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1996-03-19 第136回国会 参議院 外務委員会アジア・太平洋に関する小委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年三月十九日(火曜日)    午後五時三十一分開会     ―――――――――――――    小委員異動  三月十三日     辞任         補欠選任      成瀬 守重君     笠原 潤一君  三月十八日     辞任         補欠選任      笠原 潤一君     岩崎 純三君  三月十九日     辞任         補欠選任      岩崎 純三君     山本 一太君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     小委員長        武見 敬三君     小委員                 大木  浩君                 野沢 太三君                 山本 一太君                 川橋 幸子君                 照屋 寛徳君                 立木  洋君                 武田邦太郎君     事務局側         常任委員会専門         員       大島 弘輔君     参考人         杏林大学教授  平松 茂雄君         慶應義塾大学教         授       小島 朋之君         筑波大学助教授 井尻 秀憲君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○アジア太平洋に関する件  (中国台湾情勢について)     ―――――――――――――
  2. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) ただいまから外務委員会アジア太平洋に関する小委員会を開会いたします。  まず、小委員異動について御報告いたします。  本日、委員異動に伴い、山本一太君が小委員に選任されました。     ―――――――――――――
  3. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) アジア太平洋に関する件を議題といたします。  本日は、最近の中国台湾情勢について、杏林大学教授平松茂雄君、慶應義塾大学教授小島朋之君、筑波大学助教授井尻秀憲君に御出席いただき、御意見を聴取いたしたいと存じます。  この際、参考人の方々に小委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には、御多忙のところ当小委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本日は、最近の中国台湾情勢について忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  なお、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人二十分で、平松参考人小島参考人井尻参考人の順に御意見をお述べいただき、その後、小委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。  それでは、平松参考人からお願いいたします。平松参考人
  4. 平松茂雄

    参考人平松茂雄君) 杏林大学平松でございます。風邪を引いて声がちょっとかすれておりますのでお聞き苦しいところがあるかと思いますけれども、御勘弁願いたいと思います。  さて、私に与えられましたテーマ台湾海峡軍事情勢ということであります。皆様には余りなじまないテーマかとも存じますので、大体きょう私が話しますことをワープロで打ってまいりましたので、それに従ってお話を進めます。  中国軍は三月八日から十五日まで弾道ミサイル発射演習を始め、次いで十二日から二十日まで海空軍による実弾発射演習を実施し、さらに十八日から二十五日まで陸海空軍による上陸作戦を含む共同作戦演習を実施しております。これに対して、台湾側警戒態勢をしき、また米国は第七艦隊空母一隻とイージスミサイル艦一隻を台湾近海派遣しております。  これから、初めに中国の実施しました軍事演習内容目的、次いで中国軍能力について、その後台湾軍事能力に触れ、それとの関係米国第七艦隊派遣意味についてお話をし、最後にこれらの演習と我が国の関係について簡単に述べてみたいと思います。  まず、弾道ミサイル発射演習ですが、これは西側でM9と呼ばれているミサイルであります。中国では東風十五号と言われているミサイルであります。厳密に言えば、中国側ミサイルの名前を具体的に公表しておりませんので定かではありませんけれども、M9であろう、ほぼ間違いないと見られているものであります。このミサイルが、第一日目に三発、翌日一発、合計四発発射されました。どちらも江西省の楽平を基地とする中国軍第二砲兵部隊、これは戦略ロケット部隊でありますけれども、これが福建省の永安というところから発射したと見られております。  このM9ミサイルは、八〇年代のイラン・イラク戦争ソ連製スカッドミサイルが果たした役割に注目して、中国輸出用に開発生産した短距離弾道ミサイルです。これはロケット推進燃料として固体燃料を使用し、トラックに搭載されて運搬される中国では最新式移動ミサイルであります。ミサイル移動式意味というのは、これは今申しましたようにトラックに搭載されて移動できる、つまり生き残りということで大変重要な意味を持っているわけであります。  発射準備時間は約三十分で発射できると見られております。射程は六百キロメートルと見られておりますから、台湾対岸江西省あるいは福建省から発射すれば台湾に十分到達できるばかりか、その時間はわずか五、六分で到達するとされております。しかも、台湾にこのミサイルを撃ち落とす能力はありませんし、これを捕捉する能力もないというミサイルであります。  この弾道ミサイルは、台湾北部海域南部海域の二カ所に向けて発射されました。北部海域は角度を変えれば台北を、それから南部海域台湾全島射程内におさめております。つまり、台湾の首都と台湾全島をいつでも攻撃できる能力を保有していることを示すことにより、中国台湾に対して戦略的に優位に立つことができるわけであります。つまり、場合によっては、これでもって台湾を屈服させることができれば、それで戦争は終わりということになるわけであります。  さらに、この弾道ミサイルには通常爆弾の弾頭も核弾頭も搭載することができます。中国はこれまでに核実験を繰り返しております。特に、最近の数年間、国際世論に背を向けて核爆発実験を続けております。中国核弾頭を搭載した弾道ミサイル台湾に発射することはないと思われますが、しかし核弾頭が搭載できることは台湾に対する政治的、心理的に非常に大きな脅威となるところに意味があると思います。  もう一つ、その弾道ミサイル発射演習した目的は、実際に戦争に使うという目的であります。この弾道ミサイルM9は今申しました戦略的な意味と戦術的な意味があるわけですが、戦術的と申しますか、実際に中国戦争をしかけた場合このミサイルがどういう役割を果たすかということでありますが、それは台湾空軍施設、具体的には滑走路とかレーダーサイトを破壊し、それによって台湾海峡制空権を掌握することにあります。  台湾に侵攻するということになりますと、当然中国軍の陸軍の上陸部隊あるいは海軍海兵隊台湾海峡を渡るわけであります。それには海軍艦艇によって護衛されて渡るわけでありますが、当然台湾空軍が空からこれを攻撃して阻止するわけであります。したがって、その空軍から上陸部隊を守る、渡海部隊を守らなければいけないわけであります。制空権意味というのはそこにあるわけでありますが、しかしながら現在の中国空軍には制空権を掌握するに足る十分の能力はありません。したがって、弾道ミサイルによって台湾空軍施設を破壊すること、これによって実際の戦争は始まると考えます。これが最初に行いました弾道ミサイル発射演習一つ意味であるわけであります。  その後、いよいよ上陸部隊渡海を始める、台湾海峡を渡るわけであります。当然台湾側から空軍及び海軍によって応戦されるわけでありますから、そこで台湾海峡で戦闘が行われる。そのときにどうやって戦争を行って渡海するかということを見せたのが、そういう演習をやったのが二回目の演習になるわけであります。海空軍による実弾射撃演習というのは、そういう目的で行われている演習であると考えられます。  これまでの台湾側の報道を見ていますと、十三日に航空機が四十機以上、艦艇が十余隻、十四日には航空機二十機以上、艦艇四十余隻が参加したということが報道されておりますけれども、それほど多い航空機艦艇が参加しているわけではありません。意味しているところは、目的は今申したようなところにあるわけであります。  そして、そのようにして海峡を渡って、最後上陸作戦が始まるわけであります。もちろん、台湾側攻撃があって、それを破砕して上陸作戦を敢行する、これが最後陸海空軍による上陸作戦を含む共同作戦演習というものであります。これがまさにこれから行われるということであります。ことしになりましてから十五万の兵力が福州沖の平楽島に集結しているということが報道されておりますけれども、少しずつ集結し、部隊が個々の演習訓練を行いつつ集まっていて、そしていよいよ上陸作戦を始めるというようなことがこれから行われるのであろうと思います。  今申しましたように、この三つの軍事演習というのは、中国軍がもし台湾に対して侵攻作戦を行うときにこういうぐあいに行われますよということを見せたわけで、もちろんそのための演習でありますし、同時に外に向かって示したということで、ごく普通のシナリオであろう、細かなところはともかくとして、大ざっぱに言えばそういうことが言えると思います。  実は、これと同じような演習を昨年の夏から秋にかけて、ちょうど六月に李登輝総統が訪米して、その報復措置として中国軍事演習を行ったわけでありますけれども、このときとほぼ同じものであると言ってよろしいと思います。ただ、前回は断続的に行ったわけですが、それを今回は一度に集中的に、そして非常に大規模に、しかも演習海域も非常に広く、あるいは台湾に非常に近いところで行ったというところに特徴があると思いますし、それだけ台湾に対する威嚇という点では昨年の比ではなかったということが言えると思います。  それでは、こうした軍事演習目的は何かということであります。  これはいろんな目的があるとは思いますが、台湾の住民を心理的に撹乱し、台湾経済を混乱させ、独立を思いとどまらせるための軍事的威嚇であると言ってよろしいと思います。中国共産党政権指導者には根強い力に対する信奉というものがあって、つまり軍事力後ろ盾政治目的を達成する、力によって政治を変える、そういう根強い考え方があるわけであります。同時に、実際にもし現在の中国台湾統一するとした場合、軍事力以外に有効な手段はないというところであろうかと思います。  今度の軍事演習の効果とかあるいは目的をどう評価するかということは、いろんな見方ができるかと思いますが、しかしつまるところは、やはり軍事力以外に有効な手段がない、あれ以外にないということに尽きるだろうと思います。  中国にとって台湾統一目標ではありますけれども、現実に有効な手段を持たないところから、鄧小平時代以降、一国二制度による解決を基本方針としております。一つの国に社会主義体制資本主義体制が併存するという矛盾する方針がとられた背景には、中国には台湾統一できないという現実があります。中国は一国二制度という枠組みの中で台湾中国から離れていくのを阻止しつつ、他方中国自身が迅速に政治的、経済的、軍事的に成長して統一の条件を整えることを意図しております。  次に、中国軍事力水準台湾侵攻能力について論じてみたいと思います。  九三年から九五年までの三年間、中国軍軍事訓練改革というものを実施いたしました。特に九四年以降大規模軍事演習が頻繁に実施され、訓練改革の検証が行われました。この訓練改革内容というのは、一言で申せばハイテク条件下における共同作戦能力の演練であります。現代の戦争では陸海空三軍が参加した統合作戦常識となっており、中国軍の当面の最大の任務である台湾侵攻作戦も当然統合作戦となるわけであります。  中国軍は八五年に百万人の兵員削減を行い、それによって近代的な軍隊へと生まれ変わってきております。しかしながら、陸海空それぞれの内部での近代的な訓練改革というのは進行しておりますが、陸海空を超えた、そういった敷居を取っ払った統合作戦訓練というのはほとんど行われていないということをこの軍事訓練改革を行った総参謀部自身が認める通達を発しております。  これは大変重要な通達で、このときはまだ今回のような緊迫した状態にはないわけで、そういう意味で正直に総参謀部が自分の能力をさらけ出しておる。注目していいと思いますけれども、中国にそのような能力がないから、そのような能力を持たないことには戦争はできないし、台湾統一もできないということを正直に認めているわけであります。  この通達を出したときの総参謀長というのは、昨年の秋に中央軍事委員会の副主席に抜てきされました張万年という人であります。この人は、一説によりますと、今回の軍事演習指揮している台湾指揮所の総指揮であるということが言われているわけであります。これはむしろ当然の人事でありますけれども、それだけに現在中国台湾に侵攻するかどうかを考える上での非常に重要な一つの要素になると思います。つまり、中国軍最高指導部自身が、現在まだ中国軍には台湾渡海するだけの近代的な軍事力を持っていない、だから早く持とうということであります。  もう一つ中国軍には近代的な部隊渡海作戦ができないということは、これは揚陸能力からも言えます。揚陸能力というのは、台湾海峡を渡るのに必要な部隊を送るだけの輸送能力があるかという問題であります。これを英国のミリタリー・バランスから算出しますと、現在の中国軍揚陸能力というのは、戦車七百両、兵員八千人程度でありますから戦車一個師団あるいは海軍陸戦隊一個旅団程度で、そういう意味では大量の軍事力を短時間で渡海することは事実上不可能であるということがわかります。  それでは、中国軍には台湾軍事侵攻する能力はないのか、あるいはやらないのかということになると思うんですが、中国は、繰り返し主張していますように、台湾独立、外国の支援現実となるときには台湾を解放するということを言っているわけであります。そういうような事態になったときには、犠牲が出るのを恐れず、経済制裁を科せられさりが、あるいは国際世論の非難を浴びようとも、恐らく民間の船舶、漁船、航空機などを徴発した、そういう意味では非正規の手段を投入して、国家的な動員態勢を形成して軍事介入するということは考えられます。  中国という国はこれまでの歴史を見ても、数年前の天安門事件にしても、あるいはさらに十五年前の中越戦争にしても、まさかと思うような、我々の常識からいったら行わないだろうというような戦争を平然として行っているという歴史的な事実、あるいは中国という国は建国以来の四十五年間に大小十余回の戦争をやっているという、そういう事実を考えざるを得ない。そして、こうした戦争というのは何らかの形で国家の領土国境線とかあるいは主権に何らかの形で関係しているというようなことを考えますと、台湾という主権領土に関連する問題ではやはり譲らないということもあり得ると思います。  しかし、今まで申しましたように、台湾海峡、海を渡る作戦というのは、これは容易ならぬことでありますから、常識的に言えば渡海作戦台湾をとるということは考えられないと思いますけれども、やはり若干の疑問は残るということであります。  ほかに限定的な作戦としては、例えば大陸沿岸小島を今軍事演習をやっている勢いに乗じてとるとか、あるいは海上封鎖をやるとかいろんなことがあり得ると思いますけれども、一番効果的なのは弾道ミサイルを発射することであろうと、私はそう思います。弾道ミサイルというのは、本来の戦争目的のほかに、みずからの被害を最小限にとめつつ、相手の目標や場所を限定的に使用することができる兵器であります。これに核兵器が搭載できるぞといっておどかせばなお有効であるわけであります。  本年の初頭にニューヨークタイムズがリークした、総統選後、台湾独立した場合には中国弾道ミサイルを毎日一発三十日間台湾に撃ち込むということを言ったと言われているわけでありますけれども、こういうことも常識から考えると考えられないかもしれませんが、しかしやはり弾道ミサイル一つ意味はそういうところにあるわけで、これを飛ばすだけでも意味があると思います。  例えば、台湾の島を越えて東部の海域に撃ち込むとか、あるいは実際に台湾の島の上に撃ち込むとかというようなことはあり得ないことではないし、中国の持っている力を現実的に効果的に発揮するという点では、弾道ミサイルが一番有効であろうというふうに思います。  湾岸戦争があったときに中国台湾に侵攻するのではないか、そういう情報が流れました。そのときに、国民党の機関紙の中央日報という新聞が社説の中で、高度成長により台湾の大衆は非常事態に対する心理的適応能力が非常に脆弱になっているということを言って、それに対しての警告を発したことがあります。弾道ミサイルというのは、そういう意味では一番効果的な手段であろうというふうに考えます。  他方台湾軍事力でありますが、中国軍事侵攻に対して、あるいは軍事的威嚇に対して対抗できるかといえば、これは簡単な問題ではありません。それは、例えば中国核弾頭各種弾道ミサイルを持っておりますが台湾はそのようなものは全くない、あるいは中国軍事力は三百二十万もの大量の軍隊を持っているのに対して台湾はわずか五十万とか、いろいろこういった点を挙げますと、簡単に比較はできないわけでありますけれども、アメリカ軍事的支援がなければ、現在の段階では台湾軍事力は量的にも質的にも中国軍事攻撃に耐えられるようなものではないと言ってよろしいと思います。それは、アメリカ台湾の強力な軍事力を保有することに一貫して反対してきたからであります。台湾がもし強力な軍事力を保有すると、大陸反攻を実施することを恐れたからであります。  特に、七九年の米中国家関係樹立以後、台湾軍事力というものは非常に低下する状態にあって、そこで台湾軍事力近代化を進めているわけであります。その一つ米国からF16を百五十機入れるという計画であるわけですが、しかしまだそれは配備されてはいないわけであります。したがって、中国軍戦争をしかけるとすれば今であるということであります。つまり、F16が配備される前であるということになると思います。であるからこそ、アメリカが第七艦隊艦艇派遣した理由があるわけであります。アメリカ台湾軍事力が脆弱であることを十分承知しているということであります。そういう意図から、アメリカ空母インディペンデンスイージスミサイル艦派遣することになったわけであります。  こうした第七艦隊派遣により、台湾海峡の危機というのはひとまず私は回避されるだろうと見てよいと思いますけれども、しかしアメリカがこれだけの艦艇アジアに展開したことは最近にはなく、アメリカがそれだけ中国軍が力を行使することを抑制しようという立場のあらわれであると考えてよろしいと思います。台湾問題というのは、恐らく解決することなく今後も続くと思われるのであります。  今後、中国軍事演習がこれで終わるかどうかということにさらに触れたいと思いますけれども、私は、選挙が終わったからといって終わるのではなくて、総統に就任するまでの期間、何かやはり中国はやるだろうということ、そしてその後も恐らく台湾に対して統一のための政治交渉のテーブルの場に座らせることを目的とした軍事的な圧力を加えるだろうというふうに思っているわけであります。  最後に日本との関係ですが、ちょっと時間がありませんでしたので、これは後に回したいと思います。  以上であります。ありがとうございました。
  5. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) ありがとうございました。  それでは、次に小島参考人にお願いいたします。小島参考人
  6. 小島朋之

