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1997-02-21 第140回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年二月二十一日(金曜日)     午前九時四十五分開議 出席委員   委員長 逢沢 一郎君    理事 鈴木 宗男君 理事 福田 康夫君    理事 牧野 隆守君 理事 青木 宏之君    理事 東  祥三君 理事 玄葉光一郎君    理事 松本 善明君       安倍 晋三君    石崎  岳君       柿澤 弘治君    河野 太郎君       櫻内 義雄君    下地 幹郎君       新藤 義孝君    田中 昭一君       森  英介君    坂口  力君       松沢 成文君    丸谷 佳織君       三沢  淳君    山中 燁子君       若松 謙維君    井上 一成君       藤田 幸久君    古堅 実吉君       秋葉 忠利君    平野 博文君  出席国務大臣         外 務 大 臣 池田 行彦君  出席政府委員         外務大臣官房長 原口 幸市君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省欧亜局長 浦部 和好君         外務省条約局長 林   暘君  委員外出席者         警察庁警備局外         事課長     米村 敏朗君         防衛庁防衛局防         衛政策課長   大古 和雄君         防衛庁装備局武         器需品課長   西  正典君         防衛施設庁総務         部総務課長   野津 研二君         科学技術庁原子         力局政策課長  林  幸秀君         科学技術庁原子         力安全局核燃料         規制課長    片山正一郎君         外務委員会調査         室長      野村 忠清君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十一日  辞任         補欠選任   島   聡君     三沢  淳君   伊藤  茂君     秋葉 忠利君 同日  辞任         補欠選任   三沢  淳君     島   聡君   秋葉 忠利君     伊藤  茂君     ――――――――――――― 二月二十一日  ILO第百三号条約等の批准に関する請願(石  井郁子紹介)(第二〇四号)  同(藤木洋子紹介)(第二〇五号)  同(藤田スミ紹介)(第二〇六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木宗男君。
  3. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣、連日御苦労さまです。  きょう、今、ペルーにおいては四回目の予備的対話が終わったやに聞いておりますけれども、その最新の情報といいますか、四回目の対話経過等を発表できる範囲お知らせをいただきたい、こう思います。
  4. 池田行彦

    池田国務大臣 ペルー事件につきましては、もう二カ月を経過したわけでございますが、いまだに大勢の方々人質状態に置かれているところでございまして、本当に御心配をおかけするところでございます。何とか一日も早く解決と思っておりますが、さきのトロントにおける橋本総理フジモリ大統領の間の会談、あれを踏まえまして予備的対話が進んでおるわけでございます。  つい先ほど、第四回目の会合が終了したところでございます。私ども、まだその詳細は報告に接しておりませんけれども、いずれにいたしましても、今回は、MRTA側から従来出ておりましたロハスに加えて、いわゆるナンバーワンと目されている者も出てきたわけでございます。そういった中で三時間、いや四時間に近いいろいろなやりとりが行われたわけでございますが、これに参加しておられました保証人委員会のシプリア二大司教は、出てこられた後で、建設的なものであったということ、そうして次回は二十四日にもと、こういうふうな発表をされたというふうに承知しております。  いずれにいたしましても、こうして対話が積み重ねられることによって双方のいろいろな考え方というもの、あるいは主張のバックグラウンドというものがお互いにある程度わかってくるという中で、何とか解決への道が開けてくることを強く期待している次第でございますし、我が国といたしましても、ペルー政府努力を支え、また、保証人委員会のオブザーバーとして参加しておられます寺田顧問のいろいろな面での、いわば円滑剤としての働きとも相まって、将来への全面的な解放というものに結びつけてまいりたい、こう考えている次第でございます。
  5. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣、この予備的対話、これを積み重ねていって解決するしか、今の場合、一つの方法としてはこれが最善の策がなという思いでありますけれども、ぜひともこれは加速させるべく、日本の役割もまた果たしてもらいたいな、こう思います。  同時に、人質皆さん方も、もう二カ月経過していますから、それなりに健康状態なんかも心配なのですけれども、青木大使を初めとする館員の皆さん方だとか、あるいは日本人人質皆さん方健康状態、さらには今、ペルー皆さん方人質健康状態、これは余りこちらに伝わってこないものですから、これまたいかがなものか、言える範囲お知らせをいただきたい、こう思います。
  6. 池田行彦

    池田国務大臣 人質方々健康状態につきましては、従来から赤十字の医師が入りましてずっと様子を見ているわけでございます。そして、しばらく前からはそのチームの中に日本人のお医者さんも入っていただいて、いろいろ人質方々健康状態のチェックをする、あるいは個別にお話も聞き取っていただく、こういう作業をずっと継続しております。  そして、押しなべて申しますと、もとより、ああいう状態に長く置かれておられるわけでございますので、その精神的な面での圧迫というものは、それは少なからざるものがあると思われるわけでございます。しかしながら、そういった状態の中で見ますと、身体上の健康状態も、あるいはお気持ちの面、心理的な面でも皆さんよく耐えておられまして、特に今大きな問題があるという方は日本人人質の方の中にはおいでになられない、また、日本人以外の人質方々につきましても同様な様子である、このように承知しております。  いずれにいたしましても、こういう状態でございますので、人質方々の心身の健康状態が少しでも良好な状態に保たれるように、これからも赤十字とも連携をしながら万全の体制をとってまいりたい、こう考える次第でございます。
  7. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 現地報道なんかを聞きますと、早期に釈放された人質人たちが、青木大使の言動はすばらしかったし大変勇気づけられたというような報道もあって、私はこれは非常に特筆すべきことではないかと思うのですね。困難な状況下にあっても大使が毅然としてその職責を全うしておったということは、これはまた私は高く評価していいと思っているのですね。同時に、こういった問題が起きますと、政府は何をやっているのだとか、外務省は対応が遅いだとかという非常に安易な観点からの批判がよくあるわけでありますけれども、私は外務省ほど国益、あるいは愛国心を持って仕事をしている役所はない、こう思っているのですね。  そういった意味でも、特に今現地人質人たちも大変であるし、また寺田顧問以下サポートしている皆さん方も大変苦労していると思いますけれども、外務省におって、例えばオペレーションルームなんかでは二十四時間体制で大変過酷な任務についている人もたくさんいるわけですね。言ってみれば、挙げてやっているわけであります。そのときの最高指揮官大臣でありますから、現地のサポーターはさることながら、本省で一生懸命やっているのだということも、どうぞ人質の家族の皆さん方だとか外にもわかるように、これはやはり何といっても指揮が大事であります。この点、外務大臣防衛庁長官も経験されておりますから、十分組織についてのことはおわかりかと思いますけれども、余り外に見えぬ部分もありますから、自信を持って、外務省は一生懸命やっているのだということは私はアピールしてもらいたいと思うのですね。特に、私は毎日のようにオペレーションルームをちょっと拝見させてもらいながらも、本当にどこが終着駅かわからぬ中での作業仕事というのは大変だと思うのですね。そういった意味では、ぜひとも外務省挙げてやっているという、このことをぜひとも自信を持って、誇りを持って、また外に向けて打って出ていただきたいな、こう思います。  同時に、大臣、私は、やはりこういった問題が起きて危機管理の問題がよく出ますけれども、外務省定員といいますか、絶対数が少ないと思いますね。やりくりしております。オペレーションルームを見ても、近くの在外公館から人を呼んで三週間ぐらい出張させて、そこで勤めさせてまたすぐ帰すなんというのがあります。さらには、健康休暇で帰ってきてその後も健康休暇でなくて働かされているという例もあるのですね。これは、私はちょっといかがなものかと思うのです。同時に、一つの問題でさえやっとのやりくりですから、もし何かまた不測の事態が起きた場合は動きがとれぬと思うのですね。そういった意味では大臣、僕は外務省定員なんかは、今行政改革云々が言われていますけれども、海外渡航者もふえた、あるいは日本の商社も外へ出ていっている、数もふえている、いろいろな意味でまた公文等電信もふえているということを考えれば、外務省なんかは定員増というのを堂々と言って、私は何ら問題はないと思うのですね。この点、大臣、どう考えていますか。
  8. 池田行彦

    池田国務大臣 今外務省といたしましては、現地対策本部を組んでいるスタッフ、そしてまた本省におきましてオペレーションルームを中心にしていろいろ取り組んでいるスタッフもとよりのこと、全省を挙げて何とかこの事件早期の円満な解決に導けるよう全力を尽くしているところでございます。そしてまた同時に、ほかの外交機能にも支障を来さないようにということで全力をかけております。そういった中で、委員にはしばしばオペレーションルームスタッフも御激励賜りまして、大変感激しているということを心より感謝を込めて申し上げさせていただきたいと存じます。  それからまた、青木大使行動につきましては、かつて人質であられた方が、あるいは今入っておられる、ときどき保証人委員会のメンバーとして活動しておられる方々を通じましても、非常に立派な行動をしておられる。これが内部の人質の心理の状態あるいはテロリストの方の状態にも、非常に好ましいといいましょうか、この事件解決を図る上において好ましい影響を与えておる、このような評価もちょうだいしているところでございまして、私どもうれしく感じる次第でございます。しかし、いずれにしても、全力をかけて進めてまいりたいと存じます。  さて、外務省定員の方でございますけれども、諸先生方の御理解をちょうだいいたしまして、近年大分増員はさせていただきました。現在時点で五千五人でございます。また、今御審議いただいております来年度予算でもかなり増員をお願いしております。かなり充実はしてきたわけでございます。しかし、外交業務の方はどんどんふえております。例えば、今、年間海外にお出になります日本人は大体千六百万人ぐらい。それから、海外で在住される邦人の方が七十万人を超えているという状態でございます。ちなみに、私自身が初めて海外に出ましたのは一九六四年でございますが、その時点ではたしか十五万まで海外渡航者はいなかったと思います。そういった時点でもたしか外務省定員は二千数百だったと思うのでございますけれども、それからの業務量の増加ということを考えますと、まだまだ充実していただかなくてはいけないと思います。  ちなみに、各国状況を申しますと、一番大きいのは当然のこととして米国でございますが、これは二万数千だったと思います。あと英国あたりが一万あたりでしょうか。ようやく我が国はカナダ、イタリアと並んで五千人台に来たということでございますので、我が方の外交機能を十分にやっているということの観点から申しますと、まだまだ充実しなくてはいけないと思います。  とりわけ、その構成を見てみますと、現在、各国に比べましても本省の人数が非常に切り詰められておる、こういう状態になっております。これは当然のこと、在外活動を拡充しなければいけないということでやっておるわけでございますけれども、しかしそのことがやはり、平素の通常の外交機能を果たしていく上においてもそうでございますけれども、今回のような特別の事件を加えますと、非常に大きな負担といいましょうか、これは事実でございますので、現在の体制の中でももとより全力は尽くしてまいりますけれども、また将来的にさらなる陣容の充実のために御理解を、また御支援を賜りたいと存ずる次第でございます。
  9. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣、どうぞ外務省としても要求をしてほしいし、また我々政治立場でも、必要なものはつけるんだという判断の中で対応していきたいものだな、こう思っています。  さて、ロシア関係についてお尋ねしますけれども、今国会大臣は、対ロシア外交において重層的アプローチをという表現を初めてされました。私は、振り返って、政経不可分から拡大均衡に来て、拡大均衡の流れの中での今度は重層的アプローチかと思うのですけれども、具体的にこの重層的アプローチというのは何を指しているものか、同時にどんな政策を展開していくのか、お知らせをいただきたいと思います。
  10. 池田行彦

    池田国務大臣 私も確かに重層的アプローチという言葉を申しましたけれども、多面的かつ重層的と申し上げたかと存じます。しかし、私は、必ずしも言葉表現の仕方であるとか、いわばキャッチフレーズ的なものが特段大きな意味があるとは思っておりません。むしろ、実質的に中身においてどういうふうな進め方をしていくかということでございます。  委員特に御承知のとおり、我が国対ロ外交基本というものは、東京宣言に基づいて、北方領土問題を解決して平和条約を締結していく、そして完全な両国関係正常化を図る、これが基本でございます。しかし、具体的にそれを進めるため に一体どういうふうに進めればいいのかということで、これまでもいろいろな努力が払われてまいりました。  今委員も御指摘になりました拡大均衡というような考え方で進めてきたわけでございますけれども、そういった中で今考えておりますのは、当然領土の問題ですね。これは推進しなければいけない。しかし、だから同時に、この問題を解決に持っていくためにも、そういった問題がうまく話し合われるような条件と申しましょうか、環境というものもこれは整備していかなければいけない。この二つの面をいわば車の両輪のように同時に動かしていくということが大切だと思う次第でございます。  その条件整備環境整備の面で、またいろいろなことがあるのだと思います。一つは、北方四島自身について、いろいろな、ビザなし交流なんかもなされております。行われておりますが、そういったものをどういうふうに拡充していくかというような問題。あるいはロシアとの経済面でのいろいろな交流、それも、特に我が国に近い極東地域でのいろいろな経済交流をどういうふうに進めていくのかという問題。  それから、さらには全体としての、ロシアが今、かつてとは違った新しい国づくりを進めているわけでございますが、そういったものについて日本としても協力すべきところはしていくというふうなことを通じまして、ロシアの全体としての日本に対する考え方、とりわけ北方領土問題についての我が方の全く正当な主張に対する認識も深めながら、環境整備していく、こういうことで努力している次第でございます。  また、一点申しますと、そういった中で、昨年ロシア側から、具体的にはプリマコフ外相から、いわゆる共同経済行動という言い方の提案が出されたわけでございます。しかし、これも具体的な内容ははっきりいたしませんので、まだ余り細かな議論をしてはおりませんけれども、私も、昨年十一月でございましたか、プリマコフ外相が見えましたときに話をしまして、私がここで申しましたのは、そういった提案をさらに具体的にどういうことを考えておるのかお示しいただければ、検討することにやぶさかではない。しかし、どうしても守らなければいけない原則というのは、それがいわゆる領土の帰属の問題にかわるものであったり、あるいはそれを棚上げするものであってはいけない。これは絶対のものだ。それから当然のこととして、我が国領土に関するこの主張というものを、その立場を損なうものであってはならない。そういうところを念を押しながら、しかし、北方四島の関係で何とかこれまでと違ったようなアプローチがあり得るのであれば、そしてそのことがこの問題の解決にも資するものであるならば、それは検討するにやぶさかでない、こう申し上げた次第でございます。  重層的と申しますと、いろいろなことがございますが、全部申し上げるわけにいきませんけれども、そういったふうに、領土問題の解決をあくまで念頭に置きながら、いろいろな面についても、現段階でなし得る、しかもなすことが適切な努力を払ってまいりたい、こう考えている次第でございます。
  11. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 ロシアの問題を考えるとき、例えば今このナホトカ号の重油流出問題なんかもありますから、ちょっと日ロ関係も機微なところもありますけれども、こんなときにこそ逆にダイナミックに展開していった方がいい、こう私は思っているのです。  そういった中で、大臣、例の北方四島周辺の枠組み交渉がありますが、本来ですと今月中に開かれてよかったのかなと思っても、まだ開かれていない。少なくとも、日ロ関係を改善するには、特に領土問題の改善に、私はこの安全操業問題というのは一つのカードだと思っているのですが、この第八回目の枠組み交渉がいつ開かれるのか。外交チャンネルで当たっているとは思いますけれども、どうも見えてこないものですから、現地ではいら立ちもあります、もう三年過ぎていますから。この点、どうなっておりますでしょうか。
  12. 池田行彦

    池田国務大臣 枠組み交渉につきましては、委員指摘のとおり、現地漁業関係者方々の強い御希望というものをよく承知をしておりまして、それを外しまして、何とか現実的な、しかも原則的な立場を損なわない解決に至りたいと思っております。  委員承知だと思いますけれども、昨年はいろいろ担当者が、担当責任者が交代するなんということもございまして、我が方もございましたけれども、特にロシア側で。そんなこともございまして、なかなか進捗していない面もございますけれども、次の交渉は何とか今月中にと思って努力してまいりました。  しかし、現時点で申しますと、ちょっと今月中というのは日程が折り合わないかなと思っておりますけれども、三月には必ずこれは行えるようにしたいということで、今せっかく日程についても調整中でございます。
  13. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 今大臣から、三月にずれ込むのではないか、三月中には必ず開きたいというお話がありましたから、ぜひとも早期に開いていただきたいと思います。  同時に、大臣、この枠組み交渉は私が提案した話なのです。これは外務省提案した話ではありませんから。私は、はっきり言って三年も過ぎているということ、この時間を考えれば、長くやるべき問題でもないと思いますから、次回交渉が最後だというくらいの決意で、私はぜひとも日本側としては臨んでもらいたいなと、これだけは強くお願いをしておきます。  あとイリューシン第一副首相日本に来られる日程が発表されましたけれども、私は、やはり首脳レベル人的交流をやることが一番だと思いますね。ロジオノフ国防相も来られるという話も聞いておりますから、私は、日本外務大臣も速やかに行くべきだ、こう思うのですが、池田大臣訪ロはいつごろを予定しておりますか。
  14. 池田行彦

