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1996-02-15 第136回国会 参議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年二月十五日(木曜日)    午前十時五分開会     ―――――――――――――    委員異動  二月五日     辞任         補欠選任      島袋 宗康君     西川  潔君  二月六日     辞任         補欠選任      大脇 雅子君     峰崎 直樹君  二月十四日     辞任         補欠選任      坂野 重信君     佐藤 静雄君      田村 秀昭君     小山 峰男君      峰崎 直樹君     照屋 寛徳君      上田耕一郎君     笠井  亮君      緒方 靖夫君     阿部 幸代君  二月十五日     辞任         補欠選任      岩瀬 良三君     菅川 健二君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         井上  裕君     理 事                大河原太一郎君                 斎藤 文夫君                 清水 達雄君                 塩崎 恭久君                 泉  信也君                 白浜 一良君                 都築  譲君                 山本 正和君                 有働 正治君     委 員                 阿部 正俊君                 石井 道子君                 板垣  正君                 上杉 光弘君                 久世 公堯君                 河本 三郎君                 鴻池 祥肇君                 佐藤 静雄君                 武見 敬三君                 谷川 秀善君                 野沢 太三君                 野村 五男君                 服部三男雄君                 真鍋 賢二君                 依田 智治君                 荒木 清寛君                 岩瀬 良三君                 海野 義孝君                 大森 礼子君                 加藤 修一君                 小山 峰男君                 菅川 健二君                 鈴木 正孝君                 直嶋 正行君                 益田 洋介君                 横尾 和伸君                 朝日 俊弘君                 一井 淳治君                 大渕 絹子君                 梶原 敬義君                 川橋 幸子君                 照屋 寛徳君                 阿部 幸代君                 笠井  亮君                 小島 慶三君                 西川  潔君    国務大臣        内閣総理大臣   橋本龍太郎君        大 蔵 大 臣  久保  亘君        法 務 大 臣  長尾 立子君        外 務 大 臣  池田 行彦君        文 部 大 臣  奥田 幹生君        厚 生 大 臣  菅  直人君        農林水産大臣   大原 一三君        運 輸 大 臣  亀井 善之君        郵 政 大 臣  日野 市朗君        労 働 大 臣  永井 孝信君        建 設 大 臣  中尾 栄一君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    倉田 寛之君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 梶山 静六君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  中西 績介君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)       岡部 三郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  臼井日出男君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       田中 秀征君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       中川 秀直君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  岩垂寿喜男君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  鈴木 和美君    政府委員        内閣官房内閣外        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房外政審議室        長        平林  博君        内閣法制局長官  大森 政輔君        内閣法制局第一        部長       秋山  収君        人事院総裁    弥富啓之助君        人事院事務総局        職員局長     佐藤  信君        警察庁刑事局長  野田  健君        宮内庁次長    森  幸男君        皇室経済主管   角田 素文君        総務庁行政管理        局長       陶山  晧君        北海道開発庁総        務監理官     松川 隆志君        北海道開発庁計        画監理官     半田 博保君        防衛庁参事官   澤  宏紀君        防衛庁防衛局長  秋山 昌廣君        防衛庁経理局長  佐藤  謙君        防衛施設庁長官  諸富 増夫君        防衛施設庁施設        部長       小澤  毅君        経済企画庁調整        局長       糠谷 真平君        経済企画庁総合        計画局長     土志田征一君        経済企画庁調査        局長       澤田五十六君        科学技術庁原子        力局長      岡崎 俊雄君        科学技術庁原子        力安全局長    宮林 正恭君        沖縄開発庁総務        局長       嘉手川 勇君        国土庁土地局長  深澤日出男君        法務省刑事局長  原田 明夫君        外務省アジア局        長        加藤 良三君        外務省北米局長  折田 正樹君        外務省条約局長  林   暘君        大蔵大臣官房長  涌井 洋治君        大蔵省主計局長  小村  武君        大蔵省主税局長  薄井 信明君        大蔵省銀行局長  西村 吉正君        大蔵省国際金融        局長       榊原 英資君        文部大臣官房長  佐藤 禎一君        文化庁次長    小野 元之君        厚生大臣官房総        務審議官     亀田 克彦君        農林水産大臣官        房長       高木 勇樹君        農林水産省経済        局長       堤  英隆君        運輸大臣官房総        務審議官     相原  力君        郵政大臣官房審        議官       品川 萬里君        労働大臣官房長  渡邊  信君        建設大臣官房長  伴   襄君        建設省都市局長  近藤 茂夫君        建設省道路局長  橋本鋼太郎君    事務局側        常任委員会専門        員        宮本 武夫君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○平成七年度一般会計補正予算(第3号)(内閣  提出、衆議院送付) ○平成七年度特別会計補正予算(特第3号)(内  閣提出、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 井上裕

    委員長井上裕君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 井上裕

    委員長井上裕君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事都築譲君を指名いたします。     ―――――――――――――
  4. 井上裕

    委員長井上裕君) 平成七年度補正予算二案についての理事会決定事項について御報告いたします。  質疑は二日間行うこととし、総括質疑方式とすること、質疑割り当て時間の総計は百六十分とし、各会派への割り当て時間は、自由民主党・自由国民会議六十分、平成会五十五分、社会民主党・護憲連合二十分、日本共産党十五分、新緑風会五分、二院クラブ五分とすること、質疑順位についてはお手元に配付いたしておりますとおりでございます。     ―――――――――――――
  5. 井上裕

    委員長井上裕君) 平成七年度一般会計補正予算(第3号)、平成七年度特別会計補正予算(特第3号)、以上二案を一括して議題といたします。     ―――――――――――――
  6. 井上裕

    委員長井上裕君) この際、一般国道二百二十九号豊浜トンネル崩落事故について、政府から発言を求められておりますので、順次これを許します。中尾建設大臣
  7. 中尾栄一

    国務大臣中尾栄一君) 二月十日の午前、一般国道二百二十九号、北海道余市町から古平町にあります豊浜トンネル坑口部におきまして、トンネル上方岩盤から大規模崩落をいたしまして、トンネルが約三十メートルにわたり押しつぷされたわけでございます。  これによりまして、路線バス一台と乗用車一台が落石土砂に埋まりまして、多くの方々、推定二十名が事故に巻き込まれ、他に落石により一名の方が負傷したわけでございます。事故に巻き込まれた方々及び御家族の方並びに負傷された方には心よりお見舞い申し上げる次第でございます。  事故状況の的確な把握及び迅速な事故処理を図るため、事故直後に北海道開発局及び建設省において対策本部を設置するとともに、現地専門家などを派遣し、私からも直接北海道開発局長人命救助を第一に作業を急ぐように督励しているところでございます。  現地では、被災者救出を最優先に、北海道開発局対策本部土質工学構造力学学識経験者民間地質専門家等協力を得て作業方針を定め、多数の施工業者協力体制のもと岩盤除去作業を進めてきたところ、昨日の発破によりましてトンネル上部岩塊を破砕することができ、けさまでにトンネル上部土砂をほぼ除去したところでございます。  建設省としましては、岩盤除去専門家派遣等を行ってきたところでございますが、引き続きできる限りの支援を尽くしてまいるところでございます。  私も、昨晩、現地に赴き、古平側トンネル坑口において崩壊斜面状況坑内落石状況、さらにトンネル上部土砂除去作業状況を確認するとともに、警察消防自衛隊関係する町の救出作業に携わっている方々に、被災された方々の一刻も早い救出に向け全力を挙げて取り組むよう改めて激励、督励してきたところでございます。  また、被災者の御家族皆様方にはぜひともお会いしたいと思いましたが、何せ到着しましたのが非常に遅い時間帯でございましたから、既に爆破が一回このような形で成功いたしましたので、不安感の中における安堵感と申しましょうか、眠られている方が過半数でございましたから、お会いすることも差し控えました。機会をとらえて再び伺いたいと思っております。  また、今回の事故を重く受けとめ、崩壊したトンネルと同様の地形条件にあるトンネル坑口部全国緊急点検につきまして各道路管理者指示したところであり、それに基づき必要な措置を講じて道路安全確保に努めてまいりたいと思います。  以上、簡略ながら報告を申し上げます。ありがとうございました。
  8. 井上裕

  9. 岡部三郎

    国務大臣岡部三郎君) このたび発生した大規模崩落事故により被災された方々並びに安否を気遣われておられます御家族方々に対し、心からお見舞いを申し上げる次第でございます。  総理の御指示に従い、二月十二日、この被災現場調査してまいりましたところ、今回の事故は予想だにできない大規模岩盤崩落し、トンネル坑口部を直撃した極めて甚大な事故でございまして、救助活動は大変困難をきわめておりますが、人命救助を最優先に一刻も早い救助活動を現旧地で指示してきたところであります。  さらに、安否を気遣われる御家族方々からお話を承り、心からお見舞いを申し上げますとともに、連日不眠不休救助活動を進めている関係者になお一層の御努力をお願いしてまいりました。  また、今回の出張に際しましては、北海道開発局長に対し、一、今回の救助活動は技術的に困難をきわめる作業なので、民間も含めた広範な専門家による支援体制を強化すること、二、安否を気遣われておられる御家族方々に対しては、単なる情報提供にとどまらず、御家族の視点に立った親身な対応を行えるような体制を強化すること等を指示いたしました。  私といたしましては、一刻も早く被災された方々救出できるよう最大限努力してまいりますとともに、災害に強い安全で安心できる地域社会の形成に向けて、今後ともなお一層の努力をしてまいる所存でございます。     ―――――――――――――
  10. 井上裕

    委員長井上裕君) 二案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。清水達雄君。
  11. 清水達雄

    清水達雄君 自民党の清水達雄でございます。  建設大臣、大変な強行軍でお疲れさまでございました。岡部大臣大変御苦労さまでございました。  北海道古平豊浜トンネル崩落事故につきましては、関係者不眠不休努力が続けられておりますけれども、既に崩落後六日になります。トンネル内に取り残されましたバス乗客等の御家族方々の御心痛を察しますと、本当に余りあるものがあると思います。一刻も早い救出が必要であると思います。人命にかかわる問題でございます。何とかできるだけ早く救出ができますように懸命な努力をお願いいたしたいと思います。  また、救出後の事後対策等につきましても、政府を挙げて万全な対策がとられますようにお願いしたいと思いますけれども建設大臣北海道開発庁長官の今後の取り組みについてお伺いをいたしたいと思います。
  12. 中尾栄一

    国務大臣中尾栄一君) 率直な感想を述べさせていただきますと、私も昨日、予算委員会衆議院の方で列席をさせていただいた直後に、しかも国会対策の与野党の皆様方の御協力を賜りまして、そして出発をさせていただきました。  行ってよかったなと思いましたのは、不眠不休と先ほど清水委員おっしゃいましたが、その任に当たる主管所長などに至りましては四日間全く眠っておらないという状況でございまして、私は顔色を見たときにこれはもういかぬと思いましたので、その場でこの所長を早く眠らせるようにということを北條部長に下達をいたしました。そして、少しでも休めるようにと。  実は、きょうそのことを申し上げて、私が到着する前に二時間ほど眠らせたんですが、どうも眠らないようですと、眠れずにそのまま起き上がって私を迎えたということを聞きまして、これはもうそのままでは病気になってしまうという感じさえするわけでございます。御家族のことの安否、全く同感でございます。  実はきのうは、先ほども御報告申し上げましたように、不安感の中における一抹の安堵感と申しましょうか、まさにやっと爆破が成功した。それも考えてみますると、総理を初め各位方々から激励と同時に、総理から特に安全優先にせよと、こういう御下令でございました。同時に、できる限り家族のことを考えて温かい食事、あるいはまたトンネルの中においても温風みたいなものを出して、そして救出の中にあってもそういう形で安否を気遣う家族をおもんぱかりながらも、被災者に対する思いやりというものも必要なのではないか、こういうことでございましたので、そのことも気遣いながら全部を私は点検いたしました。  特に、私としましては、待機している自衛隊消防庁並びにその他各位警察方々、それから同時に地元町民の有志の方々、大変な御努力を賜りまして、これまた同様全く不眠不休のようにおやりになってくださっていることがわかっておりました。そして、崩れたとはいえ土砂が山積しておるわけで、バスの姿は表から見えないわけでございますから、それを今取っかかって、必死の作業できのうも徹夜をしているわけでございまして、いよいよその姿も間もなくあらわれるでございましょう。そういうことにあって、被災者をどういう形でお迎えするかということもこれまた大変な課題であろうかと思うのでございます。  それだけに私といたしましても、やはりここでひとつ人心一新しながら、それぞれの組織、機構の中でやっていることでございましょうが、休む者は多少は休ませませんと、四日間連続不眠不休ではこれは体がもつものではございません。そういう点においては、少し交代交代でもっと巧みにやってくれということと、激励を専らするということが私の使命でありましたから、一つ一つの隊を訪れ、そして皆さん方激励させていただきました。  残念ながら、私の到着が十時過ぎでありましたから、不安感の中における安堵感のため八時から皆さん寝られたそうでございます。ほとんど大半め一親等であられるようなお父様、お母様方はもう既にお休みだそうでございました。  それで、何といいましょうか、全体から見れば、駆けつけた親戚各位方々でございましょう、何人かおられるようでございますが、その方々に会ってお話をじっくり承る時間はなかったのでございますが、幸い私の前に行ってくださいました北海道開発庁大臣から激励を賜りまして、大変勇気づけられたようでございます。  そういう点においては、内閣一体、ともどもこれにお互いに連動し協力し合い、またお互いに切磋を約束し合いながら結束し合ったことは、私はこの内閣の取り組んできた姿勢においては、私の口から言うのもなにかと思いますが、大変一生懸命にやってきた結果だったかなという感じでございます。  一部誤解があったようでございますが、バスの姿はもう間もなく出てくるということを私は確信を持ちます。ありがとうございました。
  13. 岡部三郎

    国務大臣岡部三郎君) 十日の八時十一分にこの事故が起きまして、私どもが直接情報を入手したのは十一時半ごろでございました。直ちに北海道開発庁としても二十四時間体制でこれに対応する体制を整えまして、現地におきましては三時五十分に小樽開発建設部対策本部をつくり、さらに現場にもその夜には対策本部をつくりまして、これは開発局だけでなくて、警察消防地元一体となってこれに対応するような体制を整えました。  翌十一日に第一回の発破があったわけでありますが、その結果が必ずしも思わしくないというようなこともございまして、総理からも特に御指示がございまして、現地に行って指導するようにと、こういうことでございましたので、直ちに現地に赴きまして、十二日の早朝から現地に入りました。  一番最初に感じましたことは、やはりこれだけの大事故でございますので、しかもこの事柄の性質上、すべて判断はまず現地でしていかなきゃならない。こういうために現地技術体制を強化する必要がある。そのためには北海道を挙げて、しかも民間協力も得てやらざるを得ないということで、そうした措置をとりました。  二番目は、今、建設大臣もおっしゃいました、二十人の家族方々が大変に安否を気遣っておられるわけでありますから、この方々に対して十分な情報を提供し、親身になってお世話できるという体制を早く整えなければいかぬ。従来のいわゆる土木の現場体制ではそれはとても不十分だと思いましたので、開発局のそういった関係者を総動員いたしまして現地に急行させました。しかし、それだけではやはり不十分だと思いまして、帰りまして総理に御報告申し上げると同時に、建設大臣にお会いをし特にお願いしまして、日本の第一級のこういった隧道、発破等技術者を総動員していただきまして、翌朝の一便で直ちに現地に向かわせていただきました。  そうしたことも幸いをいたしまして、昨日の第四回目の発破であの二万七千トンという大きな一番がんになっておりましたものが爆破されまして、ようやく坑内での救助作業ができるようになったわけでありますから、一刻も早く安全な救助が行われますように私ども建設省その他の関係各省協力をいたしまして最大限の努力をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  14. 清水達雄

    清水達雄君 この問題につきましては、崩落原因調査でありますとかあるいは取り組み方、特に発破を何回もかけないと崩れなかったとかいろんなこともありますけれども、こうした問題については今後またいろいろ検討される機会があると思いますので、この辺にしたいと思います。  私は、補正予算審議でございますので、住専問題のほかに景気動向でありますとかあるいは財政問題、これらについて御質問したいわけでございますが、時間の関係もありますので、まず住専問題から始めたいと思います。  衆議院予算委員会で、三十日以来、非常に長い時間かかって審議が行われているわけでございますが、国民理解がだんだん、少しは理解が得られてきているのかなという感じもいたしますけれども、比率からいうと恐らく国民はなかなか納得していないというのが現状だろうと思います。  どうしてそうなのか。民主政治でありますから、内閣の施策というものは国民理解を得てやらなければならない。そういう原点を考えてみますと、やっぱりこの問題に対して、特に御担当であられます総理大臣大蔵大臣が、国民理解を得るためにどのようにしていったらいいのかというふうなことを中心に、どんな御認識を持っておられるか、お伺いしたいと思います。
  15. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 住専の問題と申しますものは、日本金融機関の抱えております不良資産問題、三十八兆と言われておりますけれども、その不良資産問題の中で代表的と申しますか、象徴的と申しますか、同時に解決を急がなければならない点でも最大の課題だと私どもは考えております。  それだけに、日本金融機関の、また金融システムの信頼をいかに回復し安定性を回復するか、確保していくかという点に対し、真剣な議論を進めてまいりました。  そして、その金融機関がみずからの損失を確定できない状況が続きますことは、預金をされておられる方々すべてに不安を与えるという問題もございます。そして、ようやく多少の明るさが見え始めてきております中で経済を本格的な回復軌道に乗せていきますためにも、この問題はどうしても解決を急がなければなりません。  そして、関係当事者の中における話し合いがぎりぎりまで続けられました結果、逆に国民に対し御説明をいたす時間、情報開示等がおくれました点、これは大変申しわけないことだと思います。しかし、この財政資金の投入という判断を決しましたのは、これはまさに国民の皆様に御負担をお願いするということでありますから、この必要性あるいはスキーム等につきまして国民お一人お一人に御理解をいただけるように十分な努力をこれからも続けてまいらなければならないと考えております。  例えば、住専は今回の処理によりまして消滅をするわけであります。ですから、住専という私企業を救済するものではございません。また、関係金融機関やあるいは住専からの借り手に対しまして救済をするといったものでもございません。当然のことながら、その債権は全力を挙げて回収に努力をしていくべきものでございます。  こうしたことも含めてきちんと御説明をする、その点になお努力を必要とする、御指摘はそのとおりと考えておりますし、今後ともに本院を初め国会の御協力もいただきながら、透明性の確保、あるいは原因、さらに種々の責任の明確化といったものに努めながら、この処理方策につきまして国民各位の御理解を得るべく全力を尽くしてまいりたいと考えております。
  16. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 今、橋本内閣総理大臣から御答弁を申し上げたことで尽きると思うのでありますが、この六千八百五十億の公的資金を導入いたします住専問題の処理を御提案申し上げるに先立って、私ども関係閣僚懇談会において申し合わせを行ったことが三つございます。  一つは、情報の積極的な開示でございます。二番目は、強力な債権の回収でございます。三つ目が、責任の明確化ということでございます。これらのことをこの住専問題の処理に当たって全力を尽くすことによって、国民皆様方の御理解を得られるよう努力してまいりたいと考えております。  情報の開示につきましては、国家公務員法等に定める守秘義務の問題に当たる事項がございますが、法的な手続によってこれらの法律上の制約をどのように解除して資料を国会の御要求に従って提出するかということについて、私どもは積極的に取り組んでまいったつもりでございます。  また、強力な回収ということには、六千八百五十億の巨額の税金を使わせていただきます以上、十三兆に及びます債務一切についていかなる免責も行わない、徹底的に債務者に対しては債務の履行を求めて回収に当たるということで全力を挙げる決意でございます。  また、今日、住専問題がこのような深刻な状況に立ち至りましたことについては、長い経緯に基づいて多くの責任がございます。債務者の責任、住専の経営者の責任、母体行の責任、そして農協系統金融機関におかれてもその経営責任等、これらの問題は明確にされなければならないと考えております。  また、この責任問題には大蔵省を中心といたします行政の責任が問われることは当然でございます。また、これらの重大な不良債権を伴う住専問題の今日を来しましたことについて、その間、政策等の決定にかかわってまいりました政治家の責任がどのように存在するのかということも究明せらるべきものだと考えております。  責任は、いかなる立場であれ区別なく私どもはその責任が問われなければならないし、とるべき責任を明確にとらせるということも今度の住専問題処理機構の任務であると考えております。  この六千八百五十億円は特定の債務者や特定の金融機関を救済するものではないということを申し上げてまいりましたが、そのことをより国民の皆さんにも御理解をいただけますよう、今後この処理機構の任務の遂行に当たって明確にしなければならないと考えているところでございます。
  17. 清水達雄

    清水達雄君 今のお話で、やはり情報開示でありますとか、責任の所在とか、あるいは回収の努力とか、そういうふうなお話があったわけですが、私はやっぱり国民が一番わからないのは、なぜ税金を使わなければならないのかという筋書きがわからないんだろうと思うんです。先ほど来おっしゃっていることはみんな必要なことですけれども、なぜ税金を使わなければならないか、それはこういう意味で仕方がないんだよという筋書きがよくわからないんだろうと思うんです。  みんな、一般の企業が倒産したって別に政府から支援をしてもらうわけではないよと言っているわけですね。住専というのは預金を預かっている金融機関ではありませんから、住専がつぶれたって別に預金が払い戻せなくなるということはないよと、こういうふうに今思っているわけです。  ところが、現実には住専に融資をしている金融機関、これは非常に力の強い母体行的な銀行もあれば系統金融みたいなものもあるわけですけれども、そういうところが住専に金を貸しているのが返ってこない。そうすると、そういう系統金融とかあるいは地銀とか、そういうふうなところに金を預けている人が払い戻してもらえないのかもしれないということがあるわけです。そこに至れば、今の日本金融システムならばやっぱり預金は払い戻してあげなきゃならないですから、そういう段階に至ると、これはもう国民には財政支出をするのはしようがないなということがわかってもらえると思うんです。そういうものをやっぱり今はもう包括してとらえて、事前にちゃんとやらなきゃだめなんですということの説明がよくわからないんです。  だから、僕はそういう点をもっとはっきり赤裸々に、多少あくどいというか、品の悪い言葉が出てもいいけれども国民にわかるような言葉でやっぱり説明をきちっとする必要があるんじゃないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
  18. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 六千八百五十億の公的資金の導入が必要となっておりますのは、今日、この住専問題が我が国の金融機関に存在いたします不良債権の象徴的、喫緊の課題として早期に処理されなければならないということについては、ほとんどの皆さんが御異存のないところだと考えております。  それで、そのことに対して公的な関与が必要となってきているわけでありまして、既にこのような事態を招来いたしましたことについての責任は明確にされなければなりませんけれども、この事態をどうするかという問題について、早期の処理ということを破産処理でやるべきだという御意見もございます。会社更生法でやるべきだという御意見もございます。そのことはかえって非常な混乱を招くし、解決をおくらせることになるのではないか。  六兆二千七百億と一千四百億の損失と欠損につきましては、これをどのように当事者で負担するかという協議の中で、母体行責任、貸し手責任、そういったような問題を総合的に判断し、それぞれの可能な負担を要請しこれを求めてきたというのがこれまでの経過でございました。そのそれぞれの当事者の負担でどうしても負担し切れない分について、これは公的資金の導入をお願いする以外にないと。  それで、もしこのことを認めないという立場に立ちました場合には、これは当事者間の解決に任せる以外になくなるのではないかと思っているのであります。そのことのもたらす影響は、金融システムの不安、そして内外の信用、信頼の失墜、そして預金者の保護、また日本経済がせっかく回復基調にあると言われる中で経済の回復をおくらせることになろうと思うのであります。  私は就任直後にG7に出席をいたしまして、昨年十月のG7で武村前大蔵大臣から各国との協議の中で話された内容を引き継ぎ、日本の金融政策に対する、不良債権の処理問題等の取り組みに対する各国の考え方、受けとめ方というものを直接各国の蔵相であります人たちからしっかり受けとめてまいったつもりでございます。  日本において今政府がこのような処理策を決定いたしましたことだけが要因だとは思いませんけれども、ジャパン・プレミアムも、〇・五まで上がっておりましたものが今日では〇・一を割って、今限りなくゼロに近づくという状況にございます。国益全体を総合的に判断して、今日、政府のとるべき住専問題処理対策は御提案を申し上げておりますこと以外にない、そのようなことを国民の皆さんに御理解を賜りたいと思っているのでございます。
  19. 清水達雄

