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1996-05-07 第136回国会 参議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年五月七日(火曜日)    午後一時二分開会     —————————————    委員異動  四月二十六日     辞任         補欠選任      岩瀬 良三君     畑   恵君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         木庭健太郎君     理 事                 笠原 潤一君                 野沢 太三君                 寺澤 芳男君                 川橋 幸子君     委 員                 岩崎 純三君                 武見 敬三君                 成瀬 守重君                 宮澤  弘君                 田村 秀昭君                 高野 博師君                 畑   恵君                 照屋 寛徳君                 立木  洋君                 武田邦太郎君                 椎名 素夫君                 佐藤 道夫君                 矢田部 理君     国務大臣         外 務 大 臣 池田 行彦君     政府委員         外務大臣官房長 原口 幸市君         外務省総合外交         政策局長    川島  裕君         外務省総合外交         政策局軍備管         理・科学審議官 河村 武和君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    朝海 和夫君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省欧亜局長 浦部 和好君         外務省経済協力         局長事務代理  中島  明君         外務省条約局長 林   暘君     事務局側         常任委員会専門         員       大島 弘輔君     説明員         内閣官房内閣内         政審議室内閣審         議官      渡辺 芳樹君         総務庁長官官房         地域改善対策室         長       川邊  新君         防衛庁長官官房         防衛審議官         兼防衛局防衛政         策課長     守屋 武昌君         防衛庁防衛局運         用課長     金澤 博範君         防衛庁防衛局調         査第二課長   山内 千里君         法務省入国管理         局審判課長   山神  進君         外務大臣官房文         化交流部長   大塚清一郎君         外務大臣官房領         事移住部長   齋藤 正樹君         労働省婦人局婦         人政策課長   北井久美子君         自治省行政局公         務員部公務員課         長       猪野  積君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○平成八年度一般会計予算内閣提出、衆議院送  付)、平成八年度特別会計予算内閣提出、衆  議院送付)、平成八年度政府関係機関予算(内  閣提出、衆議院送付)について  (外務省所管)     —————————————
  2. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る四月二十六日、岩瀬良三君が委員を辞任され、その補欠として畑恵君が選任されました。     —————————————
  3. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 次に、去る五月一日、予算委員会から、五月七日の午後半日間、平成八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、外務省所管について審査の委嘱がありました。  この際、本件を議題といたします。  まず、池田外務大臣から説明を求めます。池田外務大臣
  4. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 平成八年度外務省所管一般会計予算案概要について御説明申し上げます。  外務省予算総額は七千五百五十八億三百万円であり、これを平成七年度予算と比較しますと、三百十億二千百万円の増加であり、四・三%の伸びとなっております。  今日の国際社会においては、冷戦終結後の平和と繁栄を確保することを目指し、新たな枠組みを確立するためのたゆみない努力が続けられておりますが、政治経済両面での課題は山積しており、依然として不透明で不確実な状況が続いております。核兵器の拡散の危険は依然大きいものがあり、また主要国経済は困難を抱えたままであります。さらに、開発途上国の貧困の問題は一層深刻化しております。加うるに、地球環境、麻薬、難民、人口、エイズといった地球的規模の問題に取り組まなければなりません。このような状況の中で、我が国としても一層積極的で創造性豊かな役割を果たす必要があります。  このような観点からへ我が国外交に課せられた使命は極めて重大であり、平成八年度においては、その足腰ともいうべき外交実施体制拡充国際貢献策充実強化の二点を重点事項として、予算強化拡充を図っております。  まず、外交実施体制拡充に関する予算について申し上げます。  定員増強につきましては、平成八年度においては百六十名の増員を得て、外務省政令定員を合計五千五名といたしております。また、機構面では在済州総領事館を新設すること等を予定しております。さらに、在外公館機能強化のために在外公館施設等強化及び海外邦人安全対策危険管理体制強化のための経費三百六十五億円を計上しております。加えて、外交政策策定の基盤となる情勢判断を的確に行うために不可欠な情報通信機能強化に要する経費として六十八億円を計上しております。  次に、国際貢献策充実強化に関する予算について申し上げます。  国際貢献策充実強化の三つの柱は、政府開発援助拡充、平和・軍縮のための協力、そして国際文化交流強化であります。  まず、平成八年度政府開発援助につきましては、一般会計予算において政府全体で対前年度比三・五%の増額を図っております。このうち、外務省予算においては、無償資金協力予算を対前年度比一・七%増の二千六百一億円計上しておりますが、その内訳は、経済開発等援助費が二千百六十六億円、食糧増産等援助費が四百三十五億円であります。さらに、人的協力拡充のため技術協力予算拡充に努め、なかんずく国際協力事業団事業費は対前年度比三・八%増の千七百五十七億円を計上しているほか、国際協力事業団定員につき十九名の純増を図る等、援助実施体制強化に努めております。  次に、平和・軍縮のための協力でありますが、新しい世界平和の秩序の構築のための国際協力を進めることが必要との認識に立ち、国連の平和維持活動を初めとする平和及び難民人道分野での国際機関などによる活動支援のため、また地球環境問題あるいは麻薬問題といった国境を越えて国際社会影響を及ぼす地球的規模の問題に取り組むため、国際機関を通じて積極的貢献を行うべく総額三百九十五億円を計上しております。また、本年は日ソ共同宣言による国交回復後四十周年に当たり、北方領土問題解決のための環境整備として約三億九千万円を計上しております。  次に、国際文化交流強化でありますが、各国との知的、文化的交流を図り、異なる文化間の相互交流を促進するため百八十七億円を計上し、国際交流基金事業拡充強化及び文化協力推進等を図ることとしております。  以上が外務省関係予算概要であります。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  5. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 以上で外務大臣説明は終わりました。  この際、お諮りいたします。  外務省所管平成八年度予算大要説明は、これを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 野沢太三

