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1996-04-11 第136回国会 参議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月十一日(木曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  四月十日     辞任         補欠選任      大森 礼子君     益田 洋介君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         及川 順郎君     理 事                 志村 哲良君                 野村 五男君                 平野 貞夫君                 橋本  敦君     委 員                 遠藤  要君                 下稲葉耕吉君                 鈴木 省吾君                 中原  爽君                 林田悠紀夫君                 魚住裕一郎君                 益田 洋介君                 山崎 順子君                 一井 淳治君                 千葉 景子君                 田  英夫君     国務大臣         法 務 大 臣 長尾 立子君     政府委員         法務政務次官  河村 建夫君         法務大臣官房長 頃安 健司君         法務大臣官房司         法法制調査部長 永井 紀昭君         法務省民事局長 濱崎 恭生君         法務省刑事局長 原田 明夫君         公安調査庁長官 杉原 弘泰君     最高裁判所長官代理者         最高裁判所事務         総局人事局長  堀籠 幸男君         最高裁判所事務         総局民事局長         兼最高裁判所事         務総局行政局長 石垣 君雄君         最高裁判所事務         総局刑事局長  高橋 省吾君     事務局側         常任委員会専門         員       吉岡 恒男君     説明員         海上保安庁警備         救難部警備第二         課長      小原 正則君     —————————————   本日の会議に付した案件外国弁護士による法律事務取扱いに関する特  別措置法の一部を改正する法律案内閣提出)     —————————————
  2. 及川順郎

    委員長及川順郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、大森礼子君が委員を辞任され、その補欠として益田洋介君が選任されました。     —————————————
  3. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 外国弁護士による法律事務取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 中原爽

    中原爽君 自民党の中原でございます。  改正法律案につきまして御質疑お願い申し上げたいと思います。  この法律案のもとと申しますか、我が国といたしまして国際的な法律問題に対処するという趣旨に基づきまして、この外国弁護士による法律事務取扱いに関する特別措置法、長い名称でございますので通称外弁法と言われているそうでございますので、以下外弁法ということで申し上げたいと思いますが、この外弁法昭和六十一年の五月に公布になりまして、昭和六十二年の四月に施行ということであります。  戦後、我が国と諸外国のいろいろな交流の過程の中で、我が国国際社会に占める地位、役割等々も重要なものとなりまして、それに伴い国際的な法律問題も増加したという形の中で、このような国際的な法律にかかわります問題に的確に対処するための法制度が整備されたということは大変評価をされることであります。しかし、こういった国際問題につきましては、外国からのいわゆるこういった法的なことに対する規制緩和要求が常にあるわけでございますけれども、我が国規制緩和考え方外国規制緩和要求と、この間にかなりな温度差等があるわけでありまして、その都度政府といたしましては、この法的な緩和要求ということにつきまして対応されてきた経緯があるわけでございます。したがって、その経緯につきまして概要だけを先に事務当局から伺っておきたいというふうに思っております。  お時間もございますので、政府がただいままで対応してまいりましたこの特別措置法にかかわります外国からの法的規制緩和ということにつきまして、簡略に御説明をちょうだいしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
  5. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) ただいま中原委員からも御指摘ございましたとおり、外弁法昭和六十二年四月に施行されたわけでございますが、その後もアメリカあるいは当時のEC等からもこの制度に関して規制緩和要求幾つかされてまいりました。  そこで法務省は、平成四年九月に日弁連と共催で国民各層関係各界の有識者を中心といたしまして外国弁護士問題研究会を発足させまして、この研究会は約一年の検討の結果を平成五年九月に取りまとめました。そして、法務大臣及び日弁連会長報告書を提出したわけでございます。そこで、法務省はこの研究成果を踏まえまして、平成六年の四月、外弁法改正案を国会に提出させていただきました。  その内容は、外国法事務弁護士日本弁護士との間における一定共同事業ができることとする、また外国法事務弁護士資格承認基準であります職務経験年数緩和、あるいは外国法事務弁護士の事務所につきまして所属ローファーム名称を使用することができるとすることなどを内容としておりまして、平成六年の六月に可決成立させていただきまして、昨年、平成七年の一月一日から施行されているところでございます。  さらに、今回との関係でございますが、外国弁護士によります国際仲裁代理という問題につきましては、外国弁護士問題研究会報告書においても早期検討が必要であるという指摘がされたところから、法務省平成六年六月、すなわち改正法案を可決させていただいたころに直ちに日弁連とまた共催いたしまして国際仲裁代理研究会を設置いたしました。この研究会は昨年の十月に結論を出しまして、国際仲裁事件手続について外国弁護士代理を行えることを法律上明定すべきであるという指摘がされたわけでございます。そこで、法務省はその結論を踏まえまして、国際仲裁代理規制緩和するという今回の法改正案を提出させていただいた次第でございます。
  6. 中原爽

    中原爽君 ただいま御説明がございましたように、一番近い時点でこの外弁法の一部改正平成六年に行われまして、ただいま御説明のございました四点について改正が行われた経緯がございます。このときを含めまして、規制緩和内容ということでございますけれども、今回の法改正内容については国際仲裁事件手続代理が行える、このことについては外国法事務弁護士外国弁護士、この二つの部分でその代理を認めるだけと言うと語弊がありますけれども、それが今回の一部改正の主たるものでございます。  そのことについて国際仲裁事件定義づけを行う、この三つが主体になっておるわけでありますけれども、このことが実際平成六年のときにできなかったという理由があるのか、あるいは当時はその必要性を感じなかったのか。一部改正はその時代時代に応じまして行われることでございますけれども、今申し上げたこの国際仲裁事件手続代理というものが何ゆえ今回出てきたのかということだけをちょっとお尋ねしたいと思います。どうぞお願いいたします。
  7. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) 確かに御指摘のとおりでございます。ただ、平成五年九月に出されました外国弁護士問題研究会報告書では、この国際仲裁代理の問題はもともと外国からの要望事項にもありましたし、私ども国内的にもこれは問題があるということで早期改正すべきであるという方向性は、皆、認識は一致していたんです。ただ、この報告書におきましても、外国弁護士による国際仲裁代理というものはもう少しょく調べてみないといけないところがあるんじゃないか、また専門性の高いやや技術性のある分野でもありますので、もう少し諸外国状況を確認した上で前向きな方向検討してはどうかと、方向性は出ていたんですが、もう少し確認、検討しろという、そういうようなことがございました。  要するに、十分詰め切れていなかったという点があったということから、前回の改正では一応それを除外いたしまして、国際仲裁代理研究会という専門的なそういうワーキンググループといいますか、研究会で改めて再検討していただいた、こういうことでございます。要するに、その当時、まだ詰め切れていなかったというのが本音のところでございます。
  8. 中原爽

    中原爽君 ありがとうございました。  いずれにいたしましても、今回の一部改正については、外国法事務弁護士外国弁護士両者にかかわることでございます。まず、その外国法事務弁護士についてでありますけれども、現行法制上、外国法事務弁護士我が国でその母国の法律等に関する法律事務を取り扱うということとされているわけでありますので、外国法事務弁護士におきましても国際仲裁事件代理現行法でも行えるのではないかということをちょっとお尋ねしたい、これが一つであります。  それから、引き続きまして、外国法事務弁護士ではない外国弁護士のことでありますけれども、この方につきましても、外国法事務弁護士でない外国弁護士について、国際仲裁事件手続にどのような形で現行法の中で関与できるのかどうか、この点をもう一つお尋ねしたいと思います。  それで、その両者につきましておのおの、両者といいますのは外国法事務弁護士とそれから外国弁護士との間で、取り扱うことのできる国際仲裁事件手続についての代理を行う範囲ということにつきまして何か根本的な違いがあるのかどうか、これも含めて三点の御説明をちょうだいしたいと思います。よろしくお願いいたします。
  9. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) まず第一点目の、外国法事務弁護士現行法でも国際仲裁事件代理を行うことができるのではないかという、そういう御趣旨だったと思います。  これは、確かに現行法のもとにおきましても、外国法事務弁護士我が国において原資格法または指定法に関する法律事務を取り扱うことが認められております。この原資格法あるいは指定法といいますのは、例えばアメリカニューヨーク州の弁護士でございますとニューヨーク州法、それから指定法といいますのは、ニューヨーク州法以外にアメリカのその他の各州の法律についても一応基本的な理解ができているということでこれはやってよろしいという、そういう指定をするということになっております。  したがいまして、現行法上、確かに委員指摘のとおり、外国法事務弁護士原資格法または指定法準拠法とする仲裁事件については当事者の代理我が国においても行うことができるという、建前上はそういうことになっております。  ところが、実際の国際仲裁事件におきましては、適用されるべき準拠法というのが一つの国の法律であることはむしろ少ないわけで、幾つかの国の法律が複雑に絡み合っている、あるいは一体どれが準拠法なのかよくわからないという、そういったことがある。あるいは国際仲裁事件では、これは世界共通なんですが、そういう準拠法が何かということは余り問題にしないで、むしろ各国法制にかかわりのない善と衡平による解決という言い方で、ある意味じゃ非常に茫漠とした、常識でとにかく解決しなさい、あるいは商取引慣行中心とした常識で解決したらどうかというような、こういう言い方をよくされるわけでございます。そうなりますと、日本におります外国法事務弁護士が果たして取り扱えるかどうかというのが非常にわかりにくいということで、現実には外国法事務弁護士代理人となることが極めて困難だった、こういう経緯がございます。  それから第二点目でございますが、現在の法律上、外国法事務弁護士でない外国弁護士国際仲裁事件手続に関与できないのかという、そういう御趣旨だと思いますが、これは現在の弁護士法第七十二条によりまして、日本弁護士でない者が報酬を得る目的かつ業として法律事件に関して代理等法律事務を取り扱うことを禁止しております。したがいまして、外国法事務弁護士でない外国弁護士我が国弁護士法では日本弁護士ではないという、こういうことになるわけでございます。また、仲裁事件は七十二条の法律事件に当たりますので、その手続についての代理外国法事務弁護士でない外国弁護士報酬を得る目的かつ業として行うことは禁止されているという、そういう建前になっております。  それから第三点でございますが、今回改正案をお認めいただきまして国際仲裁事件手続について代理ができるということになった場合、外国法事務弁護士外国法事務弁護士でない外国弁護士との間でその取り扱いあるいは代理範囲について違いがあるのかないのかということでございますが、この点につきましては実質的には変わりがなくなるということでございます。  以上でございます。
  10. 中原爽

