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1996-04-03 第136回国会 参議院 外務委員会アジア・太平洋に関する小委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月三日(水曜日)    午前十時十八分開会     ―――――――――――――    小委員異動  三月二十八日     選任          椎名 素夫君  四月三日     辞任         補欠選任      笠原 潤一君     林  芳正君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     小委員長        武見 敬三君     小委員                 大木  浩君                 野沢 太三君                 林  芳正君                 高野 博師君                 寺澤 芳男君                 畑   恵君                 川橋 幸子君                 照屋 寛徳君                 立木  洋君                 武田邦太郎君                 椎名 素夫君                 佐藤 道夫君                 矢田部 理君     事務局側         常任委員会専門         員       大島 弘輔君     参考人         東京大学教授  若林 正丈君         アジア経済研究         所地域研究部研         究員      佐藤 幸人君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○アジア太平洋に関する件  (中国台湾情勢について)     ―――――――――――――
  2. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) ただいまから外務委員会アジア太平洋に関する小委員会を開会いたします。  まず、小委員異動について御報告いたします。  本日、委員異動に伴い、笠原潤一君が小委員を辞任され、その補欠として林芳正君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) アジア太平洋に関する件を議題といたします。  本日は、最近の中国台湾情勢について、東京大学教授若林正丈君及びアジア経済研究所地域研究部研究員佐藤幸人君に御出席いただき、御意見を聴取いたしたいと存じます。  この際、参考人の方々に小委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には、御多忙のところ当小委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本日は、最近の中国台湾情勢について忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  それでは、会議の進め方について申し上げます。  まず、初めに若林参考人、次に佐藤参考人の順でお一人二十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、小委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、若林参考人からお願いいたします。若林参考人
  4. 若林正丈

    参考人若林正丈君) 若林でございます。  私は、台湾政治及び台湾の近現代史を専攻している者でございます。本日は、台湾政治台湾海峡岸関係についての関連について思うところを述べよという御指示でございますので、台湾政治専攻の立場から所見を述べさせていただきたいと思います。  お手元要旨をお配りいただいていると存じますが、その最初の太い文字の方がいわば結論でございます。まず、しり切れトンボになるといけませんので、それを敷衍する形で先に結論を述べさせていただき、後に、八ポイントありますが、重点的にそれを支えるポイントでございますが、それを述べさせていただきます。  昨年六月に台湾李登輝総統米国を訪問いたしまして、その後、中国ミサイル演習を含む強い反応をとりました。その際、私の脳裏に浮かんだ日本ことわざがございます。「雉子も鳴かずば打たれまい」ということわざでございます。キジは非常に高い鋭い声で鳴くというふうに言われておりますが、中国キジが鳴いたと。鳴かなければしばらくはほかにいろんなこともあるんだけれども、中国という猟師は、キジが鳴いたのでこれ以上鳴くと撃つぞということを台湾及び米国日本その他国際社会に対して示威をする、本気で撃つ気はなかったんでしょうけれども示威をしてみせたのが今回の事態になったというふうに思うわけでございます。  しかしながら、台湾は単なるキジであろうかというふうに考えますと、後で申し上げますように、御承知のようにいわゆる台湾の奇跡と言われるような経済発展をいたしまして、さらにその上に政治民主化をやってきたわけでございまして、その成績によって国際社会の一メンバーとしての一定正統性をかち取りつつある。かち取りつつあるからといって、現在外交関係を持っていない国家が直ちに外交関係を結ぶというようなことは当面予想できないわけでございますが、そういう一定正統性を持っている。  さらに、米国が防衛的な武器は売却するということを約束しておりますので、武器体系の更新なども、台湾から見れば不満ではございますが着々と進んでおる。したがって一定防衛力を持っている。さらには、米国の議会のように世界でも強力な一つ政治組織台湾存在に好感を示しているということもございます。一定支持もあるわけでございます。  したがって、中国経済面では台湾を既に単なるキジとはみなしていないといいますか、キジではないと。APECでも台湾を受け入れておりますし、経済面では単なるキジではない、一つ人格を認めているということでございますが、政治的にはまだキジとみなしているわけでございます。  こういう状況が続くのであれば、中国政治面でも台湾一つ人格とみなすという方向がとられないのであれば、台湾海峡政治的緊張が長期的に見た場合に緩和に向かうということは余り楽観できないというふうに思うわけでございます。  中国が、政治的に変わってしまった台湾という現実を受け入れるという新しいサイドの現実主義をとることができるならば、両岸が近寄っていくというよい方向への循環が考えられるわけでございますが、そうでないとすると悪い方向への循環というものも考えられて、東アジア国際秩序がそこで変わっていくことも想定しておかなければいけないのではないかというふうに考えております。  これが私の発言の要旨でございます。  それで、まず最初に強調したいポイントは、その論旨の一に書いてあることでございますけれども、民主化ということは、一番平らかに言いますと、政府権力を行使する重要な人々が自由で公正な選挙によって選出されるシステムができるということでございますけれども、そういう意味での民主化というものが現在の台湾において行われた場合に、単にそれが政治制度改革ということではない、それを超えた内容を含むということを申し上げたいわけでございます。  日本の少し古い言葉で申し上げさせていただきますと、単にそれは政治制度改革だけじゃなくて、一種国体が変わるという内容を含むのではないかと私は認識しているわけでございます。日本太平洋戦争を経まして天皇人権国家から主権在民象徴天皇制国家国体が実際には変わったわけでございますが、台湾の場合、余りに平和的に行われたので、国際社会では余り変わったという認識をきちっと持てない場面があると存じますけれども、やはりそのような内容一種国体が変わったというぐらいの内容を持つものであるということをはっきり認識すべきなのではないかということでございます。  その内容を申し上げますと、若干込み入りますけれども、戦後、台湾にある国家というのは中華民国を自称しておるわけでございますが、これは清朝を倒したいわゆる辛亥革命でできた国家でございます。その後、この国家日本と戦争をしたわけでございます。そして、勝ちました。その後、中国大陸内戦が起こりまして、中国共産党がこの国家を支えていた組織台湾に駆逐したわけでございます。台湾では、中国内戦をしている、中国共産党政権内戦をしているという前提戒厳令が長期にしかれました。それから、憲法を棚上げする臨時条項というような法律が行われました。  これらが独裁政治の根拠になっていたわけでございますが、民主化するということはこういう法律を廃止しなければいけないということでございますから、国家体制共産党内戦をしているぞという体制からそうでない体制に戻るわけでございます。さらに、戦後の国家政治権力を握っているグループは基本的には蒋介石氏とともに中国大陸から移った人々であって、いわゆる外省人と呼ばれる人のエリートであったわけです。しかし、民主化しますと、やはり民意の反映ということがございますから、そのエリート台湾土着の人と次第次第に入れかわっていく。ですから、台湾化していくということになるわけでございます。  そうしますと、中華民国というのは、中国の近代の革命と戦ってきたという正統性台湾存在してきたわけでございますが、民主化によって、民主化の際の選挙中国大陸では行わないわけでございます、台湾だけで行うわけでございますから、主権在民原則によれば、台湾民意にのみ基づく政治権力がそこに生まれた、既に生まれたわけでございます。それを私は、中華民国第二共和制とでも言っておけば変化内容が理解しやすいのではないかというふうに考えておる次第でございます。  そういう台湾変化中国大陸変化を対照してみますと、次に佐藤さんの方から両岸の経済関係については述べられると思いますが、経済交流台湾民主化と同時に進んでおりまして、経済的には両岸は結びつく傾向にあるわけでございますが、御案内のように中国大陸におきましては一九八九年に天安門事件が起こりまして政治改革はとんざいたしております。その一方で台湾は順調に政治改革が進んでいきまして、私が今申し上げましたような変化が起こったわけでございます。したがいまして、今の状況を描写するならば両岸の関係というのは、結びつく経済、離れる心というのがいい要約なのではないか。  この結びつく経済と離れる心の方程式はどうやったら解けるのか。これがなかなかよくわからない。それが、現在、台湾海峡岸関係世界に難題を投げかけている理由であるというふうに考えております。  申し上げたい二番目のポイントは、こうした台湾変化というものが台湾国際的地位台湾国際社会でどのように扱うかという国際政治の、国際社会ルール、それを私は、ニクソン訪中上海コミュニケが出ました、そしてさらに田中訪中によって日中共同声明が出たその年の名前をとって一九七二年体制とでも言っておけばいいというふうに思っておるわけですが、それを動揺させているという認識でございます。  この体制というのは言うまでもなく一つ中国、つまり中国合法政権というのは中華人民共和国である、そして台湾はその中華人民共和国の一部であるという中華人民共和国政府の主張を尊重して台湾とは民間関係のみを持つという原則ですね。さらに、米国の場合は台湾関係法という法律でこれにもう一つ重要な条件を加えまして、台湾の前途の決定については平和的に行われなければならないということを決めたわけです。平和解決条件というのがあります。これについては、中国はこれを受け入れるとは言っていないわけでございますけれども、アメリカ及び日本もどの程度か、口では言っていないわけでございますが、その平和解決を望むということは国際社会条件づけていることであろうというふうに思うわけでございます。  ところが、もう一つ暗黙前提は、台湾というのは当時は国民党独裁国家であったという条件、さらに台湾中国、いわゆる両岸関係というのは共産党国民党関係国共関係であるという前提であったわけでございますが、先ほど来申し上げましたように、いわゆる国体の変更とも言うべき台湾変化によってこういう前提は崩れているわけでございます。  それに対して、御案内のように中国軍事演習台湾を威嚇するという行動をとりました。これは、平和解決原則であるという七二年体制の了解からすれば、中国の方がこれを変更しようとしているというふうにも見られるわけでございまして、七二年体制はまたここでも動揺させられているというふうに私は認識しておるわけでございます。  第三点は、このほど行われました総統選挙の結果というもののメッセージをどのように受けとるべきかということでございます。  御案内のように、李登輝総統が五四%という得票率で当選いたしまして、二位の台湾独立を主張している民主進歩党、民進党彭明敏候補を三十数%離しまして当選いたしました。日本新聞には李登輝氏圧勝という見出しが載ったわけでございます。  ここで想起しなければいけないのは、李登輝氏に対して中国隠れ台独派中国の言い方では台独をひっくり返しまして独台と言っているんですが、中華民国という名称のまま独立してやろうという腹づもりなんだと、こういう認識でございますが、そういうレッテルを張りまして厳しく非難したわけでございます。言うまでもなく、彭明敏氏は公然と独立を主張しているわけであります。この二人の得票率を合わせますと七五%、投票した選挙民のうち四人に三人がこの二人を支持した、中国がまさに攻撃した人間を支持したということが注目すべき第一点でございます。  第二点は、多少台湾政治内部問題に入りますけれども、李登輝氏が獲得した、あるいは彭明敏氏が得るはずであった票の三〇%ぐらい、つまり民進党基礎票の三〇%ぐらいは李登輝氏に投票されているというのが合理的な推論であるというふうに言われておりまして、私も選挙のさまざまな数字から判断してそれは正しいというふうに思っております。これが注目すべき第二点でございます。  第一点の李登輝プラス彭明敏、これが七五%という数字は、中国に対してもまた世界に対しても非常に明白な台湾民意メッセージであると思います。それは、中国の現政権が主張している統一政策統一方針というものに対して明確にノーと言ったということでございます。  第二の点、民進党支持者李登輝氏も支持したという一種のクロスボーティングが起こったわけでございますが、これは李登輝氏が国民党を超えて、さらに民進党と協力して一種連合政府組織し得る政治基盤存在しているということをあらわしているのではないかというふうに考えられます。既にいろいろ水面下では動きがあると私は聞いております。  したがいまして、私が言いますところの中華民国第二共和制というものが来月の五月二十日をもって一応形がつくわけでございますが、それの正統性を国際的に認知してもらいたいという願望は、台湾民意においても、また台湾政治社会においても減少することは考えられないというふうに考えます。諸般の情勢からことし一年ぐらいは対外行動緩和するということはあり得ると思いますけれども、長期的に見て、長期的というのは李登輝政権の四年間というふうに見ても、この願望が低下したりそれを反映する行動がなくなるという期待を持つのは現実的ではないだろうというふうに思います。これに対して中国が強く反応すれば、再びこの間のような事態が起こる可能性はあるのではないかというふうに思います。  私としては、台湾海峡岸関係変化というものは、まず第一に、第一段階としては鄧小平氏の非常に賢明な現実主義がもたらしたものだというふうに考えております。七〇年代末に、御存じのように「改革開放」というスローガンを掲げまして非常に柔軟な政策をとってきました。  台湾政府についてはどうかといいますと、中国は、中国共産党社会主義を国是としているわけでございますが、その外に資本主義経済によって反映している経済体としての台湾存在を認めたわけでございます。御存じのように、一国家制度という毛沢東時代中国からは考えられないフォーミュラが提出されました。台湾経済的存在、西側の資本主義体系の中で発展してきた経済的存在を認めるということによって両岸関係は大きく緩和して経済交流は発展してきたわけでございます。  ですから、次の段階としまして、両岸関係が発展するためには、台湾民主化して国家の性格が変わってきた、脱内戦化して台湾化したという政治的現実中国がのみ込んでくれない限り順調な解決はなかなか難しいのではないかというふうに考えるわけでございます。台湾が変わったという現実をきちっと受け入れなきゃいけないのは、中国だけではなくて他の国家国際社会も同様であるわけでございまして、台湾が昔のままの独裁国家であるという前提国際社会ルールが、一九七二年体制というのができているわけでございますが、それの基盤は動揺しているという認識を我が国も持つべきではないかというふうに考える次第でございます。  以上でございます。
  5. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) ありがとうございました。  それでは、次に佐藤参考人にお願いいたします。佐藤参考人
  6. 佐藤幸人

