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1996-02-14 第136回国会 参議院 行財政機構及び行政監察に関する調査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年二月十四日(水曜日)    午後一時開会     ―――――――――――――    委員異動  二月八日     辞任        補欠選任      筆坂 秀世君     山下 芳生君  二月十三日     辞任        補欠選任      大脇 雅子君     川橋 幸子君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     会 長         井上  孝君     理 事                 守住 有信君                 矢野 哲朗君                 石田 美栄君                 都築  譲君                 伊藤 基隆君                 山下 芳生君     委 員                 井上 吉夫君                 石渡 清元君                 亀谷 博昭君                 小山 孝雄君                 佐々木 満君                 武見 敬三君                 溝手 顕正君                 宮澤  弘君                 足立 良平君                 猪熊 重二君                 常田 享詳君                 川橋 幸子君                 小島 慶三君                 末広真樹子君                 山田 俊昭君                 山口 哲夫君    事務局側        第三特別調査室        長        塩入 武三君    参考人        東海大学政治経        済学部長     宇都宮深志君        立教大学法学部        教授       新藤 宗幸君        全都道府県監査        委員協議会連合        会事務局次長   呰上 一三君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件理事補欠選任の件 ○行財政機構及び行政監察に関する調査  (時代変化に対応した行政監査在り方の  うち地方自治体オンブズマン制度及び監査制  度等に関する件)     ―――――――――――――
  2. 井上孝

    会長井上孝君) ただいまから行財政機構及び行政監察に関する調査会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る二月八日、筆坂秀世君が委員辞任され、その補欠として山下芳生君が選任されました。  また、昨十三日、大脇雅子君が委員辞任され、その補欠として川橋幸子君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 井上孝

    会長井上孝君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、会長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 井上孝

    会長井上孝君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事山下芳生君を指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 井上孝

    会長井上孝君) 行財政機構及び行政監察に関する調査を議題といたします。  「時代変化に対応した行政監査在り方」のうち、本日は、地方自治体オンブズマン制度及び監査制度等に関する件について、参考人から意見を聴取することとし、東海大学政治経済学部長宇都宮深志君、立教大学法学部教授新藤宗幸君及び全都道府県監査委員協議会連合会事務局次長此口上一三君に御出席をいただいております。  この際、参考人皆様に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところを本調査会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。  参考人皆様から、「時代変化に対応した行政監査在り方」のうち、地方自治体オンブズマン制度及び監査制度等に関して忌憚のない御意見をお述べいただき、調査参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いをいたします。  議事の進め方でございますが、まず、参考人からそれぞれ二十分程度御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。  それでは、まず宇都宮参考人からお願いいたします。宇都宮参考人
  6. 宇都宮深志

    参考人宇都宮深志君) 東海大学政治経済学部長宇都宮でございます。  まず、オンブズマン制度普及進展、それからオンブズマン制度特質、それから我が国においてオンブズマン制度導入する場合の必要性といいますか、それから可能性課題、この三点について御説明申し上げたいと思います。  私が申し上げたいポイントは、二十一世紀への政治行政制度活性化並びに政治行政のイノベーションのため、また国民市民の新しい要求やニーズにこたえるために、国及び地方レベルにお、きまして新しい行政監視システム、すなわちオンブズマン制度導入は必要であり、その制度導入は可能であり、さらにその制度化は急務であるということでございます。この点につきましても順次御説明を申し上げてまいりたいと思います。  資料の「世界オンブズマン設立状況」、レジュメの最後に設立状況が出ておりますので御参照をお願いしたいと思います。  一八〇九年、スウェーデンに始まりましたオンブズマン制度は、一九五〇年以前にはスウェーデンとフィンランドに限られておりました制度が、一九五五年にデンマークスウェーデン制度モデルといたしまして導入したのが契機となりまして、北欧諸国を越えてアングロサクソン系諸国にも導入されるようになったわけであります。  一九六二年にニュージーランド英語圏で初めてこのオンブズマン制度導入いたしまして、このニュージーランドモデル世界オンブズマンモデルとなりまして、その後、イギリス、カナダ、アメリカ及びオーストラリアなどのオンブズマン制度制度化に強い影響を与えたわけであります。  一九六〇年代には、この表に出ておりますように十一のオンブズマン制度設置され、一九七〇年代に入りますと制度化が急増いたしまして世界的に普及発展をした。七〇年代の十年間で六十二以上の制度が誕生いたしまして、一九九三年の五月現在では世界で大体百八十人ぐらいオンブズマンと称する人たち任命をされているということでございます。  特に、八〇年代の終わりから九〇年代にかけまして、アジア、アフリカ、いわゆる新興デモクラシー諸国及び東ヨーロッパオンブズマン制度化が進行いたしまして、世界的に普及発展をしているということでございます。昨年は欧州議会、EUにおいても議会オンブズマン任命をされております。  このような世界への普及進展傾向から、私は四つぐらいのことが言えるのではないかと思います。  その一つは、世界に広まったオンブズマン制度は廃止されたものがほとんどないということでございます。行政国民市民からなくてはならない一つ苦情処理あるいは行政監視制度として定着発展をしてきているという点が第一点であります。  その二つ目は、このリストにありますオンブズマンの大半は議会により任命されるいわゆる立法オンブズマンであるということでございます。一般的にはオンブズマンというのは議会任命するいわゆる議会あるいは立法オンブズマンである、それが本物の本格的なオンブズマンであるというように言われております。もちろん、行政府から独立し、議会立法オンブズマンといえども議会の介入は受けないということで独立性を確保するということが二つ目の点であります。  その三つ目は、憲法によりオンブズマン設置する場合と法律により設置する場合があるということでございます。もちろんスウェーデンとかデンマーク憲法により設置をされております。最近の新興デモクラシーの国、例えばパプアニューギニアとか南アフリカとか南米のコロンビアとかメキシコとか、そういう国もいわゆる新しい憲法の中にオンブズマンを設けているということでございますが、憲法オンブズマン設置すると規定するということは、オンブズマン制度憲法に位置づけているということで、オンブズマン制度は非常に重要な制度であるということを憲法で規定して、独立性保障とか地位保障をやっているということだと思います。  しかしながら、このことは憲法に定めがないとオンブズマン設置をすることができないということを意味するものではない、法律によりオンブズマン制度を設けることは可能であるということは言うまでもないと思います。あるいはノルウェーとかニュージーランドとかアラスカ州のオンブズマンなどもいわゆるオンブズマン設置する法律で設けられております。  それから四つ目でございますけれども、百四十年も昔のスウェーデンオンブズマン制度がなぜ一九五〇年代に世界で必要になったのかというところがまた一つ重要なんではないか。  簡単に申し上げますと三つぐらいありまして、一つは、一九二九年以来の世界恐慌から始まったいわゆるビッグガバメント、大きな政府現象といいますか、そういう行政国家現象を挙げなければならないということだと思います。こういう行政国家時代に多くの国がオンブズマン制度化を図った。  それから第二点は、伝統的な行政統制システムがこの大規模政府時代ビューロクラシー時代において十分機能しなくなってきた。そのために世界オンブズマン制度導入する必要性が生まれた。  三つ目は、伝統的な苦情処理制度がやはり大規模ビューロクラシー時代において十分機能しなくなってきた。そういう三つ理由から非常に古い制度が五〇年代にデンマークがつくってから世界普及するようになってきたという点だと思います。  次に、オンブズマン特質機能につきましては後に回しまして、時間がありましたらお話をしたいと思いますが、先にオンブズマン制度導入必要性並び可能性課題について御説明を申し上げたいと思います。  まず、日本においてオンブズマン制度は私は必要であると考えております。その理由は、一九五〇年代以降に世界オンブズマン制度化序図った諸国都市自治体などに見られると同機に、我が国におきましても大きな政府現象が生じているということでございます。  川崎市がオンブズマン制度導入したわけでありますけれども、川崎市でなぜオンブズマン制度が必要になったのかということを御説明いたしますと、三つ理由がございまして、その一つ監視制度必要性、いわゆる行政監視強化必要性ということでございます。川崎市の行政というのは年々量的にも質的にも高度化いたしまして、行政過程も非常に複雑になっているということで、市長のもとに三十の局があり、百九十九の部があって、職員数も一万六千人に達している。こういった行政の大規模化複雑化専門化に対応するために、行政執行が公正に行われるように行政組織全般中立的な立場から監視・統制する新しい仕組みが必要になってきた。これは五〇年代に世界が必要になってきたと同じような必要性が、自治体でありますけれども生じている。これは私は国においても同様にこういう新しい監視システムが必要になってきているんではないか。  それから第二点は、中立的な行政苦情処理制度設置必要性ということで、行政に対する苦情は年金、税金、医療問題、それから騒音、都市計画などにわたって広範囲にあらわれる傾向が出てきております。二十一世紀を展望いたしまして、超高齢化社会を考えていきますと、行政に対する苦情が噴出してくるのではないかということが予想されます。そういう観点から、市民苦情不満中立的な立場から、次の点がポイントなんですが、簡易に、それから迅速、しかも無料で対応していく、ここが非常に重要な点だろうと思います。そういう意味で、新しい制度として川崎市ではオンブズマン制度導入した。  それから第三点は、類似制度の問題でございます。  これまで自治体におきましてもいろいろ市民苦情を聞き、それを処理していく類似制度が設けられております。行政不服審査行政事件訴訟監査委員制度、直接請求及び市の市民相談制度などがございます。そのときにいろいろ議論もあったわけです。いわゆる屋根の上にもう一つ屋根を架するんではないかということで、それは行政改革でむだなことではないかというような御意見、批判もあろうかと思いますけれども、基本的にはこういった類似制度とは非常に近いところもありますけれども本質的に違うんではないか。こういう類似制度を補完しながら、有機的に連携を図りながら、新しい時代へのニーズに対応するためにオンブズマン制度が必要になってきている。これはもう五〇年代、世界でそういう伝統的な苦情処理制度機能しなくなったという点と同じような考え方であると思います。  それぞれの問題点につきましては時間の都合上割愛させていただきますけれども、そういう補完強化する、あるいは既存の制度活性化していくんだと、このオンブズマン制度をつくることによって。それで、総合的な行政監視行政苦情処理制度を設けていくんだと、そういうことで川崎市ではオンブズマン制度がつくられたわけであります。  次に、可能性の問題であります。我が国においてオンブズマン制度導入は実現可能であろうかということでありますけれども、私といたしましては実現可能であると。  その根拠三つ私は挙げたいと思いますけれども、その第一は、現行監視苦情処理制度が不十分なのではないか。国民行政に対する苦情不満簡易で迅速に処理し、行政監視する新しい制度の採用が必要となってきている。  根拠の第二は、オンブズマンという考え方というのがかなり我が国で浸透している。全国市民オンブズマン連絡協議会というようなものも盛んでありますし、国民の中にかなり浸透してきているんではないかというように思います。さらに、制度化に向けてのさまざまな提案がなされてきている。  それから第三に、我が国オンブズマン制度導入するに当たって政治制度上の障害があるようには思えない。デンマークイギリスなどが類似議院内閣制を採用しているわけでありまして、これらの国でのオンブズマン制度国民行政から信頼される制度で、有効に機能しているということであります。  このように見てまいりますと、我が国においてもオンブズマン制度導入する社会的条件が熟しているというように言えるのではないかと思います。したがいまして、オンブズマン制度導入は可能であるというように私は考えます。  それでは、その制度導入に当たってどういったような課題があるのかということを二、三触れておきたいと思います。  第一は、まず議会型オンブズマン設置を行うのか、行政府型オンブズマン設置を行うのかということが大きな検討課題一つになろうかと思います。議会型オンブズマン行政府型のオンブズマンにはそれぞれ利点マイナス面がありまして、この利点マイナス面を慎重に比較検討する必要があると思います。  行政府に置くオンブズマン制度はあくまでも内部統制であるということで、行政府政治的な影響から独立した地位を確保することに問題があるのではないか。それから一方、行政の長が任命する行政府型のオンブズマン制度は、行政の長の権限に依拠することにより、多くの案件を迅速かつ簡易、低廉に処理することができるなどの長所があると思います。  これに対しまして、議会任命する議会型のオンブズマン制度外部統制でありまして、行政府から独立した中立的な立場から行政監視機能を公正に実施することができるという長所があります。一方、オンブズマン任命において政党や政治的な影響をいかに排除するかという課題があろうかと思います。  国のレベルオンブズマン制度導入する場合には、議会型オンブズマン、いわゆる国会型オンブズマン行政府型オンブズマンもいずれも設置可能であると私は思います。どちらかといいますと、議会型オンブズマンの方が行政監視機能はより有効に働くのではないかと考えております。  その理由といいますのは、国会には立法が意図したものを内閣が実行しているかどうかを監視する任務がありますし、行政統制というのは国民代表から構成される国会の重要な任務一つである。したがいまして、この国会による行政統制を強化する手段として、さらに、国民行政機関からこうむった不利益を救済する護民官として機能する中立的な第三者機関である立法オンブズマンの方がより適切であるように私は思います。したがいまして、オンブズマン機能というのは、行政権に属すると考えるよりも国会監視権に属すると考えるのが適当ではないかと思います。内閣行政権の行使について国会に対して連帯して責任を負い、立法の意図に沿い内閣が実施しているか否かを監視することが国会の重要な役割であり、現行憲法のもとで国会オンブズマン制度化が可能であり、支障はないと考えます。  もう時間もございませんけれども、地方レベルオンブズマン制度導入する場合には幾つかの代替案が考えられるわけでありますけれども、川崎市での制度化に当たりましては、現行地方自治制度の中でどのようなオンブズマン制度づくりができるか、私も委員会委員になりましてつくったわけでありますけれども、その辺のところが非常に制約でもあるし、知恵の出しどころで広あったということで、基本的には地方自治法の第百三十八条の四第三項に基づき、附属機関でありますけれども、公正・中立機関として運用する方法オンブズマン制度地方では導入したということです。  そのほか市民相談室とかそういったものを強化充実して、そこにオンブズマンをつくるのはどうだろうかという検討をしたわけでありますけれども、それでは余り十分機能しないのではないかなということで、市長任命して、議会の同意を得て、中立性を確保していくということで、オンブズマンとしての、世界に設けられているオンブズマンの重要な特色がありますけれども、例えば調査権、職権で調査できる。これは監視に非常に重要な役割を果たすと思いますけれども、自己の発意で調査できる。あるいは独立性の確保。そうろいった非常に重要な特色現行制度制約の中で取り入れて、まあまあいい制度ができたのではないかなというように考えております。  以上でございます。
  7. 井上孝

