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1997-06-05 第140回国会 衆議院 科学技術委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月五日(木曜日)     午前九時三十分開議  出席委員   委員長 佐藤 敬夫君    理事 小野 晋也君 理事 実川 幸夫君   理事 三ッ林弥太郎君 理事 山口 俊一君    理事 斉藤 鉄夫君 理事 田中 慶秋君    理事 佐々木秀典君 理事 吉井 英勝君       石崎  岳君    江渡 聡徳君       河井 克行君    木村 隆秀君       桜田 義孝君    田中 和徳君       塚原 俊平君    渡辺 具能君       井上 義久君    近江巳記夫君       笹木 竜三君    島津 尚純君       川内 博史君    近藤 昭一君       辻  一彦君    辻元 清美君       堀込 征雄君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     沖村 憲樹君         科学技術庁長官         官房審議官   興  直孝君         科学技術庁原子         力局長     加藤 康宏君         科学技術庁原子         力安全局長   池田  要君  委員外出席者         参  考  人         (東京工業大学         名誉教授)         (原子力委員会         委員)     藤家 洋一君         参  考  人         (電気事業連合         会会長)    荒木  浩君         参  考  人         (慶應義塾大学         教授)     茅  陽一君         参  考  人         (東京大学教授)鈴木 篤之君         参  考  人         (弁護士)   海渡 雄一君         参  考  人         (中央大学教授)         (日本科学者会         議原子力問題研         究委員会委員         長)      舘野  淳君         科学技術委員会         調査室長    吉村 晴光君     ――――――――――――― 委員の異動 六月五日  辞任         補欠選任   中西 啓介君     島津 尚純君   鳩山由紀夫君     辻  一彦君   羽田  孜君     堀込 征雄君 同日  辞任         補欠選任   島津 尚純君     中西 啓介君   辻  一彦君     川内 博史君   堀込 征雄君     羽田  孜君 同日  辞任         補欠選任   川内 博史君     鳩山由紀夫君     ――――――――――――― 六月五日  動力炉・核燃料開発事業団東海事業所における  安全管理に関する陳情書  (第三九八  号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  原子力開発利用とその安全確保に関する件  (今後の原子力政策の在り方)      ――――◇―――――
  2. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  原子力開発利用とその安全確保に関する件について調査を進めます。  本日は、特に今後の原子力政策あり方について参考人から意見を聴取することといたします。  まず、午前の参考人として、東京工業大学名誉教授原子力委員会委員藤家洋一君、電気事業連合会会長荒木浩君及び慶応大学教授茅陽一君、以上三名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  本委員会におきましては、動燃の高速増殖炉「もんじゅ」や東海処理施設での事故等について質疑を重ねてまいりましたが、本日は、それぞれ御専門の方々をお招きして、広く原子力政策について御意見をお聞きし、委員会審議参考にしたいと存じます。  参考人各位におかれましては、今後の原子力政策あり方、特にエネルギー問題における原子力位置づけについて、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、藤家参考人荒木参考人茅参考人の順に、お一人十五分程度で取りまとめて御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  また、念のため申し上げますが、御発言はすべてその都度委員長の許可を得てお願いをいたします。なお、委員に対しては質疑ができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。  御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず藤家参考人にお願いいたします。
  3. 藤家洋一

    藤家参考人 原子力委員会藤家でございます。  本日は、エネルギー問題における原子力位置づけに関しまして、現在の原子力委員会委員としてだけではなく、大学と申しますか、アカデミアでこれまで原子力研究に従事してきた者としての考えもあわせて述べさせていただく機会を与えていただきまして、光栄に存ずる次第であります。  きょう私は、原子力開発を、原子力の本質から出発して、その広がりと奥行きをとらえるとともに、自然や人類社会との関連をお話ししたいと思っております。  お配りした資料に沿ってお話し申し上げますが、最初に「二十一世紀人類社会原子力開発」ということで、きょうお話ししたいと思っております内容を一から四まで分けて書いております。そこに少しずつ説明を加えておりますのは、その主体となるところであります。その後四枚の絵が続いてございますが、それは、ここにあります一から四までの内容に沿って私の方でまとめましたものでございます。  それでは、早速本題に入らせていただきます。  最初は、原子力選択についてでございます。  山を登りながら考えたというわけではありませんけれども原子力開発登山に例えてお話しいたしますと、私たちは、未踏峰原子力の峰に向かってふもとを離れ、登山を始めた段階であります。しかし、まだ五合目はおろか、やっと一合目か二合目に達したあたりではないかと考えております。  図でごらんいただきますように、前面には山の雄姿がそびえていますが、その頂は雪に覆われ、雲間に見え隠れしております。一方、後方には、原子力開発がこれまでたどった道が見えております。それは、十九世紀末のエックス線、放射能放射線の発見が、また一九四二年の原子炉第一号でありますシカゴ‘パイルの成功出発点になっているわけでございます。  我が国でも、昭和三十一年、原子力日本の平和で豊かな未来に重要な役割を果たすと考え原子力基本法を制定いたしました。原子力委員会は、原子力の順調な発展を期待して、エネルギー開発放射線利用基本として原子力長期計画を策定し、今日に至っております。当初から、原子力を単にエネルギー開発に限定せず、総合科学技術としてとらえた私どもの先輩の見識と決断に敬意を表し、高く評価するものであります。  その後の約四十年の研究開発は、高品質の原子力発電を実用化するほか、放射線を、医療の分野を初め広い領域に応用することに成功しております。  ここに至りますまでには、関係者努力もさることながら、国民各位原子力を理解し、支援されたことがその大きな理由になっております。しかし、世紀末を迎え、社会が転換期にある現在、二十一世紀を見込んで原子力をとらえ直し、再認識することが求められているようでございます。  ところで、今原子力には三つ選択肢があると考えております。その一つは、原子力人類と共存できないとして、開発をやめてふもとへ戻ることであります。その第二は、原子力は認めるものの、現在の場所が既に安定しているとしてここにとどまり、従来の日本のように欧米先進国の動向にまっというウエート・アンド・シーの姿勢をとることであります。しかし、科学技術創造立国を目指す日本が、国土の狭いことや資源に恵まれないといったみずからの宿命課題を解決し、また同時に、アジアに位置する先進国日本に求められる国際貢献考えますと、最良の選択は、ここで意を決して登山を積極的に続行することだと考えます。この第三の選択こそが日本のとるべき道だと考えます。  私は、二十一世紀人類社会原子力は必然の選択だと考えております。確かに山頂は雪に覆われ、雲間に見え隠れして、そこに至る道も定まってはおりませんが、これまでの一世紀にわたる研究開発で得られた知見をもとに、また、二十一世紀人類社会を支える科学技術に求められる条件を明確にすることで、山頂に開く原子力の地平を今描くことも可能であろうと考えております。  この図は、山頂に至る幾つかの可能性を示しておりますと同時に、その未来の形を私なりに想像したものでございます。  さて、次の資料に移っていただきたいと思います。二十一世紀科学技術に何が求められるかということについてこれからお話し申し上げます。  人類文明は、科学技術にこれまで、エネルギー物質技術及び情報といった四つのことを求めてまいりました。  天然資源積極的利用をよしとして、産業革命で一気に花開いた化石エネルギー文明は、石炭石油天然ガスなどその資源多様化を図って大量消費時代を生み出すことになりました。これは同時に大量廃棄時代でございます。その結果、窒素酸化物硫黄酸化物などの副産物もさることながら、主体となる炭酸ガスによる地球温暖化という環境問題を生んで、石油文明は曲がり角に差しかかったと言えます。  しかし同時に、産業革命科学技術発展を促し、人類文明を質、量ともに拡大させ、生活レベルも飛躍的に向上させました。産業革命で構築された広範な科学技術を素直に肯定しながらも、将来に歯どめのない利用を制限するためには、ここで、利用より調和を高位の理念とする倫理観と、それを保障する社会制度及び科学技術的方策が必要だと思います。私は、利用より調和を高位の理念とする発想の転換が今大切だと考えております。社会の理解を求めての論議が、国政の場を初め社会の各所で必要になったと考える次第でございます。  さて、二十一世紀原子力総合科学技術に成長していくには、幾つかの条件がその長期展望に求められます。  その一つは、原子力サイエンスとしての能力を持っているかということであります。科学技術は、サイエンスに先導されて技術が育っていくわけでありますし、科学サイエンスは逆に技術に支えられてその実証性が確かめられるわけであります。  したがいまして、原子力長期展望にまず最初に求められるのは、サイエンスとしての資質があるかということでございます。次は、原子力固有の方法によって新しい科学技術の世界を切り開くことが可能なのかであります。それから、文明根幹となるには、従来の科学技術の総体を原子力が受けとめることができるのかであります。これに加えて、自然環境社会調和する方策原子力は持っているか。この四つ条件を満足することが必要でありまして、これはとりもなおさず、バランスのとれた整合性のある総合科学技術への発展原子力に求めていることになるわけであります。  その辺の様子がこの図に書いてありまして、産業革命以来の経過と、それが今後に何を求めるかということで書いております。  さて、次の資料をごらんいただきたいと思います。  ここでは、原子力システム整合性とは何かということでお話しいたします。  原子力開発一つ中心は、原子力発電に代表されるエネルギー開発であることは既に御承知のとおりでありますし、また本日の主題でもあります。これからはエネルギー源としての原子力に焦点を合わせてお話し申し上げます。  さて、最初に申し上げるべきは、宇宙エネルギー源はすべて原子力であるということです。人類は、自然の原子力である、私どもに一番近い太陽エネルギーあるいはその変化したものと、それから核分裂核融合といった人工の原子力エネルギー源を求めています。したがいまして、自然との調和考えるに当たっては、宇宙地球歴史、または自然のエネルギー等に学ぶことが大切であります。私は、科学技術は、自然を学び、これをまねることから始まったと考えております。  ここで一つ考えておきたいことは、地球歴史は、大気中の炭酸ガスが減少し、自然の放射能が減衰する歴史であったということであります。これは、エネルギーシステム考え出発点で私ども考えておくべきことだと思います。  生物が互いに依存し合って生きてきた生態圏では、太陽エネルギーを、植物と動物が共存することによって主な元素、特に炭素でございますが、その循環に置きかえ、それをシステムの中に閉じ込めておくことができます。生態圏では、エネルギーは出入りしますが、物質は内部で循環することが特徴であります。すなわち、リサイクルとゼロリリースの原則が成り立つ可能性生態圏エネルギーシステムが持っているわけであります。  しかし、化石燃料を大量に燃焼させる現代のエネルギーシステムでは、生態圏での炭素循環能力を超えた炭酸ガスを生み出し、循環を閉じることができません。ゼロリリースからはほど遠く、これまで炭酸ガスは一〇〇%放出されてきました。  これと同様なことが原子力開発にとっても起こって、やはり自然界放射能レベルが減少から増大に転ずるのではないかと心配する方々がおられることを存じております。しかし、原子力は、これまで一貫して放射性物質を閉じ込め、環境と隔離することに努力してきました。また、それなりの実績を上げてきたことは御承知のとおりであります。ここには、原子力が持っている本来的な性質が大きな力を果たしていることを御認識いただきたいと思います。  簡単に申しますと、核分裂特徴は、反応によって大きなエネルギーが出るため、エネルギーを取り出すのに必要な資源量が少なく、出てくる廃棄物の量も少ないということです。ちなみに、一グラムのウランを燃やして出てくるエネルギー石炭に換算しますと二・五トンになります。ここで、一グラムのウランを燃やして出てくる放射性物質は三分の一グラムでありますが、これをやはり石炭の場合の炭酸ガスに置き直してみますと、約十トンの炭酸ガスであります。グラムとトンという比較で私どもはこれを見なければいけないということであります。  また、放射性廃棄物放射能は時間とともに自然に減少してもいきますが、一方、中性子との核反応によって放射能消滅させることも可能です。リサイクルとゼロリリース可能性を含んでいるということが言えます。  このような原子力システムとしての条件はどこに求めればいいかということで、この図を見ていただきます。左側に条件を書いておりまして、それを達成できる可能性として、右側に原子力の場合の可能性を書いております。  エネルギーの高効率・多目的利用に関しましては、これは汎用性のある電気エネルギー水素エネルギーが二次エネルギーとしてこれから重要性を増してくるところかと考えております。原子力は既に電気エネルギーを生み出すことに成功をおさめてきたことは、御承知のとおりであります。  それから、将来を見込んでも十分供給可能な量の資源があるかということに関しましては、これは、プルトニウムをつくり出し、これを燃料とすることで十分それにこたえることができます。プルトニウム燃料資源としての利用原子力基本でございまして、この技術を確立することが原子力開発にとっては最重要な課題と私は考えているところであります。  さらに、環境との接点で申しますと、放射能消滅させることができるのかということでありますが、これは、先ほど申しました自然崩壊に加えて、人工的に放射能消滅させる努力もありますが、同時に工学的な手法として、次善の策として、環境から隔離することは原子力が当初から取り組んできた問題でございます。  最後に、安全で信頼性がある、こういうことが望まれているわけでございます。  上の二つは、リサイクルによって核エネルギーを完全利用しようとする追求でありますし、後の放射能消滅と安全の確保は、調和を求めてゼロリリースを追求することにほかなりません。  原子力システム開発に際しましては、このような理想の姿をあらかじめ描いておくことが大変大事だと思っております。私は、この四つ条件を、一つ一つではなく同時にすべて満足するエネルギーシステム整合性のある原子力システムと呼んでいるわけであります。  次の資料をごらんいただきたいと思います。  これは、核燃料サイクルということに関連させまして、原子炉核燃料サイクルのことを説明したものでございます。  整合性のある原子力システムでは、原子炉核燃料サイクルの協調が必要でございます。原子炉中性子核反応付加価値を生み出すところでありまして、サイクルは、原子炉燃料を供給する一方で、原子炉から出てくる物質処理して再び原子炉に戻すか、リサイクルの末に再利用できずに残ったものを環境から隔離するために処分したりします。  原子炉では、中性子核反応に対する期待があるわけでございますけれども、ここでは高速中性子能力がすぐれていることは言うまでもありません。整合性のあるシステムで、高速中性子炉がその主要な部分を占めることは言うまでもありません。高速増殖炉開発の意味がここにあります。また、核燃料サイクルでは、物質効率よい分離が期待されます。  もう少し具体的に申しますと、整合性のある原子力システムでは、核分裂によってエネルギー生産する一方、原子炉の中で生まれたプルトニウム中心とする新しい燃料を取り出して資源に供するほか、核分裂の結果出てくる放射性物質効率よく分離して、原子炉や加速器で燃やして放射能消滅します。高速増殖炉開発の今日的意味と目的整合性観点から再確認することができ得ます。  原子力開発は、常にこのような長期展望に立って究極の姿を見ていくことが重要でございますが、研究開発に長期間要するのが原子力のような巨大技術宿命であります。私は、これは原子力に限ったことではなく、巨大技術がいずれも持つ特性だと思っております。したがいまして、現状を直視し、常に現実的方策を準備して、状況の変化計画の遅延に柔軟に対応することが大切であります。  原子力委員会は、現状に即して、長期計画に示されていたプルトニウム軽水炉利用、すなわちプルサーマルについて、より具体的な形で見解を表明し、これは閣議において了解されました。さらに原子力委員会は、これに加えて核燃料サイクル確立重要性を、資源有効利用環境負荷低減観点から再確認いたしました。これは、リサイクルとゼロリリースという科学的概念現実的表現だと御理解いただきたいと思います。いずれも、原子力開発がその山頂へ向かう道筋での現実的方策であり、未来へつながるものと考えております。  現在の原子力発電電力生産主体で、燃料生産放射能消滅に多くを期待できません。しかし、その制約の中で、原子力特徴を生かしながら社会や自然との調和を図ろうとしているのが、現在の日本原子力発電の姿だと考えております。  現在、軽水炉とそのサイクルは、ウラン濃縮と再処理濃縮は低濃縮ウラン生産であり、再処理原子炉で生まれたプルトニウムや燃え残りのウラン有効利用環境負荷低減のためですが、加えて、放射性廃棄物環境から隔離するための地層処分三つが主たるものであります。現在の軽水炉燃料サイクル組み合わせから、整合性ある原子力システムまでが、長い原子力開発道筋になります。  現在の核燃料サイクル技術は、第二次大戦中に原爆開発関連開発されたものが多く、必ずしも整合性観点に立って研究開発されたものではありません。一九八七年の原子力長計の改定のころから、原子力委員会は、欧米主導キャッチアップ型開発からの脱皮を表明して、新しい核燃料サイクル研究開発に着手してまいりました。現在、基礎研究基盤研究レベルにあります。  原子力研究開発は、多様な機能を一つ一つ実現していかなければいけないという多様性と、これらを一つシステムにまとめ上げなければいけないという集中性とが同時に要求されます。他の巨大科学技術と同様に、そのために長い開発期間を要するわけであります。したがいまして、常に長期展望を明確にし、究極の姿を求める姿勢がございませんと、本来の方向を見失ったり、社会変化の中に埋没するおそれがあります。原子力は、石油文明と共存して、また将来これにかわって人類文明をその根幹部分で支える、調和のある、バランスのとれた総合科学技術へと発展していくべきものであると考えております。  どうもありがとうございました。(拍手)
  4. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 どうもありがとうございました。  次に、荒木参考人にお願いいたします。
  5. 荒木浩

    荒木参考人 電気事業連合会荒木でございます。どうぞよろしくお願いします。  本日は、エネルギー問題におきます原子力位置づけということで、電気事業者としての考えを述べさせていただく機会を与えていただき、まことにありがとうございます。お手元のレジュメに沿いまして、お話をさせていただきたいと思います。  私ども電気事業者としましては、電力の量、質、両面にわたる安定供給は、コストダウンとともに、現在の九電力体制が発足して以来、一貫して経営の最大の課題であり、来るべき二十一世紀におきましても、ますます厳しさを増す困難な課題になるものと考えております。  二十一世紀エネルギー情勢を展望いたしますとき見逃せないのは、中国を初めとする近隣アジア諸国高度成長、それに伴うエネルギー需要の急増であります。  また、ことしの十二月には、気候変動枠組み条約の第三回締約国会議、いわゆるCOP3が京都で開催され、日本議長国を務めます。会議では、CO2削減目標などが討議されるようですが、世界的な地球温暖化防止の動きも、エネルギー供給制約となる可能性が大いにあります。  このように、我が国の将来の発展基盤となるエネルギー安定供給確保、とりわけ輸入依存度の高い我が国におきましては、短期的な経済性のみならず、長期的な観点からエネルギーセキュリティー確保することの重要性が一層増してくるものと考えております。  日本のような無資源国におきまして、エネルギーセキュリティーに対する備えとは何かと申し住すと、エネルギー源多様化によりましてリスクの分散を図ること、すなわち事業者としていろいろなエネルギー選択肢を持つことに尽きると思います。  幸い、電気の場合、化石燃料原子力、そして水力、太陽光などの自然エネルギー、さらにはごみ発電などの再生エネルギーまで有効に活用することが可能です。私どもは、こうした各種エネルギー源を量、質、そして経済性の面から評価し、バランスよく確保することによって、過去に経験したオイルショックのようなことが起こっても、電気をお使いいただいているお客様に極力影響が少なくて済むよう、いわゆるベストミックス、これはエネルギーの最適な組み合わせでございますが、このベストミックス考え方で安定供給を図っているところでございます。  もちろん、各種エネルギーにはそれぞれ特性があります。例えば、石油石炭などの化石燃料は取り扱いが容易であり、原料、燃料として幅広く利用されておりますが、資源が有限であることや、その埋蔵量も地域的に偏在していることに加え、地球温暖化の原因ともなるCO2発生という問題を抱えております。一方、原子力は、供給安定性や、CO2をほとんど発生しないなど環境の面ですぐれたエネルギー源であることは確かですが、放射性物質を取り扱うことから、安全確保及び放射性廃棄物管理がきちんとなされることが求められております。  一部に、太陽光発電等の新エネルギー、省エネルギーを推進、徹底すれば原子力発電にかわり得るのではないかという見方もございます。  新エネルギーについては、私どもも今までも研究開発を進めてまいりましたし、またこれまで以上に勉強し、開発を進めていくつもりでございます。しかしながら、もともとエネルギー密度の低い太陽光や風力等のエネルギーは、たとえ電気に転換できても、量、質、経済性の面から見て、火力や原子力にかわる基幹エネルギーとして位置づけることは難しく、補完的なエネルギーとして活用することが適切ではないかと考えております。  また、省エネルギーにつきましても、我が国のGDP原単位当たりのエネルギー消費量は、二十年前の約七割と減少しておりますが、ここ十年間はほぼ横ばいの状態となっております。これ以上の大幅な省エネルギーを進めるには、国や企業、そして消費者がおのおのの役割を分担し、一層の努力を傾ける必要があると考えます。  私ども電気事業者は、国民生活や経済活動のかなめとなる電気を供給する責任者といたしまして、一生懸命取り組みはいたしますが、新エネルギー、省エネルギーに過大な期待を寄せて電力安定供給確保を図っていくことは、余りにもリスクが大き過ぎると考えております。したがいまして、今後の世界的なエネルギー需要の増大と環境面からの供給制約等を考えますと、資源のない我が国におきましては、原子力を基幹エネルギー源選択肢中心として位置づけることが不可欠であると考えております。  幸い、原子力発電は、導入初期におけるトラブルを乗り越えましくその後安定した運転実績を積み重ねておりまして、最近は年間の稼働率が八〇%を超え、日本全体の電力供給の三五%を占めるまでになってまいりました。これは、日本において軽水炉技術が定着してきた結果と考えられております。しかしながら、将来の長期的なエネルギー需給を考えた場合、やはり核燃料サイクルの推進に最大の努力を傾けていくべきであると思っております。  プルトニウム利用を軸といたしました核燃料サイクルの確立は、ウラン利用価値を大幅に広げられるという点と、軽水炉から高速増殖炉まで原子力選択の幅を広げられる点から、我が国にとりまして極めて重要な選択肢であります。また、技術先進国である我が国が、使用済み燃料から抽出したプルトニウムを有効に利用する技術を着実に開発し実用化することは、技術創造立国として国際貢献を果たすものであると考えております。  私ども電気事業者としましては、これまで国の原子力長期計画に沿って核燃料サイクルの推進に努力してまいりましたが、本年二月の「当面の核燃料サイクルの推進について」の閣議了解を受けまして、さらに積極的、着実に取り組んでまいりたいと考えております。  具体的に申し上げますと、再処理に関しましては、日本原燃株式会社六ケ所再処理工場の建設に最大の努力を払うことであり、プルトニウム利用につきましては、諸外国において十分な実績があり、安全性が確認されておりますプルサーマルを国内のプラントにおいて着実に実施していくということであります。  プルトニウム利用中心といたしました原子力開発基本は、あくまでも安全と安心でありまして、一昨年に発生しました「もんじゅ」事故や、本年三月に起きました東海処理工場アスファルト固化施設の事故は、国民の皆様に大きな不安と不信を与えた点でまことに残念でございます。国民の皆様の不安と不信を払拭するために、御当局におきまして、徹底した事故の原因究明と再発防止対策の検討を行っていただきたいと考えております。  本年四月から動燃改革検討委員会が始まり、一連の事故の背景にある問題点をさまざまな角度から分析し、改革の方向性がまとめられるところですが、ぜひとも、この検討結果を軸に、動燃事業団を今後の日本核燃料サイクル技術開発を安心して任せられるような組織に改革していただきたいと思っております。  なお、動燃の改革に当たりましては、私ども電気事業者がこれまで原子力発電所を運営管理する中で培ってきた現場を中心とするさまざまなノウハウなど、お役に立てるものがあれば積極的に支援してまいりたいと考えております。  動燃問題に象徴されますように、原子力政策考える点で決して見逃してならないポイントは、原子力社会とのかかわりであると思います。原子力のような大きなプロジェクトは、社会的信頼、地域の理解を得なければ推進できないことは言うまでもありません。  その意味では、動燃の一連のトラブルは、一般社会に十分に目を向けず、情報の把握が不正確かつ不十分、そして情報開示もおくれるなど、問題が多かったように思っております。私どもといたしましても、今後さらに情報公開を徹底していく考えでございまして、これらの情報をもとに国民の間で原子力について一層の理解を深めていきたいと考えております。1また、私も出席意見を述べさせていただきました昨年の原子力政策円卓会議におきまして、電源立地地域と消費者の痛みの共有と公平な負担という重要な問題が提起されました。電気事業者といたしましては、立地地域住民との意思疎通を一層深め、都会を中心といたします消費者の方々にも、エネルギーの問題を自分自身の問題として考えていただくよう努力してまいりたいと考えております。  その意味で、五月三十日に東京の読売ホールで開かれました一日資源エネルギー庁におきまして、ここに御出席茅参考人も御出席いただきましたが、青島東京都知事あるいは当社の柏崎刈羽原子力発電所の所在する柏崎の西川市長にも御出席いただきまして、それぞれ電力の消費地と生産地の立場として意見の交換をされたということは、私は大変有意義であったというふうに考えております。  いずれにしましても、資源小国の我が国としまして、これまでと同様、原子力は何としても必要でありまして、このことは我が国エネルギー政策の基本であると考えております。安全を最優先に安定運転を積み重ね、情報公開に徹するとともに、地元との信頼関係を一層大切にいたしまして、より多くの方々原子力発電電力供給の大きな柱であることを御理解いただけるよう、今後とも全力を挙げて努力してまいりたいと思っております。どうかよろしくお願いいたします。  どうもありがとうございました。(拍手)
  6. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 どうもありがとうございました。  次に、茅参考人にお願いいたします。
  7. 茅陽一

