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1996-04-16 第136回国会 参議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月十六日(火曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員の異動  四月十五日     辞任         補欠選任      保坂 三蔵君     坂野 重信君      鈴木 正孝君     牛嶋  正君      上田耕一郎君     阿部 幸代君  四月十六日     辞任         補欠選任      石井 道子君     河本 三郎君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         井上  裕君     理 事                大河原太一郎君                 斎藤 文夫君                 清水 達雄君                 塩崎 恭久君                 泉  信也君                 白浜 一良君                 都築  譲君                 山本 正和君                 有働 正治君     委 員                 阿部 正俊君                 石井 道子君                 板垣  正君                 笠原 潤一君                 久世 公堯君                 河本 三郎君                 鴻池 祥肇君                 坂野 重信君                 関根 則之君                 武見 敬三君                 谷川 秀善君                 野沢 太三君                 野村 五男君                 服部三男雄君                 真鍋 賢二君                 依田 智治君                 荒木 清寛君                 岩瀬 良三君                 牛嶋  正君                 海野 義孝君                 大森 礼子君                 加藤 修一君                 小山 峰男君                 直嶋 正行君                 益田 洋介君                 横尾 和伸君                 朝日 俊弘君                 一井 淳治君                 大渕 絹子君                 梶原 敬義君                 川橋 幸子君                 前川 忠夫君                 阿部 幸代君                 緒方 靖夫君                 小島 慶三君                 島袋 宗康君    国務大臣        内閣総理大臣   橋本龍太郎君        大 蔵 大 臣  久保  亘君        法 務 大 臣  長尾 立子君        外 務 大 臣  池田 行彦君        文 部 大 臣  奥田 幹生君        厚 生 大 臣  菅  直人君        農林水産大臣   大原 一三君        通商産業大臣   塚原 俊平君        運 輸 大 臣  亀井 善之君        郵 政 大 臣  日野 市朗君        労 働 大 臣  永井 孝信君        建 設 大 臣  中尾 栄一君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    倉田 寛之君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 梶山 静六君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  中西 績介君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)       岡部 三郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  臼井日出男君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       田中 秀征君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       中川 秀直君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  岩垂寿喜男君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  鈴木 和美君    政府委員        内閣法制局長官  大森 政輔君        内閣法制局第一        部長       秋山  收君        防衛施設庁施設        部長       小澤  毅君        経済企画庁調整        局長       糠谷 真平君        科学技術庁原子        力局長      岡崎 俊雄君        法務大臣官房長  頃安 健司君        法務省民事局長  濱崎 恭生君        外務省条約局長  林   暘君        大蔵大臣官房長  涌井 洋治君        大蔵大臣官房総        務審議官     武藤 敏郎君        大蔵省主計局長  小村  武君        大蔵省主税局長  薄井 信明君        大蔵省銀行局長  西村 吉正君        大蔵省国際金融        局長       榊原 英資君        国税庁次長    若林 勝三君        文部大臣官房長  佐藤 禎一君        厚生大臣官房総        務審議官     亀田 克彦君        厚生省薬務局長  荒賀 泰太君        農林水産大臣官        房長       高木 勇樹君        農林水産省経済        局長       堤  英隆君        資源エネルギー        庁長官      江崎  格君        郵政大臣官房審        議官       品川 萬里君        労働大臣官房長  渡邊  信君        労働省労政局長  七瀬 時雄君        建設大臣官房長  伴   襄君        建設省都市局長  近藤 茂夫君        自治大臣官房長  二橋 正弘君        自治大臣官房総        務審議官     湊  和夫君        自治省行政局選        挙部長      谷合 靖夫君        自治省財政局長  遠藤 安彦君        自治省税務局長  佐野 徹治君    事務局側        常任委員会専門        員        宮本 武夫君    参考人        日本銀行総裁   松下 康雄君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○公聴会開会承認要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○平成八年度一般会計予算内閣提出衆議院送 付) ○平成八年度特別会計予算内閣提出衆議院送 付) ○平成八年度政府関係機関予算内閣提出、衆議 院送付)     ―――――――――――――
  2. 井上裕

    委員長井上裕君) ただいまから予算委員会開会いたします。  まず、公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。  平成八年度総予算案審査のため、来る四月三十日に公聴会開会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 井上裕

    委員長井上裕君) 御異議ないと認めます。  つきましては、公述人の数及び選定等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 井上裕

    委員長井上裕君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  5. 井上裕

    委員長井上裕君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  平成八年度総予算案審査のため、本日の委員会日本銀行総裁松下康雄君を、また住宅金融専門会社問題について、来る四月十九日の午前に全国銀行協会連合会理事橋本俊作君、社団法人全国地方銀行協会会長玉置孝君を、同日午後に日本住宅金融株式会社代表取締役社長丹羽進君、総合住金株式会社代表取締役社長大槻章雄君を、来る四月二十二日の午前に農林中央金庫理事長角道謙一君、社団法人全国信連協会会長理事杉浦與曽松君を、同日午後に住友不動産株式会社取締役相談役安藤太郎君、株式会社共国債権買取機構取締役社長金澤彰君を、それぞれ参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 井上裕

    委員長井上裕君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  7. 井上裕

    委員長井上裕君) 平成八年度一般会計予算平成八年度特別会計予算平成八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き、総括質疑を行います。関根則之君。
  8. 関根則之

    関根則之君 平成八年度予算審議でございますので、本来ならば大変厳しい財政状況に置かれております予算そのものについて突っ込んだ議論をしなければいけないんですけれども住専問題というのが非常に大きな国民的関心を寄せられているわけでございます。この問題につきまして、衆議院審議を通じ長期間にわたりまして審議をしてまいりました。参議院に参りましてから、二日間にわたりまして総括質疑がなされたわけでございますが、承っておりまして、私どもこれで本当によくわかった、これで国民が納得するであろう、そういう確信を得るまでに私自身もまだまだ実はなっていないわけです。  そういう問題意識を踏まえまして、国民にわかってもらえるような議論政府当局と私はきょうさせていただきたいと思います。  二日間とは違いまして、きょうはNHKの放送が入っておりませんけれども院内テレビを通じまして関係官庁の方々も見ていらっしゃると思います。それから、最近ではCATVが発達しておりまして、地方へ参りますと、院内テレビで撮りました画面をCATVを通じて地域の住民に流しているところが結構あるんです。私もそういうCATVを見ている人からいろいろ御意見を承ったりしたことがございますので、直接私に答えるんじゃなくて国民の皆さんに説明をする、どうかひとつそんな気持ちになって、わかりやすい言葉でぜひお話をいただければありがたいとお願いを申し上げておきます。  私は、住専の問題をずっと眺めておりまして、この基本的な問題の所在といいますか、もとは何だということを考えてみますと、いろんな方面の貸し手、借り手、それを監督する人たち、役所、政治家を含めてですが、それぞれの方がそれぞれの責任を果たしていない、責任を放棄してしまった、そういうところにあるんではないかと、そんな感じがしてならないわけです。  お金を貸している人は、取り立てを一生懸命やって、もし取り立てができないというんであれば、財産処分なりなんなりをさせて、破産宣告までしてちゃんと貸した金を返していただく、そういう最善の努力をしなければいけないと思うんですが、それがなされていない。借りた人は、それこそ私財を投じてまでもやっぱりお金は返さなきゃいけない、そういう責任があると思うんです。義務があると思うんですよ。そういうものをすべて放棄してしまっている。そこに基本的な問題があるんじゃないか、そんな感じがしてなりません。  そこで、最初にお尋ねいたしますけれども商法に二百八十五条ノ四第二項という規定があります。この規定趣旨につきまして、法務大臣、ちょっと御説明をいただけませんか。
  9. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 商法二百八十五条ノ四の規定趣旨というお尋ねでございますが、御案内のとおり、商法は、会社財産的基盤の確保を図るという観点から、会社計算処理の適正を期するために幾つかの資産評価の準則を定めております。御指摘規定は、金銭債権評価につきまして、原則は債権金額資産の価格とするのでありますが、その金銭債権について取り立て不能のおそれがあるときは、その取り立て不能見込み額を控除して評価しなければならないと規定しているものでございます。
  10. 関根則之

    関根則之君 この規定強行規定だと思うんですね。だから、こういう状態になったときには、会社経理帳簿というのは必ずその取り立て不能の額を控除して、例えば十億の債権があっても実際の取り立てば五億しかできそうもないなと思ったら帳簿に五億として計上して五億の損を出さなければいけない、そういう経理をしなければいけない。そういう経理をすることによって配当その他をやらなければいけないと思いますが、そういう解釈でよろしいかどうか。
  11. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) その取り立て見込み額についてどういう判断をするかということは、会社役員等合理的判断にゆだねられるわけでございます。その合理的判断の結果、取締役として取り立て不能見込み額を控除しなければならないという場合であるのにかかわらず、なお債権金額全額を計上しているということであれば、取締役義務違反という問題になり得る事柄でございます。
  12. 関根則之

    関根則之君 合理的判断に基づいて損が出ているか出ていないかを決めるんだ、それはやっぱり取締役判断だ、こういうことですが、住専は一九九三年の段階で第二次再建計画をやっていますね。あの段階で既にもう取り立てば絶対無理よということがわかっていたわけですよ。もっと早くから実はわかっていたわけです。それで、現時点において損が発生しちゃっているということ、これ確定していますね。  だから、合理的判断に基づいて、少なくも平成四年、五年の段階で当然損が立つ、取り立て不能であるという判断をすべきであったし、この規定に基づいて損金を控除して計上する、こういう義務が発生していたんじゃないかと思いますが、いかがですか。
  13. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 法務当局といたしましては、御指摘の時期の住専各社財務内容について承知し得る立場にございませんので、個別の御質問についてはお答えいたしかねる立場にあることを御理解いただきたいと思います。
  14. 関根則之

    関根則之君 銀行法規定によって、大蔵省は、住専もそうですけれども住専に貸している銀行に対して監督権限があるわけですね。銀行株式会社ですから、今申し上げた二百八十五条ノ四第二項が当然適用されているわけですよ。だから、平成四年ないし五年の段階でそういう経理をやっていないで、十億の債権が実際は五億になってしまっているにもかかわらずまだ十億の債権として残っているんだと、そう考えて銀行経理をやり、それに基づいて商法規定によって配当をしたとすれば、それは法令規定に違反する業務執行であるというふうに私は考えます。  銀行法二十七条でそういう法令規定に違反した場合の規定があると思うんですが、それについてちょっと局長説明してください。
  15. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 御指摘銀行法の第二十七条は免許取り消し等に関する規定でございまして、銀行法令、定款もしくは法令に基づく大蔵大臣処分に違反したとき、または公益を害する行為をしたときには、大蔵大臣銀行に対しまして業務の全部もしくは一部の停止等を命ずることができることになってございます。
  16. 関根則之

    関根則之君 今申し上げたような、母体行あるいは一般銀行もそうなんですけれども住専に対する貸付金債権、これがもう全然取り立て不能になっちゃって、今住専七社で十三兆円ばかりの債権があります、住専側からは負債ですけれども。その債権が大体六兆二千七百億円になっちゃっているんでしょう。半分以下になっちゃっているわけですよね。物によってはもう全然取り立て不能というようなゼロになっちゃっているのがある。そういう状態というのは既に平成四年から五年にかけて、早いものは二年、三年に出ていますけれども、そういう状態になっちゃっていたわけです。  その当時の銀行が先ほど申し上げたような法律規定に基づいて不能額を控除して経理すべきものを経理していなかった、そういうことになれば、これは明らかに法律違反業務執行ですから、この二十七条を発動して業務停となり役員の解任なり、場合によれば銀行免許取り消しということをすべきではないですか、監督官庁として。監督官庁にはそういう責任があったんじゃないですか。現にあるんではないかと思いますが、いかがですか。
  17. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 金融機関は、商法等規定に従いまして、いわゆる取り立て不能債権につきましては償却もしくは引き当てをしなければならないわけでございます。御指摘のとおりでございます。  どのような債権をどの段階取り立て不能と判断するかという問題がございますが、その処理につきましては、毎期、監査役及び公認会計士監査を受けているところでございまして、私どもといたしましては各銀行がそれぞれ決算期において適切に処理をしているものと考えております。ただ、そういうことが行われていない場合には、もとより御指摘のような問題はあるわけでございます。
  18. 関根則之

    関根則之君 まことに無責任な答弁じゃないかというような気がしますよ。いかがですか、皆さん聞いていて。とんでもないですよ。監査役監査するんだからちゃんとやっているはずだと、と思いますと、こういうことでしょう。それが本当になされているのかどうかを検査監督する権限が、権限というのは責任を伴うわけでしょう。大蔵省が見にいって、おかしな経理がなされておる、監査役がおかしな会計を、やっていることがおかしいということを発見したら、それを直させるのが大蔵省責任じゃないですか。それをどうしてやらなかったんですか。
  19. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 私が今申し上げました監査役及び公認会計士という問題は、第一次的にはまず各企業がそれぞれの責任において会計処理を行うわけでございますが、御指摘のように金融検査というようなこともございます。私どもも、行政立場において、そのような経理が適切に行われているかということを常日ごろから監督しているところでございます。
  20. 関根則之

    関根則之君 常日ごろから監督していて、例えば百万円とか一千万円ぐらいの金がどこかへ行っちゃった、取り立て不能になったといろんなら私はわかる、監督官をそんな大勢置くわけにいかないんですから。しかし、金額が違うでしょう。  それから、もうとっくに、平成二年ぐらいから住専が危ないよという話はあったんですよ。中には危ないよという話があった。三和銀行の案が出たのが一九九二年の三月でしょう。平成四年の三月に三和銀行大蔵省へ持ってきているんです。これはもう大変だから、どうしようもないから住専を二つの会社に分離してともかく清算をしなきゃだめだと。これ大変な欠損が出ているんだということがはっきりわかったものだから持ってきているんですよ。  そういう状況の中で、監督はやっていますけれども、一次的には銀行に任せているんだからおれたち責任はない。それを見つけられなかった大蔵省責任があるのかないのか、大蔵大臣、はっきり答弁してください。
  21. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 住専につきましては、昨年の段階まで関係者の間では第二次再建計画に基づきましてその再建を図るという方針で努力がなされてまいったわけでございます。もとより、先生御指摘のように、それは非常に困難な見通しの立ちにくい問題ではございました。そういうところから、昨年の夏以降、やはりこれはもう清算をすべき段階ではないかということで、関係者の間で今回のような処理策をまとめるという方向になったわけでございます。  なお、御指摘平成四年当時の三和銀行から提案された問題でございますけれども、当時再建計画関係金融機関の間で議論をされておりましたころに、三和銀行より、日住金正常資産を引き継ぐ存続会社不良資産を引き継ぐ清算会社に分離をいたしまして、不良資産元本ロス母体行が負担するという処理案が示されたわけでございます。しかしながら、その案につきましては、結局当時他の母体行の同意が得られなかったこともございまして、三和銀行みずから撤回したものと私どもは承知をしているところでございます。
  22. 関根則之

    関根則之君 自発的に撤回したんだと、こう言っているんですけれども、そうでもないんですよ。衆議院審議寺村参考人が、前の銀行局長ですけれども三和から何か持ってきたと、それを見たときに係の人が、その案でひとつおやりになったらどうでしょうかと、そんな話を銀行の方にして帰ってもらった、こう言っているんですよね、大蔵大臣。  これはどういう意味なのかよくわかりませんけれども、多分三和大穴があいちゃっているんだと、日住金ですか、相手の貸付先は。日住金に対する金、大穴があいちゃっている、だから再建しなきゃいけない。さっき言った、自分貸付金に穴があいちゃって取り立て不能額がこんなに出ちゃっているんだと、それを処理しょうとして来たのに、大蔵省の役人がそんな案でやってみたらどうですかと、こう言っているというんです。  こんな無責任な態度はないんで、まさにそこのところで、銀行大穴があいているということになっていれば、それは大変なことだよと、自分で行って検査するぐらいのことまでしてはっきりさせて、もしその債権について銀行帳簿損金を控除してない経理をやっていたら、大蔵省は直ちに必要な監督権限を発動して是正措置をとるなり、さっき言った営業の停となりなんなりそういうことをすべきじゃないですか。どうしてしなかったんですか。
  23. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 今御指摘のございます商法二百八十五条に違反しているかどうか、その事実があった場合に銀行法二十七条の権限大蔵大臣として行使すべきものかどうか、今御指摘の点について大蔵省検査監督に不十分な点があるのかどうか、調査をしてみたいと思います。
  24. 関根則之

    関根則之君 そのときも私は問題があったと思う。現在も六兆二千七百億円の大穴があいちゃっているわけですよ、そうでしょう。これは全部母体行なり一般行、銀行が貸しているんですよ、ほかからも貸しているかもしれませんけれども。  大穴があいちゃっているのに、現に母体行の会計帳簿はどうなっていますか。それ、現時点ですよ、今ですよ。きょうの時点で、決算期でないと帳簿は締めませんけれども、例えば去年の秋の中間決算でもいいですよ、その時点でどういうふうになっているのか、それを調べていただけませんか。
  25. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 先ほども申し上げましたように、昨年の段階におきましては第二次再建計画に基づきまして関係者努力をしておる途中でございました。その段階におきます、すなわち前期の決算までのところは、それらの住専に対する貸し付けというものは再建計画に基づいて処理されるという前提会計上手当てをされていたということでございます。  しかしながら、昨年の十二月十九日にあのような政府の提案をいたしまして、民間金融機関の側においても住専はもう清算すべきである、このような認識をいたしましたので、三月末の決算におきましては母体行はそのような考え方、すなわち住専清算をするという考え方に基づきまして、形は多少各行独自のところもございますけれども住専に対する債権処理されるべきものという前提会計的に処理をされていると、そういうことになろうかと存じます。
  26. 関根則之

    関根則之君 ことしの三月期の決算でやればそれでいいんだというのは、まことに法の運用として、こんなものは取り立て不能の額が発生した時点でそういう経理をしなきゃいけないんでしょう。そういう状態が発生してから既にもう四年、五年たっているわけですよ。それを、政府の資金をつぎ込んで、財政資金をつぎ込んで住専処理をするということが決まった今の時点からやればよろしいんだなんて、そんな解釈はどこをつっついたって出てくるはずがないじゃないですか。明らかに銀行の怠慢であるし、銀行法律違反会計処理であるし、それを監督すべき大蔵省義務違反であると私は考えます。  大蔵大臣がさっき言いましたように、過去の経理のやり方、大蔵省責任を果たしていたのかいないのかの調査並びに現時点での経理状況というものをしっかり調べて報告していただきたいと思いますが、確認してください。
  27. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 商法二百八十五条に違反する事実が存在したのかどうか、そしてそのことが銀行法二十七条の権限行使に当たるのかどうか、そういう点を、今そういう事実がありたという前提でのお話でありますが、私どもとしては十分調査をした上でそういうことに該当するのかどうかを検討してみたい、このように申し上げたのであります。  もし、今御指摘のような問題について御報告すべき事実が存在すれば、その結果については御報告すべきものと考えております。
  28. 関根則之

    関根則之君 今いろいろ問題が起こっている中で、住専とか住専関係ある銀行大蔵省のOBの方がいわゆる天下りという形で何人ぐらい行っていらっしゃるか、現状をお知らせください。
  29. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) ただいま住専におります大蔵省のOBでございますが、社長が一名と会長が一名でございます。
  30. 関根則之

    関根則之君 銀行銀行住専だけじゃないですよ。
  31. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 銀行につきましては、全国の銀行全体で平成七年六月末現在百三十八名でございます。
  32. 関根則之

    関根則之君 今、大蔵大臣責任はないんだというような感じの答弁をなさいましたけれども、私は大変な責任があると思うんです。それで、それに対する国民からの非難が上がってきているんです。この際、こういう住専関係した人たち大蔵省銀行局で銀行監督をなさっていた方、直接はそういう仕事にかかわっていなかった方もいるんでしょうけれども大蔵省が中に立ってそこへOBのあっせんをしているに決まっているんですから、そういう人たちの一斉引き揚げみたいなことをやってみたらどうですか、そういうおつもりはありませんか。
  33. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) 最終的には公務員の天下り問題になるわけでございますが、やはり関係業界とは癒着してはならない、緊張関係を大事にするような形にしていかなくてはいかぬということが基本原則でございます。ただ、憲法上の職業選択の自由や国家公務員法制度の問題、あるいは役所の組織の効率性の問題等もございます。この点については慎重な判断が必要ではないかと考えております。
  34. 関根則之

    関根則之君 その程度の感じ方では、この住専問題に政府資金を投入する、これはなかなか納得をいただくというわけにいかないんじゃないですか、そんな弱腰で。大蔵大臣一どうですか。
  35. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 現在、金融機関におられる……
  36. 関根則之

    関根則之君 金融機関一般じゃない、住専関連の金融機関ですよ。
  37. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 住専の問題ですか。
  38. 関根則之

    関根則之君 住専関連の金融機関に百三十八人いるんですよ。
  39. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 住専関連といいますと、母体行、一般行三百行ございます。ほとんどのものが該当してくると思います。これらの方々を全員引き揚げるといいますか、やめていただく、こういうことを今私がここで申し上げることはできません。このことは金融機関の経営その他にも大変大きな影響を及ぼす問題であり、また個人の憲法上の権利にもかかわってくる問題もございます。  ただ、関根さんが今おっしゃいました御意見のその根底にあるものについては、私としても十分に理解をいたしているつもりでございます。
  40. 関根則之

    関根則之君 総理、今度のスキームの設定に当たって、政府が本腰を入れてこの問題を片づける体制といいますか、そういう対策が本当にできていたのかという気がして私はならないんですよ。今度の住専処理の案というのは、私は本質的に民間の私人間の対等な立場における和議だったんじゃないかと思いますが、住専処理の本質、そういうふうに理解してよろしいですか、大蔵大臣
  41. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 御指摘の私人間の和議というお言葉には非常に広い意味があろうかと存じますけれども、今回の住専処理策は、関係当事者間の合意を前提にいたしましてその損失負担等を定めたものでございますので、その意味で申し上げれば御指摘のような言葉も当たろうかと思います。裁判所が関与しない任意整理に分類されるものと考えられます。  なお、法律上、和議と申しますと二種類ございまして、一たん破産手続が開始されてから移行する破産法上の強制和議と、それから破産予防のための和議法上の和議とがございますが、これらはいずれも裁判所が関与するいわゆる法的整理に分類されるわけでございます。
  42. 関根則之

    関根則之君 対等な立場における私人間の和議に政府が入っていって、あっせんだとか調停だとか仲裁だとか、そういうことをやる場合がありますね。  労働省に伺いますが、労使関係が紛糾してきて国民生活に大変な影響が起こるなんというときには労働省で緊急調整をやったりしますね。あれだって結局役所が入っていきますけれども、地労委だとか中労委が入っていくけれども、そういうときに私人間の話をして、そこで賃上げは大体このくらいでもう話をつけろよ、しかし支払い者の方に、使用者の方にお金がないからそれじゃ政府で出してやろう、そんな話をしたことがありますか。ちょっと教えてください。
  43. 七瀬時雄

    政府委員(七瀬時雄君) 労働委員会の調整、先生ただいま御指摘のとおり、当事者に対して中立の労働委員会が働きかけてうまい妥協を求めていくということで、最終的にそれを合意するかどうかは当事者の問題でございますので、仲介に立った労働委員会がその履行について経済的な負担を負うというようなことはございませんし、そういう例はございません。
  44. 関根則之