    清水達雄君 今、大蔵大臣お話しになったようなことを、もっと国民にわかる言葉で具体的に言わなきゃだめだと思うんですよ。  例えば、住専問題というのは不良債権問題の象徴であるとか、早期にやらなきゃだめだとか、それから金融システムがどうだとかと言ったってわからないですよ、国民は。そういう言葉を全部かえなきゃだめだと思います、私は。  それで、この政府の処理スキームの問題が、性格というものが国民によくわかっていない。私は、そのことをこれからちょっと一つ一つ御質問したいと思うんです。  衆議院審議段階で、破産法によって法的手続を進めればいいじゃないかという議論が非常にありました。これはもうみんなよくわかっているんですけれども、破産でやった場合には、負担関係が、現在の母体行が三・五兆とか一般行が一・七兆とか、あるいは農協系統系の贈与が五千三百億なんということじゃなくなつちゃうわけですね。  これは破産処理でやれば、要するに競落をどんどんやるというようなことがあるから、早く売らなきゃならぬというようなことで安くしか買ってもらえないというようなこともあるから、まあ額もふえるんでしょうけれども、例えばある試算によれば、母体行が二・一兆とか、一般行が二・三兆とか、系統が三・三兆という負担になるよというようなことを言われているわけですね。しかし、こういうものを系統金融機関が素直に、はいそうですかと受け入れるかどうかということだろうと思うんですよ、今までの経緯で考えると。  私は、法的処理を行うということになれば、当然、系統金融機関は母体行等を相手取って、今までの覚書でありますとか行政指導とかというふうなことを踏まえた上で、損害賠償請求裁判というのが必ず起きるというふうに思うんですけれども、その点について大蔵大臣、農水大臣はどういうふうにお考えになっているか、お答えいただきたいと思います。
  20. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 御質問にありましたとおり、これは訴訟になりますと、これまでの長い住専、母体行、それと系統との関係、そしてまた設立の経緯、銀行保証が一時行われたこと等々からかんがみまして、母体行というのは百六十近くあるわけでございます。さらにまた、農中を初め、信連、共済、九十幾つあるわけでございますが、それらの間で、これらの経緯にかんがみ、損害賠償請求訴訟というのが、あるいは母体行の信義則あるいは経営破綻に導いた責任、こういったことからかなりこれは訴訟合戦がもう次から次に起きる可能性があると思います。  そういったことを考えますと、今回のスキーム、それが我々にとっては最大のスキームである、こう考えております。
  21. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 清水さんおっしゃいましたように、もし破産処理ということで、かかります経費等を念頭に置かず、当事者であります三者が債権の放棄等いわゆる負担になりますものは、六兆四千百億で見ました場合に母体行が一兆七千五百億と言われております。また、系統関係が二兆七千五百億、それから一般行が一兆九千億という債権放棄、つまり損失の負担になるということであります。  逆に、母体行を非常に免責することに結果的になってくるものでありまして、系統金融機関においては、二兆七千五百億の放棄ということになれば経営が非常に困難となってくるものだと思っております。体力の限界をはるかに超えることになり、これはひいては預金者にとって大変重大な問題を引き起こす可能性がある問題だと思っております。そのような意味で預金者の保護ということが考えられるものだと思っております。  もしそういう破産処理ということになりますと、利害関係が複雑でありまた関係者が多数に上っておりますから、今、農水大臣が申されましたように訴訟が数多く起こされるということになれば、この解決は大変長引くことによって、結果的には問題の解決を先送りすることによって、金融行政としては極めて重大な責任を残すことになるだろうと思っております。
  22. 清水達雄

    清水達雄君 破産で処理した場合に、一番責任が重いと思われる母体行、住専はともかくとして母体行、そういうものの負担が軽くなる、それで系統金融機関などの負担が非常に重くなると、いわゆる国民が一方で非常に責任の所在について大きいと思っているところの負担が軽くなるということになるわけです。だから、破産の場合と今回のような政府の処理スキームというものとの違いというのか、何かをもっと国民にわかるように説明しなきゃいけないんじゃないかと思うんです。  しかも、そういう破産みたいなことになったら、これは私は系統金融機関から当然損害賠償請求が出なきゃだめだろう、恐らくそうなるだろうと思うんです。そういうふうになりますと、日本金融機関のほとんどが裁判で争うという大裁判になつちゃうわけです。そんなことをやったら、これはもう我が国の金融機関に対する国際的な信頼は物すごくおっこちるし、国内経済にも物すごく悪影響を与える。今後の日本経済がどうなるかという不安さえ非常に起こるわけでございます。しかも、今の政府の出そうとしている六千八百億円なんというものではなくて、もっと多額の預金者保護の財政支出が生ずるだろう、こういうふうなことをもっときちっと言わなきゃいけないというふうに思うわけでございます。  こういうことをちゃんと言うか言わないかということが私はこの闘いの勝負であるというふうに思っているんですけれども、どうも政府の物の言い方は抽象的で、さっき私が申し上げたようなことなんだから、国民にはわからないということだから、もっとちゃんと国民に裸でぶつかって訴えるということをぜひやってほしいと思うんですけれども、この辺いかがでしょうか、総理大臣
  23. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 確かに、住専というのは預金者を持つ金融機関ではございません。金融機関からの融資を受け、それを運用するノンバンクの一つであります。しかし、そこに貸し込んでいる金融機関の数、二百以上と言われておりますが、これがもしそれぞれの損失額が確定しない状態がこれ以上長く続きますとき、当然のことながらそれぞれの金融機関の経営は不安定になります。そして、その金融機関は系統であろうと何であろうと皆預金者を持っておられるわけでありますから、そこに信頼を欠く事態が起こったならこれは取り返しがつきません。  金融の機能と申しますものは、多数の預金者を初めとする金融システムに対する信頼、これを利用される方々の信頼というものを土台にしてできているものであります。それだけに私どもとしては、まさに今、議員から御指摘をいただきましたようなそうした思いで一生懸命この問題に取り組んでまいりました。これからもそうした御説明努力というものに全力を尽くしながら、何とかしてこの問題をこれ以上先送りすることなく解決をしたいと心から願っております。御協力を心から願う次第であります。
  24. 清水達雄

    清水達雄君 もうちょっと整理して言うと、いわゆる一般的な場合には破産法の手続でやるのが普通のやり方だと思うんだけれども、そうすると今まで議論してきたような問題が非常に起きてくるわけです。だから、責任の所在等も踏まえ、あるいは過去の経緯も踏まえた上で、和議によるスキームなんです、政府の処理スキームというのは。破産でやった場合には非常に社会的に妥当でない結論が出てくる、あるいは裁判も起きてくる、そういうふうなものを踏まえた上で関係者間で協議をして、言うなら和解というか和議というか、そういうものでできたスキームなんです。そういうことを国民にもっとはっきり言ってやればいいと思うんですよ、これは。そういう裁判の結果を見据えて、こういうところへ落ちつくのがいいところだというスキームだと私は思います。そのことをできるだけわかりすく言うべきだというように思っているわけでございます。  それから今度は、今の政府の処理スキームで住専処理機構とかいうふうなものを使ってやった場合に、その債権の回収の問題なんですけれども、これはもう住専とかなんとかに金返せと言ったってもちろん損失が大きいからだめだし、住専が借り受け者に対して言ったって金なんか余り返ってこないと思うんです。住専処理機構が債権を譲り受けて回収努力をしても、そんな金は入ってこないと思うんです。入ってくるのは土地とビルだと思うんです。それを取るよりしょうがないんだろうと思うんです。  そうすると、今度の第一次処理とか第二次処理とか言っているように、早く競落なんかで売っちゃうと損失がもう一遍に出ちゃって、それで例えば一次処理の金額なんかも膨らむけれども、二次処理である程度穴あき土地は整形して売るとか、あるいはビルなんかも一遍に売り出すと値段が下がっちゃうから市場をにらみながら売るとか、いろんなそういう付加価値を高めるみたいなことをやって、できるだけ財政支出の増大の額を小さくするようなやり方をやっていこうというふうに私は考えているんだろうと思うんですけれども、いわゆる債権の回収をしたとき、その状態について私が今言ったようなことをいろいろお考えになっているのかどうか、その辺の考え方というものを伺いたいと思います。
  25. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 今回の処理方策におきましては、住専処理機構は住専から貸付債権その他の資産のすべてを譲り受けて強力かつ積極的に回収、処分いたしまして、極力損失を生じさせないよう最大限の努力を行うこととしているところでございます。したがいまして、貸付債権に係る担保物件のほか、現在各住専が所有し譲り受けることとなります不動産を、御指摘のようにいかに有利な条件で処分できるかということが大変に重要なことだと認識しております。  御指摘のように、物件によっては例えば不動産会社との業務提携等を行い、付加価値を高めていくというようなことも必要と考えておりますし、そのために弾力的な対応ができるよう、この住専処理機構も形としては株式会社組織とするというようなことを考えているところでございます。なお、そのためには不動産取引の専門家の御参加等も求めていくような工夫も必要と考えております。
  26. 清水達雄

    清水達雄君 そういうふうなことをやっていく場合に、これは何も住専にかかわる不良債権だけじゃなくて、そのほかにも不良債権担保土地というのはいっぱいあるわけですよ。こういうものをうまく土地利用していくためには、恐らくある程度の再開発的な行為というのがどうしても必要になってくると思うんです、非常に小さな土地を穴あき的に買ってあるとかというのが多いわけでございますから。  そこで、建設大臣、街路などの関連インフラの整備を初めとして土地の有効利用ができるようなそういう条件整備をやっていかないとうまくいかないんじゃないかと思うんですけれども、それについて建設省として積極的に後押ししてやろうというふうなお考えがあるのかどうか、お願いいたします。
  27. 中尾栄一

    国務大臣中尾栄一君) これはもう本当に土地問題の大専門家でいらっしゃる清水委員に私はお答えすべくもないのでございますけれども、現実、土地の有効利用というものを推進するのには、これは絶えず、私も日ごろ清水委員から個人的に御示唆をいただいていることではございますけれども、良好な町づくりはもとより、都市開発事業なんかの活性化などによって土地の流動化に資する面もございますから、土地市場全体が低迷している中で積極的に取り組む課題ではないかな、このような確信は持っております。
  28. 清水達雄

    清水達雄君 再開発的にある程度まとまったいい町になるような形で土地を利用しようと思いますと、街路が足りないとか街路の整備をしないとだめなんだというようなところがいっぱいあるわけですよ。だから、都市計画街路の整備費用もある程度ちゃんと見るとか、それでできるだけ都市化決定された街路用地を買って、街路も一緒に整備をしながらそういう不良債権担保土地も含む地域の効率的な土地利用を促進する、こういうことが私はどうしても必要だと思うので、そういう意味で総合的な対策を講ずる必要があるんじゃないかなというふうに思うわけでございます。  それから、責任の所在についてのお話がありました。  私は、これは国民感情から考えましても、責任のある方にはそれにふさわしい措置をとってもらわなきゃならないというように思うんです。特に金融機関につきましては、これは私も当時からも知っていますけれども、いわゆる担保評価が普通なら七割とかなんとかやるところを一二〇%分も貸しているよなんという話は随分当時も聞きましたし、銀行が土地と金と両方持って不動産会社のところへ来て、金もあるし土地もここにあるから、どうぞ借りて買ってくださいというふうなことも随分やってきているわけですよ。  だから、そういう意味におきまして、やっぱり無謀な融資であったと思いますね、当時の金融機関は。そういうことから考えますと、金融機関の責任というのは物すごく重いと思います。  ところが一方、銀行は給料が高いよとか、銀行の経営者とかなんとかというのは、社の中できちっとした体制ができていて、いい車に乗ったり、いい家に住んだり、いろいろなことをやっているよとかという話がいっぱいあるわけです。それから、最近におきましては金利も非常に低くなって、預金金利なんか物すごく低くなっちゃっている。ところが、銀行は非常に経常利益が出ているというような話もあるわけです。こういうところはやっぱりきちんとした対応を銀行にしてもらわないと、感情的に国民の怒りとかなんとかというのはおさまらないと思いますね。  そういう意味におきまして、例えば住専とか母体行の関係役員なんかについて、退職した人には退職金は返してもらう。あるいは現在の役員で責任のある者については、責任のない者はいいけれども、役員報酬のカットであるとか、あるいは銀行の給与を引き下げることができなければとめ置く。給与自体を上げないとかボーナスは減らすとか、やっぱりそういうことを、人員削減の話なんかも最近新聞に出ておりますけれども、これはちゃんと大蔵大臣として、それだけの重い責任を持っているんだから、それにこたえられるような措置をとるべしということを僕は要請してほしいと思うんです。  それからさらに、預金金利が非常に低くなっちゃって、金利所得も上がらない、困っているというような状況もあるわけで、一方、銀行はもうけているという話があるわけですから、この金利体系の見直しができないのか。あるいは、できないならこういう意味でできないんだということを銀行から国民にわかるように説明をしてもらうということも必要だろうと思うんです。その辺についてのお考えを伺いたいと思います。
  29. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 国民の皆さんに御理解をいただくことで非常に重要なことは、責任のある者が責任を問われないということがあってはならない、こう思っております。そういう意味では、母体行が母体行にまつわる住専の設立から人事、経営、そして今日の破綻に至る過程においてどのようにかかわってきたのか、これらのことについては明確にされなければならないと思っております。  そのようなことの上に立って、当然に母体行の問われるべき責任は明確になろうと思っております。私が銀行に対して要請すべきことがありますれば、的確にそのようにしてまいりたいと思っております。  また、低金利の問題についてお話がございましたけれども、公定歩合の決定は日銀の所管事項となっております。私どもも、このことについて強い関心を持ちながら、必要な協議はなされなければならないと思っておりますけれども、金利そのものについて私がここで申し上げる立場にございません。  ただ、この低金利、公定歩合の引き下げは景気対策とかかわって進められてきたと思っております。そのことが今度は年金生活者や高齢者の方々に非常に深刻な影響を与えていることもまた間違いのないところでございます。それらの問題を今十分に検討しながら今後の金利政策について考えていくことは、御指摘のとおり極めて重要なことであろうと思っております。
  30. 清水達雄

    清水達雄君 ひとつ厳しく大蔵大臣から金融機関に対して、私は重い責任に沿った措置がとられるように要請してほしいというふうに思います。  これからは、政治、行政にかかわる問題でございます。  今回の大蔵省、農水省における指導のあり方とかいろんなことを見ておったり、あるいは監督の状況といったふうなことを見ておりますと、やつばり金融行政のあり方が今のままでは十分でないという議論が非常にあるわけです。問題は、金融行政における規制指導的な機能と検査、監督機能というふうなものが私は混在をしている、混合しているというところにやっぱり一つの問題があると思います。  それからもう一つは、いわば金融行政というものが細かくは四省庁ぐらいに分かれておるということでございまして、大蔵省や農水省のOBなんかのお話をテレビなんかで見ていると、そっちは農水の問題だとかというふうな話がいろいろ出てくるわけです。だから私は、この際、大蔵省とは分離した形で、金融の検査、監督をやる機能というのはやっぱり独立して全体の金融機関を対象としたものとしてつくった方がいいのではないのかなという感じがいたします。  それからもう一つは、規制指導行政はどうするのかという問題があって、これは金融の自由化体制に移行してそういうもののウエートが下がってきまずから、そういうのはどうするのかなというふうな問題もあるのですけれども、これは余り短兵急に結論を出すことはできないかもしれません。そういう意味で、これは総理大臣から御答弁をお願いしたいと思います。
  31. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、今の日本の金融それぞれの分野における仕組みと申しますものは、それぞれの歴史的な沿革とかあるいは業務の内容等からでき上がってきたものであると思っております。そして、金融という世界が閉ざされた世界であったときには、それはそれなりに十分機能しておったと思います。  しかし、金融自由化がどんどん進んでいきます中で、当然ながら私はその規制あるいは監督といったやり方というものは変化していくべきだと思います。いわゆる護送船団方式と言われるようなやり方の限界というものも、今日既に御論議の中にも何回か登場してくるぐらいの大きな課題になりました。私は、これから先、その金融行政というものが効果的、効率的に運営されていく、そしてその柱として自己責任原則というものと行政の透明性というものを組み合わせた、そうした方向に動いていくべきものだと思います。  ただ同時に、私は組織論からこの問題をとらえるつもりはございません。むしろ、本院における御論議等を十分に踏まえながら金融自由化の時代にふさわしい仕組みというものを組み立てていくべき、そうした考え方を持っております。
  32. 清水達雄

    清水達雄君 確かに、護送船団方式から自由化体制に変わってきて、銀行行政というのはいかにあるべきかということが、私なかなかこれは銀行局自体もいろいろ悩んでいるところじゃないかというふうに思うんです。  特に問題は、いわゆる規制とか指導とかいった機能をどうするかという問題だろうと思うんです。これがなくていいのかということなんですが、私はこの今回のバブルのプロセスなどを見ておりますと、やっぱり民間の市場の中で自由にやらせて、それで事柄がうまくいくとは思えないですね、今。  例えば、不動産融資の総量規制というのが問題になったように、平成二年の三月に通達が出されてなされましたけれども、今これは解除をされておりますが、トリガー方式というのをとって、後で三%以上二カ月以上上がったらどうするかとか、さらに二カ月以上五%以上上がったら適用するとかというようなルールをつくった。これも何か平成六年の二月に、当分の間、このトリガー方式の適用を停止するということにしているようですけれども、やっぱりバブルのときに、平成二年三月じゃなくて六十一年か二年ごろにあの総量規制がかかっていれば、このバブルは起きなかったと私は思います。そういうことが必要なんですよ、これはどうしても。  そうすると、今の自由化に移行後、もうこれは市場に任せておけばいいんだということにはなかなかならないんで、そういう規制とか指導とかいった行政についてどういうお考えを持っているのか、大蔵大臣なり銀行局長も含めてちょっとお話を承りたいと思います。
  33. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 銀行行政の姿勢というものについて御指摘をいただきましたが、昨年の十二月二十六日に私どもの内部で「今後の金融検査・監督等のあり方と具体的改善策について」という文書をまとめて公表したわけでございますが、その中におきまして、  今後の金融行政の在り方については、これまで  の保護的規制行政から市場によるチェック機能  を一層活用する行政への大胆な転換が求められ  ている。その上で、市場規律を補完するものと  して、監督当局は、金融機関自身によるリスク  管理・内部管理体制の徹底を求めるとともに、  その整備状況を検査・モニタリング等を通じて  把握し、できる限り裁量を排除した透明性の高  い形で、的確な措置を講じていくことが必要で  ある。という基本的な認識のもとに具体的な方策を提案しているところでございます。  今後、そのような気持ちで取り組んでまいりたいと考えております。
  34. 清水達雄

    清水達雄君 具体的に、不動産融資の総量規制のトリガー方式みたいなああいう仕組みというのは今後残していくことが必要だ、それが妥当だというふうにお考えですか、その辺を伺いたいと思います。
  35. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) トリガー方式は、いわゆる総量規制を停止する際にそれにかわるものとして取り入れたわけでございますが、さらに平成六年二月八日の総合経済対策におきまして、このトリガー方式の適用を今のところ停止しております。  最近の地価動向や金融機関の土地関連融資の動向を勘案すれば、現在のところ、当分こういう方式を復活するという必要はないものと考えております。
  36. 清水達雄

    清水達雄君 いろいろ個別に今まで言ってきたんですけれども、やっぱり政治、行政の問題として最大の課題は、バブルの発生からその崩壊に至るプロセスを見てみますと、経済の実態の流れというか動きと政策というものが非常なミスマッチなんですよ、これは。  例えば、不動産融資の総量規制が平成二年三月に通達が出されましたけれども、東京圏で一番地価が上がったのは昭和六十二年の一年間でございまして、六八・六%という地価上昇がありました。昭和六十二年でございます。六十三年は〇・四%、それから平成元年は六・六%というふうな状況なんです。  これは、私も今まで何回かこの質問したんですけれども、総量融資規制をなぜやったのかと聞いたら、大阪やなんかが地価が上がっているからやったんだと、こういう説明をやっていましたよ、銀行局は。  確かに、大阪はかなりおくれて地価が上がってまいりまして、平成元年中に五六%上がりました、平成元年に。ここで終わりでございまして、あとは六・五とかというような程度の上昇にとどまり、その次はもうマイナスに、要するに下落になっております。つまり、平成元年中に地価高騰は終わっているんです、東京も大阪も。平成元年中に地価高騰は終わっているんです。平成二年ぐらいに若干上がって、平成三年からはもう下落に入っているんです。こういうことを考えますと、平成二年三月に総量融資規制をやったということは非常なミスマッチなんですよ、これは。  それからさらに、監視区域制度というのがありますけれども、監視区域について、これはもうかなり早い段階からかけました。監視区域の指定はしましたけれども、これの緩和が行われたのが平成五年の十二月に山梨県、平成六年の一月に東京都、つまりもう地価が下がり出してから、二、三年たってから監視区域の解除をやっている、緩和とか。解除は平成六年になってからでございます。  現在もまだ十五都府県で監視区域制度がしかれております。今しかれているのは開発が行われて地価上昇のおそれがあるみたいなところだと思いますけれども、いずれにしてもこういう状況でございまして、こういう上昇のカーブにややブレーキを踏もうという施策ですから、監視区域というのは。私は立法に関与しましたけれども、大体、地価上昇がとまればすぐ解除すべきものなんです。そういうつもりでつくったんです。ところが、何ぼ下がったって解除をしないんですから、これ。そういう歴史を経ております。  それから、土地税制の改善問題、これは私は当選以来三年間叫び続けてきて、やっと去年の暮れの税制改正で、これは橋本自民党総裁のお力添えもあって、かなり強い力になってやっとこういうふうなことになったような気がするんです。  とにかく、もう現実と政策がミスマッチなんですよ。どうしてこういうことになるのか。一つには情報の把握が遅いんです。これはもう必ずそういうことが言えます。統計を見てやるようじゃだめなんです。特に、これは経済企画庁なんかにとって非常に大事なことだと思いますけれども、日銀の政策委員会なんかもだめなんです、ああいうことは。現地にいる人がスタッフになって情報を提供して初めてきちんとした政策、間に合うような政策の情報が得られるんです。そういう仕組みをどうしてもつくらなきやだめだ。これはもう日本経済の最大の課題だと思います。  総理、そういう迅速な情報把握とスピーディーな政策決定の仕組みというものを何か考えて、そこが青信号から黄色信号から赤信号でも出しながら政策を動かしていくということをどうしても私はやらなきゃならないと思うんですけれども、ぜひこれは御検討いただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  37. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、委員は土地を中心に御議論をいただきました。しかし、これは地価の問題だけではなく、あるいは株価等につきま一しても、後になりましてから振り返ってみますと、経済的な合理性を欠いたレベルまで上昇していた、あるいは高騰していたということも考えられるわけでありまして、マーケットの中であるべき時点での水準というものが守られなかった。言いかえるなら、ある時点での急激な価格低下というものが生ずることも必然的な市場の動きであったということも言えるのかもしれません。  こうした極めて大規模かつ急激な資産価格、特に地価の上昇あるいは下落といった事象が戦後初めての経験でありましたことも含めまして、その後の実体経済への影響についての見通しが不十分であったということも私は否定できないと思います。  こうしたバブルの経験というもの、そこから出てくる教訓というものを十分肝に銘じながら、適切かつ機動的な経済運営というものに一層努めていくということにつきましては、委員の御指摘のとおりだと思います。  その上で、一点補足させていただきますと、特に私は土地の問題について、これは大蔵大臣当時、本院で御論議をいただきましたときにも申し上げたことでありますが、本来、国土利用計画あるいは都市計画といった土地に対するルールが先行し、これが運用されながら金融あるいは税といった武器が行使されることによって最も望ましい効果を上げるのではなかろうか。金融にいたしましても税にいたしましても重要な役割を果たしますけれども、わき役であるということを私は土地基本法の御論議のときであったと思いますが申し上げた記憶を持っております。  今日、その後、委員の大変なお力添えをいただきまして土地基本法というものが生まれ、一つのルールが策定をされました。こうした一つの基本ルールが生まれましたことは、今後に対しまして大きな武器をお与えいただいたと存じます。それだけに一層政府の責任は重くなる。そして、その基盤の上に立って各種の施策を機動的に運用していく、そうした基本で臨んでまいりたいと存じます。
  38. 清水達雄

