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1996-06-13 第136回国会 参議院 外務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年六月十三日(木曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  六月十二日     辞任         補欠選任      大木  浩君     岩井 國臣君      山崎  力君     寺澤 芳男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         木庭健太郎君     理 事                 笠原 潤一君                 野沢 太三君                 高野 博師君                 川橋 幸子君     委 員                 岩井 國臣君                 岩崎 純三君                 武見 敬三君                 成瀬 守重君                 宮澤  弘君                 田村 秀昭君                 寺澤 芳男君                 畑   恵君                 照屋 寛徳君                 立木  洋君                 武田邦太郎君                 椎名 素夫君                 矢田部 理君     国務大臣         外 務 大 臣 池田 行彦君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 臼井日出男君     政府委員         内閣法制局長官 大森 政輔君         防衛庁防衛局長 秋山 昌廣君         防衛庁教育訓練         局長      粟  威之君         防衛庁装備局長 荒井 寿光君         外務大臣官房審         議官      谷内正太郎君         外務省総合外交         政策局長    川島  裕君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    朝海 和夫君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省条約局長 林   暘君     事務局側         常任委員会専門君         員       大島 弘輔君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間に  おける後方支援物品又は役務相互提供に  関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間  の協定締結について承認を求めるの件(内閣  提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨十二日、大木浩君及び山崎力君が委員を辞任され、その補欠として岩井國臣君及び寺澤芳男君が選任されました。     —————————————
  3. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 立木洋

    立木洋君 日本ACSAを結ぶ前にアメリカは既に十九カ国とACSAあるいはそれに準じる協定を結んでおりますが、それらの十九カ国の中には、有事を明記していないあるいは有事を除外するというような規定のある協定、そういう協定内容になっている国はあるのでしょうか。
  5. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 私どもの承知しているところでは、フランスとの協定それからスペインとの協定については、平時有事云々規定はございません。
  6. 立木洋

    立木洋君 それは、有事を除外するというふうな規定があるんですか。
  7. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 私の承知しているところでは、除外するという規定はございません。
  8. 立木洋

    立木洋君 その内容を見てみますと、ほとんど有事あるいは戦時、あるいは危機ないし戦時等々の規定があります。それから、部隊展開作戦行動に対する共同行動等規定もあり、ほとんど有事に対処するということが可能な規定になっております。  日本の場合に、平時有事とも適用する範囲を明示的に規定していない理由は一体なぜなのか。きのうは有事平時という、そういうふうな切り口ではなしにというふうな答弁がございましたけれども切り口ではなしにというのはいささか国会の答弁としてはあいまいだと私は思うんです。ですから、有事あるいは平時という範囲を明示しなかったという、ほかの国ではほとんどそういうことが明示されているわけですけれども、明示しないという理由について説明していただきたいと思うんです。
  9. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 委員指摘のように、今回の協定におきましては平時とか有事とかいう区分についての記述はございません。平時とか有事とかいうことにつきましては、一般国際法上もまた国内法令上も、法律的な概念として確立したものがあるわけではないということでございます。  そして、この協定適用対象をどうするかということで日米間で議論をした結果、自衛隊及び米軍双方ニーズの高いものを対象とするという観点で検討を進めた結果、共同訓練国連平和維持活動及び人道的な国際救援活動のため、これに必要な物品または役務提供協定対象にすることで日米間に合意が達成されたわけでございます。
  10. 立木洋

    立木洋君 有事という概念についてはそういうふうな説明をされるけれども戦時ということが明記されている協定もあるわけです。危機的な、緊急時等々のそういうふうな規定もきちっとされているわけですから、それを除くというのであるならば、先日来総理もあるいは外務大臣も述べておられるように、この協定に基づいては米軍戦闘作戦行動への協力としての物品役務提供できないということですね。  そうしたら、そういうものを含むというふうに解してはならないという規定を入れてもいいんじゃないですか。そうした方が協定上より明確になるんじゃないですか。そういう切り口をしないというふうなものだったら、そういう規定を入れてもいいんではないですか。なぜ入れなかったんですか。
  11. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 委員指摘のように、アメリカNATO諸国と結んだ協定の中には、例えばドイツですと平時のみならず危機及び戦争事態にも適用、それからイギリスの場合ですと平時のみならず緊急時、現実敵対行為の際にも適用云々と書いてございますが、平時とか緊急時、敵対行為のいずれにおいても適用するということで、平時とか戦時とかいう区別によってACSA適用の有無を定めたものではございませんので、平時とか戦時とかいうことで定義をしているわけではないわけでございます。  先ほど来申し上げているところでございますけれども国際法上も国内法令上も、法律的な観念として平時とか有事ということで観念として確立したものがあるわけではないということから、そういう分け方はしなかったわけでございます。
  12. 立木洋

    立木洋君 これは繰り返し答弁されているように、憲法の枠内ということも強調されておるわけですし、それについては先ほど言われたような作戦行動物品提供するものではないというふうなことも述べられているわけですね。  そうすると、この第二条三項の場合に、きのうも問題になりましたけれども弾薬提供が含まれると解してはならないという除外規定さえあるわけです。除外規定を明確にするということによっていわゆる憲法の枠内であるかどうかということをも担保として明確にすることが可能になる。ところが、それが入っていないということになれば極めてあいまいさを残す。  それで、この問題について外務大臣にお尋ねしたいんですが、大臣はいわゆる有事において戦闘活動を行っている米軍に対する物品役務提供はできませんというふうに答弁されておりますけれども、このことをアメリカ側が確認したのは、いつ、だれとだれとの会談で、アメリカ側のだれがそういうことを、提供しないということで結構ですという確認をしたのか、日時と相手の名前を述べてください。
  13. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) そこのところは、対象共同訓練PKO、それから国際的な人道的な観点からの救援活動、そういうふうに明定されているわけでございますから、戦闘行為対象にならないのは条文上非常に明らかなわけでございます。これはもう確認するまでもなく、もう大前提のそのまた前の前提と言ってもよろしいんじゃないかと思います。  それからまた、協定上なぜ書かないかという御質問でございましたけれども、こちらの方も、今申しましたように共同訓練と明定してある以上、これはもうどういう読み方をしましても、戦闘行為に参加している米軍に対する協力あるいはそれとの間の協定による融通があり得ないということは余りにも明らか、自明のことでございますので、確認的な規定という御趣旨であるとしてもその必要性は全くないんじゃないかと思います。
  14. 立木洋

    立木洋君 これは外相の答弁とも思われません。グレーゾーンがあるとして、わからぬ部分があるといって、それを明確にしなければならないということが検討する問題の対象にされているわけですから、だから私は、そうするとアメリカ側はなぜACSAを諸外国に求めているのか。ACSAを求めているアメリカ目的、ねらいは一体何なのか、アメリカが明確に証言している内容をちょっと引用していただけませんか。
  15. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 一般的にアメリカNATO加盟諸国その他に求めているACSAについてどうかという話と、具体的に日本との間でこのような枠組みをつくるという話は、これは分けて考えなくてはいけないと思います。  我々がアメリカとの間でいろいろ協議をいたしましてこういう協定をつくり上げた、そして今御審議を願っておると。これはやはり日米安保条約のもとで日本と米国がいろいろな協力関係を持っている、そしてその中の共同訓練を初めとする三つ分野において物品役務についての協力枠組みをつくろうということでこの協定を結んだわけでございます。
  16. 立木洋

    立木洋君 かつてアメリカの国防総省のグリッグ兵たん部長議会証言しているんですが、これは、平時有事を問わず我々の各部隊に対する最も可能な支援を保障する他の手段を講ずることを可能にする、これがACSAであると。同時に、米軍戦時任務に専念できるようにするために基地管理任務を軽減する、こういうふうに述べているわけですね。つまり、平時有事を問わないわけです。いかなる場合でも支援をしてもらうことを求めているのが相手側の要求なんですね。ですから、同盟国兵たん支援補給品あるいは役務を供給させるという目的はここにあるんじゃないですか。  そうすると、平時有事を問わないということをアメリカが明確にしている以上、きのうも問題になった、兵たん支援ということをわざわざ言葉をかえて「後方」と。前方、後方があるかのような言葉にかえているということが問題になりましたけれどもアメリカはそういう目的日本ACSAを結んでいるんじゃないですか。
  17. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 確かにアメリカのたしか米軍関係者が八〇年代に議会における証言でその種の発言を行ったということはあります。それは、先ほども申しましたように、NATO諸国その他のところと協定を結ぶ際にそういうことになった。  しかし、我が国との間では、先ほども申しましたけれども日米安保条約に基づいて日米間にいろいろな協力関係がある、その中の一つとしてこういった枠組みをつくっていくということでございます。その根底には、やはり我が国憲法規定はこういう姿になっている、また自衛隊の性格も他の国のいわゆる軍隊とは違う面がある、それも前提にしながら安保条約もできており、そしてその枠内でのいろんな協力関係もある、そしてその協力関係一つとしまして今回物品役務についての協力関係規定した、しかもその対象共同訓練等分野ニーズが高いものとしてその対象に取り上げられた、こういうことでございます。  先ほどの、議会における証言があるから日本との協定もそういう目的ではないか、そういう趣旨でないかという御主張あるいは御疑念は、これは当たらないものでございます。いろんな証言があったにしても、現実にこのできました、御審議をお願いしている協定に即してお考えいただければと存ずる次第でございます。
  18. 立木洋

    立木洋君 その問題についてはもう少し後で聞きますけれども、これは御答弁になっていないと思うんですよ。日本の場合にだけアメリカがそういう目的を持たないというのはいささかおかしな話であります。  それで、防衛庁長官にお尋ねしたいんですが、ナイ前国防次官補が来られて、朝鮮有事が起こった場合に米軍に対して支援を行わぬような国がどうして同盟国と言えるのかということが新聞で報道されていました。  御承知のように、後方支援という言い方でなくて、ロジスティックサポートというふうに言われている兵たん支援という明確な軍事的な用語で訳するならば、自衛隊は今標語の中で「一に兵站二に兵站、三、四なくて五に兵站」といって、兵たんを極めて重視している標語自衛隊の中にありますね。そういう問題というのは、つまり戦闘を保障していく上では兵たん支援というものがなかったらこれはだめなんだと。このことを非常に重視した標語として私たちはある方から聞いたんです。  そういう状態で米軍朝鮮半島有事行動に入った場合、これは一切支援してはならないというふうなことになっているんですけれども、しかし兵たん支援を行うということになるならば、事実上はこれは戦闘行動一体化する危険性を伴うという場合もあり得るんじゃないかと思うんですけれども、そういうことは一切ないというふうに長官は考えられているんでしょうか。
  19. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 朝鮮半島有事といった具体的な仮定の御質問にはお答えは差し控えさせていただきたいと思いますが、先ほど外務大臣もお話しのとおり、この協定共同訓練あるいは国際平和維持活動及び人道的な国際救援活動適用する、こういうふうに適用三つ場面に絞っているわけでございまして、いわゆる極東有事我が国有事における米軍戦闘作戦行動への協力としての物品役務提供には適用されないということは明らかでございます。
  20. 立木洋

    立木洋君 先ほども出しましたこの二条の三項にある「弾薬提供が含まれるものと解してはならない。」という点ですね。これは弾薬提供は含まれないけれども武器弾薬輸送は排除されていないんじゃないでしょうか。あるいはまた、空港や港湾の業務としてアメリカ軍艦船あるいは航空機への自衛隊による武器弾薬の積み込み、あるいは米軍艦船航空機への自衛隊による武器弾薬装てん、据えつけなども協定は解釈上排除されていないというふうに解することができると思うんですが、いかがでしょうか。
  21. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 弾薬提供を行うことができないということは委員おっしゃるとおりでございますけれども、これは物品提供としての弾薬または武器提供について述べたことでございまして、例えば武器または弾薬輸送のように武器または弾薬に係る役務提供につきましては、この規定の第二条二項それから付表に書いてあることに合致する限り認められるということでございます。
  22. 立木洋

    立木洋君 その後ちょっと続けて。私は三つ質問したんです。武器弾薬装てん、据えつけあるいは弾薬の積み込み、武器の積み込み、それも排除されていないんでしょうね。
  23. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 委員のおっしゃられる、必ずしも私は具体的に把握しかねるんですが、ここに書いてございます例えば「輸送」に該当するものでありますれば、それは適用対象になるということでございます。
  24. 立木洋