    関根則之君 当然ないと思うんですよ。  それで、ともかく銀行は貸した金を取りに行かなくなっちゃったんですよ。そうでしょう。取りに行けば返してくれない。返してくれないとどうなるか。破産宣告なりなんなりをやるとそこで損金が出てきちゃうわけです。自分の任期中に損が出て決算で赤字計上をしたら、そんな頭取は二期ももたないですね、直ちに責任問題が起こっちゃうから。みんな追い貸しから飛ばしからそういう手法を講じて、追加融資までしてやって返させて、次から次へと不良債権がそのまま残っちゃう。先ほど申し上げたいわゆる取り立て不能の債権をそのまま置いていたんです。それが今度の結果でしょう。  そういうことをやっているから銀行サイドもどうにもならない。借りた方は、ともかく土地が下がっちゃって十分の一になったんだから返す金なんかありませんよ。返す金があったら教えてくださいよと、そんなことを言っているわけでしょう。どうにもならない。金融倫理の崩壊ですよ。貸した人も借りた人も責任を果たさなくなつちゃった。どうにもならなくなっちゃった。そこで、政府がやっと重い腰を上げて、大蔵省が多分出ていったと思うんです。  だから、出ていって、ちゃんと片づけなきゃだめだよということをきちっと権限に基づいてやればいいんですよ。それで話し合いをさせればいい。金まで出す必要はないじゃないですか。どうして出したんですか。
  45. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 初めに委員からも御指摘がございましたように、最近の金融情勢を見ますと、責任放棄、義務放棄というお言葉がそのまま当てはまるかどうかは別といたしまして、確かに貸し手、借り手それぞれの金融的な倫理というものについていろいろ問題があるような事例が見受けられると、私どももそのように感じていたところでございます。とりわけ、その象徴となっておりますのがこの住専問題でございまして、関係者の数が複雑多岐にわたっておりますがゆえに、そのような義務と申しますか責任というものがなおざりにされやすかった、その結果が顕著にあらわれていたということは言えようかと存じます。  このような問題は一日も早く解決しなければいけない、先延ばしをすればするほどそのような弊害が大きくなるということで政府として今回のような提案をし、それに賛同することを民間にも求めたわけでございます。その場合に、関係者の意見の対立が最後のぎりぎりの段階でどうしても詰まらなかったところ、その点について政府としても財政資金というものを拠出していただくことを国民にお願いすることはいかがであろうか、これは先延ばしをするということに比べると御理解をいただけるということではなかろうか、このような考え方で御提案を申し上げているところでございます。
  46. 関根則之

    関根則之君 私は何も非難をするためにこういう発言をしているんじゃないんですよ。最初申し上げましたように、国民がわからないんです、そこのところが。どうして政府は金を出さなきゃいけないんだということを素直な気持ちで私どもに言うわけですよ、後援会の集まりや何かに行きますと。ゆうべも実は私、言われましたんです。  そういう状況だから、こういう私の質問に対して、関根の言っていることは全然めちゃくちゃだよ、そんなむちゃなことを言ったってだめなんだ、こういうことだからこういう理屈で出さざるを得ないし、出すことの方が政策として正しいんだということを教えてくださいよ。私に教えるんじゃなくて、私の後ろにいる選挙民、国民の皆さんに教えてくださいよ。そういう気持ちでやってもらいたいんです。  いろいろ聞いてみると、どうもやっぱり今回の住専のキーワードは迅速円滑ということにあるんじゃないか。たしか総理も施政方針演説の中で、この問題を迅速円滑に片づけるためにはどうしてもここで、和議であろうかもしれないけれども政府の金を出して片をつけないと大変なことになるんですと、そういう説明だったと思いますけれども、そういう物の考え方でいいんですか。筋からいったら本来いかがかなと思う問題だけれども、このまま置いておくとだめなんだ、迅速円滑に片づけるためにはどうしてもここで出さなきゃいけないんだと、そういう考え方なのかどうか、確認をしたいと思います。
  47. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 早期に解決を迫られている課題であるという点においてはそのとおりでございます。そして、この当事者間の合意を得た上でその合意に基づいて最も早期な解決が可能となる、今円滑と言われましたが、そこの合意が得られるような形の解決の方策を探って、そのことによって金融システム上の一層の混乱を防ぎながら内外の信用を保全する。そういうことは、大局的に見た場合に国益、今あなたが言われました公益を守るという政治の責任にかかわるもの、それが政策的な判断と決断を必要としたものだと考えております。  もし、今言われるようないろいろな問題点もあるということで、公的な関与を合意に至らずということで中断をいたす、停止をいたしましてこれを法的処理にゆだねた場合に、公益という立場から考えた場合に大変大きな国益上の損害に発展をしていくというおそれ、可能性というものが見えている場合に、政府としては可能な限りの対策を講ずるというのが責任であろう。  私は、これは民事に関する問題でありますから、本来ならば財政支出を行うことなく処理できることが最も望ましいことだと思っております。そのことが困難な場合、その公益の政策上の判断というのは政治の責任ではなかったかと思っているのでございます。
  48. 関根則之

    関根則之君 当事者の御協議によって話をするんだと、こういうお話ですよ。それはそうでしょう。余りコンフィスケーション、完全に強制収用みたいな形でやるなんということはなかなか難しいということは私もわかっているつもりです。しかし、それにしても、どうも役所サイドのリーダーシップといいますか、監督権限も持っている大蔵省自分の意思を相手にのませていく、強制はできないにしても引っ張っていぐ、あなた方これだけやりなさいよと、そういう指導力というものが発揮されていないんじゃないかと思うんです。  アメリカの例のSアンドLを整理したとき、総理、御存じでしょうけれども、あれを始めるときにブッシュ大統領は、一九八九年の二月六日、国民に対して演説をきちっとやって、はっきり政策宣言をしているわけです。その中で、破綻している貯蓄系金融機関は、現行法に従って、FDIC、連邦預金保険公社の共同管理のもとに置くとはっきり言っているんですよ。共同管理のもとに置きますよということを言っている。  それから、お金の用意をいたします、今まで五百億ドル使っていたけれどもさらに四百億ドル追加いたしますと。合わせて九百億ドル、九兆円、それだけの金を用意しますと。と同時に、破綻金融機関の経営において悪事を働いた者たちを捜し出して罰するための全国的プログラムを実施するということを言っています。そのために司法省の予算を五千万ドル増加いたします、これによって担当の検事が大体倍になります、我々の金融市場で不正行為を働いた者たちを逮捕、訴追するための人員数は二倍近くなる、そういうことまでして政府資金の用意をしているわけですね。  こういうリーダーシップをしっかり発揮すべきではなかったかと思いますし、これからも発揮していくべきではないかと思いますけれども、総理、いかがでしょうか。
  49. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先ほど来議員から御主張のありますことを私は全く否定するものではありません。むしろ、昨年の夏の時点に戻りまして、この問題が喫緊の課題という認識を私どもが固めましてから、確かにこれは民間の債権債務の関係から発生した話でありますから本来当事者間の話し合いで解決を図ることが望ましいということで、関係当局は一生懸命努力をしてきたと私は思っております。  しかし、関係する金融機関が預金受け入れ金融機関も含めまして非常に多いということ、そしてその利害の錯綜する中で当事者の意欲と努力、あるいは能力もあるのかもしれません、それだけでは解決ができないという状況が生まれておったこともまた事実だと私は思います。  そして、これ以上この問題を先延ばししていく場合、仮に法的措置によるということになりましても、その権利が非常に入り組んでおるということは、逆に言えばそれぞれの金融機関がどれだけ、将来いつの時期に負担をしなければならないということが全然明らかでないままに問題の解決までの時間を必要としていく。これは国民の預金を受け入れている立場金融機関というものに対し国民の不安感を募らせることでもありますし、同時に国際的には我が国の金融システムというものへの不安がどうしても高くなってきて、ジャパン・プレミアムと言われるようなものが現に発生しておりました。そういったことで国益を大きく損なう危険性がある。  そうした中で、もう一方で景気の回復というものを我々は重視していくとすれば、この状況を何とか安定させて解決をしていかなければならない。その最後のぎりぎりの手法として公的資金の投入という決断がなされた、私はそのように受けとめております。ですから、手順が違ったという御指摘は私は素直に受けなければならないところがあると思っております。  同時に、現在の時点において、私どもは預金保険機構、住専処理機構というものをフルに活用して、大蔵大臣・副総理が前に答弁で使われた言葉を使わせていただきますならば、不正のある者は地の果てまでも追って債権を回収するんだという言葉を使われましたが、その方策が国会で御論議を得て御承認をいただけない状況において身動きのつかない状況にあります。  私どもとしては、一日も早く住専というものを住専処理機構で引き取り、住専というものはつぷしてしまう。その債権回収に全力を挙げる。そのプロセスにおいて不正があればこれを追及し抜くことは当然でありますけれども、先日来申し上げておりますように、紹介融資等の中に法に照らして問題があるものがあるならば当然その責任も追及していきたい、そのような姿勢で臨んでおります。ぜひ御理解をいただきたいと思うのであります。
  50. 関根則之

    関根則之君 総理はこの住専処理案をお決めいただいたときの総理ではなかったということもあるわけでございますけれども、どうかひとつ、公的資金を使う以上、ただ和解だ、協議だ、当事者間の話し合いだということだけで、それにただ乗っているというような姿勢ではなくて、やっぱりそういう民間、私人のいろんなやり方に対してきちっと自分たちで引っ張っていく、そういう指導性をぜひ発揮していただきたいと思います。  ところで、今までの答弁の中で、母体行の責任は三・五兆円の現在の貸付残高を全額放棄すればそれで済むんであって、それ以上うっかり協力したりすると株主代表訴訟にもなりかねない、そんな趣旨の答弁がありましたけれども政府母体行の責任は三兆五千億を放棄するだけで済んだと、そういうふうにお考えですか。
  51. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 衆議院予算委員会におきます答弁の最初から一貫して、母体行が三兆五千億の債権を放棄すればそれで母体行の責任は終わったと言われるほど簡単なものではない。特に、母体行は住専の設立段階から出資、人事、経営、すべてに支配的にかかわってきたそういう経緯がある。その責任を考えれば、母体行はみずからの責任を明確にすると同時に、新たなこの住専問題処理のための負担についても検討すべきであるということを私は一貫して申し上げてまいりました。今もそう考えております。  したがいまして、先ほど総理が申されましたように、債務者を私どもは一切免責しない。そしてまた、住専は今度の住専処理機構の設置に伴って債権の譲渡を行うと同時にこれは整理される。そういう立場とあわせて、責任のあります母体行に、貸し手責任と同時に住専問題に関する責任を私はぜひ真剣に考えて果たしていただきたいと考え、今も機会あるごとにそのことを先方にも伝えられるように努力をいたしております。
  52. 関根則之

    関根則之君 大蔵大臣の答弁、積極的な姿勢、これからも母体行の責任をさらに追及していくんだ、そういう姿勢について私は高く評価しますよ。しかし、惜しむらくは、これは住専処理を決める前に最善の努力をしてもらいたかった。しかし、いいことは遅くなってもやって悪いことじゃないんですから、どんどんやっていただきたいということをまずお願いしておきます。  住専処理の問題で国民の納得を得られない理由は、やっぱり借り手、貸し手の責任、これは徹底的に地の果てまでも追いかけると言っているんですから、借りたやつが返さない、これはもう徹底的にやってもらうということですから信頼をしておきます。それから監督責任がありますね。そういうそれぞれの三者の責任をきちっと私は追及することが必要だと。これをやってもらわなければいけない。  それからもう一つは、責任のとらせ方の中の一環かもしれませんが、債権回収をきちんとやるということです。これは土地の流動性を高めるとかそういう政策まで裏打ちしてやらないと、債権回収、アメリカの場合にはRTCが八七%の回収率を上げたということがありますから、ぜひひとつこれはやってもらいたい。  それからもう一つの問題は、その回収がちゃんとできるのかどうか、それに国民が疑いを持っているわけです、本当にやってくれるのかどうか。  もう一つは、私は、母体行にまだ支払い能力があるんじゃないか、そういうことを国民の皆さんが思っているんじゃないかと思うんです。もし母体行に負担能力があるとすれば、国民の税金をつぎ込む前に母体行がやっぱり責任をとってお金をつぎ込んで、六千八百億丸々持つかどうかは別として、ともがく母体行がそこで責任の一端を果たすということをやってもらう、そういうことじゃないか思うんです。  大体、住専というのは子会社でしょう、母体行の。金融界においては子会社の面倒は見る、子供をつくったら子供がやった不祥事は自分でちゃんとしりをふくというのがこれはもう当たり前の話なんで、金融界では母体行が子会社責任を持つ、そのことが日本では確立された善良な商習慣になっているんじゃないかと思いますけれども、いかがお考えですか、大蔵大臣
  53. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 今お話しございましたことはよく私どもも理解のできることでございますが、例えば子会社という場合にも、商法上の子会社としてこれを規定することは非常に難しい状況にあります。そういう問題も含めて、私どもは、法的に母体責任をこちら側から要求できる、そういうものが考えられるかということについても検討をいたしたところでございます。  しかし、残念ながら、賠償請求権を持ちますような事犯についてはそのようなことが可能となると思いますが、今はそういう御主張になりましたような立場からの母体行の責任、社会的な役割、公共性、そういうものについて母体行自身と十分協議の上、母体行がみずからその責任にこたえられるような努力を私どもとしては全力を尽くしていく以外にない、こう思っておるのでございます。  そのことを通じて国民に御負担をおかけいたしますものが少しでも縮減される、できますならばそのような負担が最終的には税の問題、それから回収の仕方、そして母体行の新たな負担、こういうものを通じていわゆる国民負担と言われているような部分がなくなることに私どもは今後も努力しなければならないことと考えているのでありますが、そのことを進めるに当たっての出発点が決まらないということがどうしようもないこともあることは御理解をいただきたいと思います。  そういう意味で、法務・検察、警察、国税各面の協力体制もそれぞれに御検討いただいております中で、一日も早い住専処理機構の発足が今求められているのだと考えております。
  54. 関根則之

    関根則之君 母体行が一般行の立場として住専七社に貸し付けている金額がありますね。その金額は幾らぐらいですか。そのうち、今度の処理の中で返してもらう金額は幾らですか。
  55. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 住専七社合計で一般行の貸付額は三兆八千億でございます。そのうち、母体行が一般行として貸し付けたものは八割程度であると認識をいたしております。  したがいまして、そのうちどれくらい返済されるのかというお問い合わせでございますが、一般行全体については一兆七千億が放棄され、残りの二兆一千億が返済されることになるわけでございますが、そのうちの八割程度、二兆一千億の八割程度が母体行に対して返済される、こういう計算になろうかと存じます。
  56. 関根則之

    関根則之君 幾ら。
  57. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 一般行に返済される二兆一千億のうち母体行が一般行の立場として貸しておるものが八割ございますので、二兆一千億の八割程度が一般行としての立場にある母体行に返済される、こういうことになろうかと存じます。
  58. 関根則之

    関根則之君 どうしてはっきり数字を言わないんですか。八割だったら一兆六千八百億返してもらうんでしょう。そんなものは母体行として返してもらうんじゃないよ。一般行として貸していたからその分を返してもらうんだといったって、母体行というのは一つの銀行なんです、それぞれの銀行なんです。それが一兆六千八百億返してもらうんですよ。そのお金の一部を返すのを遠慮したら政府資金なんか出さなくてもいいじゃないですか。その辺はどう考えるんですか。
  59. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 住専が七社ございます。ある住専に関してある銀行母体行という立場にあるわけでございますが、他の住専に対しましてはほかの金融機関と同じ立場、いわば経営に関与しているとかあるいは設立に関与しているとかそういうことではなくて、単純なお金の貸し手といたしまして関与しているわけでございますので、そういう意味におきましては他の住専に対しましては一般行の立場として考えざるを得ない、このことも御理解をいただきたいと存じます。
  60. 関根則之

    関根則之君 法律上の立場が違うということはわかるんです。一般行として貸しているんだ、親元として貸しているんじゃないということはわかるけれども、しかし銀行なんというのはみんな重なっているじゃないですか。母体行であり一般行であるんですよ、そうでしょう。百六十八か何かが母体行でしょう、それから全体で三百ぐらいの銀行があるんですか。全部重なっていますよ。お互いに連絡しているんです。住専に対して母体行として貸したもの、それと一般行として貸したいわゆる債権をどう保全していくか、そういうものだってみんな相談しているはずなんです。母体行と一般行というのはいかにも別なようだけれども、実態は一体じゃないですか。大蔵大臣、どうお考えになりますか。
  61. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 法律上の分類によれば銀行局長が言うとおりだと思いますが、実際に住専問題にかかわって貸し手としての責任を論ずるときには、私は関根さんが今おっしゃいましたようなことで考えていくことにも妥当性がある、こう思っております。
  62. 関根則之

    関根則之君 日本の銀行経営というのは、一般の企業でもそうなんでしょうけれども、含み資産を非常に持っている。特に。右肩上がりに高度成長を続けているようなときなんかは地価が上がっていますから、物すごい含み資産を持っていたというんですね。母体行の含み資産というのは現時点で大分下がってきているとは思いますけれども、どの程度あるのか。  最近、株が少し持ち直してきています。橋本内閣の経済運営よろしきを得て、随分株が上がってきているんです。その株が上がることによって、去年の夏から秋の初め、この住専処理案議論されていたときに比べて株の含み資産というのは増加していると思うんですが、その辺の状況はいかがでございますか。
  63. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 全国銀行百五十行のベースで見まして、平成七年の九月末時点、発表されておる最新時点でございますが、株式、有価証券の含み益が十八兆七千億円でございます。当時の株価が一万七千九百十三円でございました。それに比べまして八年の三月末、今度発表されるであろう決算に反映されます株価が二万一千四百六円でございますので、この含み益も若干はふえることになろうかと存じますが、それは発表をされましてから正確にお答え申し上げたいと存じます。
  64. 関根則之

    関根則之君 推計でいいんですから、大体このぐらいになるんじゃないかと計算ですぐできるじゃないですか。今電卓がないからちょっと計算できないんだけれども、すぐできるんです。そういうふうに大蔵はともかく数字をできるだけ言わない。何で言わないんだ。さっきだってそうでしょう。一般行として返してもらった額が幾らになるんだと言ったら、全体で二・一兆円の八割相当ですと言って金額は言わない。そういうこともしっかり言って、これだけのものを返してもらうんですよ、しかしそれはこれこれこういう理屈があって使うわけにはいかないんだということを説明しなきゃだめです。そういう態度は大変国民の不信を買いますので、これから気をつけてください。  それから、株主代表訴訟の問題が、さっき御答弁いただきたいと思ったんですが、答弁がなかったんです。  そもそも、今度公的資金を使うわけでしょう。公的資金というのは国民お金です。大蔵省に入っているかもしれないけれども、こんなものは大蔵省お金でも何でもない、もとをただせば国民の税金なんですから。その税金を使うというのは、何のために使うかといったら、それは公益のために使うわけでしょう、さっきから御答弁いただいているように。一般国民が、住専なんか全く関係のない人たちが公益のためにそれだけの金を負担することを我慢しているわけです。新しい税金を取るわけじゃないけれども自分の納めた税金の中から使われることを容認するということです。要するに、公益を維持するために一般国民が協力しているということなんです。  金融界で御飯を食べている、営業をしている、仕事をしている銀行母体行、そういうものは一般国民以上にその公益の維持のために、金融システムが破綻したら大変なことになるんだ、日本経済がおかしくなっちゃうんだと。その中で飯を食っている国民の生活が破壊されるんだ。そういうこれは大変な社会破壊なんですよ。  それにつながるから持たざるを得ないというんですから、そういう、社会を維持するために、まさに公益に奉仕する、一般国民もみんな出している、そこへ母体行が出すことは一つもおかしなことではないと思いますよ。大体銀行経営の第一条には、公益を増進するためと書いてあるでしょう。そういうことなんだから、そこをはっきりとわきまえてやってもらいたいと思うんです。一般国民に率先して母体行が協力をしていく、そういう態度をしっかりと大蔵省は指導をしていただきたいと思います。  時間がなくなってまいりましたので、ひとつこういうことを検討できないかと思います。今、預金保険料の料率は〇・〇一二%、十万分の十二です。これを八十四に、七倍に引き上げるということですが、これをもうちょっとふやす、八倍にふやしたときに増収額はどのくらいになりますか。
  65. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 預金保険料、御指摘のように昨年度におきましては〇・〇一二%、それを現在では四倍にいたしまして一般保険料は〇・〇四八%になっているわけでございますが、この一倍に相当いたしますもともとの保険料は年間約六百七十億円、こういうことになりますので、七倍を八倍にいたしますとその差額六百七十億円程度が増収になると、こういう計算になろうかと思います。
  66. 関根則之

    関根則之君 負担を保険料という形で求めるというのはなかなか難しいと思いますけれども、一年間で六百七十億になるんですから十年で六千七百億になるわけです。十五年かかるというんですから、十五年間それをもしいただけば、利子分まで含めて政府資金に、公的資金に相当する金額というのはここで財源ができるわけです。だから、仮にそういうものをもって償還しますということになれば、これは財政資金を本当に投入したことにならない、仮にしばらく出しておくだけのこと、ちゃんと財源として返してもらうんですよという形になる。国民に対する説明ももう全然違ってしまうと思うんですが、そういうやり方は大蔵大臣、できませんか。
  67. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 銀行協会の側も、新たな負担を行うということになります場合に、名案という言葉を使われておりますが、なかなか考えられないというようなことを言われたこともございます。  私は、今お話しになりましたようなこと、いろいろなやり方というものを考えながら、最終的には母体行を中心とする新たな負担によって国民負担が軽減されるだけではなく、そのことによって経済の回復基調が促進され、そして新たな金融システムが確立される、こういうことによって国民的な利益が確保されるということにつながるよう、今お話しになりましたことも念頭に入れて考えていくべきことではあると思っております。
  68. 関根則之

    関根則之君 大蔵大臣はきのうの御答弁でも相当前向きに、母体行に対してさらなる寄与をお願いしているというお話がありました。先ほど私の質問に対しましても、これからも母体行に対してそういう対応をしていきたいという趣旨の御答弁があったと思います。  そこで、まだまだお聞きしたいことはあるわけでございますけれども、そのほかの問題につきましては同僚のこれからの質問に譲ることにいたします。  最後に総理に、大蔵大臣から先ほど御答弁をいただきましたような趣旨で、これからも母体行の協力といいますか、寄与といいますか、そういうものをもっともっと強力に推進していただきたいと私は思います。  予算はああいう形で衆議院から送られてきておりますけれども、これを参議院としては十分審議していかなければいけないわけでございます。予算予算として、もしこのまま通過成立するにいたしましても、内容的に一銭でも財政資金の投入額を少なくする、できればもちろん出さなくても済むようにしていく、そういう努力をしていかなければいけないと思うんですけれども、そういう方策、政府としての指導性の発揮、そういうものに対して総理大臣としての決意を表明いただければありがたいと思いますし、お願いを申し上げておきます。
  69. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先ほど来、久保副総理から政府としての決意は申し上げてまいりました。そして私どもは、いずれにいたしましても、この住専の問題というものを突破口として日本の金融の抱えております不良資産問題を何としても解決いたさなければなりません。  その喫緊の状況にありますこの住専問題で、これだけ多くの御心労を煩わせることをある意味では申しわけないとも思います。しかし、これを乗り切っていきますプロセスの中で、先刻来、既に私自身も多少触れましたけれども母体行を含めまして責任を追及していく努力を怠るつもりはありませんし、むしろ一刻も早くそうした作業に取りかかれるような御協力を心から願う次第であります。  全力を挙げて金融資産の抱える不良債権処理していくために努力をしてまいりたい、そのように思います。
  70. 関根則之

