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1997-04-18 第140回国会 衆議院 環境委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月十八日(金曜日)     午前九時三十分開議  出席委員   委員長 佐藤謙一郎君    理事 杉浦 正健君 理事 萩山 教嚴君    理事 村上誠一郎君 理事 持永 和見君    理事 長内 順一君 理事 田端 正広君    理事 小林  守君 理事 藤木 洋子君       大野 松茂君    河野 太郎君       桜井 郁三君    桜田 義孝君       鈴木 恒夫君    砂田 圭佑君       園田 修光君    目片  信君       大野由利子君    武山百合子君       中村 鋭一君    並木 正芳君       西川 知雄君    松崎 公昭君       桑原  豊君    細川 律夫君       辻元 清美君    岩國 哲人君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石井 道子君  出席政府委員         環境政務次官  鈴木 恒夫君         環境庁長官官房         長       岡田 康彦君         環境庁企画調整         局長      田中 健次君         環境庁企画調整         局地球環境部長 浜中 裕徳君         環境庁大気保全         局長      野村  瞭君         環境庁水質保全         局長      渡辺 好明君  委員外出席者         外務省経済協力         局調査計画課長 吉田 雅治君         資源エネルギー         庁公益事業部発         電課長     真木 浩之君         建設大臣官房技         術調査室長   渡辺 和足君         建設省河川局開         発課長     竹村公太郎君         環境委員会調査         室長      鳥越 善弘君     ————————————— 委員の異動 四月十七日  辞任         補欠選任   園田 修光君     奥山 茂彦君   土井たか子君     辻元 清美君 同月十八日  辞任         補欠選任   奥山 茂彦君     園田 修光君   中村 鋭一君     西川 知雄君   桑原  豊君     細川 律夫君 同日  辞任         補欠選任   園田 修光君     奥山 茂彦君   西川 知雄君     中村 鋭一君   細川 律夫君     桑原  豊君     ————————————— 本日の会議に付した案件  環境影響評価法案内閣提出第七八号)      ————◇—————
  2. 佐藤謙一郎

    ○佐藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出環境影響評価法案を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河野太郎君。
  3. 河野太郎

    河野(太)委員 河野太郎でございます。  この法案は大変大事な法案であると思いますし、この法案日本にとって絶対に必要だと思います。環境庁長官を初め、関係者の御努力で無事に国会にこの法案が提出されました。本当にお疲れさまでございます。しかし、少し中を読みますと確かめたいことが幾つかございますので、幾つか教えていただきたいと思います。  きょうは通産省資源エネルギー庁の方から真木課長もいらっしゃっておりますが、当初、お役所の方から説明を受けたときに、環境アセスメント法案をつくるけれども発電所がこのアセスメント法案対象にならないというような御説明がございました。特に、通産省の方からは、この環境アセスメント法案と今までやっている発電所アセスやり方とは相入れないものであると。ですから、これは別建てで、二本立て法律としてやっていくんだ、そういう説明が随分ございました。ところが、途中からだんだん、発電所に関するアセスもこのアセスメント法案の中に含まれていく。そして、最後はこれに含まれて、なおかつ、通産省の方も、現行法案を改正して、二本立てとは言いませんけれども、一本立て半のような形になりました。  当初と比べますと大分その辺が変わってきたわけでございますが、通産省環境庁の間で一体どういうやりとりがあって、どういうことで通産省の方は二本立てから一本半というようなやり方に変わっていったのか。その間の内容を少し環境庁及び通産省の方から御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  4. 田中健次

    田中(健)政府委員 この環境影響評価制度見直しに当たりましては、実は、平成五年の環境基本法成立時点でこのアセス制度について御議論がございました。その環境基本法を受けまして環境基本計画ができ上がりまして、そこで法制化も含めて制度見直し検討するということになりました。  私どもといたしましては、この制度見直しに当たりまして、各般の、幅広くいろいろな研究から進めて立派な制度をつくっていきたいということで、実は調査研究をこれは関係省庁一体となって行うということで、関係省庁が二年有余をかけまして十数省庁でその検討をいたしてまいりました。そういうことで、一つ研究の成果がございます。それから、中央環境審議会におきます審議に際しましても、幹事会を設けまして、関係省庁十分調整を図りながらこの作業を進めてきた、こういう経過があるわけでございます。  発電所取り扱いにつきましては、その過程でもいろいろ議論がございまして、どうすれば実効性のある制度とすることができるか、実効のある制度とするためにどのような制度発電所については適切か、こういう観点から通産省とも調整を行ってまいりました。そういうプロセスを経まして、ことしの二月十日に中央環境審議会から御答申をいただいたわけでございます。  それから、二月十二日には衆議院の予算委員会で御質問がございまして、橋本総理から答弁をいたしましたけれども、要は、発電所環境影響評価法案対象事業として一般手続環境影響評価法手続に従う、そうした上で、やはり発電所の特性がございますので、他の事業と異なる特別な手続電気事業法規定をする、こういう調整を図った次第でございます。
  5. 真木浩之

    真木説明員 法制化に至ります経緯につきましては、ただいま環境庁の方から御答弁があったとおりでございますけれども法制化に際しまして、実効のある制度とするという観点から、環境庁を含め政府部内でいろいろと調整を行ってきたところでございます。  その過程で、通産省といたしましては、発電所アセスメントについては、過去二十年間にわたりまして他の事業とは異なったスキームアセスメントを実施してきておりまして、これによりまして世界最高水準環境保全実績を上げてきておりますし、また、この制度自体が、関係いたします住民、地方公共団体、あるいは事業者などの間で定着をしてきているものでございます。  それから、発電所アセスメント行政指導でこれまでやってきたわけでございますけれども、実際の運用に当たりましては、電気事業法工事計画認可というような諸規定がございますけれども、そういう規定と一体的に運用してまいったものでございます。また、大気汚染とか騒音とか振動とか、そういう公害関係の規制がございますが、これについても電気事業法の中で取り扱ってきておりましたので、このアセスメントにつきましても、そうしたこれまでの取り扱いをベースにして考えますと、電気事業法の中で一体的に規定をすることが適切ではないかというふうに判断をしていたところでございます。  その後の状況でございますが、ただいまも御説明ありましたように、二月十日に中央環境審議会答申が出まして、発電所を含め大規模な事業については例外なき法制化という考え方と、それから二月十七日に電気事業審議会の報告が出ておりますけれども、これは、これまでの発電所アセスメントスキームを踏襲し、中央環境審議会で出されました法制化に当たって盛り込むべき原則というのがございますが、これをすべて満たした上で、これまでのスキームを踏襲していくことが適切であるというようなことでございます。  また、二月の十二日には、総理の御答弁がございまして、発電所統一法対象に入れる、各事業共通手続はその法律の適用を受け、発電所に固有の手続については別の法律で、電気事業法規定をするという考え方もあるということで事務方検討を指示をしたというようなお話もございまして、そういうことを受けて政府部内で調整をいたしました結果、発電所のこれまでのアセスメント実績、あるいは発電事業が電力の安定供給という国の政策とのかかわりという問題がございますので、そういう点を考慮いたしまして、今回御審議お願いしておりますような形の法案になったわけでございます。
  6. 河野太郎

    河野(太)委員 今のお二人の答弁に全く納得ができません。どういう対立がどういう経緯で解けたのかということをお伺いをしているわけですが、何か時系列的な経緯を御説明をいただいただけで、答弁になっておりません。もう一度御答弁をいただきたいと思いますが、ちょっと時間の方も関係がございますので、一番最後にもう一度今の質問に戻らせていただいて、ちょっと次の質問に先に移らせていただこうと思います。  中央環境審議会議事録を先日いただきまして、いろいろと読ませていただきました。もう少し具体的に申しますと、平成八年六月二十八日の第二十五回の会合から三十八回目の取りまとめ会合までの議事録をいただきました。いただいた目的は、小出五郎さんという委員の方がいらっしゃいますが、その方の発言についていろいろとどういうことを言われているのか見てみたい、そう思ったわけでございます。  ところが、いただきました議事録を見ますと、どなたが発言されたかということが書いてないわけですね。小出五郎さんの発言を調べようと思いましても、お名前が出ておりません。この中環審答申に基づいて法律案をつくったということでございますから、ここで何が話されてどういう取りまとめが行われたかというのは非常に大事なことだと思うのですが、この議事録を見る限り、どなたが何を発言されたかということが全くわからないわけでございます。  それからもう一つは、十一月十九日から十二月六日まで、三回に分けて小委員会が行われて、たたき台が作成されておりますが、そのたたき台の作成の部分の議事録になりますと、審議事項ということがぼんぼんぽんと四つ、五つ書いてあるだけで、発言内容とか会議内容が一切載せられておりません。  これだけ重要な環境アセスメント法案というもの自体が、この中環審答申に基づいて法律案をつくったということであるにもかかわらず、全くこの会議議事録が不完全で、だれの発言かもわからなければ、たたき台がつくられた過程もわからない大変不十分なものだと思うのですが、これをもう少し完全なものにして再発行する御予定が環境庁の方にあるのか。あるいは、これ以降の環境庁の所轄の審議会議事録が、こうした不備を正して、きちんとどなたの発言かわかり、審議過程がわかるようなものにしていただけるのかどうか。その辺の御答弁お願いしたいと思います。
  7. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  中央環境審議会会議録発言者氏名を示すか否かにつきましては、各部会運営に関する事項でありまして、各部会長が決定することとされております。御指摘企画政策部会におきましては、会議録公開する場合には発言者氏名は伏せるものとするということが部会長によって決定されております。  これは、私どもそんたくいたしますのに、私ども立場としてはそんたくしかできないわけでありますが、恐らく、委員会審議内容を、こういう議論があったというようなことを積極的に公開していこうということと、恐らくは、一方で、自由濶達意見を言う場でありたい、この辺を勘案してこういうのをお決めになったのではないかというふうに考えております。  いずれにしましても、私ども事務局といたしましては、審議会の具体的な運営につきましては、法令に別段の定めがある場合を除きましては、当該審議会において決定されたものを尊重すべき立場にあるということにつきましては御理解いただきたいと思います。
  8. 河野太郎

    河野(太)委員 法律をつくるもとになる審議会議論をするのに、自分名前が出ては自由濶達議論ができないから名前を伏せてくれ、そういう人間がメンバーとして入っているのは非常に民主主義世界としておかしいことではないかと思います。自分名前が出るなら私の思うとおりの発言は差し控えさせていただきたい、そういう方であるならば、こういう審議会メンバーに選ばれるべきではないのではないでしょうか。  これをもとに法律をつくる、そういう答申をつくる審議会であるならば、その審議会委員自分はこういうことを発言したのだと堂々と世間に向かって発表して何ら恥じるところはない、そういう方を選んで、そういう方がきちんと議論をすべきではないかと思います。名前を出すと議論自由濶達にできないということであれば、それは参考人として意見を御参考にさせていただく、その程度でよろしいのではないかと思います。いかがですか。
  9. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答えします。  大変失礼いたしました。私が余分なことをそんたくして申し上げたためにそういう議論になったかと思います。私どもはそんたくすべき立場にしかないものですから、ちょっと余分なことを申し上げて、大変御無礼いたしました。どういう意向でそうなっているかについてまでは私ども本来申し上げるべきではなかったものですから、大変余分なことを申し上げたと思っております。  ただ、繰り返しますが、いずれにしましても、審議会具体的運営につきましては、審議会の各委員先生方の御判断によってなされているところでございますので、今御指摘にありました点につきましては、先生の御意見も踏まえまして、機会をとらえて部会長ともまた相談はしてみたいとは思っております。
  10. 河野太郎

    河野(太)委員 部会長部会長責任において会議運営されていくということに私は全く異存はございません。ただし、その以前の大前提として、審議会委員の方は名前を出してきちんと発言をしていただく、そしてそれを記録にとどめて公開をする。これはその部会長意向の前に、もうそれは当然のことである、そういう大前提でやはり審議会というものが動いていかなければいけないと思います。  今後、環境庁審議会を開催するに当たりましては、まずその委員の人選のときに、委員の皆様の発言はすべて公開をされる、そういう前提委員をお引き受けいただけるかどうか、そういうところから始めていただきたい。そして、その審議会会議録というのは、人名も含め、だれがこういう発言をしたか、そういうことがきちんと記録に残る、そういう前提でぜひともお願いをさせていただきたいと思います。  少し先へ進めさせていただきます。  この議事録を見ておりますと、公告縦覧やり方についていろいろなコメントが出ておりますが、審議会の中に入る前に、現行法律でいろいろ環境アセスに関連する文書公告縦覧することになっておりますが、具体的にどういうやり方をするのか、まず教えていただきたいと思います。
  11. 田中健次

    田中(健)政府委員 ただいまの閣議アセスでとられております公告とか縦覧のお尋ねでございますけれども公告につきましては、官報あるいは新聞等に掲載をするということ、あるいはまた都道府県協力を得て公報に掲載する、こういうことで行われていると思います。  それから、縦覧につきましては、一般の人々が行きやすい便利な場所ということでございまして、こういうことでいろいろ工夫して行われておると思いますが、都道府県や市町村の庁舎等をお借りして縦覧をしている、こういうこともあろうかと思います。
  12. 河野太郎

    河野(太)委員 ありがとうございました。  この議事録を見ますと、例えば第二十八回の会議の中でこういう意見が出ております。情報公開について「今日提案したいのは、インターネットを通じた評価書データ提供だ。」「こうした諸データ公開し、役所に取りに行かなくても、インターネットからアクセスして簡単に取得できるようにすることが環境アセスメント基盤として非常に重要である。」そういう意見が第二十八回に出されております。  また、第三十一回目の会議に、「それだけではなくて、情報電子化をきちっと義務づけるべきではないか。これは情報公開するという電子化ももちろんだが、同時に、電子化とは双方向ということを保証する面でもある。」そういう発言がございます。同じ第三十一回に、「今の時代なのだから、もっと電子手段情報が流れるようにしたらいいではないか。」そういう意見もございます。  第三十三回目の会議に同じように、「情報の発信あるいは受信の限界をできる限り広げていく。」「パソコンを利用したネットワーク環境アセスメントの中核に据えていく必要があろうかと考えている。」あるいは「先ほどからの流れで非常に気になることは、情報というのは、依然として印刷物のような形で公開しなければならないというのが基本なのか、その辺が大変疑問である。」  このように、この問題に当たって情報電子化して提供をすべきではないか、そういう意見が、この審議会議事録を読ませていただきますと、かなり多くの発言がございます。  ところが、最後答申の中にはこうしたことが全く触れられておりません。こうした発言がたくさん出されているにもかかわらず、答申でこれが落ちてしまったのはどういう過程でなのか、その辺を教えていただきたいと思います。
  13. 田中健次

    田中(健)政府委員 今先生からいろいろ御紹介がございまして、中央環境審議会審議過程でいろいろ御意見がございました。そういう御意見を集約をいたしまして、答申でも、「環境影響評価を支える基盤整備」というところにこういう表現がございまして、「この際、情報へのアクセスの向上等観点から電子媒体活用等も図られるべきである。」こういうことで、答申の中にも御意見としてちょうだいをしております。
  14. 河野太郎

    河野(太)委員 そこまで答申であるにもかかわらず、依然として、官報に載せるあるいはどこかの軒先を借りて文書公開するということになっているだけでございます。そこまで議論が行われ、そういう一行が入っているのならば、インターネットを利用するあるいはそれに近いメディアを利用することをなぜ環境庁は今回やられないのでしょうか。
  15. 田中健次

    田中(健)政府委員 今回、この法律成立をいたしまして、その公告縦覧につきましては、方法書あるいは準備書の適切な周知が行われるように、具体的な方法等に関する総理府令を定めるということで、総理府令をどう適切に定めるかということで検討してまいりたいと思います。  それで、御提案のございました、インターネットを活用して公告縦覧を行うという御提案でございますけれども、これにつきましては、我が国におきます普及や利用状況等を勘案しながら、今後の重要な検討課題としてまいりたいと思っております。  こういうことで、環境庁といたしましては、今年度予算におきまして環境影響評価情報支援ネットワーク事業というのを開始いたしまして、過去のいろいろな環境影響評価事例あるいは調査等技術的手法に関する情報インターネットを通じて提供をしたいということで、それに取り組んでまいりたいと思いまして、そうした中で、御指摘の点につきましても、公告縦覧インターネットでやるということにつきましても、できるだけ早くできるようにいろいろ工夫をしてまいりたいというふうに思っております。
  16. 河野太郎

    河野(太)委員 ぜひ、総理府令の中に電子情報を盛り込んでいただけるように御努力をいただきたいと思います。  これは、評価書その他をインターネットで引き出して読むことができるということ以外に、調査で収集した生のデータをそういう形で電子的に引き出すことができるということももう一つ重要な課題であろうと思いますので、そうした側面も考慮していただきますようにお願いをしたいと思います。  さらに、今お話がありました、環境庁でいろいろとネットワーク整備をされているということでございますが、評価書をつくる事業者文書の形でドキュメントをつくるわけですから、環境庁が定めたサーバーになるのかどうかわかりませんが、事業者責任において、事業者がそういう電子的なコンテンツ提供するということになろうかと思います。それは、いずれそういうことが法整備された場合に、事業者文書の形でコンテンツ提供する、並びに電子情報事業者がその責任において提供するということになろうかと思いますが、御確認をよろしくお願いいたします。
  17. 田中健次

    田中(健)政府委員 先ほど申しましたように、当面は環境庁の方でやっていきたいと思いますけれども、将来は、先生おっしゃったような、事業者にそういうことを課するということを考えていきたいと思います。
  18. 河野太郎

    河野(太)委員 当面環境庁の方でやっていきたいということでございますが、どういうことなのか理解に苦しみます。  事業者文書ドキュメントをつくっているわけですから、それをそのまま電子化して提供するのは、事業者がそのままできることでございます。それを何ゆえに環境庁が当初はやるのか、そのあたりを少し教えていただきたいと思います。
  19. 田中健次

    田中(健)政府委員 現在はその義務を課しておりませんので、御趣旨を踏まえて検討させてください。
  20. 河野太郎

    河野(太)委員 事業者ができることを環境庁がやるということは、今の行革の精神に全く反することだと思います。義務を課していないから事業者がやらないということであれば、事業者になるべく早く、なるべく速やかに義務を課して、そういう電子的な情報提供させるようにすべきであって、その間のブリッジを環境庁がやる必要はないと思いますが、いかがでしょうか。
  21. 田中健次

    田中(健)政府委員 私どもは、環境に関するいろいろな情報環境の実態あるいは技術的な問題等、幅広く情報をいろいろなところに提供するというのも立派な職務であるというふうに考えておりまして、その一環として考えておったわけでございますけれども先生の御趣旨等も踏まえまして、いろいろと考えていきたいと思っております。
  22. 河野太郎

    河野(太)委員 電子情報の場合、情報提供するということは、そのコンテンツがどこにあるかを提供すれば利用者コンテンツにたどり着くことができるわけでございますから、それを環境庁コンテンツ提供するということとは違うものだと思います。その辺、むだのないように御検討をいただきたいと思います。  通産省の方も、こういう情報提供を電子的にやられることについて何か御異議はありませんでしょうか、御確認お願いします。
  23. 真木浩之

    真木説明員 御指摘のありましたように、インターネット等を通じて広く情報提供するということは、非常に意義のあるものであるというふうに考えております。  環境庁の方の検討とあわせて、通産省といたしましても、先生の御趣旨の線に沿って検討してまいりたいというふうに思っております。
  24. 河野太郎

    河野(太)委員 済みませんが、持ち時間がほとんどなくなりましたので、もう短くて結構ですから御答弁をいただきたいと思います。  この環境アセスメント法案は、いわば日本の国の中だけの話でございます。ただ、環境の問題というのは、国境を越えていろいろ広がるところでもありますし、また、外国で環境が破壊をされるということは、同じ地球というところに住んでいる人類全員にとって痛みを伴うことではないかと思います。  例えば、日本ODAを利用して行われるような事業環境を保全するということに反していることがないか。今は余りチェックをするような規定がないようでございますが、例えばODAを利用して行われる事業もこの環境アセスメント法案対象にするのがいいのか、そこは少し違う話だとは思いますが、環境庁として、これから少なくとも、日本ODAが使われているような外国で行われている事業に対して、何か行動を起こすようなことを考えていらっしゃるかどうか、それだけ教えていただきたいと思います。
  25. 田中健次

    田中(健)政府委員 先生おっしゃいますように、この日本アセスメント制度を外国で行います事業に適用することは、これは主権の問題等もございまして困難でございます。  そういうことで、我が国によりますODAに係ります事業に関しましても、JICAあるいは海外経済協力基金、OECFがガイドラインを策定をいたしておりまして、そのガイドラインに基づきます環境影響評価が実施されておりまして、引き続きこうした取り組みを推進をしていきたいというふうに考えております。
  26. 河野太郎

    河野(太)委員 ありがとうございました。  一番最初の質問に本来なら戻りたいんですが、時間が終了してしまいましたので、また改めてその辺は何らかの機会にお伺いをさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  27. 佐藤謙一郎

    ○佐藤委員長 大野松茂君。
  28. 大野松茂

    大野(松)委員 自由民主党の大野松茂でございます。  私は、基本的なことを中心にいたしまして何点かお尋ねをさせていただきます。  環境影響評価法の制定は環境庁が発足以来の懸案と認識をいたしておりますが、本格的な審議が始まりましたことを喜んでいる者の一人でもございます。  環境基本法が制定されて三年が経過いたしました。石井長官は、環境基本法成立に大きく力を尽くされ、また、今日までこの環境影響評価にも深いかかわりを持って取り組んでこられたと仄聞をいたしているところでございますが、本法案提案については格別の感慨をお持ちだろう、こう思っております。  豊かな自然は、四季の変化を含めて我が国の固有の財産でございます。環境を守ること、緑と清流を守り、後世にこの美しい自然環境を残すことは私たちの義務でもあり、この豊かな自然の恵みを将来の世代に享受させることも私たちの権利である、こう私は考えております。この義務と権利こそ環境影響評価法基本大前提であろう、こうも思っております。  そこで、まず、次なる時代に向けた環境政策に取り組む長官の御所見をお伺いさせていただきます。
  29. 石井道子

    ○石井国務大臣 最近、環境問題につきましては、大きな関心を持ってまいっているところでございまして、この環境問題は、これから将来にわたって人類の生存のためにも重要な課題であると思いますし、今、社会の持続可能性の問題、そして、それは我が国の問題のみならず、地球環境の問題にも大きくかかわり合うわけでございますし、事業者とか国民の通常の活動に起因をしております環境負荷の集積の問題など、時間的な、また空間的な、そして社会的な広がりを持っているものと考えております。  このような環境問題のさまざまな変化に対応できますように、平成五年に環境基本法が制定をされ、環境の保全の基本理念とそれに基づく基本的な施策の総合的な枠組みが示されたわけでございます。  環境基本法におきましては、健全で恵み豊かな環境を維持しながら、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら、持続的に発展することができる社会を構築していくという基本理念が明らかにされております。環境影響評価制度は、そのもとで具体的にそれらの理念を実現するための手段を提供するものでありまして、国が講ずべき施策の一つとして環境基本法第二十条に定められているところでもございます。  私といたしましては、このような環境基本法の枠組みに沿って、その理念の実現に向けて環境行政に取り組んでいきたいと思っております。
  30. 大野松茂

    大野(松)委員 ありがとうございます。  私は、将来世代に引き継ぐべきこの義務と権利、これをあえて申し上げているところでもございますし、御理解いただいているところでございますが、この義務と権利を守り、支える手段として環境影響評価制度がある、こう思っております。御指摘のように、環境基本法環境影響評価の推進をうたっているところでもございます。  ところで、我が国の取り組みも、昭和四十七年、「各種公共事業に係る環境保全対策について」の閣議了解が行われて環境影響評価の嚆矢となりました。この取り組みは、先進諸国に比較いたしましても決して遅い取り組みではなかった、こう思っておりますが、それにいたしましても今日まで大変な時間の経過がございました。数えてみますと二十五年にもなります。  地方自治体では、昭和五十一年の川崎市の条例制定を先駆けといたしまして、今日までに、五十九都道府県、政令指定都市のうち、五十一団体で何らかの環境影響評価制度を有するところともなりました。そして、これらの中には、昭和五十年代の旧環境影響評価法案検討段階で制定された先駆的なものもあります。昭和五十九年の閣議決定要綱制定後、バブル経済期にかけて、閣議アセスメントに倣って制定された平均的なものもあります。また、平成五年の環境基本法の制定を受けて、新たな視点を踏まえつつ制定された先進的なものもあります。私の埼玉県もその中に入るわけでございますが、それぞれ今日まで先行的な役割を果たしてまいったものと思います。  ただ、閣議アセスメントにいたしましても、また大方の地方アセスメントにいたしましても、行政指導により実施するものでありますので、さきに発効した行政手続法で行政指導が排除されることになったために、改めてアセスメント制度のあり方についても実効あるものにするために法制化が求められている、こういうことにもなったはずでございます。  それで、本法案地方公共団体の条例や要綱による実績の積み上げの中でできたもの、こう言えると思いますが、これまで先行的役割を果たしてきた地方公共団体の条例、要綱などをどのように評価なさるのか、長官にお伺いいたします。
  31. 石井道子

    ○石井国務大臣 大野委員指摘のように、地方公共団体における条例や要綱の制定につきましては、昭和四十年代後半から始まっております。そして、現時点におきまして、条例制定団体が七団体、要綱等の制定団体が四十四団体、計五十一団体が独自の環境影響評価制度を持っているという状況でございます。  それで、環境行政におきましては地域の環境保全責任を有する地方公共団体の取り組みが大変重要でありまして、歴史的にも先行的な役割を果たしてまいったというふうに思っております。このようなアセスメントに対します取り組みについても、環境保全を促進するものとして評価をしているところでございます。  議員御指摘の埼玉県の問題につきましても、現在の土屋知事は、かつて環境庁長官に就任をいたしまして、環境アセスメント法案をつくるために努力をしたということも伺っておりますし、そして特別に環境問題には関心を持って、県の大きな施策の中心として環境を重視する県政ということを掲げているというふうに聞いております。この埼玉県の条例につきましては、全国で初めて一般意見を聴取するスコーピング手続を導入するなど大変先進的な取り組みをされておりまして、私は高く評価をしているところでございます。  法案成立後も、地方公共団体が積極的な取り組みを行っていただいて、国と地方が適正な役割分担のもとに、両者の取り組みが相まって実効あるアセスメント制度が的確に、適正に推進されることを期待しております。
  32. 大野松茂

    大野(松)委員 ありがとうございました。  閣議アセスメントにおいては、計画の概略が固まってから実施をするために、住民の意見によって環境への悪影響が明らかになっても、計画の大幅変更は大変難しいものがあったと思っております。  それで、本法案ではスコーピング手続を導入するなどいたしまして、知事、市町村長や住民から意見を聞くこととされております。地方アセスメントでいう住民は、当該地域の住民、在住者、在勤者、在学者など、このような限定をしておりますが、本法案では住民の範囲を限定しておりません。「環境の保全の見地からの意見を有する者」として、広い範囲の意見を聞くことになっております。  このことは画期的なことでございまして、私も評価しているところでもございますが、従来のケースの中には、当該地域の住民の了解を得られても反対運動団体の厳しい要求の中で立ち往生をする、このようなこともしばしばございました。  住民を限定しないことによって地域外から際限のない要求が出されたり、反対のみが強調されて事業の進捗に影響することが起きはしないか、こんなことも考えるわけでございますが、この点につきましてお答えをいただきます。
  33. 田中健次

    田中(健)政府委員 本法案におきまして、一般意見の聴取ということは、有益な環境情報提供いただく、環境保全の見地からの意見提供を期待するということでございます。  有益な環境情報と申しますのは、その地域の住民に限りませんで、環境の保全に関する調査研究を行っている専門家の方々、あるいは学識経験者、あるいはその地域に勤務をする方々、あるいは自然保護等の環境の保全に関心を持つ人々等によって非常に広範に保有されている、こういう状況にかんがみまして、また、審議会答申もございまして、意見を述べる者の範囲を限定しないということで法案を立案したわけでございます。  それで、この限定しないということによりまして、際限のない要求が出されるのではないかという御懸念でございますけれども、私どもといたしましては、まず事業者が項目を選定するに当たりましては、よりどころとなる指針を主務大臣の方で定めまして、それにのっとって項目の選定をすればいいということと、それから、事業者が必要に応じまして、いろいろ困った場合には、主務大臣に助言を求めることができるという法律構成にもいたしておりまして、こういう配慮によりまして、先生の御懸念されるようなことにはならないものというふうに考えております。
  34. 大野松茂

    大野(松)委員 いろいろな意見が出てくることは当然のことではございますが、そういう中で、例えば事業者説明会をするということになっても、その説明会そのものが拒否される、こういうことも今まで各市にしばしば起こっていたように思うわけでございます。  本法の中で、知事が意見を提出する際に市町村長の意見を求める、こうされております。一般に、事業について市町村長が意見を述べる場合、たとえこの賛否を示すものでなくても、意見を出すこと自体がこの事業にゴーサインを出したかのように受けとめられやすいものでございます。殊に、住民の範囲が限定されていないだけに、市町村長は意見を非常に出しにくくなりますし、そのことが市町村長に過重な負担になり、あるいはまた精神的にも市町村長を苦しめることになりはしないか、こうも思います。  また、そのことが住民投票につながる事態もまた想定されるわけでございますが、ともかく私はこのようなことに大変危惧をいたしております。それらについてどう対応されるお考えか、お示し願います。
  35. 田中健次

    田中(健)政府委員 ただいまも先生からお話ございましたように、この法案趣旨は、環境情報の収集を通じて事業環境保全上の適正な配慮を確保する、そうした目的でございまして、お話ございましたように、事業の賛否自体を問うものでは決してございません。  また、本法案において聴取をされました意見につきましては、事業者の側でいろいろと判断をして採否を決める、こういうことでございます。  また、そうしたことで、この法案におきましても、「目的」にも、事業に係ります環境の保全についての適正な配慮がなされることを確保するという規定とともに、それから、市町村長の意見も「環境の保全の見地からの意見」というふうに条文にも明確に規定をしておるところでございますけれども、いかんせん、先生おっしゃいましたような懸念もございますので、私どもといたしましては、以上申し上げましたような制度趣旨を国民の方々によく理解をしていただくということで、その制度趣旨の周知徹底に努めまして、そういう誤解のないように努めていきたいというふうに思っております。
  36. 大野松茂

    大野(松)委員 いわば、今お答えいただきましたことがこの法案の中でも大きな精神だろうと思うのです。それだけに、このことの趣旨が広く御理解いただけるような、そういう対応をぜひ進めていただくことも大事である、こう思っております。  次に、アセスメントの結果によりましては、別の開発方法をとらせたり、開発そのものをやめさせたりすることも検討されなければならないこともあろうかと思います。それには、利害関係のない第三者の方が公正な判断ができる、このように思っております。  地方アセスメントでは、専門的分野の委員から成る第三者機関を設定いたしまして意見を聞くこととしているところが大方でございます。そのことによって実効を上げてきている、こうも思っているわけでございますが、本法案では審議会規定しておりません。  アセスメントの審査に際しまして第三者機関を設ける必要はないのかどうか、改めてお伺いいたします。
  37. 田中健次

    田中(健)政府委員 この環境影響評価制度の信頼性を高めるということのためには、中央環境審議会答申におきましても提言をされておりますように、許認可を行う主務大臣等による審査に加えまして、第三者が審査のプロセスに意見を提出をいたしまして、それを通じて参画するということが大切であるというふうに、審議会からも提言をされておるところでございます。  こうしたことで、本法案におきましては、環境庁長官が第三者として意見を述べるという形になっておりまして、そうしたことで、客観的、なおかつ、公正な審査が確保されるようにしているところでございまして、私ども環境庁長官意見を申し上げる、その際には、必要に応じまして専門家の知識や経験も活用してまいりたいと思っております。そういうことで、さらに適切な意見の形成に努めまして、審査の信頼性を高めていきたいということで、必要に応じて専門家の知識や経験を活用していきたい、こういうふうに考えております。
  38. 大野松茂

    大野(松)委員 環境庁に係るいろいろな機関や組織があることも承知をいたしておりますが、ぜひ実効ある成果を上げられますようにお願いしたいと思うわけでございます。  それと、この法の中に、国と地方のアセスメント、これが重複した場合には、国の制度のみを適用するという形になっております。国より進んだ制度を持っている自治体もある、このようにも思うわけでございますが、この点はいかがでしょうか。後退を招くような事態にはなりませんでしょうか。
  39. 田中健次

    田中(健)政府委員 法律の六十条によりまして国と地方の制度の仕分けを規定しておるわけでございまして、私ども対象といたします制度は、国の立場から見て一定の水準を確保した環境影響評価をやる必要がある事業ということで、非常に大規模な事業で、環境に大きな影響を及ぼすおそれのある事業というのを対象にいたしております。それでまた、国が直接やるか、あるいは許認可を通じてコントロールできる事業対象にいたしておるわけでございまして、その際にも、地方の意見をいろいろお聞きをするというふうなこともいたしております。  それから、本法案では、地方が実施をいたしておりません、ほとんどが実施をいたしておりませんスクリーニングやスコーピングの手続、あるいは事後のフォローアップ等も導入をいたしておりまして、決して地方の制度に比べて遜色はないということでございます。  なおかつ、私ども国が対象とする事業以外は、地方が引き続きアセスメントを進めていくということも可能なわけでございまして、私どもといたしましては、この法案成立をいたしましても、決して地方の取り組みが後退するということにはならないというふうに考えております。
  40. 大野松茂

