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1996-12-09 第139回国会 参議院 国際問題に関する調査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年十二月九日(月曜日)    午後三時一分開会     ―――――――――――――    委員氏名     会 長         林田悠紀夫君     理 事         板垣  正君     理 事         南野知惠子君     理 事         魚住裕一郎君     理 事         益田 洋介君     理 事         松前 達郎君     理 事         上田耕一郎君                 尾辻 秀久君                 笠原 潤一君                 木宮 和彦君                 北岡 秀二君                 塩崎 恭久君                 馳   浩君                 林  芳正君                 山本 一太君                 石井 一二君                 今泉  昭君                 小川 勝也君                 直嶋 正行君                 山崎  力君                 赤桐  操君                 梶原 敬義君                 田  英夫君                 笠井  亮君                 田村 公平君     ―――――――――――――   委員異動 十一月二十九日     辞任         補欠選任     松前 達郎君      三重野栄子君     梶原 敬義君      武田邦太郎君 十二月二日    辞任          補欠選任     三重野栄子君      松前 達郎君 十二月五日    辞任          補欠選任     松前 達郎君      梶原 敬義君 十二月六日    辞任          補欠選任     山崎  力君      木庭健太郎君     ―――――――――――――  出席者は左のとおり。    会 長          林田悠紀夫君    理 事                 板垣  正君                 南野知惠子君                 魚住裕一郎君                 益田 洋介君                 赤桐  操君                 上田耕一郎君                 武田邦太郎君    委員                 尾辻 秀久君                 木宮 和彦君                 北岡 秀二君                 馳   浩君                 林  芳正君                 山本 一太君                 今泉  昭君                 小川 勝也君                 木庭健太郎君                 直嶋 正行君                 梶原 敬義君                 田  英夫君                 笠井  亮君                 田村 公平君    事務局側        第一特別調査室        長        入内島 修君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件理事選任及び補欠選任の件 ○国際問題に関する調査  (「アジア太平洋地域の安定と日本役割」の  うち、アジアにおける安全保障及び経済協力等  について)     ―――――――――――――
  2. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) ただいまから国際問題に関する調査会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日までに辞任されました委員は、及川一夫君、上山和人君、松前達郎君、山崎力君でございます。委員辞任に伴いまして、新たに赤桐操君、田英夫君、武田邦太郎君、木庭健太郎君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) 理事選任及び補欠選任についてお諮りいたします。  本調査会理事の数は今国会より六名から七名にふえておりますので、その一名の理事選任を行うとともに、委員異動に伴い現在一名欠員となっている理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、会長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事武田邦太郎君、赤桐操君を指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) 国際問題に関する調査を議題といたします。  本日は、「アジア太平洋地域の安定と日本役割」のうち一アジアにおける安全保障及び経済協力等について、海外派遣議員から報告を聴取した後、意見交換を行いたいと存じます。  議事の進め方でございますが、私から総括的な報告をいたしました後、参加された議員からおのおの十分程度、順次御意見等をお述べ願います。その後、それらの報告をもとにいたしまして、委員皆様方で午後五時半までを目途に自由に意見交換を行っていただきたいと存じます。  それでは、まず私から報告させていただきます。  本年八月二十二日から九月四日までの十四日間、アジアにおける安全保障及び経済協力等に係る諸問題並びに各国政治経済事情等視察目的として、ベトナムタイマレーシアインドネシアフィリピンの五カ国に、板垣正君、木庭健太郎君、梶原敬義君、上田耕一郎君、それに私、林田悠紀夫の五名が派遣されました。  本派遣中、お手元に配付の資料でごらんいただけますように、各国のそれぞれの分野における二十一名の方々と、派遣目的にある安全保障経済協力等に関し積極的な対話を行うとともに、ベトナムチョーライ病院タイ社会教育文化センター及び青少年職業訓練センターフィリピンバタンガス港の建設状況等視察いたしました。  東南アジア地域東アジア地域情勢については、おおむね各国における認識は共通しており、平和、安定についての見通しは総じて楽観的であり、カンボジアラオスミャンマー加盟によりASEAN十カ国が実現し、これによってミャンマー国内が安定し、やがては民主化も進むという見方が多かったという印象を受けました。  東南アジア各国における軍備近代化については、大国軍備に比べればそれほど心配するものではなく、ARFにおける話し合いを進め、ASEAN各国信頼醸成をさらに強化して、ASEAN各国の安全を図ることでほとんど一致していたと言えると思います。  さきの日米安保共同宣言については、当事国間の問題ではあるが、地域の平和、安定に影響のないように願いたいという意見もあり、また、いかに実施されるか今後の推移を見守りたいという意見もありましたが、総じて、この共同宣言はこの地域での軍事バランス上有効であり、地域の平和と安定に重要であると認識しているとの意見でありました。  米軍プレゼンスについては、アジア太平洋地域にとって恩恵であると考えているという意見、また、米国にとっても、シーレーンが確保され、この地域の市場が開放的であり、経済活動が活発であることが有益であり、双方にとってこれを歓迎するが、長期的には減少することを期待するという意見、この地域におけるバランスをとることにつながるなどの意見がありました。  中国・台湾問題については、多くの意見中国国内問題であるという認識であり、平和的に解決することが望ましいという意見がありました。一方、朝鮮半島の見通しについては、内部の問題であり、いずれ安定に向かうと認識しているとの意見、北朝鮮は国際社会に参加したいと入り口を探しているが、韓国がその入り口を閉めて回っているように見えるとの意見がありました。また、平和的解決のために四者会談の実現を期待しているなどの意見もありました。  最後フィリピンに参りましたが、ここでは日本ODAによって進められているバタンガス港の開発視察いたしました。  事業はおおむね順調に推移し、特にこの開発による住民の移転先を訪問した際には、現地子供たちが大勢で出迎え、その上、歌と踊りを披露して歓迎をしてくれました。このように現地人々の温かい心に触れることができ、我が国からのODA現地人々に喜んでもらっているという様子を見ることができました。  以上の安全保障等に関する各国要人との対話及び現地視察によって、アジア太平洋地域の平和と安定について率直な意見交換ができ、また経済協力案件は、それぞれの国においてさまざまな国内事情を抱えつつも成果を発揮していることを実感いたしました。  訪問した東南アジア各国から期待されている我が国役割については、アジア民族がお互いによく知り合うように一層の貢献とそのための予算をふやすこと、日本がもっとこの地域における安定化に向けて活発な活動をしてはどうか、日本経済的影響力期待しているなどの意見がありました。我が国としては、今後アジア各国人々との知的交流文化交流などをさらに一層促進するとともに、議員交流活発化に努めることも重要であると痛感いたしました。  以上で私からの報告を終わりますが、今回の海外派遣は極めて有意義であり、今後の調査会活動に生かしていけるものと確信いたしております。  次に、参加された議員から順次御意見等をお述べ願いたいと存じます。  まず、板垣正君から御意見を伺います。板垣君。
  6. 板垣正

