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1996-06-07 第136回国会 参議院 外務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年六月七日(金曜日)    午後一時三十分開会     —————————————    委員異動  六月六日     辞任         補欠選任      戸田 邦司君     寺澤 芳男君      村沢  牧君     伊藤 基隆君  六月七日     辞任         補欠選任      畑   恵君     戸田 邦司君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         木庭健太郎君     理 事                 笠原 潤一君                 野沢 太三君                 高野 博師君                 川橋 幸子君     委 員                 岩崎 純三君                 大木  浩君                 武見 敬三君                 成瀬 守重君                 宮澤  弘君                 田村 秀昭君                 寺澤 芳男君                 戸田 邦司君                 伊藤 基隆君                 立木  洋君                 武田邦太郎君                 佐藤 道夫君                 椎名 素夫君                 矢田部 理君     国務大臣         外 務 大 臣 池田 行彦君     政府委員         内閣官房内閣外         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房外政審議室         長       平林  博君         防衛庁教育訓練         局長      粟  威之君         防衛庁経理局長 佐藤  謙君         防衛庁装備局長 荒井 寿光君         外務大臣官房審         議官      谷内正太郎君         外務省総合外交         政策局長    川島  裕君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省中近東ア         フリカ局長   法眼 健作君         外務省経済局長 野上 義二君         外務省経済協力         局長      畠中  篤君         外務省条約局長 林   暘君         運輸省海上技術         安全局長    小川 健兒君     事務局側         常任委員会専門         員       大島 弘輔君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○商業的造船業における正常な競争条件に関する  協定締結について承認を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付) ○商標法条約締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨六日、村沢牧君及び戸田邦司君が委員辞任され、その補欠として伊藤基隆君及び寺澤芳男君が選任されました。  また、本日、畑恵君が委員辞任され、その補欠として戸田邦司君が選任されました。     —————————————
  3. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 商業的造船業における正常な競争条件に関する協定締結について承認を求めるの件及び商標法条約締結について承認を求めるの件、両件を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 武見敬三

    武見敬三君 商業的造船業における正常な競争条件に関する協定締結について承認を求めるの件でございますけれども、この協定に関連いたしまして、類似のものとしてはWTOがあると考えているわけであります。この新たな協定はこのWTOとどのような形で場合によって内容的に重複をするのか、また重複することによって生じてくる問題はないのか、この点についてお聞きしたいと思います。
  5. 野上義二

    政府委員野上義二君) 御説明申し上げます。  御承知のように、船舶というのは、注文に応じて一隻一隻つくられたり、それから買い手がその国にいない、便宜置籍船の問題でございますけれども、そういったような問題がございまして、WTOにおけるいわゆる不当廉売関税、アンチダンピングとか、それから補助金相殺関税等に関する措置が極めてとりにくいエリアでございます。そういった意味から、この新たな造船協定をつくって、補助金であるとか不当廉売、ここでは加害的廉売と言っておりますけれども、そういった問題に対応するという形になっております。
  6. 武見敬三

    武見敬三君 この協定はこれから日本及びアメリカが批准することによって発効するというふうに伺っているわけではありますが、我が国造船業界の中では、我が国の非常に複雑なあるいはわかりにくい取引慣行等対象になって、こうした協定が乱用されるようなことがありはしないかというような危惧も伺ったわけでありますが、この点についてはどうお考えでいらっしゃいますか。
  7. 野上義二

    政府委員野上義二君) いわゆる加害的廉売に対する措置が乱用され、国際貿易に対して不当な障害になるべきでないということは、この協定の重要な原則の一つとして規定されております。  それから、この乱用、悪意的な運用を防止するためには協定上種々の規定が置かれており、恣意的な運用を防止するための措置協定上に盛り込まれております。例えば、我が国に存在する造船業者に対して他の締約国よりそういった恣意的な加害的廉売に関する納付金の要求というようなものがあった場合には、我が国当該相手国に対し協議をまず要請いたしますし、協議で解決が得られない場合にはいわゆる紛争に関する小委員会、第三者のパネルの設置を要請することができるようになっております。
  8. 武見敬三

    武見敬三君 この協定に関しましては、今お話も伺いまして、基本的に賛成でございます。  次に、商標法条約締結についてでございますが、この商標法条約というのは申請手続簡素化を図ることがその目的であって、これだけでは商標権侵害等知的所有権侵害に対する効果というものは十分ではないだろうというふうに考えるわけでありますが、実際にこうした知的所有権侵害が多発する加害国において、いかなる国内法上または執行面における整備が必要となるのか、お伺いしたいと思います。また、どういうふうに我が国としてそういうことを働きかけるのか、伺いたいと思います。
  9. 野上義二

    政府委員野上義二君) 今、先生指摘のように、本商標法条約手続簡素化及び調和でございますので、知的所有権保護とは直接にかかわるものではございません。  しかし、知的所有権につきましては、従来より、工業所有権保護に関するパリ条約でございますとか、WTO協定に含まれております知的所有権関連貿易措置に関する協定TRIPS協定と言っておりますけれども、そういった多数国間の協定が作成されておりまして、知的所有権侵害についてはこういった条約、多数国間の取り決めに基づいて各国保護を図っていくということでございます。  また、いわゆる知的所有権侵害の問題が起こりやすい国につきましては、知的所有権の問題についての啓蒙とか、それから体制整備に関する各種の協力、それに加えまして二国間、多数国間での協議を行っていかざるを得ないと思っております。  我が国といたしましても、そういった観点から、WIPOの場でございますとかWTOの場でございますとか、それから最近のAPECの活動を通じまして、主として開発途上国でございますけれども、そういった国における知的所有権に関する人材育成とか制度の整備といった点について協力している次第でございます。
  10. 武見敬三

    武見敬三君 台湾APECには加入しておるわけでございますけれども、この商標法条約に参加する権利を現実には有しておりません。この場合、台湾における知的所有権保護の強化等々を考えた場合に、実際にこの条約はどういうふうにかかわりを持ち得るのか、あるいは間接的にではあれ効果を持ち得るのか、その辺をお聞きしたいと思います。
  11. 野上義二

    政府委員野上義二君) 御指摘のように、商標法条約締約国となり得るのは、WIPO加盟国であること及びその特定の要件を満たす国及び政府機関のみとなっておりまして、台湾はこれのいずれにも該当いたしません。  台湾につきまして知的所有権保護をどういうふうに図っていくかという問題につきましては、日本台湾関係が非政府的関係、非政府関係であるということを踏まえて対応する必要はございますが、他方、現在台湾WTO加盟交渉を行っております。したがいまして、台湾が独立した関税地域としてWTOに参加した場合には、TRIPS協定による知的所有権保護義務というような問題も出てくると思います。
  12. 武見敬三

    武見敬三君 この商標法条約についても了解をいたしました。  一般質問一つだけ防衛庁の方にしたいと思います。  最近起きた海上自衛隊リムパック派遣部隊事故に関連してでありますが、その後の事故調査の現状と今後の対応等についてお伺いをしておきたいと思います。特にその中で、発生原因が人為的なものであったのか、あるいはそうではなかったのか、その辺について、どの時点でそれが明確化され、かつそれによって責任の所在を明らかにして、以後こういうことが起きないような体制整備していくのか、その考え方についてもお伺いしておきたいと思います。
  13. 粟威之

    政府委員粟威之君) 今回の事故は大変遺憾なことだということで、私ども大変重く受けとめておるところでございます。  事故後、これまでにどういう体制対応をとったかということでございますが、事故が起きましてすぐ海上自衛隊米海軍によって現地において事故調査を開始したところでございます。さらに、昨日、海上自衛隊の中に監察官を長とする艦船事故調査委員会というものを設置いたしまして、本格的な究明に当たることとしております。その事故調査委員会のメンバーのうちの四人を、来週の月曜日でございますが、アメリカに派遣して、現地でも事故調査に当たらせるということでございます。  それから、今この船はリムパックという訓練をやっておる最中でございますが、CIWSの実弾を積んだ訓練は、演習はもちろん、国内においてもこの原因がはっきりいたしますまでは当分中止することにしております。  さらに、今、先生の方から人為的とかというときはどうだというお話がありましたが、事故調査の結果につきましては、今申し上げたような体制でさらにアメリカとも協力をしながら事故調査を今やっておりますが、一般的に事故調査の場合には原因可能性があるものについて総合的に調査をするということからちょっと時間がかかるかもわかりませんので、どういうことが原因で今回の事故が起きたかということについては今まだ申し上げられる段階にはありませんが、私ども、事の重大さにかんがみ、鋭意徹底的に事故調査をやつておるところでございますので、いましばらく時間をいただきたいと思います。  さらに、どういう結果になるかわかりませんが、もしこの事故人為的ミスを伴うようなものであれば、当然のことながら厳しく処分をされると思いますが、これが機材上のミスでございましたら、これについても徹底的な原因究明によって安全対策を実施したいと思います。  いずれにいたしましても、原因究明をいたしまして、こういう事故が二度と起こらないような十分な安全対策もやりたいと、こういうふうに考えている次第でございます。
  14. 武見敬三

