運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1997-02-20 第140回国会 衆議院 科学技術委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年二月二十日(木曜日)     午前十一時三十三分開議  出席委員   委員長 佐藤 敬夫君    理事 小野 晋也君 理事 栗原 裕康君   理事 三ッ林弥太郎君 理事 山口 俊一君    理事 斉藤 鉄夫君 理事 田中 慶秋君    理事 佐々木秀典君 理事 吉井 英勝君       石崎  岳君    江渡 聡徳君       河井 克行君    木村 隆秀君       桜田 義孝君    田中 和徳君       塚原 俊平君    渡辺 具能君       井上 義久君    近江巳記夫君       笹木 竜三君    中西 啓介君       川内 博史君    鳩山由紀夫君       辻元 清美君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      近岡理一郎君  出席政府委員         科学技術政務次         官       岡  利定君         科学技術庁長官         官房長     沖村 憲樹君         科学技術庁長官         官房審議官   興  直孝君         科学技術庁科学         技術政策局長  近藤 隆彦君         科学技術庁科学         技術振興局長  青江  茂君         科学技術庁研究         開発局長    落合 俊雄君         科学技術庁原子         力局長     加藤 康宏君         科学技術庁原子         力安全局長   池田  要君  委員外出席者         科学技術委員会         調査室長    吉村 晴光君     ――――――――――――― 委員の異動二月二十日  辞任         補欠選任   近藤 昭一君     川内 博史君 同日  辞任         補欠選任   川内 博史君     近藤 昭一君     ――――――――――――― 二月十七日  航空宇宙開発推進に関する陳情書  (第七  九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  科学技術振興基本施策に関する件  原子力開発利用とその安全確保に関する件  (高速増殖原型炉もんじゅにおけるナトリウム  漏えい事故問題)      ――――◇―――――
  2. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興基本施策に関する件について調査を進めます。  近岡国務大臣から科学技術行政に関する所信を聴取いたします。近岡国務大臣
  3. 近岡理一郎

    近岡国務大臣 第百四十回国会に当たり、私の所信を申し上げます。  尽きることのない知的資源である科学技術は、二十一世紀に向けて、我が国経済構造の改革を実現し、創造性あふれた経済社会をつくっていくための原動力であり、さらに、次代を担う若者たちが夢と希望と高い志を持つことを可能とするものであります。また、科学技術は、人類の共有し得る知的資産を生み出すとともに、地球環境問題、エネルギー・資源問題などの地球規模の諸課題解決に資するものであり、世界の平和と繁栄に積極的に貢献し、人類未来への展望を開くものであります。このように、科学技術振興は、限りない未来への先行投資であります。  昨年七月、科学技術基本法に基づき、科学技術振興施策を総合的、計画的に推進するための科学技術基本計画が閣議決定されました。今後、我が国は、基本計画に示された研究開発推進基本的方向に即し、率先して未踏科学技術分野へ挑戦し、革新的な科学技術の成果を創出していくことが求められております。このため、科学技術基本計画を着実に実行し、科学技術創造立国を目指して、科学技術振興に積極的に取り組んでまいります。  このような認識もと科学技術による国際社会への積極的な貢献をも念頭に置きながら、平成九年度には、以下に申し述べますような柱を中心として総合的に施策展開してまいります。  第一に、経済フロンティア拡大地球規模の諸問題の解決などの社会的、経済的ニーズに対応した未踏科学技術分野への挑戦であります。  