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1996-03-15 第136回国会 参議院 内閣委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年三月十五日(金曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  二月二十一日     辞任         補欠選任      齋藤  勁君     久保  亘君  二月二十二日     辞任         補欠選任      久保  亘君     齋藤  勁君  二月二十八日     辞任         補欠選任      笠井  亮君     立木  洋君  二月二十九日     辞任         補欠選任      立木  洋君     笠井  亮君  三月十三日     辞任         補欠選任      依田 智治君     田沢 智治君  三月十四日     辞任         補欠選任      岡野  裕君     中島 眞人君      田沢 智治君     依田 智治君      角田 義一君     藁科 滿治君  三月十五日     辞任         補欠選任      狩野  安君     岩永 浩美君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         宮崎 秀樹君     理 事                 板垣  正君                 矢野 哲朗君                 齋藤  勁君     委 員                 岩永 浩美君                 海老原義彦君                 鈴木 栄治君                 中島 眞人君                 依田 智治君                 萱野  茂君                 藁科 滿治君                 笠井  亮君                 聴濤  弘君    国務大臣        国 務 大 臣       (内閣官房長官)  梶山 静六君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  臼井日出男君    政府委員        内閣法制局第一        部長       秋山  收君        防衛庁参事官   小池 寛治君        防衛庁長官官房        長        江間 清二君        防衛庁防衛局長  秋山 昌廣君        防衛庁教育訓練        局長       粟  威之君        防衛庁装備局長  荒井 寿光君        防衛施設庁長官  諸冨 増夫君        防衛施設庁施設        部長       小澤  毅君        外務省総合外交        政策局長     川島  裕君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     朝海 和夫君        外務省アジア局        長        加藤 良三君        外務省北米局長  折田 正樹君    事務局側        常任委員会専門        員        菅野  清君    説明員        内閣官房内閣内        政審議室内閣審        議官       渡辺 芳樹君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調  査並びに国防衛に関する調査  (平成八年度以降に係る防衛計画大綱及び中  期防衛力整備計画に関する件)     —————————————
  2. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨十四日、岡野裕君及び角田義一君が委員辞任され、その補欠として中島眞人君及び藁科滿治君がそれぞれ選任されました。  また、本日、狩野安君が委員辞任され、その補欠として岩永浩美君が選任されました。     —————————————
  3. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事齋藤勁君を指名いたします。     —————————————
  5. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査並びに国防衛に関する調査を議題といたします。  平成八年度以降に係る防衛計画大綱及び中期防衛力整備計画について臼井防衛庁長官より発言を求められておりますので、この際、これを許します。臼井防衛庁長官
  6. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 政府は、昨年十一月、平成八年度以降に係る防衛計画大綱安全保障会議及び閣議において決定し、またこれを受け、同年十二月、中期防衛力整備計画平成八年度から平成十二年度)を安全保障会議及び閣議において決定いたしました。  以下、これらについて御報告申し上げます。  まず、平成八年度以降に係る防衛計画大綱、すなわち新防衛大綱は、昭和五十一年に策定された防衛計画大綱にかわり、今後の防衛力整備維持及び運用の指針となるものであります。  最初に、新防衛大綱国際情勢認識について申し上げます。  これまでの国際軍事情勢の基調をなしてきた圧倒的な軍事力背景とする東西間の軍事的対峙の構造が消滅し、世界的な規模武力紛争が生起する可能性は遠のきました。また、我が国周辺諸国の一部において軍事力の削減や軍事態勢変化が見られる一方、地域紛争の発生や大量破壊兵器拡散等安全保障上考慮すべき事態が多様化しております。こうした状況の中で、二国間対話の拡大、地域的な安全保障への取り組み等国家間の協調関係を深め、地域の安定を図ろうとする種々の動きが見られるところです。  次に、国内の状況を見ますと、近年科学技術が著しい進歩を遂げていること、今後一層若年人口の減少が見込まれること、経済財政事情が格段に厳しさを増していること等の変化が見られます。  また、自衛隊役割について言えば、その主たる任務である我が国防衛に加えて、近年、新たな分野における役割に対して期待が高まってきております。  まず、平成四年の国際平和協力法の制定以来、自衛隊はこれまでカンボジア、モザンビーク及びザイール等における国際平和協力業務実施し、国際的にも高い評価を受けてきました。さらに、昨年一月の阪神・淡路大震災や三月の地下鉄サリン事件における活動等により、自衛隊国民の生命と財産を守る存在であることが改めて広く認識されてきているところであります。  こうした自衛隊の諸活動の実績を背景として、大規模災害等各種事態への対応国際平和協力業務実施等を通じたより安定した安全保障環境構築への貢献という分野における自衛隊役割に対する期待が高まってきているところであります。  このような背景を踏まえて、新防衛大綱において示された防衛力に関する基本的考え方のポイントは次のようなものであります。  まず、新防衛大綱においては、前大綱が取り入れていた我が国に対する軍事的脅威に直接対抗するよりも、みずからが力の空白となって我が国周辺地域における不安定要因とならないよう、独立国としての必要最小限基盤的な防衛力を保有するという基盤的防衛力構想を今後とも基本的に踏襲していくこととしております。これは、国際関係安定化を図るための各般の努力が継続し、日米安全保障体制我が国の安全及び周辺地域の平和と安定にとり引き続き重要な役割を果たし続けるとの認識に基づくものであります。  新防衛大綱のもう一つの特徴は、日米安全保障体制重要性を再確認していることであります。  冷戦後の国際社会においては、国際情勢変化、それに伴う国際的な課題変化、そしてその解決に向けた国際社会の積極的な取り組み背景として、日米安全保障体制地域の平和と安定及びより安定した安全保障環境構築の面で果たす役割について再認識されるようになってきております。  このような状況を踏まえ、新防衛大綱は、日米安全保障体制我が国安全確保にとって不可欠のものであり、また我が国周辺地域における平和と安定を確保し、より安定した安全保障環境構築するためにも引き続き重要な役割を果たしていくとの認識を示しております。  また、こうした観点から、日米安全保障体制信頼性向上を図り、これを有効に機能させていくための具体的な取り組み重要性について、この新防衛大綱において整理して述べているところであります。  さらに、今後の防衛力が果たすべき役割について、新防衛大綱は、自衛隊の主たる任務である「我が国防衛」に加え、「大規模災害等各種事態への対応」及び「より安定した安全保障環境構築への貢献」を主要な柱として掲げているところであります。  大規模災害等各種事態への対応については、まず大規模災害等への対応として、関係機関との緊密な協力のもと適時適切に災害救援等行動実施するとともに、我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合には、憲法及び関係法令に従い、日米安全保障体制の円滑かつ効果的な運用を図ること等により適切に対応していく旨述べております。  また、より安定した安全保障環境構築への貢献という観点からは、国際平和協力業務安全保障対話防衛交流推進軍備管理軍縮分野における諸活動への協力を進めていくこととしております。  新防衛大綱においては、こうしたことを踏まえて、次に述べるような基本的な方針に基づき現行の防衛力規模及び機能について見直しを行うこととしております。  第一に、防衛力合理化効率化コンパクト化を一層進めるということであります。このため、「別表」に示された適切な規模防衛力へと移行していく必要があると考えております。  第二に、必要な機能充実防衛力の質的な向上を図ることにより、多様な事態に有効に対応し得る防衛力を追求しなければならないということであります。このため、装備ハイテク化近代化を図っていくとともに、情報指揮通信警戒監視機能等充実強化を図っていく必要があると考えております。  第三に、事態の推移に円滑に対応できるように適切な弾力性を確保し得るものでなければならないということであります。そのためには、その養成及び取得に長期間を要する要員及び装備教育訓練部門等において保持したり、即応性の高い予備自衛官制度を確保することが重要であると考えております。  次に、新中期防衛力整備計画について御報告申し上げます。  この計画平成八年度から平成十二年度までを対象としており、新防衛大綱に示された我が国が保有すべき防衛力の内容を実現するため、引き続き継続的かつ計画的に適切な防衛力整備に努めることとして策定したものであります。  計画の概要を申し上げれば、次のとおりです。  第一に、陸、海、空各自衛隊基幹部隊等を見直し、新たな防衛力の水準に近づけます。その際、種々事情を勘案しながら円滑な移行に配慮するとともに、陸上自衛隊即応性の高い予備自衛官制度を導入することとしております。  第二に、F2の量産を初め正面装備の更新、近代化に努めるとともに、情報指揮通信機能等充実を図るほか、災害救援に係る各種施策実施します。さらに、技術研究開発推進、隊員の生活勤務環境向上ども引き続き行ってまいります。  なお、この計画期間中の検討課題として、空中給油機能弾道ミサイル防衛の取り扱いなどがあります。空中給油機能については、今後検討を行い、結論を得、対処することとしており、また弾道ミサイル防衛については、総合的見地から十分に検討の上、結論を得るものとしています。  第三に、戦闘部隊において保有する装備と同様のものを教育訓練部門において保有する施策に着手します。これにより、教育訓練体制充実効率化が図られますが、防衛力弾力性が確保される意義も有しております。  第四に、日米安全保障体制信頼性向上を図るための各種施策推進します。その際、沖縄の施設・区域の整理、統合、縮小を含む在日米軍の駐留を円滑かつ効果的にするための施策推進することとしております。  第五に、より安定した安全保障環境構築への貢献のための施策推進します。具体的には、国際平和協力業務防衛交流安全保障対話等に係る各種施策実施してまいります。  第六に、各年度の予算の編成に際しては、一層の効率化合理化に努め、極力経費を抑制するよう努力するとともに、その時々の経済情勢、格段に厳しさを増している財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、節度ある防衛力整備に一層努力します。  次に、所要経費について申し上げれば、この計画実施に必要な防衛関係費の総額の限度は平成七年度価格でおおむね二十五兆一千五百億円程度であります。このほか、将来における予見しがたい事象への対応、より安定した安全保障環境構築への貢献等、特に必要があると認める場合にあっては、安全保障会議の承認を得て使用することができる経費として一千百億円程度調整枠が設けられております。  新防衛大綱は、冷戦終結後、二十一世紀に向けての我が国防衛力あり方を示すものであり、この新防衛大綱に従い、新中期防衛力整備計画に基づき、防衛庁としては引き続き適切な防衛力整備に努めてまいる所存であります。私としては、我が国の安全を確保し、国際社会の平和と安定に資するため、この新防衛大綱、新中期防衛力整備計画のもと、国民信頼にこたえ得るよう自衛隊の運営に努め、積極的に防衛政策推進してまいる所存であり、国民皆様方の御理解と御協力を切に希望する次第であります。  以上でございます。
  7. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 以上で報告の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 板垣正

