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1996-03-28 第136回国会 参議院 厚生委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年三月二十八日(木曜日)    午後二時開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         今井  澄君     理 事                 石井 道子君                 大島 慶久君                 釘宮  磐君                 朝日 俊弘君     委 員                 阿部 正俊君                 尾辻 秀久君                 清水嘉与子君                 塩崎 恭久君                 高木 正明君                 中島 眞人君                 長峯  基君                 勝木 健司君                 木暮 山人君                 田浦  直君                 水島  裕君                 山本  保君                 竹村 泰子君                 西山登紀子君    国務大臣        厚 生 大 臣  菅  直人君    政府委員        厚生大臣官房総        務審議官     亀田 克彦君        厚生省社会・援        護局長      佐々木典夫君        厚生省児童家庭        局長       高木 俊明君        厚生省保険局長  岡光 序治君        社会保険庁運営        部長        兼内閣審議官   横田 吉男君    事務局側        常任委員会専門        員        水野 国利君    説明員        内閣総理大臣官        房参事官     小池 将文君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度等に関する調査  (厚生行政基本施策に関する件)     —————————————
  2. 今井澄

    委員長今井澄君) ただいまから厚生委員会を開会いたします。  社会保障制度等に関する調査を議題とし、厚生行政基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 釘宮磐

    釘宮磐君 大臣には午前中の予算委員会に引き続いての質疑で大変お疲れのことと思いますが、どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。  まず、社会保障制度全般にわたって現在我が国は大きな転換期を迎えている、このように認識をするわけでありますが、社会保障制度審議会も昨年「社会保障体制の再構築」と題する勧告を発表して、平成九年度には介護保険の導入、医療保険抜本改革予定をされております。  今回の大臣所信においては、平成八年度に実施すべき重点施策中心に述べられているようでありますが、制度全般の再構築といった点についてはいま一つ明確になっていなかったように思われますので、改めてこの点を踏まえて菅厚生大臣社会保障全般にわたるビジョンについてお伺いしたいと思います。
  4. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 二十一世紀の本格的な高齢社会を目前に控えまして、経済社会活力を維持しながら、一人一人が心豊かに安心して暮らすことができる社会構築していくことが重要な課題であると、これは所信でも述べたところであります。そのために、新たな高齢者介護システム構築、また障害者施策子育て支援施策推進医療保険公的年金安定的運営など社会保障制度の基盤の強化に積極的に取り組む必要があると考えております。  今の委員のおっしゃいました社会保障制度の再構築という問題ですけれども、今後は医療福祉年金というのをそれぞれ別々に見ていくというのではなくて、それらを社会保障制度全体の中で総合して考えて、その相互の連携を図っていく必要があるというふうに考えております。  これから議論になります公的介護制度などにおいても、そうした総合的にやっていく中でより効果的な形に再構築をしていく必要があるのではないか、このように考えているところであります。
  5. 釘宮磐

    釘宮磐君 いわゆる今後の社会保障制度を語る場合に、財政との問題というのは極めて関係が深いわけでございますが、厚生省は、平成六年の三月に細川内閣のもとで、二十一世紀福祉ビジョンを公表して中長期的な社会保障方向を示したわけです。その後、ゴールドプランエンゼルプラン障害者プランの策定がありまして、さらに今、老健審介護保険具体化に向けても大詰めの時期を迎えておるわけでございます。  そういう観点からすると、平成六年の三月から社会保障費用社会保障負担の面についていわゆる財源推計を大きく見直さなければならない、そういうふうに思うわけであります。  一方、本年秋にはいわゆる税制改革見直し予定をされております。特に、前回の改革の際にはまず消費税五%ありきというようなことで、本格的な高齢化社会に対応した社会保障財源確保といった視点が希薄であったというふうに私は思うわけであります。この秋には新ゴールドプラン見直し課題になっておりますし、次回の税制改革見直しは二十一世紀に向けて社会保障財源確保していけるのかどうかという正念場のときとなると思うんです。  そういう意味で、大臣として消費税五%で一人一人が豊かに安心して暮らすことができる長寿社会構築が可能だとお考えになるのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  6. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 消費税の五%の問題はこの秋にさらに議論をされることになっておりますけれども、あの議論を思い起こしてみますと、やはり基本的には所得税等の直接税の減税というものが一つ大きな課題としてあり、また加えて新ゴールドプランなどのそうした福祉に向けての財源という側面もあったというふうに思っております。ただ、実際には数字の上では、その大部分といいましょうか、相当多くの部分がこの間の減税をいわば埋めていくための財源ということになっていることは御承知のとおりであります。  そういった意味を含めて、この五%と法定されている消費税に関して新たな法改正を要するかどうかについては次の四点を総合的に勘案して検討されると。  つまり、第一点としては社会保障等に要する費用財源確保をする観点、第二は行政及び財政改革推進状況、第三には租税特別措置及び消費税に係る課税の適正化状況、第四には財政状況など、これら四つの点を総合的に勘案して検討されるものと承知をいたしております。  また、社会保障費用のあり方については、国民的なコンセンサスを得ていく必要があることはもちろんですが、このため社会保障費用の中期的な見通しを提示する必要があると考えており、御指摘の新たな高齢者介護システムの全体像が明らかになった段階でこうした社会保障全体の新たな見通しについても検討していきたい、明らかにしていきたいと、このように考えております。
  7. 釘宮磐

    釘宮磐君 私も、この消費税五%というのはある意味ではいわゆる直間比率見直しの中での所得減税というものの財源としての五%だったというふうに認識をしております。したがって、本当にこの議論というのは、既に国債が今年度予算を含めると二百四十一兆円というような状況になる中で、社会保障費そのものをも含めて全般的な財源論をしていかなければならないと、このように考えておるわけであります。  そういう意味では、先ほど私が申し上げたいわゆる社会保障費に係るこれからの財源推計というものは厚生省の方で早くまとめていかなければならない。ましてや、この九月でありますから、これはまた先送りというようなことになってしまえば、私は国民政治不信というのはますます高まっていくというふうに思いますし、これからまた国民皆さん負担お願いしなければならないということになれば、ますますこの問題というのは重要だというふうに思いますので、特にこの点についてはお願いを申し上げておきたいと思います。  次に、少子高齢化社会に向けてのいわゆる国民負担率、この問題について大臣のお考えをお聞きしたいわけであります。  さきの二十一世紀福祉ビジョンの際には、高齢化ピーク時に国民負担率というものを大体五〇%程度にとどめようというようなことを、当時我々与党の時代だったんですが、そういうことを申し上げてまいりました。橋本総理国民負担率の抑制を打ち出しておるわけでありますが、さきのいわゆる消費税五%論議の際に、厚生大臣の党首であります武村当時の大蔵大臣が、行革をやることによっていわゆる消費税の税率を上げることを抑えるんだというようなお話もなさっておりました。確かに厚生大臣行革については、当時我々は一緒にやって、随分積極的なことをおっしゃっていたんですけれども、現実には全く大山鳴動してネズミ一匹も出なかったような行革であります。  こういった意味で、国民負担率というものを大臣として大体どの程度にお考えになるのか、私はこれから公的介護保険が導入されれば、今のままの推計でいけばこれは五〇%ではおさまらないのではないかというふうに思うんですが、その点どうでしょうか。
  8. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 国民負担率につきましては、平成八年度において大体三七・二%程度というふうに推計されておりまして、今後高齢化進展に伴って増大していくことはある程度は避けられないというふうに思っております。こういう中にあっても、今後とも経済社会活力を維持しながら必要な給付は何とか実現しなければいけないと考えております。  国民負担率については、たしか平成五年の第三次行革審の最終答申の中でもありますし、あるいはその前の第二次のときにも、高齢化ピーク時二〇二〇年ごろにおいて五〇%以下で、二十一世紀初頭の時点では四〇%台半ばをめどにその上昇を抑制するという目標を当時立てているわけであります。そういった意味で、私もやはり高齢化ピークにおいても五〇%以下をめどにその上昇を抑制するという考え方一つ基本にすべきではないか。そのために制度合理化制度運営効率化、公と民間の適切な役割分担などの確保に努めて、必要な給付を維持しながら国民負担ができる限り過重なものにならないように努力してまいりたいと思っております。  確かに、行政改革によっての財源の捻出ということがこの間必ずしも期待したほどにはいっていないとは思っておりますが、逆に言えば、これから福祉分野の中でも、ある意味では同じ財源をより効果的に生かしていくという意味でのまさに先ほど言われた再構築といったようなものも考えながら、何とかこの程度負担の中で、しかも国民が安心できる老後を送れるようにしていくようにいろいろ知恵を出し合わなきゃいけないのではないか、このように考えております
  9. 釘宮磐

    釘宮磐君 私もそういった意味では大臣考えと一致するわけでありますが、これからの国の財政の一番の歳出圧力となるのはやはり社会保障関係費であろうかと思います。その意味で、社会保障制度をどう再構築していくかということは行財政改革と直にかかわる問題だというふうに思います。  そこで、大きな政府か小さな政府かということがよく言われるわけでありますが、さきがけ大臣である菅厚生大臣は、今後社会保障制度維持発展を最優先に、そのための歳出増については国民負担を増加しても財源確保を図っていくおつもりなのか、あるいは小さな政府を最優先社会保障最小限度生活保障にとどめる方向社会保障給付水準の切り下げをも含めた思い切った制度見直しを行っていくおつもりなのか、どちらに重心をかけて施策を進めていくお考えか、お聞かせをいただきたい。
  10. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 高齢化進展に伴って社会保障費用が増大していくことはなかなか避けられないとは思っておりますけれども、一方では低成長時代を迎えて、経済活力を損なわずに過剰な負担国民に課すことがないようにしていかなければならないという、ある意味では確かに二律背反的な要素もあると思います。  私は、今、さきがけという御指摘もありましたが、そういう今の立場になる前に党の中で議論をしたときには、端的に言いますと、小さな中央政府と充実した地域福祉、そういう言い方をしてまいりました。つまりは、先ほどの行政改革の問題も含めて、必ずしも中央政府がどんどんどんどん大きな政府であっていいということではないのではないか、そういう意味では小さな中央政府と。しかし、福祉の問題は地域中心に充実した地域福祉という考え方が必要ではないか。また、その場合に、福祉というのは必ずしも経済活力に対して、福祉を充実させるという負担経済活力に対して必ずしもマイナスにだけ作用するのではなくて、例えば子供の数が余りにも減り過ぎているのがもうちょっと戻ってくるとか、あるいは老後安心感が維持できれば過剰な貯蓄といったものがもっと社会資本などに振り向けられるとか、そういうことを考えれば福祉の充実というのは経済活力にとってはプラスになる面も相当部分あるのではないか。そういう意味では今申し上げたような小さな中央政府と充実した地域福祉というのは両立ができるのではないだろうか、このように考えているところであります。  こうした点も考えながら、先ほども申し上げたように、高齢化という問題に対応していくために社会保障制度全体を視野に入れて、今特に公的介護では医療福祉という問題が中心議論をされておりますけれども、場合によっては年金とかあるいは個人個人が持っている資産といったようなものも、同世代の中では、何といいましょうか、ある意味で次世代負担を軽くするためにはその世代の中で福祉分野に振り向けるといったようなことも考えて、全体として社会保障が適切な形で過大な負担を後世代にかけないでやっていけるような仕組みを考えていく必要があるのではないか、このように考えております。
  11. 釘宮磐