    関根則之君 終わります。
  71. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で関根則之君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  72. 井上裕

    委員長井上裕君) 次に、塩崎恭久君の質疑を行います。塩崎恭久君。
  73. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 自由民主党の塩崎恭久でございます。  きょうからテレビが終わった後の総括質疑が始まりまして、自由民主党、それぞれ個人の持ち味は出すとするにせよ、それぞれ分担をいたしまして質問させていただこうということにしておるわけでございます。私は、きょうは住専の問題の追及というよりは、これからの新しい金融システムのあり方であるとか、いずれも前向きのお話をさせていただこうというふうに思っているわけでございます。  取り上げる題材は、金融とそれからエイズの薬害の問題、この二つに大きく分けられるわけでございますが、「もんじゅ」の問題も含めまして共通点がこの三つにあるのかなという感じがいたします。何が共通点か、やっぱり行政のあり方が問われているのではないだろうか。  それぞれいわば政策の立案者とそれから制度の執行者あるいは監視をする立場行政、これが同じ組織に入っているがために今回のような住専の問題が起きたり、エイズの問題が起きたり、あるいはまた「もんじゅ」の問題が起きて真相解明が進まないというようなことが起きているのではないかなという気がいたすわけでございます。これから橋本内閣のもとで行革を力強く進めるということは、大河原理事からの質問の中でも御決意をいただいたわけでございまして、恐らくこの辺の政策の立案者とそれから制度の執行者の分離という問題がこれからは大きな柱になっていくのではないだろうか、こんな気がするわけでございます。  いずれにしても、それをところどころでちりばめながらお話をさせていただきたいと思うわけでございますが、本来、金融というのは余り目立っていない方が正常な形であって、今回のようにあって当たり前のものが実は当たり前でなくなりつつあるというところに大きな問題があるのだろうと思うんです。  今回の住専を初めといたしますこの不良債権の問題の教訓というのは、一つにはバブルの発生の責任というものが根底にあるのだろうというふうに思うわけでございますし、二つ目は金融機関監督の失敗ということだろうと思います。そして三番目は、今、関根委員からもお話がありましたように、それぞれ問題を先送りしてしまった、この責任の問題というのもあるのだろうと思います。それぞれの原因あるいは真相の究明と、そして何よりも大事なのは、二度とこういうことが起きないような体制をどうつくっていくのかというところが問題なのだろうというふうに思っているわけでございます。  特に、バブルの問題というのは、これは恐らく一億総バブルであって、だれしもがあのバブルの中で多少浮かれ過ぎであったり、失敗をして損をしたり、いろんなことがあったと思います。そして、政策面でもそれぞれの立場での失敗というのは大なり小なりあったわけでございまして、特に財政においても赤字国債から脱却したかに見えましたけれども、結局実は本当の実力で脱却したわけではなかった。バブルの自然増収で脱却をしただけで、まさにこれが財政再建をむしろおくらせてしまった結果になったという大事な問題もあります。  また、経済構造の改革という意味でも、本来あそこで、円高になったときにそのままストレートに影響が出てしまえば、雇用の問題というのは、今大氷河時代なんて言われておりますけれども、実はもっと早く出ていた。つまり、問題が先送りされてしまったわけであって、そういうことでこのバブルの責任というのは極めて私は大きいのだろうと思うわけでございます。  いずれにしても、その前に住専問題に対する姿勢の問題をちょっとお話をいただきたいと思うわけでございますが、先ほど関根委員からブッシュ大統領の二月六日の演説というのが引用されました。私も引用しょうと思ったら先に引用されてしまったんですが、私がここで問題にしようと思っているのは、二月に実はもう一つブッシュ大統領がテレビで国民向けに演説をしている。アメリカはよく大きな問題があったときには、決断をしたときは、大統領みずからがテレビに出てきて国民全部に訴えかけるということをするわけであります。  その中で私は、この先ほどの記者会見での演説を含めて二つ大事なことがあったのだろうと思うんです。一つは、政府監督責任を明確にブッシュ大統領は認めたということだろうと思いますし、もう一つは包括的なプログラムを一度に出したということだろうと思うんです。  これは、実はその大統領のテレビ演説を当時アメリカにいて見た人が述懐をして書いていることでございますが、こういうことを言っておるようでございます。「八〇年代前半、われわれはS&Lの監督に失敗した。」と。大統領みずからが失敗したとおっしゃっている。そして、「われわれは過去を反省しなければならない。」、「納税者の資金を、ひとつの産業の救済のために使うことには、様々な議論があることは承知している。しかし、長い目で見た場合、問題をこのまま放置していることと、財政資金の投入により思い切って処理を進めることと、どちらがコストが安いだろう、どちらが経済のためになるだろうか。財政資金の金融システムヘの投入について、納税者の皆さんのご理解」をいただきたいと。こういうふうにまず失敗を認めた上で、そしてなおかつ包括的に先ほどお話が出たようないろいろなパッケージで出した。  今回、実は十二月十九日、当時の村山総理と武村蔵相がそれぞれ記者会見を夜中にやって、きのうの山本委員の話の中では余りよくなかった、こういう話でありますが、あのときが十二月十九日。そして、金融制度調査会の結果でこれからの新しい金融システムがどうなるかというのが十二月二十二日に出てきているわけですね。そして、罰則強化の話はついこの間三月、そして金融三法はついこの間の四月と。そして、各種住専関連資料も小出し小出しに順々にしか出てこない。こういうことでありますから、やっぱり国民の皆さんは一番最初に納得ができないままにずるずる来てしまった、こんな気がするわけであります。  この辺について総理として、そのときは総理ではありませんでしたが、反省をされるかどうか、ちょっと人はかわっておりますが、それについての御見解をまず伺いたいと思います。
  74. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、先ほど関根議員の同様の趣旨の御質問にも申し上げましたけれども、昨年の初夏のころにさかのぼり、この問題に政府が本格的な解決策を模索し始めた時点まで戻って物を考えますなら、まず途中における情報開示から確かに我々としてもっと工夫をすべきものがあったと思います。これは前政権の責任を言うのではありません。私もその中の一員でありました。そして、その論議のプロセスを明らかにしておけば、同じ対応を決断するにいたしましても私は国民の御理解はもう少し得やすかったかとも思います。  しかし逆に、私は全力を挙げて、先ほども民事の話というお話がありました、民間の話でありますから、民間の関係者の話し合いの中から合意を形成することにこだわり過ぎた、時間をかけ過ぎた、それが結果として唐突な決断のようになってしまったという御指摘は、それ自体が間違っているとは思いません。ただ、そういう努力を積み重ねる中で最善を模索し続けたということは私はお認めをいただきたいと思います。  ただ、政治というものは結果責任であります。議員が仰せられましたように、金融三法はつい先日ようやく国会に提出をさせていただくところにたどり着いた。そういうことを考えてみますと、パッケージとして当初にすべてを国民の前に明らかにし、その上で公的資金の投入についての国民への理解を求めたアメリカの手法の方がはるかにすぐれていたという御指摘は、私は謙虚に受けとめなければならないと思います。
  75. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 先般、平成会の白浜委員からの質問の中で、国会審議の柔軟性というお話がございました。政治の柔軟性というのは大事なんだろうと、私も全く意見は同感でございます。失敗を政権が認めるということはなかなかできないことでありますけれども、やっぱりそれができるような政治風土というものをつくっていく必要もあるのかなと私は思っております。  そして、そうは言いながら、今回の住専処理の問題というのは待ったなしの問題であるわけでございまして、早期に処理をしなければいけないということは私も当初から思っていたわけでございます。  それに関連して、先般、これもやはり白浜委員から、公示価格が出て、八月に路線価が出たときには随分損が広がるんじゃないかというお話がございました。私もそれを懸念する者の一人であるわけでございますが、そのほかに、例えば三月末までに住専から利払いをするかしないか、決着が随分もめているようでございますが、これも実は一般行、系統合わせて八百億ぐらい四半期であるわけであります。それから、ジャパン・プレミアムをちょっと計算してみますと、これはいろいろ計算例があると思いますが、大体〇・二%上がると四半期で四百億円ぐらいは高くなるだろうと。こういうコストもいろいろ考えてみれば、やっぱり早くしなければいけないというふうに思うわけでございます。  それに関連して一つ。  まず第一に、この間、合意というのが与野党で衆議院ででき上がりました。この間、お二方から質問が出ておりました。「制度を整備した上で措置する」という話は一体何じゃと、さっぱりよくわからない。テレビで討論会をやっておりましたけれども、全然反対のことを言っていると、こういうことであります。  しかし、我々は早期にやらなければいけないということを考えてみれば、常識的に考えれば、やっぱり住専処理法案を通した時点か、あるいは機構ができたときに執行をするというのが当たり前という感じが私はします。そしてまた、せいぜい金融三法が成立したころかなというふうに思うわけでございますが、総理の御見解はいかがでしょうか。
  76. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 与野党が合意され「制度を整備した上で措置する」とされました緊急金融安定化資金六千八百五十億円というものにつきましては、これまでもお答えを申し上げましたけれども、徹底した債権回収を図るための体制整備に一層取り組むべきことに加えまして、今後行われます特定住宅金融専門会社債権債務の処理の促進等に関する特別措置法案、この御審議における御議論などを十分踏まえながら措置してまいりたいと政府としては申し上げる次第であります。
  77. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 会期延長の話が新聞に少し出ているようでございますが、これはもちろん議会が決めることでありますから、政府がやるやらないという答弁をする立場ではございませんけれども、よもや会期延長を前提に時間をかけてまでやるというふうには考えておられないかどうか、お答えいただけましょうか。
  78. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) まさにその会期延長というものは、これは国会がお決めになることでありまして、これは私がとやかく申し上げることではありません。  ただ、委員のお話の中で、私ちょっと今気になったことがございます。参議院で平成八年度本予算の御審議を開始していただきましてから、きょうで三日目であります。私は、こういう時期に会期延長ということ自体が云々されることが大変不可思議でありますけれども、延長してまでやるつもりがあるかないかというようなお尋ねでございましたら、私どもは、もしこの住専関連の法律案あるいは金融三法案の審議についての政府の気持ちを問われるのでありましたなら、会期内にぜひ成立をさせていただき、一日も早く我々がこれらの問題に現実に手を染めていけるように御協力を心から願う次第であります。
  79. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 その御決意を聞いて、私も心強く思った次第でございます。  次に、バブル発生の責任の問題に移りたいと思うわけでございますが、八五年にプラザ合意があって急激に円高が進みました。そういう円高恐怖症の中でいろいろな施策がとられたわけでございますけれども、八六年の半ばには日銀の中でも、乾いたまきの上に乗ったようなものだと、インフレの火がついたら大変なことになるぞという認識もあったようでございますし、経企庁も八七年の八月には景気回復宣言をしている。そして、その間に土地やゴルフ会員権、絵画等々資産インフレも発生している。そういう中で、二・五%という当時で見れば超低利の公定歩合が何と二年三カ月も続いた。これがバブルの発生につながって、ひいては住専の問題につながっていったんではないだろうか、こういう指摘があるわけでございますけれども、日銀総裁、その点はいかがでございましょうか。
  80. 松下康雄

    参考人松下康雄君) いわゆるバブルの発生の原因につきましては、まず自由化、国際化などの金融経済環境の変化、あるいは首都圏への一極集中、また土地取引に関する法制、税制などのさまざまな要因が相互に影響し合う中で、経済全体にいわゆる右肩上がりという幻想が生じたということが大きいというふうに思います。  また、当時の金融政策運営について申しますと、それは国際的な政策協調が重視され、為替相場の安定と対外不均衡の是正、この重要性が強く認識される中でぎりぎりの政策選択が迫られたものであると考えております。  したがいまして、私ども後から振り返って軽々に論ずることができない面もあるとは思いますけれども、結果的に長期にわたる金融緩和にもバブルの原因の一端があったということは、これは否定できないところと考えております。
  81. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 いろいろな文献をひもといてみますと、総裁が今おっしゃった為替あるいは対外不均衡への配慮という中で、日本銀行は本当はこの資産インフレも含めて、あるいは資産インフレについては少し見逃していて反省をしているところも見られますけれども、本当は上げたかったけれどもなかなか上げられなかったというような記述がよく出てくるわけでございます。  質問としては大蔵省並びに日銀にお伺いをしたいわけでございますけれども、果たして日銀に対して大蔵省からいわゆる俗に言う圧力というものがあったのかどうか、これについてお答えをいただきたいわけでございます。そう言ったって、ありましたなんていうことをなかなか言うわけはないと私も思っておりますが。  新聞を見ると、例えば八九年三月、これ実は五月に利上げが行われるわけでございますけれども、大きく日経新聞の三月十五日に「利上げ、当面必要ない 大蔵省首脳が見解」、こんなこともありますし、また一般的なムードとしても、実はこれも日経新聞の八九年四月二十二日の社説を見ても、「自分勝手な利上げ競争は回避せよ」、こういうような話でありました。  ですから、どうも世間のムードあるいは大蔵省の中でも、今言ったような配慮で日銀が上げようとしてもなかなか上げられないような圧力があったんではないだろうか、そんなことがよく言われるわけでございますが、その点、大蔵大臣いかがでしょうか、それから日銀総裁も。
  82. 武藤敏郎

    政府委員(武藤敏郎君) 今、委員から八九年当時いろいろな議論があったという御指摘もございました。私どももそのように考えております。  日銀総裁からもお話がございましたけれども、当時の状況を見た場合に、やはり円高不況からの回復を求める国内世論への配慮、あるいは海外からは依然として内需拡大の継続が強く要請されていたという状況、あるいはブラックマンデー、いわゆる昭和六十二年にございましたけれども、その後、米国を初めといたしまして各国が株の連鎖安あるいはドル暴落を防止するために協調して金融緩和政策を行ったという事情もございます。  そういうこともありまして、結果として、いろいろ御批判があるわけでございますけれども、当時の状況の中では、国の内外からの要請にこたえて当時としてはそういう政策選択がなされたものというふうに考えております。
  83. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 当時の日銀の政策責任者におきましても、ただいま私の申し述べましたような国際環境のもとで、あくまでみずからの判断責任に基づいて政策決定を行ったはずのものでありまして、御指摘のような圧力に配慮したということではないと判断をしております。
  84. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 この点については、午後の服部委員からの質問できっちりとまたお話を詰めさせていただくということになっておるので、私はこの辺にしたいと思います。言ってみれば、こたつの中で足をけ飛ばしても顔はにこにこしていると、こういうこともあるわけでございますから、またこの点については服部委員に追及をお願いしたいというふうに思うわけでございます。  今回の住専の問題で何といっても大事なことは、金融機関監督に失敗をした。ブッシュ大統領は率直にそれを認めたわけでございますけれども、やっぱり私は失敗したと思うわけでございます。  そして、これは農林大臣にちょっとお伺いしたいわけでございますけれども、何度も出ているお話で、何度聞いてもよくわからない話ですが、三業種規制がなぜ系統にかかっていなかったかというときに、別にほかの報告を徴求していたと、こういうことがありますが、どのような報告をいっだれがウォッチしてそれを見ていたのか、この辺をちょっとお答えいただきましょうか。
  85. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 平成二年三月のいわゆる総量規制通達におきます農協系統の今おっしゃいました不動産業、建設業それからノンバンクの三業種に対します融資の実行状況の報告のことでございますけれども、まず不動産業それから建設業向けの貸し出しにつきましては昭和四十九年以降四半期ごとに、住専貸し出しにつきましては昭和五十五年以降半期ごとに、それから住専を除きますノンバンク向け貸し出しにつきましては平成元年以降四半期ごとに大蔵省、農水省はそれぞれ貸し出し状況の報告を受けていたということでございます。そういった三業種に対します融資の実行状況の報告をそういうことで受けておりましたので、あえて今おっしゃいました三業種に対する実行状況の報告ということを求めなかった、明記しなかったということでございます。
  86. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 数字をとっていたということでありますけれども銀行の場合はその三業種規制でとまった、あるいは総量規制でとまった、しかし系統機関からだけは出ていったと。これがどうしてもよく理解できないので、なぜそうなったのかというのをもう一回御説明いただけますか。
  87. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 三業種規制についての報告というのは、事前にあったことは事実であります。これは何のためにやったかといいますと、いわゆる二〇%の員外貸し出しのチェックのためでございまして、塩崎委員が今おっしゃるような、バブルのさなかにあってこれをチェックするためのいわばチェックでは私はなかったと思うんです。  ただし、単協もそれから信連も農中も、それ自体の貸し出しの総量規制は適用されているわけであります。それ以前の通達で、金融機関貸し出しは自由だと。ところが、住専は御承知のように大蔵省の通達によって金融機関適用になっているわけであります。そういった緩みがあのバブルの中でどういう効果があったかということになりますと、非常に私は問題があったと思うんです。バブルの責任はだれかとさつきおっしゃいましたけれども、これも総ぐるみの中でおまえだけチェックしなかったのはおかしいじゃないかと言われましても、なかなか難しい問題があっただろうと。  それから、最後に申し上げなきゃなりませんのは、五年のいわゆる第二次再建計画、それからそれに先行する第一次再建計画のときに信連関係は引き揚げようとしたんです。もう何か危ないぞということはわかったわけでありまして、引き揚げを模索したのでありますが、これが引き揚げてしまいますと住専はそのときに一遍につぶれちゃったわけですね。したがって、各方面から何とか協力を続けてくれということで結ばれたのが平成五年のいわば大蔵省と農林省の局長のあの申し合わせであります。  この申し合わせの有効性についてはいろいろ議論がございましたけれども、当時、債権、債務者入り乱れる中で、それにまた信連もそれぞれ貸出金額が違う、事情が違う、その中でかんかんがくがくやっていたんではどうにもならないということで、そういう議論をまとめるためのいわばそれは一つの指針であったと。こういうことで、四・五%に二%ぐらい金利を下げます、あとは迷惑かけませんと、こういうお話でございましたので、さらにまた安心をしちゃったという経緯は事実上あるわけでございます。  そういう意味では、何で貸し出ししたんだと、こうおしかりをいただいても、あの状況の中でそれならだれが一体状況を把握できたかということになりますと、私も同情を禁じ得ないというのが実情であります。こういう状況の中で今信連や農協、いろいろのところで人事異動があります。いわゆる決算期に差しかかっております。いろいろのトラブルが各地で起こっておる。そういう意味では結果責任は免れることはできないなと、こういう気持ちで今慎重にその決算期を見守っておるのが実情であります。
  88. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 大蔵省にお聞きしたいと思うわけでございますけれども、信連というのは大蔵大臣監督者であるわけでございますね。今お話がございました。それでおまけに、大蔵省の設置法を見ると七つぐらい所管する事項が書いてありますが、そこに大きく「金融」と、こう書いてあるわけです。今、農林大臣いみじくも、だれが全部を把握できたのかということを考えるとなかなか難しいというお話がございました。  しかしそうなると、今回もそのまま農林は農林、銀行銀行でやれば、結局だれも全体を見ないということになって、じゃ、だれが全体の金融という面で責任を、今回これで系統のお金がたくさん出たことについてはいろんな責任追及はありますけれども、しかし金融というのは全体の問題だからこそ今回六千八百五十億円出しましょうと、こう言っているわけでありますから。  そうすると、今の農林大臣のお言葉でいきますと全体を把握する人がいなければいけないんだろうと思うわけでございます。そういう意味では、大蔵省の設置法の中に金融を見ることになっておりますし、また実は農業協同組合法にも信連は大蔵大臣が見ることになっているわけでありますから、その辺の大蔵省責任というのはやっぱり重いんだろうと思うんですね。その辺についてどうお考えでしょうか。
  89. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 大蔵省は金融システムあるいは金融全体について責任を負っているということは、御指摘のとおりでございます。そういう意味におきまして、農業協同組合につきましても設置法の中に明示的に規定をされているところでございます。  ただ、具体的な系統金融機関監督という点につきましては一義的には農林水産省において行っておられるところでございますが、同時に私どもも金融全体の問題としては相談をさせていただいていると、こういう立場にあるわけでございます。
  90. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 またその問題については後で申し上げますが、今回の住専の問題、先ほど関根委員からも問題先送りのお話がありました。それから、一連の信組の問題もそうでありますし大和銀行の問題でもそうでありまして、この問題先送りというのが非常に重要な問題だと思うのでございます。それぞれの問題について一いつ問題を把握して、初動をどういう形でいつやったのかということを御説明いただけませんか。
  91. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) この問題先送りという点につきましては、昨年の十二月二十二日の金融制度調査会の答申の冒頭におきましても御指摘をいただいているところでございます。「最近相次いで表面化している大規模な金融機関の経営破綻は、金融機関自身の自己責任意識の不徹底によりリスク管理が十分でなかったこと、従来型の行政手法によるチェックでは不十分であり、また断固たる処置がためらわれ、結局問題の先送りとなってしまったこと等を示している。」という御指摘をいただいているところでございます。  ところで、今御指摘住専問題あるいは信用組合の破綻、大和銀行問題についての御質問でございますけれども、それぞれの問題の発端という点におきましては、まず住専問題につきましてはバブルの崩壊をいたしました時期、平成三年から四年にかけて第一次再建計画あるいは第一次の調査等の時点かちこの問題の重要性、もう少し広く申し上げますと、ノンバンク問題の重要性ということで私ども行政としてもこの問題に取り組んでまいったところでございます。  信用組合の経営問題につきましては、直接の監督に当たります都道府県知事との関係で、従来は必ずしもこの問題に大蔵省といたしまして直接取り組んできたと言いがたい面もあったように思いますけれども、バブルの崩壊期にこの破綻という問題が具体化いたしましたのはまず信用組合の分野でございました。そこで、金融当局、日本銀行とも協力しながら、この信用組合の問題にもバブルの崩壊期以降真っ正面から取り組むという姿勢で臨んできておるところでございます。  大和銀行の問題は、少しまた色彩が違う、局面の違う問題かと存じます。十一年前に起こった事件ではございますけれども、昨年の八月に顕在化をいたしまして、それ以来この問題の早期解明に取り組んできた、こういうことでございます。
  92. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 この間、司法取引があって、大蔵省が意識的に発表をおくらせるというようなお話もございました。この点についてはまた別な機会でお話を聞くといたしまして、いずれにしても縦割り行政による無責任体制といいましょうか、それから金融全体を見るところがない、そして今のような問題の先送りをするというようなさまざまな問題の中でこういう問題が起きてしまった。  では、これから新しい金融システムをどうするのか。大蔵省も「二十一世紀に向けた金融システムの再構築」と色刷りまでしてこうやって今御説明をいただいておりますけれども、これからの新しい金融システムのあるべき姿、あるいは今後の金融行政のあり方について基本的な考え方を御説明いただけませんか。
  93. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 金融行政のあり方という点につきましては、先ほど申し上げました昨年十二月二十二日の金融制度調査会の答申で全体として御指摘をいただいておるところでございますが、金融の自由化、国際化が急速に進展いたしましたにもかかわらず、市場機能を重視し自己責任の徹底を求める行政への転換が必ずしも十分に行われてこなかったのではないかとの御批判をいただいているわけでございます。また、業界との相互信頼に基づいてきました細やかな行政というものを進めていく姿勢が、ともすれば不透明な行政として批判されてきたことも事実でございます。  このような御指摘を踏まえまして、今後は市場規律に立脚した金融システムを構築してまいりますために、今後の金融行政については、金融機関行政の間に一定の緊張感を保ち、また自己責任原則の徹底と市場規律の十分な発揮を基軸とする透明性の高い行政を行っていくことが重要と考えております。
  94. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 恐らく今述べられたお答えは、この十二月二十二日の「金融システム安定化のための諸施策」を受けてのお話だと思うのでございますが、今おっしゃったことはどの金融機関をカバーしているのかということをもう一回御説明いただけますか。
  95. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) どの金融機関という御質問の趣旨でございますけれども、あるいは大蔵省監督の対象となっているものだけのことを言っておるのではないか、こういう御指摘であるといたしますならば、恐らく金融制度調査会としては、直接大蔵省が所管している業種のみならず金融全般を意識して御答申をいただいているものとは存じますけれども、私どもが直接行政の対象といたしますものは大蔵省監督をしているもの、こういうことになろうかと存じます。
  96. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 そうすると、例えば農林系統金融機関とか政府金融機関、それから郵貯、ノンバンク、年金、商社、いろいろ金融をやっているところはあるわけでありますけれども、それらを全部カバーするわけではないということですね。
  97. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 金融制度調査会には農林系統金融機関の代表の方にも御参画をいただき、そういう問題をも意識しつつ金融制度全体のあり方を御議論いただいているわけでございますが、非常に具体的に系統金融機関のあり方という問題になりますならば、これはむしろ農政の分野で詳細に御議論をいただくことかと考えております。  なお、政府金融機関のあり方あるいは郵貯問題、確かにこれも重要な金融の課題でございますが、今までのところ金融制度調査会ではそのような点に関しましては直接議論の対象にはしてまいらなかった次第でございます。
  98. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 繰り返して申し上げますけれども、金融というのは全体を見るところがなければいけないと私は思っております。今のお話ですと全体ではないということでありますから、今大蔵省改革検討プロジェクトチームということも議論になって、私もメンバーでありますけれども、やっぱり今回の失敗から教訓を得た上の結果を出さなければいけないなと思っております。  この問題はまた後でやるとして、あと金融制度などの企画立案をする当局と検査監督当局は分離すべきだと私は思うんですけれども、先進国の中で大蔵省本体で検査とか監督をやっているところがあるかどうか教えていただけませんか。
  99. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 検査監督のあり方という点については、これはいろいろな議論があろうかと存じますけれども、その点は直接申し上げることはいたしませんが、御質問の先進諸国において直接大蔵省金融機関監督検査を行っているところということでお答え申し上げますならば、ドイツにおきましては大蔵省の連邦銀行監督局が金融機関監督検査を行っております。  アメリカにおきましては、これは非常に複雑な監督検査制度になっているわけでございますけれども、国法銀行、連邦法によって設立された銀行監督検査につきましては、財務省の通貨監督庁が担当していると、こういうことになっております。
  100. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 いずれにしても、大蔵省本体の中で検査をやっているところはないというふうな御説明だったんですか、今のは。
  101. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 本体という定義がなかなか難しいわけでございますが、ドイツの連邦銀行監督局は、たしか私の記憶ではベルリンにあったと思います。大蔵省そのものがボンにございますのに対してベルリンにございます。ただ、大蔵省の中の組織であることは事実であろうと存じます。  アメリカの通貨監督庁、OCCと申します組織は、いわば大蔵省銀行局というような内局という形ではございませんけれども、財務省の中の組織であるという点は間違いがなかろうかと存じます。
  102. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 人事交流はいかがですか。
  103. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) ちょっと私、人事の点までは詳細に存じてはおらないところでございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと存じます。
  104. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 今の質問は通告してなかったのでやむを得ないとして、次回また教えていただきたいと思います。  私は別々の組織、人であろうと思っているわけでございまして、冒頭申し上げた、ルールをつくる人とルールを守っているかどうかを見る人というのはやっぱり別であるべきだと思うんですけれども銀行局長、いかがですか。
  105. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) そういう意味におきましては、大蔵省行政といたしましても、ルールをつくる立場の組織と検査をする立場の組織とは別の組織になっている、大蔵省の中ではございますけれども、それぞれ行政の目的に合った組織になっていると理解をいたしております。
  106. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 同じ質問、大蔵大臣いかがですか。
  107. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 同じ省内でのことではありますが、その判断は非常に難しい問題だと。  ただ、やはりルールをつくる立場と、そのルールを実際に監督指導といいますか、検査する立場といいますか、そういう立場が完全に一本というのは不自然であろうと。ただ、これも、大蔵省という一つの行政機構の中でそれを分けるか全然別のものにするかということについては議論のあるところだと思っております。
  108. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 なかなか難しい問題で、これから私も詰めていきたいと思います。  次に、財政と金融の関係でありますけれども大蔵省設置法の中に、第三条第三号で「金融」という言葉が出てきます。それから第四条五十一号にやっぱり「金融」と出てきますが、この具体的な内容は何かということと、金融政策の本質というのは何かというのを、これ両方、大蔵省大蔵大臣に聞きたいんですが、この金融政策の本質については日銀にもお答えをいただきたいと思います。
  109. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 金融とは、一般的に、企業等の資金の不足主体が、その将来所得を支払い原資といたしまして家計等の資金剰余主体から現時点での購買力を意味する資金を調達することをいうものとされております。大蔵省設置法第三条第三号及び第四条第五十一号に言う金融についても、基本的には同様の趣旨であると考えられております。
  110. 武藤敏郎