    参考人佐藤幸人君) 佐藤でございます。若輩者ではございますが、よろしくお願いいたします。  初めに結論を簡単に申し上げますが、今回の両岸の緊張のもたらす経済的な影響ですが、私はとりあえず一時的なものにとどまるであろうというふうに見ております。ただし、この結論はいろいろと留保条件がつきます。その点に関してはまた最後に申し上げたいと思います。  まず初めに、今回の緊張が両岸の経済関係にどういった影響を与えたかということを申し上げたいと思います。第二点として、台湾経済全体に対してどのような影響があったかという点に関して申し上げたい。第三点として、台湾等もちろん中国も含む東アジア経済に対する影響という点について申し上げたいというふうに思います。  まず第一点の両岸関係に関しましては、これは何も中国台湾に限ったものではありませんけれども、二つ経済の間の関係で大きな要素は貿易投資ということになりますので、この二点に関して申し上げたいと思います。  まず貿易ですけれども、今回の緊張によって直接的には両岸間の貿易に対してマイナスに働いた、両岸間の貿易を萎縮させる効果を持ったというふうに考えられます。それから間接的な効果として、現在、両岸間の貿易というものは、大陸に進出している台湾企業台湾から部品、材料、機械設備を買っているというものがかなりな割合を占めています。また、そういった大陸に出ている台湾企業は、さらにそこで加工したものをアメリカを初めとする第三国輸出するという形態をとっている企業がかなり多いわけですけれども、こういったオフショア型の台湾企業に対する最終マーケットからの受注が緊張を反映して減少した模様ですので、それに伴ってそういった企業台湾から部材を購入することも減るということになりまして、そういった間接的な効果もあったというふうに考えられます。  そういうわけで、今回の緊張関係はとりあえず両岸間の貿易を萎縮させたわけですけれども、一応この効果は一時的なものにとどまるのではないかと考えられます。ことし、一九九六年通年では両岸間の貿易は依然として増勢を続けるのではないかというふうに予測されます。(OHP映写)  お手元にも資料をお配りしておりますけれども、一応両岸間の貿易というものを見ていただくとこういうことになります。台湾から中国への輸出が非常に速いスピードでこの間ずっとふえ続けているということがおわかりになると思います。  一方、中国から台湾への輸出は少ないんですが、これは台湾側輸入を制限しているせいです。ただし、今回の緊張がありまして、台湾側もそれをできるだけ経済的な政策緩和したいという意向を持っていますので、今後大陸からの輸入はかなり急速に緩和に向かうと思います。実際、そういったことは九四年から始まっていまして、輸入もかなり速いスピードでふえ始めていることがおわかりになろうかと思います。というわけで、非常に急速に伸びているわけですね。これが今回のことで急に寝てしまうということはなかなか考えにくい。  もう一つ、これは台湾側及び中国側のそれぞれの貿易総額に占める両岸貿易比重をあらわしたものですけれども、今申し上げましたように中国から台湾への輸出というのは少なくて、台湾から中国への輸出というのは相当額ですから、これの比重はかなり高くて、かつ急速に上がっているということです。  これについてもう一つ注意をしていただきたいのは、両岸間の経済関係といいますと、台湾側が一方的に中国に依存しているというようなイメージを持たれるかもしれませんけれども、実は中国における台湾からの輸入というのは非常に高い比率になっていまして、中国相当程度台湾に依存しているということもここからわかるわけです。  次に投資の面ですけれども、投資については、今回の影響を考える上でまず投資タイプ二つあるということをあらかじめ理解していないとちょっと今後の展望がしにくいので、その点をまず申し上げたいと思います。  一つは、大陸には非常に豊富な労働力がありまして、賃金水準も低いわけです。こういった労働力を使うことを目的中国へ進出しているタイプ投資です。二つ目は、中国の人口は世界の中でぬきんでているわけですが、そういった広大な中国市場というものを目的としているタイプ投資であります。この二つタイプで今回の影響は若干異なるであろうというふうに考えられます。  まず第一のタイプ、低賃金労働力目的に進出している場合は、実はここ一、二年、中国投資環境というのがかなり急速に悪化しております。そういった投資環境の悪化を受けまして撤退あるいはベトナム等第三国へのシフトといった動きが既に昨年初めあたりから出てきていたわけです。それから、まだ進出していませんけれども、これから海外投資を考えようとしていた台湾企業にとっても、大陸というものの魅力は以前ほどではなくなってきたわけです。今回の緊張というものは、こういった撤退とかシフト、あるいは中国ではなくてほかの国へ投資する、そういった動きを加速させる方向に働くであろうというふうに考えられます。  第二のタイプの場合は、これは中国市場そのもの目的なわけですけれども、そういったことで簡単にほかにシフトするというわけにはいかない、特に既に進出している企業の場合は今回の緊張理由にすぐさま撤退するというのは考えにくいということです。ただし、拡張しようと思っていた企業あるいは新たに中国市場に進出しようと思っていた企業の中には、とりあえず様子見をしようかというところもあらわれております。  私が新聞記事をこの一カ月ざっと見たところですと、食品がこういったタイプ投資には多かったんですけれども、その中で、ナンバーツーに来ると思いますが、味全グループ中国進出に対して慎重というか、中国に対する反感も感じられるような形で報道されておりますが、中国進出に対してかなり慎重になっておるということです。あと、中国への投資規模が最大なのは統一グループというところですが、そこもとりあえず観望という姿勢になっております。ただし、すべての企業がそういうわけではありませんで、例えば三菱自動車と提携しております中華自動車などは全く影響なし、福州への工場進出は予定どおり進めるというような動きになっております。  前後しましたけれども、台湾から中国への投資というのも相当規模に上っております。特に九二年にいわゆる鄧小平の南巡講話というのがありまして、中国開放政策が進みまして、その後第二のタイプ中国市場目的としたタイプ投資が急増するわけです。ここで一回。ヒータを迎えて、その後ちょっと落ちつくといったような形になります。これは金額ですけれども、件数は九五年は減少ぎみですが、大型投資がふえているので金額台湾側で見た場合ですと若干増加しているということであります。  次に、第二の台湾経済そのものへの影響はどうであったかということでありますが、今回、特にこの一カ月の一連の報道では、為替レートと株価指数というものが経済に対する影響をあらわす指標として注目されたわけです。ただし、私が考えるに、この二つのインデックスというものは台湾経済のファンダメンタルズをあらわすインデックスとしては必ずしも適当なものではない、特に株価指数は投機的な動きが以前ほどではないにしろ依然強く残っておりますので、台湾の株価指数というのはかなり乱高下しますので、それを見て余り大騒ぎをするのは適当ではないというふうに本来考えております。  ただ、この二つのインデックスの意味というものは、今回に関しましてはこういった緊張が発生したという状況下で、台湾の当局といいますか政府といいますか、それが経済面でどの程度対応できるのかという、そういったものをあらわすかなり政治的な色彩の濃いインデックスであったというふうに考えればよろしいのではないかというふうに思います。  ではその結果はどうであったかと申しますと、まず為替レートに関しては、中央銀行が強力に介入しまして一ドル二十七・五台湾元という線を防衛線というふうに考えていたわけです。結果としては二月二十三日、これが春節明けで、ここから経済活動が再開するわけです。それで、これが選挙前日ですね、日曜日は抜いてあるわけですけれども。ここが二十七・五の防衛線で、ここをずっとこう行って中央銀行は守り切ったと。それで、選挙の一週間前ぐらいになるともう大丈夫だろうという形でかなり落ちついてくるということになるわけです。  株価に関しましては、日本でも報道されたかと思いますが、株価安定基金というものを創設しまして、不安定だった株価をとりあえず四千台後半のところで、揺れておりますけれども、この辺で支え切って、選挙が近づくにつれてかなり回復してくるということになったわけです。株価安定基金は、報道されているところによりますと、春節明けの二月二十三日から三月二十七日までで七百億元近くのお金をつぎ込んだと。大体主力となったのは郵便貯金で四百億元ということだそうです。  このほかの影響といたしましては、三月前半は、先ほど申しましたように中台間の貿易も萎縮したわけですが、輸出が前年同月比一〇%前後の減少、輸入は微増ということになったようです。それから、外貨準備高は三月の一カ月間におよそ四十億米ドルが減少したということです。ただ、こういった影響はとりあえず短期的なもので、その後回復するのではないかというふうに考えられます。  それで中期的、中期的と申しますのはことし一年間程度という見通しで申しましてどのような影響があるかと申しますと、台湾経済そのものが今回の緊張とは別に昨年後半から景気の下降局面に明らかに入っていたわけです。今回の緊張はそれに追い打ちをかけるようなものだったというふうに言えると思います。中国では「雪の上に霜が降る」と言いますが、そういったようなものだったと思います。そういうわけで、今回の緊張影響は中期的には台湾経済のトレンドの中に吸収されていくだろうというふうに考えられます。逆に言いますと、ことしの台湾経済は全体に不景気の色が強い形で推移すると思いますが、それは緊張の結果というよりは主として台湾経済そのものがそういった局面にあったことによるものだと考えられます。  次に、東アジア経済全体に対する影響ですが、中期的には台湾経済そのもの影響も軽微にとどまるというふうに考えておりますので、さらにそこから東アジア全体に波及する影響はそう大きくはないであろうというふうに考えられます。それで、ここでは東アジア経済の中での台湾の位置づけを再確認するということを行いたいと思います。  これは本来長い話ですが簡単に述べますと、プラザ合意以降、東アジアでは日本、それから台湾を初めとするNIES、それからASEAN、中国という大体三段階ないし四段階の重層的な分業体系が形成されてきたわけでありまして、台湾はその中の中二階にいるわけです。中二階にいるということは、ASEANとか中国など、より後発の途上国に対して資本や技術あるいは資本財、中間財の供給者として重要な役割を果たしているわけです。そういった台湾経済が正常に運営されなくなりますと、この東アジアの分業体系というのは非常に動揺する、より後発のASEANや中国も非常に大きな影響経済的にこうむることになるということであります。  それでその辺を、投資に関してのデータをごらんいただきたいと思います。  九五年はタイとインドネシアの数字がありませんが、九四年で見ると、いずれも一〇%を超える割合を台湾がASEAN各国への直接投資の中で占めているわけです。ここには出しませんでしたが、ベトナムへの投資も私の知っている範囲では台湾がたしかいまだに一位の位置にあると思います。  それから、日本との関係ですけれども、以前は日本台湾との貿易関係、分業関係というのは非常に垂直的なものだったわけですが、それが現在はより水平的でかつ非常にレベルの高い分業関係に移行してきているということであります。かつ規模も非常に大きい規模になっています。  これが日本との貿易で、これが日本から台湾への輸出中国への輸出日本台湾から輸入している分、中国から輸入している分と。見ていただくとおわかりのとおり、日本からの輸出という意味では台湾の方が中国より大きいわけですね。しかもこの内容が、以前はこちらが一次産品でこちらが工業製品とか、労働集約的なものと資本集約的なものという非常に垂直的だったものが、最近はここの中にパソコンとか工作機械とかが入っているわけで、非常に高度な関係になってきているということです。  結論でございますけれども、初めに申しましたとおり、今回の緊張影響はとりあえず一時的なものにとどまるであろうということであります。ただし、これはもちろん条件があります。若林先生がおっしゃられたように、そもそもこの中台間の緊張の根本的な問題は当面なくなることはない、それが大前提なわけでありますが、選挙前のような非常に厳しい緊張関係はとりあえず緩和に向かうということが前提でありまして、かつそういった予測が一応台湾経済にかかわる人たちの間で共有されているということが前提であります。  ただし、私のこのような結論台湾にいる同僚に見せたところ、聞いた人にちょっと楽観的な印象を与え過ぎないかと注意されましたのでつけ加えますと、以前はこのような認識は非常に漠然としたものとしてあったわけです。ところが、今回こういうことが起こりまして、こういった認識を自覚しなければならなくなったということです。これは潜在的には以前よりはやはり非常に厳しい状況になっている、つまりこういった両岸関係がとりあえず最悪の事態に陥らないというコンセンサスが以前よりは非常にセンシティブなものになってしまった。それゆえに非常に壊れやすいものになってしまったということは、潜在的な問題としてやはり指摘せざるを得ない。  もし一たん壊れてしまえば、先ほど申しましたように東アジア経済というのは重大な損失が発生するということを重ねて強調して、とりあえず私の報告を終わりにしたいと思います。
  7. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  なお、質疑はお一人往復五分以内でお願いをいたします。  質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
  8. 野沢太三