とりわけ、未知の要素を多く秘めた脳は、人類の大きなフロンティアであり、脳科学研究を総合的に推進することで、各種疾患の治療、予防といった医学の向上や、画期的な情報処理・通信システム開発といった情報社会の発展につながることが期待されております。このため、関係省庁との密接な連携もとに、その計画的な推進を図ってまいります。  また、地球温暖化気候変動の解明、予測を目指した地球変動予測に関する研究開発構造物安全性向上させ、環境への負荷を低減することが期待されている新世紀構造材料研究次世代音速機技術研究開発などを推進してまいります。  宇宙開発は、質の高い豊かな生活の実現などに貢献するとともに、将来を担う青少年に夢とロマンを与えるものであり、これに積極的に取り組んでまいります。特に、二十一世紀本格的宇宙利用時代に向け、多様な需要に柔軟に対応するとともに、輸送コストの低減を目指したHⅡAロケット開発無人宇宙往還技術試験機開発地球観測通信放送などの分野人工衛星開発を進めるほか、本年から組み立てが開始される宇宙ステーション計画を初めとする宇宙環境利用推進します。  海洋科学技術については、本年秋に、大型海洋観測研究船「みらい」の運航開始が予定されており、これを活用した海洋観測研究などを積極的に推進してまいります。また、先月発生しましたナホトカ号流出油災害につきましては、深海探査機ドルフィン3Kを用いて沈没した船体の調査を行い、油の漏出状況などの把握を行ったほか、人工衛星からの画像データ活用した重油流出海域状況把握環境影響に関する緊急研究などを進めているところでありますが、引き続き最大限の取り組みを行ってまいります。  第二に、研究者創造性を重視した基礎研究推進と、新しい時代にふさわしい柔軟かつ競争的で開かれた研究開発システム構築及び研究開発基盤整備であります。  基礎研究については、競争的資金拡充中心としてその積極的な推進を図ることとし、国が設定した戦略目標もと大学国立試験研究機関などを広く対象として研究を行う戦略的基礎研究推進事業を強力に推進するほか、科学技術振興調整費などを充実強化してまいります。  さらに、研究者がその創造性を十分発揮できるような研究環境整備するため、研究支援者確保任期つき研究員活用ポストドクター博士課程修了者)などの若手研究者への活躍の機会の提供を進めます。また、研究開発基盤整備観点から、生物遺伝子資源研究用材料などの円滑な保存・供給体制の確立といった知的基盤整備を図るほか、大型放射光施設整備を進め、本年秋に供用を開始することとしております。研究開発評価については、外部評価を行うなど体制充実を図ることとし、今後、科学技術会議において策定される大綱的指針に沿って、厳正な評価実施を図ってまいります。  また、新産業の創出による地域活性化地域住民生活の質の向上に加え、国全体の科学技術水準向上を図るため、各地域における研究開発拠点構築を初めとする地域科学技術振興策を抜本的に強化してまいります。  第三に、安全で豊かな生活を実現するために必要な国民生活に密着した科学技術推進であります。  特に、地震国の我が国にとって、地震防災対策は極めて重要な課題であります。このため、阪神・淡路大震災を契機に設置された地震調査研究推進本部方針もと関係省庁連携を図りつつ、地震調査観測網整備活断層調査などの地震に関する観測調査の新たな展開拡充や、国民一般に対する正確かつわかりやすい広報の実施などを総合的に推進し、地震に強い社会をつくってまいります。  また、健康の維持増進生活環境向上などを図るために、がん関連研究ヒトゲノム解析などを総合的に推進してまいります。  第四に、安全確保国民理解大前提としたエネルギー安定確保であります。  エネルギー資源の八割以上を海外からの輸入に依存し、今後ともエネルギー需要の着実な伸びが予想される我が国において、エネルギーを安定的に確保することは極めて重要な課題であります。このため、供給安定性などにすぐれたエネルギー源である原子力研究開発利用を進めるとともに、長期的な観点に立ち、核融合などの未来エネルギー研究開発推進してまいります。  プルトニウムの軽水炉利用、高レベル放射性廃棄物処分対策を初めとするバックエンド対策などの核燃料サイクルについては、先般の原子力委員会決定を踏まえ、政府としても閣議了解により、当面の具体的な施策展開していくための基本的考え方を取りまとめたところであります。これらを踏まえ、安全の確保及び平和利用大前提として、国民皆様理解を得つつ、関係省庁とも連携をとりながら、その着実な推進を図ってまいります。  