    立木洋君 それでは外務大臣先ほど質問に戻るんですけれども、ちょっと反対の側からお尋ねするんですが、いわゆる有事において戦闘活動を行っている米軍に対する物品役務提供はできませんというのは、できないという根拠を述べていただきたいんですが、どうしてできないのか。
  25. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) その有事におけるというお話でございますけれども先ほど来いろいろ我が方からも、政府側からも御答弁申し上げておりますけれども有事平時という法令上のきちんとした規定国際法上もあるいは国内法上もございません。  ただ、昨日のこの委員会におきましても防衛庁から御答弁がございましたけれども防衛庁においては自衛隊法第七十六条ですか、いわゆる防衛出動が発令された場合ということを一般的にいわゆる我が国の、日本における有事というふうにとらえておるということはございますけれども、今、主として委員の念頭におありなのは、日本有事ではなくて我が国周辺地域におけるいわゆる有事ということを想定しておられるんだと思いますので、そういった定義は別にございません。  それで、委員がいわゆる我が国周辺のどこかの地点において戦闘行為が行われるというような状況事態がある、そういうものを指して考えておられるとするならば、そういった状況事態があり、その中で戦闘行動を行っている米軍部隊に対する協力がこの協定に基づいて行われることはない。これは、この対象共同訓練訓練というふうな規定になっているということから明らかに読み取れる、こういうふうに先ほども申し上げた次第でございます。
  26. 立木洋

    立木洋君 いや、大分回りくどい答弁をなされましたけれども、今引用したのは、これは総理も本会議でそのとおり述べているんです。「いわゆる有事における米軍戦闘作戦行動への協力として物品役務提供をできないことは明らかです。」と。だから、なぜできないというふうに決められたのか、その根拠を私は聞いているんですよ。
  27. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 「共同訓練」と書いてあるのでございます、PKO問題等はこの際は外しましてね。「共同訓練」と書いてあるわけですから、戦闘行動を行っている米軍部隊に対して協力するという話はこの協定のらち外であるということは明らかであると思います。
  28. 立木洋

    立木洋君 憲法の枠内からはみ出すからだめだというのが根拠じゃないんですか。
  29. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員の御質問は、根拠とおっしゃっておりますが、この対象共同訓練等に絞ったと、そして先ほど来も申し上げているような有事あるいは戦闘行動に従事している米軍に対するいわゆる協力対象にした根拠というか理由は何かと、そういう御質問であるとするならば、これも昨日の委員会でもいろいろやりとりがあったかと思いますけれども日米間でいろいろ協議していく中で、こういった協力ニーズの高い分野は何だろうということでいろいろ話してまいりまして、共同訓練ほか三つ分野対象にすると、こういうことになったわけでございます。
  30. 立木洋

    立木洋君 少し具体的な内容でお聞きしたいんですが、朝鮮戦争が行われている場合、米軍戦闘行動への協力として物品役務提供はできないとするならば、日本にいる米軍公海上で共同訓練として物品役務提供した直後に米軍戦闘作戦行動に出撃するような場合も同じように提供できなくなるんではないかと解されていいんでしょうか。
  31. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 共同訓練をやっていた米軍戦闘作戦行動に出るということになりますれば、私どもはそれはもう共同訓練ではないというふうに受けとめますので、この協定適用するということはないということでございます。
  32. 立木洋

    立木洋君 公海上で共同訓練していて役務提供する、その直後に米軍朝鮮戦闘に入るというふうな場合にはできないというわけですね。
  33. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) そういう事態であるときに共同訓練をするかどうかという判断がまずあるんだろうと思いますので、私はそういう事態共同訓練が当然なされるかのごときの答弁はできないわけでございますが、全く理論的な問題といたしまして、我が方が提供するのはあくまでも共同訓練のために提供するということでございまして、共同訓練に参加していた部隊がその任務を終えてほかの任務につくということはあり得ることだろうと思います。
  34. 立木洋

    立木洋君 折田さん、これは理論上の問題じゃないんですよ。湾岸戦争のときに、一九九〇年十月二日、日本の港からミッドウェー、巡洋艦のモービルベイバンカーヒル、あるいは駆逐艦等が出撃するということになって出航した。ところが、十月の二日に出航したんだけれども、九日まで日本海上自衛隊共同訓練をしておったんです。それで、九日に共同訓練が終わって、十五日にアラビア海に到着したんです。現にそういう戦闘行動に入る直前共同訓練しているというのはあるんですよ。  そういう場合に、そういうことが明確になっている軍艦に、共同訓練のときにやっぱり役務提供物品提供、これが可能かといえば、私は文面上解釈するならばそれは可能ではないと、戦闘行動に行く直前共同訓練が行われる場合、いかに共同訓練であろうともそういう場合には許されないんじゃないかというふうに考えられるんですが、大臣、いかがでしょうか。
  35. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) それは理論上、論理上の問題として考えるならば、この協定上排除されているとは言えないと思います。  委員の提起されたケースというものが時間的に非常に接近した場面を想定して御質問になりましたけれども、逆に時間を少し分けてみますと、純粋に共同訓練をやっておった、そうして例えばそこでいわゆる補修いたしまして、例えばボルト、ナットのたぐいの部品が軍用の車両にこの協定に基づいて修理の過程で入ってきた、それがその後ある程度の時間的な隔たりを持って米軍の運用上その他の行動に入っていったということになれば、それは本協定で可能でございますし、時間的な接近度合いがどこまでならいいか、どこまでなら悪いかという話は、別途それは政策的な判断としてあり得るかもしれませんけれども、この協定上は時間的なことによって区別がされているわけではないということはそのとおりでございます。  それから、なお申し上げますと、そのことが何か戦闘行動そのものにこっちが参加したと同じじゃないか、あるいは一体化じゃないかというふうな御疑念をお持ちになっているとするならば、それはやはりまた別な話だなと、こう思います。  なお、この協定にはいろんな仕組みがあります。その中には決済という仕組みもあるわけでございます。提供された物品にしても役務にしても、それは現物によってあるいは金銭によって決済されるというふうになっています。そしてその仕組みが働くならば、この協定に基づいて我が方から米軍に対して供与された物品なり役務で一時的に米軍の力にプラスになる、あるいはゆとりができることがあるかもしれませんが、いずれにしても決済という過程を通じてそれはいずれ相殺されるわけでございますから、そのことをもって云々ということはないんだと、こう思います。
  36. 立木洋

    立木洋君 その直前に行われる共同訓練物品役務提供が可能だと、いわゆる戦闘行動に参加する米軍に対して。それは時間的な開きがどれだけあるかというふうな形で大臣は主張されましたけれども、これが認められるということになれば、アメリカの側からいわゆる戦闘行動に出る前に共同訓練をやりましょうと共同訓練の提起を申し入れてきて共同訓練を行い、そこで必要な役務提供物品提供を受けて、その直後戦闘行動に参加するということだって可能になる。そうすると、その戦闘行動に直接的に実質的にはかかわるということになるんじゃないかと思うんですが、防衛庁長官の方に聞きます。
  37. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 恐縮でございます。先ほど私が御答弁申し上げたことの関連の御質問でございますから、私から答弁させていただきたいと存じます。  共同訓練に際して提供された役務、サービスというのは、原則的にその共同訓練過程において使用されるというのが通常だと思います。例えば油その他を供給されましても、共同訓練過程において使用されるということになると思います。仮にそれが使用されないといたしましても、先ほど答弁申しましたように、決済という手続を通じてそれは相殺されるということがあるわけでございます。そういったことから考えますと、このことが御指摘のような懸念につながるということはないと思います。  ただ、なお協定上それが可能になっているということがございましても、具体的な場面においてどうするかというのはまた別途の判断があるわけでございます。そもそも共同訓練をするかどうかという判断がある。共同訓練をするとしても、その際にこの協定に基づく協力をするかしないかというのも具体的なケースに応じて判断はあるということでございます。
  38. 立木洋

    立木洋君 秋山さん、六日の参議院の内閣委員会で、朝鮮半島戦争が起こっている場合に、日本海の公海朝鮮半島周辺の公海においても共同訓練であれば米軍物品役務提供は可能だとあなたは答弁されているわけですね。だから、共同訓練では提供は可能だということになれば、先ほど問題にされました武器弾薬輸送は排除されていないという北米局長答弁があったんです。  その場合に、共同訓練をやっている最中に日本の国にある米軍武器弾薬、それを公海上において自衛隊輸送する、そしてそれを相手に引き渡すと。しかし、実際にはその直後に朝鮮半島戦争が起こっているという状況でそれに参加するということが可能になれば、まさにそれは戦争と一体となるということになるんじゃないでしょうか、あなたの六日の答弁から考えると。
  39. 秋山昌廣

    政府委員(秋山昌廣君) まず申し上げたいのは、当然のことながら共同訓練には自衛隊が参加するわけでありますが、自衛隊はこの共同訓練に参加するに当たって、これは防衛庁設置法の規定に基づいて、規定に言うところの訓練の一環として参加するわけでありますので、当然のことながら憲法の枠内で、これが武力行使あるいは武力行使と一体化するような、そういった訓練はあり得ないということであります。  それから、今の御質問の中で若干私が気になりますのは、戦闘作戦行動の命を受けた部隊とか艦隊と共同訓練することは、少なくとも自衛隊はあり得ない話だと考えております。  そういう形での共同訓練公海上でなされることは当然あり得るわけでございますが、今の御質問の設定の具体的な状況で、もちろんいろいろ伺わなければ明確な答弁はできないわけでございますけれども、しかし一般的に申し上げまして、今申し上げたような共同訓練である以上、その共同訓練の中で行われる米国の軍隊自衛隊との間の物品役務相互提供ということは、この協定によって可能であると考えております。
  40. 立木洋

    立木洋君 これは、公海上で訓練としての物品役務提供をした直後に米軍戦闘行動に出撃するような場合は提供できなくなるんじゃないかと述べた質問に対して、排除されていないというふうに先ほど外務大臣は述べたんです。時間的な長さはどうであるかという問題はあるけれども、排除されていないと。そうすると、あなたが先ほど述べた答弁も、朝鮮半島戦争が起こっている、だから日本海の公海においても、朝鮮半島周辺の公海においても、共同訓練であれば米軍物品役務提供は可能だとあなたが答弁していることと結局同じことですね。そうすると、この問題はまさに戦闘行動一体化し得る極めて危険な内容が含まれている。  五月三十日に外務大臣が「仮に有事でございましても、すべての米軍戦闘活動に携わっているとは限らないわけでございまして、米軍の一部が戦闘活動に参加しているけれども、その他の部分は他の活動をしているということは、それはあり得るのだと思います。」という答弁でそのことを合理化されようとしている。私は、これは明らかに大変な矛盾とごまかしがあると思うんです。  米軍の出しておる東アジア太平洋安全保障戦略の報告においても、朝鮮戦争が起こった場合に、アジア太平洋にいる十万の米軍が全力を尽くしてむだな兵力はないという立場をとっているんです。東アジアにおける米国の関与を支援するために我々は十万人の兵員を必要とする戦力機構を維持するんだと。我が軍が世界のどこかの地域の大規模な緊急事態に参加する場合でも、北朝鮮の侵略を抑止ないし停止させ、打ち破ることができる確実な防衛能力を維持するというふうに述べているんです。  十万の部隊が必要だと言っているのは、朝鮮戦争において現実戦闘を行っている場合に、こちらでぶらぶら遊んでいる兵隊が一部おってもいいんだというふうな意味をアメリカ軍は述べているんではないんです。全力を尽くさなければならないと。  そうすると、日本にいる米兵、いつ朝鮮に出撃するかわからない状態にある米軍に、日本共同訓練をやるんだから、物品役務提供をやったって構わないんだと、協定上は排除されていないということになるならば、朝鮮半島戦闘が起こっている場合に、全力を尽くしてアメリカが対処している、それに対してあらゆる形で事実上軍事作戦を支援する、物品役務提供になるということは明らかじゃないですか。
  41. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず、共同訓練を行っている米軍が、その後、別の任務に従事することがあるということがありましても、共同訓練をやっている時点においては、これは文字どおりその訓練に参加しているわけでございまして、そこでは例えばおっしゃるような戦闘行動に入っているわけでもないということははっきりしているわけでございます、それが時間的な長さがどうであってもですね。そのことははっきりしておきたいと思います。それは、防衛局長先ほど言ったところと同じでございます。  それから、日本周辺地域においてどういう事態が起こるかということを仮定していろいろ話すのは非常に難しいわけでございますけれども、仮にいわゆる極東有事と言われるような事態が起こるといたしましても、それが非常に大規模な全面的なものであるか、あるいは局部的な比較的小規模な戦闘活動が行える状況か、いろんなことがあり得るんだと思います。そうして、いわばそういった事態が起こる前に既に行われておった共同訓練が、比較的小規模な緊急事態我が国周辺のいずれかの地域で起こったとしても、これはすぐに終結、終了をしないで続くということも、それはケースとしては論理的にはあり得るんだと思います。  しかし、いずれにしても、これも幾度も御答弁申し上げておりますけれども、まず共同訓練そのものがそういった状況の中で行われるか、新規に行われるかどうかはもとよりでございますけれども、現に行われているものが継続されるかどうかということについても、当然まずそこに判断があるわけでございます。そして、その後でこの協定に基づく物品役務面での協力があるかどうかということになるわけだと、こういうふうに考える次第でございます。
  42. 立木洋

