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1996-12-12 第139回国会 参議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年十二月十二日(木曜日)    午後一時開会     ―――――――――――――    委員氏名     委員長         釘宮  磐君     理 事         須藤良太郎君     理 事         野間  赳君     理 事         木暮 山人君                 岩崎 純三君                 笠原 潤一君                 武見 敬三君                 成瀬 守重君                 宮澤  弘君                 高橋 令則君                 寺澤 芳男君                 長谷川道郎君                 田  英夫君                 松前 達郎君                 立木  洋君                 武田邦太郎君                 佐藤 道夫君                 椎名 素夫君                 矢田部 理君     ―――――――――――――    委員異動  十一月二十九日     辞任        補欠選任      高橋 令則君     高野 博師君  十二月四日     辞任         補欠選任      田  英夫君     照屋 寛徳君  十二月五日     辞任        補欠選任      照屋 寛徳君     田  英夫君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         釘宮  磐君     理 事                 須藤良太郎君                 野間  赳君                 木暮 山人君                 武田邦太郎君     委 員                 岩崎 純三君                 武見 敬三君                 宮澤  弘君                 高野 博師君                 寺澤 芳男君                 長谷川道郎君                 田  英夫君                 松前 達郎君                 立木  洋君                 佐藤 道夫君                 椎名 素夫君                 矢田部 理君    国務大臣        外 務 大 臣  池田 行彦君    政府委員        防衛庁防衛局長  秋山 昌廣君        防衛庁装備局長  鴇田 勝彦君        外務政務次官   高村 正彦君        外務大臣官房長  原口 幸市君        外務大臣官房領        事移住部長    齋藤 正樹君        外務省総合外交        政策局長     川島  裕君        外務省総合外交        政策局軍備管        理・科学審議官        事務代理     稲川 照芳君        外務省アジア局        長        加藤 良三君        外務省北米局長  折田 正樹君        外務省中近東ア        フリカ局長    登 誠一郎君        外務省経済局長        事務代理     小野 正昭君        外務省経済協力        局長       畠中  篤君        外務省条約局長  林   暘君        通商産業大臣官        房審議官     安達 俊雄君    事務局側        常任委員会専門        員        大島 弘輔君    説明員        総務庁北方対策        本部審議官    川口  雄君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件理事補欠選任の件 ○国政調査に関する件 ○国際情勢等に関する調査  (沖縄に関する特別行動委員会最終報告に関  する件)     ―――――――――――――
  2. 釘宮磐

    委員長釘宮磐君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十一月二十八日、青木薪次君及び照屋寛徳君が委員辞任され、その補欠として田英夫君及び松前達郎君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 釘宮磐

    委員長釘宮磐君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 釘宮磐

    委員長釘宮磐君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事武田邦太郎君を指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 釘宮磐

    委員長釘宮磐君) この際、池田外務大臣及び高村外務政務次官より発言を求められておりますので、順次これを許します。池田外務大臣
  6. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 第二次橋本内閣において、引き続き外務大臣を拝命いたしました池田でございます。参議院外務委員会の開催に当たり、委員長初め委員皆様方一言あいさつ申し上げます。  我が国外交にとって重要なこの時期に再び外務大臣を拝命することは、光栄であると同時にその重責に身の引き締まる思いであります。  今日、我が国姿勢行動国際社会全体の将来に大きな影響を与えるようになりました。世界の平和と安定の実現を通じて自国の安全と繁栄を確保するため、我が国も一層積極的な役割を果たしていかなければなりません。私は、前内閣での経験、本委員会を含む国会における御議論等を踏まえ、日本外交のかじ取りに全力を尽くす決意であります。  基本的な外交姿勢といたしましては、引き続き、日本外交の基軸である日米関係維持強化に努める所存であり、また重要な隣国である中国を初め世界各国との友好協力関係の一層の増進も図っていく必要があります。同時に、グローバルな協力アジア太平洋における地域協力に積極的に参加しながら、今日の外交課題に精力的に取り組んでまいります。最近もAPEC閣僚会議及びWTOシンガポール閣僚会議に出席し、国際社会全体の繁栄に向けた努力の中で我が国の果たす役割重要性を実感したところであります。また、外交政策の重要な手段であるODAに関しては、その効率的な実施を図っていく所存です。  外交を進めるに当たっては、国民皆様の御理解を得ることが不可欠であり、この観点からも本委員会での御議論は極めて重要であります。釘宮委員長初め委員皆様の御指導と御協力を賜りますようお願い申し上げます。
  7. 釘宮磐

  8. 高村正彦

    政府委員高村正彦君) 第二次橋本内閣発足に伴い、外務政務次官に就任いたしました高村でございます。一言あいさつを申し上げます。  依然流動的な情勢の中で新しい秩序を模索している国際社会にあって、我が国外交が果たすべき役割を考えると、その重責に身が引き締まる思いであります。  国際的な相互依存関係が深まっている中、我が国の安全と繁栄世界の平和と安定なくして考えられません。我が国は、日米関係を初めとする個々の二国間関係を増進するとともに、幅広く国際社会の直面する諸課題解決に向けてこれまで以上に積極的な役割を果たさなければなりません。具体的には、地域紛争平和的解決、軍縮・不拡散の一層の促進、世界経済の発展の確保、地球規模問題への対処などの課題に真剣に取り組む必要があります。先般も、ボスニア和平履行評議会ロンドン会合に出席し、日本に対する期待の大なることを印象深く思った次第であります。  我が国外交にとって重要なこの時期、私は池田外務大臣とともに全力を傾注して職責を果たす決意であります。釘宮委員長初め本委員会皆様の御指導と御協力を賜りますようお願い申し上げまして、私のごあいさつとさせていただきます。     ―――――――――――――
  9. 釘宮磐

    委員長釘宮磐君) 次に、国政調査に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、国際情勢等に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 釘宮磐

    委員長釘宮磐君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  11. 釘宮磐

    委員長釘宮磐君) 次に、国際情勢等に関する調査のうち、沖縄に関する特別行動委員会最終報告に関する件を議題とし、池田外務大臣から報告を聴取いたします。池田外務大臣
  12. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 去る二日、久間防衛庁長官とともに、ペリー国防長官及びモンデール駐日大使との間で日米安全保障協議委員会、いわゆる2プラス2を開催し、沖縄に関する特別行動委員会SACO)の最終報告を了承し、発表いたしました。この最終報告に盛り込まれた措置実施されれば、沖縄県の地域社会に対する米軍活動影響を相当程度軽減することができるものと考えております。  最終報告に含まれている措置の主要点を御説明申し上げます。  まず、土地の返還項目では、普天間飛行場を含む十一の施設区域の全部または一部の返還が取りまとめられております。これらの返還がすべて実現すれば、現在沖縄県にある米軍施設区域は約二一%、五千二ヘクタール縮小することになります。この縮小の規模は、沖縄復帰以来今日までの二十四年間に返還された施設区域の面積の累計四千三百二十八ヘクタールを上回るものであります。  また、同報告書の不可分の一部をなす普天間飛行場に関するSACO最終報告では、同飛行場代替ヘリポート建設の方策として海上施設案を追求することが明らかにされました。そのため、日米安全保障高級事務レベル協議のもとに新たに普天間実施委員会を設置し、同委員会代替ヘリポート建設のための実施計画を遅くとも明年十二月までに作成することとされております。  さらに、同委員会は、実施計画について日米安全保障協議委員会の承認を得た上で、日米合同委員会協力しつつ、設計、建設、試験及び部隊・装備移転についての監督を行い、このようなプロセスを経て、普天間飛行場は、今後五ないし七年以内に、代替施設が完成し運用可能になった後、返還されることとされております。  次に、訓練及び運用の方法の調整の項目では、県道一〇四号線越え実弾砲兵射撃訓練日本本土への移転などが盛り込まれております。  騒音軽減項目では、嘉手納飛行場における海軍航空機運用及び支援施設海軍駐機場から主要滑走路反対側移転することなどにより、米軍飛行場周辺の住民の方々に対する航空機騒音による御負担をできる限り軽減する措置などが掲げられております。  そして、地位協定運用改善項目では、米軍航空機事故調査報告書提供手続米軍施設区域への立ち入り及び検疫手続に関する合意などのほか、任意自動車保険や請求に対する支払いなどの改善策が取りまとめられております。  今回の最終報告をもって、沖縄に関する特別行動委員会の作業は成功裏に結実し、沖縄県における米軍施設区域の問題は一区切りを迎えたわけですが、両国政府は、この最終報告に盛られた措置の着実かつ迅速な実施のために共同の努力を継続し、また引き続き沖縄県の米軍施設区域に関連する問題に真剣に取り組んでいくことにつき意見が一致しました。また、地位協定運用についても、これを改善するための努力を継続することとなりました。  そして、この最終報告を受け、三日には、政府を挙げて特別行動委員会最終報告に盛り込まれた措置を的確かつ迅速に実施するために法制面及び経費面を含め十分かつ適切な措置を講ずるとの決意確認するための閣議決定を行いました。  政府としては、こうした点につき最大限の努力を払う所存でありますが、委員各位におかれましても、特別行動委員会最終報告に盛り込まれた措置の趣旨を御理解いただき、その実現のため御協力いただきますようお願い申し上げます。
  13. 釘宮磐

    委員長釘宮磐君) 以上で報告の聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  14. 武見敬三

    武見敬三君 ただいま池田外務大臣より沖縄に関する特別行動委員会SACO最終報告に関する御報告をちょうだいいたしました。また、その御報告に先立ちまして、今朝帰国されたばかりで、午前は衆議院の方にも御出席なされているというお話を伺っておりまして、大変なスケジュールの中で御尽力されていること、大変御苦労さまということを申し上げておきたいと思います。  さて、このSACO最終報告に関する私の見解は、まさにこの報告にありますとおり迅速にこれが実施に移されることを切に期待していると同時に、これを実行していくことが日米同盟関係というものを今後さらに円滑に、かつこのアジア太平洋における平和と安定を守る上において極めて重要である。したがって、日米同盟というものがまた沖縄を通じても円滑に機能するよう、そしてそのことをでき得る限り負担をこうむられる沖縄の県民の皆様方にも御理解をしていただけるよう御努力いただけることを切に望むものであります。  それでは、質疑の方に移らせていただきます。  さて、昨今、我が国在外大使館、いわゆる外交使節団等の果たしている役割について、さまざまな憶測をも交えた記事が掲載をされたり、あるいは対談が雑誌をにぎわすというようなこともあるわけでございまして、ひとつこうした外交使節団の果たしている役割という問題意識に基づいて御質問をさせていただきたいと考えるわけであります。  言うまでもなく、外交使節団役割に関しましては外交関係に関するウィーン条約によってその任務規定をされているわけであります。ちなみに我が国も、また隣国であります中国もこの条約を批准していることは御存じのとおりであります。  この中で、外交使節団任務としては、第一に派遣国を代表すること、第二には接受国において国際法が認める範囲内で派遣国及びその国民の利益を保護するということ、第三には接受国政府交渉をすること、そして第四には接受国の諸事情をすべて適法な手段により確認をし、これらにつき派遣国報告をすること等々でございます。このようなことが法的に規定されていることから見ても明らかなように、こうした外交使節団の果たす一つの大きな役割というものがやはり接受国における邦人保護であることは言うまでもないわけであります。  この点について、例えば「諸君!」に掲載された対談の中では、かなり好奇心の強い、若干行動範囲の広過ぎる某大学の教授という方が実際に立入禁止区域に入ってしまって現地国政府によって逮捕されたときの対応が書かれているわけであります。それは必ずしもこの外交使節団任務の中で規定されているような精神に基づいたものではないがごとく書かれているわけでありまして、もしそれが事実であるとするとこれは相当問題であるわけでありまして、この点について外務省自身のお考えをまずここで確認をさせていただきたいと思います。
  15. 齋藤正樹

    政府委員齋藤正樹君) 委員のおっしゃいましたように、外交関係ウィーン条約、それからもう一つ領事関係ウィーン条約というのがございまして、同じような邦人保護というのがいずれにも規定されております。それから、外務省設置法におきましても、第四条九項で「海外における邦人の生命、身体及び財産の保護に関すること。」というのが外務省所掌事務として掲げてあります。具体的にいろんなところで在留邦人、最近では旅行者も多いですけれども、一たん事があれば、外交使節大使館あるいは領事館を通じまして在留邦人保護ということについて日夜努力しておるところでございます。  御指摘の具体的なケースについては確認できませんけれども、我々はいろんなところで事故が起こるたびに援助の手を差し伸べて、遺族あるいは家族と連絡をとって努力をしておるところでございます。
  16. 武見敬三

    武見敬三君 まさに今御答弁いただいた基本精神が必要なわけでございまして、これから多くの邦人が諸外国で活動する範囲が広がるわけでありますから、それだけにその基本姿勢というものをおのおの外交官方々が常に忘れずに心がけていただけることを切に期待するものであります。  さて次に、接受国に対する行動という条項がこのウィーン条約の中にございまして、交渉の際には「外務省相手方として、又は接受国外務省を通じて、行なうものとする。」、こういうふうな規定がされております。これは当然外交の一元化という視点から規定されているわけでございます。その上で、それぞれ外交官職位によって相手方職位も決まり、それぞれの接触範囲というものが規定されてくるということになるんだろうと思うわけであります。  しかるに、実際にこの外交使節団の果たす役割というのは、先ほどもウィーン条約任務規定にもありましたとおり、相手国事情を十分に調査をして本国に連絡することということがあるわけでありますから、そうした通常の外交ルートを通じた自分相手から入手した情報だけではなくて、当然にさまざまな情報をそこで入手する努力を行い、これは合法的に行われるべきものでありますが、かつこれらを総体的にきちんと分析しておくことが必要であることは言うまでもないと思うわけでありますが、この点についての御見解をまずお伺いしておきたいと思います。
  17. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) 先生指摘のとおりでございまして、いろいろなレベル、いろいろなルートを通じまして集めた情報は真剣に分析をしなければならないと思っております。
  18. 武見敬三

    武見敬三君 当然そういうお答えが返ってくると思うわけでありますが、例えば中国における日本大使館外交官の中には自分のこうしたカウンターパートとの接触を通じて得た情報だけに大きく依存する傾向があるなどと記述されている部分があるわけでありますが、こういうことは決してないわけでございますね。
  19. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) もとより、私どもも今御指摘がございました情報収集活動が百点満点であると言うつもりはございませんけれども、例えば中国の場合におきましても、大使館員外交部以外にもいろいろの方面に接触しながら多角的な情報収集に努めておりますし、一般庶民との接触といったものも重視しているということがございます。また、地方出張どもなるべく数多く行って、地方関係者との接触というふうなものによ遺憾なきを期したいというふうに考えております。
  20. 武見敬三

    武見敬三君 でき得る限りそうした御努力をしていただきたいわけであります。  ただ、実際に私なども北京に参りまして、特に日中関係という視点から見ると、日本に対して極めて厳しい態度をとる傾向がある軍部の方などとも話をする機会を持ったりした経験がございます。こうしたときに、こうした軍部の中核の方々の方から必ずしも日本大使館活動についての反応というものが聞こえてこない。ある程度形式的にパーティーなどで同席をする程度というようなことがあったり、あるいは本来ならば記憶していただきたい日本大使館外交官の名前さえ知らないというようなことも実はあったことがありまして、でき得る限り今後の日中関係相互理解友好を深めていく上においても、こうした軍関係者を含めて、ぜひ日本大使館方々には積極的にこうしたところにもアプローチをして相互信頼関係に基づく意見の交換をしていただき、我が国に対するより一層の理解を求めるという努力を私はしていただきたいと考えております。この点についてアジア局長の御見解をお伺いしたいと思います。
  21. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 私どももこれまで軍の関係者を含む中国側との対話ということをもっと充実させるよう努力を払ってまいってきたつもりでございますが、まだ十分とは言えないところもあろうかと思います。御指摘を体しまして、中国軍関係者を含む中国要人との対話というものを一層深めてまいりたいと存じます。
  22. 武見敬三

    武見敬三君 それから次に、相手国に対して極めて残念ながら強く遺憾の意を表明したり、あるいは強く抗議をしたりするということが当然外交上の課題として出てくるわけであります。この場合、さまざまな抗議形態があるんだろうと思いますが、また同時に抗議形態によってそのあらわす抗議のニュアンス、強弱というものも異なってくるだろうと思います。いわばその強弱というものをいかなる抗議形態で上手に伝えるのかということはまた外交の技術という視点からも極めて重要であろうと思うわけでありますが、この点についての御見解を伺わせてください。
  23. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) この点も先生指摘のとおりでございまして、私ども案件の性格に応じまして、例えば大使特定相手国特定レベル特定の人物に対してこれこれのことを申し入れろという指示を出すこともございますし、あるいはしかるべきレベル人間が、しかるべき高いレベル人間、館員がしかるべき相手国政府人間に対してこれこれのことを申し入れろというような訓令を出すこともございますが、それは事柄の性質によりまして、まさに先生がおっしゃったような意味合いを念頭に置いて訓令しているわけですございます。
  24. 武見敬三

    武見敬三君 例えば、中国核実験に対する我が国抗議というのは、外務省としてどの程度抗議レベルと認識してその訓令を出したんですか。
  25. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 最近の中国核実験につきましては、まず東京において在京中国大使館に対して大臣ないし次官から緊急に申し入れを行っております。そして、我が国立場をさらに明確に伝えることを担保するという観点からも、東京における申し入れということとともに北京においても大使館を通じて申し入れを行ってまいっております。  最近の例で申しますと、例えば平成八年、今年の核実験についても大使、あるいは大使がどうしても用務帰国等で不在の場合にはそれにかわる臨時代理大使レベルからの申し入れを行っております。
  26. 武見敬三

    武見敬三君 そうすると、外務省としては中国核実験に対する抗議というのは大使が行うというまず基本的な立場をとっておられるわけですか。
  27. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) 特に核実験の問題については国民的な非常に強い関心があることは我々も重々承知しておりますから、在外においてはできるだけ大使にお願いすることにしております。  ただし、本省においても、先ほどアジア局長が申しましたように、非常に高い政治的な関心国民関心ということを踏まえまして大臣あるいは次官から我々の強い立場というものを相手に伝えるようにいたしておる次第でございます。
  28. 武見敬三