    清水達雄君 土地基本法につきまして極めて正しい御判断を今、総理が示してくださいました。土地問題の核心は、需給バランスをうまくとる、つまり供給を的確にやる、これは都市計画が基礎になる。やっぱりそこが一番大事なところで、その点が余り力強く進んでいないんではないか、土地基本法をつくってみても、という感じがいたしておりまして、私はその点にもうちょっと力を入れていく必要があるんじゃないかというふうに思います。税制なんかがやたらに出てきてやると非常にゆがんだ形になっちゃうということを今までも言ってきたわけでございまして、総理のお考え方に全く同感でございます。  そこで、景気動向にちょっと入りますが、二月九日の月例経済報告で景気回復判断といいますか、「宣言」と新聞なんかに出ているんですけれども、景気回復判断を示されたと思うんです。あれを見てみますと、設備投資が強含みであるとか、鉱工業生産が最近よくなっているとか、あるいは輸出の下げどまり状況とかというふうなことを踏まえておっしゃっているんだろうと思うんですけれども、やっぱり個人消費は依然として弱い。それから、住宅投資が高水準だといいますけれども、これはもう高水準になっちゃっていて、これからどうなるのかということは非常に推測が難しい状況でございます。それから、雇用は弱い、これはかなり景気がよくならないとだめなんだという話がありますけれども、ということがあります。  それからもう一つは、八年度の後半には私は公共投資が減っていくと思います。平成七年度の第二次補正を中心として大変な補正をやりました。平成八年度と経済見通しで見ると大体同じぐらいですね。四十五兆円ぐらいで同じぐらいになっているけれども、前半に七年度第二次補正がずっと出ていきますから、恐らく後半減っていっちゃう。  こういうふうなことを考えますと、本当に自信を持って景気回復過程に入ったというふうに御判断になっているのかどうか。今までも何回か見通しが必ずしもよくなかった、甘かったというようなこともあったわけなんで、お伺いしたいと思います。
  39. 田中秀征

    国務大臣(田中秀征君) 経済企画庁の仕事にも深くおかかわりになった先生ですから、すべて承知の上でおっしゃっているんだと思いますが、昨週の末に発表しました月例の経済報告、これは景気回復宣言という形で受けとられましたけれども、これによって景気が回復したとかあるいは本格的な回復軌道に乗ったとか、そういうことを意味するものではございません。  今御指摘のように、いろんな数字の中で、設備投資、住宅建設あるいは生産に明るい動きが出始めておりまして、輸出も下げどまっていると。そんな、ある意味で確かな数字を踏まえてああいう形で報告させていただいたんですが、雇用状態が大変厳しい状態にあります。十一月、十二月と完全失業率三・四と最悪を記録し続けているわけですが、さらにまた中小企業も依然として厳しい状態にございます。予断を許さない状況であることは確かなんですが、しかしながら確かなところ明るい芽が出てきて育ちつつあるというふうに認識をしております。  公共投資が息切れをするんじゃないかという御指摘だと思うんですが、これは昨年の経済対策による公共投資がかなりの期間にわたって発現するということもあり、また四・一%増の公共事業費を八年度予算に盛り込んでありますので、これはかなりの高水準だというふうに思っております。  ただ、公共投資主導の景気回復であればこれは本格的な回復過程と言えないんで、いずれにしましても、私は景気回復のために三つのかぎがあると思っているんです。予算、住専、規制緩和というふうに思っているんですが、これらの課題を克服していけば二・五%の本格的な回復軌道に乗せられるというふうに思っております。
  40. 清水達雄

    清水達雄君 平成九年度からは恐らく特別減税は廃止ということになるんだろうと思いますし、それから消費税率が引き上げられるわけですね。というふうなことを考え、それから年度後半に実質的公共投資が減るというふうなことを考えた場合に、やっぱり今後の景気動向をきちっと注視して的確な対策を打っていかなきゃならぬと思うわけなんですけれども、そういう判断をいつごろやるのか。ということは、必要ならばまた補正予算を組むという話にもつながるんですけれども経済対策をやるという話にもつながるんですけれども、この辺についてはどんなふうなお考えを持っておられましょうか。
  41. 田中秀征

    国務大臣(田中秀征君) 大変厳しい財政状況にございます。したがって、先ほど申し上げましたように三つの課題の克服というところに全力を注いで、そして適切な経済運営に努めてまいりたい、そんな気持ちで現在おります。
  42. 清水達雄

    清水達雄君 次に、財政問題なんですけれども、今度いわゆる財政の中期展望がまた出されたわけですけれども、これによりますと、平成十五年度に特例国債の発行をゼロにするためには一般歳出の伸び率を横ばいとし続ける必要がある、こういうことになっているわけですね。十五年度に特例国債ゼロにするためには一般歳出の伸びは横ばいだと。今後、高齢化社会に向かっていきますから、支出の合理化等の見直しは当然努力をしてやらなきやなりませんけれども、それをやっても不可避的に財政需要はふえていくと思います。  そういう意味で、増税とかあるいは社会保険における国民負担の増加とかいろんなそういった国民の負担増を考えていかざるを得ない、もうそういう厳しい財政状況になっているわけでございます。これは政治家として増税を考えているよというようなことは非常に言いにくいわけですけれども、やっぱり今のような国債発行ということを考えると、将来本当にどうしていったらいいのかなと我々自身もよくわからない。この辺について、総理大臣、基本的にどのようなお考えを持っておられるのか、お伺いしたいと思います。
  43. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ちょうど第二次臨時行政調査会の作業のさなかに将来の国民負担というものを議論されましたとき、高齢化の進展に伴って不可避的に国民負担率は上昇する、しかしそれをどんなことがあってもその高齢化のピークに達する時期においても五〇%以下にしろ、できれば四五、六%で食いとめろという試算が示されたことがございます。まさに、今後高齢化の進展に伴いまして財政需要が不可避的に増大することが見込まれることは、委員の御指摘のとおりであります。  政府として、それに対してき得る限り現在の歳出構造というものも見直しながら、その中で最大限努力をしていくことが前提であることは言うまでもありません。しかし、そういう努力を重ねてまいりましても、なお国民の必要とされる公共サービスの財源というものは、いずれ国民皆様方に支えていただかなければならない結果が生ずることは御説のとおりであります。  問題は、それを税の形で御負担を願うべきか、あるいは保険料という形で御負担を願うべきか、あるいはそれを折半したような形を考えるべきか、国民負担率のあり方としてこの議論はいまだ詰められておりません。  いずれにいたしましても、財政というものが国民のものであり、受益される方も国民であり、同時に負担をされる方も国民であるということを頭に置きながら、私どもはそのための具体的な方法につきまして、歳出歳入の両面にわたりまして本院における御論議等を初め、国民各層の方々の御意見というものを十分踏まえながら幅広く考えていくべき課題であると考えております。
  44. 清水達雄

    清水達雄君 時間が参りましたので、私、質問を終わりますけれども、そのほかにも質問を出していまして、やらなかったところの方々におわびをしたいと思います。  あと、関連で佐藤静雄委員が質問いたしますので、よろしくお願いいたします。
  45. 井上裕

    委員長井上裕君) 関連質疑を許します。佐藤静雄君。
  46. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 自由民主党の佐藤静雄でございます。  私も、北海道で発生しました国道トンネル事故で災害に遭われました皆々様に心からお見舞いを申し上げます。一日も早く救済措置が講ぜられるようお祈りを申し上げております。政府関係者も万全の努力をしていただきたいとお願い申し上げておきます。  そこで、私は昨年の三月十四日にこの委員会で、大蔵省の幹部職員の非違、不祥事に対しまして、国家公務員法九十九条の規定を適用して毅然とした対応をすべきであるというふうに申し上げました。しかしながら、当時の大蔵大臣の答弁は、国家公務員法第八十二条に抵触せず国公法上の処分はできないと、事態を極めて甘く見て、役人が書いた形式的な答弁に終始したわけでございます。  その後、大蔵官僚の腐敗はさらに深刻なものがあった。これは皆さん御承知のとおりでございます。今後の住専処理についても、国民の極めて厳しい御批判、この中にはこうした大蔵省の軟弱な対応あるいは度を越えた忌まわしいスキャンダル、これを繰り返した大蔵官僚に対する抜きがたい不信がないまぜになっておる。そういうことで、こういう処置については果断に毅然として行うべきである。  特に、国家公務員法九十九条というのは、お役所の名誉を汚したり、役人としてふさわしくないものがあったときには処分すると書いてあるんですから、これを適用して即刻厳正に対処すべきだと思いますが、昨年もお聞きいたしましたが、総理大臣大蔵大臣人事院総裁、それぞれお答えいただきたい。
  47. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私自身、この一連の大蔵省の不祥事というものが公務員へ、今、議員は大蔵省と言われましたけれども、大蔵省のみならず国家公務員全体に対しましてその信頼を極めて大きく損なった大変情けない事件と感じておりまして、国民各位からの行政当局に対する綱紀粛正についての御批判というものは真剣に受けとめなければならないと考えております。同時に、これらの不祥事につきまして早い時期に事実の全体について解明ができておらなかったということはまことに残念でなりません。  ただ、私は、大蔵省をかばうわけではありませんが、その時々で精いっぱいの対応をし、判明した範囲での対応をしてきたとは思っております。今後、二度とこういう事件が、事態が起こらないよう、引き続き綱紀粛正に努力を傾けてまいりたいと考えております。
  48. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) ただいま御指摘のございました大蔵省幹部に関する国家公務員法九十九条にもとる行為がございましたことにつきまして、国民の皆様にも大変申しわけないことと思っております。  私は、綱紀の粛正について省内におきましても厳格に対処するよう指示をいたしているところでございますが、とりわけ財政、金融の政策運営の任に当たります大蔵省がこのようなことによって国民の信を失うということになりますれば、その責任は極めて重大だと思っております。  今後、特に業界と行政との間の距離や緊張感を厳正に保つとともに、公務員としての誇りを傷つけることのないようやってまいりたいと思っておりますが、もし法律にもとる、また公務員の信用を傷つけるような行為に対しましては、厳格に対処してまいりたいと考えております。
  49. 弥富啓之助

    政府委員弥富啓之助君) お答えを申し上げます。  昨年の三月に委員からやはり同じような趣旨の御質疑がございました。確かに、いやしくも公務員たるものは国民全体の奉仕者といたしまして公共の利益のために勤務するのが憲法及び国公法上当然のことでございます。したがいまして、国民の疑惑を招くような行為は厳に慎むべきである、これは当然のことでございます。  ただ、具体的な事案でございますが、これにつきましては服務監督権を持っておられます各省大臣がそのときの状況に応じて個別的に厳正に対処すべきものであるというふうに考えております。
  50. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 厳正に対処していなかったからだんだん出てきたわけでございますので、それはおいて本論に入りたいと思います。総裁、まことに御苦労さまでございました。  我が国の個人金融資産は一千兆あると言われております。このうち預貯金が、個人でございますが六百兆、また金融機関の貸出残高は七百兆というふうに言われております。預金から貸し出し、金融仲介がうまくいかないと、その流れが滞ると我が国の経済や世界経済に対して非常な障害になるわけでございます。その意味で、不良債権問題の早期解決、これは私は喫緊の課題であるというふうに考えておるところでございます。  そこで、まずお尋ねをしますが、我が国の金融機関の抱える不良債権は、大蔵省は三十八兆円、非常に控え目に出しておられます。民間のシンクタンクは八十兆から百兆になる、アメリカの下院の金融委員会においては百四十兆にもなる、こういうふうに言っておるわけでございますが、大蔵省の発表した数字は本当でございましょうか。それから、どうしてこのように差が出るんですか。それを教えていただきたい。  また、住専以外のプロパーの貸付金の中に推定される不良債権は、三十八兆から住専分を引いただけでございましょうか。あるいは住専以外のいわゆるノンバンクと称されるものに対する金融機関の貸し付けばどのくらいあって、そのうちどのくらい不良債権があるのか教えていただきたい。
  51. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 大蔵省といたしましては、昨年九月末におきます預金取扱金融機関の不良債権の総額を約三十八兆円と発表したわけでございますが、これは各金融機関から報告されました計数を積み上げたものでございます。かつて四十兆円と申し上げておりましたころは推計を交えておったわけでございますが、今回は計数を積み上げたものでございまして、御議論の基礎としては御信頼いただけるものと確信をいたしております。  なお、外国においていろいろな御議論があるのは私どもも承知しておりますけれども、この三十八兆円というものがそれほどかけ離れたものではないという一つの議論の素材といたしまして、例えば三菱銀行はニューヨークの市場においても上場をいたしておりまして、そこではSEC、アメリカの基準でこの不良債権額を公表しておるわけでございます。例えば、昨年の九月期の不良債権額で比較してみますと、我が国ベースで七千五百九十六億円、これは子会社たる日本信託銀行分をも含めてアメリカ的に計算した結果でございますが、に対しましてSECの基準では七千九百億程度と、若干の差はございますけれどもほぼ同じような額になっているということからも、決してこの三十八兆円というものがそう外国の基準と離れたものではないということを御理解いただけると存じます。なお、住専、ノンバンク等の不良債権との関係でございますが、この点につきましては、金融機関から住専やノンバンクに貸し出しているものがどのように不良債権化しているかという観点から、この三十八兆円の中に含まれているというふうにお考えをいただきたいと存じます。
  52. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 まだ納得はしておりません。  あなたの方で銀行検査なり、あるいは農水省では農協の検査なりやっておると思いますが、そこで出てくる不良債権、Ⅳ分類、Ⅲ分類、Ⅱ分類、それから推計した数字と今あなたが御答弁いただいた数字と大体合っているんですか。
  53. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 私がただいま申し上げました三十八兆円という計数は、各金融機関から報告された計数を積み上げておるものでございます。  なお、検査、調査等と申しますのは、ほぼ三年に一回というようなローテーションで行っておりますものでございますから、ある時点における横断的な計数を把握するということにはなじまないということも御理解いただきたいと存じます。
  54. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 この問題についてはまだまだ議論したいのでありますが、前に進みます。  バブルが崩壊しまして我が国の経済が受けた損失、これもある学者によりますと、地価で七百兆、それから株価で三百兆円、合わせて、くしくも国民が五十年かかって蓄積してきた国民の預金一千兆と合うわけでございます。あのバブルの時代に我々が軽率な行動をとったことが五十年もかかって一生懸命集めてきたお金がみんなパアになったという格好になっておるわけでございます。  そこで、私は、住専の問題というのは余り矮小化して考えるべき問題ではない、重大な、それよりももっと根本的な基本的な問題だと、こう思っておるわけでございます。  住専の処理は金融秩序を守り、これは大蔵省のお言葉で言いますと、世界的に我が国金融経済が受けた信用失墜の回復を図る端緒だと、こう言っていますが、アメリカでも北欧でも国を挙げて不良債権を解消するための大金融戦争をやっているわけですよ。そういう意識が政府に本当にあるのかな、大蔵省にそういうのがあるのかなというところが私は非常に疑問に感じておる。  アメリカでは、御承知のようにRTCを設立して、ピーク時には八千六百人も人員を投入して、その中にはFBIもCIAも地方検事も投入して、国力を傾けるわけにはいかぬという果敢な金融戦争を挑んでいるじゃありませんか。そういう基本的な態度と今大蔵省がとっている態度、これはやはり私は格段の差がある。  それから、アメリカでは、御承知だと思いますが、銀行あるいはSアンドしの経営者六千四百人もひっくくって、そのうち五千五百人も監獄にぶち込んでいる。そのくらいのことをしないと国民の皆様が貴重な税金をつぎ込む、そういう御理解はなかなか得られないんだ。  さらに、アメリカでは十九兆円の財政資金の枠を最初から与えておいて、一生懸命その中でやった、回収の努力を重ねた。それを使い残した。そのくらいのことを考えないといけませんよ。後から質問しますが、一次だ二次だと分けて、ちょこちょこと出すから国民はなかなか納得できない、そういうことなのであります。  そこで、清水先生の御議論と重複するので簡単にお答えいただきたいんですが、私はそういうふうにこの住専の処理の問題は、農協系統がどうのこうの、すぐれて農村問題だと言う人がいますが、これは認識が浅い。別に大蔵大臣、そんなものはこだわる必要ありません。そんなことは構わないのであります。本質的にはやはり金融の安定あるいは経済の安定というところにかかってくるわけであります。  アメリカと比べても非常にわずかのお金になります。これは貴重な国民の税金ですから大変なお金です、逆から言えば。それでも国民の強い怒りはなかなかおさまらない。これはやはり国民に対する説明なりあるいは迅速な資料の公開なり、あるいは総理大蔵大臣が先頭に立って国民にお願いするという態度が欠けているからだと、私はそう思うのであります。我が日本国民説明をすれば十分理解をいただける世界で最も賢い、最も優秀な国民であると私は考えております。  そこで、この問題について清水委員の議論と重複しますが、決意のほどを総理大臣大蔵大臣からお願い申し上げます。
  55. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 今、佐藤さんからお話がございましたような考え方に立って今回の住専問題処理機構を御提案申し上げているわけであります。アメリカのRTCの場合には、御指摘のようなことでございましたが、ここは貯蓄貸付保険公社も破綻するというような状況の中で果敢な回収と責任追及が行われたのであります。  私どもも、国民皆様方の税金を投入してこの先送りできない不良債権、住専問題の処理に当たります以上、悪いやつは絶対に許さない、そしてとるべき責任は明確にとる、国民の皆さんにこの経過も情報公開を積極的に行う、こういう立場で進めてまいる決意でございます。
  56. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、副総理大蔵大臣から御答弁を申し上げましたような決意のもとに、既に法務・検察におきましても、また警察庁におきましてもそれぞれの対応をチームとして編成していただいております。さらに、税務当局等もあわせまして、この問題の国民の御理解をいただけるような決着に、そして債権のでき得る限りの回収に全力を尽くしてまいりたい、そのように思います。
  57. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 今後、不良債権処理を円滑に進めていく場合に、金融機関が昨年、ことしと破綻をしておりますけれども、預金保険料率を上げなければ保険機構の金が足りない。今度は七倍程度に上げるということですが、これによってどのくらいの保険料収入が見込まれるんですか。
  58. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 先般の金融制度調査会の答申におきましては、今後五年間に生じる金融機関の破綻処理に円滑に対処し得るよう預金保険料の料率、これは現行〇・〇一二%でございますが、これを七倍程度に引き上げることが適当とされております。  仮に、今後五年間にわたりまして保険料率を現行の七倍に引き上げました場合には、保険料収入は五年間の合計で二兆五千億円弱になるものと見込まれます。
  59. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 預金保険料を引き上げて金融秩序を防衛しなきゃならぬということはわかります。  そこで、金融機関は安易に保険料負担を預金者に転嫁しちゃいかぬ。いいですか。今でも預金利息なんというのはないに等しい。そこに転嫁していったんじゃいかぬ。金融機関自体が職員の給与、役職員の給与を引き下げたり、一層の合理化をしたり、リストラをして負担増に私は対処すべきだと思うが、いかがでございましょうか。
  60. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 御指摘のように、各金融機関においては今後の保険料負担等に対処し得るようにできる限りの合理化、リストラ努力が求められていることは、私どももそのように認識しております。
  61. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 住専処理で今だんだん、農協系統金融を救うためだとか農協系統金融に責任があるとかいう筋違いの議論が聞こえてまいります。これはまことに筋違い。  住専処理に対する公的資金の投入というものを考えてみますと、協和信用組合以来、コスモ、木津、兵庫銀行、預金保険機構も持てる力をすべて投入したじゃありませんか。これは一種の国民の負担ですよ、公的資金ですよ。幾らやりましたか。それから、日銀も出動したでしょう、これも公的資金ですよ。だから、農協系統が悪いとかそんなばかな議論は絶対許せない。お答えください。
  62. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 今まで金融機関の破綻に際しましては預金保険機構が出動をしておりますが、ただいま御指摘の東京協和・安全信用組合に際しましては預金保険は四百億円、コスモ信用組合については約千百億円、兵庫銀行については四千七百三十億円の預金保険機構からの資金が供せられております。
  63. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 全部で幾らになりますか。
  64. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) そのほかにも幾つか破綻したものがございますので、すべて足し合わせますと相当な金額に上るわけでございますが、これらはすべて金融機関が拠出をいたしました預金保険料の中で賄われておるわけでございます。  なお、日本銀行につきましては、東京協和・安全信用組合に関しまして二百億円の出資をされているということでございます。
  65. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 日銀はそれだけですか。コスモにも木津にも貸しているんじゃないですか。兵庫銀行だって貸しているんじゃないですか、みどり銀行だって。お答え願います。
  66. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) ただいま東京の二信組に関します出資について申し上げたわけでございますが、そのほか兵庫銀行につきましては劣後ローンという形で千百億の資金の供給を行っておりますが、これは金利等につきましてはまた通常の市中の金利をも勘案して決めておるものでございます。そのほか、コスモ信用組合に関しましても約二百億円の資金を供給しております。  木津信用組合につきましては、まだこの破綻処理の処理策を検討中でございまして、そのつなぎの資金として日本銀行が助力をしている点はございますが、最終的な処理方策というものは現在まだ検討中という段階でございます。
  67. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 私の質問に半分ぐらいしか答えていないんです。時間がないので前に進みたいんですが、言っておきますが、日銀の出動は私の調べでは一兆五千億円以上になる。それから、預金保険機構の発動は七千億円以上になる。これほど金融秩序の維持に投入しているじゃありませんか。なぜ今回の住専処理のことがこれほど問題になって国民の御納得を得られないか。いいですか、そこに問題があるんですよ、説明をしないから。(「説明ができないんだ」と呼ぶ者あり)いや、説明はできるんだ。できるんだけれども、下手なんだ。  それで申し上げますが、時間もございませんし、昼休みきちっと休むようにしなさいという御指示もあるので。  今回の処理スキームですが、私はかねてから、一次処理、二次処理なんて言わないで、きちっとアメリカのようにある程度枠を与えてその中で大胆に処理をしていく、さらにその大胆に処理するという裏づけに、きちっとやっぱり体制を整備して、債権を確保あるいは回収するという努力をしなきゃいかぬというふうに考えて、党の部会でもあるいは金融調査会でもそういう発言をしてまいりました。ところが、一次や二次だ。これはまことに国民にわかりにくい。どうしてこういうふうになったんですか。
  68. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 今回の住専処理方策におきまして、債権放棄等によりまして現在見込まれる損失を処理する、これがいわゆる一次ロスの処理と言われておるものでございまして、これは資産を住専処理機構に譲渡する際にどうしても不可欠なプロセスでございます。  しかし、いわゆる二次ロスと言われておる問題でございますけれども、これは住専処理機構が買い取りました債権等についてあらゆる手段を迅速的確に用いることによりまして強力な債権回収を図り、現在以上の損失が生じないよう極力努める、こういう前提に立って考えられている問題でございます。  将来、そのような方策を講じてもなお万一損失が生じた場合にどうするかという問題がいわゆる二次ロスと言われておる問題でございまして、既に発生することが見込まれる損失でございますいわゆる一次損失とはその性格が大きく異なるという点について御理解を賜りたいと存じます。
  69. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 平成四年から七年九月まで主要銀行二十一行で無税償却七・五兆円、加えまして低金利により平成七年九月期の中間決算では業務純益は約三・四兆円、民間金融機関は今史上空前の高収益を上げております。この状態の中で、非常にたちの悪い紹介融資をしたり、あるいは管理責任の欠如、そういうものが目に余る。  その責任が厳しく問われている母体行や一般行が今回の処理スキームの中でどうしてもう少し持てなかったのか、それを教えてください。
  70. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 今回の処理案の策定に際しましては、いわゆる母体行に対しても最大限の努力を求めているところでございます。すなわち、母体行が住専に貸し出している債権につきましては全額放棄をする。その額がほぼ三兆五千億に上るわけでございます。  債権の全額放棄ということに加えまして、さらに今後の対応策といたしまして、これは金融システムの安定という見地からではございますが、出資だとか融資だとかいう点についても協力を求めておるところでございまして、我々としては母体行についても最大限の努力を要請していると考えております。
  71. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 時間でございますので、これは質問でなく意見として申し上げますが、財政資金を投入するのではなくて、日銀の特融やあるいは法にのっとって破産処理で片づけなさいという指摘がございますが、これについては先ほど御答弁いただいたとおり、そんなことをしておったら間に合わない。絶対間に合わない。それから、一番弱い農協系統に一番しわ寄せが行く。三兆円以上という試算もあります。だから、私はそんなことは絶対許せないし、絶対とるべきじゃないというふうに考えております。  それを申し上げまして、午前の質問を終わります。
  72. 井上裕

