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武田邦太郎君
現実的な作戦において、
日本の
総理が
アメリカの大統領にとやかく言うことはあり得ないのは当然の話ですが、こういう核兵器時代に政治として考えるべき深長といいますか、ある意味の歴史に対する哲学といいますか、そういうことについて十分に語り合っておく必要があるということを申し上げたわけであります。
さらに進めば、我々現代の人類にとって大きな問題は、核
戦争によって勝敗のいかんを問わず、全人類的なあるいは全生命がいわゆる核の冬によって破滅するということと並びまして、やはりこの間、
アメリカのレスター・ブラウン氏が来て盛んに議論したようでありますけれ
ども、二十一世紀は飢餓の世紀であると。これなどは、まあ私なんかは幾らかかじっておりますからやや心配し過ぎた見解ではないかと思いますけれ
ども、しかしこれからそれに対して十分の努力をしなければ、やはりブラウン氏の予言した方向が
現実となる可能性は非常にあるわけです。
それから地球環境の悪化、これはもうだれでも知っていることでありまして、今のままで行けば生物は生きていけないということはごくプリンシプルとして肯定せざるを得ない。それを突破する
一つの大きな活路はやはり
戦争をやめることしかないわけです。一年に何十兆円というお金を使い、
アメリカはその四割以上の金を使って
戦争対策をやっておるわけでありますけれ
ども、人類は
戦争やめようとしない。
この前も申し上げましたけれ
ども、核ミサイルは人類が持ち得る
武器の最終の兵器で、それ以上の兵器は
戦争学上考えられない、それから先はこれはもう
戦争絶滅といいますか、
戦争放棄といいますか、それをやらなければ生きていけないというぎりぎりの関頭に立っておるということは、アーノルド・トインビー氏の見解を借用して申し上げたわけであります。
我々が食べ物について、あるいは地球環境の改善について本当に確信を持って前進するためには、
戦争放棄という重大問題を乗り越えなければいけないと思う。
戦争に使っている科学技術は最高のものでしょう。それに使っている各国の膨大な予算、人的な活動力、そういうものを食糧生産なり地球環境の改善なりに充てれば、非常に明るい前途が開けるのみならず、これはどこの国も賛成するはずの方向であることは間違いない。
アメリカのペリー国防
長官が、
日米安保だけではアジア太平洋の平和と安全を守るには十分じゃないと。中国もこの中に入ってもらい、韓半島の二つの国、それにロシアも入ってもらえば、これは非常な安定的な
状況があらわれるだろうということを聞いたことがありますけれ
ども、この人は相当な政治家ですね。つまり、そういうような関係ができれば、安保ということじゃなくて、むしろ軍縮あるいは半ば永久的な平和の方向に六つの国が力を合わせるということを内包した発言ではないか。ちょっと買いかぶったかもしれませんけれ
ども、そういう発想が
アメリカの側にあるということですね。
同時に、この前申し上げましたように、
アメリカの言論界の一部に、
アメリカは実力は持っておるけれ
ども気力が衰えた、年老いつつある、
日本の若々しい力が必要だということの議論もあるようでありますけれ
ども、もっと若いのは中国、インドですよ。これはもうこれから先、大いに経済成長することはほぼ間違いがありませんし、下手をすればそれらの多くの部分を軍事力に使うということも十分考えられることであります。
アメリカがその言のごとくやや衰えていくという場合、これから先の地球世界のあり方なり運命なりを考える場合に、やはり
アメリカが先に音頭をとって、まず六カ国の安全保障、それを一歩進めれば私が申し上げているように三十年間の不可侵条約を結ぶと。こういうことも、今日から見れば机上の理想論のように聞かれるかもしれないけれ
ども、歴史を掘り下げて前途を考えれば決してそうではない。心の一部に、あるいは防衛ということの奥底にそういう考え方がありませんと、非常に絶望的な前途しか考えられないということになりますので、そういうこともできれば
外務大臣と向こうの国防
長官ぐらいが胸襟を開いて十分話し合うと。
日本の
防衛庁長官でも結構ですけれ
ども、重ねてお願いをいたします。