    釘宮磐君 この議論はやっていますと時間がありませんので、これはまた後の機会に譲りたいと思います。  次に、障害者プランについて数点お伺いをしたいと思います。  この障害者プラン、長年、障害者障害者団体皆さん方の待望久しかったものでありまして、この点については関係者が非常に評価をいたしておるところでございます。評価すべき点とさらに推進すべき点という面で、きょうは若干の団体皆さん施設関係者、そういう人たちの意見をここで申し述べさせていただき、また質問をさせていただきたいと思います。  何といっても今回のプランのセールスポイントは数値目標であったと思います。私はこの数値目標を見たときに、やはりこの数値目標そのものが、それぞれ積算をしたことについては当然やられておるとは思うのでありますけれども、例えば授産施設だとか福祉工場、さらにはグループホーム福祉ホーム、こういうふうなものについて水準値が若干低いのではないかというふうに思うんです。  というのは、今までの実質的な伸び率を見ていましても、このまま七年間経過して今までの伸び率をそのまま伸ばしていけばこの数値をかなり上回る数値が出てくるわけでありまして、そう言えば多分、いや、それはそういうニーズがまだそこまでないんだというようなお答えが返ってきそうでありますので私はあえて申し上げますが、例えば精神病院あたりに入院している方、これはよく言われる社会的入院というのが非常に多いんですが、このあたりについても、例えばグループホーム福祉ホームについても現行の五千人を二万人というふうに言われておるわけですが、これは精神障害者だけではないわけで、そういう状況からすれば、十万人おる人たちをこれから社会に出していこうということであればこれはいささか数値目標としては低いのではないか、このように思うんですが、その点いかがでしょうか。
  12. 佐々木典夫

    政府委員佐々木典夫君) 最初に、障害者プラン数値目標設定の全体の考え方を簡単に申し上げさせていただきたいと存じます。  今回のプランの中では、ホームヘルパーの増員を初めとして幾つかの項目につきまして平成十四年度末までの整備量についての数値目標設定したわけでございますが、この数値目標設定に当たりましては、原則としまして計画目標年次でございます平成十四年度末において、ホームヘルプサービスであるとかグループホームでありますとか授産施設等施設あるいは事業利用についての障害者の方々のニーズに対応できるようにするということを基本的な目標としまして、これまでの厚生省なりあるいは地方公共団体における各種実態調査等をもとにいたしまして、なおかつこれまでの施策推進状況等も踏んまえて数値設定したということでございます。
  13. 釘宮磐

    釘宮磐君 簡単に答えてください。
  14. 佐々木典夫

    政府委員佐々木典夫君) はい。  例えば、身体障害者関係施設なりでございますと、入所施設につきましては待機者の解消を目標とする、それからグループホーム等につきましては、利用者希望数推計いたしまして、これにできるだけ対応できるような事業量確保するという考え方でございます。それから、ホームヘルパーなどの在宅介護サービスにつきましては、要介護程度ごと障害者数推計いたしまして、介護度に応じましたサービス標準高齢者の場合を参考にしながら障害者特有ニーズにも対応できるような、そんな水準設定をいたしまして全体のサービス量確保したということでございます。  今お話にもございましたが、精神障害の関連につきましては、昨年精神保健福祉法というふうな形にお改めいただきましたが、福祉分野はようやく緒についたところで、他の分野に比べまして整備がおくれております。そんなこともございまして、最近の整備量にかんがみまして平成十四年度末までの実現可能な水準設定したというふうな面もございます。  以上でございます。
  15. 釘宮磐

    釘宮磐君 今、佐々木局長がいみじくも申されましたので、この精神障害者福祉の問題についてちょっと触れたいと思うんですが、この精神障害者福祉というのは、今、局長もおっしゃったように、福祉施策としては非常におくれております。  私は、先ほど病院社会的入院が約十万人おるという話を申し上げましたけれども、この人たち社会復帰の促進を図っていかなきゃならない。そういう中で、いきなり病院から出すといっても難しいということで、援護寮だとかいわゆる中間施設的なものもつくって、さらに福祉ホーム授産施設というようなものも整備をされておるんですが、私は、今数値が少し足りないんじゃないかという話を申し上げたのは、要するにこの精神障害者福祉に対してもう少し厚生省は力を入れなきゃいけないんじゃないかということを申し上げたかったわけであります。  とりわけ中間施設等、最近は施設をたくさんつくるようになったんですけれども、現実にはこの施設がかなりあいている状況にあります。それはやはり、いわゆる福祉施策でも精神薄弱とかこういう人たちには施設福祉として措置費というのがあるんですけれども、これが精神障害者のこういった施設にはありません。そこは個人負担とそれぞれの個人契約というふうな形で、自己負担については取っても取らなくてもそれぞれの間でその施設個人との間で協議をすればいいというようなことにしているものですから、施設によっては赤が出るためにあえて入れないというような状況もあるということを私は申し上げたいのであります。これから幾らつくっていっても、結果的にそういうふうなものがつくられていっても、施設利用しやすい状況というものをまずつくってあげなければいけないというふうに思います。  したがって、私はここで無年金の問題についても特にお願いを申し上げておきたいんですが、精神障害者というのは病状が固定していないために年金をもらいにくい。しかも、見た感じでは非常に程度がよく見えるために、障害年金診断書というのがここにあるんですが、この診断書を見ても、例えば日常生活の判定の中で、食事や用便、入浴、洗面、家族との話、こういうようなものがとにかくできないということにならないと軽度という認定でこれがもらえないということで精神障害者の中では、実態調査も十分にできていないようでありますが、もらっていない人がかなりあるというふうに思います。  したがって、私は、こういった診断書の問題も含めて、この精神障害者の問題についてはもっと厚生省としては実態把握をしてやるべきだ、そしてそのためにこれからつくられていく施設が有効に利用されないというようなことになっては困りますし、ましてや十万人もいる人たちをやっぱり外にどんどん出していくということをやらなければ今回の障害者プランの中では一つ大きく欠落した部分が出てくるのではないかというふうに思いますので、よろしくお願いします。ぜひお取り組みをいただきたいと思います。  総理府の方が見えていますので、最後にこの障害者プラン厚生省数値目標を立てて我々としてはこれは評価をしているんですが、他省庁部分数値目標が今回大半見送られたというような状況にあると私は認識しております。この点について今後どうするのか。  さらには、この問題というのは一厚生省だけでやる問題ではなくて政府全体で他省庁連携をとりながらやらなきゃならない問題でありますが、この点について今後どういうふうなお取り組みをなさるのか、この点をお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  16. 小池将文

    説明員小池将文君) お答えします。  障害者プランは、御承知のように平成五年に策定しました新長期計画というのがございますけれども、それの重点施策実施計画という位置づけで、厚生省以外の分野も含めて可能な限り具体的な目標を入れたプランということで策定したわけですけれども、プラン項目の中には例えば民間建物とか駅のバリアフリー化のように行政サイドの努力のみといいますか、民間がやることに行政サイドとしてはいろんな形で支援、誘導していくというふうな項目もあります。また、生活の質の向上という観点から先端技術情報処理技術の活用というふうな項目もあるんですけれども、現時点ではまだその実用と普及に確たる見通しをつけがたい事項もあります。さらには、心のバリアの除去といったような数量化になじまない事項も多数あるわけです。  こうした事項も含め、関係省庁が一体となって総合的な障害者施策推進を図るというのがこのプランの趣旨でありますので、その点は御理解いただきたいと思います。  なお、プランの中でも書いてありますように、この進捗状況を定期的にフォローアップして必要に応じ見直しをするということにしておりますので、こういう作業を通じましてこのプランのさらに充実した、かつ着実な推進を図ってまいりたいと考えております。
  17. 山本保

