運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1996-04-22 第136回国会 参議院 本会議 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月二十二日(月曜日)    午後一時八分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第二十四号   平成八年四月二十二日    午後一時開議  第一 国務大臣報告に関する件(日米首脳会   談及びモスクワ原子力安全サミットに関する   報告について)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、林業改善資金助成法及び林業等振興資金融   通暫定措置法の一部を改正する法律案林業   労働力確保促進に関する法律案及び木材   の安定供給確保に関する特別措置法案(趣   旨説明)  以下 議事日程のとおり      ——————————
  2. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) これより会議を開きます。  この際、日程に追加して、  林業改善資金助成法及び林業等振興資金融通暫定措置法の一部を改正する法律案林業労働力確保促進に関する法律案及び木材安定供給確保に関する特別措置法案について、提出者趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 御異議ないと認めます。大原農林水産大臣。    〔国務大臣大原一三登壇拍手
  4. 大原一三

    国務大臣大原一三君) ただいま議題となりました林業改善資金助成法及び林業等振興資金融通暫定措置法の一部を改正する法律案林業労働力確保促進に関する法律案及び木材安定供給確保に関する特別措置法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  我が国林業及び木材産業は、国民生活に不可欠な林産物供給を初めとして、森林の有する国土保全水資源涵養等公益的機能の発揮の増進など、国民経済発展国民生活向上に大きな役割を果たしております。  一方、戦後植林された一千万ヘクタールの人工林充実期を迎えつつある中で、近年の我が国林業及び木材産業を取り巻く環境は、国産材価格低迷、伐出経費等経営コスト増大製品輸入増大等により、一段と厳しいものとなっております。  このような状況のもとで、林業生産活動の停滞、森林整備水準の低下、林業労働者減少森林組合素材生産業者等森林施業を担う事業主経営脆弱化等に対処して、林業経営の安定及び林業労働力確保を図ることが急務となっております。あわせて、木材製造業者等に対する木材安定供給確保し、木材製造業事業規模拡大を図ることが必要であります。  このような観点から、充実しつつある国内の森林資源木材として適切に供給できる「国産材時代」を迎える上での基本的条件整備するため、林業経営基盤強化林業労働力確保促進及び森林所有者等から木材製造業者への木材安定供給確保に関する措置を総合的に講ずることとし、これらの法律案を提出した次第であります。  次に、これらの法律案の主要な内容について御説明申し上げます。  まず、林業改善資金助成法及び林業等振興資金融通暫定措置法の一部を改正する法律案についてであります。  第一に、林業改善資金助成法改正であります。  林業経営改善促進するため、林業改善資金の新たな貸付金の種類として、新林業部門導入資金を創設することとしております。  新林業部門導入資金は、林業経営改善促進するために普及を図る必要があると認められる森林施業の方法及び木材以外の林産物生産の方式を導入し、新たな林業部門経営を開始するのに必要な資金とすることとしております。  第二に、林業等振興資金融通暫定措置法改正であります。  同法の題名を「林業経営基盤強化等促進のための資金融通に関する暫定措置法」に改め、都道府県基本構想において育成すべき林業経営目標等を明確にするとともに、林業を営む者がこの基本構想に即して作成する林業経営改善計画都道府県知事認定することとしております。  この林業経営改善計画認定を受けた者を地域林業を担うべき者として法的に位置づけるとともに、当該林業者に対する支援措置について、林業経営基盤強化促進する観点から拡充することとし、農林漁業金融公庫資金のうち森林の取得に必要な資金及び林業改善資金のうち新林業部門導入資金について、それぞれ償還期限延長等を行うとともに、認定を受けた林業経営改善計画に従って林業経営規模拡大した場合に、課税特例措置を講ずることとしております。  続きまして、林業労働力確保促進に関する法律案についてであります。  第一に、基本方針等の策定であります。  農林水産大臣及び労働大臣は、林業労働力確保促進に関する基本的な方向等を明らかにする基本方針を策定することとし、都道府県知事は、当該都道府県における林業労働力確保促進に関する方針等を明らかにする基本計画を策定することができることとしております。  第二に、雇用管理改善及び事業合理化に取り組む事業主計画に対する認定制度であります。事業主は、雇用管理改善及び事業合理化を一体的に図るために必要な措置についての計画を作成し、都道府県知事認定を受けることができることとし、このような認定事業主に対し、林業改善資金貸し付け特例課税特例等支援措置を講ずることとしております。  第三に、林業労働力確保支援センター指定であります。  都道府県知事は、認定事業主の委託に基づく林業労働者の募集、新たに林業に就業しようとする者等に対する林業就業促進資金貸し付け等林業労働力確保のための支援業務を適正かつ確実に行うことができると認められる公益法人を、都道府県ごとに一個に限り、林業労働力確保支援センターとして指定することができることとしております。  第四に、雇用管理者選任等であります。  事業主は、事業所ごと雇用に関する事項を管理する雇用管理者を選任するように努めるとともに、雇い入れ時に林業労働者に対し、雇用に関する文書を交付するように努めることとしております。  最後に、木材安定供給確保に関する特別措置法案についてであります。  第一に、都道府県知事による指定地域指定であります。  都道府県知事は、その地域における森林林齢その他の森林資源状況から見て、林業的利用合理化を図るべき相当規模森林があること等の要件に該当する地域指定地域として指定することができることとしております。  第二に、木材製造業者等森林所有者等とが共同して作成する事業計画に対する認定制度であります。  指定地域内に事業所を有する木材製造業者等当該指定地域内の森林森林所有者等は、共同して木材の安定的な取引関係の確立を図る事業に関する計画を作成し、都道府県知事認定を受けることができることとしております。  第三に、認定を受けた事業計画に従って行う措置についての関係法律特例措置であります。  事業計画認定を受けた者が事業計画に従って行う立木の伐採林地開発行為及び保安林における伐採についての森林法の適用の特例措置等並びに森林組合等事業員外利用についての森林組合法特例措置を講ずることとしております。  第四に、国有林野事業における配慮であります。  国は、木材安定供給確保事業の円滑な推進のため、国有林野事業における木材供給について適切な配慮をすることとしております。  第五に、木材安定供給確保支援法人指定であります。  農林水産大臣は、認定された事業計画に基づく木材の買い受けに係る債務の保証、木材生産または流通に関する情報の提供等木材安定供給確保のための支援業務を適正かつ確実に行うことができると認められる公益法人を、全国に一を限り、木材安定供給確保支援法人として指定することができることとしております。  以上、林業改善資金助成法及び林業等振興資金融通暫定措置法の一部を改正する法律案林業労働力確保促進に関する法律案及び木材安定供給確保に関する特別措置法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)     —————————————
  5. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。常田享詳君。    〔常田享詳君登壇拍手
  6. 常田享詳

    常田享詳君 私は、平成会を代表して、ただいま提案されました林業改善資金助成法及び林業等振興資金融通暫定措置法の一部を改正する法律案林業労働力確保促進に関する法律案木材安定供給確保に関する特別措置法案、以上の林野関係法案に対する質問を行います。  人類の生存と繁栄にとって、人口、食糧、環境の問題が解決しなければ存亡の危機をもたらすものとなることは自明の理であります。以上の問題を解くかぎ農林水産業にあると思います。  世界に冠たる工業によって日本の今日の豊かさが支えられていることは紛れもない事実であります。しかし、それは消費生活高度化という成果を上げる一方で日本人及び日本社会に大きなストレスをもたらし、バランスを欠いた生活環境を招来しています。  工業を営む都市は、農林業を営む農村によって持続可能となります。農ある社会、この場合の農は農業農村の農であります。農ある社会こそ二十一世紀日本の姿だと考えます。国土環境水資源保全し、中山間地振興の成否のかぎを握るのが森林政策であります。したがって、農ある社会構築根幹森林政策行政があると言えるのであります。  まず、総理大臣お尋ねをいたします。  農業基本法見直しが迫られていますが、そこでも明らかにされる新しい社会の形成に向けて森林及び森林政策をどのように位置づけておられるのか、お伺いいたします。  あわせて、国土保全環境保全上、森林保護重要性をどのように認識しておられるのか、お伺いいたします。  先日の日ロ首脳会談で、総理エリツィン大統領に対し、放射性廃棄物海洋投棄について、再び行うことのないよう強く求められたところでありますが、地球環境汚染責任の一端は日本にもあるのであります。まさに地球規模に及ぶ環境問題への日本国際貢献が今、期待されているところであります。  そこで、中国・内蒙古自治区や中東において砂漠緑化に取り組む多くのボランティアヘの支援策等、ODAの見直しも含め、国際緑化推進に対する今後の取り組みと率先垂範の決意をお伺いするものであります。  我が国は、このことについて過去多くの調査費を浪費してきました。調査から緑は育たないのであります。飢餓の世紀と言われる二十一世紀を目前とする今、一粒の種をまき、一本の苗を植えることが急務であります。幸いに我が国には、鳥取大学乾燥地研究センター等開発された世界一と言われる技術があります。これこそ世界恒久平和への大いなる貢献であると思うのであります。  次に、農林水産大臣にお伺いいたします。  提案された林野関係法案のねらいは、林業経営から木材加工流通体制一体的整備促進し、もって林業林産業活性化を図るところにあると考えます。特に今回の法整備の特徴は、いわゆる川下と呼ばれる木材加工業近代化大型化による合理化達成し、これがもたらす生産性向上によって国際競争力確保しよう、そして外材との競争に打ち勝ち、広い日本市場を十二分に生かして産業としての林業全般を確立しようという点にあると思います。大変野心的な労作でありますが、市場経済の原則に立ち返り、産業発展のキーワードである「生産性向上競争力確保」を政策立法基礎に据え、発想転換による林業林産業構造改善政策であると評価してよいのか、この点をまず御確認しておきたいと思います。  したがって、三法の軸となるのが木材安定供給確保に関する特別措置法案であります。品質のよい素材を量的に確保できない、そのために価格も安くならないでいたところに日本林業のネックがあって、これを取り除こうというものであります。しかるに、同法律案に盛り込まれている施策は果たして十分対応できていると言えるのでありましょうか、大いに疑問であります。  法案が規定する誘導措置として金融支援その他の施策が講じられていますが、外材との競争力確保するという目的達成への有効度について、川下からの参加への動機づけを含め、どのようなシミュレーションを行い、どのような展望を描いているのか、時間的めどを含めてシナリオをお伺いいたします。  平成八年度の予算措置を見る限り、成功は心もとない気がします。財政逼迫の折、どのように対処しようとしているのか。例えば、森林林業国土保全環境保全等、公益的、社会的位置づけについて、国民の合意を得た上で、都市住民負担を求めるかどうかということも含め、今こそデカップリング政策導入等により国民全体で森林恩恵に対する負担を分かち合うべきではないかと考えますが、いかがでありましょうか。  木材安定供給は、川下と並んで川上である林業経営安定化基盤強化が不可欠であります。これまで農業には、経営の安定を図る施策として価格政策所得政策が存在していました。しかし、林業には何もありませんでした。この制度格差を埋めて林業経営の安定を図ろうというのが今回の林業改善資金助成法及び林業等振興資金融通暫定措置法の一部を改正する法律案ということだと思います。  現在、不在村の山林所有者の山が三百万ヘクタールに上っています。このため、林業経営放棄地主の増加と相まって森林整備が滞り、山がどんどん荒れていっているのが現状です。したがって、所有権の移転や施行の受委託を媒介とした経営規模拡大は、農業と同じく林業経営安定に欠かせないものであります。しかし、農地の場合、農地利用権の集積による経営規模拡大を目指し、農地利用増進法を初め農業経営基盤強化促進法等制度的施策を次々と打ち出してきたことは御承知のとおりであります。にもかかわらず、はかばかしい成果を出すには至っておりません。この点をどのように認識し、林業においてどうこの教訓を生かそうとして本法律案を作成されたのかについてお伺いするものであります。  率直に申し上げて、平成八年度の予算措置状況をあわせて考えてみても、とても法律案趣旨を実行し得る措置とは思えないのであります。  林業経営安定化のためには林業プロパー生産物である木材だけでは不十分であるため、本法案では複合経営促進による補完策が提案されております。しかし、その内容と対象が整理され妥当なものとなっていないのではないでしょうか。中国産シイタケ大量輸入等による国産シイタケ価格低迷等に見られるように、高付加価値を持つ特用林産物開発はそう容易ではありません。この点をどうお考えなのでしょうか。  総理府世論調査においても国民の九〇%が森林に親しみを感じている現状を踏まえて、林業経営収入の約三割を占めるキノコ産業活性化とあわせて、グリーンツーリズム的なものの導入についてももう一度の促進措置が必要であると思いますが、お考えお尋ねするものであります。  木材価格低迷対応するためには、木材の高付加価値を図る必要があります。この対処策として長伐期施業が要請されます。さらに、長伐期施業導入した場合、複合経営による所得補てんだけでは足りない可能性があると考えます。そのための施策として本法案に盛り込まれた措置は十分かどうか、御見解をお伺いするものであります。  林業産業として成立せしめるのは、林業労働力の量と質であります。そこで、林業労働力確保促進に関する法律案についてであります。  林業労働力確保根幹は、いわゆる三Kの打開に尽きます。すなわち、林業経営近代化を図る必要があります。これは同時に、もう一つ労働力確保策である林業経営新規参入条件でもあります。近代化基礎経営規模拡大機械化です。近代化を進めるために、同法案施策では林業事業体の自由な起業家精神をどのように保障するのか、御見解を伺いたいと思います。  最後に、本三法案では、農林水産省と都道府県が定めた方針計画のガイドラインの枠の中で事業者計画を作成した場合のみ制度的優遇措置が与えられます。これでは、質問冒頭に申し上げた市場メカニズム導入しての発想転換による林業林産業構造改善という新しい政策手法ではなくて、伝統的行政手法にしかすぎないのではないでしょうか。  過渡的措置とはいえ、事業者自主的経済活動を阻害し、立法趣旨達成をおくらせることが懸念されることを申し添えて、質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣橋本龍太郎登壇拍手
