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参考人(
竹内宏君)
竹内でございます。
私は、
パチンコについて
幾つかの作品といいますか本があったり、あるいは
土井たか子先生と御一緒に
パチンコ文化賞をちょうだいしたりいたしまして、そんな
関係でここで何か御報告申し上げることができる喜びを得たわけであります。
パチンコ産業全体の特色みたいなことを御報告申し上げて、現在の問題についても触れさせていただきたいと思います。
御案内のとおり、この
産業の
売上高は
年間約三十兆と言われております。三十兆というのは、一億人で割ってみますとちょうど三十万円になるわけでございますから、かなり大きな
支出といいますか、
国民一人当たりの
消費支出の中で十数%を占めるということであります。もっとも、この大部分が換金されますので、実際、
胴元に戻る、
胴元の粗収入になるのは四兆円ということでございますけれ
ども、とにかく国全体を巻き込む大
産業であることは確実でありますし、
日本の
レジャー産業の中で
最大でございますし、それから我々の最も重要な
レジャーであることは確かでございます。
このような
レジャー、
パチンコが
日本で非常に栄えました理由は
幾つかございます。その第一番目は、何といっても我々都会に住んでいるサラリーマンなどにとりましては
都市型の
レジャーがないということでありますし、それから
地域に
コミュニティーがございませんから、家に帰ってもいわばすることがございません。そういうことで帰りとか暇つぶしに
パチンコをするということは、ばらばらに住んでいるあるいは
コミュニティーが崩壊した
日本の
都市の住民にとってどうも必要な
レジャーだというふうに思われるわけであります。
それから第二番目には、これは
大変射幸性といいますか、
一種の
賭博と思われますけれ
ども、
日本は
建前の国でございますから、
賭博の
供給力は実際上、表面的にはない国であります。
賭博需要はどの
国民にも確実にあるわけで、
日本でも
平安時代、あるいはヨーロッパでは
ローマ時代、ギリシャ、
ローマに
賭博の記録があるわけでございます。どの
国民も、もちろん
日本もそうでありますけれ
ども、
賭博に対する
需要は非常に強うございます。しかも、
日本は
建前上
賭博はだめだ、こういうことになっておりますから、実際は
賭博だけれ
ども賭博ではないというような、
パチンコに対する
需要が非常に強くなるのは当然だというふうに思われるわけであります。
それから第三番目は、この
業界の
技術進歩は目覚ましいわけでございまして、年配の方は御存じだと思いますけれ
ども、
パチンコ台でも、昔から二塁打、三塁打なんてちょろちょろしておりましたのが、正村ゲージになり、
チューリップになり、それから半導体がいち早く
導入された、こういうことであります。
ここには御
当局の御
指導がございますので、その御
指導を
技術進歩によって越えていくと。
チューリップなんというのはまさに御
当局の、
一つの穴に入ったら十五以上出してはいけないと、そのような御
指導を見事に
チューリップによって克服した。そういうことによって
国民の
賭博需要に応じていったという点では、まさに
芸術品かなというように思われるわけであります。
それから、
パチンコの
システムでございましても、ちょうど
地価が低いときには三尺島でございましたけれ
ども、だんだん
地価が上がると一尺島になり、それから昔は
宇宙パイプとか
月光ラインなんという
自動給玉システムができ上がり、それがさらに
自動化になり、
コンピューターが
導入され、
コンピューターと対話しながら全体の経営を管理していくというようなことでございます。
従業員の方はできるだけ
現金に触れないような
システムにでき上がっておりますので、かなり問題がある方でも
パチンコホールに勤めることによって再生するきっかけになるという点では、大変すばらしい感動すべき
システムが
開発されたというふうに思うわけでございます。
昨今になりますと、いよいよ大
産業になってくるとともに、
パチンコホールは町の
中心部にやってまいりまして、新宿でも銀座でも渋谷でも
パチンコホールが目玉になってきた。
ワゴンサービスとか大変すばらしい
サービスになり、ラスベガスやあるいは各地の
ホールといいますか、そういうところに比べても決して劣らない、一流のたたずまいを持つようないわば
賭博場ができ上がった、しかもそれが
町づくりの
中心になっている。
地方に行きますと、これが
小売店あるいは
専門店であるとかスーパーであるとか、そのようなものと結びついて
小売・リゾート・コンプレックスといいますか、そんなものになりまして、
地域の
開発の
中心、
過疎地の
開発の
中心になっているという点では大変すばらしい威力を発揮しているというふうに思われるわけでございます。
ところが、この
最大の問題は、先ほどから御
指摘のような
脱税とかあるいは
暴力団との
関係とかいろいろあるわけでございます。その背景には二つ問題がありまして、どういたしましても
賭博であるのに
賭博でないという
建前で、
現金交換というところが後ろめたいといいますか、
不法と
不法でないところのすれすれのところでございますから、そういうようなことが
業界の重要なポイントになっているということは、非常に
業界の立場が悪いといいますか、そこで悪い人々がつけ入るチャンスが出てくるということになります。