    野沢太三君 外務省予算につきましては、全体が苦しい中で四・三%の伸びを確保したということはまずまずであろうかと思います。ただ、ODAなどに見られまするように、三・五%ということで三年連続低位ということでありますから、まだ相当頑張らないと中期目標等で設定した金額に到達できないというような心配もあるわけでございます。しかし、こういった予算実施していくいわゆる実施体制強化というのは非常に重要ではないかと思うんです。  まず、平成八年度予算定員が五千五人ということで大台に乗ったわけでございますが、先般来議論していますように、出先についてはまだ兼館等のところが大分多いということからいたしましても、今後どのような増強戦略を立てるか、これらの方針についてお話を伺いたいと思います。
  8. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) 先生指摘のとおり、平成八年度末の外務省定員は五千五名となる見込みでありまして、うち在外公館定員は三千五十四名となる予定でございます。他方、機構につきましては、平成八年度末の全在外公館数は二百六十七となる見込みでございまして、このうち実館が百八十三、兼館が八十四となる予定でございます。  外務省といたしましては、厳しい行財政事情ではございますが、我が国外交重要性の一層の増大にかんがみまして今後とも外交実施体制強化に努めてまいりたいと考えております。  なお、在外公館実館とするかどうかにつきましては、我が国当該国地域との関係、あるいは他の公館新設の必要性等いろいろな要素を総合的に勘案しつつ決定しておりまして、今後とも関係方面の御理解と御支援を得て所要の体制を整備してまいりたい、このように考えております。
  9. 野沢太三

    野沢太三君 やはり兼館というようなことでなしに、実際の駐在がいるかいないかというのは大変な違いになると思いますので、今後、増強方針の中にそういったものをできるだけ解消するというような事柄も大事な判断要素一つにしていただきたいと思うわけであります。  そこで、そこへ赴任する人ですが、最近外務省プロパー以外の方からも大公使の起用が何人かございますけれども、これらの人材登用あるいは活用考え方はどのような方針で臨んでおられるのか、お願いしたいと思います。
  10. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) まず、実態から御説明したいと思います。  在外公館におきましては、平成八年五月一日現在、他省庁等出身の大使が三名、それから公使、総領事が三名いるほかに、官公庁より七百六十九名の出向者を受け入れている次第でございます。また民間からは百二十六名を、これは外務省定員の枠内で、要するに外務省員として改めて採用して受け入れている実情にございます。また、本省におきましては、官公庁より五十八名を受け入れ、民間からは二十三名を受け入れております。  これは、民間活力を我が方の活動に導入するということ、それから民間国際化にもお役に立ちたいというような観点から行っておりまして、今後とも引き続き省外人材活用すべく、他省庁及び民間との人事交流を積極的に進めてまいりたいと、かように考えております。
  11. 野沢太三

    野沢太三君 外交内容が大変多様化しているという実態にかんがみましても、今おっしゃったような民間活力を導入する、あるいは他省庁の力も活用する、こんなことをぜひひとつ御検討いただきまして厚みをつけていただきたいと思います。  それから、最近アメリカにおいてギャラップを使った世論調査をしたところ、大変おもしろいデータが出たと伺っておりますが、これらアメリカにおける世論調査というのは常に定期的にやっておられるのかどうか。アメリカ以外の国でもこのような世論調査というようなものを定期的にやりまして、定点観測をしていくということが外交政策を立てる上にも大変大事だと思いますが、今までのこの実績とこれからの取り組みについてお話しいただければありがたいと思います。
  12. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) 先生指摘のとおり、私どもといたしましても世界各国の対日認識等を正確に把握することは、我が国広報施策、ひいては外交政策企画立案等において大変有益であろうというふうに認識しております。  米国につきましては、実は一九六〇年から毎年、先生の言葉をかりますと定点観測という形で世論調査実施しているわけでございます。また、EU主要国、実際には七カ国でございますけれども、EU主要国につきましても二年ないし三年に一度、対日世論調査実施してきております。また、カナダ、豪州という国におきましても、頻度は若干落ちますが、この世論調査実施してきているところでございます。  今後は、我が国外交の広がりあるいは我が国当該国との関係の深まりということも念頭に置きまして、ASEAN等アジア地域につきましても世論調査を定期的に実施していきたい、かように考えております。
  13. 野沢太三

    野沢太三君 先般通りました在外公館位置名称法審議のときにも申し上げましたけれども、やっぱり足腰、頭ということで、この調査費というものに重点を置いて、増強することによって在外皆様の力が何倍にも増幅して発揮できるということがあろうかと思います。そういった面も官房においての今後の戦略として、人数だけをふやすというのではなしに、そういった能力をふやしていくという意味での活用をぜひお願いしたいと思うわけです。  その意味でもう一つ、今回の予算には在外LAN構築というのが十二億ほど皆増で盛られておりますが、この目的と活用方策について簡潔に御答弁いただきたいと思います。
  14. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) 外交重要性の高まりとそれに伴います業務量増大に対応しまして効果的、効率的に外交活動を展開していくためには、最近の情報技術というものを利用した情報化推進が極めて有益であるというふうに考えております。  こうした観点から、外務省といたしましては、平成七年の七月から運用を開始しております省内LANに続きまして、今後、在外公館におきましても順次このLANを導入いたしまして、行く行くはこれを本省と接続することによりまして本省在外公館との間の迅速な情報交換事務合理化効率化を進めていきたいと考えておる次第でございます。
  15. 野沢太三

    野沢太三君 こういった新しいメディアを有効に活用しまして、本省出先の連携を密にとっていただき、ぜひ効果を上げていただきたいと念願をいたします。  それでは、続きまして移住民対策について二、三お伺いをいたします。  戦前戦後海外へ移住しました方々というのは、およそで結構ですが、総数でどのくらいいらっしゃるか、また今日存命して活躍しておられる方々、いわゆる日系人というのは何人くらいと見られるのか、お話を伺います。
  16. 齋藤正樹

    説明員齋藤正樹君) 戦前戦後の移住者の数でございますけれども、まず戦前移住者が約七十七万六千人、それから戦後の移住者の数が約二十六万二千人、合わせまして約百四万というように見積もられております。また、これらの移住者及びその子孫であります日系人の総計でございますが、全世界で約二百五十万人と推定されております。
  17. 野沢太三

    野沢太三君 移住者はもちろんですが、またその子孫方々、二世、三世、四世、もう五世ぐらいまで行っているという話もありますが、そういう方々は、日本とその当該の国にとりまして政治経済文化、あらゆる分野友好親善のかけ橋としてかけがえのない皆様と私は認識をしておるわけでございます。しかし、この皆様方の中には、成功した方々も多いんですが、大変苦しい思いをして暮らしておられる方もいらっしゃる。こういう方々をどうこれから支援していくか、精神的あるいは物質的、あらゆる面からの有形無形支援が私は望ましいと思いますが、どのような考え方で臨んでおられましょうか。
  18. 齋藤正樹

    説明員齋藤正樹君) 移住者日系人は、その移住先の国におきまして経済及び社会発展に寄与しておりますし、また日本語の普及の側面でも非常に重要な役割を果たしております。したがいまして、これら移住者日系人活動支援するために、国際協力事業団を通じまして、主として日系人人材育成日本語教育に対する支援事業を従来から行っております。  主な具体的な施策につきましては、日系人を本邦に呼びまして研修を行うとか、あるいは日系社会に対する移住シニア専門家とか海外開発青年の派遣、こういうことをやっております。
  19. 野沢太三