    大野(松)委員 ぜひひとつ、そのような強い態勢をもってお願いしたいと思います。  この法案では、事後のモニタリング措置を位置づけております。予測の不確実性も考えられますことから、事後のフォローアップの措置をどのようにされるのか。また、アセスメントの結果と事後のモニタリングの結果が大きく異なるような事態も生まれることも考えられるわけでございますが、どのように対応されるのかをお尋ねしたいと思うわけでございますが、この新しい制度では、環境庁長官が述べることができるということが強調されております。事後評価の結果が予測と余り違うような事態になってしまいますと、私は、このことは環境庁の権威にもかかわることだと思っておりますので、あわせてお聞かせいただきたいと思います。
  41. 田中健次

    田中(健)政府委員 新しい、あるいは未検証な技術や手法を用いる場合等もございまして、予測の不確実性が伴うということもございます。そういうことで、事後のフォローアップは大切でございまして、法案では、準備書あるいは評価書に事後のフォローアップのことを記載をさせることにいたしております。  十四条におきまして、準備書に、環境の保全のための措置が将来判明すべき環境状況に応じて講ずるものである場合には、当該環境状況の把握のための措置を記載せよ、こういうことで、十四条にこれを記載をいたしまして、三十八条におきまして、評価書に記載されているところにより、環境保全についての適切な配慮をして事業者事業を実施をしろ、こういうことでございまして、これで、事後のフォローアップを担保をいたしておるわけでございます。  それで、先生お話にございました、事後に非常にモニタリングの結果がアセスの結果と異なったときにどうするか、こういうことでございますが、これにつきましては、私どもは、このアセスのプロセスで地方公共団体意見を申し上げる、あるいはまた、評価書の段階で環境庁長官意見を申し上げて、主務大臣も意見を出して、いろいろな角度からその環境影響評価内容検討をいたすわけでございまして、非常に大きな食い違いが出るということは起こらないように、いろいろな段階で配慮をいたしておるところでございます。  もし予測の不確実性ということでそういう問題が生じた場合には、これは、地域環境の保全の観点から地方公共団体がいろいろ対応するとか、あるいは、その事業を指導監督する立場から、主務大臣がそれぞれの制度においていろいろな対応をしていくことになろうかと思います。  環境庁といたしましても、こうした、事後に問題が生じた場合の対応でございますけれども、いろいろな環境法規で、例えば大気汚染防止法、水質汚濁防止法等で環境一般問題については対応いたしておりますのでそうした環境法規で適切な運用に努めたい、こういうことを考えております。
  42. 大野松茂

    大野(松)委員 ぜひそのような対応をお願いいたします。  昨年の秋に来日された国際環境影響評価学会、IAIA、ここのピエール・セネカル会長が、環境影響評価は未来を予測する試みだ、こうおっしゃっておりまして、アセスメントの難しさをその中にあらわしている、私はこう思っております。  我が国で、言うなれば法制化にぐずぐずしている間に、EUなどにおきましては政府機関のすべての政策や計画に環境配慮を求めるいわゆるSEA、戦略的環境アセスメントが広がりつつあります。我が国でも積極的にこれに取り組むべきものと考えておりますが、最後に長官の御所見をお伺いいたします。
  43. 石井道子

    ○石井国務大臣 我が国におきます環境行政の取り組みは、最近になりまして著しい進展を見ていると思います。そして、今回、ようやく長年の懸案でありました環境アセスメント制度成立をした暁には、それなりの充実した環境対策、環境行政が行われるものと確信するわけでございます。  ぜひこれからも、国際社会においてのおくれを取り戻すという意味でも、またおくれをとらない意味でも、そしてまた国際社会における地球環境問題を含めて充実した政策がとれるように、これからもさらにその推進のために努力をしていきたいと思っております。
  44. 大野松茂

    大野(松)委員 大変ありがとうございました。  この法制化というのは、言うなればゴールではなくて環境と開発の調和に向けた新しい出発点になる、私はこう思っております。  時間が参りましたので、質問を終わります。ありがとうございました。
  45. 佐藤謙一郎

    ○佐藤委員長 園田修光君。
  46. 園田修光

    園田(修)委員 私は自由民主党の園田修光でございます。  今までたくさんの委員の皆さん、議員の皆さんが質問をされておられる。私も、大変似通った質問もあろうかと思いますけれども、私自身が思っておりますことを少しだけ確認をさせていただきたいと思っております。  まず最初は、環境の保全の見地からの意見を提出できる者の範囲についてであります。  今国会の法案第八条及び第十八条では、「環境の保全の見地からの意見を有する者は、」「意見書の提出により、これを述べることができる。」とあり、意見を提出する者の範囲を地域住民に限定をしておりません。環境影響評価法案のねらいが、環境に関する情報を効率的にそして的確に収集するシステムを構築するということであり、事業者の適切な環境配慮に資することにあると思えば妥当な整理だろうと考えるわけであります。  すなわち事業が実施される地域の環境に関する情報は、地域の住民のみならず自然科学の専門家、他地域から通勤している人、さらにはその地域をふるさととする人々などもその地域の環境について有益な情報を持っている可能性は排除できないからであります。  しかしながら、地域が社会的、経済的に健全に発展をし、住民が安心して生活していくためには、十分に環境配慮が払われつつ一定の事業が行われなければならないこともまた事実であるわけであります。そういう点で、意見を提出する者の範囲を限定しないために、都市部の人々の意見によって地元が必要とする事業が滞るのではないかという心配をしているわけであります。  そのことについて環境庁はどのようにお考えになられているのか、お聞かせいただきたいのです。
  47. 田中健次

    田中(健)政府委員 今お話がございましたように、幅広く環境情報を収集するという観点から、意見を述べることができる者の範囲を限定しておりませんが、御指摘のように都市部の意見によって地元が必要とする事業が滞るのではないかということについてでございますけれども、ただいまも申し上げましたように、本法が求めておりますのは、その地域の住民の意見であるかどうかを問わず、環境保全の見地からの有益な環境情報としての意見でございまして、繰り返し申し上げておりますが、決して事業の賛否に関するものではないということでございます。  そうしたことで、いろいろなそのための条項もつくっておりまして、主務大臣が指針をつくったり、あるいは主務大臣に意見を求めることその他もできるわけでございまして、そうしたことで直ちに事業が滞るということにはつながらないのではないかというふうに考えております。そうしたことは考えにくいのではないか。  いずれにいたしましても、この環境影響評価意見の性格あるいは制度そのものの趣旨という事柄について国民の理解が大切でございますので、制度趣旨の周知徹底に努めていきたいというふうに考えております。
  48. 園田修光

    園田(修)委員 よくわかりました。  次に、環境影響評価の具体的な実施についてであります。  住民や知事が環境の保全の見地からの意見事業者に対して述べる機会は、方法書準備書の二回設けられております。これらの意見、特に一般意見については、地域住民に限らず提出できることから、閣議アセスに比べて数も相当ふえ、内容も多彩になると考えます。特に、自然科学の専門家の方々からは調査をすべき項目や手法について相当に高いレベルのものを求める意見が提出されることが予想されるわけであります。  そこで、調査項目や環境保全措置について事業者が物理的、経済的に対応できないようなものを求める意見が出てきた場合に事業者はどうすればいいのか、そこのところを教えていただきたいと思います。
  49. 田中健次

    田中(健)政府委員 事業者調査等の項目あるいは手法の選定をする場合、あるいは環境保全措置の検討を行うに当たりましては、あらかじめ主務省令によりまして、事業種ごとに調査等の項目等の選定やあるいは保全措置のための指針が示されまして、これに基づきまして項目等を選定する、こういうシステムになっております。  この事業種ごとの指針は、法案の第十一条三項の趣旨等によりまして、既に得られている科学的知見等を踏まえまして、実行可能、かつ、合理的な範囲で調査等やあるいは環境配慮が行われるべき旨規定されているものと考えております。したがいまして、事業者は、この考えに基づきまして、環境保全の見地からの意見内容検討を加えまして、科学的、かつ、合理的な範囲でこれを取り入れるかどうかを判断すればよいものと考えております。  御指摘のように、客観的に見て、物理的あるいは経済的に不可能な意見まで事業者に取り入れることを求めているものではございません。  なお、先ほども申し上げましたが、この項目あるいは手法の選定に当たりまして、事業者判断に迷うという場合には、主務大臣の技術的な助言を受けることができることになっております。  また、環境保全措置につきましては、事業者の見解を整理をいたしました上で、準備書段階では都道府県知事、それから評価書段階では主務大臣と環境庁長官が、それぞれこれに対しまして意見を述べるということになっておりまして、この環境保全措置についても、これによりまして適切なものとなるようにそういう仕組みをつくっておりますので、そういうことになると考えております。
  50. 園田修光

    園田(修)委員 それでは次に、地方制度との関係についてであります。  これはもう先ほどから議論になっておりますけれども、五十一の都道府県、政令市が環境アセスメントの条例や要綱を整備をしている状況の中で国が法制化をすることの意義、法と地方制度との役割分担などについては、質疑はこれまでたくさん行われてきたわけでありますけれども、こうした質疑を伺っていて、私としては、基本的なところで確認をしておきたい点があります。  今回の法案取りまとめに至るまでには、相当の調査研究が行われたわけであります。制度のあり方について、橋本総理から中央環境審議会に諮問されたのが昨年の六月でありましたが、それに先立つこと三年前から、関係省庁一体となって、海外の国の制度の実情を調査するとともに、地方公共団体制度についても調査をしてこられたと聞いておりますが、環境庁としては、こうした場合も含めて、制度のあり方について、地方公共団体の要望も聞いてこられたと思います。  本法案は、こういう作業や意見交換の積み重ねとして、地方公共団体の要望にこたえるものとして取りまとめられたと理解をしておりますが、この点、環境庁の認識を改めて確認をしておきたいと思います。
  51. 田中健次

    田中(健)政府委員 本法案の立案に至ります生でには、ただいまお話ございましたように、環境影響評価制度総合研究会あるいは中央環境審議全等におきます調査審議の中で、地方公共団体から多くのさまざまな意見をいただいたところでございます。このような地方公共団体意見を初めといたしまして、国民各界各層からの意見を踏まえまして、私どもといたしましては、充実した内容制度となるよう検討の上、御提案をさせていただいたものでございます。
  52. 園田修光

    園田(修)委員 この際ですから、法案の作成までの地方公共団体との意見交換や要望聴取の状況について説明をしていただきたいと思いますが。
  53. 田中健次

    田中(健)政府委員 まず環境影響評価制度総合研究会でございますけれども、この研究会は平成六年の七月から八年の六月までございましたが、その総合的な調査研究といたしまして、地方公共団体に対するアンケート調査と、それから地方公共団体からのヒアリングを行いました。このヒアリングを行ったのは、東京都、埼玉県、それから長野県、滋賀県でございます。  それから、中央環境審議会審議において国民意見の聴取を行いました。その中で、希望する地方公共団体から意見を聴取をいたしましたが、希望する地方公共団体は、北海道、横浜市、岐阜県、兵庫県、神戸市、香川県、福岡県、以上でございました。  それからさらに、法案の作成過程におきましては、環境庁におきまして、条例を有します団体のみを集めて一回、それから、条例を有する団体を含めて、すべての都道府県、政令指定都市を四つのブロックに分けまして、それぞれ一回ずつ、計五回にわたりまして意見交換会を行ったところでございます。
  54. 園田修光

    園田(修)委員 しっかりやってこられたといろことであります。  それでは次に、特例の内容法案のわかりやすさについてちょっとお伺いをいたします。  法案では、第三十九条以下に都市計画特例、子して第四十七条以下に港湾計画特例が位置づけられておりますが、正直申し上げて、これが非常に長くてわかりにくい条文になっているのであります。ここでわかりやすく、多少長くなっても結構でありますから、ポイントを説明をしていただきたい。まず、第三十九条の都市計画特例についての説明をいただきたいのですが。
  55. 田中健次

    田中(健)政府委員 都市計画に係ります特例でございますが、本法案対象事業が都市計画法上の市街地開発事業として都市計画に定められる場合、あるいは対象事業に係ります施設が都市計画法上の都市施設として都市計画に定められる場合におきまして、その都市計画の決定または変更をする都道府県知事、これは都市計画決定権者と言っておりますが、この都道府県知事が事業者にかわるものとして、都市計画決定手続とあわせまして環境影響評価手続を行う、こういうこととするものでございます。これが都市計画に係ります特例でございます。  具体的に申しますと、環境影響評価手続の実施主体を都市計画決定権者にするというのが一点でございます。それから、環境影響評価手続と都市計画手続とをあわせて行う、すなわち、準備書とそれから都市計画の案の公告縦覧をあわせて行う、それから、両者に対する意見をあわせて受け付ける、こういうことにいたしております。それから、環境影響評価の結果を、事業に係ります許認可だけではなくて、都市計画の決定にも反映すること、こういう内容が都市計画に係る特例でございます。
  56. 園田修光

    園田(修)委員 ここで、都市計画特例では、事業者にかわって、都市計画を決定するものがアセスの実施主体とされておられますが、なぜそうしたのか、考えをお聞かせいただきたいと思います。
  57. 田中健次

    田中(健)政府委員 都市施設、例えば道路等でございますけれども、これにつきまして都市計画決定がなされる場合には、その事業の位置、規模、構造などのいろいろな要素が都市計画で決定をされるわけでございます。  環境影響評価制度は、その手続により得られた有益な環境情報事業内容に反映させることをその本旨とするものでございまして、有益な環境情報事業内容に反映するためには、事業を定める都市計画について決定権を有します決定権者たる都道府県知事が手続を行うということが必要になってくるわけでございます。  また、都市計画が定められた区域内におきましては、都市計画が定められますと強力な私権の制限が働く、こういうことから、仮に、都市計画の決定の後に環境影響評価手続を行う場合には、私権の制限が行われていることを理由といたしまして事業内容の変更が行われにくくなりまして、せっかくの環境影響評価の結果が事業内容に反映されないような事態になることがあるわけでございます。  あるいは逆に、環境影響評価の結果を反映して事業内容を変更する場合に、それまで行われてきた私権制限の意味を失わせる、こういう事態が生じてしまうわけでございます。  そうしたことで、都市計画の決定後に事業内容の変更が求められるような仕組みは適当ではない、こういうふうに考えられるわけでございます。  さらに、都市計画決定手続で住民等の意見提出手続が設けられていることも踏まえまして、都市計画決定手続と同時期に環境影響評価手続を行うことが適当というふうに判断をして、こういうふうな制度にしたものでございます。
  58. 園田修光

    園田(修)委員 次に、港湾計画特例について説明お願いします。
  59. 田中健次

    田中(健)政府委員 港湾計画につきましては、大規模な施設の立地やあるいは大量の物流の発生がある一方で、沿岸域は生態的に見まして重要な場所が多いことから、一般環境に与える影響が大きいものでございます。これまででも、港湾法の枠組みの中で港湾計画の決定または変更に際しまして環境影響評価が行われております。こうしたことにかんがみまして、上位計画のアセスメントといたしましてこの法案対象としたところでございます。  具体的に申し上げますと、港湾法に規定をされました重要港湾、これは全国に百三十三あるわけでございますが、この重要港湾に係ります港湾計画の決定または変更のうちで、規模の大きい埋め立てに係るものと一定の要件を満たすものを対象といたしまして、その港湾計画に定められます港湾の開発利用等が環境に及ぼす影響につきまして、その港湾の港湾管理者が環境影響評価を行うこととしたものでございます。  港湾計画に係ります環境影響評価は、基本的には事業の場合と同様の手続が行われることになるわけでございますけれども、この港湾計画は上位計画的なものでございまして、この上位計画段階の環境影響評価であることにかんがみまして、スクリーニング手続とスコーピング手続を省略をいたすなど、港湾計画の特性を踏まえたもの、そういう特例を設けておるところでございます。
  60. 園田修光

    園田(修)委員 上位計画と局長からお話がありましたが、上位計画に関するアセスの先取りとして位置づけて理解していいわけでありますね。  しかし、世の中には計画と名のつくものがたくさんあるわけでありますが、その中で港湾計画のみを対象として位置づけられた理由についてお聞かせいただきたいと思います。
  61. 田中健次

    田中(健)政府委員 港湾計画につきましては、先ほど申し上げましたように、大規模な施設の立地やあるいは大量の物流の発生がある一方で、沿岸域は生態的に見まして重要な場所が多いということから、一般環境に与える影響が大きいという点がございます。  それから、港湾計画は、埋め立てによる土地の形状の変更等を主たる内容といたすものでございまして、事業アセスにおきます調査等の手法が利用できるという点もございます。  それから、これまでも、港湾法の枠組みの中で港湾計画の決定または変更に際しまして環境影響評価が行われまして、計画段階での環境配慮が行われてきておる、こういうこと等々がございまして、ほかの多くの計画と異なりまして、特に計画段階での環境配慮が行われるべきものである、またそれが可能であるということで、今回、港湾計画をこのアセス法の中に取り込んだ、こういうことでございます。
  62. 園田修光

    園田(修)委員 答弁をいただきまして、都市計画の特例あるいはまた港湾計画の特例の趣旨内容は理解いたしました。  そこで確認ですが、都市計画特例と港湾計画アセスを、ともに計画段階のアセスであると理解をする声も聞かれるわけでありますが、私は、今の説明を聞いて、両者は全く異なるものであると理解しましたけれども、それでいいのでしょうか。
  63. 田中健次

    田中(健)政府委員 先ほどから御説明を申し上げておりますように、都市計画に係ります特例は、内容自体事業環境影響についてのアセスメントでございます。それから、港湾計画のアセスメントは、計画自体アセスメントでございます。  したがいまして、御指摘のように、両者は基本的にその性格を異にしている、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  64. 園田修光

    園田(修)委員 本法案は、我が国を持続可能な社会として、貴重な環境を適切に保全していく上で基盤となるシステムを法的に位置づけるという、極めて重要な意義があるものであります。そしてまた、法案は、手続を主体とした法律でありますから、これが適切に運用されるには、その法律の登場人物、すなわち、事業者、住民、都道府県知事、市町村長といった各プレーヤーが、この法律趣旨とルールを正しく理解して、その役割を果たすことが必要であろうかと思います。  そこで、法案では、第三条に事業者等の責務が規定されておりますが、より具体的にそれぞれの、さっきプレーヤーと言いましたけれども、プレーヤーにどのような役割が期待をされているのか、説明を願いたいと思います。
  65. 田中健次

    田中(健)政府委員 具体的に申しますと、国の役割といたしましては、国の環境影響評価制度の適切な管理運営を行う、こうしたことのほかに、環境影響評価の結果を施策に的確に反映すること、あるいは環境影響評価に関します情報の収集、整備提供など、環境影響評価を支える基盤整備に努めること、これらが国の役割と理解をいたしております。  それから、地方公共団体の役割といたしましては、地域の環境保全責任を有する立場からの、手続の各段階で意見を述べるということとともに、地域の環境状況に関します情報を収集、整備をいたしまして、事業者あるいは地域住民等に提供すること、それから、国の環境影響評価制度に基づきます手続が円滑に進むよう、事業者等の求めに応じて必要な協力を行うこと、これが地方公共団体の役割と考えております。  それから、事業者の役割でございますが、制度趣旨に即して、できる限り早い段階から事業に関する情報提供しつつ、有益な環境情報を幅広く収集をいたしまして、環境影響評価を適切に実施をいたすこと、それから、環境影響評価に基づきまして、自主的、かつ、積極的に環境の保全に適切な配慮を払い、みずからの事業に係る環境影響をできる限り回避、低減することに努めること、これが事業者の役割と考えております。  それから、国民の役割といたしましては、環境影響評価趣旨に即しまして、環境影響評価過程において有益な環境情報の形成に参加すること、こうしたことが挙げられると思います。  環境庁といたしましては、以上のとおり、各主体の役割など、制度趣旨が正しく理解されるように法律成立いたしました暁には努めてまいりたいというふうに考えております。
  66. 園田修光

    園田(修)委員 最後に長官にお伺いをして質問を終わりたいと思いますが、条文を見ただけではなかなか国民にはわかりにくいところが、正直言って、あると思います。しかしながら、ルールはルールでありますから、最終的には参加者に十分理解をしていただくことであります。  そこで、自治体の要望にこたえるものであるという点とあわせて、法案内容地方公共団体や国民によく理解をしてもらう必要があると考えますが、環境庁としてどう取り組んでいくのか、長官の御意見を聞かせていただいて、質問を終わりたいと思います。
  67. 石井道子

    ○石井国務大臣 今、園田委員から、さまざまな具体的な問題について御指摘もいただきました。そして、このたびの環境影響評価制度におきます国と地方公共団体とまた事業者と国民の果たすべき役割も局長の方から説明をさせていただきました。  このような状況の中で、アセスメントが適切に円滑に実施されるように、これから、この法案趣旨について、この制度趣旨について、十分にそれぞれの立場において正しく理解されるように、環境庁としてもその制度の普及啓発に対して努力をしていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
  68. 園田修光

    園田(修)委員 ありがとうございました。  終わります。
  69. 佐藤謙一郎

    ○佐藤委員長 岩國哲人君。
  70. 岩國哲人

    ○岩國委員 おはようございます。岩國哲人でございます。太陽党を代表して質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。  私は、随分長い間、外国に生活しておりました。家族と一緒に世界各地の海や湖や川を見てまいりました。開発や汚染に苦しんでいるところもありますけれども、生活の資源として、あるいは健康や住環境を守るとりでとして、あるいは景観の資源として、海や湖に対する国民の関心は極めて高く、お役所も当然のことでありまつけれども、その保全を最優先の行政課題とせざるを得なくなったのが約三十年前からの世界的傾向となっていると思います。  ニューヨーク在住中でありますけれども、ビジネス・ウイークという一流の経済誌が、その表紙に、見た人がびっくりするような写真を載せたことがあります。それは、きれいな水面の上に大きなしゃれこうべ、骸骨の絵がかかれた表紙でした。その特集記事というのは、私たちがうらやむようなあの大きなアメリカ、広い自然、そしてきれいな空気と思っておったあの国でさえも、いつの間にか、大きな海や湖やそして川が侵されておった、汚染されておった。そして、そこの生物が死に絶えていき、あるいは魚が汚染されている、このような特集記事でありました。  開発よりも環境という考えは、もはや少数派の意見ではなくなっております。  世界の水の風景でも、私は特に心に残りますのは、イタリアのベニスであるとか、フランスのアネシー湖、あるいはユーゴスラビアから見たアドリア海等々であります。その風景は、いつまでも鮮烈な地上の美として私たち家族の心をとらえ続けております。  外国の友人に、日本にもきっと水のきれいな景色のところはあるでしようと。私は、いろいろなたくさんのところが思い浮かびますけれども、その一つとして挙げておりますのが山陰の松江市であります。中海、宍道湖の典型的な日本美を持つ松江市は、いわば和風のベニスだと私は表現しておりますけれども、そのような宍道湖を、そして日本海を眺めながら育ったことを私は大変誇りにし、また、この環境問題についてもひとしお私は関心を持つわけであります。  小さなとき、小学校二年生から私はずっと百姓、農業をやっておりました。キュウリ、ナスビ、トマト、カボチャ、大根をつくり、芋を植え、麦を植え、そして麦踏みをしながら、あの荒々しい日本海を眺め、そしてまた夏の優しい日本海も眺めてまいりました。  こうした山陰の人のみならず、多くの日本人がこの環境アセス法の誕生を待ちに待っていらっしゃるのではないかと思います。  OECD二十九カ国の中で二十八カ国が既に実施している、つまり日本だけがまだこの法律を持たないということは恥ずかしいことであり、ようやくその日が近づいたことを大変うれしく思っております。今まで関係者の皆さんが何度も努力し、そして挫折し、数え方によっては七回挫折があったと言っておりますけれども、まさに七転び八起きの結果として誕生するこの環境アセス注は、そうした苦労の後だけに、私は、名実ともに充実し、そして世界に誇れるものであってほしいと思います。  そのような観点から、きょうは幾つ質問させていただきたいと思います。  ブラジルで世界環境会議が行われました。その世界環境会議に出発するに当たりまして、竹下登元総理は、新聞紙上、多くの人たちに次のように語っておられます。「今や、環境を論ぜざるは、知性と教養と良心と勇気なき政治家といえる」、私はこれはまさに世紀の名言であると思います。名言であるというのは、そのとおり実行されればという話であります。  今、島根県、鳥取県の中海で何が起きているか。きょうは、具体的に中海を例に取り上げながら、それに関係いたしますこの環境アセスメント法について質問させていただきます。  中海・宍道湖を守る国会議員の会というのが結成されたのが、つい二月であります。自民党を除くその他の政党すべて、六党派による超党派の議員連盟は、この中海、宍道湖の景観美、そしてこの環境を守る、むだな公共事業にストップをかける、そのような共通の目的で結成されております。  まず最初にお伺いいたしますけれども、この環境アセス法の中における住民参加についてであります。  法案には、住民等が関与し得る手続と項目が記載されておりますけれども法案の範囲では、住民は環境情報の単なる提供者にとどまり、公正な判断環境配慮に向けた合意形成をなすことはできないのではないかと思われます。  なぜならば、住民の意見に対する事業者の見解書の作成義務など、事業者がとるべき措置が不十分であり、したがって、住民等の意見事業者の意思決定に反映する仕組み、手続が欠けているからであります。住民参加手続が不十分だと、環境アセスメントはいたしましても、住民との合意形成に役立たないことが危惧されます。  中海干拓を例にとれば、このことはよくおわかりいただけると思います。  日本経済新聞は、昨年三月二十四日の社説において、中海干拓に反対するという意見を掲載しております。政府が既に数百億円をつぎ込んだ中海干拓事業に、なぜ一般的には経済界寄りと理解されているような日経新聞が反対するのか。その社説には、「私たちは干拓再開に反対する。 第一の理由は、環境問題など地域住民の理解が得られていないことだ。」と書かれております。この社説は、アセスメント法のあり方に大きな示唆を与えるものではないでしょうか。  太陽党は、去る三月、新進党との合同調査団を島根県に派遣いたしました。そして、地元で環境問題についての合意形成がなされていないことが判明いたしました。事業に伴う水質、景観などに住民から多くの疑問が出されておりますが、疑問を氷解させるに足る農水省側及び県の見解説明や住民との意見交換が不足しております。この不足が国、県と住民との対立を拡大し、長引かせております。  そうした干拓後の土地の利用計画におきましても、県の説明と農水省の説明が全く異なっている。このような膨大な国費を注ぎ込みながら、なぜこのように国の事業で、そして県が実施しております。そのような中で大きな違いが生じているのか、私は全く理解ができませんでした。  国の説明は、牧畜、酪農などはそこではいたしませんということであります。にもかかわらず、県のパンフレットには立派な牛の絵がかかれ、そして、島根和牛のようなおいしい肉がここで生産されます、このようなパンフレットが島根県じゅうに配布されております。そして、質問に対しても、そういった牧畜を考えているということであります。その一週間前に、私は、農水委員会で農水大臣から、そのようなことは考えておらないと。  なぜこのような大きな食い違いのままにこの事業が今再開されようとしているのか、これも大きな問題ではあります。  中海干拓事業は、昭和四十八年改正の公有水面埋立法以前の旧法適用の事業とされておりました。現行環境アセスメントも適用されていないことは承知しております。しかし、現行環境アセスメントでも住民との合意形成手続は不十分であり、この合意形成手続の不備を改めることを今回の環境アセス法では明確にすべきであると思います。  具体的には、第一に、環境影響評価に関する情報公開を徹底するための具体的な規定を設けること。第二に、説明会の開催及び住民等と事業者が相互に意見の交換と協議ができる場としての公聴会の開催を義務づけること。第三に、住民等は、必要に応じて手続の開始から事後のフォローアップの手続までのいつでも意見を提出できるようにし、住民の意見に対する事業者の応答義務、例えば見解書の作成と公表などを規定することが必要であると思います。  これに対する長官の御意見をお伺いいたします。
  71. 石井道子

    ○石井国務大臣 中海の問題につきましては、大変長い経過がございます。経緯があります。そして、さまざまな問題を抱えているわけでございまして、環境庁立場でありますと、今までも島根県に対しましてさまざまな申し入れも行ってまいりました。  現在の状況におきましては、長い間の経過を踏まえての対策というふうに限られたことになってしまいますけれども、しかし、これからは、この住民の参加ということ、このことが大変重要な問題であることは委員指摘のとおりでございます。  事業環境影響というものにつきましては、大変多岐にわたっております環境の項目について評価をされる必要がありますし、そのためには広く意見を聞いて多種多様な情報を集めることが必要であろうというふうに思います。また、身近な自然を初めとして、そこに住む人の評価を聞かずに評価できないものであるということも存在しております。したがって、適正な環境影響評価を行うためには有益な環境情報を幅広く収集する手続が必要であるというふうに思っております。  このたびの環境アセスメント法案につきましては、このような趣旨を踏まえて、住民を初めとする一般から環境の保全の見地からの意見を求めることにしているところでございます。  先生の個別の御提案につきましては、これからもいろいろとあるわけでございますが、政府委員からも答弁をさせていただきたいと思います。
  72. 田中健次

    田中(健)政府委員 お尋ねのありました何点かについてお答えをいたします。  まず、情報公開でございますけれども、私どもといたしましても、この環境アセスメント制度を適正に行うために情報公開というのは非常に重要でございます。そういうことで、私どもの仕組んだ手続の中で、スコーピング手続方法書につきましても公告縦覧を行う、また準備書につきましても公告縦覧を行う。その中には住民等の意見、あるいはそれに対する見解、都道府県知事の意見等も公開をされるようになっておりまして、私どもとしては、情報公開には努めておるというふうに考えております。  それから、説明会の開催等でございます。法案におきましても、説明会の開催を義務づけております。その説明会におきましては、一般的に申しまして、事業者説明質疑応答が行われるものと考えておりまして、説明会の開催も義務づけておるところでございます。  それから、フォローアップでございます。これにつきましては、予測の不確実性等々もございまして、準備書あるいは評価書の中にフォローアップのことも規定をさせまして、事業実施後もそれを守っていくというふうなことでフォローアップにも意を配っておるところでございます。このフォローアップにつきましては、事業を許認可いたしております主務大臣のサイド、あるいは地方公共団体のサイドでもし必要があれば対応をしてもらう、こういう形で仕組んでおります。  いずれにいたしましても、先生の御質問の中で、私ども、この環境影響評価制度は、事業を行う際の環境への配慮を行うということで、住民意見あるいは一般の方々の意見も、環境保全立場からの意見をちょうだいするということでございまして、決して事業の賛否を問うものではございません。  そういうことで、一般意見につきましてはそういう位置づけをいたしておりますので、御理解をいただきたいと思います。
  73. 岩國哲人

    ○岩國委員 ありがとうございました。  今、環境庁長官からさまざまな申し入れを島根県に対して行ったという御答弁をいただきましたけれども委員長お願いします、環境庁からさまざまな申し入れが行われた、それをすべて情報公開していただきたいと思います。  それから、局長の方から、今、説明会をすることになっておる。この説明会と公聴会というのは、住民の立場からいえばどのような違いがあるのか。全く同じというふうに理解していいのかどうか、住民の意見は同じように反映され、公聴会イコール説明会というふうにとらえていいものかどうか、お願いいたします。
  74. 田中健次

    田中(健)政府委員 住民等に対して情報を出して説明をするという、これは事業者が行うものでございまして、公聴会といいますのは、行政が意思決定の過程でいろいろ意見を聞くのが公聴会、こういうことでございまして、私どもは、これは事業者が行いますので説明会、こういうことになっておるわけでございます。
  75. 岩國哲人

    ○岩國委員 それでは、次に、環境アセスの審査のあり方について質問させていただきます。  法案では審査は許認可を行う者、つまり主務大臣が行うようになっておりますけれども、第一に、審査体制の規定があいまいで、どのような体制で審査するかが不明であります。審査会等の独立、中立の第三者機関の設置を明確にし、審査結果報告書の作成及び公表を義務づけるべきではないでしょうか。この審査は、環境庁長官が出した意見に対する審査も当然含まれると考えられますので、明確な規定を置くことが必要だと思います。  第二に、審査の方法として第三者の参加規定があるものの、関係地域からは都道府県知事に限定されているのは、世論及び実態に合わない場合が生じ得ないか懸念を持っております。  後者の問題に関して、例えば中海干拓の問題でいえば、島根県知事が工事の再開を農水省に要請したが、各種の地元世論調査結果では、世論は工事の再開をすべきでないという意見が多いわけです。つまり、県知事の意見と世論の多数意見とは逆方向を向いております。  この世論調査結果の幾つかの事例を挙げますと、毎日新聞が平成八年二月十六日付で発表いたしましたのは、干拓賛成が二一%、反対が五四%、朝日新聞が八年六月十五日に発表いたしました鳥取県と島根県に分けた世論調査では、鳥取県側は賛成一二%、反対五四%、島根県側は賛成二二%、反対が五一%となっております。賛否以外は、わからないとか無回答であります。  いずれの調査におきましても、反対が過半数を占めております。毎日新聞の調査は、島根県知事が工事再開を農水省に要請した三月二十八日以前の調査結果であり、朝日新聞の調査は知事要請の後でありますが、その段階になってもなお反対世論が過半数であります。  県議会の意向が知事と同じであったとしても、このような状況で知事が住民意見を代表して意見を述べるというのは不十分となる可能性が非常に大きいと言わざるを得ません。  この点で、住民意見そして地元自治体のそうした代表者の意見というものについては、しばしばこれから食い違う例が、決して中海だけではなく、多くなるということも想定しながら、この環境アセスにおける審査を実行していかなければならないと思います。  この点について、御意見があればいただきたいと思います。
  76. 田中健次

