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1996-06-14 第136回国会 参議院 金融問題等に関する特別委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年六月十四日(金曜日)    午後一時開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         坂野 重信君     理 事                 中曽根弘文君                 前田 勲男君                 吉村剛太郎君                 直嶋 正行君                 林  寛子君                 一井 淳治君                 筆坂 秀世君     委 員                 笠原 潤一君                 金田 勝年君                 佐藤 静雄君                 関根 則之君                 楢崎 泰昌君                 服部三男雄君                 平田 耕一君                 保坂 三蔵君                 真島 一男君                 松村 龍二君                 三浦 一水君                 阿曽田 清君                 荒木 清寛君                 牛嶋  正君                 海野 義孝君                 高橋 令則君                 益田 洋介君                 山下 栄一君                 渡辺 孝男君                 伊藤 基隆君                 大脇 雅子君                 梶原 敬義君                 山本 正和君                 吉川 春子君                 小島 慶三君                 佐藤 道夫君                 奥村 展三君    政府委員        大蔵大臣官房審        議官       永田 俊一君    事務局側        常任委員会専門        員        小林 正二君    公述人        財団法人住宅都        市工学研究所特        別研究員     小村 哲夫君        流通科学大学商        学部教授     上田 昭三君        東京国際大学経        済学部教授    田尻 嗣夫君        女性団体職員   高田 公子君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○特定住宅金融専門会社債権債務処理促進  等に関する特別措置法案内閣提出衆議院送  付) ○金融機関等経営健全性確保のための関係法  律の整備に関する法律案内閣提出衆議院送  付) ○金融機関更生手続特例等に関する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○預金保険法の一部を改正する法律案内閣提出  、衆議院送付) ○農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○特定住宅金融専門会社が有する債権時効の停  止等に僕する特別措置法案衆議院提出)     ―――――――――――――
  2. 坂野重信

    委員長坂野重信君) ただいまから金融問題等に関する特別委員会公聴会を開会いたします。  本日は、特定住宅金融専門会社債権債務処理促進等に関する特別措置法案金融機関等経営健全性確保のための関係法律整備に関する法律案金融機関更生手続特例等に関する法律案預金保険法の一部を改正する法律案農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案及び特定住宅金融専門会社が有する債権時効停止等に関する特別措置法案、以上六案につきまして、四名の公述人方々から御意見を伺います。  御出席をいただいております公述人は、財団法人住宅都市工学研究所特別研究員小村哲夫君、流通科学大学商学部教授上田昭三君、東京国際大学経済学部教授田尻嗣夫君、女性団体職員高田公子君、以上の方々でございます。  この際、公述人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。  皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  本日の議事の進め方でございますが、まず、小村公述人上田公述人田尻公述人高田公述人の順序で、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、まず小村公述人にお願いいたします。小村公述人
  3. 小村哲夫

    公述人小村哲夫君) 財団法人住宅都市工学研究所特別研究員小村でございます。  本日、この席に参加させていただきましたこと、幸いでございますので、私なりの見解を申し上げたい、こんなふうに思います。  今回の住専の問題におきましては、予算が通過した、なかなか長い時間かかったということでございますけれども、アメリカにおきましては一九入一年にこういう問題が発生いたしまして、RTCは一九八九年でございますが、一九九五年、昨年度にこれについての一つめどがついたというふうな報告を受けておりますが、これらをいろんな資料をもって見ておりますと、予算の使い方ということに非常に真剣に取り組んだんではなかろうか。また、予算あり方については、単に予算化をするということだけではなくて、その使い道をどうしたらいいのかということで長い時間をかげながら、そして今日の一つめどがついたと、こういうふうに感じております。  今回の予算化をいたしました後はどうするか、これは日本経済最大の問題でございます。恐らく過去の日本経済史におきましても、将来必ずこの時期の問題については意見もたくさん出るでしょうし、また論議もされましょう。しかしここで学ぶべきことは何かということが今後も長く語り続けられるものだと思っております。特に今回のこの予算の中で何が重要か、これは土地流動化でございます。バブルと言われている中での大きな問題、やはり土地流動化ということが叫ばれておりますけれども、具体的にどうするか、これにつきましてはなかなか統一された見解が出ていないように思っております。  そこで、私といたしましては、なぜ土地流動化が進まないのか。これはアメリカでも同じでございましたけれども、この担保の問題、いわゆる不良債権の持っている担保が多重化している、こういう問題をどうするか。RTCにおきましては、一括で清算して第一抵当権設定権者になるという抵当権あり方について大きな一つ解決策を出したんではなかろうかと思っております。  一方、アメリカ市場では個人投資家が多いとかいろいろ言われますけれども、不動産につきましては、常に売るものと買うもの、買うものが幾らなら正しいのか、それもわからずじまいで、ただ隣の価格だけで決めるという、こういう土地に関する不透明性という問題も解決しなければならない問題ではないかと考えます。  今、日本におきましては、インターネットとかいろんな機械が進んでまいりました。その中で不動産情報も流れますが、この不動産情報というのは正しい価格なのか、あるいは投資で買う人も、値下がりしないんだろうか、それについての判断材料が本当にあるんだろうかと、出す人は個々人のことばかりで、これが公的な立場で明確になっているんだろうかという不安と疑心暗鬼の中で土地問題が語られております。  あげくの果てには、今回の住専問題でたくさん土地が出てくるとか、いろんなうわさが立ちますと、もともと日本国土土地といいますのは希少価値のあるなかなか得がたい土地であったにもかかわらず、何かその辺からぼろぼろ落っこってくるというふうに勘違いする方もいる。だから、待っていた方が得だと。常に土地については損得勘定がつきまとうわけでございますが、やはり土地というのは大切なものでございます。  一生涯かかって買うものであるならば、そういう値下がりというふうなことだけに目を向けるんではなくて、この土地は将来どうすべきか、どういう価値のあるものなのか、有効性のあるものなのか、これを素人の人にもわかるような仕組みをつくる必要があるんではないか、こんなふうに思っております。  今回、住専に関しましては、常にいわゆる住専赤字補てんみたいな、そういうところの論議がされておりますが、赤字補てん会社といえども力はあります。かつて不動産取引をした者もたくさんいる。この人たちがどうやったら生き生きとしてやれるか。やっぱり赤字補てんということの論議をするのではなくて、この税金のお金をどういうふうに使うかということを私は考えていただきたい。  私はアメリカの方に行きまして、私なりにアメリカの事情も聞いております。アメリカでは、ただ単にRTC一社で動いたんではなくて、民間の方もたくさん協力したと聞いております。その中に生まれてきたものが、日本ではこれからいろいろ論議しなきゃなりませんけれども、オークションという技術が進んだりしております。また、電波の利用といたしましては、テレビによる不動産情報の流し方、日本も相当テレビ技術は進んでおりますが、それを不動産事業に使ったという例もアメリカには見られます。いろいろ学ぶところはアメリカにありますが、しかしこれはアメリカの例でございます。やはり日本日本流のやり方を考えなければならないと考えます。  不動産業界にかかわる方々不動産宅建業は全国で十九万社から十七万社あると言われています。これほど大きな企業があるにもかかわらず、不動産流動化についての結集した形がまだ見当たりません。こういう問題というものは私ども感じておりますので、それを国政の一環として、その仕組みとかあるいは責任性とかというものをぜひ論じていただきたい。  これは単に不動産ということになりますとすぐ建設省ということになりますが、法務省大蔵省、農林省、国土庁、そして建設省、一番土地あり方について知っているのは建設省でございますが、この建設省だけに分化しているというのもまた問題、やはりこれだけの各省の方々が一体となって民間を指導するということのあり方をぜひ考えていただきたい。  以上でございます。
  4. 坂野重信

    委員長坂野重信君) ありがとうございました。  次に、上田公述人にお願いいたします。上田公述人
  5. 上田昭三

    公述人上田昭三君) 流通科学大学教授上田昭三でございます。本日、住専問題につきまして私の意見を述べる機会を与えていただきましたことを大変ありがたく思っております。  早速内容に入らせていただきますが、まず、政府の今回の住専処理策がまとめられます直前の経緯から少し振り返ってみますと、農林系金融機関政府は第一次損失分として一兆一千億円の負担を求めたとされております。ところが、負担できるのは五千三百億円だけという農林系金融機関の言い分を政府は受け入れて、そこでこの穴埋めの必要額に若干の金額を加えた六千八百五十億円を財政資金支出するという政府案が最終的に決められました。  さて、この政府案は、最も問題となる点についての決定の仕方が非常に非民主的な上、明らかに税金でもって破綻同然の民間金融機関を不当に救済しようとするものでありますので、国民に大きな損害と不公平を、また今後金融業全体に、ひいては日本経済弊害をもたらし、その上、ルールによらない非常に不透明な処理の仕方は日本国際信用を損なうものであると私は信じております。  と申します根拠は次のとおりであります。  まず、税金支出決定の仕方に重大な問題があるように思います。すなわち、五千三百億円がぎりぎりという農林系金融機関の主張の数字的根拠について、大蔵省国民に何も明らかにしないまま巨額税金支出を決めたということであります。これでは税金が全く私物のように使われるということでありまして、民主主義ルールに反する暴挙であるように私は思います。  大蔵省は、ふだんの予算案の査定の際には、わずかな金額の要求につきましても、これは大事な国民税金を使うのだからという理由で非常に厳格な態度をもって査定されていると常々聞いておりますが、一体これはどうしたことでありましょうか。  第二に、仮に農林系金融機関が真実五千三百億円しか負担できないとすれば、そのままでは残りの五千七百億円の回収不能債権に対する、農林系の場合は貯金でありますが、貯金は少なくとも支払い不能ということに機械的になります。この場合、貯金者保護と、ひいては金融システムの保全のためにこれだけの支出はやむを得ません。しかし、それはあくまでもこれら二つの目的のためにのみ限定されるべきであります。  それなのに、金融機関の中の破綻同然のものの存続を許して、というより救済存続させるために税金支出されようとしております。それも、その存続必要性はなく、国民にとっても全く納得がいかず、また国民にとってさらに大きな損失のもととなるにもかかわらずであります。  そこで、まず存続の必要がないとする根拠を申し上げたいと思います。  この財政支出について政府の言う最大の名目は、そうしなければ多数の金融機関破綻して金融システムが揺らぐからということであります。しかし、これは全くこじつけと言わざるを得ません。国際業務を広く営みますところの大銀行の場合はともかくといたしまして、普通の中小金融機関の場合は、破綻いたしましても、それらの預金支払いが保証さえされているならば取りつけ騒ぎは起こらず、したがって金融システムが揺るがないことは、一昨年以来の我が国金融機関破綻の際の実例が示しているところであります。  ただし、昨年八月末に破綻いたしました大阪の木津信用組合の場合は混乱が起こりました。しかし、これは預金の全額が保証されるという政府の方針が木津信預金者に対して十分に説明される前に業務停止命令が出されたという、当局の処理手続上の初歩的な不注意ミスによるものでありまして、本来は起こり得ないところのものであると思います。  さらに、アメリカ実例でありますが、一九八八年から九二年までの五年間に、この間に金融機関倒産アメリカでは一番多かったわけでありますが、この五年間に少なくとも二千五十五もの中小規模銀行貯蓄貸付組合破綻消滅いたしました。これは一年当たりの平均で見てみますと四百十一でありまして、何と一日に一行以上の割合で五年間も続いて金融機関が破産、倒産、消滅していったというわけであります。ところが、一日にこれだけ、正確に申しますと平均一・一機関破綻消滅いたしましても、それらの預金支払いが保証されていたがために預金者金融システムには何ら混乱が生じませんでした。こうして預金者保護金融機関救済とは無関係であることを日本アメリカの例が明白に実証しているのであります。  それゆえ預金者のための財政支出といいましても、それは金融機関が実際に破綻してから、現実預金の払い出しの必要が生じたときに預金者保護目的のためになされて初めて正当化されるものでありまして、破綻前の財政支出当該金融機関救済をも兼ねる明らかに不当なものと言わざるを得ません。  次に、金融機関破綻する前に同じ金額財政支出をして預金者保護し、それが同時に当該金融機関救済となることがなぜ不当なのかと言われる方があるかもしれません。しかし、私は不当と思うわけでありますが、その根拠は次のとおりであります。  第一は、農林系金融機関のうち本当は破綻する状態にないものにまで税金支出され、単にそれらに税金をプレゼントすることが起こり得るからであります。現に、五月二十九日の衆議院金融問題特別委員会で、一質問者に対し農林水産大臣はこう言っておられます。農林系の九五年三月期の内部留保は一兆三千億円しかない、そのうち五千三百億円拠出するのだから経営への影響は甚大だというものであります。  要するに、農林系は、五千三百億円の負担をした後、まだ余裕金が七千七百億円あるということであります、ぎりぎりの負担と言われてきたのに、巨額余裕資金のあることがはっきりしたわけであります。ところが、こういう農林系追加負担を求めるどころか、やはり六千八百五十億円の税金を現段階では投入するというのは、まさに税金の不当な私的プレゼント以外の何物でもありません。余裕金のある民間企業国民巨額の血税をなぜわけもなく与えねばならないのでありましょうか。  さき阪神大震災被害者が、震災によって喪失いたしました住居の再建に政府の援助を求めたことに対しまして、そのようにすると、政府私有財産の形成・喪失に個別的な関与をしてはならないという私有財産制度原則に反することになるとして拒絶したことと完全に矛盾するわけであります。こんなに不公平、不公正、そして非道なことはあるでしょうか。  次に、税金による預金支払いは、当該金融機関が消滅する場合でも、他の金融機関放漫、不健全な経営を助長する弊害、いわゆるモラルハザード弊害をもたらします。まして破綻金融機関がそのまま存続させられる場合はこの弊害が極度に拡大し、税金支出の一層の増大を導いて、国民により大きな損害を与えることが十分に想像されるわけであります。この弊害は、同じ政府内の経済企画庁すら、昨年十二月に発表いたしました「日本経済の現況」におきまして、「公的資金導入問題点」として指摘されております。  もう一つは、破綻同然の金融機関破綻しないで直接間接保護されますと競争はいつまでも活発化しないということであります。従来でもカルテル的預金金利は目に余るものがありますが、それがもっとひどくなるということであります。その結果、国民は大きな損失をこうむり、また我が国金融業国際競争力が低下して、日本経済の発展を阻む大きな要因となることが考えられます。  そこで、私は現在の政府処理策は絶対に不可だとするわけでありますが、根拠は以上申し上げましたとおりであります。  では最後に、財政支出が仮になされる場合、どういう処理方法がとられるべきかについて私の考えを申し上げます。  結論から申し上げますと、法治国家である我が国では、当然ながら、破綻同然の金融機関は他の一般企業の場合と同様救済せずに清算消滅させるということでありましょう。それゆえ、かかる金融機関は当然のこととして速やかに清算させることとし、その手続に入った段階預金者保護のための必要額財政支出がなされるべきであります。そのようにいたしましても、さきに申し上げましたように金融システム混乱は何ら起こりませんし、またこうすることによってのみ財政支出額必要最小額にとどめることができるからです。  ところで、破綻同然で存続させるべきでない金融機関とは一定期間実質的に債務超過赤字決算を続けているものを指しますが、こういうものの中にはみずから清算しないものもありますでしょう。それについては、法律の定めるところに基づいて行政庁業務停止命令を出し解散させるほかはありません。  ところで、今回の場合、もしこういう方法をとって解散、清算をすることとなった場合、農林系金融機関母体金融機関の間で、こういう結末になったことへの責任の所在について大蔵省も交えて争いが起こるでありましょうが、それは当事者間の問題でありまして、国民には直接関係のないところであります。当事者間で解決されればよいというわけであります。  そして最後は、住専関係不良債権の詳細な内容の公表を行い、かつ住専放漫経営責任者破綻同然の住専の無理な延命を図った大蔵省責任者、そして金融機関住専関係責任者責任法律に基づいて厳正に追及することでありましょう。それなのに今回の処理は、国民の目からいたしますと不透明でありまして、果たしてこういうことがなされるのか国民の間でも大いに疑問視されているところであります。  ちなみにアメリカでは、一九八〇年代後半以降、多数の破綻金融機関預金支払い税金が使用されました。そして、一九九五年、昨年六月三十日現在で、これらのSアンドしの貯蓄金融機関預金支払いに関していろんな不始末を起こした幹部のうち、経営責任に関して起訴、告訴をされた者は三千七百九十三人、そしてそのうち刑務所入りをした者は二千五百六十三人とこのアメリカ法務省資料は示しております。  このように公正かつ厳正に処罰されなければ、懲りない面々によって再び不祥事が発生すると国民の多くは危惧しているわけであります。このことを政治家の皆さんはどうか真剣に考慮していただきまして、ぜひ厳正な措置をこの面においてもとられるように要望いたしまして、私の意見公述を終わらせていただきます。
  6. 坂野重信