    池田国務大臣 まずイリューシン第一副首相は今月末にお越しいただきまして、一日の日に、私とイリューシンさんが共同議長を務めます両国間の委員会、経済問題を主として扱うわけですが、第二回を開催するとしております。  そのほかに、政府関係者、あるいは経済界関係者にもいろいろお会いいただく、こういうことにしておりますが、イリューシン第一副首相の訪日が日ロ関係の進展にまた一段と弾みをつける、こういうことを期待している次第でございます。  それで、お尋ねの私自身訪ロでございますが、私も、そういったこれまでの積み上げを踏まえながら、どこかで考えたいと思っております。去年の秋にプリマコフさんが来られましたので、今度はこちらが行く番でございますから、担当欧亜局長あたりは、この日はどうですか、この週末はどうですかといろいろ言ってきますけれども、御承知のとおり、国内のいろいろ政治日程もいろいろございますし、外交日程もいろいろございますので、今の段階でまだこれといった日にちを確定するには至りませんけれども、極力早く参りたい。少なくとも、ことしの前半のうちにはお伺いするようなことを考えなくてはいけないし、また、それに向かっていろいろな作業も進めてまいりたい、こう考えている次第でございます。
  15. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 外交日程あるいは国会日程もありますから、日程の特定というのは、相手もあることですからわかるのですけれども、私は早い機会に、少なくともサミットも控えている、サミットでもまた日ロ首脳会談も当然予定されるわけでありますから、速やかに行って、これまた懸案の解決に向けてレールを引いていただきたいなと思っております。  時間がありませんから、日韓と日中の漁業協定についてお尋ねしたいと思います。  おとといですか、日中の漁業協定交渉もありまして、早い機会にまた次の機会も開きたい。三月のまた前半には日韓交渉もあるというふうに聞いていますけれども、日本漁民は相当やはりこれまたいら立ちを感じております。TACも実 施されるわけでありまして、三月七日には全国漁民代表者大会も開かれるのです。  私は、少なくとも、大臣御案内のとおり、政府与党一体の中で、去年の三月二十二日、自由民主党、社民党、新党さきがけ与党三党は、これは一年を目途にという明確なタイムスケジュールというか言っているのですね。しからば、これは三月いっぱいが限度なのです、我々の認識としては。同時に大臣も、日韓、日中の外相会談でも、与党考え方はこうですよということはきちっと明確に相手には伝えてくれておりますから、これは多とするのでありますけれども、時間がないわけですね、そうなりますと。  しからば、今の進捗状況と、私は、最終的に交渉でまとまらなかったらば、協定は破棄しても仕方がないと思っているのです。破棄しても、日韓の場合は一年間存続するわけでありますから、日中の場合は三カ月存続するわけでありますから、そんなに私は日本側が害するものはないと思っているのです。ここらも含めて、大臣決意のほどと交渉進捗状況、これからの進め方お知らせいただきたいと思います。
  16. 池田行彦

    池田国務大臣 まず日中の方につきましては、委員もただいまおっしゃいましたように、去る十八、十九日の両日、北京で交渉が行われまして、その中で新しい国連海洋法条約の趣旨にのっとって交渉を進めていこうということで、基本的なところについての相互の認識は一段と深まったかなと思っておりますので、それを踏まえまして、それを具体化するための作業を詰めていき、おっしゃるようになるべく早く次回の交渉を持っていきたい、こう考えている次第でございます。  それから、韓国の方もこれはなかなか難しゅうございます。委員もよく御承知のとおりでございますが、それで、私どもは機会のあることにこの交渉の促進を求めてきたわけでございます。  先般、別府で行われました日韓首脳会談におきましても、橋本総理からも直接金泳三大統領にその点を求めました。私も、ことしになりまして実は外相間で三回会談を持っております。一月十五日にソウルへ行き、それから別府において、それから先般シンガポールのASEMの会議の折に柳宗夏外務大臣会談したわけでございますが、その際に、そういった会を通じまして我が国の方の主張、それで、今委員の御指摘のございました与党、あるいは領海を初めとする日本国内の早期解決に向けての強いお気持ち、こういうことも紹介し、とりわけ現在、もし早期解決が見られないのであれば格別の手段に出るべしという強いお気持ち、声も今上がってきているんだというようなことも申し上げながら、早期交渉妥結に向かっての韓国側のそういう一段の努力も求めてきたところでございます。  韓国側も、御承知のとおり向こうもいろいろ国内の事情もございます。この漁業海域についてもそうでございますし、それ以外にもですね。そういったこともございまして、向こうもなかなか難しい立場にあるのではございますけれども、いろいろそういったやりとりの中で次回の交渉は三月の六日、七日に持とう、こういうことで合意をいたしておりますので、そういった次回の会合に向けまして、今先生御指摘我が国のいろいろな状況というものも踏まえまして、さらに格段の努力をして早期解決に向かって進んでまいりたい、こう考える次第でございます。
  17. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣相手のある話ですから、これは日本主張だけ通ることが外交ではないと私は思っております。同時に、ただ配慮を重ねるがゆえにエンドレスになってしまって、これまた漁民の死活問題でありますから、その生活権を奪うようなことがあってもこれはいけないと思うのです。  そういった意味で、さっき私が大臣に言いました、三月がとりあえずのめどだということで交渉がスタートしているのですよ。これは私ども、外交部会等できちっと役所とも確認しながら言っているわけなんですけれども、その三月という時期が目前に迫っておりますから、例えばこの時期が来てもなお進展がない場合にどう対応するのか。私は破棄するのも一つの手だと思っているのですけれども、同時に韓国も中国も海洋法は批准しているわけですから、旗国主義から沿岸国主義にそれぞれ認めているわけですから、そういった意味では何らそごもないわけでありますから、私はある種の決断も必要だ、こう思うのですが、その点どうでしょうか。
  18. 池田行彦

    池田国務大臣 昨年の与党における御審議の状況、そして与党としての御意思の表明、それは十分承知しておりますし、その時点でも、私ども政府といたしましてもそういったことを十分踏まえながら、外しながらこの交渉に当たっていくと申し上げた次第でございます。そういったことで今日も進んでおるわけでございます。  そして、場合によってはという今の御質問でございますけれども、こういった声も最近さらに高まってきておるんだということも先方にも紹介しながら、我々交渉しているところでございます。  ただ、今交渉を精力的に進めることによって、関係両国の合意のもとで何とか円満に事を解決に導きたいと努力をしているさなかでございますので、どうか我々もかたい決意で臨んでおるということで御理解を賜ればと存ずる次第でございます。
  19. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 ぜひともそのかたい決意でしっかり対応してもらいたい。アジア局長にも、特にこの点、お願いしておきたいと思います。  北朝鮮の食糧援助に関する件で、時間もありませんからお尋ねしますけれども、WFPのニュースリリースを見ますと、北朝鮮の現状から見て深刻な食糧不足だということで、アメリカや韓国はすぐ対応しました。また、北朝鮮の貴書記の問題なんかによっても、韓国も少しはプレーアップしたのかなという感じもします、金額の支援等から見ますと。  そこで、日本政府としてはどう対応するのか。私は、少なくとも少女拉致事件の疑惑ありき、しかもその子供の親御さんがアジア局長のところに来て切々たる話で、早くうちの娘の現状把握をという話もありましたから、私はいかに深刻な食糧不足、人道支援が必要だという声があったとしても、それ以上に人の命はもっととうといものであります。ペルーなんかもやはり人の命優先だからこそ時間をかけて粘り強くやるわけでありますから、その点からするならば、私は、北朝鮮の今までの一連の流れというのは非常に不可解であるし、理解できない面がありますね。あの李恩恵の問題にしたって、日本側が当然至極のことを言っても、向こうはそれをカタにして交渉打ち切りだという非常に一方的な対応ですね。  私は、そういった北朝鮮の姿を見るときに、いかに食糧不足といえども一線を越えてはいけない、安易に支援なんかするべきではないと思っているのですけれども、日本政府としての対応はどう考えていますか。
  20. 池田行彦

    池田国務大臣 現在、北朝鮮の食糧事情は非常に深刻な状況にある、それは今度アピールを発出いたしましたWFPの言うところがそのとおりであると私ども思っております、細かい計数的な面は別にしまして。そして、このWFPのアピールは当然人道的な観点に出るものであり、それにこたえて米国は一千万ドル、そして韓国は六百万ドルの拠出を決定いたしました。これも、米国あるいは韓国も、北朝鮮との間にいろいろな解決しなくてはいけない懸案があるにもかかわらず、これは人道的な観点に立って実施したものだと承知しております。  したがいまして、日本としてもどうするかということでございますが、私ども基本的にはやはりこのWFPあるいは国連のアピールは人道的な観点に出るものであり、そういったことから考えるものだと思っております。しかしながら、しからばほかの要素は一切考慮の外かと申しますと、これはやはり国民の皆様方のお払いいただきました貴重な税金を使って行うものでございますし、やはり国民の皆様方にも、なるほどこれはいろいろなことがあるけれどもやむを得ないなというふう に御理解いただけるようなものでなくてはいけないのかなという観点は、そこは一つあるわけでございます。  そういったことを考えます場合に、今委員指摘の、文字どおり人道的な観点から解決しなくてはいけない問題があるわけでございますから、その辺のこともそれは考慮の中へ一切入れなくていいというわけにはまいらないと思うわけでございます。  それと同時に、また今回、米国や韓国が拠出に非常に迅速に応ずることにしました理由の中には、人道的な観点のほかに、やはり四者協議であるとかあるいはKEDOのプロセスであるとか、そういうものに好ましい影響を与えるであろうという考慮も働いていなかったとは言えないと思うわけでございます。  日本としても、もとよりこういったプロセスを進めるということでは韓国あるいは米国と同じ歩調をこれまでとってきたわけでございますが、しかし我が国の場合にはそれだけではないほかの要素もございます。やはり日朝間の関係正常化をどうするんだ、これが今委員も御指摘になりました例の李恩恵の問題で、向こうが一方的に打ち切ってそのままになっているわけでございまして、ここのところずっと進展のないまま来ております。こちらの方に何らかの変化があり得るのかないのか、そういったところもやはりコンシダレージョンズの一つにはなるのだと私は考えている次第でございます。  いずれにしても、今まだこのWFPのアピールに応ずるかどうか、イエスともノーとも決めておりません。国連機関としてもまだ若いんですが、人道問題局、DHAと申しますけれども、それがこの問題についてのいろいろな考え方もこれからまた出してくると思うわけでございますので、そういったことも踏まえながら今後慎重に検討してまいりたい、こう考える次第でございます。
  21. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣、今政府としては出すとも出さないとも決めていないというお話でありますが、現時点では、私は例えばこの新潟の少女拉致事件の疑惑だとか、さらには李恩恵さんの問題等からも踏まえて、私は、日本は今は出すべきでない、こう思っているんですね。いかにWFPだとかDHAのアピールがあったとしても、日本立場からいえば、私はここは明確にしておけばいい、同時に、今の時点で私は出すべきでないと思っているんですが、どうでしょうか。
  22. 池田行彦

    池田国務大臣 この件につきましても、いろいろな御意見がございます。実は、昨日も参議院の外務委員会の席上でこの問題を取り上げられましたけれども、先生と同じような角度からの御主張もございまして、また、いややはりいろいろなことはあるけれども、これは人道的な観点から応ずべしという御意見もございました。  しかし、いろいろなことを考えながら対応してまいりたいと思います。現時点で出すということを決めていないということは、先ほど御答弁申し上げました。
  23. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 現時点で、出さないという方向できちっと、日本の今言っていること、その拉致事件の問題とか、さらには李恩恵さんの問題とか、きちっと、ここが原点ですから、これを踏まえてまたしっかり当たっていただきたい、こう思います。
  24. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 次に、下地幹郎君。
  25. 下地幹郎

    ○下地委員 大臣毎日お疲れさまでございます。  沖縄問題に関して御質問をさせていただきたいと思います。  昨日、沖縄北方特別委員会大臣お話をなされました。劣化ウランの問題に関しては、環境問題をきちっとする、そして厳格な爆弾の管理、そういうふうな方向で日米間で協議を行っていく、そういうふうな御趣旨を、答弁をお伺いしました。そのことをしっかりとお進めをいただきたいというふうに思っております。  そして、きょう大臣沖縄に参られます。復帰して二十五年になりますけれども、大臣が単独で沖縄入りを、外務大臣が入られたのは初めてでございます。海洋博の一九七五年に総理と一緒にお入りになられておりますけれども、これだけ目的意識を持って沖縄に外務大臣が入られるのは初めてでありまして、百二十七万人の沖縄の県民は非常に期待を申し上げていますので、成果のある来沖をぜひ挙げていただきたいというふうに思っております。     〔委員長退席、福田委員長代理着席〕  大臣、私は思っているんですけれども、やはり国を守るということは非常に大事なことだと思うんです。そのことをやはりしっかりと国民が描かなければいけないと思っているんですけれども、今極東情勢、非常に厳しいものがある。今の貴書記の問題もありますし、中国の鄧小平さんがお亡くなりになった問題で政治も不透明になってまいりました。そして竹島の問題やミャンマーの内戦の問題や、そしてインドネシアの問題などいろいろな問題があるわけです。  その極東情勢の難しさの中で、日米の安保というものがしっかりとした役割を果たしていかなければいけない、私はそういうふうに思っているんです。そして、日米安保もしっかりと役割を果たさなければならないんですけれども、橋本政権の大きな課題である過度に集中した沖縄の米軍基地も減らしていかなければいけないんだという、この落差の大きさが、政策の面で非常に難しさが今現時点で起こっていると思うんです。  この基地政策、私はめり張りのきいた政策をやっていかなければ、この落差の大きなものに対応できないんじゃないかというふうに思うんです。このめり張りのある政策というのが、私は普天間基地の移設というものをしっかりと推し進めていく、そのことが大事であるというふうに思っております。そして、この普天間基地の問題は、私は、日米の両首脳がしっかりとした信頼関係を築く上でも、速やかにしっかりとした移設を私どもはなし遂げなければいけないというふうに思っているんです。  それで今、定義ですけれども、沖縄県民が考えている基地の整理縮小、段階的な縮小、そういうふうなものはどういう定義ですかと質問させていただきました。そして、兵力が削減していくことですね、そして二つ目には面積が小さくなることですね、もう一つは危険度が少なくなることですね、もう一つは固定化をしない、この四つが非常に大事なことであるというふうに私は定義をさせていただきましたけれども、普天間からシュワブに基地が移るということをちょっと私が定義にのっとった形でやらせていただきました。  そうすると、兵力削減という話がありますけれども、一九八七年から一九九六年までの間に、全体で、米軍の基地の中で七千二百五十四人の方が、兵隊が削減されているんです。そして、海兵隊だけでも三千五百人の方が削減されている。  そして、面積の話になりますと、今普天間基地は四百八十一ヘクタールあります。それが、今仮想ではありますけれども、移った場合に、千五百メートルのそして五百メートルの幅というふうに計算をしますと、七十五ヘクタール。その他の生活空間がなんかを添えても百ヘクタールという、四分の一の小ささになるわけです。  そして、今宜野湾の状況を見ますと、普天間基地の周り、普天間基地から七百メートルの範囲で二万人、全体で宜野湾の方は八万人いらっしゃいますから、この町の危険度という意味からしますと、海の方に移す、シュワブに移すということは、危険度も物すごく小さくなるということも間違いないと思うんです。  総理がおっしゃっている固定化という意味で、私は動かせる範囲の海上案でやっていきたいというふうな観点で、とにかく固定化をしないというのを県民に見せる意味で私は海上案ですよというふうなことを総理が打ち出している。  この四つが、私はしっかりとした形で基地の整理縮小、そういうふうなものになっていると思うんです。そのことがなかなか理解されないんですけれども、間違いありませんよね。整理縮小そして統合していくということが、沖縄県民の願いと 総理の考えとしっかりとマッチしているということは、私は自信を持っているんですけれども、大臣の御答弁を、ひとつ沖縄に行く前にお願いをしたいんです。
  26. 池田行彦