御
当局としてみますと、言うことを聞かないと
現金交換を絞るぞというようなことで、まさに重要な交渉の道具になっているという点であの
現金交換は重要でございますし、
現金交換こそ
国民の
賭博需要を支える
要因でございますから、これは極めて重要なことでございますけれ
ども、そこに問題があるという点が第一番目であります。
それから第二番目には、この
業界で大活躍されている方は
移民の
方々であります。でございますから、
移民の
方々はどの国でもそうでございますけれ
ども、やはり正当な扱いを受けておりませんし、
日本でも大企業には就職できませんし、そのような
差別を受けている
方々、それで頭のいい
方々がしこたまこの
業界に入っていくわけでございますから、この
業界が成長するのは当然だというように思われるわけであります。
日本最大の頭脳が入っているかもしれないとも思われるわけでございます。
ところが、こういう
方々は
差別を受けられているわけでございますから、どうしても
日本国民としてのアイデンティフィケーションを求めるのは無理だ、こういうことになるわけであります。こういう
方々に
差別をしながら税金をちゃんと納めろというのは無理だということでございまして、ここでこの
業界の
脱税が宿命的だというふうに思われるわけでございます。
でございますから、この問題を解決していきますにはいろいろ難しい問題もあります。御
当局は、大
産業になり
脱税が目に余り、そこで
暴力団に
流れるかもしれないというような懸念をお持ちになるわけでございますから、ここでできるだけ収入を把握しようということでプリペイド
カードをお考えになり、プリペイド
カードを
導入するについてはCR機、
射幸性の高いものをプリペイド
カードとセットにして、経済的な
要因によってこれを
導入してもらい、同時にその収入を把握しようという非常にうまい考え方をされたということでございますけれ
ども、この仕組みは、現在から見ますと多少無理があったのかなということであります。
つまり、
ホールには不正を発見するモチベーションが全くないということであります。不正なプリペイド
カードを使われても
ホールの収入はふえるわけでございますし、お客さんにそれは違っているんじゃないかなんて言って、変に突っかかっていって評判を落とすよりも黙っていた方がはるかに得だということでございますから、ここは仕組み上、大変無理があったのかなということであります。考えてみれば大変うまい仕組みでございますけれ
ども、無理がございました。
ですから、これは永遠に残る問題でございますけれ
ども、我が国における
移民の
方々が
日本国民としてアイデンティフィケーションをお持ちになるような体制をいち早くつくっていくということが重要でございますし、それからどうしても
賭博は
賭博と認めなきゃならないのかなというように思うわけであります。
パチンコ業界の
現金交換、これも本当に
芸術品でございます。特殊景品をかわりに出してそれを裏で売買するわけで、これは中古品の売買になるわけでございますから
賭博ではないということで、本当にうまく、実にうまい仕組みを考えられたということでございます。ただ、その仕組みがある限りいろいろな問題が出てくるに違いないというふうに思われるわけでございます。
ですから、ちょうどこの仕組みは、素人でよく存じませんけれ
ども、何となく憲法九条に似ているのかなという感じがいたしますし、最近の例でいきますと安楽死に似ているのかなと。実際に安楽死がありながら安楽死はないというのが
建前でございますから、非常に暗いところで安楽死が行われているというようなことで、これは我が国の国情といいますか、尊厳死とか安楽死について真正面からはっきり見ない、議論しないというような我が国の特色といいますか、大変美的センスのあるところでございます。そのような意味で、この
パチンコ業界が
賭博であって
賭博ではないという
建前をとっているのは、本当に我が国の麗しい人情のたまものかなというような感じすらするわけであります。
もし、これを
賭博といたしますと、ちょうどアメリカのカジノのように厳しい規制を実行することができるわけであります。例えば三親等以上に犯罪者があったら認めない、その犯罪者を探すために随分お金をかけるそうでございます。それから、
機械をちゃんと封印してさわらせない。現在は一々チェックされましても、くぎをいじれば一緒のことでございます。これも、いじったけれ
どもいじらないという本当に憲法九条のようなことでございます。
そういうように封印したらいじらせないとか、出玉データ比率といいますか、その
賭博性を公開するとか、それで間違ってインチキしたら永遠に取り消しでありその親族も開業はできないというように非常に厳しい規制をかけて、そこで収益といいますか
賭博の民営を認めていくというようなことが本筋ではないかということでございます。これは世界すべての国でスポーツにトトカルチョなんかやっておりますし、いろんなことにかけるわけでございますけれ
ども、我が国だけそれはいけないということになっているわけでございます。
現在のまま行きますと、この
パチンコホールとか、
パチンコ業界の
脱税問題、現在の
技術進歩は猛烈でありますから、プリペイド
カードのような新しい
システムが考えられ、その都度失敗するというような繰り返しのまま、この美しい伝統を守っていくのかなというような感じがいたすわけであります。
以上で御報告を終わらせていただきます。