    委員長坂野重信君) ありがとうございました。  次に、田尻公述人にお願いいたします。田尻公述人
  7. 田尻嗣夫

    公述人田尻嗣夫君) 東京国際大学田尻でございます。重ねてのお招きをいただきましたことを心から感謝申し上げたいと存じます。  さて、本日、私が申します見解の前提といたしましてぜひ御認識いただきたいことがございます。現在必要なことは、平成金融危機と言われる危機に対してどう対応するかということでございます。金融危機対策というのは、単に預金者の取りつけ騒ぎが起こらなければよろしいという、パニックを回避するための方策だけであってはならないということでございます。  その理由は以下のとおりでございます。  預金者の取りつけ騒ぎが起こって銀行の前に行列ができるというのは金融危機としては最終局面でございます。それよりもはるか早い段階マーケットにおきまして、例えば銀行間市場、国際的なあるいは国内銀行間市場におきまして取りつけ騒ぎが進行するわけでございます。あるいは企業金融の面でも混乱が先行するわけでございます。  つまり、金融危機対策というのは、預金者パニックを回避するということだけでは極めて危険なことでございまして、それ以前から市場対策に注意深い手当てが必要であるということが第一の理由でございます。  第二の理由は、仮に銀行間市場あるいは企業金融面混乱が起こらない場合でありましても、通常のマーケットにおきまして、金利変動為替相場変動、個々の銀行取引あるいは企業取引におきます信用のリスクの問題等々を通じまして、それが国内の物価にはね返る、資金コストにはね返るという形で、国民に最終的にはそれらすべてのコストが転嫁されていくというメカニズムがあるからでございます。  つまり、パニックは起こらない、世の中は静かに見えているけれども、その危機の本質がもたらしておりますコストの上昇ということが国民生活に直接間接にはね返りつつあるのが現実であるということをぜひ御認識賜りたいわけであります。  第三番目は、住専処理の問題、特に財政資金投入問題に関連いたしまして大変長い時間論議が続いておるわけでございます。しかし、後ほど申しますが、財政資金投入よりもはるかに大きな金額が、一般的な公的資金、広い意味での公的資金と申しますが、中央銀行等から既に投入されておるわけでございます。  不良債権問題の処理は先送りすればするほど極めて高いものにつくというのが欧米社会の教訓でもございます。そういう意味で、早急に手を打つと同時に、公的資金投入についての原則と申しますか基準と申しますか、そういうルールを早急に打ち立てることが必要でございます。一般会計からの財政資金投入にせよ中央銀行等からの資金投入にせよ、どのようなルートを経過いたしましてもすべては国民の資産が消費されるということに変わりはないわけでございます。  四番目は、日本金融産業と申しますか金融業界におきます技術革新経営革新の大幅な立ちおくれが、日本国民の資産を次の世代に引き継いでいくという重要な役割、使命に将来響きかねないような状況に今なってきておるわけでございます。これは、日本国民が将来の利益を得る機会を現在目に見えないところでどんどん失いつつあるということでございます。そのような観点から金融危機対策というのは取り組まれるべきものでございまして、預金者保護ができれば、あるいはパニックが起こらなければ、それで時間をかけていいんだということでは決してないということをまず申し上げておきたいと存じます。  さて、本委員会で御検討されておられますいわゆる金融六法案についての見解でございます。  これら六法案は、先ほど申しましたような観点から申しますと、危機対策のごく部分的な対応でございます。つまり、これは不良債権問題の処理としてもまだ入り口の段階でございまして、第二次損失の問題あるいはノンバンク等々、予想されます金融破綻の展望というのは、考えれば考えるほど大変な事態に今あるということでございます。そういう意味で、危機管理の体系が現在まだ見えていない、そういう状況で、この入り口の段階でこれ以上時間をかけることは適当でないと私は考えております。金融六法案は、そういう意味で緊急性が極めて高いものでございます。  いろいろ指摘されております決定プロセスに至る国民感情の問題もございます。さらには、内容的に種々の不備もあることは私も承知いたしております。しかしながら、今必要なことは、我々が金融六法案をスタート台にいたしまして、危機対策を体系立ったものに早くつくり上げていくということが何よりも必要かと存じます。  住専処理法案について申しますれば、先ほど申し上げましたように、公的資金投入は既に巨額に上っております。国民の関心が六千八百五十億円に集中しておりますけれども、申しましたように、それをはるかに上回る金額がなし崩し的に投入されている現実の方にも注意を喚起いたしたいと存じます。  この公的資金が直接間接危機対策として投入されているルートを簡単に申し上げますと、まず第一に、年金資金とかあるいは簡易保険の資金が株式市場対策として投入されてきた、いわゆるPKO資金の問題でございます。  二番目は、日本銀行が特別融資をいたしております。これは、中央銀行として当然の最後の貸し手機能を発動したものでございます。しかしながら、法的に疑義のある出資にまで既に及んでおるわけであります。今般、新しい追加負担に絡みまして、新しい基金に日本銀行資金を動員するという構想も出てきておるやに仄聞しております。  第三番目は、日本銀行による通常の貸し出しあるいは公開市場操作の場におきまして、問題銀行との取引シェアがどうなっておるのかという点も明らかにされる必要がございます。  四番目には、預金保険機構からの資金贈与、出資、融資が既に巨額に上っておることでございます。  五番目には、都道府県からの財政資金投入が続いております。  六番目は、共国債権買取機構などをつくることによって、税法上の恩典をフルに活用するという形での税の減免措置がとられておるわけでございます。そして、今般、一般会計からの財政資金投入問題が論議されておるということでございます。  そういう広い意味での公的資金全体として問題をとらえていく必要があろうかと思います。理論的には、債務超過をいたしました金融機関処理をいたしますには、預金を切り捨てるかあるいは公的資金投入するか、そのどちらかの選択しかあり得ないわけでございます。現在、五年間預金の切り捨てをしないという方針が有効である限りは、公的資金投入はこのポスト住専の展望を考えますと、もはや避けて通れない事態に我々は立ち至っておるわけでございます。したがいまして、一日も早く公的資金投入についての原則、基準を確立することが先決であると私は考えております。  次に、今回の一連の金融破綻処理について申し上げたいと存じます。  現在、追加負担等の問題をめぐりまして当局と関連業界との間でいろいろ論議が続いております。この過程を見ておりますと、三つのことが教訓として引き出されようかと存じます。  第一は、事態が発生してから奉加帳を回すような、そういう破綻処理の方式というのは完全に行き詰まったということでございます。次なる危機の場合におきましては同じような手法はもはや使うことができないということでございます。  二番目に考えますことは、その話し合いをまとめる段階におきまして当局と業界の間に見えないところで新しいいわゆる貸借関係、貸し借りの関係が発生していくということでございます。これは、もう言うまでもなく、護送船団行政をそのまま延長していくだけのことでございます。  三番目は、問題の処理を官僚の調整能力というものに全面的に依存した、そういう形での解決方式というものが国民感情の上でももはや限界に来たということでございます。そういう意味市場の規律を活用する処理方式というものを早急に確立していただく必要があろうかと存じます。  金融システムは極めて大切なものでございます。これは、健全な通貨を実現する基盤であると同時に、経済社会の資源配分を効率化することによりましてマクロ経済を拡大していくというフローの面での重要な機能を帯びております。もう一つ、我々の労働の成果を次の世代に引き継いでいくためのストック面の役割が極めて大きくなってきておることでございます。そういう意味で金融改革問題と政府、議会の役割というのは極めて大きいものがあるわけでございます。  市場の規律を活用するには何よりもまず政府の規律が必要でございます。  その中身は何かと申しますと、第一には、規制の緩和ではなくて規制の撤廃をしていただきたいということであります。段階的な規制の緩和は新たな行政指導、新たな規制を生むだけのことでございます。  二番目は、金融機関あるいは商品、サービスを選別淘汰するという作業は市場にゆだねていただきたい。そのために十分な情報開示をする必要がございます。  三番目は、官僚の裁量主義による業者行政をやめまして、ルール主義による市場行政に転換することでございます。規制は撤廃をし、監督は強めていく必要がございます。それは、市場の失敗は起こる可能性が高くなるからでございます。市場の失敗は政府が補正する役割を帯びております。ところが、政府にも政策の失敗、政府の失敗という事態が必ず発生をいたします。  それでは、政府の失敗をだれが補正するかと申しますと、これは議会でございます。議会が体系的、主体的、戦略的に金融問題をお取り上げいただき、その将来を方向づけていただく場が必要になってくるわけでございます。私は、大蔵省改革、日本銀行の独立性の強化と並びまして、議会における金融問題に取り組まれる体制づくりが不可欠であろうかと思います。  平成金融危機対策というのは、そういう意味で大蔵改革、日本銀行の強化、そして議会の体制づくりがいわゆる三点セットとして国民の前に示されるべきだというふうに考えております。  ありがとうございました。
  8. 坂野重信

    委員長坂野重信君) ありがとうございました。  次に、高田公述人にお願いいたします。高田公述人
  9. 高田公子

    公述人高田公子君) まず最初に、衆議院では開かれませんでした公聴会をこの参議院で開き、公述の機会を与えてくださったことに感謝申し上げます。  私自身は、共働きで二人の子供を育て家計を預かる主婦として、どんなに赤字がふえ苦労を強いられても、主婦の責任で家族の協力も得てやりくりをしております。その庶民の感覚からしますと、苦労して払った私の税金住専の乱脈経営のツケにどうして支払わなければならないのか納得することができず、反対の立場から三点にわたって公述させていただきます。  まず一点目は、昨年十二月、住専への不良債権処理国民税金六千八百五十億円をつぎ込むと発表されて以来、さまざまな世論調査が発表されておりますが、住専への投入については八割から九割近くの人が反対しております。いずれの調査も生活に根差した女性の方が数%前後高く反対の声を上げておりますが、なぜ国民の声が無視されてしまうのか疑問に感じます。  多く寄せられている女性の声の中で、住専処理に渡すお金があれば阪神大震災の被災者の方々を何とかしてあげてほしい。とりわけ、私有財産制度我が国では、私有財産損失回復は自助努力によるべきで税金支出は妥当でないと個人補償を拒否されましたのに、大きな銀行私有財産税金で補償されようとしているのはどうしても納得ができません。  仮設に入居されている方の七割が年収三百万以下で、既に孤独死が六十人を超えております。震災で失業し、雇用保険が切れた人が何人も自殺しております。せっかく地震で命が助かったのにと思うと本当に、六千八百五十億円もあれば被災者の方々十万人に今すぐ六百八十万円もお渡しすることができるのです。大銀行や悪質な不動産業者を救済するお金があるなら、被災者に個人補償して命をつなぐ救済をしてほしい、血の通った温かい政治を望む九割の国民の声が生かされる政治を心からお願いいたします。  二点目は、国民の怒りがおさまらず、より深く広く進行していることは、不況が続き、私たちの生活が深刻になっているからではないでしょうか。  私が所属しております女性団体新日本婦人の会では、二十年前から二百名を超える専門家の家計簿モニターによって毎月家計調査を集計し、毎年五月十日には三千五百名規模の生活調査を行っております。委員の皆さんのお手元にもお渡しいたしておりますが、その生活調査によっても、生活が苦しくなった、ひどく苦しくなった、この方々が六五%を占めており、家計を圧迫しているものに、政治に責任のある教育費や、そして家賃・住宅ローン、税金が上位を占めております。家計のやりくりは衣料費と教養・娯楽費、最近は食費まで削っているのが八割を占め、主婦の楽しみである買い物や人間的生活を営む上で欠かすことのできない文化などは実生活の中からは消えつつございます。  私たちの家計簿の二十年間の特徴は、実収入に占める消費支出の割合は年々下がる一方で、この二十年間八二%から六七%に下がっております。つまり、租税・公課が大きくふえたことによって消費支出の率が年々減少しているのです。七五年の租税・公課は二万三千八百九十円、実質収入に占める比率は八・二%でした。ところが、九四年の租税・公課は十三万六千七百四十円、金額で七五年の五・七倍、名目収入の伸びがこの間二・八倍であるのと比べても異常な増加だと思います。実収入に占める比率は実に一七・〇%、さらに実収入から貯金や生命保険などの掛金を引いた額で比較しますと二〇・一%、七五年に比べ二倍以上のふえ方です。  二十年間を通して年金や健康保険など社会保障費は租税・公課全体のほぼ五〇%近くを占めております。一九七五年から数年間は所得税の減税なしによって所得税の占める比率が非常に高く、その後は地方税の税率アップによって税金負担が家計の中でもずっしりと重くのしかかっています。それだけに、税金の使われ方への国民の関心、そして思い、怒りはおさまらず、国会で予算が通った後も、街頭に立っていても「怒りの一言ボード」や署名は瞬く間にいっぱいになります。  私たち新日本婦人の会は、この間、二十万を超える署名を集めましたが、その署名の中にはたくさんの女性の切実な声が寄せられております。その一部を紹介しますと、この春、子供の受験で合格はうれしかったんだけれども、百三十万円はどんなにやりくりしてもできずに、私はパートの首を切られ、ローンを借りても返すめども立たず、結局保険を解約してしまった。老後を考えると不安で眠れない夜もある。  また、別の女性は、アトピーの子供を抱え働くこともできず、一歳までは医療費が無料だったにもかかわらず、子供の成長とともに医療費が有料になったので、治療に月十万円も超え、本当につらい。  神奈川県の座間の業者の女性は、ことしの二月、日産の下請けの木型屋さんが首つり自殺をしてしまいましたが、他人事ではありません。うちの商売はブロックの仕事をしていますが、以前、親会社が不渡りを出してつまづき、夫は何日も帰ってこないし、千円で何日も暮らすことがありました。子供には食べさせないわけにはいかず、子供の寝顔を見ながら何度も死にたいと泣きました。夫を恨み、交通事故で死ねばいい、そしたら保険金も入る、そう思うこともありました。自分では死んじゃだめと思っても、こんなにつらい、いっそのことと何度思ったかしれません。  また、関西の別の女性は、夫が不況で首切り、長女も就職が決まらず、家のローンの返済の不安を家族と話し合っていたら、名義人のお父さんが死んだら借金はなくなるよ、銀行が保険に入っているからと笑い話になりましたが、私たちは借金を返せなくなったら死ぬことを考えるのに、政府住専処理に私たちの血税を使おうとしています。腹が立って仕方がありませんなど、さまざまな思いが二十万の署名の中にはたくさん寄せられております。  国会には既に三百二十万を超えて署名が寄せられていると伺っております。この三百二十万国民の背後には、住専処理に私の税金を使ってほしくない九割の国民の声があることを重く受けとめていただきたい、このように思います。  また、自治体へ住専処理に公金を投入することに反対する意見書採択にお願いに行っておりますが、どこでも積極的に受けとめられ、千を超える自治体で決議されております。  私ども新日本婦人の会を含め、地婦連や主婦連など日本の女性五十一団体が一緒になって国際婦人年連絡会をつくり共同行動を積み重ねておりますが、そこでも住専処理に私たちの税金を使うのはおかしいという決議を一致して上げ、それぞれの団体でも運動を行っております。  三点目に感じることは、母体行に責任があり、負う力がある、そう思います。  国会での審議が進み、テレビ討論会や新聞報道によって、私たちは住専がどんな会社で母体行がどんなにたくさんお金を持っているか知れば知るほど、国民は納得するどころか、疑問を大きくしていっております。  七〇年代に住宅ローンの仕事を目的に続々つくられた住専が、好景気の中でもうかることがわかると、親会社である大銀行が住宅ローンの分野に進出し、子供の仕事を取り上げ、仕方なく子供はリスクの大きい不動産融資にのめり込んでいき、バブルの崩壊でその大半が不良債権化したと聞けば、だれだって何とひどい母体行、親が子供を食べると言われても仕方がないのではと思ってしまいます。  しかも、母体行はことしの三月期の決算では純利益は六兆七千億円と伺い、これまたびっくりです。公定歩合の相次ぐ引き下げで私たち庶民の預貯金金利はないに等しいものになってしまい、年金生活者など命をすり減らす不安におびえているにもかかわらず、その私たちの懐から吸い上げたお金で富を築いているのですから、バブル時代に住専を使い乱脈経営の限りを尽くした銀行信用を取り戻すためにも母体行が追加負担をする以外にない、このように思います。住専問題で母体行が責任をとるということは、国民だけではなく国会の皆様方も含めた共通の認識になっているのですから、母体行に責任をとるよう強力に御指導を強めていただきたい。当然、住専処理法案はその上で廃案にしていくのが筋ではないでしょうか。  私たち国民が血のにじむような思いで納めました税金は、阪神大震災方々を初めお年寄りや子供たちのためにぜひ使ってくださいますことを心よりお願いいたしまして、私の公述を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  10. 坂野重信

    委員長坂野重信君) ありがとうございました。  以上で公述人意見の陳述は終わりました。  これより公述人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  11. 真島一男

    ○真島一男君 自民党の真島でございます。  初めに、上田公述人に一点だけお伺いをさせていただきたいと思います。  公述人は、アメリカで非常にたくさんの銀行倒産があった、中心はSアンドしと言われる貯蓄貸付組合でございましょうが、にもかかわらず混乱はさほど起きなかった、こういうふうにお述べになりましたが、その理由は何であるというふうにお考えでいらっしゃいますか、お教えをいただきたいと思います。
  12. 上田昭三

    公述人上田昭三君) 最大の原因はやはり預金保険機構によりまして預金支払いが保証されておったということでございます。私がいろいろ聞きましたところでは、また調べましたところでは、自分の預け先の金融機関倒産することがわかっておっても預金者は全く平然としているということで、それがまた論理的にもそうでありますし、慌てる必要がないわけであります。慌てることがなければ金融システム混乱することはないと。  しかし、金融システムさえ混乱しなければ、いや、預金者保護さえしておればいいのかという考え方もあるかもしれませんが、一言だけつけ加えさせていただきますと、アメリカの場合はそういうやり方で破綻した金融機関はもうほとんどが消滅いたしました。消滅したのは結局非効率、不健全な金融機関が消滅したわけでありまして、そういう非常に厳格なやり方の処理をした結果、現在御承知のとおりアメリカ金融業界は空前と言われるほどの好景気を謳歌しているという状況にございます。  そうしなければ金融業界というものは発展しないんだということを私はついでに申し上げることをお許しいただきたいと思います。
  13. 真島一男

    ○真島一男君 上田公述人に再度お伺いさせていただきますが、預金保険の最高額はアメリカでは幾らでございますでしょうか。
  14. 上田昭三

    公述人上田昭三君) 現在アメリカでは一銀行当たり一預金者名義について十万ドルとなっております。これは現在の為替レートで言いますと大体一千万超でございますが、一つ日本と違う重大な点がございまして、アメリカの場合はまず元本と利息が両方とも支払いの保証に入っているということ。  それから、例えば夫婦そして子供二人の四人家族の場合で申しますと、預金のいろんな組み合わせの共有名義によりまして、夫婦の共有名義、夫の単独の名義、妻の名義、それから夫と第一番目の長子の共有名義、そういう組み合わせによりまして、実は一億円を超える預金保証が現実になされているということでございます。
  15. 真島一男

    ○真島一男君 今お話しのような限度額が預金者の中でカバー率はどれくらいになると言われておるでしょうか。
  16. 上田昭三

    公述人上田昭三君) 正確な数字は覚えておりませんが、またこれは金融機関の規模または性質によっても当然違ってくるかと思いますが、私の覚えでは田舎にあるSアンドしの場合で八〇%から八〇%強というのが一つ記憶にございます。
  17. 真島一男

    ○真島一男君 私がことしの一月、FRBのグラインダー副議長さんに伺ったところによると九〇%以上だそうでございます。でございますから、預金保険というものが九〇%もカバーしてあるシステムと日本のシステムを直に比べるということはできるのかなということを、お話を伺いながら思った次第であります。では、ほかの質問に移ります。  小村公述人にお伺いをいたしますが、不動産不況と言われて非常に久しくなりますけれども、現実の現場を見ていらして、土地取引というものの実態は最近こんな傾向だよとか、地価についてはこういうものだよとかいうようなことについて御教示をいただきたいと思います。
  18. 小村哲夫