    池田国務大臣 委員が沖縄の現地の実情を、そして県民の皆様方の日々の大変な悩み、そして将来に向かっての御希望というものを踏まえてこの問題に真剣に取り組んでおられる、私どももそのことを十分に踏まえて、そして何よりも沖縄県民の皆様方のお気持ちを踏まえて、これから基地の整理、統合、縮小に全力を引き続きかけなければいけない、こう考えている次第でございます。  そして、ただいま委員がおっしゃいました整理、統合、縮小の持つ意味というのは、四つあるんじゃないか。すなわち兵力の削減、面積の縮小、それから危険度の低減、低下それから固定化の回避、これは、私もそのような意味づけというものは非常に事柄の実態をわかりやすく説明することに非常に適切であるな、さすがに現地で本当に自分のこととして取り組んでおられる委員のお言葉だなと思って、感服して聞いておった次第でございます。  そういった観点から申しますと、昨年来ずっとSACOで続けてまいりました全体としての努力も、今おっしゃったような四つの面を念頭に置きながら進めてきたわけでございます。また、そういった意味内容を持っておるわけでございますけれども、とりわけその中で象徴的なものとしての、また大きな意味を持つものとしての普天間の移転の問題にもこのことは端的にあらわれている、今委員のおっしゃったとおりだと思います。  とりわけ普天間は、あのような人口密集した地域の真ん中にあるわけでございますから、そういった意味でもこの危険度を、危険をまずなくすという意味、これは非常に大きいと思いますし、しかも代替する施設をどうするかということでいろいろ苦労する中で、これからまだお地元の御同意を得なければならない、またその前の調査もいろいろありますけれども、今アイデアとして出てきているのが海上施設である。これを追求するということになっておりますが、これは面積的にもそれを縮小するのには効果もございますし、それと同時に固定化も回避するといった点の考慮もあるというのは、委員指摘のとおりでございます。  それから、兵力の削減につきましては、従来もいろいろな格好で実態的には減少してきております。しかし、現時点においては、全体として、沖縄の駐留米軍も含めて、現在の日本にございます米軍のレベルはこれをこういうふうに将来削減しますということは申し上げられないような状況でもございますけれども、将来に向かって国際情勢が変化してくればこれはいろいろなことが考えられるわけでございますし、また、日本政府としても国際情勢の好ましい方向への変化に向かって努力をしていくということは当然である、こう考える次第でございます。
  27. 下地幹郎

    ○下地委員 沖縄県のきのうの県議会で、社会党の方の質問に対して、SACOの報告について、改めて無条件返還か県外移設を働きかける意思はというふうな質問に対して大田知事が、安保を堅持する国の立場から無条件返還を求めることは難しいというふうなお話でございます。まさに私は現実的な対応だというふうに高く評価をするわけでございますけれども、私どもは大田知事のこの答弁、そして今の外務大臣の答弁、自信を持って沖縄問題を毅然とした形で進めていただきたい、そして大きな耳を持って沖縄県民の心にこたえていただきたいということをお話しさせていただきまして、時間ですので終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。     〔福田委員長代理退席、委員長着席〕
  28. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 松沢成文君。
  29. 松沢成文

    ○松沢委員 新進党の松沢成文でございます。  まず質問の前に、昨日、中国の鄧小平氏がお亡くなりになったという情報が入りまして、今大使館の方では弔問も受け付けているということでありますけれども、中国の国家建設、特に近代化路線、改革・開放路線を貫いて中国の国家建設に大きな貢献のあった鄧小平さんの死に、心より哀悼の意を表したいと思います。  そこで、まず外務大臣に伺いたいのですけれども、この中国の鄧小平氏の逝去が中国の今後の政治、経済、社会にどのような影響を与えるとお考えなのか、お伺いしたいと思います。
  30. 池田行彦

    池田国務大臣 長年にわたり中国の最高指導者としてその近代化路線をリードしてこられました鄧小平氏の御逝去は、これは中国にとってはもとよりでございますけれども、我が国、日中関係にとってもあるいは我が国を含む国際社会全体にとっても大変大きな損失でございまして、心から哀悼の意をささげるものでございます。  さて、鄧小平氏の御逝去が中国の今後に与える影響いかんという御質問でございますけれども、御承知のとおり、鄧小平氏、かなり前から体調を崩され、あるいはその前から政治の第一線は退いておられました。そしてまた、その後をどうするか、後の政治体制をということにつきましては、鄧小平氏自身も早くから心を砕かれ、またいろいろなこともございまして、現在既に、いわば後継の体制と申しましょうか、そういったものはほぼきちんと固まっておる、こういうふうに見ていいのじゃないかと存ずる次第でございます。  それから、鄧小平氏も御高齢でもあり、まだかなり前から体調もすぐれておられなかったということでございますので、今回のことは織り込み済みと言ってはいけないのでございましょう、残念なことではあるけれども、いずれ避けられないものだということで中国の方も皆さん考えておられたのではないかと思います。  そういったことで、きのうからきょうにかけましても、中国の各界の反応というのは大体冷静に受けとめておられると思いますので、これから中国の政治あるいは経済の面におきましても、今回のことが格別の大きな影響を与えるとは思いません。鄧小平氏がリードしてこられました改革・開放路線というものは中国の基本的な路線としてきちんと定着されておりますし、これを江沢民氏を中心とする現在の指導体制が今後とも推進していくことを期待しております。  もとよりことしは香港の返還とか秋の党大会というような大きなこともございますから、中国にとっても非常に大切に、大事に政治も経済も運営していかなくてはいけない年ではあると思いますけれども、しかし、今回の御逝去が格別の大きな影響を与えるとは見ていないところでございます。それは日中関係についても同様でございます。
  31. 松沢成文

    ○松沢委員 わかりました。  次に、沖縄の駐留軍用地の問題についてお伺いをしたいのですけれども、ことしの五月十四日に、現在政府が駐留軍用地特措法に基づいて使用している土地、十二施設、三千八十五名、延べ面積三十六・三ヘクタールの土地の使用期限が切れるということであります。  政府はこれまで、沖縄の土地収用委員会に対して土地使用権原を得るための裁決申請手続というのを進めている。昨年の十一月十四日にその審理開始の決定通知が行われて、本日、第一回目の公開審理が行われ、第二回の公開審理が三月十二日に予定されている、こういう流れだと思います。  しかし、使用期限の切れる五月十四日にはもう間に合わないというのは、これまでの事例を見ていてもほぼ明らかではないかと思います。これまで昭和六十二年、あと平成四年、これを見ましても半年から一年間かかっているわけでありまして、その五月の期限を考えると、遅くとも二月中、今月中に政府として六カ月間の緊急使用の申し立てをする必要があると考えますけれども、まず、政府はこの緊急使用の申し立てを行うのか、また、行うとしたらいつ決断するのか、お伺いしたいと思います。
  32. 野津研二

    ○野津説明員 御説明申し上げます。  ただいま御質問の沖縄におきます土地の使用権原取得の問題でございます。ただいま駐留軍特措法に基づきますところの手続をとっておりますが、期限までにその手続を終了するために、今、 日程的に非常に厳しい状況になっているということは、今先生御指摘のとおりでございます。  ただ、私ども現在の政府立場といたしましては、総理も本会議あるいは予算委員会等でたびたび御答弁されていますように、今、収用委員会の方の審理が始まろうとしているわけでございまして、今出している裁決申請に基づく裁決手続、その他必要な手続が五月十四日までに終了して、期限までに手続を終えることを期待するということで、収用委員会におきますところの手続が円滑、迅速に行われる、また私どもとしても関係者に協力を求め、最大限の努力をしていくということでございます。  まさにきょう第一回の公開審理があるわけでございまして、これから審理が始まるということでございますので、現時点におきましては、今申し上げた以上のようなことは考えてなくて、とにかく収用委員会で手続を円滑に進めていただきたい、そういう立場でございます。
  33. 松沢成文

    ○松沢委員 ほぼ間に合わないのが確実なのですが、とにかく円滑に進めていただきたい、こういうことですね。  政府は一方、現在、米軍用地特措法を改正して、土地収用委員会の審理中は自動的に継続の使用が認められるような新たな特措法改正を考えている、これはもう内外に明らかになっているところであります。  国が一方で緊急使用の手続をとって、県の収用委員会がその判断を示すまでの間に、これは楚辺通信所の件でもありましたけれども、他方で法律を改正して自動的に継続使用を認めさせようとするということは、同時進行することはかなり行政行為としてはむだがあると思うのです。また緊急使用の手続も入るか決めてないということでありますが、私は、もう間に合わないのはほぼ確実だと思いますから、緊急使用をするかあるいは法改正をするか、このどちらかの措置をとらなければいけないと思うのですけれども、この両者を同時にやるということは矛盾するわけでありまして、もし緊急使用の申請をしたとすると、結論が出るまでは法改正はできなくなる。これはあくまでも順番にやっていかなければいけないものであると私は考えますけれども、いかがでしょうか。
  34. 野津研二

    ○野津説明員 駐留軍用地特措法に基づきます手続のあり方について、従来からいろいろ政府としても勉強しているということは申し上げておりますけれども、また最近いろいろな報道が出ておりますけれども、現在の政府の考えというのは先ほど申し上げたところでございまして、それ以上のことを政府として決めたという段階にはまだ至っておりません。
  35. 松沢成文

    ○松沢委員 決めたか決めていないかという質問ではなくて、もし緊急使用の手続を申請すれば、その結論が出るまでは新たなる法改正はできないのではないかと思うのですがいかが、こういう質問であります。
  36. 野津研二

    ○野津説明員 繰り返しになりますけれども、現在はとにかく、きょうから始まる公開審理を含め、手続が順調、円滑に行って期限まで間に合うということを期待するということでございまして、それ以上、今御指摘のような観点からどういう場合はどうとか、そういうことについて、私どもまだそういうところについて考えているという状況ではございません。
  37. 松沢成文

    ○松沢委員 なかなか質問が進みませんけれども、例えば、新聞情報ですけれども、二月十九日の毎日新聞においては、「緊急使用は申し立てず」ということで、法改正の方向でいくというような政府内での検討があるという記事が出ているわけですね。一方、二月十九日のこれは産経新聞だと思うのですけれども、やはり緊急使用の申し立てをやっていくべきだけれども、今は審理が始まったばかりで難しい、来月に持ち越していこうというような記事も出ているわけですね。  もう五月十五日までには、収用委員会皆さんの意見を聞いても、ほとんどの方が悲観的で、まず難しい、これはいろいろなところが聞き込みをやっておりますが、出ているわけですね。新聞でもこういう形で二つの意見が出てしまっているわけですね。  これはやはり政府としてどういう方向でいくのか、もう決めていかないと間に合わないわけでありますし、五月十四日までに裁決していただくように私たちは見守るだけですと言っているのでは済まないのじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
  38. 野津研二

    ○野津説明員 五月十四日までにすべての手続を終了するということが非常に日程的に厳しい状況にあるということはもう御指摘のとおり、私どもも十分認識しているところでございますけれども、やはり私どもとしては、そういうことを期待して何とか間に合うようにお願いしたいということを申し上げているわけでございまして、きょう第一回目の公開審理でございますので、きょう時点ではそれ以上のことを申し上げられないということも御理解をいただきたいと思います。
  39. 松沢成文

    ○松沢委員 外務大臣、お座りでありますから、ちょっと政治家の立場で、政治判断というのが必要だと思う件なのでお聞きしたいのですけれども、五月十五日までにこれは裁決はもうほぼ間に合わない、収用委員会皆さんも悲観的な意見を出されている、よほどのことが沖縄に、県民をあっと言わせるような沖縄の基地問題に対する進展がない限りほぼ難しい、ほぼというか、ほとんど一〇〇%難しい状況にあると思うのですね。  そこで、この問題をクリアするためには、緊急使用をするのか、申し立てをしてまずそれでいくのか、それとも特措法をもう一度改正して、強制使用というか、さらなる使用継続を法改正によってやっていく方向でいくのか、あと二カ月、三カ月しかないわけですから、もうこれを決めなければいけない時期に来ている。今までの例を見ても、半年、一年かかっているわけです。  こういう状況の中で、やはり政治判断が必要だと思いますけれども、外務大臣はどちらの方向でいくのが望ましいと思われますか。
  40. 池田行彦

    池田国務大臣 この問題につきましては、沖縄県との信頼関係の中で、知事さんに公告縦覧の手続への御協力も賜り、そして文字どおりきょう公開審理が行われる、こういう状況であるわけでございます。先ほど来委員がいろいろおっしゃいますように、非常に時間的にも厳しい状況にあることはよく認識しておりますけれども、しかし同時に、今行われている手続が何とか順調に進行いたしまして望ましい解決が得られるようにと、これが今政府が願っているところでございまして、こういったタイミングでもございます。  時間的に、物理的にこうなのではないか、理論的にどうなんだという御質問ではございますけれども、物事を何とか解決に導くといった立場からは、先ほど申しましたように、今進められている収用委員会の手続が本当に促進されて道が開けてくることを願う、こういうことを申し上げるほかないということを御理解賜りたいと思います。
  41. 松沢成文

    ○松沢委員 これ以上質問してもなかなか進展がないと思いますので、次の問題に入ります。  先ほども話題になっておりましたSACOの最終報告の中に、普天間基地の返還、それとその代替施設として、東海岸というのでしょうか、キャンプ・シュワブ沖の海上施設案というのが示されておりますけれども、まずこの海上施設案、さまざまな新聞報道がありますが、どこにどのようなものをどういう形でつくるのか、今政府が検討している範囲で、わかっている範囲でお示しをいただきたいと思います。
  42. 大古和雄

    ○大古説明員 お答えいたします。  普天間飛行場の代替ヘリポートとしての海上施設のお尋ねでございますが、これは今までの日米間の検討で、基本的には沖縄県の東海岸沖に建設するのが適当だろうということと、それからその工法につきましては、くい式桟橋方式、それからポンツーン方式、それからセミサブ方式、この三つにつきまして基本的に技術的には可能だという結論を得ておりまして、この点が去年の十二月二日のSACO最終報告に記述されたということでございます。
  43. 松沢成文

    ○松沢委員 私、よく想像できないのですが、ヘリポートですから、ヘリポートというかヘリコプター用の滑走路ということなんですけれども、どれくらいの大きさで、いろいろ方式があるようですが、大体どれくらい建設費というのは見込まれるものなのか、これは大まかなことしか言えないと思います、これからいろいろ設計したりあるのかもしれませんが、その辺についてはいかがでしょうか。
  44. 大古和雄

    ○大古説明員 お答えいたします。  まず規模の方でございますが、大体千五百メートルくらいの長さのものであれば米軍の運用を充足できるであろうという見積もりをしております。  それから、経費のお尋ねにつきましては、まだ具体的設置場所が決まっておりませんので、細部にわたる見積もりはできませんけれども、今までの検討の中では、例えばくい式桟橋方式、それからポンツーン方式につきましては、約数千億円程度ということで考えております。セミサブ方式については、これよりかなり経費はかかるであろう、こういうふうに見積もっております。
  45. 松沢成文

    ○松沢委員 先日我が党の沖縄問題調査団というのが沖縄に参りまして、地元の皆さんとお会いしてきた。市町村の皆さんあるいは漁業組合の皆さんとお会いしてきてお話を聞いたそうなんですが、ここは台風銀座とも言われる非常に自然条件の厳しいところでありますね。海上浮体施設という大きなものをつくると、恐らく塩害ですとかこういう環境上の心配かなり予想されるということで、地元の皆さんお話ですと、本当にそんなものがつくれるのか、そしてまた、つくるとしたら膨大なお金がかかってしまって、そういうものの負担に国民の納得が得られるのか、こういう心配もなさっておりましたけれども、そのあたりについてはいかがお考えでしょうか。
  46. 大古和雄

    ○大古説明員 今の御指摘の点については、我々の検討といたしましては、基本的には、沖縄の海洋特性を踏まえて技術的に検討いたしたわけでございます。その結果、基本的には、先ほど申しました三つの工法については技術的に可能であるという結論を得ております。  ただ、現実には、今調査水域としてキャンプ・シュワブ沖ということで地元にもいろいろお願いしておりますけれども、現実に、実際に施工する海域の状況なり調べて、そういうことでないと技術的な細部事項についてはまだ見込めないというふうに考えております。
  47. 松沢成文