    立木洋君 今までの答弁に照らして聞いておりますと、第一にアメリカ軍がなぜACSAを必要とするかという目的先ほど私が述べたとおりです。アメリカが求めているのは、平時であれ有事であれ、米軍に対する支援を求めているんだということが明確なんです。アメリカのねらいです。だからこそ、有事平時をこの文面で明らかにしようとしなかったという点に私は一つのごまかしがあると思う。  それから、兵たん支援ということが明確にされているにもかかわらず、それを「後方」というわざわざ新しい言葉を使って、前方と後方があり得るかのような形で区別しようとすることも、私はこの協定の中のごまかしの一部だというふうに指摘したいんです。  今、大臣が言われた、共同訓練ならいい、共同訓練だから問題ないんだと。しかし、軍事演習や共同訓練というのは、台湾海峡での中国の軍事演習をごらんになってもおわかりのように、相手に対して脅威を与えるものなんです。朝鮮事態が起こっている、共同訓練日本海で行われる。そうすると、この共同訓練というのは相手に対する威嚇なんですね。だから、共同訓練ならいいということにはならないんです。状況によっては相手に対する威嚇になるんです。  アメリカの国防安全保障戦略報告書の中に明確に規定しているんですね。九五年度の国防報告の中でもそうですが、アメリカの軍事的なプレゼンスは何かというと、結局アメリカの利益を守り増進させるためにアメリカ政府は国境を越えて他国の政策と行動に影響を与えることができなければならない。これは、我が国の利益のために、広範な脅威を抑圧し、封じ込めることが基礎だと。共同訓練自身にはそういう目的さえあるんです。アメリカ軍隊の存在それ自体がそうなんです。だから、共同訓練だからいいということにはならないんです。  憲法では、武力の行使のみならず、武力による威嚇さえ禁じられているわけですから、共同訓練によって相手に威嚇を与えるというふうなことに共同で参加するということ自体が憲法では認められていないんじゃないですか。どうですか。
  43. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) そもそもこの共同訓練というのは、日米安保条約に基づきまして我が国自衛隊米軍とは共同対処するケースがございます。これはいわゆる日本有事の、我が国が侵略を受けた場合でございますが、そういう共同対処が有効に円滑にいくためにその訓練をすると、そういうことでございます。  しかし、御承知のとおり我が国自衛隊は専守防衛の存在でございますし、それから日米安保条約目的も、御承知のとおり我が国の安全、そして極東地域の平和と安定を維持するという目的でございますので、そういったものが他国に脅威を与えるなんということはあり得ないわけでございます。  そしてまた今、委員の御指摘の中で米軍の存在自体が脅威だという話がございました。そしてまた、こういった訓練をすること自体も憲法に反するんだと、こういうお話がございました。もしそういうことであるならば、これは自衛隊の存在自体も否定されておることになると思います。そういうことであるならば、もう我々とは立論の基礎そのものが違うわけだと、こう思う次第でございます。
  44. 立木洋

    立木洋君 大臣とももう少し議論をしなければならない問題なんですが、時間が来ましたから最後の質問にします。  私が共同訓練の問題を持ち出したということについては、武力によって相手に威嚇を与えること自身が憲法で禁じられている。だから、共同訓練ならいついかなる場合でもそれはいいんだということにはならない。相手に威嚇を与えるような共同訓練は、御承知のように台湾海峡における中国の軍事演習を見たって明白なんですから、相手に威嚇を与えるために、相手を抑圧するために共同訓練アメリカ軍隊の存在そのものがあるんだということをアメリカの国防報告の中で述べられているわけですから、そのことだけははっきり申し上げておきたい。  もう一つは、PKOの問題だから構わぬのだという点について言うならば、これも私は異論があります。PKFは事実上日本では凍結されている。しかし、実際にはPKFで物品役務提供を行うというふうなことが事実上やられるならば、自衛隊が国連の要請があれば海外のどこにでも出動していくことは可能だと。そして、物品役務提供がこのACSAによってPKOならばやれるということになれば、事実上PKFとの協力ということにならざるを得ないわけであります。これも憲法上問題があるとして凍結されている内容ですから、私としては極めて危険な内容が含まれている。  この問題についてはさらに指摘をしたい点が多々ありますけれども、時間が来たのでこれでやめますけれども、そういう問題点があるんだということを十分に認識されて、この問題に対する考え方を明確にしていただきたいということを改めて強調して、私の質問を終わります。
  45. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ただいま武力による威嚇というお話がございましたけれども、これは国連憲章においても、また我が国憲法においてもそういうことは認められていないことは明白でございます。そのようなことはこの協定との関連において発生しないということはもとより、我が国自衛隊あるいは安全保障条約に基づく我が国の安全を守るためのいろいろな仕組みの中からも、そういうことは出てくることはあり得ないということを御答弁申し上げます。
  46. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 自衛隊法を改正する法律に伴いまして後方支援物品または役務相互提供と、こういうことによって防衛庁の予算はどれぐらいふえる見当になりますか。
  47. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 私は外務省なものですから防衛庁の予算までつまびらかにいたしませんけれども、この協定締結されますれば、防衛庁において今後検討していくというふうに承知しております。
  48. 秋山昌廣

    政府委員(秋山昌廣君) このACSA協定に基づく自衛隊物品役務提供によるコストというのは、これは当然かかるわけでございますが、米軍自衛隊との関係でいいますと、いずれこれは決済される。基本的には同じ物品を返してもらう、あるいは同等あるいは同種のものを返してもらう、それが不可能な場合には金銭で決済をするということでございますので、このACSA協定に基づく自衛隊行動によって防衛関係費が増減するという問題ではないと理解しております。
  49. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 相互提供ということになりますと、アメリカの側から日本提供される物品役務等もあるんですか。どういうようなものがあるんですか。
  50. 秋山昌廣

