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1996-05-23 第136回国会 参議院 行財政機構及び行政監察に関する調査会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年五月二十三日(木曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  二月十四日     辞任        補欠選任      川橋幸子君      大脇 雅子君     —————————————   出席者は左のとおり。    会 長          井上  孝君    理 事                 守住 有信君                 矢野 哲朗君                 石田 美栄君                 都築  譲君                 伊藤 基隆君                 山下 芳生君    委 員                 井上 吉夫君                 石渡 清元君                 亀谷 博昭君                 小山 孝雄君                 佐々木 満君                 武見 敬三君                 溝手 顕正君                 宮澤  弘君                 足立 良平君                 猪熊 重二君                 常田 享詳君                 大脇 雅子君                 角田 義一君                 小島 慶三君                 山田 俊昭君                 末広真樹子君                 山口 哲夫君    事務局側        第三特別調査室        長        塩入 武三君    参考人        慶應義塾大学教        授        小林  節君        玉川大学教授   川野 秀之君        関西学院大学教        授        平松  毅君        東邦大学教授   元山  健君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○行財政機構及び行政監察に関する調査  (時代変化に対応した行政監査在り方の  うち新たな行政監視制度法的課題に関する  件)  (派遣委員報告に関する件)     —————————————
  2. 井上孝

    会長井上孝君) ただいまから行財政機構及び行政監察に関する調査会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る二月十四日、川橋幸子君が委員を辞任され、その補欠として大脇雅子君が選任されました。     —————————————
  3. 井上孝

    会長井上孝君) 行財政機構及び行政監察に関する調査を議題といたします。  「時代変化に対応した行政監査在り方」のうち、本日は、新たな行政監視制度法的課題に関する件について、四名の参考人方々の御出席をいただき、意見を聴取し、質疑を行うことといたしております。  午前は、参考人として慶應義塾大学教授小林節君及び玉川大学教授川野秀之君に御出席をいただいております。  この際、参考人方々に二言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本調査会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  参考人方々から、「時代変化に対応した行政監査在り方」のうち、新たな行政監視制度法的課題に関して忌憚のない御意見をお述べいただき、調査参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。  議事の進め方でございますが、まず、参考人からそれぞれ二十分程度御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。  それでは、まず小林参考人からお願いいたします。小林参考人
  4. 小林節

    参考人小林節君) 慶應義塾大学小林節でございます。  このように大変重要な課題につきまして、このような国権最高機関でお話しの機会をいただきまして、大変光栄だと思っております。  お手元に既にレジュメをお配りいただいておりますが、それに沿って簡潔に私の見解を述べさせていただきます。  まず、オンブズマン制度議論であります。要するに、現在、行政国家において行政に対する適切なコントロールが十分きいているかということなんですけれども、これは単なる感情的不満は別としまして、最近の官官接待の問題とか薬害エイズの問題とか、さらにさかのぼれば、例のゼネコン汚職の問題などもきちんとした行政に対する統制がさいていなかったからこそ起きていることでありまして、これは何とかしなければならないということで、新しい制度既存制度の運用の問題に工夫が必要であるということになると思います。  そこで、多少大学の講義的で恐縮でございますが、行政に対する既存統制手段の点検を簡単にさせていただきます。  大きく分けて、立法的統制行政的統制司法的統制に分けられると思います。まず、立法的統一制はここ永田町でやるわけでありますけれども、立法作業による統制予算の策定による統制、それから行政の上にいる政治家に対する問責という形での統制請願の処理、それからその関連で国政調査権の行使、いろいろあるわけであります。これはよく言われているように、現在、行政国家化現象の中で必ずしも十分に機能していない、だけれども、私の今の観点として、だからだめだというのではなくて、使い方があるのではないでしょうかという思いで今ここにおります。  次の行政的統制でありますが、総務庁行政監察行政相談典型的にございます。私もそれに関心を持って現場を見せていただいたり比較研究をしたりいろいろやってきたのですが、日常的なマイナーな問題については結構きちんとやっていると思うんですね。ただ、今回、私自身も本当にびっくりしているんですが、官官接待の問題と薬害エイズがその典型でございます。やはり限界があるということを言わざるを得ないと思います。  それはよく言われていることでございますが、総務庁というのは唯一利権官庁でないとか、それから行政監察というのは行政府内権力分立的な位置にあるとか理論上言われますが、私もある意味でうかつにそう講じてまいりました。ただ、実態を見ていますと、さまざまな接触や人事交流の中でやはり一種なれ合い、これは表現が御無礼になるかもしれませんけれども、一種なれ合いの疑いがあるのは事実であろうと今感じております。  それから、行政相談というのは派手さはない、ある意味では権威性に欠ける、意外と知られていない。けれども逆に、全国に五千名余り相談委員がおられて、これは総務庁行政監察事務所バックアップを受けていますから、結構いい仕事をしていると思うんです、資料などを見ても。ただ、これも本質的な問題にぶつかったときさあどうかという、越えていく力に欠けるんではないか。だからこそ、まさに権威のあるオンブズマンが必要だろうという思いに今なっているわけであります。  司法的統制、これはもう御案内のとおり行政不服審査行政府が行う司法的統制でございますが、それとその先の各種訴訟、これは行政事件訴訟にかかわらずいろんな訴訟を利用して必要によっては行政府を追い込む可能性はあるわけです。これは御存じのとおり時間と経費、すなわちコストがかかり過ぎてためらわれる。そして、長い時間がかかったけれども実質的には何の利益もないというようなことが多い。  それから、最近それで心配しておりますのは、この調査会には法曹資格をお持ちの先生方がたくさんおられるんですけれども、判検交流ですね、判事と検事の人事交流の中で妙に行政に対して物わかりのいい裁判官が生まれてしまっている。そういうところに行政事件訴訟を持ち込んで何になるのか。逆に、私などむだだからやめた方がいいと思うこともあるわけであります。実にそういう意味ではこれも一種なれ合い危険性があるという気がいたします。したがって、何か新しくしなければいけない。  そこで、参議院オンブズマンということなんですが、結論として私は賛成でございます、それは今までの限界の中で。ただ、これも御存じのとおり、オンブズマンというのは作用的には三権分立論でいきますと立法作用ではないですね、司法作用でもないですよね。そうすると、やはり行政作用のたぐいでありますから、オンブズマンやり方を間違えると、それは憲法六十五条によって行政権はそもそも一括して内閣に属するわけですから、ここで行政権を行使するわけにはいかないという問題にぶつかると思うんです。そこを、先ほど申し上げたような、でも何かしなきゃいけない、既存制度では思ったほど総務庁に期待できないというような観点考えれば、やはりやり方工夫して参議院に置くのが一番オンブズマンらしいんではないかと私は今思っております。  まず、オンブズマンというのは知名度権威性がないと意味がないと思うんですね。つまり、国民大衆がそのことを知って期待し、その結果をわくわくして見て、それが政治的なバックアップになるわけです。実際、全国津々浦々のなるほどなというような行政苦情に対して、行政相談委員先生方は結構まじめに地元の名士としておこたえになっていますけれども、いかんせんそういうものが知られていない。知られていない以上使われない。使われない以上、たまたま知っている人が使って何かあっても、へえ何なのということになりまして世論のバックアップが生まれてこないと思います。それから、行政相談委員自体全国のいわば現場に五千人広がっているということでありますので、ナショナルな意味での権威性がない。御存じのとおり外国オンブズマンというのは、例えば王宮で何か公式の行事があるときにどの席に座るかということなんですが、現職閣僚相当の席が与えられる。これ重要だと思うんです、こういうことは。今の日本において行政相談委員にそういうものは、もちろん五千人にというわけにはいかない、その代表者にもそういうものは与えられていないというようなことがあります。  したがって、知名度権威性がないんですが、国権最高機関の中の一院で、かつ機能理性の府、良識の府、だから衆議院はその裏返したと申し上げているわけではございませんで、そういう憲政のブレーキ役がその位置として期待されているという意味だと思うんです。そういう意味での良識府参議院に新設しますと、特に今のような官官接待薬害エイズ行政に対する不信感がピークに達しているタイミングをとらえて、きちっと制度化して参議院オンブズマンを打ち上げますと、それは一瞬にして知名度権威性を得るわけであります。これは仕組みの問題であると同時に機能の問題として大きな力になる。  私の比較研究の結果は、やはり知名度権威性がないと実効性が生まれないんですね。そうすると、ただの行財政改革のつもりが一個のむだ金遣いをつくったことになってしまうわけであります。もちろん、これまでの制度と重なるじゃないかという議論はあると思うんですが、重なってもいいと思うんです、ここで何かプラスが生まれれば。役に立つことにお金を使うのはいいと思うんです、今のままでは何も生まれないですから。お金を使ってもいいと思う。そして、改めて重複したところは整理していけばいいわけであります。  それから、行政なれ合いにしないことができるというのは、これは大事にお気をつけいただきたいんです。まさに参議院ならではの功成り名を遂げた方で、これは実に生臭い話で、過度に政治的野心をお持ちでない方とか、それから、これは偉い先生方が御自分で処理するわけではなくて最後に判断するだけですから、材料を整える専門調査員のたぐいの参事官クラススタッフが当然何人か必要になってくる。それが各省庁からの出向者でありますと結局しり抜けになってしまう。これは三権分立及び二院分立の中で、参議院参議院独自のスタッフを育てているわけです。それがすべての行政省庁に対応するような仕組みになっておりますから、人事の登用の際にお気をつけになられること。それからあとは、名誉職ではありませんから働き盛りの一線級民間人を短期任用するとか、そういう工夫をすれば本当に生きるオンブズマンができるのではないか。  そして、二院制活性化というのですけれども、これは衆議院選挙制度が変わったことによって、一見衆議院参議院制度が似てきてしまっている面があります。ただ、もちろん人が違うわけです。それから大きな違いは、これこそ釈迦に説法でございますけれども、衆議院議員先生方というのはいつも総選挙を意識して腰が浮いたような状態で走り回っておられます。それに対して参議院先生方は、六年間身分を保障されておりますのでじっくりと考え事ができるお立場にある。これはまさに良識の府たる、理性の府たる一つの条件なんですね。そういう意味二院制をきちんと生かす。これは政治改革の一環で、立法その他に必ず反映してきます。政治の質を高めるというのも政治改革の目的であったはずであります。それから、その政治改革の先に期待されている、今の時代の要請にかなった力をつけた政治行政の傲慢を許さない行政改革という方向に行くのではないか。  ただ、幾つか注意すべき点が出てきます。党派的対立を持ち込まぬこと。どうせっくつても党派的対立があってだめだろうという議論が出てきますねっこれは、それこそ制度趣旨考えて、国会法とか規則の改正の問題になってぎますけれども、それぞれの会派比例配分ではなくて、ある意味では一定規模以上の会派は対等に同数入れてしまうとか、何かそういう大胆な発想で委員構成をなさるとか。それから、委員にそれぞれの会派議員団長経験者とか賢人会議のような形にしてしまうとか、あるいはそういう方は党議拘束から外すとか、そうすることによって事柄は、つまり本当にお互いに心を開いて事案を見つめれば、おのずと落としどころに落ちていくと思うんです。間違っても党派的対立を持ち込んだらそれは茶番になってしまうと思います。  それから行政相談、イギリスやフランスを見ておりましても、結局、偉過ぎるお方が首都に構えていて偉過ぎて終わってしまうということもあるわけで、やはり地の事情を知らないと困ります。これはいわゆる間接アクセスのたぐいですが、議員紹介というのも一つ方法です。数からいけば議員紹介よりは行政相談委員の方が数がおりますし、それから、議員紹介でありますと現職政治家としてのいろいろな利害関係も出てきますから、むしろ全国五千名の行政相談のボランティアの地方の名士とうまく連携をとるような仕組みをお考えになったら、これは花も実もあるものになるのではないかと思います。  それから、先ほどの行政機能、つまり具体的な行政処分を否定するような処分をやると典型行政権になってしまいますので、これは内閣管轄下に置かないと憲法六十五条違反になります。したがって、そこは国政調査権根拠に、それからその対になるものとして国民の側の請願権根拠にお使いになって、そして、これは権威説得力で物を言う機関のはずですから、何も最終的な結論を法的に押しつける必要は毛頭ないので、勧告と呼ぼうが意見と呼ぼうが報告と呼ぼうがそれはそれでいいと思うんです。要するに、党派的対立を外に見せずに説得力のある結論内閣と世に問えば事はおのずと動いていく。これが本来の賢人オンブズマンあり方であったと思うんです。  そうなりますと、今の制度でいくと調査会任務事項行政苦情相談とかその他の事項を少し書き加えて、メンバーの出し方の例外をつくって、それから勧告とか意見というものを明確に条文の中に入れて、あとは、現在の調査会報告を議長にお出しになるわけですよね、それを当然に内閣にも提出するとか。そういうふうに条文工夫すれば、もちろん常任委員会のする筋の問題でもありませんし特別委員会のする筋のものでもない、一種オンブズマン調査会のようなもので結構簡単に、あと予算の問題でしょうけれども、何かやってみることはできるんではないかと今は考えております。  とりあえず以上でございます。
  5. 井上孝

    会長井上孝君) ありがとうございました。  次に、川野参考人にお願いいたします。川野参考人
  6. 川野秀之

    参考人川野秀之君) 玉川大学川野でございます。本日は参議院調査会の場にお招きいただきまして大変ありがとうございます。大変光栄に存じております。  それで、本日の課題につきまして私の見解を述べさせていただきたいと思います。私はこの二十五年余り間オンブズマン制度を中心にして研究を進めてまいりました。基本的なテーマといたしましては、行政の力が非常に強くなっている、実際上の力というものが相対的に上回っているという、いわゆる行政国家化現象の中におきまして、国会権威を高め、さらには国民のいわばデモクラシー、民主政治についての力を強めるためにはどうすればいいのか、そういうことを考えてきたわけでございます。  そこで、二十五年前にふとしたことから出会いましたのがスウェーデンにおいてつくられておりましたオンブズマン制度であったわけでございます。その後二十五年、結構長い月日がたちました。二十五年前からしますと、このようなところに呼ばれて意見を述べるということ自体まず考えられないことであったわけですが、その点におきましても時代の変遷、あるいは政治状況変化というものが非常に大きかったということをつくづく感じております。  そこで、私は諸外国におけるオンブズマン制度というものの導入状況といったようなものを研究してまいりました。基本的には外国制度についていろいろ研究し、その上で我が国においてどうなのかということを考えていこうという姿勢であったわけでございます。  それで、状況というものがごく最近になって非常に大きく変わったということが言えるかと思います。つまり、過去におきましてこのオンブズマン制度導入をめぐりまして最初に国会議論されましたのは、御承知のようにロッキード事件ということでありました。その段階においては、国民はどちらかというと政治家の方にいろいろな意味合いにおいて懸念をお持ちになっていたと考えられます。ところが、最近二、三年の状況考えてみますと、先ほど小林先生が指摘されましたように、官官接待でありますとか薬害エイズの問題でありますとか、いわば行政の内部にさまざまな問題が存在している。逆に、国民の側からすると、そういったものについて最終的に期待できるのは国会証人喚問しかないといったようなことを述べられる人もおられるようでございます。  結局、国民が国の政治に対して信頼性を確保するためには、現在におきましては国会オンブズマンを置く方が行政部内に置くよりもよろしいのではないか、このように考えを改めるようになった次第でございます。高級公務員倫理観が厳しく問われるようになりまして、また国民政治不信というものから行政不信というものまで発展してくるようになったのが現状だと言っていいと思います。  したがいまして、もう既に十年前あるいは十五年前ぐらいのところでオンブズマン制度行政部内に導入されたのであるならば話は違っていたかもしれませんが、現状におきまして、必ずしも制度が完全に整備されていないという状況において、政府の側が国民に対して誠意を示すためには、国会オンブズマンを置くということが一番賢明なあり方なのではないか、このように考えるわけでございます。  それで、基本的な問題は、これも先ほど指摘芦れた点でございますけれども、現在の行政に対する立法的統制というものは必ずしもシステムが整備されていないというふうに考えられます。つまり、時間の制約というものが大変厳しいということでございまして、質問して答えを受ける、あるいは文書によって検討するということでございますけれども、その内容について、現状においては完全な意味合いにおいて必ずしも国民の期待にこたえることはできないのではないか。そこで、より機能的で実質的な制度を構築することが急務であろうかと思います。  またもう一点、ここ二年間ぐらいの状況でございますが、全国でいわゆる市民オンブズマンと呼ばれる新しい市民運動が高まってまいりました。これは、各都道府県等情報公開条例を利用していろいろな成果を上げていらっしゃっております。特に、最近の状況におきましては、監査委員官官接待の問題等々、いろいろな問題を提起されておられるわけでございます。しかし、このような運動を展開しなければ行政の運営が是正できないということ自体、それが大きな政治問題になってしまったということを意味するのではないかと考えるわけでございます。  したがいまして、現在の総務庁におきます行政監察制度あるいは行政相談制度さらに行政相談委員制度、あるいは会計検査院の制度というものが、実はこのオンブズマン論議が高まるにつれまして、かってに比べますとかなり活発に機能すろようになりましたのは事実であり、それはそれとして高く評価できるものでございますが、同時に、それぞれの制度には本来的な限界があることも事実でございまして、それが逆効果になるということもあるのではないか。また、どのような場所におきましても少数の不心得な人々がいることはやむを得ないことでありますけれども、一人の人間が大きなミスを犯すことによりまして信頼はすぐに失われ、逆に、失われた信頼を取り戻すということにはかなり長い時間かかるということもいわば一般的な事実であると思います。  そこで、その意味からしましても、実は今は一種非常事態であるのではないか。国会にいたしましても、あるいは行政にいたしましても、いわばかなえの軽重を問われているのではないか。それが明示されていないだけかえって問題は厳しいのではないか。したがいまして、お互いどっちの顔を立てるといったような状況ではなくて、双方が協力し合って難局を切り抜ける方策を検討すべきであると考えられます。  そこで、一つの問題は、多様な制度を組み合わせることはむだであり、なるべく一元的な制度をつくる方が国政簡素化に役立つという意見もあるわけでございますけれども、現状におきましては、個別の制度を網羅すると同時に、いわば全体に網をかけるような管轄範囲の広い制度があることが重要ではないかと考えるところでございます。もちろん、制度というものは生きているものでございますから、必要がなくなった制度はその時点で廃止あるいは統合することは当然であります。  したがいまして、国会オンブズマンというものを設置し、また総務庁行政相談制度あるいは行政相談委員制度を強化するということは必ずしも重複ではない同時にそれを行うことによりまして、むしろ救済の網から漏れることのないようにすることの方が重要なのではないか、このように考えられるわけでございます。  そこで、憲法上の問題点ということが出てくるわけでございますが、実際問題といたしましてどうなのか。基本的に、オンブズマンをつくるということはより民主政治を効果的にするということであり、また人権についてのさまざまな問題をなくするということに役立つというふうに考えられます。つまり、本来からいいますと、日本憲法趣旨に沿った制度であるというふうに考えられます。  一つの問題は、憲法においていろいろなことが規定されているわけでございますが、そのうちの特に人権に関する規定というものが完全に現状において保障されているのかどうか。要するに、条文として決められていましてもそれが実際の効力があるかどうかということでございます。したがって、その効力を保障するためにそれを見守る人間が必要なのではないか、その見守る人間といたしましてオンブズマンというものが重要なのではないか、このように考えているところでございます。  憲法上可能かということでございますが、その根拠といたしましては憲法第六十二条の国政調査権というものが妥当なのではないかと考えられます。もちろん、国会国権最高機関でございますから、その限りにおきまして行政に対する監督権というものも保有しているというふうに考えられます。  国政調査権の及ぶ範囲というものは、国の行政は当然といたしまして、もちろん若干例外的な事項があるかもしれませんが、地方公共団体の行政、あるいは国会が制定した法律によって設置された法人、いわゆる特殊法人等の運営にまで及ぶと考えられますので、行政部内の監督機関よりもかなり広い範囲をカバーすることができるのではないか、このように思います。  オンブズマンというのは何なのかということの本質でございますが、これは国会が制定した法律が遵守されること、守られることを確認する機能を持つものである、このように考えます。また、オンブズマン機能というものは、基本的には証人の証言とか記録の提出といったようなもの以外の強制手段は持たない。したがいまして、犯罪の捜査とか裁判所が持っているような各種の強制手段はございませんし、また与えるべきでもございません。  したがいまして、この限りにおきまして、行政権に不当に介入するわけではない、このように考えます。要するに、勧告をするあるいは意見を述べるということでございますので、国会行政に対して勧告をするあるいは意見を述べるということは、基本的に国政調査権の範囲内のものであるというふうに考えられます。  そこで、具体的にどのような形でつくるべきかということに若干言及させていただきたいと思いますが、ここで私は四つほどの考え方を提示いたしました。どれがいいのかということにつきまして、現時点において必ずしも定まった意見はございませんが、ただ一つ言えることは、今の国会機能というものを考えてみた場合に、基本的に衆議院参議院の違いというものが当然に存在する。  一つは、衆議院は第一院である。それを基本的に証明することは、憲法上は内閣総理大臣は国会議員であるということが規定されているにとどまっているわけでございますが、現実問題としては内閣総理大臣は衆議院議員から選ばれると、こういうふうになっているわけでございますね。衆議院議員から選ばれるということは、これは必ずしも憲法上の要件ではないけれども、現実にはそうであると。ということからしますと、逆に、国会オンブズマンを持つと規定して、それの実際の仕事を担当するのが参議院であるとしても必ずしもおかしいことではないのではないか。  理由といたしましては、オンブズマンが仕事をするためにはかなり長期の任期が必要である。したがいまして、途中で解散の可能性のある衆議院よりは、六年間同じ議員の方が基本的に半数はいらっしゃる参議院の方がそういったものを統制するためにより大きな力を持つのではないか、このように考えるわけです。  それともう一点は、第三者を置くことがもし憲法上に問題があるとするならば、参議院議員の中からオンブズマンといいましょうか、そういった仕事をする人を現実につくり、その方につきましては議長さんあるいは副議長さんといったような方々と同様に、必ずしも同様ではないのかもしれませんが、会派から離脱していただいて無所属という立場で仕事をしていただければ、国民の側からいたしましてもそういったオンブズマン職に対する信頼性というものをより一層高めることができるのではないのか、このように考えるわけでございます。  そこで、四点をかいつまんで申し上げますと、一つは、実は現在ドイツの連邦議会に請願委員会という委員会がございますが、この委員会は、国際オンブズマン協会という会がございますが、そこでいわゆる立法府型オンブズマンとして今日認められているものでございます。つまり、国民からの請願に対してこたえる、調査すると。これはドイツ連邦共和国の基本法の第四十五条のCという改正でつくられたわけですが、連邦議会は、「連邦議会に提出された請願および苦情申立てを処理する義務を負う請願委員会を設置する。」と、こういったような委員制度一つ考えられる。  これにつきましては、当然現在の国政調査権というものをより効率的に常設の委員会で常時監督するということでございますので、憲法上の問題はないというふうに考えられます。  それから二点目は、オンブズマンの監督をする委員会を置いて、その附属機関としてオンブズマンをつくる。オンブズマン権威はあるわけですけれども、制度上は委員会の高級な調査員として国政調査を行わせ、その結果を委員会に報告して、それを踏まえて委員会で審議し、法律の遵守について問題があるときは国会内閣に対して勧告するといったような形もとれるのではないか。  それから三番目には、事務総長と並ぶ役員としてオンブズマンを置くということが可能なのかなという気もいたすわけですが、これは若干法律上詰める点があろうかと思います。  それから四番目に、先ほど申し上げましたように、議員の中から選任する複数のオンブズマンというものを置くことが可能なのではないか。これは参議院議員の任期と同様に任期六年、もちろん複数という意味は、半数あるいは少数を三年ごとに改選するということになろうかと思いますが、複数のオンブズマンを置くことはいかがかと。  その理由といたしましては、先ほど申し上げましたように、解散のある衆議院議員では長期間の身分保障ができないということが一点。それから第二点としましては、事実上衆議院議員から内閣総理大臣が選任されるということからいたしますと、それにバランスをとる必要からしまして参議院オンブズマンを置かれる、参議院議員の中からオンブズマンを選ばれるということをされたとすれば、ある意味参議院機能強化にも役立ち、なおかつ国会による行政の監督にも役立つのではないか、このように考えられるわけでございます。  なお、行政部内にオンブズマンを置くということ、これが絶対的にだめだということではございませんけれども、ただ現実問題として、行政部内に置く場合におきましても行政委員会的なものになるべきだとするところからいたしますと、行政委員会というものをなるべく今設置されないという方針があるとするならば、どちらに置く方が早くできるのかということについては、むしろ国会あるいは参議院に置かれた方がより早い時期につくることができ、その結果国民にとっても満足できることが大きいのではないか。特にそれをいろいろな意味で報道しPRすることによりまして、先ほど小林先生も申されましたような知名度権威性が得られるのではないか、このように考える次第でございます。  そういうことで、私の見解といたしましては、国会あるいは参議院オンブズマンを置くことは、いろいろな方策をとり、もちろん法律は整備しなければいけませんけれども、法律、規則を整備することによって十分可能である、このように考える次第でございます。
  7. 井上孝

