運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1996-06-17 第136回国会 参議院 法務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年六月十七日(月曜日)    午後一時六分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         及川 順郎君     理 事                 志村 哲良君                 野村 五男君                 平野 貞夫君                 橋本  敦君     委 員                 下稲葉耕吉君                 鈴木 省吾君                 中原  爽君                 林田悠紀夫君                 魚住裕一郎君                 大森 礼子君                 山崎 順子君                 千葉 景子君                 本岡 昭次君                 田  英夫君                 大野つや子君     政府委員         法務大臣官房審         議官      山崎  潮君     事務局側         常任委員会専門         員       吉岡 恒男君     参考人         駿河台大学法学         部教授         法制審議会民事         訴訟法部会委員 竹下 守夫君         日本弁護士連合         会副会長    中務嗣治郎君         読売新聞社編集         局解説部次長  鶴岡 憲一君         弁  護  士 坂本  修君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○民事訴訟法案内閣提出衆議院送付) ○民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関  する法律案内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 及川順郎

    委員長及川順郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  民事訴訟法案及び民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案を一括して議題といたします。  本日は、両案につきまして、お手元に配付の名簿のとおり、四名の参考人方々から御意見を拝聴いたします。  まず初めに、駿河台大学法学部教授法制審議会民事訴訟法部会委員竹下守夫君及び日本弁護士連合会会長中務嗣治郎君にお願いをいたしております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。皆様から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、今後の審査参考にさせていただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  なお、本日は本会議が入りまして若干時間をお待たせしましたことをこの際御了承をお願いしたいと存じます。  議事の進め方でございますが、竹下参考人中務参考人の順にお一人十分程度ずつ御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、念のために申し添えますが、御発言の際は、その都度委員長許可を得ることになっております。また、各委員質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。  それでは、まず竹下参考人にお願いいたします。竹下参考人
  3. 竹下守夫

    参考人竹下守夫君) 駿河台大学竹下でございます。  私は、長年、大学において民事訴訟法研究教育に携わり、また今回の民事訴訟法改正につきましては、法制審議会民事訴訟法部会委員として関与してまいりました。本日は、そのような立場から、ただいま当委員会において御審議中の民事訴訟法案につき意見を申し上げたいと思います。  まず、結論的に申しますと、私はこの民事訴訟法案を高く評価し、これが今国会において可決され、法律となるよう希望するものでございます。  今回の民事訴訟法改正は、民事訴訟国民に利用しやすくわかりやすいものとし、訴訟手続の規律を現在の社会要請にかなった適切なものにするとの見地から、しかも改革は迅速を要するとの認識のもとに行われたものでございます。  我が国民事訴訟は、現在さまざまの課題を抱えております。特に、訴訟に時間と費用がかかるところから国民訴訟離れ傾向が見られ、また一般市民の有する少額権利につき裁判上の救済が十分保障されていないというようなこととか、さらに最高裁判所がその本来の役割を十分に果たすことを阻害されている等の重大な問題が指摘されております。民事訴訟法案は、訴訟手続の可及的速やかな改正という枠内でこれらの課題に最大限こたえようとするものと言えると思います。  民事訴訟法案の主要な改正といたしまして、しばしば言われるところでございますが、次の四つの改正を挙げることができると思います。  まず第一は、訴訟審理方式改革でございます。争点証拠整理手続整備という表題で呼ばれておりますものでございますが、これは審理方式改革意味するものでございます。  我が国民事訴訟審理口頭弁論という公開法廷における対審審理を中核といたしますが、従来は、口頭弁論内部ではいわゆる弁論段階証拠調べ段階という区別を設けず、審理弁論証拠調べの間をいわば行きつ戻りつして行われてきたわけでございます。そのため、手続が遅延するのみならず、真実の発見が妨げられるという難点があると指摘されてまいりました。  そこで、法案では十数年来の実務努力の成果を取り入れ、審理の過程を観念的にでございますが弁論証拠調べとに段階的に区分して考え、まず弁論段階でできるだけ早期書証等と突き合わせながら、事件核心的争点を突き詰めて裁判所と両当事者との共通の認識として確定をする。その後、証拠調べ段階では証人尋問等を集中的に行い、迅速にかつ適正な裁判に導くという審理方式を目指しております。  これは、審理の充実と促進という調和することの難しい二つ要請を同時に満たそうとするものでございます。このような審理方式は、争点中心審理あるいは集中審理というふうに呼ぶことができるかと思います。この審理方式実現するために、民事訴訟法案では争点証拠整理手続を多様化し、整備しているわけでございます。  主要な改正の第二は、証拠収集手段拡充でございます。この改正二つ目的を持っていると申し上げることができると思います。第一が争点中心審理実現への寄与、いま一つ証拠構造的偏在と呼ばれる問題への対応でございます。  争点中心審理によりまして、訴訟の早い段階争点を確定し、証拠調べ対象、取り調べるべき証拠を絞っても、それによって裁判の適正さが損なわれないためには、両当事者相手方あるいは第三者の有する証拠を利用して十分に審理に臨む準備ができていなければなりません。証拠収集手段拡充はこのような準備を可能とするものであり、その意味争点中心審理実現に寄与するわけでございます。  他方現代社会におきましては、大企業や国、地方自治体の行う大規模な事業活動がそれとかかわりのない周辺地域住民一般消費者被害を及ぼすという事件がまれではございません。これらの事件では、被害者相手方の故意、過失や因果関係の存在について立証責任を負うと解されておりますが、それを証明するための証拠は多くの場合構造的に相手方の手に偏在しているわけでございます。これが証拠構造的偏在と言われる問題でございますが、証拠収集手段拡充がこの解決に資することは明らかでございます。  民事訴訟法案証拠収集手段拡充のために採用しております重要な方策は、文書提出命令制度拡充当事者照会制度新設であります。  主要な改正の第三は、少額訴訟手続新設であります。  現在の民事訴訟制度のもとでは、一般市民の有する少額権利に対する裁判上の救済が必ずしも十分に保障されているとは言えない状況にございます。久しい以前から、一般市民簡易に利用できる少額裁判所あるいは少額裁判手続を設置すべきであるという声が聞かれてまいりました。  法案は、訴訟目的の価額が三十万円以下の金銭請求事件につきまして簡易裁判所における特別手続として少額訴訟手続を設けることとしております。  少額訴訟手続では、特別の事情のない限り裁判所は一回の期日で審理を終了し、直ちに判決の言い渡しをすることになっております。そして、この判決に対しては同じ審級内、つまり第一審で異議申し立てをすることはできますが、上級審への不服申し立てばできないということにされております。  また、この手続では、当事者弁護士を依頼しなくても自分訴訟を行えるよう裁判所十分後見的役割を果たすことが期待されているわけでございます。もっとも、このような簡易な、しかも一審限りの手続でございますので、この手続は両方の当事者の意思に基づく選択によって利用できるということにされております。  いずれにいたしましても、少額訴訟手続新設によりまして、民事訴訟が真に一般国民のものとなる基盤がつくられることになるのではないかと思われます。  主要な改正の第四は、最高裁判所に対する上訴制度改正でございます。  この改正目的は、違憲審査法令解釈の統一、あるいは判例を通じての法形成など、最高裁判所が担う重大な役割をより一層充実して果たし得るように上訴制度を改めようとするものであります。  その具体的な方策といたしましては、一方で上告受理制度を採用いたしまして、最高裁判所に対する無益な上告の流入を制限するとともに、他方許可抗告制度を導入いたしまして、近年、国民権利に重大な影響を及ぼすものが増加してまいっております決定や命令という形式の裁判についても、最高裁判所に対する不服申し立ての道を開こうとするものでございます。  従来、最高裁判所負担軽減というキャッチフレーズで呼ばれていることが多かったのはこの問題でございますが、問題の本質は、最高裁判所裁判官仕事量を減らそうということではなくて、裁判官の貴重な時間と労力を、無意味事柄から国民全体にとってより重要な職務にシフトさせるというところにあるものと考えております。  以上述べました事柄以外にも民事訴訟法案には注目すべき改正が多々含まれてございます。  二、三例を挙げるといたしますと、例えば今後ますます重要性を増す特許権等知的財産権に関する訴訟の迅速適正を期するために、東京、大阪両地方裁判所にこれらの事件を集中化できるような管轄の定めをしているということ。それから、管轄の合意に対する経済的弱者、とりわけ消費者保護を図るべきであるということが前から言われており、外国でもそのような方策がとられておりますが、今回の民事訴訟法案ではそのような対策が講じられております。さらに、選定当事者制度改正いたしまして、多数被害者訴訟などに利用しやすくしたということも重要な改正一つとして挙げられると思います。  今回の改正は、今後日本社会が一層国際的に開かれたものとなり、民事訴訟役割が増大すると予測されるにもかかわらず、現在の訴訟制度が多くの課題に当面しているところから、その可及的速やかな改善を図ったものでございます。  今回の改正、特に争点中心審理が立法に関与した者の期待どおり実現されれば、民事訴訟は大幅に適正迅速化されるものと思われます。また、少額訴訟手続の導入によって、個人の少額権利に対しても実効的な裁判上の救済の道が保障されることになると思います。さらに、いわゆる現代語化によりまして、法典自体国民にわかりよく、身近なものとなることも看過できないと思います。  これらを総合いたしますと、冒頭で申し上げましたとおり、民事訴訟法案訴訟手続の迅速な改正という枠内で、我が国民事訴訟が直面している諸課題に最大限こたえようとするものということができ、今国会において可決され、法律として成立することを私といたしましては切に希望する次第でございます。  以上でございます。
  4. 及川順郎

    委員長及川順郎君) ありがとうございました。  続きまして、中務参考人にお願いいたします。中務参考人
  5. 中務嗣治郎

    参考人中務嗣治郎君) 日本弁護士連合会会長中務嗣治郎でございます。民事訴訟法改正問題を担当しております。このたびの民事訴訟法案について私の意見を申し述べます。  社会は今、成熟社会への転換、高齢化社会への移行、国際化への著しい進展、情報通信高度化など重層的に大きな変革を遂げつつあります。それに伴い、民事紛争も複雑かつ多様化しております。  このたびの民事訴訟法改正趣旨は、民事裁判を現在の状況に的確に対応できるものとし、国民に利用しやすくわかりやすいものにすること、そして、適正かつ迅速な裁判実現するため、民事訴訟手続改善を図ろうとするものであります。日弁連も、司法国民に身近でわかりやすく利用しやすいものにするため、司法改革運動に取り組んでいるところであり、この法律案趣旨に賛同しております。  本法案内容については、弁論準備手続非公開上告制限など国民裁判を受ける権利擁護の観点から問題点もありますが、特に文書提出命令手続における公務員職務上の秘密に関する文書取り扱いについては、証拠収集手続拡充という改正趣旨に反する重大な問題が含まれていたため、具体的な修正案を提示して強く修正を求めてきました。  衆議院におかれまして、政府原案文書提出義務対象となる二百二十条四号の文書から、当面、行政文書を除外し、行政文書対象とする文書提出命令制度については、法律公布後二年をめどとして必要な措置を講ずる旨の附則を設けることを内容とする修正案が可決され、法務委員会においてその検討枠組みについての附帯決議もなされました。  日弁連が提案してきました内容修正にまで至らなかったことは残念でありますが、公務秘密文書取り扱いについて、我々の提案に沿って原案修正の方向を打ち出されましたことに対し、深甚なる敬意を表するものであります。  しかしながら、この修正は極めて例外的な暫定措置であります。次に述べますような点を御留意いただき、本法案の重要な目的である証拠収集手続拡充早期実現されんことを強く求めたいと存じます。  第一は、法を適用して正当な権利実現を図るという民事裁判の本来の機能が十分発揮できるためには、その前提として、当事者の主張する事実について真偽が見きわめられ、具体的真実が発見されることが不可欠であります。誤った事実の認定の上に立つ法の適用ほど危険なものはありません。  ところが、現在の複雑多様化した社会では、行政市民生活企業活動に深いかかわりを持ち、そのため情報行政に集中し、情報証拠の遍在する構造になっております。その行政情報裁判に提出されないため、正当な権利保護被害救済に深刻な弊害が生じていることは、HIV薬害訴訟の例を挙げるまでもなく、枚挙にいとまがありません。  民事裁判国民に利用しやすいものにするためには、その法的紛争解決するのに必要性関連性のある証拠は、原則として法廷に提出されることが重要であります。行政文書についても文書提出義務一般義務化制度を確立すべきであります。  第二に、訴訟において文書提出義務があるかどうかの判断は、法律を適用する裁判所法律判断であり、司法の本質的な作用であります。これは民間文書であろうと行政文書であろうと変わりはありません。現行法下においても、判例職務上の秘密に該当するかどうか、文書提出義務があるかどうかは裁判所判断するとされています。公務秘密文書については、行政官庁がその提出義務の有無を判断するということは、すべて司法権最高裁判所及び法律の定めるところにより設置される下級裁判所に属し、行政機関は終審として裁判を行うことができないという我が国憲法下における三権分立の原則に反するものと考えます。  第三に、文書提出義務が免除される行政文書要件は、単に形式的に秘密扱いとしたものではなく、それが提出されることによって公共の重大な利益を害することになるものと限定し、厳格に定めるべきであります。現行法下においても、代表的な判例は、文書提出義務が免除される職務上の秘密とは「公表することによって国家利益又は公共の福祉に重大な損失、重大な不利益を及ぼすような秘密」をいうとされております。  第四に、裁判所がこの提出義務の存否を判断するに当たって、必要な場合には、民間文書と同様、非公開審査手続、いわゆるインカメラ手続行政文書にも認めるべきであります。法律判断が適正に行われるための制度的な保障が必要であるからであります。  第五に、証拠収集手続拡充は単に文書提出命令に限ったものではありません。公務員証言義務についても同様であります。本法案では、民間人守秘義務を負っている者の証言拒絶公務員証言拒絶との間に著しい官民格差があり、公務員証言についての監督官庁不承認要件が広範囲であり、かつ政府説明では不承認及び証言拒絶について裁判所審査が及ばないとされております。これは、明治憲法下の戦前の制度が本法案に援用されたものでありますが、新憲法では行政文書公務員の地位の性格が旧憲法のそれとは大きく変わっており、今回の見直しに当たっては、このことを十分に考慮して、公務秘密文書見直しと同時に、公務員証言拒絶に関する条項も見直すべきものと考えます。  第六に、情報公開法による行政情報公開裁判における行政文書提出命令とは、行政情報公開されるべきであるという理念は共通でありますが、その制度目的は異質のものであります。情報公開法による行政情報公開は、何人もいかなる目的の場合でも認められるものでありますが、民事裁判における文書提出命令は、訴えの利益のある法律紛争について、事実を認定する必要性関連性という厳格な枠組みの中で、裁判を受ける権利を実質的に保障させるため、司法権作用として認められるものであります。その意味で、附則による修正検討は、情報公開法の制定とは別個に行うべきものと考えます。  最後に、フランスの有名な思想家トクビルアメリカ民主主義について語った言葉を引用したいと思います。「アメリカでは、重要な社会問題の全てが裁判所法廷に持ち込まれ、そこで解決されている。」、これがアメリカ民主主義に関するトクビルの考察でありました。  時代は変わり、またそれぞれの国情の違いはありましょうが、法による正義と国民権利実現が最終的には司法によって保障されるべきだとの民主主義の本源は変わりございません。証拠、特に行政情報が広く裁判所法廷に提出される制度が確立し、実体的真実に基づいて立法府が制定した法律が適用され、国民の正当な権利が擁護されることが保障される社会こそ真の意味での民主主義社会であります。  国権の最高機関たる立法府の御良識により、本法案を成立させていただき、速やかに、国民の広い意見を踏まえて、行政文書対象とする文書提出命令手続を初め、欧米諸国にも誇り得る証拠収集手続を制定されんことを御期待申し上げます。  なお、本法案審議とは直接関係がありませんが、適正かつ迅速な裁判実現を図るためには、単に民事訴訟手続改善にとどまるだけではなく、裁判所の人的、物的設備拡充整備も不可欠であります。この点においても、政府最高裁判所は格段の御努力をいただきますよう、切に希望いたします。  御清聴ありがとうございました。
  6. 及川順郎