    ○松沢委員 この浮体施設をつくるには、恐らく期間も相当かかると思うのですね。それで、地元市町村との交渉も全く進んでいない、提案してもとんでもない話だということで、今は断られているという状況で、県もなかなか、ほとんど動いていませんね。こういう状況交渉あるいは建設に、もしやるとしても十年あるいはそれ以上の時間がかかる可能性があると私は思うのですね。  そうしますと、今後五年なり十年なり、極東の安全保障体制の変化、例えば沖縄の海兵隊はいろいろ機能はあると思いますけれども、一つは朝鮮半島有事にも対応できる、こういう機動力を持ったものということでありますが、例えば朝鮮半島の状況がいい方向に進展して沖縄の海兵隊が今のように必要でなくなる、こういうことも予想ができるわけですね。数年後、十年後かわかりませんが、できたときにはもう莫大な国民の税金をつぎ込んでつくったものが無用の長物となるという可能性も指摘をされておりますけれども、防衛施設庁はいかがお考えでしょうか。  外務大臣、お願いします。
  48. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいまの御質問は、基地の実務にかかわる施設庁でなくて、外務省の方から御答弁申し上げるのが適切かと存じます。  私どもといたしましても、それは将来にわたって、我が国の周辺の国際情勢、とりわけ安全保障環境が改善していって、我が国としての安全を守っていく体制にいろいろな影響があり得るということは、これは十分承知しております。それだけではなくて、私ども、あらゆる外交努力を傾けまして、みずからもそのような好ましい国際情勢我が国の周辺で具現化するように努力をしなくてはいけない、そう考えております。  しかしながら、現時点で考えます限り、現在沖縄に駐留するものも含めまして、この日本あるいはこのアジア太平洋地域におります米軍のプレゼンスというものが、我が国の平和あるいはこの地域の安定を確保する上で必須だ、こう考えておるわけでございますし、先ほどのように、また将来にわたって変化はあり得るし、それを、好ましい変化をつくるために努力もすると申しましたが、しからば一体、どの時点でどういった程度の変化が期待されるということは、申し上げられるような状態にございません。  ましてや、その変化に伴って、例えば我が国の自衛隊なりあるいは駐留米軍にどういう変化が可能になるかということは、とても申し上げられる状態ではございません。そういう状態であれば、やはり現時点の実情を踏まえ、またそれを前提にした近い将来の安全保障を守っていくための体制という観点から、その基地の問題にも対応していくべきことだ、こう考える次第でございます。  それで、委員は、むだになるじゃないかという話でございますけれども、考えようによりましては、もし現在のそういったもくろみは外れてむだになるということがあれば、それは、そろばん勘定だけではなくて総合的に日本の国民生活全体の安全だとかあるいは安定、繁栄という観点から考えれば、必ずしも悪いことばかりではないんじゃないかこう考える次第でございます。
  49. 松沢成文

    ○松沢委員 SACOの報告で普天間飛行場の返還、それでこの海上浮体施設案という方向にいきなり結論が来てしまっているんですけれども、普天間飛行場を返還するのであれば、沖縄の海兵隊の必要性ということを考えれば、沖縄の中でどこか代替の施設を探さなければいけない、残念ながらそういう方向で来たと思うんですね、検討は。そこで、沖縄県民あるいは日本国民を、じゃ代替基地をつくるということを納得させるためには、幾つかの選択肢があって、そのうちのこれが最もいいから海上浮体施設に来たんだという議論がなければ、それは近隣の市町村の皆さんも納得できないと私は思うんですね。  私は、昨年のゴールデンウイークぐらいでしたか、やはり沖縄に視察に行きましたときに、そのときにまことしやかに言われていたのは、まず嘉手納飛行場の中に代替施設をつくれないかという議論でありました。それは、米軍の方にお聞きしましたら、飛行機の滑走とヘリコプターが一緒になると危険が多いんだとか、いろいろ米軍の方からは意見が出ておりましたけれども、あるいはその後、嘉手納弾薬庫ですか、あちらの方へ移設できないかとか、それで沖縄県内にも幾つかの選択肢があって、ここでやるとしたらこういう危険性がある、ここでやるとしたらコストはこれぐらいかかる、ここでやるとしたら地元の市町村の対話はできそうだ、いろいろ選択肢がある中で、やはり海上浮体施設、東海岸につくるしかないんだという結論が導き出されていれば、これはまだ日本国民も沖縄県民も、なるほどそういう経緯で来たのか、これしかないなというふうになると思うんですね。ところが、間の議論が全然抜けていて、私たちわからない。いきなり代替施設は海上浮体施設でいきますよという、何か天から降ってきたような結論になっているわけですね。  これはSACOの中の議論かもしれませんが、今政府の方が把握している中で幾つかの候補地があって、そこの比較検討をされたのか、その内容についてお聞きしたいと思うんです。
  50. 池田行彦

    池田国務大臣 それは文字どおり、SACOにおきましてはそういう議論をしたわけでございまして、普天間飛行場の持っている能力なり機能というものを維持しながら、それが沖縄の県民の方々に対する、代替施設もいろいろな影響もあり得るわけでございますから、その影響はどうなるかというようなことからいろいろ考えていった。そのときに選択肢として考えましたのは、文字どおり、今委員が御指摘になりましたキャンプ・ シュワブへの移転というものやあるいは嘉手納飛行場への集約という問題、そうしてこの海上施設というこの三つの案を中心にSACOでいろいろ討議したわけでございます。  そういった中で、先ほど申しました能力、機能の維持の面とそれから沖縄の住民の方々あるいは環境に与え得る影響、そういったもの等々比較考量いたしまして、この海上施設案を推進することが最善である、ベストであるという結論に達した、こういうことでございます。ベストと言ってはあるいは沖縄県民の方々に対してはいけないのかもしれません。  いずれにしても、影響、御負担が残るとするならば、かつて大平さんがよくレス・ワーストなんという言葉を使いましたけれども、そのマイナス面が最も少ないということでいえばリースト・ワーストというのでございましょうか、そういうことでこの海上施設案を目下追求しよう、こういうことにしているわけでございます。
  51. 松沢成文

    ○松沢委員 SACOの中でそういう幾つかの候補地の比較検討をされたということですが、その比較検討の資料は出せますでしょうか。
  52. 大古和雄

    ○大古説明員 お答えいたします。  今御指摘の点ですが、SACOの検討の中では、当初、議員の御指摘のとおり、嘉手納基地集約案、それからキャンプ・シュワブ案、それから海上施設案について種々検討をいたしました。SACOの結論といたしましては、海上施設案が地元に対する騒音等の面での負担を軽減するということと、その必要が生じた場合には撤去可能であるという観点から、海上施設案を選定した経緯がございます。  そういう中で、種々検討はいたしておりますけれども、必ずしもこの海上施設案が費用対効果が悪いというふうな感じでは考えておりません。ただ、今の御指摘の点についての費用面なりにつきましては、細部にわたる検討はいたしておりませんので、先生御指摘のように資料の提出については、そうするようなものは、固まったものはあるわけではないということで御理解いただきたいと思うのです。
  53. 松沢成文

    ○松沢委員 この沖縄の基地問題を沖縄県民の理解を得て、解決というのは難しいと思いますが、いい方向に進展させるには、やはり沖縄の海兵隊をできる限り今後とも削減、縮小するという議論も私はしていかなければいけないと思うのです。もちろん日米安全保障条約の重要性は私はわかっていると思いますし、また沖縄における米軍基地のアジアの安全保障の中での重要性、これもわかっているつもりであります。だがしかし、沖縄の皆さんにこの基地使用の、先ほどの特別立法等々の問題もありますが、こうした面で理解をいただくには、政府としてやはりアメリカとも兵力削減、沖縄の基地のあり方について原点から話し合うという方向を見せなければ、なかなか私は難しいと思うのです。  そこで、お伺いしたいのですけれども、アメリカの方はことしの二月に、四年に一度行われる、防衛に関する専門家委員会というのでしょうか私はよく訳し方がわからないのですけれども、それが開かれていて、在日兵力あるいはアジアの十万人体制あるいは日本の四万五千人体制、この兵力の見直しを検討するという作業をやっていて、五月の十五日までにそれを連邦議会の方に報告する、こういうことをやっていると聞いているのですが、それは日本政府としては把握をされてますでしょうか。
  54. 池田行彦

    池田国務大臣 承知しております。いわゆるQDRというものでございますけれども、これは四年ごとに、米国政府としてどういうふうな防衛体制でいくかという、これは何も日本関係だけじゃございません、全世界について検討するという、そういうものでございます。五月十五日がその提出の期限と伺っています。
  55. 松沢成文

    ○松沢委員 アメリカがこういう形で兵力削減の検討をしている。私は、我が日本も、アメリカがつくる兵力の計画、アメリカがつくったんだからこれに従うというだけではなくて、日本側もアメリカのようにこういう専門家委員会をつくって、極東における安全保障体制を維持するにはアメリカの兵力はどれくらい必要だ、あるいは沖縄の基地はどうすべきか、こういう問題を日本側も議論をする、そういう機関を設けて、アメリカと同時並行に進めて、そしてアメリカの考え、日本の考えをお互いに議論し合って、両国で安保条約も結んでいるわけですから、そこで兵力の問題についてもテーブルにのせて、こちらからも積極的に議論をするという方向が私は二国間の関係の中で必要だと思うのですけれども、外務大臣、いかがでしょうか。
  56. 池田行彦

    池田国務大臣 まず誤解を避けておきたいのでございますけれども、QDRは、何も日本における米軍の駐留の規模を削減する、そのための検討というようなものではございません。米国といたしまして、国防政策、そしてその計画をずっと持っておる、それを四年ごとに一応全部見直す、見直すというのはチェックするという、こういうことでございます。  そして、日本あるいは日本を含むアジア太平洋地域について今回のQDRが一体どうなるか、こういうことでございますけれども、まず前提として、日本にございます米軍も含めましてアジア太平洋地域に現在米軍は約十万人のレベルでプレゼンスがございますけれども、これは現在のこの地域の国際情勢から考えて必要である、このことは米政府が繰り返し明らかにしております。  例えば、昨年の四月の日米首脳会談の際の安全保障宣言において、あるいは昨年の秋のオーストラリアの議会でのクリントン大統領の演説において、あるいは昨年の、これはやはり東京で行われましたいわゆる2プラス2の際の当時のペリー国防長官の談話において。したがいまして、現在の日本に駐留する米軍の兵力構成あるいはレベルも含めての、そしてアジア太平洋地域の米軍のプレゼンスというものを前提として、この基本は変わらないのだ、その上で一体どういうことがあり得るかということをチェックしようというのが今回のQDRのこの日本あるいはアジア太平洋地域に関する取り組みの姿勢でございますので、これは何も削減していこうということじゃないということでございます。  そのことは、ことしになりましてからも、私ども、外交ルートあるいはその他いろいろなことで確認しております。だから、そういったことでございますので、今アメリカがQDRで在日米軍等の削減を考えようとしているのじゃない、検討しているのじゃないということをまず御理解いただきたいと思います。  そして、しかしながら将来に向かって情勢が変化したらどうなるかということは、繰り返し御答弁申し上げておりますように、日本としても、それはいろいろあり得るだろう、変化はあり得る、そしてそれだけではなくて、好ましい方向への変化が可能になるような外交努力も展開してまいります、こういうふうに申し上げているわけでございます。  さらに具体酌には、昨年の四月の日米安保共同宣言の中にも明確に、そういったことについても、我が国における兵力構成も含めていろいろなことについて今後日米間でも協議していこうという、そういうことが明記されているわけでございますので、何も米国が一方的に決めて、我が方はそれをうのみにする、追随しているというわけじゃございません。我が国我が国として、国の安全を守るためにどうすればいいか、これは自衛隊その他も含めて、あるいは外交努力も含めていろいろ考えながら、そういった中で日米協議もしていく、こういうことでございます。
  57. 松沢成文

    ○松沢委員 我が党が沖縄に行きました中で、もう一つ提案をさせていただいているのですが、これは沖縄の基地問題、いろいろもめていますけれども、その解決に向けて、例えば沖縄県の知事や副知事がアメリカに行って陳情する、あるいは日本政府に来て陳情する、こういうような沖縄から出ていって陳情するというスタイルでずっと来たわけですね。なかなか進展を見ない。私は、逆 に沖縄から、沖縄の基地のあり方あるいは極東の安全保障のあり方、これを沖縄で議論し、それを世界に発信するという方向、これは極めて重要だと思うのです。  そこで、例えば米国、日本の軍事外交の専門家を沖縄に集めて、そして沖縄で極東情勢の分析や兵力のあり方等々も議論をする国際セミナーみたいなものを開いて、沖縄から沖縄のあり方を発信するという方向が私は必要だと思うのです。こうしたセミナーを開催する提案を我が党としてさせていただいたのですが、例えば政府がこういうセミナーに協力をしてくれる、協賛をしてくれる、そういう考え方はないでしょうか。
  58. 池田行彦

    池田国務大臣 これからの沖縄を考えていく場合に、沖縄自体の振興のためにいろいろ国内的にも施策を講じていくということが肝心でございますし、大切でございますが、一方において沖縄の置かれた地理的あるいはその他いろいろな条件を考えますと、沖縄と国際社会とのいろいろな面でのかかわり、これは沖縄のあすを考える上において非常に大切なことだと思っております。  そういった意味で、政府といたしましても、いろいろな分野についての新しいプロジェクトであるとか、あるいは施設なんかも、沖縄に国際的な活動をするところをつくったらどうだろうかとか、あるいはセミナーその他の国際会議なども沖縄で開かれるということは非常に好ましいことだ、こういうふうに考えておりまして、もとより民間のイニシアチブによって進められるものもございましょうし、政府主導のものあるいは国際機関主導のもの、いろいろなものがあり得るのだろうと思います。外務省としても、そのようなことをいろいろ考えております。  ただ、今御指摘の安全保障面についてどうだ、しかもそれについての政府の支援はどうだということになりますとこれはまたいろいろ、どういうふうな性格のものをお考えになっておられるのか、あるいは、そのことについて沖縄の県が、あるいは沖縄の住民の方々が一体どういうふうにお考えになるだろうか、そういったいろいろな要素も考えながら、特に政府の支援ということになれば、いろいろなことを考えなくちゃいけないのだと思います。
  59. 松沢成文

    ○松沢委員 次の質問に行きたいと思うのですけれども、北朝鮮の黄長燁というんでしょうか黄長燁書記の亡命事件並びに北朝鮮と日本の問題についてお聞きしたいと思うのですけれども、政府のこれまでにない極めて大物の方の亡命ということでありますけれども、この貴書記は北京で亡命されたわけですが、その前日本に来られていたわけですね。日本政府は、この日本の貴書記の滞在中に亡命の動き、亡命があるかもしれないというような情報はキャッチされていたでしょうか。
  60. 池田行彦

    池田国務大臣 今回の亡命事件、その発生前に貴書記が日本で滞在しておられたわけでございますけれども、これは民間の団体の招待によるものでございまして、政府関係者は一切接触をしておりません。そういう事情でございますし、それから、亡命の動きがある等々の情報を承知しておったとは承知しておりません。
  61. 松沢成文

    ○松沢委員 外務大臣、この貴書記、大物政治家が亡命に至った背景というのでしょうか、大きな質問ですけれども、北朝鮮の中でどういう様相があってこの貴書記の亡命に至ったか、その辺は外務省はどんなふうに推測をされておりますか。
  62. 池田行彦

    池田国務大臣 これはなかなかこうであろうと申し上げるのは難しゅうございますし、必ずしも私の立場で御答弁するのが、申し上げるのがいいのか悪いのか、こういう感じもいたしますけれども、基本的に申しまして、北朝鮮、今大変な苦境にございます。経済的にもそうでございますし、政治的にもあるいは国際上においても非常に難しい状況にあって、しかも、将来に向かってどういうふうな道が開けているか、なかなかそれも確定しにくい状況にあるのじゃないかと推測するわけでございます。  そういった中で、今回亡命された貴書記でございますが、長年にわたって北朝鮮の指導者の一人として、とりわけ思想的な面での中心的な存在として役割を果たしてこられたと承知しておりますが、今日の北朝鮮の現状と未来への展望のなさ、そういったものの中で、自分のこれまでの果たしてきた役割は一体どうだったんだろうかというようなことについて、いろいろそれは悩みもあったんだと思います。  それと同時にまた、金日成体制から金正日体制への移行というのがいろいろ言われておりますけれども、ことしはいよいよ三年喪も明けて、また体制にいろいろ変化があるんじゃないかと言われておりますけれども、そういったプロセスの中で貴書記自身立場がどうなるんだろうか、あるいはその中で、そういった変動の中で、国内にいることによってどういう役割が果たし得るのか得ないのかと、いろいろな悩みがあったのではないかと推測するわけでございます。これはエスティメートでございません、せいぜいゲスティメートでございます。
  63. 松沢成文