    ○野沢太三君 自民党の野沢でございます。  両先生、大変貴重なお話をありがとうございました。  まず最初若林先生にお伺いいたしますが、中国一つ中国二つ制度というスローガンのもとにこれまで台湾を見てきたわけでございますが、五十年にわたる間、実効的な支配を北京が台湾に対してやっていないという中で台湾が今日の地位をつくってきたことを考えますと、一つ中国とは言いながら実際は二つ政府が続いてきて、今回の選挙で一層これが明確になったというふうに理解できるわけでございます。  そこで、将来仮に統一をするということになりますと、先生が今おっしゃいましたように、中国台湾現実をのみ込んでくれるという状況になることが条件になると御指摘をされております。そうすると、やはり中国の包容力といいましょうか、多様性を受け入れる条件が整ったときということになると、民主化が相当進まないと実現できないのではないかと思われるわけでございます。したがって、これは相当長期に取り組む課題のように考えますが、いかがでございましょうか。この点を一つお伺いします。  それからもう一点、佐藤先生にお伺いしたいんですが、伺いますと、中台両国ともに貿易の依存度とか投資の実績等から見ますると相互の存在というものが不可欠である、こう思われるわけでございます。そこで、政治では対立していても経済ではますます結びつきが強くなるようにうかがえるわけでございます。結びつく経済、離れる心という若林先生のお言葉がございましたが、心が離れても同居を続ける夫婦のような状況、いわば家庭内離婚という話もありますけれども、しかし最後はやはりおまえしかいないということで一緒に円満におさまるというのが我々から見ると望ましいように思うわけでございます。この点についての先生のお見通しをお伺いしたいと思います。
  9. 若林正丈

    参考人若林正丈君) 野沢先生の御意見、私も同感でございます。  ある国際政治学者が、中国台湾の問題をどういうふうに解くかと。理屈で考えていきますと、中国から見たら統一が果たせる、台湾から見たら独立が果たせる、そういうフォーミュラを双方が考えついて合意すれば問題は解決すると。夢のような話でございますが、私は本当に安定した解決というのは今から見れば夢のような話が実現するということでないとあり得ないというふうに考えておりますので、これは非常に息の長い話である。その過程をどうマネジメントするかということは当事者にとっても大事なことでございますが、今、佐藤さんからも御指摘がありましたように、国際社会にとっても非常に重要な責任があるというふうに認識しております。
  10. 佐藤幸人