  7. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 常田議員お答えを申し上げます。  まず、森林及び森林政策位置づけについてお尋ねがありました。  森林を健全な状態で次の世代に引き継いでいくことが国土の均衡ある発展と健全な地域社会育成に欠かせないことは御指摘のとおりです。このため、森林整備重要課題位置づけて、天然林保全造成複層林育成を含めて、森林資源の長期的な整備基本方向を定めた森林資源に関する基本計画等に基づきまして、木材供給のみならず、国土環境保全等公益的機能を高度に発揮し得るよう森林計画的な整備に努めているところであります。  また、森林保護重要性についてお尋ねがありました。  森林は、まさに緑と水と生命の源泉であります。そして、地球環境保全を図り、豊かな自然環境生活環境整備していくためには、森林保護保全と適正な整備が必要であるのは御指摘のとおりであります。  このために、森林法に基づき森林保全整備を図るほかに、特に貴重な動植物の保護学術研究の面で重要な森林については保護林等指定しているとともに、すぐれた自然の風景地について国立公園等指定保護をしているのは御承知のとおりであります。また、これらのうち特に国際的な価値を有するものについては、世界遺産として登録いたしております。  また、地球環境問題について我が国貢献が期待されている旨の御指摘がありました。  お尋ね国際緑化推進に対する日本貢献については、近年、世界的に森林減少劣化が進んでおります。そして、地球環境保全の上から、国際緑化の一層の進展が必要となっております。  私自身も、過去、一部の地域における緑化には協力してきた経験を持っておりますが、我が国はこれまでも、減少が著しい熱帯林を初めとして、森林保全造成のために技術協力資金協力を行うだけではなく、国際緑化活動を行うNGOに対しましても支援を行ってまいりました。今後とも積極的に国際緑化推進に努めてまいりたいと考えております。残余の質問については、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)    〔国務大臣大原一三登壇拍手
  8. 大原一三

    国務大臣大原一三君) 常田議員お答えを申し上げます。  まず、林野三法の政策的な位置づけについての御質問でございました。  森林林業を取り巻く情勢がなお依然として厳しいことは議員指摘のとおりであります。先ほども申し上げましたように、一千万ヘクタールという国産材時代の到来をどのような受け皿でどのような対応をしていくかということは、これからの林野行政の非常に大きな基本的な課題でございます。  そういった意味でも、先ほどから常田議員も御評価いただきましたが、極めて野心的な法案でございます。どうかひとつ、これに実を添え、そして根を張らせて、しっかりした土台を築いて今後の森林林業政策基本といたしたいと考えております。  第二に、木材安定供給確保に関する特別措置法外材との競争力の問題でございますが、ただいまも申しましたように、我が国林業仕組み大変小ロットで小さな製材業者との間の取引で、実際問題として都市大量需要対応できないといういわば零細構造の上に成っていることは議員御存じのとおりであります。そういったことを、川上川下を連動化させることによって、そうして計画的に、しかも大ロット供給できる体制をいち早くつくる必要がございます。そういう意味で、今回の法律多分に私も野心的なものである、かように考えております。  それから、国民全体で森林恩恵に対する負担を分かち合うべきではないかという、ありがたい常田議員の御指摘でございます。私も全く同感でございます。  先ごろ我々農林省がお願いして総理府調査をいたしました世論調査によりますと、常田議員指摘のように、九〇%の方が緑の計画に参画をしたいという御意見をお持ちでございます。四月二十九日はみどりの日でございますし、そういったことをさらに大きく飛躍させるにはどうしたらよいのか、国民負担で山を守っていかなきゃならぬ時代、あすでは遅過ぎるのではないか、そんな感じを私も持っている者の一人でございます。どうかひとつよろしく御協力をお願いしたいと思います。  それから、法改正インセンティブ施策有効性いかんというお話がございました。  林地におきましても、農地と同様、いわゆる資産保有意識などからその売買が進まない等の問題が多分にございます。しかも、我が国森林所有の実態は世界に例のないほど零細所有でございます。一人当たり五ヘクタール程度森林所有では、これは将来の森林経営を担保する経営体ではありません。したがって、何としてもこれらの零細所有形態を流動化させ、あるいはまた、受託経営促進等によって大量経営に移行させる必要があると思います。そういった意味で、各種の支援優遇措置を講ずるところといたしたところでございます。  お説のように、八年度予算程度で大丈夫かと言われると私も大変自信がないのでありまして、今後これを起爆剤にしてさらに充実発展させる責任があると思っております。  それから、特用林産物グリーンツーリズムの御指摘でございますが、中国からのシイタケ輸入品は大体三分の一ぐらいの値段でありますが、品質はこれは我が国シイタケがもう何といいましても立派な品質でございますし、そういう意味では我々はやはりこのシイタケ等を中心とする特用林産にさらなる助成と指導を行うことによって充実をしていかなければ、先ほど申しましたように、長伐期の対応ということを考えますと、どうしてもこの辺の施策が必要であると同時に、議員が御指摘になりましたように、グリーンツーリズムをもう一回見直せという御指摘でございますが、お説のとおり、この問題についてもさらなる助成やできる範囲の協力をしていかなきゃならぬと思っております。  同時に、御指摘ございませんでしたけれども、山林労務者に対する年金のありよう、ここが非常に問題でございまして、いわゆる国民年金対策だけではなく、今後どういった形で年金制度充実していくかも重要な課題考えております。  長伐期と複合経営の問題につきましては、ただいま触れたところでございます。  それから、林業労働力確保、この問題も、議員指摘のように、林業経営の最大問題の一つでございます。今回は、おかげさまで労働省の協力を得まして林業労働力確保支援センターを各県に一つ設定することによって、官民挙げてこの問題に取り組んでいく体制をまず整備していきたい、かようなことでございまして、どうかひとつ御理解をお願いしたいと思います。  それから、法案による優遇措置仕組み事業者の自主的な経済活動を阻害し、立法趣旨達成をおくらせるのではないかという御意見がございました。  これはもとよりでございまして、お仕着せの政策ではやはり次代の進展はなかろう。したがって、御指摘のように、個々の事業者自主的努力をできる限り支援するという基本姿勢立法趣旨が生かせるよう努力をしてまいりたいと思います。  以上、お答え申し上げます。(拍手
  9. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。  これにて休憩いたします。    午後一時四十一分休憩      ——————————    午後五時六分開議
  10. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。  日程第一 国務大臣報告に関する件(日米首脳会談及びモスクワ原子力安全サミットに関する報告について)  内閣総理大臣から発言を求められております。発言を許します。橋本内閣総理大臣。    〔国務大臣橋本龍太郎登壇拍手
  11. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、四月十六日から十八日まで国賓として訪日されたクリントン大統領との間で、十七日に日米首脳会談を行い、その後十八日から二十日まで、原子力安全サミットに出席するためモスクワに滞在し、二十一日に帰国しました。  日米首脳会談では、世界の将来にとってもかけがえのない日米両国関係の大切さを再確認し、さらに二十一世紀に向けた両国の協力関係の方向性を示すことができました。そして、その議論を踏まえ、「日米両国民へのメッセージ」及び「日米安全保障共同宣言」の二つの文書に合意し、これらを発表いたしました。  日米両国民へのメッセージでは、両国が共有する民主主義や自由等の価値の大切さについて述べ、そして地域問題への両国の協力、国連改革や軍縮へ向けての協力、経済関係などに触れつつ、日米関係が両国国民にとっていかに大切か、また、両国が将来の課題にどのように協力していくかがまとめられております。  そして、安全保障共同宣言においては、我が国の安全、アジア太平洋地域の平和と繁栄を図る上で、日米安保体制がこれまで同様重要な役割を果たしていくことを確認し、また、この宣言が将来に向けての両国の協力の出発点であることをうたいました。  沖縄の施設・区域の整理・統合・縮小の問題については、首脳会談において、沖縄の方々の負担を軽減するための両国政府の努力を念頭に置きつつ、特別行動委員会の中間報告内容を評価するとともに、この中間報告に取りまとめられている措置を的確に実施していくことが重要であること、また、十一月までに特別行動委員会の作業を成功裏に結実させることを確認し合いました。  経済関係につきましては、私から、我が国政府が規制緩和など経済構造の改革に向け努力中であることを説明するとともに、個別の問題についても、これまでの実績を踏まえ、必要な場合にはいつでも話し合っていくとの立場を説明しました。大統領よりは、財政赤字の削減に引き続き努力するとの姿勢が示され、我が国の経済が持続的に成長することが世界経済にとって重要であるとの指摘がありました。  また、人類や地球社会に対する脅威に日米が協力して立ち向かっためのコモン・アジェンダと呼ばれる協力に、テロリズム、地震のような自然災害、新しい感染症などに協力して対処していくよう新たに六つの分野を追加することなどに合意しました。加えて、二十一世紀型の自然と共生する発展のあり方につき、ともに検討することを確認しました。  さらに、日米両国民の相互理解を促進するために、米国の高校生、大学生、教職員、芸術家などの若者がより多く日本について学ぶ機会を拡充するための包括的な取り組みを進めていくとの方針を大統領に伝えました。  そのほか、私とクリントン大統領は、中国、朝鮮半島、ロシア、旧ユーゴスラビア、中東和平、国連改革、原子力安全サミットなどのさまざまな国際問題についても意見を交換し、両国の政策方針につき話し合いました。  今回の首脳会談を通じ、日米関係はこれまでのさまざまな分野での協力成果をさらに促進していくための大きな方向性を示すことができたものと考えます。政府としては、今回の首脳会談で私とクリントン大統領から両国民及び世界に対して示した日米協力関係の今後の姿を、日米両国さらには世界のためにさらに具体化させるよう誠心誠意努力してまいる所存ですので、議員各位の一層の御協力をお願いいたします。  次に、原子力安全サミットについて申し述べます。  冷戦の終結に伴う東西対立の解消及びロシアの政治・経済改革の進展により、原子力安全の分野においても、これまで対立関係にあった国々が新たな協力関係を発展させていく可能性が広がりつつあります。このような状況のもと、チェルノブイリ事故の十周年に当たる本年、主要国首脳会議、いわゆるサミットに例年参加しているとカ国にロシアを加えた八カ国の首脳が一堂に会し、原子力安全の分野における国際協力重要性を改めて確認したことは極めて有意義であったと評価しております。  今次サミットでは、民生用原子炉の安全、放射性廃棄物の管理、核物質の安全な管理の三つの主要議題に加え、核軍縮・不拡散の問題につき首脳間で活発な議論が行われました。また、会議の後半にはウクライナのクチマ大統領の参加を得ました。その結果、「原子力安全モスクワ・サミット宣言」、「全面核実験禁止条約に関する声明」及び「ウクライナに関する声明」の三本の文書が発表されました。