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参考人(呰上一三君) それでは、これから全
都道府県監査委員協議会連合会の事務局次長という
立場で発言させていただきます。
まず、私どもは全
都道府県監査委員協
議会連く会というのを全監連と称してございますけれども、まず、
地方自治法が昭和二十二年に制定されまして、
監査委員制度がそこで法定されたといろことに基づきまして、
地方公共団体相互間におきます
監査委員の協
議会結成の動きというのが盛んになってまいったわけでございます。
東京都の関係におきましては、昭和二十三年の十月でございますか、関東甲信越一都九県の
監査委員によりまして関東甲信越
監査委員協
議会が結成されたところでございますけれども、この動きは他の
地域にも波及してまいりまして、全国八ブロックの
監査委員協
議会というのが発足していろわけでございます。その連合体の組織として昭和二十三年十二月に全監連というものができたわけでございます。
次に、全監連がどういう事業をやっているかということでございますが、全監連としては、
一つは
監査制度に関する研究及び
調査、二番目に
監査制度に関する国及び関係
地方公共団体間の連絡調整、三番目に国または関係
行政庁に対する要望、四番目に全国
監査事務局
職員の研修などを行っているわけでございます。
以上が全監連の概要でございます。次に、本日の
課題でございます
監査委員制度が真に
機能しているか、あるいは
行政施策の経済性、効率性、有効性を測定、評価するための手法は開発、整備されているかという点について意貝を述べろということでございますので、本日せっかくの貴重な機会を与えていただきましたので、若干考えを述べさせていただきたいと思います。
まず、
監査委員制度が真に
機能しているかという問題でございますが、既に御案内とは思いますけれども、話の順番としまして、まず都道府県の
監査委員制度の概略について述べさせていただきたいと思います。
監査委員制度というのは、先ほど申しましたように、
地方自治法に
根拠を有する
制度でございまして、
監査委員の
選任というのは、知事が
議会の同意を得て、
議会の議員及び人格が高潔かつ普通
地方公共団体の財務管理等に関してすぐれた識目を有する者から
選任するということになっているわけでございます。そして、
監査事務に携わる
監査事務局は、この
監査委員及びそれを補助する事務局
職員によって構成されているわけでございます。
委員につきましては、議員から
選任される
監査委員と識見を有する者から
選任される
監査委員の割合といたしましては、
地方自治法上は議員から
選任される
監査委員の定数については一名ないし二名というぐあいにされておりますが、現在、全都道府県とも二名、二名の割合となってございます。それで、都合四名で運営されているということでございます。
また、識見を有する者から
選任されます
監査委員から
代表監査委員を選ぶこととされておりまして、この者が事務局
職員の任免権及び
監査委員の庶務に関する事項についての権限を有しているということになっているわけでございます。
次に、
監査委員の権限として認められておることにつきまして、主なものについて
説明させていただきます。
第一に、通常、財務
監査と言われるものがございます。これは当該普通
地方公共団体の財務に関する事務の執行及びその経営に係る事業の管理を
監査するということになってございます。この
監査は毎会計年度一回以上期日を定めて実施しなければならないということになっておりまして、これを定期
監査または定例
監査と呼びならわしているのが通例でございます。また、これ以外に
監査委員が必要に応じて行う
監査としまして随時
監査という
制度がございます。
第二番目には、平成三年の
地方自治法の改正で
監査委員の権限として認められました
行政監査ということでございます。これは、
監査委員は必要があると認めるときは
機関委任事務を含め一般
行政事務についても特定の事務事業をとらえて、それについての
監査を行うというものでございます。この
行政監査につきましては各都道府県とも現在のところ取り組んでおりまして、平成六年度からは全都道府県で実施してございます。
第三は、当該
地方公共団体と一定の財政的な関係を持っております団体につきまして
監査を行うものでございます。これを我々は一応財政援助団体等
監査と申してございます。これがございます。
第四番目には、決算審査と呼ばれますもので、これは