    政府委員(秋山昌廣君) それは協定にございますところの物品それから役務提供を受けることは当然あるわけでございますが、それにつきましては、基本的には同じものを返すあるいは同じサービスで返す、それからそれができない場合あるいは不合理な場合には金銭で返すということでございます。  当然、自衛隊としても共同訓練等の場で米軍からいわば便宜供与を受ける、相互にそれを提供するということは想定しております。
  51. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 たびたび申し上げておりますから誤解はないと思いますけれども、私の発言は反米政策をとるべしとか、あるいは日米安保を直ちにやめてしまえとか、そういう議論ではありません。  そういう立場を含みに入れて、この自衛隊法の改正とかあるいはCTBTなどで中国の核実験を封じ込めるとか、こういう政策が進むことにおいて日米対中国、あるいは場合によっては日米対中国・ロシアの関係が対決的に決定的にならないかどうか。そうならないためにどういう方途を考えられているかということはどうでしょうか。
  52. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員の御懸念でございますけれども、私どもは、日米安保体制を堅持いたしまして我が国の安全を守ると同時に、我が国周辺地域の平和の維持に万全を尽くしていきたい、またそのことが広くアジア太平洋地域全体の安定にもよき効果を持つものである、資するものであると、こう考えております。そして、これはもとより中国をあるいは特定の国を対象として考えているものじゃないわけでございます。  そしてそのことは、今回行われました日米首脳会談においても明らかにされておりまして、とりわけ中国につきましては、安保共同宣言の中でも、中国がこの地域においてあるいは国際社会全体の中で肯定的な役割を果たす、建設的なパートナーとしての役割を果たすということを日米ともに大切にしている、そういうことは明らかにされておるわけでございます。そういった観点から中国との善隣友好の関係をさらに促進してまいりたいと、こういうことで各般の施策を進めております。そういったことで、今御懸念のような事態にはならないと思いますし、これからもそういう方向で努力していくつもりでございます。  なお、CTBTについてのお話がございましたけれども、これも決して中国を封じ込めるという話じゃございませんで、核のない社会、世界をつくり上げていくというのは世界人類共通の目的でございますし、とりわけ我が国の場合はそのことを大切にしていかなくちゃいけないという立場でございます。その努力の一環といたしまして、CTBTいわゆる包括的核実験禁止条約を何とか早期に、この秋にも締結に持っていきたい、こういうことで、中国にもそういった国際社会の努力に歩調を合わせてやっていただきたいと、こういうことを働きかけているところでございます。
  53. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 大臣のお気持ちなり方針なりは毎回伺ってよくわかっているんですが、私が心配しているのは、そういう方針にもかかわらず、中国なり相手方がどういうふうに考えるか、感ずるかということを問題にしているわけです。この日米安保という国策を堅持する場合、アメリカの世界政策を一〇〇%支持する、こういう含みがあるとすれば、これはよほど慎重に考えませんと、どうもアメリカの世界政策には腕力を使う傾向が強過ぎるじゃないかと。  大体、基本的に言えば、我々が人生を考える場合にモラルとパワーが二大要素ですね。政治でいえば、これは平和理想とかあるいは軍事力発動とか、こういう二つの大きな要素があります。この要素の中でアメリカの世界政策を考える場合にはもちろんモラルは大いにあります。  例えば、太平洋戦争に負けたときに、敵であった日本に直ちに回復の援助をしたということなどはアメリカが持っているモラルの大きなあらわれだと思いますけれども、実際に世界をどうするかという、今日では唯一の超大国と言ってもいいアメリカが、例えばイランに対して、これはカーター大統領以来失敗続きでありますけれども、どこまでイランをアメリカの世界政策はいいなと思って承服するか。あるいはこの間の湾岸戦争でも、これはハイテク兵器によって圧倒的に勝ったということは事実でありましょうけれども、それによってフセイン政権が覆ったわけでもないし、それによってイラクが平和国家の方向に新たなる成長を始めたということもありませんし、その後の経済制裁によって最も困った者は、国民であり、女性であり、子供であり、老人であり、病人である。  こういうようなことで、ややもするとやはり腕力を振るったり経済制裁をやりがちなアメリカ一つの性格、モラルはあるけれども、ウエートは軍事力なりパワーの方にある。こういうことに対して、繰り返しますけれども、米国を敵視するわけではありませんけれども、パートナーとしてそういうアメリカの性格を軌道修正するというお考えはないですか。
  54. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 政府といたしましては、日米関係、これは我が国の外交関係におきましても、いや、我が国の政策運営全般におきましても極めて大切な関係だと思っております。  しかし、そう申し上げますことは、何もすべて米国の言うところ、あるいは行うところをよしとして、それと全く同じ行動をとっていくということを意味するわけではございません。委員先ほどおっしゃいましたアメリカの世界政策を一〇〇%支持するということではございません。我々は、米国との間で民主主義であるとか自由であるとか、そういった価値観を共有しておりますし、経済あるいは政治、あるいは文化、あらゆる面で極めて幅広い、また濃密な関係を持っております。それでまた、将来ともこれを深めていかなくてはならない。そういうことはございますけれども、具体的な政策におきましては、我が国はあくまで自主的な判断に基づいてやるわけでございますので、それは意見の違う局面も多々ございます。  今、その例示されました、例えばイランとの関係につきましても、我が国は個々の外交関係を維持しながら、いわば批判的な対話は続けていく、そういった政策をとっておるわけでございまして、またそのほか東南アジアの諸国との関係につきましても、いろいろ違いがあるのは事実でございます。目的は同じであるとしても、今、委員はモラルとパワーとおっしゃいましたけれども、そういったものをどういう組み合わせによって使うかという点につきましては、いろいろ違いが出てまいります。  そして、米国に対して軌道修正を求めるつもりはないかというお話がございましたが、軌道修正云々とは申しませんけれども、具体的な政策の運用に当たりましては、我が国判断を先方に伝え、いろいろ相談していくケースは決してまれなことではございません。むしろしょっちゅうやっている、こう申し上げてよろしいかと存じます。
  55. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 日本アメリカと対等の親友である以上当然のことでありますし、きょうの御発言は大変力強い、私の心に深くとめておきたいと思います。アメリカからも敬愛される間柄でありませんと、これは日本が周辺諸国から信頼されるということにはならないわけであります。  これは今ちょっと思いついて申し上げるんですが、防衛庁の方にお伺いします。  戦争をやる場合も政治と統帥、この関係は非常に難しい問題がありまして、ずっと前の朝鮮戦争のときに、マッカーサー司令官が核兵器を使う、こういう意思表示をしてトルーマン大統領と対立したのは極めて新しい政治と統帥の対立関係であります。この場合に、トルーマン氏が英断を持って元帥を罷免した。こういう場合には政治の方が優越したわけであって、おかげで人類は三発目の核兵器をこうむらないで済んだということになりますけれども、今度、朝鮮がそういうように政治が優越するかどうか。  例えば、私は情報は的確じゃないかと思いますけれども、北朝鮮軍が一時間そこそこでソウルに殺到するというような場合、今度の戦争はそういうのろのろした戦争じゃないと思うんですね。恐らくその前にアメリカの核兵器が物を言うだろう、そういうことは北朝鮮も承知の上でボタンに手をかけてやるだろうというようなことは当然考えられるわけでありまして、モラルというのは、これは政治がやるべき問題ですね。  軍人は、これは勝ちさえずればいいので、相手のことなんか考えておる余裕はないので、マッカーサー元帥の判断もその限りにおいては必ずしもいけないとは言えない。あのとおりやっておれば戦争も早く済んだだろうし、アメリカ軍の損害も少なかっただろう。そういう差し迫った、瞬時を争うような戦争の段階に今我々がある。  この核戦争のボタンを押すのはアメリカでいえば大統領という政治家である、最後的決断は政治家がやる、こういうことになっておるわけでありましょうけれども、それならばそれなりに、日本の政治家とアメリカの政治家の間に核戦争時代におけるアメリカのあり方、それと、親友である日本が当然アメリカの統帥に対しても善意のアドバイスをする立場を確保しませんとこれはよくない、こういう気がするんです。  そのあたりについてのお考えをぜひ明確にしておいていただきたいと思います。
  56. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 防衛庁とおっしゃいましたけれども、今、御質問をお伺いしているうちに、これはすぐれて政治にかかわる問題だと存じますので、私の方から御答弁させていただきたいと存じます。  委員指摘のとおりでございまして、政治と軍事との関係というのは、我々は本当に慎重に考えてまいらなくちゃいけないと思います。そして、他の主要国でも共通しておりますけれども我が国の場合も、自衛隊のいろいろな行動につきましては厳格なシビリアンコントロールという仕組みがございますし、また現実にもそういった体制のもとで運用がされておるわけでございます。  御承知のとおり、自衛隊の最高の責任者は内閣総理大臣でございますし、そのもとにやはり政治家であり、いわゆる文民でございます防衛庁長官がおいでになる、そういった格好で運用されておるわけでございます。  そうしてまた、日米間でというお話もございました。そして、米国の統帥に対してもというお話がございましたけれども、これは米国自体の統帥に対して直接我が国が物を申すということは、これはどうなんだろうか。あるいは統帥だけではなくて、米国の安全保障政策のあり方はこれはやはり基本的には米国の判断でお決めになることでございますので、それはお互いの主権国家の立場からして、そこにはおのずから節度は必要だと思います。  しかしながら、一般的に安全保障問題についていろいろな協議や対話をしていかなくちゃならない。とりわけ、我が国と米国との間は日米安全保障条約に基づいたいわゆる同盟関係にあるわけでございますから、その枠組みの中でも日常的に政治レベルにおけるそのような安全保障についての認識あるいは意見、場合によっては政策のあり方についての協議、対話というものは持たれておりますし、今後ともそれは維持してまいらなくちゃいけないと、こう思っております。  なお、そういった政治レベルでの、あるいは行政レベルでのいろいろな対話がある。そしてまた、そのもとで具体的にいわゆる自衛隊とそれから米軍との間のいろんな協力関係、共同関係につきましても、先ほど申しましたような政治レベルの基本を踏まえながら、具体的な行動においてどうすべきかという協議もそれは当然あるわけでございます。
  57. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 現実的な作戦において、日本総理アメリカの大統領にとやかく言うことはあり得ないのは当然の話ですが、こういう核兵器時代に政治として考えるべき深長といいますか、ある意味の歴史に対する哲学といいますか、そういうことについて十分に語り合っておく必要があるということを申し上げたわけであります。  さらに進めば、我々現代の人類にとって大きな問題は、核戦争によって勝敗のいかんを問わず、全人類的なあるいは全生命がいわゆる核の冬によって破滅するということと並びまして、やはりこの間、アメリカのレスター・ブラウン氏が来て盛んに議論したようでありますけれども、二十一世紀は飢餓の世紀であると。これなどは、まあ私なんかは幾らかかじっておりますからやや心配し過ぎた見解ではないかと思いますけれども、しかしこれからそれに対して十分の努力をしなければ、やはりブラウン氏の予言した方向が現実となる可能性は非常にあるわけです。  それから地球環境の悪化、これはもうだれでも知っていることでありまして、今のままで行けば生物は生きていけないということはごくプリンシプルとして肯定せざるを得ない。それを突破する一つの大きな活路はやはり戦争をやめることしかないわけです。一年に何十兆円というお金を使い、アメリカはその四割以上の金を使って戦争対策をやっておるわけでありますけれども、人類は戦争やめようとしない。  この前も申し上げましたけれども、核ミサイルは人類が持ち得る武器の最終の兵器で、それ以上の兵器は戦争学上考えられない、それから先はこれはもう戦争絶滅といいますか、戦争放棄といいますか、それをやらなければ生きていけないというぎりぎりの関頭に立っておるということは、アーノルド・トインビー氏の見解を借用して申し上げたわけであります。  我々が食べ物について、あるいは地球環境の改善について本当に確信を持って前進するためには、戦争放棄という重大問題を乗り越えなければいけないと思う。戦争に使っている科学技術は最高のものでしょう。それに使っている各国の膨大な予算、人的な活動力、そういうものを食糧生産なり地球環境の改善なりに充てれば、非常に明るい前途が開けるのみならず、これはどこの国も賛成するはずの方向であることは間違いない。  アメリカのペリー国防長官が、日米安保だけではアジア太平洋の平和と安全を守るには十分じゃないと。中国もこの中に入ってもらい、韓半島の二つの国、それにロシアも入ってもらえば、これは非常な安定的な状況があらわれるだろうということを聞いたことがありますけれども、この人は相当な政治家ですね。つまり、そういうような関係ができれば、安保ということじゃなくて、むしろ軍縮あるいは半ば永久的な平和の方向に六つの国が力を合わせるということを内包した発言ではないか。ちょっと買いかぶったかもしれませんけれども、そういう発想がアメリカの側にあるということですね。  同時に、この前申し上げましたように、アメリカの言論界の一部に、アメリカは実力は持っておるけれども気力が衰えた、年老いつつある、日本の若々しい力が必要だということの議論もあるようでありますけれども、もっと若いのは中国、インドですよ。これはもうこれから先、大いに経済成長することはほぼ間違いがありませんし、下手をすればそれらの多くの部分を軍事力に使うということも十分考えられることであります。  アメリカがその言のごとくやや衰えていくという場合、これから先の地球世界のあり方なり運命なりを考える場合に、やはりアメリカが先に音頭をとって、まず六カ国の安全保障、それを一歩進めれば私が申し上げているように三十年間の不可侵条約を結ぶと。こういうことも、今日から見れば机上の理想論のように聞かれるかもしれないけれども、歴史を掘り下げて前途を考えれば決してそうではない。心の一部に、あるいは防衛ということの奥底にそういう考え方がありませんと、非常に絶望的な前途しか考えられないということになりますので、そういうこともできれば外務大臣と向こうの国防長官ぐらいが胸襟を開いて十分話し合うと。日本防衛庁長官でも結構ですけれども、重ねてお願いをいたします。
  58. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員の極めて幅広い御質問でございます。該博な御知識、また御見識にのっとった非常に深遠な哲学も含んだ御論議でございますので、よく御答弁申し上げられるかどうか自信はございません。  確かに、委員指摘のように、食糧の問題あるいは地球環境の問題を含めまして、今地球社会全体として非常に難しい時期に差しかかっている、それはそのとおりだと思います。しかしながら、かってローマ・クラブの提言なんかございましたけれども、私はそういったネックというものが決定的に地球社会の将来を規定してしまう、そうしてこれからは望みがないんだという考え方はとらないところでございます。過去の人類の歴史においてそういったネックが出てきましたときに、常に人類の英知、そうしてその努力によりまして活路を開いてきたと思います。そういったことを考えますと、我々もこの問題に果敢に挑戦し、何とか将来に向かって道を開かなくちゃならぬと思うわけでございます。  そういった場合に、委員指摘になりましたように、やはり戦争というものをなくさなくちゃいけない。そして、それに振り向けられております科学技術の力であるとか、あるいはヒューマンリソーシスなどを、より建設的なといいましょうか、地球社会にとって一番大切なバイタルな問題を研究していく、またそういったことを通じて活路を開くことも可能になるのではないかという御主張、そのとおりに考える次第でございます。  また、そういったことを踏まえながら、当面の安全保障の問題についても二国間の安全保障だけにこだわるのではなくて、より広い仕組みを考えるべきではないか。例えば、北東アジアの地域を例にとられまして、ロシア等々も入ったそういった仕組みをつくること、さらに言えば将来に向かって三十年の不可侵条約をと言われました。その三十年の不可侵条約という具体的なアイデアについては、私は現時点において必ずしも現実の課題として取り組むような条件は整っているとは思いませんけれども、しかし少なくとも安全保障の面でのバイラテラルだけではなくて多国間の対話を強めていく、体制を超えてそういった対話に努めていき、信頼醸成を図っていって、そして将来に向かってのいろいろな条件を整えていくということが非常に大切なことだと思っております。  そして、米国の政治の指導者の中においてもそういったことを念頭に置いているのではないかという御指摘がございました。そうだと思いますし、我々日本といたしましてもそのようなことを考えてまいらなくちゃいけないと思います。  半ば永久的なというお話がございましたけれども、カントの「永久平和のために」というお話もございましたし、さらに古い歴史から常に人類というものはそういうものを理想として持ちながら、しかし現実の与えられた諸条件の中で一つ一つ具体的にその方向へ向かって着実に歩みを進めていかなくちゃならないと、こういうふうに考えている次第でございます。
  59. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 ローマ・クラブの話も出ましたけれども、今から見れば心配し過ぎですけれども、当時としては非常にアップ・ツー・デートな警告であった。レスター・ブラウン氏の警告もそれに似たような歴史的役割を持ち得るんじゃないかと思います。  そういうもろもろの要因を考え合わせまして、例えば沖縄の問題が私は非常に気になるんですけれども、沖縄の解放ということは、飛躍して考えられると困るのでありますけれども、やはり日米安保がなくならぬ限りは沖縄の解放はあり得ないんじゃないか。沖縄の解放があり得ないということは広く見れば日本も解放されていないと、こういうことになり得るわけでありまして、したがって、さっきの話ではありませんが、日米安保というものをパワーで解決するんじゃなくて、モラルあるいは努力の結果、ちょうど熟したカキが自然に落ちるように日米安保なるものが不要になってくる、そういう条件を少しでも早く熟させると。  時間が来ましたので終わります。あとはお察しください。
  60. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 ACSAですが、一九八八年からずっと話題になっていた部分がさまざまな打ち合わせ、相談でここまで来たということで、確かに一歩前進だと思います。きのう以来、同僚の皆さん方からさまざまな詳細な質問がありまして余り聞くこともないような気もするんですが、これを素直に読んでみて、またそれから周囲の事情を見て幾分わからない点がありますので、お尋ねをしたいと思います。  この適用範囲というのが三つありますね、共同訓練PKO、それから国際緊急援助。この三つの中でやっぱり重点は共同訓練というあたりにあるように現実にも思うんですが、これはどうなんでしょうか。
  61. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 日米間で種々検討の結果、委員指摘共同訓練、国際連合平和維持活動、それから人道的な国際救援活動三つ対象を絞ったわけでございますが、ニーズということでいきますと共同訓練は非常に高いものだろうと思います。  現に、日米間で共同訓練が行われております。協定がない状況でも、非常に部分的ではございますけれども物品役務提供等というものが行われていることは事実でございます。共同訓練を円滑に実施するためにはこうした協定が必要であるという意識は、日米双方に非常に高いものがあるというふうに我々は承知しております。
  62. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 共同訓練でお互いにちょっとないものを借りると、こういう話ですね。だけれども、常識的に考えると、共同訓練をやろうというような話というのは相当大きなイベントであって、さあ、あしたやろうというような話じゃないですな。あらかじめ相当準備をして計画を立てて、そしてどの海域でやるとか空域でやるとか、どこの場所でやろうというようなことで、相当綿密に軍人さんたちのことですからやるわけなんです。そのときにいきなり、ああ、あれが足りない、これが足りないというような話というのは余り起きないんだろうと思うんですが、これはどうして共同訓練でこういういろいろな品目についての相互提供ということが必要になって、どうしてもこの協定をつくらなきゃいかぬという話になるのでしょうか。
  63. 秋山昌廣

