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1996-05-22 第136回国会 参議院 国際問題に関する調査会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年五月二十二日(水曜日)    午後一時一分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     会 長         林田悠紀夫君     理 事                 板垣  正君                 田村 秀昭君                 直嶋 正行君                 松前 達郎君                 上田耕一郎君     委 員                 尾辻 秀久君                 岡野  裕君                 北岡 秀二君                 塩崎 恭久君                 馳   浩君                 林  芳正君                 山本 一太君                 木庭健太郎君                 高橋 令則君                 永野 茂門君                 益田 洋介君                 萱野  茂君                 清水 澄子君                 笠井  亮君                 田村 公平君    事務局側        第一特別調査室        長        入内島 修君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国際問題に関する調査  (「アジア太平洋地域の安定と日本役割」の  うち、アジア太平洋地域における安全保障の在  り方について)     ―――――――――――――
  2. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) ただいまから国際問題に関する調査会を開会いたします。  国際問題に関する調査を議題といたします。  本日は、本調査会テーマである「アジア太平洋地域の安定と日本役割」のうち、アジア太平洋地域における安全保障あり方について自由討議を行います。  本調査会では、設置以来、そのテーマに基づき、安全保障中心として参考人から説明を聴取するなど調査を進めてまいりました。また、一年目の中間報告書を作成する時期も近づいております。  これらを踏まえ、本日は午後四時を目途として委員皆様方に自由に意見を交換していただくことにいたしました。  運営につきましては、理事会で協議いたしました結果、アジア太平洋地域における安全保障あり方を、アジア太平洋地域情勢認識アジア太平洋地域の平和と安定のための方途、我が国安全保障あり方の三項目に分けて、それぞれについて希望会派から一名ずつ五分以内で御意見をお述べいただいた後、委員相互間で意見交換を行うことといたします。  なお、御発言はすべて着席のままで結構でございます。  それでは初めに、アジア太平洋地域情勢認識について自由討議を行います。  まず、各会派から順次御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、意見はおのおの五分以内でお述べ願うことになっておりますので、時間をお守りくださるようお願いを申し上げます。
  3. 馳浩

    馳浩君 よろしくお願いします。  そもそも国家戦略計画する上での情勢認識は、まず現在ある不安定要素有無を考え、相手国の能力の変化を加味して危険の存在を確定し、その危険が相手国意図に基づくものなら脅威と考え、さらに大義名分を持つに至り、危機、つまり顕在化した脅威となると考えるべきであると思います。重要なことは主観的恣意的要素を持つ意図大義名分は最後に判断することであります。なぜなら、客観的判断客観的要素有無から判断して初めて客観性を担保し得るからです。  以上を踏まえまして、アジア太平洋地域不安定要素を検証してみます。  まず、極東ロシア軍情勢についてですが、近年、量的には縮小傾向にありますが、依然、核を含んだ大規模な戦力を維持しています。その中で、政治経済情勢が不安定かつ流動的で、これは六月の大統領選挙がポイントとなります。このため、極東ロシア軍動向も不確実であります。しかし、アメリカとの冷戦終結、NATOのPFPに正式加盟した等々から、不安定要素は小さいと考えられます。  続きまして、朝鮮半島情勢です。  北朝鮮についてですけれども、核疑惑問題がありますが、米朝合意に基づき朝鮮半島エネルギー開発機構による軽水炉導入が一応進展しております。  しかし、国連の食糧支援に見られるごとく食糧難エネルギー危機工場閉鎖に陥っており、金正日体制不安定性と相まって体制崩壊、ひいては大量難民の発生、自虐的な戦争への道も考えられます。  ただし、体制がすぐに崩壊するとは現時点では考えにくいと思われます。金正日は軍、党の人事でいずれも側近を要職につけておりますし、食糧難も暴動が起こるほどまでには至っていないからです。  そのほか、チュチェ思想が徹底している軍の士気は高く、米軍がいなければ韓国軍に勝てるとも考えでおり、非武装地帯への軍の侵入等韓国への挑発は不安定要素であります。また、米朝合意の枠外の中距離弾道ミサイル開発もこれが量産されていくと危険であります。  総じて安定化方向にあるものの、偶発的事情に左右されて一気に日本アメリカ韓国脅威となる可能性を秘めています。  韓国情勢につきましては、韓国抜き米朝関係の進展が米韓関係を悪くする懸念が唯一取りざたされていると思われます。  次に、中国情勢についてです。  二十一世紀は、中国経済成長を踏まえると、中国政治経済軍事的動向に対して、アメリカを含めたアジア太平洋諸国がこれに対応していくという図式となると考えられます。  経済面においては、急激な経済成長に伴う食糧エネルギー危機があります。とりわけエネルギーに関してですが、石油確保は重要な課題であり、これが南沙諸島周辺海底油田開発との関連から領土問題を引き起こしています。また、石油輸入のためのシーレーン確保上、海軍の増強も考えられます。  軍事面では、CTBT署名後、発効までの核実験が懸念されます。ただ、対アメリカとの核バランスをとるための実験であり、脅威とは言えません。  政治面では、ポスト鄧小平権力闘争不安定要素があります。江沢民体制が盤石とは言えないと考えられます。さらに、台湾問題が尾を引くと考えられます。  さきの中国軍事演習緊張度を高めました。しかし、李登輝総統就任演説独立路線を否定したので、当面の危機を脱し、安定化に向かうだろうと考えられます。今後は、李登輝の行う外交についての態度が唯一懸念されるものと思われます。  総じてこの地域は、日本トップリーダーとする連鎖反応的経済発展と域内の相互依存関係が深く浸透しており、APECARF地域協力が進み、アメリカ関与政策とも相まって安定化が強いものと考えられます。  以上です。
  4. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 私は、二月二十八日の前回フリー討議で、アジアには領土民族宗教等に根差す紛争の火種が存在する、特に東アジアでは朝鮮半島中台南沙諸島など多くの不安定要素を抱えているというふうに申し上げましたが、東アジアについて、今の馳委員との重複を少し避けながらもう少し掘り下げて申し上げたいというふうに思います。  まず、朝鮮半島でありますけれども、アメリカ戦争回避及び北との融和策を優先したことから、最悪の事態は脱したというふうに思っています。ただ、北が体制崩壊危機に直面していると見られることから、不測事態も想定され、依然として注意が必要だというふうに思います。  前回参考人阪中参考人は、十年後の朝鮮半島統一可能性に言及されました。しかし、そうなればそうなったで、やはり東西ドイツの統一に見られましたように、一時的な混乱やさまざまな課題が生じることになるというふうに思います。したがいまして、日本としては不測事態に備えると同時に統一を視野に入れた対応策を用意する必要があるというふうに思います。  それから、中台間の問題についてでありますけれども、台湾総統選の結果として、中台間の問題解決は遠のいたのではないかと、したがって、今後少なくとも二十年ないしは三十年はこのままの状態が続くと見るべきではないかというふうに思います。その場合、この中台間での武力衝突につながるか否かはこれは別としまして、この地域全体の不安定さが増してくるだろうし、また、中台のみではなくて、周辺諸国を巻き込んだ軍拡競争がエスカレートする可能性が大きいというふうに判断をいたします。  また、全体的に、アジア諸国経済発展に伴い、ナショナリズムの高揚や、人口、食糧エネルギー環境等不安定要因となり、領土紛争やその他のトラブルのもととなる可能性も大きいというふうに思います。  さらに、中国やインドネシアが石油輸入国になりましたが、こういった国々の石油輸入の増加によって日本からペルシャ湾に至るシーレーンの混雑が増し、我が国にとってこの海上交通安全確保が大きな課題になるのではないか、このように思います。  さらに、中国について、最近、私、中国に訪問いたしましたので、若干私見を述べたいというふうに思います。  中国経済についてでありますが、おおむね今後も高成長を続けるという見方が一般的に有力でありますけれども、私は、この間訪問した結果として、あと二、三年は不透明ではないかというふうに判断をいたしております。特に、経済発展から取り残された国営企業再建が今焦眉の課題となっているわけでありますけれども、これには相当な困難が伴い、悲観的な見方も結構多いということでございます。また、国営企業の立地は内陸部に集中していますので、この問題と沿岸・内陸間の地域格差是正問題がリンクしてくることになるというふうに思います。  さらに、党幹部腐敗による共産党指導力低下が今指摘されておりますが、そういう面では政治経済両面不安要因となっているというふうに思います。  また、資源の面でありますが、先ほど食糧エネルギーという問題の指摘がございましたが、私はこれに水不足をつけ加えておきたいと思います。特に、ことしは華北地方は干ばつでありまして、深刻な状況のようでございます。  いずれにしましても、これからアジア太平洋情勢の中で大きなキーになる中国は、政治経済両面でまだ不透明な要素が多く、これらを慎重に見きわめながら我が国の将来の対処を検討する必要がある、このように思っております。  以上でございます。
  5. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 参考人の中には、アジア太平洋地域情勢について、経済発展の問題とともに、北朝鮮問題、中国台湾との緊張関係南沙諸島軍拡競争の問題などを今後の緊張要素として指摘する意見が少なくありませんでした。  私は、アジア太平洋地域情勢を悪化させる最大要素は、諸民族自決権平和的共存経済自主的発展相互自主性を尊重した平和的協力に不当に介入、干渉して、それを阻害する覇権主義の行動であると思う。その点について言えば、ラングーン事件大韓航空機爆破事件などを起こした北朝鮮ベトナム侵略天安門事件を起こした中国は、覇権主義的存在として今後もその動向を警戒する必要があるし、北朝鮮問題にも台湾海峡の問題にも、日本としてもその平和的解決のために大きな努力を払うことが重要だろうと思います。  しかし、アジア地域における最大覇権主義的存在は、みずから太平洋国家と称し始めたアメリカであり、第二は、そのアメリカに追随して進出拡大を図りつつある日本であることを重視しなければなりません。何人かの参考人もこの問題を指摘しています。  アジア太平洋地域の顕著な特徴一つに、巨額の債務返済の重圧と南北格差拡大で八〇年代を失われた十年と嘆いている第三世界の多くの地域と異なり、目覚ましい経済発展が進行していることがあります。渡辺利夫参考人は、その原因を日本円高による東アジアからの工業製品輸入資本進出に求め、日本効果と述べました。私の質問に、その前のドル高によるアメリカ効果もあったとされました。  この地域情勢を展望する際、重要な問題は、こうした歴史的経過を踏まえて、アメリカが、多国籍企業進出のためにAPEC機構化貿易、投資の自由化指導的役割を果たし、さらにその保障として、この地域安全保障体制、特に礎石としての日米軍事同盟強化と、ARFASEAN地域フォーラム強化に特別の力を入れていることにあります。アメリカ国防総省の「東アジア戦略」は、アジア太平洋地域は、現在、世界経済的に最もダイナミックな地域であり、そのことだけからもその地域安全保障アメリカの将来にとって死活的であると述べています。  アジア情勢にとって極めて重大な問題は、アメリカが、ソ連崩壊後、超大国としての地位と巨大な軍事力の基本を維持するために、敵探しに苦労したあげく、コリン・パウエル統合参謀本部議長のイニシアチブで、ソ連のかわりにごろつき国家の核保有の脅威を当面の敵とするローダ・ドクトリンなるものを採用し、北朝鮮、イラク、イラン、リビアなどをごろつき国家と規定する特異な軍事戦略を採用したことです。それはまた、核拡散対抗構想という、核拡散脅威には軍事力をもって対処するという核大国アメリカのもう一つの危険な方針と一体となっています。経済的覇権主義軍事的覇権主義の結合しているのがクリントン政権覇権主義特徴です。  今回、ソ連脅威が消滅したにもかかわらず、日米軍事同盟をさらに強化拡大し、アジア太平洋地域日米両軍の事実上の共同防衛地域とする日米安保条約の事実上の改悪の根拠とされたのも、このごろつき国家脅威論でした。こうして、アジアの平和と民族自決にとって現在最大脅威となろうとしているものは、不当な介入、干渉の源泉となり得る日米軍事同盟強化拡大であり、アジア諸国が今回の日米安保共同宣言に大きな警戒の声を上げているのも当然だと思います。  日米両国覇権主義脅威を阻止することが今後のアジア太平洋情勢の平和と民族自決を守る課題中心であり、それが実現すれば、アジア諸国民は二十一世紀を希望ある世紀とすることが可能となるでしょう。日本責任は極めて大きいと言わなければなりません。  以上です。
  6. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) 以上で意見の表明は終わりました。  これより意見交換を行います。  発言を希望される方は挙手をお願い申し上げ、私の指名を待って発言を行っていただきたいと存じます。  なお、時間が限られておりまするので、発言は簡潔にお願いいたします。
  7. 山本一太

    山本一太君 五月の、おとといだから二十日付だったと思うんですけれども、ウォール・ストリート・ジャーナル、きのう付でしょうか、クリントン大統領中国に対する対中最恵国待遇ですか、MFNの更新を一両日中にするという方針で発表するという記事が流れたわけなんです。特に、例の台湾海峡での中国軍事演習があって以来アメリカのマスコミの動きにずっと注目をしていたわけですけれども、かなり手厳しい対中批判が起こっておりまして、中には、クリスチャン・サイエンス・モニターみたいに結局中国民主主義国家の道を選ぶというのもあるんですけれども、軍部や保守派意見を聞いておりますと、多党制は非常に危険だという論調がやはり多いという感じがいたしました。  先ほど馳委員の方からもありましたけれども、私は、アジア太平洋地域安全保障を考える上では、もう言うまでもないことですけれども、この中国という存在をどうやって扱っていくか、いわば中国をどうやって政治的にも経済的にもソフトランディングをさせていくかということがやはり一番のキーだと思いますし、アメリカはいわば対中封じ込めと対中関与の真ん中ぐらいを行ったり来たりしているような気もするんですけれども、やはり基本的には対中関与政策日本政府としても進めるべきであろう。すなわち、中国にきちっとした責任大国への道を選ばせるという観点で、日本ができることというのをやはりこれからの安全保障を考える上で模索していかなければいけないんじゃないかと、こんな気がいたしました。
  8. 馳浩

    馳浩君 先ほど嶋議員からいただきました情勢の話の中でできたら教えていただきたいと思いまして、せっかく中国へ行ってこられましたので、今から言う三点についてもう少し詳しくお願いいたします。  党幹部腐敗、あるいは内陸部国営企業再建、それから水不足と、これは本当に、中国国内情勢によって中国政府周辺諸国に対する態度を改めていく、あるいは強硬にしていくということは考えられると思いますので、この点実際に行ってこられたもうちょっと詳しい情報等を教えていただければありがたく存じます。
  9. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 先ほど申し上げたもの以上に詳しいことというのは持ち合わせていないんですけれども、今中国高度経済成長が続いていますし、それからこの間発表された九・五計画というんですか第九次五カ年計画、これも従来に比べて少し抑制ぎみですけれどもかなり高い成長を維持する、こういう計画になっています。  その中で、今さっき私が申し上げたことで申し上げますと、従来の沿海部内陸部との地域間格差を是正するために、いわゆる中央政府としての資源の投入をやや内陸部に厚く向けようというのが一つ方針になっております。ただ、そうすることによって内陸地区に立地します国営企業経営再建を図ろうということなんですが、実際に現地で聞いてみますとなかなかこの部分が難しいだろうと。特に、今の中国経済成長の一番の原動力は、外資の導入なんかも含めて郷鎮企業と呼ばれるいわゆる小企業と、それからあとサービス業、軽工業、それに金融関係、こういったところが経済を引っ張っているということで、実は基幹産業になっている国営企業の不振というのは中国経済が浮上した以降もずっと続いているということなんですね。  したがって、ここが非常に深刻な問題で、本当意味での中国経済テークオフというのは国営企業がやはり再建されないと難しい、本当意味でのテークオフにならないだろうというふうに思うんですけれども、これが大きな関門になっている。特に、国営企業赤字を埋めるために政府関係金融機関等からかなり融資をしたり、あるいは財政資金を投入したりしていますが、これが立ち直らないためにいわゆる不良債権化したり、あるいは財政赤字につながっていると、こういう状況でありまして、ここが非常に困難であるということであります。  それからもう一つは、特にそういう中で申し上げますと、さっき第九次五カ年計画ということを申し上げたんですけれども、これは内陸に厚くということなんですが、実際にはそれぞれの経済発展をしている沿海部分の、例えば広東省とかそういうところは経済成長をそんなに落とすつもりはない。事実、そこが落とすと全体の経済もまた沈滞するのではないかと、こういう見方もありまして、なかなか中央政府思いどおりにいかないのではないか。  いずれにしても、こういう問題で経済が多少行き詰まりが見えたときには、さっき申し上げた党幹部腐敗問題なんかも含めて政治的な混乱にもつながる可能性がある。この見通しがある程度見えるのは大体二、三年後だろうというふうに、この点は割合何人かの方が指摘されましたので、そういう見方がかなりあるということではないかと思います。  それから水は、やはり飲料水だけではなくて、工業用水も含めて、逆に言うと飲料水までやはり不足しているという状況で、これから工業化が進んでさらに水を使うということになると、特に北の方といいますか中西部というんですか、あの地域はかなり水がネックになる危険性があるというふうに、中国の方もそういうふうに受けとめておりますし、私もそういうふうに見ました。  以上、余り参考にならないかもしれませんが。
  10. 馳浩

