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1996-04-30 第136回国会 参議院 労働委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月三十日(火曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  四月二十六日     辞任         補欠選任      松谷蒼一郎君     中原  爽君  四月三十日     辞任         補欠選任      依田 智治君     三浦 一水君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         足立 良平君     理 事                 南野知惠子君                 真島 一男君                 武田 節子君                 大脇 雅子君     委 員                 小山 孝雄君                 佐々木 満君                 山東 昭子君                 中原  爽君                 前田 勲男君                 三浦 一水君                 石井 一二君                 今泉  昭君                 星野 朋市君                 青木 薪次君                日下部禧代子君                 吉川 春子君                 笹野 貞子君                 末広真樹子君    国務大臣        労 働 大 臣  永井 孝信君    政府委員        労働大臣官房長  渡邊  信君        労働省労働基準        局長       松原 亘子君        労働省婦人局長  太田 芳枝君        労働省職業安定        局長       征矢 紀臣君    事務局側        常任委員会専門        員        佐野  厚君    説明員        厚生省健康政策        局総務課長    石本 宏昭君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労  働者の就業条件整備等に関する法律等の一部  を改正する法律案内閣提出) ○高年齢者等雇用安定等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 足立良平

    委員長足立良平君) ただいまから労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十六日、松谷蒼一郎君が委員辞任され、その補欠として中原爽君が選任されました。     —————————————
  3. 足立良平

    委員長足立良平君) 労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 今泉昭

    今泉昭君 平成会今泉でございます。  去る二十六日に開催されました当委員会におきまして、諸先生方から大変具体的な点について御質問がございましたので、私はきょうは少し理念的な問題を中心といたしまして、大臣並びに労働省皆さん方にお聞きをしたいというふうに思います。  この派遣労働問題は、実は国の雇用政策というものに大変関連の深い、むしろそれが中心になりまして考えられてきたものである、かように考えておるところでございます。そこで、実は私も十年ほど、この問題を取り扱う中央職業安定審議会のメンバーとしていろいろ論議をしてきた経過がございますので、まず最初に、なぜ我が国において派遣法導入しなくてはならなくなってきたのか、必要なのかということの背景についてお尋ねをしたいと思います。
  5. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいまのお尋ねでございますが、我が国におきます技術革新進展等に伴いまして、専門的な知識技術経験を要する仕事業務が拡大いたしまして、これらの業務につきましては特別な教育訓練が必要となる等の理由によりまして、企業として、みずからの従業員に処理させることも重要でございますが、あわせまして労働者派遣という形によってこれを処理させた方が効率的である、こういうものが拡大してきている、これは経済社会変化に応じました経済的な側面でございます。また、高齢化進展、女性の職場進出高学歴化進展等によりまして、専門的な知識技術経験を生かしたスペシャリストとして働くことを希望する労働者、あるいは都合のいい日時に働くことを希望する労働者特定企業に縛られずに働くことを希望する労働者、そういう方々がふえてきている、こういうことも一方でございます。  このような労働力需給両面にわたります変化背景といたしまして、労働者派遣的な事業現実経済社会の中で増加し、労働力需給の迅速かつ的確な結合を図るという積極的な役割を果たしてきた反面、派遣先におきます就業条件が不明確になりがちであるというようなことで、労働者保護という観点からさまざまな問題が生じておったわけです。これは十年前、当時の実情でございます。  そんなことを背景といたしまして、労働者保護を図る観点から、必要な規制整備を図った上でこのような労働者派遣に対するニーズ、それに対応するための制度、これを認めようということで十年前に労働者派遣法が制定されたものであるというふうに理解いたしておるところでございます。
  6. 今泉昭

    今泉昭君 昭和六十一年にこの派遣法が施行されまして十年経過をしたということをおっしゃいましたけれども、現在のところ、派遣労働者として仕事をしている方々が約六十万人弱いるわけですけれども、この十年間に、当初の導入目的等に照らし合わせまして、派遣法を施行することによりましてどのような実績、メリットというものが生まれてきているのか、逆にまたこの法律導入することによってどのような弊害問題点が大きくクローズアップされているのか、これらについてどのような認識をされているのか、お聞きしたいと思います。
  7. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいまの御指摘でございますけれども労働者派遣事業制度導入によりまして、時間的に拘束されずに働きたいという労働者、あるいは家庭責任等との関係で働く時間に制約がある労働者雇用の場を提供することをいたしますとともに、企業の専門的な知識技術経験を必要とする労働力需要にこたえる、先ほども申し上げましたようなこういうメリットがあるものというふうに理解しているところでございます。  ただ一方で、派遣契約中途解除等によりまして派遣労働者が解雇される、これは特に不況期になりますとそういうことが顕著になるわけでございますが、そういう労働者保護という面からの問題があること、あるいは労働社会保険適用促進、これがなかなか現実に進まないというようなこと、あるいは無許可、無届け、あるいは対象業務外労働者派遣などのいわゆる違法派遣が、これも少なくないのではないかというふうに見られる点、そういうような問題点も顕在化してきているというふうに考えております。
  8. 今泉昭

    今泉昭君 もう一点関連してお聞きをしておきたいと思うんですが、現在六十万人弱の派遣労働者がいるわけですけれども、全体の雇用労働者割合から見ると約一%程度の大変微々たる労働力でございます。アメリカあたりは、我が国に比べまして、派遣労働法をつくったのは一九二〇年代のことでございまして我が国にとっては大変先輩に当たる、こういう実験をしてきている国であるはずでございますが、そういう国においても派遣労働者の数というのは同じように雇用労働者の数に比べて大体一%程度労働者しか実際上働いていない、こういうことになっているように労働省から出されている資料を見て理解をしているわけでございます。  この派遣労働者というものを、全体の雇用政策の中でいろいろ考えてみますと、最初出発点におきましては、これからの雇用情勢が厳しいからいろいろな雇用対策をやっていく必要があるという意味でつくられたということではなくして、むしろ専門的な知識を持っている方々を活用したい、あるいは必要に応じていろいろな意味でのミスマッチを即解消できるような迅速な対応をとりたいというような意味で考えられてきたようでございまして、失業者を減らしていくとか、失業者に対して雇用機会を多くつくっていくというような意味合いはどちらかといえば薄かったような気が私はするわけでございますが、最近雇用情勢が大変厳しくなってまいっておりまして、景気の回復が期待をされているといっても雇用情勢が必ずしもそう簡単に明るい方向に向いていくとは考えられないわけでございます。  そういう意味から考えまして、今後派遣労働者位置づけというのは、今までと同じような位置づけでいかれるのかどうなのか、今後の派遣労働者の総労働者に占める割合であるとか、位置づけというもの、将来的な展望をどのように考えられておられるのか、多少位置づけ変化をさせていくようなつもりでおられるのか。そういう点についての、将来展望をお聞きしたいと思います。
  9. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生の御指摘、確かにこれからの経済社会の展開の仕方あるいは産業構造の変革のあり方などによってかなり取り巻く状況というものは変わってくるというふうに見ておいた方がいいと思うのであります。  したがって、その変わってくる状況に合わせて適切な対応労働省といたしましても行ってまいりたいと思いますが、今先生指摘のように、企業においては業務専門化多様化が進む中で、外部にゆだねた方が効率的に処理できると考えられる分野がこれからも拡大していくと思うのであります。労働者におきましては、みずからの技術知識を生かしながら仕事の内容や就業日時を選んで就業したいといった多様な働き方を求める層もこれまた一方で拡大をしてくると見ておいた方がいいと思うのであります。これらの双方需給双方ニーズを結合するものとして、労働者派遣事業に対するあり方もあるいは要望もニーズも拡大する傾向にあるものと考えているところであります。  確かに、例えば労働者派遣事業に関する規制が極めて緩やかなアメリカにおきましても、派遣事業所数は約一万二千であります。日本の場合はそれを超えまして一万三千ございます。全就業者に占める派遣労働者数割合が、先生も御指摘になりましたようにアメリカでは一・一%、日本ではそれ以下で〇・九%という数字になっております。こういう状況から見まして、大きな潜在需要が存在しないのではないかという推測も成り立つわけでありますが、我が国の場合は一年を超えるような派遣も専門的な職種によっては認められているわけでありますが、アメリカでは平均派遣期間というものが約二週間であるなど極めて短期的な需要対応するものというふうになっているわけでありまして、そういう面からいきますとアメリカは大先輩でありますが制度的に大きな違いも存在しているわけであります。したがって、単純な比較ということは極めて困難でありますが、その反面、労働者派遣事業については労働者保護を図りにくい、常用労働者代替となって不安定雇用を増大させるおそれがあるなどのデメリットも私ども十分認識をしているわけであります。  したがって、この労働者派遣事業にかかわる規制緩和につきましては、このようなメリットデメリットを十分勘案しながら、だからこそ雇用問題の当事者である労使を含めた関係者によって十分な検討を踏まえて適切に対処することが必要だと思うわけであります。  先生の御指摘のように、これからどう二十一世紀に向かって産業構造が転換していくか、見きわめを今の時点で行うことは非常に難しゅうございますけれども、この労働者派遣事業を通しまして、その時々の企業の側あるいは働く側の双方ニーズをうまく合致させるような形で対応をすることが肝要だというふうに考えているわけであります。
  10. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま大臣からお答えしたとおりでございますが、先生指摘政策論として、特に若年者雇用失業情勢が厳しいときにどう考えるかという観点から、例えばアメリカにおきますような状況で比較的短期的な雇用で若い人が会社に入りまして、それでそこで一定の判断をして正社員化していくというような観点からの派遣あり方、そういう考え方もあり得るわけでございますが、我が国はむしろ専門的、技術的な分野におきまして働く、したがって派遣労働者としてある程度長期間にわたって働くということで、そこから先常用労働者に転化するということは一般的には視野に入れていない、こういう考え方でございます。  今後のあり方として、御指摘のように雇用情勢が非常に厳しくなるそういう中で、特に若年失業がふえた場合にそういう方について短期的に派遣という形で働いてそこから正社員化するというような考え方、これも考え方としては一つ方向であろうというふうに考えますが、ただ一つ我が国若年者雇用状況につきましてはことしも非常に厳しい、超氷河期というようなことでございましたけれども内定状況は恐らく九五%を超える、短大が厳しいかと思いますけれども、そういうことで、これは諸外国から見ますと非常に若年者雇用につながっているという現状でございます。  それからもう一つは、今後若年労働者が非常に数が少なくなってくる、そういう中で経済社会の枠組みの中で対応がどうなっていくか、そういう観点も見きわめる必要がございますし、それからもう一つは、今後検討はするわけでございますけれども、そういう原則的な対応、どういう仕事でも派遣対象にするという観点をとるとすれば、その際に諸外国のように非常に短期的臨時的な仕事ということで派遣期間が非常に短い、そういう問題であるとか、あるいは派遣事業をきちんと押さえる問題であるとか、あるいは派遣先企業雇用責任をどう考えるか、こういう問題もあわせて検討しなければならない課題であるということでございます。その辺につきましては今後の検討課題ではありますけれども、これは労使を含めた関係者によって十分に検討されるべき課題であるというふうに考えておるところでございます。
  11. 今泉昭

    今泉昭君 実は、アメリカ雇用政策の中に、いろいろな文献を見てみますと、アメリカ雇用労働者のいわゆる位置づけというもの、こういうものを見てみますと、実は全労働者の中に占めるいわゆる中核労働者正規従業員というものの割合が大体七〇%台ぐらい、それからそのほかの周辺労働者というのが残りなんですが、そのほかの周辺労働者の中にパートタイマーが大体二〇%ぐらい、派遣労働者というのは一%程度役割しか背負ってないわけです。  というのは、アメリカという国は私が言うまでもなく、日本に比べまして大変個人という意識の強い国でございまして、自分の理念、自分生活信条自分の思いのままに仕事につき生活を送るという意識が大変強い国でございますから、そういう意味では派遣労働者として働くという国民性一つは持っているわけであります。しかも、日本に比べまして、日本の場合は十六業種に限定されていますけれどもアメリカの場合は業種的な限定が全くない、どんな業種でも派遣労働者として働いていいということになっているにもかかわらず、派遣労働者の数というのは大変少ないわけであります。  そういうことを考えてみますと、日本規制緩和規制緩和という大きな流れの中で、あたかも派遣法を緩めていけば規制緩和とともに雇用が増大するというような甘い夢を持ちがちでございまして、そういうところから私どもが一番心配するのは、いろんな意味での労働者保護の芽がつぶされていく、あるいは余り大事にされていかないというような危険性を大変持つわけでございますけれども、私自身は、日本の場合、余り派遣労働者というものを規制緩和することによって、雇用問題の大きな一助になるとか助けになるとかという甘い夢は余り持たない方がいいのではないだろうかという気がしてならないわけであります。  その一例といたしまして私取り上げてみたいと思うんですが、いただきました資料の中で、十六業種の中で一番たくさん働いている業種というのはどういう業種かといいますと、実は二号業種なんであります。すなわち事務用機器操作労働者。その次に多いのがファイリング、五号職種であります。その次に多いのが財務処理の七号であります。これらの人たち賃金を見てみますと、実は低い方から数えていった三番目のグループなんであります。要するに、当初の目的でありました専門家をできるだけ登用するとかいうような意味からも全くかけ離れた実態が出てきているような気がしてならないわけです。例えば財務処理なんかで言いますと、大体賃金が七千円ぐらいです。それから、ファイリングにいたしましても大した違いがない。この三種類ともいずれも日給一万円以下の賃金で働いている方々ばかりでありまして、こういう方々大変範囲の広い使われ方をするわけであります。  そういう形で使われるというところに、この派遣労働というものが企業からいうならば募集、教育手間がかからない、労務管理手間がかからない、いろんな意味雇用調整のときは自由に、自由ではないかもしれないけれども正規従業員労働組合手間もかからないでどちらかといえばやめてもらうこともできるという、そういうところがどうも中心になって活用されているような気がしてならないわけなんですけれども、この点についていかがでしょうか。労働大臣、どのように感じられておられますでしょうか。
  12. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま先生アメリカ状況労働者現状で、中核労働者、パート、派遣ということでお話ございましたが、現在の日本も大体同じような状況ではないか、大体パートタイム労働者が二〇%を超えた状況でございます。それから、派遣労働者は一%弱ということでございます。  そういう中で、ただいま御指摘のように、今後のあり方論としては、これは労使を含めた関係者十分議論をしなければならないわけでございますが、基本的に外国におきます労働市場あり方と、それから日本におきます労働市場あり方、これはやはり過去の経緯等の積み重ねも違っておりますし、それから法的な規制なんかも違っている面がございます。そういうこともよく踏まえていきませんと、ただ外国がこうだから同じようにこうするというような考え方をとるのは、これはなかなか問題があるのではないか。あるいは、現在の派遣あり方につきまして、これは専門的な仕事ということで、派遣期間を長く、そのかわり対象業務は限定してやっておりますが、こういうやり方の積極的な面でのメリット等もあるわけでございまして、そういうものについてどう考えるかということもございます。  それから、その辺のところをあわせて今後どうしていったらいいかというような課題があろうかと思いますが、ただいま業務関係で、賃金状況等との関係で、専門性がやや薄いところに集中していることによって、それが常用代替その他の形になっているのではないかということでございますが、いずれにいたしましても、現在の制度は、専門的な分野ということでこの対象業務を定めて、その中での専門性の薄さ、厚さの問題はありますけれども、そういうところをきちんとした上で対処しているわけでございまして、専門業務関連外、そういう仕事を仮にやっているとすれば、それはこの制度に合わないわけですから、そういう仕事はやめていただかなければならない、やらないようにしなければならない、こういうことで対処するというようなことでございまして、今回の法律改正についてもそういう観点からの、むしろ規制を強化する面も幾つか盛り込んでいるところを御理解いただきたいと思います。
  13. 今泉昭

    今泉昭君 確かに今回の法改正は、そういう面の足らない点を、規制をある意味では強化をして、そういう弊害が出ないようにという点につきましては私も大いに賛成なんでございますが、もう少し具体的な実例としてお聞きしたいんですが、一般特定と二種類派遣がございますけれども、データなどを見てみますと、大体一般が八割ぐらい、特定が二割ぐらいのように見られていますけれども、この傾向というのはどのように見たらいいんでしょうか。
  14. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 派遣労働者の立場からいきますと、そういう特定雇用関係があるという前提でいく方が雇用が安定するということでいけば望ましいというふうに思います。ただ一方で、派遣需要の面からみますと、やはり非常に経済社会多様化する中でいろんな形の派遣需要があるというものを整理して法律で対処するという面からいきますと、柔軟性弾力性という面から見ると、一般的な派遣という形の方がなじみやすい、こういうような問題があろうかと思います。  その辺が結果として、全体の中で今御指摘のように八割、二割というふうになっているかと思いますが、この点につきましては、どちらがいいかという点については今言ったようにそれぞれのメリットデメリットがあるわけでありまして、一概に言えない問題と、それからその辺がどうあるべきかというのは、これは基本的には労働市場あり方にゆだねざるを得ない問題ではないかというふうに考えております。
  15. 今泉昭

    今泉昭君 実はこれ、派遣事業をやっている企業の中身を分析してみなければはっきりとした答えは出てこないのではないかと思うんですが、実は、私自身職安審委員をやっていたときに、毎月のように新しい派遣会社の申請が出される結果を、報告を受けておりました。その当時、特に立ち上がりを中心として目立ったのは、大企業の完全一〇〇%子会社という形で別会社をつくりまして、企業内にいる労働者をいかに外に出していくか、こういうねらいでつくられた派遣会社というのは大変目立っていたと思います。十年前といえばちょうどプラザ合意でございましたか、あの円高が急激に進んだときでございまして、我が国の特に輸出産業中心とする大企業が大変な雇用過剰感に悩んでいたときでございました。  現に、今ですら大企業の中には二百万人を超えるいわゆる企業内失業者を抱えていて、これらの人たちをどのように処遇をしていくか、あるいは外に出していくかというのに大変頭を悩ませていると思うんです。  そういう派遣事業という一つの大きなグループがあると思うんですが、もう一つグループというのは、新しいこういう産業に乗り出してきた企業はどうだろうかというふうに考えてみますと、どうも中小零細企業が多いような気がしてならないんですけれども、そういう認識でこの派遣業界企業実態というものを受けとめてよろしいんでございましょうか。
  16. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 実態としては恐らく先生指摘のとおりかと思います。規模の大きいところでも大企業の一〇〇%の別会社でない形のものもございますけれども、大企業で数多くのところでそういう別会社という形でやっておる例もございますし、御指摘のように中小企業というところでこういう形でやっているところもあろうかと思います。
  17. 今泉昭