さらに、レバノン情勢、ボスニア情勢を含む国際問題についても有意義な意見交換が行われ、特にレバノン情勢については、敵対行為を直ちに終了するよう訴える趣旨の首脳文書が採択されました。  今次サミットの重要な成果及び私から強く主張した点は、次のとおりであります。  まず、原子力の利用に当たり、安全を最優先すべきことが改めて確認されました。この分野の初めての国際的な法的枠組みである原子力安全条約の早期発効の重要性が訴えられたことは一つ成果でありました。私からは、原子力安全のための国際協力の一環として地域協力重要性指摘し、特にアジアの国としての立場から、本年中を目途に東京でアジア諸国の原子力安全会議を開催することを明らかにいたしました。  我が国が重視する放射性廃棄物海洋投棄の問題については大きな進展が得られました。この点は後ほど御説明いたしたいと思います。  核軍縮・不拡散の分野では、私は、被爆がいかに悲惨かを体験した非核兵器国としての立場から、日本は意義ある貢献をしていきたいと強調いたしました。特に全面核実験禁止条約の早期署名を強く訴え、交渉促進のため協力していく意向を明らかにいたしました。今回、全面核実験禁止条約に関する声明が発表されましたことは、交渉促進世界にアピールする上で大きな意義を有すると考えております。  今次サミットの成果を踏まえ、原子力安全問題での国際協力強化並びに全面核実験禁止条約交渉、軍縮の促進に真剣に取り組んでまいる所存であります。  また、今回の原子力安全サミット出席の機会に、私はエリツィン・ロシア連邦大統領と会談いたしました。また、クレティエン・カナダ首相と会談し、今日の日加関係が良好であることを確認いたしました。  エリツィン大統領との会談におきまして、私は、ロシアの改革路線、二国間関係、国際問題につき幅広く忌憚のない有意義な話し合いを行いました。この会談を通じ、今後の日ロ関係全般をバランスよく前進させるための政治的弾みをつけることができたと考えております。また、エリツィン大統領と個人的によい友人関係をつくることができたと信じます。  ロシアの改革は、国際社会全体にとっても極めて重要であり、今回の会談でエリツィン大統領がロシアの改革路線を堅持するとの決意を表明したことを高く評価しており、私は、ロシアの改革路線が継続される限り、これに引き続き協力していく考えであります。  領土問題については、東京宣言を基礎として両国関係をさらに発展させていくことが確認され、外務大臣レベルの平和条約交渉を再活性化することが重要であるとの点で認識の一致がありました。さらに、そのために大統領選挙後に次官級の平和条約作業部会を再開することが合意されました。これは、大統領選挙後、領土問題に両国が協力して取り組んでいく上で大きな政治的意義を持つものと考えます。  また、北方四島周辺水域における日本漁船の操業枠組み交渉については、交渉を続けていくことに合意し、妥結に向けお互いに努力していくことについて認識の一致があったことも有意義でありました。  放射性廃棄物海洋投棄問題について、私の要請を受けてエリツィン大統領より、ロンドン条約附属議定書の改正を本年中にも受諾すること、さらにそれまでの間も引き続き海洋投棄を行わないことを明言したことは高く評価されます。  さらに、ロシア極東地域との関係については、これを強化発展させていくことの重要性につき認識の一致があったことは、今後の日本と同地域との関係強化に資していくものと考えます。  また、今回、四月末に臼井防衛庁長官が訪ロすることに合意いたしましたことは、両国関係の政治対話の幅を広げ、両国間の信頼醸成を一層促進していくことになると考えます。  本年は両国の国交回復四十周年の年に当たります。私は、今回の会談を踏まえ、日ロ関係の前進のため一層の努力を払ってまいりたいと考えております。(拍手)     —————————————
  12. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。岩崎純三君。    〔岩崎純三君登壇拍手
  13. 岩崎純三

    ○岩崎純三君 私は、自由民主党を代表し、ただいま御報告のございました日米首脳会談及び原子力サミットにつきまして、橋本総理並びに関係大臣に対し若干の御質問をいたします。  橋本総理は、このたびの一連の日米交渉、モスクワでの原子力サミットヘの参加を通じて、一週間に満たない短期間の間に我が国外交史上まれに見る快挙とも言うべき成果をなし遂げられました。私はここに、国民を代表する一人として心から敬意を表する次第であります。  さて、今回の日米首脳会談をめぐる一連の動きを見まするときに、私が強く感じることは、新たな枠組みで構築された日米関係という巨大な二つの歯車ががっちりとかみ合い力強く回転し始めたということであります。この思いは私一人ではなく、日本人のだれもが多かれ少なかれ同じ思いを抱いたものと信じて疑いません。それほど今回の首脳会談は我が国の歴史にとって重要な意味を持つものでありました。橋本総理はこれをどのように受けとめておられますか。この重要な会談のシナリオをみずから描き、そしてみずから演じられた。したがって、総理御自身から現在の心境を沖縄県民並びに国民へのメッセージとしてお聞かせいただきたいのであります。  総理指摘されたように、今回のクリントン大統領の訪日は新たな日米の出発点であり、日米関係の重要性を、日米両国民のみならず、アジア太平洋、さらには世界に向かって示したものと言えるのであります。特に、合意された日米安保共同宣言は、クリントン大統領も大いに評価されましたように、二十一世紀を展望した意義ある宣言であると同時に、日米両国民にとりまして共通の利益をはっきりと示した画期的なものであります。  冷戦後の今日は、不透明、不安定な時代と言われておりますが、その中にあって日米両国がアジア太平洋地域の平和と安定、そして繁栄のためにしっかりと手を携え、その責任を担っていくことを明確にしたことの意義は、どんなに強調しようと強調し過ぎるものではありません。日米安保共同宣言の持つ意義について、この際、改めて総理からお述べいただきたいと存じます。  また、その意義について国民の理解を求め、認識を深めていただくことが何よりも必要かつ重要であると思います。今後どのような取り組みをなさるのか、あわせてお伺いをいたします。  さらに、既に日米安保共同宣言に対して中国や韓国から幾つかの反応があらわれているようであります。その点について、外務大臣にお伺いをいたします。  特に中国は、台湾海峡の緊張以来、中国脅威論が喧伝されている中での今日の日米安保共同宣言は、中国封じ込めを意図したものであると誤解している節もあります。さらに、韓国が日本の軍事大国化を懸念するのであれば、それもまた全くの誤解であります。  いずれにせよ、このような近隣諸国の誤解、あるいは我が国に対する無用な警戒心が生ずることがないよう、政府は十分説明し理解を得るよう外交努力をすべきであります。外務大臣の御見解お尋ねいたします。  次に、今後我が国に求められていることは、言うまでもなく日米安保共同宣言の内容を具体化していくことであります。その意味では、今回の共同宣言は今後の日米安保協力の目標を設定しただけであり、いわば新たなスタートラインに立ったにすぎないと言うべきでありましょう。  今後、日米防衛協力のため、ガイドラインの見直し作業、あるいは有事における日米協力のあり方の研究、そしてそれに基づく日米間の政策調整の促進など、橋本政権が取り組み、そして乗り越えるべき問題は山積をいたしております。特に集団的自衛権の問題などをめぐっては、政府が厳しい対応と選択を迫られることも予想されるのであります。  橋本総理は、共同記者会見におきまして、さきに述べた幾つかの課題に対し、現在の法体系で何ができ何ができないかを研究することは安保体制の円滑な機能のためにも必要だと述べられております。つまり、何ができ何ができないかということの判断について、この際、憲法理念の調和点をどこに求め、国民への合意づくりをどう進めていくのかなといろいろと論議があることと思いますが、総理考え方をお尋ねいたします。  今回、私はもちろんのことでございますが、大多数の国民の予想をはるかに超えた案件は、ほとんど不可能と思われていた沖縄の普天間飛行場の全面返還が実現することになったことであります。これもまた、橋本総理の沖縄県民の方々の心に思いをいたした不退転の決意に対する見事な交渉の結果であり、高く評価するものであります。かつて総理は、沖縄の厚生年金問題の解決に向けて格別の尽力をされましたが、今回もまた、沖縄の方々の怒りと苦悩を総理みずからの責任として、その負担を少しでも軽減しようと真摯に努力をされた結果であると私は認識いたしております。  しかし、沖縄米軍基地の整理・統合・縮小も、ようやく緒についた、いわば第一歩を踏み出したにすぎないと言わざるを得ません。移転先とされる地域の方々から反発が生じているなど、これから一山も二山も乗り越えるためには国民の理解と支持が不可欠であることは言うまでもありません。移転先との調整、基地跡地利用等、基地問題に取り組む今後の姿勢について、総理にお伺いをいたします。  申し上げるまでもなく、政治は、プロセスも大切でございますが、問われるものは結果であります。このことは総理御自身だれよりも御承知のはずであります。  また、今回合意された沖縄基地の整理・統合・縮小、このためにはどのくらいの財政支出を要するのか、これをどのように賄うのか、総理並びに防衛庁長官にお答えを願います。  次は、モスクワで開かれた原子力サミットについてであります。  今なお記憶に新しい十年前のチェルノブイリ原発事故は、平和目的の利用であっても原子力が持つ恐ろしさをまざまざと見せつけました。今回のサミットでは、原子力発電所の安全確保放射性廃棄物の処分、核物質の安全管理、密輸対策、そして包括的核実験禁止条約などについてお話をされたのでありますが、サミットで得られた成果総理はどのように、今御報告を受けましたけれども、評価をされておられますか、お尋ねをいたします。  ところで、このサミットで、橋本総理は就任以来初めてエリツィン大統領と日ロ首脳会談を行われました。その際、北方領土問題に関して、返還交渉の継続を明記した平成五年十月の東京宣言を再確認され、ロシア大統領選挙後に平和条約作業部会を再開することとしたのであります。さきの日米安保共同宣言でも言及しておりますが、アジア太平洋地域の平和と安定にとって東京宣言に基づく日ロ関係の完全な正常化が重要であることは論をまちません。ここしばらくの間はロシア側の国内情勢もあって全く見通しの立たなかった領土交渉に再び方向性を見出し得たことは大きな成果であります。今後、この困難な問題に総理はどのような方策をもって臨まれるのか、お示し願いたいと存じます。  次に、我が国を取り巻く最近の外交課題の幾つかについてお尋ねをいたします。  まず、朝鮮半島情勢についてでありますが、最近、北朝鮮がいたずらに緊張感をあおったりあるいは休戦協定を無視する行為に出ることについては、まことに遺憾でございます。北朝鮮の現状を政府はどのように認識しておられるのでしょうか、お尋ねをいたします。  これに対して米国は、韓国とともに朝鮮半島の恒久平和を目指す四者会談の無条件開催を提案いたしましたが、実現の見通しについて政府はどのように見ておられるのか、御見解を承りたいと存じます。  また、クリントン大統領はさきに訪日した際に、四者会談の呼びかけを日本が即座に支持したことに感謝を表明し、実現に向けた日本協力を求めたのでありますが、橋本総理は、日本は求められればその役割を果たす用意はあるが、今は積極的に言うべきでないと、発言内容に含みを残しておられます。日米両国の間にこの問題をめぐって意見のそごはないと思いますけれども、総理の真意をお伺いいたします。  最後に、中国・台湾情勢についてお尋ねをいたします。  現在、この問題については、本院の外務委員会に設置されたアジア・太平洋に関する小委員会で短期集中的に取り組んでおります。一時期の台湾海峡波高しの緊張状態がようやく鎮静化しつつありますが、アジア太平洋地域の平和と安定のためには、台湾海峡波静か、これこそ不可欠の要素であることは論をまたないところであります。  中台関係を改善するには、まず台湾海峡の緊張を緩和する国際的な環境づくりが最も大切であり、そのことを日米を中心に進め、中台が平和的な話し合いによって交流を深めていくことが望ましいわけでありますが、政府は具体的にどのような役割を果たしていかれるのか、総理の明確な御答弁をお願いいたしたいと思います。  以上、私は幾つかの質問をいたしてまいりましたが、現在、我が国は内外にわたって多くの問題を抱え、まさに多事争論の状況にあります。今後とも、「ある国が平和であるためには他の国もまた平和でなければならない」との総理のグローバルな献身的御努力に限りない期待を寄せまして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣橋本龍太郎登壇拍手