    中原爽君 ありがとうございました。  やはり言葉遣いの上では外国法事務弁護士でない外国弁護士というような表現を常にしないとどうも法的には難しい、難しいと申しますか、間違いが起こるというようなことで、私のような素人にはよく御説明趣旨がわかりました。  それで、先ほども申し上げましたけれども、このもとになっております国際仲裁事件にかかわります新しい改正案条項ということで、これも法制上の技術的な小さな問題でございますけれども、ちょっとお尋ねをしようと思っております。  今回の改正法律案の中の第二条で、国際仲裁事件というものにつきまして、この事件定義するということが盛り込まれるわけでありますけれども、これが二条の十一号に入れるということで処理がされております。したがって、現行の十一号以降が十二、十三と順次繰り下がっていくということになるわけであります。いろいろな言葉意味定義でございますから、どこへ入れてもいいわけでありますけれども、常識的には一番最後に十四号ということを起こして入れれば事足りるわけでありますけれども、途中から繰り下げていくということについて、それなりの理由づけがおありだと思いますので、それを伺うということにしたいと思います。  それと同時に、この第二条は定義づけの項目でございますが、第二条の二号は外国弁護士定義でありますし、三号は外国法事務弁護士定義であります。したがって、繰り下げるのであれば、二、三に続いて四号のところにこの仲裁事件を入れれば二号と三号にかかわるということにもなったかなという、素人考えでございますけれども、そういうふうにも思っております。  こういったことで、これを十一号に入れたということについて簡単に御説明いただきたいと思います。  それから、この定義をいたします国際仲裁事件というものは、実際具体的にはどのような事例があるのかということをひとつお伺いしたい。  それから、現在国内にいろいろな仲裁機関があるわけでございますけれども、代表的なものは社団法人日本海運集会所でございましょうか、海事関係紛争を取り扱うということで運輸省管轄というふうになっております。また、国際商事仲裁協会という通産省管轄のものもあるというふうに伺っております。こういった現在の仲裁機関とのかかわり、あるいはこの仲裁機関国際仲裁事件を受理して取り扱っていると思いますので、その内容等受理件数、こういったことについて御説明をいただきたいと思います。  それから、諸外国においても今回の我々のこの案件と同じような形で国際仲裁事件手続代理が行われているであろうかと思いますので、諸外国においてのこういった法的な状況と我々の外弁法との相違について、特徴的な国で結構でございますから御説明をいただきたいと思います。  以上、四点ほどまとめて申し上げました。よろしく御説明をお願いいたします。
  11. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) 幾つかありましたので、あるいは落ちましたら御容赦願いたいと思います。  最初に、法制上といいますか、今度の国際仲裁事件という定義規定が二条の十一という途中に入ったのはどういう位置づけなんだろうという、こういう御質問でございまして、これは確かに委員指摘のようにどこへ入れても本当はいいのかもしれません。ただ、従来の各十三号までありましたものの並べ方を見ておりますと、一号から三号までといいますのは、これは専ら弁護士等法律事務を行う主体に関する用語定義を行ってきております。それから、四号から十号までといいますのは、原資格国など法律事務内容に関する用語定義してきているということでございます。続きまして、十一号から十二号は弁護士会に関する用語定義いたしまして、さらに最後の十三号でこの外弁法全体にかかわります、国内という、端的に言うと日本国内という、そういう定義規定を置いているんです。  この整理の仕方から見ますと、国際仲裁事件という用語法律事務内容に関する用語でございますので、その定義規定現行法の二条十号の次に置くのが相当ではないかという、こういう判断でここに入れたということでございまして、これはいろんな考え方があろうかと思います。技術的な問題だと思います。  それから第二点目、この国際仲裁事件とは具体的にどんなものがあるのかという御質問でございます。  ただいまお話がありましたように、国際商事仲裁協会などでやっておりますのは、例えばアメリカニューヨーク州に本店を置きます会社我が国本店を置く商事会社との間で商品売買等取引を行ったところ、これに関して紛争が生じた場合といったものが割合典型的なものでございます。あるいは日本海運集会所で行っているような国際仲裁といいますのは、専ら海事とか船に関する問題でございまして、例えば船の売買そのものトラブルが起きるとか、あるいは造船契約トラブルが起きた、あるいはやや法律用語で難しい定義規定もありますが、定期の用船契約をめぐる紛争などといった、こういったことが大体主流になっていると聞いております。  次に、仲裁機関における受理件数は大体どんな程度かということでございますが、先ほど委員からお話がありました我が国国際商事仲裁協会では、この協会が受理した仲裁事件のうち国際的な民事紛争に関する仲裁事件は、年によるばらつきがありまして年間三件から九件ぐらい、平均して五、六件という、こういうふうに聞いております。  それから日本海運集会所も、国際的な海事紛争に関する仲裁事件受理件数は、やはり年間五、六件程度にとどまるということのようでございます。  もっと国際仲裁我が国で活性化してほしいということは両機関とも述べておられました。  それから、国際仲裁事件代理につきましての諸外国との比較といいますか、諸外国ではどんなような規制がされているんだろうかという、こういう御質問だったように思います。  一般的に申しまして、欧米諸国等主要国におきましては、国際仲裁事件手続についての代理に関しましては、代理資格代理行為の形式につきまして特段の制約を課しておりません。したがいまして、各国弁護士が、その国籍でありますとかどこの国で弁護士資格を取ったかということを問わないで、仲裁地とされましたそれぞれの諸外国を訪れて代理人として関与しているという運用が定着しております。したがいまして、日本弁護士外国に行きまして国際仲裁事件代理をやっております。  実は国際仲裁代理研究会報告書にもそういったことを簡潔にまとめてあるんですが、具体的な国をここに挙げられておりますもので申しますと、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、香港、オーストラリア等、いずれも国際仲裁事件手続についてどこの国の弁護士代理人となることができるということで、特に制約はございません。  ただ、シンガポールにつきましては、実体準拠法シンガポール法である場合には、シンガポールにおいて開業資格を有する弁護士、すなわちシンガポール弁護士または政府法務官とともに仲裁手続に出頭することが要件とされます。したがいまして、外国弁護士が、例えば日本弁護士シンガポールへ行った場合に、シンガポール法中心になった場合には、シンガポール弁護士または政府法務官と一緒に出頭しなさいという、こういう規制がかかっておりまして、これは非常に変わった例として挙げられております。  以上でございます。
  12. 中原爽

    中原爽君 ありがとうございました。  時間がございませんので、あと二件ほどお尋ねしたいと思います。  外国法事務弁護士でない外国弁護士条項につきまして今回の改正案では、外弁法の第五章の雑則の方でありますが、五十八条の二というものを新設しております。それはそれでよろしいと思いますけれども、ただ、その条項ただし書きが後にございまして、そのただし書きのところについては外弁法条文を示して、同法五十七条第二号は弁護士法条文を示すという格好になっておりまして、結果的には同じことを言っているわけでありますけれども、業務停止について二年の内容規定ということであります。  しかし、外国弁護士業務停止を受けておりますと、当然のこととして外国弁護士やこの法律業務従事者はこの業務停止期間については仕事ができないということでありますので、特に該当しないということであります。したがって、こういった特に業務停止内容についてのことを取り上げてただし書きを設ける必要もないかなというふうに思うんですが、素人考えでございますけれども、この点について御説明をいただきたいと思います。  もう一点は、先般三月二十九日に閣議決定をされました規制緩和推進計画につきまして、これからこの外国弁護士問題についてはどのような形で取り扱われるのか。いずれにいたしましても、検討事項項目が予定されているわけでありますけれども、この点について簡略に御説明をいただきたいと思います。  以上でございます。
  13. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) 第五十八条の二、ただし書きというものは必ずしも置かなくても、むしろ当然ではないかという御質問だったと思います。  この点は、確かに常識的に考えれば、それは業務停止されているんだからやつちゃいけないよというのはごく当然のことと思われます。また、依頼者保護の観点から見ましても、そういう人がやってはいけないことは当然といえば当然だと思います。  ただ、弁護士法とかあるいは外弁法業務停止といいますのは、懲戒を受けた弁護士あるいは外国法事務弁護士一定期間業務を行うことは禁止はいたしますが、除名とか退会命令といったものと異なりまして、弁護士資格そのものあるいは弁護士たる身分そのものを失わせるということにはしておりません。したがいまして、業務停止ということを受けてもなお外国弁護士であることには間違いないという、そういう構造になっております。  また、国際仲裁事件代理を依頼されまたは受任した時点ではそういう業務停止を受けていなかったけれども、その後受けてしまったといった人についても、やはりこれは代理を認めるべきではないんじゃないか、こういう点がありまして、やはりそれをきちっと明確にしておくということでくどいようですがこういう条文をわざわざ置いたという、そういうことでございます。  それから、最後の、例の規制緩和計画について、外弁問題をどのように取り扱うのかというそういう御趣旨質問だと思いますが、確かに先般閣議決定されました規制緩和推進計画では外国弁護士問題に関しまして、この今回お願い申し上げております国際仲裁代理の自由化というものも盛り込まれておりまして、これにつきましては本年度じゆうに実施予定という、こういうことになっております。  また、かねてより諸外国からの規制緩和要望が強くありましたもの、あるいは行政改革委員会の意見書においても見直しをするべきであるという指摘を受けております外国法事務弁護士による日本弁護士の雇用問題、あるいは外国法事務弁護士資格承認基準であります五年間の職務経験要件の緩和ができないか、あるいは外国法事務弁護士が自国法といいますか原資格国法または指定法以外のいわゆる第三国法の取り扱いができないか、こういったことについても新たに計画に盛り込まれることになりました。  ただ、この三項目につきましては、昨年一月に施行されました改正法の運用をもう少し見守る必要もあるし、また現在、諸外国でも相当この外国弁護士の受け入れ制度の見直しなんかもやられているやに聞いております。こういったことの外国法制の動向などももうちょっと見定めて、これらを調査をしたい、かように思っております。したがいまして、この推進計画におきましても、本年度じゆうに見直しについての検討に着手し、平成九年度じゅうを目途に結論を得るよう努めることということで、鋭意これから検討してまいりたい、かように思っているところでございます。
  14. 中原爽

    中原爽君 以上でございます。ごく事務的な内容だけ確認をさせていただきました。質疑を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  15. 益田洋介

    益田洋介君 平成会の益田洋介でございます。よろしくお願いいたします。  まず、外国弁護士国内でどのように活動させるかというニーズにつきましては、特に我が国におきましては、第二次世界大戦後、軍属でありますとかあるいは通商関係の方、金融関係外国人が相当数一挙に流入してくることになったわけでございます。そうした歴史的な経緯、また経済活動、政治活動、通商活動等を通じまして、当然のことながら外国弁護士法律のアドバイスを受けるという必要性我が国に居住する外国人にとって多大にふえてきたわけでございます。  そこで、昭和二十四年に弁護士法が新しく制定された段階で、既に同法の第七条において外国弁護士日本国内において活動できるような条件を付与して、これは非常に注目すべきことでございますが、日弁連でなしに最高裁が判断をして、特に相応のあるいは相当の国内法についての知識を有していると判断される外国弁護士については、これは語学力に関係なしに日本弁護士と同等の一般的な法律事務を行うことを許可するという法律が施行されたわけでございます。この登録の申請が行われた実績は七十三件と伝えられておりますが、それが昭和三十年の弁護士法改正の段階におきまして、突如としてこの外国弁護士国内における一般法律事務の活動が停止されるに至ったという経緯がございましたが、この背景について若干お話を伺いたいと思います。
  16. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) 確かに、弁護士法七条というのがありまして、最高裁の承認のもとに、外国弁護士日本で既に活躍しておられた経緯がございます。  ところが、昭和三十年になりましてこれが廃止されましたのは、やはりまだ当時はほかの国でも外国弁護士の受け入れ制度というものがほとんどなかった。まだ三十年ですから戦後十年だったんですが、現在やっていらっしゃる方はいいが、どうもそれ以外の新しい方がどんどん入ってくるのはこれは問題があるということで弁護士会等からの働きかけもあり、また制度的にも、ほかの国では受け入れ制度がないのに我が国だけこういうふうにあるのは問題があるというようなことから、昭和三十年になりましてこれが廃止されたというふうに聞いております。ただ、従来から日本で働いておられる方は、これは従来どおりの既得権といいますかそういうのは認めて、日本弁護士連合会は準会員という形でそのまま引き続いて活動を認めているということでございます。なお、現在、その準会員の方はもうほとんどが高齢化されておりまして、でも形式的には十数名いらっしゃるんじゃないかというふうに聞いております。  以上でございます。
  17. 益田洋介