    野沢太三君 平成八年度の予算からいわゆる海外移住事業の費用で対応していた事柄を一部海外技術協力事業費に振りかえていただいておりますが、これはやはり今後とも量的、質的に拡充強化をすることがねらいであると思うわけですが、具体的に何をどう行うのか、内容について触れていただきたいと思います。
  20. 齋藤正樹

    説明員齋藤正樹君) 日系人は、先ほど申し上げましたように、その居住国経済社会発展とか技術移転、このような面で寄与していることがありますので、こういう点に着目しまして、移住事業費で従来から対応してきた日系人に対する支援事業の一部を、今お諮りしています平成八年度予算におきまして海外技術協力事業費に組み替える予定でございます。  今後は、現地日系社会のニーズを踏まえまして、これらの日系人に対する技術協力等人材育成あるいは日本語教育といった支援事業のあり方を検討してまいりたいと考えております。
  21. 野沢太三

    野沢太三君 海外に出られた方々が誇りを持って日本人としてあるいは日本出身者として行動できるようなそういった祖国でありたいし、またそのような支援策であってほしい、こう念願をいたしておりますので、よろしくお願いします。  それでは、続いてボスニア問題に移りたいと思います。  先日、ビルト上級代表日本にも見えまして、ボスニア支援についての要請があったわけですが、四月十三日の第二回のボスニア支援国会合におきましておおむね十八億ドルの提供申し出各国から得られたというふうに伺っております。こういった資金が集まったとして、実際にこれを実行できる体制があのボスニアの国内にあるのかどうか、この辺についてわかる範囲でお願いしたいと思います。
  22. 浦部和好

    政府委員浦部和好君) 実は四月十三日の会合においてもこの点が一つ問題点として指摘をされました。その結果、各支援国は、一つ支援形態といたしまして、まさにボスニア政府政府機関をしっかりつくり上げる、援助を効率的に実施できるようないろいろな支援を行うということが合意をされました。
  23. 野沢太三

    野沢太三君 秋に選挙予定されておりまして、議会あるいは政府関係機関等についてもこれが一つの起点になって進むんだろうと思いますが、選挙がうまくいくためには、難民の帰還とか有権者登録、政党の結成、候補者の選定等さまざまな課題があろうかと思います。この準備に対して、我が国としてどのような支援応援が行われるか、これについてお話をいただきたいと思います。
  24. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員おっしゃるとおり、今秋と言われております選挙がしっかりと行われるかどうか、それがボスニアの今後に大きな影響を持つと思います。  現在、選挙準備及び実施につきましては、デートン合意に基づきましてOSCEが中心となって進めております。現時点におきましては、現地に派遣したミッションが現地政府とも協力をしながら、今御指摘のございました選挙民登録であるとか選挙規則策定あるいは投票日実施体制をどうするかといったようなことを進めているところでございます。  我が国といたしましては、やはりこの選挙重要性にかんがみまして人的、財政的な貢献を行わなくちゃいけない、こんなことでいろいろ進めておりまして、現在までに選挙準備に携わった経験を有する専門家を二名程度派遣することにしております。そのほか、実際に選挙が行われるようになりますならば、そのときにモニターといいますかいわゆる選挙監視要員、これを派遣するということについて前向きに検討してございます。ちなみに、先般パレスチナにおきまして選挙が行われました場合にも、我が国からは七十八名という各国で最も多い選挙監視団を派遣したところでございます。  それからなお、選挙準備並びに実施のためには当然資金がかなり必要であるわけでございます。このため、今いろいろ話し合いが行われておりますが、我が国といたしましてはとりあえず二百万ドルを適当な時期に拠出する用意がある旨、先般の支援国会合、四月に行いました第二回の会合におきまして表明したところでございます。なお、本格的な選挙実施するということになれば、また追加的なことも考えなくちゃならないかと、こう思っています。
  25. 野沢太三

    野沢太三君 ぜひそのような形で援助を継続的に進めていただきたいと思います。  私は、お金ももちろん必要ですけれども、人の応援ということが今非常に重要ではないかと思います。せっかくボスニアとも国交が回復したわけでございますので、これを実館に直して仕事を具体化したらどうかと思うんですが、これについてはいかがでしょうか。
  26. 浦部和好

    政府委員浦部和好君) 先ほどのまさに援助の具体的な実施においても現地でのコンタクトというものが大変重要かと思います。したがって、我々としては、そういう意味でもできるだけ周辺の国から我が方の人間を現地に出張させるとか、あるいは現地コンタクトポイントをつくりまして常に向こうの政府と接触ができるような形で援助の効率的な実施を図りたいと現在考えております。  なお、御質問の具体的な公館設置でございますが、御案内のようにこの二月に外交関係ボスニア・ヘルツェゴビナとは開設をいたしまして、先般の在外公館名称位置給与法の改正におきまして兼轄として大使館の設置が認められたところでございますが、いわゆる公館設置の一般的な方針というものがございますものですから、そういうもの等を踏まえまして今後の問題として検討をしてまいりたいと、かように考えております。
  27. 野沢太三

    野沢太三君 当面選挙実施が大事だと思いますので、形にとらわれず実質的な意味での要員手当て等を御検討いただければよろしいかと思います。  それから、一年たつと今駐留しております平和維持軍、いわゆるIFORの皆さんが引き揚げるということが予定されておりますけれども、ボスニアの平和というのは、話し合いというよりもむしろ力で実現したという要素が非常に強い中で、力の空白が生じた場合、果たして維持ができるかどうか、この辺についての現時点での見通しなり考えをお聞かせください。
  28. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御指摘のとおり、今IFORの力によって一応の平静が保たれておる、こういう状況でございますが、年末ということに一応の期限がなっております。その後どうなるかという議論が、私が今回ヨーロッパの方へ行きましてもあちらこちらで出てまいります。そういったところで、その辺はヨーロッパあるいはアメリカその他を中心にして今後ともいろいろ考えなくちゃいかぬ大きな課題ではあると思います。  しかしながら、ともかく現在のところは、復旧・復興の支援であるとか選挙実施、さらには民生面での平和履行というものを現在一応保たれている平静のもとで着実に進めていく、それを推進していくことによって少しでも安定度を高めていくことに力を尽くすべきではないか、こう考えております。しかしながら、おっしゃるとおり、これから真剣に考えなくちゃいけない問題であると思います。
  29. 野沢太三