    茅参考人 慶応大学の茅でございます。  私は、大学エネルギーシステムの分析、評価というのをずっと仕事にいたしておりまして、そういう立場から、原子力が今後どういう役割を果たすかという点についてお話ししてみたいと思います。  この問題を考える場合は、環境資源、それからエネルギーの供給という三つの面を考えなければいけないのですが、時間がございませんので、今のプレゼンテーションでは環境、特に温暖化という問題に関する原子力の役割について触れてみたいと思います。  お手元に資料がございまして、そこに表が二枚ございます。これは数字の羅列でございますので、やや嫌だなと思われる方もあると思うのですけれども、こちらは科学技術委員会ということでございますので、そういう数字を使った議論もしていただいた方がいいのではないかと思いまして、その点は御勘弁をいただきます。  この表で何を申し上げたいかというと、過去から今後しばらくの間、原子力が温暖化という問題に関してどのぐらいの役割を果たすのかという点について御理解をいただきたいということでございます。それと同時に、原子力ということだけではなくて、この温暖化問題というのがいかに困難な問題かということを、この表で理解していただければと思って持ってきたわけです。  この表で、数字が書いてございますが、説明が何もございませんで大変恐縮なんですが、これは年ごとの変化率をパーセントであらわしたものでございます。例えば、マイナス〇・六と書いてあるのはマイナス〇・六%・パー・年という意味でございまして、何もその表示がございませんが、次の表もその意味でございます。  さて、温暖化問題というのが今非常に世界的に議論されている、そして恐らくこの十二月の京都の会議では長期的な削減の目標が決められるだろうということは、御承知のとおりかと思います。そういった点から、過去それから将来におきます日本及び先進諸国の二酸化炭素の排出の状況というものをこの表で見ていただくのが一番よろしいかと思うのですが、それは、例えば日本だけを見ますと、一枚目の表の一番右端に出ております。過去、一九八〇年代だけをとってみますと、我が国の場合、平均で申しまして、炭酸ガスは大体一%・パー・年ぐらいでふえてきております。しかし、九〇年代に入りましてはむしろ増加傾向でございまして、一・八%に上がった、こういう状況でございます。  こういう問題が一体どのようにして解決できるのかということを考える場合に、我々はしばしば、そこにございますように三つのファクターに分けて炭酸ガスの増加率を考えるのが普通でございます。  これは、そこにございますように、経済成長率、GNPと書いてございますが、それからエネルギー集約率の変化、俗に言う省エネルギーですね、それから炭素依存率、これは燃料の中にどれだけ炭素があるか、別な言葉で言いますと、どれだけ炭酸ガスが出るかという率でございまして、この三つ変化率を足しますと、ちょうど炭酸ガスの増加率に一致いたします。これは簡単な計算ですぐ出てまいります。  その場合、前の方の二つ、炭素依存率の変化エネルギー集約率の変化というのは、いずれも技術的な要因が非常に大きくきいております。それに対しまして経済成長率は、説明しなくてもおわかりのように、経済の発展の度合いを示すわけでございます。したがって、我々とすれば、GNPの成長、これはほとんどの場合プラスになるわけですが、これをどのように前の二つの技術要因で打ち消していくかということが炭酸ガス、温暖化問題を考える場合のかぎになるわけです。  その一枚目の表をごらんいただきますと、例えば八〇年代の日本というのはかなり成功した方でございます。経済は平均三・七%、これは欧米諸国に比べますと高い数字でございますけれども、これだけ高い成長を示したのですが、実は省エネルギーがマイナス二%、マイナスというのはよくなってくるという意味でございます。それから、炭素依存率もマイナス〇・六%ということで、結果的にCO2の増加は一%・パー・年ぐらいで済んだわけでございます。  ところが、九一年から後の数字がそこに出ておりますけれども、ごらんいただくとわかるように、炭素依存率はほとんど変わっていないのですけれどもエネルギー集約率は逆にプラスに変わっております。  二枚目をちょっと見ていただきますと、下に「主要国の省エネルギーの進展状況」というのが出ております。これは、今申し上げましたE/Gという因子、これが毎年どう変わっていっているかというのを指数で示した絵なんですが、その中で太い線で書いてございますのが日本でございまして、一九九四年までの絵が出ております。  ごらんいただくとわかるように、先進諸国いずれも、先ほどの荒木参考人のお話にもありますように、八〇年代の半ばぐらいまでは大変改善されているのですけれども、それからは停滞ぎみで、特に気になりますのは、我が国の場合、九〇年代から逆に上がってきているということです。つまり、省エネルギーという言葉は実質的にはかなり死語になってしまっているというのが現状でございまして、これが我々が現状を憂える一つの大きな理由でございます。  ちょっと、一ページ目の表に戻っていただきまして、それに対しまして、炭素依存率と書いたものは余り変わっていないのですが、これは、燃料、つまり化石燃料が、例えば石炭からより炭素の含有量の少ない天然ガスにかわるとか、あるいは原子力、水力などの非化石燃料にかわることによってマイナスの値がふえるわけです。  ここにありますように、八〇年代、九〇年代、余り変わっておりませんのは、これはそういった流れは余り変化していないということをあらわしております。先ほどもちょっと話にございましたように、原子力に対する風当たりは大変強くなってきておりますけれども、建設そのものはかなり長い期間をかけてやっておりますので、すぐ状況が変わるというわけではございませんで、それがこの数字にあらわれております。  恐縮ですが、もう一度二ページ目をごらんいただきたいのですが、このような状況というのを一九八〇年代のほかの国についてちょっとごらんいただきたいと思います。  今と全く同じ表がフランス、ドイツ、日本、イギリス、アメリカについて出ております。ちょっと字が小さくなって申しわけないのですが、おわかりいただけると思うのですけれども、そこで真ん中にCO2というのが出ております。これをごらんいただきますと、フランス、マイナス一・九%・パー・年、ドイツ、マイナス一・二、イギリス、マイナス〇・一というふうに、ヨーロッパの国は軒並みマイナスなんですね。つまり、二酸化炭素の排出は年々減ったというのが八〇年代の状況でございまして、現在EUが二酸化炭素の削減ということに対して積極的な一つの基盤をなしておりますが、これが何によったのかということでございます。  ごらんいただきますとわかるように、省エネルギーにつきましては、フランスを除きまして、八〇年代、世界の先進諸国はいずれも二%近い省エネルギー率を示している。つまり、どこも成績がよかったわけです。ところが、炭素依存率というのをごらんいただきますと、フランスはマイナス三・四、ドイツはマイナス一・二というぐあいで、かなり速いテンポで減少しているわけですね。  これが何であるのかというのを考えるには、一九八〇年に原子力モラトリアムが起きた、つまり、それ以後の新しい原子力発電所の運開が全部とまってしまったと仮定して再計算をしてみるとよくわかります。今の炭素依存率がその場合どうなるかというのが右側のA0という欄でございまして、ごらんいただきますと、何とフランスのマイナス三・四というのはプラス〇・四というふうにプラスに転換してしまうわけです。そのほかの国も、いずれもマイナスの数字が小さくなるかあるいはプラスに転換しておりまして、結果的に、一番右にございますように、もし八〇年に原子力モラトリアムが起きたとすれば、世界の先進諸国はいずれも二酸化炭素の排出はふえていったことになるはずだというのを、これが示しております。つまり、言いかえますと、原子力がいいかどうかということは別として、八〇年代において二酸化炭素の排出がかなり抑えられたのは、実は原子力がほとんどの原因であったということは数字の上から明確に見てとれます。  もう一度、一ページ目の日本の表に戻っていただきたいのですが、さて今後ということになります。  今後につきましては、我が国においては二つのシナリオがそこに書いてあります。真ん中にあるやや太い欄、これは需給見通しと呼んでおりまして、通産省が、正確に言いますと、通産省の総合エネルギー調査会という審議会が出しております公的な見通しでございます。たまたま私はそれの需給部会長というのをやっておりますけれども、そこで二〇一〇年までのシナリオというのをつくっております。その下に長期シナリオというのが、二〇三〇年までというのが出ております。これは昨年つくったものでございまして、一体、長期的にどのぐらい二酸化炭素を抑えられるかということを考えるためにつくったシナリオでございます。  なお、これはいずれも政府のシナリオでございますが、そこに入っている数字は私が試算したものでございまして、政府の公的な数字ではございませんので、お間違えのないようにお願いいたします。もっとも、この数字の計算を間違えますと私は学生に怒られますので、まず大丈夫だと思いますけれども。  まず、真ん中の需給見通しを見ていただきますと、そこにございますように、我々は二酸化炭素をほとんどふやさなくて済むという絵が出ております。一番右側の〇・一という数字は年率〇・一%ですので、十年間で一%しかふえませんので、実質的にほとんどふえないという意味になります。それを達成するためには、そこにあるように、エネルギー集約率が大体八〇年代と同レベル、マイナス一・六%、炭素依存率は、これも現在とほぼ同じのマイナス〇・八%という数字でやればまあいきそうだというのが、そこに書いてある数字の意味でございます。  この場合に、これができるのかということになるのですけれどもエネルギー集約率がマイナス一・六という数字は、八〇年代の数字を見る限りはできそうな気がするのですけれども、先ほど申し上げましたように、一九九〇年代から日本の状況が非常に悪くなっております。昨年も省エネルギーにつきまして審議会等で国民に呼びかけを出しておりますけれども、現実的には省エネルギーというのはまだ一向に進んでいない。これは、先ほどの荒木参考人のお話にもあるように、過去にもう十分やってしまったからかもしれません。いずれにしても、このマイナス一・六%という数字を達成するのはかなり大変なことであるというふうに我々は認識しております。  マイナス〇・八%という炭素依存率でございますが、これは実は、原子力が二〇一〇年までに七千二百五十万キロワット発電できるという想定に基づいた場合でございます。現在に比べると約二千五百万ぐらいはふえなければいけない、これは大変な数字かと思っております。  さらに、長期のシナリオがその下に出ておりますが、これは、エネルギーの集約率に関しましては大体需給見通しと同じことを考えておりますが、炭素依存率も似たぐらいはいかないかという希望が出ております。これは実は、いろいろな計算をいたしまして、原子力は目いっぱい頑張る、そして一億キロワットを二〇三〇年までにできる、それから太陽光発電のような新エネルギーも目いっぱい頑張って、私の技術屋としての立場からすると、ほとんど無理な値、例えば、日本の太陽光発電で五千万キロリッター程度のエネルギーがつくれるという前提でやった場合に、初めてこの〇・七%という数字が出てくるわけです。それでやっとゼロになるというのがこのシナリオの数字でございます。ただし、経済成長率が下がれば、もちろんもっと下がるわけです。これは産業構造審議会で暫定的に出した値でございまして、それを使っておりますのでこんな値になるわけです。  ただ、いずれにいたしましても、このような数字から見ますと、原子力というものを抜いた場合には日本CO2の排出というのはいや応なしにふえそうだということは、どなたでもおわかりになる事実でございまして、原子力というものが、やはり日本の中では非常に大きな意味を持つということがよくおわかりかと思います。  もちろん、考え方として、原子力なしでやっていこう、そして、その分ぐらいCO2がふえても構わないではないかという見方もあり得ます。しかし、私自身、温暖化問題というものの深刻性というものを考えてみ、そしてまた、現在の軽水炉技術というものとを比較してみますと、やはり我々は、原子力というものを着実に推進して、温暖化に対して少しでも手を打つのが筋であるというふうに考えております。  もう時間がございませんが、最後に、より長期の問題について一言触れさせていただきます。  お手元の一枚目の最後に、「超長期にみる原子力の役割」というのがございます。  長期的に見れば、太陽エネルギーのようなクリーンエネルギーが出てきて、我々は原子力を使わなくても済むのではないかという考え方があります。私も、正直に言いますと、二百年、三百年の後には原子力よりもすぐれた技術が出てくるということになってほしいと考えておりますが、百年のスパン、来世紀のスパンでは、それは非常に難しいことではないかと思っております。  現在、世界的に、原子力にかわる新しいエネルギーとして注目されておりますのは、太陽光発電と、植物を栽培いたしましてこれをエネルギー化する、我々の言葉ではバイオマスと呼んでおりますが、この二つでございます。ところが、その見通しを見てみますと、いずれも相当に楽観的といいますか、無理がございまして、それを実現することは非常に難しいという気がいたします。  一つの例だけ申し上げます。  太陽光発電、これは現在政府では盛んに推進しておりますし、私も大事だと思っていますけれども、現在の太陽電池の効率一〇%、この前提のもとで、皆様のお宅の屋根に全部太陽電池を張ったとしたときに一体どれだけ電力が出るかを考えますと、日本の現在の電力の一五%ぐらいなんですね。つまり、夜もあり、雨も降りますので、実際の出力というのはその程度にしかならないわけです。したがいまして、やはり、こういったものは大事なんですけれども、それのみに答えを託すことはできない。  一方において、原子力も、アメリカの主張するように、いわゆるワンススルー、つまり、軽水炉で一回使って、ウラン235だけを当てにするという考えですと、資源量的にはやはり二十一世紀のどこかでは枯渇の危機に至ることも我々としては心配しております。やはり、藤家委員の言われるように、FBR、高速増殖炉という形で、ウランをより有効に利用する手段を今後とも開発することが非常に重要だと思います。もちろん、その途中にはいろいろな問題点はございますけれども、やはり人間に長期的に安定してエネルギーを供給するとすれば、そういった高速炉の開発というのは必然であるというのが私の意見でございます。  以上でございます。(拍手)
  8. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  9. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 参考人に対する質疑は、理事会の協議に基づき、まず、各党を代表する委員が順次質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。  各党代表の委員質疑は、お一人一問五分程度とさせていただきます。また、お答えいただく参考人を御指名いただくようお願いを申し上げます。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。  なお、着席のままで結構です。  山口俊一君。
  10. 山口俊一

    ○山口(俊)委員 自由民主党の山口俊一でございます。  きょうは、参考人のお三人の先生方、本当にお忙しい中をありがとうございます。  大変参考になったといいますか、我が意を得たりというふうな部分もあったわけでありますが、確かに、原子力エネルギーというか、核エネルギーの必要性とか、あるいはそれを取り巻くさまざまな環境、これはもう十分よくわかるわけであります。ただ、先ほど茅先生おっしゃっておられましたが、実は私は典型的な文科系でございまして、科学技術委員会でいろいろ議論をさせていただいておるわけでありますが、あえて情緒的な言い方をさせていただくと、核エネルギーというものを本当に人類がきちんとコントロールできるのだろうかというふうな、素人としての若干の不安があるわけであります。  先般来、御承知のとおり、動燃の事故に端を発したといいますか、いろいろな議論が行われてきた。そうした中で、私どもも問題点等々御指摘をさせていただいたわけでありますが、ただ、事故の問題あるいは組織の問題にとどまらず、今まで日本が進めてきた原子力政策、これがどうなんだというふうな議論も実は出てきておるわけであります。  そこで、お伺いをいたしたいわけでありますが、実際、今回の場合、さまざまなことから、例えば安全性について、あるいは進めようとしておる核燃料サイクル技術的な可能性の問題、あるいはそれを担う組織の問題、いろいろ出てきておるわけです。ですから、簡潔にといったら無理かもわかりませんが、問題提起という意味でお伺いをするわけでありますので、できればお三人の先生方にお答えをいただきたいわけであります。  確かに必要性はわかるのだけれども、膨大な国費、言いかえますと税金を投入してきておる、それだけに、今回のような事故があった場合には、これは本当にできるのですか、大丈夫なんですかという素朴な疑問が国民の皆さん方にあろうと思うのですね。ですから、そうしたことに対して、安全性なり、どちらかといいますと技術的な可能性、あるいはまた採算的にどうだ、そして同時に、それを担う組織は果たして動燃のような形でいいのだろうか、この点についてそれぞれ、問題提起という意味で、五分ということでありますので、できれば簡潔にお話しをいただきたいと思います。
  11. 藤家洋一

    藤家参考人 お答えいたします。  原子力を進めていく上で、ただいま御指摘ございましたように、それの持つ本質的な性格に基づいて長期展望をつくることが大事であります。と同時に、それを支える技術がちゃんと備わっているのか、あるいは研究開発によってそのレベルまでいけるのか、それに加えて、こういった原子力開発を順調に進める集団、組織と申しますか体制が備わっているか、この三つが、まさにおっしゃるように大変大事でございますし、その相互関係も大事でございます。  今、一つの焦点の安全についてお話し申し上げますと、今回の動燃の「もんじゅ」あるいはアスファルト固化の問題は、これまでの原子力の安全が、設計の安全から運転の安全へと移ってきて、次第に社会性を深くし、一般の方々に理解していただける段階に至ったところで起こった問題でございまして、これは、社会的な観点に立ちますと、常識的な問題に触れるところがあったのではないかと思っております。  その一つは、火事は早く消すものだという話と、それから消火は徹底的にやるというのは、これはまさに社会常識でありますが、それに対していささか、こたえられなかったと申しますか、常識に反するところがあった。さらに、その後の虚偽報告等々があって、社会に対して非常な不信を与えたということは、私ども十分認識しているところでございます。  一方で、原子力の安全をどう考えるかという議論は、これまで日本におきましては、原子力安全委員会幾つかの下部組織でこの問題を扱ってまいりました。特に、許可に関連する安全審査会におきましては、こういった原子力発電所の安全問題をずっと扱ってまいりまして、私も二十年そこにおりまして、やってまいったわけでございます。  私は、技術的に言って、これまでの原子力の安全を論理で展開することも可能でございますが、これは一口に申しますと、核分裂に直接関係した事故を本質的に抑え込めるかどうかというところかと思います。先生おっしゃった意味は、まさに、克服できるかというのは、原子力核分裂反応の異常に基づく事故が抑えられるかということでありまして、これは炉の持つ本来的性質で抑え込むことを私どもは前提としておりまして、今の軽水炉は、そのような観点に立って、十分安全が確保されると考えております。なお、これについては十分な実績があることも、日本のこれまでの五十基の原子力発電所の運転を通じて十分御認識いただけるところかと考えております。先ほどの荒木参考人のお話にもその辺があったかと思います。  したがいまして、こういった技術に伴う安全というのは、本質的な安全と、先ほど申しました放射性物質を閉じ込めるという工学的なものとがうまくかみ合って、これまでの安全の実績を確保してまいったわけでございます。ただ、これを社会に説明するのは相当難しいことであります。したがいまして、実績にもかかわらず、いつも何かの形の不安があったということは、私はこれは当然だろうという認識をしております。  私は、そういう意味で、地方が原子力を見る時代に世の中は移りつつあるという言い方を常にしておりますし、そうあってほしいと思っておりますのは、社会の人々が自分たちを中心原子力を見たときに、やはり中央から来る情報によって判断するのと少し変わった判断の仕方ができるだろう、むしろ、そういうことで全体を見ていただくことが大事かと思っております。この話は、後の御質問にありました、サイクルはどうなるかというようなことにつきましても、一つの見方としてそういう見方をすれば、バランスのとれた物の見方ができるかと思います。‘非常に複雑なシステムを扱いながらやっているのでございますが、原子力の安全は、簡単に言いますと、とめて冷やせば安全が確保できるという、論理的には話しやすいところもございますので、ぜひ御理解いただければと思っております。
  12. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 山口委員に申し上げますが、所定の五分がお互いのお話だと十分を過ぎてしまいますので、名指しをいただいて、お一つで……(山口(俊)委員「後ほどで結構です、また」と呼ぶ)そうですね。また再度していただきますが、それでは、代表して藤家参考人からということで。  次に、田中慶秋君。
  13. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私は、新進党の田中慶秋です。  きょうは、三人の参考人の先生方、大変御苦労さまでございます。改めて、原子力の必要性なり、あるいはまた多岐にわたって御努力をいただいていることを皆さんからお聞きしまして、意を強くしたようなところもございます。  私は、たまたま学生時代原子力というものを学び、そしてまた、今日のような原子力利用発展ということを想像もでき得なかったわけでありますけれども、この三十年から四十年の間、日本原子力技術というのは大変な進展があった、こんなふうに思っておりますし、あるいはエネルギーや医療や、あらゆる分野に原子力利用というものがされている、こんなふうに思っております。二十一世紀は間近に来ているわけでありますけれども、まさしく原子力エネルギーを抜きにしてこれからの日本の経済や社会の生活等々を想像することは大変難しいのではないかな、こんなふうに私は思っております。  しかし、その中で、私はかねてから、原子力をより社会の中で認知をさせていただくためには、安全性というものをより徹底的に追求していかなければいけないのだろう、こんなふうに理解をしております。荒木参考人は、今日まで電気事業者として、現場でそれらに大変な努力をされてきたと思います。  そこで、実は、理論上の安全性という問題、それから実質的な現場での安全性という問題もあろうと思います。もう一つは、社会的な安全性というものに対する認知という問題があるんだろうと私は思います。特に、今度の動燃のそれぞれの事故を見たときに、ある面では、理論的な安全性だけを追求し、かつまた現場での危機管理を初めとするそういうところが抜けていた。結果として、私は、あのことによって、日本原子力のこれからの政策やエネルギー等々を含めて大変後退をするのではないかなという心配をしている一人であります。  それを払拭する意味でも、危機管理や安全性という問題について、皆さんから御理解をいただける社会的な安全性といいますか、皆さんから認知をしていただけるように、もっとPRなりを徹底的に行うべきではないかな、こんなふうに私は考えておりますので、今日までの経験から、電気事業者として、どういう点を最重点的に努力をされていくか。  日本原子力発電所が五十基もあり、社会に貢献し、そして、あそこの地元の皆さん方は今はむしろ原子力エネルギーを頼り、それに誘致の運動までされている。そして、地元の人たちも一生懸命働いている。危ないところで働くわけないわけですから。そんなことを考えて、相当これらについて努力をされたのだろうと思っておりますので、この一点に絞って質問させていただきたいと思います。
  14. 荒木浩

    荒木参考人 大変力強い激励のお言葉をちょうだいしまして、ありがとうございます。  私は、両参考人と違いまして、純粋な事務屋でございますので、理論的なことはよくわかりません。その意味で、我々がどうして原子力の安全を担保しているかということにつきまして、少し歴史的な話をさせていただきたいという考えを持っております。  原子力も導入当初、私の方ではたしか昭和四十六年ごろだと思いますが、導入当初は非常に稼働率がよかった。しかし、第一号機ができまして、翌年には二五%ぐらいの稼働率になっている。昭和四十六年には九九%ぐらいの稼働率で出発したわけですけれども、途端に悪くなった。それが、いわば低空飛行をずっと続けてまいりましたが、一九八〇年代になりましてかなり急速に稼働率が回復いたしまして、おかげさまで、現在では八〇%を上回るような稼働率になっています。  これは、実際に定期点検期間というのが入りますので、八〇%レベルの稼働率というのは、ほぼフル運転というふうにお考えいただいてよろしいんじゃないかなと思っております。もちろん、諸外国のようにもっと定期点検期間を短縮いたしますれば、もう少し稼働率はよくなると思いますが、九〇%を上回っているところもございますけれども、いずれにしましても、この八〇%という実績がいわば原子力の安全性を担保しているということで、このために我々が努力をしているということでございます。  そこで、今度、動燃事故がございましたけれども、やはり私どもでも開発の途上におきましてはかなりいろいろな苦労を積み重ねているということでございまして、特に、福島の第二発電所の三号機の再循環ポンプの事故がございまして、これは大変皆さんに、地域社会にも御迷惑をおかけしたのですが、私ども、やはりそういうときに、マスコミあるいは自治体あるいは地域住民、いろいろと批判を受けました。確かに我々の対応が非常にまずかった。要するに、何となく情報を隠す体質であるとかあるいは情報がおくれる、虚偽ということはしなかったと思いますが、いずれにいたしましても、何となく閉鎖社会的な要素を持っておった。それが、やはり我々の原子力の安全性につきまして非常に飛躍的に物の考え方を変えた、いわばターニングポイントだと思っております。  それ以来、私どもは現場の人には、とにかく原子力についてはまずとめる、冷やす、封じ込める、こういう原則を徹底することにいたしまして、なおかつ、その原子炉をとめる権限というのを当直長に与えた。要するに、飛行機でいえばパイロットに与えた。上の人に相談をすることなく、瞬時に自分の判断でとめる。しかも、私どもは今、当直長に任用されている間は、いわば職務権限といいますか、当直長の手当というのを出しておりまして、給料を少し高くしております。  そういうようなことで、いろいろ過去の自分の反省を踏まえまして、実績を踏まえて、今の私ども原子力軽水炉の運転につきまして、自分で考えながらいろいろな対応をしてきたというふうに考えております。  そういう意味で、私ども、今度の動燃さんの事故の対応、広報体制あるいは地域対応というのを拝見しておりますと、やはり今までこの動燃が、要するに会社組織じゃない、会社というのは一つの求心力もございまして、ある意味では見えざる資本の論理に導かれましておのずからまとまっていくという組織であるわけですけれども、あそこはやはり研究者、専門家の集団であったということで、ある意味で組織としての、有機体としての機能が十分に育成されていなかったのではないか。  そういう意味で、今動燃さんに我々がお手伝いできること、簡単にお手伝いできることはそういうことじゃないかということで、運転の処理の問題あるいは事故時の地域対応、広報対応、こういうようなことを今一生懸命動燃さんに、我々の今までの反省を含めまして、いわばノウハウを移転するという努力を積み重ねております。  お答えになったかどうかわかりませんが、そんなことでよろしいですか。
  15. 佐藤敬夫

  16. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 民主党の佐々木でございます。  きょうは、先生方、御苦労さまでございます。  時間が限られておりますので、端的に質問に入らせていただきたいと思います。  先ほど三人の先生のお話を承りまして、いずれも原子力の推進といいますか、その位置については積極的に見ておられて、今後も日本エネルギー考える場合にはどうしても原子力に頼らざるを得ないということのようにお聞きいたしました。また、政府の方で決定をしておりますいわゆるプルサーマル計画についても、茅先生もこれは肯定なさっておられるわけですね。  ところが、私どもがいろいろ見聞しておりますところでは、むしろ外国の諸国、例えばアメリカ、フランス、ドイツなどでは、このプルサーマル計画、再処理だとかあるいは高速増殖炉についても非常にさまざまな問題提起がなされて、それで建設中だったものについても、そういう再処理工場についても建設をやめるというようなことがあったり、見直しの動きが出ている。日本とは逆に、むしろ消極的になっているようにも聞いておるわけです。  それで、先ほど藤家先生は、これからこの原子力政策を進める上でも国民の理解が必要だということをおっしゃった。私もそうだと思います。しかし、国民一般は先生方のように専門家じゃありませんから、今度の一連の事故などを通じて、これがいわゆる炉心部分ではないとしても、やはり原子力発電というのはなお危険が伴っているのだという不安もあるわけですね。また、マスコミその他でも、今度のプルサーマル計画にしても少し議論が足りないのじゃないか、安易に過ぎるのじゃないか、あるいは外国に見習って見直すべきじゃないか、こんな議論もあるように思います。  そこで、質問の中身ですけれども、仮にこういう計画が中止になった場合、できないということになった場合には、これはいわゆるプルトニウムが堆積されるというか、余剰になるというか、そういうことも考えられるわけですね。その場合には、そういうプルトニウムなどについてはどういう処理をしたらいいのか、このことを茅先生からお聞きをしたいと思いますが、時間がありましたら藤家先生にもお願いしたいと思うのです。
  17. 茅陽一

    茅参考人 プルトニウム処理の問題というのは、恐らくワンススルーの使用済み燃料をどう処理するかという問題ではないかと思いますが、この問題は、本当は私よりも、原子力の専門家である藤家さんにお答えいただいた方が正確であるとは思います。  ですが、私の了解では、現在の段階は、御承知のように、とりあえず処理済みの燃料は蓄えておりまして、ある程度たってから廃棄をする、あるいは再処理をするという形で動かす方向に持ってきているわけですね。ですから、もし仮に高速増殖炉が中止ということになりますと、日本もやはりすべて普通の軽水炉で使いました燃料は一時蓄えて、ある程度時間がたってから何らかの場所で廃棄をするということになろうかと思います。その場合は、プルトニウムは要するに燃料棒の中に含まれているという形でございますので、それをわざわざ切り出すという必要はございませんから、従来の処理済み燃料と同じやり方をするということになろうかと思います。それにつきましては、現在、アメリカの方式がそれでございますね。
  18. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 時間ありますか。藤家先生、そのことでお願いします。
  19. 藤家洋一

