解すことになりますと、公共的利益がある公共事業は、環境保全上支障があるものであっても、場合によっては、総合的に判断して、公益が高ければ、これは主務大臣の判断ですけれども、ゴーにするということになりかねません。ですから、この一項はぜひ削除していただきたいと思います。  八つ目。法案と地方制度関係の明確化。  先ほど申し上げましたけれども、実は私は、十七年ぐらい前、計画アセスメントというのを環境庁の仕事でさんざんやりました。今やっと、東京都でありますとか、神奈川県でありますとか、川崎市でありますとか、条例をつくってアセスをやっていた自治体が、その計画アセスを新しい条例にしようとしております。従来のアセスの不備を改革するために、おとといですか、東京都計画アセスというものを一九九八年から行いたいと。要綱で動いて条例へとなっていましたから、私は、要綱では到底だめだ、当然条例でやるべきだと思いますが、多分公共団体が、そのような新しい、今の国の法案の中で抜け落ちているような視点を今回の法案ができるとともにつくり出すと思います。  それに対して、今回の法案を見てみますと、例えば六十条を見てみますと、「この法律規定に反しないものに限る。」となっています。この法律規定に反するというときに、この「規定」が、例えば、先ほど私が申し上げました計画アセスメント、代替案の分析でありますとか早期段階でありますとか、十分明記されておりません。ですから、それにないものを東京都が行う、神奈川県が条例化するときに、環境庁なり政府がその条例化の動きを抑制するようなことになることは、地方分権、行革が叫ばれる折、極めてゆゆしき問題になると思います。  したがいまして、地方公共団体が要綱ではなく条例として新しいアセスを、今までいろいろと課題があったものを直していく上で新しいアセス条例をつくることを、国は、積極的にそれを支援することはあっても、それを妨げるようなことはしてはいけない、そういう意味考えております。  私の、アセス法に対します具体的な修正なり附帯なり、まあ個別、具体の話は別にいたしまして、意見は大体以上であります。
  320. 佐藤謙一郎

    ○佐藤座長 どうもありがとうございました。  次に、河野昭一君にお願いいたします。
  321. 河野昭一

    河野昭一君 河野でございます。  本日は、陳述人の一人に加えていただきましたことを大変光栄に思っております。  私の専門は自然科学、特に生態学や生物多様性の研究に係る系統分類学が専門でございますので、ある意味では実質的に、今日の地球環境のさまざまなレベルで生じている問題の中で、とりわけ生態系やそこに共存している生物相に係る問題について、他の陳述人の方とは別の意味で直接的なかかわりを持っていると思われますので、許された時間の範囲内で具体的なことを交えて申し上げたいと思います。  まず、仕事柄、世界のいろいろな地域や日本国内を見ることが多いわけでありますが、ここ二十年来の地球環境変化というものは、私どもが当初考えていたよりも大変速い速度で変化しつつある。その中におきましても、とりわけ熱帯林の衰退の速さ、それから日本におきましては、これまで手がつけられていませんでした比較的身近なところにある自然の改変が非常に速い速度で進んでいる、このことが大変危惧されます。したがって、そういう視点考えましたときに、グローバルな環境変化はもとより、もう少し地域に根差した、地域的な環境変化実態についてもきめ細かい把握をしていくことが非常に重要になってきているのではないかというふうに考えられます。  まず、今回検討されておりますアセス法に関して、限られた時間の中で、ざっと拝見させていただきました中で、全体的に気づいたことを一、二最初に申し上げたいと思います。  私は法律家ではありませんので読み方が若干ずさんで正確さを欠いているかもしれませんが、その点はお許しいただくといたしまして、アセス法は、やはり手続法としての性格だけではもはやだめなのではないか。つまり、今ほど申し上げましたような状況の中で、実質的な拘束力を持った実体法的な性格を持たすことが非常に重要になってくるのではないかと思います。  これまでの環境影響評価をやってきました実施要綱や閣議アセスの中でも具体的な問題としては取り上げられてきているわけですが、そこで手続論だけで議論されがちであったことを、アセス法をこういう形で制定する中で、今ほど申しましたような実質的な拘束力をその中にどうやって盛り込んでいくのかということがやはり非常に大事になってくるのではないかと思います。  第二番目には、第四条の九項にもあるわけですが、判定基準を設定する、それで、この判定基準はすべて協議事項となっている、このところが私どもにとっては大変気がかりなところであります。  その基準をつくるための基準というのが一体どのような基礎に基づいて行われるのか、この部分が恣意的に行われるならば判定基準そのものは余り意味を持たないことになってしまうのではないか、したがって、そういう意味では従来の個別法の協議事項と全く変わらない取り扱いを受けてしまうのではないかということが一つ気がかりであります。  それから、今回のアセス法の中では、三条の一項にもありますように、国民の位置づけというものをある程度明記しているわけですが、国民も環境保全に努めなければいけないという抽象的な言い方で表現されているわけです。具体的にいろいろな問題が生じたとき、いかなる立場で、いかなる地域の問題について、どのように関与するのかということに対する目標というものが余り鮮明ではないような気がいたします。  それから、四番目には、これも前のお二方の指摘の中にもあったことですが、事業者、主務大臣、許認可権者以外の一体どういう立場の人間が最終的な判定に関与してくるのか。  これまでのいろいろな事例を少し振り返って考えるならば、やはり第三者機関として専門家から成る判定機関が必要なのではないか。これをもってきちっとアセスの結果のデータの検討公開、それから判定の結果の公開をもこの第三者機関の判定機関で行うということが、より実効あるものにしていくのではないか。  現在書かれている条文から見る限りにおきましては、先ほど冒頭でも申しましたように、手続法的な性格が強いために、現行の閣議アセス以上に踏み込んだ部分がどれだけ具体的にあるのか。確かに手続的には複雑になっている面が多々ありますが、その実体的存在理由が必ずしもすべての場合で透明になっていないのではないかといったようなことが総論的に気づかれることでございます。  次に、個別的な問題について少し触れたいと思います。  先ほどの指摘にもありましたように、対象事業の範囲がやや狭いのではないか。それから、評価方法とアセスの結果の公開についての透明性が必ずしも確保されていないのではないか。  具体的な事例の中で一、二申し上げさせていただきますと、一つは、林野行政にかかわる問題点と環境影響評価対象についてであります。  今回の新しい制度では大規模林道を対象にするということでありますが、広域基幹林道と大規模林道の違いは一体どこにあるのかということが必ずしもはっきりしていない。  従前から言われていることでありますが、大規模林道、広域基幹林道ともに、いわゆる道路法で言うところの道路に該当しないので、法的拘束力が不明瞭になっている。実際に、現在の運用は林道規程という通達だけであって、そういう意味では極めて不備が多いので、今後は、やはり林道法といったようなきちっとした法の制定が必要になってくるのではないか。  そういう観点から考えたときに、大規模林道も広域林道も、現実に起きている各地域における自然破壊の規模であるとか、それから誘発されている環境問題を考えた場合には、やはり同格アセス対象に含められるべきものではないかというふうに私は考えます。  具体的な事例を一つ、二つ申し上げますと、沖縄の山原の広域基幹林道でありますが、これはイタジイの原生林を貫くような形で建設が進められておりまして、ノグチゲラ、ヤンバルクイナ、ヤンバルテナガコガネなどのいわゆる山原地域の固有種が生息する極めて原生的な自然に富んだ場所であります。現在の途中段階におきましても、道路建設に伴って土砂の流亡が至るところで引き起こされておって、沖縄本島周辺のサンゴを含む海岸の生物相は壊滅状態に近いところまで追い込まれているという状態であります。  それから、第二番目に、御当地の京都府で現在進行中の丹波広域基幹林道でありますが、これは民有林地帯を通す林道計画でありまして、尾根筋には極めて原生状態に近い植生が随所に残存しており、また、クマタカ等の猛禽類の生息、営巣が確認されているところであります。  これにつきましても、NGO等の指摘があって、京都府は荒巻知事さんを先頭に全ルートの見直しアセスを過去二年間かけて行っておりまして、結果的にルートの大幅な変更を行うのが妥当であるという結論に達しております。これは一つの事例でありまして、結局、広域基幹林道の場合も、こうして地域の実情に基づいてアセスのやり直しをしてみるとやはり問題が非常に多いということで、当初の計画は変更を余儀なくされているという事実があります。  こういった点にかんがみて、林道問題は、大規模林道、広域基幹林道という言い方をされていますが、規模に関してはほとんど同じレベルであるというふうに我々は理解しておりまして、その影響に関してはやはり同等に評価をされるべきではないかというふうに考えております。  もう一つは、林道をなぜつくるかという問題について、言ってみれば林野庁の主張がやや不透明なのですね。  これまで、いわゆる拡大造林事業との関係において林道の必要性が主張されてきているわけでありますが、山形、秋田を含めまして、東北地方の海抜標高一千メーター以上のところにあります原生的な植生を持っている森林の保安林機能が道路建設によって著しく損なわれているという事実があります。  したがって、実際に造林事業との関係で林道が必要であるといたしましても、その場所の立地条件の適地性、それから、そこで一体何を造林事業対象にするかということの厳密な事前の評価というものが必要になってくるのではないか。  山原の場合でも、イタジイを切りましてもその後に植栽する適当な樹木がないのであります。これは、気候条件等を考えましても、本土におきまして行っている杉、ヒノキの植林事業とは違った意味で難しい技術的な問題を含んでいるのでありまして、ではなぜそこに林道を通すかということの意味も不鮮明になってくるといったような問題があります。  それから、もう一つは、造林地において現在起きている事態は極めてゆゆしきことでありまして、杉、ヒノキの単層林造林が進められてくる中で、林業労務者の高齢化とか数の減少等がありまして、実際に間伐材の処理とか下枝払いが著しく滞っている。その中で、せん孔虫の蔓延が既に発生している兆候がある。つまり、林野行政の中で造林事業と林道事業というのは一体化しているべきものでありますが、その辺の見きわめを国のレベルできちっとしなければいけないのではないか。そのためには、全国的なレベルでのアセスをきちっとした形でやっていくということが今緊急に必要であろうというふうに考えられます。  その次に、前のお二方の指摘にもありましたけれども、いわゆるアセス対象になっている地域の中には、今申しましたような国有林であるとか国立公園のような広い範囲の地域も入ってくるわけですが、実際に、整備事業という名のもとで、県定公園であるとか都市公園の、レベルの小さな、いわゆる都市近郊の身近な自然に対するいろいろな整備事業が着手されております。その中には二十ヘクタールから三十ヘクタール以下という比較的小面積の地域対象に含まれておりますが、これを取り扱うことに関しましては、ややもすると、整備事業であるので環境影響評価は必要ないという画一的な取り扱いがなされている。  ところが、地域的に見ますと、局地的に非常に重要な自然環境が、また生物相がその中に残されているという事実がありまして、この辺につきましても、やはりもう少し違った視点から見直しをしていくことが重要になってくるのではないかというふうに考えられます。  次に、環境庁が行っている事業にかかわる問題の中で一、二指摘をしておきたいと思います。  一つは、国立公園、特に山岳国立公園の利用と開発に関する問題であります。  今、日本の山岳国立公園というのは、大雪山系、それから本州では東北にある数カ所の山岳国立公園や北アルプスの山岳国立公園等が代表的なものでありますが、近年、利用者数の増加の中でさまざまな問題が引き起こされてきております。この段階に到達いたしますと、総量規制ということを少し真剣に考える必要があるのではないか。つまり、高山環境のように比較的厳しい環境、弱い環境条件にあるところに百万人を超える人間が侵入したときに引き起こされるさまざまな環境問題に関して、きちっとした環境影響評価をするということが今早急に必要であるというふうに考えられます。  特に、国の特別天然記念物になっております北アルプス、中央アルプスのライチョウの生息環境は、少なくとも現段階で判断する限りにおいては極めて悪化の一途をたどっており、速やかな対応が必要になっていると考えられます。  もう一点、環境庁の所管の事業の中で申し上げたいことは、緑のダイヤモンド計画であります。  これは施設整備が目的になっているということでありますが、その施設整備の中身というものは、旧態依然とした道路の整備や施設をつくるということの範囲内で処理されている。現実にその立地条件の中で適切な計画を走らせる必要があり、そのためには、この種の規模の事業であってもきちっとした環境アセスが必要になってくるのではないかというふうに判断されます。  それから、三番目に、民間企業の経済活動に伴うアセスの問題点を少し取り上げておきたいと思います。  どちらかと申しますと、ガスであるとか電力事業のように公益性の高い事業に関しましては、これまでもある程度環境影響評価が義務づけられてきたという面がありますが、こうした事業は、低湿地であるとか河川の河口であるとか干潟であるとか、比較的身近なところに位置した環境が利用されることが多い。  したがって、冒頭でも申しましたように、今日、日本列島で一番速い速度で改変が進んでいるのは、今申しましたような、比較的私どもの身近なところにある自然環境であります。ここは原生的自然ではありません。二次的自然ではありますが、その二次的自然の中に、極めて重要な、生物多様性の基礎になるさまざまな生物群の生育、生息環境があるわけであります。  農林水産省は、最近、農業生態系を含めた生物多様性の維持ということに関しても注意を喚起する必要があるというふうに方向を向けておられますが、まさにこういった視点は、今ほど申しましたような低湿地の自然や隣接した環境と深いかかわりがあり、そういう意味でも十二分にこれからアセス対象にしていかなければいけない地域であろうかと思います。  時間がなくなりましたので、最後に一言だけ言って終わりにしたいと思います。  私が申し上げたいのは、やはりこの段階では、先ほど来事後調査という言い方で指摘がされておりますが、もう少し長期にわたった環境影響評価、モニタリングの体制を確立することが極めて重要であろうかと思います。  このモニタリングに関しましては、環境庁だけでなくて、農林水産省、建設省を含めまして、関連した所管の省庁が一体のもとにモニタリングのシステムを全国レベルで確立する、これが非常に重要になってくる。アセス法の見直しは十年後にやるということですが、これでは遅過ぎるのですね。つまり、三年、五年の間に起きるドラスチックな環境変化考えたときに、それを的確に把握するためには、やはりモニタリングすることによって一体何が起きているかということを正確に把握することが必要になってくるのでありまして、この点がこれからの新しい方向を目指す上で一つの重要なポイントであろうかと思います。  そのほかまだまだ問題点はあろうかと思いますが、時間も来ましたので、私の陳述は以上で終わります。  ありがとうございました。
  322. 佐藤謙一郎