    武見敬三君 そうすると、過去の具体的事例として、一連のこの中国核実験に対して、本省としては出先の大使館に対して大使抗議に行くようにという具体的な指示というものは出したのでありましょうか。
  29. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 若干繰り返しになりますけれども、まず中国核実験という知らせに接しました場合には東京において外務大臣ないし外務次官から申し入れを行う、これを迅速に実施いたしておるということ、これがまず根本にございます。  その上で、在北京の我が方大使館から中国政府に対して同様のメッセージを伝えて誤りなきを期するという操作を行うわけでございますけれども、そのときにいかなる文言の訓令をどういうふうに出したかということになりますと、それが常に全く同一であるということではないと思いますが、先ほど官房長からも申し上げましたとおり、最近中国核実験に対する日本国内関心というのは非常に強くなっているということも踏まえて、おおむね大使レベルからの申し入れということを励行いたしております。
  30. 武見敬三

    武見敬三君 それでは、そうした指示があったにもかかわらず、実際また現地に大使がいたにもかかわらず、大使がみずから中国外交部に出向いて抗議をしなかったという事例がありましたか。
  31. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 私の承知しております限りでは訓令に違背したそのようなケースが生じたということは承知いたしておりません。
  32. 武見敬三

    武見敬三君 訓令に違反したかしなかったかはどういうふうに判断されたんですか。
  33. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) 大使も当然国家公務員でございますので国家公務員法に縛られておりまして、国家公務員法の九十八条には、「職員は、その職務を遂行するについて、」「上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。」という規定がございます。したがって、貴使みずからがこれこれしかじかの人間に対してこれこれのことをせよという訓令があれば当然それに従うことになるということでございます。  ただし、これはあくまで一般論でございますが、訓令の目的に照らして、例えば現地の事情をよく知る現地の大使館がその目的をより効果的に遂行するためにはその訓令を若干修正する方がいいんじゃないかというような意見具申をすることもあるいはあるかと思いますが、しかし最終的にはやはり本省の判断を遂行してもらうということが重要でございます。  それから、先ほど申しましたように、実際に貴使みずからがということで最終的な訓令が出れば当然それに従うのが義務でございますが、例えば貴使を含め高いレベルからしかるべき人間にこれこれのことを言えということであれば、そこにはある程度の裁量権を与えたということになるので、その結果として例えば大使でなくて公使がやるということであっても必ずしも訓令違反ということにはならないだろうと思います。
  34. 武見敬三

    武見敬三君 訓令違反にならないという余地ぶあることはわかりました。  では、実際に具体的に大使抗議に行かなかったという事例は最近幾つあるんですか。
  35. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) ちょっと正確な記録を手元に今持っているわけではございませんけれども、近年におきまして、ほとんどが大使、またはどうしても大使用務帰国等でその場に居合わせないというときには臨時代理大使というレベルでの抗議は行ってまいったと思います。ただ、これまでのすべての核実験の際に大使ないし臨時代理大使から申し入れを行ったということではなくて、公使からそのカウンターパートに当たる関係者に一、二申し入れを行ったというケースはあります。
  36. 武見敬三

    武見敬三君 その理由はなぜですか。
  37. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) これも、先ほど申し上げましたように、東京における申し入れということが基本としてまず第一ということでございまして、現地においてその場その場の状況、個々にちょっと今明らかにできる資料を十分持ち合わせておりませんけれども、迅速性の観点その他、先ほど官房長から述べましたように、訓令の中にある裁量の範囲内ということでそのような措置をとったというケースがあるということだろうと思います。
  38. 武見敬三

    武見敬三君 でき得る限り、こうした核実験に対する我が国国民の極めて厳しい批判的な態度というものが明らかなわけでありますから、私はたとえ隣国中国であろうと、こうした事柄に関してはやはり国民の意を体して厳しく抗議をしておくことが中長期的にも相互理解友好を促進していく上で極めて重要であろうかと考えます。それだけに、公使その他の代行でこうした抗議が行われるというようなことがないことが本来望ましいわけであります。今後ともこうしたことが起こらないことを私は期待をしているわけでありますけれども、適宜必要なこうした措置が考慮されたときには、やはり我が国政府としては毅然たる態度を常にこうした面でも示していただきたいというふうに私は申し上げておきたいと思うわけであります。  さて次に、私自身、昨今険悪化してまいりました日中関係の動向に対しては大変に憂慮をしております。でき得る限りこの日中関係を良好に保つということは、やはりアジア太平洋の平和と安定にとって最も不可欠な要件であるというふうに私は考えているからであります。  そこで、こうした日中両国の関係を再びきちんと改善し、そして相互信頼関係を深めていく上でぜひともしておかなければならないことは日中双方の安全保障にかかわる対話の促進ではないかというふうに考えます。  ことし八月二十日から二十三日まで我が国では村田防衛事務次官が訪中をし、そこで再度遅浩田国防部長に対して日本訪問を招待したわけであります。これに対する中国側の反応というのは現在までのところいかがなものであるのか、お聞かせいただけますか。
  39. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 防衛庁長官名で発せられたこの招待、これに対しまして中国側はこれを感謝するという反応を示しつつも、今後引き続きタイミングについては外交ルートを通じて調整していきたいということを申しております。年内の訪問は非常に難しいということをあわせ示唆しております。
  40. 武見敬三

    武見敬三君 この安保対話の一番の基軸は国防部長の日本訪問になってくるだろうと思います。また、こうした閣僚クラスにおける安全保障対話というものをできればきちんと定期化していくことがその要請だろう、こういうふうに考えるわけであります。ぜひともそうした御努力外交当局にもお願いをしておきたいと思うわけであります。  なお、村田防衛事務次官訪中の際には、そのほかにも、本年十月、アジア・太平洋地域防衛当局者フォーラムヘの中国側からの参加を要請しているわけでありますけれども、実際に今年十月に中国側から参加者があったのか、またあったとすればそれはどういう方々であったのか、おわかりになるでしょうか。
  41. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 御指摘の十月二十九日、三十日の両日にわたって行われましたアジア・太平洋地域防衛当局者フォーラムには中国からは国防部の大佐が参加したというふうに承知いたしております。
  42. 武見敬三

    武見敬三君 さらに、今後二十一世紀に向けてのアジア太平洋地域における安全保障対話の中でも特に重要なことは、各国の海洋戦略に関する相互の意図と能力に関する理解度を深化させて、そしてその調整を図ることだというふうに言われております。その意味でも、このとき同じく日本側から西太平洋海軍シンポジウムヘの参加を要請したということがあったようでございまして、これは極めて適切な要請であったと思います。これに対する中国側の反応はいかがなものであったでしょうか。
  43. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) これにも中国大使館の武官を参加せしめたというふうに承知いたしております。
  44. 武見敬三

    武見敬三君 さて次に、日中の安全保障対話というものの中である程度定期化されているものがあることは御案内のとおりであります。ことしも一月か二月でしたか開催をされ、アジア局長御自身もたしか北京に行かれたというふうに記憶をしております。来年も同時期において定期化された日中の安全保障対話というものが開催されることになっているのか、またそれは従来どおり局長クラスということになるのか、あるいは外務省当局としては多少時期をおくらせても閣僚クラスのものを実現させていきたいと考えておられるのか、その点のお考えをお聞かせください。
  45. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 私どもといたしましては、これまで続いてまいりました日中安全保障対話は大体現行のレベルでできるだけ定例化した形で継続していくということにいたしたいと考えております。もとより、委員指摘のとおり、閣僚レベルでの対話ということは非常に重要でございますので、これはそのようなものとして別途常に探求をしていくということになろうかと思っております。
  46. 武見敬三

    武見敬三君 また、こうした安全保障対話というのが二国間だけで行われるのではなくて、ASEAN地域フォーラムのように多国間で行われていくことが極めて重要であります。  ただ、ASEAN地域フォーラムにしても、これを北東アジアに目を向けた場合には、台湾海峡における中台間の対立、さらには朝鮮半島における既に軍事的な緊張をはらんだ対立があるために、この北東アジアを対象とした当該政府ないし当局を交えたこうした多国間の信頼醸成のための安保対話というものがなかなか実は実現できていないという問題がございます。これはもう大変に残念なことでございまして、何とかこうした多国間の安全保障対話を実効的にこの北東アジアでもきちんと確立をしていきたいものだというふうに考えております。  このときに、実際に、例えば「準政府レベル」というふうに新聞報道では書いてありますけれどもアジア太平洋安全保障協力会議、これCSCAPというふうに呼べばいいんでしょうか、こちらにおいて、ここには既に北朝鮮からの参加者もおり、台湾からも個人のオブザーバーという参加で出席者があるというふうに承っておりますが、ここにいよいよ中国も参加する意思ありということを伝えてきたというような報道を最近読みました。それが事実であるのか否か、その内容についての御説明をちょうだいしたいと思います。
  47. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) アジア太平洋安全保障協力会議、CSCAP、今般キャンベラで開催されました国際運営委員会において中国及びベトナム両国の加盟が決定されたというふうに承知いたしております。
  48. 武見敬三

    武見敬三君 このCSCAPというのには例えば学識経験者、ほかに政府からの関係者が出るとすれば、大体どの程度レベル方々が実際に参加しておられるんでしょうか。
  49. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) ここには政治・安全保障分野の研究所及び個人から成るメンバーが国内委員会メンバーとして選ばれているということだろうと思います。  それで、もう少し具体的に申し上げますと、国際運営委員会というのが今申し上げました国内委員会とともにございまして、これがアジア太平洋安全保障協力会議の最高の意思決定機関でございますけれども、ここに各国内運営委員会からの代表一名というものが参加することになっております。日本の方からは国際問題研究所の関係者などを中心にそういうメンバーが選択されております。
  50. 武見敬三

    武見敬三君 こうしたいわゆる準政府レベルと申しましょうか、こうしたレベルでの多国間の枠組みづくりというものがやがては政府レベルのこうした枠組みに発展していくというのは既に過去に事例があって、例えばPECCやPBECのような組織がAPECに発展していったというのはまさにその事例であろうかと思います。  それだけに、こうした安全保障の分野をめぐり、実際には極めて厳しい環境下であるとはいえ、こうした地道な努力を通じてでき得る限り早期に政府レベルの安全保障のための枠組みづくり、そういったものができ得ることを期待しているわけであります。また、そのために外交当局が極めて尽力されていることを多とするわけでありますが、今後ともぜひ一層その実現方に御努力をお願いして、私の発言を終わります。
  51. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 平成会の長谷川道郎でございます。  大臣には、WTO御出席で強行日程の中帰国をされたわけでございます。お疲れと存じますが、まず御慰労申し上げます。  しかし、昨日、一昨日、参議院予算委員会を外相がWTO出席のために欠席をされたわけでありますが、昨日、一昨日の予算委員会で若干議論になっておるわけでございますので、この間の経緯についてまずお伺いいたします。
  52. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) 直接国会にお願いしたのは私でございますので、私から御答弁させていただきます。  今回の閣僚会議はWTOが発足してから最初の閣僚会議でございまして、大変大切な会議でございます。そこで、国会開催中でございますが、ぜひ外務大臣にも御出席いただきたいということでお願いして、当初、十日の深夜にシンガポールを立って、十一日の朝成田に帰ってくるということで御了解いただいたわけでございますが、それを早速シンガポール及びジュネーブに打ちましたところ、各国から、こういう大切な会議に国際経済の世界で非常に重要な役割を果たす日本が一日しかいないというのはまことに残念である、せめてもう一日いてこの重要な会議で貢献してほしいという非常に強い要望に接しまして、これは私どもがあらかじめそういうことを予想しなかった不明を恥じるわけでございますが、そういうことで改めて国会にお願いして丸々一日日程を変更させていただいたということでございます。  現実には、十一日いっぱいまでに当初の予定では閣僚宣言というものもまとめようという予定だったようでございますし、それから日本に対して、外務大臣がいらっしゃるのであればぜひ二国間会談もこの際やってほしいという要望もたくさんあったものでございますから、そういうことも踏まえまして、お恥ずかしい次第でございますが変更をお願いしたということでございます。
  53. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 今お恥ずかしい話だというお話がありましたけれども大臣が一日でお帰りになるのは大変残念だ、ぜひもう少し残っていただきたいという御要請があった、これは当然だと思うんです。  昨日、一昨日の参議院予算委員会で予算委員長は、今回の外務大臣の海外出張については、諸般の情勢にかんがみ、理事会において協議の結果例外として了承いたします、政府側に対して今後は原則を遵守されるよう強く要望しますというふうにおっしゃいました。私ども平成会の木庭議員も同様に原則の問題だけはきっちりと御認識をいただきたいというふうに申し上げたわけであります。  しかし、予算委員長並びに平成会の木庭委員のおっしゃった原則というのはあくまでも双方の協議の上決定したことはお守りをいただきたいという意味での原則でありまして、あらかじめこうこうしかじかという御説明をいただければ、私どもは何も審議を引き延ばしをするために大臣を拘束しようとか、言ってみれば意地悪で大臣国会軽視をしてはいけませんよというようなことを申し上げるつもりはないという意味での昨日の発言であるわけであります。  今、御説明がありましたけれども、当初予想しなかったのは不明であるというお話でありましたが、これはだれが考えても当然予想できる事態だと思うんです。こういう問題は小出しにせずに、最初から率直におっしゃっていただければ私どもも真摯に対応させていただくというふうに申し上げておりますので、ひとつそういうことで御対応いただきたいと思うわけであります。  なお、WTOはまだきょうも明日も開催になっておりますが、本明日の日程がどうなっておりますか、お聞かせいただけますか。
  54. 小野正昭

