○岩國
委員 おはようございます。岩國哲人でございます。太陽党を代表して
質問させていただきますので、よろしく
お願いいたします。
私は、随分長い間、外国に生活しておりました。家族と一緒に
世界各地の海や湖や川を見てまいりました。開発や汚染に苦しんでいるところもありますけれ
ども、生活の資源として、あるいは健康や住
環境を守るとりでとして、あるいは景観の資源として、海や湖に対する国民の関心は極めて高く、お
役所も当然のことでありまつけれ
ども、その保全を最優先の行政
課題とせざるを得なくなったのが約三十年前からの
世界的傾向となっていると思います。
ニューヨーク在住中でありますけれ
ども、ビジネス・ウイークという一流の経済誌が、その表紙に、見た人がびっくりするような写真を載せたことがあります。それは、きれいな水面の上に大きなしゃれこうべ、骸骨の絵がかかれた表紙でした。その特集記事というのは、私たちがうらやむようなあの大きなアメリカ、広い自然、そしてきれいな空気と思っておったあの国でさえも、いつの間にか、大きな海や湖やそして川が侵されておった、汚染されておった。そして、そこの生物が死に絶えていき、あるいは魚が汚染されている、このような特集記事でありました。
開発よりも
環境という考えは、もはや少数派の
意見ではなくなっております。
世界の水の風景でも、私は特に心に残りますのは、イタリアのベニスであるとか、フランスのアネシー湖、あるいはユーゴスラビアから見たアドリア海等々であります。その風景は、いつまでも鮮烈な地上の美として私たち家族の心をとらえ続けております。
外国の友人に、
日本にもきっと水のきれいな景色のところはあるでしようと。私は、いろいろなたくさんのところが思い浮かびますけれ
ども、その
一つとして挙げておりますのが山陰の松江市であります。中海、宍道湖の典型的な
日本美を持つ松江市は、いわば和風のベニスだと私は表現しておりますけれ
ども、そのような宍道湖を、そして
日本海を眺めながら育ったことを私は大変誇りにし、また、この
環境問題についてもひとしお私は関心を持つわけであります。
小さなとき、小学校二年生から私はずっと百姓、農業をやっておりました。キュウリ、ナスビ、トマト、カボチャ、大根をつくり、芋を植え、麦を植え、そして麦踏みをしながら、あの荒々しい
日本海を眺め、そしてまた夏の優しい
日本海も眺めてまいりました。
こうした山陰の人のみならず、多くの
日本人がこの
環境アセス法の誕生を待ちに待っていらっしゃるのではないかと思います。
OECD二十九カ国の中で二十八カ国が既に実施している、つまり
日本だけがまだこの
法律を持たないということは恥ずかしいことであり、ようやくその日が近づいたことを大変うれしく思っております。今まで
関係者の皆さんが何度も
努力し、そして挫折し、数え方によっては七回挫折があったと言っておりますけれ
ども、まさに七転び八起きの結果として誕生するこの
環境アセス注は、そうした苦労の後だけに、私は、名実ともに充実し、そして
世界に誇れるものであってほしいと思います。
そのような
観点から、きょうは
幾つか
質問させていただきたいと思います。
ブラジルで
世界環境会議が行われました。その
世界環境会議に出発するに当たりまして、竹下登元
総理は、新聞紙上、多くの人たちに次のように語っておられます。「今や、
環境を論ぜざるは、知性と教養と良心と勇気なき政治家といえる」、私はこれはまさに世紀の名言であると思います。名言であるというのは、そのとおり実行されればという話であります。
今、島根県、鳥取県の中海で何が起きているか。きょうは、具体的に中海を例に取り上げながら、それに
関係いたしますこの
環境アセスメント法について
質問させていただきます。
中海・宍道湖を守る国
会議員の会というのが結成されたのが、つい二月であります。自民党を除くその他の政党すべて、六党派による超党派の議員連盟は、この中海、宍道湖の景観美、そしてこの
環境を守る、むだな公共
事業にストップをかける、そのような共通の目的で結成されております。
まず最初にお伺いいたしますけれ
ども、この
環境アセス法の中における住民参加についてであります。
法案には、住民等が関与し得る
手続と項目が記載されておりますけれ
ども、
法案の範囲では、住民は
環境情報の単なる
提供者にとどまり、公正な
判断と
環境配慮に向けた合意形成をなすことはできないのではないかと思われます。
なぜならば、住民の
意見に対する
事業者の見解書の作成
義務など、
事業者がとるべき措置が不十分であり、したがって、住民等の
意見を
事業者の意思決定に反映する仕組み、
手続が欠けているからであります。住民参加
手続が不十分だと、
環境アセスメントはいたしましても、住民との合意形成に役立たないことが危惧されます。
中海干拓を例にとれば、このことはよくおわかりいただけると思います。
日本経済新聞は、昨年三月二十四日の社説において、中海干拓に反対するという
意見を掲載しております。政府が既に数百億円をつぎ込んだ中海干拓
事業に、なぜ
一般的には経済界寄りと理解されているような日経新聞が反対するのか。その社説には、「私たちは干拓再開に反対する。 第一の理由は、
環境問題など地域住民の理解が得られていないことだ。」と書かれております。この社説は、
アセスメント法のあり方に大きな示唆を与えるものではないでしょうか。
太陽党は、去る三月、新進党との合同
調査団を島根県に派遣いたしました。そして、地元で
環境問題についての合意形成がなされていないことが判明いたしました。
事業に伴う水質、景観などに住民から多くの疑問が出されておりますが、疑問を氷解させるに足る農水省側及び県の見解
説明や住民との
意見交換が不足しております。この不足が国、県と住民との対立を拡大し、長引かせております。
そうした干拓後の土地の利用計画におきましても、県の
説明と農水省の
説明が全く異なっている。このような膨大な国費を注ぎ込みながら、なぜこのように国の
事業で、そして県が実施しております。そのような中で大きな違いが生じているのか、私は全く理解ができませんでした。
国の
説明は、牧畜、酪農などはそこではいたしませんということであります。にもかかわらず、県のパンフレットには立派な牛の絵がかかれ、そして、島根和牛のようなおいしい肉がここで生産されます、このようなパンフレットが島根県じゅうに配布されております。そして、
質問に対しても、そういった牧畜を考えているということであります。その一週間前に、私は、農水
委員会で農水大臣から、そのようなことは考えておらないと。
なぜこのような大きな食い違いのままにこの
事業が今再開されようとしているのか、これも大きな問題ではあります。
中海干拓
事業は、昭和四十八年改正の公有水面埋立法以前の旧法適用の
事業とされておりました。
現行環境アセスメントも適用されていないことは承知しております。しかし、
現行環境アセスメントでも住民との合意形成
手続は不十分であり、この合意形成
手続の不備を改めることを今回の
環境アセス法では明確にすべきであると思います。
具体的には、第一に、
環境影響評価に関する
情報の
公開を徹底するための具体的な
規定を設けること。第二に、
説明会の開催及び住民等と
事業者が相互に
意見の交換と協議ができる場としての公聴会の開催を
義務づけること。第三に、住民等は、必要に応じて
手続の開始から事後のフォローアップの
手続までのいつでも
意見を提出できるようにし、住民の
意見に対する
事業者の応答
義務、例えば見解書の作成と公表などを
規定することが必要であると思います。
これに対する長官の御
意見をお伺いいたします。