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1996-12-16 第139回国会 参議院 国際問題に関する調査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年十二月十六日(月曜日)    午後二時開会     —————————————    委員異動  十二月九日   辞任       補欠選任    木庭健太郎君    山崎  力君    梶原 敬義君    松前 達郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     会長          林田悠紀夫君     理 事                 板垣  正君                 南野知惠子君                 魚住裕一郎君                 益田 洋介君                 上田耕一郎君                 武田邦太郎君     委 員                 尾辻 秀久君                 笠原 潤一君                 木宮 和彦君                 北岡 秀二君                 馳   浩君                 林  芳正君                 山本 一太君                 石井 一二君                 今泉  昭君                 小川 勝也君                 直嶋 正行君                 田  英夫君                 松前 達郎君                 笠井  亮君    政府委員        外務省アジア局        長事務代理    槙田 邦彦君        外務省経済局長  野上 義二君    事務局側        第一特別調査室        長        入内島 修君    説明員        外務大臣官房審        議官       東郷 和彦君        外務大臣官房審        議官       中島  明君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際問題に関する調査  (アジア太平洋地域の安定と日本役割」のう  ち、APECマニラ会議アジア太平洋地域の  経済情勢について) ○継続調査要求に関する件     —————————————
  2. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) ただいまから国際問題に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る九日、木庭健太郎君及び梶原敬義君が委員を辞任され、その補欠として山崎力君及び松前達郎君が選任されました。     —————————————
  3. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) 国際問題に関する調査議題といたします。  本日は、「アジア太平洋地域の安定と日本役割」のうち、APECマニラ会議アジア太平洋地域経済情勢について外務省から報告を聴取した後、質疑を行います。  議事の進め方でございますが、まず二十分程度外務省からAPECマニラ会議報告を聴取した後、それを受けまして外務省に対し二時間三十分程度自由に質疑を行っていただきます。  なお、従来どおり、報告質疑、答弁は着席のままで結構でございます。  それでは、まず外務省から報告を聴取いたします。野上経済局長
  4. 野上義二

    政府委員野上義二君) 御報告させていただきます。  一九八九年に開始されたAPECは本年で八年目を迎えるわけでございます。一昨々年のシアトル会合以降、急速に進展の進んだアジア太平洋地域における貿易投資自由化円滑化作業を着実に実行する。御承知のとおり、昨年の大阪APEC会合APEC行動指針というものが合意されたわけでございますが、その行動指針に基づいた各国行動をことしから実施するということで、いわゆる行動元年というふうに申しておりますけれども、行動の年に入ったわけでございます。  それから、APEC発足以来、広範な分野においていろいろな活動を進めてまいりました経済技術協力は、自由化促進を補完、強化するものとして認識されておりますが、これの一層の活性化が図られたというのが今次のAPEC内容でございます。  今次のAPEC閣僚会合は、まず十一月二十二、二十三日、閣僚レベル会合が行われ、二十四日の夜及び二十五日、首脳レベル非公式会談というふうに位置づけられます。  この閣僚会合におきましては、お手元に資料として届けさせていただきましたが、閣僚共同声明というのが発出されました。その閣僚共同声明内容としては、まずAPECマニラ行動計画96、MAPA96と言っております。  これが四部に分かれておりまして、まず全体の概要。それから先ほど触れさせていただきました大阪行動指針に基づいてつくられた国別貿易投資自由化計画、これが十八経済から出ているわけでございます。それから共同行動計画、これは個別のものではなくてAPECの十八のメン八一が共同して行うという意味で、例えばデータベースでありますとか関税分類の統一でございますとか、そういったいろいろな問題が含まれた共同行動計画。それから第四部として経済技術協力分野活動成果というものが取りまとめられたものでございます。  実際のMAPA96は、各国計画が別添されましたので厚さにして約一二十センチメートルぐらいのものでございますので、配付はちょっと控えさせていただきましたけれども、そういった大部の行動計画が採択されたわけでございます。  今度のマニラ会合、特に閣僚会合でどういった議論が行われたかを簡単に御説明させていただきます。  先ほど触れさせていただきましたように、シアトルが第一回でございますけれども、第一回の首脳会談で、米国より、アジア太平洋共同体意識というようなものを育成していくために、各国がそれぞれ貿易投資自由化を進めてはいかがかというビジョンが出されたわけでございます。  それを踏まえまして、次の年、一昨年でございますが、インドネシアのボゴールボゴール宣言というのを採択いたしまして、開発途上国については二〇二〇年、先進国については二〇一〇年までにそれぞれの国が貿易投資自由化を進めるための行動計画をつくるということが原則として合意されたわけでございます。  それから、それを踏まえまして昨年の大阪APECで御承知行動指針、これは言うなればシアトルビジョン、それからボゴール目標、そして大阪においてはそれの行程表というものが原則として合意されたわけで、ことしのマニラでその行程表に基づいた第一回目の行動計画が出されたということでございます。  この行動計画は十月末に締め切られましたが、それまでの間に我が国におきましては二回各国との協議を踏まえて行動計画を書き直して精緻化し、十月に提出したもの、言うなれば今度のMAPA96に別添されている我が国行動計画というのは我が国の第三次案ということでございます。これは今後、毎年各国協議をしながら、我が方の経済情勢、国内の制度変更等を踏まえて大阪行動指針に乗った形で一層の改善を図っていくことになっています。同様に、各国行動計画も今後協議を通じて改善をしていくということになっております。  ただ、この点で一つ特記しておくべきことは、APEC自由化行動計画というのは各国がそれぞれ独自に行うものであって、WTO合意のように交渉によって双方を拘束するといった形で合意されるものではございません。  それから第二点でございますが、経済技術協力の再重視という点で、経済協力開発強化に向けた枠組みに関する閣僚宣言というのも出されております。これは、人材養成産業技術中小企業等の各分野でいろいろ合意が既にできておりますし、またいろいろなグループが活動しておりますので、そういったような活動を取りまとめて仕分けし、目標とか指導原則とか優先事項を取りまとめたものでございます。  貿易投資自由化が進展していくに従って、やはり開発途上国の中には経済技術協力強化というものがないと貿易投資自由化促進もできないし、またそういった貿易投資自由化を実施していく上でも経済技術協力が必要であるといった点が再認識されたという点でございます。  次に、今度のAPEC閣僚会合のもう一つの柱でございますが、これは実は先週、十二月九日から十三日までシンガポールWTOの第一回の閣僚会合が開かれたわけでございますが、APEC閣僚会合はその直前に地域関係閣僚が集まるということで、できる限りシンガポールWTO閣僚会合APEC地域として支援し、その成果を前向きなものとするということを目的としてかなり活発な議論を行いました。  特に、WTOシンガポール会合合意された情報技術合意ITA、これは半導体であるとかコンピューターといった情報技術分野の機器についての関税を相互に撤廃する合意でございますけれども、このITA合意についてぜひシンガポール会合でまとめようというために、APECマニラ会合でも各国の間で活発な意見やりとりが行われたわけでございます。  また、WTO作業計画に盛り込まれるべき個々の事項等についても、できる限りAPEC地域の実情を反映し、かつ前向きなものとし、もってAPECの方の貿易自由化等に貢献するという形での議論も活発に行われました。  さらには、APEC十八メンバーのうち中国台湾がいまだにWTO加盟国でない、メンバーでないということから、できる限りWTO普遍性を確保するために、APECメンバーであってWTO加盟していないメンバー加盟促進ということについても種々議論が行われ、結論から申しますと、そのためのWTOにおける加盟交渉促進するということが結論でうたわれたわけでございます。  以上の課題に加えまして、我が方が大阪で強く主張いたしましたAPEC地域長期的課題、これはAPEC地域貿易投資自由化促進され、かつ経済成長促進されるに従って、食糧人口エネルギー環境といった中長期的な制約要因というのが出てくる。そういった問題についてAPEC地域の中でできる限りの意見交換を図り、認識の共有化をするというのが目的でございます。  今後のAPEC地域における人口増、それに伴う食糧事情あり方エネルギー需給あり方、それからこういった点の経済成長が高まれば当然のことながら環境への負荷が高まるわけで、そういった環境への負荷というものをどういうふうに考えていくかということについての中長期的スタディーでございます。  これは日本が過般の大阪会合提案した問題でございまして、現在、中でも食糧問題について日本と豪州が共同議長でタスクフォースをやっておりましてへAPEC地域食糧需給というものが今後どうなっていくかというような点についての検討を開始しております。  最後に、今次のAPEC閣僚会合で一番問題となりましたのがAPEC新規加盟をどうするかということでございます。現在十八のメンバーがございますが、これに対して十一ほど新たな加盟を希望しております。この中にはベトナムであり、ペルーであり、ロシアであり、インドであり、アジア太平洋地域からいろいろな国が手を挙げているという状況でございます。  しかしながら、APECは、今度のマニラ会合までは作業の中身の充実化を図る、深化を図るということから、メンバーの拡大についてはマニラまで凍結するという合意ができておりまして、今度のマニラ会合各国行動計画が出たことをきっかけとして、その凍結を解除し、新規メンバー加盟の問題を検討するということが合意されていたわけでございます。  しかしながら、この新規加盟の問題につきましては種々議論を行い、いろいろな立場が錯綜しておりましたが、基本的にはまず新規加盟凍結は解除する。しかしながら、参加申請審査のための基準をより精緻にし改定した上で、九七年、来年でございますが、バンクーバーAPEC会合が開かれますけれども、このバンクーバーで新しい基準を採択する。そして、その新しく採択された基準で九八年、これはクアラルンプール会合予定されておりますけれども、このクアラルンプール会合においてその採択された基準に基づいて新規メンバーを発表する。それで、九九年のオークランド、これはニュージーランドのオークランドでの閣僚会合に初めてその新規メンバー参加する。凍結は解除するとしたものの、若干時間を置くことによって問題の詰めを行うという形で結論が出ました。  しかしながら、この問題については、後に触れます二十五日の首脳会合で、一部のASEANの首脳から時間がかかり過ぎるという声が出て種々議論をされたわけですが、明確な結論を得ないまま首脳会合が散会したために、現在のところ今申し上げたような形の参加のスケジュールが合意されているということでございます。  次に、十一月二十四日の夜及び十一月二十五日に行われました首脳会合について御報告させていただきます。  二十四日の夜の非公式首脳会合を踏まえ、二十五日、首脳十八メンバーマニラから車で約三時間ほど離れましたスービック会合を行いました。ここにおいては、APEC経済首脳宣言というのを発出しております。これはお手元に届けさせていただいていると思います。  まず、首脳宣言を採択した後に、議長であるラモス大統領より、今次の首脳会合においてはアジア太平洋コミュニティー、これは欧州共同体というような厳格な意味共同体ではなく、何といいますか地域の連帯といった意味でのコミュニティーでございますが、そのために今後何をすべきか。それから、これはリヨン・サミットでも議論された議題でございますが、経済グローバル化に対してAPEC地域はどう対応していくか。さらには、自由化計画が提出された後のAPECの、何といいますかモメンタムの維持といいますか、APECが今後の自由化促進していくための力の源をどこに求めるかというような話。それからもう一つは、今後膨大な資金需要が予想されているAPEC地域インフラ整備、このための資金というものをどういうふうに手当てしていくか。こういった点について首脳間で忌憚のない意見交換をやってもらいたいという問題提起がございまして、各国からそれぞれこういった問題について首脳の発言がございました。  サミットのこういった首脳会談のルールでは、各国首脳がどういった点を述べたかということは公表しないということになっておりますし、またAPEC首脳会合というのは首脳のみが入るという会合でございまして、補佐官も入り得ない。スービック会合は本当に十八人だけでやった会合でございますので記録等もございません。そういった点で、具体的な各国議論内容については御説明申し上げることは御容赦いただきたいわけでございますが、我が国からは、総理の方から幾つかの点を提案させていただきました。  まず第一点が、アジア太平洋共同体意識を形成するとの観点から、情報通信インフラを整備する。そのために、神戸に開設する予定アジア太平洋情報通信基盤テクノロジーセンター、これは郵政省が所管でやっておられますけれども、このテクノロジーセンターAPEC地域の利用に供する。  それから第二点は、先ほども申し上げましたが、環境問題につきまして積極的に取り組むべしということから、太平洋環境保全のために我が国として幾つか貢献すると。  一つは、これは科学技術庁が主管でやっておられるADEOSという地球観測衛星のデータをAPEC地域共有化する。それからもう一つは、日本米国とが日米のコモン・アジェンダの関係協力してやっておりますサンゴ礁保全。これは具体的にはもうパラオで実際にパイロットプロジェクトを始める予定でございますけれども、パラオパイロットプロジェクトに見られるような、アジア太平洋地域におけるサンゴ礁保全といったような問題から、とりあえずアジア太平洋、特に太平洋海洋環境保全日本協力するという提案をいたしました。  第三点は、アジア太平洋地域における、先ほど申し上げました、膨大なインフラストラクチャー、道路とか港湾とかそういったインフラ需要に対応するため民間投資を入れることが必要でございますので、民間投資を呼び込むために各国貿易保険機関協力及びインフラ情報ネットワーク、これはインフラ情報インフラプロジェクトについてのホームペ−ジを開くといったような、そういった形でのインターネットを通じた協力を考えておるわけですが、そういったものについても考えていこうという提案をしました。  さらには、APEC活動の対象である経済問題をより幅の広い視野からとらえて、例えば麻薬や銃器の不正取引防止対策等国境を越えた社会経済問題についてもそろそろAPECとして取り上げる必要があるのではないかといった点を総理の方から各国提案いたしました。  今後のAPEC課題でございますが、貿易投資自由化円滑化は、先ほど申し上げましたように、それぞれ各国から計画が出て、これを毎年レビューをしながら、協議をしながら改善していくという点。それから、先ほど申しましたように、自由化が進むにつれ、また自由化促進するためにも、開発途上国に対する経済技術協力強化していく必要があるということから、こういった点についても強化をする必要がある。それからもう一つは、先ほど申し上げましたような国境を越えた社会経済問題といったような新しい課一題にAPECとしてどうやって取り組んでいくか、こういった点についてもよく考えてみる必要があると思っております。  最後に、今次のAPEC会合におきましては民間部門が非常に活発に参画いたしました。これは、APECにはAPECビジネス諮問委員会というのがございますが、日本から三名の経済人財界人諮問委員として参画しております。  それに加えて、フィリピン側が今次会合APECビジネスフォーラムという大きなビジネスマンだけの会合を組織しまして、ビジネスマン同士の対話及び政府出席者閣僚との意見交換等も行いまして、APEC貿易投資自由化の過程に財界人経済人を積極的に取り込んでいくというプロセスをフィリピンがつくっていったわけで、これは今後ともカナダ等に引き継がれて続いていくと思いますけれども、地についた貿易投資自由化議論が続けられるというふうに理解しております。  私の方からはとりあえず以上でございます。
  5. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) ありがとうございました。  以上で報告の聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  質疑を希望される方は挙手を願い、私の指名を待って発言していただきたいと存じます。  それでは、質疑のある方はどうぞ挙手をお願いいたします。
  6. 馳浩