    参考人小島朋之君) 小島でございます。  私に与えられましたのは中国台湾政策ということであります。  中国台湾政策があるのかといえばある、ただし極めて選択の幅は狭いというふうに思っております。台湾政策があるとすれば、その基本一つ中国原則というものであります。  一つ中国原則というのは、台湾中国の神聖な領土の不可分の一部である。一つ中国一つ台湾二つ中国、これは許さない、まして台湾独立は絶対に許さない、これが一つ中国原則であります。この原則から逸脱できないところから現在の中国台湾政策と、そしてある種の台湾海峡の緊張というのが生まれているということであろうかと思います。  そこで、私はきょうの意見では、中国台湾政策の現在のこうした硬直性、この硬直度というのがどれほど硬直しているのかというお話をまずさせていただき、なぜそうした硬直した政策が出てくるのかということについて、中国にとっての台湾問題の本質というのを二つに分けて説明してみたいと思います。そして、そうした中国台湾政策硬直性というのがなぜ出てきているのか。その一つの大きな要因として、現在の中国政権のいわば過渡期的性格、そこにあるのではないかということを最後お話しさせていただきたい、こういうふうに思っております。  まず第一番目、現在の中国台湾政策文攻武嚇、こういうふうに呼ばれておりますように、文攻というのは文章で攻撃する。つまり李登輝総統を個人的に批判する。もう行くところまで行ったと言ってもいいような批判が行われております。そしてそれと同時に武嚇、武力でもって威嚇する。こういった文攻武嚇というまことに強硬な政策が展開されております。先ほど平松先生の方から出されたように、現実中国には台湾統一する上で軍事力以外に有効な手だてがない、まさにそういうことであろうと思っております。  しかし、こうした政策がずっと一貫していたかというと、そういうことではないわけであります。昨年の初めに戻ってみますと、中国台湾に対してかなり柔軟な姿勢一つ中国原則は逸脱しないけれども、柔軟な政策を展開しようと試みたことがあります。それが昨年一月三十日のいわゆる江沢民八項目提案というものであります。  今も申しましたように、原則は逸脱しないけれども首脳の相互訪問交渉を呼びかけておりました。あまつさえ五月二十二日、五月二十二日というのはアメリカでは五月二十一日でありますが、五月二十二日には台湾当局とそして李登輝先生に期待する、こういうふうに言っておりました。そして翌日、アメリカ時間では五月二十二日にクリントン政権李登輝総統訪米受け入れ決定をしたということであります。そのほか、ここにも書きましたように、両岸の民間機関トップ級会談というのも昨年の七月に北京で開催するというところまで踏み込んでおりました。しかし、このアメリカクリントン政権決定以降、特に李登輝総統アメリカ訪問からの帰国後、中国姿勢というのは一転して現在のような硬直した姿勢に変わってくるということであります。  なぜこういった政策、こうした硬直した姿勢が出てくるのか。私はその問題の本質二つあるというふうに思っております。  第一番目は、それは現実原則の乖離はもうある意味で行き着くところまで行き着いているかなということが一つであります。二つ目は、台湾問題の本質は、中国は内政問題と繰り返し言っておりますが、まさに内政問題であると繰り返し言わざるを得ないほど既に国際問題になっているというところにあり、特にそれは中国経済中国外交戦略、そういった観点から見てまさに台湾問題の本質のいま一つ米中関係にあるということであろうと思っております。したがって、米中関係であるというところから、ある意味で私自身はその従属変数というふうに考える日中関係でもあるというふうに考えております。  まず第一番目の原則現実のギャップの拡大ということでありますが、これはもう余り説明する必要もなかろうかと思います。現実とは何かというのは、これから私の後に御意見を述べられる井尻先生のところでそれは詳しくお話があろうと思います。一言で言えば、もはや台湾中国の一部たり得なくなってきているということであります。一言で言えば、台湾百年の歴史の中で経済政治の発展を背景にして、いわば台湾の人々の中にある種の台湾アイデンティティー、台湾ナショナリズム、こういうふうに言うのはちょっと言い過ぎかもしれませんが、まさにそうしたものがあるということであります。今回の総統選挙というのは、結局はこの台湾アイデンティティー、台湾ナショナリズム、それを表出させていくものである、これが現実であるということであります。  他方原則とはこれは中国のものであり、先ほど申し上げたものであります。一つ中国台湾独立は許さない、こういうことであります。これは今までもそうでありました。その今までもそうであったというのが第一点の「近代失地回復主義」、こう書いてあるところであります。これも多言を要するまでもなかろうと思います。つまり、中国の近代史が西洋の衝撃、日本も含まれますが、西洋、欧米列強による領土の簒奪、権益の簒奪ということであり、まさに中国の近現代史はその奪回を図り、そして威信を回復していくということであります。まさに近代失地回復主義、こういうふうに言えるだろうと思います。  これを最も象徴しているのは、鄧小平さんがサッチャー・イギリス首相と会ったときに、香港問題に関して、私は李鴻章のような売国奴と呼ばれたくない、こう言ったところであります。李鴻章についてはもう説明はする必要もないだろうと思います。こういった言葉がまた台湾問題に関連して何人かの指導者の口から出てきているということであります。  それ以上に、私は当面の中国台湾政策においては二番目のところが問題なのだろうと思っております。「過渡期の江沢民政権」ということであります。  御案内のとおり、まだ鄧小平さんがいなくなったわけではありませんが、ある意味でポスト鄧小平時代への過渡期が始まっております。私自身は、後ほど少し説明させていただくとおり、依然として江沢民体制が完全に固まっているというふうには思っておりません。だとするならば、江沢民体制は何としても国をまとめ、そしていわば体制の後継としての正統性を確立していかなければいけない。  その手だては何か。一つは言うまでもなく経済発展を持続させていくということであり、いま一つは、それがなかなか難しいとすれば、これは常套手段でありますが愛国主義、ナショナリズムに訴えていくということであります。まさに一つ中国原則はこのナショナリズム、愛国主義とある意味で骨絡みでつながっているということであります。したがって、江沢民体制がこの問題について逸脱する、あるいはこの問題に関連して台湾に妥協するなどというのは、これはできない相談であるということであります。できるのは、これは剛腕を持った、つまり強いリーダーシップを確立した指導者だけであります。  先ほど平松先生の方からお話があった香港問題について、一国両制構想というのを鄧小平が打ち出しました。今現在ではこの一国両制なんというのは大したことがないように見えますが、これが打ち出された八〇年代初め、これは画期的なものであり、まさにそれは鄧小平という権威と権力を集中的に握った指導者であったから可能であったわけであります。今の江沢民体制にそれができるかというと、できない。それをやることは、批判、失脚のきっかけにさえなりかねないということであります。まして来年は香港の返還、そして二十一世紀にまたがる新しい指導体制を公式に承認する十五回党大会があるわけですから、できるだけ慎重に、ある意味では憶病にやっていかなければいけないということであります。これがまず問題の第一であります。  本質のその二というのは米中関係にあるということであります。この米中関係それ自体については、これもまた井尻先生の方からお話がありますが、私自身はここでも過渡期の中国政権の脆弱性とこの米中関係が深く結びついているというふうに考えております。  中国外交は、私の見方でいけばある意味での二面外交であるというふうに思っております。一つは、経済発展を進めていくためには、日米をひっくるめてアジア周辺諸国の経済協力というのを不可欠にしております。二つ目には、経済発展を進めていくために、その経済発展に専念できるための周辺地域における平和な国際環境というのを必要としております。この観点からは、中国はある意味で国際的協調外交というのを進めます。  しかし他方で、御案内のとおり、先ほども平松先生の方からお話があったような軍の近代化を中心とした、かなり強力な物理的強制力を背景にしたある種の国際的威信あるいは国際的なイニシアチブを確保、拡大していこうと、そうした外交も展開されております。最も象徴的なのは、これも御案内のとおり、東南アジア諸国と領有権を争う西沙諸島、南沙諸島、こういったところに見られる一連の動きであろうと思います。  この二つの外交は、ある意味での矛盾でありますが、しかしながらこれは中国の側から見ればそう矛盾ではないわけであります。問題は、そのときその場所に応じてこうした二つの外交を使い分けることができるか否かというところであるわけであります。私は、現在の台湾中国との関係、ある意味での硬直した、出口が見えない、そうした政策というものは、まさにこの中国外交においては束ね役不在ということが深くかかわっているのではないかというふうに考えているということであります。  こうした台湾問題の本質二つというものを考えてまいりますと、ある意味での硬直した状況、中国側政策的な硬直状況というのはどこからきているんだろうかと。私は、台湾政策硬直性は過渡期政権の脆弱性を反映したものであるというふうに考えております。いわば現在の政権が思い切った手だてを打てない、ある意味では総統選挙後の台湾の出方に期待をかけると、そういった状況があるのだろうと思っております。  もちろん現在の中国政権、江沢民体制というのはかなり固まってはきております。その意味で強靱性を加えつつあると思います。しかしながら、依然として脆弱性というのを多く抱え込んでいる。こうした強靱性と脆弱性の共存状況というふうに言えるのではないかと思っております。  この強靱性というのは、次に書きましたような七年ももった江沢民体制、一九八九年の天安門事件直後に鄧小平によって抜てきされた江沢民さんは七年間とにかく現在の体制というのをつくってきたわけであります。  それを最も象徴しているのは、昨年九月十八日、李鵬総理がフランスのAFPの訪中団との会見のときに使った言葉であります。それがここに書きました江沢民同志を首とした、首というのはこれはトップということでありますが、江沢民同志をトップとした新しい指導中心、指導核心というふうな表現を使ったということであります。ここでこういう表現をしていいのかどうか知りませんが、中国が北朝鮮の指導体制を言うときに、金日成同志をトップとした朝鮮労働党と言う、そして現在では金正日同志をトップとした朝鮮労働党と、こういうことであります。つまり、そこまで江沢民はリーダーシップを固めてきたということであります。  しかしながら、私はそれでもなおある意味での生き残り競争というのが先ほど申し上げた来年の十五回党大会をにらんで激しくなっているのではないかというふうに思っております。  これはあくまでも状況証拠でありますが、一つだけその事例を挙げておきますと、ことしに入って繰り返し語られている政治を重視せよ、思想を統一せよというキャンペーンであります。その中身は、一言で言えば党中央に対する高度な政治的一体化を保持せよということであります。つまり、ありていに言えば、江沢民体制に対する忠誠を尽くせということであります。一月、二月において、ある論評で、これは江沢民さん自身が言ったことでありますが、中国共産党中央政治委員たちに対しても同じ要求を論文の中でしているということであります。政治委員というのは江沢民さんをひっくるめて二十七名であります。これが中央であります。その中央に対して政治的な高度な一体化を要求するとは何事ぞということであります。  こういったことにそれが見てとれますし、それから台湾問題に関連して言えば、先ほど申し上げたように、昨年の一月三十日に江沢民さんは八項目のある意味で画期的な提案を行いました。この提案を行った直後に、この提案が期待した状況とは全く異なる状況が五月二十二日以来出てきたということであります。  こういう状況をある意味では踏まえて、解釈はいろいろありますけれども、事実だけを申し上げれば、ことし一月三十日、つまり江沢民八項目提案一周年記念、このときに集会が開かれましたが、江沢民さんは出席いたしませんでした。かわって李鵬総理があいさつ、重要演説を行いました。去年の一月三十日というのは中国の旧正月の大みそかであります。ことしの旧正月の大みそかは二月十八日でありました。この大みそかには新春の祝賀会が毎年行われます。ことしも行われました。江沢民さんは登場しました。登場はしましたが、単に司会を行っただけであります。あいさつ、重要請話はこれも李鵬総理が行いました。  三月初め、バンコクでASEM、ASEANとEUとのサミットが行われました。フランスはミッテラン大統領、ドイツはコール首相、インドネシアはスハルト大統領、皆トップが出席いたしました。中国は、江沢民さんはお休みで、李鵬総理が出席いたしました。  私は、これだけをもって何かを言おうとしているわけではありません。つまり、恐らく来年の秋に開かれる十五回党大会をにらんで、今、中国政治状況というのはそう簡単なものではないということであります。台湾政策における硬直性とはまさにそれと深くつながっているということであろうかと思います。  確かに江沢民体制にとっては、台湾問題を解決すれば体制を、リーダーシップを固めていく上で非常に大きなきっかけになります。しかしながら、一九八九年五月十六日、鄧小平さんが当時ソ連のゴルバチョフ書記長と会ったときに、私は香港問題も解決した、日中関係もやった、すべての問題をやった、しかしながら台湾問題は残った、私は台湾問題の解決を見ることはできないであろう、こういうふうに言ったわけでありまして、そうした意味での難しさがあるわけであります。だとするならば、一つ中国原則を逸脱、妥協、軽視する、そうした政策はなかなかとれない。  その意味中国台湾政策は現在の段階においてはまことに選択の幅が狭い、こういうふうに言えるだろうと思いますし、次の手だては恐らくは総統選挙後の台湾あるいはアメリカの側からある意味での柔軟な提案が出てくる、それ待ちといった状況なのではないかということであります。  以上であります。
  7. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) ありがとうございました。  次に、井尻参考人にお願いいたします。井尻参考人
  8. 井尻秀憲