    田中(健)政府委員 まず、お尋ねの審査の体制でございますが、最終的には、これは許認可を行います主務大臣の方で審査をいたすということになるわけでございます。その過程で、住民意見等も踏まえた都道府県知事の意見も出ておりますし、市町村長の意見も出ております。それから環境庁長官意見も申し上げるということになっております。  最終的に主務大臣が審査をいたしますのは、その当該事業に非常に精通をしておるということと、許認可権を持っておるということで許認可にも反映をさせるということで最終的に主務大臣がやるわけでございますけれども、ただいま申しましたように、知事意見あるいは環境庁長官意見等第三者的な立場からの意見も踏まえて審査をするということでございますし、私ども環境庁長官意見あるいは知事の意見等もそれぞれの段階で公表をされておりまして、非常に重みがあるということでございまして、最終的に主務大臣の方で十分勘案をされて判断をされる、こういうふうに考えております。  それから、知事意見と市町村意見で、市町村からも直接意見が言えるようにという御質問だと思いますけれども、知事意見に限定をいたしましたのは、やはり事業者にとっては意見をまとめて出していただくということが非常に好ましいのではないかということでございます。  法律におきましても、市町村意見は、知事に申し述べまして、知事がそれを十分勘案して意見を出してくる、こういうことでございまして、私どもといたしましては、知事が市町村の意見を集約して出してくるということで、仮に知事意見と市町村意見が対立しておるという場合におきましては、私どもといたしましては、そうした意見も知事から付言をして意見として出される、こういうふうに判断をいたしております。  それから、ほかの立法例等を見てみましても、知事が意見を申し述べるときに、地方公共団体意見を聞いて、知事がまとめて意見を述べるというのが通例の立法例でもございます。
  77. 岩國哲人

    ○岩國委員 二つお伺いします。  一つは、地方公共団体意見を聴取してということでありますけれども、わかりやすく言えば、県知事が、関係市町村の市町村長あるいは議会のそういう意見を聴取するということではないかと思います。それが一般的に地方公共団体意見ととられていることが多いと思います。  しかし、今の日本のこの現状のもとで、県知事から賛成ですか反対ですかと言われたときに、県庁の方から補助金をもらったりいろいろなことをしてもらわなければいけない立場にある市町村長が、なぜ嫌だということが言えるでしょうか。多くは県知事、知事の意見にほぼ同意という形でもって出てくるのが九九・九九%だと私は思います。言ってみれば、調べるだけ意味のないことではないか、そのように思います。  二点目は、こうした環境調査のときに、虫が何匹あるいは魚が何匹、こういったことは大変大切なことでもあります。出雲市の中でも、斐伊川の治水工事においても、建設省は大変そういうことに配慮して今事業を進めようとしておりますから、そうした自然に対する配慮、あるいは動物、植物に対する配慮というものは十分に認識されてきたということは大変結構なことであります。  しかし、動物、植物以上に大切なのは、人間に対する影響、人間の体にどういう影響を与えるのか、あるいは人が住みたいと思う環境がつくられるのかどうか。そして動物、植物は賛否を言う立場にはありません。局長は、先ほど、こうした環境アセスというのは事業の賛否を問うものでは々いとおっしゃいました。そのとおりであろうと思います。しかしながら、住民が非常に嫌だといろ感情を持っているとき、これは賛否を問う以前に、住民が嫌悪感を持つような事業というものは、これもまた人間環境、住環境に対して大きな影響を与えている、そのような環境アセスの中に住民意見がどれだけ反対なのかということも大きな要素ではないかと私は思います。  動植物あるいは空気や水の質だけに限定した環境ではなくて、これからは人文的な、社会的な環境という意味から言えば、知事の意見と住民の意見とこれほどはっきり逆方向を向いているという場合には、当然のことながら、人間的環境、住環境、社会的環境というものもアセス対象に十分配慮すべきであると思います。いかがでしょうか。
  78. 田中健次

    田中(健)政府委員 第一点の意見聴取のことでございますけれども先生からもお話ございましたように、この市町村長の意見等は決して事業の賛否を問うものではございませんので、環境保全上の意見を提出していただく。そもそもこの制度が、環境アセスメントのそういう制度でございまして、その制度趣旨、性格等をぜひ御理解いただきたいと思います。  それから、環境影響評価をする項目等のお尋ねでございます。項目につきましては、幅広く環境をとらえまして、いろいろな項目を決めていくということで、その指針となりますものは行政の方で、主務大臣の方で決めて、環境庁長官がその基本を示すということになっております。自然への配慮は非常に重要でございますが、決して項目は自然への配慮だけではございませんで、環境の人間に及ぼす影響ということで、環境指標と申しますかそういう事柄について幅広く項目を決めていくわけでございます。  今お話ございました人文あるいは社会的な観点からということで、住居とかあるいは社会環境の御提言もございました。私どもといたしましては、自然にかかわりますような事柄につきましてはできるだけ幅広くとらえていきたい、こういうふうに思っております。文化財等につきましては、それを環境影響評価対象にするのはなかなか難しいというふうに考えておりますが、できるだけ幅広くとらえていきたいというふうに考えております。
  79. 岩國哲人

    ○岩國委員 こうした住民の意見と自治体、行政の意見とが食い違っているということは、決して 中海だけではなくて、日本各地に、残念ながら、最近の住民の間における環境意識の高まりとともに、これから件数、比率がふえてくるのではないか、そのように思います。  また、そうした住民の意向を聴取していこう、あるいは世論調査をするに当たって、仮にも行政当局、地方自治体が虚偽の説明、あるいは事業主体である国の意見とは違う資料を配付して、そのような住民同意を取りつけようとしていることがあるとするならば、これは環境アセス以前の問題であって、行政監察の対象にすべきではないかとさえ私は思います。  私が先ほど引用いたしました、これが島根県のパンフレットであります。ここに大きな牛が描かれております。これはうし年だからこの絵をかいたというのではなくて、立派に説明として「「島根和牛」などの大量生産・安定供給が実現します。」私はこれを見ておったから、農水大臣、主務大臣にお尋ねしたわけです。こんなことはいたしません。なぜこのような資料が配付されて、そしてそれに夢を抱いた、それならばと同意している人もあるかもしれません。もちろん、それを含めてさえもなお干拓反対が多かったということは、先ほど御紹介したとおりであります。  これからこういう環境アセスを実施するに当たって、決して、虫の意見、魚の意見をどうこうするほどに自治体の影響力はありません。しかし、住民の意見ということを言う場合に、あるいは公聴会の意見にしても何にしても、それは正確な資料に基づいたものでなければならないということを強調したいと思います。  次に、アセスの再実施についてお伺いいたします。  アセスの再実施は、事業内容の変更の場合だけでなくて、事業が長期間未着工の場合や長期間延期、休止の場合にも行うよう義務づけるべきではないでしょうか。むしろ順調に推移しているもの以上に、なぜそれだけ長い期間かかったのか、あるいはなぜそれだけ長い期間延期、休止されておったのか。それはそれだけ問題が多かった、懸念が多かったということではないでしょうか。それゆえにこそ、このように長期間未着工の事業あるいは長期間にわたって延期、休止されている事業にも義務づけるべきではないかと私は思います。  中海干拓の場合、事業のスタートした昭和三十八年度から数えまして三十四年が経過して、今工事再開が議論されております。この間に、都市化の進展、下水道や合併処理といったものの普及があり、その一方で、農業用地は減少して、農業用水の利用にも変化が生じております。また、利用目的も大きく変わってきた。米の減産ということがこの期間に始まったことも御承知のとおりであります。  事実上干拓工事がストップしてからでもおよそ八年が経過しております。この間にも、環境をめぐる状況は大きく変化いたしました。その変化を組み入れずに、工事を長期間放置した後に着工したりすれば、現実との乖離が生ずるのは避けられないと思います。  また、中海干拓・本庄工区の干拓計画は淡水化を前提にして事業が始められたものであって、淡水化が延期されたまま、あるいは淡水化は中止といった説明がなされたままで干拓工事の再開が主張されているために、大根島——八束町という町名でありますけれども、大根島の地下水の流出とともに、地下水の塩水化が心配されております。このような場合、アセスメント法案ではどのように取り扱われることになるのでしょうか。  中海の例から見ましても、事業が長期間未着工の場合や延期、休止の場合にもアセスを行うよう義務づけるべきであると考えますが、長官の御意見はいかがでしょう。
  80. 田中健次

    田中(健)政府委員 たびたび御説明をいたしておりますように、環境アセスメント制度、それからこの法案は、環境影響評価の結果を許認可等に反映させて環境保全に配慮していくという仕組みでございまして、環境影響評価手続が終了をいたしまして許認可がなされました事業につきましては、事業の実施に対します許認可等が改めて見直されるという場合はともかくといたしまして、環境影響評価を再実施することを法律上の義務として一律に課することはなかなか難しいというふうに考えております。  免許制度等も絡んでおりまして、当該免許の方で何らかの考慮があればというふうに考えております。  それからまた、環境状況の変化が事業者以外の特定の者の行為によることが明らかな場合等もございます。したがいまして、事業者に再実施を義務づけるということが必ずしも合理的なのかなということでございます。  そういうことで、一律に再実施を義務づけるということはなかなか難しいというふうに考えております。  そこで法案におきましては、一定の場合を特定して、必ず再実施をするという義務づけはいたしておりませんで、実施者が再実施をすることができるという旨の規定を置いております。こうしたことによりまして、実質上、適切に再実施がされるのではないか。大きな公共事業等につきましては、こうした条文の趣旨を酌みまして、再実施できるという規定を踏まえて、こうした状況であって、必要があれば再実施の方に踏み切ってくれるであろう、こういうことで条文を用意いたしております。
  81. 岩國哲人

    ○岩國委員 調整局長答弁を伺っておりますと、私は、日本環境は守られないという印象を持たざるを得ません。先ほど、そうした環境アセス事業主体に提示し、そして今の表現ですと、事業の免許に何らかの影響があればと思っておりますがと。これがもし本当の気持ちであるとすれば余りにもこの環境アセスというのは弱い存在でしかないのではないかと私は思います。  事業目的が時代から離れたという場合には、その事業は中止すべきであります。これは総務庁の権限で、監察報告等でこれからけじめのある報告がなされるだろうと思います。この中海についても中止に近い勧告が既に出されております。そしてその理由は、残念ながら、環境に対する影響というよりも、事業目的が時代とは外れてきたということに軸足があります。  しかし、これからは、行政監察報告の中にも、むしろ環境庁意見環境アセスを踏まえて、それが事業そのものを中止させるというくらいの影響力を持ってほしいし、そこにまた、私たちは期待をかけているわけであります。  そうした事業の中止ということに絡んで、公共工事を中止する手続制度日本には存在しないということが環境問題で大きな影響が出ているということは広く認識されながらも、事業を中止できない。自治体は前へ進むしかない。前へ進まなければ大きな負担が残って、国との間にトラブルが起きる。こうした環境アセスを名実ともに日本の中で機能させるためには、そうした大型公共事業がどのような手続で中止できるかといった、制度整備もこれから必要になってくると私は思います。  亡くなられた司馬遼太郎さんの文章が、ことしの三月、松江市のある小学校で配られました。これは司馬遼太郎さんの「二十一世紀に生きる君たちへ」と題する文章であります。その中で、「人々は、自然をおそれ、その力をあがめ、自分たちの上にあるものとして身をつつしんできた。」「二十世紀は自然へのおそれがうすくなった時代といっていい。」「しかし、自然に対しいばりかえっていた時代は二十一世紀に近づくにつれて終わっていくにちがいない。この自然へのすなおな態度こそ、二十一世紀への希望であり、君たちへの期待でもある」小学生はこの文章を読んで卒業していきました。  リオ・サミットへ島根県知事が持参された「地球の秘密」というのは、出雲市の隣の斐川町の小学校六年生の女の子が書いた絵本であります。これは会議の席上でも紹介され、全世界の人にも読んでもらいたいと紹介された。その中で、愛華ちゃんはこう書いております。「生命は、海で生まれた」「その海が今、ピンチなんだよ」。愛華ちゃんはその言葉を残して短い人生を終えました。  私たち大人は、本当に、この環境アセスという新しい武器を使って、この愛華ちゃんの願いにこたえることができるだろうか。私たちの責任は非常に重い。そのためにも、この環境アセス法を名実ともに強制力のあるような、めり張りのある運営ができるような、そのような配慮を環境庁長官初め関係者の皆さんにお願いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  82. 佐藤謙一郎

    ○佐藤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時四十一分休憩      ————◇—————     午後一時三十二分開議
  83. 佐藤謙一郎

    ○佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。並木正芳君。
  84. 並木正芳

    ○並木委員 新進党の並木正芳でございます。  兼務している委員会が同時に進行しておりますので、あるいは前の方の質問と重なるところがあるかもしれませんけれども、よろしくお願いいたします。  さて、今や環境問題は、自動車による大気汚染あるいは生活排水による水質汚濁、廃棄物の増大といった日常生活に起因する都市生活型公害から、地球温暖化、オゾン層の破壊、酸性雨、ダイオキシンといった地球的規模の環境問題に至るまで複雑多岐にわたっております。これに対してさまざまな取り組みがなされて多くの成果を生んできたわけでございますけれども、事態はますます深刻化していると言えるのではないでしょうか。二十一世紀を間近に控え、我々はこの恵まれた地球の自然を次の世代へと確実に引き継いでいかなければなりません。  そうした中で、およそ二十年の時を経て日の目を見たこの環境アセス法案は、環境庁発足以来の課題とも言え、法制化に尽力された関係各位には敬意を表するものであります。  やっとここまでこぎつけたという法案ではございますけれども、既に欧米に比べて周回おくれの内容だとの声も聞こえできます。今後は、その積極的運用により環境の保全と創造に資することを望むものでありますが、以下、そのような観点から質問をさせていただきます。  さて、東京都や十二の政令都市から、去る二月中旬、条例や要綱で実施している地方の先進的アセス制度、公聴会の開催とか第三者機関である審査会の意見聴取、審査書の公表、こういうところでは地方自治体の方が進んでいるという部分があるんだというようなことから、こうした地方自治体の進んだ制度を後退させることのないように、そういう趣旨の要請が十二自治体からは二月にあったと思うのです。青島都知事などからは、これは環境行政の大幅な後退を招くんだ、そういうコメントさえ寄せられております。  地方が国より厳しい環境基準を設けていること、あるいはこの環境アセス法案が出ることによって、今後、要綱から条例化とかこういうものが進んでいくと思うわけでございますけれども、そうした中で、地方がより厳しい基準を設けるということに関してはどのようにお考えでしょうか。
  85. 田中健次

    田中(健)政府委員 今回の法案対象となる事業は、既に地方公共団体で広範に環境影響評価に関する施策が実施されているということにかんがみまして、国と地方公共団体の適切な役割分担を図る、こういう見地から、規模が大きく、なおかつ、環境影響評価の程度が著しいものとなるおそれがあり、かつまた、国が関与する事業に限定をいたしております。  それ以外の事業につきまして環境影響評価を行わせるかどうかについては、地方公共団体判断にゆだねている、こういうことでございます。  それからまた、本法案対象となる事業につきましては、手続の各段階できめ細かく地方公共団体意見が反映される仕組みになっておりますし、また、地方公共団体意見形成過程におきます審査会の意見聴取やあるいは公聴会の開催など、私ども法律規定に反しない限りにおいて、地方公共団体における手続を設けることができることになっております。  こういうことで、地域の実情に応じた環境影響評価が行われる仕組みを確保いたしておるわけでございます。  そのほかに、スクリーニングあるいはスコーピング、事後フォローの導入などをいたしております。こうしたことで、現行制度と比較をいたしまして飛躍的に充実した内容でございまして、私どもは、地方の既存の制度と比較をいたしましても充実をした内容になっていると思っております。  したがいまして、地方公共団体と比べて遜色がない、こういうことでございますけれども法律の整理といたしまして、地方公共団体におきましては、私ども対象といたしません対象につきましては審査ができる、こういうことになっておりまして、私どもとしては、国、地方がバランスのとれた制度で今後も進むものであろう、こういうふうに思っております。
  86. 並木正芳

    ○並木委員 多くの方にお答えになったような内容だと思うのですけれども。  ということは、地方が国より厳しい基準を設ける、対象事業で分けているということですから、基準自体は、そういう基準を設けても差し支えないんじゃないかというようなニュアンスもあろうかと思うのです。  いい意味じゃないかもしれませんけれども環境問題というのは非常に日進月歩であらわれてくるということがありまして、例えばダイオキシン等でもそうなわけですけれども、そういう場合、地方の方がいわゆる回転が速いというか、対処するのにすぐに対応できていく。小さな船の方が回転が速いようなものなんですけれども。そういうふうなメリットもあると思うのです。  そういうふうなことで、国の審査の法対象であります今回の大規模事業、それと地方自治体が審査するいわば小規模事業といいますか、この法対象になっていないものですけれどもそのおのおのに対する手続、審査との間で逆転現象が生じる、これも差し支えない。法に反しない範囲というのは、対象事業で分ければそう言うこともできるわけですね。  そういうことならば、国の制度はナショナルミニマム、最低限のものとして位置づけ、自治体が国より厳しい規定を置いている場合もそれを尊重するんだ、そういうものを明記してはどうかとも考えるわけですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  87. 田中健次

    田中(健)政府委員 私どもは、国が関与をいたします大規模事業につきましては、全国どこでも同じ手続環境影響評価が行われることが適当であり、また、地域によって手続内容が異なる場合には、隣接県で手続の進行が異なるおそれが生ずるなど弊害が大きいと考えております。  このために、条例によりましてどのような手続を付加することができるかにつきましては、この法案では、統一的な手続について条例で自由に手続の付加ができることとはいたしておりませんで、法律規定に反しないもの、すなわち法律手続を変更したり、法律に定めます手続の進行を妨げたり、または瑕疵を生じさせるものでないものに限り、条例で必要な規定を定めることができるものとしておるわけでございまして、私どもといたしましては、大規模な事業につきましては全国どこでも同じ手続で評価を行うことが適当、こういうことで法律を仕組んでおる次第でございます。
  88. 並木正芳

    ○並木委員 全国平均的なというようなことです。そういうことならば、今申し上げたようにナショナルミニマムとして、むしろ、法に反しない限りと一応うたってある部分の、それ以上上乗せするようなことも認めている節もあるわけなんですけれども、この辺微妙かと思うんですけれども、その辺をむしろ明記してはどうかと思うんですが、もう一度お答えをお願いします。
  89. 田中健次

    田中(健)政府委員 ただいま申し上げましたように、法律によりまして、国は大規模な事業対象にいたしまして全国どこでも同じ手続でやるのが適当である、こういう判断でございます。  したがいまして、私どもといたしましては、国が立法する以上そういう制度にいたして、私どもといたしましては、一連の手続は、環境影響評価に配慮するということと、事業者に負担をかける、こういうことも考え合わせまして、今の御提案を申し上げている制度が一番適切である、こうい今ふうなことで御提案を申し上げている次第でございまして、先ほどから御説明をしておりますように、法律規定に反しない限りで、私ども対象にしております事業につきましても地方で行える、こういう整理にいたしておるところでございまして、その辺はぜひ御理解を賜りたいと思います。
  90. 並木正芳

    ○並木委員 繰り返しになってしまうかもしれませんので。  それで、実は、規模で分けていくという発想なんですけれども、これについて、必ずしもすべての環境問題がアセスという手続法だけでどうこうということではないわけなんですけれども、こういう見方もあるんじゃないかということをちょっと指摘させていただきたいのです。  というのは、小規模なものでもかなり問題があるというか、例えば廃棄物焼却施設から発生するダイオキシンとか、こういう問題です。  有害廃棄物ということに関しては、これからますます技術の進歩とともにいろんな問題が逆に大きくなっていくと思うのですけれども、このダイオキシン問題などを考えますと、むしろ小規模で管理が行き届かない、こういうゆえに環境汚染が大きくなっている、こういう事例なわけです。しかも、猛毒であるばかりでなくて、煙で拡散していきますから、かなり広域的に問題を起こす。しかも、それがまた地表に降り積もって堆積していく、こういうことで人体に甚大な影響を与えていく。  私も既に何度かにわたってこの問題を取り上げて、早急な対策を切望しているところでありますけれども、こうした廃棄物焼却施設、いわゆる産業廃棄物が特に問題を起こしているわけですけれども、こういう立地問題についてはどうお考えでしょうか。
  91. 田中健次

    田中(健)政府委員 この法案におきましては、中央環境審議会答申を踏まえまして、規模が大きくそれから環境影響の程度が著しいものとなるおそれがあるもの、なおかつ、国が実施をし、または許認可等を行う事業対象として選定する。国の立場として一定の水準を確保した環境影響評価が必要であるということからの判断で行っております。  それで、御指摘のような特定の物質によって環境に大きな影響を及ぼすことが懸念されるような事例、一般的にごみ処分場でございますけれども、これにつきましては、点的な事業と申しますか、類似する発電所などと比べまして敷地面積が小さく、大気汚染につながる排ガスを発生させる施設の能力規模も大幅に小さくなっております。そういうことで、御懸念をされるような事例につきましては、それぞれの法規制の体系でいかに対処するかという視点からの対応をしていくべきだというふうに考えておりまして、いずれにいたしましても、この法案は、廃棄物関係は最終処分場が対象になっておりまして、中間の焼却施設等は対象から外れております。
  92. 並木正芳

    ○並木委員 それはわかっているわけなんですけれども、私は、そういうところの部分をむしろ地方自治体に押しつけていくというか、任せていってしまう、それで地方自治体が対応できるたぐいではなくなっていくんじゃないかということを考えますと、やはり国として対応策を考える。  当然、これは施行していく上でのいろいろな技術指針とか政令だとか入ってくるわけですけれども、現在ダイオキシンは入っていない。リスク評価検討会だとかいろいろ検討委員会とかありまして、まだまだ中間答申の段階ということなんですけれども、既にその猛毒性というのは、発がん性だとかあるいは催奇性とかそういうものがもう指摘されているわけですから、そういった点では、当然、こういう部分ではきちっとした位置づけをしていっていただけるんだと思うのですけれども、その辺についてはいかがでしょうか。
  93. 田中健次

    田中(健)政府委員 お話しのように、現行閣議アセスにおきます各業種ごとのいずれの指針におきましても、ダイオキシンは対象になっておりません。  環境庁といたしましては、ダイオキシンに関します指針等も、今お話ございましたように、中間報告でございますけれども発表をいたしておるところでございまして、新法の指針におきましては、環境基本法第十四条におきまして環境の範囲が示されておりまして、その考え方の枠組みで、私どももダイオキシンについてもその環境の範囲に含まれるというふうに考えておるところでございます。  具体的な評価項目につきましては、事業の特性を踏まえまして各指針において今後選定されるものでございますけれども、ダイオキシンにつきましても、事業の特性を勘案した上で各指針の策定に際して適切に検討がされていくもの、こういうふうになろうと思います。
  94. 並木正芳

    ○並木委員 次に、この産廃等の問題でもそうなんですけれども、施設が集中的に集まってしまうことによって総量的な問題が生じている、こういう場合があるわけです。  例えば道路などの事業においても、さまざまな道路が交差する、こういうふうな場合が当然あるわけですけれども、このアセスでは事業ごとというような感じがするわけです。この辺について、一まとまりの生態系に事業主体が異なっている複数の計画やあるいは事業全体がもたらす影響を調べる一つの総合的なアセスといいますか、これについての仕組みを考えていかなきゃならないと思うんですけれども、この辺はどういうふうに考えていますか。
  95. 田中健次

    田中(健)政府委員 施設が集中的に存在をいたしますことで累積的に影響が生じるという問題でございますが、この法案におきましてアセスメントが実施される場合、その事業以外のほかの事業による環境影響につきましては、一般的に申しますと、予測評価のバックグラウンドとして位置づけられまして、評価に反映をされるということになってくると思います。  それからまた、複数の対象事業が相互に関連して行われる場合には、法案におきまして、アセスメント手続を「併せて」行うことができる、こういう規定も盛り込んでおりまして、こうしたことで累積的あるいは複合的な影響を評価することも考えられるわけでございます。  そこで、お話がございましたように、個々の事業レベルでの環境影響評価では、地域全体の将来の環境状況検討することに限界があるということでございますから、国際的には、政策やあるいは計画段階からアセスを行う戦略的な環境アセスメント、SEAが検討されておりまして、これにつきましても、私どもといたしましても、今後の検討課題とけうことで検討を進めていきたいというふうに考えております。
  96. 並木正芳

    ○並木委員 環境アセスメントを称して、社会正義を地域社会で具体的に実現するための大切なルールである、こういう表現をする方がいるんですけれども、そういう一つ観点に立ちまして、地方分権的な発想から地方自治体が積極的に関与して住民とともに良好な環境を保全、創造していく、こういうことが望まれるわけですけれども、残念ながらまだ地方分権がそこまで成長していないというか、現実には必ずしもそうはなっていないことも多いわけです。  例えば、首都圏中央連絡道路計画におけるオオヒシクイという鳥の越冬地の、これを、まあ隠したと言っていいのかどうかあれですけれども、これが抜け落ちていたという茨城県の例とか、あるいは、愛知万博のときの開発に伴う生物多様性調査、その中で開発重点地域を外したというような愛知県の例など、アセスに非常に問題がある事例も多いわけです。  先ほど午前中にも出ていましたけれども、中海干拓とか、あるいは最近ニュースになっております諌早湾の干拓事業についても、地元の知事というのは賛成だというような意向お話ししておりました。しかし、この賛成というのは、いわゆる巨額の公共投資を地元へ誘致しようとする余りに、環境面というのは二義的だというような発想も、いわゆる背に腹はかえられないというんでしょうか、いわゆる巨額の投資を当て込んでいる。あえて言うなら、巨額の建設工事費が地元に落ちるということから賛成だ、そういうふうな発想があるということで懸念するわけです。  今回の法案でも、ゴルフ場やスキー場とか、こういう問題についても、これは分権との絡みで国が事業許認可に直接関与できないようになるということから地方の方にゆだねたということだと思いますけれども、こういうふうな今挙げました例とかを考えますと、やはり地域利権に誘導されることのないように、地域の利益と国民的な利益を共同して保持していく、環境庁のこの観点からの指導性が要求されるんじゃないかと思いますけれども、この辺について見解をお伺いします。
  97. 田中健次

    田中(健)政府委員 私どもといたしましては、今回の制度を仕組む段階で、できるだけ幅広く、また早くから環境に関するいろいろな情報を集めまして、それが事業に反映できるようにというふうなことで仕組んだわけでございます。  ということで、一般の方々の御意見あるいは市町村長の意見、それから知事の意見等もそれぞれ準備書なりあるいは評価書等に表記をいたしまして、また、事業者の見解等もあわせましてそれを公告縦覧をして広く情報公開をしていく、こういう仕組みを取り入れておるわけでございます。  そうしたことで、私どもといたしましては、都道府県知事が環境保全観点から適切に御判断をいただくものというふうに考えておりますし、また、評価書の段階では、私ども環境庁長官が第三者として御意見を申し上げるということで、その意見もより適正を期していきたいというふうに考えておる次第でございまして、先生がおっしゃったようなことにならないように十分配慮をしていきたいというふうに考えております。
  98. 並木正芳

    ○並木委員 次のあれは大臣にお答えいただければと思うんですけれども、今、地方の問題をお話ししたんですけれども、この環境アセス事業者アセスだということで、特に国ということでの各省庁の問題が出てくると思うのです。  国が行ってきたさまざまな事業、例えば北海道開発局がやりました千歳川放水路計画だとか、あるいは建設省がいろいろ取り組んでいます長良川とか吉野川の河口堰の問題とか、あるいは今お話ししたような農水省の諌早湾干拓とか、こういうふうなものに関しましても、いわゆる科学的根拠とか経済的な根拠、これから諌早湾に畑をつくって酪農をやると言うんですけれども、そういう経済的効果が果たしてあるのかと、そういうような考えは、これ自然に持てるわけです。あるいは情報開示などをさまざまな点で拒否するような例もあったり、今、閣議アセスという中でいろいろ国のやってきたものもあるわけですけれども、そういうものにも問題が多いわけです。  そうしたことになりますと、いわゆる事業者みずからが行うこのアセスへの信頼性というものが危ぶまれてしまう、そういうふうなわけであります。  それで、今のお話もそうですけれども、時代的価値観がどんどん変遷していくわけです。ですから、この干拓事業というのも、食糧増産という意味では大きな時代的要請があった時代があるわけですけれども、現在、この干拓によって農地造成をしてそれほど大きな意義があるのか、そしてこの経済的な波及効果というか、それは極めて低いんじゃないか、そう考えるわけです。でありながら、農水省はかなり強硬に、過去における経緯、それと価値観を持って、さらには何か今度は防災上、例えば諌早湾なんかにおいては意義があるんだというような、そんなことをつけ加えて推し進めているわけであります。  この環境アセス法案云々の段階でも、発電所など、これを電事法で特例化して通産省のもとに置いて、縄張りといいますか、テリトリーを守ろう、そういう抵抗もあったわけです。  こういうことからすると、事業者アセスへの非常な懸念ということで、環境庁が中立的立場に立ってよほどしっかりしていただかないと、結局、魂入らずということになってしまうと思うのですけれども、その辺の御見解を大臣にお答えいただければと思います。
  99. 石井道子

    ○石井国務大臣 委員指摘の、今まで長い間かかって行われてまいりました干拓事業などにつきましては、さまざまな経緯があります。そして、現在の時点では、環境庁としても、意見が求められている段階でいろいろと意見も申し上げてきたところでありますが、それにはまた一つの制約もありますし、限界があるというふうにも感じております。  今回の環境アセスメント制度法案につきましては、事業の免許等を行う者によります審査のほかに、第三者として、都道府県知事や環境庁長官意見を述べることとされているわけでございまして、客観的に、かつ公正に手続が行われるようになっているところでございます。その過程で、やはり行政の外部の専門家の知識を十分に活用することも可能になっているわけでございます。  環境アセスメント制度につきましては、環境の保全上の支障を未然に防止して、そして、総合的な環境の保全を図る上で極めて重要な施策でありますので、環境庁といたしましても、信頼性が十分確保できるように、そして、その的確な推進序図る必要があるということで、このたびの制度の運用を図ってまいります所存でございます。
  100. 並木正芳

    ○並木委員 大変前向きな取り組み方をお聞きしたわけです。  大臣に今お答えいただいたところで、実は、COP3ですけれども、十二月一日から京都で行な れる、このいわゆる気候変動に関する国際連合煙組条約第三回締約国会議というのですか、非常に長くなりますけれども、これについてお聞きしたいと思うのです。  この会議は、九二年の六月にリオの地球環境サミットで署名が開始されて以来、九五年四月にベルリンでCOP1が行われて、そこで、ベルリン・マンデートというのですか、議定書を採択、検討していかないと、ただの努力みたいなところではいかぬだろうというようなことになりまして、そして、昨年のジュネーブでのCOP2。そういうことで、ベルリン・マンデートに基づいて、議定書あるいは法的文書ということになろうかと思いますけれども、いよいよこれが採択されるという、具体的に温室効果ガスの削減目標が設定される、非常に大きな意義ある会議になっていくわけですし、二十一世紀の人類の未来を左右する会議だ、こういう呼び声まであるわけです。  そういうことから考えますと、今まで残念ながら環境後進国というありがたくない言葉も日本はいただいてきた面も一面ではあるわけですけれども、むしろ、ここは国際的にリーダーシップを得るという大きなチャンスでありまして、国際的にもチャンスであるし、また、国民に向かっても、さまざまな環境問題あるいは温暖化の問題、これは国民もなかなか理解がいかない面もあるわけで、こういうものをアピールする絶好の機会かと思います。  そういうふうに私はとらえているわけですけれども、十二月に向けて、国際会議がいろいろ準備されたり開かれたりしているようでございます。月曜にはこちらの公聴会も京都であるということですし、地球温暖化アジア太平洋地域セミナーというのですか、これは山梨県ということですし、あるいは気候変動対策国際戦略世界会議、大変すばらしい名前会議ですけれども、こういうものが開かれるということですが、この取り組みについて、まずお聞きしたいと思います。
  101. 浜中裕徳