  14. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 岩崎議員お答えを申し上げます。  まず、先般の日米首脳会談についての評価でありますが、私は、この首脳会談では、政治、経済、文化など本当に幅の広い分野にわたって活発な議論を行うことができ、世界の将来にとってかけがえがない日米関係というものの大切さを再確認しながら、二十一世紀に向けた両国関係、その協力というものを方向性を持って示すことができたと思っております。  安全保障関係につきましては、日米安全保障共同宣言におきまして、我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と繁栄を図る上で日米安保体制がこれまでと同様に重要な役割を果たしていくことを確認し、また、この宣言が将来に向けての両国の協力の出発点であることをうたいました。  また、沖縄県における施設・区域の整理・統合・縮小などにつき、十一月までに特別行動委員会の作業を成功裏に結実させることを確認いたしました。しかし、この沖縄における基地の整理・統合・縮小というものを考えてまいります場合、政府が一丸となってこれに取り組むだけではなく、我々ははるかに広範な努力を必要といたします。  こうした観点から、特別行動委員会で取りまとめられる具体的方策の的確かつ迅速な実施を確保していくための方策につき、法制面及び経費面を含めて総合的な視点から早急な検討を行い、十分かつ適切な措置を講ずるという旨の閣議決定を行いました。  同時に、この問題の解決のためには、国と沖縄県が一体となって努力をしていくことがどうしても必要であります。例えば、移設先の選定あるいは地主の方々との折衝、さらに跡地利用計画の策定などにおきましては、地元自治体にも共同で作業に加わっていただく必要があり、心から御協力を願っております。  なお、古川副長官のもとにつくりますこのためのタスクフォースに沖縄県から代表を加えていただくことを了解を得ております。この点は私として本当にありがたいと思っております。  次に、日米安保共同宣言で示された日米協力のあり方、これを具体的に一つ一つ実施に移しながら、その過程で可能な限り国民の皆様に御説明をしていくことが今後国民の理解を得るための一番重要なことだと考えており、そうした努力を積み重ねてまいりたいと思います。  まずは、何といいましてもこの沖縄の施設・区域に関連する諸問題について十一月に特別行動委員会の最終的な結論をまとめ上げること、これが日米安保体制に対する広範な国民の御理解を得る上で極めて重要であると考えておりまして、引き続きアメリカ政府とも協力をしながら全力を挙げて努力していきたいと考えております。  有事の際の対応の取り進め方につきましては、十七日、私とクリントン大統領との間で署名した日米安保共同宣言において、二十一世紀に向けて日米安保体制というものが我が国の安全とアジア太平洋地域の平和と安定のために引き続き果たしていく重要な役割にかんがみて、日米間の安全保障面での協力推進していくことを明らかにいたしております。  こうした考え方に立ちまして、共同宣言におきましては、日米防衛協力のための指針の見直しを開始することを表明いたしました。見直しの具体的内容につきましてはまさに今後の検討を待つ必要がありますが、いずれにいたしましても、集団的自衛権の行使のように我が国憲法上許されないとされている事項について、従来の政府の見解に変更はありません。  政府としては、さまざまな事態に対して、我が国が米国と協力しながらこれに対応していくための手段をきちんと整備していく必要があると考えております。そのような対応の法的側面にかかわる問題は真剣に検討しておかなければならないと思いますけれども、いずれにせよ、我が国対応が憲法に従って行われることは当然であります。  こうした政府の方針を踏まえ、各種の緊急事態に対する具体的な対処方法を検討、整備していくことは極めて重要であり、政府としても万全の体制で臨み得るように引き続き努力をしていきたいと考えております。  また、基地問題への取り組み、その姿勢と財政支出についてのお尋ねがございました。  沖縄県には米軍の施設・区域が集中しておりますことから、長い間、我々が余りにも無関心であります間に沖縄の方々には大変な負担をかけてきたこと、今さら申し上げるまでもありません。  その沖縄県の方々が我が国全体の安全のために担っておられる負担を、日米安全保障条約の目的達成との調和を図りながら少しでも軽減してまいりますためには、普天間飛行場の全面返還を初め、今般発表いたしました特別行動委員会の中間報告措置を確実に実現することが何よりも大切だと思います。  こうした認識に基づいて、法制面及び経費面を含めた総合的な観点からの検討をできるだけ早く行い、十分かつ適切と言える措置を講ずることが必要であると考えておりまして、政府としては、挙げてこれに取り組む決意を確固たるものにするため、十六日にその旨の閣議決定を行いました。しかし、今回の中間報告の実現に要する具体的な必要経費は、今後、見積もりなどを行いまして算出することになるわけでありまして、現時点におきまして確たる数字を持ってはおりません。  次に、モスクワのサミットの成果につきましては、まず原子力の利用に当たって安全を最優先すべきということが改めて確認をされました。この分野での初めての国際的な法的枠組みであります原子力の安全に関する条約の早期発効の重要性が訴えられたことは、一つ成果であると思います。  私からは、原子力安全のための国際協力の一環として地域協力重要性指摘し、特にアジアの国としての立場から、本年中を目途に東京でアジア諸国の原子力の安全会議を開催することを明らかにいたしました。  また、我が国が重視する放射性廃棄物海洋投棄の問題につきましても大きな進展が見られました。  さらに、私は、被爆がいかに悲惨かを体験した非核兵器国としての立場から、日本は核軍縮・核不拡散の分野においても意義ある貢献をしていきたいと強調いたしました。  同時に、核兵器国に対し、それぞれの国の核兵器の解体に伴う核物質の処理の責任は第一義的にそれぞれの国にあることをも明らかにしてきたつもりであります。  同時に、全面核実験禁止条約の早期署名を強く訴え、交渉促進のために協力する意向を表明いたしました。今回、従来必ずしも態度が明確でありませんでしたロシアを含め八カ国の首脳が一致して全面核実験禁止条約に関する声明を発表することができましたことは、この条約の交渉促進世界にアピールする上で大きく意義を有するものと考えております。  また、モスクワにおきまして、私は、我が国放射性廃棄物海洋投棄の問題を極めて重視していることを強調してまいりました。その結果、十九日の日ロ首脳会談におきましてエリツィン大統領から、ロンドン条約附属書の改正を本年中にも受諾する、さらにそれまでの間も引き続き海洋投棄を行わない旨明言をされ、翌日の二十日の原子力安全サミットにおいてもこの趣旨の確認をされる発言をしていただいたことを高く評価しております。  また、エリツィン大統領との会談におきまして、私どもは忌憚のない議論をさせていただきましたが、領土問題につきましては、東京宣言を基礎として両国関係をさらに発展させていくことが確認されました。そして、外務大臣レベルでの平和条約交渉を再活性化することが重要であるという認識で一致いたしました。これに伴いまして、大統領選挙後に次官級の平和条約作業部会を再開することが合意をされました。これは大統領選挙後、領土問題に両国が協力して取り組んでいく上で私は大きな政治的意義を持つと思います。  本年は日ソの時代からちょうど国交回復後四十周年の年に当たるわけでありまして、今回の会談を踏まえ、領土問題の解決を含めた日ロ関係の前進のために一層の努力を払っていきたいと考えております。  また、十六日に韓国及びアメリカ両国の大統領が発表をされました朝鮮半島平和増進のための四者会合の提案につきましては、私は、朝鮮半島の平和と安定のためには大きな意義を有するイニシアチブであると、これを支持することを直ちに表明いたしました。  我が国としては、この四者会合が実現をし、これを通じて朝鮮半島における緊張緩和と信頼醸成が促進され、現行の休戦協定にかわる永続的な平和に関する合意が達成されることを心から願っております。同時に、北朝鮮がこの提案を遅滞なく受け入れて対話の席に着くことを希望いたしますし、そのような平和が達成されるまでの間、休戦協定を遵守し、朝鮮半島の平和と安定を害するような動きがないように改めて呼びかけをいたしたところであります。  私は、こうした点も含め、クリントン大統領との間で朝鮮半島情勢につきましてもさまざまな議論をいたしました。また、今後とも朝鮮半島情勢に関しまして、例えば日米韓の結束によりKEDOを適切に運営していくことなど、韓国及び米国と緊密に連絡しながら我が国としての役割を果たしてまいりたいと考えております。クリントン大統領との共同記者会見におきまして私が述べました気持ちは、そのような思いを込めてのものでございました。  また、アジア太平洋地域の平和と安定についてお尋ねをいただきましたが、台湾海峡情勢の真の平和と安定をつくり上げていくためには、海峡両岸の当事者間における台湾問題の平和的解決が何より大切であります。  台湾海峡両岸の関係は、昨年六月の李登輝氏の訪米、最近の中国の軍事演習などによりまして困難な局面にございます。しかし、我が国といたしましては、台湾の選挙を経ました今日、両岸の関係者が事態を直視され、現在の困難を克服して平和的解決の方途を見出すように強く希望いたしておりますし、こうした立場をさまざまな機会をとらえて表明いたしております。今後も同様の努力を粘り強く続けてまいりたい、そのように考えております。  残余の御質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)    〔国務大臣池田行彦君登壇拍手
  15. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 岩崎議員お答え申し上げます。  日米安保共同宣言に対する中国並びに韓国の反応についてのお尋ねがございました。  両国のプレスがいろいろな論評をしておるということは承知しておりますが、政府ベースでの反応がどうかと申し上げますと、まず韓国につきましては、外務部が、日米安保共同宣言はアジア太平洋地域の平和と安定のための米国の役割が今後とも確固に維持されることを明らかにしたものとして評価し、朝鮮半島の平和と安定に寄与することを期待する、このようなコメントを行っていると承知しております。また、中国の外交部のスポークスマンは、記者会見におきまして質問に答えて、日米安保条約が二国間の範囲を超えるようなことがあれば地域の情勢に複雑な要因を及ぼすとした上で、日米の努力地域の平和と安定に寄与すべきである、こういうふうなコメントを行っている、これが政府の反応でございます。  御承知のとおり、この共同宣言は、日米安保体制の重要な役割を改めて確認した上で、二十一世紀に向けた両国協力関係の強化の方向を明らかにするものでございまして、第三国に対し日米が対抗する、そういったことを目的としたものではございません。ましてや、御指摘のありました両国のプレス等における論評の中で、中国の封じ込めであるとかあるいは日本の軍事大国化の懸念といったものが見られますけれども、そのような論評が的外れであることは申すまでもないところでございます。  政府といたしましては、この日米共同宣言の趣旨、真意につきましては、既に中国並びに韓国に対しまして外交ルートを通じて十分に説明しておるところでございますし、今後ともいろいろな機会をとらえましてその趣旨、真意が広く認識されるように努力を払ってまいりたい、こう考えております。  それからまた、今後、日米防衛協力のための指針の見直しを初めいろいろな日米協力の方向を実施してまいらなくてはなりませんが、そのような作業におきましても近隣諸国との関係に十分配慮しながら進めてまいりたい、こう考えております。  次に、北朝鮮の現状についての御質問がございましたけれども、北朝鮮情勢につきましては、現在、金正日書記が国政全般を指導しているというふうな見方が一般的でございますけれども、食糧、エネルギー不足を初めといたしまして経済あるいは社会面での困難は非常に大きなものがある、こう考えております。  いずれにいたしましても、北朝鮮情勢の把握には種々な困難を伴う面もございますけれども、今後とも十分に情勢を把握するように努め、また、その動向については細心の注意を払ってまいる必要がある、このように考えております。  特に先月末の一連の北朝鮮の動きにつきましては、我が国としましても、北朝鮮の自制を強く求める、こういった我が国考えを表明してきたところでございますし、また、米韓両首脳が発表されました四者会合の提案については、いち早く総理からこれを支持するという我が国の姿勢を示されたということは、先ほど総理答弁にあったところでございます。(拍手)    〔国務大臣臼井日出男君登壇拍手
  16. 臼井日出男

    国務大臣(臼井日出男君) 岩崎議員お答えを申し上げます。  私に対する御質問は、沖縄米軍基地の整理・統合・縮小についての御質問でございました。  先ほど総理お答えを申し上げましたとおり、特別行動委員会の中間報告を実施するために必要な施策の具体的内容について、まさにこれから鋭意検討していこうという現段階におきまして、当該施策に要する経費見積もりを見積もることはできず、現時点で具体的な数字を得ておりません。  いずれにいたしましても、特別行動委員会の中間報告に取りまとめられております措置を確実に実行するために、十六日の閣議決定の趣旨を踏まえ、法制面及び経費面を含め総合的な観点から早急に検討を行い、十分かつ適切な措置を講ずることが必要であると考えております。(拍手)     —————————————
  17. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 寺澤芳男君。    〔寺澤芳男君登壇拍手
  18. 寺澤芳男