    馳浩君 いいえ、参考になりました。ありがとうございました。
  11. 永野茂門

    永野茂門君 アジア太平洋地域日本周辺で将来にわたってよく観察をしておかなきゃいけない、ある意味脅威になりつつあるといいますか、あるいは脅威に転化する可能性がある国は、私は、やっぱり中国が一番対象国として断然高い状態にあると、こういうように思います。  その一つは、中国というのは、御存じのように中華人民共和国と称する、この中華思想ですね。これはもともと中国の基本的な物の考え方あるいは国家の成り立ち、国家の振る舞いの中核にある考え方であって、かつて日本朝貢国一つであったわけでありますけれども、ひれ伏させていくという、そしてその前は戦国時代等ずっと考えてみますと、五十六にも及ぶ多民族をだんだんと征服していって統一してああいう大国をつくり上げた。必ずしも完全な近代国家として統一されているわけではありませんけれども、そういう歴史を持っている国であって、その歴史はやっぱり忘れることはできないんであって、現在いろんな一方的な行為をとっておりますが、その一つの国としての性格を規定しているのがこの歴史的な要素であるということを考えなきゃいけないと思います。  それからもう一つは、依然として社会主義国であるということであって、非常に独裁的であるという性格をこれは振り切っていないわけですね。非常に独裁的にいっている。したがって、いろんな国際的な主張も大変に一方的なものであって、うちの国で開発している核兵器は平和のためのものである、みずからを守る以外には使わないんだ、平和目的のものであると。じゃ日本平和目的に核開発すると言ったら彼らは容認するかといったら、絶対容認しないですね。彼ら自身だけが正しいのであるというんですね。こういうことをやったり、台湾に対して武力で言うことを聞けということをごく最近やったわけでありますけれども、これも非常に一方的であるし、領域法で、南沙西沙の群島の主要なものあるいは尖閣列島も、これは中国に帰属するものであると、中国領有権をこれ一方的に宣言しているわけですね。  非常にわがままな一方的なことをやるという性格は、これは社会主義にくっついているものであって、その上に古い覇権国であったということを我々は忘れてはならないのであって、そして、先ほどからいろんな人が言っていますように、資源が豊富であると言っていた資源にいろいろと問題の弱点が生じてきている。十二億の民を抱えてどうやってこれを養っていくかということにおいて問題を生じつつあるし、それから地域的な経済格差というのも非常に大きくて、これは国内紛争問題として大きくあらわれるかもしれない。  そういうように、大変にアジアの安定、平和について問題を投げかける要素を非常に多くかつ強く持っている国であるし、そういう国が軍事力を非常に強化しているわけですから、これはやっぱり二十一世紀にわたって我々は十分注意して、そういう国にならないようにしなきゃいけない、覇権国にならないようにどういうようにするかということ、これは後段の問題ですけれども、そういう意味情勢認識をしておかなければいけないと思います。これは、中国のことについてはそれだけを申し上げておきたいと思います。  北朝鮮については上田先生もお触れになったので特に今申し上げませんが、ロシアのことも私は忘れてはいけないと思うんです。  ロシアはごく最近まで覇権国であったわけです。自由化民主化方向に動き始めておりますけれども、大変にこれは苦しんでやっているわけでありまして、どこに落ちついていくかわからない。エリツィンが今後の政権をちゃんと確保して維持できるかどうかというのは大変に問題があって、案外旧共産党系が、あるいはもっとラジカルな連中が政権をとることも考えなきゃいけないのであって、ロシアの中も、おいでになった方はよく御観察になっていると思いますけれども、非常に地域格差が大きくて、自由化は余り進んでいない状況があるわけでありまして、したがって経済がうまくいっていない。  経済がうまくいっていないということは、何で貿易のための外貨を稼がなきゃいけないか、軍需品をどんどん外へ出しているわけです。それで軍需工場は動いているところと動いていない全くもうだめになっているところと、民用に転換することはうまくいかずに、しかし軍需工場を軍需工場そのままで動かしているところはたくさんあって、それは何をやっているのかというと、外に武器を売り、そしてまた確立されている軍事技術を売る、あるいは技術者を売る、こういうことをやっているんで、そういう意味においてこれも看過できない国として見守っていかなきゃいけないという国だ、こう思います。  いずれにしろ、二十一世紀にかけて中国というのは非常に問題の国である、よくなるか悪くなるかというのは我々が外からどういう働きかけができるかということに非常にかかっているということを申し上げておきます。  それから、上田先生のおっしゃった日米アジアの平和を乱す覇権主義国家群であるというお話で、これは全く私は対立した考え方で、どこにそんな要素があるんだと。  アメリカが戦後アジア地域でちょっと気にかかることをやったかなというのはベトナム戦争でありまして、これは一体本質的にどういうものであったかということは問題が残っていると思います。しかし、アメリカは再びああいうことをやってはならないということをみずから宣言しているのであって、あれを除いてアメリカ覇権主義的なことをやったということはないと思います。そして、日本がその覇権主義の片棒を担いでいるなんという、これはとんでもない誤解である、私はそう思います。
  12. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今、永野先生からも御指摘がありましたけれども、アジアの国際情勢を考えるときにやはり私たちが基本的に押さえておかなくちゃいけないのは、ヨーロッパというか、ソ連を含めて西欧では既に終わったことがここアジアではまだ残ったままであると。冷戦は終わったという状況ですけれども、ただ、アジアを見るとまだ分裂国家存在している。共産主義国家、東欧ではある意味では消えていったわけですけれども、ここアジアには、ベトナムもまだ共産主義国家であり北朝鮮もあり、中国をどうとらえるかは別として共産主義国家が三つもあるという現状をどう認識しておくか。  いずれこれがヨーロッパと同じように一つの流れを起こしてくるならば、同じような混乱が将来起こりかねない要素というのは十分にあるんだということを我々は認識しておかなくちゃいけないと私は思っております。しかも、現時点では、北朝鮮であり韓国と、こうとらえる。中国台湾と、こう見ている。ただ、今分裂状態のここの中台、南北朝鮮、これが今後変化の中で統一された場合は、全く別の意味アジア情勢が全く変わってしまう。近々とは思えませんけれども、遠い将来はそういうことも可能性としては十二分にあるんだということも、これは今後の将来展望を見るときに極めて大事な視点になるだろう。  特に、中台の問題を含めて、もし中国台湾まで一緒にした場合、どういうことが起きるか。日本シーレーンというのはまさにここにおいて寸断をされるわけであり、その辺をどう見るかという問題も起きてくる。南北がまとまった朝鮮の国力というのはどれだけのものになるのか。最初は混乱があるでしょうけれども、一つにまとまったときの、そのときの日本のつき合い方、安全保障を考えるときのそういう視点も我々はきちんと見ておかなくちゃいけない。  近々の、ある意味では二十一世紀初頭をにらんだアジア安全保障という視点とともに、二十一世紀、そういう変化の中で一体どうしていけばいいか、そのときに当たって、それへ向かって、今からアジアの中で日本アジア安全保障に向かってどういう枠組み、APECでも、いろいろ御指摘がこの調査会でもありましたけれども、そういう大枠を考えるときにその視点を忘れてはならないのではないか、そんなことを思いましたので、将来展望を含めた、もう少し将来視野も見たようなものも必要ではないかという意味発言をさせていただきました。
  13. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 全局をよく見る必要があると思うんですけれども、ソ連脅威を非常に声高に言っていた時期、日米安保条約がその脅威に対抗するものだ、こう言われたんです。ソ連が消滅して安保条約の歴史的根拠がなくなったということをアメリカの国防総省自身が日米安全保障問題という文書ではっきり認めているように、米ソの核軍拡競争がそれこそ人類の破滅を現実の可能性としていたような非常に重大な問題だったわけです、米ソの核軍拡競争というのは。  ところが、ソ連が崩壊して、アメリカも認めているように安保条約の根拠がなくなったというときに、逆に安保条約が強化されるというのは、これは極めて奇怪なことなんです。その今進んでいる事態の奇怪さを私たちはよく見詰めて、分析して教訓を引き出して、日本がどのような方向に進むかということを考えなきゃいけないと思う。  我々も、もちろん北朝鮮中国、私も先ほど申し上げましたけれども、北朝鮮は小覇権主義国家で、それから中国は、まあ中と大の中間ぐらいの覇権主義でしょうけれども、アメリカ最大覇権主義国家なんで、中国北朝鮮については我々も具体的な問題があるときは常に指摘してきたし、我々自身もいろいろ体験もしていますし、警戒を払わなきゃならぬと思うんだけれども、北朝鮮脅威や将来の中国の危険が、今安保条約を国会にも諮らないでとんでもないものに変えて、今の安保条約の条約区域というのは日本の施政下にある領域だったんだから、それを今度は日本の施政下にある領域以外のアジア太平洋地域で何か事が起きると共同防衛をやろうというんですから、これはもう条約も全く逸脱した改悪なんだけれども、そういうことを一体何で今やるのかというところに根本的な重大問題があると思うんですよ。やっぱり日本の運命にも、それからアジアの平和全体にもかかわるものだと思うんですね。  それで、今私がアメリカ日本の軍事同盟が一番脅威だということを言ったんですけれども、中国のこと言われたけれども、例えば中国の人民日報が今度の安保条約の改悪にこういうことを言っているんですね。四月十九日付人民日報。日米安保体制は既にソ連抑制から極東有事の対応へと転化し、一国型から地域型へ、防衛型から攻撃型へと変わり、日本も被保護型から参加型へと変わったと。なかなか的確にこの型の変化を中国側は見て、批判的に警戒心を表明していて、こういうことをやるとそれこそ中国の方が構えてくるわけでしょう。中国を構えさせるようなことをみずから起こしている。みずから起こすのを、いや北朝鮮が危ない、中国が将来危なくなる、何が起きそうだというふうにいろいろ数え上げて、それで自分自身のよろいを一番大きくして他国を脅威していて、それで自分が脅威だということは全くないんだというのは極めてこっけいな話だと思うんですね。  今、アメリカ日本軍事力に対抗できる国はアジアには一国もありませんよ。アメリカ世界最大の超大国、軍事国家だし、世界最大経済大国で、日本世界第二の経済大国で、軍事費は世界第二なんですから。技術力、工業力、軍事力からいって、この二国が手をつないだらそんな対抗できる国なんかどこにもないんですよ。それで、日本軍国主義は二千万人を殺した戦争をやったし、戦後アメリカベトナム侵略戦争をやった国ですからね。そういう力関係からいっても、まず第一に、アジアにおける軍事的力はまず日米なんですよ、最大の軍事的力はね。これは承認されると思うんですね、これが最大だということは。  それから二番目に、アメリカは、私先ほど申し上げましたように、ソ連がなくなったので、ハイテク兵器を含む巨大な冷戦型軍事力をどうやって保持するかというので大変だったんですよ。八九年から問題になって、アメリカの国防総省の中でも軍事力を半分にしたらどうかという意見が出た。ナンという上院議員は、脅威がないのにそんな予算は認められないぞということを国防総省に言ってくるというのでね。それで、どうやってこの軍事力を保持するかという研究に八九年からアメリカは入るんですよ。これ大きな、いろいろな文献もありますけれどもね。  それで、そのとき当時のチェイニー国防長官もブッシュ大統領も何にも案がない、弱っちゃった。それで、そのパウエル統合参謀本部議長が、彼がイニシアチブをとって指示を出して、とにかく軍事力を保持できる新しい軍事理論を探せということになるんですよ。それでいろいろやって、これは細かな地域紛争やなんかがいっぱい起きるということになると、巨大なハイテク兵器は要らなくなるでしょう。そういう敵じゃだめなんですよ。いろんなあちこち地域紛争や宗教紛争やそんなのがいっぱい起きるからというのじゃだめなんで、どうしても核兵器を含む軍事力を持ち続ける理論が必要なので、それで見つかったのがイラク、北朝鮮などでね。そういう覇権主義的な小国家が核兵器を持とうとしていると。ソ連が持っているよりもこういうごろつき国家が持つのはもっと危ないというんだ。ソ連はまだ合理主義があって、アメリカの核報復を考えてやめるというわけで、抑止が可能だと。ごろつき国家というのは抑止がきかない、何をやるかわからぬ。だからアメリカの文献では、ソ連よりもっと危ないということをいろいろ言い始めているんですね。  ここに一番新しい国防報告、九六年度アメリカ国防報告。これに国防長官メッセージというのが冒頭ついている。いつも四、五ページのもので、今度は十ページで長いメッセージをペリー国防長官がつけている。この冒頭はこうなっているんですよね。最も脅威的な危険は去った。しかし、それらの危険は新しい危険に取ってかわっている。冷戦の時期、我々は核のホロコーストの脅威に直面した。今日、我々は大量破壊兵器の拡散に伴う危険に直面している。核兵器がならず者の国家やテロリストの手に渡れば、冷戦の時期の核大国と違って、彼らは報復の威嚇によって抑止されないかもしれない。特に危険である。ソ連より危険だというんですよ、ならず者国家が持つとね。  だから、こういう珍理論、僕はあえて珍理論と言いますけれどもね、そういう珍理論をでっち上げて、それがこうやって国防報告かなんかで全部出てくるんですから、公式戦略なんですよ。九三年九月に出たボトムアップ・レビュー、アメリカの戦力構造の徹底見直し、あれ以後これが正式に採用されまして、全部出てきますよ、これはもう。ローグステーツというんだけれども、ならず者国家というのがね。  ずっとこれでつくり上げられて、それでしかも核兵器をならず者国家が持ったら危ないからこれを抑えるのが要るというんで、核拡散対抗構想というのを国防総省が発表して、私は国会でも取り上げたんだけれども、二年前の朝鮮のときにはアメリカの議会事務局は八つの選択肢を選んで、その最後は核兵器使用でしたからね。核拡散防止するのに核兵器使うというところまで言い出しているわけだから。そういう非常に危険なごろつき理論と核拡散対抗構想なるものでアメリカがやり始めているというのは非常に危険ですよ。ちょっと頭が変になっていると思うんだよ、僕は。  だから、哲学なしには軍備もつくれないんで、そういう理論と哲学を彼らは採用し始めたんだけれども、そういう理論に価値観を共有しているといったって日本がそのまま乗ることが非常に危険なんですよ。乗って、今度は日本の自衛隊が出てくるんですから。日本の自衛隊、今まで日本領土内でしか動かなかったんだけれども、今度はアジア太平洋地域で動くんですからね。これは、あれだけの侵略をやった国、まだ正式のきっちり反省もしないでいる国に対して、責任とっていない国に対して、いよいよ外に出ていくということでアジアの小国が、中国だけじゃなくて、韓国やらフィリピンやらインドネシアやらいろんな国が警戒心上げているのは当然なんで、こういう警戒心をなくすような道を我々が選ぶことが大事だ、そう思います。
  14. 永野茂門