    公述人小村哲夫君) お答えいたします。  最近の土地の状況でございますが、私自身も年間約二千戸ぐらいの不動産の扱い等で参考の意見を述べたりしておるわけでございますが、その中で非常に目立ちますのは価格でございます。価格というものにつきまして大体私が申し上げますのは、バブルが六十年から始まってきたわけでございますが、その前の五十八年ぐらいの価格、例えば東京の町田というふうなことになりますと、バブルの最中は三百万円ほどしたわけでございますが、現時点では大体百万円相当と。この額で大体今取引されているわけでございますが、それ以下に下がるまで待つというお客さんがだんだん少なくなってまいりまして、そういう物件が出てきますと取引されているというふうな状況でございます。  また一方、定借というふうなものが最近騒がれておりますが、これは神戸地区での実際の例でございますけれども、周辺価格が約五千八百万円ぐらいのところのちょうど半分の三千百万から二百万ぐらいのものでございましたが、これは申し込み順でありましたけれども、五十八宅地が三倍強の率で売れてしまったというふうなことでございますので、大体三千万から四千万の価格帯であれば価格は結構安定してきたんではないかという感じがいたします。  以上でございます。
  19. 真島一男

    ○真島一男君 ありがとうございました。  アメリカ不良債権問題でRTCの活躍というものが最近いろいろ論壇に登場しておりますけれども、RTCはどれくらいの不良債権の回収に実績を上げることができたのか、少し詳しく御説明をいただきたいと思います。
  20. 小村哲夫

    公述人小村哲夫君) お答え申し上げます。  RTCにおきます資産の売却・回収状況、これはRTCの場合にはいわゆる無担保物件の債権もあったわけでございますが、現金、預金、有価証券で言いますと一千六百三十億ドル、日本円に直しますと約十六兆円でございます、百円と想定いたしますが。それから、戸建て住宅抵当貸し付け、これが一千百二十億ドル、その他の抵当貸し付け七百九十億ドル、不動産の方が三百二十億ドル、その他の一般貸し付けでございますが、これが三百六十億ドル、その他の資産、不動産以外の資産に掲げたものでございますが、これが四百二十億ドル、合計で四千六百五十億ドルあったわけでございます。  回収の状況を申し上げますと、全体で三千九百十一億ドル、八七・二%、約九〇%でございます。その内訳は、預金、現金の方でございますが、これが一千五百八十二億ドル、これはいわゆる不良債権と言われた額の九七・八%を回収した。それから、一戸建て住宅抵当貸し付け、これが一千五十九億ドル、九六・二%。その他の抵当貸し付けでございますが、これが五百六十六億ドル、七五・五%。その他の貸し付けでございますが、これが三百六億ドル、八八・四%。不動産につきましては、三百二十億ドルのところ百六十八億ドル、五五・三%。その他の資産でございますが、これが二百三十億ドル、六二・三%という内訳で回収が進んでおります。
  21. 真島一男

    ○真島一男君 今、内訳を示していただきましたけれども、不動産の回収はほかの債権に比べて大変難しい、実態としてはほとんど全部売ったのだけれども入ったお金は五五%程度だと、こういうことだと思います。  殊に、出だしの二年間ぐらいRTCは動きが悪くて、そのことについて議会からも世間一般からも非常に強い批判を浴びたということも聞いておりますが、RTCがその後どういうふうな人的構成とかそれから雇用形態とかそういうものに腐心をしてそれなりの実績を上げるに至ったかを御説明いただきたいと思います。
  22. 小村哲夫

    公述人小村哲夫君) お答え申し上げます。  今申し上げました八七・二%の回収があったわけでございますが、八九年から九五年のRTCの職員数というのは変化がございます。発足当時は一千八百四十人で発足したわけでございまして、一時、九二年四月、簡単に申し上げますとRTCが昨年終わったわけでございますけれども、その三年前におきましては八千六百二十四人、九五年におきましては、これは見通しがついたというふうな形であったと思いますが、それにいたしましても四千二百六十八人でございました。  それで、四千二百六十八人は回収能力が非常にすぐれていたわけでございますが、これの内訳を申し上げますと、資産管理・回収、これが九百七十一人で全体の二二・八。その次に法務でございます。いろいろ土地その他債権につきましては法務関係が非常に重要視されます。この法務に関係する方が九百二十六名、二一・七%。それから財務・経理、これはいわゆるRTCを進めながら財務管理の統計の問題があると思いますが、この問題につきましても七百八十二名、一八・三%。内部管理・総務、これは五百三十人。契約管理といいますと、これが三百九十一人。調査二百七十四人でございます。その他がいろいろございますけれども、こういう内訳でございますが、特に資産管理・回収、法務、ここのところに約五〇%近い数字で体力を増強した、こんなふうな判断がうかがわれます。
  23. 真島一男

    ○真島一男君 今お話しいただいたことは、日本住専処理会社等の運用に対して大変参考にすべきことであろうと思っております。  一方、日本の競売システムというものにつきまして、これがなかなか動かないという話をよく耳にいたしますけれども、その現況、そしてどうやればそのシステムを改善することができそうかというようなことについてまた御提言をいただければと思います。
  24. 小村哲夫

    公述人小村哲夫君) 普通、担保物件を処理するという場合に、裁判所を使っての任意競売その他を行うわけでございますけれども、過去十年間で東京といいますか日本における競売のあり方をちょっと御説明申し上げますと、昭和六十年には二千七百七件ございました。それで、競売にかけまして売ったのが大体二千件でございます。  ところが、平成三年からこの競売物件については大変急増してございまして、特に平成六年になりましては不動産に関する競売のところだけ申し上げますと五千三百七十二件でございます。そのうち、競売で競落人が出て成立しましたものが二千百五十件でございまして、問題はその次でございまして、未決と言われております、つまり競売が可決していない、競落人が出てこない、そのまままたとどまってしまう、これが一万三千五百十九件でございます。  ただ、この件数は、平成六年のものに関しましてこれは何でこんなに一万三千五百十九件も未決で残っているのかということでございますが、これはバブル期以前のものでございまして、一万三千件残っておる。こういう状況でございまして、競売のあり方、特に競売をいたします場合には、常に物件の調査、それから鑑定というものに大変時間がかかります。この点を一つの問題といたしまして、アメリカでは結構民間の活用をしております。こういう、例えば任意競売というふうなもの一つをとりましても裁判執行官の人員ではなかなかできないというのが実態でございまして、今後不良債権の問題が出てまいりますと、これはある意味においては天文学的な数字で件数が出てくる可能性があります。  ただこれも、債権処理を早めるかどうかというふうなことでございますが、公述人の先生の方々も申し上げましたとおり、遅ければ遅いほど問題が広がるということになりますと、一日も早くこの東京裁判所における競売のあり方につきましては検討を要されるかと、こんなふうに思っております。
  25. 真島一男

    ○真島一男君 今、民間の協力ということにちょっとお触れになりましたけれども、こんなことを協力したらどうかなというようなことがございましたらもう少し具体的にお話をいただきたい。  それから、やりたくともこういう険路があって実はなかなか踏み切れないんだというようなところもございましたら御説明いただきたいと思います。
  26. 小村哲夫

    公述人小村哲夫君) 物件を裁判所におきまして入札行為を行うわけでございますが、これを行うに当たりましては、物件の中身それから現状がどうなっているか、それから鑑定士の評価をどうするかというふうな大きな問題がございまして、まず人的に足りないということでございます。  それで、これは簡単に申し上げますと、最後の入札というのは不動産業でございまして、不動産業は、現在、宅地建物取引主任者という国家試験における有資格者がおります。特に、こういう問題、大きな任意競売の物件というのは政令都市十二プラス東京というところがたくさんありますので、まずこの十二政令都市並びに東京での不動産業者のもう一度の教育、それから融資その他に一番かかわりましたのは不動産鑑定士でございますので、不動産鑑定士も含めた総動員でこれらの物件調書の説明、それから評価のあり方というものの見直しをしていかなきゃならないなと思っております。  特に、今現在、皆様も、先生方も土地を買った方もあるかと思いますが、不動産業を通します場合には必ず重要事項の説明というものがございます。これも数ページのものでございまして、あとの中身は土地の図面とかというふうなものになってまいりますが、これでは売る者も買う者もよくわからない書類でございます。それを改良いたしまして、銀行さんも簡単に融資できる、また買う人も安心して買える、そして売る人も売れるというふうな仕組みでの、一種、不動産図書、ページ数からしますと大体六百項目になると思いますが、それらのものをまとめた公的なものとして、あるいは公的でなくても一般の人が安心できるものとしての評価書を作成する必要があるかと、こんなふうに思っております。
  27. 真島一男

    ○真島一男君 一般に不動産が競売に付されるというときに、裁判所に行くというようなことはなかなか普通の需要者にとっては難しいことだと思われているところだと思います。  そういう中で、例えばこれから先の不動産市場で新しいシステムを考えていくことはないのか。例えば衛星テレビを通じてやるとか、インターネットを通じてやるとか、あるいは世界の投資家に向けて物件の紹介をしていくとかいうようなこと、アメリカの一部では行われているというふうなことも仄聞をいたしておりますけれども、そういうことは日本でこれからの事業として手がけていく可能性というのはあるものでございましょうか。
  28. 小村哲夫

    公述人小村哲夫君) 今、先生が御質問されました件、アメリカにおいて非常に効果があったと言われておりますのは電波の利用でございます。不動産業界で今非常に大きな問題になっていますのは、売り出し物件は新聞広告あるいはチラシその他で出てまいりますが、これは本当に一こまの表現でしかできておりません。やはりその一こまに出ている一枚の紙でこれを買うか買わないか、その結果現地まで行く。それで、それに携わる不動産業者の方もたくさん出てくる。そうすると、自分はいろいろ選びたいのに売り込まれてしまうというふうな形で、不動産業者になかなか行きにくいという環境があるかと思います。  それをどうしたらいいのかということで、アメリカの場合におきますような例で言えば、テレビを利用して一物件につき大体三十秒から四十秒のもので表示した例がございます。これを今の不動産業者にそういうふうな物件の表示の仕方というものを明らかにすることによりまして、年じゅう不動産業者さんにつきまとわれないでも安心して買える流通のあり方ということは十分にしてかつできるものと思っております。  現在、インターネットと、こう言われておりますが、インターネットはどの情報が正しいかという問題が結構残っておりますので、やはり確たる団体がしっかりした管理で消費者保護の立場で物件の明示化をするという意味での電波の利用ということは非常に重要かと考えております。
  29. 真島一男

    ○真島一男君 RTCのやったことについて、不動産の証券化ということをかなり精力的にやって成功したということも承知をしているのでございますけれども、どういう仕組みでやってどの程度の効果があったかということをお聞かせいただきたいと思います。
  30. 小村哲夫

    公述人小村哲夫君) RTCにおきます有価証券化といいますのは、これは前回、安藤太郎先生やいろいろな方々のお話がありましたけれども、それをちょっと御説明申し上げますと、RTCにおける有価証券化といいますのは、破綻金融機関抵当権等の換価について、当初は一括方式でやっていたという事実がございます。ところが、処分可能な債権が少なくなったというふうなことによりまして、回収ペースが大変おくれてしまった。そのために、売却が困難な不動産担保債権RTCの管轄に残ってしまうような状態になってしまったところから始まったものであると思います。  こういう事態に対しましてRTCは、九一年六月より、全米各地に分散するさまざまな抵当債権及び担保不動産をパッケージにして売る、バルクセールとかいろんなものがございますけれども、証券化するスキームを導入した経緯がございます。ハイリスク・ハイリターンというふうな問題は残るのでございますが、こういうものを求めるアメリカ投資家の存在がある。それから税制、債券格付制度の整備というふうな税制控除の問題もありまして、九四年までには簿価の四百五十億ドルの資産を証券化したというふうな実績がございます。  このスキームといいますのは、簡単に申し上げますと、まずRTCが特別目的会社というものをつくりまして、ここが債券を発行する会社でございます。その債券を買う方は出資者という形になりますが、債券購入者がいるわけでございまして、一方この債券発行体、債券特別企業体のほかに不動産を管理運営する会社が一緒になっているということで、出資者である投資家その他も含めまして非常に安心を持てる仕組みであったというふうに報告を受けております。それで、こういう発行体、出資者それから不動産を買う方が一体になって、特に買ったものが確実に入ってくるための努力を管理会社がしっかりしているというふうに仕組みを立てることによって成功している。  それで、この返済につきましては、元利返済につきましては優先順位をつけているわけでございますが、信用格付や期間の異なる多種類の債券、これが発行されておりまして、これが逆に投資家の多様なニーズに合致している、いろんな投資家がおります。債券の発行を促進したという形になっております。それで、債権プールの運用、処分等というものが利息の支払いとともに前倒しで投資家から得られたわけでございまして、最終的な資金回収が発行額を下回ってしまえばやはり出資者が損失負担するという形になりますが、逆に上回れば出資者も利益をもらえるという形になっております。  これがアメリカRTCでございますが、じゃ日本の場合どうなのか。日本の場合は、これは同じような形を組み合わせるといたしますと、証券会社それから信託会社及び不動産業者と三業種の経営体が集まりますと一アメリカでやりましたRTCにおける債権流動化というものができるんではなかろうかと考えております。  ただ、これらの三つは、証券会社は証券法、それから信託会社は信託業法、不動産は宅建業法というものがございますので、これらの三つというのは比較的別々にやっているケースがございます。  一時騒がれました小口化商品、小口化商品というものが一時ございましたけれども、これはビルその他の債権を売る仕組みでございますが、これは建設業の方でやっている仕組みでございまして、いわゆる信託業法でやっていない。信託業法の場合は、こういう債権といいますのはプールで売れるものと売れないものをセットで債権化することができるのでございますが、先ほど言いましたような宅建業、不動産業における小口化商品の場合はプールができません。一物件につき行う。こういうふうな、いろいろちょっとバランスが崩れているようなものもございますので、こういうものも力を合わせて一部の法改正をするなりあるいは見直しをするなりすることによりまして、アメリカにおけるRTCと同じものが日本にできる、こんなふうに考えております。
  31. 真島一男

    ○真島一男君 この不動産の不況の中で、ここで一つまた日本債権処理機構が承継した不動産をどっと市場に出すと、さらに価格の低落を招くおそれがないかということが議論としてありますし、アメリカRTCに対してそういう問題があったのではないかという批判もいまだになしとしないところでございます。  そういう中で、アメリカでは評価額の、売却価格の制限をたしかいたしたと思います。六カ月以内に売る場合には八〇%の縛りがある、六カ月から十八カ月の間には六〇%の縛り、十八カ月以上になると五〇%、そして二年たつともう一回評価し直すというようなこともございました。そういうことが日本の場合も必要ではないかなと思ってもおりますし、同時にまた、何をおいても早く現金化するという要請も強い。だから早く売った方が不動産業界に払う手数料を高くしたというような例もアメリカでも聞いておりますけれども、その辺のことについてお考えを聞かせていただきたいと思います。
  32. 小村哲夫

    公述人小村哲夫君) 今、真島先生から御指摘がありましたアメリカにおけるRTCの処分の仕組みでございますけれども、不動産につきまして、査定価格というものを一つのベースにいたしまして、これをオークションの手法とか入札とかあるいは一般の業者に委託したとかいうふうな、いろんな情報ルートを使ってやられたものと伺っております。  それで、確かに六カ月以内には査定の八〇%、六カ月から十八カ月、一年半でございますけれども査定の六〇%、十八カ月を超えた場合には査定の五〇%で売っていいということを明確に不動産業者に流した。  この確定している価格を売る側の立場で明示できるということは非常に強いものでございまして、現在日本における宅建業は仲介業でございますが、仲介業といいますのは双方代理の疑いがあるということで、みずから価格を決めることができない。ですから、常にお客の売り手と買い手と二つの顔を見ながら仕事をしなきゃならない。こうなりますと、売り手も買い手もどちらも信用しないというふうなことになりかねない。ところが、アメリカRTCにおきましては、こういうふうな取り決めをはっきりいたしまして流通させた。これは日本にはまだないものでございますから、新たな考え方として非常に重要である、こんなふうに思っております。
  33. 真島一男

    ○真島一男君 今、みんなが知恵を出し合って一つ仕組みがつくられつつあるわけでございますけれども、基本的に不動産市場というものが活性化するかどうかということがこのスキームの成功するか否かに大きくかかっていると思うのでございますが、不動産市場の活性化につきましてこんな案がいいんじゃないかというような御提案がございましたら、伺いたいと思います。
  34. 小村哲夫

    公述人小村哲夫君) アメリカに学ぶものが多い。ただ、アメリカのものをすぐ導入するというふうな形ではございません。  ただ、アメリカでやっているもので日本不動産業にないものは何かというところをとらえますと、まず不動産価格というのは一方的に決めております。それは一時、国土法というふうなものの中で価格を異常に上げてはならないというふうな制度、規定があったわけでございますが、幾らで本当にこれやっているんでしょうかというふうな形。それから比較することもできないと。  そういうふうなものからいたしますと、別名オークションと、裁判所だけでなされているものでございますが、不動産業におきましては、公正取引委員会の六十三年一月十九日の告示で、不動産の表示に関しましては公正競争規約というふうな形で規定されておりまして、その中で価格というものはまず明確にしろと。それは我々も、我々というか不動産業者もそのつもりだと思いますが、その操作については消費者保護というふうな立場で、入札とか安いものだとかいう表現はしてはならないと、こういうふうなことから、日本ではオークションが進められておりません。いわゆる動産のもの、骨とう品とかそういうものがオークションだというふうに思われておりまして、このオークションが持っている価格の透明性、お客さんも決める、不動産だけが決めるんじゃないんだと。この辺は今後いろいろ先生の方々に御指導いただきたいと、こういうふうに思っております。  一方、オークションができるということになりますと、そのオークションをする仕組みでございますが、オークションというのにはいろいろ今後、今不動産業者といいますのは十坪ぐらいの店舗の人が多いのでございますが、十七万軒ありますとそういうところが非常に多い。それを常に情報を開示するということで、先ほど申し上げましたテレビの導入、そういうテレビといいますのは、簡単に言いますと二十四時間いつでも回転させられるとか、あるいは情報はその都度流せるという仕組みがございます。それで、売れないものはすぐ消していく、売れるものをどんどん出していくというふうな形で、不動産情報あり方というものにつきましても、検討次第によりましては、不動産業者も活性化いたしますし購入者も安心して買える、この安心感ということが非常に重要ではないかと、こんなふうに思っております。  大体、以上でございます。
  35. 真島一男