    会長井上孝君) ありがとうございました。次に、新藤参考人にお願いいたします。新藤参考人
  8. 新藤宗幸

    参考人新藤宗幸君) 立教大学新藤でござます。  まず、国会が、あるいは議会行政をどう統劃するかという問題は近代から常に変わらないテーマでありますけれども、こうした調査会をお持ちであることに敬意を表しておきたいと、そう思っております。  本日、地方自治体オンブズマン制度及び監査制度等に関する件ということが私どもに参考人として話をしろというテーマでありまして、私自身について言えば、国のというか中央政府監査についていろいろと申し上げたい点が多々ございますけれども、きょうはできる限り地方自治体の話に限らせていただきたいと、そう思っております。  既に、申し上げるまでもないかもしれませんが、一方で地方分権推進法が制定されて地方分権推進委員会が活動を開始した。その他方におきまして、昨年来まさに流行語と言ってもいいのかもしれませんけれども、官官接待という問題が出てまいりました。私自身もあちこちの新聞あるいは放送局コメントを求められましたけれども、実は学者の方もなかなか利害関係がある方が多くて、さあどう思うのかと言われても歯切れの悪いコメントをする方か多々いらっしゃるわけてありまして、この問題は日本官僚制が非常に根を張っているということのあらわれだろうと考えており、私なりに、それなりに歯切れよく言ったつもりでございました。  そこへ持ってきて、この国会の最大のテーマである住専問題等も出てきており、きょうもここへ来る前にNHKのラジオ・ジャパンの収録をしてきたんですが、そうした点からも公金の使い方ということについて多々問題が生じていて、これんどうするかというのは非常に大きな問題であろうかと思っております。  そこで、新たな監視あるいは監査制度をどうつくるかということが政治上の課題になってはきますが、しかしその前に少し基礎的な前提が必要なのではないだろうかと、そう思っております。  自治体の側面で申し上げていくならば、例えばいずれの市も六〇年代の末ぐらいから広聴・広報課といったものをつくり、あるいは市民相談室をつくり、あるいは市長への手紙、最近は市長へのファクスというふうに時代変化をあらわしておりますが、そうしたことをやっている自治体が多々あります。しかし、実は、これは広聴でいろんな苦情が入ってきて、それでは所管課へ回されるのか、あるいは全庁的にそれにどのようにこたえるかという会議が開かれているかといえば、多くの場合開かれていないのが実態ではないでしょうか。  私自身随分いろいろとやってきましたし、あるいはその作成にかかわったわけですが、地域生活環境指標、こういうふうに申し上げておわかりになる先生方と、どんなものか説明せいとおっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんが、これは例えばいわゆる集会施設といったものが地域のどういうところにどのくらいつくられているのか、要するに公共施設整備水準を一目瞭然に明らかにしたものでありますけれども、そういう生活環境指標といったようなものをいずれの自治体も整えていく必要があるのではないだろうか。あるいは、そうしたものをつくるならば、対象者別に細分化した施設をつくる必要がなくなるのではないか。  例えば、東京二十二区で児童センターという施設があります。そして、自治体によって若干違いますが、ここに朝八時四十分ぐらいから職員が配置されている。しかし、朝八時四十分から生徒が来たらおかしい話でしょう、ウイークデーに、学校に行かないで。生徒というか子供が児童センターの方へ来たらこれは大変な話であるわけでありまして、その手の集会施設というものがいかに不合理であるかということがいずれの市民にもわかるような政策情報を充実させることが課題なのではないか。  あるいは議会面で申し上げるならば陳情請願といったものがございます。もちろん、この中身は国政に関係するものからあるいは身近な自治体生活に関係するものまで非常に多岐に及んではおります。しかし、請願の場合であれあるいは陳情の場合であれ、なかなか結果を出すまでに時間をかけている、あるいは陳情代表者請願代表者からその理由を聞く、そういう議会運営をやっているところというのは私の聞く限りごく一部であります。  さらには、官官接待の問題とも関係してまいりますが、食糧費、ある自治体職員、かなりの幹部でありますけれども、よく気がついたよというふうに私にふとプライベートな会話の中で漏らしたことがございますが、現在の款、項、目、細目という予算書の形式からおよそ市民が、あるいは甚だ失礼かもしれませんが、地方議会の議員の先生方が確実に予算書を読み取れるかといえば、私は読み取れないと思います。むしろ、予算書と並んで目ないし細目に対応した予算説明資料がきちんとつくられるべきである。そこには積算の根拠事業内容、そうしたことが明らかにされ、それが公表されることが必要なのではないだろうか。  あるいはまた、後ほど申し上げますが、国の場合でいえば、甚だ私は不十分であると言い続けてまいりましたけれども、行政手続法がつくられておりますが、地方自治体の場合においても行政手続条例が確実なものとしてつくられる必要があるのではないか。法律にも政令にも条例にも違反していないよ、だけれどもあなたの申請は内規に序しますということが窓口で平然と行われている。新しい監査制度設計をするのは大切なことですけれども、今申し上げたようなことはまだいっぱいございます。既存のそうした点に関しての制度改革をきちんとすることが大前提であろうというふうにまず申し上げておきたいと、そう思っております。  オンブズマン制度自治体導入するかどうかということの前に、私は現行監査委員制度について、今のようなことを前提とした上で次にお話ししたいと思います。  私自身はその新聞記事を見ていないのですけれども、九日に共同通信が独自に監査委員制度について調査をし配信いたしました。それを見たあろ市民オンブズマンの中心的な人間からきのう大学に電話がかかってきて、おまえ話に来いという話になったんですけれども。後ほどちょっと申し上げますが、まず現行監査委員制度、この場合に件民側から見まして監査委員監査をさせる、その方法として住民監査請求もあれば、あるいは直接請求制度のうちの監査の請求ということもございます。  他方、監査委員の方からいえば、そうしたものがあったときにそれをするというのは当然の話です。あるいは各予算について自発的に一般行政監査をするということも監査委員の権限の中に入っておりますけれども、全体的に言えば、私は極めて受動的な傾向現行監査委員の行動には自立っと、そう申し上げたい。問 題なのは、なぜ自立っのかということになってまいりますが、共同が調べた四十七都道府県の特に識見者の経歴についての一連の資料が手元にございますが、ほとんど軒並みと言ってよろしゅうございますけれども、識見者二人のうちの二人とも県庁OBでございます。この近辺で申し上げても、千葉も神奈川も両方とも県庁OBであるわけです。プラス議会から監査委員が出されております。この議会からの監査委員地方議会の御経験あるいは首長として地方議会を見てこられた先生方は、私がここから申し上げるまでもなくよく御存じだと思いますけれども、議長、副議長、常任委員会の正副委員長と並ぶ監査委員というのは、議会内役職配分政治一つの重要なポストであります。これは、いや、そんなことはないということは恐らく否定できない話であります。  一方において、現在の二元的代表制と申しますか、あるいは大統領制と申しますか、そういう地方議会自治体政治制度のもとにおいては、地方議会は百条委員会すら持ち得るわけでありまして、果たして議会から監査委員を出す必要があるのか。それも議会内の主として与党から出す必要があるのか。ましてや、先ほど申し上げましたように識見を有する監査委員のほとんどが県庁OBであるという状況の中で、果たしてきちんとした監査ができようかといえば、甚だ私は疑いたくなってまいります。  もちろん、地方自治法の改正で、識見を有する監査委員のうちの一名については五年間ですか、都道府県庁をあるいは市を退職して即監査委員に就任はできないという規定を入れておりますけれども、ただこの場合は、実は御存じの方もいらっしゃると思いますが、例えば総務部長でおやめになった、都市開発公社の理事長になった、そして五年たって監査委員になったという場合に、これは入らないわけですよね。  そうした監査委員の経歴の問題プラス監査委員の人事以上に、実は私は事務局大事に問題があるというふうに申し上げておきたいと思います。これは実際問題といたしまして、監査委員事務局の局長あるいはその課長等のポストはすべて事実上首長の大事になっております。  そして、一体どういうふうに使われているかといえば、極端といいますか典型的な例には二通りの使い方があるのではないか。一つは、退職間近の職員に給与表上のポストを上げるために退職金をお支払いすることも考えながら部長職に云々という形で使うのが一つ。もう一つは、ポストのあきがないと、とりあえずは監査委員事務局に給与表上相当職を見つけておくという、こういう使われ方をしているのが実態であろうかと思います。  監査委員事務局の絶対数も少ないですけれど、も、となれば、果たしてだれが各課へ行って各、部へ行って積極的に資料を請求してくるということになるでしょうか。恐らく私は、それは現在のお役人さんたちの行動から見てあり得ない。だから、仮に監査委員制度を確立するということからいえば、監査委員の人事の問題プラス監査委員事務局人事の独立性と専門性をいかに高めていくか。例えば、川崎市のオンブズマン事務局で実際に手足となって働いていますのは大学院博士課程在学あるいはそれ相当程度の比較的若い人々ですが、そうした独自の人事権をきちんとしない限り、これは監査委員に、あるいは監査委員制度独立性やあるいは能動性を期待するのは非常に難しいのであろうと。  現在、地方制度調査会等で監査委員の外部監査という、そういう議論が進んでおりますけれども、私は率直に申し上げまして、四十七都道府県並びに少なくとも地方中核都市以上の都市については連合した外部の監査制度を必要としない、むしろ今申し上げたような点の改革の方が重要でおろう。ただし、人口五百人あるいは千人といった町村で今申し上げたようなことを行うというのは甚だ実態からいって不可能であろうと、そのように思っております。そうした意味におきましては、町村部等において外部的な連合監査制度をつくるということについては特段異論を持つものではございません。  時間も限られてまいりました。私は今申し上げたような監査委員制度の概略しか申し上げておりませんが、そうした改革をまずきちんと先行させるべきである。そしてオンブズマン制度に関して言うならば、総合的なオンブズマン制度をつくることは屋上屋であると、そのように申し上げておきたいと思います。  川崎市に関しましては、もう川崎市長初め幹部が言っていることですから、今さらここで話しても何の秘密でもございませんが、現市長の一期目の選挙のときの選挙公約の草案を書いたのは私でございます。その一人でございます。御承知のとおりリクルート問題等がございまして、オンブズマン政治倫理条例ぐらい加えないことには当選はおぼつかないだろうというのがそもそもの話でございました。ただし、私の基本的な考え方からいうならば、ある特定問題に関してオンブズマン制度をつくっていくべきであると、そのように思っております。  そして、この調査会は、地方自治体監査だけではない、中央、地方を通じた改革をテーマとされていらっしゃると、そのように考えておりますが、この場合に、地方分権推進法が今後どのような動きをするかはかなり予測不可能な部分もございますけれども、仮に現在推進委員会が出している法定受託事務という形に機関委任事務概念が整理されていくならば、これは今申し上げたような意味での地方自治体監査制度を急がなくてはならないだろう。そして同時に、その場合に現在の総務庁の行政監察というものは大幅に整理される必要性があるだろうと思います。  この調査会の議事録を読むと、必ずしも言っておらないというふうに見受けられますけれども、現在の行政監察というのは、最終的な勧告をまとめる前に監察対象機関と草案について協議を重ねて、両者の合意した事項だけが監察の勧告として表に出されているのが実態であります。これは御存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。そう考えてくれば、まさに国の事務が限定される、それに対応した国の独立的な新たな監察、監察という言葉がいいかどうかわかりませんが、監視機関を充実させるということが一方において大変な課題になるだろう。ただし、繰り返すようでございますけれども、地方自治体へ仕事が移るわけでありますから、そちらをどうするかということが国政全般にわたる大きな課題になるであろうと、そのように思っております。  ちょうど時間になりましたので、これで一応終わらせていただきます。
  9. 井上孝