    永野茂門君 かなり暴論を言われましたけれども,ASEAN諸国を歴訪してみて、何を怖がっているか、中国を怖がっていますね、中国を。日米安保を強化することについて私は、強化するというのはあれですけれども、確実なものにするためにちゃんと我々はやりますよということを、ことしになってもタイだとかあるいはミャンマーだとかその付近で最高首脳であるとか軍事首脳と話してみましたけれども、それはもう非常に大事なことだと、こう言いましたよ。  それから、ある国で米国の事前集積船の配置を拒否しているところがあるんですね。なぜ拒否するのだと、非常に大事じゃないかと。特にペルシャ湾周辺に何かあった場合に利用できるような地域にそういうものを配置するのは大事じゃないか。我々もその石油の問題があるからアメリカにそういう力をかしてあげるというのは非常に大事だと思うがと、こう話しますと、いや、そういうことをやると隣の国が怖い、これは本音ですよね。そういう話が出るほどでありまして、大変にやっぱり中国を警戒している。日本に対しては何も警戒していません。日米安保についても、今申し上げましたようなことで、日米安保が本当に機能するということについて警戒している向きは、最近新聞でまたちょっと中国の人民日報みたいなのが出ましたものですから、それに呼応したような記事が若干はありましたけれども、本質的なものは私はないと思います。  特に、人民日報が日米挙げて攻撃的な色彩を強くしてきたというのは、これまた全く間違っておると思いますし、我々は、日本がそういう力をようやく持ってきたということ、日米協力して本当にイコールパートナーとして世界のいろんな問題に軍事力だけじゃなくて、軍事力はその一部でありますけれども、大きく貢献できるような状態になったから、今のように日米安保の再確認といいますか、ある意味強化、そういうことに移っていったんであって、日米が共同して経済的な覇権を唱えようとか、そういう野望は全くない。  我々は、我々と価値観であるとかあるいはそれぞれの国益が一致する国と手を握ってやるのは当たり前のことであって、そしてまたそれが世界の平和と安定と、特に世界の発展の基盤をつくるために極めて重要な力を持っていると。周辺にそういう力を持っている国はないわけでして、我々はせっかくそういう力を持っている以上、両国が力を合わせてそういうことができるようにするのは当然なことだと、こう思います。
  15. 田村秀昭

    田村秀昭君 上田先生に簡潔に御質問させていただきます。  今先生もおっしゃったように、アメリカ覇権主義でひどいと、そういうのに乗っかっていく日米関係もまずい、中国を刺激すると、それはよくわかりました。その上に立って我が国の安全はどういうふうに保障するのか、簡潔にお答え願いたいと思います。
  16. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 日本の安全は、アジアから軍事同盟をなくして地域的な集団安全保障体制をつくると。集団安全保障体制というのは、この前も言いましたけれども、国連がつくられるときに考えたもので、国連というのはやっぱり二回の世界大戦の教訓から軍事同盟の体系をなくそうと、仮想敵を持つ軍事同盟はつくらないで、すべての国の入った安全保障体制をと考えたわけですね。だから、国連全体が集団安全保障体制になって、第七章で各国から軍を出して国連軍をつくって、侵略があったら国連そのものがそれを共同で抑えるという仕組みになったわけですね。  第八章の地域取り決めの中には地域的なそういう安全保障体制のことも予想されておりまして、地域的な安全保障体制は安保理事会の承認のもとにやるということなんで、だから、我々が軍事同盟のない世界ということを言っているのは何も共産党の特殊な意見じゃなくて、国連憲章をつくったときは世界各国の共同の目標だったんですね。今でも国連憲章はその方向を望んでいるわけなんで、だから我々は国連憲章が目指す軍事同盟のない集団安全保障体制を全地球的にも、また地域的にもつくるべきで、だから日本としては、まず軍事同盟のない世界を目指すためには日本も安保条約をなくすと。これは安保条約の中でも廃棄できるようになっている。
  17. 田村秀昭

    田村秀昭君 わかりました。
  18. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ちょっと待ってください。アメリカとは日米の平和友好条約を結ぶと。安保条約なくして日本は非同盟諸国首脳会議に入って、非同盟諸国首脳会議は核兵器のない、軍事同盟のない、それから南北問題を解決する方向を目指していますので、そこへ参加して非軍事的な努力で世界の平和と世界経済発展、文化的発展のために努力するということが我々が考えている安全保障の形です。
  19. 田村秀昭

    田村秀昭君 中国台湾、朝鮮南北がテーブルに着かない現状において、どういうふうにして何年後に先生のおっしゃっているそういうものができ上がるのか、ちょっと御示唆を願いたいと思います。
  20. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 何年後というか、だから日本がまずそういうことを実行すべきなんですよ。例えばフィリピンは数年前にアメリカとの間の軍事基地協定を上院が廃棄した。時代錯誤だというので廃棄したんですね。それで、フィリピンは非同盟諸国首脳会議に参加しましたけれども、スービック基地、クラーク基地は今や経済発展の特別な地域として非常に大きな役割を果たしていて、フィリピンがアメリカと軍事基地提供をやめても、何もアジアに危険なことは一つも起きませんでしたよね。  日本としては、みずからそういう軍事同盟のない世界を目指しながら、今おっしゃった北朝鮮の問題あるいは台湾の問題についても平和的解決のために日本として当然努力すべきだ、そう思います。
  21. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) ちょっともう第三の項目に入ったようですから、順を追ってやらせていただきましょう。  それでは、アジア太平洋地域情勢認識につきましてはこの程度といたしまして、次にアジア太平洋地域の平和と安定のための方途について自由討議を行います。  まず、各会派から順次御意見を伺いたいと存じます。
  22. 山本一太

    山本一太君 大変広い多様なテーマで、ちょっと五分以内で意見を申し上げるというのは大変難しいわけなんですけれども。アジア太平洋地域の平和と安定、そして人口、食糧、環境、諸問題への対処や、あるいは多国間協力、取り組み等についての日本の対応ということを考えると、やっぱり幾つか明確な柱がある気がいたします。  先ほどからもいろいろ議論が出ているところですけれども、まず地域協力という点からいけば、やはり最初に日本が十分に活用していかなければいけないのはAPECであろうというふうに思います。地域経済相互依存を高めるということが安全保障強化するということにつながるという観点に立って、やはり日本としてはこのAPECを使って地域経済発展を促進し、そして貿易拡大に貢献をしていくという点がまず一つあるのかなという感じがします。  また、これに関連して、先般ASEMというイニシアチブを打ち出して、日米欧三極から資本や技術を集積するというまさに体制をとりつつあるASEANですね、このASEANの重要性を十分に認識した上で、特に安全保障についてはARF等の枠組みに積極的に参加、協力をしていくというのがこれがやっぱり第一の柱かなという気がいたします。  二番目なんですけれども、これは上田先生とちょっと意見が違いますが、先ほど馳委員や直嶋委員の方からもありましたけれども、やはりこの地域にはまだいろいろと潜在的な火種があると。特に、数日前のニューヨーク・タイムズにも出ましたけれども、中国が大変なエネルギー危機を迎えている中で、十年以内に日米韓の間でエネルギー問題をめぐって大きな紛争があるんじゃないかという話も、尖閣列島のいろんな事件なんかも踏まえてそんな記事も出た関係もありますし、また北朝鮮要素も依然として不安定。こういう中で集団的な保障体制というその枠組みがないということであれば、やはりその基本になるのは日米安全保障条約、これを堅持していくということがアジア太平洋の安全保障のかなめだというふうに私は確信をしておるわけでございます。  また、この地域は文化的にも社会的にも非常に多様な場所であるということを踏まえれば、こうした多国間の協力という切り口に加えて、やはり二国間の関係についてももちろん重視をしていかなければいけない。アメリカそしてこの地域の大きなキー、ファクターである中国はもとより、私は韓国との関係をより緊密にしていかなければいけない、このように思っています。特に、北朝鮮の問題については、やっぱり本当意味韓国と信頼醸成をしながら共同のイニシアチブをいろんな形で打ち出していくというのがあるべき姿ではないかというのが私の意見です。  四つ目ですけれども、人口、食糧、環境、エネルギー等の分野ですね。これについてはいわゆる二国間、バイのアスペクトだけでなく、やっぱりマルチ、国際機関とか多国間協力の枠を通じてより積極的に貢献をしていくべきだと思います。また、開発協力というのもあるわけですけれども、これはやはり経済援助という狭いコンセプトではなくて、最近よく言われますけれども総合的安全保障、すなわち軍事面だけでなく、経済、社会、まさしく人間の安全保障というような新しいコンセプトも出ているんですけれども、そういう観点に立ってやはり日本はこの地域での開発協力を進めていかなければいけないんじゃないかという感じがいたします。  私も、ODAに随分長くかかわりまして、国連機関にも勤めたわけですけれども、ODAについては使い方の問題もありますし、またシステムの問題もありますけれども、それよりも何よりも、やはりこの地域の国々との信頼醸成をきちっとすることが先だなという気がいたしました。日本に来た研修員、留学生、こうした人たちが親日になって帰るというシステムをつくらなければいけませんし、その意味では地方自治体、民間、経済界、そして議員も含めた人的な交流を本当意味でやっぱりふやしていかなければいけないんじゃないか。私が前々から言っているように本当意味の議員交流を進めていく必要があるというふうに思います。  この程度ですけれども、最後に一つつけ加えるならば、政治経済安全保障の面だけでなく、環境についても、またエネルギーについても、中国、やはりこのファクターが非常に大きな位置を占めているなということを改めて思っています。以上です。
  23. 永野茂門

    永野茂門君 山本先生がおっしゃったのと大変に重複いたしますけれども、自由化民主化された国が戦いを起こすというか、紛争を起こすことはほとんどないですね、歴史的に見て。何らかの形で独裁的な国であるというところがほとんど戦争を起こしているわけでして、かつて帝国主義時代と言われた帝国はそういうことであったわけであります。そういう意味で、各国の民主化自由化を支援していくということが、アジアの安定、平和、あるいは太平洋地域を含めて非常に大事なことである。そういう政治的なことあるいは社会的なことを含めて、その中核になるのはやっぱり経済支援あるいは経済協力あるいは貿易拡大、そういうことであろうと思います。  その中にもちろん技術的な支援も含まれなきゃいけないし、それから環境対策でありますとか、社会対策でありますとか、あるいはもっと広くエイズ対策等を含む衛生問題も含まれるでありましょうし、これは社会対策の問題にも入るわけですが、テロ対策等、エネルギーも含めまして、そういうものについてお互いに十分調整しながら各国がそれぞれ発展していくような、お互いの協力をやっていくということは基本であろうと、こう思います。  そのための事の進め方というのは、二国間でやっていくのが中核になりますけれども、バイだけでなくてマルチでいろいろなシステムをつくって、今お話が出ましたようなASEMでありますとかAPECでありますとか、そういうシステムを活用しながらやっていく。その中で、軍事問題については、特に信頼醸成でありますとか、紛争防止でありますとか、そういうものをしっかりとやっていけるようにするということが極めて大事であり、そのためには対話だけでなくて査察がお互いにできるようなシステムを、これはヨーロッパはそういうふうにやっているわけでありまして、いろんな人事交流だけではなくて、それを通じてまた特別に、オープンスカイズはまだ実質的にはできていないようでありますけれども、とにかくいろんなことがお互いに査察できるようなシステムを、少なくともヨーロッパレベル以上にはつくらなきゃいけない、こう思います。  それから、人的交流でプロジャパンをつくり上げるというのは、これは私は非常に大事なことだと思います。私自身が若いころプロアメリカンに育てられてしまったわけですが、それだけ効果のあることはできると思いますので、留学生等をどういうように扱うかということは、これは非常に細かいことですけれども工夫すべき事柄であるということをつけ加えておきます。  さらに私は、いろんな国がいろんな勝手なことをやることについては、やっぱりその都度それはいけないんだということをはっきり日本は、今言ったようないろんな援助政策、協力政策の中でそれを適切に調節することによって意思表示することを含めて、毅然としてやらなきゃいけないと思うんですね。  私、今一番心配しておりますのは、中国がそういうことになってもらっちゃ困るわけですが、またそういうことになると決して断定するわけじゃありませんけれども、ほっておくと覇権主義を追求する。もう次から次に一方的にやってきて、アメリカもこのごろ少し甘くなっていますけれども、不都合な覇権主義につながるような芽をそのままほっておくということは非常に将来にとっては悪い。全体として協力し仲よくやっていくということは非常に大事なことでありますけれども、そういうところはぴしっとやらないと、だんだんと覇権国覇権国になっていく、あるいはかつて覇権国であった国はそういうことになりやすいということを注意しなきゃならないと思います。  それから、上田先生がおっしゃった、アジアの適当な地域に、かなり広くとってもいいし狭くとっても、それはいろいろ工夫の仕方はあると思いますが、地域的集団安全保障体制をつくると。小国連ですね。私は、考え方としては、将来はそういうことに進むのがいいということには賛成です。  ただ、今いろんなまだ難しい問題をはらんだままでありますので、そこまでいく前の信頼醸成とか、今申し上げましたような紛争防止策とか、そういうことをお互いにフォーラム等で話し合いながらやっていくと、そういう段階で、将来、集団安保体制状態に持っていくということを重要な選択肢として頭の中に置いておくことはいいことだと私は思います。  以上です。
  24. 萱野茂

    ○萱野茂君 アジア太平洋地域の平和と安定のための方途についての意見であります。  安全保障、なかんずく総合安全保障が狭い意味での防衛戦略でないことは共通の理解になっている、このことは私も否定しません。ただ、最近の安全保障論議のあり方について、二、三、感想を申し上げながら、アジア太平洋地域の平和と安定のための方途について私の意見とします。  第一は、最近の安全保障論議が、本来の総合安全保障論議から離れて、有事を想定するとか、集団安全保障であるとか、そのような軍事戦略方向に突出して議論されていることについてであります。政治の場でもマスコミの場でも、突出した議論とかニュースとして扇動的にそして一過性に扱われるとするなら、日本において本来あるべき議論、あるべき方向とはかけ離れたところで世界の人たちに印象づけられることにならないか、このことを危惧しています。したがって、より持続的に時間をかけた討議を心がけることが国際社会への波及をも考慮する立場ではないかと思っています。  第二には、最近のこの調査会で元政府高官が、集団自衛権を認めていながら集団自衛権を行使できないとすることは論理矛盾であるという意見を述べられました。論理的には一見明快であります。しかし、この論理は、武力の保持は否定されていない、したがって武力の行使も否定しない、核の傘のもとにおける安全を確保しているのだから核の行使は当然であるとの論理と変わらないのではないでしょうか。外務省の元高官はかつて現役時代矛盾を犯していたのか否か私は知りませんが、日本の防衛論や外交政策はそもそもたくさんの矛盾を抱え込んでいたのではないでしょうか。  しかし、私は思います。明快な論理によって外交を律してこなかったことは、それは東洋人的気質だけではなく、明快な論理に徹することのできない日本国有の事情があったのではないでしょうか。それは、そもそも我が国がどんなに背伸びをしても小国であること、とりわけあらゆる資源を他国に依存している状況、そして一九四五年の敗戦、なかんずく米国の支配体制の中で繁栄を築いてきたというこの事実から抜け出せずにいるという矛盾であります。しかし、それは自己矛盾であると同時に、それが我が国が果たすべき役割の原点であるのかもしれません。すなわち、我が国は平和だから生きていけるのではなく、平和でなければ生きていないからであります。であるとすれば、いま一度我が国が植民地支配を始めた時代に立ち返ってみることが大切ではないでしょうか。  非常に具体的な例を申し上げます。アジアにおいて今最も紛争可能性のある地域として朝鮮半島台湾海峡状況が論じられています。しかし、この二つの地域はいずれもかつて日本が植民地支配をしていた地域であります。このことは、国際法の観点からすれば直接的には我が国責任を問われることではないのかもしれません。しかし、歴史日本が支配していなければ変わっていたのかもしれません。  分断化、多様化が普通の時代にあって、普通の価値観を見出すために、いま一度敗戦の意味と憲法の理念に立ち返って議論することが必要であり、それが紛争を未然に防止するという安全保障の原点であると思っています。その上に立って開発協力、難民支援、災害援助など、本来あるべき総合安全保障について議論されることを申し上げ、私の意見といたします。  どうもありがとうございました。
  25. 笠井亮