    武見敬三君 ありがとうございました。
  15. 戸田邦司

    戸田邦司君 平成会戸田でございます。  私は、商標法条約と、それから商業的造船業における正常な競争条件に関する協定、いわゆるOECD造船協定について質問したいと思います。  商標法条約につきましては、既にもう国内法が制定されており、それについての国内法の一部改正というようなことで今回措置されるということでありまして、今後運用の適正を図っていただきたい。また、先ほど武見委員からも御指摘ありましたが、諸外国との関係、特に発展途上国との関係については注意深く運用をしていかなければならない点があるのではないかと思いますが、その辺よろしくお願い申し上げたいと思います。  それから、OECD造船協定でございますが、これにつきましては既に国内法運輸委員会を通っていまして、法律が成立しております。そこで私も幾つか質問させていただきましたので、それらの点についてはできるだけ重複を避けてお願い申し上げたいと思います。  実は、私はこの協定交渉当事者でありました。かなり長い期間にわたってアメリカあるいはEC交渉を続けてきたというようなことでありますが、そもそもはこれは一九八九年に、SCAと言っておりますがアメリカ造船業者の協会、これがノルウェーと韓国と当時の西ドイツ、それに日本、これを不公正な助成を行っているということで、あの悪名高き通商法三〇一条によってUSTRに提訴したということに始まっております。  OECDでこれまでそういった競争条件などについて国際的に話し合いが行われてきたというようなこともありましたので、これをOECDの場に移して検討を進めるというようなことになりまして、交渉の仕方がバイからマルチになったということですが、私はこの協定の仕上がりを見ましても、結果的にそれが我が国としては正しい選択であったと思っております。交渉が五年間という非常に長い時間を要しておりますが、これにつきましては、アメリカが途中で政府代表がかわるというようなことがあったり、それからブッシュ政権からクリントン政権にかわって交渉の立ち上がりが非常におくれたといいますか、空白期間ができたというようなこともあったと思います。  そもそも日本については、日本が相当の助成を行っているのではないかという神話に基づいてアメリカがそういうような問題提起をしたわけでありますが、この交渉途上EC日本あるいは韓国ダンピングを取り上げまして、政府助成だけではなく、そのダンピングも問題にしてきたというところが一つの大きな点であったかと思っております。このダンピングにつきましては、ECダンピングに関する協定を置くべきだということを自分で主張しながら彼らはなかなかドラフトを変えてこなかった、そういうようなこともありまして、非常に長引いた原因ではなかったかと思います。  この造船業界というのはマーケットが一つとよく言われておりますが、世界じゅうの造船業者造船のクライアントであります海運会社をねらっているというようなことで、先ほどお話がありましたが、海運につきましても便宜置籍というような複雑な運航の仕方をしているということで、その辺がこの協定最終結論を得るのに非常に難しい点ではなかったかと思います。通常の商品のように輸入されるというようなことで国内市場に与える影響ということであれば、ガットなり現在のWTOなりそういうような場で扱えたと思いますが、国によっては船は外国に発注した場合に国内で通関しない、そういうようなこともある。そういうような点が非常にこの協定を特殊なものにしているかと思います。  交渉途上で、議長あるいは事務局が中立てなかったというような感も強く持ちました。途中から議長を引き受けましたスウェーデンの駐OECD大使ソルマン大使ですが、この人はこの協定がまとまらなければ大使をやめるというような決意までしてこの協定の取りまとめに当たったということであります。そういうようなこともありまして、一九九四年十二月二十一日、問題が起こってから五カ年以上を要して、ようやくその協定の採択が可能になったということであるかと思います。  私もこの協定を注意深く読み返してみましたが、我が国の利益といいますか、我々の考え方といいますか、日本考え方が非常に強く協定の中に刻み込まれているというか、そういう意味では非常によくできた協定ではなかったかと思います。  この協定の中身として二つの柱があります。一つは公的な助成一つはアンタイダンピングということですが、助成措置としてはヨーロッパサイドの直接助成、それとヨーロッパあるいは韓国におけるリストラ助成、それにアメリカ沿岸法、これは間接助成でありますが、その沿岸法によりまして、アメリカのコースタルサービスをする船舶に関する限りはアメリカ造船所で建造しなければならない、そういうようなことになっているわけです。  その中でアメリカアメリカとして問題にされた沿岸法、これについては交渉途上アメリカ側はこれぐらいいいじゃないかというようなことを相当強く言っておりました。鯨とサケという例えをしまして、日本は鯨じゃないか、我々はサケぐらいだというようなことまで言って、これを何とかそのままにしてもらえないかというようなことを言っておりました。  この協定を読みますと、沿岸法は一応認めておりますが、期限を切って見直す、そういうことになっております。アメリカ国内事情考えますと、これは非常に難しいことではないかと思いますが、その辺について外務省はどのように受け取っておられるか、お願いしたいと思います。
  16. 野上義二

    政府委員野上義二君) 委員指摘のように、アメリカ沿岸法の問題というのは非常に長い歴史を持った非常に難しい問題でございます。しかし、本協定におきましては、三年後に加盟国権利義務沿岸法によってその均衡が保たれるのかということを考慮して見直すということが規定されております。見直しの結果によって、締約国団は、沿岸法のもとで製造される船舶引き渡し量についての年間の基準量というものが設定されていますけれども、それをまた見直すことも規定されております。  これから三年先に、昔からあるこの沿岸法の問題がどういう形で対応され得るかということについて見通しをすることは、正直申し上げて非常に難しゅうございますけれども、取り決め協定規定に従って見直して、各国と協調してこういった問題について対応をしていくということだと思います。  いずれにしても、アメリカは御指摘のように船の生産量の非常に低い国でございますので、そういった点も考慮に入れるということになるかと思います。
  17. 戸田邦司

    戸田邦司君 アメリカというのは時々そういうようなものを非常に強く主張するといいますか、そういうところがあるように思います。今、WTO海運問題をやっておりますが、あれもその一つのあらわれかと思います。各国にそういうようなきちっとしたフェアコンペティションを要求するということであるなら、やはり自分たちの方もそういう点は例外なしにきちっとすべきじゃないかと我々は思うんですが、彼らの理屈ではなかなかそういかない点があるようです。また、アメリカは行政府と立法府との関係が非常に難しいというようなところもあるかと思いますが、この見直しについては締約国団で注意深く見守りながら運用していただきたい、そういうふうに思います。  それから、この協定は相当膨大な、しかも全く新しいコンセプトといいますか、そういうようなもので書き上げられた協定でありますが、この協定締結するに当たりまして、我が国は、外国造船事業者不当廉売我が国海運業者または関係会社に対する不当廉売を防止する、そういう法律を制定したわけであります。それで我が国として協定を十分に運用していけるという判断でやられたと思いますが、差し支えが起こるようなことはないだろうと思いますが、その辺、外務省はどういうふうにお考えになっておられるか、お願いします。
  18. 野上義二

    政府委員野上義二君) 御承知のように、この造船協定のもとでの加害的廉売不当廉売、アンチダンピングに関する手続というのは初めて出てきた手続でございますし、それから船舶取引というのは非常に複雑な経路をとって行われるもので、資料等把握等についてはいろいろなかなか難しい点があるかと思います。しかし、この点については関係省庁間で協力して、情報の収集、交換、そういったものを図りつつ、経験を積んでいくということになるかと思います。
  19. 戸田邦司

    戸田邦司君 国の権限によっていろいろやることが出てくるだろうと思いますが、その辺についてはひとつ落ちのないように運用していっていただきたい。初めての経験でもありますからなかなか難しい点があるかと思いますが、その辺お願いしたいと思います。  それから、造船協定の発効の見通しでありますが、昨年の暮れに、この協定を七月十五日に発効させたいということで、この協定参加国となるべき国が集まって、七月十五日というターゲットデートを設定しているようであります。そういうことでありますと、六月十五日までに各国批准書を寄託しなければならないということになるかと思います。我が国は今ここでこういう検討がされていまして間もなくと思いますが、一番難しいのはアメリカではないかと思います。先日もちょっとお伺いしておりますが、その後アメリカ状況に変化があれば、またどんな状況になっているかについてお話しいただきたいと思います。
  20. 野上義二

    政府委員野上義二君) 御承知のように、米国の上院の財政委員会ではこの法案は通過しております。マークアップは終わっております。それから、下院におきましては歳入委員会、ウェーズ・アンド・ミーンズ・コミッティーとそれから国家安全保障委員会の両方がこの問題を検討しておりまして、それぞれ可決しております。昨日、この下院の両委員会の間で議事運営委員会が行われまして、我々の持っております一番新しい情報では、来週下院の本会議法案が表決に付されるということでございます。
  21. 戸田邦司