    ○佐藤座長 どうもありがとうございました。  次に、村松昭夫君にお願いいたします。
  323. 村松昭夫

    ○村松昭夫君 弁護士の村松でございます。  私は、全国公害弁護団連絡会議、いわゆる公害弁連の事務局長をしております。この公害弁連は、結成以来ことしで二十五年を迎えますが、古くは四大公害裁判を初め、大阪空港公害裁判や昨年解決を見ました水俣病裁判、さらには全国の大気汚染公害裁判など多くの公害裁判に取り組んでまいりました。  私自身も、大阪西淀川区の大気汚染公害裁判の原告弁護団の一人であります。公害患者さんたちは、こうした公害裁判に、公害を発生させた企業や国などの公害責任を明確にしたいという思いとともに、子供たちや孫たちに二度と公害病の苦しみを味わわせたくないという強い思いで、長期間にわたって病苦を押して公害裁判に取り組んできました。私が関与しております西淀川公害裁判の患者さんたちは、「手渡したいのは青い空」という言葉に、裁判にかけた熱い思いを託しております。  こうしたことから、今回の環境アセスメント法案に対しては、全国の公害患者や弁護団は、これに大いに注目をし、同時に大きな期待も抱いております。  また、近時の公害環境をめぐる状況は、自動車排ガスを原因とする大気汚染などのいわゆる従来からの公害問題がいまだ十分な解決を見ていないということに加えて、自然破壊の進行や地球温暖化問題など地球規模での環境問題も極めて緊急な課題として早期に解決が求められているという状況ではないかと思います。  この自然保護や地球温暖化防止などの課題は、私たちの世代に関係していることはもちろん当然ではございますが、同時にそれは、私たちの次の世代あるいはその次の世代、いわゆる二十一世紀を生きる世代に極めて密接に関連している課題であろうかと思います。したがって、環境アセス法案を本当に環境保全に役立つ実効性あるものにするかどうかということは、現在を生きる私たちの世代の次の世代に対する重要な責務ともなっているのではないかというように思います。  さらに、私は、今回の環境アセスメント法案に当たって重要なのは、日本の公害経験を生かすということだろうというように思います。  御存じのように、日本では、公害列島と言われたように、高度経済成長時にさまざまな激甚な公害が発生をし、国や地方自治体、住民、企業などがその解決に向けたさまざまな努力を行い、一定の成果を積み上げてきたという経験を持っております。こうした公害経験も今回の法案には十分に反映させるべきであるというように思います。  私は、こういう観点から、時間の許す限り、透明で公正な実効性ある環境アセスメント制度を目指して、一定の意見を述べさせていただきたいと思います。  今回の法案は、初めて環境アセスメント手続が法制度として確立されるというばかりでなくて、従来のアセス制度と比較しましても、スクリーニング手続やスコーピング手続などが導入されるなど、内容面でも一定の評価をすべきものとなっていることは事実であります。しかし、現時点で本当に求められている環境アセス制度という点から見ますれば、残念ながら、多くの点でまだ不十分さを残していると言わざるを得ないというように思います。  以下、問題点と要望を述べたいと思います。  第一点目は、環境アセスメント制度の理念だとか目的が法文上明らかにされていないという問題であります。  このアセスメント法案は、環境基本法の三条ないし五条の理念を具体化したものとして制定されるものでありますが、同時に、中央環境審議会も、新たな制度が備えるべき基本原則として、「環境影響をできる限り回避し低減するという観点」を強調しております。私は、こうしたアセスメント制度の理念や目的を法文上明確にしておくということは、今後のこの制度の解釈や運用に当たって極めて重要であるというように考えます。この点をまずぜひ明らかにしていただきたいというふうに思います。  二つ目は、アセスメント手続への住民参加の機会が不十分ではないかという点であります。  住民参加の重要性に関しましては、住民自身が良好な環境を享受する主体であるというだけでなくて、住民は地域環境や特性についての貴重な情報を有しており、アセスメントをより実効性あるものにしていく上で、住民からこうした有益な情報や経験、知識を得るということは極めて重要であります。また、住民参加の十分な保障は、アセスメント制度透明性、公正さを確保するという面からも不可欠の要素であろうかというように思います。  さらに、先ほど言いましたように、日本では高度経済成長期に深刻な公害が発生をし、多くの犠牲を払いながらこれの克服に努力してきた経験を持っております。この公害発生とその克服の経験の中で、住民運動の果たした役割は極めて大きいものがありました。最近、公害健康被害補償予防協会によって「日本の大気汚染経験」という本が刊行されましたが、この本の中でも、産業公害による大気汚染克服の要因として住民運動が果たした役割が強調され、住民パワーが対策推進の大きな原動力になったことが述べられております。ちなみにこの本には、橋本首相や環境庁長官も、特別寄稿として、この本を高く評価する一文を寄せられております。こうした日本の公害克服の経験こそ今度のアセスメント法案に生かされるべきであるというように思います。  いずれにしましても、透明で公正な実効性あるアセスメント制度の確立のためには、住民に参加の機会を十分に保障することが不可欠であろうというふうに考えております。  ところが、残念ながら、今回の法案を見ますと、まず、住民の位置づけが法文上明らかでないというだけでなく、具体的に見ても、住民が参加できる機会というのは、スコーピング手続評価書の作成段階のみであります。さらに、方法書や準備書の公告縦覧期間も短くて、住民に十分な検討の時間的余裕が与えられているかというと、これも疑問であります。  私は、アセスメント手続の開始の段階から最終の評価、さらには先ほどから出ております事後のフォローアップ手続に至るまで、いつでも住民が参加できる手続ということを規定することが必要であろうかというように思います。  具体的に、この点について六点提案させてもらいます。  一点目は、先ほど言いました、住民の位置づけを法文上明記するということであります。  二点目は、スクリーニング手続でも住民が意見提出ができるようにすること。  三番目は、スコーピング手続でも説明会を義務づけること。  四番目は、最終の評価書の審査にも住民が参加できるようにすること。  そして五番目が、公告縦覧期間について、住民が意見表明ができる十分な期間を保障すること。  そして最後に、許認可決定に対して住民が不服申し立てを行うことができるという規定を設けること。  少なくともこの六つは、住民参加の保障という点では重要であろうというように思います。  次に、いわゆる上位計画政策へのアセスメント手続もぜひ導入すべきであろうと考えます。この点については、中央環境審議会の答申でも触れられております。  例えば、道路建設の場合を例にとって考えてみたいと思いますが、少なくとも道路整備五カ年計画へのアセスメント手続の導入は不可欠であろうと思います。公害環境に大きな影響を与える幹線道路や高速道路は、道路整備五カ年計画によって事実上全体的な計画が決定されているというのが現状であります。こうした道路整備計画環境にどのような影響を与えるのか、仮に一定の交通機関の整備が必要であるとしても、環境保全の面から考えて、それは道路でよいのか、それとも鉄道など別の交通機関の方がよいのかなどを検討することが今重要になっているのではないかというように思います。  地球温暖化問題におけるCO2削減対策を考えましても、自動車交通量の削減の課題は重要な柱になっております。五カ年計画どおり道路が建設されれば、自動車交通量はどうなるのか、NOxやCO2の排出はどうなるのか、環境保全していくためにはどのような交通手段の整備がよいのかなどを検討するためには、少なくとも道路整備五カ年計画アセスメント手続がどうしても必要です。全体的な道路建設が決まった後、幾ら個別の道路の建設段階アセス手続を行ったとしても、先ほど言いましたような検討は事実上不可能になってしまうのではないかというように思っております。  今言いました上位計画政策アセスという点については、他の分野についても全く同様であろうかというように思います。  関連して申し上げますと、やはりアセスメント評価対象に、あるいは評価の事項に、当該事業社会的経済的必要性、相当性ということも審査の対象に入れるべきだというように考えております。この点は、長良川河口堰や中海干拓、諫早湾の干拓など、現在、事業そのものの必要性ということに大きな疑問が投げかけられている事業全国に多数あることを考えれば、この必要性は大きいと思います。  同時に、こうしたアセス手続に代替案の提示、検討を義務づけることも必要であることは言うまでもありません。そして、大事なことは、この代替案の中には、何もしないという代替案も検討対象に含めるということがやはり必要かというように思います。  時間の関係もありますので、自治体の問題あるいは第三者機関の問題は飛ばしまして、最後に、発電所アセスの問題について一言触れさせていただきたいというふうに思います。  確かに、今回のアセスメント法案の中で発電所も対象に含めるということは述べてはありますが、同時に、電気事業法の改正という問題も明らかになっております。この発電所アセスが、本法案によるアセス手続を緩和しているというわけではないことは法文を見ればわかりますが、ではなぜ、中央環境審議会の統一的なアセスメント制度の答申にもかかわらず、独自にアセス手続をつくらなきゃならないのかというのはやはり疑問です。  特に、発電所というのは、現在でもNOxの大排出源でありますし、CO2の排出で見ましても全国の五%程度を占めておろうかと思います。また、今後も、発電所の建設問題というのは環境保全にとって極めて大きな脅威になるものであります。  したがって、私は、本来ならば、発電所の建設問題は、今回の環境アセスメント手続が当然に取り込まなければならない課題であったはずだというように思います。その意味では、発電所の建設について独自のアセス手続をつくるならば、今回新たにアセスメント手続を法制化する意義の少なくない部分が失われかねない危険があろうかというように思います。  内容的に見ましても、発電所アセス問題は、手続の各段階に主務官庁であります通産省が主要な関与をすることになっており、住民意見都道府県知事意見も直接事業者に提出できない仕組みにどうもなっているようであります。  先ほど言いましたように、透明、公正なアセスメントという視点から見れば、当該事業の主務官庁ではなく、住民や第三者機関の直接的な関与の機会をふやすことこそが今重要ではないか。そういう面から見ますと、発電所アセスはこうした要請に逆行しているのではないかという疑問を持たざるを得ません。透明、公正な統一的なアセスメントのためには、独自の発電所アセス手続をつくることはやはり避けるべきであろう、この法案の中の手続で発電所のアセスも進められるべきであろうというふうに考えております。  以上で、私からの意見表明にさせていただきます。
  324. 佐藤謙一郎