    益田洋介君 ありがとうございます。  昭和二十四年の段階で、ほかの先進諸国が全く取り入れていなかった制度我が国が国際化の急来の中で先んじて取り入れたということは、これはまことに歴史的には画期的な試みであったというふうに思っておりますが、今のお話を伺いますと、弁護士会等の圧力によって、働きかけによって三十年にそれが廃止されたということでございまして、つまり時代が逆戻りしたという一段階を我が国はこの問題に関しては残念ながら経験をしてきたわけでございます。それがまた再び、米国通商代表部あるいはEU、当時はECでございましたが、そうした各機関からの外圧によって再び門戸を開かざるを得ないという、そうした検討を迫られる状態に立ち至ったということは、国際化の激流の中で我が国が国際的な評価をどのように受けるかという問題について、残念ながら一つの蹉跌を私は踏んでしまったのではないかというふうに思っております。  さて、なぜそれでは近来になって、昭和六十二年でございますが、に外弁法という法律が施行されるに至ったかという直接的な原因についてでございます。これは非常に強い働きかけがアメリカ及びECから当時ございまして、なぜこのようになったかといいますと、これは当然のことながら、国際化が進んでおり、特に国際間の通商、交易というものが活発化してまいりまして、先ほど準拠法という言葉を用いられておりましたが、国際的に共通の法律がない限りにおいては国際間の金融ですとか通商問題については解決の糸口が全くないわけでございます。そういうことから、やはり均等に判断基準を設ける必要があろうということが世界の潮流でございまして、その中で弁護士業務だけがなぜ聖域化されているのか、もう少し国際的な共通した基盤に立って判断基準を持って法律というものを考えていかなければ、国際化の激流の中でもう日本という国が立ち行かなくなっていっている。  そういうふうなことから、またアメリカの経済的な情勢、それからまた日本が置かれている国際間における情勢といった立場から、ボーダーレス化といいますか、国境といいますか、国の閉鎖性、独自性というものをやはり切り開いていかないともう立ち行けなくなったというふうなことで、事サービス業、特にまた専門サービス業と呼ばれています弁護士ですとかあるいは医師ですとか公認会計士といった職業の人たちは特に国際化が要請されている、そういった背景が私はあったように思っております。  それで、今、第一次産業、第二次産業を除きましていわゆるサービス業と呼ばれている第三次産業においては、その生産高といいますか生産量というのは、全生産量の中の六割から七割を先進国の間では占めていると言われている時代になっておりますので、特にサービス業については門戸を開くべきだと、自由化をすべきであると、それから市場アクセスを開くべきであるという要請がひたひたと押し寄せてきた。そういった背景の中で、我が国の法曹界は、特に日弁連だと思いますが、抵抗し続けて現在に至っているということでございます。  こうした一般的な背景、それから将来的に我が国はこうした要請に対してどのように対処していくのか。問題を先送りにするばかりではいけない。やはり早晩、検討すべきことは検討すべきであると。  今回の法改正におきましても、二、三点の問題は解決を見ようとしているわけでございますが、しかし将来にまだまだ山積みされた問題が、先ほどもおっしゃっておりましたが、第三国法の問題であるとか、あるいは雇用とかパートナーシップの問題であるとか、そういった問題が山積みにされているというふうに理解しておりますが、この辺の一般的な将来的な我が国の対応について法務大臣から御意見を伺いたいと思います。
  18. 長尾立子

    ○国務大臣(長尾立子君) ただいま委員からお話がございましたように、国際化の大きな流れの中で、世界の経済の中における日本の諸活動というものが今後開かれた形で行われていかなければならないというのは、お話のとおりであると思います。いわゆる規制緩和問題、これはどのような分野においても我々が積極的に取り組んでいかなければならない問題であるというふうに考えております。  ただ問題は、我々が担当いたしておりますこういった法務行政の分野におきましては、国民の権利を守っていくということがやはり基本に据えられなければならない。このことをやはり私どもは忘れてはならない問題であると思います。  したがいまして、この規制緩和という大きな課題と、一方におきまして、国民の権利はきちんと守られるというもう一方の課題との調和をどのように図っていくか。各方面の有識者の方々、関係者の方々の御意見を十分に踏まえながら我々はやっていかなければならない、このように考えている次第でございます。
  19. 益田洋介

    益田洋介君 ありがとうございました。  それでは、若干実務的なお話に移らせていただきたいと思います。  まず最初に、外国法事務弁護士及び外国弁護士につきましては一般的に、弁護士法七十二条の規定のもとで日本における一般法律事務は行えないという原則になっているわけでございます。外国法事務弁護士の方々のお話を伺っておりますと、日本の依頼人、日本の企業でありますとかあるいは日本の個人といったクライアントが外国法事務弁護士に、例えばイギリスの法律でありますとかアメリカ法律でありますとかフランスの法律であるとかいうことについてアドバイスを求める際にどういう点を主眼にしているかといいますと、確かにアメリカ法律ではこうだ、イギリスの法律ではこういうふうな解釈が成り立つ、しかし、それでは同じ問題について、同じ事案の同じテーマについて、日本法律についてはどういう解釈が成り立っているのか。逆に、日本法律ではこのようにこの問題は解釈するけれども、アメリカ法律のもとにおいてはこのような解釈が成り立つ、一方、またイギリスの法律においてはこうした解釈になってしまうんですよといった、つまり国際法比較論的なアドバイスを求めるのが日本のクライアントの建前であると。つまり、アメリカまた諸外国日本法律の違いは、あるいは解釈の違いはこういうことであるということを知りたいのが日本のクライアントの要望である。  しかし、現行法におきましては、外国法事務弁護士というのは、日本法律について助言をしたりアドバイスをしたり提言をしたりすることは許されていないというのが現況のようであると。そうしますと、つまり専門サービス業たる弁護士がクライアントのニーズに対して十分にこたえられない、むしろ半分もそのニーズについてこたえられないような状況に追いやられているから、したがってクライアントのニーズを満足させることはできない。そこでその結果として仕事の量も減ってきてしまっていると。  現状として、イギリスあるいはアメリカ、フランスから続々と昭和六十二年以降、東京に進出してきた外国のローファームは、店を縮小するなりあるいは撤退するなりというようなことがどんどんとふえてきている。これが非常に不評を買っている現状であるというふうに考えますが、日本の一般法律事務をどのように将来、外国法事務弁護士または外国弁護士に移譲していくつもりがあるのかどうか、あるいは全くその辺についてはこれはもうモノポリーであるというふうに決めつける態度を日本は保ち続けるのかどうか、その辺についての所見をお伺いしたいと思います。
  20. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) 外国法事務弁護士制度自体は、日本で特別に試験を課したり何か研修を課して受け入れているわけじゃございません。あくまで外国でのそういう資格があって外国で仕事をなさってきたという経験があれば、日本に来ていただいて、その自国法といいますか、得意とする分野の法律についてリーガルサービスを行ってよろしいという制度でございます。  これにつきましては、例えば受け入れ制度を持っている国アメリカでも、日本弁護士なるがゆえに当然アメリカアメリカ法を扱えるという制度にはなっていないわけでございます。これはお互いにどこの国もそういう特殊性は原則としてあるわけでございます。  それで、それはさておきまして、ただいま委員からお話がありましたところで問題点が幾つかあったのは、御指摘のとおり、例えば日本のクライアントがいろいろ国際的な問題で相談に行きます。すると、これは御指摘のとおり、外国ではどうで日本ではどうでというふうに、そういう対比したりいろんなさまざまな角度から調べてほしいという、こういうことになるのは当然のことだと思います。  現在の法律でも、外国法事務弁護士はある事件につきまして日本弁護士と一緒に仕事をすることは全く禁止されておりませんので、現にそういう方はお互いに提携関係を組みましていろいろ一緒にやられているわけです。  それからもう一つ、昨年一月からの改正法の施行に伴いまして、共同事業もできますと、同じ事務所の中で。それで、お互いに一緒に仕事をして、その収入を分け合うことができるという、こういうこともやっております。  それから、前々から、抽象的な提携じゃなくて、事務所を共同使用することによって実際にはそういうニーズにこたえようというやり方で、いろいろそれぞれ工夫されてやっている点もございます。  したがいまして、現在、提携、共同事業がどうなっているのか、あるいは実際に仕事をどうやられるかということをもう少し見てみないと、性急に日本法も扱えるんだというようなことにはならないんじゃないかと、かように思っております。  そういうことでございますので、現段階で直ちに、例えば外国弁護士が当然日本法も扱えるんだというような、そういう方向性につきましては、私どもはまだそこまでは至っていないということでございます。
  21. 益田洋介

    益田洋介君 ありがとうございました。  今御指摘の点にありました、法律事務所の共同経営という問題と法律事務の共同作業という問題というのは、ちょっと混同されてお答えになっていたかというふうに思っております。  共同経営の場合は、外国法事務弁護士あるいは外国弁護士日本の一般法律事務について介入するという危険性は、共同経営ですから主従関係はありませんのでむしろ少なかろうと。つまり共同経営の場合は、共同作業ということで、外国法事務弁護士あるいは外国弁護士が自国の法律についての意見を述べ、一方でまた日本弁護士国内法のアドバイスをする、そういった形での作業が進められるというふうに思います。  一方で、今度は雇用の問題でございますが、日本弁護士外国法事務弁護士あるいは外国弁護士が雇用するということはいまだに禁じられているというふうに理解しておりますが、つまり共同経営の場合は許される、共同作業はある程度の分担範囲を分けた上で、区切りをつけた上で許されるのにかかわらず、この場合はなぜ雇用が許されないのか、その辺の背景について御意見を伺いたいと思います。
  22. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) 外国弁護士問題研究会でもいろいろ検討いたしましたが、やはり雇用は現段階では禁止するのが相当であるということで結論が出ております。  その理由は、外国法事務弁護士は基本的には自国法といいますか自分の国のことしか本来やってはいけないという、そういう枠組みがあるわけでございます。もし日本弁護士を雇用いたしまして、日本弁護士日本法を扱わせて、いわばウ飼いの匠みたいに全部こういうのを吸い上げてやるということになると、これは弁護士としての制度的な問題として非常におかしいのではないか。すなわち、これはいろいろ異論がありますけれども、日本法は自分はやってはいけないけれども、日本弁護士さんを手足として使って日本法を実際にやらせるという、そういうことは問題があるという、こういう指摘があったわけでございます。  しかし、先ほども中原委員からの御質問にも簡単にお答えいたしましたが、今度の規制緩和推進計画の中では、この雇用問題についてももう少し根本的にいろいろな見方を改めて検討してみようじゃないかということになっております。これは、果たしてそういうような弊害が本当にあるのかないのか、ほかの国では雇用を認めているケースもあるではないか、そういったいろいろな国ではどういう状況になっているのだろうかということも踏まえて検討はしてみようじゃないかという、こういうことになっております。  従来の研究会の報告では非常に問題があると言っておりますが、やはりほかの国の制度をもう一度再確認し、あるいは本当にそういう弊害があるのかないのかということについても検討はしてみましょうという、こういうことになっているところでございます。
  23. 益田洋介

    益田洋介君 問題があるという御意見は、多分法曹三者の中では一者からしか出てこない問題ではないかというふうに考えております。  つまり、主従関係を持つということは屈辱である、プライドを傷つける、それが本来の日本弁護士の姿勢からすると問題だ、このような見解であると私は思います。先ほど調査部長が御指摘のとおり、一国法だけでは判断できないケースが非常にふえておりまして、日本の場合はこの仲裁問題につきましても非常に事案が少ないわけでございます。  例えば、これは法務省でまとめていただいた資料でございますが、商事紛争、コマーシャルケースにつきましては年間わずか十件にすぎない。それからまた、仲裁センターというのは第二東京弁護士会でつくっておりますが、これは平成二年に設立されたにすぎない。だから、歴史的にも現状としてもそういった面では、国際紛争という観点からしますと日本は随分立ちおくれているわけでございますが、一方で例えばEUの国々でありますとかアメリカというところではむしろ国際紛争の方が多い。そういうふうな状況でずっと推移しております。  そうした観点からしますと、当然日本はいろいろな面で自由化の促進を迫られておりますし、国際化の足音は一段と高鳴ってきているわけでございますので、これは当然のことながら、今後国際紛争あるいは多国間の法律にわたる紛争がふえてくるのは火を見るより明らかでございます。そうした場合に、一国法にとどまって判断をするという今のようなシステムでは成り立たなくなってくるのではないか。  例えば、同じ事案の同じテーマにつきまして、外国法と日本法と両方、共通の土壌で判断をしなきゃいけないという状況が間違いなく起こってくるわけでございます。その際に、国内法については日本弁護士がするんだ、そして外国法についてだけ外国法事務弁護士あるいは外国弁護士が判断をしなさいということでは問題の解決にはつながってこない。二律背反するようなテーマについてはどうしてもそこはお互いに接点を求めていかなきゃいけない。そうした意味での判断をしなきゃいけないケースがふえてくると思います。  結局、そういうことで手かせ足かせを外国法事務弁護士あるいは外国弁護士に与えているということは、日本に駐在している外国企業についても活動がしにくくなる、あるいはもう活動できなくなってしまうという状況にも立ち至るわけでございますから、これは国際的には通商上の大問題である、法律家あるいは法律の問題だけではなくなってくるというふうに考えておりますが、この点についてはいかがでしょうか。将来的に、やはりどうしても日弁連の意見を取り入れて、主従関係というのはたまらない、外国法事務弁護士の事務所に雇われるのはプライドが許さないというような意見が果たして今後まかり通るのかどうか、その辺の判断をお伺いしたいと思います。
  24. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) ただいま委員から日弁連の問題についてお話がありました。  私、日弁連の方々と接触している限りでは、そのように主従関係になるからプライドが許さないという、そういう議論は余り聞いたことがございません。いわば、そういう主従関係になるから日本弁護士としてのプライドが許さないとか、そういうような言い方からくる反論じゃないんです。もっと別の、法律専門家として本当に日本国内で責任を持ってリーガルサービスが提供できる資格という問題は、これはやはりどこの国でも同様の制限がありまして、決して我が国だけが、日本弁護士だけが威張っているとか、そういう問題ではございませんので、そこは一言あえて日弁連のために釈明させていただきます。  ただ、確かに、これから国際的な紛争がふえてまいりますと、実は日本弁護士外国弁護士とが一緒に共同作業をするということは非常に要求されてくるんだろうと思うんです。もちろん、一人の方がすべて日本法も外国法も知っておられるという優秀な方も日本でも外国の人にもいらっしゃいます。そうは言いましても、やはり専門性の強いところでございますので、どこの国におきましても、自分の国のことはよく知っているけれども外国は十分でないという、これは多く出てまいります。  したがいまして、実は、日本弁護士外国弁護士とのどういうふうな共同関係、相携えて働くといういい関係を円滑に進めていくということは、これは委員がおっしゃったとおりでございまして、私どもそういうための工夫としていろいろな改善策はないかということを模索してきたこともありますし、これからもそういった方向についてはいい解決が少しでもできるようにということで検討してまいりたい、かように思っております。
  25. 益田洋介