    委員長井上裕君) 残余の質疑は午後に譲ることといたします。  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      ―――――・―――――    午後一時開会
  73. 井上裕

    委員長井上裕君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  平成七年度一般会計補正予算(第3号)、平成七年度特別会計補正予算(特第3号)、以上二案を一括して議題とし、休憩前に引き続き、佐藤静雄君の関連質疑を行います。佐藤君。
  74. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 住専処理で国民が非常に誤解しておるところがございます。というのは、母体行による債権放棄、これを住専から借り手に対する債権放棄と誤って国民理解されている面があります。  というのは、ロールスロイスに乗った黒眼鏡のおじさんが債権放棄してもらうと、そういうふうな印象で国民は受け取っておるところに問題があるんですよ。これらについては、住専の借り手については絶対に債権放棄なんかしないということになっているわけですから、その関連会社あるいは個人の資産、それを含めてロールスロイスでも黒眼鏡でもいいから取ってくればいい、そういうことを言わなきゃだめだ。  それから、その過程で財産隠匿あるいは調査拒否、これは新しい法律でできるようになりましたが、妨害行為がある、そういう場合には厳正に対処しなきゃいかぬ。今回の処理法案によりましてそれができるようになった、そういうところをもう少し親切に国民にお教えいただきたい。  さらに、先ほど来申し上げておりますように、本腰を入れてやっていただかなきゃいかぬということで、ひとつ大臣の御所見をいただきます。
  75. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 今、佐藤さんがお話しになりましたようなそういう立場で、私、先ほども申し上げましたように、悪質なものが許されるというようなことではそれこそモラルハザードになるわけでありまして、そういう意味では決意を固めて断固たる債権の回収と責任追及をやらなければならないと思っております。特定の金融機関や、特に住専からの債務者に免責を与えるようなことは一切ございません。
  76. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 法体系が違うといえば違うんですけれども、アメリカでは財政資金を思い切って大きな枠として投入した。しかし、その裏に金融犯罪については罰則の大幅な強化あるいは公訴時効の延長、これは日本の通常の常識では考えられないほどの措置をとったわけでございます。  我が国ではこういうことを行うことにいろいろ問題があるということは十分承知しておりますけれども、債権回収の実を上げるために、少なくとも罰則強化あるいは公訴時効の延長、こういうことをお考えいただけないか。法務大臣、法務省、  お願い申し上げます。
  77. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) お答え申し上げます。  罰則につきまして、既に行われた行為に関しまして、これを実体法的に遡及して適用してまいるような法律をつくって罰則を適用するということに関しましては、事後法を禁止しております我が国の刑事司法の基本的な考え方から申し上げまして極めて困難な点があろうかと存じます。この点は佐藤委員も御承知いただいておられるところと存ずるわけでございます。  また、公訴時効の問題につきましても、ただいま委員御指摘のとおり、米国においてはそのような措置が一部とられたという状況も私どもも承知しておるわけでございます。  ただ、我が国における刑事司法の基本的な考え方から考えてまいりますと、既に実行行為が行われたものにつきまして罰則を遡及して適用していく、そして公訴が許されないのと同じように、公訴時効につきましてもやはり行為時に適用される罰則を基本的にとらえまして、そのもとにおける公訴時効ということが考えられているのでございまして、そこで公訴官たる検察官のいわば刑罰権の発動を縛っているという面がございます。その基本的な建前から申し上げまして、大変厳しい難しい問題があろうかと存じます。  ただ、佐藤委員御指摘のように、この問題につきましては私どもも起こりました事象につきまして幅広くとらえて、そして罰則の適用に関しましても関係当局と密接な連絡をとらせていただきまして最大限努めてまいる所存でございます。そのことによって、ただいま御指摘いただいたようなことを実質的に実現してまいるように私どもとしてもできるだけのことをしてまいりたいと思いますし、検察当局といたしましても、そのような観点から、さまざまな当委員会による御議論を踏まえまして検討してもらえるものと考えております。
  78. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 大蔵省の調査結果の示達書というんですか、日曜日一日つぶして読ませていただきました。まさに惨たんたるありさまでありまして、第一回の調査のときから当然あの内容では大蔵省はこれはもう立ち行かないということはわかって、文章にもそう書いてある。それを放置しておいた大蔵省の責任は、これはまことに重大。後ほどまた質問いたしますが、せっかくの調査書でございますから、その中に書いてあるやっから一つ申し上げます。  大蔵省の調査によれば、住専が無担保、無審査で融資を行った。これは明らかに私は特別背任だと思う。大体、金融機関たる者が二兆円もの融資をするのに無担保、無保証、無審査、そんなことでいいんでしょうか。そういうところに私は大きな問題があると思う。これは何もこれから法律つくらなくても、特別背任ですから今でもしょっぴけるわけですから、厳重にひとつ摘発をしていただきたい。警察、法務の考え方をお聞きします。
  79. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) 御質問は、具体的な状況を想定されまして、背任罪、特別背任罪等に当たらないかという点であろうと存じますが、具体的な事案におけるまさに具体的な犯罪の成否に関しましては、捜査当局が収集いたしました証拠に基づきまして個別に判断されなければならない事柄でございますので、御答弁申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。  ただ、一般論として申し上げますれば、犯罪の成否に関しましては、ただいま委員御指摘のような状況を踏まえまして、やはり担保価値と融資額の関係を初めといたしまして、担保の状況とか回収の可能性の有無、その程度など、まさに御指摘いただくようなさまざまな点を含めまして、背任罪等の成立要件が充足されるかどうかということを厳しく審査してまいるということが、捜査当局また法務当局の立場であろうかと考えます。
  80. 野田健

    政府委員(野田健君) 警察といたしましても、お尋ねのような行為が何らかの犯罪を構成する可能性があるかどうかについて具体的な事実関係に即して判断されるべきものと考えておりますので、答弁は差し控えさせていただきます。  一般論として申し上げれば、警察としては、いわゆる住専問題に関しまして刑罰法令に触れる行為があれば、貸し手、借り手を問わず、厳正かつ速やかに対処してまいりたいと考えております。
  81. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 今の答弁で先取りされちゃったんですが、内部審査規定を設けていない、あるいは内部審査規定があっても担保掛け目を無視して一八〇%も独断で貸している。これは明らかに背任ですよ、特別背任ですよ。こういうことを見逃してはいかぬと私は思います。これはさっき答弁してもらいましたから結構です。  さらに、住専が自分で過大投資をした。不良債権になった。その後、不動産をウインドードレッシング、粉飾決算するために時価評価の数倍で直接子会社に引き取らせる。これは飛ばしというんだそうですが、これなんかも明らかに商法に違反していますし、場合によれば刑法にもきちっと違反すると私は思うんですが、いかがでしょうか。
  82. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) ただいま御指摘のいわゆる飛ばしと呼ばれております行為につきまして、法律上の用語ではございませんために直ちに正確な定義を行うことは困難でございますが、一般に不良債権を関連会社に移しかえるなどの行為を指すものと理解しております。  これに関しましては、国会におきましても、当委員会におきましてもさまざまな御論議が行われています。また、種々の報道もなされていることを承知しておりますが、やはり具体的な事案につきまして直ちに犯罪の成否をこの場で申し上げるのは差し控えさせていただきたいと存じます。  飛ばしと言われる行為にもさまざまな形態があろうかと思います。そこで、当委員会における御議論とかマスコミの報道等の内容も当局としては承知しているものと思われますので、御指摘のような点も含めまして、種々の観点から情報、資料の収集に当たりまして検討してまいるものと考えます。
  83. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 時間がないので、恐らく新年度の予算に対する質疑の際に行われると思いますけれども、昭和五十五年に住専に対する貸し付けを金融機関貸し付けとした、私はそのことに非常に関心を持っております。あるいは平成二年から実施された総量規制からノンバンクを除いたこの理由についても本当はおただししたい。あるいは平成二年の通達で農協系統金融機関を三業種規制の対象外とした、こういうことについても重大な関心を持っておりますが、きょうは時間もございませんので、それらは後に譲りたいと思います。  ところで、その一連の流れの中で県信連の住専への貸し出しが突出して多く増加していく。その中で、行政庁はこれをどういうふうに把握しておったか。報道によれば、全国信連協会を通じて具体的な貸付額について大蔵省あるいは農水省が直接関与しておったということになっておるんですよ。そうすれば、農林系の貸し付けの実態についても農林水産省それから大蔵省はきちっとこれを把握しているはずだ。それを見逃しておったのはどういうことか。どういう指導をしたんですか。
  84. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 今御指摘のように、平成二年三月から平成三年十二月までのいわゆる総量規制通達、それからその後の農協系統の三業種規制という形の中で融資の実行状況の報告ということの取り扱いの関連でございますけれども、住専につきましては、昭和五十五年の通達によりまして、それぞれ大蔵省それから農林水産省に対しまして貸付計画額、実行状況ということにつきまして報告を徴収いたしておりました。したがいまして、その実績につきましては私どもとしては把握をしていたということでございます。  私どもとしましても、当時の全体的な総量規制ということの通達の趣旨が投機的な取引をどう抑えていくかということでございまして、あわせて住専を含みますノンバンクにつきましても報告という形で貸し出しの動向を把握するということは必要だということで、収集をするということで、いわゆる報告ということでそれを見ていたということでございます。そういう意味では、その報告の過程の中におきまして、この趣旨を体しまして注意喚起でございますとか関係者理解を求めるということにしていたわけでございます。  当時の状況ということで申し上げさせていただきますと、当時、住専会社は系統にとりましては住宅資金の供給に対応するものという意味で、いわば社会的公共性が比較的高いものであったということと、当時におきましては、御案内のように住宅の資金ニーズも非常に高かった、国民のニーズが非常に高かったというような理解を系統としては持っていたということが一つございます。  それからもう一つは、御案内のように、当時系統といたしまして貸出率といいますか、これが非常に下がりまして、系統としてもやっぱり自己努力を要するということの中で、いわゆる住専というものは比較的その当時におきましては信用のある貸出先だと、こういうふうにとらえられていたということによりまして、今御指摘のように他の業態のようにはその効果が上がらなかったものというふうに理解をいたしておるところでございます。
  85. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 信連の監督につきましては、一義的には農林水産省において行ってきておられるところでございますが、大蔵省といたしましても、個々の信連や、まして個々の案件について御報告を受けるということはいたしておりませんが、信連から住専への貸し出しの総額について半期ごとの届け出を受けていたということはそのとおりでございます。
  86. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 いろいろ本当は議論したいところですが、進みます。  農協系統が他の員外者に対する貸し付けについては、従来、銀行の債務保証をさせておった。大体それが系統金融の常道だった。ところが、住専の貸し出しを母体行の債務保証から住宅ローンの債権譲渡担保にしちゃったんですな。これからは債務保証はまかりならぬという通達を五十四年に大蔵省は出しておられますが、どんな動機で出したんですか。
  87. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 御指摘の昭和五十四年の通達につきましては、当時、一部の金融機関におきまして安易な債務保証を行った結果、経営の健全性を著しく損ねた事例、これは現実にそういう事例があったわけでございます。そういう事例が見受けられましたことから、金融機関に課せられている社会的、公共的使命にかんがみまして金融機関の債務保証のあり方について指導をしたものでございまして、この信連の問題とは直接にはこの通達は関連をしておりません。
  88. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 それじゃお尋ねしますが、母体行は今もって住宅ローン債権譲渡担保を一元的に自行において独占管理、すべての担保に支配権を持っていると聞いていますが、どうですか。
  89. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 母体行が、住専に対する融資の担保といたしまして、住専の保有する住宅ローン債権を譲渡担保として徴することにより保全を図ることは通常考えられることでございますが、他の貸し手が徴求しております譲渡担保についてまで一元的に母体行において独占的に管理していたか否かは私どもは承知をいたしておりません。  いずれにいたしましても、母体行に対しては、住専各社との過去の経緯等をも勘案いたしまして最大限の負担を求めるべきとの観点からぎりぎりの負担をお願いしていると、こういうことでございます。
  90. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 あなたの答弁では実態がわかりませんね。わかりません。それは大蔵省もわからないと、こう言うんですから。もし、一元管理しておった、独占的支配権を及ぼしておったということならば、これは完全に母体行が住専の債権を管理しておるわけですから母体行の責任はまことに大きい、免れない。母体行が直接経営しているのと同じでしょう。そういうことはどうですか。
  91. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 今御指摘の譲渡担保を一元的に管理しておるかどうかという点については、私どもとしてそのような事実を承知しておるわけではございません。しかしながら、今回の住専の処理策に関しましては、いろいろな過去の経緯等にかんがみまして母体行の責任というものは極めて重いものがある、そういう観点をも含めまして、母体行に対して債権の全額放棄という極めて重い御提案をし、そのようなことについて御了承いただくとともに、さらに出資、低利融資等の問題についても金融システム安定の見地から最大限の御協力をいただく、こういう提案をしているところでございます。
  92. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 系統金融機関の問題についてお伺いします。  系統金融機関は、住専処理のほかにもノンバンクに七兆円を超える多額な貸し付けを行っております。あるいは一般貸し付け、プロパーの貸し付けの中にも膨大な不良債権を抱え込んでおります。その中で、住専処理機構に五千三百億円の贈与をするために、経常収支ベースで三十の県信連が赤字になる、実質経常収支ベースで十の共済連が赤字になる。大変な、組織の負担の限界を私は超えているというふうに考えております。  さらに、今申し上げましたように、プロパーの不良債権の処理あるいはノンバンクの不良債権の処理、それを考えた場合に、もう少し系統金融の中で、余力を残すと言うとまた農協に出せと、こう言う人がいるから余力を残すとは言いませんが、そういうものにきちっと対応できるように、不良債権の管理徹底についてどのように考えていますか。
  93. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 系統といたしましても、今回の住専処理策におきましていわゆる母体行、住専との関係におきまして母体行のような意味でのいわゆる住専の経営責任はないということで、このことにつきましては昨年末の閣議決定等で明確になっているわけでございます。ただ、系統といたしましても、日本金融システムの一員だということで、これを支えているという意味からやはり協力をしていかなきゃならない。そういう観点で、その協力の限度ということにつきましては、ぎりぎりの限度をしていかなきゃならないだろうということで五千三百億円のいわゆる贈与という形をとっているわけでございます。  そういう意味で、これから系統に与えます影響というのは私どもとしましても大変厳しいものがあるというふうに見ておりますが、私どもとしては、今後、系統のリストラを積極的にやることによりましてそういった問題を乗り越えていかなきゃならないというふうに見ております。  さらに、先ほど御指摘のように、系統につきましてはノンバンクの貸付額でありますとかその他の不良債権も確かにございます。そういう意味では、債権管理ということにつきましても、これまでも貸付先の経営状況についての把握でありますとか、不動産の評価につきまして客観的な第三者の評価をいただいて対応していくとか、それから延滞債権があります場合にはその実態を調査するというふうなことで、当然のことでございますが種々やってきております。  今後におきましても、そういった面で一層徹底を図ってまいりたい、さらに積極的なリストラということにつきまして本格的に取り組んでまいりたい、かように考えているところでございます。
  94. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 ここでちょっとお聞きをしたいのは、農協系統の場合に、単協段階でもいっぱいお金が集まる。預金獲得も一生懸命やるけれども、土地代金も集まってくる。それを単協段階でなかなか貸す相手先がないものですから、単協によっては二〇%しか自分で貸さないで余裕金が八〇%も上がってくる。県信連段階も同じなんですよ。一生懸命集めても、そこで貸せないので農林中金に上げる。  そこで私は、農協の本来の使命は、集めた金は農業生産の投資に使える、あるいは農家の生活改善、農家の生活経営の再建に使える。そこで、できるだけ地域で、準組合員もいますから、サラ金なんかに行かないようにして農協で貸してやればいいんです、貸してやれば。そのためには農協、私も農協の指導に携わって二十年ぐらいやっておったんですが、審査能力とかそういう面でこれはやっぱり銀行にはなかなかかなわない。  そこで、農業信用基金協会という制度があるんですよ。中小企業の保証協会と同じですね。その農業信用基金協会を拡充して、保証料なんて大したものじゃないんですから、だから農協の信用事業を本来の使命に戻すために、できるだけ集めたお金はそのところで使えるような仕組みにしていくのが私は本筋だと思う。そういう面で、農業信用基金協会の活用あるいは充実、そういうことでどう考えているかお尋ねをしたい。
  95. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 農協金融のあり方としまして、農家から預かったお金でございますので極力農業者の方々の生産面、生活面にこれを使っていくということが私どもも基本というふうに思っております。ただ、現在におきましては、六十八兆円の受信業務がございまして、それをすべて農業者の方々の生産面と生活面だけではなかなか使いこなせないということがございまして、今御指摘のように上部団体へ預け金という形で運用しているという実情にございます。  しかし、基本はやはり農業者の方々の生活、生産面にできるだけ使っていくということであろうというふうに思っておるわけでございます。そういうことになりますというと、どうしても今おっしゃいましたように農家の方々の担保力の不足ということがございますので、公的な保証あるいは保険体制の強化ということが重要であるということは、私どもそのとおりと思っております。  これまでも県の基金協会に対します出資助成でございますとか、あるいは農林漁業信用基金の拡充でありますとか、それから今御指摘のように県の基金協会の保証リスクの軽減のための保証保険範囲の拡大ということをやってきているわけでございますが、今申し上げましたような考え方に立ちまして、やはりこれからも公的な農業信用保証保険制度の拡充ということにつきましては意を注いでまいりたいというふうに考えているところでございます。
  96. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 法的な整理をすればいいじゃないかと、そういう極めて農家に冷たいお話があるんですが、農協の貯金の口座は九百万あるんです、九百万。農協というのは別に信用事業だけやっているわけじゃない。農協という組織は、農村集落あるいは漁業集落、林業集落の中で、その地域に組み込まれて地域の大きな柱になっておる。法的整理をして、農協がパニックになったら助けてやればいいなんというばかな議論をする人がいるんですけれども、それは農家の実態を知らない、農村の実態も知らない。そういう暴論には私は絶対くみしない。  そこで、農協に対する批判があることは私も十分承知しております。三段階制をとっておるのでどうしても金利も割高になる、あるいは供給する資材も割高になるという御批判が強くあります。これに対して、やっぱり農協も自分でリストラをしたり、あるいは二段階制にしたり、そういうことも考えなきゃいかぬ、そのための法律が必要であればすぐに法律を出してもらう。いかがですか。
  97. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 佐藤委員、農協の末端までよく御存じの上での質問でございますが、私も農水大臣になりましてこの住専問題に取り組んで、これからの農協金融のあり方ということを考えてまいりますと、これは大変大きな改革が必要だなとしみじみ感じております。  今まで四・五%の金利だったものが、これを国債に振り向けますと一・五、六%にしかならない。三分の一になつちゃうわけですね。そういった利回りの中で、どういうふうにしたら末端の農家のサービスができていくだろうかということを考えますと、今おっしゃったように、どうしても農協組織の改革に踏み込んでいかなければならぬ。今まで御承知のように三段階を二段階にというのはJAそのものから提案されているわけでありますが、特にこの住専問題を契機に金融秩序、信用システムというようなことの方がむしろ優先的に課題として取り上げていかれなければ、農協経営の基盤を失う危険性がある大きな課題だと受けとめております。
  98. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 時間がありませんので、大蔵省の責任についてもう少し本当は聞きたいんでございますが、それは後に続く同僚議員にお任せをするということにします。  今、我が参議院自民党では、この低金利の時代に一番苦しんでいるのは年金生活者、低金利で家計部門から金融部門に平成四年から六年まででほぼ四兆円程度の所得移転が起きている。この一番苦しい年金生活者の負担を少しでも軽減するために年金生活者に配慮した金融商品の開発、その指導、これは私どもの筆頭の斎藤先生のところではもう既にやっておる。年金口座を先生の金融機関に設定したところは一%利息を付しておる。そういうことをやはり真剣に考えなきゃいかぬ、こう思うのであります。  大蔵省の行政指導、余り評判よくないものばかりありますけれども、たまには国民に喜ばれる行政指導もやってはいかがか。これについて総理大臣大蔵大臣の御所見をお聞きいたします。
  99. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 午前中、清水さんにもお答えをしたところでございますけれども、今御指摘のように金利が非常に低い状態にありますことは景気対策上とられた措置でございますが、年金生活者等に与えております影響は非常に大きなものがあると思います。今民間でも御指摘のような立場に立った金融商品が開発されておりますけれども、今後、高齢者対策、福祉等にさらに意を用いつつ、そのような配慮ができるように努力をしなければならないと考えております。
  100. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 総理、お願いします。
  101. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、大蔵大臣から基本的な御答弁を申し上げましたが、そうしたこととは別に、現在、政府といたしまして消費者物価というものに着目をしながら運営してまいっております年金制度でありますが、現在の状況にかんがみまして、年金の水準を据え置くという考え方での特別な立法措置を改めて本院にも御審議をいただくことになろうかと存じております。
  102. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 最後に、宗教法人問題についてお尋ねをしたいのでありますけれども、昨年国民の大きな注目を集めた宗教法人問題については、世論の多数の御支持をいただきまして宗教法人法の改正が先国会で行われたわけでございます。しかし、これはあくまでも必要最小限度の改正でございまして、政治と宗教との関係を初め税制のあり方等、宗教法人をめぐるいまだ多くの問題が残されております。住専問題と宗教法人問題は国民が一番今関心をお持ちになっている問題だろう、こう思っております。  先国会で成立した宗教法人法の改正は、昨年十二月十五日に公布され、一年以内に施行されることになっております。それまでに、収支計算書の作成が免除される場合の収入の額の基準を宗教法人審議会の意見を聞いて定めるということになっております。この基準設定に当たりましては、村の鎮守様あたりの小規模な法人の負担が過重とならないように十分配慮すべき、そういうふうに私どもは主張しておりましたし、その点どのような検討になっておるのか検討状況をお知らせいただくとともに、いつからそういうことができるのか、その時期も教えていただきたいと思います。
  103. 奥田幹生

    国務大臣(奥田幹生君) 今お尋ねの額の範囲につきましてですが、文部大臣はあらかじめ宗教法人審議会の御意見を聞かなければならぬ、こういうことになっております。したがって、私といたしましては、宗教法人審議会をいつ開いていただくか、それからまた額は幾らにしたらいいか御意見を伺うか、こういうことを今検討しておる最中でございます。したがいまして、改正の趣旨を踏まえてできるだけ早く開いていただきたいということだけは申し上げることができますけれども、今直ちにいつということの御返事ができないことだけはお許し賜りたいと思います。  それから、施行日についてでありますけれども、確かに昨年の十二月十五日から起算をしまして一年を超えない範囲ということになっておるわけでございます。しかし、できるだけ早く施行をすべきだという御意見があります一方では、宗教法人はその事務所に備えつける書類の閲覧に関して新たな対応が必要であるから十分に周知期間を置いて周知を徹底すべきだと、こういうような慎重を要望されるような御意見も一方にはございます。両方の御意見を私どもとしましては十分に踏まえまして、そしていつからやらせていただくかということを真剣に今検討しておる最中でございまして、これまた今の時点で明示できないことをひとつ御理解賜りたいと思います。
  104. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 最後に、残された多くの問題を検討するために参議院に宗教法人等に関する特別委員会を速やかに設置して早急に審議を再開する、参考人招致を行っていく、そういうことをするという約束がございます。特に、先国会において、憲法二十条の後段に、宗教団体は政治上の権力を行使してはならないというふうに規定されておりまして、このことから宗教団体の政治活動にはおのずから限界があるのではないか、政教分離の原則はまさに政治と宗教の相互不介入という双方向で物を考えるべきであり、そのような視点に立って憲法の解釈を考えるべきではないかという問題が大きくクローズアップされたわけでございます。  このことにつきまして前官房長官は、十分に検討して間違いのない統一見解を出す旨の答弁をなされておりますけれども、新しい内閣においても、どのような取り組みをなされるのか、あるいはどのような解釈を出していただくことになるのか、お答えをいただきたいと思います。総理と官房長官にお願い申し上げます。
  105. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) お答えを申し上げます。  憲法の定める政教分離の原則は、憲法二十条第一項前段に規定する信教の自由の保障を実質的なものにするため、国及びその機関が国権行使の場において宗教に介入し、または関与することを排除する趣旨であると解しており、これを超えて宗教団体が政治的活動をすることをも排除している趣旨のものではないと今まで政府は見解を発表いたしておりました。  昨年来、特に勉強するということで総理からも御指示があり、私も私なりの今まで常識的な平板的な解釈をしておりましたけれども、憲法の制定時、それから今日までのいろんな経緯、こういうものを踏まえてまだまだ慎重に検討しなければならないという段階でございます。
  106. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 政府の従来とってまいりました見解については官房長官からただいま御答弁を申し上げたとおりでありますが、この問題につきまして、さきの国会における御論議の中におきまして当時の官房長官から、いわゆる宗教活動の政治的限界の問題については十分勉強して統一見解を出したいという御答弁をされました。  政府としては、このような経緯を踏まえ、内閣法制局におきまして学説の精査、分析等を行っているところでありますし、私としても内閣法制局からこれについて聴取するなどいたしているところであります。
  107. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 終わります。
  108. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で清水達雄君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  109. 井上裕