    政府委員(小野正昭君) 今日におきましては、午前中は一般演説が予定されて行われております。それから、午後につきましては、例えば貿易と投資、貿易と競争政策といった主要な問題につきましては大筋の見通しが立ちまして、残りの幾つかの問題について午後から少数国による非公式会合を行うことになっているということでございます。明日午前中は閣僚宣言を発出いたしまして、午後にWTO閣僚会議は閉幕するという予定でございます。
  55. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 明日、閣僚会議、閣僚宣言があるというお話でありますが、そこに日本の閣僚が御出席になっていないというのはいかにもという感じがいたすわけであります。  WTOは、申し上げるまでもなく、日本にとっては極めて重要な国際機関であると思うんです。けさの新聞報道でも、WTOで日本の影が薄いというような各国の批判があるという報道もなされておりましたが、みすみすチャンスを見逃したケースではないかと思うわけであります。  九五年の十一月にイスラエルのラビン首相が暗殺されました際の葬儀に日本は総理が弔問に出席をしなかった。あのとき米国はクリントン大統領が早速弔問に行ったわけであります。そして、極めて大々的に弔問外交を繰り返し、クリントン大統領はヘブライ語でさらば我が友よとおっしゃった。私がその直後にイスラエルに行きましたら、それがタクシーとかいろんな車の後ろのバンパーにステッカーが張ってあると。そういうことでクリントン大統領はイスラエル国民に極めて強い印象を与えたと思うわけであり.ます。  そういういろいろな事例がございまして、九五年の国連五十周年特別総会にも村山総理がおいでになりましたが、わずか数時間。九二年六月の地球環境サミットでは宮澤総理がビデオで出演されて、御本人も、また各国も非常に残念であり失望したという報道もあるわけであります。  今後もこういうことはあろうと思うのでありますが、こういうようなケースがあった場合、今後、外務省大臣としては国会審議と国際会議の日程が競合したような場合どのような対応でお臨みになるのか、お伺いいたしたいと思います。
  56. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもといたしまして、国会の御審議が大変重要であることはよく承知しておりまして、それがもう大前提でございます。  しかしながら、先ほど来委員からも御指摘がございますように、最近国際社会において我が国が果たさなくてはいけない役割も随分大きくなってまいりました。そういった中で、いろいろ重要左国際会議への閣僚の出席、また二国間の関係においても外務大臣を含めまして閣僚が相手国を訪問することが極めて大切であるという事例も随分ふえてまいりました。  そういったことで、私どもといたしましても大切な国会の審議とそういった外交案件をどういうふうに調整していくか非常に頭を悩ますケースがふえてきておるわけでございますが、そういった点につきましては、一律にこういうケースはということは必ずしも定義ができない面はございますけれども、極力前広に国会の側と御相談させていただきまして、国会の審議にも政府としてきちんと対応させていただく、また外交活動にも支障のないようにさせていただく、そういったことを考えてまいりたいと思いますので、今後とも御理解とまたそのような御配慮を賜りますようこの機会にお願い申し上げる次第でございます。  また、今回の私のWTOの出席に際しましては、私どもの方からの御相談の仕方あるいはその前提になります情勢の判断に足らざるところがあり、大変御迷惑をおかけしました点、私からもおわび申し上げる次第でございます。
  57. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 先般、ある新聞の談話でありますが、田村元衆議院議長が、首相のみならず蔵相、外相、通産相くらいは国会があるなしにかわらず思い立ったらすぐ飛んでいくくらい国会は寛大でなければ国損になるというふうな記事ぶ載っておりました。まさにそのとおりであると思うわけであります。ぜひそういうことでお取り組みをいただきたいというふうに考えます。  なお、それに関してきょうは政務次官にお伺いしようと思ったんですが、お帰りになりました。今回は大物政務次官が御就任でございますが、政務次官大臣の職務分掌はどういうふうにお考えなのか。  実は、きのう、おとといの参議院予算委員会の答弁で、新聞記事では政務次官の答弁に余りいい点がついておらないわけであります。しかし、大臣が御出張中に次官が勝手に物を言うというのもなかなか大変な話であります。しかし、これはきっちりとやっぱり省内で職務分掌といいます、組み立てさえしていただければいい話だと思いますが、どういうような職務分掌でお取り組みになるのか。
  58. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 一般論といたしましては、政務次官にはまず大臣を補佐していただくということが第一でございますし、また大臣が不在の場合にそれにかわってといいますか代行していただく、これが原則であろうと存じます。しかし、その原則を具体的な個々のケースにどのように当てはめていくかという点につきましては一律に線を引くということもなかなか難しゅうございますので、やはりケース・バイ・ケースとならざるを得ないのだと思います。  そして、特に国際会議への出席等の外交事案と国内の大臣としての仕事の中でも最も重要な国会審議との関係となりますと、先ほども御答弁申し上げましたが、その一つ一つ外交案件のそのときにおける状況も踏まえた重要度、それから一方で国会審議がどういうふうな状況にあり外務大臣がどういうふうに位置づけられているか、そういうことを比較考量しながら外務省としても考え、そして国会と御相談を申し上げるべきものだと、こういうふうに考えている次第でございます。
  59. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 それでは次に、竹島、尖閣列島問題について、若干でありますがお伺いをさせていただきたいと思うのであります。  日韓の排他的経済水域の境界画定のため、外務省と韓国当局で第一回の交渉があったそうでありますが、日本側は竹島水域は共同管理にするという方針、韓国側は当然のことながら韓国領海内であるというような主張があり、当然のことながら歩み寄らないまま終わったという九六年八月十三日の会談でありますが、これについて経緯をお伺いいたしたいと存じます。
  60. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 御指摘のとおり、これまで日韓間で排他的経済水域の線引き交渉というのを行ったことがあるわけでございますが、その基本になっておりますのは、この三月、バンコクにおけるアジア欧州会議、その際における日韓首脳会談での話し合いでございます。この首脳会談と、さらに六月に行われました日韓首脳会談におきまして領有権に係る問題とは切り離して排他的経済水域の画定交渉などを促進するということについて合意がなされているわけでございます。  これに従いまして、排他的経済水域の境界画定のための交渉及び漁業協定交渉が行われているということになるわけでございますけれども、具体的な解決のあり方ということについては、まだ交渉途上であり、相手のあることでもございますので、現時点で確たることを申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じます。
  61. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 今この問題ではとりあえず領土問題は棚上げということになる、そういう措置になったと思うのでありますが、竹島問題で外務省は今後どういうふうな御対応をなさるかということでお伺いしたいのであります。  本年二月十九日、衆議院予算委員会大臣は、国際司法裁判所に提訴しないという御方針を、二月にそういうふうにおっしゃったわけであります。韓国政府は当然同意をいたしませんのでもちろん無理な話であります。領土問題はそうそう先鋭的に議論を巻き起こすだけが得策だとは思いませんが、しかし主張すべきは事あるごとに主張するという態度が当然のことながら必要だと思います。先ほどもお話のありました司法裁判所に提訴をしない方針についてお伺いいたします。
  62. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御承知のとおり、竹島に関しましては我が国立場は一貫しているわけでございます。そしてまた、御承知のとおりのように、韓国は韓国として変わらぬ主張、立場を持っているわけでございます。  そういったことでございますが、我々としましてはこの問題は何とか平和裏に解決できる道を追求してまいりたい、模索していきたい、こう考える次第でございます。そして同時に、この問題をめぐる立場の違いというものが両国関係全般を悪化させることがあってはいけない、そちらの方にも十分配慮しながら進めてまいりたい、こう考えております。  さて、それでは平和裏に解決する手段として何があるか、大変難しいのでございます。その一つの方策として委員が今御指摘になりました国際司法裁判所における解決の道というのが理論的にはあるわけでございます。理論的にあるだけではなくて、現実にあれは一九五〇年代、五四年だと思いましたが、我が国から司法裁判所に提訴しようという行動を起こしたことがございます。  しかし、御承知のとおり、国際司法裁判所は両当事者がその場において物事の処理をしようという合意があって初めて動き出す、そういう仕組みになっております。そして、その当時、韓国は国際司法裁判所における紛争の処理ということに同意をしなかったわけでございます。そういった経緯もございます。また、その後の韓国側のこの問題に対する考え方としましても国際司法裁判所を通ずる解決という道がすぐ開かれているとは思えない、残念ながらそういう状況でございます。  そういったことを踏まえまして、私は、先ほど御指摘の二月十九日の答弁におきましても、今それは日本としてしたくないんだという趣旨じゃございません、したいと思いましても現実には動かない状況にあるという認識のもとにそのような答弁をした次第でございます。  今後とも、非常に難しゅうはございますが、何とか平和裏に解決する道を粘り強く探してまいりたい、こう考える次第でございます。
  63. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 平和的に解決する道、手段は非常に難しい、すぐには開けないということ、それは当然だと思うんです。しかし、今のままいけば百年たったって解決しないと思うんです。しかし、我が国が主張すべきことは事あるごとに主張するという態度は当然のことながら必要であると思うわけであります。  今総務庁で呼び戻せ北方領土ですか、キャンペーンをテレビ、新聞、雑誌でかなり大々的にやっていらっしゃると思うんですが、このキャンペーンの予算並びに内容について簡略にひとつ御説明をお願いします。
  64. 川口雄

    説明員(川口雄君) 総務庁の北方対策本部に公きましては、北方領土にもと住んでおられた方の援護、それから北方領土問題についての国民世論の啓発その他、北方領土問題に関する事務を担当しております。  先生指摘の北方領土の返還要求に関する啓発でございますけれども、この活動につきましては官民一体となって取り組みがなされております。  総務庁におきましては、政府広報を活用しまして、新聞ですとか雑誌、テレビ等の広報でありますとか、あるいは研究会、研修会等の開催、そういったことによりまして北方領土問題についての国民理解を深めてきているところでございます。  このほか、特殊法人の北方領土問題対策協会や各都道府県の北方領土返還要求県民会議、あるいは日本青年会議所等の青年団体とか労働団体、婦人団体等の民間の運動団体が各地域におきまして署名活動でありますとか県民キャラバンとか講演会等の啓発活動を行っております。  総務庁の北方対策本部といたしましては、今後ともこれらの北方領土返還要求運動を支えていただいております民間団体と密接な連携をとりまして国民の世論の啓発に努めたいと思っております。  なお、予算でございますけれども平成八年度の総務庁の北方対策本部の予算の総額は約十億七千万円でございますけれども、このうち、援護関係、啓蒙宣伝関係で約九億六千万円が計上されております。
  65. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 十億近くの広報費が投入されておるということであります。私どもしばしばというか、かなり頻繁に目にするわけでありますが、北方対策本部の方でいらっしゃいますので、何で竹島、尖閣列島をやらないのかとお聞きするのも変な話なのでお聞きはしませんが、中学、高校の教科書で竹島問題並びに尖閣列島問題がどういうふうに取り上げられているか調べてみましたら、私の想像する以上に極めて詳細に中学、高校の教科書では北方領土以外の領土問題もかなり広範に取り上げられているというのがわかりました。  しかしながら、外務省が広報活動をやるのが適当かどうか、ほかの省庁でやるということなのかもわかりませんが、竹島、尖閣列島に対しての日本の主張が、外務省というか政府としての主張が国民の目に触れる機会は、今御説明のありました北方領土のキャンペーンに比べればはるかに薄い、細い、影が見えないのではないかと思うわけであります。  竹島問題は確かに早々に解決のできる問題だとはもちろん思いませんが、例えば教科書にしろ靖国問題にしろ、私は韓国の友人とよく話すんですが、これは話をすれば、わかるかわからないかにかかわらず一応話になるわけです。事領土問題は一切妥協、妥結を許さない、話が進行しないという場面があるわけです。日韓間の外交交渉の場でちょうどのどに刺さった魚の小骨みたいな感じになるのではないかと思うわけであります。先ほど申し上げましたように、事あるごとに主張を繰り返すというのは当然のことながら大切なことだと思うわけでありますので、外務省としてもそういうことでお取り組みをいただきたいというふうに考えます。  それでは次に、国際紛争の解決の場で日本がどのような貢献ができるかという問題でお伺いをいたしたいと存じます。  国際貢献といいますとPKOという問題が出てくるわけでありますが、私は先般ある外国の国防省に参りまして、日本のPKO、それからその国のPKOについていろいろ議論をいたしました。そうしましたら、日本の皆さんは余り危険じゃないところでひとつ一生懸命やってくださいというふうな言われ方をしまして、大変恥ずかしい思いをいたしたわけであります。PKOはPKOなりのいろんな問題があるわけでありますが、そのほかにも日本が国際的な紛争解決に私はいろんな場面で貢献をできるのではないかと思うんです。  昔、貸し座敷外交という言葉がありました。ベトナム戦争のときはパリ会談、それからインドシナのときはジュネーブ、それからかっての米中の交渉はワルシャワ、パリにしろワルシャワにしろジュネーブにしろ、それぞれ両国政府もしくは両方の団体に座敷を貸して交渉の場を与えたというのがあるわけです。今、日本がこのアジアの平和のために指導的な役割を果たそうとするならば、そういう方法も実はいいのではないかなというような感じがいたすわけであります。  日本が国際紛争解決の会談の場所を提供し、航空機から通信から経費から、事によったらその紛争処理の後の民生安定の問題まで日本協力をしましようということになれば、それはそれなりに私は日本が尊敬を集める一つの方法じゃないかと思うんです。  アメリカが世界じゅうの紛争調停に乗り出しているのは、アメリカが強大な軍事力を背景にしているわけです。日本が国際紛争の調停に乗り出すとすれば、アメリカのような軍事力はありませんが、大きな金庫があるわけであります。そういうことで、国際紛争の解決のため、PKOだけではなく、違った面で貢献をされてはいかがかと思うのでありますが、御見解をお伺いいたします。
  66. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員指摘のとおり、私どもは国際紛争の解決のためにはいろんな分野といいましょうか、いろんな側面から我が国として果たせる役割を果たしてまいりたい、こう考えております。もちろん、PKOもこれまで幾つか参加してまいりまして、現にゴラン高原には派遣されているわけでございます。しかし、それ以外にも例えばボスニァにおいて行われておりますように、一応戦闘状態の終息が実現した後におきましても、本当に民生の安定あるいは政治、社会情勢の安定のためにはなすべきことがたくさんございます。そういった点について日本も随分役割を果たしているところでございます。そういったこともやりたいと思います。  それからまた、今御指摘のございました場所を提供する、お座敷をというお話がございましたけれども、その面におきましても、例えばカンボジアの和平を図るプロセスにおいては我が国は非常に大きな役割を果たしてきたと思いますが、その活動一つといたしまして東京において和平の話し合いを進めるということがたしか九〇年、九二年、その後も去年、ことしもありましたですね、そのようなこともやってきておるわけでございます。御指摘も踏まえまして、今後とも日本として果たせる役割をいろんな面で果たしてまいりたいと思います。
  67. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 この問題につきましては、また明年通常国会等で質問をさせていただきたいと思います。  最後に、国際貢献の一つの大きなものとして青年海外協力隊があると思うんです。この問題についてお伺いいたしたいと思います。  外国で協力隊のメンバーが非常に活躍をしている。もう本当に山の中、地の果てで若い皆さんが活躍し、現地の人から大変感謝されているというのを私は非常に多く目にいたしました。  ところが、その若い人たちが、休職で行った人は別ですが、新卒で行った若い皆さんが帰国後の就職で大変苦労しているというケースを私は間々目にいたします。非常に能力と意志を持った、かつ貴重な体験を持った若い人たちは大きな財産だと私は思うんです。ところが、年功序列だとか終身雇用という日本の雇用形態の中で、外国に行って活躍をしてきた皆さんをなかなか受け入れてもらえないというケースがある。この点のケアはどういうふうになさっているか、お伺いいたしたいと思います。
  68. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御指摘のとおり、我が国の技術協力、その中でも海外青年協力隊の活動というものが国際的にも大変高く評価されておりまして、外務省としてもこれを大切にしてまいりたいと思っております。  その際に、帰ってまいりましたときの国内での職場がどうなるかというのはやはり一番大きな問題でございます。そういった観点からいろんなことを我々としても考えております。  まず第一は、現職参加制度でございます。派遣されている間もそれまでのお勤め先の方で休職なりなんなりの形でつないでいただく、こういうことをやらなくちゃいけない。その観点からいいますと、所属先に対して人件費あるいは間接経費を補てんするという制度がございます。これは実は昭和四十八年からございまして、私はそのころまだ政界に出ておりませんで、たまたまそういったものを含めて外務省の予算を担当しているときに私自身が手がけましたのでよく覚えているわけでございますが、こういうものもございます。  それと同時に、帰ってこられた場合の進路のカウンセリングだとか、あるいはお帰りになる半年ぐらい前から事前にいろいろな就職に関する情報を隊員の方々の現地の方にお送りするとかということ、それからまたお帰りになりました場合にも帰国後の復帰のための準備にいろいろ資金を国内に積み立てておかれる、そういった仕組み、いろんな工夫をしているところでございます。そんなことでございまして、現在では帰国隊員の再就職率は七九%ぐらいにはなっております。  しかしながら、大変まだ困難があるのは事実でございますので、今後とも外務省としても努力をしてまいりたいど思いますが、しかし、やはりこれは国民全体といいましょうか社会全体として御理解を深めていただくということも大切だと思いますので、そちらの方についても努力をしてまいりたい、こう考えております。
  69. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 この問題はまた通常会でお伺いすることにいたしますが、二年間海外で思う存分活躍をした青年が成田に着いた途端に就職雑誌を買っているなんということになりますと、それは余りにといえば余りにでありますので、ぜひ今後ともこのケアの問題についてはお取り組みをいただきたいということを申し上げて私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  70. 高野博師

    高野博師君 外務大臣はけさ出張から帰ってこられたばかりで、お疲れのところ恐縮ですが、幾つか質問させていただきます。  最初に、第二次橋本内閣が発足したときの外務大臣の記者会見での発言で、総理から外務省にかかわる行政改革あるいは規制緩和をしっかりやるようにと言われたと。それから、日米関係日本外交の基軸である、これから維持強化していきたい、あるいはアジア諸国との関係も強化したというようなことに言及されたと思うんですが、外務省にかかわる行政改革あるいは規制緩和というのは具体的にどういうことを指しておられるのか、あるいはどのようにお考えなのか、お聞かせ願いたいと思います。
  71. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 行政改革といいましても非常に範囲が広うございますけれども外務省も行政機関の一つといたしまして、所管行政の執行、遂行が効率的であるように、あらゆる面で、経費の面におきましてもあるいは人の面におきましても極力そういう効率化を図ってまいりたい。そういった意味では行政改革の聖域ではない、そういうつもりで所管行政の遂行について十分見直してまいりたい、こう考えている次第でございます。  しかしながら、そういった外務省自体の仕事のスリム化という観点から申しますと、行政改革全体の中でどの程度のウエートを占めるかといいますと、それほど大きなものではないということは予算の規模をごらんいただきましてもおわかりいただけるかと思います。私は、そのことは十分承知しながら、それでもやるべきことはやりますと申し上げました。  それともう一つ、規制緩和と申しましたのは、規制緩和は行政改革の観点からはもとより、我が国の経済社会の今後を考えた場合にどうしてもこれは進めなくてはいけないことでございます。それと同時に、国際社会との調和を考えていく上においても非常に大切なことでございます。そして、現に外務省に対しましても、各国から、あるいは国際機関あるいは国際的ないろんな組織からも我が国の規制のあり方についていろんな御意見とか注文が随分来ております。そして、政府といたしまして、規制緩和を進めていく作業の中におきまして外務省とりわけ経済局の立場でこれまでもいろいろ作業に参画してきたところでございますけれども、これからいよいよ規制緩和を一段と進めていこう、こういうことを第二次橋本内閣でも明らかにしているところでございますので、そういう規制緩和を進める作業の中で国際的な声を反映させていく、あるいは国際社会との調和を図っていく上で外務省としていろいろ意見を申し上げていく、そういった点には力を入れてまいりたい、こんなつもりで申し上げた次第でございます。
  72. 高野博師

    高野博師君 橋本内閣が発足してから一年もたたないうちに、創造的外交とかあるいは自立的外交とか、そういう言葉がもうほとんど聞かれなくなってきている。外交方針あるいは外交哲学に変化はないと思いますが、この間、毎日新聞のインタビューで外務大臣は、外交の面でも首相が日本の国益のために展開されるのをきちんと支えるのが自分の役目だと、黒子外交に徹するというような趣旨の発言をされたと思うんですが、私は、総理に遠慮することはなくもつと池田カラーを出したらどうかなと、そういう意味で外務大臣のこれからの抱負というか展望について、簡単で結構でございますので、お聞かせ願いたい。
  73. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 橋本内閣が発足いたしましたことしの初め、創造的外交あるいは自主自立あるいは主体的という言葉をいろいろ申し上げたと存じます。そういった考えは現在においても全く同一でございます。  実は、先ほどこの委員会の冒頭に私がごあいさつを申し上げました中にもございますが、今日我が国姿勢行動国際社会全体の将来に大きな影響を与えるようになりました。これまではいわば国際社会あるいは世界というものが与件であって、我が国はそれとの関係でどういうふうに行動するか、大ざっぱに言えばそういう時代がずっと続いてきたと思うのでございますが、現在では我が国のあり方自体あるいは我が国行動世界を動かしていく、あるいは世界をつくっていくということもあると思います。そういったことを十分自覚しながら主体的に判断し行動していかなくちゃいけない、こう思っている次第でございます。  それから、黒子外交とあるインタビューで申しましたのは、当然我が国外交は総理が最高責任者で展開される、そして内閣は一体として展開するものでございます。そういった意味で、私は最高責任者である総理を支えながら全力を尽くしてまいりますということを申し上げたわけでございまして、あれはたしか質問が、池田さん、あなた個人で自分の色合いか何か出すつもりはないのと、こういったふうな問いかけでございましたので、私は必ずしも自分自身がどうということではない、内閣全体としてどういう外交を展開するか、それが世界の中での我が国の国益と言ってよろしゅうございましょうか、あるいは立場をきちんと守ると同時に世界全体のためにも役立っていく、そういうものを目指したい、こういった趣旨のことを申し上げたところでございます。
  74. 高野博師