    益田洋介君 先ほど第三国法について、日本では現在のところは、外国法事務弁護士及び外国弁護士に対しましては第三国法の事務の取り扱いについては許可をしておらないということでございます。EUの諸国においては、これは特別な事情がEUにはあるわけでございますが、第三国法を取り扱うことを既に認めておりますし、アメリカにおいてもニューヨーク、オハイオ、アリゾナ、ミネソタ、アラスカといったような、それからハワイなんかも入るようでございますが、あるいはコロンビア特別区といった九つの州については、ステートについては既に第三国法を外国弁護士が取り扱うことを認めているわけでございます。第三国法という言い方は余り聞こえのいい言葉ではありませんが、どういつだ定義づけをされているのか。  それから、先ほど自民党の同僚委員の方から質問がありましたときにお答えになったごとく、準拠法という言葉がございますが、さまざまな国のさまざまな違った法体系の中から一つの事案についてどの準拠法を適用するのが適正であるのかという判断をする際、どういつだ判断基準を現在お考えであるのか、この二点についてお伺いしたいと思います。
  26. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) 我が国外弁法においてはいわゆる第三国法という言い方はしておりません。あくまで、先ほどから申し上げております外国法事務弁護士につきましては、原資格法、すなわち自国法といいますか、そういった定義と、それから指定法という定義がありまして、それからいわゆる国内における我が日本法体系があるわけです。要するに外国法事務弁護士というのは、その専門性をもって日本で格別の審査も経ずにやれますのは、やはりその国のプロであるというところからできますよと言っているわけでございまして、すなわち原資格法指定法については相当能力がおありでしょうということで動いているわけでございます。  したがいまして、第三国法というものはどういうことかといいますと、要するに日本法とそれから原資格法あるいは指定法以外の国の法律という意味で第三国法という言い方を俗称しているわけでございます。  したがいまして、例えばアメリカのカリフォルニア州の弁護士ですとカリフォルニア州法が原資格法でございまして、ルイジアナ等若干法体系が違います州は除きまして、その他の多くのアメリカの各州の法律につきましては指定法ということで取り扱えることになっております。ところがアメリカの方が、それではギリシャ法が得意かあるいはイスラム法が得意かとかいいましてもそれは判断のしようがありませんし、私どもそれを担保する制度がございません。  したがいまして、そういういわゆる第三国法と言われるそういうたぐいのものにつきましては、現在のところ取り扱いをしてはいけないという、こういう仕組みで制度が成り立っております。ただ、これも先ほど申し上げましたとおり、第三国法の取り扱いがある部分でもう少し緩和されてもいいんじゃないかという、こういう御意見があることは承知しておりまして、規制緩和推進計画の中でもこれについてももう少し検討してみようということになっています。  ただいま委員からもお話がありましたとおり、アメリカでも九の州と一つの特別区でいわゆる第三国法の取り扱いを認めておりますが、一方ではできないという州も十あるわけでございまして、一番大きな州ではカリフォルニア州、イリノイあるいはテキサス州なんかでは、第三国法は外国法事務弁護士はやってはいけないという、こういう制度になっておるわけでございます。そのほか、いけないという国では、オーストラリアなどもだめと言っておりますし、ドイツでもだめだと言っております。  したがって、世界の趨勢が果たして第三国法を認める趨勢なのかどうかというのはもう少し冷静に検討してみないといけないんじゃないか、かように思っておるところでございます。
  27. 益田洋介

    益田洋介君 半分ほどしかお答えしていただかなかったのですが、準拠法についての考え方をお願いできますか。
  28. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) 失礼しました。  準拠法といいますのは、ある法律事件について実体的にどの法体系が適用されるかという場合と、それからその手続法がどの国の手続法でやるのかという、いわば実体準拠法手続準拠法という言い方もいたします。  したがいまして、我が国内ではほとんど日本法が、例えば日本の民法でありますとか商法が実体準拠法といいますか適用されるべき法律になります。これが裁判所へ行ったりあるいはほかのそういう公的なところで紛争を解決するんですと、多分日本の民事訴訟法でありそういう手続法が適用されるということで、我々国内におります場合は余りそういうことを、準拠法なんということを意識しないでも日本法の実体法と日本法の手続法で行動が律せられるという、こういうふうに思うわけでございます。  ところが、国際仲裁事件なんかになりますと、実はこれが非常に難しゅうございまして、先ほど申し上げましたのは、国際仲裁事件なんかでは実体準拠法が一体何なのか。実はもともと当事者の合意、契約なんかをもとにしている場合が多うございますので、一体これは何法を適用すべきか、そのもとになった契約自体が何法に基づいてやったのかというのがしかく明確でない場合があるわけです。  また、国際商取引なんかにおきましては、そんなどこの国どこの国という法体系を意識しないでも、世界に共通のいわば商慣習的な体系があったりするものですから、これは果たして実体準拠法がどこどこの国だと言い切れない場合がたくさんあります。また、国際仲裁事件に限りませず、いろんなそういう国際的な問題におきましては、一体どこの実体準拠法といいますか、どこの国の法律がそもそも適用になるんだろうかということ自体が争われるということがよくございます。  それからもう一つ手続的な準拠法の問題でございます。これは、裁判ですとそれぞれの国の独自の体系を持っております。ところが、世界共通の例えば裁判手続法というのは今ないわけです。どこの国もそれぞれの国の手続法でやっております。世界にまたがる私的な民事紛争を解決する裁判所というのはないわけです。したがいまして、国際仲裁というのがいろいろ活用されるわけでございます。これは当事者の合意に基づきまして仲裁人を選んで自由に手続法も定めて進行するということでございますので、いわば裁判手続にかわる紛争解決法としては国際仲裁という形が非常にとうとばれるわけでございます。  したがいまして、そのときの準拠法というのが非常に説明が難しいという場合がたくさんあるということを申し上げさせていただきます。
  29. 益田洋介

    益田洋介君 大変これからは大きなテーマとしてこの準拠法の判断というのが検討されていかなきゃいけない時代になったというふうに考えております。  例えば、今、部長がおっしゃったように、契約書そのものが何法に基づいて作成されたものであるかということ自体もはっきりしない場合もあるというお話でございましたが、契約書の中に、この契約に関する紛争は何法において判断されるべきであるというふうな一項が入っているのがほとんどの国際商取引の契約であります。契約書にそのような明記がされているにもかかわらず実体的な、今おっしゃった例えば船舶の事件でございますと、どこの国の海域で事故が発生したのかとかあるいは船籍はどこの国なのかというようなことも判断基準にされますし、全く準拠法と簡単に片づけてしまうことができない状況である。  つまり、さまざまな国の法律がそこに介入してくるわけでございまして、今、部長がおっしゃったように、準拠法は一体どの法律なのかということの判断のための裁判も行われる、あるいはどこの国の裁判所が管轄裁判所であるかというふうなことも裁判の対象になってくるという時代に、日本の国においては外国法事務弁護士あるいは外国弁護士に自国法しか扱わせないという考え方がどこまで私は貫かれるのかという非常に懸念をしておると同時に、そうしたかたくなな姿勢でいる我が国の法曹界といいますか、まあ日弁連のことは大分肩を持たれていらっしゃったようでございますけれども、そういった状況は早晩もう容認されなくなってくる、そういうふうに私は懸念をしているところでございます。  ところで、今回の法改正におきまして、国際仲裁代理人として外国法事務弁護士及び外国弁護士を充てることができるという改正になったわけでございますが、仲裁人についてはどのような判断をされているのか伺いたいと思います。例えば、外国法事務弁護士国際仲裁の仲裁人として選任される可能性はあるのか、あるいは外国弁護士が当事者間の合意によって仲裁人に選任されるということを日本法律で認めようとしているのかどうか、その辺をお伺いしたいと思います。
  30. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) 建前でいきますと、弁護士法第七十二条によりまして日本弁護士以外の者は業として報酬を得る目的で仲裁を取り扱うことが禁止されているわけでございますから、外国法事務弁護士でない外国弁護士も法の規制を受けるということが出てくるわけでございます。  ただ、個別の仲裁事件において、当事者の委託を受けまして単発的に仲裁人になることは全く禁止されておりません。現に弁護士以外の専門家が仲裁人となっている例もございまして、この点については実際上の支障はございません。したがいまして、これはむしろ、例えば外国法事務弁護士があるいは外国弁護士日本国際仲裁機関に仲裁人としてなられるというケースはございますし、またこれは何ら差し支えないという解釈で考えております。
  31. 益田洋介

    益田洋介君 そうしますと、今の御説明ですと、弁護士法七十二条の規定というのはもう既にこれは死文になっているというふうに解釈してよろしゅうございますか。  この条文を読みますと、「弁護士でない者は、」「一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。」、この規定は誤りですか。もう死文となったわけですか。それとも、今回の外国法事務弁護士外国法事務弁護士はこの七十二条の規定の中の弁護士に相当するのかどうかもまだはっきりしないわけでございますが、特に明らかなのは外国弁護士、つまり外国法事務弁護士でない外国の一般の弁護士についても、周旋、あっせんあるいは国際仲裁に限ってという言い方かもしれませんが、これは七十二条の例外的な事項というふうに考えてよろしいんでしょうか。
  32. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) 結論的には委員の御指摘のとおりでございます。  この国際仲裁というものの非常な特殊性、それから現実的なニーズということから、外国法事務弁護士でない外国弁護士我が国に来て国際仲裁代理人となれるということで、特に七十二条の例外ということで今回の改正になったわけでございます。  ところでその前に、一般的に七十二条は既に死文化したのかと、こういうことを言われておりますが、七十二条自体は決して死文化しているわけではございません。特に、国内でも時々事件が起きますが、弁護士でない方が弁護士の名前をかたったり、あるいは弁護士の事務員であると称して事件をいろいろ周旋したり、事件を自分がやってみたりとか、専門家でない方がそういうことを取り扱うという、要するに非弁活動と言っておりますが、そういうことは取り締まっていかなきゃいけないということは、これはどこの国でも同じでございますので、七十二条が一般的に死文化したと、こういうふうには私ども考えておりません。
  33. 益田洋介