    ○馳浩君 御説明ありがとうございました。  まだちょっと私が十分理解できない点もありますので、幾つか御質問申し上げますので、よろしくお願いいたします。  まず、APECメンバーである中国台湾WTO加盟させるように積極的に関与を働きかける必要性があるとおっしゃいましたが、どういうふうに具体的に日本として働きかけていかなければいけないのか。WTO加盟させる必要性というのは我々は重々承知しているわけですが、どういうふうに具体策といいますかさせなければいけないのか。要は本音を言えばその点にあると思いますので、その点でのAPEC会議における各国取り組み状況等の御説明をもう少し詳しくお願いいたしたいと思います。  それから、これまた基本的なことですが、新たに十一カ国がAPECの新メンバーになりたいと手を挙げている。この中で、とりわけロシアなどの加盟というのは日本にとっても非常に意味のある挙手だと思いますが、その審査基準というのが十分書かれていないので私も存じません。もしロシア加盟させるとなったときに、ロシア側加盟希望の意図というものをどういうふうに日本側としてとらえているのか。同時に、それによって得られる我が国の影響、変化というものは何なのか。ロシア加盟させるときの審査基準というのはどの点にあるのかという点を御説明いただいて、最終的には加盟させることが日本の国益に非常に有利であるならば積極的に私たちは関与していかなければいけないと思いますので、その点の一御説明をお願いいたします。
  7. 野上義二

    政府委員野上義二君) まず第一の中国台湾WTOへの加盟でございますが、御承知のように一九八六年にこれらの国及び経済WTOへの、そのときはまだガットでございましたけれども、加盟申請が出されてもはや十年たっております。我が国主要貿易上位五カ国、国という言葉はちょっと使いにくいんですけれども、台湾がありますので。我が国主要貿易相手先五者のうちの二つがWTO加盟していないという状況でもございます。したがいまして、我が国としてはこれらのAPECメンバーができる限り早急にWTO加盟し、WTOの規則を遵守してもらうというのが望ましいことでございます。そういった点で、我々としては中国及び台湾WTO加盟というのは支援しているわけでございます。  我が国において、中国加盟のためのいろいろな問題点を整理し、議論するための有識者を含めた会合等も最近十一月に開かせていただいておりますが、具体的にはWTOへの加盟という手続は二段階に分かれます。  第一は、WTOの現在のメンバーと新たに加盟を希望するものが、それぞれがマーケットアクセス市場アクセスについて二国間交渉を行う。その二国間交渉の妥結を待ったところで加盟議定書というのをつくるわけです。中国の場合も台湾の場合にもいまだこの二国間交渉が終了しておりません。加盟議定書交渉もしたがいまして終了しておりません。したがって、今次のAPEC会合閣僚宣言の中で、この市場アクセスに関する二国間交渉、例えば我が国から特定の産品に対しての中国の持っている関税が高い、日本監視品目についてこれを下げてくれというような話をして、そういったやりとりをするのが二国間交渉でございますけれども、言うなれば入会金のようなものでございますけれども、二国間交渉促進すること、もって議定書交渉をも促進する、こういうことにしております。  台湾の場合には、議定書は全然難しい問題はないと思います。と申しますのは、台湾の場合には経済制度が非常に改善されておりますので、他の東南アジア諸国等WTO参加したときの議定書乏ほぼ同じものでよろしいかと思いますが、御承知のように中国社会主義経済体制でございますので、それに伴った特殊な議定書が必要かと思われます。これについてはいろいろ議論が行われておりますが、いまだに議論の収れんを見ておりません。  しかしながら、APEC加盟メンバー十八カ国、香港を含む十八メンバーはできる限りこれらの交渉促進するという合意ができているわけでございます。私どもといたしましても、できる限り中国側に柔軟な態度を求めると同時に、我々としても今のWTOメンバーの中で必ずしも足並みがそろっていない点について協議しながら、できるだけ中国台湾WTOへの早期加盟を図っていくという方針で考えております。  それから、APEC加盟審査基準でございますが、APEC審査基準につきましては、まず原則として、アジア太平洋地域に存在する経済であって他のアジア太平洋地域諸国と強固な経済的つながりを有すること。それから第二は、APEC目的及び原則を受け入れること。それから第三点はすべての参加メンバーの同意に基づいて加入すること。今まではこれしか決まっていないわけでございます。ただ、これは余りにも漠としていて、もうちょっとじゃ強固なつながりというのは何であるのかといったような点について、今後来年のバンクーバー会合までにこういった点をより精級化するということでございます。  ロシアについてでございますが、ロシアについてはかねてよりAPEC加盟を希望しておりまして、我が方といたしましてもそういったロシアの意向は踏まえてAPECの場でもいろいろ対応しております。他方、例えばいろいろ数値的な基準をとってみますと、ロシアは必ずしもアジア太平洋地域との経済の強固なつながりがあるというふうにはいまだ言えないわけでございます。ロシアのアジア部分をとればかなり比率は高くなるんですけれども、ロシアの欧州との関係といった点を考えながら相対的に見ますとアジア太平洋地域と強固なつながりがある、他のメンバーに比べてよりアジア太平洋とのつながりが強固であるということは数量的には必ずしも言えないということが現状でございます。  したがいまして、こういった点をどう考えていくか。APECに入ればこういったつながりがより強固になるという議論もございますが、他方、現在のところアジア太平洋地域とより強固なつながりを持っている他の希望国をさておいてロシアが入るのがよろしいのかどうか、この辺は各国の相当の意見の食い違いがあるということでございます。
  8. 笠井亮

    ○笠井亮君 御説明ありがとうございました。  今度のAPECの問題ということでいろいろ伺いたいことがあるんですけれども、二つ御質問したいと思います。  一つは、先ほどの御報告の中でWTOへの貢献ということで今回大きな特徴の一つだということを言われました。去る十月、野上局長がたしか経団連にお話をなさったときに、途上国は投資の受け入れの是非というのは自国の主権問題にかかわるという立場をとっている、WTOにおいて投資問題を取り上げることについては懐疑的だというような趣旨のことをお話しされたというふうに私伺っているわけですけれども、そういう中で、まさにアジアの中の日本役割というのが厳しく問われた会議じゃなかったかというふうに思うんです。  去年の大阪会議で、日本は、いわばアメリカ主導でシアトル以降取り上げられてきた自由化を強く求める方向と、それにいわば抵抗するといいますか途上国の間を取り持つ姿勢をそれなりに見せたという指摘も中にはあったと思うんです。  今回見てみますと、いろいろ報道その他で拝見しているんですけれども、日本が非拘束的投資原則強化を求める側、それから他方でマレーシアが抵抗する、抵抗というんですか途上国の側の先頭に立って何としても投資受け入れ国を拘束する方向で投資原則強化させようとするという、日本政府の立場が鮮明になったという形で論評その他もあるということを私も見聞きしているわけです。  それから、日本が主導する貿易保険構想の問題もありますね。この問題でも、日本やアメリカの企業による事業を保護するために途上国に保険金を分担させるという、そういうやり方がいわば反発を呼んだという形も言われたりもしているわけです。  そこで伺いたいのは、そういう経過も見てみまして、前回の調査会でもこの夏の調査会の海外派遣の際の報告がありまして、その中で私が注目した一つは、タイの学者から、日本は東南アジアの国々と話をするときにアメリカと話をする言葉を使っているんじゃないか、池田外相は違ったランゲージで話しているという厳しい指摘をしているという話を報告の中で聞いたんです。いわゆる先進国の中でアジアの一員である日本への期待が大きいだけに、先ほど申し上げたような役割日本政府が演じていていいのかどうかと率直に思うわけですけれども、その辺での御見解を伺いたいと思います。  それからもう一つAPECそのものはもともと経済協力を自由に議論して進めていこうという枠組みとして始まったということがあると思うんですけれども、去年の大阪会議の直前にアメリカのペリー国防長官が政治安保問題を協議する場にしたいという趣旨の発言をして、当時の村山首相も基本的には賛意を表明するという形で、それに対してマレーシアのマハティール首相が大反対したという経緯があったということを承知しているんです。  今回の首脳会議の中でこの問題がどうなったかということでありますが、議長国であったラモス・フィリピン大統領が会議を前にして、現段階では経済問題に集中すべきだということで、政治安保機構化をAPECがしていくことについては時期尚早という見解を示すなど、アジア諸国の中にはクリントン政権が目指すような政治安保を含めたアジア太平洋共同体構想に強い警戒感があるというふうに言われております。  今回の会議では、報道その他で伺っている範囲では、そして御報告の中にもなかったので政治安保問題は議論されなかったということだと思うんですけれども、経済分野でアメリカが考えたような貿易投資自由化路線のレールを今回APECの中に敷いて行動の段階ということになった以上、こういう定例化されてきた首脳会議が今後次第に政治的な色合いを濃くしていくというような可能性が避けられないという指摘もあると思うんです。  実際に、局長の報告最後我が国からの具体的提案というところでお触れになって、APEC活動の対象である経済問題を広い意味でとらえていくと。当面は社会経済問題について幾つか麻薬とかその他ありましたけれども、取り上げるということで検討するように呼びかけたということがあったんですけれども、そういう形で経済問題から対象を広げていけば、一方で政治安保化というようないろんな考えもある中で、行き着くところは政治安保機構になっていくことにならないかという点で、現時点で政府、外務省としてはどういうふうにその点を考えていらっしゃるか伺いたいと思います。
  9. 野上義二

    政府委員野上義二君) まず投資の問題でございますけれども、結論から申し上げますと、先週九日から十三日までシンガポールで行われましたWTO会合におきましては、WTOにおいて今後投資問題を検討する作業部会を設立することに合意いたしました。これは全会一致、コンセンサスで合意でございます。このもとにございますのが先生も御指摘になったように日本でございますけれども、日本投資についてより安定的なルールを今後国際的な普遍的な投資に関するルールをつくるということを目的として、ジュネーブのWTO閣僚会議の準備の過程におきまして具体的な提案を行いました。  その提案につきまして、カナダ及びブラジル、チリ、モロッコ、韓国、こういったような先進国及び途上国双方の、約十四カ国の共同提案国を得て、シンガポール閣僚会合までにこれを出していったわけです。APECの過程におきましては、マレーシア、インドネシア等を中心に投資問題についてはまだ早いとか難しいとか、かなり抵抗がございました。それから、もう一つのグループとしてインド等、要するに投資問題というのはその国の主権に属することであるということを言うグループもございました。  しかしながら、御承知のように、東南アジア諸国、特にASEANを中心とする東南アジア諸国貿易の伸び、特に輸出の伸びというのは基本的には各国からの直接投資の受け入れの伸びに正比例して伸びているわけでございます。そういった意味で、我々としてはこういった諸国が法的な基盤を含めてより安定的な投資基盤を整備していくことがこれらの国の経済の成長につながるということも考えて提案しているわけで、ブラジルであるとかチリであるとかモロッコであるとか、そういったところが我々の提案を支持してくれたわけですけれども、そういった点でいろいろAPECの過程においては難しい問題がございました。  その後いろいろ意見交換を続け、例えばマレーシアなんかにも別途チームを派遣したりして協議していく過程において、今度のWTOシンガポール会合においてはマレーシアを含めASEAN諸国の支持を得られた、そしてこのWTOにおける投資グループの設立が決まったということでございます。  WTOにおいては、御承知のように表決等によらずコンセンサスによっての合意でございますので、WTOにおいて投資グループが合意できたということは、やはりこういった国の理解が得られたというふうに我々は理解しております。  ただ、今後、多国間の投資協定を交渉するかどうかということについては、いまだ時期尚早であり、今後二年ほどお互いに自由な意見交換をして作業を深め、そしてその作業の結果、多国間の投資協定をつくる必要が合意されたときにその交渉に入る、こういう二段構えになっておりますので、そういった点では途上国の意向を無視してごり押ししたということではないと思います。  他方、いろいろな他の分野、例えば貿易と競争政策等の分野において、これも日本が従来からジュネーブで提案してきた分野でございますけれども、こういった点についてやはり開発途上国の意向を踏まえて、単に競争政策の問題だけではなく、アンチダンピング等の貿易措置が競争政策に与える影響も踏まえたような広い形での作業になるように、日本等が中心になって欧米の説得をしてこれも今回合意できたわけで、そういった意味ではWTOの場において日本は、こういった点に若干の危惧を有していた途上国との話し合いと、それから先進国側のかなり強い意向との妥協を図りながら、日本提案を基礎に合意をつくっていったということが言えるかと思います。  したがいまして、今御指摘がありましたようなアジアの各国の意向を無視して、日本がごり押しをしたというような状況ではなかったと思っております。  APECにおける非拘束的投資宣言については、残念ながらこれは昔からずっとやっていた作業でもう限界が来ているわけでございます。したがいまして、我々としては、できればWTOで新たなより広い国の参画を得て協議を始めたいと考えていたわけでございます。そういった意味目的は達成されたと思います。  それから、第二点の政治安保の問題点でございますけれども、御承知のように、政治安保を議論するこの地域の機関としては、ASEAN地域フォーラム、それからASEANのPMC、ASEANの閣僚会議の後にポスト・ミニステラル・コンファレンスということで対話国が呼ばれていろいろ議論しております。こういった場が既にございまして、多角的にはこういった場で政治安保は議論し得るということで、APECで政治安保の議論は取り上げておりません。  しかしながら、先ほど申し上げました国境を越えた社会経済的な問題というのは、今後自由化を進めていく、グローバリゼーションが進む、それからインターネット等を通じての情報の流れがかなり自由になっていく、そういう中でやはりいろいろ考えていかなきゃならない問題が出てきている。  その具体的な例として、我々としては麻薬の問題、それから小火器、ピストル等でございますけれども、そういったようなものの国境を越えた不正取引について何らかのAPECの間での協力がないといけないんじゃないだろうか。これは一つの具体的な例でございます。具体的には税関当局等の協力を考えているわけでございますけれども、そういったようなものも今後徐々に考えていく必要があるということ。  それからもう一つは、今のグローバリゼーションにも絡んでまいりますが、やはり今後各国経済の発展及びグローバル化が進むにつれて、非常に伸びる社会の層とその影になる層というのが出てくる。これはリヨン・サミットでも橋本総理が言われたテーマで、そういった点から、御承知のように、ことしの十二月の初めに沖縄で東アジア社会保障会議というのがありました。この問題についてはAPECの場において、特に首脳会談の場において橋本総理からも御説明がありましたけれども、今後ともやはり経済の発展及びグローバル化に伴うそういった弱者に対する目配り、社会保障問題等に対する配慮というものを今後アジア地域全体で考えていきたいということでこういった会議を催したわけでございます。  そういった意味で、これは純粋にはいわゆるAPECが当初考えていた貿易投資という話からは外れますけれども、貿易投資自由化等をある意味で裏打ちするといいますか補完する意味で、こういった点についても徐々に議論をしていくことが必要ではないかと問題提起をしたわけでございます。
  10. 益田洋介