    高野博師君 ちょっと一般に使われている規制緩和とは若干ニュアンスが違うんですが、外務省はいろんな規則を持っているんですけれども、その関係で若干運用の方に問題がないかなと。  非常に卑近な例ですが、この間、実はエチオピア航空の事故があったときに日産ディーゼルの社員が亡くなったんですが、私は地元なものですから日産ディーゼルの幹部と定期的に懇談会を持っておりまして、その中で、この事故に関しては外務省は非常によくやってくれたと感謝しておりました。その中で一つだけ、事故が起きたのが金曜日だった、その事故が起きた社員のお兄さんがすぐに現場に行こうと思ったらパスポートがなかった、この発給をお願いしたら月曜日の九時しかだめだ、九時に来れば十一時に発給してやると、こう言われたということで、土、日出られなかったという事情がありました。これはきのう前もつて質問を出していなかったので、この辺の事情を調べておいていただきたいということです。  これからの国際化の中でこういういろんな事件が起きることは当然考えられるので、そういう中でもっと迅速な対応というのか、人道的な観点も含めて危機管理と緊急時の対応を考えていただきたい。この事情については後で結構でございます。今答えられますか。
  75. 齋藤正樹

    政府委員齋藤正樹君) 具体的に調べてお答えいたしますが、基本的には遺族の方が現場に駆けつけられるときには最優先処理でやっております。  さっきおっしゃいました日産ディーゼルのお兄さんが現場に行かれるためのパスポートの発給についてそういう事実があったかどうか、調べて後ほどお答えいたします。
  76. 高野博師

    高野博師君 はい、お願いします。  尖閣諸島をめぐっての香港における反日運動は最近は下火になっておりますけれども、数カ月前の抗議行動の盛り上がりというか、異常なまでの激しさがあったわけですが、この問題についてどのようにとらえておられるでしょうか。
  77. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 御指摘の尖閣諸島をめぐる香港での抗議活動、これが盛り上がった背景には、返還を控えた香港における民族意識の高揚とか政治状況、そういったもろもろの複雑な要素があったのではないかと考えられると思います。
  78. 高野博師

    高野博師君 この運動が盛んな時期に、八月末ですか、外務大臣が香港を訪問された。民主党など戦後補償を求める陳情団が陳情書を手渡そうとしたところ外務大臣がこそこそと逃げ回ったというような、そういう報道が現地でなされたようであります。また、現地の総領事が、この尖閣諸島は日本の領土だと、この問題は日本と香港の関係には影響しない、あるいは人為的に問題を拡大しないでほしいというような発言をしたのが、現地ではこの問題はスモールシングだというふうに誤解というか誤って報道されたというようなことで火に油を注ぐような結果を生んだ部分があったわけですが、香港を発信地としてインターネットで世界じゅうの華人というか華僑が反日スローガンを叫んだというような事実もあるようであります。  そこで、なぜあの時期に大臣は香港を訪問されたのか、目的は何だったのか、どのようなことまされたのか、このタイミングを選定した外交的な判断の根拠は何だったのか、お伺いいたします。
  79. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) まさに昨日、香港の特別行政区の初代行政長官が選出されましたけれども、これに代表されますように、ことしの秋から年末にかけては来年七月の香港返還を控えた重要な行事が予定されてきていたわけでございますし、予定されているわけでございます。そして、そういうさなかにおいて、香港におけるビジネス界の信頼というものを維持するということ及びそのメッセージを送るということが非常に重要であつたということが言えると思います。  そういう状況のもとで、これらの一連の行事を前にした八月末の時期に、私どもの方から外務大臣が香港を訪問して香港情勢などについて香港側と率直な意見交換ができたことは有意義であったというのが彼我双方の共通した認識であると言えるのではないかと存じます。
  80. 高野博師

    高野博師君 ただ、そういう目的であればあの時期じゃなくてもよかったんではないか、私はそう思います。  アジアの国々の中には反日感情とかあるいは対日不信、こういう感情を持っている方が依然として一部には存在する。ちょっとしたこと、ささいなことでも政治的に利用されて、これが爆発するようなこともあり得るということで、外交的な判断の誤りが事を大きくする可能性も十分あると私は思っております。  今回の香港における反日運動の本質はどういうことにあるのか、先ほど言われたような民族的な感情というか、あるいは返還をめぐっての香港の市民の不安とか、そういうことが背景にあると思うんですが、その辺はどのようにとらえておられるでしょうか。
  81. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 香港で生じました状況というものをどれぐらい私が正確に把握しているかわからないわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、返還を控えて香港における民族意識の高揚というものがあったのは事実であったと思います。そして、確かに日本に向けられた動きというものがあったわけでございますけれども、いろいろ巷間伝えられた情報の中には、香港の中にいる中華人民共和国に心情をともにする人たちもあるいは中華人民共和国に対していわば反発する立場の人たちも、返還を控えた民族意識の高揚という状況のもとで、結果的には同じ方向に向かう行動をとったということがあったように記憶いたしております。
  82. 高野博師

    高野博師君 この問題は本質的には中国の国内問題だというふうに言えないか。私、香港へは最近行ってまいりまして、その中で現地の邦人記者なんかとも懇談しまして、あれは一種の集団的ヒステリーだというような見方をしている人もおりました。  先ほど局長おっしゃったように、ある意味で民主化運動のリーダーたちが返還後の自分たちの生き残りをかけて運動のはけ口というか、そういうものを求めた、中国政府に取り入ろうとの思惑もあったのではないか、そういう見方もできると思います。この運動については、香港の中国共産党系の新聞の社説に理性的行動をとれというような論調が出てから急激に終息したと言われておりまして、香港にも中国共産党の影響力が相当浸透しているということも言えるのではないかと思うんです。  中国指導者としてはこの反日運動がいずれ中央に向けられて民主化運動に転化することを最も警戒しているとも言われておりまして、これは前例というか過去の経験にもありまして、そういう中でこの運動家たちには中国国内においても愛国無罪だというのがよく叫ばれる。愛国のためなら何でも許されるというような、そういう一種の免罪符みたいなところがある。中央にナショナリズムの高揚が共産党の政権打倒につながるということに対しての非常な恐怖心があったとも言われておりますが、いずれにしてもこれは国内の問題、香港は尖閣諸島との関係で言うとほとんど直接的な関係はない、私はそう見ております。  それから、ついでに尖閣諸島の関係なんですが、アメリカのロード国務次官補が日米安保の適用について、尖閣諸島については明確な言及を避けておりまして、あの領土権の問題についても同次官補は、北方領土をめぐる日本の主張は十分根拠があると考えるけれども尖閣諸島はそこまではないという認識を示している、しかしながら日米安保条約条約上の誓約は守るということを何度も繰り返されている。そういうことで、尖閣諸島をめぐって万一紛争が発生した場合、この諸島が実力をもって他国に占領されるような場合も考えておく必要があるのではないかと私は思っておりますが、この辺はどうお考えでしょうか。
  83. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 現在の状況は日米安保条約と尖閣諸島との関係を云々するような差し迫った状況にあるものではないという前提でお答えいたしますと、安保条約の法的枠組みということで全く一般論として申し述べさせていただければ、日本国の施政のもとにある領域には当然日米安保条約が適用されるというのが私どもの考え方でございます。  そして、これに対してアメリカがどういう立場をとっているかということでございますが、アメリカ側は本件に係ります我が国立場を承知し、かつ理解しているというふうに考えているところでございます。
  84. 高野博師

    高野博師君 それでは次に、沖縄の基地の中で一部だけ沖縄大使を設置するというようなことなんですが、これは那覇の防衛施設局内に設置する外務省の出先機関に常駐させるというようなことのようですが、これも何か総理が沖縄に行かれたときのお土産だというような報道もありました。沖縄大使任務とは一体何でしょうか。何をされるのか、簡単で結構です。
  85. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 委員おっしゃるように総理が四日に沖縄を訪問されましたときに沖縄側に示されたわけでございますが、大使を長とする外務省の出先機関を沖縄に設置するということを考えております。  そこで、業務ということでございますけれども地位協定それから米軍運用などに係ります沖縄県側の御希望ないし御要望をよく承る、そして現地で処理できるようなものがあれば早急に処理をする、そしてその他の問題につきましては本省との間で連絡調整をするというようなこと。それから、沖縄側は国際交流一般に非常に大きな関心をお持ちでございますので、そういう国際交流に関して外務省のできることについて沖縄側の御相談に応ずるというのが任務でございます。
  86. 高野博師

    高野博師君 私は設置に反対しているわけではありませんが、現地で地元の住民のいろんな要望を聞くというようなことは県庁がやればいいんじゃないか。それから、沖縄についてはまさに日本の領土内なんで、そこで外務省大使米軍なんかと直接交渉するとかいうことは外交の一元化という点でもどうかなと、あるいは設置の法的な根拠は何なのかなということをちょっと感じておりまして、大阪の大使それから北海道大使とか何人かいらっしゃいますけれども、これはまた別の趣旨、目的があって設置されているんですが、どうも何か総理の思いつきでこの沖縄大使なんというのをつくったのかなというような印象を持つております。これについてはまた別の機会に話させてもらいます。
  87. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 今、総理の思いつきというふうにおっしゃいましたけれども、私ども事務方としてきちんと詰めた上で総理に発表していただいたということを申し上げさせていただきたいと思います。
  88. 高野博師

    高野博師君 ちょっと時間がないんで反論はしません。  もう一つ、最近「諸君!」という雑誌に掲載された記事に関してですが、先ほど同僚の議員からも御質問があったようなんですが、私もう少しお伺いしたいと思うんです。  この「土下座外交」云々というような、ちょっとセンセーショナルなタイトルで対談が載っているんですが、こういうことが書かれること自体やっぱり問題ではないか。この書いたあるいは対談した専門調査員については、私の推測ですが、大使館の中で人間関係が余りうまくいっていなかったようなことがあって内部告発的なことをやったのかなと思うんですが、しかし中身については余りにも重大な問題点をたくさん含んでいる、私はそういう印象を持っておりまして、話を半分にしてもこれは問題が多い。この実情についてあるいは中身について外務省調査をしたんでしょうか。
  89. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 専門調査員という立場でございますが、この立場大使館の行う活動全般を把握する立場ではございません。したがいまして、この発言はこの専門調査員の方が個人的な見解を述べたものだと思うのでございますが、そこで述べられたことがそのまま大使館の実態を示すものだとは私たちは考えておりません。我々の認識とは大分異なる内容がございますし、それからこの方のおられた在勤期間外の事柄についての言及もいろいろ含まれているように思います。  しかし、大事なことは直接お会いしてお話を伺うことということでもあろうかと思いますので、鐸木前専門調査員と私ども関係者が直接お会いしてその真意を伺うという機会を近々設ける予定でございます。
  90. 高野博師

    高野博師君 専門調査員なので全体の大使館の仕事を知り得る立場じゃない、あれは個人的見解だ、そういう考え方自体にもやはり問題があるのかなと。大使館の中にいれば相当の情報が知り得るはずであります。  この大使館情報収集の能力というかやり方、新聞も読んでいない館員もいる、幹部もいる。あるいは中国側にべったりついた対応しかできない。秘密の保持についても問題がある。先ほどの核実験抗議についても明快な答えではなかったんですが、大使が行かなくて公使が行ったと。大使が寝ていたというような表現をしています。そういうことはないだろうと思うんですが、これは中国側寄りの考え方、大使の独自の考え方を持ってそういうことだったのかもしれません。  それからまた、邦人保護の問題についても、中国側の官憲に捕まった邦人を、中国政府に御迷惑をおかけしたのだからほっておけと言った、こういう公使の発言、これもまた重大な問題だと思うんです。  それから、先ほど専門調査員についてお話がありましたけれども、この使い方というか、ほとんど雑用係になっている、あるいは買い物をさせているとか、こういうことも言われておりまして、これもやはり問題ではないか。  もう一つは、北朝鮮の科学者が大使館に亡命したときに、日本大使館は亡命の事実はない、こういう発表をしておる。しかし、日本では橋本総理が亡命という事実はあったと言う、これは一体どういうことなのか。  たくさんあるんですが、一つ一つ取り上げてみても非常に重大な問題を含んでいる。大使館が本当に日本の国益のために仕事をしているのかなと。これが事実であるとすれば相当著しく国益を損なっている部分がある、私はそう見ておりますが、この中身についてぜひとも詳しい調査をしていただきたい。  それから、この対談によれば査察使の派遣も一あったと書いてありますが、実際査察使が行ってどういう調査をして、その報告はどうだったのか、そしてその結果を踏まえてどういう改善策がされたのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  91. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 前段の部分を中心に私からまずお答えをさせていただきたいと思いますけれども、御指摘の記事は外務省在外公館で勤務をされた方の意見として鐸木さん御本人から直接お話を伺った上で、当方において正すべき点があればそれは正していくべきものだというふうに思っております。  ただ、先ほども申し上げましたように、記事に書かれている事柄については我々の認識とは大分異なる内容のものが多々ございます。例えば、核実験云々のところでございますけれども、もしフランスの核実験があった後々での我が方の対応ということになりますと、フランスが再開した核実験、これが実施されたのは昨年の九月から本年一月にかけてということでございますし、その後に中国が行った核実験といえばことし行われた核実験ということになるんでしょうけれども、そのいずれの場合にも、申し入れ抗議は臨時代理大使それから大使から行われているわけでございます。また、その時期、鐸木氏は既に大使館には在勤しておられないわけでございます。  今たまさか一例でございますけれども、そういったように我々の方として事情を直接お伺いしたいなと思うこともあるわけでございますので、先ほど申し上げましたとおり、正すべきことは正すという前提のもとで、まず私ども関係者が鐸木さんとお会いしてお話を伺う、この機会を近々に設けたいと考えておる次第でございます。
  92. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) 査察使の御質問でございますけれども、確かに査察使は中国大使館にも行っております。査察使は、御存じのように、定期的にできるだけ頻繁に各在外公館に行きたいわけでございますが、数も多うございますので数年に一度ということになりますが、そういう形で査察使が行ったことは事実でございます。しかし、査察使の報告を読んでみますと、ここに書いてあるような指摘があったという事実はございません。
  93. 高野博師

    高野博師君 それでは、この中身について、先ほど申しましたように非常に重大な問題を含んでいるので、外務省として詳しく調査をしていただきたい。それで事実と違うのかどうか、一般的な言い方で認識に相当違いがあるということをおっしゃつていますけれども、もう少し調べていただきたい、それで報告していただきたい、そう思います。  査察使の問題については、査察使の報告にはこういう事実はない、こういうことでありますと、これはやっぱりある程度問題はあるかなと、査察制度ということを含めて。外部の人間で査察使を構成するようなことも検討しなくてはいけないんではないか。内部で自浄能力がなければ全く意味がない、問題が起こればふたをしてくるというようなやり方ではいけないと私は思います。例えば、韓国の場合は国会議員が各大使館を査するというような制度を持っております。国会議員じゃなくても結構ですが、外部の人間が査察をするような制度をぜひとも検討していただきたいと私は思っております。  今は厚生省の問題あるいは通産省の問題、いろいろ国民の目が非常に厳しくなっている時期でもありますし、外務省も真剣に対応する必要があると思います。この問題について、簡単に認識が違うというぐらいで済ませるとまたまたこういう問題が起きてくるのかなと。私の経験も含めて、もっと大使館の仕事のあり方等についてやらなくてはいけないんではないか。  これからますます外交というのは非常に重要になってくる。まさに思い切った改革をする、そして外務省の能力を高める、情報収集能力も高めるということでの思い切った行政改革をやってもらいたいなと思いますが、大臣の御所見を伺います。
  94. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほどからの御議論を伺っておりまして、実態がどうであるか、それから言われていることとのギャップが相当あるんじゃないかということもございますけれども、いずれにいたしましても、私ども外交活動が本当にその本来の目的を達成するように、そして適正なものであるように、また効率的なものであるように常に見直しながら、正すべきところは正していかなくちゃならない、そしてまたそれが行政改革に資するゆえんでもある、こう考えております。このようなことでやってまいりたいと思います。  なお、査察使の関係で一つ申し上げますと、内部の人間だけではなくて外部の人間を登用することもというふうなお話がございました。私の存じているところでは、そう多くはございませんけれども、これまでもたしかそういった試みをしたことも何度かあるんだと思います。貴重な御意見として受け取らせていただきたいと存じます。
  95. 高野博師

    高野博師君 それでは最後にもう一つ、十日のNHKのテレビ放送で、アメリカが来月ネバダ州で核爆発を伴わない核実験をやるというようなことが放送されまして、この目的は一体何なのか、いかなる実験なのか、そういう情報を持っておられるのかどうか。私の理解では、核兵器が老朽化しているということで、この維持管理のために実験をやる、あるいは新兵器の開発というようなことも目的に入っているのではないか。  それで、包括的核実験禁止条約、CTBTの対象は核爆発を伴う実験は禁止しているということなんですが、最近はスーパーコンピューターを使ってシミュレーションができるということで、フランスとか中国の駆け込み的な核実験もこういう意図があったんではないか、こう言われております。  アメリカのエネルギー省は、オプションレッドとかパシフィックブルーとか、スーパーコンピューターを使ってこれから核実験のシミュレーションをやるというようなことも報道されておりますが、この件についてどのような情報を持っておられますか。
  96. 稲川照芳

    政府委員(稲川照芳君) 委員指摘のように、CTBT条約におきましてはいかなる核兵器の爆発的実験及び核爆発ということは禁止されております。したがいまして、核爆発を生じない実験につきましては禁止の対象になっていないということは御指摘のとおりでございます。  アメリカは、従来からこの核爆発に当たらない実験ということを核兵器の、特に老朽化する核弾頭の安全性を維持確保するためにこういう実験が必要だということを言っておりまして、そのために米国政府は従来からこの実験が環境に及ぼす影響がないかどうかということを慎重に検討してまいったわけでございますけれども、御指摘のように、十二月九日に米国政府は環境に悪影響はないということを確認いたしました。  それで、その際に米国政府は、繰り返し言っておりますように、この実験が適切な透明性の措置を通じて一般国民あるいは国際社会から実験内容について理解していただく、そしてCTBT条約に違反していないということを確認するということを言っております。  以上でございます。
  97. 高野博師