    板垣正君 ただいま防衛計画大綱等についての御説明を承りました。これは極めて重大な問題でありまして、私もいろいろただしたい点はありまするけれども、まず東アジア安全保障、これがまさに今脅威を受けておるという情勢、いわゆる中台関係の問題がありますので、この際この問題についての政府見解をただし、また私の見解も述べさせていただきたいと思うわけであります。  現在の中国ミサイルあるいは実弾射撃等は常軌を逸した、国際的にも極めて不安感をもたらすものであります。現実東アジア地域に不安定な、かねてアジア情勢は不安定であり不透明であると憂慮されてまいりましたけれども、そういう一つのあらわれとして私どもは極めて深刻に受けとめますが、官房長官、この事態について基本的にどういうふうに受けとめておられますか。
  9. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 台湾海峡の問題については、昨今の台湾周辺における中国軍事演習、特に総統選挙を目前に控えての中国のいわばデモンストレーションと言うべきか、その行動に対しては私ども大変懸念をいたしております。  過般のアジア欧州首脳会議における日中首脳会談の中でも橋本総理はその問題に触れて、やはり二国間で平和裏に話し合いが進むことを期待している旨を表明されておりますし、その後の事態の幾つかの問題についても、外務省は直ちに駐日中国大使館の要人をお呼びいたしましてその都度注意喚起をしているという状態にあるわけであります。  確かに公海上でございますから、何ら法的にそのものを規制する方式はございません。やはり軍事演習はそれぞれの国が自国の軍事力維持、増強というか、そのためにみずからの有する権利を行使するわけですから、これに向かってとやかく言うことはできませんけれども、少なくとも北東アジアあるいは東アジア等における緊張を高めるということについては私たちは重大な関心を持つべきであろう、そのように考えております。
  10. 板垣正

    板垣正君 そこで、中国台湾中台関係が緊張したのは御存じのとおり昨年の李登輝総統の訪米、これをきっかけとして昨年もミサイルをぶち込む。また、今直面しておりますのは総統選挙です。いろいろ言われておりまするけれども、この選挙に対して軍事的に威嚇を加える、台湾人たち影響力を与える、こういう意図のもとに展開されていることは疑うべくもない。そこに私は非常に大きな誤解があると思うんですね。  我々も台湾との国の関係がなくなりましてから台湾情報というものが非常に乏しいわけです。そういう中で中国が主張するのは、いかにも台湾独立を要求しておる、独立運動をやるんだと。あの李登輝というのは台湾独立させようとしている、あるいはそういう立場第三国が干渉を加えている、これはけしからぬと。これは今開かれている人民大会でも協商会議の決議でも、また上から下までああいう国でありますから。  しかし、果たして台湾現実独立を求めているかというと、これはもう李登輝総統政策方針なり責任ある立場、あるいは台湾世論からも、台湾独立というのはごく一部にはあるでしょうけれども、それは決して主流ではない。台湾そのもの歴史ある中華民国として、辛亥革命以来の中華民国という立場において、この国の民主的な国民主権を国の理想として、三民主義理想としてそういうものを今回仕上げていこうと。そういう立場はやがて大陸とまさに平和的統一、自由、平和、そして富の等しい形での平和的統一を目指すという点を明確に打ち出しております。中国もまた一つ中国と言い、我々も一つ中国として平和的に統一してもらいたい。  ただ、中国という国が、台湾独立を求めている、あるいはそれに第三国が干渉しているから当然これに反撃するんだ、こういう調子の現在の中国の論調、行き方、そうした選挙に対する圧力というような中国政治あり方すら問われる姿ではないかと思いますが、その点はいかがですか。
  11. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) それぞれ私的な意見はあろうと思いますが、それは差し控えまして、既に中国一つであるという観点、これは中国もあるいは台湾側も、そして特に日本はそのことを厳然といわば日中共同声明以来うたい、なおかつ守ってきているわけであります。ですから、それぞれが独立をするとかしないとかという問題はいわば中国内部の問題であります。  ただ、現実にいわゆる一つ国家であり政府であると言っていながらも、二つ体制があることもこれまた現実であります。そして、それぞれ極めて経済的あるいは人的な交流の面で密接な関係にある両国、特に日本にとってもその両国は密接な関係があるわけでありますから、この二つの間に良好な関係維持されることは極めて望ましい、この態度をこれからも堅持していかなきゃならない。いたずらに騒がず、いたずらに恐れず、そして殊さらに問題をセンセーショナルに取り扱わない、そういう態度をお互いに持ち合うことが大切だというふうに感じております。
  12. 板垣正

    板垣正君 これは昨年八月二十二日の台湾での中国国民党第十四回全国代表者大会における李登輝総統の演説ですが、こういうことを言っているんです、「大台湾の経営はわが生存根本であり、新中原樹立はわが発展の志」であると。つまり、国際社会にも通用する開かれた経済的繁栄、自由、民主、これが生存根本であり、この生存根本基盤にして新中原樹立、つまり民主、自由の中国樹立というのが我が発展の志である、こういうふうに言っております。あるいは連戦行政院長も、いかにして民主、自由、均富原則にのっとって国家平和統一を実現すべきか、これが根本であり最大の課題である、こういう立場であります。  我が国は、中国一つである、かつ中国に対しましては現在の開放経済体制が進められるように、いわゆる中国ソフトランディング、こう言うわけですね。今の体制からより開かれた開放体制を進めつつ、そういう期待を持っておりますけれども、果たしてそうした形で開かれた姿に行っているのであろうか。  例えば経済的な面は確かに目覚ましい繁栄を遂げているということは評価されますけれども、もう一つの大きな火種である政治的な自由、民主化、この中国の姿に対して我々は期待を持っておるわけであります、開かれた姿という。そういう面においては、どうも言論の統制がより厳しくなるとか、あるいは人権の抑圧問題でも諸外国から指摘をされる、数の知れない囚人が今なお政治犯としてとらわれておる。こういう姿に対して、いわゆる中華民国と言われる台湾の側が、今申し上げたように、民主、自由、均富、これに精根を傾けてあらゆる努力を傾けておる姿というものを私どもはやはり事実として、平和的な統一が望ましい、我々も中国一つである、こう言っているわけです。  アメリカが言う関与政策中国を孤立させるんじゃなくて、関与によってソフトランディングに持っていくのがアジアの安定にもつながる。しかし、今回のような露骨な軍事的威圧、特に総統選挙というような民主的な選挙に対するああした居丈高な姿勢というものは、むしろ中国の強さよりは弱さを示すものです。そういう立場に立って、向こうの外務大臣も見えるそうですけれども我が国としてはもう少し遠慮なく物を言っていいのではないのか。  あるいは、既に一兆数千億の借款、今度は第五次借款五千八百億円について今月は第一次分千八百億についての協議が行われる云々というようなことも聞いておりまするけれども、どうもそういう点は素直には受けとめられないのではないのか。我が国ODA原則もございます。  何よりも我が国がやはり主体性のある独立国家として、そうして何よりも歴史的立場からいってもアジアの平和、安定を強く希求する、こういう立場からもこの台湾中国関係が平和的に道を歩んでいくことが望ましい。現在、緊迫状況を巻き起こしているのは決して独立を求めている台湾ではありません。そんなものは幻想です。中国覇権国家を目指しているんじゃないかという近隣諸国に不安をもたらすような今のあり方に対して、相互信頼を築く上からも端的にそうした意見を表明して、そういう立場からやっぱり日中関係を築き直していく、その時期が私は来ていると思いますが、いかがでしょうか。
  13. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 確かにそれぞれの個人的な思想、信条あるいはそれぞれの国家の歩む道は全く同じなはずがございません。それぞれの国はそれぞれの国なりの歴史を背負い、それから現在の動向を踏まえながら歩んでいるわけであります。それぞれの意向はございますけれども、内政に対して過度な干渉的な表現は私たち政府のとるべき道ではございません。  しかし、板垣委員の言われる心情は私も全く同感なところがございます。いずれにいたしましても、中国台湾の間の、特に台湾海峡が平和であることは両国のみならず我々近隣に住む国家として何よりも大切でありますから、そういう問題の解決に応分の努力を払ってまいりたい、このように考えております。
  14. 板垣正

    板垣正君 信念を持ってひとつ対処していただきますよう大いに期待をいたします。  次は集団安全保障の問題、集団的自衛権の問題、これについて、きょうは内閣法制局からもお見えいただいておりますので率直に承りたいと思います。  今の防衛計画大綱、これも新しいいろいろな構想が込められていて、ある意味では積極的に平和環境をつくっていくんだと、こういうものを込められた、その点では私は新大綱というものを評価しますけれども、ACSAを結ぼう、融通協定を結ぼう、あるいはPKOを出そう、こういう問題に際していつでもぶつかるのが国際常識と著しく異なった我が国独特の憲法解釈であります。憲法のもとにおける集団的自衛権我が国はタッチできませんと。これがどれほどある意味のむだなエネルギーをいろんなところで費やし、あるいはPKOで行っておられる現場の自衛隊人たちにどれだけ精神的な負担をもたらしているか。もうそろそろこの問題についてももっと踏み込んだ見解を出していくべきではないのか。  この間の衆議院予算委員会で法制局長官が、これを変えると内閣の権威が軽くなるんだと言わんばかりの発言がありましたが、私はそういう硬直した考え方ではなく、これだけ大きな転換期でありますから、もっと踏み込むべきではないか。防衛大学の佐瀬教授がこの問題について最近「ジス・イズ・読売」に書かれたり、あるいは産経新聞の「正論」に書かれまして、私も拝読して非常に示唆されるところが多かったわけでございます。  そこで、時間もありませんから端的に伺いますけれども、法制局に伺いたいのは、我が国集団的自衛権は持っている、国際法上持っている、持っているけれどもこれは憲法上行使できない、こう言っておられるわけです。国際法上は持っているということははっきりしているんですね。国連憲章、国連条約でも安保条約でも皆、国際法上有する集団的自衛権、じゃこれは我が国憲法上有するのか有さないのか、その点はどうでしょう。
  15. 秋山收