    ○益田洋介君 民間がかなり積極的に今回は意欲を示して、参加者も三名いらしたということで大変いいことだと思います。やはり官民一体となって総合的な力を出していかないと、標擁しているような目的達成には時間がかかり過ぎてしまうんじゃないかという気がしております。  先ほど局長からお話を伺っておりまして一つ気になりましたのは、ベトナムがまだ加盟国になっていない。民間の立場からしますと、経済市場という観点からはベトナムは非常に将来的に有望な国であるという見方が広くされておるわけでございますが、なぜべトナムが加盟基準に合っていないのか、あるいは政治的な背景があって全員のコンセンサスが得られないでいるのか、その辺の現況をお聞きしたいのが一点。  そして、民間投資ということでありますと、やはりどうしても世界貿易保険機構が相互補完的に各国において整備されないと全く意味がなくなってしまう。例えばシンガポールなんか加盟していないわけですね、機構自体を持っていない。そうなると、やはりリスクを全部しょって民間が威勢よく飛び込んでいくという時代はもう終わっていると思いますので、この保険機構については日本も相当力を入れて橋本総理提案をされていらっしゃる、力こぶを入れているということなので、具体的に、どういうふうな包括の仕方をしていくのか。  要するに、保険機構は今回九カ国で出発しているわけです。ですから、その辺の足並みがそろっていないという印象を非常に受けます。具体的には、日本もリーダーシップをとって、こうしたシステムの整備に努めていくわけでしょうけれども、どういうふうな促進方法をお考えなのか。とりあえずシンガポールなんかが保険機構に入っていないなんということは考えられないので、強固な協力体制とか関係とかとさつきお言葉を使っていたけれども、全然こういう意味からすると強固じゃない。むしろ余りの国家の機構の違いとか、それから経済の発展度合いの違いというものが色濃く出てきちゃって、協調体制がなかなか難しくなっている。  例えば保険機構なんというのは、本当に言ってみれば小グループ化ですよね。みんなで頑張って門戸を開いて互いに発展していこうという意図で出発した会合なんですが、何か求心力が出てきた部分と、あるいは遠心力で拡散してしまっている部分が出てきているんじゃないかという印象を持っているんですが、現実はどういうふうな状況でいらっしゃるか。それからまた、将来的にこうした経済力の違い、それから国の成り立ちの違い、運営の違いというものを乗り越えていかなきゃいけないわけでしょうけれども、どういった構想を外務省はお持ちでいらっしゃるのか。  それから三番目には、ウルグアイ・ラウンド後の特に農業製品の門戸の開放をかなりアメリカは厳しく今回迫ったというふうに伺っております。例えばマイケル・カンター商務長官が積極的に、会合を持たれていたときもそうだし、会合外でも相当アジア各国にアメリカの農業製品に対する門戸の開放を迫っていたと。現状はどうであったのかというお話を伺わせていただきたいと思います。  四つ目、大急ぎで申しわけないんですが、エデュケーションネットワーク、これは教育に関して各国が門戸を開いてよりよい教育、特に若年層あるいは青年層の教育に対してまた協力していこうという考えもあるやに伺っていますが、具体的に日本はどういう立場をこれから果たしていこうと考えているのか、それから各国の足並みはこのエデュケーションネットワークに対してどういうふうな現状なのか。  五つ目は、ちょっとこれは簡単で結構なんですが、食糧タスクフォースというのができて日本とオーストラリアが議長国になっております。これは中長期的な課題であると思いますが、議長国の一つとして具体的にこれからどういうふうな、シンポジウムを来年開くというふうなお話を先ほどされていましたが、シンポジウムもいいことなんですが、やはりかなりいろいろな形で啓蒙していかないといけない事柄だと思います。我が国がどういう姿勢で臨むのか、そしてまたオーストラリアの政府とはどのような具体的な意見交換を今までしてきているのか、その辺について御意見を拝聴したいと思います。
  11. 野上義二

    政府委員野上義二君) ベトナムのメンバーシップにつきましては、御承知のように我が方はコンセンサス、各国が皆合意するということを前提に支持しております。御承知のようにAPEC新規加盟国の加盟参加基準には各国の同意が前提でございますから、そういう意味では当然のことでございますがベトナムについては日本は支持してまいりました。  しかしながら、今ベトナムを含めてASEANが新たにラオス、カンボジア、ミャンマーを含めて拡大されるということも同時にASEAN側で決定しているわけで、一遍にこの四つが入れるのかどうかということについてはまたさらに詳しく吟味する必要があるかと思います。ASEAN側としてベトナムだけを切り離してこれを推し進めていくのか、それとも今申し上げましたベトナムに加えてラオス、カンボジア、ミャンマーまで含めてやっていくのか、ここについては今後ASEAN側の意向も十分聞いてみる必要があると思います。  ベトナムについて加盟を反対しているところは必ずしもございません。しかし、ベトナムと例えばもう一つ中南米ということに当然なってくるわけで、中南米のメンバーが入っていますので、そうなってくるとそれについてはいかがなものかという議論もあって、その辺が錯綜しているわけでございます。  したがいまして、この問題については、先ほど申しましたようにいろいろな議論を明年までに詰めまして、若干加盟はおくれましたけれども、これは全く私の個人的な予想でございますが、いろいろなプロセスを経て最終的には多分ベトナムとペルーは参加が認められる方向になっていくのかなという感じを持っております。  それから、先ほどの民間の参画でございますけれども、日本からAPECビジネス諮問委員会には三名の財界人の方に参画していただいておりますけれども、今回のマニラ会合にはそれに加えてフィリピン側が行いましたAPECビジネスフォーラムという会合がありまして、これには日本から約五十名の経済人参加しております。したがいまして、日本の民間の特にビジネス界のAPECに対する参画というのは非常に強固なものでございます。  それから、先ほど保険機構の御質問がございました。これは基本的には通産省の方の御所管で、今後の細かい点については私ども承知していないわけでございますが、今般APECで決まりましたのは、各国の既存の輸出信用機関及び保険機構の間での協力、情報交換等を強化する。それから、途上国の既存のでき上がった、今御指摘がありましたようなシンガポール等のないところもございますが、例えばタイなんかにはあるわけでございまして、そういったところに対しては技術協力を行い、今後先進国の輸出信用機関、保険機構と協力できるように技術協力を行っていく。さらには、そういった機関のないところに対しても技術協力を行っていってそういったものを助成していく、つくるように指導していくということです。  そのために、我が方としては、貿易投資自由化計画特別勘定というものを持っておりまして、これは昨年大阪日本が意図表明したわけでございますけれども、こういった特別勘定の費用を充ててやっております。今後とも技術協力等をやっていく意向でございます。  それから、農業につきましては、これはセミナーではなくて基本的には具体的な食糧問題を議論するタスクフォースをつくっておりまして、作業計画で現在の需給の分析をやられる、それから流通、加工、食糧関連の問題をやる、アグロビジネスでございますけれども、それからそういったものに関連する環境問題についての検討を行う、さらには将来の需給動向の見通し等を行っていく、こういった分野別に分けてやっております。  日本と豪州が共同議長をやっておりますけれども、食糧問題のタスクフォースの一番の問題は今後の食糧安全保障でございます。食糧安全保障については日本の考え方は御承知のようにあるわけでございますけれども、豪州は逆に、最も効率の高い農業生産国が最も効率の高い方法でやっていくことが世界の農業需給に役立つと、こういう日本と全く正反対の立場をとっておりますので、日本と豪州との間の距離を縮めながら何とかやっていくということで、共同議長の立場が全く違うことは事実でございます。しかし、今後時間をかけてAPECの間での考え方の共有化を図っていくということでございます。  それから、農業全般でございますけれども、今次のWTOの農業問題の議論は、ウルグアイ・ラウンドの合意に基づく今の農業取り決め、これは一九九九年いっぱい続くわけでございますが、二〇〇〇年からそれの見直しが行われるわけですけれども、マラケシュで合意されたタイムテーブルに沿ってやっていくということで、これを一部のケアンズ・グループ、特にアルゼンチンを中心としてこの計画を前倒ししようとか農業だけちょっと別の扱いにしようということの動きがございました。  結果としては日本とかEUとか、それからこれは非常におもしろいんですが、豪州といった大口の食糧輸出国等の協力を得まして、ウルグアイ・ラウンドの合意どおりに実施していくという結論を得ました。したがいまして、今のところ、大きな流れの変化はございません。ウルグアイ・ラウンド合意どおりに実施していくということが今度のシンガポールでも再確認されたわけでございます。  エデュネットでございますけれども、教育通信ネットワークはAPEC人材養成作業部会のもとに教育フォーラムというのがございまして、アメリカがホームページをつくりまして、そこでいろいろな各教育機関をインターネットでつないで、言うなればインターネット上の大学を開いていくというようなプログラムで、実は、今度のマニラAPEC会議の際にも、エデュネットのホームページ、閣僚が出ている前で全部実演しまして、日本は慶応大学、それからアメリカのワシントン大学、それからオーストラリアの大学、それからタイの大学、こういったところをホームペ−ジで全部リンクしたいろいろな共同研究の成果が公表されました。これは一番アメリカが力を入れていますけれども、日本もそういった形で日本の学術機関が協力しているプログラムでございます。  以上でございます。
  12. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 三つ質問させていただきたいんですけれども、一問ずつお答えをいただくようにします。  野上局長のお話の中で、経済のグローバリゼーション、これが非常に大きな問題だというふうに言われました。私も、APECというのは経済のグローバリゼーション、特にソ連崩壊後一層強くなっていると思うんですけれども、それに対してアジア諸国がどういう対処をしていくかということがAPECにとっての中心問題だと思うんです。  私どもは、八月から九月にかけてASEAN五カ国を回って、そのとき安全保障の問題についても、アメリカや日本などの大国の考え方とASEAN諸国の自主的な考え方と、ある流れの違いというものを感じたんですけれども、経済問題についてもやはりそういうある流れの違いがあるように思うんです。  NIESに続いて、ASEAN諸国中国、ベトナム等のアジア地域は最も経済的発展を遂げているんだけれども、その上に立って、ASEAN諸国としては国民経済の発展を主にして、同時に先進諸国との協力、相互間の協力、これに基づいて進めていこうという考え方だったと思うんです。だから当初、八九年にAPECが発足したときは緩やかな協議体、それから決め方も多数決じゃなくてコンセンサス方式ということで進んでいったんだと思うんです。  ところが、それに対してアメリカや日本など先進諸国の態度がむしろグローバリゼーション、これに参加することによって国民経済も発展するという考え方に立っている。これはどうも南北問題についての北の先進諸国の態度の変化でもあって、かつては南の国々にさまざまなODA中心の援助をやって自主的発展をというんだったのが、もうとにかくこういう状況で、しかもアジアの経済力が強いから、グローバリゼーションに参加し、貿易投資自由化をどんどん進めることによってそれぞれの国が発展するんだという考え方がクリントン大統領の九三年のシアトルイニシアチブ以後ずっと強まって、今度のマニラ会議まできて、いよいよ来年一月から始まるというところになってきているように思うんです。  「複合不況」で有名な宮崎義一教授の「国民経済の黄昏」、これ去年出た本ですけれども、彼は、多国籍企業の登場と情報通信革命、これによって国民経済の枠組みから新しいトランスナショナルな経済的枠組みをつくる動きが世界じゅうに広がっているということを言い、ヨーロッパのEU、それから北米のNAFTA、それからアジアのAPEC、この三つを実例に挙げているんです。  同時に宮崎さんは、ただ、APECの中にはいまだ国民経済の枠組みを自主的に完成させるに至っていない発展途上国が数多く残存している。非常に発展はしているけれども、まだそういう国々もあると。そういう国々にとっては、やっぱり自分の経済を発展させるためにある程度保護政策をとらなきゃならぬし、かなり高い関税も必要な部面もあるということは出てくるんだが、それに対して、いや、貿易投資自由化で二〇二〇年までには完全な自由化をなし遂げろということになってスピードアップされていきますと、やっぱりその間にどうしても考え方の矛盾というか対立が出てくる。今度のAPECマニラ会議でも反対のデモまであったし、それから貿易投資自由化に異議を唱えるNGOの会議まで開かれる、一方でそういう動きもあるわけです。  そこら辺の問題、今のところアジア経済というのは発展しているから、この矛盾はそう顕在化していないと思うんだけれども、今後進んでいくとやはりそういう国民経済の発展を主にして自主的な、割に緩やかな、余り無理をしない経済協力をという考え方、当初出発時はそうだったんだが、いやもうとにかくみんなで頑張って貿易投資自由化を進めることが経済発展だということで関税もどんどん下げていくという方向が、まあコンセンサス方式が尊重されているから押しつけじゃないかもしれぬけれども、やっぱり問題を今後生む危険があるんじゃないかと思うんです。  その点で、最大の多国籍企業を持っているアメリカが今度のマニラ会議でとった行動は、新聞報道を見ますと若干気になるところがあるんです。例えば、クリントン大統領が一番力を入れたのは情報技術協定、ITAの締結だということで、二士一首の閣僚宣言では協定を締結するためのWTOにおける努力を支持となっていたのを、二十四日の首脳経済宣言では、今度は努力じゃなくて締結を求めると一歩進んだと、これには非常なロビー外交をやったというんです。それで、アメリカのウルフAPEC特使は、会議の結果はアメリカにとって喜ばしい限り、クリントン大統領の大勝利だと言って喜んだというんでしょう。  そうすると、宮崎さんが多国籍企業の登場と情報通信革命、この二つが経済グローバル化の大きな導因だと言っているんだけれども、まさに多国籍企業による情報技術協定、アメリカの多国籍企業は最もこの分野で進んでいるんだけれども、それに非常に膨大な利益を約束する分野が開かれるという論評、コメントなんです。それをとったことはクリントンの大勝利だと喜ぶような状況が生まれると、これはそういう態度をアメリカがとり、日本もまたべったりそれを支持というのでは、発展途上国の本当の自主的発展、これに対してさまざまな問題が今後生まれるんじゃないだろうかと思うんです。  私たちも東南アジアを回ったときにいろいろ驚いたことがあったんだけれども、バンコクを初め自動車の渋滞は物すごかったし、自動車からおりると空気もにおいがすぐわかるぐらいひどいんです、バンコクのは世界でも有名らしいけれども。それから、あちらこちらでちらちら見たスラム、これはタイでもインドネシアでもフィリピンでもどこでも大変あるんだけれども、インドネシアで今度かなりいろいろトラブルが起きたのもそういう貧富の、所得格差の拡大だというんです。  今後、そういう方向で進んでいったときに、私がさっき言った二つの流れのある矛盾と結びついて、環境問題、今度も環境問題も非常に重要になったし開発協力も改めて重視されたというんだけれども、そういう問題とか貧富の格差の拡大、そういう問題の見通しで心配する点があるんじゃないかと思うんです。そこら辺をどうごらんになっているか、まずお聞きしたいと思います。
  13. 野上義二