    会長井上孝君) ありがとうございました。以上で両参考人の御意見の陳述は終わりました。  これより両参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 自由民主党の小山孝雄と申します。よろしくお願いを申し上げます。  きょう、両先生においでいただくことになったもとは、この二月に参考人の方に来ていただきまして勉強をいたしたからであります。  その際に、社団法人全国行政相談委員連合協議会の鎌田理次郎会長さんに御意見を開陳いただきました。その中で、鎌田会長は、オンブズマン制度というのは憲法六十五条の「行政権は、内閣に属する。」から見てまずい、置いてはならないと、国政調査権国会議員のみに付与された機能であって、ほかの者に譲り渡したりまたは委任することはできないんだという御意見を開陳されました。  今、そのときの議事録を参考にお手元にお届けいたしましたけれども、簡単に言うならば、行政権内閣に属するということで、すなわち西欧型の議会オンブズマンという制度は議会の職員に議員の機能を付与するようなものである、あるいはオンブズマンが苦情を処理するため個々の行政官と直接接触しなければならないし、行政の素人が行政に対して勧告権を持つと不都合も起こるし、行政サイ下から必ず不満が出てくる等々の理由であったのでございます。  この点について、今両先生、憲法上問題はないと、こういう御意見をちょうだいしたと思いますが、この鎌田会長の御意見に対するお考えを聞かせていただきたいと思うわけであります。
  9. 小林節

    参考人小林節君) 鎌田先生は個人的には存じ上げております。  これを今読ませていただいたんですけれども、ちょっと意味不明なところがございます。二つあって、まず一つは、国政調査権を職員に委任するというのは、つまりオンブズマンというのは議員以外の方を採用するというケースだけを想定されているんでしょうけれども、私はちょっと前提が違うんです。オンブズマンというのは相当に権威がないと意味のない地位でありますから、議員以外の方にオンブズマンとしてここに来ていただいても民主的正当性に欠けると思うんですね。やっぱり選挙で選ばれた人でないとだめだと思うんです。私は前提をまず争います。  それから、オンブズマンというのは、オンブズマン委員会とかそこのメンバーの先生方が君臨して、最後に賢者が判断をすればいいわけであって、実際その下調べをするのは今だって例えば調査室とかいろいろございますよね、そういうたぐいのものを言うならば、それは議会の権威でやることであり、別に権利を委任したことではないと思うんです。つまり、エイド、補助員として使っているだけのことでございますから、その問題はないと思います。  それからもう一つが、三権分立の建前でいくと国会オンブズマンが個々の行政官と接触することがというような話ですが、それがいけないのであれば国政調査なんかできないわけでありますから、大変失礼な言い方ですが、これも鎌田先生の何か勘違いではないかと私は思います。  以上でございます。
  10. 川野秀之

    参考人川野秀之君) 私も鎌田先生は個人的に存じ上げているわけでございます。  先ほど申し上げましたように、小林先生と同様、私の方も前提といたしまして幾つか説を出しましたが、その中でよりよいものは、委員会という形かあるいは独任制の形かは別といたしまして、多分、議員御自身がオンブズマンになるという形がよろしいのではないかと考えますので、その点からいたしますと、当然に参議院には国政調査権があるわけでございまして、それを実際に実行する仕事を担当する方がオンブズマンであるということであるならば憲法上の問題はないと。  それから、実際に調査をする仕事は調査員にかなり任されると思いますけれども、それは基本的には現行の国政調査調査と同じであると。諸外国オンブズマン調査をする場合においても、行政のお役人と、特に末端の役人と実際に接触して調査をするということは必ずしも多くはないわけでございまして、基本的には文書をもって調査をするという形でありますので、それであるならば国政調査の場合と基本的に変わりはないと。したがいまして、その意味におきましても憲法上の問題はないと思います。  それからもう一点は、国会には国権最高機関として行政を監督するという権限があるわけでございまして、そういった意味から、先ほども申し上げましたように勧告といったような形で意見を表明することは当然に可能である、このように考えます。  以上でございます。
  11. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 憲法上問題がある、こういうふうになりますと入口で論議がストップしてしまいますものですから、あえて前回の調査会の鎌田参考人の御意見についてお考えを求めたわけであります。  それから、続きまして小林参考人にちょっと確認させていただきたいのでございますが、実は利きのうまで、先生の二年前の「日本行政相談制度オンブズマン」という論文、ジュリストの十月十五日号に発表されたのを読んでおりました。それによりますと、「オンブズマン行政府を監視する機関である以上、権力分立の観点から、立法府にオンブズマンを付置すべきだという議論が根強い。しかし、それは根本的に誤っている。」という指摘をされておられます。その理由は憲法六十五条でありまして、内閣管轄下オンブズマンというのは置かなきゃならないということで、いわゆる議会型オンブズマンというのはだめだという御意見であった。  これをもとに実は御質問しようかなと、こう思っておりましたら、きのうになりましてこのレジュメが配られまして、議会型オンブズマンも支持するという大変力強い御意見をちょうだいしたわけでありますが、その辺の経緯についてちょっと明らかにしていただければと、こう思いましてあえてお尋ねします。
  12. 小林節

    参考人小林節君) 混乱の原因をつくりまして、まことに申しわけございません。  まず前提としまして、私は現役の学者でございまして、日々勉強しながら考え事をしてくるくる意見が変わります。それは変節と言われたら大変困る、成長したとお考えいただきたいんです。本当にまじめに考え続けているんです、毎日。ですから、私の得意のいろんな分野があるんです。  しょっちゅう意見が変わって怒られるんですが、必ず理由がございまして、この段階ではオンブズマンというのを行政型のオンブズマン考えていたんです。  その前提としては、総務庁に期待が持てるという前提だったんです、社会的背景として。それから理論的には、ヨーロッパにあるような、びしばし告発したり、あるいは処分の取り消しを要求したり、強いオンブズマン考えていたんです。そうしますと、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、立法作用かな、行政作用かな、司法作用かなと。これは明らかに行政作用なんですね。左らば、まさにこれは内閣管轄下にないと憲法六十五条違反ではないか。  それがなぜ変わったかと申しますと、まず、総務庁あり方を見ていますと、私は本当に心配していますのは、行政改革が終わったら総務庁は仕事がなくなると思っているんではないかというふうな印象、大変御無礼ですが、私は率直にそういう不安と不満を感じているんです。つまり、議論ばかりで先へ進まないんですね、わかり切っていることが。  私もいろんな委託調査とかで責任ある方と接触するんですけれども、本当にわかったと言って帰られて、翌日全然違っていることが多うございまして、ならばこういうむだな、歴史は動いておりますから、特に官官接待とかひどいものが上がってきましたでしょう、それは発想を変えようと最近思っていたところへこの話が飛び込んでまいりまして、改めてレジュメをまとめますとああなってしまいました。  以上でございます。
  13. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 私は決して小林節先生が変節なさったということを申し上げているわけではございませんので、悪くとらないでおいていただきたいんです。  今、参議院オンブズマンを新設することについてはいいことだ、支持するというお考えをお聞きしました。  たまたまけさの新聞に、昨日、新進党さんが憲法問題調査会の初会合を開いたと。そこで講演をなさったようであります。その中に、憲法改正の検討課題として、集団的自衛権の問題であるとか、あるいは新たな人権問題、外国人の人権、私人間人権効力の問題、選挙制度二院制活性化内閣の総合調整能力強化といろいろございまして、その中に行政監察専門員、オンブズマン制度の創設ということも述べられたと、こう新聞報道ではございます。  そうすると、参議院オンブズマンを新設することはよろしい、憲法上もよろしいという場合のオンブズマン制度と、新たに憲法を改正しての対象にしてでもやったらいいよとここで述べられているものと、機能であるとか、ありようだとか、あり方だとか、その点に違いがございますか。
  14. 小林節

    参考人小林節君) まだ頭の中で詰めておりませんが、少なくとも参議院にいい制度ができたら、それを明文化することによって、今ここでやったような、こういうのを置いたら憲法上問題になりますかという議論はクリアできますね。現時点ではその程度のことを考えております。  以上です。
  15. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 私は、憲法などは現状にそぐわなくなったものはどんどん改めていったらいいと、山下先生に怒られるかもしれませんが、そう思っている者の一人でございます。  もう一つ、こういう考えについてはどう思われますでしょうか、両参考人にお伺いしたいと思います。  議会型オンブズマン制度というものを採用したときに、独立性という点で非常に強烈なものになっていったと。そうすると、これは直接民主主義的なものになるんじゃないのかと。国民オンブズマンに苦情を申し立てる、それをオンブズマンが聞き入れる、それをクリアするために、こういう法律をつくれあるいはこういう予算をつけろとかいうことを指示する。そうすると、代表制民主主義に反するようなことになりはしまいかという指摘もあるやに聞いておりますが、こうした指摘に対しては両参考人はどういうふうにお考えになられますでしょうか。
  16. 小林節

    参考人小林節君) 結論は、代表民主制の憲法原則に反しないと考えます。  つまり、直接民主制になると言われるのであれば、それはその人がじかに署名を集めて、何万名そろったから法律をつくれと、それを議長に提出できるようなケースを指すわけでありまして、あくまでも情報を議院に上げて、ここの独自の判断でそこから先は進むわけですから、何らこれは間接民主制の憲法原則に反するものではないと考えます。
  17. 川野秀之

    参考人川野秀之君) 具体的な問題について検討して、その結果、意見国会あるいは内閣に述べるという制度でありますので、その意味合いにおいてむしろ代議制的であろうと、このように考えます。
  18. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 川野参考人にお尋ねいたしますが、さきに配られた、これは調査室が用意してくれた御論文によりますと、十七ページに先生が、「本来は憲法を改正して、憲法上の国家機関とし、場合によっては会計検査院と統合するのが望ましい姿であるかもしれないが、今日の日本では憲法改正は事実上不可能であるので、いわば監査基本法といった法律によって、スウェーデンと同様、オンブズマンを、複数独任制として国会機関として設置し、国政調査権を具体化する機関とするのが適切であるといえよう。」と、こう述べておられます。  そこでお尋ねいたしますけれども、できるかできないかは別にして、憲法を改正して設けられるであろうオンブズマン制度と、現憲法下において法律に基づいて設けようとお考えになられたこのオンブズマン制度上、何か違いが機能等々においてありますでしょうか。
  19. 川野秀之

    参考人川野秀之君) 憲法を改正してオンブズマンをつくるということと法律によってつくることの違いということでございますけれども、これが私のこれまでの過去の意見を若干引きずった部分であろうかと思いますが、これまで考えてきたことの最初は、諸外国の例を引きますと、全部じゃありませんが、大半のものが憲法を改正してオンブズマンをつくってきた。そして、幾つかの国におきましてはオンブズマン法といったような法律をつくってオンブズマン制度をつくってきた。どちらかというと、いわゆる英米法的な国において憲法改正ではなくて法律によってつくってきた、まあフランスもそうですね、という流れがあろうかと思います。  そこで、大分外国の流れに影響されたという点において、憲法を改正してオンブズマンをつくるということが一番筋ではなかろうかと、このように考えてきた時期が長かったわけでございます正するには当然かなり長い隠匿がかかる、あるいは現実問題として、日本ではそれは事実上不可能に近いのかもしれない。そうであるならば、今つくらなければいけない制度憲法を改正してつくるということになるとかなり時間がかかることでありまして、そこまで待てというのが果たしてよいことなのかどうかということにも疑問がございます。したがいまして、法律で先行して後でまた検討すればいいのではないかと、このように考えるわけでございます。  もちろん、憲法を改正した場合にはその憲法の規定によってオンブズマンの権限というものをかなり定めることはできるかと思いますが、ただ、その場合におきましても、余り強力な権限を持つものになりますと、これはオンブズマンではなくてもっと大きな、いわば行政監視官といいましょうか、より強力なものになり過ぎましてかえって権力分立を崩す場合もあり得ますので、したがいまして憲法条文の改正の仕方というものは大変問題になってきます。ただ、これはあくまでも仮定の問題でございますので、現状におきましては法律によりましてつくるということが望ましいのではないか、その内容につきましては先ほど述べたとおりであると。  憲法上の問題というものは、疑問は提起される方はおありであろうかと思いますが、現実問題として、国民のためになる機関をつくることに憲法上の問題があるというのは大変不自由なことでございまして、したがいまして、先ほど若干申し上げましたように、解釈上必ずしも問題点は大きくない、あるいは問題点はないとするのであるならばつくって、その結果としてそれが人権の保障あるいは国民の不満の救済、そういったことになればより民主主義は効果的になるのではないかと、このように考える次第でございます。
  20. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 ありがとうございます。  十九日の日曜日ですか、人事院が平成七年度の国家公務員法第八十二条に基づいて懲戒処分を受けた職員の数、省庁別にどういう人たちが受けたかということの発表がありました。全体で千四百十人の人が懲戒処分、免職、停職、減給、戒告を入れまして千四百十人の人が受けて、昨年に比べまして百五十人ふえたという報告でございます。  これを省庁別に見まして、非常に興味深かったんですが、郵政省が全体の八七・二%、九割近く、千二百二十九人の人が懲戒処分を受けたと。その次、法務省が六十五人、文部省が二十一人、厚生省が二十人。そうすると、この四省は職員の数にちょうどこれまた比例するようなことでございます。職員の数が多いとそれなりに、さっき川野先生がおっしゃいましたけれども、どこにでも不心得な人はいるわけで、しかも郵政省の現業の人がほとんどなのでございます。そうすると、目の前に印紙が通る、切手が通る、郵便貯金が通る等々、やっぱりそれが通るときにふと心が動くと、こういうことなんだろうなという気もいたします。決して郵政省を批判するつもりはないんですけれども。  しかし、おもしろいと思いましたのは、郵政省は早くからそういうことを想定していたんでしょうか、この四省の中で郵政省だけが内部監察制度を設けているのでございます。三十一万人の職員の中で一千二百人の人が内部監察の業務に当たっている、にもかかわらずこれだけ、割合にすれば一番多い人が残念な結果になっているということは非常に興味深いなと思いました。  さらにまた、全国的に有名になった大蔵省、これは数は十一人と少ないのでございますが、それでもやっぱり六番目になりますね。  こういうことでありまして、これを見たときに、行政組織の内部の監察、総務庁の監察の業務に携わっている皆さん、監察局の皆さんは大変一生懸命やっていらっしゃると思います。また、そんな職員の不正だけじゃない、行政相談を通じて数十万人の国民の苦情を受け付けて処理をするという、こういう大きな立派な仕事もしていると思いますけれども、公務員の不正等々、これはゼロには私はならないと思います、人間の社会は。ならないと思いますけれども、少しでも少なくするためにはやはり内部監察だけではちょっと足りないのかなと。外部からの強権力といいますか、独立性を持った、権威と権限を持った外部からの監察制度が必要なんだろうな、その資料にしなければいけないのかなと、こう思ったわけであります。  その点についてちょっと両参考人の御意見を聞かせていただければと思います。
  21. 小林節

    参考人小林節君) 私も今の資料、初めて聞かせていただいて、実になるほどと思いました。  それで、最後に先生の言われたとおり、行政監察が現時点でそれなりに機能していることは私も認めます。ただ、官官接待とか薬害エイズとか、こういう本当に根本的な問題が出てこなかったことは、総務庁というのは行政の内部ですから、やはり現に行政の内部の勧告はだめだったということのあかしてございます。まさに先生の最後のお言葉で、外部からの権威と権限、とりわけ諸国のオンブズマンを見ていますと権威がやはり物を言うと思うんです、権限よりも。それは、何とか官であることよりもむしろ国民的な人気者であること、尊敬されて人気者、そういう意味では選挙の洗礼を経てきているということと、それから院の権威を背景に持っているということ、これは何とか官ではない大きなメリットだと思います。  以上でございます。
  22. 川野秀之

    参考人川野秀之君) 懲戒処分の問題につきましては、根本的にはもう一つ検察庁がしっかりしなくちゃならない問題だと思います。  そこで、内部監察というものに限界があるということは確かに御指摘のとおりでございます。したがいまして、こういったものをばったばったと切ってしまうことが果たしてオンブズマンの仕事なのかどうかということについてはいろいろ議論があるところだと思います。いずれにしましても、こういった問題をより政治的な問題にしないがためにもオンブズマンの効用というものがあるのではないか、このように考える次第でございます。
  23. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 ありがとうございました。  調べてみましたら、古い話でございますが、終戦後、昭和二十六年の第十回国会から昭和三十一年の二十四回国会まで衆議院行政監察特別委員会というのが設けられた時代がございました、参議院にはなかったようでございますけれども。  その委員会の目的というのは、「国の行政が適正かつ能率的に行われているかどうかを監察し、以つて立法その他国政の審議に資するため」ということで、事務局体制もございまして、事務局長一名、五部体制になっております。調査員が三十二名配置されて、五年間にわたって活動した。  何かこの前身は、終戦直後新憲法になって二十二年の第一回国会に配給物資等の隠匿物を取り締まるため設けられた委員会、それを受けてこういう衆議院行政監察特別委員会というものがあったということに非常に興味を持って少しく議事録等も読んでみたのでございます。その前身であります委員会で隠匿物、配給物資等を隠したとか横領したとかということを主に取り上げて盛んにやっておったということをかいま見たわけであります。  私は、この衆議院行政監察特別委員会というのは、我々の今これから模索して何か新しい制度をつくっていこうという大きな参考になるかなと思って読んでみたのでありますが、しかし、これも時代の流れとともに立ち消えになっていったわけでございます。  オンブズマンの特性であります独立性、あるいはさっきから出ております国政調査権に基づく調査権あるいは勧告権、ちなみにこの行政監察特別委員会勧告権まで持っておったということが記録されておりますが、そうした属性、特性等々も考慮して、日本オンブズマン制度といいますか、日本オンブズマン制度のあるべき姿としてどんなイメージを両参考人はお持ちであるかお聞かせをいただいて、私の質問を終わらせていただきます。
  24. 小林節

    参考人小林節君) これまでの見解を改めてブリーフさせていただきますが、参議院調査会一種としてオンブズマン会議を置き、党派の議席数にかかわらず委員を構成し、そして強力な専門調査スタッフをつけて、機能国政調査及び請願対応のようなことをし、年次報告書をつぐり、それを議長と内閣に必ず出す、それから、世間に公表し、案件別の結論勧告勧告という言葉が角が立つならば意見とするという考えでございます。
  25. 川野秀之

    参考人川野秀之君) 参議院調査会には証人喚問権がございましたでしょうか。ちょっと質問なんですが。
  26. 井上孝

    会長井上孝君) ありません。
  27. 川野秀之

    参考人川野秀之君) ありませんですね。したがいまして、調査会ではなくて常任委員会あるいは特別委員会の方が私はベターなのではないかと考えるわけでございますが、でき得れば常任委員会という形で参議院に置く、常任委員会は必ずしも衆議院参議院では同じものを置かなくちゃからないということはないと思いますので、参議院に置くと。そこの中においては、先ほど小林先生も申されておりましたように会派構成ではなくて、その議員さんのさまざまな専門的見地から適当な方を委員に選ばれまして国政調査を常設的に行う。もちろん、その委員会には十分なスタッフを完備して、実際に委員会の審議が行われるまでにそのスタッフによりまして事前に十分な調査を文書あるいは実地踏査等々で検討する、こういう形がよろしいのではないかと考えるわけでございます。  これは別な話でございますが、実際に総務庁の方でも日本型の行政部内のオンブズマンというものをお考えであったようでございます。実際問題、一昨年、実はこの制度とほとんど同じ制度が韓国においてつくられたわけでございまして、そういった意味で、日本と韓国というのはお隣の国でございますのでいろんな意味で風土が似ているのかもしれませんけれども、もう既にオリジナリティーはなくなってしまった。したがいまして、現状においてはむしろ参議院に置く方が日本独自のオンブズマン制度によりなるのではないか、このように考える次第でございます。
  28. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 これでやめようかと思ったんですが、今委員会の話が出ましたのでちょっとお尋ねさせていただきたいのでございます。  先ほど私が申し上げたジュリストの中に、行政オンブズマンというのは既に日本にあるよと、総務庁総務庁長官の諮問機関としての行政苦情救済推進会議というのがあるよということを小林先生が指摘されました。ただし、それは欠点があると。それは、その会議のメンバーが全部大物の法律家だけで構成されている点であろう、こう指摘されまして、有効に機能するためにはこういう人をということで具体的に挙げていらっしゃる。非常に参考になると思うんです。もはや利権に関心のない引退した政治家。したがって、先生方はどんな立派な方でもオンブズマンにはなれないというわけでございますが、行政実務のベテラン、例えば元事務次官、経済人、行政相談委員団体、先ほど私がお尋ねしました全国行政相談委員連合協議会なんかの代表、それに法律家といった構成が自然であろうと、こう書かれまして大変的を射た御指摘であろう、こう思っておるわけです。  川野先生、常任委員会と今おっしゃられたので、そうなるとこうした人たちはその中に入れないわけでございます。ですけれども、常任委員会にしたときには私が先ほど申し上げました衆議院でかつて設けた委員会のようになりはしまいかなと。そして、この委員会は絶えずやっぱり政争の具にされたという歴史を持っております。政治的な中立性を保つという点において難点がありはしまいかなという気がいたしますが、その点をお尋ねして終わりにさせていただきます。
  29. 川野秀之

    参考人川野秀之君) 中立性の問題というのは確かに非常に重要な問題でございまして、もう一つ考えましたのは、先ほど申し上げましたように複数のオンブズマンを置く、この方々会派から離脱して無所属でやっていただく、こういう二つの方法考えました。  三つ目には、オンブズマン委員会の下にオンブズマンを置くという方法考えたわけでございまして、その場合には当然今述べられたような方々がよろしいのではないかと思うわけでございますけれども、そういった幾つかのメニューの中でどれがよろしいのかということを判断していただくのは、これこそ国会の仕事でございますので、このような形がありますと申し上げるのが私の役目であろうかと、このように考えます。  もちろん、中立性の確保ということは非常に大事な問題でございますので、これは衆議院よりは参議院の方がベターであると。前の特別委員会が政争の具とされたのは時代的な環境もあろうかと思いますが、同時に衆議院というまさに政争をやるべき議院において設置されたからであるわけでございまして、参議院の独自性ということをお考えいただければ、参議院委員会としてつくる、あるいは参議院議員の中からオンブズマンを選ぶという形でよろしいのではないかと。  だれを選んだかということは、これはまさに国民によって問われることでございまして、政争の具になるような委員あるいはオンブズマンを選んでしまえば、これは逆に、それこそそういった者を選んだ国会というものがまた国民から見放されるということにならざるを得ないということでございまして、賢明な参議院としましてはそうならないように最も適当な方を選ばれるであろう、このように考える次第でございます。
  30. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 ありがとうございました。
  31. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 平成会の猪熊重二と申します。本日は、小林先生川野先生、有益なお話を大変ありがとうございました。時間が十九分、わずかな時間ですが質問させていただきます。  まず、小林先生にお尋ねしたいのは、先ほど先生からいろいろお話をお伺いしたんですが、オンブズマンのイメージがどうもちょっとはっきりしないというか、よく理解できない面があるわけです。  と申しますのは、何か先生のお話を伺っていると、一口に言えば、このオンブズマン制度というものを苦情処理というふうな観点から想定しておられるのかなと。もし苦情処理というふうなことだと、請願を受けていろいろそれを調査し、その結果を勧告するなり、あるいは報告でも意見でもよろしいとおっしゃられました。先生がどのようなオンブズマン制度というものをイメージしておられるのか知りませんが、国民からの苦情を受動的に受ける機関というふうに考えられるんですが、そのように理解してよろしいわけでしょうか。
  32. 小林節

    参考人小林節君) 普通のオンブズマンを想定しておりましたので、説明が不十分で申しわけございませんでした。  当然二つ入り口があると思います。つまり、苦情を受け付けてその事案処理から制度改革に入っていくものもあれば、オンブズマン会議の方がこれはおかしいのではないかと気づいて職権で調査を始めていくという二つの系統があると思います。  それでもう一つは、イメージの問題で申し上げますと、結論として合法違法の問題になってしまうこともあると思いますが、それよりも、基本的には当不当の問題をいわば天下のお日付役のように改革提案をしていくことになろうと思います。
  33. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 今のに関連するわけですが、そうすると、先生の考えておられるオンブズマン制度というのと、いわゆる議院の持っている国政調査権との関係をどのようにお考えになっておられるんだろうか。  と申しますのは、川野先生のお話ですと、このオンブズマンは証人の喚問ないし記録の提出等までは当然前提にしておられるように話をお伺いしたんです。もちろん両先生とも、さらにこのオンブズマン制度が告発権だとか訴追権だとかというものを持つことはないようなお話でございますけれども、小林先生の場合にイメージされるオンブズマン制度というのは、議院の国政調査権との関係で、証人喚問あるいは記録の提出等についてはどの程度の権限行使の方法をお考えになっておられるんでしょうか。
  34. 小林節