    高野博師君 CTBTが採択されたばかりでありますけれども我が国はいかなる形でも核兵器の開発につながるような実験には反対であるというような意思表示を行っていく必要があるんではないか。CTBTに違反しなければいいということではないと思うんですが、我が国としては率先して核の脅威がなくなるまで努力すべきではないかなと私は思っておりまして、最後に大臣の御所見を伺って終わります。
  98. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 我が国といたしましては、核兵器のない世界に向けて核実験の禁止あるいは核分裂物質の製造の規制あるいは禁止というようなことを一つ一つ着実に進めてまいりたい、こう考えております。  ただ、現時点の国際情勢国際社会の状況から見まして一体何が合意できるものか、こういうことを考えてまいりました場合に、今の段階ではCTBTというのが国際社会の合意を形成し得るものとして意味があるんだということで、ことしあのような措置をとられたわけでございます。  そういったことでございますから、私どもはCTBTでもうすべていいと、こう思っているわけではございません。これからもカットオフ条約、あるいはその先のものもございますが、そういった部分について着実に核兵器のない世界を目指して努力を積み上げてまいりたいと思います。
  99. 高野博師

    高野博師君 終わります。
  100. 立木洋

    立木洋君 大臣、もうニュースをごらんになっておわかりかと思いますけれども、きょうのお昼のNHKニュースに関連して最初に一問ちょっとお尋ねしておきたいと思います。  今月の九日から始まった合同演習に、アメリカ海兵隊の岩国基地のFA18戦闘攻撃機がこの訓練に参加していました。ところが、訓練が終わった時点で爆弾が機体に残ったままだったわけですね。それを、アメリカ軍の基地に戻って着陸しますと危険だからという理由で、米軍の管制塔の指示によってこれを沖縄の那覇市から約十キロ西南西に落下させたわけです。そういう事実が報道されました。  この問題を見てみますと、落下させたのはおとといの午前十時ごろだというんです、米軍のあれによりますと。そうすると、いつごろ外務省にこの連絡は入ったのか。そして、海上保安庁が航行警報を発信したのは十二日、きょうになってからなんですね。それまでの間、航行警報は発信されていないんです。事実は十日、おとといの午前十時にその爆弾を落下させているのにもかかわらず、日本側への連絡はどうだったのかという問題が一つあります。  これが那覇市から西南西の十キロだということになると、十二海里の中ですね。領海内にいわゆる現物の爆弾が落下させられている。それについてこれほどおくれて報告がされる。だから、これが事故にでもなったなら大変なことになるんではないかというふうな気もするわけです。  こういう問題に対してやはりきちっとした対応をとることが私は必要だろうというふうに考えます。米側に対してこの問題について既に申し入れを行ったのかどうなのか。申し入れを行ったとしたら、どういう申し入れを行ったのか。今後こういう事態が起こらないようにするためにもきちっとした対応が私は必要だと思う。  爆弾の重さは約四百五十キロの千ポンド爆弾だというふうにきょうのニュースでは報道されていました。結局、米側の話では爆弾は爆発する危険がないというふうに言っているけれども、海上保安庁が航行警報を出しているわけです。その落下させた場所が沖縄の宮古島や石垣島と那覇港を結ぶフェリーの航路になっている。その地点に落下させているということを考えますと、これはますます問題ではないかというふうに思うんです。  こういう問題に対してはきちっとした対応をとるように外務省としてもしていただきたいので、その経過とそれに対して外務省がどういう措置をとられたのか、その事実関係について報告していただきたいと思うんです。
  101. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 本件につきまして、現在まで在京米国大使館米軍等から得ている情報を取りまとめますと次のとおりになります。    〔委員長退席、理事木暮山人君着席〕  十日の十時ごろでございます。今、委員指摘のように、岩国飛行場所属のFA18D戦闘攻撃機一機が沖縄の鳥島射爆撃場におきまして訓練中、千ポンド爆弾の投下操作を行ったところ、それが落下しませんで、嘉手納飛行場へ引き返そうとしたけれども、そのまま着陸するのは危険と判断されたために爆弾を支持するラックとともに同爆弾を海上に投棄したということでございます。  投棄の地点は沖縄空港の西方約五・五マイル、約十キロ沖でございます。そして、その地点の座標は北緯二十六度十一分四十六秒、東経百二十七度三十二分十七秒、水深は約五十メートルでございます。そして、当該機のパイロットは手順に従いまして、船舶が付近を航行していないこと及び一マイル以内に陸地がないことを確認の上爆弾を投棄したということでございます。当該爆弾は海上への落下の際には爆発せず、そのまま海底に沈んだということでございます。  この情報につきましては、私ども外務省は、十日の夕刻午後四時ごろでございますが、連絡をもらっております。そして、外務省は直ちに海上保安庁へも防衛施設庁へも連絡しております。そして我が方からは、即座にその場で米側に対しまして本件につきまして遺憾の意を表明するとともに、必要な措置をとること、それから原因の究明をすることを要請するとともに再発防止について申し入れを行ったところでございます。    〔理事木暮山人君退席、委員長着席〕  そして、この爆弾の危険性の有無につきましては現在も米側に照会中でございますが、海上保安庁は我が方の通報を受けまして、爆弾が存在すること、その座標につきまして十一日の午後、航行警報を発信したところでございます。  その後、在日米軍司令部と海上保安庁との間で連絡を取り合いまして、投棄地点の座標を中心とする半径ニキロ以内を危険区域とすることで船舶航行の安全が確保できるとの連絡があり、これを受けて海上保安庁は、十二日の未明、その区域が危険区域である旨の航行警報を発信したということでございます。  以上が事実関係でございます。
  102. 立木洋

    立木洋君 大臣、こういう事件や事故というのは絶対起こってはならないことですし、こういう問題については一つ一つきちっとした対応をとっていくようにしていただきたい。本質論につりては議論しますとまた長くなりますから、その点できちっとした対応をとるということをぜひ大臣にお願いしておきたいと思います。
  103. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 本件につきましては、先ほど政府委員から御答弁申し上げましたように、外務省といたしましても米側から通報がございましたときに直ちに遺憾の意を表明すると同時に再発防止等についてもきちんと申し入れをしたところでございます。たまたまその時点で私はシンガポールにおりましたけれども、私のもとにもそのような報告が参りました。  今後とも、あってはならないことでございますが、このような事態に対しては適切に対処してまいりたいと存じます。
  104. 立木洋

    立木洋君 次に、九月三日にアメリカがイラクに対して行った攻撃の問題に関連してちょっと事実関係をはっきりさせておきたいと思うんです。  この経過をアメリカの「星条旗」など、その他アメリカが発表している公式的な文書等々によって全部調べてみました。  一番最初にクリントン大統領のもとにイラクの情勢について報告が入ったのが八月十八日です。それに基づいて八月二十八日にイラクに対してアメリカが警告を行い、軍事攻撃を開始するかどうかという検討に入りました。その検討に入ったと同時に、二十八日から三十一日までの間にアメリカはロシア、フランス、トルコ、ヨルダン、サウジアラビス、エジプトなどと協議をしています。これはただ単なる通告ではなくて協議であります。  そして三十一日、月末にアメリカは国家安全保障会議で軍事行動を含む戦略文言を作成し、大統領がそれを承認しております。その指示が若干変更されてB52爆撃隊の隊長フロイド・カーペンター中佐に出撃命令が同日に出されて、B52はバークスデールの基地を出発いたしました。そして、結局、日本時間で九月二日午前九時にグアム島を経由し、グアム島基地から出発してイラクの攻撃に向かうというふうな経緯を経ております。  このときに、爆撃命令を受けてイラクに爆撃に行ったB52戦略爆撃機に対して、嘉手納基地のKC135空中給油機八機が飛び立って約四回にわたって給油を行っております。この給油を行うという作業は、実質的にB52がイラクを攻撃する戦闘作戦行動の不可欠の一端だったというふうに考えるんですが、その点については間違いないですね。この空中給油をしなかったら爆撃できなかったわけですから、爆撃を成り立たせる上での不可欠の一部であったというふうに言えると思いますが、いかがでしょうか。
  105. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 従来より、イラクには限りませんけれども世界各地で活動している部隊のローテーションのために世界の他の諸国へ世界の他の諸地域から、例えば湾岸へ航空機、艦船、要員等が一時的に移動するということについては我々は米側との種々の連絡を通じて承知しております。ただし、我が国にある航空機等がこのような形で一時的に移動することがあり得ることについては承知しておりますが、米軍運用の一々についてはその詳細を承知しているわけではございません。
  106. 立木洋

    立木洋君 また移動なんというおかしな話がちょっと出てきましたけれども、結局、B52がイラクを攻撃するという命令を受けて出た飛行機に空中給油機が、嘉手納のKC135が空中給油を行っているわけですから、どのように折田さんがおっしゃろうと、これは攻撃を成立させる上でのやっぱり不可欠の一部であるというふうに私は考えるわけです。それについて異論はあるでしょうけれども、話を先に少し進めます、時間が余りありませんから。  この問題でこの間の本会議で橋本総理が答弁されたのは、日本に対して正式に通告があったのは日本の三日の午前中に通告があったというふうに総理は答弁されています。これは事実上B52がイラクに対して攻撃を開始するということが指示がされた後です。  そして、この問題を多少比較してみますと、アメリカは、先ほども言いましたように、八月二十八日から三十一日までヨーロッパの多くの国々や中東諸国と協議に入っています。協議をしているわけです。ところが、協議をしたけれども彼らの国々からは拒否をされています。だから、サウジアラビアについてもヨルダンについても、あるいはトルコ等々いわゆるこのB52を空中給油する飛行機、態勢もあるわけですし、そこの基地もアメリカ軍は使うことができますけれども、しかしこれらの国々は米軍の要請にはこたえておりません。  スペインなんかの場合も、A177戦闘機ですか、これが途中で着陸しましたけれども、アメリカ側は正式な手続に従っていないではないか、我々は植民地ではないと言ってスペインはそれを拒否してアメリカの飛行機A177を追い返しております。  さらに、これはフランスにしても中国にしてもロシアにしても国連の安全保障理事会でこういう問題については反対し、イギリスがこのアメリカの行為を支持するという提案が事実上通過できない状態になった。アメリカが国連においても孤立したという状態が浮き彫りになっております。  ところが、そのアメリカが一方的に、協議ではなくて、日本がアメリカから攻撃を行うという通告を受けたその直後に、池田外務大臣は何らかの行動をとるということであれば基本的に理解しなければならないという支持の表明を行っております。これは、攻撃がどんな攻撃であるかということもまだ明らかにならない前に支持の表明をするというのはやはりいかがなものかという感じがするわけです。  こういう、結局アラブ諸国やヨーロッパの国々、国連における多数の安保理の国々がアメリカの今回のイラク攻撃はやっぱり国連憲章に照らしても道理がない、ですから二十一カ国から成るアラブ連盟はアメリカの行動にいかなる合理性も見出せないという抗議の声明を発表いたしております。  こういう状況の中で、日本だけがそういう通告を受けて、協議ではなく、一方的な有無を言わせない通告を受けて、それを甘受して、そして支持の態度を表明するというようなことは私は外交上いかがなものだろうか。もっと日本側としてもその事実を確かめ、明確にし、そしてそれについて意見を述べるということができるだろうと思うんです。それをやらないで、国際的に孤立している状況の中でアメリカに対して支持するということで、アメリカからは日本政府行動に対して大変称賛されたということが報道されております。私は、こういう行動というのはやはり日本政府としてはとるべきことではないんではないか。  前回のクウェートに対する侵略が行われたという場合については、我々日本共産党はアメリカに対して、アメリカの帝国主義的な行動だと言ってこれを批判しませんでした。これは、外国に対して侵略を行った行為に対して、ある場合には国連憲章で認められた行為をとることが可能ですから。  だけれども、国連憲章に照らしても道理がない、また国連憲章の五十一条で認められている個別的集団的自衛権の問題にかかわってもこの問題に対して合理性がないというような場合については、国際的な立場に立った日本政府としてはきちっとした対応をとる必要があるんではないか。それが本当の外交のあり方だというふうに私は思うんです。  この一連の経過、若干長々と述べさせていただきましたけれども、その点についての大臣の御見解をお聞きしておきたいと思うんです。
  107. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御指摘の米国のイラクに対する九月三日の報道に対する我が国のとりました対応というのはこういうことでございます。  あの際の米軍による行動が、イラクに関連する一連の国連安保理決議の履行を確保するため、それに必要な措置ということであれば、我が国としてはこれを理解し、支持する、こういうことを申したわけでございまして、我が国としてはいわば無条件で米国のやることはすべて支持しますよということは申し上げておりません。  御承知のとおり、国連には一連の決議がございまして、イラク軍が北部イラク地域から撤退するようにということをずっと国連として求めておったわけでございます。そういったことが確保されるために必要な措置ということで米軍行動するのであれば、それは理解し、支持する、こういうことを明らかにしたということでございます。  なお、委員今御指摘の中でいろいろな国がこれを拒否したというような御指摘がございましたが、それは例えば当該国の基地を米軍が使用することについて、その国と米国との条約の関係あるいはその他の関係からいってどうかという判断からその国がとった行動だと思いますので、我が国が一般的な意味での米国の行動に対して理解するしないということとは少し次元の違った問題ではないかと思います。
  108. 立木洋

    立木洋君 先般の参議院の本会議で橋本総理がこの問題について、どういう根拠で、どういう国連安保理の決議に基づいてアメリカがこういう行動をとったのかということについては、明確に安保理の何々ということを指摘することができませんでした。イラクの全般的な行動についてという言い方ですね。  ところが、今までイラクの問題に関して、決議六八八の問題については、いわゆるクルードの問題についての救難という措置は出されておりますけれども、その決議の内容は武力行使には触れていません。しかし、今度の場合に爆撃したのはクルードの地域ではなくて南部なんです。それが一体どういうことになるんだということが記者からも厳しい質問がたくさん出されているという状況もあります。もう一つの決議九八六の場合はイラクに対する石油の禁輸の一部解除を求めたものであって、これがいわゆるイラクを攻撃する道理のある根拠になり得ないということも明白です。  ですから、やっぱり国際的な立場に立って正当な主張、きちっとあるべき根拠、それに基づいて日本政府行動すべきであって、そういうアメリカに対して、日米安保関係があるからということで、問題をそういう形で全面的に支持を表明するというふうな状態というのは外交上危険だということを私はあえて述べておきたいんです。  そういうふうな国際的に問題視されるような行動を今後とるようなことがないように、この点についてもさらに突っ込みますともう時間がございません。八分で私の持ち時間が終わりです。ですから、もうこれ以上突っ込んだ議論はできませんけれども、その点だけを強く私は要求をしておきたいということで私の質問を終わりますが、大臣、何かコメントがあれば一言
  109. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今回の米国の行動の根拠いかんという点については、もう私も詳しくは申しません。先ほど申しましたように、あくまで一連の安保理決議の履行を確保する、そのために必要な措置ということでやったということでございます。  それから、先ほど申しましたように、日本といたしましては、委員がただいまちょっと触れられましたように、日米安保があるからこの問題を理解するとか支持するとかいう話ではございません。それとは全く切り離した問題として、安保理のあの決議の履行を確保するために必要であればということで理解を示したということでございます。  それから、なおその後も、私自身が米側と会いましたときに、こういった問題については十分に国際社会理解を得られるような努力をしながら、配慮をしながら進めることが大切だよということは申しております。
  110. 立木洋