    ○真島一男君 この新しい時代の不動産業のイメージをつくって、また国民の信頼感を獲得するためにも不動産に関しての法制を整備すべきである、不動産業法のようなものを検討したらどうかという声も聞かれますが、それについて御所見を承りたいと思います。
  36. 小村哲夫

    公述人小村哲夫君) 先ほどからオークションと、これは不動産のものでございますが、不動産といいますのは、先ほど申し上げましたように有価証券化の問題もあります。そうしますと、宅建業ではできるんだけれども、有価証券ということになりますと証券法の問題がある。  それから、これを一たん、よく使われておりますのは地権者の同意をとりやすくするということで、一時、信託銀行が信託業法のもとで信託登記をいたしまして、それで町づくりを計画したと、いろんなものがございます。これもそれぞれ信託銀行さんは、信託銀行さんというのは比較的店舗が少ない企業でございますが、それをやろうにも不動産業者はできない。この辺のいろんな、宅建業というものだけに縛られてしまっているということに大きな問題があるわけでございまして、この辺を例えば共同企業体、宅建業の企業、それから信託業法の企業、証券会社の企業、こういう方々がそれぞれ一つになって、そういうものであればどこでも売れるというふうなものを仕組むことが必要ではないかと、こんなふうに考えております。
  37. 真島一男

    ○真島一男君 今、バブルの宴の後、都心の至るところにあいた土地がある。それを横目で見ながら、多くの勤労者は一時間半、二時間という遠距離通勤をしているというのが現実にあるわけでございます。  この大きな都心の土地という財産を生かして、そして日本の都市を再生させる今は一つのチャンスでもあろうかと思うのでございますが、そういうことについて、こうやったらそれがうまくできるんじゃないか、都心に住宅をという本当に都市住民の一番の願いが実現するには一つのチャンスであろうということでございますが、何か御提言をいただければと思います。
  38. 小村哲夫

    公述人小村哲夫君) 今、先生の方から伺いました、あるいは私の方から申し上げましたもの、これは先ほどから申し上げていますように、例えば普通、行政指導というふうな言葉を一つとりますと、勧告、指導、指示、要望、助言、訓示、警告、七つの言葉が出てまいります。これを各行政単位でまとめておりますと、とてもではありませんけれどもできません。  そこで、今回の住専処理におきましては、いろんな学識経験者の方々からこうすべきだという論議があるわけでございますが、それをまとめている機関がない。それぞれ各個人でしゃべっている。これでは一つの体制はつくれない。特にアメリカの場合は、非常に行政管理がはっきりしていますからありますが、日本の場合、これもまた複雑でございまして、例えば大蔵省その他、建設、農林。農林省と、今住専問題ではよく論議にされますけれども、同じ悩みでございます。  やはりそういう省庁関係のOBの方々、例えば法務省におきましては最高裁判事を歴任した方々、こういう方々が集まるOB会をまずつくる。そのOB会のもとに一般、これは単に不動産のみならず証券会社、それから大蔵省の所管の金融機関、これらの方々が集まる協議会、そこで本当に民民の中でどういう取引をしたらいいのか、それをそういう大蔵省その他のOBの方々に申し上げる。そのOBの方々は一たん退官されておりますので直接指導することはありませんけれども、逆にOBの力ということで各省庁の情報をよくとる。  簡単に申し上げますと、国策に合った民間企業あり方というパイプが現在ございません。そういうOBの方々、たくさんいられると思いますので、そういう方々委員会というふうな形でも結構だと思いますが、そういう委員会のもとに民間機関の団体が集まる。それで関係する諸機関とのパイプを簡単に流す。  先ほど言いましたように七つの言葉、これは大変我々も苦労するところでございます。そういう組織と、しかもこれが財団とか社団とかいろいろありますけれども、この住専処理というふうな問題はノンバンクとかいろんな問題につながってまいります。同じ問題がたくさん日本国じゅうにあるものですから、これを継続的に、住専だけの問題で終わったというものではない、そういう民間企業の合議体というものをもし可能であればぜひつくっていただきたいと、こんなふうに思っております。
  39. 真島一男

    ○真島一男君 ありがとうございました。  終わります。(拍手)
  40. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 自民党の吉村剛太郎でございます。  本日は、公述人の皆様方には、大変お忙しいところ当特別委員会にお出ましをいただきまして、心から御礼を申し上げる次第でございます。時間も限られておりますので、早速お尋ねを申し上げたいと、このように思う次第でございます。  まず、田尻公述人、かねがね金融問題の専門家としての御高名は拝聴しておるところでございます。我が国におきまして、大蔵省が財政と金融の行政監督権限をある意味では一手に握っているわけでございます。この体制について、このたびの金融問題に絡みまして大いにいろいろな意見が出ているところでございます。つきましては、今後の我が国のそういう面の金融の監督機能、望まれる姿といいますものについてお聞かせをいただきたいと、このように思いますのが一点。  それから、田尻公述人一つのアイデアを持っていらっしゃるだろうと思いますが、大変参考になる外国のシステムがあればひとつ御紹介をいただきたいと、このように思う次第でございます。  その一つ前に、今日の大蔵省主導によります俗に言われております護送船団方式といいますものの功罪。すなわち戦後五十年、今日までこれだけの日本の経済の発展のその底辺にはやはり護送船団等いろいろと言われておりますが、それなりの役割は果たしたんではないかなと、このように思っております。  それが今日、国際化の中において一つの転換期に来たことはもう我々も承知しておるところでございますが、過去、今日までの日本の経済を下支えしたこの金融システム、それも護送船団方式だと。これはある意味では一番遅い船に合わせていく、よたよたよたよたしているのも、本来ならばつぶれてしまうべき金融機関をも引っ張ってきたというところ、これは今日では一つの壁になっておりましょうが、しかし果たした役割というものはそれなりのものがあるんではないかなと私は思っておる次第でございます。  この三点について、まず田尻公述人からお聞きしたいと、このように思います。
  41. 田尻嗣夫

    公述人田尻嗣夫君) まず、護送船団行政について私見を申し上げたいと存じます。  いわゆる護送船団行政というのは、戦後約四十数年にわたりまして日本金融システムを方向づけてきた行政の総称でございます。これは、戦後の恒常的な資金不足の時代に産業復興を進め、かつ効率的な競争力のある日本経済を育成するという目的のために構築されたものでございまして、いわゆる資金不足の時代あるいは日本経済が開発発展段階にある過程においては十分その機能を発揮したものだというふうに考えております。  つまり、金融システムといたしましては、為替管理を厳重にすることによりまして、ただでさえも不足いたします円資金が国外に出ることをまず抑えるわけでございます。つまり、日本列島の中にございます円資金を有効に効率的に方向づけていくために、今、先生御指摘のような仕組みがつくられたわけでございます。  そういう意味で、護送船団行政が効果がなかったとかあるいは有効でなかったということでは決してございません。日本経済の発展段階としてこの金融行政が果たした役割というのは国際的にも分析と評価の対象になっておるものでございます。  しかしながら、一九八〇年代、特に一九八〇年代以降でございますが、日本経済が恒常的な資金余剰の時代を迎えたわけでございます。そうなりますと、資金不足を前提といたしました護送船団行政は新しい金融環境に適合できなくなったということでございまして、平たく言いますと、時代の方が変わったわけでございます。その意味で護送船団行政にかわる新しい金融行政のあり方ということが今求められておるわけでございます。  もう一つは、護送船団行政が、今日、平成金融危機と呼ばれるものと決して無関係でないということも指摘しておかなければなりません。その第一は、どうしても非効率な金融機関がこれまで温存されてきたこと、二番目は、金融サービスに競争原理が思ったほど働かなかったこと、そして三番目には、日本金融産業全体としての国際競争力が劣後したこと、これはやはり今後に残された重要な課題でございます。  そういう意味で、これからの金融自由化あるいは金融行政と申しますれば、この新しい金融環境にどう対応していくかということが必要でございます。といたしますと、これまでの金融制度そのものが以前の金融環境に対応したものでございますから、既存のいろいろの金融関連法規を徐々に部分的に改正を進めていくだけでは対応し切れないわけであります。それは矛盾がまた新たな矛盾を生んでいくということになるわけでございます。  そこで私は、今後の金融行政は、古い制度とか古い法律を少しずつ改善していくという相対的な金融自由化政策ではなくて、本来、市場経済の中におきます金融システムあり方という未来の姿から逆算いたしまして、今どこを直さなければならないかと、そういう意味での絶対的な金融自由化政策というものに大転換すべきであろうと考えております。  二番目の御質問でございますが、財政と金融は一体であることが能率的、効率的だという意見がございます。この場合に注意を必要といたしますのは、そこで言われます金融とは一体何かということであります。これを金融政策と金融行政というふうに二つに分けて考えてみたいと思います。  財政を預かります政府機構と申しますのは、これは権力機関でございます。一方、通貨はいかなる目的にも動員できる大変便利な道具でございます。したがいまして、世界の歴史におきまして、権力を持った政府機構が何にでも使える通貨も自由に動員できるという仕組みをつくりました国においては、数々の失敗、悲劇が、あるいは経済上の混乱が起きてきたわけでございます。そういう意味で財政と金融が一体である方が政策当局にとっては便利だということは確かでございますが、国民経済の立場からは、だからこそ切り離すべきだというふうに私は考えております。  金融政策と、もう一つ金融行政でございます。  財政は金融政策と無関係であり得るかと申しますと、決してそうではありません。金融政策というのは国民経済に重大な影響を与えますので、戦争は余りにも重大だから将軍たちだけには任せておけないと言われますように、金融政策を中央銀行だけに任せておいていいものではございません。金融政策については、それぞれの立場から国民的な論議と監視が必要でございます。ただし、その具体的な政策発動手段の最終的な判断の権限は中央銀行にゆだねられるべきだという意味で財政と金融は分離されるべきだということでありまして、決して金融政策の論議を排除するものではございません。  もう一つ、金融行政の方でございますが、金融行政は市場を設計するという役割と、もう一つは、金融機関の行動を監視監督して預金者保護、決裁システムを運営していくという目的がございます。この金融行政が財政と一体でなければならないという理論は私は存じないわけでございます。そういたしますと、金融行政と金融政策を合わせた広い意味での金融と財政は一体でなければならないという言い方は私は賛成できません。  金融行政がこれまで大蔵省の全面的な管轄下にあり、かつ金融政策についても日本銀行の独立性に数々の疑義があったわけでございます。この権限の集中が、実はバブル経済の発生につきましても大変大きな原因の一つと指摘されております。金融政策が為替政策の犠牲になったということのいわゆる悲劇が今展開されておるわけでございます。  さらに、金融行政を持っておりますことは、金融というのはさまざまな経済活動の最後に清算する帳じり合わせの作業でございますので、お金にはいろんな情報がついてまいります。その情報政府機関によって独占されておる状況というのは極めて危険なことでございます。  そういう意味で、金融行政は大蔵省から分離されるべきである。金融政策についても、日本銀行の独立性を強めるということで、政府からの独立性を確保する必要があろうかと存じます。  規制というのはルールでございます。監督というのはそのルールが守られているかどうかを監視する仕事でございます。ですから、金融自由化を進めていき、市場経済にゆだねればゆだねるほど失敗は多くなりますので、この監督は強化する必要があるわけでございます。そういう意味政府からも、政府と申しますか、財政当局からも独立した監督機関というものが必要でございます。  ただし、この場合もそこにすべての監督機能、権限を集中いたしますと、これまた金融革新を阻害する問題が出てまいるわけでございます。そういう意味で、私は、中央銀行と新たに創設されるべき金融監督機関とが相互に牽制し合うチェック・アンド・バランスの中でしかるべき監督をしていくということが好ましいと考えております。
  42. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 ただいま田尻公述人は日銀の独立性ということをおっしゃったわけでございます。私自身も、今日の日銀といいますのは、ある意味では世界の中央銀行の中でこれほど無力な、無力と言ったらこれは失礼ですが、力の弱い中央銀行というのはないんではないかなと、このように思う次第でございまして、業務から人事まで政府に握られておるというようなこと。私はドイツの連銀というのがどういう実態なのかよく存じ上げませんが、ドイツの連銀の独立の気概、それから能力、そういうものは日本の中央銀行であります日銀よりも非常に高いレベルにあると、このように聞き及んでおります。  ただ、ドイツの連銀の目的はただ一つだ、それは物価の安定だ、これだけに焦点を絞った中央銀行だと、このようにもお聞きしておるわけでございます。それがどうなのか私も存じ上げませんが、それについての先生の御意見、またあと、今おっしゃいました日本銀行の独立性といいますのはどういう面での独立か、時間もございませんので概略で結構でございます、お教えをいただきたい、このように思います。
  43. 田尻嗣夫

    公述人田尻嗣夫君) 日本銀行の独立性が極めて低いレベルにあるということには多少注釈が必要でございます。日本銀行法は、昭和十七年の国家総動員体制の一環としてつくられた恐るべき全体主義の法律がこの平和な時代に生き残っておるという意味で、制度上、日本銀行政府からの独立性が存在しないというふうになるわけでございます。  しかしながら、中央銀行の独立性というのは制度上と、もう一つは実態上、両方から測定する必要があるわけでございます。そういうふうに考えますと、日本銀行の独立性が法制度上ほど弱くはないということも確かかと思います。  もう一つは、それでは中央銀行の独立性を高めればインフレは起こらないのか、つまり金融引き締めという痛みを伴わずにインフレを抑えることができるのかと申しますと、決してそうではございません。中央銀行の独立性が高い国においてインフレ率が低いという統計的な証拠は数々ございます。しかし、その間の因果関係はまだ全く説明できないわけでございます。  それから、それでは日本銀行がそういう現実の中でどの程度の成果を上げてきたかということで、世界の中央銀行におきます物価上昇、通貨の安定に対する成績表というものを国際的にランクづけしてみますと、戦後の日本の物価上昇率というのは極めて低い、ドイツに次いで低い水準にあるグループでございまして、そういう意味日本銀行の政策運営結果に対する国際的な評価は高いものがあるということも認めるべきだと思います。  第二の、どのような中央銀行のタイプが理想的かというお話でございます。  まず、理論的には、金融政策とそれから金融機関を監督する、金融システムの運営を図っていくというものがございます。金融システムを維持運営していくという仕事はプルーデンス政策と申します。金融政策とプルーデンス政策というのは利益相反の関係にあるとよく言われるわけでありまして、そういう意味で中央銀行はドイツ連銀のように通貨の価値の安定ということに絞るべきだというのが理論的な大勢を占めておるわけでございます。  しかしながら、それでは現実にドイツ連銀が完全にプルーデンス政策から無縁かと申しますと、ベルリンにございます連邦銀行監督局に多数の人間を派遣して情報を得ておるわけであります。あるいはドイツ国内の各州におきます銀行監督はドイツ連銀が代行しておるわけであります。つまり、金融政策とプルーデンス政策は実は現実にはなかなか切り離せないという問題があるわけでございます。そういう意味で通貨の安定だけをやっておればよろしいと簡単には言い切れない現実社会の難しさがあるわけでございます。  では、日本の中央銀行はこのドイツ連銀型がいいのかほかのタイプがいいのかという最後の御質問でございますが、ドイツ連銀型は御承知のように通貨の安定だけが目的でございます。政府の経済政策に対する協力義務は、その通貨安定という目的に支障のない限りという前提がついた上での協力義務でございます。政府が連銀の政策決定に対して異議を申し立てる、金利の変更について反対をするということがありましても、ドイツ連銀はその実施を二週間見送ることは義務づけられておヶますが、二週間後に理事会で再び同じ決定をすれば政府の意向と関係なく金融政策を遂行できるという立場であります。つまり、ドイツ連銀は憲法上政府から完全に独立した政府の枠外の機関でございます。これをハードタイプと申します。  一方、もう一つ独立性の高い中央銀行といたしまして連邦準備銀行、FRBというのがございます。これは実は政府機関一つでございます。政府機関の中にありながら政府から独立性を保っておるということでございます。  何を言いたいかと申しますと、中央銀行の独立性というのは政府からの独立性でありまして、議会からの独立性ではございません。したがいまして、日本銀行は仮に政府から独立性を確保いたしましたら、そのかわりに議会に対してアカウンタビリティーと申しますか、説明責任をより多く法的に負うべきであると私は考えております。
  44. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 ありがとうございました。  もう一つ、これは最近の問題でございますが、円安が進行しておりまして、もうやがて百十円になんなんとしております。この円安が、当然金利にも作用しますし、それからさらに金融政策といいますものにも影響していこうと、このように思っておりますが、最近の事例でございますが、その辺をちょっと簡単にお聞かせいただければと、このように思っております。
  45. 田尻嗣夫

    公述人田尻嗣夫君) 本来、金融政策は為替相場現実の動きに左右されてはならない。フロートの時代におきましては為替レートというのはいろいろな要因、経済外の要因でも変動してまいります。したがいまして、金融政策を直接為替レートと連動した形にするとか、あるいは特定のレートを維持するために金融政策を動員するということの失敗がルーブル合意以降の日本のバブル経済下であったわけでございます。そういう意味では、為替政策というのは政府の仕事でございまして、金融政策は中央銀行、分離されるべきものでございます。  今現在の円安でございますが、それを金融政策上どのように考えるべきか。現在の円安は金利の面で生じておるのか、あるいは日本経済あるいは住専問題等の処理をめぐるもっと広い観点からの円安なのか、いろいろな分析が必要な状況でございまして、金融政策上すぐに何かをすればこの円相場が変わっていくという状況には私はないと考えております。
  46. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 ありがとうございました。  もう時間もなくなりましたが、小村公述人にちょっと一つお伺いいたします。  バブルの時代から今日では、主要都市におきます地価といいますのはある意味ではもう半分以下というような状況でございます。それがなおかつ下げどまっていないんではないかと、このようにも言われておるわけでございますが、これだけグローバルな経済社会の中で、国内の需要と供給面の、それから資金面の価格形成のみならず、国際的な影響も当然受けるわけでございまして、そういう面で、小村公述人、個人的な意見として、我が国の地価はまだ下がるか下がらないか、どのようなお考えかお聞かせいただきたい、このように思っております。
  47. 小村哲夫