    参考人小林節君) まだ考え途中ではございますが、実効性ある調査をするためにはやはり証人喚問権、これは立法政策の問題でありますから、仮に一種調査会にするとしてもそれは与えればいいことであると私は思っております。ただ、そうしますと今度は、そこから先、偽証とか宣誓拒否の告発の問題まではまだ思いが固まっておりません。  ただし、別の点を申し上げますと、ある意味ではこれまでの国政調査権の焼き直していいと私は思っております。つまり、何かオンブズマンという目新しいことをすることによって、これも政治改革の一環ですが、国会の姿勢が変わるだけではなく国民の方も主権者としてのかかわり方を変えなきゃいけないので、ふっとこっちに目を向かせるという歴史的なきっかけになれば。環境はまさに行政スキャンダルが今噴出しておりますから、そういうときにこっちを向かせる、実は同じものを衣をかえて出すようなことであっても私はいいと思っております。
  35. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 川野先生にお伺いしますが、川野先生のお考え国政調査権というものを基盤に置いたオンブズマン制度というのをお考えのようにお伺いしたんですが、ただギインという言葉がハウスの議院と両方ありますのでハウスと申し上げますけれども、ハウスの有する国政調査権を、現在は国会法によって委員会も有するという形になっております。しかし、このオンブズマン制度をとった場合にハウスの国政調査権が、どのようなオンブズマン制度にするかは別にして、包括的・全面的にそのようなオンブズマンに委譲というか委任されることは憲法上非常に問題があると私は考えます。  そして、先生が今オンブズマンの形態はここに四つぐらい考えてありますと、この中のどれを選択するかは当事者の問題だと、こうはおっしゃられるんですが、一番最初に国政調査委員会のような、現行の常任委員会と同列の一つ委員会を置くというふうなことも考えられると、私もそれはそうだろうと思うんです。  ただ、そうした場合に、では現行の、現在ある常任委員会国政調査権は何しているんだという問題になってくるのだろうと思うんです。現行の各委員会は国政調査権国会法によって付与されて、理念的にはいろいろ頑張っているはずなんです。ところが、現行の委員会がしっかりやらぬものだから、それと同列の常任委員会をさらに置くということの相当性、妥当性という問題が一つ出てくるんじゃなかろうか、この点が一点です。  それから、今度は各議院に役員として議員以外の者からオンブズマンを選任するとか、あるいは参議院に議員から選ぶ複数のオンブズマンを置くという三番目、四番目のような形になってくると、先ほど申し上げたように、もしこのオンブズマン制度がいわゆる国政調査権を持つようなことになると、憲法国政調査権の全面的・包括的な付与とか委任とかそんなところまで予定していないんじゃないかという疑問点が出てくると思うんです。これが二点目なんですが、それぞれについて御意見をお伺いしたいと思います。
  36. 川野秀之

    参考人川野秀之君) 大変的確な御質問であろうかと思いますが、まず第一点としまして、イメージといたしましては国政調査権をすべてこの委員会にゆだねるということでは必ずしもございません。基本的にこの委員会がやることは何かというと、国民からの苦情に対応して、まあ請願ですね、国民からの請願に対応してそれを検討するということが一点。それからもう一点は、具体的な政策課題ではなくて、行政国民に対して不当な行為をしたということについて、それが妥当であるかないかということを検討することがオンブズマンの最大の目的であります。要するに、個別の行政分野について、政策形成のためにあるいは立法制定のために国政調査を行うということは、これはもちろん当然別個に存在し得ることでございまして、何も常設の委員会をつくったからといってそこにのみ与えるということではないということでございます。言葉が足りませんで失礼いたしました。  それから第二点。役員あるいは議員の場合についても同じことが言えるわけでございまして、基本的には国民からの問題に柔軟に対応するということが一点。それから二点目は、他の委員会等々が検討されていない重要な行政課題があった場合に、それを委員会のイニシアチブで調査することが可能なのではないか。特に、各委員会のいわば枠を超えたような問題があった場合にそういうことが必要なのではないか。要するに、行政全般に関係する問題がもし提起された場合に、それは内閣委員会の仕事なのかもしれませんけれども、基本的にはそういうことにタッチしてよろしいのではないか、このように考えるところでございます。
  37. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 あとは私の考えでいることについてちょっと御意見をお伺いしたいと思うんです。  まず、オンブズマン制度をつくろうということは、基本的に現在の非常に技術化、肥大化して、総体的に国民の目から見たら何もわからぬ巨象のような行政機関、この行政機関行政執行を監察するというところにあるだろうと思うんです。  今のような行政のありようというものはなかなか外から見たのではわからないという意味において、もう少し行政機関内部からの、言葉は余り妥当でないのですが、内部告発的な問題を受け付けないとそういうふうにならぬ、外から見たのでは何をやっているんだかわからぬという面が非常に多いと思うんです。エイズの問題だって何をやっているんだかわからぬ。随分国会で表立っていろいろやってもわからぬ。ようやくここのところ少し見えてきた。要するに、行政官僚の中にも行政執行についていろんな不満やあるいは違法性を認識している人もいるだろうと思うんです。そういうふうな行政内部からのオンブズマンに対する意見具申とか、あるいは先ほど申し上げたように、余り妥当じゃないんですが、内部告発というふうな問題、この辺をどうお考えなんでしょうか。  どうも日本人の考えからすると、内部告発というと何かスパイみたいだ、裏切りだと。しかし、今そのぐらいにしないとこの肥大化した行政を外から見ていたのではぐるぐる回っているだけで何もわからぬというふうにも考えるのですが、簡単で結構でございます。それぞれの先生から、そういうのはよした方がいいとか、ちょっとは考えてみようとか、お伺いしたいと思います。
  38. 小林節

    参考人小林節君) 内部告発と言われるお気持ちは私もわかるんですが、ただ、印象としては日本人の民族性に合わないような気がします。やはり、世の中が暗くなってしまうような気がいたします。  でも、あの状態をどうするんだということでございますが、それはやはり今回も当事者が果敢に頑張ったということと、それに世論がついてきたこと。それから、ある意味では素人である特権をフルに行使された大臣の個性があったと思うんです。ですから、内部告発よりは私は素人の殴り込み、それを世論がバックアップするという形の方が明るいと思うんですね。  そういう意味では、まさに新しくぱっとオンブズマンができましたという話題性で民意を巻き込んで迫っていく方が私はいいと思います。  以上でございます。
  39. 川野秀之

    参考人川野秀之君) 当事者にはやはりさまざまな利害関係があるわけでございまして、中立の第三者が意見を持つということ、これが重要であろうかと思います。  その意味で、内部告発という形はいいのか悪いのか。要するに問題は、その内容が正確なものである場合もあればそうでない場合も当然にあり得るということでございまして、そういったものがあったからすべて問題があるとは必ずしも限らない場合もありますし、またやむにやまれぬ事情で出されたということもおありでしょう。  したがって、そういったものにつきましても基本的にはオンブズマンが内容を検討し、問題があると思ったときにはそれをみずからのイニシアチブで調査するということ、言葉を多少不正確に伸うかもしれませんけれども、それは要するにみずからの意思で検討するかしないかを決めると。  基本的には、やはり本来はそういったものよりはより明らかにされた形が望ましいんでしょうけれども、ただ、もちろん事情によって自分の身分、姓名を明らかにできないということもあろうかと思いますので、その場合はいわば例外的なケースとして検討する、これはむしろ具体的な規則、運営の問題であろうかと思います。
  40. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 もう一つ私見を申し述べたいと思うんですが、地方自治体の住民は直接請求権を持っているわけです。会計監査ならば監査請求もあるし、あるいは議員のリコール請求権もあれば条例制定権もある。要するに、このように地方自治体においては住民に直接的な権利を与えている。ところが、国民には国家に対する、特に行政府に対する直接請求権が何もない。この辺の問題、現行憲法のもとにおいても法律を制定すれば当然になし得るのかどうなのかというふうな点をお伺いしたいのが一点。  あともう一つ、お二人の先生から参議院オンブズマンにかかわる制度を置いたらどうだと、こうおつしゃつていただいたんですが、もし参議院に置くといった場合には国会法を改正しなけりゃならない。ところが、国会法を改正するためには衆議院がうんと言わなきゃだめなんだ。しかし、憲法の五十八条二項には、両議院はおのおのその会議その他の手続、規則を定めることができると書いてある。できるというよりもむしろ各議院は、ハウスはハウスで定めろと憲法は書いてある。にもかかわらず、仮に今参議院オンブズマン制度を置こうとした場合に、衆議院がうんと言わぬと身動きできぬという国会法の規定は、この憲法五十八条二項の趣旨に照らして非常に違憲の疑いがあると私は思っているんです。  その辺、もう時間がありませんので、憲法五十八条二項と国会法との関係についての御意見を、もしよろしければ一言だけお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  41. 小林節

    参考人小林節君) 二点申し上げます。  まず、衆議院の賛同が必要ならば、これは政党政治でありますから、得る努力をなさったらいかがというのが一つです。  もう一つは、私はこの事例が憲法違反になるとは思いませんが、まさに先生のような一流の法律家がこの場にもおられてそれを深刻にお感じになるのであれば、よき先例をおつくりになったらよろしいと思うんです。つまり、国会法の改正がつまずいたら世論に訴えた上で、規則制定権を行使して独自のオンブズマンをおつくりになるとか、それも一つ政治改革だろうと思います。  以上でございます。
  42. 川野秀之

    参考人川野秀之君) 基本的にはオンブズマンという制度が説得をもって旨とする制度でありますので、参議院衆議院を説得できないという形であるならばそれ自体権威ということに問題が出てくる可能性もあるわけでございますが、国民の世論を喚起して、世論というものを味方にしてやればできるのではないか。  その場合に、いわばバランスの問題として、衆議院内閣総理大臣を出している。それに対して、参議院はその対称としてこういう機能を持つということであるならば、一つの説得の材料にはなるのではないかということでございます。  いずれにいたしましても、国会法というものが憲法五十八条二項とどうなのか。要するに、各議院の自律権とどうなのかということは確かに大きな問題であります。ただ、国民の側からいたしますと、議院規則でつくるものよりは法律でつくったものの方がより効果がある、期待感を持てるということは事実だろうと思います。  ただ、制度上の問題としましては、先ほど申しました委員会あるいは調査会という形であるならば、当然参議院規則でつくることは可能なのではないかと考えますが、私自身は小林先生ほどの憲法の専門家ではございませんので、小林先生意見に従いたいと、このように思います。
  43. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 どうもありがとうございました。
  44. 大脇雅子

    大脇雅子君 両先生が参議院議員のオンブズマン一つオンブズマンの形として提案されたことに実は一種のショックを受けております。  と申しますのは、私はこちらに参りましてまだ三年有余ですが、各委員会の審議のあり方にどうも納得がいかないものがございます。といいますのは、一つ委員会は閣法の審議と政府とのやりとりに終始いたしまして、法律の実施状況、あるいは通した法律に欠陥はないかという審議、それから時代変化に対応して新たなる立法が必要かという、いわゆる議員同士の議論というのが全くないと。本来、選挙民に選ばれた議員であるならば、まさにそこに中心が置かれるべきではないかというふうに考え続けているものです。そのためには、調査室もあり、法制局もあり、専門的ないわば伝統工芸の世界とも言うべきほどに精級な作業をしていただけるところがあるわけでございます。  したがって、私は議員というものは常にオンブズマン的でなければならないというふうに考えていたものですから、さらにまた議員オンブズマンというアイデアを伺いますと、何か自戒を込めて、私ども議員が何をやっているんだと言われているのではないか、反省しなければならないのではないかと、実は先生方のお話を伺ったわけです。  しかし、そういう中で議員がオンブズマンの形でなければならないとすれば、現在、国政調査権が十分に機能していないということと、それから縦割り行政の中で、大きな視野で国政を批判することができないということとか、あるいは請願というものが本当に形骸化していて、国民の声を私どもが受けとめるというには制度的な欠陥があるというふうに実は考えなければいけないのではないかと、お話を聞きながら考えていたわけです。  先ほど猪熊議員がおっしゃいましたように、オンブズマンというのは何のために置くのかと。参議院の第三特別調査室調査したところによりますと、オンブズマンという名称は、不法行為によって被害を受けた者にかわって不法行為者から補償金を取り立てるために中立の団体から選任された者というのがオリジンである。そして広義には、本人にかわってその利益を守るために行動する代表者、代理人、弁護今後見人というふうに定義をされているんです。  私はオンブズマンに大きな夢を持っておりますので、この定義に根差して今議会に必要だとすれば、小林先生がおっしゃったようにオンブズマンは本当の生活に根差した知識を持っておられる賢者とか知の人というものが選任されるべきではないかというふうに思います。二十一世紀はNGOの時代だと言われておりますように、やはり今必要なのは、オルタナティブな新しい発想に基づき、そして、見えなかった今までの実態を専門性とグローバルな視野でもってとらえる人たちが国政にいかに関与してこられるかだというふうに私は思うわけです。  そういう考え方のオンブズマン制度というものについて、先生方の御意見をぜひ御教示いただきたいと思います。
  45. 小林節

    参考人小林節君) オンブズマンのイメージの問題ですが、既存のどんな制度でも、やはり違うところがあるとすればそれは今言われたまさに人の問題だと思うんです。  それで、賢者、知の人と言われて、私も全く同感で、まさに知識と経験と知恵を三つ兼ね備えた人だと。これはお世辞ではなくて、議員名鑑などで記録を見ていますとちょっと平均年齢が高いですけれども、まさに参議院というのはそういう方がある意味でたどり着くところという面もあるわけでありまして、既存制度をうまく工夫して簡単に今オンブズマンをつくるとしたら、やはりここに立ち上げるしかないというのが印象でございます。
  46. 川野秀之

    参考人川野秀之君) まさに議員自体が常にオンブズマン的な性格を持たなくちゃならないという御意見は大変心を強くしたところでございます。実際問題としまして、イギリスあるいはアメリカ合衆国におきまして、オンブズマン制度導入すべきかすべきでないかという議論が議会でなされたときにそういう問題が提起されたように伺っております。  それで、参議院の内実につきましては私は存じませんけれども、ただ問題は、ある人から言わせますと、今ある意味で形骸化していると考えられるような制度がありまして、それを大いに活用して物事が大きく変わるということであるならば、それを十分に活用して国民のためになるようにさまざまなことを行うということは、むしろ国会あるいは参議院の責務であるというふうに考えますが、ぜひ早急に制度導入に至ればこの上もない幸せであると、このように考えるところでございます。  また、実際問題として、参議院にはいろいろな経験をお持ちの方がいらっしゃいます。この中にはさまざまな分野でさまざまな仕事をされ知識と経験豊富な方もいらっしゃいますし、また、実際に庶民の代表といいましょうか、普通の国民意見を十分に踏まえて検討できる方もいらっしゃると思いますので、そういった方々が必ずしもその知識と経験を十分に生かせない制度であるとするならば、それは改正してよりよい制度に変えるべきだと、このように考えるところでございます。
  47. 大脇雅子

    大脇雅子君 オンブズマン説得力を持って権威を確立して新しい分野を開くとすれば、まず行政権に対する限界においては、立入調査権を持って公文書や公文書のファイルを全部見ることができるという権限を付与する必要があるのではないか。  それからまた、私はスウェーデンにおいて平等オンブズマンや子供オンブズマンの実態を調査したことがあるのですが、この人たちは不正があると思えば裁判に、提訴権を持つことができるという意味で司法とも連携を持っている。  この二点、こういう権限を付与すべきことについてお尋ねをして質問を終わりたいと思います。
  48. 小林節

    参考人小林節君) 結論としては何かちょっとそぐわないような気がいたします。つまり、ヨーロッパのように法律で切った張ったに国民がなれている民族なら別ですが、我々のような風土の中でそれをやると、何か新しい怖い別働隊の検察官ができたみたいで、逆に言えば重みがなくなってくるわけであります。将来的にそういうこともあるかもしれない。現時点では第一段階として、まずは権力ではなくて権威で語る程度からお始めになって、そこでもしいければ結構、いけない場合に、限界があったらさらに強権をというふうにお考えになるのがいいかなと今思っております。  以上でございます。
  49. 川野秀之

    参考人川野秀之君) スウェーデンという国はまさにオンブズマンの国でございまして、多種多様なオンブズマンがございます。  先ほど大脇先生がおっしゃいましたように、オンブズマンという言葉自体は本来必ずしも国の役職に限ったことではございませんので、さまざまな意味合いにおいて法的な代理人あるいはさまざまな団体の代理人等々もオンブズマンである。そういった意味からしますと、本来の意味はスポークスマンというような言葉に近い状況もあるわけでございます。  そこで、政府関係のオンブズマンに限って物を考えますと、議会オンブズマンと他のいわゆる特殊オンブズマンとは必ずしも性格が同じでないということが一点。  それからもう一点は、スウェーデンの国政機構といいましょうか、行政機構というものはかなり特殊である。ただ、その方向性に例えばイギリス等も向いているんじゃないかということは、前々回の片岡先生のコメントの最後の方で行政官庁の独立性、エージェンシー性といったようなものを申し上げられたところで感じたのでございますが、スウェーデンの場合には行政官庁というものは内閣からも基本的に独立している。内閣から独立しているから国会がチェックしなくちゃいけないというのが基本的な状況であります。  それから、確かにスウェーデンの場合、議会オンブズマンにも訴追権はございますが、これはほとんどいわば伝家の宝刀であって、実際には出さないことが意味を持つというような状況である。  あとの特殊オンブズマンは基本的には行政部内型になるかと思いますので、行政部内型のオンブズマンが訴追権を持つというのは別段問題はないというふうに考えるところでございます。  したがいまして、我が国の国会オンブズマンを置く場合に、それが訴追権等々を持つことが果たして妥当なのかどうか。確かに、証人喚問の場合の偽証というのはまた全く別な問題でございますが、不法行為があったということがはっきりした場合に、それを訴追することまでが国会の仕事なのか。基本的には勧告という形で行政にそういうことは任せる。要するに行政がそれをしなければ、世論を味方にして行政のかなえの軽重を問う、こういう形が望ましいのではないか、こういうように考えるところでございます。
  50. 山下芳生

    ○山下芳生君 憲法上の問題を整理するために、改めまして両参考人に聞きたいと思います。  国会オンブズマンを置いた場合、憲法上疑義が生じるのは、その議会オンブズマンがどのような活動を行いどのような権限を与えられた場合に憲法上疑義が生じるとお考えなのか、できれば憲法条文もお示しいただきながら説明を願えますでしょうか。
  51. 小林節

    参考人小林節君) 憲法の六十五条に「行政権は、内閣に属する。」とありますので、議会オンブズマンが個別具体的な行政処分の当不当などを結論として、場合によっては取り消すとか、そういうようなことをすると行政権さん奪の問題になると考えます。  それから、いろいろな行政苦情処理の問題には境界線事例がございまして、これは国政調査権限界そのものなんですが、裁判とか行政不服審査に関する苦情が持ち込まれて、それをうかつにもし受け付けて、それは結論が不当であるというような決議、何かそんな先例もあったような気がしますけれども、それは法的な拘束力はないにしても、司法の独立にもとるのではないかという憲法論になります。七十六条で、司法権は最高裁以降の裁判所が独占している。その後に司法の独立の規定の条項がございます。  とりあえず今とっさに思いつくのは以上二点でございます。
  52. 川野秀之

    参考人川野秀之君) 今、小林先生が申され生じた二点については同感でございます。基本的に行政処分の当不当について決定をするということは一つ問題がある。  それから、現在起訴されている状況あるいは裁判が進行している状況において、その事件について当不当の意見を言うことも司法権への介入ということでございまして、司法権の独立というのは、ある意味においては行政権の独立よりもより一層重要な憲法上の規定だと思いますので、この二点が問題であると。  あとの問題は解釈を固定化することによって解決可能な問題が多いのではないか、このように思うわけでございます。
  53. 山下芳生

    ○山下芳生君 次に、既存制度との関係でお尋ねをします。  新たにオンブズマン制度を創設しなくても、既存制度で解決できるのではないかという議論もあると思うんです。私も、今ある制度の運用の改善だとか強化、これは確かに非常に大切なことだと考えます。国会に限ってみても、例えば証人喚問の紙芝居方式などは改めて、国民的な関心や監視を強化するためにきちっと中継をやるようにすることなどはすぐできることの一つだと思いますし、あるいは各委員会の審議も、一般調査案件が随分減ってきている問題、審議時間が十年前と比べて半分になっている問題、マスコミでも指摘をされておりますけれども、これも直ちに改めるべき問題だと私は考えます。同時に、国会国政調査権の充実した行使を保障、補完するために国会オンブズマンを置くことは積極的であるとも私は思っているわけです。  そこで両先生に、既存制度の運用の改善強化、もっとこういうこともできるじゃないかと、具体的にお考えのあるところがあればお話ししていただきたいのと、そのこととの関連で、しかしそれでもやはり議会にオンブズマンを創設することの意義、これもこういうことだから大事なんだと、具体的にお話しいただけますでしょうか。
  54. 小林節

    参考人小林節君) オンブズマンとの関連で申し上げれば、例の先ほど出てきましたジュリストに私が書いたことなのですが、今の総務庁行政監察局の行政相談制度をもう少し実のあるものにする。つまり、天と地が分かれてしまっているんですね。地の事情を五千人の行政相談委員先生方がうまく上げてきてもそれが途中で切れてしまう。そのために、さっき私が書いたものを読まれましたけれども、賢人会議のような、全相協の代表も入れるし、引退した大物政治家も入れるとか、こういう形で本当に地の事情が天に届くような運用が可能ではないか。これは何度も総務庁の次官以下にお話しして、個人的にはそのとおりと言われて数年たって、もう言わないことにしているんですけれども、これが一点。  それから、会計監査行政監察も強化することは意味があると思うんです。現に、最近の報道ですけれども、監査や監察自体官官接待の対象になっているのではないかと疑いが持たれているわけですね。それではまずい。  結局、今の制度の改善と同時に、たびたび申し上げたかもしれませんけれども、何か国民の中にそうなんだと思わせるムードを盛り上げないとこういう世論は動かないと思うんです。国政調査と似たようなものを、別の皮をかぶってばっと見せるわけですね。それによって関心を持っていなかった国民がこっちを向くようになる。何か参議院はやってくれるのかな、あれ不愉快だしというようなことで、これが力になっていくと私は思うんです。そういう意味では参議院オンブズマンに賛成でございます。
  55. 川野秀之

    参考人川野秀之君) 既存制度がそれなりに頑張っていることは確かであるわけでございますが、ただ、いかんせん匿名的、匿名といいましょうか、非常に静かに行動している。要するに、本来行政というものはだれかから何を言われなくてもきちっとやっておくべきものであることは当然でございまして、要するに、だれにも悪影響を与えないようにきちっとした行政をやるというのは当然のことである。また、それについての監査あるいは苦情処理をやる場合においても、だれがやったからどうなり、だれがやったからどうなるというのが変わってはいけないというのが、いろいろなことをおやりになるときの多分行政部内における根本原則だろうと思います。  それはそれで意味があることなんですが、問題は、今のようないわゆる情報化社会、最近高度がつくようですが、高度情報化社会といったような状況におきましては、そういうふうに静かにだれにも知られずにやっていたのでは余り意味がない。むしろ、こういうことをやっていますよということをより強調してやった方が国民にアピールする。そして、逆に言いますと国民の方も、あそこに言えばいろいろなことをやってくれるんだなという認識がつく。行政相談委員制度を三十年間地道にやってこられたわけでございますが、まさに何回も言われておりますように、いかんせん知名度がない。  確かに、広報で多少のあれはやっているようです。年に一回行政相談週間というのがございまして、たまたまこの間ございましたですね。まあ全部の市町村であるかどうかわかりませんが、行政相談週間がある、そこの行政相談委員はだれであるということを書いた広報を、これは私の住んでいる市のですが、見たことがありました。これは年一回のことでありまして、いつもあるとは限らない。そういった意味で、静かにきちっとやっていればそれでいいという従来的な考え方では激動の状況に対応することはできない。  したがって、先ほど小林先生が言われましたように、知名度権威性のあるものによって判断する。判断の中身は多分同じ判断をされるかと思うんですけれども、同じ判断をされるにしましても、変な話ですけれども、どこかの無名の行政の担当者がされた判断よりはオンブズマンのやられた判断の方がより国民に納得させられるのではないか、このように考える次第でございます。
  56. 山下芳生

    ○山下芳生君 ありがとうございました。終わります。
  57. 小島慶三

    ○小島慶三君 本日は、両先生にはわざわざおいでをいただきまして本当にありがとうございました。  私は、二つばかり問題というか疑問を自分で自問自答しているわけであります。一つは、例えば先ほど来先生に御提案いただいたようなオンブズマン委員制度といったようなものを参議院に設ける。こういう形で考えてみた場合に、委員会の目的にもよることでありますが、妥当な人選が果たして得られるかどうか。  国政レベルの問題で、例えば政界を引退された高潔な方とかそういう方もいらっしゃるでありましょうし、事務次官OBもたくさんいらっしゃるでありましょうが、事務次官OBの場合にはどうしても各省との連絡が強過ぎるということがありましょう。それから、国政レベルの問題ではない個別具体的な行政の問題について、例えば行政相談委員とかそういう方からの人選ということもあるかもしれませんが、そういう方にはやっぱり国政レベルの問題は不適当でありましょう。そうすると、かなり中間の人を選ぶ、行政にも通暁しているという人を選ぶということになりますと、これは先生の一番懸念しておられるなれ合いという問題がどうも避けがたいというふうに思うんですね。そういう人選がどういうふうに進められるのか、この点を私は大変危惧しております。  それからもう一つの問題は、今出ているこの問題というのはかなりな程度行政官のモラルに関係する問題があるのではないかというふうに思うわけであります。だから、その自浄性というものを確保するということを進めないとオンブズマン制度も本当に生きてこないというふうに思うわけであります。もちろん、その自浄性を高めるために、例えば、これは古い話でありますが服務規律だとか、あるいは新しい話としては情報公開とかいろいろ手段があると思うんですけれども、何かその自浄性が前提になるような感じが私はしてならないんですけれども、その点について両先生にお伺いしたいというふうに思います。
  58. 小林節

    参考人小林節君) 人選についてでございますが、一部お話し申し上げましたように、やはりこれまでの議会内の先例は一切考慮しないということが肝要だと思います。  それで、私は思うんですが、恐らく制度趣旨がわかり、かつそれを全参議院議員の先生方が誇りにかけて納得しておつくりになったのであれば、あなたやったらという人が自然と浮かび上がってくるんではないか。大変な人材集団でいらっしゃいますから、しかるべき賢者が浮かび上がってくるような気が私はいたします。それが一点。  そして、もちろん賢者である以上、最後の判断をしていただければいいんであって、要は有能なスタッフをつけることが大事だと思います。その有能なスタッフ行政省庁のひもつきでないことだと思います。それが一つの決め手になると思います、外国の例を見ていても。  それから、先生御指摘のとおり、これはこれ一つで世の中の面倒を見るわけではございませんから、当然既存制度とか原則とか、まさに服務規律の問題とか、全体的に締めるべきものを締め直した中で行われる壮大な作業であると思います。  以上であります。
  59. 川野秀之