    参考人井尻秀憲君) 筑波大学の井尻でございます。私に与えられましたテーマは、米中関係台湾海峡情勢ということであります。  もう既に御案内のようにアメリカの第七艦隊が、空母二隻を含めて十二隻から十五隻ぐらいの水上艦が台湾近海に恐らく総統選挙の前までに集結するというような状況が出てきております。ここでそういう点を考えるに当たりましてアメリカの対中国政策、こういう台湾海峡の緊張状況に対してアメリカはどのように関与していくのかということを既にある程度やっているようにも見えます。そして、そのことが持つ意味合い、日本の対中国あるいは対台湾問題の扱いということに対する影響なりインパクトはどういうものがあるかということをやはり考えなければいけない、そういう視点からきょうはお話をさせていただくわけでございます。  とりわけ、その際に私どもが理解しておかなければならないことは、アメリカ中国との間の米中関係における従来の取り決めというものもございます。そういった点が一つ。それから中国の場合、八九年に天安門事件がございました。御案内のようにそれ以後、米中関係を含め西側の国々との関係中国の場合かなり孤立するような状況になったわけですけれども、しかしこれまた御案内のように日本のリーダーシップがかなり働きまして、中国の孤立化というものを徐々に解いていくことができるようになりまして、中国は国際社会に復帰してきたということであります。  そういう中で、ブッシュ政権時代あたりから対中国だけではなくて対台湾との関係台湾問題に関する認識が高まってきた。そして、それを受け継いだクリントン政権の現在とっております対中国政策の基調がどういっだものであるのか。それに対して、最近のアメリカ議会における一連の、特に共和党優位の議会主導によるところの対台湾政策の変更と言われているような点を踏まえて、その後に李登輝訪米ということもございまして、米中関係がある意味ではぎくしゃくしながら、しかし片一方では何とか対話を模索するというような形で今日まで来たと。  ただし、台湾総統選挙を行うに当たって、既に李登輝訪米以来緊張が進んできたこの台湾海峡の問題にアメリカはどの程度、しかもどのように関与していくのか、こういう点が最終的に問われなければいけない問題としてあるように思います。そして、そのことが日本外交にとってどういう意味合いを、インパクトをもたらすか、こういう角度からきょうはお話をさせていただきたいと思います。  時間の関係もございますので、判断の前提といたしまして簡単に御説明いたしますが、米中関係におきましては基本的に三つのコミュニケと言われているものがございます。  一つは、七二年のニクソン・キッシンジャー時代に、キッシンジャーの秘密外交というふうなことも言われましたけれども、電撃的にニクソン・ショックというまさに非常にドラマチックな形で米中が和解を遂げた。つまり、アメリカはベトナム戦争の後遺症に非常に悩む、同時に他方において中国は中ソ対立という極めて大きな問題を抱えている。そういう状況の中でアジア太平洋地域において中国が安定した形で登場してくるという意味で、ニクソン、キッシンジャーのいわゆる多極化政策といいますかバランス・オブ・パワー、勢力均衡政策によって中国へのアプローチがなされ、そして米中和解、接近ということが可能になったわけであります。  これは七二年の段階でございますが、このときに上海コミュニケというものを結んでおります。それは、今日共通項となっておりますところの一つ中国台湾中国の不可分の領土であるということ、それから北京が中国の唯一の正統政府であるということ、そういうことを基本的な前提として共通項として持つように至ったその第一のきっかけであります。ただし、七二年の段階ではワンチャイナを認めながらも必ずしも今急いですぐ国交樹立まで持っていく必要はない、そういう時代でありまして、まだ米中の国交が樹立されたわけではなかったわけですね。逆に日本の場合、七二年の九月に田中元総理が訪中いたしまして、いわゆる日中共同声明そして日中国交樹立、つまり外交関係がそこで開かれたわけであります。  ですから、この点でアメリカと日本との間のアプローチといいますかやり方が違っていたということはありますけれども、しかし今度はそれと同じような米中の外交関係の樹立てすが、これは七九年に出てまいります。そのときに交わした米中間の共同コミュニケ、これが先ほど申しました共通項を大体踏襲していると思いますが、ただしそれまであった台湾アメリカとの間の防衛条約の破棄という問題もございますので、そうなってきますと台湾の安全という問題が出てくる。  これに対して、当時の米中国交のドラマというのは、カーター政権が比較的秘密裏に行うようなドラマチックなものであったわけです。そして米中国交をなし遂げた。同時に、いわゆる米台防衛条約を破棄するという形で、かわりにカーター自身は台湾関係法というものを考えていたわけでございまして、それを議会に提出する。  ところが、最初の台湾関係法というものは非常に中国側の意図を酌んだものでありまして、必ずしも今日あるようなものではなかったわけでございます。中国を牽制するといいますか、台湾の安全をもう少し重要と考えるというような今日持っているところのそういう台湾関係法ではなかったわけですが、これに対して議会が大幅な修正を加えることによって今日あるところの台湾関係法が七九年から八〇年の初めの段階で出てきたわけでございます。つまり、台湾問題というものをアメリカははっきりと平和的に解決しなければならないということ。  これは日本の立場からしますと、国交関係を結んだことによって中台関係に関して、あるいは台湾の地位の問題に関して日本は基本的にステートメント、話をする、あるいは何か関与する立場にない。つまり、かつて日本は中国との戦争を行って、そしてまた台湾を植民地として五十年間支配してきた。それが日中国交という中国との外交関係の樹立によって、いわば領土問題、台湾の地位という問題に関してそれまで日本が一貫して言ってきたことでもありますので発言する立場にはない。つまり、アメリカが平和的手段によって統一かあるいは何らかの解決をやらなければならないというふうに言うのに対して、日本はこの問題に関して発言する立場にはなくて、むしろ領土の放棄という側面の方に力点が置かれていたというふうに私は理解しております。  したがって、アメリカ台湾関係法というものが今日のいわゆる台湾海峡の緊張状況においてどういつだ意味合いを持つのかということが問われなければならないわけでございますが、しかしこれまた必ずしも明確なものではございませんで、極めてあいまいな部分がまだあると思います。  この七九年の国交のときに行いました米国の国内法としての台湾関係法は、これはその後の八二年の米中コミュニケと比較して議論するとはっきりするわけです。要するに、米台の防衛条約を破棄した段階で台湾の安全をどうするかということを考えるときに、いわゆる兵器、武器の供与を台湾側に対して行うということ。ただし、その文言は、ここにも書いておりますように、大統領が議会に報告して憲法上の手続に従いながら適当な行動を決定するというような文面でありまして、そのことでもってアメリカがこの台湾問題、台湾海峡の問題に関してどの程度関与するのかということに関してははっきりと物が言えない、そういう文言だというふうにも言えます。  ただ、議会のてこ入れででき上がりましたこの台湾関係法は、米国の国内法ではあっても、これが存在することによって米国から台湾へのいわゆる武器の供与が正当化されているということであります。もちろん中国側はそれを批判しているということであります。  その時点からもう一歩進みまして、米中関係が八二年の段階に来たときに三つ目のコミュニケが交わされました。ここではソ連のアフガン侵攻、つまりソ連の存在は依然として非常に重視されていたという状況の中で、いわゆるチャイナカードという言葉が使われ始めましたように、中国をソ連に対するカウンターウエートとして、そこにバランスを見て、そして米中の双方の関係を強くする、こういう時期でございましたので、八二年の米中コミュニケは、これまた玉虫色の部分がありますけれども、しかし中国主導型のものであった。したがって、先ほどの台湾関係法に基づく問題に関しては、武器の供与を漸減していきまして、緩やかに減らしていって、そして最終的にはゼロに持っていくと。つまり、米中国交段階であった防衛体制、兵器体制の状況にまで戻すというような、そういうコミュニケがここでできたわけであります。  しかし、これは今日から見ますと、天安門事件を経て、その後ブッシュ政権の末期、後半の時期に入りまして台湾問題が徐々に新たな形で今日のような重要性を増してくる。つまり、台湾経済あるいは政治の変化、あるいは現実外交、実務外交と言われているような台湾の国際的地位の上昇、そういう点を踏まえてブッシュ政権も対中、対台湾のバランスというものを考えなければいけなくなってきた。  したがって、先ほど平松先生からもお話がございましたF16戦闘機の対台湾供与というものは、ブッシュさんの当時の大統領選挙に向けたいわば国内的な事情という側面もございますけれども、同時に台湾へ百五十機の戦闘機を供与する、売却する、こういうバランスであります。つまり中国がソ連からスホーイ27という戦闘機を買う、こういう状況の中で台湾海峡における軍事力のバランスというものをとっておかなければならない、そういう判断が出てきたわけであります。  その後、クリントンさんの時代になってまいりますと、クリントン政権は内政重視ということを最初から言われていたわけでありますが、外交面ではある意味で非常にあいまいさの残る、あるいははっきりとした政策が打ち出せない中で内政問題に忙殺される。それから同時に、旧ユーゴほかいろいろな国際問題があちこちで冷戦後の状況として出てくる。それらに一つ一つ対応していくわけですが、対アジア政策という点に関してはきっちりとしたものを持ってやるということがなかなかできない状況の中である種の思いつき的な外交をしてしまったという点があります。  ただし、対中あるいは対アジア全般に関してそうなんですけれども、最近言われておりますアメリカの包括的あるいは積極的な関与政策、いわゆるエンゲージメントポリシーと言われるような政策が今日のアメリカの対中政策の基調になっています。これは、アメリカの従来の対中政策の伝統というものをある程度反映しているというふうに言ってもいいわけです。  特に、ナイ・リポートと言われておりますアメリカのジョセフ・ナイ前国防次官補を中心にしてつくりましたアジア太平洋地域におけるアメリカの戦略に関する報告書なんかは、まさに関与政策ということをうたっておるわけであります。それは、ここにも書いておりますように、基本的に中国軍事力をまだ弱いものというふうに見ている。そういう前提のもとで、現時点では米軍の兵力をアジアに残しながら中国との対話を通じて中国を国際的ルールに従わせ国際クラブの中に組み入れていくと。これはまた非常にあいまいな表現なんですけれども、いわゆる関与政策という形であらわれているわけであります。  そういうあいまいさを持っているアメリカの対中政策でありますけれども、そういう点に対してアメリカの場合は議会、特に共和党優位になった議会の側から強い大統領府批判が出てくる、またそれを世論が後押しすると、こういう構図が出てまいりました。  特に、九四年秋の中間選挙で共和党が圧倒的な優位に立ち、もともと反共保守的な雰囲気の強い政治家の人々を中心にして、それから同時に民主党のもともと民主主義あるいは人権といったものを重視する議員の人々の間に一種の連合が成立いたしまして、そしていわゆる議会主導型の対台湾政策の変更、つまりそれによって李登輝訪米を可能にし、同時に先ほど申しました台湾関係法の重要性というものをより強く訴えて、八二年の米中コミュニケを上回る決議を行って、大統領にあえて署名を迫るというような状況が出てきた。つまり、アメリカにおいても議会を中心に台湾の存在というものをより強く意識する、そういう台湾政策の変更という点が出てきているわけです。  そして、御案内のとおり、最近の台湾海峡情勢における中台関係の緊張という中で、アメリカは第七艦隊台湾海峡近海への派遣を含め、アメリカ台湾へのコミットメントと同時に対中国牽制という、こういう図式が出てきているわけでございます。そのことの持つ意味合いが、これは単に台湾だけの問題あるいは中国だけの問題ではございませんで日本にも及ぶ問題だということで、それなりの意見の違いはございますけれども、アメリカの中に幾つかのいわば議論が散在しております。  代表的なものを申し上げますと、アメリカは大統領府、国務省、そして国防総省、ここでは先ほど来申し上げた積極的関与政策という基調を基本的に崩していない。ただし、それで済むのかというようなことが議会の側から出されてきている。とりわけ今回の軍事演習というような状況の中で、議会は決起大会を開くなり意思を強めてますます大統領にいわばこの問題でのイニシアチブを迫る、そういう状況が今出てきているわけでございます。  ただ、最後に私は、ここにも書いておりますけれども、片方で国務省を中心に米中の間の対話というものも進行し始めているわけであります。そういう中でこの米中関係と米台関係の両方を眺めながら、この昨今の台湾海峡の緊迫した状況に対してアメリカがどの程度関与するのか。それはぎりぎり難しい面もございますけれども、既にある程度の牽制が行われ始めているということは言えるかと思います。  時間を超えておりますので申し上げませんが、そのことといわば立場を全く同じくするわけではない日本、しかしながら日米の安保体制というものを持っている、しかも沖縄問題を含めて日米安保の再定義ということが言われるような時代において、中台関係台湾海峡の緊張状況を一つのきっかけとしてもう一回日米関係を考えるような案も、また考え方も出てくるであろうし、ここに至って日本の戦略面、安全保障面を含めた外交のあり方というものが問われる。  つまり、平たく言いますと、こういう米中関係の状況の中で、日中関係をとるのかあるいは日米同盟関係をやはり基軸としていくのか。もし台湾海峡に何らかの事態が生じてそれに対してアメリカが介入するというようなことになりますと、そういう日本の微妙な立場が問われることになるわけでございまして、そこを我々は考えていかなければならないというふうに考えております。  どうも失礼しました。
  9. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  なお、質疑は各委員往復五分以内でお願いをいたします。いわゆる五分ルールを適用させていただきます。  また、小島参考人には御都合によりまして午後七時ごろ御退席でございますので、この点御留意の上御質疑をお願いします。  質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
  10. 野沢太三