    板垣正君 板垣であります。  私は、訪れた国、要人との対話等で特に印象に残った点、私見を交えて順次御報告をいたしたいと思います。  初めがベトナムであります。  ベトナムは、私も不勉強だったんですが、国語を全部ローマ字化しているんですね。ローマ字化しているあの姿にあらわれているような近代化教育を極めて熱心にやっているという姿、しかしまだまだいろいろおくれている面がある。今お話がありました、どこの国でも日本ODA経済協力に対しては非常に感謝をしておる、ベトナムで会った方も皆そういう御発言が多かったわけであります。  特にベトナムの場合は直前に第八回党大会が開かれて、今までの成果を確認する、十年間あるいは五年計画においても平均成長率が八・二%といいましたか、極めて順調に発展をしておる。さらに二〇〇〇年を目指し、あるいは二〇二〇年を目指して計画を立ててひたすら国づくりに進もう、こういう意気に燃えていることを感じたわけであります。今七千五百万だがもうやがては一億を超すだろう、二〇二〇年には経済大国になるんだ、だから日本ODA協力でもなるべく一流のものが欲しい、あるいはベトナム人たちが働ける場、いろんな能力を持っているからそれもひとつ結びつけて活用してもらいたい、あるいはまだ貧しいんだから利子の支払いは少し考えてくれと、こういうような率直な意見も聞かれたわけでございます。  特にド・ムオイ共産党書記長、この人が実質的にあの国のトップでございます、大変時間を割いて我々を歓迎してくれました。今お話がありましたけれども、日米安保共同宣言については自分は配慮をすると。配慮をするというのはどういう意味ですかと聞いたのには答えはなかったんですけれども。特に、アジア情勢というものはベトナムにとっても非常によい状況に転換しつつあると、こういう見方ですね。つまり、どこの国でも平和な環境を期待しておる。中国もしかり、アメリカも冷戦後いろいろ困難が続いているけれども、また日本の立場もしかり。そういう中で、ベトナムの場合、中国との関係というものでは西沙諸島の問題も平和的な話し合いの中で解決する方向を目指しているということであります。  ただ、書記長お話の中に、さすがに独立闘争の志士でありますから、フランス植民地が百年間続いて、第二次大戦日本も入ってきて、あるいはその後フランスとの第二回の戦争、アメリカと二十年戦ってきた傷跡は今なお深いものがある。日本が入ってきて二百万人のべトナム人が餓死をした、こういう問題がいろいろ言われているわけであります。この二百万餓死したというのはどうも亡くなったホー・チ・ミンが一番初めに言ったといわれておりますが、この問題について私は、いやそれはすべて日本軍の一方的な、日本だけの責任において行われたことではないし、二百万の人間というのは確認はされておらない、こういうことをその場でも申し上げたんですけれども、こうした問題がやはりなお両国間でも、議員同士だから出したんでしようと大使館の人は言っていましたけれども、こういう問題が出たということであります。  さっき申し上げました外務次官等も、アジア情勢は非常に我が方に有利に開いている、経済発展アジア存在感が高まってきておると。それは相互協力が進む、あるいは第二次大戦後大きな軍事闘争が久しく行われていないというようなこと、そういう安定的な発展方向と、しかし不安定な要素もいろいろある。それぞれの国が、インフラはまだ不十分であるし社会的問題を抱えておる、発展の格差が出てきている、あるいは国境紛争を控えておる、こういうような不安定な要素もある。  そういう中の安保問題では、ARFベトナムもこれを高く評価しておる。二十一カ国がASEAN諸国を核として一歩一歩正しい方向に進んでいる。日米安保宣言等については関心を持って、この地域の安定、安全への影響、悪い影響が及ばない、そういうふうに希望をする。また、日本外務大臣からもそういう説明を承っておりますということでありました。  なお、これからの計画におきましては、この新たな五年計画では四百二十億ドルの資金の投入が必要である、そのうちの五〇%は海外からに期待をしております、日本の援助をよろしくお願いします、こういうこともございました。  タイで会ったのがチャワリットさんです。この方は、当時は副首相国防大臣、今度改造で総理になられたわけです。あのころ向こうは政局が非常に不安定で、チャワリット総理になるだろうという話もあって、我々もあなたが総理になるんじゃないですかと言ったら、いや私は支持率は八%しかありませんと言うんですね。私は総理になるよりキングメーカーになりたい、鄧小平になりたいなどとごまかしていましたが、総理になられたわけです。さすがに安保情勢についても全般的には楽観をしております、そういう見解を持っている。この地域安定づくりが進んでおる。カンボジア関係もよくなった。ラオスも安定してきた。ミャンマーも望ましい方向に行くと期待をしております、ASEAN加盟すればそれに適合していくであろうと。それから南沙問題も平和的な解決を目指す、あるいは中台問題も平和的な解決方向双方とも紛争は望んでいないはずだと。  特に言われたのが、東南アジアの安定にとって重要なのは三国の関係であると。つまり、日米、米中、日中、これが平和の柱である。それぞれが役割を果たすべきである。その中でも日米関係は積極的に平和創造に参加をしていく、あるいは日本自衛隊PKOかかわりができて、このことを評価する。日米安保宣言についても、平和が必要であり、日本は平和の柱と認識をしております。かつ、アジアの非核の理想支持に向かって努力していることは喜ばしい。中国の動向も、軍事力増大等はあるけれども、仮に攻撃的な姿勢をとると従来のせっかくここまで築き上げてきた中国の蓄積を失ってしまう、経済の整備あるいは国民の幸福追求に果たしてきた、それを一日、二日で失うようなことは考えまい、一国のことが世界に直ちに響く時代であるから中国も平和を志向するであろうという見方であります。  さっきも申し上げましたが、自衛隊に対してPKOでよく活動した、大体、伝統的に日本は侍の国だと評価意味でそう言っていました。それから、アメリカプレゼンスはなくすのではなく、長く置いておく方がいいんじゃないか、こういう見方をしておりました。  タマサート大学プラサート教授は、ASEAN会議だと思うんですが、池田外務大臣は、演説を聞いているとアジア太平洋ということは二回も三回も言ったけれども、日本アジア関係アジアとどうかかわっていくかということについては発言が、タッチがなかった、物足りなかったということを率直に言っておりました。日本はインパクトが大きいのだから、ひとつアジアにおける活動期待したい、こういうことであります。  なお、サロート外務次官に会ったときには、彼はミャンマーの問題もいずれうまくいくだろうという言い方をしておりましたが、タイだって五年前には軍事政権があって、一九三〇年以来苦労し時間をかけてこれだけ民主化したんだと。ミャンマーも今そういう情勢にあるけれども、ASEAN加盟をし民主化が促進されるであろうと期待を込めて言っておりました。日米安保共同宣言については別に驚かなかった、日米協力は長い間続いていることだし、これを軸として平和を目指していかれるということを期待する、こういうことでありました。  マレーシアアブドル外務次官でございましたけれども、なかなか明確なことを言っておりました。日米安保については、いかなる国もいかなる国とも条約を結ぶのは権利であって尊重されるべきである、平和、安全、発展のために結ばれたとすれば支持されるし、逆の効果を持つなら期待できないと。要するに、文言よりはどう実施されるか、どう周辺諸国効果をもたらすかを見守ります、日米で解釈しておられるとおりのことを希望しますと。  マレーシアの場合、中国問題については、中国大国で重要な国であって、これは隣の国で避けることのできない現実で、受け入れるほかない友好的なかかわりの中に中国を取り込んでいく、そういう形で地域の安定、発展を目指していきたいと。  なお、アダム・カディル上院議長は、いわゆるマハティールの東方政策というものを非常に評価をする。国際社会における発展途上国にやる気、元気を起こさせたのが日本です。日本がたいまつを掲げて前向きの努力をしてもらいたい、あるいは文化、スポーツその他の人的交流も含めて交流をしてもらいたい、こういう期待を率直に述べておりました。  さらに、ステファン・リヨン日本研究センター所長は、アメリカプレゼンスは今後も継続されるべきである、日米安保宣言については十分理解をしております、こういう見方をしておりました。  時間が過ぎましたので、あとは質問で補足させていただきます。
  7. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) ありがとうございました。  次に、木庭健太郎君にお願いいたします。木庭君。
  8. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 木庭でございます。  今回、林田会長以下我々は東南アジア五カ国を訪問いたしましたけれども、幸いフィリピンではラモス大統領ベトナムでは今お話のありましたド・ムオイ書記長、そしてクイでは今回首相となられましたチャワリットさん、いわば各国トップ方たち議員として交流ができた。これは今後の調査会あり方でも極めて大事な視点だと。行くならばやはりそういう各国トップ方たち日本国会議員意見交流をする場が必要だと。率直な意見交換ができましたし、これは本当に大きな成果だと思うし、今後調査会調査あり方として、ぜひ出向くときはそういうトップをねらえということをやっていただきたい。このことを強く感じました。  さて、総合的な印象をまず私自身申し上げるならば、この地域というのは対外的には南沙の問題があったり中台の問題があったりミャンマー問題を抱えております。国内的にもまだ民族問題とか民主化とか本当にある意味じゃさまざまな問題を抱えた国々ではあるのですけれども、ともかく行ってみて強く感じたのは、そういう課題を抱えながら、ASEANという全体のまとまりを見せながら、しかも経済的にも政治的にも成長を続けており、ある意味では本当に世界の中に政治的、経済的な新たな核が間違いなくでき上がってきている。それに対する首脳の自信というようなもの、また民衆の熱気というものを率直に感じたというのが全体的な印象でございます。  そして、先ほどからちょっとお話がありますけれども、こうしたASEAN域内信頼醸成というか、安全保障に対する、また外交に対する考え方の基本をなしているものは何か、キーワードは何だったかと思いまして各国首脳の話を総合してみますと、私が感じたのは、一つ先ほどから会長が指摘されている物事を楽観主義でいこうという楽観主義考え方各国首脳に共通している。次は対話主義、あくまで対話でやっていこうということをどこもおっしゃる。もう一点は、ステップ・バイ・ステップ漸進主義だと。この三点を強く感じた次第です。  その例といたしまして、ASEAN考え方成果としてあらわれた一つは、フィリピンイスラム系モロ民族解放戦線というのがございますが、今回ここが政府と和解をいたしました。まさに歴史的和解でございます。この和解の歴史的瞬間の翌日に我々はフィリピンに入ってラモス大統領とも会見をいたしたわけでございます。その和解背景に、このASEAN域内で今言いました三つのキーワードに基づいてフィリピン首脳インドネシア首脳が、インドネシアというのはイスラム世界最大国でありますから、話し合っていく中でこうしたある意味では一つの国の抱えた大きな問題というのを解決していくという、そういう土壌ができ上がっている。これについては非常に驚きましたし、ASEANの団結というものをもう一回きちんと私たちは見ておかなければならない、こう感じました。  ぜひこの考え方、急激に問題解決をしようとしない、また力でなく対話を中心にというASEAN考え方というのは日本にとっても極めてありがたいことでございますし、こういうASEAN各国との対話を重ねることの必要性先ほど会長から指摘をされましたけれども、ASEAN各国というのでなくて、ASEAN一つ共同体ととらえて、その共同体に対して例えば私たち日本国会議員議員交流をするとか文化交流をするとか、そういった視点が要るのではないか、こんなことを感じた次第であります。  また、ASEAN交流背景になっているものの一つとして私が感じましたのは、トップもそうですけれども、上層の方々も、要するに英語というのがASEAN地域共通言語できちんと機能しておるという問題でございます。自由に英語という言語を使いながら率直に意見交換をするような時代ASEANがなっている。‘方、日本はどうかというと、遠い将来を考えた場合に、教育という問題も考えたんですけれども、やはり二十一世紀をにらんだとき、日本は本当に英語の会話が十分できるような民族になっておかないとアジアの中で共通性を持てなくなるんじゃないか、そんな危惧すら抱いた次第でございます。  日本の果たすべき役割の問題については、今お話のあったとおり、経済面だけでなくて政治的にも安全保障の面でも日本に対する期待というのが意外に大きいというのを感じました。  特に私が驚いた一つの事象は何かといいますと、取りまとめていただきましたこの調査会会談要旨最後のページにメルカド・フィリピン上院議員発言がございます。これまで戦後五十年、例えばベトナムとかフィリピンというのは戦時中の日本の行動に対して極めて厳しい認識を持ち、それをある意味では引きずり続けた国々でございますけれども、この上院議員にお会いしたときに、もうそういう古い話をしていちゃいけないんだと次の時代に向かってそういう考え方は世代的な二日酔いだとまで言われまして、まさにそういう意識の変化というのが生まれてきているんだと。そこも踏まえながら、我々はこういう方々との交流を深めていかなければならないんではないか、こう感じた次第です。  さらにもう一点、国々を回りまして、例えば中国との関係の深いベトナム、また北朝鮮につきましては皆さん御存じかどうか知りませんけれども、タイという国は北朝鮮とも極めて深い関係を持っている。ある意味では、我々以上にいわゆる今問題を抱えている中台、北朝鮮の問題についてASEANそのものでも果たし得る役割を持っている国がある。この辺の認識を私たちは改めなければならないし、中台とかまた北朝鮮の問題を解決する際にぜひこういうASEANが持っている知恵についても私たち日本というのはおかりしながら謙虚にやる必要があるんではなかろうか、こう感じた次第でございます。  最後に、ODAの問題で一点だけ触れておきたいと思います。  今回さまざまなODA案件を訪問させていただきました。私にとって一番印象深かったのはベトナムチョーライ病院という病院でございます。私は実は一九九一年にもこのチョーライ病院を訪れ、今回が二回目でございました。チョーライ病院というのはベトナム戦争後、日本ベトナムとのある意味じゃ一つの新しい経済案件というか、両国の交流の機関として設置してつくったものでございました。  ところがこのチョーライ病院、建設が終わった後に実はベトナムカンボジアの問題が起きました。以来援助が日本として途絶えてしまいました。途絶えた後行ったのが一九九一年のときでございます。ODA案件でできたチョーライ病院が、国交が途絶え経済協力を放した途端にどうなっていたか、実は行ってみましてびっくりしたのは、一九九一年に行ったときはチョーライ病院というのは野戦病院でございました。集中治療室初め最新の近代的施設を全部持ち込んだわけです、そして建設した。ところが、日本が手を切った途端に、その運営をやろうにもできない状況に陥ってしまって、結局は酸素ボンベは置かれている、ただ建物が残っているだけで中の機能は全く果たせないような荒れ果てた状態が一九九一年でございました。  そして、今回行かせていただきまして本当にうれしかったのは、この病院が本来の機能を果たすような形に戻っていたということでございます。これはカンボジア問題が片づいた後、日本政府に御努力をいただきまして、真っ先にこのチョーライ病院の改善ということで、もちろん施設改善を初め、また医師の派遣、運営のあり方、ある意味では日本がすべてを提供いたしまして復帰に努めまして、今回行ったときの状況はまさに病院らしく少し消毒液のにおいがしておりました。一九九一年に行ったときは何かもう本当に異様なにおいだったのが、まず入ったときに消毒液のにおいという、何というさま変わりだと、このことを強く感じました。  また、それとともに、タイでは青少年職業訓練センターも訪れて、そこで活躍している日本のメンバーともお会いしましたけれども、これからのODAあり方一つ大事なことは、そういう各国が望む基礎的なものをODAで整備するということはもちろんなんです。ダムとかいろんな問題もあります。でもそれ以上にソフト面ということを日本が果たしていかなくちゃいけない。それが継続されたときにはすばらしいものになっていく。ぜひそのことをODAについてはいろいろな角度から検討しなければいけないし、私は特にソフト面の充実ということを強く実際に現場に行って感じましたので、最後にそのことを申し上げて私からの印象、感想にかえたいと思います。  以上です。
  9. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) ありがとうございました。  次に、梶原敬義君にお願いいたします。梶原君。
  10. 梶原敬義