    政府委員秋山收君) 憲法集団的自衛権関係についての御質問でございまして、やや詳しくなりますが御説明させていただきます。  国際法上の考え方としましては、先ほど御指摘のとおり国家集団的自衛権を有している、これは主権国家である以上当然であると私どもは考えております。しかしながら、政府は従来から一貫して、憲法九条のもとにおいて許容される自衛権の行使は我が国防衛するために必要最小限度の範囲にとどまるべきでありまして、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容といたします集団的自衛権の行使はこの範囲を超えるものである、憲法上許されないという立場に立っているわけでございます。  この考え方につきましては、確かに集団的自衛権の行使はできないということは憲法九条の上で明文の規定はないわけでございますけれども、次に申し上げるような考え方からして当然導き出されるものであるというふうに考えているわけでございます。すなわち、憲法第九条第一項は「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」というふうに規定しております。  しかしながら、我が国独立主権国として自国の安全を放棄しているわけではございませんで、国民が「平和のうちに生存する権利を有する」という憲法前文の規定を踏まえてこの憲法九条を読みますれば、我が国に対して外国から直接に急迫不正の侵害があった場合に、日本国家として国民の権利を守るための必要最小限度の実力行使までも認めないということをこの条文が規定しているものとは到底考えられないところでございます。したがいまして、独立国家として必要最小限度の自衛行動については憲法もこれを禁じていないということがこの解釈の基本となるべきものと考えております。  この考え方を踏まえて解釈いたしますと、集団的自衛権の行使と申しますのは、他国に対する武力攻撃があった場合に、我が国自身に対する武力攻撃がなくとも、言いかえれば我が国への侵害がない場合におきましても、我が国が武力をもって他国に加えられた侵害を排除する、この行動に参加するという内容のものでございまして、このような行為までも先ほど述べました憲法九条が容認していると考えることはできないのではないかと私どもは考えているわけでございます。  このようなことから、憲法九条の許します我が国の武力行使は、私どもは自衛権発動の三要件と言っておりますけれども、第一に我が国に対する武力攻撃が発生していること、第二にこれを排除するためにほかに適当な手段がないこと、第三に必要最小限度の実力行使にとどまるべきことというこの三つの要件が備わった場合におけるものに限られるというふうに考えているわけでございます。これが従来からの政府見解でございます。
  16. 板垣正

    板垣正君 改めて従来の見解を拝聴したわけですけれども、要するに我が国憲法集団的自衛権を行使するのが問題なんだと、権利はあるけれども行使はできないと。しかし、五六年に国連に加盟したときも重光さんの演説で、我が国憲法前文と国連憲章というものは目的は全く一緒です、完全に合致しておりますということで、我が国は何も憲法集団的自衛権がございませんなどという保留は一切ありません。国連憲章そのもの我が国憲法そのものでございますと。  そのほか、これは佐瀬さんも、また朝鮮戦争当時の大橋武夫法務総裁も、日本憲法のそういう問題、朝鮮に行っていろんなできる範囲の手伝い、日本は戦争はできないけれどもいろいろお手伝いしております、朝鮮に従事いたしております、これは当然考えるべきことであって、また憲法はそれを禁じておらないのであります、自衛権の行使として当然できるんだと。つまり、この際の自衛権というのは、朝鮮戦争ですから日本が攻められたわけじゃない、いろんな形で米軍に協力をしておる、それは憲法上の自衛権として認められるんですと、こういう記録も残っております。今の問題は改めてまた見解を承ります。  もう一つ突っ込んで、我が国集団的自衛権が認められないというのは個別的自衛権との関係もある。我が国の場合は個別的自衛権でも必要最小限と、こう言う。これが量的な制約なのか。すると、集団的自衛権というものが認められないということは、個別的自衛権の必要最小限を超えるからいけないんだと言いますね。超えるからいけないと言うが、しかし集団的自衛権の量の問題で言うのか。元来、自衛権のあり方というものは態様です、姿。その姿において必要な限度を超えない、国連憲章にありますけれども、行使規定としては一つの精神規定的なものとしていわゆるその態様においてとらえられるのではないのか。  さらにもう一つお聞きしたいのは、集団的自衛権といっても、これにも必要最小限集団的自衛権、つまり量じゃなくてその態様において必要最小限我が国を守るためのいわゆる集団的自衛権というものもあり得るのではないのか。すべての集団的自衛権必要最小限の自衛をみんな超えてしまうんだと。これは何を基準にして言っているのかよくわからない。正常に考えるならば、やはりいろんな態様がありますから、ほかの国と一緒になって我が国関係ないところでやるというような姿、これは憲法上いろいろ問題があるということは明白でありましょう。  しかし、端的に、朝鮮近海でいろんな問題が起こった、あるいは単独で訓練をやっている米軍に石油を補給する、そういうことをも集団的自衛権だからかかわれませんと。これはいささか納得できないのではないか。その態様ですよ、姿ですよ。  しかも、それは直接我が国防衛にかかわる問題ですね。  そうした集団的自衛権の論議というのは、法制局がおっしゃるように棒を飲んだような一つ見解、もう最小限を超えるんです、だからだめなんですという形ではなく、いろいろな態様があり得るという立場検討してもらいたいと思いますが、いかがですか。
  17. 秋山收

    政府委員秋山收君) 御質問の前半で三月十一日の産経新聞の佐瀬教授の寄稿について触れられました。その点についてまず釈明させていただきますけれども、この寄稿の引用いたします国会答弁は、私ども調査したところでは、昭和二十六年十一月十七日の参議院平和条約及び日米安全保障条約特別委員会での大橋大臣の答弁でございます。  この答弁は、あくまでも我が国に対する武力攻撃があった場合に、それに対しまして例えばアメリカが救援に参りまして我が国及び我が国周辺で戦闘がある場合に我が国としてどうするべきかという対応についての答弁でございまして、朝鮮戦争、朝鮮の事態を前提とした答弁ではございませんので、したがいまして集団的自衛権の行使を念頭に置いた答弁ではないのではないかというふうに私どもは考えております。  それから、先ほどの補給等を行うことができるかどうかということでございますけれども、そのようなそれ自体が武力行使ではない行為につきまして我が国としてどの程度それに参加できるかどうかということにつきましては、これはどのような状況のもとでそのような行動が行われるのか、あるいは米軍のどのような行動に対してどのような補給が行われるのかといった個々の具体的な行為の態様について十分な検討が必要と思いますので、確定的なことを申し上げることは困難な面がございますけれども、一般論として申し上げますれば、その我が国が行う補給というようなことが憲法の禁ずる武力行使または武力による威嚇に当たるものであるかどうか、あるいは米軍の行動が武力の行使などに当たるものであるかどうか、それから米軍の行動が武力行使などに当たる場合にこれと共同して行われる我が国行動がこれと一体となるような行動に当たるものであるかどうかというようなことにつきまして、憲法との関係から事例に応じまして十分に慎重な検討をしていくべきものというふうに考えております。
  18. 板垣正

    板垣正君 まあ事例にもよりましょう。つまり態様によって、今のところ何か集団的自衛権はもう憲法違反だと枠をはめられているので、個別的自衛権でやれるはずだと。個別的自衛権という名のもとに何か枠が広がっていくような、その辺はだからもっと論議すべきではないのか。  終わりに、この問題について官房長官防衛庁長官の御所見を承って終わりたいと思いますが、よろしくお願いします。
  19. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 板垣委員にお答えを申し上げます。  お互いに戦争を体験した人間であります。私は日本憲法が世界の中で特異なものであるということに誇りを持っております。この憲法九条のいわば精神というのは日本の今日を築き上げた一番根幹でもございますし、また戦争に巻き込まれない、戦争をしない、この精神が私は日本の中にある限り日本というのは大丈夫な国であると。  それから、具体的に起きる自衛権というものはどういうものなのか、それから自衛だけであるのか。集団的自衛権と言うけれども、例えば日米安保条約というのは二国間でありますが一つの他国の力をかりて行う安全保障でありますから、この運用というものには幾つか私はグレーゾーンがあるはずだと。その問題を個々に全部詰められるかというと、なかなか詰め切れません。しかし、我々がみずからの武力で外国に自分の意思なりなんなりを押しつけることはしない、そういうことはこれからも守っていかなきゃならない一番大切な分野だと思っております。  それからもう一つは、集団的自衛権と言うと大上段に振りかぶるようになりますが、いわば日米安保条約が有効に作動する、日本近海その他で万一の場合を考えれば私はおのずからそこには節度ある協力というのはあるべしと。なければ、安保条約、日米安保というのは消えてなくなるわけであります。そういうことを考えれば、それぞれの具体的な事例をもはや研究をしてもいい時期にあろう、それがむしろ憲法の精神を生かす道だというふうに私個人は考えております。
  20. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 委員お話しのとおり、国際法上我が国が個別的自衛権、集団的自衛権をともに有しているということは事実でございます。先ほどお話をいただきましたその行使自体が個別的自衛権に当たるのか集団的自衛権に当たるのかということは個々それぞれの事態に応じて判断すべきものと考えておりまして、今後とも慎重に検討をいたしてまいりたい、このように考えている次第でございます。  自衛隊行動にかかわる有事法制の研究につきましては、昭和五十二年以来検討いたしてまいってきております。私ども防衛庁といたしましては、この研究にとどまらず、その結果に基づき法制が整備をされることが望ましい、こう考えております。この点は高度の政治判断にかかわるものでございます。国会における御審議、国民の世論の動向等を踏まえて検討すべきものだと、こういうふうに考えている次第でございます。
  21. 板垣正

    板垣正君 終わります。
  22. 矢野哲朗

    ○矢野哲朗君 自由民主党の矢野でございます。  私も衛藤防衛庁長官のもと五カ月間政務次官として防衛行政に携わらせていただきました。その間、多々懸案があったわけでありますけれども、きょう長官から御報告いだだきました新防衛大綱並びに幾つかの案件については結論を出すことができました。反面、大変重要な案件で結論を出せずして引き継がせていただいた案件も多々ございます。その中で、大変大きな問題としまして、沖縄県における在日米軍の整理、統合、縮小問題についてまずお伺いをしたいと思います。  御案内のとおり、私が着任したのは八月でありましたが、着任後約一カ月で大変痛ましい事件が起きたわけであります。あの事件に端を発しまして、大田知事の代理署名拒否、そのことを契機としまして、沖縄県に大変過度の負担をさせている現状というものが日本国民の中に改めて認識されたわけであります。  改めて言うまでもなく、在日米軍の七五%が沖縄に集中しています。しかも、それは沖縄県の県土の一一%を占めるという状況でもあります。このことについて、本当に日本国民としてひとしくその痛みを分かち合うというふうなことをいかに国民に理解してもらうかと、これが今後の我々の大きな政治課題になってこようと思うのであります。日米安全保障体制の堅持という方針のもと、日米の協力に係る負担を過度に沖縄県に強いてきた歴史、このことを深く重く受けとめ、我が国全体の問題として真摯に受けとめて対応しなければいけない。  特別行動委員会、もう二度ほど訪米もしているということを聞いております。大変真摯に、そして熱意を持ってこの事案についての解決を図られているようでありますけれども、まだまだ中途段階とはいいながら、四月十六日にクリントン大統領が来日の際、何か具体的な一つ結論めいた話も出さなければいけないという状況にあろうと思います。  その中で、今までの折衝過程の中での内容、またどこまで詰められたのか、その辺で公にできる範囲内での報告をひとつお願い申し上げたいと思います。
  23. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 沖縄の在日米軍の基地の問題につきましては、ただいま委員から沖縄の県民の方々の長い御苦労等について御発言がありました。そういう状況を我々も十分認識のもと、各省庁と協力をいたしまして鋭意検討しているところでございます。  具体的に申し上げますと、昨年十一月に特別行動委員会、SACOの第一回の会議を開きました後、その下部機構でございます作業グループを日米双方におきましてこれまでに四回開いてございます。現在のところ、各施設・区域につきましては、論点の整理あるいは問題点の洗い出しということで日米共同で作業をしているという状況でございます。  この問題につきましては、現在のところ具体的にこの施設あるいは区域につきましての成果について申し上げられる段階ではございませんけれども、当面、四月のクリントン大統領訪日までにできるだけの成果を上げられるように米側と協力し、国内でも関係省庁とよく調整しながら進めてまいりたい、そういう状況でございます。
  24. 矢野哲朗

