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1997-04-16 第140回国会 衆議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月十六日(水曜日)     午前十時二十二分開議 出席委員   委員長 逢沢 一郎君    理事 鈴木 宗男君 理事 福田 康夫君    理事 牧野 隆守君 理事 森山 眞弓君    理事 青木 宏之君 理事 東  祥三君    理事 玄葉光一郎君       安倍 晋三君    石崎  岳君       岸田 文雄君    河野 太郎君       櫻内 義雄君    桜田 義孝君       下地 幹郎君    新藤 義孝君       林  幹雄君    森  英介君       石井 啓一君    坂口  力君       島   聡君    松沢 成文君       丸谷 佳織君    山中 燁子君       井上 一成君    藤田 幸久君       中路 雅弘君    伊藤  茂君       平野 博文君  出席国務大臣         外 務 大 臣 池田 行彦君  出席政府委員         外務大臣官房審         議官      西田 芳弘君         外務省総合外交         政策局長    川島  裕君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    朝海 和夫君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省欧亜局長 浦部 和好君         外務省経済局長 野上 義二君         外務省条約局長 林   暘君  委員外出席者         警察庁警備局外         事課外事調査官 内田 淳一君         防衛施設庁総務         部施設調査官  石井 道夫君         環境庁水質保全         局水質規制課長 畑野  浩君         運輸省海上技術         安全局船員部労         働基準課長   齊藤 孝雄君         海上保安庁警備         救難部航行安全         課長      長江 孝美君         外務委員会調査         室長      野村 忠清君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十六日  辞任         補欠選任   柿澤 弘治君     林  幹雄君   田中 昭一君     桜田 義孝君   原田昇左右君     岸田 文雄君   若松 謙維君     石井 啓一君   古堅 実吉君     中路 雅弘君 同日  辞任         補欠選任   岸田 文雄君     原田昇左右君   桜田 義孝君     田中 昭一君   林  幹雄君     柿澤 弘治君   石井 啓一君     若松 謙維君   中路 雅弘君     古堅 実吉君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  千九百六十三年五月二十二日に地中海漁業一般  理事会の第一回特別会合(同年五月二十一日及  び二十二日にローマ開催)において及び千九  百七十六年七月一日に同理事会の第十二回会合  (同年六月二十八日から七月二日までローマで  開催)において改正された地中海漁業一般理事  会協定締結について承認を求めるの件(条約  第四号)  千九百七十四年の海上における人命の安全のだ  めの国際条約に関する千九百八十八年の議定書  の締結について承認を求めるの件(条約第八号  )(参議院送付)  千九百六十六年の満載喫水線に関する国際条約  の千九百八十八年の議定書締結について承認  を求めるの件(条約第九号)(参議院送付)      ――――◇―――――
  2. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 これより会議を開きます。  千九百六十三年五月二十二日に地中海漁業一般理事会の第一回特別会合(同年五月二十一日及び二十二日にローマ開催)において及び千九百七十六年七月一日に同理事会の第十三回会合(同年六月二十八日から七月二日までローマ開催)において改正された地中海漁業一般理事会協定締結について承認を求めるの件、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約に関する千九百八十八年の議定書締結について承認を求めるの件及び千九百六十六年の満載喫水線に関する国際条約の千九百八十八年の議定書締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。丸谷佳織君。
  3. 丸谷佳織

    丸谷委員 新進党の丸谷佳織と申します。外務委員会での質問は初めてとなりまして、何かと不手際あるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。  地中海漁業理事会協定締結承認におきましては、国際的な漁業資源管理を通じて日本漁業の安定そして発展につながるものとし、賛成の立場から質問をさせていただきます。  本協定は、昭和三十八年、一九六三年及び昭和五十一年、一九七六年の地中海漁業一般理事会において改正されていますが、日本政府は以前からこの理事会にオブザーバーとして参加していたと伺っております。協定が改正されましてからかなりの年月を経まして今我が国加盟するに至る理由そして加盟することでどのような利点があるのか、お伺いします。
  4. 野上義二

    野上政府委員 ただいま先生指摘のように、本件協定は六三年に改正されたものでございますけれども、御承知のように、従来我が国といたしましては、地中海地域におけるマグロ類資源保存に関しましては、大西洋まぐろ類保存国際委員会ICCAT通称アイキャットと我々呼んでおりますけれども、ICCATを通じてその資源保存協力してまいったわけでございます。しかるところ、地中海理事会の方は、従来マグロ類に関しては何らの保存措置というものをとっていなかったわけでございますけれども、一九九五年の五月に、マグロ数に関しても保存協定をつくる、保存勧告をするという保存措置を採択したわけでございます。そういった観点から、我が国といたしましても、やはり地中海漁業一般理事会に参画して、我が国にとっての主要な関心であるマグロ類資源保存等について地中海漁業一般理事会においても協力を図っていくということを目的として、今般この協定締結について国会の御承認を求めているということでございます。  その利点でございますけれども、先ほど申し上げましたように、我が方といたしましては、従来ICCATを通じてやっておりました。ICCAT加盟国が二十四カ国、他方この地中海漁業一般理事会の方は二十一カ国の加盟ICCAT地中海の方に入っているのは四カ国でございます。そういった点も考えまして、やはり地中海の 方でマグロについてICCATのとっておりますような保存措置と同様の保存措置を勧告しておりますので、我が国としても地中海一般理事会の方に入って、こういった形での、ICCATで従来行っているような協力をさらにこちらの側でも行っていく、それをもってしてマグロ類資源保存を図る、それから我が国漁業利益の増進といった点を図っていくということを考えております。こういった点が利点ということでございます。
  5. 丸谷佳織

    丸谷委員 今お話がありましたICCAT大西洋まぐろ類保存国際委員会を初めとしまして、やはりマグロ我が国食文化におきまして長い間大変重要な食料資源となってきております。また主要国際機関日本加盟しています漁業に関します主要国際機関には、ICCATのほかに、インド洋まぐろ類委員会全米熱帯まぐろ類委員会みなみまぐろ保存委員会などがあるのですけれども、今回五番目の協定になるわけなんですが、今回の協定既存締約国平成八年の十月現在で二十一カ国に上っていますが、本協定対象水域であります地中海及び黒海沿岸国で未加盟国は今何カ国あるのでしょうか。  この協定目的であります、地中海海洋生物資源保存管理及び最適利用の促進を行うという観点からしましても、本来であれば積極的に参加すべきというふうに思われますが、未加盟国協定参加しない何らかの問題があるのかどうか、お伺いします。
  6. 野上義二

    野上政府委員 未加盟国沿岸国でこの協定対象になっております地中海黒海をも含みますけれども、この沿岸国で未加盟国は、非締約国は、スロベニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、グルジアウクライナロシアの五カ国でございます。  非加盟国のこの地域における漁獲高というのは、全体のこの地域の水産物の漁獲高の二・六%程度ということでございます。もちろんこの二・六%の中には日本漁獲高も入っておりますので、沿岸国によるものはもうちょっと小さくなると思いますけれども、そういった意味で、沿岸国で非加盟国である各国がこの地域で行っている漁獲量というのは極めて小さいものであって、そういった観点からしますと、非加盟国の問題というのは必ずしも大きな問題ではないかと思っております。
  7. 丸谷佳織

    丸谷委員 今非加盟国が五カ国ありまして、沿岸国に未加盟国の五カ国があることで、漁業実績は低いということから考えましても不都合な点は生じないというふうに受け取ったのですけれども、積極的に参加するべきだと思われますか、この五カ国が。教えてください。
  8. 野上義二

    野上政府委員 御承知のように、この地域におきます我が国関心マグロでございますけれども、マグロにつきましては、御承知のように、高度回遊性といいますか非常に広い地域漁獲が行われますし、それからこの地域マグロ資源については極めて高度利用がなされておりますので、そういった意味から、非加盟国漁獲高は小さいわけですけれども、我が国関心であるマグロ資源保存という観点から、我が国としてもこの地中海漁業一般理事会参加して、こういった非加盟国に対してもやはり資源保存を求めるように地中海理事会の場で活動していくことが、日本利益を確保することになると考えております。
  9. 丸谷佳織

    丸谷委員 実際には黒海、本協定対象水域に含まれています黒海海岸線の約三分の一が本協定の非加盟国であります、今挙げられましたロシア、そしてウクライナグルジアに占められていることを考え合わせますと、本協定の実効のある運用の面で妨げになっているのではないかという危惧がされます。  協定の第三条の「任務」の項によりますと、理事会は、海洋生物資源開発保存、そして合理的な管理及び最適利用を促進することを目的とし、この目的のために、海洋生物資源保存及び合理的な管理のための措置を作成し及び勧告すること等の任務及び責任を有するというふうにあるのですが、今後協定参加する方向の働きかけというのは、今おっしゃったようにされていくおつもりだということで確認させていただいてよろしいですか。
  10. 野上義二

    野上政府委員 今先生指摘のように、黒海もこの対象に含まれているわけですけれども、我が国は、黒海ではマグロ漁獲は行っておりません。しかし、先ほど申し上げましたように、マグロ高度回遊性の魚であるということ、それから黒海対象になっておりますのは、FAOの統計がそもそも地中海黒海を一括して統計をとっているということから、統計一貫性からこの理事会においても黒海対象にしているという事情がございます。  そういった点はございますけれども、先ほど申し上げましたように、やはりマグロ類資源保存という非常に重要な問題でございますので、今後、地中海漁業一般理事会に参画して、こういった国にも参画ないしはその資源保存を求めていくということをやっていくというつもりでございます。
  11. 丸谷佳織

    丸谷委員 では、本協定対象水域黒海での漁獲量は少ないというふうに聞いていますが、その漁獲実績というのは、改めてお伺いしたいのですけれども、正確な数字というのは出てきますでしょうか。
  12. 野上義二

    野上政府委員 我が国につきましては、実績はございません。その他の国による漁獲量は、およそ年間三十万トン程度であると思います。
  13. 丸谷佳織

    丸谷委員 本協定は、現在二十一カ国が締約国になっておりまして、中には昨年の一月、エーゲ海に浮かぶ岩礁の所有権をめぐって軍事衝突の一歩手前まで行きましたトルコとギリシャの両国も含まれていますし、またEU主要国でありますフランス、スペイン、イタリアも加盟国になっております。  経済的に相互の利益を守りつつ、また環境問題、そして各国の政治的な背景も踏まえまして、それぞれの国が発展し、ひいては豊かで平和な国際社会の創造を目的とするという一面もこの協定にはあると思いますが、現在、EU諸国は、通貨統合、そしてNATO東方への拡大という大きな政治問題を抱えております。二期目のクリントン大統領は、NATO東方拡大米中関係と並びまして外交政策の主柱に据えて、七月に行われますNATO首脳会議で中・東欧加盟対象国を選び、一九九九年までに拡大を実現する方針を明確にしている中、このNATO加盟が有力視されています国は、ポーランド、チェコ、そしてハンガリー、また加盟希望国におきましては、スロバキア、スロベニア、ルーマニア、そしてアルバニア、マケドニア、エストニア、ラトビア、リトアニアと多数にわたるに至りまして、ロシアは、NATO東方拡大脅威を減らし、ヨーロッパ安全保障を担う大国としての立場を築いていくことに、今必死と言っても過言ではないというふうに思います。  元米国務省政策企画室長のピーター・ロトマン氏は、報道によりますと、NATO加盟とは、つまるところそれによって米軍による防衛保障を得るということ、軍事的にも欧州駐留米軍兵力冷戦時の三分の二になり、西欧各国国防費も削減されている、NATOは今やボスニア和平の維持などに専念しており、ロシア軍事的脅威でないことは彼ら自身ロシア自身がよく知っているというふうに話しておりますが、ソ連の崩壊後、空白になった東欧諸国安全保障ヨーロッパ安全保障体制とどう結びつけていくか、大変重要な課題だと思います。  チャーチルは一九四七年に、世界安全保障のためにヨーロッパはいかなる国も排除しない統一体になるべきだという発言をしておりますが、池田外相NATO東方拡大をどうとらえていらっしゃるか、またロシアNATO関係がどのようになることが望ましいとお考えか、お聞かせください。
  14. 池田行彦