    ○笠井亮君 日本共産党の笠井亮です。  アジア太平洋地域において現在地域安全保障の枠組みがないもとで、本調査会の議論の中でも、それを目指すということでARFのような多国間の安保協議の枠組みを評価する意見、この中で、それを二国間の同盟にかえることはできないとして、米国を中心とする二国間の確固たる同盟関係とそれを補完する意味での多国間の安保のつながりを考えるべきだとの意見も出されたと思います。  私は、こうした枠組みが、真の意味でのアジア太平洋の平和と安定を目指す方向、すなわち、先ほどもありましたけれども、国連憲章の根本精神にある、軍事ブロックを否定し体制の違いを超えた集団安全保障体制の確立を打ち出した方向とは異質なものであるというふうに考えます。  本調査会では、特にARFをめぐって活発な議論があったと思いますが、私はこの枠組みを米国がどう位置づけているかを明確に押さえることが重要だと思います。その点で、在日オーストラリア大使館付の武官のマクダーモット氏が「新防衛論集」の中で、アメリカ東アジア戦略が示した方向について、「米国は発足したばかりのARFという機構を強化し、APEC共同体の中での安全保障対話を設け、また、日米安全保障条約による基盤をもとに強固な地域軍事同盟構築を望んでいる。」というふうに端的に述べております。まさにアメリカは、ARFを利用した多国間安保協議が伝統的な二国間の同盟関係を補完するものと位置づけております。  ナイ前国防次官補が述べたように、アメリカが考えているのは、NATOのように強固な日米安保関係とOSCEのような幅広い多国間協議体であることは明確だと思います。つまり、日米安保条約をNATOのように集団的自衛権を持った本格的な軍事同盟にして、それを中心に多国間の協議体をつくろうというのがねらいにほかならないというふうに見るわけであります。調査会の中でも、参考人の中からも、アメリカの戦略は国益中心主義で自国益と地球益を同一視している、対アジア太平洋地域戦略の中心要素を二国間同盟協力体制に置き、それが同地域の対立的構造を固定化させているとの指摘があったことに注目すべきだと思うわけであります。このような力による覇権主義に基づく軍事同盟体制中心に据えることは、多様性を持つアジア太平洋諸国民族自決権と経済の自律的発展、南北問題の真の解決を妨げて、力で抑え込んで支配しようとするものであります。  また、アメリカは依然最強の核戦力を保持し、東南アジア非核地帯条約についても、核兵器の通過、寄港の確保をねらい、見直しを迫っておりまして、必要ならいつでもこの地域に核兵器を持ち込む危険があることも明らかになりました。アメリカの軍事プレゼンスは、こういうふうにして見てみますと、アジア太平洋地域の安定要因どころか不安定要因そのものであると見るべきだと思います。  先ほど上田委員も述べましたけれども、軍事同盟も核兵器もなくし、すべての国々が対等、平等の立場に立った真の集団安全保障体制をつくることこそアジア太平洋の平和と安定への道ではないかと思います。この地域にその可能性はあるんではないかと考えます。そのためにもまず日本が、憲法の平和原則の立場からその先頭に立って、非軍事の分野、つまり経済、文化、技術の問題などなどによって南北問題の解決や飢餓、教育、医療などの分野でこそ本当に貢献をしていくべきだというふうに考えています。  以上です。
  26. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) 以上で意見の表明は終わりました。  これより意見交換を行います。発言を希望される方は挙手をお願いいたします。
  27. 永野茂門

    永野茂門君 私は私の発言を補足しておきたいと思います。  集団安全保障体制を将来つくることに賛成である。これはその言葉はそのとおりでありますが、まだ当分の間、日米あるいは米韓等の二国間条約を中心にしてやらなきゃいけないだろうし、それから特にその間において、日米という非常に力を持っている、日本は軍事的には力を持っていませんけれどもいろんな意味で力を持っているわけでありますから、そういう力を持っている国が力を合わせて中核になってアジア太平洋地域の安全の基盤をつくっていくということは、やはり中核として当分の間維持していくのが当然だと思います。集団安保体制に持っていくためには、もっともっといろんな体制がちゃんとするまではなかなか難しいんじゃないかということをつけ加えておきたいと思います。
  28. 高橋令則

    ○高橋令則君 ちょっとそれるかもしれませんが、少し別な角度から申し上げてみたいと思います。  私は、この安全保障問題、特にアジア太平洋地域全体の安全保障問題にはハードとソフト、あえて言えばそういうふうな仕組みがあるのかなと思っております。  ハードの方は軍事面というふうに言って、私はそう見たいわけですけれども、そっちの方の必要性あるいは仕組みといったものについては、私の意見田村委員それから永野委員意見と余り違いません。ただ、ソフトの面について私は特に強調したいんですけれども、我が国アジアの平和と安定に貢献していくためには、アジアの人たちに、我が国我が国民、我々自身をもっと理解をしていただく必要があるのかなと、そういう努力をもっともっとすべきではないのかなと思います。率直に言って、私は、ある外交官から、大分前ですけれども、残念ながら日本人は国際社会で余り尊敬されていない、アジアで最も尊敬されていない民族がほかにいるけれども、それは名前は言いません、おわかりだと思いますが、その次が日本人じゃないかということを言われてびっくりしたことがあります。  かつて、私の郷土出身の学者、新渡戸稲造がいるわけですけれども、国際連盟の次長をしました。「武士道」というものを書いたんですね。彼は、「武士道」を書く理由といったものは、日本社会、日本人の意識構造、文化といったものを理解させるためにああいう本を書いたわけですけれども、彼がその中で書いた日本の文化、武士道にあらわされる恥を中心とする日本人の意識といったものは、当時アメリカに非常に理解をされて、それなりの尊敬というんですか、彼の意図は達せられたんですけれども、残念ながら、そういうふうに新渡戸稲造がいわゆる国際社会に向かって発信した、尊敬されるべき、あるいは敬愛されるべき日本人の文化、意識構造といったものは今や失われてきているのではないだろうかと。  私は、武士道の文化が全部いいとは言いませんけれども、その流れをくむもの、そして大事な、他の国民に尊敬される国民づくりというんですか、そういう文化の面といったものに我々はもっと目を向けて取り組んでいくべきではないかなというふうに思っております。  短期的に言えば、アジア地域の青年子女といったものをもっと我が国に呼んで、そして留学生にきちんとした待遇をして、そして本当意味我が国のよさといったものをわかってもらえるような努力をもっとすべきだと。少なくとも我が国に来て勉強し、働いた留学生が帰って、日本て嫌な国だなというふうなことを思う人が多いという現状を何とかして改善をすべきだと思うんです。  それからもう一つは、海外青年協力隊のような、我が国の有能な、しかも活力のある青年がアジア地域に出ていって、そしてその地域で汗を流して、日本人というのはいい人間だな、いい民族だな、いい国民だなというふうなことを現地の人たちに見せる。現地、人のために汗をかくということをもっと示すような、そういうことをもっと大がかりに国家的にも支援をして、そして取り組んでいきたいものだなと。海外青年協力隊に行った者が帰ってきて職探しに困るという現状は、我々はこれは非常に残念なことではないかなと。私もかつて地元にいたときにはそういったことに携わっておりましたけれども、現実にそうなんですね。どちらについても、残念ながら日本人、我が国我が国民全体としてそういうことについての理解が十分だというふうに私は言えないのが現状ではないかと思うんです。  そういう意味の文化というか、意識構造の面、そういった面の改革、そういうものに取り組むのがこの二番目の最も根底、いわゆる底にあるものじゃないかなというふうな感じがいたします。  終わります。
  29. 馳浩

    馳浩君 アジア太平洋地域の平和と安定のためのということですけれども、やはり思想、政治体制がこれだけ正反対、違う国家がこの地域存在する以上は、私は、まず日米安全保障条約を破棄するという考え方は提言と言わざるを得ないという考えです。  と同時に、私は、ならばということでルールが一つ、この地域の国々が思想、経済政治体制が違っていようとも何かルールを共通して持つことができる部分について取り組む必要があると私は考えます。その点に関して、私は、エネルギーと人材交流という点で、非常に今後の一つ方向ではないかと考えます。  文部省が行っております国費を活用した留学生の交流で、受け入れるのはASEANあるいは中国等のアジア諸国がほとんどですけれども、日本の高校生、大学生等の留学先というのは、アメリカ、カナダ、フランス、イギリス、ドイツ等、欧米の諸国がほとんどで、どうも我々日本人の目がアジアに向いていないということで一つこれは大きな欠点があると思います。そういった国費を活用した留学生の交流制度においても、私たちは、ASEAN諸国を初めとする中国韓国、私はそこに北朝鮮も含めたいんですけれども、近隣諸国に対して若者たちを派遣するということは重要であろうかと思います。  と同時に、ASEAN諸国の大使からも要請が多くありましたけれども、高等職業教育といったもので、こう言うとあれかもしれませんが、日本にある知的財産というものを、やはり留学生を受け入れることによって、技術を習得してもらい、かの国に帰っていただいて、そういう知的財産がアジア太平洋地域で共有されるという体制は、これは長期的な観点として必要ではなかろうかというふうに考えます。  もう一つエネルギー問題ですけれども、萱野委員の指摘にありましたように、やはり日本は小国であるということを自覚し、それから、資源を依存しているということを自覚した上で、例えば中国におけるタリム盆地、あるいは中央アジアにおけるトルクメニスタン、あるいはロシアにおけるサハリンやシベリアの大地からも石油あるいは天然ガスの供給を確保するということが必要になってくると思います。  そういう意味では、今、例えば天然ガスのパイプライン等を国境を越えて敷設するということであるとか、これはもちろん環境問題と絡みますけれども、中国の石炭あるいは石油等の消費量が多くなっている、これからも一人当たりの消費量が多くなる段階で、供給において環境に優しいエネルギーをいかに供給できるかということ、これはある意味アメリカも含めて取り組んでいく必要があるのではないかという、そういう私の意見です。  以上です。
  30. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 ちょっと二点申し上げたいと思うんですけれども、私も、きょうはアジア太平洋地域における安全保障ということなんですが、さっきちょっとお話に出ました、いわゆる集団安全保障というのは確かに理想の姿ではないかなというふうに思います。  ただ、現実には、これは先ほど来お話ありますように、政治及び文化的な違いとか、あるいは歴史的な経過を踏まえて、やはりまだまだその時期は熟していない。したがって、今、本当日本がこの地域の平和と安定に貢献していく上では、やはり日米安保条約というのは不可欠であるというふうに認識をいたしております。  特に、さっきもちょっとお話がございましたけれども、やはりこのアジア地域安全保障を考えた場合に、日本、米国、中国、この三つの国がどういう行動をするか、これが非常に大きな影響を持つというふうに思うわけであります。  そういう観点から考えたときに、やはり日本本当に、先ほど来出ていますように総合安全保障という観点に立って、先ほどのお言葉をかりればソフトということになるのかもしれませんが、そういう面で貢献をしていく上でもやはり日米安保体制というのが前提になるんではないかと。  先般のちょうど台湾総統選挙の前に中国が威嚇をいたしましたが、これに対して公然と抗議した国は、抗議の強弱はありますが、アメリカ日本とたしかカナダとオーストラリア、この四カ国でありまして、それ以外のアジアの国は沈黙を守ったわけであります。これは何を意味するかというと、決して中国の行為を肯定したわけじゃないと思うんですね。やはり先ほどお話ありましたように、抗議をすることによるリアクションを恐れているというふうに受け取るべきではないかと。そうすると本当にこの地域が伸び伸びと平和であり続けるためには、今は私はやはりアメリカのプレゼンスというのは不可欠だと。したがいまして、将来、集団安全保障に持っていくために、まず日米安保条約を廃棄せよというのは全く順序としては逆であると、このように思うわけであります。  それでもう一点、これはぜひ皆さん方の議論をいただくということで、ちょっと申し上げたいんでありますけれども、先ほど来この地域の平和と安定のために日本が、例えば経済援助の問題なんかも出ています。  ただ、私はここで念頭に置いておかなければいけないことは、日本経済援助というのはこれからの日本の社会を考えたときには、例えば国の財政でさまざまなことを行うということについて考えますと、大変制約を受けてくるんではないかと。御承知のような財政状況でありますし、日本の社会は高齢化をしていくわけでありまして、国内的に相当な財政需要が出てくる。その中できちっと対外的な貢献をしていくためには、もちろん一般国民に対してその必要性というのをより理解していただかなければこういうことは続けられないだろうと。  それから、果たして経済体力的にどんどんこれからも対外援助をふやしていくことは可能かということを考えますと、やはりおのずから限界点があるんではないか、ちょっと短絡的に考えますとそういうふうに思うわけであります。  そうした場合に、じゃどうすべきかということでありますが、私はやっぱり日本の社会を変えていく、例えばさっき留学生の問題が出ていましたが、日本で卒業しても、特に文科系の場合に例えば博士論文をとるのに大変苦労するとか、あるいは日本でいろいろ仕事をしてもプロモートの面でうまくいかないとか、要するに日本のこの社会に対する外国からの一種の入りづらさみたいなものがあると思うんですね。  それは、これからのさまざまな日本国内の繁栄を維持していくためにも、やはり国際化ということは不可避だと思うわけでありますけれども、そういう面で考えますと、やはり外国からも投資をしてもらえる、日本からももちろん外国に投資をするけれども、外国からも投資をしてもらえる。あるいは海外から来た人が日本でやる気を持って働ける、あるいはその力を発揮できる。やはり、そういう社会構造を見直していくといいますか、こういう日本の努力が必要じゃないのかなと。  さっきプロジャパンのお話がございましたけれども、そういう観点で見たとき、残念ながら日本はまだ非常に課題が多いんではないか。世の中がだんだんシビアになってくればくるほどこういう問題というのは対処しづらいわけでありますが、私の見る限りで申し上げますと、例えば民間企業はかなり今私が申し上げたような方向に進んでいるんではないかと思うんですね、方向としては。  しかし、日本のいわゆる官僚制度含めて、公的な部門であるとか、あるいは地域等にそういう面でのまだ具体的なこの前進の芽というのが見えてきていないんではないかなと、こういうふうに思うわけであります。そういう社会になって本当意味での国際化ができるんであって、かつ、それがやはりこの地域の他国の人たちとの意思疎通をより、あるいは利害を共有していくという面でも大きな貢献をしてくるんではないかと、こんなことを感じている次第でございます。
  31. 岡野裕