    政府委員(武藤敏郎君) 金融政策の本質は何かというお尋ねでございますけれども、金融政策は一言で申し上げますれば、金融、通貨に働きかけることによりまして物価の安定あるいは持続的な経済成長をもたらし、これによりまして国民経済の健全な発展を達成していこうというものだろうというふうに理解しております。  また同時に、信用供与あるいは資金決済という面から経済取引を支える重要な機能を有しておるわけでございまして、このような機能が円滑に達成されるような市場の整備でありますとか金融機関の健全性の確保とか、そういう環境整備に努めることも政府及び中央銀行の大切な役割というふうに考えております。
  111. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私ども日本銀行におきまして行っておりますいわゆる金融政策でありますけれども、これはインフレなき持続的成長を達成いたしますために、日銀法によって政策委員会の専管事項と定められております公定歩合の変更あるいは日々のマーケットオペレーションなどを通じまして市場金利を誘導し、通貨価値の安定を図ることを通じてマクロ経済活動全般に影響を与えていく政策、そういうものとして理解をいたしております。
  112. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 先ほどの西村局長の中で、金融というのは結局金融政策なんですか行政なんですか。全然さっき言っているのはよくわからないんです。皆さんわかったら僕に説明していただきたいと思うんですけれども局長もう一回、いかがですか。
  113. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 先ほどは金融とは何ぞやというお尋ねでございましたので、多少かた苦しい表現でございましたけれども法律的な定義を申し上げたところでございます。  金融行政あるいは金融政策という言葉が一般的に使われます場合には、通常、これは必ずしも法律用語ではないと存じますけれども、金融政策というのは日本銀行が中心になって行っておられるような政策をいい、金融行政というのは金融検査だとか監督だとか主として大蔵省が中心になって行っているようなものを指されることが多いように私どもは理解をいたしております。そういう意味では、私ども、金融政策というよりも金融行政というものを担当しているという意識で取り組んでいるところでございます。
  114. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 金融政策は担当していないという意味ですか。
  115. 武藤敏郎

    政府委員(武藤敏郎君) 金融政策といいましても非常に幅の広い言葉かと思います。  公定歩合についてはどうかということでありますれば、これは日銀の所管事項であるということが日銀法に明確になっておるわけでございます。例えば、銀行券の発行高の規制、これは大蔵省の認可が必要でございますし、支払い準備率も大蔵省の認可が必要というようなことで、金融政策におきましても中央銀行行政当局がそれぞれ協調しながら行っているものというふうに理解しております。
  116. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 先ほど通貨に影響を与えるというふうに武藤さんはおっしゃいましたけれども、それは一体何を言っているんですか、金利を言っているんですか。
  117. 武藤敏郎

    政府委員(武藤敏郎君) 量、質両面でということで、金利もそれから量的にも含むものかと思います。
  118. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 ちょっと切りのいいところでやめろというお話がありましたのでここでやめたいと思いますが、また午後にその続きをやらせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
  119. 井上裕

    委員長井上裕君) 塩崎恭久君の残余の質疑は午後に譲ることといたします。  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十七分休憩      ―――――・―――――    午後一時開会
  120. 井上裕

    委員長井上裕君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  平成八年度一般会計予算平成八年度特別会計予算平成八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、休憩前に引き続き、塩崎恭久君の質疑を行います。塩崎恭久君。
  121. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 午前中、金融政策の本質というのは金利だ、こういうお話を日銀総裁並びに総務審議官からいただいたわけでございます。  そこで、御質問でございますけれども、公定歩合の変更というのは日銀の専管事項だと言われ続けてきているわけでございますが、これは日銀法の第十三条ノ三というところに書いてあるわけです。それと、先ほど来申し上げている大蔵省が金融を所管する、この金融との関係というのはどうなっているのかというのを大蔵省並びに内閣法制局に御説明をいただきたいと思います。
  122. 武藤敏郎

    政府委員(武藤敏郎君) 先ほどもお答え申し上げましたとおり、金融という言葉は非常に広い意味合いを持っておりまして、金融政策ばかりでなくて、金融システムの維持あるいは金融市場、そこに参加する金融仲介業者の健全性確保といったようなこと全体を含んでおるわけでございます。そういう意味で、大蔵省の所管事項としての金融は広い意味合いであろうと思います。  一方、日銀法は、御指摘のとおり公定歩合の変更につきまして所管事項というふうに定めておるわけでございまして、日本銀行判断に任されている事柄というふうに理解しております。  いずれにいたしましても、経済情勢についての密接な意見交換でありますとか、経済政策の運営に遺漏なきように金融行政当局と中央銀行当局との常日ごろの密接な意見交換というのは必要であろうというふうに考えております。
  123. 大森政輔

    政府委員大森政輔君) 私ども立場で申し上げられることは極めて限られるわけでございますが、要するに日銀法におきまして、二十条で手形の割引及び手形貸し付けというものを日本銀行業務にしております。それとともに、ただいま御指摘のありました十三条ノ三におきまして、そのような割引歩合及び貸付利子歩合、いわゆる公定歩合の決定及び変更は日銀の政策委員会がつかさどる事項とされている。  他方、大蔵省設置法におきましては、御指摘のとおりその所掌事務の一つとして財政と金融の調整とかあるいは国内金融と国際金融との調整という事項が掲げられております。  このようなことから概観いたしますと、大蔵省が金融に係る調整というものを所掌事務の一つとしていることはそのとおりでございますが、他方、公定歩合の決定、変更ということに限りますと、これは日本銀行法で日銀政策委員会の所掌事務としておるということが言えます。したがいまして、法律制度としましては基本的には日銀政策委員会によってのみ決められる事柄、これが公定歩合の決定、変更ということでございます。  ただ、日本銀行法におきましては、第六章で主務大臣、これは大蔵大臣であろうかと思いますが、主務大臣の監督規定が設けられております。この監督規定をどのように運用するかという問題、これはひいては高度に金融政策の立場から行われるものでございまして、この点については私どもとして言及する立場にはないということでございます。
  124. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 いささか専管というものがどういう定義なのかよくわからないところが今のお答えでもあるような気がいたします。  基本的には専管事項だという御説明もありましたけれども、しかしそうなると、先ほども申し上げたように、八九年三月に「利上げ、当面必要ない 大蔵省首脳が見解」というのはいささか行き過ぎではないのかな、これを圧力と呼ばないで何と呼ぶんだろうか、こんな気がいたすわけでございます。  そこで、金融政策と財政政策を同一官庁がやっているところが諸外国であるのかという質問でございます。それについて日銀並びに大蔵省、お願いいたします。
  125. 武藤敏郎

    政府委員(武藤敏郎君) ただいま金融政策と財政政策を同一官庁が所管している例はあるのかというお尋ねがございました。  先ほどから金融と財政という言葉と、金融政策と財政政策という言葉がいろいろ使われておるわけでございますが、私どもの理解する限り、米国におきましては御承知のとおり予算編成権を議会が持っております。これは非常に特殊な例でございますけれども、その他の主要国におきましては大体金融と財政が同一の大臣のもとにあるというのが大ざっぱに言って言えるかと思っております。  詳しく言いますと、そのお国柄によりましていろいろな事情がございます。いろいろな事情がございますけれども、総じて言えば今申し上げたようなことということでございます。
  126. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 金融政策という言葉の定義につきまして先ほど法制局長官からもお話がございましたけれども、私が午前中にお答え申し上げました日本銀行の専管事項として考えております金融政策は、これは金利の調整を主とするいわば狭義の金融政策と申してよろしいかと思います。こういう意味での金融政策、その点につきましては米国、ドイツ、フランスを初め多くの主要先進国におきまして独立した中央銀行によって運営されているというのが通例でございますから、そういった意味の金融政策とそれから財政政策というものを同一官庁が所管しているという例は少ないのではないかと思われます。  G7について見ますというと、イギリスにおきましては財政政策、金融政策双方とも大蔵大臣責任を持ってこれを実施いたしておりますけれども、最近におきましては、同国でも金融政策の方針を決定します際に、イングランド銀行総裁の判断大蔵大臣に対して明示的にお示しをしてこれを考慮するというように、いわば一体的な運用に心がけておられまして、その両者の定期協議の内容は一般にも公表されている、そういうふうな状態でございます。
  127. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 武藤総務審議官、今の日銀総裁のお答えについてどう思われますか。
  128. 武藤敏郎

    政府委員(武藤敏郎君) 私が申し上げましたのは財政と金融という言葉を使って申し上げたわけでございます。金融政策、財政政策と申し上げました場合に、ただいま総裁からお話がございましたとおり、イギリスにおきましては公定歩合操作は大蔵大臣が所管しておるという例がございますけれども、他の主要国におきましては公定歩合操作は中央銀行の所管事項であり、それは日本も同じであるというふうに理解しております。  最初に申し上げてちょっと言葉足らずで大変恐縮でございましたけれども、金融という言葉には、金融政策のほかに、先ほど申し上げましたとおりシステム全体、そこに参加するものへの監督というものも含まれておりますので、そういう部分は諸外国におきましても幾つか、もちろん細かい例外はあるわけでございますけれども、総じて大蔵省あるいはそれに相当する部局が主要な役割を演じていると、こういうことを申し上げた次第でございます。
  129. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 先ほど武藤総務審議官は、大蔵省は広い金融をやっている、その中に金融政策も入るとおっしゃったような気がするんですね。そうすると、金融政策も含めてやっぱり大蔵省はやつているんですか。
  130. 武藤敏郎

    政府委員(武藤敏郎君) 金融政策の定義、いろいろあろうかと思いますが、狭義で例えば公定歩合操作及び公開市場操作ということで申し上げますれば、これは中央銀行の所管事項であるということだと思います。しかし、金融政策の中にも、例えば支払い準備率操作というようなことは日本銀行の所管事項でありますけれども大蔵大臣がそれに対する認可を行うということになっておるなど幾つかの例がございまして、そういう意味で大蔵省もその金融政策の一部分を担っているというふうに申し上げたわけでございます。
  131. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 しかし、金融政策の本質は金利を動かすということでありますから、今のお話ですと、一体大蔵省が金融政策まで所管しているのかどうか、ちょっと今の説明じゃ不明瞭だと思うんです。日銀の専管だと言いながら、法制局長官も今おっしゃったように監督官庁としての立場もあるんだと、その辺があったと思うんです。ですから、いずれにしてもやっぱり不明瞭だと。私は、その辺は明確にしていくべきだろうという意味で、日銀法の改正をしなければいけないと思っておるわけでございます。  そこで、日銀総裁はきのうもおいでをいただいて、先進国の中央銀行法と比べて遜色のないことを強調しておられますけれども、具体的にはどんな点が日本に欠けていて、どんなところが参考になるのか、お話しいただけますか。
  132. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 各国の中央銀行制度は、それぞれの国の事情あるいは歴史的な背景によってさまざまでございますけれども、先進国におきましては概して中央銀行に対して高い独立性を付与しますと同時に、その反面、議会への説明などを通じまして議会制民主主義との接点を維持するように工夫されているほか、決済システムの運営を初め金融システムの安定確保における中央銀行の役割が明定されているケースが多いと思います。  特にヨーロッパにおきましては、最近、EUの統合を展望いたしまして統一中央銀行プランがマーストリヒト条約で合意されておりまして、これに基づきましてフランス、イタリアなど各国においてそれぞれの中央銀行制度の改革が行われつつあるところでございます。こうした動きが我が国の場合も参考になるのではないかと考えております。
  133. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 最初に聞くべきだったかもわかりませんけれども、改めて日銀法改正について今どう思っていらっしゃるのか。何度も歩かせて恐縮でございますけれども、お願いいたします。
  134. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 現在の日銀法は昭和十七年の制定でございまして、当時の時世も反映をいたしまして、例えば政府の許認可権等については相当強固な規定を持っております。しかしその後、昭和二十四年の改正で日銀政策委員会が導入をされまして以来、金利を中心とする政策事項について日銀の専管事項ということで運営をしてまいっておりますし、また法律全体の運用につきましても、戦後の実態に合わせた弾力的運用が行われてまいってきているように思います。  そういうことではございますけれども、今日の目からこの法律を見ますというと、今日の自由化されまた国際化された金融、経済というものの実態とはだんだんと離れている面も多いというふうに存じます。私どもといたしましては、それらの点につきまして今後の発展の動きも含めて広い視野から改正が検討されるということでございましたならば、そのプロセスに対しましては貢献できるように御協力してまいりたいというふうに考えております。
  135. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 新しい金融システムがこれから市場原理に基づいて、またその自己責任原則を大事にし、そして透明性の高いものにしていこうと、こういうお話でございますから、当然中央銀行たる日本銀行もそういう目にもさらされ、そしてまたそれなりの力をつけていく必要があるんだろうと思うんです。  大変失礼でございますが、よくお公家さん集団と言われたり、ぬるま湯と言われたりするわけでございますが、私自身がおりましたのでそれはよくわかっておりますが、ただ独立性を与えればいいというものではないんだろうと思うんですね。それは、ある一定の枠組みの中で独立性を与え、そしてまた先ほど議会との関係のお話が出てまいりましたけれども、そういうこともきちっとしなきゃいけないし、今申し上げた透明性というのもなければいけないと。  アメリカなんかはハンフリー・ホーキンズ法というものがあって、議会証言を定期的にやっている。それからFOMC、公開市場委員会というのが議事録を公開している、ガラス張りにさせている。こういうわけで、これが競争原理を働かせる理由にもなるんだろうと思うのでございます。  仮に、日銀に対して一層の独立性を付与するとするならば、現状以上の情報開示の努力というのがやっぱり要るんだろうと思うんです。それについてはどんなふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  136. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 議会制民主主義のもとにおきまして、中央銀行の政策決定の独立性を高めるということが行われますれば、当然それに伴いまして国民に対する中央銀行責任というものを適切に果たしてまいりますために政策決定の透明性も強化をする必要がございますし、また政策の内容につきまして詳細を一般に御説明申し上げ理解を得る努力も必要になると思います。  その場合におきましては、やはり一方では議会に対する報告というようなアメリカで行われている方式もございますし、また内閣を通じる、人事等を通じましての責任を明らかにするという点もございます。また同時に、政策決定の過程をいろいろな方法で国民に対して明らかにすることも必要でございます。  それらはすべて中央銀行の考えやねらいを国民に対して理解され支持されるように努めていくということでございますので、私どもはこれらの点につきましては今後とも一層努力をしてまいりたいと思っております。
  137. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 今、国会とのかかわりというようなお話も出ましたけれども、そうなるとすれば国会の受け皿というのも考えなければいけないのではないか。アメリカだったら銀行委員会とかいろいろあるわけでありますし、それなりの議員の質のアップというのも必要だろうし、調査スタッフというのも要るかもわからない。  それから、何よりも柔軟な運営ができる国会でなければ、公定歩合の話まで政治家が振り回すようなことがあってはならないと思うんですね。ですから、国会がきちっとした柔軟な運営ができると白浜先生がおっしゃいましたけれども、そういうような形で、ピケなんかで物事を決めるというような国会ではやっぱりいけないのではないかと私は思うわけでございます。  そこで、日銀の独立性を強めるということに関しての御見解、きのうも少しお話をいただきましたが、総理並びに大蔵大臣にお願いいたします。
  138. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 金融の性格からいたしまして、日銀の独立性を高めるということは今国民から非常に多くの意見があると心得ております。  私は、金融のシステムやルールなど全体にわたって経済の動脈としての機能、役割がよりすぐれたものとなってまいりますためには、単に独立して相互の連携をなくするというようなことであってはいけないと思っておりまして、経済の動脈たる金融の役割がより高められるために、それぞれの持つ独立性、権限というものをわきまえつつ十分な意思疎通が行われる努力が一方において払われていなければならないものと考えております。  日銀の独立性ということにつきましては、今非常に重要な論議の課題となっておりますから、本委員会におきます御論議等も十分に傾聴しながら、この問題に対して我々はどのように対応しなければならないかも今決めなければならないときに来ているんだと思っております。
  139. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 昨日、私はそれぞれの国によって財政当局と中央銀行のあり方には実態上差異があるということを申し上げました。また、現実の状況として、現行の日銀法の規定のもとにおいてこれまで特に政策運営上支障となるといった問題は生じてこなかったと思うということも申し上げました。そしてその上で、やはり金融システム、経済システムの根幹に触れる論議と並行して中央銀行のあり方というものは議論されるべきということを申し上げてまいりました。その意味で、今回日銀法の改正の論議が出てまいりましたプロセスが、私はこの住専問題というものを契機に浮上したという点に多少の危惧を覚えております。  例えば、日本の金融行政というものの中で長いこと指摘をされながら是正をされてこなかったいわゆる護送船団方式でありますとか、あるいは非常に厳しい規制とともに保護が加えられてきた行政というもの、これは反面から言えば透明性を欠くという批判を浴び、機動性を欠くという批判をも受けてまいりました。今日、金融自由化の大きな流れの中で次々にその規制は緩和され、あるいは撤廃され、同時に今回の住専の問題を契機として起こってきた議論の中で、より一層の情報の開示、透明性の向上といったものも求められております。私は、そうした流れとあわせて、金融システム、経済システムの変化とあわせて日銀法改正というものを議論していただくべきではなかろうか。そして、その流れの中に新たな姿を模索するということであるならば、私はそうした検討は将来のためにも有意義だと思います。  いずれにせよ、どこの国であれ、その国の財政当局と中央銀行との間はその国のいわば仕組みの中で動いていることでありますから、それぞれ特色もあり、問題もあろうかと存じます。我々はその中でベストの組み合わせを模索すべきと、そのように思います。
  140. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 今の橋本総理がおっしゃったことは、私も結論部分は大変賛成をいたしまして、心強く思うわけでございます。  先ほど来申し上げているように、この住専の問題にしても、あるいは「もんじゅ」の問題にしても、これから触れますエイズの問題にしても、これまでの行政のあり方というものが問われ、そしてまさに総理が今おっしゃったように、日本の風土に合った日本にふさわしい民主主義のあり方、官僚制度のあり方、政治のあり方、あるいは三権分立のあり方というものが私は必要なんだろうと思うわけであります。チェック・アンド・バランスの日本のあり方、あるいは民意の反映をどういうふうにしていくのか、こういうような問題というのが大変重要なんだろうと思うわけであります。  ハンフリー・ホーキンズ法というのは、先ほどちょっと触れましたけれども、これは別に中央銀行の公開のためだけにあるわけではなくて、もともとこのベースにありたものは一九四六年の雇用法というアメリカでできた法律であります。ここで実は経済諮問委員会というのも中ででき、大統領の年次経済報告というのもでき、それから上下両院の合同経済委員会というのもできたんです。つまり、戦後のアメリカの経済政策のフレームワークというものをこの法律で四六年につくったんです。  その後、変動相場制になり、そしてまたインフレの経験もし、新たにハンフリー・ホーキンズという法の形で直して、またいろいろな形のものを追加していく中で、まさにその中央銀行であるFRBの報告をせいとかなんとかいうような話が出てきたわけであります。ですから、そういう意味では私は日本の経済政策全体をどういうふうに調整していくのか、どういうふうに総合調整していくのかというのがこれからの我々の課題であろうと思うんです。  それぞれお役所は、今回の住専問題にしても何にしても、一生懸命やっていることは私もよくわかっているつもりでございますが、それはオーケストラのようにきちっとオーケストレーションしなければ、先ほどの農林と大蔵が別々にやって金融は全体としてだれも見ないというようなことではやっぱり今回のような問題が起きてしまうわけであって、その辺はきっちりとした新しい仕組みというのをつくらなければいけない、むしろこれは政治のリーダーシップでやっていかなければいけないことではないかなというふうに思っているわけでございます。  そのような意味で、これから国会、あるいは議員立法でもいいのかもわからない、新たなこれまでの官僚制度ではないものを、仕組みをつくりながら、新しい経済政策の総合調整機能というものをどうやっていくのか、その辺のお考えを経企庁長官並びに総理にお伺いをいたしたいと思います。
  141. 田中秀征