    益田洋介君 七十二条が死文化してしまったんであれば大変日本弁護士さんが窮状に陥ることになるということでございますが、だんだんに形骸化されていく、死文化という言葉が間違いであれば実体がなくなっていくという傾向であるような私は印象を受けております。  それでは次に、今、国際仲裁の仲裁人にも外国法事務弁護士及び外国弁護士が選任され得るというお話でありましたが、最終的に私は、国際仲裁が、さらに調停を不服として、結果として訴訟に追い込まれた段階で、今度は外国法事務弁護士及び外国弁護士が裁判所において弁論権を与えられていないというのは、これは不公平ではないか。同じ事件について一番事情をよく知っている、事実関係もよく知っている、あるいは法律もそれなりに調査した外国法事務弁護士及び外国弁護士が、今度は裁判になったら弁論権がない、一切弁論することが許されないというのは、これはバランスを欠くんじゃないか。当事者にとっては、今までずっとその事件を担当してきた、あるいはその調停に参加してきた外国法事務弁護士及び外国弁護士が裁判でも引き続き弁論を担当してくれることが最良であることは間違いないわけでございますが、この辺の法律改正についてはどのようにお考えか、伺いたいと思います。
  34. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) 今、委員若干誤解しておられるんじゃないかと思われる点が一つありましたのは、国際仲裁事件になりますと、改めて法廷へそれが出るということは極めて希有といいますか、仲裁裁定が出ますと、いわば一審限りのようなものですからこれで終わりでございます。もちろん、仲裁裁定自体が非常に問題があると、もともと仲裁人なり代理人の資格の問題なりいろいろ問題があるということで、この仲裁は無効だというような、あるいは取り消してほしいというそういうような争いが起きることはありませんが、ある事案については仲裁合意がありますともう仲裁で終わりでございますので、普通の場合は裁判所へ行くということはないということでございます。  ただ、一般論として、外国法事務弁護士等にも法廷弁論権を付与すべきではないかという、こういった御趣旨かと思います。現在の外弁法におきましては、裁判所における訴訟代理人としての活動は民事訴訟法等の我が国法律によって律せられておりまして、手続法等を熟知していない外国法事務弁護士にこういった法律事務を行わせるということは、依頼者にとっても裁判所にとっても利益とならないという考え方に立っておりまして、外国法事務弁護士が訴訟代理人となることを禁止しております。  これはそれ自体、どこの国でも同様に、法廷に立つというのは弁護士業務の一番根幹的な中核となっている部分でございまして、これは外国弁護士が立てるというそういう仕組みにはなっておりません。我が国だけではございません。したがいまして、法廷弁論権まで与えるという改正は現在のところ考えていないということでございます。
  35. 益田洋介

    益田洋介君 確かに、これはサービスのクオリティーの問題という観点からしますと、それなりに日本語を十分理解し、さらに昭和二十四年の弁護士法の第七条にあったように、相応のあるいは相当の国内法についての知識を持っていなければ、とても法廷弁論なんかは任せられるものじゃないことは確かでございます。諸外国におきましては、外国弁護士に、例えば六カ月間のトレーニーの生活をさせるとか、新たな短期の修習をさせた上で弁論権を与えるという例はあるわけでございますので、この点もやはり将来我が国において検討課題になってくる問題だと思います。  それから、御承知かどうかわかりませんが、イギリス法の法体系、司法制度におきましては、基本的に法廷弁護士と事務弁護士と二つに分かれております。アメリカではこれは一体化したわけでございますが。法廷弁護士というのは法廷弁論を主たる業務としているわけでございますので、例えばイギリスの法廷弁護士法律的な知識とかあるいは法廷弁論の手法であるとか技術というものをどうしても日本の裁判所で生かしてもらいたいという場合には、法廷弁護士は法廷弁論が主たる業務ですので、法廷弁護士意味がなくなってしまうということで、全くイギリスの法廷弁護士は特に魅力を失っている。したがって、日本はその市場アクセスをオープンしていないという意見があるわけでございます。  さらに一方では、新法の三条第一項において、法律事務手続について、裁判所、検察庁その他の手続代理及びその文書の作成については外国法事務弁護士及び外国弁護士については許可をしていないということでございますので、この点に関しましては、例えば英国の事務弁護士は全くその仕事がなくなってしまう。事務弁護士というのは、訴訟手続でございますとか事前協議ですとか、そうしたことを主たる業務にしているわけでございます。法廷弁論もできない、事務手続もできない、そうした見方からすると、一体それじゃ何を今の日本法律改正を繰り返しながら外国弁護士に付与しようとしているのか。  さらに、日本法律についてアドバイスを受けたいから日本弁護士を雇用しようとすれば雇用を許されない。これではがんじがらめになって、手かせ足かせをかけられて全く本来の弁護士活動を外国弁護士はすることが許されていないじゃないか。全くこれでは自由化がなされていないじゃないか。規制のかけ過ぎじゃないか。緩和の糸口さえ見えない。  弁護士の仕事の中で法廷弁論と事務手続が許されていないということになれば、一体それじゃ何をすればいいのか、そういう判断に皆さん、外国弁護士の方は苦しんでおられて、したがって外国法事務弁護士というのは何の権限もないから資格の申請もするのはやめようといった動きがあるくらいです。  ですから、これは非常に時代に逆行していて、むしろ冒頭申し上げたように、昭和二十四年の弁護士法のあの時代に返るのが日本の本来の姿ではないか、国際社会の中で日本の法曹界が認められる日本の姿ではないか、このように考えますが、法務大臣、御意見いかがでしょうか。
  36. 長尾立子

    ○国務大臣(長尾立子君) 先ほど、我が国における規制緩和問題、こういった法務行政の分野につきましての基本的な考えを申し上げたところでございます。  日本法に関します法律事務外国で資格を得ている弁護士の方に開放すべきであるという委員の御意見であるかと思うわけでございますが、諸外国におきましても、やはりその国の法律について熟知をしている、また特に手続法について熟知をしている、またその国の言語というものについての障害等々を考えますと、同じ形で日本におきます弁護士活動を認めていくことができるかどうかということにつきましては大変に難しい問題であるかと思っているわけでございます。  弁護士の業務は、大学におきます専門的な勉強の上に、国が行います専門家としての試験を課しまして、かつその後二年間の研修を義務づけました後に弁護士資格を付与いたしているわけでございますが、これは国民の法律の中におきます権利を守っていただける、こういうことの担保としてこのような厳しい資格制度を持っているわけでございます。そういう権利を守るという大きな要請から考えますと、一つ制約があるということは私はやむを得ないことだと思っております。  しかしながら、一方におきまして、国際化社会の中で現在の規制のあり方がもちろん万全であるというふうに申し上げているわけではないわけでございまして、例えば外国弁護士日本弁護士との共同事業、これはある意味では前回の改正におきまして緒についたばかりでございます。  こういった実態を十分に踏まえまして、私どもはこういう規制緩和という大きな課題の中でどういう解決が国民の権利を守るという見地から最も望ましいものであるか、考えさせていただきたいと思っております。
  37. 益田洋介

    益田洋介君 ありがとうございました。  厳しいハードルを乗り越えて法曹資格を得るという大臣のお話でございましたので、日本の法曹養成制度について若干政府のお考えを伺いたいと思います。  現在、司法試験合格者の数が七百名になりまして、非常に狭いながら受験生に若干門戸が開かれたわけでございますが、私は個人的に、諸外国の法曹養成制度日本現行制度とを比較してみましたときに、やはり試験をいたずらに受験生に何回も受けさせているという制度自体が果たして許されるものかどうかというふうに考えるわけでございます。  例えば、イギリスの場合は受験の回数制限を古くから設けておりまして、これは三回挑戦して四回目にうまくいかなかった場合は司法試験の受験をあきらめてくださいよというふうな制度でございます、簡単に申しますと。  といいますのは、イギリスの場合は、アメリカのアトーニーに相当するソリシターという事務弁護士が相当数おりますが、いわゆるバリスターと言われる法廷弁護士は数が非常に少なくて、そして試験に四百五十人程度、多い年で五百人程度しか毎年合格しないわけでございます。かなりそういった意味では狭き門でありますので回数制限を設けて、何回でも挑戦して周りの方、家族の方に不安ですとか負担をかけることも社会的には不利益であろうと。むしろ、司法試験に何回か挑戦するほどの意志の力とまた勉学に対する姿勢のある受験生であるならば、法曹界でなくてもほかの世界に行っても十分に才能を発揮できるような人材ではあるまいか。  そういう方は、司法試験というのは別に優秀であるから、有能であるから合格するということではないというふうに私は個人的に考えておりまして、むしろ受験のテクニックといいますか、私もそういう経験を経たわけでございますが、そういったものに要するに向き不向きというのがあるのではないかと。であるならば、ほかに十分な才能を持ちながら、たまたま司法試験制度という受験のタイプに向いていないために何年も時間をかけて空費をしてしまうということは社会的な損失であろうと。  むしろ、そうしたほかの面で才能のある方は違う分野に早目に行っていただいた方が社会的な利益につながるのではないかと。その分野で力を発揮していただいた方が社会的にはトータルな意味では利益につながるのではないかというふうな考え方がイギリスの法曹養成制度、特に司法試験の回数制限という制度の背景にあったというふうに伺っております。  この件につきましてどのようにお考えか。年齢制限を設けている国もありますが、これは年齢というのはちょっとまた考え方が違うと思いますので、私は日本にも回数制限を設けるべきではないか、その方が皆さんハッピーなのではあるまいか、そのように思っておりますが、この辺についてどういうふうな御見解か、法務大臣、よろしければお答え願えますか。
  38. 長尾立子

    ○国務大臣(長尾立子君) 司法試験問題につきましては、今、委員から御指摘がございましたように、欧米の主要国におきましては受験回数を二回とか三回、こういった制限をしているところが多いというふうに承知をいたしております。  我が国におきましても、今、委員がおっしゃいました御意見、まことにごもっともであると思うわけでございますが、受験回数を制限するということによりまして、有為な人材が社会のいろいろな分野で活躍をしていただく、こういうような多様な選択肢を考えていただくということは一つの御提案としてあると思っております。  法曹養成制度等改革協議会、ここでこの司法試験についての御検討をいただいたわけでございますが、その御意見の中におきましても、受験生に今のお話のような転身の機会を与えるというような観点から、受験期間を五年間に制限をしてはどうかというような御意見、それから法曹の質の確保という観点から、受験回数制限という方法に限らず受験歴を考慮した選抜方式を採用してはどうかというような御意見があったわけでございます。  本年の司法試験から、合格者を決定するに当たりまして、受験者の受験歴を考慮する一定のやり方を導入することといたしているわけでございますが、この点につきましてはいろいろな御意見が各方面にあるわけでございます。司法試験制度と法曹養成制度、こういった抜本的な改革を検討していく中でなお検討させていただきたい、このように考えております。
  39. 益田洋介

    益田洋介君 ありがとうございました。  それでは、同じテーマにつきまして裁判所の御意見をお伺いしたいと思います。  全体の司法試験の合格者数を決めるに当たって、当然のことながらこれから法曹三者がそれぞれ将来の人員計画というものについてのお考えを持ち合って決めていかれると思いますが、七百名が果たして適正な合格者数であるかどうかということもまた将来的に、今実験段階だというふうに思いますので、見直していかなければならない。例えば、千名であるとか千五百名であるとかいう数字が適正であるというような御意見もあるかに伺っておりますが、裁判所としては今後の裁判官の人員計画をどのようにお考えか。  特に、裁判官もさることながら、今回、住専問題が今国会の焦点になっているわけでございます。きょう、別の院では予算が通過するやに伺っておりますが、これはまだ住専の不良債権処理問題の入り口部分の議論でございまして、今の段階から出口の部分、つまり債権を保全した後にいかに処分するのかという問題を今から検討しておかないと、またつけ焼き刃的に慌てふためいて十分に検討されない法案を通さなきゃいけないようなことに追い込まれては国民に対して申しわけないというふうに私は考えるわけでございます。  やはり、競売というのが出口でございますので、競売の手続のための裁判所の書記官が大分不足しておるということで、書記官の数それから質の向上についてのトレーニングといったものについて相当準備をしておかないと、巨額の不良債権の処分に当たって出口の部分で今度はっまずいてしまうのではないかというふうな気がいたしておりますので、法曹養成制度にあわせて、裁判所のこうした人員の将来的な配置についてのお考えをお伺いして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  40. 堀籠幸男

