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1996-03-28 第136回国会 参議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年三月二十八日(木曜日)    午後一時開会     ―――――――――――――    委員異動  三月二十五日     辞任         補欠選任      岩井 國臣君     鈴木 省吾君      松村 龍二君     下稲葉耕吉君      三浦 一水君     中原  爽君  三月二十七日     選任          大野つや子君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         及川 順郎君     理 事                 野村 五男君                 平野 貞夫君                 橋本  敦君     委 員                 遠藤  要君                 下稲葉耕吉君                 中原  爽君                 林田悠紀夫君                 魚住裕一郎君                 大森 礼子君                 山崎 順子君                 一井 淳治君                 千葉 景子君                 本岡 昭次君                 田  英夫君    国務大臣        法 務 大 臣  長尾 立子君    政府委員        法務政務次官   河村 建夫君        法務大臣官房長  頃安 健司君        法務大臣官房司        法法制調査部長  永井 紀昭君        法務省民事局長  濱崎 恭生君        法務省刑事局長  原田 明夫君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   涌井 紀夫君        最高裁判所事務        総局人事局長   堀籠 幸男君        最高裁判所事務        総局経理局長   仁田 陸郎君        最高裁判所事務        総局民事局長        兼最高裁判所事        務総局行政局長  石垣 君雄君        最高裁判所事務        総局刑事局長   高橋 省吾君    事務局側        常任委員会専門        員        吉岡 恒男君    説明員        内閣官房内閣外        政審議室内閣審        議官       松井 靖夫君        警察庁刑事局捜        査第一課長    中島 勝利君        外務大臣官房外        務参事官     古屋 昭彦君        大蔵省主計局主        計官       長尾 和彦君        厚生省保健医療        局精神保健課長  吉田 哲彦君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 及川順郎

    委員長及川順郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十五日、松村龍二君、三浦一水君及び岩井國臣君が委員を辞任され、その補欠として下稲葉耕吉君、中原爽君及び鈴木省吾君が選任されました。  また、本委員会は一名の欠員となっておりましたが、昨二十七日、大野つや子君が委員選任されました。     ―――――――――――――
  3. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。長尾法務大臣
  4. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、下級裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所職員員数増加しようとするものでありまして、以下簡単にその要点を申し上げます。  第一点は、裁判官員数増加であります。これは、地方裁判所における民事訴訟事件の適正迅速な処理を図るため、判事補員数を十五人増加しようとするものであります。  第二点は、裁判官以外の裁判所職員員数増加であります。これは、一方において、地方裁判所における民事訴訟事件民事執行法に基づく執行事件及び破産事件の適正迅速な処理を図るため、裁判官以外の裁判所職員を五十五人増員するとともに、他方において、裁判所司法行政事務を簡素化し、能率化すること等に伴い、裁判官以外の裁判所職員を三十四人減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所職員員数を二十一人増加しようとするものであります。  以上が、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  5. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 野村五男

    野村五男君 私は自由民主党の野村でございます。質問をさせていただきます。  規制緩和小委員会提言によりますと、「規制緩和が進み自己責任原則徹底する社会では、意見の対立は、行政によってよりも、むしろ司法によって解決されることが原則となる。」というふうに提言がされているわけであります。  日経新聞平成六年、それに東京新聞の八年二月のその中に二割司法というふうな問題が書かれているわけでありますが、そこを引用させてもらいますと、「法曹関係者は、自嘲(じちょう)を込めて「二割司法」と言う。最近の調査でも、法律問題の解決裁判を利用したと答えた人は一割、弁護士と相談した人も二割にとどまった。国民紛争解決手段として司法が果たしている役割は、大きくない。争いごとを嫌う国民性や、権利意識の低さなどに、「二割司法」の原因を求める見方もある。だが、カネと時間がかかり、国民に分かりにくい裁判仕組み運営の仕方、絶対数が不足し、大都市に偏在している弁護士の実態が、裁判から国民を遠ざけている、といえる。」という点がこの日経新聞によりますと指摘されているわけであります。  それに、平成八年二月七日の新聞によりますと、「日本司法は機能していない、といわれるようになって久しい。特に民事訴訟は、手続きが面倒で時間とカネがかかり過ぎて、社会の変動についていけないので、肝心な時に頼りにされない。いわゆる住専問題で、関係者の間から破産会社更生法適用などの法的解決を求める動きが出なかったのは、その表れの一つ」ではないだろうかという指摘がされているわけであります。  「その裏で、法的根拠の不明確な行政指導、対症療法的な政策で矛盾を深めたり、示談屋、暴力団などの紛争への介入を招いている。」のも現実である。  「法制審議会の部会がまとめた新しい民事訴訟法要綱案は、このような状況改善するために、さまざまな工夫が盛り込まれた。裁判所に集まらなくても、電話会議システムを利用して双方の主張要点を整理でき、テレビ会議システム遠隔地にいる証人の尋問もできる。あらかじめ争点を整理して集中的に証人を調べたり、少額の訴訟では、一回の審理で即日判決を言い渡す方式も導入」できるだろうというふうなことを言われております。  「これらが軌道に乗れば、いまは文書交換の場と化している法廷が活性化し、審理もスピードアップするに違いない。基本的な方向は支持できる。 しかし、役所が「それは秘密だ」と言いさえずれば、官庁文書を証拠にすることはもちろん、裁判所秘密扱いが正当かどうかさえ調べられない、また内部で使用するためにつくられた文書は提出拒否できる、という文書提出命令の規定など、問題点は残っている。 環境、医療消費者訴訟などでは、しばしばマル秘文書内部文書が決め手になる。情報公開の流れにさからい、消費者、弱者の救済の道を閉ざしかねないだけに、「実質的公平の確保」を念頭において、さらに議論を重ねるべきだ。」という提言がなされております。  「これからの日本に求められるのは、法という客観的基準による問題解決徹底である。大和銀行の損失隠し事件では、法律ルールに対する日米の考え方の違いが浮き彫りになった。その場しのぎのあいまいな解決ではなく、法の枠組みにしたがって明確に問題を解決していかないと、国際的に通用しない。」だろうという提言も出されております。  「そのためには民訴手続きだけでなく、「法による解決」のための条件整備が必要だ。」と。「たとえば裁判官の数。」ということで、これは大変びっくりするような数字でございますが、「制度の違いがあるとはいえ、一人当たりの国民はアメリカ八千人、ドイツ四千人、フランス一万二千人に対し日本は六万人である。」というのが現状である。  そこで、この裁判所職員定員法に関係して質問させていただきますが、まず法務当局にお伺いしたいのでありますが、判事補定員を十五人増加する理由は何なのか、お伺いいたします。
  7. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) 判事補定員を十五人増加する理由は、先ほど御趣旨を説明いたしましたとおり、地方裁判所における民事訴訟事件審理充実改善のためでございます。  具体的には、次のような事情があるものと聞いております。すなわち、裁判所におきましては従来から、事前準備徹底、あるいは弁論兼和解の活用等によりまして民事訴訟事件審理充実促進を図ってきたところでありますが、しかし国民からは、裁判に時間がかかり過ぎるという批判が高まっておりまして、また諸外国からも審理促進を求められているという、そういう状況にございます。  このようなことから、ただいま委員指摘のとおり、民事訴訟法の全面的な見直しということが必要でありますとともに、現行法の運用におきましても、訴訟関係人理解協力を得た上で審理充実を図り、審理を集中的に行うことによりまして口頭弁論期日の間隔を短縮するなどの改善を図る必要があります。そのためには、裁判官負担件数を減少させることがその前提となるわけでございます。  これに加えまして、民事訴訟事件は最近急激に増加しておりまして、しかも事件内容は複雑困難化しております。したがって、これに伴って裁判官裁判事務負担は著しく増加しておりまして、このような裁判事務適正迅速化を図り、しかも一層の審理充実を図るためには、やはり裁判官の人的な充実が必要であることは言うまでもありません。  ところで、裁判官につきましては、その主たる供給源司法修習生に限られますところから、まず判事補から増員を図る必要があるわけでございます。このようなことから、判事補から判事になる方の数やあるいは司法修習生から判事補任官希望者がどのぐらいいるかといったことなども考慮した上、平成八年度におきましては今回判事補十五人の増員を図ることとした、このように最高裁の方から伺っております。
  8. 野村五男

    野村五男君 最高裁にお伺いしますが、増員する判事補充員の見込みはどうなのであるか、まずお伺いします。
  9. 堀籠幸男

    最高裁判所長官代理者堀籠幸男君) 判事補につきましては、お手元の資料にありますように、平成七年十二月一日現在におきましては欠員四名でございますが、ことしの四月期の判事への任官あるいは退官等により現在員は八十人程度減少することが見込まれているところでございます。  今回の改正において増加される予定定員十五人を加えますと、結局ことしの四月におきまして百人程度員数を補充する必要があるわけでございますが、この四月に司法修習を終える者から判事補に採用することが予定されているものから考えまして、充員が可能であるというふうに考えておるところでございます。
  10. 野村五男

    野村五男君 同じく最高裁にお伺いしますが、民事訴訟事件増加していると聞いていますが、その係属状況及び処理状況について最近の推移をお伺いいたします。
  11. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者石垣君雄君) 今回、増員をお願いしている地方裁判所民事訴訟事件について申し上げたいと思いますが、新受件数は年々増加傾向をたどっておりまして、平成六年におきましては十五万七千三百九十五件と過去最高を記録しております。既済件数も新受件数とほぼ同様の傾向を示しておりますが、平成六年においては十五万五千七百六十三件でございます。未済件数も年々増加傾向にございまして、平成六年におきましては十二万七百二十七件となっております。
  12. 野村五男

    野村五男君 こういう質問をさせていただいておりますけれども、実は経済団体一つ経済同友会も、平成六年の朝日新聞の社説を引用させてもらいますと、「「変革の時代」と司法役割」ということなんですが、「「生活者優位への転換を」とか、「真の豊かさを」というかけ声とともに、」先ほど申し上げました「規制緩和行政改革といった「変革」をめざす議論が各方面でにぎやかだ。そうしたなかで、経済団体一つ経済同友会が先ごろ、「現代日本社会の病理と処方」と題する報告をまとめ、望ましい社会の実現のためには、司法強化充実が欠かせないとする提言を発表した。」というふうに言われております。  その後に、「日本司法は、確かに市民にとって縁遠い存在だ。「裁判ざた」という言葉に象徴されるように、司法機関を利用すること自体が悪いイメージで語られる。 なのに、司法当局弁護士会は、つい最近まで、一般市民の利用を広げる方向での制度改善や施策に、それほど力を入れてはこなかった。関係者指摘を重く受け止めてもらいたいと思う。」というふうに提言がなされているわけであります。  その中で、「規制緩和行政改革は、法による公平なルールと、違反へのきちんとした制裁の仕組みを伴わなければ、弱肉強食の生存競争を激化させるだけに終わる。」と。  「同友会報告は、そうした認識に立ったうえで「個人にとって身近な司法」を目標に掲げ、「裁判にかかる時間とコスト、アクセスの面で、個人が利用しやすいよう改善が図られるべきだ」とする。具体的には「法曹人口が極端に少なく、社会の求めに応じきれていない」として裁判官、検察官、弁護士のバランスある増員主張。」しておられるところであります。先ほど裁判官の話をしましたが、「国民六千二百余人に一人の割合である今の法曹人口を、それぞれ五百人弱、千人弱、二千人弱に一人の英、独、仏ぐらいにはすべきだ、」とも提言しているわけなのであります。  最高裁に続いてお伺いしますが、民事執行事件破産事件係属状況及び処理状況について最近の推移をお伺いいたします。
  13. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者石垣君雄君) まず、民事執行事件から申し上げますが、大別して、民事執行事件には不動産執行事件債権執行事件というのが大きな要因を占めるところでございます。  先に、不動産執行事件状況を申し上げたいと思いますが、最近で比較的事件が落ちついていた時期は平成二年でございまして、新受件数で言いますと四万一千百七十九件でございましたが、平成六年には六万三千九百三件に増加をしております。既済件数は、平成二年が六万三千八十三件で新受を上回っておりましたが、平成六年には四万九千二十八件と新受に追いつかない状態になっております。未済件数で見ますと、平成二年が五万九千九件でありましたものが、平成六年には十万八千九十二件と大幅に増加をしている状況でございます。  それから、債権執行事件ですが、同様に比較をしてみますと、平成二年の新受件数は九万一千九百十五件でございましたが、平成六年には十四万三千五百四件に増加しております。こちらの方の既済件数の方はほぼ新受件数にリンクするような形で、平成二年は十一万七千九百十一件でありましたものが、平成六年には十二万八千七百八十九件の既済となっておりますが、新受件数に追いつかない状況はやはりこちらもあると申せましょう。それで、未済件数でいくと、平成二年が十一万四千二百八十件でありましたものが、平成六年には十五万二千十九件と増加をしたということになっております。
  14. 野村五男