    参考人佐藤幸人君) 私も野沢先生の御指摘は全くごもっともで、同感するしかないわけであります。もちろん相互に不可欠でありまして、本当に最後に一緒になってくれればいいわけなんですが、ただ当事者、特に台湾側から申しますと、そうはいっても相手は油断ならないということでありまして、やはり保険は掛けざるを得ないというのが実態であります。  そこで政府が行っているのが南進政策というもので、特に投資に関して言いますと、中国にばかり投資しないでベトナムとかあるいはフィリピン、特にスービック湾の開発には台湾は深くかかわっておりますし、あと最近ではミャンマーもかなり注目されてきています。そういったところに分散してほしいという政府のかけ声に当初はなかなか企業も反応しなかったわけですけれども、今回の件をきっかけに企業側も以前よりはかなり真剣に考えるようになるだろうというふうには一応考えられます。先ほど申しました中では、特に第一のタイプに関しましてはかなり実際に南進と申しますか東南アジアの方へシフトする動きが出てくるとは思います。  ただ、そうは申しましても、やはり最後には一緒になった方がいい仲でありますので、その辺が微妙なバランスでありまして、はっきりどちらへ行くという形にはなかなかならないとは思いますけれども。
  11. 野沢太三

    ○野沢太三君 ありがとうございました。
  12. 高野博師

    ○高野博師君 平成会の高野でございます。  若林先生にちょっとお伺いしたいと思うんですが、一つ大胆な仮説というか結果論的なんですが、今回の緊張については台湾中国もそれからアメリカももともと本気でやる気はなかったのではないかというふうに思うんです。  これは、一つは両岸の経済関係が今お話がありましたように非常に緊密化していて、戦争になった場合に両者の経済的なダメージが大き過ぎるということ、それから中国側のミサイル等はあるものの、近代的な軍事力という点では台湾よりすぐれているとは言えない、むしろ台湾の方が強力だという見方もあるということで、台湾を本気で攻撃する、あるいは攻撃できるような事情にはない。それから、テレビの放映なんかを見ても、台湾の一般の市民がそれほど緊張しているというふうには受け取れなかった、そういう緊迫感がなかったような印象を私は受けました。  それで、選挙前にアメリカ側から中国軍は武力行使はしないと言っている、そういう情報も流れまして、これは中国側が後から武力行使という手段は捨てていないというような発表もありました。大陸側としては、江沢民体制を強化するという国内的な事情があって台湾に対して強硬な姿勢をとった。アメリカも、空母を派遣する等の手段によって平和を脅かすものに対しては断固として許さないと、これも大統領選挙を控えたクリントン大統領の国内世論向けの一つのやり方をした。  中国アメリカにはこういう一種の暗黙の了解があって、本気でやらないというのがあったのではないか。台湾もその辺の事情をよく知っていた。したがって、今回の台湾海峡緊張というのはこの三者による一種政治的なゲームであったというようなことが言えないのかどうか。ちょっと大胆な仮説なんですが、先生の御意見をお伺いしたいと思います。
  13. 若林正丈

    参考人若林正丈君) 中国政府の内部は、伝え聞くところによりますと複雑のようでございますので、どのような勢力のどのような意図、複数の意図が絡み合って今回のようなことが行われたかという判断は私の理解力の外にあることでございますけれども、台湾に直接手をつける、福建沿岸の島も含めてでございますが、そういう軍事的に手をつける意図のもとに行われた軍事演習ではないという判断は正しいのではないかと思われます。その上での米中の駆け引きというものが今回の中心的な内容であったというふうに思われますので、ただいまの高野先生の御判断のような印象を私も持っております。  選挙キャンペーン中の李登輝総統の発言というものは非常に強気でございまして、心配ないということを強調しておりました。そのことを反李登輝派の候補が無責任だというふうに言ったわけでございますが、李登輝総統の判断というものはやはりそこまで見ていたというふうに私は推測しておりまして、その判断のようになった。  そういう点から言いますと、今回の総統選挙といいますものも非常に不公平な選挙でございまして、そのような判断をするだけの情報を持っているのはあの四人の候補の中では李登輝総統だけだったわけですから、勝つのは当たり前というのが私の感想でございます。
  14. 高野博師

    ○高野博師君 ありがとうございました。
  15. 林芳正

    林芳正君 自民党の林でございます。  両参考人から大変貴重なお話を賜りましてありがとうございました。  まず若林先生に二つほどお聞きしたいんですが、中華民国第二共和制ということで台湾化ということをおっしゃいました。この台湾化ということが今から中長期的に、中国のほかの少数民族の自治区がございますけれども、この辺にいろんな影響を与えるんではないかなと思うんです。少数民族の自治区そのものに対して与える影響中国政府がその少数民族にいろんな政策をとることに対する影響それから香港も似たような状況にあるんではないかなと思うんですが、香港に与える影響についてお聞きしたいのがまず第一点であります。  それから、「世界」の六月号の先生の論文に、今回の選挙を契機にナショナリズムとそれからポピュリスト的な外交になってくるということが書かれておりました。私も本当にすばらしい視点だなと思っておるわけでございますが、七五%ほどこの二人がとったということで、今後七五%という数字が引き続き出てくるのか。つまり台湾におけるメディアの世論調査や新聞等の動向ということが、アメリカにおいてはCNN外交と言われておりますけれども、どのような影響をこれから台湾の外交政策に与えていくことになるのかについての御所見がもしあればお伺いしたいのが第二点目でございます。  それから佐藤参考人にお聞きしたいのは、先ほどの台湾投資でございますけれども、南下政策ということをおっしゃっておられました。これはもしかしたら資料がまだないのかもしれないんですが、一九九四年に比較して一九九五年は台湾比重が大分下がっておるような数字で、タイとインドネシアについては数字がないのかもしれませんけれども、一方で南進化が進められておるというお話でした。数字の上で比重が落ちておるのはほかの国の比重が伸びておるというふうに理解すればいいのか。その辺についてちょっとお聞かせ願えればと思います。
  16. 若林正丈

    参考人若林正丈君) 林先生の御質問の第二点からお答えしたいと思います。  七五%という数字台湾の今後の外交にどのようにはね返ってくるかという御質問だと思いますけれども、私としては、これはいわゆるポピュリスト的外交といいますか、派手な元首外交をしなくてもその威信を保てるだけの数字を得たということで、派手にやらなくても李登輝総統の威信は保てるという意味で、当面は柔軟に出るだけの余裕を台湾の当局に与えたという解釈は可能かと存じます。  ただし、問題は内部の政治の組みかえが順調にできるかということでございまして、李登輝総統選挙中から既にいわゆる台湾政治生態の再調整と言っております。この場合の生態というのはエコロジー、生態系という意味の生態でございますが、政界再編成とでも訳すのでしょうか、そういうものが行われるということを言っております。  その背景は、昨年末に行われました国会の選挙で与党の国民党が過半数ぎりぎりしかとれていないということでございます。そして、日本の先生方のようには国民党の国会議員はまじめに出席しませんので、対決法案でも平気で欠席する人がいたりします。ですから、国会運営は過半数をとっていれば問題ないはずなんですが、非常に厳しいわけでございます。ですから、民進党の一部なり全部なりの協力を得るとか、そういうことをする必要があります。するためには内閣のポストその他をあけなければなりません。あけるためには自分を支持していた者を切らなければなりません。  ですから、そういう一連の権力分配の調整がきちっとできる。できますと、いわゆる順調な選挙の結果を反映した、台湾主流の意見を反映した政治構成、これは統一、独立の問題だけについてですけれども、政治的な勢力の組み合わせができる。そうすると、無理にキジが鳴かなくてもいいという事態ができまして、余裕を持って中国とつき合えるといいますか、情勢はますます厳しくなると思うんですが、台湾内的には余裕を持った政治的な対応がとれるというふうに関係していくのではないかと思います。ですから、李登輝総統政治手腕は、当選するためよりも後の方が厳しい政治手腕が今まさに問われているということであろうかと思います。  中華民国の第二共和制とかいわば国体が変わるような変化が起こったことで中国全体の統合、特に少数民族その他香港への影響ということでございますが、これも影響はあるであろうし、中華人民共和国国家体制及び中国共産党の統治権力、統治体制に対して影響が出ないように非常に気を使うであろうということは間違いないであろうと思われます。  先ほどの高野先生の質問にも関係しますが、台湾の方から見ておりますと、中国台湾との統一の問題についても、それから少数民族の問題についても柔軟な体制がとれるかどうかというのは、やはりひとえに政治体制の性格にかかっているというふうに思われます。よその国の政治体制影響を与えるということは非常に難しいことでございますので、外国の人間としてはこれはもう祈るしかない、私個人としてはそういう心境でございます。
  17. 佐藤幸人

    参考人佐藤幸人君) 直接投資に関しては、特にここではタイとインドネシアが欠けておりますし、そもそも二つの年度でトレンドを見るのはなかなか難しいところがありまして、非常に変動の激しいものであるということと統計がかなり不正確なものが多い。ちなみに、タイはネットの流入額ですが、ほかは認可統計ということになっております。そういうわけで、ここに私が出しました資料からトレンドまで読むのはそもそも困難かと思います。私としては、とりあえず台湾がこの程度比重を占めているということを御理解いただければ結構だと思っております。
  18. 川橋幸子