    ○寺澤芳男君 平成会を代表いたしまして、橋本総理並びに関係閣僚に御質問をいたしたいと思います。  総理、お疲れさまでございました。まず、きのうお帰りになったロシアでの原子力サミットについてお尋ねをいたします。  ロシアによる放射性廃棄物海洋投棄禁止、危険な原子力発電所の安全性向上あるいは閉鎖などについて一定の前進が見られたことは認めますが、これらを確実に実施する上で必要な資金援助はどうするのか、また、ロシアの核兵器を解体して取り出される膨大な兵器用プルトニウムの処理をどうするのかなと、いずれも具体性に欠けるように思われますので、より詳細な御説明をお願いいたします。  また、包括的核実験禁止条約、CTBTについては、ロシアも本年九月までの合意に同意したようですが、この結果、中国対応がますます注目されます。CTBTの見通し、中国への今後の対応についてお伺いいたします。  橋本総理がアジアの原子力安全会議の開催を提案されたことは、大変時宜にかなったことと評価いたします。総理の提案の内容についてお聞かせください。  経済発展が著しいアジアでは、中国を含めて今後ますます原子力発電に依存することになりますが、その安全性の確保は我々が最も関心を抱いているところであります。私は、東アジア原子力機関といったものを設立し、核の国際管理を含む原子力発電の協力体制を確立すべきであると思いますが、総理の御所見をお聞かせください。  あわせて、原子力安全条約の早期発効を目指すべきであると思いますが、御意見をお聞かせください。  次に、日米関係についてであります。  一九七七年から一九八九年の十二年間、駐日米国大使を務めたマイク・マンスフィールド大使は、退任直後、フォーリン・アフェアーズ誌に論文を寄せ、その中で、日米関係を今日世界で最も重要な二国関係と形容し、アメリカも日本ももはやこれ以上一国のみで物事を遂行していくという選択肢を持たないと結論づけました。この認識は、表現もそのままにクリントン大統領からもたびたび示されております。私も同感であります。  日本とアメリカ、この太平洋の両岸に位置する二つの国の関係ほど、戦前、戦後を通じて深くかかわり合った二国関係は希有でありましょう。そして、現在、日米関係は日米二国間にとってのみ重要なのではありません。世界の二大経済国としてこの関係は世界経済の全体の行方に大きな影響力を持つに至っており、その点からも世界で最も重要な関係なのであります。しかし、残念ながら、日本の行財政改革、経済構造改革のおくれがこの二国関係に暗い影を落としております。そういう現実も踏まえて、橋本総理に日米関係の重要性についての御認識をお尋ねいたします。  さて、このたびの日米首脳会議の成果である日米安全保障共同宣言において、冷戦後も日米安保体制がアジア太平洋の平和と安定にとって重要であるとの認識が再確認され、新たな日米防衛協力についての合意がなされたことは、歴史的にも極めて重要な意味を持つものだと私は考えます。  この合意によって我が国の役割と責任はどのように変化するのか、文言からは必ずしも明らかではありません。今後、周辺諸国に無用の脅威を与えることはないのか、そして我が国が武力紛争に巻き込まれることはないのか、こうした疑問や不安が国民の間に存在しておりますし、中国は、事実、共同宣言に対する懸念を表明しております。  これらの不安に対し説明することは政府の責任であります。今回の日米安保共同宣言が持つ意味、それが果たす役割につきまして、まず概括的な総理の御所見をお聞かせください。  次に、共同宣言についての基本的な問題点について具体的にお尋ねをいたします。  まず、共同宣言では両首脳は、日米安保条約がアジア太平洋地域の安定と繁栄を維持するための基礎であり続けることを再確認しておりますが、アジア太平洋地域とは一体どの範囲を指すのか。  といいますのも、改めて私から申し上げるまでもありませんが、わずか十条までしかない日米安保条約において、「極東」という言葉は何度か出てまいりますが、「アジア太平洋地域」という言葉は使われておりません。アジアといいますと非常に広いように思えます。例えば、アジア陸上大会は中東の人々も参加しております。  従来、政府は、安保条約に言う「極東」とは、フィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び台湾地域もこれに含まれると説明してまいりました。それでは、今回の安保宣言で対象範囲が変更されたのでありましょうか。もしそうであるならば、条約本体の改定を意図的に回避するこそくな手段であり、国民を愚弄するものであります。  次は、日米防衛協力のガイドラインについてであります。  このガイドラインの見直しを開始することに両首脳は一致し、「日本周辺で発生し得る事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合の日米協力に関する研究をはじめ、日米間の政策調整を促進する必要性について意見が一致した」とあります。  まず、この宣言の中で「日本周辺で発生し得る事態」とありますが、日本周辺とはどこまでを指すのでしょうか。  今回の宣言により、我が国の安全保障をめぐるその範囲の議論は非常にわかりにくくなりました。条約本体の「極東」、「極東を超える在日米軍の行動範囲」、今回の宣言の「アジア太平洋」、さらにガイドライン見直しの対象となる「我が国の周辺」と、地域的な用語が飛び交っております。外務大臣、これらの言葉を整理して御説明ください。  この決定は、いわゆる極東有事を想定してその研究を開始し、さらにはその研究成果を日米ですり合わせるものと考えていいのでしょうか。もちろん、日本は何をすべきであり、何ができないかを検討することは我が国にとって極めて重要であり、橋本内閣としては、内閣の命運を左右する重大問題であるとの認識を持ってこれに取り組むべきであります。  この重大問題に対し、連立与党が果たして足並みをそろえて当たれるのか、大いに疑問であります。ガイドライン見直しに対する総理と防衛庁長官のお考えをお聞かせいただきたいと思います。  特に、有事の際の措置について法律の手当てが必要なもの、すなわち有事法制につきましては、現在の憲法の枠組みの中で法令を研究し、どのような対処行動ができるかを明らかにすることは当然であります。政府も昭和五十二年から作業に入っていることと思います。しかし、その内容国民に具体的に知らされなければ、国民は極めて不安な状況に置かれることになります。  今後さらに進められる有事法制研究の方向、具体的な対処行動の内容は、関連法律案の国会への事前の提出を含めて可能な限り国民にオープンにすべきだと思いますが、総理にこの点をお約束いただけませんでしょうか。  また、米軍支援などで問題となる集団的自衛権に対する総理の御所見もあわせてお聞きしたいと思います。  次に、沖縄米軍基地の返還についてお聞きいたします。  普天間飛行場の全面返還は決まりましたが、今後これをいかにスムーズに実施し、沖縄県民の意向に沿った地域振興を進めていくかが重要であります。そして、移転先の自治体や住民の理解と協力を得なければなりません。我が国が全面的に負う基地撤去のための財政負担も膨大なものになりましょう。これらにどのように対応していくのか、総理並びに防衛庁長官のお考えをお聞かせください。  次に、経済分野についてお伺いいたします。  今回の日米首脳会議では、経済問題は突っ込んだ討議のない、なぎの状態で終了したと言われております。保険、フィルム、半導体等、個別分野の課題すべてが先送りされましたが、クリントン大統領は三分野それぞれについて言及し、解決に向けての意欲を示しました。これに対し、橋本総理大臣はどのような考えで臨まれたのか。  また、会談において大統領は、保険分野については六月一日、半導体については七月末までに何らかの合意が成立することを希望すると述べました。  これらの経済問題について、政府はあくまで日本の消費者の利益につながる自由市場経済の原則に従った解決をなすことを強く求めるとともに、合意成立に向けての具体的な見通しはあるのかどうかお尋ねをいたします。  今回の日米安保共同宣言は、副題として「二十一世紀に向けての同盟」とタイトルがつけられております。日本のこれからの進路を決定づける極めて重要なものだと考えます。  つまり、この宣言は、これまで戦後日本が歩んできた歴史の中でも、一九五二年の講和条約と日米安保条約の締結、その後の安保改定、日ソ、日韓、日中との国交正常化、沖縄返還などの歴史的事実に匹敵するほど我が国の死活にかかわる重大な文書であると思います。橋本総理とクリントン大統領の迎賓館の庭での署名式という演出も、この宣言の重要性を意識してのことであると思います。  もちろん、条約であれば国会の委員会で審議することもできますが、今回は宣言文にとどまっており、この宣言に盛り込まれたこれまでにない強いタッチで描かれた日本の将来像について、国民が十分に語り、審判を下す場を得ておりません。  また、国民の九割が反対している政府の住専処理案、官僚の資料隠しを許した「もんじゅ」事件、厚生行政の腐敗が問われているHIV事件、経済三分野のすべてを先送りした日米関係のきしみ、結論を出せないNTT分割問題など、現在の連立与党は既に政権担当能力を失っております。  今こそ、民主主義のルールにのっとり、これらの問題を争点とした解散・総選挙で民意を問うべきではないでしょうか。橋本総理の御決断を期待いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣橋本龍太郎登壇拍手
  19. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 寺沢議員お答えを申し上げます。  冒頭、順序を変更されまして、モスクワの原子力サミットについて御質問が幾つかございました。もし足りないものがありましたらどうぞお許しをいただきたいと思います。  冒頭、海洋投棄についてより具体的にという御指摘がございました。  御承知のように、かつてロシアの放射性廃棄物、低レベルのものではありましたが、海洋に投棄をされ、我が国の漁民等にも大きな不安を与えた事件がございました。そして、今回、この海洋投棄について、私はロシア側にこれを停止することを確認したいという一つの願いを持ってまいりました。先刻御報告を申し上げましたように、九六年中にロンドン議定書の改正についての受諾の意思を明らかにすると同時に、この間、海中・海洋投棄は行わないという大統領の明言を得ましたことは先ほど報告したとおりであります。  なお、日本は現在、放射性廃棄物海洋投棄を行わないでも済むような施設の整備協力をいたしておるわけでございます。少なくともこれで太平洋側に対する海洋投棄はもう行われないと私は確信をいたしております。  また、その他の問題としてございますのは、核兵器の解体に伴う核物質の処理についてでありますが、これは私が先ほど申し上げましたように、核兵器を製造し有している国が一義的に処理すべきこと、非核兵器国としての日本、唯一の参加者の立場でありましたが、この点は——唯一ではありません。イタリアもありました。失礼をいたしました一の立場で私の方からこれを主張し、これに異論はございませんでした。  そして、今後、我々は原子力発電所の事故に対し、ともに対応していかなければならないわけでありますが、現在、チェルノブイリ原発の事故以来十周年の今日、石棺の老朽化に問題が生じ、現在これに対するEUのフィージビリティースタディーが行われております。今回の会議の席上、クチマ・ウクライナ大統領もおられる席上でこの中間の状況報告をされ、年内にはフィージビリティースタディーが終了するであろうというEUの発表を受け、その結論が出た後に今後の対応をしていくことが決定をいたしました。  そうしたことを踏まえながら、各国の首脳は原子力の利用に当たり安全が最優先されるべきであることを決意して、確認をしてきたわけであります。  そして、具体的には、G7及びロシアは、原子力の安全に関する条約の年内発効のために各国に対し同条約の締結を呼びかけることになりました。また、チェルノブイリ原子力発電所の二〇〇〇年までの閉鎖のためにG7諸国が協力していくことも確認されました。そして、核兵器の解体から生じる核物質の処理の選択肢を検討するための国際的な専門家会合を本年中に開催することが決定されております。  次に、CTBT交渉の早期妥結に中国をいかに説得するのかという御質問がございました。  今回のモスクワ・サミットにおきまして、従来必ずしも途中の姿勢に明確さを欠いておりましたロシアを含め、参加しました首脳が全員一致でCTBTに関する声明を発表し、本年九月までの交渉妥結及び署名への強い決意を示しましたことは、独自の立場をとっておる中国にも強いメッセージを与えるものになると思います。  日本は、従来から中国に対して、平和的な核爆発をCTBTの禁止する核実験の範囲外とするといった独自の主張は考え直してもらいたい、我々は全面的な核実験の禁止を求めるということを繰り返し主張し、CTBT交渉の早期妥結に貢献するよう働きかけているわけであります。今回の原子力サミットの成果も踏まえ、あらゆる機会をとらえて働きかけ、説得の努力をしていきたいと考えております。  また、原子力安全に関する東京会議の開催につきまして、私は、本年中を目途に里足でアジア原子力安全会議を開催することを明らかにいたしました。  この会議は、原子力発電の導入の機運が非常に高まっておりますアジア地域において、原子力発電所の安全確保放射性廃棄物の管理などの地域協力について議論をすることを目的と考えております。こうした議論の場を提供することによりまして、アジア地域における原子力安全についての意識を高め、具体的な取り組みの強化を訴えていくことが重要であると考えております。  原子力安全条約につきましては、G7及びロシアは、この条約が本年末までに速やかに発効するよう各国に対し同条約の締結を呼びかけることになりました。我が国といたしましても、原子力安全の分野における初めての法的枠組みであるこの条約の早期発効が極めて重要であると考えております。  次に、日米関係の良好な協力協調関係を維持し発展させていくことは、冷戦終結後におきましても、アジア太平洋のみならず、世界全体の平和と繁栄のために不可欠のことだと思っております。殊にその基盤をなす日米安保体制は、国際社会が依然として不安定な要因を内包している中で、我が国の安全及び世界の自由、繁栄、平和にとって共通の利益だと考えております。  こうした日米関係の重要性につきましては、十七日の日米首脳会談及びその際に合意、発表されました二つの共同文書におきましてクリントン大統領との間で再確認をしたところでありまして、今後とも今回の大統領訪日の成果基礎として幅広い分野における日米協力関係を一層進展させてまいりたいと思います。  次に、日米安保共同宣言についてでありますが、日米関係の中核をなす日米安全保障体制につき、これまでの安全保障分野における日米間の緊密な対話という成果を踏まえ、この重要な役割を改めて確認いたしますとともに、二十一世紀に向けた日米同盟関係のあり方について内外に明らかにしていくという意味で、私は極めて重要な意義を有するものであると考えております。  