    今泉昭君 私は、この雇用問題というのは、人間にとりまして生活基盤を安定させるための最大の重要な課題だろうというふうな認識をしております。これはやはり国が責任を持って、政策としてやっていかなきゃならないことではないだろうかというふうな私は信念を持っているわけでございまして、世の中の流れにつれまして民営化をするとか、あるいは大きな政府よりも小さい政府がいいという大きな流れの中で、民間にこういう労働雇用の問題を手放していくというあり方が果たしていかがなものなんだろうかという疑問を実は持っている者の一人でございます。  そういう流れの中で、労働省としては職安審議会中心としていろいろ御苦労なされながら、実は雇用問題の解決のために工夫をされたんだろうと思うんでございます。私としましては、これは職安行政の中でできない仕事ではないはずなのに、何で外に出していったのかという気がしてならないわけでございますが、むしろそういう意味で職安の場合、特に労働行政の職安行政に関しては人をふやしてでももっと手厚い、きめの細かい行政をすべきではないかという気持ちを持っている者の一人なんでございますが、そういう考えにつきまして、大臣、どのように考えられますか。
  18. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生の御指摘のように、雇用問題については、もちろん基本的にも第一義的にも国が責任を持つべき重要な政策の遂行課題だと、こう思っているわけであります。これから規制緩和がいろんな形で行われていくというふうに考えられますが、労働者雇用の安定という観点から見ますと、先生指摘のように国が労働市場全体をきっちりと把握していく、これが極めて重要だと思うんです。そして、国民に対しまして無料で職業紹介などを行う公共職業安定所の役割というのは、その意味では一層重要になってくると思っています。  行政改革もありまして、非常に厳しい要員関係、定員関係でございますけれども、その中でも、先生御案内のように、労働省の公共職業安定所あるいは同じ出先の監督署などについても、労働省のみはたとえわずかでも増員をしてもらってきた経緯がございます。それは今言われたような、国は国民に対する雇用問題に責任を持つという重要性が認識されたからだと思うんですが、それだけで十分だとは思っていませんけれども、これからも要員の配置についても全力を尽くしていきたいし、先生方にも御協力をいただきたい、こう思っているわけであります。  また、先般開かれました雇用サミットにおきましても、いわゆる公共職業安定所をもっと重視する政策を全面に打ち出すべきだということもフランスやドイツからも御指摘がございました。いろいろ会議の中で意見を聞いておりますと、この先進七カ国の中ではむしろ日本が他の国に比べて一番公共職業安定所の役割が十分に生かされているのではないかなと、こういう自負は持つことができましたけれども、今御指摘のあったようなことを十分に私ども認識をしてさらに進めていきたいと思います。  また、迅速かつ効果的な職業紹介を行うために、いろんな情報機器を活用して求人や求職情報の提供機能の強化や専門的な相談援助機能の強化等を図ってまいる所存でございますが、このことと派遣事業を認めていくということをうまく相互に補完し合うということがやはり必要なのではないかなと思います。  一%程度という現実からいきまして、必ずしも派遣事業雇用関係に大きなシェアを占めるというわけではありませんけれども、本来の派遣事業として求めてきた専門的な職種、あるいは専門的な技能を生かすことも含めてこの派遣事業に問題が起きないように、そういうことを労働省としても十分に配慮して対応してまいりたい、このように考えるわけであります。
  19. 今泉昭

    今泉昭君 正規従業員以外のいわゆる不定期労働者というんでしょうか、そういう人たちのことを考えてみますと、例えばこの派遣労働もその一つでございましょうし、そのほかに我が国の場合は有料職業紹介というのが相当大きなウエートも持っているはずであります。あわせまして、パートタイム労働者というものが大変存在をしているわけでございますが、この三つをどのような位置づけをし、どのような法の制度の中でとらえていくかということが今後大変重要になると思うんです。  派遣労働者の中身を見てみますと、これはアメリカもそうでございますが、日本も大体八割ぐらいが女子労働者だというふうに聞いております。女性労働者の場合は、どちらかといえば家計の中心になって家計を支えていくという方々よりも、少しでも収入をふやしたい、あるいはまた時間を有効に使いたい、これまで持っていた自分技術、技能を何らかの形で発揮をしたいという気持ちを持っている方々が、今言いました三つの正規従業員以外の形で働いておられるというように実は聞いているわけでございます。有料職業紹介の場合はちょっと違う一面があるとは思いますけれども派遣労働の場合とパートタイマーの場合はその本質からいって余り違いがないような気がするわけでございます。パートタイム労働派遣労働よりもはるかに人数が多いわけでございますが、パートタイム労働派遣労働を何で区分けしていかなければならないのかという疑念も一部あるわけでございますが、その点についてちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  20. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま先生、有料職業紹介、派遣、それからパート、三者について御指摘がございました。派遣労働者につきましては、確かに御指摘のように女性が多うございまして、アメリカで八割でございますが日本は九割でございます。  派遣労働者とパート労働者、これについてどう違うのかというようなことでございますが、現在の考え方は、どちらかというとパート労働者の方というのは比較的専門性が薄い仕事についている。今御指摘のようなことで、女性の方が多く働いているということでございます。パート労働者につきましては、いわゆるパート労働法、国会で御審議、成立させていただきました法律に基づく対策を講ずるということでございます。それから派遣労働者につきましては、現在御審議いただいております労働者派遣法の中で、専門性のあるものについて対象業務を限定して、そのかわり派遣期間は一年を超えて働けるというような形で対処していく、こういうことでございます。  それから、有料職業紹介は、これも御指摘のように、これちょっとやや観点が違うわけでございますが、いずれにしろこの有料職業紹介あるいは派遣の問題等につきまして今後どうなるかという点につきましては、有料職業紹介については現在中央職業安定審議会労使を含めた関係者で議論をしていただいているところでございますけれども、実はILOにおきましても九十六号条約、これは我が国も批准しているわけでございますが、このあり方をめぐりまして、最近の非常に激動する経済社会の中で、いろんな形での雇用あるいは希望も多様化している、そういう中でこの見直しが来年九七年にあることになっておりまして、現在準備作業が進んでおりますけれども、その見直しの観点として、この有料職業紹介のあり方、それから派遣労働あり方、あるいは職業情報の提供の問題、こんなものについてどう考えるかというような議論がこれから始まろうとしているところでございまして、その辺も見ながら私どもとしては今後の雇用政策あり方について考えていく必要があるのではないかというふうに考えておるところでございます。
  21. 今泉昭

    今泉昭君 ちょっとデータを、もしわかっていたらお聞かせ願いたいと思うのですが、派遣労働者として派遣されている方々が働いている職場、こういうのは中小零細企業派遣されている例が多いのでしょうか、大ざっぱでいいです、何%とかそんな必要はありません、それとも大企業でもって受け入れているような傾向が多いのでしょうか。それを、もしわかっていたらお聞きしたいと思います。
  22. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 労働者派遣先現状につきまして、申しわけありませんが、その規模別の調査をとっておらないものですから必ずしもその辺明らかでございませんけれども、ただ一般論として例等を考えますと、必ずしも派遣労働者中小零細企業に行っているかというと、むしろそうでなくて大企業に行っている例も相当ございまして、これは恐らくそういう意味では数からいくとむしろそちらの方が多いのではないかな、これは個人的な私の感じでございますが、というふうな感じでございます。
  23. 今泉昭

    今泉昭君 と申しますのは、実は派遣労働者が働いている先の企業実態、それから派遣をする際の派遣元の企業の基盤というものが、実は自分たちが安心して働くための大変重要なポイントとなると思うのであります。  実は、派遣労働者賃金というものと一般労働者賃金を比較してみますと、日本の場合は必ずしも、先ほど私が申し上げましたように、特殊な技能を持っている方々派遣労働者として派遣されている例が決して数としては多くないものですから、どちらかといえば限定のない、垣根のないような、一般労働者としても扱われかねないような業種に大変集中しているものですから、一般労働者と比較をしてみまして決して高い賃金じゃないんです。むしろもらっている名目賃金も低いと私は見ております。逆にアメリカなんかの実態を見てみますと、派遣労働者の方が正規従業員よりも高い賃金で実は働いているわけです。  こういう実態を見てみますと、これはいろいろ理由があると私は思うのですが、例えば契約をしている契約金に比べまして賃金実態を見てみますと、大体半分ぐらいです、契約金の半分ぐらいが派遣労働者賃金として手渡されている。残りの五〇%は派遣元におけるところのピンはねということではなくして、例えば教育訓練なりあるいは募集費用なり、いろんな意味での福利厚生費用なりに使われるのではないだろうかと思います。そういう意味で考えてみますと、派遣業者のマージンは実は微々たるもののような気がしてならないわけです。  そういうことを考えてみますと、派遣会社というものは、例えば大企業の完全子会社として自分のところの従業員をアウトプレースメントする、外に出していくということを前提としている企業は別問題といたしまして、独立の派遣業として営んでいる中小の派遣業者は大変企業実態からいって健全だとは言えないような状況にあるのではないかという心配をするわけであります。そういうことが実は派遣労働者賃金不払いになったり、福利厚生費の費用負担を削減してみたりというような形につながる危険性があると思うんですが、特に中小企業派遣業者の経営実績というものについて、調査などをされたことはございますか。
  24. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 私ども労働者派遣事業、これは許可制、届け出制ということで実施しているわけでございますが、許可の条件、これはきちんと押さえましてその許可条件に合っている場合に許可をする、あるいは許可条件に合わなくなればこれを解除すると、こういう基本的な考え方で対処しているところでございますが、個々の事業者の実態についてこれを個別に調査するというのはなかなか難しい問題でございますし、そこまでやるのかという問題もございまして、私どもとしてはそこまでは調査はいたしておりません。  ただ、それでマージンの問題につきましてどうかという点につきまして、この間御視察いただきましたところにつきましては、規模の大きいところ小さいところ、比較的しっかりしているところかと思いますけれども、ざっと七五%から八〇%というような賃金割合というような結果でございますが、ただ一方で、御指摘のように五〇%ぐらいのところもあるのではないか、その辺のコストについて企業としてどうかかるかとかいうところもいろいろ対象業務その他によって違うわけでございまして、その辺について個別に国が規制すべきかどうかという点になりますと、やはり基本的には事業活動を自由に実施していく、それについて国として労働者派遣事業法でどこまで規制するかと、こういう問題になろうかと思います。  その点につきましては、現在、御承知のように、労働条件につきましては労働基準法の十五条ですか、「労働条件の明示」で賃金労働時間を明示する、あるいは派遣法の三十四条で労働実態が複雑な面についての就業条件を明示すると、こういうことで労働者保護を図るという考え方で対処しているところでございます。
  25. 今泉昭

    今泉昭君 派遣労働者は実際の雇用主と、それから実際の職場の現場で働いて監督を受ける二重の、二元の管理を受けているような形になるわけでありまして、普通の労働者でありますと直接雇用主が労働管理をする、労務管理をするということで、法制上の直接的な関係というものが管理する側と管理される側ということで明確に出てくるわけですが、一番大きな問題がいろいろ出てくるのは、仕事をやっている場においていろんな問題が生じてくるわけでございまして、そういう面では派遣先の管理者との関係というものが大変あいまいになりがちな一面がありまして、法の監視というのも大変薄らぎがちであることはもう言うまでもないことでありまして、そういう点を考慮されて、いろんな規制を今回の法改正にも工夫をされたと思うわけであります。  しかしながら、日本の場合は雇用管理責任というものはあくまでも雇用主の方であります、派遣元の方にあります。ところが、先輩の立場にあるアメリカ派遣法を見てみますと、実は派遣先派遣元も同じような雇用管理責任というものを問われるような法体制になっているというふうに理解をしておりますし、裁判の実例におきましてもそれが明確に出てきているような状態でございます。日本も、そういう面では直接雇用元だけにそういう責任をかぶせるのではなくして、両方に持たせるような法体制を整えるべきではないだろうか、これがそこに働く労働者保護に結びつくのではないだろうかというふうに考えているわけでございますが、こういう点について所信をお聞かせ願いたいと思います。
  26. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま先生指摘の点でございます。確かにそういう問題がございます。  現在の我が国労働者派遣法につきましては、諸外国と違う点は、一方で対象業務専門性の高いものに限定して、したがってそういう意味では、労働条件は一般的に言いますと、そういう専門的な方ですからきちんと確保できる可能性が高いと、こういうものについて派遣法対象にして、かつ働く期間も長くすると、こういう観点で対処しているところでございます。そのかわり、労働派遣あり方としては、ただいま御指摘のように、三者の間については派遣元が雇用責任を負い、それから派遣先の方は使用責任だけで雇用責任はとらない、こういう法律体系で組み立てられているところでございます。  一般的に、いわゆる対象業務を限定しないあり方としましては、これについてはその事由をきっちり押さえまして、臨時的、繁忙期、正規の労働者では対応できない時期に派遣労働者対応すると。したがって、そういう事由で派遣期間も二週間とか一カ月とか短い期間に限定すると、こういうことでやる。かつ、雇用責任については二重に派遣元のみならず派遣先についても負わせる、こういう考え方で対処しているところでございます。  その辺についての法制のあり方が基本的に現状におきましては違っているところでございますが、したがって、今後このあり方論として労働者派遣事業をどう考えるかという点について検討する場合には、当然そういうところも議論の対象になる課題であろうというふうには考えているところでございます。
  27. 今泉昭

    今泉昭君 二つほど要望を申し上げておきたいと思いますが、先ほど私が申し上げましたように、当初の法を制定したときのねらいから外れまして、先ほど申し上げましたように、大変専門性の薄いところにニーズが高くて、大変多くの方々がそこに働いているような実態でございます。  それにもかかわらず、当初は専門性が高いということで、アメリカやドイツやフランスに比べて、派遣期間もある程度、一年程度はやむを得ないという、少し長くてもやむを得ないという考え方であったようでございますが、そういうような専門性のないところが多いにもかかわらず、実態派遣の長さを見てみますと、一年以上というのは大変我が国の場合は多いわけでございまして、本来ならば、そういう専門性のないところが多いならばもっと派遣期間が短いのがこれは自然の形だろうと思うわけでございますので、本来の目的に沿ったような実態が出てくるようにこれはやっぱり行政の指導というもの、あるいはまた法の不備の改正というものが必要ではないだろうか、こういうふうに思うわけでございまして、ぜひその点について今後とも御努力をお願いをしたいと思います。  それから第二点は、労働者の苦情の問題におきまして、現場に労働組合でもあれば労働組合が肩がわりして苦情を吸い上げて、いろんな形で積極的に解決をしてくれるんでしょう。しかしながら、派遣元にもほとんど労働組合がないような実態でございますし、我が国の場合は、派遣先においても、派遣先で働いている労働組合の中に実は入れてくれるというようなことはまずあり得ないわけであります。アメリカの場合はそういう例も実はあるわけでございますが、日本の場合は皆無でございましょう。そういうことになりますと、そこに働く労働者はみずからの力でもってこの問題を解決していかなきゃならないという気持ちになるわけでございます。  データなどを見てみますと、七〇%以上が苦情は解決をされているということの結果は出ているようでございますけれども実態は必ずしもそんなものではないだろうというふうに、下に埋もれている例がたくさんあるのではないだろうか、よっぽどひどいものだけが出てくるのではないかというふうに思うわけでございまして、この苦情処理機関というものの工夫を今後とも検討していただきたいと思います。この二点を、まず要望として出しておきたいと思います。  さて、時間も迫ってまいりましたので、介護派遣の問題あるいは育児休業に対する派遣の問題について少し触れたいと思います。  この問題については、むしろ女性の先生方の方から集中的にお聞きになると思いますので多くは避けたいと思いますが、育児休業制度というものの法制化がなされてこれからますます利用者がふえてくると思うわけでございますが、介護休業の問題は大変微妙な問題が多いものですから、なかなか普及というものが遅々として進まないのではないだろうかと思うわけであります。そういう意味で、我が国の場合は介護の問題はボランティアの問題と絡めて根本的に考え直す必要があるのではないかというのが私の持論でございます。と申すのは、たまたまボランティアといえば阪神・淡路大震災を契機にいたしまして大変クローズアップされておりまして、それだけが中心になって論議されがちでございますけれども、それとは別に、基本的に我が国はボランティア問題というものを考え直す時期に来ているのではないかと思うわけであります。  と申しますのは、我が国は大変幸いなことに徴兵制度というのがございません。これは大変喜ばしいことでございます。この伝統は、我々としては残していきたいし育てていきたいと思っているわけです。そういうことから、どちらかといえば国民の中に、一つの組織に入って、そして国のために何をするかあるいは団体のために何をするか、自治体のために何をするか、社会のために何をするかという意識の大変薄いのが私は心配なのでございます。これからますます高齢化社会になって、高齢者の数が大変ふえるとするならば、これは単に介護保険の問題であるとか、あるいはまた一部の人のボランティアにこれを任せておくということではいけないような、大変重要な危機的な状況我が国には将来やってくるのではないかということを心配しているわけです。  そこで、私自身といたしましては、徴兵制度にかわるという意味合いの、表現はおかしいんですけれども、私は教育の中にこれをカリキュラム化してしまって義務づける必要があるのではないか。例えば半年なら半年、ちょうど教員の免許を取るためには実地に出て実習をやってこなきゃならないわけでございまして、そういう形のものを一億国民がすべて経験をして世に出ていく、こういうシステムが必要なんじゃないかと思うのであります。そういう経験をしていなければ企業には就職できない、これは社会に出る前の義務なんだという形の、これは文部省の管轄でありますからここでは余り大きく言えませんけれども、そういう社会をつくっていく必要があるんじゃないか。  そのためには、幾らそういう教育を受けても、実は実際に社会に出てそれを組織的に動かす社会的なシステムができていなければ、これは全く何にもならないわけでありまして、ボランティアが勝手気ままにボランティア作業として介護の実地に出ていっても何の役にも立たない、ばらばらなことになるわけでございますから。  そういう意味で、介護という問題に絡めて根本的に介護問題を考え直してみる必要があるのではないだろうか、こういうふうに考えるわけであります。例えば、労働省の範囲で言うならば、これは文部省とは全然別個にそういう段階を経た者でなければ企業としては受け付けない、企業の中に就職できない、こういうようなシステムをつくるという考え方はいかがでしょうか。
  28. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) なかなか新しい、難しい課題についてお話しになられましたけれども、今後二十一世紀に向かって高齢化が急速に進む中で介護の問題が非常に大きな課題であるということはもう御指摘のとおりかと思います。これについて教育という観点からどのように取り組むか、これは文部省所管でございますし先生からの御意見はそういうことにつきまして文部省の方にも伝えたいと思っておりますが、どう考えるかということでございます。  それから、ボランティアとしてこの問題についてどういうふうに取り組むかという点につきましても、これは課題としては非常に大きな課題かと思いますが、私どもがなかなか率直にお答え申し上げることは困難でございますが、ただ一点、後ほどまた御審議いただきます高齢者雇用安定法の中でシルバー人材制度という仕組みがございますが、これはボランティアではございません。一定の収入を得て働く仕組みで、これはむしろ高齢者間の相互扶助というようなことになろうかと思いますが、シルバー人材センターのメンバーが介護についての補助的な業務、一定の教育訓練等もしましてやるというような点については、全国的に今後の高齢社会に向かって非常に重要課題ということで取り組みを始め、そういう実態もふえてきている、そういうところはございます。  この介護につきましてもう一つの御意見の、企業の就職問題という観点から、企業がそういう一定の経験を積まなければ採用しない、できないようにしろという点でございますが、これにつきましても法制的に考えるとすれば、やはり非常に大きな議論のあるところでございまして、例えば先進国におきましてもそういう規制があるかどうか、あるいは基本的に労働契約自由の原則の中でどこまでそういう規制ができるかどうか、そういう問題点が内在するわけでございまして、なかなか率直に申し上げまして簡単にそういう方向に向かって検討できるかどうかという点についてはお答えが難しいかと思いますが、一応の研究課題として研究はしてみたいと思います。
  29. 今泉昭