    会長井上孝君) ありがとうございました。  次に、呰上参考人にお願いいたします。呰上参考人
  10. 呰上一三

    参考人(呰上一三君) それでは、これから全都道府県監査委員協議会連合会の事務局次長という立場で発言させていただきます。  まず、私どもは全都道府県監査委員議会連く会というのを全監連と称してございますけれども、まず、地方自治法が昭和二十二年に制定されまして、監査委員制度がそこで法定されたといろことに基づきまして、地方公共団体相互間におきます監査委員の協議会結成の動きというのが盛んになってまいったわけでございます。  東京都の関係におきましては、昭和二十三年の十月でございますか、関東甲信越一都九県の監査委員によりまして関東甲信越監査委員議会が結成されたところでございますけれども、この動きは他の地域にも波及してまいりまして、全国八ブロックの監査委員議会というのが発足していろわけでございます。その連合体の組織として昭和二十三年十二月に全監連というものができたわけでございます。  次に、全監連がどういう事業をやっているかということでございますが、全監連としては、一つ監査制度に関する研究及び調査、二番目に監査制度に関する国及び関係地方公共団体間の連絡調整、三番目に国または関係行政庁に対する要望、四番目に全国監査事務局職員の研修などを行っているわけでございます。  以上が全監連の概要でございます。次に、本日の課題でございます監査委員制度が真に機能しているか、あるいは行政施策の経済性、効率性、有効性を測定、評価するための手法は開発、整備されているかという点について意貝を述べろということでございますので、本日せっかくの貴重な機会を与えていただきましたので、若干考えを述べさせていただきたいと思います。  まず、監査委員制度が真に機能しているかという問題でございますが、既に御案内とは思いますけれども、話の順番としまして、まず都道府県の監査委員制度の概略について述べさせていただきたいと思います。  監査委員制度というのは、先ほど申しましたように、地方自治法根拠を有する制度でございまして、監査委員選任というのは、知事が議会の同意を得て、議会の議員及び人格が高潔かつ普通地方公共団体の財務管理等に関してすぐれた識目を有する者から選任するということになっているわけでございます。そして、監査事務に携わる監査事務局は、この監査委員及びそれを補助する事務局職員によって構成されているわけでございます。  委員につきましては、議員から選任される監査委員と識見を有する者から選任される監査委員の割合といたしましては、地方自治法上は議員から選任される監査委員の定数については一名ないし二名というぐあいにされておりますが、現在、全都道府県とも二名、二名の割合となってございます。それで、都合四名で運営されているということでございます。  また、識見を有する者から選任されます監査委員から代表監査委員を選ぶこととされておりまして、この者が事務局職員の任免権及び監査委員の庶務に関する事項についての権限を有しているということになっているわけでございます。  次に、監査委員の権限として認められておることにつきまして、主なものについて説明させていただきます。  第一に、通常、財務監査と言われるものがございます。これは当該普通地方公共団体の財務に関する事務の執行及びその経営に係る事業の管理を監査するということになってございます。この監査は毎会計年度一回以上期日を定めて実施しなければならないということになっておりまして、これを定期監査または定例監査と呼びならわしているのが通例でございます。また、これ以外に監査委員が必要に応じて行う監査としまして随時監査という制度がございます。  第二番目には、平成三年の地方自治法の改正で監査委員の権限として認められました行政監査ということでございます。これは、監査委員は必要があると認めるときは機関委任事務を含め一般行政事務についても特定の事務事業をとらえて、それについての監査を行うというものでございます。この行政監査につきましては各都道府県とも現在のところ取り組んでおりまして、平成六年度からは全都道府県で実施してございます。  第三は、当該地方公共団体と一定の財政的な関係を持っております団体につきまして監査を行うものでございます。これを我々は一応財政援助団体等監査と申してございます。これがございます。  第四番目には、決算審査と呼ばれますもので、これは地方公共団体の長であります知事の依頼に基づきまして地方公共団体の決算について審査するものでございます。この審査結果については、知事の方で歳入歳出決算書とあわせて議会に提出するということになっているわけでございます。  五番目には、毎月例日を定めて地方公共団体の現金の出納につきまして検査するというものがございまして、これが例月出納検査と言われるものでございます。  第六番目には、地方自治法上、特別監査と位署づけられてございますが、これは先ほど新藤先生からも御説明がありましたように、住民の請求に基づいて監査を実施いたします住民監査請求制度、この住民監査請求制度類似した制度といたしまして事務監査請求と呼ばれる制度がございます。  なお、住民監査請求制度につきましては、当該地方公共巨体の住民か一人で請求できますのに対しまして、事務監査請求は当該地方公共団体の選挙権を有する者の五十分の一の連署が必要とされております。  監査委員は、これらの権限を適正に行使すべき立場、いわゆる責務を負っているわけでございますが、この権限行使に当たりましては、選任権者であります知事の指揮監督を受けることなく、独立して行うことができるものということが地方自治法には定められているわけでございます。  そして、その監査の結果につきましては、原則として監査委員の合議によりその内容を決定いたしまして、それを知事、議会等に提出するとともに、これを公表することとされてございます。公表の方法につきましては、特に定めてございませんが、通常は各都道府県の公報により行われているわけでございます。  以上、述べましたように、監査委員の権限は、財政援助団体等監査という例外はございますが、その属しております地方公共団体の事務について監査するものとされているわけでございます。これは中には審査あるいは検査というような言葉が使われているものもございますが、これらにつきましてはいずれも監査の範疇に含めて理解するのが通常でございます。  そこで次に、監査ということでございますが、一概に監査という言葉につきましては地方自治法は特に決めてございませんので、これは一般的にはどういうのかということになるわけでございますが、これは一応、他の関係者の行為あるいはその結果としての実態あるいはそれらに関連して作成された情報を一定の基準に照らして批判することであると解されるのが通常ではないかと考えております。このような監査の考えから、監査権限の制約というのがおのずから導き出されるわけでございます。  まず第一には、一定の行為の存在というのが監査には前提となってまいりますので、つまり監査は事後監査であるということでございます。したがって、行為形成過程あるいは形成途上にある行為、例えば予算編成とかあるいは事業計画などの適否、これらのものについては権限が及ばないということでございます。  第二番目には、批判の前提といたしまして一定の基準が必要とされておりまして、基準の存在しない分野につきましては批判機能が及ばない面があるということでございます。  以上、述べさせていただきましたことを踏まえさせていただきまして、引き続き、監査委員制度は真に機能しているかという問題に入ってまいりたいと思います。  この問題につきましては、昨今において住民の方々を初めとしまして関係各方面より寄せられております厳しい批判というものを背景として言われているものと考えております。  現在、現行監査委員制度のあり方、その監査の仕方などにつきまして、空出張・空飲食問題などを通じて幾多の批判が寄せられているところでございますが、これらの批判を要約させていただきますと、一つは、監査委員のうち識見を有する者から選任される者が当該自治体のOBより選任されることが多いということから、監査委員の知事等執行部局に対する独立性中立性が損なわれているのではないかということでございます。  いま一つといたしましては、監査委員を補助して実際の監査に当たっております監査事務局の職員が、当該自治体の人事ローテーションに組み込まれて短期に異動しておりますので、監査の実務に習熟していない素人の監査になっているのではないかという点もございます。  また、空出張・空飲食問題に象徴されておりますように、監査委員が、その責務であります自治体の行財政運営に対するチェック機能、これを十分果たしていないのではないかということ。  以上、三点になるのではないかと考えております。  これらの批判につきましては、厳しく反省しなければならない点がございますけれども、一方、監査委員制度に対する誤解に基づいている面もあるのではないかと思ってもおりますので、この点を交えて批判にこたえる形で監査委員制度が真に機能しているかということを述べてまいりたいと思います。  第一に、自治体OBの監査委員が多過ぎるという批判でございます。確かに、現在のところ、四十七都道府県のうち北海道、高知県、この二道県を除きました四十五都府県におきまして自治体OBが監査委員選任されております。  この点につきましては、現在の制度では選任の権利者は知事でございまして、どのような者を選任するかは知事の専管事項でありますから、なぜ自治体OBが多いのかという点については確かだことは私どもは述べられないわけでございますが、自治体のOBは当該自治体の行財政運営について深い識見を有しておるというのが通常でございますので、この識見を監査において十分に生かしていただくことができる、その本来のそういったものを生かしていくことができれば、自治体の行財政運営の適法性、妥当性の確保に資するという監査委員の責務を果たす上で極めて有意義なものがあると考えてございます。  また、監査委員はその事務を公正不偏な態度でみずからの判断と責任におきまして誠実に管理し執行するという立場を負っております。その義務を果たしていくために、みずからの責務の重大性というのを認識いたしまして研さんしていくならば、職務遂行にこういう姿で当たっていただければ、自治体OBであるという一事をもって知事筆に対する独立性中立性が損なわれるということはないものと考えてございます。  次に、事務局職員の人事の問題でございます。これは制度上におきましても、先ほど申し上げ生じたとおり、事務局職員の任免権は代表監査委員が形式的には有していることになってございますが、人事権を裏打ちしております予算に対する権限を有しておりません。したがいまして、実態的には、批判もありますとおり、自治体全体における人事ローテーションの枠組みの中で異動しているのが通常でございまして、在職三年ないし四年で異動させる県が多く見受けられるところでございます。  したがいまして、このローテーションの期間が短い者のみで職員が構成されているというようだことがありますならば、言われているような問題が生ずる可能性はあるものと思っております。この点につきましては、一部の県で画一的に行われている現在の異動基準を見直そうという機運が出てきてございます。  一方、可能な限り、こういった点を補うために監査業務に習熟するような研修等の充実を図り、努力しているのは当たり前のことでございます。  第三に、総括的な批判といたしまして、監査委員制度機能していないという批判がございます。  この点につきましては、まず監査委員の職務行使の基本精神というのは、不正または非違の摘発を旨とするわけではございませんで、行政の適法性または妥当性の保障にあるべきでございます。いかにすれば公正で合理的かつ効率的な行政を確保することができるかということが最大の関心事でなければならないわけでございます。  このことは、広い範囲にわたって抽出により監査することによりまして行財政運営の全体像を把握することが監査委員には求められているものと理解しております。そして、このような基本精油並びに実際上の問題として、膨大な監査対象件数と人的な制約などから監査対象局におけるみずからの内部統制に一定の信頼を置いての抽出によろ監査にならざるを得ないという側面を有していろことはそのとおりでございます。  また、空出張・空飲食問題につきまして申しますと、これを発見するためには、この分野に絞って抽出率というものを増加させるということが必要でございますが、また、これについて関係人調査という地方自治法に定められた権限を行使すべきことが必要となるわけでございますが、これについても先ほど申し上げました人的制約などの点で困難がございますし、何よりも関係人調査というものは、これは強制権を有していないわけでございます。この強制権を有していないために、相手方の任意の協力に依存するしかないという問題点を抱えてございます。ここに監査の限界というものもあるわけでございます。  このようなことから、従前におきましても実施してまいりました監査の中におきまして、こういった空出張・空飲食などを発見するのは非常に難しかったということを残念ながら率直に申し上げるほかございません。ただ、そのような事実につきまして明らかにされてきた状況を見ますと、今後においてはこのような点につきましても重きを置いた監査を実施していく必要性というものを切実に痛感している次第でございます。  以上の点を踏まえまして総括的に申しますと、私どもといたしましては、自治体の行財政運営の適法性、妥当性の確保に資するという監査委員に与えられました責務を全体的には果たしているものではないかと自負しております。その意味におきましては監査委員制度は真に機能していると申し上げたいわけでございますけれども、現実に今申し述べましたような空出張・空飲食問題等が数県にわたりまして行われているということがあからさまになるという事態の中で、このことを厳しく受けとめ、反省しているところでございます。  今後におきましては、みずからのごれまでの姿勢あるいは取り組みなどにつきまして厳しく反省いたすとともに、監査のあり方などにつきまして見直すべき点を見直していきたいと、そう考えているわけでございます。  なお、監査委員制度に対する批判として住民監査請求制度に対するものがございます。  この制度は、御案内のとおり、住民が知事等執行機関職員による公金の支出あるいは財産の管理などの当該自治体の財務会計上の行為に違法または不当な行為があると認めるときに、このことを証明する書面を添えて監査委員監査を求め、必要な措置を講ずることを請求するものでございまして、住民の請求によりまして職員等の違法生だは不当な行為を是正、防止することにより、適正な財政運営を確保し、住民全体の利益を擁護することを求めたものでございます。  この住民監査請求制度の運用に関しましても、地方自治法に規定されております要件に該当しないものとして請求自体が却下されるもの、あるいは請求に理由がないとして棄却されるものが多過ぎるという批判がございます。住民監査請求が適法なものとして受理されるためには、一定の要件を満たしていなければならないわけでございますが、請求人が違法、不当とする行為が当該地方公共団体の財務会計上の行為に当たらないもの、まだ事実を証する書面が不適当なものがあるなど、不適法な請求として却下される事例が多く見られることも事実でございます。  住民監査請求におきましては、住民の方々が必ずしもこの制度をよく理解していないということも原因になっているものと思います。私どもといたしましては、広報などを通じまして、また相談ごとに住民の方々に詳細に説明するなどしまして、制度の趣旨について一層理解をしていただくということになっておるわけでございます。  また、棄却ということでございますが、受理をして、中身に入って棄却するということでございますが、監査委員監査した結果、請求人の主張に理由がないと判断したものについてこの棄却ということをやっているわけでございますが、請求に全く理由がないとしているものばかりではなく、この点につきましては、違法、不当とは言えないまでも何らかの問題点が見受けられるものについては要望等を付して、事務処理の改善などについて監査委員意見を述べるということをやっているわけでございます。  以上、雑駁ではございますが、監査委員制度は真に機能しているかという問題につきましての私の考えを述べることについては終わらせていただきます。  次のテーマでございます行政施策の経済性・効率性、有効性を測定、評価するための手法というのは開発、整備されているかという問題でございますが、これにつきましては、監査に当たりましてはその性格上、判断基準というものが必要となります。こういう中に一般的には正確性、合規性、経済性・効率性、有効性の四点というものが取り上げられてございます。この四点の観点から監査対象行為を検討、分析していくことが必要だということになってございます。  正確性というのは決算審査などにおいて求められるものでございますし、合規性というものにつきましては、法令等に従って適正に処理されているかという点で判断していくものでございます。  第三の経済性・効率性については、経済性と効率性が別々に考えられてございますけれども、いずれにしても、個々の事業が最小の経費で最大の効果を挙げていくかというような点について挙げられるものでございます。  第四の有効性につきましては、所期の目的を佳成し効果を上げているかという点を問うものでございます。  これらの点につきましては、いわゆる経済性一効率性、有効性の問題につきましては、今後、この手法の開発について非常に問題を抱えておりますので、これらについては十分に検討していかなければならないと、そういうぐあいに考えております。  以上、簡単でございますが、これで終わらせていただきます。
  11. 井上孝

    会長井上孝君) ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 守住有信

    守住有信君 自民党の守住でございます。  きょう、お三人からそれぞれの御体験なり自分の考え方をお示しいただきまして、まことにありがとうございます。つい一週間前も学者の先生お二人と行政相談委員の組織の代表の方にそれぞれお尋ねをしましたのですが、きょうは私も皆さん方のお話を聞きながら、前もって何にも用意しておりませんので当意即妙でございますけれども、御質問をさせていただきます。  参議院というのは専門性を持つ衆議院と違った分野ですね。比例区もあります。全国的には職能代表。あるいは地方、県一円でございますから、小選挙区みたいな小さいブロックや細かいあれじゃございませんからね。まして参議院には決算委員会という、よく言われております「衆議院は予算委員会、参議院は決算委員会」、いわゆるプラン・ドゥー・シーでございます。そして、それの決算審査を経ながら、その中のいろんな問題点やあるいは不十分さ、これを指摘しながら次の予算なりあるいは新しい立法なりに刺激を与えていく、簡単に言うとそういう役目だと思っております。  議員になりまして最初は法務委員会にしばらくおりました。我が国の治安という問題が最初ですが、その後はずっと決算委員会をもう十年ぐらい続けております。  国の場合は会計検査院といういわゆる内閣とは離れた専門グループが、専門家がおります。もう一つが今お話も出ましたような行政監察、やはり地方行政相談委員のいろいろな声というものを絞りながらきて、来年度は幾つの、どういうテーマでいくかということに取り組む、こういうわけでございます。ただし、その中で抜けているのが大蔵と警察だと、こういう御指摘もあったわけでございます。  そういうことも踏まえながら、我々は両方のウイングといいますか、会計検査院だけじゃなくて行政監察の結果なり声を受けとめて決算委員会でそれぞれ省庁別にもやる。あとは締めくくり総括で全閣僚を並べて、そして場合によっては警告決議を総理以下内閣にやる、与党だろうと野党だろうと問うところではない、こういうスタンスでやっております。  さて、きょうのテーマ地方自治体地方自治の根源。その上に私は国政があると思っております。ますます地方分権の流れも行くわけでございますが、私は足元しかよく知りませんので、川崎市のお話は実際前から聞いておりました。マスコミ的にも見ておりましたけれども、さて自分の小さい市町村は別としまして、大きな市あるいは特に県、この場合には今もお話が出たような議会の決算特別委員会、それと監査委員、この役割、実態というもの、いろいろ人事等のお話もございましたけれども、今度は議会の決算特別委員会国会ならば我々決算委員でございますね、今の調査会もそういう角度で今後やるわけでございますけれども、そういうものとプロ集団というか監査委員地方自治体の場合はそこの議会の決算特別委員会という特別の使命を持った議員のグループと監査委員、この関係につきまして先生方が何かお感じになっておられることを、この点は十分じゃないぞ、こうしたらいいんじゃないかと、オンブズマンという大きな制度の方は別にありますけれども、足元から物を見ていこうと思っておりますので、第一歩でございますけれども、日ごろのお考えなり印象なり御指摘なり、そこらあたりにつきまして勉強させていただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
  13. 宇都宮深志

    参考人宇都宮深志君) 議会の決算特別委員会とエキスパートの監査委員との関係でございますけれども、これは両者が連携的に有機的な関係で自治体の有効な監査をやっていくというのがあるべき姿だと思うわけでございます。  そういう意味からしますと、先ほどから監査委員制度のお話がありましたけれども、監査委員任命の問題とかあるいは事務局の独立性確保の問題、これは川崎オンブズマン制度をつくるときにも事務局がしっかり独立性を確保しなければ十分機能を果たせないのではないかというようなことがあったわけでありますが、そういう意味でプロフェッショナルな監査委員制度というものを中立的で独立をして監査あるいはそういう機能がしっかり果たせるような方向につくっていくということが一つあると思うんです。  それと、議会の決算特別委員会というのは市中の代表で構成されている先生方が特別に指名されて決算特別委員会を形成しているわけでありまして、そういう意味では、その決算特別委員会がまたプロフェッショナルな監査委員のいろいろな活動とか機能をチェックする意味もありますし、それを支援していくというような形もあろうかと用いますけれども、そういう形で両者が連携しながら監視なりそれぞれの目的を遂行していく、これからそういう方向で改善をしていく必要があるのではないかなというように思います。  以上でございます。
  14. 新藤宗幸