    国務大臣(田中秀征君) 塩崎委員の御質問の趣旨はよく理解できます。  まず、政府の役割として、新しい経済政策を企画立案したり、あるいはまた経済の実態を正確に迅速に統一的に把握する、そういう機能というのはどうしても必要だと私は思います。そのために、情報を収集し調査し分析する、この機能も必要となるわけです。その上にまた、政府の経済関係部門を調整していく機能も、いかに小さな政府になっても、この経済運営、マクロ政策を担当する機能というのは私は必要だというふうに思っております。  そう認識した上で、それでは今それを担当している経済企画庁は十分にその役割を果たしているかということになるわけですが、残念ながら十分に果たし得ているというふうには思っておりません。そしてまた、そういう状態にもないというふうに思わざるを得ない、そんな気持ちであります。  これは塩崎委員も当庁に関係してくださったことがおありなので申し上げるまでもないんですが、やはり右肩上がりの拡大経済、拡大財政の流れの中では期待される役割は果たし得たと思います。しかし、経済が低成長になって厳しい財政運営を強いられる、そういう状況下で各省庁がしのぎを削る、食うか食われるかというそういう状態になりましてから、横並びの形での当庁の存在というのはこれでいいのかと私は思っております。本当に横並びならいいけれども権限が弱い形での横並びで調整機能を預かうて十分に役割を果たし得るのかというと、正直言って大変疑問に思っております。  だったらどうしたらいいかということになるんですが、私は、このところ内閣の調整機能の強化、見直し論が盛んになっておりますが、そういう調整機能全体の見直しの流れの中で当庁の役割とか位置づけというのも見直していく段階に来たかなと、そんなふうに思います。金融行政の改革、再編ということが課題になっておりますけれども、そういう流れの中でも当然これは視野に入れていかなければいけない、そんなふうにも思っております。
  142. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 結論から申しますと、経企庁長官が御答弁になったものと余り変わらないんですけれども、私はもっと経済企画庁がみずからの機能を強化し調整機能を強めてくれることをむしろ願っております。  組織というのはっくればつくるほど全体としての力は弱くなると私は思います。むしろ、既存の組織をいかに活力を持って仕事をしてもらうか、要は私はそこにかかるように思います。そして、例えば新たな第三者機関といった御提案がよくあるわけでありますけれども、往々にしてその事務局にどこから人を得るかという点が忘れられておるような気がいたします。  アメリカのように職場の移動が非常にフリーに行われるところでありますと、民間から人を得ることも比較的簡単にできます。また、その人が民間に出ていくことも非常に簡単であります。そのかわりに、その間のバリアは非常にかたいものがある。そして、外に出たとき、官にあるときに自分が知っていた知識で行動した場合のペナルティーは極めて強いものがありますし、その時代のコネクションを使って仕事をすることに対しても非常に厳しい制約が課せられております。  我が国の場合には、今日まで終身雇用制というものの中でそれぞれの仕組みができ上がってまいりました。他から転じてくる人を受け入れやすい仕組みではありませんし、他に転出していって新たな職を求めるにも極めて難しい社会構造でありました。  今後、これが変化していきますと、また私は相当いろいろ違った工夫も出てくると思います。しかし、人材を得るということを考えましても、私は経済企画庁がより強い役割を果たしてくれることによってその使命を全うしてくれることを願っております。
  143. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 さまざまな問題があるわけでございますけれども、やはりここは政治のリーダーシップでもって新しい日本を支え得るだけの経済政策、全体のミクロ、マクロ含めてやれるような仕組みづくりというものをしなければいけないなというふうに思うわけでございます。  そこで、最後の話題でございますが、エイズ薬害問題に移らせていただきたいと思います。  三月末に和解が成立をいたしました。参議院でも今度参考人を呼ぶということになっておりますし、衆議院の方でも先般原告団をお呼びになったようでございます。  この和解成立を踏まえて、ちょうど厚生大臣に在任されたときにスモン和解で御苦労された御経験をお持ちの橋本総理は新三党合意を踏まえてどういう御指示をされてきたのか、そしてまた現時点での御感想、今後の課題についてどういうふうに思っていらっしゃるのかを御披瀝いただきたいと思います。
  144. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、今回の和解に向けての菅大臣、またその前任であります森井大臣、関係された各位の御努力に改めて心から敬意を表したいと思います。そしてまた、その敬意を表する公の場を与えていただいたことにもお礼を申し上げます。  この和解協議につきましては、節目節目で菅大臣から御報告をいただき、私の方からも御参考になるようなことはその都度申し上げてまいりました。  七年に及ぶ裁判が和解の成立という形で大きく一つの区切りを迎えましたことを厳粛に受けとめております。と同時に、これは終わりではありません。むしろ、これから治療あるいは治療のための研究体制の整備といったことを我々は解決していかなければなりません。その中で、患者の方々の御意見も伺いながら、安心して治療を受けられるような対応というものをこれから厚生大臣にも御苦労をいただくわけでありますが、私もできるだけの支援をいたしてまいりたいと思います。  そして、一方ではその真相解明という問題もございます。同時に、エイズというものが国際的に今大きな問題になっておりますだけに、その治療、研究の推進とあわせまして、医薬品による甚大な健康被害というものを発生させないために、再発させないために、その再発防止のための対応というものも考えていかなければならないと思います。  なお、一点だけ個人的な感想を含めてお考えをいただきたいと存じますが、我が国では血液の必要量を献血によって賄っております。まだ私が幼かったころに、売血による黄色い血というものが非常に大きな社会問題になったことを記憶いたしております。そして、その反省の中から献血による血液行政というものが確立をいたしました。  私自身も献血の経験を比較的持っておる一人だと思います。しかし、その血液の量が十分に足りているかと申しますなら、残念ながら必ずしも献血によって十分に賄われているという状況では今日もないと私は思います。  殊に、特定の血液型になりますと、手術用の新鮮血を得るためにも関係医療機関は献血者の確保に大変苦労をいたしております。もし血液製剤というものの原材料を我が国の献血体制のもとにおいてチェックをされた血液で賄うことができておったとしたならば、この事件はどういう道筋をたどっただろうか。私自身は個人的にそのような思いを持っております。  献血というものがより国民の中に定着をし、必要な血液というものが献血によって補われる体制、同時にその献血がむだにされない血液行政というものを我々は求めていく必要がある。今回の和解に関連しそのような思いも持っております。
  145. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 ありがとうございました。  厚生大臣、今お話がありましたように、大変御苦労いただいたわけでございますが、これからまさに治療を含めて恒久対策が大変大事だというお話がございました。これについてのこれからの方針についてまずお伺いしたいと思います。
  146. 菅直人

    国務大臣(菅直人君) 今、総理からもお話がありましたが、この和解に至ります過程では前森井厚生大臣、そして橋本総理、また与党三党の皆さんにはプロジェクトをつくっていただきまして、原告団との間を含めて非常に積極的に取り組んでいただいた結果がこういう形になったのではないかということで、私からも関係者の皆さんにお礼を申し上げたいと思っております。  恒久対策でありますけれども、エイズ訴訟の和解は成立をいたしましたけれども、エイズ医療体制の整備については現在全力を挙げてその対応を進めているところであります。  具体的には、とりわけ患者の方々から強い要望が寄せられているエイズ治療研究推進体制の整備ということがあります。これにつきましては、国立国際医療センターの病院にエイズ治療や臨床研究などを担当するエイズ治療・研究開発センター、これは仮称ではありますが、こういうものを設置して基礎研究を担当する国立予防衛生研究所のエイズ研究センターの充実を図り、連携をする中で治療、研究、情報及び研修を一体的に推進するセンター的機能を整備していきたいと考えております。  また、エイズ拠点病院につきましては、これは全国どこでもエイズに対する高い診療水準が維持できるように、あるいは確保できるようにということで今後とも一層整備充実をするとともに、センターとの連携を図りながら研修などを通して診療水準の向上、均質化を図りたいと考えております。  また、エイズ治療薬が、アメリカなどでは次々と新しいいい薬が出ているわけですが、できるだけ早く患者の方々に行き届くように迅速審査の実施によるエイズ治療薬の早期供給や、承認される前にもエイズ治療薬を治験という形で実質的には使っていただけるような、そういう形を進めているところです。  さらに、差額ベッドの問題についても、エイズ拠点病院を中心に御本人の意に反した不適当な差額徴収が行われることがないように万全の措置を講じていきたいと思っております。  具体的には、エイズ拠点病院には個室をきちんと整備するよう促進を図っております。また、新たに医療保険の診療報酬における重症者加算という制度の中で、他の患者さんから逆にいろいろと病気がうつってくるという、免疫が低下している方が多いものですから、そういうことを防止するための治療用の必要からエイズ患者が個室などに入った場合には、この加算の対象といたしまして、これにより差額ベッドの徴収が行われないよう医療機関の指導を徹底したいと思っております。  厚生省、都道府県に差額ベッドに関する苦情相談窓口を設置して、不適当なところについては個別的にも指導していきたい、このように考えております。これらの措置につきましては、先日、四月十二日にエイズ拠点病院の病院長及び都道府県の担当者の緊急会議を招致いたしまして、私からもあいさつを申し上げ、それぞれの問題について議論なりあるいは方針の徹底を図ったところであります。  こういった問題のほか、鎮魂慰霊の措置など御遺族の意見を伺いながら進めなければいけない問題、さらには恒久対策で他の問題も幾つか残っておりますが、それらは原告団の皆さんと協議をしながらさらに推し進めていきたい、こういう状況にあることを御報告申し上げます。
  147. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 最後の質問になろうかと思いますけれども、先ほども総理から再発防止の問題が御指摘ございました。やはり住専の問題と同じように真相究明と、二度と同じことが起きない体制づくりということが大事なんだろうと思うんです。  業務行政の見直しということでございますけれども、これのポイントというものを、プロジェクトチームができたやに聞いているわけでございますが、どう考えているのかお話ししていただきたいと思うんです。  今回の例のエイズ研究班というのは聞けば聞くほど法的根拠のないものであって、権限も何もない、記録も正式にとっていない、課長レベルの私的な研究会、これがまかり通っていたということでありますから、段ボールの中にファイルが残っている程度のことで済まされてきてしまった。この辺の法的な位置づけのあやふやさ。それとか、薬事法の第六十九条の二に「緊急命令」とか、七十条に「廃棄等」というところがあるわけですけれども、これには回収義務というのはなくて、回収を命ずることができるという、まあやってもやらなくてもいいような形になっているわけであります。そういうようなまずい事態が発生しそうなときには、やらなければいけないというような改正をやっぱりやらなければいけないんじゃないだろうか。  それから、これは銀行検査の問題と同じでありますけれども、アメリカではFDAというのがあって、これまたかなり独立性を持った組織として新薬の承認等々をやっているようでございまして、この日本型のチェック・アンド・バランスの仕組みというものをこの点でどう考えていかれるのか。こういった点を含めて簡潔にひとつお願いいたします。
  148. 菅直人

    国務大臣(菅直人君) 今御指摘いただいたことは、それぞれ今回の問題の反省をする上での大きな論点だと思っております。  今回の血液製剤によるエイズ感染問題の反省の上に立ちまして、医薬品による健康被害の再発防止に最大限努力をしていくこととしており、そのために、まず厚生科学会議に臨時的に新たなメンバーも加わっていただいてこの会議を開催して、そこからいろいろ有識者の御意見をいただきたいと思っております。  また、同時並行的に、事務次官を長とするプロジェクトチームを設置いたしまして、以下に述べるような項目について議論をしていきたいと思っております。第一点はいわゆる政策決定プロセスのあり方、第二点は情報提供のあり方、第三点は薬事行政及びその組織のあり方ということで進めていこうと思っております。  エイズ研究班に頼り過ぎたという点につきましては、エイズの原因が十分に解明されていない段階で、関係する専門家の協力を得るということは、それはそれで必要であったと考えておりますけれども、政策判断に直結する段階におきましては、やはり権限責任が明確な組織にその判断をゆだねるべきではなかったかと。今回の場合、そこが明確でなかったという意味で、この政策決定プロセスについて検討したいと考えております。  また、国の一定の場合の回収命令の義務づけなどについて、厚生大臣の薬事法上の権限の行使は、まあ権限は与えられているんですが、どういうときにそれを行使するのか、その時点の医学的、薬学的治験のもとにおける専門的かつ裁量的な判断によるものと考えております。  しかし、今回の反省に立ってみますと、今後この規定を運用する上では、薬事法上の安全性確保の権限を行使する上でのマニュアルの作成などが必要ではないか。つまりは、大臣といっても実際には自分判断することは難しいわけですから、どういう場合には回収をするんだというようなマニュアルの作成が必要ではないか。こういうことを通して、迅速かつ的確な権限の行使が行われるように努めてまいりたいと思っております。  また、承認審査の体制につきましては、一つは諸外国についても、厚生省で担当している承認審査に関する人員は大変少数で行っておりまして、そのかわりにといいましょうか、専門家に中央薬事審議会などで御協力をいただいているところです。今、塩崎委員の方からアメリカのFDAの例を挙げていただきましたけれども、確かにアメリカの場合は医薬品等の審査をFDAでかなり独立的にやっている。  日本の場合は、そういう審査も業務局でやり、ある意味では産業育成的な要素も同じ業務局で担当していたという点で、これはやはり審査については多少独立した形の方がいいんではないだろうかと、こういう意見があることも十分踏まえて、今後プロジェクトの中で業務行政全体にわたる組織の見直しを考えていきたいと思っております。  そういったことで、厚生科学会議やあるいは省内のプロジェクトの検討を踏まえて、何としても今後の医薬品による薬害の再発防止、健康被害はもう起きないようにということで頑張っていきたいと思っております。
  149. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 今FDAのお話が出ましたけれども、冒頭申し上げましたように、日本の行政のあり方、これは総理がおっしゃるように、それぞれの国の風土や歴史を踏まえた上でのお話でございますけれども、やはり考え直さなければいけないだろう。そして、その中の柱というのは、厚生大臣も今お認めをいただいたように、厚生省の中の人がこの審査もやっておられるということで、ちょうど銀行検査大蔵省の中にあって育てる方と検査をする方が一緒になっている、こういう問題があるんだろうと思うわけであります。  ですから、これからの日本の行政改革を進めるに当たっての一つの大きな柱として、政策の立案者と制度の執行者あるいは監視をする人、この辺はでき得る限り分けていく、日本型のチェック・アンド・バランスのあり方というものを追求していかなければいけないのかなというふうに思うところでございます。  きょうの質問は以上で終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  150. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で塩崎恭久君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  151. 井上裕

    委員長井上裕君) 次に、牛嶋正君の質疑を行います。牛嶋君。
  152. 牛嶋正

    牛嶋正君 私は、平成会の牛嶋でございます。  きょう、私の持ち時間は三十分でございますので、住専問題に限定して御質問させていただきたいと思います。特に、私は税の観点から、政府がお出しになりました住専処理案について幾つかの問題点を指摘し、それについて御質問をしてまいりたいと思います。  税の問題に入ります前に、私の質問の意図を十分お酌み取り願いたいために、ちょっと税に関係のない御質問を最初に二、三点させていただきたいと思います。  総理は、金融システムは我が国経済の動脈として極めて重要な枠組みを構成すると考え、その安定化は緊急の課題であって、住専処理に当たって財政支出を投入することもやむを得ないというふうに述べてこられました。私は、この考え方には極めて重要な要素が一つ落ちているんではないか、こんなふうに思っております。  それは、金融システムはなるほど経済社会の枠組みを決める重要な要素ですけれども、もう一つ重要な要素として財政システムが想定されるわけであります。両システムが相まって経済体制を支えているというふうに考えていいのではないか。先ほども経済システムという言葉が出ましたけれども、私は金融システムと財政システムとを合わせて経済システムというふうな概念になっていくんではないかと思っております。  総理が使われてきた経済の動脈という言葉を用いまして比喩的に表現させていただきますと、人間の体の隅々まで血液を送り細胞の活発な活動をすためには、動脈と一緒に静脈が必要ではないかと思います。ただ心臓から血液を送るだけではだめでありまして、それによって細胞に栄養を与えることはできますけれども、細胞の分泌物を集めてそれを処理してもう一度血液を心臓へ返さなければなりません。それは静脈の役割。私は、金融システムが経済の動脈であるとするならば、財政システムが静脈に当たるのではないか、こんなふうに思っております。  したがって、我が国の経済を立て直していくためには、金融システムの安定化、これも必要ですけれども、同時に財政システムの安定化、言いかえますと財政再建も進めなければならないのではないかと思いますが、この点についてまず総理にお考えをお聞きしたいと思います。
  153. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は議員の御論議を全く否定するつもりはありません。そして、まさに議員が述べられましたような観点から論議をいたしていくとすれば、まさに双方のシステムが有機的に組み合わせられてそれが最も効果的に運営される状態を想定し、そこに全体を誘導していくことがベストであろうという点は、私はそれを否定するものではありません。  ただ、問題として、今回その比喩は確かに私ども用いてきたことでありますけれども、御論議が住専処理というところに集中しておりましたから、金融システムの安定という点に力点を置いて私は御答弁を申し上げてまいりました。議員の論拠に対し、全く私は異論を申し上げる気はありません。
  154. 牛嶋正

    牛嶋正君 こういうふうに我が国の経済体制が両システムによって支えられているということになりますと、経済を立て直してもう一度安定成長の軌道に戻していくためには、先ほど申しましたように両システムの同時進行というのが望ましいわけですけれども、少なくとも金融システムの安定化を先行させる場合、その過程で財政システムの安定化をおくらせてはならないんではないか、私はこういうふうに思います。  どちらかのシステム安定を先行させることは私はいいと思います。そして今、恐らく金融システムの安定化に全勢力を傾注されているわけですけれども、しかし両システムで支えている経済であるとするならば、金融システムの安定化の過程で、少なくとも私は、財政システムの安定化をおくらせるようなそういう影響が出てはならないのではないかというふうに思いますけれども、この点について総理はどのようにお考えでございましょうか。
  155. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 論理的には両者が全くパラレルの関係を保つのがベストかもしれません。しかし、その上で私は、残念ながら今回、我々は議員と違う選択肢を選んだということを申し上げなければならないと思います。  なぜなら、私どもは一方におきまして、確かに歳出の増加とそれに見合うだけの歳入が不足をしておるところから公債に依存せざるを得ない部分がふえております。そして、財政の健全化という視点に論点を集約いたしました場合、この公債残高の増加というものは非常に大きな問題であります。当然のことながら、この累増にどこで歯どめをかけ、逆に歳出の中に占める国債償還費を圧縮できるかを我々は考えていかなければなりません。  同時に一方で、現実の経済が進行していきます中で、例えば現在のように景気の回復基調、しかしその足取りが緩い。それを引っ張っている部分の相当多くの部分に公共事業が役割を果たしている。そういう中で、民需にそれを移していくための投資が必要であるとするならば、私は、一時的に財政の悪化を覚悟した上で、なおかつやはりそれだけの歳出を覚悟すべき選択というのはあり得ると思っております。  金融システムの健全性を取り戻す場面におきましても、私は同様の選択肢はあろうかと考えております。
  156. 牛嶋正