    委員長及川順郎君) ありがとうございました。  以上で両参考人の御意見の陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 志村哲良

    志村哲良君 まず、竹下参考人にお伺いをいたします。  竹下参考人民事訴訟法専門として御研究に携わられるとともに、法制審議会民事訴訟法部会委員として、今回の民事訴訟法改正審議にも参加されたと伺っております。  ところで、今回の改正は大正十五年の改正以来実に七十年ぶり全面的改正となるものであります。そこで、現時点でこのような改正をする必要性と、今回の改正意義がどのような点にあるかということ、先ほどの御高話の中に含まれておったかと思いますが、今の二点に集約してお聞かせいただきたいと考えております。  次に、中務参考人お尋ねいたします。  我が国では、民事裁判には時間がかかり過ぎるという問題点があるとの指摘国民各層からされているところであります。実は私、ついせんだってこの法務委員会におきまして、裁判に時間がかかり過ぎるという問題に関しまして法務当局にお伺いをしたところであります。中務参考人弁護士として日ごろから民事裁判実務関与をされておられると思いますので、実務家立場からこのような指摘についてどのようにお考えであるか、お聞かせいただきたいと考えております。  あわせて、中務参考人お尋ねをいたします。  中務参考人日本弁護士連合会の副会長であると伺っております。今回の民事訴訟法についての法制審議会における審議に対しまして、日本弁護士連合会としてはどのような形で関与をしてこられたのか、お聞かせをいただきたいと思います。  次に、竹下参考人にさらにお尋ねをいたします。  今回の改正は、民事裁判に時間と費用がかかり過ぎるなどの問題点改善のため、さまざまな点から改正を加えているものと伺っております。そこで、具体的にはどのような点が改善されるのでございましょうか。また、それらの改正実現した場合には民事裁判はどの程度迅速化されることになると予測されるのでありましょうか。御説明をお願いしたいと存じます。  続けて、竹下参考人お尋ねをいたします。  今回の改正におきまして、新しく少額訴訟手続が創設されましたが、その意義と評価について参考人のお考えをお聞かせいただきたいと思います。  最後に、中務参考人お尋ねをいたします。  今回の改正により、国民にとって民事裁判がより利用しやすいものになると思われますが、法律の規定が定められた場合には、それに合わせて実務の運用につきましてもさまざまな点で工夫を凝らす必要があるのではないかと思います。そこで、今回の改正実現した場合には、裁判実務の重要な担い手の一人である弁護士会としてどのような対応考えておられるか、お聞かせいただきたいと存じます。  以上であります。
  8. 竹下守夫

    参考人竹下守夫君) それでは私の方から、私あての御質問は三点あったと思いますが、それを順次まとめてお答えさせていただきます。  まず第一点は、今回の改正の必要と意義ということであったと思います。  今回の改正は、委員指摘のように七十年ぶり全面改正でございます。この七十年の間に、国民の意識の変化あるいは客観的な我が国経済社会情勢変化によりまして、民事訴訟に対する期待あるいは需要というものが大変高まっていると思います。  例えば権利を侵害された者は、訴訟外で非公的な形で処理をするのではなくて、裁判所救済を求めるというような傾向が強くなり、この点は少額権利の上でも同じでございます。  それから、単に自分権利が侵害された者だけではなくて、社会一般社会的な問題の解決透明性を求めるようになり、自分の直接の利益かかわりのない問題であっても、それが社会的に透明な裁判手続によって解決される、あるいは処理されるということが強く望まれるようになっているわけでございます。さらに、今後ますます国際化が進んでまいりますと、このような傾向は一層拍車がかかると思うわけでございます。  それにもかかわらず、現在の民事訴訟制度は基本的には七十年前と同じ構造を持っておりますために、十分このような期待ないし需要対応し切れなくなっているわけでございます。紛争複雑多様化ということもございますし、それからさまざまな原因によって訴訟に時間と費用がかかるという問題もございます。  そこで、今回の改正は、そのような社会期待需要にこたえ切れていない現在の制度改正する必要があるというところから作業が始まったものと承知いたしております。したがって、今回の改正意義訴訟手続改正、しかも迅速に対応をするという観点からこれらの課題に最大限にこたえようとしたものと評価することができます。  ただし、手続改正ということを中心にしておりますために、それ以外の残された問題というものがあることも確かでございます。とりわけ、司法制度に関連いたします法曹人口も含めた法曹養成制度、あるいは法律扶助制度、さらには弁護士費用等の問題は今後残された問題ということになるかと思います。しかし、そのような問題が残っているとはいえ、手続法の迅速な改正という枠内では最大限の対応ができているものと考えるわけでございます。  次に、訴訟には時間と費用がかかるという問題が指摘されているけれども、今回の改正ではそういう問題に対応するために一体どのようなことが実現し、またそれらが実現した場合にはどの程度訴訟が迅速化されるのかという御質問であったように思います。  今回の主要な改正のうち、特に民事裁判の迅速化と関連するものといたしましては、先ほども申し上げましたが、審理方式改革というものをまず挙げることができると存じます。  これは先ほども申しましたとおり、従来の訴訟のやり方がいわば弁論証拠調べの間を往復する。そして一部の人の言い方によりますと漂流型の審理になっている、どこへいつ行き着くかわからぬというような状況に立ち至っている。それを争点の整理と証拠調べというふうに段階的に区分をいたしまして、まず争点整理の段階で十分その事件の核心的な争いの原因はどこにあるかということを突き詰め、その後で集中的に人証の取り調べ、証人尋問、当事者尋問等を取り調べて、一気に紛争解決に持っていこうということでございますので、訴訟が迅速化するものと期待されるわけでございます。  それからさらに、証拠収集手段拡充というものもこのような審理のあり方を可能にするものでございまして、やはり訴訟の迅速化に奉仕するものということが申せます。  第三に少額訴訟手続でございますが、これも先ほど申しましたとおり、三十万以下の金銭請求につきまして、特別の事情のない限りは一回の期日で審理を終えるということでございますので、この手続対象となる事件につきましては迅速な解決期待できるというふうに申すことができます。  なおこのほかに、先ほどは触れませんでしたが訴訟資料の提出時期の早期化、集中化ということが図られ、従来のように審理が続いている限り随時攻撃防御方法を提出できるということではなくて、それぞれの状況に応じて適切な時期に提出すべきであるといういわゆる適時提出主義の考え方がとられております。  また、しばしば訴訟を長引かせる代表的な例として、当事者や証人が多数いるような大規模な事件がございますが、そういうものにつきましても迅速化が図れるような手当てをいたしております。  なお、OA機器の利用等によりまして督促手続であるとか、あるいは電話会議システム、テレビ会議システムを使った争点整理、証人尋問というようなものも訴訟の迅速化に役立つと思います。  これらの改正実現された場合にどの程度訴訟が早くなるかということは、事柄の性質上具体的な数字で申し上げることは大変難しいわけでございます。ただ、とりわけ争点を中心としたような審理のやり方ということは十数年前から実験的に一部の裁判所ないし裁判官によって試みられております。  そういう実験的な試みをやっておられる一人の裁判官が報告されているところによりますと、司法統計等から推測される争いのある事件の平均的な審理期間というものは、普通これまで二十四カ月ぐらい、約二年というふうに考えられてきたが、争点中心審理を実験的にやってみた結果では九カ月ないし十一カ月に短縮できたというような報告がございます。  これは一つの例でございますので、すべて今後こういうふうに半分以下に短縮できると申すことは直ちにはできませんけれども、その一例から見ましても相当程度の迅速化が期待できるのではないかと考えられます。  最後に、少額訴訟手続意義と評価ということでございました。これは先ほど申し上げましたとおり、三十万円以下の金銭請求事件につきましては、当事者弁護士に依頼をしなくても自分簡易権利救済を図ってもらえるという手続として実現されたものでございます。  この手続では、消費者金融業者のような業者の利用も排除しておりません。しかし、専ら業者によってこの手続が独占されるということのないように、利用回数の制限を設けるという手当てもなされておりますし、先ほども申しましたが、両当事者の任意の選択に任せるというような配慮もなされております。  そこで私といたしましては、このような手続ができるといたしますならば、少額権利について実効性のある救済手段が確保され、しかもそれは決して粗雑な裁判ということではなく、十分申述に基づいた迅速な救済ということが実現できるのではないかと評価しております。  以上でございます。ありがとうございました。
  9. 中務嗣治郎

    参考人中務嗣治郎君) 私に対する質問は三点でございますので、一つずつ順々にお答え申し上げたいと思います。  まず、裁判に時間がかかり過ぎるということの御批判については、弁護士会としても厳しく受けとめております。弁護士会は、昭和六十三年に司法改革宣言を行いました。これはまさに司法国民に身近でわかりやすく利用しやすい司法にしたい、こういう宣言でございました。そしてまた、弁護士みずからの自己改革を含めて司法全体の基盤を充実させていきたい、こういう運動に取り組んでいるわけでございます。  現在、司法の予算は国家予算の〇・四%にも満たないごくわずかの金額であります。先ほども申し上げましたように、裁判を迅速かつ適正にするためには、ソフトの面で今回のような民事訴訟法改正も必要でございますけれども、ハードの面で裁判所の人的な設備、要するに裁判官、そしてまた物的な設備、裁判所、そういうものの充実、そしてまた現在法務省との間で法律扶助の実現に向けて研究会が進んでおりますが国民裁判を利用しやすいようにするための法律扶助制度、こういうようないろんな面の総合的な体制ができて初めて裁判が迅速で時間のかからない、国民に利用しやすい制度になるんだ、このように考えております。  第二番目の、弁護士会が今回の民事訴訟法案についての検討のために、法制審議会に対してどのような取り組みをしてきたかという問題でありますが、御案内のとおり、法制審議会委員には日弁連から委員を推薦しております。そしてまた幹事も推薦しております。この方々はそれぞれ民事訴訟法について御見識のある練達の実務家でございますけれども、その方々をバックアップするための委員会も組織いたしまして、五年有余の間この方々をバックアップしてまいりました。この民事訴訟法案が今回国会に上程された、この五年有余の間の法制審議会委員方々関係者の御尽力に対して日弁連として深甚な敬意をあらわしているわけでございます。  ただ、法制審の委員日弁連が推薦いたしましても、みずからの見識で意見を述べる、そういう仕組みでございます。この法案が成立するまでの間、検討事項あるいは試案に対して日弁連としてさまぎまな意見を申し上げてきました。そして、最終的には法制審議会委員方々の御見識でこの法案についての意見を述べられたわけでございます。  三番目の、この法案が成立した場合の弁護士会の取り組みでございますが、もし法案が今国会で成立いたしましたならば、法案施行されるまでの間に弁護士会として、新しい民事訴訟法の運用を改正法案趣旨に沿った形で十二分に発揮できるような研修、シンポジウム、それから研究を続けてまいりたいと考えております。  例えば、全国各地では今民事裁判の運用改善に関する懇談会というのが裁判所弁護士会との間で持たれております。私が属しております大阪地方裁判所管内では、もう既に二十五回民事裁判改善に関する懇談会を続けておるわけでございます。このような懇談を通じて、裁判所とその民事裁判を担当する弁護士との間でこの法案が所期の目的を達成する、そういう運用になるよう最善を尽くしたい、このように考えておるところでございます。
  10. 志村哲良

    志村哲良君 ありがとうございました。
  11. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 平成会の魚住裕一郎でございます。  両参考人には、お忙しいところありがとうございます。中務参考人日弁連の民訴法の問題の担当者として尽力され、敬意を表するものであります。また、竹下先生はずっとこの民訴法部会でやってこられまして、深く敬意を表するものでございます。  時間がございませんので、重要と思われる点を中心に御意見をいただきたいと存じます。  まず、中務先生、ここは参議院でございますが、衆議院でもう十分議論をいたしまして、しかも附則をつけて、修正し、かつ附帯決議までつけております。その中で、再検討に当たって「秘密要件の在り方」、これについても「司法権を尊重する立場から再検討」をするんだ、そういう文言になっております。これにつきまして、日弁連あるいは中務参考人としてはどのような趣旨と理解するんでしょうか、簡潔にお願いいたします。
  12. 中務嗣治郎

    参考人中務嗣治郎君) 秘密要件につきましては、現在、裁判所判例が集積されております。その代表的な判例は、私が先ほど申し上げましたように、秘密というのは単なる形式秘ではなしに、国家の重大な利益を害する、公共の重大な利益が害され、あるいは重大な損失がもたらされるものが秘密である、こういうように言われているのが現在の判例であります。  今回の附帯決議の中身について再検討する場合には、現在、裁判所判例で集積してきました秘密要件について十分尊重していただく、こういうことを意味するもの、このように解しております。
  13. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 ありがとうございました。  それで、今、中務参考人意見陳述で述べられましたけれども、日弁連立場がどうもよくわからないと私は思っております。  先般、六月十一日、日弁連会長名で会長談話というのを出しました。その中で、「当連合会の修正意見を含めて充分なる審議が尽くされ、今国会において本法案が成立するよう要望するものである。」という言葉になっております。今、中務参考人も同じような趣旨でおっしゃられました。もちろん、日弁連としての修正意見というのが出ておりますけれども、それには至っていない修正案だから残念だという趣旨だと思いますが、さらにこの後残り少ないこの国会において、日弁連の案でしっかり十分審議して、その上で成立を図られたいという趣旨なのかどうか、この点についてちょっと御意見いただけますか。
  14. 中務嗣治郎