    公述人小村哲夫君) 今、地価と申しますと、どこで高いか安いか、これは普通アパートその他で、むしろ土地を買わないでアパートを借りていた方が得ではないか、あるいはビル用地につきましては、借りているのであれば買った方がいいんじゃないか、こういうふうな意味からいたしますと、同じ払うのであれば、買った方がいい、借りた方がいい、これを別名収益還元価格というふうな表現で判定をする場合がございます。  バブルのときに何が起きたか。今回、税制改正の一つといたしまして、我々といいますか、不動産業者の中によく出てくる言葉が、買いかえの特例ぐらいまで認めたらいいではないか。買いかえの特例といいますのは地価を上げたというふうな原因になっていると言われておりますが、やはり移りやすい、流動性があるという意味におきましては買いかえの特例は、一面悪い点はありますけれども、いい点もあるということで考えられるんではないか。  それで、特に、先生が今おっしゃいました、地価の今後の動向はどうかと。これは私の個人的見解でございますが、ビルの入居率も安定してまいりました。ただ、商業地域につきましては、どこまでが都市計画上の商業地域なのかというふうな問題、これは昔から論議されているところでございまして、一応住宅地がとまるということになりますと、収益還元価格ということで土地の見方が変わってまいりますので、価格はこれ以上急激にまた下がるということは考えにくいと判断しております。  アメリカRTCの中で成功した例というのは、例えばオークションとか有価証券とかいろいろありますが、先ほどちょっと述べてはございませんけれども、その中で非常に大きな力を持ったのは、先ほどの不良債権を処分するときの価格の評価でございます。  これはニューヨークにある日本不動産業者でございますが、そこのところの報告書をもらいますと、鑑定評価が最初の一〇〇から一一〇%の価格で売れた、一時期十一兆円のものが逆に九兆円に不良債権額が変わったと言われておりますが、その中に鑑定価格が非常にうまくいったというふうな報告を受けておりますところから見ますと、現在、宅地の問題につきましても、収益還元価格というふうなものがベースになりまして、この評価のあり方によりましては土地は安定するんではなかろうかと、こんなふうに思っております。
  48. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 アメリカの場合はRTCが引き受けました担保土地の処分が随分うまくいった、このように思っておりますが、今御説明ありましたような要素も一つであろうかと思います。  聞くところによりますと、日本人は更地を好みますね。上に何か建っているよりも、どうしても更地を好む傾向があるんではないか。ところが、アメリカはむしろ土地の利用価値ということで、上に建物が建っておれば例えば取得してもすぐそれを利用して収益を上げることができる、そういうのも一つ感覚の違いとして存在したのかな、これは私も事実関係はよく存じ上げませんが、何かそういう一つの好みの違いというものもあるのかな、そのような話も聞いたことがあるわけでございますが、そういう点についての実態を御存じでございましたらお聞かせいただきたい、このように思います。
  49. 小村哲夫

    公述人小村哲夫君) 日本の場合、更地がいいと。この更地がいいというのは自由に処理できるということで、特に堅固でない建物での商業地、これはだれもが投資しやすい土地であろうと思っております。アメリカの場合は、いち早く少しでも利益を回収するということですから、建物があった方が賃貸に回せる、建物を建てるというのにつきましては非常に高額な金がかかりますので、そのお金をかけない手法でやったと。  それともう一つ大きなことは、アメリカの場合の担保の法的な性格といたしまして、清算という形で全部処理したわけでございますが、日本の場合におきましても担保というのは、その土地からの果実というものは全くとれる権利はございません。あくまでもその土地を管理している、最後は売ってしまうという処分権の担保でございまして、その担保を持っている土地からの利用する果実、簡単に言えば利益というものは全く外されている。  そういうふうなところからいたしますと、上物が建っていた方が回収しやすいんだというふうなアメリカのものがあったと思いますが、土地というふうな性格は今二通りの問題がございまして、日本人的には処分という所有権の権利を志向したいという願望があるというのは否めないと思っております。
  50. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 ありがとうございました。  終わります。(拍手)
  51. 高橋令則

    ○高橋令則君 平成会の高橋と申します。  小村上田田尻高田、四人の公述人方々には、この特別委員会においでをいただきまして貴重な御意見を賜りますこと、厚く御礼を申し上げます。  まず、私は上田公述人にお伺いをしたいと思います。  先ほど吉村委員から田尻公述人に御質問がございましたが、私はもう少し広い意味でお尋ねをしたいんです。今日、我が国は戦後五十年を経過いたしまして社会経済、いろんな面にわたって大変な発展はしたというものの、二十一世紀に向かってさらなる発展を遂げていくためにいろんな意味で改革をしなければならない、そういう課題に迫られている、そのように認識をしております。  この委員会の主たる課題となっております金融改革という問題、住専問題に象徴されるわけですけれども、これもまたその一つであろうなと。そして、ここで繰り返し議論をされておりますように、確かに金融は経済の動脈、マネーのフローを扱うという意味で非常に大事な役割を果たしているわけでございまして、これが今日、不良債権というふうな動脈硬化症状を呈するような事態になりまして、この早急な打開が必要である、その認識は私どももひとしく持っております。しかしながら、これを解決していくための手順、やり方といったことについては、またさまざまな意見があることは事実でございます。  まず、この問題解決の前提として、私が前段申し上げました、特に戦後の我が国金融システムが抱えている課題、そして今直面している大きな問題、そういったものの原因そして背景、そしてまたそれを二十一世紀に向けて解決をしていくその方向といったもの、そういうものの基本的なマターはいかがなものであろうか、そういうことについて上田公述人の御意見をお伺いしたいと思います。
  52. 上田昭三

    公述人上田昭三君) お答えを申し上げます。  私が思いますところでは、現在の住専問題に象徴されますところの金融システムの脆弱性の根本的な原因は、一言で申し上げますと、余りにも日本の金融は競争が抑制され過ぎてきたということに尽きるのではないかと私は思います。一護送船団行政というのはまさにそれを実現するための一つ方法であったわけでありますが、しかし現在は非常に問題が露呈して改革されねばならないという評価が固まりつつあります。以前は、逆に日本経済の発展に貢献をしたのではないかという御意見もありますけれども、その点、私はちょっと異論を持っております。それはさておきまして、なぜ日本において競争が制限され過ぎていたか、またさらにその根本的な原因を一つ非常に現実的にずばりと私は歯にきぬを着せずに申し上げさせていただきたいと思います。  それは私の分析では、ともかく金融業界競争をさせないようにしていろいろな利益を金融機関に与えるということ、これが大蔵省の基本的な行政方針としてとられてきた。じゃ、大蔵省は一体なぜそういうことを、金融業界だけの利益になるようなことをずっとやってきたのかという点につきまして、これはまた非常に現実的といいますか世俗的と申しますか、はっきり申し上げまして非常に高い給料をもらえる銀行業界への天下りを見返りにしての金融業界への利益の供与ではなかったのかと私はつくづくと思うのであります。  要するに、例えばこの護送船団行政というルールがしかれてきたことにつきまして、非常に効率の悪い銀行が生き延びていく、要するにつぶさないんだと。その一つの具体的な方法といたしましては、最低効率の銀行が生き延びていけるような非常に低い金利水準が維持されるように、別の言い方をしますれば効率の高い銀行競争をしかけないように内々に指導するということが大蔵省によってなされてきたのではないかということであります。  そして、そういうことの結果、本来ならもうとっくに破綻消滅しているはずの金融機関が、具体的には粉飾決算を行って生き延びている。そして、その粉飾決算をまた監督当局が黙認するというあしき慣行によってそういった金融機関が生き延びてきたように思われるのであります。ところが、多数の金融機関についてひどい経営実態を当局はついに隠しおおせないという状況に立ち至って、ここに何とかしなきゃいけないということで住専問題となって表面化したわけであります。  したがいまして、こういう金融システムの脆弱化をもたらした最大の原因というものは、それは銀行業界のやり方のいろんな不始末な点もございますけれども、根本的には金融行政の大もとでありますところの大蔵省のそういう非常に自己の利益を考えたやり方に根差していると思われます。そこで私は、そういう根本的な原因についての認識に立ちまして、現状を改革するためにはどうしなければいけないのかという点について申し上げたいと思うわけであります。  それは、まず一つには金融行政、すなわち金融機関の許認可、監督、指導といった行政を行うところを分けるとか分けないとかいろいろな論議もあり、金融庁をつくるとかつくらないとかいろいろありますけれども、根本的には私は完全にルール化して行政の側の不当な裁量の余地をなくすことではないかと思います。  最近、私が新聞の学者の方々の論調などを見ておりまして非常に矛盾に感じますことは、大体異口同音的に、これからの金融行政は徹底的にルール化して、そういう裁量の余地をなくさなきゃいけないということをどなたもおっしゃるのでありますが、では現在の住専問題はどういう方法で解決するのか、処理するのかという点になりますと、現在進んでおりますような談合的なやり方で解決しなければ仕方がないと。これは私は非常に矛盾した言い方ではないかと思うわけであります。  それはともかくといたしまして、行政側の不当な裁量の余地を徹底的になくすということが一つでございます。  もう一つは、完全にルール化いたしまして裁量の余地をなくしましても、まだ次のような問題が残ります。それは、例えば現在、御承知のとおり完全に自由金利時代に表面的には入っているわけであります。ところが、私はこの面をいろいろと実際的に調べてみますと、これはカルテルの結果としか言いようのないような非常に低い水準で、都市銀行から関西にあります一番小さい第二地方銀行に至るまで、例えば最近の小口六カ月物の定期預金金利で申しますれば、都銀十行とそれから日本で最小の規模の銀行金利が全く同一で横並びになっているということであります。そういうことの結果、最小規模の銀行は生き延びて、そして非常に効率の高い銀行は、いろいろ最近問題になっておりますように、大変な利益を上げているということになるわけであります。  そこで、現在自由金利時代でそういうことが許されてはならないのに、金利の非常に低い水準での横並びを当局が黙認するというルール無視の利益擁護、寄与が現になされていることを私は注視しなければならないと思います。それは大蔵省あるいは日銀もその責任の一半を負わなきゃいけないと思いますが、なぜそういうことを黙認しているんだろうかということであります。これもいろいろとせんじ詰めて考えてまいりますと、結局のところ、先ほど指摘いたしました大蔵官僚の銀行への天下りの確保ということにしか合理的な理由は考えられないということであります。  したがいまして、ルール化するだけではだめでありまして、ルール化されたものを完全に実行されるようにするためには、そのルールが破られたことを見逃すようなことがされてはならない。見逃すようなことがないようにするためにはどうすればよいかといえば、見逃すことによって監督当局に何ら利益が及ばないようにするということ、具体的には天下りを完全に禁止するということではないかと思います。  現在、大蔵省をやめてから三年間は銀行業界に天下りをしてはいけないということであります。それも五年間にすべきだという話もございますけれども、私からしますれば、もうそれは最低でも十年ぐらいは天下りを禁止しなければ、決してこういう悪い慣習、慣行というものはなくならないように思うわけであります。  したがいまして、根本的にはルール化をするということ、そのつくられたルールが完全に守られるようにするためにルール破りを考えさせるようなインセンティブをなくすということ、この二点に尽きると思うのであります。こういう改革によって初めて金融業界競争促進されることになり、それによって不健全、不効率な金融機関が淘汰されていくということの結果、金融システムは自然に健全なものになると私は考えるわけであります。  幾ら話の上で美辞麗句が並べられましても、競争というものを徹底的に保障するようなシステムでなければもう何にもならないということを、最近のアメリカ実例などから見ても私は再認識しているところであります。  そしてまた、競争が激しくなって生き残った金融機関経営効率も自然に高まるわけでありまして、それによって金融機関の利用者は効率化のメリットを享受することができるということが一点。  それから、効率化していきますと当然に日本金融業国際競争力も増していくわけであります。この面からも、我が国の経済の発展にとって非常にプラスになると同時に、日本金融業に対する海外諸国からの信頼度も高まりまして、そこで日本金融システムも強固なものになると私はかたく信ずるわけであります。  何事も競争を完全に行わしめるということが根本でありまして、それを実現するためにはどういうことをすればよいかということを考えますと、私の以上申し上げたようなことがどうしても必要だ、こういうわけでございます。
  53. 高橋令則

    ○高橋令則君 ありがとうございました。  つまるところ市場原理の徹底というふうにお伺いしたわけですが、先ほど田尻公述人からやはり同じような趣旨で、市場の規律を活用する方式を確立する必要があるというふうな御趣旨の御意見をいただいたような気がいたします。  その件をもう少し、今の上田公述人の御意見にも関連してお聞かせをいただきたいと思います。
  54. 田尻嗣夫

    公述人田尻嗣夫君) 金融機関不良債権が発生したという事実だけでありますれば、それは単に金融機関経営問題でございます。世界最大債権大国でありますこの日本において、その金融機関の単なる経営問題であるべきものが、なぜ金融不安とか平成金融危機ということに発展したのかということが第一の命題ではないかと思います。  それでは、同じように巨額不良債権が発生いたしましたアメリカあるいはイギリスにおいて、アメリカン・レートとかブリティッシュ・レートというものが国際的に発生したかという命題も次に考えなければなりません。  三番目には、五年間預金の切り捨てはしないという政府の公式のお約束があるにもかかわらず、なぜ社会的な不安心理が消えないのかということでございます。  この三つの命題を考えてみますと、そこに原因がはっきりしてくるわけであります。つまり、不良債権の大きさとか個別金融機関破綻が金融不安を拡大させているのではないということであります。  では、何がその原因なのかと申しますと、二つございます。  つまり、金融不安というのは一種の社会心理現象でありますが、それを考えてみますと、第一は実態が隠されていること、これが不安を拡大しておる最大理由でございます。金融当局あるいは金融機関情報を隠しておりますことが疑心暗鬼を呼ぶわけであります。  ジャパンレートは決しておかしな現象ではございません。これはまさに市場の規律でございます。体質の悪い銀行には当然高い金利が要求される、これがいわゆる市場の原理でございます。ですから、高い金利を国際市場で要求されておること自体は、それ自身は問題ではないわけであります。問題は、日本国籍の金融機関であるということで一律に高い金利が適用されているということであります。  そのことは、言いかえますと、体質のよい銀行が悪い銀行と同じように同類視されておるということであります。そうなりますと、例えば私がよい銀行預金をしておりましたならば、資金コストが安ければ本来高い預金金利や低い貸出金利を適用してもらえるはずが、実はその悪い銀行と無差別に取引なさっているほかの方と全く同じメリットしか受けられないという問題が発生しておるわけであります。  このような日本国内のディスクロージャーの現状におきまして、あるいは政策当局のスタンスが現状のようでございますれば、今後予想されます金融不祥事あるいは不良債権の拡大する中で、日本当局の公表いたします数字は全く国際的に信用されない、ますますジャパンレートが横行していく、そのコストは結果的にすべての国民に転嫁されるということになってしまうわけであります。  第二の原因は、どう対応するのか先が読めないという対応のまずさでございます。  先ほど上田先生からもお話がございました。アメリカでも多数の銀行が壊れ、ある州では三日間、ある業態の金融機関取引を停止すると、モラトリアムさえ行ったわけでございます。決してパニックは起こらなかったわけではなくて、銀行には多くの預金者が殺到いたしました。しかしながら、そういうパニックは局地化された、その地域以上には広がらなかったというのが日本との違いでございます。  それじゃ、全米規模の信用不安になぜ拡大しなかったのかというと、それは、先ほど預金保険の御説明がございましたが、私は、それ以上に政府、政策当局の危機管理能力というものに対する信頼感というものが国民の中にあったからこそ、逆に言いますと、地方の監督局は大胆にもモラトリアムを実行することができたということではないかと思います。  そういう点で、金融不安を拡大しておる原因は、実態が隠されていること、そして先が読めるような対応が行われていないこと、そこに原因がある、不良債権問題が山を越しただけでは平成金融危機というのは終わらないと私は考えております。
  55. 高橋令則

    ○高橋令則君 情報開示の重要性、言うなれば透明なルールに沿った処理といったものが今後の金融システムの確立、そしてまたこのことは今回の住専問題を含む我が国不良債権処理の基本でなければならないと私は思っているわけでございますけれども、我が国不良債権問題処理のいわゆる今後の我が国金融システムが持つべき原則に照らしてのあり方と申しますか、守るべき原則といったものについて改めて上田公述人からお聞かせをいただきたいと思います。
  56. 上田昭三

    公述人上田昭三君) 情報開示がこれからの金融システムを強固なものにする上において非常に重要であるという田尻先生の御意見には全く賛成でございます。  そこで、我々として考えなきゃなりませんのは、なぜ日本大蔵省情報を隠そうとするのかという点を根本的に解明しなければ、ただ情報開示をせよ、開示をせよと言うだけでは何にもならないのではないでしょうか。  それから、情報開示、開示といいますけれども、これは例えば預金について、預金者段階について申しますれば、二つのレベルで考えなければいけないと思います。  一つは、預金者といいましても、小口の預金者というものとそれから非常に大口の預金者というものと、大きく分けますとそのように分けられるわけでありますが、小口の預金者というものはごく一般的な庶民の方でありまして、銀行が仮にどういう情報を開示したところでそれを果たして理解されることが可能なのかどうか、私はその点非常に危惧を感じます。なればこそ、アメリカにおきましても日本におきましても、この小口預金保険制度というものが存在するわけであります。  小口預金をする方は、一般庶民の方は、銀行倒産してもどうのこうのということは余り心配しないで安心して預金をしなさいよということのために預金保険制度があり、預金保険制度は小口のものだけを保証していると私は思うわけであります。  そこで、本当に情報開示が必要なのは大口の預金者に対してであろうかと思います。じゃ、アメリカの場合、大口の預金者はどういう情報の開示を受けているのか。これは日本のレベルに比べまして非常に程度が進んでいるわけでありまして、この銀行経営が思わしくないとなりますと、もう徐々にまるで波が引くように預金が流出していくということで大口預金者は自衛策を講じているということであります。  日本の場合は、それをやりますとその銀行がつぶれるであろう。そうなると、また困った面が出てくるのでということで大蔵省はそれをやらない。困ったことが出てくる。どういう面で困ったことが出てくるのか。大口預金者に困ったことが出てくるのなら話はわかりますけれども、そうでない、公正でない面において不都合なことが起こるということでは、私はそういうやり方というものは非常にフェアなやり方ではないと。まずそういう点を根本的に改めて、仮にそういう情報の開示がその銀行を困難におとしめるようなことであっても、それは預金者の利益を第一に考えるという見地から断固として行わなければいけないと私は思うわけであります。  情報の開示と、それから行政のいろんな分野におけるルールをはっきりとつくるということ、そしてそのルールの無視が行われないようにするということ、この三つのことが今後の日本における非常に健全な金融システム、健全な金融業界、そしてその結果として非常に大きな利益を消費者が得るようにするための根本的な方策であろうかと、そのように私は思います。  なお、ついでに、先ほど田尻先生からアメリカでも実はモラトリアムがあったんだというお話を伺いましたが、私もそれは存じないわけじゃございませんが、私の知っている限りでは、それは一九八〇年代にミシガン州で発生いたしました。事実、発生したと思います。しかし、取りつけ騒ぎが起こりましたのは、いわゆる連邦預金保険制度に入っていない、言うたらその州独自の非常にローカルな脆弱な保険機構に入っているところの金融機関が行き詰まって、そして連邦預金保険機構に入っていないから預金者は危ないということで駆けつけたというように私は聞いております。  田尻先生の御指摘はそれと違うケースかもしれませんが、私の理解はそうであるということを、先ほどアメリカではそういう混乱は起こらなかったということを申し上げた手前、ちょっと補足しておきたいと思います。
  57. 高橋令則