    最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) まず、法曹人口の問題につきましては、先ほど法務大臣から答弁がありましたように、法曹養成制度等改革協議会の意見書を踏まえましてこれから法曹三者で協議していくわけでございますが、その中では、中期的には年間千五百人程度の増加を図り、まずその前提として千人というようなことが多数意見になっておりますので、そうした意見書を踏まえまして誠実に協議していきたいというふうに考えております。  それから、裁判官の増員の問題につきましては、事件の動向等を踏まえまして、できるだけ裁判官にふさわしい方をたくさん採用したいというのが私どもの考えでいるところでございます。  それから、執行事件の点につきましては民事局長の方から答弁いたします。
  41. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 委員の方から住専問題についてお触れになりましたが、一番中心的な問題は不動産の執行事件ということになろうかと思いますので、現在抱えております執行事件の問題点というのは十分承知をしておるつもりでございます。事件が大変高水準で推移をしておりまして、一方でまたバブル期の取引の影響もありまして権利関係が非常に複雑に錯綜しているというような問題もございまして、労力を大変要するという状態になっております。  そこで、裁判所としましては、これまでも事件の急増した庁に職員を増員するという施策をとってまいりましたが、例えば東京地裁の執行部の職員につきましては、事件が急増する前の平成三年四月には書記官、事務官等は合計で三十九人でございましたが、平成八年の四月には、書記官二十人、事務官四名を増員したのを含めますと現在では九十四人ぐらいの体制になっておるところでございます。  同様に、大阪についてもかなりの増員を図っているところでございますが、委員から、特に事件処理についての能力と資質というようなお話もございましたので、裁判所としては書記官等の資質を向上させるために、高裁管内ごとに民事執行事件を担当する書記官を集めた研修を計画し、また民事執行事件に関する裁判官、書記官の協議会なども開催をしているところでございます。  今後とも、事件数の動向に応じて増員等の適切な対策を講じていきたい、こういうふうに思っております。
  42. 一井淳治

    ○一井淳治君 本件の法案を実施した場合に、我が国あるいは我が国関係者にどのような利点と申しましょうか利益をもたらすのか、それからまた、この法律は非常に特殊専門的な問題でありますから、この法律を実施する受け入れ体制がちゃんとできておるのかどうか、その点についてお伺いします。
  43. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) 我が国国際仲裁はほかの主要国と比較いたしますと活発でない、こういう指摘がされているところでございます。その要因といたしましては、言葉の問題でございますとか、あるいは物価、経費等が高いとか、あるいは基本的に我が国がファーイーストと言われる、いわば欧米から見るとやや離れたところにあると、いろんなこういう問題もありますが、その中で一つ代理の問題も指摘されてきたところでございます。今回の改正によりまして、外国弁護士日本に来てやれるということになりますと、やはり活性化をする一つの障害を除いたという面ではよくなるのではないかというように期待しております。  また、今回の改正によりまして特にマイナスになるということはちょっと考えられないところでございます。  それから、受け入れ体制の点でございますが、先ほどもお話し申し上げましたとおり、現在、仲裁機関として社団法人であります国際商事仲裁協会、それから同じく社団法人であります日本海運集会所等が活動しているところでございまして、当面、この改正の実施のために組織面等で手当てが必要になるというふうには考えておりません。むしろ、各組織ともできるだけ多くの国際仲裁事件が来ることを願っていると、そういうことを聞いております。
  44. 一井淳治

    ○一井淳治君 きょうは海上保安庁の方がお見えであると思いますのでお尋ねしたいと思います。  衆議院の予算委員会で米田議員が、朝鮮民主主義人民共和国へ日本から提供した第二次援助米につきまして、これが緊急輸入米ではなくて五万三千八百トンの国産米を送ったんだという趣旨質問をしておられます。この質問の資料は、米田議員の御説明によりますと、海上保安庁が確保したものを、入手されたものを公安調査庁に提供されて、公安調査庁の方から米田議員が入手したんだというふうに言われておるところでございます。  そこで、海上保安庁の方にお尋ねしたいんですが、この問題になっている資料を海上保安庁の方から公安調査庁に提供したという事実があるのかどうか、まずお尋ねいたします。
  45. 小原正則

    説明員(小原正則君) 公安調査庁の方に資料をお渡ししたというのは事実でございますが、その中に、国産米でありますとかそういったようなことに関しての事実を海上保安庁が把握したとかあるいはその存在をうかがわせるとか、そういったようなものについては一切ございません。
  46. 一井淳治

    ○一井淳治君 海上保安庁の職務とすれば、積み荷の内容、そういったものについても調査をされたりあるいは一応の状況を把握するとかいうこともなさるんですか、どうなんですか。
  47. 小原正則

    説明員(小原正則君) 海上保安庁は、海上保安庁法に基づきまして犯罪の予防でありますとか、そのほか海上の安全にかかわる一切を任務といたしております。したがいまして、船舶の動静の把握でありますとかそういったことを行うために、そういった関連情報を収集するというようなことは実施しております。
  48. 一井淳治

    ○一井淳治君 これは農水省の食糧庁が確保しているお米だと思うんですけれども、米が内地米か外米かというような調査はされるんですか。
  49. 小原正則

    説明員(小原正則君) 私どもは、先ほど申し上げましたように、犯罪の予防でありますとかそのほか海上の安全の確保に関することを任務としておりますことから、その米の産地がどこでありますとかいうことについては関心のない事実でございまして、たまたま調査している過程におきまして参考事項として知り得たものについては、そういう報告を現場から受けたということはございます。
  50. 一井淳治

    ○一井淳治君 本件についてはどうなんですか。もう一遍お尋ねしますが、本件についてその種のものを公安調査庁に提供されたんですか。
  51. 小原正則

    説明員(小原正則君) その米が国産米であるとかなんとかといったようなことに関して、公安調査庁にお渡ししたような事実は一切ございません。そもそもそういった資料を私どもは把握してございません。
  52. 一井淳治

    ○一井淳治君 公安調査庁の方でもこの問題については十分御調査をされたと思いますので質問をさせていただきたいと思いますけれども、米田議員も選挙を勝ち抜いてこられた一かどの議員でございますから、いいかげんな質問をされていないと私は思います。そして米田議員自身、これは公安調査庁から入手した資料なんだというふうにはっきり言っておられるんですね。そうすると、どうも公安調査庁からその資料は出たんじゃないかというふうに思われるのがこれは必然になってくるんですが、どうなんでしょうか。公安調査庁でも御調査されたと思いますけれども、この資料を提供されたのかあるいは盗まれたのか、その辺はどうなんですか。
  53. 杉原弘泰

    政府委員(杉原弘泰君) お答えいたします。  私ども公安調査庁におきましては、ただいま問題になっております北朝鮮への支援米に日本産米が含まれているという趣旨の資料、情報というものは一切存在いたしません。したがいまして、米田議員が衆議院の予算委員会で御指摘になりました資料が当庁の提供によるものであるということはあり得ないということをまず最初に申し上げたいと思います。  また、私どもにおきましては、かねてから北朝鮮船舶の我が国への入出港状況につきまして海上保安庁から関連資料の提供を受けておりまして、今回の我が国から北朝鮮への支援米を輸送する船舶につきましても同様に海上保安庁から資料の提供を受けました。ただ、この資料の中には北朝鮮への支援米に国産米が含まれていたとの趣旨の記載はございませんでした。  公安庁職員が何らかの資料を渡したかどうかという点につきましては、部内で調査を進めておるところによりますと、現在までのところそのような事実は認められません。ただ、今後もなお検討、調査したいと考えております。
  54. 一井淳治

    ○一井淳治君 これはどちらかが事実じゃないことを言っているということなんです。これはどちらも正しいということはないんです。というのは、事実関係一つですから。ですから、米田議員が公安調査庁から入手されたというのが真実であるのかどうかという、これは二律背反、どっちかが正しい、どっちかはうそだというふうになってくると思うんです。  そういう本当に大切な問題ですから、だから公安調査庁の方も、もう相当前からこの問題は出てきておるわけですから厳重に調査されたと思うんですけれども、いいかげんな調査じゃなくて、例えばいつごろからどういう調査を始められているということもあわせて御説明いただきたいと思います。
  55. 杉原弘泰

    政府委員(杉原弘泰君) ただいまの御質問は、この北朝鮮の船舶に関する調査をいつごろから
  56. 一井淳治

    ○一井淳治君 米田議員のこの質問に関する資料、その点に絞ってです。
  57. 杉原弘泰

    政府委員(杉原弘泰君) 質問に関する資料についての調査、つまりその資料が私どもから出たかどうかについての調査という御質問でございますか。
  58. 一井淳治

    ○一井淳治君 そうです。
  59. 杉原弘泰

    政府委員(杉原弘泰君) その点につきましては、米田議員から去る四月九日の予算委員会で質問がなされました際に初めて御指摘があったわけでございまして、その後調査を開始した、こういうことでございます。
  60. 一井淳治

    ○一井淳治君 具体的にはどのような調査をされていますか。
  61. 杉原弘泰

    政府委員(杉原弘泰君) 今申しましたように、北朝鮮船舶の入出港状況につきましては海上保安庁から資料の提供を受けておりましたので、そういった資料の保管状況、入手状況、そしてそれにかかわった関係職員からも何度かにわたって事情聴取をした結果、ただいま申し上げましたような答弁となったわけでございます。
  62. 一井淳治

    ○一井淳治君 そうすると、一応今のところは、そういう事実、米田議員が持っておられる資料を提供した事実はないけれども、またさらに調査をしておったら変わったということが出てくるんですか。というのは、米田議員に提供したという事実が出てくる可能性があるんですか、どうなんですか。
  63. 杉原弘泰

    政府委員(杉原弘泰君) 先ほどお答えいたしましたとおり、米田議員が過日の、四月九日の衆議院の予算委員会で提示されましたまさにその資料、つまり北朝鮮への支援米に国産米が含まれていたという記載のあるその資料、その資料につきましては、先ほど申しましたとおり、私ども公安調査庁が公安調査庁としてそれの作成に関与したこともありませんし、それからまたその提供をしたという事実もないということは先ほど申し上げたとおりでございます。  ただ、その他の資料、今申し上げました予算委員会で提示されたその資料とは別に、公安調査庁が海上保安庁から提供を受けているその資料、その保管の状況につきましては今調査中でありますが、現在までのところ、それが外部に提供されたという事実はないということを申し上げているわけでございます。
  64. 一井淳治

    ○一井淳治君 そうしたら、ほぼ一〇〇%ないと考えていいんですか。ほぼというより、第一に、米田議員がお持ちの資料は公安調査庁からは絶対に出ていないと、そのようにお聞きしていいんですか。
  65. 杉原弘泰

    政府委員(杉原弘泰君) その点につきましては、先ほどお答えしたとおりでございます。
  66. 一井淳治

    ○一井淳治君 この論議されている時期なんですけれども、今まさに与野党の間で激しい政治的な攻防が展開されておるわけでありまして、その議論の中には、加藤幹事長が米支援に関与していることがどうかとか、幹事長の証人喚問とかそういうふうな問題も一緒に出てまいりまして、まさにこの米問題が政争の具にされそうになっているわけであります。そういうものの原因となる資料が公安調査庁という一つの行政機関から、公正であるべき行政機関から出てきたらいけないわけですね。非常に世論に対しても誤解を与えますし、こういうふうなことが起こってはいけないと思いますけれども、その点についてどのようにお考えでしょうか。
  67. 杉原弘泰

    政府委員(杉原弘泰君) ただいま委員が御指摘の点はまさにそのとおりであると思っておりまして、私ども公安調査庁の公務所としての信頼を確保する意味でも私どもへの御指摘の問題については大変重要な問題と考えておりますので、真剣に対処、対応しているつもりでございます。
  68. 一井淳治

    ○一井淳治君 それじゃ、この質問は終わらせていただきます。  この本件の法律の案をおつくりいただく過程におきましては、法務省日弁連との間で平成四年に外国弁護士問題研究会を開催されるとか、あるいは平成六年に国際仲裁代理研究会を発足させるなど、法務省日弁連との間では協力してこられたという経過がございます。そして、最近の新聞報道などを見ますと、少年審判に関する意見交換会を持とうということで、日弁連の方でもそういう動きが協力的な方向に向かっているということを聞いているわけでございます。法曹三者が協力し合って、そしていい改善を行うということは非常に好ましいことでありまして、我々も大いに支援させてもらいたいと思っているわけでございます。  ただ、この少年法問題というのは、過去の経過を見ますと、最も日弁連との間で厳しい対立があった案件でありますから、うまく進めていかないとせっかく今醸成されつつある法曹三者の協力体制がうまくいかないということもあり得なくもないわけであります。どうか法務省におかれましては、司法の前進を図る、そのためにお互いの理解を深めて協力し合う、余りこれまでの自説を押し通すというのではなくて、国民のためにお互いの理解を深めながら前進を図るという態度でお願いしたいと思うわけでありますけれども、いかがでございましょうか。
  69. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) お答え申し上げます。  日本弁護士連合会に対しまして去る二月二十八日、最高裁判所とともに、少年審判手続の現状と問題点、特に少年に関します非行事実の認定のあり方をめぐりまして世間の耳目を集めたような事件がございましたようなことが契機となりまして、各方面から事実認定のあり方を中心にいたしまして少年審判手続のありようにつきまして論議がございました。そういうことを受けまして、まず法曹三者間において意見交換を行うための場を設けたいという意向をお伝えいたしまして、意見交換会への日弁連としての参加を求める申し入れをしたわけでございます。  御指摘のとおり、この問題は過去非常な論議を呼んだところでございまして、まさに委員指摘のとおり広く国民と申しますか、広く大方の御理解を得られるような方向で何らかの措置ができるかということ、それはすなわちやはり司法の場からこの問題について適正に対処していくための基盤づくりということが重要になると思います。そういう点で、まさに委員はうまくとおっしゃいましたけれども、そのような論議が実を結ぶ方向法務省としても最高裁判所また日弁連とも心を合わせて対応してまいりたいと思います。  日弁連からの回答は、新聞で一部報道されたような事実がございますけれども、回答はまだないわけでございます。日弁連内部でも大変慎重な手続を経て、会としての意見を現在集約しておられる状況だろうと思います。そういう中で、予断的なことを私の立場から申し上げることは差し控えたいと思いますが、法務当局といたしましては、仮に法曹三者の意見交換会が日弁連の御賛同も得て開始されるということになりますれば、少年審判の現状と問題点につきまして率直に意見を交換いたしまして、この問題に対する司法の現場を預かるという意味での法曹三者の共通の認識が得られるように努力させていただきたいと考えております。
  70. 一井淳治