    野村五男君 判事補増員によって地方裁判所における民事訴訟事件審理をどのように充実させるのか、最高裁にお伺いいたします。
  15. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者石垣君雄君) 民事訴訟事件増加をしているということは先ほど法務省の方からもお話があったとおりでございますが、地方裁判所民事通常訴訟事件数平成四年以来過去最高を更新してきておりまして、事件内容も複雑困難化しております。したがって、裁判官裁判事務負担は著しく増加をしていると言っていいかと思います。  通常判事補は御存じのとおり合議事件主任裁判官となりますために、判事補から増員をすることによって合議事件処理そのもの充実を図ることができるということになります。また、合議体において現在よりも多くの事件処理することが可能になりますので、これまでは事案が複雑困難でありながらやむを得ず単独体処理していた事件合議に付することが可能になりますために、単独体はそれほど困難でない事件処理に専念することができるということで、円滑な事件処理に資するものだというふうに考えております。
  16. 野村五男

    野村五男君 次は、法務当局にお伺いしますが、裁判官以外の裁判所職員を二十一人増加する理由は何なのでしょうか。
  17. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) 裁判官以外の裁判所職員では、裁判所事務のうち裁判部門について、裁判所書記官五十五人を増員することが予定されております。  その内訳は、まず、地方裁判所における民事訴訟事件審理充実を図るため裁判所書記官三十八人を増員し、二番目に、地方裁判所における民事執行法に基づく執行事件処理充実強化を図るため書記官十五人の増員、三番目に、地方裁判所における破産事件処理充実強化を図るために裁判所書記官二名の増員と、合計五十五名の書記官増員予定しております。  ところが、他方で、政府における職員定員削減の方針に協力する意味で、主として清掃等庁舎管理業務に携わる技能労務職員三十二名を減員するほか、司法行政部門におけるタイピスト二名の減員が可能でありますので、この三十四人を減員することによりまして、裁判官以外の裁判所職員定員は差し引き二十一人増加すると、こういうことになるということでございます。
  18. 野村五男

    野村五男君 改めて最高裁にお伺いしますが、増員する裁判所書記官充員はどのようにして行われるのか、まずお伺いします。
  19. 堀籠幸男

    最高裁判所長官代理者堀籠幸男君) 裁判所書記官につきましては、平成七年十二月一日現在の欠員は三十一人でございます。本年の四月までに退職等によりましてさらに二百二十人程度の現在員の減少が見込まれるところでありますが、今回の改正によって五十五人の裁判所書記官増員予定されているところでございます。したがって、その欠員の補充が必要となるわけではございますが、これは裁判所書記官研修所の課程を修了し、裁判所書記官任命資格を取得する予定の者の任命、それから退職する裁判所書記官の再任用等によりましてはぼ充員が可能であるというところでございます。
  20. 野村五男

    野村五男君 それでは、裁判所書記官増員によって地方裁判所における民事訴訟事件審理をどのように充実させるのか、改めてお伺いします。
  21. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者石垣君雄君) 先ほど委員の方から新聞記事の御紹介をいただきましたが、現在裁判所では、法廷書面交換の場から実質審理の場にするための運営改善というものに取り組んでいるところでございます。  具体的に申し上げますと、書記官事務に関連するところでは、例えば訴状審査充実させるとか、あるいは予想される事件進行見通し等についての情報早期に得ることによって事件の類型に適した解決方法を選択すると。あるいは事前準備期旦酬準備徹底して、法廷では実質的な討論を闘わせると。それによって早期争点を確定し、争点を絞った立証活動をしていただくと。  それによって集中的な審理を実現し、口頭弁論期日実施回数を減少させるというようなことを目標としておるわけでございます。  これらの方策を実施するために、裁判官の指示のもとに、裁判所書記官から訴訟関係人に対してその理解協力を求めて積極的に種々の働きかけを行うことが必要になるわけでございます。これらの中でも特に、解決方法を選択するために必要な情報の収集や、あるいは裁判所からの釈睨を求める訴訟関係人への伝達、あるいは準備書面や基本的な書証の早期提出等の督促など、これらの事務裁判所書記官が行うことによって審理充実促進を図りたいと、こう考えているわけでございます。
  22. 野村五男

    野村五男君 それでは、裁判所書記官増員によって、民事執行法に基づく執行事件及び破産事件処理についてどのように充実強化を図るのか、最高裁にお伺いします。
  23. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者石垣君雄君) まず、執行事件関係で申し上げますと、特に不動産競売手続におきましては、御承知のとおり、適正な価格で売却をするということが、しかも正確な事務処理をするということが必要になりますので、そのために執行官が作成する現況調査報告書あるいは評価人作成する評価書に基づいて物件明細書というものを作成した上、いわば三点セットと言っておりますが、これをあわせて一般の閲覧に供するということをやっておるわけでございます。  この物件明細書には、不動産の表示のほかに不動産に係る権利の取得の状況や、あるいは売却によって設定さ訓たものとみなされる地上権の概要や、あるいは競売不動産について買い受け人が引き受けるべき用益権内容などを明らかにするということになっております。この明細書記載事項自体は複雑なものとは言えませんが、これを作成するためには、その前提として、占有者占有権原占有の始期、それから占有権原賃借権である場合には賃料支払いの有無、あるいは占有者権原売却後も引き受けとなるかどうかなど、さまざまな事項について検討をすることが必要になりまして、法律的に困難な問題を含むこともございますので、再度の現況調査評価を求めたりということで大変な労力を要しております。  このような物件明細書作成を適正にするために、書記官事項チェック等を十分できるような体制を整えたいというふうに思っているわけでございます。それによって執行事件処理促進させたいと思っております。  それから破産関係で申しますと、破産事件につきまして書記官処理する事務は、申立書審査、受け付け、あるいは破産宣告の送達、官報公告登記嘱託主務官庁への各種の通知、債務者審尋の立ち会い、調書の作成、それから封印の執行届け出債権調査債権表作成等多岐にわたっておりまして、先ほど申し忘れましたが、ここ数年破産事件が急激に増加をしておることも相まちまして、裁判所書記官事務量が顕著に増加をしております。そのためにこれらの事務を適正に処理しようというふうに思っておるところでございます。
  24. 野村五男

    野村五男君 いろいろ質問させていただきましたが、バランスのある法曹増員をお願いしたいと思っております。  次に、選択的夫婦別姓、別氏制度について質問させていただきます。  この問題、法務省はこれをどのように今後扱っていくのか。それから、この法務委員会には我が党の遠藤会長初め、大変我が党を動かされている方がおるので、私は思うのでございますが、この問題の法案が提出された場合に、我が党としてはどのようになされるのだろうかなと、私自身も非常に興味を持った問題なのでお伺いさせてもらうわけであります。  実際に、選択的夫婦別姓制度別姓を選択できるということを、夫婦間であっても、国会議員夫婦間であったとしても、男性の側がむしろ反対であったり、女性の側が賛成であったり、非常に複雑になっているわけであります。  最近、私も実際に結婚式などに呼ばれますと、一人息子と一人娘さんの結婚式が多くて、大変悲しい結婚式になったりしますので、私は、きっと時代が変わってくるのでという勇気づける話をするときもあるのであります。  そこで、この夫婦別姓というものが意外に身近な国、いわゆる隣の国、それからヨーロッパの国と、そういう事情がよくわからなくて、まだ国民的コンセンサスを得られないようなときであるから余計、非常に難しくさせていると思っているのであります。  そこでお伺いしますが、法制審議会は選択的夫婦別氏制度導入を内容とする民法改正要綱を答申したようでありますが、歴史的に見て我が国における夫婦の氏の制度はどのようなものであったのか、改めてお伺いいたします。
  25. 濱崎恭生

    政府委員(濱崎恭生君) 我が国におきまして、いわゆる一般庶民が氏、姓を称することを許されたというのが明治三年からでございまして、国民すべてが氏を称するようにいわば義務づけられたのが明治八年からであるというふうに承知しております。  この明治八年当時の夫婦の氏のあり方がどうであったかということでございますが、これについては特段の法令上等の定めがなかったようでございます。慣習上は、婚姻をしても妻は実家の氏すなわち婚姻前の氏をそのまま称し続けるのが原則であって、夫が死亡して妻が夫の家を相続したといったような場合にだけ夫の氏を称することになったというように聞いております。  夫婦の氏についてこれの定めが置かれましたのは、明治九年三月十七日の太政官指令が最初でございまして、そこにおきましては、今申しました慣習というものを受けたものかと思われますけれども、原則として妻は婚姻後も実家の氏を称するものとされておりまして、いわばこの時点では夫婦は別氏ということであったわけでございます。  夫婦が同じ氏を称することになりましたのは明治三十一年のいわゆる旧民法の施行からでございまして、旧民法は御案内のとおり、いわゆる家の制度を定めておりました。この家の制度のもとでは、家に属する家族はすべて同じ氏を称するという規定を置きます一方、妻は夫の家に入るということになっておりましたことから、結果として夫婦は同じ氏を称することになったわけでございます。  その後、戦後の昭和二十二年に新憲法のもとで民法の規定が改正されまして、これによりまして家の制度が廃止されたわけでございますが、その際に、夫婦は同じ氏を称する、その場合に夫の氏を称するか妻の氏を称するかいずれかを称するものとして、いずれにしても共通の氏を称するという規定が置かれて現在に至っているというふうに承知しております。
  26. 野村五男

    野村五男君 時間の関係で最後の質問にさせていただきますが、これは日本だけではないということが非常に大事なことだろうと思っております。最後に、夫婦の氏について諸外国の制度はどうなっているのかをお伺いして、質問を終わらせていただきます。
  27. 濱崎恭生

    政府委員(濱崎恭生君) 氏というものにつきましては、いろんな性格を持っていると言われております。そういった氏というものが持っているどういう性格を重視するかということはそれぞれの国において異なっておりまして、したがいまして夫婦の氏のあり方についての諸外国の制度にもいろんなものがございます。  夫婦が必ず同じ氏を称しなければならないとする国は、我が国のほかに主要国としてはインドが挙げられるくらいでございまして、多くの国では何らかの形で夫婦の双方が婚姻前の氏を使用する道が少なくとも開かれているということが言えようかと思います。  若干類型的に申しますと、氏は基本的に個人が自由に定めることができるという考え方のもとで夫婦の氏についても自由な定めが認められている国、それから夫婦が同じ氏を称するか別の氏を称するかを選択することができるという国、それから夫婦が同じ氏を称することを原則としながら、自分の氏が夫婦の共通氏とならなかった方が自分の氏を共通氏に付加して結合氏として使用することができるとする国、夫婦が別氏となることを原則としながら配偶者の氏を自己の氏に結合して使用できる国などがございます。  具体的に若干申し上げますと、氏は基本的に個人の自由であるという考え方の国としてはアメリカ合衆国とかイギリスが挙げられますし、夫婦が同じ氏となるか別氏となるかを選択できるという国といたしましてはドイツ、スウェーデン等が挙げられますほか、夫の氏は変わらないものとして妻が夫の氏を称するか自分の氏を称するか、あるいは両方の結合氏を称するかを選択できるという国としてオランダ、イスラエル等がございます。  同じ氏を原則として婚姻前の氏を付加して使用できるという国といたしましてはオーストリア、スイス等が挙げられます。一方で、別氏を原則として配偶者の氏を付加して使用できるという国として中国等が挙げられます。  大体、以上のような概要でございます。
  28. 野村五男