    政府委員野上義二君) まず、経済グローバル化でございますが、今御指摘のように、情報通信技術の飛躍的な発展と、それからやはりウルグアイ・ラウンド等を初めとする従来積み重ねてきたいろいろな経済貿易関係自由化の結果であると思います。  その経済グローバル化を最大限に享受しているのがASEANを初めとする東南アジア諸国であると。言うなれば、東南アジア諸国というのは、香港とか何かも含めましてやはり経済グローバル化から最も利益を受けている国である。彼らの今の成長というのは、やはりグローバル化が基盤にあって伸びているというのが私どもの認識でございます。  そういった意味で、総理もいろいろなところのスピーチで言っておられますけれども、グローバル化の波にうまく乗ったアジア、そういったものが非常に積極的な経済貿易投資自由化の話を進めていくというのは非常に有益なことであるというのがまず第一点でございます。  それから第二点は、ITA等でございますが、先ほどの情報通信一つの大きな流れのもとにありますのが今のITの情報技術品目の貿易でございます。これにつきましては、APEC地域というのは、特に東南アジア地域は純輸出国でございます。したがいまして、ITの関係、半導体とか組み立てられたものとかそういったものでございますけれども、その関税が相互に撤廃されていくということは、我が国の周辺にあるアジア諸国及び東南アジア諸国にとってはプラスでございます。  これについて残念ながら一番今まで抵抗していたのは欧州共同体、欧州共同体は一丁関連物資が七%から一四%程度の関税で守られていたわけですけれども、これを下げていこうという話ですから、そういう意味では東南アジア諸国にとっては基本的にはメリットのある話で、東南アジアを抑え込んでいるとか、無理やり東南アジアに自由化を迫ったということではございません。  ただ、IT合意APECの宣言でも、関税撤廃を目指すけれども、他方、途上国については柔軟性も持つんだということを書いてございます。したがいまして、一律に途上国全部を一緒にやるわけではなく、今後のWTOで詰められますところですけれども、関税が若干残っている国がございますので、それを撤廃していく過程においても、何年かかって段階的にどういうふうに撤廃していくか、技術的にはステージングと言っておりますけれども、関税引き下げのステージング等についても柔軟に対応するということになっております。  したがいまして、基本的には工TAにつきましても東南アジア諸国にとってはプラスになるということでございます。もちろん、先生御指摘のように、グローバル化というのは地域的にも、それから同じ地域の中でも対応ぶりの明暗を振り分けるわけでございますし、一定の国の中でも社会セクタレ別に若干の明暗が出てくるわけですけれども、そういった点についてはやはり常に配慮していかなきゃいけない。  これはリヨン・サミットから続いたテーマでございますけれども、特にグローバル化の波に完全におくれているアフリカ諸国、こういったところに対してばやはり開発援助で対応し、グローバル化の波に乗ってもらう。それからシンガポールなんというのは経済グローバル化の最先端を行っているわけで、そういった国なんかについては、今度のWTOシンガポール会合に見られますように積極的なイニシアチブをとってもらうということ。それから、個別の国の中における問題につきましては、先ほど申しましたようにいろいろな目配りが必要である。  都市の問題が出ましたけれども、APEC環境の中では、今の海洋環境に加えましてクリーンシティーというプロジェクトがございます。都市の生活環境をどういうふうに考えていくかという問題も今後環境グループの中で考えることになっております。  したがいまして、やはりグローバル化でいい面ばかりではないそういった残された面についても目配りをし、それなりの協力をしていくということはAPEC作業計画の中でも考えております。
  14. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 今、リヨン・サミットのことをおっしゃいましたけれども、北の国々がそれこそ今おっしゃったグローバル化に乗ることによっておくれた国々も発展のコースに乗り得るというのが、少し一面化される危険があると思うんです。  リヨン・サミット経済宣言ではこう書いてあるのです。「この新たなパートナーシップは、その発展段階がいかなるものであれ、すべての開発途上国グローバル化の恩恵を分かち合い、それに参加することができるようにすることに狙いを定めるべきである。」と。だから、発展段階がいかなるものであれ、とにかくグローバル化ということがリヨン・サミットにも出てくるということは、相当気をつけなきゃいかぬ。  僕は一つ外務省にはちょっと厳しい質問になるかもしれませんが、そういう発展途上国に対する本当に親身な、財政制度審議会でもODAについてきめ細かなというのを言っているんだけれども、そういう態度が必要だと思うんです。  この間、賞ももらった船橋洋一氏の「アジア太平洋フュージョン」、APEC論なんだけれども、これは五カ国訪問の前に読んだんです。通産省それから外務省に対するかなり厳しい批判が載っていて、とにかく発展途上国の大臣と会うときは十五分だと決めてあるというのです。  マレーシアの副首相兼蔵相のアンワル・イブラムさんが、九四年秋、武村蔵相に面会を申し入れたら十五分だと。非礼だとしてマレーシアの外務省はキャンセルしろと進言したけれども、イブラムは、先方は自分より年配だから十五分でもいいというので十五分で我慢したんですって。武村さんが九五年にクアラルンプールへ来たとき、マレーシアの外務省は前の返礼で十五分にしたらどうかとイブラムに言ったら、イブラムは遠来の客だからというので長い時間会ったというのです。  次に、今度はマレーシアの通産相ラフィダ・アジズ氏が河野洋平外務大臣に会った、このときも十五分。アジズは大臣室から出てエレベーターの中で不満を言ったと。マハティール首相でさえ日本での首相官邸での会談の時間の短さに不満を漏らして、マレーシアの閣議でも議題になった。「何も日本の政治家に会って、記念撮影をお願いしようというのではないんだ。政策対話をしようというのに十五分でどうやってできるのだ」と。  これは、中国を除けば開発途上国は大体十五分というのが決まっているというのですね。こういう対応ではもう本当にどうにもならないと思うので、今でも大体十五分なのか、もっと長くちゃんとやっているのか、こういう本にこれだけ書かれているんだから一改善状況をお聞きしたいのですが。
  15. 槙田邦彦

    政府委員(槙田邦彦君) 開発途上国首脳なりが日本にお見えになったときに、首相官邸での総理大臣との会談時間が十五分間に限定されているかという御質問だと思うのでございます。  これは私ごとで全く恐縮でございますけれども、かつて総理大臣の秘書官をやっておりました経験から申しましても、必ずしも十五分で切られているということではございませんで、秘書官の立場からすれば、委員おっしゃいましたように、相手が先進国であろうが、あるいは開発途上国であろうが、まさにはるばる我が国にお見えになった方ですから、実質的な話をしていただくためには十分、十五分ではあいさつ程度に終わってしまうというごとなので、できるだけ長い時間をとって会っていただきたいと思うのでございます。  そのように日程調整に当たっては努力もするわけでございますけれども、必ずしもそのとおりに十分な時間をとることができないことがしばしば見られるということがございます。確かに、外国に我が国首脳が行かれますというと、三十分あるいは一時間というように非常に長い時間をとって会談に応じていただいておるという現状があるわけでございますから、これは日本の政府の対応として、あたかも相手の国の人が失礼であると感じることのないよう十分な時間をとるようにしていかなきゃならぬだろうと思っております。  現在、どういうふうになっておるのかというのは必ずしもつまびらかにいたしませんが、総理も大変にお忙しい方なものですから、なかなか時間がとれないということはあるのだろうと思います。  これは私が答弁するべきことかどうかわかりませんが、外務大臣の場合には、それは十五分のようなこともありましょうが、一般的には総理大臣よりはもっと長い時間がとられているのではないかと思っております。
  16. 野上義二

    政府委員野上義二君) 今次のAPEC閣僚会議の際には、池田外務大臣にはほぼすべての開発途上国の出席閣僚と会っていただきまして、長い人は一時間ぐらい、短い人は十分ぐらいということで、これは先方の事情にもよりますけれども、いろいろな問題のある閣僚との懇談につきましては、問題のあるというのは話し合うべき問題があるということで、その閣僚、例えばインドネシアのアラタス外務大臣なんかとは一時間弱じっくりと議論をしてございます。したがいまして、表敬だけをした大臣もございますけれども、実質的に本当に長い会談をした途上国の閣僚も多数いるということでございます。
  17. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 なるべく気持ちの通った対応をしていただきたい。私どもの調査団には、ベトナムの書記長もかなり長い時間をとって話してくださったり、ラモス大統領もかなり長かったですよね。十五分というのは、通訳を入れると本当に表敬訪問だろうと思うので、余り閣議で問題にならないような対応をお願いしたいと思います。  気持ちが通ったという点で、ODAがかなり大事な問題になってくるんだけれども、朝日新聞も十月六日付社説で、従来の日本のODAを根本から見直すことが必要だ、今まで経済成長優先型だったけれども、その内容を人と生活を中心としたものに組みかえていかなきゃならぬということを提言しているんです。  同じ朝日の十一月二十二日に、フィリピンに二年半いた前のマニラ支局長がODAの失敗例を二つ大きく書いているんです。一つは超高圧送電線事業、これは電線の九五%が盗まれちゃった、これはまあ事故かもしれぬけれども。一つ聞きたいのは、五十億円の非伝統的農産物開発事業、これは貧しい農民の援助というんじゃなくて、一件当たり多いと一千万単位の貸し付けだと。借り手は地元の有力者や政治家に限られた上、融資額の約四割が返済されない。再融資もストップしたままという状況になっている。ところがOECFは一切のデータ提供を拒んだ。外務省は延滞債権の額すら公表しなかった。情報公開全くないんです。  情報公開しないということも非常に問題だけれども、本当に貧しい農民に対する援助、農業に対する援助じゃなくて、非伝統的農産物開発事業というので、日本円で一件当たり一千万単位の貸し付け、しかも四割戻ってこない。こういう状況が進んでいくんでは、これはなるほど社説が言うような根本から見直すことが必要だということがあると思うんです。  私ども参議院のこの調査会は、以前このODAについて各党一致の決議をつくって本会議でも通過しているんです。この中に、原則として情報公開するということを書いてありますし、特に、そういうことである以上やっぱり国会もその審議にかかわる必要があるということをいろいろ提案していたんです。外務省としてこういういろんな実例の中で情報公開の問題、外交上の問題でどうしても前もって明らかにすることができないということがあることは私たちもある程度わかるんですけれども、できるだけこういう問題が世論の支持を受けるような、きめの細かいODAになるような改善策を、フィリピンの実例その他から考えておられるんだったらお伺いしたいと思います。
  18. 中島明