    ○岡野裕君 私は、御質問でありますが、長いこと国際問題、外交、防衛やってこられた上田耕一郎先輩と、それから永野先生と、お二方にお尋ねをしたいのであります。  永野先生おっしゃいましたが、およそ平和的な自由主義国家というものは侵略戦争はやらないというお話でありますが、私は、あえてベトナム戦争は、事を起こしたアメリカが自由主義、平和主義国家でないわけではないと、こう思っております。これはどういうふうに先生の理念からすると解釈したらよろしいのか、アメリカのハイチあたりについてはどういうふうになるのか、韓国の竹島侵略についてはどういうふうになるのか、などという面からお尋ねをしてみたいと。  同時に、上田耕一郎先生に伺いたいのは、この間、私、岡崎さんにこの同じ竹島のお話を質問としていたしましたけれども、合点がいくようなお答えがありませんでした。というのは、この竹島については明らかに日本領土だと、いや韓国からするならば、これは独島でおれの領土だと、長い間争いが観念上はあったけれども、実力行使的にこの岸辺に永久的な構造物を構築するというような行為は初めてだと思うのですね。これやはり外交摩擦が起こらないように我々としてはせいぜい外交関係で漁業権でも確保できればいいというような感触が岡崎さんのお話のようであります。  それじゃ、侵略されてもこのまま容認するならば、尖閣諸島はどうなるのか、あるいは北方四島はもう五十年侵略されて返せ返せ返せと言っているんだけれども、いささかも返さないというような状態の中から、竹島あるいは尖閣列島を黙視するというような場合には、ロシアとしてはそんなもの返す必要があるか、五十年の実績だと。今侵略しつつある竹島あたりも拱手傍観をするということであれば、もう北方四島なんか返ってこないのが当たり前だというような観念になっちゃうだろうし、それは西沙南沙に対する中国の侵略、これあたりについても、はてさてどんなふうになるかな、非常に何というのですか、先輩にお尋ね、二点。
  32. 永野茂門

    永野茂門君 アメリカがいろんなことをやった、それについて、典型的な自由主義国家であり、民主主義体制を持っている国であるにもかかわらず、そういうことをやったじゃないかと、それどう思うかと。  まず一つは、先ほど申し上げましたように、ベトナム戦争については大変にアメリカ自身が反省をしているわけですね。ハイチの問題だとか、その他の問題はちょっとわかりませんけれども、どこの国も過ちは犯すということはあると、こう理解する以外にないでしょう。それで、日本も過ちを犯したかもしれませんからね。  竹島の問題ですけれども、これは、韓国はまさにそう思っているんじゃないでしょうか。しかも、都合よくまだ日本が占領されていた時代に早く既成事実をつくってしまったんで実効支配していると。住民が住んでいるわけでありませんから厳密に実効支配しているとは言えないかもしれませんけれども、我々が何も手が届かない時代にみずから信ずるところで。だから韓国はあれは悪いことをやったとは思っていないと思いますね。日本日本の主張は正しいと思っているわけでありますけれども。したがって、韓国が間違っておるというのは、韓国の立場に立てばそうは言えないんだろうと思うんです。  私は韓国のやっていることを認めるということじゃありませんよ。ありませんけれども、韓国の立場ではそうだということだと思うんです。
  33. 岡野裕

    ○岡野裕君 諸先生のお話は非常にきれいなお話が出ておりますけれども、具体的に足に火がついた問題については、これは国際問題という広い見地の中から三年がかりでひとつ大きな結論を出そうという場で論議するにはふさわしくないかもしれません。
  34. 永野茂門

    永野茂門君 ついでに申し上げますが、きのう私は本件について内閣委員会で梶山官房長官に御意見、御見解を強要したわけでありますけれども、そして、私が提案したのは、とにかく協議機関をつくって白紙に戻すように努力しなきゃいけないんじゃないか、そこから調整をやり始めるのがいいんじゃないかと言ったら、両方の意見が全然合いませんので協議機関は意味ありませんと、こういう御回答でございましたことを御参考までに。
  35. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 領土問題、非常に複雑なんですけれども、やっぱり平和的解決、これを原則にしたいと思うんです。  竹島問題については、日本共産党はこれは、日本領有権を公表したときにどこの国からも異論が出なかったということで、日本領土だという見解を発表しました。ただその際、まだ日韓併合の前だけれどもいろいろ複雑な問題もあるのでなお研究したいということもっけてあったんですが、当時、日韓併合の前だけれども日本が外交権を奪っていた時期に当たりますので、竹島問題は文献も含めてなお研究中なんです。  それから、千島問題については、これは一つはやっぱりルーズベルトに非常に大きな責任があるんですね。戦争中、ルーズベルトはスターリンに会ったときに、千島はソ連に渡すと、それから彼は蒋介石に沖縄を渡そうということもしたことがありまして、だから、太平洋憲章やカイロ宣言に反して千島はソ連に、沖縄は蒋介石がそれを断ったものでアメリカがとるということを実は第二次対戦中にほぼ決めていたんですね。そのことによって沖縄は事実上占領され、千島はヤルタ協定でソ連に渡されるということがありまして、ともに僕は国際法違反で不当だと思うんですね。  我々としては、千島列島全体が平和的に日本のものになったので、武力でとったものじゃありませんので、自民党と違って、択捉、国後だけじゃなくて全千島を日本に返還すべきだと。そのためには、サンフランシスコ条約の二条(C)項のあの領有権放棄条項、これを破棄しないと国際的に話が通らない。あのときのサンフランシスコ講和会議で吉田全権は択捉、国後も全部千島だと言っておきながら、後で択捉、国後は千島じゃないんだということを言って返還要求するのはこれは国際法上も通らないので、むしろ真っ正面から二条(C)項を廃棄して全千島を日本に返すべきだという行動を名実ともにとるべきだ、そう思っております。
  36. 岡野裕

    ○岡野裕君 上田先生、だんだん論点が別の方へ行っちゃっているんですな。  竹島問題とか尖閣列島の問題についてどういうふうに具体的に措置をすべきかと、共産党ではなくて上田先生にお尋ねをしたい。
  37. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 だから、具体的措置は平和的に解決すべきことです。向こうがとっているからといって、こっちが何か自衛隊で動くなんていうことじゃなくて。
  38. 田村秀昭

    田村秀昭君 先ほど高橋先生や山本先生がおっしゃっていた留学生の問題というのは私は非常に重要な問題だというふうに認識しております。これは、後から私の持ち時間のとき申し上げますが、政治が貧困だからであります。  大東亜戦争が勃発してから四年間の間に南方特別留学生制度というのを日本は設けまして、一期生から四期生までアジアの各国から四百人ぐらいの留学生を日本に招聘して、内閣総理大臣がみずから晩さん会をして、宮崎農業学校や陸軍士官学校や東京大学に留学をさせている。この人たちが帰って、日本が負けてから各国の独立をなし遂げ、かつ、さらにその人たちが大変な努力をしてASEANをつくったということもございます。  日本の留学生制度というのは、今は民間がやっているか若干官もやっておりますが、官僚主導であるので、政治が主導的にやっていないところに私は非常に問題があるというふうに思っております。  例えば、防衛大学に今タイから六名ほど、シンガポールが一名ですが、来ておりますが、これ全部お金を払うんですね、その在学の経費を。だからお金のない国は来れないわけです。戦時中、日本はみんな悪いことをやったようなことをおっしゃっている方も多々おられますが、そのときは一銭もそんなお金を取らないで民族自決の精神をそこでアジアの皆さんに教育をしているという、そういうような精神的な面の教育を今全然していない。技術的なこととかそういうようなことで、それも政治が絡んでおりませんから非常に日本は嫌な国だというふうな感じで帰っているところに私は非常に問題がある。  留学生というのは、平和と安定のために極めて重要な役割を将来演じる、今すぐということじゃないけれども。だから、そういうことは、もうぜひアジア太平洋地域の平和と安定のために日本はもっとお金を使ってこういう若い青年たちを受け入れるべきである、国家として受け入れるべきだと私は思っております。
  39. 笠井亮

    ○笠井亮君 先ほどの御意見の中で、集団安全保障体制をつくっていくことは確かにいいことだし必要だ、しかし当分それは難しいんだというお話があったと思うんです。いいことで必要だという点では大いにやっぱりこれ一緒に努力しなきやいけないことだと思うんですけれども、その先で、まだ当分の間それが難しいということで二国間を中心にやらないといけない、その間、日米が力を持っているんだからそういう国が中核になって基盤づくりをやっていくというふうな御意見があったわけです。  私は、当分難しいからということで結局は軍事力や軍事同盟という力の仕組みをあくまで残して固執していくという方向が、日米でいえばこの前の安保共同宣言で、二十一世紀の五十年ということでクリントン大統領も国会演説でも言ったわけですけれども、そういうことをやっていくことが真の集団安全保障への接近を逆に妨げて遠ざけるということになるというふうに見るべきじゃないかと思うんですね。  クリントン大統領が二十日にワシントンで包括的なアジア政策演説を行って、二十一世紀に向けてアメリカアジア太平洋の大国であり続けるというふうに述べて、個別の軍事同盟をよろいの板のように重ね合わせて、個別的、集団的に機能させて米国の利益と平和を守っていくということを述べているということなんです。結局アメリカ自身の国益なんだということを改めて大統領自身がアジア政策ということで述べているわけで、そういうアメリカとあくまで一緒になって軍事的な同盟関係を結んで、それが中心になってやっていくということが集団安全保障体制ということを目指している方向とやっぱり相入れないということはきちっと押さえるべきじゃないかなというふうに私は思います。  それから、核兵器についても同じだと思うんです。核兵器をなくすことが必要だ、しかし当分なかなかなくならないからアメリカの核兵器が必要だし、それに依存してその核の傘のもとであることが大事なんだという議論になりますと、そういうことによって核兵器に固執して依存するというふうになりますと、それが核兵器廃絶自身を遠ざけるということになるんじゃないか。結局、当分なくならないからということでアメリカは持つし、それに依存するという関係になりますと、今持っていない国々が、なぜアメリカなどが持って、あるいはアメリカなどに依存してやっていくということが許されるのかということで、拡散したり保有するということでの誘発というのにつながっていくわけだと思います。  やっぱり核兵器の問題でも同じだと思うんですけれども、今目指すべき方向に向かって何が必要なのかという点でやっぱり正面から必要な課題を追求する。だから、集団安全保障を目指してそれ自身を追求するということですし、核兵器廃絶だったら、それ自身に向かってどう近づいていくのかという努力がやっぱりアジア太平洋の平和と安定にとっても大事なんじゃないかということを申し上げたいと思います。
  40. 山本一太

    山本一太君 先ほど、そちらの田村先生がおっしゃったこと、私本当に賛成でございまして、実際こちらに来た研修員とか留学生受け入れやっていましたので、今の体制ですとどう考えてもプロジャパニーズになって帰るような状況はないので、やっぱりそこら辺は改善していかなきゃいけないと思うんです。さっきプロアメリカンの話が永野先生の方から出て、私も林先生も向こうに留学した経験からいわばプロアメリカンになったんですが、アメリカはやっぱり悪いところもあるし、社会的なひずみも大きいんですけれども、私一つ思ったのは、やっぱり世界で唯一クーデターの心配がない国だと思うんですね。  そういう民主主義の重みみたいなのをやっぱりアメリカで感じてきたということがありまして、上田先生先ほどからアメリカ覇権主義だとおっしゃっているのはどういうところから出てきているのかなというふうに思っているんですけれども、ちょっと簡単に先生のそこら辺のお考えをお聞きしたいなと。留学生のことについては本当に一〇〇%賛同いたします。
  41. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 簡潔に。  覇権主義というのは支配を求めることですよね。例えばベトナム戦争の話があったけれども、あれは六四年にトンキン湾事件でやったでしょう。トンキン湾事件というのは、アメリカの駆逐艦がベトナムの魚雷艇に攻撃されたということを国防総省、政府が発表して、アメリカの上下両院が即日全軍事努力を政府に委任したことがあるんですよね。そうしたら、ペンタゴンペーパーというのが公表されたら全く捏造だったということが明らかになって、上院、下院が、八〇年かな、全部取り消したんですよ、無効だというので。そういうふうに捏造までして東南アジアに押し出すわけね。それをまあ覇権主義と。  今は、だからアメリカの国益が世界の利益だということで、アメリカの国益を追求するために全世界の支配を目指すわけで、クリントン政権は今拡張戦略だ、封じ込めじゃなくて拡張戦略だということを自分で言っていますけれども。  それで、重要なことは、なぜそういう覇権主義戦略をとるかというと、軍事的、政治的な動きの底には経済があるんですよ。多国籍企業世界シェア、世界進出、これがアメリカ覇権主義経済的根底なんですよ。アジアでこれだけ一生懸命になっているのは、先ほど引用したように、東アジア戦略で、アジアが最もダイナミックな地域なんだ、経済発展で。だから、今アメリカアメリカ経済危機から脱出するためにも、多国籍企業アジアにおける投資、これに最も重点を置いているわけですよ。その経済的覇権主義を裏づけるのが軍事的覇権主義だと、これはクリントン大統領も演説でちゃんと言っていますけれども、そういう形で進むわけ。日本の場合にも、やっぱり日本の多国籍企業の東南アジア進出日本の投資は、先ほど直嶋さんも投資の話をされたけれども、東南アジアが一番多いでしょう。  それで僕はあっと思ったのは、この間NHKのテレビ討論を見ていたら楠川が出てきたのね。楠川と実は高等学校で同級なんだよ。あれ、元冨士銀行の副頭取だったのが、今、経済同友会の安全保障委員会の委員長なのね。それで日曜のこの安保討論にも出てくるわけ。四月八日に経済同友会が集団的自衛権の見直しを要求する報告書を発表して、その報告書を発表した責任者が楠川なんだよね。  それで、五年ぐらい前経団連が安全保障問題で、日本の財界はもっと意欲的になれという決議をやったことがあるんだけれども、なぜそうなるかというと、資本で進出するでしょう。そうすると、革命なんか起きて没収されたら大変なわけよ。だから進出企業というのはその国の政府と、しばしば反動的なところが多いんだけれども、そこと一体化するわけだ。それで、いろいろ下からの動きを抑えるわけね。そのためには軍事力が要るんですよ。  それで、ここまで日本の多国籍企業が大きくなって進出し始めると、これは経済同友会もはっきり言っているけれども、アメリカに頼るだけじゃもうだめだ、だめだというか責任果たせないと。日本もだから軍事力を出さなきゃいかぬというので、経済同友会が、初めて集団的自衛権の見直しを要求する報告書を財界が発表したというのは、だから今日本の財界もそこまで来ているんですよ。  そうなると、そういう経済的覇権主義を追求する上で軍事的覇権主義も必要になってくるんで、そこに私の言うアジアにおける最大の危険は日米の多国籍企業の従属的結合のもとでの進出、それを保障するための軍事的安全保障だと、そういうことに今なっている。これから日本進出をするときに、公害はどんどん出す、そういうことを抑えないで軍事的な問題ばっかりするのはいけないんで、だから、私の言うその集団安全保障本当の平和的体制をつくるためにも、実は多国籍企業の横暴なやり方も規制する必要があるんですよ。  全労連がおととし東京で国際的な多国籍企業の民主的規制のシンポジウムをやって、かなり各国の労働組合が集まってなかなか活発だった。それぞれの国が自分のところで日本進出企業のひどいやり方を抑える動きやっているでしょう。それの国際的連帯が必要だというわけね。だから僕は、平和や民族自決を目指す国際的連帯と同時に、その根底である多国籍企業の横暴なやり方に対する民主的規制の国際的連帯は必要で、文化の問題もありますけれども、そういう運動の側も多面的な運動が必要になっているというふうに思いますね。
  42. 永野茂門