    参考人川野秀之君) 妥当な人選というのはまさに重要な問題でございますが、これこそ参議院でおつくりになるときの一番肝要な問題でございまして、これができないようであればおつくりにならない方がむしろよろしいわけでございます。  したがって、妥当な人選が得られるという判断の上でおつくりになるべきだとは思いますが、先ほども申し上げましたように、従来の先例とかそういったものを考慮せずに誠心誠意お選びいただければよろしいのではないか。あるいは、それがもし問題が起きるようであるならば国民の批判に当たるわけでございまして、いわばせっかくつくる制度ということになりますから、国民の批判にたえるべき制度をおつくりになることが肝要であると、このように思います。  それからもう一点は、小林先生と同様でございますが、有能なスタッフという問題。特にこの中で一番重要なポイントとしましては、裁判官出身者あるいは弁護士出身者といったような法律関係に非常に明るい人間をぜひスタッフの中にお加えいただくことが肝要かと、それから民間からの登用というものも非常に重要であろうと、このように考えるわけでございます。したがいまして、スタッフが十分に補佐できれば方向性というものは自然に定まり、妥当な方向に進むと、このように考えます。  それから、これもまた小林先生と同様に、この制度だけがすべてではありませんので、さまざまな制度をつくることによってより一層よりよい行政あるいはよりよい国政を進めていくということが重要かと、よりよい行政を進めていくためのいわば新しい制度的な保障としてこの制度が必要だと、このように考えております。  以上でございます。
  60. 小島慶三

    ○小島慶三君 終わります。
  61. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 本日の調査会のテーマはオンブズマン制度を創設することが憲法にどの程度抵触をするか、違憲なところはどこなのかなということなんであります。  先ほど来から伺っておりますと、山下議員の質問にもありましたけれども、そのときの先生のお答えの中で、憲法六十五条と七十六条の司法権の独立の問題をちょっと言われたんですが、あと六十二条の議院の国政調査権の問題もあるんです。特には三権分立、いわゆる行政権への侵害がないということがオンブズマン制度創設に当たって憲法上一番留意しなきゃいけない点である、こういうように考えてよろしゅうございますか。ほかに憲法上何か疑義、問題点がある条項があればお示しをいただきたいと思います。
  62. 小林節

    参考人小林節君) 法律家の先生に釈迦に説法でございますが、三権分立ということがよく議論で用いられますが、これは分立が目的ではなくて、分立した上でチェックス・アンド・バランシスでございますから、許される範囲で介入し合うことによって質を高めていく。本当に釈迦に説法で申しわけないんですけれども、そういうことであったと思います。  ですから、六十五条の問題をクリアする限り、あとはむしろ国会行政府に果敢に介入してあげることが三権分立、ひいては立憲主義、ひいては人権の保障に寄与するのではないかと今私は考えております。  それで、さっき先生の御指摘で思い出したんですけれども、確かにまだほかにも気をつける点がございます。国政調査権を院から取り上げる形になってはいけない、これももちろんですけれども、それからもう一つは、調査の際に人権侵害をしないように気をつけるという点はあると思います、運用上。  以上でございます。
  63. 川野秀之

    参考人川野秀之君) まず、三権分立、権力分立の問題でございますけれども、これは言うまでもないことでございますが、日本制度は議院内閣制でありまして、アメリカのような大統領制とは基本的に違うと。  したがいまして、アメリカ的な権力分立というのは権力分離とも言われるような制度でありますが、議院内閣制の場合においては議会の代表者内閣総理大臣及び国務大臣として内閣を構成し、行政を監督するわけでございまして、そういった意味合いにおいて、国会というものはいわば内閣を送り出した責任者でもあるわけでございます。  したがって、国会が送り出した内閣及びそのもとにおける行政に対して国会は常に見守る必要がある。監視というとちょっと強過ぎますので見守るという言葉を使わせていただきたいと思いますが、見守る必要がある。国会行政のやっていることについて見守るということは決して三権分立には反しないということが一点でございます。  それから、先ほども申し上げましたように、司法権の独立につきましては十分に保障する必要がある。人権の保障のために十分に配慮する必要があると。  これは、実はオンブズマンというもの自体、本来人権尊重のためにつくるべきものであるということも当然のことでありますので、基本的人権の確保のためにつくったものが基本的な人権を侵害するということになってしまいますと、これは本末転倒ということになりますので、このようなことはあってはならないことであると、このように考えます。
  64. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 先ほど質問の前提で、私は当然議会型オンブズマンを前提にして質問をしたわけなんです。いわゆる行政府型のオンブズマンに関しては憲法上の疑義、もちろん人権侵害、司法権の独立の問題等あるんですが、当然に議会型オンブズマンに関する憲法上の問題はもうほとんどないと、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。簡単で結構でございます。
  65. 小林節

    参考人小林節君) はい。ないと今思っております。
  66. 川野秀之

    参考人川野秀之君) ないと思います。
  67. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 小山議員が冒頭、小林先生意見が変わったことを御質問になったんですが、私は先ほどの先生の説明がちょっと理解できないんで改めてお尋ねをするわけであります。  先生はジユリストの中で、いわゆる行政府型はいいんだけれども、国会型のオンブズマンなんてとんでもないと。これは六十五条に反して違憲であるとまで明言されている先生が、今日ここに至って合憲であると、こういうふうに改見された。その理由が、僕は憲法解釈において最も重要なところの変説なるがゆえに、あえてそこがどうして変わられたのか詳しく知りたいわけなんです。  六十五条の行政権のとらえ方がいろいろとあるとは思いますけれども、先生は国会オンブズマンというものは違憲だと。それ以前に小林先生自身は強力な行政オンブズマン、いわゆる行政処分の取り消しとか訴追だとかいろんなことができるような行政オンブズマン考えていたんだと。ところが、最近になって官官接待だとか空出張だとかいろいろ汚職構造が出てきて、それを是正するためにもぜひオンブズマン国会に置くべきだと、こう変えられたと、こういう御説明をなさったんですけれども、ちょっと理解できないんです。私、頭が悪くて申しわけないんですが、納得できる説明を伺えたら幸いと存じます。
  68. 小林節

    参考人小林節君) 今、先生が確認してくださった論理のとおりなんですが、私の思考は、法制度の枠の中で解釈論上どれだけ幅があるか、あとはその中に政策的に社会の現実に照らして妥当な結果が生まれそうな道を選ぶという、そういうアメリカのロースクールで鍛えられたやり方でいっているんです。  そうしますと、現実に日本行政状況を見ますと、行政府の中に置いておいたのでは、現に官官接待もだめだったじゃないですか、薬害エイズも結局あんなことになっちゃったじゃないですかという思いが強いんですね。その事実が先にあってショックなんです。となると、どう理屈をこねても、行政府の中では人事交流もあるし、それから実際に総務庁行政監察と監察される役所との関係までも何かいま一つ不安が残るんです、私自身の事実認識として。ならば、もう三権分立の向こうへかけ合いまして、向こうへ行かなきゃだめだという思いで、また改めて理論を組み直したわけです。  そうなりますと、今度は行政府ではなくなりますから、行政府型のような過激な、びしばし、あれやれこれやれというのはできませんよというので、勧告にとどめるというあの仕組みになったわけであります。その事実認識が前提にございます。
  69. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 その点もうちょっと質問したいんですが、時間がございません。  川野先生にオンブズマンの選出方法でちょっとお尋ねしたいんですが、先ほどから人格高潔、参議院が非常に利点があるから参議院議員の中からオンブズマンを設けるのがいいんだという御説なんですが、例えばオンブズマンを何人、どういう方法で選ぶかの問題もあるんでしょうけれども、先生がおっしゃるなれ合いを防ぐ意味において、行政をチェックする一番ふさわしい人間はやっぱり国民が選ぶという公選制をとったらどうかと思うんですが、これは憲法上何か疑義があるんですか。あるいは、その公選制によるオンブズマンというものが何かはかに問題でもあるなら、そこら辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
  70. 川野秀之

    参考人川野秀之君) まず第一点といたしまして、公選によるオンブズマンというのは例がないというのが一点でございます。その理由といたしまして、公選によってオンブズマンを選ぶということになりますと、いわば大統領あるいは首相、あるいは地方の場合で言えば知事のカウンターパートになってしまう、対立物になってしまうと、そういったことがございまして、そういうふうにしていった場合に、むしろ政争の具になる危険性は大きいのではないかと、このように考えるのが一点。  それから、今の憲法上におきまして、そういった方を公選で選ぶということが果たして妥当なのかどうか。これはちょっとまだ私自身解釈が詰まっておりませんけれども、いろいろな意味で詰める必要があると思います。それはともかくといたしまして、基本的にこのようなものを公選で撰ぶということはまさに直接民主主義的な方向性でありまして、代議制民主政治と必ずしも調和しないのではないかと、このように考えるところでございます。
  71. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 済みません、小林先生にも同じ質問ですが。
  72. 小林節

    参考人小林節君) 公選制で選んだ場合、議員でないとすると何なのか。行政官の方になるとすると、それはやはり内閣の指揮命令下には身分を含めていなければいけないですから、どう考えても現憲法上そういう地位が、居場所がないはずなんです。ない以上はつくれないと私は思います。それに尽きます。  以上でございます。
  73. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 現憲法上の地位が憲法上見当たらないということは、憲法改正をしない限り公選制というのは認められないと、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  74. 小林節

    参考人小林節君) はい。イエスでございます。
  75. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 終わります。
  76. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 お二人の参考人の先生、大変ありがとうございました。非常に勉強になりました。  最後になりましたら、質問したかったことがほとんど出ております。それで、私なりにまとめて申し上げて、先生の御見解を承りたいと存じます。  まず、先ほど山田先生もおっしゃっておりましたように、きょうのテーマはオンブズマン憲法との関係ということにいたしておりますし、それでこういうふうに私は解釈したいと思うんですけれども、国会というのは、これはあくまでも行政を監督する、そして内閣の責任も問う、そういう立場にあるものだと思いますね。そういうことからいきますと、当然行政のいろいろな問題についてチェックをしていかなければならない責任があると思うんです。  その場合に、国会だけでそれを果たせるかということになると、非常に難しい問題があると思います。そういう意味では、参議院一つの附属機関としてそういうものを設置するということで行えば、これは国会機能を果たすための附属機関としての役割を果たしてもらえばいいわけですから、憲法上支障はないだろうというふうに私なりに解釈するんですけれども、その点はいかがかということです。  それで、今お話がありました民選の問題、小林先生がおっしゃっておりましたけれども、私もちょっと民選ということになるとこれは果たして憲法上どうなんだろうか。やっぱり独立した機関というふうに考えざるを得なくなるので、そうなると憲法上定められたどこの機関に一体所属するのかということになるとちょっと問題があると。  そういう意味で、あくまでも国会の附属機関として設置することでいいんではないだろうかなと、そんなふうに考えるんですけれども、その点についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  77. 小林節

    参考人小林節君) 附属機関にすることには二つ問題があるような気がいたします。  第一は、オンブズマンの性格上、一種の職務の独立性が保障されなければなりません。となると、それは議員集団としての委員会とか調査会で、その院から許されているないしは慣行で独立性が出てきたというのでないと、議員でない者が院の権威を背景に独立した機能を行使することは憲法によって仕切り分けないと無理があると私は思います。これは、立法レベルとか慣習レベルとか規則などで仕切り分けていいことではなくて、憲法事項であると考えます。これが一点。  それから附属機関にして、合法な附属機関とするならば院の監督下に置くしかなくなるわけであります。そうなると、逆に権威性がなくなる。したがって、やはり院、つまり議員集団の部分できちんとおやりにならないと居場所も権威性もなくなると考えます。  それから、先ほどの民選のことは、繰り返しでございますが、やはり民選で出てきますと、まさに一種の大統領のような壮大な選挙で出てきちゃうわけで、それは大変な民主的正当性を我が国の中で持ってしまう。これは間接民主制の仕組みの中で果たしてそうなることが許されるか、許されないと思います。仮に強引に押し切ったとしても、それはそれだけの正当性、強さが出てしまうものは居場所がない、三権のどこにも居場所がない、やはりこれは無理であると思います。
  78. 川野秀之

    参考人川野秀之君) 附属機関として置くべきかどうかということについてもいろいろ考えたのでございますが、完全に独立した附属機関ということになりますとなかなか現行憲法上の疑義を完全にはなくすことはできないのではないか。  そこで、要するに委員会を置いてその附属機関というものならば可能だろうと、あるいは役員としてならば可能だろうということを考えたわけでございます。いずれにいたしましても、職務の独立性を保障するためにどうすればいいのかということがなかなか大きな問題でありまして、極めて本来的なといいましょうか、他のヨーロッパ諸国の多くで、スウェーデンとかデンマークとかそういった国々で置かれているようなオンブズマンであるならば、これはやはり憲法上の機関としてつくられた方がより望ましいというふうに思います。  したがいまして、現在の憲法と調和した形でオンブズマンをおつくりになるのであるならば、基本的に議院自体あるいは委員会の附属機関、監督する委員会を置いてその附属機関としてオンブズマンを置く、そういう形しかないのではないかと、このように考えるところでございます。  また、民選の問題については先ほど申し上げたとおりでございます。  以上でございます。
  79. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 次に、別な問題ですけれども、空空出張とか空空接待とかいろいろ大きな事件がございましたけれども、こういうものがどうして発覚しなかったんだろうかなと思うんですね。私は、もっとやっぱりそれぞれの職場の中でそういう問題というものが話し合えるような民主化された職場であれば、こういう問題というのはある程度小さいうちに防げたのではないだろうかなと、そんなふうに思っているんです。それは別な問題として別な機会にやりますけれども、実際には、行政監察局もあるし、会計検査院はそこまで機能しているかどうかわかりませんけれども、地方ではちゃんとした監査委員制度もあるわけですね。しかし、行政の中でチェック機能があるにもかかわらず、そういうものが全然外に出てこなかったというところに非常に問題があると思いますね。  そうなりますと、きょうのテーマからちょっと離れるかもしれないけれども、オンブズマン制度というのは行政の中に置いてもなかなかその効果というものは発揮できないんではないだろうか。それよりも国民から選ばれた、国民にとってはむしろ身近な議員ですね、自治体の議員もそうですし国会議員ももちろんそうですが、そういう議員のもとにそういう制度を置いた方が問題を提起しやすいんではないだろうか。  例えば同じ公務員であっても、先ほど山田先生の方からもお話がありましたけれども、公務員同士の行政機関にそういう問題を提起するよりは、むしろ監督権を持っている国会の方にあるいは自治体の議会の方に提起しやすいというようなことからいけば、やはり行政の中に置くよりは議会の方に置く方が、国会においても地方議会においてもいいんではないだろうかなという私の考えなんですけれども、先生方のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  80. 小林節

    参考人小林節君) 結論は私も同意でございます。  先生は僕の記憶では首長の御経験がおありだと思いますが、私などがよく知らないそういう現場の情報を持った方のお話を聞いてますますこちらは確信を持てましたので、それを突き詰めていってみたいと思っております。
  81. 川野秀之

    参考人川野秀之君) これはまさに地方公共団体の問題でございますが、なぜ監査委員制度機能しないのかということの中で一番大きな問題としまして、監査事務局の職員の問題があろうかと思います。つまり、監査委員の事務局というのは非常に小さなものでございまして、当然市役所なら市役所全体の人事交流の中からできている。したがいまして、そこで余り強いことを言うと、次に別な職場に行ったときに後で影響しないだろうかと、こういったような懸念が現場といいましょうか、さまざまなところにおいて非常に大きいように聞いております。  したがいまして、この問題もいわばオンブズマンの独立性と同様に、オンブズマンスタッフというものがどのようにして選ばれるのか。要するに、変な言葉でございますけれども、その職を終わって別の職に行ったときにいじめられることのないようにする必要がある。そういった意味合いにおいて、行政部内の交流ということをやるべきでないもう一つの理由としてそういうことも含まれるのではないかと、このように考えるところでございます。  以上でございます。
  82. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 ありがとうございました。
  83. 井上孝

    会長井上孝君) 以上で両参考人に対する質疑は終了いたしました。  両参考人には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見につきましては、今後の調査参考にさせていただきたいと存じます。本調査会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  ありがとうございました。  午後二時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時二十九分休憩      —————・—————    午後二時一分開会
  84. 井上孝

    会長井上孝君) ただいまから行財政機構及び行政監察に関する調査会を再開いたします。  休憩前に引き続き、行財政機構及び行政監察に関する調査を議題とし、「時代変化に対応した行政監査在り方」のうち、新たな行政監視制度法的課題に関する件について、参考人方々意見を聴取し、質疑を行います。  午後は、参考人として、関西学院大学教授平松毅君及び東邦大学教授元山健君に御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本調査会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  参考人方々から、「時代変化に対応した行政監査在り方」のうち、新たな行政監視制度法的課題に関して忌憚のない御意見をお述べいただき、調査参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いをいたします。  議事の進め方でございますが、まず、参考人からそれぞれ二十分程度御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。  それでは、まず平松参考人からお願いいたします。平松参考人
  85. 平松毅