    川橋幸子君 社会民主党の川橋と申します。ちょっと飛び離れた質問かと思われるかもわかりませんが、お二人のお話を聞いていると、国家って何だろうと、国体という言葉も出ましたけれども、国体でもよろしいんですが、こんなごくごく素朴な基本的な疑問を私は抱いたわけでございます。  若林さんの方からは歴史的正統性とか防衛力とかというお話がございましたけれども、どうやら若林さんは最後には、民主的手続というんですか、民意国家をつくるというところを強調しておられたように私には受けとめられたわけです。  当面、台湾民意も非常に慎重で、即独立を急ぐという格好ではないように、賢い国民性のように思われましたけれども、長期的には願望が高まるというお話もございまして、台湾民意というのはこれからどんなふうに、どのぐらいのスパンで物を考えればいいかということもあるかもわかりませんけれども、その辺を予測を含めてお話しいただければと思います。  それから佐藤参考人の方には、エコノミストでいらっしゃいますので政治のことをお伺いするのはちょっと場違いなのかもわかりませんけれども、経済安定の願望というのは台湾にも大陸側にもあるとして、それらが政治的な安定にどの程度大きな力を持ち得るものなのか。どうも経済と心というのは離れることがあるというようなお話でございましたけれども、社会の一番基礎的なシステムが経済だとすると、かなり経済の問題というのは政治の安定に対するモチベーションになり得るのではないかと思うんですが、こんなことはどういうふうに考えたらよろしいでしょうか。  以上です。
  19. 若林正丈

    参考人若林正丈君) 独立か統一かということについての台湾民意の分布及び今後の動向という御質問と理解しておりますが、本日はさまざまなアンケート調査の数字を持ってまいりませんでしたので具体的な数字を申し上げられませんけれども、台湾ではこういうアンケート調査ができるようになったのは八〇年代末からで、戒厳令が解除されてしばらくたってからでございます。  いろんな聞き方がございまして、一番単純な聞き方は、あなたは中国と統一するのに賛成ですか、現状維持がいいですか、台湾独立がいいですか、こういう聞き方でございます。きちっとした数字がないので、私の印象でございますが、いつも一番少ないのは独立てす。一番多いのは現状維持です。これはいろいろな調査機関によって違いますが、場合によっては過半数か六〇%ぐらいというのがあります。統一というのはだんだん減っておるというのが現状ではないかと思います。  まだいろいろな聞き方もございまして、現状維持も、当面は現状維持して将来統一する、それから当面は現状維持して将来独立する、永遠に現状を維持するとか、そういうふうに分けて聞くのもございます。それから、もし中国が反対しないで平和的に独立てきるとしたら独立に賛成するかというような条件つき独立を聞くアンケートもございます。  いずれの場合も現在中国が出している条件での統一というものを受け入れがたいという民意の方が圧倒的に多いというふうに私は理解しております。先ほどの総統選挙李登輝足す彭明敏で七五という数字もそれを非常に正直に反映していますし、中国軍事演習というものが多少はその数字を上乗せしたんではないかというふうに判断しております。
  20. 佐藤幸人

    参考人佐藤幸人君) まず中国の方なんですけれども、これは私は専門外で、特に北京の方は余りよくわからないんですが、昨年福建省を回った印象では、福建省は今台湾に対して非常に依存しているわけですね。台湾がなければ福建省の経済発展はほとんどあり得ないと言っていいと思うんです。そういった意味で、多分まだ潜在的なものだと思います、顕在化していないと思いますけれども、そういった福建省の状態はある程度中国が余り過激なことに走ることの抑えになるということは潜在的にあるし、将来的には期待してもいいんではないかなというふうな印象を持ちました。  台湾側ですが、台湾民主化したということでありまして、いろんな形でいろんな民意が反映されやすくなったわけですけれども、そういった意味でやはり経済界の意向というのは非常に政権政治全体に影響を既に持っておりますし、今後もますます持ってくるであろうということは言ってよろしいかと思います。
  21. 立木洋

    ○立木洋君 若林参考人にお尋ねしたいんですけれども、蒋経国氏が亡くなって、八八年に李登輝氏が総統についたんですね。それからもう八年たったわけですが、この八年の間にいわゆる李登輝政権が進めてきた政策というのには、一貫性という面もあるかもしれませんけれども、やっぱり変わってきているんじゃないかという気がするんです。ですから、今後李登輝氏がとっていく路線のあり方というのが変わっていく可能性があるのかないのか。  つまり、一九九一年二月に国家統一綱領を決めましたね。そして、第一期が短期の交流互恵の関係を進める、第二期が中期の相互信頼協力を進める、第三期が長期の協商統一ということまで掲げた内容です。それが一九九三年の十月になりますと、いわゆる一つの国、この国というのには中国という言葉がなくて、一つの国と二つ政府という主張を出されたわけですね。そして、国際的な地位を強めるという方向で、この八年の間に一人当たりのGNPが三倍以上伸びてきましたから相当状況が変わってきていると思うんですけれども、こういう主張を見ていきますと力点の置き方に変化があるんじゃないか。そうすると、今後状況変化によっては李登輝政権がとっていく方向というのも多少重点の置き方が変わってくるんじゃないかというふうな気がするものですから、そこらあたりの、今までの八年間の歩みと今後変わり得るかどうかという点についてお尋ねしたい。  それからもう一つ佐藤参考人の方にお尋ねしたいのは経済の問題なんですけれども、たしかこの十年近くの間に台湾の一人当たりのGNPというのは四倍近くに膨れ上がってきておりますね。今もう一方一千ドルぐらいだと思います。  そういう状況を見ていきますと、中国でこの台湾との関係の前に問題になってくるのが香港との関係ですね。香港の返還が問題になりますが、この香港の問題を見てみますと、台湾輸出する主要相手国の二番目に香港が入っているんですよ。アメリカとほとんど数値が変わらないぐらいにまで、第一位がアメリカで第二位が香港です。  だから香港経由で、つまり第三地域を経由して貿易関係その他の関係が非常に密接になっているということを聞くんですが、参考人のお出しになったこの資料の貿易関係数字中国台湾の直接の関係だけの数字ではないだろうかというふうに思うんですけれども、この経済関係が進んでいくという状況が今後の台湾の国際的な地位の問題や対中関係に今度反作用的に影響を強めていくかという、つまり両者の関係がどうなってきているのかということと、その反面、この経済関係の強まりというのがどういうふうに中台関係影響していくんだろうか。  また、香港との関係が問題になってきた場合、それについて中国側が出しているのは二つ制度一つの国、二つ制度中国と香港関係よりもより緩やかな関係になるだろうというふうな言い方を銭外相が最近述べております。そういうことから考えてみて、経済関係が中台関係に与える影響がどういうふうになり得るのかというその二点について伺います。
  22. 若林正丈

    参考人若林正丈君) 八八年に前総統が亡くなられた後、副総統であった李登輝氏が総統になったわけでございますが、ほぼ一九九三年の春までは李登輝氏にとっては政権内の権力闘争の時代でございました。ですから、自分の権力が安定するといいますか、党内の権力覇権が確立するに従って比較的彼にとって明瞭な政策になってきた、そういう意味の変化があるんではないかと思います。  一つ国家二つ政府とか、一つ中国二つの対等な政治実体があるというのが政府の公式の、台湾側の方の一つ中国の解釈でございますけれども、中国台湾との言葉の化かし合いといいますかゲームがありましてわかりにくいんですが、第三者から見ればとりあえず今は二つ中国でいくんだというのが李登輝政権の立場だと思うんです。これが李登輝政権の間に変化するとはちょっと思えないというのが私の印象です。  ただし、総統選挙後にどのような大陸政策の第一歩を踏み出すべきであるかということについては現在まだぼかされていると思います。李登輝総統の発言を見ますと、いわゆる三通という直接に中国と航空機や船舶をやりとりしていくというようなことですが、これについては国家安全の問題もあるので、まず敵対状態の終了ということですね。これは昨年の一月に江沢民氏の呼びかけがあった後、李登輝総統がそれに対応する発言をした際にも出てきたことでございますが、それを優先するというようなことを言っております。  ところがその一方で、総統選挙が終わりますと、マスコミは一斉に三通だというようなムードをかき立てようとしておるわけです。行政院の大陸委員会という部局がございますが、選挙中に私がそこの方と話したときに、いや、三通一二通と言っているのはマスコミがそういうふうにしているだけであって、我が政府の方の優先順位は敵対状態の終了という問題をまずやっていくのが第一歩なんだということでありますが、中国との接触のためのいわゆる半官半民の海峡交流基金会というところへ参りますと、やはり三通をやっていくというようなニュアンスの発言も聞かれました。ですから、どういうふうに第一歩を踏み出すか、私が現在知っているところではまだどうもはっきりしない。  ただ、国家統一綱領というものにおきましては、三通をするためにはやはり両方の例えば航空当局のオフィシャルな接触がどうしても必要なわけでありまして、それは立木先生がおっしゃられた中期の段階に行われるということになっておりますが、これはどうもなし崩し的にオフィシャルな接触というのが始まっていくのではないか。今もうノンオフィシャルの形では両岸関係はなかなかマネジメントできなくなってきているだろう、実務的にも難しくなってきているというふうに私も思っておりまして、ですから中期段階の一部というのはなし崩し的に始まるというような判断を私は持っております。
  23. 佐藤幸人