    ○松沢委員 今外務大臣のお言葉の中にも少しニュアンスがありましたけれども、北朝鮮の権力中枢における権力闘争、これに敗れて、もうこれ以上いることはできないという判断で亡命された。貴書記の手記というんですか、お手紙にも少しあらわれておりますけれども、大臣は、この北朝鮮の権力中枢におけるいわゆる穏健派と強硬派というんでしょうか、こういう形の、穏健派というのはできるだけ開放を進めていこう、中国や韓国、アメリカ、日本ともできるだけ広くおつき合いをして、その中で援助を引き出したり、そういう開放型ですね。逆に強硬派というのは対韓、対米強硬路線というような権力闘争があって、その中で穏健派である貴書記が敗れて亡命をしてきた、こういう見方もマスコミ等々でなされておりますけれども、外務大臣はこの辺はいかがお考えでしょうか。
  64. 池田行彦

    池田国務大臣 なかなか内情のうかがい知ることが難しい国でございます。それからまた、穏健派、強硬派と申しましても、やはり他の国々におけるそういった言葉であらわされるような勢力とはまた違った面もあろうかと思いますけれども、それにいたしましても、国際社会とのかかわりをどういうふうに見ていくかということについて、今回亡命された方は、これまでもいろいろな接触の多い方でございましたから、国際社会の実情もよく承知しておられ、そういったことの関係について比較的柔軟性に富んだ対応を考えておられたんじゃないかと思いますけれども、そういった方がこういった、国内にあって役割を果たしていくことが難しくなったという情勢というものは、北朝鮮の体制全体としてやはり、何といいましょうか強硬派と言うべきなのか、あるいは国際社会との調整について余り、比較的積極的でない勢力が相対的に力を増してくるおそれはあるのかなという感じもいたします。
  65. 松沢成文

    ○松沢委員 もうちょっと視点を変えて言いますと、この前の金正日さんの五十五歳の誕生日の二月十五日の祝賀報告会ですか、この中の発表文の中に、軍隊がまさに人民であり国家であり党だという、非常に軍の強調ぶりというか特筆ぶりが目立ったんですね。それで、貴書記も手記の中にそういう表現をされていますし、もはやこの事態を解決するのはもう戦争によるしかないかもしれないということまで言っているのですね。本来、社会主義国家というのは、党がすべて軍も政府も指導して、前衛の党がすべての中心に置かれるわけですが、こういう表現を見ていますと、かなり軍が台頭してきて軍事国家的な色彩が強まったというふうに見ることができると思うのですけれども、外務大臣、どうお考えでしょうか。
  66. 池田行彦

    池田国務大臣 それは軍の立場の相対的な高まりという見方もあり得ると思いますけれども、それからまた、先ほど申しましたように、比較的国際感覚があるというか、そういった勢力の退潮ということもあり得るかとは私も申しましたけれども、一方において、こういうことも言えるんだと思いますね。今回の亡命事件が起こりまして、北朝鮮の対応どうか、反応どうかと、こう見ました ときに、国際社会全般がこれまでのあの国のビヘービアから考えて予期した反応に比べれば、比較的穏やかといいましょうか、そういう反応であった。反発がそれほど激烈でなかったということもございますし、例えばKEDOのプロセスはそのまま続けていこうという状況にはございますし、あるいは、いわゆる四者協議、これはまだ始まってはいないわけでございますが、四者協議のプロセスがぴしっと遮断されることもあり得るんじゃないかという観測もありましたけれども、今のところそれはそれとして、直接には影響させないというような様子であるということを見ますと、北朝鮮の中でのいろいろな勢力争い、あるいはその拮抗関係もさることながら、全体として非常に追い込まれる中で、必ずしも、今委員があるいは危惧しておられるかもしれない、軍がぐうっと強くなってその意向だけで動くという要素だけではない。追い詰められて、やはりこれは少し国際社会との関係を調整しなくちゃいけないなという考えもあるのじゃないかということが、今回の亡命事件を通じての反応の中にもうかがえるという、その両方の要素があると思います。いずれにしても、これは大きな関心を持って注視していかなくちゃいけない国でございます。
  67. 松沢成文

    ○松沢委員 そういう中で、先ほども話題になっておりましたけれども、北朝鮮の食糧事情が大変厳しい、報道によると飢餓で亡くなる方も出ているという状況の中で、昨年に引き続き、WFPの食糧援助をやってほしいという要請が出ているわけですね。そこで、先ほど、アメリカから一千万ドル、韓国からは六百万ドルがほぼ決まった、そういう中で日本はどうするのかという質問であったわけなのですけれども、現状では、日本はまだ決めていないということでありますね。  そういう中で、先ほどの鈴木委員の質問と重複するのですけれども、この日朝間には、拉致事件疑惑、あるいは帰国事業で帰った日本人妻の帰国要望があるにもかかわらずそれが実現しない、こういう問題がたくさんあるわけですね。  まずお聞きしたいのですけれども、この拉致事件というのはどれぐらいこれまでにあって、どれくらいの方がその疑惑の中にいるのか、また、帰国事業に参加された日本人妻の方はどれぐらいとなるのか、その辺の数字をまず出していただけますか。
  68. 米村敏朗

    ○米村説明員 お答えいたします。  私どもの方から拉致事件の、拉致の疑いのある事件、北朝鮮による拉致の疑いのある事件は、これまでに少なくとも六件九名、また拉致が未遂であったと思われるものは一件二名、こういうふうに認識しております。
  69. 松沢成文

    ○松沢委員 日本人妻の方はわかりますか。
  70. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 申しわけありません。  当初の段階と現在の段階で数字の出入りというか、むしろ減少ということがあろうかと思いますけれども、数字は追って御連絡申し上げます。
  71. 松沢成文

    ○松沢委員 確かに、私は、北朝鮮をソフトランディングさせて、できるだけ極端なことが起きないように導くというのは大変重要だと思いますし、それには、今大変食糧難で困っているわけですから、国際社会ができる限りのことをしてあげるという人道目的の援助、これに反対するわけじゃないのですけれども、やはり我が国にも北朝鮮に拉致されたという、韓国への亡命者等々から、ほぼ確実だと思われている方が、まだ疑惑が何人もあって、また日本人妻が北朝鮮に行って帰国を希望しているのにほとんど帰れない状況、こういう状況があって、果たしてこういう人たちの人権というのはどうなるのだろうか。これは大変難しい問題だと思いますが、食糧援助をすることは結構ですけれども、この拉致事件あるいは日本人妻の問題、これを政府として、前回も李恩恵さんの問題を持ち出した途端に交渉が壊れてしまったわけですが、今後北朝鮮とこうした日本人の人権の問題に対して解決のためのチャネルを持つ努力をするという方向は、外務大臣、あるのでしょうか。
  72. 池田行彦

    池田国務大臣 御承知のとおり、日朝の正常化交渉は、李恩恵事件で今どんざしているわけであります。あれは第四回の交渉の際にこちらから提起いたしましたら、向こうが非常に強い反発をし、その後、五回、六回、七回とやるたびに、その問題を中でやるか門前でやるかといろいろ交渉がございましたが、それで結局第八回で、そのことが原因で決裂したままで今日に至っております。  この問題を初めとして、先ほど警察庁から御答弁もございましたように、我が方として掌握しているだけでも九件のそういうものがあるわけですが、北朝鮮の立場は、こういったものへの関与を全然、頭から否定しているわけでございますから、その辺が非常に難しいところがございます。そういうことでもございますので、これからもいろいろ我々も情報は収集をしながら、いろいろそういったことの解決に向かっての努力はしてまいりますけれども、今直接交渉してどうこうという状況には、展望は開きにくいということでございます。  それから、日本人妻の問題につきましても、これまでいろいろな場で北朝鮮側に申し入れをしてまいりました。現時点においても、具体的にどうこうとは申しませんけれども、北朝鮮と日本との間の接触の機会が全くないというわけではございません。これは外交の、いろいろな方々がございますから、具体的に、どこで、いつ、だれがということは従来から御答弁はお許しいただいておりますけれども、細々としたものではあっても、そういう接触の場がないわけではない。そういうところでは、常にこれを提起しながら先方の努力を促しているわけでございます。それに対する反応は、若干進む可能性が出るのかなと見られる場面もないではございませんでしたけれども、基本的には非常にかたい、冷え切った状況で推移しているということでございます。  いずれにしても、今後とも努力はしたいと思います。
  73. 松沢成文

    ○松沢委員 問題なのは、北朝鮮がまだこういう事実を認めていないというところだと思うのですね。  そこで、私も、もちろん米の問題とこの問題を絡ませるというのはよくないことだと思います。しかし、日本の国民の税金として、お金で北朝鮮を援助するわけですから、やはり日本の国民の人権が守られていないという状況の中で、これはかなり国民的には不満も大きいと私は思うのですよ。  そこで、やはり北朝鮮に対して、こういう方々調査、認めていないかもしれないけれども、まず調査はしてほしいということを正式に、援助の前に私は要請すべきだと思うのですけれども、それは政府としてできませんか。
  74. 池田行彦

    池田国務大臣 日本人妻の方については、これまでもいろいろやってきたことは御承知のとおり、御答弁申し上げたとおりでございます。  拉致の方でございますが、それは先方が関与を認めていないわけでございますね。そして、日本としては当然、こういう疑いがある、かなりこれは確実性があるのでということで、文字どおりそういうことを李恩恵のケースについては申し入れた。そして、そのことが原因となって正常化交渉そのものがとんざしているという状況でございますから、我が方のスタンスとしては、姿勢としては、当然、北朝鮮に事情を調べてほしいということを要請するその立場でございますし、それをしたわけでございますし、しているわけでございます。
  75. 松沢成文

    ○松沢委員 今回の米支援の条件と言ってはいけませんけれども、米支援を出す前に、このことを正式にもう一度申し入れるという方向は可能じゃないですか、日本側から。
  76. 池田行彦

    池田国務大臣 今回のWFPのアピールというのは、完全に人道的な立場からする支援の呼びかけでございます。韓国や米国もそういったものとして、それぞれ北朝鮮との間で解決しなくてはいけない件は多々あるのだけれども、そのこととは直接に結びつけずに、これは人道的なものとして出すということで対応しているわけですね。従来、去年のものなんか日本がやったのもそうでござい ますから、直接にこれをリンクするというのは、これはなかなか難しいところがございます。  しかし一方において、いろいろなこういった事件があるということは、状況があるということは、やはり国民の皆様方が北朝鮮に対する支援、幾ら人道的なものといえども釈然としない状況であるということも事実でございますから、そういうところを北朝鮮が一体どう考えるのかなとか、そういうことはあり得ると思いますけれども。
  77. 松沢成文

    ○松沢委員 最後に、国連等の国際機関、人権問題等担当しているところもありますね。こういう機関から、北朝鮮に対して拉致事件等の調査をしていただく、こういう方向は考えられませんか。
  78. 池田行彦

    池田国務大臣 いろいろな可能性は、当然のこととして我々は考えながら、これまでも努力はしてきましたし、これからも対応してまいりますけれども、なかなかそれがうまくワークしないというのがあの国との関係でございます。
  79. 松沢成文

    ○松沢委員 質問を終わります。
  80. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 次に、藤田幸久君。
  81. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 外務大臣にまず御質問いたしますけれども、先ほど冒頭で、鈴木宗男議員の質問の中にもございましたけれども、外交実施体制の強化ということで、増員の要請も今回の予算に出ておりますが、ペルーのああいう事件等、あるいは今の北朝鮮の、あるいは最近の亡命事件を見ましても、やはり海外邦人保護、危機管理体制の強化、あるいは情報機能体制強化ということが非常に重要だと思っております。  私は、最近まで民間の国際機関におりましていろいろな国を回っておりまして、外交官の方々が、非常に過酷な状況の中も含めまして活躍をしておられる状況を見てまいったわけですが、先ほどのお話にも出ておりましたように、非常に日本外交官の数が少ない。五千五名ということですが、アメリカが二万四千人とかフランスが一万二千人。簡単な数字をちょっと取り寄せてみまして、さらにびっくりいたしましたのは、本省職員が千九百五十一名。  たまたまG7の国々の、外務省の職員の本国におる数と、それから外国に出ておる数を見ておりますと、こういう分析の仕方がいいのかどうかわかりませんが、いわゆるアングロサクソン系、アメリカ、イギリス、カナダは、本省職員の方が多いのですね、外国に出ている人間よりも。たまたまフランス、ドイツ、イタリア、日本の場合には、本省職員の方が少ない。外に出ている方の方が多い。日本の場合には、一・五倍ぐらいが外に出ていらっしゃる。ということは、言葉の問題とか、いろいろ日本から出られる方の面倒を見られることが一つの背景かなという気もしないでもないのですが、それで、かねて思っておったのですが、いわゆる日本外交官の方々は、便宜供与を受けるというのが随分多いわけです。  それで、たまたま数字を見てみましたら、平成七年度で、便宜供与を受けた数の合計が三万三千二百二十件、総人数が十五万三千五百九十二名、これに滞在日数を掛けた総延べ人数が七十一万九千九十三名。よく聞く話で、パリの大使館は一夏二百人とかそれからニューヨークとワシントンと足すとゴールデンウイークで百何十名とかいう話を、議員の数だったと思いますが、聞いたことがございます。それで、議員の便宜供与といいますか、外遊件数を平成八年で見てみますと、衆参両院ですけれども八百四十五名、それから件数で五百四十三件。  私はたまたま議員になって二回ほど党の外遊で参りまして、大変ごちそうになったりいたしまして、大変ありがたいのですけれども、これだけ体制が少ない中で、それから冒頭で申し上げましたような在外公館の役割、機能というものの強化が必要な中で、例えば議員に対する便宜供与が減りますと、お金の問題もさることながら、情報収集活動あるいはほかの意味での外交活動に随分割かれる外交官の方が解放されて、少ない中でも、より有効な外交活動ができるのではないかという気がいたしますけれども、お答えづらい質問がと存じますけれども、お答えいただければ幸いです。
  82. 池田行彦