    ○浜中政府委員 お答えを申し上げます。  先生ただいま御指摘のとおり、十二月に開催を予定されております地球温暖化防止京都会議、いわゆる気候変動枠組み条約第三回締約国会議に向けまして、私ども今あらゆる努力をしているとこでございます。  ただいま御指摘がございましたように、この十二月の京都会議に向けまして、公式の準備会合というのが各国の交渉担当者の間で持たれておりまして、既に六回開催をされ、あと二回、京都までの間に開催予定でございますが、議長国となると目されております我が国といたしましては、それに加えまして、さまざまな機会を通じまして、十二月の京都会議で成果が上がりますように努力を傾けているところでございます。  ただいま御指摘のございました地球温暖化アジア太平洋地域セミナーにつきましては、既に一九九一年から毎年、環境庁が主催をいたしまして開いてきておりまして、今回で第七回になるかと思いますけれども、ことしにつきましては、山梨におきまして、山梨県の御協力もいただきながら七月に開催を予定しておりまして、準備を進めているところでございます。この会議を通じまして、アジア・太平洋地域の発展途上国が地球温暖化問題に積極的に取り組んでいけるように、あらゆる技術的な支援をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。  また、ただいまもう一つ引用されました気候変動対策国際戦略世界会議というのを、三月の末に京都で開催をさせていただきました。  この会議につきましては、我が国及び世界のこの問題に関する第一線で活躍をしておられる専門家の方々、政府関係者やあるいは産業界、学界のあらゆるところから御参加をいただきまして、早期の行動のもたらす機会、機会と申しますのはチャンスというような意味でございますが、そういうチャンスと問題点ということで、いろいろな角度からこの点について検討を重ねたわけでございますが、やはり地球温暖化防止を図る上からは、なるべく早期の段階で積極的に行動をとっていくことが望ましい。また、これからの対策には技術の発展が必要でありますが、そうした技術の発展を促す上からも、やはり政府あるいは国際機関といったところから、明確な将来に向けての対策の方向性を示していくことが必要だといったような結論が得られたところでございます。  このように、あらゆる場を活用いたしまして、現在、私どもといたしましても、京都会議の合意に向けまして努力をしているところでございます。
  102. 並木正芳

    ○並木委員 いろいろ御努力いただいているようですけれども、もう一つ、COP3というもののフォロー的なものとして、地球環境基金、これにファンドレージング、要するに、お金を稼ぐというか、それをやるというような話で、ロゴマークを使うだとか切手を発行するだとか、これは郵政省の管轄にもなることですけれども、いろいろそういうようなことを考えられてきているわけですけれども、この辺についてはどうなっているでしょうか。
  103. 浜中裕徳

    ○浜中政府委員 お答えを申し上げます。  先生指摘のとおり、環境事業団に設けております地球環境基金におきまして、これまで環境NGOの環境問題への取り組み、内外のNGOの取り組みに対して支援を申し上げてきたところでございますけれども、九年度予算におきましてさらに、京都会議あるいは国連環境特別総会などに向けましていろいろと努力をされておりますNGOに対して、従来とはまた違った枠組みでこれを支援していこうというようなことで新たに予算措置もさせていただいたところでございます。  こうしたものを活用しながら、我が国では、京都会議に向けまして、NGOの横断的な連絡組織といたしまして気候フォーラムというものもできておりますし、その他のさまざまなNGOも取り組みをしておりますので、そうした活動に対し私どもとしても最大限の支援をしていく所存でございます。
  104. 並木正芳

    ○並木委員 では、もうちょっと具体的にお聞きします。今の問題は、結構です。  よく言われるのですけれども、二〇〇〇年までに二酸化炭素等の温室効果ガスの排出量を一九九〇年レベルまで戻す、こういうことが言われております。それについて政策や措置をしているのでしょうけれども実効性が必ずしも上がっていない。  一九九〇年は、換算したところで三億二千万トン。九三年にちょっと九二年よりは下がって三億二千四百万トンにはなったのですけれども、九四年にはまたふえてきてしまったというようなことで、九四年には三億四千三百万トン。炭素換算値ということで前年比五・九%増加、一九九〇年度比になると七・二%の増加、こういうふうになっているわけであります。なかなかこの辺は大変だなというような印象を持つわけです。  実は、つい最近の報道の中で、ボンで開かれた特別会合で、EUから、これはさらに先ですけれども、二〇一〇年の温室ガスの排出量を一九九〇年水準より一五%減らそうじゃないかという案が突如出された。ある意味ではCOP3に向けてだんだんに熱を帯びてきたということでいいのですけれども、アメリカも猛反対するし、日本の田辺環境問題担当大使が慌てて発言されて、非難して、EU間だけでやるということに関して、差別だというような発言をされたということです。  それで非常にてんやわんやの状態であったというところを見ますと、先ほど指摘した発電所環境アセスの綱引きでもわかるわけですけれども、こういう通産省との、ほかの省庁ももちろんあるわけですけれども、非常にあつれきがある。その辺で、議長国としてむしろ提案する、まとめる側に立って、果たして責任が果たせるのかなというような懸念をずっと持って見てきているわけなのです。  その辺で、実効ある削減値の提案ということを、果たしてどういうふうなレベルに今来ているのか。あとまだありますけれども、その辺のことにつきまして、そういう他省庁とのあつれきの問題ですので、大臣にお聞きできればと思います。
  105. 石井道子

    ○石井国務大臣 ことしの十二月にCOP3を迎える我が国といたしましては、何とか国際社会においても堂々と胸を張ってその会議に臨めるような体制づくりをしなければということで、今までもいろいろ準備を進めてまいりました。  今回EUから出されました数字もまたありますが、ちょうど四月十五日に日本としては通報をしなければならないということでもありましたが、いろいろとスケジュール的に間に合わなかったものですから、それは先送りになりました。しかし、現在、各省庁との連絡調整をしながら、日本としてできるだけ裏づけのある実現可能な数値目標をいろいろと探っているところでございまして、できるだけその目標を早く出さなければということで作業を進めているところでございます。  具体的な作業につきましては政府委員の方からもお答えさせていただきたいと思っておりますけれども、とりあえず、現状は今のような状況ではありますけれども、ぜひこれからも十二月のCOP3の成功に向けて、いろいろと具体的な取り組みに向かって総力を挙げまして取り組んでまいりたいと思っております。
  106. 浜中裕徳

    ○浜中政府委員 大臣がお答えになったことにつきまして、私の方から若干つけ加えさせていただきたいと思っております。  先生指摘のとおり、COP3に向けましての削減目標につきましては、私どもも議長国となると目されておるわけでございますから、各国の積極的な対策努力を引き出すことができ、かつ、その国際的な合意が可能であるような目標の数字というものを提案していくことが重要であるというふうに強く認識しているところでございまして、そのためにも我が国自身がまずどの程度削減していくことができるかということについての議論を深めていかなければならないというふうに考えているところでございます。  昨今報道されておりますのは、数値目標の設定そのものではございませんけれども、条約上求められております我が国の対策の内容についての通報でございます。この通報それ自体は、施策の効果や排出の見通しを定量的に示すものでございまして、それ自体大変膨大な作業を要するものではございますけれども、その結果が今後の数値目標の設定に当たっても重要な基礎となると考えておるところでありますので、大臣の御指示もいただきまして、できる限り削減の見通しが示せるように、現在調整に努めているところでございます。  また、京都会議に向けましては、こうした我が国自身の削減の可能性に加えまして、各国のこれまでの主張も十分考慮いたしまして、また、いろいろな国際的な合意によりまして国際的に協調してさまざまな対策を実施することによって初めて削減可能な、そういった対策もあるわけでございますので、そうしたものの効果もどの程度のものであるかというようなことも検討を行うことが必要であると考えております。  現在、そうしたことも含めまして政府部内で鋭意検討を進めているところでございまして、私どもといたしましては、こうした結果も踏まえ、各国の賛同が得られるような具体的な数値を含んだ国際目標の案を提案してまいりたいと考えているところでございます。
  107. 並木正芳

    ○並木委員 もう一つ、COP3の中で、これは北欧四カ国の方から出されたみたいですけれども、いわゆる排出権を取引しよう、そういう構想が出ているということで、先進諸国の場合は積極的にそうしてもらうと都合がいいというような意見もあるようです。  一方、日本も通産的な考えでいくと、あるいはそれがいいのかもしれません。けれども、お金でその排出権を買ってしまうということです。その辺について考えますと、お金で全部解決していくというと、全然問題が変わってきてしまう。要するに、削減目標なんというのはもう先送りになっていくのじゃないか、こういう考えに当然なるわけなのですけれども、この辺については、環境庁はどういう見解をお持ちなのでしょうか。  私、先ほど国際的なリーダーシップをこのCOP3で発揮するいい機会だというふうなことも述べたわけなのですけれども、逆に言うと、対応によっては世界をがっかりさせる、そういう逆の結果にもなりかねないと思うのですけれども、その辺の御見解をお聞きしたいと思います。
  108. 浜中裕徳

    ○浜中政府委員 お答えを申し上げます。  先生ただいま御指摘の排出権の取引につきましては、最近アメリカが交渉の中で提案をしているものでございまして、アメリカの考え方は、法的に拘束力のある目標を設定する必要があるというのがまず第一ではございますが、その目標の達成に当たっては、最大限の柔軟性を認めるべきである。  そこで、排出の目標につきましても、単年の目標ではなくて複数年にわたる目標を設定する。それから、複数年である期間でございますが、その期間の中で、次の期間、例えばそれは五年なら五年という期間を設けるといたしまして、最初の五年と次の五年の間に排出枠の移動といいますか、それを貯金に例えまして、繰り越しであるとかあるいは前借りでありますとか、そういったようなこともやれるようにしたいというような提案でございますとか、さらに、国ごとの排出目標の間で、決められました枠の中で取引もできるようにしたい。あるいは、共同実施、そういったものもやりたいといったようなことをいろいろ言っているわけでございます。  とりわけ、御指摘の排出権の取引につきましては、これはアメリカの国内で、酸性雨対策で二酸化硫黄の削減について実施した経験がございますが、そしてまた経済的な観点から見ますと、非常に効率よく汚染防止対策を進めていくことができるというような利点も強調されておりますが、他方、こうした仕組みにつきまして、国際的な対策として実施されてきた経験が国際社会にございませんし、しかも、これを十分な信頼性を持って行うことができるかどうか。排出権を売りたいというところがあったといたしましても、そのような排出のある量というものが確実に売りたいというところが減らすことができるものかどうかといったような問題点もございます。  したがって、そうした売り買いができる排出の量といったものにつきまして、信頼性を持ってそれを測定をすることができるか、あるいは検証することができるかといったようないろいろな問題点が今提起されておりまして、国際的にもまだまだこれから多くの検討が必要な状況でございます。  私ども環境庁といたしましても、そうした問題点がまだまだこの点についてはあると思っておりますので、国際的な検討の場におきまして、慎重にこの点については検討を深めていきたいというふうに考えている次第でございます。
  109. 並木正芳

    ○並木委員 時間がないのですけれども、COP3、せっかく質問しましたので、国民に対するアピールという点で最後に一点だけお聞きしますけれども、CO2だとかNOxだとかフロンだとか、なかなかわかりにくいという面もあるかと思うのです。  その辺、具体的にどういうふうに説明していくかというような点で、皆様方もいろいろ思いをめぐらせていると思うのです。例えば食糧政策なんかに関しましても、日本の食糧政策というのは非常にあいまいだとも言われているのですけれども、幸いなことには今、日本は食糧はあり余るくらいある、経済的な力をもって世界から買い集めているわけです。  こういう食糧問題に関しましても、地球温暖化ということで非常に大きな影響が出てくる。小麦なんかでも、中国は世界一位だそうですけれども、これが一〇%くらいは減ってしまうだろう。あるいは、第三位のインドは六〇%くらい減る。アジアではもう五〇から六〇%減ってしまう。アジアに結構大きな問題があるようですね。モロコシ、いわゆるコウリャンですけれども、これも半減してしまう、中国で。トウモロコシも四〇%くらい減るだろう。あるいは、北朝鮮、今大変食糧不足で悩んでいるようですけれども、これもまた壊滅的に、モロコシなどでは八七%くらい減ってしまう。こういうような恒常的な食糧不足を生んで、すなわちアジアの混乱と日本の危機というような問題にもつながっていく、こういうような観点もあるわけです。  そういうところで、ぜひそういう問題もアピールして、地方自治体の施策とか、身近なところからのエネルギー節約とか訴えていく必要があろうかと思うのですけれども、そういう点についてお聞きをしたいと思います。  それと、やはり今ずっとお話ししてきたように、国と国、先進国と後進国のいろいろなあつれきとか、あるいは省庁間、こういう産業立国思想と環境問題を考えていく上でのあつれきとか、あるいは地方と国、さまざまなものがあります。いずれにしても、環境庁が中立的、第三者的なきちっとした機関で、人間的視点を、人間の命と健康を守っていくというような視点を持ってぜひ取り組んでいただくことが重要かと思います。  そういう点で、私は、機構の改革で、リストラの時代といいますけれども環境庁はもっと充実させるべきだという考えもあるのですけれども、その辺は、時間がありませんのでまた改めてお聞きさせていただこうと思っておりますけれども、ひとつ、COP3の国民へのアピールの仕方への考え方、あるいは環境庁の今後の姿勢、それについて、大臣、最後にお答えいただければと思います。
  110. 石井道子

    ○石井国務大臣 地球温暖化の原因となっておりますのが温室効果ガスということで、その最も大きいのが二酸化炭素、炭酸ガスでございますが、この排出量が日本世界で第四位、西側先進国としては第二位でございまして、この数値を何とか削減しなければならないという差し迫った状況がございます。  そして、この地球温暖化によって引き起こされるさまざまな現象については、今委員からもお話がありましたけれども、百年たつと温度が二度上昇して、そして水没をする島や地域がたくさん出てくるというようなことも心配されておりますし、水面が五十メートルから百メートルくらい上がってしまうということが心配をされておるわけでございまして、また、食糧の問題とかあるいは伝染病の問題とか、さまざまな問題がそれによって起こされてくるというのが非常に心配をされております。  ですから、そのことをできるだけ国民の皆様方が十分に理解をしていただいて、そしてぜひこのことを国民総ぐるみで——今、何か答弁、数字が間違ったようです。五十センチから一メートルということでございまして、申しわけありません、上昇するということでございまして、そのことをちょっと訂正させていただきます。そのようなことで、できるだけ国民が総ぐるみで臨めるような活動を、今環境庁としても、各自治体とか事業体とか国民の皆様方に対してお願いをしているところでございます。  まだまだ不徹底の部分があるかと思いますが、今度COP3が行われます京都については、かなりその準備も進んでいるというふうに聞いておりまして、このような波及効果がさらに全国的に広がることも期待をしているところでございます。どうぞよろしく御協力、御支援のほどお願いいたします。
  111. 並木正芳

    ○並木委員 ありがとうございました。
  112. 佐藤謙一郎

    ○佐藤委員長 武山百合子さん。
  113. 武山百合子

    ○武山委員 新進党を代表しまして、武山百合子ですけれども質問させていただきます。  このたび、環境影響評価法案という、手続一つの画期的な制度が俎上に上って議論をされるということで大変うれしく思っておりますけれども内容を見ましたら、不備な点が大変多いというのが私の感想です。  それから、環境庁の方からいただきましたこの法案手続の流れの図式なんですけれども、私はほとんどわかりません、この図式を見ましても。これが国民にどれだけわかるのかなという印象を持ちました。これを見まして国民にわかりますでしょうか、環境庁長官お願いいたします。
  114. 石井道子

    ○石井国務大臣 図式については、どの図式かちょっとわかりませんけれども、今度の法案は非常にわかりにくいというように一般的に言われておりますが、それだけ私は中身の濃い、さまざまな問題が盛り込まれた重要な法律であるというふうに受けとめております。いろいろと研究をちょっとされればおわかりになることではないかと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  115. 武山百合子

    ○武山委員 いえ、中身が濃いからイコールわかりやすいということにはならないと思います。複雑過ぎて、あり過ぎて、そして質の問題でどうかという、後から私質問いたしますけれども一般の国民の目に非常にわかりにくい。私は国民を代表して言っておりますので、私のレベルが国民のレベルだと思いますので、ぜひお聞きおきいただきたいと思います。  まず、このいわゆる手続法なんですけれども環境庁は、これは日本は外国に三十年近くおくれてできたわけなんですけれども、どのような外国のものを参考にしてつくられたんでしょうか。
  116. 田中健次

    田中(健)政府委員 法律ができるのは残念ながらおくれましたが、四十年代の後半から、まず公共事業につきましてアセスメントを始めましたし、また五十年代になりまして、発電所あるいは港湾、公有水面埋め立て等の各法律でもアセスを始めましたし、また五十九年から閣議決定の要綱によりましてアセスメントを始めておりまして、それも既に十数年の実績を積んできたわけでございます。  このたびその閣議要綱をベースにして法案化を図ったわけでございますけれども、その過程研究会をつくりまして、関係十数省庁が一緒になりまして事務局をやって研究会を進めてまいる、その過程でいろいろな内外の制度を調べましたけれども、外国の数多くの制度も、実際に調査団を外国に派遣したりいたしまして、十分いろいろと調べたその成果に基づきまして、審議会等で御検討をいただいてこの法案にまで至ったわけでございます。
  117. 武山百合子

    ○武山委員 大変外国を研究されてつくられたということですけれども、その外国と比較しま才と、特にアメリカ、カナダ、オランダ、環境先進国と言われている国のアセス法律内容と比較しますと、大変日本がおくれているという部分は、住民参加、これは大変おくれております。  例えば、方法書公告縦覧、その後意見の提出これはもう書類で、書面で提出するだけなんですね。それから、スコーピングの後説明会の開催、ここで一方的に説明を受けて、そのときにお互いに議論し合うのかどうか、また後で細かい部分で突っ込んで聞きたいと思いますけれども、その傍も意見書の提出ということで、やはり一回、二回しがここの住民参加はされてないわけなんです。それも書類で、書面で一方的ということなんですね。  それで、他の国はやはり二回、三回と、ともに公聴会で意見を出し合うて、そして住民とそれから事業者とお互いに話し合って、そこに第三者機関が入って、第三者機関が事業者側とそして住民側の意見を両方入れたような案をその後また提示しているわけなんですね。そういう点で、日本は本当に外国を調査して入れたのかなというと、私はほとんど入れてないと思います。実際に、諸外国の方が二回、三回と、もっと透明で、実際に意見議論する場を設けられておるものですから、その点をちょっと伝えておきたいと思います。  住民参加というところが欠けているということと、それから、知事意見といいまして、首長さんの意見が入ってなくて、知事意見ということで、知事が首長の意見を代表しているということで、ここは機関委任事務の弊害だと思うんですね。  日本は、二十一世紀は国際化、自立した社会、そして個人が豊かな社会、先日予算一般質問のときにそのように官房長官が答えたんですけれども、これからそういう社会になっていくのに、まだ情報公開法も上がっておりませんし、地方分権も行われておりませんので、確かに仕方ないんですけれども、その知事が、首長さん、市町村を仲表して意見を言う、そのときに透明、公正性が確保されるかというと、私はそうじゃないと思うんですね。やはり補助金、交付金をもらっていますと、必ずそこで左右されるわけなんです。ですから、知事の意見だけという、ここの辺も、私は、先進諸国と比べて日本独自の考え方であろうと照います。  それで、中身にちょっと入りたいんですけれども、現在、政策それから計画段階、このアセスが行われる前の段階ですね、もしくは実施間近の事業が今あると思うんですね、たくさん。そのうち今回の法案の第一種事業に当たるものは今どのぐらいあるのでしょうか。
  118. 田中健次

    田中(健)政府委員 法の対象となる事業の第一種事業がどのくらいになるのか、こういうお尋ねだと思いますが、法の対象となる事業、具体的にはこれからその規模要件等は政令で定めていくことになるわけでございまして、具体的な規模もまだ決まっておりませんし、それから、個々の事業の進捗状況、まちまちであることから、なかなか数字を出すことは難しい状況でございます。いろいろなそういう制約がありますが、推計をいたしますと、最近の十年の閣議アセスやあるいは省議アセス実績等から見て、年間六十件ぐらいのアセス案件が出てくるのではないか、こういう推測でございます。
  119. 武山百合子

    ○武山委員 ありがとうございます。  これは、もちろん駆け込みも全部入れてという意味ですね。
  120. 田中健次

    田中(健)政府委員 何をもって駆け込みというのかわかりませんが、一般的に言ってこのぐらいの数が、今後、法が施行されると出てくるのではないか、こういう推計を申し上げた次第でございます。
  121. 武山百合子

    ○武山委員 もう一度お聞きしますけれども、今回の法案成立して、この第一種事業に当たるものの数なんですけれども、それは年間六十件ぐらいという意味でしたか、今おっしゃったのは。
  122. 田中健次

    田中(健)政府委員 先ほど申し上げましたように、いろいろなことから推計しまして、第一種事業が年間六十件ぐらい出るのではないか、こういうことでございます。
  123. 武山百合子

    ○武山委員 それでは、例えば長良川河口堰などの事業に相当するような事業の数は、そのうちどのくらいでしょうか。
  124. 田中健次

    田中(健)政府委員 事業はそれぞれの実施官庁、事業官庁がやるわけでございまして、私どもといたしましてはその辺の見通しはよくわかりません。
  125. 武山百合子

    ○武山委員 でも、これは環境に及ぼす大変な影響を評価するわけですから、大体環境庁がそういう国営事業をつかんでいないというのはおかしいと思いますけれども、それも大体わかりませんでしょうか。主務官庁じゃないからわからないということでしょうか。長良川河口堰のような、ああいう大きな事業に相当するような事業ということなんですけれども
  126. 田中健次

    田中(健)政府委員 先ほどから申し上げておりますように、各省でそれぞれ事業をやるわけでございまして、今の時点でこれからやる事業情報をとるようなシステムにはなっておりませんし、今のところ、私どもとしてはそういう情報はつかんでおりません。
  127. 武山百合子

    ○武山委員 でも、大体そういう情報というのは環境庁に入ってくると私は認識しておりますけれども。大きい事業というのは前々から、政策の段階そしていわゆる計画段階で根回しはされているわけですから、そういう大きな事業、今後行われるような事業というのは。全くあすのことはわからないという意味にとれましたけれども、そのような意味なのでしょうか。
  128. 田中健次

    田中(健)政府委員 私どもは、事業官庁が事業を始めまして、それは、いろいろと関係する自治体等にも御連絡をいたしまして、そこからアセスメントが始まってくるわけでございます。アセスメントが始まりまして、その基本的な事項は私どもがお示しをした方針によりまして各事業者にやっていただくわけでございますが、私ども環境庁意見を求めてくるのは評価書の段階になった時点でございまして、それも今の制度では、これは大変残念なことではございますけれども、主務官庁が意見を求めてきたときだけ意見が言える、こういうことになっております。  そういういろいろなシステムもございまして、私どもといたしましては、今の時点でそういう情報をつかむということになっておりませんので、お答えは申し上げられない、残念ながら、そういうことでございます。
  129. 武山百合子

    ○武山委員 何か主務官庁の縄張り争いのようなお話、主務官庁それぞれの力で、それぞれの立場でやっているというだけで、環境庁は何の影響もないというようなお答えに聞こえましたけれども、まず私が言いたいのは、今までの経験から、環境に重大な影響を及ぼし得る事業については、環境庁の力で何とか今アセスが実質的に適用されるようにしていただけないかという意味で聞いたわけです。ですから、それはぜひ前向きにやっていただきたいと思います。  それでは、次に移ります。  アメリカでは環境影響評価法に関しては検討から約三年程度で成立しているし、諸外国でも検討から成立まで日本ほど時間を重ねている国はないのですけれども、まず、日本はなぜ三十年もの年月がかかったのか、それから、これまで法案化に抵抗してきたのはどのようなものか、機関なのか、ぜひともお伺いしたいと思います。
  130. 田中健次

    田中(健)政府委員 お答えを申し上げます。  政府といたしましては、御承知のとおり昭和五十六年に環境影響評価法案、旧法案を提出いたしたわけでございますけれども、昭和五十八年の衆議院の解散で残念ながら廃案になったわけでございます。そのときの状況は、いろいろ御審議をいただいたわけでございますけれども、残念ながら国会の解散で廃案になったということでございます。  その後は何もしないわけではございませんで、閣議要綱に基づきまして実行をしてまいりまして、その間に、先ほど申しましたように研究会をつくりまして、いろいろと幅広く検討をしてきたということでございます。その研究会、あるいは検討過程で、今度は各省庁が一緒になって研究検討を進めてまいりました。政府一体となって研究検討を進めて、今回この法案の提出までに至った、こういうことで御理解をいただきたいと思います。
  131. 武山百合子

    ○武山委員 私は、実は、廃案になったその理由をちょっと聞きたいと思いまして聞きました。なぜ廃案になってしまったのでしょうか。
  132. 田中健次

    田中(健)政府委員 国会の方で解散になりまして廃案になったというふうに受けとめておる次第でございます。
  133. 武山百合子

    ○武山委員 何か法案が出たたびに解散になってしまったのでしょうか。
  134. 田中健次

    田中(健)政府委員 審議は何度かいただいたようでございますけれども、残念ながら採決に至らなかったということでございます。
  135. 武山百合子

    ○武山委員 その採決に至らなかったところをちょっとお聞きしたいと思います。
  136. 田中健次

    田中(健)政府委員 推測いたしますと、国会での御審議議論がまとまらなかったということで、その時期ではなかったということになろうかと思います。
  137. 武山百合子

    ○武山委員 もっと突っ込みたいところですけれども、何か押し問答のようですので、この議論はまた別な機会にということで、次に移ります。  次に、スクリーニングの件でお尋ねいたします。  今回の法案における第一種事業に当たらないような過去の事業のうちで、有害物質が環境基準をかなり超える、または施設周辺住民の多くが体の不調を訴えるといった環境への大きな影響を与えている施設があると思うのです。そういうものはちょっとわかりますでしょうか。
  138. 田中健次

    田中(健)政府委員 急にそう抽象的なことを御質問されましても、私どももちょっとデータを持っておりませんし、今の時点で直ちにお答えをするだけのものを持っておりません。
  139. 武山百合子

    ○武山委員 抽象的と言いますけれども、今大変問題になっている、例えばダイオキシンなどなんですけれども、これはもう環境庁でよくおわかりになっていらっしゃることだと思うのです。決して抽象的じゃないと思いますけれども、これはまた後で別個にお聞きいたします。  それで、結局、環境庁は、今のお話のように、そうやって私に言わせれば逃げています。情報公開法でいずれ公開されることにはなるのですけれども情報公開法に備えて、最も害の大きいごみ焼却炉のダイオキシンのデータなどを徐々に小出しにしながら、日本人に免疫をつけようとしているのじゃないかという気もいたします。もしそうだとしたら、そのやり方は間違っていると思います。そのようなやり方をとれば、日本人は徐々に環境に関する悪い情報になれ、またかとだけ感じるようになって、みずから動いて自分の周りの環境を整えるために活動するようなことはなくなってしまう。  つまり、政治家が頻繁に保身に走るために、国民がそれになれ、白けてしまって、さらに政治が悪化するという悪循環に陥っているのと同じで、環境に関する不祥事になれて、白けてしまって、環境がさらに悪化するという悪循環に陥ることになるのじゃないかと思います。  環境庁の方々や事業官庁の方々は、仮に国会の場で具体例を挙げたら、住民の施設建設反対運動や巻町のような住民投票等が起こり、生活に不可欠な施設が運用できなくなったり建てられなくなったりして、結局困るのは国民だというふうにお考えになっているのかもしれませんけれども、私はその考えは間違っているのじゃないかと思います。  例えば、原発や産業廃棄物の施設の予定地などに住んでいる一部の住民だけが本当に環境悪化の危険にさらされているのなら、環境庁等の意見も一理あると思います。しかし、本当のところは違うのです。危険性だけで済んでいる原発はまだいいかもしれませんが、実際は、道路でもごみ焼却場でもゴルフ場でも環境基準に抵触している、環境基準はないけれども、有害物質を出している施設が日本には大変あるということ。  最近、ダイオキシンの問題で施設が公表になりました。情報公開ということで多くの名前が挙がりました。大部分の地域の住民が環境悪化の危険にさらされ、その影響を受けているわけです。そうなると、先ほど質問したような、環境への重大な悪影響を与える可能性のあるこれからつくられる施設の公表や、現時点で環境に悪影響を与えている施設を公表することは、必ずしも環境庁が考えていると思われる方向には進まないと思います。  むしろ日本人は、やっと本当の意味での情報公開により、都市部ではほとんどどこへ行っても余りよくない環境にぶつかり、現時点で環境悪化の原因である施設を利用している限りその状況に陥るわけですから、日本人は、便利な生活と環境保全とのバランスについて、地域の人々と議論を始め、環境を保全するためのコストを認識するようになり、よい環境だけを要求する住民エゴから脱却できるのではないかと私は思っております。そして、徐々に有害物質に毒されていくほど気持ちの悪いことはありませんし、今の日本人が現在の便利さを投げ出すとも思えません。それだからこそ人々は動き始めると思うのです。  以上のような理由で、事後調査の結果に対する罰則規定のない今こそ、私は、環境ビッグバンとも言うべき環境情報の全面公開をすべきだと考えておりますけれども、いかがでしょうか。
  140. 田中健次

    田中(健)政府委員 環境アセスメント法は、大規模な事業をやるときにできるだけ環境への負荷を少なくするということで、それを事業者責任と負担によってセルフコントロールでやっていただく、そういう制度でございまして、その手続を定めておるところでございます。  したがいまして、先生今いろいろとお話がございましたけれども情報公開の面からも、その事業につきましてアセスメントを行うというときに、できるだけその内容公告縦覧をいたしまして、広く一般の方々からも意見をとって、できるだけ環境への配慮ができるように考慮をいたしておるところでございます。  したがいまして、この制度では、事業を始める前にアセスメントを行いまして、その結果を許認可に反映をして、アセスメントの結果もあわせまして許認可の判断をいたすということでございます。  その後の状況につきましては、私どもとしては、準備書なり評価書にその後のフォローアップも書かせまして、それを守っていただくということにいたしておりまして、事業者の方でそうしたことを踏まえて適切にやっていただくということを考えておりますが、万々が一予測と随分結果が違った、こういう場合には、事業官庁の方でもいろいろ考えていただきますし、地方公共団体の方でも考えていただきますし、あるいは、環境にシビアな影響が出るということであれば、大気汚染防止法なり水質汚濁防止法なり、それぞれの環境規制の法規から適切に対応していく、こういうことになろうかと思います。
  141. 武山百合子

    ○武山委員 日本では十一業種と規定されておりますけれども、例えばアメリカでは規定がないんですね。あらゆることが環境影響評価対象になるわけです。それで、環境影響評価対象というのはもう、例えば今回の北陸で起こった重油の問題、あれも規定になかったと思うんですよね。  例えばこれから法律として施行する場合、日本でいわゆる規定外のものが出てくるわけですよ。ダイオキシンもそうだと思うんですね。予想し得ないことが現実に出てきているわけです。そういうものこそ環境アセスが大切だと思うのですけれども日本の場合は、対象となる事業を初めから枠にはめて、もう十一業種と決めているわけですね。ですから、例外規定を置くというようなことなんです。  人間環境の質を重視して、原則としてすべての事業が欧米では環境の影響評価をつくる過程アセス対象になっているというのが非常に日本と違うところなんですけれども、そのために事業者が、アセスをしないでいいように初めから自主的に環境に影響が出ないように努力するという、よい結果を生んでいる場合もあるわけなんですね。  日本はなぜ対象事業の枠をはめたのか。欧米のように枠をはめない、枠をはめる、その辺のちょっと認識というか、状況を知らせていただきたいと思います。
  142. 田中健次

    田中(健)政府委員 我が国は、具体的に十二の事業種を掲げております。これは、先般来申し上げておりますように、国の立場から見て一定の水準を確保する環境影響評価をする必要がある事業ということで、非常に大規模な事業環境影響に著しい影響を及ぼすおそれのある大規模な事業。それで、それを、環境への配慮を考慮するということで、国が直接行うか、あるいは許認可に絡む、こういう事業対象にして国がそのアセスメントを行う。その他の事業につきましては、これまでの経緯等も踏まえ、地方自治体にもそのアセスメントをやっていただく。こういうふうな整理になっております。  そういうことでございまして、今先生お話ございましたが、これは大規模事業についての環境影響評価でございまして、事件とか事故とか、そういうことに対応する制度ではございませんので、その点はぜひ御理解をいただきたいと思います。  そういうことで、我が国は十二の事業種を掲げておりますけれども、そのほかに、今後いろいろと世の中が進みまして、今申し上げましたような基準に合致するような、新たに環境影響評価を行う必要のある業種が出てまいりますと、それも対応できるように法律の中にバスケットクローズがありますので、将来そういう事態になればそれで対応できるというふうになっております。  そういうことで、我が国としてはそういう考え方で十二業種になっておるわけでございまして、欧米のお話ございましたが、欧米諸国におきましてもいろいろでございまして、ドイツのように、対象となる事業種をすべて法律で定める例はございますけれども、ほかの諸国におきましては、具体的な事業種やあるいは規模を政令で詳細に定めるのが一般的ということになっております。
  143. 武山百合子