    山本保君 平成会山本保です。  ただいまは釘宮委員から精神障害者の話が最後に出てまいりまして、私も実は県の方でそういうお母さんたちからのいろんな陳情を受けたり、また一緒に今活動しているものですから、ぜひその辺特にこれからもお願いしたいなと思っておりました。  どうぞ大臣、特に今お話が出ましたように、今回の障害者プラン、いろんな問題もあるかと思いますが、精神障害者という、今まで医療福祉の間というよりも、まさに医療中心に仕事をされてきた、そしてまた患者さんと厚生省がいろんなあつれきもあったというようなことで非常に施策がおくれているようでございますので、どうぞ積極的に進めていただきたいということを最初につけ加えさせていただきます。  私は厚生省では児童福祉の方をやらせていただいておりましたので今回は、他の問題は同僚の方にお任せいたしまして、特に児童福祉法改正につきまして絞ってお話を伺いたいと思っております。  現在、まさに少子高齢社会の到来ということでございまして、このような子供たちのために児童福祉分野でもエンゼルプラン、また教育とか住宅政策、働く女性の問題、さまざまなところで行われているわけですが、しなければなりません。ただここで、不思議なことですけれども、問題を持った子供さんを抱えた家庭の相談を受けたり、またどうしても家庭で子育てができないような、そういう場合に応援をする、こういう児童福祉のいわば中核的な問題を扱っております分野についてはこれまで旧態依然であったというふうに私自身も感じているわけであります。  実は、今回こういう問題について御質問しようということで考えておりましたら、不測の事態で何か委員会が大分延びまして、その間に、偶然ですが、厚生省の方から児童福祉法改正を行うんだということが発表になりました。  そこで、そういう点では私も今でも子供たちのためにやっておりますし、いろんな学者の意見も聞いたりしております。また、これからそういう改正を行おうというふうに伺っておりますから、きょうは細かいところを何か追及するというような形ではなくて、この問題について同じ立場で、どんなことをこれから進めていったらいいのかということについて私なりのポイントというようなものを話させていただきたい、できればそれにお考えを述べていただきたいなと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。  まず最初に、発表になりました児童福祉法改正の趣旨とか背景、またその基本方針などにつきまして、局長さんからぜひ簡潔にその辺お話をしていただけませんでしょうか。
  18. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 児童福祉体系全体の見直しを検討しようということで、今、中央児童福祉審議会におきまして審議をお願いしたところでございます。  委員指摘のとおり、少子化の進行あるいはまた女性の社会進出等々、昨今の児童それから家庭を取り巻く社会経済環境というものが非常に大きく変わっているわけでございます。そういった中で、現行の児童家庭行政の基本法と申しますか、もとになっておりますのは児童福祉法でございますけれども、この児童福祉法は昭和二十二年に制定をされております。ちょうど来年が五十年目の節目を迎えるということになるわけでございますが、今回の見直しにつきましては、こういった一つの節目を契機といたしまして、これからの二十一世紀を見据えた、そしてまた昨今の児童や家庭を取り巻く社会経済環境をも踏まえた施設体系というものを構築していく必要があるのではないかということで、内容についてはこれからでありますけれども、まさに現行の児童福祉体系全体について見直しを行おうということになったわけでございます。  大きな柱として考えておりますのは、一つには養護施設とかあるいは教護院といったいわゆる要保護児童施策の体系でございます。それからまた、保育所を初めとします児童の保育施策の体系、それから母子寮あるいは児童扶養手当あるいは母子寡婦貸付金等々ございますが、そういった現行の母子家庭施策、この体系というものをどういうふうに今後構築していくべきなのかということについて見直しを行いたいということで御審議をお願いしておる、こういうことでございます。
  19. 山本保

    山本保君 どうもありがとうございます。  そこで、きょうは時間の関係もございます、またさまざまな問題もございますので、最初におっしゃいました要保護といいますか、いわば家庭養育にいろいろ問題といいますか、受けてきた子供たちのところを特に中心お話をしようかなと思っているわけでございます。  この法律はおっしゃったように五十年前にできました児童福祉の基本法でありますが、この分野というのはその中の一番中核分野、もっと言えばそれ以前からのさまざまな法律や施策が組み込まれたものであります。ですから、今回の改正というのは、単に例えば新しい施設をつくる、その場合名前を変えるとか、またはいろんな事業を追加するというような形でというよりは、まさに基本的な児童福祉の今後の方針というようなものにも絡んでくるのではないかなというふうに思うわけでございます。  そこで、私はまず最初児童福祉の理念というものを確認の意味もありましてお聞きしたいと思っているわけでございます。  もちろん、五十年前のものでございますけれども、現代でも守らなければならないというか継承すべき、または現実に合わせて、現代の状況に合わせて展開していくべきような理念というものがあると思います。私は、一般に言われておりますように、児童福祉法というのはすべての児童の、これはいわば特別な保護を要する、または特別なハンディキャップを持った子供さんに対するというのではなく、全国のすべての子供に対して行うサービス、サービスもその欠けているところ、足らざるところを補うというのではなくして、法律では「心身ともに健やかに」という言葉がございますけれども、まさに子供たちの最高の生き方を応援する形でサービスが行われると、こういうのが児童福祉の理念ではないかと思っているわけです。  確認でございますが、局長、その辺について何かお考えがございましたら、御意見ありましたらいただきたい。
  20. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 現行の児童福祉法、これは五十年前にできておるわけでありますが、その基本理念というのは今日でも十分通用する立派な法律だろうと私は思っております。  ただ、その中での施策体系自体が今日あるいはこれからに沿うものになるかどうかという点について、やはり現行の施策体系にとらわれずに新しい観点に立ってこの見直しが必要であるというふうに考えておるわけでございます。  それと同時に、この児童福祉のあり方として考えておりますのは、現行の児童福祉法は原則十八歳未満の者を児童ということで対象にしておるわけでございますけれども、やはり児童福祉といいますか、この児童福祉の成果といいますか、こういったものというのはやはりこれから自立した社会人としてきちっと育っていくということがあって初めてその真価を問われるというふうに考えておりますので、そういった意味では、十八歳未満という年齢はありますけれども、これらの子供たちがさらに社会人として自立できるような、そういったシステムというものも念頭に置きながら考えていく必要があるなと、こんなふうに考えております。
  21. 山本保

    山本保君 おっしゃるとおりだと思いますけれども、自立した社会人というような言い方で社会適応といいますと、何か極めて受け身的な形もありますので、どうぞ個性豊かに人生を生きがいを持って生きていける人に育てるような応援ということでお願いしたいと思うわけです。  そこで、少し具体的なことをちょっとだけお聞きしたいと思っておるんです。といいますのは、児童福祉というのはまさにすべての子供に対する仕事でありますから、例えば学校へ行っている子供たちに対しても当然いろんな形で応援をしなければならないと思うわけですけれども、どうも今まで見ていますと、これは後からまた申し上げますが、小さな子供で学校へ行くまでは児童福祉は熱心だけれども、学校へ行ってしまうともう自分たちの仕事ではないとか、何かこれはお役所の壁というものもありますけれども、そんなことも感じていたわけなんです。  特に、最近いじめの問題など学校で非常に問題になっております。これはまた文教委員会でもやろうと思っているんですけれども、厚生省としていじめの問題について最近何かこれまでと変わったようなことをやられたとも聞いておりますけれども、どんなものがございますか。
  22. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) このいじめの問題は非常に深刻な問題でございますけれども、そういった意味ではこれまでも例えば児童相談所を初めとしましてかなり関心を持ちながら児童福祉サイドからもいろいろと対策を講じてきております。  ただ、この問題については、今、委員指摘のように、どちらかというと児童福祉サイドから見ますと教育分野の問題であるというような考え方が強かったのではないかということを思っておりまして、そういった意味で我々も反省を込めて、この児童福祉分野においても教育分野との連携を密にして、そしてこの問題に積極的に取り組むべきであるということを強く実は申してきておるわけであります。  そういった意味で、実は、ことしの一月十二日でありますが、全国の各ブロックの幹事の児童相談所長あるいは児童福祉の主管課長でありますけれども、お集まりをいただきまして、文部省の担当者にも参画をいただいてこのいじめ問題について緊急会議を開催をし、一緒にこの問題というものを考え、取り組んでいこうということにしたわけでございます。  そういった意味で、この問題については児童福祉観点から重大な問題ということで私どもとしても積極的に取り組みをしていきたい、このように考えております。
  23. 山本保

    山本保君 どうもありがとうございます。  お聞きしていましても、非常に積極的に最近特に出ていこうということで、子供たちのためにその努力、またぜひ続けていただきたいと思っておるわけです。  一つだけ、細かな話になりますけれども、こういう場合、連携といいましても児童福祉の方は、悪い言葉ですが、言うならば落ちこぼれた子供さんやまた悩んでいる教師のお世話をしてください、そうでない子は学校でやるんですからというような、こういう分担論みたいなものがどうしても出てきます。  私は、児童福祉の理念というのはそうではなくて、すべての子供たちが優しい心を持った豊かな人間に育つような応援をするのが福祉であるということから、例えばいじめをどんどんつくっているようなそんな学校があるのであれば、ぜひその学校には一言も二言も言えるような制度、また権限を持った配置というようなことを、これからまた文教委員会でも言っていこうと思っているわけですが、ぜひお願いしたいと思います。  そこで次に、時間のこともありますので少し飛ばしますが、もう一つ実は大事な理念がございます。それは割と忘れがちなのでございますけれども、児童福祉の理念というのは子供に対するサービスなんですが、その基本は子育てをしている親に対して非常な共感を持ってその親を支援していくという原理がございます。この辺について少し私の意見を述べながら、また具体的にちょっとお聞きしょうと思うわけでございます。  これは実は現行法にもあるんですが、もともとは明治三十三年、ちょうど一九〇〇年にできました感化法という法律があります。これは名前からいきましても問題を起こしたような子供のというふうにお考えかもしれませんが、実際は我が国で最初児童福祉の法律でありまして、というよりも福祉の初めての法律でございます。ここには非常に福祉の理念があらわれております。といいますのは、こういう不幸な子供たちに対しては、罰則であるとかまた制裁を加えるという考え方ではなくして、常に愛情でもって守る愛護と、また子供たちを教育していかなければならないという考え方であります。  これはちょうど二百年ほど前になります。スイスにペスタロッチーという学者がおられましたけれども、この方が一七八三年に「立法と嬰児殺し」という論文を書きました。ここでは、今とよく似ているんですが、二人の若い女性が落胆からか絶望からか、自分たちの嬰児を殺した。当時、厳罰をもって処すということで死刑になったわけなんですが、これに対してペスタロッチーは非常に怒り、論文を書きました。この女性たちは決して愛を失ったわけではない、社会や人間の善意に絶望したからなんだ、「人間性の滅するところ嬰児殺しあり」と、こういうことを述べ、そして今で言う家庭裁判所やまたケースワーカー、相談員というような制度を提案し、これが実は世界じゅうのいろんな児童福祉また社会福祉施設をつくっていく端緒となるものであります。これが百年前の日本にも輸入され、こういう児童福祉のものが出てきたわけであります。  ですから、この理念というのは私は重要な考え方ではないかと思うわけであります。例えば、児童福祉法の二十五条には「保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認める児童」という形で児童福祉の対象児童を規定しておりますけれども、実は、この何げない、またちょっと冷たい言葉ではありますが、刑罰主義ではない、ここにまさに児童福祉が対象とするべき子供が出てきているわけでありまして、ただこれはこの条文だけ読みましてもなかなかわかりません。ぜひ今後、私は新しい福祉ニーズというものについてよりわかりやすく児童福祉法の中にも書いていただきたいなと思うわけでございます。  そこで、ちょっと話を少し展開させまして、今後の新しい児童福祉ニーズというようなことについてこれから取り入れていただけるのではないかと思うんですけれども、その辺について少しお考えをお聞かせいただけますか。
  24. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 現行の児童福祉法は今お話がございましたような規定があるわけでありますが、そういった規定に基づいて現在やっておるわけでございますけれども、今回の見直しの検討に当たりては、まず児童福祉の対象児童というものをどういうふうにとらえていくべきなのか、これはやはりその時代ニーズといいますか、時代時代によっても違ってくるという面もあろうかというふうに思っておるわけでございます。  最近では、例えばいじめの問題とかあるいは不登校の問題あるいは虐待とか、あるいは自立できない子供というのが非常にふえているというようなことが言われております。あるいはまた、家庭においても子育ての機能というのが低下をしてきているのではないかというようなことも言われておるわけでございます。  そういった昨今における子供を取り巻くさまざまな状況というものを配慮した上で、それでは児童福祉の対象というものをどうとらえていくべきなのかということを御議論いただこうというふうに考えております。
  25. 山本保