    野村五男君 ありがとうございました。
  29. 山崎順子

    ○山崎順子君 平成会の山崎順子です。  ただいま長尾法務大臣から裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の提案理由が説明されました。現在、オウムの事件また住専の問題、TBSの問題等、ほかにもさまざま法曹関係の方たち、裁判官弁護士、検察官、皆さん大変お忙しく、仕事が山積しておりますので、私はもちろん裁判所職員をふやすことは大賛成でございますし、もっと充実されていいのではないか、十五人なんていうのは少な過ぎるのではないかというくらいに思っております。しかし、ただ、数をふやせばいいというものではないということはもう言うまでもないことだと思います。  私には、どうも裁判官や検察官にはジェンダーの視点というものが欠けているのではないかと思えることが時々ございます。それで、きょうはそのことについて御質問をさせていただきたいのでございます。  まず、昨年、刑法が改正されました。そのときの審議で、私は強姦罪について、その構成要件を見直すべきだということ、また強姦罪が軽過ぎるのではないかというようなことを質問させていただきました。そのときに、なぜ嫌ならもっと抵抗をしなかったのかとか、なぜついていったのか、なぜ逃げなかったのかと被害者ばかりが責められて、反対に加害者の方に、なぜ理性を持ってそこでやめなかったのか、なぜ相手の感情を尊重しなかったのか、なぜ平気で女性の尊厳を踏みにじるのか、まるでけだものではないかといった、加害者を責める方が逆に少ないのではないかというようなことも質問させていただきました。  被害者である女性が責められ、法廷では過去の異性関係までが根掘り葉掘り聞かれ、その上、抵抗の程度が少なかったからということで強姦は成立しないとされ、加害者として告訴された被告は無罪というような判決も随分出ております。そうした判決で、この判決文の中に書かれていたんですけれども、「セックスには着衣が破れるくらいの力が伴うのが普通である」と書かれているんですね。私は、こういったセックス観を持っている人たちが法を守る立場にいるのかと思うと、大変恐ろしいと思います。  このときの私の質問の議事録を読んだ朝日新聞の記者がいるんですけれども、この議事録の政府委員の答弁を読んで本当に驚き、そして愕然、がっかりしたという手紙を私にくれました。  またその後、つい最近のことですが、お読みになった方もいらっしゃると思いますが、「性暴力を考える」という連載がずっと朝日新聞でなされておりました。そこに読者からの投稿の一部としてこのようなことが載っております。  例えば、これは長野の三十代の歯科衛生士の女性ですが、「恐怖で抵抗できずに性行為をさせられても犯罪が成立せず、金銭を奪われるなら犯罪が成立するというのは、納得できません」。また、大阪の四十代の教員の女性ですが、「「ふしだら」であろうが結婚歴があろうが、なぜ被害者が非難されるのか。窃盗にしろ強盗にしろ他の犯罪は加害者がまず責任を問われる。警察も裁判所も、常識が欠けている」のではないか、そのように書いていらっしゃるんです。  さて、このような常識が欠けているのではないかといった厳しい批判について大臣はどう思われるでしょうか、お答えくださいますか。
  30. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 一般論として申し上げますと、法の執行に当たる者が人の心の痛みをわかる、その方の立場に立って物事を考えていくことができる、そういう基本的な姿勢が要請されているということは、先生のおっしゃるとおりだと思っております。
  31. 山崎順子

    ○山崎順子君 先日、沖縄での少女強姦事件の加害者への求刑十年に対して六年半から七年の実刑判決がおりました。これに対しては大臣はどのような感想をお持ちになるでしょうか。
  32. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 昨年九月、沖縄で発生いたしました米軍人三名による小学生を被害者とする逮捕監禁強姦致傷事件、まことに痛ましい事件であると思います。二度とこのような事件が発生しないことを強く願うものでございますが、この事件につきましては、今お話がございましたように、本年三月七日、那覇地方裁判所におきまして、被告人三名につきいずれも有罪判決が言い渡され、うち一名については判決が確定しております。  判決内容についてのお尋ねでございますが、裁判所が、証拠に基づき、それぞれの案件に即し適正に判断して行われるものであると承知いたしております。法務大臣としてのコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
  33. 山崎順子

    ○山崎順子君 確かに、大臣のお立場ではこの七年という刑が軽いとか重いとかというふうにお答えになることはできないかと思いますけれども、沖縄県民の人々の間にはこの判決に対して軽過ぎるという不満が渦巻いております。基地に囲まれ、米兵による犯罪が後を絶たない中で暮らさざるを得ない沖縄県民の人たちのこの事件に対するわだかまりというものはなお強いということを私たちはしっかり認識しなければならないと思います。また、沖縄県民だけではなくて、私たち日本の女性たちのほとんどはこの七年を軽過ぎると感じております。しかし、他の強姦事件を見ますともっと軽いんですね、残念ながら。この国は法治国家なのか、社会全体が女性を余りにもないがしろにしているのではないか、女性の尊厳を低く見ているとしか思えないと、この強姦罪が軽過ぎるということに対してほとんどの人が怒りをあらわにしております。  先ほど私は、あえて少女暴行事件ではなく少女強姦事件と申しました。新聞等では強姦を暴行と言いかえ、また強制わいせつをいたずらなどと言いくるめております。これはどうしてなのか。これは新聞の品位を保つためということらしいんですけれども、これは逆に私は、加害者の犯罪を大変あいまいにして、性暴力の恐怖は全く伝わりませんし、悪質な犯罪であるという意識すら男性に持たせることができないのではないかと思います。  もう一つは、被害者のプライバシーの保護ということも言われておりますけれども、私の友人で強姦事件の被害者の弁護を一生懸命ずっと引き受けている女性がいるんです。彼女は今アメリカへ行って、アメリカの方がもっと強姦やそういった性犯罪、女性への暴力に対する事件に対してシビアで、大変すばらしい弁護士さんがいらっしゃるところで今勉強中で日本にいないんですけれども、さまざまな裁判のときによく私のところに、この日に裁判があるから傍聴に来てくれというはがきをくれました。それで、私たち女性はみんな、できればその時間をあけて傍聴に行くんです。  なぜ傍聴に行くかといいますと、その裁判所では、もちろん裁判というのは公開になっておりますから、聞きつけてマニアと言われる人たちがたくさん裁判所の傍聴に来ておりまして、その女性がどういった過去の性体験があったか、それから強姦されたときどういう状況であったかということを、その場で全部根掘り葉掘り聞かれることを逐一速記いたしまして、それをまたマニアに配るというようなことをやっているわけです。  そういった傍聴人がいるようなところでは、警察でも事情聴取されるときにジェンダー意識のない警察官によって第二のレイプが行われたような大変つらい気持ちになり、また裁判所でそういった傍聴人がいて、そこで過去の性的体験まで、異性関係まで問われるというような状況では、だれも大変苦しくても告訴もしないということは当然だと思うんです。  そういったプライバシーの保護こそ本来はされるべきであって、裁判所ではそんな過去の異性関係は問わないとか、そういった制度にすべきなんです。また、そういったマニアをできるだけ排除できるようなシステムにすべきですし、私たち女性が、できるだけそういった人たちが入らないように傍聴券をとって並ぶというようなことをずっとしてまいりました。そういった被害者のプライバシー保護すらしないで、ただ犯罪をあいまいにするような暴行というような言葉は私は使うべきではないと考えているんです。  先ほど申しました朝日新聞の読者からの記事の中にも、小学生のころ性暴力を受けた四十代の女性がこういうことを言っております。「子どもへの性暴力を「いたずら」と表現した記事を見ると、怒りと悲しみを抑えられない。どんなに小さな心が傷つき、おびえ、泣いているだろうと思うと、胸がふさがります」、このように言っていらっしゃいます。これはマスコミの問題でもありますけれども、こうしたマスコミ等の意識や社会の意識の根源に、私は、やはりその強姦罪の軽さやまた裁判でのプライバシーの無視があるのではないかと思います。  再度、強姦罪の構成要件の見直しなど早急に必要だと思うのですけれども、こうした刑法の見直しですね。ここに、女子学生がやはり「これほど性犯罪の刑が軽いとは。法治国家日本への信頼すら揺らぎました。女性の法曹関係者が過半数の委員会を作り、刑法を改定すべきです」と書いていらっしゃる。それから、慶応大学の女子学生が今回そうしたものを卒業論文になさったということで、かなり女性たち、若い女性の間で女性への暴力についての制度法律が不備だということが認識されてきました。  実は、今私もぜひ早急にその刑法を改正してほしいと思っていますが、昨年の刑法改正時には法制審議会の刑法部会に当然女性がいたんだと思いますけれども、いかがでしょうか、答えていただけますか。
  34. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) 昨年、刑法改正審議いたしました法制審議会刑事法部会の委員数は三十一人でございました。全員が男性でございました。(「おかしい」と呼ぶ者あり)  なお、七年六月からは、同部会の委員、女性が一名加わっております。  以上です。
  35. 山崎順子

    ○山崎順子君 今、同僚議員の方からおかしいという声が大きく上がりましたが、まさにだれしもがそう思うと思います。なぜ百年以上も前につくられた刑法を改正するときに、もちろん御存じのことでしょうが、百年以上前には国会には一人も女性がおりませんでした。裁判官にも女性がおりませんでした。検察官もしかり、弁護士もそうです。そういった中でつくられた刑法がそのまま残っている、それを百何十年ぶりに改正しようというときに、なぜその刑法部会に女性がいなかったんでしょうか、お答え願えますか。
  36. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) 法制審議会の部会の委員は、それぞれ、学者の方、あるいは実務家の方、学識経験者等から御推薦をいただいたりして構成をしているわけでございます。かねて私ども、刑法部会以外のところでは随分弁護士会の御推薦等でたくさんの女性が入っていただくようになっておりますが、刑法部会におきましては弁護士会等の推薦もございませんで、いろいろ推薦団体にはぜひ女性を御推薦願いたいということを言っております。ところが、この刑法部会等法制審議会におきましては、やはり基本的に、相当学識経験等で年配の人といいますか、若い方が少ないものですから、なかなか御推薦いただけないという、こういうような実情もあったかと思います。  私どもといたしましては、特に政府関係の男女共同参画室等でも、できるだけぜひ審議会の委員に女性をたくさん含めるべきだということで、各関係方面には女性委員の推薦を積極的にお願いしているという、こういう状況でございます。
  37. 山崎順子

    ○山崎順子君 推薦をお願いしているというだけではやはりだめなんじゃないかと思うんですね。  さまざまな審議会でクオータで一五%ということを政府目標にしておりますけれども、刑法の方の部会でもぜひともその辺を守っていただきたいと思いますし、推薦がなくても自分たちで探し出すぐらいの形でぜひお願いしたいと思いますが、大臣いかがでございましょうか。
  38. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 現在の審議会の委員の構成につきましては、それぞれの団体からの御推薦をいただかなくてはいけないという部分がどうしてもありますので、その点につきましては、それぞれの団体の御意向に反して私の方で任命をしていくというところが難しい面があるということは御了解いただきたいと思います。  しかし、政府全体といたしまして、こういった政策決定の場に女性の委員をふやしていこうという目標を掲げておりますことは、これは十分私は承知いたしているところでございまして、できる限り女性の委員をふやすということに努力をさせていただきたいと思います。
  39. 山崎順子

