○
池田政府委員 お
手元に、「
動力炉・核燃料開発事業団高速増殖原型炉もんじゅナトリウム漏えい事故の
原因究明結果について」二十日付の
資料と、きょう御説明申し上げますために簡単な
要約をつけてございます。時間が限られてございますので、この
要約に基づきまして御説明申し上げたいと存じます。
まず、「
もんじゅ」の
ナトリウム漏えい事故が発生いたしましたのは、一昨年の十二月八日でございました。その後、昨年の五月に至りまして、
科学技術庁といたしましては、この
事故の
原因等につきまして
報告書を取りまとめました。この
段階で、
原因は、二次系の
ナトリウムが
流れております
冷却系につけてございます
温度計、それの
さやの
設計において
判断ミスがあったということでございまして、これが
ナトリウムの
流れによる
振動を回避できず高
サイクル疲労によって
破損をした、こういう
原因について見きわめをつけてございました。
今回の
報告書は、その後、この
報告書を提出させていただきました以降、二次
系ナトリウムの
温度計につきましては、A、B、Cと三つの
ループがございます。今回
破損を生じましたのは
Cループ、それも一本でございました。この一本だけがなぜ
破損したのかといったことについての
原因を
調査をしたわけでございます。
それからもう
一つは、「
もんじゅ」におきましては、
ナトリウムが約七百キロほど漏えいいたしました。これが床の
ライナーの上に堆積したわけでございますが、そのときに、床の
ライナー、これは厚さ六ミリほどの鉄製でございますけれども、これが一ミリほど厚さが減ってございました。こういった
化学反応についてさらに詳細に
調査をしようということになってございました。
主としまして、この二つの問題について
検討を続けてまいった次第でございます。今回、その
原因究明の作業を終了いたしましたので、ここに御
報告申し上げる次第でございます。
お
手元の
資料で
最後から二枚目に、「
シースの曲がりと
温度計さや」という図をつけてございます。
ここで
シースと言っておりますのは、
温度計の中に入ってございます
熱電対と、それを保護するための管で包まれた
部分を言ってございまして、この
シース自身は厚さ〇・四ミリほどの
ステンレスでできてございます。これが、
温度計自身、
さやをごらんいただきますと、太い
部分は
外径が二十二ミリ、細い
部分は
外径が十ミリでございまして、
ステンレスの厚さは三ミリでございますから、この中の厚さ、内径が四ミリのところに差し込まれているわけでございます。
今回
破損を生じましたのは、このちょうど細い
部分から太い
部分に至る
段付部、この
部分で
破損をしたわけでございます。この一本だけがなぜ壊れたかということについて、あらゆる
要因を洗い出したわけでございます。例えば、
Cループだけでも十六本ございます。これのそれぞれの
使用環境がどう違うのか、あるいはつくられた
過程にばらつきがあったのかどうか、こういったさまざまな
要因をすべて
検討してまいりました。
その結果、
シースが
温度計さやに挿入されている
状態、この
状態によっては
振動の大きさが変わるということが判明いたしました。
シースの
中間部で曲がって挿入されている場合には、
振動の大きさを抑制する
効果が小さいということが判明した次第でございます。すなわち、そもそもこの
温度計の
設計に誤りがあったために、
ナトリウムの
流れによって
振動する、それで高
サイクル疲労を起こしたわけでございますが、
シースが正しく入っていた場合には、この
振動をある程度抑制する
効果があったということでございます。これが曲がって入っていたために、この抑制する
効果が小さく、
温度計さやの
設計の最も悪い点が如実に出てしまったということでございます。
今回、この
調査の結果回収いたしました
シースにつきましても、さまざまな
実験をしました結果、ちょうどこの細い
部分から太い
部分に変わります
段付部、このあたりで接触をしていたために、
破損した
温度計につきましても、こすられた後、ここに、この図には
摺動痕と書いてございますが、こういったものが実際に観察できた次第でございますし、
実験の結果も、百五十ミリほどのところで曲がって入れた場合には、同じような
摺動痕ができるということまで確認した次第でございます。
なお、今回の
調査は、結果的には、
シースが入っていなかった場合には、むしろもっと早く壊れただろうということを示唆するものでございます。
もう
一つの点でございます、
ナトリウム漏えい燃焼実験について御説明申し上げます。
今回、漏えいしました
ナトリウムと
ライナーの
化学反応について調べますために、
燃焼実験を行いました。二回行ったわけでございますけれども、一回目の
実験は装置の故障で途中で中止してございます。二回目の
実験は六月に行ったわけでございますけれども、このときは「
もんじゅ」
事故とほぼ同じ時間、