    池田国務大臣 私ども、これだけ日本の経済活動、国際的な活動が経済の面でもあるいはその他の面でもどんどん広がってくる中で、少しでも我が国としてのあるいは日本人としてのいろいろな活動が十分に行われるように、外務省としても努めていく、役割を果たしていくというのはこれは当然だ、こう思っております。そういった意味では、海外にいろいろな用務を持ってお出になります方々のお手伝いをするということも、これはあながち外交活動の邪魔になっているといって排除されるべきものではないと思っております。  とりわけ、議会の先生方の御活動の場合には、そのこと自体が議員活動としてのいろいろな重要な、議員外交としての重要な役割をお持ちになっていることもございますし、そういったときに、在外公館員が御一緒させていただくということを通じて、外務省としても、いろいろ各国政治の世界、その他につながりができるといったこともあるわけでございますので、あながちこれは、いやお荷物になっておりますと申し上げるべきものではないと思っております。  しかし、そこはやはり内容にもより、また程度にもよるのだと思います。これは最近は、先生方の方でも随分派なれておられると申しましょうか、国際的な活動もしておられる方も多うございますから、我々の方がお教えを請うケースもあるわけでございますので、そこのところはお互いに常識的に運んでいくべきものかなと思っております。
  83. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 ありがとうございます。  これは、議員の方の立場から自主的に、例えば公務、党務等々を別にいたしまして、プライベートな性格のものとか、あるいは特に外務省在外公館方々のお忙しい手を煩わせずに済むようなことにつきましては議員の方で、特に外務委員会の方などが理解を深めて、自主的に、可能な限りは自主的にそういったことについては辞退をするといいますか、自粛をするというような動きを議員の側の方で進めていくことも、身近な中から改革に役立つかなという思いを持っておりますし、また折があればほかの議員の皆様にも呼びかけをしていきたいということを申し上げて、この質問は終わりたいと思います。  次に、ODAの質問に移らさせていただきたいと思います。  大臣、ODAということについて、最近、日本にいらっしゃる外国人の方々の中で、ちょっとやゆした言い方で、ODAということについて別の言い方があるのですけれども、お耳にされたことがございますでしょうか。いや、なければ結構なのですが、最近聞いた話で、ODAをもじってお金だけ上げる、外国人の中で言っている方がございまして、そういう言葉が出ること自体残念だというふうに思っておりますけれども、もう一つ、ODAということについて言い方がございまして、お金だけは上げないと言われていることがございます。  それは何かといいますと、いわゆる従軍慰安婦の問題でございまして、私ども一月十二日から、鳩山由紀夫代表を初め、民主党の議員団で韓国へ行ってまいりました。ちょうど大臣が、六時間ですか、ソウル訪問された日程と部分的に重なったわけですけれども、私どもがソウルに参ります前日に、いわゆるアジア女性基金の方から、七名の元従軍慰安婦の方々に基金からの支払いが行われたわけでございます。  この基金そのものにつきましては、原文兵衛理事長初め、前からこういう戦後処理、あるいは現在も傷を抱えておられる方々に対するケアを長い間行ってこられた方々がかかわっておられるということで、私も大変敬意も表しておりましたし、それから、その渡された際に、総理からの手紙が慰安婦の方々に渡されたわけですけれども、非常に突っ込んだ表現をされておられると思います。一部参考までに読ませていただきますと、   いわゆる従軍慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題でございました。私は、日本国の内閣総 理大臣として改めて、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを申し上げます。  我々は、過去の重みからも未来への責任からも逃げるわけにはまいりません。わが国としては、道義的な責任を痛感しつつ、おわびと反省の気持ちを踏まえ、過去の歴史を直視し、正しくこれを後世に伝えるとともに、いわれなき暴力など女性の名誉と尊厳に関わる諸問題にも積極的に取り組んでいかなければならないと考えております。 これは総理自身も内容について深く検討されて使われた言葉だということで、私自身も大変評価をしておるわけでございますけれども、今回、支払いが行われた翌日に参りまして、私ども率直に感じましたことは、この基金あるいは政府方々が大変努力をされ、いろいろな工夫をされてこられた、ただ、そういった思いが慰安婦の方あるいは受け取り国の一般の国民の方々に通じていないということが非常に残念だと感じたわけでございます。  あえて言いますと、受け取り国側の方では、額そのものよりも、やはり日本政府のかかわりがよく見えないということが一つの問題であるようでございます。私ども、お会いをいたしました韓国の指導者の方の中にも、日本政府の方が責任を回避し、あたかも第三者に責任を転嫁しているかのような印象を残念ながら与えてしまっておるというような言葉も聞いておるわけです。  私は、基金そのものの問題よりも、大きく考えまして、日本の法体系あるいは行政の仕組み、さらには政治のリーダーシップが十分でない、そういったもろもろの重荷を一手に負わされて、むしろ板挟みになって苦労されているのが基金の皆さんではないかという感じがしておるわけでございます。それを越えるために、政府、民間基金あるいは一般の国民も含めまして、いろいろな知恵を持ち寄って対策を講じるべきではないかという気がいたすわけですけれども、それにつきましても、非常にきめ細かな工夫をされたがゆえに、それがむしろ誤解や混乱を助長しているというような面も感じられたわけでございます。  今回の予算に関しまして見ておりますと、例えば、平成九年度の予算においては、このアジア基金に対する拠出金の項目が、経済協力に係る国際分担金等の支払いに必要な経費というふうになっておるわけですけれども、そもそもアジア基金に出しているお金がなぜ国際分担金の中に組み込まれているのかということについて、まず御質問申し上げたいと思います。
  84. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 これは、基金が設立されました際に、この事業というものをどういうふうに実施していくか中でいろいろ意見があった段階において、そういう問題に知見があるであろう国際機関を経由するということが一つ考え方であるということで、そういう当時の想定のもとに今御指摘の予算化を行った経緯がございます。したがいまして、次年度からは、そういうものとは違った予算の立て方になっております。
  85. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 そういう女性問題について知見のある国連ということでございますけれども、もしその知見のある国連というものを当時想定をして――当時確かに、平成八年度の積算内訳を見ますと、平成八年度は、補正も含めまして国連女性関係拠出金というふうになっておるわけです。その国連女性関係拠出金、そういう女性問題に関するあるいは人権問題に関する知見がある国連ということを想定されておられるのであるならば、実は、昨年の五月でしょうか、いわゆる国連人権委員会の方で、女性に対する暴力に関する有名なクマラスワミ報告というものが出たわけですが、この調査団がわざわざ日本にお越しになった。リットン調査団以来の調査団が日本に参ったわけですけれども、もしそういう知見のある国連女性関係拠出金ということであるならば、その知見のある国連の委員会であるところの人権委員会に対する勧告が出ておるわけでございまして、そのクマラスワミ報告に関しては、日本政府の方では、国際社会における法の支配に対する重大な侵害であるというふうに一時反対をしておったようでございますけれども、そういう予算の拠出の理由づけをしておるのであるならば、そのクマラスワミ報告というものを尊重し、謙虚に耳を傾けた対応をむしろとるべきではないのかなという気がするのですが、いかがでございますでしょうか。
  86. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 最初に申し上げましたように、平成八年度の予算で国連女性関係拠出金として計上いたしましたのは、当初、本件事業は、女性の人権などの分野において知見を有している国連を通じて実施することを想定したということがあったため、そういう予算計上となったというふうにとどまるものでございます。  現在は、基金の事業内容が御承知のとおり明らかになっておりますので、平成九年度の事業の予算要求からは、アジア女性基金関係事業拠出金として予算計上しているわけでございます。
  87. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 ただ、平成八年度の段階、あるいはその補正というのはごく最近のことでございますから、その段階で、アジア女性基金に渡るお金であったということは既にはっきりしておったのではないでしょうか。
  88. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 補正予算はあくまで本予算に対する補正というものでございますので、本予算が国連女性関係拠出金として計上されていったことに技術的に従って、同じ項目のもとに予算計上したということでございます。
  89. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 ただ、女性基金は既に昨年度の本予算が出てくる前から存在しておったのではないでしょうか。
  90. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 時系列的なことを申し上げたいと思いますけれども、平成八年度の当初予算、これを計上するときには基金の事業内容というものは決まっていなかった、そういうことから国連女性関係拠出金として計上した、補正はそれに技術的に従った、したがって九年度予算からはアジア女性基金関係事業拠出金として予算計上しているということでございます。
  91. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 仮にそうであるにしましても、本年度の予算、また改めて申しますが、経済協力に係る国際分担金等の支払いに必要な経費となっておるのですが、その中にそのアジア女性基金、なぜこういう経済協力に係る国際分担金等に入るのでしょうか。
  92. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 経済協力の国際機関等拠出金、その目で計上されているということでございます。
  93. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 これで余り時間をとりたくありませんので先に進みますけれども、結局、今回アジア基金の方で問題になっておりますが、いわゆる医療・福祉事業、これは国の予算からお金を出しているわけですが、せっかく国の予算で計上し拠出をしていながら、伝わる段になりますと国が消えてしまっているということが非常にもったいないというふうに感じたわけでございます。せっかく国がかかわっておるのにそう見せないように工夫せざるを得ないという、いろいろな理由があるということを存じておるわけですけれども、それをまるで方法がないのかということについていろいろと検討すべきではないかというふうに思っているわけですけれども、やはり補償ということは日本の法体系上からして無理であったにしても、国費によって自主的な資金提供を被害者個人に行うことができないかということをかねがね思っておるわけですけれども、外務省の方に先日お伺いをいたしましたらば、立法府の判断を前提とした上で、責任的履行を果たすための経済的給付ならば可能であるというようなお話を承っておるのです。  最近、例えばスイスの政府の方で第二次大戦中に門前払いを食わせたユダヤ人に対する未来基金として基金をつくって支払ったとか、あるいはドイツのポーランド和解基金とか、あるいは独仏協調財団というような例がございますけれども、最近になって状況が明らかにされてきた事柄について、いわゆる補償という形ではなくて自主的に個 人に対してお金を支払っているというような例もあると思うのです。  したがいまして、立法府の判断を前提とした上でということはありましても、自主的な経済的な給付ということが可能であるならば、せっかく政府の出しておりますお金を、非常にある意味ではきめ細かに工夫をされて医療・福祉事業としてお渡しになっておるわけですけれども、せっかく国から出ているお金ですので、補償という形でないにしても、それが個人に渡れば、これはその受け取り手の、単に慰安婦の方々だけではなく、当該の韓国の世論、政府も含めまして、受け取りやすい状況に対して非常に大きな進展になるのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  94. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 政府予算を原資として実施する事業である、こういうことについてこれまでも関係各国理解を得るべく努めてきているところでございますが、今後ともそのような理解をさらに一層得るように努力したいと思っているわけでございます。  しかし、何と申しましょうか、今の事業というのは、いろいろ想に想を練って、考えに考えを尽くした結果、これしかないという形で発進したものであるというふうに承知いたしております。現在も医療・福祉事業につきましては、見積書をちょうだいして、そして現金を届けて、そしてそれで医療材の購入に充てていただいてその領収書をいただくという形になっておりまして、私は、基金がこういう事業を行うに際しては、元の慰安婦の方々が置かれた実情やお気持ちに沿った内容の事業が実施されるように相当工夫されている、最大限の努力を尽くしているということだと思っております。  しかし、ここが限界というものでございまして、仮に基金の事業が使途を担保し得ない現金給付を行うということをもし委員がおっしゃられるのであるといたしますと、政府の拠出金の適正な使用はやはり確保し得ないし、政府の拠出そのものが不可能になるということでございますので、いわゆる現金での支給ということはあえてしていない、こういうことでございます。
  95. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 政府努力をされておられるということはわかるのですが、ただ政府努力が渡す直前でどこかで消えてしまっているということが非常に残念である、それを越えられることができないかということを先ほどから申しておるわけで、それが外務省を初め、総理府、その他の皆さん努力を生かす道でもないかと思うのです。努力をされるということと、相手方がどう受け取るかということは違うということは、恐らく外交に携わっていらっしゃる皆さん、よくおわかりだろうと思うのです。そこの工夫の問題でございますけれども、現金を渡すということが、自主的に責任的履行を果たすための経済的給付、この辺はきょうは条約局長お願いをしておったのですが、条約局長の方でどういうふうにお考えになるのか、お答えをいただきたいと思います。
  96. 林暘

    ○林(暘)政府委員 先生御承知のとおり、さきの大戦にかかわる賠償であるとか財産請求権の問題については、サンフランシスコ条約、それからその他の二国間の関連する条約で一応解決を、例外はございますけれども、解決をしているわけでございます。そういう意味において、そういう当該国とは賠償問題、請求権の問題は解決済みであるという前提に立って、この慰安婦の問題も我々は対処しておるわけでございます。したがいまして、当該のいわゆる従軍慰安婦に対して個人的に補償する義務は日本政府にはないという前提に立っていることがまず第一でございます。  先生が言われました自主的にということでございますけれども、これはもちろん、先ほど各国の例を申されましたけれども、各国がそれぞれの政策に基づいて個人に補償するということ、ないしは個人に見舞金のようなものを出すということが禁止されているわけではもちろんございませんので、そういう政策をとって、それを実施するという国というのは当然あるわけでございます。  日本の場合には、自主的にということで、これは国内の問題になろうかと思いますけれども、国内において法律を制定して、国内、ないしは最近の例で言えば台湾の郵便貯金についてお金を支給したという例はございますけれども、先ほど先生が言われました立法府云々ということは恐らくそれを指して言われているのかなというふうに想像いたしております。そういう法律をつくって、それに基づいて見舞金のようなものを支給した例というのは日本においてもあるわけでございまして、それを、一般論としてそういうことが不可能であるということを申し上げるつもりはございませんけれども、当該本件につきましては、いわゆる請求権の問題は法的な問題としては解決済みであって、そういう意味において、政府が賠償ないしは補償する義務はないということは、従来から申し上げているとおりでございます。  そういう前提に立って、先ほど御指摘があったと思いますけれども、医療・福祉支援事業については、個人に対するそういう問題としてではなくて、一般的にそういうお気の毒な方々に対する医療ないしは福祉事業をやろうということで予算化をしたものと承知しておりますので、その形の予算化されているものを現金で支給するということは、恐らく不可能なことであろうというふうに承知をしております。
  97. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 外務大臣にお聞きしたいのですけれども、この慰安婦問題にかかわらず、最近出てきた、あるいは今も残っている戦争から波及をした問題、あるいは傷を背負っておられる方々の問題に関しましては、これは私は、いわゆる政府政府との間の関係の問題ということよりも、もっと広い国全体と国全体の問題というふうにとらえる必要が出てきておるのかなという気もするわけです。  あるいは別の言い方をしますと、完全かつ最終的にという表現がよく出るのですけれども、あくまでもそれは法律的な解決あるいは決着でございまして、やはり国と国との関係ということになりますと、冷戦後は特にそういった意味が出てきたと思いますけれども、やはり人道的な側面、道義的な側面あるいは政治的な側面。  ですから、例えば慰安婦の問題というのは確かに過去の問題と位置づけることもできると思うのですが、現実に今の外交政治の問題に存在をする現在の問題、それから、今後ほかの世界との関係をどう築くかという意味では未来に関する問題と思いますので、そういった意味での政治家としての姿勢というものをお伺いしたいわけです。  これは、この前韓国から帰ってまいりました後で私ども民主党の代表団で総理にお話に、別府会談の前ですけれども、お渡しをいたしました中にも触れておるわけですが、一九五七年、ちょっと古い話ですけれども、日韓問題が非常に暗礁に乗り上げましたときに、当時久保田発言ということと日本人の財産請求権問題ということで暗礁に乗り上げておったわけですが、そのときに、当時の社会党の加藤シヅエ議員の質問に答える形で、当時の岸首相は次のような形で発言をしておるわけです。従来の条約や法律解釈でなく、精神的な基盤ができてないというと、お互いが信頼をし合い、お互いの誠意を、少なくとも疑わないという気持ちにならない、まず我々の方からそういう態度を示さなければならないとおっしゃられて、久保田発言を撤回し、それからもう一つ、従来我々がとっておった法律解釈に拘泥しない、両国の本当の友好関係を将来につくり上げるという見地から取り扱うと言われまして、対韓請求権を譲歩し、政治解決をもたらした。これは、その年の四月三十日の参議院の外務委員会の議事録でございます。  もちろん事情、状況が違っておるとはいいましても、恐らくこれからこういう高い政治的な判断、ステーツマンシップによる政治外交というものが発揮される必要が出てくるときが多いのではないかという気がするわけですけれども、外務大臣の方から御所見を承れれば幸いです。
  98. 池田行彦

    池田国務大臣 このいわゆる元従軍慰安婦の方々の問題につきましては、女性の名誉と尊厳を深く傷つけた事柄でございまして、政府としても、 そういうことには深いおわびと反省の気持ちを持っているところでございます。  そういったことを踏まえまして、これまでいろいろそれをみんなが考えてまいりました。特に、この問題につきましては、大勢の国民の方々が、自分としての、国民の一人としての気持ちもぜひあらわしたいということでいろいろな浄財をお寄せくださったわけでございます。  そういった国民的な動きの高まりというものも考えまして、政府としても、いわゆる法律的な意味での問題は、これは完全に決着済みなのではあるけれども、やはり何らかのことはできないかということで知恵を絞りに絞って、今、医療・福祉事業をやっている資金は国が出すということでこの基金事業が推進されておるわけでございまして、いわばそういった日本の国民全体としての、全体と言ってはいけませんか、多くの国民のそうした真摯の気持ちの結晶、そうして、政府としての道義的な観点からの気持ちも結晶したものとして今基金の事業が行われているわけでございますので、そういったものとして、関係方々の御理解をどうやって得ていくか、そういう努力を進めていくべきものだと思います。  いろいろなそういう要素があることは承知しております。それを、こういった要素があるから、これは実は本当のものじゃないんだということを我が国の責任ある方々海外へ行っておっしゃることも間々ある、そういったことが、この事業の本当の意味なり目的を御理解いただくことの支障になっていることもございますので、そういったことで、ともかく、ぎりぎりの知恵でこういった基金をつくり、進められている事業だということを理解してもらう、こういうことに徹するしかないんだ、こう思っております。
  99. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 ありがとうございました。質問を終わらせていただきます。
  100. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 次に、松本善明君。
  101. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣に伺いますが、沖縄問題は今や国政の中心問題の一つになってまいりました。  外務大臣、ごらんになったかどうかはわかりませんが、沖縄県の県議会が、劣化ウラン弾の撤去などを求める全会一致の決議をしました。ここでは、この劣化ウラン弾の使用、貯蔵について「言語道断」、断じて容認できない、激しい言葉で即時撤去を求めていますし、県民の怒りはまさに「頂点に達している。」こういう強い表現でこの決議がなされております。  私は、外務大臣が劣化ウラン問題の対米折衝の担当大臣として、官房長官から、報道では、外務省の鈍感さにいら立ちを覚えるというようなことが報道をされております。この発射問題を知ってから一カ月近く沖縄にも国民にも知らせなかった責任、特に国民の健康、安全を守る立場からの責任について、まず最初に伺っておきたいと思います。
  102. 池田行彦