    ○矢野哲朗君 先般、私は沖縄に行く機会がありまして、普天間初め那覇、それから読谷、一連のこの案件についてつぶさに見てまいりました。確かに沖縄県民の希望、気持ちもわかるんだけれども、具体的な展開、対応ということになると果たして現実問題として可能なのかなと、非常に難しい場面に遭遇をしたわけでございます。ですから、事案は重要だ、しかしながら困難だと、こういうふうなことだと思うのであります。  今後の外交日程を考えますと、四月中旬のクリントン大統領訪日の際の事前折衝ということでペリー長官が来日される、こういう話も聞いております。ペリー長官のカウンターパートナーであります臼井長官は国会の日程が定まらない昨今であります。ですから、その中でどうこうというような判断も非常に難しいかもしれませんけれども、やはりこちらの熱意、事は重大だ、しかし難問だと、こんなことも含めて長官みずからこの案件に取り組む、そういう姿勢を示される必要性があるんではないのかなと私は思うのでありますけれども、長官、ひとつその辺のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  25. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) ただいま委員からお話しのとおり、この沖縄問題というのは単に沖縄の問題だけではなくて、私ども日本国民全体の問題として受けとめなければならない、このように考えております。  ただいま防衛局長からお話ししましたとおり、四月のクリントン大統領訪日に向けてできるだけいい成果を上げなければならない。SACO等の場を通じて懸命に今努力をいたしているさなかでございます。  いろいろ米側からも要人がお見えになりまして、その都度それぞれのお立場でこの問題解決に対する取り組み、あるいは先般の昨年九月の暴行事件に対する遺憾の意が表されておりまして、そのアメリカの取り組みの真剣な姿勢というものは私どもよく承知をいたしております。私どもも事前に、できる限り早くペリー長官にお目にかかって、私どものこの沖縄の施設・区域の整理、統合、縮小に対する決意、熱意というものもお伝えをしたい、こう考えております。  何分ともに現下、国会の審議状況が非常に不安定でございます。また、ペリー長官も大変お忙しいお立場でございます。そういう意味で、現在検討いたしておりますが、なかなか難しい環境にあるということを理解いたしております。  いずれにいたしましても、ペリー長官もクリントン訪日に先立ってお見えをいただくということでございますので、そうした場を通じて私どもの気持ちもしっかりと伝えてまいりたい、このように思っております。
  26. 矢野哲朗

    ○矢野哲朗君 思い起こしますけれども、衛藤長官がみずから先陣を張って沖縄に飛ぶというふうな経緯もございました。ですから、この件につきましては、ぜひひとつ臼井長官、まさに我が手でこの結論を出すんだという迫力を持って事に当たっていただきたいとお願い申し上げたいと思います。そこには何らかの答えが出るのではないかなと期待申し上げますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  私は、冷戦時は少なくとも恒久平和の確立は難しい、と同時に二つの大きな勢力の対立の中でホットウォーの起きる可能性はないかな、こういうふうな解釈ができようかと思っております。  しかし、ポスト冷戦ということになりますと、努力すれば恒久平和の確立もできる、反面、二つの抑止力がなくなってしまったという中で、小競り合いは幾らでも起きる可能性があるというふうな状況になってきたと私は解釈をしております。  ですから、かえって日本を取り巻く環境というのは、現在なおかつ今後を展望したときに大変不安定な要素がある、こう言わざるを得ない状況だと思うのであります。  北朝鮮もしかり、中国もしかり、そして今回の台中間のあの問題もしかり、そして南アジアのそれぞれの国がかなりの予算を軍備拡張に傾注しておるという事実もあるわけであります。ですから、この日本を取り巻く環境が前防衛大綱の時点の環境から今回の新防衛大綱を策定したという流れの中でどういうふうな環境の変化をもたらしたのか、その辺の防衛庁見解をお伺いしたいと思います。
  27. 小池寛治

    政府委員(小池寛治君) ポスト冷戦といいますか、冷戦終結後のアジア太平洋地域の軍事情勢についての御質問ですけれども、先生も御指摘のとおり、東西対立というのがなくなり、世界的な戦争の可能性というのは確かに遠のいているかと思います。それと、アジア太平洋地域における軍事情勢については確かに幾つかの変化が見られるのも事実でございます。  例えば極東ロシア軍につきましては、九〇年以降、量的には縮小傾向にあり、また軍の活動というのも全般的には低調になっております。  それと、ロシアと中国との関係ですけれども、長年にわたった中国・ロシア国境を隔てた緊張関係というのは大幅に緩和しております。それからまた、ロシアは中国に対して近代兵器の供与国になりつつあるところでございます。それからまた、かつては国交のなかった韓国はロシアそれから中国との間で国交を樹立しておりますし、経済関係のみならず、国防関係当局者の相互訪問など政治、外交的な関係が深まっているというような変化も見られます。  また、このような二国間の変化だけではなくて、多数国間の政治安全保障に関する対話の場というのが新しく芽生えております。先生も御承知のとおり、ASEAN地域フォーラムの第三回の会合がことしの七月ごろにインドネシアで開かれるということで、多数国間の安全保障に関する対話の努力というのも端緒についているという状況がございます。しかしながら、他方、欧州と異なりまして、アジア太平洋においては、ポスト冷戦といいますか冷戦終結後においても、昔からあった問題というのが依然としてそのまま残っているということもまた事実かと思います。  具体的に申し上げますれば、朝鮮半島における対峙状態というのは、過去四十数年間軍事的な対立状態というのが続いておりますし、非武装地帯を挟んで合計百五十万という軍隊が対峙して軍事的緊張が続いているということについては基本的に変わっておりません。それから、極東ロシア軍につきましても、確かに量的には縮小しておりますけれども、大規模な戦力がこの地域に蓄積されて、さらに近代化も緩やかでありますが続いている。それから、中国につきましては、近年国防費を大幅に増額させておりますし、核戦力あるいは海軍力、空軍力を中心に近代化を漸進的に進めているということでございますし、また台湾周辺におきましては、先ほどのミサイル発射訓練あるいは海空の実弾演習というのが現在行われているということは先生方御承知のとおりでございます。  このように、依然としてアジア太平洋地域の先行きというのは不透明、不確実な要素を持っているというふうに見ざるを得ないというふうに考えております。
  28. 矢野哲朗

    ○矢野哲朗君 ですから、まだまだ不安定要素が多々あるぞというような一つの話だったと、私も同感であります。  そんな中で、昨年の臨時国会の折、災害派遣時の新たな立法措置で、自衛隊の緊急通行車両の通行、そして警戒区域の設定、土地等の一部使用等の権限を新たに設定させていただいた経緯があります。このことは、阪神大震災のあの当時、自衛隊活動国民のそれぞれの眼にテレビをもって確認をされた。いずれにしろ、大変一生懸命やったなという一つの評価があったと思います。  記憶ですと、一昨年の九月一日の防災の日に各地方自治体からの自衛隊に対する参加要請は四万人前後だったかなと。それが、昨年の九月一日の防災の日の地方自治体からの参加要請は八万七千人を数えたと私は記憶しております。それほどまでに自衛隊のあのときの活動たるや目をみはるものがあった、こういうふうなことだと思うのであります。ですから、それに際して自衛隊活動が制約されてはいけない、スムーズに自衛隊活動が展開できるようにというような一つの措置だったと思うのであります。  そんな中で、私は今まで外から見ていた話と中から見た話で改めて危機感を感じたのでありますけれども、そういう一部危機も含めて日本を取り巻く環境はまだ変わりません、じゃ日本独立、自主を守っていく中でどういうふうな法整備が必要なんだと、これは当然な一つの国のあり方だと思うのであります。  歴史をひもときますと、五十三年に三原長官のもとで、有事の中での対応、法整備の不備な点はどうなんだということでの研究をしようというふうな一つの経過があったようであります。直接自衛隊防衛庁に関連する法案、そして他省庁とつぶさなければいけない法案、そしてその他の法案と、これは三分類に分けて検討されたようであります。  しかしながら、その検討の結果いろんな問題が抽出された。その点での問題は相互に確認されたようでありますが、しからばそれに対してどういうふうな一つの前進があったのかということになると、約二十年を経過した今日、問題はわかっているんだけれども現実に一歩も踏み出していないというような状況であろうと思うのでありますけれども、ひとつ御見解をお伺いしたいと思います。
  29. 江間清二

    政府委員(江間清二君) 有事法制の研究についてのお尋ねでございますけれども、ただいま先生お話しのとおり、これは昭和五十二年から研究を進めたものでございます。  今お話にもございましたとおり、第一分類、いわゆる防衛庁所管の法令、あるいは第二分類といいます他省庁所管の法令、それから第三分類として所管省庁が明確でない事項に関する法令ということでそれぞれ検討を進めまして、第一分類、第二分類につきましては昭和五十六年、昭和五十九年にそれぞれ取りまとめまして、国会にも御報告をしたところでございます。第三分類につきましては、現在、安全保障室を中心として政府部内で検討を進めているという状況でございます。  そもそもこの有事法制の研究と申しますのは、我が国有事に際して、つまり防衛出動を命ぜられるという事態におきまして、自衛隊がその任務を有効かつ円滑に遂行する上での法制上の諸問題を検討したということで、これは近い将来に国会に提出を予定した立法の準備ということではございませんで、現行法制上不備な事項についての問題点等を整理するということで進めたものでございます。したがいまして、一応その研究という観点から見ますと、第一分類及び第二分類については基本的にその目的を達したということでございます。  ただいまの先生のお尋ねは、単に問題点の整理ということでの研究にとどまることなく、その法制化に向けた努力が必要なのではないかという御趣旨と理解をいたしますけれども、もとより私ども防衛を担当しております立場からしますと、この有事法制という問題につきましては、研究にとどまらずに、その結果に基づいて法制が整備されるということが望ましいという考え方は持っておるところでございます。ただ、法制化をするかどうかという問題につきましては、先ほど板垣先生の御議論の際にも大臣の方からお話がございましたように、高度の政治判断にかかわるものでございますので、国会における御審議あるいは国民世論の動向といったようなものを踏まえながら検討をすべき問題ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  30. 矢野哲朗