    牛嶋正君 考え方の違いということを今御指摘になりましたけれども、私は経済というものが財政システムと金融システムによって支えられているという立場をとらせていただきまして、もう少し議論を進めさせていただきたいと思います。  私もこの問題を議論するに当たりまして、ちょっと比喩を使わせていただきたいのでございますけれども、それは我が国の経済を車に例えてみたいわけです。そうしますと、今申しました金融システムと財政システムというのは恐らくその車の両輪に当たるのではないかというふうに思うわけであります。  このことと関連してまず指摘しておきたいのは、この二つのシステムとも今の形が形づくられたのはいつかということです。これは、私は高度成長期から四十年代を通じてではないかというふうに思っております。そのときは、まだ我が国のGNPというのは世界のGNPの一〇%以下でございました。成長は大きかったんですけれども規模はそれほど大きくはありませんでした。それほどまだ大きくなかった車体に合わせて今の両輪がつくられていたということであります。  ですから、当時は非常にうまく回転をいたしまして高度成長が遂げられたわけであります。しかし、その後の我が国の極めて目覚ましい発展によりまして、今の状態はというと、この車体が非常に大きくなってしまった。そして、その当時つくられた両輪、すなわち両システムというのはもう支え切れなくなっているような状況、これが現状ではないかというふうに思うわけであります。  そうだといたしますと、これから住専処理というのは金融システム安定化の糸口だというふうにおっしゃいましたけれども、この住専処理の問題も含めまして、今スキームに見られるような部分的な補修ではどうにもならない状況になっているのではないか。金融システムにいたしましても財政システムにしても、非常に大きな改革を進めていかなければならない、こんなふうに思っております。  そのためには、全く新しい経済体制をつくっていくわけでありますから、これまでの考え方に基づいてはそういうふうな大事業というのはできないんではないかというふうに私は思っております。発想の転換、これが必要でしょう。それよりも何よりも、先ほどの御質問もありましたけれども、政治がリーダーシップを発揮していかなければこのような大改革は進んでいかないんではないか、こんなふうに私は思っておりますが、これについての総理のお考えをお聞かせください。
  157. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、政治がリーダーシップを発揮するということに全くこれも異論はありません。その上で、私は本院におきましても議員ともしばしば論議をさせていただいたところでありますが、政治が経済のルールにどこまで関与できるんだろう、市場の原理というもので動いていく市場に対して人為的に、政治といえどもその介入は人為であります、人為的に介入し、その方向を変える機能はどこまであるんだろう、私はそこが一つの問題点だと思います。  そして、私は統制経済を好む者ではありませんし、市場経済論者です。これは議員も同じ御見解をかつてちょうだいいたしました。そして、新しい経済システムとか、言葉で飾ることは非常にいろいろな言い回しのできることでありますけれども、私は、現在我々が解決すべき問題点の優先順位として、昨年来この住専問題というものをいわば我々が解決しなければならない金融機関の抱える不良資産処理の代表的なもの、喫緊のものとして前内閣から取り組んできたと思っております。  残念ながらまだなかなか御理解のいただける状況にはありませんが、さればといってこの問題を後に送ることができるかといえば、これを後送りすることに賛成される方もまたないと思います。そして、政府としてはこの問題を先送りしてはならないという決意のもとに、ここまで取り組んでまいりました。
  158. 牛嶋正

    牛嶋正君 この議論を進めるに当たりまして、もう一つだけちょっと総理のお考えをお聞きしたいのでありますけれども、今まで金融システムとそれから財政システムを並べて議論してまいりましたけれども、これらの両者は密接な関係があるわけでございます。  さらに比喩的に申しますと、私はその関係づけているのは車軸ではないかなというふうに思っております。その関係というのはそれではどういう関係なのかということですけれども、金融システムの関係しております領域というのは、総理も今おっしゃいました市場経済であろうというふうに私は思っております。すなわち、消費者主権とそれから企業の自由というものを前提にした市場経済であります。そこでは毎日の複雑な経済活動、それによって生ずる個人間あるいは企業間の利害の対立というのは市場で交換される財サービスによって調整されているというふうに考えていいかと思います。そして、その財サービスの交換の媒体が貨幣であるということです。ですから、財サービスの円滑な流れというのは貨幣の円滑な流れによって支えられている。そういう意味で先ほどから言っております経済の動脈であろうというふうに思うわけであります。  しかし、経済活動が行われるのはその市場経済だけではございません。もう一つ重要なのは非市場の領域であります。と申しますのは、すべての財サービスが市場を通じて供給されるわけではありませんで、非常に市場になじみにくい財サービスがございます。それは、典型的には国防とかあるいは警察とか消防といったようないわゆる公共財であります。我々の生活にとっては基本財でありながら、市場を通しては供給できない。それはだれがするのかというと、結局は国または地方公共団体が公共財として供給せざるを得ないわけであります。  その場合、問題はその供給にかかる費用をどういうふうに調達するかということであります。結局これは無償でサービスを提供するわけですから、強制的に税という形で徴収せざるを得ないわけであります。市場経済というのは、消費者主権、それから企業の自由、その根底に自己責任の原則が私はあると思います。  それでは、非市場の領域においてこの経済活動を律する原則は何かということですね。私は、それは公平であり公正、そしてもう一つは透明ではないかというふうに思います。この透明の原則、これは同時に市場経済にも適用されるべき原則であるというふうに私は思いますが、この点について総理のお考えをひとつお聞かせください。
  159. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今原則を三つに限定され、公平、公正そして透明という言葉を用いられました。従来であれば、私はそこに透明のかわりに入る言葉は中立てあっただろうと思います。  しかし、今システムそのものが動きつつあり、そしてその中で従来保護というものと裏腹の規制というものによって動いてまいりましたさまざまな社会構造、これは経済の世界でも行政の分野でも同等でありますが、ここに規制緩和というものが入り、それと裏腹に自己責任というものが強調をされるようになってきた中で、そこで中立という言葉のかわりとして透明というものが入ってくる、それは私は進行のプロセスとして別に異論はありません。
  160. 牛嶋正

    牛嶋正君 今私は金融システムと財政システムを結ぶものとして車軸ということを申し上げましたが、車軸というのは、ですからこう考えればいいのではないかなと思います。だれもが社会で生活していくために守らなければならない社会のルールを示しているということです。そして、そのルールを支えている根底に今申しました自己責任、あるいは公平、公正、透明といったような諸原則が置かれているというふうに考えるわけであります。  そこで、私は、この車軸というものが社会のルールを意味しているということであれば、また比喩的にお話をさせていただきますと、こういうことが出てくるのではないかと思います。  一方の車輪を補強するために、言うならば金融システムの補強を図っていく過程で仮にその車軸に亀裂を生じたりあるいは車軸を曲げるようなことになりますと、車は真っすぐ走らなくなってしまいます。そうしますと、いずれはもう一方の車輪も破損をしてしまうのではないかということであります。  したがって、金融、財政のいずれのシステムの安定化を図っていくためにも、まず守らなければならないことは、見直しに当たりましてもう一方のシステムにできるだけ影響を与えないような形でその補強をし、そしてシステムの安定化を図っていかなければならないのではないかということ。これはシステムを安定化していくために守らなければならない非常に重要なルールの一つだと私は思っております。  それからもう一つは、いずれのシステムを見直すに当たりましても、その根底にある、先ほどから言っております自己責任とか公平、公正、透明の諸原則にできるだけ基づいて、私はやっぱりシステムの安定化、車の補強を進めていくべきであろうというふうに思いますけれども、この点について最後に総理のお話をお聞きしたいと思います。
  161. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 委員が例えを使われましたので、私も同じ例えでお返事をさせていただくことをお許しいただきたいと思います。  まず委員は、両方の車輪というものが健在であり、その上で車軸にひびが入る、あるいは何らかの問題を起こすという引例をされました。しかし、私は今それよりも、車軸が健全かどうかを調べる前に片方のタイヤがパンクしかかっているんだと、すり減り方が偏りまして金融という方のタイヤがパンクしかかっている。財政というタイヤも実は相当摩耗しておりまして取りかえを急がなければなりませんけれども、それよりも先に片方のタイヤがパンクしそうな状況だと思っております。そのパンクを抑えていく、その上で車軸をきちんと点検もいたしましょう。もう片方のタイヤも交換いたしましょう、しかしまず走行中の車が路肩に寄って他の車をやり過ごして安全を確保しますためにもパンクのおそれをまずふさぎたい、私はそう思います。
  162. 牛嶋正

    牛嶋正君 私は、今の御議論なんですけれども、それでは、住専処理に関する政府・与党案が提案されてかなりの時間をかけて審議されながら、いまだに多くの国民の理解が得られていないのはなぜかと、こういうことなんですね。そのことを議論するためにちょっと長々と今まで議論させていただいたわけです。  私は、そこには二つ理由があると思っております、その一つは、住専処理に関する政府・与党案が社会のルールの根底にある諸原則を無視して作成された、ここに一つ大きな問題があるというふうに思います。(発言する者あり)それからもうつは、住専処理に関する政府・与党案がそのスキームの中に六千八百五十億円の財政支出を含んでいるわけですけれども、これによりまして社会のルールをゆがめ、すなわち先ほどの車軸に亀裂とかあるいはそれを曲げてしまうというふうなものがあったとしますと、財政システムの安定化に重大な影響を私は与えるのではないかということで、この二つの理由を挙げさせていただくわけでございますけれども、これについて大蔵大臣のお考えをお聞かせください。
  163. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 今ちょっと途中でいろいろ向こうからかけ声がかかりましたものですから、十分に聞き取れなかったところがたくさんございました。  私は、先ほど橋本首相がお答え申し上げましたことで十分に今の御質問に対してお答えになっているのだと思っておりますが、私も確かに、金融のシステムを安定させることのために同じようにやはり危機的な状況もございます財政システムに無理を強いているという結果になっていることは、これは御指摘のとおりだと思っております。  しかし、全体の経済という生命を助けるといいますか、そのことのためにまずどのような外科手術を手がけるか、こういったようなことはその状況に対する判断の問題だと思っております。その判断が的確であるかないかということについては、政治としては非常に重い責任を伴うものであることを十分に心得た上で、いろいろな経過と現状にかんがみて一つの政治的な判断を下し、そしてそのことを実行すること以外に先生が今御指摘になりました経済という生命を救出する方法はほかにない、こういう決断に達したものだと思っております。
  164. 牛嶋正

    牛嶋正君 税の問題に入りたいのでありますけれども国民の各層に広く薄く税負担を求めていく、こういった税改革、いわゆる税負担のフラット化でありますが、これは高齢化が進んでおります先進諸国の共通した税制改革の方向だというふうに思います。  我が国も平成元年に消費税が導入され、そしてまたそのとき、所得税に関しましてもそれまでの十段階の税率を五段階に整理する、フラット化するということがなされてきたわけであります。これによりまして納税者の数が非常に圧倒的にふえたわけです。すなわち、消費者がすべて納税者というふうになるわけでありますから非常に圧倒的にその数がふえたわけです。  それに伴いまして、税に対する考え方というのは非常に大きく変わってきているのではないか。その一つとして、納税義務は果たすけれども、しかし自分たちが納めた税がどういうふうに使われていくのか、これについて非常に厳しい監視の目を向けるように私はなってきたと思います。そして、自分たちが納めた税が公平かつ公正に使われているということを確認することによって税モラルというものが堅持されていく、維持されていくというふうに私は思うわけであります。  そうだといたしますと、今回の六千八百五十億円の財政支出に対しましてやはり国民の理解が得られるような説明をきちっとしておかなければ、税モラルというのがだんだんと低下していって、これから高齢化が進む中で税構造のフラット化を進めなければならないのにそれに大きな障害が生まれてくるのではないか、これが私が一番懸念するところでございます。  この点について、そんな懸念はないんだというふうにお考えなのか、税モラルと今回の財政支出との関係についてどのようにお考えになっているのか、大蔵大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  165. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 議会という制度が民主主義を基礎にして発展をしてまいりましたその原点は、今お話がございました税の問題であると考えております。  税を納めるのが幾らかということに関心が非常に強くて、一たん納税をした後は任せるというような議会制民主主義の未成熟な時代からいたしますと、今お話がございましたように、確かに今日では納めた税がどのように使われたかということに納税者が強い関心を持ち、そしてそのことに対し要求し、意見を議会に向けて述べるというようになることによって議会制民主主義は発展を遂げてきたと思っております。  そういう立場から考えてまいりますと、この住専の問題を処理いたしますために六千八百五十億円の財政支出を行うということについて、納税者であります国民の皆様方の十分な御理解を得るということが大変難しいことも私どももよく承知をいたしているところでございます。そのためにも国会において長い日時をかけての御議論をいただいているのだと思っております。  これらの議論を通して、国民の皆様方の御理解をいただくことによって将来的に国益が守られる、そういう政治の判断というものをどう納得していただけるかという努力が今日も皆様方の熱心な御審議を通じて続けられているものと考えております。  これらのことに関しましては、衆議院におきましては与野党、与党と新進党の皆さんとの間にいろいろの協議が行われて、合意事項というものが決められました。この合意事項は、残念ながら与党による修正案として提出され、衆議院を通過してこちらへ御審議をお願いすることになったのでありますが、この修正案が提案をされましたときの提案理由の一節に、住専の不良債権処理に財政資金を投入することの重要性とこのことについての国民の十分な理解と納得を得るために修正、つまり総則第十六条を追加修正するものであるということが提案の理由となり、この修正案は衆議院において可決されたのであります。  そういうことからいたしましても、今日もなお、皆様方にもぜひ御審議を通じて国民の皆様方の御理解をいただけるよう御協力をお願い申し上げる次第でございます。
  166. 牛嶋正

    牛嶋正君 私は国民の理解を得るのは非常に簡単だと思うんですよ。と申しますのは、最初に申しましたように、我々が守らなければならない原則を守らずにこのスキームがつくられてきたところにあるわけであります。したがって、自己責任の原則というものを今仮に守るとするならば、まず、なぜ住専が破綻したのか、その責任はだれなのかということを明確にしなければ、私は国民の理解の得られるようなスキームはできないんではないかと思っております。逆であるわけですね。いまだにその責任が明確になっていないということです。  ですから、私は少なくとも次の二点を今やっぱり率直に国民説明すべきだと思います。  一つは、住専処理の当初から財政支出の導入を予定されていたのかどうかということです。もしそうではなくて途中で財政支出の導入が議論されたとするならば、いつの段階で、そしてどういう根拠に基づいてその財政支出の投入がなされたのか、この点です。これがまず一点です。  それから第二点は、財政支出の六千八百五十億円、これはだれもが系統に対する補助金と考えているんです。ですから、補助金ではないんだという明確な説明をしていただければ、国民の、納税者の理解はすぐにでも私は得られるんではないかと思いますけれども、もう一度重ねてお尋ねをいたします。
  167. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 公的資金の導入の決定を最終的にいたしましたのは昨年十二月十九日の閣議決定でございます。これに先立つ長い論議の機会がございましたことは既に何回も御説明を申し上げたところでございます。  この六千八百五十億は、結局、住専問題を処理いたしますために、回収不能と申しますか、第Ⅳ分類とされましたいわゆる損失となっている部分、それから整理されます住専七社の欠損債務となっておりますものを合わせて六兆四千百億の負担、処理に当たって、当事者との間の協議に基づいて決定をされたということも御説明申し上げてきたところでございます。
  168. 牛嶋正

    牛嶋正君 十分な説明がまだやっぱり得られないんではないかというふうに思いますけれども、さらにきょうは法人税の問題もちょっと用意してきておりますので、法人税の方へ移らせていただきまして、住専処理との関係を少しお尋ねしてまいりたいと思います。  税構造が法律、税法でもって租税の原則であります公平、中立、簡素、この三原則をいかに満たしておっても、課税の執行の段階で課税当局の裁量が入ったりあるいは法律どおりになかなか執行が難しいという税は、それは公平で公正な税とは言えないんではないか、私はこんなふうに思っております。  こういう執行段階で裁量が入りやすい税というのは、私は法人税ではないかと思うんです。法人税の課税ベースであります法人企業の利潤を計算するに当たりましては、何百という費用項目がありまして、それを一々損金扱いするか益金扱いするかということで分けていかなければなりません。そんなことで、公平の点から問題のある租税特別措置の数も法人税は一番多いんではないか、私はこんなふうに思っております。  そういう意味で、今までの我が国の税制は法人税に依存してまいりましたけれども、非常に問題のある税を税制の中心に置いてきたというところがあると思うんです。私はここらをもっと早く直していかなければならないのではないかというふうに思っております。  この費用項目の中で一番問題になりますのは、減価償却費、それから交際費、広告費、寄附金でございます。今回の処理スキームで問題になってまいりますのは寄附金あるいは減価償却費の取り扱いについてであります。これは本則では決められておりませんで、ほとんどは通達で決められているというふうに聞いております。  母体行と住専関係というのは親会社と子会社関係ではないか、それだけに母体行に対していろいろな責任が追及されるわけですね。そうだとしますと、母体行が放棄する債権、これを課税上どう取り扱うかということであります。私は、今の責任論からいうと、これはやっぱり子会社に対する贈与であり寄附金ではないか、こんなふうに思うわけであります。それが今回のスキームでは損金扱い、すなわち無税償却という扱いをされております。  これには私はかなり相当な理由がなければならないと思いますけれども、その説明もほとんどされていないわけです。この相当な理由というのはどういうふうにお考えになっているのか、それは一般国民の納税者を説得できるような理由をお持ちなのかどうか、お聞かせください。
  169. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 今法人税の特別措置法などについてのお話が最初の段階でございましたが、私は特措法はその役割を終えたものは整理せられるべきものと考えております。  なお、後段で御質問ございました債権の放棄に伴う償却の課税の問題についてでございますが、これは今回のスキームに関して特別な例を設けようとするものではないと国税当局から私は報告を受けております。その内容につきましては、そのようなことで特例的な扱いを受けるものではなく、これは税法に伴う一般的な扱いが適用されるものと、こういうことで説明をいたしておりますので、詳細は、厳正にこれを適用しているものと考えております国税当局から説明をいたさせます。
  170. 若林勝三

    政府委員(若林勝三君) このたびの住専処理につきまして、母体行の債権放棄についての償却のあり方でございますが、金融機関に限ったことではございませんけれども一般に法人が債権放棄等を行った場合に生ずる損失でございますが、これは企業会計上は損失として処理されるわけでございます。委員が今御指摘ございました寄附金に該当しない限りは法人税法第二十二条三項の規定により損金の額に算入されることになるわけでございます。  ところで、その寄附金に該当するものにつきましては、法人税法の第三十七条によりまして損金算入に今制限が加えられておることは御案内のところでございますが、経済的利益の供与すべてが寄附金に該当するというわけではございませんで、その供与することに何らかの合理的な経済目的などがある場合には、従来から供与した経済的利益は寄附金に該当しないというふうにされておりまして、こういう考え方につきましてはもう先生御案内のことかと思いますが、判例等においても定着しておる考え方であるわけでございます。  したがいまして、先ほど例がございましたが、例えば法人が債務超過に陥りました子会社、こういうものを整理するという場合がございます。こういう場合、株主である親会社とか債権者などの利害関係者、こういう関係者債権放棄をいたしましたり、その整理に伴いましていろいろな負担をすることがあるわけでございますけれども、こういった損失というのは、それが社会通念から考えましてやむを得ないというようなものである場合には相当な理由があるということでございまして、税務上も損金の額に算入されるということになるわけでございます。  これは今回の住専処理のために特に認めるというものではないことは先ほど大臣からお答え申し上げているとおりでございまして、取り扱いの統一性、それから課税の公平を確保し課税の適正な執行を図るということで、税法の解釈あるいは取り扱いの基本として従来から法人税の基本通達において明らかにしているものでございます。もとより、税法に定められている基本的な考え方に当然沿ったわけでございます。  そこで、先ほどさらに、相当な理由があいまいではないかという御指摘もございました。一般的に申し上げまして、経済的利益の供与が寄附金に該当しない場合というのは種々の経済行為の場面で生じ得るものであろうかと思うわけでございます。また、事業関連性の強弱など定量化しがたい、数値で示すことが非常に難しい場合、困難な諸要素を総合的に勘案して判断せざるを得ない性格のものであるわけでございまして、想定されるすべての場合を通達で明らかにしていくということはなかなか難しいということもひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  171. 牛嶋正

    牛嶋正君 そういう説明を聞いても、一般納税者は法人税については非常にあいまいだなというふうな感じを持つわけです。  と申しますのは、住専に対する母体行の責任というのはいろんなとり方があると思いますけれども、この債権放棄をそのまま全部を無税償却ということになりますと、いわば半分しか負担していないことになるわけで、そんなことで母体行の責任はとれるのかということが一般国民の理解ではないかと思います。  そうだとしますと、全額とは言わないまでも、一部は寄附金扱いといいますか、損金扱いにしない方がいいのではないか。そうすることによって、私は、税のモラルというふうなものをある程度、今回の住専処理に関しまして先ほどから指摘しておりますように、モラルに対するかなりいろいろな形で悪影響を与えてきているわけですけれども、その一部でも防ぐことができるのではないか、こんなふうに思っております。  住専の今度の処理案が財政再建あるいは財政システムの安定化に悪い影響を与えるんではないか、今までそれを税のモラルを通して議論させていただいたわけですけれども、実はバブルのときは逆でして、政府が余りにも財政再建を急ぐ余り、金融行政におきまして幾つかのミスをしたんじゃないかというふうに思っております。その第一番目は、よく言われますけれども、総量規制の時期のおくれですが、私はもっと基本的にはやはり金融の自由化の段階金融機関に対して徹底的に自己責任の原則を徹底しなかった、ここが一番大きな問題ではないかというふうに思っております。  そうだといたしますと、やっぱりもう一度いろんなシステムを見直していくに当たりましては原則を大事にしなければならないということであります。このことから考えますと、私はこの原則を守るということは、言いかえますと今回の予算に盛り込まれております財政支出六千八百五十億の削減からそれが始まるのではないかと、こういうふうに思っております。  お答えは結構でございますが、そういうことを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
  172. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で牛嶋正君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  173. 井上裕

    委員長井上裕君) 次に、服部三男雄君の質疑を行います。服部三男雄君。
  174. 服部三男雄

    服部三男雄君 住専問題に関し、銀行の不良債権問題ということでお尋ねしたいと思うんですが、ここ数年間の日本経済が直面する困難の多くはバブルの発生、崩壊に端を発していると言っても過言でないと思うわけであります。  財政資金六千八百億円の投入の是非について今いろいろ論議されておりますが、その前に、バブルの発生、崩壊というのは、私の考えでは、これは日本の経済金融システムというものがなかなか現状と合わなくなってきている。システムのミスマッチから起こった問題であろうかなというふうに総括的には考えるんですけれども、やはりこの問題を徹底的に原因究明して、分析し、反省点を明らかにして、そこから新しい金融システムをつくっていく判断の材料というものをつくることが私たち政治家に課せられた大きな職務ではないかなと、このように思うわけであります。  まずその点で、先ほど塩崎委員も尋ねましたが、再度大蔵省並びに日銀に、このバブルの発生及び崩壊の原因、それから行政として何を反省点とするのか、この点についてお尋ねしたいと思います。
  175. 松下康雄

    参考人松下康雄君) いわゆるバブルの発生の原因についてでございますが、これは自由化、国際化などの金融経済環境の変化、首都圏一極集中、土地取引に関する法制、税制などさまざまな要因が相互に影響し合う中で経済全体にいわゆる右肩上がりの幻想が生まれたということが大きいと思いますが、他方で長期にわたる金融緩和にもその原因の一端があったことは否定できないところであります。  ただ、当時といたしましては、国際的な政策協調が重視されている中で、為替相場の安定と対外不均衡の是正の重要性が強く認識をされまして、金融政策の運営面でもぎりぎりの選択を迫られたものと理解しております。  ただ、一たん発生しましたバブルはいずれは自律的に崩壊せざるを得ないものでありますので、それに伴う経済への悪影響を防ぐためには、自明のことでありますけれども、結局バブルを発生させないということが重要なことであります。  この点を金融政策面について申し上げますと、そこで大事なことは、第一に、為替相場の安定や対外不均衡の是正のために過度に金融政策に依存した対応をとるということは適切なことではありませんで、あくまでインフレなき持続的な経済成長を目標としていくことが大事だということ、また第二に、資産価格の動向などにも十分留意をいたしまして早目早目の対応をとることなどであると考えております。
  176. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 今、専ら世の中では、バブル崩壊の過程の影響の大きさというものについて注目をされているわけでございますが、もとより発生の過程からこの問題を考えなければいけないわけでございます。  バブル期の地価や株価につきましては、後から振り返ってみますと、経済的な合理性を欠いたレベルまで高騰していたと考えられますし、その後急激な価格低下が生じることも必然的な市場の動きであったようにも考えているところでございます。  資産価格の変動の影響の大きさというものは、とりわけ金融機関のバランスシートというものに反映されるわけでございます。現在、私ども金融機関の不良債権問題というものに苦しんでいるわけでございますが、このようなバブルの発生、崩壊のプロセスを通じて生じました金融機関のバランスシートの回復というものに取り組んでいるということかと考えているところでございます。
  177. 服部三男雄