    ○武山委員 お言葉を返すようですけれども、アメリカでは規定がないわけですね。対象事業規定はないわけです。すなわち、人間環境の質を重視して、どれだけ影響があるかどうかというところで見るわけですから、あらゆる事業対象になるという視点で法律ができているわけなんです。  それで、今回の法案のような対象事業の選び方でも、スクリーニングのときに国民と事業者が話し合い、第三者機関が両者の間を取り持って接点を見つけるというような仕組みを組み込めば、少しはましな制度になるんじゃないかなと思うのです。例えば成田空港の問題もそうですし、もう行われてしまったあの長良川の問題もそうですし、干拓の事業ですね、それらも結果的にはいろいろな問題を起こしているわけなんですね。  その辺を、やはり過去の反省を踏まえ、過去を見習えば、事業を強行するというやり方ではなく、国民と事業者が話し合って、第三者機関が両者の間を取り持って接点を見つけるというような仕組みは考えられないものでしょうか。
  144. 田中健次

    田中(健)政府委員 今お話にございましたスクリーニング制度でございますけれども、これは、スケールで区切るわけでございますから、大規模の事業のうちで、その中での比較的小さ目のもの、これにつきましてもできるだけ環境影響評価制度にのっけていこうということで対象にするかどうかを決めるわけでございます。  そのときには、私どもがその判断基準というものを示しまして、それで都道府県知事の御意見も徴して主務大臣の方で決めていく、こういうことになっておりまして、都道府県知事はその辺の地域の地域特性であるということをいろいろと承知をしております。広域的な観点から承知をしておりまして、国の制度にひっかかってくる事業は広域的に環境汚染が心配される、こういう事業でございますので、私どもとしては、環境情報を含めまして地域のいろいろな情報を持っている都道府県知事の意見をこのスクリーニングの段階でお聞きすればそれで十分事が足りる、こういうふうな判断でこういう仕組みにしたわけでございます。
  145. 武山百合子

    ○武山委員 それはやはり、中央集権国家の今のような体制を長く続けていきたいという線が基本的にあるからなんですよね。  今まで事業が、それは環境に悪いからといって中止した例はほとんどないと思うんですよ。やはり、政策の段階、そしてその実施の段階になってどんなに反対闘争が起こっても、そのまま続行してきたというのが日本の今までの社会状況だと思うのです。それでまたこのようにして中央集権国家を築いていこうという、住民の参加をしないで、地方公共団体、知事の意見を主にしていくというその知事はやはり今までの中央集権国家で来ておりますので、やはり、国営事業としてこういう事業をやりたいと言ったときにほとんど今までの例で反対なんということはなかったと思うんですよね。  ですから、そこに第三者機関や国民や事業者が入って、そして話し合いを持って、そして一番いい方法をとっていくという方向に二十一世紀は流れていくような社会にやはり環境庁もつくっていかなきゃいけないと思うんですけれども、その辺はどうでしょうか。
  146. 田中健次

    田中(健)政府委員 都道府県知事の意見だけを徴するのは一番最初のこのスクリーニングの段階でございまして、その後のスコーピング制度から始まりまして、準備書評価書の段階、その段階になりますと住民あるいは市町村長の意見も当然徴する、こういう仕組みになっております。住民の意見を幅広く、居住地を限らずに徴することになっておりますし、市町村長の意見都道府県知事を通じて出てくる、それをまた準備書評価書に書きまして公告縦覧をして広く世間に問う、こういうふうなシステムにしておりまして、先生お話のようなことは十分私どもは配慮をいたしておるつもりでございます。
  147. 武山百合子

    ○武山委員 その件もまた後日議論をしたいと思います。  次に移ります。スコーピング、代替案についてお聞きいたします。  今回提出されている法案では規定があるのかないのか言葉ではわからないのですけれども、代替案、複数案ですね、についてお伺いいたします。  まず、アメリカのスコーピングでは必ず代替案を検討するということになっているんですね。仮にこの法案が過去にありましたら、長良川の河口堰を例にとれば、代替案が最低限事業者によって検討されたか。何もしないとか、事業者の案というような、答えがいろいろあるかと思いますけれども、建設省に答えていただきたいと思います。
  148. 竹村公太郎

    ○竹村説明員 お答えいたします。  長良川の河口堰の事業の代替案の御質問でございます。  この長良川河口堰の閣議決定は昭和四十三年、そして事業の着手が四十六年となっております。その際、私ども、この長良川河口堰の洪水を防御するためにどのような代替案があるか、検討してございます。  この長良川というのは日本でも最も危険な川でございまして、戦後五十年間に五回破堤しております。三十四年の伊勢湾台風では五千人が亡くなっております。この長良川流域の六十七万人の方々にとって、長良川がともかく安全に流れるようにというのが最大の念願でございます。  具体的に申しますと、長良川の地域に住んでいる方々の約七メーター上を洪水が走るような状況でございます。七メーターと申しますと、大体ここが四、五メーターだとしますと、あと二メーター上を大洪水が流れるような状況になってございます。  さてそこで、私ども建設省は、この長良川をどうやって洪水から守るかという代替案でございますが、第一点、堤防を横に広げる案、これは引き堤と申します。この案を検討しました。三十八年当時の検討では、千二百世帯の方々を移転しなきゃいけない。この地域を守るための河川改修で千二百世帯の方々を移転させるということは、ある意味で、コミュニティーを守るためにコミュニティーを破壊してしまうということで、これはちょっとできないなという一つ考え方。  そしてもう一つが、堤防をかさ上げするという、堤防をもっと高くしようという案がございました。これも、先ほど申しましたように、日本で一番高い堤防の長良川をさらにもっと高くするのかという、技術的には可能かもしれませんが、本当にそれをするんだろうかという議論をしました。ただ堤防を高くするだけではなくて、新幹線だとか東名高速だとかさまざまな橋、約十二橋、近鉄だとか名鉄、十二橋をかさ上げしなきゃいけません。大変な工事費がかかります。  そして、最後に私どもが選んだのがしゅんせつでございます。しゅんせつというのは非常に専門用語でございますが、川の中の河床を掘り下げるということでございます。川の中の河床を掘り下げてしまいますと潮が上ってきますので、潮どめ堰としての河口堰が要るということで私ども代替案を考えました。  具体的に金額で御紹介申し上げますと、引き堤、堤防を横に広げる案、これが当時の試算では約五千七百億円。かさ上げ案、堤防を高くしようという、これは新幹線だとか東名だとかそういうつけかえもございますので、八千七百億円。それで今度、長良川河口堰で潮をとめて、そして川の中を掘り下げようという私どもの最終的に選んだしゅんせつ案が三千八百億円ということで、昭和三十八年から四十年代当時、限られた国力の中でどうやって長良川を安全にするかという代替案の検討をそのように先輩たちはしたという結果でございます。
  149. 武山百合子

    ○武山委員 はい、ありがとうございます。それでは、代替案を幾つ検討したんですか、要は。今、お金の話が主でしたけれども
  150. 竹村公太郎

    ○竹村説明員 もう一度御説明させていただきます。  洪水を守るためには川の断面を大きくすることが一番基本でございます……(武山委員「数で結構です、代替案を幾つ提示したのかという」と呼ぶ)堤防を横に広げる、一つ、堤防を高くする案、そして川を掘り下げる案、三つでございます。
  151. 武山百合子

    ○武山委員 どうもありがとうございました。  それは、もちろん住民に公告縦覧されて、そして住民に説明会を開きまして住民と話し合われた結果、最後の河口堰になったわけですか。その辺をちょっとお聞かせください。
  152. 竹村公太郎

    ○竹村説明員 この長良川の改修工事、川を守ることは流域の方々の最も注目のあるところでございまして、私ども建設省は、地域の方々と岐阜県、愛知県、三重県、そして流域の市町村長の方々と、そして、直接の利害関係者である漁業関係者と長い年月話し合いをしております。先ほど申しました昭和四十六年に事業着手して、堰の本体に着工したのが昭和六十三年でございます。この間私どものやってきたことは、ほとんどの多くの力を使って地域の方々に代替案の説明、そして長良川河口堰の必要性としゅんせつの必要性を御説明してきたという経過がございます。
  153. 武山百合子

    ○武山委員 ありがとうございます。  代替案というのは、やはりある程度数が多く、そして、どのような項目を比較して、それでこのような代替案A、このような代替案B、このような代替案Cとか幾つかあれば、住民もその中身を見て、ああここの部分でこちらの方がいいのか、ここの部分であちらの方がいいのかという、住民が自分の目で判断できると思うのですね。ところが、その前には情報公開がきちっと、その費用がどれだけかかるかではなくて、質の問題で、代替案の中身の問題だと思うのですね。その中身がどの程度公正で透明で数多く評価されて出ているのかというのが問題になるのですけれども、今のお話ですと、私その中身を実際に見ておりませんので、私の感想ではよくわかりませんでした。  ただ、長良川の河口堰で代替案が出ていたということはほとんどマスコミにも出ていませんでしたし、これがいい、あれがいいという議論もなかったので実はお聞きしたわけなんですけれども、それは建設省だけのお考えで代替案をつくられているとは思えないのです。第三者、特にNGOとか、そういうものに関係のある学者の考えだとか、専門家の考えだとかがもちろん入って代替案ができているわけですね。その辺をお聞かせください。
  154. 竹村公太郎

    ○竹村説明員 お答えします。  私ども建設省河川局は、地域の方々を洪水から守るという責務を与えられております。専ら原案をつくり、それを実施していくのが法的にも私ども責任になってございます。そのために私どもは、代替案を含めて、私どもが作成し、それを地域の方々に御説明するというプロセスを踏むわけでございます。  従来、私どもは、昭和三十八年、四十年代、大変災害が多くありまして、工事を早くやらなければいけないということで、全般的に言えば十分な情報公開をしていた。今のレベルから見たら十分な情報公開をしていたとは思えませんが、当時の早く工事をやって安全な川にしなければいけないという必要性の中で、先輩たちはこの代替案等も含めた情報公開を最大限していたと私は聞いてございます。
  155. 武山百合子

    ○武山委員 自立した国民になるために、やはり代替案がしっかりとした内容で出てくれば、ただ単に反対するだけではなく、ああこの案がいい、この案がいいというふうに自分自身で、独立した自己の判断力というものを養うためには、きちっとした透明で公正な代替案が必要だと思うのですね。  それで、今お話を聞いておりますと、建設省独自の考えの代替案だというところに、やはり日本のいわゆる官主導の、いわゆる一般の住民参加のない代替案だと思うのですね。代替案が義務づけられると同時に、やはり専門家がこれからどんどん入っていって、省庁だけの考えではない、もっと住民も非常に理解のある住民、理解のあるというのは、ただ賛成するというだけではなく、そういう知識、それから大きな意味で豊富な判断力を持った、そういう方々が参加した、また専門家が参加した、そういう方々がつくられる代替案というものがやはり義務づけられた方がいいと思いますけれども、この代替案が明文化されていないのです。ぜひ入れていただきたいと思いますけれども、その辺、環境庁はどのように思っていますでしょうか。
  156. 田中健次

    田中(健)政府委員 代替案のお尋ねでございますけれども、アメリカなど諸外国におきましては、環境への影響をできるだけ回避をして低減する、こういう観点から複数の案を比較検討する手法が用いられておりまして、これが代替案の検討とされておるところでございます。この場合の代替案と申しますのは、立地の代替のみならず建造物の構造とか配置のあり方、環境保全設備、あるいは工事の方法等を含む幅広いものでございます。  中央環境審議会答申におきましては、「複数案を比較検討したり、実行可能なより良い技術が取り入れられているかどうかを検討する手法を、わが国の状況に応じて導入していくことが適当」とされておりまして、複数案の比較検討を含みます「環境保全対策の検討の経過を明らかにする枠組みとすることが適当」、こういうふうな答申をいただきまして、それを受けまして、この法案では第十四条の第一項で、準備書に「環境の保全のための措置」、それから「環境保全措置を講ずることとするに至った検討状況」、そういうことが記載をされることになる、そのように立法上構成をいたしております。  御指摘の、代替案が立地の代替を意味するということでございますと、我が国におきましては、地域の利害対立を誘発するおそれがあるなどいろいろ問題もございまして、立地の代替を義務づけるということは現実的ではないのではないか、私どもとしてはこういうふうに考えております。
  157. 武山百合子

    ○武山委員 私は、日本国民はそれを乗り越えないと、本当の意味のやはり透明で公正な社会というのは大変難しいと思うのです。住民の利害とかと恐れていないで、これから二十一世紀はそこを乗り越えないといけないと思うのです。ですから、代替案をきちっと提示もしないで、それは義務づけられないというのではなく、やはり提示をして、きちっと見せて、住民に参加させて、そして一つの案をつくっていくという一つの方向性を国がリーダーシップをとっていかなければいけないと思うのです。  あくまでも今までの官主導でやっていくという考えは、二十一世紀の開かれた国際化、そして自立した社会、住民が本当に自分たちの町は自分たちでつくっていこうという地方自治、地方分権化を進めていく上で、この法案だけ——そういう意味では、今の法体系では環境問題に関して未然防止的な観点から、行政訴訟や住民側が提訴できる可能性はほとんどないわけです。ですから、やはりそういう意味で住民本位の——だれのための国家か。やはり国民のための国家だと思うのです。法律も国民のための法律だと思うのです。それで、参加させる機会が少ないというのは、私は、やはりほど遠い、今の体制を維持していきたいというのはもう明らかだと思うのです。  ですから、ぜひ代替案を幾つも、欧米のような方向で義務づけて、そして利害関係が起こるというおそれを抱かないで、幾つか出して国民に提示して、それでわかった上でこういう方向でという一つの方向性をつけないといけないと思いますけれども、方向性をつけるという意味の代替案はいかがでしょうか。
  158. 田中健次

    田中(健)政府委員 代替案につきましては、先ほど御説明を申し上げたとおりでございまして、この法案にも代替案と申しますか、そういうことを検討の経過として記載をするように、こういう仕組みにいたしておるわけでございます。  先生お話ではございますけれども、やはり日本は非常に用地難でございまして、用地の問題につきまして代替案をいろいろと提示するということは、住民との関係で非常に難しい問題でございまして、現時点ではそれをやることはなかなか難しいということは御理解をいただきたいと思います。
  159. 武山百合子

    ○武山委員 お言葉を返すようですが、用地難とおっしゃっていましたけれども、これから地方分権化されていって、それぞれの地方が小さな政府となっていくわけですから、それはもう今のような一極集中から外れていくわけですから、用地難などと言えないと思います。地方に行きますと豊かな土地が十分ありますし、そういう意味で地方がこれから栄える二十一世紀になっていくと思いますので、用地難だと初めからそういうふうに決めつけないで、環境庁はぜひ広い視野で考えていただきたいと思います。  それでは、次に移ります。  例えば臨海副都心計画のような事業の場合、事業区域を例えばA区域、その周りの区域をB区域としますと、A区域内部にもさまざまな建物が建つことになります。それから、恵比寿ガーデンもそうだと思いますけれども、これは都がやった事業だと思いますけれども、A区域内にさまざまな建物が建つことになりますと、例えば大きな暖房施設があり、A区域内の居住区などに大きな影響を与えることもあるかなと思います。現にいろいろな場所でそのような影響が発生しているのですけれども、現在の閣議アセスでは、区域内の内部に対するアセスは行われないのですね。外に対するアセスだと思います。  今回の法案による指針では、例えば区域内のアセスは実施されるようになるのでしょうか。外部に対するアセスだと思うのですね、そういう認識でおりますけれども。臨海副都心のような、あと、例えば恵比寿ガーデンのような住居とそれから商業都市が混在している一つの開発地域内の中の議論というのはされなかったような気がするのですけれども、これは入っているのでしょうかどうか。
  160. 田中健次

    田中(健)政府委員 一般論として申し上げますけれども先生の今のお話は、このアセスメント調査等を行う地域的な範囲の問題だと思います。  これは、事業内容とそれから何を調べるかという項目との関係から、事業による影響が及ぶと考える範囲に基づきまして適切、かつ、合理的に定めるものでございます。  これは、私どもがその基本となります省令を定めまして基本方針は示すわけでございますけれども、今お話ございましたように調査区域の中は調べないで外は調べるということではございませんで、調査区域を設定したところを調べるということでございますので、広域に環境への影響を及ぼすような場合にありましては、その当該事業の予定区域の周辺も含めまして環境の影響予測評価をする、こういうことになろうと思います。適宜、状況によって区域をつくっていく、こういう……(武山委員「中も外も」と呼ぶ)はい、そうです。
  161. 武山百合子

    ○武山委員 ありがとうございます。  そうしましたら、中も外も、広範囲ということに解釈いたしました。  それでは、次に行きます。  それから、説明会ということで、先ほどどなたかも、住民参加の説明会ということですけれども、これは第十七条ですね、説明会についてちょっと定義していただきたいと思います。
  162. 田中健次

    田中(健)政府委員 説明会の開催の目的は、関係地域内の住民に準備書内容を適切に周知をすること、こういうことでございます。
  163. 武山百合子

    ○武山委員 環境保全の見地からの意見を有する者の意見書の提出期限は第十八条にありますけれども、この提出期限は、例えば悪質な事業者公告縦覧ぎりぎりまで説明会を開催しなかった場合には、説明を聞いてからわずか二週間しかないわけですね。意見書を準備する期間が少ないのですけれども、せめて説明会が開催されてから一カ月と二週間ぐらいあったらいいなと思います。その期間の問題で、その辺はもう少し延長ということはありませんでしょうか。
  164. 田中健次

    田中(健)政府委員 意見書の提出期間でございますけれども、まず、必要な準備書等は縦覧期間として一カ月縦覧をいたします。それから、縦覧期間が満了いたしまして、その翌日から二週間を経過する日までということで、縦覧が終わった後も二週間ございます。合わせまして一カ月と二週間の間に意見書を出していただくということでございます。  それから、説明会は最初の一カ月間の中で開くということになっておりますので、期限の前日に説明会を開く、こういうことは起こり得ないところでございます。
  165. 武山百合子

    ○武山委員 それでは、説明会の場所についてお聞きいたします。  「関係地域内に説明会を開催する適当な場所がないときは、関係地域以外の地域において開催することができる。」とあるのですけれども、「関係地域以外」と範囲を大きくすれば、例えば北海道の事業に関する説明会を東京で行うといったことも可能になってしまうので、せめて同一都道府県内か、事業地域が複数都道府県にまたがる場合には当該都道府県内にとどめるべきではないかと思います。  「関係地域内に説明会を開催する適当な場所がないとき」とは、どのようなときを想定しているのか、その辺をお聞かせください。
  166. 田中健次

    田中(健)政府委員 地域によっては大勢の方々にお集まりいただくような集会場等の適当な場所がないことを考えておるわけでございまして、その場合でも関係地域外で開催できるとしているわけでございますが、おのずとそれは、目的は関係地域内の住民に説明するわけでございますから、住民の参集の利便性を考えて選定をすべきことになろうかと思います。  したがいまして、先生が例にお引きになりましたような、北海道の事業のものを東京で行うということは、常識的に考えて、ないであろうというふうに考えております。
  167. 武山百合子

    ○武山委員 それでは、第十七条四項に「事業者は、その責めに帰することができない事由であって総理府令で定めるものにより、第二項の規定による公告をした説明会を開催することができない場合」とありますけれども、これはどのような場合を想定しているのか、ちょっとわかりやすく説明してください。
  168. 田中健次

    田中(健)政府委員 十七条の、事業者の責めに帰することができない事由につきましては、今後総理府令で定めることになりますけれども、例えば台風などの天災によって予定していた会場が使用不能になる、こういった場合などが該当するものと考えられます。総理府令内容については、法成立後に適正に定めていく、こういうことになります。
  169. 武山百合子

    ○武山委員 そうしますと、説明会は必ず何が何でも開催させるという意味ですね。
  170. 田中健次

    田中(健)政府委員 法の趣旨といたしまして、説明会は必ずやっていただく、こういうことでございます。
  171. 武山百合子

    ○武山委員 ありがとうございます。  それでは、説明会の期間、時間に関しては、条文中に規定がないわけです。また、個別の事業によっても異なるはずであり、どのように調整し、定めるのですか。
  172. 田中健次

    田中(健)政府委員 説明会の期限でございますけれども、これは先ほど御説明いたしましたように、縦覧の期間内にやるということでございますから、公告をいたしまして一カ月以内にやるということでございます。  申しわけございませんが、後段の質問、ちょっと失念をいたしましたのでお願いをいたしたいと思います。
  173. 武山百合子

    ○武山委員 それでは、その説明会への参加ですけれども、「環境の保全の見地からの意見を有する者」ということですけれども、ちょっとこの辺わからないのです。説明会へ参加できるのは、「環境の保全の見地からの意見を有する者」ということですね。この辺をちょっと説明していただけますでしょうか。
  174. 田中健次

    田中(健)政府委員 何度も申し上げておりますように、この環境アセスメント制度趣旨は、大規模事業を行う場合に環境への影響をできるだけ少なくする、こういうことでございまして、そういう一連の手続でございます。そうしたことで、説明会の目的というのは、準備書内容を十分に理解してもらいまして、環境保全の見地からの有益な意見を述べられるように、それを目的にしてやるものでございます。  この法案では意見提出者の範囲は限定しておりませんため、この説明会におきましても、関係地域の住民以外の者が説明会に参加しても特段問題はございませんで、そういう意味でどなたも参加できる、こういうことでございます。
  175. 武山百合子

    ○武山委員 ありがとうございます。  第五項の規定による総理府令では具体的にどのようなことを定めるのか、ちょっと列挙していただきたいと思います。
  176. 田中健次

    田中(健)政府委員 これは、説明会の開催に関しまして、非常に事務的なあるいは技術的な事項になろうかと思いますけれども、「総理府令で定める。」まだその辺のところは私ども検討いたしておりませんので、今後詰めていきたいと思います。
  177. 武山百合子

    ○武山委員 具体的にどのようなことを定めるのか、ぜひ教えていただきたいと思います。  それでは、次に移ります。  評価書の方ですね。主務官庁が多数ある事業の場合、許認可の一覧表は評価書に含まれるのですか。
  178. 田中健次

    田中(健)政府委員 そういう事項は記載事項になっておりません。
  179. 武山百合子

    ○武山委員 これは例えば、大規模な、広大な敷地を有する大学が設置される場合、主務官庁は文部省ですね。しかし、建築基準だとかいろいろな建物の方は建設省ですか。それから、もちろん環境の方は環境庁ですけれども、主務官庁が多数ある事業の場合、いろいろな許認可がそこで必要なわけです。その一覧表というのは、許認可の中身、それがその評価書に含まれるのかどうかという意味なんです。
  180. 田中健次

    田中(健)政府委員 先生のお尋ねは、免許権者が複数になる、こういう場合ではないかと思いますけれども、例えば公有水面の埋め立てによります廃棄物の最終処分場の設置など、一つ事業が複数の事業種に該当する場合、こうした場合を除きまして、一般的には、一つ事業について一つの免許等を政令で定めまして、その免許等にアセスの結果を反映させることといたしております。  したがいまして、こうした一般的なケースでは、複数の免許が必要になると、その一連の流れの中で主務大臣が複数の、この段階ではこの免許、この段階ではこの免許、こういうことになろうかと思いますけれども、そうしたいろいろ免許がある中では政令で、一番これにかかわる濃度が強い免許を政令で定める、こういうふうになろうかと思います。
  181. 武山百合子

    ○武山委員 それでは、次に移ります。  まず、評価書には、法人がアセスを実施した場合その法人名を記載することになっていますけれども、アメリカのように個人名を記載する方がアセスの質も高まるかなと思いますけれども、どのような理由で本法案ではそのようにしないのか、お聞きしたいと思います。
  182. 田中健次

    田中(健)政府委員 アセスの信頼性を高めて責任感を高めるということで、それをやった人の、法人なら法人の氏名、住所等を書いていただくということで、これは責任を明確にするということでございますので、その会社名を書けばそれで趣旨は達するというふうに判断をした次第でございます。
  183. 武山百合子

    ○武山委員 個人の方がその趣旨は、アセスの質も高まると思いますけれども、それは環境庁は、日本の国は法人の方が高いという意味ですね。
  184. 田中健次

    田中(健)政府委員 アセスメントを個人として受ければ個人の名前が出る、こういうことでございます。
  185. 武山百合子

    ○武山委員 それでは個人の場合と法人の場合と両方という意味に解釈してよろしいでしょうか。
  186. 田中健次

    田中(健)政府委員 その委託を受けた人が個人であれば個人の名前でいい、こういうことでございます。
  187. 武山百合子

    ○武山委員 では両方ということで解釈いたします。  それでは次に、アメリカでは、評価書一般市民から見てわかりにくかった際に、裁判でわかりにくいからやり直せという判決が出ているのですけれども、この法案に、わかりやすい評価書をつくらなければならないという項目を入れ、それがわかりやすいかどうかを審査する仕組みをつくったらいいかと思うのです。一般の市民から見てわかりにくかったという、そのわかりにくい評価書、当然出てくると思うのですね。まず、弁護士さんにはわかりやすくても一般の国民にはわからないという印象なんですね、全部条文で書いてありますから。  この点、わかりやすい評価書をつくらなければならないという項目を入れるつもりはありますでしょうか。ぜひ私は入れていただきたいと思いますけれども
  188. 田中健次

    田中(健)政府委員 準備書の作成を義務づけておりますけれども、今先生がおっしゃられたような点もございまして、できるだけ一般の国民もわかりやすいようにということで、準備書とそれを要約したもの、要約書もつけさせるということになっておりまして、要約書をごらんいただくと概要がわかる、こういう手だても講じております。
  189. 武山百合子

    ○武山委員 それは信じていいんでしょうか。
  190. 田中健次

    田中(健)政府委員 条文で十五条に「要約書」とございますので、ごらんをいただきたいと思います。
  191. 武山百合子

    ○武山委員 しかし、その要約書ですけれども、官庁が書いた要約書はわかりにくいと、国民のもう固定的概念があるのですね。本当に国民はそう思っているわけなのです。ですから、本当にわかりやすいかどうか、失礼ですけれども、わかりやすい要約ということですけれども、それを審査する仕組みをつくったら私はおもしろいと思うのですけれども
  192. 田中健次

    田中(健)政府委員 これは事業者準備書なり評価書をつくりますので、この要約書も事業者がつくるということで、官庁がつくるわけではございません。事業者がおつくりになるということでございます。  いずれにいたしましても、こうした趣旨をわかりやすく徹底させる必要がございますので、そういう趣旨の徹底には努めていきたいと思います。
  193. 武山百合子

    ○武山委員 国民は、事業者事業者事業を遂行するために、環境基準をクリアしていなくてもクリアしたように書かれるおそれがあるのじゃないかということをすごく思っているわけですよ。  ですから、私は一般の国民から見てわかりやすい評価書をつくってくれということで今、一つ提案として入れたのですけれども、それは私は天下の日本政府ですので、信じることはやはり救われると思っておりますので、信じたいと思っております。ぜひ要約を入れて本当にわかりやすい評価書をつくっていただきたいと思います。もしそれに違反しましたら、追及いたしますので。  時間が来てしまいました。まだたくさんありますけれども、また時間を追っていろいろと教えていただきたいと思います。本当に中身の質の高い評価書をぜひつくっていただきたいと思いまして、私の質問を終わりにいたします。  ありがとうございます。
  194. 佐藤謙一郎

    ○佐藤委員長 西川知雄君。
  195. 西川知雄

    西川(知)委員 西川知雄でございます。  長官、この間の火曜日には法律と条例ということに絞って環境庁それから長官の御意見をお伺いいたしましたが、お嫌でしょうけれども第二ラウンドというところで、やはり第六十条と第六十一条、この二つを中心にしてこれから討論をしていきたい、こういうふうに思っております。  まず、第六十一条の方から始めてみたいと思います。  第六十一条は、「地方公共団体は、当該地域の環境に影響を及ぼす事業について環境影響評価に関し必要な施策を講ずる場合においては、この法律趣旨を尊重して行うものとする。」こういうふうに書いてありますね。長官、私この間申しましたように、長年法律を読んできているのですけれども、この六十一条も六十条と並んで何が書いてあるか具体的にはさっぱりわからないというふうに私は思うのです。  長官、「この法律趣旨を尊重して行うものとする。」というのは一体具体的にどういうことなのか、簡単で結構ですが、わかるかわからないかお答え願いたいと思います。——いや、これは環境庁長官お願いします。
  196. 石井道子

    ○石井国務大臣 地方公共団体につきましては、今までもさまざまな長い経過の中で実績を持っていると思います。それなりの条例また要綱などをつくってやってきていただいているわけでございます。このたびの環境アセスメント法案につきましては、国が行う事業と地方で行うべき事業と分けているわけでございますが、そういう国が担当すべきアセスメントにつきましては今度の法案が適用になるということであります。また、地方公共団体が関与する事業につきましては、今回のアセスメントに対しましての趣旨も尊重しながら地方独自の法案をまた生かしていくというふうなことではないかと思います。  具体的なことにつきましては、政府委員から答弁させていただきます。
  197. 西川知雄

    西川(知)委員 長官、今御回答をされていて、本当はなかなかこれはわかりにくいことだというふうに思われていると思うのですね。そこで、一つまたわかりにくい六十一条を具体的にお尋ねしたい、こう思うのです。  その前に、条例というのは六十条で書いていますから、この六十一条が主に適用になるのは要綱なんですね。  そこで長官、禁反言の原則とか信義則の原則、こういうのはきっと今までお聞きになったことがあると思うのです。この禁反言の原則というのは質問通告していませんからそこを見ても書いてないですけれども、どういうことかと申しますと、国民とか住民の間で、政府の、また地方公共団体考え方法律とか条例には書いてない、だけれども、こういう方針でやっていくのだよということが要綱とか行政指導とかそういう形で出ている。こういう場合には、住民、国民が、確かにそういう方針で国は動いているのだな、法律はなくても、条例はなくてもそういう方向で動いているのだなということを信頼するのですね。  そうすると、後に今度は通達とか条例とか法律を出して、やっぱりこれは違ったわ、全く反対のことをやりましょう、こういうことは許されないというのが禁反言の原則とか信義則の原則、こういうことになっているのですね。これは実は税務関係では判例もございまして、理論の一つの大きな柱になっているところなんです。  ところで、長官も御存じのように、五十を超える要綱がございます。そして、昭和五十九年の閣議決定、これ以前に、もう十九に上る都道府県と政令指定都市が地方独自の要綱等を定めているのですね。ですから、これらの要綱はその地域地域の事情に合わせて、そして地域の住民、国民の中に浸透しているのですね。これを後からそれとは全く違うような例えば法律とか行政処分とかそういうものを持ってきますと、これは今まで住民に定着してきた要綱の内容を全く覆すことになるということで、禁反言の原則に反するというふうに私は思うのですよ。  これはいろいろな議論がありまして、環境庁田中局長に聞くと、これは違うのじゃないかというふうにお答えになると思います。  長官はいろいろなほかの面で御専門ですけれども、こういう法律のところは特に御専門じゃないということはわかっておりますが、むしろ、そういう方がこういうことをどう思うかということを言っていただくのが一番いいと思うのです。  今まで、五十九年よりも前に十九ものそういう要綱等があって、国民とか住民のところに、環境アセスをするときはこういう手続でやるのだよと言っていたときに、後でそれと違ったことを、それもレベルがちょっと下がるというような、しかも地域性を勘案していないというような法律ができた。これはさっき私が申しました禁反言の原則に反する、または反しない、どういうふうにお考えか、長官の御意見をお伺いしたいと思います。
  198. 石井道子

    ○石井国務大臣 大変専門的で難しい言葉なのでございますが、今までの地方自治体における取り組みも踏まえた上で、今回の環境アセスメント制度検討されてきたというふうにも思います。そして、中央環境審議会答申を受けて、いろいろと現在に至っているわけでございますけれども、この法案におきましては、やはり地方公共団体が関与し意見を言える機会もあります。また、住民も意見が言えるということになっておりまして、スクリーニングとかスコーピングの手続を導入しているわけでございますから、そこでそんなに、今までの地方公共団体が行ってまいりました条例なり要綱なりというものに相反する結果というのは出にくいのではないかというふうにも思います。  ですから、そういうふうなさまざまな立場の方々の御意見も伺いながら、それを踏まえて環境庁長官意見を言って、そのときにも専門家の意見も十分取り入れるというふうなことで、これからは、地方公共団体また住民の方々との連携も深めながら取り組むことによってよりよい制度の運用が図れるのではないかというふうに考えております。
  199. 西川知雄

    西川(知)委員 それで、今の御意見では、都道府県のいろいろな制度も勘案して、都道府県の知事とかその担当部局の意見もよく聞いた上で、そして満足のいくような法律案がつくられた、こういうふうに発言されたと私は理解しておりますけれども、ところがそれは違うのです。なぜ違うかは今から申し上げましょう。  実は、政令指定都市、これがございますけれども、その指定都市の市長さんからいろいろな要望書が出ているわけです。そして、これは環境庁長官、それからこれは地方分権推進委員会委員長あてに提出をされました平成八年十一月の「指定都市の意見」というのがございまして、その中に、二十一ページ、「環境影響評価」というところに次のようなことが書いてあるのですね。すなわち、   環境影響評価は、国の閣議決定要綱等のほか、各地方自治体の条例等により実施されている。国は、地方自治体の制度に対し、閣議決定要綱との整合性を図るよう要請している。   現在、国において法制化を含め環境影響評価制度見直しが行われているところであるが、現行の閣議決定要綱の延長上で法制化がなされる場合には、地域の実情に応じた総合的でより充実した制度を制定し、これを実施することが困難になるおそれがある。   したがって、ここからが重要なのですが、  環境影響評価制度法制化に当たっては、国は基本的枠組みを定めるにとどめることとし、手続対象事業の設定等の細部については、指定都市が主体的に条例等「等」が入っていますね、「条例等を制定・実施できるようにすべきである。」こういうふうにまず意見書が出ておりまして、そしていろいろなことが書いてあるのですね。  そうすると、それも指定都市十二市長、この方たちが全部、今の法案、国でスタンダードを決めてもいいけれども、それはミニマムですよ、それ以上、地方の事情に合わせて、いろいろな今までの上乗せ条項とかあればそれを尊重してやってください、こういう意見を堂々と出しておられるわけです。  そして、その後、平成九年の三月六日には、各市の環境局長から具体的な、これは後でお尋ねしますけれども、要望書が出ております。どんな制度にしてほしいか、どうなるかということを具体的に出しています。  そうすると、これは環境庁長官、今環境庁長官が、都道府県等の地方の意見を十分に聞いて、そしてほとんどの反対がないような形でこの法案が作成されたようなことをおっしゃっておりますが、具体的な事実と違うのではないでしょうか。御返答をお願いします。
  200. 石井道子