    戸田邦司君 一番難しいアメリカがそういう方向に行っているということで、六月十五日といいますか、七月十五日そのものが守れるかどうか別にしまして、余り大きな違いなしに発効できるということではないかと思います。  次に、これも先ほど武見委員の方からお話がありましたが、この協定運用上のダンピング提訴を乱用いたしますと、非常にいろんな問題が起こってくると思います。  私は、交渉途上各国にこのダンピング提訴を乱発するとこの協定は事実上効力を失うことになるということを機会をとらえてはお話ししてまいりました。この協定範囲が非常に広いというのが一つの大きな問題ではないかと思いますが、百総トン以上の船舶対象にしている。百総トンというと相当の数に上りまして、私は、途中で、できれば五百トンとか二千トンとかそういうところで切るべきではないかという話もしましたが、アメリカは、最初百トンで始まったんだから百トンで通すべきだというようなことも言っておりましたし、それから北欧は、漁船などを考えると百総トンという敷居が必要だというようなことも言っておりました。  漁船も国によっていろんな設計がありますから一律に船価を推定できないというような困難な問題もありますので、できれば漁船も切りたいと思ったんですが、実はヨーロッパサイドでは漁船自身も相当問題になっているというような点もありまして、その辺、範囲が広まったまま最終的に結論を得ていくというようなことですから、今後この協定運用していく上でそういったことを考えますと、締約国団が常時監視をしながら知恵を出して運用していかないとダンピング提訴が乱発される、そういうようなことにもなるかと思います。  我が国造船関係では指導的な立場にもあるわけですから、外務省の方としても今後の折衝の上で注意深く見守っていただきたいと思いますが、ひとつその辺についてお話しいただきたいと思います。
  22. 野上義二

    政府委員野上義二君) 今御指摘のように、世界の造船量を百トン以上で切りますと二千万トンぐらいございますので、非常に大きな規模でございます。ただし、漁船はこの協定から外されました。漁船は外れております。  こういったいわゆるアンチダンピング調査に関する手続の恐意性を排除するために、先生指摘のように、協定自身にいろいろな規定も入っておりますが、やはり加盟国間の、締約国団の間の協議でそういった恣意性を排除していくということで、OECD委員会の場等を通じてきちっと対応をしていく必要があると思っております。
  23. 戸田邦司

    戸田邦司君 次に、ダンピングが問題にされるとすれば、非常に競争の激しい韓国造船業が一番注目されるところではないかと思いますが、韓国との競争力その他を考えて、韓国ダンピング行動といいますか、その辺は運輸省ではどのように受けとめておられるか、お聞きしたいと思います。
  24. 小川健兒

    政府委員(小川健兒君) まず、日本韓国との船の価格競争力についてちょっと申し上げますと、一般的に言って賃金水準は韓国の方が安くて有利になっておりますけれども、生産性では日本の方がまさっております。  総合的な価格競争力というのは、為替相場によって大きく影響を受けるわけです。昨年前半の急激な円高の際には、我が国造船業に対して韓国が競争力において非常に有利でございましたが、現在の為替水準では、船によっていろいろ異なりますが、例えばVLCCと言われている超大型タンカー、こういったものなどの競争力はほぼ互角というふうに見ておりますし、またパナマックス型といっているバルクキァリア、これらの中小型の船舶では日本が有利というふうに考えております。  こういったことで、韓国が有利な分野あるいは日本が有利な分野、そういった差がございます。
  25. 戸田邦司

    戸田邦司君 今後の運用の問題はいろいろあるかと思いますが、外務省、運輸省の方でその辺ひとつ落ちのないようにお願いしたいと思います。  また、六月十五日まで間に合うか間に合わないかですが、ひとつ外務大臣にもその辺の手続について御努力いただけますようにお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  26. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) ただいまお話ございました点でございますが、国会の御承認が得られ次第、内閣といたしましても早急に手続を進めてまいりたいと存じます。
  27. 高野博師

    ○高野博師君 平成会の高野でございます。  二つの協定条約については賛成でございます。  時間の許す中で、中東情勢その他についてお伺いしたいと思います。  中東情勢については、世界の平和と安定にとって非常に重要な意義を持っている位置を有すると思います。また、我が国も中東和平に貢献しているということで、国民の関心も高いと思います。  そこでまず、先般のイスラエルの首相選挙で和平か治安かをめぐって国論が二分され、右派のリクードのネタニヤフ党首が僅差で労働党のペレス首相に勝利した。これについては、ラビン前首相は二度殺された、こういう論評もあります。国民の半数は、戦争という大きな暴力をなくす和平よりもテロという小さな暴力をなくす治安の方を選んだということが言えるかと思います。選挙結果については、ことしの二月、三月のパレスチナのイスラム原理主義組織ハマスによる連続自爆テロ等が大きく影響したとも言われております。  この選挙結果によって中東の和平プロセスがとんざしかねないという懸念が世界じゅうに広がっているわけでありますが、政府はこの結果をどうとらえているんでしょうか。
  28. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) 委員指摘のとおりネタニヤフ候補が勝利したわけでございますけれども、これから政策にどういうふうな変化が出てくるか、とりわけ中東和平のプロセスにどういうふうな姿勢で臨むか注視してまいらなくちゃいけないと、こう考えております。  確かにネタニヤフ候補あるいはリクードは、選挙戦のさなかにおいては従来のイスラエル政府に比しまして極めて慎重なといいましょうか、そういった姿勢を示しておったわけでございますけれども、選挙における勝利後は若干発言に変化も見られるという面もあると思います。和平プロセスは大切にしていくんだということを言っております。しかしながら、具体的にどう対応するかとなりますと、まだいろいろ不分明なところもやはりありますので、これから動向を注視してまいりたいと思うわけでございます。  我が国といたしましても、これまで進められてきました和平プロセスをきちんと継承していくと同時に、さらにそれを進展させるような方向に、方法といいましょうか、そういった姿勢をとることを強く期待しているところでございます。
  29. 高野博師

    ○高野博師君 当分は様子を見るということかと思うんですが、ネタニヤフ次期首相は、二日の勝利演説の中で、安定した平和、真の平和、治安の伴う平和を達成するために近隣諸国との対話を進展させる、こう述べておりますけれども、PLOについては一切言及しなかった。それから、エルサレムの帰属に関しては統一された不可分のイスラエルの首都だ、こう力説したと伝えられております。これもまた様子を見てからということになるかもしれませんが、和平の中核になるパレスチナ自治交渉が困難に直面するだろう、こういう観測もあります。  ネタニヤフ党首は、聖地ヘブロンからのイスラエルの早期撤兵を否定している、あるいは自治の拡大も認めない、さらにはパレスチナ国家樹立には反対だ、さらにユダヤ人入植地の扱い等についても譲歩する気配がない、こう思われますが、そうなるとパレスチナとイスラエルの武力による闘争という最悪のシナリオも考えられるかなと。中東が再び力の論理に支配されることが懸念されているわけですが、この辺についても政府の見解をお伺いします。
  30. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) 先ほど一般論としては和平プロセスを大切にすると言っておるけれども具体的なところはいろいろ問題があるということをおっしゃいましたけれども、文字どおり、ただいま委員が御指摘されましたように、特にパレスチナとの関係をどういうふうにするか、パレスチナ国家を認めないとか、そういったことも言っておるわけでございますので、そういった点では我々は和平プロセスの進展に好ましからざる影響を与えるんじゃないかという点は懸念しております。  しかし、ネタニヤフ首相御自身がこれまで歩んでこられた道から見ましても、国際社会あるいは外交についても十分な知識なり識見をお持ちの方と理解しておりますので、これから具体的な対応において国際社会のこの地域における和平、安定を求める流れ、何よりもあの地域に居住する住民の方々の立場ということも考えて適切な対応をすることを強く期待しておりますし、我が国としても、関係各国ともよく連絡をとりながら、でき得る働きかけがあればそういうことをやってまいりたいと、こう考えている次第です。
  31. 高野博師

    ○高野博師君 もう一つ、具体的な点なんですが、中東の包括和平へのかぎは、ゴラン高原からの撤退問題を核としている、対シリア和平交渉の再開、早期妥結にあると、こう言われますが、ネタニヤフ氏は撤退を拒否している。この態度を変えない限り交渉は成立しないだろう。シリアの影響下にあるレバノンにも波及して、イスラム過激派のヒズボラとイスラエルの戦闘が激化するおそれもあると。  ゴラン高原については、PKO活動に我が国自衛隊も参加しているということで、先般、国連の安保理でもゴラン高原のPKOについては、UNDOFですか、駐留期間を半年延長したという決定をしております。今後のゴラン高原の情勢についてどう見ているのか、また状況の変化によってはPKOの派遣等を見直すようなことがあり得るのか、お伺いいたします。
  32. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) おっしゃるとおり、中東和平全体を進めていく上で、シリアの動向、特にレバノンに対する影響力も非常に強いわけでございますので、これは非常に大きな意味を持っている、あるいは一つのかぎを握っていると、こう見ております。そして、先般のイスラエル選挙の結果がそういったシリアあるいはレバノン等の態度なり動向にどういう影響を与えるか、これも注視をしていかなくちゃならぬと思っている次第でございます。  そして、いわゆるUNDOFの関係につきましては、御指摘のございましたように、先般UNDOFの延長ということが言われまして、その点につきましてはイスラエルもまたシリアも同意しているところでございます。そういったことで、我が方の参加部隊をどうするかということも考えなくちゃいけないわけでございますが、現在我が国のPKO参加部隊あるいは要員の活動につきましてはシリアまたイスラエルも高く評価していると、こういうふうに私どもは承知しております。  そういったいろいろな情勢を考えながら、我が方としては、引き続き中東和平の進展のためには貢献していく、こういった立場に立ってこれからいろいろ対応してまいりたいと、こういうふうに考えております。当面は、UNDOFに対する任務を実施計画に従い整々と実施していくと、こういうことで考えております。
  33. 高野博師