    説明員(中島明君) 先生御指摘のように、政府開発援助を実施するためには国民の理解と支持を得ることが非常に重要だ、まさにそのとおりであろうと思います。そのための情報公開ということは非常に重要な手段であろうと思います。  私どもも数年前から、年次報告という形で我が国の政府開発援助の実施状況というものを毎年取りまとめて報告書の形で出しておりまして、その中に、例えば援助に携わった企業の名前というようなものも公表しております。それ以外に、ODA白書と申しまして、毎年秋にODAに関する活動報告というようなことも行っております。それから、一たん行ったODAのプロジェクトの事後的な評価を行いまして、毎年百件以上の評価を行っておりますけれども、それもまとめまして評価の報告書というようなものも出しております。  このような形で、従来から情報の提供ということについては心がけておりますけれども、引き続きこういった分野における努力というものは行っていきたい、そのように思っております。
  19. 木宮和彦

    ○木宮和彦君 最初に経済局長にお伺いしますけれども、APECでともかく日本が何をすべきか、根本的な問題です。  私は、私の考えですから間違っているかもしれませんけれども、いわゆるアジアの大部分の国は発展途上国です。片やアメリカ、オーストラリア、ニュージーランドと先進国がございます。ちょうど日本はそのかけ橋といいますか真ん中にいて、やはり日本がある意味で両方の言い分がよくわかるわけです。その利点を利用するわけじゃありませんが、リーダーシップをとってこの地域でもって共同体をつくると。昔は大東亜共栄圏というのがありまして、そういうものじゃなくて、ともかく新しいアジアの共同体をつくるということに力をかすべきではないかなと。これは私が思うんで、その点の御批判をいただきたいのがまず一点。  次に、中島審議官もいらっしゃるので、今もODAの話が出ましたけれども、経済協力とかあるいは技術協力とか、その他いろいろあると思います。しかし、それだけではなくて、将来は留学生を日本にぜひODAを使って、そして毎年計画的に日本で四年間なら四年間教育して、そしてアジアの国に帰して、その人たちが将来はまた国の中心人物となると思うんですが、そういう計画をもっと積極的に、やっているかもしれませんが、これは文部省の予算ではなくてODAでもってできるかできないのか、また、やるべきではないかと。先ほど来いろんな、橋をかけたりダムをつくるだけじゃなくて、むしろソフトの面で日本が貢献すべきではないかなということを私は思うんですけれども、それについても御意見を賜りたいと思います。  それから、東郷審議官もせっかくいらっしゃるので、ニュージーランドとかオーストラリアは島と島でもってお互いに経済だけではなくて、今言った人間の若者の交流とか文化交流あるいは人的な交流を盛んにやっているように見受けますけれども、そういうのを日本も学んで、積極的にそういう方面でひとつ日本が貢献できないかなと私は考えるわけでございますが、それについての御批判なり御意見がありましたら伺いたいと思います。  よろしくお願いします。
  20. 野上義二

    政府委員野上義二君) 今、先生御指摘のように、日本はいわゆる欧米諸国でもないし、それから開発途上国でもないということで、そういった点で双方の考え方を両方酌んでじっくり対応していくというのは全くそのとおりで、これは何もAPECに限られる話ではなく、例えば今度のシンガポールWTO閣僚会議でもそういったかけ橋といいますか、そういった役割をできるだけやりたいということでやってまいったわけでございます。  他方、APECの中の途上地域というのは、例えば韓国、これも今度OECDに入りましたので途上地域ではございませんけれども、シンガポール、香港、こういったところはもう既にニュージーランドやオーストラリアよりも個人所得が高くなっている。言うなればほぼ先進国にというか、オーストラリア、ニュージーランドよりもさらにもっと豊かな国になっているわけで、そういった国の協力も得ながら、我々はアジアとそういう先進国の橋渡しみたいなことをやっていく必要があると思っておるわけでございます。  これはAPECではございませんけれども、欧州とアジアの間の対話でASEMという、アジア欧州対話というのがことしの春バンコクで第一回首脳会合が開かれて対話が行われているわけでございますが、アジア側の調整国というのは現在日本シンガポールなわけでございます。日本シンガポールで共同してアジア側の意見を取りまとめて、欧州側の調整国といろいろな調整をしながら議事を進めていくということをやっておりました。そういった仕組みの面からも先生今御指摘のような点の配慮を実際やってきておるわけでございます。
  21. 中島明

    説明員(中島明君) 留学生の受け入れの話が御指摘ございました。平成八年度の予算でございますけれども、文部省の予算におきましては、六百億円弱のODAの予算を組んでおりまして、五万人の留学生、これは昨年半ばの数字でございますけれども、そういった留学生の受け入れのために努力をしているということでございます。  それ以外にも、外務省におきましては国際協力事業団、JICAを通じまして大体毎年七千人弱ぐらいの研修員の受け入れというふうなこともあわせやっておりますし、こういうような努力は今後とも続けたいと思っております。
  22. 東郷和彦

    説明員(東郷和彦君) 先生御案内のように、豪州におきましてはことしの三月に十三年ぶりに保守連合政権が成立いたしまして、対外関係におきましては対外政策要綱というところにおいて、アジア諸国との関係緊密化は外交政策上の最重要課題ということで、APECにおける積極的な参加及びASEMへの参加等の方向で対外政策を取り進めているところでございます。アジア諸国との文化交流関係に関しても非常に意を用いているところというふうに承知しております。  こういう経験にも学びながら、我が国の文化面でのアジア諸国との関係強化を考えてまいりたいというふうに思っております。
  23. 木宮和彦

    ○木宮和彦君 もう一点、これはラオスの問題。ラオスはAPECに入っているかどうか知りませんが、あそこはまだ義務教育の制度はあっても学校がないんですね、教科書もない。日本の民間の団体でかなり精いっぱいやっているようでございますが、なかなか進捗しないようです。そういうODAのやり方についてこの辺で日本も方向転換して、教育の問題とかいうようなことをこれから外務省も十分考えてもらいたいなと私は希望をいたしますから、よろしくお願いします。
  24. 今泉昭

    ○今泉昭君 二つほど教えていただきたいと思うんですが、第一点は、先ほどからの話にもございますように、APECが世界のGNPの五七%を占めるような巨大な経済市場になっている、あるいは世界貿易の中でも四四%を占めるような大変大きな経済市場であることはもうだれも否定できないわけです。そういう中で、いかにして民間がこれに関与していくかということが非常に重要になって、先ほど御報告にもありましたように民間部門参加の重要性が取り上げられた。  しかも、今度のAPECの中ではラモス大統領が音頭をとってビジネスフォーラムをやられたというふうに聞いておりますが、先ほど野上局長のお話では、日本から五十数人の経済人参加をした。大変評価をされていたようなんですが、新聞などの報道によりますと別な意味での批判もあるようでして、例えば日本経済規模、経済的な実力から見て、あのビジネスフォーラムに参加をした数というのは必ずしも大きくなかったんじゃないか。例えばアメリカなんかの実業家は百数十人も参加していた、あんな遠いところから。シンガポールや香港の実業家も相当な数が参加しているにもかかわらず、日本からはわずか五十名程度というのは、果たしてそんな評価に値するような国内の産業界としても関心であったかどうか。多少私もはっきりわからないものですから、その点についてひとつ聞かせていただきたいと思うわけです。  それからもう一つの点は、今回のAPECで特にアメリカはITAの批准に向けて大変強力な推進を行った。それに対する見方が、ITA関係の市場規模というのは五千億ドルからの大変膨大な市場規模であるから、物的な意味で市場を拡大していくという意味での一つは積極的な提言、推進もあっただろうと思うんですが、私はこの情報産業の問題については、別な面でも少しうがって見てみる必要があるんじゃないだろうかなという気がしてならないわけです。  それは、特にこの問題について欧州諸国が反発をするということは、ただ単にそのシェアが小さいということではなくして、これは国家主権の基盤を揺るがしかねない大変重要な問題を含んでいるんじゃないかと思うんです。  というのは、私自身、歴史を振り返ってみますと、近代的な国家というものが成立をして、まず最初に国家間の大きなあつれきが生じたというのは要するに植民地闘争であっただろうと思うんです。それぞれの国々がみずからの権益を拡大するために植民地を拡大していった。こういう時代が恐らく十九世紀の一つの大きな流れだっただろう、しかもこれが二十世紀の前半にかけても。このことが世界各国の戦争にもつながつた大きな原因であっただろうと思うんですね。  その経験からか、一九四五年の第二次世界大戦終了後は、これをどのように抑止していくかというような流れの中で生じた新しい世界各国の覇権の姿というのは、イデオロギーを中心としてそれぞれ抗争していく。米ソ両国がそれぞれのイデオロギーを前面に立てて、みずからの権益をいかに守っていくかという流れがあっただろうと思うんですね。  私はそういう流れの中で、たまたま社会主義諸国がああいう形で崩壊をして、今やそういう意味でのイデオロギー間の対立というものはなくなったわけでございますが、別な意味で二十一世紀を展望しますと、情報化の問題というのは大変大きな意味を持つのではないか。情報化社会を支配するということは、ある意味では世界を支配すると言えるような大変重要な問題ではないか。これを支配されれば国家主権が揺らぎかねないという危機感が、恐らく私はヨーロッパ諸国には物的な意味とは違って心の中にあるのではないだろうかと思うわけです。  御存じのように、情報を支配しますと人間の心も支配するような状況でございますね、いろんな意味で、報道されているように、国家という観念もなくなってしまうようなバーチャルリアリティーの世界が存在しつつあるわけであります。そういう意味で情報のシステムを握り、情報を握るということが、別な意味での世界覇権というふうな形でこれからぶつかる危険性も私は出てくるというふうに思っているわけです。  そういう意味では今一番力を持っているのが米国でありますし、そういう意味ではアジア諸国では、APEC加盟諸国におきましては、先ほど野上局長が言われましたように、大変この情報化産業の拡大によって恩恵を受けている国々が多い。確かに物質的な意味では、情報化産業の拡大に伴って恩恵を受けているということは事実だろうと思うんです。  それ以外に、やはりそれぞれの国々が何らかの危惧感を持っていたのではないかと思う。したがって、アメリカのITAの強力な推進に対して、必ずしも積極的に対応するという姿勢が見られなかったということも報道の一面で聞いているんですが、そのことについての局長の考え方をちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  25. 野上義二

    政府委員野上義二君) まずITAでございますけれども、これは参加したい国の締め切りは来年の一月末でございます。したがいまして、今後若干まだふえるかと思いますけれども、現時点でいわゆるAPECの中の途上国という点から見てみますと、参加を既に表明したものがチャイニーズ・タイペイ、台湾でございますね、それから香港、インドネシア、それから韓国、韓国は途上国とは言いがたいわけでございますけれども、シンガポール、こういったところが手を挙げております。マレーシアが現在検討中と理解しております。マレーシアは御承知のように半導体の輸出という点では非常な巨大な輸出国でございますので、そういった意味ではマレーシアは今後これに参画してくると思います。  情報の問題は二つの側面に分かれると思いますが、一つは、今度のITAに見られるような情報機器のハードの問題、それからもう一つは、情報通信産業のソフトの問題ということであります。  ハードの問題につきましては、例えば工業原材料を多くの国が関税ゼロにしているように、情報機器、中でも特に半導体のようなものは、原材料、ある意味での原材料でございますから、多くの国がどんどん関税を下げているわけでございます。こういった今度のITA参加する国の中での途上国の多くは、相当既に広い分野関税をゼロにしております。そういった意味で、今後若干追加的に関税をゼロにしていく分野がどこかということでいろいろ議論しているわけで、大宗ではゼロの部分が多いということでございます。他方、EUは、先ほど申しましたように、半導体について七%から一四%のレベルで保護をしております。  そういった点で、日本とアメリカが日米の半導体の合意をした際に、やはり半導体のいろいろな国際的な協議参加するのであれば、少なくとも先進国であるEUは競争条件を同じにしてほしいということで、このITA交渉一つの裏、側面があるわけでございます。今も先生御指摘のように、各国ともやはり半導体を中心とした情報機器産業というのは守りたいわけですが、関税をつけて守った方がいいのか、それとも関税をゼロにして自由な競争にして守った方がいいのかというところの競争になってくるんだろうと思います。  これはちょっと余談になりますが、外務大臣とブリタン欧州共同体委員長との交渉がこの問題でございました。うちの大臣から、日本は水着てセントーサ島の方に泳ぎにいこうとしているのに、いまだに欧州は毛皮のコートを着ているので動きが遅いという話をして、欧州の速い動きを求めたわけでございます。やはり今の流れは、今申し上げたような途上国のAPECメンバーWTOメンバーもできるだけ身軽になって動きを速くしたいという流れではないかと思います。  それから、情報通信に関しましても、WTOの基本電気通信サービス交渉というのを来年の二月十五日までに終えることになっております。これにつきましても、できるだけ積極的な対応をしようというのが今のこの地域の動きでございますが、もちろんこの電気通信サービスにつきましては、遺憾ながらASEAN諸国の中では必ずしもほかに比べてちょっと足の遅いという国もございます。ただ、これらの国も今後積極的に交渉参加してくるというふうに我々は理解しております。ちなみに、APECの世界におけるGDP、五六%でございますが、このうちの四割以上は日本とアメリカでございますので、やはりAPECにおける日本とアメリカの特殊な地位というのは数字からも明らかだと思います。  それから、日本からのAPECに対するビジネスマンの参画、今御指摘のようにかなりの数が参加しましたが、アメリカは一説によれば全部で二百名ぐらい来ていたと聞いております。もちろん、アメリカの方が積極的であったかどうかというのは、単に数で比べることはできないと思います。日本からの御参加の方のレベルは相当高いレベルでございましたし、それからアメリカの一つの会社が一遍に五、六人来たりとか、そういったところもございましたので、単純な数の比較は難しいと思います。日本側の参画というのは決して諸外国に比べて見劣りのするといったようなものではなかったと思っております。
  26. 今泉昭