    ○佐藤座長 どうもありがとうございました。  次に、島津康男君にお願いいたします。
  325. 島津康男

    ○島津康男君 島津でございます。  既にほかの各陳述人から重要な問題は指摘されておりますので、共通すると申しますか重複するところはなるべく避ける、おっしゃったことは皆大事なことであるという前提でございます。  なお、封筒の中に三点資料が入っておりますが、これを利用しながら、特に「環境影響評価法案に対する意見」と題しましたものを基本に陳述を申し上げます。  私は、他の陳述人のように、調査をビジネスとしてやっている者でもなければ、制度としての法学的な専門家でもございません。もともと理学部出身でございますけれども、環境影響評価の専門家だと自分では思っております。  二十五年前に日本に導入されたアセス以前、一九六〇年代後半から、私が住んでおります矢作川の流域で、事業者と住民のパートナーシップによるアセスという、社会システムとしてのアセスの開発普及に携わり、その後、国や自治体の調査、審査に当たっております。また、特にアジアの、中国、台湾、韓国、マレーシアのアセスの指導を長く続けてきた者であります。また、現在、大阪において「市民からの環境アセスメント」という公開講座を開いております。これらの経験をもとに意見を申し上げたいと思いますが、むしろ、これからどうすべきだということの前提として、委員先生方に御理解いただきたいのは、今あるのはどこがおかしいのかということを具体的に申したいわけであります。  二つの点を中心に申し上げます。  先ほどから出ておりますように、アワスメントだとか、あるいは免罪符だとか、形骸化しているということなのですけれども、一体それは、実態はどこにあって、どこをどう変えればいいのか。それからもう一つは、何か環境基準をクリアすればいいというものになっているというのは、どこから来て、ではどこを変えればいいのか。その他、先ほどから出ております、アセスの早期段階の問題、住民参加の問題、国と地方の関連については、既に各陳述人がおっしゃっておりますので、時間があればということにいたします。  実は、なぜアセスメントがアワスメントだと悪口を言われているかと申しますというと、アセス準備書なり報告書が、ほとんどというか全部が、影響はありませんということになっているわけであります。そんなはずはないのでありますけれども、すべての場合に、影響なしと。技術指針にも影響なしと書きなさいとは書いていないのにもかかわらず、どうしてそうなってしまうのかということであります。  例えば、その例として、どうも影響がないとは言えないなあと思うときでも、「慎重に環境保全対策を行うから問題はない」と書いてあります。つまり、内容が何もない。言葉だけで逃げているわけであります。「慎重」というのは、どういう内容なのかというのは書いていないのですね。  それから、私、悪口を言うと極端な悪口になるのですけれども、事業地域の中で生物は消滅するかもしれない、だけれども周りにも似たようなものがいるから問題はないと書いてあります。事業予定地の周りは事業者の土地ではありません。そこが保全されるという担保はどこにあるのですか。そういう形式的な言葉で済ますというのがまかり通っている。  これは、今ある指導要綱なり条例なりが悪いというよりも、それを運用する仕方に問題があるというところが一つあります。だから、これは、新しく法律をつくった場合でも、これからできてくる政令だとか、あるいは各省の省令、技術指針、そのところに大きな問題がある、大事なことが残っているということであります。  これまでは、事前に、小さい事業でも、地方公共団体レベル事業でも一年ぐらい四季折々の調査をしなくちゃいけない、大きなものになると何年も調査する、その結果が準備書という形で出てくるわけです。後で何か調査が不十分だということがわかっても、手戻りが非常にしにくいわけなのですね。それで、生煮えのまますっといってしまう。  それを防ぐという意味で、先ほどから出ておりますスクリーニングだとかスコーピングだとか、アセスをする前に、こんなアセスをしますよということをちゃんとみんなに見せるということは有効だと私は考えます。これは既に一部の地方公共団体で条例、指導要綱で長年にわたって実施済みで、有効なことが証明されているわけであります。  さらに、先ほどの、事後調査といいますかフォローアップという出口もちゃんと固めるということが今回の法案の特徴だということでありますけれども、例えば、こういう問題があります。  ゴルフ場、これは国のアセス対象ではございません。地方公共団体の、都道府県アセスの条例なり要綱の対象であります。今は大分数も減りましたけれども、一時はもう日本じゅうゴルフ場をつくっていた。  アセスを行い、かつそれが通って営業に至ったゴルフ場について、予測が当たったかというのを調べた例があります。特に排水の水質の予測は当たったのか。残念ながら、当たったところはありません。なぜか。これは予測の技術がお粗末だというせいじゃないのです。なぜかと申しますと、アセスをするときに、こういうコースレイアウトでやりますよという青写真が出ておりまして、それに基づいて、ここに降った水はどこへ行く、どこの池に入るという予測をしているわけです。ところが、営業しているコースはそれとは似ても似つかないものになっている。地形が変わっているのですから、水の行き先が変わる。水質が予測のとおりにならないのは当たり前。つまり、これも全く形式で、アセスのときには、まあこういう計画を出せばいいやということになっていて、それが実際の計画実施のときに変わってしまっているわけなのですね。  ですから、先ほど青山陳述人も、例えば、早期にアセスをするということには二つ意味があって、一つは、もっと計画の早い段階からしなさいということがあるとおっしゃいましたが、今のゴルフ場の例を挙げると、もっと早期に実施時期を上げたら、計画の不確実さが明らかになるだけで、予測がますますぱあっとなってしまって、当たらないどころか意味がなくなってくる。だから、時期を早めればいいというものではないわけです。そのように、計画がこれでいくということをちゃんと担保する、そういう性格で縛るというかやっていかないと、形骸化してだめになってしまうわけですね。  次に、これも先ほどの陳述人の例でありましたが、アセス環境基準クリアでいいのかという問題であります。  現在、公害項目と自然環境項目とに限定されております。しかも、公害関係項目の比重が今の手続では高いと思われます。それはある意味では仕方のないことで、二十五年前にアセスが導入されたときは、水俣病だとか四日市ぜんそくだとか、いわゆる産業公害が顕在化してきたときであります。したがって、公害を後で規制するよりも事前に防止するという姿勢、これが二十五年前、一九七二年の日本における閣議了解アセスの導入になったわけです。ですから、公害防止が重視されているということはやむを得なかったかと思います。  しかし、現在のアセスというのは、何ppm以下であればいいとかというふうに、ppmであらわされる数値がひとり歩きすると申しますか、とにかくそういう予測をして、環境基準をクリアしているかどうかということを、一生懸命結論を出すわけであります。  一方、自然環境については、それに対して非常に見劣りがする。それは、自然の価値はppmではあらわせないという、逃げ口上というか、特徴があるわけです。しかし、よく考えてみますと、天然記念物があるかないか、イエスかノーかというのは一種の基準でありまして、数値であらわされないとしても、基準をクリアしているかどうかのレベルにあることは間違いないわけであります。  それで、どうしてそういうことになってきたかというと、先ほども出てまいりましたが、なぜその場所が選ばれたかというのは、自然環境アセスには非常に重大な意味を持っているわけです。この狭い日本で何か事業をすれば、必ずどこか木を切ってみたり干潟を埋めたりするわけでして、事業のスタートというのは自然を変えるということにつながっているわけですから、自然環境に関するアセスというのは、今までの公害に対する考え方と同じように、もっともっと持ち上げてこなくちゃいけない。これからのアセス法は、もちろんこれはこの後の技術指針の問題かもしれませんけれども、そのところを避けて通れない踏み込みをしている。  例えば、先ほどから出ております地球環境。五年前の地球サミット、リオ宣言、アジェンダ21、これは地球環境に関する行動計画であります。その中に、「持続可能な開発」というのがアジェンダ21の行動計画の目標の一つに上がっているわけです。これに基づいて日本は環境基本法を制定しております。そして、環境基本法の第十四条で、公害、貴重な生物の保護だけでなく、生物の多様性の確保、人と自然との豊かな触れ合いなどを環境政策の新たな課題とうたっておる。  今回の法案の第十一条はその第十四条を引いているわけですから、公害、天然記念物の保護だけじゃない、生物の多様性を確保する、人と自然との豊かな触れ合い、こういったようなものが当然アセスに入ってこなくてはいけない。つまり、環境基準をクリアするというだけではなくて、開発可能かという評価基準があってもいいじゃないかということであります。  「持続可能な開発」とは何だと議論をし出すと切りがありませんけれども、これは、たとえ天然記念物でなくても、後の世代のために、今あるものをどうやって保ち、よりよくしていくかということでありますから、基準の問題じゃないわけなのですね。  今、皆さんの資料の中に、ちょっと御愛きょうのためにこんな変な地図が入っております。私の住んでおります名古屋で、中部新空港という、伊勢湾に空港をつくる計画があります。二十四時間営業をしなくちゃいけない、騒音の問題があるというので、関西空港と同じように海上空港になっております。ごらんになりにくいかと思いますけれども、感じは関西空港に似ています。  それで、そこに何か黒い筋がいっぱいあると思いますけれども、これは、下の方にウの山というのがありまして、そこに一万羽のカワウが住んでおりまして、毎日出勤してえさをとりに行くのにどこを通っていくかというルートであります。これはレーダーで追跡したものです。ごらんのように、空港の周辺に集中しております。ウが来るということは魚がいるということなのですから、これはいい漁場であるということは間違いないわけであります。  関西空港の場合には、同じく空港島周辺及び空港島になるところに対して、漁業権の補償という形で金銭で解決しております。「持続可能な開発」という評価基準を立てたら、それは通らなくなるわけですね。なぜなら、魚や鳥にお金を上げても、要らぬと言います。魚がいることが望ましく、鳥は魚がいないと困るというわけであります。これは、単にイエスかノーかでは済まないわけですね。どのようにして今の自然を維持するかという対策を、こうであるということを宣言することまでがアセスの中身に入ってくるという点で、新しい問題ではないかということであります。  あと、いろいろなことがあるかと思いますけれども、最後に、国と地方との関係について、経験というか、一つ具体的に申し上げます。  数年前に、第二名神・東名のアセスというのが行われました。これは、兵庫県から東京まで、沿線の各都道府県が一斉にアセス対象地区を抱えたというときであります。それは、高速道路でありますから、もちろん国の事業でありますので、現在の手続に従って行われ、なおかつ各地方公共団体は、それぞれの持っている環境に対する熱意あるいは力をどのように発揮して、自分の地方の環境に対してどういうことをするかというコンクールになってしまったわけなのですね。それで、非常に差が出てくるわけです。  この、差が出るというのは、例えば、国が法律をつくったら地方の方はまた何か二重手間になるとかして混乱を招く、あるいは、地方だったらもっと小さい事業アセスをかけるのだとしますと、小さな事業が国の大きな事業よりも厳しいアセスなんかつくったら逆転じゃないか、そういう意見がいろいろあります。これは混乱と見るのではなくて、地方の実力をあらわすところだと見ていただきたいというのが私の願いなのです。国は最低限必要なところをカバーしながら、環境を守りたいという地方の思いはちゃんと尊重できるように、国の制度地方公共団体の条例を分けていただきたい。  以上でございます。
  326. 佐藤謙一郎

    ○佐藤座長 どうもありがとうございました。  以上で意見陳述者の皆様からの御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  327. 佐藤謙一郎

    ○佐藤座長 これより委員からの質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。持永和見君。
  328. 持永和見

    持永委員 自由民主党の持永でございます。  意見陳述人の先生方には、本日は、それぞれお忙しい中だと思いますが、私どもとして大変大事な法案だというふうに理解し、審議をしております環境影響評価法案につきまして、この地にお出向きをいただき、貴重な御意見をそれぞれお述べいただいたところでありまして、心から厚く感謝を申し上げたいと思います。  時間も大変限られておりますので、二、三点お伺いをさせていただきたいと思います。  まず、中央環境審議会の部会長をおやりいただきました森嶌先生にお伺いを申し上げたいと思います。  先ほど来、先生方からのいろいろな御意見の中で、いわゆる代替案、答申書の中では複数案と言われておりますが、この複数案につきましては、比較検討する方法を導入することが適当であるというような御提言がされておるところであります。このことについて、法案審議の段階では、環境庁の方からは、準備書環境保全対策の検討経過を記載させるのだという説明がなされておりますが、この答申で言っておられる複数案の意味する内容につきまして、審議会における議論あるいはその位置づけにつきまして、森嶌先生の御見解をお伺い申し上げたいと思います。
  329. 森嶌昭夫

    ○森嶌昭夫君 お答えさせていただきます。  代替案ということですが、部会におきましてもこの議論は相当長時間にわたってなされております。  一つは、代替案というものはいかなるものであるか。例えば代替地ということもあるでしょうし、先ほど村松さんがお述べになったように、何もしないという代替案もあるでしょうけれども、多くの場合には環境保全の方法であるとか事業の方法であるとかさまざまなものがあり得るということから、一概に、代替案ということでこれを法律上の問題として取り上げる場合には、なかなか定義がしにくいのではないか。  そして、特に日本の法律は余り細かく細部にわたって書かない。私は法律家として残念なことと思いますけれども、一般にそうであります。その意味で、そうした内容を例えば指針なりなんなりで細かく明らかにしていくということにする。ここに書かれているこの書き方がいいのか悪いのか私はにわかに判断できませんけれども、ただ、表現はともかくとしまして、詳細に書き込むということは、今の日本の法律技術、あるいは法律の全体の技術的な書き方としては難しいのではないか。  しかし、それは非常に重要なことでありますので、省令になるのか、あるいは指針という形でやるのか、あるいは環境庁長官基本的事項ということになるのか、それはともかくとしまして、私は、運用段階ではそれをより詳細に明らかにして、そして準備書等においてその記載をさせる、あるいは比較した結果を出させるということが適切ではないかというふうに思っております。
  330. 持永和見

    持永委員 ありがとうございました。  それから、もう一点、先ほど来各先生方からも御意見が出されておりますし、また我々の国会の委員会における審議の過程でもかなり各委員から出された問題の一つとして、地方公共団体制度との役割分担の問題があるかと思います。  先進的に地方公共団体が条例で規定をする、あるいは条例でアセス実施しようとしていることを、このアセス法案ができたことによってそれを阻害してしまうのではないかというような御懸念の意見も出されておりますが、法案対象事業について、国の制度と地方の制度をどういうふうに運用し適用していくか、お互いの関係をどうしていくか、こういった問題は、当然のことながら中央環境審議会においても、あるいは先生の部会においてもいろいろと御議論のあったことではないかと思います。その辺の経過を、部会長でありました森嶌先生の方からお伺いを申し上げたいと思います。
  331. 森嶌昭夫