    今泉昭君 時間が参りましたので質問はやめますが、働く者にとりまして労働行政というのは実は唯一の力強い国の機関なわけでございまして、いろいろ民営化であるとか行政改革であるとか規制緩和だとかという時代の大きな流れの中で、大変苦しい立場に立たされることが多いとは思いますけれども、あくまでもひとつ働く人たちの立場に立ってこれから力強い労働行政を志向してくださることを心からお願いいたしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  30. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それでは、前回に引き続きまして質問を続けさせていただきます。  先回、平成三年度の行政監察結果のフォローアップについてお尋ねをいたしました。その中で、労働基準監督署がいわゆる監督指導をしていて、是正報告の提出の徹底を図るよう改善措置を図るというような回答をしておられるわけですが、その結果についてお尋ねをいたします。是正報告の数、それから違反の類別などについてお尋ねをいたします。
  31. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) 先生指摘平成三年の総務庁の行政監察結果に基づきまして、先ほど御指摘されましたような回答を私どもいたしたわけでございます。その後、具体的には平成四年二月に全国監督課長会議を開催いたしましたけれども、その場におきまして是正報告の提出の徹底を図るように改めまして指示をいたしております。さらに、その後に監督課長会議、ブロックでやったりしたのも含めますと相当の数やっておりますし、また全国の労働基準局また監督署に対しまして本省から監察などもやっておりますけれども、その機会を通じましてやはり同じように是正報告の提出の徹底というのを図ってきているわけでございます。  具体的にどの程度提出をされているか、また違反がどの程度かというお尋ねでございますけれども、直近の数字を御紹介させていただきますと、平成六年におきまして労働基準監督署が派遣事業主に対しまして実施した定期監督の件数は二百三件でございました。そのうち、労働基準法に何らかの形で違反をしておった事業所数が九十事業所、率にいたしまして四四・三%という数字でございました。  具体的な違反事項でございますけれども、例えば労働者を雇い入れる際には賃金については文書によってその労働条件を明示しなければいけないということに法律上なっておりますけれども、その明示がなされていないとか、それから法定労働時間を超えて時間外労働労働者にさせる場合には、三十六条に基づきます協定が必要なわけでございます。協定なしに時間外労働をやらせたというようなケースもございました。なお、最初に申し上げるべきだったかもしれませんけれども、これは派遣業に対します定期監督でございますが、いわば内勤の労働者派遣労働者ではなくて内勤の労働者も含めました違反条項でございます。  なお、それ以外にも例えば就業規則の作成、届け出が義務づけられているにもかかわらずそういったことがやられていないとか、また事業場規模によりますけれども、衛生管理者の選任が義務づけられているにもかかわらず選任されていなかったといったようなものが違反事項として把握をいたしております。  また、一般事業場に定期監督というのも実施いたしているわけでございますけれども、その際派遣労働者に関する違反が認められましたものは、労働安全衛生法令に関しまして二十件、労働基準法関係が六件というふうになっております。違反の内容については、先ほど申し上げましたこととおおむねダブっておりますので割愛をさせていただきますが、そういうような件数でございます。  なお、違反をこういうことで指摘をいたしたわけでございますけれども、違反の内容によりまして再度監督し是正を確認しているような場合とか、また是正報告を求めるということで確認をしているとか、また就業規則の作成や届け出がなされていないというようなケースにつきましては、労働基準監督署に就業規則が届け出られたといったようなことで確認をするといったような形で、何らかの形で確認をしてきているというような状況でございます。
  32. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 改善措置の状況によりますと、労働者派遣事業指導官というものを増設しておられるわけですが、これと監督官との提携というか、仕事はどのような形になっているのでしょうか。
  33. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 提携の御指摘でございますが、私どもの行政につきましてはこれは労働者派遣事業法に基づきます対応、これを適切にしていくと、こういう観点から対処しているところでございますし、労働基準監督官につきましては、これは御承知のように最低労働基準を遵守していただくという観点から監督、指導を行っていると、こういうことでございます。しかし、この辺につきまして行政を進める上で必要があれば提携をどうするか、こういうことも考えなければならないというふうに考えております。
  34. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それでは、その派遣労働者雇用保険、社会保険への加入の促進をする具体的な内容はどのようにとられようとしているのでしょうか。とりわけ、事業主負担が派遣労働者の自己負担になっているということの苦情がかなりあると思うんですが、その点についての指導状況はいかがでございましょうか。
  35. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 派遣労働者労働保険等への加入の促進でございますが、この点につきましては、昨年末の中央職業安定審議会の建議におきましても、「派遣労働者に対する労働社会保険の適用の促進を図るため、関係者制度の趣旨、内容に対する理解を促進するための措置」として、関係者に対します指導、周知を行うことが適当であると、こういう御指摘をいただいているところでございます。  労働省といたしましては、建議を踏まえまして派遣労働者に対します労働社会保険の適用の促進を図るための具体的な措置として、今回審議をお願いしております法律の中へ盛り込みました労働大臣が定めて公表する派遣事業主及び派遣先が講ずべき措置に関します指針及び派遣労働者に対するパンフレットに制度の趣旨、内容等必要な事項を記載すること等によりましてこの指導、周知を行うことを予定いたしているところでございます。  それから、保険料の負担の問題につきまして、これは基本的には制度の枠組みとして雇用保険につきましては料率が決まっておりまして、労使で負担していただくと、こういうものでございます。
  36. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 事業主負担を、本来ならば事業主が負担すべきものを自己負担を要求するという派遣業者があるということを現場労働者の声として耳にいたしますので、よろしく指導の徹底を図っていただきたいと思っております。  次に、派遣労働者からのさまざまな苦情が出ていると思いますが、労働省としてはその苦情の発生状況をどのように把握しておられるでしょうか、お尋ねをいたします。
  37. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 派遣労働者からの苦情の発生状況でございますが、これにつきましては、例年七月に実施しております労働者派遣事業適正運営推進月間におきまして全国の公共職業安定所等に寄せられました労働者派遣事業にかかわる苦情、相談件数、これを見ますと、平成六年度におきまして二百十五件、平成七年度におきまして二百六十九件に上っているところでございます。  その内容といたしましては、適用対象業務以外の業務に関するもの、労働者派遣契約の中途解除を含む解雇に関するもの、賃金に関するもの、就業条件の明示に関するもの等が比較的多く見られる状況でございます。
  38. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 その苦情の処理については、どのようにされているのですか。とりわけ労基法違反、その他の状況が出た場合の措置についてもお尋ねいたします。
  39. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 派遣労働者からの苦情につきましては、これは公共職業安定所の窓口において対応しているところでございますが、調査いたしました件のほとんどのケースにつきましては、派遣元あるいは派遣先責任者を中心派遣先派遣事業主との密接な連携のもとでおおむね適切に処理されているものというふうに承知いたしているところでございます。  私どもの窓口で、仮に労働基準法に関するようなものについて把握いたしました場合には、これはやはり労働基準監督署と連携をとって、そちらで対応していただくということになろうかと思っております。
  40. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 労働者派遣に関する労働基準法違反で、いわゆる命令とか勧告とかあるいは送致などされた事例はあるのでしょうか。
  41. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) 先ほど私が申し上げさせていただきました数字は、具体的にそのうち何件に是正勧告をしたかどうかというのはちょっとないんでございますけれども、違反が非常に重篤というと変ですけれども、そういう重要な事項について違反がある場合にはおおむね是正勧告をいたしているわけでございます。  なお、手元に送致の件数の数字を持っておりませんので、恐縮でございますがその件についてはここでお答えすることはちょっとできないので、申しわけございません。
  42. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それじゃ後でお知らせいただければと思います。  今回、苦情処理に関する事項あるいは損害賠償の措置等について派遣契約の内容に記載されるわけですが、その記載事項は派遣元あるいは派遣先の管理台帳の記載事項とすることとされておりますが、それぞれ今回の改正を含めて具体的な内容はどのようになるのでしょうか。あるいはまた、どのような効果が出るというふうに把握しておられるのでしょうか。
  43. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 労働者派遣契約に記載すべき内容といたしましては、派遣事業主、派遣先におきます苦情相談の窓口あるいは苦情処理のプロセス等が考えられるところでございます。また、派遣元管理台帳及び派遣先管理台帳に記載すべき内容といたしましては、苦情の申し出のあった年月日あるいは苦情の内容及び苦情の処理状況等が考えられるところでございます。この点につきましては、具体的には法律が成立いたしますれば、その後の実施する段階で関係審議会において審議いただきまして対処してまいりたいと思います。  これらの内容につきましては、改正後の法第四十七条の二の規定に基づき公表いたします指針にも盛り込むことを予定いたしておりまして、指針を派遣事業主及び派遣先に周知徹底するとともに、指針に基づいて指導、助言することによりまして、派遣事業主等による苦情処理が適切に行われるよう努めてまいりたいというふうに考えております。
  44. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうした記載された条項その他を、派遣労働者自身に周知徹底させる必要があると思いますが、それの方途についてはどのようにお考えでしょうか。
  45. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 私どもといたしましては、まずこの法律を施行する段階でできるだけ周知、広報に努めますとともに、私どもの出先機関等にパンフレット等を配付いたしまして、これが関係方面にできるだけ多く渡るように努力をいたしたいと考えております。
  46. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 派遣労働者専門性確保するということが必要で、派遣労働者に対する教育訓練ということが必要だと思いますが、その実施状況はどのようになっているでしょうか。
  47. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 御指摘のように、派遣労働者に関しましてはこれは専門性を高めるという観点から教育訓練が実施されることが重要でございますが、この実施状況につきましては、私ども平成七年の労働者派遣事業実態調査によりますと、一般労働者派遣事業におきます教育訓練の受講状況につきましては、新規採用登録時に受けたものが常用で五一・四%、登録型で四〇・二%、派遣直前に受けたものが常用で四四・六%、登録型で四〇・三%、派遣後に受けたものが常用で五一・四%、登録型で三一・六%でございます。特定労働者派遣事業におきます教育訓練の受講状況につきましては、新規採用時に受けたものが八〇・六%、派遣直前に受けたものが三八・五%、派遣後に受けたものが五一・八%というような形になっております。  教育訓練の方法といたしましては、派遣先でのOJT、派遣事業所内のOJT、派遣事業所内でのOFF−JT、こういうものが比較的多くなっているところでございます。
  48. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 昨年の十一月にスタートしたと伝えられておりますビジネスインターン制度というのがございます。それは、説明会の後、キャリアアップ研修を三ないし六カ月間行って、そして一定程度スキルを身につけた後、OJT研修という名のもとに一年間その派遣先に出すと。スキルを生かすという名目ですが、給与支給がほぼ二十万、社会保険の加入制度も福利厚生制度もあって、そのビジネスインターン制度の推薦文句によりますと、「OJT研修 人材派遣会社メリットを活かし、派遣システムを利用して様々な企業での実地研修を行います。」という、そういう募集で九六年三月で約八十名が参加したという事例があると聞いております。  これは労働者派遣法によりますと、専門的な性格を有しまたは特別の雇用管理を必要とする業務ということでいわば規制がかかっておりまして、政令で定める業務に限定をされ、これ以外の業務については労働者派遣事業を行うことは罰則つきで禁止されるというのが法の趣旨だと思いますが、このOJT研修制度、いわゆるビジネスインターン制度というものを認めますと、これは低賃金を固定化して他に普及のおそれがあるばかりではなく、この適用対象業務の拡大ということになって法的に問題ではないかというふうに思いますが、その点についてはいかがでしょうか。
  49. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 御指摘の件につきましては、ある会社が昨年から行っているものを指すものというふうに考えますが、これにつきましては、御承知のような非常に厳しい雇用情勢の中でなかなか就職の決まらない大学四年生あるいは未就職卒業者、こういう方を中心に語学やあるいはOA実務、秘書業務、こういうものについて即戦力になるためのキャリアアップ研修を半年間実施した後、本人が希望すれば同社の労働者派遣システムを利用して働く実務研修、実地研修制度、この研修を一年間行う、こういうものであろうかと思います。  これの業務につきましては、ただいま申し上げましたように十六業務の中に指定されております範囲内に含まれる業務についての実地研修、こういうことでございまして、この制度につきましては労働者派遣法上の観点から見ますと、これについての問題は特段にないのではないかというふうに考えております。ただし、その受講生等から具体的な苦情等があれば、当然これは私ども行政として対応しなければならないというふうに考えているところでございます。
  50. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 OJT研修というのは雇用機会均等法のいわば平等処遇を果たすところにも入っておりませんし、それから在留資格では特別に研修という枠組みがある以上、このOJT研修がいわゆる十六業種に限定されるということについては何らかの指導監督というものが必要ではないかと思います。そうしますと、いわゆる中途解除の問題についてはどのようにお考えでしょうか。
  51. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 実地研修、OJTということで一年間行われておりまして、これについては現実に給与が支払われているということでございますので、そういう観点でいきますと、今回法案で改正の御審議をいただいております中途解除の問題、これに該当するというふうに考えております。
  52. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 給料がその職種にかかわらず何か二十万というふうに仕切りがされていてさまざまな研修をするということですが、この点については御見解はいかがでししょうか。
  53. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 具体的にその給料がどんな状況かというのを把握しているわけでございませんが、給料につきましてはこれは一定の考え方で決められるというものであろうかと思います。  私ども行政の立場からいきますと、労働者派遣法に基づいてきちんと対応しているかどうかという観点からいきますと、やはりこの対象業務の範囲内、これを外れたものは当然違法ということになりますからそれはできない、こういうことできちんと押さえなければならないのではないかというふうに考えております。
  54. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 この制度が、いわば適用対象業務外への派遣という形で拡大しないように十分な監督をお願いしたいと思います。  次は、ガルーダ・インドネシア航空の件について東京都地労委の命令が出されたわけですが、それについてはどのような御見解なのでしょうか。とりわけこの問題では、通訳として採用をしてスチュワーデスの業務をさせたということで、通訳なら深夜乗るわけですから労働基準法違反になりますし、スチュワーデスなら労働者派遣法の違反になるということで直接雇用を求めたケースですが、それが認められなかったということについては法的にいろいろな論点があると思います。ただ、派遣労働者の立場に立ちますと、こういう状況の場合はなすすべもないというのが状況でありますが、そういった派遣労働者保護の視点から、これはどのような対応が図られてしかるべきだというふうにお考えでしょうか。
  55. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 御指摘のガルーダ航空事件につきましては、東京都地労委におきまして一定の命令が出たわけでございますけれども、これは現在中央労働委員会に係属中でございますので、政府といたしましては、私どもといたしましてのコメントは差し控えさせていただきたいと思います。  違法な労働者派遣事業に対しまして、労働省といたしましては、これは派遣労働者保護の徹底を図るという観点から厳正に対処していかなければならないということでございますが、ただあわせまして、その際に派遣労働者雇用の安定にも十分留意する必要があるということでございまして、個々の事案の内容に応じて適切に対応していかなければならないというふうに考えているところでございます。
  56. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 派遣元、派遣先、あるいは労働組合などの団体交渉応諾義務ということもさることながら、むしろそういう処理の問題として、例えば苦情処理の機関に労働組合などを参加させるというような観点での対応が私はいいのではないかというふうに思いますが、その点についてはどのように考えたらよろしいのでしょうか。
  57. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 今回、法案でお願いいたしております中で、苦情処理に関する措置等も盛り込んでいるところでございますけれども、これについてどういうふうな形で対処するかという点についてはいろんな御意見もあろうかと思います。  ただ一方で、先ほども指摘ございましたけれども労働組合自体が派遣労働者労働組合に参加させないという例も多数ございますし、あるいは労働組合がないのが一般的であると、こんなこともございます。現状におきましていろんな面での問題点があるわけでございまして、なかなか画一的に考えることが難しいのではないかというふうに考えているところでございます。
  58. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 労働者派遣事業に対します賃金の支払の確保等に関する法律の適用の考え方及び適用の状況についてお尋ねをいたします。
  59. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) 賃金の支払の確保等に関する法律という法律がございますが、これによります未払い賃金の立てかえ払い事業先生御承知のとおりでございますが、企業が倒産したために賃金が支払われないまま退職した労働者に対しまして、その未払い賃金の一定範囲について国が事業主にかわって支払うという、こういう制度でございます。御指摘労働者派遣事業につきましても、他の事業と同様に派遣元の企業が倒産した場合、賃金が支払われないまま退職した労働者に対しましては、この賃金の支払の確保等に関する法律に基づきまして一定の範囲で未払い賃金の立てかえ払いを行っているわけでございます。つまり、他の産業と同様に適用されるということでございます。  この適用状況というのを、具体的にはどういう意味で御質問されたかわからない面もございますけれども、未払い賃金立てかえ払いを実際に行った件数ということでお答えさせていただきますと、最新時点平成六年度、全産業でございますけれども、千八十四の企業に対して発生いたしました未払い賃金について立てかえ払いを行っておりますが、支給されました労働者数が一万八千七百四十七人、金額にいたしまして約七十億という額に上っております。  なお、これは当然この中に労働者派遣業も含まれているというふうに私ども現場から報告を受けておりまして、具体的に何件で労働者数何人というところまでは内訳をとっておりませんので、まことに申しわけございませんが、適用されておるということだけで御勘弁いただきたいと思います。いずれにいたしましても、この未払い賃金立てかえ払い制度は、労働者にとっては倒産した場合の賃金確保されるという意味で非常に重要な手段でございますので、今後ともこの運営には私ども万全を期してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  60. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 育児休業等取得者の代替要員に係る特例が今回の法改正で行われるわけですが、建設業、港湾運送業あるいは政令で定める業務として警備業が除外されておりますが、その理由はどこにあるのでしょうか。
  61. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) この点につきましては、労働者派遣法制定時にさまざまな議論もあったわけでございますけれども考え方の整理といたしましては、港湾運送業務につきましては、これは業務の波動性等にかんがみまして港湾労働法という別の法律がございまして、そこで特別の雇用調整制度が設けられておりまして、それが理由でございます。建設業務につきましては、これは一般的に重層的な下請関係のもとに業務処理が行われている中で、これにつきましても別の法律、建設労働者雇用改善法という法律によりまして雇用関係の明確化等を図るための措置が講じられている、こういうことから適用除外業務といたしたところでございます。  このほかに、当該業務の適正な実施を確保するためには労働者派遣事業として行わせることが不適当と認められる業務について政令で除外することになっておりますが、そういうことで現在警備業務が定められているということでございます。  今回の特例におきましても、中央職業安定審議会の建議を踏まえまして、これら労働者派遣事業という需給調整システムを導入すること自体不適当であるというふうに考えられている業務につきましては、現行の整理の考え方にならいまして適用対象業務から除外するというふうな考え方をとっているところでございます。
  62. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 育児休業取得者の代替要員に関する特例の適正な運用を確保して乱用を防止するために、いかなる措置を講じようとされているのでしょうか。
  63. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 育児休業等取得者の代替要員に係る特例につきましては、育児休業等取得者の代替要員の確保という事由に着目して設けられた制度でございまして、その事由により労働者派遣が行われるように担保することが必要であると考えているところでございます。  このため、育児休業等取得者が現におり、その人の業務について労働者派遣が行われることを明らかにするため、労働者派遣契約及び派遣元・派遣先管理台帳に育児休業等取得者の氏名、休業取得者が従事していた業務及び休業取得期間を記載させることといたしまして、派遣事業主及び派遣先はもとより、指導、監督を行う行政機関の職員におきましても、特例による派遣が適正な事由により行われているかどうかを確認できるような仕組みを考えているところでございます。  育児休業等取得者の代替要員に係ります特例の適正な運営確保し乱用を防止するために、派遣事業主及び派遣先により、これらの措置が適切に行われるよう私どもとしては指導、監督をしてまいりたいというふうに考えております。
  64. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 例えば、一年間というふうに期間が限られるわけですけれども労使協定によって一年の育児休業期間を例えば三年とか二年に延ばしているところがあると思うんですが、その場合の一年を超える部分の代替要員の確保については、この特例との関係でどのように考えたらよろしいのでしょうか。あるいはまた、当初一年ということで休業を予定していた労働者が六カ月で復職をしたいといった場合には、派遣労働者に対する取り扱いというのはどのように考えたらよろしいのでしょうか。
  65. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 育児休業等取得者が出ました場合に、すぐに代替要員を自社内で確保したり、あるいは新たに雇用することが困難な場合、これが想定されることから今回の特例措置を講ずることという考え方をとっているところでございまして、休業期間が一年にわたるようなケースについては、派遣先事業主はこの特例を活用しながらその期間を利用して、自社内の例えば人事ローテーションによって代替要員を確保するとか、あるいは代替要員を募集することによりましてパート労働者等の代替要員を確保すること、そういうことができるのではないかというふうに考えているところでございます。  それから、もう一点の御指摘の当初一年の育児等休業を予定しておった者が六カ月で戻るという場合、こういうケースにつきましては、派遣労働者には何ら原因がないにもかかわらず就業機会が失われる、こういうことになるわけでございます。そういう意味から、雇用主としての派遣事業主が当該派遣労働者の新たな派遣就業の機会を確保する等、その雇用の安定を図るべきものということでございまして、そういう考え方で指導をしてまいりたいというふうに考えております。
  66. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、育児休業、介護休業取得者について、休業を取得したことに伴う不利益な取り扱いの禁止、あるいは原職復帰の保証を制度化するよう検討いたしませんと、この特例との関係でその権利が形骸化していくという危険性があると考えられますが、この点の御見解はいかがでしょうか。
  67. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 育児休業、介護休業を取得したことに伴う不利益取り扱いの禁止につきましては、休業の申し出、取得を理由とする解雇の禁止及び年次有給休暇の取得要件に係る出勤率の算定に当たっては、休業を出勤とみなす取り扱いについては育児・介護の法律の方に規定をしておるところでございます。  しかし、それ以外の事項につきましては、いかなる行為が不利益な取り扱いとして禁止することが適当であるかどうかというコンセンサスが得られていないことにかんがみまして、法律上は明文化せず、育児・介護休業法に基づき労働大臣が定めました事業主が講ずべき措置に関する指針の中に、育児・介護休業中における待遇や、休業における賃金、配置等の労働条件に関する事項が、休業を取得したことを理由として当該労働者を不利益に取り扱うものではあってはならないということを盛り込んでおります。  そしてまた、休業後の原職復帰につきましても法律で一律に禁止することは困難でございますので、指針の中におきまして、育児休業及び介護休業後におきましては、原則として原職または原職相当職に復帰させることが多く行われているものであるということに配慮をしてほしいということを盛り込んでいるところでございます。  労働省といたしましては、この指針をつくって、昨年以来その指針の周知、啓発に努めておりますが、今後とも一生懸命やっていきたいというふうに思っておるところでございます。
  68. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 病院における介護の業務を適用対象業務に追加するに当たりましては、どのような事項に配慮することが必要と考えられるでしょうか。とりわけ医療福祉事業専門性確保及びチームワークの養成というものは重大だと考えられます。  追加することに向けて、労働省と厚生省の関係省庁との連携の状況、あるいは現在議論されているとすれば、その論点について双方の省庁にお尋ねをしたいと思います。
  69. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 病院における介護の業務につきまして、これを労働者派遣事業の適用対象業務に追加するということにつきましては、常勤の看護補助者の雇用労働条件に悪影響はないか、医師、看護婦等とのチームワークで行われております病院での介護業務になじむか、質の高い介護労働者確保できるかというような問題点が考えられるかと思います。  しかしながら、一方で派遣労働者による介護につきましては、派遣元が教育訓練を行うこと等によりまして、専門的知識を有する介護労働者確保し、付き添い解消後の病院等におきます夜間、繁忙時間帯におきます介護などの、常勤の看護補助者のみでは対応できないような場合の介護ニーズ対応し、医師、看護婦等、派遣先の指揮命令に従って行われることが期待されるものでございまして、そのような懸念は少ないのではないかということから、中央職業安定審議会におきましては、適用対象業務として追加することが適当であるというふうにされたと考えておるところでございます。  今後、病院における介護の業務労働者派遣事業の適用対象業務に追加するに当たりましては、これは政令で指定するわけでございますから、このような点について関係方面の十分な理解を得つつ進めていくことが重要であると考えておりまして、厚生省等の関係省庁とも十分な意思疎通を図りながら進めてまいりたいと思っております。
  70. 石本宏昭