    委員長井上裕君) 次に、泉信也君の質疑を行います。泉君。
  110. 泉信也

    ○泉信也君 平成会の泉信也でございます。  まず、補正予算案につきまして三点お尋ねをいたします。  先ほどもお尋ねがございましたが、先日、景気回復宣言と銘打ちました月例経済報告が出されました。その中では、「緩やかながら再び回復の動きがみられ始めている。」という言葉がございまして、こうした回復基調のお話鈴木内閣以来だというふうに承っておるところでございます。  しかし、雇用でありますとか、中小企業が依然として厳しい状況が続いておるわけでありまして、住専の問題を初め金融システムの不安などを考えますと、本当にこのような楽観的な見通しでいいのかどうか疑問の点がございます。経済界の中にも、そのような実感はない、慎重に考えないと花見酒に終わってしまうのではないかという懸念も表明されておるわけであります。総理の景気に対します、あるいは見通しに対します現状認識をお伺いしたいわけであります。  為替レートの動きでありますとか、失業率の問題でありますとか、内需拡大等財政需要の問題、あるいは消費税率アップと相当大きな課題を抱えた中で、景気回復への判断につきまして懸念材料があるとすれば何なのか、そのことにつきましてもお答えをいただきたいと思います。
  111. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 景気回復宣言と言われましたけれども、先ほど経済企画庁長官からも御答弁を申し上げましたように、実質的に明るい指標が出てきたものをそのとおり申し上げたということは事実であります。  そして、長期にわたりまして極めて厳しい状況の続いてまいりました我が国経済の中で、金融の緩和基調に加えまして昨年の補正予算の効果もようやく出てまいりました感じでありますが、公共投資を中心とした経済対策の策定など切れ目のない施策の実施もありまして、現在、設備投資あるいは住宅建設等における明るい動きに加えまして、輸出にも下げどまりの動きが見られております。そして、こうしたことを背景にして生産は緩やかながら増加をいたしております。こうしたことを考えましたとき、「緩やかながら再び回復の動きがみられ始めている。」、私どもはそう認識をいたしました。  しかし同時に、極めて厳しい雇用情勢、これは失業率が三・四、天井に張りついた状況のままであります。また、有効求人倍率は多少戻ってきたといいながらも、なお〇・六五という状況にあります。さらに、通常でありましたならば比較的早かったであろう中小企業の立ち上がりが、今までの不況の体験と比較いたしましても非常におくれておりますし、殊にその状況は中小企業の中でも非製造業において残念ながら依然として厳しい、より厳しい情勢が続いているといった状況でありまして、懸念材料としてはまさにこうした問題点を我々としては深刻にとらえなければなりません。それだけに、景気の回復力を強めてその持続性を確保するということが極めて大切であります。  ですから、委員が幾つかの要件を列挙せられましたけれども、私どもといたしましてはそうした問題意識も共有をしつつ、金融の緩和基調と相まって内需をいかにして拡大していくか、金融機関における不良債権問題の処理をいかに進めていくか、午前中の御議論にもありましたような土地の有効利用の促進などをどう図っていくか、さらに新たな業を起こしていくという観点から、そのためには積極的にやはり規制緩和を進めて新しい分野で仕事が起こせるような状態をつくり出す努力、こうした各種の経済構造改革というものを進めてまいらなければなりません。  しかし、何よりも本院におきましてこの機会にお願いを申し上げたいことは、予算に切れ目を生じないようにぜひ政府の予算案の早期の成立に私どもは大きな願いを込めておるという点を御理解願いたいということであります。
  112. 泉信也

    ○泉信也君 予算に切れ目がないようにということにつきましては、私どもも大変重要なことだと思っておるところでございます。  次に、大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、税収見積もりにつきまして、先日発表されました租税及び印紙収入の状況を見せていただいた上でお尋ねをいたします。  十二月末までの税収の累計は二十八兆八千億ということでございますが、現在審議いたしております補正予算案の税収見積もり五十兆七千億の五七%にしかすぎないわけであります。昨年度の同じ時期に比べましても少し数値が下回っておる。特に、所得税、法人税の進捗割合が大変低い。そこで、七年度の税収が五十兆円に届かないのではないか、こんな心配をしておるわけであります。  しかも、この数年、常に当初予算を大幅に下回ります税収欠陥が生じておるわけでありますが、こうした学習効果が生かされないまま、見せかけの歳入予算を計上するために恒常的な税収欠陥とともに、やや言葉はひどいかとは思いますが、放漫な財政運営を許すことになっているのではないか。こうした意味で、この五十兆円に届かないのではないかという懸念に対して、大臣はどういうふうな御判断でしょうか。
  113. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 税収の動向について御説明させていただきます。  御指摘のように、十二月末の状況等については御指摘のとおりでございます。そういった実情を踏まえまして、大法人等がどういう状況であるか聞き取り調査を重ねた上、さらには年末の経済見通しの状況等を踏まえまして、私ども第一次補正後の税収が確保できるかどうか検討したわけでございます。  その結論としましては、第一次補正後の予算に対して、残念ながら二兆九千百二十億円の減額を余儀なくされたということでございます。内容的には御説明いたしませんが、所得税、法人税、消費税等について減額をさせていただいております。この結果、税収は当初予算では五十三兆七千三百十億円を予定しておりましたが、五十兆六千八百十億円に落ちるであろうと見ております。御指摘の五十兆を割るんではないかという御指摘ではございますが、私どもの見通しでは五十兆をやや上回ると考えております。
  114. 泉信也

    ○泉信也君 ぜひそうあってほしいと私も思っておるわけでございます。  さて、今回の補正予算では、今御説明ありましたように税収については約三兆円近い減額修正を行っております。これは宮澤内閣以来の経済対策発動のタイミングがずれたのではないかとか、あるいは経済構造の変化に対応した施策の展開が不十分であったのではないか、こうしたことが重なって減収になったのではないかというふうに思うわけであります。  二兆円の公債発行が予定されているわけでありますが、財政再建への対応をどういうふうに考えておられるのか。十一月十四日に財政危機宣言というようなものも出ました。また、八年度予算に関連しましては「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」、こうしたものも発表されました。しかし、いずれももう一つ決意のほどがはっきりしないわけであります。  大蔵大臣にお尋ねいたしますが、減額修正に伴って公債を発行しなければならない今日の状況をどうごらんになっておられるのか、そして来年度に向けてどういう対応をなさろうとしておられるのか、お尋ねをいたしたいと思います。財政審の答申を受けて考えますというような通り一遍のことではない御返事を期待いたします。
  115. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 御承知のように、八年度の予算案におきまして、歳入で二十一兆円余りを公債に頼るということは財政にとっては大変危機的な状況と言わなければなりません。しかも、累積いたしてまいりました公債残高は八年度末には二百四十一兆を超える見込みでございます。しかも、この予算の中で、歳出面でも国債費が十六兆円を超えて全体の二一%を超えるような状況で、政策的経費を極度に圧迫する状況が生まれております。  今、このような中で財政改革は至上命題となっているのでございまして、財政審におきましてもできるだけ速やかに答申を出していただきたいと思っておりますが、特に歳出の面では財政の役割や守備範囲といったものに十分切り込んで論議をしていただけるものと思っております。  また、与党におきましても、与党三党の方で財政改革についての協議の場をつくられることになっております。国会におきましてもぜひ皆様方の御審議を賜りまして、財政の今日の危機的な状況に対して的確な対応ができますように、財政改革の方向を速やかに決めてまいらなければならないと思っております。
  116. 泉信也

    ○泉信也君 ありがとうございました。  大変難しい問題でありますだけに、国会はもちろん、官民挙げてこの問題に取り組まなきゃならない。そのためには、予算制度と申しましょうか、単年度主義でありますとかシーリングの要求の方式とか、そういうところまで入り込んで議論をしていただきませんことには、大変大きな借金を乗り越えることはできない。民間の方からも知恵をかしていただいて今私ども検討いたしておりますけれども、ぜひこの内閣の大問題ということで、大きなテーマとして取り組んでいただきたい、このように思います。  次に、住専問題についてお尋ねをさせていただきます。  けさほど来御議論のございました中で、政府説明が足りない、丁寧に説明しろ、こういうことがございました。こういう御指摘も確かにそのとおりでありますが、国民はこの今の政府のスキームに対しまして本質的には十分理解をした上でなお反対をしておられるのだ、不満を述べておられるのだ、私はこういうふうに思っております。  まず、なぜか。私は、税金を投入する、このことは国民の感情として許せないという気持ちがあることだと思っております。  二番目に、マイナスを含めました受益と申しましょうか、そのことと負担の能力、この問題に対する対処の仕方の因果関係が不明確である。応益と応能という言葉であらわしていいとすれば、そうした因果関係が不明確なスキームである。そして、さらに閣議決定、了解の中でも責任を問うということが言われておりますけれども、具体的にこの責任論が国民の目の前に明確になってこない。このことが、国民が現在の政府のスキームに対して納得できないという声を上げておるのだと思っております。  そうした意味におきましては、私どもは法的な処理がいい、こう考えております。更生法の適用、そしてまた必要があれば破産法の適用、こうした事柄が政府がおっしゃるいわゆる金融システムの安定あるいは秩序の維持に最終的には有益である、このように思っておるわけであります。決して今回の住専処理が個々の金融機関を守るということではないわけでありまして、自己責任のシステムに組みかえていくという方向が見えれば、恐らく多くの国民も納得してぐれると思っております。ベアリングズの銀行倒産に絡みましてイングランド銀行総裁が、公的資金の導入はモラルハザードをもたらすということで手当てを避けたわけであります。  そこで、お尋ねをいたします。  けさの毎日新聞によりますと、現在の政府のスキームの中では母体行三兆五千億という債権放棄が実際は七百億前後合わない、こういう記事がございましたが、このことは事実でしょうか。
  117. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 六兆四千百億の損失と欠損を償いますものとして母体行に対して三兆五千億の債権の全額放棄を同意してもらっているわけでありますから、三兆五千億に達しないということになれば、これは六兆四千百億の全体額が違ってくるわけであります。だから、そのようなことはあり得ない。  それから、全額放棄ということは、三兆五千億を超える債権があっても全額放棄であります。全額放棄と三兆五千億は、二つのこの条件を母体行に満たしてもらうということでありますから、そのようなことはあり得ないと思っておりますが、なおその七百億不足するという報道につきましては、数字上の詳細なことは銀行局長の方から御答弁いたします。
  118. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) けさの毎日新聞の報道がどういう根拠に基づいておるのか私は存じませんけれども、母体行あるいはそれぞれの金融機関が自分たちの考えでいろいろな御意見をおっしゃるということはそれはあるかもしれませんけれども、私どもはそういう御意見も伺った上で三兆五千億という母体行の債権の放棄ということをお願いし、そういう前提に立って確信を持って取り組んでおるところでございまして、母体行の債権放棄額が三兆五千億を切るということはございません。
  119. 泉信也

    ○泉信也君 それぞれの立場で言うのは勝手だと。それはそうかもしれません。しかし、これは国民の税金を使うかどうか、そうした厳しい議論をしておるときに、関係者の考え方が十分整理をされないまま国会に出すということはまことに不謹慎じゃありませんか。  今、衆議院の参考人招致の中で、正確にはわかりませんが、全銀協の橋本会長は、法の範囲内での責任は負いますと、こういうことを言われたと言われます。一方、農林中金の角道理事長は、債権放棄のみではだめだと、こういう参考人の発言が衆議院で先ほどあったというふうに承知をいたしております。  既に食い違っておるわけでありますが、このまま今のスキームが進められるとお考えでしょうか。大蔵大臣、お願いします。
  120. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) いろいろなお立場の方々の御意見を総合的に勘案いたしまして一つの解決策を見出した、それを提案しているというのが今回の処理策でございます。そういう意味では、関係者方々がこのような点について十分御理解をいただいた上で対応していただいているものと理解をしております。
  121. 泉信也

    ○泉信也君 先ほど申し上げましたように、この国会の場で議論をするに当たって、まだ関係者の意向が十二分に調整されていないというその案がここに出てくることに大変私は問題がある、このように思っておるわけであります。  そこで、大蔵大臣、不良債権、先ほどここでも議論がありました、当局からの説明でありますと三十八兆円と、こういう数値が出てまいりました。これは三菱銀行の例をとって、アメリカのSECの調査も大蔵当局の調査もほぼ同じだからまず間違いないだろう、こういう御説明でございました。  しかし一方では、七十兆であるとか八十兆であるとか、あるいはアメリカでは百四十兆であるとかいろいろ言われておりますが、仮にこうした数値が出てまいりましたときに、金融システムの崩壊につながるおそれがあるからという理由で再び公的資金を使われることはないとおっしゃっていただけますでしょうか。
  122. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 信用組合の破綻等につきましてそのようなことが考えられる場合もあるというのは金融制度調査会の答申の中にもございますが、いわゆるノンバンク等の持ちます不良債権について公的資金を導入するということは考えておりません。
  123. 泉信也

    ○泉信也君 今、公的資金を導入することはない、こういうふうにおっしゃったわけでありますが、システムの崩壊が心配だから使う、今回は公的資金を入れる、こういう論理構成になっていると私は思うんです。これが八十兆、百兆となって崩壊の危機に瀕したときでも、今、大臣がお答えいただきましたことでいきますならば論理が矛盾するんではないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  124. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 今、大臣からお答え申し上げましたのは、金融制度調査会の昨年十二月二十二日の答申でございますが、その中におきましても、信用組合の問題に中心を置きまして、「破綻処理費用が不足するような場合には、経済全般の安定を確保するためのコストとして、広く間接的な受益者として、納税者にも負担を求めることとせざるを得ないと考えられる。」というような御答申もございます。しかしながら、ノンバンクの処理という観点から申し上げますと、政府・与党の申し合わせにおいてこれ以上のノンバンクの処理において公的負担をするということは考えていないということを明言しているところでございます。
  125. 泉信也

    ○泉信也君 今の御答弁ですと、ノンバンクが破綻をしても金融システムの崩壊につながることはないということをおっしゃっているのと同義語ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  126. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 今回、住専、これはノンバンクの一種でございますが、ノンバンクの一種である住専につきまして特段の御配慮をお願いしております趣旨は、一般のノンバンクについてはそれぞれの責任がある者が自分の意欲と能力で個々に処理をしていくべきものであり、それがまた可能であるけれども、この住専という十三兆円の塊につきましては、それぞれが相互に関連をし、非常に全体の額としても大きいものであるので、緊急の課題として金融システム安定のためにあらゆる手段を講じても早急に適切に対応していくべきものであると、こういう特殊な位置づけを置いた上でお願いをしている、こういうことでございます。
  127. 泉信也

    ○泉信也君 私には納得できる御答弁ではございませんが、今回の国民が納得しない、怒っておる三つの要因の中で、私は応益と応能という言葉で表現をさせていただきました。母体行、一般行あるいは系統、この三つを総体的に議論することも大変重要でありますが、絶対的にこの責任を全うすることになっておるのか、そのことも私は議論をさせていただきたい、こんな思いでおります。  特に系統機関につきましては、ノンバンク、これは住専を除くわけでございますが、資金供給額は七兆七千億、そのうち不良債権五百八十億、こういう御報告がなされております。これは、不良債権の定義が必ずしもはっきりしておりませんのでどこまで入っておるのかわかりませんが、非常に私どもとしては数字が五百八十億というのは小さいんではないか、こんな思いを実は持っておるわけです。  また、これがもし事実とすれば、系統金融機関金融機関として十分な当事者能力を持っておられたのではないか、その証左ではないかとすら実は思えるわけであります。総量規制の前に三兆円というお金を系統機関は既に住専へ出しておられるわけですし、八九年二月のいわゆる財基令の改正によりまして信連の自主運用の幅を拡大したということも、系統機関の自主運営能力があるという前提でこうした施策がとられたのではないか、こういうふうに思いますが、大蔵大臣、どうお考えになりますか。
  128. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 幾つかのお尋ねでございますが、ノンバンクにつきましては、今現在、おっしゃいましたように住専を上回ります七兆七千億の債権がございます。うち、不良債権額は現在のところ五百八十億でございますが、その定義につきましては一般的に用いられている定義のとおりでございます。  それから、全体的な今回の処理スキームにつきましての考え方でございますが、ちょっと午前中もございましたように、今回、農協系統ということとこの住専問題ということを考えました場合に、二つ分けていただかなきゃいけないかなと思います。  一つは、農協系統と住専との関係ということから見ますというと、農協系統はこの住専の設立に全く関与していない。それから、その後の事業運営につきましても、役職員等を全く派遣しておるわけでございませんで、さらにまた、よく言われております住専問題が何で浮上してきたのかということの中で言えば、個人住宅ローンとそれから母体行との業務分野の未調整のままの展開を行えたと。そういう意味で住専破綻の原因をどう考えるか、そういうことをいろいろ考えますというと、いわゆる経営責任としてのことを系統自体に問うことはできないと思います。  ただ、やはり系統も我が国の金融システムの一員ということでございますので、そういう中で金融システム安定という観点からの要請といいますか、協力ということの中でぎりぎりの協力を申し上げるということであろうと思います。  そういう意味では、もし詳しく必要であれば私ども説明させていただきますけれども、先ほども佐藤委員の御質問にございましたように、例えば信連ということで見ますというと、ことしの経常利益におきまして、過半、約三十程度でございます。それから、当期利益におきまして二十程度のものがやはり赤字になるということでございまして、そういう意味では信連につきましてもそういうことはやむを得ないというふうに私ども見るわけでございますが、これ以上ということになりますというと、背後に六十八兆円という膨大な受信業務を受けております。かつ二千五百というそれぞれの単協というのがございまして、これまた受信業務を受けておりますので、これ以上私どもとしてはやはり負担は困難だと、そういう議論の整理をした上でのぎりぎりの御協力を申し上げる、こういうことでございます。
  129. 泉信也

    ○泉信也君 今、局長がお述べいただいたことは既に衆議院の方でもたびたび議論がなされておりますが、スキームができる段階ではそういう数値がなかったこともこれはまた明確であります。まあ、つかみ金という言葉は決していい言葉ではありませんけれども、私にはそうしか思えないようなことで五千三百億というようなものが決まったと。  今、局長がお答えになりました、また私どもの質問に対しまして、設立経緯やあるいは経営に関与していないということからして、今回の系統機関の責任は五兆五千億全額返済を前提として資金の贈与、協力、こういう言葉が御回答いただいておるわけでありますが、なぜ資金の贈与ということになるのか、金額の多寡は別といたしまして、なぜ債権放棄ということをとらないのか、このことについてお尋ねをいたします。
  130. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) これは先ほど御説明したとおりでございまして、私どもとしては、住専問題の本質が何であるかということを考えましたときに、やはり住専の経営問題だということだろうと思います。そういう意味で、系統につきましては設立に関与しておりませんし役職員を一人も送っていないという意味で、さらに住専破綻の原因ということを招いていない、そういう事情の中で系統に住専問題の経営責任を問うことはできないということの考え方に立ちまして、今おっしゃいましたように昨年十二月十九日の政府・与党合意文書及び閣議決定文書におきましても協力という形で、先ほど申し上げましたように我が国の金融システムの安定という観点からその一員としての協力を申し上げる、こういう位置づけになったというふうに理解をいたしております。
  131. 泉信也

    ○泉信也君 局長、そういうふうにお答えになるから国民がますます理解ができない、おかしいという一つの系統機関に対する評価が出てくるわけであります。  経営に関与していない、住専の仕組みに人を派遣していない、こういう事実は事実として私も承知をいたしておりますが、住専の経営というよりも、農林中金、信連あるいは個々の農協の経営という観点からすると、当然それぞれの組織の経営者、役員というものはしかるべき判断をしなければならない立場にあると私は思うんです。  農水大臣、今までのお答えからいきますと、まさに系統機関の経営者は無能である、こういうことを天下にさらけ出していることになりませんか。
  132. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 住専が誕生しましたいきさつは委員御存じのとおりでありまして、産業金融から消費金融へという過程の中で、何とかして住宅需要だけには優先的に金融をつけて消費者へ回そうではないかというのが私は住専の事起こしであったと思うんです。それが五十五年末期になりまして住専が不動産へ傾いていった。その過程において母体行、つまり親銀行そのものが、これはもうかるわいなということで自分がそっちへ乗り出していって、住専には不動産融資をやりなさいと、こういう流れというのがずっと出てきたわけでございます。  そして、その過程で、御承知のように大蔵省が立入検査をせざるを得ないという事態が三年、四年に起きたわけでございますけれども、その調査結果については実は系統は何ら報告を受けていないわけでございます。そしてまた、第二次調査のあの荒々しい内容も私は初めて、特に農水省の諸君も初めて見た、こういうことでございまして、私たちは一貫して信じ切っておったその機関がそういう実態であったということを知る由もなかったというのが、私は正直言って系統の方々の意見だっただろうと思うんです。  さはさりながら、今日のような事態が起きまして、もし末端の系統の中であの不良債権を出し、そうして経営破綻というところまで行くようになれば当然その経営責任は免れない、かようにお答え申し上げております。
  133. 泉信也

    ○泉信也君 農水大臣お話で、全くわからなかった、信じていた、こういうお言葉がございました。言葉じりをとるわけではございませんけれども、その信じることが実は経営者としての資質を問われておる、こういうことじゃないでしょうか。  私は、金額の多寡を問わず系統系も債権の放棄をしてそれなりの経営者としての責任を負うべきだ、そこまでやれば国民理解をしていただける、そういう方々がふえてくるのではないか、こんな思いを持っておるわけであります。  先ほど申し上げましたように、閣議でも責任を追及する、こういうことを決めておられるわけでありますから、例えば農協法の三十三条でございましょうか、なぜこういうことできちっと責任を明らかにして国民の納得をいただくような責任の追及の仕方を今からでもとっていただくことができないのか、なぜそれを避けられるのか、もう一度お答えをいただきたいと思います。
  134. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 衆議院から何回もお答えしているのでありますが、これからの系統金融というのは非常に厳しい金融競争のあらしにさらされる可能性があります。だから、今後は今までのようないわゆる護送船団方式のぬくもりの中で系統金融が安住しておったら大変なことになるということを私は一番認識しておる者の一人でございます。  したがって、そのリストラに強力に邁進しなければならぬ、それはもう長い期間を置いていたら大変なことになる、そんな感じで今我々はその金融システムのリストラに積極的に取り組んでいるところでございます。
  135. 泉信也