高速増殖原型炉もんじゅ事故につきましては、科学技術庁において、昨年五月に報告書を公表した後、残された課題検討を行ってまいりましたが、原因究明についての最終的な結論を得るに至りました。今後、安全性総点検を着実に進め、万全の対策を講ずることとしております。また、将来の高速増殖炉開発のあり方については、原子力委員会高速増殖炉懇談会において幅広く審議を行っていくこととしております。  今後とも、原子力に対する国民皆様不安感を払拭し、一刻も早く信頼を回復すべく、積極的な情報公開及び提供を進めるとともに、政策決定過程において国民皆様の声が十分反映されるように努め、国民とともにある原子力を目指してまいります。  さらに、世界的な核不拡散体制強化貢献するため、昨年九月に採択された包括的核実験禁止条約早期発効に向け、関係法案早期国会に提出すべく準備しているところであります。  以上、科学技術に対する私の基本認識を示すとともに、平成九年度における科学技術庁施策概要を申し上げました。  時代は大きく動いております。我が国が、時代の波にのみ込まれ世界から取り残されていくか、あるいは、未来を確かな感覚でとらえ世界をリードするフロントランナーとして躍進していくかは、科学技術振興にかかっていると言っても過言ではありません。  私は、科学技術行政責任者として、科学技術に課せられた重大な使命を全うすべく、全力を尽くしてまいります。  委員長を初め、委員各位の御指導、御協力を心からお願い申し上げます。
  4. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 次に、平成九年度科学技術庁関係予算について説明を聴取します。沖村官房長
  5. 沖村憲樹

    沖村政府委員 平成九年度科学技術庁関係予算概要を御説明申し上げます。  平成九年度一般会計予算において、科学技術庁歳出予算額五千七百十四億一千百万円を計上いたしており、これを前年度当初歳出予算額と比較いたしますと、四百二十億八千二百万円、八%の増加となっております。  また、電源開発促進対策特別会計において、科学技術庁分として、歳出予算額千五百九十三億七千五百万円を計上するほか、産業投資特別会計から三十七億円の出資を予定いたしております。  以上の各会計を合わせた科学技術庁歳出予算額は、七千三百四十四億八千六百万円となり、これを前年度の当初歳出予算額と比較いたしますと、四百十六億八千六百万円、六%の増加となっております。  また、国庫債務負担行為限度額として、一般会計千三百六十一億八千九百万円、電源開発促進対策特別会計二百十二億七千四百万円を計上いたしております。  さらに、一般会計予算予算総則において、原子力損害賠償補償契約に関する法律第八条の規定による国の契約限度額を九千五百八十億円とするとともに、動力炉・核燃料開発事業団法規定により、政府が保証する借り入れ等債務限度額を百一億円といたしております。  次に、予算額のうち主要な項目につきまして、その大略を御説明申し上げます。  第一に、社会的、経済的ニーズに対応した未踏科学技術分野へ挑戦するため、三千三百六十六億七千二百万円を計上いたしました。  まず、経済フロンティア拡大地球規模の諸問題の解決に資する研究開発推進といたしまして、脳科学研究省庁の枠を超えて推進するとともに、地球変動予測に関する研究開発、新世紀構造材料(超鉄鋼材料)の研究次世代音速機技術研究開発推進するため、六百九十六億五千六百万円を計上いたしました。  また、先端的科学技術分野研究開発推進といたしまして、HⅡAロケット開発無人宇宙往還技術試験機HOPElX開発地球観測通信放送等分野人工衛星開発宇宙ステーション計画への参加等を初めとする宇宙開発利用推進に千八百六億円、海洋観測研究開発を初めとする海洋科学技術推進に二百三十五億一千百万円、ビーム高度利用研究を初めとする先導的原子力研究開発に七百七十九億円を計上するとともに、ライフサイエンス、物質・材料系科学技術推進航空技術等研究開発推進することといたしております。  第二に、独創的な基礎研究推進と新たな研究開発システム研究開発基盤構築整備を図るため、千四百六十七億三千六百万円を計上いたしました。  まず、競争的資金拡充等による基礎研究推進といたしまして、大学国立試験研究機関等から課題を公募し実施する戦略的基礎研究推進事業に二百四十億円を計上するほか、産学官連携により重要な基礎研究等推進するための科学技術振興調整費に二百四十九億五千万円を計上するとともに、創造科学技術推進制度等の重要な基礎研究推進制度推進することといたしております。  