    ○山崎順子君 女性たちがまず文学部ですとか教育学部ですとか家政学部に行ってしまうというところも一つ問題で、小さいうちから女性も法学部ですとか経済ですとか理工学部ですとか、どんどんそういうところに行けるように私はすべきだと思います。残念ながら日本ではまだ、女性がそう思っても、例えば県立の学校などで大変優秀な女子高生が東京の大学の理工学部へ行きたいと言いますと、進学指導の先生が、「おまえ、そんなところへ行ったら嫁のもらい手がないぞ」といまだに言うような状況がございまして、女の子が一生懸命勉強しているとそんなに勉強しなくていいと。逆に男性には、自分の家の男の子にはもっと勉強しなきゃいけないと言う。まだまだ親の側でもそういう女性に対する教育の面での、差別とまでは言いませんけれども、偏見があるように思われてなりません。  その辺から変えていかなくてはなかなか刑法部会にまで女性が行かないのかなという気はいたしますが、ぜひともその辺、私は、どういう団体が推薦なさっているのかもう一度きちんと調べまして、今度そちらにも御意見を言いたいと思っております。  それはそこでおきまして、次は堕胎罪と優生保護法に関して質問させていただきます。  この堕胎罪も、もしこの部会に女性がいたら昨年撤廃されていたかもしれないと思うんです。私たちももっと署名活動などをすればよかったと悔やんでおりますけれども、堕胎罪がいまだに存在していることを知らない人たちもおります。そして、我が国の優生保護法と堕胎罪は国際的に大変悪名高い法律でございまして、カイロでの国際人口・開発会議でも、また昨年の北京での世界女性会議でも各国の非難の的になりました。そのことは御存じだと思います。  さて、昨年刑法改正時に議員であった、そのときの三石議員がこの委員会で堕胎罪を廃止すべきではないかと要求をなさいました。そのときの答弁は、法制審議会が出された改正刑法草案の解説にも書かれているとおりですので私も承知しておりますので、あえてもう一度廃止すべきであると要求するのは、多分同じような答弁しか返ってこないと思いますのでどうしようかという気はあるんです。ただ、世界じゅうの女性たちの声がまた昨年の北京会議を機に大きく上がっておりますし、そして日本政府もこの北京での行動綱領を採択して、その行動綱領に堕胎罪が反するものですから、この点でまた昨年よりは前進した御答弁がいただけるのではないか、そのように期待して、まず堕胎罪は憲法十四条違反ではないか、そして堕胎罪は女性に対する人権侵害ではないかということについてお答え願えればと思います。
  40. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) 御指摘のとおり、堕胎罪のあり方と申しますか、立法論につきまして御指摘のような論議が平成七年四月に当委員会でされました。その際の政府委員の答弁についても御認識の上、いわば退路を断たれた上での御質問ということで大変緊張しているわけでございますが、基本的にはなお堕胎罪の存廃問題につきまして過去積極、消極両論、それぞれ、さまざまな角度から議論がなされてきたろうと存じます。  その中で、何よりも胎児もまた生命を持つものとして保護する必要があるという立場、そしてその軽視はひいては人命軽視にもつながるという立場、そのような御指摘。また、国民意識といたしましても、一般的に堕胎を容認する、是認するという状況には至っていないというような状況。その他いろいろございますけれども、そのような中で私ども承知する限りでは、堕胎罪を全廃したというような諸外国の例もないようでございます。  そのような状況を考えますと、基本的にはいまだ、これまで堕胎罪を存置してまいりました事情が大きく変わったというふうに考えるには至らないであろうというふうに考えているわけでございます。  ただ、堕胎罪のあり方そのものについて御論議いただき、これを全廃するというお立場の御議論の中には、堕胎罪そのものというよりもむしろその背後に隠れていると申しますか、さまざまな人の営みのあり方についての社会の受け取り方、それについて感じられていることがその背景になっているということがただいまの委員の御議論の中からもうかがわれるわけでございまして、そういうもの。また一般に、先ほどの強姦罪についての被害者に対する捜査官あるいは法執行に当たる者の基本的な認識のあり方という点で、いわば被害者の立場といいますか、痛みを感ずる側からの御議論ということで、これは十分に認識してまいる必要があるだろうというふうに考えておりますので、その程度で大変申しわけございませんけれども本日の答弁とさせていただければと存じます。
  41. 山崎順子

    ○山崎順子君 おっしゃるとおり、この堕胎罪のことは優生保護法とも関係がございまして、もう本当によく御存じだと思いますけれども、まず日本では、健常なとか障害とかと分けるのはおかしいと思いますけれども、健常な女性には堕胎罪で必ず産むことを強制し、一方、障害者には国民優生法というものがかつてあり、それで産まないことを強制してきました。それが我が国の人口政策であったわけですけれども、この二つの法律というのは女性の子宮を管理し、国民の量と質の調整弁として機能してきたわけですね。  この国民優生法を手直しして中絶の許可条件を含んだ優生保護法が現在機能しておりますけれども、この法律の目的といいますのは、第一条に書いてあるんですけれども、「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護することを目的とする。」と書かれております。この「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」、これはどういうことなのか。  人間に優劣があるのか。不良な子孫というのはどういうものなんでしょうか。  大臣は厚生省に長らくおられましたから、このあたりのことも随分御存じだろうと思うんですけれども、個人的な見解で結構ですから、不良な子孫というふうなことを書いてあるのをどう思われますでしょうか。
  42. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 確かに私は厚生省の職員であったことがございますけれども、現在の立場でこの法律についての解釈を申し上げるというのは差し控えさせていただきたいと思います。
  43. 山崎順子

    ○山崎順子君 法務大臣じゃなくて女性としてで結構でございますが、いかがでしょうか。
  44. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 確かに私は女性でございますけれども、ここには法務大臣ということで出席をさせていただいておりますので、その点は御了解いただきたいと思います。
  45. 山崎順子

    ○山崎順子君 余り大臣をいじめても仕方がありませんので次に参ります。  「優生上の見地から不良な子孫の出生を」というふうに書かれていて、まずこの法律のタイトルも優生保護法となっておりますけれども、こういったふうに言われた方たちがこの後にいろいろ、今回らい予防法が廃止されまして優生保護法に規定するらい患者に係る規定を削除するということが決められました。優生手術を受けさせるといいますか、その対象に「本人又は配偶者が、癩疾患に罹り、且つ子孫にこれが伝染する虞れのあるもの」、これは医師がこの人たちに対して「本人の同意並びに配偶者があるときはその同意を得て、優生手術を行うことができる。」としているわけです。となりますと、不良な子孫というのはらい疾患の方ということになりますね。  ほかにもここに、「配偶者の四親等以内の血族関係にある者が、遺伝性精神病、遺伝性精神薄弱、遺伝性精神病質、遺伝性身体疾患又は遺伝性畸形を有しているもの」とか、この一のところには、「本人若しくは配偶者が遺伝性精神病質、遺伝性身体疾患若しくは遺伝性奇型を有し、又は配偶者が精神病若しくは精神薄弱を有しているもの」、このようにずっと書かれているんです。  このまま読みますと、不良なというのはこういった方々を指すのかということになりまして、今回はこの「癩疾患」というところを外すわけですけれども、そのように例えば障害を持つ人たち、精神的な病のある人たちを、ただ病がある、障害があるということで、健康な人たち、健常なという人たちと差別をし、不良な子孫と片づけてよろしいのでしょうか。  これはどうでしょうか。憲法の、法のもとでは平等だということでございますから、法務省の方でお答えいただければと思います。
  46. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) この全体の法律の構成は、一方におきまして、このような方々について堕胎の罪を除外する例として、ある一定の範囲タ限定いたしました上で、御本人及びその配偶者の方の同意ということを前提といたしまして、この法律の運用を考えていくという仕組みであろうかと思います。  先生の御指摘は、この法律趣旨自体に現在の時代感覚から見て非常に多く問題があるという点の御指摘であろうかと思いますし、らい疾患につきましての改正が行われたということは、その一つのあらわれであるかと思っております。
  47. 山崎順子

    ○山崎順子君 この優生保護法下で、不良な子孫と考えられ、子供を産むべきでない存在として考えられてきた女性障害者が多くおります。彼女たちは初潮を喜んで迎えられるどころか、介助が大変だということで子宮摘出手術さえ強要されてきております。こういった事実を、これは厚生省の方にお伺いしますが、御存じでしょうか。
  48. 吉田哲彦

    説明員(吉田哲彦君) お答えいたします。  ただいまの御質問のように、女性の子宮の摘出につきましては優生保護法上は認められておりません。また、このような事例については、一部マスコミ等においてそのような報道がされておるわけでございまして、過去に数件そのようなケースがあったという報告を私どもは聞いております。
  49. 山崎順子

    ○山崎順子君 じゃ、新聞での記事をごらんになったのと、あと数件だけの報告しか御存じなくて、調査などは全くしていらっしゃらないということですか。
  50. 吉田哲彦

    説明員(吉田哲彦君) ただいま正確な年次は賞えておりませんが、数年前にそのような事例が報道されまして、その段階におきまして厚生省から全国の都道府県あるいは医師会、さらには文部省にお願いいたしまして大学病院等に調査をさせていただきましたところ、大学病院関係で二件ほどそのようなケースがあったというふうに伺っております。
  51. 山崎順子

    ○山崎順子君 私どものグループの中には現実に子宮摘出をされた女性たちがシンポジウム等でパネラーとして話をしていらっしゃいまして、そんな二件や三件のことではございません。  それで、優生保護法に規定する不妊手術の範囲の中に入っていないと今おっしゃいましたけれども、確かにそうなんですが、その不妊手術の範囲すら逸脱する非人間的行為がたくさん行われているわけです。これは女性障害者への暴力にほかならないと思いますけれども、本人の意思によらない強制的な不妊手術をやはり規定しているからではないかと思うんです。  この本人の意思によらない不妊手術が暴力に当たることは、昨年の北京会議での行動綱領百十五にも強制的な不妊化ということを禁止しておりますし、同時に、行動綱領九十五では、差別、強制、暴力なしに性と生殖に関する決定を行う権利をすべての人たちが行使できるよう促進するのが政策の基礎であるというふうに保障しております。また、百六の(h)では、強制的な医療を撤廃することということが書いてございますけれども、こういったものにこの優生保護法が反しているのではないかと思うんです。  このような法律が行動綱領の採択に賛成した日本にいつまでもあるということは、女性やまた女性障害者のリプロダクティブライツ、これはセクシャルが入った方がいいと思いますが、セクシャル・リプロダクティブライツに対する侵害でありますし、国際社会に対しても恥ずべきことだと考えますが、いかがでしょうか。
  52. 吉田哲彦

    説明員(吉田哲彦君) 優生保護法につきましては、ただいま委員指摘のように、不良な子孫の出生を防止するという優生思想の法目的や、精神障害者や遺伝性疾患を有する者に対する本人の同意なしに優生手術を行えるといった規定があることから、このような考え方に基づいた、実際の運用というものは最近行われておりませんが、このような規定そのものが残っておるということから、障害者団体を中心に障害者に対する差別であるということから、早急に改正すべきという御意見があることも十分承知しておるところでございます。  しかしながら、委員御案内のとおり、この優生保護法には人工妊娠中絶の規定もあわせて規定されておるわけでございまして、この人工妊娠中絶の規定も改正すべきだと、こういう御意見、特にこの規定を廃止して女性の自由意思による中絶を保障する法律をつくるべきだと、こういう御意見がある一方では、胎児の生命尊重のための中絶の規制をもっと図るべきだ、このような御意見まで大変幅広い御意見が国民の間にあるわけでございます。  したがいまして、厚生省におきまして、ただいまのような優生保護法自体につきましては、直ちにどこをどのように見直すかといったことを積極的に申し上げる段階にはないというふうに考えております。  しかしながら、この問題については、多くの方々が大変関心を持って御議論されておるわけでございますので、私どもといたしましても、関係各方面での御議論推移を十分に見守りながら、どのような手順でこの優生保護法の改正手続を進めたらいいのか、引き続き真剣に検討してまいりたい、このように考えておる段階でございます。
  53. 山崎順子

    ○山崎順子君 今おっしゃった中で、確かに経済的理由の中絶を許可する、そのあたりのことまでもしこの優生保護法が撤廃されれば大変だというようなお話もありましたけれども、だからこそまず堕胎罪の廃止、そしてこの優生保護法の廃止、そして女性たちが経済的理由とかそういった理由ではなくて、自分たちの意思で、例えば三カ月以内の胎児でありましたら脳波もまだできておりませんから、ある期間は妊娠中絶を許可するというような形に変えていくなりという、その辺のことをしっかり厚生省の方では皆さんの意見を聞きながらやっていただきたいと考えております。  もう一度、法務省に堕胎罪についてちょっとお聞きしたいんです。先ほどからもう随分刑事局長にはお答えいただいていまして、重ねてで恐縮ですけれども、先ほど憲法十四条違反ではないかと申しましたけれども、例えば妊娠というのは男女の性関係の結果であって、女性だけの問題ではございませんよね。どうでしょうか。
  54. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) そのように承知しております。
  55. 山崎順子