    永野茂門君 集団安全保障体制になぜ今移行できないのか、当分移行できないのかという、一番よく考えてもらいたいのは、集団安全保障体制をとった場合に日本は、集団安全保障体制に依存するとともに、裸であるということですね。したがって、日本のそのときにおける軍事力、防衛カレベルをどこに持っていくかということ自体も大変に難しい問題である。これをどうやって解決するか、まだ何とも言えないところがあって、非常に難しい問題だと思います。それを指摘しておきます。  それから、核兵器がどうしてなくならないんだと。どうやってなくしますか。どこかに残っていたらこれを抑止しなきゃいけないわけですね、この使用を。そうしますと、世界で一斉に爆発させるか、どこかへ持っていくか、そういう以外に核兵器をなくすということは非常に難しいんですね。国際管理に移せばいいじゃないかと。国際管理に移せますか、これを。  したがって、まさに核兵器が残っている以上この使用を抑止する、抑止するのはもう核兵器しかないんです。道徳心に訴え、倫理観に訴えたって、いよいよとなったら使うところは使いますので、これはやっぱり物理的に使うことは不可能であるという状況を継続せざるを得ないということが残るということを御指摘申し上げておきます。
  43. 田村公平

    田村公平君 僕はそういう格調高いことじゃなくして、アジア太平洋地域本当アジアの一員の日本人として、ちょっと意見を述べさせていただきたいと思います。  というのは、今確かにアジアの国々は貧しい国がいっぱいあります。唯一先進国に近いというか、東京並みの生活ができるのはシンガポールだけだと思います。例えばインドネシアの田舎に行きますと、戦後の我が国の五十年がきょうという日に混在しています。そういうところに例えばコンピューターを入れようとしても、アンペアが変わるしボルテージはしょっちゅう変わるし停電があります。そんなことよりも、村のかじ屋さんとかそういうもっと生活に根差したそういう意味での留学生の交流や技術交流をしていくことが僕はより……。  日本人て、実は先ほど高橋先生もおっしゃいましたけれどもアジアでは物すごく嫌われています。鼻持ちならない醜い黄色と言われています。それは、JTBや日本旅行で団体で行って、タイのバンコクに行ったら、パッポンのいわゆる売春宿に行って一番から何百番まで、僕はポン引きの役もやったことありますからよく知っています。僕は食えなかったから、ずっとリュックサック一つで歩いていましたから。そして、団体でいわゆる買春ツアーをやっている。そして、ブランド物のあるところに行くと、やっぱり観光バスでやってきて、ルイ・ビトンを買いあさり、シャネルを買いあさり、彼らの生活費の一年分をそこいらのOLが買っていく、そういう姿を見て尊敬されるはずもないです。  実は、同じようなことを豪州、ニュージーランドから来た人、イタリアから来た人もやっています、ヨーロッパのいわゆる白人という人たち。やっているけれども彼らは個人で動くんです。目立たないんです。そのことはどういうことかというと、常に日本帝国陸軍を連想させるようなやり方でやっているから、やっぱり尊敬されないんです。  今、アジアの人たち、この前ASEAN七カ国の大使が来ましたけれども、彼らは大変なエリートです。貧富の差もあります。大変そういう意味でサバイバルゲームにたけています。生き残り戦略にたけています。だから、今欲しいのは、いわゆるプロトコル、外交的な儀礼を除いて本音を言えば日本の金だけうまく引っ張り出せばいいと思っています。そういうしたたかさを我々日本人は、日本国政府は持ち合わせていません。  そういう意味では、実は山本先生、馳先生、先生方おっしゃいましたけれども、もっと現地というか、現地という言い方はよくないかもしれないんですけれども、もっと地道な、タイトな人的交流をして、今の僕たちよりも上のジェネレーションの人にそれを求めても無理ですから、若いその国の人たちとそういうことの交流をしていくことが本当意味での力強い、足が地についた安定につながるんじゃないかと思います。  これは山本先生の専門分野でありますけれども、一兆円を超えるODAの金を渡したって、固有名詞を挙げて悪いけれども、大手商社がいいように稼いで機能しないということになっていくわけですから、そういう意味での地道さをこの国のやり方としてお願いをしたいなというのが私の意見です。  どうもありがとうございました。
  44. 岡野裕

    ○岡野裕君 田村先生は自分で落ちたというお話をされましたが、私も、そこまでは落ちないですけれども格調の余り高くない話をすると、高橋先生から海外技術協力隊の若い人たちが日本に帰ってきても職場がないというお話がありましたが、なるほど海外へ行って、山村僻地やジャングルの中でお目にかかる海外協力隊の青年はうんと立派だと、こう私も思い込んでいましたけれども、その諸君がやっぱり東京へ帰った場合に就職が困るという話も随分聞きました。海外協力隊千人の、言いますならば選抜試験、これが毎年行われますが、ここで言うと目黒の海外技術協力隊の本部で面接試験をやりますと、四百人ぐらいの若い男女の諸君がみんな来て、三十人ぐらいの先輩がそれぞれ自分の経験を述べて、今度はその三十人の人に対して十人ぐらいずつがまた小一時間いろいろの心配事を聞いていく。懇切丁寧にうんと答える。  私、思ってもいなかったんだけれども、私はデザイナーをやってきてデザイナーの希望であります、どこかそういうのを採用してくれる国はないだろうかと、私は実は植木屋で盆栽つくるのが名人であります、私は靴屋をやっておりますという二十一、二の子が積極的に行きたいと言っているんですね。そうすると、行く前の日本の就職難と同じ程度の就職難が帰ってきた場合にも襲うのかなと。私は、非常に熱心に手を挙げて希望することをこの目で見たんです。僕もそのグループの中に入って、何だ五十を越えたしらがのじいさんが何で来たんだと思われたと思うけれども、積極的に質問をしてやっていたら、うんと熱心だけれども、やはり中には今お話をしたような、帰ってきても行く前と同じ程度の就職難に遭っているということかもしれないなと。  多くの人は何とか就職できるようだけれども、さっきからお話が出ている、東南アジア等々から留学生をうんとこさ日本によこしてというものも大歓迎だけれども、その皆さんが帰るとみんな日本びいきのうんと勤勉家になるかと言うと、落ちこぼれもあるのね。だから私は、海外協力隊の中にも例外もあるし、留学生の中にも例外があるし、だけれども全体として徐々に徐々にこういう努力を積み重ねれば、上田先生がおっしゃったような大きな効果も出てくるのではないかなと。だけれども、本当に海外協力隊というのは、さっき言った四百人の中に入ってみると、東京から外へ出ていって大丈夫なのかと、失礼しました、脱線しましたが、そんな感じがいたしました。
  45. 高橋令則

    ○高橋令則君 そういう人もいるということは私もわかります。全体としてはいいんじゃないでしょうかね。
  46. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) 最後に、我が国安全保障あり方につきまして自由討議を行います。  まず、各会派から順次御意見を伺いたいと存じます。
  47. 林芳正

    ○林芳正君 既にこのテーマにも入ったような形で多くの先生方から御議論がありました。重複するところもあるかと思いますけれども、簡単に、議論のたたき台ということで私の考え方を述べさせていただきたいと思います。  まず、我が国安全保障あり方ということですが、法体系として、昨今言われております集団的自衛権の問題というのが必ず出てくるわけでございます。これを考える上で、まず自然法的に何があるのか、その次に国連憲章というのがあって、これは条約だと思いますが、それから憲法があって国内法があるというようなやっぱり整理をしておくのが必要なのかな、こういうふうに思っております。  その中で、先ほどからいろいろと既に議論は出ておるようでございますけれども、いわゆるコレクティブ・セキュリティーとコレクティブ・ディフェンス、集団的自衛権と集団的安全保障という概念をきちっとやっぱり分けて考えなきゃいかぬのじゃないかな、こういうふうに思っています。  集団的自衛権というのは、私が理解しておるところによりますと、一応仮想敵があってそれに対して残りの人が団結をして守るということだと思います。集団的安全保障というのは、そういう仮想敵がなくて、むしろ国内で言いますと予見し得ないような犯罪者が出てきた場合にこれをみんなで守る警察のようなことを国際社会でやると。ですから、身内から、先ほどのあれで言いますと、出てくる芽を摘むということを永野先生はおっしゃっておられましたけれども、これを未然に防いだり、実際に悪い人が出てきたときに実力でこれを阻止するということで、これは考え方としては基本的に違った概念である、こういうふうに思うわけでございます。先ほど来、集団的な安全保障を究極的には目指していきたいということではかなりの先生方の合意があったように私はお見受けしておったんですけれども、これに行く場合に、やはり今議論になっている集団的自衛権ということの議論をこれにどうつなげていくかというのが一つの問題になる、こういうふうに思います。  それで、具体的な枠組みについてはいろいろとお話がありました。今の二国間の同盟、いわゆるハブ・アンド・スポークと、こう言われておりますけれども、これを軸にして多国間の安全保障をやる、そしてその上に国連があるというような考え方で私もいいと思うんです。  この間、英語の話で益田先生から補完と代替というお話がありました。まさに私は、この今の二国間の同盟を束ねていくことと、それから多数国間の地域的な安全保障というのは、この補完という機能からどうやったら代替に持っていけるのかと。補完ということはダブって存在して、ないところを補っていって、そしてその最初の方の同盟の関係がもう要らないというところまで補完機能ができたときに初めて代替が可能になる。ですからこれは、補完と代替の二者択一ではなくて、補完関係を強くしていくことによっていずれ代替ができるということを目指していくべきでありますし、この補完機能がない場合には代替というのは最初から考えることができないということになるわけでございますから、そういう考え方でやっていきたいと思います。  国連の中でも今PKOについていろんな議論がございます。常備軍をつくった方がいいとか傭兵を国連公務員として出した方がいいという考え方もありますし、またやり方として初期におけるクイックな出動ということでクイック・レスポンス・フォースということを、かなり議論が進んでおるようでございまして、これはコストとの見合いでどこまで国連にやっていただけるのかという技術論も、我々ももっと入っていってやるべきではないかなというふうに考えております。  具体的な方途として、先ほど来いろいろ出ております。信頼醸成措置、人的交流や経済協力の強化ということはいろんな先生方から出されておりました。これがまず初めでありまして、第二弾としてやはり予防外交ということを考えたらどうかなと。コンフィデンスビルディングがうまくいっても、もう少しで紛争が発生しそうになるという状況にあったときに、紛争が発生する前にできるだけの措置を外交としてとっていくという予防外交が非常に今から重要になってくるんではないかなというふうに思います。  国連のPKO活動もむしろこのところに、このフェーズにもっと重きを割くべきではないかなと私は個人的には思っております。もちろん、国家の主権というものとのバランスをどうとるのかということもあるわけでございますけれども、この辺もマルチの場で協議をすることによって、コンフィデンスビルディングの次の予防外交というステップについてもう少し踏み込んだ議論をして、ここで抑えていくということが効果的な紛争処理に役に立つんではないかなと、こういうふうに思っております。  国内の議論でございますが、この間、岡崎参考人からお話があったように、集団的自衛権について内閣法制局の見解で国の行動が縛られているというのはいかがなものかということがございました。私も非常にその視点として同感であったわけでございます。今まで先生方の御議論を聞いておりまして、いわゆる安全保障におけるリベラリズムとリアリズムというか、現実をどう直視して、しかも理想に、ある目標にどうやって近づけていくかという間の相克があるわけでございまして、これは二者択一ではなくてその人の主観やその時々の国際情勢情勢認識のお話がきょうございましたけれども、これによって答えがいろいろと変わってくるんではないかなと、こういうふうに思っております。  ですから、どこまでこのデモクラティックコントロールといいますか、選挙を通じて選ばれておる我々がこれについて、国民に対して安全と生命と財産の保障をするという責任を持った我々が答えを出すのか、またそれは別の機関でやるべきなのかという議論をもう少しした方がいいんではないかなと。  これに関連して外交政策の決定過程におけるメディアの役割というのは大変に大きな役割があると思いますけれども、いずれにしましても、我々が本当に決断を責任を持ってやった場合に、間違っておった責任というのは、これは経済政策と違いましてもうとれないわけでございますから、この責任をどういうふうに民主的なルールとの関係で考えるのかということを考えていかなければならないんではないかなと、こう思っております。  これが私の大体の意見でございまして、先ほどのいろんな話の中でアメリカのお話がございましたのでちょっと付言させていただきますと、アメリカも、ベトナム戦争をやったり、またハイチに出ていったりといろんなことがあるわけでございますが、山本先生がおっしゃっていましたように、この軍産複合体については、「パワー・エリート」という本をミルズという方が書かれてきちっと出版されておりますし、また私が留学しておりましたときも、ハイチの侵攻やベイルートの事件等、すべての事件についてきちっと学校でケーススタディーをやっていろんな議論がなされておるというところが、やはり体制として民主主義をとっておる国家の強みではないかなということを感じました。  それを最後につけ加えさせていただきまして、私の意見表明とさせていただきます。ありがとうございました。
  48. 田村秀昭

    田村秀昭君 政治の基本は国民、国家の安全を保障することであります。  我が国は、資源の非常に少ない、燐鉱石、ボーキサイト、鉄鉱石一〇〇%輸入石油九九・六%輸入の、よその国から資源を売っていただいて繁栄をしていくという国でございますので、通商国家であることは言うまでもありません。商いをする国家であります。  そういたしますと、三つの条件が必要となります。それは、日本が通商国家として生きていく上に三つの条件。一つ世界が平和であるということです。サダム・フセインがクウェートに侵攻するような乱世の世の中では商いはできません。二番目に、七億トンの資源日本に運んでくる、そして七千万トンの商品を海外に輸出するシーレーン確保されておらないとなりません。三番目に、WTO、お金を出せば資源を売っていただいて、そして日本の製品を自由に買っていただくというシステムが成り立っていなければなりません。この三つは、我が国の生存をする上に不可欠の要件であります。  冷戦中、これは全部アメリカがやっておりました。我が国は今四百七十兆円の、全世界の富の一五%強の経済活動をする国家になったわけでありますから、この三つの条件に対して一六%の経済活動をする国家としての役割を果たしていかなきゃならないと考えています。  しかし、我が国政治体制は、先ほど申し上げた三つに対して貢献できるような政治システムになっておりません。日本政治システムは、私は、政治家の方がたくさんおられますが、開発途上国型の政治システムだというふうに考えております。日本経済活動、最大の受益者であった日本は、富を国内にどのように分配するかという政治システムであります。  簡単に申し上げますと、政治家自身の利益のための官僚による占領憲法の政治であります。これを、今や四百七十兆円の経済活動をする国家として先進国型の政治システムに変えていかなきゃなりません。すなわち、国民のための国民による国民の政治にしていかなきゃなりません。そうしない限り、さっきの三条件を四百七十兆円の経済活動をする国家として履行することはできません。  そういう観点に立って我が国安全保障を考えた場合に、日本シーレーン日本の海上自衛隊が守っているんではありません。米国の第七艦隊が守っているわけです。したがいまして、日本安全保障をこれから考えていく上に非常に重要な点は何かといいますと、日米安保体制を堅持するということであります。そして、それにふさわしい日米同盟の信頼性を高めていくということです。同盟だけあってもだめです。いかに日米同盟の信頼性を高めるかということをしていかなきゃならない。  そして特に私は、中国台湾に対する関係というのは、日本国民の約九〇%以上の人は武力侵攻をしないだろうというふうに考えておりますが、アメリカのハドソン研究所でも国際戦略研究所でも、日本人以外のほとんどの人は中国台湾への侵攻は非常に確率が高いと。なぜならば、中国歴史を考えたときに、領土及び主権に関しての問題になったときには必ず武力行使をしているということです。それで、その時期については、私は、朝鮮有事と同時に行われるんではないか。  そういうときに我が国はどういうふうにするのかということが、今後のアジア太平洋における我が国の選択なんですね。どういうふうにするのか、何にもしないのか、遺憾であるということだけ言っておくのか、どういう話し合いをするのか、そういうことを今から十分に考えておかなければならない。これはそんなに長期的な話ではありません。必ず台湾が国際社会で認められるような、さらに国になる以前にそれは行われるだろうと私は思っております。  そういう意味において、我が国安全保障をどうしていくかということは日米関係の中で十分に考慮しなければならない話であると思っておりますが、日本の自衛隊と日米安保というのがリンクしておりませんので、私はこれをきちっとリンクさせていく必要があるんじゃないかというふうに考えております。もちろん、集団的自衛権のことにつきましては当然そういうことはやっていかなければいけないんで、そういうことに固執しているのは冷戦構造の中にどっぶりとつかっている人たちが言うことだと私は思っております。  以上です。
  49. 松前達郎