    説明員(石本宏昭君) 医療につきましては、これに係る業務が患者の生命、身体に直接影響するものであること、また医師、看護職員、看護補助者等から成るチームにより一体として提供されるべきサービスであることという特徴がございます。このため、看護補助者でありましても、その業務を行うに当たりましては、医療関係従事者との間でしっかりとした信頼関係が必要でございまして、仮に短期的、断続的な就労を前提とする看護補助者の派遣形態を認めた場合、良質な医療サービスの確保に支障が生ずるおそれがあるということも想定されまして、慎重な対応が必要であるというふうに考えております。  本件につきましては、現場の関係者の意見を十分踏まえ、良質で効率的な医療の確保という観点から対応してまいりたいと考えております。
  71. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それでは、最後に労働大臣お尋ねをいたします。  労働者派遣事業のネガティブリスト化は、労働者保護観点から問題が多いと考えられます。昨年末に出された行政改革委員会の意見がネガティブリスト化を打ち出しておりますが、この問題に対する労働大臣の御見解はいかがでしょうか。  さらに、育児休業取得者の代替要員に係る特例について、派遣労働者保護観点から適正な運用を図ることが重要だと思いますが、あわせて改正後の法律の適正な運用ともども労働大臣の御決意を伺いたいと思います。
  72. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生の御指摘のネガティブリスト化の関係でございますが、この労働者派遣事業対象業務の拡大につきましては、労働力需給調整機能が多様化されるという、そういうメリットがある一方で、御指摘のように労働者保護に欠けるおそれの拡大、あるいは派遣元における常用雇用労働者等の代替を促進するおそれの拡大などのデメリットもあると実は認識をしているところであります。  このネガティブリスト方式を採用している諸外国におきましても、派遣の理由を限定したり、あるいは派遣期間を厳格に制限し、その期間を超えて派遣した場合には罰則を科すとか、あるいは派遣元に雇用されたとみなすなど、労働者保護のため強力な措置を講じているところが非常に多うございます。昨年末に出されましたこの行政改革委員会の意見も、ネガティブリスト化とあわせて派遣労働者保護のための措置を講ずる必要性についても言及をされているところであります。したがって、この適用対象業務の拡大につきましては、そのメリットデメリットを十分勘案しながら、雇用問題の当事者である労使を含めた関係者による検討を踏まえて適切に対処してまいりたい、このように考えているところであります。  また、育児休業取得者の代替要員に係る問題について今御指摘がございました。御指摘のように、この育児休業等の取得者の代替要員に係る特例に関しましては、派遣労働者保護に配慮しながら適正な運用を図っていくことが特に重要であるというふうに認識をいたしております。このために、派遣期間を最長一年間に限定する、そして休業取得者の業務代替以外の派遣が生じないように、労働者派遣契約に休業取得者の氏名等を記載することの措置を講ずることにいたしたわけでございます。これらの措置が確実に履行されるように指導、監督を徹底いたしまして、この特例制度が本来の目的に沿って適切に活用されてまいりますように努めてまいりたいと考えているところであります。  また、この派遣労働者保護観点から、労働者派遣法目的にもありますように、労働者派遣事業の適正な運営派遣労働者の適正な派遣就業確保されることによりまして、派遣労働者雇用安定等、その福祉の増進が図られるものというふうに認識をいたしております。したがって、御指摘の点については、まさに同感であります。  このため、今回の法改正におきまして派遣先の適正化のための措置を設ける等、労働者派遣事業の適正な運営確保するための措置を重視することを中心に置いているわけでありまして、苦情処理に関する措置も、最前御質問がございましたけれども、それを充実いたしまして派遣労働者の適正な派遣就業確保するようにしてまいりたい。  そして、本法案の成立後におきましても、改正後の法律の適正な運用を図るようにより徹底した周知、指導等を行って、先生の御指摘のような問題が起きてこないように健全な運営を図ってまいりたいと考えているところであります。
  73. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 ありがとうございました。
  74. 足立良平

    委員長足立良平君) 本案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後零時四十分まで休憩いたします。    午前十一時四十二分休憩      —————・—————    午後零時四十分開会
  75. 足立良平

    委員長足立良平君) ただいまから労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  76. 吉川春子

    ○吉川春子君 労働者派遣事業は、本来禁止されている労働者供給事業を一部例外的に解禁をしたものですが、学者の指摘でも労働者を文字どおり商品として仲介をして、労働者賃金に寄生することで利益を得る間接雇用、すなわち封建的、前近代的な慣行を禁止したのが職安法の目的だとされていますし、もしこの派遣事業を解禁ということであるならば、単に労働者賃金に寄生するような事業主を厳しく規制しなくてはならないはずだと思います。  労働省の調査でも、例えば一般派遣でビル清掃は、派遣料金は一万一千六百三十八円、そのうち派遣労働者賃金は五千五百六十二円です。派遣料金の四七・八%にすぎないわけです。これは建築物清掃全体の平均値なので、個々にはもっと搾取率というか中間マージンをたくさん取っているということです。前回、局長にも答弁していただきましたけれども、半分程度しか派遣料金のうちから賃金として払われないという実態があるわけです。  同時に、労働者派遣事業というのは限りなく有料職業紹介に近いわけです。有料職業紹介の手数料は一〇%に抑えられています。それに比べても非常にマージンが大きいわけですけれども、日弁連も強く御意見をおっしゃっていますけれども派遣元の中間搾取を防止するために派遣料率を法定せよと、こういう御提案があるわけですけれども大臣どうお考えですか。
  77. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生が御指摘のように、労働者派遣することによってマージンを取る、これが実態問題としていわゆる必要以上に経費を見るという、あるいは一定の派遣事業元が一定の企業として営利を行う目的を持っているわけでありますから、一定の営利のためのマージンを取る。これは、そのパーセントはどの程度がいいかということはさておきまして、必要以上にマージンを取る、いわゆる搾取をするということは基本的にあってはならないことだと、私はこう思うわけであります。  その前提で申し上げるのでありますが、この派遣事業におきます派遣料金というのは派遣事業主と派遣先の間で労働者派遣というサービスに係る対価として決められるわけでありますから、その決定されたものを派遣労働者に対して、このような条件であなた行ってもらいますよと、こういうことになっていくと思うんですね、手続上は。  したがって、直接その派遣料金は我々が法律で決めるという筋合いのものではないと思うのでありますが、また一方、派遣料金の派遣労働者に対する開示という問題につきましても、基本的には雇用主である派遣事業主とそこに雇用されている派遣労働者、その労使間で話し合って決めることが基本であろうと実は認識をするわけであります。  片方でそういう不当な搾取もあってはいけないわけでありますし、きちっとした内容を労働者自身認識をしなくてはいけないわけでありますから、そのために法的措置といたしましては、労働基準法の第十五条で「労働条件の明示」が義務づけられているわけであります。また、この労働者派遣法の第三十四条の規定では「就業条件の明示」といった措置が講じられているわけでありまして、これらによりまして派遣労働者保護を十分に図るように、担保できるように指導も徹底してまいりたい、このように思うわけであります。
  78. 吉川春子

    ○吉川春子君 野放しにしておいてはいけないんだと、こういう大臣のお話がありました。  今言われたように、三者で決めるということになりますと、やはり派遣料金の明示、労働者本人にこれは知らせるべきではないかと思いますが、この点はいかがですか。
  79. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 最前も申し上げましたように、労働基準法の第十五条では、「労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」と明確にうたっているわけであります。「この場合において、賃金に関する事項については、命令で定める方法により明示しなければならない。」、これは開示を義務づけているわけでありまして、問題になりましたこの労働者派遣法を制定する際に大変な議論がいろいろございました。その議論を通しまして、この「就業条件の明示」ということが定められたわけでありますが、その第三十四条では、「あらかじめ、当該労働者派遣に係る派遣労働者に対し、労働省令で定めるところにより、その旨及び第二十六条第一項各号に掲げる事項その他労働省令で定める事項であって」ということをきちっとうたいまして、「当該派遣労働者に係るものを明示しなければならない。」というふうにここで再度くくっているわけでありまして、この労働基準法と派遣法の第三十四条、これをきちっと実行させるといいますか、当然のことでありますが、そのことをやることによって、今先生の御指摘のような問題が起こらないようにでき得るし、またしなくてはいけない、このように考えるわけであります。
  80. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうしますと、不当な中間マージンが起きないように、そしてまた労働者派遣料金ですね、給料じゃなくて派遣料金も含めて明示するということが望ましいと、こういう方向できちんと指導していただけるということですね。大臣もう一度、お願いいたします。
  81. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 最前も御答弁申し上げましたけれども、もともとこの派遣料金は派遣元の事業主と派遣先の間で対価として決めるわけでありますから、その決めたものを実際派遣労働者に対してどのように開示するかということは、その派遣元における労使の間できちっと話し合いを行って決めてもらう、これが私は基本だと思うのであります。  そして、今申し上げたように、労働基準法あるいは労働者派遣法、こういうものによって派遣労働者保護を図る立場から、「就業条件の明示」という中で具体的に使用者の側が労働者に内容についてはその条件として明示することが定められているわけでありますから、これをきちっとやってもらうことによって問題が起きないようにできるのではないか、このように思うわけであります。
  82. 吉川春子

    ○吉川春子君 当該労働者に彼の派遣料金を知らせると、そしてその不当な中間マージンが取られないような、そういう点で十分なる労働省の指導を要求いたします。  それから、給料の未払いの問題なんですけれども派遣先派遣料を払っているけれども派遣元が倒産して給料が未払いになった例というのを、私一度この委員会で取り上げたことがあるんですけれども、そのときに局長派遣法のもとで検討してみるというふうに答弁されているんですが、それが今度は盛り込まれないんですが、端的に伺いますけれども派遣労働者を守るために賃金確保法の中に派遣という枠を特別に定めていただいて、そしてこういう場合の給料の保障ということをぜひやっていただきたいと思うんです。  というのは、賃確法の中には規模などが決められていますが、登録型の業者の場合労働者の数が多いんですね。これでもって賃金確保法の対象外になってしまうという例もありますので、さっき同僚委員の答弁に対して、この中でどれぐらい派遣労働者賃金が保障されているかという点は、それはつかんでないんだという御報告もありましたけれども、その点賃金確保法の中に派遣の枠をきちっと定める、こういうことが必要じゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  83. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) 派遣労働者は、派遣事業主との間の労働契約に基づきまして、その業務命令によって派遣先事業主のところで指揮命令を受け就労するということではございますけれども派遣労働者に対して賃金の支払い義務ということは当然のことながら派遣元の事業主でございます。  先生指摘のように、派遣元の事業主が倒産した場合にどうなるか。賃金が支払われないまま労働者が退職したという場合につきましては、賃金の支払の確保等に関する法律に基づきまして、未払い賃金の立てかえ払いを行っているところでございます。  先ほどもちょっと申し上げましたけれども、この賃金の支払の確保等に関する法律は、すべての産業派遣事業であろうとそうでない場合であろうと適用されておりまして、派遣事業について特別に取り扱うということについてまで何かそうしなければいけない問題があるかというと、私どもさほどではないのではないかというふうに考えているわけでございます。つまり、この現行の立てかえ払い事業の範囲内におきまして必要な保護は図られているというふうに考えているところでございます。  なお、先生指摘されました登録型派遣の場合には、登録されている人たちが非常に多い、そういう場合には中小企業に当たらないということで保護から外れるのではないかという御懸念であったかというふうに思いますけれども、登録型の派遣事業の場合には、登録されている人が全部労働者としてカウントされるという扱いではないわけでございます。この労働者のカウントにつきましてどういうふうにするかということでございますけれども、当然のことながら、これは常時使用する労働者であるかどうか、つまり常用労働者が何人いるかということによって判断をいたしているわけでございます。登録型派遣労働者の場合には、派遣の都度労働契約が締結されるということになるわけでございますので、一般的には期間の定めのある雇用労働者になるということではないかというふうに思います。  したがいまして、このうち六カ月以上継続して派遣されるか、または派遣されることが予定されているという人がどのぐらいいるかということによりまして、中小企業に該当するかどうかということを判断しているわけでございまして、これは一般産業の場合と扱いは異ならないわけでございます。そういうことで十分対応できるのではないかというふうに考えているわけでございます。
  84. 吉川春子

    ○吉川春子君 実際問題として、賃金未払いという被害をこうむっている労働者がいるわけです。しかも、派遣元、派遣先という二つのところに分かれてしまうということがありまして、派遣労働者賃金の未払いの問題については、どう保障するのか。建設業者のように元請の責任を認めるという方法も一つあると思いますけれども、ただでさえ不安定な状況に置かれている派遣労働者が、派遣元の倒産によって賃金が受け取れない、賃金確保法の枠からも外れてしまう、こういうような実態があることにかんがみまして、私が提起しました賃金確保法に枠を設けるというのも一つの提案ですけれども、それを含めて、賃金を十分保障するという制度検討をぜひ労働省としてもしていただきたいと思いますが、大臣、この点についてはいかがでしょうか。
  85. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 現在の法律のもとで、倒産をした場合の賃金の未払い、これの立てかえ払いをする制度であるとか、あるいは御指摘になりましたように、建設業法における元請の下請代金の支払い義務、こういう制度についても同じような形で設けるべきではないかという一つの御提起だと私は思うのでありますが、派遣先派遣元とは、建設業における元請と下請という関係とは比較するようなものではないと思いますから、御提起は御提起として十分に受けとめさせていただきますが、先生の御指摘のように、今直ちにそれをどのように規定上きちっと明記するか、あるいは法的にどう整備するかということは、これからの検討課題として御指摘だけは受けておきたいと思います。
  86. 吉川春子