    ○矢野哲朗君 官房長の状況報告、私なりに理解するところでありますけれども、この出発当初の一文面がこういうふうな認識だからそうだったのかなというふうな話なんですけれども、「幸い、現在の我が国をめぐる国際情勢は、早急に有事の際の法制上の具体的措置を必要とするような緊迫した状況にはなく、また、いわゆる有事の事態を招来しないための平和外交の推進や民生の安定などの努力が重要であることはいうまでもない」、こういう一文があるわけですね。ですから、有事が起こる可能性があるなしの論議なのか、それとも一国の独立を今後も維持していくための論議なのかということは、そろそろ私は原点に戻って広く国民に訴え、世論の喚起を求めるというふうな行動を起こす時期が来たんではないかな、かように考えるところなのであります。  ですから、今まで自衛隊行動ということ自体が何か負の遺産を背負ってきているというふうな、一言で言うならばそんな印象を強く持つ日本歴史なんでありますけれども、災害時に対する自衛隊活動の評価も上がってきました。国際協力におけるPKOの活動についても大変な評価をいただいてまいりました。こういう折柄、やはり平時だからこそそういった有事に際しての対応はどうあるべしということを国民に訴える時期が来たんではないかな、こう思うところでございます。  私なりに非常に矛盾を感じたのは、平成八年度の予算、今審議中でありますからどうなるかわからないかもしれませんけれども、一部人口が集中しますよということで、急増地帯における民生安定のために警察官の三千五百人の増員を箇所づけされております。反面、私は、自衛隊が、本当に緊急災害時に出動しろ、テロリストの対応もしなさい、今後ますますPKOの展開が重要視されてきますよと、こういうふうな任務を負いながら、新防衛大綱では二万人の定員減をするというふうな相矛盾した現実を体験しますと、やはり今こそこういうふうな、平時だからこそこういった基本的な問題をひとつ国民に訴えようと、こういうふうな努力をぜひしていただきたいと強く感じるところでありまして、長官にその辺の御所見をお伺いしたいと思うのであります。
  31. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 委員から自衛隊の昨年の活動に対する御評価をいただいて大変ありがたく思っております。  私ども、新防衛大綱におきましては、我が国周辺における我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態に対しては、特定の事態を念頭に置いているわけではございませんけれども憲法並びに所定の法律に従って行動する、こういうふうに書かせていただいている次第でございます。  先ほどお話しいただきました有事法制研究につきましては、現行法制上の不備な事項についての問題点を整理するということで、近い将来国会に提出するという問題ではございません。しかし、先ほどお答えがありましたとおり、我が国防衛を担当している防衛庁といたしましては、有事法制については当然のことながら研究にとどまらず、その結果に基づき法制が整備されることが望ましいと、こう考えている次第でございます。こうした問題については高度の政治判断が必要でございます。そういう意味におきまして、国会等の御審議を待ちながら、また国民の世論の動向も踏まえながらさらに検討をいたしてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  32. 矢野哲朗

    ○矢野哲朗君 ぜひ長官の熱意ある行動をひとつ御期待申し上げたいと思います。  続きまして、今回の新防衛大綱の中でも、日米安全保障条約が日本の安定にとってまさに基軸になりますというふうな一つの明確な訴えをしておるわけであります。その中で、五十三年に「日米防衛協力のための指針」というようなことでうたわれたわけでありますけれども、「侵略を未然に防止するための態勢」並びに「日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等」、この点については十分日米間で詰めがされているようであります。反面、「日本以外の極東における事態日本の安全に重要な影響を与える場合の日米間の協力」ということでありますけれども、この件がいまだ論議されず今日に至るというふうなことのようであります。  外務省では今回ACSAという大変重要案件、私もこの任につきましていろんな米軍の方と話をすると、ぜひひとつ早急にこのACSAを成立させてくれというような強い要望をされたわけであります。その件については近々法律が提出されるようでありますけれども、それも含めて、この日米協力の中での日本あり方というものをやはりアメリカとしては相当期待しているものがあるんではないかと。  国内事情、先ほどの政治的判断も含めて非常に難しい問題が多々あるかもしらぬけれども、この問題については決して避けては通れないというふうな状況があろうと思います。その辺についての御所見をお伺いいたします。
  33. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) ただいま矢野委員御指摘の、まずACSAでございますけれども、私どもはなるべく早くこれを締結すべきであるという観点から、日米間で今精力的に協議をしておりますし、国内の調整も進めているところでございます。  それから、御指摘のございました「日米防衛協力のための指針」の第三項にございます「日本以外の極東における事態日本の安全に重要な影響を与える場合の日米間の協力」についての研究でございます。  これは、経緯をたどってみますと、昭和五十七年一月に日米安全保障協議委員会で日米間で研究を始めようということで意見が一致したわけでございます。そして、日本側におきましては外務省防衛庁が中心となって研究を行ってきているところでございますけれども、先生御指摘のように、まだ結論を得るには至っていないということでございます。  この研究は、日本以外の極東における事態日本に重要な影響を与えるような場合に、日本が米軍に対して行う便宜供与のあり方を研究しようというものでございまして、米軍による自衛隊の基地の共同使用その他の便宜供与のあり方に関する研究も含まれているわけでございます。  それから、先ほど来説明にもございましたように、今般の新しい防衛大綱の中で、「我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合には、憲法及び関係法令に従い、」、間を飛ばしますけれども、「日米安全保障体制の円滑かつ効果的な運用を図ること等により適切に対応」していくということが明確にうたわれたわけでございます。私ども、この防衛大綱でこういう趣旨がうたわれたということも踏まえ、鋭意やっていきたいというふうに考えているところでございます。
  34. 矢野哲朗

    ○矢野哲朗君 時間ですからそろそろやめたいと思うのでありますけれども、まだまだ案件は大変多く残っているというような感じがいたします。  ぜひこの委員会でこの案件を注視して、やれるものはやろうと。それはすべて当面解決できるというような簡単な案件ばかりではありません。しかしながら、案件を整理してそろそろ手をつけていきましょうというふうな一つ背景だけはぜひつくってみたいなと。ひとつ御協力をよろしくお願い申し上げたいと存じます。  終わります。
  35. 萱野茂

    ○萱野茂君 中国台湾情勢についてお伺いしたいと思います。  初めに、緊迫しております中台問題について質問します。  報道によりますと、この三月五日、中国の全国人民代表大会において李鵬首相は台湾関係については平和統一に一貫して力を尽くしているが武力行使の放棄を約束しないと述べ、そして八日から人民解放軍は台湾海域でミサイル発射訓練を実施し、台湾総統選挙への干渉を強めているとしています。  また、新聞ではこの事件を台湾近海として報道しておりますが、私の知り合いで、定年後は寒い北海道ではなく暖かいところで暮らそうと八重山諸島の与那国に移住した人がおります。この方に話を聞きますと、与那国から台湾は目と鼻の先とのことであります。中国ミサイル着弾地域のうち、台湾北方海域でいいますと、台湾本島まではおよそ四十キロ、与那国までは六十キロと言われていますから、これは台湾近海のことであると同時に日本近海のことなのであります。  このような中国の行為はまさに我が国周辺地域の平和と安定の問題であり、また東アジア地域における平和に向けての国際協力に背を向けたものではないでしょうか。この際、政府中国の軍事行動に対しての基本的な認識を伺っておきたいと思います。  第二点は、中国台湾との関係について平和的環境のもとでの対話の努力を積み重ねることが最も緊急の課題と思われますが、その外交的努力について政府方針を伺っておきます。  第三点は、この海域におけるアメリカ海軍の警戒行動について伺っておきます。  アメリカのクリントン大統領は、十一日、中国の江沢民国家主席に対して親書を送り、中国の軍事的威嚇の自制、台湾問題の平和解決を促したと報道されております。一方、大統領命令によって同海域へ第七艦隊などの緊急展開を命じ、原子力空母ニミッツなどが既に台湾海峡近海に至っていると報道されていますが、アメリカ海軍の警戒行動の実態について政府としては具体的に把握しておられるのでしょうか、またアメリカ政府筋からの報告などがあるかどうかお伺いしておきたいと思います。  さらに、このような行動が三月八日のペリー国防長官のアメリカ海軍派遣の可能性に言及した発言に基づくとすれば、これは明らかに作戦行動ではないでしょうか。そうであるとすれば、この場合、空母インディペンデンスは横須賀港を母港としており、けさの新聞にも「米艦載機、威圧の訓練 五分おき発進」と報ぜられております。当然、日米安全保障条約に基づく事前協議の対象となるのではないかと思いますが、政府認識を伺っておきます。また、このことについて日米双方にどのような行為があるのか、例えば日本側から協議の働きかけなどがあるのかどうか、その辺も伺います。  第四点は、中国側のミサイル発射の事実について、また日本近海の着弾の事実もしくは位置について防衛庁はどのような方法で確認しておられるのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  36. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 中国が今月の八日から十五日までの予定で台湾周辺の北部及び南部の水域においてミサイル発射訓練を、また十二日から二十日までの予定で福建省沖合において海軍及び空軍による実弾演習を実施しているという事実がございます。  私どもといたしましては、現在、台湾海峡において直接の武力行使が直ちに行われるというような差し迫った状況にあるとの情報には接しておりません。しかし、台湾海峡において緊張が高まることは東アジアの平和と安定にとって好ましからざることであると思います。中国台湾周辺での軍事演習を本格化しておりますことは、この観点から私たちとして強い憂慮の念を抱くところでございます。  政府といたしましては、台湾問題は関係当事者間において平和的に解決されるべきであるという立場を一貫して保持してまいっております。私たちとしてはそのような解決を強く希望しているわけでございまして、現下の台湾海峡情勢を踏まえまして、中国に対してはそのような立場に立って行動することを強く求めてまいっておる経緯がございます。  今申し上げたところに政府としての立場は尽きるのだろうと思いますけれども、具体的に申し上げれば、今月の六日、私から在京中国大使館へ、また海空軍の演習が始まって演習が本格化すると見られる前夜の三月十一日に、同じく私から在京中国大使館に対して日本側の強い懸念と憂慮の念を伝達いたしました。あわせて、日本の船舶航行、漁業等、そうした活動に対する影響というものがないよう確保されるべきであるということも申し入れた次第でございます。  それに先立って、今月初めバンコクでアジア欧州会合がございました際に、日中首脳会談、日中外相会談が行われました。このときにはまだ訓練の具体的な内容ということが広報されておりませんでしたけれども、既に演習があるということは確実視されておりましたので、総理及び外務大臣から中国の李鵬総理及び銭其シン副総理兼外交部長に対しまして、私たち台湾問題の平和的解決を強く願っている、そして当事者がそういう考え方に立って行動してもらいたいということを直接伝達した経緯がございます。  私が六日、十一日に申し入れを中国側に対して行いました際にも、今後、実際の状況の展開にかんがみましてさらに申し入れを行うことがあり得べしということを中国側にあわせて伝達してございます。  その次に御質問の対話の努力という点で、既に新聞報道などにも選挙が終わった後には台湾李登輝総統の方から平和攻勢に出るというような話が出ていたということもあろうかと思いますけれども、いずれにいたしましてもこの問題について当事者間の対話というものが始まるということは、そういうことがあれば非常に望ましいことだというふうに私たちは考えておる次第でございます。  次に、御指摘のクリントンの親書でございますが、私どももその親書の件についての報道を見まして米側に確認を行いましたところ、これは何らかの誤解であろう、すなわちそのような親書が発出された事実というものはないということでございました。親書が発出されたわけではございませんけれども、米側として、米側の懸念と委員が今おっしゃられたような諸点も含めて、いろいろなレベル、いろいろな機会に中国側に伝達しているということは想像するにかたくないところであろうと考えます。  それから、空母ニミッツあるいは空母インディペンデンス、その他随伴艦のこの地域における活動についてでございますが、既にインディペンデンスは台湾の百マイルぐらいのところにいると。  他方、ニミッツはまだ到着しておらず、ペルシャ湾からマニラ経由で今台湾周辺の海域の方に向けて進んでいるところでございまして、そこに到達するのは来週の初めぐらいではなかろうかというふうに承知いたしております。このような最近の台湾海峡における米海軍艦艇の活動状況などにつきましても、私たちは米軍、米側から適宜情報提供を受けてまいっております。  具体的には、例えば空母インディペンデンスの監視活動でございますとか、空母ニミッツの台湾近海への移動などにつきまして、米国の国防総省、在米国の大使館、それから在京米国の大使館、すなわち我が方と米国の双方の大使館、それから在日米軍などから逐次情報を得ております。この関連で、中国ミサイル着弾についても米側より情報を受けたというふうに承知いたしている次第でございます。  なお、この点が作戦行動に該当するかどうかという点につきましては、御承知のとおり、日米安保条約第六条の実施に関する交換公文においていわゆる事前協議と言われるものの対象となっておりますのは、合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、合衆国軍隊の装備における重要な変更、それから日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用というこの三つのカテゴリーになっているわけでございます。  この点については今まで累次の国会における質疑、やりとりが行われていることは御案内のとおりでございますが、現在、空母インディペンデンスを初めとする米海軍艦艇は、台湾海峡において緊張が高まっているという状況にかんがみまして、台湾から沖縄にかけての海域で通常の訓練を行って監視活動を継続しているという実態のものであると承知いたしておりまして、このような活動であれば、これは事前協議の対象になるものではないというふうに私どもは考えております。
  37. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 御質問は、中国台湾周辺海域でミサイル演習を行った、そのミサイルの弾道等について自衛隊はどう把握しているのかといったような趣旨の御質問だったかと思います。  防衛庁といたしまして、航空自衛隊及び海上自衛隊の航空機等による情報収集体制を強化いたしておりまして、このミサイル発射訓練を含む中国軍事演習の詳細につきまして可能な限り情報収集の努力を行っております。しかしながら、今回発射された中国の弾道ミサイルの航跡を把握したか否かにつきましては、我が方の情報収集能力を明らかにすることになってしまいますので、この点についてはお答えは差し控えたいと思います。  しかし、我々としても、アジア局長から今答弁がありましたように、日米の情報交換あるいはその他のあらゆる情報収集をいたしましてこの実態把握に努めているということでございます。
  38. 萱野茂