    参考人佐藤幸人君) 初めに統計のことを御紹介しておきますが、今回とにかく時間が限られていましたので余り統計のことを詳しく御紹介する時間がなかったんですけれども、貿易に関しては若林さんが今おっしゃった大陸委員会というところが刊行している両岸経済統計月報というものです。台湾から中国への輸出は実は非常に面倒くさいというか、なかなかわかりにくいんですけれども、現在はこういうやり方になっています。  まず、香港の再輸出統計があります。それが一つあります。もともとはこれだけ使っていたんですけれども、九〇年代に入ってトランスシップメントが物すごくふえまして、その部分がなかなかわからないということで、現在では台湾から香港への輸出、これは台湾側の統計であるわけです。香港側の統計で、台湾から香港への輸入という統計があるんですね。この間の差が非常に大きくて、これが恐らくトランスシップメントだろうと今は推測されていまして、この分を足したものが台湾から中国への輸出ということに一応推定値としてなっております。中国から台湾への輸入は、これによりますと九三年まではやはり香港の再輸出統計を使っておりましたが、九四年から台湾の税関統計を使っているということであります。  それで本題の方に戻りますと、先ほどの川橋先生の御質問とも関連するかと思いますが、中国側のことは私はそういうわけで余り詳しく存じ上げませんので先ほどの繰り返しになりますけれども、中国にも既に台湾との経済交流によって既得権益層が発生しているわけです。これはまだ私は潜在的なものだと思いますけれども、将来的には両岸の平和的な関係を維持する勢力になってくれるのではないかと、かなり期待を込めて予測したいというふうに思います。  台湾側ですけれども、先ほどは漠然としたかなり大まかな言い方になりましたが、もうちょっと突っ込んで申しますと、若林先生から三通の問題が取り上げられました。台湾の当局も以前ほどではないですけれども若干機関によって色合いが違いまして、先ほど若林先生がおっしゃったように、大陸委員会は大分保守的というか慎重派、海峡交流基金会はそれよりは積極的、あと経済部もかなり積極的というような色合いになるかと、印象ですが思います。そういう意味では一応積極的な方の立場から出ているかと思いますけれども、両岸関係、とにかくとりあえず選挙前の緊張を和らげなければいけないということで、台湾側のその際の手段はやはり経済的な政策によってということになるのではないかと思います。  それともう一つつけ加えておきますと、三通政策に促進的な要素としましては、台湾政府が今経済政策としてメーンに掲げておりますのがアジア太平洋オペレーションセンターの創設ということであります。これは容易に想像がつくように、台湾がオペレーションセンター化するためには大陸との交流がやはりもっと自由に行われなければ、台湾企業もそうですけれども、外国企業にとってもメリットは非常に少ないわけです。これは経済部あたりが特に強く働きかけるわけですけれども、三通に対して促進的な要素になっているというふうに思います。
  24. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 新緑風会の武田と申しますが、若林参考人に伺います。  結びつく経済、離れる心というのは非常に興味深い切り口だと思うんですが、そういう意味で見ますと、かつて世界はどの国も離れた心、離れた経済だったと思うんです。第一次大戦以後、経済が結びつく芽生えがあらわれて、ヨーロッパでまずそういう芽生えができまして、現在ではあちこちに心は離れているが経済は結びついているという現象がかなり顕著に出ておりますね。トップはEUですけれども、NAFTAも割合素直に前進するかもしれませんし、APECとマハティール氏の言うようなEAECとどっちに落ちつくのかということは、アメリカ中国の姿勢いかんにもよりますけれども、いずれにしましても国家主義的な時代が過ぎ去って国家連合時代に入っているということは間違いないと思うんです。  そこで、政治は紆余曲折はあっても民主主義に落ちつくだろう、経済は紆余曲折はあっても市場経済的な方向に行くだろう、こういうことがもし大きな間違いがないとすれば、私は中国台湾と心も一つになる可能性が十分にあると。  私は、中国は大きい国ですから連邦制がいいんじゃないかと思っております。現在の政治権力は希望しないでしょうが、理想を言えば台湾中国の連邦的な一部として一つになるということが、これは必ずなるというんじゃありませんで、隣人としての願望です。  そういう立場に立ちますと、アメリカのような国が腕力を振るって介入するということは甚だ好ましくない。しかし、アメリカが腕力を振るうということになれば、日米安保によって程度いかんでは我々もその後にくっついて何かしなきゃならぬということになると、私が今申しましたような願望とは著しく志が違うわけで、このあたりの若林先生のお考えを伺いたいと思います。
  25. 若林正丈

    参考人若林正丈君) 私、先ほど台湾海峡岸関係の糸をほぐすといいますか、最終的に安定する夢のようなフォーミュラというのは、中国から見たら統一で台湾から見たら独立というのが達成されれば解決すると言いましたが、恐らくそういうのはいわゆる国家連合というものじゃないかなと。  これはどういう内容を持つかよくわからないんですが、中華国家連合、その中にPRCもあればROCもある、何らかの結合があって、国際社会もそれぞれの独自性とその結合も受け入れるというような形になれば比較的安定した形になるんではないか。これはもう想像の域を出ませんけれども、現状から見るとそういうものではないかと。ただ、それの実現に、もちろん政治というのは、世の中というのは変化するものでございますので、台湾側の意図も変化するかもしれませんし、中国側変化するかもしれません。しかも、言うまでもなく両方が変化しなければこれは実現しないということがあるのではないかと思われます。  現在、中国が言っているのは非常に狭い一つ中国の定義でございまして、これは連邦制もだめであるし、中華人民共和国という単一国家のごく特殊な一部としていてもいいよと、こういうのが中国の立場でございまして、これでは交渉は全く始まらないわけですね。  それを受け入れないからといって武力で威嚇するということになった場合には、これは極めて無理な形で統一しようとしているということでございまして、私は現状で無理に統一しても、無理に独立しても、北アイルランドのような事態があり得るというふうに判断しているわけです。だから、無理な統一をさせないという意味での米国の介入は、私は両岸関係については正しいというふうに判断しております。  もちろん、隣国、非中国人の立場として、最終的にこうせいああせいということが言える立場でないことは当然でございますけれども、無理な統一、無理な独立が不安定をもたらして我々に不利益をもたらすものであるならば、それについては意見があってしかるべきであると、私はそういうふうに考えております。
  26. 畑恵

    ○畑恵君 平成会の畑でございます。両参考人におかれましては、お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。  若林先生に二点ほど伺いたいと思います。  一点は、先生が「世界」の九五年六月号にお寄せになりました論文の中で、江沢民中国国家主席と李登輝総統、二人の対話のお話が書かれております。トップリーダーが直接対話をするという非常にエポックメーキングなことが起きて、しかもこのニュアンスを拝見すると、良好な温和な調子で進んだというふうに読み取れるんですが、今回の選挙の結果を受けて、この二人の関係というのは、また対話を繰り返すような場がこれから設定されていって、離れる心ということではございますけれども、両者の人間的なコミュニケーションを通じて、台湾中国との心のコミュニケーションというのも何か生まれるような可能性があるのかどうか。  もう一点は、アメリカとの関係でございますけれども、今回の七五%の支持率という数値をアメリカ側がどう判断して今後台湾との関係を進めていくのか。  二点について伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
  27. 若林正丈

    参考人若林正丈君) 米国がどう判断するかということについては、ちょっと私の知識、能力の範囲でございませんので御容赦願いたいと思います。  江沢民氏と李登輝氏との関係ですが、私が伺うところでは、昨年のあのころまでは両者の一種のホットラインがあったというふうに伺っております。ですから、台湾サイド、李登輝政権サイドでは、中国内部のポスト鄧小平に向けての権力闘争をにらみながら、一体だれと話したらいいんだろうかということをじっと見詰めていて、一応江沢民だというふうに選びかけたところだと思うんです。それがあの対話であったろうと思います。  私個人は、あの時期には江沢民氏が中国における指導権を固めて、その上で鄧小平氏が七〇年代末にやったような現実主義がもう一度政治の面でも打ち出されれば、これまでは経済を中心にポスト冷戦の分裂国家の中でも非常に平和的な発展を見せ、建設的な発展を見せていた両岸関係というのがうまくいくんではないかという期待を非常に持っていた時期でございまして、ああいう文章になっているわけでございます。  その後の李登輝氏の訪米があの時期に実現するというのは恐らくだれの脚本にもなかったことなのではないかというふうに私は思っております。そうしますと、江沢民氏にとっても失点になっているので、台湾の方の政権としても、自分の方の基盤は固まったけれども、相手は一体だれと話したらいいのかという判断はまだついていないというふうに思います。  指導者が会うということは非常に重要で、会うだけでも大変いいことだと思うんですが、会うための条件というのは、台湾はだれが会うかははっきりしたわけです。中国の方はどうなのかというのが、私は中国政治の専門ではございませんけれども、どうも台湾側としても判断しかねる様相をこれから見せるんではないかというふうに思います。ですから、早目に二人がどこかで会うというようなドラマチックなことはそんなに起こらないのではないかというふうに見ております。
  28. 畑恵

    ○畑恵君 ありがとうございました。
  29. 椎名素夫

    椎名素夫君 一つ佐藤参考人に、技術なことですが、台湾から大陸への投資というのは地域的にはどういうふうになっているかということをちょっと伺いたいんです。  それから若林参考人ですが、一国二制と言いますね。一体そういうことというのは歴史上あるんだろうかという気がするんです。一制で二以上というのは、例えばアメリカ合衆国ができたときも、いわば一制十三国というようなことで始まったのがアメリカ合衆国の始まりですね。それから、ソビエト連邦というのはいろんなところを一制のもとに抑え込んでソビエト連邦というのができた。それが崩れると、この制度は嫌だと言った途端にソビエト連邦というのが崩れましたね。どうも一国二制というのは大体無理なんじゃないかと私は思っているんですが、この点を伺います。  それから、もしそうだとすると、離れる心、政治というのはどんどん進んでいく。それと対置されるのが経済ですが、お互いの関係、相互依存度が深まってしまって、これをほごにするわけにはいかぬじゃないかというようなことが一つの常識として言われております。  実はこの間、選挙直後に台湾に行っていろんな人と会ったんですが、民間のある人が言いましたのは、台湾の繁栄の基礎というのは大陸と絶縁した状態でできたものであると。その後、大きなかかわりが起きてきたので、自由を捨てるぐらいだったらあのぐらいのものはほうり投げても我々は死ぬわけじゃないというような大変勇ましいことを申しました。この実情と、これは佐藤さんにも伺うべきことかもしれませんが、そういうような感覚についてどうお考えになるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  30. 佐藤幸人