具体的には、日本がアジア太平洋地域においてより安定した安全保障環境の構築のために協力していくこと、日米安保体制を基盤とした日米間の各般の協力を進めていくことを含めて、二十一世紀を見据えた日米安保体制のあり方を幅広い観点から明らかにするものであり、今後その内容を具体的に一つ一つ実施に移しながら、日米安保体制の一層円滑かつ効果的な運用に努めていく所存であります。  また、アジア太平洋地域の範囲について御議論がありましたが、地理的概念としてのアジア太平洋については必ずしも確定したものがあるわけではありません。例えばAPECでアジア太平洋地域と申しました場合には、中南米の一部まで含んでおります。  したがって、明確にどの国がアジア太平洋地域の範囲に含まれるのか、あるいは含まれないのかということを一般的に申し上げることは困難であり、また、日米安保条約が安定要因として作用している対象は一定の地理的範囲に限定される性格のものではありませんので、今回の日米安保共同宣言に言うアジア太平洋地域の範囲を厳密に定義することは、私は余り意味がないように思います。しかし、強いて申し上げるなら、これは基本的に東アジア及び大洋州の両地域を念頭に置いたものとお考えいただいてよいのではないかと思います。  次に、日米防衛協力のための指針についてでありますが、十七日、クリントン大統領との間で署名いたしました日米安保共同宣言におきましては、日米安保体制我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と繁栄のために引き続き果たしていく重要な役割にかんがみ、日米間の安全保障面での協力促進していくという観点から、日米防衛協力のための指針の見直しを開始するとしたものであります。  こうした見直しの具体的な内容につきましては、まさに今後の検討を待つ必要があるわけでありますが、既に現行の指針のもとで、日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合の日米間の協力について研究が行われており、また、新防衛大綱におきましても、我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合に、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を図ることなどにより適切に対応することといたしておりますことからも、このような場合の日米間の協力のあり方も指針の見直しの際に重要な要素となることは当然であると存じます。  また、有事法制につきましては、自衛隊の行動にかかわる有事法制の研究につきましては、自衛隊法第七十六条の規定により防衛出動を命ぜられるという事態において、自衛隊がその任務を有効かつ円滑に遂行する上での法制上の問題につき、政府部内で昭和五十二年から検討をいたしております。  これまでに防衛庁所管の法令及び他省庁所管の法令についての問題点を、昭和五十六年四月、昭和五十九年十月にそれぞれ取りまとめ公表してまいりました。また、所管省庁が明確でない事項に関する法令につきましては、現在、内閣安全保障室を中心とする政府部内で検討を加えております。  こうした問題につき、特に法制化の問題につきましては高度の政治判断に係るものであり、議員からも御指摘をいただきましたように、国会における審議あるいは国民世論の動向等を踏まえて対応すべきものである、それは御指摘のとおりに存じます。  また、米軍支援と集団的自衛権の行使についてであります。  政府としては、安全保障上のさまざまな事態に対し、米国との協力も含め、我が国がこれに対応していくための手段をきちんと整備する必要があると考えておりますが、いずれにせよ、我が国対応が憲法に従って行われることは当然であり、集団的自衛権の行使のように我が国憲法上許されない事項について、従来の政府の見解に変更はございません。  次に、沖縄の米軍基地の返還についてお尋ねがございました。  沖縄県には米軍の基地施設が集中しておりますことから、従来から大変な御苦労をかけてきております。その沖縄県の方々が担っておられる負担というものを日米安保条約の目的達成との調和を図りながらも少しでも軽減するために、普天間飛行場の全面返還を含めて、今回発表されました特別行動委員会の中間報告措置を確実に実現していくことが不可欠であります。  こうした認識に基づいて、法制面及び経費面を含めて総合的な観点から早急に検討を行って、十分にして適切な措置を講ずることが必要だと考えておりまして、士八日、政府はこれに挙げて取り組む決意を閣議決定としてお示しをいたしました。政府としては、所要の移設を含めました中間報告措置を実施する観点から、本土を含む地元関係者の御理解と御協力が得られるように配慮しながら、今後、最大限の努力を払ってまいります。  また、今回の中間報告の実現に要する具体的な所要経費、これは今後見積もりなどを行い算出するものでありまして、現時点で確たる数字を得ているものではございません。しかし、逆に、幾らお金がかかるといたしましても、沖縄の方々のためにこれは仕上げなければならないことであります。  また、さきのクリントン大統領との会談における保険、フィルム、半導体のやりとりについてもお尋ねがございました。  議員からは日限を切った話し合いが行われたような印象を持つ御発言がございましたが、これらの点につきまして日限を切った発言はクリントン大統領からはございません。むしろ、個別経済問題が日米関係全体に悪影響を及ぼさないように、そうした認識で一致をいたしてまいりました。そして、引き続き解決に努力をしていきたい旨を述べられたのに対し、私からは、これまでの実績を踏まえて必要な場合にはいつでも話し合っていくという立場を明らかにいたしました。  また、保険、フィルム、半導体という三点を大統領の方から提起をされましたのに応じて、私の方からは、民間航空、特に旅客における話し合いが大事だということも提起をいたしております。  今後とも、御指摘の三分野を含めまして個別の経済問題に関しては、問題の性格に応じて、これまでと同様国際ルールにのっとって、二国間でも多国間でも誠意を持って話し合いをしていきたいと存じます。  最後に、解散・総選挙につきまして御意見をいただきましたが、私どもは今、景気に切れ目のない経済運営に万全を期しますとともに、御指摘のありました沖縄における施設・区域の特別行動委員会での合意事項を的確に実行していくこと、リヨン・サミットなどさまざまな懸案を抱えております中で、到底考えるゆとりがございません。  残余の質問につきましては、関係大臣から補足をいたします。(拍手)    〔国務大臣池田行彦君登壇拍手
  20. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 寺沢議員から私への御質問は、極東地域、そしてアジア太平洋地域、それから我が国周辺地域、こういった表現をどういうふうに整理すればいいのか、こういう点でございました。  まず、安保条約上の極東地域でございますが、これは日米両国が平和・安全の維持に共通の関心を有している区域、このように考えておりまして、このような区域というのは大体においてフィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であるということは、安保国会当時の統一見解で示されているとおりでございます。  それから次に、今般の日米安保共同宣言におけるアジア太平洋地域、これはどういうことかという点でございます。  これにつきましては、共同宣言におきまして、「日米安保条約を基盤とする両国間の安全保障面の関係が、共通の安全保障上の目標を達成するとともに、二十一世紀に向けてアジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基盤であり続けることを再確認した」、こういうふうな文脈で触れられております。これは日米安保条約の目的達成のために米軍が我が国に駐留しているという事実、その事実がアジア太平洋地域諸国に安心感を与え、結果としてこの地域の安定要因として作用している、そういった認識を述べたものでございます。  明確にどういう範囲かという点につきましては、先ほど総理からも御答弁ございましたけれども、今のような趣旨でございますので、厳格にその範囲を定義するということには余り意味があるとは考えられませんし、強いて言えば、東アジア、大洋州両地域基本的に念頭に置いたものである、こういうことでございます。  それから第三に、共同宣言における日本周辺地域、こういう言葉はどういう意味かということでございますが、ここに言います日本周辺地域とは、基本的に昨年の十一月に策定されました新防衛大綱において使用されております「我が国周辺地域」と同じ概念でございます。  ちなみに、新大綱における「我が国周辺地域」というのは、我が国の防衛努力と日米安保体制の存在が相まって国際社会の安定に効果を及ぼしている地理的な範囲、そういうふうに観念されておるものでございまして、このような範囲というのは時々の国際環境によりまして変動し得るものでございますので、明確にその境界を画せる性格のものではない、こう考えております。(拍手)    〔国務大臣臼井日出男君登壇拍手
  21. 臼井日出男

    国務大臣(臼井日出男君) 寺沢議員お答えを申し上げます。  御質問は、ガイドラインの見直しに対する御質問でございます。  ガイドライン、すなわち日米防衛協力のための指針については、さきの日米安保共同宣言において日米間で見直しを開始する旨合意をされたところでございます。  この指針につきましては、前防衛大綱の考え方を踏まえて策定されたものであることは御承知のとおりでございまして、新防衛大綱が決定されました現在、現行の指針は新防衛大綱の内容に合わせて見直しを行うことが必要であると考えております。  その具体的な内容につきましてはいまだ申し上げられる段階にございませんが、防衛庁といたしましては、今後、日米安保共同宣言を踏まえまして、関係省庁や米側とも協議をしつつ、真剣に検討を行ってまいる所存でございます。  次に、沖縄米軍基地の整理・統合・縮小についてのお尋ねでございますが、政府といたしましては、所要の移設を含む中間報告措置を実施するとの観点から、本土を含む地元の関係の皆さんの御協力、御理解を得られるよう配慮しつつ、最大限の努力をいたしてまいる覚悟でございます。  また、特別行動委員会の中間報告に取りまとめられております措置を確実に実行するために、十六日の閣議決定の趣旨を踏まえまして、法制面及び経費面を含め総合的な観点から早急に検討を行い、十分かつ適切な措置を講ずることが必要であると考えております。(拍手
  22. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 答弁の補足があります。橋本内閣総理大臣。    〔国務大臣橋本龍太郎登壇拍手
  23. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 大変失礼をいたしました。  御質問のありました資金援助という問題につきましては、今回の会議で全く議論に出ておりません。(拍手)     —————————————
  24. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 伊藤基隆君。    〔伊藤基隆君登壇拍手
  25. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 私は、社会民主党・護憲連合を代表しまして、ただいま行われました橋本総理日米首脳会談、日ロ首脳会談並びに原子力安全サミットに関する報告につきまして、総理並びに関係閣僚に質問いたします。  まず第一に、日米首脳会談について御質問申し上げます。  橋本総理は、昨週、歴史的な日米首脳会談を終えた後、直ちにモスクワに向かわれ、エリツィン大統領との会談をこなされ、その後原子力サミットに出席されるなど、短期間に重要な外交課題に果敢に取り組まれ、大きな成果を上げられました。質問をさせていただくに当たり、まず総理のこの間の御努力に心より敬意を表するものであります。  とりわけ、さきにクリントン米国大統領を迎えて行われた日米首脳会談は、日米両国民へのメッセージや日米安全保障共同宣言をまとめるなど、この間の日米首脳会談の中でも歴史的な意味を持  両国首脳は、この二つの文書において、共通の価値を有する両国がパートナーシップを強化するとともに、アジア太平洋の平和と安定のために日米防衛協力を進め、あわせてこの地域における多角的安全保障対話と協力を表明したものであります。我が党は、これらの文書を二十一世紀に向けた日米関係の基本方向を示したものとして、全体として評価するものであります。  今回の日米安保共同宣言の発表に当たって、日米防衛協力指針、いわゆるガイドラインの見直しが合意されましたが、大きな関心を呼んでいることは御承知のとおりであります。  この問題に関連して、今後、我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態への対応に関する課題の整理を、与党としてもまた政府としても行うことになろうと思いますが、私は、こうした作業を政府が始めるに当たって、あらかじめ次の三点を確認しておく必要があると考えるものであります。  第一は、昨年十一月、村山内閣のもとでまとめられた新しい防衛計画大綱に規定されたように、我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態への対応については憲法及び関係法令に従うことを再確認することであります。  第二に、防衛計画大綱を策定した際に、当時の野坂官房長官が、「集団的自衛権の行使のように我が国の憲法上許されないとされている事項について、従来の政府見解に何ら変更がないことは当然であります」との談話を発表されたわけでありますが、この見解を今次の連立政権においては引き続き堅持することが必要であります。  第三は、日米共同文書が発表された際、与党三党でまとめた談話においても確認したように、ガイドラインの見直しにかかわる作業を行うに当たって近隣諸国との関係に十分に配慮することであります。