    ○野沢太三君 それでは、簡単に申し上げます。  平松参考人にお伺いしたいんですが、最近台湾に御滞在をなさったと伺っておりますが、今回の中国演習中国の意図に反してむしろ台湾皆様が李登輝さんを支持するという動きを強めているというふうに伺っております。中国の意図は逆効果ではなかったかと思われますが、いかがでしょうか。この一点。  それから小島先生に最初に質問をお願いしておきたいんですが、最後のところの日本の選択として何があるかという中で、ネガティブカードが円借凍結、ポジティブカードが安保の明示であると、こういうふうに御指摘をいただいております。先ほどの御説明ではここがちょっと時間の関係で御省略があったかと思うんですが、この点をちょっと補足していただければありがたいと思います。  それから井尻先生にお伺いしたいんですが、日米安保というものの再定義が今課題になっておるわけでございますが、この必要性が今回の中国演習によってますます重要になったのではないかと思うわけでございます。その場合、有事の場合の日本の支援のあり方、日米安保に対する日本の取り組みについて御見解があったらお伺いしたいと思います。  最初に平松先生に、台湾皆様の世論といいましょうか動向がどんな動きになっているか、よろしくお願いします。
  11. 平松茂雄

    参考人平松茂雄君) これは非常に難しい問題で、影響があったことは間違いないと思いますけれども、では李登輝総統が大勝するというようなところにまで影響を及ぼしているかということになりますと、必ずしもそこまでいっていないんじゃないか、そういう印象であります。ただ、これは全く私の個人的な印象にすぎませんのでわかりませんけれども、大勝するほどの影響は与えていないような印象であります。  先ほども申しましたように、中国軍事演習目的は、とりあえずは台湾中国から離れていくのを阻止するということを当面の目的としているわけで、それは昨年の演習でほぼ目的は達成したというふうに私は見ております。ただ、そのままほったらかしておくと台湾あるいは李登輝総統が何をまたやり出すかわかりませんから常に威圧をかけていく必要がある、そういう面から行われていると思いますので、その点ではこれからもやっていくだろうというふうに私は思っております。
  12. 小島朋之