    山本保君 ぜひそのときにひとつお考えいただきたいなと思いますのは、今の施設体系というのは、まさに子供の問題を分類するという考え方に立っております。  例えば、日々保育に欠ける子供という言い方をしたり、養護に欠ける子供という言い方をしたり、または不良行為をなし、またはなすおそれのある子供と。ですから、この考え方自体が私はもうとても古いんだと思うんです。もしそうだとすれば、これから、冗談のようになりますが、テレクラをした子供に対する施設であるとかそんなことになってくるのか。これはおかしいわけですね。まさにここに古い福祉の形が出ておると思います。ある問題を持った人たちを隔離して収容していくという考え方が実は児童福祉法にも残念ながら残っていると思いますので、ぜひこの場合、施設子供たちを分類して入れるという考えではなくして、まず子供たちに対してどのようなサービス機能を持つのか、自立のためのどういうサービスを与えるのか、または家庭環境がないがゆえに親子関係または人間の信頼関係がないようなところを直すようにするのか、教育を含めた総合的な指導をするのか、または心理的な治療を中心にする施設なのか、こんな形でもう一度施設体系を、新しいものをつけ加えるというのではなくして、全体を見直してやっていっていただきたいなと思うわけでございます。  それからもう一つは、先ほどのことに戻るんですが、親の支援ということであります。これについて少しお聞きしますけれども、児童福祉法でこういう用語関係で親に対する支援というような条文はあるんでしょうか、ないんでしょうか。この辺はどうお考えでございますか。お考えだけで結構でございます。
  26. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) たしか文言上はそういったような書き方ではないと思いますけれども、いわゆる保護者というようなとらまえ方になっておるわけでありますが、保護者との関連で、広い意味支援をしていくということは現行の児童福祉法上も前提になっておるというふうに考えておりますけれども、明確に家庭というようなものを意識した形での現在の法律体系かというと、その辺は若干はっきりした形にはなっていないのではないか、そんなふうに受けとめております。
  27. 山本保

    山本保君 ちょっと私の質問の仕方がまずかったかなと思うので、それはまた後でもう一度同じようなことでお聞きします。  その前に、ちょっとうっかりしておったんですが、親に対するプログラムと支援ということが実は児童福祉または福祉の基本的なまず考え方なんだということを申し上げたわけですけれども、現実にはなかなかそれが行われていないのではないかというおそれがあるわけです。  きょうはその細かな具体例を挙げることはやめますが、例えば施設に入所する場合なども、この法律では親権を行う者または後見人の意志に反してこの入所等の措置をとることができないというような規定がございまして、これはまさに親というものの先ほど申し上げた百年前からの考え方であります。親が不十分なときにそれを応援するんだということですから、あくまで、最後まで親というものを立てるような形になっております。そうかといって、うまくいかなければということで、親が子供福祉を阻害するような場合には家庭裁判所がそれを審判し決定をして、許可を得てその施設に入れるという、またもしそれでもだめな場合には親権を喪失させるというような規定があるわけでございますが、実は後半のその規定は民法の規定が基本でありまして、児童福祉法独自のものではないと思います。  しかしながら、実際にはいろんな施設に入れますときに、現場では例えば意志に反してやってはならないということを反対がなければいいんだというふうに解釈をして、これは簡単なことでして、反対がないようにするためには余り詳しく説明しなければよろしいわけで、しかももっと言えば当事者がいるかいないかわからないなどというふうに、調査しなければ反対も出ないということになります。それから、すぐに反対すれば家庭裁判所へ送ろうとか、または親権を喪失させてしまう、こういう動きが時々、特に虐待問題などについてございます。  私はそういうことが無効であるとかやってはならないということを申し上げているわけではないんですけれども、あくまで福祉としては親に対するサービスをいかに具体的に行っていくのか、このことが問題であると。局長がおっしゃいましたように、実はそれが児童福祉法ではほとんど規定がない。この規定がないままにした上で例えば親権というようなことを福祉関係者が言うのは私はいかがなものかと思っておるわけでございまして、そんなことは考えられていないとは思いますけれども、ぜひこの辺はまた御注意していただければと、御留意いただきたいと思っております。  次に、話題を少し進めまして、今申し上げたのが言うならばもう非常に古い形の理念でございますが、新しいといいますか、現代に合わせた形というものがございます。それは施設入所主義から在宅支援主義というような、まあ勝手に言っているんですけれども、こういう考え方じゃないかなと思うわけでございます。  先ほどお答えになったところは除いて結構でございますので、今後この在宅サービスというようなことを児童福祉法の中ではどのように位置づけていこうというようなお考えがあるのかお聞かせいただきたいんですが。
  28. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 現在の児童福祉法上は在宅サービスについては直接的な規定は余りないのでありますが、まさにこれから見直す際においてはその辺を法制的にどうするかという問題が一つございます。  ただ、法律の書き方はともかくとしましても、まさにこの児童福祉につきましても、地域における支援というような体制をどう整えていくかということは非常に大きな課題でありますから、そういった意味で在宅というものをかなり重視した施策の展開ということが必要だろうというふうに思っております。  一方、それと同時に、やはり施設でどうしても暮らさなきゃならないという子供たちもたくさんいるわけでありますから、そういった施設生活する子供たちの質的な内容の充実というものをどういうふうに図っていくかということも大きな課題でありまして、その辺のバランスをどうとっていくかということについて十分検討していかなきゃいかぬ、こんなふうに思っております。
  29. 山本保

    山本保君 後のことは非常に重要なところでございます。  在宅指導、在宅支援をするんだから施設は要らないんだというような県も、施設縮小ばかり進めているようなところもあるようでございまして、これはまさに局長がおっしゃったように施設の機能がより専門的に、そして多様な生活をしている方を直接応援するわけですから、これまでのようにあるところで切った人たち施設に入れて、そしてその方たちだけに決まった、定式化されたサービスをするのと違うということで、より専門的なところを高めていただきたいと思っておるわけです。それはその次に申し上げます。  一つだけちょっと補足しておきますと、実は児童福祉法二十七条の一項には二号措置というのがございまして、ここには「児童又はその保護者を児童福祉司、精神薄弱者福祉司、社会福祉主事又は児童委員に指導させること。」という条文があります。これが実は私が見ますに唯一の家族、親に対する児童福祉法支援の根拠規定であります。しかし、この規定だけでは実際動きません。この辺はもっと具体化するようにといろいろ私も努力したんですけれども、なかなか難しいです。ぜひこの辺についてもっとこれを現代に合った形で展開していただきたいと思っておりますので、それはお願いします。  もう一つ、この在宅ということで忘れてならないのが実は、児童福祉分野には非常に珍しいといいますか、歴史的には古いんですが、里親制度というのがございまして、これは障害を持った方とか、またお年寄りにはこの制度はそのままは難しいところで、まさにかわいらしい子供という、本当に子供だけにある特権であるかと思うんですけれども、実際にはなかなかうまく使われておりません。一部の学者には、里親制度などは日本には向かないんだというようなことを言う方がおられまして、私は暴論だと思うんですが、そうではなくて、まさに制度の欠陥であると思っておるわけです。  里親制度改正というようなことをこれからもお願いしたいと思っておるんですが、何かこの辺についてお考えがございますでしょうか。
  30. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) この里親制度は、これはアメリカ等ではかなり進んでおるんですが、日本の場合は登録者は八千人ぐらい今もいるんですけれども、言葉も里子という言葉とか里親という言葉がよくないと言われておるんですが、ここは便宜使わせていただきますと、実際に里子に行っている子供というのが二千人ぐらいだということで、そういった意味ではマッチングがうまくいっていない面もあろうかと思います。  この辺、制度的にもっと弾力化を図っていくとか、いろいろ工夫をしていったらどうかということが言われておるわけでありまして、この辺の問題も今回の検討の中であわせて御議論いただこうかなと思っております。
  31. 山本保

