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佐藤道夫君 私からは、当面問題になっておりまする六千八百五十億円の支出根拠について承りたいと
思います。
これにつきましては、実は政府の説明と
母体行の言い分とが全く食い違っておる。天と地、水と油と言ってもいいような違い方です。
政府の説明によりますれば、この金は金融システムを守るために必要な金だ、これがなければどういう金融不安が起こるかわからない、預金者保護も図れないと。今もそういう話が出ておりました。政府はこういう説明をしております。
ところが
母体行側は、これはむだ金であると、簡単に言いますれば。仮に
母体行が
負担するとしまして、これを支出すると直ちに株主代表訴訟が起こると。株主訴訟というのは、忠実義務に違反する、要すれば任務に違反する行為でありまするから、そして会社に損害を与える行為です。
政府の説明によれば、この金は
銀行を守るための金なんだと、こう言っております。ところが
母体行側は、これは全くのむだ金であると。一体この食い違いがどこから出てきておるのか。こんなことじゃ
国民は一層迷うばかりでございます。きちっと統一してくれないと困ります。私はそう
思います。
物の例えでございますけれ
ども、政府の説明によれば
銀行を守るためだと、こういうことでありますから、ある
銀行が毎日のように窃盗団に襲われておる、金を盗まれてこのままでは
銀行がつぶれるというので大金をはたいて非常に頑丈な金庫を買うことにいたします。これは
銀行が生き延びていくために必要な金であります。これをもって不必要なむだ金であるといって株主代表訴訟を起こすような株主はおりませんし、仮に起こされても十分対抗できるわけであります。
ところが、骨体行側はどういうふうに言っておるかというと、これはむだ金であると。ですから、金庫を買う金だとは恐らく言わないんだと
思います。支出すれば直ちに訴えられて取締役が不法行為の
責任を負う、こういうわけですから、例えて言いますれば頭取以下の役員たちが毎晩のように芸者を揚げてどんちゃん騒ぎの遊興をやっておる、その金を
銀行から出そうとすれば、これは株主はとんでもない話であるといって代表訴訟を起こすでありましょう。
政府の説明と
銀行側のこの食い違いをこのままにしておいていいんでしょうかと私は思うわけなんです。
銀行は
銀行として一体何を考えておるのであろうか。また、政府は政府でそういう
銀行の説明をそのままほうり投げておいていいんだろうか、こういう気がいたします。両者協議の上、統一見解を出していただきたい。それでなきゃ
国民は安心できないという気がいたします。
なるほど
銀行側の言うとおり、これはむだ金だということになれば、政府は何もむだ金を、第一、救済される本人がむだだと、こう言っておるわけですから、出してやる必要は全くないわけで、ほっておけばよろしいわけでございます。(「それはむだだよ」と呼ぶ者あり)そうだと
思います。
一方、
銀行側が政府の説明を聞いて、なるほどこれは政府の言うとおりである、これは我々が本来
負担すべき金であるが、しかし我々の金庫は遺憾ながら空っぽで、逆立ちしても鼻血も出ない、これは
国民の皆様方、我ら
銀行をお哀れみの上どうかお恵みくださいませと、こう言うならばこれまたわからぬ話でもないわけですが、
銀行は決してそうは言いません。
銀行の金庫はもう金で今うなっているという話でありまして、低金利
政策のおかげだろうと
思います。その金は、しかしむだ金はびた一文出したくない。何か政府その他は
銀行を救うために税金を投入するということをしきりに言っておると。そういうことならば、酔狂な人もおるものだから出させてやろう、それでもって我々が救われるか救われないか、そんなことは関知するところではない、こういうのが
銀行の考えではないかとしか思えないわけでございます。
どうかもう一回
銀行側ときちっと話し合って、今の見解を、一体どういうことになるのか、政府が間違っておるのか
銀行が間違っておるのかきちっとしてほしい、こういうふうに
思いましてこの質問をいたしたわけでございます。
大蔵大臣でも
総理でも結構でございます。