    ○吉川春子君 違法派遣の問題なんですけれども、職安の窓口にもいろいろ寄せられているようですが、プログラマーとして派遣されて行ったけれども雑用ばかりさせられたとか、あるいはバスの運転手、家電製品、パン等の販売など対象業務に従事させられたということとか、あるいは事前面接とか履歴書等の事前送付などが行われている、こういう問題があるんですけれども、問題は派遣労働者自身がこれを告発すれば自分の職を失いかねない。実際に労働者が解雇されてしまって失業した例もあるわけですね。違法派遣関係に置かれている労働者の権利保障をどうするか、これが問題だと思うんです。  外国の立法例、例えばフランスなどでは派遣法の趣旨に反する派遣が行われた場合は、派遣先派遣労働者の間にもう直接の雇用関係が生ずる、こういう推定規定もあるわけですね。恐らく、我が国でも裁判にでもなれば、これはもう派遣ではなくて直用関係にあるんだと、こういう判断が下される事例もあると思いますけれども、しかし裁判の結果を待つというのであれば、長い年月、そして膨大な費用を要するわけですね。だから、こういう違法派遣のもとに置かれている労働者保護のために推定規定を求めるなど素早い労働者救済措置を行うべきではないかと思うんです。  違法派遣派遣労働者の失業、こういうふうにならないためにも、これは非常に検討を要することだと思うんですけれども、どのようにお考えでしょうか。
  87. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいまの点でございますが、御指摘のように違法な派遣を受け入れた派遣先につきましては、これについて一律に派遣労働者と直接雇用関係が成立したものとすることにつきましては、他面で不適正な派遣就業を行わせるような問題がある派遣先におきます就業を継続させることにもなりまして、かえって派遣労働者保護という面から問題があるという点もあるのではないかというふうに考えるところでございます。  ただ、先生のただいま御指摘のような考え方外国でありますような考え方、これも一つ考え方であるというふうには理解いたしておりますけれども、現在の我が国におきます労働者派遣法上の考え方としては、これは専門的、技術的なものについて対象業務とし、雇用関係については基本的に派遣元との雇用関係派遣先とは使用関係、こういう法律的な整備をいたしているわけでございまして、そういう観点から、ただいまお答え申し上げたような考え方、また違法な派遣労働者事業を行う事業主から派遣労働者を受け入れて就業させる派遣先の適正化のための措置といたしましては、これまで特段の規定はなかったところでございますが、今回、勧告、公表等の措置をこの改正法案で盛り込んだところでございまして、私どもといたしましては、この有効適切な運用を図ることによって対処してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  88. 吉川春子

    ○吉川春子君 四月十八日の当委員会の参考人質問で、派遣事業者の代表の方に質問しましたところ、事前面接を行う場合があると明言しました。非常にびっくりしたわけですけれども、こんなことを放置しておいていいとは思いません。ぜひ実態を調べて厳正に対処していただきたいと思いますが、どうですか。
  89. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいまのご指摘の点等につきましては、今後私ども検討してまいりたいと思います。
  90. 吉川春子

    ○吉川春子君 いや、検討するんじゃなくて、現に事前面接をやっていますと明言されたわけです、議事録にも残っていますけれども。それに対してちゃんと調査しますか。
  91. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 御指摘の点につきましては、調査いたしたいと思います。
  92. 吉川春子

    ○吉川春子君 我が国労働者の組織率というのは全体でも二四%と非常に低いんですけれども派遣労働者、中でも登録型の組織率は三%台、圧倒的に未組織労働者であります。  労働行政として、派遣労働者の組織化について積極的な支援を行うべきだと思いますが、どういうことを行っておられるのか伺います。例えば、働く人の権利を守るためには労働組合を組織する。つまり派遣労働者の組合ができるかということ、それは不可能に近いので、労働組合の労供事業ですね、これが派遣労働者の組織化にほかならないと、こういう中大の角田先生指摘もあるわけですけれども、労供を実際に行っているところ、例えば旅行の添乗員、音楽家ユニオンの例ですけれども、そのところの報告では、労供事業を始めた結果、労働条件がよくなって賃金が上がった。派遣会社の相場は一日八千円から一万二千円だけれども、ピンはねがなくなって労供の場合は二万円近く、つまり三割上がったというわけですね。派遣会社の方の労働条件も上がったということなんです。  派遣労働者についてのきれいなリーフレットを労働省からいただいたんですけれども、ここには労供についてのことは一言も書いてありませんけれども労働省派遣労働者の組織化についてどんな指導を行っているんですか。
  93. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 派遣労働者の組織化の問題でございますが、労働組合についてこれを、組織化を国として図るかどうかという点につきましては、これは基本的には労働組合、これは労働者の自主的な組織、活動でございまして、この組織化問題について政府として直接組織率を高めるための措置というようなものはとっておらないところでございます。  ただ、ただいま御指摘のもう一点のその具体化として労働組合の行う労働者供給事業について、これにつきましては職業安定法の第四十五条に基づくもので、労働組合がこれを行おうとする場合に許可の条件に合う場合これを許可する、こういうことでございますけれども、この制度自体の周知徹底につきまして、これもいろいろな機会をとらえまして労働組合等にその周知を行っているところでございますが、これは派遣法関係の周知と一緒にするかどうかという問題については問題もあろうかと思いますけれども、今後とも労働組合としての労働者供給事業についての制度につきましては、その周知を進めてまいりたいと思います。  また、具体的に私ども関係機関で相談がある場合につきましては、これについてできるだけ積極的に許可制等についての具体的な説明等もいたしてまいりたいと思います。
  94. 吉川春子

    ○吉川春子君 このリーフレットにもぜひ載せてくださいね。  労働省は、十年前のこの派遣法ができたときの答弁では、雇用と使用を分離したことにより派遣先事業主は団体交渉の応諾義務を負わない、こういう答弁を繰り返していました。しかし、賃金の決定とか労働条件とか途中契約の解除の多発とか、派遣元のみならず派遣先との独自交渉を持つ必要性というのが強いわけです。  御承知のように、去年の二月二十八日、最高裁の判例が出されました。これは、派遣先を使用者と認定してそれとの団体交渉権を認める判決なんですけれども、大変重要なものだと思います。判決を受けて、今回の法改正にこういう問題も当然私は盛り込まれるべきだったと思うんですけれども、この判決と今度の法改正の問題、どんな検討をされたんですか。
  95. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 労働者派遣事業制度の見直しに関します中央職業安定審議会の審議におきましては、派遣先におきます派遣労働者就業条件確保を図るための措置等について多角的な観点から議論が行われたところでございます。  ただいま御指摘の朝日放送事件につきましては、労働者派遣法施行前の事件でございますけれども、この最高裁判決において、雇用主以外の事業主であっても、基本的な労働条件等について雇用主と同視できる程度現実的かつ具体的に支配、決定できる地位にある場合については、その限りにおいて労働組合法第七条の使用者に当たるという判示がされたものというふうに理解いたしております。  具体的な使用者の判断につきましては、これは実態に即して行うべきものでございますけれども派遣法上の派遣先につきましては、賃金派遣労働者の基本的労働条件等を決定できる地位には現在の法体系上ございませんので、原則的には集団的労使関係の当事者とはならないものというふうに考えておりまして、一律に派遣先の団体交渉応諾義務を課すことはそういう意味では適当でないのではないかというふうに考えているところでございます。  なお、中央職業安定審議会におきまして、派遣先事業主にも一定の範囲で関係労働者との団体交渉に応ずることを義務づけることが考えられるのではないかという御意見もございましたけれども、この点については具体的な議論には至らなかったというふうに記憶いたしております。
  96. 吉川春子

    ○吉川春子君 判例が個々具体的な問題について判示するというのは当然のことでして、しかし一般的に必要があるわけですから、団体交渉応諾義務について今後とも検討を進めていただけるように私は強く要求をしておきたいと思います。これについて大臣の御意見も聞きたいところなんですけれども、時間が迫っておりまして後のと一緒にお答えいただければと思うんですけれども大臣派遣法の問題は女子労働者の問題なんです、九割以上が女性だと。しかも、七割から八割は三十代前半ということで、若い女性労働者の問題であります。  それで、今回の改正の中で、育児・介護休業の代替要員への派遣が認められたわけですけれども常用労働者にかえて当然のようにどんどん派遣を使うことに道を開く、こういうおそれがあると私は思います。これはいろんな法律家団体もこの育児・介護休業の代替要員の派遣には反対していますし、まず代替要員を直接雇用に求めるべきだと法律専門家などからもそういう指摘があるわけです。  私は、その介護休業、育児休業を保障する義務が企業にあるわけですが、原則はそのための正規の職員の確保、これにまず努力を傾けるべきではないかと思うんですけれども大臣いかがでしょうか。
  97. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生の御指摘でございますが、大企業中小企業とでまた状況が違ってくると思うんです。したがって、それは本当は、代替要員を予備要員という言葉で呼んでいいのかどうかわかりませんけれども、そういう要員をあらかじめ確保しておいて、休業者がいた場合はローテーションの中に組み入れていくというのは非常にいいことだとは思いますけれども企業実態からいってなかなかそれだけの余力がないというところもございましょうから、一概に先生の御指摘をそのとおりというわけにいかないと思うのでありますが、そういう問題点があるだけに、この休業された人が取得しやすいようにしていくために、休業後に円滑に職場復帰ができるようにということを重視して労働省としても指導を行っているところであります。  また、労働大臣が定めたこの事業主が講ずべき措置に関する指針の中にもそのことをきちっと盛り込んでいるわけでありますが、原則として原職または原職相当職に復帰させることが現実に多く行われているものであることに配慮する旨をあえてその中に盛り込んでいるところであります。  先生の御指摘のように、育児休業や介護休業を取得することによって、休業をとった女子労働者が将来の雇用不安につながっていかないようなことを労働省としても適切に指導していきたい、このように考えます。
  98. 吉川春子

    ○吉川春子君 今、大臣が大企業中小企業とは違うとおっしゃられましたが、確かに代替要員を認めるのを規模三十人以下の中小企業に限るべきだと、こういう労働弁護団の提案もあるわけで、大企業がどんどん代替要員を派遣で利用するなんて、こういうことを許しておいてはいけないんじゃないかというふうに思うわけです。  それからもう一つは、育児、介護の代替では全く同じ仕事につくことになるわけです。だから、派遣労働者に対して、就労条件の確保に当たって代替される正規雇用労働者の就労条件との均等待遇、同一労働同一賃金、こういうようなことが特に担保されなくてはならないと思うんですけれども、この問題については大臣いかがお考えでしょうか。これも原職復帰を促す上で非常に重要な問題だと思いますけれども、その保障、そういうことについてどのように考えておられますか。ガイドラインに盛り込むとかいろいろ方法があると思うんですけれども、お考えを聞かせていただきたいと思います。
  99. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 御指摘の点でございますけれども代替要員であります派遣労働者につきましては、これは休業取得者の行っていた業務を行うということでございますけれども、必ずしも休業取得者と同等の技術知識経験を持って業務を行っているとは限らない。  御承知のように、基本的には我が国はいわゆる長期雇用制というような形で、そういう中で賃金体系等も定まっておる、そういう面もございます。また、派遣労働者派遣事業主に雇用される労働者でございまして、休業取得者は派遣先雇用される労働者であることから、雇用主の異なるこれらの労働者について賃金の取り扱いを必ずしも同列に論ずることはできないというようないろんな議論もあるわけでございまして、いずれにいたしましても、派遣労働者派遣先において適正な就業条件のもとで就業できるようにすること、この点が重要でございまして、今後とも派遣労働者の適切な派遣就業確保に努めてまいりたいというふうに考えています。
  100. 吉川春子