    ○高野博師君 今、大臣がおっしゃられましたように、日本政府としては引き続き中東和平に貢献していくという基本的な立場があると。現在、中東貢献策として具体的にどのような援助をやっているんでしょうか。
  34. 法眼健作

    政府委員(法眼健作君) 私どもは、中東に関しまして、第一に、重点を置いておりますのはパレスチナ支援、これにつきましては既に総額一億八千四百万ドル強の貢献を行っております。これにはガザだとかジェリコの病院、それからインフラ整備、そういったようなこととか、それから国際機関、UNRWA、難民機構でございますが、こういうものを通じましても支援を行っております。  そのほかに、中東におきましては、ほかの周辺国の支援、パレスチナ周辺国に対しましては、エジプト、ジョルダン、シリア、レバノン等あるわけでございますが、これらの国につきましてはこれまでに既に九千億円を超える、四カ国合計いたしますと一兆円を超えるような支援、これは湾岸戦争のときのいろいろな支援も加わっているわけでございますが、そういったような形の支援を、有償、無償、技術協力、そういったものを通じまして行っております。  この地域の安定のためには俗に言う和平による配当ということが言われておりますが、和平による配当は経済的な、そういう目に見える利益ということが必要と言われておりますが、私どももその点を踏まえて中東に対する支援は今後とも引き続き行っていきたいと考えております。
  35. 高野博師

    ○高野博師君 クリントン大統領が、この選挙の結果のわずか数分後にネタニヤフ氏に電話を入れて祝福して、そして訪米を要請したと。極めて迅速な対応をしたということが伝えられております。クリントン政権にとって中東和平は外交面での最優先課題だということで、当然と言えば当然なんですが、きょうの新聞によると、橋本総理と外務大臣は六日に祝辞を送ったというふうに載っておりますが、これはどうしてこんなに遅くなったんでしょうか。
  36. 法眼健作

    政府委員(法眼健作君) もう少し正確に申し上げますと、祝辞を送ったのはそれよりもっと早い段階であったわけでございますが、新聞発表をいたしましたのが六日でございまして、先方にはもっと早くそのメッセージは届いております。
  37. 高野博師

    ○高野博師君 それなら結構でございます。  政府は、ネタニヤフ氏個人についてはどういう評価をしているんでしょうか。あるいは、この次期首相は訪日経験はあるんでしょうか。あるいはまた、現地の在外公館はどの程度接触してきて、同氏についてどの程度の情報を持っていたんでしょうか。
  38. 法眼健作

    政府委員(法眼健作君) まず、ネタニヤフ次期イスラエル首相についての評価でございますが、この方は御案内のとおりアメリカ育ちでございまして、マサチューセッツ工科大学を出ておりまして、八二年から八四年まで駐米大使館の次席、その後、国連大使をおやりになったり、大変な知米家と承知しております。もう一つ、非常な現実主義者でもあるというふうに言われております。私どももネタニヤフ氏に対してどういう方であるかということについてはいろんな角度から調べておりますが、聞くところでは現実主義者であって、そういった面がこれから中東和平の面でどのように出るかということは、一つの参考になるのかと思います。  政府側はネタニヤフ氏とどのようにつき合いがあったかという御質問でございますが、外務省とのこれまでの接点は、小和田大使などが外務審議官のころイスラエルを訪問していろいろな会談をしておられますし、また九一年、九二年は外務副大臣、総理府副大臣ということで、それぞれのポジションにおいて私どもの大使、在外公館などと接触していたと聞いております。  訪日の点につきましては、私どもは、学生のころなどにつきましてはまだそこまで調べておりませんが、今までのところ、そういった公的立場での訪日はないと承知しております。
  39. 高野博師

    ○高野博師君 訪日招待は考えておられるんでしょうか。アメリカがすぐ招待ということをやっておりますが、日本はどうでしょうか。
  40. 法眼健作

    政府委員(法眼健作君) 大臣、総理とこれからお諮りしなければいけないところでございますけれども、友好国の首相でございますし、当然そういうことは検討いたしたいと考えております。
  41. 高野博師

    ○高野博師君 招待についてはやはりタイミングというのが非常に重要ではないかということを感じます。  中東和平については、領土と平和の交換という原則に基づいて今まで進められてきたわけですが、日本政府としても、先ほど大臣がおっしゃられたように、引き続きこの中東の和平に積極的に貢献していただきたいと思います。  時間がありませんので、インド情勢を聞こうと思ったんですが、ミャンマー情勢についてお伺いいたします。  去る五月二十七日に、アウン・サン・スー・チー書記長が率いる国民民主連盟の党大会が開かれたと。この党大会で、国会の早期開催、軍部の政治会議を否定したとか、あるいは政治活動の自由とか言論の自由とか、政治批判あるいは党大会前に逮捕された二百六十人以上の党員の即時釈放等が決議されました。最近の情報では、軍事政権は市民対話集会も禁止したというようなことがきょうの新聞にも出ておりますが、このミャンマー情勢についてどう見ておられるのか、見解を伺います。
  42. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) ミャンマーにおきましては、今御指摘がございました五月二十六日のNLDの大会開催をめぐりまして、政府側がNLD関係者を大量に拘束するということがございまして、緊張が非常に高まってまいりました。  そういうことでございましたので、私は五月二十四日に訪日中でございましたオン・ジョー・ミャンマー外務大臣と会いまして、拘束者の即時釈放等の働きかけを行ったところでございますけれども、党大会が五月の二十八日にまずは平穏裏に日程を終了したということ、あるいは、まだ一部拘束され、さらに起訴された者もおりますけれども、相当多数の被拘束者が解放されたというような点、そういった意味で一定の効果はあったものと、こう考えております。  しかし、他方におきまして、今、委員指摘のように、毎週末スー・チー女史が自宅前で行っている集会を今週末から規制するというふうにNLDに対して政府が申し入れた、こういった情報もあります。こういう情報を受けまして、私どもはやはり政党活動の自由の観点からこれは認められなくちゃいけないんじゃないか、こう考えまして、実は昨日、六日でございますけれども、在ミャンマーの山口大使からミャンマー政府に対しましてそういったことを申し入れたところでございます。  いずれにいたしましても、我が国といたしましては、政府とNLDの関係者、両者が何とか現在の緊張を乗り越えて話し合いができるような状況をつくり、そして民主化の実現へ向けて一歩一歩努力していくということを強く期待しておりますし、我が方は双方にチャンネルを持っているという立場を使いましてこれからも働きかけを行ってまいりたいと、こう思っております。
  43. 高野博師

    ○高野博師君 ミャンマーについては、この名前自体を呼んでいる国はASEANと日本ぐらいで、ほかは軍事政権であるということでみんなビルマのままだと。この辺もちょっと日本は欧米等と歩調が違うというか、ASEANに合わせたのかどうか。この辺のことも含めて、ミャンマーに対しては、孤立化を避けるというか、対話と交流を通じて人権状況の改善を促すような建設的な関与、これもASEANと一緒になって政策をとってきたと。  ミャンマーにとっては日本は最大の援助国であります。静かな外交ということで、人権問題あるいは民主化推進を求めつつ、軍事政権であっても全面的な経済協力の凍結はしないで人道的分野について実施してきたと、こう言われますが、アウン・サン・スー・チーさん等は日本対応に非常に厳しい見方をしていると思います。  それで、実際にヤンゴンの国立看護学校の拡充計画、これは十六億円の、これは無償ではないかと思うんですが、新聞報道によると、日本の人道援助といいながら、工事の請負業者、学校のスタッフ、生徒まで全部軍事政権が決めている。受益者は政府にコネのある者だけだということを批判しております。それから、ヤンゴンの空港拡張事業についても約二百億円。この円借款についても、スー・チーさんは民主主義とか人権問題で完全な保障がないなら供与は好ましいことではないという、そういう発言もしております。  それで、この日本の援助が軍事政権の強化あるいは延命につながるようになっていないかという点についてはどうでしょうか。
  44. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) 我が国としましては、御指摘のように、欧米諸国とは若干違う姿勢でミャンマーに対しては対処してきております。そういったことで、経済協力につきましても、当然ODA大綱に沿って対処していくわけではございますけれども、これまでの既往の継続案件や基礎生活分野に係る案件で民衆に直接影響する問題については、これはケース・バイ・ケースで検討の上対応をしていく、こういう方針でおるところでございます。  今具体的に御指摘のございました看護学校の話でございますが、これにつきましても、やはり医療という問題はこれは民衆にとって一番大切な問題の一つでございますし、特にミャンマーにおきましては、医師もさることながら、看護婦の方々の数が本当に足りないという事情もあります。そういったことでこの事業は続けているわけでございます。しかし、そのことが現政権あるいは政権につながる人々に不当な利益をもたらすということがあってはいけないと思いますので、そのあたりは注意してまいりたいと、こう考えております。  なお、いま一つお話ございました空港の問題につきましては、これは今のところ中断したままで再開はしていない、こういうことでございます。  いずれにいたしましても、そういうことでございますので、政府側あるいはアウン・サン・スー・チーさんの側でいろいろそれぞれの立場からする御発言はありましょうけれども、日本としては先ほど申しましたような立場から適切に対応していく所存でございます。
  45. 高野博師