    ○高橋令則君 ありがとうございました。  先ほど上田先生から、冒頭の公述に当たりまして、現在提案されております政府処理スキームについての御意見が既にございました。  私は、それを繰り返してお尋ねしょうと思いませんが、その中で特に突っ込んでと申しますか、御意見をお伺いしたい点がございます。  それは一つは、いわゆる公金を導入することなくして処理できれば一番いい、私どもはそう思っておるわけです。仮に公金導入をしなければならないとしても、それはやはり一定のルールがなきゃならないだろう、きちんとした、国民にもわかるようなルールがなきゃならないだろうなと。したがって、それは、投入する場所、そういったものが非常に大事だろう、出口へ行ってやれば非常に金がかかるから、入り口の方が安いからという議論ではないだろうなというふうな感じを持っております。  先ほど上田先生からもそのような趣旨のお話があったように私は承りました。したがって、公金投入の厳守すべきルールといったものについて先生はどのようにお考えになっておられますか。  また、もう一つは、現在の政府処理スキームでは六千八百五十億円の税金を核として組まれておりまして、仮にこれが早期に実施されなければ日本経済に大変な影響が生ずる、国際信用は失墜すると何遍も実は耳にたこができるぐらい言われているわけですが、これについて上田公述人の御専門の立場からどのようにお感じになりますか、お伺いしたいと思います。
  58. 上田昭三

    公述人上田昭三君) お答え申し上げます。まず第一番目の問題点についてでございますが、不良債権処理に関連しての公的資金処理ルールはどうかということであろうかと思います。  私は、先ほども申し上げましたように、預金者保護のためには、それは公的資金の投与というものはやむを得ない場合もあるであろうということであります。しかしながら、預金者保護ということは、預け先が倒産して初めて保護の必要が出てくるものではないでしょうか。ところが、現在の日本住専処理に関連してのやり方というのは、金融機関がつぶれる前に、その金融機関救済も兼ねて公的資金が投与されようとしている、これがいけないということを私は強く主張しているわけであります。  したがいまして、私の考えにおきますところの公的資金投入ルールというものは、それは預金者保護に限定するということ、それがすなわち金融システムの安定を確保することになるからであると。しかし、預金者保護さえ始末すれば金融システムは一義的に安定するということでありますから、何も金融機関救済する必要は全くないということで、ルールというものは金融機関倒産した場合に初めて、預金者に対してその預金支払いするためにのみ公的資金を投与すると、これがもう絶対に必要なルールであろうかと思います。  それから、もう一つはどういうことでございましたですか。
  59. 高橋令則

    ○高橋令則君 六千八百五十億円を削除した、そういう場合はどうなるかと。
  60. 上田昭三

    公述人上田昭三君) 確かに、もしそれを今やらなければ、もう国際的な信用もさらに失墜して大変なことになるということでありますが、私が思いますのに、逆であろうかと思います。  国際的な信用が薄れていく大きな原因は、それは日本のやり方というものが非常に不透明であるということでありまして、公的資金を投与しなければ金融システムがおかしくなるから、それを見越して国際的な評価が低まっているということではないと思います。  現に、日本政府は今後五年間、現在の時点から言いますれば四年間、この預金支払いの保証を行っている、そのためには公的資金も投与するんだということはもう内外にはっきりしているわけでありますから、今六千八百五十億円がこの段階で投与されなくても、そういう国際的信用が急激に下がってしまうということは私はないように思います。  それから、そういたしますと、むしろこういう談合的なやり方での公的資金の投与というものがなくて、本当に必要な預金者保護のための場合にだけするんですよというやり方にすれば、私は日本の金融行政の透明性というものが非常にはっきりしてきて、国際的な信用が高まり、また国内における金融行政への不信感、不安感というものも払拭されて、私は内外の面において今こういうやり方での公的資金の投与はしない方がかえってよい効果を生むのではないかと、このように思っております。
  61. 高橋令則

    ○高橋令則君 終わります。(拍手)
  62. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 平成会の渡辺孝男でございます。  公述人の皆様には本当にお忙しいところおいでいただきまして、貴重なお話を聞かせていただきまして、まことにありがとうございます。  今まで総論的な話が大分続きましたが、私は少し各論的な話をしてみたいと思います。  まず最初に、本年の公示地価が発表されましたけれども、三大都市の商業地で平均一六%地価が下落しているということであります。この住専処理スキームは昨年八月から九月の調査結果をもとにスキームができているわけですけれども、今後、路線価もこれから発表されると思いますが、それによっていわゆる第Ⅲ分類それから第Ⅳ分類というような不良債権の額が少し変わってくるんじゃないかというふうに思いますけれども、その点につきまして小村哲夫公述人に御意見をお伺いしたいと、そのように思っておりますが、どうぞよろしくお願いいたします。
  63. 小村哲夫

    公述人小村哲夫君) 不良債権額というものも、私どもの方は新聞紙上等で金額はわかるんですが、その中に土地という簡単にいいますと有物担保というのが全体にどのくらいを占めるのか、それでその処分方法というのはどういう形なのかということが明確でないものですから、これといった一つの判断がつきにくいのでございます。  ただ一つだけ、この地価といいますのは、先ほど申し上げましたように、周辺、いわゆる賃貸という、住む住居としてのアパートとそれから借りるというふうなものとの比較におきまして、価格が非常にそれに近いものになっている。  特に関東財務局の方で物納物件をことしの六月に約八十件売っておりますが、これの価格を見ますと、例えば二十三区の中でも住宅地の中にかなり出ておりますが、我々が売ってもこのぐらいで売るんではないだろうかというふうなことを言う業者さんがおりますが、それでも売れているケースがございます。やっぱり売り手側のいわゆるはっきりした者が売る場合に価格というのは決まるんだなと。  ただ、現在の地価、公示価格が十年前からいきますと、いわゆる国民総生産における上昇率と比較しますと、マトリックスで言えばもう一つにぶつかってしまうぐらい下がってしまったということでございますが、いわゆる不良債権額の中に占める有物担保というのはどういう性格なんだと。住宅かあるいは非住宅か、それのほかにさらに売りにくい物件か。売りにくいといいますのは、簡単に申し上げますと、その土地が使いにくい土地でございまして、例えば調整区域のど真ん中にある土地を住宅地と言われましてもこれは処分しにくいということで、その中身がどうなのかということがわかれば住宅都市工学研究所といたしましても一つの提案は出せるのではないかと、こんなふうに思っております。
  64. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 続きまして、上田公述人にお伺いしたいと思うんですけれども、つい先日、東京共同銀行の記事が出まして、実は正常とされた債権のかなりが不良債権となりまして、経営が成り立たなくなってきているというような話がありました。本来ならば正常債権と考えていたものが、地価の下がりとかそういうものを含めまして、予想より大分不良債権の方が額がふえてきているということであります。  今後、二次ロスの問題がありますけれども、このように不良債権が予定よりもどんどんふえていった場合に本当に二次ロスというものがかなりふえてくるんじゃないかと私自身は心配しておるわけでございます。  そういう意味で、今回の政府のスキームというものは十分なものでないんじゃないかなというような考えを持っているわけですけれども、上田公述人の二次ロスに対する考え方、御見解を承れればと思います。よろしくお願いいたします。
  65. 上田昭三

    公述人上田昭三君) 二次ロスの政府による公的資金負担は、二次ロスのそのとき発生する金額の二分の一というように今決められております。そして、去る十一日のこの委員会銀行局長は、二分の一を政府負担する根拠として次のように述べておられます。それは、その二次ロスの処理のために資金を負担してくれる金融機関にあらかじめリスクの程度を示す必要があるからという新聞報道でございました。  そこで、私はこの記事を見まして直ちに感じましたことは、そもそも今回の住専問題という不祥事は金融機関の不始末によって起こったものであるのに、国民に大きな犠牲を強いながらなぜそこまで金融機関の側に配慮をせねばならないのかという点であります。なぜそこまで金融機関に配慮して二分の一の限度を明示しなければいけないのかという、それは全く国民を犠牲にしての話であろうかと思います。  その点に関しまして、私はこの二次ロスそのものも一次ロスと同じように税金による負担というものは一切必要ないということでありまして、そういうことをすれば、また金融システムがどうのこうのという、あるいは国際的な信用がどうのこうのというような懸念が出されるんじゃないかと思います。その点につきましては私はもう何回も申し上げておりますように、預金支払いさえ保証されるならばそういうことはありませんよ、起こりませんよと。したがって、そういう金融機関救済するような形での一次ロスの公的資金の供与はもちろんのこと、この二次ロスにつきましてもそういうものは全く必要はないということを申し上げたいと思います。
  66. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 続きまして、少し金融関連四法案、それとの観点に立ちまして、やはり上田公述人の方にお伺いしたいんです。  今回、政府が提出しました住専処理案は私的企業への公費導入という点がありますけれども、それと同時に、今回金融関連四法案では、これから市場規律に基づく新しい金融システムの構築、そういうものを目指しているわけでございますけれども、そういう意味では非常に矛盾したものを持っているんじゃないか、二つの住専処理のものとそれから関連の金融四法というものが。  片方は、そういう市場規律をきちんと守るべきだと言っておりながら、住専処理に関しては、これは特別だから今回は許しましょうというような、いわばそういうようなものが混在しているということで、そういうものに対して国民はどうもおかしいんではないかというようなことを感じておって、政府住専処理スキームに対して九割が納得しないということになっていると思うんですが、その辺に関しまして御見解を承りたいと思います。
  67. 上田昭三

    公述人上田昭三君) もうその点は全くおっしゃられるとおりでありまして、矛盾も甚だしいと思うわけであります。将来的にはきちっとしたやり方でやります、しかしながら現在はそういうやり方じゃなくして談合的にやりますということなんですが、一体どうしてそういうことが文明国においてなされるのか、私はもう本当に唖然としているところであります。  関連しまして、実は最近この六千八百五十億円の税負担を軽減するために七千億円の基金を新しくつくってどうのこうのという案が出ておりますが、これはまた非常にごまかしを含んだものでありまして、一言だけそれに関連して私は申し上げさせていただきたいと思います。  それは、現在なされようとしております六千八百五十億円の財政支出を、今取りざたされております基金の運用益で十五年後、この財政資金の投与は現在なんです、それから運用益で返ってまいりますのは十五年後のことなんですね。もしもこの六千八百五十億円を投与しないで国庫に納めておいて、そして適宜運用したといたしますれば、その運用の利回りも、今いろいろ言われておりますような三・八%というようなことで複利計算をしてみますれば、何とそれは十五年間に五千百三十五億円の利子収入ということになります。  したがいまして、十五年後にその運用益から返してもらうんだということであるならば、六千八百五十億円じゃなくして、当然これを運用すれば入ってくるはずの五千百三十五億円を足しました一兆二千億円について、じゃ民間金融機関がどれだけ返還してくれるのかと、こういう論議でなければ全く国民を愚弄するものでなかろうかと私は思います。
  68. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 ありがとうございました。  その点に関しまして、市場の規律というものを非常に重要視されております田尻公述人に同じことについて御見解を承りたいと思います。
  69. 田尻嗣夫

    公述人田尻嗣夫君) 上田先生の御指摘の、破産してから、金融機関倒産してから資金を出すべきだと、全くそのとおりでございます。今、日米間の金融危機対策として決定的な違いはそこにございます。それだからこそ、日本では法的責任の追及が後回しになったり、いろいろな問題が生じて議論の混乱が生じておると、そのとおりでございます。  私も、財政資金投入しないで済むということであれば、もちろんそうあるべきだと思います。しかしながら、私は、最初に申し上げましたように、一般的な公的資金が既に六つのルートからどんどん投入されている、一般会計から出る六千八百五十億円だけを取り上げて時間をどんどん先送りしていかれることに強い疑問を持つわけでございます。  それは、一般会計であろうが中央銀行の資金であろうが、すべては国民の共有資産でございます。しかも、中央銀行資金をなし崩し的に動員した結果、今度八年ぶりに日本銀行から政府に対する国庫納付金がゼロになるという事態を迎えておるわけでございます。ですから、これもいわゆる国民の資金が本来入ってくるべきものが流出してしまったわけであります。ですから、殊さらに六千八百五十億円だけに国民の関心を集中させるということに私は非常に不満でございます。もしそれを御議論なさるんであれば、これまで動員されてまいりました公的資金すべてについて御議論いただく必要があるということでございます。  それからもう一つ、今後の二次損失の問題についてどうするのかということでございます。  二次損失については、これは現在金額が確定しておるわけではございません。しかしながら、一次は出して二次はだめなんだよという理由は一体何であるかということでございます。つまり、それは矛盾を矛盾の上に重ねていくことになるわけでございまして、これは、今もし二次損失公的資金は一切投入しないんだということになりますと、今仮に一次資金で六千八百五十億円を投じましても社会不安、金融危機は一切解消いたしません。それはまさに捨て銭でございます。  そのようなことを考えますと、今、二次損失の問題について財政資金投入は是か否かと、それだけを取り上げて議論なさることの問題設定が私はおかしいと申し上げざるを得ないわけでございます。  それからもう一つ預金保険という問題がいかにも預金者保護について万能であるかのような、あるいはそれがあれば公的資金は要らないのかというような議論もあるわけでございます。上田先生の御指摘の小口の預金者に対して、零細者に対して預金保険を充実せよ、私は全く同感でございます。  しかしながら、ここでお考えいただきたいのは、預金とは一体何でございましょうか。銀行にとってはそれは債務、借りた金でございます。預金者銀行にお金を貸しておるわけでございます。その貸しておるお金を一方では貸し手責任と言い、一方では貸し手責任はないんだと言う、これは論理矛盾でございます。  それから、預金保険は制度上万能でないと申しますか極めて頼りないものでございます。アメリカで十六兆円もの財政資金投入した、それは預金保険があったから防げたわけではございません。Sアンドしの預金保険公社は破産をいたしました。つまり、財政資金投入したから預金保険を再構築することができたわけでございまして、これは保険制度があったからパニックを防げたわけではないわけでございます。まずそれが第一点。  第二点は、もし一度に多数の金融機関が破産をいたしますと、預金保険では絶対にカバーできないわけでございます。現在、いろいろ研究されております世界の預金保険制度の中で、金融機関が一度に同時に大量に破産する仕組みを回避する手段は見出せていないわけでございます。  それから三番目には、預金保険はだれが出したお金かと申しますと、これは預金者負担したお金でございます。つまり、本来もらうべき預金金利の一部が預金保険料として積み立てられていくだけのことでございます。預金保険からお金が出れば、どこからかお金が降ってきたようなものではございません。預金者が結局自分の過去に積み立てたお金をいただくだけのことでございます。  そういう意味で、私は預金保険を充実すればという前提に立っての御議論には余りくみしたくない。預金保険というのは極めて限定的、零細な小口預金者を一時的に救済するだけのことでございまして、これがあれば金融不安は生じないというものでは決してないわけでございます。  それからもう一つは、預金者もやはりモラルハザードの問題がございます。いいかげんな金融機関が高い金利を出して預金を集めるということについて、不注意にもそれに乗っかるという責任は当然とっていただくべきでございます。そうでなければ、ほかの賢明なる預金者コストが愚かな預金者に移転することになるからでございます。預金保険を公的資金を幾らでも投入して守っていくよということにした結果がアメリカモラルハザードになったわけでございます。つまり、銀行にとって借金は全部政府が払ってやるよということを意味するわけであります。そうなりますと、高利でもどんどん預金を集めて食い逃げしちゃった方が得だというふうなモラル汚染が起きるわけでございます。  したがいまして、預金保険はこういうこういう場合に必ず適用されますなどという固定的、極めて明快な預金保険制度は危険でございます。むしろ、適用されるかどうかはある程度あいまいにしておくべき、建設的なあいまいさの上に預金保険制度は限定的に持ち込まれるべきものでございまして、金融不安対策としては決して万能ではないというふうに申し上げたいと存じます。
  70. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 預金保険のことが話題になりましたけれども、今後五年間はペイオフをしないで預金者保護するということになりますけれども、その後ではやはり預金者の方も自己責任のもとに預金をしなければならないということになるわけでございます。どうも私たちの場合、日本国民の場合にはまだまだ銀行は倒れないものだというような意識がこびりついておりまして、本当にこの五年間という期限がどこで決められたのか私自身はよくわかりませんが、その五年間で預金者自体が自己責任を問われても大丈夫だというような、そういう国内のシステムがきちんとできるかどうかはディスクロージャーにかかっていると思うんです。  その辺、預金者混乱に陥らないようなそういうディスクロージャーのシステムについて何か御見解がありましたら、上田公述人の方からお聞かせいただきたいと思います。
  71. 上田昭三