    服部三男雄君 日銀総裁の御回答を聞いていますと、日銀として為替の問題、内需振興ですね、貿易インバランスの問題に過度に集中して金融政策をやってはいかぬという非常に明確な反省点が出ていますが、どうも大蔵の方の回答を聞いていますと、発生の原因について大蔵に何か問題があるのかないのか、あるとすればそれは何なのか、それに対して今後はどういうような対策を講じにゃいかぬという明確な回答がないように思いますので、再度回答を求めます。
  178. 武藤敏郎

    政府委員(武藤敏郎君) ただいま総裁の方からお答え申し上げましたとおり、バブルの原因といいますものには、一口で申し上げれば、金融機関によるリスク管理体制が不十分のままの金融活動の活発化、長期にわたる金融緩和、それと我が国経済に対する強気の期待といったようなことから、大量の資金が株式、土地の市場に流れ込んだために発生したものでございます。  こういう事態を後から考えまするに、やはりその時点その時点におきましては適切と考えられた財政金融政策を講じてきたというふうに考えるわけでございますけれども現時点で当時の状況をかんがみますと、資産価格の急激かつ大幅な変動というものが国民経済に及ぼす影響について結果的に的確な認識を十分にしなかった、不十分であったというふうに考えておるところでございます。
  179. 服部三男雄

    服部三男雄君 リスク管理が不十分だった、金利自由化、金融自由化の中でリスク管理が不十分な体制であったところに銀行行政の欠陥があるという趣旨の反省がありますが、あとは、例えば金融の緩和だとかあるいは国民が右肩上がりのユーホイズムというんですか、インフレ期待心理があったというようなことについて、大蔵として当時何か手は打てたんじゃないかという気が私どもはしてならぬわけです。それについて何か反省点はありませんか。
  180. 武藤敏郎

    政府委員(武藤敏郎君) 当時の状況につきまして、既に御承知のことかと思いますけれども、円高不況に対する内需の拡大の要請、それから経常収支黒字減らし対策、これは特にアメリカを初め海外から強い要請があったこと等々を考えますと、当時の金融政策、財政政策がその時点においてはやはり最も適切と思われた政策選択をされたのだろうというふうに思います。  ただ、今申し上げましたのは、結果においてとにかくその後のこういう御承知のような問題を生じたということはどこから来るのかといえば、今申し上げましたような資産価格の急激なる上昇及び下落が、所得配分等経済に与える甚大な影響について十分認識していなかったというところに問題があるというふうに考えるわけでございます。
  181. 服部三男雄

    服部三男雄君 今の大蔵省の答弁を聞いていまして、これだけの政治問題になっているバブル崩壊後のデフレというものに対してどうも真摯な反省をしているようには私はとれない。  先ほど、午前中の塩崎委員に対して総務審議官は、国の内外のいろんな、例えばブラックマンデーのときのドル暴落が怖かったとか、円高に対応して円高恐怖症のことを言っているわけですけれども、あるいは内需拡大をせにゃいかぬ、そういう内外の要請があったからなかなか日銀としても金利を上げられなかったのではないか、インフレの防止ができなかったんじゃないかというような答弁をしたことを覚えております。ということは、大蔵の認識として日銀というのは、先ほど総裁からお話あったように、インフレ防止が最大の目的だと言っているのと全然違うことをあなたたちは日銀に対して認識しているというふうに言わざるを得ないんです。  日銀総裁、歩くのが疲れたらどっちでも結構ですから、どうも武藤審議官が言っているようなことを聞いていますと、大蔵と日銀というのはその程度の認識なのかと言わざるを得ないんですが、何か御感想はありませんか。
  182. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私ども日銀におきまして金融政策を考えてまいります際に、現在の制度のもとにおきましてもそれは日銀政策委員会によるところの決定というものに任せていただいているところでありますので、私どもといたしましては、それらの問題に関しましては私ども日銀の全体政策判断というものに応じた措置をとっていくことが建前でございます。これらに対しまして、当然政府側の政策との間で意見の交換あるいは情報の交換ということはもちろんあるわけでございますけれども、最終的な責任といたしましては私どもにおいてやっているところでございます。
  183. 服部三男雄

    服部三男雄君 日本銀行にお尋ねします。  今の答弁にもありましたけれども、法制、税制が不動産の供給を制約するというような制度的要因もあったというふうなお答えが、これは松下総裁だけでなくて三重野さんも何度もここでお答えになっている。その制度的要因としてどういうところを考えておられるのか、ちょっと具体的に挙げてください。
  184. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私どもが当時考えていたことを具体的に申し上げますというと、ただこれらは現時点では既に相当程度見直されていることではございますが、まず法制面では、都市計画法に基づく市街化区域と市街化調整区域との線引きや建築基準法に基づく建ぺい率、容積率等の規制が必ずしも実態に合わないで、結果として宅地開発や土地の高度利用を制約していた面があるということ、また借地借家法のもとでの地主、家主の権利に対します過度の制限が高層賃貸住宅の建設を困難にしていたことなどでございます。  また一方、土地税制面では、例えば固定資産税の税率が低く、土地の評価額自体が時価を大幅に下回っておりましたので、実効税率がさらに低くなっていたというようなことがございます。ただ、さきに申しましたように、この点は今日におきましては相当程度見直されたところでございます。
  185. 服部三男雄

    服部三男雄君 主に日銀なんですけれども、当時二・五%の低金利、公定歩合が二年半続いたと、それが金融緩和の原因になっているわけですけれども、しかしその当時から見て、今その五分の一の〇・五で来ておるわけです。もう一年近く来ておるわけでして、二・五以下になってからもう一年を超えているわけですからね。でも、別に今バブルでも何でもないわけです。  バブルになった原因の金融緩和というのは、マネーサプライが当時一五、六%という状態が四年間も続いたということが最大の問題だろうと思うんです。しかも、その金の回転が非常に速かった。マネーサプライが高く、かつ回転が速いわけですから、この金が日本国じゅうを、それはロックフエラーセンターを買ったようにアメリカへ買いにいけば別ですよ、日本の国内に金がたまらないわけですけれども、当時はずっと返ってきていましたからね。日本国内に滞留すればどこかにその金は、金というのは利を求めて動くものですから、どこかへ集中していく。それがたまたま土地に当たっていった、株に向かったということだろうと思うんです。  そこで、三重野さんが韓国を訪問したときの一九九四年八月三十一日のときの講演があるんですが、そこに、マネーサプライの変動の意味を正確に読み取るノウハウと自信に欠けていたと、こういうようなことをおっしゃっているんです。金融政策上、このマネーサプライというのをどういうふうに位置づけるのか。マネーサプライのターゲッティングポリシーというのもありますけれども、それをとるのかどうか。もしそれをとらないとするならば、今は完全に金利自由化しましたね、去年から。そうすると、公定歩合というのは効きにくくなっているわけですね。そうすると、マネーサプライを日銀がどのようにしてコントロールしていくのか。市場のままに任せたのであれば、もう一度インフレ心理というのが高揚して、日本がもうかんかん照りの景気になってインフレ心理というのがもし高揚じたときに日銀としては手を出すすべがないのかどうか、そういうことをお答え願いたいと思います。
  186. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 日銀といたしましては、マネーサプライに目標値を設定してそしてこれを厳格に達成しようとする政策はとっておりませんけれども、マネーサプライにつきましては、その大きな変動が経済活動の変調を示唆しているという可能性が高うございます。したがって、金融政策運営を判断していきます上で極めて重要な指標の一つとして位置づけていくことが適当であると考えております。  御指摘のバブル期のマネーサプライの変動につきましては、金利自由化が進展します中で金融商品の相互間での資金シフトが活発化いたしましたこと、中でも当時大量に満期を迎えました郵便貯金ですが、これはマネーサプライに含まれておりませんものですが、その郵便貯金から銀行預金への資金シフトが発生したといったような事情も相当程度影響していたところでございます。  それだけに、当時としましてもこれらを総合的に勘案いたしまして、マネーサプライの変動について評価を下すということにはかなり難しい面があったのではないかと思うのでありますけれども、ただ後から振り返ってみますというと、長期にわたりました金融緩和が結果的に過大なマネーの供給につながったということは否めませんので、マネーサプライにつきましては引き続き研究を深めながらその動向を十分注意していきたいと思っております。  ただ、昨今のマネーサプライの状況は、現在かなり落ちついた緩やかな動きを示しているというのが現状でございます。
  187. 服部三男雄

    服部三男雄君 三重野さんも松下さんも大いにそれを検討して、ターゲッティングは無理でも、二度とバブルが発生しないような金融政策上のノウハウとかテクニックというのを大いに積んでいただきたいと心から要望します。  続きまして、先ほど塩崎委員が公定歩合の専管の問題というのに触れましたが、公定歩合というのは今までと意味合いが変わっておりますね。  といいますのは、今までだったら直接金利を動かせる武器だったわけですね、公定歩合は。今は金利自由化になりましたから、公定歩合にそういった機能を見つけるのはなかなか難しいだろうと思うんです。ということで、オペレーションによる短期市場における金融操作というものが非常に重要になってきていますね。これはもう経済学者もあるいは日銀のいろんな報告、調査、全部で言われていることであります。  そうしますと、日銀法の改正の問題に絡むんですが、公定歩合そのものよりも短期市場におけるオペレーションの重要さということになりますと、この短期市場のオペレーションというのは、日銀法四十四条の大蔵大臣監督に係るものなんでしょうか。
  188. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 御指摘のように、今日の金融情勢下におきまして公定歩合の決定ということは、もとより中央銀行としての基本的な金融観を端的に表現する指標といたしましてなお大きな重要性を持っているものでございますけれども、現実の問題といたしましては、市場の金利を決定してまいりますのは市場において日々決定されてまいります各種の短期金利を中心とした金利の動向でございます。  そういった趣旨から日銀におきましても、昨年以来、公定歩合の決定と別に市場金利の誘導目標の考え方というものを公表することにいたしまして、例えばそれを今の公定歩合よりも平均的にはやや下の水準に維持をするというような政策目標を立てますと、そのことを公表して、市場に対して全体の金利誘導を行っているところでございます。  このような公定歩合と市場の誘導された金利水準の二つを手段として金融政策を行っていくというのは昨年からの試みでございますので、今後ともなお経験を積みながらそのやり方については改善をいたしたいと思っておりますけれども、これは他国の中央銀行におきましても同様の操作を行っておるところでございます。
  189. 服部三男雄

    服部三男雄君 それが四十三条の大蔵大臣管轄下に入るのかどうか。
  190. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 失礼しました。四十三条の大蔵大臣の、これは認可でございましたか、特にそれを必要とする事項ではございません。これは日銀におきますところの日々の市場における資金のやりとりのあらわれでございます。
  191. 服部三男雄

    服部三男雄君 次に、為替の問題を尋ねたいんですが、日本は戦後ずっと右肩上がりで経済がよくなっていった。変動相場制のもとでは経済力が強くなれば趨勢的に円高になるのは当たり前のことでありまして、それが変動相場制の意味なんであります。ところが、どうも円高恐怖症というのが日本にありまして、ジャーナリズムも円高になるとぎゃあぎゃあ騒ぐという癖があるものですから、大蔵から日銀に委託がありましてかなり大規模な為替介入をやっておられると。ことしはたしか二十兆円か三十兆円ぐらいのそういう資金を組んだということが新聞に書いてありました。本来の変動相場制の趣旨からして、そういったスムージングといえども余りにも日常的に介入し過ぎているんではないかという気がしてならないわけです。  特に先ほどのマネーサプライとの関係で、介入をやりますと当然円が出てくるわけですから、むしろマネーサプライの増加要因にもなりかねないというようなことで、どうも過剰介入しているんではないかという気がするんですが、その点について大蔵と日銀はどういうように思いますか。
  192. 榊原英資

    政府委員(榊原英資君) 個別の為替介入のあり方については市場に不測の影響を与えるということで差し控えさせていただきたいと思っておりますけれども一般論として申し上げれば、通貨当局による為替介入は為替相場がファンダメンタルズから著しく乖離したときのみに行うということでございます。  例えば昨年の円高局面というのは、これは明らかにファンダメンタルズから著しく乖離していたということでございます。昨年の四月二十五日のG7でも、これが著しくファンダメンタルズから乖離している、秩序ある反転を目指すんだということを宣言しておるわけでございまして、私どももG7の合意に沿って、G7の協調の枠の中で為替相場に介入をしているということでございます。  また、金融政策への影響ということでございますけれども、これは専門的に言いますとステラリゼーション、不胎化すると言うことができますから、マネーサプライの増加あるいは減少と為替介入との関連はこの不胎化によって切ることができるということでございます。
  193. 松下康雄

    参考人松下康雄君) マネーサプライとの関係について補足をいたしますが、為替介入を行いますというと、例えば円売りドル買いをいたしますと金融市場に円資金が放出されることになりますけれども、日本銀行におきましてこうした為替介入要因によります資金の増減も含めて、通常は全体としての市場の資金に過不足が生じないように、日々の金融調節によりまして市場の資金量を調整いたしているところでございます。  したがいまして、円売りドル買い介入を行いましたからといって、それが直ちに市場金利が下がり金融機関の貸し出しが活発になってマネーサプライが増加するということではございません。
  194. 服部三男雄

    服部三男雄君 大蔵省の国金局長に為替の関係でもう一点尋ねます。  外国為替勘定がありますね。ニクソン・ショック以来ずっと介入をやってきているわけですが、その間、趨勢的には円が高くなってきている。そうすると、三百円から今百五、六円ですか、為替差損としては大体二百円近くあるわけですね。その間に買ったドルで対外証券をやっているわけだから、特にレーガンの時代だったらそれはもう十何%、日本の三倍ぐらい高かった金利がありましたからね。配当金利は結構あったんだろうと思うんですけれども平成六年で見ましたら約一・二兆円ぐらい赤字になっているんです、外国為替特別会計貸借対照表という大蔵省が出しているのを見ると。  こう見ても一スムージング介入しても結局は日銀引き受けの為券でやっているわけですから、国民の財産でしょう。どうもそんなことで、スムージングだと言いながら、どんどん介入することによって国民が結果において二兆円以上の損をしているんじゃないかなという気がするんですが、どうですか。
  195. 榊原英資

    政府委員(榊原英資君) 今、先生御指摘のとおり、平成七年度末の額で見ますと、外国為替等評価損は十兆一千二百二億円ということになっております。ただ、先ほど先生から御指摘もありましたように、このドルあるいは外貨を運用した結果の利益というのがございますから、各年度の決算剰余金を積立金として積み立てておりまして、これが七年度末には七兆四千七百三十九億円になつております。  先生御指摘のように、評価損がこの積立金を現在上回っているという状況になっておることは事実でございます。ただ、外為特会は現金主義ということを採用しておりますので、現金の過不足の生じない未実現の損益というものによって特会の運用に直接的な影響はないということでございます。  確かに、御指摘のようにずっと円高局面でございましたので、そういうことで評価損がかなり膨らんだということでございますけれども、趨勢としての円高局面が終わった現在、これが逆転する可能性もありますので、当面、現金主義の外為特会の運営には支障がないということで、これは我々として急激な円高に対応するために、円高不況に対応するために必要なアクションであった、そういうふうに思っております。
  196. 服部三男雄

    服部三男雄君 今の榊原局長の言うのにはちょっと納得しませんね。為券はロールオーバーして積み上がっていますから、それは確かに現実に吐き出さないんだから直接影響がないのはよくわかっています。それは特会のシステムがそうつくってあるからであって、日本の金としては損しているんじゃないですか。それが一つ。  もう一つは、為券の発行費用はこの中に含んでいないんじゃないですか、金利分は、この特会の勘定の中には。どうもその点から見ましても、もっと本当の差損は大きいんじゃないかな。今二兆円オーダーとおっしゃったが、四十七年からやっているわけですから、その間ロールオーバー、ロールオーバーしていった金利を含めますと、これはすごい膨大な損になるんじゃないかと思うんです。どうですか。
  197. 榊原英資

    政府委員(榊原英資君) 為券の金利分は特会の貸借対照表の中に入っておりますので、この積立金と評価損の差額が先生の御指摘の点だというふうに理解しております。ただ、これは急激な円高に対応するために必要な為替介入であったというふうに私どもは理解しております。
  198. 服部三男雄

    服部三男雄君 先ほどちょっと小言を言いましたが、どうも大蔵省の原因分析等は甘いような気がしてならない。  その点、大蔵省の財政金融研究所というところから平成五年四月に「資産価格変動のメカニズムとその経済効果」、これが出されたころはたしか西村さんは所長だったんじゃないかなと思うんですけれども、これはかなり学者が集まっていろいろな分析をしております。その中に、まず円高デフレというのを過大評価していたんじゃないかというようなことが書いてある。次に、先ほど松下総裁からもお話がありましたが、大蔵省主計主導の財政再建を優先し過ぎたために金融政策に過度の負担がかかり過ぎていたんじゃないか、そのために引き上げるべき公定歩合を引き上げるタイミングを失したのではないかというようなことも書いてあります。  その他もろもろのことが分析として書かれてあって、この分析は経済学界でかなり評価が高いのでありますが、財政再建主導その他を考えますと、大蔵というのは本来財政を預かるところであって、経済政策のすべてをカバーするようにはつくっていないわけです。そういう権限は与えていないわけです。ところが、日本の経済政策を考えると、すべて大蔵が主導してやるようなイメージを持っている。  きのうの朝日新聞の夕刊に田中直毅先生が、大蔵省主計局の自意識過剰だ、すべてのところへ政治にかわってまで乗り出していくというようなことが書いてある。もっともだと僕も思います。そういう現象は目に余るところがありますから。それはそれだけ政治家がだらしないんだと言われればそうかもしれませんが。  この財政再建は、確かに平成二、三年ごろには再建が終わって赤字国債を発行しなくなったが、今度はもう出さざるを得ない。結局、バブルといいましても資産インフレですから、一時的には財政が均衡したって、後で失敗したらまたそのツケは回ってくるわけであります。  私は今何を申し上げたいかというと、大蔵の主計は財政を考えるのは当たり前なんです。理財は理財で国有財産のことを考えるのは当たり前、銀行局は銀行行政を考えるのは当たり前、それぞれつかさつかさはそれぞれの目標、自分が正しいと思う目標、あるいは日銀は日銀の目標を追求するわけであります。先ほど塩崎委員も言いましたように、国家として全体の経済政策、金融政策、財政政策、あるいは一般の産業対策というものについて、バランスのとれたものがどうもなかったところに先ほど言うシステムミスマッチがあって大きなバブルの崩壊になったのではないかという問題意識があるものですから。  特にクリントンが大統領になってから、どうも安全保障だけじゃなくて通商とか産業政策で世界のヘゲモニーを握ろうとしているということ、経済を重点に考えたアメリカの政策に変わってきたことでNECというものをつくった。経済対策会議というのをつくった。日本にもその経済対策会議らしきものはあるんです。  総理、ちょっと聞いていただきたいんですが、緊急経済対策とか経済対策閣僚会議とかいろいろあるんですが、これは単に閣僚が集まっているにすぎない、サロンみたいなものだなと私は思うんです。何の権限も持たせていない。これでは、これだけ経済が大きくなった日本の経済政策を内閣が統一した方針のもとに行政を指導していくことは無理じゃないかなと思うんです。  アメリカのNECは大統領令によってつくったらしいんですけれども、やっぱり日本の経済を今後考えていって、与党第一党の自民党から総理を出したわけでありますから、ここらでひとつ、単なる口頭了解ばかりやっている経済対策閣僚会議じゃなくてもっと権限を持った閣僚会議のようなものをつくっていく必要があるのじゃないか。  それについて先ほど塩崎委員からそれと類似の話があって、経企庁長官は経企庁が主導してやりたいということをおっしゃっているんですが、そういったことも含めて再答弁をお願いしたいなと思います。
  199. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は別に現在の経済対策閣僚会議がサロン化しているとは思いません。しかし、国会開会中の場合に、非常に時間が限定をされるためにじっくり議論ができておらないということは、これは御指摘のとおりです。  と同時に、私はその閣僚会議が権限を持つという形が望ましいのか。ある意味ではその閣僚会議の議論というものを受けながら閣議が責任を持つていくのかというならば、やはり私は閣議そのものが責任を持って対応していくというのが本筋ではないかと思います。  このところ、私は村山内閣で連立政権の閣僚を体験し、その風習が残っております中で非常に望ましいと思っておりますのは、単独政権時代の閣議というものはややもすると形式に流れがちでありました。しかし今、連立政権の中で、閣僚同士の意思の疎通を今までより非常に必要とするということから生まれてきたのだと思います。閣議後に必ず閣僚懇談会が開かれ、その閣僚懇談会というものが非常に実質的な議論の場になっている。私は、これは非常に今いい姿だと思うんです。そして、閣議そのものが活性化し、閣僚懇の議論というものがそれぞれに生きていくという意味では、私はやはり閣議がリーダーシップを持って事に当たっていくということであろうと存じます。  いずれにいたしましても、議員が主張されたいポイントというのは、政治そのものが責任を持ち、その中で内閣たるものが責任を持てという御激励と受けとめ、貴重な御意見としてちょうだいをいたします。
  200. 田中秀征

    国務大臣(田中秀征君) 私が就任してからまだ関係閣僚会議が開かれておりませんので、どういう雰囲気のものであるかは承知しておりませんけれども、十分に役割を果たしてきたというふうに思っております。  私が先ほど申し上げたのは、企画庁の調整機能ということについて申し上げたわけで、それも今まではよかったけれども、今そしてこれからということになれば調整機能を強化する必要があるだろうということは申し上げたところであります。  特に、言ってみれば私ども企画庁や総務庁、調整官庁でやれるのは総理大臣の旗本みたいなものですから、総理との一体性というものをより強めていくということも大事なことだと思いますし、また特定官庁から影響を受け過ぎないように気をつけていかなければいけない、そんなふうに今思っております。
  201. 服部三男雄