    ○高野博師君 日本政府としては、今の政権が民主連盟との対話あるいは国民和解への対話を働きかける、そういう外交努力を重ねるべきではないかと思います。また、ODAについても、軍事政権に対しては民主化とか人権、こういう問題についてもっとめり張りをつけて、何らかの申し入れ等をするとか、こういうことをもっとやってもいいのではないかということを感じております。  最後に、時間がありませんので一つだけ、安保理の常任理事国入りについて。  五月二十六日の産経新聞に、アメリカの国務省が「常任理事国への優柔不断」というタイトルで内部文書をつくっていると。これは政府の正式な見解ではないと断ってはあるんですが、日本が常任理事国入りをした場合に、PKOへの参加などをめぐって日本国内の議論によって日本が困難な状況に陥る可能性がある、また日本はアジアにおいてアメリカから独立した政策と利益を追求し始めたというようなことも言っておりまして、特に常任理事国になった場合に期待にこたえられないんではないか、惨めな結果か失望を招くだけだと、かなり厳しいことを言っております。そして、日本については軍事的な側面についてはほとんど期待できないということも言っております。常任理事国入りに反対しているわけではないという、そういう内部文書なんです。  これについては、アメリカの対日認識というのは我々が思っているそれとはかなり違うというか、かなりずれがあるのかなという感じを持っておりますが、これについてどうお考えでしょうか。
  46. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) 御指摘の新聞報道に関しましては、実は直ちに米国政府にも照会いたしました。そして、米側から、報道されている内容は米国の立場ではない、そしてまた米国としてはもう七〇年代の初めから一貫して日本の常任理事国入りを支持してきており、このような政策に何らの変更もない、こういった公式の回答を得ているところでございます。私どもも、現在の日本の国連活動における参画の仕方、そういったものを前提として、そして米国も我が国が安保理常任理事国として責任を果たしていくことに理解をし支持をしてくれているものと、こういうふうに理解しております。
  47. 高野博師

    ○高野博師君 内部文書は、こういうものは存在しないということを言っているんでしょうか。
  48. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) 要するに、米国の公式な立場をあらわすものとしてそのような文書は存在しないと、こういうことでございます。
  49. 高野博師

    ○高野博師君 この文書自体が正式見解ではないという断りがあるんですが、それはこれで結構でございます。  時間が来ましたので、終わります。
  50. 川橋幸子

    川橋幸子君 社会民主党の川橋幸子でございます。  前回の本委員会、それからたしか六月五日の本会議のときにお尋ねさせていただきましたアジア女性基金の問題について、重ねて本日もお伺いさせていただきたいと思います。  六月四日でございましたか、アジア女性基金理事会が開かれまして、いよいよスタートに当たりまして、焦点になっておりました償い金といいますか金額の問題、おわびの手紙の問題、それから意外に注目されていなかったのですが非常に大事なこととして福祉・医療事業の問題が理事会の中である程度の方向が出たと報じられておりますけれども、その理事会の意向についてまず御説明いただきたいと思います。
  51. 平林博

    政府委員(平林博君) ただいま先生指摘のとおり、六月四日にまず理事会と運営審議会の合同会議がございまして、その後理事会の会合がございまして、次のような決定がなされました。私も双方にオブザーバーとして参加させていただきました。  第一点は、アジア女性基金の行う元従軍慰安婦の方々に国民的な償いをあらわす事業、一時的な償い金を差し上げる事業については、一人当たりの金額でございますが、二百万円を下回らないように考える。  第二点は、これと非常に関係がございますが、政府の資金により行う医療・福祉事業についても、相手国政府その他と至急詰めまして、できるだけ関係者、元従軍慰安婦の方々が神益するようなプロジェクトを推進するということでございます。  第三点は、総理大臣の手紙につきましては、橋本総理からはっきりと反省とおわびの気持ちを心を込めて書くということが披露されまして、これが了承された。  最後の第四点でございますが、全体として政府の責任ある協力を期待する、こういうことでございますので、政府といたしましては、この基金の決定を尊重するとともに、一緒になって協力して事業の推進に当たってまいりたい、こういうふうに思います。
  52. 川橋幸子

    川橋幸子君 第四点、政府の協力といいますか、政府の責任についても既にお述べいただいたわけでございます。もう以上の平林室長の答弁で尽きているのかもしれませんけれども、なおこのところ新聞の論説等でも大変心配される論評が載っているわけでございます。  アジア諸国の信頼を取り戻すために始めた基金でございますが、最初はアジア諸国も大変友好的に受けとめたと思います。また、前回の外務委員会で御紹介申し上げました、アメリカの国務省から出ております日本の人権の実情について述べているくだりでもこの部分は評価されていたと思うのでございますけれども、このところ、大変これは言いにくいことではございますが、やはり与党第一党の方にも御自覚いただきたいと思うのでございます。  宮澤内閣時代の政府見解でもって国の関与と強制力ということはお認めになって、おわびされたわけでございます。にもかかわらず、さまざまな御発言が出てくるというのは、せっかくのこの基金の滑り出しをまた無残に打ち砕いてしまうという、こういう感じがするわけでございます。どうか一言、外務大臣の方からも政府の姿勢についてこの場でもまたお答えいただきたいと思います。
  53. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) 政府といたしましても、また外務省といたしましても、当然でございますけれども、アジア女性基金の事業につきましては、その意図するところが正しく理解を得、そしてその事業が着実に進められまして、大変苦しみを味わわれいまだに深い痛みを重く引きずっておられる方々に誠意を示す、そういうことが行われることを強く期待しておりますし、先ほど外政審議室長からもお話ございましたように、政府としてもその事業が所期の目的を達成できるように最大限の協力をしてまいりたい、こう考えております。  外務省といたしまして、また関係国の政府あるいは関係の方々にそういった事業の目的とするところをよく御理解いただきますようにこれからも努力をしてまいりたい、こう思っております。
  54. 川橋幸子

    川橋幸子君 二点目は、これもまた私は前回の本会議で質問させていただいた事項なのですが、北朝鮮に対する食糧支援の問題がございます。本会議では大変丁寧な答弁はちょうだいしたんですけれども、よく耳を澄まして伺っておりましたら、いずれにせよそういうアピールがあれば必要に応じて対応という、そういう感じの御答弁でございまして、あるいは政府の方ではまだ御検討にならないのかと思っておりましたところ、その翌日、「政府、応じる方針」、こういう記事が出ているわけでございます。社民党に対する質問だからということがあったのかなと、いささか私は被害者意識にとらわれてしまうわけでございます。  きょうの新聞では、国連の明石人道問題局長の方から数字を挙げての二次支援アピールがなされておりまして、これに対する政府の、外務省の方の御検討もかなり進んでいるやに記事が書かれているわけでございますけれども、日本政府はどのように対応なさっていくおつもりなのか、お伺いさせていただきたいと思います。
  55. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) 報道がいろいろされておりますのは承知しておりますけれども、正確に申しますと、現時点の状況はこういうことでございます。  今御指摘の国連のアピールでございますが、事前にいろいろ情報が漏れて報道は走りましたけれども、きちんとしたアピールがまとめられ、それが発表されたのは六日、日本時間で申しますと本日の未明でございます。そういったことで、我々もこのアピールに接したばかりでございます。総額約四千三百六十万ドル、こういうことでございます。これを受けまして、我が国としましてはいかなる協力が可能か検討しており、対応考えてまいりたいと、私の手元のペーパーにはそう書いてあります。  そういうことで、実は先ほど委員のお立場がというお話がございましたが、つい先ほども衆議院の外務委員会で与党の最大政党の代表の方から御質問があったのでございますが、今のような答弁をしたところでございます。  さらに、ペーパーを離れて若干踏み込んで申し上げますと、十分な情報は入ってはきませんけれども、北朝鮮における食糧の事情が一段と厳しくなっていることは事実でございます。そういったことを踏まえまして、国連として緊急に、そしてあくまで人道的な立場から支援をしていこうじゃないかということで出されたアピールでございます。そういった性格のものとして日本政府もとらえ、いかなる協力が可能かというのを、これをいかなるというところにストレスを置きまして、協力はするという方向で考えるんだ、それをいかなる方法、手法によってやるかということでこれから検討をしてまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。  もとより、それを進めていく場合には、我が国と並んで最も大きな関心を持っております韓国そして米国とも緊密に連絡をしながら進めてまいりたい、こう思っております。
  56. 川橋幸子