    池田国務大臣 委員指摘のとおり、ことしの 七月のNATO首脳会議におきまして新規加盟国について決定をし、九九年からというふうになっておるわけでございますが、このNATOというのは、冷戦終えん後の国際的枠組み、とりわけヨーロッパ地域における安定を図る上で非常に大きな意義を持っておると思います。それは委員も御指摘になりました、経済面政治面でのEUの果たす役割と並んで、安全保障面からのアプローチとして大切な役割を果たすものと認識している次第でございます。  そして、もとより、東・中欧につきまして、今どういうふうな位置づけになるのかということが未確定の状態がずっと続いてきたわけでございますが、そこにいわゆるNATO東方拡大ということで、ある程度の新しい秩序ができるということでございまして、そのことがヨーロッパの安定に資することを我々としても期待しております。  ただ、一方におきまして、ロシアがこの拡大についてある種の心配といいましょうか、そういうことをしているというのは御承知のとおりでございますし、ロシア立場からすればそれも理解できないことではございません。しかしながら、ロシア自身も、NATO拡大のあり方によっては、これが決して自分に、自国に対する何らかの好ましくない影響を与えるものとはならないで済むという認識を持っていると考えます。  そういったことで、これまでNATOとの間でいろいろ話し合いも行われましたし、先般のヘルシンキにおけるエリツィン大統領クリントン大統領との間の話し合いで、一つの大まかな道筋といいましょうか、そういうものが見えてきたような気がいたします。  そういったことで、拡大後のNATOロシアとの間でも、そういった協調といいましょうか、協力までいかなくても協調関係が保たれて、全体としてヨーロッパが安定した姿になるということは、冷戦後の国際的な枠組み全体が安定するという観点からも、評価し得るものと考える次第でございます。
  15. 丸谷佳織

    丸谷委員 今お話が出ました、三月二十一日にヘルシンキで行われました米ロ首脳会談で、ロシアNATO新規加盟国核兵器を配備しない、そしてNATO部隊を配置しない、軍事施設を新設しないと要求しまして、アメリカそしてロシア東方拡大への認識の対立は認めつつ、NATOロシア協力関係を定める文書の制定で合意しているのですが、このNATO新規加盟国核兵器を配備しないという決定は、唯一被爆国であります我が国日本におきましても大変歓迎できるものだというふうに私は認識しております。  我が国核軍縮を進めようとする立場、そして国連の常任理事国になろうとする外交方針をより世界に明確にするために、ロシア要求を米国が原則として受け入れたという状況を踏まえた上で、非核兵器国には核兵器を配備しない新機軸を打ち出すことが考えられますが、外相見解をお聞かせください。
  16. 池田行彦

    池田国務大臣 新規加盟国核兵器を配備しないという方針は確かに先般のヘルシンキ会談で確認されましたけれども、実は、その前に、昨年十二月のNATO外相理事会においてそういった方針が打ち出されておったというふうに承知しております。これを新機軸と位置づけるかどうかでございますけれども、ともかくそういった方針は明らかにされております。  これは結局、新規加盟国に対しましてもNATOとしての防衛義務は果たさなくてはいけないわけでございますが、それを果たしていく上において核兵器をそこに配備する必要性はないという、いわば軍事的な観点からの判断一つあったのだと思います。それと、もう一つは、やはりロシア立場なりロシアの懸念に対する配慮という側面もあったと思います。そういうことでございまして、いずれにいたしましても軍事的な必要性を中心とした観点からの判断というふうに我々は認識しております。  それで、それを我が国唯一被爆国としての立場からどういうふうに見るかという点でございますが、現時点におきましては、やはり核戦力通常戦力とを組み合わせたものが、日本も含めてでございますが、いろいろ戦争を防止するための枠組みの根底にはあるのだと思います。NATOもその基本は変わっていないんだと思います。  だけれども、そういった前提の中でも、いろいろ軍事的な必要性その他の観点からいって、新規加盟国には核は配備しないというふうな方針が打ち出されていること、あるいはそのほかの面でも核軍縮の努力は行われているということはこれは当然のこととして、究極的には核兵器のない世界を目指して努力していくという我が国立場からも、歓迎すべきことであるとは考えております。
  17. 丸谷佳織

    丸谷委員 同じく米ロ首脳会談では、六月にデンバーで行われますサミットに関する話し合いもされました。これにはロシア参加し、結局八カ国サミットというふうな決定がなされていますが、この首脳会談経済問題討議に同席していますサマーズ米財務副長官は、報道によりますと、ロシアサミットの全日程に参加し、記者会見や声明も八カ国でする、ただし経済問題のうち核となる幾つかの部分についてはこれまでどおり七カ国で話し合うというふうに述べております。  一方、三月二十三日に、橋本総理は、事前にクリントン大統領に対して、開発国際金融国際経済についてはロシアを加えてはならないとの考えを伝えたことを明らかにした、また、日ロ間には北方領土の問題があるということをエリツィン大統領に伝えてくれるよう要請したと述べているという報道が載っています。  そしてまた、四月十一日に、新聞は十二日なんですが、ロシアシェルパを務めていますエフゲニー・ヤーシン無任所相が述べたところによりますと、ロシア首脳によるすべての経済討議への参加を希望しているとし、エリツィン大統領経済討議への全面参加要求日本政府と対立していることを明らかにしたという報道がなされています。  この三つの報道を読みますと、クリントン大統領、そして橋本総理との間でロシアサミット参加形態について若干の相違があるように思われるのですが、日米見解相違が実際にあるのかどうか、またロシアサミット参加形態は具体的にどのような形になると思われるか、お伺いします。
  18. 池田行彦

    池田国務大臣 御承知のとおり、ロシアはこれまでもいわゆるG7先進国サミットに一定の限定はございますけれども、参加してまいりました。そういった意味で、G7とあわせてP8というような言われ方もしておったわけでございます。また、その参加形態、つまりロシア参加するテーマなりあるいは参加する場の数あるいは時間数、そういったこともだんだんと広がってきておったわけでございます。しかし、これまでは、原則としてこれはG7であって、ロシアが加わる場合はP8とするというふうな形になっておったわけでございます。  今度のデンバーで開かれますサミットでどうなりますか、最終的な形はまだこれからシェルパの間で調整しなくてはいけないことになっておりますけれども、基本的な流れとしては、委員指摘になりました先般のヘルシンキにおける米ロ首脳会談で話し合われた、その前には我が国橋本総理も含めましてG7各国首脳にもいろいろ御相談といいましょうか、打ち合わせもあったわけでございます。そこで、どういう形になるか、まだ確定はしておりませんけれども、これからは、要するに一番最初から最後までロシアデンバーにいる、そして、おっしゃいましたように最後記者会見にも八カ国の首脳が同じ立場で出ていく、こういうことは確保されております。  ただ、その中で、通貨であるとかあるいは金融あるいは開発といったような問題につきましては、ロシアの現状からいたしまして、やはりまだほかのG7の国々と一緒に協議することはどうな のかな。それまでの準備、体制も必ずしも備わっていないということはロシア自身も十分認識しておるところでございまして、そういった点につきましては従来のG7で話をする、こういうことは基本的にロシアも含めて今の段階でも了解されているのだと思います。  言ってみれば、原則と例外の転倒といいましょうか、形の上では、これまではG7原則でそれにロシアが加わってP8になるということだったのですけれども、しかし実態が、だんだんロシア参加する部分が多くなってきた。そうなれば、今度はむしろ原則の方を八カ国にして、ただ、通貨開発等経済の問題についてはロシア参加せずに七カ国でやる、そういう形になっていくんだ、こう思います。  そういった意味で、従来のG7の国の間では、日米はもとよりのこと他の国も含めまして、基本的な認識相違は、そごはございませんし、それから、ロシアとの間でも基本的な認識は一致していると思います。報道はいろいろございますけれども、そういうことはございません。  それから、北方領土との関係に言及されましたし、またそういったことも若干報道されている面もあるわけでございますけれども、我が国としては北方領土に関する立場はきちんとしておりますし、御承知のとおり東京宣言という基礎の上に立ちまして領土問題に取り組むということになっておるわけでございまして、このことと、サミットの枠内でどうするかということは、一応これは分けて考えておるわけでございますので、サミットの場で北方領土の問題について、何か関連文書にということは考えません。東京宣言という九三年に出された新しい基礎があるわけでございますから、その上に立ってロシアとの間でいろいろ解決を目指していく、こういうことでございます。  それで、橋本総理からクリントン大統領北方領土の問題について話があったという報道もございましたけれども、仮にそういうことがあったとしましても、これは、そこのところがサミットとリンクしているわけじゃなくて、我が国立場はきちんとはっきりいたしまして、いろいろな場で、米ソが話し合う場合には機会があればその日本立場を米国からも言ってもらうというか、米国も日本立場はよくわかっているよというようなことをロシア側に伝えてもらうと、そういうふうな趣旨あるいはラインに乗ったものだというふうに御理解賜ればと思います。
  19. 丸谷佳織

    丸谷委員 私も北海道出身なんですけれども、北方領土の問題というのは本当に北海道だけではなく、もちろん日本の問題としてまたこれからも考えていかなければならないと思いますし、総理が近く訪米されるということもありまして、今、デンバーサミットに関する件に関しては重要な課題になってくると思うんですけれども、今回のこのデンバーサミットロシアを含んで本当に開催されるという大変意義のあるサミットになるに加えまして、北方領土に関する件を関連文書に盛り込む意義というか、大変大きくなってくるというふうに私は思います。今まで、九一年にはロンドン・サミット議長声明の中に含まれておりますし、九二年のミュンヘン・サミット政治宣言の中にも入って言及されております、北方領土の件に関しましては。それ以後は言及されていないんです。  それで、今回、デンバーサミット関連文書北方領土のことを盛り込むことの意義というのは大変大きいものがあるというふうに思うのですが、もう一度最後に、その件に関しまして外相見解をお伺いしたいと思います。
  20. 池田行彦

    池田国務大臣 確かにロンドン・サミットあるいはミュンヘン・サミットでそういったことで言及されておりますけれども、たしか法と正義に基づいて領土問題を解決し、日ロ関係を完全に正常化すべしということでございますね。それは当時のG7各国の共通の認識でございまして、それでその認識は今日も有効である、これは変わりないわけでございます。  そして、先ほどもちょっと申しましたけれども、その後、九三年に至りましていわゆる東京宣言というのが日ロ間で出されまして、その中で、ロシアの方も領土の問題があるんだということをきちんと認め、その上に立って話し合いをしてこれを解決していこうということになっております。それで、その基礎の上に今この解決を図っていこう、そしてその領土問題を解決して完全に正常な関係を結ぼうということで日ロの間で話し合いを進めておるわけでございます。そういうことで私どもは進めていくべきものと、こう考えておる次第でございまして、先ほど、そういった新しいといいましょうか現在のその状況というものを考えれば、デンバーサミットで新たに文書で、サミット枠組みの中で新たに文書で宣言するということは必ずしも必要とは言えないのではないのかなと。むしろ、実態の方をどう進めていくかが大切なんだと思います。  先ほど申しましたように、サミット参加国としてのロンドン、ミュンヘンで示された認識というものは現在も有効であるということは変わらないわけでございます。
  21. 丸谷佳織

    丸谷委員 ありがとうございました。  以上で質問を終わります。
  22. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 次に、坂口力君。
  23. 坂口力

    ○坂口委員 それでは、引き続いて質問をさせていただきたいと思います。  私に課せられました条約は、海上人命安全条約議定書と満載喫水船条約議定書の二つでございまして、党内で割り振りをいたしましたら、大変難しいのが私に当たりまして、正直なところは、いささか質問させていただくのに困っておりますが、この二つにつきまして同時に質問をさせていただきたいと存じます。  さて、この内容を拝見させていただきますと、船舶を定期的に検査をし、そしてそれに証書を発行することを規定しておりますが、検査の間隔でありますとか証書の有効期間が、他の関係条約に定める検査の間隔やあるいはまたこの有効期間と調和していないということで、これを調和させるという内容のものでございます。このことは、恐らく手続の簡便あるいはまた負担の軽減等々からこういう条約の改正になったものというふうに思っておりますが、この内容をずっとこう拝見をしておりまして、一つ、なぜかなとちょっとわかりにくいところがございました。  それは、この満載喫水船の方の附属書の1の「第一章 総則」がございますが、その「第一規則」のところに、今までは「船体の強さ」ということになっておりましたのが、今回のこの改正では「船舶の強さ」ということにこう言いかえられております。英語の方を見直してみましたら、こちらの方もやはりストレングス・オブこれはハルですかね、フルじゃないね、ハルだと思いますが、という文字からストレングス・オブ・シップというふうに変わっておりまして、これはどんな意味があるのか。大きな意味があるのか、あるいはそれほど意味のないことなのかということもちょっとわかりにくかったものですから、しかし変わったということは何かの意味があるんだろう、その辺からひとつお聞きをしたいと思います。
  24. 朝海和夫

    ○朝海政府委員 船の安全性に関係しましては、いわゆる船体自身の強さの問題のほかに、ブルワークあるいは船楼、そういったハル以外のところの設計強度、健全性も必要であるということでございまして、そこでハル、船体だけに限らず、より広い意味でのそういった船楼なども含む船舶の構造上の強さを十分にしていこうという意味でございます。
  25. 坂口力