    藤家参考人 日本原子力政策は、平和利用に徹するという大前提のもとに、資源有効利用環境負荷低減ということで進めております。その観点に立ってみますと、プルトニウムの再利用というのは、まさにこれはその第一に要求されることであります。  御質問が、もしそうでない場合という御質問でございますので、なかなか考えにくいのでございますが、確かにおっしゃるように、ある国においては使用済み燃料をそのまま直接処分するという発想がございます。  従来、軽水炉の中においてもプルトニウムは自然にできておりまして、それがまた自然に燃えているわけです。今荒木参考人の方から三五%の電気原子力発電と申されましたが、その三割ぐらいはまたこのプルトニウムが出している電気でございます。それをもう一度使おうとしているのがプルサーマルなりプルトニウム有効利用でございますので、私は、その延長上に問題が起こるとは思っておりませんし、十分これまで実績を持っているところでございます。  しかし、あえてそれも外しまして、直接処分したらどうかということでございますが、プルトニウムはいろいろな意味で相当能力が高いものでありますから、これを核兵器に利用するという可能性が全くないわけではございません。プルトニウムを直接再利用しないという観点は、技術観点よりもむしろそういった観点がございますが、考え方を変えて、これを直接処分して捨てたとしますと、これは常に再利用可能性を残しているということになります。それをもう一度引っ張り出してきて使えば使えるわけでございますから。しかも、それを直接処分しますと、環境に与える放射能の量が相当ふえてまいります。プルトニウムの分だけ放射能量がふえるわけでございますから。したがって、安全ということを長い目で見ますれば、直接処分によってかえってその危険が増すということも私は考えるところでございます。  以上です。
  20. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 ありがとうございました。
  21. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 次に、吉井英勝君。
  22. 吉井英勝

    ○吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。  きょうは、参考人の皆さん、どうも御苦労さまでございます。  後ほど自由質疑のときに藤家参考人茅参考人に伺いたいと思うのですが、最初五分ということなので、荒木参考人の方に最初に伺いたいと思います。  最近、原子力委員会の懇談会でも話題になっております最終処分地の問題ですね。あれを電力のコストに入れていくということを考えますと、せんだって日刊工業で紹介されているところでは、電力料金一キロワット時当たり数銭から十銭が大体試算される。  それからもう一つ、六ケ所の再処理工場、日本原燃の分ですね、あれが一兆八千八百億ほどになってきまして、電事連としてもなかなかここは頭が痛いというか、議論していらっしゃるところのようですが、せんだって、エネルギーフォーラムの六月号で、海外から再処理して戻ってきた分が大体一キロワット時当たり七十銭に対して一円ないし一円五銭、つまり四割から五割日本原燃でいくと高くなるという見通しを述べております。  これらを含めて考えたときに、プルサーマルでやったときのコストが大体どういうふうになるというふうに考えていらっしゃるのか。大体コストが見合うかどうかということも電気事業の場合は一つ問題になってまいりますので、その辺どうお考えかを率直にお伺いしたいなというふうに思っております。  もう一点だけ、時間がございましたら、高レベル・長寿命のものの消滅処理研究開発とか、あるいは最終処分地の管理コストを含めて、民間でやっていくのか、あるいは国に依存していきたいというお考えなのか、この辺のところも率直なところを伺っておきたいなというふうに思います。  以上二点です。
  23. 荒木浩

    荒木参考人 コストの問題でございますが、今吉井委員の方からお話がございましたが、私ども、この日刊工業ですか、出ていた数字がほぼ正しいというふうに理解をしております。十銭程度だと思います。  ただ、外国から持ってきたときと日本の再処理工場がつくったものがどちらが高いのか安いのかということになりますと、これは恐らく我々が再処理工場でつくるのが、先ほど御指摘のように工場自体が一兆八千八百億と大きな工場でございますので、そこから生産される再処理コストが入りますから、少し高くなるということは私どもも認識しております。  ただ、我々が将来導入するプルサーマルにつきましては、濃縮度が違うとか、あるいは運転技術が非常に高まるというようなことを考えますと、それほど大きな格差にはならないのではないか。しかも、九円ぐらいが原子力の単価でございますが、そのうちの大体二円ぐらいがいわゆる燃料費でございますが、この燃料費の中でプルサーマルのコストの上昇分が十銭程度だということになりますと、私どもは、これが原子力の中でコスト自体を支配するほどの価格の上昇にはならないのではないかというふうに考えております。  それから、先ほどのお話ですが、最終処分地の選定をどうするかと……
  24. 吉井英勝

    ○吉井委員 最終処分地を決めて、そこでの、ずっと保守していく管理的経費など、全部かかりますね。それから、その最終処分の技術開発も問題になります。それから同時に、高レベル放射性廃棄物消滅処理とか、そういう研究開発もやはり大きな課題になると思うのですが、それらを電気事業連など民間の方でかなりのものを考えていこうというお考えなのか、やはりそこのところはひとつ国でやってもらいたいというのが率直なお考えなのか、その点なんです。
  25. 荒木浩

    荒木参考人 消滅技術というのは、むしろ私の両サイドの技術屋さんにお答えいただいた方がいいと思いますが、加速器とかその他で中性子を当てることによりまして、プルトニウム放射能の半減期間を短縮するという技術が、これは私は将来に大変期待をしておるのですが、少なくとも今は残念ながら余り、理論的にはあるいは可能かもじれませんが、経済的にコストが合うかどうかについてはわかっておりません。  ただ、これを民間でやるのか、あるいは政府機関でやるのかということになりますと、私は、こういういわばナショナルプロジェクトのような、ある意味での巨大技術といいますか先端技術というのは、やはり国にお願いするのが適切だ。商業的に、いわば事業化されるようなものにつきましては確かに民間がやる方が、責任問題を含めまして、あるいはお金の問題を含めまして、柔軟に機動的に対応できると私は思いますが、こういう技術開発、基礎技術というようなものは、やはり国の研究機関にお願いをするというのが適切だというふうに考えております。
  26. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 次に、堀込征雄君。
  27. 堀込征雄

    堀込委員 先生方、どうもありがとうございました。  私も、不勉強でございますが、最初藤家先生にちょっとお伺いしたいわけであります。  よく技術未来の話がわかったわけでありますが、例の熱核融合の話でございます。各国とも財政難でややとんざしたというような報道を伺っておるわけでありますが、これは先ほどのお話でいきますと、雪がかぶっている部分なのか、雲に隠されたあたりになるのか、どういう視点といいますか、どの辺で位置づけられながらおやりになっているかという問題と、この可能性というのは、今原子力の持っている諸問題は相当程度解決できる技術なのか、そういう視点で研究なされているのか、それを御質問したいというのが一つ。  もう一つ荒木会長にお願いしたいのですが、今もコストの話がございましたが、やはり動燃で民間に期待をする部分、プルサーマルの推進だとかいろいろな期待があると思うのです。片方で、ちょっと離れて恐縮ですが、今の規制緩和で、電力の卸と発電、送電の分離だとか、電気料を下げるためのいろいろな要求などもございまして御苦労されていると思うのです。そのようなことが、電事連、民間で進めるプルサーマルの推進なり、総合的にそういうことが影響すると考えられるのかどうか。  ちょっとわかりにくい質問かもしれませんが、そういうことについてどう考え、プルサーマルは推進されていくという意思表示がされたわけでございますが、そういうことの絡みでどのような決意というか考え方でいらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。  以上です。
  28. 藤家洋一

    藤家参考人 核融合をどうとらえるかということでございますが、私先ほど、核融合核分裂の二つを人工の原子力可能性として申しました。核融合は天体の原子力でございますが、核分裂地球原子力であります。核融合は太陽で起こっていることは御承知のとおりであります。核分裂は、地球上でオクロ鉱山で今まで自由に、自然の原子炉があったことが確認されており、百万年ぐらい安定して運転されたことが証明されております。  したがいまして、それぐらいの難しさの差があるということを御承知おきいただきたいと思います。やはり、天体にある大きな宇宙の話を地球の片隅に持ってくるという、大きなものを小さくするという努力は今まで科学技術が余り取り扱っていない。小さいものから大きいものへはございましたけれども。そういう意味での難しさがある。  ただ、宇宙エネルギーがこれで賄われているときに、やはり人類の大きな挑戦としてこれに向かうことは大切なことだと思っております。そういう意味で、原子力委員会でもこのITER計画、国際計画として今いろいろ議論されているところでありますが、これを科学技術創造立国としての日本がとらえるべきであるということで、その検討を始めております。  ただ、これを今、既にエネルギー源という位置づけをするのがいいのか、科学技術としてこの研究開発をやるのがいいか、私はむしろ後者により重点を置いた研究開発であるべきだろうという気がいたしております。これはまさに、これから日本が世界の先進国としてどう生きていくのか、これまで科学技術は西洋文明中心とした発展をしておりましたけれどもアジアにこういった新しい科学技術の拠点ができて育っていくのか、それも大変重要なことだと思っておりますので、これについては、原子力委員会の中にこの懇談会及び専門部会をつくりまして、一つは専門家を集めて御議論いただき、もう一つは広く学識者あるいは世のデシジョンメーキングにつながる方々に御意見を承りながら、将来展望を明確にしていきたいと考えているところでございます。
  29. 荒木浩

    荒木参考人 プルサーマルが少し高い、しかし、日本電気料金も高いから欧米の水準と遜色のないところまで下げろというような御要望があるということも事実でございます。  今まで既に議論されておりますが、プルサーマルというのは確かにキロワット・アワー当たり十銭程度高いということも事実ですが、やはり日本のような少資源国では、プルサーマルというのは、これはヨーロッパで、フランスあるいはドイツ、そういうところで既に実用化済みでございますし、技術的には私は全く問題ないと考えておりますし、それからやはり資源の有効活用という点、あるいは放射能管理ということから考えれば、プルサーマルはどうしてもやっていきたい。  一方で、電気料金をもう少し下げられないかというようなお話がございますのも事実であります。一昨年の四月に電気事業法が改正になりまして、私どもは昨年の一月一日に電気料金を数%値下げをしております。  私は、自分の体験を申し上げてちょっと失礼なんですが、私は社長に四年前に就任いたしまして、日本エネルギーといいますか、我々が少し、いわゆる供給信頼度あるいは安定供給というところに力点を置き過ぎて設備形成をし過ぎていたのではないか、経済性ということもパラレルに考えながら設備形成するということがやはり我々公益事業にとっても大事だということを私は申し上げて、要するに会社の経営のスリム化。私の会社は、たまたま昭和二十六年に電気事業が再編成になりまして、できたわけですが、私が社長に就任したときに四十二年たっておりまして、企業も四十二年たっといわゆる厄年でありまして、少し成人病の体質があるんじゃないか、少し太目になっていないか、あるいは動脈硬化に陥っていないかということで始めたのがコスト削減運動でございます。  そういうものをやってきたことが、設備産業、装置産業というのは非常に資本費にコストがかかっておりますので、コストを下げるといっても、今合理化をやったらすぐ下がるというものではありませんで、要するに設備建設を根元から見直して、じわじわと効いてくる、それがこのところやはりじわじわと効いてきた。そういう意味で、私は、電気料金の収支構造として当社でも料金を下げられるのではないかという見通しを得た、ある意味で確信を得たというのが、私がこの前、五月九日に記者会見を申し上げて、佐藤大臣の御意向にも多少沿えるということであります。  そういう意味で、私は、この間電気事業法の改定がありましてから、卸電力の導入だとかあるいは特定電気事業、あるいはIPPというものが入ってまいりまして、これがかなり私どもにとりましても供給力の積み上げになっている。同時に、コストインセンティブになっている。ある意味では、外ではこれだけ安いものができるという勉強をさせていただいたという意味で、非常にプラスになった、あるいは社内の改革に非常にプラスになっているというふうに考えております。  確かに、プルサーマルの導入と、この高くなる要因と、あるいはそのコストを下げられる要因と、非常に二律背反でありますけれども技術革新によりまして、あるいは我々のいろいろな経営努力によりまして、かなりコストを下げられるというような環境にだんだんなってきているというふうに私は理解しております。
  30. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 以上で各党を代表する委員質疑は終了いたしました。  この際、参考人に対する自由質疑の議事整理について申し上げます。  これより質疑のある委員は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。また、発言の際は、着席のまま、所属会派及び氏名を述べた上、お答えをいただく参考人を御指名いただくようお願いいたします。  なお、理事会の協議によりまして、一回の発言時間は三分以内となっておりますので、委員各位の御協力をお願い申し上げます。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  31. 江渡聡徳

    ○江渡委員 自由民主党の江渡でございます。  核燃料サイクルの六ケ所が私の選挙区ということもありまして、非常にこの件に対しては私自身も関心がある者なんですけれども、特に、きょう三人の参考人の皆様方、環境問題のことにもかなりお触れになっていたと思うのです。ただ、先ほど佐々木委員の方からもお話があったわけですけれども、ワンススルーかあるいはリサイクルかということで、私自身は、ウラン資源ということを考えていった場合、やはり再処理は必要だと思っているのです。ただ、原子力政策円卓会議の中に出席していた原子力資料情報室の高木さんという方は、再処理というのは逆に大量の放射線環境に放出しているんだ、決していいものじゃないみたいなことを言っていたわけですけれども、その辺のところに関しまして、藤家参考人の方からお答えいただきたいと思っています。  それと同時に、今回、動燃の問題におきまして、危機管理というか、そういうことが非常に強く今国民の中でも論議がされているようなところでございまして、実際、現場の方におりまして電気関係の会社を運営されているというところで、電気事業者の方として、荒木参考人の方から、この原子力発電所等におきます危機管理のこれからの対応の仕方等に対しましてお答えしていただければありがたいのですけれども、よろしくお願いします。
  32. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 参考人にも申し上げますが、時間が限られていますので、答弁はできるだけ簡潔にお願いをして、たくさんの皆さんから質疑を繰り返させていただきたいと思います。
  33. 藤家洋一

    藤家参考人 最初に、再処理をやった方が放射性物質をたくさん環境に出すのではないかということでございますが、放射性物質ができるのは原子炉の中でございまして、それで再処理施設で燃えていないウランだとかあるいはプルトニウムを取り出すわけでありますから、その分、放射性物質は減っているわけであります。単純に考えますと、出てきた放射性物質のうち、再処理施設で取り出すものですから、環境へ出る分はそれより減るということは、非常に簡単な算術でおわかりいただけるのではないかと思います。  ただ、そのやり方がいかに安全に行われるかということについて、いろいろ円卓会議等々で御質問もあり、当方もお答えした、あるいは別の方々からお答えしたこともございます。  それから、もう一つ、長い時間での安全は、先ほど佐々木委員の御質問に私はお答えしましたように、環境プルトニウムをある形で貯蔵といいますか処分しますことは、それだけ可能性を残すということになりますから、私は、やはり処理をすることによってより安全を確保する。  それと、こういう話はいきなり現場で何かをということではありませんで、そこへ至るまでに長い時間をかけての研究開発をやった結果、お願いすることにしていることをぜひ御理解いただきたいと思っております。  先ほどのプルサーマルにいたしましても、これまで日本では実際に軽水炉を使ったテストもやっておりますし、御承知の「ふげん」は、まさにこのプルサーマルと申しますか、MOX燃料をこれまで六百五十体も使ってその成果を上げてきたものでありまして、外国の千六百体と比べて日本が六百五十体、既にこういう実績を持っているということをぜひ御理解いただきたいと思います。
  34. 荒木浩

    荒木参考人 江渡委員に平素六ケ所で大変御厄介になり、ありがとうございます。  私は、危機管理と申すよりはむしろ、こういう原子炉あるいは原子力関連するような施設を運転するに当たりましては、やはりそれが社会から受け入れられるような開かれた組織であるということが一つ、それから、施設を運営するに足ります管理体制がしっかりしているということが一つだと思います。  残念ながら動燃の場合、例えば、六ケ所じゃございませんで動燃の例をとって恐縮でございますが、私は動燃の「もんじゅ」の組織を拝見いたしたのですが、研究開発体制のところでは部長がおるのですね。ところが運転する部門では課長しかいないというようなことで、どうも動燃の組織の中では、研究者集団と実際の現場を預かっている集団の間に責任とかあるいは処遇の格差、待遇の格差があるのじゃないかという感じがいたしました。恐らく、こういう管理体制の中で原子炉あるいは原子力施設というものを運転するということは、私は大変難しいなという感じがいたしております。  それから、実際にトラブルが起きた場合どうするかということは、先ほどもお話し申し上げたように、とめる、冷やす、封じ込める、この三原則でありまして、この権限をやはり現場におろすということ、それから地域対応、ともかく何か起こればすぐ地域に連絡する、あるいはマスコミにプレスするということが私は大事だと思っております。それを包み隠さず、誠実に対応するということが大事だと私は思っております。  実はこの間、笑い話になるので恐縮ですけれども、私の方で作業員の簡易トイレが燃えたことがあるのですね。それもほんのぼやにもならないようなものだったのですけれども、それを地方自治体あるいは消防署に連絡したために、消防署からこんなもので連絡したらけしからぬといって怒られたというようなケースもございましたが、少なくともそのぐらいの意識で現場では危機管理安全管理、そういうことに意を払っているということを御報告したいと思っております。
  35. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は福井なので、十五基原発関係がありますので、しょっちゅう問題が出ております。非常に安全に関心を持っております。  二点お尋ねしたいのですが、一つは、東電の福島の再循環ポンプの問題も随分と国会で論議をしました。それから、関電の蒸気発生器の細管問題等も論議をしましたが、要は、なかなか資料を、情報公開を積極的にやろうという構えがないのですね。問い詰められてやむなしに出すというのが、東電の再循環ポンプを含めて、今までの例だと思うのですよ。  私は、今回の動燃の「もんじゅ」、それから再処理工場、「ふげん」等の一連の事故にも同じことが言えると思う。原子力がいわゆる軍事機密から出発した閉鎖性からいえば、そういうものの影をなお今引きずっておると思うのです。本当の原子力に対する信頼性を確立するには、情報の徹底した公開ということなしにはあり得ないという大きな流れになっていますが、そこらが電力関係あるいは動燃を含めてまだまだ、頭ではある程度わかっていながら、実際には理解されていないと思うのです。それについてどう考えるかということが第一点。  第二点は、今度のプルサーマル計画は、私から見れば、今まで、出てくるプルトニウムを、要は新型転換炉でつなぎをやって、将来高速増殖炉でこれを吸収してやっていくというのが本筋だったわけですね。ところが、二つとも頭を打ってきたために、今プルサーマルによって軽水炉でこれを使おうという、わき役が突然主役に躍り出してきた感じがするので、これはよほどの国民理解を求める努力をしないと合意はなかなか形成されないと思うのです。そういう努力がいると思うのです。  そういう中で、まだ国際的にプルトニウムとナトリウムを制御できた国は、どこもみんな苦労しているけれども、ないわけですね。そうなりますと、なかなか高速増殖炉は難しい。私が昭和四十六、七年ごろに参議院で論議した時分に、三十年たったら高速増殖炉は営業炉の時代を迎えるという言明であったが、あれからほぼ三十年近く、二十五、六年たっていますからね。だから、まだこれから三十年、四十年先に可能性が送られていると見ると、なかなか難しさがあるのですね。  そこで、慌ててプルトニウムを全部無理に燃やすことを考えなくてもいいのではないか。アメリカやロシアは、御承知のとおり、今水の中につけて、ワンススルーで一回で捨てるか、あるいは将来これを水から取り出してどうするか、様子を見ている、プールの中につけて。フランス、イギリス、日本が全部再処理路線でやってプルトニウムを取り出しておりますね。だけれども、本当にナトリウムやプルトニウムが制御できるかどうか、そういうことが確認されるまでは、将来の貴重なエネルギーというプルトニウムを何も慌てて燃やすことはないのではないか。だから、水の中につけて……
  36. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 辻委員に申し上げます。  質問は手短にお願いをして、お答えいただく参考人を御指名ください。
  37. 辻一彦

    ○辻(一)委員 はい。  そういうことで、私は、もっと水の中につけて様子を見てもいいのではないかと思うのですね。慌ててやらなくてもいいのではないか。だから、青森の再処理工場でやられるのも結構だけれども、しかし、全部を再処理しなくても、一部は水につけて状況を見る。そのための中間貯蔵施設という構想が今出ているのですから、これを生かしてやっていくべきではないかと思いますが、これは政策的には藤家原子力委員に、それから実務的には荒木会長さんにお尋ねしたい。
  38. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 参考人のお答えの傾向が偏っておりますが、暫時、またこの後も御質問がございますから、お許しいただきたいと思います。  それでは、手短にお願いを申し上げます。
  39. 藤家洋一

    藤家参考人 日本原子力開発基本は平和利用に徹するということは何度も申しておりますが、これについて一つ大事なことは、プルトニウムをいかに使っていくかということであります。日本は、このプルトニウムをどうやって使うか、それを常に公表する形でやっておりまして、その我々の平和利用を目指した原子力開発の透明性を世界に理解してもらっているところであります。しかし、きょう私申しましたように、非常に明確に一つの展望を描いた中で、同時に現実に対して柔軟性を常に確保していくことは必要であります。そういう意味で、辻先生のおっしゃることは、私はそれなりに理解できているところであります。  ただ、何かが証明されるまでにというお話をどう受けとめるかについては、私も多少考え方が違うかと思いますが、技術開発はステップ・バイ・ステップでございますから、きょうお話ししましたように、ウエート・アンド・シーという形をとるよりも、やはり日本としては一つずつ問題を解決する方向で努力する方が望ましいと私は思っております。  仰せのような中間貯蔵の話も、柔軟性を確保する中の一つ選択としては大事だと理解しております。
  40. 荒木浩

    荒木参考人 まず、情報開示が十分じゃないんじゃないかという点につきましては、辻委員の方から御指摘の点があることも事実だと私は思っております。  そういう意味で、今ままでは、先生がさっきおっしゃいました福島の第二の三号機の事故のころは、確かに我々の電力会社あるいは電力会社の中でも原子力技術屋さんの中にそういうクライメートといいますか、技術屋さん固有の風土があったということは事実であります。それは、かなりというよりはほとんど解消されて、今では少なくとも当社に関する限り、そういうことはほとんどなくなっているというふうに、私自身は指導しているつもりですし、また信じております。  それから、プルサーマルは、ATRがなくなってその代替品に出てきたんじゃないかというような御指摘でございますが、これにつきましては、原子力の長計の中に従来から書き込まれていることだと私は思っております。  それからもう一つ、外国で既に撤退をしておりますFBRへなぜ日本がかかわっているのかという御質問でございます。これは、高度成長時代は確かに日本はある意味じゃ途上国でありました。先進国の物まねで我々のパイを大きくしながら、経済の成長発展を遂げてきたわけでありますけれども、今日本は、経済あるいは技術のトップランナーとして世界の先端を走っている。これから恐らく、今まで日本が扱ってきたような技術とかあるいは製品だとか、そういうものは、今ASEANとかいわゆる途上国と言われるところにシフトすると思います。そうなってきた場合に、日本が何をして生き残っていくか。あるいは経済大国として、途上国あるいはそういうものを引っ張っていき、あるいはちょっと水をあけて前を走るという場合には、いわゆる物まね技術だけではこれをリードすることはできないんじゃないか。  アメリカがやめ、あるいは諸外国がやめたこのFBRの技術をなぜ日本がやっているのか。私は、これはむしろ技術創造立国としての日本がこれからみずからやっていかなければならない開発だと思っております。これは別に原子力だけじゃございません。宇宙開発だとかそういう点につきまして、こういう巨大技術につきましては、当然のことながら日本がこれを担っていくということが全地球的なレベルで日本の責務だ、私はそういうふうに理解をしております。
  41. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 次、委員の中で茅参考人に御質問のある方。
  42. 渡辺具能

    ○渡辺(具)委員 自民党の渡辺でございます。  茅先生にという御指摘がございましたので、茅先生にお願いをするわけです。  せっかく資料を提出いただきましたので、その資料に関する質問をさせていただきます。茅先生の第一ページ目の表の中で大変興味深い数字を示していただいたわけですが、茅先生の最終的な結論は、あるいは私は取り違えているかもしれませんが、省エネあるいは経済成長率あるいはCO2の増加率をいわば境界条件として、特に温暖化問題に対応するためにはCO2の増加率をゼロに近いところで抑えなければいけないというふうなところで、結果として炭素依存率をマイナス〇・七にする、そのためには原子力にどうしても活躍してもらわなければいけない、こういうのが一つの結論だったかと思うのです。私はその結論に対して異論を唱えるわけじゃないのですが、その結論を確認する意味でも、いろいろな議論をしておかなければいけない。  そういう意味で一つ提案申し上げるわけですが、省エネのところが非常に難しいという話がありましたけれども、例えばこのマイナス一・六というのは、かつて蒸気機関車を電気機関車に置きかえることによって熱効率が非常に上がった、それがこの省エネなんかに相当するのではないかというふうに、理解が間違っているかもしれませんが、私はそういうふうに思うわけです。いわゆるエネルギー以外の技術革新がこの省エネ率を非常に高めるというふうに思うわけですが、むしろそこに努力をこれからも傾注すべきであって、もしその目標が達成されないとすれば、経済成長率の方をあきらめるべきだというシナリオを考えるべきではないかというふうに私は思うのですが、いかがでしょうか。
  43. 茅陽一

    茅参考人 御質問をいただいて、ありがとうございます。  今のお話ですが、まず最初に、この「長期シナリオ」と書いてある表でございますが、ここにCO2の増加率ゼロとありますけれども、私は、これはゼロで済むかどうか多分に危惧をしております。と申しますのは、現在、御承知のこの十二月の京都の条約加盟国会議に提案されておりますアメリカ案それからEU案、いずれも削減方向でございまして、ゼロどころかマイナス幾つというのが決まりかねない、どうなるか本当にわかりませんけれども。そういった意味では、我々はやはりCO2の増加率をゼロ以下にするという絵をいろいろかいてみなければいけないだろうと思っております。  その場合に、省エネルギーにもっと力を入れるべきではないかという御意見ですが、省エネルギーについては今まで以上に力を入れるべきだし、おっしゃるように、単なる節約ではなくて技、術開発が必要だということは私も感じております。現実に、普通の産業の中での省エネルギーというのは、八〇年以降はほとんど設備投資をベースにして起こっているんですね。つまり、新しいプロセスが入って省エネルギーになっているケースが多いわけです。そういった面はいろいろな産業で見出されますので、それを加速することが当然第一だと思います。  その中で、もう一つは、私はこれは常に主張しているんですけれども、従来余りやっていなかったような廃熱の抜本的な利用、例えば現在神戸の周辺で、発電所それからごみ処理場の廃熱を住宅に供給するというプロジェクトが提案されております。こういったものはヨーロッパにもたくさんあるんですが、日本ではほとんどないんですね。ですから、こういったものを思い切ってやっていくというような努力が今後非常に大事だろうと思います。  ただ、それによって原子力がなくていいのかということになりますと、残念ながら、それだけにすべての望みをかけるのは余りにも無理過ぎるというのが私の意見でございまして、常に総力戦と言っておりますけれども、やはり原子力を含めて炭素依存率の低下と省エネルギーとをバランスよくやっていくことが我々の今後の戦略ではないかと考えております。  経済成長率につきましては、おっしゃるように、ここには二・三という数値が出ておりますが、私個人としては正直言って高いだろうと思っております。といいますのは、日本の人口は、御承知のように、二〇一〇年前後から多分下がってくると考えられます。その状況で従来のような高い経済成長率が要るのかということになりますと、私は経済学者ではございませんが、どうもそこまでは要らないのではないかという気がいたしまして、ここにあるような数字については、どれもこれも全部やはり努力をすべきだ、そういった意味で、一つをやればほかが済むというものではないというふうに考えております。
  44. 笹木竜三