    参考人佐藤幸人君) まず、投資の地域分布ですけれども、これは私の申しました二つタイプと密接にかかわっております。  まず、台湾から中国への投資というのは第一のタイプが先行したわけです、低賃金労働力目的とする投資が。この場合、特にオフショア型で第三国輸出目的としていたということもありまして、華南にかなり集中しました。ただ、中国側台湾側の統計で若干ずれていまして、中国側の統計では福建省が多く出ていますけれども、台湾側の統計だと広東省が多く出てくるということです。ただ、中国側の統計は恐らく初期の投資台湾企業投資が香港からの投資ということになっていた部分がかなりあると推測されていますので、多分広東省が一番多かったというのが恐らく正しいと思われます。  それが初期の段階ですが、九二年の鄧小平の南巡講話以降、第二のタイプ中国市場目的とする投資、これが物すごい量でふえるわけです。第一のタイプ、初期の投資とはけた違いの規模投資が行われた。この場合は中国市場目的ですので、まず全体的に分散化していきます。華南への集中ということはなくなります。それから、その最重点地域は上海を中心とする華東地域へというふうに移っております。これが現在も続いていますので、台湾企業投資の中心は華東ということになります。  それから、私も多少お答えした方がいいのかと思うんですが、椎名先生の聞かれた台湾の人のお気持ちはすごくわかりますけれども、代償はやはり相当大きいというふうに考えられます。これも二つタイプで申しますと、第一のタイプに関してはある程度ほかの国へシフトはもちろん可能です。ただ、今大陸へ出ている規模をすべて受け入れられるようなところがほかにあるかというと、第一のタイプに関してもまずないと。  それからもう一つ、第一のタイプに関しても、自転車などが代表的ですけれども、これはずっとグループ投資化していまして非常に大陸に根づきつつあります。そういったものを丸ごとほかへ持っていくというのはかなり困難が伴うだろうということです。  第二のタイプの場合、中国市場ですが、これはないからといって、例えば最大手の統一企業がすぐ困るかという問題にはならないかもしれませんけれども、ただ、こういった第二のタイプ投資を行っている企業の場合、非常に企業の発展ということ、中国市場への外延的拡大ということがないと、つぶれはしないかもしれませんが企業発展が非常に難しいというのが現状ですので、やはり中国との関係は非常に大切ではないかというふうに考えられます。
  31. 若林正丈

    参考人若林正丈君) 一国家制度というのは無理じゃないかというお話ですが、私も同感でございます。一つ経済の順調な運営というのは上にある政治権力の性格によってかなり影響される、それによっていろいろ、政治権力社会との関係でいろいろ暗黙の了解があってうまくいくというのがございますので、それがドラスチックに変わってしまったときにうまくいくのかどうか、これは非常に疑わしいことではないかというふうに考えています。私の知る限り台湾の方も、これは無理だよということは私が接触した限りではほとんどの人がそのように見ていると思います。  それから、椎名先生にそういう勇ましいことをおっしゃった台湾の方がおられるということですが、一面の歴史的根拠はあるだろうというふうに思います。  台湾の漢民族が中心の社会というのは存在し始めてから四百年ぐらいの歴史でございますが、その当初というのは明朝の没落する時期でございます。この時期は鄭成功の集団というのがありまして、これは半分海賊ですね、武装攻撃集団がいたわけであります。清朝、つまり中国大陸に非常に力が満ちてくると、この力の影響というものが台湾に来るわけです。移民が行って、漢民族の社会になったということでございます。今現在、原住民族は三%しかいません。  ところが、明朝末期になりますと中国大陸の力は弱るわけであります。弱りますと西太平洋のパワーが台湾影響を与えてくるということになるわけでございまして、十九世紀後半、台湾も開港いたします。そして、しょうのうの輸出、お茶の輸出、砂糖の輸出ということで非常に台湾経済は機敏に反応いたしまして、このころから実は輸出主導の発展だったわけでございます。日本の植民地になったときに、大陸との経済関係よりは日本との経済関係が重要であったことは言うまでもございません。冷戦になってからも、貿易の向き、経済関係の向きというのは同じでございます。  したがいまして、十九世紀の後半からついこの間まで、佐藤さんが御説明になったような相互依存ができるまでは、この百年はある意味では中国なしに経済的には生きてきたし、発展してきたというのが事実でございます。ただ、もっと大きく広げて見れば、例えば清朝の最盛期のように中国大陸に強大な政権ができて、しかもそこの文明の程度も高いということになれば、それは台湾はその存在に非常に大きく影響されることになるということは間違いないというふうに思います。  現在の中国は昔、我が国の知識人が上国と呼んでいたわけですが、ただ大きいだけじゃなくて上の国だと、上等な国だと呼んでいたわけですが、そういう一種の強さに対する畏敬と同時に尊敬もあったわけです。ですから、そのような強国になれば台湾も抵抗する力はないだろうと思うんですが、そういう上国に中国がなるのかどうかそれはわからないというふうに言わざるを得ないので、勇ましい方も半分の根拠はある、歴史的根拠はあると思いますけれども、これからどうなるか、それほど大きな自信でもっていけるのかどうか、それはやはりそう楽観はできないだろうと思います。
  32. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 今の御発言とも関連するんですけれども、長期的展望に立って台湾の将来がどうなるのか、こういうことなんですが、実は私も最近台湾に参りまして、向こうの立法、司法、行政の院長その他主立った方々と意見の交換をしまして、大変自由闊達にフランクに個人的な意見も述べていただいた、そういう感じがいたしました。  それから、私は法律家なものですから、向こうの弁護士さんたちともまた意見の交換をする場を設けてもらいました。これまた自由に法律家同士が話をしまして、まさしく日本政治家あるいは法律家と話をしているような雰囲気を感ずることができました。  それから、私は経済は素人ですから目で見る現象しかわからないんですけれども、何年か前に台湾に行った際は自転車が町じゅうあふれんばかりに走っていたんですけれども、最近行きましたら自転車がバイクにかわっていた。自転車からバイクにかわるということは経済力が相当向上しているんだろうという気がするわけです。  それから、私は検事をしていたものですから治安ということに大変関心がありまして、警察その他の人たちに治安情勢を聞きましたら、非常にいいと。また現実に、夜歩く際にひとり歩きを注意されたり、町を歩いてひったくりに注意するというのは外国旅行の際にあるんですけれども、台湾ではそういうことはなかったわけですから、治安もよりよく保たれているという気がするわけです。  政治経済と治安、これはもう本土に比べても隔絶しているんだろうと思われますが、中国本土がこれから頑張りましても、この差はますます開くばかりで埋まることはまずなかろう、中国が頑張れば台湾も頑張るわけですから差はますます開いていく一方だろうと思うんですけれども、この点の見通しはいかがなものか、専門的立場からお教え願えればと思います。  それから、統一の問題なんですけれども、今、先生のお話にもありましたけれども、中央政府の文明度がすぐれておってそれに辺境地域が徐々に吸収されていくということならよくわかるんですけれども、これは逆の立場になっております、辺境地域の文明度が高いと。  かつて、ローマ帝国が周辺をゲルマンの蛮族に取り巻かれておった、まさかローマとゲルマンが合体するとはだれも考えていなかったわけで、結局ローマは滅ぶしがなかったわけです。それと同じように、この差がますます広がれば広がるほど台湾というものは破滅の道を歩いていくのではないかという気がしてしようがないわけです。独自性を保つためにはもう独立しかないんじゃないかという気もしておりまして、そういう点についてちょっと御所見を例えればと思います。
  33. 若林正丈

    参考人若林正丈君) 中国は大変大きゅうございますので、民度を平均してしまいますとおっしゃるように台湾との差が埋まるということはあり得ないというふうに思います。ただ、改革開放政策というのは一部分が先に豊かになってもいいという政策でございますから、経済数字を見ていけば、一人当たりのGNPの追いつく速度が台湾の方のパーキャピタGNPをふやしていく速度より高ければ、現象的には追いついていくということは上海とか広州とか沿岸の一部についてはあるのかもしれません。  ただ、社会の質というものは、経済発展が急速にいくと逆に悪化するという面が台湾を見ても存在しますので、それが中国についてどうかということになるとやはり悲観的だ。私は中国大陸を十分研究しているわけではございませんのでこれは感覚的判断でございますけれども、そう簡単に埋まらないというふうに思います。  我々が接したときの人の感じの違いというものが、台湾の人に接したときはまだ同じ産業社会に生きているという感じがするわけですけれども、同じような場合に、恐らくコーヒーを飲んでだべるであろうとか、同じような教育を受けた人間だったら同じようなところで外来語を入れるだろうというような判断、そういう同じようなロジックで考えるであろうというのが中国でもふえてくるでしょうけれども、全体の民度の関係で近づいていくというのは余り期待できないだろうというふうに思います。  二番目の問題ですが、中国の歴史にとっては脅威と世界の主流になっている文明の進展の面で、海の方からそういう勢力がやってきたというのは歴史上初めての経験になっているだろうと思うんです。ですから、中国人の対応というのは非常に分裂しているだろうと思うんですけれども、中国がそういう挑戦を受け入れざるを得なくなってから百数十年たつわけですが、いまだに答えが出ていないんじゃないか。その経験を徹底的に受け入れざるを得なくて、経済的にもうまくいき政治的にもある意味でそれなりにうまくいってしまったというのが台湾の例でございまして、このことが中国との距離を生んでしまって逆に危なくなるといっただいまの先生の御判断も、あり得る悲劇的なシナリオの一つではないかというふうに思います。
  34. 寺澤芳男