    政府委員(秋山昌廣君) 今御指摘のとおり、日米共同訓練の実施に当たりましてこれを効果的に実施するために、事前の日米間の調整というものは確かにかなり行われるところでございます。訓練の日程、場所、あるいは訓練項目、それから実施手順等でございます。  しかし、例えば海上での訓練におきまして、故障ですとかあるいは運用上の理由から補給艦が随伴できない、あるいはうまく運用できないという場合に、油、水、食糧等の提供をお互い要請し合うというニーズはかなりあるわけでございます。あるいは、共同訓練相手側の基地とか演習場あるいは訓練海域に進出いたしましてやる場合について考えてみますと、例えば自衛隊米軍の演習場あるいは訓練海域に進出してやる場合、本来であれば自衛隊が民間からいろいろ調達しなければならない役務物品といったものが適時適切に調達できない、そういうときにこのACSAを活用いたしまして米軍から一時的に借りる。あるいは、運用上の都合で当初の計画より参加規模が急に増加するといったようなこともあるわけです。また、ハプニングというわけではございませんけれども、傷病者が発生した場合に、これはタイミングよく輸送したり衛生上の措置をとるといったようなことが必要になる場合があるわけでございます。  そういったようなことにかんがみまして、これまでの共同訓練の経験からいたしまして、今お願いしておりますような物品役務相互提供ニーズがかなり高いということでございます。
  64. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 今のお話で、なるほどいろんな場合があるということはわかったような気もしますが、そもそも共同訓練というのは、共同訓練のために共同訓練をやるんじゃなくて、有事平時という言葉をお使いになりたくないんでしょうからお使いにならなくてもいいんですが、やっぱり何かに備えてこれはやっておこうという話だろうと思うんですね。それで、今おっしゃったようなさまざまなケースが、一たん事が起こったときにふだんからそういうことをやっておくとうまくいくと。事が起こったときにという意味が相当含まれておるのだろうと思うんです。  それで、きのうからのさまざまな質問のお答えで、有事平時というような話じゃないんだということですが、それはずっと平時訓練だけやっていれば済むというような世界になれば非常にいいんですが、そうじゃないかもしれないと、こう思うから国防というものも必要になるし、安全保障の外交面でもいろんなことが必要になるんでしょうから、大変巧妙にいろいろなことをお話しになったけれども、結局は事が起こったときにどうするかということが頭になくてやっていらっしゃるんじゃないんでしょうね。
  65. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) それは委員指摘のとおりでございまして、訓練そのものが目的じゃございません。そもそも日米安保条約は一体何を目的にするかといえば、我が国の安全を守ることであり、あるいは極東、我が国周辺地域の平和を守るためでございます。そして、ないことを望みはいたしますけれども、おっしゃるような緊急事態が起きたときにはそれに有効に対応しなくちゃいけない、当然のことでございます。  したがいまして、いわゆる我が国有事というような事態になった場合に、当然日米共同対処をいたします。その共同対処がきちんとできるようにということを考えて平素から訓練しておると、そういうことになるかと思います。
  66. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 まことに結構で、そうでないと本当に意味がないので、兵隊さんを遊ばせているというような話になりますのでいいと思います。  そうすると、きのう以来、あるいは最近のこのACSAに関する話というのは専らそこらに集中していると思うんですが、周辺で何か起こったときに、米軍戦闘行動をやったりしたときに、一体これはどうなるのかねというところに相当議論が集中しておりますね。そのときには、戦闘行動に従事している米軍への物品役務提供はこれによってはできないということはどこを読んでも明白であると書いてあるので、確かに読んでみるとそうなるでしょうね。  それはいいんですが、大体八八年から話が始まって、実はもっと前からあるわけでしょうが、いざというときに困ることがあってはいけないというのでガイドラインの研究なんかがずっと続いているわけですけれども作戦行動をどうするかその他、最後にロジスティックスというのが入っていますね。そこらあたりが現実にいろいろ共同訓練なんかを重ねてみると困る場合が出てくる、もう少ししっかりした協定をつくってそういうことがスムーズにいくようにしなければいけないということでずっと進んできたんだろうと思うんです。  そうすると、周辺の話も非常に重要だと思うのでさらに議論をする必要があると思いますし、それには憲法解釈の問題なんかも絡んでくるのでこれもまた重要な問題だと思いますが、それはまたいつかに譲ることにして、戦闘行動に従事している米軍との間での物品役務提供というのはできないと、こう総理外務大臣もおっしゃっておりますが、これは例えば日本有事のときはどうなるんですか。
  67. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 政府として、戦闘行動に従事している米軍物品役務提供ができないと御答弁申し上げているのは、この協定に基づいてなされる物品役務提供というものはそういうものではない、こういうことを申し上げているわけでございます。  そして、ただいま委員の御質問は、いわゆる日本有事我が国が他国から侵略を受けた場合にどうするかという話でございますが、そういった場合には日米間で共同対処しなくちゃいけない。当然そのときにはいろいろな共同対処がございますが、いろんな協力といいましょうか、連係プレーには当然いろんなものが出てくるんだと思います。そういったことにつきましては、従来もそのガイドライン等である程度のものはある。しかし、これからそのガイドラインについても新しい状況を踏まえて見直し作業を進めなくてはいけない、このように考えておりまして、そのことは先般の安保共同宣言でも明らかにされているわけでございます。  このガイドラインだけではなくて、日米安保条約に基づくいろんな協力関係、その日本有事のときも含めましてどういうことをすべきかということについてはこれから研究を進めていこうということになったわけでございまして、まだその作業は始まったばかりでございますから具体的に申し上げられる段階ではございませんけれども、そこではいろいろな分野あるいはいろいろな面での協力関係について研究していくことになろうかと思います。
  68. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 そうすると、日米安保条約というのは五条、六条というような話がありますが、我々にとって一番死活問題というのはその五条ですね、要するに日本有事の場合。    〔委員長退席、理事高野博師君着席〕  大体八〇年代というのはその周辺なんということは相当忘れておって、日本は五条事態だけをしっかりしておけばいわゆる西側の安全保障の鎖の弱い部分はできないというような事情にあったために、五条、日本有事のときに一体この日米安保というのはうまく機能するのかということが中心課題だったと思うわけです。  我々にとっては、周辺も大事ですが、朝鮮半島も大事ですけれども日本有事ということがもし起こった場合に一体どうするかが一番大事なことなので、ガイドラインの研究の中にロジスティックスとかなんとかいう言葉は出てくるけれども、これは決して有事のときを想定していないですね。ふだんから必要な装備は買って供給しておこうとか、何とかお互いにやっておこうとかなんとかという、そういうことは書いてあるけれども、このACSAに、今度の協定に相応するようなところは今まで何にもなかった。  したがって、今までは日本物品管理法があってさまざまな提供に制限がある、それからアメリカの方でも相応する法律が恐らくありますね。ですから、そこらあたりは、その場その場でやっていると非常に不便であるから、お互いに協定を結んでいざというときにはきちっといくようにしよう、こういう趣旨だろうと思うんです。  ところが、今のお話でもわかりましたが、一番肝心なところはこれから研究するということになっておって、素直に読むと、おっしゃったように戦闘行動に従事している米軍には提供できない。そうすると、日本を守るために日本戦闘行動に従事したということが仮にあした起こった場合、この協定ではできないですね。
  69. 秋山昌廣

    政府委員(秋山昌廣君) 先ほど外務大臣から答弁がありましたとおりですけれども、若干補足して答弁させていただきたいと思います。  まさに我が国有事の場合ということは、法的措置の面で見ますと、自衛隊法第七十六条の防衛出動が下令されているような状況を考えるべきかと思います。そういたしますと、自衛隊法の八十八条による自衛隊による武力の行使、そういうことによりまして我が国を守るという行動が法律上手当てされているわけでございます。    〔理事高野博師君退席、委員長着席〕  そこで、実は有事法制の研究というのがございまして、これは現在の自衛隊法上の問題あるいは他省庁所管の法令の問題そういう研究が実はなされております。それに基づく立法措置なりあるいは法令上の手当てはなされておりませんが、研究は進められておりまして、防衛庁といたしましては、我が国有事の場合の法令整備について早く着手すべきだという考えを持っているところでございます。  他方で、日米のガイドラインに基づく研究というのは、御案内のとおり、侵略を未然に防止するための態勢、日本に対する武力攻撃に際しての対処行動、それから日本以外の極東における事態、こういう三つの項目で研究が進められたわけでございますけれども、二番目の日本に対する武力攻撃に際しての対処行動というのはそれなりに幾つかのケースで研究の成果が上がっているところでございます。  ただ、このガイドラインに基づく研究はお互い、米国も日本もでございますが、立法とか予算とか行政上の措置をこの研究によって義務づけているものではありませんが、それぞれの国で対処するということになるわけでございまして、我が国の場合ですと毎年つくっております年次防衛計画というところに反映をさせているところでございます。  ただ御指摘の、我が国防衛出動を下令しているような状況における日米のいわば協力形態につきまして、これは例えば八十八条に基づくところの自衛隊の作戦が、もちろん日米協力して行われるわけでございますけれども、その範囲内で済むのか、法令上の手当てが必要なのか、あるいは法令上のいろいろな整備をする必要があるのか、この辺は検討課題になっているということでございます。
  70. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 もう少しはっきりさせておきたいんですが、侵略を未然に防止するための態勢をどうするかというのが一つの研究項目。それから、日本に対する武力攻撃に際してどう対処するか、これが二つ目の項目。それから、日本の周辺で日本の安全に重要な影響を与える場合の日米間の協力、こう三つある。我々にとって一番の死活問題は二である、一というのはもちろん大事ですけれども。それを飛ばしていきなり周辺の話に飛んでしまったんじゃないかという気がどうもしてしようがないんです。  二のところは今いろいろ研究は進んでいるとおっしゃったけれども、現にこうやってあらわれてみて、向こうの軍隊自衛隊が一緒に共同して事に当たらなければいけないというときの、それこそ、ちょっと弾が足りなくなったと、インターオペラビリティーというようなことを協調しながらずっとやってきているんだろうと思うんです。  しかし、そういうときにも、いや、協定がないからできないし、弾はだめだとこれに書いてあるじゃないかというような話になってしまうと、戦争になったんだからそんなことは言ってはいられないからどんどんやってしまえということは、要するに無法状態をつくってしまうことになりますね。  ここのところは早く穴を埋めておかないと、日本の防衛自身のところの対処態勢ですね、穴があいたままほっておくことになるんじゃないかという気がしてしようがないんです。そして、今までこういうものがなくて、それぞれケース・バイ・ケースで物品管理法の解釈その他でやってきましたね。それではいけないというのでこれはできたと。これが十年間有効であるという話になってくると穴はあいたままでずっと行ってしまいはしないかというのが私の心配でありますが、いかがでしょうか。
  71. 秋山昌廣