    参考人(平松毅君) 平松と申します。このたびはこのような機会を与えていただきまして、大変光栄に存じます。  レジュメに沿って申し上げたいと思いますが、時間もありませんのでレジュメの一番と四番についてだけ申し上げて、二番、三番につきましては、また御質問があればお答えするということにしたいと思います。  立法府にオンブズマンを置く場合に憲法を改正しなければならないかどうかという問題でありますが、このような問題につきましては、参議院にも法制局があり御専門の方もいらっしゃいますので、私の意見も単なるたたき台というふうにお考えいただいて結構かと思います。  まず、幾つかの課題がございますが、第一は、オンブズマン国会の附属機関として設置する場合に、国会の附属機関としましては、現在、弾劾裁判所が憲法の規定に基づいて設けられております。憲法趣旨は、これら以外には国会には附属機関を設けない趣旨であるというふうに解した場合には、これら以外に国会の附属機関を設けるには憲法の改正が必要であるという結論が導かれるでありましょう。  しかし、この議論に対しましては、現実に現行法により国会の附属機関として、憲法に規定がない参議院事務局であるとか国立国会図書館が法律で設置されておりますし、憲法趣旨国会の附属機関を弾劾裁判所に限定する趣旨であると解釈する根拠もありませんので、この点ではオンブズマンを設置することが違憲であるとは言えないン思われます。  第二に、国会は国の最高機関であり、国会議員は国民の信託を受けてその職務を行っている以上、その権限、例えば予算承認権、立法権、調査権、質問権、質疑権、懲罰権等でありますが、これを他に委託することはできないのではないか。したがって、オンブズマンを設けることは憲法の改正を必要とするのではないかという議論があります。  憲法第六十六条は、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」と組定しておりますが、この意味は、各議院に行政権の行使に関してコントロールのための各種の法的な手段が認められるべきことを意味しております。  国会による行政統制は、大きく、決定権的な統制、例えば法律をつくる、予算を承認する、あるいは外交についての承認権などでありますが、それと運営統制、例えば質問、人事調査などに分けられます。  しかし、運営統制の手段につきましては、国政調査権のように明文で規定している場合、あるいは間接的に規定している場合もありますが、必ずしも網羅的には規定しておりません。オンブズマンも、議院が国政に関する情報の収集や事実の調査をするという運営統制の手段として設けるものでありますので、それが運営統制の範囲にとどまる限り、憲法に規定がないから違憲とは言えないと思われます。  ただ、議員以外のオンブズマン調査結果に基づいて直接政府に勧告するという制度を採用する場合には、議員以外の人間に質問や質疑権と類似した勧告権を与えることになりますので、憲法上の疑義が生じます。そこで、オンブズマン調査結果を議院の例えば委員会に報告するにとどめ、政府に対してどういう措置を勧告するかは議院にゆだねることが適当ではないかと思われます。  もう一つ方法は、オンブズマン調査結果を議院に報告すると同時に、苦情の対象となった関係行政機関に直接勧告することができると立法措置によって定めることであります。このような立法措置をとることが行政権を侵害し違憲でないかという議論もあり得ますが、オンブズマンは関係行政機関に対し法的拘束力のない勧告をするだけで、大臣の指揮命令権を侵害するわけではありません。  ここで問題となりますのは、「行政権は、内閣に属する。」と規定する第六十五条でありますが、ここに言う行政権とは、国家作用から立法と司法を控除した残余の作用とされておりますので、その範囲は非常に広く、準司法作用や準立法作用を含むさまざまな作用が含まれます。これらの作用のすべてを内閣がみずから行うことはできません。  したがって、この規定の趣旨は、議会が決定した行政組織を前提に、内閣国政の重要事項に閲する総合調整をすることにより全体を統括する地位にあることを意味し、そのような地位を内閣に与えた趣旨は、国会内閣を通じて行政の民主的統制を確保することにあると解されますから、オンブズマンによる勧告国会による民主的統制の手段として行われ、かつ、その勧告が法的拘束力を有しない以上、行政権の行使が全体として内閣による適度の統制に服し、かつ、国会に対する責任行政を確保することができるのであれば、このような立法措置をとることが憲法に違反するということはないのではないかと思われます。  第三点といたしまして、昨年十一月一日の質疑の中で、上野理事から、デンマークではオンブズマンを設置するのになぜ憲法を改正しているのかという御質問がありましたが、これに関しまして私は二十六年前に「デンマークの行政監察制度」という論文を書いております。これを見ますと、デンマークではオンブズマンを設けるために憲法を改正したのではなく、戦後の一九四六年に憲法を全面改正するための委員会が設けられ、その折に二院制を一院制に変更するとか議院内閣制を明文で定めるとかの改革が行われまして、その一環としてオンブズマン制度導入されたのでありまして、これを憲法上の制度とする必然性があったかどうかについては必ずしも断定できません。  ただ、これを憲法上の制度とすることが必要であるとする論拠といたしましては、新しい憲法におきまして明文で議院内閣制を採用し、行政官は大臣の指揮監督に服することになり、行政権の行使については内閣国会に責任を負うこととされました。このため、国会は直接行政統制するのではなく、大臣を通じて行政統制することが制度化されました。ところが、オンブズマン国民の苦情に基づいて行政官の職務執行を直接統制する制度であるという理解がなされましたので、これが行政権を侵害することになるという議論もあり、その根拠規定を憲法に置くことにしたものであります。  また、オーストリアにおきましてもオンブズマン導入のための憲法改正がなされましたが、これはオンブズマンに連邦大統領や連邦大臣に対する勧告権を与え、さらに、連邦官庁が発した命令の違憲性について連邦憲法裁判所に訴訟を提起する権限なども与えるためであると思われます。  この問題は、オンブズマン制度導入するに際しまして我が国においても検討する必要があると思われます。なぜなら、オンブズマンは大臣に対して単に勧告するにすぎず、法的に拘束するものではないのでありますが、しかし勧告をする前提として調査が行われます。その調査が大臣の承認のもとに行われる事実上の調査であれば問題はないと思われますが、オンブズマンの特色は、守秘義務を負うかわりに秘密文書を含むあらゆる公文書を閲覧し、公務員に証言を求め、閣議を含むあらゆる会議に陪席するという強力な調査権にあるからであります。オンブズマンは、この強力な調査権により事実を解明した上で、この事実を独立に評価し、だれにも反駁できない説得力ある勧告を行うことにより行政改善、苦情救済を図ることにその独自の存在意義があります。  そこで、このような強力な調査権を法律で与えることが、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」と定めた憲法第六十六条第三項に違反しないかどうかが問題となります。これについては次のように考えることができます。  まず、オンブズマン国会を代表して事実を解明するために行政官に証言を求め、秘密文書を含むあらゆる公文書の提示を要求することは、内閣国会に責任を負う制度が採用されており、それを具体化するために国政調査権が与えられていることから、憲法も承認していると解することができます。  スウェーデンでは、以前国政調査権が乱用されましたために、個々の議員や委員会による国政調査権を剥奪し、オンブズマン調査をゆだねることとしております。そのかわりオンブズマンには無制限の調査権が付与されました。  ただ、その調査権を国会議員以外の、参議院の委任を受けたオンブズマンに委任することも、それが国政調査権の範囲内の権限であれば、参議院の事務局が議員の委任を受けて調査するのと同様の意味で認められるであろうと思われます。  ちなみに、ドイツ連邦議会におきましては、議会における重要な決定、例えば憲法改正などでありますが、この準備のために一九六九年に議院規則の改正により予備調査会制度を設けましたが、この予備調査会には議員以外の学識経験者を加えております。ドイツのラント議会、邦の議会におきましても同様の機能を有する調査委員会が設けられております。このことは、ドイツにおいては、最終的な決定権が議員にあれば、その準備の段階を外部に委託しても憲法違反とは考えられていないことを意味するのではないかと思われます。  次に、我が国におきましては、国政調査権の行使も無制限ではなく、秘密文書の調査や秘密事項の証言には限界があるとされております。したがって、この限界を超える調査権をオンブズマンに付与するには、それが行政権を侵害しないという新たな解釈を必要とします。しかし、その限界内閣国会との力関係によって定まるのでありまして、政府の政治的な判断を必要とするように思われます。  次に、オンブズマンを設ける場合にはどのような範囲で調査権を与えるのかが重要な問題となります。  実は、ドイツにおきましては請願権活性化するために、立法を求める一般請願と苦情に対する救済を求める苦情申し立て請願を区別し、この苦情申し立て請願を効果的に処理するために議会の請願委員会に、中央官庁を通ずるのではなく、直接関係行政機関から情報を入手することができるように調査権を大幅に強化する改革が一九七五年に行われたのですが、我が国でもオンブズマンを設置する場合には、大臣を通ずるのではなく、直接関係行政機関調査し、その機関に改善を勧告することができるような立法措置が必要になるのではないかと思われます。  次に、国政調査権に関しましては、現在では国政調査は、特定の具体的な案件に関する調査、特別調査が補助的機能として認められておりますが、行政に対する一般的・包括的な調査、いわゆる一般調査でありますが、これは認められないのではないかという議論があります。  これがもし認められるとするならば、では、どういったふうな理由が必要であるのかということを考える必要があるかと思いますが、まず政府の権限というものを大きく政策決定、すなわち法律を執行する権限と、もう一つは法律を超える国政の一般的な方向を定める執政というふうに分けた場合に、現在、議会で規定されております質問とか質疑とか国政調査などは、立法予算など国家目的を認定し、それを遂行することに対する責任を確保するための手段であります。  ところが、行政は、いわゆる狭義の行政、法律を執行するという行政についても国会に責任を負うこととされておりますが、この行政というものを監視する責任を果たすための手段が国会には与えられておりません。与えられていないというか、十分ではありません。そこで、そういったふうな執政ではなくて、執行あるいは狭義の行政というものを統制する手段としてのオンブズマンを設けることは政府が国会に負っている任務を遂行するために必要であるということから正当化されるのではないかと思われます。  次に、レジュメの二と三は省略いたしまして、四の方に入っていきたいと思いますが、オンブズマン国会に設置する場合に、どういう仕組み機能を期待することができるかという問題であります。  まず、一般国民オンブズマンに期待している問題は、国が個別の苦情処理をすることではないように思われます。今問題となっております住専問題とか官官接待などを、マスコミのように単に国民感情をあおるのではなく、第三者的立場で事実を解明し、その事実に基づく理性的な判断資料を議員に提供して審議の充実を図ることにあるのではないかと思われます。  しかし、このような問題を調査する機関といたしましては、既に行政監察局とか、地方公共団体に関しましては自治省による監督があるではないかという反論が考えられます。確かにそうなのですが、参議院オンブズマンを設けた場合には別の機能を担うこともあり得るということを例を挙げて御説明したいと思います。  もう既に御存じ思いますが、以前はみ出し自動販売機が問題となったことがあります。この問題は、通行中はみ出し自動販売機にひっかかったり、あるいは自動販売機が歩道を占拠しているために車道を歩行することを余儀なくされた大阪の一弁護士が、訴訟を起こす、住民運動を組織する、告発する、企業と交渉するなど、さまざまな運動を繰り広げた結果、マスコミの支持を得、その結果、十ほどのメーカーが一社当たり七十億円、総額七百億円をかけてはみ出し自動販売機を撤去し、薄型の販売機に置きかえたという問題であります。  この問題は、一九九二年八月にこの弁護士が問題提起した成果であるということは間違いないのでありますが、実はその前の一九九二年四月にも近畿管区行政監察局は路上販売機についての改善勧告を出しているのであります。では、役所である行政監察局の警告が大きな話題とならないで、弁護士のパフォーマンスがなぜ大きな力となったのかということを考える必要があるのではないかと思われます。  官官接待につきましても同様のことを指摘することができます。官官接待を自粛することにつきましてはこれまでに何度も自粛のための通達が出されております。例えば、昭和五十四年十一月二十六日付自治事務次官通達は、「官公庁間の接待及び贈答品の授受は行わないことはもとより、官公庁間の会議等における会食についても必要最少限度にとどめる」よう自粛を求めています。しかし、それがなぜ大きな世論とならず、市民オンブズマンの活動が大きな世論となったのかを考える必要があります。  すなわち、同じことを行いましても、その運動が中立的な、あるいは国民の立場で行われたと国民が感ずるかどうかによって運動の成果は大きく左右されるわけであります。これを考えますと、参議院オンブズマンを設け、それが中立的かつ徹底した調査によって明らかになった事実を国民に示すことができるならば、世論を動かす大きな力となるであろうことが期待できるかもしれません。  そこで、次に、もし国会オンブズマンを設けるとした場合どういう制度を設けるかでありますが、地方自治体におきましては住民監査請求とか住民訴訟という制度があり、例えば知事や市長が公金を不当に支出したことが明らかになりますと住民監査請求を行い、それが退けられますと住民訴訟で争うことができますが、近年この住民訴訟が増大しております。この制度があることによって住民は自治体の行政に対する高い参加意識を持つようになったということが言えます。国民オンブズマンに期待しているのは、個人的な苦情処理ではなくて、住専問題とか官官接待の問題について自分たちの意見を反映できるような仕組みを設けてもらいたいということではないかと思われます。  そして、理念的にも、議会制民主主義とは、主権者が議会を通じて政府を統制する仕組み制度的に保障されなければなりません。  そこで、住民監査請求とのアナロジーでオンブズマン制度について考えますと、オンブズマンはドイツで行われているように、立法を求める一般請願のほかに苦情申し立て請願を受理することができることとし、苦情申し立て請願国会請願委員会の委託に基づいて調査するという形式で設置するということが考えられます。ただその場合、個人の利害に関する苦情を受理することといたしますと既存行政相談などと重複しますし、その数が膨大なものになりとても処理し切れないであろうと思われます。  そこで、オンブズマンを設置する場合には次の四つの方法考えられるのではないかと思われます。  一つは、地方自治法の住民監査請求と同様に、国民が納税者としての立場において税金の使途を監視する制度としてオンブズマンを設けるという考え方であります。この場合には、国の財務会計上の処分に関して、国民は公益を守る見地から参議院オンブズマンに苦情を申し立て、オンブズマンはそれを調査した上で国会委員会に報告し、あるいは関係行政機関勧告することになろうかと思います。  これに対しましては、既に会計検査院があるではないかという批判があり得ます。しかし、現在の憲法第九十条の解釈によりますと、会計検査院が検査報告内閣へ送付すると同時に直接国会へ提出することは憲法違反とされております。すなわち、政府は会計検査院から送付された検査報告を検討した上で、政府の見解を付してから国会へ提出することとされておりますので、国会が国の財政状況を直接監視する制度は現在のところ存在しないのでありまして、この面からも国の財務会計上の行為を対象としたオンブズマン制度を設けることは意味があるのではないかと思われます。  もう一つの第二番目の考え方といたしましては、国民が主権者としての立場で国政を監視する制度として設けるものでありまして、国の行政の公益に関する苦情に限定して国民からの苦情を夢理する制度とすることが考えられます。  すなわち、その苦情が申し立てどおり処理されても本人の利益にならないような苦情に限定するわけです。住民監査請求は財務に関する違法あるいは不当な支出の場合にしかできませんが、その範囲をもう少し広げて、公益にかかわる苦情であれば受理することができることとするわけであります。  これは、いわばスウェーデンでオンブズマンが設けられた当初の原点に返るものと言うことができます。すなわち、一般の立法請願といいますのは将来の改革、改善を求めるものでありますが、この場合の苦情といいますのは公益に関する過去の具体的な弊害の是正を求めるものであります。  三つ目といたしましては、イギリスやフランスで設置されておりますように、苦情内容は行政一般といたしますが、そうしますと苦情内容が膨大なものになりますので、議員を通じて苦情を受理することにより件数の増大を抑制しようとするものであります。  四つ目は、国民からの直接アクセス制を採用いたしますけれども、苦情を申し立てることができる分野を環境問題など国民が広く関心を持つべきである特定の分野に制限するものであります。との種のオンブズマンが近年非常に多く設けられでおりますし、既に多くのモデルがありますし、この後、元山教授がこの三と四に関しましては詳しくお話しなさると思いますので、この程度にしておきたいと思います。  次に、苦情の数についてでありますが、何しろ日本におきましては一億二千万の国民がおりますので、膨大な苦情がもたらされると思います。その中でどの苦情を取り上げるかということはオンブズマンの裁量にゆだねられるべきではないかと思います。例えば、ブリティッシュコロンビア州がその旨を明文で設けております。なぜならば、同種の苦情が多数ある場合に、苦情の回答という形式ではなく、まとめて調査したり、あるいは新聞報道に基づく調査もあってしかるべきではないかと思われるからであります。  そして、苦情の中には行政監察局で処理した方がよいもの、人権擁護委員にゆだねるべきもの、消費者センターで処理すべきものなどがあると思われますので、それらを適宜振り分けてオンブズマンからそれらの各機関調査を委託することが適当ではないかと思われます。  次に、苦情を受理した場合、オンブズマンはこれをどう処理するかでありますが、オンブズマン調査をする過程で関係行政機関と話し合ううちに、関係行政機関は自主的な改善措置を講ずるのではないかと思われますが、オンブズマンとしましては、調査結果を国会委員会に報告し、苦情申立人に調査結果を通知するということまでは問題ないと思われます。  ただ、その調査結果に基づいて政府に改善措置を勧告するということになりますと、現在の行政監察と重複いたしますし、行政権を侵害するのではないかという批判が出てくるのではないかと思われます。立法のための補助的機能としての調査ではなく、批判のための調査国政調査権の範囲を超えているのではないかという批判であります。この点、立法措置を講ずるに際しまして政府との調整が必要になろうかと思いますが、できれば関係行政機関に直接勧告する権限を与えることが望ましいと思われます。  ただ、勧告するかどうかはそれほど重要な問題ではなく、事実が明らかになれば対策はおのずから生まれますし、国会国権最高機関でありますからどんな対策でもとれるのではないかと思われます。この調査結果を国会の方でどう生かすかは、例えば立法措置を講ずるのか、質疑、質問によりただすのかは国会に任せてしまうという方法もあるかと思われます。  あとはささいな問題ですので、私の報告は一応このくらいにしたいと思います。  どうも御清聴ありがとうございました。
  86. 井上孝

    会長井上孝君) ありがとうございました。  次に、元山参考人にお願いいたします。元山参考人
  87. 元山健

    参考人(元山健君) ただいま紹介をいただきました東邦大学の元山健でございます。  本日は、参考人としてお招きをいただきまして、お話をさせていただく機会をちょうだいしましたことを心から光栄に存じております。  レジュメに沿いまして簡単に私の考えをお話し申し上げたいと思います。  私は、イギリスの制度参考にしながら、議会型オンブズマンの我が国への導入可能性について、特に憲法理論の側面から近年の理論動向も御紹介しながら御説明をしたいと存じます。  イギリスを参考にいたします理由は、一九六七年、今から約三十年ほど前に設置されて以来、当初、一方で何の役にも立たないのではないかという批判、他方で行政官吏の側からの猛烈な抵抗にもかかわりませず、今日では国民、議員、そして何よりも実は行政官吏の深い信頼を同時にかち得て確立した制度としまして、国民の苦情の救済と議会による行政のコントロールとに貢献をしているからでございます。  そこで、そのようなことを前提にいたしまして、一番目の「オンブズマンの設置」というところからお話をしてまいります。  概要でございますけれども、我が国の場合には、オンブズマンは人口等も考慮いたしまして三名から五名ぐらいが必要ではないか。レジュメにありますように、第一案は内閣が議会の承認を得て任命する。これが最も設置しやすい方法ではないかと思います。しかし、第二案、議長が内閣の同意及び、もちろん参議院の場合にはこの参議院の承認を得て任命するという方法。あるいは第三案、議長が議院の承認を得て任命する方法考えられると思います。  説明に移りますが、イギリスにおきましてはこの第一案を採用しております。憲法六十五条の「行政権は、内閣に属する。」という規定を根拠にして、時に議会型のオンブズマンを否定する向きもあるようでございますけれども、この一案または二案の任命方式を用いますと、オンブズマン行政の長の信任にも基づいているということになります。  しかし逆に、第一案につきましては、これは行政型のオンブズマンではないかという御感想もあるいはお持ちかと存じます。これにつきましては、まず議会の承認を要するということになっている。また、後に述べますように、また平松教授も御説明ありましたように、オンブズマンは議会の委員会と緊密な関係を保っております。このことで機能的には十分に議会オンブズマンとして活動することができると思います。事実、イギリスにおいてはパーラメンタリーコミッショナーという、英語にもありますようにパーラメント、議会の官吏というふうに言われているわけでありますが、そのイギリスは先ほど申しましたようにこの第一案の制度をとっております。  もちろん、第三案もこれからお話ししますように、理論的には設置可能ではないかと思っております。ただし、我が国は議院内閣制をとっておりまして、その議院内閣制の政治的な現実、力関係等々がございますので、その実現についてはあるいはやや難しいかもしれません。  次に、大きな二番目、「オンブズマンの権限」というところにお話を移させていただきます。  概要についてですが、これも平松教授からの御説明ありましたように、オンブズマン行政に関する国民の苦情を受理して、これを調査して、その結果を報告するという制度でございます。  イギリスの場合には、オンブズマンには高等注院の裁判官と同様の調査権が与えられておりまして、内閣または内閣委員会の議事録等を除きまして、一切の情報を提供し、または文書を提出するように行政に対して要求することができます。  しかし、大臣は、国家の安全またはパブリックインタレスト、公共の利益に反すると考えますときには、公表についてこれを制限または禁止することができる。つまり、原則としてオンブズマンはすべての行政、政府の文書を閲覧できるわけであります。しかし、公表は制限等をされている場合がある。我が国でも同じ議院内閣制を採用しておりますイギリス同様の権限を、これも平松教授と基本的に同じでございますが、付与する必要があるのではないかというふうに私は考えております。  それから、イギリスのオンブズマン行政に関する決定を行政にかわって行うというようなことはいたしません。苦情を調査いたしまして、結果を公表いたしまして、場合によっては批判、勧告をする権限があるだけでございます。高い人格、すぐれた識見に基づく強度の調査権、そして緩やかな決定権、小さな決定権、これがオンブズマンの特徴でございまして、これはぜひ受け継いでいただきたいと思うわけでございます。ただ、批判あるいは勧告という場合に、これも平松教授の御意見にもありましたけれども、具体的にこうしたらどうかというところまで含めるかどうか、新しい立法が必要ではないかと平松教授はおっしゃいましたが、これは考慮の余地があるだろうというふうに私も考えております。  説明のところにも少し入ってしまいましたが、今申しました非常に強力な調査権こそがオンブズマンにとってのまさにかなめでございます。  なお、イギリスでは我が国同様情報公開法がまだ制定されていないということでございまして、その中で三十年近く前にオンブズマンが設置されたということをつけ加えておきたいと思います。  ここで、オンブズマン調査権を、レジュメにも書きましたが、憲法上いかなる性格のものとして考えるか。特に、厳格な三権分立論の立場から合憲性について疑義があるという御意見も時に伺いますので、これらを念頭に置いて簡単に説明をさせていただきたいと存じます。  まず、国政調査権の諸学説についてでございますが、補助的機能説です。これは、三権分立に留意をした上で、「国権最高機関」と四十一条にあるけれども、国会が三権の上に、つまり他の三権の上にあるということを必ずしも法的には意味しない政治的な尊敬を込めた美称であって、憲法的、法的な意義はないとした上で、憲法上法的な意義を有するのは四十一条の後半、「立法機関である」ということであります。したがいまして、国政調査立法のために必要な、立法という仕事を行うために、これを助けるために与えられた機能であるというふうに主張いたします。  もっとも、東京大学名誉教授の芦部教授は、立法が広範に及ぶ以上、この国政調査権は純粋に私的な事項を除いてほぼ国政の全域に及んで当然であるとその御著書に述べておいでになる。実際、国政調査権の母国アメリカでも、国会の行う調査はすべて何らかの立法目的が調査の最初から推定されているという法理、原理が通用しております。したがいまして、調査の範囲は広い範囲に及ぶことができます。  また、オンブズマン委員会の調査活動は、国民の具体的な行政の苦情に基づいてこれを調査し、必要に応じて行政監察ひいては立法に寄与するものですから、一般的・包括的な行政に対する調査ということにはならないと思います。  また、いかなる程度まで広範に及べば一般的・包括的になるのかということについて、芦部教授は緩やかにこれを解するべきであるとされていますし、判例もまた、重大、明白な過誤のない限りは議院の自律権の決するところであると指摘しています。例えば、本調査会行政監察という一般的・包括的目的をお持ちでございますので、憲法違反の委員会であるとは私には到底思うことができません。  独立機能説に立ちますと、これは「国権最高機関」という四十一条に法的な意義を認めまして、何がしかの国権統括の機能を認めます。  例えば、佐藤幸治京都大学教授は、国権最高機関憲法的意義につきまして次のように述べておいでです。「国家諸機関機能および相互関係を解釈する際の解釈基準となり、また、機能帰属が不明確な場合には国会にあると推定すべき根拠になる」と。その上で、さらに次のように述べておいでです。「国会は「最高機関」として国政の中心にあって世論の表明・形成の焦点であることが期待されるのであるから、国政調査権の有する国民に対する情報提供機能・争点提起機能は軽視さるべきではなく、むしろ調査権のそのような機能を前提とした上で他の政府利益や国民の基本的人権との現実的調整がはかられるべきもの」であると。  この点につきまして、近年の理論動向をさらに補足させていただきます。  一つは、ただいまの佐藤京都大学教授の説にかいま見られますように、国政調査権国民の知る権利にこたえる機能として位置づける説でございまして、この説では、調査それ自体国政調査権の独自の目的というふうになります。つまり、立法のためという目的限定をここで離れることができます。  新たな理論動向の第二は、いわゆる行政国家化と私どもが言います状況の中で、議院の立法能力の実質的な低下という現実を前にいたしまして、議会の行政監視あるいは行政批判を通しての行政統制にこそまさに議会の再生、ルネッサンスを期するものであるという主張もございます。  これらの新しい理論は、先ほども言いましたように、議院の国政調査権について立法のためのみのものであるとは考えておりません。結論的に申しますと、これらの独立機能のいろいろな説も、あの補助的機能説同様に、オンブズマン設置について憲法上何か問題があるということにはならないように思います。  それと関連いたしまして、オンブズマン調査活動というのは行政活動であって、オンブズマン調査という行政活動をすることは行政権のさん奪だという意見もあるかもしれませんが、私はこれに対しましては、それだけを取り出して、つまりオンブズマン調査活動というその一局面だけを取り出しまして、それは行政活動だから行政権のさん奪だという形で独立して論ずるというのは誤りであると思います。国会は、平松教授もおっしゃるように、その生まれた地、歴史的な起源からして、行政統制にその目的がもともとあります。したがいまして、国会の自然権とも言われる行政統制あるいは立法に資する活動の中の調査活動という形で、総合的に理解をしていく必要があるというふうに思います。  それから、先ほど申しましたが、オンブズマンには決定権、行政にかわって行政的決定をする権限はありません。調査した結果にどうこたえるかは、私も平松教授と同様、とりあえずは行政にゆだねられる。ただし、重大な事案であるというにもかかわらず何ら改善が行われないというような場合には、オンブズマン国会、本院であれば参議院に対して特別に注意を喚起する。あと国会が対処すべきことではないでしょうか。  それから、行政相談との関係も少しプリントに書いておきましたが、これは平松教授もおっしゃいましたので、これについては私は、オンブズマン調査行政相談等ではその本質的な目的が異なるということだけをここでは申し上げるにとどめます。  それから、これも平松教授からございましたように、オンブズマン調査権を与えるということは、議院の国政調査権委員会に委任したその上にもう一回オンブズマンに委任して、委任の委任、つまり再委任で許されないんではないかという御心配があろうかと存じます。これにつきましては、例えば東京地裁の昭和五十六年のロッキード関連の判決で、議院の国政調査権という場合のこの議院とは委員会を含むものだというふうに判示されておりまして、このように判例から見ましても委任の委任、再委任ではないというふうに考えることができると思います。  大きな三番目でございますけれども、オンブズマンは職権の行使に当たって独立性を認められなければなりません。任期を別にいたしまして、裁判官類似の職の保障が必要だろうと思います。  それから二番目の、次に述べる点は苦情の申し立てをどう受け付けるかということなんですが、私は国民から直接または議員を介して受け付けるということを考えております。  職権行使の独立の点につきましては、公正取引委員会あるいは人事院などの委員人事官の任免、職権行使について既に非常に似た実例を持っているわけです。ただ、独立行政委員会が行政の内にあって、行政の指揮命令から独立して職権を行使できるということになっているんですが、これと同様のシステム、つまり議会の政治的な命令からは独立をして、議会の目的、つまり行政統制行政監察という目的に資するシステムがあってはいけないものなのかと、平松教授と同じように私も考えているわけでございます。  もう一つは、職権を独立させますと議会から離れてしまうんではないか、飛んでいってしまうんではないかという御心配があるかもしれませんが、これは、苦情の申し立てを議会の議員の皆さんとそれからオンブズマンが受けて、それからたとえ第一案の場合でございましても、議会のオンブズマン委員会あるいは調査会との密接な関係がございますのでその点の心配はないだろうと。  それから、苦情の申し立てでございますけれども、私は国民と議員どちらからでも苦情を受け付けるようにしたらいいと。イギリスの場合には国会議員のみが苦情をオンブズマンに取り次ぎます。その理由は、オンブズマンが議会の官吏として、議員が本来有している有権者の苦しみ、悩みを取り上げるという権利をゆだねられているという建前が一つと、もう一つは、直接受理すると多過ぎるんではないかという危惧でございます。それで、二十年たちまして後者の危惧は、つまり多過ぎるんではないかという危惧は実は杞憂に終わっております。  そこで、ロンドン大学のキャロル・八一ロー教授は、これから国民から苦情を直接受理したらどうだ、ただし、必ず国会議員に、あるいは委員今かもしれませんが、これをちゃんと送付するという提案をしておりまして、我が国でも参考にするべき案ではないかなと思います。  国会議員あるいは議会が行政苦情の申し立ての窓口になることにつきまして、その根拠でありますけれども、私は国民が苦情を議員に申し立てる行為というのを現代的な請願というふうに位置づけて、憲法第十六条に根拠を求めることができるのではないかと思っております。現代における請願権は補充的な参政権として再生されるべきだというふうに思っているわけです。  たとえ苦情であろうとも、国会議員が行政に属する事柄の窓口になるのは、行政の取り分を侵すものでけしからぬといった議論がもし万が一あろとすれば、行政統制は議会の自然権であるという主張に加えて、憲法十六条の請願権があるということも御利用いただければというふうに私は思っております。  時間が過ぎました。最後の「その他の諸問題」につきましては幾つかありますが、オンブズマン調査は裁量によるんだと、ほかに任せることができるものは受理したものであってもほかに任せる。また、どういう苦情を受理するかということは、オンブズマン自身の裁量で最終的に決めるということです。それから大事なことは、苦情の調査対象となった公務員当人の意見をきちんと聞く。イギリスの場合は多くの場合、当該の公務員の行為をむしろ擁護するものになっておりまして、イギリスの公務の水準の高さを証明することになっております。  それから、もう一点でありますけれども、オンブズマンの管轄する行政領域につきましては、例えば最初から全部にするのか、あるいは担当する官庁を限定するとか、そういうことにつきましては国会行政の間におきまして慎重な検討が必要だろうと思います。この場合、イギリスの例を申し上げますと、やはり徐々に拡大をされていっております。そして、円滑に運用をされております。  時間を超過いたしまして申しわけありません。  以上でございます。
  88. 井上孝

    会長井上孝君) ありがとうございました。  以上で両参考人の御意見の陳述は終わりました。  これより両参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  89. 武見敬三

    ○武見敬三君 本日は、お二人の参考人におかれましては、まことに貴重な御意見を拝聴させていただきまして、まことにありがとうございました。大変勉強になりました。  当調査会におきましてこうしたオンブズマンを取り上げ、検討をするようになったその背景というものをまず確認しておかなければならないんだろうと思いますので、それとの関連でまず最初の御質問をさせていただきます。  私なりに理解しているところは、この参議院のいわば意義というものを参議院の独自性という形で追求する政治姿勢が強くございます。それと同時に、もう一つの重要な背景といたしましては、近代、我が国の中では官僚主導型の政策決定に対する非常に強固な神話が存在していた。しかし、その神話が崩れ始めたという背景があるように思われます。この二つ目の背景の原因として、とりあえずは三つ指摘することができるのではないかと思います。  従来よりある第一の点というのは、肥大化した縦割りの行政に対する不満の増大、特に内外の時局の大きな変革期においてダイナミックな政策の転換を求める国民世論の直観力というようなものが明確となり、そうした国民世論の期待に沿えない状況が大きく認識されるようになってきたことがこの神話の崩壊の第一点にあるように思われます。  第二点は、官僚の倫理性との関係がございます。その官僚の倫理性一つの側面は、大蔵省高官の疑惑、これはもう次官にもなるのではないかと言われるような人たちが、実は極めて倫理的に問題のある行為をしていたことが明らかになったこと。さらには、我が国社会の中で通常あるような極めて好ましくない悪慣習、もたれ合い的な接待が官僚の中央、地方それぞれの機構の中で制度化、構造化され、いわゆる盲官接待というようなものが実は露骨にあったことが国民の目の前にさらけ出されてしまったこと。こういったいわば職権乱用にかかわるような倫理上の問題が非常に深刻になってきたことがあるように思えます。  従来は、官僚といえば大きな権限を持って、国の行方を左右する重要な役割を担えるという自負心のもとで、安月給でも夜遅くまで我慢する。そして、功成り名遂げた後は優雅な天下り先があって、そのことが一応保証されているから、現職の間は非常に倫理観も強固に一生懸命働いてくれると思っていたわけでありますが、どうもそうじやなさそうだというような、そういう倫理上の問題に気がつかれてきたことであります。  第三番目は、どうも我が国の官僚機構の中では、担当するその期間のみその問題点に責任を負うだけであって、結果として組織としての無責任さというものが極めて露骨に明らかになってしまったこと。これは特に厚生省のエイズの問題を通じて私は非常に国民の皆さんが理解をし始めた点ではないかと思います。これもやはり官僚の倫理性にかかわる問題だろうと思うわけであります。  以上、三つの点を通じて、我が国の国民の間で官僚主導型の政策決定に対する神話が崩れ始めたこと。こうしたことが参議院の独自性を求める私どもの考え方と結びついて、参議院におけるオンブズマン制度の創設の可能性を検討するこの調査会に結実しているというふうに考えているわけであります。  そこで、ではなぜオンブズマンかということになるわけであります。  お二人の参考人に、法的な側面ではなくて、まずこうした基本的な点でお伺いしたいわけでありますが、なぜ今我が国においてこのようなオンブズマンというような制度が必要とされるようになったのでありましょうか。その最大の理由は何か、お二人の参考人から伺わせていただきたいと思います。
  90. 平松毅