    ○坂口委員 ちょっとよくわかりませんでしたが。ハル以外の構造といいますとどんなことになりますのかよくわかりませんが……。  私こう拝見した感じでは、「船体」というのと「船舶」という場合、「船体の強さ」といいますとこれはストラクチャー、構造上のものだけを何か指すような気がいたしますし、「船舶の強さ」ということになりますと、構造プラス機能面も含めて、ファンクショナルなものも含めて強さという ことを意味するように感じましたので、「船体」という言葉が「船舶」という言葉に置きかえられたのはそういう意味ではないのかなと。私の想像でございますが、そんなふうに感じておりました。今お聞きしましたのとは若干ちょっと違いましたので、それはそれで結構でございます。皆さんの方が正しいのでしょう。そのように受け取らせていただきます。  それから、船の人命にかかわります問題につきまして、海上保安庁の方からの資料というふうに思いますが、「海難の発生と救助状況」というパンフレットをちょうだいいたしました。これを拝見いたしますと、私も驚いたのですが、平成七年の要救助船舶といいますのは、これは日本国内の話でございますが、千七百五十四そうでございます。ということになりますと、三百六十五日で割りますと一日当たり約四そうになりますかそのぐらい要救助船舶があるということは、そんなにもあるのかなとちょっと驚いて見せていただいたわけでございます。これに伴います遭難者は八千五百六十五名で、そのうち死亡・行方不明者は百九十六人という数字になっております。  問題は、この原因別でございますが、原因別のところを見ますと、見張りの不十分でありますとか操船不適切、船位不確認、こういうふうな運航の過誤、それから機関取り扱い不良、火気・可燃物の取り扱い不注意、積載不良、こうしたものを加えました人為的要因というのが全体の七二%を占めているということでございまして、構造上の問題あるいは設備の問題といいますよりも人為的な要因というのが七二%を占めているということで、これまた非常に驚いたわけでございます。  そこで、今回の人命の安全のための国際条約、あるいは満載喫水線に関する国際条約の中身は、こうした問題ではなくて、定期的な検査あるいはまた構造に対する検査、これはもう最初の検査、それから定期的なものも含めてでしょうけれども、そうしたことが中心でございますけれども、実際日本の船で起こっております人命にかかわりますことは、そうしたこととはいささか違ったところで起こっているということがわかったわけでございます。  それで、これは日本の例でございますが、これは日本に特有なことなのか、それとも諸外国におきましてもこういった同じようなことが起こっているのかということを知りたかったわけでございますが、私の手元にはそうしたデータはございません。きのうお願いを申し上げましたが、もし外国の例で、例えばアメリカでありますとかあるいはヨーロッパのどの国でも結構でございますが、そうした特定の国だけでも結構でございます、恐らく世界的なこうした統計というのは多分ないのだろうというふうに思いますので、比較をするような風がございましたら、どういうふうな状態になっているのかということをお知らせいただきたいと思います。
  26. 朝海和夫

    ○朝海政府委員 おっしゃるとおり、海難事故に当たりまして人的な要因による場合が相当あるのではないかと国際的にも言われておりまして、そのための対策もそれなりにとられているところでございます。ただ、統計的なこととしましては、国際的にございます統計は、海難の原因別に浸水、火災・爆発といった統計はございますけれども、火災にせよ浸水にせよ、それが人的な要因に基づくものかどうか、そこまでの統計は実はございません。しかし、国別の点につきましては、そういう統計があるのかどうか調べてみたいと考えております。
  27. 坂口力

    ○坂口委員 では、ぜひそれはお願いをしたいと思います。わかりましたらまたお教えをいただきたいと思います。  この人為的ミスということを考えました場合に思い浮かべますのは、適正な人員の配置でありますとか、あるいはまた人材教育の問題です。人はきちっといたけれども、それ相応の教育を受けた人がいなかったというようなこともあるでしょうし、あるいはまた適正配置、あるいは人材はいたのだけれども過重労働等があって、そして凡ミスが出たということもあるのだろうと思うのです。これは労働基準の問題だろうというふうに思いますが、考えられることとしてはそうしたことがあるのではないかという気がいたします。  外国の問題は別にいたしまして、日本の場合にこれだけのことが起こっているわけでありますので、運輸省の方にお聞きをした方がいいのか、あるいは海上保安庁さんにお聞きをした方がいいのかちょっとわかりませんが、あるいは双方かもわかりません。こういうことが起こっている、これだけ日本の中で人為的ミスが起こっているその背景、なぜこうなのかということについて、わかる資料がございましたらひとつ教えていただきたいと思います。
  28. 齊藤孝雄

    ○齊藤説明員 お答え申し上げます。  先生の御指摘のとおり、船舶の事故に関しましては人的な要因によるものが非常に多くて、約七割ぐらいがそうだと言われております。これにつきましてはいろいろ原因がございますけれども、一つは、今おっしゃられましたように、見張りでございますとか、その辺につきましてはやはりまず必要な人員の確保というのが第一でございます。必要な人員の確保ができませんと、見張りも十分にできませんし、過重労働になって、したがって疲労といったことが安全に影響してくるというようなこともございます。  したがいまして、これにつきましては、船の大きさでございますとか航行区域等に応じまして必要な人員の乗り組みを義務づけておりまして、それについて船員労務官の監査等によりその実行を確保しておるところでございます。  また、乗り組むべき船舶に応じてそれぞれ船員が持つべき知識、技能というものも違っておりまして、その必要な知識、技能を持った船員が乗り組んでいませんと、どうしても操船とか機関のことに関しまして人為的なミスが起こりやすいわけでございます。そこら辺につきましても、それぞれ船舶の航行区域等に応じまして必要な知識、技能を規定して、国家試験を行って、それを担保しておるということでございます。
  29. 坂口力

    ○坂口委員 それはそのとおりなのだろうというふうに思いますが、実際問題として一年間に事故を起こしている千七百そうからの船があるわけであります。人も八千人からその中に含まれている。その原因はもう既に解明されて、先ほど私が読み上げましたように、さまざまな人為的要因による原因がある、これもわかっているわけです。それに対するいろいろの指導はしておみえになるのでしょうけれども、そういうことが起こっている。  事故を起こした船のその原因はそういうことなんですけれども、なぜそういうことが起こってきたかということについて、もう一歩その先に行かないとその原因はなかなか減っていかないわけでありますので、そこをどのように、もう一歩その先を見ておみえになるかということを私はお聞きしたかったわけであります。これは海上保安庁の方でそこは取り締まりをきちっとしておみえになって、ちゃんとしておみえになるのであれば、海上保安庁の方からお聞きをしたいと思います。
  30. 長江孝美

    ○長江説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生から御指摘ございましたように、海難事故の約七割が人為的な要因によるものだということでございますので、私ども海上保安庁といたしましては、この事故を極力減少させるためにさまざまな手を打っております。  まず、海事関係者の皆様に海難の大変さ、こういったものをよく十分御理解いただくために、海難防止思想の普及徹底ということで、海難防止講習会を全国であらゆる機会を通じまして実施いたしております。  また、当然のことでございますが、海上における衝突防止、このためのルールでございます海上衝突予防法、このほか関係海上交通法令の遵守につきまして関係の皆様方に御指導を申し上げているところでございます。  さらに、海上保安庁自身といたしましても、海上交通センター等の航行管制機関がございますの で、ここで所要の航行管制を実施いたしますとともに、各船舶に対しまして情報提供を非常にきめ細かく行っておりまして、航行安全の確保、それから海難の防止ということに全力を挙げてまいっていきたい、こういうふうに考えております。
  31. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。  ただ、私いただいた資料は平成七年度だけの資料しかないわけですが、もう少し数年単位で見ました場合に、この事故の数は減ってきているのでしょうか。これはどうなのでしょうか。
  32. 長江孝美

    ○長江説明員 大変御心配いただいたわけでございますが、過去五年ほどをとってみますと、いろいろな気象条件の悪化等ございますが、ほぼ横ばいで、抑制できておる、こういうふうに思っております。
  33. 坂口力

    ○坂口委員 ほぼ横ばいということは、いろいろと指導をしておるけれどもその効果が出てきていないということなのでしょうか。それとも、船の数だとか乗船する人がふえているから、それは数がふえているから、横ばいだけれども、よくなってきているということなのでしょうか。そこはどうなのですか。横ばいだといって威張っておれない、横ばいはいけないので、だんだん少なくなっていってほしいわけですが、いろいろと指導をしてもらっていることが適していなければ、それは変えていただかなければいけないし、新しい指導もしていただかなければならないし、そこはどうなのですか。
  34. 長江孝美

    ○長江説明員 事故の多い要因といたしまして、漁船とプレジャーボートというのは大変数の上から多くなっておりますが、漁船の皆様の事故につきましては趨勢的に着実に減少をいたしております。  ただ、プレジャーボートは、御案内のように、昨今皆様方楽しまれる方が多くなっておりまして、プレジャーボートの事故が、いろいろ指導はいたしておりますが、やや漸増傾向にある、こういうことでございまして、トータルでは大体横ばい、こういうことでございます。
  35. 坂口力

    ○坂口委員 このほかに、いわゆる船を運航する人たち、働く人たちではなくて、いわゆる乗船者の問題もあるわけでございますが、乗船者の問題も恐らく条約等ではいろいろと議論をされてきているのだろうというふうに思います。  時間がなくなってまいりました。今申し上げましたようないろいろさまざまな人為的な要因も含めまして、日本だけでなくて諸外国におきましてもこうしたことが多いということになれば、こうしたことをどう減らしていくか。相互協力にしてやっていかなければならない問題もあると思いますし、それぞれの国の近くを船が運航いたしますときにはそれぞれの国が救助をしなければならない問題もあるのだろうというふうに思います。  そうしたものを含めて、今後どういうふうな条約をまた改正していくという方向に持っていくのか、私、その辺つまびらかにわかりませんけれども、現在、外務省の方でさらにそうしたことが諸外国との間で話し合われているのかどうか、あるいはまた、現在はないけれどもこれからそうしたことをどのように話し合いの場にのせていこうとしているのか、そんなことも含めまして、御意見をひとつ聞きたいと思います。
  36. 朝海和夫

    ○朝海政府委員 人的な要因による事故への対応でございますけれども、国際的な場としては国際海事機関、IMOでもいろいろ取り組みがなされておるわけでございまして、現在具体化しておりますのは、先ほどちょっと触れたことでございますけれども、船員の、乗組員の各種機器の操作、取り扱いなどに精通しているかどうかといった点を、いわゆるポートステートコントロール、寄港国による外国船舶の監督という手法でもって措置していこうということが既に導入されております。  このほかに、別途、安全を確実なものにするために、船と陸上、あるいは船と船会社、乗組員相互の関係といったようなことも含めまして、安全体制の組織としての充実を図る、それによって総合的な安全管理を高めるということを目的とする条約の改正も試みられているところでございます。
  37. 坂口力

    ○坂口委員 要救助船舶の原因別の中で、材質でありますとか構造上の欠陥というのは七%ということになっておりますので、全体としては比較的少ないわけですが、これもゼロではございませんので、さらにひとつこの辺につきましても、御注意をいただくようにお願い申し上げたいと思います。  さて、せっかく質問に立たせていただきましたので、大臣にリマのことにつきまして一言だけお聞きをさせていただきたいと思っております、あと十分ほどしか時間は残っておりませんが。  リマの人質事件は大変長期戦になりまして、外務省の皆さん方も大変お疲れだろうというふうに思いますし、大変な御努力をしていただいておりますことに心から敬意を表したいと存じます。  我々は、時々外務省からいただきますパンフレットや、あるいはまた新聞紙上で拝見をする以外に現状について知る手だてはないわけでございますが、一つ一番心配をいたしておりますのは人質の健康状態でございます。赤十字の先生なんかが行っていただいて、かなり綿密に診察等もしていただいているようでございますが、長期戦になってまいりましたので、精神的にはかなりそれはストレスになっているのだろう、それは想像にかたくないわけでございますが、何か全体としては落ちついた状態というようなことが新聞紙上では報道されております。  これはそのようにとらせていただいていいのか、あるいはもう少し詳細に見ればこういうこともあるのだというようなことがあるのか、その辺、お話をしていただける範囲内で結構でございますが、お話を伺いたいと思います。
  38. 池田行彦