    参考人新藤宗幸君) 地方議会の決算特別委員会地方議会の場合には常任委員会じゃございませんので決算特別委員会監査委員との関係でありますけれども、中央といいますか国の場合にもあるいは自治体の場合にも、戦後確かに憲法、財政法あるいは地方自治法等によって予算、決算についての民主的な制度はつくられましたが、日本の予算制度の基本的欠陥は、先生方国会の決算委員会の活動は活動として評価いたしますけれども、予算についてほとんど何の権限も与えられていない、決算が極めて弱い立場に置かれているというのが少なくとも戦前期からの伝統をそのまま引き継いでいる日本の予算制度の欠陥であろう、そのように思っております。  したがって、予算制度の改革、つまり決算上の責任を首長あるいは行政府にきちんと問う、そうした仕組みがつくられていない、それを中央、地方にわたってきちんとつくるということをまず大前提にしておきたい、そう思っております。  その上で申し上げますが、少なくとも議会の決算特別委員会、私もすべての地方議会を知っているわけではございませんけれども、ここにおける議論というものを概観している限り、そこには一体何を議会側は問おうとしているのか、つまり、先ほどもお話しございましたが、違法、不当な支出なのか、あるいは事業効果について問題を問おうとしているのか、この辺に関してもう一つ焦点が絞られていないのではないか、そのように思っております。  そして実は、個人的なことを話して恐縮でございますけれども、先般の統一地方選挙で当選した一年生の東足区議会議員に頼まれまして「予算を読む」という勉強会をやっております。ところが、例えば都区財調の財源が一体どういう税から構成されているのかということすら実は御存じでない一年生区議会議員が残念ながら多数でございまして、こういう状況で、決算で一体何が問えるのか。その意味でいえば、まず地方議会の議員が少なくとも税財政制度に関して勉強することが大前提であろうと。その上で、しかし違法、不当な支出は当然としましても、決算特別委員会の議議の焦点を、その事業にどのような効果があったのかという点に絞り、それを次年度同時進行的な予算編成にきちんと反映させるということにするべきではないかと。  したがいまして、監査委員に関しましては先ほども若干触れましたけれども、私は議会から監査委員を出す必要というのはほとんどないと考えております。監査委員議会とはまた違った、つまり議会の場合には一会派で、一つ政治色で彩られているわけではございませんし、またどうしても首長・与党との関係、与野党関係は反映せざるを得ないわけですから、そこから相対的な意味で独立した監査委員並びに事務局は独自の調査を行っていき、まさに違法、不当な支出のみならず、経済的な効果あるいはその事業の効果について積極的な提言といいますか、勧告をしていくような監査委員であるべきだと。  要するに、自治体を統制する制度というのは、行政改革問題、行政の簡素化問題とも関係するんですが、多元的であってよろしいということではないだろうか。その統制するチャンネルが少ないというのは甚だ行政側の怠慢を、あるいは気の緩みをもたらす結果になるのではないか、そのように考えております。  以上です。
  15. 呰上一三

    参考人(呰上一三君) それでは私から答えさせていただきます。  私ども議会から選出される監査委員のことを議員選出監査委員と申し上げてございますけれども、この議員選出監査委員に関して私どもが期伸しておりますのは、住民の立場に立った点から灘査に対して御意見、御指摘をいただくということに期待をしております。また、識見監査委員というものにつきましては、これはもう当然のことながら人格が高潔で、いわゆる地方公共団体の財務管理あるいは地方公営企業の事業管理に対して、その他行政運営に識見を有しているという立場がらの御指摘、そういったものを期待しているわけでございます。  したがいまして、私どもはこういった立場の構いがございますけれども、そういう立場の違いの中からそれなりの有効な御指摘あるいは御意見がいただけるものと、そういうぐあいに思っております。現に私は東京都監査事務局の立場にもいるわけでございますが、東京都の議員選出の監査委員先生方には常にそういった都民の立場に立った御意見あるいは御指摘をいただいて、これらについてたじたじとなる面もございますから、そういった点でちゃんとそういったことをわきまえた議員選出監査委員であればそれなりの機能を果たしていただけるものと確信しております。
  16. 守住有信

    守住有信君 どうもありがとうございました。  それで、議会の方を見ておりますと、これは槽報公開とかかわりますけれども、本会議とか予算委員会の方は傍聴者、まあ連れてもきておるでしょうけれども、大勢なんですよね。決算特別委員会の方は全く情報公開もなければ何のテーマ、速記録は別として、それもないということを私は知ったんです、県、市ともに。人口六十何万の熊本市もですよね。  それと、今御指摘になりましたように、四名のうち議会の議員が入っておりますでしょう、どうもこれがね。そしてもう一つがOBの問題。もつと専門的な視野の広い弁護士さんとか公認会計士とか、いろいろおられますよ。そういうのに対する視点が、力点が全くない。これを声を出してやるのは単に地方自治の、自治省の審議会だけではないはずだと、こう実は思っております。自治省に対してもこういうやり方でいいのかと、私自身の体験で。  この間決算委員会で、野中広務自治大臣にでしたけれども、締めくくり総括のとき熊本市の例を取り上げたんです。例えば昼窓手当、熊本市では有名だったんですよ。一時からはちゃんと交代制度をとっておるんですけれども、地区労との間で協約を結びまして特別の手当を給付した。市民からも相当声が出ました。議論があった。決算特別委員会の方でもそのまま。  そこで、ついに熊本市内のあるミニコミ誌の社長がこれで裁判を起こした。四、五年間続けておったんだが、高裁で負けたけれども最高裁で勝ちました。一年間に一千三十万ですかな、最近の一年分だけを市長個人が払うべしと、こういうことになりました。私も裁判起こしたかった。バッジをはめておるものだからちょっと遠慮しまして、それをミニコミ誌の社長がやるというものだから弁護士費用だけは応援しました。これは熊本市だけではなく、全国で二十近くの市が昼窓手当を出しておったんだが、あの熊本市の最高裁の判決のおかげで全部なくなりました。ただし、三審ですから弁護士費用は三百何十万かかったんですよ。そういう勇ましい侍もおります。最後は最高裁まで行って片づけたんです。そこに至らぬような問題が山のようにありまして、言い出すといろいろ出てきます。私もちょっとジャーナリストになったようなつもりで昔からそういうのをウォッチングしておりますからね。  それから、いろんな点で行政相談委員の人とか熊本市には何人もおります。これは皆さんも聞いてもらいたいんだけれども、市政だよりとか県政だよりに載っておらぬのですよ、行政相談委員の住所、電話番号、どういう経歴の方とか。要するに市長や県知事は自分の宣伝ばかり。細川護煕以来、格好のいい写真を入れたりなんかしてイメージづくりだけはやって、後の知事もまねする、市長もまねする。肝心な市民との接点、その一番大事な接点が私は実は行政相談委員だと、こう思っておるんです。これの住所、氏名も何にもわからぬわけだ。全部とは言わぬけれども、皆さん方のところも市政だよりとか町政だよりとか県政だよりとか発行しておりますでしょう。この中に、市民は、県民はだれに相談に行けばいいのか、訴えればいいのかという簡単な手続ですな、こういろ点も私の考えの一端でございます。  まず、今ある制度をどうやって本当の機能を回復させるか。その次に、おっしゃいました川崎市のような独自なやり方、私はそういう気持ちを持っておりますものですから、そういう点について、特に川崎市を御体験の新藤先生から実践の例その他をもっと広げてお話しいただいて、また御提言いただきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
  17. 新藤宗幸

    参考人新藤宗幸君) 今、先生おっしゃいましたように、私も冒頭で申し上げましたように、ともかく新しい制度をつくる前に現行制度の中で釣革するべき点が多過ぎるのではないかという気持ちがしております。  例えば、先ほどは触れませんでしたが、都道府県、市町村ともに長期計画といったものをつくっております。中には布張りの表紙の立派なものをつくっておりますが、ああいうものを一体だれが見ているんだろうといえば、ほとんど見たことがないという状態すら生じているわけでありまして、そういう中で行政の統制も何もあったものではないというのが実態ではないだろうかというふうにも思います。  オンブズマン制度を今採用している自治体川崎に限りませんが、ああしたものに関心が集まるのは、少なくとも現行監査委員制度、あるいは今御指摘ございましたが、行政相談委員にしても広聴・広報にしても、言ったからといってなかなか解決が図られないために、その新しい制度に住民の期待が集まる。川崎があの制度を発足させた以降、問題として挙げられているのはほとんどが教育問題であります。市立小中学校における内申書の問題もあればいじめの問題等々の話であるわけですね。そういうことが従来の制度で救い得ないということでいろんな意味での関心を呼んでいるんだろうと思います。  しかし、そのことは監査委員が必要でないということでは全くないし、繰り返しになりますが、私はまずOBの監査委員の人選は絶対にやめるべきであるというふうに申し上げておきたいと思います。  時間も限られていますが、具体的に私が体験したことをごく簡単に申し上げます。九五年一月の山梨県知事選挙を控えまして、それ以前の十二月段階におきまして、当時の山梨県社会党県議団は、視察等に県知事からお手当が贈られた問題をめぐって甲府地裁に提訴をしたわけであります。ところが、選挙が近づくに従ってその訴訟をおろして、知事与党というか、知事を推薦するという話になりました。朝日新聞甲府支局が私にどう考えますかと電話で取材をしてまいりました。そのときに、それはそれ、しかしその問題にだらしないとかなんとかと怒っている前に住民訴訟でも起こしたらどうなのと、そういうコメントをいたしました。それから五日後に、その朝日新聞の甲府支局の記者が私に、先生、実は住民監査請求が起きたんですよと、こういうことを連絡してまいりました。  それで、県の監査委員はその問題にどうしたかといえば、社会党は甲府地裁に証拠書類を整えてこういう支出があったと言っていたにもかかやらず、実はこの山梨県監査委員はそれを棄却したわけです。そういう事実はないといって棄却をした。その結果、現在それに基づいて住民監査請求を起こしたグループが甲府地裁に裁判を起こしております。  こういうことは一つの極端な例かもしれませんが、きのうまで助役であった、きのうまで何々長であったという人間が、先ほど機能しているという御意見、確かにそういう見方もあるかもしれないけれども、自分が責任の一端、かなりの有力な責任を担っている事業について、しかも自己監査であるとすれば、違法、不当であるとか等の不定的評価をするはずがないわけであります。  したがって、私は議会選出の監査委員も必要ないと思いますが、都道府県庁あるいは市役所OBを監査委員に加えるということは絶対にやめるべきだと。そこを排除していくことがこの問題の、そして今後、先ほども申し上げましたが、もし仮に機関委任事務等々が廃止されて実際の権限が強化されるとすればきちんとやってもらわなきゃ困るわけでありまして、そういう状況の中で実際の行政を透明化させる一つの核心部分ではないかと。それをきちんと行い、同時にそのオンブズマン制度を整えていくということには何ら異論がございませんが、オンブズマン制度についていろいろ関心を呼ぶのは既存の制度機能していない結果だというふうに考えるべきではないか、そのように思っております。
  18. 守住有信

    守住有信君 今、最後におっしゃいましたオンブズマンそのものを否定するわけではないが、既存の制度が血が入っておらぬ、力が発揮できておらぬと、簡単に言うとそういうのが最後の結論だと思いますけれども、私個人もまことにそうだ、それを仕掛けていくにはどうすりゃいいかということを自分でも考えておるわけでございます。  私も実例主義で、恥でございますけれども申し上げますと、例えば前の熊本市長、人事の採用。市長がわいろをもらったら一発で刑事事件でございます。過去にも別の市でございました、熊本県下で。どういうやり方をするかというと、議員市もらうんです。議員は職務権限がない。それで市長室に行って、市長、よろしく頼むよと、こうやる。そうすると、絶対頭が上がらぬ。万年与党、これは政党を離れてですよ。共産党さんだけは違っていたけれども、ほかはみんな。自民党から始まってだんだん社会党、公明党まで。市会議員ですよ。これはもう大きな問題になりました。  それからまた、市会議員の採用が、これを調べさせたら息子、娘が一二十人余おりました。それで、立派ならいいんですけれども、採用してまず交通局とか水道局とか下水道とか現場の方に配置するんです。それで何年かたっと、もう市役所職員です。企画部門の本庁舎の方へ連れてくるとか、そういう恥ずかしい話でございます。  そういうのが世上、マスコミにもいろいろ出ながら、監査委員は何をしておるかと申し上げますと、市の話をしましたけれども、市の監査委員、政党別には申しませんけれども、市会議員が二人、それからOBが一人、もう一人は弁護士だということで私は非常に安心したんです。ところがどっこい、このお方が民事弁護士でいらっしゃいまして、扱うのは行政事案、行政の担当の弁護士さんじゃなくて民事の和解調停の方、そういう弁護士さんがずっと来ておったんです。これは実例でございます。いろんな角度からの監査委員の人選があると思います。  それからもう一つがおっしゃいました事務局、これが二、三年でくるくる回っておる。もうおっしゃるとおりです。市の人事異動の中で巻き込まれてくるくるとなって、また新しいやつだと。そうすると、ほかのセクションに対して何の発言力もない。それで、ちゃんと上に収入役はおるんです。三役の一人です。県庁だって出納長がおるんだ。実務的にはその下ですから、そこを通じてですから。そういうことを私感じております。  松前先生の東海大学でございますからあえてお尋ねするわけですけれども、それ以外にもこういう点を、大きな制度論と一緒に運用の改善、多面的にいろいろございますと思いますけれども、どういう角度で改革していけばいいのか、それは国会から声を出していかなきゃいかぬ、こういう気持ちを持っておりますので、東海大学の先生にもよろしくひとつ。
  19. 宇都宮深志

    参考人宇都宮深志君) 既存のいろいろ類似制度がたくさんあるわけでありますが、まず既存の制度活性化する、あるいはそれを有効に機能するようにするということは私も大賛成でありまして、必要なことであると思います。  今、議論が出ておりますように、行政相談委員とかいうのは国民市民レベルからいうと住所も氏名もよくわからない。私自身、相模原に住んでおりますけれども、だれが行政相談委員になっているのか実はよく知らないわけであります。そういう意味からしますと、国のレベル行政相談委員制度というのは五千四十六人現在おるそうでございますが、もっと国民に浸透するようにPRなりする必要があるのではないかというように、そういうような制度上のそれぞれの類似制度があるわけでありますけれども、それを改善する、それを有効に機能するようにするという必要があると思います。  それと、オンブズマン制度の関係でいきますと、私はこのオンブズマン制度というのは非常に制度導入は急務だということをお話ししましたけれども、世界傾向から見ましても制度導入が私は立ちおくれているんじゃないかという意見を持っているんですが、むしろこういう新しい制度導入することによって既存の制度というものを活性化する役割があるのではないかなというように考えております。  川崎制度導入してからどういう状況かというのは、お手元に資料を配付しておりますのでそれを見ていただきますと、平成二年の十一月一日から運用が始まりまして、第一年度は二百二十一件の苦情を受け付け、それから二年度は百四十二件、三年度が百五十七件、百三十六件、百四十件というように苦情を受け付けて処理をしております。  こういう苦情件数の状況でありますけれども、これまでの運用の状況を見ておりますと、オンブズマン制度がなければ苦情の受け付けがなかったのではないかなというようなもの、かなり解決が難しいような行政苦情というのを受け付けて処理をしているということで、それが全般的に行政改善に結びついて行政側にとっても大きなメリットがあったのではないか、もちろん市民にとってもメリットがあったと。  それから、職員の意識改革といいますか、これは私、英国のオンブズマンにお会いしたことがあるんですが、御承知のように、英国はサッチャーさんのときに行政改革を、ハリケーン改革と私は言っているんですが、すさまじい行政改革を断行したわけです。イギリスオンブズマンはどういうようになっているのかなと思ってイギリスに一年間滞在したときにそのオンブズマンにお聞きしましたら、オンブズマンの事務局とかそういうものについては一切手をつけていないということで、より充実をしているというお話がありました。オンブズマンの効果についてそのイギリスオンブズマンにお聞きしましたら、オンブズマンが存在するということが非常に重要なんだと。いつオンブズマン調査に入るかということを行政職員は考えている、そういうことで決定に対して非常に時間をかけて慎重に決定するようになってきた、こういうところが効果がある、こういうお話だったわけです。  川崎の五年間ぐらいの経験を見ておりますと、やはり自発的に調査ができる職権調査というのが川崎オンブズマンに与えられておりますので、いつ調査が入るか、そういうことで全般的に緊張して行政運営をするようになってきたということが非常に大きなメリットではなかったかなというように私は見ております。そういう点から見ますと、順調に運用は進んでいっているのではないか、行政側にとっても市民側にとってもかなりいい結果がもたらされているのではないか、そういうように評価をしております。  以上でございます。
  20. 守住有信