次に、創造的な研究開発活動展開のための研究環境整備といたしまして、重点研究支援協力員制度充実等による研究支援者確保任期つき研究員等活用促進ポストドクター博士課程修了者)等一万人支援計画推進研究評価体制充実等を図るため、二百七十二億五千万円を計上いたしました。  また、地域における地域科学技術振興といたしまして、地域における中核的研究機関群の形成に資する地域結集型共同研究事業地域研究開発促進拠点支援事業等推進するため、百二十六億八千四百万円を計上いたしました。  さらに、研究開発基盤整備充実を図るため、知的基盤整備に三十四億七千九百万円、大型放射光施設Spring8の整備等に百九十二億六千万円、研究開発に関する情報化促進等に百五十八億四千三百万円を計上いたしました。  このほか、国の研究施設整備、人当研究費充実を図るほか、科学技術に関する国民理解増進に努めることといたしております。  第三に、安全で豊かな生活を実現するために必要な国民生活に密着した科学技術推進を図るため、四百六十九億七千七百万円を計上いたしました。  これにより、地震調査研究推進本部方針に基づき、地震調査観測網整備及び活断層調査推進するとともに、地震防災科学技術研究開発等を進めるなど防災安全対策充実を図るほか、がん関連研究ヒト遺伝子解析等の健康の維持増進食品成分データ整備等生活環境向上等を図ることといたしております。  第四に、安全確保国民理解大前提としたエネルギー安定確保のため、三千二百億円を計上いたしました。  まず、原子力安全規制行政充実安全研究推進放射能調査研究充実等原子力安全対策充実強化を図るため、五百七億七千四百万円を計上いたしました。  次に、原子力開発利用に対する国内外の理解増進情報公開を図る観点から、国民各層対象としたきめ細かな情報提供を進めるほか、原子力発電施設立地地域住民等理解信頼増進に資する施策展開するため、二百九十九億四千八百万円を計上いたしました。  また、核不拡散対策充実を図るため、六十七億円を計上いたしました。  さらに、核燃料リサイクル技術開発の着実な展開バックエンド対策抜本的強化を図るため、千三百五十七億九千百万円を計上いたしました。これにより、高レベル放射性廃棄物処分に関する研究開発等強化するほか、使用済み燃料の再処理等についての研究開発等を行うとともに、高速増殖原型炉もんじゅ」の維持管理等を行うこととしております。  このほか、未来エネルギー研究開発推進することとし、国際熱核融合実験炉(ITER)計画への参加等による核融合研究開発推進するとともに、新エネルギー研究開発推進するため、三百二十八億六千三百万円を計上いたしました。  第五に、科学技術による国際社会への貢献を図るため、千七百四十七億三千八百万円を計上いたしました。  まず、宇宙からの地球観測を行うための環境観測技術衛星等研究開発推進大型海洋観測研究船整備を図ること等により、地球環境問題への取り組み強化するとともに、ヒューマン・フロンティアサイエンスプログラム等国際協力プロジェクトに積極的に参加することとしております。  このほか、アジア太平洋諸国、旧ソ連を初めとした国際科学技術協力を進めるため、海外研究機関との共同研究外国人研究者受け入れ等による国際研究交流施策充実を総合的に推進することとしております。  以上、簡単でございますが、平成九年度科学技術庁関係予算につきまして、その大略を御説明申し上げました。      ――――◇―――――
  6. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 次に、原子力開発利用とその安全確保に関する件について調査を進めます。  この際、政府から、高速増殖原型炉もんじゅ」におけるナトリウム漏えい事故問題について、その原因究明に関する報告を聴取いたします。池田原子力安全局長
  7. 池田要