    参考人(平松毅君) ただいま武見委員が御指摘になったことはまことにそのとおりで、大変的確な分析と御指摘だと思います。  そこで、なぜオンブズマンが話題になったのかということですが、先ほど申し上げましたようなこと以外には特に用意しておりません。先ほど申し上げましたように、例えばはみ出し自動販売機の問題にしましても官官接待にいたしましても、そういったふうなことはいけないんだということはこれまでちゃんと自治省の通達なりあるいは行政監察局の監察がなされているわけです。にもかかわらず、そういったことが行われましても、国民は、あれはただ単なる表向きのことだ、本当にやる気はないんだと、そういったふうなことに対する信頼感がなかったために大きな運動とはならなかった。  ところが、他方におきまして、全く利害関係のない第三者である例えば弁護士会、あるいは市民運動が同じ問題を提起いたしますとそれが大きな世論となったということの背景には、いわゆる第三者機関によるところの事実の解明というものが、国民信頼を喚起する上で意味を持つのではないかといったふうなことを示していると思われます。  私もこれ以上のことは用意しておりませんので、この程度でお許しいただきたいと思います。
  91. 元山健

    参考人(元山健君) 私も、武見議員の御指摘、御見識はまことにそのとおりであろうと考えております。私ども参考人としてお招きいただきまして、なぜこの調査会オンブズマン等について真剣な御調査をなさっているのかということが大変によくわかりました。  第一番目の、参議院の独自性ということの理由でございますけれども、憲法学会におきましても、国民代表から成る第二院である参議院の意義についてさまざまな議論がなされております。その中で一般的に言われておりますのは、これは議員の皆さん方に逆に大変失礼かもしれませんが、私たち学者の間では衆議院の代表機能を補完する、そして、衆議院参議院、両方で国民の気持ちというものをより豊かに深く代表してくれるんだと。そのことは、衆議院と異なる代表、任期も異なっている、それから半数改選になっている。  特に、これは政治の現実の問題もございますけれども、参議院は三年に一度選挙がございまして、これが場合によってさまざまな、今申しました政治的な理由で衆議院で必要な解散が行われないというような場合には、むしろ民意をそれなりに反映するいい機会になっているんじゃないかという意義づけがあったり、あるいは、二つの議院でもって審議を繰り返すことによって、その間に一定の期間があるわけですから、民意の動向を参議院の段階でさらに反映していくというようなこともできる。それから、それとかかわりますのは、衆議院が犯した過ちを正す慎重な審議の場になっている。それから、長い任期をお持ちでございますので、これは長期的な視野に立った審議を可能にしている。  オンブズマンは、平松教授もおっしゃっておりますし、また議員の皆さん方は既に御勉強のように、日常の行政運営の統制でございまして、ある意味では、通常だと大変地味なものと私は思います。ただ、その中から、実は隠れていて、国民にこんな大規模な不利益を与えていたというようなことを引き出すことがある、そういうシステムだろうと思いますので、参議院においてオンブズマン研究をなさるということはよくわかるわけです。  それから、なぜ今オンブズマンなのかと。武見議員のおっしゃるとおりであろうと思います。ただ、これは佐藤京大教授の言を私は引用しましたが、私はまさに参議院が世論を喚起する役割も果たしているというふうに思うのでございます。今国内で市民オンブズマンという人々の活躍と申しますか、これが一つは大きな影響になっている。それからもう一つは、参議院がこの調査会を通して、新聞報道などもございますので、実は大変に国民世論に影響を与えている。  ただ、ちょっと申し上げましたように、武見議員のおっしゃった幾つかの問題の中で、極めて政治的なスキャンダルに対応する仕事というのは、実はオンブズマン向きではございません。結果としてそういうことが出てくるかもしれませんが、そうではないのであります。  しかし、俗に申しますと、この市民オンブズマンが摘発するというようなことが大変国民に人気があるのは、武見議員がおっしゃいますように、行政統制をだれがやるべきなのかということで、議会に対する新しい期待というものが、実はこれは私のお話でも申し上げましたように議会の自然権なんですけれども、非常に大きくなっているのではないか。先ほど憲法学会の大ざっぱな通説的な参議院の意義づけでございましたが、参議院におきましても検討する、研究する余地があるのではないかというふうに考えております。  不十分ではございますけれども、お許し願います。
  92. 武見敬三

    ○武見敬三君 このオンブズマンに本来期待される機能というのは、実は国民が官僚機構に対する神話を失い始めた理由というものと必ずしも上手に重複しているわけではないのは、まさに元山先生御指摘のとおりだろうと思います。  またさらに、なぜこのオンブズマンかという議論になってきたときの一つの背景に、これはやはり政治家として非常に反省をしなければいけないことだろうと思いますが、従来の我が国の二院制の中で、国政調査権等を使いながら立法活動やあるいは行政に対する調査活動をしている現状に対して、国民の皆さんが決して満足をしていないということが、オンブズマン制度というものに新たに着目をするその背景に私はあったんだろうと思うわけであります。この点は、後ほどお聞きしますオンブズマンを選ぶときの資格要件をどうするかという議論と実は密接にかかわってくるだろうと思うわけであります。  そこで、話を進めさせていただきたいわけでありますが、このオンブズマン制度というものを、特にまた参議院考えるときに、その役割の性格というものを、例えば独立性であるとかあるいは権威性であるとか、あるいはきょうの午前中にも議論になっていたわけでありますが、その知名度の高さを通じて国民世論の支持を得る、そういった性格といったようなものが議論をされてきたわけであります。  特に、独立性というのはただ単に行政府に対する独立性だけではなくて、参議院に設置する場合には党派的な活動からの独立性ということが非常に重要な条件になってくるのだろうと思うわけであります。こうしたオンブズマン制度、役割の性格についてどのようにお考えになるか、平松先生及び元山先生、御両人にお聞きかせいただきたいと思います。
  93. 平松毅

    参考人(平松毅君) 御質問ありがとうございました。  オンブズマンにどういう人を充てるかについて考えてみますと、これは紛争解決ですので、恐らく常識では、議員以外で最高の地位にあった法律家が選ばれるのではないかと思われます。以前、だれが望ましいかにつきましてある参考人から、スウェーデンでは最高裁判事級の人が任命されているという言葉が出てまいりましたが、ここで考慮していただきたいのは、法律解釈は手段であって目的ではない。したがって、法律解釈の専門家が公益判断にすぐれているということでは必ずしもないということであります。  例えば、弁護士は依頼主の利益になるように法律を解釈します。弁護士は、そういう狭い視野から特定の利益を擁護するために法律を手段として利用している人たちであります。政府の役人も裁判官も、現在の憲法解釈を見てもわかりますように、特定の利益や目的のために狭い視野から法律を活用する能力においては大変すぐれておりますが、何が公益なのか、どうすればすべての人々の幸福を増進するのかという公益自体、目的自体を長期的視野から判断する能力において特にすぐれているわけではありません。  今日、法律は公平という目的を達成するため我々の生活を隅々まで規律し、本当に有能な人がその能力を活用する分野がますます狭められております。公平が実現される程度に応じて、我々の生活はそれだけ法律の網の目の中に閉じ込められているということを考慮する必要があると思います。  また、以前ある参考人から、政党とかそういう政治的影響力を排除した形でという意見がありまして、政治家は望ましくないようなニュアンスの意見がありましたが、数多い職業の中で公益の実現を目的とする仕事をしている人は政治家だけであり、選挙や陳情や圧力など社会の修羅場の中をくぐり抜け、なおかつ世間から信用される仕事をした人というのは並大抵の人物ではないと思います。初めからきれいな仕事をした人ではなく、世間の修羅場をくぐり抜けながらなおかつ尊敬を得ている政治家オンブズマンの適格者でないということは言えないのではないかと思います。  例えば、ドイツで初めて市民オンブズマンを評けましたラインラント・ファルツ州オンブズマンは州議会の議長でしたし、オーストリアでもフランスでも政治家からオンブズマンが任命されていることを考慮する必要があろうかと思います。  結局、どういう人が望ましいかといいますと、国民が、国民の立場に立って調査してくれる人であるという信頼感を持つような人であれば職業にはかかわらないのではないかと思われます。  以上です。
  94. 元山健

    参考人(元山健君) 私も基本的に平松教授と同じ考え方を持っております。  イギリスの場合には、実は法によってオンブズマンになる者の資格は定められておりません。これまでオンブズマンになった方は、公務員の御出身、法律家の御出身、それから会計検査院長。まあ法律家の御出身と申しましても、これは日本でいいますと高裁、最高裁の例で、公務員の御出身といいますとやはり次官、局長という御経験をお持ちの方が実例でございます。  さらに、これにつきましては幾つか難しい問題もあろうかと思います。やはり政治家とて、とてと言うのは失礼かもしれませんが、政治家とて除外の対象ではない。ギリシャ以来、私の大好きな言葉に、政治とは最高の美徳であるという言葉ぶございます。そのことを平松教授は、荒波を越え汚いこともくぐり抜けて人生を輝かしく過ごさ打てきた方々であるというふうに具体的におっしゃいましたが、まさに最高の美徳であるお仕事を国民代表としてなさっている経験をお持ちの方がオンブズマンになれないとは私も思いません。  ただ、これははっきりしておかなくてはならないのだろうと思うんですが、平松教授はおっしゃいませんでしたけれども、オンブズマンにおなりになりましたらひとつ参議院議員をおやめになるという必要があるいはあるかもしれません。ここら辺の具体的な話になりましたら、それはさらにまた必要があれば、私などよりももっとすぐれた研究者もございますので、具体的なところは伺われたらよろしいかと思いますが、現職のままでオンブズマンになるということには、これはいささか問題があるかもしれません。  以上でございます。
  95. 武見敬三

    ○武見敬三君 特に、参議院オンブズマンに求められる独立性というものを考えたときに、御指摘のとおり、オンブズマンになる個人の資格の要件というものが非常に大きく作用する、そういうように私は理解をし、お話を承りました。確かにそのとおりであろうかと思います。  また同時に、そういういわゆる個人の資格要件だけではございませんで、制度として実際に設置するときに、党派的な活動から守って、この参議院オンブズマン制度というものの独立性を維持し、国民信頼をいかに維持し続けるようにするかという制度上の問題を考えたときに、どういう基本的な考え方からそれを実際に検討したらいいのか。具体的に、例えばこういうやり方であれば好ましいというような御意見があればぜひ伺わせていただきたいと思います。これも平松先生、元山先生、御両人にお伺いさせていただきます。
  96. 平松毅

    参考人(平松毅君) まず、オンブズマン国会に設ける趣旨は、その中立性を確保すること、それからもう一つはその中立性に対する国民信頼を確保することにあります。  まず、中立性の概念でありますが、これは日本と西欧とでは異なります。日本におきましては、世俗の俗事から超越していることによって中立性を確保できるとみなされましたので、戦前、会計検査院の中立性を確保するために、会計検査院は天皇直属の機関とされたわけです。今日におきましても、審議会の委員に対する利害関係者からの働きかけや圧力を封ずることによって中立性を確保しようとするのも同様の発想から来ております。このような考え方を消極的中立性と称することができます。  他方、西欧におきましては、相対立する利害がともに代表されることによって中立性が確保されるという考え方がなされておりまして、これを積極的中立性と称することができます。例えば労働委員会は、使用者側委員と労働者側委員がともに代表されていることによって、全体として中立であるということが言えます。この意味におきまして、国会にも与党と野党が存在し、ともに政策決定に影響を与えることができますので、全体として中立であるということが言えます。  こうして、オンブズマン国会に置くことには、苦情が中立的な機関によって処理されるという国民信頼を確保するという意味があります。そういたしますと、オンブズマン国会に置くことが望ましいということになります。  ところが、他方におきまして、我が国におきましては、このような中立性の理念に基づいてつくられた制度は、その理念どおり機能していないという現実にも注目する必要があります。すなわち、利害または見解の対立を調整することによって中立的判断を期待する制度は、我が国では、利害や見解の対立を妥協させることによってではなく、利害や見解の対立を表面化しないことによって機能しているという現実を考慮する必要があります。我が国におきましては、利害または見解の対立は直ちに敵味方の判断と連動しやすく、意見や利害の異なる者が駆け引き、取引あるいは妥協によって合意を形成しつつ職務を行うということが難しいという国民性があります。その意味で、日本人は感情的な民族であると言われております。  このため、利害や見解の対立を制度化することによって中立性を確保しようとする制度は、初めから見解や利害の対立を捨てるか、表面化しないことによって機能していると言うことができます。これについては多くの例を挙げることができます。  例えば、地方におきますところの議会と首長の関係は、議会が世論を代表し首長を統制することが予定されておりますが、現実には、議会において行政の違法や不当が暴かれることは余りありませんし、仮にあってもそれが議会の意思としてまとまることはほとんどなく、ほとんどの議会が事前の根回しを通じて、オール与党体制として機能しております。  また、監査委員と都道府県や市町村との関係も同様でありまして、監査委員は、会計処理が適正に行われていることを住民に証明することにより、都道府県や市町村を監視するのではなく、それに協力することによって機能しております。  会計検査院と行政権との関係につきましても同様のことが言えます。新聞で報道されましたが、会計検査院は、例年その存立に見合う金額の不正を摘発するにとどまり、それ以上の仕事をすることは控えているような印象を受けます。  公正取引委員会も、近年、外圧によりかなり積極的に活動するようになりましたが、それまでは通産省や大蔵省に対する遠慮からか、できるだけ警告にとどめて、それ以上に刑事告発をすることを避けようとしたように思われます。  この意味におきまして、国会内閣との関係を共同協力関係とする議院内閣制は、我が国の国民性に適した制度であるということが言えるかと思われるわけであります。  オンブズマン制度を設ける場合におきましても、このような国民性に留意する必要があると思われます。すなわち、中立性を確保するためにオンブズマン国会参議院に置いたといたしましても、中立的判断が苦情処理に反映されるということは余り期待できないし、国民も中立性ということをそれほど重視しないのではないかということが考えられます。  具体的に言いますと、日本の各省庁は、一概には言えませんが、西欧のようなトップダウン方式ではなく、全体の合意によって意思形成がなされる場合が多くありますので、オンブズマン調査結果に基づいて大臣に対して正面から改善措置を勧告し、大臣が勧告に基づく措置をとるという方法は、オンブズマンが設けられたといたしましても実際にはとられないのではないかと思われます。これまで、実際に沖縄県や川崎市で設けられたオンブズマンの活動の実態を見ましても、オンブズマンは第三者機関としてではなく、知事や市長の代理人として、知事や市長の意思に従って行政に協力する機関として苦情を処理しているように思われます。  そこで、仮に参議院オンブズマンが設けられたとしましても、勧告までに、事前の改善の必要性や方法などについて関係行政機関と非公式の協議、省庁内部における稾議に基づく組織決定などが行われ、実施の見込みが立った時点で勧告が行われるということになろうかと思われます。  そういたしますと、行政監察と変わらないのではないか。それならば、総務庁オンブズマン制度研究会が提言しているように、行政府内部にオンブズマン委員会を置き、行政相談から上がってきた処理困難事例や、直接国民から申し立てられた苦情を処理することとした方が既存行政監察との連携も円滑にいくのではないかという気がいたします。  ただ、行政府内部にオンブズマン委員会を置きましても、各省庁の独立性が強い我が国におき生じては、各省庁にまたがる苦情処理制度を設けるについては、各省庁にその勧告をどう受け入れきせるかという問題があります。  日本におきましては、各省庁にまたがる問題を横断的に処理することがいかに難しいかということは、政府が設けている市場開放オンブズマンを見てもわかります。年間平均四十件程度の苦情を処理するために各省庁共通の処理基準を定め、総理大臣を長とする市場開放問題苦情処理対策本部、その下に関係省庁連絡調整会議を設置し、審議機関として民間の委員から構成される市場開放苦情処理推進会議と苦情処理部会を設け、事務局を経済企画庁が担当しております。結局、市場開放オンブズマンの場合、すべての省庁が合意することができる基準を設け、自主的に処理させた上で問題がある場合には苦情処理部会で審議し、その結果を大臣の命令という形式でさらに再考を促すという手続がとられておるわけです。  したがって、行政府オンブズマン委員会を設ける場合にも、市場開放オンブズマンに類似した仕組み、すなわち、政府がオンブズマン勧告を全面的にバックアップする体制を設けなければ、現在の行政監察局の活動以上の成果は期待できないということになろうかと思われます。  ちょっと御質問の趣旨とは違ったかもしれませんけれども、このくらいにして御容赦いただきたいと思います。
  97. 元山健

    参考人(元山健君) 制度としてオンブズマン参議院に設置するというときに、党派的な影響から独立性をいかに制度として確保できるかというのは大変難しい問題でございますけれども、私がきょう皆様方にお話をさせていただいた限りでは、先ほど武見議員からありましたように、やはりまず一つオンブズマンになる人物の問題です。それと同時に、オンブズマンにどのような地位、ポジションを用意するかということが大きいと私は思うんです。人は器に合わせて大きくなるとも小さくなるとも申します。ですから、そこは参議院がどれだけ中立性を確保できる器を用意されるか、その器の中に私どもが申しておりますような人物が入るのか、これで私は一定の党派的な影響からの中立性というものが確保できるであろうと思います。  それからもう一つは、平松教授もおっしゃいました議院内閣制をとっておりますので、憲法構造上議院内閣制をとっているということを前提にした上で、実際には本院、参議院とそれから行政内閣との実質的な一定の協調というものがどこかで得られないと、もちろん、オンブズマン法というものができる場合に、当然それが前提になりますけれども、人物の任命等に当たりましてもそういう慎重な配慮の上で、その上で私はかなり強い権限を用意し、かなり強い身分保障を用意するということがまず必要だろうと思います。  これは、平松教授がおっしゃるように日本的な風土というのがございますけれども、ただ、それを前面に出し続けておりますと、実は今問題になっておりますのは、武見議員が一番最初におっしゃいました問題に対する見識、官官接待であるとかもたれ合ってしまうとか、それに対抗することができないわけでありまして、時代が大きく変わろうとしている中で、ここはやっぱり発想の転換をし得る場として、参議院が大いにこの制度を検討していただくことを私は期待しております。  以上でございます。
  98. 武見敬三

    ○武見敬三君 最後に一言だけ。  この参議院オンブズマン制度を設置する際において、独立性あるいは第三者性と申しましょうか、こうした点がどれだけきちんと制度上確保されているのかということが、恐らく国民の支持と信頼を得る上で決定的に重要な要件ではないかと実は思っていたものですから、御質問をさせていただいた次第であります。  なお、その一つの方式として、個人の要件等についての御意見もございましたが、例えば参議院議員がオンブズマンになるときに議員の職を辞するという、非常に私にとってはほおっと思うような御指摘がございまして、なるほどと感じたわけでありますが、まだその辺がちょっとよくわからない部分もございますので、もしお時間をお許しいただけましたら、元山参考人に一問だけ、なぜ参議院議員を辞さなければオンブズマンになれないのか、その考え方について伺わせていただければよろしいのですが、会長、よろしゅうございますか。  それで私の質問を終わらせていただきます。
  99. 井上孝

    会長井上孝君) 元山参考人、端的にひとつ御答弁をお願いいたします。
  100. 元山健

    参考人(元山健君) 武見議員の、独立性、第三者性こそが制度としてのオンブズマンのポイントなんだということは、私がたった今議員のお尋ねにお答えしたことと同様でございまして、同感でございます。  なぜ職を辞せと言うのか。それは、議員の皆さん方は、国民の利害に対して公平で公正であるというふうに御自分はお思いだと思います。端的に申し上げますれば、オンブズマンに必要なのは公平公正であることだけではなくして、国民から、外から実際公平公正らしく見えるということも大変重要な要素なのでございます。  ですから、議員の皆さん方が日々国民の苦労やあるいは利益のために、すべての国民のために御奮闘なさっていることは十分承知しておりますけれども、そのとおりであるというふうに私がここで世間の見方を申しましたならば、町の飲み屋でもって多分怒られるんじゃないかと思うんです。公平らしく見える、公正らしく見えるということもオンブズマンの大事な要素でございます。そこで、参議院という政治的な職、国民代表としての職でありますが、政治的な職を辞したらどうかと。  実は私、既におわかりのように、このことにつきましては当初のレジュメにも、また私の用意してまいりました粗末な最初の話にも考えておりませんでしたけれども、武見議員のあえての御質問でございますので、公正であることと同時に、公正公平らしく外から見えるということが大事なんだということをその理由として申し上げておきたいと思います。  以上でございます。
  101. 武見敬三

    ○武見敬三君 ありがとうございました。
  102. 都築譲

    ○都築譲君 平成会の都築譲でございます。きょうは、お二人の参考人には、大変お忙しい中をお越しいただきまして、大変貴重な御意見を伺わせていただきましてありがとうございました。  午前中も、実はお二人の参考人の方にお出ましをいただいていろいろお話を聞かせていただいたわけでございます。午前中は、どちらかというと議会にオンブズマンを置くことに消極的な方ではないかと、こういうお話だったんですが、来られたところ、どうも賛成という立場になっておられまして、午後のお二方のお話もお伺いしますと、いずれの参考人の先生も賛成ということでございます。  オンブズマンということでいろいろ議論がなされておりますけれども、オンブズマンの具体的なイメージというのがまだいまいちわからないまま来ているんだろうと思います。ですから、例えば議会にオンブズマンを置くことについて憲法上の問題がもし生ずるとすれば、それは例えば行政処分の取り消しをするとか、あるいは訴追の権限を持つとか、司法権に実際には介入していくとか、あるいは人権上の配慮の問題とか、そういったところがなければ置けるのではないか、こういうふうなお話でございまして、オンブズマンのイメージ自身が非常に弾力的な柔軟なものでまだ固まっていないことによる議論の過程であろうと、こういうふうに思うわけでございます。  私自身、個人の見解を申し上げれば、むしろ現在国会に与えられている権限、機能、こういったものを十分に発揮していくことによって、立法府として、あるいはさらに行政府、司法府との連携の中で、国民行政に対する苦情とかあるいは国政全般に対する苦情といったものが適切に救済できるのではないか、こういう考え方を今でも実は持っておるわけでございます。  午前、そしてまたきょうの平松先生、元山先生のお二人の参考人のお話を聞きますと、オンブズマンの一般的なイメージとして、中立性とかあろいは独立性とか、さらに権威あるいは知名度、それから専門的なスタッフ、こういったものがございますし、また決定権ではなくて調査権を十分振るうことであると。そして、勧告意見というふうな形でその見解を表明をすると。そしてまた、どういう案件を取り上げるかについては、議員の紹介による案件を選ぶんだという方式とか、あるいはそれについてはまたオンブズマンが裁量権を持つんだとか、そういうふうなお話だったろうと、こういうふうに思います。  それで、幾つかちょっと細かい点をお聞かせいただきたいと思うわけです。まず、オンブズマンでございますけれども、身分保障の問題がその中立性とか独立性の観点から言われておりました。オンブズマンの身分の保障ということでございますけれども、例えば幾つか例がございます用意に反して罷免されないとか、そういう例もあろうかと思います。ただ、私ども政治家は一応選挙という形で国民の皆さんの批判、洗礼を受けると。それから、最高裁の判事についても国民審査というふうな形で国民の審判に付されるわけでございまして、そうするとオンブズマンの身分保障というのは具体的にはどういうことをお考えになられるのか、そこのところをちょっと元山先生にお伺いしたいと思います。
  103. 元山健

    参考人(元山健君) まず、都築委員の一番最初の御認識、つまり国会の持っている機能をまず十分に発揮することの方が大事だと、国会の持つている機能を十分に発揮することが大切であるという認識は、これは私も同様でございます。  ただ、諸国でオンブズマンが議会に設置されてまいります経緯は、決して自由諸国、先進諸国の議会が怠けていたからではございません。実は先ほどの武見議員の御見解、御見識にもございましたように、やっぱり現代という時代の中で、特にこれは国民福祉のために極めて強大な組織にこの百年、二百年の間になったこの行政に対するきめの細かい、ここが重要なところでございますが、きめの細かいチェックを参議院議員、衆議院議員国会という意味では両方ですが、参議院であれば参議院議員の皆さん方とともにチェックをしていく補助機関というものが各国で必要になってきていると。つまり、そういう現代行政国会としてさらに有効にチェック機能を果たしていくということが必要になっているんだということで、議会の先進国であるイギリスを初めとしてこの制度が採用され、しかも、個別の行政領域を担当する医療オンブズマンであるとか地方行政オンブズマンであるとかいう形で、これは平松先生のレジュメにもございますけれども、拡大をしていっているのが実情でございます。その点のやはり認識があるんだと思います。  ただし、都築議員のおっしゃいますように、現在、国会機能を十分に発揮しているかどうかということの御検証は、これはやはり常に議員の皆さん方の職責として行っていただきたいというふうに私はもちろん思っております。  ただ、それがあるからこれがだめというものではない。やはり議会というものの意味をお考えいただきたいと思うのですけれども、国民が時に行政に抱く苦情や不満というものを取り上げる国民にとって有効な手段、システムがさまざまにあること、これはもう決して、これがあるからあれはだめというような、要するに相互排他的なものではないだろうというふうに思います。  それから、二点目のオンブズマンの身分保障について。政治家には選挙があり、裁判官、特に最高裁の裁判官には、都築委員がおっしゃるように国民審査がございます。オンブズマンの身分保障との関係で、オンブズマンは私の理解するところによれば、そのような国民からの信任といいましょうかそういうものを得ない、そして極めて強い身分保障を持ち、強い調査権を持つということについての疑義かとも存じますが、実は先ほど来申し上げておりますように、諸国のオンブズマンには決定権限がございません。オンブズマン調査をする強大な調査権は持っておりますけれども、これは議員各位の間にも御意見の違いがあるだろうと思いますが、最高裁の裁判官の場合は、死刑判決を確定するというような重大なことをただの刑事裁判でもいたしますし、それから何よりも憲法の番人と俗に申しますように、違憲立法審査権を行使する三権の一つの頂点でございます。したがいまして、そのような国民審査というシステムを憲法はとっている。  政治家とおっしゃいましたが、特に国政を預かる国民代表が、まさに憲法前文にもありますように、我ら国民は、皆さん方国民の選良である代表を通じて行動するというふうに、主権の行使について皆さん方に深い信頼を寄せているわけであります。中学校の公民の教科書に主権どはということで、国の行方を決める力というふうに言っているわけでございますけれども、そういう力を国会議員の皆さんはお持ちです。そこのところがオンブズマンと違うところでございます。
  104. 井上孝