    ○吉川春子君 今の局長の答弁、私納得できません。ということは、じゃ代替要員ということで全部の業種に拡大しちゃったわけですね、育児、介護については。そして、しかもその安い派遣労働者で埋めますと、こういうことになれば常用雇用にかわるものとしての派遣労働者位置づけというものがどんどん出てきちゃうわけで、それはすごく変な答弁ですよ。むしろ、例えば一年間とか半年とか、そういうことで常用雇用にかわるものとして導入するというのであれば、原職復帰が可能なような条件整備をしてやらなきゃならない。そのための均衡待遇ということがどうしても必要なわけです。それを原則的にそんなものは必要ありません、企業主の勝手ですというような答弁ではだめです。  大臣、この点は解釈論とかなんとか重箱の隅をつつくような議論じゃなくて、原職復帰を守るという、派遣労働者にその地位を脅かされないという点で、そういう均衡待遇というところの保障が必要ではないか、その点についての大臣の御見解を、最後に伺いたいと思います。
  101. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) これは前週のこの委員会における質疑でも触れられたことでありますけれども代替要員として派遣をする場合に、その派遣を受けた企業が休業者を将来復帰させずに済むような、そういうことに利用させてはならぬ、これは明確に御答弁申し上げてきているわけでありまして、そのためにも派遣期間を一年というふうに限定をしているわけであります。  いずれにいたしましても、派遣元と派遣を受け入れる企業との間によってその派遣者の賃金その他が契約料金として決定をされているわけでありますから、そこで先生が御心配になっているように、例えば現実に働いている労働者の半分とか三分の二とか、そういう低い賃金代替要員を雇うことができるということには現実になっていないと思うのでありまして、したがって、派遣契約を結ぶ際にその辺のところは一年間なら一年間という期限つきで受け入れるわけでありますから、そのことを念頭に置いて契約は果たされるものと私は理解をしているわけであります。  しかし、先生の御指摘のように、少なくとも休業者が原職復帰をすることが難しくなるような、あるいはこれからどんどん派遣労働者にすべてを頼ればいいというふうなことに活用されないような、そういうことの指導、啓蒙は労働省としてもきちっとしていきたいと、こう思います。
  102. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 自分が今まで大切にしていた価値観というんでしょうか、非常に重大だと思っていた価値観が、何らかの理由によってその価値観を変えなければいけないという問題は私にとっては非常に苦悩でありますし、また自分の価値観を変えるということに対して一つの勇気というか感動もないことはありません。今、私はちょうどそういう状況にあるような気がしてなりません。やはり自分の価値観が正しかったというのが何らかの理由で変わるというこの苦悩の部分は、自分なりに苦悩じゃない感動の部分にするべきだというそういう思いで私は質問をさせていただきたいというふうに思っております。  私の質問は、大変残念なんですけれども、電話でやりとりをいたしましたので、質問の形式がちょっと変わって通告がないような形でこれから質問するようなことになると思いますが、そこはベテランの大臣局長のことですので、どうぞお怒りにならずに御回答いただきたいというふうに思っております。  私の非常に好きな憲法の条文があります。労働政策に大変御造詣の深い大臣にこんな条文を読むのはまさに失礼かと思いますけれども、念のためにこの条文をちょっと読ませていただきます。「基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」という憲法九十七条があります。この憲法九十七条の条文というのは、私がちょうど今苦悩している私の気持ちをそのまま何かあらわしたような条文であって、女性が基本的人権を得たその基本的人権の中に勤労権という権利がある。憲法二十七条です。この勤労権に私たち女性はどれだけか小躍りをして人類の進歩に感謝をしたものです。つまりこの基本的人権というのは現在及び将来にわたってこれを、今までの幾多の歴史と努力によって得たものであるから現在はもちろんのこと、将来にわたってもこれを守りなさいと。つまり憲法の九十七条というのは、まさに私は女性に対しての応援歌のような感じがいたします。  この派遣法をずっと勉強させていただきますと、これは私たち女性の本当に悲しい歴史、苦しい歴史というものがずっとあって、それに対して勤労権という権利があるこの現在、この派遣法というのは、今現在私たちがこれを検討しているんですけれども、将来、女性とか男性とかというふうな区別がなくなる社会が来るとは思いますけれども、その将来の人々にとってこれは、ああよくやってくれた、二十世紀の人はよくやってくれたというように言われるような法案なんでしょうか。それとも、何だ歴史を逆行させたではないかと言われるようなことなんでしょうか。  まず、この大きな理念をお聞きいたしたいと思います。
  103. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 大きな理念で御質問されますと、なかなかそれに的確にお答えするほどの能力は持ち合わせていないんでありますが、この勤労する権利というものはもちろん憲法で定められているわけでありますから、これを基本に置いて労働行政があることはこれは間違いない事実でありまして、少なくとも今労働省が所管をしていろいろんな行政の内容については、その憲法を踏まえて行政を進めていると私は自負をしているわけであります。  ただ、どんどん産業形態が変わる、社会構造が変わるという中で労働者を雇い入れるという企業ニーズあるいは働きたいとする労働者側のニーズ、これはもう年ごとにさまざまなものに変わってきているわけです。非常に多様なものになる、複雑なものになる、そういうことに対応してその時々に英知を絞っていろんな法律を制定してきているわけでありまして、この労働者派遣法というのもそのときの状況に、必要に迫られて対応する、そういう法律としてスタートしたと思っています。  それが、現実に今の状況対応し切れないという面もございますから、労働者保護するという立場を重視しながら今回の法律改正をお願いしているわけでありまして、そのためにも労使関係で十分な議論をし、もちろん公益委員という方々にも入っていただいた中央職業安定審議会でも長時間にわたってそういう視点から議論をしていただいた結論として、今回の法案の策定につながったと私は考えています。  したがって、先生の言われている理念をそのまま私がお答えする立派な答弁になっていないかもしれませんけれども、少なくとも労働行政というのは、その労働者の立場に立って、保護をするという立場に立って、権利を保障するという立場に立って忠実に行ってきている。しかし、十分に全部それがなし得て十分な成果として全部実ってきたかというと、それはまだまだ実っていない面もありますけれども、これからも先生の言われているようなことも十分に配慮しながら、全力を尽くしていくということを申し上げておきたいと思います。
  104. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私が、なぜこういう質問をしたかといいますと、先般、国民生活・経済に関する調査会で二十一世紀はどうあるべきかというときに参考人が来られまして、その参考人のお話の中にちょうどこの派遣の話がありました。そのときに、その参考人の方から今は権利というよりも経済でもって物事をはかる尺度が強くなったんだという発言があって、私はちょっとどきっとして、もしもそういう考え方が我々人類の中に一般化してしまうと、女性はそのときの経済によってもう本当にいつでも振り回され、使い捨てにされ、経済がよいとき悪いとき、そしてその経済的な効果によっていろいろされてきたという歴史を持ち合わせておりますので、大変これは危険な発想だというふうに思いました。  派遣というこの形態も経済が前面に出た私は形態じゃないかというふうに思っております。そういう意味で、この法案を審議するときには、今大臣が本当に雄々しくお答えいただいて私は安心をいたしましたけれども、そうじゃない、もっと私たちが本当に将来に向かって、これは二十世紀の人はよくやってくれたと言われるような、そういう高い価値観、高い基本的人権というものを置きながら、この法案の指針をつくる行政をしていただきたいということを切に思いまして、そういう質問をさせていただきました。  それでは、続いて質問をさせていただきます。この派遣法というのは今から十年前にできたんですが、それよりもっと前、十三年前になるんでしょうか、もう既にフランスとかアメリカとかドイツとか、そういうところではこういう考え方が採用されておりました。この法案をつくるときには諸外国、特に日本は諸外国と比較するのが非常に好きな国ですので諸外国と比較するんですけれども、後でつくる法案の方は既にもう行っている国よりもいいものがなければこれは私たち日本人の英知とは言えないわけで、私が推測するには多分これは諸外国を見て、それをお手本にしたりあるいは取り入れたりしたんだろうなという思いでおります。  そこで、諸外国を見るとアメリカでは対象業務は原則自由、それからイタリアは原則禁止、その間にフランスとドイツがあると、こういう形になっておりますけれども、この派遣法はどの国のどういう部分、どういうことをお手本にしたのか、取捨選択したのか、そこら辺を一度お聞きいたします。
  105. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 労働者派遣事業につきましては、労働者雇用する者と指揮命令する者とが分離するという特殊な形態であるため、そういう意味での問題点としては、労働者保護に欠けるおそれがある、それから派遣先におきます常用雇用労働者との代替を不当に促進するおそれがあるというようなことが内在しているわけでございます。  そこで、御指摘のように外国においてどうかという点でございますが、こういうことを踏まえまして、ただいま御指摘ございましたように、アメリカのように原則自由としながら、判例や政府の見解によって派遣元と派遣先との連帯雇用責任を認めるような形で運営しているもの、ドイツ、フランスのように、労働者派遣事業を行う場合には許可または届け出を必要とすることとともに、派遣期間派遣を利用できる事由、これを厳格に制限して、違法な派遣が行われた場合については派遣元、派遣先ともに罰則を科するか、あるいは派遣先派遣労働者の間に雇用関係が成立したものとみなす、そういう形で運営しているもの、あるいはイタリアのように労働者派遣事業を全面的に禁止しているものというような措置を講ずることによって対応が図られてきたところでございます。  我が国におきましては、こうした諸外国制度も参考にしながら、一方で我が国雇用慣行あるいは労働市場の動向、法制度の枠組みの違い等を考慮いたしまして、労働者派遣事業につきましては許可制を採用するとともに、労働者派遣事業を行うことができる対象業務を専門的、技術的なものというような形で限定すること等によりまして、派遣労働者保護及び派遣先の常用雇用労働者との代替の促進の防止を図っているということでございます。  したがいまして、御指摘の諸外国の例を勉強いたしましたけれども、その上で日本労働市場あるいは雇用慣行、そういうものを踏まえた形で、現行の制度につきましては専門的な対象業務に限定して、そういうものについて、ただ一方で派遣期間は長く認める、こういうような考え方、それからもう一つ派遣元との雇用関係雇用管理責任派遣元、それから派遣先は使用責任と、こういう形で派遣先雇用責任は負わせていないと、こういう法律体系で実施している、こういうことでございます。
  106. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 そうしますと、どこの国と一番日本の法体系は近いんでしょうか。
  107. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) どこの国に近いかと言われますと、なかなか似ているケースが少ないんですが、どちらかといいますと許可制等でやっているという意味ではドイツ、フランスの体系かと思いますが、ただしその中身が、一般的にそちらはいわゆる対象業務の限定をせずに、ただし事由を厳格に臨時的な業務というようなこと、それから派遣期間も短期間、二週間とか三カ月とかそういう短い形でやっているという考え方でございまして、我が国の場合にはそういう考え方でいくか、あるいは現在の法制のように専門的な業務、これに限定いたしまして、したがって事由は問わずに派遣期間も短期間でなくて長くする、こういうような考え方対応する、これは十年前、労働者派遣法を制定する際にいろんな議論、さまざまな議論がある中で整理をいたしましてこの法律が制定されて実施されたと、こういう経緯になっています。
  108. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 本来ならば、私ももっと勉強していろいろしたかったんですが、時間切れだったんですが、どうもほかの国を見ますと、どうしてこういうふうな考えになったのかということがある程度理解できるんですが、日本派遣法を見ていると正直言って何をどうしたいのか、その一つの体系というんでしょうか、そういうのが私にはまだ理解できなくて非常に頭が混乱して悩んだり、勇気を出そうと思ったり、非常に大変でここ一週間ばかりこの法案で私は体調を崩しそうになったわけです。  例えば、アメリカだったら、先ほどから何度も議論になっておりますように、派遣先派遣元との連帯の雇用責任というのをとっていますし、ドイツやフランスにおいては違法派遣を行ったときにはいわゆるみなし雇用というのが行われて、派遣先に対してもちゃんとした刑事補償というんでしょうか、刑事制裁というのがかけられて非常に派遣労働者に対しては保護をきちっとしている。そういうのを見ると、これは非常にこういう部分が危険だということで、ああきちっと保護をしているんだなということが一目瞭然でわかるんですね。  ところが、日本派遣法を見ると、公表はするんですね。するんだけれども、ここを保護しているんだ、労働政策労働行政としてきちっと保護しているんだ、この危険な部分はこうしているんだというのがちょっと見えにくいんですけれども、それはどういうふうに考えたらいいんでしょうか。
  109. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 繰り返しになろうかと思いますが、労働者派遣法を十年前に制定する際に、基本的な考え方として、ただいま先生指摘のように、ドイツ、フランスのような形で考えるか、あるいは現在の法律のように対象業務を無制限に、いわゆるネガティブリストでフリーにすることなく技術的、専門的な業務に限って対象とする。したがいまして、対象業務の幅は現在十六業務ということで極めて限定された形になりますが、そういう形で認めるとともに、その派遣期間については臨時、繁忙期に限るという縛りをせずに、その期間はある程度長期間にわたって同一の事業所に雇用できるようにする、そういうような考え方。  その背景には、今言ったような専門的、技術的な仕事業務ということに限定することによりまして、労働条件面についてはそういう意味で一定の確保ができる、そういう仕事である、こういう考え方背景にあろうかと思いますが、そういう形で整理をする。労働者派遣契約あるいは派遣事業主及び派遣先が講ずべき措置、労働基準法等の適用に関する特例措置、そういうものをあわせて設けることによりまして、この就業条件等の整備を図る、こういう形で現在の法律が定められてきているということでございます。  そういうことで、御指摘のように、そういう意味でいきますと諸外国のような形ではない形で現在の労働者派遣法が制定され、運用されてきているということになろうかと思います。
  110. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 何か執拗に言って申しわけないんですけれども局長が一生懸命御説明いただくのはよくわかるんですけれども、一言で言いますと特色というんでしょうか、アメリカやフランスやイタリアを見ると、この法案はこういう特色でできているんだというのがよくわかるんです。職種は限定しないんだけれども、刑罰を科して危険なところをきちっとするんだとか、あるいはフランスやドイツのように、テンポラリー労働というんですか、一時的にしか採用しないんだという、そういう特色があるんですけれども、それでは局長、この日本の法案を一つだけ特徴を挙げると何になるんでしょうか。
  111. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 特色を挙げますと二点でございまして、一つ対象業務、これがネガティブリストではなくて専門的、技術的な業務に限定しているということ、それからもう一点は、派遣契約期間が二週間とかそういう短期間でなくて一年を超えることが、これは継続でございますが、一年ごとの契約ということになりますけれども、それが可能である、こういう点が違っております。
  112. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 そうすると、今のその二点はどのようなメリットがあるんでしょうか。
  113. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) メリット一般的に二つやはり考えられまして、その専門的、技術的な仕事というのは比較的高度の技術を持った方ですから、そういう方についてはこういう派遣労働で行った場合についてもその働く条件、これは確保されるという点がございます。それからもう一つは、雇用期間が長いということは、その分その派遣労働者にとって雇用が安定するというメリットがあります。そういうことが言えるかと思います。
  114. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 そうすると、ちょっとわかりづらくなるんですけれども、非常にスペシャリストであるということですね。そうすると、育児とか介護のときの代替要員は、このスペシャリストということからいうとちょっと論理が合わなくなるんですけれども、どうしたものでしょうか。
  115. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 御指摘のとおりでございまして、したがって現在の派遣法の体系のいわば特例という形になりまして、育児・介護の休業につきましては、むしろ今言いましたドイツ、フランスと同じような考え方で、いわゆるこれは法律で育児あるいは介護休業をとっている人の代替要員ですから、そういう意味での事由がはっきりしているわけであります。  それからもう一つは、期間も休業している期間ということですから、これも一年以内ということでその派遣の期間もはっきりしている、そういう形でございまして、したがってこれは特例という形で今回法律改正をお願いしているということでございます。
  116. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 今のお話を聞いていますと、アメリカ型でもない、フランス型でもない、じゃこれはもう完全に日本型というふうに特色、特徴づけてもよろしいんでしょうか、お聞きします。
  117. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 御指摘のとおり、これは日本型の派遣法であるというふうに考えていいかと思います。  なお申し上げますと、ただいま先生指摘のように、明快な形での労働者派遣事業あり方については、一方では行政改革委員会の御意見でもありますようにネガティブリスト方式、対象業務を限定しないようにすべきである、こういう御意見もあります。あわせて、労働者保護を図るべきだと、こういう観点がございまして、そういう観点からは、アメリカと同じように派遣先についても罰則つきで規制をすべきであるとか、そういうような御意見もあります。  したがって、今後のあり方検討する際には、やはりそういうあり方論、そういうものが恐らく避けて通れない課題になってくるのではなかろうかというふうに思います。
  118. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 日本型というと、私がすぐぴんとくるのは玉虫型ということであります。アメリカ型でもない、フランス型でもないという、それでは日本型というと、日本というのは何が何だかわからないような玉虫にしてしまうという、そういう意味じゃないかというふうに思うんですが、先ほど私憲法の条文を述べましたように、この勤労権の問題では玉虫型ではちょっと困るんですけれども、その点は日本型イコール玉虫型と呼んでもよろしいんでしょうか。
  119. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま日本型と申し上げましたけれども、これは玉虫型ではございません。対象業務は明確に限定されております。したがって、その対象業務以外の業務を行った場合には、これは明確に法律違反ということで、これはきちんと是正しなければならぬ。そういう意味では、対象業務は限定をいたしております。  ただ、派遣期間についてはドイツ、フランスのケースと違いまして、これは長期間にわたっても可能であると、こういう意味ではドイツ、フランス型とは異なっております。しかし、労働者派遣法に基づいてきちんと処理しなければならないという点については同様でございまして、そういう意味では適切にこの法律運営がされなければならない、そういうふうに考えております。
  120. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 局長、ぜひとも玉虫型にならないように、きちっと保護型になっていただきたいというふうに思います。  さて、先ほどからこの専門職、専門職というところを非常に力説しておりました。私も専門というのは非常にいいと思います。しかし、いろいろな現状を見ていますと、本当に専門なんだろうかというのが私の疑問の一つなんです。  普通私たちもそうですけれども自分がスペシャリストになるというのは、ある程度長い時間をかけて長い経験を踏んでそして一つの専門になっていくわけです。ですから、専門というのは、いろんなことを知っていろんなことができるんだけれども、しかしこれだけは人に負けないという、そういうのが私は専門だというふうに思いまして、適切な言葉かどうかわかりませんけれども、専門ばかになるのが私は専門じゃないと思うんです。  ですから、派遣を見ますと、女性が九割以上というこの状況で、専門というのは一体どういう意味を含んでいるのか。まさに、適切な用語ではありませんが、何か専門ばかを一生懸命つくっているような感じです。労働省が一九九三年に出している労働者派遣事業実態調査の結果報告を見ますと、あなたは訓練をして専門の知識自分で十分持っているかという質問に対して、訓練はしてない、つまり訓練は受けてない、非常に不安定だという回答が四三・六%もあるんですね。これを一体どのように受けとめていらっしゃいますか。
  121. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 専門という観点につきまして、ただいま先生指摘のように、幅広い知識経験を有する中でこれだけはほかの人に負けない、こういうものが理想でございますが、現在の労働者派遣法運営上のこの専門的なものといいますのは、御承知のように現在政令で十六業務仕事が限定されて対象になっております。したがって、この十六業務、これの対象に入るものが一応その労働者派遣法のできる仕事、こういうことになります。  これにつきましては、この中におきましても、確かにその専門の程度という面からいきますと非常に、例えば通訳、翻訳、速記の仕事にしろ、秘書にしろ、その他の仕事にしろ、その対象業務の中に入っていても専門の底の浅いものから深いものまで、それもあろうかと思います。あろうかと思いますけれども、この労働者派遣事業の適用対象業務として行っておりますこの一号から十三号までの十六業務について、この対象業務であれば、これはこの派遣法労働者派遣事業対象として派遣仕事ができる、こういうことでございます。  この労働者派遣法が制定された背景につきましては、大臣もお答え申し上げておりますけれども需給両面からの理由があるわけでございまして、働き手の側からいきますと、自分の持っている知識、技能、そういうものを活用して、これは九〇%が女性の方でございますが、家庭を持った女性の方が自分の時間を活用して働く、こういう場合にこの派遣仕事を、こういうものを希望する、こういうケースも多いわけでございまして、そういうことからただいま申し上げましたような形でこの法律が運用されている、こういうことが言えるかと思います。
  122. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 局長のお話を聞いていると何が何だかわからなくて、最後はそうかなと思わされちゃって、これではいけないともう一度目をみはって考え直すんですが、私の言っていますのは専門だと言い切れるそういう体制にはなっていないんじゃないですかというのが一つの質問です、どうでしょうか。
  123. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) その点につきましては、先ほど申し上げましたように、基本的にはこの対象の十六業務仕事、これがきちんとできる、そういう方についてこの労働者派遣法対象仕事として派遣事業で働ける、こういうことでございますが、その対象業務についての知識経験、技能、技術、そういうものの中身につきましては、おっしゃるようにこれは常により高いものである方がいいわけでございまして、そういう意味での教育訓練、トレーニング、これも非常に重要であろうかと思います。  その辺については、派遣事業主がそこにおきます対象の方についての教育訓練、こういうものを一定の枠組みの中で実施している面もありますし、自分自身がその技術、技能を高めることによってより適切に派遣で働けるようにしていく、こういうような形でお考えになっておる方もあろうかと思います。  いずれにいたしましても、そういう意味でより専門的な知識、技能を持っている方が望ましいわけでございますが、法律の枠組みとしてどこまでこの対象を認めるかという点になりますと、先ほどからお答えしているような形になろうかと思います。
  124. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 やっぱり何だかわかったようなわからないような気がすることはするんですが、私に言わせますと、スペシャリストだということだけで許されるというならば、これがスペシャリストだという客観的なもの、いろんな状況でわからなければ、職種は随分と広いですから、私にしたらもうそんなにスペシャリストじゃなくてもできるような仕事があるわけですね、非常に。だから、非常に危険だという感じがしないでもないんで、将来私はスペシャリスト第何級とか、英検何級とかありますね、ああいうような形でこの職種専門性をおやりになるんですか。
  125. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 対象業務の中におきまして確かにおっしゃるようにそういう専門的な資格のあるものも多くございます。したがって、そういう観点からいきますと、そういう専門的な資格を持っていて派遣事業で働いている方も多いわけでございますけれども、必ずしもそういう資格を持っていない方につきましても、この対象業務仕事をきちんとやり得るということであればそういう方もこの十六業務の中で働ける、こういうことでございます。  そういう面からいきますと、教育訓練、これを充実するということが非常に重要であるわけでございまして、この労働者派遣事業において、専門的な業務等について派遣労働者に対する教育訓練の充実を図る、こういうことが非常に重要であるという考え方のもとに、例えば中小の派遣事業主におきましては単独で教育訓練を実施することがなかなか困難だ、こういうこともございますので、派遣事業主が共同して教育訓練を実施する、そういうことが効果的ではないかというようなこと、あるいは中央職業安定審議会の昨年十二月の建議におきましても、この教育訓練についてその充実を図るという観点から、派遣労働者の公共職業能力開発機関あるいは民間の教育訓練機関等による教育訓練の活用を促進するとともに、派遣事業主団体等が行う教育訓練に係る取り組みを促進することが適当である、こういう御建議もいただいているところでございます。  そういう観点から労働省といたしましても、この派遣事業主団体等に対しまして、その団体が行う派遣労働者に対する効果的な教育訓練の方法等に関する調査研究も委託いたすことにいたしておりますが、そういう調査研究の結果も踏まえながら対処してまいりたいというふうに考えております。
  126. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 今の御回答で、必ずそういう調査をしていただかないと、非常に危険なことがいっぱい入っているんじゃないかというふうに思います。  それと関連いたしまして、先ほどから給料の問題が非常に問題にされております。私の資料を読みますと、これは労働省が出した賃金構造基本統計調査ですか、平成六年のを見ますと、大卒女子の三十一歳で時給約千六百円、これを年収に直しますと四百三十三万円になります。ところが、派遣労働者が受ける賃金は時給千五百円、これを年間の時間千九百十時間に掛けますと二百八十七万ということになりますから、この計算でいきますと三分の二以下になってしまう。これは今までも各委員先生方が何度も賃金の平等、平均化というのをお話になっていますけれども、こういうふうに女子が多い派遣という対象労働者が、まず給料でもって差がつけられていってしまう、また技能の面でもきちっとした研修がなければその能力の面でも差がつけられていってしまうという問題が起きてきます。  フランスの例を見ますと、フランスでこういうことが言われています。フランスは日本と違いまして、制度が違いますので、派遣労働者はほとんどが男性である、そしてほとんどが十八歳から二十四歳までの若い人である、そしてもう一つ外国労働者である、特にブラックアフリカ出身の労働者で占められているというのがフランスの統計です。これを見ますと、制度は違いましても派遣対象になっている、働く人は社会的弱者がこの制度を利用していっていて、それが固定化していってしまっているというのが大体外国の例です。  日本も今こうやって見ますと、女性が多い、そして賃金も低くなる、教育も訓練の場所も非常に狭められているというならば、日本においてもこれは社会的弱者がこの制度を利用し、この制度対象になっていくということが考えられるのですけれども、フランスの場合と比較しながらどのようにお考えになりますか。
  127. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいまの御指摘の点でございますが、フランスと基本的に違いますのは、先ほども申し上げましたように、対象業務が限定されておりまして、一般的にネガティブリストでだれでも働ける、こういう形のものではございません。日本では専門的な職種というような考え方がヨーロッパに比べてなかなかないわけでございますが、そういう中で、一定の十六業務という、より専門性の高い業務についてこれを対象として派遣労働というものを認めている、こういうことでございます。  賃金につきましては、確かに高いもので、これは日額ですが、翻訳、通訳、速記等の業務で一万八千八百二十四円、建築物清掃の業務では五千五百二十六円というような、幅が相当ございますけれども派遣労働者保護というような観点から今回の法案におきましては、従来から問題のございました点について、例えば労働者派遣契約の中途解除に関する措置、あるいは適切な苦情処理を図るための措置の充実、派遣事業主及び派遣先が講ずべき措置に関する指針の策定、公表、そういう措置を今回の改正案の中に盛り込みまして御審議をお願いしているところでございます。  また、派遣労働者に対する労働条件、就業条件の明示、これは基準法の十五条あるいは派遣法の三十四条で規定されているわけでございますが、この明示が的確に行われるようにするために、例えばモデル雇い入れ通知書あるいはモデル就業条件明示書、こいうものをつくりまして、それに基づく指導、啓発を行っていこうというようなことも考えているところでございます。  改正後の法律の運用に当たりましては、派遣労働者の適正な労働条件、適正な派遣就業確保されるよう、これらの措置を十分活用しながら、派遣元、派遣先を指導、啓発してまいりたいというふうに考えております。
  128. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 まさに適正に対処していただかなければいけないんですが、私は一つ、またここで非常にこういうことは危険なんじゃないかということを質問させていただきます。  今言うように、給料も低くなる可能性もある、そして専門的な知識も磨く機会がなくなる、そして長くて一年という短期間雇用ということになる、そしてスペシャリストという、仕事の一部分だけはできてもあとはできないというよりもやれない、こういう勤労者がこれから経済的な問題につれてふえていくだろうという予見は十分できるわけです。  そうすると、女性でこういう形で勤労する人が多くなるということは、一つ企業の中、一つの団体の中、一つの組織の中で、スペシャリストではあるんだけれども総合的な物の判断、総合的な運営、企画、経営という、そういう判断能力の非常に少ない働き手というんでしょうか、そういう女性がどんどんふえてくるんではないだろうか。私は、別に管理職になるのが唯一の人生ではないかもしれませんが、そういう幹部という問題を考えるならば、こういう働き方というのは女性にとって幸せなんでしょうか、どうなんでしょうか。
  129. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 現行の法律のもとでこの対象労働者は約五十八万人でございます。これはバブル後の不況期で数が相当減ってまいりましたが、最近またふえてきて現在五十八万人ということでございますが、現状につきまして、これは先生指摘のようなことで対象労働者がどんどんふえているということでは必ずしもないかと思います。  もう一面、働き方の問題、特に女性の働き方ということを私が申し上げるのもあれですけれども、そういう観点からの選択の幅として、先生指摘のように仕事をきちんとやっていく、こういう方と、それから一方では家庭責任も持ちながら一定の技能は持っている、そういう意味では働く場をどこかに求めているということで、これは正規の雇用でずっといくということじゃ必ずしもなくて、手近にそういう仕事があれば自分技術、技能を生かして働きたい、こういうグループの方も一方ではふえているわけでございます。  それがパート労働という形で働く場合と、派遣労働というようなことで登録しておいて仕事の機会があったら働く、こういうような形での需要もあるわけでございまして、そういう意味では、そういう面からの需要に対しましてはこの労働者派遣法におきます対象業務、これがそれに見合う仕事の働き方であるというふうになろうかと思いますが、どういう働き方を選択するかという点につきましては、これはやはり個々の労働者が判断する、そういうものでございまして、枠組みとしてこういう働き方の枠組みが派遣法の中で用意されている、こういう理解でございます。
  130. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 確かに働き方というのは本人の選択だとは思いますが、フランスでこの派遣法をつくるときに非常に反対がありまして、ミッテランが首相になったとき、この派遣法というのは見直そうということの政策を打ち出したわけです。そのときに非常に不況が来まして、失業するんだったらまだこの働き方で雇用を継続した方がいいだろうと、そういうことで現在に至っているということを私は知りました。  そうするならば、フランスとかいろんな諸外国を見ましても、理想はきちっとした働き方の方がいいんで、先ほども言ったようにスペシャリストというのはすべてが理解でき、すべてができるんだけれども、しかしこの一つだけはもう抜きん出ていいというのがスペシャリストであって、それしかできないというのは私はちょっと意味が違うんではないかというふうに思います。  そういう意味では、私はこれから労働行政に携わる労働省にあってはやはり理想の働き方はこうであるという理念を持っていないと、あなた方勝手ですよと言われても、女性はこういう経済の波に洗われたときにはやむを得ず失業という場合が往々にしてあるわけです。そういうことを私は念頭に入れなければ、この法案というのは非常に危険な部分をいっぱいはらんでいるというふうに思います。  四月二十四日の朝日新聞に大きく出ました、ご存じだと思いますけれども派遣の記事が出ました。これを見ると、「失礼な、名前くらい覚えて」、こういう題で出ているんですけれども派遣の方が行くと一般の職員の方とは一緒になれない、常にあなた方は派遣だからというふうに全然違う対象で見られる。お菓子を分けるときでも派遣の人にはくれない、常用雇用の人だけでお菓子やお茶を飲んで、そして名前を覚えてくれなくて、そこのアルバイトさんと言われると、こういうんですね。  ですから、日本の今までの慣行的雇用形態の中ではどうしてもこういう派遣の働く人というのは一風違った感触で見られているということは、これは事実だというふうに思うんです。そういう点で私は、給料の面でもあるいは職業のスペシャリストであるその技能の面でも、それが尊敬の念で見られるようなそういう働き手であるならば私は今言ったように非常にいいと思うんですけれども、そうではないというところに問題があるというふうに思うんです。  この朝日新聞を見て、名前ぐらい覚えてよというこういう切実な訴え、それからセクハラが横行しているとか、そういうことに対して私は何らかのきちっとした打つ手の方向性を出さなければいけないと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  131. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 働き方の基本的なあり方として、ただいま先生指摘のような点はこれはおっしゃるとおりだと思います。そういうことを念頭に置きながら行政も対処しなければならないというふうに考えます。  それから、ただいまも御指摘ありましたような、労働者保護という観点から派遣労働あり方についていろんな問題点があるという御指摘あるいは事実、そういうものもございます。  今回の改正法案につきましては、そういう点も踏まえまして不況期における契約の中途解除の問題であるとか、あるいは今言ったようなもろもろの苦情をどう処理するかとか、そういうものについて一定の考え方中央職業安定審議会の場におきまして一年ぐらいかかって議論をし集約して、その辺の対処の方策について今回の法案の中で、就業条件整備であるとかあるいは適正な運営、こういう観点からの考え方で改正の中身を盛り込みまして御審議をお願いしているところでございます。  私どもといたしましては、いずれにしてもこの労働者派遣法に基づきまして適正な運営確保を図るべく行政としては最大限の努力をしていかなければならないというふうに考えているところでございます。
  132. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 時間もなくなりました。フランスやドイツのように保護をするための刑罰が非常に厳しい国であっても、この「フランスの派遣労働法制」という島田陽一先生の書いている論文を拝見いたしますと、それでも現在うまくいっていないで、非常に法の網をくぐるような違法な働き方を食いとめることができないと、このように書いております。これについてはどのようにお考えですか。
  133. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) フランスの実情を私ども正確に把握しているわけではございませんが、ただいま先生指摘のような問題点もあろうかと思います。  それから、先ほどございましたけれども、フランスにおいて派遣法について非常に大きな反対論もあって見直しもしようというようなことできたわけでございますが、御承知のようにヨーロッパは非常に不況が深刻でございまして、一方では失業率が一〇%を超えてそれが恒常的な状態になっている、若年失業者が非常に多い、学校を出ても就職できない、そんな状況が続いておりましてより深刻化している、そういう中でこの派遣法の見直しも延び延びになっているかと思います。  それから、現在の運営上の問題点、そういうものもあろうかと思いますが、いずれにしろこの労働者派遣事業制度法律、これを見直す場合に、一方で御指摘のように派遣先についての雇用責任、これを罰則つきで強化すべきである、こういう議論と、それから一方ではいわゆるその対象業務の枠を外して自由にすべきである、こういう御議論もございます。この辺は、やはり両面をよく議論しませんとなかなか難しい問題があるのではないかということでございまして、いずれにしろ、そういう議論をするとすれば、やはり労使関係者が対等の立場で十分議論を煮詰める必要があるというふうに、そういうことによってそういうものを踏まえて制度運営をしていくことが非常に重要である、こういうふうに考えているところでございます。
  134. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 最後に大臣にお伺いいたしますが、大臣は殊のほか労働政策にお強いし、女性にも非常に優しい方ですので、この問題はいよいよ私はこれからの大きな大臣課題だというふうに思います。  先はどのように、日本型というのは玉虫型と言われるような、そういうことにならないように、この問題には非常に経済の面においては便利という大変メリットもありますけれども、その経済の上で便利ということが勤労権の上では非常に危険という両方をはらんでいるというふうに思います。  そういう点で、これから大臣はこの法案の成立後指針をおつくりになるわけですけれども、それに対する御決意を、どのようにきちっと保護していただけるかという御決意をお聞きして、私の質問を終わります。
  135. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生の最前からの問題提起あるいは御質問をずっと聞いておりまして、戦後の新しい憲法のもとでとりわけ女性の皆さんに対する権利をきちっと確保していくこと、それが労働行政の中に確立するような行政であってほしいという願いが先生の御質問の中にはずっと一貫して込められているわけでありまして、そのことについては全く同感であります。  しかし、現実のこの今の社会情勢というのは非常に多様化しておりますから、例えば私の知人でもそうでありますが、どこか働きたいところを探してほしい、それは切実な願いでありますから、監督署や職業紹介所の方に御連絡を申し上げて面接をしてもらったりするような、まあ御援助もしてまいりました。そうすると、いや、私はフルタイマーで働くことはちょっと家庭の事情が許さないと、だから悪いけれども昼から午後だけの勤務にしてもらいたいとか、あるいは一時ごろから夜の五時ごろまで、夜はまた家庭の食事の準備もあるから限定した時間にしてもらいたいとか、まあここは一つの例でありますが、いろんなニーズがあると思うんです。  したがって、まだまだこの女性の地位の向上ということが言葉だけに終わって現実化していないという御指摘もありますが、女性の地位向上という面と実態的な家庭生活という面とこの兼ね合いでですね、なかなか思うように自分知識やあるいは技能やあるいは経験を生かして十分な満足のいくような業務につけないという、そういう面がまだたくさんあろうと思うんです。  だから、そういう人たちニーズにも片方でこたえながら、働く場合に女性の皆さんの権利を保護する、あるいは労働基準法でも定められておりますように、一定の女性であるがゆえのいろんな面で保護すべきものはきちっと保護していくということをきちっと念頭に置きながら、この派遣事業でさまざま起きてくる問題についても対処していく必要があるかな、またその面について重大な責任労働省は持っているなと、こう実は思っているわけであります。  いずれにいたしましても、賃金の問題、労働条件の問題あるいは常用労働者として働いていらっしゃる女性の皆さんが、例えば育児休業で休まれた場合に、その育児休業が解消されて職場復帰したときに自分のもとの職場に戻れるとか原職を保障するとか、いろんな面も実態的な面としてきちっと対応できるようなこともきめ細かく行政の中に生かしていきたい、このように考えておりますので、ぜひひとつ御理解と御協力を賜りたいとお願いします。
  136. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 終わります。     —————————————
  137. 足立良平