    立木洋君 本格的議論は次のときにやります。
  111. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 きょうもまた世界の現実の近未来についての原則論的な展望についてのお尋ねです。  この間、十二月三日でしたか、EUの議長さんが若干の随員を連れてこられて、この委員会と懇談したいということで、委員長以下何名かでお会いしました。最初、委員長がお話しされて、向こうの議長が話をされて、そしてこっちの委員が若干名発言したわけであります。  私が発言しましたのは、ECが国家を超えて手を握っていると。その条件は何かといえば、参加各国は政治的には独立している、しかし経済は一体化の方向に進む、防衛は共同と、この三つの柱があるように思う。防衛については、対象は主としてロシアの脅威であるけれども、アメリカの援護がある、こういう形になっている。これがEUだけの現象かというと、世界的にそういう現象が相続いて起こっているではないか。例えばASEAN、これも政治独立、経済一体化、防衛は共同というところまではいっておりませんけれども中国、インドという巨大な潜在的な圧力を受けながら、南沙列島問題などを控えて最近は海空軍の充実に乗り出している、こういう形でありまして、やはりEUの後を追うグループではないかと。  もう一つはNAFTA、これは世界を圧倒するアメリカの軍事力があるから防衛の共同ということは殊さら言う必要はないだろうけれども、政治独立の中で経済は一体化の方向に行くのではないか。カナダは国際的には模範生だし、メキシコは非常な問題性の多い途上国であるけれども、アメリカ、カナダの誘導よろしきを得れば飛躍的な発展の可能性を持っているし、それから南米諸国も北米の後に続いて大体同じような、まだこれは発芽程度かもしれませんが、発芽までいっていないかもしれませんが、そうなる可能性を思わせる状況ですね。  それで、EUは人類のトップを歩いているような形だと思って非常に敬意も持ち注目もしておるんだけれどもと、言葉はこのとおりじゃありませんが、大体こういう意味のことを言ったんです。  経済一体化のかぎとも言うべき通貨統合が非常に難航しており、一番先輩格のイギリスが難色を示す。こういう形は、EUという国家グループは人類の歴史のとっぱなを歩いているんだけれども、そういう歴史法則というのか、そういう展望についての頭の整理がまだ十分ではないんじゃないかというようなことを、大変失礼ですけれども、そう申しました。  そうしたら、うちの委員長に続いて向こうの議長も相当話されたんですが、私の質問にはお答えにならないで、そばの若い随員かだれかに、君、適当に返事しろとかなんとか命令されて、それでその若い人はごく簡単に、EUは後から続く国家群にとって模範になるようなEUになりたい、こう言って、本当に模範的なお答えでございました。  そういうことを考えますと、さきに国家連合の方向に歩みつつある、歩む可能性のあるグループを幾つか挙げましたが、例えばロシアなども非常に困難をきわめて前途はわかりませんけれども世界の歴史の論理からいってやはり国家連合的な形態で落ちつくのではないかと思うんですね。  それから、インドを中心とする南アジアは全くわかりませんが、イランからイスラエルにかけて中東がどういうふうになるのか、これも全く見当がつきません。アフリカも幾つかの単位にまとまるのか一つになるのか、これも全くわかりません。わかりませんけれども世界情勢の大体の動きは、動いていく方向なり、帰着とまではいきませんけれども、どういう性格の国際形態になるのかということは何となく浮かび上がってくるような気がするんです。  そこで私は、特に大臣のお考え、大臣世界じゅうを歩いて特に指導者としょっちゅう議論しておられるわけですから、彼らの考え方なりは一番よくおわかりじゃないかと思いますが、中国は国家連合形態をとるのかどうか。とるとすれば、地理学的に言えば中国日本、韓半島か朝鮮半島かの二つというのが当面浮かび上がるわけでありますけれども、現実の国際政治からいえばまず可能性はないと言っていいような状況ですね。しかし、もしこれが本当にできれば、後でちょっとお考えを伺いたいんですけれども沖縄の軍事的な意義は急速に希薄になるという可能性もありますし、私は中国がこれからどう動くのかというのはやはり非常に注目に値すると。  非常に懐の深い考え方をする国でありますから、今度アメリカに行って国防大臣ですかが話されたところによると、おれたちの軍備拡張は外国を脅威するものじゃない、これは戦争を抑止するんだと、こう言って、ちょうどアメリカが核兵器で言うた論理をそのまま使って自分らの軍備拡張をうまいことやっておりました。  ともかく、その中国の動向というのは、やはりもっと視野を広く、長い目で見て今のままでいくのか、もっと弾力的な姿勢をとるのかということが一つの問題で、この中国のあり方についてのお考え、これはもう大臣はいろんな会議に出られ,て、出られるごとに視野も広がり、考え方も深まるでしょうが、現在の段階でのお考えですね。  それからもう一つは、APECが今私がお話ししているような意味における国家連合形態になるのかどうか。これは私の全く素人考えですけれども、ちょっとそこまではいかぬだろうと。政治が独立する、経済は一体化だけれども、防衛は共同というようなことはちょっと考えられないですね。中国が入り、中国の江沢民氏はこの間のフィリピンの会議でもロシアもAPECに入れたらどうだということを言ってみんなびっくりしたらしいですけれども、そうなるとAPECというのはちょっと国家連合形態にはならぬだろうと。  こういう二つの問題が日本の目の前にあるんですが、そう責任を持たなくてもいいから、大臣の今お考えになっていることをちょっと。
  112. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) お答えになりますかどうですか、必ずしも自信がございませんけれども。  考えてみますと、人間の諸活動、経済活動から文化活動からあるいは政治活動、あらゆるものを含めまして、割に一つの国、国民としてまとまってとらえられたという時代がいわゆる国民国家の時代、近代から現代だったかもしれないと思います。  最近の状況というのを見てみますと、委員も御指摘なさいましたように、経済は文字どおりグローバリゼーションということで、全世界を全く一つのものとしていくという流れがとうとうとして進んでいるわけでございます。また一方、政治あるいは防衛、安全保障という観点から申しますと、いわゆる米ソニつの超大国がきちっと抑えておったその枠組みがとれまして流動化してきた。そういう中で、国家連合と言っていいのかどうか、要するに幾つかの国が地域的にまとまりながら安全を確保していこうという動きがあちらこちらにあるというのはそのとおりだと思います。  そういった状況でございますので、一面で見ますと、例えば経済の方なんかに注目していきますと、いわゆる世界全体が一つになっていくという流れがずっと顕著である。ところが、政治とか安全保障という面を見ますと、むしろ冷戦構造が壊れたということの効果として、それぞれの国が自分の安全を考えながら地域的に手をつないでいこうという動きをするというので、国家というものがいっときよりもむしろ存在が際立ってきた、そんな状態にあるんじゃないかというふうな気がいたします。  さて、そういった中で、EUにつきましては確かに経済の面から始まってその他の面につきましてもずっと統合が進んでいって、ある意味じゃフュージョンじゃないか、融合じゃないかという言われ方をされるところもございますけれども、非常にいろんな面での結びつきが評価されておりますので、これは将来の世界に与える影響という観点からも大きな関心を持って見守るべき存在だと、こう思っております。  それから、中国でございますけれども、もともと中国中国ではなくて中華ではないかということを言われることもあるぐらいでございまして、あれだけ大きな国でございます。それは地理的に申しましても、また人口から申しましても、そしてまたその中には非常に多様な要素がございますし、例えば経済社会の発展段階から申しましてもいろんなものが混在しております。それだけに、中国自身が一つのものとなってこれから進んでいくという点でも、いろいろな解決できなくちゃいけない、克服していかなくちゃいけない問題、課題を抱えておるんじゃないか、こんな気がいたします。  それから、他方、そういった中国が一体となってさらに周辺の国との間に統合というか関係を強化していく、そういうことがあり得るかどうかというのが御質問の一つだったと思います。  その点については何とも申せませんけれども、近年、とりわけここ二、三年、いろいろな地域的な結びつきでございますね、APECにいたしましてもあるいはARFにいたしましても。そういったものに対する中国関心と申しましょうか、あるいはかかわり方が従来よりもかなり積極的になってきたんじゃないか、こんな気がいたしております。ことしのAPECの会合でも極めて積極的に発言をしておりました。従来の中国でございますと、自分のところにかかわりのある問題についてだけ発言して、そういったリージョナルな枠組み全体のあり方についての発言は少なかったのでございますけれども、そういうものが出てきたというのがここのところの特徴じゃないかと思います。  さらに、それが経済面を主体とするAPECだけではなくてARF、これは信頼醸成、そして予防外交、将来的には安全保障の面で役割を果たせるんじゃないかと期待されている枠組みでございますが、そこでも中国が積極的に役割を果たそうとしている。例えば、信頼醸成に関するワーキングパーティーがございます。これまで日本が共同議長をやっていたのでございますが、来年からは中国自分がやろうといって手を挙げてきたということがございますので、確かに中国が近隣の諸国との間の関係を積極的に考え行動していこうという傾向が顕著になっているということが言えるんだと思います。  そして、私どもも基本的に中国のそういった姿勢というものは歓迎すべきものだと、こう思っております。プラス・マイナスいろいろございましょう。しかしながら、中国がこういったアジアあるいはアジア太平洋という地域の本当に建設的な、そして積極的な役割を果たしていくメンバーとしてみずからをきちんと位置づけていくということがこの地域の安定なり平和にとっても基本的に有意義なことだと思います。そういった中国の動きを肯定的にとらえながら我が国としても対応すべきものである、こんなふうに考える次第でございます。  これはリージョナルな問題だけじゃなくて、例えばさらにグローバルな枠組み、現在もやっておりますが、WTOなんかにつきましても中国がそれに加盟の申請をしており、我が国もそれを積極的に支援していこうということにしていることは御承知のとおりでございますが、地域的なものであれグローバルなものであれ、中国をそういった枠組みの中にきちんと位置づけていくということはいいことだというふうに基本的に考えているところでございます。  それから、APECとおっしゃいましたけれども、ASEAN初め東南アジアの国を中心として、アジア太平洋の国々がどういうふうにこれに結びついていくかということでございますが、これはいろいろございますけれども、それぞれの国は非常に多様性を持っておりますし、また経済社会のいろんな構造から申しましても、その地域だけではなくて、例えばアメリカあるいはヨーロッパ、その他の地域ともいろいろ関係を持っていかなくてはその存立は難しいという性格があるんじゃないかと思います。  そういった意味で、ヨーロッパだとかあるいはラテンアメリカなんかであるような、まず内向きにしっかりと固めていくという方向ではなくて、お互いの連携も強化はしてまいりますけれども、常に外に対しても開かれた、オープンな枠組みとしてこれからも歩んでいくんじゃないかなと、そんなふうに考えている次第でございます。  突然の御質問でもあり、甚だ頭の整理ができていないお答えで恐縮でございますが、いわば感想めいたことをお答えさせていただきました。
  113. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 ありがとうございました。  そこで、APECがASEAN等の国家連合体をも含んでもう一歩歴史を前進した形になり得る可能性をも持っているというふうに考えますと、APECの前途は非常に注目に値すると思うんです。  そこで、沖縄の問題が当面一つの落着に到達したわけでございますが、そのときにこういう問題を出すのは幾らか乱暴な不謹慎な態度かもしれませんけれども、この状態がどこまで県民の理解を得ているか、あるいはこれから得ることができるか、また本当の根本的な問題は沖縄が完全に自由になるということでしょうが、そういうことを今から考えてもいいではないかという気がしているんです。  アメリカでもペンタゴンはどういう状況になれば日米安保を解消できるかということを日常的に研究課題としているそうですね。しかし、アメリカとして今現実に日米安保を解消するなんて考えているとは思えないですね。ただ、アメリカの世界政策の重要な一項としていろんな角度から検討するという検討の姿勢を示しているだけで、現実に日米安保をやめちゃおうなんというようなことは考えていないはずなんですね。  ですけれども、そういう多角形な、先を読んだ研究をするということはアメリカのすばらしいところで、私もアメリカの高い知性は非常に高く評価する方ですけれども日本もやはり、今の段階は今の段階として、最後的に沖縄の県民が本土の国民と同じような本当に安らかな状況といいますか、今が完全に安らかかどうかは議論がありましょうけれども、そういう状況になる事態を迎えるのはどういうプロセスを経てであろうかというようなことは、アメリカのペンタゴンがやっているような理論的な検討でいいからやはりやった方がいいんじゃないかという気がするんです。  それで、私はこの委員会でもずっと前に申し上げましたが、もう時間が来ちゃったようですから、それじゃこの次にしましょう。
  114. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 お疲れでしょうけれども、いましばらくおつき合いください。  私、いつも大変損な役割でして、私の前に武田委員がいつも高邁な高い次元のお話をなさいまして、その後にうんと瑣末な一技術的な問題で大変恐縮なんですけれども、海外在住日本人の選挙権行使の問題についてお尋ねしたいと思います。  実は、ことしの二月にも当委員会でこの問題をお尋ねしたわけでありますけれども、その際、事務当局の方から、大変技術的に難しい問題があって、慎重に検討しているところでありますがと、こういうお返事が、回答があったわけです。  しかし、考えてみると、恐らくこれは十年来、二十年来慎重な検討をしてきたんだろうと思いますよ、この問題につきましては。永田町の用語あるいは霞が関の用語で言いますと、慎重に検討するというのは、要すればやりたくない、実現したくない、こういう場合に使うんだと、こう言われております。一体いつまで慎重に検討をするんだろうかと思っておりましたら、若干政治的な風向きが変わってきて、自民党と社民党とさきがけの三党合意の中でこの問題が取り上げられておる。それから、数日前の新聞では、新進党がこの問題につきまして野党ではあるけれども法案を提出しようか、こういう動きにもなっているようであります。もうそろそろ慎重検討は棚上げにして、政治的な勇断を持って踏み切るべき時期ではないか、こう思うのであります。  一体どこに問題があるかといいますと、外務省に言わせると、在外公館に何万という選挙人が来られたのではとてもじゃないけれども事務処理はできない、郵便投票を認めてもらいたい、こういうことを外務省は言いました。自治省はこれに対して、郵便投票を認めるとみんなインチキをやるだろう、どれが本人かわからない、だからもって郵便投票は認められないと。要するに、両者ともやりたくないからそういうことを言って今までずるずると引き延ばしている、それだけのことなんですね。  外務省の言う何万人という在外邦人が押しかけてくるだろう、有権者が押しかけてくるだろうということになると、これは別にそれを在外公館でやる必要もないわけですから、国内の適当なところにそういう投票所を設けまして、これは相手国の了解は必要ですけれども、主権の行使であるからして在外公館でなければならない、そんな理屈はありません。絶対にありません。考えるまでもないと思います。  それから、自治省の言い分もこれは大変おかしいのでありまして、選挙権を与えるとみんなインチキをやるだろうと。国民は主権者なんですね。その主権者に向かって、一公務員というのは公僕、召使ですから、召使が主人に対してあなた方に選挙権を与えるとインチキやるでしょうから与えられませんよと、こんな思い上がった言い方はないと思うんです。  最近、霞が関の高級官僚の評判は大変よろしくない。やるべきことをやらないで、ただ酒やただゴルフばかりやっている、こう言われておりまして、まさか外務省方々についてはそういうことはないのだろうと思いますけれども、しかし油断はできないわけでありまして、いつまでもそういう人たちに任せておいていいんだろうか。  この際、もう少し政治判断を行いまして、外務大臣と自治大臣が二人で話し合えばやろうやろうと、これだけでも一分もあれば結論は出ます。技術的にどういう問題があるか、何の問題もないんです、これは。郵便とそれから直接投票との併用制を考えればいいだけのことであります。  若干の不心得者がおることは間違いないと思いますよ。国内の選挙でも、選挙のたびにやっぱり不心得者の選挙違反が起こるわけですけれども、これはやっぱり厳しく措置をする、その防止のためのいろんな方策を考える、それが役人の仕事なんですよ。政治家はそんなことを考える必要はないので、これは必要だ、じゃやろう、技術的な検討をしろと言うだけのことでいいわけですから、踏み切れないことはないのでありますから、次期国会にはぜひともこの法案は提出する、政府提案でやるということをどうかこの場で確約していただきたいなと、こういう気がするわけであります。よろしゅうございましょうか。
  115. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 佐藤委員の御指摘は非常によくわかるところでございます。国民である海外在留邦人の選挙権、参政権という大切な権利を守るということはまことに行政というか日本の政治全体にとって重要な課題だと思っております。  そしてまた、難しい難しいと言われるけれどもそんなに難しいことはないとおっしゃる点も私もわかります。郵便投票あるいは在外公館での投票という問題の持つ難しさなり問題点というのは何も日本に限ったことじゃございませんで、諸外国でも同じような事情があるんだと思います。それを乗り越えて実施している国が多いということを考えれば、委員おっしゃるように、これは政治的に決断すればやれないことはない。そして、細かな問題点をできるだけ防ぐための措置は行政でやるべきだというふうにおっしゃることの意味はよくわかります。  そういった意味では、これは政治の世界における決断といいましょうか、問題点はある程度もう割り切ってしまうということが必要なんだと思います。そういった意味では、先ほど委員も御指摘になりましたけれども、今多くの政党の中でいろいろな試みがと申しましょうか、作業が進んでいるということは、おっしゃるような政治の世界全体としての決断ができる条件が整いつつあるんじゃないかというふうに考える次第でございます。したがいまして、これは政治の決断だと私は思います。  ただし、それは外務大臣あるいは自治大臣といった片足政治、片足行政の世界におる人間の決断というよりも、私どもを含めました政治の世界全体としての決断をすれば、あとの細部については行政の世界で対応するべきことだと思います。  そういった意味では、私どもといたしましては政治の世界での今申しましたような条件あるいは環境の整備が進展していくことを期待している、こういうふうに考える次第でございます。
  116. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 先進国の中でこれが実現していないのは日本とイタリアだけだというふうに言われています。そのとおりだろうと思います。もう二十一世紀ですから、国際交流はこれからますます頻繁に活発化されてくる、当然選挙権の行使を認めていいんであろうと。  国内におりますと平気で棄権をするんですけれども、海外に行きますとどうしても投票したいという人が多いんで、私が行きますと熱心にそういう質問をよく受けます。ぜひとも実現してほしい。もちろん、不正などは我々が相互に監視をしてそういうことがないようにいたしまするということもきちっと言っておりますし、そういう熱心な人たちが不正をするとはゆめ思えません。ぜひともその実現の方向に向けて、おっしゃるとおりボールはこちらにも投げ返されてきたわけですから我々全体の問題でもあろうかという気もいたしますので、やっぱりみんなで考えて、なるべく早い機会にこれは実現していきたいというふうに考えておりますので、御同席の委員方々にも御協力をお願いしたい、こういう気がいたします。  それでは、この問題はこれで終わりにいたしまして、次に対人地雷全面禁止条約の早期実現の問題について一言質問させてください。  これは、この十一月十三日に国連総会の第一委員会というところでしょうか、早期実現条約締結についての決議案が採択されておりまして、日本を含む八十数カ国が共同提案国になった。反対はなし。ロシア、中国、その他二、三の国が棄権をしたということですが、この棄権の理由が振るっておるわけでありまして、やっぱり自衛上必要だから全面廃止には踏み切れないということで棄権したんだ、こう言われております。  そういたしますと、ああいう国々は大変広大な国を持っておるが、やっぱりどこからかいつかだれかが侵略してくる、しかも直接兵を進出させてくると。そのために長い長い国境線あるいは海岸線などに何万個という地雷を敷設する必要があると真剣に本気に考えているんだろうか。もし、そういうふうに考えておるとすれば、今やもう時代錯誤だろう、こういう気がいたします。そんな時代ではもうないんだろうと思います。  これは昔から悪魔の兵器と言われておって、何か今までに一億個以上の地雷が使われておるんだということで、今でも年間二万人ぐらいの死傷者が出ておる。最近はしきりに内戦に使われておるようですけれども、内戦が終わってもそのまま放置されているものですから一般民衆が被害を受けておるという状況で、もうこういう時代ですから、この兵器の全面禁止に踏み切っていいんじゃないか、こういう気がしておるんです。  しかし、我が日本政府も必ずしも腰がきちっとしているわけではなくて、どうもやっぱり自衛上必要だからということで留保条件をつけたいということが以前の姿勢であったようであります。我が自衛隊は何か百万個の地雷を持っておるんだという話ですけれども、これはうそか本当か知りませんけれども、一たん緩急あったら、この美しい日本の海岸線に地雷をいっぱい埋めてハリネズミみたいになって国を守ろうと真剣になって考えておるんだとすれば、これまたおかしい話だろうと思いますよ。  もうそんな時代ではないことはお互い百も承知ですから、これまた日本が先頭に立って核兵器と同じようにこんなものはやめようと、そのために速やかに条約をつくろうということに本腰を入れて取り組んでもらいたい、こういう気がいたします。  幸い、大臣はたった一人でございましょうか、留任したのは。それだけ大物大臣であると思いますから、先頭に立ってこういう問題を解決するように頑張っていただければと、こういう気がいたします。
  117. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 日本といたしましても対人地雷の全面禁止に向かいまして積極的に進めてまいりたいと思っております。先ほど委員の御指摘になりました今回の国連総会における決議につきましても、そういった観点から共同提案国の一つとして推進しておるところでございます。  それから、我が国がこの全面禁止についていろいろ留保をしておった、あるいは必ずしも積極的でなかったというニュアンスの御発言がございました。確かに、そういうふうに受けとられてもやむを得ないかなという対応が従来なかったとは申しません。しかし、その点につきましては、委員も御承知だと存じますけれども、ことしの六月、リヨンで開かれましたG7サミットの際に橋本総理が記者会見いたしまして、これから我が国は対人地雷全面禁止を支持するということについて内外に態度を明らかにさせていただいた次第でございます。  その中で、我が国としては対人地雷の全面禁止に向けた国際的な努力を支持するということ、そしてその合意が達成するまでの期間も我が国として自主的な措置をやっていくと。その自主的な措置の内容というのは具体的には自己破壊装置を持たない地雷をなくしていくというのが基本でございますが、そういった姿勢を明らかにしたということを申し上げさせていただきたいと思います。  それと同時に、地雷の問題につきましては、全面禁止という大きな問題のほかに、現在あります地雷を除去する、その作業のためにいろいろ財政面その他で支援するということが一つございます。それから二つ目には、そういった除去だとかあるいは地雷探知の技術を開発していくという問題がございます。それから三つ目には、不幸にしてその地雷の犠牲になられた方々に対する措置、例えばリハビリなど、そういった面における措置。  この全面禁止以外の三つの分野につきましても日本は積極的にこれらの役割を果たしておりますし、明年三月にはこの三つをテーマにいたしました国際会議東京で開催しようとしているところでございます。
  118. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 いま少しく時間があるので最後の問題、これは北朝鮮の日本人妻の帰国問題であります。  まず、実態がどうなっているんだろうか。もう三十年ぐらい前でしょうけれども、一体何人ぐらいの日本人妻が北朝鮮に行ったのか。現在生存しているのは何人ぐらいなんだろうか。そのうち帰国を希望する者、永住帰国あるいは一時帰国でもいいですけれども、恐らく全員が一度ぐらいは帰りたい、こう思っているんでしょうけれども、何人ぐらいが帰国を希望しておるのか。それから、実態が全然わからないんですけれども日本の中で一体どの機関が責任を持ってこういう問題を調査しているのか。その辺のところをちょっと事務的に教えてもらいたいと思います。
  119. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 一九五九年十二月から在日朝鮮人などの北朝鮮への帰還が開始されましたが、そのときに帰還した夫と一緒に北朝鮮に渡った日本人妻の数、これは千八百名強、千八百名以上と承知いたしております。これらの日本人妻の中で日本に帰国した事例は政府としては承知いたしておりません。また、帰国希望者が何人いるかということも現実に把握できない状況でございます。  人道的な観点から北朝鮮の日本人妻問題というのを政府としても当然重視しておりまして、従来、家族に対するアンケート調査などを行ったほか、日本赤十字社を通じた北朝鮮側への安否調査要請などを行ったこともございます。  それから、日朝国交正常化交渉の場においても国交正常化交渉前にも一部の日本人妻の里帰りというものが実現できないのかということで強く相手に求めた経緯がございます。しかし、安否調査について、北朝鮮側から若干名の安否について回答してきた例はございますけれども、そのほかには率直に言って特段の進展がないのが現状でございます。
  120. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 一言で申し上げますと大変けしからぬという思いがするわけであります。彼女たちももう五十、六十ぐらいでありましょう。本国にいる日本の親たちも既に亡くなりつつあるのでしょう。兄弟たちも皆老いつつある。やっぱり死に際に一日会いたいとか、もう三十年も別れ別れになっている兄弟と会って話をしたいとか、それは当たり前の人間として当然のことだろうと思います。  それを妨げているのは何だろうか、北朝鮮への援助の問題をどうすればいいかとか、いろいろありますけれども、そんな問題とはすべて切り離しまして、これだけでも粘り強く要求していって、一人でも二人でもとにかく日本に一度でも帰ってきて親兄弟と会う。そういうことを実現するような、もうこれまた時代が変わりつつある、そういう時代だろうと思うんです。国の政府がそういうことを決めて、おまえは帰してやる、おまえは帰さないとか、そんな時代でもうないと思うんです。そういう考えを持って、これからもいろんな機会をつかまえまして粘り強く北朝鮮の当局と交渉してもらいたいと思います。  これが実現しない限り、場合によってはもう一切の援助なんかはしないというぐらいの気持ちがあってもいいんだろうと、私はおかしくないと思っております。それぐらい今や国益と同等に人間の権利というもの、人権というものは評価していいんだろう、こういうふうに考えておりますので、こういう考えでこれからも大いにその点は粘り強くやってほしいと思います。お答えは結構でございます。  以上で終わります。
  121. 矢田部理