    山本保君 ぜひお願いします。  私は、里親制度一つの桎梏というのは、養子縁組制度と非常に類似した形をとっておって、これがまさに現在のボランタリーな精神を持った若い方たちに受けないんじゃないかと思っておるわけです。  ですから、こういう子供をずっといつまでも預かっていくというスタイルではなくて、例えば週末とか休日、お正月などに見るというようなものも制度の中に取り入れていくことであるとか、そうなれば当然家族に全部任せるというわけにはまいりませんので、若い方たちの子育てを応援するような専門スタッフをきちんとこの里親制度の中で確保して応援することであるとか、また里親さんといいましても実はほとんど法律的には権限が何もない、実際上子供の親権者とまた子供の権利というものと対抗するような権利は、それは難しいとは思いますけれども、しかし現実子供を一生懸命育てている里親さんの意見が全く制度に生かされないような形にもなっておりまして、一度やった方もこんなのではもう嫌だというような声も聞くわけでありますので、ぜひこういうところをひとつ検討していただきたいと思います。  それから、養子縁組についてちょっと言いましたが、養子縁組というのはもともと裁判所の仕事でありますけれども、福祉の方にも実は養子縁組あっせん事業というのがありまして、私らのときにつくったわけなんですが、なかなかうまく動いていないとも思っております。これは特に国際養子などで大きな問題がございまして、近いうちに法務委員会の方で取り上げたいと思っておりますので、そのときにはまた御協力いただきたいと思います。  次に、四つ目の問題になるかと思うんですが、実は専門機能、専門性というものをいかに高めるかということであります。福祉というのは、私は肩入れするわけではありませんけれども、教育や医療などにも引けをとらない専門的な職種である、専門職であると、こういうふうにつくっていくべきではないか。そうでなければそれを受ける子供たちも、また親御さんも不幸でありますし、一生懸命働く方にとっても、十年も二十年も働いてもちっとも給料が上がらない、だからもう退職せざるを得ない、こういうような状況。これはいろんな問題がありますが、一番原則的に言えば、根本のところは福祉というものが専門性が低いと見られているわけでございまして、この辺をぜひ重視していただきたいと思っているわけであります。  今度の改正では、例えばこの児童福祉の専門職員の養成課程というようなものについて改正していくというようなお考えはお持ちでありませんか。
  32. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 今度の改正の中でそこまで広げられるかどうかという問題が実はございます。  もちろん、御議論していただこうと思いますけれども、これはなかなか難しい問題で現在も、むしろ逆に、我が国の福祉の場合は戦後基本的なシステムができたというようなことから、どちらかというと福祉サイドは非常に専門性というものを余りにも強調し過ぎるんじゃないかという御意見もあります。そのために適当な人材がきちっと回っていかないというような御指摘も一方であったりしておりまして、例えばそれぞれの専門家ということでいろんな新しい名前の職種をつくるというようなことがいいのかどうかということになりますと、その辺のところはいろんな意見があろうと思います。そういった意味で、例えば児童指導員とか児童厚生員、あるいは児童福祉司とか、こういった児童関係だけでもいろいろな名前を冠した専門職が現在あるわけでありまして、私はむしろこういった専門職の方々が十二分に力を発揮できるようなシステムなり教育制度なり研修制度なりというものをどう充実していくかということがやはり優先されるのかなという認識でおります。  ただ、御指摘の趣旨も十分私どもわかりますので、それを念頭に置きながらこの辺のところは考えさせていただきたい、こんなふうに思っております。
  33. 山本保

    山本保君 私としてはその辺はちょっと考えを異にするわけでございまして、今の職員というのはまさに施設におるから名前が違うというようなことで、その職員の中身についての規定ではないと。言うならば、専門学校程度の保母さんという規定が一番中心にあって、そのほかいろいろ名前がございますけれども、よく見てみますとほとんどそれについてのカリキュラムも確定していないし、国も何もそれを指定もしていないということをぜひ認識していただきたいなと思うんです。これは大学院マスター程度まではきちんと置いた、そういう大きな専門の課程を考え、その中でさまざまな段階の職員、専門家をつくっていくというような制度をまずつくるべきだと私は思っております。  二番目は、これは冗談半分と聞いていただいてもいいんですが、もっとそれ以上に実は効果を上げる方法がありまして、それはまさに行政部門にもっと福祉の専門家を登用することであります。  私の経験からいきましても、実はアメリカなどでは福祉をやっている役所では局長クラスまで福祉の専門家がちゃんとそれなりのポストを持っております。ところが、残念ながら我が厚生省は、ヘルス・アンド・ウエルフェアのはずなんですが、ウエルフェア部門については私がそうであった課長補佐ポストが最高でありまして、それも計画的に養成しているわけではありません。これでは福祉の人材がきちんと伸びてこないと思います。もちろん、大学にそのための講座もないじゃないかとか、こういう問題を言い出しますともうこれはどちらもどちらでありますから、ぜひここは勇断を持って審議官ポスト、課長職相当ポストなどをつくっていくようなことをお願いしたいなと思っておるわけでございます。これはお願いでございますのでどうぞ聞きおいてください。  その専門性と絡めて一つだけ、これはもう時間もあれですのでちょっと申し上げますが、児童相談所という機関があり、これが児童福祉の一番の中枢でございますけれども、児童相談所については先ほどの御説明でもちょっと出てこなかったような気がするんですけれども、これについて何かこれから見直していくことはお考えでございますか。
  34. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 冒頭申し上げた大きな三つの体系というものを基本に見直しお願いしようということで進めておるわけでありますが、その三つの体系を担う各種のいろんな行政組織、あるいはまたボランティアの組織等々マンパワー関係の問題があろうと思います。  それはそれらとの関連においてどういうようなシステムが一番いいのかというような観点考えていきたい、そんなふうに考えておりまして、そういった意味では一つの児童相談所のあり方そのものを見直すというような柱を、立ててはおりませんけれども、当然のことながらそういった行政機関のあり方を含めた検討をしていくことになるというふうに思っております。
  35. 山本保

    山本保君 今、児童相談所は基本的に言えば県にあるわけでございまして、県の機関となるわけですが、年間非常にたくさんの相談件数を受け、やっております。  今まさに福祉の流れは地域へということで市長村に移管するというような問題も出てくるわけでありますけれども、私は、しかし福祉にはそういう例えば障害者とかお年寄りのように本来町の中でみんなで生活していた人を、この戦後の経済成長の最中、そういうことでは効率が悪いということで施設へ閉じ込めていったような施策が今や改善を迫られている、こう考えます。  しかし、一方、この児童福祉で顕著なように、また先ほども申し上げたような親の問題または問題を起こした子供の問題のように、プライバシーを守り、その弱さをずっとこう抱きかかえて隠してあげる、こういうような機能が非常に重要なわけでありまして、この機能は簡単に市町村へおろせるものではないというか、なるべくそういうものから外していくことであります。ですから、児童相談所というのを、ただ形式的にすべて福祉のものは下へおろせばいいというのではないということだけちょっと御注意をいただきたいなと思っております。  次に、五番目の観点になりますけれども、これは私が勝手に言っているのかもしれませんが、今までの福祉というのは幼少期中心主義といいますか、小さな子供中心であったと。例えば、昭和四十九年に出た中央児童福祉審議会の基本的答申がありまして、大分前ですが、しかしそれ以後出ていませんのでこれがいまだに残っているわけですが、そこにも「福祉行政において重点的に援助を要する児童の年令は、特に幼少の児童」であるという一文も出てまいります。  これは福祉だけが悪いわけではなくして、まさに発達心理学その他も今までは大人になるところ、青年期ぐらいまでを問題にしておりました。ところが、最近この十年、生涯にわたる発達という観点が非常に重要になってきまして、お年寄りもまたそれなりのすばらしい生き方に対する努力をされ、またそれなりの効果があるというような視点が学会でもだんだんと確立してきております。先ほども局長ちょっとおっしゃいましたけれども、私は中学校以降の児童への福祉というものも学校に任せるのでなくしてやっていただきたいと思っているんです。  そこで、時間もありませんので具体的に一つ申し上げますが、実は登校拒否の子供に対する専門施設として情緒障害児短期治療施設というのがあり、この施設は法律ではおおむね十二歳未満の児童を入所させるというふうに規定しておるわけですが、これは全く実態と合っていないと思うわけですけれども、これについては、この名前の施設を残すかどうかということは別としまして、ぜひこの改正を早急にといいますか確実にやっていただきたいと思うわけですが、その辺についてどうお考えでございますか。
  36. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 施設体系全体をどういうふうに構築するかという問題がありますけれども、現行の情緒障害児短期治療施設、これはまさに法律上はおおむね十二歳未満の児童ということを対象にしておるんですが、実態は入所児童の六割が中学生でございます。そういった意味からしますと、この法律の趣旨と実態というのはかなりかけ離れておりまして、やはり全体的な見直しが必要だというふうに考えております。
  37. 山本保

    山本保君 この施設は非常に数も少ないと。これは理屈は簡単でございまして、先ほどちょっと申し上げましたように、児童というものを、この子は親がいない子である、この子は情緒障害を有する子である、この子は非行を犯した子である、こんなふうに分けていっておるものですから、施設の中で今申し上げたような子供は実はみんな一緒なわけです。しかも、登校拒否になるような子供は普通の子供さんであります。  ですから、そういうことを考えますと、他の施設というときに、学校教育も連携し精神科のお医者さんもおり、そして心理治療のセラピストもいるという、こういう新しいタイプの施設がちっとも伸びないということでありますから、これは施設体系全体を見直すときに、その子供たちに対する心理的な治療を中心とする福祉施設という類型で、またそれに特殊教育なども参入する総合的な施設というのがこの機能だと思いますので、ぜひこの際これはその線で進めていただきたいなと思っております。  それから、少しだけ時間がありますので、実はまとめにもなりますが、児童福祉というのは、今ちょっとおっしゃったように、児童福祉だけで全部できるわけではありません。さまざまな、特にこの場合は教育部門、そして大きな子供になってきますと労働部門、そして医療と、こういうのが非常に関連してくるわけでありますけれども、確かにこれまでなかなかそういう連携というのがうまくいっていなかったんじゃないかなと思っておるわけです。  一つだけ例として、大臣おられますが、これは実は前の森井厚生大臣からも積極的なお答えをいただいたわけであります。教護院という施設があり、これは先ほども申し上げた感化法を受けた施設でありますけれども、その理念は非常にすばらしいと思うんですが、現実にはなかなかうまくいっていない。それを邪魔している一つの原因として、すべての子供が今学校へ行っている時代であるのにかかわらず、教護院に入っている子供は義務教育を受けることができない。できないというのは言い過ぎでも、しかし法律上受けなくてもいいという規定がある。  この規定は昭和八年にできた規定でありまして、当時としては福祉の方は頑張った、学校教育がやりたくないと言っている者に対して、実際上それなりのことをやっているんだからちゃんと卒業認めなさいよというわけですから、私は当時としては非常に子供たちのための法律であったと思うんです。しかし、六十年以上たちまして、五十年どころじゃないわけですが、今になってみますとそういう規定があるがゆえに、その昭和八年の法律がほとんど変わらず実は児童福祉法にあるわけであります。  この昭和八年の法律は議員立法でできた法律ですので、私はもし厚生省が余り積極的でないなら議員立法でやろうかなんて勝手に思っているわけでございますけれども、学校教育を受けなくてもいいというような規定について、ぜひこれを削除といいますか、削除というと何か言葉を急に今思い出しましたけれども、そういう意味ではありませんが、この法改正をやっていただきたいなと思うわけでございますけれども、局長、いかがでございますか。
  38. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 教護院の子供の教育の問題というのは、これはかねてから議論の非常にあるところであります。もともと学校教育からドロップアウトした子供たちでありますから、そういった子供たちを再びきちっと復帰できるように教育をする、これはなかなか大変なことだろうというふうに思います。  そういった意味では、教護院の教育というのは里に義務教育を授けるということにとどまりませんで、いわゆる全人教育といいますか、そういった意味での教育というものが目標にされているというふうに思います。  問題は、形だけの義務教育を受けさせるということではいけないわけでありますから、こういった義務教育制度あるいは学校教育制度と、それかりまた教護院における教育のあり方、これらをどう実質的な意味確保していくかということは非常に大事だというふうに考えておりまして、この辺のところはかなり議論があろうと思いますけれども、そういった議論を十分踏まえて、そして関係者の合意のもとに必要な法文の修正なり手当てというものを考えていくべきだと、こんなふうに考えております。
  39. 山本保