地方公共団体の長であります知事の依頼に基づきまして
地方公共団体の決算について審査するものでございます。この審査結果については、知事の方で歳入歳出決算書とあわせて
議会に提出するということになっているわけでございます。
五番目には、毎月例日を定めて
地方公共団体の現金の出納につきまして検査するというものがございまして、これが例月出納検査と言われるものでございます。
第六番目には、
地方自治法上、特別
監査と位署づけられてございますが、これは先ほど
新藤先生からも御
説明がありましたように、住民の請求に基づいて
監査を実施いたします住民
監査請求
制度、この住民
監査請求
制度に
類似した
制度といたしまして事務
監査請求と呼ばれる
制度がございます。
なお、住民
監査請求
制度につきましては、当該
地方公共巨体の住民か一人で請求できますのに対しまして、事務
監査請求は当該
地方公共団体の選挙権を有する者の五十分の一の連署が必要とされております。
監査委員は、これらの権限を適正に行使すべき
立場、いわゆる責務を負っているわけでございますが、この権限行使に当たりましては、
選任権者であります知事の指揮監督を受けることなく、独立して行うことができるものということが
地方自治法には定められているわけでございます。
そして、その
監査の結果につきましては、原則として
監査委員の合議によりその内容を決定いたしまして、それを知事、
議会等に提出するとともに、これを公表することとされてございます。公表の
方法につきましては、特に定めてございませんが、通常は各都道府県の公報により行われているわけでございます。
以上、述べましたように、
監査委員の権限は、財政援助団体等
監査という例外はございますが、その属しております
地方公共団体の事務について
監査するものとされているわけでございます。これは中には審査あるいは検査というような言葉が使われているものもございますが、これらにつきましてはいずれも
監査の範疇に含めて理解するのが通常でございます。
そこで次に、
監査ということでございますが、一概に
監査という言葉につきましては
地方自治法は特に決めてございませんので、これは一般的にはどういうのかということになるわけでございますが、これは一応、他の関係者の行為あるいはその結果としての実態あるいはそれらに関連して作成された情報を一定の基準に照らして批判することであると解されるのが通常ではないかと考えております。このような
監査の考えから、
監査権限の
制約というのがおのずから導き出されるわけでございます。
まず第一には、一定の行為の存在というのが
監査には前提となってまいりますので、つまり
監査は事後
監査であるということでございます。したがって、行為形成過程あるいは形成途上にある行為、例えば予算編成とかあるいは事業計画などの適否、これらのものについては権限が及ばないということでございます。
第二番目には、批判の前提といたしまして一定の基準が必要とされておりまして、基準の存在しない分野につきましては批判
機能が及ばない面があるということでございます。
以上、述べさせていただきましたことを踏まえさせていただきまして、引き続き、
監査委員制度は真に
機能しているかという問題に入ってまいりたいと思います。
この問題につきましては、昨今において住民の方々を初めとしまして関係各方面より寄せられております厳しい批判というものを背景として言われているものと考えております。
現在、
現行の
監査委員制度のあり方、その
監査の仕方などにつきまして、空出張・空飲食問題などを通じて幾多の批判が寄せられているところでございますが、これらの批判を要約させていただきますと、
一つは、
監査委員のうち識見を有する者から
選任される者が当該
自治体のOBより
選任されることが多いということから、
監査委員の知事等執行部局に対する
独立性、
中立性が損なわれているのではないかということでございます。
いま
一つといたしましては、
監査委員を補助して実際の
監査に当たっております
監査事務局の
職員が、当該
自治体の人事ローテーションに組み込まれて短期に
異動しておりますので、
監査の実務に習熟していない素人の
監査になっているのではないかという点もございます。
また、空出張・空飲食問題に象徴されておりますように、
監査委員が、その責務であります
自治体の行財政運営に対するチェック
機能、これを十分果たしていないのではないかということ。
以上、三点になるのではないかと考えております。
これらの批判につきましては、厳しく反省しなければならない点がございますけれども、一方、