    川橋幸子君 ありがとうございました。どうやら被害妄想に陥らないでよいという大臣の御答弁でございまして、私も御信頼申し上げたいと思います。  少々時間を短縮した方が喜ばれるのでしょうけれども、今の外務大臣のお言葉に勇気を得まして、通告しておりませんけれども、もう一問具体的な質問事項としてお伺いします。  人道的な援助に対して日本としては重視していくという外交姿勢があるわけでございます。このところ外務委員会で私は人権問題というものを中心にお伺いさせていただいております。人権問題というものは、私が個人的に考えますところ、どうも米ソのイデオロギーの対立がなくなった後の一つの世界秩序として外交上の大きな要素になっていると私は理解するわけでございます。  軍事というのがハードウェアであって、経済とかあるいは開発援助とかというお金がソフトである。とすると、もう一つ新たにつけ加わっている外交要素というのはヒューマンウエアというような感じの要素であって、それは甘っちょろいソフトクリームなんかとは全く違う。これは笑い事ではないのでございます。  むしろ、世界秩序の中で、自分を大事にしたいと思ったら相手にも配慮する、相手を大事にしようと思ったら自分をコントロールする、自己コントロールする、それから正しいと思ったら主張するということですね。一つの規範としてむしろ辛い厳しい面を持っていると思うのでございますが、最後にそういう人権といいましょうか、チャリティーではない人道といいましょうか、そういうものに対する外交姿勢について大臣のお答えを聞いて、終わりたいと思います。
  57. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) 私も、決して人権という問題を何か慈善的なものとして、あるいは甘っちょろいものとしてとらえているわけではございません。人権というものは人類全体が主に取り組んでいかなくちゃいけない普遍的な価値であり、普遍的な課題であると思っております。しかし、それを実現するためにもやはり現実をよく踏まえながら、着実にそれを実現していくということも大切だと考えているわけでございます。  それから、今言ったように人道が大切だと申しましたのは、我が国の経済協力全般にとっても人道的な見地が大切でございますが、とりわけ北朝鮮の関係におきましては正常な国交がない状態にございます。そういった状態の中では経済協力全般を進めるということはできません。  そういう前提に立った上で、しかしながらこれは人道的なものであり、しかも緊急的なものであるから検討しょう、こういう観点から申し上げたということを触れさせていただきます。
  58. 川橋幸子

    川橋幸子君 ありがとうございました。
  59. 立木洋

    ○立木洋君 きょうの協定並びに条約については賛成です。特にお聞きしたいことはありません。  実は、海洋法条約のときにお尋ねしたいことがあったんですが、時間が足りなかったためにお尋ねできなかったので、きょうお尋ねさせていただきます。  非核三原則の問題を非常に重視されておるという政府の答弁もありまして、先般の五月三十一日の橋本総理の本会議での答弁では「国籍にかかわらず核搭載艦の我が国領海通航は無害通航とは認めないという立場であります。」というふうに答弁なさいました。これは、これまでの立場を一貫して貫くということだと思うんです。  では、日本政府が核搭載艦の我が国領海の無害通航を認めず拒否できるという国際法上並びに条約上の根拠についてお尋ねしたいんですが、いかがでしょうか。
  60. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) 御承知のように、国連海洋法条約では第十九条一項、二項というのがございまして、内容は先生よく御存じのとおりでございます。  その十九条一項の趣旨は、領海法条約にも規定がございまして、私どもは現時点で言いますと、この領海法条約十四条四項及びそれを受け継ぎました十九条一項に基づいて核積載艦の領海通航は無害通航に該当しないと、こういう立場をとっておるわけでございます。その関連で、十九条二項におきまして無害通航ではないと認められるものが十二、例示されておるわけでございます。これは限定的なものかあるいは例示的なものかというところでございますけれども、私どもは、これまでの審議経過等にかんがみましてこれは例示的なものであると。したがって、十九条一項でもって核積載艦の領海通航というものは無害とは認められない、こういう立場をとっておるわけでございます。
  61. 立木洋

    ○立木洋君 今述べられたように、十九条二項に挙げている例示的な十二項目の中には核搭載艦というのは明記されていないわけですね。  それで、そういうことになれば、この海洋法条約会議の中で日本政府としては核搭載艦の領海通過は我々は無害通航とは認めませんよということを明確に意思表示をし、国際的にも認められるという状況があったんでしょうか。いかがでしょうか。
  62. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) ただいまの御質問でございますけれども、私どもは、既に何回も申し上げておりますように、第三次国連海洋法会議において、我が国の非核三原則というものが維持されるようにという基本的な立場で臨んだわけでございます。  これは先生十分御賢察いただけるとは思いますけれども、そういった我が方の立場をこの条約に直接書き込めという議論をするのがいいのか、それとも結果として文書ができ上がったものが我々の非核三原則を維持することに役立つ形になっているものがいいか、それは外交的にもいろいろ配慮はございまして、今おっしゃいました点につきましては、結果としては私どもの立場は確保されているというふうに考えておるわけでございます。
  63. 立木洋

    ○立木洋君 実は、今回の海洋法条約の審議に当たって、第三回海洋法会議日本政府が非核三原則の立場について述べた文書、つまり領海における核搭載艦の通航が無害通航とは認めませんよというふうに述べた発言があればその資料をいただきたいと言ったんですが、いただいた文書にはそのことは全く明記されておりません。  そして、そういうことがあったので、私は先日、きょうもお話がありました上智大学の山本教授に、海洋法について極めて権威のある方ですが、その方にお聞きしたら、第三回海洋法会議においては日本政府はそういうことについては述べておりませんというふうに参考人として答弁されたわけです。  だから、述べていなくて、領海における核搭載艦の通航は無害通航とは認めませんよということがどうして国際的に認められることになるのか。我が国の主張だけではそのことが国際的に認知されたということにはならないわけですからこれは当然述べるべきだと思うんですけれども、どうして述べなかったんでしょうか。述べなくてどうして国際的に認知されて、いわゆる無害通航ではないということが通ることになるんでしょうか。ちょっとその点、どうしても納得できないので御答弁をいただきたいと思うんです。
  64. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) この海洋法条約をつくる過程におきましては、我が国としては我が国のいろいろな基本的な立場、そうして我が国の利害を考えながら対応してきたところでございます。そういった中で非核三原則を堅持していくということ、これも我が国の基本的な立場の一つでございます。それも十分考えながら対応してまいりました。  同時に、我が国は主要な海洋国家の一つであるということ、そして我が国の存立その他のためには例えば航海の自由ということが大切であるという、こういうこともございます。そういったいろんなことを勘案いたしまして対応してきたわけでございます。そして、我が国が非核三原則を堅持するということは、もうあらゆる機会をとらえて明らかにしているところでございまして、国際的にもそれは周知徹底していると、こう考えている次第でございます。  それからさらに申し上げますならば、先ほどお話しになりました十九条二項の審議の過程で、一部の国から列挙された項目に該当しない限り通航が無害とみなされるという、そういう提案がありましたけれども、それは取り入れられなかったという経緯もございます。そういうことを踏まえますと、先ほど政府委員が答弁いたしましたように、十二項目はこれは例示であって、まだまだほかにもあるのだと。そしてそれは基本的には、一義的には沿岸国が解釈していく、そういう枠組みになっております。  そういったいろいろな状況を組み合わせてまいりますと、本会議において総理が御答弁申しましたような我が国の立場というものは各国にも理解をされておるし、これはそういったこととして通用するものであると、こう考える次第でございます。
  65. 立木洋

    ○立木洋君 大臣がお述べになりましたけれども、しかし国際的に完全に我が国の立場が認知されるということは、いわゆる外交上、その趣旨を外交経路により国際的に周知させることが必要であるというふうに非核三原則の問題で山本教授も述べられているんですよ。だから、これは周知させなければならないんです。そうしなければそれは担保されないんです。だから、そういうことをやってこなかった、ましてや重要な第三回海洋法会議の席上で日本政府の立場はこういう立場でございますと、それを文書に書かせるだとかなんとかじゃなくて、日本政府としてそういう立場をやっぱり明示すべきではなかっただろうかということがあるものですから、どうしてもその疑問が残るわけです。  それで、一九八九年にアメリカとソ連の間で共同声明が発表されて、その附属文書が出されていることは御承知だと思うんです。そこには「無害通航を規律する国際法の規則に関する統一解釈」というのが出されておりますが、この内容については御承知でしょうし、それに対してはどういう態度をおとりになったのか。一九八九年九月二十三日の米ソの共同声明並びにそのその附属文書の解釈の問題です。この「無害通航を規律する国際法の規則に関する統一解釈」についてどういう見解を日本政府はおとりになったんでしょうか。
  66. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) 先生がおっしゃいます当時のソ連とアメリカとの間で無害通航に関する国際法規の統一解釈というものについての宣言が出されたことはもちろん承知しておるわけでございます。  我が国はどういう態度をとったかというお尋ねでございますけれども、ちょっと繰り返しになる部分がありまして恐縮でございますが、基本的な立場としては、国際法上特定の通航が無害通航に該当するか否かについては、国際法上の一般的基準の枠内において第一義的にはあるいは第一次的な判断は沿岸国にゆだねられているというふうに私どもは考えておるわけでございます。  そういうことからしまして、国際法の規則を踏まえて、我が国としては核搭載艦の領海内通過は無害とは認めておらない。その立場には現在も変わりはないわけでございます。こういう我が方の立場は、累次の国会におきます内閣総理大臣の施政方針演説等において繰り返し表明しておりまして、この点は、先生のお言葉もございますけれども、私どもとしては内外に十分周知徹底されているということでこれまで来ておるわけでございます。
  67. 立木洋