    委員長足立良平君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、依田智治君が委員辞任され、その補欠として三浦一水君が選任されました。     —————————————
  138. 末広まきこ

    末広真樹子君 先週の金曜日に引き続きまして、労働者派遣法について二回目の質疑をさせていただきます。  前回の質問では、労働者派遣法の光と影の光の部分を中心に質問させていただきました。今回は影の部分に焦点を当てて質問させていただきます。そこでまず、前々回の委員会法律の執行状況の審議を行った際に、大臣の御説明にございました高齢者雇用安定法との関連からお伺いしてまいります。  高齢特例労働者派遣事業について、この労働者派遣事業は、今国会で改正案が審議される高齢者雇用安定法が平成六年に改正されて生み出されたものでございます。高齢者の雇用、就労の厳しい現状につきましては、これまでも私うるさいほど質問させていただきました。高齢特例労働者派遣事業の適用対象業務はいわゆるネガティブリスト方式で定められています。このネガティブリスト方式の導入をめぐっては二つの意見の対立がございます。  まず一つは、規制緩和のかけ声のもとに労働者派遣業務対象特定業務を除いたすべての業務対象にすべき、つまりネガティブリスト方式に賛成するという御意見。一方で、労働者派遣業はまだまだ日本には定着していないから、労働者派遣に伴う人権無視のトラブルが多々発生しており、その解決も進まぬうちの業務拡大はいかがなものかという反対の声です。そのような対立があるにもかかわらず、高齢者を対象とした労働者派遣事業では一致してそのほとんどの業務対象とすることになったのです。また、こうした派遣事業は、高齢者にとってふさわしい事業だという声も聞かれました。  では質問ですが、この事業制定以来高齢者の派遣実態はどれほどのものか、まずお示しいただきたいと思います。
  139. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 高齢者派遣実態でございますけれども、本年四月一日現在、高齢特例労働者派遣事業事業所数は三十二事業所でございまして、そのうち一般高齢特例労働者派遣事業いわゆる登録型の許可件数は二十八件。特定高齢特例労働者派遣事業いわゆる常用雇用労働者のみを対象とするもの、これの届け出受理件数は四件となっております。
  140. 末広まきこ

    末広真樹子君 これまでに四件しかなかったんですね。まだまだその実態は不十分なものとしか言いようがございません。  前回にも報告しました地元の登録型の一般労働者派遣会社は、現在二万八千人の登録者を有して、年間五千人の派遣を行っております。この会社が昨年三月より高齢特例労働者派遣事業もあわせて始めました。しかしながら、これまでの実績は登録者わずかに百五十名、派遣実績に至ってはたったの十一人でございます。前回質問した折に私はこの会社のシステムを褒めて褒めてべた褒めいたしました。この優良な派遣会社にしてこの状況なんです。  それでは、一体いかにして高齢者にもふさわしいとされる労働者派遣事業を高齢者に対して活性化させていくのか、その方策をぜひ明らかにしていただきたいと思います。
  141. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生の御指摘でございますが、六十歳以上の高年齢者につきましては、私もそうですが、もちろん体力などの個人差が非常に大きいということもございます。だんだんと体力も衰えてまいることが自分で自覚できるわけでありますから、したがって自分の体力の関係で働き方に対する希望もさまざまなんです。また、一般の若い人と違って、そういう働き方に特定の希望を持つという人が非常に多いこともこれまた事実であります。  したがって、このために、働く日時を選択できるいわゆる労働者派遣による就労も選択肢の一つとして活用されることが期待されるというのが高齢者の特例派遣事業の私は性格だと思うのであります。高齢者の特例派遣事業につきましては、平成六年十一月の制度実施以来、今局長も答弁しましたけれども、余り拡大していないんです。先生の地元でも、言われているようにたった十一人というお話がございました。これは、高年齢者の労働者派遣に対するニーズが少ないということが最大の原因ではないかなというふうに推測されるところであります。高年齢者の知識経験等の活用につきましては、社会一般の理解を促進することなどによりまして、せっかく制定されている高齢者の特例派遣事業でありますから、これを積極的に活用するように努めてまいりたい、あるいは啓蒙してまいりたい。それ以外に今のところ御答弁するいい表現が見つからないんです。  お年寄りの皆さん、お年寄りと言ったらおしかりを受けますが、高齢者の皆さんのニーズができるだけ生かされるように、そういうことについては十分な配慮をしていきたい、このように考えます。
  142. 末広まきこ

    末広真樹子君 その派遣事業では高齢者派遣をエルダー事業部と称しておりまして、高齢者の呼び名でエルダーというのがどうもはやりみたいなんですが、その会社のエルダー事業部を見学した際に、部屋にはだれもいらっしゃらないんです。職安に行ったときも高齢期雇用就業支援センターにだれもいらっしゃらなかったという御報告をしております。どちらもほかの機関はにぎわっているにもかかわらず、ここだけがぽつんとだれもいない。前々回質問いたしました全国で唯一の高年齢者職業経験活用センターである武蔵野エルダー、このセンター活動も不活発であることは既に質疑で御報告しております。高齢者の就労の厳しさは、派遣事業にあっても全く変わりないことが現地調査で再確認できたわけです。  それにしても気になりましたのは、見学した派遣事業二社の社員の若さであります。特定派遣事業会社では社員が二十代から四十代。この会社は創立二十二年の会社でございますから、その当時二十歳代の人がようやく四十歳代になったというわけですね。この会社では本年一千名の採用と申し上げております。逆に去年一年間の退職者数が三百八十名もあったということです。ですから、これはすごい労働力の新陳代謝と言っていいかと思います。もう一社の一般派遣事業会社も同様に平均年齢は二十八歳。女性ばかりのところです。二十五歳から二十九歳が五〇%を占め、三十五歳以上はわずか数%。すると四十歳以上の中高年者では、独立するといった方も若干はいらっしゃるのでしょうが、そのほかの方は一体どのようになっていっていらっしゃるのでしょうか。  派遣労働者が二十歳代から三十歳代、そして女性の多くに歓迎されているにしても、中高年の労働権はどう保障されていくのでしょうか。高齢者の派遣事業が全く振るわない現実を見ても、また中高年の派遣労働すら保障されていないのなら、この労働者派遣事業労働者の使い捨て労働と陰口をたたかれているんです。そう言われても未来に暗雲を投げかけることになりはしないのかという心配がございます。  大臣、この労働者派遣事業は中高年以上の労働者、とりわけ女性にとってどのような未来を保障し得るとお考えでしょうか、お教えください。
  143. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) なかなか難しい御質問でございますが、実情を申し上げますと平成六年度に実施されました実態調査を見ますと、派遣労働者の平均年齢は三十三歳でございまして、二十五ないし二十九歳の層で全体の三一・七%と最も多くなっております。また、五十ないし五十九歳の方は全体の三・九%、六十歳以上の方は全体の二・六%と非常に少ない割合でございます。  派遣労働者が若い層に集中している理由、これも定かではございませんけれども、例えば派遣事業でウエートの高いソフトウエア開発、事務用機器の操作等これは一般的には若い層に向いておりますし、中高年齢者に対するニーズが少ないということが影響しているものと考えられ、業務によっていろいろ違うのではないかというふうには考えているところでございます。  今後の動向につきまして、御承知のように二十一世紀に向かって急速な高齢化社会になる中で労働あり方が、派遣のみならず全体の労働あり方がどうなっていくかという点につきましては、これから新規学卒者を中心とします若年労働者は年々減っていきますし、一方で高齢者がふえていく、あるいは女性の方の職場進出もふえていく、そういう中で派遣労働がどうなっていくか、こういうようなところであろうかと思います。  今後の動向としましては、今回対象業務の拡大を図るという観点から対処しております企業におきます事業の実施体制に関する企画、立案等の業務とか、あるいは病院における介護の業務などについては、これはむしろ中高年齢者にも適した仕事ではないかというふうには考えているところでございます。
  144. 末広まきこ

    末広真樹子君 中高年の将来は非常に暗そうだということがよくわかりました。  次に、請負と派遣の区別についてお尋ねしてまいります。労働者派遣法の制定に伴い、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区別に関する基準を定める告示というのが定められております。この告示によりまして請負と派遣の二つは明確に区別されているはずなんです。  しかしながら、優良な派遣事業の経営者ですらこのようにおっしゃいました。派遣事業となれば派遣法の規定や制約をいろいろと受けざるを得ません。ところが、派遣をしていても請負事業としていれば全く野放しで事業を行っています。私はこの耳で聞きました、それ。現在定められている十六業種以外のさまざまな事業が請負事業という名目で、派遣事業ではないからと自由に行われている事例があると聞いております。また、十六業種内であっても、派遣事業であるにもかかわらず請負事業とされている例もあると聞いております。  それでは、労働者派遣法の枠を逸脱した派遣事業が一体どれほどあると認識していらっしゃるのでしょうか、その実態把握をお示しください。
  145. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 的確な数字自体なかなか難しいわけでございますが、私ども平成六年度におきまして臨検指導をいたしました、これは請負事業所に対する件数でございますけれども、七百七十八件、臨検指導で認められました違反件数が五百五十五件でございます。これは軽微なものに対する口頭指導等も含めておりますが、これに対しまして是正指導書等の交付件数が九十二件という結果になっております。
  146. 末広まきこ