この点については、既に一部の近隣諸国から懸念が表明されていることもあり、関係国との緊密な対話を進めるとともに、アジア太平洋地域における多角的な安保対話・協力を並行して進めることが重要であると認識するものであります。  橋本総理、今、私が申し述べた点は、我が国の安全保障政策基本にかかわる重要な課題であり、今後、政府としても、我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態への対応を検討していく上においても、あらかじめ確認を要するものであると考えるものでありますが、総理の御見解を伺います。  また、特に近隣諸国との関係に十分に配慮するとの観点から、我が国周辺地域、とりわけ北東アジアにおいて多角的な安全保障の枠組みづくりに努力をしていくべきであると考えるものでありますが、この点についても総理のお考えをお聞かせください。  次に、沖縄米軍基地問題についてお伺いいたします。  私は、今回の日米首脳会談に向けて、両国の政府関係者が沖縄に関する特別行動委員会SACOを中心にして精力的に作業を進めた結果、普天間飛行場の全面返還を含め、沖縄米軍基地の約二〇%が縮小されることが合意され、また、日米地位協定の運用について若干の改善が図られたことを歓迎するとともに、橋本総理を初め関係大臣の多大な御努力に心から敬意を表するものであります。  しかしながら、これは出発点にすぎません。今後、合意された案件の実現を図っていくためには、関係施設や訓練の移設先となった自治体との協議を円滑に進め、また、移設に伴い必要とされる膨大な費用の捻出に努めなければなりません。これら二点について、関係大臣たる防衛庁長官に見解をお伺いいたします。  また、SACOの作業は今回の日米首脳会談で終了したわけではありません。発表された日米安保共同宣言にも明らかにされているように、両国首脳は本年十一月に向けてSACOの作業を成功裏に結実させるとの確固たるコミットメントを表明したのであります。沖縄県民は、これを第一歩としてさらに米軍基地の整理・統合・縮小を求めています。これからの半年の間にどのようにして沖縄県民の強い要望にこたえていくのか、総理の御決意をお伺いするとともに、関係大臣たる外務大臣に今後の方針についてお伺いいたします。  次に、先日行われた日ロ首脳会談についてお尋ねいたします。  日ロ首脳会談は、九三年十月のエリツィン大統領の訪日以来二年半ぶりということにもかかわらず密度の濃い会談が行われるなど、大きな意味を持つものになったと高く評価するものであります。特に、両国間に横たわる北方領土問題について、ロシア大統領選挙後に平和条約作業部会を再開することで合意できたことは大きな成果であったと考えております。  ことしは、日本とロシア、当時のソ連が一九五六年に国交を回復して四十周年を迎える記念すべき年であります。このような節目の年に当たり、日ロ両国が領土問題の進展を図り、懸案となっている平和条約の締結に大きく前進できるように最大限の努力を図るべきであると考えるものでありますが、総理の御決意をお聞きいたします。  また、聞くところによれば、韓米両国による四カ国会合提案に関連して、ロシア政府はこうした朝鮮半島における多国間対話への関与を希望しているということでありますが、我が国としてもこの点に関しては、将来的には関係六カ国会議など積極的な関与が求められると考えるものですが、外務大臣のお考えお尋ねいたします。  最後に、モスクワで開かれた原子力安全サミットについて質問いたします。  原子力の利用には安全に絶対的な優先順位を与える決意などを表明した原子力安全サミット宣言は、民生用原子炉の国際的に高い水準の安全性の確保、放射性の廃棄物の管理、海洋投棄の禁止、核物質の管理など、主要先進国が国際協力を確認した点で評価できます。  しかし、原子力の安全確保は、チェルノブイリ原発事故の経験からその事故被害の重大性を認識していても、安全性に問題ありとされる多くの原発が旧ソ連、東欧を中心に運転を続けているなど、その具体化には多くの困難があります。国際的にも国内的にも原子力の利用には賛成反対の多くの議論があり、国によっては原子力発電新規計画を停止している先進国もあります。  橋本首相はサミットの席上で、アジア諸国の原子力安全に関する東京会議を今年中に開催することを提唱されましたが、今後、原発建設計画が集中すると言われる中国や東南アジア諸国にどのような提案をされようとしているのかをお伺いいたしまして、私の質問といたします。(拍手)    〔国務大臣橋本龍太郎登壇拍手
  26. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 伊藤議員お答えを申し上げます。  まず、我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合への対応について、十七日に私とクリントン大統領が署名いたしました共同宣言におきまして、そのような場合における日米協力のあり方についての研究を行うことに言及をいたしました。その研究の具体的内容につきましては、まさに今後の検討を待つ必要がございますが、いずれにいたしましても、集団的自衛権の行使のように我が国が憲法上許されていないとされている事項についての従来の政府の見解を変更はいたしておりません。  政府としては、さまざまな事態に対し、我が国が米国と協力しながらこれに対応していくための手段をきちんと整備しておく必要があるとは考えております。そして、そのような対応の法的側面にかかわる問題というのは真剣に検討しておかなければならないと考えておりますけれども、いずれにいたしましても、我が国対応が憲法に従って行われるというのは当然のことであります。  また、このような研究を行う一方で、近隣諸国との関係に配慮するという観点から、常日ごろから近隣諸国との意思疎通を図りますとともに、そもそも議員が御指摘になりましたような事態が生じないように、ASEAN地域フォーラムなどの地域的な安全保障の対話及び協力の枠組みの発展を初め、各種の外交努力を積極的に行っていきたいと思います。  また、北東アジアにおける多角的な安全保障の枠組みづくりにつき御指摘がありました。  北東アジアの平和と安定は、まさに我が国の安全保障にとって極めて重要であります。こうした観点から、私どもは、日米安保体制を堅持しながら、各国間の相互の安心感を高めるために、ASEAN地域フォーラムに積極的に取り組むと同時に、北東アジアにおいても政治・安全保障対話の実現に努めてまいりました。  議員が御指摘になりました多角的安全保障の枠組みが具体的に何を指しておられるのか必ずしも明らかではありませんけれども、北東アジアにおきましては、各国の間に脅威の認識あるいは経済発展の段階、さらに経済社会制度などが異なっておりまして、また、一部の国との間には正常な国家関係が存在していないこと等にかんがみ、地域的な安全保障の機構をつくるための環境はいまだ整っておらないように思います。  現在、まず民間レベルの対話といたしまして北東アジア協力対話の推進に努めておりまして、ここにおきましては、日、米、ロ、中国、韓国の官民の関係者が個人の資格で出席し、地域の安全保障について議論をいたしております。北朝鮮には今までも要請をいたしましたが、残念ながら参加をしていただけていないというのが現実であります。  次に、沖縄県における米軍の施設・区域の整理・統合・縮小についてでありますが、沖縄県には施設・区域が集中しておりますために、県民の方々の生活にさまざまな影響が出ておりますことは御指摘のとおりであります。  このように沖縄県の方々が我が国全体の安全のために担っていただいている負担を少しでも減らすために、今回発表いたしました特別行動委員会の中間報告に盛り込まれております措置を確実に実現していくと同時に、日米安保共同宣言にも述べておりますように、十一月までに特別行動委員会における最終的な結論を取りまとめるよう全力を挙げて努力していかなければなりません。  この中間報告措置を実現いたしますためには、十六日の閣議決定でも申しましたように、法制面及び経費面を含めて総合的な観点から早急な検討を必要とし、十分かつ適切な措置を講ずることが不可欠であります。今後、お地元の協力も得ながら、政府は一丸となってこれに取り組んでいく決意であります。  次に、日ロ首脳会談におきまして、私は、ロシアの改革路線、二国間関係、国際問題について幅広い忌憚のない意見交換を行うことができました。この会談を通じて、日ロ関係全体をバランスよく前進させていくための政治的な弾みをつけることができたと思います。  領土問題につきましては、東京宣言を基礎として両国関係をさらに発展させていくことが合意をされ、外務大臣レベルの平和条約交渉を再活性化することが重要だという認識も一致をいたしました。そして、それを受けて、大統領選挙の後に次官級の平和条約作業部会を再開することも合意されました。  私は、これは大統領選挙後、両国の関係者が努力をし領土問題に取り組んでいく上での大きな政治的意義を持つものと考えております。特に本年は日ソ国交正常化以来四十周年という年を迎えるわけでありまして、この会談を踏まえて、領土問題解決のために前進させ、平和条約を締結させるために一層努力をしていきたいと考えております。  また、原子力安全に関する東京会議を提唱いたしましたのは、原子力安全というものの性格上、国際協力の一環として地域協力が非常に重要なこと、そしてアジアの各国が二十一世紀に入りますと一斉に原子力エネルギーに依存する度合いの高まっていくことを頭の中に置きながら、特に地域協力重要性を強調し、アジアの国としての立場から本年中を目途に東京でアジア原子力安全会議を開催することを明らかにいたしました。  この会議で目的といたしますのは、原子力発電所の導入の機運が高まっておりますアジア地域において、原子力発電所の安全確保放射性廃棄物の管理などのための地域協力について議論することを目的と考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)    〔国務大臣臼井日出男君登壇拍手
  27. 臼井日出男

    国務大臣(臼井日出男君) 伊藤議員お答えを申し上げます。  沖縄米軍基地の整理・統合・縮小に関する御質問でございますが、政府といたしましては、所要の移設を含めた中間報告措置を実施する観点から、本土を含む地元関係者の御理解と御協力を得られるよう配意しつつ、最大限の努力をいたしてまいりたいと考えております。  また、特別行動委員会の中間報告に取りまとめられております措置を確実に実現するため、十六日の閣議決定の趣旨を踏まえ、法制面及び経費面を含めた総合的な観点から早急に検討を行い、十分かつ適切な措置を講ずることが必要であると考えております。(拍手)    〔国務大臣池田行彦君登壇拍手
  28. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 伊藤議員から御指摘ございましたとおり、特別行動委員会の作業は終わったわけではなくて、十一月の最終結論に向かって全力を尽くしていかなくてはならない、そのように考えております。総理からも御答弁ございましたけれども、私の立場からも沖縄の県民の方々の御要望に少しでもよりよくお答えできるよう全力投球してまいりたい、こう考えております。  それから、米韓両国の大統領が発表されました四者会合の問題でございますが、これにつきましては、朝鮮半島の平和と安定に資するという大きな意義を持っている、こう考えまして、我が国としてこれを支持する声明を直ちに出したところでございます。  この四者会合そのものにつきましては、その性格上、我が国が直接参画していくということは考えられません。しかし、将来の問題として、朝鮮半島の安定を図る上で我が国に期待される役割、こういうものが出てくることは当然考えられるわけでございまして、そのようなときには我が国としてもその役割を十分果たしてまいりたい、こう考えております。  現に、そのような観点から、いわゆるKEDOにつきまして、米国並びに韓国と連携をとりながら役割を果たしていることは御承知のとおりでございます。(拍手)     —————————————
  29. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 立木洋君。    〔立木洋君登壇拍手
  30. 立木洋