    ○松前達郎君 約五分間ということですからちょっとまとめて書いてきたわけなんですが、恐らく前半は今までいろいろお話が出ましたのと重複するところがあろうと思いますけれども、その辺はお許しいただきたい、こう思います。  安全保障に関してなんですが、古典的には軍事的な意味に限られていたと思います。専ら国防とそれから抑止の二つの機能がその中にあった。ところが、核時代の到来によりまして抑止と国防のギャップが非常に大きくなってきただろうと思います。果てしのない核軍拡競争を生み出した核抑止論、私はそういうふうに解釈しておりますが、本来核戦争を回避するためのものであったはずなんでありますが、核抑止戦略は核抑止力による脅迫の信憑性、これを高めることを目指しながらも他方ではその信憑性を絶えず疑っていく、こういうパラドックスが根本的に内在をしていたのではないか。核抑止力は明らかに今破綻の可能性を迎えてきているだろうと思います。  核戦略が核抑止力として考えられ、しかも米ソ対立の中で繰り広げられてきました核軍備競争が破綻をして、いわゆる冷戦が終息に向かう、完全終息はしておりませんがその方向に向かう、こうなりますと核戦略のもとにおける安全保障の概念というものもある程度変化せざるを得ないのではないか。つまり、総合的な安全保障の達成には平和な世界をつくるための軍備管理を含む外交的努力が不可欠の要件になる、こういうふうに思います。  しかし、そのために最も重要なことは、外交努力の意図それから能力、こういうものが十分確立をされていなければならないのではないでしょうか。中でも意図に関して、これは国家全体がどの程度に平和愛好的であるのか、あるいは好戦的であるのか、こういったような国民の資質あるいは価値観、国内の社会経済的な要因が問題となると思います。  最近では日米安全保障条約の軍事的安全保障の面が非常に大きくクローズアップされてきておりますけれども、専ら軍事同盟としての日米安保が議論をされている、そういう状況だと思いますが、安全保障条約の中を見ますと、相互協力と安全保障なんですね。こういうための条約である。ミューチュアル・コオペレーション・アンド・セキュリティー、こういうことで表現をしているわけです。その中の第一条には、国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないよう解決する、武力による威嚇または武力の行使をいかなる国の領土保全または政治的独立に対するものも含めて慎んでいくんだ、こういうふうに記載をされております。これはある意味で言うと我が国の憲法をある程度意識した条文ではないかと思っております。  この二国間条約なんですが、核戦略が主流であった時代、ヒの時代には日本アメリカの核の傘のもとにあるとよく言われていました。それによって守られているんだと、こういうふうに言われてきたんですが、最近の状況を見ますと核の傘というのもどうも破れ傘になってきたような感じを持つわけであります。  たしか参議院の外務委員会に私おりましたときに外務省の意見を聞いたんですが、外務省の考えとして、さっき申し上げた国際的な交渉、こういうものについて軍事力をバックにしないと国際交渉が成り立たないんだというふうな意見を言った人がいるんですね、これは外務省です。これは過去の時代には確かに国家間の交渉には伝統的な軍事力が不可欠である、こういうふうにされてきたわけですが、これは軍事力による威嚇あるいはその直接行使による自国の思想の強制が常識として受け入れられていたからであろう、こういうふうに思います。  今日でその傾向が完全になくなったとは言えません。しかし、あからさまに軍事力をちらつかせて、いわゆる砲艦外交といいましょうか、こういった武力解決を求める戦争も、先進国に関する限り極めて少なくなりつつあるのが現状だと思っております。また同時に、それ以外の国家間でも、軍事力は直接、間接を問わず行使しにくいものに現在なっているのだろうと思います。  こういう状況の中で我が国安全保障を考えてみますときに、これを担保するものとして軍備を第一に挙げるというのはもうナンセンスじゃないだろうか。今日では国際交渉における軍事力の重みというのは交渉力の他の要素に取ってかわりつつあるのではないか。その他の要素というと何かといいますと、国力の重みといいますか、すなわちこれは、モーゲンソーという政治学者の著書の中に「国際政治」という著書があるのは御存じだと思いますが、地理的条件ですとか天然資源ですとか工業能力ですとか、あるいは軍備ももちろん入ります、人口、国民性、国民の士気、あるいは外交の質、政府の質などが挙げられているわけであります。  これからの我が国安全保障日米安保条約に担保されるものではないのではないか。我が国独自の国際交渉力による平和確保、あるいは経済力による内外の民生安定、またハイテクノロジーを駆使した情報力、また同時に専守防衛、すなわち独自の防衛システムの構築などがどうしても必要になってくるのだろう、こういうふうに思います。  日米安全保障考え方も主としてアメリカ側から大きく今変わってきているのだろうと私は思いますが、その目的の基本であるのは、これはナイ報告、これ国防総省の報告ですが、これにありますように、アメリカの東アジア太平洋地域に関する安全保障戦略、この中で地球規模の戦略目的とアジア安保政策のもとに東アジアには十万規模の軍隊を駐留させるという、こういう戦略に今大きく変換をされつつある、これをやはりじっくりと私ども見ておかなければいけない、こういうふうに思っております。  そこで、それじゃ具体的にはどういう問題があるか、どういう方法があるかというのが先ほど出ておりますけれども、私もアジアにおけるいわゆる集団的な安全保障、これが構築されることを理想とするというふうに考えております。しかも、その内容というのは相互依存型でなければいけないんですね。今フォーラムを私どもやっていますが、これはコモンセキュリティーという考え方ですね、お互いに共通したセキュリティー、その辺から始めませんと、なかなかこれはまとまるものではないのではないだろうか、こういうふうに考えております。  非常に漠然としたことを申し上げましたけれども、意見を申し上げた次第であります。  以上です。
  50. 笠井亮

    ○笠井亮君 我が国安全保障をめぐって調査会のこれまでの経過の中で、やはり日米安保条約とそれから集団的自衛権の問題が焦点になったと思います。ソ連が崩壊したもとで中台あるいは北朝鮮情勢などを挙げて、依然として不透明、不確実だから日米安保条約を堅持すべきとの意見がかなり見られました。  しかし、私もこれはいろいろ伺っている中で、防衛研究所の参考人意見でも注目させていただいたんですけれども、中国にしても北朝鮮にしても、ソ連脅威にかわるような脅威ではないということがあったと思います。ですから、それが安保堅持の論拠にならないことは明らかじゃないかというふうに考えます。にもかかわらず、今度の日米安保共同宣言では、日米安保体制を二十一世紀に向けてアジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎であるというふうに位置づけて、米軍存在を正当化して、二十一世紀まで安保とそれから米軍基地の体制を固定化しようとしていることは重大だと思います。  また、日米安保体制日本の国益にかなうものであり、かつ主権国家として自主的判断をするのだから国益は確保されるという見解がこの調査会の中でも述べられました。この点では、新防衛計画の大綱が自衛隊に新たに周辺諸国紛争への対処などの任務を加えて、日米安保共同宣言朝鮮半島などを含む地域紛争に際して米軍への軍事協力という形で自衛隊を介入させることに道を開いた事実を直視すべきだと思います。このことは、せんだっての参考人からも、現行安保条約の実質的な改定であり、憲法上問題であり、これは従来から違憲としてきた集団的自衛権の行使に当たると指摘されているところであります。  まさに、日米安保体制のもとでは、日本日本の国益を自主的に決定することができないままにアメリカの軍事行動に巻き込まれて共同行動を迫られる危険があること、そういう段階に来ていることは明らかじゃないかというふうに思います。これが国益にかなうかというふうに見ますと、そうではない、決してそうではないということが言えると思うわけであります。  このことに関連して、価値観を共有するアメリカとの協力は当然との意見も出されましたけれども、先ほども議論もあったわけですけれども、アメリカ東アジア戦略報告に見られるように、ベトナム侵略戦争をいわば正義の戦争だとしてそれを行動基準とするのがアメリカだというふうに思います。このアメリカと価値観を共有して協力し合うというのが当然というふうに見ると、これはいかがなものかというふうに思うわけです。同時に、参考人の中で指摘もありましたけれども、戦争責任を反省せずに米軍とともに自衛隊がアジア紛争介入するほど危険なことはないし、近隣諸国からも脅威と見られることは確実だと思うんです。  最後の問題ですけれども、集団的自衛権は、そういう中で国際的にも認められた自然権であって、これを行使できるようにすべきだという議論もございました。これは、先ほども議論もあったと思うんですけれども、軍事同盟によらない集団安全保障こそ本来の国連の基本精神である。軍事同盟を前提とした集団的自衛権は、歴史的な経過から見ても、それに矛盾した内容をアメリカが後から押し込んだものであって、また我が憲法とも相入れないものであることは経緯から見ても明らかだと思います。今こそ我々は、二十世紀の二度にわたる世界大戦が軍事同盟によって引き起こされたという歴史の教訓を強くかみしめる必要があると考えます。  こうしたもとで、我が国安全保障あり方として、憲法の平和原則に沿ってアジア諸国世界各国との友好協力の道を進むこと、それから我が国を危険な道に引き込むような大もとにある日米安保条約の廃棄とそれによる非核非同盟の新しい進路の実現を目指すことが緊要であるというふうに考えております。  以上です。
  51. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) 以上で意見の表明は終わりました。  これより意見交換を行います。  発言を希望される方は挙手を願います。
  52. 板垣正

    ○板垣正君 やはり今大きな転換期にあるということは、これはもうだれも言うわけでございますね。現実に、戦後五十年体制から五十一年目を迎えたこの現状、内外情勢というものが、いや応なしに日本の国としての姿勢、特に安保体制に対する対応というものの転換を求めているんではないのか。  つまり、安保体制戦争に巻き込まれるんだと言われた反対の人たちは、あの時代にも、これはアメリカ戦争に巻き込まれるんだと、ソ連脅威はないんだと、こうあの時代は主張してきた人が、今度は冷戦後はソ連脅威はなくなったんだからもう安保は要らないんだと。そうすると、やっぱりソ連脅威というのは昔は認めていたのか認めていなかったのか、その辺非常なジレンマだと思う、矛盾していると思いますけれども。  要するに、この一つの契機としてはあの湾岸戦争の体験というものがある。あれで百数十億ドルのお金を国民の税金から出したけれども、ほとんどの国から尊敬されなかった、評価されなかった。さっき、アジアにおいても日本人は尊敬されておらない、嫌われておると。これは本当に我々は真剣に受けとめなければならないと思うんですね。それはまた当然だと思うんです。みずからの富を誇り、そしてしかも危険に身をさらすことはお断りする、自分さえ、自分の国さえ平和であり繁栄すれば、こういうふうに受けとめられる姿勢というのはやはりそのまま尊敬されるはずもないし、また冷戦後の特にアジア太平洋の情勢というものはそういう形では済まない。つまり、今までは、率直に言ってアメリカに依存し、難しい問題は全部アメリカさんにお任せするような形で今日までひたすらに経済的繁栄を図ってきた、やはり私はそういう見方ができると思う。  今やアメリカは、超大国とは言いながら、いろんな意味における限度も出てきたし、また一国だけが世界を牛耳れるはずのものでもない。そういう中で、やはり日米安保体制がある意味で見直される、再確認される、そこに日本が応分の今まで空白になっていた部分を埋めなければならない。  有事とか集団自衛権とかが今急に論議されるようになった受けとめ方もありますけれども、これはもうずっと以前に、正常な国家なら、少なくとも独立を回復した後、あるいは少なくとも冷戦直後ぐらいから本当は論議を尽くして、冷戦後の日本の国策の基本方向というものはやはり大きく転換せざるを得なかったんじゃないのか。言うなれば、そういう難しい問題はなるべく避ける、政治の場でもすぐ不毛な論議になってしまうから避けてしまう。避けている間に、いつの間にか日本の常識は世界の非常識、世界の常識が通らない。何か、まさにそれこそ歴史の教訓に学ぶべき日本だけが特別の国なんだ、うちの国は平和憲法をいただいている特別な国であると、こういう国際常識の通らない、そういう姿になってしまっているという点、これが、日本が顔の見えない国であるとか、何を考えているかわからないとか、こういうふうな評価を受けるゆえんではないでしょうか。  私は、そうしたものを含めて、やはり日本日本なりの応分の立場において、しかも、アジア太平洋の新しい二十一世紀の展望の中で中長期的にもまた当面の問題としても、積極的に平和環境をつくり出していく、その基盤になるのは、やはり現時点においては日米安保体制を確認し、かつ日本なりの、通常どこの国でも備えるべき有事に対する対応なりあるいは後方支援の体制というようなものも整えるべきだと思います。  私は、この間の連休に、自民党の安保調査会のメンバーでワシントンに数日間参りまして、向こうの防衛専門家やいろいろな方にお会いをしました。やはり、印象に残っておりますことは、朝鮮の話も出まして、北朝鮮の崩壊はもう時間の問題だという見方が多かったですね。これはいつとは言えないけれども、しかしもう三年以内には崩壊するだろうと断言した人もおりました。つまり、アメリカが今北朝鮮に向けてとっている対策は、いかにして静かに崩壊してもらうか、暴発されないように、そういう意味合いを持ちました。  これと対照的に感じたのは、やはり中国存在を非常に大きく意識をしているといいますか、そういう中で、これは時間も長くなりますからあれですけれども、やはり予防外交ということを非常に強調しましたね。中台関係の台湾における、あの紛争を未然に抑止したということは、彼らは我々はよくやったんだという非常に強い思いは持っておりますし、私どももそう思っておりますけれども、やはり中国を決して封じ込めようとしているんじゃないんだと、いかにしてこの国際社会に引き入れていくか、周辺紛争をなるべく起こさないような姿でいかにつき合っていくか、これは私もやはりそうしたことを大事だと思いました。  集団自衛権とかそういうふうな話も一部出ましたけれども、彼らの言っているのは、それは日本の国内問題ですよと、一国の国策はあなた方が決める、我々が介入すべき問題ではないと。いかにすれば国益が守れるのか、それを決める政治的意志が一番大事でしようと。まさにそのとおりですね。まさに問われているのは政治的意志であって、我々の責任であろうと。  こういう思いで、やはりこの安保の問題についても、アメリカアメリカの立場で国益を中心にしていることは当然ですよ。そういう中における日本日本の国益をいかにして守るか。その中で共通にかたい同盟関係として確認し合えるものがあるはずであります。まあ、共産党の上田さんの、アメリカは頭がおかしくなったんじゃないかというのは、これはちょっと言い過ぎじゃないでしょうか。いやしくも同盟国として関係し、相互に認め合っていこうという立場もあるはずですから、頭がおかしいというふうな言い方をする人こそ余りにも独善的で、余りにも傲慢ではありませんか。そういう点はやっぱり我々は評価しませんね。  さらにもう一つ申し上げますと、やはり若い人たちがアジアの人たちと心を開いて交流をして、本当に分け隔てのない形で開かれていく、開かれつつある面が随分あると思いますよ。  同時にこういうことも聞くんですね。向こうの青年たちはやはり自国の歴史に非常な関心を持ち、誇りを持っていますね。日本の青年というのは歴史の話が全然できないと。つまり、戦後非常に偏った自虐的な、自分の国は侵略ばかりやってきたんだ、アジアで二千万人殺したと根拠のないような数字が教科書にまで出たりするような国で、何もかも悪いことをやってきたと真っ黒に歴史を塗りつぶしてしまっている。そんな姿ですから、受験もなるべく近現代史は出ないから、一体、本当にもう戦争にしたって遠い遠い昔の我々と関係のないことだというような印象になってしまっておりますね。  幸いこれについては最近、東京大学の教育学部の藤岡教授を中心とする新しい動きが出てきておりますね。東京大学の教育学部といったら、かつてはこれは日教組の本山ですよ。そこの教育学部の教授がみずからの教育学部の体験を通じて、どうもこういう真っ黒の歴史を教える、これでもかこれでもかと、自国の歴史は真っ黒なんですよと、こういう中では子供たちが歴史に対して興味を失う、関心を失う、当然であると、誇りも持てない。それはやはり歴史教育としては誤りではないか。やはり歴史も事実は事実として、真実をやはり真実として率直に取り上げて教えていく、こういう形で新しい――この藤岡教授は何も大東亜戦争肯定論じゃありませんよ、必ずしも。しかし、事実は事実として、やはり歴史的に評価できるところはそのままに教えていくべきだという、もう今非常に勇敢に闘っておられますね。それも一つの動きだと思うんですよ。  そういう流れの中で、やっぱり私どもは、反省がない反省がないと言われる。そんなことはありませんよ。日本人で再び戦争をやろうと心から思っている者はいないんじゃないですか。それは国を守るためには戦うし、国際的な正義のためには戦う。しかし、それ以外に侵略の野心を持って他国を侵して戦争をしようなどと思っている者は一人もいないはずですよ。  その平和維持というものに、我々は与えられた憲法にではなく、我々自身に信念を持ち、相互信頼を持って、やはりこの二十一世紀の転換期における課題、今直面している日米安保体制のあの共同宣言に織り込まれたことを確実に実行する。困難ではあるけれども、沖縄の基地返還、移設、これもやり遂げて、この関係というものも将来の基地縮小にもつなげながら、やがて安保体制も過去のものになる時代が来ますよ、しかし、そのためにやはり今この体制を固めていく。こういう点について私は深く感じておりますことだけ申し上げます。  以上です。
  53. 益田洋介