    ○山崎順子君 ところが、男女の性関係の結果でございますし、だれしもそのことはお認めになると思うんですが、その結果を自分の体に引き受けざるを得ない、つまり妊娠をしてしまうという女性の方に選択の権利を与えず、つまり一〇〇%の避妊方法はないわけですから、ですからこの選択の権利を、女性というのはだれでも妊娠した胎児を中絶するということは、刑罰で決められなくても罪悪感を持っておりますし、つらいし、悲しいし、嫌だと思っております。  それなのに、一〇〇%の避妊方法がなければ、産んでから、今子供の虐待ですとか子捨てとかいろんな問題が起きておりますけれども、もちろん産んで育てて働いていけるような状況だったらよろしいですけれども、平均賃金は低いし、だれしもが子供を育てながら働けるというような社会環境はまだまだ整備されておりません。そうした中では、一〇〇%の避妊方法がない以上、やはり中絶というのも一つの女性への選択権として与えるべきではないかと私は考えているんです。そうした選択の権利を与えずに、かえって責任のみを負わせる堕胎罪というのはやはり法のもとの平等をうたった憲法第十四条違反ではないかと思います。  さらに、御存じだと思いますが、一九八五年に女子差別撤廃条約が批准されております。この二条の(g)に「女子に対する差別となる自国のすべての刑罰規定を廃止すること。」というふうにもうたわれているんです。これは一九八五年のことなんです。十年も前のことなんです。日本は批准しているんですけれども、なぜ違反する堕胎罪がまだ撤廃されないのか、やはり私には納得がいかないんですが、もう一度刑事局長お答え願えますでしょうか。
  56. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) 委員の御議論の基本的な部分が、極めて人の営みに対する哲学的と申しますか、基本的な物の考え方に基づくものであろうと思われますので、軽々に私の方でそれについての御意見を申し上げるということについては大変難しゅうございますけれども、最後に御指摘の憲法十四条の関係、また女子差別撤廃条約との関係ということになりますと、やはりそれぞれ両性が背負っているさまざまな制約と申しますか、さまざまな条件に基づくある程度の許される範囲での法の適用のあり方の差異ということはやはり認識されておりましたし、またやむを得ない面もあるといういわば考え方であったのであろうと存じます。  しかしながら、そういうことも踏まえまして、堕胎罪の全面的撤廃ということについて御議論があるということについては、ただいまの御指摘でよく承知いたしました。しかしながら、現在直ちにそのような方向に向けて法改正について議論するという状況には、やはり先ほど申し上げましたような状況からいまだ至っていないような気がしてなりません。しかし、そういう御意見があるということを念頭に置かせていただきたいと存じます。
  57. 山崎順子

    ○山崎順子君 これまでに優生保護法については何度か改正の動きがございました。そのたびに私たち女性の中で、障害を持つ人とそうでない人との間に逆に対立するような状況があったことも事実です。  しかし今、私たち女性は、少子化の傾向があって一人の女性が産む子供の数も減っておりますけれども、できるだけ働きながら、そして配偶者と愛情関係、信頼関係を築きながら、そして子供も一人ではなく二人、三人と産みたいという女性たちは多いし、また子供を産みたくない、産みたくないというか持たない女性もいますし、そういった選択をする女性もいますし、産みたくても産まない女性もいます。また、障害を持つ女性もいます。いろんな女性たちがいますけれども、全部の女性たちが、その条件とかそういった現状の健康のいろいろな差によることの差別なしに、自分たちの体を自分たちで慈しみ、いつ何人子供を産むか産まないかの選択、そういったものを自由にさせてほしいと考えています。  もちろん、そこには生命の尊重もしっかり考えておりますし、そこでいつも女性たちは悩むわけですけれども、その選択の自由というものは個人の基本的人権であると思います。そして障害を持つ人たちが、または持たない人が障害を持つ子を産むこともそれも自由ですし、私たちは宿った胎児を障害があるからそれで抹殺しようなどということは全く思いませんし、それぞれ同じ生きる権利があると思っております。そうした女性たちにとって、この選択の自由ということは人生をみずからの意思で選び取って生きるための自己決定権として不可欠な条件だと思っております。  こうした視点で、つまりセクシャル・リプロダクティブヘルスの視点から、この堕胎罪、そして優生保護法を廃止し、新しい法律制度を早急につくる必要があるのではないかと私たちは考えておりまして、ただ要望とか陳情とかそういったものだけを今まで繰り返してきたんですけれども、もうそれではだめで市民立法でもつくって国会に出したいというぐらいの思いでおりますけれども、ぜひそういった新しい法律制度が必要だと思うのですが、最後に大臣、これについていかがでしょうか。
  58. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 今、先生の方から、女性の立場に立って現在の法体系をもう一度見直していくべき時期になっているのではないかという御提案があったように伺ったところでございます。  法律の体系全体を考えていきますと、そのような女性の皆様が持っておられる人生観、価値観、それがよりょく生かされなければならない一面におきまして、私どもから御答弁させていただきましたように、一方において生命のとうとさというものをどう考えていくのか、子供自身の人権というものをどう考えていくのかという面の検討もやはり必要であろうと思っているわけでございます。  いずれにいたしましても、現在の社会状況の中でいろいろな価値観が動きつつある時期であると思っております。いろんな方々の御意見を十分に承りまして、私どもの法律体系のあり方については考えていきたいと思っております。
  59. 山崎順子

    ○山崎順子君 時間ですので、終わります。
  60. 一井淳治

    ○一井淳治君 これは言うまでもないことでありますけれども、我が国は三権分立、言いかえますと司法権の独立ということを政治的な基本構造としているわけでありまして、やはりこの司法というものが立法や行政に対抗できるだけの強い体制を確保していくことが国政の基本として必要であると思います。  他方、我が国は民主主義を追求していく国でありますから、民主主義の基礎といいますのは基本的人権の保障ということが何よりも大事でありまして、国民が法のもとの公正な裁判を手軽に受けることができるということが完全に保障されるべきであると思います。  ところが、現実には国民の目から見ますとどうも司法が見えないといいましょうか、あるいは司法国民を守っているという信頼感がないといいましょうか、あるいは司法の存在感というものがいま一つ見えてこないと思います。  これは新聞の社説を引用させていただきます。  ややこれは厳し過ぎるのじゃないかという感じもありまして非常に申し上げにくいんですけれども、司法制度の発展ということを願う者としてあえて御紹介させてもらいますけれども、去年の五月十四日の朝日新聞の社説を見ますと、「市民紛争解決にそれほど役立たず、立法や行政をほとんどチェックできない司法は危機状態にある。」ということが書かれておりますし、去年の十一月六日の日本経済新聞では、「国民が使いにくい「小さな司法」から脱皮を図るべきだ」と、そしてことしの二月七日の東京新聞ですが、「日本司法は機能していない、といわれるようになって久しい。」ということが指摘されておるわけでございます。  司法の重要性ということは、これはもう国民の共通の認識であると思いますけれども、司法部にいらっしゃる方々が司法の重要性ということを強く主張されまして、予算の確保とかあるいは人的、物的設備の拡充のために一層御努力賜りたい。そうしないと司法の未来が開いていかないと思うわけでございますけれども、御所見を伺いたいと思います。
  61. 涌井紀夫

    最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 司法部の使命というのは、申し上げるまでもございませんで、やはり裁判所に提起されてまいります各種の事件をいかに適正にまたは迅速に処理していくかということに尽きるわけでございます。  最近の社会情勢の変化を背景にいたしまして、委員からも御指摘がありましたとおり、これから恐らく司法に対する国民の需要というのはますます増大していくだろうという認識は私どもも同じように持っております。  したがいまして、これからの司法のあり方としては、やはり国民の立場からしまして、もっともっと利用しやすい、またわかりやすい、そういう裁判を実現していくということが最大の課題になろうかと思っております。そのためには、もちろん人的な機構の面、あるいは物的な設備の面での充実整備を図っていかなければなりません。そういう基盤の上に立って、さらに裁判運営自体を今までよりももっと国民に利用しやすいような形に改善していくといいますか、そういう努力が必要になるだろうと思っております。私どもとしては、そういう面でこれからも着実な努力を傾けていきたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  62. 一井淳治

    ○一井淳治君 私が申し上げたいのは、司法部の方々、特にトップにいらっしゃる方々が司法の国政における重要性といいましょうか、三権分立といいまして、行政やあるいは立法に対して強力な権威を持って国政を運営していくんだという、そういう自負心といいますか自信といいますか、そういったものをまずお持ちいただくこと。  そして、それが司法内部にずっとおりていって、地方裁判所裁判官方もそういう自信を持つて、自分の仕事が国民に非常に役立っているんだと、国民のために働かなくちゃいけないんだという責任感を持ちながら運営していただくということが非常に大事ではなかろうかと思うんですが、いかがでございましょうか。
  63. 涌井紀夫

    最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 全国の裁判官は今委員指摘のありましたような気持ちで事件処理に取り組んでおります。  今一番、国民の側から見まして裁判所に対する要望が強くなっておりますのは、先ほど小さい司法という御表現がございましたけれども、国民の側から持ち込まれました事件を、特に民事事件の場合、もう少し素早くといいますか迅速に処理していかないと、やはり法的紛争解決する手段としての司法の意味というのが小さくなってくるのではないかという点だろうと思います。  私どもの方としましては、先ほども言いましたように、基盤整備の問題を進めながら、同時にやはり運用の改善を極力図っていきまして、今まで以上に迅速な事件処理といいますか、そういうことができるような訴訟運営をぜひつくり上げていきたいというふうに思っておるところでございます。
  64. 一井淳治

    ○一井淳治君 重ねて申し上げますけれども、私は一番大事なのは、立法や行政に対してこれをチェックする重要な機関であるという自負心といいますか、そして人権の擁護をするのは裁判所なんだという国民に対する重い責任感、これが予算の確保とか司法部の発展のために一番必要ではなかろうかと思うんですけれども、どんなお考えをお持ちでございましょうか。
  65. 涌井紀夫

    最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) もちろん各種の事件につきまして、裁判官といいますのは全く公正で中立な立場からそれぞれ法律に従った判断をするわけでございますので、特に行政に対して遠慮するとかそういうふうなことではなくて、本当に法律に照らして正しい判断をするという心がけで全員、事件処理に当たっているものと思っております
  66. 一井淳治

    ○一井淳治君 加えまして、今既に御指摘がありましたけれども、現在的な意味を申し上げますと、行政改革委員会規制緩和報告書とか、あるいは経済同友会の「現代日本社会の病理と処方」というところに書いてありますけれども、今、日本経済も非常に危機的な状況にありまして、これを乗り切っていくためにも経済の国際化とかあるいは構造改革ということを進めなくちゃいけないわけでありますけれども、これまでの行政主導の次心意的な経済運営ではやっていけないと。大和銀行事件のようなことでは、とても国際的に日本は生きていけない。やはり自己責任の厳しい市場競争体制に移行していこう。  そのためには情報公開ルールの尊重、あるいは公正な社会をつくらなくちゃいけないということで今後前進していくと思うんですけれども、そういった中で、やはり司法部に対する期待が大きいわけですから、司法は今後の社会の法的インフラとして非常に重視されているわけですから、司法部の人的、物的設備の拡充とか予算の確保とかそういったことを、私が申し上げたようなことを大いに主張されながら御努力を賜りたいと思うわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  67. 涌井紀夫

    最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 委員指摘のような状況社会に出てきておるということは、私どもの方も十分承知しております。司法の特色といいますのは、委員も御指摘ありましたとおり、公正で透明な手続でその法的な紛争処理するというところに特色がございますので、これからの社会状況前提にいたしますと、恐らくいろんな法的紛争解決、従前は裁判所にその処理を持ってこなかったものが、次第に公平で透田な手続での処理を期待するという形で裁判所に持ってこられる、そういう分野が非常に多くなろだろう、そういうふうに思っております。  したがいまして、裁判所の方としましては、そういう司法に対する需要の拡大に十分対応していけるような、そういう体制をつくっていかなければいけないだろうと思っております。
  68. 一井淳治

    ○一井淳治君 今回は裁判所定員法ということで、裁判官あるいは職員増員ということがテーマになっておりまして、私どもはもちろん賛成なんでありますけれども、裁判官十五人ぐらいではとても追っつかないと思うわけであります。  これは先ほどもお話があったんですけれども、国民一人当たりからいきましても、日本の場合は六万人に裁判官一人、アメリカが八千人に一人、ドイツが四千人に一人ということであります。こんなことではとてもだめでありますし、裁判官の手持ち事件も最近、ちょっとお聞きしますと、一人が三百五十件も四百件も持っているというようなことでは、本当に現実の問題として処理できないと思うわけであります。  この十五人というのは、現実の忙しいのを何とか解決しようというのには、それでも不十分だと思うんですけれども、より司法の重要性からいきますと、長期的な方策を立てていただきまして、そして毎年何人ずつか、何十人ずつか、あるいは何百人になるか知りませんが、これはそう簡単にそれだけの人材を確保できないと思いますけれども、相当数の人を計画的にふやしていくと。そして、十年とか二十年後の日本裁判所はこうなるんだというはっきりとした方向性を出していただくということも、将来の日本の民主主義あるいは司法部のために、もうそろそろそういったことをやっていただかなければならない時期じゃないかと思うわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  69. 涌井紀夫