    ○泉信也君 基本的なお考えは、私は農水大臣と同じだと思っております。系統金融機関の足腰を次の世代に向けて強くしていかなければならない、あるいはリストラをやらなければならない、そういうことだと思っております。  しかし、今回のスキームは、住専処理機構への融資条件にしましても一般行、母体行とはまた違うというように、本来血を出してでも新しいシステムに向かわなければならない系統機関に対しては随分緩やかである。先ほど申し上げましたように、相対的な比較ではちょっと議論が混乱いたしますが、絶対的に見ましてもこれだけの五兆五千億というお金を貸し込んでいながら全く責任が及ばないようなスキームというのはやはりどこかおかしい点がある、私はこのように思っております。  今回のシステムの維持というのは単なる今までの、大臣がおっしゃいましたような護送船団方式みたいなぬるま湯の中のシステムを維持するということではないはずでありますから、この際、系統金融機関につきましても経営者としての責任を当然追及すべきだ。なぜそれができないのか、大変恐縮ではありますが、総理、お答えを聞かせていただけませんでしょうか。
  136. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 先ほどから申し上げておりますように、三十の信連に経常利益の赤字が出る、そういった事態を我々は重大な関心を持って着目しておるわけでございまして、中には委員御承知のように内部的ないろいろの混乱が起きる可能性もございます。  ただ、私が心配いたしますのは、これだけの負担をかけて、そうして三十信連が赤字に陥る、それも次の決算で黒字に転換するという保証もない。そういう状況の中で、信用不安に陥るということを非常に心配しているわけでございまして、やはりおっしゃったように、私がおまえ責任とれと言うんでは恐らく、自己責任の信連でありますから、いわゆる破綻が起きた場合の責任問題というのはこれからかなり出てくるんではないのかなという心配をしておる最中でございます。
  137. 泉信也

    ○泉信也君 個々の農協への貯金者等を保護していく、あるいは農村地域の秩序を維持していく、そういうことは当然大切なことでありますけれども、経営者としての責任を問うということは、私は全然別個の話だと思っておるんです。そこがこのスキームの中では大変あいまいな状態のままであります。私は、もう一度原点に返ってここをぜひ立て直していただきたい。それが閣議決定、了解事の責任を問うという文言につながってくるんじゃないでしょうか。私はそう思っております。  そこで、次は行政の責任について少しお尋ねをいたします。  二月十二日の産経新聞に「日本に明日をつくるために」という司馬遼太郎さんの文章が載りました。その日に司馬氏は亡くなられたわけでありますが、その中で「日本経済は一とくに金融界が――気がくるったように土地投機にむかった。どの政党も、この奔馬に対して、行手で大手をひろげて立ちはだかろうとはしなかった。」、こういう文章がございます。  なぜ政党と書かれたのか、なぜ政治家と書かれなかったのかはもう聞くすべもございませんけれども、私どもの責務も大変大きいと私は思っております。  私は、運輸省に入りましたときに、行政の失敗というのは国民全体に大きな影響を与えるので非能率と言われようと慎重に運べ、こういうことを教えられたわけであります。今回の行政に対します責任論の中で大蔵解体論というようなことが出ております。これも必要かもしれませんが、今はそんな議論をするときではなくて、これだけの問題を起こした行政の具体的な責任をどう問うていくのか。今のところ、全くこの行政に対する責任が表に出てこないわけですけれども、大蔵省と申しましょうか、大蔵大臣、農水大臣、このことについては今どんな考え方をお持ちでございましょうか。
  138. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 司馬遼太郎さんのお書きになったものを引用されました。もう少し先まで読んでいただければ非常によかったと私は思っておりますが、いろいろな御意見があると思います。  この住専問題の処理と取り組んでまいります中で、具体的に債権の回収や責任追及をやることによって責任は明確になってくると思います。  それから、行政の責任というのはその時点時点において判断を誤ったりしたことの責任もございます。しかし、そのときは的確な判断をしたと考えても、結果的にそのことが国家国民にとって大変な不利益をもたらし、そして住専問題で言いますならば今日のような深刻な事態を引き起こしたことについての結果責任というものは厳しく問われなければならないと思っておりますが、今はその責任を問うこととあわせて債権の回収に取りかかるための処理機構を速やかに皆様方の御決定をいただいて、そのことに取りかかることが責任を果たす一つの道だと考えております。
  139. 泉信也

    ○泉信也君 最後まで読まなかったわけではございません。私も最後に書いてあることは承知をいたしております。  今、大臣お答えになりましたのは、確かに当面どうするか、そのことに全力を挙げるということも当然のことでありますが、しかし過去にこれだけの行政をなさった方々に対して、国民に向かって何をしようとしておるのかということを一切今もおっしゃらないじゃないですか。  具体的にお尋ねをいたしますと、今回のスキームをつくるに当たって大変大きな影響があったと言われます大蔵、農水両局長の覚書があるわけであります。そこで、そのときの行政の長として大臣あるいは政務次官、こうした方々の責任は一向に具体的に表に出てこない。私は、この平成五年二月三日の両局長の覚書を交換するに際しましては、省内手続として決裁者を示す稟議書というのがあったと思うんです。そのものをぜひ出していただきたい。そのことによってこの覚書の最高責任者はだれだったかということが明確になるのではないかと思いますので、ぜひお願いをいたします。
  140. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 覚書と申しますのは行政を進める上での一つのプロセスでございますので、部内の事務手続はきちんと処理をしてございます。本件につきましても、局長が責任を持って当時判断をし、そのような処理をしておるということを申し上げられます。
  141. 泉信也

    ○泉信也君 大臣、今お聞きいただいたように、事務手続はきちんとしておると思いますと、こういうことでございますが、それだったらその稟議書のおもてをぜひここに出していただきたい。覚書の中身は既に一般に出ております。しかし、かがみはなぜ出せないのか、お答えいただきたい。
  142. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 存在いたしますならば出さない理由はございません。
  143. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 私、先ほど、思いますとは申し上げなかったと思っておりますが。そのような手続をきちんと踏んでおりますと申し上げたつもりでございます。
  144. 泉信也

    ○泉信也君 あるものは出すと大臣はお答えになったのに、局長はどうされますか。出してください。
  145. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 大臣の御指示でございますので、上司の御指示に従うのは当然でございます。
  146. 泉信也

    ○泉信也君 農水大臣、いかがでございましょうか。
  147. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 農水大臣はその当時田名部農水大臣だったと思います。多分、稟議書はあるのではないでしょうか。私、その辺つぶさにしておりません。事務局から答えさせます。
  148. 泉信也

    ○泉信也君 確かに、おっしゃいますように林大蔵大臣であり、田名部農水大臣であります。  これは与党、野党の区別はありません。最終的に決裁をした人間がだれか。その責任を問わなければ国民は納得できないわけであります。ですから、農水省も恐らくきちんとした事務手続をするのであれば、これだけの大問題でありますから大臣の決裁を受けておられる、私はそういうふうに推測をいたします。ぜひこれは後で委員長、お取り計らいを。
  149. 井上裕

    委員長井上裕君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  150. 井上裕

    委員長井上裕君) 速記を起こして。
  151. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 大蔵省といたしましては、このような案件の処理に際しましては所定の事務手続をきちんと踏んでおるということを先ほど申し上げたわけでございますが、その文書の提出につきましては大臣の御指示に従うようにいたします。
  152. 泉信也

    ○泉信也君 農水省の方はいかがでございますか。
  153. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 今、銀行局長からお話がございましたけれども、農水省といたしましても、事柄の性格上きちんと事務手続をとっておるところでございます。提出につきましては、大臣と御相談をして対応させていただきます。
  154. 泉信也

    ○泉信也君 両省ともそういう資料、物があるということはお認めになったと私は思います。ただ、一つだけ農水大臣大臣の御意向を徴した上で局長は対応するというふうなお答えでございますので、大臣のお考えを聞かせてください。
  155. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) あるそうでございますから、大蔵省と足並みをそろえて行動したいと思います。
  156. 泉信也

    ○泉信也君 大変歯切れが悪いんですね。情報公開だ情報開示だ、これは重要だというふうに内閣の皆さん全部おっしゃっておられて、ここで出しますということをおっしゃらないというのはどういうことでございましょうか。あるということまでは言っていただける。しかし、出すか出さぬかはまだわからないんじゃこれは非常に困るわけでありまして、ぜひ出していただきたい。出すということをお約束いただきたい。お願いをいたします。
  157. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 私は、出さないということを申し上げているわけではございません。私ども、今回の問題に関しましては、資料の公開につきまして今まで最大限の努力をしてまいったと考えております。本件につきましても、本来内部の事務手続に関する事柄でございますので、そのような点を十分検討したいと思いますけれども、私ども、資料が存在すること、そのような手続を踏んでおることをきちんと申し上げた上で、大臣とよく御相談をして御指示に従うということを申し上げておるところでございます。
  158. 泉信也

    ○泉信也君 大臣、恐れ入りますが、今のような答弁では全く納得できませんので、出していただけるのかどうか御返事をいただきたいと思います。
  159. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) さっき申し上げましたように、この覚書の稟議書を提出するということについて、私としてはこれを拒む理由はないと、こう思っております。ただ、あなたもよく御承知のことでございますが、行政府には行政府の国家公務員法に定められた制約がございます。だから、そのことに触れるかどうかは私には今すぐはわかりません。したがって、そのことに関して御要求であれば、委員会として正規の手続をお踏みくださるようにお願い申し上げます。
  160. 井上裕

    委員長井上裕君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  161. 井上裕

    委員長井上裕君) 速記を起こして。  ただいまの問題につきましては、理事会で協議をいたします。
  162. 泉信也

    ○泉信也君 私はこれで質問を終わらせていただきますが、国民の多くの方々政府のスキームについては、一番最初に申し上げましたように、三つの視点から納得をしておられない。このことを申し上げまして、関連質問の時間に譲りたいと思います。  ありがとうございました。
  163. 井上裕

    委員長井上裕君) 関連質疑を許します。直嶋正行君。
  164. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 それでは、泉委員の関連ということで、引き続き質問させていただきます。  住専についていろいろお伺いしたいのでありますが、その前に一、二、高速増殖炉「もんじゅ」の事故について総理及び科学技術庁長官にお尋ねをいたしたいと思います。  昨年末に起きました「もんじゅ」の事故は、我が国原子力利用に対する社会的信頼を大きく失墜させたのではないかと思います。今原因を究明中というふうにお聞きをいたしておりますが、その原因究明や技術的な問題の解決と同時に、やはり一度損なわれた信頼を回復するということが、例えば今後「もんじゅ」の運転を再開する場合にはそういうことがないとなかなか運転の再開は難しい、こう思うわけであります。  それで、まず科学技術庁長官にお伺いしたいのは、そういった面から考えますと、今後仮に運転を再開するとした場合にどのような条件といいますか、環境的な面で整えば可能と考えておられるのか、これは具体的にお答えをいただきたい。特に、私素人ですから技術的なことはよくわかりませんが、今回の事故は技術的にもかなり深刻な面があるんじゃないかというような意見も聞いておりますので、そういったことも踏まえてお答えを賜ればと思います。
  165. 中川秀直

    国務大臣(中川秀直君) お答え申し上げます。  「もんじゅ」の運転再開の社会的、科学的な条件というお尋ねであろうと存じますが、まず前段のことにつきましては橋本総理からも、ともかく地元の同意がない限り原子力行政というものは進められない、「もんじゅ」の運転再開のためには地元の皆さんが安心できる状況をつくり出すよう、こういう御指示並びに答弁もなさっておられます。  我々、今、委員触れられましたとおり、直接ナトリウム漏えいの原因になりました破損した温度計、テレビ等でも報道されておりますが、これを日本原子力研究所東海研究所に運び、また明日からは金属材料技術研究所、つくばに運びましてクロスチェックをして調査をする。また同時に、ナトリウム漏えいの模擬実験などもこれからいたしていかなければならない、こう考えておりますし、四月初めごろまでを目途にこうした調査を実施いたしまして、学者、専門家、お集まりのタスクフォースにおいてこの検討を行う予定でございます。  現段階では、こうした徹底的な原因究明ということを進めて、ともかく国民、地元の皆さんに御納得、御理解がいただけるような万全な安全対策、例えば温度計はあそこ一カ所ではなくて、二次冷却系もA、B、Cと三ループございますし、それぞれに約四十本近い温度計があるわけでございまして、それもやはり一部は取り出してチェックをしなきゃならぬし、最終的には全部取りかえなければならないというようなことも想像するわけであります。それはまだ決まっていない、専門家の御検討にまつわけでございますが、いずれにしてもそういう万全な安全対策、二度とこういうことを起こさないということを講じて、それが第一弾ですが一運転再開については、なおかつ最初申し上げましたような、その上で地元の理解を得なければならぬ、こう考えております。
  166. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 今、地元の理解も含めて御答弁がありました。私は、いつもこういう問題の場合、感じることが一つあります。それは、どうしても今回のような事故が起きた場合には、国といいますか中央の感覚と、現実にああいう施設が目の前にあって、それゆえに非常に安全問題に関しては敏感であるという地元との意識のギャップというのがしばしば出てくるわけです。今回も、御記憶の方もあるかと思いますが、あの事故直後、例えばということなんですが、前科学技術庁長官が高速増殖炉の開発は続けるというような発言をされて地元の反発を買った、こういう経過もあるわけです。  ですから、ぜひ科学技術庁長官には、今申し上げたようなことも含めて、情報の公開であるとか地元対応もよろしくお願い申し上げたいというふうに思うわけであります。  それで、総理に今回の事故を踏まえてどのように受けとめておられるのかということ。  ちょっと私見を言いますと、この間、第一次調査報告書というのが出てまいりまして、ごらんになっているかどうかわからないんですが、印象的に申し上げますと、その中でいろんな問題点を指摘されているのであります。例えば、十四項目にわたって不備な点を挙げているわけなんですが、これはどちらかというと動燃に対して改善勧告といいますか、そういうトーンになっているわけです。私はむしろ、今回のことも含めて考えると、やはり行政府サイドにそういう出先のことも含めてもっと地元のことも考えながらこういう計画を遂行していくという、そういう広い意味での責任が大きいんじゃないかと思うのであります。その点は余り触れられていないんですね、今回のこの報告書では。  したがいまして、そういうことももし御見解ありましたら含めて、これからの特にこの核燃料サイクルについての総理の御認識と見解を承りたいと思うのであります。
  167. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは、この「もんじゅ」の問題に限らず原子力開発全般について一番基本的なことでありますけれども、まず何よりも安全の確保というのが大前提でありますし、同時に国民の皆さん、殊に立地をいたします地元の方々に対しての信頼関係というものを欠いてはこれらの行政は進みません。  そうした点から考えてみますと、私は今回の「もんじゅ」の事故というのは、その事故の発生そのもの以上に、その後の動燃の対応というものが非常に大きな問題を将来に残したと思っております。そして、その事故発生後の動燃と科学技術庁の連絡体制を含めまして、その後の対応というものが地元の方々、またこれは地元だけではなく、国民全体に大変な不安感と同時に不信感を与える結果になりましたことを非常に残念に思っております。  私も技術的な問題について知識があるわけではありませんので、その原因につきましては今後の事態究明の中で解明されていくその結果、そしてそれから導き出される対策というものをきちんと遂行できるようにしていかなければならないと思いますけれども、それ以上に大事なことは、議員も御指摘になりましたけれども、動燃、この場合は動燃であります、動燃と科学技術庁、この間の連携をいかにうまくとるか。  同時に、地元にあるいは動燃事業団に任せるだけではなく、科学技術庁自身がいかにふだんから地元の方々に目的、状況あるいは内容、さまざまな角度から情報を開示しながら信頼感を持っていただき、協力関係をつくっていくことを心がけていくかであると思っております。  たまたま、私はこの問題が発生いたしましてから後に総理という座に着けていただくことになり、二度この問題についての報告を受けました。科学技術庁自身の反省の中に、動燃に全部をゆだねるのではなく、科学技術庁自身がより積極的に情報を受けとめ、それを処理し、広報に努めるといった点について既に工夫をいたしておると私は思います。  しかし、いずれにいたしましても、我々としてはこれは非常に大きな教訓になりました。そして、原子力行政というもの、核燃料サイクル全体を問われましたけれども、そうしたものを進めていく上で、安全というものを大前提とした上で、地元との間、特に信頼関係をいかにつくり上げていくか、もし問題が起きたときにはいかに早くそれを知らせ、その状況に対する対応策をも開示していけるか、こうしたことを真剣に考えていくべきと、そのように思っております。
  168. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 それでは、先ほど議論がありましたが、住専の問題に入っていきたいと思います。  私も住専の問題について幾つかお伺いしたいと思うのでありますが、まず最初に大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが、今回の国民のこの住専処理に対する最大の疑念は、さっきもやりとりありましたが、何のために税金を使うのかという、ここなんですよね。  これはもう言うまでもなく、再々言われていますように、要するに預金者を持たないノンバンクであって、民間企業の住専が破綻を起こしたということなんですね。この住専あるいは関係する金融機関、系統、借り手、いろいろ当事者がいると思うのでありますが、当事者間でとにかく責任を持って解決をする。これは今回の住専処理ということにかかわりなく当事者間で解決をする、民間企業の問題でありますから、これが我が国の法律の建前だと思うんですよ。これが我が国の経済社会のルールだと。  ですから、したがって本来はやっぱりそういう解決が望ましい、あるいはそれが本来あるべき姿だというふうに思うんですけれども、非常に基本的な点なんですが、まず大蔵大臣、この点について、私が申し上げたようなこと、同じような認識でございますか。
  169. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 住専問題の今日の状態を速やかに処理、解決しなければならないという立場においては、私とあなたとの間に意見の相違はそんなに大きくないのだと思います。この問題をいわゆる当事者、民間の問題だから民間解決に任せる、こういうことが可能ならば、私はそれでよいと思うのであります。可能であればというのは、この債権債務の関係が処理されればということだけでは言えないのでありまして、それはその処理の仕方が及ぼす影響、そういうものを国益の見地から、つまり国民の利益を守るという立場から判断をしなければならないと考えております。  したがいまして、原則的にはこれは民事の問題として解決せられれば最も望ましいという点においては、御主張になりましたことについて私は異論はございません。しかし、先送り先送りされてどうにもならない状態に立ち至った今日、その解決は不可能と、当事者間における解決は困難という判断をしたのであります。
  170. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 ですから、私は去年のたしか臨時国会で、住専の問題は大変なんだからもう本当は処理していなければいけないはずだと。さっき田中経企庁長官も、この不良債権問題が経済のネックの一つだと、こうおっしゃったんですけれども、そのときからそうだったんですよ。そのときに大蔵大臣も農水大臣も、まず当事者が話し合っているんだ、だからそれからなんだと。今、大蔵大臣言われたように、当事者が責任を持って話し合ったんだけれども、もう今は解決不可能なんだと、こういうことなんですよね。  そうすると、要は、さっき責任論というのがありましたが、本来、民間企業の問題なんだから当事者が話し合って解決するのが望ましい問題なんだ、これは責任からいっても当然そうあるべきなんだと。ところが、それで解決つかなかったということは、だれかわかりませんが、その当事者のそれぞれがぎりぎりの話し合いをしたかもしれませんが、トータルとして見てみますと、当事者の責任のとり方、とらなければいけない責任において税金を入れなきゃいけないということは、だれかがその責任を回避している、あるいはだれかの責任の部分を税金で埋めている、あるいは全員の責任の部分を税金で埋めているのかもしれません。いずれにしても、私はそういうふうに思うわけです。本来、当事者が責任を持って解決しなきゃいけない問題に対して税金で入れるわけですから。  だから私、大蔵大臣にもう一点お聞きしたいのは、そういう点からいうと、それぞれその当事者というのは今回の処理において責任を全うしたと、そういう御認識は持たれているんでしょうか。あるいは今回の処理フレームがそれぞれの当事者たちの責任の度合いを反映した処理フレームだと、このように御認識されているんでしょうか。どうでしょう、その点は。
  171. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 短い時間ですので、いろいろの問題を一緒にお話しになりましたから少し私が理解しにくい点があったのかもしれませんけれども、私は今度の処理スキームの中で六兆四千百億の損失、欠損の負担に当たっては、この中に母体行責任も貸し手責任も、そういうものがいろいろな角度から検討されて、この負担する金額の中には反映していると思っております。  しかし、それがすべてかと言われるとそうではないと思います。これからまだ、この処理スキームを御決定いただきましたならば、住専処理機構と預金保険機構とが一体となりまして、あらゆる法務、警察、国税、こういったところの力もかりて、そういうものが一体となってこの問題を処理し終わることによって責任は果たされるものと思っております。  そして、その過程において、このような状況に立ち至った責任というのも明らかにされなければなりません。法的に追及せらるべき責任があればその責任は問われるべきものと考えております。  また、道義的に責任を負わなければならないものについては、そのことが明確になります中で、その責任についてみずからどのような責任のとり方があるか明らかにしなければならないものと考えております。
  172. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 私は、今の大蔵大臣の答弁はちょっと話が変わっていると思うんですよ。今おっしゃったように、この処理スキームを遂行していく、債権回収する過程で責任が明らかになって、それを明らかにしていく、責任もとってもらう、これは個別のたくさんいる利害関係者にとっては当たり前の話なんです。  しかし、大臣もそうだったと思うんですが、この国会が始まるときに、この住専問題は大変だ、なぜ税金を入れなきゃいかぬのかという国民の反発が非常に強い中で、国会の議論の中で責任をそれぞれ明らかにしていく、また情報もオープンにしていく、こうおっしゃったわけです。  私たちは、これは衆議院の方ですが、新進党はそのための資料が公開されていないのでまだできない、こう言ったんだけれども、与党の方も国会の議論の中でやればいいじゃないか、こうおっしゃったわけです。ですから、一〇〇%細かい話まで、個々の利害関係の話までこの国会で責任は問えませんが、しかし基本的な部分の責任はやはり明確にしておかなきゃいかぬと思うんです。それが私は今回の国会の役割だと思うんです。  それで大臣にお伺いしたいんですが、衆議院でもう総括審議は終わりました。延々長時間やりましたよね。その審議の中で、大蔵省あるいは政府として今申し上げた責任の問題についてどの程度、どういう部分にこういう責任があって、こういうことが今言えるんじゃないかと。まだ審議の途中だから、これからもいろいろ出てくるかもしれませんが、現在の段階でこういうことが言えるんだというようなことのお考えといいますか、お持ちでありましたらそれをお伺いしたいと思うんです。私はそれはなけりゃいかぬと思うんですが、どうでしょうか。
  173. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 国会の御論議によって明らかになりますものについても、私どもは注意深く謙虚に承っているところでございます。また、この問題につきましては、特に大蔵省としては、バブルの発生から破綻に至るその経緯に関しても十分な検討を加えるように要請をいたしておりまして、このことについても協議を行っております。  今、だれがどんな責任があるというようなことを私がここで申し上げるような立場ではございませんけれども、しかし私どもは責任を回避したり、とるべき責任をとらずに済ますというような考えはございません。国会においても、そのような立場で御論議いただきますことを私は十分伺いたいと思っているところでございます。  それからもう一つは、責任ということは、先ほど申し上げましたように、将来の我が国の金融システムの安定のために、国家のためにこの問題を解決するということが重要な責任をとる道だと考えております。そのことについてはぜひ皆様方も御協力をいただきたいと思うのであります。  私、衆議院段階でもずっと伺ってまいりまして、政府が提案いたしております住専問題処理機構に対する対案とも言うべき処理の方策については非常に多くの視点からのたくさんの御意見をいただいておりますが、私としては、今政府の提案を覆すというような御提案であるかどうかということについてはもっと検討しなければならないと思っております。現在、私は政府の提案いたしておりますことを御承認いただくことが責任を果たす上でも最善の道だと考えております。(「日本全体の責任だよ」と呼ぶ者あり)
  174. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 今、日本全体の責任だというお話がその辺から出てきました。これは明らかに国民にツケを回す話だと思うんです。  金融システムをどうするかという話の前に、なぜ税金を使わなきゃいけないのというところがはっきりしていないんですよ。こうなった、税金を使わざるを得なくなった理由がはっきりしないんです。本当に当事者たちはきちっと責任をとってこうなったのか。そういうふうに見えないんです。さっき泉議員の質問の中でも、農林中金の理事長さんの受けとめと全銀協の方の受けとめと異なる、こういう話がありましたが、まさしくそういうところがしっくりきていないんですよ。  政府からちょうだいした資料の中にも、去年の秋から当事者が真剣に交渉してきた、こういうくだりがありました。私は、非常に皮肉な言い方をしますと、真剣に交渉したことは間違いない、しかしどうも当事者たちは自分の責任を逃れて、人に、その責任をだれに回すかということで真剣に交渉したんじゃないか、こういうふうに言いたくなるぐらいの経過ですよ。  それで次に、私ちょっと総理にお伺いしたいのでありますが、要するにこの問題は当事者がやっぱり責任を放棄したように見えるんです、国民から見ると。見ざるを得ないんです。これが、例えば神戸の震災のように、何か天災が起こってそれをみんなで負担しようや、こういうことなら非常にはっきりしているんです。しかし、今回はそうじゃないわけです。  今、大蔵大臣の答弁もそうですし、総理もしばしば、このまま放置すると金融不安を引き起こしてしまうので大変だ、したがってこの処理フレームをつくったと、このようにおっしゃるわけなんですけれども、私はこれを別の角度から見ると、こういうあいまいな中で税金を入れるということは、あえて嫌みな形で申し上げますと、当事者たちが居直っちゃった、居直っちゃったツケを税金で払わざるを得なくなった、このようにしか見えないんですけれども総理、どうなんでしょう、この点。これは国民の率直な疑問だと思うんですよ。
  175. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、それぞれの負担がなぜそうなったかということ、必要がありますなら再び三たび主管閣僚から御説明をいただきたいと思いますけれども、先般来たびたび御論議があり、本院におきましても先ほど来御答弁を申し上げておりますように、昨年の春過ぎから幾つかの金融機関の問題が浮上いたしました。そして、それぞれに対する対応策が講じられていきます中で、日本金融システムの信頼回復の上で避けて通ることのできない問題は住専問題ということは、議員もここで質問をしたと仰せられましたように非常にはっきりとしてまいりました。  そして、昨年の初夏ぐらいからでありましょうか、正確な時期を私は熟知いたしておりませんけれども政府部内におきましても、また関係当事者間におきましても、その真剣な話し合いというものは行われてきたと承知をしております。そしてその中で、この問題を処理していくために必要な金額のそれぞれに負担できるぎりぎりの議論が積み重ねられました結果、逆にそのために時間が長くかかり過ぎて御説明の時間なり国民情報を開示する時間が不足してしまったことは、大変これは申しわけなかったことでありますけれども、こうしたスキームを決定いたしました。  これも繰り返すようでありますけれども、さまざまな角度からこれに対して御論議が寄せられております。国民各位が納得しておられないということを私自身も感じております。しかし同時に、そのために今この考え方を一たん捨てて新たなものをというだけの時間的な余裕がないと私は感じておりますし、この景気の状況の中で、先刻も御論議がありましたように、ごくわずかではありましても前途に明るいものが出てきつつある、その状況を確実な回復の基調に乗せていきますためにも、この金融機関の抱える不良資産の問題というものの象徴的な、しかももう今さらこれ以上時間をかけることのできないこの問題に決着をつけることはどうしても必要なことだと考えております。  おしかりは甘受いたしますけれども、ぜひこうした考え方も御理解を賜りたいと思います。
  176. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 私は、今の総理の御説明を聞いても納得できないんです。というのは、今も総理がおっしゃったんです、これ以上引き延ばしちゃうとだめだと。まさしくこういう見方が、金融システムに不安を生じるから入れなきゃいけないんだ、いいんですか、金融システムがどうなってもと。そういうところが非常に私はすっきりこないんです。  それで、さっきも総理は将来の日本経済を考えてもうここで処理しなきゃいけないんだ、こうおっしゃいましたが、私は、先ほどもちょっと議論ありましたが、やっぱりこういう問題というのは少なくとも経過と責任を明らかにして、したがってこれだけ国民の負担をお願いしますというのが、私たちは今この処理に税金を使うことは反対ですよ、反対ですが、仮に税金を使うにしても、私はそれが順序だと思うんです。  どうも、何か当事者がわいわい半年も期間をかけて話し合ったけれども結論が出なかった、それぞれがそれぞれの責任のことを言い合っていると。結局、さっき申し上げましたが、これは第一義的に見ると、どうもだれかの責任の穴埋めをしているんじゃないかと、税金で。それが金融システムの安定のために必要なんだと、こういうふうに抗弁しているんじゃないかというふうに見えてきちゃうんですよ、総理。ですから、どうでしょう、この点もう一度お伺いしたいと思うんですけれども
  177. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先般来、例えば衆議院での論議の中におきまして、むしろ政府のスキームにかえて法的な措置、例えば破産法あるいは会社更生法を使うことによってこの問題に対応すべきではないかといった御論議がございました。ただ、政府の考え方の根底には住専というものは消滅させるということがございます。そして、これにはいろんな御論議もありましょうけれども、その消滅に際しまして、住専各社に対して資金を供給してまいりました金融機関それぞれの損失はここで確定をいたします。それはそのままその後の経営資料として、経営判断の上で私は大きな役割を果たすであろうと存じます。  会社更生法という形をとりましたときには住専というものは存続をいたします。しかし、それが
  178. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 そうとは限りませんよ。それはちょっと勉強不足だな。
  179. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) いや、基本的には、分けて非常に簡単に申し上げますけれども、その点は御理解をいただきたい。  同時に、破産法という手続をとりましたとき、住専が消滅するという限りにおいてこれは一番手早い方法だと思います。しかし、ここにかかわります各金融機関のそれぞれの損失額が確定するまでには相当な時間を要すると思います。その場合に、それぞれの金融機関に預金をしておられる方々は自分の預金している金融機関の損失額が確定しないという不安をいつまでも残すことになります。そうした問題点があることもぜひ御理解をいただきたいと存じます。
  180. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 総理は大変頭のいい方で、私はここで今、破産法とか会社更生法と政府の処理スキームとどちらがいいのかという議論を別にしているつもりはないんですよ。
  181. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) いや、議論を私、しかけたつもりはないです。
  182. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 それで、例えばもっと端的に言いますと、これは数日前のある新聞なんですが、武村前大蔵大臣のインタビュー記事が出ています。これはお読みになったと思うんですが、この中で武村前大蔵大臣はこうおっしゃっているんですね、今回の処理フレームの決定について。つまり、母体行、一般行が損失を持ってくれたあと残るのが一兆二千億円だと、これをめぐって系統金融機関と交渉になったと。なるべく近い額を了解してもらって、足らないところを公的支援でやるしかないと考えたと。  つまり、これを見ると、農林系にできるだけ、これは体力の話がさっき農水大臣からもありました、持ってもらって、残りはもうとにかく農林系の支援のために公的資金を入れるんだと腹をくくっていたと、こうおっしゃっているんですね。そうすると、さっきの総理のように、金融システムの問題とか日本経済を考えたときの問題とちょっと違ってくるんです。それから、総理衆議院の答弁で、別に農協系の支援ではないというような趣旨の御答弁をされていますね、今回の処理フレームは。これは武村前大蔵大臣の発言等を見ると明らかに違う御見解なんですよ。  ですから、非常に閣僚の皆さんを含めて関係者のとり方も一致していないんですね。私は、非常に生煮えのはっきりしない処理フレームを今回出されたんじゃないかと、こう思っているわけです。  それで、この部分がやっぱりいろんな議論が出てくる背景にあるんじゃないか、こう思うんですけれども、いかがでございましょうか、総理
  183. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 武村さんの朝日新聞のインタビューを今お取り上げになったと思うのでありますが、この一番最初に武村さんは、今度の住専問題の処理は日本経済の霧を晴らすための使命であるということを問題意識として明確に述べておられるなと思いながら、私読ませていただきました。  確かに御指摘のような部分がございますが、これらの点につきましては、当委員会においてはどのようなお取り計らいかまだ伺っておりませんが、衆議院におきましては明日、御本人が出席の上、委員外議員質疑が行われると伺っております。  いろいろ私も伺ってみたいこともありますが、例えば農協の問題に触れられておるようなところは、これは金融システムを守るという点、預金者保護をきちんとやるというような点において農協系金融機関に大きな不安がいかないように、ここの預金者が守られるということもこれは全体の任務としては当然なことでありまして、どの視点から物を見るかということによってそのような御発言もあり得るなということを私は思いながら見たのでありますけれども、全体としてのこの問題を取り上げる使命感というものは非常にはっきり述べられているんじゃないでしょうか。.
  184. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 ここで私は大蔵大臣とマクロ論議するつもりはありません。  それじゃちょっと時間がありますからお伺いしますが、この中で、さっきもちょっと申し上げましたが、今回の一次損失なら一次損失の税金の投入は、さっき武村さんは明らかにこれは農協、確かに農協金融システムの問題もあると。それから、明らかにこれは農協との折衝であったと、こうおっしゃっているわけです。ですから、結局は農協系統金融機関との関係で税金が入ったということなんですよね。従来から説明されているのは、そうじやありませんと、これは全体的にいろいろ議論した中で税金を入れたんです、こういう従来からの説明なんです。ここのところはどうなんでしょう、大蔵大臣
  185. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 今御質問ございましたこと、私、どういう視点で見るかということによってそのような見方もあり得るだろうと申し上げたのであります。しかし、その基本のところは日本金融システムを守って内外の信頼を回復しなければならない。このことについて武村さんも昨年十月のG7において考え方を述べられているわけであります。だから、全体の中のある面ではそういう意味も持つというふうに述べられたことを取り上げて、意見が違うのではないかという見方は私はとらないところでございます。
  186. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 時間が来ましたのでこれでやめますが、明日またこの住専の問題、継続して質問させていただきますので、本日は一応これでやめたいと思います。
  187. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で泉信也君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  188. 井上裕