    ○森嶌昭夫君 先ほど島津先生お話にもありましたように、国の法律がなかったために各地方公共団体が、競ってと申しましょうか、環境アセスメントの条例ないしは要綱を今までつくってこられた。そして、それは、各地方公共団体においてそれぞれ異なった特色を持ったものも存在することは確かでございます。しかし、法律をつくる段階で二重の手間を重ねるということは望ましくないことでありますので、むしろ、他の、地方公共団体が今までやってこられたことを引っ張れるような内容法律をつくるということが大事であります。  先ほど島津先生も御指摘になられましたように、国の法律の方がいいかげんで、そして小さなものをやる地方自治体の方が厳しいというのは、これは本来おかしいことでありますので、私が先生方にぜひお願いしたいのは、法律段階からさらにこれを省令とか指針とかいう形で運用に移していくわけですけれども、その際に、政府において、この法律の趣旨、あるいは私どもが提案をいたしました答申の趣旨をきちっと守った運用規則、省令等をつくっていただきたいということでございます。  地方自治体が、従来、例えば審査というようなことをやっているところもございますけれども、これを地方自治体における意見という形で事業者に、あるいはその後に主務官庁に対して提出をする、そのための具体的な審査を条例で行われるということについては、当然それを認めているわけでありますから、従来のプラクティスをお守りになるということは差し支えないのではないか。  ただ、青山さんだと思いましたけれども、先ほどおっしゃったように、その際に法律に違反してはいけないということが書いてございますけれども、これは、例えば意見を述べる期間等が国の法律によって規定されている中でやることを期待しているわけでありまして、ある県に行ったら意見を述べる期間が長くなって、ある県では短くて済むというのは、やはり法律としてはおかしいのではないか。そこで、先ほど申し上げましたように、意見を述べる期間等について、各地方自治体が従来やってきたプラクティスが妨げられないような、そういう期間政令において定める、それをきっちりと政府においてお考えいただきたいというふうに思っております。
  332. 持永和見

    持永委員 ありがとうございました。  それから、もう一点、これは先ほど来、たしか青山先生もそういう御意見でございましたし、河野先生もそういう御意見じゃなかったかと思いますが、評価基準の評価の問題について、環境庁だけではなくて、第三者機関を設置してそこで審査をすべきだ、あるいは判定をすべきだという御意見がありました。  先ほどの意見陳述の中で、森嶌先生お話では、たしか、評価基準については法律にはきちんとしたものがない、法律で書くものではなくて、むしろ政省令の中でそういうものはきちんと書かれるべきだというようなお話がありました。この環境影響評価自体が非常に手続的な規定でありますから、その手続的な規定との兼ね合いもあるかと思いますが、この第三者機関、環境庁とは別の第三者機関を設けることについて御意見をお伺いいたしたいと思います。  また、第三者機関を設けるべきだという御意見をいただきました先生方に、どういう形での第三者機関がふさわしいとお思いなのか、その点をお伺い申し上げたいと思います。
  333. 森嶌昭夫

    ○森嶌昭夫君 そのような御意見が出ますのは、従来の閣議アセスに対する不信というものが出発点になっていると思います。  それから、もう一つは、審査という言葉の使い方でございまして、中環審での審査というのは、これは、事業許認可をする主務官庁がそれを評価する、そこを審査という言葉で言っております。しかしながら、それ以前に、例えば地方自治体などで、それぞれ事業者のした評価についてチェックをするということを、私どもは審査という言葉では呼んでおりませんけれども、実際、従来それを審査というふうに呼んでこられたところもあるわけです。  審査という言葉の問題ですが、意見を述べるに際して、第三者機関の意見を聞いて都道府県知事などが意見をお述べになることは法律が予定しているところであります。  それから、先ほど青山先生の方から、具体的に中環審がやるべきだということでございますけれども、一つは、このアセスメント法律対象にする事業が非常に広うございまして、いろいろな分野が入ってまいりますし、それから、事業の分野だけではなくて、具体的な内容も、地域的な特性も、いろいろなものがあるわけでございます。そこで、仮にそれを全部カバーできるいわゆる審査委員会を環境庁に設けるとすれば、これは膨大な数の専門家、いろいろな種類の専門家を用意するということになります。  現在でも、具体的な問題が起きますと、例えば検討会とか研究会という形で、環境庁長官ないしは企画調整局長あるいは大気保全局長などのいわば諮問機関としましていろいろな学者が集められて、その時々に応じて意見を述べるということをしております。その意味で、法律上の制度として第三者機関をつくるということになりますと、これはまた行政改革などとの関係でもいろいろ問題があるのではないか。  しかし、これもまた、再び運用にばかりあれしますと、信用のないところで運用をちゃんとやれというと、やはりサボるのではないかという御懸念もおありかと思いますけれども、この法律が発足して環境庁が自分の役割をきちっと果たすということであれば、私は、環境庁長官が主務大臣に意見を述べるときなどに、具体的にそのテーマに応じた専門家の意見を徴して、環境庁長官の責任において意見を述べられるということを期待しております。
  334. 持永和見

    持永委員 今の点に関しまして、青山先生河野先生、何かございましたらお願いします。
  335. 青山貞一

    ○青山貞一君 私は、先ほど申し上げたとおりであります。  本来、公聴会が手続の中に義務づけられれば、それは一つの第三者的な意見——きょうも、立法府ですけれども、そのような場です。やはり環境庁といえども政府の一員であります。ですから、レビューとコメントというのは違いますけれども、環境庁がレビューする、コメントするというのは当然あってしかるべきですが、やはりそれぞれの分野の専門家がその都度テーマに応じ、例えば公聴会できょうのような陳述をするという機会が正式に保障されていいというのが一つです。  これは、第三者的な審査の場を、例えば中央環境審議会アセス部会、これは先ほど言ったとおりなんですが、すべての案件に初めから適用するのは難しいので、ですから、例えば、これは重要案件だ、これは国の法案ですから大きな事業であるというときには、環境庁長官がそういう公聴会もしくは中央環境審議会の中の部会を動かすということでも十分だと思います。  現状では、その両方がない。先ほど申し上げましたが、カナダ、オランダ等はあります。ですから、環境庁といえども政府の一員だとすれば、情報公開法がない中で透明性が十分確保できない以上、やはり第三者の意見をちゃんと記録に残す。というのは、後々、建設され、事業が行われ、モニタリングすれば結果はわかるわけですから、そのときの違いを明確にするという意味でもそういうものを持つべきだ。  森嶌先生が今、行革のさなか云々とおっしゃられましたけれども、これは僕はちょっとおかしいと思います。行革であっても、国民が必要とする第三者的なレビューの場、公述する場というのは必要だというふうに思います。
  336. 河野昭一

    河野昭一君 今ほどの第三者機関に関する審理ですが、これは、私は、むしろ余り大きく考えないで、アセス対象になる問題というのは非常に多岐にわたっていますから、その対象ごとに比較的適当な審査のできる能力を持った方をもって構成するということが非常に重要になってくるのではないか。  例えば、今問題になっております福井県の中池見湿地のLNG備蓄基地の問題でも、これは、あそこに非常に豊かな生物相があるということですが、それを超えて、地理学的にも袋状埋積谷という非常にユニークな地形をしていて、しかも十万年ほどの堆積層があるという意味で北半球で唯一の場所である。こういう場合、生物学者だけでは実際に判定できない場合があります。したがって、地球物理学者であるとか生物学者プラス、ここは農業を営んできた場所として江戸時代以来新田開墾でずっと水田がつくられてきた場所でもありますから、やはり農学関係の人も加わるというふうに、問題の性格によって適宜そういうふうに比較的フレキシブルな審理機関をつくるということが的確な審査をすることにつながるのではないかと思います。
  337. 持永和見

    持永委員 それぞれの先生方、ありがとうございました。  実はまだまだお伺いしたいこともあるのでございますが、時間が参りました。  先ほど島津先生から、これは実態問題ですが、特に、従来の公害防止関係環境アセスから、むしろこれからは、自然環境を大事にするような、そちらに比重を多くするような環境アセスが望ましいんだ、ぜひそうあってほしいという御意見がありましたけれども、私も実はそういうふうなことを考えております。  ただ、生物多様性の問題というのは、いろいろ評価の仕方その他が難しいと思います。またひとつ先生方のお知恵をかりながら、政府としても、我々政治家としても、こういった方向に向けて頑張らせていただきたいなということを最後に申し上げて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。  各先生方、ありがとうございました
  338. 佐藤謙一郎

    ○佐藤座長 大野由利子さん。
  339. 大野由利子

    大野(由)委員 新進党の大野由利子でございます。  きょうは、意見陳述者先生方、大変お忙しい中を、東京や名古屋、大阪等々から御参加をいただきまして、大変ありがとうございます。  国民の皆さんの待望久しい環境アセスメント法がいよいよ法制化のときが来たということで、国民の皆さんの大変大きな期待が寄せられております。日本はこの法制化が非常におくれたわけでございます。十六年前に閣法として提出されながら、十四年前に審議未了、廃案。そういう状況でございました。やっとできる法律でございますので、何としても、実効性の高い、高度なといいますか、いいアセスメント法にしたいという願いを持っているわけでございます。  初めに、私、ちょっとマクロな立場になるかと思うのですが、質問させていただきたいと思います。  森嶌先生、また青山先生、そして河野先生に初めにお伺いしたいのですが、今、日本は十年間で六百三十兆円という公共事業を行うことが村山内閣のときに決定をしております。この公共事業には非常にむだなものも多い。税金のむだ遣いであるとか、環境破壊が非常に甚だしいとか、いろいろな批判も高いわけでございまして、事業決定をしてから事業が完成するまでの間、二十年、三十年の間に、全く周辺環境も変わってしまう、社会状況も変わってしまうということが本当にございます。  九州の諫早湾だとか島根の中海の干拓問題等々にいたしましても、農地をつくろうというところから、今はもう農地は必要ないというふうに状況が変わってきつつあるわけですが、行政は一たん決まったことはなかなか変えられないという、そういう状況があるわけです。  今回、この環境アセスメント法が、こういう公共事業の決定とか見直しに対してどれぐらい有効に機能することができるのか、どこで接点を持つことができるのか。  手続法だからちょっと限界があるのじゃないか、無力なのじゃないのかというような御意見もあろうかと思いますし、今回の法案の中で事後アセスがちょっと明確になっていないものですから、この環境アセスメント法がどこまで機能できるのかという懸念を持っているわけでございますが、この点について御意見を伺えればと思います。
  340. 森嶌昭夫

    ○森嶌昭夫君 私は、法律家として、まことに残念ながら、環境アセスメント法がすべてをカバーするということは不可能だと思います。仮に事後アセスをこの法律の中に盛り込むとしても、どういう場合に事後アセスをするのか。当面この法律対象としておりますのは、ある事業をしようとする場合に、環境アセスをさせて、それを前提にして許認可をする、その許認可環境に配慮したものであるということを保障しようというのがこの法律の主眼であります。  先生指摘のように、許認可が出てしまった後にずっと事業が行われない、そしてあるとき突然復活をしてくる。長良川などの問題でありまして、私自身も長良川のNGOの委員の一人としてその問題にかかわったことがありますけれども、非常に無力を感じました。できるものはできてしまうという感じがいたしました。  しかし、これは基本的にはやはり政府のポリシーの問題であって、この法律の中で、それに対する歯どめ、どういう場合にどういう歯どめをすることができるかというのは、残念ながら、法律家として私は、手続法だから無理というよりも、全く違う観点の問題であるためにそれはできないのではないか。むしろ、ちょっと申しわけない言い方ですけれども、国会においてそうした事業について十分目を光らせて、そしてその政策の見直しを国会において議論していただくということがもっと有効ではないかというふうに考えております。
  341. 青山貞一

    ○青山貞一君 一点は、今森鳥先生お話の最後の部分だと思うのですけれども、やはり立法府が行政を十分コントロールしてこなかった過去の歴史というのが、公共事業が独走して、結果としていろいろな問題を起こして現在に至っているところだと、委員の皆さんを前にして非常に僣越な言い方なのですけれども、私はそういう認識を実は持っています。  それで、環境アセスメントが、環境への著しい影響がある、必要性も妥当性も正当性もないような公共事業が、過去に計画決定された、事業認可されたからということでいまだに生き残っているということに対して、今回の法律だけでなく、今の日本の現状で果たしてどこまでそれをストップできるかということに関しては、私は非常に厳しい認識を持っています。  その大前提は、実はアメリカで国家環境政策法、アセスメント法律ができたのは一九六九年であります。多分その二年前に連邦情報自由法という情報公開法ができております。一九四六年、私が生まれたときですけれども、行政手続法というのができております。行政手続法情報公開法が、連邦、つまり国のレベルであった中でアセス法ができております。  ですから、アメリカの場合には、今私が申し上げましたように、行政が自分の裁量で次々いろいろなことをやっちゃうというものを、今言った二つ、行政手続法情報公開法でまず透明性を高め、抑えた。その次にアセス法があって、それなりの効果を生んだ。  私が先ほどの陳述で申し上げましたけれども、アセス法は日本ではどうしても公害の未然防止とか自然環境保全に重点を置かれますが、アメリカでは、自然環境も見据えていたし、それだけじゃない。そもそも、政府政策決定の高いレベルで環境配慮をすることによってよりよい政策決定、政策形成をするということからしますと、やはり私は、情報公開法を早急に立法府の方々に力を入れてつくっていただきたい。  その条件ですけれども、行政の中でいろいろな政策的な判断をしている部分情報公開から外すというような、私に言わせれば、もうとんでもない、ばかげたことが中に一部入っています。これは諸外国を見ても、政策形成の過程こそオープンにすべきです。  政策形成の過程をオープンにする情報公開法ができれば、おのずとさまざまな公共事業をめぐる問題、それからアセスメントでも、きょう私が申し上げました、環境庁長官意見を出す前に、例えば神戸空港であれ本四連絡橋であれ——きょう、実は東京湾横断道路の貫通式があります。私も実は六時からテレビに出ますけれども、建設省がコメントし、私は環境の側からコンピューターグラフィックスまで入れてコメントしています。そういうことで、やはり、行政に対して立法がちゃんとした法律を用意して暴走を抑える。  それから、先ほど島津先生から私の早期段階について批判が出まして、私はちょっと当惑したのですが、早期段階は当然代替案と込みです。代替案があれば、一つ一つに対してはかなり確定性の高いものを用意しながら早い段階でできるわけです。そういうものを立法府が情報公開をしないと、例えば、早い段階で立地点を示すと、地価が上がるとか、住民運動がいっぱい起こるとか、すぐそういうことを言われるわけですけれども、実は、情報公開をちゃんとし、キャピタルゲイン課税をちゃんとしておけば、そういう問題も抑えられるわけです。  ですから、森嶌先生と私の考えは最後は同じなのですけれども、やはり、立法府がアセスだけで全部どうにか公共事業をチェックしようということよりは、その背後にある情報公開、関連法をこれを機会にぜひ整備していただければと思います。
  342. 河野昭一