    参考人小島朋之君) 日本の選択は限られているということでありますが、では一体全体日本は何ができるのか。もし台湾海峡である種の危機的な状況があらわれてきたとき、その危機を回避し、危機を防止し、そして危機が起こったときに、それに対処するにはどういったカードがあるのか。私は、さほど多くはないというふうに思っております。幾つかあるとすれば、そのカードというのがここに書きましたようなネガティブカードとポジティブカードということであろうと思っております。  ネガティブカードというのは、一言で言えば懲らしめてやる、制裁をする、こういうことであります。昨年中国核実験を行ったときに、五月に円借の一部削減、そして次には凍結と、こうやりました。ことし中国核実験をやったらどうするんだろうと思いますが、それと同時に今度は台湾問題が出てまいりました。そこで今、円借の凍結、円借の削減、こういったことが言われておりますが、つまりこういった制裁、何々しない、何々に対して懲らしめてやるということは、状況が一段上がればまたこちらもそれに対応して、エスカレートしていかざるを得ないということであり、その意味で私は余りこれは生産的なものではないというふうに考えております。  それよりもむしろ、ある意味ではもっと具体的でより効果的なのは、まさに次に書いたポジティブカード、つまり日米安保体制、その有効性をきちんと明示していくことだろうと思います。特に昨年の沖縄事件以降の中国の日米安保に対する評価は、ある意味で疑いというものをかなり持ち始めております。つまり、本当にこれが機能するのかどうか、もしかすると日本の国内状況を見ていくとそうでもなさそうだな、そういう疑念を持ってきているわけでありまして、まさにその疑念を晴らす、それ自体が非常に大きなカードになるというふうに思っております。
  13. 井尻秀憲

    参考人井尻秀憲君) 簡単にお答えいたしますが、日米安保の再定義の時期にこの台湾海峡の緊張状況がどのように影響してくるか、しかももしここで何か大きなトラブルといいますか緊張が軍事的な衝突にまで発展した場合に日本がとり得る政策は何かということでございます。  当然日米安保の枠組みもございますが、日本の憲法の状況の中で集団自衛権というものを行使するところまでは至っておりませんので、したがってたとえ有事であっても恐らくベトナム戦争などのときと同じように後方支援的な状況しかとり得ないのではなかろうかというふうに、私は軍の方の専門ではございませんけれども、一般的に理解しております。  ただ、六九年だったと思いますが、日米共同声明が出されまして、そのときに極東条項というものをあえて入れました。そして、これは必ずしも日本本土だけではなくて朝鮮半島つまり韓国、あるいは台湾、ここらあたりの安全というものに関しても関心を示すという声明でございます。しかし、それに関してはアメリカとの間で日本は当然事前協議を十分行って対処していかなければならない、こういうこともございます。したがって、そういう意味で日本のとれる立場というのは今申し上げたような点になってくるのではなかろうかと思います。  ただ、アメリカの側から見ますと、日米安保の問題が沖縄問題も含めて今非常に議論されているときでございますので、四月のクリントン訪日という状況を踏まえてこの問題をもう少し考えるといいますか、検討する必要があるのではなかろうかというふうに思っております。
  14. 野沢太三

    ○野沢太三君 ありがとうございました。
  15. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) それでは、時間の制約がございますので、小島参考人を中心に質問をお願いします。
  16. 立木洋

    ○立木洋君 時間がおありになるそうで、一問だけ小島参考人にお尋ねさせていただきたいと思います。  台湾中国の一部であり、中国一つの省である、そういう意味においては国内問題だという点については、まさにそのとおりだし、国連の場においても基本的には解決されている問題だろうと思うんです。  しかし、私が考えるのは、中国が対外的に行う外交政策、これは台湾に関してもそうなんですけれども、結局あのベトナム問題のときに、つまり中国アメリカとの国交が回復された後でベトナムに対して、我々は制裁を加えてやる、カンボジアに対するああいう態度はけしからぬと制裁を加えてやるという立場に立ったんです。覇権的な立場ですね。それから国内においては、あの文化大革命で大変な内乱まで起こるような状況や、天安門事件戦車や銃まで持ち出していって学生の要求を武力で押さえつけるというふうなやり方、人権問題でいうならば国際的にも厳しく批判されている問題点が中国では非常におくれた問題としてあるのではないか。これは先ほど参考人の方も御指摘になったとおりだと私は思うんです。そういうあらわれが今度の台湾の問題でも関連して出てきているんではないかという点についてどういうふうなお考えがあるのかということ。  それから、中国の場合には、特に生産力の発展にとってそのことが有利であるか有利でないかが我々のすべての問題を考慮する出発点だというのが中国の党大会で決定されているんですね。だから、結局この見地からいきますと、台湾はかつての時代と違って一千億ドル近くの外貨準備ができるような状況になってきていますし、それから中国との貿易その他経済交流という中で中国に与える経済的な影響も少なからず存在していると。やっぱりそういう中国側経済的な利益という問題があって、若干台湾に対する揺れがあらわれてくるという問題もあるんではないか。  これが参考人のおっしゃった江沢民体制の過渡期的な問題ということと絡み合って中国の置かれている経済、もう外国から食糧も輸入しなければならないような輸入国になった。エネルギーも九三年には一千万トン輸入するというふうな状況にまでなっていって、大変な汚職や腐敗まで生まれてきているというふうなことがあるものですから、一方では引き締めをやらなければならないけれども、やっぱり近辺での経済関係というのは何とか改善したい、そういう要素もあるんではないかというふうに考えているんですけれども、参考人の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  17. 小島朋之

    参考人小島朋之君) 立木さんのおっしゃるとおりだろうと思います。私は意見表明のところで二面性と申し上げましたが、まさに中国外交というのも二面性なんだろうと思います。  おっしゃるとおり、台湾問題への強硬な姿勢というのは、その背後にチベットの問題、新疆ウイグル自治区の問題、内モンゴルの問題、そして香港の問題、つまりここで妥協すればこういった今申し上げたような地域でのある種の独立性、そういうものを助長しかねない、そういう思惑が一つにはあり、いま一つは先ほどの話の中で申し上げたようなある意味での中国の歴史、伝統的な覇権主義的傾向というのもそこにあるだろうと思います。  しかし、他方で、まさに中国外交の二面性でありまして、今、立木委員がおっしゃられたとおり生産力が最優先である、こういう立場でいけば中国にとっては経済発展を最優先していかざるを得ない。もしそうであるとするならばある種の協調外交は進めていかざるを得ず、一九七八年末以来、中国というのはそうした協調外交の中である種の国際社会の一員としてのマナーといいますかルールというものも身につけつつある、そういう側面もあろうかと思います。その意味では依然として二本足路線と申しますか、その二本足路線をどううまくバランスをとっていけばいいのかということに依然としてある種の動揺というものをこれからも中国は持っていくだろうと思いますし、その意味で両様の対応を日本をひっくるめた国際社会が必要としているということであろうと思います。  ついでにもう一点だけ申し上げますと、食糧の輸入ということについては、昨年の段階で既に穀物輸入は二千万トンを超えております。
  18. 川橋幸子

    川橋幸子君 小島先生のお話は過渡期政権の脆弱性というのが非常に強調されていらっしゃる。ほかの先生方は、平松先生はかなり長期のことをおっしゃっていらっしゃいますし、また井尻先生の場合はアメリカの方からの見方が強調されていらっしゃるのかなと思うんです。そうしますと過渡期のこの時期、日本が冷静に構えればこの問題は来年の第十五回党大会まで過ぎれば中台問題はそう心配することではないというふうに見てよろしいのですか。ちょっと雑駁な聞き方でございますけれども。
  19. 小島朋之

    参考人小島朋之君) 私も雑駁な言い方をしてしまいましたが、過渡期というのが一体全体どのくらい続くのか、これが問題でございます。当面は来年の十五回党大会ということでありますが、果たしてそれで過渡期を乗り切った、そしてポスト鄧小平時代に入るのかということになると、私はまだそれは見えてきていないというふうに思っております。その意味で過渡期というのはそう短いものではないと思っております。  第二点目として、台湾問題についてある種の鎮静化というのは総統選挙の後にあるかもしれません。しかし、それはこれまでもそうであったように、一つ中国原則というものを取っ払う、そしてそれを解決するような、そうした形での解決ではあり得ようはずがないわけであります。他方台湾現実というのは、先ほど言ったような現実はこれからますます進んでいくことになるわけですから、その意味で問題先送りで、依然として極めて危険な状況があらわれてくる可能性はまだまだ続くというふうに私は思っております。
  20. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 私は沖縄の出身なので、本当は沖縄の基地問題と絡めて聞きたいことがたくさんありましたけれども、小島参考人に一点だけお伺いをいたします。  近代日中関係史の御専門で台湾関係の御著書もたくさんあられる立教大学の戴教授が、つい数日前にこのような見解を発表しておりまして、地元沖縄の新聞でも随分大きく報道されたんです。  要旨は、中国軍事演習による台湾威嚇の本当のねらいは、二十三日の総統直接選挙で李登輝総統を高い得票率で勝たせて政治基盤強化を図り、統一に向けた中台による今後の交渉を円滑化させることにあると。さらに続けて戴教授は、高得票率での再選で統一問題の交渉相手としての李総統により高い当事者能力を持たせたいというのが中国側の裏の意図ではないかと見たと。そして、より具体的に演習が選挙に与える効果として、一つは対中、問題の最大争点化、二番目に対中問題解決をだれに託すかという住民投票の意味合いが出てくる、三番目に軍事威嚇下での勝利や李総統にこれまでなかったカリスマ性をもたらすなどと予測をした上で、李総統政治基盤強化は中国にとって今後予想される交渉に有利になると判断しているのではないか。  こういうふうな見解を発表されて、先ほど申し上げましたように地元の新聞でもかなり大きく報道されたんですが、この見解については小島参考人はどういうふうに思っておられるのか、御意見を聞かせていただきたいと思います。
  21. 小島朋之

    参考人小島朋之君) 私は、証拠がないので反論することもそれに対して同意することもどちらもできないわけでありますが、そうだとすれば余りにもコストがかかり過ぎているなというふうに感じざるを得ません。つまり、今回の一連の行動の結果として、日本をひっくるめて、特に東南アジア諸国の中での中国軍事脅威論というもののある意味での正しさを植えつけた、増幅させたというふうに言っていいだろうと思います。その意味ではちょっとコストが高過ぎるんじゃないのかなと。選挙が終わって、そして何らかの結果が出た際に中国側は、今回の一連の行動、政策措置に対して効果があったと、こういうふうに恐らく間違いなく言うと思いますが、今おっしゃったような見方には私はちょっと同意しかねるところがございます。
  22. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) 小島参考人には、大変御多忙のところありがとうございました。  それでは、引き続き質疑を継続したいと思います。
  23. 大木浩

    ○大木浩君 自民党の大木浩でございます。  平松先生にお聞きしたいんですが、先ほど台湾海峡をめぐる中国台湾のそれぞれの軍事力の分析をしていただいた。そのときもおっしゃいましたけれども、中国の場合に、陸軍の兵力はたくさんありますけれども、空軍力ということになると台湾海峡制空権を確保するだけのものはまだ少なくとも持っていないというふうにおっしゃいまして、私もそういうふうに判断しているんです。また、海軍力ということにつきましても、台湾側の方が守っているわけですから、そこへ強行に揚陸作戦をするだけのものがあるかどうか、これも必ずしも十分ではないんじゃないか。  ということになりますと、何かするとすれば先ほどおっしゃいましたように、ミサイルを本土の方から飛ばすとか、当たるように撃つか当たらないように撃つかは別として、そういうことも考えられる。しかも、それがこの選挙のときで終わりということじゃなく、今後もそういうような状況が続き得るとすれば、そういった状況に対してどういうふうに台湾側あるいはアメリカ側は対応することが考えられるのか。  そしてもう一つ、これは先生は先ほど、後で話すとおっしゃいましたが、その場合に日本として、これは日米安保体制との絡みもありますので、どういうことができるか、あるいはアメリカからどういう期待があるかということについてコメントしていただきたいと思います。
  24. 平松茂雄