    池田国務大臣 本件につきましては、大変御心配をおかけしております。もう四カ月を超えまして、まだ大勢の方が人質の状態になっておられるわけでございます。そういった中で、委員御心配いただきました、人質になっておられる方々の健康状態につきましては、おかげさまで国際赤十字の方が、常時と申しましょうか、ずっと様子をチェックし、把握していただいております。そしてまた、日本人の医師の方もそのメンバーとして入るということができるようになっているわけでございますが、そういったことを通じて、当方の得ている情報を総合して判断いたします限り、そのようなチェックに基づきまして、もし必要な場合は適切な手当てと申しましょうかそういうものも行われているということで、現在、健康面で特段問題となるような事例はない、こういうふうに承知しております。  赤十字の方では、人質の個別の方についてもいろいろ適切に対応しておられるようでございます。全体として特段問題はないと申しましたけれども、それはやはり基本的に、もともとある程度の持病と申しましょうか、そういったものをお持ちの方もございますが、そういった方には適切な、これまでずっとお使いになっていた薬が必要であるとか、そういうこともあるわけでございますが、そういうところの措置もちゃんとされているということでございます。  しかしながら、いずれにいたしましても、これだけ長くなりました。心理的にはもとよりでございますが、やはり身体的な健康の面でも随分と、それは人質になっている方々はもとよりでございますが、御家族の方も御心配なさっていると思います。そういった意味では、何よりも、根本的な解決につながります早期の全員の御無事での解放というものに向かって、さらなる努力を傾注してまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  39. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。  もう一つ、私たちにわかりにくいのは、このMRTAの犯人たちが、彼らは彼らだけで行動をしているのか、それとも外部の、彼らの仲間なのかあるいは同じようなグループなのか、そうした外部との連携のもとに彼らが行動しているのかとい うことがわかりにくいわけでございます。外部のそうしたグループとの連携のもとに彼らが動いているということになれば、こうした犯罪が第二、第三というふうに、一つの事件を解決するためにまた次のことをやるというようなことも起こらないとは限らないわけでございますし、大変心配な面もあるわけでございます。  これはなかなか説明していただきにくい面もあると思いますけれども、お話しをいただける範囲内で結構でございますが、お話を伺いたいと思います。
  40. 池田行彦

    池田国務大臣 本件自体、なかなかわかりにくい面もある。それからまた、私ども、承知していることにつきましてもお話し申し上げることを差し控えざるを得ないものも少なくないという点は、御理解をちょうだいしたいと思います。それに、さらに各紙報道、虚実取りまぜまして、あるいは場合によっては推測や憶測も取りまぜていろいろなさいますので、いろいろ心配がさらに増幅するというようなこともあり得るわけでございますけれども、今お尋ねの件につきましては、私どもは少なくとむこういうふうに考えております。  今、事件の解決に向かって責任を持って当たっておるペルー政府当局は、このMRTAの行動というのは、公邸内におりますセルバという名前の、これがリーダーとして、その指導下でこのテロの事件、それからその一連の活動、行動は行われているのだ、そういうふうに認識しておる、こう承知しております。そして、いわゆるセルバよりもいわば上部の人物といいましょうか、あるいは上部の組織というものが外部にあって、公邸外にあって、そこからの指示で動いているということはないんだ、そういう認識でペルー政府当局は対処している、こう理解しているところでございます。
  41. 坂口力

    ○坂口委員 昨日の新聞でございましたか、犯人が、事件が解決をしますとき、外国に出ますときに、人質として日本人を連れていくといったようなことを言っているというようなニュースが流れております。これは人質の人たちが言われたことが外部に漏れたのかどうなのか、よくその辺はわかりませんけれども、大変微妙な段階に来ていることは事実でございますので、その点はひとつ今後も御努力をいただきますよう、お願いを申し上げておきたいと思います。  さて、先にこのリマの人質の問題を大臣にお聞きをしてしまいましたが、きょうのこの条約の問題の締めくくりをさせていただきたいというふうに思います。  いずれにいたしましても、この二つの条約、それぞれ大事な条約であることは間違いありません。しかし、今回改正に出てまいりました内容よりも、より切実な問題として起こっている問題もこれあり、これからまたそうした点をさらに諸外国との間で協議をしていただかなければならないのであろうというふうに思っておりますので、初めにお願いをいたしましたが、できる限りデータを集めていただいてお示しをいただきたいというお願いと、これに取り組まれます大臣の御決意をお聞きいたしまして、終わりにさせていただきたいと思います。
  42. 池田行彦

    池田国務大臣 我が国は主要海運国の一つでございます。そういった意味で、海難救助を初めとして、海上における人命の安全を確保するという点につきましては、どの国にも増して大きな関心を持ち、また適切に対応していかなくてはならない、このように基本的に認識しております。  そういった意味で、委員指摘になりました、そういったいろいろな措置を講じていく上においても、まず実態の正確な把握というものが肝心だということは御指摘のとおりだと思いますので、そういったことも含めまして、政府といたしましては、まずその実態を正確に掌握した上で、その安全面での措置をさらに手厚いものにしていくためには国際的に一体どういうふうな取り組みをしたらいいか、その辺をよく考えながら、これからも二国間あるいは多国間の協力を強めていくことを積極的に取り組んでまいりたいと存じます。
  43. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。
  44. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 これにて坂口力君の質問は終わりました。  次に、藤田幸久君。
  45. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 ありがとうございます。条約承認案件に移ります前に、ミャンマーのことについてお伺いをしたいと思います。  四月六日でございますが、ミャンマーの軍事政権SLORCの高官の一人でありますところのティン・ウ第二書記の自宅に日本から送られたという小包が届いて、それが爆発するという事件が起きたわけでございますが、ミャンマーにおきましては、昨年からアウン・サン・スー・チーさんのNLDのいろいろな集会の禁止でありますとか、それから仏教徒によるヤンゴンのパゴダにおける爆弾事故、それから僧侶によるモスクの襲撃、マンダレー等でございますが、いろいろ起きてございます。  その一連の事件の中でこういう事件が起きたわけでございます。これが日本の消印あるいは切手千円分ぐらいですか、の小包で届いたということになっておりますが、この日本から出ているということの事実関係について日本政府の方でどういうふうに把握をしておられるか、まずお聞きしたいと思います。
  46. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 爆弾テロ事件に関しまして、ミャンマー政府が我が国に対して捜査協力を要請してきております。今、私どもといたしましては、政府部内で連携をとりながら協力を行っていこう、そういう過程にあるわけでございます。
  47. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 その捜査協力に関しまして、ちょっと郵政省の方に聞きましたらば、まだ警察庁の方からは正式な捜査協力を受けていないと。日本政府としてまだ正式な捜査協力を受けていないということでございますでしょうか。
  48. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 今お答え申し上げましたとおり、ミャンマー政府から我が国に対して捜査協力を要請してきておりまして、私どもは、これに応じてできるだけの協力を行いたいというふうに考えておるわけでございます。  具体的には、四月の九日、ニュン・スエ外務副大臣から山口大使に対しまして、ミャンマーの郵便局にある記録をもとにいたしまして、今回の事件が反政府勢力が日本の郵便を利用して行ったテロであるというふうに確信していると述べるとともに、我が国政府に対して可能な限りの捜査協力を要請したという経緯がございます。  これに対して、山口大使からは、テロ行為というのは絶対に許されない行為であり、強く非難するという我が国立場を表明いたしまして、要請のあった点については可能な限り協力したいということを既に回答いたしております。
  49. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 新聞報道等によりますと、日本の五つぐらいのいわゆる反政府系の組織に対する疑いの目も向けられたけれども、それに対して否定をしておるような報道がございますが、この在日の反ビルマ勢力といいますかグループの動向について、日本政府の方でどういう把握をされておられるか、あるいはその関与に関する何か情報、あるいは関与がないという情報、どちらかわかりませんけれども、どういう状況把握をしておられるか、お聞きしたいと思います。
  50. 内田淳一

    ○内田説明員 警察といたしましては、警察法第二条に定められました公共の安全と秩序の維持という責務に基づきまして、治安情勢の把握に努めているところでございます。  しかしながら、具体的な違法行為に基づき検挙をした場合などを除きまして、原則として個別の団体に関するコメントは差し控えさせていただきたいと存じます。
  51. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 引き続き、そういった事実の解明に関しまして努力を続けていただきたいと思います。  ミャンマーの関係で触れましたので、ちょっと角度を変えまして、日本の外国政府に対する承 認方式についてちょっとお伺いしたいと思います。  と申しますのは、日本はいまだに政府承認という形式をとっておられまして、その一つがこのミャンマーの軍事政権SLORCの承認でございまして、たしか八九年、つまり平成元年の二月だろうと思いますが、いわゆる昭和天皇の崩御に際しまして、大喪の礼にミャンマーからも要人がといいますか政府を代表して参加をしてほしいという理由でもって、かなりどたばたと承認をしたということを記憶に覚えておりますけれども、当時、かなりミャンマーといろいろな貿易等をしておりましたいろいろな団体から働きかけがあったというような報道があったということも覚えております。  そもそも日本政府は現在、いろいろな外国の政府を承認する方式、政府承認方式というものをとっておられるようですけれども、一般的に政府承認方式というものを原則としてお考えになって承認をされておられるのか、それとも国家承認方式というものも国によってはされておられるのか、まず一般的にどういう承認形式をとっておられて、その根拠となる理念といいますか、原則はどういうところにあるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  52. 林暘

    ○林(暘)政府委員 我が国の場合、国家承認と政府承認といずれについても原則として行うという考え方で行っております。  国家承認と申しますのは、いわゆる新しい国家が、これは新しく独立した場合ないしは他の国から分離した場合というようなことで、新しく成立した場合に国家承認ということを行っておりまして、その場合には、客観的要件として、その成立した国家ないしは集団といいますか、その国家が国家としての要件を充足しているということ、国家としての要件を充足しているということは、一般的に申し上げれば、一定の領域を有してそこに住民を有し、かつその住民を実効的に統治する政治機構、政治権力を確立しているということでございますけれども、そういう国家としての要件を充足していること、それから第二番目に、国際法を遵守する意思と能力を有している、そういう要件に合致した場合に国家承認を行うということで行っております。  それから、政府承認でございますけれども、これは今申し上げましたように新たに国家として成立したという場合ではなくて、革命とかその他、いわゆる通常のその国における憲法上の手続外の方法で新たな政府が成立したという場合、憲法の枠外で政体が変更した場合に政府承認という形を行っております。  この場合の要件としては、この場合にも二つ挙げられると思いますけれども、一つは、その新しく成立した政権というものがその国において実効的な支配を確立しているということ、それから二番目に、新しい政権が国際法を遵守する意思と能力を有しているということ、そういう要件に合致した場合に政府承認を行うということをいたしております。  ただ、この国家承認にいたしましても政府承認にいたしましても、これは承認する方の一方的行為でございますけれども、これはそういう要件が合致した場合に必ず行わなくてはいけないかということではなくて、そこには承認する方の意思が入るということは、そういうことになっております。
  53. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 今のお話ですけれども、新しい国に関してはすべて国家承認であって、新しい国じゃなくて憲法以外の手段で政権がかわった、例えばクーデター等々、あるいは転覆が起こったりとかそういう場合には政府承認というふうに、そういうふうに画一的に原則が確立しているんでしょうか。
  54. 林暘

    ○林(暘)政府委員 国際法上、国家承認というものと政府承認というものは二つのカテゴリーとして分かれておりまして、先ほど申し上げましたように、新しい国家として成立した場合には国家承認、政府が憲法の枠外において変更した場合には政府承認という形でそれぞれ行われております。  ただ、政府承認というものを制度として使わないという国もこれはございます。我が国の場合には、国家承認、政府承認、いずれについても行うというやり方でやってきておりますし、今後もそういうことでやろうというふうに思っております。
  55. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 例えば、政府承認について実効支配それから統治能力というようなことをおっしゃいましたけれども、ぱっと思い浮かべますのは、このミャンマーのSLORCの場合ですけれども、一九八九年の二月にたしか承認をされておられるわけですが、その一年後の選挙でそのSLORCではないNLDの方が、アウン・サン・スー・チーさんのグループの方ですが、四百八十五の議席のうちの三百九十二議席をとった。ということは、その一年前にそのSLORCを、実効支配をしてそういう能力を持った政府であるというふうに日本政府判断をして承認をしていたということになるわけです。  それから、さかのぼりまして、ポル・ポト派のことをいつも思い出すわけですが、一九七八年の秋だと思いますが、当時、多分北京、中国大使だったのだろうと思うのですが、佐藤大使という方がカンボジアの大使として信任状を持っていって承認をしているわけです。ポル・ポト派、つまり民主カンボジア政権ですけれども。信任状を持っていった数カ月後の一九七八年の十二月二十五日にベトナム軍がプノンペンに進攻して、翌年七九年の一月七日にヘン・サムリン政権というものが誕生しているわけです。  ということは、この二つの例だけでいいますと、政府承認をしなくても国際法上はよかったものを、理由があって政府承認をされた。それはその実効支配等々の要件を満たされていたと今林局長がおっしゃったとおりだろうと思うのです。  ところが、ポル・ポト派の場合には数カ月後に、これは実効支配というものを、あるいは能力というものを、それから住民の意思というようなことをおっしゃいましたが、そういった要件が、裏づけが非常に脆弱であったということの証明がなされたということではないかと思いますし、ミャンマーの場合も一年後にはそういう選挙に関しては結果が出たというわけです。  ということは、あえて政府承認をしなくてもよかったのかもしれませんが政府承認をした、それでこういう結果が出ているわけでございますが、その判断についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  56. 林暘