    最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 長期的な計画を立てまして、適正な裁判官数というものをはじき出しまして、それに基づいた増員計画をやってはどうかという御指摘、何度かこの委員会でも御指摘を受けておりまして、私どもの方もいろいろな観点から検討はしておるところでございます。  ただ、毎回申し上げておりますけれども、現実にそういう計画を立てます場合に、いろいろ不確定な要素というのがございます。もちろん、基本的には事件数の動向というのがございまして、実は現在は民事訴訟事件数というのはかなり多くなっておりますけれども、五年とか十年というような周期でごらんいただきますと、何万件かの単位で大幅に増減するというふうな状況がございます。そういう状況を将来にわたって的確に予測するということが非常に難しいというところもございます。  それと、裁判官の人員をふやしていただきます以上、それに伴いまして審理運営改善と申しますか、従前よりはそれによって短い時間で事件処理できるというふうな、そういう体制をつくっていくことでありませんとなかなか国民の皆様の御理解は得られないかと思うんです。実は、事件処理期間を決定する要素というのは必ずしも裁判官の数だけではございませんで、当事者の側の訴訟活動のあり方がどういう形になるかという点とも密接に関連してまいります。現在、弁護士会の御協力も得ながら、いろんな形で民事訴訟運営改善策を考えております。そういう運営改善策がどういう形で実を結んでいくか、その辺も見ながら必要な裁判官数というのも計算していかざるを得ない面がございます。  それともう一つは、委員指摘がございましたように、裁判官の場合、給源というのが司法修習生に事実上限定されてまいりますので、果たして修習生の中から毎年、本当に裁判官になっていただける、そういう適格性、資質を持った方をどの程度採用できるかという点、この点も見ながら毎年の増員数というのを考えていかざるを得ないという面がございます。そういうふうな面がございますものですから、毎年その時々での必要な人数というのをいわば単年度で考えて増員をお願いしてきておるわけでございます。  ただ、委員指摘ございましたように、私どもの方も基本的にはやはりこれから司法に対する社会の需要というのはますます増大するだろうと考えておりますので、大きな方向としましては、着実に裁判官増員というのは進めていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  70. 一井淳治

    ○一井淳治君 都市部においては裁判制度が機能しておりますけれども、ちょっと地方に行きますと、裁判官がてん補てん補でほとんど充実した裁判が行われていないというふうなことが実際にはあるわけであります。私は幾ら何でも、日本が文明国と言われるためには、裁判官は最低五〇%ぐらいはふやしてもらわないと民主主義国とは言えないんじゃないかというふうに考えます。  ここでそんなことを言っても始まりませんので、きょうは大蔵省の方においでいただいていると思いますが、司法部の予算の査定に当たっては、やはり司法の独立性ということがあるわけですから、厳しくしないで司法部の要求された予算はそのまま尊重するというぐらいでお願いしたいと思うんですが、そのあたりはいかがでしょうか。
  71. 長尾和彦

    説明員長尾和彦君) 司法部の独立性というお話でございますけれども、裁判所につきましては、三権分立の独立性の観点から、その機能の十分な発揮が予算面から不当に制約されることがあってはならないということは御指摘のとおりだろうと思います。この趣旨から、財政法においてもいわゆる二重予算制度が設けられているところでございます。  私ども財政当局といたしましても、裁判所予算についてはこういった点を常に念頭に置きつつ、その御要望を十分承りますとともに、当方としても財政を取り巻く諸情勢について十分御説明をいたしまして、最終的に双方が合意に達するよう努めておるところでございます。  今後とも、このように十分意見を承りながら一緒に作業を進めていきたいと考えておるところでございます。
  72. 一井淳治

    ○一井淳治君 局長さんでないんですから、ここで要望しても始まりませんけれども、私の申し上げたことも十分御配慮賜りたいと思います。  次に、住専問題に関連して質問をさせていただきますが、住専の問題はまさに国民的な課題でありますし、日本の経済の将来にとりましても大きな問題であると思います。  二月二十七日の法務委員会におきまして、民事責任の追及ということにかかわって会社制度上の問題点について質問をいたしましたら、大臣の方から「十分関心を持ってまいりたいと思っております。」という御回答、御所見をいただいているわけでございます。その後、さまざまな資料が公表されたり、あるいは国会の委員会で論議がされて相当解明が進んでおると思うわけであります。  住専問題についての責任追及というふうになってきますと、やはり無責任な貸し付け、住専が無責任な融資を繰り返しておったということが大きな問題になってくると思うわけです。そのあたりのことについて、その後調査等を進めておられるならば、どの程度まで進んでおるのか、御説明をいただきたいと思います。
  73. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) 住専をめぐりまして検察当局におきましても、国会での御論議、またさまざまな報道の状況を踏まえまして、既に御報告申し上げましたとおり、東京及び大阪にこの問題に関する協議会、また地検レベルでは専従班を設置するなど、所要の体制を整えているところでございまして、現在あらゆる観点から、関係当局とも緊密に連絡をとりつつ、情報や資料の収集に努めまして、その分析検討を行っている段階であろうと思います。  何分、極めて長期間にわたる、しかも関係者の非常に多い、一つ社会的な事象を解明していく作業がどうしても必要でございますので、ある程度の時間が必要だろうと思います。その中で、真に刑事上の国家の刑罰権を適用すべき事態というものが明白になってくるというような事態になりますれば、検察当局はまさに証拠に基づいて厳正に対処していくものと考えております。
  74. 一井淳治

    ○一井淳治君 これは十二月十九日の与党三党のまとめでありますけれども、住専問題につきましては、住専各社の経理等の過去より現在に至るまでのディスクロージャーを含むあらゆる資料を公表すると。それから債権回収については、「どんなに困難であろうとも、どんなに少額の債権であろうとも、回収は厳格かつ容赦なく行うべきであり、」という決定をし、そしてその後の閣議了解でもそれに基づいて進めることが決められておるわけであります。法務省も非常に損害賠償請求については専門的な立場でいらっしゃるわけですから、積極的に資料を収集されて、そして解明のために力を発揮していただきたい。  もう時間が来ましたので、要望をさせていただきまして、終わらせていただきたいと思います。
  75. 橋本敦

    ○橋本敦君 まず、薬害エイズ問題に関連をして質問いたします。  この問題が、患者の皆さんの多年の苦しみの末にようやく国が責任を認めたことの上に立って近く和解の運びになったことは、その内容が救済措置等患者の皆さんから見て不十分さを残しているとはいえ、喜ぶべきことだと思っております。しかし、この問題についての関係者の責任というものは、人道上もまた法的にも決して消し去ることのできない重大な問題だと思います。  そういう立場で、前回の法務委員会で私は、いわゆる厚生省のエイズ研究班班長の安部氏に対する告訴がなされました殺人、殺人未遂問題について厳重な捜査を要求したのでありますが、刑事局長も法務大臣も、検察庁は厳しく捜査を遂げる乏いう方向についてお話がございました。  一方、製薬会社の責任も極めて重大でありますが、この製薬会社の直接の担当者の責任を問う重要な告訴が、先日、大阪地検に提出をされております。この告訴告発は正式に受理をされましたかどうか、まずこの点いかがですか。
  76. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) お答え申し上げます。  御指摘の件につきましては、本年三月二十二日にいわゆる薬害エイズの被害者の方から大阪地検に対しまして告訴がなされました。この告訴につきましては、同日、大阪地検において受理いたしました。そのように報告を受けております。
  77. 橋本敦

    ○橋本敦君 これはミドリ十字の社長を務めておりました、かつて厚生省薬務局長の職にあった松下氏に対する殺人の告訴であります。  ミドリ十字は、もう既に明らかになっておりますが、危険な非加熱製剤、この危険性を十分に知りながら販売を強行したという点で重大な責任があると指摘をされております。とりわけ、加熱製剤処理が承認をされた一九八五年、それ以後もなお三年近くにわたって危険な非加熱製剤をミドリ十字が安全だというそういうキャンペーンのもとで販売をしたということは、いたずらに被害者を増大させたというだけでなくて、まさに犯罪的行為だと言わざるを得ない重大な問題であります。  この松下氏は、その非加熱製剤をミドリ十字が販売をいたしました、まさに危険な状況があった一九八三年から八八年までの間、社長を務めていたわけでありまして、非加熱製剤が危ないとして加熱製剤が承認された八五年以後も社長を務めておりますから、その危険な非加熱製剤である当行製造のクリスマシンというその薬剤が、まさに患者がHIVに感染をし、エイズを発症し死亡に至る危険性があることを十分に認識していた可能性がある人物としてその責任は重大であります。したがって、そういう点からいえば、確定的に殺意があったというそういうことも断定できる可能性があるし、未必の故意は十分にあったということも言えるし、刑事責任は私は極めて重大だと思います。  この件について検察庁としては厳重な捜査を速やかに遂げるべきだと思いますが、それについて刑事局長の御意見はいかがですか。
  78. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) 検察当局におきましても、御指摘のような事態を踏まえまして鋭意捜査を遂げまして、まさに法と証拠に基づきまして適正な処理をするものと考えております。
  79. 橋本敦

    ○橋本敦君 厳しい捜査を要求しておきたいと思います。その点は法務大臣もお考えはいかがでしょうか。
  80. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) ただいま刑事局長から御答弁を申し上げましたとおり、検察当局は法と証拠に基づきまして適正に捜査をされるものと思っております。
  81. 橋本敦

    ○橋本敦君 正式に受理された以上、手はまさに検察にゆだねられたわけでありますから、厳正な捜査をよろしく遂行されることを強く要望しておきたいと思います。  次に、TBS問題に触れたいと思います。  この問題については、坂本弁護士平成元年十月二十六日に行われましたインタビューのビデオをTBS関係者がオウム関係者に見せたという事実は動かざる事実になったと、こう思います。その点についてはもう言うまでもありませんが、会社自身がそのことを認めたことにとどまらず、きのう行われた裁判の結果を通してもこの問題については疑う余地のない明白な事実になった、こう考えております。検察庁としては、この点について、見せた事実は関係証拠に照らして間違いないと判断されていると思いますが、いかがですか。
  82. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) 御指摘の点につきましては、いわゆる坂本弁護士一家殺害事件の公判における検察官の冒頭陳述に述べられた事柄に関するものと存じますが、この冒頭陳述の中で述べられておりますのは、このような事情でございます。  まさに本件「犯行に至る経緯」という中でその点に触れているわけでございますが、折衝の過程で坂本弁護士のインタビューの発言内容が判明したということを前提にいたしまして、冒頭陳述におきまして証拠により証明すべき事項として提示されているわけでございます。  必ずしも、ビデオそのものを見せたか見せなかったかという点は冒頭陳述では明らかにいたしておりませんので、その点は検察官といたしましては、「犯行に至る経緯」の中で、いわばインタビューの内容が伝えられた、そのことがオウム側に了知されたということを重視しているものと考えるわけでございまして、その点につきましては検察当局といたしましては証拠に基づきましてこれから証明していく事柄であろうというふうに存じております。
  83. 橋本敦

    ○橋本敦君 これから証明する事柄であるということはわかりましたが、既にきのうの公判廷でも一部の証拠は出されておりますが、いわゆる早川メモという問題、それから早川供述、これと、検察官はビデオの内容は任意提出を受けて御存じですから、そのビデオの内容とが極めて一致をするという状況にあることは、これはそういう御判断は間違いないでしょう。
  84. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) そのような報道がなされていることは承知しているのでございますけれども、従来から法務当局といたしまして、進行中の刑事事件の公判におきます証拠調べの状況につきましては、公判廷に顕出されたものにつきまして具体的に御指摘を受けまして、検察当局に確認した上でその点について確認するというやり方をとらせていただいているのでございます。そういうわけで、まさにビデオの内容と早川メモと言われているものの内容がどういうものかという点につきまして、公判廷でそのような形で顕出されていたわけでございませんので、そのような形での確認は差し控えさせていただきたいと存じます。
  85. 橋本敦

    ○橋本敦君 ビデオの内容は冒陳で詳しく述べられていますね。それは証拠によって具体的事実として述べられたわけでしょう。
  86. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) 冒頭陳述で、証拠により明らかにしようとする事実として提示した事実はそのとおりでございます。
  87. 橋本敦

    ○橋本敦君 だから、具体的にこのビデオについてもう一つ聞きますが、これは任意提出を受けておられることも間違いありませんね。
  88. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) そのように承知しております。
  89. 橋本敦

    ○橋本敦君 したがって、具体的に事実はほとんどビデオそのものの内容と間違いないということは明らかであります。  問題は、オウムがこのことをまさにその二十六日に、坂本弁護士のビデオが撮られたその日に知ったということでありますが、これはTBS関係者がそういうビデオがあるということを教える以外に知りようがない。TBS関係者から知ったということは間違いないでしょう。
  90. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) 冒頭陳述の中身では、だれからということまで明らかにしているわけではございませんが、委員指摘のまさに一時ごろにおいて了知されたというふうに主張しているものと存じます。
  91. 橋本敦