    野沢太三君 時々刻々情勢が変わる中での適切な判断と対応が極めて重要だと思いますので、我が国もその中で応分の支援協力ができるよう御努力をお願いいたしたいと思います。  なお、OECD関係の開発委員会に提案しております途上国支援のいわゆる目標設定の問題について数問伺う予定でしたが、時間がなくなりましたので次回に譲りまして、私の質問はこれにて終了いたします。
  30. 武見敬三

    ○武見敬三君 それでは質問をさせていただきます。  まず初めに、中国の核実験についてお尋ねをさせていただきたいと思います。  中国の核実験は準備をしてから実行するまで約六十日間かかると、こういうふうに言われております。現在アメリカの偵察衛星などで確認されている限りにおいては、三月よりこの準備が始まったと言われております。そういたしますと、五月の下旬ごろに中国が核実験を行うことが予見されるようになっているというふうに聞いておりますが、外務省はこの点、状況をどう確認しておられるのでありましょうか。
  31. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 中国の核実験について、いついかなるタイミングで行われることになるかということは確認できておりません。
  32. 武見敬三

    ○武見敬三君 現在準備が進められている点については、情報を確認されておられますか。
  33. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 中国の核実験についてのいろいろな情報というのはあるわけでございますけれども、これはその情報の性質にかんがみ、ここで個々のコメントないし御紹介をさせていただくということは差し控えるのが適当と考えます。
  34. 武見敬三

    ○武見敬三君 わかりました。それでは次の質問に移らせていただきます。  四月二十四日から少なくとも五月二日まで、五隻の中国船籍の海洋調査船と一隻のフランス船籍の海洋調査船が沖縄西方海域、これは日中の中間線よりも日本側の公海上というふうに聞いておりますが、そこにおいて、中国船籍の場合にはジグザグ航行等、あるいはフランス船籍におきましては船尾からケーブル三本を曳航し、うち二本から空気の泡を一定間隔で放出し、調査活動に従事していることが確認されたと聞いております。  この中国船籍の海洋調査船五隻に関しましては、現場で巡視船等からその航行目的等質問をしたと承っておりますが、その返答はいかなるものでありましたでしょうか。
  35. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 私どもも海上保安庁と連絡を緊密にとってまいっておりますけれども、中国船については現時点まで明確な回答が得られておりません。私どもといたしましては、今御指摘の中国船籍五隻の船の動向というものを承知いたしましてから、在中国大使館を通じまして中国の外交部に対し累次照会を行ってまいっております。また、四月三十日には、アジア局の審議官からこれまた在京の中国大使館を通じて同趣旨の照会を行っておりますけれども、これについての回答は今日現在まだございません。
  36. 武見敬三

    ○武見敬三君 そういたしますと、この中国船籍五隻が調査活動を行っているかどうかという確認はできているんでしょうか。
  37. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 今申し上げましたとおりでございまして、できておりません。
  38. 武見敬三

    ○武見敬三君 そういたしますと、調査活動というふうにまだ断定はできないわけではありますが、実際に五隻もの中国船籍の海洋調査船が同時にこういう形で一定の海域で活動をするというのは前例があるんでしょうか。
  39. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) これまで五隻の船がこのような活動を行ったということについて前例があるというふうには必ずしも承知いたしておりません。
  40. 武見敬三

    ○武見敬三君 それでは、フランス船籍の海洋調査船の方についてお伺いをしたいと思います。  こちらについては、その調査目的について外交ルートで照会をされ、我が国の立場を申し入れられて、その結果、四月三十日にフランス側から本件の調査をとりあえず中断する旨連絡があった、そして五月一日に日中中間線の中国側水域に移動したというふうに聞いておりますが、とりあえず中断するというこの言い方は、これは再開はあり得るということなんでしょうか。
  41. 浦部和好

    政府委員浦部和好君) 現在のところでは、我々の照会に対してフランス側が外交ルートで答えておるところは、先生今御指摘のとおり、現在の調査はとりあえず中断し、今後の対応につき検討をするという連絡だけでございますので、我々としてはそのような判断はまだできないというふうに思っております。
  42. 武見敬三

    ○武見敬三君 では、その調査についてはフランス側から全く回答はないわけですか、その調査活動内容とか。
  43. 浦部和好

    政府委員浦部和好君) 先ほど申し上げました照会に対しましてフランス側は、堆積物調査であるとか磁気調査であるとか地震的調査等、純粋に科学的な調査を行っている旨回答を越してございます。
  44. 武見敬三

    ○武見敬三君 現時点においてフランス船籍の海洋調査船が日中間で係争地点と言われているような海域でこうした調査活動を行うというのは極めて理解をしがたいわけでありますが、実際に例えば中国側から委託を受けた海洋調査であるかどうか等推測をされるわけでありますが、この点についてはいかに判断したらよろしゅうございますか。
  45. 浦部和好

    政府委員浦部和好君) ただいま御説明しましたような回答がとりあえずフランス側から来ているわけでございまして、それ以上なかなか憶測、推測をするのは難しい状況にございます。
  46. 武見敬三

    ○武見敬三君 中国政府は、例えば銭其_外相が訪日をした際にも、海洋法条約の関連で漁業のみならず大陸棚の問題も一括して協議することを求めてまいりました。日本側は漁業を中心に考えていたわけでありますが、中国側はあえてこれに大陸棚を加えて一括というふうに言ってきております。  四月九日から第一回の専門家レベルにおける協議が始まったというふうに聞いておりますが、こうした専門家レベルにおける協議の中で大陸棚に関連する中国側からの何らかの新しい提案ないし動きというものがあるのでありましょうか。
  47. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 四月九日の事務レベル協議というのは、海洋法条約、漁業などに関する実務者レベルの非公式協議でございますが、この中において特に大陸棚の開発ということについて新たな発言ないし提案があったというふうには承知いたしておりません。
  48. 武見敬三

    ○武見敬三君 中国政府が海洋法条約に関連した交渉の中で大陸棚の問題をいずれ積極的に持ち出してくる可能性というものを私は予測するわけでありますが、この場合、外務省としてはどう対処されるおつもりなのか、その基本的な方針をお聞かせください。
  49. 林暘