    服部三男雄君 経企庁長官、今の御答弁で特定官庁の影響を受けないというのは、どこをおっしゃっているんですか。
  202. 田中秀征

    国務大臣(田中秀征君) 大蔵省のことであります。
  203. 服部三男雄

    服部三男雄君 時間が足らないものですから駆け足になって、議論を深めるには時間がないので申しわけないと思っております。  次に、大蔵省銀行局に尋ねますが、住専問題を初めとして銀行の不良債権問題というのは早期に解決せにゃいかぬということは大蔵大臣も何度もおっしゃっている。そうでないと後々非常に困るということをおっしゃっているんですが、不良債権問題を早期に処理する経済的なメリットは何なのか具体的に挙げていただきたい。おくれればどういうデメリットが出るのかということを具体的に挙げていただけませんか、国民にわかるように。あなたの答弁は非常にわかりにくい。国民に具体的にわかるように答えていただけませんか。
  204. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 不良債権問題の重要性というのは、いろいろな方々から御指摘を受けているわけでございますが、私の理解するところでは、まず第一に、金融が不良債権問題を抱えているということによって日本経済の先行きに暗雲がかかっているという感じを皆様がお持ちになる、そのことによって経済の活性化がおくれてしまう、こういうことが一つあろうかと存じます。  もう一つ、金融そのものの問題といたしましては、ようやく不良債権問題というものに手をつけられるような状況にはなってまいったわけでございますが、この不良債権問題の克服なくして国民の預金の保護ということに万全を期しがたい。このまま放置しておくならば、やはり金融に関する国民の不安というものがいつまでも続く、そのことがとりわけ弱い金融機関にとっては大きな影響を与えて預金者保護に遺憾な点を生ずるおそれなしとしないという問題が一つあろうかと存じます。  三つ目の問題といたしましては、このような日本の経済、金融をめぐる状況が、外国から見ますと大変に心配だということで、ジャパン・プレミアムというようなものに反映されておりますように、日本経済の運営上不利な条件を醸し出している、これは一日も早く取り除かなければいけない、こういうことかと理解をいたしております。
  205. 服部三男雄

    服部三男雄君 非常に抽象的なお答えでありまして、具体的に挙げていただきたいと思うんです。  例えば、まず貸している債権銀行債権が不良債権になるということは利息が上がってこないということでしょう。不稼働、動いていない債権ということでしょう。そうすると、銀行に保有コストがかかるわけでしょう、預金者に払う金利がかかっているんだから。ところが、不稼働債権は償却しなきゃしょうがないわけでしょう。今度の住専では放棄まで認められりゃ結構だけれども、引き当てしていくには償却原資が要るわけでしょう。こんなことを話していると時間がたってしょうがないんだ。  償却原資というのはもうけで、業務純益でいかなきゃしょうがないでしょう。それが全部圧迫されてくる。そうすると、銀行はもうけなきゃ食っていけませんから、優良貸出先から利ざやを厚く取らざるを得なく追い込まれていきますね。こういうふうに経済の生の実態の話を、銀行局長、もうちょっと詳しく説明してくれませんか。
  206. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 具体的に申し上げますならば、一つは、先ほど申し上げましたように、預金者の保護という面で遺憾な点が生ずるおそれがあるという問題でございますし、他方におきましては、服部委員今御指摘の「金融の円滑」という言葉が銀行法にございますけれどもお金が世の中にめぐっていくという機能を阻害している、そのことが経済の活動というものの制約になっている、こういう点もあろうかと存じます。
  207. 服部三男雄

    服部三男雄君 答弁を聞いているといらいらするんですけれども、じゃ、私から言いましょう。  まず、銀行の法人税ががたがたに減りましたよね。数兆円減っているんですよ、単年度で。これはもう国家経済にとって大損害でしょう。  次に、銀行は後向きの仕事、不良債権処理にばかり有能な人材を充てますから、貸出先に対するケアができなくなってきているわけです。早く言えば中小企業育成ができないんですよ、リスクテークしてやらないんだから。リスクテークするだけの貸出資金の余裕がないんだから、今の銀行には。これは経済にとって物すごいマイナスになるでしょう。  第三に、ジャパン・プレミアムがありましたね。塩崎委員が言いました。年間に数千億円かかっているんですよ、このジャパン・プレミアムというのは。  第四に、こうして償却がどんどんおくれますと、日銀総裁は金利はしばらく上げませんというようなニュアンスの回答をしていただいていますからいいんですけれども、金利がもし上がり出すと、これは市場金利ですから大蔵としても日銀としてもどうしようもないわけです。金利がぐっと上がっていきますと銀行業務純益というのは激減するんです。これは銀行の利ざやというのを考えると当たり前のことなんです。こういうことになっていきますと、ますます償却原資がなくなってきて悪循環に入っていくわけです。そうすると、これは経済が不活発になるわけです。要するに、経済の血液が回らなくなっているわけですから栄養失調になるわけですよ。  こういったものを考えますと、今もう日本のこの不良債権問題の時期というのはやや逸している、これが国際的なレピュテーションの問題になっているんだ、こういうふうに回答してもらいたいものですね、西村局長。  さて、銀行局長に重ねてお伺いしますが、局長住専の問題を除いて銀行の不良債権の償却というのは大体峠を越えたんだということを去年あたりからおっしゃっていますね、国会答弁で。ただし、これは帳簿上の処理の峠を越えたにすぎないんです。といったって、帳簿上はそれは引き当てして償却すれば消えていきますよ、資産勘定から。だけれども、残っている、取り立てが本来できる、不良債権化しているけれども回収可能な債権のコストはまだかかっているわけですよ。これは結局担保物件の処分をせずには回収できないわけでしょう。ところが、物の処分についてこの国会論議は全然ない。もう六千八百億でとまっている。実に嘆かわしい国会論議をやっているわけです。  物の処分というのは、今の日本の不動産業界の実情を考えまして、あなたは前に、一生懸命債権回収をやるんだ。債権回収といったら物の処分ですよ。今の不動産業界の実態を考えて、住専が抱えている担保でとった土地をどっと売り出しをかけたら、買い手はありますか、ニーズがありますか、買う資金というのは銀行から貸せますか、どうですか実態は。
  208. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 御指摘のように、不良債権処理帳簿上は随分と進んでまいったと存じますけれども、実体経済という観点から申し上げますならば、物の処分あるいはそれを証券化して流動化するというようなことはまだなかなか努力が足りないという点があるのは御指摘のとおりでございます。  私ども、そういう点で、例えば債権買取機構の不動産の処分だとかそういうことについても努力を促しているところでございますが、いかんせん経済の現状から申しますと、担保不動産が次々に処分できていくというような状況には今のところまだ至っていないわけでございます。  銀行がそういうものについて金融的なバックアップをするということに関して十分かという御指摘でございますが、なかなか不動産の価格というものの先行きが今のような状況でございますとちゅうちょする向きもあろうかと存じますけれども、そういういろいろな難しい問題がある中で、単に不良債権問題が帳簿の上の処理にとどまらず実体経済面に浸透していくということについて私どももさらに努力を重ねさせていただきたいと存じます。
  209. 服部三男雄

    服部三男雄君 ちょっと質問の順序が逆になりましたが、松下総裁にいつまでも待っていただくのは申しわけないんで、一点だけ聞いていただいてお帰り願いたいと思うんです。  これは世銀が出したものだろうと思うんですが、「ワールド・バンク・エコノミック・レビュー」という一九九二年九月の「メジャリングジインディペンデンスオブセントラルバンクスアンドイッツエフェクトオンポリシーアウトカムズ」という本があるんです、英語の本ですが。  読みますと、大体書いてあることは、世界の二十行ぐらいの中央銀行の独立性とインフレーションの相関性があるかというようなことを書いてある部分がある。二十のうち十七、八番目ぐらいが日本の中央銀行の独立性のケースじゃないかと。そして、日本の今回のバブルのこともそういうことに関連があるんじゃないかというニュアンスのことを書いてあるんです。  先ほど来の日銀総裁の御答弁を聞いておりまして、独立性について国民世論が盛り上がって、国民の英知が結集された議論がなされるのなら日銀は大いに協力したいというようなことをおっしゃっているんですが、日銀は昔から公定歩合に関して、下げの大蔵、上げの日銀と言われておりまして、どこをどういうように直してほしいかという、日銀の中で研究されたものがあるんだろうと思うんですよ。こういうレポートが世銀から出されて、どうも日本の日銀の独立性が弱いというようにはっきり言っているわけですからね。  例えば日銀法の四十三からの三条ぐらいはこれは非常にぐあいが悪いとか、先ほど来おっしゃっているのは、国民の間に日銀に対する信任の関係からも独立性というものを考えにゃいかぬという、ちょっとそういうニュアンスのお答えもあったように記憶していますが、具体的におっしゃっていただけませんか。それをお答え願ってお引き取りいただきたいと思います。
  210. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 日本銀行の現在の制度の中で改善すべき点という御指摘でございますけれども、私どももこれはやはり現状におきまして、例えば主要他国の中央銀行の制度等と比較をいたしまして、法律の構成としてこれを見ました場合には、日銀に対する諸監督の対応その他から申しまして、中央銀行としての金融政策判断の独立性の点から申しますと改善の必要があるというふうに思うわけでございます。  ただ、今日までの私どもの政策運営に当たりましては、そのあたりは特に日銀政策委員会の戦後の新しい権限というものを背景にいたしまして、私どもとしましては十分な自主性を持って金融政策を動かしてきたように考えております。  御指摘のように、各国の独立性をいろいろな指標をもって比較するという試みは今日、各国いろいろなエコノミストが行っているところでございますけれども、その中には、日本の中央銀行の場合には、法律の問題、字句の問題は別として、運用の問題及び戦後におきますところの実際のインフレあるいはデフレの今日までの推移の点から見ますというと、相当のところまでやっておるというような評価もいただいている面もございます。  私どもとしましては、そういう点について今後なお一層努力をいたしまして、世上の日銀に対する評価が上がってまいりますように努めてまいりたいと思います。
  211. 服部三男雄

    服部三男雄君 日銀総裁は質問終わりましたので、どうぞお帰りいただいて結構と思います。  さて、先ほどの物の処分のところに戻るわけですが、今特に参議院に移ってから与党側も母体行にもっと責任を持たせろと、大蔵大臣も困ったなという顔をしながらも何となしにそうですねとおっしゃっていると。しかし、法律上できないことですから、三・五兆円の債権全額放棄、それ以上のことをしろということは、逆に行政、政治が不透明なことを民間業者に対して要求していることになるんです。これは法律上できないことなんです。できないことをやるということは困ったことなんですね。いかにも日本的体質だとまた海外からの評判が落ちるんですよ、大蔵大臣。そこで、別の何か、母体行なり一般行の協力方法を探さにゃいかぬということでいろいろ御苦労を願っている。  私は今、物の処分のところで申しましたように、今度のこのバブル崩壊による土地価格の下落というそのリスクを母体行に持たせたらいいと思っているんです。ということは、例えば七十億の土地だという評価をして担保設定したわけですから、今それが例えば五十億におっこっていても、物の処分を行わなきゃ債権を回収できないんだから、一たんそれを銀行に抱かせたらどうかなと。要するに物納ですよ。担保物をそのまま引き取れと。債権で買い取らすわけですね。  先ほど言いましたように、不動産業界にその土地、担保物を処分してもそれの受け皿がないんです、ニーズが全くないんですから。なぜなら、産業界は産業の空洞化によって海外へどんどん出ていっている。金融も空洞化になっている。オフィスビル需要は全くない。そんなときに都心部の土地をだれか買ってくれと言ったって、不動産業者は買い手がいないんですよ。買う金もまた銀行ばなかなか出せないんですよ、今。  そうしたら、銀行自体これは業務純益は物すごくもうかっていますからね、〇・五%の低金利政策のおかげで。一たん銀行に抱かせたらどうか。これなら法律上はそんなに難しくないんじゃないかなと思うんですけれども、どうですか大臣。
  212. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 一つの考えだと思いますが、これはなかなか、それこそ法的に強制できる問題でございませんのでかなり難しい問題だろうと思っております。私は、どのような形であれ、協議、納得の上、合意して負担ができるという道があれば、そのことが言われている何か名案がないかということだと思っております。いろいろなことを検討することは重要だと思っております。
  213. 服部三男雄

    服部三男雄君 大蔵の主税と国税庁に尋ねますが、今の私のような考え方でやった場合、どういう税法上あるいは税務上の問題が起こるか、回答願います。
  214. 若林勝三

    政府委員(若林勝三君) 税務上の具体的な扱いにつきましては、個々の事案に即して判断する必要があるわけでございますが、あくまで一般的な考え方ということで申し上げさせていただきたいと思います。  法人が貸し金の担保としていた物件でございますが、当初の評価額よりその価格が低下している場合ということでございます。それで、その当該物件を当初の評価額で買い取るという場合にどうなるかということであろうかと思うわけでございます。  その場合は、まず担保物件を買い取った側でございますけれども、これは買い取り価格と買い取り時の時価とに差がある場合でございます。この場合、税務上の取得価格は買い取り時の時価とあくまでなるわけでございます。これを超える部分につきましては、その金額は、当該取引がやむを得ず行われたというようなことの何か合理的な理由がある場合は別でございますけれども、こういう場合がなければ、合理的な場合でなければ寄附金として扱われる可能性があるものと考えられます。  また、担保物件を譲り渡した側、譲渡した側につきましては、譲渡価格と譲渡時の時価の差額に相当する金額は受贈益、利益を受けたわけでございますから受贈益ということになりますが、一方帳簿価格と譲渡時の時価との差額に相当する金額は逆に譲渡損ということになろうかと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、具体的な事案につきましては、それは個々の事案に即して判断すべき問題でございます。
  215. 服部三男雄

    服部三男雄君 単なる寄附金であれば、法人税法の問題である程度は処理できるわけですね。一方、土地を譲り渡した方にとっては、損金と益金のツーペイの問題だから税務上の問題は発生しませんね。そうすると、必ずしも法制上不可能とも言えないように、大蔵大臣、思うんですよね。  ただ問題は、あくまでも一時的に銀行に引き受けさせるだけでして、銀行はそんな土地を持ったって何の活用もしないわけですから、いずれは不動産業界へ流していく。そうすると、超短期重課の問題が発生するわけです。主税はそういうことに対して何らかの手当てができるんじゃないかと思うんですが、どうですか。――通告していなかったか。じゃ、僕の通告忘れかもしれませんから、カットいたしましょう。  次に、本論の住専問題に入るんですが、六千八百億投入するのは何でだというところに、民間の問題に何で公的資金を導入するんだという議論、民間の破綻に対して何で税を投入するんだという議論の中に混乱が僕は見られると思うんですね、大蔵大臣。  例えば、製造業者とか流通業者とか建設業者、一般の業者が経営不振に陥って破綻したとします。そんなところにだれも確かに公的資金をつぎ込むばかはいませんよ。ただ、一般の建設業とか製造業とか流通業者と金融業者というのは質的に違うものがあるんです。なぜかといいますと、よく言われるシステミックリスクというやつですね。もう一つは、金融というのは経済の血液という、しかもそれは全部つながっている、金がぐるぐる回っているわけですからね。  この一般の業者と金融業者との質的な性格を間違えて、同じ民間の破綻の問題に何で公的資金を導入するのかという説明をしたら、これは混乱を来すと思うんですよ。やっぱり金融業者というのはそれだけのあれを持っているんですから、公的な役割というものを。まして、この住専とか金融不良債権問題というのは金融業者全部にかかわっているんですからね。  これ通産大臣にお聞きしたいと思うんですけれども、過去に、繊維交渉のときに田中通産大臣が、繊維業者が日米交渉で国家政策としてだめになった、機の機械を全部国で買い上げようと言ったことがありますな。一業界が全部壊滅する場合には、国家資金をそこに投入したことがあるんですよ。  今度の金融機関だって、国の経済を考えますと、投入してもそんなに僕はおかしくない。ましてや、それだけの重要な役割を持っているんだということを思うんですが、通産大臣、大蔵大臣、どうですか。
  216. 塚原俊平

    国務大臣(塚原俊平君) 繊維交渉のときの話は小説等でしか理解していないものでございますから、具体的な事例は今持っておりませんので、ちょっと答弁しょうがございません。申しわけございません。
  217. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 私も再三申し上げてまいりましたが、金融機関の持つ公共性、社会的責任というものは企業の中でもとりわけ大きいものがあると考える、今御意見ございましたようなことは私もそのように考えております。  ただ、その破綻に対してどのような処置をするかということ、それに直ちに結びつくかどうかということはまた別の問題だと思いますが、公共的責任の重さに対応することは政治の側から考えてまいります場合にも重要なことだと思っております。
  218. 服部三男雄

    服部三男雄君 銀行局長に尋ねますが、過去に、ここ数年で金融問題で公的資金が導入された例がほかにあるんじゃないか。例えば、信用組合が破綻した場合に、これを清算するときに監督官庁である地方公共団体が既に何例かもう公的資金を出しているじゃないか。こういう例があるということを挙げていただけませんか。
  219. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 最近の事例で申し上げますならば、例えば東京都の監督いたしますコスモ信用組合の破綻に際しての財政的な支援の例でございますが、各地方公共団体におかれましては地域経済に与える影響や民生の安定等を勘案の上、公益上の必要性から自己の責任に基づく判断によってこのような措置をとられた例が幾つもございます。主として信用組合の経営破綻に際しての問題でございます。
  220. 服部三男雄

    服部三男雄君 具体例を挙げてください。
  221. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 具体的な例といたしましては、最近の例ではコスモ信用組合あるいは神奈川県の友愛信用組合、岐阜県の岐阜商銀、大阪府の大阪府民信用組合等の例がございます。
  222. 服部三男雄

    服部三男雄君 具体的な公的資金の金額を出してください。
  223. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) それぞれの地方公共団体の支援額につきましては、例えばコスモ信用組合につきましては二百億円でございます。友愛信用組合につきましては三十五億円、岐阜商銀につきましては十五億円、大阪府民信用組合につきましては百億円というような例になってございます。
  224. 服部三男雄

    服部三男雄君 尋ねたいことはいっぱいあるんですが、時間の制約があります。  結局、この金融不良債権問題の根本は何だったか。土地の値段が三分の一にどんと落ちたというところに最大の原因があるわけです。その土地というのはどこにあったかというと、主に大都市部の商業圏の中心地に集約しているということも今回の銀行の不良債権問題の特徴であります。こういう大都市圏の都心部における土地の有効利用という問題は、先ほど日銀総裁の回答にもありました高度利用が制約されているという土地規制の問題があるわけです。  この点について建設省に尋ねますけれども、平面的に東京都の都心から百キロもずっと平屋建てが並ぶというんじゃなくて、高度利用をどんどん進めていく必要があるんではないか。そういう観点から、建設省はどういうような対応を考えているのかお答えいただけますか。
  225. 近藤茂夫

    政府委員(近藤茂夫君) 都心居住推進あるいは安全、安心の町づくりという観点から高度利用を推進すること、これ極めて重要な課題というふうに私ども認識いたしております。  そういった観点から、過去、例えば住居系の地域について細分化するとか、あるいは住居系の建築活動につきまして容積を割り増しするいわゆる中高層階住居専用地域、そういった計画的な制度面の創設、さらには既成市街地における基盤整備を面的に進めるための新しい事業制度、こういった制度面、計画面の充実を図ってきたところでございまして、そういったことの活用方策について現在鋭意進めているところでございます。
  226. 服部三男雄

    服部三男雄君 都市計画法に高度利用地区という制度はあるんです。これは建設省の直接所管じゃなくて地方公共団体の所管になっているんですが、こういったものをもっと活用するということについて建設省の回答を求めます。
  227. 近藤茂夫

    政府委員(近藤茂夫君) 先生御指摘のとおり、確かに高度利用地区というある程度街区単位に指定する地区計画制度があるわけでございますが、実際のその運用面の実態について見ますと、法定の再開発事業を予定する地区についてスポット的に指定されるというのが実態でございます。  もう少しこれを活用したいということで、今までも例えば容積率の割り増しの限度を引き上げるなど弾力化を図ってきたところでございますが、まだまだ動きが見られておりません。基本的には民間の実需、これがなかなか動いていないという実態もあるわけでございますが、さらにその活用方策について検討してまいりたいと、このように思っているところでございます。
  228. 服部三男雄

    服部三男雄君 今、都市局長の回答の高度利用地区というのは、面的に広げると。この制度の最大の特色は、道路のためのセットバックをすると容積率が大きく割り増しされるということ、それから最低建ぺい率、最低容積率という今までの日本の都市計画にないシステムであるということ。今までの都市計画というのは、最高容積率は定めても下の方は何も書いていない。むしろ、最低容積率を上げることによって高度利用化が図れるわけです。それが再開発のピンポイントの制度としてどうも流れていっているのはよくない、面的にもっとかけにゃいかぬという考えがあるんですが、建設省としてもそれに対応できますか。
  229. 近藤茂夫

    政府委員(近藤茂夫君) 高度利用地区を面的な形で活用する、これは基本的にはそういう方向で運用したいと考えておりますが、現段階におきましてはまだまだいわゆる税制、財政上の措置、こういったインセンティブ、こういうことについてもさらに検討することが必要だろうと思います。あわせて地域住民の利害調整、これについてどういうふうにしていくかということについても関係公共団体と意見調整しながらいろいろ進めていかなければいけない、基本的な認識はこういうふうに持っているところでございます。
  230. 服部三男雄

    服部三男雄君 今、都市局長は税制あるいは融資といったような財政政策が必要だと。これは当然のことでありまして、最低容積率を例えば三〇〇とか四〇〇にするということは、今平屋に住んでいる人は住めなくなるわけであります。それに対して、一種の規制強化になるわけですから、何らかの形で財政融資政策を、あるいは税制上の措置をしてやらにゃいかぬ。そうすると、これはとても建設省一省ではできない。大蔵が絡む、主税が絡むし主計が絡んでくるわけであります。こういったことを私なんかは日ごろ高度都市機能集積地区整備促進法というような考え方を言っておるわけでありまして、こういうものはやっぱり内閣でみんなが協議して土地対策としてやらないと、先ほどの話に戻りますが、物の処分ができなかったら住専の解決はできないんですよ。  国家の政策として、総理のリーダーシップのもとに土地対策関係閣僚会議を、サロンじゃなくて本当の実施機能を持った閣僚会議でこういったものを解決していただきたいと思うんですが、総理の明確な回答を求めます。
  231. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今回の規制緩和の中でも住宅について、私どもは省庁の壁を越えて新たなルールをつくりました。そうしたことを体験してきた上で、議員の御意見を今伺っておりましても我々として大変参考になる部分が多いと思います。まさに閣僚会議が名実ともの閣僚会議として生きていきますように、私ども、今の御意見をも含めて検討をさせていただきたいと思います。
  232. 服部三男雄

    服部三男雄君 最後の質問ですが、大蔵大臣にお聞きします。  小沢一郎さんの書いた「日本改造計画」という本があるんです。有名な本です。随分印税も上がったそうですが、この二十四ページに、政権党が両院で過半数を得て法律を成立させるには一部野党に譲歩、妥協したものをさらに譲歩せよ。マスコミがまた野党の行動に疑問を呈しなくて、審議を尽くしてコンセンサスを追求するよう主張してきたと。もし政府が社会党、当時は野党のことです。社会党やマスコミに押されて、社会党とのコンセンサスを得るために基本方針を曲げて譲歩をするようなことはだめだというようなことが書いてある。  当時の社会党、元社会党の書記長として、この問題では社会党と名指しされております。今また住専問題で、今度は野党の新進党のピケです。こういう立派な本を書かれた人のことについて、大蔵大臣はどういうように思われますか。
  233. 久保亘

    国務大臣久保亘君) 今、小沢さんの著書の一文をお取り上げになりましたけれども、私、ちょっと忙しくてまだ読む機会がございません。  私どもも野党で長い経験を持たせていただきました。さまざまな対決すべき法案等についての扱いでいろいろな行動を考えてまいりましたけれども、私どもは最終的に審議権を保障しないというような考え方には立たなかったように思っております。
  234. 服部三男雄

    服部三男雄君 終わります。
  235. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で服部三男雄君の質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午後三時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十二分散会