    参考人中務嗣治郎君) 基本的には日弁連は、既に先生方の手元にも参っていると思いますけれども、三月二十七日に理事会の満場一致の決議でこの法案についての日弁連の見解を明らかにいたしました。そこでは、この二百二十条四号ロの公務秘密文書については修正していただきたい、こういう意見を表明したわけでございます。そしてまた、その修正の具体的な内容につきましても提示させていただきました。  今回、日弁連が申し上げておりましたような修正ができなかったことは残念である、会長談話の残念であるというのはそのことでございます。しかしながら、日弁連のスタンスは、この法案を廃案にしたいとか、あるいはこの法案について全部反対である、こういう立場ではございません。この法案は、先ほども申し上げましたように、国民に利用しやすい、わかりやすい民事手続という形で大きな目標が掲げられております。そしてまた、日弁連が今まで言ってきました上告制限あるいは弁論準備手続非公開、こういう問題点がありますけれども、全体としては評価するところでございます。  ただ、文書提出命令、特に公務秘密文書文書提出命令については、証拠収集手続拡充という改正法案趣旨に反する項目がございましたので、これについてはぜひとも今国会修正していただきたい。そして修正の上、成立させていただきたい。これは今も変わりございません。  しかし、あと残り少ない会期の中で、特に衆議院におかれましては、附帯決議あるいは附則公務秘密文書についての取り扱いが一時棚上げされまして、二年という一つの短い期間の中で日弁連が申し上げてきましたような方向で修正ができるということについて深甚な敬意を表する、こういうスタンスでございます。
  15. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 二年間で検討をしていこうということでございますけれども、中務先生としては今後どのような機関で再検討をすべきとお考えなのか。  私、個人的に言えば、例えば法制審議会、もう前に原案をつくっていますから、それと同じような場所でやった方がいいのか、あるいはもっとマスコミ関係も含めたような新たな機関をつくってやった方がいいのかという点と、先ほど先生は公務員証言義務について官民格差ということをおっしゃられました。この百九十一条二項、拒否事由といいますか、そういう点も含めて再検討をすべきであるというふうにお考えなのかどうか。機関と検討項目について御所見をいただきたいと思います。
  16. 中務嗣治郎

    参考人中務嗣治郎君) 機関についてはいろんな案あるいは選択肢があろうかと思います。  法制審議会でもう一度検討していただく場合、あるいは国会で閉会中でもこの問題についての検討委員会をおこしらえいただくとか、いろんな選択肢があろうかと思います。私が申し上げたいのは、どういう機関でありましても国民の広い意見を幅広く聞いていただきたい。そういう国民意見にのっとった検討をしていただきたい。そういう機関であってほしい、こういうことを要望したいと思っております。  それから、そこで検討する場合には、いわゆる文書提出命令における官民格差だけではなしに、公務員証言義務についても、民間人守秘義務を負っておる者の証言義務との間で先ほど申し上げましたような大きな官民格差がございます。  その公務員証言義務につきましても、新しい改正法の証拠収集手続拡充という目的に沿って、そしてまた行政情報公開という一つの理念に沿ったそういう修正をお願いしたい。したがって、文書提出命令だけに限ったことではなくて、整合性を持ったいわゆる行政情報公開、こういう視点に立った証言拒絶あるいは文書提出命令の規定に修正していただきたい、このように考えております。
  17. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 わかりました。  それで、あともう一点なんですが、日弁連修正意見だとすべて司法判断だけに服しなさいよというような形になるわけでございますが、これだとどうしても個別のプライバシーとかいう問題だけではなくて、外交上とかあるいは防衛上の秘密とかいろいろ出てくるんだろうと私は思うんです。  その場合の調整の仕方といいますか、HIV訴訟みたいな形、そういう問題ではなくて、もっと高次元な政治的判断を要するような場合、これをどう扱っていくべきなのか。一部には議院証言法における疎明、それから内閣の声明という形で、あの場合はいわゆる行政権と立法権ですが、さらに行政司法とのバランスを図っていくという方法もあり得るんではないだろうかと私は考えるんですが、その点について中務先生の御所見がございましたら、簡潔にお願いいたします。
  18. 中務嗣治郎

    参考人中務嗣治郎君) 私は、現憲法下における司法権、立法権、行政権、この三権分立、このチェック・アンド・バランスのもとにおいては、いわゆる文書提出義務があるかないかという判断法律判断、いわゆる司法判断である、それは司法権に属する、このように考えております。  そして、この文書提出命令がもし国家の重大な機密にかかわるような問題である、あるいは統治行為にかかわるような問題であるということになれば、これは最高裁判所まで行くわけでございます。最高裁判所判断で、これは統治行為に関する問題であるから裁判所判断が及ばないんだと、こういうところまで最後は行くわけであります。  そういう意味では、最終的にはそういう国家の重大な機密に関する判断については司法権が及ばないという判断司法権がする。そこまで行くのが現憲法下における三権分立の制度だと、司法権がすべて裁判所に属するという現憲法下における制度だと考えております。  そして、最高裁判所国民審査を受け内閣が任命するわけでありますし、また裁判所が適用する法律は国権の最高機関たる立法府が制定するわけでありますが、そういうチェック・アンド・バランスの上に立って日本のいわゆる国政、民主主義国民主権の制度が確立されていくわけでございますので、文書提出義務があるかないか、その判断はあくまで司法権判断すべきものだと考えております。
  19. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 ありがとうございました。  それでは竹下先生よろしくお願いします。御高名な先生でいらっしゃって質問するのもなかなか難しいんですが、ちょっと確認でございますが、竹下先生のレジュメの中で、一番下の方なんですが、「無益な上告」という表現がございます。また、今口頭では無意味上告というような表現もあったと思うんですけれども、無益とか無意味というのはだれにとって無益なのか、お教えいただきたいと思います。
  20. 竹下守夫

    参考人竹下守夫君) 私が無益とか無意味というふうに申しましたのは、本来上告審と申しますのは御案内のとおり法律審でございまして、現判決法律違背がある場合にそれを破棄するということを趣旨としております。その趣旨に合わないような、初めからそういう意味上告の本来の対象にならないような事件という趣旨でございます。  だれにとって無益かという点でございますが、これは強いて申せば制度そのものの趣旨に合わないということでございますので、広くとらえれば国民全体にとって無益ということになるかと思います。
  21. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 要するに裁判制度設定者たる国、それから税負担をしている国民という趣旨だと思いますが、ただこれは紛争解決手続といいますか、紛争解決サービスというか、そういうためにあるんであるし、また当事者は時間と費用、大変な心理的負担も含めて一生懸命やるわけでございまして、一言で無益と言われたら非常にかわいそうだなと実は思ったものですから、ちょっと質問させていただきました。  先生は、ずっと民事訴訟法部会におられたと思いますけれども、衆議院でも今回の文書提出命令に関して非常に拙速といいますか突然出てきたというような表現が使われるんですが、そんな印象をマスコミの方もまた我々も持っているというのが率直なところでございます。これに関して、議事録を出してくれと要求をしてもなかなか出していただけずに要旨みたいなものが出てきておるわけでございます。これはだれがどういう発言したかというのを先生として出されたらまずいというふうにお考えなのかどうかというのをまず聞きたいと思うんです。
  22. 竹下守夫

    参考人竹下守夫君) 法制審議会の議事録は、これまで審議会内部における自由な意見交換という趣旨から公開されていないというふうに承知いたしております。したがいまして、この問題につきましても、議事録そのものを公開するというのは、最終的には法務省の判断でございますけれども、部会の委員をしております私といたしましても、差し当たって特に具体的に何を秘密にしなければ困るということがあるわけではございません。やはり制度として要旨を公開するというぐらいのところが適当なのではないかというふうに考えております。
  23. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 昨年の九月二十九日でしたか閣議決定がございまして、一般的な法制に関する審議会というのは全部議事録を公開するんやという閣議決定がなされておるんですね。本来の趣旨からいったら、要旨どころかきちっとしたものを出さなきゃいけないというふうに思っておりますし、今回特にこの文書提出命令についてはその経過に非常にみんな疑念を持っているわけでございまして、今そういうふうにちょっとお聞きしたわけでございます。  その部会の中で、このまま日弁連案といいますか、全部インカメラあるいは全部かけるような方向での案というのは事務次官会議とかそういうところでは通らないんだ、この文書提出命令一点で法案をつぶすのはもったいない、これを生かすためにも情報公開法の議論と並行してまたそのときに再度考えればいいんではないか、そういうような雰囲気というものがあったんでしょうか、民事訴訟法部会の中で。
  24. 竹下守夫

    参考人竹下守夫君) 審議の細かい過程のことにつきましては、私も十分記憶をしているわけではございませんし、責任者である法務省の担当官にお聞きいただきたいと思います。しかし、委員の一人として、今御質問のございました点について私の記憶している限りのことで申し上げたいと思います。  この問題につきましては、御案内と思いますが、当初から一般義務化をするか、それとも現在のような限定列挙でそれに幾つかの種類の文書をつけ加えるかという考え方の対立としてずっと審議がなされてきたものでございます。一般義務化をするというときには、常に一般義務化をするかわりに、証人の場合と同じように証言拒絶の事由に相当するような事実が書かれている文書については例外を認めざるを得ないだろうということが議論されておりました。  その意味では今回の案、政府原案でございますが、法制審議会で決めた要綱というものもそういう考え方に沿っていたわけでございます。したがいまして、そこでの議論は主として証言とのバランス、証言拒否事由とのバランスというところにウエートがあったというふうに考えております。
  25. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 今証言の問題が出てきましたけれども、中務参考人からもございました官民格差ということが言われておりますが、どうも政府答弁を聞いていても公務員の証人義務とパラレルに扱っていこうというような言い方になっておりますけれども、果たしてその前提があるんだろうかというのを私疑問に思っております。  かつ、この政府原案のままいきますと、大正十五年の改正前の旧法、包括的な証言拒絶権というのがありましたけれども、それと同じような形になってしまって、今まで現行法あるいはこの改正案にも出ているような個別的な証言拒絶を認めるというのとちょっと違ってくるんではないだろうかという疑念を持っております。その点についてお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  26. 竹下守夫

    参考人竹下守夫君) 御案内のとおり、現行法と違って、今回の民事訴訟法案におきましては、証言拒絶の点につきましては一般的な承認拒絶権というものを監督官庁に認めるということではございませんで、監督官庁が承認を拒絶できる理由というものは限定したわけでございます。公共利益に反する場合、あるいは公務の執行に著しい支障を生ずる場合というふうに限定をしているわけでございますので、包括的なあるいは概括的な証言についての承認拒絶権を監督官庁に認めるという趣旨ではないというふうに考えております。
  27. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 終わります。
  28. 千葉景子

    ○千葉景子君 本日は、竹下参考人そして中務参考人委員会に御出席ありがとうございます。限られた時間でございますけれども、何点か御意見をお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。私は十五分でございますので、その間でお答えをいただければ幸いでございます。  まず、中務参考人お尋ねをいたします。  日弁連としても今回の民事訴訟法案については、先ほど問題点を御指摘いただきましたけれども、全体としては国民に開かれた民事訴訟を充実させていくということで、御賛成をいただいているということでございます。ただ、私も基本的な内容には賛成をしているのでございますけれども、これをうまく運用し、あるいは効果的に使っていきませんことには趣旨が生かされないことになろうかと思います。  そこで、私も先般ちょっと法務省の方にも、最高裁にも質問させていただいたんですが、日弁連で先般シンポジウムを開かれました。そこで大変おもしろいと言ってはおかしいんですけれども、大変裁判官が多忙である、そういうような調査結果なども公表されていらっしゃいます。この日弁連のシンポジウムなどからどんなような事実が見えてきたのか。そして、迅速な裁判をこれから図っていこうという今回の改正なんですけれども、それに伴ってやはり裁判官の充実ということも根底になければ制度が生かされないかというふうに思いますので、このシンポジウムから見えた内容と、そして裁判官の増員などについて御意見がございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  29. 中務嗣治郎

    参考人中務嗣治郎君) 御案内のとおり、裁判官の数それから司法予算、それから国民裁判所を利用して紛争解決するという割合、これは象徴的に二割司法、こういう言葉が定着しているわけでございますが、そういう厳しい国民司法に対する目を我々は謙虚に受けとめております。  そして、この民事訴訟法案というソフトの面での運用改善もさることながら、裁判所の物的な設備それから人的な設備、これは裁判官だけではなしに書記官も含めての充実、そしてまた弁護士の自己改革、こういうものを総合的にこれから整備していかなければ、本当の意味での国民に利用しやすい、わかりやすい民事裁判がない、このように考えております。
  30. 千葉景子

    ○千葉景子君 ちょっとそれにプラスしていただければ幸いでございますけれども、裁判官の数がなかなかまだ十分に足りていないという部分があろうかと思うんですけれども、やはり一件一件の事件を十分に審理をいただく、あるいは少しゆとりを持って審理をしてスピードアップを図っていくという面で、やはり増員が必要だということは参考人としてもお考えでしょうか。
  31. 中務嗣治郎

    参考人中務嗣治郎君) これはもう日弁連の悲願でございまして、裁判官の定員の増加、それから裁判所の職員の増加、これは従来から常々申し上げてきたところでございます。  ちなみに、昭和二十四年と現在との裁判官の数それから弁護士の数を申し上げますと、昭和二十四年には裁判官は千四百十一人でございました。現在は二千五十八人、六百四十七人しかふえていないんです。弁護士は昭和二十四年には五千九百十九人、現在では一万六千人近くなっているわけでございまして九千六百二十一人ふえているわけでございます。  諸外国に比べましても、裁判官の数は極めて少ないわけでございまして、一人当たりの裁判官の持ち事件数というのが何百件、こういう状態では本当に国民に納得のできる、そして迅速な裁判はできないと思います。  そういう意味で、裁判官の定員増、それから司法予算をぜひ国会でも十分御検討いただいて御配慮いただきたい、このように考えております。
  32. 千葉景子

    ○千葉景子君 それではもう一点、中務参考人お尋ねをいたします。  今回、最高裁に対する上訴制度について上告受理の制度が採用され、また少額訴訟手続新設をされるということになりました。これ自体はこれまでの議論の中で工夫をされた制度であろうというふうに思います。上訴制度について、これまでの三審制度にある意味では制約を課すということになるわけでございますし、少額訴訟についても一定の枠がはまるということでございます。  実際、利用する側から考えて、これが本当に三審制度を制約したり、あるいは少額訴訟ということで、手抜きと言ってはおかしいですけれども、中身が十分に審理されるかということなどを考えたときに、制度を導入するに当たって注意すべき点というんでしょうか、実務の経験から何かございましたら御指摘をいただきたいと思います。
  33. 中務嗣治郎

    参考人中務嗣治郎君) 今回の民事訴訟法の中で、上告制限というのが一つの問題でございました。そしてまた、少額事件の特別な取り扱いというのも一つの目玉になっているわけであります。  私は、基本的には裁判を受ける権利国民裁判を受ける権利というのが実質的に保障されるようなものでないと、それがいかに迅速な裁判であってもいびつな裁判になってしまう。適正でかつ迅速な裁判、その適正ということを忘れた裁判になってはいけない。そしてまた、裁判を受ける権利が失われるようなことになってはいけない。  したがいまして、今回、私どもはこの法案について修正をお願いしたいというのは、いわゆる証拠収集手続拡充文書提出命令一点に絞りました。上告制限あるいは弁論事務手続非公開については、法制審の中でもこの問題については反対であるということを表明してきたわけであります。しかし、この法案全体を国会で成立させていただきたいということで、何もかもというんではなしに文書提出命令一点に絞って修正をお願いしてきたわけであります。  しかしながら、上告制限の問題につきましては、なお問題が残っているわけでございまして、今後、この法案の運用、それからまた将来の課題として、国民裁判を受ける権利が実質的に保障されるような形へ全力を尽くしていきたいと考えております。
  34. 千葉景子