    池田政府委員 お手元に、「動力炉・核燃料開発事業団高速増殖原型炉もんじゅナトリウム漏えい事故原因究明結果について」二十日付の資料と、きょう御説明申し上げますために簡単な要約をつけてございます。時間が限られてございますので、この要約に基づきまして御説明申し上げたいと存じます。  まず、「もんじゅ」のナトリウム漏えい事故が発生いたしましたのは、一昨年の十二月八日でございました。その後、昨年の五月に至りまして、科学技術庁といたしましては、この事故原因等につきまして報告書を取りまとめました。この段階で、原因は、二次系のナトリウム流れております冷却系につけてございます温度計、それのさや設計において判断ミスがあったということでございまして、これがナトリウム流れによる振動を回避できず高サイクル疲労によって破損をした、こういう原因について見きわめをつけてございました。  今回の報告書は、その後、この報告書を提出させていただきました以降、二次系ナトリウム温度計につきましては、A、B、Cと三つのループがございます。今回破損を生じましたのはCループ、それも一本でございました。この一本だけがなぜ破損したのかといったことについての原因調査をしたわけでございます。  それからもう一つは、「もんじゅ」におきましては、ナトリウムが約七百キロほど漏えいいたしました。これが床のライナーの上に堆積したわけでございますが、そのときに、床のライナー、これは厚さ六ミリほどの鉄製でございますけれども、これが一ミリほど厚さが減ってございました。こういった化学反応についてさらに詳細に調査をしようということになってございました。  主としまして、この二つの問題について検討を続けてまいった次第でございます。今回、その原因究明の作業を終了いたしましたので、ここに御報告申し上げる次第でございます。  お手元資料最後から二枚目に、「シースの曲がりと温度計さや」という図をつけてございます。  ここでシースと言っておりますのは、温度計の中に入ってございます熱電対と、それを保護するための管で包まれた部分を言ってございまして、このシース自身は厚さ〇・四ミリほどのステンレスでできてございます。これが、温度計自身さやをごらんいただきますと、太い部分外径が二十二ミリ、細い部分外径が十ミリでございまして、ステンレスの厚さは三ミリでございますから、この中の厚さ、内径が四ミリのところに差し込まれているわけでございます。  今回破損を生じましたのは、このちょうど細い部分から太い部分に至る段付部、この部分破損をしたわけでございます。この一本だけがなぜ壊れたかということについて、あらゆる要因を洗い出したわけでございます。例えば、Cループだけでも十六本ございます。これのそれぞれの使用環境がどう違うのか、あるいはつくられた過程にばらつきがあったのかどうか、こういったさまざまな要因をすべて検討してまいりました。  その結果、シース温度計さやに挿入されている状態、この状態によっては振動の大きさが変わるということが判明いたしました。シース中間部で曲がって挿入されている場合には、振動の大きさを抑制する効果が小さいということが判明した次第でございます。すなわち、そもそもこの温度計設計に誤りがあったために、ナトリウム流れによって振動する、それで高サイクル疲労を起こしたわけでございますが、シースが正しく入っていた場合には、この振動をある程度抑制する効果があったということでございます。これが曲がって入っていたために、この抑制する効果が小さく、温度計さや設計の最も悪い点が如実に出てしまったということでございます。  今回、この調査の結果回収いたしましたシースにつきましても、さまざまな実験をしました結果、ちょうどこの細い部分から太い部分に変わります段付部、このあたりで接触をしていたために、破損した温度計につきましても、こすられた後、ここに、この図には摺動痕と書いてございますが、こういったものが実際に観察できた次第でございますし、実験の結果も、百五十ミリほどのところで曲がって入れた場合には、同じような摺動痕ができるということまで確認した次第でございます。  なお、今回の調査は、結果的には、シースが入っていなかった場合には、むしろもっと早く壊れただろうということを示唆するものでございます。  もう一つの点でございます、ナトリウム漏えい燃焼実験について御説明申し上げます。  今回、漏えいしましたナトリウムライナー化学反応について調べますために、燃焼実験を行いました。二回行ったわけでございますけれども、一回目の実験は装置の故障で途中で中止してございます。二回目の実験は六月に行ったわけでございますけれども、このときは「もんじゅ事故とほぼ同じ時間、ナトリウムを漏えいさせました。七百キロほどのナトリウムを漏えいさせたわけでございますけれども、この際の状況について御説明申し上げます。  一番最後資料に、「参考2」といたしまして図によって示してございます。  「もんじゅ事故の場合には、漏えいいたしましたナトリウム温度計の壊れた部分から外に出たわけでございますけれども、空気中で直ちに空気反応いたしまして、燃えながら、酸化ナトリウムあるいは過酸化ナトリウムになりながら床のライナー上に落ちたわけでございます。