    ○石井国務大臣 この政令指定都市の御要望につきましては、私も前に伺わせていただいております。  今度の環境アセスメント法案の扱いにつきましては、県と市というふうに分類をしているわけでございまして、それはある程度それなりの理由もあるわけでございます。  政令指定都市というと、かなり県と同等の権限を持っているという点では、県と同等であるというふうに言われておりますが、すべての権限が政令指定都市にあるわけではありません。一部に限られているというふうに思います。  今回、私ども環境庁で扱います権限については、やはり特別な権限を政令指定都市に与えていないということになるというふうに思いますが、それはやはり、国が行います環境アセスメントにつきましてはかなり大規模なものである、地方自治体も広範囲にわたっているケースもあるかもしれない、そういう点になりますと、政令指定都市だけの独自の判断ではいかないのではないかということも考えられるのではないかと思います。  しかし、政令指定都市にはそれぞれの立派な実績があるわけでございますから、そのような環境アセスメントについての具体的な取り組みについては、かなり同意される部分があると私は思いますし、それは、お互いに調整し協調しながらやっていくことによってよい運用が図れるのではないかというふうに思っております。  具体的には局長の方から答弁をさせていただきます。
  201. 西川知雄

    西川(知)委員 ポイントはちょっと違うのです ね。政令指定都市の位置づけというものが必ずしも都道府県と同じでないということで、都道府県に集中をしよう、こういう御説明であったと思うのですが、私の質問した趣旨は、こういう、さっき要綱から始まりましたけれども、この法律は、今までいろいろな地方の要綱とか条例があって、そして地域に密着した環境アセスメント制度は既にできている。  そこで、長官は、何で今度の国の法案をつくったかというと、地域のいろいろなそういう今までの状況を十分調査して、その人たちの意見を取り入れて、そして必要かつ十分である、だからこの国の仕組み、これを尊重してください、すなわち事業者に負担をさらにかけるような環境アセス手続制度、これはだめです、しかし知事が意見を形成するについて市町村長から意見を聞いたり審査会から意見を聞いたりするのはよろしい、こういう方針である、こういうふうに基本的にはおっしゃったわけです。  そこで、私はなぜ質問したかというと、指定都市がどういうことをできるかできないかを実は御質問したわけではなくて、こういうふうに全指定都市が反対しているじゃないか、この反対しているところを勘案して、そして必要かつ十分であると——指定都市全部は十分じゃないと言っているわけですね。だから、そのときにそんな議論が果たしてできるのか。すなわち、これは、国が必要かつ十分だとは言っているけれども、本当はそうじゃないんじゃないか。  例えばこの間も申し上げましたけれども、実際に各県を調査しているわけですね。それはどこかというと、東京都、埼玉県、長野県、滋賀県、これは環境影響評価制度総合研究会、ここが四団体からの制度の実施状況を聴取したわけです。あとは、いろいろと視察に行ったり、いろんな部局を集めていろんな会議をやっているようですけれども、十分な意見をこれでは聞いてないというふうに解釈される。  こういうふうに解釈されるということは、これは事実に基づくわけですから、法律が例えば通ったとして、後で裁判所が見た、後で学者が見た、そうした場合に、必要かつ十分であるというからこれは、この制度がまず優先するんだというふうに言えるんですが、そうじゃないということになるとこれは全く違うことになるんですね。  長官、今の私が申し上げましたことを勘案しまして、もう一度その観点から御答弁願えればと思います。
  202. 田中健次

    田中(健)政府委員 お話でございますけれども、私どもは、地方といろいろ意見交換会をやってまいりました。  繰り返しになりますけれども、条例を有する団体とは二月上旬、条例を有する団体を含めてすべての都道府県あるいは指定都市とは二月下旬に四回に分けて、計五回にわたり実施をいたしました。また、それ以前にも、昨年の八月から九月にかけまして、北海道、横浜市、岐阜県、兵庫県、神戸市、香川県、福岡県、この七団体からヒアリングによる意見聴取を行っていただきました。これは中央環境審議会でございます。さらにさかのぼりますと、環境影響評価制度総合研究会においても地方公共団体からのヒアリング等を実施をいたしました。  このように、制度のあり方の検討から法案の作成に至る各段階におきまして、地方公共団体意見を聞いてきたところでございます。  それで、意見交換会では地方公共団体から質問意見が述べられましたけれども地方公共団体意見が尊重されるような制度にしてほしい、あるいは地方の取り組みを後退させることのないようにしてほしい、こういった要望もございました。  環境庁としては、これらの要望等も検討をいたしまして、できるだけ取り入れられるようにということで法案を作成をいたしたものでございまして、地域の環境状況あるいは地方公共団体の取り組みに私どもとしては十分配慮をした内容となっている、こういうふうに認識をいたしております。
  203. 西川知雄

    西川(知)委員 その総括はもう少し後ですることにしまして、まず簡単に、最後発言だけ、これは間違いだということだけ皆さんに述べておきたいと思うんです。  法律をつくるというのは国会で成立するんです。ですから、我々が、政府がちゃんと自分意見では調査をしたと言ったとしても、客観的に見て果たして必要かつ十分な調査をされてきたのかどうか、これが将来法律ができましたら論点になるんです。  ですから、こんな、指定都市の意見が、全指定都市が反対している、そういうような制度が、環境庁の考えでは必要かつ十分かもしれないけれども、少なくとも私の考えでは必要かつ十分じゃ全然ない。例えば十二のうち二つか三つが反対しているならわかります。だけれども、十二全部反対しているというようなところで、必要かつ十分なんという議論は、これは裁判所でもどこでも通らないということだけまず申し上げまして、少し具体的に私お尋ねをしたいと思うんです。  例えば横浜市、横浜市にもこれは要綱がございます。そして、いろいろな手続を書いております。横浜市では、第七条の一項によって準備書を作成いたします。そして、その準備書の提出を市長にします。それと同時に周知計画書の提出をします。  これはもし要綱が、例えばこのままでもいいですし条例になったとしてもいいです、どちらにしてもいいです。そして、これが対象事業、第二種事業に適用されるというふうに考えて、その前提でお答えください。この周知計画書の提出、こういう義務事業者に課しておりますが、これは法律に反することになるんでしょうか、反しないことになるんでしょうか。
  204. 田中健次

    田中(健)政府委員 法律対象事業に関しまして事業者に周知計画書の提出を義務づけるということは、基本的にはこの法律規定に反するのではないか、こういうふうに考えられます。
  205. 西川知雄

    西川(知)委員 今、基本的に反するというふうにおっしゃいましたが、それじゃ例外は何でしょうか?
  206. 田中健次

    田中(健)政府委員 地方の制度における個別の、具体の規定と本法案との関係につきましては、事案に即しまして慎重に検討する必要がございますから、今そういう慎重な言い回しをしたわけでございます。
  207. 西川知雄

    西川(知)委員 そうすると、事案によっては、この周知計画書、これが要求をされても事業者はこれに従わないといけない、こういうことが出てくる、こういう理解でよろしいですね。
  208. 田中健次

    田中(健)政府委員 個々の具体的な事案につきましては、個別に判断をいたしたいと思います。
  209. 西川知雄

    西川(知)委員 ですから、何回でも言いますけれども、個々の事案に即して判断をしないといけないということは、そんなことは、その場その場になってみなきやわからない、こういうことを言っているのと全く同じなんですね。それじゃ法律を、ここで法案審議している意味なんか一つもないんですよ。その場にならなきやわからないんじゃ法律をつくったって仕方ないんですから。基本を決めて、そしてそのメルクマールが何かということをちゃんと判断し、それを書くのが法律であり、また政令であるんですよ。  そこで、次にお尋ねします。  横浜市では、その後説明会を開きまして、説明会が終わったら説明会等終了の届け出というのを第十一条の一項によって市長に出さないといけないことになっているんですが、これも事情によってはよく、場合によってはだめだ、こういうふうに解釈してよろしいんでしょうか。
  210. 田中健次

    田中(健)政府委員 法律対象事業に関しまして事業者説明会開催の届け出を義務づけるということは、これも基本的には、この法律規定に反するのではないか、こういうふうに考えられます。
  211. 西川知雄

    西川(知)委員 いや、私の質問説明会等終了の届け出で、説明会開催の届け出を事業者から市長に出す、これはいいはずなのですよ。
  212. 田中健次

    田中(健)政府委員 開催の届け出と同様だと思われます。
  213. 西川知雄

    西川(知)委員 では、それは反するのですか反しないのですか。しかも、それは基本的にですか、絶対ですか、例外はあるのですか、その辺をお答えください。
  214. 田中健次

    田中(健)政府委員 要するに、事業者に私ども法律が求めております以上に負担をかけるということは、基本的にはこの法律規定に反する、こういうことになろうと思います。
  215. 西川知雄

    西川(知)委員 そんなことは、私がこの間、またきょう総括したというかまとめた話であって、具体的にそれは何かということが私にはよくわからない。そして、多分ここにいらっしゃる方が、わかっていらっしゃる方があったら言ってください、非常にわかりにくいしわからないと思うのです。だから私は聞いているのです。  だから、もう一度お尋ねしますが、説明会等終了の届け出、これを横浜市が、事業者から市長に出せ、こういうふうに言っているわけなのですが、こういう条例ができた場合、また要綱があった場合、それは法律に反するのでしょうか、反しないのでしょうか。
  216. 田中健次

    田中(健)政府委員 法律に反するものと考えられます。
  217. 西川知雄

    西川(知)委員 それから、評価書を作成しまして、評価書事業者が市長に提出をいたします。そしてそれを閲覧して、住民が意見書を作成して、意見書の写しを事業者に渡します。その後、第十七条で、意見書に対する事業者の見解というのを市長に出さないといけないということになっておりますが、これは、お答えはいかがでしょうか。
  218. 田中健次

    田中(健)政府委員 今のケースにつきましては、基本的にこの法律規定に反するのではないか、こういうふうに考えられます。
  219. 西川知雄

    西川(知)委員 もう一度お尋ねしますが、私は、基本的なことと、そして原則と例外というのがあれば、何が原則で何が例外かも含めてお答え願いたいというふうに先ほどから申し上げている次第です。私は、これがだめだとかこれはいいとかそんなことをまだ言っているわけではないのです。事実は何なのか、法律を審査しているわけですから、一体考え方は何なのかということを今法律をつくっている段階で明確にしておいた方が、将来、私も五年もたたないうちに、一年もたったら一体どうなったのか、これを忘れますよ。そして、ここにいらっしゃる委員の方もまた場所を変わったりしたらわからなくなる。だから今はっきりとしておこう、こういうことなのです。  だから、もう一回聞きますが、意見書に対する事業者の見解、これはいいのですか悪いのですか。
  220. 田中健次

    田中(健)政府委員 個々具体的なことを先生いろいろ挙げられておりますけれども、私どもといたしましては、この法律規定に反しないもの、こういうことは、基本に戻りまして、法律手続を変更したり、法律に定める手続の進行を妨げたり、または瑕疵を生じさせるものでない、こういう意味でございまして、このようなものについては、条例で必要な規定を定めることができるというものでございます。  それで、先ほどから御議論がございますけれども法案規定された事業者義務というものが必要十分なものであるかどうかということが前提になっておると思いますが、私どもといたしましては、この法案は、対象となる事業につきまして、環境影響評価に関します全国共通の、統一の手続を定めるというものでございます。  アセスは、立場の異なる広範な主体が従うべき共通のルールを定めることによりまして、環境情報の形成促進と環境配慮の確保を図ろうとする制度でございまして、対象事業につきましては、全国共通の統一の手続を定めるということでございます。  それから、統一の手続内容は、環境配慮の必要性と事業者に求める負担、これとのバランスを考慮して決定をいたしたものでございます。  環境影響評価手続事業者に一定の負担を課するものでございまして、環境配慮の必要な範囲で事業者の行うべき義務を定めることが適当というふうに考えております。  したがいまして、法案の定める手続以外にいたずらに事業者に負担を課することは、法案の定める手続の統一性に反するものでございまして、法案の予定するところではない、こういうふうに考えております。
  221. 西川知雄

    西川(知)委員 それでは、もっと具体的に見ていきたいと思うのです。  今、事業者に負担をかけるということは、これはとんでもない、さらに義務を課すということは、そういう条項があれば、これは法律違反だ、こういうふうにおっしゃっているわけです。  では、事業者というのは一体だれなのかということを検証してみたいと思うのです。  そうしますと、事業者、これはいろいろな事業によって、事業というか分類によって事業者は違ってくるわけですが、例えば、これは建設大臣であったり都道府県知事であったり公団であったり、そういうところばかりなのですね。日本道路公団、本州四国連絡橋公団、首都高、水資源開発公団、都道府県知事、鉄建公団、市町村、公害防止事業団、ほとんどこういうところを事業者と言っているのです。  これは、例えば都道府県知事というのは、知事としての資格でこの環境影響評価法においてその役割を果たして、事業者はまた違う人が、全く違う一般事業者がいた。そうした場合に、一般事業者がさらに今の負担よりもうんと負担をかけられるということであれば、これはまた少し考える必要があるのかもしれませんが、これは本当の実態を見れば、知事という資格でやっているのか単なる地方公共団体事業者とやっているのかということだけの差で、実際は同じなのですね。だから、負担をかけるということにはならないというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  222. 田中健次

    田中(健)政府委員 事業者につきましては、今先生お話しになられました官庁なり公団とかもございますけれども、本法の対象となる対象事業には、電力会社もございますし私鉄の会社もございます。そういうことで、何も公共事業に限っているわけではございません。
  223. 西川知雄

    西川(知)委員 そうすると、その公共事業に限った場合を考えますと、その電力会社とかそういうところを例外にする、そうするとその事業者には負担はかからない、こういうふうに考えてよろしいですか。
  224. 田中健次

    田中(健)政府委員 これは手続法でございまして、私どもといたしましては、両方一律に手続をかけるというのが公正だと思います。
  225. 西川知雄

    西川(知)委員 環境庁長官、今の話だと、事業者に負担をかける、そういうような手続というのは、これはちょっとまずいのじゃないか。その背景にあるのは、例えばそれは電力会社とか、そういう一般事業者であれば、そういう人たちが今までやらなくてもよかったことをやらないといけない、これは大変だということで、何となく理解ができないわけでもないのですが、これは同じ組織内であればネームプレートが違うだけでそんな大変な手続でも何でもないと思うのですが、その辺いかが思われますか。これは政治家としてお答え願いたいと思います。
  226. 石井道子

    ○石井国務大臣 今度の法案につきましては、対象となる事業について環境影響評価に関する全国共通の統一の手続を定めるものであるということになっております。そして、その統一の手続内容につきましては、環境配慮の必要性と事業者に求める負担とのバランスを考慮して決定したものでございます。  したがいまして、この法案の定める手続以外にいたずらに事業者に負担を課するということは、法案の定める手続の統一性に反するものであって、法案の予定するところではないというふうに理解をしているところでございます。
  227. 西川知雄

    西川(知)委員 今、二つ重要なことを言われた のですね。まずはバランス論、それからいたずらな負担というふうにおっしゃったのです。  そこで、事業者事業者にですよ、説明会が終わったよというふうな届け出を単に出させる、しかもそれが、事業者が例えば地方公共団体であった、そして知事のところにそれを出すといったとき、これはまずいたずらな負担ですか。これは環境庁長官にお尋ねしたいのです、今環境庁長官がそういうふうにおっしゃいましたので。
  228. 田中健次

    田中(健)政府委員 それは個々具体的に考えないといけませんけれども、私どもといたしましては、事業者に負担をかける、こういうふうに考えざるを得ません。
  229. 西川知雄

    西川(知)委員 長官の御意見も同じでしょうか。
  230. 石井道子

    ○石井国務大臣 同じでございます。
  231. 西川知雄

    西川(知)委員 そうすると、いたずらな負担の反対は、私は余りよくわからないのですけれども、いたずらじゃない負担というのがあるとすれば、それは何なのでしょうか。
  232. 田中健次

    田中(健)政府委員 個々具体的に申すのはなかなか難しいところでございまして、私どもといたしましては、負担を課することは避けてほしい、こういうことでございます。
  233. 西川知雄

    西川(知)委員 私は、さっぱりよくわからないのですが、同じ都道府県の中で、この知事というのは、本当に知事さんが実務をやるわけじゃないのですから、その担当部局があって、そこでやられると思うのですね。そして事業をするところがあります、それも例えば都道府県でやります、同じフロアにあります、隣の課です、こうしますね。そうした場合に、説明会をやったよといって紙をぽっと回す、これがどうしていたずらな負担で、そして今おっしゃったような、環境の配慮といたずらな負担とのバランスにおいてバランスに欠けると、私が選挙民から聞かれたときにどういうふうにして私は説明をすればいいのか、お教えください。
  234. 石井道子

    ○石井国務大臣 この負担のあり方につきましては、地方自治体のさまざまなレベルの格差が考えられると思います。ですから、今回の法案につきましては、事業者また国民、地方公共団体、国、それぞれの立場で従うべき統一のルールを決めたわけでございまして、これは、この手続がナショナルミニマムであって、地方公共団体ごとに手続が異なってしまう場合には、事業者が地域によって異なる程度の環境配慮とそれに伴う負担を求められることになってしまうということになりますので、それでは法案の予定しております環境配慮の必要性と事業者の負担のバランスが崩れてしまうということが心配をされているわけでございまして、手続の地域間格差というものは義務を負う事業者に混乱を生じさせているという弊害も出てくるのではないか、その点が心配をしているところでございます。
  235. 西川知雄

    西川(知)委員 私は今混乱しているのですよ。というのはどういうことかというと、もう一回例を挙げてやりましょう、その方が簡単ですからもう一回言いますよ。  さっき言ったように、事業者が例えば神奈川県だ、知事も神奈川県だ、こうしましょう。そのときに、いいですか、さっきのような例がありました。例えば、説明会がありました、終わりました、終わったことを通知します、これはだめなのですか、いたずらな負担なのでしょうか。それをちょっと、環境庁長官、常識の線からお答え願いたいと思うのです。長官、よろしくお願いします。
  236. 田中健次

    田中(健)政府委員 今は義務を課するということを問題としておるわけでございまして、私どもといたしましては、義務を課するということにつきましては、公共、民間を問わず、同一の議論をすべきだという基本的な考え方に従っておるわけでございます。
  237. 西川知雄

    西川(知)委員 それでは違う角度からちょっと聞いてみましょう。  今まで要綱があるところで国の要綱と違う内容を定めた場合に、これをどういうふうに地方の方で処理しようかというとき、調整規定があるのがほとんどなのですけれども、例えば、長野県とか滋賀県、岡山県、広島県、横浜市、これは双方の制度を満たすように調整を図っているというふうに、これは環境庁調査でも言われているのです。  例えば横浜の場合は、第二十八条において、「国、他の地方公共団体その他別に市長が定める公社、公団等(以下「国等」という。)が、対象事業を実施しようとするときは、その旨を市長に通知するものとする。」と規定しておりまして、さらに、「この場合において、市長は、当該対象事業に対するこの章の規定の適用について国等と協議し、この章の規定の全部又は一部を適用しないことができるものとする。」と規定してあるのです。全部を適用しなければ国のところに戻るのですが、一部を適用しないと、この手続、地方の手続と国の手続がパラレルで並行して進んでくる、そういうことになるのです。  そして、我々がヒアリングしたところによると、今まではそれでうまくいっていたというのですね。全国版と地方版がうまくいっていた。うまくいっていたのに、そして地方の実情を反映した手続ができているのに、どうして今度環境庁が全国一律をつくらないといけないといって、その地域の特殊性、そして地域に根差したそういう評価制度手続、これを壊そうとするのか私にはさっぱりわからないので、長官、その辺のところの御答弁お願いします。
  238. 田中健次

    田中(健)政府委員 先ほどから御説明をいたしておりますように、国として対象事業を定め、国としての制度をつくるということでございますから、私どもといたしましては全国共通の統一的な手続を定める、こういうことに立っているわけでございます。その統一手続内容は、環境配慮の必要性と事業者に求める負担とのバランスを考えて決定をしていく、こういうことでやっているわけでございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
  239. 西川知雄

    西川(知)委員 私は、このバランス感覚を今聞いているわけですよ。これは私、お役人の方に聞いても答えは決まっておるわけで、ここは環境庁長官を中心にした、アセス法という非常に重要な法律審議する場所ですから、環境庁長官が今言った私の質問に答えていただかなければ、これは記録に残ることですし、そしてこれは単にここで論議しているわけじゃなくて、国民に対してどういうふうな考え方をするのかということを言っているわけですから、環境庁長官、ぜひお答え願いたいと思います。
  240. 石井道子

    ○石井国務大臣 今局長から答弁をいたしましたが、それと同じでございます。
  241. 西川知雄

    西川(知)委員 長官、なかなか言いづらいとは思うのですけれども、やはりこれは長官が政治家として、そして大臣として堂々と我々に御答弁願う、これが今全議員も望んでいるところなのですね。長官がそういうふうに言って政府に確認して、政府も長官のおっしゃるとおりですと言うのならわかるのですが、これはもう全く逆で、これは全然、ちょっと長官としても不本意だというふうに私は思います。  そこでもう一つお尋ねしたいのですが、そうしますと、大規模な事業については法律が適用される、今度のアセス法が適用される、小規模なものについてというとおかしいのですけれども、その対象事業にならないそれ以下のものについては厳しい要綱とか条例が適用される、こういうふうになりますね。これこそ全く環境配慮の必要性と負担とのバランスを欠いている議論になるのじゃないかと私は思うのですが、そのバランス感覚を長官に聞きたいと思います。
  242. 田中健次

    田中(健)政府委員 私どものこの法案は、スクリーニングあるいはスコーピングの制度を導入いたしておりますし、また、環境基本法に対応した評価項目の充実、あるいは環境保全対策の検討経過の公表、事後のフォローアップ措置の導入、それからこれも重要なところですが、許認可等への確実な反映、こうしたことで地方の制度と比較しても充実した内容となっている、こういうふうに 思っております。  したがいまして、御指摘にございましたような逆転現象ということは生じることは考えにくいわけでございます。
  243. 西川知雄

    西川(知)委員 いずれにいたしましても、長官、これは必要かつ十分な調査をした上で、地方の声を吸い上げて、そして画一的な全国統一的なアセス法案をつくる、こういうふうに今こちらの方ではお聞きしているのですけれども、私が申します意見は私だけの意見ではないのです。典型的な例は、さっき言ったように、事業者都道府県知事であって、そして説明会が終わりましたということを横の課にちゃんと紙一枚届ける、これもいけないというのは私は全くおかしい、いわゆる官僚主義的な考え方じゃないかと思わざるを得ないのです。  それから、そういう私の意見はさっき言いましたように私だけの意見じゃない、指定都市もそういうふうに言っている。こういうときに、必要かつ十分なスタンダードであると、どうしてそんなことが言えるのですか。  これは長官、ナショナルミニマムというふうにお考えなのですか。その辺のことをお答え願いたいと思います。
  244. 田中健次

    田中(健)政府委員 先ほどから何度もお答えをいたしておりますとおり、対象となる制度を国がつくるわけでございますから、全国共通の統一手続が必要でございます。これはぜひ御理解をいただきたいと思います。  それで、地方との関係につきましては、先ほどから御説明をいたしておりますように、意見は聴取をいたしまして、お話し合いもいたしました。酌み取れるところは、制度としてこの法案の中に組み込んで御提案を申し上げておるところでございまして、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
  245. 西川知雄

    西川(知)委員 要するに、一歩も譲らない、ほかの国民の意見をこの法案の中に入れようとしない、そういうような考え方じゃないかというふう思わざるを得ない。これは私はゆゆしきことではないかというふうにまず思います。  それから、法律と条例の関係で火曜日でしたか議論をさせていただきましたが、この法律と条例の関係も私は例を挙げて、これはどうだ、これはこうかというふうにお尋ねをいたしました。そのときも、すぐこうだというふうにお答えになれなかった、またならなかった事例が何件かありました。ということは、これはなかなか難しい問題なのだ。個々の事情に応じて、そして個々の場面に応じてその適用はいいかどうかを考える。それほど難しいことであるというふうに私は理解しました。  そうすると、例えば、この第六十条のところで「この法律規定に反しないものに限る。」第六十一条で「この法律趣旨を尊重して行うものとする。」と書いていますけれども、そんなことは当たり前のことを書いてあるだけであって、その当たり前ということが実際の適用の場になってどうなるかということを考えるのが一番重要じゃないかということを私は申し上げたいのです。  そして、河川法の適用において、普通河川のところにおいて果たして規制ができるかどうかということについても裁判で争われて、そして長い年月を経てやっと結論が出た。そして、大気汚染防止法で、水質汚濁防止法で、そういう法律でも実体法について上乗せができるとかできないとかいうことが明確に書いてあるのです。だから、環境庁のお役人さんはよくその適用はおわかりでしょうけれども、しかし、法律ができて成立すれば、それはもう国民のものなのです、国民がその法律に規制されるのです。そのときに、法律趣旨とかそういうことを言っていてはさっぱりわからない。  私はここで提言をしたいのですが、具体的に条例のどのような規定法律に違反するかということを、違反するものは明確にわかると思いますから、違反するかということを大臣、局長お話しの上、リストを出していただきたいのです。最低、リストを出していただきたい。そして、本来はそれは国民に知らしめるべきですから、この法律の中に書くべきなんです。最低、政令の中におさめるべきなんです。そういうふうに明確にしないと、これが将来疑義が出て、そして最高裁まで争わないといけない、こういう事態に陥るのですね。  この間も申し上げましたが、そのとき聞いていらっしゃらなかった方もいらっしゃいますからもう一度申し上げたいのですが、要するに、将来、法律趣旨にかんがみとか、法の作成過程にかんがみとか、そういうこと、こんなことを言ったってさっぱりわからないのですね。それは、この審議をしたときに委員会委員がきっちりとそのポイント、ポイントについて具体的に詰めなかったからそんなことになっているのですよ。私は、この委員会ではその辺、どこが許されるべきか、許されないのか、今みんなよくわかっているわけですから、それをぴちっと詰めるべきだと思います。  長官、もう時間がないので、長官の御答弁を。局長ではなくて長官から最後お願いします。
  246. 田中健次

    田中(健)政府委員 今お話がございましたが、網羅的にケースを出せというお話でございますけれども、これはいろいろなケースがございまして、網羅的にすべてケースを出すということは困難でございますので、これは具体的に判断をするということになろうと思いますので、網羅的にケースを出すということは難しいので御容赦をいただきたいと思います。
  247. 西川知雄

    西川(知)委員 まだ一分ぐらいあるそうなので。網羅的に出して、出すのが難しければ、例えば全部出すのは無理であれば十でも二十でもわかるところだけでも出すというのが当たり前であると私は思います。それができないようでは、今後、将来いろいろな法律問題でこの問題が争われてくるのじゃないか、そのときになってからでは遅いから今やりましょう、当たり前のことを私は言っているのです。私は、環境庁がつくった法案が全然だめだとか、そんなことを一つも言っているわけじゃなくて、はっきりしないところははっきりしましょう、今審議しているのだから。そして、具体的に例を挙げているわけですから、その辺のところを私は皆さんにも御理解いただきたいと思います。
  248. 田中健次

    田中(健)政府委員 先ほどからるる申し上げておりますように、基本的な考え方につきまして御説明をいたしました。その基本的な考え方に従って個別には判断していくしかないわけでございまして、網羅的でなくても、あれが落ちている、これが落ちている、こういうことになろうかと思いますので、基本的に我々がお示しをした考え方で御判断を賜りたいと存じます。
  249. 西川知雄

    西川(知)委員 もう質問時間が切れましたので、最後に申し上げたいと思うのですが、私は、それは非常に無責任発言である。これは、国民はみんな今の局長のようにこの法律を知らないのですよ。知らない人に、こういう場合はこうなるということをちゃんと知らせてあげる、これが本当に国会の役目であり、そして親切な行政であり、立法なんです。だから、法律に反するとか反しないとか、法律趣旨は何か、そんなこと、わかりゃしないですよ。私だって、この法律趣旨が何かというのをよく研究して、何時間も勉強して、皆さんから聞いてからわかるのです。  だから、そんなことではだめで、ちゃんと法律に何が違反して、条例ではどういう条項が違反して、どういう条項の規定であればいいのか等々をちゃんとメルクマールとして国民の前に明確に示すべきであるということを最後に申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  250. 佐藤謙一郎

    ○佐藤委員長 小林守君。
  251. 小林守

    ○小林(守)委員 民主党の小林です。  この環境委員会における法案審議も随分時間を重ねてまいりました。そして、各委員質問のポイントというか焦点となっている問題についても随分絞り込まれてきた、このように考えているところであります。そして今、西川委員の方からは、実態を踏まえた、事例に基づく法理論的な詰めた議論がなされたわけでありますけれども、大変参考になる、切れ味明快な議論だったのではないかというふうに思えてなりません。  一方、環境への配慮の最大の責任官庁である環境庁のお考え、答弁が、やはりもう一歩踏み込んだ答えになっていない、このような感を私自身も受けているところでありまして、私の方からは、ことしの二月に出されました中央環境審議会答申内容の中で、それぞれ重要な事項に触れられているわけでありますけれども、全体的に、この法案の中で法文化はされたらしいのだけれども、どうもよくわからぬという部分、それから法文化はされなかった事項について、まず総括的に触れて、その事由と今後の環境庁の対応等についてお聞きしておきたい、このように考えているところであります。  まず、今度のアセスメント法の基本になっております環境基本法、さらにそれを受けた中環審答申等では、今日までの環境影響評価要綱等についてはいわゆる環境基準等の行政目標のクリアというようなことが一つの許認可の基準になっておるわけですけれども、しかしこれからは、少なくとも環境基本法趣旨を受けていくならば、その行政目標や環境基準というのは最低の基準というか、これは当然充足すべき基準であって、環境への配慮という観点で考えるならば、できる限り環境への負荷を回避し最小化する、そういうことが求められているわけであります。  そういう観点から、当然新たなスコーピングやスクリーニングの段階において、環境影響評価において、先進国の例ではアメリカのNEPAというような法律、国家環境政策法では代替案というものを示すというようなことが明確に位置づけられているわけでありますが、この法案においては、どうもどこにあるのかよくわからない。どこにきちっと位置づけられているのか。  実はこれまでの答弁の中で、各委員質問の中で何人かがこの問題に触れておりましたけれども、どうも第十四条の一項七号のロにありそうだというようなことでありますけれども、少なくとも中環審答申の中でも、複数案の比較検討の経過、実行可能なよりよい技術の取り入れ等についての検討、これらについてのものが答申されているわけでありますから、これだけの委員が問題提起をしていることを考えるならば、これはまさに党派を超えた観点だと思います。あらゆる党派の人が同じような問題意識で臨んでいるわけでありますから、そういう点で、もう一度確認する意味で、この複数案の比較検討答申内容はどの法案で受けられているのか、含まれているのかどうか、それを確認したいと思います。
  252. 田中健次

    田中(健)政府委員 今先生からお話がございましたように、審議会答申において、「複数案を比較検討したり、実行可能なより良い技術が取り入れられているかどうかを検討する手法を、わが国の状況に応じて導入していくことが適当」、それからもう一つ、複数案の比較検討を含む「環境保全対策の検討の経過を明らかにする枠組みとすることが適当」、こういうふうな御提言をいただいております。  そういうことを受けまして、本法案におきましては、先ほど先生からお話がございましたが、十四条の七号のロで、「環境の保全のための措置」とともに、その措置を講ずることとするに至った検討状況の記載を義務づけておりまして、中央環境審議会答申を踏まえた法律の構成になっておるわけでございます。
  253. 小林守