    池田国務大臣 私どもは、今回の劣化ウラン弾の問題につきまして、米側から我が方に対する連絡が大変おくれたということも遺憾だと思っております。それは、米側もその点については深い遺憾の意を表しておるところでございます。また、私どもがこれを承知いたしましてから、沖縄県への御連絡あるいは公表というのが、これも一カ月近く経過したという点については、私どもも、沖縄県あるいは県民の方々への配慮が十分でなかったという点は反省しております。  しかし、その点につきましては、他の委員会でもいろいろ御質疑にお答えしてまいりましたけれども、私どもといたしましては、米側からの通報を受け、少しでも具体的な内容をある程度掌握した上で御連絡するということで、情報の提供あるいは質問等を通じていろいろただしておった、その往復をいろいろやっている間に時間が経過した、こういうことであるということでございます。
  103. 松本善明

    ○松本(善)委員 実際上は、アメリカの報道で慌てて公表したというふうに見ざるを得ないという状態であります。  私は、この劣化ウラン弾の毒性について改めて聞いておきたいのですが、総理は、予算委員会で、微量重金属としての問題、毒性の問題があるということを、その毒性について認める答弁をされました。外務大臣は、この毒性について、みずからの認識としてのはっきりした答弁がないように私は思うのですけれども、これが人体に有害、危険な物質としての認識で対処をしているのかどうかということについて、はっきり伺いたいと思います。
  104. 池田行彦

    池田国務大臣 私ども、これが体内にかなりの量摂取された場合には、その化学的な特性からして、いろいろな健康上の問題を引き起こす可能性があるということは、十分認識しております。それを認識した上で、ただ、今回の状況につきましては、あのような一般の人間の立ち入れない状態の区域であるということ等を考えまして、今回の件について、今直ちに人に対する影響は、これまでは少なくとも出ていないし、これからも出てくるような状況ではない、こう言っているわけです。この物質自身が全く健康に影響ないものだなどという認識は毛頭ございません。
  105. 松本善明

    ○松本(善)委員 改めてこの委員会でも紹介をしておきたいと思いますが、アメリカ上院の銀行住宅都市問題委員会の報告では、体内に入った場合、「骨や主要臓器に沈着し、骨髄に影響を与えDNA損傷を引き起こす」。それから、会計検査院の米議会への報告によれば、  酸化劣化ウラン粒子は、放射性と毒性の両方の危険をもたらす。汚染された車両の上、あるいは中で従事する人員はそれを吸い込むか飲み込むことがありうる。吸い込まれた劣化ウランの危険は酸化劣化ウランの溶解度いかんによる。より溶解しやすい酸化劣化ウランは血液のなかにより速く入り、主として腎臓に有毒な危険をもたらす。吸い込まれた溶解できない酸化劣化ウランは肺のなかに長期にとどまり、放射線によるガンの潜在的危険をもたらす。 これはアメリカの国家機関の正式報告です。大臣も、体内に取り込まれた場合の危険性はここで答弁をされたと思います。  問題は、外務大臣は予算委員会で、これは米軍が緊急事態で使用することがあり得る、劣化ウラン弾の撤去を求めない、こういう答弁をされました。日本やその周辺で劣化ウラン弾が使用されますと、これは、この徹甲焼夷弾という言葉でわかりますように、燃えて、今会計検査院の報告で紹介をいたしましたように、エアロゾル化した粒子が浮遊する、そういう劣化ウランが日本周辺で使用された場合には、それが日本を覆うということになる。そういう危険、それは極めて吸い込みやすい状態になるわけですね。これは日本の国民の生命、健康の危険ということで、これは安全保障のために必要だということで、撤去を認めないとかあるいは緊急事態で使用することができる、ところが、そのときには日本国民自体の健康や生命が脅かされる、このことについて外務大臣はどう考えていますか。
  106. 池田行彦

    池田国務大臣 私、先ほど申しましたように、この物質が体内に相当量摂取された場合、あるいは吸引された場合には、いろいろな障害を、健康への悪影響を与える可能性があるということは承知しております。しかし、そもそもそういった相当量がどういうふうに摂取されるか、その摂取が行われるかどうかというそこのところが何なんでございますね。そして、少なくとも今回の訓練に際して誤使用された問題につきましては、ああいった一般の人々が入れない状況にあるということで、大量に摂取という状況は少なくとも今まで避けられているし、今後もそういうことはないようにしなくちゃいけませんし、可能性がそんなにあるとは思っておりません。  それから、今委員指摘の方は、いわゆる有事といいましょうか緊急事態、あるいは戦闘状況と言った方がいいのかもしれませんが、そういった状況の中で使われる可能性がある、その場合どうなのかということでございますけれども、まず私は、やはり我が国あるいは我が国周辺での緊急な状況があったときに米軍がそれに対処していく、 そういったときにいろいろな手法、そうして装備あるいは弾薬等を使用するわけでございましょうけれども、そういった中にこのいわゆる劣化ウランを含んだ徹甲焼夷弾が使用される、そういう必要性が出てくるということはあり得るのだと思っております。  しかしながら、そのことが、今エアロゾル化してということでございましたけれども、そのことが後々に至るまでも大勢の方々の健康へ影響を与えることがあるのかどうなのか、その点については、米軍が今こういう装備をしているという前提は、戦闘行動そのものに基づくいろいろな人間への危害、これはそういう状況でございますから、あり得るわけでございますけれども、それとは独立したものとして、こういうものが使われたことによって格別のものが、非常に大きな意味を有するという前提には立っていないのだ、こういうふうに考える次第でございます。
  107. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは米軍の報告をもとに答弁していらっしゃいますけれども、やはり日本の国民の健康、安全を守るという立場で、みずからの認識として、このエアロゾル化したものは吸入しやすいのですよ。  徹甲焼夷弾は、重い金属で貫徹力が強い。それが貫徹した場合の摩擦熱が千百度ぐらいになるから、それでウランが燃焼する、それでエアロゾル化する、そこに効果がある。イラクの戦車が黒焦げになって、その中に入ったアメリカ兵がほとんど全部湾岸戦争症候群にかかっているということからも、先ほどのアメリカの政府機関の報告を御紹介したところからも、やはりこれが成功した場合、要するに貫徹をして思ったとおりの効果をこの弾丸が発揮をした場合に非常に危険な状態が、特に日本の周辺で使われた場合、そういう状態になる。この危険性を本気で認識をしないと大変なことになると思う。沖縄の皆さんはそれを体で知っているから、あの激怒した決議ができているのですよ。  在日米軍司令部のケビン・クレサリク広報部長が、この弾丸については、かたい地表の衝撃で大部分が粉々になっており、残りの弾丸を発見することは期待できない。要するに、大半が飛散している、千五百発ぐらいのうちの百九十二発は回収しているけれども、そのほかの大半が衝撃で飛散している、これが危険なのですよ。私は、ここの認識がなかったらこれは大変なことになるのじゃないかと思う。実際に焼夷弾として成果が上がった場合に、エアロゾル化して、それが吸入しやすい状態になる。これが日本列島の周辺で使われた場合には、日本国民全体の健康に重大な影響があるということについて、池田外務大臣認識をしていらっしゃいますか。
  108. 池田行彦

    池田国務大臣 湾岸戦争のときのあれでは、この劣化ウラン弾が使用されて、それが所期の目的といいましょうか効果を発揮した場合にかなりの威力を示したというのは承知しております。しかしそれは、そもそもかなりの高温になるわけでございますから、その高温の状態の中で戦闘に参加した兵士は命を失った、こういうことであろうと存じます。  それから、その後、エアロゾル化したものが原因になって、その戦闘には直接参加していなかった、事後に入ってきた者に対する影響があったのじゃないかといった見方も出たというのは承知しております。しかし、その当時、いわゆる湾岸戦争症候群というのでいろいろな症状があったわけで、その原因についてはいろいろな説もあり、また複数の要因が挙げられたわけでございますけれども、少なくとも、米軍といいましょうか、あるいはあれはたしか大統領の諮問機関が責任を持って調査したのだと思いますけれども、その報告では、いわゆる湾岸戦争症候群とこの劣化ウラン弾との間の因果関係は低いものである、たしかアシライタリーという表現だったと思いますけれども、要するに可能性は低いというふうな報告がなされておると承知しております。
  109. 松本善明

    ○松本(善)委員 大統領の諮問機関の報告は、湾岸戦争症候群そのものについて述べていますけれども、劣化ウランのエアロゾル化したものの危険性については述べていないのですよ。先ほど述べましたアメリカの正式の、上院の委員会それから会計検査院の報告は、このイラクで起こったいろいろな症状について討議をしたその結果なんです。今の外務大臣認識では非常に危険だと私は思います。そこをはっきり認識をして、そしてアメリカ側と交渉しないと、本当に日本の国民の健康を守るという立場に立っていないのじゃないかというふうに思います。  それで、さらに伺いますが、この劣化ウラン弾については、在日米軍報道部長のクレサリク中佐が、私たちの党の赤旗日曜版のインタビューに答えまして、劣化ウラン弾は、「海兵隊のハリアー機」、これは前見つかったものですね、「戦車攻撃用の空軍のA10サンダーボルト、陸軍のM1A1エイブラムス戦車、海軍艦船用の二十ミリ高性能機関砲(CIWS)などがこの弾を使用可能な状態にある」、こういうふうに述べているということであります。そうすると、この劣化ウラン弾はハリアー機のみならず、今述べましたような部隊が兵器で使う状態なんです。このことについては外務省は確認をしておるでしょうか。
  110. 池田行彦

    池田国務大臣 いずれにいたしましても、これは、訓練で使用できるのは米国の本土にございます限定された場所、こういうことになっておりますので、日本では使われることはございません。
  111. 松本善明

    ○松本(善)委員 訓練で使わないということは決まっていることですけれども、いざというときに使うということを言っているから問題なんですよ。そのときに重大な問題になる。  しかも、今外務大臣はお答えになりませんでしたけれども、否定はされませんでしたが、クレサリク中佐の言うとおりであるならば、これはA10がしょっちゅう飛来する三沢基地、それからCIWSを搭載する艦船全十一隻の母港の横須賀基地、広島の広、川上、秋月各弾薬庫あるいは佐世保基地などにある危険性があるわけです。  使うというから、それでは弾薬はどこにあるのかということになる。これは沖縄のみならず、日本全土の問題なんですね。私はこれは当然アメリカ軍に問い合わせて公表すべきではないかと思いますが、外務大臣の見解を伺いたいと思います。
  112. 池田行彦

    池田国務大臣 この劣化ウラン弾が我が国にございます施設・区域の一部に保管されているということは、そのように認識しております。  しかし、それが具体的にどこであるか、そしてどのようにあれしているかという点でございますけれども、従来からこれは、日本との関係だけではございませんで、米軍は一般的に、そういった弾薬等の備蓄状態については、それは明らかにしない、こういうことで来ておりますし、我が方としても、そこのところは、米軍が安保条約上の役割を果たしていく上で適切に対処しなくてはいけない、そのためにいろいろなことをやっていく、その中の一環であるということで、これをただしていくということは、従来からしていないところでございます。
  113. 松本善明

    ○松本(善)委員 どうも外務大臣、この危険が大したことでないように思っているのではないか。日本の本土で使われたら、それは本当に重大なことです。こういう非人道的兵器は禁止すべきだ。アメリカのクラーク元司法長官が、劣化ウラン兵器は禁止すべきだということを述べております。アメリカでは禁止運動がいろいろなところで広がっています。これは外務大臣、御存じですか。
  114. 池田行彦

    池田国務大臣 米国においてもいろいろな見方があるのは承知しておりますけれども、しかしながら、現在までのいろいろな知見その他を踏まえまして、現在米軍においてはこれを採用しておるということだと承知しております。しかしながら、その保管あるいはその使用に対しましては、厳正に管理をしておる、そして訓練の際、使用するのは米国本土内の限られた訓練場に限定されている、こういうふうに承知しているところでございます。  それから、人道上の観点からということでございますけれども、私どもも、対人地雷その他通常 兵器であっても、そのような観点から国際的に使用を規制されるものがあるということは承知しておりますし、日本もそういった条約に入っているのもございます。しかし、そういった国際的な枠組みの中でも、この劣化ウラン弾は規制の対象にはなっていない、こういうように承知しております。
  115. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは私は外務大臣、考えてほしいと思うのは、私どもは外務大臣とは意見が違うと思うが、安保条約はなくしてアメリカとの友好条約を結ぶ、こういう基本立場です。だけれども、今党派を超えて、沖縄を含め、海兵隊を撤去しろ、それよりも前でも劣化ウラン弾は撤去せよ、これは本当に最低限の沖縄の要求ですよ。それは日本国民全部そうです。それすら受け入れない、いざというときに日本で使ってもいい、これは私は、そういう姿勢でいたも沖縄の県民の総スカンを食う、とても解決なんかできないということをはっきり言っておきたいと思います。  次の問題にちょっと行きますが、外務省の安保条約課が二月十日付で国会に提出いたしました「鳥島射爆場における徹甲焼夷弾誤使用問題」という文書によりますと、訓練時の劣化ウランを含有する徹甲焼夷弾の使用については、米国本土の特定の射爆撃場においてのみ行われることが米軍の内部規則で定められているというふうにあります。外務大臣もたびたび答弁をなされました。今度の鳥島の射爆は、この内部規則違反でありますね。
  116. 池田行彦

    池田国務大臣 今回の問題は、米軍の内部規則に沿わない形で、誤って使用された、こういうものでございます。
  117. 松本善明

    ○松本(善)委員 誤って使用されたといっても、違反であることは間違いありませんね。
  118. 池田行彦

    池田国務大臣 内部規則に決められておるところでは使用しない、こういうことになっているわけでございますから、その内部規則に規定されているところとは違った使用である、こういうことでございます。
  119. 松本善明

    ○松本(善)委員 では、その内部規則を知り得る立場にあった者はだれなのか。これは私は、その弾丸の性能を知らないで訓練をするということは、軍事常識上あり得ないと思います。これは徹甲焼夷弾として貫徹をして燃焼した場合に成果を上げる、その性能を知らないで訓練をするということは、軍事的には絶対あり得ないと私は思います。思いますが、まあ外務大臣は誤使用というふうにずっと言っておられるけれども。  では、その内部規則を知らなければならない立場にあった責任者は、海兵隊司令官ですか、それともハリアー機の隊長ですか。それは米軍に確かめておりますか、だれが知らなければならなかったのか。
  120. 池田行彦

    池田国務大臣 それは、こういった誤使用が起きました直接的な理由といいましょうか、きっかけといいましょうか、この爆弾はこういうふうな場合に使用していいのだという表示が、爆弾そのものと、それからカタログにされておる、こういうことであるけれども、そこの表示が不十分であった、そのためにこういったことが起きた、こういうふうに今説明を受けております。  したがいまして、これはだれが知り得る立場にあったか使用してはいけないかということを知り得る立場にあったのか、あるいは知らなくてはいけない立場にあったかと申しますならば、それはこの爆弾を使用する可能性のある、米軍の担当するそれぞれの責任者は、それを知るべき立場にあったのだと思います。ただ、その表示の仕方が十分でなかったために、こういうことが起きた、こういうことだと思います。
  121. 松本善明

    ○松本(善)委員 その現場の責任者は、劣化ウラン弾だということは知っていたのでしょうか。それとも、劣化ウラン弾を日本で、四つの特別の射爆場以外では使ってはいけないということを知らなかったのか、劣化ウラン弾だということも知らなかったのか、アメリカに、軍側に確かめておりますか。
  122. 池田行彦