    守住有信君 じゃ、ちょっと関連で。  川崎市は行政相談委員はちゃんとあるわけですな、それはそれでね。監査委員監査委員にかわってがこの方式ですか。そこのところをちょっと。
  21. 宇都宮深志

    参考人宇都宮深志君) いろいろな地方自治体と同じように市民相談制度というのはもちろんあります。市民相談員というのを置いておりますけれども、行政苦情簡易迅速に対応する体系的な手続とか、事案を客観的に調査するための資料閲覧権とか資料請求権などは一切与えられていないということで、受け付けをして各行政部門に取り次ぎをする。そこで、それぞれが受け付けて処理をしていくということです。オンブズマンにはもちろん資料提出権とか閲覧権もございますので、中立的な立場で客観的に住民から苦情を受け付けて処理をするということで、市民からも非常に信頼性を確保できるという制度だと思います。  もちろん、このオンブズマン制度というのは監査委員とかそういうものに取ってかわるわけではありませんで、監査委員制度というのはちゃんと法的な制度としてあるわけでありますから、そういうものを補充していくといいますか、補完していく必要性がこの新しい時代に出てきているのではないかなというように私は考えております。  以上でございます。
  22. 守住有信

    守住有信君 どうもありがとうございました。もう一つ。  私は九州でございますので、九州は一つと言ってやっております、国会議員会もね。諌早市が何かに出ておりまして、このペーパーじゃ諌早市の詳細なあれがございませんもので、この長崎県の諌早市、これをひとつある程度御承知なら紹介していただければ、熊本市と連携させてみようかと思っておりますので、どちらの先生でも結構でございます。
  23. 新藤宗幸

    参考人新藤宗幸君) 諌早の場合には片仮名文字は使っておりませんで、市政参与委員というのが正式名称です。そして、人数は三人で、選任方法は、議会の同意は必要としておりません、市長が委嘱をして、任期は四年であり、再任は可であるという、そういう形になっております。  それで、じゃどういう方がなっているかということでいえば、元警察署長、それから家庭相談員、それから元市議会議員の方が市長から委嘱を受けて市政参与委員になっておりまして、月曜日から金曜日まで毎日一人が詰めているというそういう形態ですけれども、ここには、オンブズマンというものをどう定義するかにもよりますが、強固な勧告権といったものは与えられておりません。  以上です。
  24. 守住有信

    守住有信君 そこで、全体を把握しておられますのでもう一つ。  この行政監察の今の仕組み、実態はいろいろ御説明いただきました。そこで、元へ戻りまして、私がちょっとさっきも言うたように啓蒙運動というか、県政だよりとか市政だよりとか町政だよりとか、町の方は全部じゃありませんが、相当広報活動に力を入れておる。熊本市政だよりは土曜、日曜は帰りますのでいつも見ておるんですよ。そうすると、私の気がつく範囲ではこういう中に行政相談委員の名前とか経歴とか住所とか電話番号というのが出ておりませんもので、私は周知啓蒙運動、今ある制度の浸透、これが一番すそ野だなと、こう思っております。その上に、今まで出ましたようないろんな実例、あるいは外国の例等も参考にしながら取り組んでいかにゃいかぬと思っております。  そこのところはどうなって、どういうふうな、つまり縦割り行政ですから、総務庁は。自治体と別個でしょう。建設や何かずっと縦で来るわけだ。だからそこのところ、横の方へ、広報活動ですからね、県にも市にも広報課があるんだけれども、そういうのに文書依頼なんてしたことがあるんだろうかと、実は皆さんのお話を聞きながらそういう疑問を持ったわけですけれども、そういう点はどうでございましょうか。いわゆる行政監察の方々がとらえておられて、県や市町村の広報ですな、これを取り次ぐべきは私は行政管理局、行政監察局、総務庁ではないかと、こう思っておるわけです。まあそこのところをお聞かせいただければありがたいと思います。
  25. 呰上一三

    参考人(呰上一三君) お答えさせていただきます。  都道府県の場合のいわゆる現行監査委員制度の中で活動がよく伝わっていないのではないか、この辺をちゃんと広報活動で明らかにする必要があるんじゃないかということでございますが、現在の仕組みから申しますと、先ほど都道府県の監査には財務監査を主流といたしまして事務事業全般にわたって監査する行政監査といったものもございますし、また、住民からの請求に基づく住民監査請求制度あるいは事務監査請求制度というものも御存じのとおりあるわけでございます。  こういった監査の報告書というものは、手っ取り早く東京都の場合で申しますと、そういう監査報告は当然知事及び議会に報告するわけですが、それ以外に、うちの方でいえば情報連絡室といろのがございまして、そこの一般閲覧のところに報告書等が届いていつでも見られる状況にはなっているということになってございます。  しかしながら、これをもっと易しくダイジェスト版的に都民の方に知らしめる、住民の方に知らしめるということにつきましてはまだまだ私どもも足りないものがあると思っておりますし、もともと現行監査制度というものがどういうものであるかということを御理解なさっていないという方もいらっしゃると思いますので、これらにあわせて、先ほど先生からの御指摘のあった点も踏まえて、やはり相当にそういった点に力を注いで、住民が情報公開によって得た情報に基づいて積極的にそういった監査に対する請求ができるような、それで自分たちの住民自治というのが十分に反映されるような広報活動に今後努めていかなきゃいかぬと、そういうぐあいに思っております。
  26. 守住有信

    守住有信君 県、市の職員録を見れば、そこにはちゃんと載っておるんですね。市役所なり県庁の職員録には載っております。もう一つ底辺が私は行政相談委員だと思う。これは全くない。市政だより、県政だよりにもない。職員録にはある、こういうことでございます。これは調査室か委員部か知らぬけれども、総務庁に言って、各県、市の重立ったところでは広報を発行しておるんだから、ここにやっぱり指示ができぬのかと、縦割りだけれども。  それを私は皆さん方に要請するんじゃなくて、我々自身がそういうあれをぴしっとやっていかぬと。どこを動かせばいいか。やっぱり結局は総務庁を動かして、総務庁が文書で各県知事や市町村に手紙を出して、そして相談委員から監査委員の、そこまでね。まあ役割問題は御努力していただかにゃいかぬけれども、どういう役割かといろことをそれぞれ市民に、県民にわかるように。せっかく広報を発行しておるんですよ、高い金出して。まあ近ごろはもう色とりどりで、写真が入ったりいろいろですよ。結構なことだと。イメージをアップして自分の選挙まで考えておるかもしれぬ。市長なら市長が、自分のテープカットしているところが何遍も出てくるとか、一番市民社会との接点のところが出ていないとか、こういうのに私はちょっと憤激しておるわけでございます。一週間前は行政相談委員の組織の事務局の方のお話を聞いたわけですけれども、そのときから余計そういうふうに思うようになりました。  ひとつ会長さんもそこのところをやつぱりちょっと自治体に、こういう仕組みがまずあるということ、どういう役割、これをあれして、後は情報公開の問題に入っていくんじゃないかと思っておりますので、最後に会長さんにお願い申し上げまして、私はここで終わらせていただきます。どうも御苦労さんでございました。
  27. 常田享詳

    ○常田享詳君 平成会の常田享詳でございます。ただいまは三名の参考人先生方には大変貴重な御意見を聞かせていただきまして、ありがとうございました。心からお礼を申し上げたいと思います。  また、今、守住先生からは地方議員の、私も三期十二年県議会議員をしておりまして、私の議会報告にも載せていなかったなというようなことで、反省を今しております。そういった反省も決めながら質問させていただきたいと思います。  私は、今の官僚主導の政治、それから行政の失態、そして数々のスキャンダル、こういったものを改めるためには議会による行政監視の体制、すなわちオンブズマン制度の参議院への導入が必至であるということを考えております。そういったこととあわせて参議院の役割、すなわち国会改革のためにも私は取り組むべきことだというふうに考えております。そういう立場から質問をさせていただきたいと思います。  去る二月七日にも、先ほど来お話が出ていますように、三人の参考人をお呼びして行政監査行政統制のあり方について御意見を伺ったところであります。その際に、行政主体は国民であり、国民の論理はあっても官の論理はあり得ない、しかし現状を見るとき官の論理がまかり通っている、今こそ倫理的公務員を育てる制度が必要であるというようなお話がありました。  確かに、最近の公務員にまつわる事件は目に余るものがあると思っております。国民の怒りと行政不信は高まるばかりであります。また、中央官庁の問題解決能力の低下や組織の疲弊は隠しさうがありません。  例えば、大蔵省は、住専問題における金融行政の失態のみならず、前の財政金融研究所長の企業からの資金提供と財テク副業、元の東京税関長の接待漬け等々、幹部のスキャンダルが次々と明るみに出ています。また、よりにもよって行政を監察する立場行政監察局の近畿管区の監察官が億円横領で大屋政子女史に告発されていることが今発売中の雑誌に報道されているのであります。そして、そのいずれも処分らしい処分は行われていないのであります。  こういうような状況を見るときに、私は今こそ倫理的公務員を育てる制度必要性を痛感するわけでありますけれども、宇都宮先生、新藤先生、お二人にまずこのことについてお考えをお尋ねしておきたいと思います。
  28. 宇都宮深志

    参考人宇都宮深志君) 今の御意見に対して、私は、先ほど申し上げましたように、いろいろな問題が発生をしておりますし、二十一世紀への新しい行政制度の革新を考えていきますと、国のレベルに新しい監視システム導入が必要になっているのではないかなというように思います。  そういう意味で、憲法上においても日本国会オンブズマン制度を置く点につきましては問題はないのではないかなというように思います。それが参議院にオンブズマンを置くかという問題はいろいろとこれから煮詰めていかなきゃいけない検討事項だと思いますけれども、いずれにいたしましても議会国会オンブズマンを置くということにおいては制度上支障はないのではないかなということで、そういうようなものを置くことによって、議会が総体的に監視機能を強化して、内閣のもとでの官僚機構全体に対して目を光らせて未然にいろいろな問題をチェックする役割を果たす。イギリスの例でも申し上げましたように、オンブズマンが存在するということで、それが行政全般に緊張感を与えて行政改善へと結びついていくのではないかなということで、導入に対して私は前向きに考えております。  以上でございます。
  29. 新藤宗幸

    参考人新藤宗幸君) 倫理的公務員なるお考えですが、確かに目に余る事態が多々続いておると思います。その目に余る事態をどうするか、その場合に、オンブズマン制度を参議院、要するに国会導入するかどうかということを、もちろんいろいろ技術的なことまで含めて検討せねばならないと思いますけれども、ただ問題なことは、目に余る公務員が次々と生じてきているのはなぜなんだろうか。これをしゃべり出せばいろんなことが言えて短時間で話すことは不可能だと思いますが、少なくとも三点あるのではないかと思います。  第一点は、いわゆる大蔵省銀行局も一つの典型ですが、戦後日本の経済発展官僚制に仕切られた市場を前提にして発展をしてきている。その間に、産官癒着といいますか、一体といいますか、言い方次第ですが、構造がつくられている。そういう経済的な規制をすると言いながら、実はその両者の癒着構造をつくっているこの官僚制に仕切られた市場というものの基本的な改革を国会が中心になって行うことが第一点目ではないか。  それから第二点目は、この間もドラマでやっておりましたけれども、「官僚たちの夏」、あの中には出てまいりませんが、実は○○次官、○○大臣という、あのときにはたしか佐橋大臣、三木次官という言葉で社会的な問題にもなりましたけれども、生涯職の官僚が最終的にまさに実権を握る。日本の公務員制度に私は政治任命職の幅を広げるべきだと、特に幹部公務員の間に政治任命職の幅を広げるべきだ。今のような、入り口で選別をし、五十何歳かまでにその官僚機構のトップまで走り上がるという構造を続けている限り、入ったときは非常に優秀なんだけれども、そのうちに何かおかしな話になるというのもある意味では当然ではないか。  そして三点目には、政治倫理法の問題も九三年以来さまざまに議論されてまいりましたけれども、公務員倫理法をきちんと制定することが必要なのではないだろうか。そういう改革の上で、それならば国会がお持ちの国権の最高機関としての権限、そしてそのための各常任委員会並びに特別委員会、それにプラスして独立性の高いオンブズマン制度をつくるとすれば、その両者の関係、先ほど決算特別委員会監査委員との関係をどう考えるかという御質問もございましたけれども、同じように詰めてみなければならない問題が多々あるのではないか。  ただ、一言だけ余計なことかもしれませんが申し上げておけば、総務庁の行政監察局というか、総務庁を中心にオンブズマン制度と言っていることの背景には、いわゆる総務庁の行政監察が国の事務並びに当然のこととして機関委任事務に及ぶと。したがって、機関委任事務を自治体の事務ないし法定受託事務にかえてしまえば、総務庁はいや応なく正当性といいますか、仕事の幅が失われる。そこで一種の、分権とともに自治省焼け太りでも困るけれども、総務庁焼け太りも困るわけでありまして、そうしたオンブズマン制度が総務庁行政監察局の焼き直しみたいな形で出てくることについては私は異論を申し上げたいと、そう現存では考えております。
  30. 常田享詳

    ○常田享詳君 さて、オンブズマンのお話も今出たわけですが、そのことについて宇都宮先生にお尋ねをしてみたいと思います。  先ほど申し上げましたように、二月七日にも参考人の方のお話を伺ったわけでありますが、その際には、オンブズマン制度議会導入することに憲法上の疑義があるというような発言がございました。しかし、議会オンブズマンと一言に申しましても、国会内に置くか国会外に置くかといろことから始まりまして、オンブズマンに私たち議員が就任するのか、また外部からどなたかをお呼びするのか、また勧告、調査に強制力をどこまで持たせるのか、いろいろ考えられると思うわけであります。  国会には、自分たちが意図したものを内閣が実施しているかどうかを監視する任務があります。行政統制国民代表で構成する国会の重要な任務一つであります。私はオンブズマン立法府にあってこそ行政監視という役割が果たせると考えております。  そこで、国会へのオンブズマン設置について、重ねてでございますけれども、障害はあるのか、あるとすればどのように解決をすればいいのか、オンブズマン制度にお詳しい宇都宮先生のお考えをお尋ねいたします。  それからあわせて、その際に出ました国政調査権との絡みですね、あなたたちには国政調査権というものがあるじゃないかと、それを最大限に使うことが先決であって、オンブズマン制度というような新しいものを導入することは憲法上疑義があるんだというようなお話がありましたけれども、国政調査権との絡みはどうなるのか、お考えをよろしければお願いします。
  31. 宇都宮深志