    ○萱野茂君 次に、朝鮮半島の緊張緩和と対北朝鮮への災害支援についてお伺いしたいと思います。  北東アジア安全保障上のもう一つ課題であります朝鮮半島、とりわけ北朝鮮の体制不安の問題についてであります。  北朝鮮の体制をめぐる評価、認識そのものの問題もありますが、私は朝鮮半島の緊張緩和なり北朝鮮の政局にとって北朝鮮の民心の安定は極めて欠かせない要因であろうと考えております。  北朝鮮は、これまでの年間二百万トンからの慢性的な食糧不足に加え、昨年の未曾有の災害によって危機的な食糧不足の状況にあると言われております。災害復旧のおくれは今春の春耕にも影響が及ぶことも予想されています。国連の人権援助局の現地での調査では、年間の食糧需要総量が七百六十三万九千トンに対し、不足の量はほぼ半分の三百八十七万トンと言われています。このような状況は、民衆の日常的な不安感から政情そのものを不安定化させる危険性をはらんでいるのであります。  政府は本格的に対北朝鮮への食糧援助を検討すべきであり、またそのためには日米韓のより緊密な体制が必要と思われますが、北朝鮮の食糧事情の把握とその支援のあり方について伺っておきたいと思います。
  39. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 北朝鮮の状況につきましては、現在、金正日書記が国政全般を指導しているという見方が一般的でございますが、他方、委員御指摘のとおり、食糧、エネルギー不足など、いろいろな困難を抱えていると考えられます。北朝鮮情勢の把握は実際にはなかなか困難な面がございますけれども、今後ともその動向には細心の注意を払っていく必要があると考えております。  昨年夏の洪水被害に対する国際社会の支援に関連して、最近、北朝鮮側が国連の諸機関に対して追加アピールの発出が不要であるとの意向を表明したということがございました。私どもといたしましては、国連諸機関の支援要請を受けて既に総額五十万ドルをこれらの諸機関に拠出したという実績がございますけれども、今現在、ただいま申し上げましたような状況にかんがみ、さらなる支援を検討しているわけではございません。  いずれにいたしましても、北朝鮮側において、いろいろな分野のいろいろな人からも既に指摘されておりますとおり、もう少し透明度というものを高めていただく必要が一般的にあるのではないかというふうに考えております。  なお、北朝鮮の状況の把握につきましては、先ほど非常な困難があるということを申し上げましたけれども、これも委員の御指摘のとおり、日米韓三国の間で情報交換、意見交換というものを行う場ができております。昨年十一月のAPECの際に韓国、米国、日本の三外相がまず会合を持ちまして、その外相会談において、外相より下のレベル、高級事務レベルの会合というものを北朝鮮の情勢把握等のために持とうではないかという合意ができました。それに従って、第一回の会合は既に先般一月にハワイで行われた経緯がございます。今後ともこうした場の積極的な活用ということを通じて、北朝鮮の動向あるいはその情勢というものについてできるだけの把握の努力をいたしたいと考えております。
  40. 萱野茂

    ○萱野茂君 次に、ウタリ対策、つまりアイヌ民族対策のあり方に関する有識者懇談会についてお伺いしたいと思います。  ウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会の審議について伺います。  我が国の先住民族でありますアイヌ民族、私もその一人でありますが、このアイヌ民族に対しましてはこれまでも政府によって一般的な生活の向上を目的とした福祉施策がとられてきております。しかし、このアイヌ民族に対しまして、新たな法的措置を含む今後の施策を審議されるために、昨年三月、内閣官房長官のもとにこの懇談会が設置されました。以来これまで十回の会合が重ねられ、四月早々に答申といいましょうか、報告がなされると伺っております。  私はもちろん、いわゆるアイヌ新法の制定について十数年間民族の存亡と悲願をかけ政府に要請を続けてきた北海道ウタリ協会の仲間たちはかたずをのんでこの行方を見守っております。それは普遍的な人権問題であるとともに、より本質的には日本の近代の歴史に対する清算がここに凝縮されているからであります。  昨年は戦後五十年ということで、かつて日本アジア近隣諸国に行ってきた植民地支配のあり方が改めて問われております。私たちアイヌ民族が今この懇談会の審議の意味日本の近代史の凝縮とすることの意味は、明治以来の日本がとってきた蝦夷地とアイヌ民族への侵略政策、まさに植民地的支配そのものであったとの歴史的事実によるものであるからであります。  したがって、私は懇談会の報告こそ日本社会とアイヌ民族との関係において初めて明らかにされる歴史的清算であろうかと考えているわけであります。そのような意味で、歴史的和解の意味を持つものをどのような形で清算されるか、大いに注目しているところであります。  そこで伺っておきますが、一つは報告を目前にして懇談会の審議がどのような方向性を持って進められているか。もちろん懇談会は第三者機関でありますから、その審議の公平性との兼ね合いはあるでありましょうが、ぜひ明らかにしていただきたいのであります。  二つ目は、報告の時期はいつごろとなるのか。  そして三つ目には、梶山官房長官は三月八日の第十回目の懇談会に出席しごあいさつをされておりますが、その中で、懇談会の検討事項は歴史や文化の領域のこと、またウタリ対策のあり方に関する基本的な哲学とも申されております。この際、官房長官歴史認識、またアイヌ問題についての哲学をお聞きできればと思っております。  四つ目には、官房長官は懇談会報告を当然尊重されるものと思いますし、尊重してくださることを期待しているわけでありますが、官房長官立場として御決意を伺うことができればありがたいと思っております。
  41. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 萱野委員の長年にわたるアイヌ運動、まことに敬服の限りであります。  今その結晶としての御意見やら政府対応についての私は最後のお話を聞いたような思いであります。  御指摘のとおり、過日の有識者懇談会に私は初めて出席をさせていただきました。今まで回を重ねること十回、おおよその方向づけが今なされつつあります。そして、三月末にはこの懇談会の答申が私のもとに出される予定であるというふうに聞いております。これを受けてもろもろの施策を  その答申にあとう限り沿ってやってまいりたい、このように考えております。  そして、その際、アイヌ問題についての歴史、文化観というものも、若干私の耳を打つものというか胸を打つものが二、三、今までの私のいわば調査や勉強の中でもありましたので触れておきました。  アイヌの人たちをめぐる問題については、御指摘のとおり歴史や文化あるいは法制度までひっくるめた幅広い分野にわたる検討が必要と認識しておりますが、現在この有識者懇談会においてはこのような幅広い観点からの御検討をいただいている最中であり、今その取りまとめを急いでいるところでもあります。現時点においてこの問題について私見を申し述べることは、この有識者懇談会に対する一つのいわば圧力になってもいかがなものか、あるいはそういう予見を持ってはいかがなものかということでありますので、私からはこの問題についての私見を申し述べることを差し控えさせていただきたいと思います。  ただ、アイヌの人たち歴史的な沿革の中で、特に明治期以降、北海道開拓が進む過程で大変な御苦労をされてきたというふうに承知をいたしておりますし、またこのような少数者が誇りを持って生きていけるような社会を実現することは非常に大切だという気持ちを持っていることをつけ加えておきます。  ありがとうございました。
  42. 渡辺芳樹