    委員長井上裕君) 次に、一井淳治君の質疑を行います。一井君。
  189. 一井淳治

    ○一井淳治君 まず、北海道トンネル事故につきまして、事故に遭われた方、御家族の方に対して心からお見舞いを申し上げたいと存じます。あわせて、一刻も早い救出をお祈り申し上げます。  建設大臣北海道開発庁長官におかれましては現地にお行きになりまして、そして関係省庁の大変な御努力ということに対して心から敬意を表しますと同時に、今後一層の早期の救出に向けての努力をお願いしたいと存じます。  また、この場をかりまして、先ほどのお話によりますと総理からも温かい御指示を賜っているということでございますけれども関係省庁におかれまして一層御努力を賜りますようにお願いを申し上げます。  また、自治省に対して御配慮を賜りたいわけでございますけれども、余市町、古平町両町とも対策本部を設置いたしまして、大変所要経費を費やしているところでございます。どうか自治省におかれましても御配慮を賜りますよう、この機会をおかりいたしましてお願いを申し上げたいと存じます。  今回の補正予算でございますけれども、歳入不足が原因でございます。これはマスコミの報道でございますけれども政府の方で、マスコミの言葉を使いますと、意図的に経済見通しを高く見積もっておるんじゃないかということが言われております。  税収不足にならないように成長率を高く見るということは考えられることでありますし、経済見通しにつきましてはさまざまな関連がありますので、そういう事情が働くことも予想できるところでございます。そして、私自身も何となくこのマスコミの報道が当たっているんじゃないかというふうな気もいたしますし、そのあたりのことは大体皆さんが理解しているような状況ではなかろうかと思うわけであります。  そういったことで、総理に対してお尋ねしたいわけでございます。経済見通しをもう少し現実に合わせるように、大変御努力いただいて経済見通しが現実に合うように努めていらっしゃることはわかるのですけれども、政策的な観点がどうしてもよぎってくるということがあると思います。その点を改めて、民間の研究機関の見通し、これは今回の場合は一・二%ぐらい低かったようでございますけれども、そういうふうに改める御努力を賜ったらどうかというふうに思うわけでございますけれども、いかがでございますでしょうか。総理にお聞きしたいと思います。
  190. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 正確には経済企画庁長官から御答弁をいただいた方がよいかと思いますけれども、少なくとも政府経済見通しと申しますものが、経済運営に当たりまして政府の基本的態度のもとで想定される経済の姿についてお示しをいたすものでありますし、その指標というものはおのずから定まったものを使っていくわけでありまして、あえて高く見積もるというような性格のものではございません。  平成八年度につきましても、内外の経済情勢の変化というものを勘案しながら、民需が次第に力を増し、経済が内需中心の自律的回復に移行すると見込んでおりまして、経済見通しに示しました二・五%の経済成長率というものは達成可能なものだと考えております。しかし、それには当然のことながら、例えば予算の切れ目を生じない、あるいは規制緩和を着実に進めていく、こうした努力を必要とするものであることは言うまでもないと思います。
  191. 田中秀征

    国務大臣(田中秀征君) 昨年の暮れの段階ですと、私なんかも本当に二・五%は大丈夫なのかなと、そんな感じがしていました。しかし、その後いろんな経済指標で大変明るくて確かな動きが出てくるにつれて、このところ民間から出ている予測は私どもを上回るようなのも散見される、そんな状態になってきたと思います。
  192. 一井淳治

    ○一井淳治君 私が申し上げたのは、おととしの年末の経済成長率について申し上げたわけでございます。  次に、今後の財政再建の観点でございますけれども平成十二年に公債依存度を五%以下に抑制するという財政運営目標が破綻してきたという現実があるわけでございます。欧米諸国を見ましても、厳しい財政再建計画を立てるなど、財政の立て直しということについては大変努力をしているようでございます。我が国におきましては、具体的に歳出削減について計画を立てられるとか、何かお考えを持って強力にことしは推進していただかなくちゃならないんじゃないかと思いますけれども、そのあたりの御見解を総理にお願いしたいと思います。
  193. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは、今、委員からも御指摘がございましたけれども、今回の予算編成に当たりましても、もはや危機的と言っても言い過ぎではないというような財政事情のもとで、歳出削減も一生懸命に一方で進めながら、その一方では景気あるいは国民生活の向上に配慮するという大変苦労を財政当局の諸君にもしてもらいました。  今、財政制度審議会におきましては、財政の果たすべき役割あるいは守備範囲の見直しについて、そして財政健全化に取り組むに当たっての目標についての検討を始めていただいておりますし、与党三党の中におきましても、三党合意によって設置をされる財政構造改革の検討の場あるいは国会の議論の場、さまざまな角度からこうした御議論が進められると存じます。  私どもとしては、今、議員からお述べいただきましたような基本的な厳しい認識を持ちながら、平成八年度予算というものをいわば地ならしにして財政改革というものに取り組んでいかなければならない。そして、その中でできるだけ速やかに健全な財政体質を築きながら、一方では地方分権を進めていきます中で、地方に対する税財源の配分といった問題にも真剣に取り組んでいかなければならない。その意味では、問題の解決は非常に複雑になりますけれども、真剣に取り組んでいかなければならない、そのような思いを持っております。
  194. 一井淳治

    ○一井淳治君 ことしは景気が上向きに向いていく、したがって税収もふえるということを強く期待はしているわけでありますけれども、しかし過去のさまざまな財政赤字からして、構造的な赤字がそれ自体ふえていくという危険性もあるわけでございます。そういった中で、健全な財政をつくるために一層の御努力をお願いしたいと要望申し上げておきたいと存じます。  次に、景気対策についてでありますけれども、景気対策の中には構造改革という側面も非常に強いと思います。昨年の十二月に構造改革のための経済社会計画がつくられたわけでございます。平成八年は実質的には最初の一年目でございます。このまとめられた本の六十二ページを見ますと、平成八年から十二年にかけて構造改革が適切に進められたならば三%の経済成長を確保するだろう、それが行われなかった場合には半分近くに経済成長が落ち込んでしまうだろうというふうなことが書かれておるわけであります。  その見通しにつきましては議論があるかもしれませんけれども、私どもとすれば、ここに書かれておる総合的な計画を一つ一つ具体的に前進させて、何としてでも日本経済が国際社会の中で発展できるように構造改革を進めていかなくちゃならない、そのように思うわけでございます。この経済計画の一年目に当たって具体的にどのように総合的な計画を実行されていくのかという点につきまして、経済企画庁、適切な方に詳細な説明をいただきたいと思います。
  195. 土志田征一

    政府委員土志田征一君) お答えいたします。  経済計画の内容でございますけれども、一つは自由で活力のある経済社会をつくっていくということでございまして、このためには高コスト構造是正・活性化のための行動計画というものを今回の計画の中には盛り込んでございます。  したがいまして、まずこの高コスト構造の是正に向けまして規制緩和推進計画を実際に実行していく、それから競争政策の積極的な展開を図るといったようなことを進めていく必要があると考えております。同時に、活力ある経済ということでは、新規産業を創出し、新規の雇用を創出していかなければいけませんので、ベンチャー企業の創出のための資金調達面での支援を充実する、こういったようなことを具体的に展開していく必要があるというふうに考えております。  また同時に、二番目の基本的な方向といたしまして、豊かで安心できる経済社会の創造ということで、少子・高齢社会を目指したさまざまな施策を展開していく必要があると考えております。  さらに、こういった経済社会の発展基盤となりますような四つの基本的な柱としまして、人材の育成、それから科学技術の振興、さらに高度情報通信社会の建設、さらに社会資本整備というようなことを掲げてございます。こういった点では、特に科学技術創造立国を目指しまして、予算でもその点の配慮をしておりますし、また高度情報通信社会の構築を目指しましては政府全体として情報化への取り組みを進めていく、こういったような幅広い側面で具体的に計画の推進を図っていきたいというふうに考えております。
  196. 一井淳治

    ○一井淳治君 これは経済企画庁だけの問題ではなくて各省庁共通の課題でございますので、関係大臣におかれましても前進させるようお願いを申し上げたいと思います。  そして、この経済社会計画には高コスト構造是正のための行動計画というものが具体的に記されております。各分野ごとに書かれておりますけれども、トップに物流の問題が書かれております。  この物流コストの低減ということにつきましては、国際的にも日本経済が太刀打ちできるように、あるいは経済の空洞化が進まないようにこれはもう極めて緊急の課題であるというふうに思いますけれども、物流コストの低減について運輸省にもっと強力な展開をお願いしたいというふうに思うわけであります。  例えば、モーダルシフトを進めるということが書いてあります。今現在、たちまち手っ取り早く使えるのはJR貨物でありますけれども、JR貨物の状態は非常に弱々しい実情でありまして、これが自主的に強化されるのを待っておったらいつの日にモーダルシフトが完了するかわからない状態でありますし、あるいは都市部の高い土地を使ってトラックターミナルをつくろうといったって民間の業者にはとてもできるわけではありませんので、そのトラックターミナルとか港湾などにはやはり公共投資を増加するなどのことが必要だろうというふうに思います。  そういった意味で、日本経済の発展の支障にならないように、物流コストが高いことが足を引っ張らないように、運輸大臣におかれましてはもっと強力な施策をお願いしたいと思うわけでありますけれども、いかがでございましょうか。
  197. 亀井善之

    国務大臣(亀井善之君) 物流は我が国経済社会の発展の基礎をなしており、重要な分野と認識しております。真に豊かな国民生活の実現と我が国産業の国際競争力の保持のため、物流の一層の効率化が求められていることを承知いたしております。  このため、運輸省におきましては、港湾等の物流インフラの整備、幹線物流におけるモーダルシフトの推進、物流拠点の整備など、物流効率化のための施策を総合的にかつ積極的に推進してまいりたい、このように考えております。  鉄道貨物輸送については、東海道線の貨物輸送力増強に必要なインフラ整備に対する鉄道整備基金から無利子貸し付けなどの支援措置を講じているところであり、今後もモーダルシフトの受け皿として輸送の効率化を推進してまいる所存であります。  トラックターミナルは、合理的なトラック輸送網の形成、幹線輸送の共同化等の物流効率化に資するものであり、今後も種々の支援措置によりその整備を推進する所存であります。  港湾については、平成八年度を初年度とする新たな港湾整備五カ年計画の策定に向け、鋭意努力しているところであります。この中で、物流コストの低減を図るため、大水深コンテナターミナルの整備や複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルの整備などに重点的な投資を行う所存であります。
  198. 一井淳治

    ○一井淳治君 詳細な御説明を賜ったわけでありますけれども、そういったことは大体そういう方向で進んでおるわけでありまして、今後一層の御努力を、努力してもなかなか実現が困難なことはよくわかっているんですけれども、そこのところを実現できるように御努力賜りたいというふうに思います。  今、沖縄の問題が非常に重要な課題になっております。ここで沖縄出身の照屋委員に関連質問をお許しいただきたいと存じます。
  199. 井上裕

    委員長井上裕君) 関連質疑を許します。照屋寛徳君。
  200. 照屋寛徳

    照屋寛徳君 戦後、もう既に五十年余が経過いたしました。悲惨な沖縄戦から二十七年間に及ぶアメリカの軍事支配を経て、復帰してからも既に二十四年たっております。今なお膨大な米軍基地の重圧のもとで苦しむ沖縄県の現状について、橋本総理の御認識と御所見を伺いたいと思います。
  201. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ちょうど沖縄県が本土に復帰し名実ともに日本の一角となりました時点、すなわち議員が二十七年間の占領という言葉を用いられましたその占領状態が切れた瞬間、私はちょうど当選三回の時代でありました。そして、非常にこれを喜んで迎えた一人でありました。  そして、沖縄県の皆様方に戦時中戦後を通じまして非常に多くの犠牲、引き続く御苦労をかけたことは十分承知をしておったつもりでありました。そして、その後のさまざまな状況の中で、昭和四十七年に本土に復帰いたしました後にも、米軍の施設・区域が集中していることから、県民の暮らしの上でもさまざまな問題が起きていたということも認識していたつもりでありました。  ところが、先日、総理大臣として初めて大田沖縄県知事にお目にかかり、お話を伺いましたときに、本当に我々が知っているつもりであったことで知らなかったこと、受けとめ方の誤っていたこと、県民の胸の中にあります苦しみ、悲しみ、怒り、どういうふうに形容すればいいのかわかりません。非常に重苦しい思いというものを知事から拝聴いたしましたときに、最初に私が申し上げた言葉は申しわけありませんでしたという言葉でありました。私自身、多少お手伝いをさせていただいた時期がありましただけに、改めて県知事から承ったときの思いというものは大変厳しいものがありました。  これから先、沖縄県内における米軍の施設・区域に関連する諸問題について、どうすればこのような長年にわたる沖縄の方々の苦しみ、悲しみというものに最大限心を払った解決ができるのか、今悩んでおります。基地の整理、統合、縮小という目標一つをとりましても、その内容は大変重いものがございます。  政府としては、日米安全保障条約の目的達成というものとの調和を図りながら、県民の負担が少しでも軽減されますように誠心誠意努力を続けたい、今そのような思いでおります。
  202. 照屋寛徳

    照屋寛徳君 去る一月三十日に沖縄県から政府に対して、二〇一五年を目途に沖縄の米軍基地を段階的かつ全面的に返還してもらいたいとの基地返還アクションプログラムが提示されました。この沖縄県が作成した基地返還アクションプログラムに対して、橋本総理、池田外務大臣、そして臼井防衛庁長官の御所見を賜りたいと思います。
  203. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 一月三十日、沖縄県から御説明をいただきましたアクションプログラム、これは現時点では、県がお取りまとめになったものであり、さらに地元でも調整していくということを伺っております。  政府としては、日米安全保障条約堅持という基本方針のもとで、その目的達成との調和を図りながら、沖縄県における施設・区域の整理、統合、縮小というものについて総合的に検討いたし、アメリカ側とも協議の上で現実的に誠意を持って対応していきたいと考えております。
  204. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) ただいま総理からも御答弁ございましたように、県から御提出ございましたアクションプログラムはなお地元での調整も要するということでございますし、また一方におきましては、従来の返還要望事案との間の整合性をどうするか、その辺の検討も必要なんじゃないか、こういうふうに考えるところでございます。  いずれにいたしましても、政府といたしましては、安保条約の目的達成との調和を図りつつも、沖縄における基地の整理、統合、縮小に真剣に取り組んでおるところでございまして、まさに本日も特別行動委員会、いわゆるSACOと申しておりますが、これのワーキンググループが開催されまして、騒音の問題等々につきましてもいろいろ論議をすると同時に、基地の整理、統合の問題についても意見の交換が行われた、こういうことでございます。  今後とも密接な日米間の協議を積み重ねまして誠心誠意この問題に取り組んでまいりたい、このように考えておるところでございます。
  205. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) ただいま総理並びに外務大臣からお答えがございましたとおり、沖縄県に米軍の施設・区域が集中していることによりまして、大変長い間、沖縄県民に多くの御苦労をおかけしてまいりましたことは承知をいたしております。また、整理、縮小につきまして県民から強い御要望があることも承知をいたしております。私どもといたしましては、従来から沖縄県に所在をする米軍の施設・区域等の整理、統合、縮小に努力をいたしてまいったところでございます。  先般御提示をいただきました基地返還アクションプログラムにつきましては、県民の将来の展望という立場で、その御要望につきましては私ども十分承知をいたしているところでございます。一方、日米安全保障条約は、現在の私ども日本の安全のみならず、アジア太平洋地域の安全と平和に極めて重要な役割を果たしているわけでございます。  先般、大田知事とお目にかからせていただきましたときにも、知事からアクションプログラム等についての御要望を拝聴いたしました。私どもからは、日米安全保障条約についての私どもの立場も御理解と御協力をお願いいたしたところでございます。  いずれにいたしましても、今後とも沖縄に所在する米軍の施設・区域の整理、統合、縮小に向けて一つ一つ確実に現実的に解決すべく努力をいたしてまいる覚悟でございます。
  206. 照屋寛徳