    会長井上孝君) 会長から参考人にちょっと申し上げます。  それぞれの質問者が持ち時間を持っております。これからの方々は十分以内になりますので、大変恐縮でございますが、ひとつ御答弁は端的に、場合によってはイエスかノーかというような御答弁をお願いしたいと思います。
  105. 都築譲

    ○都築譲君 恐れ入ります。ちょっと私の質問の仕方も悪くて御迷惑をかけましたが、私の場合はまだ残り時間八分ぐらいあると思いますので、あと幾つかお伺いをしたいと思います。  今、元山先生の御返事とも関連するわけでございますけれども、例えば非常に世の中が多様化してきておるわけでございまして、それぞれの経緯とかいったものもいろいろあるだろうと思います。ですから、そういった意味で、むしろ世の中が複雑多様化してきている中で、非常に限られたオンブズマン、例えば議会に置く場合、三ないし五人程度が人口比からいって適切ではないかと、こういうふうに言われましたけれども、例えば情報通信からあらゆる産業からあるいは労働分野から福祉分野から、いろんな行政分野が国家の作用として働くときに、そういう限られた方にすべてのことをゆだねるようなことが本当によろしいのかどうか。ちょっとまた抽象的で大変恐縮ですが、この辺について御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  106. 元山健

    参考人(元山健君) おっしゃることの意味はよくわかります。端的にお答えをしなくてはいけないのですが、都築委員、すべてをゆだねるわけではございません。何もゆだねないのです。決定を行い、それが行政の改善や立法に結びつくのは、これはまさに参議院でございます。  ですから、オンブズマンというのは、広範な調査権を持って、さまざまな苦情を受理して、そしてその中から常に参議院オンブズマン調査会なりオンブズマン委員会なりというものに連動させ、そこを経由して予算に関する、大蔵に関すること、通産に関すること、それぞれはそれぞれのまた委員会に回していくというような形で、複雑多様な変動期の世の中であればこそ、決定権はまさに参議院にゆだねられている。  以上でございます。
  107. 都築譲

    ○都築譲君 それで、冒頭、オンブズマンのイメージということで、権威とかあるいは知名度とか独立性というふうな話になったわけですが、ここで問題になってくるのは、オンブズマンがそういうふうに非常に権威のあるものとして、特にまた議会に置くということになりますと、決定権とかいったものはないにしても、調査結果として出す、あるいは勧告として出すような形になればそれなりの影響力は持ってくるだろうと、こういうふうに思うわけです。だから、それは国会を事実上拘束するような意味を持ったり、あるいは行政府に対して相当の拘束力を及ぼすような影響力も事実上持ち得るのではないのかなと、こういうふうに思うわけです。  この点について平松先生はどういうふうにお考えになりますでしょうか。
  108. 平松毅

    参考人(平松毅君) 確かに、現代では行政分野が多岐にわたり複雑化しておりますので、一人のオンブズマンにあらゆる行政分野を管轄させるような独任制のオンブズマンを設けるということは現代ではほとんど行われておりません。現代では、例えば環境問題とか情報公開とか、そういったものがそれぞれの分野を管轄するオンブズマンを設けるというふうな形が最近の一つの動向であると思われます。  さらに、オンブズマン勧告した場合に、それが事実上大きな影響力を持ち得るという根拠はその内容の説得力によるわけです。したがって、その内容が、調査に基づく説得力があるような勧告を行った場合に影響力を持ち得るのであって、説得力を持たないような勧告であれば、これは世論も無視しますし、また、国会の方でこれを無視しても構わないわけです。  そういうふうな点がオンブズマンが民主的な制度であるということで普及した理由でありますが、今日のように行政分野が非常に複雑化し、多岐にわたるような状況におきましては、国民のすべての分野を管轄するようなオンブズマンを設けて果たして機能するかどうかについては確かに問題があるかと思います。
  109. 都築譲

    ○都築譲君 ありがとうございました。  また今の御答弁とも関連して、平松先生もそれから元山先生も、例えばどういう案件を取り上げるかはオンブズマンの裁量にゆだねる、こういうお考えだろうと思うんです。  ですから、そういう案件の取り上げ方についての、例えば国民の皆さんとかあるいは議会の中での不満とか苦情、こういったものがあった場合とか、あるいは今平松先生が言われたような説得力のないようなものを言う。例えば一つ行政監察仕組みを見ても、社会福祉の観点からは、受給者の保護という観点からはぜひこれはやった方がいいと言いながらも、財政事情の観点からはこれはだめだとかいう議論がある。あるいは、日本の国産米をどこかの国に輸出するに当たって、これはぜひやるべきだという議論と、国際状況の中でこれはだめだという議論とか、こういったものがあるわけですね。そこら辺の分野が非常に複雑多岐にわたっている中で、いろんなところからのまた意見も出てくるだろうと、こういうふうに思うわけでございます。  オンブズマンの案件の取り上げ方に対しての不平不満とか、出した報告についての、意見についての、あるいは勧告についてのまた不平不満とか、そういったものはどういうふうに処理され、オンブズマンをまた監督するオンブズマンといったものが必要になってしまうんじゃないかと。  また当初の議論に戻って恐縮ですけれども、もともと各委員会が常任委員会という形で置かれて各行政分野を所管している。だからこそ、私はそこが十分な機能を発揮していく、監視をしていくということが重要ではないのかなと、このように思うわけでございますけれども、ちょっと簡単にコメントをお二人の先生方にお願いしたいと思います。
  110. 平松毅

    参考人(平松毅君) はっきりした数字は覚えておりませんが、苦情のうちでオンブズマンが取り上げる事案といいますのは、各国およそ五%程度から一〇%ぐらいでありまして、あとの事案はすべて管轄外であるとかささいな苦情であるとかいったふうな理由で却下されております。  したがって、オンブズマンは、この問題については調査した結果自信のある勧告を行うことができる、そういうふうな事案だけを取り上げておりまして、その結果、苦情のうちで実際に取り上げられるものは、はっきりした数字はちょっと覚えておりませんが、五%程度ではないかと思います。  では、苦情が取り上げられないことに対する不満を言うこと、もちろん言うことは自由でありますが、それに対しましてはオンブズマンの方で、これこれの理由で取り上げられないんだということを本人に回答するということ以上の義務は負わないようになっております。
  111. 元山健

    参考人(元山健君) 都築委員の先ほどのお米の問題であるとか、これは同じ行政統制でも政策決定にかかわる領域でございまして、これはオンブズマンの領域ではない。  それから、取り上げ方について不平不満が出てくるんではないかというときには、先ほどの平松教授と同じで、必ず理由を付しまして、こういう理由で取り上げないんだよということをきちんとオンブズマンは伝えております。  それから、これも都築委員と同じになるかもしれませんけれども、やはりオンブズマンを最後にきちんと連携させていくのは議会の委員会でございます。ですから、まさに議会の委員会、議員こそが国権最高機関、最高責任者としてオンブズマンの後ろにいるということ、これが大切なことであり、オンブズマンは、そういう意味で議員の皆さん方の手助け、議員の補助者でございます。
  112. 都築譲

    ○都築譲君 ありがとうございました。
  113. 山下芳生

    ○山下芳生君 両参考人にお伺いします。  オンブズマン国会の附属機関として設置することは憲法上問題はないと。ただ、国会議員以外の者がそのメンバーに任命された場合は憲法上疑義が生じるということですが、国会議員以外のメンバーがオンブズマンとしてどのような活動や権限を与えられた場合に、憲法上のどの条文に抵触するのか。同時に、そういう疑義を解消するために、国会議員以外のメンバーがオンブズマンに任命された場合はどのような活動や権限にすべきなのか、改めて具体的にお聞かせ願えますか。
  114. 平松毅

    参考人(平松毅君) ただいまの御質問は、国会議員に与えられた権限というものを国会議員以外の者に与えた場合ということですが、これは先ほどもちょっと申し上げたわけですけれども、ただ、ドイツにおきましては、委員会におきまして法案というものを審議する、こういうことは議員でなければできませんが、この委員会の審議を充実させるために予備調査会というものを設けまして、そこにおいて第三者を任命して、そこで審議を行う。その審議した結果というものを委員会で審議するというふうな制度を連邦議会のほかに各州の議会も採用しております。  したがって、議員が与えられております予算、それから質疑質問権、懲罰権、議院規則制定権などの権限というもの、それ自体を第三者に委任することはできませんが、そのための調査を委託することは、これは国会の権限においてできるのではないかというふうに思われます。  オンブズマンに関しましても、これは先ほど申し上げましたけれども、スウェーデンでは、議員から成るところの国政調査権というものがもともとあったわけですけれども、議員が国政調査権を行使した場合にはさまざまな権限の乱用があったわけです。  例えば、裁判所に行きまして判決文は一ページに何行書くべきであるかということを指示したり、あるいは大学に行きまして重商主義を正しく講義しているかどうかを調べたりしたわけです。あるいはまた大事に関する苦情がありますと、その人事の苦情について調査して、この人事は適当でないといったふうな勧告を行ったりしたことがあったわけです。  そこで、国政調査権というものを議員以外の第三者にゆだねて、そのかわりその第三者は徹底的な調査を行うことができる、しかし国会自身は調査権は行使しないという制度を設けたわけですが、これがオンブズマンであったわけです。したがって、国会におきまして調査した結果というものを直接どう利用するか、これは議員の権限でありますが、調査する材料を収集すること、これは憲法に反しないのではないかと思われるわけです。
  115. 元山健

    参考人(元山健君) 山下議員のお尋ねですが、国会議員以外の者が国政調査権を行使してはだめだという議論は、それはそういうことにはならないのでして、実際我が国の国会国会の附属機関を持っておりますし、これは平松先生のおっしゃったとおりでして、それと同じような附属機関つくってはいけないんだというのであれば、これは今ある附属機関はどうなるんだという話にもなります。  それから、委任の委任の再委任だということにつきましては、先ほど判例もあるいは学説も挙げましたように、国会議員の権限と議院の権限を委員会に委任して、その委任された権限を委員会がまた委任するのかというこの議論は、一つにはつまり議院と議院の委員会というのはこれは実態上一体でありまして、ですから本調査会は議院の権限を委任されて、副次的にやっているのではないというのが一つ、判例、学説上の考え方であります。  それからもう一つは、平松教授がおっしゃいましたスウェーデンの場合でございますけれども、権限の委任という場合に、これは都築議員にもお話ししましたが、決定権は各委員会が持っておるわけでありまして、そこにオンブズマンが議会の官吏として議院の国政機能の拡充に資するという利点がございます。  以上でございます。
  116. 山下芳生

    ○山下芳生君 次にへ先ほど武見委員からも問題提起されましたけれども、オンブズマン制度導入する背景、どこからその要求が来ているのかと、これは非常に重要な問題だというふうに思います。両参考人は住専問題や薬害エイズの問題をお挙げになっておりますし、午前中の参考人からはゼネコン汚職のことも挙げられました。  私は、もっとさかのぼれば二十年前のロッキード航空機疑獄であるとか田中金脈事件など、一連の汚職腐敗事件に対する国民の怒りからこういうオンブズマン制度の要求がやはりずっと出てきているということを感じるわけです。なぜそういう事件が発生したのか、発生を食いとめられなかったのか、あるいはなぜ事件が明るみに出て真相がなかなか究明されないのか、なぜそういう事件が繰り返されるのか、このことに対する国民の怒りというか、何とかしてほしいという要求が底流にあると思うんですね。  そこで、両参考人に、先ほど平松参考人からは、はみ出し自販機の事例を挙げて説明いただきましたけれども、また別の事例で、国民の大きな関心を呼んだ具体的事例に照らして、だからオンブズマン制度が必要なんだと、これまでの諸制度はここに限界があって、あるいはもっとこういうふうに運用しなければならないが、それでもオンブズマン制度が必要なんだということを少し具体的にわかりやすく御説明いただければと思います。
  117. 平松毅

    参考人(平松毅君) 大変難しい御質問で、実はこれは日本ではないのですが、外国においてオンブズマンというものが設けられました一つのきっかけといたしましては、外国におきましては法律の規定というものは、これは宗教上の戒律とのアナロジーにおきまして厳格に適用する。だから、法律を行政の場におきまして柔軟に適用するということは行われないわけです。一たん法律ができますと、これはもう厳格に適用する。厳格な適用というものを行政のサイドでゆがめることができないわけです。そういったふうなことから、オンブズマンの存在意義というものは、外国におきましては柔軟な適用ということ、つまり立法勧告権を持つオンブズマンがそういう柔軟な適用というものを許す、勧告する、そういうふうな意味があったわけです。  このことは、例えばフランスのオンブズマン法におきましてメディアトゥールは、法を厳格に適用した結果、正義が損なわれると認識した場合には、その状況を改善する対策を勧告することができるという規定が明文で置かれております。  ところが、日本におきましては、行政指導という言葉に見られますように、行政は法律を柔軟に適用することについては世界に冠たる国であります。この原因といいますのが、日本にはもともとすべての人に適用される法という観念が存在しなかったことにあると思われます。すなわち、我々は昔から家族とか親族とか若者、職場仲間、それぞれの共同体における異なった規範というものはあったわけですけれども、すべての人を通ずるところの普遍的な規範というのもは我が国にはなかったわけです。  したがって、我々はそれぞれの仲間同士のさまざまな決まりというものを守ってきた。すべての法というものができましても、その法というものを我々のそれぞれの人間関係をうまくする、うまくやっていくための道具として使ってきたといったふうなことがありますから、我が国におきましては、そういう法というものを柔軟に適用するという役割を持つようなオンブズマンというものは必要がないということが言えるわけです。  そういたしますと、ではなぜ日本においてオンブズマンというものが叫ばれてきたのかということでありますが、これは今申し上げましたような共同体的思考によりまして、法というよりも現実の力関係というものが優先するような仕組みの中で、法というものに基づくところの正義を求める意識がだんだんと国民の間に高まってきた。そういうふうな人たちの声というものをマスコミが代弁して正義というものを実現できる方法というものを求めた。そうすると、オンブズマンというものに行き着いたということではないかと思います。  したがって、そういったふうな期待にこたえるようなオンブズマンを設けるといたしますと、先ほど申し上げましたような地方における住民監査請求とのアナロジーにおいてオンブズマンを設けるということが一つ考えられると思います。  具体的な事例ということはちょっと思いつきませんので、御容赦いただきたいと思います。
  118. 元山健

    参考人(元山健君) 具体的な事例につきましては、まだ我が国にはございませんので仮定の話になってしまうので難しいのですが、これは手短にイギリスの場合で最近の例を一つ申し上げます。  イギリスで身体障害者に対する社会保障給付のやり方が変わったんです。そうしましたら、この制度変更によって受給が非常に滞りまして、それで国民から文句が出た。それを受けて議会コミッショナーが調査をしたところ、これは行政が大変かわいそうなことになっておりまして、制度が変わって職員が新しい制度になれなきゃいけないのにちゃんと研修がされていない、人手が足りないということがわかりました。これは一九九二年の事例なんですが、一九九二年の六月に二十五万件の苦情が寄せられたんですが、そのことをきちんと取り上げまして、半年後には五万件にまで減らしました。そして、イギリスの社会保障省は制度自体を変更いたしました。これは現実に制度があるところでの例でございます。もちろんその間に当然議会が活躍をしております。  それから、かわって、我が国でないものですから、仮定の例が大変難しゅうございます。非常に抽象的な言い方で恐縮でございますけれども、例えば公害などの行政に関しては、必ずしもそれほど大きな秘密文書ではないようなものは、このような制度がありますと小さな問題であるうちにきちっとそこへ出かけていって調査して済むかもしれない。山下議員あるいは都築議員、武見議員、皆さんおっしゃいましたような薬害エイズであるとかスキャンダルというのも、その最初できちっと片をつけておきますと、実はスキャンダルにならないものも私は相当あるんじゃないかと思います。  そういう意味で申しますと、実はこういうシステムというのはむしろ行政の外にあって、かなり厳しいのですけれども、厳しい目でもって最初のうちにぴしっと見て、この調査会なり委員会なりがきちっと物を言うということによって人権が守られ、それから行政が守られる。ここが重要なところでございまして、行政が守られるというふうにお考えいただければいいのではないか。  今、薬害エイズと公害について申しましたけれども、具体的にはない制度でございますので、架空のシミュレーションをちょっとしなくてはなりませんが、その具体的な経緯については、時間がございませんので、省略をどうぞお許しいただきたいと思います。  以上です。
  119. 山下芳生

    ○山下芳生君 どうもありがとうございました。終わります。
  120. 小島慶三

    ○小島慶三君 きょうは、両参考人の方、わざわざおいでいただきまして、ありがとうございます。  私は一問だけお伺いをしたいと思います。  私が今一番深刻な関心を持っていますのは財政の危機ということでございます。この間も予算委員会のときに一般支出の五%カット、これはこのごろ武村前大蔵大臣も中央公論あたりで提案しておられます。それから不当支出に対するペナルティーの徴収、それから三つ目には民間支出と連動しないプロジェクトの一時凍結、この三つを提案したんですけれども、総理からは賛成ではないという答えが返ってまいりました。  それから、もう一つ私が申し上げましたのは、この財政危機に際してオンブズマン制度というものを活用したらどうかという提案でございまして、一番の問題点は、一般の役所の予算支出感覚というものが麻痺しているんじゃないか、それが非常に不当な、あるいは不適当な支出というものにつながって財政を膨張させているんじゃないかと。だから、これはぜひオンブズマン制度というものを、今の制度を補完する機能とさっきおっしゃいましたけれども、そういうことで活用できないものか。  だから、建前から申しますと、行政管理庁があり、それから会計検査院があるわけですから、その両面からこういった支出のチェックというのはできるはずでありますが、これがどうもはかばかしくないというところからそういう提案を申し上げたんですけれども、これも総理は御賛成でなかったんです。  そこで、先生方にこういったことについてひとつお伺いしたい。  だから、単なる調査ということではなくて、やはり勧告とか注意の喚起とか、そこまで踏み込んでの問題解決というものがこのオンブズマン制度によってできないかというのが私の質問の趣旨でございます。
  121. 平松毅

    参考人(平松毅君) 確かにそういったふうな問題について、オンブズマンが設けられオンブズマン勧告した場合には、それが中立的な調査に基づいて得られた客観的な資料に基づくところの勧告であり、もちろん勧告といいましても、政府に直接勧告するということは、そういった権限を与えることは、これは行政権の侵害だということになるかもしれませんが、要するに、そういうふうな調査に基づいて、例えば議院が政府に勧告する、質問することは可能かと思います。  では、それが果たして機能するのかどうかにつきましては、先ほど申し上げました我が国の国民性というふうなことを考えますと、例えば会計検査院とかあるいは公正取引委員会などの活動を見ていましても、全く対立するような見解というものを述べくそして摩擦を起こすといったふうなことはどうも日本国民性に合わないのではないか。したがって、そういうふうな勧告が実際にどの程度世論を喚起して、そして、世論のバックアップによって政府や官僚制に対する圧力となるかということは、これはやってみなければわからないのではないか。  初めからオンブズマンを設ければ、それによって世論を喚起する、あるいは政府に対する相当な圧力になるかどうかということは、多くの不確定要因があって一概には言えないのではないかと思います。
  122. 元山健

    参考人(元山健君) 財政危機の問題を具体的な事例として、オンブズマンを活用できないかということ、特に勧告とかそれから注意を喚起できないか。  この件につきましては、平松教授がおっしゃいましたように、行政権オンブズマンが直接勧告をするというようなことはちょっと難しいけれども、しかし、オンブズマンがこちらに、議院に必要な意見を述べる、あるいは調査結果を上げる。議院が勧告をしたり、国会自体はそもそも行政の存立の根拠たる法律を制定する権限を持っているわけでありますから、そこでは当然できるだろう。それから、勧告の実質性をいかに確保するかと。  これは日本国民性があるんだと、平松先生のおっしゃる面はあろうと思います。例えば会計検査院にいたしましても、議員の皆さん先刻御存じのように、この報告内閣に最初するんですね。それから、公取等々のいわゆる独立行政委員会も内閣にまず報告します。しかし、この調査会で検討されておりますオンブズマンは、その報告内閣ではなくて議会にいたします。ですから、ここから先は、いかに本院がけじめをつけるようなシステムと行為を確立するかという問題とももちろんかかわってくるだろうというふうに思います。  ここは重要なところなんですが、重大な勧告とか何かをし得るような権限を持った一定の独立性を持っているこれまでの機関というのは、主として内閣報告します。しかし、オンブズマンは議会、議員の皆さんのところに直接結びつく、ここに大変重要な意味があるのではないか。そういうふうに私は考えております。
  123. 小島慶三

    ○小島慶三君 ありがとうございました。どうも問題がこっちへ返ってきたようであります。ここで終わります。
  124. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 調査室から与えられたこの資料の中に掲載されている元山先生の論文を拝見いたしました。憲法六十二条の国政調査権と議会型オンブズマンとのかかわりについての論及があるんです。  そこで、国政調査権というものをどうとらえるか。いわゆる補助的機能なのか独立的な機能かということで先ほど冒頭御説明をいただいて、どちらをとっても合憲であるというお考えだということはわかったんです。  いわゆる日本の通説と言われる補助的機能説、京都大学の芦部教授の異説と違う伝統的な通説。これに基づきますと、やっぱり国権最高機関性というものは単なる美称であって、立法機関こそ四十一条の本来の趣旨だと。立法趣旨がそうであるとするならば、補助的機能説からいけばむしろ違憲のにおいが非常に強いんではないかという考え方が出てくるんですが、独立説に立てば、国民と直結した国会というのは最高機関だから、行政に対してある程度介入することも許されるという論理は成り立つんだけれども、そうではないんだということであれば違憲のにおいもあるんだと思うんです。  そこのところを、補助的機能と独立機能との差異によって、いわゆる議会型オンブズマンの合憲・違憲論に対するかかわりについてお伺いをいたします。
  125. 元山健

    参考人(元山健君) 私のまだ若い時代の、元気ばかりよくて恥ずかしいような論文をお読みいただきまして、ありがとうございます。  私の趣旨は、きょうの報告でもまたその当時も実は基本的に変わっておりませんで、補助的機能説に立っても設置できるだろうというふうに思っておるわけでございます。  補助的機能説と独立機能説との違いはどこにあるのかと申しますと、独立機能説は京都学派の考え方で、現在でも京都大学の佐藤幸治教授はこの説に立っておられますし、補助的機能説は伝統的に東京学派の考え方で、これは芦部教授が立っております。
  126. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 さっき僕、間違えたね、失礼。
  127. 元山健

    参考人(元山健君) ですから私は両方紹介をさせていただいたんですが、この両説の大きな違いが出てまいりますのは、実は議会と行政との関係ではございません。議会の行政統制というのは、たとえ立法の補助的機能説に立ちましても、二重の備えがあるんです。  第一番目には、先ほどの平松教授のお話にもありましたように、要するに議会はそもそも行政統制する、内閣国会に責任を負っているんです、ですから、そういう意味でまず第一番目の備えとして、補助的機能説に立ちましても議会による行政統制権というのは憲法上ある。第二番目に、立法の補助だとしましても、社会生活において立法の及ばない領域は私的な事項を除いてほとんどないというぐらいに芦部教授は広くカバーした。まして第三に、行政は法によらなくてはなりません。  そのように考えますと、立法の補助的な機能であるというふうに考えましたところで、実は対行政に関しましては独立機能説と同じである、独立機能説の佐藤幸治教授がその著書でおっしゃっていることでございます。それからこの件では、実は先ほど申しましたようにアメリカでも同様に理解をされております。  ですから、補助的機能説に立つと違憲のにおいがするということは、立法という活動をかなり極端に狭く考えない限りは、そのように議員の皆様方はお考えかどうかわかりませんが、つまり、国民生活の広範に及ぶんだというふうに考える限りは、それは違憲のにおいなどはしない。まして独立機能説に立てば、山田議員がおっしゃるようにもうこれは当然許されるべきものである。  以上でございます。
  128. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 先生の論文でその点がちょっとあいまいだったから確認させていただいた。いずれも、どちらの説に立っても合憲であるということにおいてはよろしゅうございますね。  オンブズマンに対しては組織だとか権限だとかいろんな問題があるんですが、私、権限についてお尋ねします。  きょう午前中も午後からも、いわゆるオンブズマンの権限というのは単なる改善勧告意見の具申程度にとどまるものにすぎないということのようなんですね。例えば告訴、告発、訴追なんというものを入れると、これは行政権に対する侵害がなんということでまさしく権力分立に反する。  ちょっと小さなことを言うようだけれども、私は権力ブンリュウと学生時代に習ったからブンリュウ、ブンリュウと言っているんですが、午前中から先生方は全部ブンリツ、ブンリツとおっしゃるんだけれども、どちらでも構わぬのかどうか、それもあわせてちょっと答えていただきたい。  そこまで権限を強力に与えなければ、せっかく設けた行政監視、行政チェック機関としての機能は十分に全うしないんじゃないか。神奈川県の市民オンブズマンの先生が、オンブズマンというのは特効薬でなくて漢方薬でいいんだ、ないよりはあった方がいい程度のものでも足りるというようなお話があったんですが、せっかく幾らかの費用を投入してでき上がる新制度の与えられる権限の強大さというのは僕は大事だと思うんですが、この点について簡単にお答えいただきたいと思います。
  129. 元山健