監査委員制度に対する誤解に基づいている面もあるのではないかと思ってもおりますので、この点を交えて批判にこたえる形で
監査委員制度が真に
機能しているかということを述べてまいりたいと思います。
第一に、
自治体OBの
監査委員が多過ぎるという批判でございます。確かに、現在のところ、四十七都道府県のうち北海道、高知県、この二道県を除きました四十五都府県におきまして
自治体OBが
監査委員に
選任されております。
この点につきましては、現在の
制度では
選任の権利者は知事でございまして、どのような者を
選任するかは知事の専管事項でありますから、なぜ
自治体OBが多いのかという点については確かだことは私どもは述べられないわけでございますが、
自治体のOBは当該
自治体の行財政運営について深い識見を有しておるというのが通常でございますので、この識見を
監査において十分に生かしていただくことができる、その本来のそういったものを生かしていくことができれば、
自治体の行財政運営の適法性、妥当性の確保に資するという
監査委員の責務を果たす上で極めて有意義なものがあると考えてございます。
また、
監査委員はその事務を公正不偏な態度でみずからの判断と責任におきまして誠実に管理し執行するという
立場を負っております。その義務を果たしていくために、みずからの責務の重大性というのを認識いたしまして研さんしていくならば、職務遂行にこういう姿で当たっていただければ、
自治体OBであるという一事をもって知事筆に対する
独立性、
中立性が損なわれるということはないものと考えてございます。
次に、事務局
職員の人事の問題でございます。これは
制度上におきましても、先ほど申し上げ生じたとおり、事務局
職員の任免権は
代表監査委員が形式的には有していることになってございますが、人事権を裏打ちしております予算に対する権限を有しておりません。したがいまして、実態的には、批判もありますとおり、
自治体全体における人事ローテーションの枠組みの中で
異動しているのが通常でございまして、在職三年ないし四年で
異動させる県が多く見受けられるところでございます。
したがいまして、このローテーションの期間が短い者のみで
職員が構成されているというようだことがありますならば、言われているような問題が生ずる
可能性はあるものと思っております。この点につきましては、一部の県で画一的に行われている現在の
異動基準を見直そうという機運が出てきてございます。
一方、可能な限り、こういった点を補うために
監査業務に習熟するような研修等の充実を図り、努力しているのは当たり前のことでございます。
第三に、総括的な批判といたしまして、
監査委員制度が
機能していないという批判がございます。
この点につきましては、まず
監査委員の職務行使の基本精神というのは、不正または非違の摘発を旨とするわけではございませんで、
行政の適法性または妥当性の
保障にあるべきでございます。いかにすれば公正で合理的かつ効率的な
行政を確保することができるかということが最大の関心事でなければならないわけでございます。
このことは、広い範囲にわたって抽出により
監査することによりまして行財政運営の全体像を把握することが
監査委員には求められているものと理解しております。そして、このような基本精油並びに実際上の問題として、膨大な
監査対象件数と人的な
制約などから
監査対象局におけるみずからの
内部統制に一定の信頼を置いての抽出によろ
監査にならざるを得ないという側面を有していろことはそのとおりでございます。
また、空出張・空飲食問題につきまして申しますと、これを発見するためには、この分野に絞って抽出率というものを増加させるということが必要でございますが、また、これについて関係人
調査という
地方自治法に定められた権限を行使すべきことが必要となるわけでございますが、これについても先ほど申し上げました人的
制約などの点で困難がございますし、何よりも関係人
調査というものは、これは強制権を有していないわけでございます。この強制権を有していないために、相手方の任意の協力に依存するしかないという
問題点を抱えてございます。ここに
監査の限界というものもあるわけでございます。
このようなことから、従前におきましても実施してまいりました
監査の中におきまして、こういった空出張・空飲食などを発見するのは非常に難しかったということを残念ながら率直に申し上げるほかございません。ただ、そのような事実につきまして明らかにされてきた状況を見ますと、今後においてはこのような点につきましても重きを置いた