    政府委員(秋山昌廣君) 今、むしろガイドラインの関係の御質問と承ったわけでございますけれども、現在のガイドラインは、先ほど申し上げましたように一項、二項、三項とあるわけでございます。そして、先般の日米安全保障共同宣言でこのガイドラインの見直しがうたわれておりまして、その見直しの対象として当然現在の対象となっている一項、二項、三項、これが一つ現実の問題としてあるわけでございますから、これからその見直しをどうやって進めていくかということを議論しておりまして、その過程我が国有事が外れているということはございません。これからそれも含めて議論をしていきたいというふうに考えているところでございます。
  72. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 二を飛ばしてやっていらっしゃると言うつもりはないんです、もちろんやっていらっしゃるわけですが、この物品役務相互提供というのはその中の一つの部門ですね、いわゆるロジスティックスの。それが現実の姿としてあらわれてきたのは、二を飛ばして三のところで専らあらわれてしまって、二のところに適用できないような格好になってはいないかというのが私の懸念であります。  だから、何も米軍への提供というだけじゃありませんが、つまり自衛隊米軍が共同行動をとっているときに、こっちのものがなくなって、アメリカ軍が持っているやつをちょっと貸してくれないかということにもこういうものは適用されるはずですね。そうすると、そこらあたりばこれではもう一切提供できないことになっておりますというと、事が起こったとき、それぞれの持っているものだけを抱えて必死になって戦う、しかし鉄砲はあるけれども弾がなくなったから自衛隊はもう撃ち方やめで、米軍はまだ弾があるから撃っているのをそばで見ているというような話になりかねないと思うんです。
  73. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員の御心配なさるところはよくわかるわけでございます。ただ、この協定はあくまで共同訓練等ということを対象にしておりますので、この協定に関する限りは今おっしゃるような五条事態に対する対応ということにはならないわけです。それは、間接的に訓練を通じて練度を高めておくという意味での効果はございますけれども物品役務について五条事態あるいは六条事態についてもこの協定がその対象にしているわけじゃございません。  しかし、別途、御心配されますいわゆる我が国有事の際どうするかという問題については、先ほど来防衛局長が御答弁申し上げておりますけれども、現行の枠組みの中でもできることもある程度あるし、またさらに手当てをしなくてはいかぬことについて研究がかなり進んでいるものもございますし、またこれから研究しなくてはならないものもございますが、おっしゃるとおり、その五条事態が一番大切なのでございますから、それについては今後遺漏なきよう作業を進めてまいりたい、こう思っております。
  74. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 ぜひこれは急いでやっておいていただくべきことだと思います。  それから、また日本有事の中に閉じこもりますが、今拝見しておると、例えば陣地構築なんというような演習をやりますね。そうすると、正式名は知りませんが、ブルドーザーなんかを持っている自衛隊の要するに土木をやる部隊が出ていって、一生懸命つくって三日間で一応陣地ができたというと、もうくたびれちゃって、陣地ができたら、有事のときにはそこから今度は戦闘が始まるということなんでしょうけれども訓練ですから、さあでき上がったということで演習が終わるわけです。  ところが実際は、考えてみると、日本は建設業なんかが大変に盛んでありまして、自衛隊は一生懸命ブルドーザーとかいろんな土木機械を買っておりますが、いざというとき民間のものを使えるようにしておくと物すごい戦力になるんだろうと思うんですね。  こういうこともある意味では物品役務提供みたいな話なんですが、今は政府に勝手に寄附しちゃいけないんでしょう。たしかこれはできないことになっておりますね。いろんな場合が想定できるかと思いますけれども、民間の力もかりながらいろいろできるようなこと、例えば燃料が足りなくなったらそこらじゆうにガソリンスタンドはありますから、どこかから借りてくるとかいうようなことというのは、やっぱりふだんからやっておかないといけないんじゃないかという気がするんです。  ついでにつまらないことを言いますと、例えば、昔ですが、基地の中にある燃料なんかの備蓄というものが割に少なくて困るというので、もう少し持っていなきゃいけないという話がありましたが、いや、それはそんなに要らないのであって、とにかく角を曲がればガソリンスタンドがあるから大丈夫ですと言うんですね。だけれども、いざという場合には停電なんかするんですね。停電すると、この地Fに確かにガソリンはあるんですがといっても揚がってこないんですね。一体それをどうやって揚げるか。やっぱり手押しポンプか何か買っておいた方がいいんじゃないかというような話もしたことがあるんです。  つまらない話をしましたけれども、そういうことも織りまぜて、日米間ということだけでなしに、いざというときには機動的にできるというのが先ほど防衛局長がおっしゃった有事法制というような話にもかかわってくるんでしょうけれども、ここらあたりはやっぱりしっかり足腰をやっておきませんと、冷戦のときはもう本当に無事に過ぎてよかったと思っておりますが、よろしくそのあたりをお願いいたしまして、終わります。
  75. 矢田部理

    ○矢田部理君 ACSAの問題に入る前に、軍隊慰安婦の問題について一、二点質問しておきたいと思います。  奥野元法務大臣が六月四日の記者会見で、慰安婦は商行為に参加した人たちで、強制はなかったという発言をされております。また、同じ時期に板垣正参議院議員も訪れた韓国の慰安婦の方に対して、お金が支払われないという例があったとは全く信じられない、強制的に連行したという客観的証拠はあるのかとただしたと伝えられております。  このような発言と認識というのは私は大変驚きでありまして、日本軍の行った蛮行と暴力の犠牲となった多くの女性に対して、再びそのような人権がじゅうりんされるようなことがあっては断じてならないと考えておるのであります。  外務大臣及び防衛庁長官、両者にお聞きをいたしますが、まさかこれと同じ認識に立つということにならないと思いますが、この発言に対してどうお考えでしょうか。
  76. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御指摘の発言あるいは認識は、政府の認識とは異なるところでございます。  私どもといたしましては、平成五年に官房長官が談話を出しておりますが、そのときの政府の認識、また考え方を現在の内閣においてもきちんと堅持しているところでございまして、過去に大変な苦しみを味わわれ、いまだに深い傷を持っておられる方々に対しましては、我々は深い反省の気持ちとそしておわびの気持ちを持っているところでございます。そして、御承知のとおり、少しでもそういった方々のお気持ちを和らげることはできないのかということで基金をつくりまして、その事業を今進めるべく鋭意努力しているところでございます。
  77. 矢田部理

    ○矢田部理君 一言だけ申し上げますが、当時の日本軍が直接関与した蛮行だという指摘もかねてからなされておるわけでありますが、防衛庁長官として、ただいまの奥野発言等についてどんなふうに受けとめておられるか。
  78. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) ただいま外務大臣からお話しいただきましたとおり、当時大変厳しい環境の中で大変な思いをされた方々に対して申しわけない、こういうふうに思っておりまして、国としてそのお気持ちに対して慰謝をする努力というものはすべきである、こういうふうに考えておりまして、現在、基金等をつくって努力をいたしているところでございます。
  79. 矢田部理

    ○矢田部理君 外務省、外務大臣で結構でありますが、そういう立場をより積極的に明確にするために私は申し上げたいのでありますが、先般、国連の人権委員会に対してクマラスワミ報告書とそれに明記された勧告につきまして日本外務省は、人権委員会はそれに留意しただけであって、支持したり人権委員会の意思となったわけではないと。勧告、報告書をできるだけ減殺しよう、問題をそらそうという動きを示しておりますけれども、この報告書は、特に報告者は日本の政府に協力を期待するということで、日本政府に対して数項目の強い要請をいたしております。  そういう点で、日本が犯したいわば深刻な戦争犯罪、性犯罪という人権じゅうりんに対して、国としての責任を明確にして、被害者個人に対して損害賠償を支払うべきだというのが私どもの立場、主張であります。今、防衛庁長官も申されたように、基金論ということで対処しようとしている。国民から基金を集めて、これで問題を処理しょう、そういうことに対しても激しい怒り、納得できないという声が強まっているのでありますが、外務大臣としてはどんなふうにお考えでしょうか。
  80. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先般の人権委員会におけるクマラスワミ報告書の扱いといいましょうか、それにつきましては、かつてこの委員会でも御答弁申し上げましたけれども、それはテークノートということでございまして、この問題についての我が国の国としての責任あるいは特定の行動を求めているものとは理解しておりません。  それからまた、政府としての立場は、先ほど申しましたように、過去に大勢の方々の名誉と尊厳を深く傷つけ、いまだに心に傷をお持ちになっているということに関しましては、反省をし、またおわびの気持ちを持っているわけでございます。そして、我々としては、あくまで先般設立いたしました基金の事業を通じて対応をしてまいりたいと考えておるところでございます。  委員指摘の国としての責任、損害賠償というお話でございましたけれども、それは法律的な観点から申しますならば、これは既に解決済みの問題でございまして、政府の立場は委員の御主張とは異なるところでございます。
  81. 矢田部理

    ○矢田部理君 この議論はかねてからあるわけでありますが、国家間ではある種の整理がついたとも言われておりますが、個人が持つ損害、被害についての賠償請求権、これは依然として残っていると。それに見合った政府サイドの答弁もかつてあったわけでありまして、そういう点でやっぱり政府の責任を明確にすると。それから、損害賠償という立場に立つということが、今後のアジア外交を考える上においても、それから戦後責任を果たす意味でも非常に大事だということだけを申し上げて、次の質問に入ります。  一つは、冷戦後の時代の認識でありますが、冷戦後、有事とか戦争という事態は大幅に想定しにくくなった。特に、対ソ脅威ということがかねてから害われてきたのでありますが、ソ連が、今はロシアでありますが、日本に侵攻する、攻めてくるというようなことはもう考えにくい、考える必要がないとさえ今言われておるわけでありますが、そういう認識に立つかどうか。  それから、小紛争、地域紛争的なものは国際的には残っておりますが、これも日本及びその周辺で考えてみますれば、従来に比べてその可能性は極めて低くなってきているというふうな認識に私は立つのでありますが、この二つについて外務大臣はどんなふうに考えておられますでしょうか。
  82. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) いわゆる冷戦時におきましても、とりわけいわゆるデタントだとかそういった事態が進んだ段階におきましては、我が国として必ずしも特定の国を脅威ということで考えるということはなくなってきたということは、委員も御承知のことと存じます。そして、冷戦が終えんいたしまして数年といいましょうか、かなり時間が経過いたしました。  それで、現状でどうかと申しますと、私ども、今名前を挙げられました国も含めまして、特に特定の国を対象にして我が国の防衛政策あるいは安全保障政策を考えるということではございません。確かに世界全体を巻き込むような大規模な戦争というものも可能性が極めて少なくなったということは言えると思います。  しかし一方におきまして、冷戦の時代においてはそういった世界全体を巻き込む戦争の可能性があるということがある意味ではブレーキになりまして、決定的な対立、そして戦闘行動につながることがなかったいろいろな地域的な対立関係、そういったものが、逆に冷戦が終えんしてから戦闘につながってくる。これは民族的な問題あるいは領土問題、宗教的な問題、その他もろもろの問題が戦闘につながるということが世界のあちらこちらであったということは、我々が過去数年間見てきたところでございます。  さて、そういった要因が我が国の周辺あるいはアジア太平洋地域でどうかという点になりますと、委員はその可能性が極めて少ないということをおっしゃいましたけれども、私どももその蓋然性はどうかと言われますと、これはそういうことがあるとは申せませんけれども、一般的な認識といたしまして、我が国の周辺におきましても国家間でいろいろな利害の違いあるいは主張の違いがあるということは否定できません。  そうしてまた、全体として軍備の縮小というものが世界的には進む中で、アジア地域においては必ずしもそういう流れにはなっていない。依然として強大な軍事力を持っている国がございますし、中には、その意図は別としまして、現実に軍事力の増強につながるような行動をとっている国も複数あることもこれは否定できないと思うわけでございます。  そしてまた、この地域におきまして、いろいろな地域の安定あるいは平和を目指すための努力が続けられていることも事実ではございますが、現実にきちっとそういったものを担保する、あるいは確保できるような仕組みが確固として存在するという状況には至っていないということも否定できないところでございます。  そういった意味で、我が国周辺地域にはまだいろいろ不安定な要因もあり、そしてまた先行き不透明感があるということは否定できないと思います。
  83. 矢田部理