    ○小林(守)委員 このような議論の経過なり、質問答弁書を見れば、ああ、そこに入れたのかというふうに確認はできるわけであります。しかし、国民一般が、それぞれの、専門家にしても、この法案をぱっと読んで、その複数案の検討というものがどこにあるのだ、どうやら十四条の七号ロにあるということなのかどうか、実際、表から見た場合に果たしてわかるかどうか、ちょっと読んでみたいと思います。  「環境の保全のための措置(当該措置を講ずることとするに至った検討状況を含む。)」と、これだけなのですね。ここに実行可能なよりよい技術の検討も行ったというようなことが、複数案の検討というものが入っているのかどうか読み取れない。  読む気になればそれはそういうふうに読めるとは思いますが、あえてそれを否定しない、きちっと入っているのだというならば、「環境の保全のための措置」、括弧の前に、括弧の中でもいいのですが、複数案の検討の経過とか検討という言葉をなぜ入れないのか、何ら差し支えないことではないのかと思うのですね。  中環審答申の中でも明確にそういう言葉を使っているわけでありますから、その複数案の検討とか実行可能なよりよい技術、環境負荷の回避、最小化のための複数案や、よりよい技術というものを検討する、そういう経過を明らかにするのが適当であるということが答申にあるわけでありますから、なぜこういうことでわからないようにしてしまったのか、その辺が納得できないわけであります。
  254. 田中健次

    田中(健)政府委員 お尋ねでございますけれども、私どもは、先ほど御説明いたしましたが、中環審答申で、結論といたしまして、「環境保全対策の検討の経過を明らかにする枠組みとすることが適当」、こういう御答申をいただきまして、これらを踏まえて、法制上の表現等もいろいろ検討いたしまして、この法案のような表現になったということでございます。決して隠すとかなんとか、そういうことではございませんので、御理解を賜りたいと存じます。
  255. 小林守

    ○小林(守)委員 それでは、もう一つ同じような問題で、フォローアップの措置ということで、いわゆる科学的知見の限界とか、それからそういうことによって将来どういう影響が出てくるのか予測が難しい、不確実性というようなことが現実にあるのは私も十分理解しているつもりなのです。  そういうために、スコーピング段階から準備書等に環境影響評価後のフォローアップの措置を記入しておくというような、フォローアップの措置というものがこれもまた答申に明確に位置づけられているわけであります。  また、そうすることによって、評価後の調査等の結果に関する情報を収集、整理して、ぞして継続的に技術的な評価を行って、その情報提供することを通して環境影響評価の技術的な向上を図っていくことが適当である、こういう形で、人知のなかなか及ばない、科学的にもなかなか解明できない、そういう問題についての環境影響評価の対応の仕方という形で、フォローアップというものが事後調査という形で明確に計画段階から位置づけられたということで、大いに評価していいと思うのです。  実は、このフォローアップの措置についても、今日までの答弁によると、同じ十四条の七号のハに入っているというような御答弁があったかと思います。このフォローアップの位置づけについては十四条の七号ハで理解できる、そこに入っているというふうに考えていいのでしょうか。
  256. 田中健次

    田中(健)政府委員 中環審答申を受けまして、フォローアップの実施が重要ということで、先生お話しになりました法案の十四条の七号のハに、環境の保全のための措置が「将来判明すべき環境状況に応じて講ずるものである場合には、当該環境状況の把握のための措置」、これを記載するように規定をいたしました。  それから、もう一つ連動いたしますのは、法案の三十八条でございます。三十八条におきまして、「事業者は、評価書に記載されているところにより、環境の保全についての適正な配慮をして当該対象事業を実施する」ということにいたしておりまして、この条文によりましてその確保が図られる、こういう措置を行っているところでございます。
  257. 小林守

    ○小林(守)委員 今確認ができまして、フォローアップ措置についても明確に位置づけられているというようなことでありますが、この十四条の表現についても、事後調査というような言葉を、例えば、将来判明すべき環境状況に応じて事後調査を講ずるものである場合はとか、講ずるものであるというようなことを、事後調査ということを一言入れるだけで、ああ、これはフォローアップだなと明確にわかるのですね。何かこれは削除している意味がよくわからない。そのくらい、事後を入れたって、国民に丁寧に説明するのには必要な言葉ではないかというふうに思うのですが、先ほどのお話の中で、「わが国の状況に応じて導入」というような、複数案の比較検討も含めて、どうも「わが国の状況に応じて」のところに何かこういう原因があるのかどうか、どうですか、そこは。こういうふうに非常にわかりづらくしているのは、我が国の状況に応じてこうなってしまうのですか。
  258. 田中健次

    田中(健)政府委員 決してそういうことではありませんで、審議会答申を踏まえて、それをそんたくして、法制局ともいろいろ相談しながらまとめた条文でございまして、決してそういうわけではございません。このフォローアップにつきましても、なかなか法制的にも表現が難しいということで、結果として御提案をいたしておりますような形になった次第でございまして、決して他意のあるものではございません。
  259. 小林守

    ○小林(守)委員 それでは次に、新たな環境基本法が制定されまして、生物の多様性等についての評価、環境配慮というものがクローズアップされてきているというふうに考えられるわけです。それで、実は、これは答申の中にもあるのですけれどもアセス再実施というような概念の中では、この法律が適用になってアセスをやった後、なおかつ長期間未着工とか休止状態にある場合については再実施をしてはどうかというような提言が答申の中にはあるのですね。それはそれで今後の大きな課題だというふうに思うのですが、その前に、答申には触れられていないのですけれども、それと同じような問題で、実は今日まで閣議アセスでやっているのですけれども閣議アセスが既に済んでいる事業で、長期間未着工あるいは事業休止状態にある事業がかなりあるというふうに思います。  それで、先ほどの西川先生議論の中でも、例えばその事業者への義務的なさかのぼっての負担というのは、これは難しい。事業者に対するさかのぼっての義務的負担というのかな、負担を求めることは現実に難しいと思うのですが、事業者が国や国関係の公団等であるならば、私は、これは国民がいいと言うならば行政が公的費用で実施してもやぶさかではないのではないか、このように考えるわけであります。  そんなことで、少なくとも国の直轄事業とか公団事業等について、しかも閣議アセスが終わってしまっているものですね、これについては、新法アセス、この新しい法律に準ずるような同程度の措置を、公的な責任において、これだけのことをきちっと、環境基本法環境基本計画、そして新しいアセス法をつくってきた、政府もそれを認めてきている、そういう責任の上に立つならば、生物の多様性とか生態系の保全とか、そういう観点から、その当時閣議アセスにはなかった、しかも事業は未着工であるというものについては、公的責任において準ずるような措置を、アセスをやってもいいのではないか、このように考えるのですが、まず、どのくらいそういう事業があって、それらについて環境庁としてはどう考えていくのか、お聞きしたいと思います。
  260. 田中健次

    田中(健)政府委員 先生今おっしゃいましたようなケース、数としては把握をいたしておりませんが、附則の第四条におきまして、こうしたケースにつきましてもこの環境影響評価手続を行うことができるという規定は用意をいたしております。
  261. 小林守

    ○小林(守)委員 そうなりますると、あとは政治の責任ということになるのでしょうか。
  262. 田中健次

    田中(健)政府委員 あとはその事業を実施する事業者判断になってくると思います。
  263. 小林守

    ○小林(守)委員 そうしますと、先ほどの議論にもありました事業者とは、少なくとも国、まさに国直轄事業ですから、国ですよね。そして公団等になるわけですね。これの判断によるということになりますか。
  264. 田中健次

    田中(健)政府委員 そういうことでございます。
  265. 小林守

    ○小林(守)委員 それでは、この辺をしっかりと受けとめて、今後の課題として問題提起を共有していきたい、このように考えております。  それでは、今度は具体的に、建設省にきょう来ていただいておりますので、先ほど来の議論の中でも、つい最近、長崎県の諌早湾のいわゆる潮どめゲートがおろされた、ムツゴロウが悲しい目をして砂の中に潜ったというような映像が出ておりました。さらには、同じように、宍道湖の中海の干拓の問題もございます。これは農水省に関係する直轄事業ということになりますが、それらの大きな事業もあります。  閣議アセスというのは、御承知のように、これは一九八四年、昭和五十九年ですか、閣議で環境アセスメントの要綱がつくられたわけですけれども、もう既にそれ以前に事業実施が決定されたダム事業などがたくさんあるのですよね。そういうことで、例えば、私自身の聞いた、調べた範囲でも、既に二十九年前に実施決定されたダム、これは熊本県の五木の子守唄の里である川辺川というのでしょうか、そこのダム、これは既に二十九年たっているそうです。それから、群馬県の八ツ場ダム、これも二十九年たっているようです。それから、私の地元なんですが、思川開発事業、これが二十七年たっております。  これら閣議アセス以前に既に国の事業としてまたは公団の事業として事業実施決定されたダムについて、少なくとも私は、先ほどの局長さんの答弁をかりるならば、これは、今の主務大臣、主管大臣の環境への配慮、そして新たな国際的な日本の使命みたいなものもあります。そういう観点から、少なくとも事業者である国が、公団が、みずからの責任において実施すべきではないか、先ほどの議論も踏まえて私は問題提起をしていきたい、このように考えているわけなんですが、それらについて再度、今度は長官、いかがでしょうか。
  266. 竹村公太郎

    ○竹村説明員 それでは、今の御質問に御説明させていただきます。  法制度上の問題は、私どもの所管ではございませんので差し控えさせていただきますが、実際にダムを実施している事業者としましてお答えさせていただきます。  私ども、五十九年の閣議決定で環境アセスを実施しているもの、現在事業中のもので十四ございます。そして、五十九年の閣議決定以前に、五十三年に私どもの建設省の事務次官通達ということで、当面の措置方針ということで、閣議決定になるまでの運用として行っていたものが十三ございます。そして、先生指摘のそれ以前のダム、つまり制度としてはそれ以前のもの、ダムが七ダムございます。その七ダムの中に、今一つの例に出されました川辺川ダム等がございます。その七ダムについて私どもどういうふうな状況にあるかということを簡単に御説明することによって、お答えにさせていただきます。  川辺川ダム及び七ダムのうちもう一つの徳山ダムと申しますのは、私ども昭和五十一年以来営々と環境調査をやってきまして、その評価及びその対策をやってきましたのを、ダム事業審議委員会という審議委員会で、公の席で紹介し、先生方に御審議願ったというシステムをとってございます。もちろん、ダム事業審議委員会だけではなくて、地元の方々に直接説明会、そして疑問を抱く市民団体の方々と話し合いというようなことも、この徳山ダム、川辺川ダムで私ども実施して、環境への配慮の御理解を願うような、公の形で実施してございます。  なお、今の七ダム以外に、八田原ダム、これは今水がたまっておるわけでございますが、このダムは湖水の水質を守るための最大限の対策をし、滝沢ダム、大滝ダム等では、つけかえ道路工事につきまして、クマタカが確認されましたので、私ども、特に大滝ダムでは、平成八年の六月十日から八月三十一日、八十二日間つけかえ工事をストップしまして、クマタカのひながかえったことを自然保護団体の方々と一緒に確認し合いまして工事を再開したというような、環境調査をやって対策をしているというだけじゃなくて、きめ細かい対策を、市民団体の方々の協力を得ながら、各現場で工夫をしながら実施しております。
  267. 小林守

    ○小林(守)委員 そういう形で法的な義務はなくても、事業者責任として、国の責任としてそれは行っているということになるんだろうと思いますが、一般論として、確かに民間事業者が過去の許認可を受けた事業で、法律ができたからさかのぼって負担をしてやってくれというのは、これは難しい。しかし、事業者が国であるならばだれも不利益はこうむらない、こうむるのはまた国民ということになるんでしょうね、税金でやるとなれば。国民はそれをやってほしいというふうになっているわけでありますから、こういうことをやりますということになれば、国に対して、ああそうかという形での御理解がいただけるのではないか、このように考えるんですが。  先ほどちょっと残しましたけれども、要は閣議アセスの前の問題、それから閣議アセスを受けていても長期間未着工や休止状態にある事業について、事業者が国である場合は、新しいアセス法に準じた措置をとっていくというようなことを約束していただけないかどうか、約束というときつい言葉だからなかなか答えが出ないでしょうが、それについての長官の所見を伺いたい。
  268. 石井道子

    ○石井国務大臣 ただいま建設省の方からも御答弁がありましたが、今のところは、それぞれの主務大臣の判断によりまして適切な対応が図られているものと考えております。
  269. 小林守

    ○小林(守)委員 できるならば、環境庁長官立場から、閣議の中ででも、あの事業についてはぜひ、どこどこの大臣さん、こういう配慮をした措置をとっていただけないかというような働きかけを、責任ある立場で働きかけをしていただきたい、どのようにお願いをしておきたいと思います。
  270. 渡辺和足

    渡辺説明員 建設省の所管しております事業のうち、先ほど先生の方から御指摘のありました閣議決定要綱に基づいて、既に実施されておりますアセスメント手続につきましても、本法に基づく手続とみなす規定が置かれておりますので、評価書公告後、対象事業実施区域及びその周辺の環境状況の変化、その他特別の事情によれば、事業者が必要と認める場合にはアセスメントの再実施を行うことができる、こういうことになっていると思っております。  したがいまして、現在のところ、私どもアセスメントを実施してきた事業につきまして、先生先ほど御指摘のように、長期間未着工とかあるいは休止状態というものはございませんけれども、今後こうした事例が生じた場合につきましては、この法律趣旨にのっとりまして、適切に対応していきたいというふうに考えております。  以上です。
  271. 小林守

    ○小林(守)委員 ありがとうございました。  それでは、また答申と今度の法案についての問題に戻りまして、幾つかまだ残っておりますので、お聞きしたいと思います。  次に、いわゆる上位計画、上位の国の計画や政策、これにおいて環境配慮というものが求められているわけであります。環境基本法第十九条には、「国は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境の保全について配慮しなければならない。」この環境基本法十九条にのっとるならば、国のすべての計画について、この縛りというか、環境への配慮が義務づけられるというふうに私は理解をするわけですが、これについて、答申では触れられておりますけれども、今度の法案には出てまいりません。答申の中でも、検討課題というふうに掲げられておりましたけれども、これらについて、今後どのように検討していこうとしているのか、姿勢をお聞きしたいと思います。
  272. 田中健次

    田中(健)政府委員 上位計画アセスにつきましては、今先生からお話がございましたように、審議会答申におきましては、なお検討を要する事項が多くて、主要諸国においてもその取り組みが始められつつある状況にあるということで、政府としてはできるところから取り組む努力をしながら、国際動向や我が国での現状を踏まえて今後の具体的な検討を進めるべきである、こういう御答申、御指摘をいただきました。  このように、答申におきましては、上位計画や政策に係りますアセスメントは今後の課題とされたところでございます。法案におきましては、この中環審答申を踏まえながらできるところから取り組んでいくということで、港湾計画につきましてのアセスメントを今回盛り込んだところでございます。  今後、この中環審答申に従いまして、国際動向や我が国での現状を踏まえまして、政府の計画や政策につきましてのアセスメント手続等のあり方について、私どもといたしましては具体的に検討を進めていきたいということを考えております。
  273. 小林守

    ○小林(守)委員 後で見直し条項の問題についても触れますけれども、この上位計画等については、目途として五年ぐらいに絞ってやっていくぐらいの姿勢がないと立ちおくれるというふうに私は考えているんですが、また後でそれは触れたいと思います。  次に、国外での事業の扱いというようなことでお聞きしたいと思います。  環境基本計画の中で、「国際協力の実施等に当たっての環境配慮」というものが明確に位置づけられております。その中では、「環境配慮に関するガイドラインを的確に運用するとともに、」云々、「その他の公的な資金による協力及び民間企業の海外活動についても適切な環境配慮が行われるよう努める。」ということで、国及び公的な資金に対して、そして民間企業の海外活動に対してもこの環境配慮というものがかかるんですよということを明確にうたっているわけでありますけれども、これらについて、中環審答申の中で触れられております。政府開発援助、ODAに係る事業についてもさらに拡充をしていかなければならないというふうに問題意識を持っている一人でありますが、現在、JICAとかOECF、海外経済協力基金等ではガイドラインを持って進めているというようにお聞きをしております。  そこで、外務省から来ていただいておりますので、このガイドラインの実効性ども含めて、現状についてのお話をいただきたいと思います。
  274. 吉田雅治

    ○吉田説明員 ただいま小林先生の方から御指摘ございましたように、中央環境審議会答申の中に、JICA、OECFの海外援助事業につきましてもガイドラインを実施していくんだというような御指摘がございまして、他方で、その中央審議会答申にもございますように、ODAの実施主体というものがあくまでも途上国政府でございますので、私どもといたしましては、こうした途上国の努力を支援していくという立場にございます。  したがいまして、ODAを実施する際には、我が国の環境影響評価手続を直接適用するということにつきましては困難な面があると思われます。したがいまして、基本的には、実施の際に相手国に対しまして一定の基準の環境配慮を行うようにさまざまな形で働きかけることとなります。  具体的に申しますと、援助に関しましては、政策を協議するための年次協議あるいはさまざまな機会がございますけれども、相手国に環境配慮を重視するという我が国の姿勢を伝えるとともに、既にございますJICA及びOECFにおける環境配慮のガイドラインを設けまして、個別プロジェクトの形成並びに計画の段階から実施に至るまで環境配慮が徹底されるように留意しております。事後評価におきましても、在外公館の報告事項の項目に環境配慮というものを含めるようにいたしております。  こうしました環境配慮のための努力を今後とも続けていきたいというふうに考えております。
  275. 小林守

    ○小林(守)委員 直接外務省の所管ではないと思 うのですが、中国の三峡ダムの開発の問題で、アメリカ等では、ダムからの撤退というような形で、資金的な援助というか手だてについて行わない、三峡ダムには参加しないというようなことが出されております。しかし日本では、これについては日本輸出入銀行が融資をするというようなことで、入札に参加するというようなスタンスをとったというふうに思います。結果がどうなっているか、まだ結論は出ていないのだと思いますけれども、この日本輸出入銀行などが融資を決定するとか資金的な裏づけをするに際して、少なくとも、政府の特殊法人ということになるならば、やはり環境への配慮というものを欠かして考えてはいけないのだろうというふうに思うのです。  ところが、そんな議論なしに、三峡ダムについていろいろ国際的な議論がある中で、問題が議論されないまま急遽決定をされたというようなこともございまして、海外に対するいわゆる開発援助というのですか、そのあり方が、確かに、主権を侵すような、主権に対して介入していくようなことがあってはならないというふうに思うのですが、援助をするからには、日本環境政策なんだという形で、少なくとも国際社会の中で名誉ある地位を占めたいということになるならば、日本一つの、戦略的に言うならば、環境政策地球環境保全のためにリーダーシップをとっていくというあたりが大きなポイントになっているのだろうというふうに私は思うのですね。  そういうことで、ただ援助をするのじゃなくて、環境政策はこういう形でやってほしいのだという形で、相手の国の国策とかも議論するぐらいのスタンスでやっていかないと、やはりこれはよくないのではないかな、そのように考えておりますけれども、外務省、もし所見がありましたらお聞きしたいと思います。  そのほかに、同じような問題で貿易保険の問題、これは通産省ですかね、これも何か簡単にやっているのですよ。これらについても、事業について一定の貿易保険を付するのは確かに通産省所管なんだけれども、中身は特別会計でやっているということなので、通産省もなかなか口が出せないような感じがあるのですが、そういう海外に対する資金援助とか投資とか、そういう中では環境配慮というものが貫徹できているのかどうか。私は、JICA、OECFについてはガイドラインで相当実効を上げてきているというふうに思うのですが、まだまだ不十分だと言わざるを得ないのですけれども、外務省の方で御所見がありましたら話してください。
  276. 吉田雅治

    ○吉田説明員 輸銀、貿易保険につきましては、所管外でございますので差し控えさせていただきますが、外務省といたしましては、先ほどのプロジェクトにおける環境配慮に加えまして、環境関連案件というものを重視しておりまして、例えば中国でございますと、第四次の円借款の九六年から九八年の三年分の四十四件中十五件を環境に向けて考えるというふうな、環境に関する案件を極力ODAの中で取り上げるということで先方政府にも申し入れをしておりますし、そうした意味での環境方面の協力を今後とも強化してまいりたいというふうに考えております。
  277. 小林守

    ○小林(守)委員 それでは、続きまして、また中環審答申法案との関係の問題に移っていきたいと思います。  評価の審査というようなことで何度ももう既に、質問の最大のポイントはここにあったのではないかと思うのですけれども、いわゆる環境庁長官意見を述べるというこの意味、重要性、それから客観性や信頼の担保をどう確保できるのかというところに本当に本委員会審議の大きなポイントがあるように思うのです。要は、第三者機関的なものはつくらないというのですが、しかし、開発事業官庁、主管官庁に対して、少なくとも環境庁は第三者的な立場での意見を言う責任がある、またその立場にもあるというふうに考えるわけですけれども、それについてはいろいろお話がございましたので、重複は避けたいと思います。  いずれにしても、今環境行政については追い風があるというふうに言っていいと思うのです。この追い風をしっかりと受けとめられるかどうかが、この法案の生き死にを決めていくのではないかというぐらいに私は考えておりますので、今こそ環境庁の存在価値を、環境庁ここにありというようなところを示してほしい。そこを我々は望んでいるわけでありますから、応援をしたいということでありますので、その辺をぜひ、環境庁長官は出しゃばってもらいたい、こんなふうに思うのですよ。  できるならば、最後の許認可の際の意見ではなくて、あらゆる重要な段階において、必要に応じて環境庁長官はいつでも意見が述べられる、そして第三者性を確保するために、例えば中央環境審議会の専門部会とかなんかの委員意見も聞いて、そして環境庁長官意見として所管大臣に申し上げるというような仕組みをつくってはどうかということなんです。  これは実は既にそういう質問もございましたので避けますけれども、もう一度大臣に、環境基本法の実現に向けて、いよいよ追い風が吹いてきているわけでありますから、環境庁の存在価値を示す考え方、決意的なものを含めて、最後質問みたいになってしまいますが、まだ続きますけれども、この時点でもう一度環境庁長官の御意見をいただきたいと思います。
  278. 石井道子

    ○石井国務大臣 現行閣議アセスにおきましては、環境庁長官意見を求められなければ意見が言えないという形でございますが、このたび、環境アセスメント法制化された時点で、環境庁長官意見につきましては、政府におきまして、環境行政の総合的な推進に責任を持って、そして関係行政機関の環境の保全に関する事務の総合調整を所掌する立場から意見が述べられるようにもなりました。  法案におきましては、必要に応じて主務大臣等に環境庁長官意見が述べられた際はこれを勘案することとされておりまして、環境庁長官意見は十分に主務大臣等に重みを持って受けとめられるものと思っております。  環境庁としては、その責任の重大さにかんがみまして、必要に応じて専門家の知識や経験を活用しつつ、適切な意見形成に努め、この環境アセスメント法案が円滑に運用されますことを願っているところでございます。
  279. 小林守

    ○小林(守)委員 それでは、中環審答申法案との関係についてはひとまず終わりまして、次に、法案そのものの中で幾つかの問題点について、疑問点についてただしておきたいというふうに思います。  まず、見直し条項ということで、附則第七条、検討条項、これについてお聞きしたいと思います。  この第七条では、「政府は、この法律の施行後十年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」というふうになっておりますが、見直し年限は、実はその前の附則の中で、施行日は二年以内というふうになっておりますので、最長というか、公布から施行日までの二年というものをとった場合は、見直しが来るのが十年後ということになりますから、二〇〇九年になるはずなんですよ。もう来世紀のワンステップ過ぎてしまうわけですが、二〇〇九年ごろに見直し検討の法的な時期が来るということになるのですけれども、今日の国際的な社会経済活動とか、地球環境のCO2の問題やオゾン層の破壊の問題、これらのこと、それから人口爆発の問題とかさまざまな問題を考えていった場合は、これはそこまで待っていられるのかというふうに考えております。  もちろん、アセスメントのスパンでいうならば、そのぐらいのタイムが欲しいというのは、さっきも言ったようにわかると思うのですよ。一つ事業をやっていくのに十二、三年かかってしまう。調査の段階で十年ぐらいかかってしまうというのも実際にあるわけですよね。そのぐらい当たり前ぐらいかかるダムとかそういう大きな事業があるのも事実なんですが、このアセスメント見直しをするスパンは、やはり私は、ほかの法律見直し条項というのは大体五年、今日の法案等では五年が多いのですよね、一般的に。何か十年というと、時限立法で十年で打ち切りですというような法律でつくるとか、そんなふうに思えてならないわけなんです。  よりいい法案にしていくためにも、今日まで一生懸命これに取り組んでこられた、そしてここまでたどり着いた、この努力の成果としてこの法案が上がってきているわけですけれども、しかし、委員のさまざまな質問の中で、まだまだ不十分だというようなところも指摘されているわけでありますから、そういう点でも私は、見直し条項は十年ではなくて五年というのが当たり前じゃないか、このように考えているわけでありますが、いかがでしょう。
  280. 田中健次

    田中(健)政府委員 お話ございましたように、附則の第七条でございますけれども、この趣旨は、事業者に対しまして新たな負担を課するという法案の場合は、政府の方針に基づきましてこうした規定を置くというのが通例になっております。  この法案内容は、閣議アセス実績を踏まえつつも、スクリーニングあるいはスコーピングなどの事前手続、あるいはフォローアップ措置の導入など多くの新たな要素を備えたものでございまして、こうした点の運用状況を含めまして、法施行後十年を経過した段階で法律の施行の状況について検討を加えまして、その結果に基づいて必要な措置を講ずる、こうした趣旨でございます。  「十年を経過した場合」と十年としたのは、この法案対象となる事業につきまして、ただいま先生からもお話ございましたように、調査等に要する期間を含めて一連の手続に、短い場合でも二、三年、長い場合には五年以上の年員がかかるために、一定の実績の積み重ねを見るという観点から十年としたものでございます。  そこで、制度の適切な運用という観点では、逐次制度の運用状況を点検いたしまして、内外の科学的知見の集積状況を踏まえまして必要に応じて技術指針を見直すなど、運用の改善を図っていくことが基本であると私どもは理解をいたしております。  また、上位計画のアセスのように、中環審答申で今後の課題とされた事項についても検討を進めてまいる、こういうことでございますので、御指摘のような地球規模の環境状況の変化やあるいは社会情勢、経済情勢の変化等とともに、法の施行状況を見きわめながら、私どもとしては必要に応じ、適時適切に対処をしてまいるつもりでございます。
  281. 小林守

    ○小林(守)委員 姿勢はよくわかりますし、またそうしていただきたいと思うのですが、十年にする必要性というのはない。五年ではなぜ悪いのか、まずいのかということを、私は再度聞きたいと思います。  対象事業種の範囲とか項目とか、例えば技術的な指針とか基本事項、これらについては少なくとも五年ぐらいで見直しをしなければ、やはり時代の流れに対応できていかないですよ。もちろん、長いスパンの問題もあるのですよ。だけれども、五年で見直して、もうちょっと時間をかけないとだめだというものについては、その時点ではさらにこれは継続で、いじらないという形でいいわけですから、五年ぐらいの間に見直さなくてはならないことが必ずあるはずですから、五年にしておくのが私は正しいと思うのですよ。  それから、例えば時限立法で、地方分権推進法はあと三年ぐらいで切れることになります。今六月に、地方分権推進委員会の勧告が、第二次勧告になりますか、これが出されるわけですけれども、そういう形で勧告を受けて、政府は地方分権推進計画をつくる。これについて、時限立法ですから三年ぐらいの計画をきちっと出すわけですね。そうなりますると、先ほどからの議論である国と地方との関係、法令と条例との関係、地方と地方の関係、これらについての新たな関係が、少なくとも今までの上下の関係とか垂直の関係ではなくて、対等、協力関係であるという理念が明確に打ち出されてきて、そういう中身の中で地方分権が進められていくということになってきているわけであります。  第一次勧告を見ていただければわかるように、もう既にそういう方向性は厳然たる事実として流れてきているわけでありますから、その流れに沿って考えるならばへ先ほど来の議論である六十条の問題については、私は少なくとも、そこまである程度置いておいても、地方の先進的な取り組みを後戻りさせないような例えば考え方答弁、そういうマターで確認されるならば、新たな分権推進の計画の中で問題解決の枠組みができてくるのではないかというふうに思えてならないのですけれども、それも大体三年ぐらいでははっきりするはずですよ。  そういうことで考えるならば、五年以内が適切ではないか。そういうのが出たらその時点でやりますよということになろうかと思うのですが、やはりそれは十年で置いておくよりも五年の方が、ほかのいろいろな問題も含めて環境の問題がさらに重要になってくるわけですから、できるだけ短い期間でよりいい法律に直していくということからいっても五年が適当だろうというふうに私は思います。  それから、もう一つ言いたいのは、私も当選したばかりに廃棄物処理法、これは二十年来の大改正をやったときに党の方の事務局長でかかわってきたのですが、そのときにいろいろ議論がされました。そして、いろいろな問題が残っていた。しかし、今後の検討課題として積み残した課題については、今度の法改正でほとんど、ちょうど五年後の今回、法改正が出されます。例えば、原状回復措置とかそういう基金をつくらなくてはだめだとか、それからマニフェストという伝票は全産業廃棄物につけなければだめだというのですが、その時点は特管物、特別管理産業廃棄物だけに限定してマニフェストをつけるというふうになっていましたが、今度の法律では全部の産業廃棄物につけましようというようなことになります。  少なくとも五年で一定の階段をワンステップ上ると、社会的に、また経済社会的にも国民的にも一定の新たな課題が具体的に迫ってきて、今度はこれをやらなければだめだというふうになってくるんだと思うのです。  そういう意味からも、今度の法改正で一定の水準というか、階段のワンステップの踊り場に出るはずであります。その踊り場で見て、さまざまな問題がまた見えてくるはずでありますから、それらが見えてきてまた国民の理解が定着されてくる、それが五年ぐらいで今どんどん変わっていくのだろうというふうに私は思うのです。そういう点で十年は長過ぎるということで、再度お答えをいただきたいと思います。
  282. 田中健次

    田中(健)政府委員 先ほど御説明を申し上げましたように、この七条の規定は、新たに国民に負担を課すような制度につきましては、その制度全体を再度実施状況を踏まえて見直してみる、こういう規定でございまして、新たに負担を課するものにつきましては、すべてこの趣旨規定は入るわけでございます。  先ほども説明をいたしましたように、この間にいろいろと運用状況を見まして、指針等を改正する場合にはこれは政省令等でできるわけでございまして、そういうことで、必要なものにつきましては、適時やっていくということでございますが、制度の根幹等を見直すということにつきましては実績の積み重ねが必要でございまして、先ほど申しましたようなアセスのかかる時間ということを考えますと、私どもとしては十年という期間が必要ではないか、こういうふうに考える次第でございます。
  283. 小林守

    ○小林(守)委員 納得できませんので、これは政治の責任で何とかしていかなければならないだろう、そのようにも考えているところであります。  次に、もう一つお聞きしたいと思います。  法の第三十三条にかかわることですが、この条文について趣旨がよくわからないのです。この条文の中の第二項の二号、三号あたりですね、この辺の説明をちょっとしていただきたいというふうに思うのです。  要は環境への配慮という、環境保全の審査の結果とあわせて対象事業の実施による利益を勘案して、例えば許認可をするしないを決めるのだというようなことですが、この法文は中環審答申の中では触れられていないというか、よくわからないのです。どこからどうこの考え方というか事項が入ってきたのか。少なくとも、昭和五十六年だったでしょうか、前回出されて廃案になった政府案については入っていなかった概念だそうですが、私も確認しましたが、入っておりません。しかし、今回新たに入ってきたというのは何か意味があるのかどうか。  あえて心配するのは、要は環境への保全の審査の結果とあわせて経済的な利益、要は損か得か考えて許可しろということになってしまうのかどうか。そうなってきますると、何のための環境影響評価か。これは公共事業全体に言えることであって、公共的な利益を優先して環境は犠牲にしていいという話にはならないはずでありますが、これとのバランスでやるのだということになると非常に問題だ。少なくとも事業官庁というか、そういう方はぜひ入れてもらいたいようなニュアンスが感じられるのですが、少なくともこれは環境庁の頑張りどころの問題であって、こんなものを入れさせてはいけないのだというふうに思うのですが、いかがですか。
  284. 田中健次

    田中(健)政府委員 法の三十三条でございますが、いわゆる横断条項でございまして、事業に関します個別法の許可等の審査に当たりまして、アセスメントの結果の審査をあわせて判断して、処分すべきことを規定したものでございます。  個別法の規定のみによって審査が行われたとした場合に、免許等が行われるケースにつきましても、この規定が設けられることによりまして、アセスメントの結果、環境上問題があれば免許等を拒否したり、あるいは免許等に条件を付することができるということになるわけでございます。これは中環審答申も踏まえましてでき上がった制度でございます。  ところで、免許等に関する法律規定にはさまざまなものがございまして、今申し上げました効果をこれらの規定に対しまして横断的に付与するためには、その規定のタイプに応じまして条文を書き分ける必要がある、こういうことから法案の第三十三条の第二項に第一号から第三号までの規定が置かれているところでございます。  御指摘の第二号と第三号の「対象事業の実施による利益」といいますのは、当該免許等に当たりまして考慮される環境以外の利益のうち免許等を行うことによってもたらされるもののことでございまして、仮に本規定がないといたしますと、個別法の審査におきましては、この利益がより重く判断されることによりまして免許等が行われる方向に働くケースにつきましても、本規定が設けられることによりまして、こうした環境以外の利益のみならず、アセスメントの審査の結果も考慮して免許等の判断が行われることになるものでございまして、免許等において環境配慮が徹底されることになるわけでございます。  利益という用語を用いましたのは、環境審査とあわせて判断される内容法律的に表現したものでございまして、利益という用語が用いられていることによりまして環境面の配慮がないがしろにされるのではないかという御懸念には及ばない。これは立法技術的な考慮からこういう表現になったものと御理解をいただきたいと思います。
  285. 小林守