    ○千葉景子君 それでは、竹下参考人お尋ねをさせていただきます。  今、中務参考人にもお尋ねをしたんですけれども、今回の民事訴訟法案、御議論をいただきましたが、その背景、根底に裁判所の充実、裁判官あるいは施設を含めて環境整備というのが当然必要かというふうに思いますけれども、参考人としてはそういう問題についてはどのようにお考えでしょうか。今の裁判の実情と、これから将来に向けてのお考えがございましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  35. 竹下守夫

    参考人竹下守夫君) その点につきましては、私も委員指摘のとおり、裁判所の人的、物的設備というものが現在以上に充実されるべきであるし、そうでないとなかなか今回の民事訴訟法改正趣旨実現することは困難であろうというふうに考えております。  とりわけ物的設備委員も御案内だと思いますが、いわゆるラウンドテーブル法廷というふうに申しまして、法壇と称する一段高いものが従来の法廷にはついてございますが、そういうものを外した、裁判官と両当事者とがひざを交えて審理をすることができるような法廷というものが幾つか各地の裁判所にできておりますけれども、まだ十分ではないというふうに思われます。  それから人的な面につきましても、御指摘のように、裁判官は現在大変な負担を抱えておられるということを伺っておりますし、裁判所書記官の数も足りないということも聞いております。したがいまして、そういうものも充実していくことが大変望ましいと思っております。  ただ、裁判官にしても裁判所書記官にしても、やはり国民のために質の保障がないといけませんものですから、むやみに数だけふやすというわけにいかないところが恐らく難しいところだろうと思います。裁判所当局といたしましても、そのような質を確保しながら定員をふやすことに尽力していただきたいと考えております。
  36. 千葉景子

    ○千葉景子君 それでは時間もあれですので、最後にお聞きしたいと思います。  今回の民事訴訟法案の中で、最も関心を持たれ、そしていろいろ多様な意見がございましたのが公的な文書の扱いについてであろうかというふうに思います。審議内容その他これまでも既にいろいろと議論をされてまいりましたが、衆議院の方では修正が加えられ、そして附帯決議なども付されております。  衆議院のこういう審議なども踏まえて、竹下参考人としては今後これを検討するに当たってどんな点に留意すべきか、あるいは法制審の審議の中で不足をしたり、まだ十分でなかった点など、もしおありだとお考えであれば、そんな点も含めて御意見をお聞かせいただいて、質問を終わりたいと思います。
  37. 竹下守夫

    参考人竹下守夫君) ただいま御指摘のように、今回の民事訴訟法改正につきましては、衆議院以来の審議の中で文書提出命令、とりわけ公務員職務上の秘密に係る文書提出命令というものが関心及び議論の対象になったわけでございます。  衆議院法務委員会における附帯決議、それから附則等の趣旨から拝見いたしますと、衆議院修正は二年程度をめどとした暫定的措置ということのようでございますので、当然その間に次の改正案の用意がなされるということが要求されているのだと思います。  その場合に検討すべきところでございますが、これは附帯決議で御指摘になられているとおり、一つ秘密要件、これは民事訴訟法案とそれから現行の刑事訴訟とで食い違っておりますので、それをどうするか。民事訴訟と刑事訴訟の違いということもございますので、そのことをも考慮しながら、どのように考えていったらいいかというのが一つの重要な点だと思います。  それから判断権の所在でございますが、この点につきましては今回の衆議院での御審議の過程、それから一般世論等の動向から拝見いたしますところ、やはり司法判断権というものをもっと強化する方向で考えろという御趣旨のようでございますので、それを尊重していくべきであろうと思います。  それからなお、審理手続につきましても重要な問題でございますので、例えば議院証言法のような考え方もございますし、いろいろな考え方というものを参考にしながら検討していくべきだろうと考えております。  法制審議会での審議の過程では、私どももいろいろなことを考えて議論してまいったわけでございますけれども、このような結果から考えますと、行政情報公開ということについての配慮に若干欠けるところがあったかなというような反省を個人的にいたしております。  以上でございます。
  38. 千葉景子

    ○千葉景子君 ありがとうございました。
  39. 橋本敦

    ○橋本敦君 本日は御多忙のところ、竹下先生また中務先生ありがとうございます。  中務先生から、先ほど公文書提出義務について大変貴重な御意見をいただきました。この問題については私も大変関心を深めておりまして、衆議院で我が党は日弁連の皆さんの御意見も尊重する立場修正案を出したのであります。残念ながら全会派の合意に至りませんで、御存じのとおりの修正案にとどまりましたが、なおこれから検討できる課題でございますから、さらに力を入れていきたいと思っております  それに関して、先ほど先生の方から、行政情報の開示の問題は、情報公開法という次元の問題とは違ってまさに司法権作用の問題として、その立場で違いをしっかり踏まえて検討する必要があるという厳しい御意見がありました。まさに私も司法権作用だと思います。  そういう点で、一つ要件の問題についてきちっと司法権が尊重される立場での判断ということを、国民裁判を受ける権利との関係でも決めなきゃなりませんし、インカメラという手続の問題についても司法権作用が及ぶということを保障していくということが両々相まって大事だと思っております。そこらについて御意見をさらに敷衍していただきたいと思います。
  40. 中務嗣治郎

    参考人中務嗣治郎君) 先生の御指摘のとおりでございまして、情報公開法による行政情報公開というのは、これは何人でも、どのような目的でも、行政情報公開してくださいという一般的な権利でございます。  しかしながら、いわゆる民事裁判における文書提出命令というのはまさに訴えの利益がある法律紛争でないと裁判としては受理されない。なおかつ文書提出命令が問題になるのは、立証事項、いわゆる事実を判断する、事実を認定するために必要性関連性という二つ要件がさらに厳格に枠組みされるわけでございます。  そして、裁判というのは、まず事実が何であるかということを確定する、その確定された事実に対して法律の適用をする、これが司法作用であります。したがって、その事実が、本当に真実がその法廷に出てこなければどのような法律が適用されましてもそれは正義に反する。  そういう意味で、裁判所真実が明らかになるようにするための制度、これはもう一番重要な制度でございます。アメリカではディスカバリーの制度、それからフランスでは最近司法に対する義務、いわゆる証言義務文書を提出する義務、そういうことが法律で明定されたぐらいでございます。  そういうことで、この文書提出命令というのはいわゆる司法権作用、そしてその義務があるかないか、どういうような場合にその枠組み考えるかというのはまさに法律判断、それはまさに司法判断だと位置づけております。
  41. 橋本敦

    ○橋本敦君 それは、まさに真実の発見という大事な課題に直結する国民にとっても重要な問題であるわけです。  そこで、次の問題としてもう一点お伺いしたいことは、公務員のそういった司法判断に対する態度の問題ですが、インカメラの制度裁判所検討して、これは実質秘に該当しない、訴訟関係者の要求は正当だから当然提出すべきだと、こういう判断があったとしましょう。ところが、その判断にも行政側が従わないということが予想されるかされないのか。予想された場合に、アメリカ等では裁判所侮辱罪という手続もあるんですが、そういうものは日本にはございませんし、そこらあたりの検討はどうだろうかという点についてもしお考えがあれば述べてほしいんです。  といいますのは、エイズ問題で厚生省の文書があれほど大問題になりましたように、容易なことで出さないという官僚的古い体質が日本の機構の中で完全に除去されているとは国民は信頼しておりません。だから、裁判所がそこまで御努力を願って判断されても、その結果に行政側が従わないということが起こり得るとすれば、これは一体どういうことになるだろうかということまで考えた上での御意見がもし議論されているのであれば教えていただきたいということでございます。
  42. 中務嗣治郎

    参考人中務嗣治郎君) 実際に裁判所文書提出命令に対して行政庁がそれに従わないというケースが今まで数多くあります。具体的には今、ある地方自治体が裁判所命令に対して文書を出さない、それに対して裁判所が間接強制といいまして、提出しない場合の、一日に金幾ら幾ら払えと、こういうような課徴金を課しておるわけでありますが、その金額が実に一億円に達しておる、それでもなお出さない、こういうケースがあるわけでございます。  そういう意味で、文書提出命令が将来制度化されましても行政庁が出さないというケースが考えられます。今、先生御指摘のように、アメリカではそれに対する対応策がちゃんと規定されているわけでありますが、日本でもそのようなことを真剣に検討しないといけない。何のための情報公開制度なのかということが問われると思います。  ただ、具体的に今、民事訴訟法日弁連としてその場合にはこういう案を出すべきだという具体的な修正案は現在のところまだ持っておりません。それはこの二年の間に日弁連としても十分研究をして、できれば御提示できるようにしたい、このように考えております。
  43. 橋本敦

    ○橋本敦君 この問題について法制審の議論がどうであったかなかなか知る由もないんですが、しかし突如として出てきたという感を私どもは否めないんです。日弁連としては、法制審で公文書提出義務問題についてこういう案が出てくるということに対応して、もっと早くから御意見を広めていただくということが可能であったのかなかったのか、それほど突然であったのか、そこらあたりどうなんでしょうか。私どもは極めて突然だという違和感を持っております。
  44. 中務嗣治郎

    参考人中務嗣治郎君) 先生の御指摘を受ければじくじたる思いでございますが、日弁連としては、この文書提出命令について今日議論されているような形で論議していなかったわけでございます。具体的にいわゆるペーパーとして出てまいりましたのは昨年の十二月一日でございますので、それから急速この問題に取り組んだというような実態でございます。  ただ、証言の拒絶事由を準用するような形で文書提出命令一般義務化という問題が提起されておったのはその前からでございますが、このような形のものについては、まことに残念ですが、日弁連としてもちょっと検討できていなかったというところでございます。
  45. 橋本敦

    ○橋本敦君 それだけに、私どももなお今後あの修正案に基づきまして二年をめどにの検討の中で御意見もよく聞きながら、また各界各般の意見を聞きながら真剣に検討していきたい、こう思っております。  時間がありませんので、両先生に最後の質問になるんですが、司法国民的基盤の拡充ということが大事だという御意見もございました。最高裁の問題についていいますと、裁判官の過重負担を理由として上告制限をするというのは、国民裁判を受ける権利をもっと尊重するという立場から見たらどうかなという意見はございます。  最高裁の裁判官の人数は今十五名ですが、これはもう大審院時代よりもはるかに少ない。だから、人数をふやせば小法廷もふえますし、それから裁判所裁判官に対していろいろと判決その他を検討するのに御尽力いただく調査官、これもふやして、事件ごと調査官配置じゃなくて裁判官ごとに最低限の調査官を配置していただいて検討をしていくというような体制を組めば、これはかなりやっぱり負担は軽減される、こう思うんです。  ですから、一般的に法曹人口、裁判官をふやすということは大事ですが、具体的な最高裁の審理の促進とまた国民裁判を受ける権利の保障という立場から、私が指摘したような最高裁の増員問題については具体的にそうすべきだという御意見はあるのかどうか。その意見はどうなのか、竹下先生と中務先生にお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  46. 竹下守夫

    参考人竹下守夫君) それでは、まず私の方から申し上げたいと思います。  先生御指摘の点はまことにごもっともでございますが、私どもの考えでは、まず裁判を受ける権利との関係でございますが、今回の上告受理制度を導入することによって、むしろ最高裁の裁判官が重要な事件あるいは原判決を本来破棄すべき事件、そういうような事件につきまして慎重な審理をした上で裁判をすることができるようになるのであって、むしろ国民裁判を受ける権利を実質化するものだというふうに考えているわけでございます。  これは一見矛盾するようではございますが、しかし裁判を受ける権利というのは、上告を例にとって考えますと、上告をされた相手方もあるわけでございまして、相手方も迅速な裁判を受ける権利を持っているわけでございます。一審、二審と負けていながらさらに事実問題を争うというような上告があるといたしますと、上告人の不満があることはわかりますが、上告権利を保障するということは、かえって相手方の迅速な裁判を受ける権利をそれだけ害する結果にもなるわけでございますので、そのことも考えないといけないんではないかというふうに思うわけでございます。  それから、裁判官数あるいは調査官数の増加でございますが、これはたびたび指摘されているところで既に御承知のことと存じますが、現在のように原判決が誤っているというので破棄される率が四%を超えることはない、むしろ恒常的には三%以下という状況のもとでは、先ほどちょっと申しましたが、結局むだな上告によって事件が多くなっているのであって、その流入を阻止することが先決だということでないと国民の納得を得にくいのではないかと私どもは考えているわけでございます。  同じようなことは、実は外国の例ではフランスでございまして、フランスは戦前からもう四回か五回裁判官数をふやしてまいりました。そのために、当初は三合議部、日本で言うと小法廷三つぐらいで発足したものが、現在はたしか七つぐらいまでふえているわけですが、一向に減らない。これ以上裁判官をふやしたのでは法律審として法令解釈の統一という趣旨を生かし切れないという段階にまで来ている、ようやく無意味上告の流入を阻止しようかという方向に向かいつつあるというようなことが報道されております。  そういうような例を考えますと、もちろんフランスと日本とではいろいろ事情が違いますけれども、日本裁判官の数をふやすという解決方法は現在の時点ではなかなか難しいのではないかと私は考えているところでございます。
  47. 中務嗣治郎

    参考人中務嗣治郎君) 最高裁判所への上告制限の問題につきましては、日弁連改正法案の要綱試案の段階意見書を出しておりまして、これについては幾つかの理由から反対であるという意見を表明しておりました。  その中に、今、先生の御指摘にもございましたように、もし最高裁判所のいわゆる負担が過重であるならば、それは裁判官を増員して対応すべきであるという考え方も理由の一つにございました。そしてまた、最高裁判所に対する上告事件が多いというのは、下級審に対する判決に対して国民の不満が多いんだから、下級審の充実をまず図るべきであるというような理由もその中に掲げさせていただきました。  しかし、今回修正を求めたのは公務員職務上の秘密に関する文書提出命令に絞らせていただきましたけれども、上告制限の問題についても問題点があるということは指摘させていただいているところでございます。
  48. 橋本敦

    ○橋本敦君 ありがとうございました。
  49. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 以上で両参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。  本日は、長時間にわたりまして大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。本委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。大変にありがとうございました。     ―――――――――――――
  50. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 引き続きまして、読売新聞社編集局解説部次長鶴岡憲一君及び弁護士坂本修君から御意見を承ることといたします。  この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙のところを本委員会出席いただきまして、まことにありがとうございました。皆様から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、今後の審査参考にさせていただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  議事の進め方でございますが、鶴岡参考人、坂本参考人の順にお一人十分程度ずつ御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、念のために申し添えますが、御発言の際は、その都度委員長許可を得ることになっております。また、各委員質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたしたいと存じます。  それでは、まず鶴岡参考人にお願いいたします。鶴岡参考人
  51. 鶴岡憲一