これが床のライナー上に落ちて、さらに、落下してきたナトリウムは表面で燃え続ける。ただし、堆積してまいりましたから、その内部では鉄と酸化ナトリウムとが反応いたしまして複合酸化物を生成した。  この鉄とナトリウムと酸素との酸化反応が起こったということは、既に昨年の五月の段階でも見きわめをつけていたわけでございますけれども、今回実験を繰り返すことによりまして、この反応過程について、七百度から七百五十度Cの温度反応が推移した場合には一時間当たり〇・二ミリから〇・三ミリの減肉をする、結果的には三時間余り漏えいしたわけでございますから、ちょうど「もんじゅ」の事故におきましては合計で一ミリほどの減肉になったといったことが確認できた次第でございます。  もう一つ燃焼実験で行いました場合には、結果的には床のライナーに穴をあけてしまいました。この原因についても今回調査をしたわけでございます。  この実験におきましては、「もんじゅ」の設備とは実験の設備が相当違ったものでございました。コンクリートで囲った比較的狭い空間で実験を行いましたから、ナトリウムが燃え出しますと周りのコンクリート壁の温度が上昇いたしました。その過程で、コンクリートは百度C以上になりますと、含まれております多量の水分が放出される結果となりました。この水分が燃えておりますナトリウム反応いたしまして、ナトリウムの水酸化物を多く生じたということでございます。水酸化ナトリウムが生じまして、これが床ライナー上にたまる結果になったということでございまして、このたまりました水酸化ナトリウムの上に、さらに燃えながらナトリウムが落下し、それが浮くような格好で反応が続いたということでございます。  結果的には、この反応過程で、鉄、イオンがこの溶融塩上の反応過程にイオンとして溶け出すといった過程で腐食がどんどん進んだということが分析できた次第でございます。この反応を私どもは溶融塩型の腐食と呼んでおります。  別途行いました減肉等の腐食実験におきましても、この反応が起きますと、実際、この実験におきましては「もんじゅ」の事故とは異なりまして百度ほど高く、すなわち八百度から八百五十度Cほどの温度反応が進んだわけでございますけれども、その過程では、一時間当たりの腐食量、減肉量が二ミリから三ミリに及ぶということも確認いたしました。そうしますと、結局、三時間余り実験を続けたわけでございますから、鉄板には六ミリほどの穴があいてしまったといったことが十分確認できたという次第でございます。  このように、実験を通じまして、「もんじゅ」の事故におきましてはナトリウムと鉄とが酸素との間で複合酸化物をつくるような腐食が起きた、実験におきましては溶融塩型の腐食が起きた、それぞれ全く違った反応が起きたということを見きわめた次第でございます。  このような結果を踏まえまして、本日報告書を取りまとめまして、先ほど原子力安全委員会に御報告した次第でございます。その時点でもって公表させていただきました。  今後は、さきに、昨年の十月に、このような原因究明と並行いたしまして、既に「もんじゅ」の安全性総点検を始めてございます。これは、今回の温度計設計ミスのような、同じような過ちがほかにないかどうか、あるいは、運転マニュアル等に見られましたようなふぐあいかないかどうか、こういった点を洗いざらい調べようという作業でございますけれども、今後は、今回の原因究明過程で得ました新たな知見をこのような安全性総点検に活用いたしまして、安全対策検討してまいりたいと存じております。  また、このような「もんじゅ」の事故に関連いたしましては、安全委員会におきましても別途専門家を動員いたしまして検討を行っております。原因究明でございますとか再発防止策、こういった議論をしておりまして、昨年の九月には、二次系でナトリウムが漏れた場合の安全評価を行うべしといったことを御指摘をいただいております。果たして実験で行ったような内容が実際の「もんじゅ」で起こり得る余地があるのかどうかといったような点につきましての評価を、これから行いたいと思っております。このような過程におきまして、今回原因究明過程で得ました知見につきましては、積極的に活用してまいりたいと存じている次第でございます。  以上で御説明を終わらせていただきます。
  8. 佐藤敬夫

    佐藤委員長 次回は、来る二十五日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時五分散会