    ○立木洋君 沿岸国に無害性の有無が認定される、許容されているということについては私もそうだと思うんです、これは十九条の一項でそういうふうな内容になっていますから。そのこと自身は否定しないんです。  しかし、もう一つ重要なことは、それを国際的に周知させることがどうしても必要だという見解が山本教授の見解として述べられているわけです。その点で、終始国会で述べられているからということではなくて、山本教授が言うのは、外交経路により国際的に周知させることが必要であると、こういうふうに述べているんです。国会で何回述べたってだめなんです。それは本当に国際的に認知されたことにはならない。  ましてや、ここでは今申し上げました「無害通航を規律する国際法の規則に関する統一解釈」が米ソの間で出されておりますが、その第二項には「軍艦を含むすべての船舶は、積荷、装備又は推進方式にかかわりなく、国際法に従って領海の無害通航権を有し、その通航は事前の通告又は許可を要しない。」と、こういう統一見解なんです。軍艦が装備、つまり核を積載していたとしても、そういう装備があったとしても、これは国際法に従って領海の無害通航権を有しているんだ、だから通航は事前の通告もまた許可も要しないと、こういうふうに米ソの統一解釈では述べられているわけです。それが一九八九年です。既に海洋法条約の審議が終わった後の一九八九年に出されたわけです。  これについて日本政府は、それは違うと、我が国としてはそういうことを認めていませんよという明確な日本政府の見解を米ソに対して伝えたんでしょうか、こういう米ソの統一解釈が出された後で。いかがでしょうか。
  68. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) 繰り返しになりまして恐縮でございますけれども、私どもの立場は周知徹底されているという考えでございますから、この宣言が出たときに、これも共同声明ということで、私どもに伝えてきたとかそういう話ではございませんけれども、特別に両国に申し入れるということは事実関係としてはございません。
  69. 立木洋

    ○立木洋君 だから、そういう統一解釈が米ソの間で出されている。つまり、核積載艦の領海通過の問題については、第一に問題になるのはやっぱりアメリカだろう。それから、第二に問題になり得る可能性があるとすればソ連かもしれない。特にその二つのいわゆる核大国がそういう統一見解を出している。領海に対する通過の問題に関して、これは無害通航なんだ、どんな装備、核兵器を積んでおったって無害通航なんですよ、だから事前協議も必要ありませんし通告もしませんよという統一見解を出しているんですね。これはもう既に日本政府もそれを知っている。  しかし、知っていてもそれに対して何も言わなかったということになると、実際に領海における通航が行われた場合にどういうことになるのか。日本政府は、我々がこういう見解を出した後でも何も述べなかったではないかというふうに言われた場合、日本政府としては、いや違うというふうに述べるだけのいわゆる国際的な担保があるのかどうかということになってくると思うんです。その点はいかがでしょうか。
  70. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) 当時、米ソの間でそのような統一解釈がなされたといたしましても、先ほど政府委員から御答弁申し上げましたように、一義的な判断は沿岸国にゆだねられておる、こういうことがございます。そうして我が国が核搭載艦の領海内通航を無害とは認めていない、こういうことはもう国際的に周知されておりまして、これは米国もまたロシアも十分承知しているわけでございますので、我が国とのかかわるケースにつきましては米ロもそういった我が国の立場というものを十分認識した上で対応するというふうに考えております。
  71. 立木洋

    ○立木洋君 米ソの今挙げた統一解釈の中の第三項ではこう書いているんです。「一九八二年の条約第十九条は、第二項において、通航が無害とされない場合の網羅的なリストを提示している。」と。例示的じゃないんです。「網羅的」と言っているんです、米ソの間では。しかも「領海を通航する船舶で、これらの活動のいずれにも従事しないものは、無害通航のものである。」、ここまで言い切っているんです。例示じゃないんです、あそこに挙げている十二項目というものの米ソの解釈は。そういうことになってくると、大臣が幾らそういうふうにおっしゃっても、ますますこれは納得するわけにはいかぬ。  そこで、私は、同じ年の一九八九年五月に問題になりましたタイコンデロガに関しての事件、これは一九六五年のときの問題ですけれども、タイコンデロガの核兵器紛失事故が問題になりまして、その文書が、国務省から国務長官へあてた重要なメモが一九八九年五月十五日に明らかになった。これも国会で問題になりました。そこでは明確に、日本政府は肯定も否定もしないというアメリカの政策を厳格に維持することの重要性を強調したと、そういうふうに国務長官あての国務省のメモで日本政府の立場についての解釈が伝達されています。このことは、現実にはアメリカの核艦船の寄港と領海通過を事前協議対象としないということを約束した初めてのものとして問題になりました。  だから、一九八九年にアメリカにそういうことが日本の政府の立場として通告されているとすれば、アメリカ側は、我々はこの問題についてはソ連との間でもこういう統一解釈を出したんだという結果になり得るんではないかというふうなことさえ想定できるわけです。そういう日本政府の立場をアメリカに通告している。当時、日本政府はこのことについて否定をされました、そういうものは我々としては了解していないと。しかし、そのことはアメリカの国務省のメモの中に明確に記載されているわけです。その文書も入手されているわけです。  そういうことになると、領海における核積載艦、搭載艦の通過が無害通航であるということが国際的に認知されて、本当に守られるんだろうかという疑念が最後まで残るわけです。  ですから、結局そういう問題については、事前の通告も許可も必要としないとまで述べているこの米ソの統一解釈の問題について、そうではないんだ、日本政府についてはかくかくしかじかの見解を持っている、だから海洋法条約第十九条第一項の基準に基づいて我が国としては核積載艦の領海通過は無害通航とは認めないということを明確に、少なくとも核搭載艦があり得る核保有国に対しては通告をすべきじゃないか。また、しかるべき今度の国際会議の席上でそういう日本の立場を国際的に周知させる努力をすべきじゃないか。もしそれをしなかったら、この問題が完全に守られ得るという担保が国際的にもないというふうに私は認めざるを得ないんですが、いかがでしょうか。
  72. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) 米ソの合意については先ほども申し上げたとおりでございますけれども、第三次の海洋法会議の初めの段階において、先ほども申しましたけれども、一部の国から列挙された十二項目以外のものは無害とみなされるという規定をしろという提案があったけれども、それが排除された、そうならなかったということは、我が国がとっております、あるいは例示であるという解釈を支援するものであると、こういうふうに考えます。  そしてまた、先ほど国務省内のメモというお話がございましたけれども、それについての我が国政府の立場というのは、今、委員自身が御引用されたように、明確になっている次第でございます。  いずれにしても、我が国は非核三原則を堅持するものでございますし、米国もそのことは十分承知しておると、このように考えます。
  73. 立木洋