    梶原敬義君 準備をしてまいりませんでしたのでまとまらないと思いますが、幾つかの点について報告をさせていただきたいと思います。この報告書や皆さん方の報告とちょっと変わった形になると思いますが、四点について報告をいたします。  私は、タイを除きましてあとの四カ国は初訪問でありました。したがいまして、非常に興味深かったのであります。特にベトナムの場合は戦争の傷跡がまだいえていない、そういう面をあちこちで見ました。ベトナムを除く各国はもうまさに車社会でありまして、車も余りいい車じゃないんですが、物すごい車のラッシュでございます。ベトナムは、特にホーチミン市においては、単車があっという間に何百台と信号待ちに集中するようなまさに単車の社会。ベトナムのおくれというのは、はっきり戦争の後遺症というのが時代をおくらしているんだなというのを見てまいりました。  次に、各国で大体共通している言葉というのは平和と安定、絶えず平和と安定という言葉が出てくるんですが、やはり今日ほど平和と安定を求めているときはないと思いますし、また平和で安定な時代も今が一番そういうときではないか。特に、日本をめどにして経済的に物質的に追いつけ追い越せ、追い越すまでいかないかもわかりませんが、どんどん進んでいる状況の中ではやはり平和と安定が大前提であるというのが各国の共通した見方ではないか、そう思います。  そして、国防の考え方は、それぞれ外に打って出ていく力というのではなくて、やっぱり必要最小限度の国防あるいは国内治安、そういうものを考えた軍事力整備のあり方、あるいは近代化方向もそういう範囲内だというような感じを受けてきました。  それから大変興味深かったのは、米軍プレゼンスについてそれぞれが期待をしておる。自分のところに米軍の基地があるのは好ましくないけれども、沖縄に米軍が存在したり、極東の米軍プレゼンスというのはアジア全体にとっても大事なことだというような感じのお話をあちこちで承ってまいりました。  それから、ベトナムもそうなんですけれども、役人とか、要するに公務員なんかの給料が非常に安い。いろいろ聞いてみましたら、所得税を個人からは取っていない。どこから取っているのか、財政はどうしているのかというのはなかなかよくわかりにくいんですが、もっと研究してみたいとは思っておりますが、どうも国営企業と企業から税金を取って賄っているんだというようなお話であります。また、タイに行きましても相続税を取っていない。したがって、貧富の差はだんだん拡大して社会が先で混乱するようなことになるんじゃないかというような意味のことを大学の準教授にもお尋ねしましたが、相続税を取っていないと言う。  全体的に各国とも今のような調子でいきますと、持てる者と持てない者の貧富の格差がばあっと開いてきて、少し社会的な混乱を引き起こすことが来るんではないかなという心配もしたんです。  ODAとの絡みでございますが、もっと人的交流並びに教育あるいは技術、例えば国家の税制のあり方、そういうものまでもやはり、今、木庭議員が言われましたように、そういうソフト面もこれから非常に大事ではないかなという感想を持ちました。  いずれにいたしましても、大変五カ国もう本当に暑いさなかでございましたが、ASEAN諸国約四億人が熱く燃えて、経済発展のためにどんどんエネルギーをたいているような、そういう姿を見てまいりました。大変参考になりました。  以上、まとまりませんが報告にさせていただきたいと思います。
  11. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) ありがとうございました。  最後に、上田耕一郎君にお願いを申し上げます。上田君。
  12. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 今度の五カ国訪問は非常に意義のある調査になったと思います。準備に当たった委員部、調査室、外務省、それから現地の大使館の皆さんにお礼を申し上げたいと思うんです。  調査室の御努力でこういう会談の記録を出していただいて、これは非常にいいことで、何年か前に中東五カ国を回ったことがあるんですが、あのときも外務大臣その他に会いましてなかなか充実したあれだったんです。私は赤旗に連載を書いたんですけれども、今後ともこういう調査をやった場合に今度のようなやり方で記録をきちっと残す、大変でしょうけれども、お願いをしたいと思います。  四つの点についてちょっと感想的なことを申し上げたいんですが、まず、アジア情勢認識です。  日本では、今度の日米安保共同宣言なんかでも、アメリカ見方影響されて、北朝鮮が大変だから十万の米軍、四万七千の在日米軍などということになっていますけれども、ASEANの五カ国では中国についても脅威と見ていない、北朝鮮についても大体安定している方向と見ていまして、日本で言われている状況と非常に違うということがよくわかりました。日本はやはりアメリカ影響され過ぎて、少数派の過激な情勢認識をやっているなと思います。中国なんかもASEANの仕組みの中に平和的に取り込める、南シナ海のシンポジウムの経験なんかも持っていまして、そういう自信を持っているんです。  その自信は、会長も言われましたけれども、ASEANが、最初反ベトナムでできた同盟が、去年ベトナム加盟、それからラオスカンボジアミャンマーが入ればASEAN10になる。西暦二〇〇〇年には四億を超える人口だという大変な自信がありまして、そういう自信が、ASEANがイニシアチブをとってアジアの平和を進め得るんだというものが土台にあるんだと。それでこういう楽観的な、根拠のある楽観論を皆さん持っているんだなと思いました。  次は、軍備増強問題です。  事前のレクチャーやいただいた資料なんかでも、各国かなり軍備増強が進んでいるんです。それで、アジア経済研究所の諸論文とかいろいろ読んだんですけれども、大体前に読んだのでは、アジア経済発展から経済的余裕ができている。それから、ゲリラ戦などその他解決したので、陸軍中心の内戦型の方向から、空と海、特に石油資源問題なんかがあるので海軍の増強に力が入っている。それからまた、中国日本に対する警戒等々の分析がありましたが、現地に行ってお聞きしますと、専ら軍備拡張ではなくておくれた古い軍備近代化なんだというのがほとんどのお答えでした。  ただ、アメリカのプリンストン大学の日本研究所長のケント・カルドー氏の「アジア危機の構図」などを読むと、やっぱり今後アジアで、中国ももう既に石油輸入国になっているし、二十一世紀にはエネルギー危機がかなり進展するだろうという見通しなんかがあって、桜美林大学の加藤助教授はそういう点でいうと海軍増強、特に潜水艦がかなり重要な役割を果たす地域だということなど指摘されているので、海軍の軍備増強については今後我々も見ておく必要があるのではないかという感じがしました。  三番目は、日米安全保障共同宣言とその反響です。  五カ国の中でフィリピンだけが非常に高い評価で、理由は、アメリカの核の傘がないと日本は対中国防衛用に核を持つんじゃないかということを言いました。誤解があるんですけれども、そういう見方で見ていた。  なお、核の問題について私おもしろかったのは、フィリピンは憲法で非核政策を書いてあるので、しかしアメリカが核兵器を持ち込んだらどうするんだと聞きましたら、シアゾン外相は、アメリカは持ち込んでくるだろう、しかし我々はないだろうとそういうふうに言っている、これは日本と同じだと。日本から学んでそうやっているんだというまことにおもしろい説明で、日本における核兵器持ち込みを日本の政府がアメリカが核の存否について言わないというNCND原則を守って覆い隠しているという実態がフィリピン外務大臣の口から暴露されたというので、私は大変おもしろく思いました。  ほかの国は、大体理解すると外交的儀礼で言いながらやはり警戒を持っています。ベトナムは非常にはっきり、否定的影響を与えるんなら賛成しないと言いました。それから、いただいた資料では、例えばタイのバンコク・ポストなどというのは、これはNATOの小規模版だと、なかなか鋭い正確な指摘などしてあったので、タイのプラサート準教授にこの問題を聞いたら、彼はやはり、これは新しい課題、新しい問題があるということで、慎重ながら今度の日米安保共同宣言についての新しい問題の重要性を見ていました。  私は、まだ各国はこの日米安保共同宣言の危険性について中身をよく御存じないと思います。ベトナムの外務次官は、池田外務大臣が来ていろいろ聞いたら、新しい内容はないと言っておったと。そういう新しい内容はないということを外務大臣各国を回って説明しているというのは、これも非常に問題で、新しい内容がないのなら今後を見るけれどもそう反対はしないという態度なのかもしれません。日米安保共同宣言の危険性、来年の秋にはガイドラインが出てきますけれども、やっぱり非常に重要な問題がここにはあると思うんです。まだ実態をよく御存じないので、一応外交的儀礼で評価はされるけれども、内心はやはり警戒的な見方で今後の展開を見ていく、こういう感じがしました。  それから最後は、非同盟の問題とアメリカプレゼンスの問題です。  私はこの問題に一番関心を持っているんですが、今度訪問した五カ国はすべて非同盟諸国首脳会議の参加国で、フィリピンは九一年にクラーク、スービックの両基地を撤去し、あのとき上院が新基地条約の批准を拒否したんですが、翌九二年に非同盟諸国会議に参加しました。タイは、ベトナム戦争のとき北爆の拠点だったんですけれども、その米軍の基地を撤去させて、私がフィリピンの基地撤去のことを言ったら外務次官は私に、タイ米軍基地を撤去したことを忘れないでくださいと、そういうことまで言われました。そのクイも去年、九五年に非同盟諸国会議に参加したんです。そうしますと、アジアでは非同盟諸国会議に参加していない国は日本、緯国、中国、この三カ国で、あとほとんど二十カ国以上が非同盟諸国会議に参加しているわけです。  しかし、この非同盟もいろいろ動揺やら問題点というのをさまざまに持っています。今度お会いした中でも、タイのプラサート準教授は、もう非同盟主義の時代はほぼ終わったと思う、そういう評価を言いました。マレーシアのカディール外務第一副次官は、質問をしましたら、非同盟の目的、原則には何ら変更はないんだ、そう言われました。この二人の中間がインドネシアでお会いしたジャーナリストのカトッポ氏で、非同盟は非常に重要なんだが、しかし現実を見なきゃならぬということで、いろいろ問題点あるいは矛盾、現実と非同盟の原則との間の矛盾を感じておられる言い方でした。  その矛盾が一番出ているのが米軍プレゼンスアメリカプレゼンスに対する非同盟諸国の評価と対応なんです。これは非常に矛盾がいろいろ出ているんですね。  例えば、フィリピンは、先ほど言いましたように新しい基地条約を拒否している。これは時代錯誤だといって上院が拒否しているんですが、メルカドさんも拒否した側の有名な論客だったんです。しかし、あそこはアメリカと軍事同盟条約を結んでいるんです。相互防衛条約を結んでいるんです。相互防衛条約を結んでいるんだから、それからあそこの憲法は戦争放棄、政策手段としては戦争を放棄すると。新しい憲法は非核も決めているし戦争放棄も決めているんですが、じゃアメリカ側が攻められたらフィリピン軍は一緒に守るのか、どうなるんだと聞いたら、お答えは、国連が承認し議会が承認すればということで、国連の承認と議会の承認を条件として挙げました。だから、非同盟諸国会議に参加していても、防衛条約を結んでいて、五カ国の中でアメリカと軍事同盟条約を結んでいるのはフィリピンだけでしたけれども、議会が承認すれば戦うこともあり得るような、非常に矛盾を抱えた、横暴が進んでいるなと思いました。  タイは、七六年にアメリカの軍事基地をなくしたんですけれども、アメリカとの定期的な軍事演習もしています、コブラ・ゴールド演習というのもやっているんですね。同時に、タイ湾にアメリカが事前集積の基地といって補給船を置かせてくれということを申し入れて、タイ側の説明では、何でアメリカのこういうものを置くんだと言ったら非常に不明確だったので断ったというんですよね。だから、アメリカと軍事演習をやっているんだけれども、タイ湾にアメリカが事前集積の船を置かせてくれと言ってくると、問い合わせて答えが不明確だと断るというようななかなか自主的な態度もとっているんですね。さっき言ったカトッポさんは、インドネシアはジレンマに陥っている点もあるんだというふうに言っていました。  だから、米軍プレゼンスについては当面はやっぱりやむを得ないだろう、あるバランスのためにやむを得ないと皆さん見ている。長期的には減ってほしいんだという言い方をしています。  マレーシアのマハティール首相は、日本でのある会の講演で、外国軍事基地は全部撤去すべきだという話もしましたし、インドネシアのアラタス外相もある会合で、外国軍事基地は反対だということを述べているんです。楽観的に見ながらも、今のアジアにはさまざまな問題が起きるので、バランスとしては米軍がしばらくいてもいいと。けれど、長期的には減ってもらいたい。しかし、最後までやっぱりいるだろうとか、なかなか米軍プレゼンス問題については矛盾した評価がありまして、これがさつき言った日米安保共同宣言についての評価の微妙な感じとも結びついているんだろうと思うんです。  私は、今度行って、非常にまとまったお話をしてくださって強い印象を受けたのは、マレーシアのリヨンさんという日本研究センター所長のお話で、リヨンさんは食事のときにかなりまとまった話をしてくださいまして、ここにほとんど全文ありますけれども、非常に印象的でした。  リヨンさんは、とにかくソ連崩壊後の情勢の中で、今までは軍事的なバランス・オブ・パワーが役割を果たしていたけれども、今後はそういう軍事的なバランスパワーに基づかない、軍事力に基づかない平和へのアプローチをASEANとしてしたいというんです。それで、アメリカ中国日本、韓国のような大国が核となるのではなくて、ASEANが核となったARFにしたいとかね。だから、非常に自覚的、自主的に平和的なアプローチを進めていきたいという話をされていて、私は非常に印象的でした。  私ども日本共産党は、安保をなくして非核、非同盟の道を進もうと思っているので、そうなれば皆さん方も、そして日本も非同盟首脳会議に入れるんだという話もあちこちでしたんですけれども、やっぱりアジアの行く方向として非核、非同盟の方向が非常に豊かなものがあるし、大きな流れとなっているんだということを五カ国を回って印象を持ちました。板垣さんとは反対の印象でございますが。
  13. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) ありがとうございました。  以上で海外派遣報告を終わります。  これより意見交換に移ります。  御発言を希望される方は挙手を願い、私の指名を待って発言していただきたいと存じます。  なお、御発言は従来どおり着席のままお願いいたします。参加議員への質問、要人との懇談に対する率直な感想等、この派遣に関連し何でも結構でございますから御発言をお願い申し上げます。
  14. 山本一太

