○武見敬三君
アジア・太平洋に関する小
委員会について御報告申し上げます。
小
委員会は、
アジア太平洋地域における
我が国の外交のあり方について幅広い
視野から
調査、検討を行うため、本年二月二十九日に設置されて以来、小
委員十四名をもって活動を進めてまいりました。
まず、三月十二日の第一回小
委員会において、
アジア・太平洋に関する小
委員会は、時局に即した形で外交と国民世論との間のよき仲介者としての役割を担うべきことを確認し、その第一弾として、当面、三月二十三日の台湾総統選挙を控えてにわかに緊張が高まった中国・
台湾情勢に焦点を当て、短期集中的に
調査、検討することといたしました。
そこで、三月十九日に平松茂雄杏林大学教授、小島朋之慶応義塾大学教授、井尻秀憲筑波大学助教授を参考人として招き、意見聴取と
質疑を行ったのを皮切りに、二十七日には
米国ハーバード大学のエズラ・ヴォーゲル教授、朱建栄東洋学園大学助教授、田中明彦
東京大学助教授、四月三日には若林正丈
東京大学教授、
佐藤幸人
アジア経済研究所研究員をそれぞれ招いて同様に意見の聴取と
質疑を行い、中国・
台湾情勢について多角的かつ詳細な検討を加えました。また、四月十日には
外務省の
アジア局長と北米局長、防衛庁の防衛局長からも説明を聴取し、
我が国の対応について
質疑を行いました。
これらの意見及び説明の聴取と
質疑の内容を踏まえて、小
委員会に別途設置された幹事会において論議を重ねた後、五月十四日の
アジア・太平洋に関する小
委員会において、中国・
台湾情勢に関する
調査の経過及び概要とともに、五点から成る提言を盛り込んだ報告書を取りまとめた次第であります。
提言の全文は次のとおりであります。
中台
関係は、昨年一月に江八点(江沢民・中国国家主席の台湾政策八項目提案)、四月に李六点(李登輝・台湾総統の六項目提案)が提案されたが、同年六月の李登輝総統訪米を契機に中台双方の軍事演習が活発化し、緊張が激化した。
そうした中で本年三月二十三日、台湾において初の民選による指導者選出の選挙が行われたが、この選挙をはさんで中国は、台湾付近でミサイル発射訓練、海・空軍実弾演習及び陸海空統合演習を実施した。一方、
米国は、同時期に空母インディペンデンス及びニミッツを含む艦船を台湾周辺海域に派遣した。
もとより我々は、一九七二年の日中共同声明、一九七八年の日中平和友好
条約に基づき、日中両国民の更なる善隣友好
関係の増進を願うものであるが、今回の軍事的諸行動には関心を持たざるをえない。また、台湾海峡における緊張の高まりを深く憂慮するものである。
本小
委員会は、今回のかかる事態は、
アジア・太平洋の平和と安定に係わる
国際的な関心事であると認識して議論し、その結果に基づき、次の提言と期待を表明するものである。
一、台湾問題は、中台双方による自主的、平和的な話し合いによって解決されるべきであり、これが妨げられるようなことがあってはならない。
二、台湾海峡における軍事的緊張が、中台双方の軍備増強につながり、
アジア近隣諸国の安全保障上の警戒心を招き、すでに顕在化しつつある
アジアの軍拡競争に拍車がかかるような事態を
回避するための措置が速やかに講じられるよう強く希望する。
三、台湾が、みずからの努力により民主主義の制度化に尽力しつつあり、民選により指導者を選出したことを歓迎するとともに、中台双方が民主主義と人権の保障を
発展させ、より開かれた社会を
建設していくよう期待する。
四、中国経済及び台湾経済が持続的に
発展し、かつ、資本、技術、市場をめぐる中台経済
関係が
発展していることを歓迎し、これが
アジア・太平洋における持続可能な成長に貢献することを期待する。
五、日中両国
政府間のすべての
分野における対話を一層充実させ、こうした対話を議会間交流、民間交流などの各レベルでも緊密に行うことにより、日中両国間の相互理解を一層深めるとともに、両国
関係が
アジア・太平洋の平和と安定に貢献するよう積極的に努力するべきである。
以上が提言の全文並びに中国・
台湾情勢をめぐる
アジア・太平洋に関する小
委員会の活動の概要であります。
本日、「中国・
台湾情勢に関する報告書」を外務
委員の皆様のお手元にお配りしてありますが、
外務委員会におかれましては、この提言を含む本報告書を御了承いただき、
関係各方面に御周知くださいますよう、
委員長においてお取り計らい願いたいと存じます。
なお、
アジア・太平洋に関する小
委員会は、今回の活動に引き続き、今会期中さらに活動を継続してまいる所存でありますので、一層の御理解と御
支援をお願い申し上げます。また、今回のような活動をより充実させるためには現地
調査が不可欠であることが多くの小
委員から
指摘されております。今後、
外務委員会による海外
調査のための
委員派遣が可能となりますよう、特段の御努力、御配慮をお願いいたしたいと存じます。
以上、御報告申し上げます。