    ○林(暘)政府委員 先ほど申し上げましたような条件が整っている場合に国家承認ないしは政府承認をするということでございまして、条件が整っていない場合に承認をするという場合には国際法上の尚早の承認ということで、それは国際法上の違法行為ということになりますけれども、条件が整っている場合に承認をするということは、そういう意味で全く問題ないわけでございます。  ただ、その承認をした政府が、その後、早いか遅いかはわかりませんけれども、何らかの理由で崩壊したということは、それはそれなりの別の理由でそういう結果が招来するわけでございますから、それはその限りにおいてはいたし方がないということでございまして、その条件が成就しているかしていないかという判断で、成就している場合に承認をするということは何ら問題がないというふうに我々は考えております。
  57. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 ということは、先ほど、条件が整っておった場合に実際に最終的に承認をするかどうかというのは、承認をする日本側の一方的判断であるということをおっしゃいましたが、それと今の御答弁をあわせて考えますと、こちらが法的に承認できるという条件が整っておれば、相手方の政府がいわゆる政府としてその国民との関係その他を含めました統治能力、実効支配等々の政府としての要件を整えておるかどうかというものはさほど気にしなくても、したがって後になってつぶれてもいたし方ないというお話でございまし た。  ということは、相手方の将来の見通しというものは二義的なことであって、あくまでもこちらが主観的に法的な要件が整っておれば承認して構わないというふうにも聞こえるのですが、その辺はいかがでしょう。
  58. 池田行彦

    池田国務大臣 そこのところは、政府承認するかどうかというのは、実効支配を初めとしてそういった要件が整っておるかどうかで判断する、純粋な法的な立場からの判断だと思います。  もとより、それとは別の角度から見まして、我々としても当然のこととして世界各国に民主的な制度あるいは人権が十分に保障されるような社会、そういうことが広がっていくということは当然重要視しております。しかしながら、ある特定の国が必ずしもそういう状態になっていない、例えば民主的な選挙の制度を持っている持っていないということだけをもって、それがないから、我々が望ましいと考えるような政治制度になっていないからといって、政府を承認しないあるいは国家を承認しないということには必ずしもならないという点は、御理解いただきたいと思います。  そこに国家としての実体が新たにできた、あるいはある一つの国家の中で新たに実効支配をする政府が客観的に成立したという事態がございました場合には、やはりいろいろな面での関係を維持することが必要になるということもあるわけでございますから、ミャンマーの事例で申しますと、あの時点で我が国が政府の承認をいたしましたが、我が国以外にもアジアの諸国はかなり政府の承認をしたのだと存じております。  それから、欧米の国なんかでは政府承認というやり方をとっておりませんからそのような行為はございませんけれども、現実問題として、我が国がたしか政府承認をした時点においては既にかなりの数の欧米の国々も、当時のいわゆるSLORCの政権でございますか、それといろいろな現実のコンタクトといいましょうか、関係を成立させておった、このように理解しております。  それからまた、その一年後に選挙でNLDがあれだけの多数をとったじゃないか、SLORCは多数をとれなかったじゃないかということは御指摘のとおりでございますけれども、選挙であらわされたミャンマーの国民の意思がどうであったかというのはそのとおりでございますけれども、しかし承認の時点において実効支配をしておったということは否定できない。  また、選挙の結果が政治に具体化されないでそのままずっときているということについて、それをどう見るかという点につきましては、それは当然別途の判断はございますけれども、しかしながら依然として実効支配をしているという実態というものは認めざるを得ないということでございます。  だから、ゾルレンの世界とサインの世界と、そこのところはやはり一つ一つの行為をする場合に一体どういう観点からするのか、どういう目的からするのかということで分けて考えることも必要かと存じます。  なお、先ほどの御質疑の中で、委員がミャンマーの承認を御大喪の礼の関連で御見解をお述べになりましたけれども、このミャンマーの政府の承認という我が国の政府の行為につきましては、そのような関連は全くなかったということをこの際申し上げさせていただきます。
  59. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 その八九年の二月の段階では、欧米の国でかなりの国が承認をされておった。政府承認を……(池田国務大臣承認じゃない、関係を持っていた。接触していた」と呼ぶ)ですから、きょうは承認お話をしておりますものですから……(池田国務大臣「いや、承認というあれはないけれども、関係を持っておった」と呼ぶ)ですから私は、承認をなぜしたのかという質問で、先ほどの大臣の答弁で、当時既に欧米のかなりの国が承認というふうに先ほど聞いたのですけれども。
  60. 池田行彦

    池田国務大臣 正確に申し上げますと、先ほど申しましたのは、欧米の国々が政府の承認というそういう仕組みをとっていない。ミャンマーについてだけではなくて、全体的にそういうやり方をしておりません。したがって、政府の承認をするかしないかといった問題は出てこないわけでございます。  しかし、政府の承認をするというのは実体的にどういう効果があるかと申しますと、その新しくできた政府のもとにある国といろいろな関係を持つかどうかということでございますね。そういった意味から申しますと、我が国が政府の承認という行為をした時点において欧米のかなりの国もいろいろな関係を持っておった、政府間の接触も行っていた、こういうことでございます。  形式行為としての政府の承認という仕組みは欧米の多くの国、米英独仏等はとっていない。しかし、形式的な行為としての政府の承認ということを我が国等が行うことによって出てくる効果、あるいは実体的な関係というものは何かというと、それはもろもろの面での国家間の、国と国との間の関係、とりわけ政府間の接触でございましょうけれども、そういった実体的な意味での政府間の接触は既に持っておった、こういうことを申し上げた次第でございます。
  61. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 それはそれ以上申し上げませんが、カンボジアの場合には、ポル・ポト派を承認しておりましたときには、実際に承認をしておった、あるいは関係を持っておったという国の関係からいうと随分違っておると思いますし、実際に承認をしておった国というものは非常に少なかったということを申し上げて、私が実は申し上げたいと思っておりましたのは、先ほどの条約局長のお話で、国家承認の場合には新しい国に限って、それで、既にある国の政府がかわった場合には政府承認というふうに日本は区分けをしておるということですが、私が申し上げたいのは、既にある国がクーデターその他で政権がかわった場合に、そういう政府あるいは国に対して国家承認をとるという方式もこれから考えてよろしいのではないかということを実は申し上げたかったわけでございます。  したがって、ミャンマーの場合も、いわゆる政府承認という形ではなくて国家承認という形で、ほかの先進国のかなりの国々が、いわゆるそういった意味での支配が実効的であれば、外国政府の承認を前提とすることなしに外交関係判断する、エストラーダ主義といいましょうか、そういう方式に移行している国が多いようでございます。  これから、旧ソ連からCISができた過程とか冷戦が終わった後でいろいろな形で国家の形態あるいは政府がかわっていく状況が多い中で、新しくできた国に限らず、既にある国がいろいろな形で領土が分かれて二つの国が出ていく形式とか、いろいろ複雑になってまいると思いますけれども、そういった際に、無理に政府承認をせずに、あるいは時期が熟した段階で政府承認をするという時期の問題もあると思いますけれども、それに対して国家承認をするという方式の選択肢がないのかということを実はお伺いしたいと思ったわけですが、その点はいかがでしょうか。
  62. 林暘

    ○林(暘)政府委員 今の御趣旨はいま一つわかりにくかったのでございますけれども、先ほど申し上げましたように、国家承認と政府承認というのは、国家を承認するか新しく憲法外の手続でできた政府を承認するかということでございまして、政府承認をしないで国家承認をするということの意味が正直言ってよくわかりませんでした。  ただ、御指摘のありましたエストラーダ主義というのは、これはつまり政府承認にかえて国家承認をするという考え方ではございませんで、政府承認ということをそもそもやらないということ、その場合に国家承認をやるという意味ではなくて、政府承認というものをやらないということを唱えたメキシコの外務大臣の考え方でございます。  したがいまして、政府承認を行わないで国家承 認を行うというのは、ちょっとその意図がよくわからないのでございますけれども、我々としては、新しく国家ができたような場合には国家承認を行うし、国家が国家として存立しているけれどもその中で憲法上の手続に従わないで政府がかわった場合には政府承認を行う、こういう考え方でやっているわけでございまして、これが特に支障があるというふうには考えておりません。  ただ、先ほど申し上げましたように、欧米の国で政府承認を行っていない国がございますけれども、これらの国がそれじゃ国家承認を行っているかというとそういうことはしておりませんで、現実の何らかの行為によって、事実上政府承認と似たようなことで、ある意味での関係をつくっていくという行為をある時点でとるということでやっているということでございます。
  63. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 といいますことは、例えば、たまたまきょうはカンボジアとミャンマーのことを申し上げておるわけですが、日本政府におかれましても、政府承認をせずにもろもろの関係を継続し得る可能性が、例えばポル・ポト派の政府の時代、七八年でございますが、あるいは八九年のミャンマーの二つの例を申し上げておりますけれども、その段階で、あの時期に政府承認をしないで関係を続ける選択肢はなかったのかどうかということをお伺いしたいと思います。
  64. 林暘

    ○林(暘)政府委員 政府承認という制度をとっておりますと、今委員が御指摘になりましたような行為をとった場合に、それはいわゆる黙示の承認という形で、つまり、政府承認をします場合には、明らかに政府承認をしますよという明示の承認をする場合と、ある行為をとったことによって承認が推定されるような行為をとることによって黙示の承認をする二つのケースがございます。  それで、日本のように政府承認という制度をとっております国の場合には、例えば、欧米が現実の問題として関係を開いたというような行為をとりますとそれは黙示の承認ということになりますので、そういう意味においては、政府承認を行わないで関係を開くということは我が国のような場合には現実問題としてはなくて、そういう関係を開く行為をとれば、それが黙示の承認というふうにとられるということでございます。
  65. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 ということは、このことばかりに時間がかかってしまいましたが、いわゆる政府承認をとらずに関係を築く動きというものも可能であるということでしょうか。
  66. 林暘

    ○林(暘)政府委員 先ほども申し上げましたように、欧米の国の中では、そういう考え方に立って、そういう制度でやっている国がございます。
  67. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 ということは、新しい世界情勢の中で、そういった方式を日本政府も検討するという可能性あるいはお考えがないのかどうかということをお伺いしたいと思います。
  68. 林暘

    ○林(暘)政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたように、我々が、国家承認及び政府承認という両方の制度をとっておりまして、それでやっておりますけれども、それで支障があるということは特に考えておりませんし、そういう意味において、現時点で我々がそれを変えるということは考えておりません。
  69. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 時間がありませんので、条約承認の案件の方に移りたいと思います。  海上人命安全の条約議定書満載喫水線条約議定書関係でございますけれども、この二つの条約に関して言えますことは、漁船の海難事故に対する適用がないということがこの条約を読んで感じるわけですけれども、なぜ漁船に対する適用が二つの条約にないのか。といいますのは、実は漁船の海難事故の方が極めて多いのではないかと思われるわけでございますが、これについてお答えいただきたいと思います。
  70. 朝海和夫

    ○朝海政府委員 委員指摘のとおり、この二つの条約は漁船には適用しないこととなっております。  その理由は、漁船と申しますのは、一般に、自分の国の港から漁場に出かけていって、また自分の港に帰ってくるという運航が通常でございます。いわゆる商船であれば、ある港から出て、幾つかの港に寄って、最終的には自分の港に帰ってくるのかもしれませんけれども、いろいろ港に寄ってくるというのが商船の一般的な運航の実情だろうと思います。そこで、漁船の運航の状況が、商船とは先ほど申し上げたような意味で違うために、この二つの条約では商船の方だけを適用対象としているということでございます。
  71. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 同じ関連で、漁船に関する条約に関しましては、今回の条約にも関係しておりますが、国際海事機関、IMOの方でトレモリノス条約というものを作成しているのですけれども、こういった漁船の海難事故を防止するためには、先ほど商船と分けておっしゃいましたけれども、しかしながら漁船の事故がやはり多いわけですから、そういった意味では、こういった条約にも加盟をして、その発効に向けて努力をするということが必要ではないかと思うわけですが、これについてはいかがでございますでしょうか。
  72. 朝海和夫