    参考人平松茂雄君) 先ほども申しましたように、中国が現在持っている力で台湾に対して何らかの軍事行動をとるとすれば、それをできるのは弾道ミサイルであるし、それはできるであろうと思いますね。ですから、既にやっているわけですけれども、少なくとも去年に比べればことしの着弾海域というのは台湾により近いところで行われているわけですし、場合によっては台湾の島を飛び越えて東の海域に撃ち落とすとか、初めはそんなに大きな被害が出ない程度に島の上に落とすとか、恐らくかなりのパニック状態が生まれるだろうと思いますから、それでそれなりの目的は達していくだろうと思うんですね。  中国が島をとってしまうという考え方は、これは能力的にありませんし、それからそういう軍事行動をとればこれはアメリカが間違いなく介入していきますからそれはできない。その辺は中国側も重々わかっているはずだろうと思うんです。そういうことは私は考えなくてよろしいだろうと思うんですね。  それに対して台湾側は何ができるかということですが、私はやはり一番可能性のあるのは今申しましたように弾道ミサイルでおどかすことだと思いますから、それに対していかにそれを抑制するかということになると、これは台湾には今のところありません。それを防止するためにTMDをアメリカアジアの同盟国とつくろうとしているわけでありますけれども、大変お金のかかることでもありますし、効果がどこまであるかということはわかりません。  私は、アメリカの第七艦隊が厳然としてプレゼンスしていることがやはり抑止力になると。今度もはっきりとそれはわかったわけですから、偉大なる艦隊がプレゼンスすることが絶対に必要だ、その第七艦隊アジア地域にプレゼンスして、そして十分機能を発揮できるような体制をアメリカも含めて関連する国が整えることが何よりも一番必要だろうというふうに思います。その場合、日米安保体制というのはそういう意味では一番の基本となるわけでありますから、やはり日本がそのように努力することが最大であるというふうに思います。  それに関連してもう一つ申し上げておきたいんですが、中国の軍事拡大という傾向からもう既に台湾も戦力の増強を図っている、それから東南アジアの諸国も戦力の増強を図っていると。軍拡というレベルにまではまだ達していないと思いますけれども、それぞれの国が自分の国を守るという観点からの軍事力の増強であり、兵器の移転だと思います。しかし、このままの状態が続きますと、兵器は兵器を呼び、軍拡は軍拡を呼ぶということになりますから、そうなることは決していいことではありませんので、それは避けなければならない。その意味でも第七艦隊の存在というのはやっぱり絶対に不可欠な条件だろうというふうに思います。  そういう意味では、今度の台湾海峡危機というのは、アジアにとっても日本にとってもアジアの安定と安全ということを考える非常にいい一つの契機となるだろうと思います。私は、日本政府あるいは日本の国民に対してもやはり今度の出来事を十分生かして、日本の安全ということを考えてほしいというふうに思います。  以上です。
  25. 立木洋

    ○立木洋君 先に井尻参考人にお尋ねしたいと思います。  参考人が先ほどおっしゃったように、米中関係基本を見る場合、七二年の上海コミュニケ、七九年の国交樹立、それから八二年の武器売却問題に関する米中コミュニケ、これは基本的な文書として明確にされていると思うんですが、今日の台湾問題の中で起こってきた状況を見てみますと、一つアメリカが去る九月に台湾との関係を強化するために格上げしましたね。その名称の問題からして、あるいは高官の交流を促進する問題、貿易関係をより強化するような問題についてこれまで以上に台湾との関係を格上げした形で強化するという措置をとった。  それからもう一つは、御承知のあの李総統が、九三年でしたか、一つの国と二つの政府という論を発表しました。一つの国と二つ制度ではなくて二つの政府ですから、これは中国側としては非常に遺憾とする内容の点だろうと思うんですが、李総統のプライベートなアメリカ訪問に対して通常のビザが発行されたということが、またこれが問題の一つになったんじゃないか。  それからもう一つの問題は、武器の供与の問題については、先ほど参考人がおっしゃったように、八二年の米中共同コミュニケではだんだん減らして最終的にはなくしてしまうという方向になっているんですけれども、八七年度のアメリカ台湾に対する軍事援助は七億二千万ドルですが、九三年度になると、これはF16戦闘機を含めますが、六十五億二千万ドルというふうに大変な伸び方をしているわけです。  だから、これまでの質で抑えていく、さらにこれ以上ふやさないと。そうではなくて、だんだん減らしていってこの問題は解決していくんだということが八二年の共同コミュニケであったにもかかわらず、これにもどうも反しているんじゃないか。こういう問題で、やはりアメリカ側としては改めなければならない点ではないだろうか。だから中国の行動に対して、あそこに空母派遣して武力で相手側に対処するという形ではなくて、アメリカ側のそういうやり方をもよく考えて、改めるという方向をとるというふうな態度を主張することが今の時期は必要ではないだろうかという考えです。  それから平松参考人にお尋ねしたいんですが、今の中国の軍の基本的なあり方の問題についてはお話を聞いて大体わかるんですが、あそこの軍が、去年でしたか、江沢民のもとで中堅幹部が大分抜てきされましたね。それから、七軍区においては軍区の編成がえがやられたりしたという状況があります。これは江沢民自身が軍歴を持っていないわけですから軍内部に支配的な基盤がないというふうなことがよく言われますけれども、今の台湾情勢との絡みでこのような軍の編成や大量な中堅幹部の抜てきなどの制度上における動き、先ほど申された、特に軍に対しても党に対する忠誠を誓うという見解が最近強調されるようになってきているという問題があります。  軍の予算を見てみますと、軍事費が八九年度は二百四十五億五千万元なんですが、九五年度の予算では六百三十億元にふえているんですね。大変な伸びを六年間で示している。こういう問題と今の台湾とのかかわりは何らかのかかわりがあるのかどうなのか、中長期的に見てこの措置がどういう意味を持っているとお考えになるのかという点についてお尋ねしたいわけです。  以上、二点について。
  26. 井尻秀憲

    参考人井尻秀憲君) 米国の対台湾政策の格上げという点に関しましては、私、先ほど台湾政策の変更というようなことで申し上げたように既に議会を中心に、例えば最近でも台湾側米国でのいわゆる出先機関、日本の場合は駐日台北文化経済代表所と文化経済という言葉が入っているわけですけれども、それと似たような表現の駐米台北経済文化代表事務所をやめて台北代表事務所みたいなことにするとか、つまり経済と文化に限ってしまっていわゆる政治的な意味での台湾の立場というものを極力抑えてしまう、そういうやり方を今までやっていたわけであります。これは対中配慮からアメリカにしてもあるいは日本においてもそうですが、したがってそこをいじることで格上げするというようなことが今検討されております。  そういうことを含めていろんなものを、今日の台湾の特に民主化の成功という事例を極めて重視した形で台湾の国際的地位の上昇ということを反映し、同時に台湾の民主化というものが、これは私は台湾経験というふうに呼んでおりますけれども極めて平和的に行われてきた。それはアメリカにとっては、特にアメリカの議会、民主党さんもそうですし、本来共和党さんはそうではないんですけれども、違った角度から見るわけですけれども、しかしもともと台湾との関係が深い、そういう政治家の方も多い。そういう意味でこの台湾問題をもっと国際的に扱う状況が生まれてきたということですね。  しかしながら、議会がやるいわば決議とかそういうものは、政治的なインパクトはありますけれども法的な拘束力を持たない。ただし、極めて圧倒的な決議であるとすれば大統領に対する政治的な圧力になる。まさに李登輝訪米の下院、上院両方を含めたいわゆるスタンダードのビザを与えるという決定はほとんど満場一致に近い。一人の反対だけであったわけですね。そういうものであるとすれば、やはりかなり政治的な意味合いを持って大統領に対する牽制になる。
  27. 立木洋

    ○立木洋君 済みません。それは通過ビザで一人の反対なんですが、出されているのは通常ビザなんですね。
  28. 井尻秀憲

    参考人井尻秀憲君) いわゆる通過ビザじゃなくて通常ビザです。
  29. 立木洋

    ○立木洋君 通常のビザが出されているわけですね。
  30. 井尻秀憲

    参考人井尻秀憲君) はい、出されているわけです。
  31. 立木洋

    ○立木洋君 議会で決められたのはいわゆる通過ビザなんですよ。通過ビザが決められたのに、国務省は通常ビザを出したんです。ですから、議会の多数の意思の反映ではないというのがやっぱり引っかかったんじゃないかなという感じがしたんですが。どうも済みません、途中で。
  32. 井尻秀憲

    参考人井尻秀憲君) 私は通常ビザというふうに理解しておりましたので、そこは私の方の見解の間違いかもしれません。  ただ、先生からお話のありましたように米国の対応を改めるべきではないかと、こういう議論に最終的に持っていくところは、私の立場からしますと、台湾というのは小さな島であっても、ある意味で民主、人権、そういう二千百万人口を代表する一つ政治的な実体なんですね。これをやはり国際的な形で認めていくということは私はごく普通のことであるというふうに考えているわけです。その一つの形態として選挙を行っているわけで、それに対して中国がたとえ公海上であってもあれほど大々的な軍事演習なりそういうものをやらなければいけないということは、やはり日本の国民の皆さんにとっても非常に納得のいかない点ではなかろうかという気がするわけです。  これに対してアメリカは、政策としては従来の対中政策という側面、あるいは対台湾政策の基調というものは、特に大統領府、それから国務省、ペンタゴン、ここらあたりの政策を実際に決定してやっていく、執行するところでは、まだ中国重視型の状況にありながら、議会の圧力を受けてそして同時に変わってきているところだろうと思いますので、やはり今回のような空母派遣も含めて中国軍事力に対する牽制ということをやらないと、この問題は台湾海峡だけの問題ではなくてアジア太平洋地域におけるいわゆる安全保障の問題というふうにも広がっていくわけでございますので、アメリカのプレゼンスというものがやはり必要であるということを考えれば、私はむしろ逆の立場をとるというふうに申し上げたいと思います。
  33. 平松茂雄