    河野昭一君 私が申し上げたいことは二点あるのですが、一つは、今制定をしようとしているアセス法の範囲の中でこれから起きるであろうことをすべて予測し、制御していくということは不可能ではないかと思うのですね。  なぜかといいますと、環境問題というのは、どういうケースを取り上げても長期的に見て対応しなくちゃいけない問題が多くて、例えば森林一つにしても、稲の場合であれば、例えばことし不作でも来年とれればいいというような形で対応できるわけですが、森林の場合は、五十年、百年というタイムスパンの中で始めて、その森林の機能を維持し、生産力を維持していかなければいけないということがありますから、やはり大事なのは、長期的な政策としてのストラテジーをもう一回組み立て直すということが今非常に必要になってきているのではないでしょうか。  恐らく二十一世紀は、グローバルな環境変化だけでなくて、地域的には、日本のように国土の狭いところでこれだけ人口密度が高いところは、あらゆるレベルの環境問題で我々は閉塞状態になる可能性を含んでいます。それプラス資源の枯渇。こういったことを含めて考えたときに、やはり立法府で今考えなければいけない、すぐ取り組まなければいけないことは、長期的なストラテジーを日本としてどういうふうに組み立てていくかということの真剣な議論が今ほど必要なときはないのではないかと思います。個別的な経済活動の間で起きる出来事だけに追われていて、その対応にきゅうきゅうとしているだけでは、問題の本質的な解決にはおぼつかないのではないかと思います。  今青山先生が言われたような意味で、個別的なことに関してはいろいろ処理できることもあると思いますが、やはり今行政府が一番力を入れてやらなくちゃいけないことは、もちろんこれは立法府とあわせてでありますが、もう一回国の環境政策の長期的ビジョンをストラテジーとして組み立てるということを根本的にやり直す時期に来ているのではないかと私は思います。
  343. 大野由利子

    大野(由)委員 環境アセス実施した後に、長期間未着工の場合とか、事業を始めたものの途中で休止したような場合、何年もたっている場合は、もう一回アセスをやり直さなければならない、状況が変わっているのじゃないかと思うのですが、今回このことが法案の中に出ていないのじゃないか、このように思っているのです。  青山先生と島津先生にお伺いしたいのですが、島津先生は先ほど、計画が変更されて内容が変わっちゃうというようなことをちょっとおっしゃいましたが、本来は、計画が変わればアセスをやり直さなければいけないのじゃないか。今回それは法律に出ているのじゃないかと思うのですが、実態はそのように行われていないということなのかどうか。このことをちょっと御質問したいと思います。
  344. 青山貞一

    ○青山貞一君 いわゆる再調査ということで、答申、かつ、法案に再調査規定はあると思います。  大野先生おっしゃるように、一つの大きな公共事業に絡む問題なのですけれども、かつて何十年も前に計画決定もしくは事業認可されたものが放置される、もしくは、途中まで事業をやったけれども、社会経済状況変化によって大きくその基本フレーム、規模であるとか業種であるとかが変わる、それに対して柔軟に対応するアセスというのが、これは国の要綱だけでなく、自治体の条例、要綱でも不備だったことは間違いありません。ですから、大野先生の一回目の質問に関連するのですが、公共事業環境面からチェックする、見直しするという意味では、どういう場合に再調査が必要かということをもう少し明確にする必要があると思います。  もう一つの、事後調査というのは、例えばアメリカとかオランダでは環境モニタリングとかいろいろな名前で言っておりますが、まさに今のアセスメントは予測のやりっ放しである。  実は、私がかかわったものに事後調査はいっぱいあります。当初、これは要綱とか条例に基づくものではなく、地元住民、例えば本四連絡橋のときは漁師さんです。十五年ぐらい前に、今からですともう二十年以上前ですけれども、当初環境庁が指導して行った本四連絡橋のアセスが、実際、工事が終わり、物ができてみたら、つり橋を走る電車が物すごい騒音を出したわけです。漁師さんたちは、二十数年前は、到底アセスメントのアの字もわからないわけです。わからないと言うと言い過ぎなんですけれども、よくわからなくて、それにある意味で協力したり、反対したりした。実際できてみたら、夜中に貨物車が走ると物すごい騒音で飛び起きちゃう。  これは、何でこうなったか。実は、一つは、つり橋の構造のところに鉄道が例えば八十キロ、九十キロで通れば、当然物すごい騒音になるわけです。当時は、予測技術がそれほどなかった、もしくは、つり橋に鉄道を走らせる事例も余りなかった。それで、実際走らせてみたら大変なことになったわけです。  私らは、実はそこで調査を行い、報告書にし、当時たしか石原慎太郎さんが運輸大臣だったときですが、それをあるところを通じて示したところ、衆議院の環境委員会で問題になりまして、すぐ対策とか、その後環境庁が事後調査を数カ月おくれてやる。こういうことはもう多々あると思います。公共事業が物すごい時間がかかるわけです。  ですから、全部にするか大物にするか、それのスクリーニングは確かに一つあります。しかし、この十四条、本当に専門家——例えば私、こういう分野を専門で実務をやっています。仕事でもやっています。こういう人間が見ても、きのう、研究所の若い人間にもさんざん見せましたけれども、よほどよく読んで、事後調査をここのところでするのかな、しかも事業者が自分の判断でするのかなというふうに読める話であって、森鳥先生たちがつくられた中環審の答申ではっきりうたわれていたあの事後調査に比べますと、非常に見えづらいと思います。  実は、今回の法案を私の知り合いの日本語がはっきり読めるアメリカの連邦政府環境コンサルタントに見せてみましたところ、ファジーだと。非常にその辺が、玉虫色というのを説明するのに大変だったのですけれども、どっちにでも読める。どっちにでも読める法律では、事業者の判断によって、やるかやらないかわからない。しかも、事後調査公開規定がそこには必ずしも入っておりません。そこになくても、準備書公開されるのだからいいという話もありますけれども、それは、これを読む限りはそう読めません。  ですから、アセスメントの最終的な始末というのは、モニタリングであり、事後調査である。河野先生おっしゃるように、生態系ですと長いことしなくちゃいけませんけれども、この制度をちゃんと実効性を担保するという意味で、この部分については、もう少し前に、見出しとして、再調査と同じように事後調査を明記していただきたいというふうに考えます。
  345. 島津康男

    ○島津康男君 今問題になりました再調査あるいはモニタリングというのには、二つの場合があると思います。  先ほど大野先生指摘いただきましたゴルフ場の場合、これはいわば違法なのですね。アセスが行われ、その後建設にかかわる手続というのがまた行われるわけですが、そのときに内容がすりかわっている。青写真をすりかえたということであります。ですから、アセスを軽視しているということから起こってくる問題であります。自治体によっては、アセスのときに提出したデザインといいますか、これはその後変わらないということを、言質をとると申しますか、そういう形で縛っているところもありますが、元来、違法の問題であります。  それから、もう一つ、長く放置されて動かない、実施に至らない計画、これに関しては、今の自治体の指導要綱でもやり直しというのはついておるところがございます。ただし、これも非常に難しくて、五年で放置したと見るのか、十年でいいのか、あるいはそれは事業の規模にかかわりますし、都市計画なんか二、三十年もたって突然道路がまた出てくる。これは細かくは規定できないということで苦労している。  それから、その調査はだれがやるかというのが随分問題になります。アセスは、御承知のように、事業者が自分の責任で行うものとなっておりますので、後の追跡の調査事業者の責任だというのが本来でありますが、それでは住民が承知しないというか信用しないということがあり、これは自治体が自分でやるべきだということが出てきているところがあります。そして、折衷案として、事業者がお金を出して負担をして、実際の調査行政がやるという、潜りというか、そういう便法を考えている自治体もあります。  結局、アセスというのは、住民がどう安心するかということがどうしても出てきますので、ケースケースによって違ってくるという場合があることはやむを得ないと思います。  以上です。
  346. 大野由利子

    大野(由)委員 まだいろいろ質問したいことがございますが、時間が来たようでございますので、どうも大変ありがとうございました。
  347. 佐藤謙一郎

    ○佐藤座長 桑原豊君。
  348. 桑原豊

    桑原委員 きょうは、諸先生方から大変貴重な御意見をたくさんお聞かせをいただきまして、本当にありがとうございます。いろいろ示唆に富んだ御意見が多いわけでございまして、ぜひこれからの審議にも参考にさせていただいて、努力をさせていただきたい、そういうふうに思います。  まず最初に、河野先生にちょっとお聞きをしたいのですが、先生から御報告がございました、いろいろな地域での開発事業の問題点、いろいろ挙げられたわけでございますが、どうも、今国が想定をいたしておりますアセス対象事業にならないのがほとんどのようではなかろうかというふうに思います。  私は、対象事業について、スクリーニングのような制度も入れてやっていこうということですから、従来から見れば一歩も二歩も前進したのかなと思います。しかし、現実に、本当に住民がいろいろ影響を受けたり困ったりというのは、規模的にはかなり小さい事業で、ある意味では、住民が住む環境から遠いところではなしに、近い、里山のようなところも含めて開発をされるものがいろいろ問題になるということになろうかと思います。  そういう意味では、対象事業を絞っていく際に、事業種を決めるのではなしに、むしろ、ある意味では、どれでもスクリーニングの対象になるというぐらいの大きな対象というふうに想定した方がいいのではなかろうかというふうに思います。  また、スクリーニングの際には、残念ながら、その地域に住む住民の皆さんの御意見なり、あるいはそこの自治体の長の意見も取り入れられないということでございまして、そういう意味では、知事意見が入るとはいえ、そのスクリーニングをしていく際に本当に公正なものが出てくるのだろうか、そこら辺が大変不安に思うわけですけれども、そういったことも含めて、少し先生の御意見をお伺いしたいと思います。
  349. 河野昭一

    河野昭一君 先ほどの私の説明の中で、個別的、具体的な事例を幾つか挙げさせていただきましたけれども、多くのものは、既に事業としてスタートしているか、終わったものもあるというものばかりなのですが、やはり今回のアセス法の中で取り上げられる第二種の方に当たる部分、これの中に、今挙げられた対象になる地域とか自然がかなり多く含まれているのではないか。  私は、日本生態学会の自然保護専門委員会の全国委員をしておりますが、生態学者の考え方として、従来は、自然保護なり環境保全というと、原生的な自然と申しますか、それを中心に考えていこうという考え方でやってきた部分があります。しかし、現在、私たちの反省は、そうでなくて、むしろ身近なところにある二次的自然を含めて、これは、人がある程度利用している、生活の場として使っている環境なのだけれども、その環境の中に含まれる多様な生物相や自然環境の重要な部分をあわせてどう評価するかということをやり直ししようと、生態学会の自然保護専門委員会の中でもこの議論を今いろいろな角度からやっているところであります。  そういう意味で、このアセス対象になる自然というのは、必ずしも百ヘクタール、二百ヘクタールという非常に大規模な自然を対象にするのではなくて、もう少し小規模であっても、そこにどういう自然度の高い自然が含まれているかとか、生物多様性がそこにどれだけあるかといったようなことの、きめ細かな調査の中でゾーニングをしていくということが非常に重要になってくる。  例えば県定公園というようなレベルの中でも、従来以上にゾーニングをすることによって、利用すべき空間と、きちっと保存すべき空間というものがある程度位置づけられる。今の、実際にやられているいろいろな事業を見ますと、必ずしもそこら辺のところは厳密にきちっとやられていなくて、やや無差別に事業が走らせられているというところがあるのではないかと思います。  それから、その中で地方自治体がどれだけ責任を持ってこういう問題に対応するかということですが、具体的な事例の中では、残念ながら、やはりまだ地方自治体の方も力不足ではないか。そういう意味で、環境庁なり国のレベルがもうちょっとしっかりしてもらわないと困るというふうに私は思っております。もちろん、個別的には地域の問題ですから、自治体が一定の役割を果たすということは大事になってまいりますが、残念ながら、その辺がまだやや力量不足ではないかというふうに私は感じております。  一方で、むしろ地域のNGOの方たちの方が、地域自然環境や自分たちの周りの生活環境については非常に正確な情報を集めて対応しておられる。ただ、そのNGOの方たちの生の声が、必ずしも地方自治体のレベルにも届いていかないし、国のレベルにも届いていかないという形で、残念ながら、部分的には事業が進んでしまっている。  環境問題の難しさは、先ほど、途中で見直しがあってもいいのではないかというような意見もありましたけれども、対象によっては、見直したときにはもう既に遅い。つまり、その根底が完全に壊されてしまっていて、もとへ戻すということはまずほとんど不可能である。よく言葉の中で、植生復元とか自然を復元するという言い方がありますが、これは、厳密に生態学的に言いますと、復元というものは、生物学的なレベルではまず一〇〇%ないのであります。したがって、この復元という言葉にまやかしがありますので、そういう形で、途中でとめて復元するというような対応の仕方で本当に自然がもとへ戻るのかということについても、やはりきちっとした認識を持つ必要があろうかと思います。  長くなりましたが、以上です。
  350. 桑原豊