    参考人(鶴岡憲一君) 私は、司法専門の記者というわけではありませんけれども、民訴法改正問題につきましては、情報公開問題の延長線上という視点から取材し、報道してきました。本日はそういう視点から、特に文書提出命令の問題にテーマを絞って意見を述べさせていただきたいと思います。  まず、今回問題になったのは、二百二十条四号ロの規定でありました。公文書内容秘密とすべき点があるかどうかの判断権を官庁にゆだねるという内容ですけれども、この条文が衆議院における修正で削除されたことは大変歓迎できることだと受けとめております。この条文が法制化されれば、文書提出範囲の拡大という法改正本来の目的に反することになると考えるからです。  民訴法の改正にはさまざまな多岐にわたる論点があったわけですけれども、私は、文書提出命令の問題というのは法改正目的から見ましても、これがすべてではないにしましても、非常に重要なテーマの一つであると思います。  といいますのは、この改正目的は、裁判には費用と時間がかかり過ぎるというふうなことが問題になってきたわけですけれども、文書提出命令改善されまして証拠が十分に提出されるようになれば、審理がスムーズに進むだけではありませんで、恐らく費用もその分だけ少なくて済むことになると思います。  また、証拠が十分に提出されれば真相の解明もスムーズに進み、それぞれの訴訟当事者が納得できる形での判決が出されやすくなるのではないかと思う次第です。そういうことになりますれば、控訴とか上告とかそういった案件も自然と減っていくのではないか、こう思います。  民事訴訟と申しましても、薬害などに絡む現代型訴訟におきましては官庁の責任が取りざたされるようなケースが多々ございます。こういうケースでは官庁は中立的な立場にはとどまりにくいという状況があると思います。そうした立場の官庁に公務秘密判断権を任せるということになりますと、官庁自身にとって不都合な文書を提出してほしいと求めましても、これは秘密ですということで恐らく提出を拒むでしょう。そして、その結果、文書提出の範囲もおのずから制約されてしまうことになると思います。  この問題を情報公開という視点から見まして、法務省と法制審の検討の経過について、私は特に二点について疑問を感じました。  まず、文書提出命令は官庁や企業への証拠の偏在を是正する一番有効な手段である。そして、この証拠文書の提出範囲を現状より広げることが重要なのだというふうに言われてきました。それであるならどうして、公務秘密について証言する場合は監督官庁の承認を要するという、これは情報公開の視点からいいますと大変後ろ向きな要件であります。こういった証言拒絶要件に四号の行政文書の提出要件を横並びさせようとしたのか、この点を大変疑問に思いました。むしろ、情報公開あるいは行政文書の開示を積極的に進めて証拠の提出範囲を広げようということであれば、証言拒絶要件の方こそ改正して情報公開という時代の流れにこたえる形にすべきだったのではないかと思います。  もう一つの疑問といいますのは、四号のロの規定が条文に盛り込まれました昨年十二月の時点でも、私たちの眼前ではエイズ薬害訴訟に絡む行政情報をぜひ早く開示してほしいという声が非常に高まっていたわけです。また、住専問題に絡みましても、大蔵省の情報を積極的に出してほしいという声が国会を含めまして非常にあったと思います。こういった現状を、現在進んでおりました情報開示の要請という声を、法制審や法務省の方々は一体どういったふうに評価していたのだろうか。こういった事例こそ、本当に官庁に秘密判断権を任せた場合に証拠となる文書の提出範囲が広がるかどうかを見きわめる大きな材料、格好の材料だったのではないかと思うわけです。  私自身、これまで幾つかの官庁を取材してきましたけれども、その都度印象に残るような情報隠しに遭遇してまいりました。こういった体験も含めて言えば、官庁が自分に不都合な情報をなかなか出そうとしないということは、エイズ行政対応を見ましても非常に容易に推察できたのではないかと思うわけです。法制審や中央省庁の人たちは、エイズ薬害の感染被害者が、死ぬ前に私は真相を知りたいんですと叫び続けてきたわけですけれども、こういった声を一体どのように受けとめていたのだろうかと本当に疑問に思わずにはいられません。  四号ロの規定が行政文書提出範囲の拡大の妨げになるのではないかということを私が確信しましたのは、その条文が盛り込まれたいきさつを取材した結果でした。異なった立場の信頼できる複数の人の取材から、この条文を加えなければほかの省庁が納得しないんですというふうに言われているという話でした。この条文を入れた原案どおりでなければ各省庁の事務次官会議も通らないということを法務委員方々が法務省の人から言われたという話も再三にわたって聞きました。こういったことはまさしくほかの省庁の圧力があったということを示す事態だと感じました。  この取材から、四号のロの規定というのは、証拠収集の拡充強化を求める国民の声に反し、隠したい文書はどうしても隠したいのだという官庁の意向に沿う案と私としては判断し、報道してきた次第です。  また、この条文は情報公開法の精神にも反するものだと思っております。情報公開法といいますのは、官庁の恣意的な判断をできるだけ排除し、行政情報原則的に公開することが目指されているわけです。ところが、この四号のロというのは官庁の完全に裁量的な公務秘密判断を認めるわけですから、まさしく正反対な性格を持ったものであると言わぎるを得ないと思います。いろいろな官庁が情報開示義務の軽い法律の方へ流されがちになることはもう常識的にも予想できることだと思います。  この条文の削除を歓迎したいのは以上の理由からです。ただ、衆議院における修正で、公務秘密判断司法にゆだねることが規定されないで先送りされたことは大変残念だと思っております。  何が公務秘密に当たるかの判断におきまして、官庁が中立であり得ないことがある事情からも、また三権分立という観点から見ましても、公務秘密判断権は官庁以外の中立的な立場の機関に行ってもらうのがやはり適切であると思います。裁判所は、これまでも何が秘密に当たるかという問題で判断をしてきた実績がございますし、仮に下級審の判断が誤っても上級審で慎重に再点検できる、こういった仕組みがありますから、裁判所が公務秘密判断を行うのがやはり最適だと思います。  今後引き続いて検討が行われるといたしましても、裁判所に公務秘密判断権をゆだねるということと、証拠提出範囲の拡大という民訴法改正の本来の趣旨を明確にした上で進めていかれることが一番重要なことではないかと思う次第です。  また、今後の検討につきましては、専門的な問題であるから、政治家でもなく法制審委員のような専門家にこの問題は任せるべきだという意見の方の声も聞きました。しかし、公務秘密判断を官庁あるいは裁判所に任せるべきなのかということでしたら、これは別に専門家でなくても理解できないことではないと思います。  むしろ、ほかの省庁の圧力が今回のようにまかり通りまして混乱が生まれた背景としましては、法制審が審議経過を明らかにしないという、専門家独特と言っていいのかどうかちょっとわかりませんけれども、秘密主義の運営があったという印象を強く私の取材からも受けました。今後の検討に当たりましては、まず議事録を公開させまして、審議経過を再確認した上で進めていく必要があるのではないかというふうに思う次第です。  また、今回のように官庁自身の利害に深く絡むような立法におきましては、立法府のチェックがいかに重要であるかということが本当に明確になったと思います。今後検討を進めるに当たりましても、ぜひ立法府にリーダーシップを発揮していただきまして、積極的に国民の声も聞きつつ検討を進めていっていただきたいと思う次第です。  今後の修正の方向ということになりますと、本当に公務秘密なのか判断が難しいケースが確かに出てくると思います。そういう場合におきましては、裁判官非公開審理、いわゆるインカメラ方式と言われている方式ですけれども、これを適用することを考えるのも一つの工夫かと思われます。ただし、非公開審理と申しますのは、裁判公開原則という点からいいますと絶対に正しいものかどうかということでは私自身も疑問に思う点がございます。  そういう場合に備えまして、アメリカではボーンインデックスという方式で、秘密そのものは語らないけれども、その周辺まで、秘密ぎりぎりのところまで官庁に説明させまして、それで本当に秘密として扱って開示すべきでないかどうかを判断する方法が使われているということです。  こういった方法も併用いたしまして、判断材料が少な過ぎる場合にはインカメラ、そこまで行かなくて済む場合にはボーンインデックス、あるいは一時的な裁判官判断といった方式を採用すればいいのではないかと、素人考えながら思う次第です。  また、何が秘密であるかという定義も今回問題になったわけですけれども、これは本当にやはり行政情報というのは国民の財産だと思いますので、非開示の範囲はできるだけ限定的に定義されるべきではないかと思います。  以上で私の陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  52. 及川順郎

    委員長及川順郎君) ありがとうございました。  続きまして、坂本参考人にお願いいたします。坂本参考人
  53. 坂本修

    参考人(坂本修君) 弁護士の坂本でございます。一九五九年に弁護士になり、以来今日まで三十七年間一貫してひたすら現場の弁護士であった者として、民訴法の改正について意見を申し上げます。  意見はたくさんありますが、大きく言って、公務秘密とされる文書についての提出命令の問題、非公開弁論準備手続の問題、上告制限の問題、これが国民裁判を受ける権利を保障する民事司法として、この法案改正法案であるのかどうなのかを決する大問題だと思います。  一の論点につきましては、既に衆議院修正がされまして次善の策として私も積極的に評価をするものであります。限られた時間の中で、二と三の問題、とりわけ二の非公開弁論準備手続を中心に意見を述べます。最大の問題だと思うからであります。にもかかわらず、衆議院でも実際上の審議は全くされず、マスコミにおいても完全に見逃されている問題だと思うわけです。  以下、その理由を述べます。  法案原則非公開弁論準備手続新設いたしました。これは非公開での弁論準備手続をやり、その中で書証の証拠調べまで認めてしまうというものであって、今までの民事裁判のあり方を根底から変えてしまうものであります。  「裁判所は、争点及び証拠の整理を行うため必要があると認めるときは、当事者意見を聴いて、事件弁論準備手続に付することができる。」、当事者意見裁判所を拘束しませんから、つまりは弁論手続をとるかとらないかは結局は裁判所の専権であります。しかも、この弁論準備手続では、「裁判所は、相当と認める者の傍聴を許すことができる。」となっています。裏読みではありませんが、この条文はきちんと読めば裁判所は相当と認めなければ傍聴を認めない、つまり原則非公開手続だと見るべきであります。  重大なことは、この非公開弁論手続準備書面の提出、証拠の申し出についての採否の決定だけではなくて、書証の取り調べが行われるとなっていることであります。私の学問不足かもしれませんが、法案に「争点及び証拠の整理」としか書いていないのに、中身を見ると証拠の取り調べが入っているというのは実に奇異な感じがします。着ている服と中身が違うんだと思わざるを得ないわけです。  しかも、ここで調べられる文書というのは、契約書とか登記書とかいわば事件と別に前もって客観的につくられたというような文書に限りません。本来は証人として証言すべき人たちが裁判が起きてから書いた陳述書、つまり証言内容に当たる陳述書をすべて取り調べることができるのであります。  したがって、この点については、この手続の賛否についてさまざまに意見を持つ学者、法律家であっても、実際には証人調べ以外のすべての裁判活動証拠調べ弁論手続非公開の中に行われてしまう、それは問題なんだということを一様に指摘されております。  例えば、判例タイムズ九〇三号のこの問題の特集であります。この判例タイムズの座談会、三十二ページ以下のところに、小林秀之上智大学法学部教授、加藤新太郎司法研修所事務局長・判事などの方が私と同じことを言っております。したがって、公開の今私たちが普通裁判というときに考えられる法廷、だれもが傍聴できる法廷での証拠調べというのは、このやり方を進めていくと証人調べしかなくなってしまうという日本司法制度民事裁判制度についての抜本的な改悪が実現するんだと私は思わざるを得ません。  具体的に私の経験に基づいて申します。  私は、かつてある金融機関で少数の組合の人たちが連日第二組合から暴力やつるし上げを繰り返され、耐えかねて犯人を告訴したところ、女性を含む五人の労働者が証告だということで解雇をされたという事件を担当いたしました。法廷が始まりました。会社からは支店長を含む十九通の陳述書が提出されました。いずれも、そんなことは全くないと、微に入り細に入り実に説得力のある陳述書でした。私たちは公開法廷で厳しく反対尋問をし、うそを明らかにし、この裁判に勝利することができました。解雇は無効となりました。  しかし、私は今振り返って、この新弁論準備手続で十九通のうその陳述書が全部取り調べられ、実際上裁判官の心証が形成されてしまった後に、しかもその陳述書に縛られて法廷に出てくる会社側証人を反対尋問し、真実を明らかにすることが今できるかと言われたら、私は全く自信がありません。  実際の裁判では、会社側が白を黒とする陳述書をたくさん出してくるケースは実に多いのです。そのことが判決上はっきり指摘されているのは、最近の代表的な事件として東京電力人権裁判、横浜地裁判決を挙げることができます。これはたしかおととしだったと思います。横浜地方裁判所は、判決文中わざわざ被告会社の立証の特異性という一項を設けて、会社側の三百五十一通にわたる膨大な陳述書について、これらは会社のあら探しの主張をなぞったものであり、そのほとんどは信用することができないと厳しく判決をしました。  私は、もし新設手続のもとで三百五十一通のこういう陳述書が出され、その取り調べがすべて終わった後にどうやって真実を立証するかということを、人権を守る立場弁護士として心から憂えるものであります。  私が言うのは、決してこういういわゆる労働事件とか公害事件とか行政事件に限ってのことではありません。例えば、私たち弁護士は、バブル経済の渦の中で、大手銀行、ノンバンク、サラ金会社、時には仮装した暴力団金融などにだまされてむちゃな金を貸し与えられる、家や宅地を担保にとられる、わけもわからずに連帯保証契約、根保証契約に印をつかされる、そしてやがては厳しい取り立てに追い回される人たちの裁判をたくさん担当しております。  もしこの改正が通ったら一体どうなるでしょうか。だまし同然につくらせた契約書にぴったりと筋書きを合わせた陳述書、そして今回の関連法案第九条で認められる公証人面前宣誓陳述書をびしつとつくれるのは金融機関の専門家であります。庶民は弁論準備手続段階でこれに対抗する陳述書をつくることは多くの場合困難でしょう。非公開法廷で金融会社の取り立て専門家とその弁護士さんたちにこういう文書を次々に突きつけられたときに、被害者である庶民はどうやって自分権利を守ったらいいのでしょうか。  忘れてはならないのは、民事裁判では弁護士が代理人としてつかない本人訴訟が数多いということです。地方裁判所の調査で、双方弁護士の代理人がついているのはわずか四四・九%しかありません。当事者双方に弁護士がついていないのが一六・七%、原告側にのみ、つまり原告にしか弁護士がついてないのが何と三五・四%です。非常にたくさんの被告が弁護士なしで法廷へ来ているんです。  こういう被告にとって、今私が言ったような非公開手続で、つくられた陳述でどんどん責め立てられたらどうやって身を守るんでしょうか。それがどうして国民が納得のできる親切な裁判になるんでしょうか。証人調べはもう残りかすですよね、調べた後の。マスコミの方々にもどうしてこのことが問題にされないのか本当に私は不思議に思います。  マスコミだって、今の準備手続のときには原則非公開ですから聞けないんですね。だから、準備手続で全部もう裁判の荒仕事が終わってしまって、最後にいわば儀式的に証人が出てきたときにしか司法報道はできません。公務秘密が明らかにならないのは言論の自由に対する侵害だとマスコミの社説や記者の方々の言われるのは本当に正しいと思います。でも、うその陳述書がまかり通って形骸化した証人尋問の段階しか報道できないというのはやはり日本の言論の死ではないでしょうか。  私はそういう点で、もう時間もありませんので、私の結論を申し上げます。非公開弁論準備手続は削除していただきたい。どうしても今さら削除することができないというなら、少なくとも当事者双方の同意を要件としてもらいたい。そして、仮にこの同意があったときでも、証言にかわるような陳述書の証拠調べはできないとしてもらいたい。これが最低の要求であります。  上告制限をすべきでないことについては、先ほど中務参考人が申し上げたことに賛成でありますので、省略をいたします。  最後に、国民権利を守る民事裁判制度を本当にこれを機会につくりたいと思います。  遅過ぎる裁判の問題があります。問題の抜本的な解決は、司法予算が国の総予算の〇・四%、東京都の警察関係予算の二分の一以下という異常な状態にあります。これをやはりちゃんとして、裁判官、書記官、速記官らの増員や裁判所施設の改善を図ることです。  日弁連裁判官を退官した弁護士対象に聞き取り調査した結果、最も多忙だった事期は、東京や大阪など大都市の地裁・高裁民事部と、その周辺の地裁民事部にいたときで、担当事件は二百件以上三百件未満が最も多く、三百件以上、四百件以上という裁判官もいたことが明らかになっています。朝日新聞は六月十二日の夕刊でこのことを赤裸々に明らかにしております。  自分法律家の経験、私は裁判官をやったことはありませんが、三百件や四百件の事件を持って、人権を守り、事実が何かを調べて判決するということはできません。こういうことを改めるのが基本であり、こういうことに手をつけずに、先ほど言った、密室でどんどん裁判実務をやってしまう、このことは結局はたくさんの庶民に悔し涙の解決を強いることになり、司法に対する信頼を失わせることになると思います。良識の府とされる参議院が今から審議を尽くしていただいて、最善の解決を図られることを心から望んで私の意見の陳述を終わります。
  54. 及川順郎