    ○寺澤芳男君 平成会の寺澤です。  オーバーシーズ・チャイニーズ、まあ華僑という言葉が適切かどうかは別として、要するに中国台湾以外に住んでいるチャイニーズの動向について、例えば来年香港が中国へ返還される。聞くところによれば、かなりの有力者が他国の国籍を取得している。そうなると、オーバーシーズ・チャイニーズの数は、特に有力なビジネスマンたちの数あるいは勢力はふえていくだろうと思うんですが、彼らの現時点における中国台湾との問題についての見方、それからお二方がそれぞれお考えになるオーバーシーズ・チャイニーズが中国あるいは台湾に将来与えるであろう実際的な影響力について教えていただければ幸いです。
  35. 若林正丈

    参考人若林正丈君) 学者の世界ではオーバーシーズ・チャイニーズの研究はそれなりの専門がございまして、私の返答がきちっとした返答かどうかちょっとお疑いになりながらお聞きいただきたいと思うんです。  経済的な動向に影響を強く与えるような海外華人というのは、政治的な危険に対する保険というのはとっくの昔に掛けているのであって、香港が返還になるからそこで彼らが特に困るということではないというふうに思われます。香港の場合は、一九八四年に中英共同声明ができましてちゃんと期限がわかっているわけでして、十分準備しておるんではないかと推測をいたします・  それから、台湾に関してはいわゆる華僑という人、それから台湾の本省人、いわゆる台湾人という人たちが、戦後アメリカに行ってドクターを取って学者になったりビジネスマンになったりという人と政治的傾向が違うようであります。台湾人のロビー、歴史的に言われた台湾ロビーというのじゃなくて、台湾人の議会に対する働きかけは非常に巧みでございまして、七〇年代末の台湾関係法から独裁政権時代の国民党にいろいろ圧力をかける、台湾戒厳令に関する公聴会の開催とか、非常に上手にロビーをやっておりました。李登輝政権になってからそういうもののまねをしまして、いろいろ上手にロビー活動をやっておりました。この間はアメリカ政府のスポークスマンが皮肉でもって、中国もまねをしたらどうかというようなことを言ったそうでありますが、そういう影響力は存在しているというふうに思います。  この点について私の知識は限られておりますので、申しわけございません。
  36. 佐藤幸人

    参考人佐藤幸人君) 私は若林先生以上にちょっとこのテーマから遠いので、必ずしもお答えにならないかもしれませんけれども、いわゆる華僑あるいは華人ネットワークというものに関する私の見方をちょっと述べてお答えにかえさせていただきたいと思います。  日本では、私は神話だと思っているんですけれども、華僑・華人ネットワークというものは非常にがっちりしたものが悠久の昔からあって、それが非常に閉鎖的なものであるというイメージがあるように私は感じております。私の理解するような華僑・華人ネットワークというのはそういうものではなくて、非常に柔軟で開放的で、必要に応じて基本的に形成されるものであって、先に人間関係、血縁地縁のネットワークありきというよりは、あくまで機能的な目的に応じてつくられるもので、そのときのきっかけがたまたま血縁であったり地縁であったりするものだというふうに理解しています。  ただ、実際、華人によるASEAN諸国を含む東アジア経済活動というのは非常に今活発なわけです。それで、その中の台湾の位置づけなんですけれども、華僑、華人が工業をやる場合、技術は買ってくればいいというような見方が強いわけですけれども、台湾は、この華僑、華人の広い意味の漢民族の中で、非常に工業、製造業について技術を現在蓄積しているわけですね。これはもっと注目されていいと思っております。そういった面で、このネットワークの中で台湾の役割というのは非常に重要であるだろうし、これからもあろうというふうに思います。  昨年アモイに行ったときも、そこではインドネシアのリム・ションリョンと台湾のトンテックスの共同のポリエステル工場がありましたが、私は実際には見ませんでしたけれども、工場で実際に現場を指導しているのは台湾のトンテックス・グループから派遣された人たちで、リム・ションリョンは金を出しただけというような話も聞いておりますし、そういった役割を台湾は果たしていくんだろうなというふうに思っております。
  37. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 佐藤参考人に一点だけお教えいただきたいと思います。  私は沖縄の出身なんですが、沖縄は歴史的に中国とも台湾とも深いつながりがございます。特に十四世紀以降、琉球王朝の時代には、中国台湾、朝鮮、その他東南アジアの国々と大交易をして琉球王朝は栄えたわけでございます。現在、沖縄県は、東南アジアヘ、南へ開かれた玄関口として、これから経済交流を、貿易を盛んにして国際都市を形成しようと、こういう取り組みをしておるわけでございます。  中国の華南経済圏との経済交流では、現在福建省に県の友好会館を建築中でございます。それから、アモイ市とも市町村レベルの交流もやっておりますし、それから船舶はもう定期的に入っております。近々飛行機も飛ぶやに聞いております。それから、福建省との経済サミットも既に二回、沖縄と福建省で行っております。当然、投資貿易に限らず観光などについても、最近台湾からの観光客がふえておるということと、台湾のコンピューター関係では、部品を台湾でつくって、最後の組み立てを沖縄のフリーゾーン地域で完成させて、そしてメード・イン・ジャパンのレッテルで世界へ売り出す、こういう人もあらわれているようでございます。  経済関係を含めて今後の両岸関係、そういう進行の状況と沖縄の占める経済的な位置というんでしょうか、そのことについて佐藤先生から御示唆になるような御意見を拝聴できればありがたいなというふうに思っております。
  38. 佐藤幸人

    参考人佐藤幸人君) 大変難しくて大きな課題で、今お答えできることは非常に限られたことで恐縮なんですけれども、実はこういった問題は、昨年度、私どものアジア経済研究所で沖縄県の県庁及び大学と協力してプロジェクトをやったはずであります。私、まだ最終的な報告書を見ておらないんですが、そこにかなり詳しくあるんではないかというふうに思います。  今、私がお答えできることは本当に限られておるんですけれども、中台関係、三通が今後どうなるかというのが非常に大きな当面の課題というか問題なわけです。しかも、香港が今まではイギリス領ということで非常に都合のいい位置にいたわけですけれども、中国になってしまう。かつ、台湾投資も華南から華東へ移っているというわけで、とりあえず三通が急速に進んでしまうと直接やってしまうのでそういった需要は生じないかと思いますけれども、三通が漸次進むとしますと、沖縄が中継地として適当な位置にあるということは言えるのではないかと思います。  ただ、こういった構想はかなり以前からあったにもかかわらず実際には余り進んでいないというふうにも聞いておりまして、その一つの原因は、規制が日本側に多過ぎるというのも原因だというようなことも伺っております。余り詳しく存じ上げないで申し上げるのはなんですが、やはりそういったことですと規制緩和というのが日本側ではひとつ必要になるのかなというふうにも考えます。
  39. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) それでは、小委員長の方から若林参考人にお聞きいたします。  今回の台湾海峡の緊迫化した情勢の中でアメリカが空母二隻を派遣いたしました。このことを通じて台湾の人たちは、アメリカ台湾に対する安全保障上のコミットメントについてどういうふうにそれを受けとめたんでしょうか、その点解説をしていただきたい。基本的には、アメリカは戦略的なあいまいさというものを維持するというような方針を持っているようでございますが、これに対して台湾の人たちは今回の経緯を通じてアメリカの関与をどういうふうに受けとめたか。  第二点は日台関係に関してでございます。こうして台湾において選挙を通じた民主主義的な体制ができ上がる結果として、台湾の人たちは、先ほど若林参考人からもお話がありましたとおり、継続して国際的にみずからの戦時政体が認知されるということを願望し続けて活動をいずれは活発に再開するだろう、こういう展望を示されました。そういう展望の中で、日本に対してどのような外交的な働きかけを今後台湾はしてくるのであろうか、こうした見解について御説明していただければ幸いです。
  40. 若林正丈

    参考人若林正丈君) 大変難しい質問でございますが、私は三十一日まで台湾に滞在しておりました。選挙の期間に私が感じ取った雰囲気というものは、米国第七艦隊の二隻がやってくるということで、これで安心して投票ができるというのがあのときの雰囲気ではなかったかと私は感じております。  しかしながら、米国の介入は問題を一層複雑にする、しかも台湾が米中の大国のゲームのこまにされてしまうのだと、そういう意味もあるので、米国中国に強い態度をとるということは必ずしも台湾に有利ではないという論調も台湾新聞には見受けられたと、このように感じております。  それから、日本に対してどういうことを期待しているかということですが、願望はしながらも余り期待できないと判断しているというのが台湾の方々の気持ちなのではないでしょうか。政治的には余り期待していないというのが、恐らく日本を理解する方々の、心情的には期待する、願望するんだけれども、日本の事情を見ると余り期待できないというのが判断なのではないかというふうに思います。これは、例えば李登輝総統が京都大学の同窓会に来る、そういうような面において余り期待できないという判断をしているのではないかと思います。
  41. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。  参考人には、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。小委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十一分散会