    ○笹木委員 まず、先ほど茅参考人の方から、二百年、三百年後には原子力よりもよいエネルギーが出てくるかもしれないというお話がありました。核融合についてはどう思われているのか。百年とか百五十年で実用化ということはまず無理だと認識されているのかどうか、確認をしたいと思います。  それと、FBR、この実用化については二〇三〇年とかいろいろ言われてきているわけですけれども参考人自身は、実用化の年限、いつごろだと思っておられるのか、これも端的にお答えいただきたいと思います。  それともう一点、新型転換炉、ATR、この実用化をめぐって、原子力委員会みずからがしつかりやるんだと言って、そのわずか一年後にやはりやめましたと言う、本当におかしな、ばかなことがありました。これについて、この科学技術委員会でも何回も議論がありますけれども、こういうばかなことが二度と起こらないために、参考人原子力政策円卓会議でいろいろ議論をお聞きになっていると思うわけですけれども、使うことから切り離されたこういった開発体制というか方針づくりをどう変えていくか、御意見を例えればと思います。  この点については荒木参考人にも、ぜひ、こういったばかなことが二度と起こらないようにどう変えていくのか、お考えをお聞かせ願いたいと思います。
  45. 茅陽一

    茅参考人 まず最初核融合でございますが、先ほど藤家さんが言われましたように、技術的には非常に大変な技術だと思います。したがって、かなり長期的な時間がかかるということが一つと、もう一つ、私は、FBRと比較した場合に、核融合の場合にはかなり損な点があるというように考えております。  それは何かといいますと、御承知のように、現在の原理の核融合というのは非常な高温を必要といたします。したがいまして、エネルギーの採取というのは、結局外側しかとれないわけですね。それに対しまして、現在の核分裂ですと、炉の中からエネルギーがとれる。御承知のように、熱媒体を入れまして、中からエネルギーをすくい上げられますので、装置的にいいますと、どうしても核融合の施設というのは大きくなってしまうわけです。ということは、それだけ経済的に不利になるということなので、将来を考えますと、核融合とFBRというのは、当分の間、やはりFBRの方が経済的にはるかに有利だろう。技術的にも、やはりFBRの方が核融合よりは容易であるというふうに私は考えておりまして、その意味から、私自身は、FBRをやはり最初にするべきだというふうに考えております。  ただ、だからといって、核融合はやるべきではないと思っているのではなくて、やはりそういったものはやるべきでしょうけれども、しかし、バランス考えるべきだというのがこの点についての意見でございます。  それから、FBRがいつ本当に実施できるようになるのか、これは非常に難しい御質問なんですけれども、現在、二〇三〇年ごろというのはよく言われる数字ですけれども、私は、いろいろなエネルギーの供給のバランス考えますと、やはり来世紀の前半ごろには物にならなければ困るというふうに考えております。  最後に、ATRを含めまして、原子力政策の不整合の問題ですけれども、これは、おっしゃるように、私自身も大変不満は感じております。それに対する一つの対応の仕方としては、私はやはり、かなり政府から離れた立場から意見を言う機関、そして、その意見を言う機関の意見を政府が真剣に取り上げる体制が必要だと思っております。例えば、昨年原子力政策円卓会議というのを開催いたしましたが、あのようなものも、もう少し政府から離れた形で独立させて、そこが思い切ったことを言う、いわばお日付役みたいなものですが、ただし、そのお日付役が言うからといってすべて取り上げる必要はございませんけれども、そういうお日付役がきちんといるような体制をつくることが一つの解決策ではないかと思っております。  以上でございます。
  46. 荒木浩

    荒木参考人 今の笹木委員の、私は後半のATRについてお答え申し上げますけれども日本の、これは企業でもそうですし、それから特に政府機関のプロジェクトというのは、一度走り始めるとなかなかブレーキがかからない、実際にそれが研究目的を達したといった場合にもなかなかリタイアをしないというのが、ある意味では日本のビューロクラシーの一つの難点だと私は思っております。  今度の「もんじゅ」の事故に照らしましても、というよりは動燃の事故に照らしましても、私は、本来、研究開発目的を達したようなもの、しかも将来も余り発展性のないというようなものはやめるべきだというふうに思っております。「もんじゅ」は引き続きやるべきだと私は思っておりますけれども、例えば「ふげん」なんかは、既にATRがなくなったわけですから、これなんかも、ある期間を置いて廃炉にすべきじゃないかというふうに私は考えております。  実は、ATRにつきましては、これをやめていただきましたのは私が張本人でありまして、ナショナルプロジェクトを途中で軌道修正させていただいたというのは例がないのだという話は、そのとき私自身も知らなかったのですけれども、私のは単に、コストが高い、とてもこれを我々が電力の格好で引き取るのほかなわぬということで、やめていただくように当時の田中科技庁長官にお願いをいたしまして、撤退をさせていただいたということであります。  いずれにしましても、開発目的の達成されたようなプロジェクトというのは、私は、国家的な事業でも、あるいは我々の企業内においても、速やかな決断をするのが一番合理的だというふうに理解しております。
  47. 藤家洋一

    藤家参考人 最初茅参考人核融合高速増殖炉に対する御見解は、私も全くそのとおりだと思っております。  それから、荒木参考人のATR問題につきましては、あのATR実証炉のキャンセル問題が、これまでの原子力政策あるいは将来の原子力政策にどれだけの影響を与えるかという観点から私どもは検討いたしまして、このATR実証炉に期待したものが、今の軽水炉、ABWRにMOXを挿入することで代替できるという判断をいたしまして、そういうことでATR実証炉の中止ということを決定いたしたわけであります。もしこれが原子力政策の遂行上相当影響を持つものでありましたら、議論は続いたと思っております。
  48. 田中和徳

    田中(和)委員 自由民主党の田中和徳でございます。  それでは、お尋ねをさせていただきます。  私は、実は都市部に住んでおります。川崎市でございまして、東電さんの火力の発電所もあるわけでございますが、あれが原子力の発電所であり、事故でもあったらどうなのかなと思いながら、電力のありがたさ、こういうものも感じ入っておるわけでございます。  やはりこれからの我が国エネルギー政策を考えるときに、どうしても原子力による、ウランはもちろんでありますが、プルトニウムの発電というものは極めて重要な課題だと思いますし、不退転の決意で臨まなきゃいけない、こんな気持ちを私は持っております。最後は高速増殖炉というところまで行かなきゃいけないのだろうと思いますけれども、動燃の位置づけというものを今後どうするかというのが、今回の事故の中で確認をしていかなければならない重要な課題だと思います。  荒木参考人に御確認をさせていただきたいと思いますし、お考えを承りたいと思うのでございますが、動燃は立ち直らせることができるのかどうか、そして動燃を立ち直らせることができなかったとすれば、新たなる組織をつくっていった方がいいとお考えなのかどうか、ぜひ教えていただきたいと思っております。
  49. 荒木浩

    荒木参考人 動燃の改革につきましては、これは動燃改革検討委員会その他で議論されていることでございますので、私自身がこれについて所信表明という立場にはないのじゃないかという感じがいたしますが、感想だけ述べさせていただきます。それでお許しいただきたいと思います。  確かに、先ほど来私が申し上げておりますが、動燃という組織自体、研究者集団というか、ある意味では官僚組織であるというところが、実際に原子炉というような非常に安全性にかかわりのあるようなものを運転していたというところにやはり問題があるのではないかというふうに私は理解しております。その意味では、組織を一般の社会に受け入れられるような組織にするということ、あるいは、施設を運営するに当たりまして、必要な管理体制を持っていただくということがどうしても必要かなと思っております。  いずれにしましても、現在の動燃というのは、技術の偏重に伴います、事業家意識が薄いとか、あるいは一連の事故に見られるような管理の不在体質がございます。あるいはもう一つ、先ほどの吉井理事からのお話もありましたように、技術屋集団の中にはどうしても一般国民からかけ離れたような閉鎖的な体質があるというようなこともございますので、やはりこういうところをクリアしていかないと動燃は立ち直れないんじゃないか。  しかし、私は、動燃という組織は、どうしてもこれだけの国家的なプロジェクトを担っているわけですから、高速増殖炉、それからもう一つ大事なのは最終処分の高レベル廃棄物処理技術、これはどうしても国がやって解決していかなきゃならない問題でありますから、これを担うような組織、あるいは組織がえをするといいますか、それをどういう形にするかということは私自身もここで申し上げる立場にありませんけれども、いずれにしましても、そういうような組織に変えていくということだけは必要じゃないかと思っております。
  50. 島津尚純

    島津委員 新進党の島津尚純でございます。  荒木参考人にまずお尋ねさせていただきたいと思いますが、電力の供給システムの見直しという問題で、ことしから来年、再来年にかけまして大変な変革の時期が来るというふうに思うのです。  それで、昨年の暮れの閣議決定でも、電力のコスト削減、国際水準並みというようなことが決定されました。また、一月七日の通産大臣の発言では、発送電分離というのも研究課題だというようなすごい発言があって、非常に波紋を呼んだわけであります。そして、五月十六日に行動計画がまた閣議決定されまして、いろんな策定をことしじゅうとか年度末にやっていこうというようなことになってきております。そしてまた、発送電分離まではいきませんけれども、区分経理は目標に置こうというような発言がなされております。  例えば佐藤通産大臣あたりの発言というものは、イギリスの急進的な改革、これが下敷きになっているだろうというふうに思うのです。ただ、九〇年から始まったイギリスの制度というものが、まだ短時間で、評価も決定していないときに、私はこういう発言というものは非常に軽々であったのではないかなというふうに思っております。  また、例えば日本とイギリスの国情の違いを申し上げますと、御承知のように、エネルギーの自給率の問題、向こうは一一〇%、こっちはほとんどない。あるいは電力の伸び率、向こうはマイナス一・三%、こっちは二、三%伸びている。例えば負荷率が、向こうは冬ピークであって六七%ぐらい、こちらは五五%。停電が非常に多発して、向こうは年間八十分、こちらはほとんど完璧というような七分ぐらい。このような決定的な国情の違いというものは歴然としておるわけであります。  そういう中で、例えば、とにかくコストを下げればいいんだということで発送電分離というものを導入していった場合、非常に開発コストがかかる、そして長時間かかるような原子力発電開発というものは、もうだれも手をつけない。そして、去年から始まった卸電力入札制度でもおわかりのように、三百五万キロワット落札されているわけですが、ほとんどがこれは化石燃料を使う火力発電ということであります。ですから、火力発電がどんどんどんどんふえていく。ということは、CO2、先ほども申されましたような問題もある。CO2は何とかしなければならない。そして、これからのエネルギーの中核というものはやはり原子力だとおっしゃっておる。しかし、それも壊れていく。こういうふうな発送電分離という制度導入に対して、参考人としてはどのようにお考えかということを一点聞かせてください。  それから、もう一点、藤家参考人に聞かせていただきたいのですが、これは簡単に申し上げます。  例えば、今稼働している日本の原発の中で二十年以上たったものが十基以上あるというふうに聞いております。古くなってくるとだんだん安全性の問題なんかも起こってくるんじゃないかなというふうに一般の人だって考えると思うのですね。これについてはどのような対応をされようとしているのか。  それから、プルサーマル計画につきましては私も賛成なわけでありますが、六ケ所村の再処理工場が二〇〇三年ぐらいから稼働するというふうに聞いておるのですが、これでは能力が足らないのですね。それで、日本に新たにこういう再処理工場というものをつくっていかなきゃならないのじゃないかということを考えるのですが、そのようなことについてどうお考えか、それぞれお願いを申し上げます。  以上です。
  51. 荒木浩

    荒木参考人 まことに島津委員の御指摘のとおりだと思います。  この発送電分離というような問題を考える場合には、その国の国情というものをベースに考えなきゃいけない。特に日本の場合には、まず一つ資源が全くないということ、それから国土が狭隘である、あるいは日本自体の産業構造が非常に高信頼度の電力を必要としていること、あるいは日本人自体がユーティリティーに対する要請度が非常に高い、こういうさまざまな国情がありまして、こういう中でどういうふうにこういう事業を運営していくかということになるのだろうと私は思っております。  そういう意味で、今御指摘のように、イギリスの場合には、もうほとんど需要が伸びていない、あるいは北海油田のように七百八十万バレルぐらいの大石油ガス田が見つかったとか、あるいは冷房がないとか、あるいは事故に対しまして余りセンシビリティーが高くない、そういうような事情の中で、サッチャーさんのときに、国営企業を民営化する、そういうような過程で発送電分離を行つたという事実がありまして、この辺は、今申し上げた背景と同時に、全く事情を異にしている。  我々は、今の電力のいわゆる一貫体制になりまして、要するに、発送電あるいは営業まで一貫体制になりまして既に五十年近くたっているわけでありますね。しかも、それが民間企業として運営されているわけですから、たとえそういうことになりましても、現実の問題としましては、なかなか株主総会も通らないのじゃないかという感じがいたします。  いずれにしましても、一番大事なことは、今先生が御指摘のように、どうしても長期的な目で物を見るような対策というのが打てない。IPPの導入でもそうだし、石油火力の導入もそうです。原子力なんかは、私どもは地点から培養いたしまして、これが建設に、あるいは実際に発電に至るまでは二十年、三十年はかかっているわけですね。そういうようなものが、例えば発送電を分離していくという場合にはできるのか。  特に、発電を分離いたしますと、恐らく供給責任というのがなくなるのだろうと思います。供給責任を解除いたしますと、要するに発電業者というのはみんな勝手にやっていいわけです。自分の判断で安いものをつくる、こういうことに短期的にみんな投資をして、また配電業者は安いものから順々に買っていくということになりますから、懐妊期間の長い、例えばLNGにせよ、あるいは原子力にせよ、こういうプロジェクトに対しまして非常に及び腰になるということは私は事実だと思います。そういう意味では、日本のように、まだまだ需要が伸びているようなところで、しかも資源がない、あるいは国土が狭隘だというようなところではなかなか長期投資が難しいということになると思います。  そういう意味で、やはり一貫経営で最終的に我々が発電から送電まで責任を持つというのが日本の国情に一番適しているのではないか、私は、そういうふうに判断いたしております。
  52. 藤家洋一

    藤家参考人 最初に、経年劣化の問題についての御質問かと思っております。  原子力発電所の寿命をどうやって決めるか、いろいろ考え方はございます。燃料については、これは三年に一回、四年に一回で全部かえてしまいますので、これについての寿命を考える必要はございません。それから、いろいろな部品につきましても、制御棒も寿命中ずっと同じものを使っているわけではございませんし、ほかのものもいろいろな定期検査等々をしながら取りかえていく部分が多いわけでございまして、最近は蒸気発生器まで取りかえるということが進みまして、これも寿命を決めるものではない。恐らくは原子炉の炉心を包んでいる圧力容器のようなところが最終的には寿命を決めるものかなという感じがございます。  いずれにしましても、長い運転期間のうちに何が起こってくるかということは、見込みは持っておりましても、やはり実態として事実を確認していく必要がございます。これにつきましては、経年化対策ということで、まさにこれは一つの大きなテーマとして取り上げて、これによって安全性が損なわれないような対策を施しているところでございます。  それから、ついででございますので、次は当然廃炉の問題ということになるかと思いますが、これは、初めて日本に動力試験炉として原研に入れましたJPDRの廃炉が既に終わりまして、この技術が今後の相当大きな参考になると思っております。それから、既に御承知のように、発電炉としては初めて導入された原電東海一号炉をそろそろ廃炉の対象として考えようとしております。これは、一方の高レベル廃棄物の問題と同じようにこれから対応していかなければいけない問題で、当然これは安全上の観点からも取り組んでいるところでございます。  次に、プルサーマルにも関連しまして、再処理工場の話でございます。  御承知のように、二〇〇三年ごろ再処理工場が働く。これは八百トンというスケールでございますから、原子力発電所数十基分を対象にするということで、それだけの容量があるわけでございます。したがいまして、この使用済み燃料全体をどう見るかというところにいろいろな要素が加わってまいります。  一つには、早く第二再処理工場をつくって余裕をふやせばいいじゃないかということがございますが、発電所の使用済み燃料何十基分かを扱えるようなものは、やはりみずからの技術という意味では相当大事なものでございます。先ほど私がお話し申し上げた高品質の原子力施設をつくっていくというのは、これまでの日本原子力の非常に望ましいところでございましたので、動燃の東海での再処理工場の運転経験、さらにはこれからできます六ケ所村の大型の再処理工場の運転あるいは設計、建設の経験、こういうのを踏まえまして、十分信頼性のあり、また効率のいい第二再処理工場を二〇一〇年ごろに考えようとするのが今の原子力長期政策の考え方でございます。  その間、先ほどから何度も申しておりますプルトニウムのいわゆる透明性の問題、これを実際どうやって確保していくかという上で、一つは、原子力発電所のサイト内に貯蔵するということ、それから、先ほど辻委員からお話がございました中間貯蔵でどう対応していくかというような問題、さらに、御承知のように海外再処理をこれまでやってまいりまして、今、これをどうするか最終的な結論には至っておりませんけれども、これもあるいはそういう意味では一つ可能性になり得るかもしれません。いずれにいたしましても、原子力開発の柔軟性の中でこの問題に対応させていただきたいと考えているところであります。
  53. 石崎岳

    ○石崎委員 自民党の石崎です。  先ほどATR実証炉の断念について、荒木会長がコスト面から、そして藤家先生は、プルサーマルで対応できるんだから技術的にもそれはいいだろうという、両方の事情から断念をしたということでありますが、FBRについて、これまた将来的にコスト面が増嵩した場合に、電事連としてまたそれにタッチしないというような方向性があり得るのかどうか。  それからもう一点、先ほど荒木会長は、バックエンド対策については動燃、組織的にどうなるかはわからないけれども、国策としてやってほしいということでありましたが、電事連として、高レベル対策についてアウトサイダーなのか、どういうふうにかかわっていくのかということをお聞きしたいのです。  最初の質問は荒木会長と藤家先生、二番目は荒木会長にお願いします。
  54. 荒木浩

    荒木参考人 ATRをコストでやめたんだからFBRについてもいかがか、こういうような御指摘のように承りましたが、それでよろしゅうございますか。  私は、やはり原子力というのは一つの流れがありまして、その一つサイクルの中では、FBRというのはやはり我々がどうしても到達しなければならない技術だと思っております。そういう意味で、これはナショナルプロジェクトとしまして、今後とも、経済性だけではなく、要するに日本エネルギーセキュリティー確保という点から、やはりFBRというのはぜひその技術日本で確立してほしいというふうに考えております。経済性だけではないというふうに考えさせてください。  それから、バックエンドをどうするのかということで、電力会社は少し腰が引けてないかというような御質問だったと思いますが、これにつきましては、私どもも一緒になって考えていることは事実です。  実施主体をどうするかということが今処分懇談会で大変話題になっておりますが、私がかねて主張しておりますのは、我々は決してこのの最終処分の問題で腰が引けているということじゃなしに、我々が現実にいろいろと、例えば建設にせよあるいは運転にせよ、自治体にかかわっておりまして、地方の自治体あるいは住民のところへ行きますと必ず言われるのは、業者の話はわかった、要するに民間業者の話はよくわかりました、しかし国の顔が見えないということを常に私どもは指摘をされております。ですから、国の顔が見えないということによりまして、話がそれから前進をしないという現実があるわけです。あなたたちの話はわかったけれども、国はどうなっているんだ、国の基本政策はどうなんだということを常に問われております。  私は、将来、最終処分場の立地選定に当たりましては、実際の現場に行く者はそれは民間であるかあるいは国の人が行くかは別としまして、最終的に国が前面に出ないと恐らく地方の方がそれを認めていただけない、納得していただけないんじゃないか。そういう意味で、私は、これは国が積極的に関与していっていただくべきプロジェクトだ、そういうふうに考えております。  別に、我々が腰が引けているということじゃありませんで、現実問題として、我々がいかに動いても、やはり国の顔が見えないということで、地方自治体とかあるいは住民の皆さんからなかなか受け入れられていかないという現実があるということだけ御認識いただきたいと思います。
  55. 藤家洋一

    藤家参考人 まず、ATRとFBRの比較につきましては、ATRはほかで技術的に代替できるものがあると申しましたが、FBRはそれを代替するものはございません。したがいまして、本来ATRは、軽水炉から高速炉へっなぐ一つのステップとしてそこに存在したということを御理解いただきたいと思います。  それで、きょうも最初のお話の中で、原子力技術の確立というのは、やはり高速中性子に期待する部分が非常に大きいんだということを申しました。これがまさに高速増殖炉の今日的解釈につながるということを申しました。昭和三十年代、日本原子力政策が始まったときに、あるいは世界も、高速増殖炉という、この高速炉が持っている一つの大きな特徴をレッテルに張って増殖という言葉を使ってきたわけでございますが、ほかにも高速炉の持っている性質は相当すぐれておりまして、これをもって初めて原子力技術が確立てきるものだという認識を持っておりますから、これについて研究開発を続けていくことは当然でございます。  さらに、高速増殖炉経済性につきましては、この持っている本質的な性格と申しますのは、非常に出力密度が高いということでございます。それに、運転温度を高くできて熱効率が上げられる。前者はシステムを小さくできる特徴を持っておりますし、後者は効率をよくしていくという特徴を持っておりますから、これが経済性の上で達成できないという考え方には立っておりません。研究開発としては難しい問題もございましても、必ずやそういったものができると確信をしております。  それから最後に、これまでいろいろ御議論いただいておりますし、特に動燃の関係がございますが、「もんじゅ」の話あるいはアスファルトの話、政策と技術と組織というこの三つ関連考えなきゃいけないと申しましたが、今出されている問題は、少なくとも技術的に克服できない問題ではないということを最後にお話し申し上げて、この克服に向けて全力を挙げたいと考えております。
  56. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 茅参考人に端的にお伺いいたします。  COP3に関してですが、先ほど先生お話しいただきましたように、CO2排出抑制の一つの柱に原子力、これはどうしても欠かせないというお話がございました。ところが、COP3に向けてのいろいろな動き、政府部門とNGO部門があるかと思いますが、政府部門におきましても、例えば日本環境庁等において原子力についての言質は、ほとんど何もしないということ、それから、そのCOP3の半分を占めるNGOに至っては、どちらかというと反原子力という色彩が濃いような雰囲気がいたします。どうしてこういうことになったのか。また、そういうことで現実にCO2排出抑制を国際社会で達成するために実効的な結論がこの十二月に出るんだろうかと大変私は危惧をいたしておるわけでございますが、その点につきまして、茅先生の御見解をお伺いしたいと思います。
  57. 茅陽一

    茅参考人 確かにおっしゃるように、NGOその他で、原子力に答えを求めずにほかのものに答えを求めようという動きはございます。私も覚えておりますが、一九八八年、トロントでサミットの直後に、チェンジングアトモスフィアという会議がございまして、そこで、二〇〇五年二〇%CO2削減というステートメントが出て、それが温暖化問題の直接の発火点になったわけです。そのときにちょうど外側でNGOが大会を開きまして、そこでやはり似たような宣言を持ってまいったわけです。そのときに書いてあったのは、原子力はしかし最低の選択である、だから原子力は推進すべきでないということをつけて持ってきたわけですね。それに対して、会議の中で議論が出まして、それでは何に答えを求めるのかという議論が出て、そのときに、太陽エネルギーに頼るというのは余りにもむちゃな議論であるという意見が多かったことを覚えております。  それで、私自身も、さっき申し上げましたように、NGOのそういった意見の中には太陽エネルギーに対してのかなりの期待があることは存じておりますけれども、それが現実的ではないということについては先ほど申したとおりでございます。  それから、欧米でも省エネルギーに対して非常な期待を抱く考えがあります。日本でもそうですけれども。これについてはいろいろなものが出ておりますけれども、現実に省エネルギーがどこまで実行できるかということになりますと、最近の状況を見ますと、やはり一般の消費者、いわゆる民生でございますが、これが自覚をして動かないことにはなかなか進まないというのが実感でございます。  しかし、それに対して政府が何か抜本的な対策をとるならともかく、現状では簡単にはいかないだろう。そうすると、省エネルギーで答えをすべて出すことも無理であり、太陽でも無理だ、やはり原子力組み合わせバランスのある答えを探すしか私は答えがないのではないかというのが思っておることでございます。
  58. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 それでは、まだ御質問があろうかと思いますが、予定の時間を若干超過をいたしましたので、これにて参考人に対する質疑を終了いたします。  参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後二時開議
  59. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き、原子力開発利用とその安全確保に関する件、特に今後の原子力政策あり方について調査を続行いたします。  午後の参考人として、東京大学教授鈴木篤之君、弁護士海渡雄一君及び中央大学教授日本科学者会議原子力問題研究委員会委員長舘野淳君、以上三名の方々に御出席いただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  本委員会におきましては、動燃の高速増殖炉「もんじゅ」や東海処理施設での事故等について質疑を重ねてまいりましたが、本日は、それぞれ御専門の方々をお招きして、広く原子力政策について御意見をお聞きし、委員会審議参考にしたいと存じます。  参考人各位におかれましては、今後の原子力政策あり方、特に原子力政策の諸問題について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、鈴木参考人、海渡参考人、舘野参考人の順に、お一人十五分程度で取りまとめて御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  また、念のため申し上げますが、御発言はすべてその都度委員長の許可を得てお願いをいたします。なお、委員に対しては質疑ができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。  御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず鈴木参考人にお願いいたします。
  60. 鈴木篤之