    委員長及川順郎君) ありがとうございました。  以上で両参考人の御意見の陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  55. 野村五男

    ○野村五男君 ただいまは鶴岡参考人、坂本参考人、御陳述ありがとうございました。  まず、民事訴訟の現状、将来に向かっての課題といった点についてお尋ねしたいと思います。  民事裁判については、ただいま御説明もありましたが、時間と費用がかかり過ぎるという点が大きな問題であると言われております。今回の民事訴訟法案は、このような問題点を少しでも解消して民事訴訟を利用しやすくしようということを一つの大きな目的としていると説明されております。  そこでお尋ねしたいのですが、民事裁判に時間と費用がかかり過ぎると言われる原因はどこにあるとお考えになるのでしょうか。また、このような問題点を解消し、民事裁判改善するための方策としてはどのような方策があるとお考えでしょうか。  鶴岡参考人には、新聞記者としてのこれまでの民事裁判事件の取材などを通じて感じてきたことを、また弁護士である坂本参考人には、当事者の代理人として裁判実務に直接携わってこられた者として感じてきたことを、それぞれお答えいただきたいと思っております。
  56. 鶴岡憲一

    参考人(鶴岡憲一君) 私は、先ほども申し上げましたように、司法専門記者ではありませんので、全般的な民事裁判問題点というのは承知しておりませんが、やはり根本的な問題というのはなかなか真相が明らかにならない。特に、私は自動車とかあるいは航空関係を担当しておりまして、そういった製品欠陥に絡む紛争を何度か取材したことはございます。  そういった取材を通じまして感じましたのは、やはり証拠が官庁なりあるいは企業なりに偏在している。裁判になりましても十分な証拠を出されないために、文書提出命令現行法下では十分に機能していないと言われておりますけれども、そういった点がやはり一番大きな問題ではないかというふうに思う次第です。  また、ほかの方々もいろいろ御指摘されておりますけれども、私がたまたま読んだ本では、もう既に七〇年代から一人当たりの裁判官が三百件以上の事件を抱えて疲労こんぱいしているというふうなことが書かれておりましたけれども、裁判官が少な過ぎるということも問題であろうかと思います。  したがいまして、そういった問題点解決していきますのには、一つはやはり証拠を十分に提出させられるような仕組みが必要である、これが今回問題になった文書提出命令の問題だと思うわけです。それともう一つは、裁判官をふやすということではないかなと素人考えながら思っております。  以上です。
  57. 坂本修

    参考人(坂本修君) いろいろあると思うんです。確かに長過ぎる裁判というのは救済にならないと思いますので、早くしたいと思います。  解決策はいろいろありますが、やはり証拠の偏在を打破して、先ほどから問題になっております文書提出命令なんかを官民を問わず前進させるということは非常に大きな第一歩になると思います。歓迎をしたいと思います。  それから二番目に、これは短い時間で言いづらいんですが、挙証責任の問題というのがあるような気がします。つまり、どっちがどのぐらいのことを証明したら正しいことが正しいと言ってもらえるのかということです。例えば、私が担当している事件では女性の人たちはほとんど昇格、昇進を二十年たってもしない。男はどんどん上がっていくのに、女だけは同じ試験で入ったのにどんと下の方にいるという事件があるんですね。七年半裁判やって、やっと近く判決。王様は裸じゃありませんが、データを出したら、女が差別されているというのは一発で勝っていいんだと思う。けれども、いろいろうるさい、難しい問題がありまして、あれを証明しなきゃならぬ、これを証明しなきゃならぬ、これはどうだとありまして、勝つだろうなと思うまで証言しようと思うと、裁判官が不足で月に二遍か三月に二回ぐらいしか法廷に入りません。速記官が足りないから、速記録がないから次だと相手の弁護士はおっしゃいます。そんなことでずるずる延びている。だから、挙証責任をもう少し常識的なものにすれば随分違う。  最後に、しかし、何といっても人の問題です。裁判官をふやしてほしいと本当に思います。裁判官と随分意見が違うときがあり、対立することもあった人間ですが、少なくとも私は、私たちの弁護士の中で最もよく働いている者に比べても、裁判官は過労だというふうに思います。  たまたまある法廷が終わった後、裁判官と雑談することがありましたら、坂本さん、過労で死んだら、遺族があんたを頼むようにしようかと笑っていました。それは異常です。私は、裁判官は気の毒だと思います。いい判決をしていただくには、裁判官、もちろん書記官や速記官を含めてふやすことをぜひ国会で善処されたいと心から願いたいと思います。
  58. 野村五男

    ○野村五男君 ありがとうございました。  ただいまそれぞれのお立場から民事裁判の現状に対する御認識などについて御意見を伺ったわけですが、それでは、それぞれのお立場から見て、今回の民事訴訟法案内容は全体としてどのように映っているのか、この点についてお二人の御意見をちょうだいしたいと思います。
  59. 鶴岡憲一

    参考人(鶴岡憲一君) 全体の評価というのはなかなか私の立場では申し上げにくいところなんですけれども、文書提出命令以外の点で、私個人的に一番問題だと感じましたのは、やはり坂本先生が指摘されました審理非公開部分が拡大されかねない問題であるということと、それから最高裁の上告制限であろうかと思います。やはり裁判というのは公開原則であるべきでありますし、また国民裁判を受ける権利というのはいかなる理由でありましても制限されてはいけないんではないかという考えからです。  以上です。
  60. 坂本修

    参考人(坂本修君) 改正点がたくさんございます。その中で、一つ一つとらえれば改正点何点、改悪点何点と、そういうふうにやれば私は改正点が多い法案だと思います。したがって、この法案をつぶしてしまえとか、改悪反対だとか、そういう立場では全くありません。改正したいと本当に思います。評価をしております。ただ、その中で今の弁論準備手続の問題と上告制限、これは比べて何対何でいいとか悪いということではないと思います。裁判は劇的に変わると思います。  これは、倉田卓次さんというベテランのたしか三十数年裁判官をやった方が今弁護士になっておりまして座談会で話していますが、やっぱりこの非公開手続の中で弁論準備兼和解というのが始まって、仕事に追われている裁判官がそのプレッシャーに耐えかねて十分調べ切れないうちにもう和解しなさいとおっつけていくような傾向が起きることを自分は不幸だけれども予言するということを言っています。私はそう変わると思います。  だから、このままならば、もし私に一票があるならばこの法案に私はやっぱり反対をいたします。非常に改正点がたくさんあり、心から改正したいと思っても、今の点が解決しなければ反対をするのが私は国民のためだと自分では確信しています。
  61. 野村五男

    ○野村五男君 次に、少額訴訟手続についてお尋ねしたいと思います。  今回の民事訴訟法案には、現行法にない全く新しい手続として、少額訴訟手続の創設が盛り込まれております。この手続は、これまで裁判を起こしても時間と費用の面から割が合わないと考えられてきたような紛争についても、一般の方々裁判による解決を求めて裁判所に持ち込むことができるようにという趣旨で導入されるのであり、三十万円以下の金銭の支払いを求める事件について、原則として一回の期日で審理を終えて直ちに判決をしようというものであります。  それでは、このような手続の創設についてどのように思われるか、鶴岡参考人お尋ねしたいと思います。
  62. 鶴岡憲一

    参考人(鶴岡憲一君) 裁判に絡むトラブルというのは年々ふえてきておると聞いております。しかしながら、この民訴法改正目的でも問題になりましたように、時間とお金がかかり過ぎる、こういう点から見ますと、少額訴訟制度につきましては時代の要請対応した改正点ではないかというふうに思っております。
  63. 野村五男

    ○野村五男君 次に坂本参考人お尋ねしたいと思いますが、少額訴訟手続を実際に運用するに当たって、運用に当たる裁判所としてはどのような配慮が必要になると思われますか。また、市民にとって本当に利用しやすい制度とするためにはどのような工夫があると思われますか。弁護士として長年訴訟に携わってこられた立場からの御意見を例えればと思っております。
  64. 坂本修

    参考人(坂本修君) 率直に言って私今具体的にこうしたらいいという案を持っておりません。ただちょっと心配なのは、手続に応ずるかどうかを最初に、たしか第一回の口頭弁論のときにもう決めちゃうんですね。だから、法廷に来た被告の方がその制度趣旨、これに応じてもいいし応じなくてもいいんですよというようなことをよほど裁判官が親切に話してあげないと、こんな仕組みになっちゃったのかなと思って準備もできないままその手続に乗ってしまい、やっぱり負けちゃう、あとは異議しかない、そういうふうにならないようにする。せめてその程度の努力が要るだろう。  この点につきましては、あとはやっぱり私たち弁護士も現場で実践をしながら、裁判官とも御相談し当事者とも相談しながら、弊害をどうやって少なくして役に立つようにしていくかという努力が必要なんだろうというふうに思っております。未来の私の努力義務だと思いますが、こうしたらいいというのは今の程度しか申し上げられません。
  65. 野村五男

    ○野村五男君 それでは時間もありません。最後最高裁判所に対する上訴制度についてお尋ねしたいと思います。  今回の民事訴訟法案では、最高裁判所に対する上訴制度整備一つの大きな柱とされております。現在の複雑化、多様化した社会状況から考えると、今後は司法役割がますます重要になってくると思われますので、その意味でも最高裁判所に対する上訴制度整備は重要なことであると思っております。  この点について、ことし三月三日の毎日新聞に掲載された「日曜論争」を見ますと、弁護士最高裁判所の判事にもなられた橋元四郎平弁護士も、裁判の充実のために上告制限には賛成であると述べておられます。  そこで、今回の民事訴訟法案による最高裁判所に対する上訴制度整備について、同じ弁護士としてどのようにお考えになっておられるか、坂本参考人お尋ねして、終わりたいと思っております。
  66. 坂本修

    参考人(坂本修君) 刑事裁判のことですが、ずっと昔学生時代に冤罪事件の八海事件の映画を見たことがあります。高裁で死刑判決を受けた被告が面会に来た人に、鉄格子にしがみついて、まだ最高裁があるんだと叫ぶところで終わっていました。確かにいろんな難しい問題があるんですが、これは私の一面的な言い方かもしれませんが、一審も乱暴で高裁も乱暴で、救いを最高裁に求めるしかない、絶対的な上告事由がなくても判断してほしいという事件が実に多いんですね。橋元四郎平さんがお書きになったのを読みました。気持ちはよくわかるし、ああいう面もあると思います。しかし同時に、たしか同じ毎日新聞に別の日弁連弁護士さんが、最高裁の判事を四十五人ぐらいにしててきぱきやったらいいじゃないか、そっちの方が本筋じゃないかというのを書いておられました。  私は、もっと裁判官をふやして一審二審の裁判を充実させ、最高裁まで行かなくてもいいようにさせることを大前提にしながら、最高裁の裁判官をふやすという解決の方が大筋の解決であって、そこが大変だから縮めてしまうのは、結局水をあふれさせ、司法に対する信頼を失わせるというふうに思って、この改正には残念ながら賛成できません。
  67. 野村五男

    ○野村五男君 ありがとうございました。
  68. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 平成会の魚住裕一郎でございます。  本日は、マスコミの現場から、また裁判の現場から貴重な御意見をいただきまして、両参考人に対しお礼を申し上げる次第でございます。  何点か聞かせていただきたいというふうに思います。  鶴岡参考人にお伺いをいたします。鶴岡参考人の読売新聞紙上における解説の記事を読ませていただきましたけれども、条文での明確な修正をすべきであるというような趣旨でございました。また、先ほど意見陳述で、与党の修正案公務秘密文書については先送りではないかというような御意見でございました。この点についてもう少し意見を述べていただけますか。
  69. 鶴岡憲一

    参考人(鶴岡憲一君) 条文での明確な修正と申しますのは、文書提出命令につきましては拒否事由について現行法では規定がないわけです。したがいまして、合理的な規定を明文で設定すべきではないか、こういう趣旨です。  それから、公務秘密についての、どういうことですか。
  70. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 この点につきまして具体的な条文といいますか、どういうような制度の立て方が参考人としては一番適切と考えておられるのかということをお願いいたします。
  71. 鶴岡憲一

    参考人(鶴岡憲一君) 公務秘密判断の仕方につきましては、先ほど意見陳述でも申し上げましたけれども、やはり官庁自身が判断するといいますのは、官庁の利害に絡む情報が問題になった場合に、どうしても中立的な立場からの公正な判断というのは非常に困難になってしまいます。したがいまして、公務秘密文書判断はやはり第三者が行うのが本筋であるべきかと思います。  そして、その第三者機関として最も適当なものは何かと申しますと、やはり現在の公的な機関を見回してみましても裁判所以上のものはないだろうと思います。裁判官というのは本来、建前からいいましても組織のあり方からいいましても、中立公正な立場判断が求められる存在であります。したがいまして、やはりこの公務秘密判断というのは裁判所にゆだねるのが一番適当ではないかと思う次第です。
  72. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 先ほど再検討に関連して御意見がございました。秘密について官庁が判断するのか裁判所判断するかについての判断専門家でなくてもできるんだというようなことでございました。確かにそうだなと思います。  参議院に送られてきた案というのは、衆議院修正になった上での案でございまして、至急に再検討をすべきであるというような附帯決議がつけられておりますけれども、鶴岡参考人としては、再検討をする場所、機関、どのような場所が一番いいかという点についてお尋ねをしたいと思います。  先ほどは立法府のチェックというふうなことも言っていただきましたけれども、このまま法制審議会に差し戻しといっちゃおかしいですけれども、原案をつくったところへまた戻すということなのか、あるいは鶴岡参考人のような情報公開に広い知識、また見識をお持ちの方に入ってもらって議論をしていくべきなのか、その場合どういうことが考えられるのかということについてコメントをいただきたいと思います。
  73. 鶴岡憲一