    矢田部理君 先ほどのSACO報告に関連して最初に伺いたいと思います。  問題の普天間飛行場については特別の章を起こして記述、報告がございますが、この普天間飛行場については、沖縄の人たちの願い、要求は撤去をしてほしいということであって、どこかに移設をしてほしいという要求でないことはだれの目からも明らかだと思うんです。したがって、代替施設として海上にヘリポートをつくるということは沖縄の人たちの要求にこたえたものとは私は考えておりません。  しかし、そこが焦点の報告でありますので関連して伺っておきたいと思いますのは、沖縄本島の東海岸沖というふうになっておりますが、何か特定の場所等々がもう描かれているのでしょうか。描かれているとすれば、それは一つなのか複数箇所あるのか、その辺はどんなふうになっておりますでしょうか。
  122. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 沖縄本島の東ということになっておりますが、どこの部分というふうにまだ特定するには至っておりません。地元との調整それから技術的な検討もさらに進めることになっております。
  123. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、今お話しのあった地元ということでありますが、橋本総理が先般沖縄に行かれていろんな談話を発表されたり懇談に臨まれた際に、総理の言葉として、海上ヘリポートをつくるに当たっても県と市町村の了解を得ることが不可欠だと、地元の反対を押し切ってまで強行はしないという発言がありました。    〔委員長退席、理事木暮山人君着席〕  また、同趣旨だと思いますが、市町村の責任ある方々の集まりの席で、皆さんが納得しないうちに頭越しに国が見切り発車をし、特別の場所を押しつけることはないというような趣旨の発言をされたというふうに伝えられておりますが、政府見解はこのとおりと承ってよろしゅうございますか。
  124. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) この点につきましては橋本総理が沖縄においでになりまして地元の方々に表明されたとおりでございます。  当然のことでございますが、普天間飛行場の機能を代替する施設をつくるといたしますならば、地元の方々の御理解を得た上でなくてはできない、これは当然のことでございます。
  125. 矢田部理

    矢田部理君 それは理解ということではなくて了解というふうに承ってよろしゅうございますね。そういう言葉を使われております。
  126. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 総理も、先ほども委員指摘になりましたが、御納得をという言葉を使っておられます。そういうことでございます。
  127. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、場所が特定をしないということですが、地元というのはどういう地域を指しておるのでしょうか。例えば、今キャンプ・シュワプ沖というのが一般的に言われておるのでありますが、その沖合を想定した場合に地元の市町村、県はわかりますけれども沖縄県であることは明白ですが、地元の市町村というのはどんな市町村を指しているんでしょうか。
  128. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほど政府委員から御答弁申し上げましたように、今回のSACO最終報告におきましては沖縄本島の東海岸ということでございます。そして、それを具体的にどうするか、どこにどうするかという点につきましては、これから普天間実施委員会というのをつくりまして明年の暮れに向かっていろいろな作業を進めていきたい、こういうふうに考えているわけでございますので、そういった作業の中で、その関連で地元の自治体と申しましょうかそういったことも出てくると、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  129. 矢田部理

    矢田部理君 わかりにくいのは、海上につくるわけでしょう。そうすると、その海上には市町村はないわけだから、海の上ですから。そうすると、その地元という意味はその沿岸の市町村というふうに伺ってよろしいでしょうか。
  130. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) そこのところが、私どもとといたしまして今海上施設ということでその可能性を追求していくことにしておるわけでございまして、それは場所だけではなくて、海上施設と申しましても一体どのような形態のものをどのような工法でということもあるわけでございます。それによりまして海岸から遠くもなり近くもなる。逆に海岸から遠くもなりあるいは近くもなることによって工法の方にもいろんな影響が出てくる、そういう相関関係にあるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、私どもといたしましてはそういった代替の海上施設をお願いします場合に大きな利害関係をお持ちになる地域の御理解を得ながら進めていく、こういうことでございます。
  131. 矢田部理

    矢田部理君 東海岸の沖につくるわけですから、沖に面した沿岸の市町村、沖を望む沿岸の市町村と言ったらいいかな、ぐらいのところの理解がないと地元と言われても困るわけなんで、そういう理解でいいんでしょう。
  132. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず大前提として、私どもは何としても沖縄の御要望がとりわけ強い現在の普天間の飛行場を全面返還に持っていきたい、そしてそのためにはその代替の施設をお願いせざるを得ない、こういうことでございます。この二つはセットになっておりますので、そういう点でひとつよろしく御理解をちょうだいしたい、こういうことでございます。
  133. 矢田部理

    矢田部理君 セット論の是非ということになれば、私はやっぱりセット論はだめだと、沖縄の人の願いにこたえたものではないということだから。そこの議論は今してもしようがないから……
  134. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) それじゃ議論にならない。
  135. 矢田部理

    矢田部理君 いやいや、やめておくのですが、総理の言葉では、地元の市町村の了解を得たい、頭越しにやることはない、得なきゃならぬと、こう言っているから、さてその地元というのはどういうことをイメージして言っておられるのかということになれば、その市町村内につくる場合にはもちろんわかるわけですが、海上につくるわけですから、そうすると地元というのは一体どこなんですかという問いをするのは、議論の抱き合わせかどうかは別として、必要なんじゃないでしょうか。沿岸に面した市町村ということで、どうしてそういうことが言えないんですか。    〔理事木暮山人君退席、委員長着席〕
  136. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) セット論はとらないとおっしゃいますけれども、私どもはどうしても普天間の返還実現したい、これがあるわけでございます。それがまた沖縄の御地元の最も大きな御要望でもあったと理解しております。そして、これを実現するために、実現しなくちゃいけない条件としてその代替の施設が必要であると。そして、地上もあるいは既存の施設の中もということもいろいろ検討してまいりましたけれども、それぞれに難点がある。  海上施設につきましてももとよりいろいろ難点はございますけれども、いろいろ検討する中で海上施設というのがいろいろ工夫していくならば御理解を得られる可能性が相対的に強いのじゃないかということで海上施設の可能性を追求していくということにさせていただいているわけでございまして、その際には地元の御理解そして御納得を得ながら進めていかなくちゃいけない、こう言っておるわけでございまして、それは当然のこととして海であるからといっておかの方は関係ないだろうなんてことは申しません。先ほども言いましたように、大きな利害をお持ちになる地域の御理解を得ながら進めていくということでございます。  ただ、これが今東海岸ということでございまして、具体的にどこ、あるいはどの程度陸から離れたというところはこれからの問題でございますから、現在の段階であれこれ特定はできないという点はおわかりいただけると思うのでございます。
  137. 矢田部理

    矢田部理君 そうしますと、このSACO報告で海上につくるあるいはそれを追求するということは言われているわけですから、その海上施設をつくるに当たって、それと利害関係を持つ市町村の了解が必要だという認識に立つということはよろしゅうございますね。
  138. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私がお答えしましたように、これからつくっていく海上施設と大きな利害関係を有する地域、そういうふうに御理解いただければと思います。
  139. 矢田部理

    矢田部理君 私の言ったことと違うんですか同じなんですか。同じ趣旨だということでいいですね。
  140. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私の御答弁を委員におかれまして同じことを言っているなと御理解いただければ幸いでございます。
  141. 矢田部理

    矢田部理君 ばかばかしい議論はこの程度にいたします。  いろいろ沖縄問題はたくさんありますが、次の問題、東北アジアの非核地帯創設問題についてちょっと伺っておきたいんですが、赤道以南といいますか、南半球は非核地帯でほぼ覆われることになりました。問題は北半球をどうするかという議論がいろんなところで出始めているのでありますが、私どもは東北アジアでこれをつくるべきだと。  この地域や範囲をどうするかという議論はいろいろあるわけでありますが、少なくとも日本は非核三原則を持っています。それから、御承知のように、九二年に朝鮮半島の非核化に関する共同宣言というのを南北両朝鮮でまとめまして、この南と北の朝鮮では核武器の試験や製造をやらない、あるいは貯蔵や配備や使用をしないということが両者間で合意をされております。ということになりますと、日本も南北朝鮮も非核化では一致するわけでありますので、被爆国日本としてこれをやっぱり積極的に推進する立場に立つべきではないかというふうに考えますが、大臣、いかがでしょうか。
  142. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私は、一般論といたしまして、核兵器国を含むすべての関係国が同意する等の適切な条件がそろっている地域において非核地域ができていくということは核拡散防止の目的に資するものである、こう考えます。  しかし、日本も含めました北東アジアの地域がどうかと申しますと、現実問題として域内で緊張関係あるいは対立関係などがございます。そうしてまた、複数の核保有国が存在するというのも事実でございます。そういったことを考えますと、まだ非核地域実現のための現実的な環境が整っておるとは言えないんだと思います。  現実的な環境と申しましたのは、方向といたしましては我が国は核のない世界を目指して努力を進めていく、これはもう当然でございます。それから、確かに朝鮮半島につきましても先ほどおっしゃったような九二年の宣言がございますでしょうけれども、しかし現実に国家問の対立、緊張の関係があるし、また核保有国が複数存在するということを考えますと、まだこの地域での非核地域あるいは非核地帯というものができる現実的な条件が、あるいは環境が整っているとは残念ながら言えないんじゃないか、こう考えます。
  143. 矢田部理

    矢田部理君 緊張や対立を和らげるためにも非核化の構想を積極的に進めることは大事な課題なのでありまして、その点で非核三原則、日本の非核三原則に幾つかの問題点がありますけれども、それはそれとして建前上はそうなっている。南北朝鮮も共同宣言をしたのでありますから、この三国がやっぱり積極的に進めていく、そのイニシアチブを日本がとるということはあってしかるべきだと思います。  それから、周辺国で核保有国も今あるということはそのとおりです。そこで、周辺の米中ロ三国に対してもそういう非核化の動きを積極的に支援する、そういう環境づくりに協力をするというような要請をしながら、三国だけでいいかどうかということは私も議論があるわけでありますが、少なくともまず三国でとりあえずやる、そしてその地域を拡大していくというふうなことが私はあっていいのではないかというふうに考えております。  先般、私は中国のかなりの責任ある人とも話をしました。核実験問題に我々は反対ですが、同時に非核化問題の推進に当たっては中国も反対ではなくて、そういう方向が出れば尊重するというふうな態度を既に表明しつつありますし、先般の南アジアヘの非核地帯の創設に当たっても、インドやパキスタンに対しても中国はそういう立場を明確にしております。  そういう点で、南北朝鮮と日本だけではなくて、周辺の核保有国にもそういう非核化の流れを積極的に推進するために協力をいただく。そして、より具体的に言えば、核不使用、先制使用をしないという宣言を求めていく、約束を取りつけていくというようなことで非核を本格的に推進するのであれば、現状が難しいということではなくて、その難しさを打開するためにも推進という立場外務大臣としてとると大変政治家としても先るのじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  144. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもも核のない世界を目指して着実に努力はしてまいりたいとは思います。しかしながら、今のお話の中で、例えば日本と朝鮮半島だけで非核地帯ができるかといいますと、この地域全体の安全を考えます場合には、他の核を保有している国が存在する、その関係も当然考慮に入れながら考えざるを得ないというのが現実だと思います。  そちらにも働きかければいいじゃないかというお話もございますけれども、しかしそれはやはり核の世界だけではなくて、あるいは安全保障にかかわってくるいろんな要素を考えながら物事は進めていかなくちゃいけないんじゃないのかなと。したがいまして、全体としての信頼の醸成あるいは安全保障環境の改善という努力の中で考えていくべき問題じゃないかと考えていることを申し添えておきます。
  145. 矢田部理

    矢田部理君 現状の説明だけをされてもしようがないので、政治は次の展望を持った問題を提起し、構想を進めていくことが大事だと思いますので、今後御検討いただきたいのです。  もう一問だけで終わりたいと思います。  原発の輸出ということが盛んに動きとして出てきております。世界の先進国は原発は新規については少なくとも中止ないしは抑制の方向に動いている。日本だけが推進論に立ち、国内がなかなか厳しいものだから今度は外国に輸出をしようということでインドネシアあたりに対する輸出も盛んに進められていることがあるわけであります。  一つだけ確認をしておきたいのは、OECDでも原子力発電所向けの信用供与セクター了解というのがありまして、原発に関してはODAを使ってはならぬ、その資金を供与してはならぬという了解があろうと思うのでありますが、この基本は外務省も踏まえて、そういうことはしない、ODAの資金は使わないということはお約束できますね。
  146. 畠中篤

    政府委員(畠中篤君) 原子力発電所の建設につきましては、先生今御指摘のOECDの原子力発電所向け信用供与に関するセクター了解というのがございまして、我が国といたしましてはこの了解を今後とも遵守していく考えでございます。原子力発電所にODA資金を供与しないとの立場には変更はございません。
  147. 矢田部理