    政府委員(林暘君) 先生御案内のとおり、現在国会の方に海洋法の承認についてお願いをしているわけでございますが、それと同時に、国内法といたしましても排他的経済水域及び大陸棚に関する法律案についてもお願いをしているわけでございます。  海洋法におきましては、大陸棚につきましても排他的経済水域につきましても、大陸棚の場合には二百海里以上の部分も規定がございますけれども、基本的に基線から二百海里沿岸国が権利を持つということになっておりますが、日中間において日本の領土と中国の領土との間に四百海里未満のところがあるわけでございますから、そこの部分についての境界の画定ということはいずれしなくちゃいけない、向こうから求めがあればそれについても交渉しなくちゃいけないという状況にはなろうかというふうに思っております。
  50. 武見敬三

    ○武見敬三君 大陸棚の資源開発について中国政府がどうも相当積極的に動き出しているような感じが見てとれるわけであります。既に過去において、尖閣列島周辺海域を含め中国側から、例えば石油資源の開発等についての共同開発等のいろいろな打診ないしある程度の申し入れといったようなものが公的あるいは非公式あるいは民間レベル等々において行われてきているように聞いているわけでありますが、その内容は一体どういうものであったのでありましょうか。
  51. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 中国については、これまでも東海大陸棚の共同開発を行いたいという趣旨の提案が七九年当時いろいろ議論があった模様でございますけれども、中国政府として具体的にいかなる共同開発を考えているかというようなことについては、詳細は承知いたしておりません。
  52. 武見敬三

    ○武見敬三君 この点は、領土問題等も絡まり、非常に敏感かつ重要な課題であるだけに、国民世論の動向等もよく勘案をして対処されることを切に望むものであります。  次の質問に移ります。  四月二十五日に中ロ共同声明が出されました。エリツィン・江沢民会談を受けてのことであります。その中で、中国とロシアを戦略的な協力関係及び仲間の関係、あえてこれは同盟関係ではないわけでありますが、仲間の関係というような表現でそれらの関係が確立されたこと、そして軍事技術協力をより一層強化することが確認をされています。ただし、この軍事技術協力というものが第三国に向けたものではなくて、しかも透明度を保ったものであり、国連の軍備登録制度に情報を提供しなければならぬものであることなどが約束をされております。この国連の軍備登録制度等に情報を提供することが約束されていることなどは、大変好ましいことであろうというふうに考えるわけであります。  御存じのとおり、国連の軍備登録制度というのは、日本が欧州共同体諸国と協力をして採択にこぎつけました軍備の透明性に関する国連総会決議によって一九九一年に設置されたものでありますが、何分総会決議によるものであって、強制力はございません。第一回の登録が一九九二年度分、二回が九三年度分、三回が九四年度分と行われているわけでありますが、中国及びロシアは第一回目からこの国連の軍備登録制度に登録をしているのでありましょうか、あるいはそうでないとしたらいつからこれに登録をし、参加をしているのでありましょうか。
  53. 河村武和

    政府委員(河村武和君) 中国及びロシア双方とも、今、委員が御指摘になりました九二年度分の輸出入以降につきまして、毎年その状況登録いたしております。
  54. 武見敬三

    ○武見敬三君 この登録すべき内容というのは、戦車、戦闘用航空機、軍用艦艇、ミサイル・ミサイル発射装置、攻撃ヘリコプター、装甲戦闘車両、大口径火砲システムの七つのカテゴリーの兵器について過去一年間の輸出入の数量と輸出入先を登録するということになっているようであります。  近年、ロシアから中国に対して、SU27の第一世代の戦闘機であるとかキロ級の潜水艦等、さまざまな兵器が大量に輸出されているというふうに聞いているわけでありますけれども、この国連の軍備登録制度によってその実態というものが一体どの程度把握できているのでありましょうか。
  55. 河村武和

    政府委員(河村武和君) 今、委員が御指摘になりましたとおり、いわゆる通常兵器の国際移転のデータとなる兵器は七つのカテゴリーによってできておりまして、戦車、装甲戦闘車両、大口径火砲システム、戦闘用航空機、攻撃ヘリコプター、軍用艦艇及びミサイル・ミサイル発射装置という七つでございます。  九二年にロシアが中国に対して輸出したとして登録をいたしましたのが、戦闘用航空機二十六、それからミサイル及びミサイル発射装置百四十四というものでございました。中国が提出しましたロシアからの輸入の状況というものも全く同じでございます。すなわち、ロシアから二十六の航空機と百四十四のミサイル及びミサイル発射装置を輸入したという登録内容が出されております。  九三年度につきましては、双方とも移転が行われたという報告をいたしておりません。  九四年度分につきまして、ロシアから中国に対して軍用艦艇一が輸出されたという登録がなされまして、中国からもロシアから軍用艦艇一を輸入したという登録がなされております。
  56. 武見敬三

    ○武見敬三君 その軍用艦艇一というのは、このキロ級の潜水艦なんでありましょうか。
  57. 河村武和

    政府委員(河村武和君) 国連の軍備登録制度自体からはこの軍用艦艇が何であるかということを特定することはできません。すなわち、登録制度上その詳細について記載する義務がないということによるものと考えます。  他方、通常我々が常識的にいろいろなところで集めております情報を総合しますと、この軍用艦艇一といいますのはキロ級潜水艦であろうという推定を行ってもそれほど間違っているものではない、このように考えております。
  58. 武見敬三

    ○武見敬三君 実際にこの国連軍備登録制度、できたこと自体に価値があるということもあるかもしれませんが、その七つのカテゴリーのあり方等、さらには登録している国家の数その他、まだ十分ではないと思いまして、これをいかにこれからより効果的な登録制度にしていくのかということは、提案をするに当たって非常に重要なイニシアチブをとった我が国としては特に率先して考えて実践しなければならない課題ではないかと思います。その点、引き続きその御苦労をぜひお願いしたいと思います。  それから、国連のこうした登録制度を補完する形で新しい登録制度、例えばASEAN地域フォーラムの加盟国を対象にこうした地域の軍備登録制度というようなものは創設できないものでありましょうか。特に、アジア太平洋などの状況を反映すれば、先ほども御説明があったように、その七つのカテゴリーというのは大変あいまいでございまして、軍用艦艇というカテゴリーだけではなかなかわからない。むしろこれは、海上艦艇と潜水艦というのはカテゴリーとしてちゃんと分けるべきだろうと思います。  そうしたようなことを、地域の実情に合わせて設定された地域の軍備登録制度というようなものがASEAN地域フォーラム等をうまく利用した形できちんとできれば大変好ましいと思うわけでありますが、この点どうお考えになりますでしょうか。
  59. 河村武和