    ○矢田部理君 この議論も本格的に本当はやりたいのでありますが、私の認識は、もう対ソ脅威はなくなった、だから日本有事は想定しにくいというのが一般常識になってさえいると。  確かに、世界には民族とか宗教とか、それから場合によっては領土その他の問題も含めてある種の紛争があることは事実でありますが、日本及びその周辺に紛争が起こる可能性は少なくとも冷戦時代よりは減っている、低いというふうに見るのがこれまた常識的な受けとめ方ではないかと思いますが、どうも最近、防衛庁、外務省も含めて、日本周辺に何か有事があるかのようなことを意図的につくり出したり宣伝したりして、日本有事から極東有事へという方向づけが行われている。そしてそれに安保再定義をのせるというねらい、動きになっているように私には思えてならないのであります。  具体的な質問をいたします。  まず、法制局長官にお願いしたいと思いますが、法制局はかねてから集団自衛権の行使は憲法に違反し、憲法上許されないという立場をとってこられた。日本自衛隊が集団自衛権の行使をする、武力の行使ということはもとよりでありますが、他の国が武力を行使したからといってそれと一体となるような行為もしてはならない、憲法上これも許されないというふうに言ってこられたのでありますが、その見解は確固不動のものと伺ってよろしゅうございますね。
  84. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) 今まで申し述べた見解は現在も堅持しておりまして、情勢に応じて変更するような見解を申し述べることはございません。
  85. 矢田部理

    ○矢田部理君 また法制局にはいろいろ個別問題についても伺います。  そういう中にあって、最近、日本周辺有事と対米支援ということが盛んに政府サイドから議論が報道されたり流れたりしてきているのでありますが、私は二つの逸脱があると思うんです。  安保条約そのものに私どもは賛成ではありませんけれども、少なくとも安保条約は条約上極東の平和と安全のために米軍日本に駐留するに当たって施設・区域を提供するということを決めただけなのであって、それを超えて後方支援をするとか集団的自衛権の一翼を担うというような議論はあってはならないのでありますけれども、どうもやっぱりそこに踏み込んで後方支援に向かっていこうと、その重要な前段としてACSAも位置づけられるかと思うのでありますが、その点が一つ。  もう一つは、極東有事だということで極東の範囲が安保改定の際盛んに問題になったのでありますが、最近極東という言葉も下がってしまった、日本周辺有事というふうに範囲を漠然とさせ実際上は拡大をしていくというのがねらい、流れかと思いますが、この二つの問題についてまず伺っていきたいと思います。  防衛庁など、外務省も含めてでありますが、四月のたしか半ばごろですか、自民党の安全保障調査会に後方支援その他についての何か文書を出したというふうに伺っております。防衛庁を中心に伺いますが、その文書を見ますると、極東などの日本周辺の有事での対米支援についてということになっておりまして、幾つかの中身が列挙されております。  その二、三を紹介いたしますと、「自衛隊による物品の貸付(洋上における給油等)」、さらには「米軍兵員、装備品等の自衛隊航空機等による輸送」などなど幾つかの項目が挙げられているのですが、日本有事ではなくて極東有事で、これに出撃をする米軍に対して洋上で燃料を供給したり、あるいは兵員輸送を手伝ったり、装備品、武器弾薬等の自衛隊機による輸送を担当したりということになれば、これは明確に集団自衛権に抵触をする、アメリカ戦闘に対する支援、軍事協力になるというふうに考えられますが、こんなことまで本格的に議論しているのでしょうか。検討課題にのせているのでしょうか。
  86. 秋山昌廣

    政府委員(秋山昌廣君) 御指摘の資料は、これは自由民主党の極東有事への対応についての議論につきまして、その議論に資するために作成した資料、それをお使いになっているかと思います。  その資料を見ていただけるのであれば、二ページの右の下の方に書いてありますように、こういったいろいろな検討課題の中には「憲法上禁じられている武力の行使との関係から、米軍の武力行使と一体化するか否かにつき整理が必要なものあり」と、これは検討しなければならないということをお断りしているわけでございます。
  87. 矢田部理

    ○矢田部理君 今、私が例示した中身、これは検討するまでもなく集団自衛権行使の重要な中身で、明白に憲法違反だというふうに思いますが、法制局長官いかがでしょうか。
  88. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) ただいま集団的自衛権の行使に当たって明白に違憲ではないかという御意見でございましたけれども、要するに冒頭に御質問いただきましたような一体化論との関係の問題になろうかと思います。  そこで、従前から申していますように、一体化論の問題というのは、個々具体的な事情、特にその配慮事情として、戦闘行動が行われているあるいは行われようとしている地点と当該支援行動の場所との地理的な関係とか、あるいはその具体的な内容とか、あるいは相手軍隊の武力行使の任にある者との関係の密接性とか、あるいは協力しようとする相手方の活動の現況とか、そのような諸事情を総合的に勘案して個々具体的に判断さるべきものであるということを申し述べていまして、ただいま委員の御質問のような所与の条件だけでどうこうということを確定的にお答えすることは極めて困難である、不可能であると言わざるを得ないと思います。  ただ、それでは御不満でしょうから、ごく一般論だけ申し上げておきますと、他国の軍隊に対する補給、輸送、医療というようなみずから武力行使を行わない行動について、それが憲法九条との関係で許されない行動に当たるかどうかというのは、要するに他国軍隊による武力の行使等と一体となるような行動としてこれを行うかどうかということを個々具体的に、先ほど述べましたような諸事情を総合勘案して判断すべき問題であるというふうに考えております。  以上でございます。
  89. 矢田部理

    ○矢田部理君 問題、設問のつくり方によるわけですが、現に戦闘行動を行っている米軍、これに日本が出向いていって油を補給する。これはだめでしょう。一体そのものだ。重要な集団自衛権の行使の一翼を担っている。さらには、戦闘行動を行っている米軍の兵員を輸送する、それから武器弾薬をそこに送り込む、それを自衛隊がやったら、これは違憲に決まっているじゃありませんか。結論だけどうですか。
  90. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) ただいま非常に限定された所与の条件のもとでどうであるかという御質問でございますけれども、確かにそのような限定された条件になりますと、米軍の武力による行使あるいは武力による威嚇と一体化されていると判断できる可能性が非常に高まるとは言えようかと思います。
  91. 矢田部理

    ○矢田部理君 それで結構です。  それから、いろいろ質問したいんだけれども日本周辺の有事というふうになってきているんですね。今までは極東有事だった。日本周辺ということで、極東の範囲を広げるんでしょうか。これはどうなっていますか。
  92. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもは、安保条約でいろいろなことが規定されていますが、その一つは、我が国が侵略を受けた場合にどういうふうに対応するか、いわゆる五条事態に対してどうするかということ。そして、いま一つは六条事態ですね、それを考えているわけでございます、安保条約上ですね。そこのところを特に解釈を改めるとか、そんなことはしておりません。
  93. 矢田部理

    ○矢田部理君 昔、極東条項、極東の範囲についての議論があって、政府の公式見解は、極東というのは「フィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域」であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれると言ってきたわけですね。今度は日本周辺地域ということになると、韓国や台湾だけでなくて朝鮮の北部、北朝鮮も入るんでしょうか。中国も視野に入れた表現でしょうか。それはいかがですか。
  94. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 極東の範囲等に関する従来の政府見解を改めたものではございませんけれども、今、委員指摘の解釈にも、明確にどこからどこまでと言うことはできないがといった部分がきちんとあった上で、それであえて言えばおおむねそんなところだと、こういう言い方になっていると思います。私どもはそういった解釈で、解釈を踏襲しているところでございます。
  95. 矢田部理

    ○矢田部理君 本当は精密な議論をしたいんです、これは大事な問題ですから。  この極東条項の説明のときにも、「フィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域」と書いてあるんです。この「周辺の地域」と、今盛んに政府筋で議論されておる日本周辺有事の「日本周辺」とは同じ言葉なんでしょうか、違う言葉なんでしょうか。
  96. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもが言っておりますのは、最近とおっしゃいますけれども、典型的には先般の日米安保共同宣言で言っております「日本周辺地域において発生し得る事態」と、これを指しておられるんだと思います。これは、何といいましょうか、その地域で起こる事態我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような地域と、だからそういったような事態が起こり得る地域という意味合いでございまして、今、委員が御指摘になりましたいわゆる極東地域についての政府見解の中で述べられている周辺地域というのとは、これは意味合いが違うものでございます。
  97. 矢田部理

    ○矢田部理君 極東のときにも日本の周辺の地域と言って、そして具体的にはフィリピン以北だとか韓国や台湾も入るんだと、こう言ってきた。同じ表現で、今度は極東の範囲をはるかに超えたペルシャ湾まで含むような、あるいはフィリピン以北ではなくてフィリピン以南も入るような広大な地域を想定している日米共同宣言になっている。  そこで問題は、安保条約の改定もせず、国会にもかけず、もちろん国民のコンセンサスも得ないまま勝手に政治宣言で問題を広げてしまっている。そして最近は、極東有事と昔は言ってきたが、日本周辺有事、周辺有事ということで問題を広げ、かつそこにアメリカ軍が出動するに当たって後方支援をすると、こういう内容が具体的に今進みつつあるという、極めて私たちにとって憂慮すべき状況が進んできていることを私は大変遺憾に思っているわけであります。  もともと安保条約には、極東有事に備えて基地の提供、施設・区域の提供だけが義務規定であるって、それを超える後方支援なんという法制上の裏づけがありますか。法制局長官、どうでしょうか。
  98. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 法制局長官の前に、まず私から御答弁申し上げます。  まず、周辺地域という言い方でございますけれども、極東の範囲に関して、政府統一見解といたしまして三十五年に出しました中では「大体において、フィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域」ということで書いてあるわけでございますが、ここで言う「周辺の地域」というのは、極東地域の中のさらに限定された一部と、こういうことを指しているというのは論理上明らかだと思います。そして、先ほど申しましたように、日米共同宣言等で言われている「日本周辺地域」というのは、その地域で起こる事態我が国の平和と安全に重要な影響を与えるそんな地域ということを申しておるわけでございまして、これは言葉としては、この両者はその意味内容は違うということを申し上げておきたいと存じます。  それから、この点は法制局長官からも御答弁あるかと思いますけれども安保条約上、我が国ができるのは区域・施設の提供だけであるというお話でございましたけれども安保条約六条できちんと区域並びに施設の提供はできるということは明定しているところでございますけれども、それならば他の協力は一切できないかといいますと、そういうことはないんだと思います。我が国としてまだほかにもいろいろな協力が可能である、このように考えております。
  99. 矢田部理

    ○矢田部理君 私は、法制上何かそれを裏づける根拠があるかと聞いている。
  100. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) ただいま外務大臣から答弁がございましたことでもう尽きるわけでございますけれども、この安保条約規定されている事項以外は我が国は一切できないという法理はございません。  憲法範囲内ならばいろいろやれることは多々あるわけでございますが、ただ、例えば自衛隊という組織の行動を伴うものならば自衛隊法上の制約があるとか、いろいろな国内法上の制約はございますけれども、その条件整備をすれば憲法範囲内では安保条約以外の国際協力も可能であるということは疑いがないところでございます。
  101. 矢田部理

    ○矢田部理君 法制上の根拠があるかと聞いておるんだ。法制局長官、政治家みたいなことはしちゃいかぬ。  次の質問に入ります。次はACSAの話に時間がなくなってしまいますので移りますが、共同訓練であれば、共同訓練目的が何であれ、この提供後方支援等々ができるというふうに考えますか。
  102. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) この協定は、日米で行われる共同訓練の際に、物品役務の面での協力ができるということを規定しているわけでございます。  共同訓練目的いかんにかかわらずかという御質問でございますが、共同訓練をどういう目的でやるかというのはこの協定とは別のところで考えられるべき話でございますから、これは防衛庁の方から御答弁いただくのが適切かと思いますけれども、それは、基本的には日米安保条約に基づいて日米がいろいろ協力していくと。特に、いわゆる五条事態のときには共同対処してまいるわけでございますけれども、それが有効に行われるためには平素から訓練をしておくことが必要である、そういうことを考えてなされるのが共同訓練であると、こう考えます。
  103. 矢田部理