    ○一井淳治君 次に、住専問題でもそうなんですけれども、商法の会社の財産状況の把握という点について質問させていただきます。  二月二十七日に私はこの商法の機能について質問させてもらいましたけれども、大臣からは、「会社制度上どのような問題点があるかについて十分関心を持ってまいりたい」という御方針をお示しいただいているわけでございます。  最近、いろんな住専が点検されておりますけれども、例えば日本住宅金融株式会社を例にとりますと、平成四年三月期には六十九億円の損失を出しておりますけれども、二百二十億円の別途積立金があって、そして別に危機的な会社状況ではない、中間配当もするというふうな状況でありました。他方、同じ期の三和銀行の調査によりますと、四千八百三十二億円の債務超過だと、これはもうまさに破産原因があるわけでありますけれども、そんな状況であったわけでありまして、今から見ますとやはりこの三和銀行の調査が正しかったのではないかと思います。  結局、問題点は、商法の二百八十五条ノ四に規定されておりますけれども、貸し金として計上されておる数字が商法二百八十五条ノ四に従って記載されていない。すなわち、回収不能分が非常に多額なんだけれども、この回収不能分をほとんど計上していない。全体として優良な会社のようにつくられてしまっているということに問題があると思うわけでございますけれども、法務省の御所見を伺いたいと思います。
  71. 濱崎恭生

    政府委員(濱崎恭生君) 私どもといたしましては、御指摘の住専の具体的な財務内容、計算処理の実態というものをまだ承知できる段階になっておらないわけでございますが、委員指摘の商法二百八十五条ノ四の規定によりますれば、債権について取り立て不能のおそれがあるときはその取り立て不能見込み額を控除して評価しなければならないということが規定されておるわけでございます。そういう規定に違反するという取り扱いがされている事実があるとすれば、それは商法の規定に違反するということに相なろうかと存じます。
  72. 一井淳治

    ○一井淳治君 住専問題はまさに政府にとっても国民にとっても極めて重大な課題であるというふうに思います。そして、この住専処理に当たっては、法務省中心となって解明に当たっていかなくちゃならないということが示されておるわけでありますか。この種の資料はもう既に大蔵省は握っているわけですから、資料がないというんじゃなくて、どうか早目に御調査を進めていただきたい、ぜひとも大臣の御指示によって前進を図っていただきたいというふうに思います。  そして、これは最後質問でございますけれども、商法四百九十八条十九号に、記載すべき事項を記載しない、あるいは不実の事項を記載した場合、これは貸借対照表とか損益計算書とかそういった会社の重要書類でありますけれども、そういった場合には過料を科すことになっているわけでございます。この商法二百八十五条ノ四に貸し金の額の記載方法が示されておるわけであります。多少の幅はあると思いますけれども、大幅に外れて非常に少ない金額を記載しているという場合には、まさに記載すべき事項を記載せず不実の記載をしたということに該当するんじゃないかと思いますけれども、御所見を伺いたいと思います。
  73. 濱崎恭生

    政府委員(濱崎恭生君) もし、御指摘のように金銭債権が完全に取り立て不能であるということが見込まれ、したがって金銭債権の評価に当たってその取り立て不能見込み額を債権金額から控除しなければならないという場合において、債権金額をそのまま評価額として計上しているということであれば、御指摘のように不実の記載をしたということで過料に処せられる行為に該当する場合があろうと存じます。
  74. 一井淳治

    ○一井淳治君 時間が参りましたので、大臣にお願いでございますけれども、この住専問題につきましてはどうか省を挙げて、民事も刑事もあると思いますけれども、省を挙げて解明と責任追及に当たられますよう要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  75. 橋本敦

    ○橋本敦君 まず、法案に関連をして質問いたしますが、今回の法案が、法務省日弁連との間で国際仲裁代理研究会を組織して、諸外国状況及び今日の国際化の動向、そしてまた弁護士制度そのものの基本的なあり方ということも含めて研究協議を遂げられた結果、こういった改正案となってきたということについて、御努力には一定の敬意を私も払っておるところでございますが、なお若干の問題について質問をさせていただきたいと思っております。  その第一の問題として、先ほどからも議論がありましたが、今度の改正弁護士法七十二条の例外ということでの扱いだということになるわけですね。その例外としての扱いということになったその範囲を厳格に内容及び手続の面でもきちっとしていかないと、七十二条との関係であいまいさを残す、あるいは外国弁護士法四条の関係での形骸化につながるということになってはならないという問題があると思います。  そこで、国際仲裁事件とはどういうものかということをここでしっかりと定義をするということの必要性はどこから来たのか、まずこの点、いかがでしょうか。
  76. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) 国際仲裁事件というと一見わかったような気になるんですが、実は確かに難しい点がございまして、各国におきましても国際商事仲裁と言ったりあるいは国際仲裁という表現をするんですが、いろんな定義づけが、必ずしも一義的に世界共通のものがあるわけじゃございません。ただ、幸いなことに、世界各国のいろんな条約でありますとかそういうものを見ますと、少なくとも本拠地がその国外にある人が当事者になっているというところは相当共通性を持っております。  したがいまして、今回の研究会等におきましても、できるだけこれを客観的なものでわかるようにしないといかぬだろうという報告書が出ております。そういう関係から今回の改正法におきましては、世界的にも相当コアの部分として認められております考え方、すなわち「当事者の全部又は一部が外国に住所又は主たる事務所若しくは本店を有する者である」というこういう言い方で、できるだけ客観的にわかりやすく定義をしようという考え方からこういう定義づけをしたわけでございます。
  77. 橋本敦

    ○橋本敦君 実際の扱う具体的な問題として、外国弁護士の場合は、「その外国において依頼され又は受任した国際仲裁事件手続」、こういう規定の仕方がございますね。  そこで、ここで言う「外国において依頼され又は受任した」という規定の仕方をする必要性がどこにあったのか。このことは、いわゆるトリップビジネスとの関係でこういう規制がどういう合理性を持つと考えていらっしゃるのか。この点はいかがですか。
  78. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) 「外国において依頼され又は受任した」という文言が今回の五十八条の二という中に入っております。  このように限定を加えているわけですが、このような限定を加えましたのは、そもそも今回の改正我が国を活動の本拠として国際仲裁代理だけを行うような特殊な外国弁護士制度を設けるものではないという前提がございまして、あくまで国際仲裁の特殊性といいますか必要性なども考慮して、こういう外国で活動しておられる方が日本に来られて国際仲裁代理を行っていただくということが国際的なハーモナイゼーションからも非常に望ましいという観点から考えられたわけでございます。  このような限定を加えましたのは、そういう意味で、我が国で本拠地を構えてそこで一般客を募集するという、そういう形態は避けたいという問題と、それからもう一つは、その国において、業務を従事しております。その外国において依頼され、または受任した場合におきましては、その国の弁護士会等による実効的な規律監督が及んでいるのが普通でございますので、そういうことも考慮してこういう限定を加えたということでございます。
  79. 橋本敦

    ○橋本敦君 その点に関連をして、私はそういう意味での規定の仕方は合理性を持っていると思うんですが、もう一つ合理性を持つ必要があるのは、今、永井さんがおっしゃったいわゆる非弁活動に対する規制をこれはやっぱり考えておかなくちゃならぬ。  日本弁護士連合会の場合は自治権を持っておりますから、自治機能として、弁護士の品位及び職責の社会的責任を果たす上で懲戒ということについては実質的な機能を持つわけですね。ところが、外国弁護士の場合は日弁連のそういう機能が直接に及ぶわけじゃありません。しかし、この国際仲裁手続に関して、この限度において七十二条との関係を例外的にこういうように適用するということになりますから、いわゆる非弁活動、日本弁護士以外の者が制約を受ける、そういったこととの関係で、外国弁護士の場合であってもこの国際仲裁手続等の関係で、いわゆる範囲を超えた非弁活動と見られるようなことがあった場合の監督機能といいますか、そういった問題は、これは国際的な関係がありますので大変難しいんですけれども、そういった議論はこの研究会の中でどのように議論され、今どのようにお考えになっているのか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  80. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) やはり、先ほどもたしかお答えの中で申し上げたと思いますが、日本の、日弁連の監督に服しております外国法事務弁護士の場合ですと、まだこれは監督権が及んでいるからいいんですが、外国法事務弁護士でない外国弁護士日本に来て国際仲裁代理を行うという場合、一体どういう監督が及ぶのかということが議論はされたわけでございます。そのときに、やはり日本に登録等あるいは監督機能を持っていない外国弁護士は七十二条の関係では基本的には非弁であると、弁護士とは言えないというその基本的な枠組みは変えないと。  ただ、そうはいいましても、この国際仲裁というものの特殊性ということ及びそのニーズの大きさという観点から、弁護士法七十二条あるいは外弁法の基本的な枠組みに反しない限りで、この限度では許容すべきであろうという、そういう考え方に立ったわけでございます。
  81. 橋本敦

    ○橋本敦君 その点は私も賛成であります。そういう趣旨でこの改正案ができたということについて、この改正案に私も賛成しているんですが、そういったことが仮に起こった場合の監督機能とか、あるいは非弁活動に対する取り締まりというようなことも一つはやっぱり研究課題として上ってくるなというように考えておるわけです。  そこで、国際化の波の中で、準拠法との関係もいろいろありまして、日本法が準拠法とされているような場合については日本弁護士との協力あるいは共同代理、そういったことも実際のこれからの仕事の円滑化のためには必要ではないかという議論も当然あるんです。先ほどからもそういったことに向けての議論もありました。そういう点については研究会での議論及びこの法の具体的な今後の適用の問題としてはどうなっていくというふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  82. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) 外国弁護士日本国際仲裁代理を行われる場合には、言葉の問題、その他日本法が場合によれば関係してくるケースも出てくるだろうということがいろいろ予想されるわけでございまして、一般的に国内国際仲裁を行うとしても、やはり多くのケースにおいては日本弁護士と事実上共同してやるということが予想されるわけでございます。  ただ、研究会でもその議論が出まして、特に準拠法日本法とするような国際仲裁というのが起きた場合には、外国弁護士日本弁護士と必ず共同してやりなさいという、こういう規制をかけてはどうだろうかという考え方もあったわけでございます。  ただ、これに対しては、先ほどからも申し上げておりますとおり、国際仲裁における準拠法の特殊性から言いますと、非常に多国的なものが重畳するとか、必ずしも準拠法が明確ではないといったことに照らしますと、準拠法いかんによって代理のやり方に制限を課するということでは非常に実務上の困難が生じるということが思われます。また、世界的な趨勢としても、シンガポール以外はそういう共同代理を強制するということは全くしていないわけでございます。  研究会での検討の結果も、本当に日本法が必要である、あるいは専門的なことが必要ならば、その外国弁護士は必ず日本人の弁護士と相談したり、法的助言を受けたり、あるいは共同代理の方式をとるだろうと、これは世界共通の基本的な弁護士としての倫理であるという認識があると、そういうことから、そういうベーシックなリーガルエシックスがある以上、それを条文で書くということはいかがなものかと。むしろこれは本当の意味できちっとしたリーガルエシックスに任せればいいことであるという考え方で、さきに申し上げました国際仲裁代理研究会におきましても、全員一致で共同代理方式を明文で書いて要件とするというやり方は避けましょうという、そういう結論になったということでございます。
  83. 橋本敦