    山本一太君 ただいま、今回のミッションに参加された委員方々から大変示唆に富んだ御報告をいただきまして、ありがとうございました。  私が特に感銘を受けたのは、木庭委員がおっしゃったように、今回のミッションが本当に各国首脳方々との会見をなさってこられたということで、フィリピンラモス大統領初め、チャワリット首相ですか、まず大変感銘を受けたわけです。木庭委員がおっしゃったように、こうした各国トップと率直な意見交換をする機会というものをやはり我々個々の議員がふやしていかなければいけないということに大変私も賛意を示したいと思います。  先般、林委員と一緒にシンガポールの国際会議に行ってまいりました。若手の参議院議員三人で参加をさせていただいたわけですけれども、ゴー・チョクトン首相とお目にかかる機会があり、昼食会を挟んで随分首相とも直接意見交換をする時間が持てたわけです。その中で、これから日本とシンガポールの関係、協力を通じていろんなイニシアチブのアイデアが出てきまして、それを今いかにフォローアップするかということを検討しておりますので、木庭委員のおっしゃった方向で、こういう流れをやはり国際問題調査会の中からつくっていただければということを一つ希望させていただきたいと思います。  それからもう一点、上田委員の方から、ASEAN諸国中国をこれからいわゆる国際秩序の中に取り込んでいくことに非常に自信があって、これについては楽観的だというお話があったんですけれども、私どもシンガポールに行きまして、シンガポールはどちらかというと日本政府以上に親日的で、中国の動向というものについてはポジティブだという話を伺ったわけでございます。会議の中で、私も名前は申し上げませんけれども、いわゆる次世代のリーダーと言われるある大臣としばらくお話をする機会があったんですが、やはりシンガポール側の本音というのは、むしろ自信を持って中国を取り込めるというよりは、ノーバディー・キャン・ストップ・エレファント、だれも中国という巨象はとめられない。現実を見据えて、やはり中国にいろんな修正を加えて、何とか我々のルールに乗ってもらいたいという、むしろ私は現実を踏まえてどうやって対処するか、自信を持って楽観視をしているというのとはちょっと違う雰囲気を感じたということは一言申し上げたいと思います。  それから、やはり木庭委員のおっしゃったチョーライ病院なんですけれども、これはJICAの技術協力のプロジェクトで、例えばケニアでやっているジョモ・ケニヤック農工大学とか、タイのモンクット王工科大と並んで非常に歴史の古いプロジェクトで、サイゴン陥落の直前まで日本の専門家と調査員がいたプロジェクトでございます。  私も一時パプアニューギニアの病院のプロジェクトを担当しておりまして、木庭委員お話で、ODAのプロジェクト全体に言えることですけれども、特に病院のプロジェクトというのはローカルコストの問題や運営の問題と非常に難しいところがあります。これはODA全体の問題にかかわると思うんですけれども、やはりソフト面の充実ということを国際問題調査会の方からもどんどん意見具申をしていくべきではないかと思いました。  最後一つ申し上げますと、やはり木庭委員がおっしゃった英語によるコミュニケーションがASEANの中で非常にできているということなんですが、今回シンガポールの国際会議に出席した議員は、たまたま林委員も私もアメリカの大学院を出ておりまして、英語ですべて行いました。通訳もなかったわけです。しかしながら、昼食会のときにゴー・チョクトン首相が、今回の会議は通訳なしでまさに英語のコミュニケーションだったけれども、別にコミュニケーションがすべてではない、すなわち、例えば語学が特にできなくても通訳をつけてきちんとした外交について、あるいはシンガポールとの関係について語れる議員をどんどん呼びたいというお話をされたんです。  ですから、もちろん語学ができるというか英語ができるようになるという教育の問題はあるとしても、根本のところはむしろ英語で直接交換をするということではなくて、個々の議員考え方であり、外交に対する姿勢ではないかというふうに私は感じましたので、その点だけコメントさせていただきたいと思います。
  15. 田英夫

    田英夫君 今の御報告を聞きまして、特に今回非常にいい選択を、これは会長、事務局でされたのかもしれませんが、いい国を訪問されたと感じます。それぞれ日本にとって非常に重要であることはもちろんですけれども、同時に従来、比較的国会あるいは一般的に関係あるいは交わりが薄かったのではないかという国を訪ねられたことは非常に意義があったと思います。  今の御報告を聞いて具体的に三つぐらい興味を持ちましたのは、一つは上田さんが言われた北朝鮮、中国に対する脅威という問題。これは余りにも実情とかけ離れた、アメリカのごく一部の脅威論がむしろアメリカの中以上に日本では大きく取り上げられ過ぎているんじゃないかという印象をかねて持っていたんです。ASEAN諸国というのはその点を非常に冷静に見ているんじゃないだろうかという感じを持っていたのが、ちょうど上田委員からその点を指摘されました。この問題は長々申し上げませんけれども、私も大体全部行った国ですが、この点は非常に重要なことではないかと思います。  それから、非同盟諸国会議のことにも触れられましたが、これも日本では余り重要視されていない。東西対立、冷戦構造と言われた時代から、アメリカを中心とする自由主義陣営とソ連を中心とする当時の社会主義陣営という対立のみが非常に大きく議論されてきましたが、実は非同盟諸国会議というのはアジアを中心にして世界ではむしろ、国の数はもちろん圧倒的に多いわけですが、ある一定の力を持っていると。  私は、今から十数年以上前、ちょうど一九七五年に北朝鮮を訪問したときに、今北朝鮮の外務大臣をやっている金永南氏が労働党の国際部長でしたが、今回我々は非同盟諸国会議に参加することを決意しましたということを表現したので、それは決定じゃないんですかと言った覚えがあります。それは、確かめたところ、やっぱり決意なんですね。社会主義陣営に入らずに非同盟諸国会議に入るということを決意した、こういうことであらわれているように、この問題、非同盟諸国会議というのをもう少し我々は重視していいんじゃないだろうかと思います。  それから、アメリカプレゼンスの問題というのに皆さん触れられましたが、これはやはり非常に冷静に我々は沖縄問題にも絡めて考える必要が、いろんなアジアの国の意見を冷静に受けとめる必要があるんじゃないか、一定の前提を持って受けとめると失敗するんじゃないかと思います。  フィリピンアメリカ軍基地を撤去するときに、実はタニヤーダという上院議員に招かれてその基地撤去運動の現実を見てきたことがあります。そういう撤去運動を経てクラーク、スービックという基地を撤去していったという一種の市民運動の力がその背後にあったということもぜひ申し上げておきたいと思います。  以上です。
  16. 笠井亮

    笠井亮君 派遣議員の皆さん、どうもお疲れさまでございました。調査室からも詳細な報告が出されまして、きょうまた直接派遣議員方々からも報告を伺って、一言で申し上げて非常にリアルに状況がわかったというのが感想でございます。本調査会のテーマであります「アジア太平洋地域の安定と日本役割」を深めていく上で極めて興味深く、勉強になったという点で感謝申し上げたいと思います。  感想的になるんですけれども、一言意見を申し上げたいと思います。  一つは、報告を拝見しまた伺いまして感じたことなんですけれども、多くの派遣議員の方も強調されましたが、東南アジアとかそれから東アジア情勢に対する各国関係者、当局者含めての認識というのが全体として本当に安定に向かっているという点で極めて楽観的だというのを私も非常に強く思いました。カンボジアミャンマーという域内の問題しかり、それから対中関係あるいは中台問題、それから南沙問題あるいは朝鮮半島の情勢もしかりということだと受けとめました。  いずれにしても、そういう一連の問題について、それぞれ自国内もしくはASEANの枠内で解決できるんだという自信を非常に感じ取りましたし、しかも軍事的な協力に基づかない平和の確立を強く望んでいるというのが強い印象であります。そういう国々にしてみますと、せっかく第二次世界大戦でこうむった惨禍から抜け出して今日の平和と発展をここまで築き上げてきたんだから、大国からはそれを促進するような援助は歓迎するけれども、相互尊重が本当に大事だし干渉されては困る、そういうことがあったら事態を悪化させるだけだというのが共通認識だなということを読み取りました。  日米安保共同宣言についても、訪問先で意見交換されたということで先ほどお話がありましたが、私もその全体の意見交換とか先方の言っていることの中身をよく読んだり伺ったりしてみますと、今申し上げたようなアジア各国の立場と日米安保共同宣言の立場、つまり安保共同宣言ではアジア太平洋地域には依然として不安定性あるいは不確実性が存在するから、この地域の安定を促進するために日米安保による影響力の行使が必要だし介入が必要だという立場をとっていると思うんですけれども、そういう立場との間にはかなり大きなギャップがあるんじゃないかなというのが大きな一点目の感想であります。  それからもう一つは、日本役割への期待の問題なんですけれども、プラサート・タマサート大学準教授ですか、日本東南アジア国々話し合いをするときにアメリカと話をする言葉を使っている。池田外務大臣は違ったランゲージで話しているというふうにずばり指摘していたのが非常に印象に残りました。プラサート氏によりますと、どこがアジアだかわからない、アジアの一員という姿勢が足りない、欠けている、そこまで言われたというのは非常に印象に残ったわけです。  そしてまた、日本に重要なことは第二次大戦以降まだ残っている問題を片づけることというフィリピンからも指摘があったようですけれども、いずれにしても各国ともアジアの中での日本役割への期待が非常に大きいがゆえの指摘として、プラサート準教授やあるいはフィリピンの政府の関係者の言ったことも厳しく受けとめる必要があるんじゃないかなというふうに思いました。  そういうことにこたえる上でも日本がとるべき道というのは、アメリカの立場からアジアに臨むというんじゃなくて、訪問した各国と同様に非同盟の立場を目指すことであり、そしてかつての侵略戦争への反省に立って戦後処理をきちっと行って憲法の平和原則を堅持するという方向が要るんじゃないかということを思いました。  そういう中で、最後なんですけれども、ラモス・フィリピン大統領が、日本には軍事的役割よりも経済的影響力を行使してほしいと言われたわけですけれども、日本ODAについても、そういうことも含めてベトナムタイを初め各国から望まれているようなインフラ整備、貧困などの社会問題の解決だとか、あるいは社会経済発展の恩恵を余り受けていない社会層に重点を向けるという期待も寄せられているわけです。そういう点も大いに念頭に入れた理念を確立していくことがいよいよ大事になっているのかなと受けとめたわけであります。  そういう観点で、本調査会の今後の調査にも生かして、私自身も大いにそういう点での調査に参加をしていきたいと思っております。
  17. 益田洋介