監査を実施していく
必要性というものを切実に痛感している次第でございます。
以上の点を踏まえまして総括的に申しますと、私どもといたしましては、
自治体の行財政運営の適法性、妥当性の確保に資するという
監査委員に与えられました責務を全体的には果たしているものではないかと自負しております。その意味におきましては
監査委員制度は真に
機能していると申し上げたいわけでございますけれども、現実に今申し述べましたような空出張・空飲食問題等が数県にわたりまして行われているということがあからさまになるという事態の中で、このことを厳しく受けとめ、反省しているところでございます。
今後におきましては、みずからのごれまでの姿勢あるいは取り組みなどにつきまして厳しく反省いたすとともに、
監査のあり方などにつきまして見直すべき点を見直していきたいと、そう考えているわけでございます。
なお、
監査委員制度に対する批判として住民
監査請求
制度に対するものがございます。
この
制度は、御案内のとおり、住民が知事等執行
機関や
職員による公金の支出あるいは財産の管理などの当該
自治体の財務会計上の行為に違法または不当な行為があると認めるときに、このことを証明する書面を添えて
監査委員に
監査を求め、必要な措置を講ずることを請求するものでございまして、住民の請求によりまして
職員等の違法生だは不当な行為を是正、防止することにより、適正な財政運営を確保し、住民全体の利益を擁護することを求めたものでございます。
この住民
監査請求
制度の運用に関しましても、
地方自治法に規定されております要件に該当しないものとして請求自体が却下されるもの、あるいは請求に
理由がないとして棄却されるものが多過ぎるという批判がございます。住民
監査請求が適法なものとして受理されるためには、一定の要件を満たしていなければならないわけでございますが、請求人が違法、不当とする行為が当該
地方公共団体の財務会計上の行為に当たらないもの、まだ事実を証する書面が不適当なものがあるなど、不適法な請求として却下される事例が多く見られることも事実でございます。
住民
監査請求におきましては、住民の方々が必ずしもこの
制度をよく理解していないということも原因になっているものと思います。私どもといたしましては、広報などを通じまして、また相談ごとに住民の方々に詳細に
説明するなどしまして、
制度の趣旨について一層理解をしていただくということになっておるわけでございます。
また、棄却ということでございますが、受理をして、中身に入って棄却するということでございますが、
監査委員が
監査した結果、請求人の主張に
理由がないと判断したものについてこの棄却ということをやっているわけでございますが、請求に全く
理由がないとしているものばかりではなく、この点につきましては、違法、不当とは言えないまでも何らかの
問題点が見受けられるものについては要望等を付して、事務処理の改善などについて
監査委員の
意見を述べるということをやっているわけでございます。
以上、雑駁ではございますが、
監査委員制度は真に
機能しているかという問題につきましての私の考えを述べることについては終わらせていただきます。
次の
テーマでございます
行政施策の経済性・効率性、有効性を測定、評価するための手法というのは開発、整備されているかという問題でございますが、これにつきましては、
監査に当たりましてはその性格上、判断基準というものが必要となります。こういう中に一般的には正確性、合規性、経済性・効率性、有効性の四点というものが取り上げられてございます。この四点の観点から
監査対象行為を
検討、分析していくことが必要だということになってございます。
正確性というのは決算審査などにおいて求められるものでございますし、合規性というものにつきましては、法令等に従って適正に処理されているかという点で判断していくものでございます。
第三の経済性・効率性については、経済性と効率性が別々に考えられてございますけれども、いずれにしても、個々の事業が最小の経費で最大の効果を挙げていくかというような点について挙げられるものでございます。
第四の有効性につきましては、所期の目的を佳成し効果を上げているかという点を問うものでございます。
これらの点につきましては、いわゆる経済性一効率性、有効性の問題につきましては、今後、この手法の開発について非常に問題を抱えておりますので、これらについては十分に
検討していかなければならないと、そういうぐあいに考えております。
以上、簡単でございますが、これで終わらせていただきます。