    ○橋本敦君 公判の関係があるから慎重に御答弁なさるが、TBS関係者以外から言うわけもないんですから。常識的に言って、冒陳でこれを了知したという事実を指摘していることは、TBS関係者から以外考えられないんだから、それはもう言うまでもないですよ。  ところで問題は、まさにこういうビデオをTBSが見せたという、そういうことは間違いないという今日の状況の中で、一体それがどういうことなのかという問題です。そのことは、まさに報道機関として放映前に見せるということ、そしてまた圧力によってそれを放映しないということ、こういうことがあり得るならば、これは放送倫理上も放送法上も重大問題です。だから、きのうも橋本首相みずからが、この問題は行政上の処置を含めて厳正対処が必要だということをおっしゃって  いるわけです。  私は、ここではそういった放送法上あるいは報道倫理の問題は問題にしませんが、それが犯罪の捜査あるいは捜査の進展との関係でどんなに重大な意味を持つかということをもう一遍改めてここで指摘をしたいと思うんです。  まず、刑事局長に伺いますが、この検察官の冒頭陳述を読んで一見して明白なことは、このビデオの内容を知り、そして松本がそれに対して放映を中止させるよう働きかけるように指示をし、その指示に基づいて早川らが赴いて放映中止の処置をとるよう執拗に迫る、こういう事実があったこと。そして、その結果、放映中止が一応行われるんですが、それでも飽き足らずに松本は、さらに坂本弁護士にその内容を訂正し謝罪するようにせよという指示をしている。そして坂本弁護士のところへ行かせたという事実は、これはもう間違いありませんね。
  92. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) 委員指摘のような事実が検察官において、証拠により証明すべき事実として提示されていることはそのとおりでございます。
  93. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、刑事局長、まさにこのビデオの内容を知り、そしてそれの訂正を要求し、坂本弁護士がそれを聞かなかった。人を不幸にする自由があるか、私は徹底的に闘います、こう言って坂本弁護士が毅然として被害者と正義の立場に立ったということが、それがまさに坂本弁護士の活動を阻止することが困難であるということがオウムに明らかになり、そのゆえに松本は被害者の会の活動を恐れて坂本弁護士を殺害するという、そういう殺意を決意するに至ったという、犯行の動機の具体的なかっ直接的な内容を構成する事実であるということは間違いありませんね。
  94. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) ただいま委員指摘の事実が検察官の冒頭陳述におきまして、「犯行に至る経緯」またそれにつながる共謀の前段階における重要な事実として提示されていることはそのとおりでございます。
  95. 橋本敦

    ○橋本敦君 まさに殺害の、犯行の直接的動機となった事実である。  坂本弁護士のお母さんが言いました。もしこのときに、オウムがこういう抗議をやり、そしてTBSに放映中止を要求し、そういう事実があったということを知らせてくれていたなら、坂本堤はもっとオウムに対する用心をして、警戒心を持って、そうすればこんなことは起こらなかったかもしれない、こういうことを言っておられます。私は、母親の気持ちとして痛いほどわかる。  また、横浜事務所の弁護士の皆さんも、なぜ言ってくれなかったんだろうか、言ってくれておればあの犯行に至らない、そういう可能性もあったに違いないということを言っておられるわけです。  そういう点からいえば、TBSがこのビデオを彼らに見せ、あるいは内容を知らせ、そして一方、オウムに知らせておきながら、坂本弁護士や横浜事務所に、オウムがTBSに抗議に来て厳重な抗議をした事実を知らせないというのは、これはまさにTBSの重大な、一方的な犯行に加担すると言ってもいいぐらいの重大な私は誤りだと思うんです。まさに不作為による殺人輔助に当たるのではないかと書いたくなりますよ。  刑事局長、どうお考えですか。
  96. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) 具体的な事件状況に照らしまして法律的な判断ということになりますので、私の立場からは差し控えさせていただきたいと存じます。
  97. 橋本敦

    ○橋本敦君 あなたが差し控えたところで、多くの新聞は、こういう報道、公表が行われていれば重大事件が防げたか、あるいは捜査の進展につながった可能性が高い、こう言っています。また別の新聞は、関係者や警察に通報しなかったことは弁解できない、坂本事件早期解決、ひいては松本・地下鉄サリン事件を未然に防ぐかぎにもなり得たからだと言っています。そのとおりですよ。  そういう判断からこの問題の重要性を考えていかなくちゃなりませんね。  そこで、第二番目の問題として、この問題についてTBSはその後もずっと一貫して明らかにしなかったということの重大性です。御存じのとおり、この問題があった直後に、このプロデューサーを含むTBS関係者は横浜事務所に行っているんですからね。弁護士が明らかにしたように、公開捜査に警察が踏み切ったのは事件後の十一月十五日、その直後に彼らは来たと言うんです。それでも話さないと、こう言うんです。  警察庁に伺いますが、公開捜査に十一月十五日に踏み切って、警察はあらゆる情報を知りたいと思い、また知る必要があったのではありませんか。
  98. 中島勝利

    説明員(中島勝利君) 一般論で申し上げて恐縮でございますが、いわゆる凶悪事件等の重要事件の発生当初におきましては、捜査をやる側の我々にとりまして、真実に迫るような情報が得られ、その情報に基づいて一定の捜査づけをするということは極めて有効であるというふうに考えておりますし、平素から市民国民に対してもこういうふうな有効情報の提供ということをお願いしてきているわけでございます。  せっかくの御質問で恐縮ですけれども、御質問の件には、仮定にわたる事柄でもございますので、詳細な答弁はこれ以上は差し控えさせていただきたいというふうに存じます。
  99. 橋本敦

    ○橋本敦君 刑事局長、警察庁、この事件が起こったときに、私は、十一月三十日、法務委員会質問していたんですよ。現場にオウムのプルシャが落ちていたと。坂本弁護士事務所へ彼がいなくなる三、四日前に抗議にもオウムは訪れているんだ、だからオウムの影があるんだ、徹底的に調べてくれと。ところが神奈川県警は、失蹉事件だと、こう言って、明白な犯罪、略取誘拐事件というようにとらえていない。そのときの答弁で言っていますよ。一家そろっていなくなった。  「犯罪に巻き込まれた可能性があるということでございまして、」、特異な事件として全力を挙げて救出と解明に努めておりますと。犯罪に巻き込まれた特異な事件、そうじゃないんですよ。まさに被害者として殺害されていたんですよ、結果的に見て。だから、オウムに踏み込んで捜査せいと、こう言ったときに、あのプルシャ一つではできません、横浜事務所に三日前に抗議に来て激論したというだけでは踏み込むことはなかなかできませんと言うのです。そういう状況で、ここで警察庁は、しかし、あらゆる情報を収集して全力を挙げたいと、こう言っているんですよ。  だから、そういうときに、TBSが黙っているんじゃなくて、実は坂本弁護士がいなくなる直前、二十六日に、ビデオの内容を教えたらこういう厳しい抗議があってテレビ中止を要求されたと。そして、そのことで坂本弁護士事務所へも押しかけていったという、そういう事実があるということをTBSがあなたたちに明白に言っていたら、弁護団に言っていたら、あなたたちの捜査はその問題について一層進展するじゃないですか。  その後に、麻原らは海外へ行きました。私はその問題もとらえて、なぜむざむざと海外へやるんだ、チェックできないのかと言うと、それに対しても、十分な手当てはしたけれども仕方がなかったと答弁したでしょう。  そういう状況の中で、この重要なニュースが情報として、まさに正確な事実として警察に、検察庁に伝えられていたならば、捜査の行方に重大な進展上影響があったと、私はこう思わざるを得ないんです。  そういう意味では、TBSはまさに重要な犯罪の動機にかかわる証拠を隠していたと、証拠隠滅の一種だと、許せぬ行為だと私は言いたくなるんですが、警察、刑事局長どう考えますか。振り返ってどうですか、まじめに答えてください。許せぬ問題だ。
  100. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) 委員の当時からの本件に関します注目されていた状況からの御提言、またこの事件に対する見方ということで、私どもといたしましても十分心して承りました。ただ、今からこの点について振り返りまして、ある種の、こうであったらばという点から一定の判断をしていくという点についてはなかなか難しい面もございまして、ただいま私の立場からその行為についての問題点指摘するという点については差し控えさせていただきたいと存じます。
  101. 橋本敦

    ○橋本敦君 最後に聞きますが、指摘はいいです。  言ってほしかったと、その事実を明らかにしてほしかったと警察も刑事局長も思いませんか。それぐらいは思うでしょう、どうですか。磯崎社長もこの間、記者会見をして、この問題が今度の犯罪に影響なかったとは言えませんと認めています。言ってほしかったというぐらいのことは捜査当局として考えて当たり前じゃないですか。どうですか。
  102. 中島勝利

    説明員(中島勝利君) 繰り返しで恐縮でございます。  凶悪事件等におきまして、有効情報というものが捜査の方向づけを非常に決定する重要な要素でございます。こういう情報を捜査側において希望しているということは言うまでもないところでございます。
  103. 橋本敦

    ○橋本敦君 刑事局長、どうですか。
  104. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) 第一線の捜査に当たる者としての気持ちをそんたくしてのお話と思いますが、そのような気持ちを持つ向きも当然理解できることだろうと思います。
  105. 橋本敦