    ○橋本敦君 その点はよくわかりました。  最後に、この法案に関連をして法務大臣に御意見を伺い、またお願いしておきたいんです。今度の場合も、日弁連との研究会、協議を通じ、各国事情調査を通じて一定改正方向を出されてきたわけですが、大臣も先ほどおっしゃったように、これからいろんな意味で国際化という一つの要請がある、それと同時に、我が国の司法制度の根幹は守っていかなきゃならぬというこういった問題もある。そういうことでこれから多くの問題がまだまだ議論をされていくわけです。  例えば三月二十九日の閣議決定を見ましても、今後は外国弁護士による日本弁護士雇用の問題も議論しようではないか、あるいはまた、外国法事務弁護士の職務経験要件を緩和するという議論もあるが、これも検討しようじゃないかといったようなことで、第三国法の扱いも含めてまだまだ緊急課題がこれからあるということになっているわけですね。  日弁連も積極的にこういった問題については対応していく姿勢を持っておりますけれども、我が国のこれまでのよき慣行として、あるいはこれからの課題を国民的コンセンサスの上でやっていくという、そういう課題をやっていく上からも法曹三者なり法務省日弁連との協議はしっかり尽くしていくという、こういう方向は今後とも堅持をしていただきたいということを私もぜひお願いしたいと思っておりますが、大臣の御意見はいかがでしょうか。
  84. 長尾立子

    ○国務大臣(長尾立子君) 先ほども申し上げたところでございますが、国際化という大きな課題の中で、こういった法曹分野におきましても規制緩和問題、真剣に検討していかなければならない問題だと思っております。  しかし、この点に関しましては、やはり日本の置かれました今までのいろいろな歴史的経緯、それから現実に国民の皆様からの要望、国民の皆様の権利がきちんと守られるかといったさまざまな観点からの検討が同時になされなければならないわけでございます。  今、委員からは、法曹関係者三者の十分な協議の中でこの問題の解決の方向を探っていくようにという御指摘でございまして、この点につきましては私も同様に考えております。
  85. 橋本敦

    ○橋本敦君 ありがとうございました。  法案と離れますが、この機会に、裁判所にお越しいただいておりますので、一、二点質問させていただきます。  実は、サリンの裁判の問題でありますが、四月に入りましていよいよ麻原被告らに対する公判が開かれるということで一層関心が高まり、またこのオウムの許せない犯罪についての真実の解明という国民的期待も高まっておりまして、裁判の傍聴に対する関心が非常に高いわけです。  それで、今まで開かれた公判でもできるだけ広い法廷で、開かれた裁判として、国民に対しては憲法も保障しておりますような公開の原則を守りながらやっていただくということで特段の努力をお願いしたいと思うんですが、傍聴券を求めて長蛇の列ができるわけです。そういうことで裁判所も大変な御苦労を願っておると思うんです。  ここで私が特にお願いしたいのは、地下鉄サリンあるいはこれから松本サリンも出てまいりますけれども、被害者の皆さんが公判を傍聴したいという関心が非常に高いわけです。そういうことで、地下鉄サリンの被害者の皆さんを代表して被害者弁護団の事務局長の方から裁判所にもお願いが行っておるようでございますけれども、この公判について被害者に対して、幾らの枠をいただけるかはともかくとして、特別の傍聴券を枠としてつくっていただくというような御配慮が特段の配慮としてお願いできないだろうかという要望が大変あるわけです。この要望は、これは本当にかなえてあげたいと私は思うんです。  地下鉄サリンの被害者の皆さんにとっては、この事件というのは本当に深刻な問題です。同時に、開かれた法廷を通じて、みずから被害者になり、あるいは夫を失い、子供を失った被害者が、真実の解明を裁判所でどう進めていくか、まさに真実解明のみずから立会人となって公判の行方を見定めていきたいというのは、これは人間的な要望でもあるし、そしてまた同時に、被害者の皆さんにとっては権利と言ってあげてもいい大事な課題だと思うんです。ところが、あの長蛇の列ではこれはどうにもならない。  こういうことで、裁判所として被害者の皆さんに対する傍聴のあり方について特段の御検討をいただけないだろうか。そういう検討をいただけるならば、半分よこせとか何十人よこせとは決して言わないわけですから、被害者弁護団との協議を通じて適正な範囲において協議をさせていただいて、秩序正しく傍聴ができるようにしたいという希望があるわけです。こういった希望をぜひ私は入れてあげていただきたい、こう思っておりますが、裁判所としていかがお考えでしょうか。
  86. 高橋省吾

    最高裁判所長官代理者(高橋省吾君) 傍聴希望者が極めて多数になることが予想される事件につきましては、傍聴機会の公平を図るために傍聴券を抽せんする方法をとるのが通常であります。被害者などその事件と特別の関係を有する者から事前に傍聴の希望があった場合には、特別傍聴券を交付して優先的に傍聴席を割り当てているというのが実情であります。  具体的にどのような場合に特別傍聴券の交付を認めるかどうかということにつきましては、これは傍聴席の数でございますけれども、これは個々の事件ごとに、法廷の大きさ、あるいは予想される一般傍聴希望者の人数、優先的に傍聴を希望している者と当該被告事件との関係、あるいは希望の理由などいろんな事情を考慮しまして、その事件を担当しております受訴裁判所が判断しているところでございます。  したがいまして、必ずしも優先的に傍聴を希望している者の要望がすべて認められるというわけではございませんけれども、そのような考慮のもとで、特定の傍聴希望者に優先的に傍聴を認めることが相当である、このように判断した場合には、必要と判断した数の特別傍聴券の交付を認めている、こういうのが実情でございます。  オウム真理教関連事件におきましても、被害者及び被害者の遺族等から裁判所に対して事前に傍聴の希望が出された場合には、受訴裁判所が、先ほど申し上げましたようないろんな事情を考慮しまして、特別傍聴券を交付するかどうかを判断することになると思われます。  実際に、東京地裁におきましても、中川智正被告人の坂本弁護士一家殺害事件の審理、これはことしの三月十二日の第四回公判ですが、その事件と、それから早川紀代秀被告人の同じ坂本弁護士一家殺害事件の審理、これはことしの三月二十七日の第四回公判ですけれども、この審理におきましては被害者の遺族に対してそれぞれ二席の特別傍聴券が交付されたと聞いております。
  87. 橋本敦

    ○橋本敦君 わかりました。  今後とも、今おっしゃったような要求、申し出によって具体的な判断として特別傍聴券を出していただくという、そこのところを続けていただくということと、今おっしゃった二席というのが、これが私は可能であるならば、法廷の広さその他あるいは事件の性質によって幅を持たせていただいて、できるだけ要請にこたえてやっていただくように御検討をお願いするということで質問を終わりたいと思いますが、いかがでしょうか。
  88. 高橋省吾

    最高裁判所長官代理者(高橋省吾君) 結局、先ほど申し上げましだように、いろんな事情を考慮しまして受訴裁判所の方が適正に判断してくれるものと考えております。
  89. 橋本敦

    ○橋本敦君 終わります。
  90. 田英夫

    ○田英夫君 既に同僚委員から多くの御質問がありましたので、重複は避けたいと思います。  この問題については、私が長いこと国際問題に取り組んできた感覚からいえば、遅きに失したんじゃないかというのが感想であります。したがって、改正に至る経緯ももう中原委員の御質問にお答えになりましたので触れません。  実は私ごとですが、先週中国の北京に参りまして日中民間人会議というのに出たんですが、たまたま中国の司法部長、つまり法務大臣にお会いする機会がありました。食事をしながらの雑談ですから、会話ですから、話はいろいろありましたけれども、その中でまさにこれに触れる会話がありました。  最近、実は中国はすさまじい経済発展を遂げているのは御存じのとおりでありますけれども、それに伴う法整備、特に経済関係法の整備がまだ整っていないということの中で、例えば最近も日本の中小企業が向こうに進出をされてそこでトラブルが起こっている、こういうことが報道で行われました。これに対して中国は、報道の内容が違うといって大変不満を持っておられるようでありましたけれども、かといって、今回の国際仲裁というところに持ち込んでくるというような体制には中国はまだない。こういうことで、被害を受けた日本の中小企業も大変困っておられる。実はこういうことが中国は特に今後多発することが予想されると思います。  あるいは、ASEANは最近すさまじい経済発展を遂げていて、しかも中国よりはるかに進んでいるという形で発展を遂げている。そこでも、逆にASEANの製品が日本に入ってくるというような現象になってきている中で、経済的な紛争といいますか、事件が起こってくる。この場合に、国際仲裁というような形になり得るかというと、まだこれもなかなか難しい。アメリカとかEUというところは先進国でありますから、これに対応できる十分の能力がある。  こういう実情を考えますと、中国の司法部の方は、日本の法体系を教えていただきたいというのが偽らざる気持ちですというふうな御発言まであります。ぜひ法務省はそうしたことも念頭に入れて、例えば今回の改正の問題も取り組んでいただきたいということを冒頭申し上げておきたいと思います。  そこで、実はいわゆる外弁法ができました昭和六十二年ですか、あの当時は、これができればどっとアメリカなどから来られるんじゃないだろうか、参加されるんじゃないか、千人ぐらいになるんじゃないかというような声さえあったと思いますが、現在、どのくらいのいわゆる外国法事務弁護士、つまり法務大臣の承認を得て日弁連に登録をされているという方はどのくらいおられるか。できればその出身の地域、国でなくても結構ですが、アメリカとかEUとかアジアとかいう分け方でもいいですが、おわかりになればお教えいただきたいと思います。
  91. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) ことし、三月三十一日現在でございますが、外国法事務弁護士として登録している者の総数は七十七名でございます。外国弁護士となる資格を取得した国別の数で申し上げますと、アメリカ合衆国が五十一名、イギリスが十四名、オーストラリアが三名、フランスが二名、ドイツが二名、オランダ一名、ブラジル一名、香港一名、中国一名、カナダ一名、合計七十七名でございます。  なお、御参考までに時系列的にちょっと見てみますと、発足当初は、この制度が開始されて間もなくは三十名から四十名でございました。その後だんだんふえてきまして、平成四年、五年あたりになりますと七十九名ぐらいになっております。その後いわば横ばいでございまして、現在七十七名という、こういう状況にございます。
  92. 田英夫

    ○田英夫君 率直な感想で、当初の予想よりは少ない、非常に少ない。これもいろいろ原因があるんじゃないだろうか。今後の対応の中で研究会などで御検討いただきたい、このことはきょうは触れませんけれども。結論を言えば、外国法事務弁護士という方々がもっとより活発に活動できるような環境をつくるという考え方が私などはもっと欲しいなという気がいたします。  そして、これも研究会などで今後御検討いただきたい課題ですけれども、先ほどからも橋本さんも触れておられましたけれども、日本のシステムというか日本の司法制度を守っていくという立場をとるのか、もっと国際化に対応するそういう方向に大きく進んでいこうとするのか、この二者択一という感じになってくるんじゃないかと思うんです。私は言うまでもなく後者の国際化に積極的に対応するという姿勢で進んでいただきたいと思うわけですが、大臣いかがでしょうか。
  93. 長尾立子

    ○国務大臣(長尾立子君) 国際化に積極的に対応する、すなわち今後の社会経済情勢を十分に踏まえて規制緩和という問題に積極的に取り組んでいくべきであるという御趣旨につきましては、先ほど私も申し上げましたように、その方向については委員の御指摘方向を否定するものではないわけでございます。  しかし、一面におきまして、国民の権利を守っていくという面から、今話題になっております弁護士活動等につきましては、現行日本国内法の諸規定によりましていろいろな意味で大変な義務を課してきたものでありまして、そのような大きな課題とどのように調整を図りつつ国際化への方向というものに持っていくか、そのバランスの問題であると認識をいたしております。
  94. 田英夫

    ○田英夫君 ありがとうございました。終わります。
  95. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。——別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  外国弁護士による法律事務取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  96. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  97. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十四分散会