    山本保君 おっしゃる意味もわかりますけれども、しかしはっきり申し上げれば、それは二つのことを非常に混同されております。  事実上、子供たちに実質的ないい教育が与えられるかどうかということは、まさにこれは教育方法とか学校経営の問題でありまして、そういう問題と、法の体系として義務教育を受ける、普通の学校教育を受けることができるかできないかという問題は、これは私は明らかに別のことであると。  そして、先ほど申し上げたように、実はこれは昭和八年という古いときに当時の文部省と内務省との間でつくられた条文でありまして、といいますか、結局調整がつかずに議員立法になったわけですけれども、その辺のところもぜひ局長、積極的に踏み込んで、もちろん現場の方のよい教育のためには今の学校教育など来てもしようがないという意見は一見もっともですけれども、これは制度論という意味ではありません、ぜひそこは変えていただきたいと思います。  それで、もう一つだけ教護院について申し上げますと、教護院は名称を変えてもだめです。というのは、実は今申し上げたのは四十八条ですが、四十四条に不良行為をなし、またはなすおそれのある子供を入れるという先ほど言った条文があります。これが実は問題なんです。これは実は感化法の最初にはなかったんです、こんな言葉は、いつできたのか。十年ほど後にできたんですが、当時司法省が少年法をつくりたい、そこで司法省と内務省の闘いがありまして、そのときに内務省側が、いや我々はすべての不良少年を入れるんだということで突っ張ってつくったのがあの条文なんです。  ですから、今や少年法と児童福祉法がまさに上手に多様な対応をしましょうという時代ができたときに、もう既にこの四十四条の不良行為云々というのは意味がない法律なんですよ。しかし、これは残っておりますから、これもぜひ変えていただきたいということを強く申し上げます。  まだほかにもございますけれども、最後厚生大臣、長々と余りおもしろくない議論をしたかもしれませんが、しかし児童福祉法は先ほど申し上げたように実は各福祉の一番基本でございますので積極的に改正をしていただきたいと思っておるんですけれども、その決意のほどをお願いしたいと思います。
  40. 菅直人

    国務大臣菅直人君) ただいま山本委員と児童家庭局長のいろいろな質問とその答弁を聞きながら、私もこの分野は必ずしも制度的な意味ではそう詳しいところではありませんでしたから余計にいろいろと参考になる御議論をいただきました。ありがとうございました。  児童と家庭を取り巻く環境というのは、もちろんこの戦後五十年で非常に変化してきたわけですけれども、特にいじめの問題とかいろいろな問題、最近この院でテレクラの問題なども堂本委員か取り上げられたりいろいろしているようですけれども、どう言ったらいいんでしょうか、何が子供を育てる環境として不十分なのか、ちょっと極端な言い方かもしれませんが、かつての経済的には貧しかったし社会的には厳しい条件の方が子供かしっかり育って、逆に経済的にはかなり豊かになってきているけれども、あとは学校に行け、成績をよくしろ、受験、受験と言われているような社会の方が子供たちが、何といいましょうか、強い子供たちが育ちにくい。強いという意味は、必ずしももちろん体のことだけではなくて、精神的にもなかなか難しい問題を抱えるケースが多いわけですけれども、そういう点でこの非常な変化の中で従来の児童家庭福祉政策体系というものが十分対応できなくなっているということは私にも十が予想されるところであります。  そういった意味で、今の御議論なども踏まえて、現在中央児童福祉審議会に特別部会を設けて見直しの検討に着手をいたしているわけであります。二十一世紀少子高齢社会を控え、子供たちを健全かったくましく育て上げ、次代の担い手として社会に送り出すことが必要であり、児童家庭福祉政策の充実は活力ある社会の基盤づくりという観点から最も重要な課題一つ認識いたしております。  そういった意味で、大変難しい議論もこれからあるというふうに思いますけれども、山本委員はこの面での専門家でもいらっしゃいますので、ぜひいろいろとアドバイスをいただきながらまた議論を進めさせていただきたい。  どうもありがとうございました。
  41. 山本保

    山本保君 どうもありがとうございました。
  42. 田浦直

    ○田浦直君 私は、厚生大臣所信につきまして、主として医療問題について御質問を申し上げたいというふうに思っております。  大臣もおっしゃられておりますけれども、急速な高齢化社会によって国民医療費が高率に伸びる一方、保険料の収入というものは経済的なものを反映して伸びないというふうな状況にあるわけです。この傾向はこれからも一層広がっていくのではないかなというふうな気がするわけですけれども、この国民医療費というものを考えたときに、一体これからどういうふうにやっていけばいいのかということを非常に私も心配に思っておりますし、疑問にも思っておるわけでございます。  この点について大臣に率直に、これからどう取り組んでいかれるのか、どうしたらいいのかということについてまずお尋ねをしたいというふうに思います。
  43. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 国民医療費が高齢化進展に伴って増大する一方では、最近の経済基調の変化で、今もおっしゃったように、保険料の収入は伸び悩んでおります。このために医療保険財政平成六年度において政府管掌健保でも約二千八百億円という大幅な赤字ということで、このことはもちろん他の健康保険制度でもかなり赤字基調が強まっているわけです。  このような中で国民皆保険体制の維持とその効率的な運用を図っていくことが大切だと考えております。このために、今後の医療保険制度のあり方について、医療保険審議会において幅広い観点から御審議をいただいているところであります。  昨年八月の論点整理的中間取りまとめの中では、医療供給体制のあり方を含め、幅広い視点に立って医療適正化対策を講ずるとともに、それでも国民所得の伸びを上回って国民医療費が増大する場合には、保険料あるいは国、地方公共団体負担給付の範囲の見直しや患者負担のあり方について総合的に検討する必要性が指摘をされているところです。  今後、関係審議会でさらに掘り下げた議論をいただくとともに、その結果を踏まえて高齢社会にふさわしい良質かつ適切な医療を効率的に確保するため、平成九年度における医療保険制度の抜本的改革に向けて努力してまいりたいと思っております。  今おっしゃいましたように、医療費というものをどういう形でその質を落とさないで医療費の伸びを抑えていくかということは常にあった問題ではありますが、特にこれから数年というのはその問題が大変重要になってきているんだと思っておりますし、公的介護制度議論をする中でも、先ほどの他の委員の方にも申し上げたように、従来のように医療福祉あるいは年金というものをそれぞれの制度の中でどう伸びていくかというように考えるだけでなくて、場合によってはそれらの制度を再構築する中でより効率的な形でその医療費といいましょうか、そういう福祉に係る費用を活用していくことによって全体としては医療効率化確保するということも考えなければいけない大きな問題ではないか、このように認識しております。
  44. 田浦直

    ○田浦直君 高齢化社会にふさわしい良質かつ適正な医療を効率的に確保するというふうなことになるかと思うんですけれども、これにつきまして平成九年度の制度改革に向けて取り組んでおるということも発言をされておられるわけですけれども、この平成九年度の制度改革というものの中身といいますか、それはどんなことなんですか。
  45. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) まず、現在の国民健康保険の対策が平成七年度、八年度の暫定対策でございまして、かつ老人保健制度におきましても、現在の拠出のあり方につきまして七年度を起点に三年以内に見直しを行えということがまず法律の上では規定されております。  したがいまして、国保の立て直し、それから老人保健の特に拠出金をめぐってのルールを見直すということ、これがもう最低限求められておるわけでございますが、ただいま大臣から御答弁ありましたように、そういう単なる国保なり老人保健の見直しでは済まされない状況にございますので、もう少し広い観点から、かつこれからの経済社会の構造変化も念頭に置きながら制度の安定化が図れるような方向で根本から見直してみる必要があるんじゃないだろうか、そういうスタンスで臨みたいと思っておるわけでございます。
  46. 田浦直

    ○田浦直君 そうしますと、その制度改革というのは平成九年度にはできる、平成九年度が終わったらできるということなんですかね。
  47. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) そういうテーマが大きければ大きいほど、やはり九年度からようやく手がけられるということじゃないかと思っておりまして、完成するというまではちょっと断言しかねると思っております。
  48. 田浦直

    ○田浦直君 国民医療費というものはやはりこれから伸びざるを得ない、もう高齢化社会ですから。これはもう高齢化社会が進む一方だというのはどうしようもないわけなんですね。そうすると、お年寄りの方が病気にかかるというのもこれはもうどうしようもないというふうに思うわけですね。  したがいまして、国民医療費というものを考えたときに、一つはそのパイを大きくするか、一つ医療費自身を抑制するか、この二つしかないというふうな気がするんですね。私は今のところを見ておると、医療費を抑制するということで何とかおさめようというふうな傾向があるような気がするんですけれども、そういうことはございませんか。
  49. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) そうあっては医療そのものがいわば、経済用語でございますが、縮小再生産になってしまいますので、それはまずいんじゃないだろうかと思っています。むしろ医療水準はどんどんこれからも上がってまいるはずでございますし、機械も、それから薬剤も、それからいろんな手法につきましてもなおなお研究され、新しいものが開発されるはずでございますので、そういったものと保険財政を念頭に置いた調和をどの辺で図るかという、そういうこととして問題を見るべきではないかと思っております。
  50. 田浦直