    ○朝海政府委員 トレモリノス条約でございますけれども、一九七七年のトレモリノス国際条約に関する一九九三年のトレモリノス議定書というものが作成されてございます。ただ、現在のところ締約国は二カ国だけでございまして、発効の見通しが現在のところは立っておらない状況でございます。  したがいまして、私どもとしましては、この発効の見通しなども見きわめながら、この条約、この議定書締結すべきかどうか検討しているところでございます。
  73. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 それから、この条約に関連して思い起こしますのは、この前の日本海におけるナホトカ号の重油の流出事故のことなわけでございますけれども、同じように八年ぐらい前ですか、アラスカ沖でアメリカのエクソン所有の原油流出事故がございまして、当時十万羽のウミドリとかそれから百万頭の海洋動物の命が奪われたというようなことが言われているわけですけれども、今までのところは、環境庁の国立環境研究所がまとめた環境調査によれば、この重油の漂着付近の海水や大気中から発がん物質が検出されたとありますけれども、人体に及ぼす影響ほどではなかったと。  ただ、実際にボランティアの方なんか見ておりますと、非常に眼鏡をかけたり、マスクをかけたりといったものをテレビ等で拝見をしておるわけですが、実際にそういう人体への有害物質がなかったのか。それから、かつてのアラスカのように、実はあれから八年たった今でもいろいろな動植物への影響が続いているというふうに言われておりますけれども、そういった広い意味での生態系への影響といったものがないのかどうか。それから、そういった影響からの回復に対する方策といったものにどんな認識を持っておられるのか、お伺いしたいと思います。
  74. 畑野浩

    ○畑野説明員 お答え申し上げます。  ナホトカ号の油流出事故に伴いまして、環境庁におきましては、事故発生直後に行いました現地調査を初めといたしまして、これまでに重油の成分の分析、それから水質、大気の汚染状況、魚介類中の重油成分の含有状況、それから海域、海浜生物及びウミドリ等への被害状況等について、これは幅広い分野の専門家で構成されておりますナホトカ号油流出事故環境影響評価総合検討会という検討会の意見等を参考にしながら、環境調査を進めてきております。  環境調査につきましては、現在取りまとめ中の部分もございますし、また委員指摘のとおり、影響が長期に及ぶということも懸念されることもございますので、今後とも引き続き検討会の意見等を踏まえながら、段階的、継続的に調査を実施していくというふうに考えております。  なお、これまで調査された結果によりますと、流出をいたしました油は通常のC重油の範疇におさまるもの、あるいは水質、大気等において重油の成分というのは検出されておりますけれども、全般的にその影響は軽微であること等が報告をされているところでございます。
  75. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 残念でございますが、時間が参ったようでございますので、私の質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  76. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 次に、中路雅弘君。
  77. 中路雅弘

    中路委員 最初に、地中海漁業一般理事会協定の問題について二、三御質問します。  この地中海漁業理事会は一九五二年に発効して、六三年、さらに七六年に改正されましたが、我が国加盟してこなかったわけですね。九四年の十一月に国連の海洋法条約が発効したが、その翌年に日本はオブザーバー参加をしました。そして今回正式加盟に踏み切ったわけですが、これはどういう……。これまで加盟してなかった、簡潔にお願いします。
  78. 野上義二

    野上政府委員 御承知のように、我が国地中海におけるマグロ漁業等の問題につきましては、従来から地中海を含む地域をカバーしております大西洋まぐろ類保存国際委員会ICCAT、アイキャットといっておりますけれども、これを通じて協力してまいったわけでございます。  今先生指摘のように、地中海漁業一般理事会が、九五年の五月にICCATでとっておりますようなマグロ類保存措置を勧告したことを踏まえて、これを我が方としても評価して、そういった点から我が国としてもこの地中海漁業一般理事会においても同様の保存のための協力、貢献等を行っていくということで参加することにいたしたわけでございます。     〔委員長退席、福田委員長代理着席〕
  79. 中路雅弘

    中路委員 地中海漁業一般理事会が、今おっしゃったように、これまでのようなマグロのとり放題はもう許さないという動きが出てきたわけですが、この地中海漁業理事会の勧告文が、スペインで九五年の五月二十六日に採択をされています。この勧告文を読ませていただきますと、例えば六・四キログラム以下のクロマグロの捕獲と水揚げを禁止するための必要な手段をとるとか、非常に厳しい漁獲の規制を決めているわけです。  こういう動きの中で、このままでは、地中海漁獲の全量がクロマグロですから、日本にとっては打撃になる、いわば、そこで慌てて本協定締結しよう、これが実際の動きじゃないのですか。
  80. 野上義二

    野上政府委員 今先生指摘の、地中海漁業一般理事会で九五年五月に採択された保存措置の勧告内容というのは、我が方が既に従来から参加して協力しております大西洋まぐろ保存ICCATの勧告内容と同様のものでございます。特に、別に新しい内容が出てきたものということではございません。  例えば、大西洋の方にございます六月、七月の大型船によるはえ縄漁業の禁止というようなものは、従来、我が国が実施してきた話でございまして、そういったようなものが地中海においてもようやく認められるようになってきたということを評価いたして、我が国としてこの地中海の方においても協力をして、参画していくということにしたわけでございます。
  81. 中路雅弘

    中路委員 八二年に国連海洋法条約が作成されたわけですけれども、先ほどお話しのように漁場の沿岸諸国がこうした規制をすることがこういう中で当然予想されたわけで、私は、海洋法条約が発効される、そういう時点から、今日の協定締結をやはり検討していくべきではなかったかと考えました。余りにも目先の利益だけの外交では、やはりこうした動きを見通して、もっと早く今日のこうした協定締結についても検討すべきではなかったかと思いますが、いかがですか。
  82. 野上義二

    野上政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、この地中海漁業一般理事会がとりました措置というのは我が国にとって格段に目新しいというものではなくて、言うなれば、ICCATで従来やっていた話を地中海でもやるようになったということでございます。  そういった意味で、加盟国が違うとかいろいろな問題がありますので、我が国としても、地中海漁業一般理事会に参画して、マグロ資源保存に積極的に協力するとともに、我が国漁業利益を図っていくというのが趣旨でございます。
  83. 中路雅弘

    中路委員 今私、経過を少し勉強させていただく過程で、一言外務大臣に要望をしておきたいのですけれども、この協定締結の、いわゆる先ほどお話ししました、地中海漁業協定の一般理事会の九五年の五月の勧告でありますけれども、この点はきょうの問題を論議する上で非常に重要な資料でもあるわけですが、外務省にその原文をお願いしましたら、原文は持ってきたのですけれども、訳文は断られたのですね。こうした国会の条約審議に非常に重要な資料ですから、その点では、ぜひ条約審議に必要な資料は翻訳もして論議のために積極的に関係の議員にも提供していただく、今後ひとつこうした点についての要望を外務大臣にお願いしておきたいのです。
  84. 池田行彦

    池田国務大臣 外務省といたしましても、国会における御審議のために必要な資料は極力御提供申し上げるように心がけてまいりたい、こう思っております。  今御指摘のその資料がどういうものか、今ちょっと私もつまびらかにいたしませんけれども、よくございますのは、外交のことでございますから、当然、事の性質上なかなか、あるいは相手国あるいは関係国との関係でお出しできないという実質的な問題があることもございます。  それから、それ以外に形式的な問題といたしまして、恐らくこのケースもそうだと思うのでございますが、国際機関なりなんなりのいろいろな会議等で行われました書類というものは当然英文なり仏文なりそういった言葉でできておる資料でございます。もとより、それを条約なり国会の御承認を得るべき協定としてお出ししますときはきちんと日本語としても確定いたしますけれども、一般的には、日本語のいわゆる訳文というものがないままに我々のところに保管されているあるいは利用されている資料が少なくないわけでございます。  そういった意味で、決して労を惜しむというわけでは――労も実は大変なんでございます、それを一々訳しますのは。それだけではなくて、資料の性格からいいまして、あえて仮訳みたいなものをつくるのがいいのか悪いのか、そういう点もございますので、やはりそういった事情もあるということはひとつ御理解賜りたいと思います。しかし、原則といたしまして、国会の御審議に供するために、あるいは先生方の御要望なさいます資料につきましては、極力外務省としてもお出しするようにしてまいりたい、こう思っております。
  85. 中路雅弘

    中路委員 原文はいただいたのですね。訳文を、そんなに長いものではありませんし、実際に、劣化ウランのとき質問したああいう膨大なものじゃないのですから。ぜひひとつそれはこれからよろしくお願いします。  もう一問、海上人命安全条約に関連してですが、ソ連の船舶は、ナホトカ号を初めとして相当老朽化していると言われていますけれども、定期的に検査する体制があるのかどうか、あるいはそうした必要な国内法令がどんなものがあるかよくわからない、外務省に聞きましてもそうです。船舶による汚染防止条約にも加盟していませんし、この人命安全条約議定書なども締結してないロシアであります。  今回の膨大な被害補償について、条約的にはだからロシア政府の責任はないということなのかもしれませんけれども、ロシア政府が自国の船舶の安全確保のために法令や実施体制を整備していないということが原因だとすれば、日本政府としてロシア政府に補償に関する協議をする必要も出てくるのではないかと思います。ロシアの検査・安全体制もよく把握していただきたいのですが、こうした補償の問題の協議ですね。  それからもう一つは、いまだに二千五百メートルの海底と言われていますが、沈んでいるナホトカ号の半分の処理に対してロシア政府の責任を追及すべきだと思います。引き揚げるのに膨大な費用も要するわけですが、技術上の問題もあると言われていますけれども、ナホトカ号の残りの船体 引き揚げについて、あわせて政府はロシア政府と話し合う必要があるのではないかと考えます。  この二点についていかがでしょうか。     〔福田委員長代理退席、委員長着席〕
  86. 浦部和好

    ○浦部政府委員 まずナホトカ号の事故の原因でございますが、これにつきましては、まだ最終的な結論というものが御案内のように出ておりません。かつ、この結論を出すためにはいわゆる船尾部分の調査というものが大事だということにつきましては、二月の初めにモスクワで日ロ間の専門家が会合いたしまして、そういう結論に至っておるわけでございます。これを受けまして、その後二回、日本ロシアの専門家が話し合いを行っております。  具体的にその部分の調査ということにつきましては、実は海中のケースについては行ったわけでございますが、これから引き揚げるということになるわけでございまして、これについてもロシア側が参加をしたいということでございますので、共同で対処していこうということになっております。この引き揚げ自身の作業がこれからどうなるかということは御専門の当局でやっていただいていると思いますが、いずれにしろ、ロシア側の専門家の参加を得て調査をやっていき、こういう協力を進めながら事故原因の早急な解明に努めたい、かように考えておるわけでございます。  また、一般論といたしまして、確かにロシア海上の事故防止であったり汚染防止等々についての条約に入っていないという点につきましては、先ほど申し上げましたような専門家の会合等の機会、各種機会を通じまして、そういう条約参加してくれるよう慫慂をしているところでございます。  また、次の御質問でございますが、今度は船尾の引き揚げにつきましては、運輸大臣のもとにナホトカ号船尾部残存油対策検討委員会というものが設置をされておりまして、その専門家の委員会の方々の結論が三月下旬に、いわゆる尾つぼの部分の引き揚げは技術的に不可能であるという結論に達していると承知をしております。  ただ、いずれにいたしましても、政府といたしましては、本件ナホトカ号の事故についてはあらゆる観点から積極的にロシア側と話をしているわけでございまして、今後とも、御指摘の船尾部分の対策についても、関係省庁と連絡を取りながら、必要な場合にはロシア側に対しても働きかけていくことを十分検討していきたい、かように考えております。
  87. 中路雅弘

    中路委員 時間があとわずかですので、少し条約と離れますが、二、三確認をしたいと思うのです。  先日、昨年ですが、横浜にあります上瀬谷通信施設の中に、作戦管制センター、ここにCTF57という看板が出されてきました。外務省に最初お尋ねしたら、そういう部隊は外務省の名簿にもない、多分第五でしょうというお話だったのですが、調べていただきましたら、第五七任務部隊司令官、この看板ですが、哨戒飛行部隊の司令部です、時期は一九九五年七月以降に駐留開始という外務省から返事をいただきました。また、横須賀に同じ時期に、第五艦隊の潜水艦任務部隊、TF54、タスクフォース54という部隊も存在をしています。  第五艦隊というのは、バーレーンに司令部があります、中東任務範囲の、作戦範囲の部隊ですし、第七艦隊と合わせて両方に入っているわけですね。二足のわらじで、中東へ行けば第七艦隊が第五艦隊に入るから連絡調整だというお話もありますけれども、しかし、中東を作戦範囲にする部隊の司令部が横須賀に提供している基地、上瀬谷に存在をしているということについては、私は、日米安保条約に基づいた基地の提供からいっても大きな問題があると思うのです。  施設庁にまずお聞きしますけれども、横須賀にこの部隊入ったのは、最近できましたフラッキーホールと名づけられた司令部の建物に第五のその潜水艦の人が入っています。落成式には横浜の施設局長も参加をしたというのは新聞で報道されていますが、この司令棟はいつの日米合同委員会で決められたのか思いやり予算だと思いますが、どこの予算で建てられたのか、そこの使用条件はどうなっていますか。
  88. 石井道夫