    政府委員(河村武和君) 今御指摘がございましたとおり、この通常兵器の移転登録制度は、できましてから既に三度の登録をいたしました。  そもそもこの移転登録制度をつくる際からいろいろな問題点といいますか、いろんな実態についての議論が行われまして、最終的にはまさに通常兵器の移転、輸出入だけを登録する、しかも七つのカテゴリーに限ってということになったわけでございます。  今、先生が言われましたとおり、それじゃ七つのカテゴリーで十分なのかという問題がございます。それから、七つのカテゴリーの中をもっと細分化したらどうかという問題がございます。さらに言いますれば、移転ということだけで十分なのか、兵器の生産というものを登録したらどうか、もしくは所有しているものを登録したらどうか等いろいろな問題点がございますが、同時にこれは各国のまさに国防に関係することでございますので、各国ともいろんな意見を出しました結果、九一年の決議におきましては御案内のとおりの内容になったわけでございます。  その後、国連におきましてもこの移転登録制度をどのように発展させていくべきかということについていろいろと議論をいたしております。専門家グループの会合が九七年にも予定されておりまして、改善策というようなことがあり得るとすれば果たしてどういう改善策があるかということについて議論することになっておりますけれども、その一つの問題がいわゆる地域レベルでの登録制度ということでございまして、まさに国連の枠内での地域における登録制度、地域地域によって合意をすれば現在存在している国連全体の登録制度と異なるより詳細なものをつくってもいいのではないかという議論が行われております。  今申しましたのは、まさに国連の中で地域割を行いましてその登録制度をつくるということでございますけれども、御指摘のとおりいわゆるASEANリージョナルフォーラム等でさらに別途の、兵器の透明性を向上するための制度というものを考えてもよいわけでございますので、先ほど申しましたとおり、いわゆる国防、安全保障というものの観点一つ持ちながら、今後どういう制度が適当なものとしてつくることができるかという議論を日本としても進めていきたいと、このように考えております。
  60. 武見敬三

    ○武見敬三君 ASEAN諸国の中ではこうした域内の登録制度について具体的な話が既に持ち上がっているというふうに聞いておりますが、状況はいかがでございますか。
  61. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) ASEAN諸国の中にそのような考え方があり得るということは私たちも理解いたしておりますけれども、それが今具体的な提案というような形を伴って提示されているという段階ではないと思います。
  62. 武見敬三

    ○武見敬三君 それでは引き続きまして、日中関係からの視点で御質問をさせていただきたいと思います。  私は、四月に自由民主党の訪中団の一員として訪中をいたしまして、あちらで熊光楷副総参謀長と会談する機会を持ちました。この中で、日中の安全保障対話及び軍事交流の強化というものが今極めて喫緊の課題になっているということを強く主張したわけであります。しかし、こうした軍部の指導者の対応というものは、こうした日中二国間においてさえも安全保障の対話を促進しようとする積極的な態度にはまだなかなかなっていないように思われたわけであります。しかし、幾分か考えてみようという程度の感触は得ることができました。また、こうした日中の信頼を二国間で醸成しつつ、いずれ将来、日米中三カ国の安全保障協議というような場が設定されることが望ましいのではないかという議論もその中でしたわけであります。  そうした議論に対して、ある程度重く受けとめよう、考えてみようというそういう返答はあったわけでありますが、我が国として現在から将来に向けてこの日中の安全保障対話を何とか中国の軍部をより積極的に引き出す形で実現していく方途はないものであろうか。この点いかに考えておられるのか、御意見を伺いたいと思います。
  63. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 我が国と中国との関係、あらゆる分野で緊密な連携をとっていくことが必要なことは言うまでもございません。そういった中で、御指摘の安全保障の分野におきましても、対話の促進を通じましてお互いの間の信頼関係を醸成していくということは非常に大切だと、こう考えております。従来におきましてもそういった交流はある程度行われておりまして、もう一昨年になりますか、我が方の統合幕僚会議の議長が訪中したということもたしかあったはずでございます。  そういったことで、今、委員指摘のように、これからもそういった対話はますます強めていくべきだと思いますし、また将来的には米国も含めたいろいろな対話の促進、そうして信頼関係の醸成というものが極めて大切だと考えておりますので、いろいろな機会をとらえてそのような努力はしてまいりたいと考えております。
  64. 武見敬三

    ○武見敬三君 それから、時期がちょうど日米首脳会談及び日米安全保障共同宣言が出された後であっただけに、中国側がこの日米安保体制にいかに反応し評価をするかということが私の大きな関心事でもあったわけであります。この点、極めて公的な返答が返ってきたのみで、積極的にこの日米安保体制について議論を詰めるということは、むしろ中国側が避けたような感があったわけであります。  ただ、興味深かったことは、日米安保条約というものが二国間の範囲を超えると地域に複雑な問題を引き起こすという、こういう言い方をしたことであります。このことは、実は冷戦期における日米安保条約に対する評価と違った評価を中国がし出した一つの大きなあらわれではないかという気がしてなりません。  例えば、冷戦期であればこれは当然日米安保条約を通じてアメリカの軍事的プレゼンスが維持をされ、それがソビエトに対する戦略的牽制になることは中国が評価をしておりました。そして二つ目には、日本の軍事大国化を阻止するという点でこれを評価しておったわけであります。  しかし、これからどう評価を変質させていくのかということを考えたときに、どうも中国は、この日米安保条約及び日米安保体制というものを、日本の防衛をより限定したものにさせることを中心に考えるようになっており、従来のような形ではもはやアメリカ当該地域における軍事的プレゼンスを評価しなくなってきているという、そういう理解ができるのではないかと思うわけでありますが、この点に関する外務省の御見解をお聞かせください。
  65. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 中国が今回の日米安保宣言につきまして委員指摘のような二国間の関係を超えた場合には地域に複雑な問題を引き起こす可能性がある、こういったことをいろいろな機会に言っていると。そのとおりでございます。私が銭其_外務大臣と会談しましたのは、これは日米首脳会談の少し前でございましたけれども、そのときにもそれと同じような言い方をしております。その背景には、この地域のいろいろな情勢の変化、それに伴っての中国の位置づけ、そうして中国の目から見た場合の日米のあり方に対する評価の仕方というのは変化があるいはあるかもしれません。  しかし、我々といたしましては、今回の日米安保共同宣言を通じましても、これは従来の安保条約あるいは安保体制に何らの変化はないわけでございますし、それからまたこのことは、中国も含めましてアジア太平洋全域の安定に資するものだと、このように考えておるわけでございます。  御承知のとおり、首脳会談の際の共同宣言の中にも、米国、日本ともに、中国はこの地域におきまして我々と一緒に進んでいく建設的なパートナーであるということを期待するといった趣旨の表現があるところでございます。そういった我が国あるいは米国の考え方というものを機会あるごとに中国側にも説明いたしまして、この日米安保体制というものが中国にとっても決して言われるような、あるいは思っておるかもしれないような懸念をもたらすものではなくて、むしろ中国のためにもプラスになるものだという点に理解を求めていきたいと、こう思っております。
  66. 武見敬三