    矢田部理君 これで終わりますが、そこは大事な点でありますが、やはり原子力についてはその安全性に深刻な疑問がある。廃棄物の処理に見通しが立たない、それからコストについても大変いろんな問題が出始めておるのでありまして、原子力政策、とりわけ海外に積極的に輸出をしていくというような政策については根本的に改めるべきだというふうに私は考えておりますので、外務大臣も少しそういう頭でこれから外交に当たっていただきたいということを申し上げて、終わります。
  148. 田英夫

    田英夫君 発言の順番を変えていただきまして、勝手を申して申しわけありません。ありがとうございました。  来年は日中国交正常化二十五年ということで中国の問題が改めてクローズアップされる年ではないかと思いますが、そのことも込めまして中国との問題を若干取り上げたいと思います。  ことし中国に何回か参りましたし、中国の人たちとも話し合う機会が何回かありました。例えば、中国外交の当事者あるいは国際問題の学者の皆さんなどと議論をする機会があったときに、日中米、日本中国とアメリカ三角形論というのを議論したことがあります。これはむしろ中国の学者の方から出してきたのであります。  つまり、中国は、アメリカとの関係、日本との関係、それから日本とアメリカとの関係、この三つが三角形になっているように望んでいる。これは日本で余り言われていないといいますか、中国がそう考えているとは余り日本の皆さんは思っていないんじゃないかと思うんですけれども中国の国際問題の学者が数人そういう同じような発言をいたしました。そこで、私が、それは正三角形ということをイメージしているんだろうか、同じ三角形論でも正三角形なのか二等辺三角形なのかというような議論まで実はしたわけです。  これは大変参考になる議論だなと思って今実は御紹介をしているわけですが、やはり歴代総理も外務大臣もアメリカとの関係はもちろん第一義的に大切だけれども中国との関係も大切だということを繰り返し言っておられるわけですけれども池田外務大臣は、日本を真ん中にして、アメリカとの関係、中国との関係ということからすると二等辺三角形とお思いになりますか。
  149. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 日本にとってどの国との二国間関係が大切かと申しますと、それは当然価値観を共有し、また安全保障の面でも同盟関係にございますし、それから経済の面でも政治の面でもあるいは文化の面でも、あらゆる分野でまことに広く、また深い相互の関係を持っております米国との関係を大切にしていくというのは当然でございます。  しかし、それに劣らず、やはりアジアの近隣諸国との関係も重要だと考えております。その中でも中国との関係というのは長い交流の歴史もございますし、また現在におきましてもそれぞれ国際社会におきまして極めて大きなウエートを占めているといいましょうか、大きな役割をそれぞれに果たさなくちゃならない関係でもございます。さらに、これから二十一世紀を展望していくならば、中国日本、それぞれにそういった役割はますます大きくなつてくるんだろうと思います。  そういうことを考えるならば、やはり日中の関係は非常に大切であろうと。大切だというのは、単に日中それぞれにとって大切というだけではなくて、アジア太平洋地域全体のため、あるいは国際社会全体のためにこの日中の関係を大切にしなくちゃいけないという共通の責任を持っているんだと思っております。それは日米関係についても同じことでございますし、また今三角形とおっしゃいましたけれども、米中関係も同じだと思います。  そういった意味で、この三角関係、トライアングルを大切にするということは私自身も常々言っているところでございまして、実は先般の2プラス2の席上におきましても私の方からそのことを申しまして、ペリーさんもそれを表明したところでございます。もとより、他の国との関係はいいという話ではございません。  それで、さあそれが正三角形なのか二等辺三角形なのか、その辺の長さがどうなのかという点でございますけれども、その点について、ちょっと表現は違いますけれども、2プラス2のときに私はこういうことを申し上げたんです。  何となくこの三つの国の関係がどこかが近づくとほかのところが遠のいていくとか、そういうことがよく言われる。現に、ここのところ非常に難しい問題を抱えておりました米中関係がずっと改善の方向に向かって急速に展開している。そんなことを見て、米国においてあるいは日本において、これは日米関係が置いていかれるんじゃないか、あるいは日米関係がこれまでほど米国側において重視されないんじゃないか、あるいは日中の関係が置いていかれるんじゃないか、こんな、心配をなさる向きがかなりございます。  しかし、その点につきましては私はそうじゃないんだと。この三カ国の関係はあれかこれかの関係、言いかえるならばゼロサムの関係ではなくてプラスサムの関係ではないか、その三カ国のうちの一つの関係がよくなるならばそのほかの関係も相乗作用でよくなっていくということも可能な関係である、ぜひそういうふうな方向に私は持っていかなくちゃいけない、こういうふうに考えておりまして、そのことを2プラス2で申しましたら、ペリーさんもそうだと言いまして、その日のうちに三回ぐらい記者会見その他の場で自分の考えとしておっしゃったようでございますけれども、こういうことに共鳴していただくのは大変ありがたい。  先ほど委員おっしゃるような認識の方が中国側でも少なくないとするならば、我々は三国にそれぞれございます。そのような考え方を大切にしながらこのトライアングルの関係を発展させていきたい、こう考える次第でございます。
  150. 田英夫

    田英夫君 全く同感でございます。先日のマニラ・スービックのAPECでの中国首脳の態度あるいはアメリカのクリントン大統領の姿勢というものはまことにそういう意味で私はよかったなと。中国がAPECといいますかアジア太平洋地域に円満な形で出てくるというか参加してくるということが最も望ましいと思っていたんですが、従来ややもすると中国自身の問題よりも周辺から中国に対する冷たい目があったように思うんです。そういう意味で大変いい方向に進んでいると思います。  そこで、一つ具体的な問題で、これは九月に決算委員会池田外務大臣にもお話しいたしましたので、もう大きな問題ではなくなってきつつあるのかもしれませんが尖閣列島の問題、これはこじれますと日中関係で非常にぐあいの悪い問題になると心配をしていたんですが、このAPECの機会にそれぞれ外務大臣あるいは首脳クラスでこの点についてもいい方向に進んでいるというふうに理解しておりますが、それでよろしゅうございますか。
  151. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) おっしゃるとおり、尖閣列島をめぐる問題につきましては我が国立場中国立場とは違います。それだけに、委員は今こじれるという言葉をお使いになりましたけれども、この問題の取り扱いいかんにおきましては日中関係全般に好ましくない影響を与えるおそれが多分にございます。そして、しばらく前に現実にそういうことが大変心配される状態であったわけでございますが、尖閣列島をめぐる立場立場としまして、そのことがこの大切な日中関係全般をおかしくすることがあってはならない、我々としてはこういうことで対処してきたつもりでございます。そして、中国側もこの問題をめぐる立場の違いが両国関係をおかしくしてはならないという基本的に同じような御認識のもとに対応していただいたと。それが先般のマニラにおける首脳会談の場で確認されたということだと存じます。  そういった意味で、おっしゃるとおりいい方向に向かっているとお考えいただいていいと思うのでございますが、ただ基本的な立場の違いは依然としてあるわけでございますから、これで安心していいというものではない。我々は、今後とも細心の注意を持って我が国立場はきちんと守りながらも、この問題には冷静に対処して、日中関係全体が友好裏に維持され、さらに進展していくように対応してまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  152. 田英夫

    田英夫君 これは確認という意味なんですけれども、実は中国外交関係者と最近話しましたときに、それはマニラAPECの後ですが、大臣今おっしゃったとおりの状況だという認識は中国側も一致しておりました。  ただ、その人は、どうも日本外務省の中にこの問題について従来日中間で確認をされていた意思統一が軽視されているやに思える感じがある、こういう意味のことを言っていたのが気になりますので、確認をする意味で申し上げるんです。  これはもう大臣加藤アジア局長を初め皆さんも当然よく御存じのことでしょうが、例の日中国交正常化の話し合い、田中総理と周恩来総理の話し合いの中でもこの問題が取り上げられて、今回はこのことには触れないでおこうということが言われたことがまず第一で、そして一九七八年の日中平和友好条約締結のときにも触れないということで一致をしていた、こういうふうに中国側理解をしていると言うんです。これをその外交当局者は、これは日中間の共同認識だと我々は思っているんですと。  例えば、外交条約とか協定とか交換公文とかいろいろなやり方で合意するやり方があるけれども、文書で合意しているわけではないし、合意というのは強過ぎるかもしれないけれども、共同認識だと。幸いに文字が一緒ですから同じ意味にとっていいわけでしょうが、そういうふうに表現をしておりましたが、これについてはどういう感想を持たれますか。
  153. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私は、一番大切なところは日中関係全般を大事にして友好裏に維持しなくちゃいけない、この共通認識であり、その共通認識に立ってのお互いの努力、そして協力だと、こう考える次第でございます。そして、その認識は日中国交回復のときも厳然とあり、その上に立って我々も今も努力しているところでございます。そこを大事にしてまいりたいと思います。  それで、具体的にそのときのやりとりがどうかという点につきましては、これまでの経過の中で、基本的な立場の違いのほかにも若干日中で認識が違う部分もございましたけれども、そこのところは余りどうだこうだということを詰めることにそんなに意味があるわけじゃなくて、そういった基本的な立場の違いは違いとして全般の友好親善関係を維持し発展させていこうというこの共通の認識を大切にしたい、こう思います。
  154. 田英夫

    田英夫君 その意味で、一九七八年の日中平和友好条約が締結された直後に当時の鄧小平副首相が初めて来日をしまして、記者会見の中で記者の質問に対して尖閣列島問題に答えているのが大変興味があるので申し上げますと、尖閣列島は我々は釣魚島と言う、だから名前からして違っていると。つまり、中日国交正常化の際にもこの問題については双方が触れないということを約束していると。今回の中日平和友好条約交渉でも同じくこの問題には触れないということで一致をしてきたと。しかし、一部の者はこういう問題を挑発に使って、こういう問題をかりて中日両国の関係に水を差したがっております、こんな発言を鄧小平氏はしているんです。  さらに、こういう問題は一時棚上げしても構わないと思います、我々の世代の人間は知恵が足りないかもしれない、しかし次の世代はきっと我々より賢くなるでしょう、そのときは必ずお互いにみんなが受け入れられるようないい方法を見つけるでしようと。記者会見ですけれども、こんなことを鄧小平氏が言っているんです。  だから、初めから領土問題というところでは一致しないことをお互いに承知しながら、いわゆる棚上げという言葉まで使っているわけでして、この辺の感覚をうまく、いわばあうんの呼吸でいかないと水を差す人たちが動く可能性が出てくるというこの鄧小平氏の言い方はなかなか味があるなと思いますが、この辺はもうお答え要りませんから、釈迦に説法のようなことですから、中国側の感覚としてはお互いによくわかるんじゃないかと思いますので、御参考までに申し上げました。  あと核の問題で一つ伺いたいんですが、核廃絶というのは、もちろん日本外務省政府も当然最終的には核は廃絶すべきものだと思っておられると確信をいたしますけれども、その意味で、最近、十月二十九日に国連の第一委員会ですか、総会に向けてマレーシアが中心になって二十三カ国が提案をした国際司法裁判所の勧告を受けて核廃絶の条約をつくる方向で進もうではないかという決議案が出ましたときに日本政府は棄権をしております。これは一部の国民の皆さんは大変心配をしておられる問題です。特に、広島、長崎の市民の皆さんは、このことについて一体政府はどういうつもりでいるんだろうかということすら私のところへ言ってこられた方があります。それも無理はないと思うんですが、オーストラリアとか非常に核廃絶に対して熱心だった国も同じように棄権をしております。カナダもそうですね。  したがって、もう少し政府は、外務省はこのことについて説明をされた方がいいんじゃないかと思いますので、真意を伺っておきます。
  155. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ただいまの御質問にお答えする前に、先ほどの鄧小平さんの記者会見における発言というのを私どもよく承知しております。しかし、私どもは、その際に使われた具体的な言葉を日中間で了解したかどうかという点については、この点についても中国の方とはちょっと認識の違いがあるということでございます。しかしながら、先ほど申しましたように、基本的に尖閣諸島をめぐる日本立場中国立場、これは違うけれども、しかしながら尖閣列島をめぐる事態によって日中関係全般をおかしくしちゃいけない、そこのところは認識は一致しているんだ、これを大切にしたいと、こういうことでございます。  そういった意味では、鄧小平さんの言葉も味があるとおっしゃいましたけれども、私どもが最近申し上げている言葉の味も中国側にもかみしめていただきたいなと、こう考える次第でございます。  さて、ただいまの核の話でございますけれども、御承知のとおり、我が国としては核兵器のない世界を目指して一歩一歩着実に努力していく、こういう基本的なスタンスでことしもCTBTについて我が国としてもあれだけの努力をし、一つの進展があったということをうれしく存じております。そして、さらにその先にカットオフ条約早期締結、さらにというふうに進めていきたいと思うわけでございます。  そういった中で、今御指摘のございましたマレーシア等の提案に係る決議の問題でございますが、これにつきましては、そういった目標は目標として一歩一歩着実に進めていくという我が国の現実的な立場からしまして、今の段階では、この内容ではという感じで棄権をしたわけでございますけれども、そこのところを具体的に国民皆様方にも御理解いただくべきであるという御指摘はそのとおりだと思いますので、ここは少し正確を期して政府委員から答弁させていただきたいと思います。
  156. 稲川照芳

    政府委員(稲川照芳君) ただいま田委員から御指摘がございましたマレーシア決議案の主な骨子は、最近CTBT条約が採択されて、かつICJの勧告的意見が出されたという核軍縮をめぐる状況に照らして、マレーシア決議案は、核軍縮努力を誠実に継続し交渉を妥結する義務が存在するという認識を新たにするということが一点と、もう一つは核兵器の全面禁止条約を九七年中に開始することというこの二つからなっております。  その意味で、前者の核軍縮努力を誠実に行う義務がある、この点につきましては日本も賛成でございます。分割投票にこの部分が諮られまして、当然日本は賛成いたしました。ただ、第二の、後半の九七年中に核軍縮交渉を誠実に開始するという点につきましては、ただいま大臣からも申し上げましたように、日本政府としましては現実的な一歩一歩を努力していきたいということで、例えば明年早々には第一委員会がジュネーブで行われますけれども、その軍縮委員会におきましてカットオフ交渉をぜひ早く開始したいということで努力していきたい、そういうことで決議全体には棄権いたしました。そういうことでございます。
  157. 田英夫

    田英夫君 確かに、CTBTが曲がりなりにもといいますか、インドの問題もありますし、核保有国は実験をやめると言ったわけではないので、爆発をさせないで実験する方法を既にアメリカなどは開発しているということのようですから、その辺は曲がりなりにですが、とにかくできたと。そうすると、次はカットオフ条約だと。こういうことの中で、さっきのはちょっと余りにも少し先に飛んでいるという、これはよく理解できます。外務省は従来外交のそういう問題についてPRをなさるということは控えておられたように思うんですが、こんな問題は何らかの形で国民にわかるような努力をされた方がいいのではないかなと思います。  それで、カットオフ条約も、来年はもう目の前に迫ってきているわけで、これが具体的に出てきたときに日本政府として、つまり濃縮ウランとプルトニウムが国際的にどういう形になるかこれからの問題ですが、管理に置かれるとか制限されるとかいろいろ案が出てくるようですが、そうすると、日本の原子力発電を中心にした核燃料をリサイクルしていく、プルトニウムをリサイクルさせていくということの根本に触れてくる可能性があるわけです。これは政府部内でよほど調整をされませんと積極的にカットオフ条約を推進していくという立場をとりにくくなるんじゃないだろうかということを心配いたしますので、きょうはその点、具体的なことまでは触れなくて結構ですけれども、段取りとしてそういう方向でいくということは私もよく理解できますから、ひとつその点でぜひ御留意をいただきたいと思います。  最後に、もうほとんど時間がありませんけれども、防衛庁においでいただいているので、お待たせしましたが、申しわけありません。  TMD、防衛庁はBMDと言われるようですが、既に今年度予算にも予算が計上されております。その額と、どういうことに使われたかをちょっと簡単に説明していただきたいと思います。
  158. 秋山昌廣

    政府委員(秋山昌廣君) 我が国の防空システムのあり方に関する総合的調査研究ということで七年度から進めておりますけれども、八年度予算では約四億四千三百万円、これは八年度までに行ってきた例えば現下の経空脅威に対処するための防空システムの機能、性能等の分析・評価を踏まえまして、八年度以降、シミュレーションによる防空システムの費用対効果の分析・評価を行おう、こういうものでございます。
  159. 田英夫

    田英夫君 ことしの防衛白書に初めてBMDというかTMD、弾道ミサイル防衛構想という言い方で登場してきていると思いますが、これはこれから積極的にこの構想に防衛庁としては参加をしていこうという意思と受け取ってもいいんでしょうか。
  160. 秋山昌廣

    政府委員(秋山昌廣君) 先生御案内のとおりかと思いますけれどもへ今日の国際社会におきまして大量破壊兵器及びその運搬手段となり得る弾道ミサイルの拡散が進んでいる、また各種ミサイルの質的近代化も進んでいる、こういう状況下におきまして、現有の我が国の防空能力、そういうものを維持しつつ、弾道ミサイルにどのように対応するかが我が国の防衛政策にとりましても非常に大きな課題と考えているわけでございまして、こうした課題に的確に対応できる効率的な防空システムのあり方に関して、いずれこれは政策判断が必要ではないかというふうに考えております。  御案内のことかと思いますけれども平成八年度から始まりました中期防におきましても同様の趣旨が書いてありまして、この中期防の期間中にどうするのかということについて結論を得るということを閣議決定しておるところでございます。  そういたしますと、結論を得るための政策判断をする。その政策判断をするためには、弾道ミサイルの脅威とか弾道ミサイルに対処する防空システムの技術的可能性ですとかあるいは費用対効果、そういった問題が我が国の防衛政策との整合性の関係も含めまして、当然必要な資料を集め、その政策判断に資することが必要であろうということで研究をやっておるわけでございまして、あくまでもいずれ行わなければならない政策判断のための資料を集めている、そういう研究でございます。
  161. 田英夫

    田英夫君 どうぞひとつこれは慎重にということをお願いして終わります。ありがとうございした。
  162. 釘宮磐

    委員長釘宮磐君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時三十五分散会