    ○矢田部理君 私の方から質問しますが、平時における米軍への支援であっても、アメリカ軍訓練目的で軍事的示威行動を行ったというような場合にはやっぱり憲法上の武力による威嚇に当たる、憲法九条に抵触する可能性が強いというふうに見られるわけですが、目的によっては共同訓練だからといってできないんじゃないですか。
  104. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) これは国連憲章におきましても、また我が国憲法におきましても、武力の威嚇は行わないということは明確になっているわけでございます。したがいまして、そういった我が国憲法あるいは国連憲章、そういったものを踏まえながら結ばれている日米安保条約、そしてその枠内で行われる共同訓練が武力の威嚇に該当するということはそもそもあり得ないと考えているところでございます。
  105. 矢田部理

    ○矢田部理君 これは法制局でもしばしば議論になったところでありまして、演習だと称して威嚇をするというようなことはしばしばあり得るわけですよ、今までの過去の歴史上。だから、そういうことはやっぱり許されない。そういう訓練の際に少なくとも提供後方支援をすることはだめだということは、法制局長官、いいですね。
  106. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) ただいま、法制局でも従前しばしば議論したところであるということの意味を私はちょっと理解しがたいことでございますけれども、要するに本来の意味における共同訓練ならば憲法上問題ない。しかし、共同訓練と称して武力による威嚇に当たる行動をするのは、やはり外務大臣から答弁ございましたように、これは憲法が現に禁止しているところでございます。
  107. 矢田部理

    ○矢田部理君 ですから、目的によっては、共同訓練だからといっていいものではないというふうに受けとめておきたいと思います。  もう一つPKOとか人道的救援活動に対する提供とか支援ということがあるわけですが、この米軍の活動については武力の行使は許されている、あるいはまた国連の決議で許される場合がしばしばあるわけです。そういう場合にでも支援ができると、提供が可能というふうに考えますか。
  108. 川島裕

    政府委員(川島裕君) お答え申し上げます。  このACSA協定によりまして、国連平和維持活動あるいは人道的な国際救援活動を実施するということでございますけれども、これは国際平和協力法に基づく国際平和協力業務の一環として行うことになっております。そういう状況でその範囲内において実施可能な物品役務提供を一括に行うということでございますから、その限度において、そもそも平和協力法自体が憲法上問題のない活動として整理されております以上、問題がないと考えております。  実際問題といたしまして、平和協力法に基づきまして業務を実施する場合には、御承知のとおり平和協力法のもとで五原則がございまして、停戦合意が成立したところで出てくるのが想定されておりますので、武力が行使されているという状況のもとで自衛隊があれこれ行動するということは想定し得ないだろうというふうに考えております。
  109. 矢田部理

    ○矢田部理君 どうも歯どめが、説明はそうらしいが、歯どめがないんですよ。  もう一つ共同訓練名目で物品提供を受けて、その直後に出撃するというようなことが考えられるわけですね。事実これまでもベトナムやペルシャ湾には、事前協議が必要なためそれを脱法するために、日本を出るときには通常の行動日本の領海外に出たらそこから出撃命令が出たと称して、事前協議を受けないでペルシャ湾なりベトナムに出撃していったというようなアメリカ軍の従来の行動から考えますと、これは共同訓練だといっていろんな提供を受けながら、それを受けた直後から今度は出撃をすると、こういうことがあってはならないし、許されてはならないと思うのですが、いかがでしょうか。
  110. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) それは先ほども他の委員からの御質疑でお答えしたところでございますけれども、この協定対象にできるのは共同訓練等三つ分野に限られているわけでございまして、少なくともこの協定に基づいて物品役務自衛隊から米軍提供されるその時点におきましては、これは明白に米軍共同訓練という任務に従事しているわけでございます。
  111. 矢田部理

    ○矢田部理君 もうあと一間で終わりますが、どうも共同訓練ということだけを目的にしてこれが結ばれたとは到底考えられない。いろんな関係者の発言などが報道されておりますが、やっぱりこれを足場にして、戦時における後方支援の体制につないでいこうと。現に研究、検討も行われつつあるわけでありますが、その危険性が高いのが一つ。私は十分あれしておきたいと思います。  例えば第二次朝鮮戦争を想定して、戦争に行った、戻ってきた、共同訓練だといってそこで物品提供した、そしてまた戦争に行くというふうな脱法だってやっぱり考えられないわけじゃない。いろんなことが想定をされるのでありまして、共同訓練だからといって安心できないということを申し上げておきたいのが一つ。  もう一点で終わりますが、武器輸出三原則というのがつくられておりまして、日本のやっぱり平和政策にとって重要な柱だったのでありますが、かつてたしか中曽根内閣のときに対米武器技術だけはよろしいということで穴をあけた。またまた今度は共同訓練名目ならよろしい、PKOなら可ということで大穴をあけることになります。これは武器輸出三原則に明白に抵触するというふうに思うのであります。  そして、それはアメリカだけではなくて日本の同意という条件がかかっておりますが、同意さえあればアメリカから他国に移転することも可能だということまで今度のACSAは用意されているということになると、集団自衛権の行使という問題とあわせて重大な問題をはらんでいて、いかなる意味でも私どもは賛成できないということを申し上げておきたいと思いますが、武器輸出の関係だけ答弁いただきたいと思います。
  112. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず第一点でございますけれども、この協定上、脱法的なことを通じて、いわゆる有事あるときに適用する危険性が高いというお話がございましたけれども、私どもはこの協定で決められた規定にのっとって適正に運用していくのは当然の話だと思っております。  なお、いわゆる有事という事態が生じたときにどういうふうなことをすべきか、それは日米協力も含めてどういうことをすべきかということは従来もある程度の法的な枠組みもあり、また研究しているものもございますし、またこれからそういった研究をさらに進めていこうということは先般の共同宣言でも明らかにされたことでございまして、それはそれとして政府としてもきちんと対応してまいります。しかし、この協定はあくまで共同訓練等分野対象とするものであるということを申し上げておきたいと思います。  それから三原則の関係でございますが、これは三原則と抵触するのではないかというお話でございましたが、今回私どもはこの協定に基づいて行われる物品役務提供というものがいわゆるこれまでの三原則等に規定される武器に当たる可能性があるので、これは三原則等によらないことにする、いわば別のことでそういうことを明らかにしておりますので、これは抵触云々の話ではないと思います。  しかしながら、これも明らかにしておりますけれども武器輸出三原則等の基本理念は守っていくこと、国際紛争を助長することがあってはならないということを、基本理念はきちんと維持していくということを明らかにしておるわけでございます。それは明らかになっておりますし、また第三国云々の話もございますけれども、これのときも事前の我が国の同意のない限りというふうな歯どめがきちんとかかっておるわけでございまして、御懸念のようなことはないと思います。  それからなお、三原則に言う武器というのは非常に広い定義になっておりまして、ここで想定されるのは、例えば軍用のトラックを補修した、そのときにボルトとナットを入れたと、そんなことがこれでも三原則では武器になる可能性がありますので、だからそういったものはこれは三原則によらないこととするということを明定したわけでございまして、これが三原則の基本理念を危うくするということはあり得ないことだと考えている次第でございます。
  113. 矢田部理

    ○矢田部理君 終わります。
  114. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認め、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  115. 立木洋

    立木洋君 私は、日本共産党を代表して、日米後方支援物品役務相互提供協定について、反対の討論を行います。  去る四月、日本政府は、日米安保共同宣言によって日米安保条約の重大な改定を受け入れました。こうして、これまで政府が建前としてきた我が国の専守防衛さえも大きく逸脱し、アメリカの軍事戦略に沿ったアジア太平洋地域で自衛隊が対米支援の共同行動をとれるようにしようとしたものであり、本協定はその具体化の一つであります。  本協定は、政府の言明でも明らかなように、朝鮮半島米軍戦争を行っている場合、日本などにいる米軍共同訓練の名目で兵たん支援物品役務提供を排除しないものであります。  この自衛隊による米軍への兵たん支援物品役務提供は、これまで政府が、米軍の武力行使と一体となる支援憲法の禁ずる集団的自衛権の行使に当たるとして提供できないとされてきた制約をも事実上取り払うものであります。さらに、政府は、憲法の枠内といいながら武器輸出三原則を適用除外として、憲法の精神に基づく定めよりもアメリカを優先したことは重大であります。  その上、このような米軍への自衛隊による兵たん支援は、我が国憲法の第九条一項で永久に放棄している国際紛争を戦争、武力の威嚇、武力の行使で解決してはならないとする恒久平和主義の立場をも明確にじゅうりんすることになるからであります。  さらに、本協定は、共同訓練のほかにPKOや人道的国際救援活動にも適用するとされています。アメリカACSA国内法では、国連憲章の六章や七章までも含めて提供できることとされている点を見ても、国連の旗のもとで活動する米軍であれば、地球上のあらゆる地域に自衛隊兵たん支援できる可能性に道を開くものとしても重大な転換を画すものであります。  以上申し述べたように、日米共同宣言、ACSA締結という政府の選択は、我が国憲法の前文にも明記されているように、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」したにもかかわらず、今後の歴史に重大な禍根を残すものであることを指摘して、反対の討論を終わります。
  116. 矢田部理

    ○矢田部理君 私は、新社会党・平和連合を代表して、本協定いわゆるACSA承認に反対の立場から討論を行います。  ACSA規定は極めて抽象的、包括的であり、憲法が禁じる集団的自衛権の行使に抵触するおそれが随所に含まれています。それは単なる危惧ではありません。今国会での政府答弁や外務省、防衛庁首脳の発言において、言葉の言い回しによってその適用範囲を際限なく拡大し、事実上、有事における日米軍協力ができるところまで拡張されようとしていることが既に明らかとなっています。  ACSAの条文には、共同訓練提供された武器の部品や構成品、燃料などがその直後に戦闘作戦に用いられることを禁じる規定はありません。PKOや人道的国際救援活動に出動した米軍が、安保理の授権によって、または独自の判断で武力行使を行った場合、それへの自衛隊後方支援はしないという明確な歯どめもありません。  日本有事以外の状況下に、米軍部隊の一部が戦闘行動を行い、他の一部が日本の領域またはその周辺で待機、補給、共同訓練を行って、その間に自衛隊から後方支援物品役務提供を受けて、その後に戦闘部隊に合流または交代することにも歯どめはありません。  また、ACSAは、武器輸出三原則に違反し、米国だけではなく第三国への武器移転にも道を開いています。  むしろ、政府答弁や外務省、防衛庁などから聞こえてくる声は、それらを容認し、事実上、戦時後方支援物品役務提供に限りなく接近する方向へのものばかりであります。そして、既に戦時後方支援のあり方について検討を進める動きさえ政府部内では存在しております。  これでは、集団的自衛権の行使を禁じた憲法九条の理念と規定は否定され、事実上の改憲と言わなければなりません。ACSAを生み出し、それを方向づける日米安保共同宣言が、事実上の安保条約の大改定であるにもかかわりませず、国会の承認も経ず、国民の議論にも供せずに、日米両国政府の首脳の間だけで行われたのと軌を一にするものであります。  このように憲法も国民の意向も無視して、日本の将来とアジア諸国との関係に重大な影響を与える軍事協定を結ぶことは、私は断じて認めるわけにはまいりません。  冷戦後の世界とアジアでは、軍事同盟の強化や軍事力による大国主導の秩序維持ではなく、あらゆる紛争を話し合いによって政治的に解決する努力を積み重ね、核軍縮を初めとする大幅な軍縮と積極的な信頼醸成措置を推進し、経済的、文化的な協力と交流を促進することによって多国間の平和保障と協力仕組みをつくり出していくことが最大の課題であり、特に日米などの大国に課せられた責務であります。  日本の政府と国会がこの責務に背を向け、戦争と武力による威嚇または武力の行使を準備するようなことは、憲法も国民も許しておりません。  私は、この立場から、本委員会ACSA承認をしないことを求め、反対討論といたします。
  117. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  118. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、本件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十七分散会