    池田国務大臣 私どもが承知しておりますのは、この爆弾が日本では訓練に使用できないものだということは、表示が不十分であったので、そのことを認識しなかったのだ、こういうふうに承知しております。
  123. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、劣化ウラン弾だということは知っていたということなのでしょうか。
  124. 折田正樹

    ○折田政府委員 実際にハリアーに装てんする作業に当たった人が、その爆弾に書いてある、表示があるわけです、それは一定の文字で、文字と数字で書いてあるわけですが、本人自身が、それが劣化ウラン弾であったかどうかということを承知していたかどうかということは、私ども確認をしておりません。
  125. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは本当に無責任だと思いますよ。これだけの重大な問題が起こっているのに、だれが責任を持っていたのか、そしてその人の認識はどうだったのか、それも確かめないで、一カ月以上たっている国会での論議に外務省がそういう姿勢で臨んでくるというのは、私はとんでもないことだと思います。本当に国民の健康を守るという立場に立っているのかどうか、アメリカ側の説明をここでしゃべるだけなら、外務省は要らぬですよ。本当に日本の国民の健康を守るという立場で、外務省がアメリカ側と断固たる態度で折衝すべきなんです。私は、そういう姿勢が全くないということが本当に遺憾だということを申し上げて、質問を終わります。
  126. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 次に、秋葉忠利君。
  127. 秋葉忠利

    秋葉委員 社民党の秋葉です。  今の外務省の答弁、松本議員の質問に対する答弁で、実際に弾を積んだ人間が劣化ウラン弾かどうかを知っていたかということに対して、わからないというふうな返事をなさいましたが、我が党がアメリカ大使館に抗議に出かけた際に、安全保障の担当官から、現場で弾薬を積んだ人並びに飛行機に乗っていたパイロット、そのレベルでは劣化ウラン弾であることを認識していたという答えをいただいております。最低限、そのくらいのチェックは外務省としてもおやりになった方がよろしいかと思いますが、それは事実の確認ですから、知らないということで済まされる問題ではありませんので、あえて注意を喚起しておきたいと思います。  まず、外務大臣に伺いたいのですけれども、総理並びに外務大臣、遺憾だということをおっしゃっていますけれども、どの点について、これはかなり複雑な経過のある問題ですから、一体どの点について遺憾だとおっしゃっているのか。つまり、アメリカは誤射だと言っているようですけれども、誤射されたことについてなのか。鳥島という地域が選ばれたことについてなのか。あるいはアメリカがこれを公表しなかったことについてなのか。あるいはおくれて通報された、日本側が知らされなかったということについてなのか。あるいは知らされた後でも沖縄県に通告するのがおくれたことについてなのか。あるいは劣化ウランというこの弾薬の危険性ということ、それを十分知らなかったということについてなのか。さまざまな問題があるわけですけれども、あるいはそのすべて、この問題について、すべての局面でいろいろな判断ができたにもかかわらず、ほとんどすべての場面で残念ながら適切な処置をとったとは言えないと思いますけれども、そのすべてなのか。遺憾だというのはどの部分を指していらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。
  128. 池田行彦

    池田国務大臣 まずこの劣化ウラン弾は、我が国においては訓練のために使用されないことになっておるわけでございますが、米軍の内規に沿わない形で誤って劣化ウラン弾が訓練で使用されたということ、このことは遺憾だと思っております。また、そのことが一年余りにわたって当方に連絡されなかった、この点も遺憾である、こう考えております。そして、その点は我が方から米側にも申し入れ、米側としても深い遺憾の意を繰り返し表明しているところでございます。  それから、この通報を受けましてから、いろいろ事実関係の確認その他のやりとりに手間取りま して、沖縄県に対する御連絡あるいはその公表というものも手間取った、この点につきましても、私どもは、とりわけ沖縄県あるいは県民の方々に対する配慮というものが不足しておったということで、反省しているところでございます。
  129. 秋葉忠利

    秋葉委員 わかりました。大分はっきりしてまいりましたが、今出てこなかった点についてもぜひ遺憾の意を表していただきたいということで、これは科技庁の方に伺いますけれども、原子力基本法並びに核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の定義に従うと、劣化ウランはどういう物質だということに分類されるのでしょうか。
  130. 片山正一郎

    ○片山説明員 御説明を申し上げます。  劣化ウランは、化学物質としては、元素としてはウランでございますので、原子炉等規制法に言う核燃料物質に相当するわけでございます。
  131. 秋葉忠利

    秋葉委員 そうすると、その使用については、原子力基本法並びに今申し上げた核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律によってその使用目的が制限されている。特に大事な点を申し上げれば、平和利用以外の目的にはこれを使ってはならないということですから、当然この原子力基本法並びに今申し上げた、これは長いので等ということでまとめますが、原子力基本法等の法律によれば、劣化ウラン弾を日本でつくることはできないという結論になりますが、それを確認していただきたい。
  132. 林幸秀

    ○林説明員 お答えいたします。  原子力基本法に言います原子力といいますのは、「原子核変換の過程において原子核から放出されるすべての種類のエネルギー」というふうに定義をされております。  今回の劣化ウラン弾に関しましては、現在までの情報を総合いたしますと、非常に高い貫徹力を確保するために比重の重い劣化ウランというものを利用した砲弾でございまして、その使用といいますのは、原子核変換の過程における原子核から放出されるエネルギーというものを利用するものではないというふうに解釈されます。したがいまして、今回の劣化ウラン弾を考慮した場合には、原子力基本法で言う原子力の定義に当たらないというふうに考えております。
  133. 秋葉忠利

    秋葉委員 等と申し上げたのは、原子力基本法だけを見るのではなくて、関連法もすべて見た上で言ってくださいということなんです。  核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の第一条で平和目的にその利用が限られているのは、原子エネルギーだけですか。
  134. 林幸秀

    ○林説明員 先ほど定義として申し上げましたのは第三条でございまして、第三条の一号に原子力とはと書いてあると先ほど申し上げたわけでございますが、その柱書きの方に「この法律において次に掲げる用語は、次の定義に従う」ということで原子力の定義をしておりまして、したがいまして、第二条の方にございます、先生おっしゃっておりました「原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、」ということについての原子力は、第三条の定義と同じだというふうに解釈されます。
  135. 秋葉忠利

    秋葉委員 全然答えになっていないじゃない。原子力のことを言っているのじゃなくて、今最初の答えは、これは劣化ウランといえどもウランなんだから、これは核燃料物質とおっしゃいましたね。核燃料物質の使用については、僕は原子力基本法だけを言っているのではなくて、法律の名前までちゃんと挙げて、これは長いから言いにくいのですけれども、何回も読んで言っているじゃないですか。さっき私の部屋に来て、きちんと責任ある答えをするからということを言っておきながら、今のは全然私の質問に何も答えていないじゃないですか。  ですから、原子炉の規制に関する法律の第一条には、核燃料物質もその使用は平和目的に限られるとはっきり書いてあるのですよ。だから、それを見れば、当然これは劣化ウラン弾をつくることはできない、その結論になるじゃないですか。それを聞いているのに、原子力基本法の方だけを引用するというのは、これはごまかそうとしているのですか。
  136. 片山正一郎

    ○片山説明員 原子炉等規制法の関連について御説明を申し上げます。  劣化ウランを含む砲弾を使用することは原子炉等規制法において平和利用の観点からどうだろうかという点でございますが、劣化ウランを含む砲弾については、使用の目的とか方法とか具体的な内容を審査するわけでございますので、一般的な仮定でここで一概に御議論をすることはできないかとは存じますが、仮に核燃料物質が平和の目的以外で利用をされるおそれがあれば、原子炉等規制法に基づく許可をするということはできないということとなろうというふうに考えてございます。
  137. 秋葉忠利

    秋葉委員 そういうことを言うと、原爆も使用目的によってはいいことになってしまうのですよ。そんなばかな話はないので、これは包括的に、要するに原子力関連の物質を武器をつくるために使ってはいけないということが明確に述べられている。原子力基本法とそれから原子炉規制法の両方をあわせるとそういうことになります。  その点を、ただ単に技術的な条文解釈で逃げようとするのではなくて、原子力基本法の精神にのっとって、やはり真っ正面から科学技術庁はこれは受けとめてもらわなくては困る問題だと思います。今回の問題は非常に大きいのですけれども、そういった真っ正面からの受けとめて真っ正面からの議論に応じなくては、日本政府として禍根を残す問題だと思います。そういった対応を切に望みますけれども。  したがって、日本でこの劣化ウラン弾をつくらない、あるいは所有していないというのは原子力基本法の精神によるということはおわかりいただけたと思います。原子力基本法の精神というのは非核三原則と表裏一体の関係にあるわけですから、当然この劣化ウラン弾についても、非核三原則の持たない、つくらない、持ち込ませないということが適用されるべきだと思います。  となると、米国がどのような形で所有しているにしろ、劣化ウラン弾を日本国内に貯蔵しておくということは、非核三原則そして原子力基本法の精神からいって非常に大きな問題がある。その点から、即刻我が国政府としてはアメリカ軍に対してこの劣化ウラン弾の撤去を求めるべきだと思います。外務大臣、その理由についてもあわせて御意見をお聞かせください。
  138. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほど原子力基本法等についての御議論がございました。これについては私は所管外でございますけれども、ただ、今回の件について考える場合には、こういった別の角度から見なくてはいけないんだろうなと思います。  一般国際法上、接受国の同意を受けて駐留する外国の軍隊は、特段の、別段の合意のない限り、当該受け入れ国、接受国の一般法令に従う必要がない、こうなっております。したがいまして、我が国の現在の地位協定もそういう前提でつくられている、こういうことでございますので、在日の米軍が劣化ウラン弾等についての保管、保有等を行う場合に、先ほど御指摘のございました原子力基本法等の我が国の国内法の規制をそのまま受けるものではない、こういうことでございます。それが一点でございます。  それから、もとよりそうは申しましても、そういった接受国の公共の安全その他にそれは十分配慮すべきは当然でございますから、そういった点でのいろいろな配慮をしなくてはいかぬ。そういった意味で、保管等に万全の注意をしなくてはいかぬというのは、これは当然でございます。それは、そのことは、地位協定の中にも、接受国の方の法令の趣旨なんかは尊重すべきだと書いてあります。  それから、そういった意味からいうと、米軍も弾薬等をきちっと厳正に保管するべく努力しているわけでございますが、今回の件については、誤使用が起きたという点は遺憾であり、そこはさらなる改善措置を求めましたし、それをしておる、こういうふうに理解しております。  それから、非核三原則の精神からしても撤去を求めるべきじゃないかというお話がございましたけれども、そこのところは、どうなんでございましょうか、先ほどの答弁で、我が国の法制上、劣化ウランというのは核燃料物質にはなっておりますけれども、非核三原則といった場合には、要するに核兵器でございますね、これを持たず、つくらず、持ち込まず、これが非核三原則でございまして、核兵器というのは、これは核爆発あるいは核融合によって発生するエネルギー、それを兵器として使うものということでございまして、これはいかなる意味においても、この劣化ウランあるいは劣化ウラン弾がそれに該当することはあり得ないわけでございまして、直接の、直接はもとよりかなり間接的、牽強付会という言葉は不適当かもしれませんけれども、やはり無理やり理論づけしても、非核三原則との関係で今回の問題がいろいろ検討されるべきものとは私は考えておりません。
  139. 秋葉忠利

    秋葉委員 非核三原則と原子力基本法が表裏一体の関係にある、その成立の過程からいっても、さらに原子爆弾その他の性能等からいっても、それが表裏一体の関係にあるということが理解できるかどうか、それを前提として考えるかどうかというところで答えが変わってくるのかもしれませんけれども、池田外務大臣、広島の御出身ですから、ぜひ今のような議論を被爆者の皆さんとひざをつき合わせてやっていただきたい。放射能の被害に苦しんで、後遺症に苦しんだ我が国の被爆者にとって、今のような御議論は通用いたしません。  やはり放射能の被害ということが、爆発力もそうですけれども、放射能の被害ということを核兵器の中心的な性能の一つに数えるということが常識だと思いますので、改めて今のお考えについては再検討をしていただきたいと思います。  ですから、論理的に整理をすると、結局、我が国としてつくれない、あるいは所有できない劣化ウラン弾、その基礎には原子力基本法並びに原子炉の規制に関する法律があるわけですが、それを米軍が持つことあるいは使用することはもってのほかだというのが私は論理的な帰結だと思います。その論理的な帰結の上に立って、他国が使用する場合に、それではそれを我が国に対して、あるいは敵として、あるいは友邦として使う、両方の場合がありますけれども、使われた場合に、その被害をやはり事前に理解をして防護策をとるというのは、これは当然のことだと思います。先日の予算委員会の質問では、防衛庁はそのことに関して全く、劣化ウラン弾についての性能は知らないという答えが出てきましたけれども、これは容認できない考え方だと思います。  その点について、再度、こんなことで防衛庁が、ある意味では専守防衛ということが基本になっている我が国考え方の中で、本当に専守、守るということを念頭に置いて仕事をしているのかその点について確認をしたいと思います。
  140. 西正典

    ○西説明員 御説明申し上げます。  自衛隊では、先生御指摘のとおり、劣化ウランを含有した弾薬を一切保有しておらず、また、これまで研究を行ったこともございません。劣化ウラン弾についての具体的知見、必ずしも有しているわけではございません。日ごろ、劣化ウラン弾に限らず、種々の軍事技術情報につきましては、私ども、公刊資料などによりましてその入手に努めておるところではございますが、武器の性能につきましては、各国とも秘匿性が高く、特に弾薬の性能は、部隊などの戦闘力に直結し、公表などなされないのが一般的でございます。このため、かかる情報を入手することが非常に困難であるというのがまず実情でございます。  しかしながら、劣化ウラン弾、つまり徹甲弾という点について着目いたしますと、これは、弾丸の持つ運動エネルギーで厚い装甲物などを物理的に貫徹させる、これを目的にしてつくられた弾薬でございます。かかる物理現象につきましては、自衛隊では長年、タングステン合金を弾心とする徹甲弾という形で研究をしてまいりまして、具体的に弾丸としての物理的特性はこれと異ならないもの、かように理解いたしております。  そうした観点から申し上げますと、劣化ウラン弾の詳細の性能がわからないからと申し上げましても、必ずしも劣化ウラン弾に対する防御の研究ができないということではございませんで、私ども、そういった形での防御の研究というものは、タングステン弾心の研究の中で理解しておると考えております。  また、劣化ウラン弾が使用された際の周辺への影響につきましては、劣化ウラン弾が使用された例が必ずしも多くありませんで、情報も乏しいのが実情でございまして、基本的には劣化ウランという金属の性状が反映されるものとは考えておりますが、いずれにしろ、今後とも、公刊資料などによりまして情報の入手に努めてまいる所存でございます。
  141. 秋葉忠利

    秋葉委員 今の答弁は、まさに沖縄戦における日本軍と全く同じ姿勢を現在の自衛隊も持ち続けているということの証拠だと思います。  劣化ウラン弾が非常に大きな被害をもたらすというのは、その貫通力、要するに、軍事的な性能だけではなくて、先ほどからお話がありますように、もうこれはかなり日本国内にも広まりましたけれども、結局、発火をすることによって酸化ウランが生じて、その酸化ウランがエアロゾル状になって毒性並びに放射能を持った形で広く散布する。それが、ただ単にタンクの中の乗組員だけではなくて、広範な被害をもたらす。したがって、非戦闘員に対してもこの被害が生じるということ。具体的には、湾岸戦争の場合にはそういった被害が生じた。  これも、疫学的に実際に確認することは非常に難しいわけですけれども、そういった事実があるからこそ、きちんとした性能を知った上で、少なくとも住民に、非戦闘員に対しての被害を最低限に抑えるような努力をしなくてはならないところだと思いますけれども、今のお答えでは、要するに、タンクに対する被害についてわかっているから、人命に対する、そして非戦闘員に対する考慮は全くなくてもそれで十分なんだという考え方、これは、まさに沖縄戦における旧日本帝国陸軍の考え方と全く同じであります。  五十年以上たって、軍の本質が全く変わっていないということに改めて私は絶望の気持ちを持ちますけれども、時間が参りましたので、この点については、改めてまた別の機会に問題提起をさせていただきます。
  142. 逢沢一郎

    ○逢沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十九分散会