    ○立木洋君 最後に一つだけ。これは答弁は要りません。  今の御答弁、大臣と担当の方のお話を聞きましたけれども、私はどうしても納得できないんです。山本教授が明確に述べられているように、それは沿岸国としてのいわゆる権利として許容されているものだということについては私も同感です。それは海洋法の文書を見れば明白です。しかし、これは国際的に周知させなければならないんだ、周知が必要なんだと。だから、国会で幾ら所信表明を経て演説をなさってもそれはだめなんで、外交経路を通じて相手側にそのことをしっかり認知してもらうということがあって、初めて国際上そのことが認知されたものとして担保されるということになり得るんだろうと思うんです。  だから、今の場合ではそういうふうになり得ないという疑念を私は消すことができない。その点の努力を引き続いてしないならば、私はこの問題についてはやっぱり抜け道ができてしまうということを指摘して、私の質問を終わります。
  74. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 造船協定及び商標法条約については賛成でございます。  ここで、先日来気になっていることを若干お尋ねしたいと思うんです。  四月十八日でしたか、日米安保共同宣言につきましてアメリカの言論界で非常な沸騰的な反応がありました。今まで日本は、マッカーサー元帥が起案した憲法の中で軍事的にはひそやかに平和的にやってきたが、今や五十年たって殻を破って、それで太平洋におけるアメリカとの軍事協力に姿勢を改めたと、そういう意味の言論が二、三にとどまらず出ておったようであります。  これは、その当時を考えてみますと、日本におけるその当時の日米安保に関する問題意識で最大なるものは、普天間基地が全面的に返るとか、それはどういう条件でどういう事態において返るのかということが少なくとも国民の間では最大の関心事でありましたけれども、アメリカではそういうことは余りありませんで、今までの日本の軍事的に平和的姿勢あるいは消極的な姿勢が破れて、アメリカとの全面的協力体制に入ったということが非常に大きく取り上げられておるんです。この違いについてどうお考えでしょうか。
  75. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) これもいろいろな場で政府としてたびたび申し上げているところでございますけれども、今回の日米首脳会談における日米安保の宣言、これの性格でございますが、これは決してこれまでの日米安保条約を変更しようというようなものじゃございません。これまでの枠組みはそのまま続けていくということでございます。  ただ、そのことが現在のあるいは近い将来における我が国を取り巻く地域あるいはアジア太平洋地域全体に対してどういうふうな作用をし、どういうふうな効果を持つかという点についてはいろんな見方があると思います。そういった点をとらえて、米国においていろんな論評がされたのだと思います。アジア太平洋全域の安定にとっても好ましい影響を持つという観点からの評価なら、それはそれで私は間違っていないと思います。しかし、そのことをもって、我が国がこれまでの政策を変更して、あるいはその殻を破って、いわゆる軍事的な面で積極的に取り組んでいこうということだという理解があるならば、それは少し深読みというよりも読み間違いじゃないかと、こう考える次第でございます。    〔委員長退席、理事高野博師君着席〕  なお、日本側の言う論評につきましては、私はやはり基本的に日米安保体制を堅持し、そして新しい安全保障関係の中でもそういう役割を果たしていくということを認め、また今回の安保の再確認を評価する意見が多数であったと、こう思います。しかし、それをやるためにも、現実問題として非常に大きな御負担をされております沖縄の県民の方々に対する配慮が必要である、そしてその御負担を軽減しなくちゃいけない。しかも、その中の一番大切なものといいましょうか象徴的なものとして普天間の基地に対する対応があった。そういうことで、日本ではそこの問題がクローズアップされたと、このように考える次第でございます。
  76. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 アメリカの側で、そういうアメリカ日本との軍事的な提携が全面的に明確になったということを力強く思うか喜ぶか。その最大の理由は、今、世界で一番大きな危険をはらんでいるところはアジアである。なかんずく、中国が非常に巨大な経済成長をやり、それに伴って大規模な軍拡をやり、しかも国家としての姿勢が周辺に対して、向こうの人たちが言う言葉をそのまま言えば侵略的であると。これに対して、世界の警察官としてのアメリカは、まだ実力はあるけれども気力はかなり衰えていると。そこに、まだ比較的若い日本協力が、言葉はちょっと違いますけれども、非常にありがたいんだと。こういう中国に対して非常な危険なものとする認識があって、それが特に日米安保の強化に重大な意義を付与する最大の理由になっているように感ずるのです。  従来、大臣は、日米安保は特定の国を対象にしないと、こう言っておられるからお返事は大体見当がつきますけれども、これはやはり先ほどのお話ではありませんけれども、こっち側はこう考えているけれども、客観的な世界の情勢あるいは各国の認識はそれとはかなり離れて、日米安保という性格は中国に対する封じ込め政策、封じ込めという言葉もかなり使われておるようでありますけれども、そういうものだという認識がかなり論議されているわけです。  大臣のお返事は大体わかりますけれども、簡潔にこれをまとめて伺いたいと思います。
  77. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) 御推察のとおり、私の申し上げることは、決して今回の日米安保宣言が中国あるいはいかなる特定の国をも対象にしたものではございません。それだけではなくて、その宣言の中に中国との関係についても触れておりまして、日米両国とも中国との友好関係をさらに増進していくことが非常に大切だということも言っておるわけでございますから、いろんなコメントはあったかもしれませんけれども、日米両国の考え方あるいは意図というものは明白だと、こう考える次第でございます。
  78. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 ところが、四月十七日の共同宣言に対して、中国側は間髪を入れず激越な反撃的宣言を出しているわけです。でありますから、日本は非常に平和的でありますけれども、アメリカでは中国を非常に危険視しているということは明らかでありますし、中国もまたそういうアメリカの姿勢に対して非常に鋭敏に反応する姿勢を持っている。その間、日本だけが平和的だということは、ある意味において非常に危険だと言えぬこともありませんが、これはもうこれで一応終わりましょう。  そこで、中国はアメリカに対して、到底まだ追いつきませんけれども、一歩でも半歩でもアメリカの軍事力に対応できるような軍事力の強化をしたいと。その一番先端は核兵器でありますけれども、これは世界の世論を背景にアメリカが核実験をさせないという強力な包囲体制をとっておりますから、どうやら中国もそれに屈服するという姿勢が最近では伝えられております。しかし、あの千軍万馬の中国がこのまま、アメリカの永続的な核優越に対して、もう中国は参りましたというような姿勢をとるとは簡単には考えられないわけですね。  それで、その間、インドが現在の核保有国に対して、インドもまた周知のようにパキスタンとの対立において核兵器保有の強烈な意欲を持っている国でありますけれども、それがやはりCTBTの動きに対して、今核を持っている国々がいつごろまでには核を廃絶するのかその時期を明文化しろと、こういう要求をしているわけですね。これは、それだからインドが本当に平和的だとは断定できませんけれども。  私どもは、かねて、インドが今言っているようなことを、本当にアメリカが中国に核兵器を持たすまいとするならば、まず自分がいつごろまでにはロシアとも相率いて核廃絶をするつもりであるからということを言うのが当然であろうと。自分だけ高く構えて、おまえたちはやめろと言うことは、これは長い国際関係では通用するはずがないということをこの委員会でも申し上げたことがあると思いますけれども、そのあたりはどうお考えですか。
  79. 池田行彦

    ○国務大臣(池田行彦君) 核保有国あるいは核を持たない国、それぞれの立場でまたいろいろな思惑で発言をしたり行動をしたりすることはあると思います。  しかし、私どもといたしましては、究極的な核廃絶と申しますか、核のない世界を実現するということを目指して着実に努力していく、これが一番大切だと思っております。そういったことでいろいろな取り組みをしておるわけでございますが、CTBTにつきましても、そういった意味では核保有国も含めまして何とか合意を形成し、先ほど申しました目標に向かっての一歩を進めていくと、そういうことが大切なんじゃないかと思っております。    〔理事高野博師君退席、委員長着席〕  したがいまして、中国のこの問題に対する立場につきましても、私どもは、平和的な小規模な爆発を対象外にするということは好ましくないということを繰り返し言ってまいりましたし、それが国際社会全体の大きな流れになっているということで、今御指摘もありましたように、中国の姿勢にもある程度の変化が今見られつつあるのだと思います。  それから、インドの主張につきましても、期限を切るという点につきましては、そのこと自体を抜き出して考えればあるいは委員今御指摘のような評価というものも可能かと思いますけれども、先ほど申しましたように、いろいろな立場、いろいろな意見がある中でともかくCTBTの条約をまとめ上げていくと。そういう観点から申しますと、現在のインドの主張というものは、いわばそういった合意形成にとって妨げになるという状況になっているのも事実でございますので、そういったところはインドが真にCTBTの締結を求めるならば、現在のこの条約をめぐる状況というものをよく踏まえて対応することを期待していると、こういうことでございます。
  80. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 先ほど来、立木委員もおっしゃったし、私も非常に痛感しますのは、客観的な世界の現実とか諸外国の思惑から離れて、日本の平和的な善意的な考えだけで通用するということが考えられないという心配を私どもも持っていることを一応心にとめておいていただきたいと思います。  最近気になりますのは、中国とロシアが提携しつつあると。これなども、本当にお互いの間で心から信頼し合える、何でも言い合って信頼し合える間柄ということはどこの国にもないわけで、日本アメリカといえども同盟関係は利害の一致にほかならずということで、本当の理想を同じくする同志的な国家関係ではないのは明らかですね。  だから、中国とロシアの間でも、当然利害がたまたま一致すれば手を握るし、反すればすぐけんかをするというような間柄でしょうけれども、今の時点だけ見れば、中国とロシアが手を握れば当然の結果として日本アメリカがそれに対応する形があらわれてくるわけですね。だから、そういう状況に対して世界の警察官をもって任ずるアメリカと日米安保を通じての友達になるということは、昔の言葉で言えばアメリカの軍事的世界支配の一環を日本が担当して組み込まれていく、これは昔の表現でありますけれども、結局そういうふうに外国から見ればとられかねない情勢が客観的にあるのではないかと思います。  もう時間が来ましたので、また伺います。終わります。
  81. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認め、これより討論に入ります。——別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、商業的造船業における正常な競争条件に関する協定締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  82. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、商標法条約締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  83. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、両件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十分散会