    桑原委員 どうもありがとうございました。  それから、先ほどの御意見の中でも二、三出ておりましたけれども、このアセス法の目的は一体何なのか。  確かに、手続法としての目的の規定は条文の中にございますけれども、一方で、「国等の責務」ということの中では、単にさまざまな基準をクリアするということだけではなしに、それよりも、むしろ環境に対する負荷を抑えて、そして低減をさせていく、そういうように環境そのものをいいものに変えていこう。その背景には、いわゆる持続可能な発展といいますか、そういった物の考え方があるのだろうというふうに思うのですけれども、そこら辺が必ずしも明確になっていないがために、この法そのものをどう運用していくのか、何をよりどころにしていくのかというところでかなりあいまいなものが出てくるのではないかと私はこれも危惧をするわけですけれども、この点について、五人の先生方に一言ずつ御意見をお伺いしたい、こういうふうに思います。
  351. 森嶌昭夫

    ○森嶌昭夫君 私は、この環境影響評価法は、環境基本法の傘の下にあるわけですので、当然環境基本法の目的を達成する、そのための事前評価手続、そして、結果として、環境基本法が目指しているように、環境に対する負荷をできるだけ減らしていく、そして次の世代に良好な環境を残す。  もう一度繰り返しますけれども、この法律だけでそれが出てくるのではなくて、私は、全体の、五年以降の環境体系という、そういう中で考えるべきだろうというように考えております。
  352. 青山貞一

    ○青山貞一君 環境基本法的な理念とは別に、私は、先ほど来の大野委員お話との関連もあるのですけれども、環境面から見て政策形成それから公共事業を適正化していくということがアセス一つの大きな目的だと思います。  それで、どういう観点から政策立案及び公共事業の適正さを判断するかというのは、三つだと思います。必要性、妥当性、正当性です。  必要性というのは、もしその事業をしなかった場合にどうなんだ。もしそれが本当に必要性があるものであれば、そのことによって環境影響があっても、当然それなりに、それをはるかに上回る社会経済的なメリットがあります。かといって、環境面から見て妥当でなければその事業は当然社会的に受容されない。環境面から見た妥当性をチェックする。ですから、社会経済的な必要性は当然なければいけません。ないものがたくさん動いていると思います。  次に、正当性。これは、アメリカの言葉で言うデュープロセス。情報公開行政手続です。それに関係する人たちがだれでも意見を申し述べられるということだと思います。  ですから、崇高な理念は当然あるのですけれども、やはり今の日本の現状を見ますと、霞が関の諸官庁の政策立案及び公共事業を、環境というものを一つのキーワードにしながら、必要性、妥当性、正当性をチェックしていくためのものだというふうに考えます。
  353. 河野昭一

    河野昭一君 私は、持続可能な環境の利用とか、サステーナブルユースという言葉でよく使われるのですが、この言葉も、先ほどの環境復元とあわせてかなり危ない部分を含んでいるのですね。何をもって持続可能な資源の利用と言うかということの判断は、厳密に、生態学的に、生物学的に言ったときには、大変難しい問題を含んでいます。  なぜかと申しますと、今地球上全体で起きている変化は、グローバルな環境変化としてCO2の増加とか温暖化とかいろいろな形で言われていますが、同時に、では地域的に見てどういうことが起きているかということを考えた場合に、日本列島の場合も、やはり火力発電所の直接的な影響というような形で起こっている大気環境へのインパクトというのは、我々が考えている以上に物すごい速度で進んでいるわけです。ですから、大気環境一つとってもそういう問題があります。  きょう皆さんの封筒の中に入れた資料の中にも、私が二十年来続けております北陸電力の影響評価、何が起きているかという調査結果が一部入っておりますが、こういうふうに、確かに全体的に環境が変わっていて、そういう中で、それを国のレベルで国際的にどうコントロールするかというような議論が盛んにされる中で、一方で、忘れられているのは、地域的に非常にドラスチックなことが起きていることがややもすると軽視されているということが一つあります。  ですから、最近、環境に対するいろいろなはやりの言葉があって、環境復元とか、持続可能な資源の利用とか、いろいろな言い方がされるわけなのですが、それが持っている有効性と制約というものを厳密に一つ一つ検討して考え直していかなければいけない時期に今なっているのではないかというふうに思うのですね。  個別的な問題はたくさんありますけれども、私は、今言ったことで尽きていると思うのは、やはり日本に関しては、国際的な責任をどう果たしていくかということとあわせて、国内で地域的に何が起きているかということに対してきちっとした認識が今ほど必要にされている時期はないのではないかというふうに考えています。
  354. 村松昭夫

    ○村松昭夫君 私は、先ほども、この理念だとか目的を法文の中で明記することがやはり必要ではないかという意見を述べさせていただいたのですが、いずれにしても、先ほど言いましたように、環境基本法の三条から五条、この中では、きちっと環境保全して次の世代にそれを残していくという問題や、あるいは国際的にもそのことの重要性というのがこの中で触れられていると思うのですが、重なっても、やはりこういうのをきちっとこの法案の中に明記をしていくということは大事ではないかというように思います。  弁護士ですので、例えば法案の解釈がよく裁判で問題になったりいろいろしますけれども、やはり法律には、どうしても、その運用だとか解釈に一定の幅があるときに、どう解釈するのが本当にこの法律の趣旨に沿ったものであるかということを明確にするという面からいうと、やはり趣旨を明確にする。その趣旨の中で、環境影響をできるだけ回避をして低減をするということが非常に強調されていますけれども、やはりこれが重要だろうというように思っております。  それから、先ほど青山先生から同時に公共事業の問題が出ましたけれども、私もそのとおりだと思っていまして、この環境影響評価、当然その中には、その事業の持っている必要性だとか相当性というところもやはり審査あるいは評価対象の中にきちっと入れていくということが今の段階での法案としては求められているだろうというように思っております。
  355. 島津康男

    ○島津康男君 先ほど来のほかの先生方と余り違わないのですけれども、例えば今回のこの法案を見ますというと、先ほどから一番問題になっております環境基本法というのは、第十一条の実施に係る部分、いわば、これから先できる技術指針の内容規定するものですよというところであらわれておりまして、本来の総則第一条のあたりには何の顔も出ていない。  それで、第一条は、事業実施するという対象の問題と、それから目的は環境保全に対してと書いてあります。ここに環境基本法のもとだということがあればもっとインパクトがあるのではないかと思います。  以上です。
  356. 桑原豊

    桑原委員 どうもありがとうございました。  最後に、河野先生と森嶌先生にひとつお聞きしたいのですが、先ほど青山先生も強調されましたけれども、いわゆる早期のアセス、まあ計画アセスといいますか、あるいはもう諸外国では法案とか政策的なものも含めてアセス対象にしている、そんな話も聞くわけですけれども、やはり個別の事業を個々にチェックをしていくということはもちろん大事なのですけれども、それの前提になる計画というものがどうなのかということを抜きにした場合に、本当に余り意味のないものになってしまうのではないか、そういうふうに思います。  日本の開発状況を見ておりますと、個別の問題のアセスということよりも、ある意味では、計画アセスをしなければならない、そんな段階にもう既に入ってしまっているのではないか、それをこれからの問題として先送りをするというのは、やはりかなりおくれをとっているのではないかなというふうに私は思うのですけれども、そのことについてどういうふうに思われるか。  それから、環境庁という庁の役割を考えてみますと、やはりそういう計画アセスを事前にちゃんとやれるような、そういう役割を環境庁が担っていかないと、環境の総合的な調整をやるといっても、ある意味では、自治体ですらほとんどもうそういうことはやっているわけですから、環境庁の本来の役割を果たすという意味では、計画アセスに積極的に取り組む必要があるのではないかというふうに思うのですけれども、その点についてどうお考えか、お聞きしたいと思います。
  357. 森嶌昭夫

    ○森嶌昭夫君 計画アセスが必要であるということについては、桑原委員のおっしゃるとおりでありまして、私は、やはり計画アセスというものを考えていくべきだろう、立法していくべきだろうと思います。  そこで、それでは法律技術的にこの法案の中に計画アセスというものを入れる。計画というのは、これはむしろ政策アセスですね。事業のもっと早い段階という意味ではなくて、全くの上位計画アセスという意味であります。そういたしますと、アセスをする対象も手法も恐らく全く違うわけですので、技術的にはここへ盛り込むということは少し難しいのではないか。あるとすれば、せいぜい全く別の条文をつくって、別のアセスの仕方、別の意見の聴取の仕方というような形で、二本立てのものをこの中に入れるということは不可能ではありません。  それから、もう一つ。そのようにして考えた場合に、私どもも研究をしたのですけれども、残念ながら、諸外国も含めて、そういうことが必要だと言いながら、それでは具体的に法律技術的にどういうアセスで、どういう手続でといったものは、まだ十分固まっておりません。それは、先ほどの、青山さんのおっしゃった、国の政策全体をどうレビューするかということも含めて、一度早急に詰めて、そしてその中から出てきた技術を入れての立法をすべきだというふうに私は考えております。  結論的には委員のおっしゃるとおりでありますが、では、今すぐこの法案の中に何らかの条文が入れられるかというと、私どもの検討では、まだちょっと時期尚早。それではそれまで待った方がいいのかというと、私は、個別でも、ともかく今までできていなかったものをつくることが先だというように考えております。
  358. 河野昭一

    河野昭一君 法律論は別としまして、先ほど来何度も申し上げていますように、今ほど長期的な視野が必要なときはないのではないかと思います。そういう意味で、計画アセスというか、それに似た性格のものをきちっと確立していくということは非常に重要であって、そのためには、私は、環境庁だけでなくて、国土庁とか、国の経済のかじをとる経企庁とか、そういうところが、むしろ三十年、五十年というような、ちょっと従来我々が考えないようなタイムスパンの中で起きていくようなことをも射程距離に入れた、しっかりした検討を国のレベルでやっていくということが非常に重要になってくるのではないかと思います。  法律論の上では、いろいろ技術的に難しい問題が今森嶌先生が言われているような範囲であるとは思いますが、恐らく二十一世紀は、あらゆる意味環境問題で我々も苦しめられるというのは目に見えている。そういう意味で、やはり余り目前のことだけで議論するのはもはや遅いのではないかというふうに私は考えています。
  359. 桑原豊

    桑原委員 どうもありがとうございました。  大変いろいろ示唆に富んだ御意見、ありがとうございました。これからも努力をさせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  360. 佐藤謙一郎

    ○佐藤座長 藤木洋子さん。
  361. 藤木洋子

    藤木委員 日本共産党の藤木洋子でございます。  きょうは、公聴会に陳述人としてお運びをいただきまして、それぞれのお立場から専門的な御意見を聞かせていただいて、私も随分勉強になったり、示唆に富んだ御発言の数々、本当にありがとうございました。  最初に、村松さんにお伺いをしたいのですけれども、先ほどのお話の中で、環境保全の面からだけではなくて、当該事業社会的経済的側面からも果たしてそれが必要なのかどうなのかということも検討に入れる、こういった面から環境に及ぼす影響評価する環境アセスメントが必要ではないかという議論がございました。これは私も非常に関心を持っているところでございまして、もう少し詳しくお話しいただけることがあれば、それを一点お聞きいたしたいと思います。  それから、引き続いてもう一つ伺いたいのですけれども、先ほど来お話が出ております、一つ一つ事業そのものは大した影響はないのだけれども、しかし、例えば琵琶湖の周辺にこれから開発が予定されている八つのダムがあるわけですけれども、その一つ一つについての環境影響評価をやりましても、それを受けとめる琵琶湖にどこまでの負荷がかかるのかといったようなことも総合的にアセスメントを行う必要があるのではないか。しかも、上流の部分だけではなくて、至るところ、沿川から最後のところまでのアセスが必要ではないかということを非常に思うわけですね。  先ほど来、上位計画の問題がまだ時期尚早というようなお話がございますけれども、今まで、大きなプロジェクトをやって、それこそ復元不可能だと言われている自然の破壊が本当に大規模にやられたというような例が随分多いものですから、その辺が非常に大切ではないかと思います。その辺、強調していただくようなことがありましたら、お話をいただきたいというふうに思います。
  362. 村松昭夫