    益田洋介君 私は残念ながらこの五カ国どこも行ったことがございません。東南アジアでは香港、それから中国の南端、広東省のあたりしか実際に肌で経済情勢ですとか政治の情勢を感じてきた経験がないので非常に残念なわけでございますが、今このペーパーを読ませていただき、四人の参加者の報告を聞かせていただきまして、思っていた以上に活気のある、これから本当に伸びていこうという国々だなという印象を受けましたし、政策に対する考え方が非常にすっきりしているんじゃないかなという印象も受けました。  それは、先ほど来何人かの先生が指摘されているように、日本アメリカ影響を強く受け過ぎているという御指摘も当たろうかと思います。ただし、北朝鮮につきましては田先生がおっしゃったようにはアメリカは警戒心を持っておりません。自然壊滅的にこの朝鮮半島の問題は解決するだろう、むしろやはり驚異は中国であろうという点を強調していますので、我が国の外交関係者、政治家の人が中国について相当アメリカ影響を受けた上でそうした警戒心をいたずらに強くしているということは私もそのとおりであろうというふうに思います。  上田先生、ほかの参加された先生方にお答えいただいてもいいんですが、フィリピンタイ米軍のベースが撤去された。私は幾つか疑念を持っていますが、ベースで働いていた人たちの雇用問題というのに両政府はどういうふうにその後取り組まれてきているのか。要するに失業対策、新規の雇用機会の創出といいますか、そうしたことは沖縄の普天間についても嘉手納についても、我が政府としても当然真剣に取り組んでいかなきゃいけない政策上の大きな課題だと思っておりますので、現実にこの二国がどのような雇用政策を執行してきたのか、もしお考えがおありでしたら伺いたいと思っております。  それから、雇用の機会というのはベースがなくなった後むやみに創出できるわけじゃありませんので、当然大きな網で経済振興についての政策も考えて新たな産業、職業というのを創出する努力をしてきたことだろうと思いますが、もしその辺についてお考えがあれば伺わせていただきたいと思っています。  それから、資料の2の四ページのミエ学園について。これは、インドネシア福祉法人福祉友の会といったものがあって、小倉みえさんという二十一年に復員してきた方のようですが、この東京在住の方が中心になってさまざまな活動インドネシアにおいて展開されていると。非常に私は興味を持ちました。  これは、三百三十六万円供与して、ランゲージ・ラボラトリー、ビデオ、事務機器等、こういうものを供与しているんですが、政府は全く何の援助もしていない団体で、あくまでも個人の有志が設立しているような、こういう団体があること自体存じ上げませんでしたが、非常にいいことだと思いますし、今後ともできれば日本の進出企業の方のボランタリーの協力体制をお願いしたりして存続させていっていただきたい。非常に心温まる御報告をいただきました。  それから、お話し合いになったのかどうかわかりませんが、香港の来年の本土復帰についてどういうふうな、当然これは自由貿易国でありますし、外貨がアジアでは圧倒的に、シンガポールと並んででしょうけれども、流入してきているところだと思います。ですから、この五カ国の今後の経済活動についても、香港がどういう方向にこれから向かっていくのかということは皆さん興味がおありだと思うんです。この点についてはちょっと記述がないんですが、お話し合いはされましたでしょうか。  以上三点、お考えを伺わせていただきたいと思います。
  18. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) ミエ学園について話が出ましたので、最初にミエ学園について私から説明をさせていただきます。  ミエ学園は、小倉みえさんがあの戦争中にスラバヤにおられまして、そして戦後帰ってきたわけです。インドネシア人々に非常に親しくしてもらい、お世話になって帰ってきた。したがって、インドネシアに何かしなければならないという気持ちを持ちまして、私なんかも相談を受けまして、そして二千五百万円の金を出しまして、実はあの戦争中に当時インドネシアに残って独立戦争を戦った日本人が千人以上おったんです。多くは戦死をしましたが、二百名ぐらいは残っております。それの会館をつくって、そしてそこにその人たちの二世、三世、またインドネシアの若者、そういう人たち日本語を教えようとミエ学園という学園をつくったんです。  それで、この前私たちインドネシアに参りましたときに、例の草の根無償で三百万円くらいでしたか、日本政府がお金を出すということになりまして、それで私たちはちょうど一緒になってそのセレモニーに参加をしたというようなことなんです。  ミエ学園は、実は後援会もつくっておりまして、そういう日本語学校のほかに、インドネシアの小学生、中学生に対して、ジャカルタとスラバヤとそれからスマトラ、ジョクジャカルタ、それだけの学校に金を出して、そして、インドネシアの少年が学業につくことができるように学資を支給したということでありまして、日本に後援会ができておりまして、私もその後援会に入っておるわけですけれども、そういうのがミエ学園であります。
  19. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 基地撤去と雇用政策の問題なんですけれども、この問題で一番苦しんだのはフィリピンなんです。  私、ここに一冊本を持っているのは、当時赤旗の記者がフィリピンにずっといまして、「こうして米軍基地は撤去された」という本を書いているんですけれども、九一年九月十六日に上院が新しい米比基地条約の批准を拒否して、これは歴史的な日になったんですね。あれはアキノ大統領のときに新しい憲法ができて、新しい憲法というのは、基地は持たない、核兵器を持たない、それから国の政策として戦争は放棄するという、日本の憲法に似たような、またあるいは超えたような、そういう内容がありまして、基地を持つ場合には上院が承認し、議会が要求する場合は国民投票が要る、上院の承認には三分の二以上の同意が要ると憲法で決まっているわけです。  それで、この十六日に批准が拒否されるんですが、このときの十二人の上院議員の演説が全部この本には資料で入っているんですね。これを読みますと、やっぱり一番皆さん苦しんだのは雇用問題なんです。例えば、アキノ政権のエンリレ国防相は、「条約拒否のための唯一の障害は、全面的で急な米軍撤退による基地労働者の失業だ。これへの容易な回答はない。」と、こう言っていますし、ラウレル副大統領の弟さんは、私の心は、現在苦しんでいる、基地撤去後もっと苦しむ人たちのために血が流れている。これもやっぱり雇用問題なんですよね。  だから、基地撤去したいけれども、撤去して膨大な米軍基地労働者の雇用をどうするんだということで一番苦しんだんです。しかし、とにかくやろうということで基地撤去をするわけです。そのもの自体は必ずしも全面的に解決したわけじゃないし、我々も余り時間がなくてこの問題をフィリピン方々に質問はできなかったんですけれども、新聞報道等ではクラーク基地並びにスービック基地ともに特別の経済発展地域に国として指定されて、今度スービックでAPECの首脳会議が開かれたんで、むしろ大統領も基地がこういうふうになっているということを全世界首脳に見せようとした点があるので、かなりすばらしい変容がアジアで最大の二つの基地で進んでいるんです。  しかし、我々聞いているところでは、全部これで雇用問題が解決したかというと決して解決していないんで、解決していないけれども、フィリピン経済が基地撤去によってむしろ新しい発展方向方向としてはそれを生み出しつつあるということは言えるんじゃないかと思います。  だから、これはやっぱり沖縄の問題にとっても、沖縄の場合は雇用問題と同時に軍用地主の生活問題もあるのでさらに複雑ですけれども、やはりフィリピンでああなんですから、日本経済力をもってすれば解決方向は必ず見い出し得る、そういうふうに思いますけれども、どうも一般的な答えで恐縮です。
  20. 板垣正