    ○鈴木参考人 本日は、参考人として意見陳述の機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。  お手元に資料をお配りしてございますので、それに基づきまして、原子力政策の諸問題について、私が日ごろ感じておりますところを述べさせていただきたいと思います。  まず、いわゆる動燃問題は、権限と責任の範囲が欧米などに比べて不明瞭なままに実際の意思決定や行動がとられているという、日本社会の構造的問題が露呈したものとしてとらえるべきではないかというふうに思います。原子力のように安全確保が重要な場合は、組織運営や危機管理に関する裁量と責任をより明確にしておくことが重要ではなかろうかと思います。  具体的には、国の安全規制の範囲をより明確にするとともに、事故の責任は基本的に事業者にあることをより徹底する仕組み、新体制、新組織が必要ではないかと思います。参考までに、アメリカにおきましては、いろいろな細かい技術基準がございますが、これは基本的には、NGOである学会が中心になって決めているものでございます。こういうことも日本で大いに参考にすべきではないかというふうに思います。  原子力は、現在、日本の総電力需要の約三〇%を供給しております。これまでは、欧米の先進技術を学び、改良を加えた上、安全性にすぐれた日本原子力発電技術開発することに重点が置かれていたかと思います。これは、いわゆるキャッチアップ型のアプローチであったわけで、今後は、いわばトップランナーの一つとしての自覚と取り組みが必要ではないかと思います。  具体的には、原子力発電を支える核燃料サイクルの体系をつくり上げていきますとともに、二十一世紀に向けた新しい技術開発に長期的に取り組むべきではないかと思います。その場合、環境調和への一層の取り組みと国際協調への一層の貢献という視点が重要ではないかと思います。  原子力は、廃棄物の物理的発生量と、地球温暖化物質であるCO2の発生量が他の電源に比べてけた違いに少なく、環境保全の上から、もともとすぐれた特質を持っております。  しかし、放射性廃棄物でございますから、安全管理が必要だということになります。技術的には、廃棄物中の放射能をできるだけ少なくし、環境調和に一層努めることが今後とも重要ではないかと思います。そのために有効な方法が、発電所の使用済み燃料を再処理し再利用することでありまして、俗にプルサーマルと呼ばれております。これは、資源リサイクルの一種でございます。プルサーマルによって、ウラン資源の消費量を二〇%程度は節約できる上に、いわゆる高レベル放射性廃棄物中の放射能の潜在的危険性を半減することができます。  産業における資源リサイクルは、それぞれの産業の規模や状況に応じて適切な方法で行うことが肝要ではなかろうかと思います。  プルサーマルによるリサイクルも同様でございまして、日本の当面の課題は、第一に、英仏への委託再処理から回収されるプルトニウムを、MOXと呼ばれる燃料に加工して日本に持ち帰りまして、日本原子力発電所でプルサーマル利用すること、それともう一つ、青森県の六ケ所村に建設中の国内の再処理工場を完成させ、日本核燃料サイクル体系を着実に構築していくことでございます。  ウラン価格を見ますと、当面、低位安定的な状況でございまして、使用済み燃料リサイクルすることに対する経済的なインセンティブは、短中期的にはそれほど大きくないかと思います。しかし、資源はできるだけ大切に使うべきでありまして、資源リサイクルは長期的観点からできるだけ奨励されるべきではないでしょうか。と同時に、柔軟性のある核燃料サイクル体系にする上から、当分の間、再処理しないものについては適切に備蓄貯蔵していくことが肝要かと思います。  さらに、長期的観点からは、高速炉の開発に取り組むべきだと思います。  現在のままの原子力発電方式では、俗にワンススルーと言っておりますが、ウラン資源利用率はわずか〇・五%程度でございます。プルサーマル計画を進めることによってこれを一%近くまで向上させられますが、それ以上は難しいわけでございます。究極的には高速炉が必要でございまして、高速炉によって、ウラン資源利用率は現状の百倍の五〇%程度にはなるかと思います。  高速炉開発は、費用と時間がかかりまして、欧米には、そのために挫折した例もございます。日本は、それらの経験を生かし、もっと効率的な開発の方法を技術的に検討すべきではないでしょうか。動燃改革の要請の一つは、このことを可能にする新組織・体制にすることかと思います。  次に、環境調和への一層の取り組みの観点からは、高レベル放射性廃棄物処分の問題が最も大きな課題かと思います。  日本は、これまで、この点を等閑してきた嫌いがどうしてもぬぐい切れません。この課題は、単なる技術的問題というより社会的問題でございまして、社会的な理解を得る信頼性の高い技術開発することが第一かと思います。そのためには、安全ばかりではなく、安心していただけるような日本的アプローチも必要かと思います。例えば、国民に納得していただけるまではいつでも回収できるように管理することも、技術的には可能かと思います。  当面の課題は、動燃が岐阜県瑞浪市東濃地区に計画しております深地下空間の研究施設を建設することかと思います。動燃改革の第二のポイントは、この計画の円滑な実施を促すようにすることかと思います。欧米のように、そのために独立した組織をつくることも検討に値するのではないかと思います。  廃棄物問題は、いずれにしても社会的に解決していくことが基本でございます。  一般廃棄物や産業廃棄物にしてもへ課題は山積しております。なかんずく放射性廃棄物の問題は難しいわけでございまして、その一つの例が、病院などの医療機関や研究機関から発生する放射性廃棄物の処分の問題でございます。日本では、依然として未解決のまま暫定的に貯蔵されたままでございます。  まして高レベル放射性廃棄物となれば、社会的にさらに難しいわけでございまして、諸外国では、高レベル放射性廃棄物処分については、国会の場で議論し、国としての方針を決めているところが多いわけでございます。日本においても、そのような社会的合意形成の方法を参考にすべきではないかと思います。  今後の原子力政策にとって重要なもう一つの点は、国際社会への一層の貢献かと思います。  例えば、中国における毎年の石炭消費量は莫大です。日本全体の年当たり総エネルギー消費量の約一・五倍のエネルギーが、現在既に石炭を燃やして供給されているという勘定になります。これによる環境汚染は年々深刻化の様相を呈しているわけでございまして、少なくとも将来の電源については、できるだけ原子力にしたいというのが中国の方針であります。  この原子力導入の機運は、高人口かつ高経済成長の東アジアの国々に共通しております。これらの国々は、原子力先進国としての日本技術力に大いに期待しているわけでありまして、原子力安全の面ばかりでなく、放射性廃棄物管理などの面でも、東アジアにおける原子力協力を一層進めるべきではないかと思います。  次に、日本はプルサーマルを隠れみのにして核兵器を持とうとしているのではないかとの懸念が諸外国にある、そういう点についてはどうかということでございます。  そのような疑念は、プルサーマル計画のいかんにかかわらず存在することの認識がまず重要かと思います。現に、核不拡散条約の当初の大きなねらいは、臼独の非核化にあったかと思います。日本が核保有国となれば、国際的に孤立化し、国益に何らかなうものでないことを常に国の内外に明らかにすることが肝要かと思います。  プルサーマル計画が諸外国の心配を増幅しないかとの懸念につきましては、透明性と情報公開が重要でありまして、日本はこの点で大変努力してきておりまして、国際的に高い評価を受けておりますが、今後ともその姿勢を貫くべきかと思います。  原子力分野での国際貢献の中で緊要性の高い課題は、米ロ間の核軍縮に伴って核兵器を解体するときに発生する余剰プルトニウムの取り扱いをめぐる国際協力の問題でございます。  特に、ロシアの余剰プルトニウムにつきましては、資金的にも技術的にもG7の協力が不可欠かと思います。今回のデンバー・サミットの議題の一つにも上っていると伺っております。  昨年十月のパリにおける専門家会合の場で、ロシア国内でプルサーマル利用ができるように技術協力したい、こういう提案が仏独からございました。これが国際協力のあり方として非常に有力な選択肢だということになっているわけでございますが、日本技術に対する期待も大変大きいわけでございます。核軍縮に具体的かつ技術的に貢献し得る貴重な機会かと思いますので、仏独提案と協調的な日本提案を速やかに示していただくべきではないかと思います。  最後に、日本原子力開発も約三十年たったわけでございます。私は、やはり転機を迎えているかと思います。動燃問題を契機に、今後の三十年を見通して、今後のことを考えていくべきだ。少子・高齢化の進展、冷戦構造の崩壊、キャッチアップ経済の終えん、大競争時代の到来などの社会環境の大変容のもと、行政改革と財政改革という大きな改革の枠組みの中で新しい構想を示すときではないかと思います。  一言で言えば、開発に費用と時間がかかり過ぎるという面を見直しまして、もっと効果的かつ効率的な技術選択肢開発の方法を国民に提示することが重要ではないかと存じます。そのために、五年、十年単位の段階的な開発目標を新たに定めまして、権限と責任を明確にした新体制のもとに開発計画を遂行すべきではないか。と同時に、原子力のような公共性の高いエネルギー技術開発には、国民みずからの参加意識を涵養していただくことも重要ではないかと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  61. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 どうもありがとうございます。  次に、海渡参考人にお願いいたします。
  62. 海渡雄一

    ○海渡参考人 私は、「もんじゅ」、六ケ所村の核燃料サイクル施設の訴訟にも原告代理人としてかかわり、現在、日弁連の公害対策環境保全委員会原子力部会の部会長を務めております。欧米諸国のエネルギー政策や原子力政策についても調査をしてまいりました。  きょうは、このような意見を述べる機会を与えていただいた科学技術委員会の先生方に、心からお礼を述べたいと思います。  「もんじゅ」の二次冷却系室で九五年十二月に発生したナトリウム火災事故、去る三月十一日に東海村の動燃再処理工場の放射性廃棄物アスファルト固化工程で発生した火災爆発事故の持つ意味、そして今後の原子力政策の方向について意見を述べたいと思います。  私がきょうお話しすることは、レジュメの冒頭に掲げておきました最近の日本弁護士連合会の原子力政策に関する一連の意見書に沿ったものであるということをあらかじめ申し上げておきたいと思います。  まず最初に申し上げたいことは、何よりもプルトニウムリサイクル、すなわち高速増殖炉と再処理工場の運転、建設の停止を求めたいということです。  プルトニウムエネルギー源として用いる高速増殖炉という考え方は、原子力開発の当初からあったものです。むしろ、その歴史軽水炉よりも古いと言えるでしょう。日本原子力計画屡 一九五六年の当初から高速増殖炉開発が予定されておりました。最初計画から四十年たっても現実化していない技術というものには、根本的な疑問があります。  プルトニウム燃料とし、炉心の周りに装荷されたプルトニウムをさらに増殖していく、このプルトニウムを再処理で取り出す、このような夢は世界じゅうの原子力技術者によって共有されていたものです。しかし、今もこの夢を見続けているのは、ひとり日本の動燃と科学技術庁だけであると言っても過言ではないでしょう。  アメリカでは、一九八三年十二月に、バーンウェル再処理工場の建設が中断されていたものを正式に閉鎖を決定しています。さらに、クリンチリバー高速増殖炉は、十六億ドルの政府資金を投じて七割が完成した段階で、一九八三年十月に計画停止が決まりました。現在、軍事プルトニウム軽水炉で燃焼させる計画は検討されていますが、高速増殖炉、再処理の現実的な計画はありません。  ドイツでは、バッカーストルフの再処理工場が二十六億マルクを投じた後、一九八九年六月に建設計画が放棄されています。カルカーの高速増殖炉原型炉SNR300は、一九七三年に着工され、七十五億マルクもの巨額な費用が支出されましたが、結局核燃料が装荷される前に、一九九一年三月には計画中止となり、現在は遊園地となっております。この私のレジュメに載せました写真は、つい最近私が行って撮ってきた写真でございます。  イギリスでは、日本からの再処理委託を主たる業務とするセラフィールド再処理工場のTHORPが稼働中ですが、国内でのプルトニウムリサイクル計画は放棄されています。高速増殖炉のPFRは、一九八七年に蒸気発生器における細管の大量破断事故を起こしました。その後、この原子炉は一九九四年に閉鎖されています。  世界で最も原子力利用に熱心なフランスでさえも、再処理高速増殖炉未来には疑問が投げかけられています。高速増殖炉実証炉として建設されたスーパーフェニックスは、数多くのトラブルを起こし、停止、運転を繰り返し、一九九一年には増殖炉としての運転をとめています。  いずれの国でも、高速増殖炉も再処理工場も、プルトニウムの危険性と技術的な困難性からトラブルが続出し、また経済性に対する疑問が提起され、撤退が決まってきたとまとめても差し支えないでしょう。  「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故、東海処理工場の爆発事故で明らかになったことは、第一に、施設の持つ潜在的な危険性がいかに大きいかということ、第二に、これまでの国の安全審査で十分な審査がされてこなかったということ、第三に、動燃にはこのような施設を運転し管理する十分な能力がなく、事故を未然に防止できなかったということ、第四には、動燃の秘密主義、そして平気でうそをつく体質など、その組織の誠実性、信頼性のレベルですら問題があるということなどです。  一たん決められたことをやめるということは、大変な困難であることはよく理解できます。しかし、政治的な決断なしに不合理な政策決定は正されません。イギリスの高速増殖炉の閉鎖は、サッチャー首相のツルの一声で決まったと言われています。プラスの価値を生み出す可能性もなく、重大事故の危険性、放射性物質の増大、拡散という負の遺産だけをもたらすプルトニウムリサイクルを停止させるのは、国会の責任です。  第二に提言したいことは、独立の事故調査機関の設置です。  日弁連は、「もんじゅ」事故に際して、独立の事故調査機関の設置を呼びかけました。今回の再処理工場事故によって、このような日弁連の主張の正しさはますます明らかとなっています。  「もんじゅ」の事故隠しは、現地に立入調査した県職員によって指摘されたものです。今回の消火確認のうそも、科学技術庁の事故調査委員会のメンバーではなかった、火災、爆発の専門家が作業員から直接の事情聴取を行う過程で明らかとなったものです。事故の当事者である動燃や、これと一体の科学技術庁には、原子力施設の事故を公正に調査する能力も資格もないということは今や明白と言わなければなりません。橋本総理も、外部からの調査が必要と発言されました。  しかるに、現在も動燃と科学技術庁による事故調査の体制は何ら変更されておりません。今度こそ、一刻も早く動燃、科学技術庁から独立した調査機関をつくり、徹底した調査を進めるべきです。このような基本的なこともできなければ、国民の信頼回復はおぼつかないというふうに考えます。  第三番目には、科学技術庁自体の再編が必要だということを述べたいと思います。  「もんじゅ」、東海処理、「ふげん」と動燃のたび重なる失態に対して、動燃事業団の解体、民営化という問題が急浮上してきています。日弁連は従来から、動燃事業団を風力や太陽光など再生可能エネルギーを含む総合的なエネルギー研究機関に変革するよう提言してきました。  しかし、科学技術庁が現在提唱されている動燃解体論には若干の危惧があります。なぜなら、諸悪の根源を動燃に帰し、これを解体することで、プルトニウムリサイクル基本とする国の原子力政策の延命を図る意図が透けて見えるからです。  動燃をここまでスポイルしてしまったものは、国際的にも否定されたプルトニウムリサイクルという考え方を動燃に押しつけてきた科学技術庁みずからの責任でもあるのではないでしょうか。むしろ、動燃は科学技術庁の政策実施機関だったというふうに言えると思います。ですから、エネルギー政策と科学技術庁の組織体制の根本的な見直しを伴わない動燃解体は、トカゲのしっぽ切りにすぎないと言えると思います。  橋本総理は、先ごろの事故に際して、動燃という名前も聞きたくないというふうに言われました。しかし、「もんじゅ」も東海村も六ケ所村の再処理工場も、設置を許可されたのは総理大臣御自身です。原子力偏重のエネルギー政策に固執し、その改革を怠ってきた政府みずからの反省を行動に示されない限り、どのような激しい動燃非難の言葉もそらぞらしいばかりです。  エネルギー政策の主体は、現在通産省と科学技術庁に分割されています。しかし、この現状は行政の効率化という観点からも問題です。失われた国民のエネルギー政策への信頼を回復するには、当事者能力を失っている科学技術庁を、エネルギー部門は通産省に、原子力の規制部門は環境庁に、科学技術研究部門は文部省に解体整理する程度の行政改革をなし遂げる必要があると思います。動燃の解体が、原子力行政の再編と、そして新しいエネルギー政策の出発につながることを強く期待したいと思います。  第四に申し上げたいことは、エネルギー事業に対する規制の緩和と原子力に対する政府予算の見直しです。  九電力独占体制とコスト無視の電力料金制度が、電力料金の高価格化を招き、ひいては日本経済の空洞化を加速してきたという批判が産業界からも強まっております。  最近公表された公正取引委員会の「電気事業分野及びガス事業分野における規制緩和と競争政策上の課題について」では、発電、配電、送電の会計上ないし組織上の分離、競争原理の導入が提言されております。去る五月十六日閣議決定された経済構造改革プログラムでは、電力会社と一般企業の対等な競争条件を一年以内に定めることが決められました。  私は、日弁連の調査で昨年カリフォルニアを訪問いたしました。カリフォルニアでは、来年一月一日を期し、電力会社を発電部門と送配電部門に分離し、自由市場で電力の売買ができるような大改革が進行中です。イギリスでは既に電力市場の自由化を行いました。カリフォルニアでは、市場自由化後も市場競争力を持たない原子力発電の高価格を補うために、CTCという競争移行費用を支払う計画です。今や原子力発電は、過去の誤った政策による負の遺産として認識されるようになっているのです。  日本原子力に著しく偏重したエネルギー政策は、政府みずからが石油代替エネルギー原子力しかないという世論誘導のもとで進められてまいりました。その結果、ヨーロッパの国々で行われているような再生可能エネルギーエネルギー効率化、天然ガス利用の拡大というような、現実的で冷静な議論の機会が失われたのではないかというふうに考えられてならないのです。  私は、もう五年前になりますが、ドイツの連邦経済省を訪問いたしました。その際に、ドイツのエネルギー政策立案の責任者の方から、日本政府は今後も原子力発電所を建設し続けるという野心的な政策をお持ちのようだが、果たしてコスト分析はやられているのでしょうかというふうに真顔で聞かれたことがあります。  膨大な原子力予算は、再生可能エネルギーエネルギー効率化に向けられるべき予算を、スクラップになってしまうであろう「もんじゅ」原子炉や六ケ所村再処理工場などの原子力プロジェクトに浪費させ、企業自体のエネルギー関連技術開発の意欲をそいできたと言えると思います。  日本は自由主義経済の国です。導入から三十年以上も経過している産業への国家予算の投入は正当化できないと思います。財政危機と言われる中、原子力予算も聖域ではあり得ないのです。  先ごろ、高レベル放射性廃棄物処理処分は民間主導で行う方針が原子力委員会の高レベル放射性廃棄物処分懇談会から示されました。発生者責任の原則の徹底を求めてきた日弁連の立場からも賛同できるものです。  そろそろ原子力産業も国から自立すべきです。そして、電力事業は規制緩和によって市場化を図るべきです。原子力に対する新規予算は原則としてやめてみてはどうでしょうか。  そして、電力会社は発電とその他の配電部門を別会社にすべきです。会社を一つにしたままではコストの透明性が不十分であり、発電と送配電の組織的分離を強く求めておきたいと思います。  五番目に提言したいことは、エネルギー政策そのものの見直しです  私は、昨年、日弁連の調査でドイツとデンマークの新しいエネルギー政策を見てまいりました。原子力未来エネルギーを頼ることができないと決断した国々では、新しい政策が次々と打ち出されていました。  現実的な原子力の代替エネルギーは、言うまでもなく、埋蔵量が豊かで環境的にもクリーンな天然ガスです。石油石炭利用を減らし、天然ガス利用をふやしていくことは共通した政策でした。しかし、再生可能エネルギーでない天然ガスには資源的な制約もあり、石油石炭に比べて有利とはいえ、CO2の排出も避けられません。  風力、太陽光発電などの再生可能エネルギーについて、市場化が図られるまで政府が補助することは当然です。地球温暖化の問題を考えれば再生可能エネルギーの方が化石エネルギーに比べて有利なわけですから、この差を炭素税、CO2税などの形で経済的手法として取り込むことは環境経済政策として合理的だと思います。  しかし、風力発電については、ドイツにおいてもデンマークにおいても、既に税制上の一部の優遇措置を除いて政府補助は必要ないとされています。それほど市場価格が下がってきているということです。他方で、技術開発を加速化し、コストの低減を図る必要のある太陽光発電については、当面電気の高価格での買い取りを保証するような法律的な制度が必要だと思います。  エネルギー予算を組み替え、エネルギー効率化、低価格、高効率天然ガスのコージェネレーション、環境に適合した風力や太陽光に思い切ったシフトを行い、これらの技術日本経済の基本に据えるべきだと思います。そのような政策への第一歩として、「もんじゅ」高速増殖炉の運転の停止、六ケ所再処理工場の建設の停止という政治的な決断を強く求めたいと思います。  御清聴ありがとうございました。(拍手)
  63. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 どうもありがとうございました。  次に、舘野参考人にお願いいたします。
  64. 舘野淳

    ○舘野参考人 舘野と申します。  このたびは、発言機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。  私は、一年ほど前まで原子力研究所におりまして、ある意味では原子力開発の内側から見てきたという立場にありますので、そうした体験も踏まえまして、きょう提出しましたレジュメに沿ってお話を申し上げたいと思います。  まず第一点ですけれども原子力開発現状をどう見るかということであります。  一昨年の「もんじゅ」の事故、それから引き続きます東海処理工場の火災爆発事故というのは、技術的に見ましても非常に重大かつ深刻であったわけですが、同時に、これを契機に、動燃の体質とかあるいは安全審査などを含みます原子力開発体制全般にわたって批判が集中してきたというふうに考えられます。これは、やはり今日の原子力開発の進め方に対する国民の不信というものをあらわしているのじゃないかというふうに思います。  こういう、言ってみますと危機的状況ということを考えますと、ちょうど二十年前にやはりこういうことが起こりまして、当時の三木首相の私的な諮問機関として設置されました原子力行政懇談会というのを思い出します。この懇談会は、ここに引用しましたように、非常に国民の不信感が高まっているというふうに述べまして、同時に行政体制を改革する提案を行いました。その中で、原子力安全委員会の設置とか、通産、科学技術庁、運輸の行政の三分割などが実施されました。  この答申はいろいろ問題がありまして、例えば、原子力発電を推進する通産省が規制を行うとか、あるいは原子力発電の規模の決定は原子力委員会でなくて通産省が行うなど、いろいろ重大な欠陥が持ち込まれたというふうに思います。この当時、私はたまたま原研労組の委員長をやっておりまして、当時の行政懇のメンバーの方たちに会見を申し入れまして、意見を申し上げたことを覚えております。しかし、行政懇は、そういう問題点はありましたけれども、とにかく危機意識のもとで明確な論理を持ちまして改革に取り組んだということが言えるのではないかというふうに思います。  しかし、例えば円卓会議などを見ましても、今回の事態に対する対応の仕方としては、そういう論理といいますか、そういうものが全く感じられない、こういうふうに思っております。さらに、政府や産業界は動燃だけに問題を限定して、動燃告発や解体などを行うということによって、批判が原子力開発体制全般や政策全般に広がることを食いとめようとしているというふうに思われるわけであります。そういう意味では、ぜひ深く突っ込んだ討議をしていただいて、国民の不信を回復するような議論をぜひお願いしたいというふうに思っております。  では、どういうふうに開発体制を改革すればいいかということでございますが、私は原子力政策円卓会議でも述べたところですが、ちょうど十年ほど前に、私の属しております日本科学者会議というところがそういう提言を行っております。十年昔ですので少し古くなりますけれども、しかし本質的には今回の事態から見て非常に正しかったのではないかというふうに思います。  それは、ここにも書いてありますように、まず第一点としましては、自主、民主、公開の原子力平和利用三原則を遵守する。これは原子力基本法に明記してありますが、いろいろな事態を見ますと、空洞化されているというふうに感じざるを得ない。  それから、研究開発体制としましては、原子力安全委員会の発足によって役割を終了しました原子力委員会を廃止する。それから、それにかわるものとしまして、研究開発をどう進めていくかという観点で、研究者の公選制による原子力研究会議を設置する。それから、日本原子力研究所を特殊法人から国立研究所に改組する。特殊法人の問題点とか原子力委員会の問題は、また機会があれば後ほどお話ししようと思います。それから、動力炉・核燃料開発事業団は廃止するということを提案しております。  それから、日米原子力協定の話などがありますが、きょうは時間がありませんのでここは省略いたしまして、続いて、原発と核燃料サイクルに関しましては、軽水型の原発の新設を中止する。それから、使用済み核燃料即時再処理を延期して、原発敷地内に保管するという長期保管の体制を研究すべきだ。それから、高レベル廃棄物処理処分については国際学術連合の勧告を全面的に尊重する。それから、ウランプルトニウムサイクルを再検討する。それから、将来の核燃料処理に備えて基礎研究を強化するというふうなことを述べております。  さらに、ビッグプロジェクトに関しましては、非常に莫大なお金を食いますので、ほかの科学研究の分野と調和を失しないようにするべきだ、こういうことを提案しております。  これは、動燃事故の以後の事態の展開を考えますと、ある意味では正しかったのではないかというふうに考えております。  引き続きまして、動燃事故との関連につきましてさらに説明をしていきたいと思います。  動燃事故が起こりまして、私のところにも大分、一体何でああいう事故が起こるのでしょうねというふうなことはマスコミの方や何かからもいろいろ御質問がありました。私たちの日本科学者会議の原子力問題委員会としまして、そのとき声明を発しまして、三点根本的な原因として挙げております。  第一点は、技術の問題です。核燃料処理技術といいますのは、高レベルの放射能、それから強い酸、有機物というのが混在する物質系を扱う化学システムで、技術的に非常に難しく、未完成の技術であるというふうに考えております。  事故というのは、人間のコントロールがきかなくなった状態で、自然の法則に従って事態が進展していくというふうに考えております。例えば再処理工場の事故でも、化学反応が起こる、温度が高くなるというふうなこと、これは全部自然の法則に従って起こっていくわけですから、人間は悪い言葉で言えばごまかすことができますけれども、自然というのは正直でありまして、そういう意味ではごまかしがきかないわけですね。  ですから、そういう意味では、科学技術政策を進めるに当たっては科学者、技術者の意見を十分聞いていただきたい、取り入れる必要があるというふうに思っております。科学者というのはいろいろ意見を持っていることが、分かれることが多いようですが、しかし、十分に議論を尽くせばある程度の一致点は見出せるのではないかというふうに考えております。これまで、国の政策を進めるに当たっては推進派の学者の声だけを取り入れてきた。そういう意味では、先ほど述べました公選制の原子力研究会議などを考えるべきでありますし、それからプルトニウムリサイクル政策を、これは後ほど述べますが、抜本的に改める必要があるのではないかというふうに思います。  二番目は、動燃団体制の問題です。これは本当は事業団体制と言うべきかもしれませんけれども、私ども原子力関係の人間はよく動燃団体制と言っておりまして、動燃団が発足したわけですが、これは単に一つの特殊法人が発足したということだけでなくて、これまでの開発方式を全面的に変更する体制であったわけです。  動燃団体制といいますのは、動燃をトンネル機関としまして、高速増殖炉などのいわゆるナショナルプロジェクトというものに膨大な国の予算をつぎ込む、それを大企業に流すという方式であったわけです。これまで曲がりなりにも存在しておりました基礎研究は切り捨てられまして、スケジュール優先で開発が進められるということであります。このようなシステムですと、技術導入型、キャッチアップ型というのは先ほどもお話がありましたけれども、こういう開発の場合には効率的に進むわけでありますが、しかし一たん蹉秩が生じますと、これを創造的に解決していくという能力に欠けておりまして、もろさをさらけ出すというふうに言えると思います。  こういうふうに再処理技術が未完成であるだけに、基礎研究を並行して行うことがぜひとも必要だったわけですが、今回の動燃の事態というのは、こういう開発体制が本当によかったか悪かったかということに対する結論が出てしまったというふうに言っていいのではないかというふうに考えます。  こういう例として、原子力開発事業団の例の原子力船「むつ」の話がありますが、これは時間がありませんので省略いたします。  三番目は、動燃を初めとする原子力開発体制の中で、研究者や技術者の発言がさまざまな形で抑圧される、つまり民主主義が保障されていないということがあると思います。  動燃の事故の虚偽報告なども科学者であれば事実を曲げるということはあってはならないことですが、それが外部への思惑などの官僚的な体質で簡単に曲げられてしまうということがあるわけです。  かつては動燃もそういう体質ではありませんで、動燃労組はアンケートをとって八十カ所の問題点指摘、改善要求などを行ったわけですが、こういう要求は無視されまして、労働組合自身が当局の意向に逆らわない組合へと変質させられてしまった、こういうことが言えると思います。  こういうことは原研でも、当時、筆禍事件とか差別とか処分など、さまざまな抑圧が加えられたという事態が発生しております。そして、これが原研独自でなくて科学技術庁の指導のもとに、弾圧とか処分とかというよりも、こういうふうに変えろという指導が行われたというふうな文書が出されております。  その次に言うべきことは、研究開発に関しましては、さまざまな意見があって当然だというふうに思います。そして、それを十分取り入れてこそ進歩があって、安全が守られるわけですが、行政的な手段で異論を抑圧するというふうなことは無責任、無気力な体質を生んでしまうということです。  原研では、要するに基礎研究ばかりやっておって、また労働組合がうるさいからというふうなことで、原研の開発が取り上げられて動燃に移されたというふうな話がありますけれども、そういう科学技術庁の優等生がこういう事故を起こした、こういう事態になったということは非常に皮肉だというふうに私は考えております。  時間がありませんので、最後に、核燃料サイクルの問題に関して一言述べたいと思います。  動燃でのこの事故によりまして、今国が進めようとしておりますプルトニウムリサイクル政策が、技術的見地からも大変無理な政策であるということが非常に明確になったのではないかと思います。  我が国が核武装すると疑われないように、生成したプルトニウムを全部使い切ってしまうというのがこの政策の基本でして、これは技術的必然性から出されたものではなくて、いわば外交的要求みたいなものから出されているので、技術の側からいえば大変な負担になるわけですね。そうしている中で、ATR、新型転換炉それから高速増殖炉が大体だめになったということで、専ら軽水炉プルトニウムを燃やすプルサーマルの計画を推し進めようとしているわけです。  私は、円卓会議で、プルトニウムのサーマル利用というのは愚劣な利用法であるというふうに申し上げました。高速増殖炉プルトニウムを燃やしますと、これは数値の評価はいろいろあると思いますけれどもウラン資源は現在の百倍程度有効に利用できる。これは、十年しかもたなければ、百倍ですと千年ですから、ある意味では大変結構な話だと思うのですけれども、プルサーマルでは、ここにはせいぜい二倍程度と書いてありますけれども、〇・五倍、五割ぐらいふえるにすぎないわけですね。  そうであるにもかかわらず、プルサーマルに関しましてはいろいろ技術的なデメリットがあります。ここら辺は余り議論されていないのですけれども軽水炉で燃やしました場合には、これはお手元の資料に私の文章は入っていると思いますけれどもプルトニウムの高次化という現象が起こりまして、非常に防護しにくいガンマ線などを出すダーティープルトニウムというふうなものがたくさんできます。そして労働者の被曝がふえる。それからまた、使用済み核燃料の中に数万年とか数十万年とかいう非常に超長寿命を持ちます放射性物質、超ウラン元素というのが大量に含まれるようになってくるわけです。  こういうことで、プルサーマルをやるのでしたらもっとよく検討する必要がありますし、円卓会議でモデレーターを務めました佐和さんという方も、プルサーマルに関しては改めて会議を開くべきであるというふうに述べられておりますが、政府は、円卓会議が終了すると電光石火の早さでプルサーマルをやることを決めてしまった。開かれた原子力などと言っていますけれども、これでは国民の信頼は得られないのではないかというふうに考えております。  こういうことで、プルトニウムリサイクル政策を中止しまして、当面は使用済み燃料を長期貯蔵する方法を採用すべきだというふうに考えますし、青森県六ケ所村の再処理工場の建設は中止すべきであるというふうに考えております。  そうしますと、その使用済み燃料を放置するのは子孫にツケを残すことであると言う方もおられるかもしれませんけれども、しかし、再処理をしましても高レベル放射能処理処分の方法は確立しておりませんので、問題は先送りになっただけで、決して本当の意味の技術的解決にはなっていないというふうに言えるわけであります。  時間が参りましたので、一応ここで終わります。(拍手)
  65. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見の開陳は終わりました。
  66. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 参考人に対する質疑は、理事会の協議に基づき、まず、各党を代表する委員が順次質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。実川幸夫君。
  67. 実川幸夫