    ○武見敬三君 どうも中国の場合には、日米安保体制について肯定的に評価する基軸としては日本の軍事大国化を阻止するという点のみがはっきりとした形で残っており、アメリカの軍事的プレゼンスを維持するという点に関しては肯定的評価からこれが非常に否定的評価にもつながりかねない状況に転換し始めている。  その理由は二つあって、一つはこの日米安保体制の中に台湾がより強固に組み込まれることに対する警戒心、二つ目は、この日米安保体制の範囲が徐々に拡大されていくことを通じてそれが中国に対する封じ込めにならないかという警戒心、これらが相まって否定的な評価が徐々に台頭し、その肯定的評価との間で微妙なバランスを持ち始めているという現状を私は認識するわけであります。  それだけに、今後、我が国がこの日米安保体制というものを再確認し、その体制を整備充実していく上において、その範囲の問題と、それから行動様式を通じての例えば日米のガイドラインの新たなあり方についての問題であるとか、あるいは中国を仮想敵国としないということについてのしつこいほどの中国に対する確認であるとか、そういうようなことを相当精緻に中国側に対して伝達をし、その相互の理解が図られないと、日米安保体制と日中関係を両立させるということが非常に難しい状況が出てくる可能性が出てきたものですから、この点について政府としての十分慎重な対応を御期待申し上げて、質問を終わります。
  67. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 今の武見先生の御質問とも若干関係いたしますけれども、過日、三月に行われました台湾の初の民選大統領選挙に際し、中国のミサイル実射演習が実施されたわけです。私の聞いているところによりますと、中国は最近軍部が強くなりまして、こういう演習の実施も事前に政府側に報告されたとは聞いておりませんで、ほんの直前にそういうことを実施するということだったようでございます。  日本政府は、この演習に対してどういうような態度で臨まれたのか、防衛庁、自衛隊はどういう行動をとったのか、それでこのミサイル実射訓練というのは実際にどのぐらいの規模の演習であったのかの三点をお聞きいたします。
  68. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 日本といたしましては、累次申し上げておりますとおり、台湾をめぐる問題が当事者間で平和裏に解決されることを強く希望しているということでございまして、中国が台湾周辺でミサイル演習を含む本格的な軍事演習を行った際には、これを憂慮いたしまして、中国側に対し直ちに申し入れを行った経緯がございます。  それから、国際社会に対しましても、日本として、我が国を含む東アジアの平和と安定の観点から、台湾をめぐる問題がこの両岸の直接の当事者間の話し合いによって平和的に解決されることを強く希望しているということを種々の機会をとらえて表明してまいっておるところでございます。  なお、演習の規模ということでございますけれども、御承知のとおりこれは三種類の訓練、すなわちミサイル発射訓練と海空の統合演習と陸海空統合演習から成り立っておるものでございました。  ミサイル発射訓練につきましては、三月の八日未明に三発、十三日早朝一発、合計四発のミサイル発射訓練が行われ、この訓練は十五日に終了をしております。  海空統合演習につきましては、十二日に開始され、これに戦闘機が十余機、艦艇十余隻が参加いたしました。台湾国防部スポークスマンによると、十三日及び十四日にも演習は行われましたが、十五日から十七日までは天候不良の影響活動は少なかったということでございます。  それから最後に、陸海空の統合演習でございますが、十五日付新華社の報道ですけれども、十八日から二十五日まで陸海空の統合演習を実施する旨を報告いたしまして、しかし大規模な演習は行われないまま二十五日には終了が報告されたというふうに承知いたしております。
  69. 金澤博範

    説明員(金澤博範君) 自衛隊は常日ごろから航空機等により、我が国領域及びその周辺を行動する航空機、艦船等に対しまして、常続的な警戒監視を行っているところでございます。  防衛庁といたしましては、先般台湾付近で実施された中国軍の一連の軍事演習の動向につきましては十分注意を払う必要があるという考えのもとに、航空自衛隊及び海上自衛隊の情報収集に当たる航空機の機数あるいは飛行頻度を増加させることなどによりまして情報収集体制強化し、当該演習の詳細について可能な限りの把握に努めたところでございます。また、これにあわせまして、内局、統幕、陸海空幕及び各部隊等の情報担当者等も所要の勤務体制をとったところでございます。  三月二十五日をもちまして同地域における中国の軍事演習は終了した模様であることから、自衛隊ではかかる情報収集体制を通常のレベルに戻したところでございますけれども、同地域における中国軍の演習等については引き続き注意を払い、その把握に遺漏なきを期してまいりたいと考えております。
  70. 山内千里