    末広真樹子君 名古屋でも、去年生まれましたユニオン名古屋によって派遣労働やパート労働などの女性労働中心とした労働相談に取り組まれていらっしゃいます。  その一つに病院へのベビーシッター派遣というのがございました。病院で働く看護婦さんたちの院内保育所のお仕事なんですが、これは請負としてなされているのだと思うんですが、すべて病院側の都合で労働条件を決められていく実態を考えていくならば、大いに問題があると考えられます。実質的にはこれは明らかに派遣であると言える就業実態が見受けられたときにどのような指導がなされているのか、詳しくお示しください。
  147. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま御指摘のように、明らかに派遣という形で行われており、かつ労働者派遣法に反する事実があれば、これは私どもは厳正に対処し、是正しているところでございます。
  148. 末広まきこ

    末広真樹子君 厳正に対処し是正していくでは具体的じゃありませんが、局長、もう少し具体的にお願いできませんか。
  149. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) そういう事実があれば当然直していただかなければなりませんから、そういうことをやめていただかなければならないということでございます。
  150. 末広まきこ

    末広真樹子君 もうよろしいわ。次に、派遣先企業責任の明確化についてお尋ねしてまいります。  優良な派遣企業であれば、派遣先企業派遣労働者との良好な関係を築くことができていくと思うんです。しかし、そうでない場合、特に派遣先企業派遣労働者の受け入れにまだ経験不足であったり、これはトラブルが多いです、ただ労働者雇用にかかわる費用を節減しようという、これだけの意図しかなかったりするとさまざまなトラブルが発生してくるわけです。  先ほど述べたユニオン名古屋での電話相談でも象徴的な三つのトラブルの具体例が報告されております。まず一つ目、大企業派遣された男性のケースです。正社員と全く同じ建設関係仕事でしたが、給料は正社員の半分という報告です。二つ目、女性ですが、それまでのパート労働をやめて、息長く働けるということで派遣労働を選んだ方の事例です。この女性はたった一カ月で派遣先から契約を切られて、あげくの果てには派遣元からも首を切られたという、理由は何だったんでしょうか。土日が休日という派遣元との契約をこの方は結んでいました。ところが、同じ派遣先のほかの派遣労働者は土曜は休みでないという契約条件、この両者がぶつかりました。で、職場内でもめました。そうすると派遣元、派遣先ともにそのことについての調停とか、あるいは責任もとらずにその派遣労働者をやめさせたと、こういうことになったんです。業務内容は受付業務という契約であったんですが、実際は電話と応接室での営業業務を行っており、十六業務対象外のお仕事でございました。おまけにその事業所で働く従業員は全員派遣労働者でした。  三つ目のケース、女性です。ここは大企業の子会社派遣会社でした。同一企業グループがその子会社として派遣会社をつくって、そのグループ内にのみ労働者派遣を行うことの問題が頻繁に起きていると思われます。この具体的ケースは、派遣労働者として一年経過して、社会保険への加入を希望しました。ところが、派遣元はそれを渋ったんですね。こういう派遣元、多いんですよ、そこまではなと言うんですよ。会社側の社会保険料負担分だけ給料を下げるという条件で社会保険加入を認めたと、こう言うんです。  では、派遣元及び派遣先企業そして派遣労働者との良好な関係を築くためには、この三つの事例を見ても明らかなように派遣先企業あり方責任をたださなければいけない場合が多いようです。派遣元及び派遣先企業の規模が小さければ小さいほど三者の力関係というのは派遣先企業が一番強いのです。ここには逆らえないのです。ここが問題です。  そして、今回この法改正案で派遣先企業が適用対象業務外業務をさせたり、無許可事業から派遣を受け入れたりすれば企業名公表や勧告などの措置をとることができると本改正ではなっておりますが、この措置を含めて、今回の法案が派遣労働者労働権保障のために幾つかの改正をしようと努力していることは評価できます。しかし、企業名公表や勧告といった措置では不十分ではないでしょうか。  例えば、障害者雇用促進法の中でも同様の措置がとられておりますが、実効を上げているとはとても言えない現状です。この障害者雇用促進法では、雇用納付金といった罰金に近い制度も設けられております。改善勧告は毎年出され、企業名公表も既に二回されました。しかし、障害者雇用は十分に前進してはいないんです。派遣元、派遣先双方企業責任が一層強く問われなければ、労働者派遣事業そのものが成長していかないと思います。罰則を設けることが規制緩和の面から考えるとふさわしくないという御意見もあるようですが、しかし、問題がある以上、適切な罰則を設けることが派遣事業の拡大、前進に必ずつながっていくんだと信じたいと思います。  派遣先企業責任を明確化していく必要、そして労働基準法の遵守、それに反するときの罰則を派遣労働にも適用すること、労働者派遣先企業との交渉権を認めるといった大きな改革が必要かと思います。より労働者の立場に立った法改正を強く望みますが、いかがお考えでしょうか。
  151. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 改正後の法律の第四十九条の二の勧告及び公表の措置、今回改正案でお願いしているわけでございますが、派遣先の違法状態の態様に応じまして機動的に発動することができるとともに、公表による関係者への周知効果を通じまして、違法派遣に対する幅広い抑止効果が期待できるというふうに考えておりまして、適切に発動すればこれは相当強力な措置ではないかというふうに考えているところでございます。  ただいま障害者の関係につきまして、公表制度が不十分であるという御指摘がございましたが、私、担当者時代にあの法律に基づきます公表を行ったわけでございますが、これは私は相当の効果があったというふうに考えております。従来、なかなか伝家の宝刀で抜かないということで、公表制度があっても実際に運用されないというような感じが強かったわけでございますが、一応きちんと整理をして公表いたしました。そういうことによる結果としまして、企業雇用に対する関心、かなり認識が進んだのではないかというふうに考えております。雇用率で見ますと、当時一・三二%でありましたものが現在一・四五%というふうにある程度上昇もいたしておりますし、それから特に不況期において優先的に障害者の首を切ると、こういう事態も少なくなっております。そういう意味で、適切に運用すればこの公表制度というのはかなり効果があるのではないかというふうに考えているところでございます。  また、雇用先の責任との関係での罰則問題あるいは団体交渉、そういうものについて御指摘のような御意見もあるわけでございますけれども、現在の労働者派遣法におきましては、先ほど来申し上げておりますように、一定の専門的な業務に限定し運用するというようなこと、したがいまして、関係については派遣元と派遣労働者の間は雇用関係、それから派遣先とは使用関係というような形で整理をいたしておりまして、そういう意味での罰則つきの派遣先責任、こういうものはございませんが、今後制度全般を見直す中におきまして、そういうことも議論の対象として検討されるものというふうに考えております。
  152. 末広まきこ

    末広真樹子君 次に、雇用形態による身分差別についてお尋ねしてまいります。  地元で訪問しました派遣先企業の社長は、派遣労働者を採用する理由を一にコストダウン、二に新しい企業を創出するには旧来からの労働力は邪魔になるとはっきりおっしゃいました。この事例から見えてくることは次の点です。労働者にとって派遣労働がより安い賃金で雇われることにつながってはならない。そして同時に、より現代にマッチした労働力が必要とされているということも明らかになったわけです。まさに裏表が明らかになって、きょうの日経新聞、「職を拓く」という特集の二回目なんですけれども、そこのところに「能力は磨き続けない限り劣化する。会社への忠誠心にこだわり、限られた枠の中にとどまっていると、自分の実力や客観的な評価すら見えなくなる。」という、これはリストラされた中間管理職が再就職できない現状を記した記事なわけでございます。それほど、労働市場というのは非常に早い対応で新陳代謝を図っていきたいというのが本音なんです。  これからは、労働者も変わっていかなくてはいけないんじゃないか。みずからの働き方を決めるに当たっては、自分の人生観に基づいて労働者自身が進むべき道を自己選択、自己決定、そして自己責任、この時代なのだと思うんです、厳しいですけれども。つまり、生き方の多様化対応していくと思えるからです。でも、そうなればなるほど労働者に対して常に正しい情報というのが開示されていなければならないと思うんです。そして、その選択決定の違いによって生活の格差が生じるようではいけません。派遣労働者と正社員とに遜色のない就業条件が保障される、そのような新たな雇用関係就業実態が築かれなければなりません。このままでは、これまでの正社員、そして臨時雇いやパート、嘱託やアルバイト、それから派遣労働、さらには非雇用就業といったさまざまな労働形態の違いの深まりが新たな身分社会をつくることにもなりかねません。  そこで、最後の質問になりますが、大臣派遣労働がより自由な働き方を保障しても、その働き方によって身分社会をつくり出さないようにしていくためにどのような施策をつくり出していくのか、基本的な姿勢をお示しください。
  153. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生の御指摘のように、職場ではさまざまな問題点が今あることは私ども十分認識をしているところであります。  だからこそ、この労働行政を推進する中でそういうさまざまな問題を解消するための努力というものが必要でありまして、そのために職員挙げて今取り組んでいるところでありますが、労働者の価値観やライフスタイルが変化する中で、働き方に対する考え方も最前から申し上げておるように非常に幅広く多様化してきております。その際に、派遣労働やパートタイム労働といった働き方が、低い労働条件を強いられる、強要されるといいますか、そういう労働者の増大につながっていかないように、いろんな就業条件整備であるとか環境整備、これが非常に私は重要だと認識をしているところであります。  今回の法律の改正案におきましても、派遣契約の中途解除や適切な苦情処理、こういうものにかかわる措置など、派遣労働者就業条件確保のための措置を充実することを柱に置いているわけです。これを適切に運用していきたい、あるいは法律に基づいた指導もしていきたい、このように考えるわけであります。  最前から公表の問題もありました。これは、どんな場合もそうでありますが、罰則規定を設ければすべて解消するかといったらそんなものじゃないわけです。労働者を雇う側の認識を高めること、あるいは働く側の権利意識も高めること、両方が相まって初めて罰則があろうとなかろうと目的を果たすことができると、基本的にはこう思うわけでありますが、そういう公表制度を設けたことも使用者に対して、いわゆる雇用主に対して大きな警鐘を鳴らすことにもつながっていっていると私は思うわけです。  いずれにいたしましても、今先生が御指摘のように、先生の地元で大変な御努力をいただいて職場の実態を把握されてきているというその御努力に敬意を表するとともに、そういう具体的な例を一つ一つ解消するような努力を、地道でありますが積み重ねていく以外に、いわば特効薬的な方法はないのではないかと、こう思いますので、私どもは厳正に対処することも含めながら、日常、日々の努力を積み重ねることに重点を置いていきたいと、こう思います。
  154. 末広まきこ

    末広真樹子君 労働者がライフスタイルに合った自由な意思決定のもとに派遣労働という労働スタイルを選び、自己責任をとっていくためには、三つのことが大切だと思います。一つ、小さな派遣元と小さな派遣先のレベルアップです。それから二つ、雇用者、使用者、両方での責任の明確化。三つ目、責任を逸脱した場合にはペナルティーを科す。これらの三点を踏まえた十分な改正案であることが望ましいと考えます。  また、この改正案の運用に当たっては、私が拝見した限りでは、民間のすぐれた対応マニュアルをお持ちの会社もございました。これらを十分、いや行政と民間は立場が違うなんて言っていないで、いいものはどんどん取り入れて活用されることを一言申し上げて私の質疑を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  155. 足立良平

    委員長足立良平君) 他に御発言もなければ質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  156. 足立良平

    委員長足立良平君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  157. 吉川春子

    ○吉川春子君 私は、日本共産党を代表して、労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。  労働者派遣事業は、そもそも職業安定法で厳しく禁止されている労働者供給事業の一部であり、そのうちの一部の業務に限って合法化したものです。その結果、第二次世界大戦後営々と築いてきた労働者の権利を一部崩されてしまう側面を持っています。  法施行後十年間、当委員会での審議を通じてもさまざまな労働者雇用上の権利侵害が発生していることが判明いたしました。しかも、合法、非合法を分けるかなめである対象業務について政令事項にしているばかりか、その範囲も極めてあいまいであることなど、罪刑法定主義の原則に抵触しかねない欠陥が明らかになっています。これが本改正案に反対する第一の理由です。  第二は、違法派遣を告発すれば解雇という形で我が身に降りかかってくる。こうした派遣労働者の権利侵害をなくすためには、派遣関係一般雇用関係からは例外的な制度であるという前提に立ち、法の定めからの逸脱については一般原則に戻る。すなわち、派遣先に直接の雇用を義務づける原則の確立こそが必要です。今回改正によってもこれらの問題の解決が見送られるなど、労働者保護の面が極めて不十分だからです。  改正案は、派遣契約の解除にかかわる措置、苦情処理に関する措置については一定の改善を行っています。しかし、それは極めて不十分で、例えば解雇予告期間三十日についても派遣契約の記載事項として労働省令で定めるだけです。法律上の義務にしなければ実効性が保てないことは、派遣労働の性質上明らかです。  もともと、派遣法は二十七条で派遣労働者の国籍、性別、信条、社会的身分、労働組合活動などを理由として派遣契約の解除をしてはならないと決めていますが、この規定に違反した場合の制裁規定が派遣先にはありません。ここを改めない限り、労働者保護などはおぼつかないのです。  改正案は、さらに違法派遣について新たに派遣先責任を明記することとしました。しかし、その際の是正措置は全く不十分というべきで、指導、助言、是正されなければ勧告、それでもだめなら公表というだけで、派遣を停止させることができるのは風俗営業などに従事させている場合に限っています。これでは、違法に派遣労働者を使用した派遣先の使い得を許容するものになってしまいます。  反対理由の第三は、育児・介護代替の名目で派遣事業法のかなめである業種限定を外していることであります。しかも、本来正規従業員代替できるところにも無限定に派遣労働者による代替を許すこととしており、これまでの常用雇用労働者代替を促進しないという立場を逸脱するものです。  第四は、派遣労働者の九割以上が女性ですが、労働基準法の母性保護規定や雇用機会均等法あるいはILO百五十六号条約の家族的責任を負う労働者保護が、いずれも派遣先事業所では保障されないという点です。団結権は行使しにくい、派遣先との団体交渉権を否定するということとも相まって、女子差別撤廃、地位向上を西暦二〇〇〇年目がけて達成しようとし、行動綱領まで定めている世界の流れに反するものとなっているからです。  第五は、今回の改正が、日経連の「新時代の日本的経営」と題するレポートに明らかな、財界、大企業の今後の雇用戦略にこたえようとするものだからです。すなわち、労働者を、一、企業の基幹部分を担う従来の長期継続雇用という考えに立った長期蓄積能力活用型グループ、二、企業課題ごとに専門的熟練能力をもってこたえる有期雇用を前提とした高度専門能力活用型グループ、三、その他の一般事務、製造を担うパートや派遣労働者で構成される雇用柔軟型グループの三つに分け、その実現を図るために、派遣事業対象業種限定の全廃を要求していますが、本改正案は業種枠の拡大でこれにこたえようとしているわけです。  以上、本法案に反対する理由を明らかにして、私の討論を終わります。
  158. 足立良平

    委員長足立良平君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  159. 足立良平

    委員長足立良平君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  160. 足立良平

    委員長足立良平君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、武田節子君から発言を求められておりますので、これを許します。武田君。
  161. 武田節子

    ○武田節子君 私は、ただいま可決されました労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、平成会、社会民主党・護憲連合、新緑風会及び参議院フォーラムの各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。    労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  経済社会情勢の変化の中で、労働者派遣事業が適正に運営され、派遣労働者雇用の安定その他福祉の増進が十分に図られるよう、政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。  一、対象業務の見直しに当たっては、我が国雇用慣行との調和に十分留意し、常用雇用労働者代替を促すこととならないよう、また、専門性等を確保した業務内容となるよう十分に配慮し、中央職業安定審議会の意見を尊重して、個々の対象業務の内容及びその範囲を具体的に定めること。  二、病院における介護労働への派遣制度の適用に当たっては、医療福祉事業専門性やチームワークの要請を踏まえ、看護管理の下に置くなど適切な配置が行われるよう指導すること。  三、育児休業等に関する特例の運用に当たっては、休業取得者の代替要員の派遣に限られることを確保するとともに、休業取得者が原則として原職又は原職相当職に復帰することについて配慮されるよう指導すること。  四、派遣先における実際の就業条件が、派遣事業主が示した就業条件と相違することのないよう、適切な措置を講ずること。  五、派遣事業主及び派遣先に対し、労働者派遣契約に、労働者派遣契約の中途解除に当たって講ずる損害賠償に関する措置等派遣労働者雇用の安定を図るために必要な措置が適切に記載されるよう指導すること。  六、派遣労働者の苦情処理について専門的な相談援助を行う団体の取組を促進するとともに、行政機関による苦情相談機能の充実を図るため、関係行政機関の適切な連携を図ること。  七、改正後の労働者派遣法を踏まえ、派遣先に対する指導を徹底するとともに、派遣と請負の区分について具体的な基準を作成し、請負等を偽装した違法な労働者派遣事業の解消に向けてより一層の指導・監督を行うこと。  八、労働者派遣事業の適正な運営確保するため、派遣事業主及び派遣先の自主的な努力の促進、労働者派遣事業適正運営協力員制度の活用を図るとともに、行政体制の整備・充実を図ること。  九、派遣労働者に係る社会保険労働保険の適用促進に向けて、派遣事業主等関係者への制度の周知徹底等適切な措置を講ずること。  右決議する。以上でございます。何とぞ御賛同いただけますようお願いいたします。
  162. 足立良平

    委員長足立良平君) ただいま武田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  163. 足立良平

    委員長足立良平君) 全会一致と認めます。よって、武田君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、永井労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。永井労働大臣
  164. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) ただいま決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を十分に尊重し、努力してまいる所存でございます。
  165. 足立良平

    委員長足立良平君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  166. 足立良平

    委員長足立良平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  167. 足立良平

    委員長足立良平君) 次に、高年齢者等雇用安定等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。永井労働大臣
  168. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) ただいま議題となりました高年齢者等雇用安定等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  現在、我が国においては急速な高齢化進展しており、二十一世紀初頭には、超高齢社会が到来することが見込まれております。  このような状況のもとで、高年齢者の職業の安定その他福祉の増進を図るとともに、経済社会の活力を維持するためには、高年齢者が長年にわたり培ってきた知識経験等を活用していくことが必要であり、高年齢者の多様な形態による雇用就業機会を確保することが重要な課題となっております。  政府といたしましては、こうした課題に対処するため、定年退職者等に対する臨時的かつ短期的な就業の機会を確保するための措置の充実を図るための法律案を作成し、中央職業安定審議会の全会一致の答申をいただき、ここに提出した次第であります。  次に、その内容の概要を御説明申し上げます。  第一に、都道府県知事は、定年退職者等に対し臨時的かつ短期的な就業の機会を提供すること等を目的とする、二以上のシルバー人材センターを会員とする公益法人をシルバー人材センター連合として指定することができることといたしております。  第二に、労働大臣は、シルバー人材センター及びシルバー人材センター連合の健全な発展を図ることを目的とする公益法人を全国シルバー人材センター事業協会として指定することができることとしております。  この法律は、本年十月一日から施行することといたしております。  以上、この法律案の提案理由及びその内容の概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  169. 足立良平

    委員長足立良平君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十分散会