    参考人平松茂雄君) 今の井尻先生に対する御質問でちょっと私からも御説明したいと思うんですが、今、立木議員から米合間の兵器移転で額がふえているんじゃないかという御質問がありましたけれども、八二年の協定は量と質において制限するというもので、米中国交樹立の段階のレベル以上の兵器はアメリカ台湾に売らないということを中国に約束されました。それがずっとほぼ守られてきたと言っていいと思います。若干の約束違反はありましたけれども、ほぼ守られてきたと言っていいと思います。それがアメリカによって破られるのは、ブッシュがF16を百五十機売るということにおいて破られたわけであります。それは立木議員の御指摘のとおり、私もアメリカは違反したというふうに思っております。しかし、これは条約とか協定ではありませんで一種のステートメントですから、どこまでこれが拘束力があるかという点になると疑問がありますし、台湾アメリカもこれは条約や協定ではないからいいんだと言っているわけであります。これが一つ。  もう一つ申し上げておきたいことは、ではアメリカがなぜ台湾に対して量と質の点で国交樹立の段階のレベルでいいという中国側の条件をのんだかといえば、もちろんアメリカ側の力がなかったということもありますけれども、これは一つは中ソ対立があるから大丈夫であると。それからまた同時に、中ソ対立を持続させるためにも、つまり中ソ対立が続けば中国アメリカ側とある種の友好関係が持続するであろうという前提のもとで進んだわけであります。  ところが、八八年、九年に米ソ冷戦が解消する、そしてソ連がなくなるという国際情勢の大きな変化が起きる。その間、中ソ対立が解消して中ソ関係は改善していく。そればかりでなくて兵器まで買う、移転する。そういう国際情勢の変化があったという中でF16の百五十機の移転というものが行われた。そういう意味で八二年のコミュニケのときの状況と国際環境が非常に変わったということが一つあると思います。  それからもう一つそれに関連して申せば、米中国交のときに台湾問題は当然問題になるわけですが、アメリカはこのときカーター政権ですが、カーター政権中国に対して台湾に対する武力行使はしないということの一札をとりたかったのですが、とれなかったという問題が実は今の今まで尾を引いているということであります。平和解決に限るということの一札をとりたかった、その辺がやはりアメリカの力のなさだというところであろうと思います。それを台湾関係法という国内法で補うことになるわけであります。繰り返しますが、今の問題にまでずっと及んできているし、これからも及んでいくだろうということだと思います。  それから、私の方に対する御質問ですが、初めに国防費から申しますと、国防費といいますのは国家財政の中に計上されています費目の一つであるわけですが、これは消耗性の軍事支出です。具体的に申せば兵隊の給料であるとが食べるものとか着るもの、それから兵器を買うお金、それから部隊の日常の経費、これはガス代、水道代、それから部隊の訓練、演習に関する費用ということであります。  今度の国防費は御指摘のように二年前から、早いところは九〇年代に上昇し始めて、特に九四年、九五年は二〇%以上の伸びということでありますが、これは私が先ほど申しましたように中国軍事訓練改革をやっていることとまさに符合するわけでありますし、かなりの軍事訓練と演習に金がかけられているはずである。ふえた分がそのまま軍事訓練、演習になっていると、そこまで決めつけるつもりは毛頭ありませんし何の証拠もありませんけれども、私はそのように見ているものであります。むしろ兵器を開発、生産する金というのは違うところで支出されているわけで、これは残念ながら公表されていませんのでわかりませんが、今度の李鵬首相の政府活動報告を見ますと非常に重要なことを言っております。  これはほとんどのマスコミが言及していないものですから私の個人的な関係で産経新聞に私の談話ということで報道してもらったのですが、李報告の中で非常に注目すべきことは、中国軍近代化と同時に軍民転換ということをやっております。軍民転換というと日本ではもう軍隊を離れてしまっているというふうに思うわけでありますが、これはそうではなくて、軍隊が民需品をつくって一つは金もうけをするということと、もう一つ民間企業を通して西側の技術を入れる、軍がまともに正面に出ていけば話がまとまらないのを民間企業を通して入れる、そういう二つ目的でもって軍民転換が進んでおります。  これはもうかなり前からやっているわけでありますけれども、その先鞭をなしているのは海軍の造船であります。それから航空機ですね。中国では船にしても航空機にしてもすべてが軍用の船舶であり航空機であったのが、この軍民転換によって民間の船舶や船をつくるようになった。あるいは人工衛星を打ち上げる、原子力発電をやる、さらには本田とかヤマハの技術を入れてオートバイをつくってかなりの生産を上げているということが進んでいる。  実は、かなりこれが進んでいるということを今度李鵬首相が初めてその政府活動報告で、それが社会主義市場経済の進展と適応する形でそういう一つ経済体制ができ上がりつつあるということを言っております。これは中国近代化経済的基盤ができ上がりつつあるということを首相みずからが政府活動報告で言ったと。これは非常に重大なことで、こういうことを言ったことは初めてであります。非常に注目していい。国防費というのは消耗的な支出でありますから、それよりははるかに生産的な支出の方が重大であります。そういう意味で、近代化経済的基盤もでき上がりつつあるという点で私は非常に注目しているわけであります。きょうもマスコミがたくさん来ておられるようですから、その点に注目していただきたいと思います。  それからもう一つの幹部の抜てき問題でありますが、江沢民政権というのは軍事政権に支えられてでき、そして発展してきている政治権力であると私は見ております。それができましたのは、具体的に申せば九一年の秋に北京軍区が北京郊外でかなり大規模軍事演習をいたしました。これはほとんど注目されなかったのでありますけれども、このときに江沢民が出てきて、演習を観閲して訓示を垂れるということをやった。これは大変重要であります。  そして、翌年の九二年が十四回党大会であるわけでありますけれども、つまり軍に支えられて江沢民指導体制というものが形成されていく、その過程で楊尚根兄弟が排斥されていくわけであります。これを支えたのが軍部であるわけであります。具体的に言えば今の江沢民の一番の後見人となっている劉華清それから張震という人、この人は、今、立木議員から御指摘がありましたように幹部の養成、つまり近代的な軍人を養成していくという軍の学校教育の中枢にいたのがこの張震という人間であるわけで、これを抜てきしたことの意味は、中国軍隊がかなり近代的な軍隊に向かい始めていると言って私はよろしいと思うんですね。  まだまだ初期の段階にはありますけれども、向かっている方向はかなり明確に近代的な軍隊の方向に向かっている。その軍隊が九三年から軍事訓練改革をやっている。きょうお話ししたとおりのわけであります。それを検証する演習をやっている。もし今度台湾軍事侵攻するというときにはそれをそのまま移行するという形で行われるというふうに御理解いただきたいと思います。  御指摘のようにかなりの人が大将に抜てきされましたし、階級も抜てきされて枢要な地位についていく。こういった人たちが即江沢民に忠誠を尽くしているかどうかは我々にはわからないわけでありますけれども、かなりそういう方向へ進んでいるんだろうというふうに言ってよろしいかと思います。ある意味では江沢民というのは単なる首にすぎないというふうに言ってよろしかろうと思います。  以上であります。
  34. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 現状の認識では、アメリカの武力は圧倒的に強い、中国はそれほどでもないのに武力を発動する傾向がある、国内的には人権を無視する傾向が強い、日本は政治的には甚だ脆弱だ、こういう認識がポピュラーではないかと思います。仮に今後十年、二十年というスパンで物を考えると、その間に大きな戦争がないという前提で中国経済をどこまで伸ばし得るか。これはエネルギーとか食糧関係についての改善がどこまであるかということが前提になりますけれども、経済の専門家がそういうことを検討した場合、経済が成長すれば中産階級がふえて民主主義が成長するということは歴史の当然なプロセスでありまして、現在のように中国が今後十年、二十年持続するというのはむしろ現実的でないではないかという気がするんです。  それから、軍事力、武力につきましても、もちろんアメリカの方が強いでしょうが、今日の武力関係の技術からいうと地球は非常に狭いわけです。中国の武力は、今、アメリカの西海岸まで到達するそうでありますが、これが東海岸まで行ってニューヨーク、ワシントンを直撃するようになるのは、これも想像が加わるわけですが、いつごろになるのか。これはロシアの核兵器技術も相当活用しておりますので全然不可能だということはむしろ言えないではないか。TMD的な武力に対する防衛が完璧にいくのかどうか。そういうことを考えますと、今我々が現状認識として持っておる認識は、十年、二十年のスパンで考えるとかなり修正をしてもいいではないかという議論が成り立つか成り立たないかですね。  そうなりますと、日本はもちろん現在は政治力としては脆弱でありますけれども、アメリカが強いから日米安保に依存する傾向が強いわけでありまして、やがてそうでなくなる、あるいは中米の間で核戦争でも起これば今のままでは日本は核戦争の最前線に立たされるわけです。そういうことを考えに入れれば、何とかこの十年あるいは十数年、二十年を平和に保って、中米がかつての米ソのように世界を二分するわけじゃありませんけれども、戦えば双方大けがをするというような状況のもとで、あの時点では仲介の平和勢力がなかったわけでありますけれども、アメリカにも友情を持ち、中国にも友情を持ち得る日本の姿勢がこれから先どこまで伸びるかはちょっとわかりませんけれども、やはり現在のようなアメリカとの軍事協力に依存する日本のあり方を修正して中米の平和的関係を増進する。  これから先の歴史の進行の可能性の中でそういうことを探求することが日本にとってもアメリカ中国にとっても非常に有益だというような考え方ができるかできないか、両先生のお考えを伺いたいと思います。
  35. 井尻秀憲

    参考人井尻秀憲君) まず十年後のことですけれども、簡単に私の考えるところで、中国大陸そのものの今後の十年ということを考える場合に、極めて短期的には、先ほど小島先生からの御意見もありましたけれども、江沢民政権がある程度維持していくだろうというところなんですね。ただし中国国内、これが成長路線でずっといくかどうか云々といういろんな十年後のシナリオが描けるわけですけれども、私は中国のこれから抱える問題は、特に経済の成長に伴って、市場化に伴って出てきている腐敗というような問題をやっぱり党中央の政治闘争と絡めて、いわば江沢民体制の生き残りがそこにどの程度できるかという問題と絡めて出てくるんじゃないかという気がしております。  つまり、中国内部の政治力学というものがまだ安定しておりませんし、むしろこの後、鄧小平さんが現実に不在となった後にもう少し新たな展開が出てくる可能性もあるというふうに見ております。そこで江沢民体制がやらなきゃいけない仕事としては、かつての天安門事件の責任、再評価というような問題も含めて、まだ中国の内部事情が安定し得るかどうかということに関しては疑問が残るというふうに思います。短期的には私は生き残りができるような状況を江沢民さんはつくってきたというふうに考えておりますけれども、その次の中期的な問題でやはりちょっといわば弱さが出てくるんじゃなかろうか、内部事情がかなり苦しいんではなかろうかという気がしております。  ただ、それに対してアメリカは、結局アメリカの外交というものは基本的に二つの顔を常に持っていたわけでありまして、道義的モラル、人権、そういうものを非常に追求するような民主党的な考え方ですね。しかし、それは極めてイギオロギッシュであって、対外的にもむしろそれによって介入を呼ぶというような形、つまり従来から民主党は戦争と福祉の党というふうに言われていたわけでありまして、逆に共和党は平和と経済的繁栄の党というふうに言われていた。そこにニューディール以来の、二〇年代以来の基本的な前提となるような考え方があったわけですけれども、この二つの顔をアメリカは常に持ってアジアに向かってきている。特に対アジア政策において介入、不介入というリズムを常にやってきているわけであります。したがって、朝鮮戦争に絡んだりあるいはインドシナ戦争、ベトナム戦争に絡んだり、これは民主党政権のときにそういうことが起こっているわけですけれども、そういう状況があったわけです。  しかし、片方では共和党主導の議会というのは極めて保守的、孤立主義的な側面も非常に強く持っているという点がございます。そういう中で今日のような台湾海峡における米中の一種の軍事的緊張が出てくれば、アメリカ台湾という一つの民主主義の模範生を守るためにも、あるいは中国のいわば軍事力に対する牽制という意味合いも含めて当然出てくるということになるでしょうけれども、米中の平和的関係をむしろ増進していく役割としての日本と、こういうふうなことで考えておられたのかなというふうに質問の要旨を理解してよろしいんでしょうか。  だとすれば、むしろ私は、確かに米中の間に挟まれた日本が、今後日本のアジア外交というもの全体を考えていく場合に、これからもっといろんな複雑な問題が、プレーヤーが大きくなりますから考えなきゃいけない面が出てくるんではないかと思うのです。  単に日米の同盟でいくのか、あるいは日中という枠組みでいくのか、つまりアジア重視でいくのか西洋重視でいくのか、こういう枠組みから、冷戦後の非常に多極化してくる状況の中で、しかも東南アジアというようなASEANの力の台頭という点なんかも踏まえて考えていきますと、私はむしろ将来アメリカの大きな軍事的なプレゼンスが一つまだ依然として残されていなければならないという状況のもとで、中国のパワープロジェクションといいますか脅威となっていくような戦力がもしこの十年後ぐらい出てくるとするならば、日本はむしろ日米安保の枠組みというものを解消するどころか再定義し直して、そして検討し、それを何らかの形で強化する。  同時に、それを台湾、韓国、そしてASEAN、こういった日本にとって同盟あるいは友好的な関係にある国々との協力関係をもっと強めながら、安全保障というものを多角的に考えていくといいますかアジア全体で考えていく、そういう枠組みをつくっていく方向へ考えていかないといけないんじゃなかろうか。そういう意味でのイニシアチブは日本がとっていいんじゃなかろうか。そういう意味で、ASEAN地域フォーラムとかそういうものも非常に重要なものになっていくのではないかというふうな気がしております。
  36. 平松茂雄