    参考人宇都宮深志君) 先ほども申し上げましたけれども、現憲法上、国会オンブズマンを置くという点では障害がないのではないかというように思います。  オンブズマン機能というのは行政権に属するということではなくて、いわゆる国会に与えられた統制権に属するものであると考えますので、それはオンブズマン行政監視したりすることは、国会任務一つである監視権というものをより充実、拡充していくものであるというように考えておりますので、今の憲法上支障はないのではないかなというように思います。  国会オンブズマンを置く場合には、例えばどういう人をオンブズマン任命するかという問題があると思いますけれども、それはいろいろ諸外国の例で、スウェーデンあたりは大体最高裁の判事級の人が選ばれておりますし、人物高潔で行政に明るい、国民的にもよく知られているということで、スウェーデンにおきましてはJOと言っておりますけれども、国民だれでもJOといえば知っている。我々が手紙をそのオンブズマンに出すときに、スウェーデン・JOと出せば直接行くというように非常によく知られた人がオンブズマンになっております。したがいまして、議員とかそういうことではなくて、やはり広く国民の中から適任者を選んでいくべきであろうと思っております。  それから、実効性の問題でございますけれども、世界オンブズマンすべて、日本川崎でも同じでありますけれども、これは勧告権しかないと、これがまたオンブズマン特色でありまして、要するに裁判所のように取り消したり破棄したりする権限はない、強制力はないということが特色であります。  それじゃいかに実効性を持つかという点でありますが、これは、例えば国会に置いているオンブズマンイギリスとかいろんな国を見ておりますと、勧告を出して行政官僚機構がそれに従わないという場合には国会に対して特別な報告書を出すと。それと同時にパブリッシュといいますか、新聞報道をすることによって大体勧告は受け入れられていると。私がいろいろ各国の勧告の事例を見ますと、勧告に従わなかったのはまれであるというようなケースになっておりまして、オンブズマンは勧告権を持っているというのが特色であって、それだから有効性がないということではなくて、武器としては情報公開をすることによって担保を得ているというのが特色であります。  国政調査権の関係でありますけれども、私は両院に置かれている国政調査権というのはオンブズマンとは何ら矛盾しないと思うんです。それが憲法オンブズマンをつくることに問題があるとは思わないわけです。当然、国政調査権というのは国会に与えられた、いわゆる行政監視とか、調べたり証人喚問ができる制度でありまして、それを有効に国会で使って、しかもまたオンブズマンを使って両方が有機的に連携しながら効果を上げるものだというように考えております。  以上でございます。
  32. 常田享詳

    ○常田享詳君 重ねて宇都宮先生にお尋ねをいたしますけれども、オンブズマン制度を活用して行政統制監視をするにはどのような基準、方法を利用すればよいかということであります。  二月七日の調査会でお呼びした広島修道大学の山谷先生は、アメリカ合衆国の会計検査院が活用しているようなプログラム評価といった方法は難しいというふうにおっしゃっておりましたけれども、先生はどのようにお考えになりますか。
  33. 宇都宮深志

    参考人宇都宮深志君) GAOという会計検査院でありますけれども、あそこは重要な機能として行政評価を行っております。プログラム評価とかそういう施策の評価とかいうことが行われておりまして、私自身も、我が国行政で非常に必要な点というのは、政策は組むけれども、政策を組んだ後の、要するに結果の評価ということが非常におくれているんではないかなというように思っております。  そういう意味では、議会におかれましてもいろいろな委員会においてプログラム評価ですとか施策を実施した結果、それがどういうように国民影響を与えているか、あるいは国民が満足であるかどうかということを常にチェックする必要があると思います。オンブズマンの場合はそういうプログラム評価というのも当然必要なことでありますし、やっていくことだと思いますが、行政の全般に目を光らせて監視をしていくということでありまして、それに加えてプログラムというものの評価も加えていくということになると思います。  それから、国民行政に対するいろいろな苦情とか不満を迅速に受け付けて処理をしていく、そういうような機能もあります。それから、いろいろ規則とか法令とかそういったものに欠陥があることによって国民に被害をこうむらせている、そういう場合は、その規則とか法令とかいうものを改正しなければ常に繰り返し繰り返し国民に迷惑を与えるというようなことが起こるわけでありますので、オンブズマンというのはそういうようなものに対しても改善の勧告ができる、そういうような役割を持っております。  以上でございます。
  34. 常田享詳

    ○常田享詳君 それでは、新藤先生にお尋ねをしたいと思います。  新藤先生が書かれましたかなり前の「主張・解説論壇地方分権で政府のリストラを」、これを読ませていただきまして、地方議会に携わっておりました関係上、大変共鳴するものでありますけれども、先生は民間臨調にも関与しておられたというふうに聞いております。  そこで、今地方分権が叫ばれておるわけでありますが、仮に地方自治体が既存の監査制度に加えて、先ほど来出ておりますけれども、もしこのオンブズマン制度導入した場合、これは地方分権にとって有益なのでしょうか有害なのでしょうらか、先生のお考えをお伺いします。
  35. 新藤宗幸

    参考人新藤宗幸君) もちろん有益だと、そら申し上げる以外ないと思います。  というのは、言うまでもないことですが、仮に機関委任事務概念を完全に廃止する、そういう問題、あるいは補助金の大胆な整理、あるいはさらに言えば税源配分の変更ということが進行するとするならば、これはまさに透明度を高め住民の行政についての統制がきちんとできなければならないわけであります。その限りにおきまして、監査委員問題もそうですが、オンブズマン制度といったものをつくっていくことというのは不可欠なんではないでしょうか。そのように考えます。  以上です。
  36. 常田享詳

    ○常田享詳君 もう少し突っ込んでお伺いいたします。  地方分権のためにも導入が必要だということでありますが、導入した場合、行政相談委員及び地方自治体監査委員という今ある仕組みとの調和はどういうふうに図っていったらいいというふうに先生はお考えになりますか。
  37. 新藤宗幸

    参考人新藤宗幸君) まず、もしおっしゃつているものが総務庁の行政相談委員ということであるとすれば、それから先ほど来申し上げておりますが、総務庁の地方監察局並びにそのもとの事務所というのは私は大胆に整理されるべきであろうと。というのは、ほとんど国の事務というのは最も基幹的な話に限定されてくるわけでありますから、それをなお国がやっている必要性というのはまずないわけです。  さてその場合に、今度は一応の分権状態ができたとして、監査委員制度の改革というのは、先ほど来申し上げているような意味での改革が行われ、主としてオンブズマンは私が考えているこわでいえば、かなり分野を絞った苦情処理機関として設置をしていくことが望ましいのではないかと、そう思っております。
  38. 常田享詳

    ○常田享詳君 新藤先生と呰上先生にお尋ねします。  北海道で裏金問題がありましたね。実は、北海道議会がアンケート調査をした結果を北海道議会から送っていただきました。  これを見て驚いたのは、このたびの処分が当然と答えた部長級以上の管理者が一二%、それから道庁内の各課に聞いているんですが、当然であると答えた職場が八%ということなんですね。要するに、このたびのこの処分は、ほとんどの人がいわば当然ではないと。いたし方ない、やむを得ないとか、やむを得ないが問題が残る、納得できないというような認識しかしていないわけですね。  こういう実態を見ましたときに、地方監査体制というのは、私も地方議会にいたわけでありますけれども、十分機能していないんではないかというふうに思うわけであります。  それで、先ほど来お話が出ておりますように、構成するメンバーが県庁のOBであったり議会であったりで占められているということで、先般マスコミに大胆な提案がされていたわけでありまして、監査委員を選挙で選んではどうかということであります。これは大変大胆な提案だと思うわけでありますけれども、地方の権限と財源を大きくする地方分権は時代の流れだ、しかし一方で住民と役所の溝が広がっている、監査制度の改革を信頼回復のための第一歩にしなければならないということで、監査委員を選挙で選べというような提言がなされているわけであります。  お二人のこの意見に対するお考えを、北海道のそういう認識とあわせてお願いします。
  39. 新藤宗幸

    参考人新藤宗幸君) 北海道の具体的な意識調査のサンプルがどういう人であったのかというのはちょっと存じ上げておりませんが、ただ北海道という地域を考えた場合に、そうした意見が出るというのもある意味ではもっともではないだろうか。つまり、まさに補助金漬けの話もあれば、あるいは御存じのとおり北海道庁の体制というのは非常に分権化されていない、まさに北海道という地域において極めて集権的な行政体制になっている。そうしたことから考えてくると、そういう反応が出てきてもいたし方ないと。だからこそ、逆に言えば分権的な改革を進めることが必要だというふうに今は申し上げておきたいと思います。  そしてもう一点、某新聞が社説で監査委員の公選制ということを書いたのは私も存じ上げておりますけれども、私はそれには異論を持っております。監査委員を仮に直接公選で選ぶということをやれば、そこへ恐らく政党政治の介入があるだけであって、今よりはるかに事態は悪化する可能性の方が高いだろう。OB云々というような話はちょっとこっちへ置いておきまして、議会の承認を必要とすると同時に、逆に言えば、現在でも別段できないわけではないんですけれども、むしろ直接請求による解職等の制度といったものをより簡素化していくということをきちんと考えた方が、監査委員みずから飲み食いして空出張していたというのではどうしようもないわけでありますから、そちらの方を私は考えるべきだと、そう思っております。
  40. 呰上一三

    参考人(呰上一三君) ただいま常田先生の方から北海道の件を例にされたわけでございますが、私、個人的に申し上げますならば、これは当然そういう認識は間違っておる、そう思っております。  ただし、若干その背景を説明させていただきますならば、日本の風土として、いわゆる接待というか、そういった民間が金を要求するということは非常に蔓延しているムードにあります。  こういう中で、例えば北海道の場合、いわゆる議会先生方のパーティーとかそういったときにお金を出すという構造、それに行かなきゃいけないと、これに身銭を切って行くのかという問題が一つは背景にあろうかと思います。ところが、現実にはそういう形で私どもは身銭を切って行っているわけでございます。身銭を切っている者がいたとしても、これがすべてにわたるとできない。それで私どもは峻別しながら行っていますが、そういう日本の風土にある。民間風土、いわゆる人が人を接待するというその制度自体の改革とともにこの問題を考えていただきたいなと、そう思います。しかし、これの裏金をつくるということについては、これはとんでもないことだと思っております。  それから次に、公選制とのかかわりの問題でございますが、監査委員を公選で選ぶというのも一つの考えでございましょうけれども、これはもう監査委員制度というのが昭和二十二年に地方自治法に制定以来、地方制度調査会とかそういった諸団体の要請に基づきまして数々の改正をしてきて今日に至っているわけでございます。したがいまして、私としましては現行制度を維持しながら改善を進めていくべきであろう。  当然その中で、行政の効率性なり透明性というものをどんどん確保するためのことをやっていかなきゃいけないわけでございますけれども、私はこういった問題には二点問題があると思います。  選任権は、これは知事、それとそれを承認する議会がございます。この中で、人材を選ぶということが一つだろうと思います。しかし、この点に余り重大な関心が寄せられていなければ、やはりいい加減な監査をする監査委員というのもあらわれるという基本的な理解をしてございますので、ひとつそういった面では、そういう人選上しっかりとした人材を集めるということだと思います。  それともう一つは、地方自治法上で監査委員に課せられた使命というものを十分認識していればこういう事態は起こらない、そういうぐあいに思っておりますので、基本的には現行制度の改善で十分に対応できると、そう考えております。
  41. 常田享詳

    ○常田享詳君 もとに返りまして、宇都宮先生、最後にもう一点お尋ねいたします。  先生は川崎市の市民オンブズマンの創設に関与され、一方で東京都のオンブズマンの創設にも努力をされたというふうに伺っております。川崎にはオンブズマン制度導入されたわけでありますけれども、東京にはいまだオンブズマン制度導入されていない。両方手がけられた先生から考えられて、一方に導入し他方は導入していない、なぜ川崎には導入し東京には導入できなかったのか、場所にいろいろ問題かあるのかどうなのか、最後にそのあたりを教えていただきたいと思います。
  42. 宇都宮深志

    参考人宇都宮深志君) 東京都につきましては、具体的に東京都がオンブズマンをつくるということでそういう委員会をつくってやったわけではございません。それはある研究会で、プロジェクトでオンブズマンを取り上げるということで研究をしたわけであります。  そういう点からちょっと比較にはならないのではないかと思いますが、川崎にも関係しまして、それから藤沢市ですね、九四年に条例ができましてことしの六月から二名のオンブズマンが、これも本格的なオンブズマンでありますけれども、発足することになっております。両者関係いたしましたけれども、最初につくった川崎モデルが鴻巣とかあるいは今回の藤沢市とかそういうところにほぼ同じような条文が入っておりまして、それがモデルになって、徐々に地方自治体の中で要綱か条例かいずれかによってつくられていっている。昨年の夏には横浜市で福祉に関するオンブズマン制度が要綱で導入をされております。  それから、都道府県レベルでは、御承知のことと思いますけれども、沖縄県で昨年の四月一日から、これは都道府県で初めてでございますけれども、ほぼ川崎と同じような制度で発足をしております。それから、宮城県でオンブズマン制度をつくる懇話会が提言を出していまして、来年度中には宮城県でもオンブズマン制度を発足させていくというように、自治体の中にも徐々に浸透しております。  以上でございます。
  43. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 社会民主党の伊藤でございます。  まず宇都宮先生にお伺いいたします。  私は先生の書かれた論文を事前にいただいておりまして、抜粋でございますが、その中で、「オンブズマン制度導入した諸国では、職員や官僚機構に欠陥があるとか、それらの質がよくないとかいう理由で、オンブズマン制度導入されたのではなく、福祉国家の時代必要性からその制度化が行われた」。さらには、「第二次世界大戦までは、スウェーデンとフィンランド以外の諸国においてオンブズマン制度に関心が持たれなかったのは、その制度を採用するための広範囲な社会的条件が熟していなかったためである。」。このことについて非常に関心を持っておりまして、きょうのお話もお伺いしました。  すなわち、オンブズマン制度は民衆の側からの要望というもので出たのか、行政の方からのリードによるものかというと、私は歴史的な経過、発生時においては行政、政府というものからの指導によって、またはリードという形で起こってきたのではないかと思います。お話を聞く限りにおいて、ニュージーランド導入のころから行政とか政府自体の考えが国民の権利を守る方向に向かってきたんではないか。同時に、行政の質、量ともの拡大が起こって、行政の停滞というものがシステムの中から出てきて、行政機能を有効に働か仕る必要からの考えが行政から生まれて、同時に国民の側からの不満というものが起こってきたんじゃないかというふうに思います。  先生の論文をお読みして、私もさまざま考えてみまして、それでは行政に対する国民、または地方自治に対する住民というものの存在がどのよろに変化してきたか。最初の段階はピープルというような段階があって、それがシチズンになって、タックスペイヤー、今はコンシューマーという時代ではないかと。前回の参考人との話のときもコンシューマー、消費者という意識でオンブズマンまたは行政監察はやるべきではないかというお話も申し上げまして、先生方もそのようなことを言ってくださっております。そういう段階が、例えばタックスペイヤー意識がその時代において全体をきちんと表現する、そういう勢力になっていたかどうかということはなかったと思うけれども、タックスペイヤーとしての意識というものがあらわれて、それは住民も行政の方も多分にそのことを意識する、そういう経過はあったと思います。  今、さまざまな市民権が確立されてきた成熟社会、先進国なんかにおいてはやはりそういう制度も拡充されている。その上に立って、じゃ行政は消費者にどれだけのサービスをやるかという時代に今はなっているのではないかというふうに考えているわけです。消費者が主人公ということは、消費者の主権というものをどのように行政が守るか、あるいは行政監察とかオンブズマンが守っていく装置となり得るかという時代日本も来ているのではないかというふうに考えます。行政と消費者の双方に、行政サービスを中に挟んでよりよきものをつくり出そう、よりよき社会をつくり出そうという積極面がなかったら、このオンブズマン制度とか行政監察制度の充実というのはつまらないものになってしまうという感じがいたします。そのために今回の議論も、また先生方の提言も大きく触媒の役割を果たしているのではないかと思っております。  ここでお聞きしたいのは、そのような先生の論文や今私が申し上げたこととの関連で、川崎市においてのオンブズマン制度導入の発想、準備、実行、現在の状況ということから見て、やや仮説めいた私の意見または先生の論文とは合致しているのかどうか、あるいは行政指導だけで行われて根づいていないのかどうか、住民の側の変化というものはあるのかどうか、住民の側の変化行政がとらえてのことなのかということについて、川崎市の実態から少しお聞かせいただきたいというふうに思います。
  44. 宇都宮深志