ナトリウムを漏えいさせました。七百キロほどの
ナトリウムを漏えいさせたわけでございますけれども、この際の
状況について御説明申し上げます。
一番
最後の
資料に、「参考2」といたしまして図によって示してございます。
「
もんじゅ」
事故の場合には、漏えいいたしました
ナトリウムは
温度計の壊れた
部分から外に出たわけでございますけれども、
空気中で直ちに
空気と
反応いたしまして、燃えながら、
酸化ナトリウムあるいは過
酸化ナトリウムになりながら床の
ライナー上に落ちたわけでございます。これが床の
ライナー上に落ちて、さらに、落下してきた
ナトリウムは表面で燃え続ける。ただし、堆積してまいりましたから、その内部では鉄と
酸化ナトリウムとが
反応いたしまして
複合酸化物を生成した。
この鉄と
ナトリウムと酸素との
酸化反応が起こったということは、既に昨年の五月の
段階でも見きわめをつけていたわけでございますけれども、今回
実験を繰り返すことによりまして、この
反応の
過程について、七百度から七百五十度Cの
温度で
反応が推移した場合には一時間当たり〇・二ミリから〇・三ミリの
減肉をする、結果的には三時間余り漏えいしたわけでございますから、ちょうど「
もんじゅ」の
事故におきましては合計で一ミリほどの
減肉になったといったことが確認できた次第でございます。
もう
一つ、
燃焼実験で行いました場合には、結果的には床の
ライナーに穴をあけてしまいました。この
原因についても今回
調査をしたわけでございます。
この
実験におきましては、「
もんじゅ」の設備とは
実験の設備が相当違ったものでございました。コンクリートで囲った比較的狭い空間で
実験を行いましたから、
ナトリウムが燃え出しますと周りのコンクリート壁の
温度が上昇いたしました。その
過程で、コンクリートは百度C以上になりますと、含まれております多量の水分が放出される結果となりました。この水分が燃えております
ナトリウムに
反応いたしまして、
ナトリウムの水酸化物を多く生じたということでございます。水
酸化ナトリウムが生じまして、これが床
ライナー上にたまる結果になったということでございまして、このたまりました水
酸化ナトリウムの上に、さらに燃えながら
ナトリウムが落下し、それが浮くような格好で
反応が続いたということでございます。
結果的には、この
反応の
過程で、鉄、イオンがこの溶融塩上の
反応の
過程にイオンとして溶け出すといった
過程で腐食がどんどん進んだということが分析できた次第でございます。この
反応を私どもは溶融塩型の腐食と呼んでおります。
別途行いました
減肉等の腐食
実験におきましても、この
反応が起きますと、実際、この
実験におきましては「
もんじゅ」の
事故とは異なりまして百度ほど高く、すなわち八百度から八百五十度Cほどの
温度で
反応が進んだわけでございますけれども、その
過程では、一時間当たりの腐食量、
減肉量が二ミリから三ミリに及ぶということも確認いたしました。そうしますと、結局、三時間余り
実験を続けたわけでございますから、鉄板には六ミリほどの穴があいてしまったといったことが十分確認できたという次第でございます。
このように、
実験を通じまして、「
もんじゅ」の
事故におきましては
ナトリウムと鉄とが酸素との間で
複合酸化物をつくるような腐食が起きた、
実験におきましては溶融塩型の腐食が起きた、それぞれ全く違った
反応が起きたということを見きわめた次第でございます。
このような結果を踏まえまして、本日
報告書を取りまとめまして、先ほど
原子力安全
委員会に御
報告した次第でございます。その時点でもって公表させていただきました。
今後は、さきに、昨年の十月に、このような
原因究明と並行いたしまして、既に「
もんじゅ」の
安全性総点検を始めてございます。これは、今回の
温度計の
設計ミスのような、同じような過ちがほかにないかどうか、あるいは、運転マニュアル等に見られましたようなふぐあいかないかどうか、こういった点を洗いざらい調べようという作業でございますけれども、今後は、今回の
原因究明過程で得ました新たな知見をこのような
安全性総点検に
活用いたしまして、
安全対策を
検討してまいりたいと存じております。
また、このような「
もんじゅ」の
事故に関連いたしましては、安全
委員会におきましても別途専門家を動員いたしまして
検討を行っております。
原因究明でございますとか再発防止策、こういった議論をしておりまして、昨年の九月には、二次系で
ナトリウムが漏れた場合の安全
評価を行うべしといったことを御指摘をいただいております。果たして
実験で行ったような内容が実際の「
もんじゅ」で起こり得る余地があるのかどうかといったような点につきましての
評価を、これから行いたいと思っております。このような
過程におきまして、今回
原因究明の
過程で得ました知見につきましては、積極的に
活用してまいりたいと存じている次第でございます。
以上で御説明を終わらせていただきます。