    ○村松昭夫君 一つは、社会的経済的な必要性だとか相当性も含めるべきではないか、評価に当たってぜひ検討すべきではないかということを言ったことに関連してなのですが、従来の典型公害ばかりではなく、現在、環境という面からいっても、生物の多様性の問題だとか、あるいはもっと言えば、例えば京都でいえば、景観の問題だとか、あるいは歴史的、文化的な遺産の問題、こういうものも当然評価対象に入れていかなきゃならない。こういうのは、先ほどからも出ておりますけれども、ある面では評価が非常に難しい側面があると思うのです。しかし、それが失われることによって取り返しがつかないという点では極めて重要な問題であろうと思うので、そういうのはまず必ず入れていくべきであろう。  それと同時に、後で申します上位計画によるアセスとも関連するのですが、その事業環境面の評価のときに、裏返しとして、どうしてもその事業の、例えば公共事業の経済的メリットがどうこうという問題が常にあります。ところが、残念ながら、現在はそういうことを公の場できちっと評価をする場がないのだろうというように思います。そういう面でいうと、このアセス法ができるわけですから、当然その事業環境的な側面についての評価をするわけですから、できることなら今言ったようなところもこの手続の中に含めて、きちっと公の場で、公開の場で論議をしていくということが必要だということで、先ほど申し上げたというのが一点目であります。  それから、二点目は、例えばダムなり、言われたように、いろいろ重なって影響が出てくるという問題、これも非常に重要な問題だろうというふうに思っております。  それについては、一つは、先ほどからも強調しておりますように、上位の計画政策というところで慎重に検討するということを本当にやらなかったら、一つ一つ細切れにやっていたらできないだろうというふうに思います。さらに、一定のものが、仮に上位計画だとか政策までいかなくても、例えば大阪湾なら大阪湾の湾岸に幾つかの発電所なり物ができていく場合に、それが予想されたならば、それを個別のアセスの中で取り込んでいくという努力をするべきではないかというふうに思っております。  以上です。
  363. 藤木洋子

    藤木委員 確かに、今お話をお伺いいたしまして、私も、累積的といいますか、複合的といいますか、そういうものに対するアセスメントが極めて重要ではないかというふうに思っております。  それから、今回の法案が、住民参加といいますか、意見を有する者の意見を反映させる、そういう仕組みを早い段階から織り込んでいくということになっているわけですけれども、しかし、それであれば、最終的にその事業に対して許認可を与えるところにどのようにその意見が反映をしたのかということがわかるシステムといいますか、そういうことが大事ではないかというふうに思うのですね。それについては五人の先生方にお一人ずつお伺いしたいと思うのです。  許認可の決定のところにどの程度反映したかということが透明度を持ってわかるようになるシステム、そういうものが盛り込まれないかどうかという点について、一言ずつお聞きをしたいというふうに思います。
  364. 森嶌昭夫

    ○森嶌昭夫君 先ほど青山さんも指摘されたところでありますけれども、現在、日本の行政、特に許認可の場合に、その許認可の決定プロセスというのは、情報公開がございませんので出ておりません。そこで、例えば事業者がどう住民の意見等を繰り込んだかということについては、これは評価書の段階でちゃんと書くことになっております、どれだけ、どういうふうにして、自分たちはどう考えると。ところが、それが今度主務官庁に行きまして、いわゆる審査ですが、主務官庁が許認可をする前提としていろいろなファクターを、環境へのファクターをどう考えたかということは、公開あるいはほかの人がきちっと見るということはできていないのです。この法律からは直ちにそうなっておりません。ただ、将来的には、環境アセスメントだけではなくて、情報公開とかさまざまな仕組みを働かせる。  また、これも先ほど青山さんがおっしゃいましたけれども、アメリカでは行政の決定に対して裁判所が介入できるということが一九七〇年代からどんどん広がっておりますが、日本では、御承知のように、裁判所はなかなか行政の決定に対して介入することはしない、ないしは避けているわけでありますから、そうした仕組みを一方では直しながらやっていかざるを得ないのではないかというふうに思います。
  365. 青山貞一

    ○青山貞一君 私のきょうの陳述の過半は今の質問に答えるようなことだったと思いますので余り時間をとらないつもりですが、やはり政府政策形成のプロセスを含めて適用除外しない情報公開法をつくるということが、住民、国民、市民の意見を、例えば建設省でありますとか通産省に伝える大きな原動力になると私は思っています。  そういう意味で、今回の法律環境庁がすごく頑張ったことは私は評価いたしますし、計画アセスが、十八年ぐらい前に国立環境研究所にいる森田恒幸さんと私で当時一生懸命やったのですけれども、きょう、ここで、これほど先生たちのところで議論されるということに、非常に感謝といいますか、はっきり言いましてうれしさを持っています。しかし、やはり情報公開法がないところに計画アセスはないと僕は思います。それが市民参加を形骸化させないことにもなります。  さらに言いますと、もうちょっと実務的な話で、私が最近やっているのは、NGOとしてインターネットのホームページ、メーリングリスト、電子掲示板です。そこで、例えば、この間、行政改革委員会で、独立して存在する必要のない役所の三つ目に環境庁もいたのでびっくりしたのですが、それをめぐって環境庁の役割についてみんなで議論しようということを投げかけたところ、何十という意見が、確かに今のような環境庁じゃ要らないとか、いろいろなものがあったわけです。それは私が言ったのじゃないのですよ。  それで、そういう議論を丸めない。つまり、アセスの場合、住民の意見というのは大部分丸められちゃうのです。一行とか半分になっちゃうのです。そっくりホームページならホームページに出しておけば後からだれでも見られる。ですから、アセス意見書とか、公述は公聴会がないのでないのですけれども、そういうものを環境庁が個別案件ごとに、例えば、これは長良川、これは本四、これは東京湾横断、そういうものをホームページ、メーリングリストを開いて、そこで意見が来たものを全部出せばいいと思うのです。  おとといだか、たしか日経か何かに、各省庁がインターネットで意見募集。意見を幾ら募集してこちらが答えても、個人メール、つまり、通産省にだけ行って、その人たちが見て、聞きおいたのでは、一応住民の声を聞きましたよというアリバイにしかならないのです。それをそっくりほかの専門家、ほかの人にも見られるようにするためには、今幾らでも効率よくホームページでできます。そういうことをすれば丸めようがない。その中には思いも寄らなかったものもあるかもしれません。それをみんなで共有する。情報公開だけじゃなくて、情報参加といいますか、情報関与といいますか、情報をみんなで共有する、そういうことが可能です。  ですから、こういう時代ですから、ぜひインターネットを使う。そうすると全国一律で見られます。環境庁は、環境基本法のときも今回のアセスも、Eメールで意見をと言っていましたけれども、ほかの人から来たものも即みんながフィードバックできるようなシステムにしてもらうことが、先ほど言ったこと以外で私からの提案になります。
  366. 河野昭一

    河野昭一君 私も、今青山先生が言われたのと同じような受けとめ方をしているのです。  これまで二十五年以上にわたるいろいろな環境問題に対するNGOの方たちとの取り組みの中で、確かに、意見聴取とかいろいろな場面が与えられても、それが実質的に実効ある形で政策に取り込まれることが非常に少ない。残念ながら今まで私が経験した中ではほんの一件しかなかったというのが現実です。それは、国立公園の中への、アルペンルートへのマイカー乗り入れの規制をするという一つの請願ですが、これが地域住民の意見が取り入れられた唯一の例なんです。  しかし、この中で、立法府の先生方、国会議員の先生方や県会議員の先生方の果たした役割が大変大きくて、ある意味行政を押し切ってしまったというところに実際にそういったことが実行された一つの背景があった。したがって、私は、立法府の先生方の役割は非常に重要ではないかと思っています。つまり、住民から上がってきた声を具体的に政策事業を進めたり変更させたりするのにどういうふうにかじをとっていただくかという非常に重要な役割を先生方が担っておられるのではないかというふうに私は思います。  しかし、一方で、行政府の側に、住民から上がってきた声に対する柔軟な対応がこれまで以上に求められるのではないかと思います。情報公開と言っていますが、情報のかなりの部分は依然として公開されないままで、半ば強制的に公開させられているというような現状があるわけですから、その辺のところも行政府の側は相当考えていただかなければいけないのじゃないかと思います。
  367. 村松昭夫

    ○村松昭夫君 今の問題で、二つだけ言いたいと思います。  一つは、審査の透明性という点では、今の法案では主務官庁が最終の評価の審査をすることになっておりますけれども、本来なら、ここに第三者機関が審査をするという手続がとれればいいのではないか。そのことで、より審議の経過が明らかになり、透明になり、住民の意見がその中でどういうふうに議論されたのかということが明らかになっていくのではないか。できることならそういうことが導入されるべきではないかというのが一点目であります。  二点目は、先ほどもちょっと出ましたけれども、私は、せめて、意見の提出の機会があったときに意見を表明した住民は、その許認可決定に対して不満があった場合には、不服申し立てができるという手続をこの法案の中に設けるということも必要ではないか。そうすれば、そこから後、最終的には司法審査というところにも行くことができますし、そういう中で、どういう審査が行われたかということは必ずそこでまた司法審査の対象になっていくということになりますので、そのことも必要ではないかというふうに思っております。
  368. 島津康男

    ○島津康男君 二つの点で申したいと思います。  このアセス法案事業に対する許認可にくっついたもので、その許認可のお墨つきの一つとして挙げられているという感じがどうしてもするわけです。そのレベルにおいては、情報の公開というのは、知らせてもらう、あるいは自分の意見を言うということであります。  それから、もう一つ、例えば上位計画の話が先ほどから出ておりますが、これは判断の材料にするための手続であるべきというものもあるはずじゃないか。つまり、これはアメリカに近いものを言っているわけですけれども、みんな情報を持っている、それで判断をする議論の材料にしようという形なわけです。その場合には、情報を公開するというよりも、情報を共有するということの方が大事なのですね。その手段としてインターネットというのがあり得るわけであります。  自分のことを言ってなんですけれども、環境に対する予測の判断の材料にするというやり方は、最初にちょっと申しましたが、矢作川方式というのは二十年前からそれをやっております。これを住民投票というと非常に目がうるさいものですから、住民参加投票という名前にしております。イエスかノーかを聞くのじゃなくて、何もしないも含めて、必ず三つのどれがいいかを投票するというやり方です。これは情報の共有なのですね。これは今どきだったらインターネットに適した方法です。  この法案がどうかということの先になってしまうのですけれども、その方向に行く一歩であってほしいという意味で、私の意見といたします。
  369. 藤木洋子

    藤木委員 それでは、最後に森鳥先生にお伺いをしたいと思うのです。  この答申の中で、実効ある環境影響評価が行われるために、答申が示している基本原則に沿って対応する必要性を述べておられます。その基本原則を具体化するに当たって、統一的で、透明性が保たれる、わかりやすい制度とすることを強調しておられると思うのですね。  橋本総理に答申を手渡されるときにおっしゃった言葉の中に、骨抜きにならないようにと言ってお渡しになっていらっしゃいますよね。私はあれは非常に印象的に伺っておりまして、そういったところから見て、この法案で発電所が特例として設けられたということは、果たして今の精神に沿った望ましいことであったのかどうなのか、そのことについて最後に御見解を伺いたいと思います。
  370. 森嶌昭夫

    ○森嶌昭夫君 橋本総理に答申を渡した当時には、そもそもこの法律から発電所は外れるのではないかという、私どもの方に直接あったわけではありませんけれども、世間ではそういう情報が流れておりました。中環審は、環境アセスメントというのは基本的なルールを決めているのだから、環境アセスメントについてはどの事業であろうと全部入るべきだというふうに考えておりました。そして、現在の法案の中には発電所もこのルールは守るということでありまして、ここに書かれていることは全部やるわけであります。  先ほど、ほかに御意見を発表された方から、そのほかに、電事法の、例えば通産大臣の関与というのが規定されている、それは望ましくないのではないかという御意見がありましたけれども、私は、環境基本法についての原則を審議いたしました立場から申しますと、発電所も含めて全部がこの法律のもとで、少なくともこの法律に要請されたことは全部やらなければ通らないという意味で、現在の法案については、いろいろ御意見はおありかと思いますけれども、私どもがあのときに懸念していたことは結果的には生じなかったというふうに評価しております。
  371. 藤木洋子

    藤木委員 時間が参りましたから終わります。  先生方の御意見をしっかり踏まえまして、これからの審議と、そして、それこそ私たちの意思決定の場に反映できればと思っております。  本当にきょうはありがとうございました。
  372. 佐藤謙一郎

    ○佐藤座長 辻元清美さん。
  373. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党の辻元清美と申します。  きょうは本当に京都に来てよかったなあというふうに思っています。私、国会議員になったのが初めてでしたので、きょう初めて公聴会というのに参加したのですけれども、公聴会というのは大事やなあと思いました。そういう意味では、環境アセスのこのプロセスで公聴会がないというのは、きょうこれがほんまに大事やなと私は強く思ったので、さらに審議の中で強く主張していこうかなというふうに考えております。やはり、このように意見を聞かせていただくことで、こうしたらええ、ああしたらええといっぱいお互いに啓発されて、触発されて、総合的に、多角的に物が見えてくると思うのですね。アセスはやはりそうあらなあかんねんなあと、改めてきょうこの会で学んだことが多かったと思います。  さて、具体的に、小さなことを幾つか御質問させていただきたいと思います。  まず、青山先生にお伺いしたいのですが、今までも、閣議アセス段階で幾つかの御相談に乗られたり、実務をされてきた。事業者は何ぼぐらい払うのですか。それが私よくわからなくて。いろいろな規模があると思うのですけれども、アセスをやるなんていったら、事業者が物すごい負担をしているのか。それが、今回変わっちゃったら、また膨れ上がるのかどうか。その辺も、実質的に事業者がどれだけ積極的になるかというのが、倍、三倍とかになると非常に心配な面もあるのですが、普通、事業者はどれぐらいアセスにお金をかけているものなのか。幾つかの事例で結構なのですけれども、事業の何%とかそういうお答えでも結構ですし、ちょっとお伺いしたいのです。
  374. 青山貞一