    参考人(鶴岡憲一君) 今回の法制審の対応を見てまいりますと、一番問題だったのは、全員一致の結論という方式がまず一つありまして、それ以上に問題なのは、この審議の経過を明らかにしないで秘密主義で運営してきたという点であろうかと思います。  例えば、こういう内容がもし途中で明らかになっていれば、もっと二百二十条四号のロというのは早くから問題にされていたのではないかということが法制審の小委員会の議事録などを見ますとある程度わかってまいります。この議事録を見ますと、三権分立という考え方からかなりかけ離れた発言が割合目につきます。また、この四号のロの規定について、これに反対する意見も結構この小委員会の議事概要には掲載されております。こういったものがなぜもっと早く明らかにできなかったのかなということを一番感じます。  それから、この法制審の民訴法の検討の中心になってきました部会長あるいは小委員長、この人たちの、専門家としては本当に押しも押されぬ権威者だというふうに伺っておりますけれども、例えば経過を確かめたいという私の取材に対しましても、議事録を読んでほしいということで応じていただけませんでした。しかしながら、議事録はこの法制審でもって非公開を議決していたわけです。かなり厳しい言い方をしますけれども、こういった無責任と言えるような対応をされる方がリーダーとしてやっておる機関では、とても私としては安心して今後の検討を任せられないという気がいたします。  また、中野貞一郎先生、この方は民訴法部会の小委員長をお務めになりましたけれども、衆議院での参考人としての意見陳述あるいは質疑の中で、四号のロの規定につきまして、現在の裁判所判断権のあり方につきまして、裁判所判断現行法下ではないのだと、裁判官秘密になるかどうかを最終的に判定できないのだというふうな見解を述べておられました。  しかし、既にこの公務秘密についての判断を行っている判決というのは、先ほどの中務先生の紹介されたものなどを含めまして幾つかあったわけです。こういった現状をどういうふうに認識されているのかということを考えますと、一国民として考えてみました場合にはやはりこの方もとてもお任せできないなという気がいたします。したがいまして、仮に法制審に差し戻すといたしましても、こういった方々はやはり今回の混乱の責任ということを含めましても、退いていただくのが適当ではないかと思う次第です。  また、立法府役割ですけれども、法制審にまず情報公開といいますか議事録の公開、議事内容公開をきちっとやっていただくと。確かに発言の自由を確保するということは審議経過では大切なことであると思います。したがいまして、例えば発言者の氏名を隠す、出さないということはやむを得ないかと思いますけれども、それ以外に隠すべきものは、こういった一般的な案件を審議する場におきましては私はないのではないかと思う次第です。こういったことをまず立法府から、もしできるのであればチェックし、やはりこういった情報公開をまず審議の過程から実現していっていただくということが必要ではないかと思います。  以上です。
  74. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 貴重な意見、ありがとうございました。  それでは、坂本参考人にお伺いをいたします。  弁論準備手続を中心にしながら御意見をいただきました。三十七年間にわたる裁判実務の経験の上からの御意見でございまして、私も裁判実務十年ぐらいしか実はやっておりませんから、状況が違うのかもしれませんが、実際普通のといいますか、ごくごくありふれた民事事件の場合、第一回法廷で行って、弁論権和解というか、そういう手続に事実上入って、書面を交換しながらまたそれを裏づける証書をどんどん出すというような形で、実質上、弁護士も迅速な裁判にかなり協力をしてきたし、またそれがみずから抱える当事者利益にもなるという思いで私も実はやってきました。これを制度的にもきちっと整備していこうというような趣旨で今回の弁論準備手続制度が規定されたのではないだろうか、決して裁判の実際を無視したような形ではないんではないかと私は思うんですが、この点についての先生の御所見をいただきたいと思います。
  75. 坂本修

    参考人(坂本修君) 私も、今でもたくさんではありませんが、弁論権和解手続に応じたことがございます。それは、委員の質問されたような、そっちの方が早くてうまくいくかなと思ってやったのであります。現行法にはない手続、本当は法律上はない手続で問題なんですが、実務で便利なものですからやったことはあります。だから、その質問の趣旨はわかります。  ただ、決定的に違うのは、今の弁論権和解は双方の同意が必ず必要であります。どんな乱暴な裁判官でもいきなり弁論権和解手続だと言う方はいらっしゃいません。必ず双方の代理人に、今度はこれからは弁論権和解でやりたいと思いますが、次回裁判官室でいかがですかと言って、双方がはいと言って初めて入るんです。ところが、今度の手続当事者の同意が要件になっておりません。ということは、裁判所がそう決めたら従わざるを得ないということであります。これについて実際上、異議を申し立てたり争ったりする手段はないと思います。ここのところが決定的に違う点の一です。  それから二番目は、陳述書の証拠の取り調べまで弁論権和解で全部やる、まあ弁論だからやっていると言えばやっていますけれども、どっちかというと余りそこには集中してないように私には思えます。ところが、今度は陳述書の取り調べが全部行われるのが原則になっております。  しかもその中には、先ほど言葉足らずでしたけれども、公証人のところへ行って、私のこの陳述書は本当のことを書いているんですから信じてくださいと言って宣誓をすれば宣誓陳述書というのができて法廷へ出てきます。弁論準備手続で全部調べられます。法廷でもしその証人をうそじゃないかといって私が尋問しても、うそだということを認めれば、公証人の前でうそをついたのがけしからぬということで、それだけで十万円の過料を取られます。どうしてそういう重荷をしょっている証人を反対尋問で真実のことを言わすことができるでしょうか。それは先生も弁護士の経験を振り返っていただければ、私とほぼ同じ思いがあると思うんですが、それじゃ困るんだと。  だから、今度のやつでもせめて同意にしておけばいいと思うんですね、双方の。そして、陳述書はやめよう、ほかのことはちゃんとやっちゃおうというならば、それでも私は原則賛成しかねるものがあるんですが、少なくとも法案をこのまま通してはならないとまでは申し上げません。ただ、そこのところは先生本当に心配だと思います。
  76. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 坂本先生の御懸念ももちろんわかるわけでありますが、一方でやはりたくさんの事件を処理しなくてはいけない、また記録を読んで裁判官のそれなりの、頭で整理した上で訴訟を進行しなくてはいけないという職責があるわけですね。結局その懸念とその職責とのバランスを考えていくべきだろうと私は思っておるんです。  先生の意見陳述の中で貴重な御提案がございました。これ非公開準備手続は削除する、どうしても残すというならば、双方の同意、そして陳述書についての証拠調べはできないようにする。私はそこまでは必要ないんではないか。つまり、弁論準備手続に付す、これは今のような条文で私はいいと思うんですが、今度戻る場合ですね、当事者双方が同意しなければ、申し立てをしなければこの口頭弁論に戻れないというような制度じゃなくして、ちょっとおかしいぞと思ったら当事者一方の申し立てで取り消すようにしていけばちょうどうまくバランスがとれるのではないだろうか、そんなふうに私は考えておるんです。この点についての先生の御意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  77. 坂本修

    参考人(坂本修君) やっぱり私の心配の方が強いのです。そして先生、それは私の心配だけではなくて、先ほど申し上げましたこの倉田卓次元裁判官、三十三年ぐらいですか、超ベテランの裁判官。この弁論準備手続にはむしろ結論としては賛成だとおっしゃっている方ですが、その方がこう言っているんです。  やはり、これから先も、弁論兼和解じゃなくて、弁論準備兼和解という形のことをやる。件数の圧力が大きい以上は、必ずそういう逃げ道を選ぶ人が出てくる。つまり、争点整理もやるんですけれども、ある程度争点整理が煮詰まると、本当に争点整理をきちっと詰めずに、もうここらでちょっと和解案を示して、どうだというふうな形で片づけてしまうほうが、楽というか、判決書かなくていいし控訴もないという形での和解を選ぶ裁判官が必ず出てくる、つまり、件数の圧力さえなければきちっとやる人が多いと思いますが、件数の圧力が大きいときには、必ずそういうイージーな形をとる人が出てくるだろうと、不吉な予言をするわけです……。 三十何年の裁判官のキャリアのあるこの方の心配はそうだし、今の弁論兼和解でも心配なんです。  先生、それでしたら私はなぜ双方の同意にかけないのか。つまり、裁判官から双方同意してやってくれませんかと言われたときに、よほど心配なことがあるか、それじゃ困るという理由がなければ、裁判官の心証といったって実務弁護士考えますし、当事者だって裁判官の権威とかどう思われるかというのを物すごく心配しますから、そんなに楯突くことはないと思います。  現在の弁論兼和解がほとんど異議なく進んでいるのはそういうことです。でも、異議があってもやらされてしまうというのと、異議があればそうはならないということは、やはり民主主義手続の問題としては天と地の違いであり、そういうのは非公開ということの恐ろしさも含めてきちっとする方が私ははるかにすぐれていると思わざるを得ないのです。
  78. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 終わります。
  79. 千葉景子

    ○千葉景子君 両参考人、ありがとうございます。限られた時間ですけれども、何点かお尋ねをさせていただきたいと思います。  まず、鶴岡参考人お尋ねいたします。  鶴岡参考人は、民事訴訟法専門ではないけれどもという何か遠慮をなさった御発言でございましたけれども、大変貴重な御意見をいただきました。そこで、民事訴訟ということではなく、むしろ情報公開制度、こういう面からこの法案に注目をされてきたということでもございましたので、ちょっとその点についてお尋ねをさせていただきたいんです。  実は私も情報公開制度というのは、自分のことを言ってなんですけれども、いささか携わってまいりました。そういう意味では大変関心を持っている一人なんですけれども、国際的に見ましても、それから我が国におきましても、この情報公開制度というのは非常に大きなやっぱり今流れになっているだろうというふうに思います。地方自治体でもかなりの数条例化をされておりますし、それから、私もメンバーの一人にさせていただいて、情報公開法案を九三年に議員立法ではございますけれども出させていただいたりいたしました。  こういう流れの中で、今回の民事訴訟法の場合にも、この情報公開制度そのものがもっと迅速に国のレベルでも制定されていたらあるいは確立されていましたら、この問題ももっとスムーズに解決できた部分があったのではないかということで大変残念には思っているんです。そういう意味で、この情報公開制度のそのものの流れ、国では今まだ制度化されておりませんけれども、それについてどんなふうに考えられるか。  それから、そういう動きと裁判手続の中における行政情報取り扱いの差異というんでしょうかね、その辺については何かお考えを持っておられるか、もしお聞かせいただければというふうに思います。
  80. 鶴岡憲一

    参考人(鶴岡憲一君) まず、情報公開法の制定の流れですけれども、御承知のように、昨年四月から行政改革委員会行政情報公開部会が検討を進めてきているわけです。ことし四月に要綱案を発表したわけですけれども、確かに情報公開法といいますのは、国民情報公開請求権を認める、しかも憲法に基づいて認めるということですから、これが先に制定されておりますれば、この民事訴訟法文書提出命令ももっと開放的なものになったのではないかと思うわけです。  ただ、この情報公開法要綱案を見ますと、確かにこの不開示決定に対する救済につきましては比較的手厚いなという印象を受けます。例えば、不開示決定が出た場合に不服審査会にかけるわけですけれども、その不服審査会の対象には、これこれこういう情報は存在しませんという情報不存在という形での処分、これも不服審査会にかけられますし、それからその情報があるかないか言えない、存否不確認情報といいますか、そういう情報の場合も審査会にかけられるということですから、救済という点で見ますとかなり手厚いということが言えるかと思うんです。では、入り口のところ、窓口のところで果たしてどんどん出てくるような要綱案になっているのかといいますと、疑問に思う点が多々あります。  代表的なのは、行政の意思形成過程情報の扱いなんですけれども、この中で意思形成の過程で自由な発言を妨げるとかそういったことにつながるような情報を開示しないというのはわかるんですけれども、国民の混乱とか誤解とか、こういったものも不開示決定の理由になっております。しかし、誤解とか混乱といいますのは、むしろ情報公開して説明すればかなり解消される場合も多いかと思うわけです。したがいまして、そういった意思形成過程情報などの限定というのは、やはりぎりぎりまで絞った形にしなければいけないのではないかと思うわけです。  二番目の御質問ですが、裁判手続の中での行政情報取り扱いという問題ですけれども、これは情報公開法とオーバーラップする部分があると思います。  といいますのは、行政情報を開示するのは、いずれにしましても、裁判においてもあるいは一般的な情報公開の窓口におきましても官庁である点は変わらないわけです。この点で共通しているわけですから、やはり両方の法律とも情報をより広く開示するという方向でつくっていってほしいと思うわけです。  それでは、違う点といいますと、ほかの参考人の方も御指摘されましたが、民事訴訟法の場合は訴える利益という要件に当てはまる範囲での情報の開示ということになり、それだけむしろ一般的な情報公開よりももっとさらに広げて出すべきものではないかと思うわけです。  そうしますと、今回の民事訴訟法改正案での文書提出命令の扱いを見ますと、それがすべてといいますか、四号文書については秘密判断権が官庁側にあるものということになりますから、意見陳述でも申しましたとおり、これは官庁にとって不都合な情報はすべて隠されてしまうおそれがある、こういう危惧を持っております。  あと、情報公開法要綱案と民事訴訟法の共通点として、文書提出命令に絡む守秘義務の問題につきましては、特に衆議院の方で行政改革委員会側の答弁で、公務員守秘義務の範囲と不開示情報の範囲が実は要綱案の主要な論点になっていたというふうな答弁がありました。そして、まず不開示情報の範囲を検討し、その上で守秘義務との関係検討する、こういう考え方であるという答弁でしたけれども、中間報告の要綱案では全く守秘義務について触れられておりません。  これは私の記者としての推測にすぎませんけれども、情報公開法審議における守秘義務の扱いというのは、民訴法での守秘義務の扱いの結論が出るのを待っているのではないかというふうな危惧を感じました。  そういう点から見ましても、守秘義務の扱いに関しましては、やはり秘密判断権を官庁に任せるのではなく司法審査にゆだねるという方向で検討が進められるべきものと思っております。  以上です。
  81. 千葉景子

    ○千葉景子君 もう一点お聞きいたしたいと思います。簡単で結構でございます。  今回の民事訴訟法案の基本的な視点は、国民にわかりやすい、そして公平で公正でしかも迅速な裁判をという点にあろうかと思います。その目的自体はだれもが求めているところでございます。  そういう意味で、マスコミの関係者としてあるいはこれまで裁判を見てきた観点で法案を生かす意味で、さらにそれにプラスする意味で、迅速な裁判あるいは国民にわかりやすい裁判という意味で、何か御注文のようなことがあればお聞かせいただきたいと思います。
  82. 鶴岡憲一