    公述人上田昭三君) 五年後にはペイオフ制度も導入するということで、そこで初めて我が国預金者の自己責任制度が問われるということになるわけであります。  ちょっと振り返って考えてみますと、日本の場合は昭和四十六年に預金保険制度ができました。したがいまして、現在もうこれで二十六年目になるわけでありますが、実はこの間、一回も大蔵省は公式には預金保険制度の説明を国民に対して行っていないんです。全く行っていないんです。  その点、この間の衆議院のこの種の委員会でつかれた際に銀行局長はどういう答えをしたかといいますれば、確かに大蔵省としてはそういう印刷物では周知は行っておりません、ただし、ことしの一月から民間の各金融機関が店頭においてそういうパンフ類を置いて行っておりますということを、私はテレビを見ておりましてそういうことを知ったわけであります。そこで、私は早速近くにあります都市銀行の一店舗を訪ねてみました。そういうものは全然置いていないんですね。同じことなんです。こういうことで、大蔵省預金者のためにつくられた預金保険制度を全く国民に知らせない。  そして、先ほどもこういうお話がございました。預金者は相変わらず預金について不安を感じていると。それは、小口預金者について言いますれば、預金保険制度について全くまだ知識のない人が少なくないからではないでしょうか。こういう大蔵省のやり方で、一方において預金者に自己責任だけを問うというのは全く不合理な話であります。  しかしながら、いずれにしましても、大口預金につきましては自己責任が問われなきゃいけない。そのためには、まず小口預金者に対してはっきりとこの限度については保証されるんですよということをこれからは大蔵省は、過去のことはともかくといたしまして、真剣に印刷物でもって国民に十分周知するということ、これは私は絶対に必要かと思われます。  先生方、皆さんもうほとんどアメリカへ行かれまして、アメリカ銀行を訪れたことと思いますが、アメリカ銀行の入り口のドアのガラスのところにFDICに加盟しているという表示がありまして、中へ入ってカウンターに行ってみますれば、非常に懇切丁寧に預金保険制度の説明のパンフが置かれている。そして、政府政府で何か機会があるごとにそういうことをまた周知している。日本は全くの逆であります。そういうことで、これからはひとつ大蔵省は真剣にこの制度の周知に努めていただかなければいけないと思います。  もちろん、これが余り周知をされ過ぎると預金者側にモラルハザードが起こるんじゃないかというまた大蔵省側の杞憂があるんじゃないかと私は思うんですが、預金者モラルハザードモラルハザードと言いますけれども、この銀行が危ないとか危なくないというのは一体どうしてわかるんでしょうか。危ないとわかった銀行になおかつ金利が高いからということで預けて初めてモラルハザードが成立すると私は思うのでありますが、そういう情報資料も信頼できるものが全く公表されていない段階預金者はそんなことは全然わからないわけであります。ともかく他の金融機関預金金利が低過ぎるから、まあまあましな金利を出しているところに預けているというのが現在までの実態じゃないかと私は思います。  したがいまして、そういう預金者側のモラルハザードということは、これまでの状況については余り言うことはできない。しかし、今後は情報がしっかり公表され、小口の預金者にも理解されるような形で公表された段階において小口預金者モラルハザードということは問われてしかるべきじゃないかと、このように私は思っております。
  72. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 残り時間がわずかですけれども、ペイオフの一千万という数値ですが、これがほぼみんなに了解されているようなことで余り議論にならないんですけれども、その額について簡潔に、もう時間がありませんので、上田公述人の方から一言よろしくお願いします。
  73. 上田昭三

    公述人上田昭三君) 現在、ごく一般的な勤労者の退職金が千五百万円を超しております。それからまた、アメリカの実態は先ほど申し上げましたように一応……
  74. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 済みません、簡潔に。
  75. 上田昭三

    公述人上田昭三君) 結論だけ申しますれば、少なくとも千五百万程度にしなければ庶民の預金は最低保証されないと、このように思います。
  76. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 ありがとうございました。(拍手)
  77. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 公述人の皆さんには大変御苦労さまでございます。社会民主党の伊藤でございます。私は、主として田尻公述人にお尋ねしたいというふうに思っております。  この委員会での議論のそもそもの起こりというのは、私はプラザ合意以降の問題にあるんじゃないかというふうに思っております。当時、双子の赤字を抱えたアメリカが、金融・財政政策のいわば世界的な遂行能力といいましょうか、国内においてもそうだったんでしょうけれども、遂行能力を失ったと。主要先進国に対し全面的な対米協調を要求してきた。すなわち、ドル切り下げによる競争力回復が目的であったんじゃないかと。その背景に新デタントというものがあるかと思いますけれども。  そこで、アメリカの単独利下げが日本やドイツヘの大量資金還流を生むという懸念から、ドル暴落の危険があるということから、主要先進国の同時的な金利低下、ドル安へのソフトランディング、かつ日独の内需拡大、世界経済指導力の分散を目指したという経過であったのではないかと思っています。    〔委員長退席、理事前田勲男君着席〕  そこで、一九八五年九月、先進五カ国蔵相会議が開かれて、ドル高是正に向けたプラザ合意がなされ、これにより急速なドル高修正局面に入って、円レートは八五年九月の一ドル二百三十円から一年後に百六十円へ急騰いたしました。  他方、急激な円高は、一九八五年六月をピークに下降に向かっていた我が国の景気を一層悪化させることとなって、円高不況に対応するため、日銀は八六年一月以降、公定歩合を五次にわたって引き下げて、八七年二月には、現在とは比較になりませんが、史上最低二・五%という状況になったのであります。  すなわち、金融緩和が株価の大幅上昇と地価の大幅上昇を招いて、土地と金融資産に偏ったストック化が持てる者と持たざる者との資産格差を広げまして、株式市場からの資金導入が容易になった企業の資金需要が激減して、銀行の資金が大量に不動産市場に流出し、ノンバンクを含め全国銀行の総貸し出しに占める不動産融資のシェアが三〇%近くになったという状況であります。  さて、ここで、こういう状況下において質問したいわけでございます。資本主義市場経済というものが必ず需給のアンバランスを生むという中で、六〇年代までの戦後の世界経済は数量ベースでその矛盾を調整した。七〇年代以降は価格で調整、八〇年代以降は金融で調整ということであろうかと思っています。先進国が共通したこういう対応をした。日本ばかりではないと思っています。  金融による調整は、日本において、または世界主要先進国において必然のものなのか、そうせざるを得ないという経済の仕組みなのか、政府または中央銀行による政策の選択として行われたものか、あるいはほかの道があったのか。特に日本における過度の金融調整といいましょうか、そういうものが他の先進主要国と比べてバブルの激しさまたは崩壊の激しさというものを生んだんではないだろうかというふうに考えられるのであります。  果たして、そういう金融調整が今後もずっと続いていくのかどうか。今後二十一世紀にかけて経済における金融の役割はどのようになっていくんだろうか。今日までプラザ合意以降の流れを何回も何回も繰り返していかざるを得ない宿命にあるのかどうか。そういう中で、それに対応していく金融の再編ということで金融の再編が起こるのか。あるいは根本的な金融政策というものを打ち立てることができるのか。そういう点について、まずお伺いしたいと思います。
  78. 田尻嗣夫

    公述人田尻嗣夫君) バブル経済の発生原因については、先生御指摘の要因がいろいろ絡まっておると私も判断いたしております。  いわゆる実物経済と申しますか、財、サービスの取引においてアメリカとその他の国々との間の調整がつかなくなったということから、基軸通貨国としての特権と申しますか、パワーを最大限に活用するその一環として、一つは内需拡大を求め、一方でドル安を求めたわけでございます。為替政策と国内の財政・金融政策の両方をアメリカの必要とする方向に動員するということが行われたわけでございまして、これはドル本位制と申しますかドル体制の崩壊過程の重要な一ステップではないかと私は存じます。  したがいまして、結論の方から先に申し上げますと、ドル体制の中で日本経済が生きていかざるを得ないという大枠がある以上、今後ともドルの危機あるいはアメリカの国際収支の危機が深刻化するたびに我々は、そういった負担と申しますか犠牲を要求されるということではないかと思います。  しかしながら、その負担の仕方、度合いにおいては国によってかなり違ったものがあったわけでございます。  特に、G7の中でも、ドイツにおきましては日本のようなひどい資産インフレは起きなかったわけでございます。そこにやはり政策当局の賢明な判断と、それからドイツとアメリカ関係、ドル体制と申しますかドル貿易の比重が低いドイツの独自性というものがあったかと存じます。  しかしながら、我が国におきましてはドルを決済通貨として使う、あるいはドル体制の中で経済成長を図っていかないといけないという現実がある以上、ドイツのアメリカに対する立場と日本の政策当局の立場とは決定的に違うのではないかと思います。  さればどうすればいいかということでございますが、一つは、その負担の仕方、プロセスをより日本国の国益に合う形に持っていく方法はないかという政策手段の追求の問題がございます。もう一つは、金融政策は国民経済の基盤であります通貨の価値を守るという重要な使命を持っておるわけでありますから、通貨を犠牲にしない範囲内での金融政策の国際協調というのはいかなるものかということも追求されるべきであろうかと思います。  もっと突き詰めていきますと、結局のところ、我々はドル資産を積み上げ、ドルで商売をしていくという立場にある限り、この問題は必ず繰り返されていくに違いないわけであります。それだけになおのこと円の国際化ということを早急に促進していく必要があるわけでございます。  円の国際化というのは、何も日本が為替差損を避けるためとか、あるいは日本国のそういう負担ができるだけ軽くなるようにという一国繁栄主義の観点ではございません。円というのは今や国際公共財でございます。だからこそ、今般の平成金融危機処理についても緊急性が極めて高いと私は申し上げておるわけでございます。  もう一つは、金融政策、財政政策とも必ず失敗がございます。各国とも八〇年代後半のプラザ合意と申しますかG7型の国際協調体制に対する反省ということが一様に起きておるわけでございます。決して財政当局の責任だけではございません。中央銀行にも失敗がございました。  ある方は、日本銀行の独立性という問題に関しまして、日本銀行はそれだけ偉いのか、賢いのかと、こういう御質問を私は受けたことがございます。これは逆でございまして、日本銀行が強くない、賢くないから独立性を与え、かつそのアカウンタビリティーと申しますか、説明責任を議会に対して責任を負わす体制を明確にする必要があるということでございます。
  79. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 今のお話もそうなんですが、私もさまざま調べてみまして、日米関係の強さといいましょうか、日米関係ということからするとやや必然的な事の起こり方をしているということでありますから、先生のおっしゃった円の国際財ということについて、どれだけ円決済をなし得るかということになるかと思いますけれども、なかなかここは難しいことであろうと。  特に、一ドル三百六十円に決定された経過というのが、当時、購買力では一ドル百八十円であったと。そのことが日本の経済復興をもたらしたわけですが、今日なお一ドルは百八十円であるということからすれば、非常に長いタームの中でバブルが起きてバブルが崩壊していくということにすれば、今後の金融政策、金融システムというのは、かなり厳しく自国の利益と協調、日米協調と国際協調と合わせながらしていかなきゃならないなと思っております。  そこで、金融の自由化の問題でございますけれども、先ほど先生が説明の中で相対的自由化から絶対的自由化へと。未来をきちんととらえてどう自由化を果たしていくかということがその答えになり得るのではないかというふうに私もお聞きしておりました。金融の自由化も日米円・ドル委員会の報告書が出たことをスタートとしております。ここにもまたアメリカが出てくるわけでございます。    〔理事前田勲男君退席、委員長着席〕  そこで、大蔵省が金融の自由化に着手するに当たって、先ほど申し上げた一九八〇年代以降の金融調整時代に対応できる方向としてそのことをやったのか、または金融調整局面に対応できるシステムを目指していたのか、ないしは本来的には先生の御意見ではどうあるべきであるのか。  または、今、金融六法のうちの金融四法は国際経済・金融に対応できるのか。私の疑問は、金融自由化に着手したとき、なぜ今の四法案が出てこなかったのか。大蔵省は自由化と同時になぜ次なる金融時代を考えて体制の準備をしなかったか、ここが大変疑問なんですけれども、それらの点についてお答えいただきたいと思います。
  80. 田尻嗣夫

    公述人田尻嗣夫君) 我が国の金融自由化は、御指摘の日米円・ドル委員会の八四年五月の報告以来、既に十二年ほどになるわけでございます。その過程でなぜこういう金融関連四法案のようなものができなかったのかということでございますが、私も政策当局の外側からそれを推察するしかない立場でございます。  では、なぜ日本が金融自由化をやったかということ、これはよく言われますように、二つのコクサイ化、国債の大量発行と日本経済の国際化というこの二つに対応する必要があったというふうに説明されております。それはそのとおりでございます。  しかしながら、直接的なきっかけ、なぜ八四年五月だったかとかいうような問題を考えてまいりますと、日本の金融自由化には大変特徴的なことがございます。  第一には、アメリカからの強い要求があって、外圧に対応するという形での外圧対応型の金融自由化でございました。したがいまして、金融自由化の中身は、対外開放、国際金融をまず自由化する、国内への競争原理の導入は後回しにされたわけでございます。二番目は、法人取引を先に自由化するということでありまして、小口の個人の取引の自由化は、これも後回しになりました。三つ目は、同じ個人あるいは法人の中におきましても、大口の取引をまず自由化して、小口の取引は後にするという方向がはっきり打ち出されたわけであります。これがつまり私の申し上げます相対的な金融自由化の中身でございます。  そういたしますと、この三つの後回しになった国内で、個人で、小口というところが、金融自由化のメリットを受けるいとまもなく超低金利時代に入ってしまったという現実があるわけでございます。当然、政策当局としては市場の失敗も想定しなかったわけではないと思います。しかしながら、それまでの護送船団行政の慣性力と、あるいはそれに対する過信というものがあったのではないかと思います。つまり、秩序立った自由化というのは可能であるという考え方があったのではないかと存じます。  しかし、そのことは既にヨーロッパ並びにアメリカの金融自由化過程でそうではないと思われる材料が多く提供されていたわけでございまして、その辺に対する取り組みあるいは情報の評価の仕方という点に問題があったのではないかと存じます。  もう一つは、金融自由化をすれば預金金利や貸出金利競争が行われて国民経済に福音となるのかとなりますと、決してそうではありません。金融自由化というのは規制をなくすることでございます。規制をなくした後の自由金利時代というものが本当に競争状態に入っていったかということを諸外国に求めてみますと、例えば先進国の中では、ドイツが一九六七年までに真っ先に金利の自由化を終了いたしました。そういう意味では統制金利は消滅いたしましたが、かわって登場いたしましたのが業界のカルテル金利でございます。そういう状況が近年まで続いておったわけでありまして、金利の自由化を真っ先にやったドイツが金利競争がほとんど行われない状態が最近まで続いていたという現実があったわけでございます。  そういう意味で、先ほど上田先生もおっしゃいましたように、参人制限をやるあるいは寡占状態にあるというその構造に手をつけない表面的な規制緩和では自由化のメリツトは出てこないわけでございますし、そのデメリットを回避するための市場の規律も働かないということであります。私は日本の金融自由化政策を全面的に否定するわけではございません。いろいろメリットも片方では出ております。しかしながら、そういった問題が今日の問題をもたらしたというふうに考えております。
  81. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 時間がありませんので、あるいはちょっと時間内におさまらないかもしれませんけれども、できたら簡単にお答えいただきたいと思うんです。  これからの金融の国際化時代における金融システム危機管理についてどのようなところから危機が起こってくるか、私は金融の安全保障みたいな思想が必要なんじゃないかと思っておりますが、その辺はいかがでしょうか。
  82. 田尻嗣夫

    公述人田尻嗣夫君) 金融システムというのは大変冷酷なメカニズムを持っておりまして、弱いところに必ずしわ寄せが行くという現実がございます。もう一つは、システミックリスクと申しまして、最も弱いところで切断をされてシステム全体がばらばらになっていくという問題があるわけであります。  そういう意味では、金融問題というのは、平均値とか業態別に十把一からげに論じるということのできない極めて注意深いミクロの分析が必要でございます。そういう点からいきますと、今、日本金融システム国内的にどうかということになりますと、そのミクロ的なリスクというものを測定するだけの情報がほとんど提供されていないわけでございまして、そういう意味では今般の銀行負担のお話も銀行界全体としてどうかと、こういう議論にどうしてもなってしまうわけでございます。  そういう意味で、これからも最も弱い部分はどこかということ、あるいは弱くなりそうなところはどこかということについての情報公開が必要であろうかと存じます。
  83. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 どうもありがとうございました。  終わります。(拍手)
  84. 吉川春子

    ○吉川春子君 四人の公述人の皆さん、本当に御苦労さまです。  私は、特に高田公述人にお伺いしたいと思いますが、先ほど、国民が血のにじむような思いで納めた税金阪神大震災の被災者を初め、お年寄りや子供のために使ってほしいと述べられましたけれども、私も同感です。  先ほど、共働きで二人のお子さんを育てられたと言われました。子供たちの放課後を保証する学童保育ですが、ことしの予算で千三百カ所の学童保育所の一カ所当たりの国の補助金を一二%カットしました。補助金の額は一カ所当たりわずか三十六万円です。  また、病院に附属してある看護婦さんなどが利用する院内保育所の保母さんたちの人件費を三七・五%カットしました。十二カ月分支給すべきところを七・五カ月分しか補助金を出さないと、こういうわけです。看護婦さんが保育所がないために子育てができずに離職をすることがないように、看護職員確保の目的で院内保育事業に対して国が補助金を出しているわけです。それでもことしの予算で削っている。こういうやり方について、まず公述人はどうお考えですか、お伺いします。
  85. 高田公子

    公述人高田公子君) 私自身も無認可保育所とか学童保育に子供を通わせながら頑張ってまいりましたので、今、国の予算が減らされてくる中で、その辺に本当にしわ寄せが行っていることに心を痛めております。ぜひ国の政治の力で、社会に光の当たっていない人たちを大切にしていただきたいなと思っております。
  86. 吉川春子

    ○吉川春子君 公定歩合の金利が、低金利が長く続いて、国民預金利息が少なくなって、特にお年寄りや女性の方々には大きな打撃になっています。  ところが、金融機関、とりわけ大銀行はこの低金利で莫大な業務純益を上げています。銀行の今年度の三月決算を見ますとまさに史上最高です。都市銀行は約三兆五千億円、主要二十一行で約四兆七千七百八億です。九一年度から九五年度までの五年間の主要二十一行の業務純益は約十六兆三千五百億にもなります。大銀行はバブルが崩壊してもこのように莫大な純利益を上げ続けています。  私は、母体行には体力があり、母体行の責任で不良資産の処理をすべきだと考えておりますけれども、高田公述人はこの点についていかがお考えですか。
  87. 高田公子