    ○青山貞一君 かなり実務的な御質問で、非常に光栄であります。  実は、アメリカのNEPAとか、カナダの場合、オランダの場合、それぞれ事業費の〇・一%とかいろいろと数字が出ておりますが、日本の場合、それこそ発電所の場合には何億とかけるところから、小さな道路、ぶつ切りにした道路の場合には千五百万。ただ、その場合も、アセス報告書に要するものとその前の調査に要するものは別とか、いろいろとありますから、国の大きな事業の場合には数千万から数億かけている事例が多いと思います。  実は、その額は個々ばらばらなのですが、私は、本業としてもそういうものをやっている者としてこういうことをここで言うのはちょっとどうかと思いますけれども、実はアセス調査業務というのは、昨年一月一日、WTOが一般競争入札をしろということを政府調達に関連して言っておりますが、現実を見ますと、ほとんど一般競争入札はされておりません。指名競争入札もしくは随意契約による調達です。  何が起こるかといいますと、きょうも朝日新聞の一面か何かに出ておりましたけれども、どこかの話で、いわゆるDの問題がそこらじゅうでありますから、Dというのは談合のDですけれども、その価格の妥当性、見積もり以前に、いわゆる政府なら政府調査業務としてコンサルタントに発注するときの透明性、きょうは一切そういう議論がないのですけれども、それを高める必要があると思います。それによって、例えばそれが半額になるとかどうこうというのはありますけれども、それは、何はともあれ、一般競争入札もしくはそれに準ずる、参加型、公募型とかいろいろとありますけれども、そういうものに切りかえていかないと、現行の大規模公共事業に伴うアセスの業務発注形態及びその額が適正かどうかというのはわかりません。社団でも財団でも特殊法人でもない任意団体として日本環境アセスメント協会というのがあります。そこに私はあえて入っておりません。なぜ入らないかと言いますと、そこでいろいろな、大気汚染の調査をやって幾ら、何をやって幾らというおおむねの価格を決めています。それに基づいて積算しますから、通常、ある額が出ていますけれども、それが、先ほど言いましたように、技術進歩とかそういうものが勘案されていませんし、企業努力も勘案されておりません。ですから、それによって何千万、何億というのが出ても、それが本当に妥当なのか。  あと、調査として出される業務が、例えば電力会社は電力会社の関連会社のコンサルタントを出すというのが一般であります。そこでの問題、建設省が外郭団体に出すとか、環境庁は知りませんけれども、そういう業務発注形態というものも同時に考えるべきだと思っております。
  375. 辻元清美

    辻元委員 どうもありがとうございました。  ちょっとそこのところが、せっかくいいのができても、やる人たちがお互いに仲よし同士で、まあ、なあなあて言うたら変なのですけれども、やるというようなことになっていたら困りますので。ただ、今伺いますと、そこのところ、ちょっと心配かな。  そういうコンサルタント会社で実際実務を担っている方々は、例えば、官庁から来はった人とか電力会社から来た人とかが経営しているとかいう場合がほかの業界でしたらよくあるのですが、この場合はいかがなのでしょうか。
  376. 青山貞一

    ○青山貞一君 あります。例えば、環境庁のある方がある研究所をつくって、そこで例えば本四連絡橋のアセスをやる。たくさんありますね。  やはり私自身そういうところに二、三十年いまして、その現実を見たときに、きょうのお話に加えて、計画アセスがあろうと何があろうと、やはり私たち自身の問題で、私は、湾岸戦争のとき、日本海重油流出のときに、すべてボランティアで、自分たちの能力で潮の流れ、油の流れを予測して、それをホームページに毎日出す、きょうは富山湾に入る、そういうことを、業務とは別に、NGO、ボランティアとしてやってきて、そういうことをやってきた意味で、アセスだとかそれに類似する話というのは、第三者性が非常に重要だ。  それが、業務発注を通じてそこでそういうものが担保できない。つまり、利害がある。もしくは、今委員がおっしゃったような、天下りという言葉は僕は嫌いなのですけれども、そういう関係の中で発注が行われるということは、長良川でも何でも同じですけれども、やはり政府とか立法府だけの問題ではなくて、民間の側もそれなりに透明性を高める努力をしなくちゃいけません。ただ、そうはいっても、無理ですから。  先ほど言いましたように、より一般競争入札。技術と価格でどこが決まる。私が今つき合っている、東大の法学部を出られて建設省にキャリアで十五年務められて法政大学の教授をやっています福井秀夫さん、本当は私のかわりに福井さんがここに来て話す話だったのですが、彼に言わせますと、こびと名刺の数と言っていますね。いや、冗談じゃなくて、建設省の十五年現職の人が言うのだから間違いないと思うのです。これからは、やはり技術と価格でアセス調査業務をふさわしいところがとる、第三者的なことをやれるところがとるということにならないと、きょうの法律が幾らいいものができても、その後の話としては難しいと思います。
  377. 辻元清美

    辻元委員 どうもありがとうございます。  そういう意味で、今回の法律の中にコンサルタントというか会社の名前を入れるというのが入ったのは、少しいいのかなというふうに私は考えているのです。きょう、いろいろなお話を聞かせていただいた方もおっしゃいましたけれども、第三者機関はますます必要かなというふうに思います。  さて、もう一つ、ちょっと具体的に気がかりなことで。私、この間代表質問で、どきどきしながら本会議でこのことを質問したのですが、そのときにリゾート法との絡みというのをちょっと質問したのです。  河野先生にお伺いしたいのですが、許認可の仕方が違うということで今回は適用されないというお答えだったのですけれども、リゾートの開発について、将来私は入れていった方がいいなと考えておりますが、河野先生はどのようにお考えでしょうか。
  378. 河野昭一

    河野昭一君 基本的には私が先ほどから申し上げていることの繰り返しになりますが、リゾート法が制定されたときも、一番の問題は、やはり比較的身近なところにある自然環境がかなり無差別にターゲットになってしまうということがありまして、そのことによる影響全国でいろいろな形でどんどん進んでいって、それを規制する有効な手だてを何ら持たなかった。  その場合でも、先ほどから言っていますように、環境影響評価対象になる広さとか規模とか、それから従来から言われている古典的な意味での自然度の高さ、つまり原生的自然でないとか、二次的な自然であるといったようなランクづけをされることによってほとんど置き去りにされてきてしまったという面があって、おくればせながら今度こういう形でアセス法がスタートするわけですから、私が先ほどから繰り返し述べておりますように、やはり身近な自然の中でゾーニングをきっちりやって、そしてその中で、重要なものとある程度私たちが利用していかなければいけないものとの間の峻別をきちんと線引きするということが非常に重要になってくるのではないかと思います。
  379. 辻元清美

    辻元委員 皆さん質問なさって、最後の方になるとなかなかしにくいのですよ、これが。  先ほどから出ております情報公開のことで、島津先生のペーパーを読ませていただきましたら、アメリカやカナダではアセスの結果を毎日のペースでインターネットで公開しております、特にカナダでは、画面の地図上でその州をクリックするとその州でのアセスの実情がぱっと出てくるとか、事業別、事業主体別の検索もすぐにできるというのです。これを見て、こうなったらいいなあというふうに思うのです。  先ほどからも、皆さん、情報公開の重要性、情報公開法もあわせて早期に成立してとか、それから、これからどうすればいいかということで、裁判所の介入も日本で考えたらいいのじゃないかとか、いろいろな意味で実効性を持たせるということについての御意見を伺いました。  そうしたら、それとは反対に、これは皆さんにお伺いしたいのですが、こうなったらいいなとみんな思っているのですけれども、日本で今ならない原因、何が阻害しているか、一番の原因は何とお考えなのかというのをお聞きしたいと思うのです。  といいますのは、私、実は情報公開法も担当になっておりまして、今議員立法でつくっているのですけれども、確かに痛感しているのですが、一番これが原因やというのを、省庁が悪いとか、何でも結構なのですが、漠然とした質問で本当に恐縮なのですが、一つずつお伺いできないでしょうか。
  380. 森嶌昭夫

    ○森嶌昭夫君 大変申しわけないのですけれども、立法者がきちんとしていないためにいろいろなところがコントロールされていない。もう少しきっちりと社会を眺めて立法を速やかにやっていただきたいと思います。
  381. 青山貞一

    ○青山貞一君 これを言うと石をぶつけられるかもしれないのですが、やはり私は国民が悪いと思います。国民がそういうものを必要としない。僕はまだ日本が先進国だと思っておりません。  ついこの間、日本が嫌になってアメリカに行ってしまった友達がいまして、彼から私にインターネットでメールが来ましたけれども、一八〇〇年ですか、ワシントンDCに連邦政府が移ったときのアメリカの役人の数が百三十七人だった。そのときの日本の江戸時代の武士の数が数十万。それが象徴しているように、それは数の話なのですけれども、いかに小さな政府で効率的にやっていくかということがベースにあれば、当然情報開示はしなくちゃいけない。ところが、やはり、国民が欲したのかどうかわかりませんけれども、今の政府は効率が非常に悪いと僕は思います。効率の悪い中で情報非開示ということは、もっと悪くする。それで、先ほどからの公共事業も暴走する。  ですから、先生方の立法府もそうですし、司法も、裁判が物すごい時間がかかるわけです。それも早くしてもらわなくちゃいけないし、自分たち自身も、利害で選ぶのじゃなくて、本当に政策で頑張っている先生たちを選ぶようなものにならなくちゃいけないですから、今まで行政と立法の悪口を言っていたのですけれども、私は、自分を含めて、やはり国民がもっと目を見開かないと情報公開法はいいものはできないと思います。
  382. 河野昭一

    河野昭一君 私も一言だけで言いますと、やはり一つには、今の制度の中で情報が自由に開示されるような形になっていないということがあります。ですから、実際に開示請求しても、非常に時間がかかって、なかなか思う情報が出てこないというようなことがあります。  それから、いろいろな制約の中で紙がかぶせられて、その部分は見せてもらえないといったような形で、せっかく情報が公開されているのだけれども、肝心のところについては事実上全く非開示と同じような形でしか、半端な形の情報しか流されてきていないという部分があります。これを直さないとなかなか本質的な問題の解決につながっていかないのじゃないかと思います。  それから、もう一つは、青山先生が言われたのとは全く別な意味で、日本人の村社会的な性格というのが非常にきつくきいておりまして、大都会においては、そういった情報が提供された場合においても、ある程度その情報の真偽や価値というものを評価しようということがあるわけですが、地方に行っていろいろな環境問題に取り組む中で、地域社会の中での受けとめ方というのは都市住民とは違った形の受けとめ方がなされていて、これは非常に難しい問題だと思います。実際に情報がそこで提供されていても、見ない、聞かない、言わないというような形でしかそれが受けとめられていないというのが一つ背景にあるのではないかと思います。
  383. 村松昭夫

    ○村松昭夫君 行政がどうして情報を公開しないのかということで考えていることだけを言いたいと思うのですが、二つありまして、一つは、やはり都合の悪い情報があるのだろう、率直に私は、そういうのがあるのだろうと思います。  しかし、もう一方では、こんな情報をどうして公開しないのかと思う情報さえ公開しないという局面があると思うのです。それは、僕は基本的には民主主義の問題だと思うのですが、いわゆる行政側が、もっと住民、国民を信頼をするというか、私は先ほども住民参加のところで強調したのですけれども、住民というのは非常に経験を持っているし、知識もあるし、情報を持っている、そういうのを本当に吸収していくことの方がよりいい方向になるのだということについての確信がないのだろうと思うのですね。  もっと言うと、そういうことで本当にすばらしい行政を進めたという経験がないことが、同じような、だんだん情報を隠していくという方向に逆に行っているのではないか。本質的にはそれは民主主義の成熟度の問題だと言ってしまえばそれまでなのですが、そんなふうなことを思っております。
  384. 島津康男

    ○島津康男君 辻元先生と同じで、一番後になりますと言うことがなくなってまいります。  次元の低い話ですけれども、先生方、一度アセス準備書、これをぱらぱらとでも見ていただきたいと思うのです。どんなものかということがおわかりになると思います。つまり、情報公開というものの中心が今そういう文書による公開なのですけれども、その書き方の下手なことというか、わかりにくいことというか、英語で言うと、リーダブルでないのですね。理解させようというふうになっていない。これは、悪くとれば、知らせたくないというふうに、誤解かもしれないけれども、そう思う人がいる。だから、そういうレベルにあるということから始めていかなくちゃいけない。  以上でございます。
  385. 辻元清美

    辻元委員 長時間にわたりまして、どうも本当にありがとうございました。  私の質問はこれで終わります。
  386. 佐藤謙一郎

    ○佐藤座長 これにて委員からの質疑は終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  意見陳述者の方々におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。  拝聴いたしました御意見は、法案の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼を申し上げます。  また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、深甚なる謝意を表する次第であります。  これにて散会いたします。     午後四時三十一分散会