    ○田浦直君 それで、そうおっしゃっていただけば非常にありがたいんですが、私どもの方からいえばこれは当然パイを大きくする、その中に例えば介護保険なんかも今度は新しくできてくるという意味もあるのかなと私は自分ではそういうふうに思っておるわけなんですね。やはり、国民医療費が伸びない、収入がなくなる、それだから医療を何とか抑える、これは非常にまずいやり方だと思いますので、ぜひパイを広げる方に努力をしていただきたいなというふうに思うんです。  この国民医療費に一番関連のあるのは、これは診療報酬だと思うんです。四月から診療報酬が新しく変わります。これがもう出されておりますが、今度変わる診療報酬のねらい、どんなことを目的にこの診療報酬を変えられるのか、その辺をひとつかいつまんで御説明をお願いしたいと思います。
  51. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) まずは急性期医療とそれからいわゆる長期療養、こういったものにつきまして適正な評価をしたいと考えております。それから、療養型病床群の整備を促進する、いわゆる慢性型になっておるお年寄りの受け皿整備という意味でございます。それから、病院と診療所の機能分担、連携を図る、それから薬剤費がいろいろ問題になっておりますので医薬品の適正使用、それから分業もいろいろ問題になっておりますので適正な医薬分業を進める、こういう観点も取り入れたいと思っております。あわせまして急性期の医療、小児医療、精神医療、それから歯科の関係でございますが、これからふえるであろう歯周疾患治療、こういったニーズの高い分野につきまして技術料を重点的に評価をする、こんなことでもって結果として良質な医療確保できるように、こういうことをねらっておるつもりでございます。
  52. 田浦直

    ○田浦直君 今度の改定は実質アップというのは〇・八%と言われておりますね。恐らくこれは四月から二年間それでいくということにおおよそなると思うんですね、例年二年ごとに改定をしていくわけですからね。  そうしますと、今多くの病院、特に官公立病院なんかほとんどは赤字経営をしておるわけですが、その〇・八%上げて二年間もてるかどうか、今でも赤字なのがこれから二年間、これはもう人件費も上がりますし物価も上がる、あるいはいろんな高価な薬とか機械も出てくるでしょう、そういうことを考えたときに、私はこれはちょっと難しいんじゃないかなという気がするんですね。今でも病院が幾つか倒れておるというふうな状況ですから、今後さらに赤字病院が広がってくるのではないかなと危惧をしているんですけれども、そういったところについてはどういうお考えを持たれておりますか。
  53. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) 改定に当たりまして、物価、人件費の動向を十分配慮をして、それから先ほど申し上げましたようないろいろな目標、目指す点も配慮をして、それでいわばどれだけふえるだろうかという計算をした上で、一方で医療収入がどれだけ想定されるかというのでいわば差し引きでその穴埋め分を改定幅として設定したつもりでございます。  そういう意味では、私ども、内容改善を図りながら、かつ物価、人件費の動向にも対応しているものというふうに認識しておりますが、個別にはやはり病院経営、診療所経営は非常に苦しい点もございます。そういう意味で、経営の工夫をしていただきながらこの改定の趣旨に沿って対応していただければ医業経営の安定にもつながっていくのではないだろうか、こう考えておる次第でございます。  なお、診療報酬改定は御指摘がありましたように大体二年に一回の改定ルールになっておりますが、これにつきましてもいろいろ御議論がございまして、毎年改定をすべきではないかというような意見もございます。といいますのは、やはり物価、人件費の動きに的確に対応していくというためにはそういうこともあっていいんじゃないかという、こんなことも関係の審議会などでは議論があるところでございます。  それから、当面の問題としましては、九年度に消費税見直しが行われて料率が引き上げられるというふうなことになりますと、消費税関連の診療報酬見直しはぜひとも必要でございますので、そういう動きがあるならば私ども改定をお願いしなきゃいけないんじゃないだろうかと、これは当面の話でございますが、そういうふうに考えております。
  54. 田浦直

    ○田浦直君 ちょうど今、局長から話が出ましたから、質問しようかなと思っておったんですが、消費税の問題、恐らく来年の四月には上がる、これは法律で決まっておるわけですから。何%かということはわかりませんけれども、この消費税というのは病院にとっても非常に負担になるわけですね。  それで、ことし診療報酬を上げたので、二年といいますとこの消費税分がどうなるのかなというふうなことを私は非常に心配をしておったわけですけれども、来年も診療報酬改定があるというふうに考えてよろしゅうございますか。
  55. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) 繰り返しになりますが、消費税率が上げられるということであれば私は必要だと思っておりまして、そういう方向お願いしたいと思っております。  なお、消費税関係をしてどのように診療報酬上扱うのかという点につきましては大変議論がございまして、もう先生も十分議論の経過を御承知だと思いますが、いろいろ方法があるのではないかと。現在、点数上で幾つかの点数を引き上げることによって転嫁できない消費税の分に対応しているという、そういう方法をとっておりますが、この方法がいいのかどうかという疑問が呈されておりまして、これは関係の審議会でこれから十分練ってもらうということにしております。
  56. 田浦直

    ○田浦直君 僕も今の消費税分の上乗せの仕方はちょっと診療側にとって不利な感じがしておるわけですね。その辺はぜひ検討をしていただきたいというふうに思っております。  それから、今度の診療報酬の改定で一つ二つ細かいことを言いますと、非常に複雑になっているんですね。例えば、看護料の組み合わせだけでも百三十種ぐらいあるんですよ。もう診療機関の専門家でもわからない。どれをとったらいいのかというのがわからないような非常に複雑化しておるわけですね。やはり、規制緩和、規制緩和と言っているわけですから、非常にそういう意味では規制がきつくなってきているという感じがするんですね。例えば、医師を何名、薬剤師を何名、看護婦を何名、それも正看、准看、いろんな組み合わせがあるわけです。ある意味では人的な資源のあるところには高いお金をあげようという配慮かもしれませんけれども、逆に言いますと非常に規制が強くなってくるという印象はぬぐい切れないところがあるんですね。したがいまして、この点はやっぱり簡素化するような方向にぜひ持っていっていただきたいなというふうに思うわけでございます。  それからもう一つ、これも細かいことですけれども、入院中の患者さんが他の医療機関を受診した場合、例えば精神科の病院に入院している人が目が悪いからといって眼科に見てもらいたい、こういった場合に、今までは眼科の方で請求を出すことができたんですね。今度はそれができないと書いてあるんです。これはどうしても理解できない問題なんですね。ちょっと正確に読みますと、  他の保険医療機関の外来を受診することになった場合における診療報酬の請求は、入院医療機関の診療報酬明細書の摘要欄に他医療機関での診療に係る合計点数を併せて記載するとともに、他医療機関における診療に係る所定点数を記載した診療報酬明細書を添付して診療報酬の請求を行うものとし、 こう書いてあるんですね。しかも、その診療報酬の分配は相互の合議にゆだねると書いてあるんですよ。  これはちょっと医師や医療機関にとってはできないだろうと私は思っていますけれども、どうしてこういうふうな改定をされたのか、ちょっとお尋ねをしたいというふうに思います。
  57. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) 点数表をにわか勉強しておりますが、状況を御説明申し上げますと、入院中の患者さんが入院の原因以外の病気になった、けがをした、こういう場合には従来ですとその入院している医療機関でいわば自己完結的にお世話をしてくださいというルールにしておったわけでございます。ところが、それは非常に問題じゃないかという意見がございまして、どうしても当該の病院や診療所で対応できないというケースについては他の医療機関にかかることはいいですよと、こういうルールをつくったわけでございます。  それじゃそのときの点数の請求はどうやるんだと、こういう話になりまして、それで今御指摘がありましたように、もともと入っている病院や診療所の方で請求してください、しかしほかのところでかかった分はそれだけ渡さなきゃいかぬですからその分を添付して請求してくださいと。合わせ技一本でとりあえずもともとの病院の方から請求してもらって、ほかにやむを得ずかかった分を分けてもともとの病院から払ってください、こういう仕組みにしておるわけでございまして、しかしそこは相互のまさに合議が必要なので、合議をちゃんとしてくださいねと、こんなふうな取扱方針にしたつもりでございます。  確かに面倒だということも御指摘あるかもしれませんが、そもそもこういうことが出てまいりましたのは、もともとが初めに入っていた病院で全部お世話してくださいと、こうやっていたことが不便だということから始まったことでございまして、その点ひとつ御理解いただきたいと思います。
  58. 田浦直

    ○田浦直君 だから、もしそういうふうな理解ある気持ちでそういうふうにされたとおっしゃられるなら、その診療を受けた診療所からの請求でいいんじゃないかと。それをわざわざもとの病院にこれだけ要りましたと、これは診療所の先生にとっては非常にある意味では屈辱的なんです。何で病院にそれを出さなければならないのか、よその病院にそれを見せなければならないのか。そしてそこの病院の先生と私とが合議して診療報酬の中で何%ずつもらいますと、例えば一万円あれば税金とかいろんな配慮もあるでしょうから五千円下さいとか、そういう話し合いをしろということですからこれはちょっと医者としては受け入れかねると私は思っております。この点についてはぜひ検討をしていただきたい。  しかも、この場合の取り扱いは、例えば診療所がもらう方のお金はこれは診療報酬になるんですか、それとも自己負担になるんですか、自由診療のお金になるんですか。病院の方からいただくお金はどういう性格のお金になるんですか、合議していただくお金は。
  59. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) 診療報酬そのものでございます。  それで、なぜ一等初めに入院の原因になったその病院、診療所で扱ってもらうかといいますと、やはり主たる病気がそこにあるはずでございますので、その主たる病気と関連して、関連してかあるいは偶然的に発生した他の病気とのトータルの判断が必要だと。ところが、もともと入院をしているところでは対応できないような性格のものだから他のところにお願いするわけでございまして、原則はやはり一人の患者さんを当該の病院で完結的に診てもらうというのが原則ではなかろうかなと思っておりまして、ある意味では便宜的な措置としてこのようなルールを開いたわけでございます。  その点につきましては、先生おっしゃいましたような御意見も踏まえて、これは医師会と相談してこのようなルールに決めたわけでございますが、御指摘のような御意見もあったということを前提にしながらまた意見交換をいたしたいと思います。
  60. 田浦直