    板垣正君 今のお話のとおりだと思うんですね。我々もできたらあそこに入りたいと言ったんですが、入るチャンスがなかったんですが、あの地域経済団地として発展させていこうというようなプランを持っておるということです。雇用問題は確かに深刻な問題で、フィリピン全体が非常に苦しんでおる、そういう背景もありますから、やはり短期的にはなかなか解決が難しいんじゃないでしょうか。だから、今度APECで、フィリピン人たちがあそこでデモをやって、自分たちの不満を訴えるというふうな姿もあったという、やはり発展途上における一つの悩みというのがあらわれてきたと思います。  それと関連をして、大統領も、我々は基地はなくしたが、アメリカプレゼンスは認めておりますよ、それを否定しているんじゃありませんよということで、いろんな御報告もありましたが、やはり私の印象は、さっき中途半端で終わりましたので若干追加させていただきますが、私の受けとめ方というのは、やはりアジアにおけるARFあり方には非常な自信を持っていますね。  ARF話し合いをして、初めはもう多国間協議をノーと言っておった中国を、失敗しても何回も何回も話の場に引きずり込んでいって、ようやく国際法に基づいて、海洋法条約に基づいて平和的な話し合いをしますということがフィリピンとの間でも話がついたとか、もし、ARFがなかったらあそこでは武力抗争が起こっていたかもしれない、そのくらい言い切っておりましたから、さっきお話もありましたけれども、ARFというものはあくまでも決定する場じゃない、席に着いて、そういう問題を皆で話し合う、それを平和的に何とか解決をしていく、そういう誇りといいますか、自信的なものは感ぜられました。  感ぜられましたとともに、そういう楽観できる、今アジアが上り坂にある、協力体制ができつつあるという、それでARFの体制なりAPECという格好でしょうが、やっぱりその安定ですね、その安定を支えているものがやっぱりアメリカプレゼンスなり日米安保体制、これをやはりそこに位置づけていることは間違いないと思います。かつ、そういう流れの中における日米安保体制というものが、今までの一国平和主義でアメリカから守ってもらう立場の安保にあらずして、いわばアジア太平洋地域の平和、安定をどうつくり出していくか。これは、ラモスが言ったとおり、確かに日本に武力的役割期待しているわけじゃない。しかし、そのプレゼンスというものを通じて、やはり日本にもう少し積極的に平和政策の方まで打ち込んでくれと。  これはさっきもお話ししたフィリピン上院議員フィリピンというのは上院議員というのは二十四名しかいないんです。だから、投票のときは何千万票という票をとって、全国区なんですね、あそこ。まだ五十代ぐらいの上院議員あたりが未来を、日本がまた過去のことをいろいろ言っているのは、そんなものは老人の二日酔いだというくらい、日本は安保の問題でももうちょっと積極的にやったらどうですかと、それは偽りのない率直な場面でした。  そういうことも含めまして、私はやはりこのアジア成長の姿というものと、日本がもっと積極的なかかわりをいろんな形で持っていくことをアジア人たち期待している。過去のことなんて余りこだわっておりません。むしろ、そういうことはそれとして、日本の前向きな協力を期待するというのが私の受けとめ方であります。  以上です。
  21. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) 香港の将来の問題について私から申し上げますと、香港の問題は直接問題にしなかったわけです。中国に対して、結局中国国内問題というようなことで、各国とも大体そういうようなことで、余り中国のことをとやかく言うということは避けておったというような印象です。
  22. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 香港の問題じゃないんですけれども、長い目で見ますと、歴史を振り返ると、常に緊張状態と比較的ゆったりした状態を繰り返しているわけですね。緊張状態がひどくなると爆発して戦争になる、こういう繰り返しを持っているわけであります。だから今、これはちょっと老人の苦労性で言うようなものですけれども、ASEAN地域が前向きの非常に明るい姿勢を持ち得ているのは大変結構で、私もこれを心から祝福したいんですが、世界的な状況を見ますと、そういう方向にずっと行ってしまうと必ずしも言えない条件があると思うんですね。きょうはことごとく言いませんけれども。  第一は戦争要因。国際問題を軍事力解決しようという姿勢が全くなくならない限りは我々は本当に安心はできない。ASEANにしても、海空軍を充実させるということは、武力的に前進するということでありまして、これがASEAN経済力の高まり、科学技術力の高まりによって、核装備の方に前進しない可能性は絶無であるかといえば、中国とインドの間に囲まれているこの地域がその誘惑に駆られないということは、必ずしも断定はできないんじゃないか。  第二は食糧問題です。これはアメリカのワールドウォッチが盛んに言っているように、二十一世紀は飢餓の世紀だと。食べ物の争奪戦、足りなければ輸入すればいいじゃないかということの言えない時代が来る可能性が、私はワールドウォッチほど悲観しませんけれども、かなりあるではないかということ。  その次は、エネルギーの窮乏ですね。  第四は環境、地球環境が悪くなってくる。  少なくともこの四つの状況を見れば、心配し過ぎかもしれませんけれども、心配しないでおれない要因がむしろこれから高まる可能性もある。  そういう状況の中で、アメリカ軍が日本にいるという状況を近隣諸国は仮に結構だと言われましても、いつまでもこういう状況が望ましいとするのか。それを必要としない平和的条件を整えるとすれば、どういう条件にすればアメリカ軍のプレゼンスなしにアジアを平和にやっていけるかという検討は全然必要ないのか。  聞くところによると、ペンタゴンではどういう状況になったら日米安保を解消できるかという検討を普通にやっているそうです。ですから、我々もやはりそういうようなことも念頭に置いて、アメリカアメリカの利益によって判断するんでしょうが、我々はやはり東アジアの本当の安定的平和を実現するために、米軍プレゼンスを必要としない日本あるいはアジア諸国のあり方について掘り下げることが必ずしもむだではないではないか。  結局、平和問題というのは、軍事力プレゼンスによって、軍事力によって国際問題を解決するということをなくさない限りは危ないと。つまり、これはまた夢のような話でありますが、すべての国が戦争放棄を堅持しない限りは、経済成長につれてイラクなどは核兵器以上の猛烈な力を持つ化学兵器、生物兵器を持っておるというので騒いだことがありますが、そういう武力に対する誘惑をまず人類は容易に絶無ならしめ得ない、こういうことも一応は考えに入れるべきではないかと思うんですね。  結局、各国が戦争放棄をやるということは、何はさておいても現に核兵器を持っている国から、インドがこの間の会議で盛んにやったわけでありますけれども、核廃絶のプログラムを明確にして、そしてしかる後にほかの国も核の誘惑にはとらわれるなという勧告をまず持っている側がやるとか、そういうようなことを夢のように考えないでやりませんと、歴史の歩みというのは非常に加速度をもって進みますので、先の先を考えて、当面の楽観的な緩やかな考えも大変に結構ですし、必ずしも私はそれに反対はしませんけれども、そのもう一つ先の将来を考えに入れまして、武器の問題、食糧の問題、エネルギーの問題、環境の問題を総合的に視野に入れて掘り下げるということが、非常に抽象的な話ですが、大事じゃないかという気がするんです。どうか老人の苦労性だと思って聞いていただきたいと思います。
  23. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 先ほど申し上げましたように、アメリカプレゼンス問題というのが各国ともいろいろな意見を言い、ジレンマに苦しみ、アジアの平和にとっても今後大きな影響を持つんですけれども、私が非常に危険だと思うのは、アメリカの国防報告、それから「関与と拡大の国家安全保障戦略」等々で、アメリカ軍事力行使の場合に三つのケースを挙げていまして、第一がアメリカの死活的利益にかかわる場合、この場合は必要なことは何でもやると、こう書いてあるんですね。二番目は死活的利益にはかかわらない軍事紛争の場合、三番目は人権問題、三つあるんです。  今度イラク軍の動きでミサイル攻撃をやったんですが、あのときクリントン大統領は死活的利益にかかわるということを言ったんですね。あの場合、全く国際法違反なんです。つまり、国連決議にもない、国連安保理事会で決議も否決されたと。国連は認めていない。それから、国連憲章五十一条の個別的集団的自衛権にも関係ない。つまり、武力攻撃されてないんですから、アメリカも同盟国も。そうすると、これまで国連憲章のもとで武力行使していいケースとして、国連が承認した場合、それから武力攻撃を受けて個別的集団的自衛権を発動する場合、二つあったんだけれども、二つに当てはまらないんですね。全く勝手に国際法違反で死活的利益にかかわると言ってやったんですよ。アメリカの国防報告も「関与と拡大の国家安全保障戦略」も、国際法に基づいてなんという言葉は一行もないんです。だから、今後アジアでやっぱりアメリカが自分の死活的利益にかかわると思うと軍事力を全く勝手に行使する、そういう危険がアジアでもあるわけで、その実証が今度のイラク問題だったんです。  そういう意味では今、武田さんも言われましたけれども、そういう軍事力行使によらないアジアの平和を本当に探究することをしないといけない。やっぱり国際法、それから国連憲章に基づくそういう方向で本当は探究していく必要がある。アメリカの必要なことは何でもやるの中には核兵器使用も入っていたわけです。これは公然と書かれているわけで、そういう点では唯一の被爆国だったこの日本が、非核非同盟の方向アジアの諸国と共同して探究するという必要は今の情勢でいよいよ大きくなってきた、そうつくづく思っています。
  24. 板垣正

    板垣正君 上田先生のおっしゃるアメリカが国際法を無視して軍事力を行使する危険がある、アジアにおいてもそういう危険性があると。例えば、現在のアジアにおけるアメリカが国際法を無視して軍事力を行使するという可能性はアジアのどこの地域においてあり得るわけですか。
  25. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 九四年の北朝鮮の核疑惑のとき、アメリカはかなり脅迫的軍事的政策をとろうとしたんです。でも、明らかになったけれども、日本アメリカが何か起こしたときに何をやってくれるかと、かなり要請があって、日本としては当面できないという答えがあって、自民党の国防関係の方がアメリカへ行って聞いてきたところによりますと、どうも日本が何もできないのでカーターに行ってもらって平和的解決方向を探ったんだ、そういう話がアメリカ側であったそうですがね。だから、本当にやりかねないんですよ、死活的利益にかかわると。  だから僕は、九四年の場合、日本が何もやらないのでアメリカは軍事的脅迫じゃなくて平和的路線に切りかえたという話、もし本当なら、日本がどっちを向くかということはアジアの平和にとって非常に大きな役割を果たすんです。だから、日本がそういう無法なときにノーと言えるようにしなきゃならない。それを日米安保共同宣言とか今度のガイドラインで事実上のアメリカとの条約みたいなもので手を縛ると、いよいよ日本は全然武力攻撃を受けていないのに、アメリカの行う軍事行動に巻き込まれると危機が実際のものになるだろうと思います。
  26. 板垣正

    板垣正君 ここで先生と議論するのもいかがかと思うけれども、しかしこれは非常に大事なことで、おっしゃるようなことをそのままああそうですがというわけにはなかなかいかないと思うんです。  というのは、安保体制なら安保体制の根底にかかわる問題で、つまりアメリカが無責任に武力を行使するという見方が、そういう見方があれなんでしょうか。むしろ私は逆に、アメリカがもう兵隊さんを殺すということはなかなか難しい、第一線に出すということを非常に渋るといいますか、PKO活動も非常に消極的な姿勢をとるとか、ましてベトナム戦争,朝鮮戦争であれだけの若者の血を流し、余り得るところがなかったアメリカの立場というものは、そう安易に武力を行使するという見方は私は非常に誤りではないのかなと。  さらに言うなら、安保体制というものは、やはりアメリカの前方展開、アメリカプレゼンスというのはやっぱり紛争を未然に防止するというところに今のアジア国々が、私は大方の国がアメリカプレゼンスというものを認めている。もちろんそれが永久のものとは言わない、いずれそうしたものも必要がなくなるときも来るでしょうけれども、それは相当長期的な問題であるというような話は聞きました。  そういう立場で、日本日米安保体制確認というものもアメリカ側の前方展開に、タイ首相も言った、アジアの平和というのはやっぱり日米、日中、米中関係、この三国関係が柱ですよ、その役割をよく考えてもらいたい。やはりアジアの大きな安定の問題にかかわってくる中国の未来性というのは、これこそまさに不安定な不透明な問題をまだ抱えておると。  そういう中で、台湾問題を含めさらにアメリカは今努力している。北朝鮮問題については、よくぞ我慢していると思うくらい何とか話し合いで進めていこうという努力を続けておるという姿の中での日米体制というのは、へたをすれば武力行使するから日本はそれにブレーキかけて非同盟中立だと、こういうふうな見解というのは、今の私どもなりあるいは多くの国民の支持のもとにある日米安保体制なり、あるいは日本の平和政策という面から言えば、もっと積極的にそうしたアジアの平和、安定、紛争の未然防止、危機の未然防止、危機が起こったらそれをいかに消しとめてしまうか、その辺に私は日米安保体制なり日本の平和政策の意義づけというものを見い出す。そういう利益というものは日米、日中の間でもお互い共通し得るそれぞれの利益じゃないでしょうか、アジア国々とも。
  27. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 板垣さん、我々は、うちの議員が外務省をかなり詰めたんですよ、イラクに対するミサイル攻撃の根拠を。外務省は答えられないんです、クルド族の自治についての決議についてもアメリカの軍事行動一切ないじゃないか、どうなっちゃってるんだ。結局外務省は、国連決議全体としてと言うんですよ。どの国連決議。何もない、できない。  私はこの間、代表質問でこの問題を取り上げた。そうしたら橋本首相が、国連決議全体としてとまた言いましたよ。はっきり答えられないんですね、この問題を詰めると。だから、アメリカの今度の攻撃についての国際法上の根拠は、橋本氏はあの日の夜すぐ指示したんだけれども、あらゆる根拠はないんですよ。  アメリカベトナム戦争のときは、六四年のトンキン湾決議で、トンキン湾で魚雷艇から攻撃されたということを決議にして、アメリカ国会で決議とった。これは全く捏造だったことが明らかになって、その後アメリカの上院の決議は否認されたんです。あのときもアメリカは武力攻撃を受けたという理由づけでベトナム侵略を始めたんだけれども、イラクのときには理由づけもしてないです。今はもうソ連がなくなって本当に唯一の超大国だから、ソ連がいるときは理由づけが必要だったでしょうけれども、今は理由づけなしにやるんだから。  では、板垣さん、イラクのミサイル攻撃はどういう国際法上の根拠があるとお思いですか。これは答えられたら外務省より偉いですよ。
  28. 板垣正