    ○今泉昭君 ちょっと追加、よろしいですか。  ITAをめぐるハードの問題につきましては、言われたとおりに私もある程度そうだろうというふうに思いますが、その裏に隠されたいわゆるソフトを中心とする、これからの情報化社会を支配するという意味での危機感とか警戒感とかというものが、APEC首脳の中にあるいはビジネスマンの中になかったかどうか、そういうのをちょっとお聞きしたいと思ったんですが。
  27. 野上義二

    政府委員野上義二君) むしろITAよりは基本電気通信サービス交渉の方で、かなりそういった点についてはまだ東南アジアの一部の国を中心に守りの姿勢が見られるということだと思われます。ハードというよりはどちらかといえばソフトの、特に基本電気通信サービスの方ではITAより、ASEAN諸国の一部はより守りの姿勢が強いということは感知されます。
  28. 板垣正

    ○板垣正君 一つは、中国APECなりWTOに対する基本的なスタンスを伺いたいんです。  中国は、APECのいわゆる個別行動計画でも積極的な関税引き下げの計画を出すとか、WTOにはぜひ参加したいという姿勢をとっているということですが、このAPECには中国が開発協力基金というものの創造を提案したと。しかしどこの国も賛成がなかったというようなちょっと報道です。その内容が、どういう計画というか意図というものであったのか、どういう実態であったのか。そういう中で、中国APECなりあるいはWTOでもオブザーバーで出ていたわけですね、先進国が余り先走りし過ぎる、そういう意向といいますか、これから開発される国々のスタンス、立場というようなものが無視されかねないというような発言があったということも報道されていますね。その辺における中国の基本的なスタンスというものを説明していただきたい。これが第一点です。  第二点は、これと関連する日本の態度です。これは報道のあれもあるかもしれませんが、こういう会議になるとアメリカが非常に目立つ活動日本は影が薄いとか、それから立ちおくれているというような面が、そういう見方がどうしても出てくる、イメージづけられる。したがって、国民も余り自分の問題と受けとめられない。私はそんなことじゃこれからの国際社会に対応できないと思うんです。  そういう面で、例えば大臣の出席問題なんかも、これは国会でも、ああいう重大な国際会議、しかも今度のWTOあたりはもう極めて大きな新しい出発点だったと思いますね。それに通産大臣も行かない、外務大臣も初めは一日の予定で行ったけれども、向こうの空気を見て二日に延ばして、それにしても途中で帰ってくると。こんなことじゃ日本という国はどうなんだろうと見られると思います。それは、私どもは政治の場においてもやはり国際的な会議の出席等についてはもっと反省しなきゃならぬと思う、反省されていくと思いますけれども。  同時に、どうなんでしょうか、皆さん方が現場で第一線で交渉に当たっておって、やはり今言われている日本というのはいろんな形の規制といいますか、縦割り行政といいますか、あるいはいろんな規制があって、弾力的に機を失せず対処していくとか、そういう面の、やはり今行政改革が厳しく言われていますが、規制緩和、日本もいろんな案を出しているわけですけれども、その辺の具体的な、こういう点の規制というふうなものが、あなた方は実際もっと弾力的な交渉なり決定権なり持ってやるぐらいの意気込みを持っておられると思うが、その辺を非常に妨げているというようなものが私はあるんじゃないかと思う。その辺を率直に伺いたい。  以上です。
  29. 野上義二

    政府委員野上義二君) まず、中国でございますけれども、中国APECにおいて、他のメンバーと同様に二〇二〇年までの貿易投資自由化のための国別行動計画を出しております。これは関税の引き下げを中心に出しておりまして、さらにそれに加えて、例えば知的所有権の制度改善とか投資制度改善とかいろいろやっております。非関税障壁も撤廃すると言っております。  しかしながら、他方、WTO加盟という観点から見ますと、WTO加盟のためには中国が現在のWTOのルールを守るということを明確にしてもらう必要があるわけでございます。その過程で、例えば非関税障壁については枠の公表がないとか割り当て方法が見えないとか、そういったような例えば透明性がないといった点もありますし、それから内国民待遇と申しますか、内外差別でございますね、こういったようないろいろな産業助成の措置もとっておりますので、これについても時間をかけてやめてもらわなきゃいかぬ。  それから、例えば非関税措置の中で一番大きいのは、中国の場合には外国貿易権というのがございまして、これは中国から認可を受けた中国の企業でない限り対外貿易ができないことになっておりますけれども、これはWTOの基本原則である内国民待遇に違反する措置でございますので、こういった点はやめてもらいたい。  他方、そういった措置をもちろん中国がやめるに当たっては、中国は開発途上地域でございますから今すぐやめるわけにはいかないだろうと。したがって、何年かかかってそういうものをきちっとやめるという一種のタイムテーブルを合意していこうじゃないか、こういうようなことを我々は中国に言っているわけでございます。したがって、ルールは守ってほしい、しかしそのルールを守るための時間はもちろんかかりますねというところでやっているわけでございます。  中国はこういった点について従来から我々と協議をしておりますが、まだ完全に合意ができていないというのが現状でございます。こういった点が合意できますれば、先ほど申しましたように、市場アクセス交渉各国との二カ国間の合意ができ、そしてそういった点を盛り込んだ議定書をつくることによって中国加盟が可能になるということでございます。  残念ながら、APEC中国が出してきております国別行動計画も、WTO交渉中国が今まで説明してきている以上のものは出てきておりません。したがいまして、ちょっとその辺のところがさらに中国側の努力も必要かなという感じがしております。  それから、今度の閣僚会合でございますが、御承知のように、WTO、昔のガットの節目節目の会議には必ず外務大臣に出席をいただいております。ここ近年でも武藤外務大臣、羽田外務大臣等、マラケシュの会合等、そういったところに御出席いただいておりまして、今次会合も、全部ではございませんでしたけれども、外務大臣の出席が可能になったことは極めて我が国にとって有益だったと思っております。  実情を申し上げますと、WTOの今度のシンガポール会合における閣僚宣言の作成過程は、大臣及び補佐官一名、通訳なし、それも十五から十七の主要国のみという形でほとんど議論されたわけです。これはもう外務大臣がシンガポールに入ってからほぼ四十八時間、ほぼぶつ続けにこれが行われました。したがいまして、本当のその場で大臣同士がいろいろやり合うという形での閣僚宣言の作成になったわけでございます。  こういった非常に激しい交渉でございましたし、その過程で日本からいろいろな妥協案を出したり、それから会議場の隅にわっと集まっていろいろ途上国の、先ほども話がありました例えばマレーシアのラフィダ貿易大臣なんかと話したりいろいろな閣僚と話しながら、途上国、先進国双方にとって受け入れ可能なような案文をその場その場で、大臣とそれから大臣の補佐役には在ジュネーブ代表部の赤尾大使が補佐に当たったわけですけれども、日本からはこれだけしか入れなかったわけです。通訳も入れてくれないということで、そういった意味で、非常に池田大臣に活躍いただいたということでございます。これはもう全く掛け値なしの実際の状況がそういうことだったわけでございます。  大臣が出発される水曜日の夜の時点で、大臣の飛行機は非常に遅うございましたので、夜中にシンガポールを出る飛行機でしたので、その時点で大体すべての、二十数項目の問題がございましたけれども、二つほどを除いてほぼ妥結して、残っておりましたのは貿易と労働基準という日本としては若干賛成しかねる問題でございましたので、そういった意味では日本から考えて重要な議題についてはすべて大臣に十五カ国非公式協議でやっていただいたというふうに我々は感謝しております。  もちろん、最後会議が終わってから大臣に記者会見とかそういったものをしていただければもっとよかったわけで、顔が見える見えないといった点については、会議が終了した時点で大臣が記者会見をしたのと、私のレベルで記者ブリーフをするのでは全く違いますので、そういった意味ではやっぱり大臣が最後までいていただいたらなということはございましたけれども、国会日程等の方もございましたし、やむを得なかったかと思っております。  ただ、他方、一部の閣僚はそういった十五カ国の夜を徹する起草委員会に出ずに、記者会見ばかりやっていた閣僚もいたことも確かであります。それを見て、日本は記者会見がないのはけしからぬということを日本の新聞記者が言いましたけれども、そういった報道も多々ありましたが、閣僚会議の起草委員会に入っていて記者会見はできないというのが私どもの考えですし、それが大臣の方針で、ずっと四十八時間ほぼぶつ続けで会議をしていたというのが現実でございます。
  30. 板垣正

    ○板垣正君 ちょっと今、答弁漏れ。  それはよくわかりました。池田さんも行く以上は四十八時間不眠不休で、しかし最後におっしゃったように、やはり大事な場ですから、初めから終わりまで五日間なら五日間いて十分に大事な折衝をやってもらうし、またインパクトのある記者会見もやってもらう、こういうこと。これは我々も反省点もありますけれども。  それで、さっき言った中国の開発協力基金を提案して、だれも賛成がなかったという問題はどういう問題なんですか、その点だけ。
  31. 野上義二

    政府委員野上義二君) 中国が事務レベルでいろいろな提案をしてまいりました。事務レベルの会談でいろいろな開発協力基金が欲しいということを言って、いろいろそういった意見の表明はあったんですけれども、なぜか事務レベルの会合を続けている間に消えてしまいました。したがいまして、これは最終的な閣僚折衝には上がっておりません。
  32. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 地球世界がグローバリゼーションをたどっている、それも相当急スピードにいっているということは間違いないと思うんですが、APECの今の段階がその方向に素直にといいますか、直線的といいますか、進んでおると見るのかどうかについては若干注意深く考える必要があるんじゃないかという気がするんです。  もちろん現在の世界は国家主義の時代じゃなくて、その次の時代に移っていることは間違いありませんが、例えばEUのあり方、これは十幾つかの国が、各国の政治は独立しているけれども、経済は一体化する、防衛は共同、アメリカの協力か応援かはありますけれども、ロシアという存在があるせいでその点ははっきりしている。こういう各国の政治は独立しているが経済は一体化し、防衛は共同でやるという形が比較的はっきり出ていると思うんです。  ただ、そういう考え方が必ずしも整理されていないものだから、一番先輩のイギリスが経済一体化のかぎとも言うべき通貨統合に随分渋ったわけです。こういうことは人類の歴史が進行している中で、我々も似たようなものですから、我々の脳みそが必ずしもその方向に整理されにくい、国家の利害が絡む場合には特にそうだ、そういうことが言えるのじゃないかと思うんです。  ところが、EUと同じような現象がほかにもあるわけです。例えばASEANです。これは経済一体化がかなり行く。防衛の点ではどうでしょうか。核兵器に対して自由な地域を探求するとか、あるいは中国とインドという巨大な国の間に挟まっているせいもありますし、南沙列島のような事情もあって海空軍を近代化するのに努力する、こういう形もあります。あと、ロシアは大体国家連合的に整理されなければ落ちつきようがないと思います。NAFTAはアメリカの巨大な軍事力があるから余り防衛ということは考えないんでしょうけれども、人類の歴史の段階からいえば、やはりEU、ASEANと似たような形態をたどろうとしているのか、南米にもそれに似たような萌芽があるというようなこともあります。  そういうふうなことになりますと、我々の世界が現在一直線にグローバリゼーションの道をたどるのかどうかということについては、その前に一つの段階があり得るのではないか。APECは最も理想的にいけばASEANは解消されるのかどうか、それにもかかわらずASEANはその中で一つのまとまりを持って存在し続けるのではないか、そういう観察も成り立つわけです。  だから、我々としては、日本国境を近くに持っている国々と国家連合形態を持っておりません。だけれども、地理学的に言えば中国、韓国、北朝鮮、日本ぐらいが国家連合を形成するのは、現実の国際政治の中では可能性が非常に乏しい感じがしますけれども、全然そんなことは絶対あり得ないともこれから先の国際政治の動きいかんによっては断定しがたいものを感ずるわけです。  そういうような状況が今地球世界にあるということを頭に入れて、もちろんこれはグローバリゼーションが進めばいいんでありますけれども、先ほど先生方の御意見にもありましたように、先進国の方が享受する利益が多くて途上国の方は付随的であると。それは資本を投入し、技術を提供するんだから自分の国に損なのにやるはずはありません。しかしこれを受ける方の側は、そうであっても途上国なりに自分らの発展可能性を探求することができるというので、多少しゃくにさわるかも知れないけれども、受けて手を握っていこう、こういう形じゃないかと思います。  先ほど上田さんが言われたように、こういうことはやはり基本的には国あるいは途上国側の特定の人間の利益よりも民衆の利益、幸福の方にウエートを置いた提携の仕方が先進国と途上国との提携の仕方においてはより望ましいではあるまいかと、そういう問題が出されましたが、これは私は非常に正当な御意見だと思うんです。  だから、今のASEANの中で防衛問題がちょっと取り上げにくいということは余りにも当然でありまして、国家連合自体がまだされ切っていないのに、どちらかといえばグローバリゼーションにウエートをかけるAPECが防衛問題を取り上げるということは、防衛問題と言う以上はAPECの外に対してあるいは内に対してどういう図式でいくのかということを考えると、これは厄介だからちょっとネグっておこうというのが当然な話であります。  いずれにしましても、現状においてはAPECが素直に世界一体化、自由化というのは歴史的に言えば世界一体化でしょうが、そういう方向に進むと考えるのはやや早計で、その前にみんなで努力して解決しなきゃならぬ問題があるじゃないか。  マレーシアのマハティール氏が、ずっと前ですけれども、中国台湾日本、韓国なんかも入って東アジア何とか連合をつくるという意見を出したときに、もちろん日本は沈黙を守りましたが、アメリカの強硬な反対でこれが消えてしまったというようなこともありまして、なかなか世界一体化のプロセスの中で防衛問題というのは非常にデリケートな困難な問題として伏在しているという気がするんです。  ちょっと話がいろいろ飛び飛びになりましたけれども、APECの今の段階を、グローバリゼーションの方に非常にウエートをかけた見方が、もちろんそれはいいんでありますけれども、楽観的に過ぎないかどうか。そのあたりはどうお考えでしょうか。
  33. 野上義二