    ○田浦直君 その辺はぜひもう一度検討をしていただきたいと思います。  それから、大臣所信の中にも盛られていますけれども、高齢化社会をやはり何とか、予防すると言ったらなんですけれども、少しでもカーブを落とすためにはやはり子供さんをたくさんふやすことだと思うんですね。高齢化社会を何とか、やはり社会的な活性を高めるためには子供さんをふやすということがこれは一番大事なことだというふうに思うんです。  私はずっと厚生委員会の議事録を読んでいますけれども、乳幼児の医療費というものについて無料化してほしいという意見が結構たくさん出ておるんですね。しかし、それに対しては大体にべもなくそれはだめだというふうに御返事があっています。私は、今までは医療費を対象にしただけのことであったかもしれぬけれども、これからは社会的な活性を求めるという意味で乳幼児の医療費というものも考えていかなければならないんじゃないかなというふうに思うんですけれども、ひとつこの乳幼児の医療費ということについて無料化できないものかどうか、御答弁をお願いしたいと思います。
  61. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 乳幼児の医療費の無料化、いわゆる医療保険自己負担部分を公費で見てはどうかというお話だと思います。この問題につきましては、実態的には今県単事業で全国ほとんど行われておるわけでありますが、それを国の制度としてきちっとつくったらどうか、こういうようなお話だろうと思います。  これは、かねてからのお答えの繰り返しになって申しわけないんですが、やはり子供の対策といいますか、子育て対策というのは非常に重要であるということは、これはもう私ども十分認識をしておりますし、そういった中であらゆる政策というものを展開していかなきゃいけないというふうに考えておるわけでありますが、この医療費についてそれでは無料化という格好にいくのがいいのかどうかという問題になってまいりますと、やはり我が国の医療保障制度の基本はこれは医療保険制度でやっておるわけでありますが、そういった中で医療保険制度のシステムとして受診者に一定の一部負担を課しておるという格好になっておるわけであります。  そういった制度でありますけれども、特に児童対策というような観点で、例えば難病の子供たちとかあるいは未熟児あるいは障害児、こういった特に手厚い援護といいますか援助が必要な児童についての疾病等につきましては、現在既に医療費の公費負担はやっておるわけでございます。  そういった意味で、乳幼児医療費一般についてすべて無料化をするということは、全体の政策の優先順位等々考えた場合に私どもとしてはやはりこれは適当ではないんじゃないかというふうな考え方で、これを無料化していくという考え方は持っていないということでお答えを申し上げておるわけでございます。
  62. 田浦直

    ○田浦直君 大体そういう答弁をずっとしてありますよね、読みますと。  私がちょっとわからないのは、例えば老人は無料なんです。一部負担はありますよ、千十円とかね。だけれども、子供は有料なんだと。これは大体三割。これはどういう理由なんですか、老人は無料で。今の御説明だとおかしいんじゃないかなと僕は思うんですが、その点はどういうふうな解釈でそうされているんですか。
  63. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) 高齢者の一部負担をいわゆる定額にしておりますが、これにつきましてはいろいろ老人保健制度見直しの際に議論がございました。  そもそも老人保健法ができたときに、今までいわゆる無料化しておったものを有料化するというわけなので、その有料化に当たって一体どういう形のものがふさわしいのかという議論がございました。お年寄りの経済考えますと、年金がかなり大きなウエートを占めておる。そうすると、収入が限られておるのだから医療を受ける際の窓口負担についてはやはりあらかじめわかっておくものがいいのではないかという、定額の一部負担制をとるべきだという議論が非常に多うございました。我々働いている者ですと、御存じのとおり、健康保険本人ですと一割の自己負担でございますが、そういうふうに定率がいいのか定額がいいのかという議論が随分なされまして、結局今申し上げましたような老人の家計、経済ということを考えるとあらかじめ窓口負担が決まっておった方がよろしいということで定額の一部負担制がとられたというふうに私ども理解をしております。  ただし、これにつきましては、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、医療保険のありようにつきまして関係の審議会で御議論いただいておりまして、平成七年の八月に医療保険審議会で検討の中間取りまとめがなされておりますが、その中では「患者負担や保険料負担における世代間の公平の観点から、高齢者医療費については、受益に応じた負担を含め、高齢者に応分の負担を求めるという考え方についても検討が加えられる必要がある。」と、こういう指摘がなされております。  こんなことをベースにしながら高齢者負担関係をどう考えるか、こういった議論を深めていきたいと思っております。
  64. 田浦直

    ○田浦直君 私もそういう考えはよくわかるんですよ。だから、そうなれば例えば子供さんも一割ですよ、お年寄りも一割ですと、これならわかるんですよね。だけれども、子供さんは三割です、お年寄りは無料です、千円負担すればいいんですと、これはやっぱりおかしいと思うんですね。  特に、今から子供をたくさん育てなければならないという家庭にとっては、これは経済的な負担もあるでしょう。お年寄りの人が必ずしも裕福だとは言いませんけれども、僕はどちらかというと子供さんの方に無料にしてやりたいなというぐらいな気持ちがある。だから、そうはできなければ、せめてどちらも一割ぐらいにするぐらいな配慮ができないものかなというふうに思うんですね。これからやっぱり日本が社会的な活性化を求めていくためには子供さんをとにかくたくさんつくることだということですから、その辺をぜひ、また機会があったら質問をしますので、もう一遍検討をしていただきたいというふうに思います。  それから、厚生省の方から指導大綱あるいは監査要綱というのが出ているんですね。今度三十五年ぶりに改正された。  いつでしたか、塩崎委員からも歯科医師の方が自殺をされたというお話もありました。これは平成七年のことですが、平成五年にも富山でお医者さんがやっぱり自殺をされている。最近そういうのがどんどん出てきているような感じがするんですね。だから、この指導大綱、監査要綱というのを私も読んでみましたけれども、これはさらにまたそれを強化しようというふうなところがあると思うんですね。  この要綱をつくられた意味といいますか趣旨、それについてお尋ねをしたいというふうに思います。
  65. 岡光序治

    政府委員岡光序治君) 御指摘がありましたように、今までの指導、監査につきましていろいろ問題点が御指摘されました。これは医療関係者からも問題があるんじゃないかという指摘がありましたが、支払い者側からももっときちっとやれという指摘もあったり、両サイドからの指摘が実はございまして、中医協で一年ほどかけて議論をいただきました。その結果が今回の見直しになったわけでございます。  基本の考え方といたしましては、これまでの指導、監査の考え方をそのままベースにいたしまして、より制度を御理解していただいた上で、その制度のルールに従って適正な保険診療を実施していただきたい、こういうことをお願いしようということにしているわけでございます。  指導の面につきましてやや行き過ぎの指導があるんじゃないか、それが大変不幸な事態を招いていることにもつながっているんじゃないかという、そういう指摘もございましたので、今回の見直しにおきましては、ただすぐに個別指導に入るのではなくて、そういう個別指導に入る前にいわば保険のルールをよく知ってもらうという、私ども教育的観点という生意気なことを言っておりますが、よくルールを知ってもらうという、そういうことを念頭に置いた、私どもの用語では集団的個別指導ということで、病院なら病院病院も総合病院と単発の病院とありますし、それから診療科によって例えば内科と精神科では全然違っておりますので、そういう似たようなグループをグループ化しまして、それでそのグループの中でほかの似た仲間の人たちと比べた場合に点数が非常に高い、こういう場合に集まっていただいて、あなたのところはこんなぐあいな位置づけになっていますよということを個別名がわからないような格好にしながら何となく認識をしていただいて、なるほどほかの人たちとおれのところは違うんだなということをまずわかってもらおうと。そして、なぜそういう高い点数になっているのかということについて、仲間の人たちと比べながら、どうあったらいいんだろうかと、こういったことをいわばお互い勉強してもらう。しかも、これは医師会なり歯科医師会なり、そういう専門団体にも御協力をいただいて、そういういわば個別指導に入る前に、事前に教育的な観点から簡便な方法でひとつ勉強してもらおうと、こういうルールを入れたつもりでございます。  そして、普通は個別指導でやりまして、問題のあるようなケースが出てまいりますと、経済的にはその部分を自主返還してもらう格好になっておりますが、今導入しようとしております集団的個別指導ではその返還金も求めない、本当に勉強し合ってもらう、こういうことをやろうとしているわけでございます。  要するに心は、お互いそういう制度を勉強しながら保険のルールというものを理解した上で、それでそのルールのもとで最もふさわしい適正な保険診療をやってもらおうじゃないか、そのことをお互い勉強しながら理解をしていきましょうねという、そういうことを入れたつもりでございまして、あとはそういうことを見ながら、どうしても問題があるケースにつきましては個別指導を行い、あるいはまた個別指導でも対応できないということであれば監査に入っていくという、十分わかっていただいていわば自立を促すという、そっちの方にこの指導、監査のあり方を持っていきたいということのあらわれだというふうに理解しておりまして、決してめちゃくちゃに警察権力みたいなことを振り回すのではなくて、よくよく理解してもらうということを前提にしようではないかという改正のつもりでございます。
  66. 田浦直

    ○田浦直君 もう時間ですから最後に申し上げたいと思うんですが、指導なんですよね、監査と違って。だから、今、局長が言ったようなそんなやわらかいことをやっておれば、だれも自殺しませんよ。自殺がもう知っておるだけでも二人も出ておる、この近年。あるいはまだそういうふうになっていなくてもいろんなトラブルが起こっておる、そういうことですからぜひ気をつけてやっていただきたい。もしそういう人が今度出たら、これはあなたの責任ですよ。指導大綱を新しくつくって、あなたはそういうのは出ないというふうな確信を持ってつくられておるかもしれませんけれども、そのくらいのことをぜひ思って発言をしていただきたいと思うんですね。  特に、これを見て感じているのは、今、局長がおっしゃられたような、監査に移行するような指導というのがにじみ出ているんです。今まではそうじゃなくして指導だと。指導をするということで、たとえまずいことがあっても、もう一遍指導します、もう一遍指導しますという姿勢だったんだけれども、今度のはそうじゃなくして、指導した結果これはやっぱり監査に移す、監査を頭に入れた指導になっている。その辺が私はちょっとおかしいんじゃないかなというふうに申し上げたわけでございます。  この点についてまた時間があったら再質問をさせていただきたいと思いますけれども、人命にかかわっていることですからぜひ十分な配慮をしてやっていただきたいというふうにお願いをいたします。  どうもありがとうございました。
  67. 今井澄

    委員長今井澄君) 本件に対する質疑はこの程度とし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十八分散会