    ○橋本敦君 時間になりましたから、終わります。ありがとうございました。
  106. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 裁判官定数増の本法案については賛成でございます。もう既に質問も出尽くしているんではないかと思いますので、この際、この法案と直接関係ありませんが、最近の法務委員会において私が集中的に質問してまいりましたいわゆる慰安婦問題で残されている諸点がありますので、時間をいただいて質問させていただきます。  まず、この前質問いたしました中の一つに、慰安婦問題に関係されていると言われているグアム島のアメリカBC級戦争裁判の記録の調査ですが、国立国会図書館にある資料の調査はしていただきましたか。
  107. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) 昨年、当法務委員会におきまして本岡委員から御指摘を受けまして、グアムの戦犯裁判審理記録が国会図書館にあるかどうかということを早速調査いたしました。  その結果、マイクロフィルムのコピーがございまして、それを入手して、早速そのコピーに基づきまして翻訳作業を行ってまいりました。それで、若干コピーの関係で読み取りにくい点もありましたが、数旦削ほぼ一応の翻訳ができました。  それで、現在点検作業をしておりまして、その中身を整理しております。こういった作業が済み次第、内容を取りまとめる予定でございます。
  108. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 現在の時点で、それが前回私が質問しました内容裁判記録であるということはほぼ確認できますか。
  109. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) 前回もお答えしたんですが、これが従軍慰安婦問題なのかどうか、ちょっと確認できません。  ただ、今整理をしているところで確認はしておりませんが、どうも民間の日本男性がある現地の女性を売春宿に連れていったという事柄で一つ有罪になっているという、それで果たして軍関係のいわゆる従軍慰安婦なのかどうなのかということはまだちょっと記録を十分見ておりませんので、翻訳も再整理しまして確認作業をしたい、こういうふうに思っております。
  110. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 なぜそのことが裁判になるんですか。民間の宿屋へ、部屋へその女性を連れていって強姦したんですか。
  111. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) 嫌がるのに売春宿に連れていったという、そこで働かせたという訴因があって、それでどうも有罪にはなっているようでございます。
  112. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それだけのことが有罪になった理由なんですか。
  113. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) この方は訴因が、起訴はたくさんあるようでございまして、まだ整理しておりませんので十分御報告ができませんが、そのうちの幾つかで有罪になっているんです。  そういう状況でございますので、今ここで正確なことをちょっと申し上げられないのは残念でございますが、ごくもう、きのうおとといかの時点で一応作業は終わったようでございますので、改めてまた内容を取りまとめてみたいと思っております。
  114. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それは、私どもの方にも資料はいただけますね。
  115. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) この資料につきましては、公表の可否あるいは方法等につきましては、国会図書館が持っておられるものでございますので、こことも協議いたしまして、どういう形で公表するか、あるいは必要性があるのかどうかについては検討させていただきたいと思っております。
  116. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 前回の質問で、法務省に「戦争犯罪裁判概史要」というのが保存されているということが確認されました。そして、この「概史要」の中に戦争犯罪裁判起訴事実調査表というのがありまして、そこには、強姦百四十三件、売春強制三十四件など、慰安婦問題と関連する犯罪がアメリカ、イギリス、フランス、オランダ、中国など連合国のBC級戦争裁判によって起訴され処罰された事実として記録されているということになつたわけなんです。それで、今のグアムのもこのうちの一つと私は考えられると、こう思っております。  そこで、法務大臣、今、国連の人権委員会日本の従軍慰安婦問題の議論が起こっているんですが、事実関係が政府の行為によってはほとんど明らかになっていない、それが最大の問題なんです。そして、先ほど言っておりますこの戦争犯罪裁判起訴事実調査表に出されている各案件、これの個々の具体的な事実が資料として明らかになればかなり事実関係がはっきりしてくると思うんですが、法務省にありますこの資料の公開なり、一つ一つの個々の案件になっている裁判起訴事実を解明していくための御努力を法務大臣にお願いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  117. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 売春強制という起訴事実で起訴されました事件及び従軍慰安婦問題につきましては、事実を明らかにするためこれまでできる限りの努力をしてきたところでございますが、今後とも努力をさせていただきたいと思っております。
  118. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それでは具体的に聞きますが、今言いました「戦争犯罪裁判概史要」というのがあるんですよ、法務省に。だけれども、これは法務省は見せないと言うんですよ。あっても見せないと。それを法務大臣に見せるようにしていただきたいと、こう言っているんです。
  119. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) 前回もこの委員会で御説明いたしましたが、法務省で保管しておりますいわゆるBC級戦犯の裁判と言われる裁判に関する資料のほとんどは、我が国が裁判国から公式に入手したものではございませんで、戦後こういう裁判が終わりまして、各省庁打ち合わせいたしまして、被告人や遺族、弁護人等の関係者が所持していた関係資料やメモというものを昭和三十年以降、法務省が引き継いで保管することになったものでございます。  この中には、さきに従軍慰安婦問題でも御報告申し上げましたとおり、明らかに裁判の判決書きであろうと思われる、あるいは正式の起訴状であろうと思われるものがあるものは、これは同一性が確認できるんですが、実は、起訴状らしきものはあるんですが判決の内容がわからないとか、そういったものも多数ありまして、あるいは弁護人の個人的なメモとかそういうものもあるわけでございまして、必ずしもそれぞれの正確性についての保証がございません。そういったものをその後、聞き取り書きをやったりなんかした調査を昭和四十八年になりまして初めて、大ざっぱな数字ではあるけれども大体こういう状況ではなかったろうかということを整理した部内資料でございまして、決してそれ自体が何か特別な一つ裁判記録なり原本的なものであるとか、そういうものでは全くございません。部内的な今まで雑多に集まったものを、大体こういう状況ではないかということを整理したものでございます。  それで、私どもこれを一般的には公表しておりませんのは、やはりその中にはいろんな部隊名であるとか個人名が出てきておりまして、これを一般的に公表することは、まだ生きていらっしゃる方あるいは遺族の方等の関係がありますので、それについては取り扱いを慎重にしているという、こういう状況でございます。  なお、ただいまお話ございました売春強制の項には、御指摘のように三十四人の内訳として、米国一、オランダ三十、中国三となっているんです。米国の一は、今委員がお話しになりましたとおり、多分グアム島の事件ではないかと思われます、まさに数日前にわかったことでございますが。あと、中国三がちょっとわかりません。それからオランダの三十というのは、既に二年前に御報告をいたしました二件、十名の、それがその中に入っているんじゃないかと、ここまではわかっております。  なお、単に起訴状があるだけのものでもいいのかどうかということを含めてもう少し調べてみたいと、かように思っております。
  120. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 前回のときも、あなたの答弁聞いておると、人手と時間があったらやれそうな答弁だったんですよ。そうじゃないんですか。  それでは、オランダ女性を慰安婦とした罪で、そのことによって犯罪として裁かれたインドネシアのバタビア軍事法廷の、これはどこから出てきたんですか。
  121. 永井紀昭

    政府委員永井紀昭君) それが、前回申し上げましたとおり、私ども法務省の中にあります資料を全部総ざらいした結果、多分起訴状と判決の写しと思われるものがあったので、これは多分間違いないだろうということでオランダ語を翻訳していただきまして、それで確認ができたというものです。ところが、そのほかの件については確認する資料が現時点では私どもの中にはありません、はっきり言いまして、確定できるものがないんです。  それで、本委員会で本岡委員から御指摘がありましたその件についても、なるほど国立国会図書館にあったのかと、米国の公文書館のそういうものがあったのかということで、急いで取り寄せて確認をしているという、こういう状況でございます。
  122. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 今の話を聞いておりますと、厚生省のエイズ問題で、ないないと言っていたのが厚生大臣が改めて調査をしたら出てきた、次から次に出てくるという、そういうことと私は似ているんじゃないかと思うんですよ。  だから、長尾法務大臣、今おっしゃっているような話が本当なのかどうなのかということを大臣の権限で、一体このBC級裁判の実態は何であったのかということを、日本自身が裁かれているのに日本自身がわからぬのですよ。こんなおかしなことがあっていいんですか。日本の将兵がある一つの犯罪を犯して、人道の罪であるとか戦争犯罪とかいうBC級に対応する、そういう犯罪を犯したと裁判をされているんですよ。それで、外国の連合国の勝利国によって裁かれた。しかし、だれがどんな罪でどう裁かれたかという資料が一切日本にはわからぬ。そんなことがあっていいのかなということを私は別の観点から思うんですよ、ずっと法務省の対応を聞いていてね。  それで、本当に真剣に調査をしたのかどうかということも私は納得できません。改めてここで法務大臣に、先ほど言いました「概史要」、資料に当たらないものだとあなたがおっしゃっても、ひょっとすると私が見たらそれは重要な資料であるかもしれないんだから、あるものならそれは公開してもらいたい。プライバシーに触れる面があるなら、こことここはプライバシーに触れるからこれは公表してもらっては困るといって、いろいろな資料の公開の仕方もある、このように思います。  だから、ひとつ法務大臣、その資料の公開あるいはまた今後全面的な調査についてここでお約束いただきたいと思います。
  123. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 先生のお言葉でございますが、私どもの現在の状況を率直に申し上げさせていただきますと、戦争犯罪について裁かれましたさまざまな記録、非常に多くの地域で行われたものでございますし、その記録の保存ということに関しまして、日本政府またその関係者が関与したということも少ないものでありまして、全体の資料の信憑性、そういうものを確認することができるということに大きな制約がある。今の現時点で考えまして、極めて困難な状況にあるということは御了解をいただきたいと思っております。  したがいまして、私どもといたしまして、先生からのお話の中で、できる限り努力はさせていただきますということを先ほど申し上げました。その中で考えさせていただきたいと思います。
  124. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 また改めてこの問題は論議させていただきます。  実は、ジュネーブで三月十八日から人権委員会が開かれております。私も四月に入りましたら人権委員会に行ってまいりますが、ことしの人権委員会での議論の焦点は日本の慰安婦問題と中国の人権問題ということであって、そして日本の慰安婦問題は、先日ここでも議論しました国連人権委員会特別報告官クマラスワミ女史の、日本のこの慰安婦問題に対してどう対応すべきかということに対する勧告、これをめぐった論議になると思います。  日本政府はこれについては納得できないということであるようでありますが、私はそれはおかしいと思っているんです。やはり、国連の人権委員会での議論の結論というのは尊重すべきだと思うんですよ。日本が尊重せずに国際社会の女性の人権問題で孤立するというような、そんな恥ずかしいことをしてもらいたくない。私はこの目で、人権委員会日本政府がどういう発言をするのか、世界各国がどういう意見を出すのか、どういう結論が出るのかということをしっかり見定めてきたいと思う。  それで、この法務委員会というのは人権擁護を任務とする委員会なんです。法務省は人権を擁護する立場にあるわけで、女性の人権をどう擁護するかというのは、さっきもちょっと優生保護法の問題がありましたけれども、これは今日的に極めて大事な問題なんですよ。世界の女性を相手にして日本は闘う気なのか。どうも外務省はその気構えで人権委員会に臨もうとしているようですが、どうなんですか。
  125. 古屋昭彦

    説明員(古屋昭彦君) ただいまの本岡先生御指摘の三月十八日から行われております国連の人権委員会でございますが、このたびは世界各地の人権状況とか人権のさらなる促進、助長、経済的・社会的・文化的権利の実現等、さらには国際人権規約の締結状況といった数多くの議題というものが討議される予定になっております。  御指摘のクマラスワミ特別報告者の報告でございますが、まだ具体的にどういう議題のもとでいつごろ審議するのかというような手続的な面が決まっていないという状況だとジュネーブの方から報告が入っております。  ただ、いずれにしましても、私どもといたしましては、クマラスワミ報告書の附属文書にある法律的な議論については国際法上成り立たないと考えておりまして、我が国政府としては受け入れる余地がないと、かような点は種々の機会をとらえて明らかにしております。  ただ、他方政府といたしましては、いわゆる従軍慰安婦の問題につきましては、多数の女性の名誉と尊厳を傷つけた問題であると認識しておりまして、従軍慰安婦として数多くの苦痛を経験され、心身にわたりいやしがたい傷を負われたすべての方々に対して心からおわびと反省の気持ちを申し上げてきたところでございます。  クマラスワミ特別報告者についても、女性のためのアジア平和国民基金については道徳的な観点から歓迎するという記述をしておりますし、政府といたしましても、これまでもこの基金に対して必要な協力を行ってきたわけでございますが、基金が所期の目的を達成できるよう協力してまいりたいと考えております。
  126. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私もとっくりと一遍見させていただきます。恐らく孤立して日本は恥をかくようになると思います。  それでは、その問題はまた予算委員会とか外務委員会で直接議論させていただきますが、今出ました女性のためのアジア平和国民基金、これは目標額は幾らで現在どのぐらいのお金が集まっていて、それを何か八月ごろに総理大臣の署名入りのわび状をつけて配ると言っておりますが、一体配る対象は何人で、一人当たり何ぼのお金を配ろうとなさっているのか、ちょっとここで教えていただけませんか。
  127. 松井靖夫

    説明員(松井靖夫君) 御説明させていただきます。  女性のためのアジア平和国民基金におきましては、いわば国民の皆様の善意をいただくということでございますので、目標額ということは特に決めておりません。現在までに約二億二千万円が寄せられております。  それから、二番目に御説明させていただきますが、これをどのような形でこれから給付していくかという問題がございます。  正直申し上げて、現在まだ募金の途上にございます。したがって、いわばこういう事業の対象者の確定とか、どのように配っていくかというのは、募金の状況をも勘案しつつ基金の方でこれから検討を進めていくというのが現在の段階でございます。
  128. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 もう時間が来ましたけれども、最後に言わせていただきます。  今、外務省の方が胸を張って、女性のためのアジア平和国民基金でもって日本の国の気持ちを示すんだと。一方、受けて立っている国民基金は、四億八千万の予算をつけて二億二千万の金が集まった、これからどうするかまだわからぬ。一体何人の人を対象にしてやるんですか。何の完全な調査もやらないで、どこの国に何人おられるのかということもわからない。日本がそのときにその現地で何をしたかという実態もまだろくろく調査しないで、そしてその国民基金をどうするか。  私は、この間、そのために韓国、台湾へ行って話を聞いてきました、当事者に。大変なことを言っているじゃないですか、向こうの方で。とりあえず国民基金をもらっておきなさいと、そのうちに国もやるようになって国のものももらったらよろしいとか、全くでたらめなことを、国民基金の人は行かれて、まるで日本の国の恥をさらしたようなことをやってこられているんですよ。  だから、この種のものはやはり国の責任でどう措置をするかということが基本になければ、国ができないから国民基金だと。国民の皆さん、お金集めてくださいよと。一年がかりでどのぐらいの金が集まるんですか。例えば千人という目標があって、一人に一億円、だから一千億のお金が要りますと、こう言って募金されるならまだ話はわかりますよ。集まってみて、そして何人おられるのかわからない。そんなずさんなことを日本の国としてやれますか。冗談じゃないですよ。あきれたな、今の話を聞いて。せめて、千人を大体目標にしております、一人二百万円です、だから二十億何としても集めたいんですといろんなら、その中身は別にして、一応そんなものか、それでいいのかという議論になるけれども、議論にもならないじゃないですか。だめですよ。  わかりました。きょうはこれぐらいで、ジュネーブへ行って、帰ってきてもう一遍やらせていただきます。ありがとうございました。
  129. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。――別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  130. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 全会一致と認めます。  よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  131. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十四分散会      ―――――・―――――