    参考人(鶴岡憲一君) 迅速さという点でいいますと、やはり最初に申しましたように、裁判で何が問題になっているのか、あるいは係争の案件の真相というのは一体何なのか、これが早くわかるということが一番迅速化する上での本筋の課題ではないかと思います。  その点で見ますと、やはり証拠が十分に提出されるということが必要であろうと思います。長くなっている裁判というのを見ますと、証拠が官庁なりあるいは企業なりに偏在している事件に多い。そこから今回の民訴法の改正の動機も発しているところがあるわけですから、そこのところを対応していくのが一番大切かなというふうに感じております。
  83. 千葉景子

    ○千葉景子君 それでは坂本参考人お尋ねいたします。  大変難しい問題ではございますけれども、これまでの経験に基づいて本当に私どもも考えさせられる問題点を御提起いただきました。  時間がございませんので、なかなかそれについて十分にお聞きできないのですけれども、先ほどの中で、裁判官自体が件数の多さの圧力を感じておられる、それが解消されることによって随分、いい裁判をしようということはだれも考えているだろうというふうに思いますので、そういう問題点があるということもわかりました。  それから本人訴訟が多いということもございます。これが双方に代理人がついていることがあれば随分いろいろな不利益を解消できる部分もあろうか思うんです。そういう意味では、御本人がなさることも別に悪いわけじゃないんですけれども、できる限り代理人もつけられる、それから裁判自体も受けやすいという、例えば法律扶助という面でも、この法案ばかりではなくて考えるべき点があろうかというふうに思います。  参考人も全体としてはこの法案を進めていくという必要性も御指摘をいただきましたが、それ以外に裁判官についての問題点とかあるいは訴訟を利用するに当たっての問題点など、実務経験からお感じのことがございましたら御指摘をいただきたいと思います。
  84. 坂本修

    参考人(坂本修君) 私は全然別件で最近日本の代表的なマスコミの編集委員の人と会う機会がありました。裁判官をふやせと言ったら、裁判官だけじゃなくて弁護士もふやしたらどうだと。賛成ですと。  私は、弁護士がまじめに働くことを前提として、例えば地方公務員並みの年収があって、両親と家族を含めて生きていくということが両立するといいんですがと言ったら、怒られまして、それは弁護士のわがままだと。タクシーだってはやらないタクシーもある、飢える自由は万人に共通である、そういうことを言うからあなた方は世の中の評判が悪いんだと言われました。  私は、それは違う、私は金持ちにしてくれとかサボって寝ていても地方公務員並みの給料をくれと言っているのではない。たくさんの事件を抱えた裁判官が人権を守れないように、まじめにやっても本当に食えなくなったらやっぱり弁護士が人権を守るのは難しくなる。だから、法律扶助制度などをせめてイギリスやアメリカ並みに、なぜこの経済大国日本でつくれないのでしょうか。私たちは自腹を切って当番弁護士をやっています。私も六十三歳になっていますが、当番弁護士は一件も逃げないでやっています。でも、そんなことを持ち上げていくのが政治なんじゃないですか。それが文明であり民主主義ではないですかという議論をしました。  だから、裁判官をふやし、弁護士もふやし、そしてだれでもが弁護士を雇えるようにし、もちろん雇わなくてもいいと思います、そして親切な裁判が受けられるようにしてほしいと思います。  一点つけ加えさせてください。時間がなくて省略しましたが、私がお手元に差し上げた文書の六ページのところに、密室だってそれから公開法廷だって、裁判官はまじめな人たちだから、やることは変わらないのじゃないかという意見をよく聞くことがあります。でも、これは実務の経験としまして、傍聴席に傍聴人が一人いると裁判官はしゃんとしますし、変な言い方ですが、私の依頼者でなくてもだれかに見られているときの私はちゃんとしています。見られていないときは手を抜いているのかというと、そんなことはありません。でも、やっぱり緊張感が違うんです。そういうことがやっぱり大事なことだというふうに思います。  特に、本人訴訟か何かで事件を早く片づけなきゃいかぬというプレッシャーにあえいでいる裁判官が、いいかげんに頭にきちゃって、ぐずぐず言わないで解決しなさいというのは、公開法廷では言いませんが裁判官室では飛び出します。何度もあることです。  ですから、そういうことも含めまして、今、千葉先生の言われたように、裁判がもっと、どんなに貧しくても、しょせんは今の世の中どう頑張ったって社会的強者の方が権利利益も守れると思います。せめて裁判になったら平等になれる、あるいは平等に近いところにいる。それが先ほどから言った非公開弁論手続、陳述書取り調べ方式をやられたら、戦車の前に裸で立つようなことに庶民はなりはせぬでしょうかと。私たちは庶民の弁護士として頑張りますが、私たちの手だけでは及ばない。せめて法律をちゃんとしてほしい、そう思うわけです。
  85. 千葉景子

    ○千葉景子君 ありがとうございました。
  86. 橋本敦

    ○橋本敦君 きょうは両参考人、御多忙のところありがとうございました。  まず、坂本参考人にお伺いをさせていただきますが、貴重な御意見を拝聴いたしまして、大きな観点で裁判を受ける国民権利国民裁判を受ける権利というその裁判はまさに真実を明らかにし、適正な法令の適用、国民が納得する裁判ということだと思うんです。  そういう国民裁判を受ける権利をどう担保するか、これがまさに法制度の問題ですが、そういう中で私は、憲法原則としての公開法廷というのは近代民主社会において極めて重要だと思うんです。そういう裁判公開という憲法原則とのかかわりにおいて、先生が厳しく指摘される非公開弁論手続の持っておる問題点とのかかわりで、その点について御意見をいただければ幸いと思います。
  87. 坂本修

    参考人(坂本修君) 先ほども一部申し上げましたが、基本的人権というのは、昔そういうものがなくて、奪われていて、そのために大変悲しいことが続出したから今度はやめよう、それを人権として決めようと。それが私は基本的人権が憲法に書かれていく歴史の流れだというふうに習いましたし、事実そうだと思います。  裁判官はまじめな人が多いと思います。けれども、あれだけ何百件としょっていてだれも見ていない法廷で、きょう一息かけてこの本人がべたんと折れてしまえば、判決文も書かなくて済むし控訴もされない、一丁上がるんだと。その誘惑に駆られて事件が流れていくという危険は実務的には非常に大きい。変な言い方をすると労働事件なんかよりももっと被害が大きいかもしれない、抵抗する力を持っていませんから。  それと公開法廷で、最近では裁判官ウォッチング運動なんというのが随分はやっています。ここに奈良弁護士会が一九九五年に発表した裁判傍聴運動の記録というのがあります。非常におもしろい記録です。この中で裁判官の経験を持つ以呂免義雄さんという副委員長がまとめていますが、刑事事件以上に民事事件の応酬というのは激しい、そして民事事件こそ法廷で傍聴して緊張感のある法廷にすることが大事なことなんだ、刑事事件以上にある意味では大事なんだということを奈良弁護士会の役員の方々はこもごも語っておられます。  私は、これは本当に弁護士会が総力を挙げてやった傍聴運動の総括の文書でぜひ御参考にしていただきたいんですが、民事裁判における裁判公開というのがいかに大事かということを実践の結果論証したものとして貴重な証拠だと考えております。
  88. 橋本敦

    ○橋本敦君 次に、準備手続において書証の取り調べが行われる。陳述書の取り調べが行われる。その準備手続の基本目的がまさに争点の整理だということであれば、裁判所はその事件について心証をとるのが目的ではないはずです、争点の整理にとどまる。ところが、実際に陳述書等がたくさん出てくる。そして、そういうことについて関係当事者意見がその陳述書が正当だということも含めていろいろ言われるということになりますと、おのずから心証形成がされるということは当然出てくるということが避けられないんではないか。  私も長年の弁護士経験から、労働事件の不当労働行為の問題あるいは人権侵害の問題、こういった問題で、端的に言って企業側がまさに真実を進んで明らかにするなんというのはもうとても信用できない経験をしばしば持っているんです。だから、坂本先生が今指摘されたように、あの東電の事件でも、三百通を超える陳述書のほとんどが信用できないということを裁判所がわざわぎ判決で厳しく批判をするということだって起こってくるわけです。だから、そういうことを避けるためには一体どうするのかというのは、これはまさに裁判の公正を確保する上で極めて重大な問題になってくるわけです。  その点について、先生の御意見では、一つ当事者双方の同意なしにこういう手続をやっちゃいかぬというお話もありましたが、そういう陳述書の取り調べということで裁判所が間違った心証をとらないようにするために、一体弁護士はどういう努力が可能なのか可能でないのか、先生の経験から御意見があれば承りたいと思います。
  89. 坂本修

    参考人(坂本修君) 陳述書の問題は三つあると思います。  一つは、陳述書をあらかじめ全部調べてしまいますと、裁判官によっては大体わかったから証人は要らないと言うでしょう。もし証人を出すとしても、陳述書が正しいということを調べる。あるいは陳述書で言い足りないところをちょっと例えば十五分とか二十分で言ってくれとか、まず証人調べがそういう点では非常に減って形骸化していくと思います。  二番目は反対尋問です。証人尋問でがちがちに固めて、違ったことを今さら言えば十万の過料を払わなきゃいけない。しかも、企業社会のおきてに縛られている証人の方に陳述書がうそだということを言わせ、本当のことを言わせるというのは本当に綱渡りの軽わざです。私は自信がありません。全力を挙げますが自信がありません。そういう点ではうそがはびこるということです。  先ほど、証拠開示というと正しい証拠が出てこないということを言われました。そうじゃなくて、うその証拠法廷に乱入してくるということをどうするのかというのが問題です。  最後に三番目、にもかかわらず陳述書は今でも結構使われているじゃないですかと、どうしたらいいのか。私は、個人的な努力としては陳述書を自分はなるべく使いません。相手にも使わせません。民事訴訟には書面を朗読するような形で証言することは禁じられています。もともと邪道なんです。ただ、それが裁判が込み過ぎてそうなっています。  またもとに戻りますが、裁判官をふやしていただければ、その事件判決がまだ出ていませんので私のやったことが正しいか正しくないかは今後の問題ですが、私は十三人の原告をたった一日で調べたことがあります。会社の反対尋問もたった一日、十三人の証人を二日で全部終わりました。そういう努力はしていますしできると思います。でも、弁論準備手続が入って陳述書の取り調べが原則になったときに、裁判官に私が言ったようなやり方で裁判を進めることを認めていただけるでしょうか。変わり者扱いにされ、そんなのは今の新法のもとではだめということでけ飛ばされることをまじめに心配しています。
  90. 橋本敦

    ○橋本敦君 非常に重要な指摘実務上の経験からいただいたわけですが、そこのところでもう一つ伺いしたいのは、陳述書の取り調べがはびこるのは私も基本的に賛成できません。しかし実際に出てくる。それが非公開準備手続ということでわずかな当事者の中で出てくるということと、公開法廷でのそういう陳述書の提出ということについて、公開法廷意見が言える、何が出てくるかは明らかになる、関係者が法廷にたくさんいるということとの違いは、これまた大きい問題じゃないかと思うんです。その点について、先生の経験からどうお考えになりますか。
  91. 坂本修

    参考人(坂本修君) 端的に言って二つが大きく違うと思います。  第一点は、陳述書が公開法廷で出されたら、その陳述書を採用することの可否についてみんなが見ている前で堂々と反論ができます。裁判官の密室の中でごちゃごちゃやられるのではありません。だから、不正常な陳述書をその場で防ぐことができるでしょう。  第二点、当日になるかその次になるかわかりませんが、公開法廷で陳述書が出されてくるときは、大体次回なら次回にそのことで陳述書を書いた人間が証人として出てきます。それを反対尋問で、余り陳述書の中身が裁判官の心にしみ込む前に法廷でみんなが見ているところでそれがうそだということを明らかにできます。それは弁論準備手続で何カ月も前に全部陳述書だけが非公開の中で取り調べられる効果と比べたらやはり天と地の違いだと思います。
  92. 橋本敦

    ○橋本敦君 貴重な具体的な指摘をいただいたと思いますが、この民訴法の改正が法制審ではもう五年もかけてやってきたんです。ですから、先生が御指摘になった弁論準備手続だけに限らず、上告制限の問題もある、それからその他マスメディアを使った新しい方式の取り入れもある、簡易事件の処理もある。まさに基本法の一つですから、逐条審議的な意味も含めて、将来の我が国裁判制度のあり方の基本にかかわりますから、これはもう国会は一国会も二国会もかけて本当に論議すべきじゃないか、私は弁護士という立場は当然ですけれども、そう思うんですが、残念ながら国会はもう終わる、こういうことでしょう。先生どうお考えになりますか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  93. 坂本修

    参考人(坂本修君) 本当にそうだと思うんですよね。  法制審が一生懸命調べたのは、そのこと自体に私は反対はございませんけれども、法律をつくるところは国会だというふうになっているはず。国会は法制審が決めたことについて認証をする場では決してないんだというふうに思います。  承るところによりますと、会期はもう間もなくであり、今私が言ったような論点は衆議院でも調べられていないし、マスコミでも解明されているとは思いません。私が言っていることは、弁護士の三十七年の生涯をかけて申しますが、日本の庶民の人権を守れるか守れないか、どういう裁判になるかということについて決定的なことだと思います。ぜひぜひ、党派を超えて審議を尽くしていただきたい。  でも、きょうの参考人で半日ですか、この間一日たしかお調べになったと聞いていますので、あと一回ぐらいというふうに聞いています。六法の一つで、手続法ですから、これでだれそれがすぐ何人悪くなる、これで全部裁判やられるんですからね。これからの何十年の裁判がこの手続でやられるという、人権の根本にかかわることについて、なぜ二日半の審議しか参議院には許されないのでしょうか。  私は、衆議院の投票も全部してきましたし、参議院だって一度も棄権したことはありません。二院制のもとでいい法律をちゃんとつくってほしい、いつもそう思って投票してきました。すべての国民がそうであり、皆さんの議席はそういう国民の強い希望のもとに存在しているんだと思います。  ですから、もうぎりぎりここに来て私のお願いしたいことは、よく国会は継続審議ということをやりますね。何でこれが継続審議になったら困るんですか。これで半年法律ができるのがおくれたら何が起きるというのでしょう。継続審議をして、衆議院がどういういきさつかわからぬけれども実質上見落としてしまった中身を、国民のために参議院が本当に調べて打つべき手を、私が言ったのは一つの案であります。私はあれがぎりぎりの案だと思いますが、違う案があるというなら、それはそれで議院の良識でいろいろ御検討していただきたい。しかし、決して見過ごしていいことだとは思わない。それを継続審議という、議院だけが決められることがあるんですからやっていただけないでしょうかと。私は一度も棄権をしたことのない一人の有権者として、そして恐らく私のように思っている人がたくさん国民にいることを信じて、そのことをぜひお願いしたいと思います。
  94. 橋本敦

    ○橋本敦君 時間が終わりまして、鶴岡参考人には御質問申し上げる時間が私にはないので、大変失礼いたしましたが、おわびをいたしまして終わりたいと思います。
  95. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 以上で両参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見を述べていただき、まことにありがとうございました。本委員会を代表いたしまして衷心より御礼を申し上げます。大変にありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十五分散会      ―――――・―――――