    政府委員野上義二君) EUとの対比で見ますと、EUの大きなところと小さなところは、人口でも個人所得でも国の全体のGDPでも、その差は非常に小さいものがございます、比率が五対一とか。ところがAPECの中は、人口とかGDPとかそういったものを比べてみれば、大きなところと小さいところの比率が八十対一とか、そのくらいの異質性もございます。それから、欧州の場合はほとんどの国が同じような政治体制をとっておりますけれども、APECの中にはまだ違う政治体制をとっている国も例えば中国のようにございます。そういった点で、欧州等に比べるとAPECというものが極めて異質なものである、欧州に比べれば同質性が少ないということはまた事実でございます。  ただ、他方、グローバリゼーションという観点から見ますと、例えば世界の港の中でのコンテナの取扱高というのを見てみますと、一位、二位三位はAPECメンバーでございます。一位が香港、二位がシンガポール、三位が多分台湾の高雄だと思いますけれども、四位に釜山が来て、五位にロッテルダムが来て、七位が神戸だったと思います。  ですから、そういった意味で例えば世界の物流というようなものを考えてみれば、APEC諸国というのは完全にそのハブ、中心になっているわけでございまして、そういう意味ではやはりグローバリゼーションというものを利用しているのがAPECグローバル化に対して実はかなり抵抗を持っているのが一部の欧州諸国じゃないかと思います。グローバリゼーションの波に乗ってそれをうまく利用して利益を上げているのがAPECの中の多くの国であって、それに対して例えばWTOの場なんかでございます貿易と労働基準みたいな話、かなりグローバル化の波に抵抗して、やっぱりどうも途上国の労働基準なんかが低いから我々が損をしているんだということを言うのが実は欧州でありそれから米国の一部のセクターということで、したがいまして私どもはグローバリゼーションというのはAPECの個々の経済をとってみればプラスだと。  ただ、先ほど申しましたように、APECの中にもいろいろばらつきはあるなということではないかと思っております。
  34. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 投資自由化について二問ばかりお伺いしたいんです。  いただいたぺ−パーにも「アジア太平洋地域における膨大なインフラ需要に対応するためには、民間投資を呼び込むことが重要であるとの観点から、貿易保険機関間の協力及び「インフラ情報ネットワーク」の設立を提唱。」とあり、先ほど投資原則の問題についてもお話がありました。  投資原則問題では、日本がかなり投資受け入れ国を拘束する方向で投資原則強化しようとするのに対して、マレーシアがかなり抵抗したというような報道もあるんですけれども、そこら辺のマレーシアと日本との意見対立の状況もちょっとお伺いしたいと思います。  それからその次に、日本は八五年のプラザ合意以後急速に東南アジアに生産拠点を移していて、日本経済も本格的ないわばグローバリゼーション化、多国籍企業化が国際的にかなりおくれていたのに、プラザ合意以後本格的な多国籍企業に進んでいったと思うんです。今、年間かなりの投資をやっていますけれども、投資先との問題点日本投資原則強化を要望したというんだけれども、投資先の国々から日本の多国籍企業に対するいろんな要望は一体どうだったのか。  実は、この間五カ国を回ったとき、タイからマレーシアに行く途中、飛行機で私の隣に座った人が川崎の日産の下請会社の専務さんで、自動車につける小型モーターの工場移転先を探しているんだ、数カ国回っていると言うんです。フィリピンから帰るときも、我々が行ったバタンガス港、あの地域に進出を考えて探してきたという方に会いまして、なるほど大企業だけじゃなくて下請の中小企業も社長さんや専務さんが探して回っているんだなということをリアルに実感したんです。  先ほどある新聞で東南アジアの日本の会社で残業その他の問題で不満を持った婦人労働者がやめた話なんかもいろいろ出ていたんですけれども、例えば今度の会議で進出先の日本の多国籍企業に対するいろんな要望が出たのかどうか、また外務省として東南アジアに進出している日本の大企業あるいは中小企業の出先との問題点をどんなふうにおつかみになっているか、これを二番目にお聞きしたいと思います。
  35. 野上義二

    政府委員野上義二君) 投資問題につきましては、先ほどWTOAPEC両方の絡みで御説明を申し上げましたけれども、我が国投資についての国際的な法的な安定性を求める、そのために国際的なルールをつくろうということを主唱していることは事実でございます。  そういった点から、WTO等におきましても、日本カナダ等が一緒になってそのためのいろんな提案をしてまいりました。また他方、APECの場においてもできる限りそういった動きに対しての支持を求め、今度のシンガポールWTO閣僚会合においても、関係国と話しながらできる限りWTOにおけるそういった作業の開始を求めてまいりました。  しかし、先ほど申しましたように、やはりWTO各国の中にはまだ必ずしも投資問題について十分の知識水準がないとか、必ずしもWTO百二十七カ国のメンバー国の間で知識の平準化が行われていないというようなこともあって、私どもは投資ルールの策定の前に、やはりWTO作業をしてみんなで投資について少し勉強しましょう、今後二年ぐらい勉強して、勉強した成果を踏まえてルールの交渉の必要があればそこでやりましようという形に今若干軌道修正をしております。  こういったラインというのは、例えばマレーシア、それから多くのAPECメンバー、ASEANの各国等と非公式にいろいろ話し合って調整しながら出してきたポジションでございますので、そういう意味で我々が押し切ったということではございません。我々はもうちょっと早目に作業が進められればいいと思っております。  と申しますのは、いろいろ我が方の投資家等の意見を聞いてみますと、今後BOT等の関係で途上国のインフラ等にも相当お金を出していくときに、やはり法的な安定性それから利益の送金、そういったような問題についてのいろいろなルールがきちっとしていた方がいい、そういう要望を踏まえてやっているわけでございます。  他方、日本投資についていろいろな観点から私どもも研究しております。例えば、民活利用のインフラ投資促進のための勉強会でございますとか、それから昨年から外務省、大蔵省、通産省、経企庁、それに経団連、そういった方の御参画を得て、他方東南アジアに駐在している日本の企業の方にもお集まりいただいて、東アジア官民合同フォーラムという形で、これはもう貿易よりも最近は投資が中心でございますけれども、そういったことで現場で実際に仕事をされている日本の企業の方と密接な意見交換をしながら問題点を見ております。  実際のところ、日本投資についての批判といったものは、例えば日本の企業は現地の人をなかなか役員にしてくれないとかいったような声があります。他方、それを日本の企業の方に聞いてみますと、現地の方でジョブホッピングという言葉を使っておりますけれども、給料がいいとすぐ横に移ってしまうのでなかなか責任のある地位に置けないと。これは一つの現象を両側から見た話だと思います。日本はなかなか上に上げてくれないから仕事をかわるのだと現地の人は言い、他方、現地の日本の企業から見るともうちょっと長くいてくれればというような、いろいろな見方があると思うんです。ただ、これはやっぱりいろいろ現場で意見交換をしながら相手国の政府ともそれから日本の企業とも話しながらやっていかなきゃならないと思います。  他方、日本はGDPに占めます海外生産の比率というのがドイツとか米国に比べれば三分の一、四分の一という段階でございます。そういった意味においては日本は海外に対する生産設備の移転という点に関しては米国、ドイツに比べれば相当まだ比率が低いということが言えるかと思います。
  36. 林芳正

    ○林芳正君 ちょっとおくれて参りましたのでもう最初に御説明があったかもしれませんけれども、二点ほどお伺いしたいんでございます。  一つは、イメージの問題でございます。スービック首脳会談をやったということで、御存じのようにこれは基地がなくなったところでやったということで、主催者側の方で、基地がなくなってたしかフリーポートみたいになっているところでやったということについて、そういうたぐいのインプリケーションといいますか、基地がなくてもやっていけるんだというようなことが現地側からあったか。また、そこに参加していた首脳の中で、公的にはそういうコメントはなかったと思いますけれども、オフレコの場面でそういうインプリケーション等があったのかどうか、また記者会見等でそのようなたぐいのやりとりがあったのかどうかということをお聞きしたいのが一点。  それからもう一つは、先ほど今泉先生からも御指摘があったITAそれから基本電気通信サービス交渉でございますが、具体的な中身で、電子商取引というのが今世界じゅうで話題になっておりまして、インターネット上でいろいろ取引をしてサイバー空間で、貨幣類似の、貨幣の情報が流れるということで、アメリカ、ヨーロッパでかなり先陣争いみたいなのをやっておりますけれども、この辺のことについて話題として出たかどうか。その二点についてお聞きしたいと思います。
  37. 野上義二

    政府委員野上義二君) スービックにつきましては、端的に言ってございませんでした。と申しますのは、朝早く首脳が飛行機でスービックに入って、そのままスービック会議場に入って、会談が終わってそのまますぐまた出てきちゃったということで、スービックでやったという事実だけで、それ以上の議論というのはございませんでした。  それから、電気通信の分野でございますけれども、WTOにおける基本電気通信交渉は、基本的には国際電話及び無線、そういうような基本サー、ビスでございます。基本サービスについての交渉、料金体系をどうするかとか、接続をどうするかとか、外資規制をどうするかといったような話で、特にそういったインターネットというような内容の、言うならばソフトの問題については必ずしもまだ議論は行われておりません。  ただ、一部の国が、特にこれはフランスとカナダですけれども、言語の問題に絡んで電気通信の文化的特性という話はしております。フランス語の話でございます。それ以上のところは今のところございません。
  38. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 先ほど板垣先生からWTOにおける大臣の出席の問題を取り上げられましたけれども、我々としても外務大臣、また通産大臣も心置きなく出席をしていただきたいと思いましたけれども、ただ、何といっても会期が短いわけでございまして、長くと要請したにもかかわらず短くなったという経緯がございますので、御了解いただきたいというふうに私は思っております。  それは横に置きまして、この首脳宣言の中で、アジア太平洋地域の中の「コミュニティーの精神の深化」という表現がございますが、これは一体何を指し、どのように深化をさせていくのかということをお伺いしたいと思います。  もちろん、このAPECとは性質は異なりますが、例えばNATOも東欧諸国加盟することによって、そのアイデンティティーをどう保持していくのかということは非常に大きな問題になっていくわけであります。今後十一カ国とも予定されている加盟申請がありますけれども、どんどんどんどん広がるとともに、コミュニティーの精神の深化というのは非常に難しくなっていくのではないか、その点をぜひお願いしたいと思います。
  39. 野上義二

    政府委員野上義二君) 今、先生御指摘のように、現在までのところAPECは十八でメンバー凍結されているわけでございます。これからいろいろな手続を経まして、仮にメンバーが拡大されていったときに、本当の意味でのメンバー間での対話が成立するだろうかという問題は非常に深刻な問題でございます。  端的に申しますと、例えば首脳会談だけをとりましても、十八の首脳が一日で話せる回数というのはある程度限られてくるわけですが、これが倍になりますともっと短くなってしまう。本当にそこで十分な対話ができるかどうかというのは非常に深刻な問題でございます。  さらには、今APECコミュニティーと言っておりますのは、欧州共同体共同体というようなことではなく、一体感とか連帯感とか、そういったものをいかに助長できるか、醸成できるかという話です。そのためには何が必要かというので、例えば私どもなんかも提案しておりますけれども、いろいろな形でのコミュニケーション、人的な交流、さらには先ほど林先生の方からもございましたようないろいろなインターネット等を通じてのコミュニケーション、そういったいろいろな形のコミュニケーションがございますけれども、そういった点なんかについても今後話していく。青少年交流なんかももちろんこの中に入ってまいると思います。  そういった点で、正直言って、地理的に太平洋を囲んでいるというだけで、先ほどから申し上げておりますように、政治的な体制も異なりますし、それから経済の発展段階も異なりますし、経済の規模も異なる。このAPECの中でいかなるコミュニティー意識、ある意味での連帯感を持っていけるかということを今後さらに議論していかなきゃいけない。特に、メンバーが広がれば広がるほどこの問題が希薄になるという、その辺のところをどう考えるかというのは、今後のAPECの抱えている一番大きな課題ではないかと思います。
  40. 山本一太