    参考人宇都宮深志君) 川崎市のいわゆるオンブズマン条例が運用されてから五年半ぐらいたっているわけでありますが、そのいろいろな経過、あるいはオンブズマン制度をつくるに当たっての発想といいますか、その発想に基づいて委員会をつくって提言をしたわけであります。それに基づいて条例がつくられて運用が開始されて五年半経過をしてきているわけであります。  市民の側から一体オンブズマン制度をどうとらえているかという問題であります。オンブズマンは三人のオンブズマン任命されておりますが、まず一つ我々が考えたのはオンブズマンというのは独立性を確保しなきゃいけないということで、やはり本庁舎から離れたところに事務局を置くということ。  それから、今監査委員独立性の問題が出ておりましたけれども、やはりオンブズマン機能するかどうかというのは、もちろんそのオンブズマンは第三者で人物高潔な人を外から入れるということで、官僚機構の中に新しい風を吹き込むという非常に重要な意義があると思うんです。  オンブズマン独立性の確保と同時に、事務局の独立性をどうするか。  普通の行政部門から出向で来た事務局では、それが二年、三年で交代していくのではオンブズマン独立性の確保は難しいんではないかということで、できるだけ事務局職員もそこで長期に情報とかエキスパートな知識を蓄積していくということを配慮して、代表オンブズマンの意向を聞いて人事異動なんかをやっていくというような工夫序凝らしました点と、一つ非常に重要な点は、専門調査員を置くことができると、置くことができろのではなくて置くと。藤沢市の条例では置くことができるというようになっていますが、やはり先ほど新藤先生の方からお話がありましたように、ドクターを終わった専門員を外から六人置いておく。これで客観的な調査ができるようになるのではないかというようなことを配慮してやっていろわけであります。  その三人のオンブズマンが事務局で週に何回かそこで受け付けするだけではなくて、巡回をしていく。毎月一回巡回をしておりまして、年に十一回外に出てそれぞれの区役所で市民と接触をしてそこで受け付けを行う、こういうようなシステムをとっておりまして、受け付けを見ておりますと、市全体から行政に対する苦情とかそういったものが出てきているということでありまして、市民の中にもだんだんと根づいてきているのではだいかなというように評価をしております。  それから、行政の中にもいろいろないい点が出ている。先ほど申し上げましたように、これまでは、受け付けたものすべてが苦情申立人の要求が正当である、あるいは行政がやったものが不当であるということではないわけですね。要するに、調査してみると苦情申立人の言い分には正当性がないということが五〇%ぐらい出てきているわけです。それで、申立人に対してオンブズマン意見を話す。そのことによって市民は、非常に中立的なオンブズマンがちゃんと勧告を出したり意見表明をするわけですから、十分納得をする。中立的なオンブズマンがそう言うんだから自分の言ったことは正当でなかったということで、お互いにそこの中で納得をしている。ということからしますと、やはり中立的でそういう客観的な調査をするオンブズマンというのは非常に市民からも、とりわけ行政から信頼されるようになってきている、そういうように考えます。  以上でございます。
  45. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 新藤先生にお伺いいたします。  新藤先生の事前に配付された論文の中で、新産、工特のどたばたの後、高度成長の弊害とともに地域的個性の追求が自治体政治的アジェンダとして自覚されていった時代地方自治体は在宅福祉サービス、環境アセスメント、情報公開、空き缶条例等さまざまな政策を展開していったと。  私はその時期の地方行政自治体に対する肯定的な面で非常に同意するんですが、その後、現在の中で、行政の側に消費者の主権を守るという意識がどのぐらい強いのか、あるいはさまざまな行政サービスを提供した後、途絶えているのか、発展しているのか。先生のお話をきょうお聞きする限りでは、多分に悲観的な話が出てきているわけですけれども、住民と行政の関係を見たときに、行政の側から行政の改革をするという意識が特に地方自治体の中で強く出ているのかどうか、そういう中でのオンブズマン制度オンブズマンというものの導入が積極面としてとらえられているのかどうかお聞かせいただきたいというふうに思います。
  46. 新藤宗幸

    参考人新藤宗幸君) 約三千三百近くの地方自治体があるわけですから、これを一概に同じ色で切って捨てることというのは非常に難しいと思います。  ただ、先ほど来、消費者というお言葉でありますけれども、実は六〇年代の公害問題等々の非常ににぎやかであり、国の政策、施策も非常におくれていたそういう段階において、オンブズマン一つ日本語でもあるかと存じますが、護民官的な、あるいは市民を消費者として扱う、そういうサービスの向上ということが、いうところの革新自治体、革新首長によって私は行われていったんだろうと思うんです。  それで、先生と詳しく議論をしておりませんので真意のほどが私にもわかりかねるところがございますけれども、私が地方自治体を見る限りで言えば、つまり住民を消費者のまま置いているのではないかと思っております。国政において国民、あるいは自治体における住民というのは、私は行政サービスの消費者ではない、行政サービスの生産者であるというふうに思います。もちろん、消費者主権という言葉が市場経済にございますけれども、いわゆる行政サービスの問題からいえばそのサービスをどう決定するかという生産者であるべきであり、役人はその生産者である我々が使うサーバントにしかすぎないわけであります。  しかし、現実にはどうもこの関係は逆転をしていて、住民を単なる行政サービスの消費者と見立て、これこれこういうサービスを流せば満足するのではないかという、そういう傾向が強まっており、だからこそ、例えば官官接待の場合におきましても、私の新聞のコメントに随分文句というか意見を寄せられた県のお役人がいらっしゃいます。我々は住民のためにやっているのだ、自分で飲み食いしているのではない、あなたが新聞で言うような、場合によったら贈収賄罪だという話は甚だ現実を知らないということをおっしゃる。  だけれども、私はそのとき申し上げたんですが、あなた方の住民のためという議論というのはまさに話が逆転しているのであって、それが住民のためかどうか、そうやって金を配り、宴席を設けることによってむしろ住民はどこかへ置き去りになっているということをよく考えなさいよというふうに話をしたことがございます。どうもそうした消費者あるいは行政の客体として位置づけるところに最近のさまざまな不明朗な話がにわかに生じているのではないか、そのように思っております。  以上です。
  47. 山下芳生

    山下芳生君 宇都宮参考人に質問をいたします。  国のレベルオンブズマン制度導入に当たって立法オンブズマン制度とするか、行政オンブズマン制度とするかの選択は大きな検討課題一つ参考人は問題提起をされて、結論として立法オンブズマンの方が適していると述べられました。書かれた論文には簡潔にその根拠が示されておりますけれども、もう少し突っ込んでその立場の御説明をお願いできますでしょうか。
  48. 宇都宮深志

    参考人宇都宮深志君) 先ほども申し上げましたけれども、国会に置くオンブズマン制度にするか、あるいは行政府に置くオンブズマン制度にするかという点におきましては、それぞれ国の政治風土といいますか、そういうものとの関連においていずれが機能するかという問題になると思います。  そういう意味では、いずれにおいても長所あるいはマイナス面が両方ともあるということを申し上げたわけでありますけれども、行政監視という点、それから非常に伝統的な行政苦情処理制度行政国家時代においてややもすると十分でなくなってきている。そういうような観点からいたしますと、国会に置く議会オンブズマン立法オンブズマンという方が適しているんではないか。  その理由といいますのは、行政府に置いたオンブズマンというのは、まあよく言われているんですか、同じ穴のムジナではないかと。要するに究極的に言いますと、行政の長が任命したオンブズマン行政の長の行為を調査するということにもなる。そういうところに独立性というものの確保の点で難点があるんではないかなということで、これは行政府型のオンブズマンでは非常に一つの欠陥といいますか、そういう点がある。  長所といたしましては、行政の長が任命したオンブズマンが勧告したものについては、行政の長は長の権限に基づいて官僚機構に迅速にその勧告を実施させることができるということで、割に円滑に処理はされていくんではないかなという、そういういい面もあるというように言われています。  それに対しまして、国会とか議会に置くオンブズマンというのは、いわゆる行政府からの独立性という視点からいきますと、全般的に行政監視するということで国民からの信頼性といいますか、それを確保できる、非常に中立性が明確であるということ。ニュージーランドオンブズマンでありますロバートソンさんが、一昨年総務庁の主催で国際オンブズマンシンポジウムが行われたわけですが、そのときに次のようなことを述べております。  制度としてのオンブズマンというのは行政による権力行使に対する憲法に基づく番人である。いわゆる憲法的な番人がオンブズマンである。次の点が非常に重要な点ですが、いわゆるオンブズマンに対して、行政府に監督権限を付与するようなプロセスによってオンブズマン任命するような妥協をすることは、国民の間にオンブズマン制度の信頼性に対する不信を醸成することになるということで、ロバートソンさんは、オンブズマンというのは議会に置くべきである、それが本物のオンブズマンである、こういうことを指摘しております。  以上でございます。
  49. 山下芳生

    山下芳生君 非常に大事な御意見だと思うんですね。これは単に理論上の問題にとどまらず、実態から見てもやはり立法オンブズマン(有)度の方が適していると言わなければならないというふうに思うんです。  かつて田中金脈事件の一つであった信濃川河川敷問題で、事件の真相究明に当たって当の建設省は、田中角栄の私利私欲のために建設行政が不当にねじ曲げられていったその過程を証明する重要書類をなくしたと、こういうふうに言って事実上の証拠隠滅行為を行いました。そのときに、真相解明の第一の責任を負うはずの当時の行政管理庁、これは行政管理庁が建設省の当時の言い分をそのままうのみにして、その上疑惑なしという結論を出して、いわば事件のもみ消しの片棒を担いだという事実があります。  こういういわば秘密行政、そういう体質というのは、例えば、今日においても住専問題の資料の出し渋りにも見られるような傾向だと思うんですね。ですから、現在の行政府にみずからを監視し浄化する、そういう能力が本当に欠如しているということを、これは事実が物語っている。  そういう現実に立脚するならば、やはり国権の最高機関である国会憲法保障した国政調査権を活用する、あるいはまたその行政監督権を充実する、そのことが非常に重要になっているんではないかと私も思うわけであります。  そういう上で、立法オンブズマン制度導入したとして、宇都宮参考人はそのオンブズマンにどのような権限を与えることが必要だとお考えにになっているかお述べください。
  50. 宇都宮深志

    参考人宇都宮深志君) 諸外国の立法オンブズマンの状況を見ますと、権限として非常に重要なものはやはり調査権限だと思います。これは資料閲覧権、資料提出権、非常に強力な調査権が与えられております。  オンブズマン研究で有名なカナダのカールトン大学のローワットさんが日本に来られたときに非常に意味のあることを言っているんですが、要するにオンブズマンが非常に有効な点は、政府が持っている資料をとにかく調査権ですべてを見ることかできるということであります。そういう権限が与えられているのがオンブズマンであると。情報公開制度というものも必要であるけれども、七、八年前のことですが、そういう情報公開制度導入がなかなか進まない場合には、オンブズマン制度を早く導入すれば国民から信頼されるオンブズマンが、政府が持っている資料をちゃんと貝ることができる。したがって、見ることによって客観的な勧告が出せる。資料を見なければ客観的な調査はできませんから、事実を調査して事実をちゃんとつかむ。  アメリカのハワイとかそういうところでは宣誓して証言をする、いわゆる召喚する権限までオンブズマンに与えられているということで、まずそういう強力な権限をオンブズマンに与えなければ、そういう権限がなければ、くつわをはめた番犬のようなもので余り意味のないものになってしまう。  それから、もう一つの権限といたしましては自発的に調査する権限、これが最も私はオンブズマン特色で重要な権限だと思います。職権で調査ができる、これがやはり全般的に目を光らせる、いつでもオンブズマン調査に入ることができる。したがって、国民からの苦情がなくてもオンブズマンみずから職権で調査に入るということですから、立入権もあるし、それで目を光らせるし監視をすることができるという、そういった権限が必要なのではないかと思います。  以上でございます。
  51. 小島慶三

    ○小島慶三君 私は、きょう一問に限ってお三方に御質問申し上げたいと思います。  それは財政の問題でありまして、今、日本の財政はピンチであると私は思っておりますが、先般、武村大蔵大臣もそういうふうな宣言をなさいました。また、この間予算委員会の出張で大阪に参りましたが、大阪府でも非常に予算が苦しいというので三%一律削減をする、支出の削減をするということを言っておられました。  予算の一律削減ということも一つ方法でありましょうし、不当な支出について国庫にその十倍ぐらいの回収をするというのも一つの手でありましょう。また、公共事業についても、非常に予算の執行について問題があるということを耳にするわけであります。  例えば大阪の関西空港なんていうのは一兆四千億かかった。実際はその三分の一はカットできた、あるいは半分でできたという説も私は聞いております。その当否は知りません。しかし、一般的にそういうふうな予算の支出について、果たして行政に自浄力があるのかどうかという点も、これも考えなきゃならぬと思うのでございます。  そこで、そういう点に照らしまして、財政の、殊に予算の執行という面でオンブズマンを活用するということが可能なのか、果たしてそれが必要なのか。その場合にはどういうふうな仕組みをつくるべきか、こういうふうな点についてお三方の御意見を伺いたいと思います。
  52. 宇都宮深志

    参考人宇都宮深志君) 財政の関係で、いわゆるオンブズマン役割機能一つに能率性についてもいろいろ調べるというのがありまして、能率的に行政運営がされているかどうかということについてオンブズマンがチェックしているということでありますから、そういう点からしますと、財政全般についても支出との関連でオンブズマンが一定の役割を果たすのではないかなというように考えております。  以上でございます。
  53. 新藤宗幸

    参考人新藤宗幸君) オンブズマン立法オンブズマンとしてつくるか、あるいは行政府の側につくるかはともかくとしまして、設置されればそれなりの監視機能を持つということは当然言えると思います。  私はそういう御質問をお聞きするといつもそう思うんですけれども、今これだけの情報化社会と言いながら、各省庁どこの末端事務所で一体幾ら金が使われていてどこと契約しているのかという、オンラインでそれが各省官房会計課はもとより、会計検査院あるいは大蔵省、そういうところへ入ってくる仕組みになっていないわけです。確かに入札制度はつくられております。そしてオンブズマンをつくったところで、入札制度に仮に不当な支出と思われること等々あるいは談合等がないとすれば、これはそのままになってしまうと思いますが、実は御承知かもしれませんけれども、ゼネコンの社員たちの言葉の中に営業設計という言葉がございます。つまり、公共事業の前段階において手弁当でもっていろいろ助けているわけです。そうなれば、入札価格なんていうのは漏らしたことはないと担当官は言うけれども、何のことはない、業者が自分でつくっているようなものでありまして、その手の、つまり前提になる日本の予算制度そのものが極めて複雑なんです。  諸外国のオンブズマンが非常にいろいろと活躍しているという話はいろんな方がお話しになるんですけれども、その際に、だから日本導入しろという議論の前に私は片づけなきゃならないことがいっぱいあると思っておるんです。  補助金総覧一つ見たって六センチ、今度A判に変えて三センチぐらいになりましたけれども、近代百二十年にわたって精緻にこういう状況をつくり、そして予算が配分され、さらにそれを末端工事事務所まで配分しているこの構造、そしてそれぞれに業者との癒着構造がつくられている。こういう集権的な国家というのはそうそう先進国にないわけでありまして、その構造それ自体をもっと可視的なものにしなければ、諸外国でという話を即持ってきても私は余り意味がないんじゃないか。  そういうことを同時並行的に行いつつ、強力な権限を持ったオンブズマン設置するならば十分に活用は可能だと、そのように思っております。
  54. 呰上一三