    参考人(元山健君) 最初に、私も学生時代は権力ブンリュウというふうに教わりました。これはブンリツでもブンリュウでも結構かと思います。  それから、オンブズマンの権限についてでございますが、スウェーデンの場合にはそもそもの最初に実はこのような訴追権を持っておりました。ただ、これは平松教授のすぐれた御研究によっても今日では使われていないということでございまして、私も平松教授も同じように、ちょっと告訴、告発というところまではオンブズマンにはさせるべきではないと。そういう意味でいいますと訴追権というもの、これはオンブズマンには与えない方がいい。  なぜかといいますと、もったいないというふうに山田議員はおっしゃいますけれども、非常に強力な調査権を与えておるわけです。そして、お話ししましたけれども、諸外国の場合かなり秘密の文書も見ることができます。そこから出てきた結論というのは、例えばその秘密の文書が公にならなかったとしても、極めて大きな説得力をそれ自体として持っているわけでありまして、後の処理は、それは山田議員を初めとする本議院の仕事であるというふうに私は思っております。それこそまさに国会議員自身の職責であると。そういう意味でいうと、オンブズマンは山田議員を初めとする議員諸氏の手足となる議会の官まであるというふうに思っておるわけです。
  130. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 何か今のお話だと、議院には強い国政調査権があるから告訴、告発まで認める必要がないというような論法なんだけれども、告訴、告発、訴追まで認めるということは司法権の侵害というか、行政権の侵害になるということが論拠になるんではないんでしょうか、先生。簡単で結構です。それは僕の私見でも結構、先生から反論であれば結構なんですが。  先生にぜひ聞きたいのは、先生の論文の中に、憲法国民の公選制は予想していない、こういうところがあるんですね。午前中も、国民オンブズマン公選制について尋ねましたら、憲法はその地位その他について予定していない、だからそれを公選制にするためには憲法改正が必要だと、このような御意見が午前中の先生にあったんですけれども、私はむしろ逆に、オンブズマン公選制というのは憲法は予想はしてなくても期待は国民のしているところだろうと思うんですね。  行政をチェックする、三権分立とか国民主権だとかいろんな意味からも、国家の統制作用というものが正しく運営されて作用するためには、国民と直結した公僕たるオンブズマン、これが選出されて、その人が十分なる活動をされて機能すると思うんですが、この点、先生の論文から、憲法が予想しない国民公選制と言われる論拠とかをお尋ねいたします。
  131. 元山健

    参考人(元山健君) 訴追権については山田議員おっしゃるとおりでございます。訴追権それ自体の行使は行政権のまさに本質に属しますので、これはできないということで私も同意見でございます。ちょっと視点のずれたお答えをしたかもしれません。お許し願いたいと思います。  それから、オンブズマンの公選制につきましては、私はその論文でも、また今でもそうなんですけれども、どうしても国民代表である議会の官まであるという位置づけをしておりますものですから、公選制にいたしますと議会議員と同じ地位、同じレベルに立つ、民主主義的な正当性と申しましょうか、そういうことというのはオンブズマンには予定されていないというふうに私は考えているわけです。ですから、それがそのとき論文に書いた公選制ができないという理由でございます。
  132. 井上裕

    会長井上孝君) 山田君、時間ですから、まとめてください。
  133. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 いわゆる公選制の論拠の一つに、行政権に対する控除説に立って、明文規定のないようなものは立法に任せているというのが通説的見解だと思うんですね。そこら辺の論拠からいって、憲法改正が必要でなくて法律によってそういうオンブズマン公選制というのはできるんじゃないかというふうに私は思うんですが、簡単で結構です、それを答えていただいて、私の質問を終わります。
  134. 元山健

    参考人(元山健君) 大変いい御質問をいただいて、私一人でお答えできるかどうかわかりませんが、オンブズマンの公選制の是非につきましては、公選制という意味を私は大統領選のように考えているんです。国民全員が一人か二人のオンブズマンを選ぶ、それは私は日本憲法の控除説に立ちまして、先ほど申しましたようにやっぱり民意代表の正当性というところに根拠があってできないと。  しかも、そのような形で公選制をする場合には、これは先ほどちょっとお話がありましたけれども、例えば訴追権があれば決定権もゆだねられて当然だろうというような話になるわけで、そうなりますとこれはもはやオンブズマンではない。あくまでもやはり議会の官吏としてあるべきだろうというふうに、やや頑固でございますけれども私は思っております。
  135. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 どうもありがとうございました。
  136. 末広まきこ

    末広真樹子君 時間が大変押しておりますので、手短に聞いてまいりたいと思います。  まず、国民にとって何が問題かという、オンブズマンが必要だと言われるわけを考えてみますと、一つ目に、民意が反映されない。具体的には、住専問題で国民の八割が反対していてもそれは予算とともに通過してしまうと、こういうことがあるわけなんですね。それじゃオンブズマンをつくって、おっしゃるように内閣直属型ではなく議会直属型にしても、参議院衆議院と同じ党議拘束を抱えている以上は何も機能しないんじゃないか、じれったいだけなんじゃないかと思うんですが、平松先生いかがでしょうか、端的にお願いします。
  137. 平松毅

    参考人(平松毅君) まず、国政調査権についてでありますが、現在、国政調査権につきましても、これは特定の案件に関する特別調査はできますけれども、行政に対する一般的・包括的な調査権を与えることはできないと考えられております。しかし、オンブズマンを設ける場合には、このような一般的・包括的な調査権を与えなければ機能しないわけであります。  そこで、なぜ、こういうものを設けることが必要なんだ、こういうものを設けるのは憲法違反ではないんだという理屈を考える必要があるわけです。  まず、現在の内閣機能というものを大きく執政と狭義の行政とに分けますと、執政といいますのは、要するに国の政治の方向を定めるという法律の執行を超えた機能でありますが、そういったふうな政治的責任を伴うような問題につきましては質問、質疑国政調査権などによって統制する制度が一応予定されております。しかしながら、狭義の法律の執行に対する統制制度というものは現在のところないわけです。  オンブズマンといいますのは、そういったふうな行政に対する一般的・包括的な調査というものを与える、すなわち狭義の行政に対しましても国会統制の権限を持っているわけですから、その具体的な行政に対する統制を行うための手段としてオンブズマンを設けることが一応正当化できるのではないかと思います。
  138. 末広まきこ

    末広真樹子君 ありがとうございます。  聞いたことがちょっとミスマッチしたみたいな感じでございますけれども、内閣直属型ではなく議会直属型にしてオンブズマンを持っても、衆議院と同じ党議拘束を持っていれば出る結果は同じではないかという同じ質問に対して元山先生はいかがお考えでしょうか。
  139. 元山健

    参考人(元山健君) 参議院はさまざまな党議拘束の問題につきましても、本調査会もその一つだと思いますが、これをある程度必要な修正を加えていくという改革を行っておいでです。私はそのような改革を、先ほど憲法学会の参議院の意義について四、五点申しましたけれども、そういうものを踏まえて参議院が一層改革に取り組んでいかれるということが必要だろうと思います。  と同時に、平松教授が今おっしゃったことは無関係ではございませんで、オンブズマンは、いわゆる執政という大きな国政の政策の方向性というような議論よりは、むしろ行政、つまり法律執行レベルでのコントロールにかかわりますので、その点でいいますと、実は参議院党議拘束ということにつきましては、この問題についてはオンブズマンが何かを参議院に問題提起したときに比較的受け入れやすいんではないかと、私はそういうふうに思っております。  党議拘束が場合によっていけないのではないかということは十分に理解いたしておりますけれども、それがあるにいたしましても、今申しましたように、オンブズマンの主要な活動領域というものは庶民の日常の行政についての不満や何かから始まるわけでありますから、それについては比較的合意は成りやすいのではないか、またそのようにしていただきたいというふうに私は考えております。  以上でございます。
  140. 末広まきこ

    末広真樹子君 そのようでありたいというのは私も同じ考えでございます。  次に、今国民が何を怒っているかというと、例えばエイズ問題なんかは非常に長い年月調査が入らない、エイズ以外でも疑惑が出ても解明されない、それを国会議員は何をしているかという怒りだと思うんですね。でも、実際に議員がそれの調査に個人的に一人で入っていくなんというのはもうほとんど無理だと思うんですね。  だから、やっぱりそういう意味では、先ほど申されました予備調査会、各委員会の手足となって調査してくれる人たち、今行政マンで調査室というところはございますけれども、行政マン以外でそういう手足となって調査してくれる人たち、その人たちをオンブズマンとして議員が活用する、委員会が活用すると、そういうような考え方でよろしいんでしょうか。元山先生、お願いします。
  141. 元山健

    参考人(元山健君) それは一つのお考えだろうと思います。十分成り立つと思います。  ただ、オンブズマンの場合には、その活動の出発点は国民行政に対する直接的な不満やひどい目に遭ってしまったというふうなところでございまして、国会議員からの依頼あるいはその命令を受けて、それに従って行動するという人間ではございません。これはオンブズマンとは別の話でございますが、しかし、そのようなシステムを別に検討するということは、これは私きょう全く用意しておりませんけれども、平松教授のお話にもありましたように、事実、ドイツではそのようなシステムがあるわけでございますので、それは一つ可能性があるという気はいたします。  以上です。
  142. 末広まきこ

    末広真樹子君 たくさんお聞きしたいことはありますが、持ち時間があと一分少々になっております。  例えば、国会の各委員会の審議状況というものを多チャンネル、生中継で広く情報を国民の皆様に公開していくということも一つの解決策にはならないだろうかと思うんですが、この点に関してはいかがでしょうか。元山先生、短くお願いします。
  143. 元山健

    参考人(元山健君) 大変結構なお考えだろうと思います。つまり、オンブズマンの役割というのは情報を広く議員とひいては国民に提供するという、そういう機能を大いに持っておりますので、そういう意味では政治あるいは国政に関する情報を広く国民に公開していくという方向は、これは考えるべき一つの手段であると、私見でございますけれども思います。  以上でございます。
  144. 末広まきこ

    末広真樹子君 オンブズマンというものを決して否定する考え方ではございませんけれども、どなたがおなりになっても大変難しい職種であろうかと思いますので、情報を公平に生で伝達するというテレビの使い方、つまり多チャンネルでどの委員会も国民の選択によって聞ける、見えるというようなことも一つの方策ではないかなと思います。  私の質問を終わります。
  145. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 今、世間を騒がせている官官接待、これなどはまだ違法性は薄い方ですけれども、それよりも空空接待、空空出張、これはもう明らかに違法行為ですね。そういうことが平然と今まで何年も行われてきだわけです。それを行政に対する監督権を持っている議員が、私たち国会の場でもきちっと指摘できなかった。また、自治体の議会においてもそれができなかった。そういうことについて大変反省をしているわけですけれども、しかし、どうして行政的にそういうことがチェックできなかったんだろうかと考えてみたら、行面監察局あるいは会計検査院、こういったものはいわば当事者と同じような立場にある公務員である。それともう一つは、やっぱり国民からも何か非常に遠い存在であるという、そういう結果ではなかったかなというように思うわけです。  また、先ほど自治省から官官接待については特に通達が何度も出されているというふうに言われましたけれども、一説には、通達を出した方が地方へ行けばちゃんと接待を受けているじゃないか、通達なんというのは一応形式を整えるために出したにすぎないと、そういうふうに軽視されがちだと思うんですね。そういうことから申しますと、行政をチェックする機関としての私どもの役割は大変大きいと思うわけです。我々の権限というものを十二分に発揮するための一つの附属機関として私はオンブズマン制度というものを考えてみたいと思うわけです。  そうなりますと、国民の皆さんが特に注目したいのは行政内部ですね、そういう方々がやはり一番最初に問題をつかんでいるはずだと思います。ですから、そういう人たちが国会なり自治体議会で権限として持っている行政に対する監督権、チェック機能を発揮してもらうために、情報の提供をできる機関として私は議会に置いた方がよろしいのではないだろうかな、そういう考えを持っていたわけです。  たまたまそれが憲法上どうなのかということで、午前中から先生方のお話を聞いているわけですけれども、特にきょうは、先ほど来附属機関として設置することについては全然問題がないというようなお話もいただいて、大変意を強くしたわけです。  ただ、午前中の先生方から出された中で、オンブズマンそのものがもっと権威性を持つ必要があるんじゃないかというようなことが随分強調されたわけです。その場合に、例えば民選ということも考えられるのではないかというようなことも言われました。私は民選については否定的な立場に立っておりますけれども、このオンブズマンの人を非常に問題にしている。これは権威のある方、国民が見ても、ああ、あの方であればという、そういう方を選ぶということは結構なことだと思うんだけれども、しかし、それを重要視し過ぎてオンブズマン制度というのが果たしてうまくいくんだろうかというように思うわけですね。  私は、オンブズマンそのものに対する権限というものをどこまで与えるのか、そして、その権限を十二分に生かしていくためにそれなりの優秀かスタッフを多く持つという、そういう制度の方をむしろ重視するべきではないのかなというように実は考えているんですけれども、その辺に関する両先生の御意見を聞かせていただければありがたいと思います。
  146. 平松毅

    参考人(平松毅君) まず、当初言われました官官接待でありますが、これがなかなか改まらなかった原因といいますのは、確かにおっしゃいましたとおりですが、それが違法であるということに対する共通の認識がなかったことに原因があると思います。  先ほど申し上げましたように、日本は法律によって職務を行うのではなくて、むしろ合意によって行う、法というものはある政策目的を達成するための手段であるというふうな認識が非常に強いわけです。そこから脱法行為を合法的に行うための行政指導というものが日本においてずっと行われているわけです。それは別に悪いことではないと思います。だから、例えば空出張にいたしましても、そういうことをすることがいけないことなんだということの共通の認識ができればそれは改まると思いますが、そういう共通の認識をつくるための道具としてオンブズマンというものが役に立つかもしれないと思われるわけです。  それから次に、オンブズマンというものを選挙で選ぶのかどうかということでありますが、その分かれ目はオンブズマンを専門職として位置づけるか、代表職として位置づけるかということにあるのではないか。したがって、オンブズマンといいますのは、今申し上げましたように、非常に細かい専門的な調査を行った上で、その専門性に基づいて説得力ある勧告を行う機関でありますので、そういった専門性というところにオンブズマン権威があるわけですから、選挙で選ぶよりは、そういったふうな公益判断のできる専門の方を任命することの方が適切ではないかと思います。
  147. 元山健

    参考人(元山健君) 山口議員のお考えに基本的に同意できるところがたくさんございます。  確かに、オンブズマン権威の人であると言われますけれども、平松教授の理由にもありますように、私も先ほど申しましたけれども、これは代表機関ではないわけでございまして、やはり民選ということは問題があると。同意見でございます。  それから、その権限こそがポイントであって、その制度自体が大事なわけです。これは、私は先ほど別の言葉で、たしか武見議員の御質問に器は人をつくるよというふうに申しましたが、この器というのがつまり制度、権限でありまして、例えば、これは平松教授もおっしゃいましたけれども、現に他国でオンブズマンになっている方は、公平公正というと裁判官をやった人なんじゃないかとか、そのように限定されておりません。  実はイギリスの場合、初代の会計検査院長になったのはコンプトン卿とおっしゃいますが、この方は会計検査院長をやる前は行政の次官を経験されている方で、しかもまことに見事にその職をこなしてオンブズマンの基礎を築かれたわけでありまして、やはり権限こそポイントであるというふうに私も考えます。  ただし、器は人をつくると申しましても、もちろんそれはそこそこやはり権威のある方をというふうにとりあえず今のところは一般的に申し上げておかざるを得ないのですが、その権威という意味は山口議員お尋ねのような民選ということではないと思います。民選というようなことで権威づけるのではないと思います。  以上でございます。
  148. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 終わります。
  149. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 伊藤でございます。きょうはどうもありがとうございます。  私は、きょうの議論を聞いていまして、フリートーキングといいましょうか、今後、この調査会オンブズマン制度について議論する場合の大変豊富な知識、豊富な情報が入ったというふうに思っています。  特に、武見委員が、なぜ今オンブズマンかというところから始めた質疑の中では、我々が本当に検討すべきことは、参議院あり方良識の府と言われている参議院の姿を我々自身の力でどうつくるかということが前提の議論になっていなきゃならないというふうに思っておりまして、後々の議論をすることが大変楽しみになっています。  特に、末広委員のおっしゃった政党との関係の問題等も十分に我々は議論しなければ国民の本当の信頼にこたえられないのではないか。その機能が確立されていて初めてそれを補完する調査機能としてのオンブズマン、あるいは調査機能ではないかもしれませんけれども、一体となったものが生きてくるんじゃないかというふうに思っています。  私は、今から少し私の考えを、考えというか情報に基づき述べまして、両先生の意見、感想をお聞きしたいというふうに考えます。  何回かこの委員会で私はイギリスのシチズンズチャーターについて、そのように言わなかったけれども意見を述べてきました。一九九一年七月二十二日にメージャー政府が市民憲章、シチズンズチャーターを発表しております。二十三日のザ・タイムズが「市民憲章こそ昔の名誉ある名前、すなわちマグナ・カルタの名前を受ける資格があるというべきである」ということで、次のように述べております。  少し長くなりますが、「古典的な市民権(参政権、表現の自由、法の支配など)が、特定のエリートではなく、すべての人々が享有するようになった現在、人々は政治的な結社や投票に関心を示さなくなり、それに代わって、所得の向上および消費に関心を示すようになったという認識である。言い換えれば、現代社会においては、政治的な市民の問題ではなく、消費者の問題が中心の課題になっているという認識である。」と、これがタイムズの評論といいましょうか考え方を表明したものであります。  シチズンズチャーターは完全に実施されているということについては多くの疑問があると思いますけれども、一つに、サービスの水準を明確にする、サービスの水準が明確になっているからこそ国民のサービスに対する認識というものがきちんとされると。特に、具体的には、「ロンドンのリューズハム区は、ごみ収集の回数・時間を明示し、それが達成されない場合には、一ポンドの補償金を該当する住民に支払うとしている。また、住民から文書による苦情があり、十日以内に区がそれに回答しなかった場合には、住民に十ポンド支払うということも明示している。」と。すなわち、基準を設けるということの重要性があると。  第二に、情報のオープン、情報の公開という問題でありまして、このことについては、平松先生の中で、「スウェーデンにおいては、この制度の基本的機能は、行政活動の公開を促進することにあると考える。」という考え方が述べられておりますし、元山先生の中でも、「私見によれば、行政情報の公開は、オンブズマンの是非を超えて、行政国民統制への大道であると思われる。」というところもありまして、このことを述べているのではないかというふうに私は思っています。  さらに第三に、「公共サービスが住民のニーズに応じない等々の理由で住民に不満がある場合、その不満を訴える装置が必要である。それがなければ、公共サービスの質が向上するということはあり得ないといっても言い過ぎではない。」として、「不満を訴える手続きを重視し、また、それを担当する種々のオンブズマン制度監査委員制度の充実を提言している」と。  このことは事実でありますけれども、メージャー首相がこれに対してこのような考え方を述べているわけです。「要するに、ユーザーすなわち住民を主権者とし、その主権者の監視と注文によって公共サービスの質を改善していく。それが市民憲章の目的である」、「これを前提とすれば、オンブズマン監査委員制度の充実は、単に、住民の不満を聞き届ける装置として考えられているだけでなく、住民を主権者として行動させるための装置としても位置づけられている」、行動させる装置ということだろうというふうに思います。  私は、市民が政治上の諸権利の保障あるいは獲得という段階を経て、コンシューマーとして行政と対等の立場で行政サービスを選択し受けるということは、場合によっては拒否するということもあり得るのであって、行政と市民を対等に置く意識革命というふうにも思っております。これこそ主権在民、あるいは憲法十五条に言うすべて公務員は全体の奉仕者であるという概念と一致する方向ではないかと思いまして、このことが我々の議論の根底になければならないというふうに思うわけでありますが、これに対して両先生の御意見ないし感想をお聞かせいただいて、私の質問を終わります。
  150. 平松毅

    参考人(平松毅君) 最近の苦情などの傾向なんでありますが、市民から確かにいろんな苦情が申し立てられます。イギリスのオンブズマンの実際の活動報告などを読んで、どういうふうな苦情があって、それがどう処理されているかということを見ていきますと、最近の苦情は社会的受忍限度と、それから不正不当の摘発とのちょうど境界線に当たるような苦情が非常にたくさん出されております。  例えば、行政庁が二週間仕事の返事をしなかったといったふうな苦情がありますと、それを調査した結果、それに対して例えば損害金幾らの慰謝料を払えとかあるいは花束を持って謝罪せよと、こういったふうな勧告オンブズマンから出されておるわけです。それで、そういった勧告が出されますと、今度は二週間ならいけないけれども、では一週間だったらどうかというふうにどんどんと要求がエスカレートしてまいります。  そういったふうに、これは行政監察局に出される苦情もそうなんですけれども、現代ではほとんどが公益性のない、個人的な利得を求める苦情が非常に増大しております。メージャー首相がそういう市民憲章を出されましたのも、余りにも個人が所得とかあるいは利得、消費、そういったものに関心を持ち過ぎて、そしてオンブズマン制度ができましても、それを自分たちの利得のために最大限に利用する傾向がある。それに対しまして、もっと公共性というものを喚起する意味が私はあるのではないかというふうに考えております。  ですから、私はオンブズマンを苦情処理制度として設けることには反対ですが、そういったものを設ける場合には今言ったようなことも考える必要があるのではないかと考えております。
  151. 元山健

    参考人(元山健君) 伊藤議員の御質問でございますけれども、まず参議院あり方の改革が前提であるし、末広議員の御質問にもあった政党との関係も議論してということでございますけれども、オンブズマンとかあるいは具体的なそのような制度というのは、どちらが先どちらが後ということではなくて、それこそ順番の問題ではないというふうに思っております。  それから、イギリスのシチズンズチャーターにつきましては、これは伊藤議員御存じのように、さまざまな領域にこのシチズンズチャーターに基づきまして事務処理の基準というものができ上がっておりまして、それが全部関係行政庁の窓口にパンフレットとして置いてございます。これはイギリス現地の日本の大使館等々に言えばすべて取り寄せられると思います。先ほど御紹介ありましたように、極めて詳細に、十日以内、十五日以内というようなことを、もちろん該当の行政庁のその職務によりますけれども、そういうふうに具体的に行政現場国民にパンフレットという形でもって約束をしています。そういう意味で、消費者主権というメージャー首相の見解、また伊藤議員の見解は今日的な一つの御見識であろうというふうに思います。  実は本日の朝日新聞の朝刊に、「改革途上の英国」ということで、秘密主義の問題で取材がございます。イギリスは、メージャー首相のそのような政治哲学に基づきまして、要綱によって情報公開を行うということを始めました。労働党は情報公開法をつくれと言ったわけですが、要綱でいくと。公的情報へのアクセスを拡大して、情報への正当な請求に応じるという前提でありますが、公開されるのはあくまでも情報であって、行政機構の文書そのものではないというような条件、あるいは特殊法人は対象にしない。さらに、情報の公開を制限する法律が二百五十もあるというような状況がございまして、やはり要綱、つまりシチズンズチャーターも法律ではございません。  要綱によるものというのは、伊藤議員もシチズンズチャーターが完全に行われているわけではないんだというふうにおっしゃいましたが、やはり問題が出てきているようでもございます。ただ、言うまでもなく、何もないよりは全くよいというふうに言うことは当然できるだろうと思います。  あと、確かに平松教授がおっしゃいましたように、この消費者主権が、下手をいたしますと民主制が衆愚制に堕するというような、ギリシャ、ローマ以来言われているようなことがございますけれども、消費者の主権者としての正当な要求がゆがめられた形でもって行政に向けられるという場合もあるかもしれないなというふうに思います。  オンブズマンはそういう点では、先ほど来申しましたように、実は苦情の処理、取り上げ方について裁量を持っております。そこら辺のところで、やはりオンブズマンであれば公共性を喚起するような基準を確定していく。また繰り返しになりますが、その背後には、当院なら当院の議院の委員会が控えているということになろうかと思います。  不十分なお答えかもしれません。お許しください。  以上でございます。
  152. 井上孝

    会長井上孝君) 以上で両参考人に対する質疑は終了いたしました。  両参考人には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見につきましては、今後の調査参考にさせていただきたいと存じます。本調査会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  ありがとうございました。     —————————————
  153. 井上孝

    会長井上孝君) この際、派遣委員報告に関する件についてお諮りいたします。  先般、当調査会が行いました行財政機構及び行政監察に関する実情調査のための委員派遣については、報告書が提出されておりますので、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  154. 井上孝

    会長井上孝君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時九分散会      —————・—————