    板垣正君 いや、その問題は、あなたがすぐアジアに適用して同じスケールがあり得ますよというふうな言い方をされると、これは異議を唱えますね。イラク攻撃についてはいろんな論議があると思う。
  29. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ないです、一切ない。
  30. 板垣正

    板垣正君 いやいや、すっきりしてない問題はあると思う。
  31. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 問題はある。だから、アジアでもやりかねないんですよ、死活的利益のあるときは平気で。
  32. 板垣正

    板垣正君 ですからそこが、じゃ今具体的にそういう情勢というものがどこにあるんですかとなるわけですね。むしろ逆じゃないですか、アメリカが今果たしている役割は。
  33. 今泉昭

    今泉昭君 大変参考になる御報告を伺いまして、ありがとうございました。  今のアメリカプレゼンスの問題は、アメリカ経済ASEAN諸国とも大変密接な経済関係を結んでますます拡大するでしょう。ASEAN諸国もますますアメリカ経済との密接な関係がふえていくでしょう。当然そういう関係が深まれば深まるほどアメリカプレゼンスをこの東アジア地域から薄めるなんということはでき得ないことだし、あり得ないことですから、その辺のことを極端な論議にしないようにひとつ論議をしていただきたいと思うんです。  本来、私がきょうお尋ねしたいことは別な問題でありまして、具体的な武力の抗争であるとか衝突であるとかという面から生ずる安全に対する危機というのとちょっと離れまして、安全というのはやっぱり国内のいろんな問題の崩壊から発生するということも当然あるわけですね。それがそれぞれの各国の利益に抵触して武力抗争につながっていくということも当然あるわけです。  派遣されていろいろ各国視察された皆さん方に印象をちょっとお伺いしたいと思いますが、とにかくASEAN地域が今物すごい経済発展を遂げていることは事実であります。それぞれの国々によりまして、大変失礼な言い方かもしれませんけれども、民主主義の程度、成熟段階というのは大きな差があるわけです。それぞれの知恵を生かしながら、民主主義の手法を活用しながら経済発展に結びつけてこられた。  そういう意味で大変明るい方向があることは事実でありまして、今の御報告の中にも大変明るい面だけの御報告をいただきました。大変歓迎すべきことだと思うんですが、逆な面で、これらはそれぞれの民主主義の発展の段階の違いによって国内的には多くの矛盾を抱えておることも事実だろうと私は思うわけです。  例えば、経済発展がすさまじい勢いでされればされるほど、国内におけるところのいわゆる格差の拡大というものが進んでいくということと、あわせて格差の拡大というのが地下経済をますます大きくさせていっているということがあると思うんです。それぞれの国々が、民主主義のルールをとりながらも発展の段階によって違うやり方をやっているものですから、いろんな意味国内的な不協和音も出てくる。外交官なり国を治める方々は悪いというのは言わないと思うんですよ。自分たちが成功した例、それで自信を持った面だけを報告されていると思うんですが、私は、深刻な問題がそれぞれの国々で進行している面があるのではないかと思うんです。  例えば、何とかして格差に追いつこうとして、麻薬の問題、こういう問題が大変な勢いで日本にも影響を及ぼしつつある。あるいはまた、民主主義をある意味では弾圧するような形で、国際的には対話を主張しながら国内的には対話を否定するような形で、何とか追いつこうというような形の行動が政治の手法の中に出てきている一面も否定できないんじゃないかと思うのであります。  そういう意味で、例えば武田先生が言われていましたように、人口問題一つ取り上げてみても、世界の人口の三分の二がアジアに集中をしている。しかも、人口の増加率が一番高い。そういう中において、貧困という問題が表面的な、経済的な成功とは裏腹に拡大をしていっているという一面もあるわけですね。  そういうところの問題が積み重なっていきますと、国内的に政治的な不安がある。あるいは政治勢力の対立という問題も出てくる。例えば、東ティモールの問題を取り上げても、それは明らかなことでございます。  そういう面で、各国をずっと視察されまして、明るい面はそのとおりだろうと思うんですが、こういう危険性があるというふうな意味印象を受けられている点がありましたらお話をしていただければありがたいなと。それに対して日本がどうすべきか、それが総合的にこの地域の安全にも大きく影響していくだろうと思いますので、もし気がつかれたら追加して話をしていただければありがたいと思います。
  34. 板垣正

    板垣正君 インドネシアへ行ったときにそういう話を聞きました。ちょうどジャカルタの暴動といいますか、騒乱がありましたね、あの後行きましたから。  つまり、スハルト政権というのが大変な経済発展を遂げてきて、もう二十一年ですか、来年総選挙、再来年大統領選挙なんですね。そういう中でああいう暴動が起こる根っこには、おっしゃったとおり、まず所得の格差があります。持てる者と持たざる者との差があります。それから、中間層がずっと成長してきて、そうすると今あそこは与党しかないわけですね、野党を認めないという体制ですから、そういうある意味の体制に対する民主的な要求がある。あるいは、地域格差が非常に目立ってきている。特に、東ジャワの方がおくれている。これを開発できるかどうかがこれからのかぎですと、こういうふうなことも言っていました。  その辺で、ではどうすればいいかというところまでは私はあれですけれども、まさにあの国もあれだけの成果を上げながら、しかし本当の民主化過程をどう開いていくかという大きな問題に今ぶつかりつつあるという感じがしました。
  35. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 一つはそういう貧富の格差という問題が起きていて、話したときにどういう話題が出たかというと、まだ相続税を持った国がたしかないという話がありました。ですから、個人にどんどん集積できるというようなシステムをまだ今持っているものですから、そういう意味での格差が起きている。実際に町に皆さんも行かれたらわかるでしょうけれども、都市はスラム化の問題というのが物すごくありまして、実際見ていて貧富の格差という問題は極めて深刻な問題になりつつあるんでしょうけれども、それ以上にまだ国全体の水準を今東南アジアが上げようとしている段階であって、そこまでまだ少し至っていないかなというのが一つ。  もう一つは、なぜ今そういうふうに、おっしゃる意味で負の面が出てきにくくなっているか、見えにくくなっているかというのは、まだ強力な指導者が各国には存在しているからではないかと。一つは、今言いましたように、やっぱりフィリピンのラモスというのは強いし、インドネシアもそうですし、マレーシアではマハティール、まさに長年やった人たちがまだトップのままずっといるという段階で、これがかわっていくときには確かに今泉先生がおっしゃるような問題がまた噴いてくる可能性はあると。今はある意味ではリーダーシップみたいなところで無理やり引っ張っているような面もあるんではなかろうかというような気がちょっとしました。  だからといって、この貧困、格差をなくすためにどうするかという問題については、まさにこれは、ODAの中でも、例えば日本で援助するときに、どちらかというと都市の開発というような案件が出てきたら、そうじゃなくて農村開発の方に手を入れてみるとか、ODAあり方ではいわゆる民主化とかそういう均衡的発展みたいなことで協力のような考え方というのはできるんじゃないかな、そんな気はいたしました。  以上、感想です。
  36. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 今のやりとりも含めて非常に参考になる御報告をありがとうございました。御報告をお伺いして、私なりの所感を二、三点申し上げたいと思うんです。  一つは、受けた印象としまして、ASEAN各国とも、このレポートを見ましても平和と安定という言葉がキーポイントになっているんですが、これはやはり経済発展がバックグラウンドになっている。それから、そういう中で国の将来について基本的には右肩上がりでこれからもいくだろうというかなりの自信を各国の指導層といいますかお目にかかられた方がお持ちになっておる、そういう結果ではないかなと。したがいまして、個々の国が、今お話がありましたように、いろんな政治的対立というものが出てくるかどうかまだ若干の心配な面がある。しかし、基本的には経済発展をするASEAN各国という認識に立って私たちがこれから日本安全保障を考えていくということが重要なことじゃないかな、そのように思いました。  そういう中で申し上げますと、各国国内的な格差の問題とか、あるいはASEAN各国の中でもやはりベトナムタイではかなり格差があるというふうに思いますので、今議論がありましたが、日本の特にODAを初めとしたそういう国際援助のあり方ももう少し、さっきのソフトが重要だというお話も含めて、我々なりに研究をしてみる必要があるんじゃないかな、これが一点感じました。  それから二つ目ですが、先ほど来議論があります米軍プレゼンス及び日米安保の問題なんですが、私は正直言って、この報告書を読んで、今各国の中で米軍プレゼンスが必要ない、不要である、こういう議論というのはなかったという印象を受けました。いずれにしても、アジアの現況を見ると、遠い将来の話は別にしまして、依然やはり米軍プレゼンスは必要である、こういう基本的認識はそれぞれこのレポートを拝見する限りにおいてはあったんではないかと思います。将来それがどう変化をしていくかということはそれぞれ御意見はお持ちだと思うわけでありますが、少なくとも現時点及び近未来においてはそういう指摘があったんではないかというふうに受けとめました。  それから同時に、日米安保の問題も、確かにこの中にもございましたように、日米安保日米同盟があることによって何らかの脅威をASEAN国々が受けるということに対する将来的な不安といいますか、若干それはうかがい得たと思うんですが、むしろ先ほどお話があったように、これからのASEAN各国安全保障を考える上で、経済的な問題も含めて考えますと、日米、日中、米中、この三カ国の関係が非常に重要だと思うんです。ですから、恐らく私は、この三カ国のそれぞれの関係バランスASEAN国々の皆さんが念頭に置いてさまざまな発言をされたりお考えになっているんじゃないかというふうに思うわけであります。  したがって、そういう中で見ますと、こういうことを含めて私ども今度、じゃ日本安全保障あるいは役割についてこれを受けとめてどういう方向が必要だという認識を持つかという点が次のステップとして非常に重要なんじゃないかなというふうに思います。  それからもう一点は、三点目の問題なんですが、朝鮮半島及び中国の脅威の問題なんですけれども、少なくともASEAN各国日本との間で比較しますと、朝鮮半島の問題に関してはやはり置かれた状況が違うと思うんですね。地理的条件も異なる。したがって、私は少しこれは地理的な問題も含めて、ASEANの受けとめがこうだから日本はそれでいい、こういうことには議論としてはなっていかないんではないか、やはり日本の置かれた状況下での判断というのが要請されるんではないか、こういうふうに思います。  それから中国の問題は、今のASEAN各国は、中国が非常に経済発展していますし大国ですから、これをひとつ国際的なシステムの中に取り込んでいこうという認識で、例えばARFなんかもそういう方向に進んでいるというふうに思うんです。このペーパーを拝見しますと確かに中国は脅威にはなっていない、あるいはならない、こういう見解が述べられているんですが、逆に言いますと、やはり今の中国が非常に協調的であって、そして順調に発展していくということであれば脅威ではないかもしれない、しかしその成り行きによってはやはり脅威になり得る。それを潜在的脅威と言うのかどうかは別にして、それだけASEANの枠組みの中に中国を取り込んでいこうと皆さん一生懸命になっていくということは、逆に言うとやはり中国方向が違えば脅威になり得る、こういう認識があって今の政策なりそういうものがとられているんじゃないか、私はそういうふうに受けとめた方がむしろ中国の問題はよろしいんではないか、こう思いました。  特に、アメリカという国に対する認識の違いというのがさつきの議論でございましたけれども、恐らくその議論の根底にあるんではないかというふうに思うわけであります。私たちがどこまで将来を見据えて議論するかということにかかわってくるんですけれども、少なくとも向こう十年とか二十年というスパンでアジア安全保障ということを議論していくということから考えますと、ちょうどこれは最後に念押しになるんですけれども、やはりアメリカ軍の存在とか日米安保体制というものが当面は必要ではないか、こういう認識をもう一度、これを受けた印象として持ったということを申し上げておきたいと思います。
  37. 林芳正