    公述人高田公子君) 私も全くそのように思っております。  今、九割もの国民住専に対して怒っておりますのも、今、吉川先生がおっしゃいましたように、本当に私たちの生活の中で、とりわけ年金生活者は預貯金が命の綱だとおっしゃっています。今まで退職金をそのまま貯金に持っていると、利息とそして年金で何とか暮らせていったのが、全くそれがなくなったがために、退職金そのものを使い果たしていっているので、その退職金がなくなったときが命が切れるときだということをもう本当に年金生活者の方がおっしゃっています。  そういう国民一人一人の命をかけた毎日の苦労の中から見ておりますと、母体行が本当にたくさんのお金がありながらみずから責任をとろうとしないことに対して、私も本当に責任をとっていただきたいと思っております。
  88. 吉川春子

    ○吉川春子君 大蔵省、そして政府は、前々から銀行、とりわけ大銀行に手厚い保護、優遇策をとってきました。  例えば、法人税について言えば、貸倒引当金とか退職給与引当金とか、引当金、準備金などの損金控除によって法人税が相当減額される、そういうふうになっています。また、莫大な不良債権を抱えていても、莫大な業務純益によって償却されて税金が軽減される、こういう仕組みになっています。  政府の庶民への対応と比較してこれは余りにも優遇ではないでしょうか。国民の間にこれに対する大きな怒りの声か広がっているのも当然だと思いますが、その辺の公述人の思いをお聞かせいただきたいと思います。
  89. 高田公子

    公述人高田公子君) 今まで私たち若い女性たちの中には、とりわけ職場で働くOLの方々の中には、政治に関心がない、あるいはかかわりたくない、そういう方々が今回本当に怒りを広げていっているのは、今おっしゃいましたように、大きな企業が自分たちの中にたくさんのお金をため込んでいっている、それと比べて私たちの暮らしが余りにも大変だというあたりに怒りが沸き起こっていると思っております。
  90. 吉川春子

    ○吉川春子君 大蔵省は、政府広報で、「住専問題とは何ですか。お答えします。」という、こういうパンフレットを大量につくっているわけです。このリーフもそうなんですけれども、これはパンフレットとビラを一千百八十万円かけて四十万部印刷して配布しております。これは九五年度と九六年度の予算の合計です。  このパンフレットの中を見ますと、「六千八百五十億円の財政支出を含む政府住専処理策は皆さんの預金を守るためにどうしても必要です。」とここに書いてあります。「住専処理のために一人五千五百円ずつの税金を新たに納めていただくことはありません。」とか、選挙のビラのようなものなんですけれども、「政府財政支出がないと住専処理策が白紙に戻り、景気に悪影響がでます。」とか「今回の住専処理策は最も重要な景気対策です。」などと書かれています。  政府広報については今までも物すごい批判がありまして、例えば原発が安全だ安全だという政府広報を物すごいお金、税金でやるわけです。それから、消費税導入のときも、そういうふうに政府広報、政府のPRをやって、批判を集めました。世論が二つに分かれたり、今回は二つどころか九対一ぐらいなんですけれども、そういう問題について政府税金を使ってこういうことをやるということについては、政府広報というのは単なる事実のお知らせならともかく、世論誘導をやるようなことは私は認められないと何遍も国会ても追及しているんですけれども、これを見ると、まさに皆さんの預金を守り暮らしを守るために六千八百五十億の支出は必要なのですと言わんばかりのパンフを出して、リーフを出して宣伝しているんですよね。  こういう点について公述人はどのようにお考えでしょうか、お聞かせください。
  91. 高田公子

    公述人高田公子君) この政府の広報を見たときに一番びっくりしましたのは、国会でちょうど審議中で、世論が真っ二つどころか今おっしゃいましたように圧倒的に反対している、そういう大事なものを審議している最中に既に政府が広報として出されたということに対しまして、非常にこれはおかしいんじゃないかな、国会で決まったことを政府がお知らせするというのだったらまだ納得できますが、決まっていないものを、まさに九割の反対している人たちに対してその思いを静めるといいますか、ただ、あの広報がまかれることによって、よりみんながこれはおかしい、どこが一番おかしいかということでみんなで論議になりましたのは、「税金を新たに納めていただくことはありません。」というくだりのところです。  私たちは、私たちが納めた税金も私たちの税金だというふうに思っています。私たちの納めた税金が、それは政府税金だと思っていらっしゃるのかなということをこの広報を見て改めて感じまして、そのあたりからいろいろとずれが来るのかなと。  私たち国民税金だから、国民の一番苦しんでいる、苦悩している人たちに、本当にあすの命が危ないような方々に大事に使っていただきたいのに、そういう方々のところに大切に使われないのは、やっぱり国民から納められた税金はもう自分たちのものだというふうに思っていらっしゃるんじゃないかということが、この広報のチラシを見て国民の中ではかなり意見としては上がっておりました。
  92. 吉川春子

    ○吉川春子君 もう一つ高田公述人にお伺いしたいんですけれども、政府住専税金をつぎ込む一方で、来年四月から消費税率を五%に引き上げようとしております。全く国民を踏みつけにするようなやり方で私は許せないと思いますが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  93. 高田公子

    公述人高田公子君) 私も消費税につきましては、先ほど皆さんにお配りいたしました新婦人家計簿あるいは生活の実態調査のところにも資料を入れておきましたが、家計簿のモニターさんで、消費税が導入されましてから七年間、毎日毎日消費税を記帳し続けた方が六十三万六千円。私たちはもう毎日のことですから本当に三%でもお買い物のたびにため息をついておりましたが、改めて六十三万六千円ということを伺いまして、もしこれが本当に五%になったら百万を超えて消費税を支払ってきたことになるんだなということで、これでは生活はやっていけないなということが私たち家計を預かります主婦の実感です。
  94. 吉川春子

    ○吉川春子君 上田公述人にお伺いしたいと思うんですけれども、先ほど来いろいろ議論にもなっておりますが、今、銀行は、とりわけ大銀行は莫大な業務純益を上げております。  一九九五年は史上最高と、こういうふうに言われておりまして、都市銀行は九五年度は約三兆四千五百億、九一年度からの五年間で見ますと十二兆三千八百億、全国銀行ベースで見ますと、九五年度は約六兆七千三百六十億円、九一年度から五年間で見ますと二十四兆六千億円、こういう額に上っているわけです。  私は、これは公定歩合の引き下げによるものであると、このように理解しておりますが、上田公述人はこのことについて「エコノミスト」の三月十九日号でしたか、「銀行は、公定歩合引き下げ時に二種類のペテン師的利益増やし行為を徹底的に行っている」と、このように糾弾しておられます。この点について御説明していただければと思います。
  95. 上田昭三

    公述人上田昭三君) 簡単に御説明申し上げます。  二種類のペテン師的な手法と申しますのは、一つは、要するに公定歩合が引き下げられたときに、預金金利を多目に引き下げて、それからローン金利の方は少な目にしか引き下げないということで、そのたびに利ざやを広げていったということであります。  数字で申しますれば、平成三年七月から第一次の公定歩合の引き下げが行われたわけでありますが、その直前の六月の利ざやというものは、総利ざやでありますけれども、〇・六%程度、それが昨年の十一月には何と一・五%程度にまで広がっているということで、その利ざやを人為的に公定歩合の引き下げに便乗して広げたことによる利益のふやし。  もう一つは、そういう預金金利の引き下げは公定歩合の引き下げと同時にもう間髪を入れずに行って、一方ローン金利の方は少な目に引き下げながら、かつ、去年の四月の例で申しますれば、住宅ローン金利は何と三十数日おくれて引き下げる、預金金利は即座に引き下げるけれども、ローン金利の方は約一月のずれを人為的につくって引き下げると。そういうやり方で、よく調べてみますと実に何とも言えないずるいやり方で利益を広げておったということでございます。  私は、正当なやり方で利益を上げるのであれば、もう何十兆何百兆上げようとそれは当然のことであろうかと思います。
  96. 吉川春子

    ○吉川春子君 時間が来ました。  ありがとうございました。
  97. 小島慶三

    ○小島慶三君 本日は、公述人の皆様、どうも御苦労さまでございます。  私は、何とかの一つ覚えじゃありませんが、この問題の始まったときから言い続けてきたことがありますので、これについてお考えを伺いたいと思います。  といいますのは、今回のこれが一番もめてきた原因というのは、六千八百五十億の国費支出ということであると思うんですが、私は何もそういう手段によらなくても、日銀法二十五条によって日銀の特融という制度があるのですから、それでやれば十分ではないかと。もっとも、国庫納付金に関係が出てきますから、その問題はありますけれども、これは後で処理すればよろしいというふうに思います。それで何回か予算委員会でも質問をしたんですけれども、総理の御答弁も大蔵大臣の御答弁もどうも余りはっきりしない。  そこで、本日はいい機会でございますので、公述人の方にそういった考え方についての御意見を承りたいと、こういうふうに思います。  まず田尻公述人にひとつお願いします。
  98. 田尻嗣夫

    公述人田尻嗣夫君) 私の個人的見解としては、先生の御見解とは全く逆でございまして、財政資金を抑える見返り財源として中央銀行資金を動員するというのはあってはならないことであります。  現在、日本銀行の無原則な資金動員というものは、このまま参りますと中央銀行自身を不良債権漬けにするおそれのあるコースでございます。国際的に見まして日本銀行の財務体質は決してよくはございません。悪いという意味ではございません。その自己資本比率等民間金融機関に求められている国際的基準に比べましても、日本銀行の財務体質はそれほど強いものではない。それだけに我々は慎重に大切にこの中央銀行制度を守らなければならないということでございます。  二番目は、先ほど六千八百五十億円の住専処理に日銀法二十五条を動員した特別融資をということでございますが、中央銀行の資金が動員できる範囲は一時的な流動性不足をカバーするつなぎ融資というものでございまして、金融機関支払い能力を中長期的に維持していくための資金であってはならないわけでございます。  なぜならば、現在のような管理通貨制度のもとにおきましては、健全な中央銀行の財務体質というものが円に対する国際的信頼、国民の信頼の基盤でございます。かつての金本位制のように金の裏づけがあるという時代ではございません。国民が中央銀行の財務体質について疑問を持った途端に紙切れになってしまうわけでございます。  そのようなことでございますので、今回も財政資金を抑える代案として中央銀行資金を追加負担分で一千億円云々の報道がございますけれども、断じてこれは許されるべきではないと私は考えております。
  99. 小島慶三

    ○小島慶三君 私の意見とは大分違うようでありますが、じゃついでに、ついでにと言っては申しわけありませんが、上田公述人にひとつお願いします。
  100. 上田昭三

    公述人上田昭三君) お答え申し上げます。  全く今の田尻先生のお答えと同一でございますが、ただ一つだけ蛇足をつけ加えますと、仮にそういうことが可能であったとしても、現在問題になっております破綻同然の金融機関救済するためにそういうことは絶対になされてはいけないということもつけ加えたいと思います。
  101. 小島慶三

    ○小島慶三君 どうも旗色が悪いようでありますので、私はこれで質問を終わります。
  102. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 上田公述人に二点お伺いいたします。  第一点は、追加負担関係でありまして、今母体行に追加負担を求める声が高いんですけれども、いま一つはかばかしい答えが返ってこない。母体行というのは最初から債権放棄で十分、それ以上の追加負担は株主代表訴訟の問題があると、こういうことを言っておりました。しかし、これは私は口実にすぎないと思います。  なぜかと申しますと、金融システムを守るためだと、こういうことを言っておりますから、これは端的に言えば銀行を守るために必要な追加負担だと、こういうことになります。ですから、銀行はそのことをはっきり株主総会で、我と我が身を守る金ですよ、株主を守る金にもなるんですよということを説明すれば株主も納得してくれるんだろう、万が一にも怒ることはないと思いますし、怒ったにしてもそういう訴訟は恐るるに足りないと、こう思いますけれども、その点はいかがか。  それから、もう一つは法的措置のことで、なぜ母体行が法的措置をとらなかったのかと、こういうことなんですが、政府の説明によると、法的措置をとると農林系が非常に不利になると。ということは、住専に対する債権者は農林系と母体行がおるわけですから、農林系に不利になるということは母体行に有利ですから、母体行はなぜそういう有利な道をとらなかったのか。少なくとも農林系を自分のベースに誘い込む一つの呼び水になったんじゃないか。そういう我を張っていると法的措置をとりますよということを母体行が主張すれば農林系もいつまでも突っ張っておれなかった、それが話し合いの糸口になったのじゃないかなと、こう思うんですけれども、いかがでしょうか。簡潔にお願いします。
  103. 上田昭三

    公述人上田昭三君) まず、第一番目の御質問でございますけれども、御質問の御趣旨は非常によくわかりますが、私自身の立場といたしましては、この問題につきましても、そういう談合じゃなくして、いい意味での談合というものを含む場合もございますが、そういうことは話し合いじゃなくして、ここまでこじれた問題はやはり法的に解決しなければならないのではないか。  それは、母体行の言い分もあるわけであります。また、農林系も言い分があるわけであります。また、大蔵省の言い分もあるわけです。そういう場合には、解決というものがなかなかつかない場合には法律によってやってもらうというのが原則であって、談合は、結局のところ後々まで貸し借りの関係を残していって、またそういういろんな問題が起こりかねないということで私は余り賛成できないと思います。  それから、なぜ民間銀行が法的措置に踏み切らなかったのかという御質問でございますが、一時そういう動きがあったように思いますけれども、それならもう銀行側は法的措置に踏み切りますよというような話があったように思いますが、それがなぜ消えてしまったのか。恐らくそれは大蔵省からまたいろんな抑制が裏側ではあったんじゃないかと、私はそのように思っております。以上でございます。
  104. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 次に、国民代表的な方は高田公述人だけでございますのでお伺いいたしますが、これは、この前、参考人として元銀行局長の寺村信行氏をお呼びしたときの話なんですけれども、農林系と母体行というのは一度もこの問題について話し合いのテーブルに着かなかったと、大変衝撃的な話をなさいました。それぞれ自分の言い分があってこれはもう話し合ってもむだだと、こういうことを言っておったのでしょう。テーブルにさえ着かなかった。これは大変に無責任なことだと思います。  率直に言うと、自分たちの世界で起きた問題ですから、自分たちがまず話し合って解決をする。それは一生懸命やれば多少なりとも歩み寄れるわけで、最終的にはまとまらなくても、やっぱりあそこまでやったのなら後は政府が面倒見てやろうというムードにもなってくるんでしょう。  しかし、何もやらないで、いずれ政府が出てきて解決してくれるんだろう、その際、政府は手ぶらでは来ないはずだと、こう思っていたのかもしれません。案の定六千八百五十億円というお土産を持ってきて話がまとまったかのごとくですけれども、これは経済人としては許しがたい怠慢、無責任ぶりだと私は思いますけれども、この点についていかがお考えか、感想で結構でございます。
  105. 高田公子

    公述人高田公子君) おっしゃるとおり、無責任だということも事実だというふうに思います。  もう一つ、私はやっぱり、この間の国会でのお話し合いなどの状況を見ておりまして、どうしても政府が母体行に対しまして甘い態度をとられますので、母体行の方がある意味で自分たちがこのままいけば政府救済してくれるというふうに、反対に政府の方を母体行がなめちゃっている。なめちゃっていると言いますと言葉がきつ過ぎると思いますが、ですから政府がはっきりと母体行に責任があるということをおっしゃれば、もっと母体行が責任をとったのではないだろうか。そういう点で、母体行と農林系に対しましても、話し合いが必要ならば話し合いの大事さというのも御指導されるべきではないかと思います。
  106. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 終わります。
  107. 奥村展三

    ○奥村展三君 公述人の皆さん大変御苦労さまでございます。  端的にお伺いをいたしたいと思います。  小村先生と田尻先生にお願いをしたいんですが、先ほど真島先生の方からも質問されておりましたので、多少重なるかもわかりません。  回収した不動産を証券化しようと言われているわけでございますが、なかなか進まないと思っております。これにつきましてどのようなお考えをお持ちでしょうか。そしてまた、何かいいお知恵がありましたらお教えをいただきたいと思います。
  108. 小村哲夫

    公述人小村哲夫君) 有価証券が、かつては不動産に関しまして抵当証券というものが一つありまして、これがいわゆる個人消費者までなかなか届かなかった。民間投資機関の方でみんな買い取ったという事実もありまして、現在のところ土地担保にとったいわゆる有価証券というのはなかなか出しにくい。特に、今日のように変額保険とかもろもろの保険の中で元本割れをしているというふうなことがありますと、なおさらなかなかそういうところに進みにくいんだろうと思います。  今までは各信託銀行とかあるいは証券会社とかばらばらにやっていた話がこういう成果でございますので、今後はそれが一つになって新たな有価証券をつくるべきだと。一つの例としてアメリカの方にもそういう試行錯誤した例があるものでございますから、それは今後の課題としたいと、こんなふうに思っております。
  109. 田尻嗣夫

    公述人田尻嗣夫君) セキュリタイゼーションの問題でございますが、現物としての土地不動産を有価証券化することによりましていろんな方策が開けてくると、そのとおりだと思います。しかしながら、日本機関投資家並びに金融機関は今大きなリスクを非常にとりにくい状況にあるわけでございます。したがいまして、その流動性をつけるための証券化は、グローバルな国際的なマーケットの中で処理されていかなければならない。同時に、国内で法制度等々の環境整備を進める必要があろうかと思います。  そういう点では、先ほどどなたかの御発言にございましたけれども、国内で今流動化すべき不動産土地の国際的なお買い物リストと申しますか、そういうものを世界的にPRしていく必要があるということだろうと思います。現行法の中でも可能な道は必ず見出せるはずでございます。  既に私の友人たちの間の話では、そういった競売もしくは処分される土地不動産を使って付加価値を高めて非常に大きな利益を上げたマネー集団、あるいはそういう専門家たちのグループがこのところ東京に頻繁に訪ねてきておるそうでございます。こういう御審議が既に国際的にそういう反応を呼び起こしておるわけでございますから、そこに日本の当局がそういった動きを歓迎する、そういう姿勢を示されることだけでも、彼らの知恵とノウハウとマネーを東京に持ち込むことはかなりできるんではないか、そんなふうに考えております。
  110. 奥村展三

    ○奥村展三君 どうもありがとうございました。終わります。(拍手)
  111. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人方々に一言お礼を申し上げます。  本日は、御多忙中のところを長時間にわたり本委員会に御出席賜り貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)  これをもって公聴会を散会いたします。    午後四時五十分散会