    参考人平松茂雄君) 大変難しい問題ですけれども、中国のようなああいう大きな国で、しかも非常に多様な要素を持っている国で、人口がとにかくとてつもなく巨大で、人口の中でも住民も非常に多様である、それから人間のふえ方がこれまた異様なくらいの勢いでふえていく、しかもまだまだ後進的である、格差もある、そういう社会が近代化していくとは実は私は思っておりません。そんな簡単に近代化できることでもないし、民主化社会になるとも私は思っておりません。ですから、そういうことは私は余り期待しておりませんし、それを現実として考えていかなきゃいけないだろう。そういう国ですから、私は政治権力というのはやはり権威主義的な権力にならざるを得ないというふうに思っております。  もし中国が我々と同じような近代化された民主主義社会になっていくことが望ましく、そうなることを望むとすれば、一つアメリカのような連邦制になるとか、あるいは、これは人の国のことを言うとしかられるかもしれませんけれども、一つの国家としてまとまっていること自体に無理があるから、やはり幾つかの国に分かれた方がいいではないだろうかと、そのように思っています。  これは中国自身が言っていることですけれども、中国という国を一つの国家としてとらえることに無理があるわけで、国家ではなくて一つの世界、小世界であると私は思っておりますから、やはり一つの権力でもって大衆の、地域の隅々にまで行き渡るような政治をやること自体に私は無理があるだろうと思います。いやでも権威主義の政治権力にならざるを得ないだろうと思いますし、今までの歴史を見ていてもそういった傾向が強い。何らかの形でやはり軍事政権に依拠した政治権力にならざるを得ないんじゃないだろうかというふうに思います。したがって、中国に対して我々と同じような合理的な政治を望んでも、それは期待外れになるんじゃないだろうかと思います。  お答えになったかどうかわかりませんけれども、以上であります。
  37. 川橋幸子

    川橋幸子君 お伺いしたいことはむしろ武田委員の方がより的確なお言葉で御質問くださいましたので、私が聞くことは少し蛇足の域に入るのではないかと思いますが、せっかくの機会ですので井尻先生の方に伺いたいのでございます。日米安保の再定義の問題でございます。  日米のこの協力体制がカバーする地域が極東であるか、あるいはもっと広い地域であるかということは非常に議論のあるところでございます。この再定義の中に、軍事だけじゃない、何かもっと、私は本当に素人なので率直に言わせていただきますと、例えばアメリカの外交というのは、世論なりあるいは議会なりの反応で非常にあいまいというか、揺れ動くことをアメリカの強みとしてやっているわけですね。しかも、軍事と経済と人権の三つのバスケットのバランスをその中でとりながら、一定の方向性がないようでいながら大国の強みでこれがアメリカンウェーということでやってきているわけです。  それから考えると、日米安保体制というのは、こちらが費用、コスト負担をしてあちらが人の負担をするという軍事面だけの同盟じゃない、何かもっと、アメリカにならこういうことを言っていけば、主張すれば、むしろアメリカ人は理解しやすくて再定義の方向もさまざま対応性のあるものになってくると、こんなことが考えられないのかどうか。再定義に関してお伺いしたいと思います。
  38. 井尻秀憲

    参考人井尻秀憲君) 御質問の意図を私が十分理解しているかどうかということにもなりますが、つまりいわゆる軍事力経済、人権を中心に考えるアメリカを相手にして日米安保の再定義ということを日本が今後進めていく上で何か新しい発想なり要素が加えられないものかということだと思うんです。  いわゆる文化的、人的交流という側面においては日米関係もかなり深度の深いものがあると思うんです。ですから、あくまでも安保体制の再定義という形で今考えていかなければならない点は、軍事の問題を外せと言われるとちょっとあれなんですけれども、今アメリカで非常に議論されていると申しますか、ちょっと危ない兆候だというふうに議論されるものの一つに、沖縄に行ったりして講演なんかもしておりますアメリカのリビジョニストと言われているような修正主義者は、こういう台湾海峡の問題、中国問題が出ることによって日本を忘れてしまってはならない、日本問題があるじゃないかというふうに言う人たちがおります。  この人たちの中心になっているチャルマーズ・ジョンソン教授なんかは沖縄に行って、沖縄の基地はもう要らないんだ、米軍はもう要らないんだというようなことが発言としてあるんですけれども、彼に確かめてみたところでは、そういう大胆な、無理なことを言っているわけではなくて、むしろ日本のいろんな感情、アメリカに対する反米感情も含めた、それを沖縄が代弁するみたいな形で出てくるといいますか、それがほかの地域に波及して、そして横須賀なりほかのそういうところまで失うようなことになっては困るという、つまりフィリピンのケースが日本に起こる可能性という意味で非常に心配しているということで、日本のことをもっと知らなければならないんだと。アメリカ外交戦略をやっている人たちが、ジョセフ・ナイなんかも含めて、ハーバード大学に戻りましたけれども、彼は国際関係の理論家であって日本を十分知らないんだというような意見がかなりアメリカにあるわけですね。  そういう意味で、私はその新しい何かというものは何なのかというのはなかなか申し上げられないんですけれども、十分検討に値する場がここへ来て一つ与えられたと、今回のこの四月のクリントンさんの訪日も含めて今後の問題として。ですから、よく言われますのは、集団自衛権の問題であるとかいろんなことをやはり我が国においても十分考えなければいけない場を与えられているというか、そういう意味で再定義をやる一つのきっかけの私は絶好のチャンスであるというふうにとらえております。  ただ、アメリカはもちろん軍事を外しても経済の面でも結果重視という形で日本にいろんな形で迫ってくるわけですけれども、対米関係をかなりきっちりうまくやる方法というか、そういう秘訣みたいなものを考えましたら、私の四、五年ぐらいのアメリカ留学生活の経験からしますと、少なくともきっちり話すことだというふうに思います。アメリカの人に対してはきっちり理論を立てて話せば聞いてくれる。ただし、アメリカの人たちの主張というのは間違っていることも多いけれどもきっちりしゃべる。そのきっちりしゃべるのに対して日本側もやっぱりきっちりしゃべる、そしてコミュニケートをやっていくことが軍事力だけに頼らない一つのやり方、相互理解と相互交流の深化ということを考えていく場合にそれがアメリカを納得させる一つの重要な要素になるのではないかというふうに考えます。
  39. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) ありがとうございました。  それでは、最後に私の方から平松参考人に御質問させていただきたいと思います。  現在の中国政府の最大の関心事は、民主的な手続で選出された、恐らく再選されることになる李登輝総統が国際社会でいかなる扱いを受けるかという、そこに絞られてくるような気がするわけであります。李登輝総統が国際社会でどのような扱われ方をした場合、それが実際に中国政府による武力行使につながるのか、この点についての御見解を聞かせていただきたいと思います。
  40. 平松茂雄

    参考人平松茂雄君) 武力行使をしたくても恐らくできないんじゃないでしょうか、さればといって認めるわけにもいかないんでしょうけれども。ですから、やはり威嚇は続けるだろうというふうに思います。
  41. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) 威嚇を続けるというのは、直接の武力行使にはならないが、軍事演習等を通じてそうした、例えば再度訪米するとかあるいは日本を訪問するといったケースですか。
  42. 平松茂雄

    参考人平松茂雄君) いや、そうじゃなくて、私は恐らくこの軍事演習というのは、選挙が終わってそしてその次に総統が就任するわけですから、そのときまでが一つの期間であって、引き続き何らかの威嚇を続けると思うんです。そして、恐らく李登輝総統統一ということを多分言われるわけですから、この次の目的というのはやはり政治交渉のテーブルに座らせる、それは最終的には一国二制度の方向でやっていくわけですけれども、これを台湾側が受け入れるはずはないわけでありますけれども、それは将来の問題として、とにもかくにも交渉のテーブルに座らせる、そういう方向に進めていくだろうというふうに思います。
  43. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) わかりました。  それから、喫緊の課題でございますけれども、三月二十三日の投票日に向けて空母ニミッツが機動部隊を引き連れた形で台湾海峡を北上いたします。このときに、二十五日までの予定で行われている中国の三軍合同の演習というのは、中間線よりも大陸側でありますが、実施されていることになります。そうすると、この北上する空母ニミッツと三軍合同の中国軍事演習というものは相当近接した地域で行われるような想定ができるわけでありますが、そこにもし何らかの不測の事態が起きるとすればどういうケースがあり得るのですか。
  44. 平松茂雄

    参考人平松茂雄君) 中国側は恐らく中間線を越えてくるようなことはないと思います。その点は慎重にやるだろうと思いますからそういう事態はないと思いますけれども、考えられることは、戦闘機が飛び出してくるとかミサイルか何かがそれるとかということになるだろうと思いますけれども、それで何か具体的な紛争が起きるというところにまで私はいかないと思っています。
  45. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) 例えば航行する空母ニミッツの場合、軍事演習の中から何らかの形で自分たち米機動部隊に対して攻撃的な姿勢演習の中の何らかの中国側航空機なりがとった場合には、直ちにこれに対する迎撃態勢というのは整えているわけですね。
  46. 平松茂雄

    参考人平松茂雄君) 整えていると思います。
  47. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) そういう形での不測の事態はあり得ると、こういうことですか。
  48. 平松茂雄

    参考人平松茂雄君) しかし、アメリカ側がやっつけるということはないだろうと思います、警告は与えるでしょうけれども。むしろ軍事演習そのものは決められた海域の中でちゃんと中国が行われるだろうと思いますから、それに乗じて何らかの行動を起こすという、例えばどこかの島をとるとか、そういうことはあり得るかと思いますけれども、まずそれはないと見ていいんじゃないでしょうか。緊迫はするでしょうけれども、私は何も起きないで済むだろうというふうに思っています。
  49. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) そうすると、まさに台湾の人たちが投票するその日を一つのめどにして米空母機動部隊台湾海峡を航行するという、その意味は一体どこにあるんでしょうか。
  50. 平松茂雄

    参考人平松茂雄君) それはプレゼンスすることの意味だと思います、存在すること自体に意味があるわけですから。これはいい悪いは別として、それでもって一応安心して選挙ができるということだろうと思います。
  51. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) そうすると、民主的な投票行動に対するある一定の中国側軍事的威嚇が好ましくない効果を及ぼさないための軍事的な示威行為という理解でよろしゅうございますか。
  52. 平松茂雄

    参考人平松茂雄君) そうですね。それでいいと思います。アメリカとしてはプレゼンスすることに意味があるのであって、それ以上のことは考えていないと思います。今の段階ではアメリカが積極的に軍事行動を起こすかどうかに関しては、ないだろうと私は思います、中国側が特に何かしかけない限りは。
  53. 武見敬三

    ○小委員長武見敬三君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。  参考人には、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。小委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時五十七分散会