    参考人(呰上一三君) 私は行政オンブズマン度についてはちょっと立場が違いますので、専門家でございませんので、現行監査制度という立場で答えさせていただきます。  まず予算の執行、いわゆる地方自治体の行為というのは、プラン・ドゥー・シーというような形で行われているわけでございます。私どもは監査機能というのはそのシーの段階というぐあいに理解しているわけでございますが、その際に、そこの中で一つは経済性、効率性というのを十分に吟味していく。これは当然のごとく、地方自治法にも書いてございますけれども、最少の経費で最大の効果を挙げて事業が行われているのかどうかという点検をしなきゃなりませんし、また、有効性という見地で事業全体が所期の目的を達して効果を上げているかどうか、こういった側面にも着目していかなければならないと思います。  しかし、これが地方自治体の今までの監査の中でまだ行政監査というものが導入されていない財務監査中心の時代では限界があったわけでございます。それは事業全体をとらえて、その事業が果たして効率的に執行されているかどうかという見方は、財務監査の中にはございませんでしたのでなかなか困難でございましたけれども、おかげさまをもちまして平成三年の地方自治法の改正で行政監査というものが認められました。これは行政事務全般にわたって、その中のある特定の事業、これは例えば病院事業あるいは下水道事業というものをプランからドゥー、シーという形で見るという方法が確立されているわけでございます。  そういう中で、監査委員として、これが効率的あるいは経済的に行われているか、あるいは有効性を持って行われているのかということを見ることも可能になってまいりましたし、こういった点を十分にわきまえて、今後はこの行政監査というものに私どもは力を入れて、今財政危機にある、東京都も例外ではございませんけれども、そういった執行面で経済性、効率性あるいは有効性に従って事業を行われているかということを監視していきたい、そう思っております。
  55. 小島慶三

    ○小島慶三君 ありがとうございました。  これで終わります。
  56. 末広まきこ

    末広真樹子君 前回、一週間前に三天の参考人先生方にお聞きしたときは、総務庁の行政相談委員というのと私たちの考えでいたオンブズマンというのとが全くかみ合わないですれ違ったままで、頭の中が混乱して、これはだめだと、オンブズマンなんかできっこないやという落胆した思いで終わったのでございますが、今回は少し明るい希望が持てたかなというふうな感想でございます。  お話を伺っていて思ったことなんですが、オンブズマンというのに護民官という訳され方をしていらっしゃいましたが、どんな人をだれがどんな方法で選ぶか、これが非常に難しい。  かつて「もんじゅ」の事故で、人が人を裁くことの難しさに行き当たったといって自殺なさった方がいらっしゃいます。まさに同質の問題で、オンブズマンを選び損なっちゃったらもう国民の信頼はどこからも取り戻すことはできない、非常に重要な問題だと思うのでございますけれども、宇都宮先生、いかがでしょうか。
  57. 宇都宮深志

    参考人宇都宮深志君) どういう人物を選ぶか、あるいはどういう方法で選ぶかというのが非常に重要な課題だろうと思います。  川崎でつくる場合に、人物高潔で地方行政にすぐれた識見を持っている人というのが条例の中に入っているんですが、その提言をつくるときにいろいろ議論がありまして、先ほどの監査委員の公選制という問題、オンブズマンの公選はどうかというような意見もあったわけです。しかしながら、当然オンブズマンというのは行政に対するエキスパートでありまして、そのエキスパートを公選で選ぶという制度は適切ではないのではなか、私もそういう考え方であります。  川崎は三人のオンブズマン任命しているわけですけれども、人物高潔というのはどういう人を選ぶかと。市長任命することになっていますが、いずれにしても選ばれた三人の方々を見てみますと、やはり適任の人が選ばれているのではないかなと。元高裁の長官と、それから大学教授と弁護士さんが選ばれておりまして、適任の人が選ばれているということであります。  国の場合におきましては、国会に置く立法オンブズマンを考えた場合に、課題といたしましては、政党とかそういう政治的な影響力を排除した形で国民に信頼される第三者としてのオンブズマンをどのように選んでいくかというところがやはり検討課題だろうと思います。  以上でございます。
  58. 末広まきこ

    末広真樹子君 持ち時間が十分間でございますので、短目にお答えいただきたいなと。勝手言って済みません。  二つ目に、オンブズマン白書を出している自治体はあるのかどうか。私はオンブズマン白書の中に一番期待するのは、皆さんの貴重な税金はこう使われたよということをまず第一に報告してもらいたいなと思うんですけれども、最新モデルという川崎市の場合はいかがなんですか。
  59. 宇都宮深志

    参考人宇都宮深志君) オンブズマン白書というかどうかは別にいたしまして、年次報告書を出すことになっております。それにつきましては、詳細などういう案件、どういう事案があったか、どういうように解決されたか、それぞれの事案についての分析も出ております。  以上でございます。
  60. 末広まきこ

    末広真樹子君 一度拝見したいものと思いますけれども、税金はこう使われたよというところまで及んでいるのでしょうか。
  61. 宇都宮深志

    参考人宇都宮深志君) オンブズマン事務局がどれだけの支出をしたかとか、そういうことについては直接は触れていませんけれども、いずれにいたしましてもオンブズマン事務局というのは最小の人員で最大の効果を上げるということでおりまして、スタッフは非常に小規模なスタッフで実施しております。  以上でございます。
  62. 末広まきこ

    末広真樹子君 もう一点、勤労者の苦情をどこで拾い上げるのかなという疑問が残りました。というのは、月-金交代制で九時から四時というのでは勤労者との接点はないんですね。一番税金を払っているのは仕事に出ている人たちなんですよね。一体だれの意見を聞いていただいているのかなという疑問か残りました。宇都宮先生、いかかでしょうか。
  63. 宇都宮深志

    参考人宇都宮深志君) 受付時間につきましては、その意見を十分配慮して今後も対応していかなければならないのではないかというように私は思います。
  64. 末広まきこ

    末広真樹子君 というように、非常に役所的な事情で対応する時間を決めたり曜日を設けたりしてはならないと思います。あくまでも国民の側に立ったものでなければ、オンブズマンという制度はっくつてもまた今と同じ官僚機構のもとに置かれるだろう。  それからもう一点、天下りはいかなることがあってもどんな場合でもあってはならない。審議会においても、各種委員会においても、ましてやオンブズマンという名を背負うならばそれは絶対にあってはならないと思います。  そして、これは最後に反省でございますけれども、前回も申し上げました。本来ならば参議院というところが予算執行に対して厳重なるチェックを行い、あるいは野党というものが与党の意見に対して果敢に質問していく、ただしていくという立場であるべきが、昨今、どういうところでこんなになったのかわかりませんが、一言で申せませんが、与党も野党もほとんどのところで相乗りをしていたり、政策もほとんど変わらない。だれが一体野党的立場国民の声を吸い上げて言ってくれるのかという、これはもう国会議員みずからに突きつけられたやいばであろうと思います。  私は、参議院においてはまず政党の関与を受けてはならない、参議院においてはあくまでも個というものを重要視しなければならないのではないか。これは参議院の存亡にかかわる問題であるというふうな感想を持ちました。  どうもありがとうございました。
  65. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 きょうのテーマでここまで質問が出ますと、私が用意した質問はほとんど出尽くしていまして、あるいは重複になるかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。  議会型のいわゆるオンンブマン、これを前提にいたしますけれども、これを我が国が採用することは制度上も問題はないし、急務だというふうに宇都宮先生はおっしゃっていただきまして、非常に意を強くしたところであります。  我が国議会型のオンブズマン制度導入に対して反対する論者は、憲法論とか議院に与えられているところの国政調査権があるからもうそんなものは必要ないというようなことをおっしゃっているわけでありますが、きょうの先生のこのオンブズマン制度導入論に関して、この反対論者が言うところの憲法論なるものは取るに足らない議論である、こういうふうにお伺いしてよろしゅうございますか。
  66. 宇都宮深志

    参考人宇都宮深志君) 憲法論的にやはりこの点については煮詰める必要があると思いますけれども、私は、行政学をやっている者として憲法の条文をいろいろ調査検討いたしましたところ、我が国憲法の上で国会オンブズマンを置く点においては問題はないのではないかと。それは当然、先ほども申し上げましたように、国会内閣行政権行使に対してチェックをしていく、監視をするという重要な役割が与えられているわけです。オンブズマンというのは国会に与えられた監視権といいますか、そういうものをより充実拡充していく補助的な手段として国会導入するわけでありますから、それは憲法上問題はないのではないかというような考え方を持っております。
  67. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 論者が三権分立とか議院内閣制を持ち上げてくるんですが、先生の御意見とまさしく私も同じ考えを持つもので、意を強くいたしました。  先ほど山下委員の質問で、先生が御主張なさっているところの議会型オンブズマン制度の権限について尋ねられたところ、先生は我が国議会型オンブズマンの権限として最も重要なのは自発的に調査する機能、これを与えることだ、こうおっしゃった。聞いてみると、先生の言われるのは調査権、いわゆる資料提供権だとか閲覧する権利がオンブズマンに与えられている大きな権限だと、こうお答えになった。そういうことであれば、私どもに与えられている議院の機能としての国政調査権で十分足りるんじゃないかと思うんですね。  スウェーデンにおけるいわゆる訴追権、世界の中で訴追権を認めているオンブズマンというのけスウェーデンだけなんですけれども、そこまで認めないとオンブズマンという制度の、先生がおっしゃるところの行政チェックは不十分ではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  68. 宇都宮深志

    参考人宇都宮深志君) 資料閲覧権と資料提出権ということとあわせまして職権による調査という、これは非常に有効な手段だろうと思うんですね。これは国民から苦情があって調査を始めるということではなくて、いわゆる第三者の、専門であるオンブズマンというのが四六時中行政全般に目を光らせているということで、職権による調査権によっていつでも調査に入る。例えば新聞情報とか、あるいは言葉がどうかと思いますけれども垂れ込みといいますか、そういうような匿名による情報提供というのもオンブズマンには入ってぐるわけです。あるいはあそこがきな臭いよ、何か問題があるのではないかということを、煙が立っているんじゃないかというようなときには常に職権調査で入っていくことができるということで、こういう自発的な調査権というのが非常に重要でありますし、それが武器になるというように思います。  訴追権の問題でありますけれども、これはスウェーデン特有な制度だろうと思うんですね。ほかのところでは訴追権が与えられているものはだいわけでありまして、私は日本導入した場合にそこを付与するところまでは必要ではないのではないかなという意見を持っております。  以上です。
  69. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 これは水かけ論で、不必要だからということで、先生は、いわゆるオンブズマンにいろんな調査権ですね、問題提起して追及していくだけで十分事足りるというお話なんですが、この前、一週間前に来られた先生によりますと、スウェーデンでは訴追権が現実に行使されていないという状態にあるというようなお話もあったんですが、そこまで強い権限を与えると、憲法上とか法律上だとか、日本行政監視としては何らかの行き過ぎがあるというふうにもお考えなんでしょうか。
  70. 宇都宮深志

    参考人宇都宮深志君) それは専門の公法関係の人によく煮詰めてみなければいけない点だと思いますけれども、資料閲覧権とか資料提出権あるいは職権調査という、そういう意味では政府が持っている情報に対して、例えば情報公開で言えば適用除外で出てこない情報がたくさんあるわけでありますけれども、オンブズマンというのは適用除外情報といえども見ることができるということでありますから、非常にそういう点では中立的で客観的な調査ができると。そういった権限を与えれば、行政統制あるいは国民への苦情に対する客観的な調査処理というのが十分できるのではないかなと、そういうような考え方で訴追権までは必要がないのではないか、そういう意見でございます。
  71. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 その議論はそこまでにしておきまして、オンブズマンというのは中立性独立性がやっぱり担保されなきゃいけないということで、行政府からの独立、いわゆる議会型オンブズマンがいいということは先生がきょうも、著書でも一貫して御主張なさっているところであります。  先ほど来広議員からも同じ質問が出たのですけれども、現実にオンブズマンの仕事をするのは、日本で四人になるか三人になるか五人になるかわかりませんけれども、そのスタッフですよね、そのスタッフにどういう者を選ぶかとなると、やっぱり行政経験のある官僚OBの力なり知恵を多少かりなきゃならぬとなると、先ほどから言われているように、天下りじゃないけれども、行政OBも多少持ってこなきゃいかぬかなというところに常に行くわけなんですが、独立したスタッフを中立独立性を維持して集めるという何か具体的な方法はあるんですか。
  72. 宇都宮深志

    参考人宇都宮深志君) やはりスタッフィングといいますか、これがもう一つの重要な課題だと思います。  英国のオンブズマンのスタッフ組織を見ますと、英国の制度は各省からの出向で来ている、対応しているんです。スウェーデンなどは独自でそのスタッフを採用しているということで、スウェーデンなどのスタッフ組織というのは法律の専門家が中心にやっています。それから、アメリカのハワイ州とかネブラスカ州とかアラスカ州、アイオワ州、四州が議会オンブズマンを持っておりますが、そこの事務局はやはり独自にスタッフを採用しているということでありまして、専門的には法律だけではなくて心理学とかそういうような専門家をスタッフに入れております。  私がアメリカでいろいろ調査した結果を申し上げますと、非常に小さな機構でありますから、公務員というのはやはり自治体全体で言うとだんだんと係長になり課長になり、上がっていくわけでありますけれども、オンブズマンの小さな組織で専門家としてスタッフを採用した場合には昇進との関係という問題があって、いろいろ質問して調べたんですけれども、オンブズマンに勤めるということに対してそのスタッフというのは非常に生きがいを持っていると。そこで勤めることが市民に対する貢献なんだということで、生き生きと仕事をしているということが私が調査した結果ありまして、日本で国に置くオンブズマンを考えた場合にスタッフィングといいますか、やはり国会で独自に採用して、情報なりエキスパートというものを蓄積して、十分なる監視機能苦情処理あるいは改善機能を果たせるような機構をつくるべきだろうというように思います。  以上です。
  73. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 最後に一点だけ。オンブズマンというのはやっぱり中立・独立てなきゃいかぬ、しかも国会に基礎を置くということになると、最終的には公選制によるべきだとお考えかどうか。  そして、選ばれたオンブズマンの資格保障、いわゆる憲法では裁判官の身分保障をしております。減俸されないとか転職させられないとか意思に反してやめさせることはできない、まあいろいろ裁判官の身分保障はしておりますけれども、日本にもし議会型のオンブズマン制度導入したら、そのような強い身分保障のあるオンブズマン制度が置かれなければならないと私は思いますが、それに対する御意見もお伺いして、私の質問を終わります。
  74. 宇都宮深志

    参考人宇都宮深志君) どういう人物を選ぶかという方式でございますけれども、公選制というのはオンブズマンを選ぶに当たっては適切ではない。  といいますのは、やはりオンブズマンというのはいわゆる人物高潔で行政に対して非常にすぐれた見識を持っているという、そういう面ではプロフェッショナルだという性格があるわけでありまして、国民の公選で選ぶというのには不向きではないかなという考え方を持っております。  それから、身分保障は当然すべきだろうといろふうに思います。
  75. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 どの程度の身分保障が必要ですか。
  76. 宇都宮深志

    参考人宇都宮深志君) いずれにしても、世界オンブズマンを見てまいりますと、任期、例えば十年一期というのもありますし、六年というのもありますし、川崎の場合は三年で二期までというのがありますが、非常に権威の高い職務でもあるということで、資格要件とかそういったものを十分条文の中に入れてちゃんとした身分保障をすべきではないかと、そういう意見を持っております。  以上でございます。
  77. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 どうもありがとうございました。
  78. 井上孝

    会長井上孝君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見につきましては、今後の調査参考にさせていただきたいと存じます。本調査会代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十四分散会