    ○林芳正君 今の安全保障の問題については、いろんな議論があっておもしろかったんですが、私も今の直嶋先生、板垣先生と大体同意見でございまして、よくARFとか多国籍の機関というのが代替するというような考え方があるんですけれども、私はやっぱり補完でなくてはいけない、こういうふうに思っておりまして、ベースにやはり今のハブ・アンド・スポークという体制があって、そのベースの上に乗っかって信頼醸成等この多国籍のところでやっていくことによって補完機能を果たしてもらう。何年というお話が今ありましたけれども、長期的にはこの補完機能がどんどん充実していけばベースが要らなくなるという事態も可能性としてはないとは言えないと思うんですけれども、現状を見る限りはやはりベースがあってそれを補完する、コンプリメントするというふうに言うんだと思うんですが、そういう機能だろうな、こういうふうに思っております。  ですから、ヨーロッパで例えますと、まだARFはNATOと呼ぶには全然そこまでいってないわけでして、CSCEというものに近づきつつあるというのが現状だと思いますから、NATOがあってCSCEがあるということで、やはり補完というところはきちっと押さえていかなければいけないと思います。  それからもう一点は、先ほど今泉先生が触れられた点ですけれども、貧富の差が、開発独裁というふうに言われている問題に関連してだと思うんですが、ございました。これはどこと比較するかという問題も私は視点として必要じゃないかと思っておりまして、例えば日本や西欧諸国と比べればまだ開発独裁のフェーズですからそういうこともあろうかと思うんですけれども、逆に言えばアフリカの発展途上国、また南米の発展途上国と比べた場合にどうかという視点も必要だと思います。  この視点で、たしか数年前に世界銀行から「イースト・エイジアン・ミラクル」というレポートが出ておったと思いますけれども、これには非常に高度の経済成長を遂げた一方で、きちっと所得の格差が余り広がらないように配慮しながら持続的な成長をしておると、非常に好意的なレポートが出ておったわけでございまして、行かれた方がその辺までお話をされたようには、このレポートにはこれは安全保障ですから出ておらないわけですけれども、多分次の段階としては、徐々に民主化をしていく過程で社会のいわゆる現時点で中から下層にある方がどうやって上昇していく機会を与えるか。これは我が国の場合はまさに今受験戦争と、こういうふうにやゆされておりますけれども、メリットクラシーを導入して上層部へ流れ込んでいく仕組みをうまくつくって、その後終身雇用、生涯賃金という保障をシステムとしてすることによってやってきたというふうなことが言えると思うんですが、この辺の制度をどうやってどの段階でそれぞれのASEANなりその後に続いてくる国が取り入れていくかというようなことになってくるのではないかなと思っておりますので、 一言つけ加えさせていただきました。
  38. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 きょうは、貴重な御報告を聞かせていただきまして、大変に参考になりました。非常に明るい未来というか、そんな印象を持ったんですが、先ほど板垣委員、また木庭委員がメルカド上院議員の言葉を引用して、過去の問題について言うのはもう老人の二日酔いだというような御指摘もありましたが、しかし一方においてまだ残っている問題があるというような御指摘もあります。また、これはタマサート大学の準教授のレポートですか、発言の中でも、日本アジア的なアイデンティティーを示すと危険があるという指摘があるというようなこともあります。  東南アジアASEAN経済発展そして安定、その中で日本がどのような役割を果たしていくかというふうなことを考えた場合、やはり日本に対する根本的な信頼回復をどう図っていくかということが非常に大切ではないだろうかというふうに私は思っております。この点もぜひ心の片隅に置いておかなければなりませんし、これがなくして、いつまでたってものどに刺さった骨のような状況で続くのではないだろうか、私はこのように考えております。
  39. 南野知惠子

    南野知惠子君 御訪問された先生方の大変有意義な御報告をお伺いいたしました。ベトナムのところでは、真っ先にチョーライ病院などがございまして、私も過去に関係しておりますいろいろな医療関係の問題については大変興味深く見せていただきました。  先生方が御訪問されました国々については、私も全部の国に二、三回は訪問させていただいているのでございますが、特にODA、また経済協力という関係につきましても大変興味深く思っております。ベトナムには日本人のお漬物屋さんが出たりしております。また、そういうことの関係からこれからは我が国のいわゆる社会進出、企業の進出ということもあるでしょうから、そういったものについてこれからも経済も大いに協力していかなければならない。  この協力する土台の中に、やはり今もお話が出ましたように信頼関係というところに大きなポイントがあろうかと思っております。信頼関係の中で、女性だから言わなきゃならないポイントというものもこの中にあるのではないかなと思います。それは、やはり今いろいろなところで話題になっている児童虐待だとか、いわゆる買売春の問題、また麻薬の問題、そういった問題についても各国協調しながら、やはり我が国も守りながら他国の人々も守っていくということも大きな観点ではないかなと思っております。男性方が出かけていかれる場合にはそこら辺の小さな話題というものはなかなか出にくいだろうと思いますが、我々が出かけていくときには大変そういった部分が大きくなってくるということも、バランスのとれた国際協力ということの中には必要になってくるのではないかなと思っております。  それからもう一つ、このチョーライ病院との関連もあるんですけれども、我が国ベトナムとは、ベトちゃん、ドクちゃんというところから大変興味深く、医療の話題から進出いたしました。そういう中でも大変興味を持ち、ここの政治の中にも日本がどのような形で援助しているかということが出てきているんですけれども、これからの国際社会については、やはり相手方の望む援助をどのように顔が見えるようにするかというところに大きなポイントがあるだろうと思います。    〔会長退席、理事板垣正君着席〕  そういう観点では、ベトナムについては、私は、人口問題議員懇談会というアジア国々議員人たちとチームをつくっております。そういうような方々と一緒にスービックに行ってみたりとか、それからその他では、ベトナムではクチ、御存じだろうと思いますけれども、そういうところまでも行って、そこに住む方々の心理的な問題、または経済の問題、貧困の問題等も見てきているわけですけれども、ベトナムの女性が、自分たちも自立をしたい、そして医療という問題を考えたい。食糧と水というところに大きなポイントを置いておられます。そういった意味では、向こうの人方が、私は助産婦ですのでそれを要求されたと思うんですが、助産婦協会をつくって女性のいわゆる人口問題を解決したいと。そういう要求にこたえて向こうにそういった援助をすることができたわけなんですけれども、そういう目に見えた形、向こうの人たちの望む援助というものがこれからの大きな課題になってきて、日本が手を差し伸べたことによって向こうの人たちが健康になれた、いい生活ができるようになったというところが一番基本になってくるのではないかなと思っております。  経済援助について私見を述べさせていただきました。これからも、いろいろとお出かけになられますときにはやはりもう一方の、もう一方と言ったら変な言い方ですが、女性という問題についても、生活の暮らしの場面ということも見てきていただきたいなというふうに思っております。あれはマレーシアでしたか、スモーキーマウンテンなども状況を見にいきましたけれども、大変興味深いといいますか、経済問題とその国の発展ということには大きな意味合いを持っていたなと思っております。  以上でございます。
  40. 山本一太

    山本一太君 今の南野先生のおっしゃったこと、随分私も賛同できるところがありまして、大変いい御意見だったと思います。    〔理事板垣正君退席、会長着席〕  私もJICAとそれから国連開発計画で随分長い間援助の仕事をやってまいりました。今泉先生がいろいろ、ASEANで明るい話ばかりじゃなくて、それぞれの国情によって民主主義の発展段階も違うしさまざま問題を抱えているというお話があったんですけれども、ちょうど今月号だと思うんですが、「フォーリン・アフェアーズ」にハンチィントン教授が、西欧というものはユニークだけれどもユニバーサルではない、すなわち西欧の価値観というものが必ずしもアジアには当てはまらないという論文をお書きになりまして、その中に、アジア経済発展というのは必ずしも西欧的なやり方で達成されたのではないという一文がありました。コカコロナイゼーションという言葉をハンティントン教授が使ったんですけれども、コカ・コーラみたいなものが西欧を席巻しても、結局それが、西欧文明というか西欧的考え方というものが世界を席巻するというのはこれはもうアメリカのおごりだという、そういう趣旨の論文だったわけなんです。  さっき林先生がおっしゃったように、開発独裁の問題、いろいろあると思うんですね。それがいいかどうかというのは別としても、私の経験からいきますと、やはりアジアにはアジアのやり方というものもありまして、もちろん民主主義の発展段階、民主主義に向かって進んでいくことはもちろんなんですけれども、そこら辺のところを単に言えない問題がある。アジアの今の発展というのはアジア的なアプローチをしたから成功したというところも私はあると思います。  私は、さっき林先生がアフリカのことを言いましたけれども、よく援助の世界アジアのモデルをアフリカに当てはめて何とかしようというセミナーがあるんですけれども、初めてニジェールに行ったときに、飛行機の上から見て十五分も赤茶けた砂漠で、これはサハラ砂漠ですけれども、アジアとアフリカというのは置かれている状況が全く違うんですね。文化的にも違いますし、あんな圧倒的に不利な地理的条件を抱えたところでアジアモデルは通用しないんじゃないかというのが、初めてアフリカの地を踏んだのがニジェールだったんですけれども、私の印象だったんです。  申し上げたいことは、民主主義の発展段階はいろいろあって、自由化の問題等は抱えているんですが、やはりアジア的な価値観とかアジア的なやり方というものにも目を向けてODAとか経済発展の問題は考えていくべきなんじゃないかということを今泉先生のお話や南野先生のお話を聞きながら思いましたので、一言だけコメントさせてください。
  41. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) ほかにありませんか。  それでは、時間が参りましたので、本日の意見交換はこの程度とさせていただきます。  各委員には積極的に御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。  なお、今後の本調査会活動でございますが、理事会等で協議いたしました結果、調査テーマである「アジア太平洋地域の安定と日本役割」のもと、引き続き安全保障について議論を進めるとともに、それに加え、アジア各国経済情勢を踏まえ、経済協力等についても議論を行い、我が国の果たすべき役割調査していき、何らかの成果が得られるようにしてまいりたいと存じまするので、委員の皆様の御協力をよろしくお願い申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十七分散会