    説明員(渡辺芳樹君) 事務当局から若干補足をさせていただきたいと思います。  委員御指摘のとおり、これまでこの有識者懇談会は十回の会合を重ねてまいりました。直近の会合は去る三月八日でございました。その間、約一年の検討の間でさまざまなヒアリングあるいは昨年秋には北海道の現地視察もさせていただくというようなことで取り進めさせていただいております。  御指摘のとおり、現在、報告書の取りまとめに向けて精力的に意見の調整を進めていただいておるところでございます。次回の懇談会は三月二十八日に開催する予定としておりまして、その際、全体としての御意見の集約を図っていただけるのではないかというふうに承知しております。  文案を確定いたしまして正式な報告書として官房長官に御提出いただくことができる詳細な日程につきましては、やはり二十八日の審議結果いかんにもかかわることでございますので、三月末あるいは四月に少し入るというようなことも懇談会の委員の先生方の御議論によってあり得るのかもしれないと思いますが、事務当局として最善を尽くして早急に報告書の取りまとめに努めてまいりたいというふうに思います。
  43. 萱野茂

    ○萱野茂君 四つ目の、官房長官が懇談会報告を受け、それに対してどのように受けとめてどのように扱ってくださるかについての決意のほどを一言お願いしたいと思います。
  44. 梶山静六

    国務大臣梶山静六君) 私はこの報告がどういう形でどんな意見を踏まえて出されるものかまだわかっておりません。しかし、このメンバーの方を見ますと、それぞれの専門家でございます。亡くなられた司馬先生もこのメンバーの一人であり、行ってまで調べられた、いろんないわば歴史観を持った答申が私は出されると信じております。  ですから、政府としてはあとう限りこの答申を尊重し、そして現時点で答申がどういうものになるかわかりませんけれども、今すぐに対応のできる問題、長く思想、哲学として残すべき問題、それからこの問題はいずれの地域でもいずれの時代にでもこういう過程を経ながら一つの民族の統合や独立あるいは民族の保護というものがなされたわけでありますから、もろもろの状況を踏まえながら適切な措置を講じなければならない、このように考えております。
  45. 萱野茂

    ○萱野茂君 この問題については、北海道出身の五十嵐広三先生が次々に官房長官がかわるたびにぜひということを伝えているやに伺っておりますので、大いに期待しております。北海道じゅうのアイヌは、このごろ何となく日が長いな、早く日が暮れて早く答申が出てくれればとみんな楽しみにしておりますので、ぜひいい方向で検討してくださることを心からお願いしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  46. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 私は、新防衛計画大綱の問題について質問する前に、沖縄の問題について伺っておきたいことがありますので質問をさせていただきます。  周知のとおり、駐留軍用地特別措置法に基づく楚辺通信所の土地の一部の使用が三月三十一日をもって期限切れになります。国が今起こしている大田県知事に対する職務執行命令訴訟の判決は三月二十五日に出ることになっております。国が敗訴した場合はもちろんのことでありますけれども、勝訴した場合にも使用までの手続に時間がかかるため、四月一日以降は米軍の不法占拠となることは間違いない状態にあります。現に橋本総理は十三日の衆議院外務委員会で、手続を三月三十一日までに終えることは大変困難な状況になったと認識していると、このように答弁をされています。  そこで端的に伺いたいのでありますが、四月一日以降、米軍がその土地を使用する場合、その法的根拠はどこにあるのでしょうか。
  47. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) お答えいたします。  ただいま先生御指摘になられましたように、私ども現在、楚辺通信所に関しましては、三月三十一日までに何とか手続を終えて適法な権原を取得したいというふうに考えて最大限努力しておるところでございますが、極めて困難な状況になっておるというふうに認識しておるところでございます。  したがいまして、総理答弁にも今言及されましたが、私どもとしては、この地域につきましては引き続き在日米軍の方に提供する必要がございますので、法律上の手続にございます緊急使用の申し立てを県の収用委員会の方にいたしまして、正当な権原を何とか三月三十一日までに許可をいただきたい、このように考えているところでございます。
  48. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 それは不可能だと思うんです。間に合わないというのはそういうことなんです。  というのは、二十五日に判決が出ますね。それで、署名は拒否すると大田知事は言っておられるので、拒否するのにどのぐらい時間がかかるかというと三日かかるんです、二十八日の最後まで。  そうすると、残されている時間は二十九日だけなんです。三十日、三十一日は土日でお休みなんです。だから、二十九日しかないんですよ。二十九日に全部のことがやれるなんということはあり得ない。だから橋本総理も極めて困難な状況だということをあそこで答弁されたわけで、あなたのように最大限の努力を尽くして四月一日までに間に合わせるようにしますなんて、そんなのはあり得ないですよ。もう一回。
  49. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 三月二十五日に判決が出るということで今予定されておりますが、現段階ではまだその判決の言い渡しがされていない状況でございますので、私どもとしてはこの時点で具体的にどうなるかということを申し上げるような段階ではないと一つは考えているところでございます。しかし、先生が今おっしゃられましたような点も考慮いたしまして、現在いろんな観点から勉強はしておるという段階でございます。
  50. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 判決がまだ出ていないからとおっしゃいますけれども、負ければもちろんその問題が起こるわけだし、勝っても今言ったような状況で起こるわけで、仮定の問題ですからまだお答えできませんというのはもう通用しないです。そんなことを言っているのはひど過ぎますよ、どっちだって期限が切れちゃうんですから。だめです、その答えでは。
  51. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 再度同じことで恐縮でございますが、先生がおっしゃられるような事態も一応念頭に置いた上で現在いろんな検討をさせていただいておるということで何とか御了解をいただきたい、このように考えております。
  52. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 ちょっと無責任だと思うんです。きょうは十五日でしょう。あと十日後に起こるんですよ。そのことについてはっきり国民に、こういうことが起こる、それじゃどうするんだろうかということは何にも言わない。全く無責任だと私は思うんです。  いろいろなことを検討しておるということですが、こういう報道があります。それは、条約は国内法より優先する、あるいはまた民法では公共の利益が私権に優先する、そういう立場から臨むというような報道がございます。しかし、そういうことをするためにも、仮にあなた方がそういう立場に立ったとしても、そうするには手続の法律が要るわけです、手続法が。それがまさに特措法であるわけです。その特措法の期限が切れちゃうわけですから、その手続を担保する法律というのが適用されないわけなんです。  ですから、条約が優先する、あるいは公共の利益が私権に優先する、だからいいんだということにしてしまえば、これは全く法治国家ではあり得ない、そういう状況が生まれてしまうわけです。  この問題についてどういうふうに考えておられますか。
  53. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) そういうふうな事態も想定されますが、そういう事態を想定いたしましてどういうふうに対応するのか、現在そういう点を種々勉強させていただいているということを先ほどから答弁申し上げているわけでございまして、具体的内容については申し上げられる段階ではないということで御了解をいただきたいというふうに考えているところでございます。
  54. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 すべてそういうふうにお答えになるなら、別の角度から私は質問をいたします。  期限が切れれば法的根拠がなくなるということはお認めになりますね。
  55. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 現段階で先生の御質問に対して断定的なことは今ちょっと申し上げられないということでございます。
  56. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 そういうことはお答えできないと。  そんなことはないですよ。四月一日以降それが切れる、そうすると何の法的根拠でもって使用するのか、占拠するのかと私は聞いているわけであって、そういうことが起こりませんなんていって、それは答弁にならないですよ。というのは、そういう事態が起こった場合には何の法的根拠があるんですかという質問を私はしているんですから、それはわかりませんというようなことは通用しないですね。
  57. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) お言葉をお返しして恐縮でございますが、私どもとしては現段階でいろんな角度から検討しておるということを申し上げているのであって、そういう事態が仮に来た場合にどういうふうに国民皆様方に御説明するか、そういう点につきましても今いろんな角度から勉強させていただいているということを申し上げているわけでございます。  また、先ほど来申し上げておりますように、まだ判決が出されておらないという時期にそういうことを断定的に申し上げるのは今の時点では余り適当ではないというふうに考えておるわけでございます。
  58. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 余り話が通じないようなんですが、まことに驚くべきことだと思うんです。あと十日後に起こるということについてこういう状況です。  私はこういう答弁があるんじゃないかと思って、法制局の方に来ていただこうと思いました。  私が今防衛庁とやっているやりとりについては、法制局の方は聞いておられてどこに問題があるのかおわかりだと思います。  期限が切れてしまった場合、四月一日以降これは確実に切れるわけですよ。総理自身もお認めになっておることなんですよ。法制局に伺いたいんですが、その場合にどんな法律がございますか。  そういうことになってしまっても米軍がその期間使用できる法律というのがございますか。
  59. 秋山收

    政府委員秋山收君) お尋ねのケースにつきましては、現在、使用期限までに使用権限を取得するために政府としても最大限の努力をしているところでございますし、また種々のケースを想定して防衛施設庁を中心に勉強しているところでございますので、法的見解を申し述べることは今の段階では差し控えさせていただきたいと存じます。
  60. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 もう一回伺いますが、差し控えさせていただきたいということは政治的な対応ですね。私が聞いているのは法的な対応、法的なことです。法律がありますかということを聞いているんです。そういうことがやれる法律がありますか。
  61. 秋山收