    ○実川委員 自由民主党の実川幸夫でございます。  きょうは、先生方、大変御苦労さまでございます。また、先ほどから貴重なお話をいただきまして、大変参考になりました。それでは、時間がございませんので、早速尋ねさせていただきたいのですが、私からは鈴木参考人にお尋ねをさせていただきます。  先ほど何項目かに分けていろいろとお話を聞かせていただきました。今後の原子力政策エネルギー政策について大変参考になりました。  ちょうど二十五年前だったと思いますけれども我が国石油ショックがございました。そのときには、欧米諸国と協調して原油を確保したり、あるいはまた国を挙げて省エネ、省資源に取り組んでその危機を乗り越えてまいりました。まだ記憶に新しいと思います。それ以後、国内では大型テレビあるいはパソコン等の電気製品が各家庭に普及しまして、エネルギー需要というものはさらに伸び続けてまいりました。その後、需要増大を見越して、エネルギー開発を確実に進めてきたわけであります。  中でも、エネルギー全体の三割、四割を占める原子力に対しては当分の間依存していかなければならない、先ほども先生からそういう御説明がございましたし、これから五十年そしてまた百年、将来のエネルギーの供給を、また開発をどう進めていくかというのが今国内全体の意見ではないか、このように思っております。  そこで、鈴木参考人にお尋ねしたいのですが、これからのエネルギーの需要と供給のバランス、先ほどある程度御説明をいただいたのですが、もう少し詳しく、そしてまた今後どのような見通しがあるのか、そしてまた輸入依存度の見通し等をあわせて御説明をしていただきたいと思います。  また、時間があればで結構なんですが、この資料にはありませんけれども核融合、いわゆるITERの開発計画ですが、午前中にも二、三質問がございました。私もいろいろな角度から御説明を聞いているのですけれども、この核融合、ITER開発は、もちろん国内のエネルギー供給問題だけではなくして、我が国国際貢献やまた安全保障の観点からも積極的に取り組んでいくべき課題ではないかと思っております。  そういう中で、二、三日前だと思いますけれども、財政構造改革の報告の中で、何か積極的には我が国には誘致しないというような報告がございました。そういうことで、もし我が国に誘致されない場合、そしてまた事情が変わって我が国に誘致されたときのメリット、デメリットについて、時間があれば、お答えいただきたいと思います。  以上でございます。
  68. 鈴木篤之

    ○鈴木参考人 御質問は二点あったかと思いますので、お答え申し上げたいと思います。  まず第一点ですが、エネルギーの需給バランスの見通しについてどうかというお尋ねだったかと思います。  私は、この点については、まず日本の国内とそれから世界全体というふうに分けて考えてみたいのですが、日本の国内におきましては、経済成長も昔ほどではございませんので、いわゆるエネルギー需要の伸びというのは、過去、今先生おっしゃった石油危機以降のこれまでとの関連でいえば、それほどでもないかとも思います。しかし、依然としてエネルギー需要の中でも電力需要は特に伸びているわけでございまして、その中で原子力が今三分の一程度を占めているということで、結局は、ベストミックスとよく言いますが、私はいろいろな意味でエネルギーバランスよく使っていくということかと思います。  そういう中で、原子力が三分の一ぐらいを今後とも占めていくというのは、ある意味では非常にバランスのとれた考え方ではないか。その電源の三分の一程度を占めていくためには、今後とも原子力をある程度使っていくと同時にふやしていかなければいけないということになると思うのです。そういう意味で、着実に原子力発電を、例えば原子力発電所を新規につくり、あわせてそれに応じた燃料サイクル施設を充実していく。やはり大事なことは着実に進めていくということかと思います。同時に、その経済性についても十分留意していく必要がある、こういうことかと思います。  もう一つのお尋ねが、核融合エネルギー利用することに関する技術開発の一環として、国際核融合実験炉、いわゆるITERの計画についてどう考えるかというお尋ねだったかと思います。  私債核融合炉に関連した分野の専門家ではございませんので、単なる一人のいわゆる技術者としての意見ということになろうかと思いますが、私はできればそういうものも実現させていくべきかと思うのですが、やはり一番大きな困難は、コストが非常にかかるということかと思います。  これについては専門家の間で随分議論といいますか検討されていまして、そういう意味でも合理化はなされているのだと思いますが、しかし、私は、先進国がそれぞれ財政難にある状況の中で、やはり我々技術者はさらに開発プログラムそのものを合理化するという努力が重要ではないかというふうに考えております。  私は核融合炉の方は専門家ではございませんので詳しくないのですが、核分裂炉の方であれば、先ほど来お話も出ていますが、例えば高速炉の開発も、これはできるだけ開発のプログラムそのものを技術的に合理化していくということが大事ではないか。  そういうことで、広く国民の支持が得られればこれを実現していく、こういうプロセスがやはり今後は重要ではないか、そういうふうに思います。
  69. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 斉藤鉄夫君。
  70. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 新進党の斉藤鉄夫でございます。  私は、三人の参考人の方にすべて質問をさせていただきたいと思いますので、端的に質問させていただきます。  まず、鈴木参考人に、原子力の専門家として、高速増殖炉がリーズナブルな投資でリーズナブルな期間に我々人間が実用化できる段階になるのかどうか。先ほども海渡参考人の方から、外国ではもうこれをやめている、日本だけがこの研究開発を続けていくのはばかげているというふうな意見の陳述があったわけでございますが、それに対してどういうふうにお考えになりますかという質問をさせていただきます。  それから、海渡参考人と舘野参考人には、同じ質問でございますが、お答えいただきたいと思いますけれども原子力に反対する一つの理由として、放射性廃棄物環境の問題があるかと思います。  私自身どう考えているかといいますと、原子力発電で出てくる放射性廃棄物というのは、確かに人間にとって好ましくないものではありますが、人間の管理下に置いておくことができる。しかし、その他の、主な発電である火力発電の場合、二酸化炭素その他が出てくるわけですが、現在の技術ではそれを環境に放出せざるを得ない。ある意味では人間の管理下を離れるわけでございます。そういう意味では、人間の管理下に置ける原子力発電の方が、環境上からも、また二酸化炭素の排出抑制という意味からもいいのではないか。私自身はそう思っておりますが、それに対してのお考えを海渡参考人と舘野参考人からお伺いしたいと思います。  以上です。
  71. 鈴木篤之

    ○鈴木参考人 高速増殖炉開発が、リーズナブルな投資のもとにリーズナブルな開発期間の中でできるかどうかというお尋ねだったかと思います。  これは、ある意味では大変重要なポイントをつかれていると思いますし、またその答えはそう簡単ではないと思いますが、先ほど実川理事の御質問にもお答え申し上げましたように、大事なことは、まずこれは時間とお金がかかるということで、それについてできるだけ技術者がみずからより合理的なプログラムを考えていくということかと思います。それはこれから技術者が十分努力しなきゃいけないことなんですが、私は、私見なんですが、そういうことが可能だという見通しを持っております。  それで、いつごろ実用化する可能性があるかということでございますが、私は、これは単に技術でそれを実現するということではなくて、やはりそれはいろいろな意味での世界のエネルギー情勢にもよるのだと思います。  ですから、これから二十年、三十年ぐらいのスケールで考えたときに世界のエネルギー情勢がどうなっていくのかということとの関連が重要でございまして、私の感じでは、やはり石油価格が将来再び高くなる可能性はあるのだと思います。それに連動して天然ガスの価格が高くなることも考えられ、かつまた、それに関連して天然ウランの価格が高くなることも考えられる。そういう状況を考えたときには、やはり高速炉による原子力発電選択肢として我々が準備していくということは、これは非常に重要なことではないかというふうに思います。  ちょっと委員長、先ほど実川理事の御質問に対して、私は前半の部分で、エネルギー需給のバランスを世界全体と日本と分けて考えてみたいと言ったときに、世界の方についてお答え申し上げるのを失念いたしましたので、ちょっと補足させていただきますが、その分、今まさに斉藤理事からの御質問とも関連するわけでございまして、私は、世界全体を見ますと、長期的にはやはりエネルギーは足りない方向だと思うのですね。  これだけ人口爆発が予想され、途上国の経済成長が期待されている中で、世界全体で見ますと、エネルギーは足りない方向だ。日本においては、まず省エネルギーが大事で、ある意味では我々の生活はエネルギーを随分潤沢に使える状況になっているわけでございます。したがって、日本では、もうこれ以上ぜいたくする必要がないんだという意見もあると私も認識しております。しかし、世界を見ますと、これはエネルギーが足りない方向でありまして、そういう意味では、日本が世界全体のエネルギー需給のバランスに貢献できるような技術を長期的に開発していくという視点は重要ではないか、こんなふうに思います。
  72. 海渡雄一

    ○海渡参考人 まず、原子力発電所を化石燃料の発電所に置きかえた場合には、当然炭酸ガスの総排出量がふえることは避けられないのですね。ですから、今すぐ原子力発電所をやめて、それを火力に置きかえればCO2対策上は非常に不利になるというのは、先生の御指摘のとおりだと思います。  しかし、原子力発電所には、チェルノブイリ事故の例を見てもわかるように、非常に致命的な事故を起こせば大量の放射性物質環境中にまき散らしてしまう潜在的な可能性があるというふうに思うのですね。動燃東海の再処理工場の事故でも、結局、中に入っていたものが低レベル廃棄物でしたから大量の放射性物質の放出にはなりませんでしたけれども放射能の閉じ込め機能自身が失われるというような、そういう前代未聞の事故が起こっているわけです。  「もんじゅ」についても、これは確かに仮想事故という形ではありますけれども、核暴走事故というものが起こり得るという前提で安全審査の中でも検討されているわけですね。我々は、「もんじゅ」については核暴走事故の危険性というものが基本的には克服されてないんじゃないかという疑念を持っております。  もう一つは、事故を起こさなくても、放射性廃棄物管理、確かに通常に管理されて数十年のオーダーであれば高レベル廃棄物でも管理できると思いますが、それを数万年のオーダーで本当に管理できるか。環境から隔離してそれだけの年数、基本的には処分というのはもう管理をしないという前提だと思うのですけれども、それが未来の子孫の生きている環境中に出てこないという保証が本当にあるのかどうか。  そういうことを考えたときに、原子力には炭酸ガスの放出こそありませんけれども環境的なプラスマイナスを考えたときに、どちらの選択が有利か。私としては、原子力には軍配を上げにくい。  ドイツでは、炭酸ガスの排出量を二〇〇五年までに二五%減らすということを計画で決めています。しかし、原子力を増設する計画は全くありません。エネルギー効率化と再生可能エネルギー、そして天然ガスのシェアをふやしていくということでこういう目標が達成できるんだという、きょうの私のレジュメにもドイツ政府のエネルギー計画を書いておきましたけれども、こういう計画でそのような政策が実行可能だと言っています。CO2対策で原子力というのは、日本だけで通用している非常に特殊な論理ではないかなというふうに思いますので、ぜひ世界的な状況をよく調査研究していただきたいなと思います。
  73. 舘野淳

    ○舘野参考人 私も長い間原子力研究に携わっておりまして、そういう意味では、一概に原発を全部やめろとかあるいは高速増殖炉開発を一切行うな、そういう立場をとっているわけではありません。ただ、科学技術発展といいますのは、何といいますか、人間が幾らあがいてもどうしようもないところがありまして、やはりその発展の段階を経ていかなければそこへ到達しないということがありますので、これはやはりそういう手順を踏んできちんと開発を行っていくべきだというふうに考えているわけです。  特に高速増殖炉の場合には、何か今にも非常にいいことがあるような、一種の絵にかいたもちみたいな格好でそれが宣伝される。研究者の立場としてはわからないわけではありません。予算をとってくるためには、こういうふうにいいことがありますよということをよくやるわけですけれども、しかし、それが先走り、ひとり歩きしてしまいますと、原子力に対するイメージも非常に損なわれると思います。そういう意味で、きちんと手順を踏んで行うべきだ。ですから、高速増殖炉は、やはり今の段階では基礎研究をもっときちんとやるべきだというふうに考えております。  それから、通常の軽水炉の発電に関して言いますと、これはお隣の海渡参考人もおっしゃいましたけれども、巨大事故と廃棄物処理処分の問題が技術的にまだ残念ながら解決していないというふうに考えますので、ここのところをちゃんと解決しないと、これはやっていいということの全面的なコンセンサスはなかなか難しいんじゃないかというふうに思います。やはりそこのところを今後とも研究開発努力していくべきだというふうに思っております。
  74. 佐藤敬夫

  75. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 民主党の佐々木ですけれども、私は安全規制という点に絞ってお尋ねをしたいと思います。  いずれにしても、原子力施設で事故が起きた場合に、少量だとはいいながら、この間の東海でも放射能が漏れたということに対する不安というのは非常に大きいわけですね。こういう事故があると、もう大変困る。それが災害になった場合には、ほかの目に見える災害と違って放射能災害というのは目に見えないわけですし、五体に感じないわけですから、これは本当にそういう意味での恐ろしさがある。  そこで、私ども民主党は、科学技術部会の中に原子力防災の小委員会をつくって、それで何とか防災対策を、国がもう少しきちんと基準をつくったりその対策を講じるような手だてをする、そのための法律が、特別法が必要でないかということで今研究をしているんですけれども、しかし、まずその事故を起こさないための安全規制、この体制がどうなんだろうかということだろうと思います。  それで、舘野参考人も、参考資料によりますと、そのためにある原子力委員会が、国民の安全を守る立場にあったが、むしろ原子力推進のための機関になったとして、原子力委員会の廃止を提唱し、これを行政委員会に改組するようにおっしゃっておられるということのようですね。  それからまた、海渡さんがかかわって日本弁護士連合会の方でつくられた資料でも、この事業の推進主体と別に、原子力施設の安全性を審査するものとしてあるのは原子力安全委員会だけれども、それが十分な機能を果たしていない、それが機能を果たしていないというのは一つには権限がないからだ、例えば立入調査、検査の権限も事故の場合にもないではないかというようなことを言っておられる。  確かに、ほかの国を見ますと、例えばアメリカの原子力規制委員会、NRCなどは、これは独立の機関で、しかもスタッフも三千人からいるということで、もう大変な権限を持っているようです。今行政改革かまびすしい中で、日本でこれだけのスタッフを持つような独立委員会をつくれというのはなかなか難しいとは思うのだけれども、しかし、現実的な方法としてどういうことが考えられ、どうすれば効果が上がるのか、これについて。  これは時間がないのでなかなか難しいと思いますが、鈴木先生も、権限と責任を明確にした新体制ということを強調されておられるのは、やはりこういうことをお含みになっておられるのかと思いますけれども、まず海渡さんにお伺いをして、もし時間があればお二人、なければ、また後の一般質疑の中でお願いしたいと思います。
  76. 海渡雄一

    ○海渡参考人 日弁連ではこの点についてはいろいろ検討を進めてきたのですが、美浜原発事故の安全上の問題点を検討した後の調査レポートでは、日本にNRCのような独立行政委員会を設けるような提言を出しております。  しかし、その後、我々は、ヨーロッパを中心にイギリス、ドイツ、スウェーデンなどに行ったのですが、そういう国ではむしろ、独立行政委員会ではなくて、環境省の中に原子力の安全関係の部局が全部統合されようとしているということがわかりました。イギリスの場合には、環境省ではなくて雇用省保健安全執行部というような、ちょっとよくわからないようなところに入っているのですけれども、とにかく原子力を推進する母体とは別の行政部局に規制の権限が移転されているということがわかってきました。  それで、先生方にも資料として配ったレポートの中では、環境庁の方に規制権限を移すべきだ、現実的にはこれは、科学技術庁と通産省の中にある原子力安全に関する部局を配置がえするということです。環境庁のもとに配置がえして、そうすれば相当な数のスタッフ、最初は同じメンバーでやるしかないのですけれども環境庁のもとでそういうものがスタートすれば徐々に独立性を持ってくるのではないか。そういう改組をしてはどうかということを提言していまして、これは非常に現実的ですし、今の行政改革の中でも十分できるのではないか。ドイツなどでは、環境省自身が連邦環境・自然保護原子炉安全省なんというふうに言うのですよ、省の名前自体が。そういうような方向に持っていくのがいいのではないかなということを提言しております。ぜひ、現実的な提言として御検討いただければうれしいです。
  77. 舘野淳

    ○舘野参考人 安全委員会に関しましては、前の原子力行政懇のときに申し入れもしたのですけれども、やはり責任と権限のある行政委員会にしなければだめだろうというふうに思います。行政委員会にして、強力なスタッフをつけていく。  それからもう一つ、問題は、原子力分野の推進派の学者ばかりを選んでなあなあでやっているということですので、そこが一番難しいところですけれども、やはり人選の仕方をどういうふうにするかということをぜひ考えていただく必要があるのではないかというふうに思っております。
  78. 鈴木篤之

    ○鈴木参考人 安全規制に関して二つの御指摘があったかと思います。一つは独立性の問題、もう一つは規制強化の問題。  私は、独立性については、これはできるだけさらに独立性の高いものに、できればするべきだと思います。  他方、規制を強化すべきかどうかという問題なんですが、これは私は、すべてのことが規制強化によって安全は担保されるんだ、確保できるんだという考え方はいかがなものかと思います。  私が申し上げたかったことは、例えばアメリカの技術基準は、NGOである学会が中心になってこれをつくっているというのはまさにそういうことでございまして、規制はもちろん大事なんですが、あわせて大事なことは、実際に物をつくり運転する事業者がそのことについて十分責任を持てるようにするということだと思いますね。つまり、規制がすべてだということになりますと、規制側にすべての責任が行って、いわば物をつくり運転する方は、その規制どおりやっていればあとは責任ないんだというふうなことも考えられるわけですね。これは、ほかの分野も考えますとそういうことはないわけでございまして、大事なことは、それぞれが責任を持ってこれを進めるということでないかと思います。
  79. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 吉井英勝君。
  80. 吉井英勝

    ○吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。  きょうは、三人の参考人の先生方、お忙しいところ、どうもありがとうございます。  私は、動燃問題、特殊法人問題について舘野参考人にお伺いし、それから、さっき舘野参考人のお話にありましたプルサーマルの技術上の問題点については、後ほど鈴木、海渡両参考人に伺いたいと思います。  それで、動燃事故がありまして、科学者とか技術者の集団は非常に閉鎖的であるとか、いろんな話がありました。しかし、私自身、かつてそういうところに身を置いておりましたから、どうもそれはおかしい話だなと率直に言って思っております。  この間も、参議院の文教の参考人のときに学者の方の発言がありましたけれども、例えば、かつての湯川さん、朝永さんが活躍された時代の京大の基礎物理研ですね、若手の人たちの非常に自由闊達な議論の中で素粒子論の新たな展開等があったわけですね。ですから、科学者や技術者の集団になれば閉鎖的、そういうばかなことはないわけで、どこに問題があるのかというところ、この点をひとつ伺いたい。  せんだって、エネルギーフォーラムの六月号で、電力業界、原発メーカー、そして有識者の方たちの座談会的に載っているものを読んでみますと、動燃問題で、一つは、科学技術庁の特殊法人への口出しが多過ぎることによる弊害というのが挙げられておりました。それから、労働組合としてのチェック機能が働いていない動燃の体制も挙げられておりました。ですから、かつて原研にいらっしゃった舘野さんの方から、科学技術庁と特殊法人の関係などを含めて、さっきも三ページ目の真ん中あたりのところで少しお触れいただいておりましたが、研究者の自由濶達な動きに対して実際上どんな口出しがあるのかという、電力業界の方が言っているような話、もう少し具体的にお聞きできればというのが一つです。  もう一つは、午前中ちょっと時間がなくなって聞けなかったのですが、プルサーマルについて、「ふげん」でMOXの実績は十分積んでいるという話がありました。しかし、昼休みに参考人の方と食事をとりながらお話ししたときには、「ふげん」というのはプルサーマルとタイプが全然違いますから、MOXの実績の話はそのまま当てはまらないわけで、むしろガンマ線とかプルトニウムの高次化の問題などで技術上問題があるということについては認めていらっしゃったわけです。  それらを含めて、鈴木参考人と海渡参考人の方からは、プルサーマルについての技術的問題点について、何か問題なしみたいな話をずっと言っていたものですから、問題は問題としてやはりあると思いますので、どういう点を問題として、ここのところを研究開発しなければいけないというふうにお考えなのか、それを伺っておきたいと思うのです。  以上二点です。
  81. 舘野淳

    ○舘野参考人 まず、研究者の集団に対して、特殊法人に対して科学技術庁がどういうふうに関係を持っていたかということで、一つの文書があります。これは、先ほども申しましたけれども科学技術庁の当時の原子力局長の村田さんという方から原研に向けて出された文書であります。  これは、「昭和四十二年度業務監査の結果について」ということで、ちょっと背景を申し上げますと、このころ原研に動力試験炉、JPDRというのがございまして、それの勤務態様ですね。原子炉ですから、夜ずっと通して直をやらなければいけないわけですけれども、五班三交代から四班三交代に移るという事態がありまして、これは労働組合は反対したわけですけれども、所の方が強硬にこれを入れようとした。それに対して労働組合はストを行ったのに対して、所はこの職場に無期限のロックアウトをかけてきたわけですね。これは、後で裁判を起こしまして、地裁、高裁、最高裁でいずれも労働組合が勝訴したという結果が起こっております。  そのときに、原研当局が証拠として裁判所に出した、つまり、原研だけがやったのではありませんよ、科学技術庁からの御指導がありましてこういうふうにしたのですよということで、文書が出ております。  それは、一つは「JPDRの五班三直制について」ということで、ちゃんとそれをやるべきである、いろいろ問題があって最初は五班三交代にしたと思われるが、現在これらの問題は既にほとんど解決されたと見られるので、直勤務体制の改善を図るべきであるというのが第一点。  それから第二点は、「研究成果の外部発表の許可について」ということで、ちゃんと管理をしていない、したがって、研究成果等の外部発表に関しては許可手続、許可基準その他所要の事項について明確な規定を制定し、所全体についてその実施を行うべきである、こういうふうに指導しているわけですね。  研究者にとりましては、自分の研究したことをどういうふうに発表するかということは非常に命ともいうべきものでありまして、これを一片の規制でもって、もちろん規則は全部なくせということを言っているわけではありませんけれども、こういうふうな官僚から指導されるというのは非常に心外だというふうに思っております。  それに対して、原研の回答の文書もありますけれども、ごもっともで、そのとおりやりますという回答文書があるわけです。これはもし必要でしたら、後で委員長にでも何でも差し上げますけれども。  そういうふうな格好で、内政干渉といいますか、運営に関する干渉が非常に強いわけですね。私が入所しましたとき、原研を何で特殊法人にしたかということで、その理由としましては、政府からも民間からも独立して研究開発が進められるからだというふうに教えられたわけですけれども、こういうふうに非常に強い官僚支配といいますか、コントロールがついている。  それからもう一つは、特殊法人というのは一%程度の出資金を民間から集めなければいけないわけですけれども、そのときにやはり民間から運営に関していろいろクレームがつく。おまえのところの研究者はこんなことを言っているのはけしからぬじゃないかというふうなことですね。そういう意味では、民間からも官僚からもコントロールされるという非常に悪い結果が出てきたというふうに思っております。  こういう官僚支配の弊害としましては、要するに、一番基本的に言いますと、研究者の論理と官僚の論理というのは違うのですね。そのどっちがいいとは言いませんけれども、研究者はやはり研究を進めるために一番いいやり方でやっている。ところが、官僚の人たちがそれを見ると、どうもそうじゃないというふうに考えておられるようで、例えば、たくさんお金を使うとこんな厚い報告書を書かなければいけない。これは研究者にとっては何の意味もないことなわけですね。こういうことで研究者の才能をすり減らしてしまう。  もちろん、大事な国民の税金を使っているわけですから、ある程度のオブリゲーションはあるにしても、すべての運営に関して官僚の論理が貫徹してしまいますと、結局動燃みたいな体質になってしまう。こういうふうに思っておりますので、動燃を再編成する場合も、ぜひともこの官僚の論理と研究者の論理という点には、そういうことを繰り返さないようにお願いしたいというふうに思っております。
  82. 鈴木篤之