    ○立木洋君 私は、日本共産党を代表し、日米首脳会談に関し、橋本首相に質問をいたします。  今回の日米首脳会談及び日米安保共同宣言は、日米安保条約の重大な改悪であります。日米首脳会談で署名した日米安保共同宣言が「二十一世紀に向けての同盟」との副題を持っております。過去五十年間にわたって日本国民国土を縛りつけてきた日米安保体制をクリントン米大統領は去る十八日の国会演説で、次の五十年の日米パートナーシップを展望したいと言い、何と百年も続く軍事同盟という一方的な意思表示まで行ったのであります。それは日本におけるほぼ現在の水準、つまり四万七千人の水準を含め、この地域において約十万の前方展開要員から成る現在の兵力構成を維持することを再確認しているように、現体制の固定化、強化にほかなりません。  ソ連の崩壊によって安保条約の理由づけが完全に根拠を失い、とりわけ沖縄の米兵暴行事件を契機に基地の撤去と地位協定の見直しの声が新たに高まっているにもかかわらず、二十一世紀に向けて今後五十年も安保と基地体制の固定化と強化の道を合意したことは断じて容認できません。  去る三月九日、十日の日本世論調査会による全国世論調査によると、在日米駐留軍兵力について規模の縮小と撤退を求めたのはあわせて八四・四%を占め、それに比較して現状維持が適切というのはわずか一〇・八%であります。また、現状の安保条約について、存続すべきが三七・七%に対し、段階的解消すべきが五一・四%と上回っています。  このように国民の過半数が異論を唱えている国の進路にかかわる大問題を、なぜ憲法第七十三条に従って国権の最高機関である国会の承認案件としなかったのでしょうか。橋本内閣の国民主権に反する違憲行為ではありませんか。はっきりとお答えいただきたい。  この共同宣言の第一の問題は、在日米軍が日本の基地を利用するその適用範囲についてであります。  安保条約の六条では極東に限定され、その範囲はフィリピン以北、日本及びその周辺の韓国、台湾を含むとされていました。ところが共同宣言では、「極東」との表現が全くなく、日米安保条約が二十一世紀に向けてアジア太平洋地域の安定的で繁栄した情勢を維持することを再確認しと位置づけて、「アジア太平洋地域」との呼称が十一回も明記されているのであります。極東とアジア太平洋地域は明らかに異なる範囲を示すものであり、安保条約の六条の適用範囲をアジア太平洋地域拡大したのではありませんか。この点でも、共同声明で言うアジア太平洋地域とはどの地域を示すのかは極めて重要な問題であります。明確な回答を求めます。  第二に問題なのは、日本から出撃する米軍への軍事協力のための周辺地域での日米共同行動についてであります。  ナイ国防次官補の米議会証言では、新防衛計画の大綱が国防総省の東アジア防衛戦略報告書と明確に重なり合うことが成功をはかる尺度だと述べていましたが、それを受けて、日本の新防衛計画大綱では、我が国周辺地域において日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を図ると明記されました。これは日米間の共同行動を発動することです。  安保条約の第五条では、日本への武力攻撃があるもとでのみ日米共同行動が発動し得るとされているにもかかわらず、日本への武力攻撃でないのに自衛隊が米軍との共同行動ができるというのでしょうか。はっきりしていただきたい。  このことと関連した具体的措置として合意した現行ガイドラインの見直しは、アジア太平洋地域などでの米軍の戦争や武力紛争に自衛隊などが米軍への作戦協力、後方支援などを行うとして、飛行場、港湾の施設、燃料、水、食糧の提供、修理、医療、輸送などの支援、情報の提供など多くの方策の研究と政策調整を行うことを確認しています。これは現行のガイドラインとは全く異なって、周辺地域の紛争に当たって米軍に対する日本との共同行動を具体的に定めるものではありませんか。  さらに、見直しては、ガイドラインが作戦研究から作戦計画に格上げされ、日本政府はその実施が義務づけられるのかどうか、また、周辺地域有事での立法体制の具体的整備を行うのか否か、明らかにしていただきたい。周辺地域における米軍の行動への協力は、米軍の武力の威嚇または武力の行使と一体化する道を開くものとして、自民党歴代政権さえも憲法で禁じているとした集団的自衛権の行使となるではありませんか。  また、周辺地域有事において民間空港の閉鎖や米軍使用が検討される施設・区域の提供や有事立法化は、我が国の憲法で保障されている基本的人権や言論の自由、財産権などを制限することとなり、憲法の侵害に当たるのではありませんか、明らかにされたい。  さらに、後方支援・物品役務相互提供協定に関連して、武器部品などの提供について武器輸出禁止の原則の適用外にするなどと述べていますが、そもそも武器輸出禁止の根拠法は、政策判断で禁止しているのではなく、我が国の憲法上禁止されていることは、政府の国会答弁によっても明白であります。これらの措置をなし崩し的に適用外とするようなことは絶対に許されません。  これらの諸点について、あわせて具体的な見解を求めるものであります。  首相は、二〇一五年までの計画的、全面的な基地撤去という沖縄県民の強い要求を知りながら、米側に対して現在の水準を維持することを認め、沖縄県民の要求に背を向け、日本国民の願いに真っ向から反する態度をとっています。  普天間基地の五年−七年後の返還でも、嘉手納弾薬庫地区への新しい滑走路つきのヘリポートの建設や岩国への移転など、逆に嘉手納基地、岩国基地の強化となるもので、地元自治体や住民の強い反対が起こっているではありませんか。しかも、一兆円とも言われている移転費用の支出は、国債残高が二百四十兆円にもなり、住専への税金投下が大問題になっているとき、この財源は国民に新たな犠牲を強いるものではありませんか。他の施設・区域の返還もそのほとんどが基地の機能維持を口実に移転を求めるものであって、基地の返還を願う沖縄県民、日本国民にとっては、まさしく基地のたらい回し以外の何物でもないというのが実感であります。  宣言では、核兵器を含む大量破壊兵器の拡散に懸念を表明し、クリントン米大統領も共同記者会見で、ならず者の国によって再び不安定化するなどと述べています。  しかも、クリントン政権は、核開発・保有の疑惑でさえも、核兵器の使用を含む軍事的措置で抑え込むとの核拡散対抗構想を依然として堅持しています。沖縄でも、嘉手納弾薬庫地区に核兵器の組み立てや整備の施設を保持し、第四〇〇弾薬整備中隊の機能が今も継続されているのはなぜでしょうか。このためではありませんか。佐藤・ニクソン会談での核兵器の再持ち込みの密約はないというさきの本会議での首相の答弁は、事実を隠ぺいし、国民を欺くものではありませんか、お答えいただきたい。  最後に、日米共同宣言は、かつてアジア全域を侵略した日本が、過去の侵略戦争を反省せず、この地域に対して再び軍事的関与をする道を開き、インド洋を含むASEAN、大洋州の地域に対して武力によるプレゼンスの道への第一歩を大きく踏み出そうとするものであります。こうした道は、我が国憲法の恒久平和の理念とも相いれないものであり、アジア諸国民の反発と地域の緊張を一層強めることにしかなりません。憲法の平和原則の大道に立ち戻ることこそ、アジア諸国民世界各国との友好、協力の道へ進むものとなることを改めて強調し、質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣橋本龍太郎登壇拍手
  31. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 立木議員お答えを申し上げます。  なぜ日米安保共同宣言を国会の批准承認案件としなかったのかというお尋ねでありますが、この共同宣言は日米両政府首脳の政治的意思を確認し合うものでありまして、憲法七十三条による国会による承認を必要とするものではございません。また、条約ではない本件共同宣言が日米安保条約を改正するものであり得ないことは言うまでもありません。  次に、「アジア太平洋地域」との表現についての御指摘でありますが、これは日米安保条約の目的達成のたの米軍が我が国に駐留しているということがアジア太平洋地域における米軍の存在を支える重要な柱の一つとなっており、米国のこの地域におけるコミットメントを明確にするものとして、アジア太平洋地域諸国に安心感を与え、結果としてこの地域の安定要因として作用しているとの認識を述べたものであり、政府はこうした認識を累次の機会に今までも示してまいりました。  したがって、今回の日米安保共同宣言におけるアジア太平洋地域についての言及は、日米安全保障条約上の「極東」の範囲について述べたものではなく、安保条約の対象地域拡大するといった御指摘は当たりませんし、また、政府としては、安保条約における「極東」の解釈を変更する考えはございません。  明確にどこの国がアジア太平洋地域の範囲に含まれるのか、あるいは含まれないのかといった、一般的にこれを申し上げることは困難であり、また、日米安保条約が安定要因として作用している対象は一定の地理的範囲に限定される性質のものではありませんので、今回の日米安保共同宣言に言う「アジア太平洋地域」の範囲を厳密に定義することには私はほとんど意味がないと考えておりますが、強いて申し上げるなら、これは基本的に東アジア及び大洋州の両地域を念頭に置いたものと考えていただいてよいのかと思います。  次に、日本への武力攻撃がないのに共同行動ができるかとお尋ねがありました。  安保条約第五条が、我が国の施政のもとにおける領域において日米いずれか一方に対する武力攻撃が行われた場合における米国と我が国の共同対処について定めたものであることは御指摘のとおりです。  他方、我が国に対する武力攻撃が発生していない場合におきましても日米間でさまざまな形態の防衛がなし得ることは当然でありますし、現行の日米防衛協力の指針におきましても、「侵略を未然に防衛するための態勢」及び「日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合の日米間の協力」についても規定をされているところであります。  次に、その防衛協力のための指針でありますが、十七日、クリントン大統領との間に署名いたしました日米安保共同宣言におきましては、日米安保体制我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と繁栄のために引き続き果たしていく重要な役割にかんがみ、日米間の安全保障面での協力促進していくとの観点から、日米防衛協力のための指針の見直しを開始すると表明しております。こうした見直しの具体的な内容につきましては、まさに今後の検討を待つ必要があり、現時点で具体的なことを申し上げる段階にはございません。  なお、集団的自衛権の行使のように我が国憲法上許されないとされている事項について、政府の見解を変更はいたしておりません。  周辺地域における有事における我が国対応についてのお尋ねがありました。  我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が生じた場合に、我が国としていかに対応すべきかということは、政府として真剣に研究、検討しておくべき重要課題であると考えております。さきの日米安保共同宣言におきましても、こうした事態における日米間の協力のあり方についての研究の必要性を確認しておりますが、その具体的な内容につきましてはまさに今後の検討を待つ必要があります。  いずれにいたしましても、このような場合における我が国対応が憲法に従って行われることは、新防衛大綱でも明らかにされているとおりであります。  また、日米物品役務相互提供協定と武器輸出三原則との関係につきましては、政府としては、日米安全保障条約の円滑かつ効果的な運用及び国際連合を中心とする国際平和のための努力に積極的に寄与するという本協定の意義等にかんがみ、この協定のもとで行われる武器等の提供は武器輸出三原則等によらないといたしましたが、この場合におきましても、協定上、提供された物品等の使用は国際連合憲章と両立するものでなくてはならないこと等が規定されておりますから、国際紛争などを助長することを回避するというその基本的な理念は確保されていると思います。  また、普天間飛行場の返還に当たりましては、同飛行場が現に果たしている極めて重要な機能と能力は維持されなければならないこと、このため沖縄に既に存在する米軍施設・区域の中に新たにヘリポートを建設するとともに、嘉手納飛行場に追加的施設を整備し、現在の普天間飛行場の一部機能を統合すること、また、普天間飛行場に配備されております空中給油機十数機を岩国飛行場に移駐し、岩国飛行場からほぼ同数のハリアー戦闘機を米本国に移駐させること、さらに危機に際しての米軍による施設の緊急使用について日米両国が共同で研究を行うといった措置をとることが必要になります。  他方、嘉手納飛行場への追加的施設の整備に関しましては、現段階で具体的な内容は定まっておりませんが、同飛行場の航空機騒音の低減につきましては、県及び嘉手納町から強い御要望のございました海軍駐機場の移設及び遮音壁の設置について、今回の特別行動委員会の中間報告において合意をいたしております。  また、岩国飛行場への空中給油機の移駐に関しましても、既に申し上げましたように、同飛行場からほぼ同数のハリアー戦闘機を米国本土に移駐することといたしておりまして、岩国飛行場におきまして航空機騒音が増大しないよう配慮をいたしております。  しかし、いずれにいたしましても、普天間飛行場の返還についての決断は、沖縄県及び沖縄の方々の強い御要望を背景として行ったものでありまして、その具体化には、今後、沖縄県当局と協力をしながら最大限努力を傾注してまいるつもりでありますし、また、所要の移設先の関係者の御理解、御協力が得られるよう誠心誠意努力をしてまいります。  米軍基地の移転費用につきましては、特別行動委員会の中間報告に取りまとめてあります措置を確実に実現するために、十六日の閣議決定の趣旨を踏まえて、法制面及び経費面を含めて総合的な観点から早急に検討を行い、十分かつ適切な措置を講ずる必要がございます。  大量破壊兵器の拡散問題については、今回の日米安保共同宣言におきまして、アジア太平洋地域における不安定・不確実要因の一つとして大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散を挙げておりまして、また、これが日米両国の安全保障にとって重要な意味合いを有するものだと認識を述べております。  議員指摘のように、米国政府は、このような大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散に対応する手段の一つとして拡散対処イニシアチブを推進していると私は承知をいたしております。  他方、議員から御指摘がありました嘉手納弾薬庫地区における第四〇〇弾薬整備中隊、これは第一八航空団第一八兵たん群に所属する中隊であり、同弾薬庫地区において弾薬の整備などを行っていると承知をしておりますが、その詳細につきましては、米軍の運用に係ることもありまして、私は承知をいたしておりません。  いずれにいたしましても、政府としては、核持ち込みの事前協議が行われない以上、米国による核持ち込みがないことについては全く疑いを有していない、これまで申し上げてきたとおりであります。  そして、核兵器の持ち込みの密約に関して今回もお尋ねがございました。  政府が従来から申し上げておりますように、御指摘のような密約は存在をいたしません。沖縄の返還交渉に際しまして、核兵器に係る問題は日米間で極めて明確に確認されております。また、密約の当事者とされる佐藤総理御自身が当時から密約は存在しない旨を明確に述べておられるところであります。(拍手
  32. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時十六分散会