    政府委員秋山收君) 繰り返しの御答弁になって恐縮でございますけれども、現在、防衛施設庁を中心に種々対応その他勉強しておりますので、現段階におきまして私どもから法的な見解を申し述べることは差し控えさせていただきたいと存じます。
  62. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 また防衛庁にお伺いいたしますけれども、先ほど言いましたように、条約が優先する、あるいは民法でいけば公共の利益が私権に優先するということが言われますが、四月一日以降、防衛庁としてはその立場でこの問題を処理してしまうというようなことは、これは法治国家では私は許されないことだと思いますが、そういうことはしないんでしょうね。
  63. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 条約上の観点というようなことも含めまして、現在外務省等とも検討を進めておるという状況でございますので、内容につきましては、先ほど来申し上げているように、ちょっと現段階で申し上げる段階にはないということでございます。
  64. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 大体答えはわかりました。何を聞いてもそういうことだと思うんですが、新聞の報道では、それからまた過去にはこういうことがありました。法的には切れてしまった、しかし管理権が存在するというようなことで、管理権という概念を持ち出して切れた期間を何とか対応しょうということをやったことがあります。そんな対応も考えているんですか。
  65. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) ただいまの御質問は、昭和五十二年の公用地暫定使用法の期限が参議院の方で御審議中に切れまして、そのときのことを言及されたんだと思いますが、私どもとしてはその当時と今回の状況等につきましても十分検討して、しかるべき結論を出して、またその際御説明したい、このように考えておるところでございます。
  66. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 もう一つ伺いますが、切れた場合に新規の立法をしてそこの部分を補うという方法があると思うんですが、新規の立法を考えておられますか。
  67. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 私どもからそういうことをちょっと申し上げる立場にはないと思いますので、何とぞ御了承いただきたいと思います。
  68. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 これはひどいものですよ。大体考えられ得るバリアントというのはそういうものなんですね、私が言ったような。これはみんな答えないというのがあなた方の態度。十日後に起こることについても答えない。これは全く無責任きわまりない。現地では四月一日になったら混乱も予想されるというようなことを現地の新聞が報道しております。それでも防衛庁としてはまだ何にも申し上げませんと。こんな態度が通じると思いますか。いつまでそういう態度をとられるつもりですか。
  69. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 私どもとしては、一応三月三十一日まで賃貸借の使用権原がございますので、それから以降の問題について今の時点で申し上げる段階にないということを御了解いただきたいということを御答弁申し上げているところでございます。
  70. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 委員長、これは事実上の答弁拒否です、事実上の。答弁拒否というのが成立するにはいろんな法的なこともあるんでしょうけれども、これは本当に事実上の答弁拒否で、私はこういう態度というのは国会と国民を愚弄するものだ、本当に率直に言ってけしからぬと言わざるを得ないですね。  最後に、あなたにきちっと答えてもらいたいんですけれども、何らかの法的な措置で、法的な根拠があってあなた方はこの問題を乗り切る、法的な根拠ですよ、それがあなた方はできると、本当にそう思っておられるんですか。
  71. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 現在検討しているということを恐縮でございますが再三申し上げておるところでございまして、先ほど法制局からも御答弁がありましたように、法的な点も含めて現段階では答弁を差し控えたいということをお願いしている状況でございます。
  72. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 そういうふうに言われるなら、法制局も含めて言いますが、法的には新規立法をやる以外にないんですよ。だって特措法がもう適用できないわけでしょう。では、新規立法をやるんですか。
  73. 秋山收

    政府委員秋山收君) それは専ら立法政策の問題でございますので、担当の部局が判断されるべきものであると考えます。
  74. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 特別立法云々という話については、私どもとしては、そういう点も理論的には考えられるかもしれませんが、現段階でそういうことについて予断を与えるようなことも申し上げられませんし、検討しているしていないとか、そういうことについて現在いろんな角度から勉強させていただいているということを申し上げているのでございまして、特別立法云々について現在何かあるかというような趣旨の御質問であれば、私どもとしては現段階でそこまではまだ考えていないということは申し上げられると思います。
  75. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 そう言うと結局何にも考えていないということになつちゃうんですよね。ひどい話で、新規立法以外ないんですよ、実際は。ところが、新規立法はやるかやらないかと言うと、まだ決めていない、考えていない。管理権の問題もそうで、みんな何にも考えていないというのが最後の結論になつちゃうんですね、論理的に言うと。まだ何にも決めていません、検討中だ検討中だと。ではこの点はどうだ、この点はと言うと、それは考えていない考えていないと。これは本当にひど過ぎる。  こういうことは法治国家であるべきことではないんですね。  これ以上押し問答をやっていても仕方ありませんから、質問をこれから別の問題に移させていただきますけれども、私はこれが事実上の答弁拒否であり、こんなことが国会で許されているというようなことがあっては断じてならぬということだけははっきり申し上げたいと思います。  次に、新防衛大綱の問題について残された時間質問をいたします。  私がこの問題で質問をしたいのは、ACSAと新防衛計画大綱との関係であります。新防衛計画大綱の構成の中に、基本的な考え方とそれからその次に日米安保体制信頼性向上という一つの柱があります。ACSAの問題は日米安保体制信頼性向上という柱の中の運用面の効果的な協力態勢というところに属する問題だと私は認識しておりますが、そういうことでよろしいでしょうか、まずその点を伺いたいと思います。
  76. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) まず、ACSAそのものにつきましては、御案内のように昭和六十三年から実は日米安保事務レベル協議で議論をしてきた話でございます。そのとき、米側から共同訓練等の際の物品役務の融通の仕組みが有用であるという旨の発言があり、そしてその必要性も含めて日本の方で白紙的にその検討をするといったような経緯があって現時点に来ているわけでございます。これは要するに米軍と自衛隊の間の現場でのいろいろな物品役務の融通、そういうシステムがお互いに有用であるところから話が進んでいるわけでございます。  お尋ねの件でございますが、その結果もし今回ACSAというものの協定ができ、あるいはその法律ができるということでシステムができますと、御指摘のとおり、防衛大綱に言うところの日米安保体制のところに書いてあります信頼性向上を図るというところにつながる。そして、それは何かといえば、共同演習、共同訓練、これらに関する相互協力充実を含むというところに最終的にかかってくるということは御指摘のとおりだと考えております。
  77. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 ACSAと大綱との関係はわかりました。  ACSAのことですが、秋山防衛局長は二月二十三日の衆議院での安全保障委員会の質疑の中で、ACSAの範囲はどのぐらいの範囲かという質問を受けられて次のように答えておられます。  ACSAの適用範囲についてですが、日米共同訓練といったものが中心になりますけれども、それ以外にどういつだものを対象として入れるべきか、その点についての詰めをやっているところだ、こういうふうに答弁をされています。私が伺いたいのは、それ以外とはどういうことなのかということです。
  78. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 実はまさに今、日米間でこのACSAの適用の範囲ですとかあるいは対象を何にするかということの最終的な詰めをやっております。先ほど答弁いたしましたように、スタートの時点から米軍側より共同訓練において非常に有用であるという指摘があり、それをも含めて白紙的に検討しようといったような経緯がございますので、共同訓練が中心であるということは両国とも認識は一致しておりますが、それ以外について今まさに最後の詰めをやっているところでございます。
  79. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 昨日の新聞報道ですと、自民党の山崎政調会長が、国際緊張が高まったとき、例えば今、台湾でこういう緊張が高まっておりますし、それからまた朝鮮半島でこれからどういうことが起こるかわからない状況でありますが、国際緊張が高まったときACSAを適用するかどうかも検討の対象になるという記者会見を山崎政調会長がやったということが昨日報道されました。それ以外のことで検討しているというのはそういうようなことですか。
  80. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 私は山崎自民党政調会長の記者会見での発言を正式に承知しておりませんが、報道ベースの話を前提にして考えてみますと、例えば今回の新防衛大綱の中に示しました我が国周辺地域における我が国の安全に重要な影響を与える事態といったような場合に、我が国として適切に対応しなければならないとすれば一体どういうことがあるだろうか、そういう文脈の中での御発言だと報道ベースで考えますと認識をいたします。  我々、ACSAの日米間の協議につきましては、今申し上げましたように、既に昭和六十三年からかなり長い期間、米軍と自衛隊の現場での物品の融通といったものが有用であるということで議論をしてまいりまして、一応それとは話は別の形で協議が進んできているというふうに認識しております。
  81. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 いろいろおっしゃったんですが、そうすると山崎政調会長が言ったようなことは検討の対象になってはいないんですか、どっちなんですか。
  82. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 報道ベースでございますが、政調会長の御発言の話は、まさに日本の国の周辺において生じる日本の安全に重要な影響を与える事態について、例えば今御指摘になったACSAの問題ももちろん入ると思いますが、有事法制ですとかあるいは危機管理対策とかそういった面についての範囲の話と理解しておりまして、それとは別の形で我々の作業は進めているというふうに御理解いただいた方がよろしいと思います。
  83. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 今言われた危機管理ということと緊張状況ということとはまた概念を区別されるんですか。
  84. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 今我々が進めているACSAの話はまさに共同訓練を中心としてというところでほぼ御理解いただけると思うわけでございますが、それとは別の話として、日本の国の安全に影響を与えるような重要な事態が発生した場合の検討をいろいろしていかなければいけないじゃないかという点について、私もそういうようなことを考えるところでございますが、それはそれとして、別の案件という認識でございます。
  85. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 秋山防衛局長の言われたことはわかりました。ただ、大変なグレーゾーンが残っているということだけは非常に明確だと思います。  最後に、これはACSAとのかかわりでもあるし、また他の問題でも同様ですが、きょう冒頭で板垣委員の方からも提起されました集団的自衛権の問題とそれから個別的自衛権の問題について、現在の局面でどういうふうに防衛庁は考えているのかということを質問して、私の時間が来ましたので終わりにしたいと思います。  私の質問の趣旨は板垣委員が質問されたのと立場は反対でありますが、問題の接点はすれすれのところで一致をしております。というのは、集団的自衛権の行使というのは憲法上許されないというものですから、憲法を変えるまではなかなか言えない。だから個別的自衛権を無限に拡大していく、これで対応していこうというのが今の対応の仕方だと思うんですが、そこから先へどうやって行くのか。板垣委員は行っちゃった方がいいというお考えだと思うんですが、私は行っちゃいかぬというふうに思っているんです。ここのすれすれのところというのは質的な問題なのか、それから日本の参加の対応、形態の問題なのか、ここのところが非常にはっきりしていない、あなた方の今までの答弁でも。  それで、一体こんな無限の拡大でそれを乗り切ることができるのか、やはり質的に何か飛び越えなければならないのか、本当にそういう問題があると思う。私は、絶対に飛び越えてはならぬというふうに思いますが、防衛庁の考え方として一体どこにそのメルクマールというものを置いておられるのか。もう今までの答弁の範囲をはるかに超えたことが今実際には行われ、また新防衛計画大綱というのはまさにそういうものであるので、これは明確な見解をあなた方が持たなければ国民に対して不誠実な態度になると言わざるを得ないと思うんです。いかがですか。
  86. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 今回の新防衛大綱安全保障会議及び閣議で決定された昨年の十一月二十八日に内閣官房長官談話というものが出されております。その内閣官房長官談話で、  新「防衛大綱」においては、まず、日本憲法の下にこれまで我が国がとってきた防衛の基本方針については、引き続き堅持することとしております。  なお、集団的自衛権の行使のように我が国憲法上許されないとされている事項について、従来の政府見解に何ら変更がないことは当然であります。 というふうに談話で発表しておりますし、我々はそういう立場でこの集団的自衛権不行使ということで物事を考えているところでございます。  なお、先ほど来多分御関心のある、あるいは議論の対象だと思います新防衛大綱の中の「大規模災害等各種事態への対応」の二番目の「我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合」の取り組み方につきまして、先ほど法制局の第一部長からもお話がございました。  集団的自衛権不行使という理念のもとで、しかしその範囲が明確でない問題が現実問題としてあるわけでございます。そういう点については、今後我々鋭意詰めさせていただきたいと考えております。
  87. 聴濤弘

    ○聴濤弘君 終わります。
  88. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後零時十二分散会      —————・—————