    石井説明員 ただいまお尋ねの司令都庁舎でございますけれども、これの整備に係る基本合意は、平成五年一月二十七日の日米合同委員会において合意されました。これは日本政府による提供施設整備費で整備したものでございます。この司令都庁舎の整備に要した経費は約二十六億五千六百万円でございます。(中路委員「もっとはっきり言ってください、数字がちょっと」と呼ぶ)経費は約二十六億五千六百万円でございます。先ほど先生、落成式に横浜の施設局長出席というふうに新聞で読んだとおっしゃいましたけれども、施設局長は出席しておらなかったというふうに我々は承知しております。
  89. 中路雅弘

    中路委員 上瀬谷の方も、外務省の私いただいた報告では、先ほど言いましたように、一九九五年七月以降駐留開始という報告をいただいた。ただし部隊がいるかどうかは別にしても、駐留ですから、駐留開始時期が九五年の七月。  外務大臣にお聞きしたいのですが、第五艦隊のこうした司令部が日本米軍に提供している基地の中に置かれておるということは、安保条約との関連でどういうことになりますか。
  90. 折田正樹

    ○折田政府委員 御説明させていただきます。  米海軍横須賀基地には、第七艦隊令下の潜水艦部隊である第七四任務部隊、TF74の司令部、それから第五艦隊令下の第五四任務部隊、TF54司令部という、同一の司令官及び幕僚が両司令部の職務を兼務している部隊が存在しております。  それから、上瀬谷通信所施設内には、第七艦隊令下の哨戒航空機部隊である第七二任務部隊、TF72司令部と第五艦隊令下の第五七任務部隊、TF57司令部が、同様に同一の司令官及び幕僚が両司令部の職務を兼務しております。  第七四任務部隊と第五四任務部隊は単一の潜水艦部隊を構成しておりまして、それから第七二任務部隊と第五七任務部隊は単一の航空機部隊により構成されているわけでございます。  そしてこれらは、それぞれ単一の部隊に属する潜水艦及び哨戒機につきまして、その時々の行動エリアに応じまして、第五艦隊担当空域で行動する場合には第五四任務部隊または第五七任務部隊の司令部として機能し、第七艦隊担当空域で行動する場合には第七四任務部隊または第七二任務部隊の司令部として機能すると承知しております。そして、五四任務部隊及び五七任務部隊の各司令部は、第五艦隊令下の潜水艦、哨戒機の指揮とともに第七艦隊と第五艦隊との連絡調整等を任務としているものと承知しております。  そして、かねて政府よりお答えしているところでございますけれども、日米安保条約第六条の趣旨は、施設・区域を使用する米軍の能力や任務を極東地域内に限定することにあるのではございませんで、この同条が定めます目的に合致した施設・区域の使用が行われているか否かは、施設・区域を使用する米軍が、我が国を含みます極東における国際の平和と安全の維持に寄与する役割を現実に果たしているか、そういう実態があるかどうかによって判断されるべきものであるというふうに申し上げてきているところでございます。  そして、第五四任務部隊司令部それから第五七任務部隊司令部は、先ほど申し上げましたように、第七艦隊と第五艦隊の間の連絡調整を行うとともに、第七艦隊令下にある第七四及び第七二任務部隊の司令部としても機能しているものでございまして、また、第七四任務部隊と第五四任務部隊は、単一の部隊により構成され、同一の司令官により指揮されております。  仮に、同部隊の一つの艦船が第五艦隊担当区域に行動している場合であっても、その同じ潜水艦が必要に応じ司令部の命によって第七四任務部隊の任務につくということになっているわけでございまして、この司令部及び任務部隊が、我が国を含む極東における国際の平和と安全に寄与する役割を果たしているという実態には変わりがござい ませんで、このような司令部が我が国の施設・区域内に設置されることは、日米安保条約上問題になるものではないというのが我々の考え方でございます。
  91. 中路雅弘

    中路委員 これは、第五艦隊の司令部はバーレーンにあるのですよ。だから第七艦隊が中東へ出かけて向こうで作戦する場合は、第五艦隊の中に入るわけですね。しかし、横須賀にいるのは第七艦隊、今実際にいるのは。そして、これは西太平洋、インド洋までやっているわけですから、向こうへ行けば第五艦隊の中に入るというのは、わかります。  そうだとすれば、少なくとも上瀬谷、横須賀にいる部隊で、第五艦隊の看板を同時にかける、存在を。しかも最近ですから、これは日米安保条約で基地を提供している趣旨からいっても、安保条約を事実上中東まで拡大して、その本拠地にしていくということになるのですよ。第五艦隊の少なくとも看板やこの司令部がここにいるということについてはこれは取り消して、第七艦隊が中東へ行った場合は、第五艦隊の中に入って、それはそこで調整されるでしょう、同じ二足のわらじを履いているのだから。最近までなかったのですよ、日米安保共同宣言を出されて前後からこうした看板をどんどん出してくるというのは、私はけしからぬことだと思うのです。少なくともこの第五艦隊の存在は、日本の基地からこれら取り消すべきだということを強く主張しておきたいと思います。  時間が来ましたので、もう一問だけ、ちょっと外務大臣にお聞きしておきたいのですが、今横須賀は、御存じのようにアメリカの空母の母港になっています。インディペンデンスは今オーストラリアの方に行っていますが、退役するということになっていますね。あと、通常の空母でキティーホークとコンスナレーションくらいしかないと思うのですが、四月四日の一般の新聞でも、アメリカの軍事筋が、二〇一〇年にはすべて原子力空母に切りかえる方針だと述べています。ずっと将来の問題ではなくて、近くこうして横須賀を母港にしているこうした艦船が通常型空母から原子力空母にかわるという場合に、これは認めるわけですか。いかがですか。
  92. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま委員の御指摘の問題でございますけれども、私どもそういった空母がかわる云々という話をまだ聞いておりませんし、仮定の問題にお答えするのは差し控えたいと存じます。
  93. 中路雅弘

    中路委員 具体的にいつ変わるかということは別にして、じゃ一般論でどうですか。一般論で、原子力空母の母港ということが問題になった場合、日本の非核三原則やあるいは原子力の平和利用、こういう関係の問題でどうですか。
  94. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま先ほど提起された仮定も外します、横須賀も外します、一般論と言い直されましたから。完全な一般論として非核三原則はどうかと申しますと、これは要するに、核兵器にかかわる原則である、このように承知しております。
  95. 中路雅弘

    中路委員 時間がないので終わります。改めてやりますが、原子力の平和利用という問題もあるんですね、原子力船の。核を持ち込まないというだけではなくて、そのもとにある問題があります。この問題はいずれ、一般論ではなくて、近く具体的に出てくる問題ですから、改めて論議をしたいと思います。  時間なので終わります。
  96. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 以上で中路君の質問は終わりました。  次に、伊藤茂君。
  97. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 幾つか質問をさせていただきます。  まず最初に、今議題となっております中での条約第九号、満載喫水線条約議定書に関連してでございます。  古巣の運輸省ですから、ちょっと心配なので一つ質問いたしますが、三月二十二日でしたか総務庁の海上運送事業に関する行政監察がございまして、ざっと見ましたら、運航業者に対する運輸省の監査が適切に行われているかいないかということについての指摘がございまして、適切でないという点が指摘され、改善を勧告されております。また、監査件数の不自然な偏りなどもなぜ発生するのかということも問題になっております。さらには、事故を起こした業者に対する行政処分、各運輸局ごとにばらつきが見られるという指摘もございます。海のルールに関する問題というのは、やはり円滑、適正に行われることが非常に大事だというふうに思っておりますが、どうお考えになっておりますか。――連絡がうまくいっていないようでございますので、また別途説明を聞きたいと思います。  外務大臣に伺うのですが、私は、東アジアの将来、いろいろな夢がございます。安全保障などに関するものとかASEAN地域フォーラムとか、さまざまなお取り組みがございまして、それらが拡大、発展することを私も心から望んでおります。同時に、アジアの将来を考えますと、私ども日本が鋭意努力をしていかなければならないさまざまなテーマがあるのではないかというふうに思うわけであります。  全部外務大臣の担当のテーマではありませんけれども、例えばアジアのエネルギー問題、非常にこれは大きいですね。やはり原発導入率が非常に高い、世界でも高い地域になるのではないだろうか。そうなりますと、文明史的に見てそれがいいか悪いかは別問題にして、やはりそういう部面でもっと安全、技術、情報交換、協力とかいうふうな分野の問題などもあると思います。日本もさまざまそういうことでの協力ということも必要であると思います、いきなり核燃料サイクル化、プルトニウムに走らないと思いますから。  それから、環境問題なども、やはりアジアは自然との共生という哲学が共通にありますし、これから経済発展が世界でも最も高いテンポで進んでいくとなりますと、やはり環境問題にどう協力し合うのかということもますます重要になってくると思います。それぞれ現段階でもさまざまな努力はあるわけでございますけれども、そういう意識はやはり私どもはアジアとの共生のために持たなければならないというふうに思います。  それで、具体的な質問なんですが、海に関することでございまして、世界で最も成長が高い、これからは海運その他ますます活性化をするということになってまいると思います。そういうことを考えますと、海の環境とかあるいは海洋汚染、それから、このところ重油の問題など何か日本海岸でも太平洋側でも至るところに続発をしておりますけれども、やはり災害対策などの協力、連携というものを日ごろから、あるいはまたシステムとして協力し合うということは、アジアの共生そしてアジアにおける日本役割として非常に大事なことではないだろうかというふうに思うわけであります。  私は、これは夢なんですが、アジア各国で、例えば一つの船か一つの飛行機に、日本人も乗っています、マレーシアの人も乗っています、中国の人も乗っています、そしてきれいな海を守る、あるいは安全を守るということでパトロールするとか夢みたいな時代になってほしいなというふうに思うわけでございますけれども、アジアにおいて日本の持つポジションは大きいわけですから、そういう努力について誠意ある提唱役があるいは汗をかいた幹事役かというようなことをする、特に海に関連してそういう感じがいたしますが、考え方、具体論は別にして外務大臣、どうお考えですか。
  98. 池田行彦