    ○小林(守)委員 今の答弁を含めて、再度検討していきたい問題だなというふうに受けとめております。  ただ、今の局長答弁については、そういう趣旨であるならば、その趣旨をしっかりと守って頑張っていただきたいということをつけ加えて、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  286. 佐藤謙一郎

    ○佐藤委員長 藤木洋子さん。
  287. 藤木洋子

    ○藤木委員 日本共産党の藤木洋子でございます。  最後になりましたけれども、どうか最後までおつき合いをいただきますように、まず最初にお願いしたいと思います。  先ほど来いろいろ議論をされて、これで二巡目といいますか、二回目になりまして、問題点がほぼ明らかになったという思いがいたしますが、私も、今回の法案は、国内外の法制化の世論を受けまして、法律による環境影響評価制度の枠組みを提案されたものだというふうに受けとめております。  環境影響評価法制化は、これまで幾度となく産業界などの圧力で国会提出が見送られてまいりました。現行閣議アセスはゼネコン型事業などの大規模開発に免罪符を与えるものだとして、国民の皆さんから強い批判を受けてきたものでございました。また、先進国の中で唯一法制度を持たない日本は、国際的にも法制化が強く求められておりました。  環境基本計画でも、「我が国におけるこれまでの経験の積み重ね、環境保全に果たす環境影響評価の重要性に対する認識の高まり等にかんがみ、内外の制度の実施状況等に関し、関係省庁一体となって調査研究を進め、その結果等を踏まえ、法制化も含め所要の見直しを行う」、こう言って四年にわたり作業を進めてきて、やっと法制化にこぎつけたものでございました。  ところが、この関係省庁一体となって進めてきたはずのものが、土壇場で、この法案とは別に通産省電気事業法を改正して発電所アセスを行うことになってきたわけです。当然、国民の中からこの法案通産省の態度に強い不信感が起きております。  お伺いしますが、どうして関係省庁一体となって統一したアセス法制化できなかったのか、この点、大臣にお答えをいただきとうございます。
  288. 石井道子

    ○石井国務大臣 発電所の扱いにつきましては、いろいろと経緯がございました。発電所は、環境影響評価法案対象事業一つとして、中央環境審議会答申基本原則を満たすように作成されました環境影響評価法案に定める各種指針や手続が適用されることになるわけでございます。  発電所につきましての通産省などの考え方、いろいろありまして、それは過去二十年間、電源立地の円滑化のために、通商産業省の省議アセス制度において手続の各段階から国が監督指導して十分な実績を上げてきたというふうにありますし、また、民間事業者の個別事業が電力の安定供給という国の施策と強いかかわりを持っているという特殊な性格を有しているものでありますので、環境影響評価法案手続に加えまして、電気事業法を改正して手続の各段階で国が関与する特例を設けることにしたところでございます。  このために、発電所につきましても答申趣旨を踏まえた十分なアセスメントが行われることとなりまして、統一的な制度の扱いとなったものでございます。
  289. 藤木洋子

    ○藤木委員 しかし、中央環境審議会答申でも「統一的で、透明性が保たれ、わかりやすい制度とする」というふうにわざわざ「統一的で、」という文言を入れまして、橋本総理答申を手渡す際にも、くれぐれも骨抜きにならないようにというコメントを添えているわけですね。ところが、この中環審答申に反して、通産省の権限を強化した内容での電気事業法を改正した。それで、この法案でも、「この法律及び電気事業法の定めるところによる。」ものと特例扱いをしているわけです。  ですから、このように発電所アセスだけ特例扱いするということになりますと、中央環境審議会企画政策部会長が何度も強調したように、この法案自体が骨抜きになってしまうのではないか、私はそういう心配を持つものでございますけれども、骨抜きになっているのではないでしょうか。
  290. 石井道子

    ○石井国務大臣 発電所は、環境影響評価法案対象事業一つとして、中央環境審議会答申基本原則を満たすように作成されました環境影響評価法案に定める各種指針や手続が適用されることになっております。したがいまして、環境影響評価法電気事業法の特例によりまして骨抜きになるという御懸念は当たらないと認識をしております。
  291. 藤木洋子

    ○藤木委員 確かに、この法案では発電所対象事業になっております。この法案に従った環境影響評価一般的な手続がなされることになるわけです。  しかし、電気事業法改正案では、手続の各段階で、勧告をする、変更命令を行う、通産省の関与の仕組みがその都度織り込まれているということになっているわけですね。また、第二種事業の判定だとか方法書の評価方法でも記載事項を追加するというような、手続的にはちょっと見たところ環境影響評価制度が強化をされたような内容になってございます。  これでは、相対的に見まして、電気事業法改正案よりも今出しているこの法案が安易な制度のような、言ってみたら軽んじられているのではないか、そのように見えてならないのですね。そんなふうに見えてもよいとお考えになっておられるのかどうか、お答えをいただきたいと思うのです。
  292. 石井道子

    ○石井国務大臣 発電所環境影響評価法案対象事業ということになっておりまして、環境影響評価法案に定める共通的な手続が適用されるわけでございます。  発電所につきましては、先ほど申し上げましたように発電所の特殊性ということで、今回は環境影響評価法案手続に加えまして、電気事業法を改正して手続の各段階で国が関与する特例を設けることにしたところでございます。このように、事業の特性に応じた適切な手続を定めているものでありますので、どちらが軽いとか重いとかという性格のものではないというふうに考えております。
  293. 藤木洋子

    ○藤木委員 せっかくでございますから、電気事業もこちらの網にすっぽり包んでしまうことができるというような環境影響評価をつくり上げて、そして特例を削除すべきではなかったかというふうに思うのですが、今からでも、削ろうと思ったらあそこをちょっと削ればいいだけですから、お削りになるお考えはございませんでしょうか。
  294. 石井道子

    ○石井国務大臣 発電所の特例につきましては、いろいろ申し上げたところでございますが、従来からの制度の安定性の観点から、また発電所の特殊性の観点からも、国が手続の各段階において関与する特例を設けることが適切であると判断して設けたところであります。  したがいまして、政府としても、現在お示しをしております案が最善の案であると認識をしております。
  295. 藤木洋子

    ○藤木委員 次に移りますが、この法案は、許認可等を行う行政機関が、対象事業の許認可等の審査に当たって、環境影響評価の結果に基づき対象事業環境保全に適正に配慮されているかどうかの審査を行い、許認可等の可否を判断する、そういう仕組みを盛り込んでおります。  これは今までのことと随分違いまして、現行閣議アセスの要綱でございますとそうはなっておりませんでした。対象事業の免許等を行う者は、評価書の記載事項について適正に配慮がなされているものであるのかどうか、このことを審査し、その結果に配慮することとされておりました。それで、これまでの許認可権者は、事実上、許認可の基準に適合していれば許認可をしてきたということになっていたわけです。  この法案では、免許等を行う者は、免許等に係る基準に関する審査、このことと、それから環境の保全に関する審査の結果、この両方をあわせて判断をし、基準に該当している場合であっても、免許等を拒否する処分を行い、または免許等に必要な条件を付することができるとしています。これまでの配慮するだけとは違いまして、環境の保全がなされない場合には許認可をおろさないということだと思うのですが、それでよろしゅうございますでしょうか。
  296. 田中健次

    田中(健)政府委員 本法案におきましていわゆる横断条項を設けました趣旨は、環境影響評価の結果を免許等に反映させることによりまして環境の保全についての適正な配慮がなされることを目的としたものでございます。したがいまして、免許等を行う者におきまして、この趣旨を踏まえた上で適切な対応がなされるものというふうに考えております。
  297. 藤木洋子

    ○藤木委員 確かに、環境影響評価の結果を対象事業の許認可等の決定に反映させる仕組みを盛り込んでいらっしゃいます。しかし、問題は、環境影響評価の審査は相変わらず許認可権者が行うことになっているという点なんです。  法案では、方法書及び準備書につきまして都道府県知事が意見を述べる際、条例などに基づいて第三者機関である審査会等の意見を聞く手続を経てもよいことになっております。また、環境影響評価書の評価を行うのは意見を聞いた事業者だということなんですね。ですから、環境庁長官などの意見及び行政機関の意見で補正するということはできるのですけれども、結局のところ、審査は許認可を行う所管の行政機関がその任に当たることになっております。これでは、環境影響評価の公正な審査が果たして十分期待できるのか、私はとても十分な期待ができない、そういうおそれがあるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
  298. 田中健次

    田中(健)政府委員 評価書につきましての審査を許認可等を行う主務大臣といたしましたのは、事業の特性を熟知をしているこれらの許認可権者が免許等を通じまして環境影響評価の結果を反映させていく仕組みの方が実効を上げることができる、こういうふうに判断をしたことによるものでございます。  それで、許認可等を行う主務大臣の審査に際しましては、私ども環境庁長官がこれらの大臣に対しまして環境の保全の見地からの意見を述べることといたしておりますし、政府におきまして、環境行政の総合的推進に責任を持ちまして、関係行政機関の環境の保全に関する事務の総合調整を所掌する立場から述べる環境庁長官意見は、許認可等を行う主務大臣におきまして当然重みを持って受けとめられ、これによって環境保全上の配慮が適正になされるものと考えておるところでござます。  環境庁長官意見につきましては、必要に応じ専門家等の意見も徴しながら的確なものにしていくということでございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
  299. 藤木洋子

    ○藤木委員 所管の行政機関が許認可を行うということに対して環境庁長官がはっきりとその立場から物を言っていくということなのですけれども、これは力の要る仕事ですよ。  私、ちょっと調べてみましたら、例えば電力九社がございますけれども、そのすべてに、通産省の高級官僚が十名派遣されておる、派遣されているというか、その主な任務についていらっしゃるのですよ。ほとんど副社長でいらっしゃるわけですね。それから、建設業の方で見てみますと、建設省からやはり大手ゼネコン三十八社中三十五社に六十二名が天下っております。  これらの事実を見ましても、とても環境影響評価の公正な審査を期待することができない。これと真っ正面から立ち向かっていくというそれだけの御決意がなければ、なかなか並大抵のことではなかろうという思いがするわけです。  既に、都県のアセス要綱などの制度では、審議会などの設置で第三者機関による審査などを行っているところもございます。国の制度として、環境影響評価の審査をするために、事業者や許認可権者とは全く独立をした公正な第三者機関の設置を盛り込むことが望ましいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  300. 田中健次

    田中(健)政府委員 環境影響評価制度の信頼性を高めるためには、中央環境審議会答申におきましても提言をされておりますように、許認可等を行う主務大臣等によります審査に加えまして、第三者が審査のプロセスに意見の提出を通じて参画するということが必要でございます  このために、本法案におきましては、ただいまも御説明いたしましたように、私ども環境庁長官が第三者として意見を述べることといたしまして、客観的かつ公正な審査が確保されるようにしているところでございます。その際に、必要に応じまして専門家の知識や経験も活用いたしまして、さらに適切な意見の形成に努めまして、審査の信頼性を高めていきたい、こういうふうに考えております。
  301. 藤木洋子

    ○藤木委員 そういった高級官僚と企業との癒着があるということもしっかりと見通した上で頑張ってもらわなければならないというふうに思いますね。  次に、法案は、地方公共団体が第二種事業及び対象事業以外の事業に係る環境影響評価についての事項に関し条例で必要な規定を定めることを妨げるものではないとしております。  第一種事業については、先ほど来問題になっているのですが、国の制度で一本化した環境影響評価が行われることになっております。これでは地方公共団体の独自性と地域特性を考慮した制度の実施が制限をされることになるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  302. 田中健次

    田中(健)政府委員 本法案におきましては、既に地方公共団体で広範に環境影響評価に関する施策が実施されているということにかんがみまして、国と地方の適切な役割分担を図るという観点から、規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがありまして、なおかつ国が関与する事業対象を限定をいたしております。それ以外の事業につきまして環境影響評価を行わせるかどうかにつきましては、地方公共団体判断にゆだねることとしておるところでございます。  それで、本法の対象となる事業につきましても、手続の各段階できめ細かく地方公共団体意見が反映される仕組みとなっておりまして、また、地方公共団体意見の形成の過程におきます審査会の意見聴取であるとか公聴会の開催など、法律規定に反しない限りにおいて、地方公共団体におきます手続を設けることも可能になっておるところでございます。このように、地域の実情に応じた環境影響評価が行われる仕組みとなっているというふうに私どもは考えております。  さらに、本法が定める手続内容も、スクリーニングあるいはスコーピングの手続を導入しておりますし、事後のフォローアップ措置の導入など、現行制度と比較いたしまして飛躍的に充実をいたしておりまして、既存の地方公共団体制度に比較しても充実した内容となっておるわけでございます。  なお、多くの地方公共団体制度では、現行閣議アセス対象となる事業あるいは国の直轄事業につきまして、対象から除外しているケースが多い状況でございます。これは、これまで御答弁を申し上げてきたところでございます。  こうしたことから、本法案が、現行地方公共団体環境影響評価の取り組みにおきます独自性あるいは地域性を制限するものではないというふうに私どもは考えておるところでございます。
  303. 藤木洋子

    ○藤木委員 やはりおかしいと思うのですね。  確かに、第一種事業に対する環境影響評価手続で、方法書だとか準備書について都道府県知事の意見を述べることはできます。その際、都道府県審議会等の意見を聞いて述べること、これもできるわけです。しかし、それは、都道府県の独自性、地域特性を生かしたその都道府県環境影響評価制度で実施することとは明らかに違った評価書が出てくるわけですよ。ですから、地方公共団体意見が十分反映されるとは言いがたいというふうに私思うのですね。  どうも伺っていますと、国のやる事業には口を出してもいいが、言いたいことがあったら言ってくれ、しかしそれは聞くだけ、こういうところでどんどん進んでいきそうな感じを受けるのですけれども、いかがでしょうか。
  304. 田中健次

    田中(健)政府委員 都道府県知事の意見は、当該地域の環境特性を熟知をした地域の環境保全責任を有する立場から述べられるものでございまして、当該地域特性を十分に反映したものであると思っております。  このような都道府県知事の意見は、事業者により、十分重みを持って受けとめられるとともに、環境庁長官やあるいは許認可等を行う主務大臣等が意見を述べるに当たりましても十分勘案されることになっておりまして、地域の実情に応じた環境影響評価が行われる仕組みとなっておるところでございます。  知事意見等は、準備書あるいは評価書等で公開をされるところでございまして、私どもといたしましては、地域の特性を十分に反映した意見が出てくる、こういうふうに考えておる次第でございます。
  305. 藤木洋子

    ○藤木委員 既に、都道府県アセス要綱等の制度では、複合事業などへの対応だとか、第三者機関による審査、上乗せ、横出し基準などの独自性と地域特性を考慮した環境影響評価が実施されているわけですね。これは、だからやはりできないのですよ。第一種事業であっても、地方公共団体との調整を行って、地方の制度の制限とならない、そういう対応をやはりきちんとやっていく必要があるというふうに思うのです。  ですから、都道府県知事などが要請をすれば地方の制度で実施することができるというふうにするとか、地方公共団体の独自性、地域特性を生かした制度が実施できるようにすべきだと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  306. 田中健次

    田中(健)政府委員 本法案のように、事業者に一定の義務を課す制度につきまして、どのような制度が適用されるかにつきましては、法令であらかじめ明確に示されておらなければ無用の混乱が生じることになりかねず、知事の要請という行為に任せて適用関係を定めるということは不適切であると考えておるところでございます。  本法案におきましては、国と地方公共団体の適切な役割分担を図るという観点から、大規模で国の関与のある事業法案対象といたしまして、それ以外の事業につきましては地方公共団体判断にゆだねることとしたものでございます。  また、本法案対象となる事業につきましては、いわゆる横断条項によりまして、環境影響評価の結果を許認可等の国の意思決定に反映させる仕組みとなっておりまして、先生が御指摘になったような仕組みとした場合には、このような横断条項を設け得るか疑問が生ずるところでございます。  以上のような見地から、御指摘のような仕組みとすることは困難でございます。  なお、本法案では手続の各段階できめ細かく地方公共団体意見が十分に反映される仕組みをとっておるわけでございまして、地方公共団体に配慮をした仕組みとなっているものと私どもは考えております。
  307. 藤木洋子

    ○藤木委員 私も地方公共団体へ参りまして、関係職員の皆さんからこの法案について言われた問題はここなのですよ。これを一番御心配でございました。ですから、私はちょっと不思議に思うのですね。電気事業の場合は特例にできるけれども地方公共団体の場合にはそこまで心が配れないのか、そんな思いがしてなりません。  国と地方公共団体の権限の調整規定、これを定めていただきたいというふうに思いますね。例えば、二つの県に及ぶものなど、広域的なそういう行為は、当然国が責任を持てばいいと思いますけれども、その他の行為は地方公共団体の所管とするというぐらいの大胆さがあってもいいのではないかというふうに思いますし、条例による上乗せ、横出しを認める、こういったことも規定をされてはいかがかと思いますが、そのことは私の方から要求だけさせていただいて、次の質問に移りたいと思います。  法案は、対象事業環境影響評価につきまして、意見を有する者の地域限定を撤廃し、意見の提出機会は拡大をしております。住民参加の機会を拡大していると私も受けとめているわけですが、現行閣議アセスの要綱では、事業者準備書について関係地域内に住所を有する者の意見の把 握に努めることになっています。そこで、これまでは事業者が殊さら狭い範囲を設定して、地権者など限られた関係住民の意見を把握するだけでございました。意見を有する地域住民、専門家を排除してきたという現況がございました。  今度のこの法案は、関係地域によって住民の参加を排除しない、このように受けとめておりますけれども、それでよろしゅうございますでしょうか。
  308. 田中健次

    田中(健)政府委員 関係地域と申しますのは、準備書の送付先及び縦覧地域を定めるものでございます。一方、一般意見の聴取は、環境の保全の見地からの意見を有する者を対象とするものでございまして、地域的範囲を限定するものではございません。  したがいまして、関係地域の設定は、意見提出ができる住民の範囲を限定する意味を持つものではございません。
  309. 藤木洋子

    ○藤木委員 そこで、地域の問題なのですけれども、この法案は、主務大臣は環境庁長官と地域を定める基準をつくる、こういうことになっておりますけれども環境の保全の見地から、対象事業による環境影響が及ぶ範囲を狭くとるべきではないと思うのです。  例えば、発電所の煙突は、高くなればなるほど煙が広範囲に拡散をいたしまして影響を与えますけれども現行では説明会の開催などは発電所のある市町村に限られておりました。これでは煙の影響を受ける三十キロ圏の市町村の住民が参加できない、こういうことになるわけですね。実害を受ける人たちが参加できない。  ですから、地域の設定に当たりましては、環境の範囲を適正に判断をして、できるだけ多くの住民が参加できるようにすべきだと考えておりますけれども、いかがでございましょうか。
  310. 田中健次

    田中(健)政府委員 関係地域は、個々の事業内容等に応じまして、その実施が環境に及ぼす範囲が適正に定められるものとなるように、おのおのの事業種の特性を勘案した基準により設定をしたいと考えております。  具体的には、方法書段階におきましては、標準的に環境への影響が及ぶと考えられる範囲、それから準備書段階におきましては、調査等の結果に応じまして、方法書段階より具体的に環境への影響が及ぶと考えられる範囲が、それぞれ市町村単位で定められるような基準とすることを想定をいたしておりまして、適正な環境影響の範囲が確保されるものとなると思っております。  この基準は、主務大臣が環境庁長官に協議をして定めるということとされておりまして、適正な基準が設定されるように対処をしてまいりたいというふうに思っております。
  311. 藤木洋子

    ○藤木委員 今の御答弁の中で、町村が一つの単位になるように聞こえましたけれども、その町村というのは、事業の種類によっては隣接以外も含むということで理解してよろしゅうございますか。
  312. 田中健次

    田中(健)政府委員 影響のあると思われるところは入るというふうに御理解をいただきたいと思います。
  313. 藤木洋子

    ○藤木委員 また、この法案では、事業者説明会を行う場合、先ほどもちょっと御質問の方があったのですが、私はちょっと違う角度から伺いたいのです。  その責めに帰することができない事由で説明会を開催することができない場合には、当該説明会を開催することを要せずという規定がございます。これは、事業者が一方的に判断した、いわゆる住民の開催妨害を念頭に置いた規定ではないというふうに思っておりますけれども、念のため確認をしておきたいのですが、いかがでしょうか。
  314. 田中健次

    田中(健)政府委員 事業者の責めに帰すことができない事由につきましては、今後総理府令で定めることになりますが、例えば、台風などの天災によりまして予定していた会場が使用不能となった場合などはこれに該当することになると考えます。いずれにいたしましても、総理府令内容については、法成立後に適正に定めることといたしたいと考えております。  なお、説明会を開催することができない場合には、事業者は、要約書の提供など説明会の開催にかわる措置を講じまして、説明会の目的である準備書の周知が適切に図られるように努めることとなっている次第でございます。
  315. 藤木洋子

    ○藤木委員 これは現在の要綱にもございましたか。閣議アセスの要綱にございましたか。
  316. 田中健次

    田中(健)政府委員 ございます。
  317. 藤木洋子

    ○藤木委員 この項目を運用したことはかつてありましたでしょうか。
  318. 田中健次

    田中(健)政府委員 申しわけございませんが、そこまで把握をいたしておりません。
  319. 藤木洋子

    ○藤木委員 私が伺ったところでは、一度もお使いになったことがないということでございました。  この法案は、住民参加の機会をこれまで以上に拡大していますけれども、住民の意見事業者の意思決定に反映される仕組みにはなっておりません。  法案では、事業者は、方法書及び準備書の作成をするに当たりまして、都道府県知事の意見は勘案する、しかし意見を有する者の意見には配慮して検討することと規定されています。また、事業者は、準備書及び評価書環境の保全の見地からの意見を有する者の意見の概要を記載し、都道府県準備書等に意見を述べる際には、意見を有する者の意見に配慮することになっております。それでは、意見を有する者の意見は、事業者の意思決定にどこまで反映することになるのでございましょうか。お答えください。
  320. 田中健次

    田中(健)政府委員 本法案におきましては、スコーピング手続で、住民等が事業者の作成した方法書につきまして意見書を提出し、事業者はこれに配意をして、方法書検討を加えて、準備書事業者の見解を記載するとともに、必要に応じまして所要の修正を行うということになっているわけでございます。また、準備書から評価書に至る過程におきましても同様の仕組みが設けられているところでございます。  このような仕組みを通じまして、環境の保全の見地から述べられました住民等の意見につきましては、事業内容に適切に反映をされることになるものと考えております。  御質問のうちで、事業内容の決定への関与という点につきましては、環境影響評価制度におきます一般意見というのは、事業の賛否についての意見を求めるものではございませんで、有益な環境情報提供していただく、環境保全の見地からの意見の提出を期待をしている、こういうことでございます。
  321. 藤木洋子

    ○藤木委員 先ほど来そういう答弁をほかの委員の方にもしておられるわけです。私は、意思決定にどこまで反映するかというのは、やはりその環境影響評価を修正したり補正したり、そういうことに影響を与えられるかという観点から申し上げているわけです。ですから、意見を有する者の意見は配慮するものであって、免許等を行う者のように環境影響評価を修正したり補正したり、事業の拒否や必要な条件をつけるような、意思決定に意見が反映できる仕組みにはなっていない、これは明らかだと思うのです。意見を有する者の意見事業者の意思決定に反映する仕組みを盛り込むべきだと私は思うのですね。  先ほど、そうすると、その賛否によって事業をするのかしないのかということになるというようなことをおっしゃっていましたけれども、そうではなくて、私は、環境保全という場合には、良好な環境を保全するということと同時に、失われた、破壊された環境を取り戻す、回復をする、そういう意味も含まれると思うのですね。そういったことからいいまして、そこに住んでいる人たちの実感を伴った切実なそういう意思といいますか意見というものは、十分環境影響評価の修正や補正などというところにまで反映をすることが大事ではないかというふうに思うのですが、いかがでございましょうか。
  322. 田中健次

    田中(健)政府委員 本法案におきましては、新 たにスコーピング手続を設けることによりまして、事業計画のより早い段階におきまして住民の意見提出の機会が設けられ、住民意見の提出の機会が増加したところでござまして、住民意見という点におきましては制度が改善をされたところでございます。  また、事業者は、意見書の提出があった場合には、これに配意をして、方法書または準備書検討を加えまして、準備書または評価書事業者の見解を記載するとともに、必要に応じまして所要の修正を行うこととされておりまして、本法案におきまして、環境の保全の見地からの住民意見につきましては、適切に反映されることになると考えておるところでございます。
  323. 藤木洋子

    ○藤木委員 住民参加や情報公開を考えた手続だというのでありましたら、私は、法の目的に住民参加と情報公開の意義づけをしっかり文言として盛り込むべきだと思うのです。それはいかがでしょうか。
  324. 田中健次

    田中(健)政府委員 本法案趣旨、目的は、中央環境審議会答申にもございますとおり、事業者みずからが広範な人々から意見を聴取しつつ環境影響評価を行って、十分な環境情報のもとに適正な環境配慮を行うということでございます。  御指摘の、情報公開やあるいは住民参加といった点につきましては、中央環境審議会答申では、「事業者事業に関する情報提供し、これに対して住民等が環境の保全の見地からの意見を述べ、その意見に対応して事業者環境配慮を行う過程を通じて、事業に係る意思決定に反映させるべき環境情報の形成に住民等が参加するものとして位置づけるべき」、こういうふうにされておりまして、環境情報の形成という文脈において位置づけられているところでございます。  本法案では、答申を踏まえまして本法案を作成したものでございまして、環境情報の形成という文脈の中で、法の定める各手続に御指摘趣旨が含まれているものでございます。この点は、目的規定におきまして、環境影響評価が適切かつ円滑に行われる手続と表現をされておるところでございます。
  325. 藤木洋子

    ○藤木委員 やはり私は、中環審のおっしゃることを非常に忠実にお聞きになっている側面と、それから、あそこまで統一的なアセスをつくれと言われているにもかかわらず特例をお設けになったことと、少しその辺には公正さを欠くような気がしてなりません。  次に、この法案は、準備書及び評価書での調査等対象となる環境を公害防止等に限定せず、準備書等に環境保全対策の検討経過や事業着手後の調査などを記載させることとなっております。  現行閣議アセスの要綱ではそうはなっていないわけですね。調査などの対象となる環境は、いわゆる典型七公害と言われているものと地形、動植物などの自然環境に限定されておりまして、代替案、複数案などの検討経過や事業着手後のフォローアップの記載を求めておりません。そこで、環境負荷を最小限に抑える代替案が市民側から提案をされても検討されることもなげれば、事業着手後に環境の著しい変化が起こっても対応をとらない、これがこれまでの実態でございました。  そこで、代替案の比較検討という場合は、先ほどもお話がございましたけれども、アメリカなどでは、対象事業を実施しないこと、つまり事業をやらないというのも一つの代替案の中に含めて記述をすることになっていますし、アメリカのことだけじゃございません。今国会に提案をされております南極条約の議定書の附属書の環境影響評価規定でも示されているところでございます。当然、この法案でも、対象事業を実施しないことも含む代替案の規定になると思うのですけれども、それでよろしゅうございますか。
  326. 田中健次

    田中(健)政府委員 諸外国では、環境への影響をできる限り回避、低減をするという観点から、複数の案を比較検討する手法が用いられておりまして、これが代替案の検討とされているところでございます。  この場合の代替案と申しますのは、立地の代替のみならず、建造物の構造あるいは配置のあり方、環境保全施設や工事の方法等を含む幅広いものでございます。  中央環境審議会答申では、「複数案を比較検討したり、実行可能なより良い技術が取り入れられているかどうかを検討する手法を、わが国の状況に応じて導入していくことが適当」といたしておりまして、複数案の比較検討を含みます環境保全対策の検討過程を明らかにする枠組みとすることが適当と提言をされました。  本法案では、これを受けまして、準備書環境保全のための措置を講ずることとするに至った検討状況を記載させるというふうにしたわけでございます。  御指摘の、実施をしないという代替案がおっしゃいます諸外国でのゼロ代替案ということを意味するものでございますと、これは、私どもといたしましては、何もしない場合の大気汚染やあるいは水質汚濁のバックグラウンド濃度の推計、あるいは事業による環境改善効果を見るためのものでございます。  そのような意味では、我が国でも実際の場でこういうことが行われているという現状でございます。
  327. 藤木洋子

    ○藤木委員 現状で行われているのであって、ここで言われている代替案の中にはそれが入っているのですか、いないのですか。
  328. 田中健次

    田中(健)政府委員 私どもは、それは代替案ではないというふうに考えております。
  329. 藤木洋子

    ○藤木委員 この法案は、事業着手後の調査などを記載させることになっております。しかし、このフォローアップの措置を規定するだけでは不十分ではないでしょうか。既に、少なくとも事後調査、報告、指導、こういったことを規定した都県のアセス要綱がございまして、これは国の制度として事後の手続の措置を導入することを強く求められていたところでございます。  ですから、事業着手後における事後調査、報告、指導などの事後手続をより明確に盛り込む必要があるのではないかと思うのですが、その点はいかがでございますか。
  330. 田中健次

    田中(健)政府委員 環境影響評価制度は、事業の実施の前に環境影響を把握をいたしまして適正に環境の保全を図るための制度でございまして、法の射程といたしましては事業の実施前でございます。  このため、本法案では、予測の不確実性等の観点から行う事後調査等内容を事前に把握をするという観点から、これを準備書評価書に記載をするということとしたものでございます。  事業者は、評価書に記載をされているところによりまして適切な環境保全上の配慮をして事業を実施するということとなりますが、さらに、免許等を行う主務大臣等が必要と認める場合には、必要な条件を免許の際に付することができるということにもなっております。  ただし、本法の射程は、事業実施前の手続等を定めることにあることから、事後調査報告書の提出といった措置は位置づけていないというところでございます。
  331. 藤木洋子

    ○藤木委員 しかし、先ほど来お話を伺っていますと、地方でつくられている環境アセスの要綱だとか条例だとかに遜色ないというふうにおっしゃるわけですけれども、やはり不十分だと思うんですね。  確かに、環境影響評価というのは事前評価には違いありませんけれども、それをフォローアップにまで及ばせていこうという趣旨を盛り込まれたのであれば、そのフォローアップ自身もやはり有効に働くような担保がないといけないというふうに思うんですが、このぐらいのことはちょっと書き足すわけにはまいりませんか。これは、削るのではなくてちょっとつけ足したら済むことなんですが。
  332. 田中健次

    田中(健)政府委員 先ほどから申し上げておりますように、事前の規定でございまして、私どもとしては原案が適正なものというふうに考えております。
  333. 藤木洋子

    ○藤木委員 どうもお考えは変わらないようでございます。本当にこれでいろんな意見が反映するのかなと、環境庁においてをやと、そういう思いがするのを本当に悲しいと思っております。  それでは、最後に長官にお尋ねをさせていただきたいと思います。  先ほども私申し上げましたけれども環境の保全というのは、今ある環境を良好な環境として守っていくということもありますけれども、しかし、環境影響を与える以上は、どんなに軽微であっても影響を与えることに違いはないわけですね。もう既に影響をずっと与え続けてきたところに私たちは住んでいるわけですから、その破壊をされた環境を回復をさせるということもあわせて取り入れてまいりませんと、本当に環境を保全することにはならないというふうに思うんですね。  そこで、さきに挙げました南極条約の議定書の附属書の例を見るまでもなく、既に道府県の環境アセス要綱などでは、対象事業の累積的、複合的な予測評価、これを実施しているわけです。臨海副都心などの大規模で複合的な事業が各地で行われておりまして、予測と評価をする際に累積的、複合的な項目を盛り込むこと、これが大事だというふうに考えるのですけれども、いかがでございましょうか。
  334. 石井道子

    ○石井国務大臣 このたびの法案に基づきましてアセスメントが実施される場合には、当該事業以外の他の事業による環境影響については一般的に調査等に際してのバックグラウンドとして位置づけられておりまして、評価に反映されることになります。このような評価が適切に行われるためには、バックグラウンドに関して国や地方公共団体による情報提供の充実が必要でありまして、今後、情報基盤の充実に取り組んでまいりたいと思います。  なお、複数の対象事業が相互に関連して行われる場合には、法案の第五条第二項及び第十四条第二項においてアセスメント手続を「併せて」行うことができるとの規定が盛り込まれておりまして、こうした形で累積的また複合的な影響を評価することも考えられることになっております。
  335. 藤木洋子

    ○藤木委員 琵琶湖などというのはアセスメントのない時代にやられました総合開発でして、単品でそれぞれ見ますと軽微な影響だということが言われていたんですけれども、実際にはもう死の湖と化すようなそういう苦い経験を私たちは幾つも持っているわけですから、ここのところも、ぜひ累積的で複合的な項目を盛り込む努力もしていただいて、総合的な、総体として本当に実効のあるアセスの効果が発揮できるように法案を仕上げていきたいものだというふうに思っております。  私たちも今度の前進面を否定しているわけではありませんで、それが本当に実効あるものになって法律として成立するかどうか、ここのところが一番大切だと思っておりますので、残されました質疑の時間を私も力いっぱい奮闘させていただく決意を申し上げて、私の質疑を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  336. 佐藤謙一郎

    ○佐藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十八分散会