    ○鈴木参考人 プルサーマルについて、何か技術的にさらに研究開発をするようなところがあるのではないかというお尋ねだったかと思います。  私の理解しているところでは、プルサーマルは、アメリカでいいますと六〇年代後半、既にこれをやった経験がございます。それで、ドイツもそのころから進めてきております。現在でもプルサーマルを行っております。フランスは、ここ十年近く非常に積極的にこれを進めております。  そういう事実に照らして、プルサーマルが非常に、例えば安全上本質的な問題があるのではないかというお尋ねであれば、私はそうは思いません。ただ、もちろん専門的には、ウラン燃料プルトニウム燃料では若干違いますので、これは十分その差を検討し、確かめておく必要がございます。この点は、諸外国でもやっておりますし、日本でもそういうことを既に行っているわけでございます。したがって、プルサーマルに関する限りは技術的な意味では大きな課題というものはない、こういうふうに理解しております。
  83. 吉井英勝

    ○吉井委員 今の原子炉の段階とその後の再処理工程を含めての技術的問題なんですけれども
  84. 鈴木篤之

    ○鈴木参考人 MOXといいますか、プルトニウムを一部ウランにまぜまして、これをプルサーマルと称して一遍軽水炉で燃やして、それを取り出した後の再処理はどうなのかという御質問かと思います。  その点につきましては、これも既に経験は少しございますが、むしろ経済的に、ウラン燃料を一度使ったもの、この使用済み燃料と、MOXの形でプルサーマルで利用したものを使用済み燃料にして、それを再処理する、そういう二つのケースを考えますと、恐らくウラン燃料が使用済み燃料になったものを再処理した方が合理的なんですね。恐らく吉井理事のお尋ねの中にもそのことが含まれているかと思います。  したがいまして、将来的にそういうことが経済的な意味でも成り立つような方向で原子力利用を進めていくということが妥当な考え方ではないか。それについて研究開発を、より経済的になるような再処理の方法について、あるいは環境調和型と言えるようなものにしていくというような技術開発を長期的な観点から進めていくことが大事ではないか、こういうふうに思います。
  85. 海渡雄一

    ○海渡参考人 プルサーマルの技術的な問題点についての御質問だったと思うんですが、問題点は三つに分けられると思うんです。  まず、日常に炉心で燃やすときの問題点ですけれども、これについては、一つは制御棒がききにくくなるという問題点が指摘されています。したがって、何か異常事態が起こったときに、緊急停止をするのにウラン燃料に比べて時間がかかるという問題点。これは、重大な事故が起こる可能性という意味では少しふえるという部分が避けられないと思います。  それと、炉心の特性が少し不安定になる。何か異常が起きたときの炉心の揺れの幅というんでしょうか、動特性というふうに言ってもいいんですが、そういうものに危険な傾向が見られる。もちろん、それが絶対に技術的に克服困難な問題かどうかという点については、ここで申し上げる問題じゃないと思いますけれども、少なくとも軽水炉と比べて難しい問題が含まれているということは言えると思います。  それと、仮に事故が起きた場合に、環境中に漏れ出す放射性物質の中に当然プルトニウム量がふえるということになります。これは非常に環境にとっては危険な問題になりますので、何か重大な事故が起きて、物理的には同じ量の放射性物質が漏れても、MOX燃料を燃やしているときに事故が起こったら、基本的に高速増殖炉が事故を起こしたのと同じように大変危険な事態が発生し得るという点をまず強調しておきたいと思います。  三点目に、再処理をする段階で問題点がないかということですけれども、これは鈴木先生もお認めになりましたが、余り技術的な経験が正直言ってないと思うんですね。そして、いろいろな技術的レポートなどを僕は読んだだけですけれども、MOX燃料の場合には非常に溶解させることが難しい、溶解残渣が残りやすいという問題点が指摘されています。通常の再処理の場合でも、燃焼度を上げていくと溶解しにくくて、残ってしまったものがいろいろ目詰まりを起こしたりというようなことは再処理の工程でトラブルとして起こるんですが、そういうことが起こりやすいということが指摘されていると思います。  それから、もう一点だけ。私は、MOXの技術的な問題点もさることながら、MOXについては経済性の問題の方がより重要だと思っております。それについては質問じゃないので、お答えを差し控えますけれども、もし質問があればお答えしたいと思います。
  86. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 次に、堀込征雄君。
  87. 堀込征雄

    堀込委員 太陽党の堀込です。  三人の先生方、どうもありがとうございます。  とりあえず、時間が限られておりますから、海渡先生に三点ほど簡潔にお伺いをしたいと思います。  一つは、プルトニウムをめぐる国際情勢、特に、それを大量に抱え込むことに対する世界からのいろいろな批判の問題を抱えることになるだろうというふうに思うわけでありまして、特にアジアの情勢を見ますと、既に韓国、台湾あるいは中国、この辺が原子力発電に踏み切り、続々と各国が続こうとしておるという状況があるわけでありまして、特にアジアにおける核の不拡散体制といいますか、そういう核の不拡散システムをつくっていく、そのために日本が大きな役割を果たしていかなければならない。そのためには、やはり日本がある意味ではトップランナーとして、プルサーマルを初め模範的な道筋を示していくということが大事だと思いますが、見解をまず一つは伺いたい。  それから第二点目に、世界的、日本的なエネルギーのセキュリティーの問題でありますが、これは先生でも結構ですし、あるいは日弁連としての考え方でも結構ですけれども、短期的経済性の話ではなくして、長期的なセキュリティーの問題を何を中心にどういうふうにお考えになっていらっしゃるかということをお聞かせいただきたい。  三点目に、御存じのように、十二月に京都でCO2をめぐる第三回の条約国会議が開かれまして、議長国日本がどうも基準を達成できないんじゃないかというようなおそれすら実は出ていまして、非常に大きな問題に近未来なるであろう。こういうことの中で待ったなしの状況にあるわけでありますが、そういうことと今の原子力あるいは燃料問題全体についてどうお考えになられますか。  以上、三つお尋ねを申し上げます。
  88. 海渡雄一

    ○海渡参考人 大変厳しい御質問で、名誉なことだと思います。  まず、プルトニウムをめぐる状況で、アジアの国々が原子力に一方的に流れているかどうかという点ですけれども、確かに原子力発電所をつくる国々がふえているのも事実ですけれども、それぞれの国でやはり見直すべきだという意見も強まっているわけで、台湾の国会などでは、原子力発電所を禁止するという決議が一たん上がって、またそれが取り消されるとか、そういういろいろな問題が起こってきているわけです。  プルサーマルについても、確かに、プルトニウムの需給のバランスが崩れて余剰のプルトニウムがたくさん出ているという現状は好ましいことではありませんから、それをなくしたいという気持ちは大変よくわかるんです。しかし、余ってしまったからそれをプルサーマルで燃やそうというのは、やはり御都合主義だなという感じがして、むしろ、プルトニウムを分離するということ自体に経済的な意味があるんだろうか、プラスの経済的な価値を生み出しているんだろうかということをきちっと検討していただきたいなというふうに思うわけです。  私が、イギリスのサセックス大学の再処理のコスト分析をされている専門家のフランス・バークハウトさんという方から聞いたところによりますと、MOX燃料は再処理のコストまで加えるとウラン燃料の六倍の値段になるという算定結果を出されていました。そして、ドイツのエコ研究所のミヒャエル・ザイラーさんという方は、ドイツの電力会社からMOXの経済分析を委託されて、委託研究した経験を踏まえて、具体的に何倍というのは、これは守秘義務があるから言えないんだけれども、イギリスの六倍よりはうんと高い、はるかに高いというふうに言われていました。  こういう、現実にMOX燃料がどれくらいの価格でできるのかということ自身が余りはっきりした形で公表されてないということ自身も異常だと思いますし、やはり今問われていることは、莫大な経費を投じて再処理をすること自身が経済的合理性があるだろうかという問題じゃないかなというふうに思っております。  第二番目の質問ですが、長期的セキュリティーの問題、これは確かに重要だと思います。しかし、今の世界のエネルギー政策を見たときには、やはり価格の問題と環境の問題というのを一番重視するというのが世界の流れだと思うんですね。セキュリティーは三番目の項目になるんじゃないか。  セキュリティーを無視するというわけじゃありませんが、私は、規制緩和を進めて、たくさんの民間の、例えば民間の鉄工所などがたくさんエネルギーを持っているわけで、そういうものから電気が出せるとか、たくさんのタービンを回しているところがあるわけですが、そういうところからコージェネレーションでエネルギーが一般の電線に供給できる、そういう非常に柔軟な、規制緩和によってもたらされるような、民間の企業がエネルギー事業にどんどん算入していけるようにするということが、ひいては長期的な意味で非常にセキュリティーをもたらすんじゃないかな。  もちろん、再生可能エネルギーで、風力発電であるとか太陽光をやれば、これはもう基本的になくなることはないわけで、自前のエネルギーになるわけですね。そういったいろいろな選択肢をふやしていく中でエネルギーのセキュリティーというのは図られるわけで、私自身も、原子力発電所、今やっているものをすぐとめろというふうに言っているわけではなくて、それ自身は安全に使っていただきたいというふうに思いますけれども、これをふやしていくということが果たしてエネルギーセキュリティーを図る道かなという点で疑問があるということです。  それから、COP3のことについてお尋ねがあったわけですけれども、確かに、日本がCOP3に当たって基準達成できないということでは、大変議長国として恥ずかしいことになるというのは私も全く同じ意見で、実は日弁連でもこのCOP3の対策の実行委員会というのをつくっておりまして、今そのレポートを順次まとめているところなんですけれども、やはり政治の場にある皆さんがどうやってエネルギーを削減し、そしてCO2を削減するのかという、経済成長とバランスをとりながらエネルギーの消費量を減らすということは十分可能だと思うんですね。  例えば、真夏の非常に暑い時期の電力料金をどんと上げてみるとか、ピークの時期の電力料金を上げてみるとか、CO2税制度を導入して、しかし前年度比何%エネルギーの削減に成功したところにはCO2税をこれだけパックしますよ、これはデンマークなどでやっているのですけれども、そういう制度をつくれば、企業は必死になってエネルギーの削減に取り組むと思うのですね。  そういうように、国民の意識を変えようということで単に呼びかけるだけではなくて、エネルギーの削減に成功すれば何か経済的に有利なことが起こるというような状況をつくれば、日本人は計算高いですから、十分CO2の削減という目標も達成していけるのではないか。今、非常にそういう政策が不十分だと思います。
  89. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 以上で各党を代表する委員質疑は終了いたしました。  この際、参考人に対する自由質疑の議事整理について申し上げます。  質疑につきましては、午前と同様、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。発言の際は、着席のまま、所属会派及び氏名を述べた上、お答えいただく参考人を御指名いただくようお願いいたします。  また、一回の発言時間は三分以内に御協力をお願いいたします。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  90. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党・市民連合の辻元清美と申します。  私は、海渡参考人に二つ、そしてそれぞれの方に一つずつ御質問させていただきたいと思います。  今の電力市場の自由化ということに私も関心がありまして、先ほどの御説明の中で、カリフォルニア州でこれが活発に行われているということを聞きましたので、ちょっと具体的な内容とその議論に至る過程、そしてその中で原子力及び再生可能エネルギーの扱いはどのようになったのか、まずお聞きしたいと思います。  それともう一つ参考人は、海外の例を随分御視察もなさっているようなんですけれども、実際に高速増殖炉と再処理をやめた国、ドイツなどがあると思うのですけれども、そういう国ではやめた後、使用済み燃料をどのように取り扱う計画がなされているのかということを質問したいと思います。  それから、三名の方に、原子力政策を語る折に情報公開というのが非常に大事だというのは、これはもうすべての人の認識であるかと思うのですが、現在の動燃の一連の事故を見ましても、ちょっとその面が不備かなという印象を受けております。そういう意味で、三名の方、今の情報公開のあり方をどのようにお考えか、どういう点が問題点かということを指摘していただければと思います。  以上です。
  91. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 それでは、海渡参考人は少し連続しておりますので、二番目の質問に鈴木参考人、舘野参考人にお答えいただき、海渡参考人には最後に二つの問題についてお答えいただきます。
  92. 鈴木篤之

    ○鈴木参考人 情報公開について、何か問題がありやなしやということをお尋ねだろうと思いますが、情報公開というのは、特に原子力の安全性に関する限りでは、できるだけそれを進めるということが大事かと思います。  その点については今後ともそういう方針を貫くべきだと思うのですが、情報公開ということについては、例えばよく知的所有権の問題なんというのを別の角度から議論されるわけでございますが、そういうこともあわせて考えざるを得ないわけでございます。したがいまして、これは私、意見陳述の中で申し述べさせていただきましたが、やはり裁量と責任というものがある意味では明確にならないと、本当の意味での情報公開の原則というのは決められない部分もあろうかと思います。  ただ、この原子力の安全性に関する限りは、これはできるだけ多くの方々に安心していただくことが大事なのであって、事業者はできるだけその情報を公開する、あるいは規制当局もこれを公開するということが大事である。私、その状況は最近は随分よくなっている、こういうふうに理解をしております。
  93. 舘野淳

    ○舘野参考人 情報公開に関しましては、もともと原子力では、自主、民主、公開、あるいは公開、自主、民主というふうな言い方もしますけれども、三原則というのがございまして、そういう意味では、まさにその一番先鞭をつけている分野なはずなわけです。その三原則がどうして出てきたかといいますと、原子力研究を始めるときに日本学術会議の中で随分議論がありまして、原爆の製造にもつながるような原子力開発をするべきかしないべきかというふうなことを議論をされまして、その中で三原則が出てきたわけです。  それで、特に公開に関しましては、「原子力の研究と利用に関する一切の情報が完全に公開され、国民に周知されることを要求する。この公開の原則は、そもそも科学技術の研究が自由に健全な発達を遂げるために欠くことのできないものである。」研究が発展する上でもそれは基本だというふうなことを言っているわけですね。  ところが、基本法の方では「成果を公開し」というふうなことになっておりまして、それはそれで構わないのですけれども、一部の人たちは、成果だけを公開すればいいんだ、途中のプロセスは公開する必要がないなどという論理を使いまして、この公開を妨げるような発言をしたこともあります。だれかということは言いませんけれども。  そういうことからいいまして、もっと徹底的に情報公開というのは進められるべきであるということが第一です。もちろん、特許の問題とかなんとか、そういうのは認めないというわけではありません。  もう一つ大きな問題は、核物質防護というのがございまして、これは核兵器がテロリストに奪取されないように、これを隠しておかなければいけないという要因があるわけですね。特にアメリカあたりからのプレッシャーでこれが日本原子力開発の中へ持ち込まれまして、その結果、原子力施設が囲い込みを行われるような格好になりました。これに対して、私たち原研の労働組合などが随分反対もしましたけれども、これも無原則、無定見に、核物質防護だからこの情報を公開しないんだというふうなことを、開示制限というふうに言っていますけれども、そういうことを続けますと、結局その公開がなしましになってしまうということがあると思います。そこら辺のところもよく検討する必要があるのじゃないかというふうに思っております。
  94. 海渡雄一

    ○海渡参考人 まず、カリフォルニアの電力市場の関係ですが、せっかくですから私のお配りしたレジュメの四ページをごらんいただきますと、電気事業の再編の最終案というものを載せておきました。  わかりにくいかもしれませんが、G1、G2とか書いてあるのは電力会社で、これは既存の電力会社と新しく電気事業に参入してきた企業を全部含むわけです。これをパワーエクスチェンジという、ここが自由市場になるわけですけれども、売り買いがされる。それを地域の配電会社が、C1とかなっているのはコンシューマー、需要家ですけれども、そこに売っていくわけです。そこの仲介をしているのが独立システム管理者、インディペンデント・システム・オペレーターと言うのですけれども電気が停電してしまわないように全体の管理をしている人というものを、公的なものとしてつくるわけです。  もう一つ電力取引所の右側にあるのが直接アクセス、ダイレクトアクセスというふうに言いますけれども電力会社から直接契約をして、安い電気を買うというようなこともできるようになる。市場から買うか、直接契約で買うかという選択肢ができてくるわけです。アグリデータと書いてあるのは、要するに電力ブローカーみたいな人が安い電気がないか探して、それを買ってきてくれるというようなことになるということです。  こういう市場の自由化によって何が起こったかというと、原子力のコストが非常に高いんだということが常識的になってしまいました。これはカリフォルニア州のエネルギー委員会の人がもうはっきり言っていたわけですけれども、市場自由化から五年間は、先ほども申し上げましたようなCTC、競争移行費用というのを支払いますけれども、五年後はそれが打ち切られるわけですね。それが打ち切られたときに、赤字を覚悟で原子力発電所が運転を続けられるかどうかということが今非常に大きな問題になっているというふうに言えると思います。  再生可能エネルギーについては、コスト的に言えば、今のところは原子力とほぼ同じだと思います。天然ガスなどに比べればやはり高いわけです。アメリカには現状炭素税、CO2税の制度がないわけですね。しかし、市場の自由化後も発電会社は、一〇%程度は再生可能エネルギーをまぜて電気を売りなさい、必ず再生可能エネルギー電気にまぜて売るということを義務づけられることになっています。したがって、現に建てられている再生可能エネルギー、風力タービンとか、そういうものについては維持されていくことは明確なんですけれども、ただ、CO2税などが導入されなければ、天然ガスのコストが安定している段階では、新しい再生可能エネルギーの施設をカリフォルニアでつくっていくということは非常に困難だろう。今もう相当な割合でカリフォルニアにはできていますけれども、それを維持していくのが精いっぱいという状態じゃないかと思います。  それから、ドイツで廃棄物をどういうふうに扱うかということ、これも御説明すると長い話になるのですが、従来、ドイツでは使用済みの燃料は再処理することが原子力法で義務づけられておりました。しかし、この原子力法が一九九四年に改正されまして、直接処分、これはアメリカやスウェーデンなどでも既に実施されている方式ですけれども、再処理をしないで使用済み燃料を処分するという方式がオプションとして可能になったわけです。現実には、この法律改正より前に、ゴアレーベンというところに放射性廃棄物の直接処分のためのコンディショニング・パイロット・プラントというものが建設されておりまして、これは九五年からもう運転を開始しています。  今、最大の問題となっているのは、フランスのコジェマとイギリスのBNFLとの再処理委託契約をどうするかという問題です。これも、日本が再処理をやめるとしたときに最大の問題になることだと思いますけれども電力会社は今コスト計算をやっていると思います。違約金を払って破棄するのがいいのか、それとも再処理をやってしまうのがいいかということをコスト計算していると思います。余り情報が公開されていませんけれども、我々がドイツに行って聞いた話では、クリュンメル原発というところについては再処理委託契約を破棄したということが報道されていました。それ以外の点について、ちょっとまだどうなっているかはよくわからない。  基本的には、ドイツは、再処理をやめた後、使用済み燃料は直接に処分する。もちろん、直接処分するといっても、使用済み燃料を解体してがしゃっとまとめて、かさは減らして、それをキャスクに入れてしまうというやり方なんですけれども、そういうやり方の方向に向かって進んでいるというふうに言えるのではないかと思います。
  95. 井上義久

    ○井上(義)委員 新進党の井上義久でございます。  私から舘野参考人にお伺いいたしますけれども、先ほど、「もんじゅ」の事故、一九九七年三月十一日の東海処理工場での火災事故の件なんですけれども技術的に見ても極めて重大かつ深刻な事故である、こういう指摘をされているわけです。これまでの議論、どちらかといいますと、動燃の体質の問題でありますとかいわゆる安全審査にかかわるような開発体制でありますとか、そういう点で論じられてきたわけですけれども、どういう意味で技術的に見て極めて重大かつ深刻な事故であったのかというのが一点。  それから、プルトニウムリサイクルについて再検討すべきだ、こういう御主張をされまして、結論的に言えば、今のプルトニウムリサイクルは中止をすべきである、このように指摘をされておるわけでございますけれども、先生の基本的なお考えは、いわゆるワンススルーでいくのか、結論的にはそういうことなのか、それとも将来の課題としてはこのプルトニウムリサイクル技術的な困難があるので、もう一回基礎技術をしっかりやつた上で再開するなりという意味なのかということをお伺いしておきたいと思います。よろしくお願いします。
  96. 舘野淳

    ○舘野参考人 動燃の事故がどうして極めて重大かという御質問ですけれども、まず再処理工場の事故からいいますと、三点ほどありまして、一つは、爆発事故が起こりまして、レッドゾーンと言っていますけれども放射能閉じ込めの隔壁が破れまして、最も危険な区域が外部と直通状態になった、これはあってはならない事故なわけですね。特に爆発といいますのは、火災と違いまして瞬間的に起こりますから、手の打ちようがない。だから、こういう爆発事故というのは原子力施設では本当にあってはいけないと思うのです。  そういうことが日本で、初めてとは言いません、随分古い話ですけれども、例えば原研でも、これは放射能が関与しているというわけではありませんけれども、再処理研究開発の中で有機物と酸とがまざった液が爆発したというふうなことがあります。それは幸い、それほど大きなことになりませんでした。そういうことが起こっているということが第一点ですね。  それから第二点は、三十七人という非常に大量の内部被爆者を出したということですね。これは、内部被爆者は本当はもっとちゃんと調査すべきだと思うのです。私、いわゆる環境放射能の専門家ではありませんので余り詳しいことは言えませんけれども、もっと内部被爆者の状況というのをきちんと測定すべきだったというふうに思っております。それが第二点。  それから第三点は、プルトニウムなどの長寿命の核種が、幸いにして量は少なかったわけですけれども環境に放出したということで、これは日本の今までの事故の中では、やはり最大、最悪の事故だというふうに私は思っております。  それから、もう一つの「もんじゅ」の事故ですけれども、これは、かねてからナトリウム技術というのは非常に困難だということを言われておりまして、私たちもいろいろシンポジウムの中などで指摘したわけですけれども、言われていたことがまさに起こってしまった。確かに破損した部分はほんのちょっと、わずかなところですけれども、それで非常に大きな火災にまで至ったということで、私は、これはやはり最悪の事故だった、最悪といいますか、非常に大きな、技術的に深刻な事故だったというふうに言っていいのじゃないかと考えております。  それから、プルトニウムリサイクルに関してどうするか、ワンススルーにするのかというお話ですけれども、ワンススルーといいますと、どちらかといいますと、使い捨てにしてしまう、そのまま使用済み燃料をどこか、できれば非常に地層的に安定なところに埋めてしまうことも含めて、使い捨てという概念が強いのですけれども、私が考えておりますのは、長期保管をまずやる。長期保管しますと、短寿命の放射能が随分減衰しまして大分扱いやすくなってきますし、そういう中で再処理技術に関してはさらに開発を進めていく。  今、ピューレックス法という溶媒抽出法が再処理のメインになっていますけれども、これは、その溶媒抽出法に関して非常に大量のお金を使って開発したからそれがメインになっているわけで、それだけじゃなくて、まだほかの技術もいろいろあるわけですね。だから、そういうことも含めて、もう少し長期的に使用済み燃料をどうするかということを考えていった方がいいのじゃないかというふうに考えております。
  97. 井上義久

    ○井上(義)委員 プルトニウムリサイクルそのものについては、将来的にはどのように考えていらっしゃいますか。
  98. 舘野淳

    ○舘野参考人 私は高速増殖炉可能性を否定しているわけではありません。ですから、高速増殖炉が可能になりましたら積極的に使っていっていいのじゃないかと思います。これは、やはり技術発展を希望を持って見守っていくということが必要なのじゃないかというふうに考えています。  ただ、今の、サーマルでやるのは本当に愚劣なやり方だろうというふうに私は考えております。
  99. 石崎岳

    ○石崎委員 自民党の石崎です。  二点お聞きします。  先ほどからプルサーマルの安全性について先生方の間では意見が違うようなので、素人から見ると、どっちなんだということでよくわかりませんけれども、先ほどどなたかの質問に対するお答えの中で、鈴木先生が先にお答えになり、その後海渡先生がお答えになりましたが、海渡先生がお触れになった高次化とか制御の問題について、鈴木先生はそれに対してどう反論なり補足をなさるのかというのをまずお聞きしたい。  もう一点は、海渡先生は代替エネルギーについては天然ガスということを、ここに書いてありますけれどもエネルギー全体をダウンサイジングするなら別にしても、代替エネルギーとして、発電の場合には随分エネルギーロスが大きいというふうに言われておりますが、その点について海渡先生と鈴木先生にお聞きします。
  100. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 それでは、ひとつ参考人同士のお話をお伺いさせてもらいます。
  101. 鈴木篤之

    ○鈴木参考人 最初に、プルサーマルの安全性について、先ほど少し御指摘のあった点についてどう思うかというお尋ねだったかと思うのですが、プルトニウムの高次化という点について申し上げますと、プルトニウム利用しますと、プルトニウムのアイソトープの構成比が変わってきて、より放射線がたくさん出るようなプルトニウムになるというのは事実でございます。したがって、そういうことをよくわきまえた上でこの利用のやり方を考えなければいけない。しかし、それはそういうやり方があるのであって、例えばハンドリングについては、できるだけリモートでハンドリングするようにするとか、そういう技術が既に使われているわけでございます。したがって、そのことが安全上何か困難を来しているということではないというのが、その点でございます。  それから、原子炉をとめるのに制御棒のききが悪くなるというのも、これはそのとおりでございます。したがって、そのことを十分考慮して、プルトニウム利用の割合であるとか利用の仕方を技術的に決めなければいけない。それを実際決めているわけでございます。  これは、余り例え話はよくないかもしれませんが、原子炉をとめる場合のききということだけに、ある種のアナロジーで申し上げますと、例えば自動車でいいますと、ドイツの自動車と日本車を比べますと、一般的にはドイツの自動車の方がブレーキのききがいいと思います。これは恐らく、ドイツの方が通常高速で運転することを認めているからだと思うのです。したがって、非常にききのいい車をつくっております。そのかわり、摩耗が早くて、多分早く交換しなければいけない、そういうことになってきます。  したがって、ブレーキのききがいいか悪いかということだけで技術の優劣を決めるものではございませんで、つまり大事なことは、そういうことを十分わきまえた上でその使い方を決め、使っていくということでありまして、このことは、先ほど申し上げましたように、各国でも既に相当の期間の経験を踏んでいるということでございます。
  102. 海渡雄一