    池田国務大臣 私ども、これから世界の中で、とりわけアジアの中でいろいろ各国の国民と協力協調しながら生きていく上においていろいろなことが大切だと存じますが、今委員が御提起なさいましたように、これからアジアの経済がどんどん発展していく中で、エネルギーの問題にどう対応するか、あるいは環境の問題をどういうふうにみんなで解決していくかということは、非常に大きな問題でございます。  それと同時に、このアジア太平洋、世界で一番大きな海のあるところでございますし、日本自体が四方海に囲まれた海洋国であり、その海のもたらす恵みあるいは利便の上に我々の生存も成っているわけでございますので、こういった海洋に関する面でのアジアの諸国の協力というのをますます強めていかなくてはいけない、御指摘のとおりだと思います。  現在におきましても、いろいろな努力はございます。海洋に関するものにつきましても、御承知のように国連環境計画に基づく北西太平洋地域海行動計画というものが、ロシア、中国、韓国と我が国との間にございまして、本年の夏には我が国で海洋汚染に関するいろいろな対応策について国際会議をしようかとかいうこともございますけれども、こういったものもまた一例でございます。  さらに多くの地域の国を、それからまたさらに多数のテーマといいましょうか、課題について協力を進めていくという、ぜひ平素からそういったシステムをつくっていく、あるいは努力を傾注することが大切だと考える次第でございます。  各国の人間が一つの船に乗って海をパトロールという構想でございますね。本当にそういうことも大切だと思います。もし放置しておいて、海洋汚染が進み、あるいはそのほかこの地球というものが非常に人類の生活を支える場としての条件が悪化していった場合に、昔のノアの箱船みたいなものに乗ってどこかほかの天体へ行かなくてはいかぬなんということを、これはそんなことになっても大変でございますから、まず我々の大切な、かけがえのない地球をしっかりと守っていくという面で協力を推進していかなくてはいけない、その中で日本が指導的な役割を果たしていかなくてはいけない、そういった委員の基本的なお考えにつきましては、全く同感するところでございます。
  99. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 前向きの御答弁をいただきましたが、今、例えば我が国の周りの領土問題で、竹島とか尖閣列島とかいろいろな苦労をするわけでありますが、やはりそれらの問題に正面からぶつかって、しゃかりきに苦しんで大汗を流すという面もございますが、やはり今も大臣の御答弁ありましたような意味とか、そういうアングルでのさまざまな努力というものがいい意味での信頼関係をつくり上げていく、さまざまな知恵を絞ることが必要なときではないだろうかという気持ちがいたしましたので、申し上げさせていただきました。一層の御努力をお願いしたいと思います。  次の御質問ですが、けさテレビを見ておりましたら、アメリカでバーンズさんの北朝鮮の食糧援助の発表が、テレビでぱっと見まして、二百四十万人の子供たちが、六歳以下の子供たちが飢えている、その子供たちを救うためにということで一定の決断をなさったという発表がございました。確かに、私どもとしては隣国、近国ですから、さまざまのいい関係になるべく早い将来なるようにと私も思います。朝鮮半島の安定、今国会で議論されている沖縄問題を例といたしましても、改めて私どもの政治の努力あるいは政府の努力が非常に大事だなということを思うわけでございます。  一方では、さまざまのマスメディアで、今までにない形ですが、北朝鮮での食糧問題、非常に深刻な状況だということがオープンになって報道されているという状況がございます。また、国連初めさまざまの緊急アピールとか応援とか支援とか、人道的な意味でのマルチの立場からの努力がなされているということも御案内のとおりであります。  と同時に、一面では、いわゆる少女拉致事件とか、二国間での深刻な問題もあるという事実でございます。また一方では、新聞を見てびっくりしましたが、ノドン・ミサイルがあるというふうな物騒なことが起こってくるというわけでありまして、やはり多国間で起こっている食糧問題などの応援、二国間であるこういう難しい問題、一体これをどう解いたらいいのか。  私は、北朝鮮への食糧支援の問題も人道上の問題だと思います。それから、いわゆる少女拉致事件と言われているもの、これもミステリーのようなことで、なかなか真相はつかみにくい、非常に難しい問題なんですが、やはり日本の少女が消えてなくなるということからいいますと、これまた非常に重大な人道問題だというふうに私は思います。そういうものをどう解いていって、国際社会からも、ああ、日本は知恵を絞って、やはり知恵のあるさまざまな努力をしているなという解き方をしなければならぬというのが、外務大臣も頭の痛い仕事だと思いますが、当面する現実の状況ではないだろうかというふうに思います。  一方、少女拉致事件とか言われている問題もまた大切な、人道問題というよりももっと、政府あるいは国の基本的問題だろうと思いますが、どう打開をするのかということも、捜査当局が鋭意何かの犯罪で国内で捜査するのと違った、非常にこれは難しい問題。その難しい問題が打開しないうちは飢えている人たちの応援もしないというわけにもまいらぬということだろうと思いますね。  私は、例えばノドン・ミサイルの問題にしろ、それから不幸にして起こっているそういう少女拉致事件とか言われる問題にしろ、政府もそうですし、それから政治、政党あるいは政治家としても、やはりこういうことをきちんと言う。そんなこと、例えばノドンの問題やめてください、もっと正常な平和な関係にするようにお互いに考えましょうというふうなメッセージか意思表示もすべきだというふうに思います。  大きな流れとして、とにかく朝鮮半島の緊張状態をどう解いていくのか、また飢えている人たちをどう人道的に救援するのか、やはり知恵のある方程式を解く努力をしなくてはならぬというふうに思うわけでございます。それについては、やはり国民の大方の御理解の得られるような方向でなくてはならぬと思いますし、また、そのためにはさまざまの努力を私どもしなくてはならぬというのが、アジアの中で、また朝鮮半島に対応する中でも私どもが置かれている立場ではないだろうか。そうのんびりもしていられないというふうに思います。その辺、どういうお考えをお持ちでしょうか。
  100. 池田行彦

    池田国務大臣 私どもも、北朝鮮、今大変な苦しい状態、とりわけ食糧の問題は非常に逼迫しているというふうに認識しております。そして、それをベースにいたしまして、国連機関も人道的な観点からの食糧支援のアピールをし、それに対して、もう既に米国、韓国を初めかなりの国がそのアピールに応じて食糧支援に踏み切っている、このこともよく承知しております。  私どもも、事人道的な問題でございますから、これは国の近い遠いを問わず、我が国としても対応しなくてはいけない問題だと思います。現にこれまでも世界各国、そういった苦しい状態になったときに食糧の支援等を、規模の大小はございますけれども、いろいろやってまいりました。現にやっております。ましてや近い国でございますので、我が国立場からいいましても、この地域が安定するということは非常に大切だ、またそのための努力をしなくてはいけない、そういった人道とはまたちょっと違った観点からも、その重要性というものはよく認識しているつもりでございます。  しかし、他方におきまして、またほかにいろいろ考慮しなくてはいけない問題もある。委員が御指摘になりました問題もございますけれども、それ以外に、北朝鮮として、食糧もそうでございます、これは去年、おととしぐらい言われましたように単に一時的な気候あるいは天災に基づく不足ではなくて構造的な問題だろう、こう見ざるを得ませんね。あるいは、そのほかにも経済社会の運営全般についていろいろあるのだと思います。そういったところに、何らの具体的な変化も見られないままに人道という建前で次々、人道、緊急という建前で毎年むしろ恒常的にそういうことを求めていく、またそれに対応していく、これは日本だけじゃなくて国際社会全体としてもどうなの か。このあたりもよく考えてみなくてはいけない一つの要素だと思います。  それから、委員が御指摘になりました、全く違う観点からではあるけれども、我が国の国民の人権なり安全にかかわる、文字どおり人道上の問題もございます。これは当然、直接的に例えば食糧援助と結びつける、リンケージを考えるということは、これは必ずしも適切ではない、かなりそれは無理がある話だと思います。だがしかし、素朴な国民の皆様方のお気持ちとして、ましてやそれに御関係のある方々のお気持ちとして、そういった問題が疑惑その他が解明されないままに、しかもその疑惑の解明について誠意のある対応が見られないままに、食糧の問題は人道上の配慮だからどんどん進めなさいということて、それでいいのかという強い御疑念が出てくるというのも、これはまた無理からぬところだと思うわけでございます。  そういった意味では、そういったことにつきましても、もとより政府としてもそういった事情がよくわかるように解明、あるいはできることなら解決されるように努力はいたしますが、こういった疑惑がある、疑惑をかけられている北朝鮮の方も、もし、そういうことがない、こうおっしゃるのならば、そこに、その点についてきちんと、より明確にする、誠意のある対応というものが示されるということも、いろいろな国際社会我が国も含めた国際社会とあの国との関係、単に食糧援助だけではなくていろいろな関係を円滑化する上において、考慮をされてもいいことではないかとも思うわけでございます。  いろいろなことがございます。そういったことを総合的によく考えながら、どういうふうに具体的に対応していくか、考えてまいりたいと思います。  それで、先ほど申しましたように、米国、韓国等は既に対応しておりますね。それで、御承知のとおり、去年、おととし、我が国も食糧援助をやってまいりました。そのときも米国、韓国等とも連携といいましょうか、いろいろ話し合いをしながら対応してまいったわけでございますけれども、ことしもどういうふうに考えるか。それは、最終的な決定はそれぞれの国が独自の判断でするのは当然でございますけれども、いろいろな情報なり考え方なりにつきましては、いろいろ意見なりなんなり交換しながら進めておる、そういった中で我が国としても慎重にかつ真剣に対応ぶりを考えているところでございます。
  101. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 いずれにいたしましても、そう月日を置くわけにはまいらぬ問題でございますから、やはり知恵を絞って、国民的な御納得、あるいは国際的な意味での納得、日本への信頼というのを保たれるようなことを、もう日にちは、そう長い時間かけるわけにはまいらぬと思いますけれども、御努力をお願いしたいというふうに思います。  あと一つだけ伺いたいのですが、来週末には日米首脳会談、外務大臣も御同行なさると思うのですが、ちょっと心配しておりますのは、在日米軍について、前はよく朝鮮半島の不安定な状態ということで、十万、四万七千ということが通常言われておりました。先般の国防長官、それからこの間は前国防長官も見えまして、久方ぶりに私も会話をすることができましたが、朝鮮半島の統一が成っても必要なのだと言われている。私は、この辺のことについて、日米間でひずみが起きないように、あるいは日本国民の中でまたさまざまの大論争にならぬような努力をこの日米首脳会談、あるいは日ごろの外務大臣の御努力の中でお願いしたいというふうに思います。  先般の日米共同声明の中でも明らかになっておりますように、いずれにいたしましても、アジアの、極東の安全というものについて、鋭意お互いに努力をしていく、またその状況の進展に合わせてお互いに軍事的なプレゼンスについても相談していきましょうという趣旨のことは何遍も確認をされております。総理も外務大臣も、その原則は沖縄の負担軽減も含めまして国会で言われている、私はそのとおりだと思います。  一般論から申しまして、どちらにしても、あらしの日に無防備で表を歩くというのはこれはおかしいと思います。それから、晴天の日に重装備をして、かっぱ、コート、雨靴を履いて傘を差して歩くというのもこれは異常な形でありまして、やはり周囲の環境のもとにどういうプレゼンスが必要かということが決まってくるというのは当然の話でございまして、そういう構図の中で、やはり悪い方向ではなくてよりよい方向に努力をしていく。そういう中に日米間のきずなもあり、それからアジアと日本とのきずなもあり、それから忘れてはならない沖縄の県民とのきずなもある。その辺はやはりコンセンサスと調和ある努力をどう図っていくのかということが私どもの仕事であろう。  たまたま特措法の問題では賛否異にいたしましたが、賛否があって、反対すればいいなんということはさらさら思っておりませんから、やはり大事な政治の責任を真剣にやらなければならないというふうに考えておりますし、そういう意味での与党間の懇談会等、高く敬意を表して、やっていただいているというようなことなのです。そういう意味で申しまして、やはり言葉で出ることと何か違っちゃったなとか起きないような形の中で、私は、なるべく近い将来に、新しい段階で、那覇、東京、ワシントンという関係が起きるようにと願っておりますが、最近の国防長官発言などについてどう思いますか。
  102. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま委員が御指摘になりました点につきましては、委員が述べられました御認識と私ども基本的に一致しております。そしてまた、御心配なさいましたような日米間における認識のそごというのはございません。私どもは、はっきりしておりますのは、現在、アジア太平洋地域日本における駐留米軍も含めた十万人のプレゼンスが必要であるということを昨年の四月の日米首脳会談で確認いたしまして、そのラインをずっと引き続き申し上げております。  しかし、一方におきまして、中長期的な問題といたしまして、国際情勢に変化があればそれにどういうふうに対応していくのが適切であるかということについて、防衛政策の面あるいは軍事態勢の問題、そういったものについても日米間で協議しようということは、委員も御指摘のとおり共同宣言にもきちんと書いてあるわけでございます。そういうことはしっかりやっていこうということを日米ともに認識しておりますし、先ほどお話しになりました、ことしになりまして米国からのその関係の責任のある地位の方が次々おいでになりましたが、そういった場におきましても、総理からもあるいは私も具体的に言っているところでございます。この共同宣言に書いてあるのは単に文字だけではないよ、具体的にやっていくのだよということを申し上げていることでございますが、そういうことで進めてまいりたいと思います。  新聞ではいろいろなニュアンスが出ておりますけれども、そういった発言をされた方々に確認してみましても、典型的にはコーエン新国防長官でございますけれども、御本人に防衛庁長官が確認されて、私自身もさらに確認しましたけれども、おっしゃっていることは同じなのでございます。ただ、仮定の問題を置いていろいろ質問を受けたものでございますから、その質問があった点について答えたところが報道の面では強調したように映ったということでございまして、コーエンさんのおっしゃったことは、まず、朝鮮半島に統一が成るとしても一体それがいつになるのかそのことはさっぱりわからないじゃないかということを一つはおっしゃったということでございますね。そして、あとは先ほど申しました我々の共通認識のことを申されたところでございまするから、そこのところはそごはないものだと考えております。  いずれにいたしましても、委員おっしゃいました、東京とワシントンとさらに那覇との間の関係をきちんとしてまいりまして、安全保障のために 必要な努力もきちんとそのときそのときの情勢を見ながらやらなくてはいけませんし、しかし同時に、そのことに伴う負担、とりわけ沖縄の県民の担っておられます余りにも大きな御負担が少しでも、いやでき得る限り軽減されるように引き続き努力をしなくてはいけませんし、また米軍駐留に伴ういろいろな生活上の御不便その他を軽減するための努力も継続しなくてはいけないものと考えております。
  103. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 これで終わります。
  104. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  105. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 これより各件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、千九百六十三年五月二十二日に地中海漁業一般理事会の第一回特別会合(同年五月二十一日及び二十二日にローマ開催)において及び千九百七十六年七月一日に同理事会の第十三回会合(同年六月二十八日から七月二日までローマ開催)において改正された地中海漁業一般理事会協定締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  106. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約に関する千九百八十八年の議定書締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  107. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、千九百六十六年の満載喫水線に関する国際条約の千九百八十八年の議定書締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  108. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  110. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時五十九分散会