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池田国務大臣 私ども、対ロ
外交では非常に重大な
課題を抱えております。何といいましても、
北方領土の問題を
解決して、そして平和条約を結んで
関係の正常化を図らなくちゃいけない、こういった大きな
課題でございます。
それと同時に、一方におきまして、
ロシアもあのような大きな変革がございまして、旧ソ連とは全く違った道、我々が歩んでいるのと同じ方向の道を目指して今改革の
努力をしているわけでございます。そういったこともにらみながら、いろいろな面での
交流の強化もしていかなくちゃいけないと思っております。
そのような観点から我々も今対ロ
外交に取り組んでおるところでございますけれども、私どもといたしましては、この
領土の問題と同時に、
領土の問題を
解決するために好ましい
環境、条件を整備していくという問題を車の両輪のごとく進めていかなくちゃいけないという
考えを持っております。
具体的には、昨年の十一月に東京で開きました
プリマコフ外相と私との間で、そういった
考えをこちらから強調したわけでございます。それに対してプリマコフさんの方も、
日本の
考え方はわかるけれども、
ロシア側としては、
環境整備をまず先行させて、それから帰属の問題をという言い方をしたわけでございます。しかし、
日本の言うように、それを先送りしたり棚上げにしたりしてはいけない、ましてや帰属の問題に関する作業にブレーキをかけるものであってはいけない、そんなことはするつもりはないということは
ロシア側も明確に申したわけでございます。
そんなことを踏まえましてずっと
交渉を進めてまいりまして、先般、私がまたモスクワへ行きまして、エリツィン大統領にもお会いし、また
プリマコフ外相とも会談をしてまいりました。そういった中で、この問題の
関係についてさらに我が方の基本的立場を述べましたけれども、
ロシア側は、それはわかるけれども、まずは経済面の
交流等々、いわば
環境整備の話がまずというような立場は依然として崩さなかったわけでございます。
しかしながら、基本的に、先方も
領土の問題が重要であるということは、これは九三年の東京宣言に四島の名前をすべて明記し、この問題の
解決のために
努力しなくちゃいかぬということをうたっているわけでございますから、それを土台にして双方で
努力していこうということは向こうも認めております。
その上で、先ほど
委員も御
指摘になりましたが、私どもの方からは、今世紀中に起きた問題だから今世紀中に何としても
解決する、いや、最終的な
解決に至らないにしても、その方向があるいはめどが明確になる、それを求めて
全力を傾けなくちゃならないじゃないかということも繰り返し主張しております。先方も、そのことは意欲的に、積極的に、精力的に取り組まなくちゃいかぬという必要性はあれしておりますけれども、時期を明定することにつきましてはなかなかうんと言わないというのが現状でございます。
しかし、
政府間じゃございませんけれども、
ロシアの世論に非常に大きな
影響力を持つ、いわばオピニオンリーダーズといいましょうか、言論界の
方々と今回もモスクワで話しましたときには、おもしろいことを言う人間もおりまして、私が何としても今世紀中に起きた問題は今世紀中にと申しましたら、うーんと言いながら、二〇〇五年というのはどうだろうということを言ったことがございます。二〇〇五年とは一体何かと申しますと、ちょうど
日本海で日露が、かつての
ロシア帝国と
日本が戦ってから百年ということなんですね。
これは
政府じゃございませんからなんでございますけれども、ともかく我々も、ただこの問題は大切ですよ、
解決しなくちゃいけませんよという確認を繰り返すだけではなくて、一歩でも二歩でもその方向へ向かってきちんと進めなくちゃいけない、こういうことを
考えておるわけでございます。
それと同時に、
環境整備の観点で、先ほども議論がございましたが、
北方領土の
関係の、例えば
ビザなし
交流の枠の拡大だとかそういったこともしておりますし、それから、漁業の
関係の
枠組み交渉につきましては、今、本当に早期の
決着に向けて最終的な段階という、その決意を持って最善の
努力をしている次第でございます。
それからさらに申しますと、両国の経済
交流関係を促進するために、この九日に
ネムツォフ第一副首相を迎えまして
貿易経済に関する
政府間委員会を開きましたが、そこでも大分いろいろな進展が見られました。
具体的に申しますと、極東の地域に重点を置いて
我が国の経済協力を進展させていこう、そのための
ロシア側の税制とか法制とかいろいろな
環境の整備が必要である、あるいは
日本の方からは市場経済移行に対するいろいろなテクニカルな面も含めた技術協力が必要である、そういったものを強化していこうという話もいたしました。
そういった中で、具体的に、例えばサハリンで行われております天然ガスとかあるいは石油の開発のプロジェクトについての
環境整備が進み、さらに進展する明るい展望があるなということも確認し合いましたり、輸銀の融資の
関係で、四億ドルか五億ドルの二つの枠があるわけでございますが、その五億ドルの枠の
関係で三件、それで百六億円
相当の合意をしまして、輸銀と先方の担当銀行との間の署名も了したというふうな進展もあったというようなことでございます。
今後、
ロシアのマクロ経済が一応安定を取り戻し、将来へ向かって発展の段階を迎えるという中で、
ロシアの内外からの投資というものが非常に大きな役割を果たすという観点から、
日本からの対ロ投資の促進もやっていこう、あるいはそういった内外からの
ロシアにおける投資が上がっていくために必要ないろいろな
環境、条件を整備する上において
日本が協力していこうというようなことも話し合いまして、そういった問題について
考え方の大枠が固まりましたら、デンバーで開かれます
日ロ首脳会談において、その面での具体的な進展を図るような話し合いを首脳間でやってもらおうじゃないかというような話もしたところでございます。
そういったことでございまして、ほかにも政治や安全保障の問題も含めてのいろいろな対話もここのところ緊密に進めておりますが、あくまで
領土問題を
解決して正常化を図るというこの
課題を着実に進めるということを忘れずに、一方において各分野での
交流を深めてまいりたい、こう
考えている次第でございます。