    照屋寛徳君 村山内閣のときに設置されました沖縄米軍基地問題協議会が橋本内閣誕生後いまだ開催をされておりません。沖縄県も早期開催を強く望んでおりますが、いつごろまでに開催されるのか、総理のお考えをお示し願いたいと思います。
  207. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、去る一月二十三日、知事に御上京をいただきゆっくりお目にかからせていただきましたが、その後、一月三十日に第三回の沖縄米軍基地問題協議会の幹事会を開催させていただき、その席でプログラムの御説明等もいただいてまいりました。  そして、この沖縄米軍基地問題協議会につきましては、その発足の時点で、事務レベルの幹事会における検討が一区切りついたところで開催ということが決まっておったようであります。そこで、三月五日に第四回の幹事会を開催することになっております。  私といたしましては、この三月五日に第四回の幹事会を開催する、そこで検討されます状況等を見ながら協議会の開催日程は御相談をしたい、そのように考えております。
  208. 照屋寛徳

    照屋寛徳君 沖縄米軍基地問題協議会の開催というのは、基地返還アクションプログラムあるいはまた沖縄の米軍基地の整理、縮小、統合を図っていく上でも私は早期開催が必要であると。知事も強くそれを望んでおられるわけで、どうなんですか、総理、まだ具体的な日程設定には至っておりませんでしょうか。
  209. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 三月五日の第四回の幹事会の日程は、予定として既に双方で御相談をしておると思います。  私は、この五日の時点で次の協議会あるいは幹事会、いずれにしても日程の相談をしてもらいたいと思っておりますが、今、委員を通じましてできるだけ早く次回の開会をという知事さんの御伝言、そう受けとめさせていただき、事務方にもそういう御伝言のあったことを伝えながら、五日の幹事会で御相談をするようにさせたいと思います。
  210. 照屋寛徳

    照屋寛徳君 沖縄県民は、四月の日米首脳会談で沖縄基地の固定化が宣言されることを強く危惧いたしております。特に、在日米軍兵力四万七千人体制を共同声明に明記しないよう知事を含めて多くの県民が求めておりますが、橋本総理並びに池田外務大臣の御所見をお伺いいたします。
  211. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) お答えいたします。  四月の日米首脳会談におきましてどういうふうな共同宣言といいましょうか、共同文書と申しましょうか、そういうものをつくるか、現在作業の最中でございまして、まだ固まっておるわけでございません。  ただ、基本的には、冷戦後におきましても日米安保体制が大変重要であるというこの重要性を首脳レベルで再確認するということ、それからまた安保体制に基づきまして両国が引き続き協力していくという決意を明らかにすること、こういうことが主目的でございまして、その先の個別具体的な表現については今後米側とも調整していく、こういうふうなことになっている次第でございます。
  212. 照屋寛徳

    照屋寛徳君 橋本総理にお願いでございますが、ぜひ四月の首脳会談前に、これまでも沖縄のことについては総理におかれましては大変心配りをいただきありがたく思っておるわけでございますが、橋本総理みずから沖縄においでになって、沖縄基地の実態調査と同時に知事を初め関係諸団体、関係各位と会談をされるおつもりはありませんか。その結果を首脳会談に生かしていただきたい、こういうふうに思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  213. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先般、官邸に知事にお越しをいただきましたときに、私の方からまたお目にかかることはできますかということを知事さんにお願いを申し上げました。知事さんも快くいつでもと言っていただきました。  今、沖縄県を訪問できるできないのことは日程上のことでありますので私もお答えができるわけではありませんけれども、私はいずれにしても日米首脳会談の前に知事にはもう一度お目にかかりたいという気持ちを持っており、先ほど来問題になっております協議会あるいは幹事会等の状況等も見ながら、知事の御日程と合わせてお目にかかる機会は持ちたい、そう思っております。
  214. 照屋寛徳

    照屋寛徳君 最後に、沖縄開発庁長官に二点お尋ねいたします。  一点目は、沖縄県が作成した国際都市形成整備構想についてでございます。二点目は、沖縄におけるフリーゾーンの現状についてどのような御認識を持っておられるか。同時に、将来的に沖縄県全域をフリーゾーン地域に指定する方策は考えておられませんか、お伺いいたします。
  215. 岡部三郎

    国務大臣岡部三郎君) 私も沖縄開発庁長官を拝命いたしまして、戦中戦後、沖縄が大変な御苦労をされてこられた、そして今なお基地問題等でそれが続いておるということを深く認識いたしまして、冒頭総理が言われましたような基本的な認識のもとにこの地域の振興、発展のために最大限の努力をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。  そうした中で、お尋ねの国際都市形成整備構想が今沖縄県を中心とされまして新しい二十一世紀に向けてのグランドデザインとして検討されておるということはよく承知をいたしております。今具体的な施策について県の方でいろいろ御検討でございますので、今後それをよくお聞きをいたします。いずれにいたしましても、私は、沖縄県の置かれておる地理的あるいは風土的な条件からいたしましても、やはり近隣、このアジア太平洋地域との密接な交流のもとに協力なり交流の拠点としてこの地域を活用するということは将来にとって大変重要な課題であると考えておりますので、今後、県と十分連絡をとりながら、御意見を聞きながら検討してまいりたいと考えております。  もう一つのフリーゾーンの問題でございます。  いわゆる自由貿易地域が今那覇地区に二・七ヘクタールでありますが設けられております。先般、私も沖縄県へ参りまして大田知事さんにお会いしたときにも、この地域が必ずしも先生が今おっしゃいましたように当初の期待どおりにはいっていない面があるというお話がございました。私も帰りがけにあそこへ寄りまして、あそこに入っておる会社の方々の御意見も伺いました。  これにはいろいろな原因があるようでございます。あの地域自体が狭過ぎるという問題もありますし、それからまた一般的に不況下でなかなか新しい投資が起きにくいということもあったと思います。それからさらに、基本的にはやはり大競争の時代になってきまして、近隣諸国もああいうフリーゾーンをつくっておるという、それとの競争の面で沖縄が必ずしも企業にとって有利とは言えないという面もあるのかもわかりません。  いずれにしましても、現在のあの地域をどういうふうに活性化していくかということを地元の方々また県の御意見も聞いてよく検討し、その上でまたそれを、例えば今県は中城地区の埋立地に拡大しようという御計画もお持ちでございますから、そういうことも含めて検討してまいりたい、一歩一歩前進してまいりたいと考えております。
  216. 一井淳治

    ○一井淳治君 次に、「もんじゅ」事故関係して質問させていただきます。  事故原因の正確な調査が進められると思いますけれども、何しろナトリウムの使用というのは液状のダイナマイトを循環するようなものですから大変危険性があったと思います。事故後の様子を見ますと、非常に肩が張っているといいますか、高速増殖炉を何としてでも開発していかなくちゃならない、そのためには少し情報を秘匿してもいいというふうな、非常に凝り固まった、そういうふうな雰囲気が強かったように思います。  そういう中で正確な調査機関をつくるということは非常に困難ではなかろうかと思いますけれども、どうか意識的に公正な第三者機関をつくっていただいて、そこで調査をしていただくというふうにお願いしたいわけでございますけれども、いかがでございましょうか。科学技術庁にお聞きいたします。
  217. 中川秀直

    国務大臣(中川秀直君) 「もんじゅ」の今回の事故を見ますと、二次系のナトリウム漏れということで、放射能漏れはなかったということでございました。また、原子炉の安全というものも一応は確保されたと。しかし、そういう科学的な安全といいましょうか技術の面での安全というのと、それからまた国民や地元の皆さんの安心、安全意識という社会的な安全という中に相当のギャップがあるということが露呈したような感を受けております。  そこで、今後、システム等にこういうトラブルがあった場合はやはりすぐとめる、あるいはまた情報もすぐ知らせる、こういう原則で万全の安全対策あるいは積極的な情報公開、こういうものを進めていかなければならぬと思っております。  先生お尋ねの第三者機関でございますけれども事故の原因究明あるいは安全審査に当たりましても、御案内のとおり、国会が御同意をいただく総理府に置かれている原子力安全委員会、こういう存在がございます。これは委員の先生方全部利害関係者でない方々でありますし、そのもとに審査会、専門部会等入れますと約四百名ぐらいの多くの方々が御参加をいただいているものでございまして、私どもは第三者機関と、このように位置づけている次第でございます。  したがって、当庁の原子力安全局とそれからその第三者機関である原子力安全委員会、今回の事故に関しましても、それぞれタスクフォースとワーキンググループと分けまして、そうした原因の究明あるいはまた安全性のチェック、こういうことをやっていこう、こういうことで今進めているところでございます。
  218. 一井淳治

    ○一井淳治君 ここに科学技術庁の調査状況の報告がございますけれども、「もんじゅ」の施設設備は高い信頼性を確保することとしていたにもかかわらず、現実に漏えい事故が発生したということが書かれております。そういうことで、まさに人間の考えを超越したようなことが起こるわけでありますから、そこでは安全性ということを自己目的とした調査が行われなくてはならないというふうに思います。  また、地元の信頼の回復、国民からも信頼されるということが必要でありまして、安全性に十分な確信が得られない場合には運転の凍結ということも考えるというふうな、本当に公正な方が解明をして初めて私は地元の方々の信頼も回復できるのではなかろうかというふうに思うわけであります。今お話があった方々は、これは全員とは言いませんけれども、地元の相当の方々からはどうだろうかというふうな意見も寄せられる可能性もなきにしもあらずでありまして、もう少し突っ込んだ第三者機関の設定ということはできないんでしょうか。
  219. 中川秀直

    国務大臣(中川秀直君) 先生御指摘のとおり、第一点目のところは私どもも本当に真剣にそう考えておりまして、いろいろこれまでの調査でこのたび取りまとめた結果等を踏まえまして、例えば温度計などのいろいろな当庁関係の研究開発にかかわるさまざまな、「もんじゅ」のようなサイトでの設備、細部の設備、こういうものもこれからはしっかり審査、チェックしていく、あるいはまた認可事項の保安規定のみならず今後の操作手順書までチェックする等々、今回の教訓で得られたことを十分に原子力安全行政に生かしてまいりたい、こう考えております。  それで、再度のお尋ねでございますけれども、確かにアメリカのスリーマイル島において事故が起きたときには、これは炉心溶融という大変な事態であったわけでございますが、その際はカーター大統領がケメニー委員会という独立の大統領任命の事故調査特別委員会を設けました。かような事態ということになれば、これはもうそんなことは絶対にあってはならぬことでございますけれども、当然そういうことは政府において検討されなければならぬ事態であろう、こう考えております。  今回の場合は、私どもの判断は、先ほど申し上げましたとおり常設の原子力安全委員会、この第三者機関の機能を、私どもも全く事務局も分離をして別々の者がやっておりますし、先生方も通常の諮問機関に比べては強い権限を、みずから企画して審議して、総理大臣はその決定を十分に尊重しなければならぬ、我が庁のみならず関係機関すべてに勧告できると、こういうダブルチェック機関でございます。  先ほど申し上げましたとおり、二つの審査会、十五の専門部会等、約四百名の各分野の専門家から構成している第三者機関でございますので、この先生方を私どもは信頼を申し上げて、この体制でダブルチェックで臨んでまいりたい、こう考えております。
  220. 一井淳治

    ○一井淳治君 次に、文部大臣と宮内庁の方にお尋ねをいたしますが、天皇陵墓の調査についてでございます。  与謝野元文部大臣に御努力いただきまして、学術調査の学会等の要求に応ずる方向で進みかけておったわけでございますけれども、その後、前進の報告が聞かれない状況でございます。文化財保護法の適用ということもあるわけでございますけれども、私はまず文化庁あるいは文部省におかれましてこの問題についてのお考えをまとめられたらどうだろうかというふうに思うわけでございますが、その点はいかがでございましょうか。それから、宮内庁の方のお考えもあわせて伺いたいと思います。
  221. 奥田幹生

    国務大臣(奥田幹生君) 陵墓を学術的に調査してはどうかというお話でございますけれども、基本的には陵墓というのは宮内庁が管理をされておられるところでございますし、実際調査をなさる研究者と宮内庁の間の問題であろうかと私どもは考えておるわけです。  与謝野元文部大臣が前向きの御発言というお話が今ございましたけれども、私どもとしましては、陵墓は今もなお天皇及び皇族を葬る場所としましていろいろと祭祀が行われております。そういうところに今すぐ幾ら学術的といいましても調査に踏み込むということは、国民感情もどうなのかなということを相当慎重に考えなければなりませんので、やはり私どもとしましてはもう少し事態を見きわめて対応したいと思っております。
  222. 森幸男

    政府委員(森幸男君) ただいまの天皇陵についての御質問でございますが、今、文部大臣からお話がございましたように、陵墓は歴代の天皇及び皇族を葬る場所でございます。御先祖のお墓として現に祭祀が行われておりまして、皇室と国民の追慕尊崇の対象となっている、こういうことでございますので、宮内庁といたしましては静安と尊厳の保持に努めながらこの維持管理に当たっているところでございます。  ただ、一方では、陵墓につきましては貴重な文化遺産であるということもございますので、学術研究上必要な場合につきましては、ただいま申し上げましたような陵墓の基本的な性格というものに照らしまして、可能な範囲内でできるだけの御協力をしていくというふうなことを私どもの方針といたしております。  いずれにいたしましても、この陵墓は現に祭祀が行われておりますいわば生きたお墓というような性格がございます。そういう意味から、その中心でございます墳丘部への立ち入りであるとか、あるいはまた発掘調査などは私どもとして認めていないところでございまして、今後ともこの方針については変える考えはございませんけれども、学術研究上の協力ということは、これは今後とも進めてまいりたいと考えております。
  223. 一井淳治

    ○一井淳治君 続いて、住専の問題について質問をいたしたいと存じます。  きょう十時からの質疑が続きましたけれども、破産等の手続では今回のような大型、深刻な事態には対応できない、今回のスキームを強力に推進していくべきであるという議論がなされたというふうに思います。私どもといたしましても、わかりやすい言葉で国民の間の理解を深めていくと同時に、責任を厳しく追及して成果を上げていくほかには方法がない。そして、この唯一の方法を前進することによりまして、国際的な日本経済の信頼を高め、そして景気の回復を図っていくということで前進していきたいと思うわけであります。  そういうことで、この処理計画の基本となりますのは住専処理会社が作成される処理計画でありますけれども、この内容がイメージがまだ明らかでないわけであります。そういったことで、私ども思いますのは、例えば健全な資産を住専の方に残すのかどうか。そうすると、退職金等に取られてしまいやしないかというふうな心配も出てまいりますし、資産の評価によっては公正な処理計画はできないんじゃないかというふうなことも心配いたします。  そういうことで、この処理計画を具体的にどのような内容で構成していくのか、あるいはこれをいつごろまでにおつくりになるのか、まずその点を伺いたいと思います。
  224. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 処理計画につきましては、現在、関係者の間で具体化に努めているところでございますけれども、予算をお認めいただき法律をお認めいただきましたならば、直ちにその決定にかかれるように準備を進めておきたいと考えております。
  225. 一井淳治

    ○一井淳治君 そうすると、法案ができると、例えばどれくらいの期間でこれをつくり上げられるのか。そうして、この処理計画の内容というのはイメージがわかないわけですね。その辺の説明をお願いしたいと思います。
  226. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) この住専処理策をつくりました理由は、できるだけ早く住専の資産の処理をしなければいけない、その場合に債権の強力な回収に努めなければならない、こういう趣旨でございますので、枠組みをお認めいただきましたならばまさに一日も早く、できるだけ早くという気持ちでございます。何日ということを申し上げる段階ではございませんけれども、一日も早くということで御理解をいただきたいと存じます。  その処理計画の中では、詳細な関係者間の負担の分担、あるいは会社設立、会社に資産を移行しました後の運営の仕方等についてできるだけ具体的な計画をつくることを考えているわけでございます。
  227. 一井淳治

    ○一井淳治君 そうすると、資産を全部移行するんですか。どうなるんですか。
  228. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 資産はすべて譲り渡すわけでございまして、それはいわば額面で申しますならば約十三兆円のものになりましょうし、その実質的な価値という意味で申しますならば約六兆八千億円というようなものになろうかと存じます。  言うまでもなく、譲り受けました資産というものはその住専の債務者に対する債権をすべて含んでおるわけでございますから、大臣が重ねて御説明申し上げているように、債務者に対するその債権の回収ということについては一円たりとも猶予をすることなく取り組む、こういうことでございます。
  229. 一井淳治

    ○一井淳治君 その計画の中には、この倒産原因といいますか、住専がどういう事情で経済危機に陥ったとかそういう経過ですね、倒産原因、そういったものも明らかにされるんですか、どうでしょうか。
  230. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 処理計画は実務的なものでございますので、そのような破綻に至った経緯とか原因というようなことについて必ずしも言及する必要はないのではないかと考えております。
  231. 一井淳治

    ○一井淳治君 きょうの議論の中に、例えば林大蔵大臣、田名部農水大臣の稟議書の問題が出てまいりました。これは当時の行政の責任を追及するということだと思いますけれども平成五年に第二次再建計画というものができました。このことが例えば問題であるけれども、先延ばしをしたかどうか、その先延ばしをしたことの責任があるかどうかわかりませんけれども、責任の有無というもの、これが問われてくると思うわけであります。  アメリカでもよく言われておりますけれども、先延ばしをするとリスクの高い企業に投資をしてますます損害が大きくなるというふうに言われます。しかし、日本の住専は先延ばしをした結果、いろいろ返済をしてかえって傷が浅くなっているかもわかりません。そういった経過、そういったふうなことがどこの段階で、どういうところでまとめられるんですか。この処理計画でまとめられないとすれば、ほったらかしにされるんですか。
  232. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 申しわけございません、御趣旨が完全に理解できておるかどうか自信がございませんが、第二次再建計画以降の処理の仕方が先延ばしということであったのではないか、そういう問題について処理計画の中で言及されないのは問題ではないかという御趣旨でございますとすれば、まずその第二次再建計画そのものが必ずしも先延ばしという意識でつくられたものではない。当時としては、当時の状況判断、環境を踏まえた上で、最善の努力ということで取り組んだものであるということは御理解をいただきたいと存じます。結果的に今日のような状況に至りましたことについては、行政としてそれなりの反省をすべき点はあろうかと存じますけれども、当時の判断として最善の努力を傾けたということはお認めいただきたいと存じます。  なお、そのような状況について処理計画の中で言及をする必要があるかどうかという点については、先ほども申し上げましたように、処理計画と申しますのは実務的なものでございますので、そのような問題に触れる必要は必ずしもないのではないかと考えております。
  233. 一井淳治

    ○一井淳治君 この再建計画の当否は別にいたしまして、経過ですね、どういう経過であったか。債権がふえるとか減ったとか、さまざまな経過についてもこれは触れないから、別のところで、例えば国会あたりで検討しないといけないのか、あるいは預金保険機構あたりでそういったことはまとめるようになるのか、どうなんですか。
  234. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) そのような状況について、私どもとしては第一次及び第二次の調査結果も国会に御提出しておるところでございますし、関係の資料も提出しておるところでございます。もしそれで十分でございません場合には、御質疑の中でお答えを申し上げ、御説明してまいりたいと存じております。
  235. 一井淳治

    ○一井淳治君 それから資産譲渡ですけれども、これはどういう方法で、いつ行うんでしょうか。
  236. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 資産の譲渡は、今対象となっておりますのが七つの住専がございますけれども、住専ごとに関係者の間でお話がまとまり次第、直ちに住専処理機構にそれぞれ一つずつ譲渡をしていく、こういう手続を考えております。
  237. 一井淳治

    ○一井淳治君 一番心配しておりますのは、暴力団系の人が家賃などを徴収していると、そういった場合に、債権譲渡が法律上当然に行われたらいいんですけれども、今回はそうじやありませんから、その辺のことをきちんとやらないと二重払いとか、そういったふうな危険が起こるとかいろいろ問題があると思いますけれども、その辺はどうでしょうか。
  238. 西村吉正

    政府委員(西村吉正君) 債権の管理及び回収に関しまして強力な体制を組む、場合によっては法律の改正も検討するということにつきましては、既にそのような方針で取り組んでおるところでございますし、今回御提案申し上げております特別措置法におきましてもそのような点をお願いしているわけでございます。
  239. 一井淳治

    ○一井淳治君 今後、国会の審議も進みまして、実態の解明が進んでまいると思います。また、新しいスキームが国会の御承認をいただいた後動き始めますと、さまざまな事実関係が明らかになっていくと思います。そういった段階で、きょうも大蔵大臣の方から立派な御決断をいただいたわけですけれども、引き続いて情報公開を進めていただきたい、特に国会から求められた場合には積極的に応じていただきたいというふうに思うわけでございますけれども、そのあたりいかがでございましょうか。
  240. 久保亘

    国務大臣(久保亘君) 住専問題の処理に当たりましては、国民の皆様の御理解をいただくために情報の積極的な公開を行うということを既に内閣としても申し合わせているところでございます。その考え方に沿って今後も対処してまいりたいと思っております。
  241. 一井淳治

    ○一井淳治君 それから、住専の関係での民事上、刑事上の責任追及でありますけれども、特に刑事上の責任追及というのは、活字の上では書かれましても、実際にはなかなか容易ではないんじゃないかという心配がいたします。  今回のスキームの中には、住専の処理機構の方の告発についても規定されておるわけでありますけれども、しかし実際にこれは自分の身近な方を告発するわけですから、十分に機能するかどうか非常に不安であります。そういった点で、今回のスキームを実行する場合には、関係省庁の非常に細かい努力というものが期待されておるのではなかろうかというふうに思います。  そして、最後に申し上げたいことは、今回の住専問題につきましては、やはり大蔵省の金融行政、監督行政のあり方ということが問われておることも否定できないというふうに思うわけであります。  先ほど私申し上げましたこの問題の先送りという問題がありますけれども、これも今後十分検討してみないとわかりませんが、あるいは大蔵省のさまざまな行政指導の当否というふうなこともあると思います。その場合、やはり反省すべきは反省して、金融行政、監督行政のあり方を見直していかなくちゃならないんじゃないかというふうに思います。  今、行革が進められておりますけれども、こういったことは行革だけの側面で見ていってはいけないので、やはり金融行政のあり方を基本としながら、深い検討が必要であるというふうに思います。その際、見直しに当たっては機構の見直しということも必要ではなかろうか、それも大胆に恐れないで検討していくことが肝要であるというふうに思いますけれども、そのあたりにつきましての総理の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  242. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) いずれにいたしましても、今回の問題が露呈いたしましたもの、それはいわば保護と規制を中心とした時代の行政というものが自由化の進展とともに限界に来たということでございます。  そして、当然のことながら、この関門を乗り越えました後、自己責任原則とより透明性の高い行政、そして市場によるチェック機能というものを生かした行政への転換というものは当然のことながら視野に入れて議論をしていかなければなりません。私は、その意味におきまして、委員の御指摘はまさしくその点を指されたものと受けとめます。  そして、いずれにいたしましても、初めに組織あるいはその権限の見直しありきというのではなくて、これまでの金融行政というものに対していわば総点検をした上で、それを踏まえて、新しい金融システムをどうすればよりよいものとして構築できるか、そのために適切な行政のあり方はどうか、そのような視点から検討を加えていくべきだと考えております。
  243. 一井淳治

    ○一井淳治君 終わります。
  244. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で一井淳治君の質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十六分散会      ―――――・―――――