    ○海渡参考人 天然ガスは当然化石エネルギーですから有限なものではないか、そして天然ガス電気に転換していく技術にロスが大きいのではないかという御指摘ではなかったかと思うのですけれども、まず一つ天然ガスについてはどの点が有利かというと、埋蔵量が相当豊富にあるということ、それと環境的に見たときに、CO2の排出量もそうですし、その他の環境に有害な物質の排出量も非常に低い、ないわけではありません、相対的に低いということが挙げられます。  それと、そういう非常に純度の高いものですから、いわゆるコージェネレーションですね、ジェットタービンを使ってやるコージェネレーションに適していると思うのです。現在アメリカで導入されてきている新規のエネルギーのほとんどが天然ガスのコージェネレーションだと思います。その天然ガスのコージェネレーションでやれば、これもいろいろな試算がありますけれどもエネルギー効率原子力の場合は三割とか言われていますけれども、熱と電気両方供給できるわけで、両方合わせればエネルギー利用効率は七割から八割、一番進んだものでは八割に達するというふうに言われています。そういうことを考えると、やはり天然ガスというのは代替エネルギーとしては非常に有望なものではないかなと思います。  ただし、CO2対策とか資源の有限性という問題がありますから、同時に再生可能エネルギー、風力については私はもう経済的に確立していると思っていますけれども、こういうものを大量に導入していくことも必要ではないか。太陽光は、現状では到底まだ他のエネルギーと価格的に勝負できるような状況にありませんけれども、しかし量産化すれば、もしかしたらここ数年のうちに非常に価格が下がるかもしれません。大量に導入して価格低減効果をつくるためには、国が相当な資金を投じて初期効果をねらってみるというのは外国でもどこでもやっていることなんですけれども、そういうことをやってみる必要があるのではないかなというふうに思っているということです。  以上です。
  103. 近藤昭一

    ○近藤委員 民主党の近藤昭一でございます。  参考人の皆さん、貴重な御意見ありがとうございます。  私も、プルサーマルについてもう少しお聞きしたいのでありますが、高次化という問題、聞くところによりますと、高次化も、前にどういう炉で燃やしたかによって非常に性格が違う、まさしくだだっ子のように、前に燃やしたところによって非常に性格が違うというふうに聞いているのですが、そのことについて三人の参考人の方にお聞きしたい。  もう一点は、科学技術庁は二〇三〇年ぐらいに高速増殖炉技術ができるだろうという予想をしておるわけですが、なかなかこれは難しいのではないかなと思うわけです。これはいろいろな要素があると思うのですけれども。ただ、もし仮定として二〇三〇年ぐらいにそういう技術が確立する、しかしながら、現在のように軽水炉の発電所、原発の立地でも非常に住民運動が起きて難しい状況で、二〇三〇年の時点でそういった高速増殖炉の発電所をつくることが可能というか、どんな状況になっているか、想像で結構なんですけれども、お話をいただければと思います。
  104. 鈴木篤之

    ○鈴木参考人 お尋ねの点は、プルトニウムの高次化ということは何か性格の違いもあるのだというお尋ね、ちょっと私、御質問の内容を十分把握し切れておりませんが、こういう御質問であれば、それに対してお答えしたいと思います。つまり、原子炉にはいろいろなタイプがある。そういういろいろなタイプの原子炉で使った結果出てくるプルトニウムについては、いろいろなタイプのプルトニウムがあって単に高次化というような言い方では済まされないのではないかという御質問であれば、お答えしたいと思うのです。  これは、プルトニウムはいろいろなアイソトープの組み合わせになることは、原子炉によってもちろん違いますし、考えられるわけでございます。そのことが何か非常に技術的に難しいことを惹起するかというと、繰り返しになりますが、そういうことは私はないと思います。  ただ、エネルギーとしてプルトニウムをいずれ使っていくという立場に立つならば、これはやはり高速炉のようなものを使うのが適切なのであって、いわゆるプルサーマルというようなものについては、そんなに何回も使うということは、技術的には余り賢いやり方ではないという気がいたします。  しかし、資源を有効に使っていくということは、技術開発技術を少しずつ学び、改良し、より理想的なものに近づけていくという意味では、これは一足飛びに高速炉を目指すというよりは、やはり現在利用している軽水炉プルトニウムをMOXの形にして利用するという技術なりシステムなりインフラストラクチャーなり、そういうものを社会的にも十分経験しながら進めていくことが重要なのでありまして、日本は比較的そういう面においてはアメリカの経験を学び、導入するということをもって実用化をしてきたわけですが、やはりこの点については、これからは我が国みずからがある程度そういうことを進めていくという考え方も重要ではないかというふうに思います。  それで、もう一つは、FBRの実用化が二〇三〇年ごろだとして、そのころはどういうことになっているのかというお尋ねだったかと思います。  これは、先ほどの斉藤先生からの御質問にも関連いたしますが、将来原子力発電を進めていきますと、これは最低限ウランという資源を使います。このウランという資源は、現在は潤沢でございまして、ウランの価格が急に高くなるということは予想されておりません。  しかし、だからといって、この資源は、今のやり方ですと、ウランを掘ってきてそのうちわずか〇・五%しか使っていないわけですが、そういう非常にむだといいますか乱暴な使い方というのは、長期的に見ると、私は好ましいことではないのではないか。資源はできるだけ大切に使うというのは、これは何も道徳的な意味で申し上げているのではなくて、世界全体、地球環境を本当に守っていこうとするならば、考え方としてそういう考え方が重要なんだと思うのですね。  したがって、短期的な経済性だけで論じるのではなくて、そのことも大事なんですが、同時に長期的な意味でどういう方向を志向すべきかということも大事なのであって、これは欧米のように短期的な経済性が優先される国々ではなかなか難しいと思うのですけれども日本のような国では、できる範囲でそういうことをあわせて進めていくということが非常に重要ではないか。そう考えますと、二〇三〇年というのは今から三十年後になりますが、三十年後かどうかはともかくとして、いずれそういう時代がやはり来ると思っておくべきではないか、こういうふうに思います。
  105. 舘野淳

    ○舘野参考人 燃やした炉によってプルトニウムの組成がどうなるかというお話ですけれども、これは余り例がありませんので、いろいろ推定した計算はあります。例えば、中性子エネルギーの分布がどうなっていればどのくらいのものがたくさんできるとか、そういうものはあります。お手元に私が出しました資料として一つの表が載っていますけれども、それは一つの例でありまして、それがどの程度正しいかというのは、やはりやってみなければわからないところは随分あるのじゃないかというふうに思います。  それで、やはり問題は、さっきからも出ていますダーティーになるということと、それから長寿命のプルトニウムを超えたいろいろな廃棄物ができる、これが非常に大きな問題だ。それから、一、二回は使ったとしても、燃えないプルトニウムがどんどん出てきますから、本当に最後まで何回回すのですかと言われたら、私は、今推進しようとしている方も、とことん回すというふうにおっしゃることはないのじゃないかというふうに思っております。  今、プルサーマルをやろうというのは、プルトニウムを本当に資源的に有効に利用しようというよりも、そういうことで何とか再処理を軌道に乗せたい、そうしないと発電所の中で使用済み燃料がたまってしまって困るというふうな要素が非常に大きいのじゃないか、そこのところをやはりきちんと見ておく必要があるのじゃないかというふうに思います。
  106. 海渡雄一

    ○海渡参考人 まず、プルサーマルについてですけれども、当然、原子炉でどのくらいの期間、炉のどの位置にあって燃やしたものかによって、できてくるプルトニウムの同位体構成というのが変わってくるわけですね。そういう意味では、もちろんMOX燃料をつくる際にプルトニウムウランとの調合の割合というのはコントロールできると思いますけれどもプルトニウムの同位体構成という部分についてはなかなかコントロールが難しいので、MOX燃料ごとに性質が違ってくるということは十分あり得ると思います。  それで、先ほども言いましたけれども軽水炉であっても暴走事故の危険性ということは全くないとは考えられていない。例えば、沸騰水型の軽水炉では、炉の中が泡で詰まっているわけですけれども、その泡が、緊急炉心冷却系などから冷たい水が入ってきて一気に気泡がつぶれたとか、その場合には当然、負のボイド効果というのが軽水炉にはあるわけです。高速増殖炉の場合は逆で、正のボイド効果があるわけですけれども、ボイド反応度があるわけですが、そういう場合には軽水炉であっても暴走事故というものが起こり得るというふうに言われているわけですね。  そういうケースの場合に、先ほど言ったように、プルサーマルについては制御棒のききが悪くなるということは鈴木先生の方もお認めいただきましたけれども、即座に原子炉を緊急停止しなければいけないわけですね。その場合に間に合わなくなる可能性というのがふえるという点では、軽水炉で暴走事故が起きるかどうかということ自身が一つの大きな技術的な争点なわけですけれども、よりその危険性が増すという意味では、MOX燃料の危険性という点は否定できないんじゃないかというふうに思います。  それと、FBRの実現が二〇三〇年という話で、そのころどうなっているかというお話があったのですが、日本のFBR計画というのが立てられたのは一九五六年なんですね。アメリカでは一九四六年にFBRの計画が立てられているわけです。二〇三〇年といえば、それからもう八十年たつ。そんなに時間がかかって開発した技術というのはいまだないと思うのですね。何世代にもわたらなければできてこないというような技術で、現実にそういうものが確立するというふうには思えません。  実は、昨年私はカリフォルニアに行ったのが二月だったのですけれども、その前年の十二月に「もんじゅ」の事故が起こっておりました。当然、行った先で「もんじゅ」の事故について向こうの原子力の専門家の人たちの意見も聞いてみようと思って聞いたのですけれども、ほとんどの原子力の専門家が「もんじゅ」の事故のことを知らないのですよね。これは本当にショックを受けたのですけれども、報道されていないと言うのです。もう原子力についてはニュースバリューがない。アメリカの報道機関自身がもう原子力についてはほとんど報道していないということなんですね。  確かにアメリカは、今でも電力の二〇%くらいは原子力で賄っている国です。しかし、新しい原子力発電所をつくる計画というのは皆無と言っていいと思うのですね。ヨーロッパでも、原子力発電所を新規につくっていこうという国は、絶対ないとは、フランスなんかはつくろうという計画はあると思いますけれども、非常に少なくなっている。そういう中で、さらにFBRにまでいくというのは、言ってみれば猪突猛進のドン・キホーテに等しいのではないかなというふうな感じを受けます。ちょっと言葉が過ぎるかもしれませんけれども、そういう意見です。
  107. 島津尚純

    島津委員 新進党の島津でございます。  海渡参考人にお尋ねをさせていただきたいと思います。大変歯切れのいいお話をいただきまして、感心して聞かせていただいておったのですが、その上でどうしてもちょっと納得のいかないお話が数点ございましたので、お聞かせいただきたいと思います。  その一つは、発送電分離のお話であります。  私は、これに対しては、区分経理までは必要だろうと思いますが、その先の発送電分離までは、得るものが小さく失うものが大きいだろう、こう思っております。日本の料金は確かに欧米と比べて二割くらい高いわけですが、この日本の多少値段が高い元凶は安定供給と負荷率の問題である、体制の問題ではない、ここに焦点を当てて努力すれば欧米並みになる、こう考えているのです。  それで、そういうことがありながらも、海渡参考人としては、発送電分離まで持っていく必要があるのか。いわゆる安定供給を壊すということ、停電が七分というものを、欧米並みに七、八十分にまでしても構わないんじゃないか、安くなれば。それから、競争させますと、どうしても発電コストの安い化石燃料を使う火力発電所になると思うのですよね。そうすると、原発に手をつける人はだれもいなくなる。こうなってくると、言うならばベストミックスというものも壊れてくる。CO2の問題が先ほど出ていますが、CO2を減らそうということにも逆行してくる。こういう問題を御勘案されながらも、やはりどうしても発送電分離まで持っていった方がいいとおっしゃるのかが一点です。  もう一つは、原子力発電所にはもう頼るまいよ、それよりも天然ガスとか新エネルギーに視点を移していこうというようなお話だったわけですが、日本では現在三四%が原子力で、二〇一〇年にもう四二%と、大変な比重ですよね。そして、現在でも天然ガスというものは二二%使っておる、こういうことです。ですから、これを中心にしようよといっても、やはり資源には限界がありますので、二五、六%くらいに伸ばしたら精いっぱいじゃないかなというふうに思います。  さらに、新エネルギー、これは今国会で新エネルギー法案というのが成立をしまして、新エネルギーをどんどん応援しようやという体制をつくりました。しかしながら、当面の中期的な新エネルギーの目標、我が国ではせいぜい四十万キロワットぐらいだな、こういうような話です。そうしますと、現在の日本の最大電力は一億八千万キロワットですから、一%に満たない、コンマ以下のものです。そうすると、こういうものはやはり頼りたくともまだ頼れないということです。そうすると、どうしても私たちは、消極的な選択とあえて言ってもいいかもしれませんが、原子力に頼らなければいかぬのではないかな、こういうふうに思っているのですが、その辺をどうぞお聞かせください。
  108. 海渡雄一

    ○海渡参考人 発送電分離には得るものが少なく失うものが大きいのではないかという御指摘でした。  確かに、エネルギー安定供給ということとエネルギーのコストを下げるということとのバランスということが、こういう規制緩和を進める際の大きな問題になっている。当然、カリフォルニアでも欧米でも問題になっているわけです。  しかし、どうして発送電の会社の分離というところまでカリフォルニアやイギリスなどでの議論で進んでいくかといえば、やはり経理上の分離だけでは、送電をする会社自身が電力企業の一番大きいものを兼ねているわけで、送電会社がすべての電力企業を平等な顧客というふうにみなすことが難しい。  NTTの民営化を見てみても、NTTは市内回線を全部持っていて、市外の部分についていろいろ競争参入してきて、それでも確かに随分変わりました。だけれども電力の場合に発送電の分離を経理上のものだけにとどめると、例えば送電にかかるコストというものが本当に正確に出てくるだろうかということですね。送電のコストはこうなんですということで、非常に高い価格を市場に参入しようとしてくる別の発電企業に請求されたのでは、平等な競争にならないわけですね。  だれが見ても平等な競争にするためには、送電企業自身がすべての発電会社を平等に扱って、それで商売するという形にすることが一番わかりやすいし、これを垂直的分離というふうに言うのですけれども、それがどうしても不可欠だという方向にどんどん議論は進んでいったようです。その際に、安定供給、そして停電が起こらないように担保するということは大変大事なことです。  それにあわせて、先ほども御説明したカリフォルニアでのこの最終案の中では、独立システム管理者というのを公的なものとして規定しているわけですね。独立システム管理者が、既存の大きな企業とそして新規に加入していった企業のすべての電気をリアルタイムで把握して、停電が起きないように管理していく責任というものをはっきり負わせる、そういう組織体を新たにつくっているわけです。全部が市場化して無秩序になるということではなくて、全体を秩序立てるような管理者を置くという発想になっているわけですね。ですから、これによって安定供給が失われて停電が続出するというようなことは、そういうことを心配している人はカリフォルニアには余りいなかったと思います。  確かに、競争ということをふやしたときに、天然ガス、火力発電がふえて原子力発電所がつくれなくなるという可能性はあると思います。それはしかし、コスト的に見て火力発電の方が有利だかちそうなるのであって、仕方がない部分があるのではないか。  そして、CO2の減少のためにふやすとすれば、将来のエネルギーの主流になっていくと言われている再生可能エネルギーの方にシフトして、そこに国の予算を投じていけば、再生可能エネルギーの方は、私は、風力についてはもうコスト的には少なくとも通常の火力発電と互角、若干差があるのですけれども互角に近い勝負ができる状態になっていると思いますし、太陽光についてはまだまだ十倍ぐらいの差があってとても太刀打ちはできないのですけれども、量産効果をねらえば市場化も可能ではないかなというふうに思っていますので、CO2削減とも両立した形で市場化というものが可能なのではないかというふうに思っております。  それから、やはり天然ガスや新エネルギーといってもキャパシティーに限度があるのではないかというお話で、確かに政府の計画では、再生可能エネルギーについて非常に控え目な見積もりを出されているというふうに僕は思います。私が見てきた国は、確かにデンマークとかドイツとか風力エネルギーが非常に伸びている国なんですね。言ってみれば、こういう国は世界の中では特殊な国です。しかし、インドなどでも非常に伸びていますし、そういういろいろな国々で、原子力に頼らないでやっていこうと決めたところから、そういう新しい知恵というものが生まれてきているのであって、四十万キロワットというのは余りにも控え目です。  現状アメリカの場合には、いわゆる独立した電気事業者による発電事業というのは年間五百万キロワットずつふえています。確かに、これの大半が天然ガスだと思います。しかし、いわゆる電力会社自身がつくっている発電所より、市場参入してくる民間がつくる電力事業者の方がもう既に多くなっているのですね。それが年間五百万キロワットという、百万キロワットの原発にすると五基ですが、そのぐらいのものが供給可能になってきているわけです。天然ガス自身が有限じゃないかという議論はもちろんあると思います。そのことを配慮しても、僕も原子力について今すぐやめろというつもりはないのですけれども、つくってしまったものは安全に使っていただきたいと思いますけれども、これを新たにふやすというのは経済的に見れば正当化できないのじゃないかなというふうに思っています。
  109. 渡辺具能

    ○渡辺(具)委員 自民党の渡辺でございます。  やや結論めいた質問で恐縮ですけれども、余り時間もないし、大分議論も進んできたので、あえて質問させていただくわけです。  午前中、藤家さんの話の中に、これから原子力政策選択するに当たって、あきらめるか、ウエート・アンド・シーでいくか、続行するか、この三つがあると言われたわけですね。三人の方にぜひお伺いしたいと思っていますが、今まで私もお話をお伺いしていて、ここであきらめてしまえば話は簡単で、何もみんな悩まないのだけれども、やはり、少なくともウエート・アンド・シーでいくか、さらに挑戦を続けていくかというあたりの選択をせざるを得ないので、みんな悩んでいるわけですね。そこでどの道を選択するかというのは、やはり一に今の原子力全般にわたる技術に対する評価だろうと思うのですね。  その評価についてお伺いしたいと思うのですけれども技術というのは、これも午前中そういう話が出ましたけれどもシステムとして全体の技術整合性がとれていなければいけない、一つだけでも技術がおくれているとその技術はだめになってしまうというような意味の話がありました。さっき鈴木参考人の方から自動車の技術の話がありましたので、私もぼっと思いついたのですけれども、自動車の技術というのはいろいろな技術が集合体としてあるわけです。さっきブレーキとおっしゃっていたけれども、例えば一カ所、ブレーキに関する技術がだめなら全体の技術をだめにする面もあるわけですね。  そういう意味で私は、今の原子力の中においては、核燃料廃棄物処理のところが、肝心のエネルギーをとるところに比べて非常に技術的におくれている。特に、技術論からしても脚光を浴びない部分である。例えば、アスファルトで封じ込めるとかコンクリートで封じ込めるというのは、先端技術に比べて物すごく幼稚な話じゃないかという気もするわけですね。  そういう意味で、ちょっと長くなって恐縮ですが、今我々が原子力政策選択するに当たって、私は本当はおくれている技術をもっと集中的に攻めて全体を後で使うという選択がいいのじゃないかなというふうに思っているわけですけれども、さっき情報公開という話がありましたが、我々素人は途中経過を幾ら教えてもらってもよくわからないところもあったりして、プロとして、専門家の皆さんとして、今の原子力技術に対してどういう評価をしておられるか。  この辺がおくれているので、やはりどうこうすべきだとか、あるいは待つべきだとか、あきらめるべきだとか、非常に結論めいた質問で恐縮なんですけれども、ぜひこの際、専門家がいらしておられるのでお伺いしておきたいと思うのです。
  110. 鈴木篤之

    ○鈴木参考人 放射性廃棄物の問題が一番技術的におくれている、あるいは原子力開発の隘路になっているのではないか、そういう御指摘あるいは御質問だったかと思うのですが、技術的にはさらに改善した方がいいもの、そういう部分はございます。技術については常にそういう部分がございます。それは別にいたしますと、基本的なところは、技術的には既にアベーラブルだといいますか、我々はその選択肢を持っている、こう思います。  問題は、お尋ねにもあったかと思いますが、廃棄物の問題ですから、やはり社会的に難しい問題がある。つまり、何といいますか、そんなに日が当たらないといいますか、そういうことは結局は社会的に相当難しい問題をはらんでいる、こういうことなのだと思いますね。  それで、私、陳述の中でも申し述べさせていただきましたが、これは社会的に御理解いただけるようなものを、やはり技術的にもできるだけ磨いて、技術的な信頼性を上げていってそういうものにしていくということは、もちろん大事だと思います。大事だと思いますが、私は、こういう社会的な問題も技術によってすべてが解決できるというのはいかがなものかな、やはり社会的な問題は社会的な解決方法というのもあわせて考えていくべきだと思います。  これは、一つの例が、申し上げましたように、実は病院から発生する放射性廃棄物社会的な解決方法はまだ見つかっていないわけですね。にもかかわらず、病院においては、放射線の治療、放射線による検査が日常的に行われているわけでございます。  ですから、実際そういう難しさがあるなら、しばらくウエート・アンド・シーでいって、そういうものが解決してから原子力発電をもう一度始めたらいいのではないかというようなお考えを私もよく伺うことがあるのですが、これはしかし、放射性廃棄物の問題に限らず、廃棄物の問題の本当の難しさを十分御理解していただいていないのではないかという気がいたします。つまり、現実にそういう問題に直面しながら解決していくのがこの廃棄物問題なのであって、これは我々が日常的に出す廃棄物もそうだと思います。  ですから、大事なことは、放射性廃棄物の場合、そういう現実的な難しさがある場合に強引に何かやってしまうというようなことがありますと、これはむしろ安全性その他においてある種の問題を惹起しかねないわけでございます。放射性廃棄物の場合は、これは皮肉なことに、あるいは逆説的かもしれませんが、これを十分安全にとっておくことができるのですね、量的に少ないものですから。したがって、病院からの放射性廃棄物についても、これはあるところに貯蔵してあるわけですが、そのことが大きな社会的な問題として顕在化していないわけであります。したがって、放射性廃棄物に関しては、これを社会的に困難であるがゆえに強引に何かやってしまうということは、私はもちろんすべきではないと思いますし、やる必要もないと思います。  したがって、私のお答えは、やはり原子力発電についてはこれまでと同じように着実にこれを進めることが大事であって、しかし、あわせて放射性廃棄物の問題を、技術的だけではなくて社会的に解決していくことについても、できれば、例えば国会の場においてもぜひ御審議いただきたい、こんなふうに思います。
  111. 舘野淳

    ○舘野参考人 先ほど三つのどういう立場をとるかというふうなお話でしたけれども、私は、先ほどから何回も申しておりますように、やはりこの研究開発は進めていくべきだ、それで、本当に着実に可能になった時点で実用化すべきだというふうに考えております。ですから、ウエート・アンド・シーのところに該当するかどうかわかりませんけれども、ややそれに近い感じです。  ただ、問題は、その進め方に際して、今まで余りにも原子力というのは優遇されていたというか、特権的であったのですね。例えば安全審査一つとってみても、原子力に好意的な人たちが集まって安全審査をしているわけです。ですから、どの原子炉一つとってみても、それは問題があるから建てるのをやめろと言われたことはないわけですね。まあ、そんな危険な原子炉はつくっていないと言われればそれまでですけれども。やはりもっと公正に、フェアに、ほかのものと競争できるような技術として育てていかない限り、優遇され過ぎたゆえに体質的に非常に虚弱になってしまって、特権的になってしまって、動燃みたいなああいうことを起こしてしまう、そういうふうに言えると思うのです。  お金のつき方にしましても、お隣の海渡参考人が先ほどから強調しておられますように、いろいろなエネルギー源というのはある。ところが、そういうエネルギー源に比べて、原子力には莫大なお金がついているわけですね。これをもう少し新エネルギーの方へ回すというふうなことも考えながら、特別扱いするのをぜひやめるべきだ。  そうしないと、これはよく第三者検査機構を確立すべきだという話が私どものシンポジウムでもいろいろ話されるのですけれども、例えば外国に輸出するとしても、日本の安全審査ではとても外国では信用してくれない。もっと客観的に、例えば外国の人たちも入れたようなところで安全審査というか安全のチェックができるようなことをしない限り、そういうことすらできないのじゃないかという意見があるわけですね。  ですから、やはりこの開発のやり方をもう少し考え直していただく必要があるのじゃないか、こういうふうに思っております。
  112. 海渡雄一

    ○海渡参考人 原子力技術について、三つに分けてお話ししたいと思うのです。  まず、プルトニウムリサイクルに絡む高速増殖炉と再処理という技術については、私は、技術的には確立していないというふうに思います。だからこそ、今回のような「もんじゅ」の事故であるとか、東海の再処理工場のような事故が起こっているのだと思います。  高速増殖炉については、核暴走事故であるとかナトリウム技術の困難性、こういった問題はずっと指摘され続けてきて、結局どこの国でもトラブルを起こして、そしてできなくなっている。再処理についても、やはり化学的な意味での危険性、核物質を液体状で取り扱うことからくる危険性というものは克服されていないのではないか。技術的評価としては、そういう判断になると思います。  軽水炉と直接処分に関しては、若干違う意見を持っています。これは、商業的にも十分成り立って、現に運用されているわけで、技術的にはそれなりに確立しているものだろうというふうに思います。  しかし、だからといって何の問題もないかといえば、軽水炉についても巨大な事故というのは起こり得るわけです。その一歩手前まで行った事故がアメリカのスリーマイル島の事故でしたし、その二歩ぐらい前の事故が、日本でも、福島第二原発の三号機で再循環ポンプがめちゃめちゃに壊れるとか、美浜の二号炉では蒸気発生器の細管が破断する事故とか、そういう重大事故を既に起こしているわけですね。  そういう意味では、軽水炉、ワンススルーについては、技術的に一応確立してはいるけれども、本当の意味で絶対に放射能を外部に漏らすことのないような形で確立しているかというと、その点については若干疑問符をつけざるを得ないという部分があると思います。ですから、その点についても技術的な研究というのは続けられるべきだと思います。  それから、放射性廃棄物の問題ですけれども、当然、低レベルの放射性廃棄物、今回のアスファルト固化というのは低レベルなんですけれども、本当はこれはもう技術的に確立しなければいけない部門でああいう爆発事故というのを起こしてしまったわけですけれども、低レベルについては技術的には可能だと思います。  しかし、高レベルの放射性廃棄物については、これは世界じゅうで処分できている国はないわけですね。それはやはり重大な事実として見据えるべきであって、今後、確かに数百年ぐらいのオーダーで環境中に漏れないだろうという技術はできるかもしれない。しかし、このような非常に危険な物質を、人類未来プルトニウムの半減期でいうと二万年ですけれども、こういうオーダーで本当に地中に埋設するような形で安全に処分できるのだろうかということは、やはり真剣に悩んでみる必要がある。  私は、デンマークに昨年行ったわけですけれども、デンマークでは一九八〇年に原子力開発はしないということを決めています。その段階までは原子力の研究所もあったわけです。導入の計画もありました。その際に、やめた原因をデンマークのエネルギー省の方に聞いたところ、やはり一番放射性廃棄物のことが問題だったのです、国内に廃棄物を処分できるような場所を見つけられない、そこで原子力を導入することについてはノーという方向に行かざるを得なかったということを聞いています。  どこの国も、廃棄物の、特に高レベルの最終処分ということについては悩んでいるわけで、もうつくってしまったものですから、それを何とかしなきゃいけないわけで、そのことから目をそらすわけにはいきませんけれども地層処分については、当面、私は、地層処分というのを技術的に確立したものとみなすのではなくて、今後も研究開発を続けて、本当に安全なものというふうに確立するまでは、人間から見て管理可能な場所に置いて管理を続けるという選択をせざるを得ないのじゃないかと思っております。
  113. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 ありがとうございました。  それでは、まだ御質問があろうかと思いますが、予定の時間が参りました。これにて参考人に対する質疑を終了いたします。  参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十一分散会