    ○益田洋介君 まず最初に、笠井委員の方から、二十日のクリントン演説を聞いているとあるいは読んでいると、最終的にやはりアメリカの追求しているものはアメリカの独自の国益だったんじゃないかという御指摘でしたが、私は、そのこと自体は間違いではない、そういった解釈も正しいけれども、そうした主張をクリントンが表明するということは間違いではない、むしろ当然のことであるというふうに思います。  そして、今、林委員の方から、集団的自衛権については自然法、条約法、それから憲法というふうな重層的な、あるいは段階的な詰めが必要であろうという御指摘がありましたが、この件についても私は全く賛成でございます。  ただ、自然法と林先生がおっしゃったものの中身としては、やはり世界慣習法といったようなものが不文律な共通の認識といった解釈になるのかなというふうに思って聞いておりましたが、問題は、皆様御承知だと思いますが、国連憲章の第五十一条で付与されている権利というふうに盛んに主張がなされておりますが、権利を行使する、そのバックには、背景には、当然のことながら義務も果たしていかなきゃならないという私は関係にあるんじゃないかと思いますので、権利を主張するんであれば、当然のことながら集団的自衛の義務もやはり国連の一員としては果たしていかなきゃいけないという議論が当然これから出てくるんじゃないかというふうに考えております。ですから、一方的に、片務的に権利だけ付与されているという認識は、これからは議論の場で通用しなくなっていくんじゃないかなというふうに考えます。  そして、今、板垣先生の方から、当然独立国家としてこの集団的自衛権と憲法九条の二律背反については、既に今までたくさんの議論がなされてこなければならなかったはずであったと。神学論というような形で議論はなされてきたという経過はあるようですが、私はそのころ日本にいなかったので詳しくはわかりませんが、一応そういった憲法論争、それから条約法と憲法とどちらが優位性を持っているのかという論争はなされてきたと思いますが、先日も山内参考人にこの辺のお考えを若干伺いましたところ、やはり日本の憲法学者の方というのはなべて憲法優位論だというふうに私は印象を受けております。国際法優位ということになると憲法学者である意味がなくなってしまうので、自己否定になるので、どうしてもそういうふうな傾向にならざるを得ないのかなと思っておりますが、ここで私が懸念いたしますのは、アメリカ合衆国憲法の第六条では、既に条約法が国内法、つまりアメリカ合衆国憲法に優位するんだという明確な位置づけがなされている。そういった国家との間で安全保障条約を結んでいる日本の国内の見解が共通の法体系の認識に立っていないというところが一番問題であると思います。  日本の場合は、今までなされてきた議論の主流というのは、あくまでも憲法が優位なんだと、したがって集団的自衛権の行使は違憲であるということなので、基本的な物の考え方、発想が違った土壌でこれからどういうふうに話し合っていくかというのは大変なことだと思います。  そこで、私はまたさらに板垣先生の御意見に賛成なんですが、これはやはり国内の問題として国会の場で私たちが真剣にこれから議論していかなければいけない問題だと思いますし、体系的なまず考え方というものを確立しつつ具体的な一つ一つの事案に対して見解を決めていく、そういった積極的な姿勢が必要じゃないかというふうに考えております。  それから、直嶋先生の方から中国軍事演習台湾海峡における軍事演習の際に反対をした国が幾つかあった、その中にも日本は含まれているというふうな御意見でございましたが、反対を表明したことは表明したんでしょうが、私はこれは十分な抗議ではなかったし反対の表明ではなかったというふうに個人的には認識をしております。  むしろ、日本はあのタイミングで、クリントン大統領が来る前に実にタイミング的にはうまくはかったと思うんですが、インディペンデンスをプレゼンスさせて、アメリカの勢力がどうしても必要なんだ、アジア安全保障のためにはアメリカの軍備力が、それも膨大な軍備力が必要なんだということを日本の国民に訴え、そしてアジア諸国にも同時に訴えていった。そのことによって日米共同声明が当然のことのように表明できるようになった、スムーズに表明できた。そういった背景があったのであって、むしろ日本は非常に意図的に消極的に反対を表明したのではなかったのかなというふうに考えています。  その証拠として経済制裁、例えば無償援助を打ち切るというふうな話は一切なされておりません。池田外務大臣は反対をしておりました、その必要はないと考えると。なぜ必要ないと考えるのかというと、日本はあの軍事演習に対しては反対ではなかった、真意から反対をする意向がなかったからじゃないかと、そのように考えております。  それから、ちょうどそれは言ってみればはれものにさわるような、また中国とかほかのアジアの国に対して政治的に日本は強く発言できなくなっているという何かアレルギー現象のようなものがあって、これはやはり言うべきことを国家として、隣国の一員としては言わなければいけない。特に、ミサイルの射程位置付近は沖縄の大事な漁場でありまして、これは漁民の漁獲の営業損失というようなものも政府は当然補てんするということを考えなければいけないことだと思います。カナダのように全く地理的に離れているところでも強い抗議を出したんですから、日本政府は今後も、今までできなかったのであれば、今後さらにこういうような威嚇外交をするのであれば経済制裁をとるんだというしっかりした毅然とした姿勢をとるべきだというふうに考えております。  それから、田村先生が非常に興味深いことで、アジア諸国からの留学生を日本に受け入れて、しかもその費用については応分の負担を政府があるいは政治がすべきであると。政治がすべきというふうにおっしゃった中には、民間の協力というのも当然要請していく、優良企業の方に募っていただくというふうなことは非常に僕は賛成でございますが、と同時に、私は日本からもどんどん留学生を欧米諸国に、政府また民間の援助でさらに積極的に出していくべきだというふうに考えております。  イギリスでは、フーワズフーという紳士録、亡くなった方の紳士録に、伊藤博文ですとか山県有朋、井上馨といった明治の元勲たちが、一年、一年半と随分苦労なされて勉強していたということがありますので、もっと現代の若者たちは外国に出して、そして私はアジアのそうした留学生たちとの共通項というのは、やはり自分たちも欧米の民主主義の文化を勉強したんだというそうした共通認識、しかもそれを英語を媒体としてこれから意見交換をしていけるような日本人をどんどんふやすべきじゃないかというふうに考えました。そういった意味では、受け入れると同時にこちらからも出すということだと思います。  さらに、板垣先生が御指摘ありましたが、日本人の顔が見えないとよく欧米人から言われると。私も聞いたことがあります。顔が見えないわけじゃありませんで、橋本さんの顔ですとか村山さんの顔は、特徴がある特に村山さんの顔なんかは見えないわけじゃありません、物理的にはよく見えるわけでございますが。やはり、それは歴史を語らないからだという御意見で、私はそれも一理あると思いますが、今日本人が外国に行って英語で日本の文化を、あるいは伝統的なそうした民芸ですとか舞踊だとか芸術といったものについて胸を張って語れる留学生たちが何人いるだろうか、非常に私はそれは不安でございます。  というのは、やはりこれは個人の問題だから自分で本を読んで勉強すればいいだけの話だろうということで片づけられる問題じゃなくて、教育の根本は家庭教育だと私は常々思っていますが、そういうことを子供に伝承できるような親が果たして何人いるだろうかと、私も三人の子供の親でありますのでこの点も不安でありますが、やはり学校教育で受験対策に偏重することなく、日本の伝統文化をカリキュラムの中に入れて教育をしていくという、そういった教育の場での土壌がこれからは必要になってくるんじゃないかな、そのように考えております。  ありがとうございました。
  54. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 アメリカの頭がおかしくなった問題ですけれども、クリントン大統領は四月十七日、共同宣言を発表したときの橋本首相との共同記者会見で、脅威の冒頭にローダ・ステーツ、ごろつき国家を挙げたんです。頭がおかしくなっていないとすれば、血が上り過ぎていたことは明らかだと思うんです。  それから、日本人はだれも再び戦争をしたくないと思っていると。これも私も同感なんだけれども、今度の共同宣言は、アメリカ軍を守るために日本戦争に巻き込まれる危険を強くしている。宮澤元首相は、読売新聞の座談会で、横田基地から戦闘機出撃を認めれば横田基地が攻撃される可能性があるんだ、今後これを踏まえて議論しなきゃならぬと、元首相がそういうことを言っているんですから、そういう危険を持っていると思うんです。  それから、私ども、非核、非同盟を主張しているのは、日本の現代史を踏まえた非常に厳しい国際的責任がそこにあると思う。  まず第一に非核というのは、日本世界で唯一の被爆国だからです。国連総会の第一号決議は核兵器廃絶でしたので、唯一の被爆国として核戦争の悲惨さを最もよく体験している国として、国連総会第一号決議の核兵器廃絶を実現する先頭に立つことは日本国家責任だと思います。  第二の非同盟についてですけれども、私どもが言う非同盟は、日本の場合、軍事同盟には入らない中立という意味も入りますが、日本はあの侵略戦争の体験から、戦後四、五年間は共産党から当時の自由党まで中立が国民的コンセンサスだった時代があります。「忘れられない国会論戦」という最近出た中公新書の中には、中曽根康弘氏が四八年に中立は八千万民族の悲願だといって演説したというのが引用されているわけです。それからマッカーサーも、日本は東洋のスイスになれと言いました。ですから、あの侵略戦争の反省を全国民が行っていた時代は軍事同盟を結ぶなんというのは考えられなくて、外務省も講和条約の準備として四八年ごろまでは中立の外交的準備をしていたと、当時の条約局長が著書に書いています。  ですから、そういう国民的コンセンサスがあった時代があるわけですので、私は、戦後五十年たって、新しい条件のもとで再びそういう国民的コンセンサスを確立する条件が大きくなっていると思うんです。  日本の中立というのは、スイスや北欧諸国の中立、あれは小国が大国戦争に巻き込まれない中立だったんですけれども、そういう中立とは歴史性格を異にしています。それは、大国日本が、あれだけの侵略戦争をやった日本が再び侵略をしないという中立て、絶対侵略戦争を再びやらないという意味の中立て、これは歴史的に非常に新しい問題です。日本のようにこういう経済大国になってこれが軍事大国にならないのは、これもまた非常に新しい問題で、しかし今なりつつあるんですけれども、これだけの経済大国軍事力を持たないで軍事同盟に入らない中立を進むというのは、世界史でも初めてのことです。だから、いろいろ困難はあります。集団的自衛権も当然持てとか山のような意見がいろいろ出てきますけれども、私は、日本の現代史から考えると、困難だけれども、そういう新しい道を進むべきだと思います。  私非常に注目したのは、数年前、グラスゴー大学のラダ・シンハという教授、一橋大学にもしばらく来ていた方ですけれども、著書の中で日本は中立国家になるべきだ、世界のナンバーワンになるだろうということをさまざまな文脈で研究して提言していて、私は非常に我が意を得たりと思ったんです。その新しい中立日本意味は、さらに戦後、インドのネルーが米ソ両ブロックに加わらないという意味の非同盟という問題を提起し、それで非同盟諸国会議がつくられていって、さらに非常に大きな国際的意味を持ち始めていると思うんです。  ですから、日本がこういう経済大国でありながら軍事同盟に入らない中立、再び侵略しない中立の道を選び、同時に非同盟諸国会議に入って、今アメリカ主導の世界秩序ができていますけれども、そうではない新しい世界秩序をつくるということの上で大きな役割を果たし得る。非同盟諸国会議は中小国が多いので、また発展途上国が多いので、やっぱり日本のような国がそういう国際的な努力と力を合わせれば、今だれの目にも見えないような新しい国際的な発展の道が必ず開けるし、日本の進路にとっても非常に新しい道が開かれる。そういう国際的責任日本国民は負っていると、そう私どもは考えているわけです。
  55. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 私は、今、上田先生からるるお話がありましたが、理想を持つことは決して悪いことだと言いませんが、やはり私たちは特に安全保障の問題というのは現実的な選択の中からしていかなきゃいけないと思うんです。  例えば、非同盟諸国に入って日本がリーダーシップをとるべきだ、こういうふうにお話がありましたが、非同盟諸国なるものの性格もちょっとよくわかりませんが、果たしてそういう実体を伴うものになるのかどうか議論があると思いますけれども、このことは別にしましても、私は今の世界情勢アジア情勢の中で日本安全保障条約、日米安保条約を破棄すれば、例えば非同盟に入って何らかの役割をという場合、いろんな大きな役割を期待されて入ることになると思うんですけれども、恐らくそれを果たし得る力はなくなってしまうだろうと。  私は、今の日本経済社会というのは、さっき田村理事から三つのポイントを挙げてお話がありましたが、やはりあの三つをいかに維持していくか、あの三つを維持することによって辛うじて成り立っているんだと。ですから、もしそういう選択をすれば、それはすなわち足元から崩れ去ってしまうことになる。ですから、そこのところのやはり情勢見方が残念ながら大きく異なっているなということを今痛感しましたので、このことだけ一言申し上げておきます。
  56. 林田悠紀夫

    会長林田悠紀夫君) ありがとうございました。議論がいよいよ白熱化をいたしまして、尽きないようでございますが、予定した時間が参りましたので、本日の自由討議はこの程度とさせていただきます。  委員各位には貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。  本日は、アジア太平洋地域における安全保障あり方のそれぞれの項目につきまして活発に御意見を交わしていただきまして、まことに有意義であったと存じます。  本日の調査会を踏まえまして、理事の皆様とも御協議の上、一年目の中間報告書を作成してまいりますとともに、調査テーマに沿ってさらに論議が深められますよう運営に努めてまいりたいと存じまするので、何とぞ委員各位の御協力をお願い申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五分散会