    ○山本一太君 ちょっとおくれてきたので、もしかしたらもうそちらの方から御説明があったかもしれないんですが、今お聞きしたように、今回のAPECは、やはりボゴール大阪である程度投資貿易自由化の枠組みができて、それをいよいよ実行段階に移す、改めてアクションをする段階になったということを国際社会に向けて示したという点では、非常にもちろん意味があったというふうに私も思っております。また、日経か読売か何かの記事で見たんですけれども、このAPEC日本米国中国との間の首脳会談の場になったということも、ひとつやはりAPECの重要性をこれから高めていく出発点になるのかなという気はしております。  私もこのAPECの間、いろんな資料を読ませていただいたり、あるいは新聞やテレビの報道なんかでフォローさせていただいたんですけれども、終わってみますと、頭の中に残っているAPECの目玉ということは、きつき林委員の方からもあったんですが、やっぱり何といってもITAのことで随分クリントン大統領の意向を受けてアメリカが一生懸命やったなということ、それと例の中国加盟中国台湾ですか、加盟問題について少し積極的な姿勢を打ち出したということ、それとあとは投資貿易自由化と同時に、やっぱり経済協力技術協力が必要だと、大体この三点ぐらいだったんです。  それで、さっき板垣委員の方からもあったんですけれども、板垣先生のおっしゃった外務大臣が最後までいなかったという問題ですね。これはやはりもちろん国内の事情もあり、それは政治の責任でもあって、外務大臣が余り外に出ちゃいかぬという風潮があるようなところもありまして、それはやはり我々自身が少し意識を変えなきゃいけないということはあると思うんですが、どうも日本がこの会議でどのくらいリーダーシップをとったのかということが余り見えてこなかった気がするんですね、率直に言いまして。  それで、局長の方からの説明で、四十時間ほとんど起草に加わって大臣が大変御努力をされたということはそのとおりだと思うんですが、やはりある程度日本がイニシアチブをとったことについては、外務省の方もいろいろ御努力をいただいていると思うんですが、今後できるだけ目に見える形でPRをする。すなわち国際社会に、今回のAPEC会議においては日本はこういうことをしましたということをもうちょっと積極的に言っていくべきじゃないかと思うんです。  実はOECDのこの間の経済協力の指針みたいなのがありましたね。これは正確に何と言うのか忘れましたけれども、経済協力大綱みたいなのがありましたね、OECDから出した。これについては、実は聞いてみれば相当日本がリーダーシップをとってやった話なんですね。ところが、この経済協力の大綱を日本が後ろでバックアップしたということを知っている人はかなり少ないんで、やはりそういうところにつきましては、特にこれから外交の重要性とかODAの必要性を国民に対しても説明をしていかなきゃいけないところですから、もちろん御努力はしていると思うんですけれども、やはりこういう国際会議の場ではいかにそれを効果的に国際社会に出し、そして国内に発信していくかという戦略をもう少しやはり考えて立てていくべきなんじゃないか。  これは私のアンテナが弱いということもあるのかもしれませんけれども、私の頭に残ったのはやはりそのITA加盟の問題ばっかりで、局長がおっしゃったように外務大臣がそこまで努力されたのであれば、日本としてはAPECでこれだけの存在感があるということをもうちょっと示す方法があったんじゃないかというふうに思うんで、そこら辺のところをちょっとコメントをいただきたいと思います。
  41. 野上義二

    政府委員野上義二君) 今の先生の御指摘、WTOの今度のシンガポール会合の件だと思いますけれども、WTO会合での……
  42. 山本一太

    ○山本一太君 いや、APECでもそうですよ。
  43. 野上義二

    政府委員野上義二君) APECは外務大臣、通産大臣、両方とも全期間出席させていただきました。  WTOにおいては、大臣は実際問題、取りまとめの核となっていただいていて、そもそも存在自身を余り公表しない形の、主要国だけの、これは先進国、途上国を含めて十五カ国だけの、御承知のように百二十七の国が来ている中で、十五、六カ国だけ集めて別室でずっと一日じゅうやっていたという話で、これは取材させなかったんです、一切。そういった点もあって、ちょっとメディアの映りは悪かったんですけれども、ただ、実質の取りまとめの中核であったことは事実でございます。  それからもう一つは、ただ他方、非常におもしろいのは日本側のメディアの取り上げ方と諸外国のメディアの取り上げ方は全然違うということです。諸外国のメディアにはジャパニーズプロポーザルとか、それから、例えばCNNでのWTOの報道の裏は全部池田大臣が演説しておるところだったんですよ。そういったことは全然日本のメディアはおっしゃらないわけです。ですから、我々も今度の、正直なところ申し上げて、私の口からこういう場でこういうことを申し上げるのはいかがかと思いますけれども、日本の報道機関の今回の日本行動に対しての報道ぶりは全く不満に思っております。
  44. 南野知惠子

    南野知惠子君 今、山本先生も御質問になられたんですが、私もお聞きしたがったのは、いろいろと日本の顔が見えないというところでございます。いろいろな会議でイニシアチブをとるために、またリーダーシップをとるためにということをお伺いしたと思うのですが、今メディアの問題だということで多少は安心いたしましたけれども、ロビーその他でやはり日本が今大きな話題となっている歴史的な背景、歴史的な評価というものを他国はどのような形で見ているのか。それがこういうイニシアチブをとるというものとの関連でどのように相互作用しているのかということを  一つお伺いしたいと思うのです。  それにつきましては、マハティール首相はルックイーストというような形で親日派を示しておられたのですが、今まだそれが生きているのか、またその他の国々はそれをどのようにとっておられるのかということが一つ。  それからまた、マニラからバンクーバーへというような形で会議が移行されるわけですけれども、それにつきましてある新聞紙上では、いわゆるスラム街の問題などについては大きな看板で隠されて表に出なかったということです。各国においてはそういった恥部は話題にしたくないだろうということはわかるんですが、やはりこれからの経済開発、各国で見れば貧富の差が激しいと言われているのが開発途上国であろうと思います。そこら辺の差を縮めるためにもそのようなものはオープンにしなければならないだろうというふうに思うのですが、その二点についてお伺いいたします。
  45. 野上義二

    政府委員野上義二君) 我が国WTOにおけるイニシアチブ等は、先ほど申し上げましたように、投資にしてもそれから競争政策の問題にしても、これは必ずしも私どもが思ったとおりの結果にはならなかったわけです。例えば環境の問題にしても積極的にイニシアチブをとり、したがいましてそういった問題が中核となっている閣僚宣言の詰めというのはEUと並んで日本先進国では中核になってやったわけです。それはもう実際の会議をやっている人から見ればこれはだれの目から見ても明らかだったと思います。  ただ、WTO会議というのは先ほどから申し上げておりますように、首脳がどこかにこもっちゃってなかなか見えない形で、百二十七の平場で全部やっておりますと収拾がつきませんので、特定の首脳が集まってわっとやっていますのでなかなか目には見えにくい。他方、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、会議場には出ないで記者会見ばかりやっていられる閣僚も一人ばかりおられまして、一つの問題だけをわあわあと言っておられる方もおられました。  そういった意味で、日本はそういった批判は一切ございませんでした。日本はよくやってくれたというのがシンガポール議長国の評価だと思います。残念ながらシンガポールは問題を力で押し切るというほどの大きな国ではございませんから、いろいろな国の支援が必要で、そういった意味では日本とかASEANの中での進んだ国ないしはカナダ、こういったようなところの支援を求めながら議事を進行していったということは事実でございます。  これは、現地紙を見ていただければ日本の問題等についての記事は全然違います。なぜか日本の新聞では顔が見えなかったということをまず書きたがる。仮に日本が特定の事項をごりごり主張して顔が非常に見えたとすると、日本の新聞は、日本はそれでいいのか、橋渡し役を忘れたのではないか、こう書くに決まっているわけでございます。したがってどうしようもない、どっちに行ってもああいう記事になるのかなということでございます。ちょっとこれはこの場では不謹慎かもしれません。
  46. 南野知惠子

    南野知惠子君 それから、歴史的な問題点については。
  47. 槙田邦彦

    政府委員(槙田邦彦君) 歴史的なというのは、ルックイースト政策が今も続いているかどうかというお尋ねであったと思うんですが、ルックイースト政策というのは御承知のように一九八一年にマハティール首相が就任されましてから、それまではマレーシアはイギリスの旧植民地であったということもあって、イギリスと文化的にもあるいは経済的にも強いきずながあったわけですけれども、それを見直して日本それから韓国等に、特に日本の企業などにおける規律等がございますけれども、規律の非常に厳しさ、整然とした行動パターンとかそういうものを含めて日本に学んでいくべきである、こういう発想からそういう政策が打ち出されたわけですが、これは依然として続いております。  例えば、ルックイースト政策、東方政策のもとで教育あるいは訓練の問題につきましてどういう御協力ができるのかということは年次協議をやってきておるわけなんですが、つい先ほどといいますか先週ですか、マレーシアで第十八回目の年次協議を行っているわけでございます。  この東方政策なるものが二〇〇〇年でもって二十年になるわけですけれども、今後それがさらに続くのかどうかということにつきましては、これはマハティール首相の名前と非常に結びついている政策なものですから、その後どうなるのかについては私どもとすれば一概には申せません。いずれにいたしましても、名前が仮に変わったとしてもそういう基本的な政策の流れと申しましょうか、それは続いていくのじゃないかなという気がいたします。
  48. 南野知惠子

    南野知惠子君 いや、私が申し上げているのは、今日本で言われているいわゆる他国に対する歴史的な問題点がクローズアップされている部分、その問題点については他国はどのように我が国を見ているのか、それが今の経済の開発ということに影響を及ぼすのか及ぼさないのか、いわゆる親密な関係がつくれるのかどうか、信頼関係はどうかということです。
  49. 槙田邦彦

    政府委員(槙田邦彦君) 過去の歴史問題ということ、端的に申しますと日本の第二次世界大戦中におけるいろんな行為というものについての各国の見方ということについてのお尋ねでございます。  これは釈迦に説法でございますけれども、やはりアジア全体いろいろ濃淡はございましょうけれども、日本の過去の行為に対するいろいろな感情的な根というものが完全に断ち切られていない、まだ連綿として続いているという状況であろうと思います。したがいまして、これが時に触れ折に触れ外交問題となったり国際問題となったりして浮上してくるという状況が続いているわけでございます。他方、じゃそれが日本とアジア諸国との間の経済活動そのものに直に何か影響を与えているのかということになりますと、私はそういうことは基本的にはない状況にあるのじゃないかなと思っております。
  50. 野上義二

    政府委員野上義二君) 今度のWTO閣僚会合が開かれた国際会議場、サンテックセンターというところですが、これは御承知だと思いますけれども、シンガポールの港のところの広場の真ん前にありまして、サンテックセンターの前には例の血債の塔があるところでございます。  しかし、シンガポールはそういった状況で開かれた会合でも、やはり今度の会合シンガポールが議事運営をやっていくには日本の力に頼る、日本に同志国といいますか、今後のWTO会合をきちっとやっていくためにはどうしても日本とか近隣のASEANとかそれからカナダとか、そういった比較的穏健な立場をとっている国の支援がなければできないということで、我々は一種の議長の友達といいますか、よく国際会議でやりますけれどもフレンズ・オブ・チェアマンというのがありますけれども、その一角としてずっとやってまいりました。そういった問題は底流にはございましょうけれども、こういった経済に関する国際交渉、その中でシンガポール議長役を果たすという、大任でございますけれども、そのときのフレンズという中には当然日本が入っているということでございます。
  51. 小川勝也

    ○小川勝也君 私の方から二点質問させていただきます。  一つは、やはり経済中心のAPECの中で、食糧問題をめぐる記述が数行あったんですけれども、食糧タスクフォースということをどうとらえたらいいのかということ、やっぱり食糧の自給率が低い中で、あるいは大きな輸入国でもある我が国にとってこの問題に関与するということは非常に大きな問題点だと思います。今回、議長になっているということもありますので、その辺の御説明をいただきたいのが一点。  そしてもう一つは、この夏に私は一人でベトナムの方に日本からの企業進出の現状を見てきたわけなんですけれども、先ほど来投資問題点とかあるいは成熟化の問題があったんですが、現地で現地企業の方に伺った話の中で、税制のあり方が大変だ、例えば所得税を三年前までさかのぼって取られるような現状がある、これ何とかならないかという話を聞いてきたわけなんです。そういう国がAPECに入会というか、入りたいと希望している。この辺のことが問題になり得るのかどうなのか、あるいは日本のベトナムヘの投資あるいは進出といったときに新しいチャンネルをつくる上で非常にいいことなのかどうなのか、その辺のことをお伺いしたいと思います。
  52. 野上義二

    政府委員野上義二君) APECにおける長期的課題としての食糧問題というのは日本提案でございます。  これは、大阪会合で村山総理の方から、アジアの成長をめぐる今後のアジアの長期的制約要因として、人口増食糧需給関係、それからエネルギーの需給関係、さらにはそれに伴う環境への負荷、こういった問題をアジアは制約要因としてまじめに受け取らなければいけない、したがってこの問題については認識の共有化を図ろうということで日本提案して、中長期的な課題としてのAPEC作業になったわけです。  日本食糧の部会の幹事役を今やっておりますけれども、これは大輸入国としての立場でやっているわけで、他方、この地域では最も大きな食糧の輸出国の一つであるオーストラリアにも絡んでもらおうということで、日本と豪州とで組んでやっている話でございます。ここで、今御指摘のような点等についてできるだけの認識の共有化を図るということをやっております。  それから、第二点のベトナム等に対する投資の問題でございますが、我々としては、やはりそういった制度面での国際的な標準化ないしは法的な安定性というのが今後の投資促進する上でも、これは受益国から見てもそれから投資国側から見てもいい話であるべきで、逆に言いかえれば、受益国からも投資国からものみ得るような国際的な投資ルールというものができるんじゃないだろうかということで、今後WTOを中心に作業をしていきたいと考えているわけでございます。
  53. 槙田邦彦

    政府委員(槙田邦彦君) 若干補足的に申し上げさせていただきますと、確かに委員の御指摘のようにベトナム、中国も相当あるんだろうと思いますけれども、そういう制度の面での透明性が必ずしも十分でない。突然新たな措置が導入されて、ベトナムないしあるいは中国、そういうところにおられる日本の企業の方がびっくりして大変困惑するというふうな状況が往々にして見られます。  ですから、中国もベトナムも社会主義国というにしきの御旗はおろしておりませんけれども、しかし実態的には市場経済ということに移行しつつある。そういう過程において、また法的な整備も必ずしも、現在一生懸命やっておりますけれども、十分にできてないというふうな状況の中で出てくる現象でもあろうかと思いますので、これは、我々政府の立場からも投資環境をちゃんといいものにしてもらわないとなかなか投資にいけないですねということで、いろんな形での申し入れをしてきているということでございます。  それは二国間の話ですが、今APECなりなんなりで投資環境を整備していくことが重要であるということは、基本的に経済活動の発展のために前提条件になるわけですから、そういう認識がそういう多数国の場でもっても共有されていくということをやはり期待していきたいというふうに思っております。
  54. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) まだ御質疑はあろうかと思いますが、予定した時間が参りましたので、本日の調査はこの程度とさせていただきます。  野上経済局長外三審議官、御苦労さまでございました。ありがとうございました。     —————————————
  55. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) 継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。  国際問題に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十七分散会