    説明員(山内千里君) 中国軍のミサイルの訓練の状況でございますが、先ほど外務省の方から詳細な御答弁がございましたので、重複を避けまして幾つかの点について追加させていただきます。  先ほど御答弁ございましたように、三月の八日と十三日の早朝におのおの三発、一発ずつミサイルが発射されたわけでございますが、事前に中国は、これは三月五日でございますけれども、台湾の南方と北方、おのおの三十キロほど離れたところでございますが、に訓練海域の設定を告示しております。特に、北方の方でございますが、これは台湾から最短の部分で約三十キロ、我が国の領海から約四十キロ、一番近いところは与那国島でございますが、ここから約六十キロほどでございます。  三月八日に三発撃ったわけでございますが、一発目が南の部分、二発目は北の部分でございまして、三発目が南の部分。それから三月十三日にもう一発撃ちました。これも南の部分でございます。  具体的な発射しましたミサイルでございますが、これはいわゆるM9と呼ばれておりますものでございまして、射程が大体六百キロ、よくCEPと言いまして大体半数が当たる部分ですが、これが大体半径三百メーターぐらいの性能がございます。中国側は既に映像も公表しておりますが、このM9型は大体射程が六百キロでございますので、この二つの地域に着弾しておりますので、恐らく発射したのは対岸の福建省の中部、楽平という地域がございますが、この付近ではないかと推測しております。  以上でございます。
  71. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 アジア局長にお尋ねしますが、あらゆる機会をとらえて平和的に解決してほしいという旨の伝達を政府として行ったと。中国のどなたと行ったんですか。日本政府はだれで、中国側はだれに話したんですか。
  72. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 最初の申し入れでございますが、これは中国がミサイル発射訓練を発表した翌日の三月六日に、私から在京中国大使館に対して行いました。  次いで、海空軍の実弾演習が開始されるその前日の三月十一日に、同じく私から在京中国大使館に対して申し入れを行っております。
  73. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 大使館のどなたですか。
  74. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 通常、具体的な外交ルートを通じてのやりとりということは、これを必ずしも公に申し上げることが適当だとは考えませんけれども、中国の次席の代理でございます。
  75. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 この問題は民主主義に対する挑発だと僕は思っているんですね、中国のやり方というのは。だから米海軍も出撃をしているわけであります。本来民主主義に対する挑発的行為に対してそれを守るんだという国家としての強い意思が私には感じられないんですが、いかがですか。
  76. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほどアジア局長から答弁申し上げましたように、具体的にはアジア局長から大使館に対してきちっと申し入れをしているわけでございます。  なお、国際的に見まして、外交ルートを通じまして本件について中国側に対して申し入れを行いましたのは、我が国のほかには米国、カナダ、オーストラリア、これだけであった、アジアの諸国の中では我が国だけであったと、このように理解しております。  そんなこともございまして、我が国の立場また考えというものは、明確に中国側にも伝わり、また国際社会でもそのように承知されているものと理解しております。
  77. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 先ほど武見先生からの御質問にもありましたように、将来、我が国のとるべき態度として、中国側にくみするのかアメリカ側にくみするのかという選択に迫られる時期が必ず来る。そのときに、どっちつかずのようなことでは日本の安全は保障されないと私は考えておるんです。将来のことですから外務大臣に今すぐお答えを願う話ではありませんが、日米安全保障条約という同盟を結んでいるんだという決意を持っていただきたいというふうに思っております。  次に、一九八四年の四月二十九日の昭和天皇誕生日に、日本とマレーシア、日本とASEANとの友好促進に貢献した功績によって日本政府から勲二等瑞宝章を受章されたマレーシアの元上院議員で、かつて我が国の南方特別留学生として我が国に留学をしていたラジャー・ダト・ノンチックという元上院議員が次のように述べているわけです。ちょっと読ませていただきます。  かつて 日本人は  清らかで美しかった  かつて 日本人は  親切でこころ豊かだった  アジアの国の誰にでも  自分のことのように一生懸命つくしてくれた  何千万人もの 人のなかには  少しは 変な人もいたし  おこりんぼや わがままな人もいた  自分の考えを おしつけて  いばってばかりいる人だっていなかったわけじゃない  でも その頃の日本人は  そんな少しの いやなことや  不愉快さを越えて  おおらかで まじめで  希望に満ちて明るかった  戦後の日本人は  自分たち日本人のことを  悪者だと思い込まされた  学校でも ジャーナリズムも  そうだとしか教えなかったから  まじめに自分たちの父祖や先輩は  悪いことばかりした残酷無情な  ひどい人たちだったと 思っているようだ  だから アジアの国に行ったら  ひたすら ペコペコあやまって  私たちはそんなことはいたしませんと  言えばよいと思っている  そのくせ 経済力がついてきて  技術が向上してくると  自分の国や自分までが  えらいと思うようになってきて  うわべや 口先では  済まなかった悪かったと言いながら  ひとりよがりの  自分本位の えらそうな態度をする  そんな  今の日本人が 心配だ  本当に どうなっちまったんだろう  日本人は そんなはずじゃなかったのに  本当の日本人を知っているわたしたちは  今は いつも 歯がゆくて  くやしい思いがする  自分のことや  自分の会社の利益ばかり考えて  こせこせと  身勝手な行動ばかりしている  ヒョロヒョロの日本人は  これが本当の日本人なのだろうか  自分たちだけで 集まっては  自分たちだけの 楽しみや  ぜいたくに ふけりながら  自分がお世話になって住んでいる  自分の会社が仕事をしている  その国と 国民のことを  さげすんだ眼でみたり  バカにしたりする  こんな ひとたちと  本当に仲よくしてゆけるだろうか  どうして  どうして日本人は  こんなになってしまったんだ    一九八九年四月         クアラルンプールにて こういうメッセージを今の日本人に出しているわけです。  それで、この人だけがそういうことを言っているんじゃありません。もう一人、同じく南方特別留学生でシャフィー元外務大臣はこう言っています。   日本政治家の冒頭の挨拶は、ハンで押したように決まって次のような、「過ぐる大戦において我が国は貴国に対してたいへんご迷惑をおかけし申しわけありません」というお詫びです。   私は、そのたびに、なぜそのような挨拶をなさるのですか。あの戦争で日本は立派なことをなさったではないですか。日本軍がイギリス軍を追い払ってくださったからこそ我々は独立てきたのです。大東亜戦争なくしては、マレーシアも、インドネシアも、シンガポールも、その他インドをふくめた東南アジア諸国の独立は考えられません。   この貴い戦争の遺産を否定することは、バックミラーばかり見ているようなものです。自動車は前を見て運転しなければ進路をあやまりますよ。 こういうふうにASEANをつくった多くの人たちはみんな、当時日本に留学をして、日本の指導、訓練、教育を受けた人たちが現在のASEANの中枢というか最もトップのクラスになっているわけです。これは有名な土生さんがお書きになった「日本人よありがとう」という本ですので、外務大臣はお読みになっていなかったら、私は持っているので差し上げますが。  これは日本人が言っているんじゃないんです。マレーシアあるいはASEANの指導者が言っているんですね。そういうことを踏まえて外務大臣の御所見を承りたい。
  78. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもが世界の国々、とりわけアジアの国々と友好関係維持していくという上で、我々自身、他の国の方々がどういうふうに我が国のあるいは日本人の行動をとらえ、評価しているかということをよく見ていかなくちゃいけない、こう考える次第でございます。  これまでの我が国のいろんな行動につきましていろんな見方があるというのは事実だと思います。今、委員指摘のようなことも確かにあるのでございましょうが、またそうではない見方もあると思うのでございます。  ただ、少なくとも、私ども日本人といたしまして、我が国といたしましては、いろいろございますが、やはり過去の一時期の侵略あるいは植民地支配というものを通じてアジアの諸国の人々に多大の苦難あるいは損失を与えたということはこれは忘れてはいけない。それはきちんと反省した上で、現在から将来、未来へ向かって友好関係を築き上げ、そうしてともにこの地域そして世界の安定、平和、繁栄に力を合わせていくという観点から対処していくべきものと、こう考えておる次第でございます。  そういった意味で、今、委員お読みになりました中でも、現在の我々の行動の中で、いろいろ批判されておりますけれども、とりわけ経済的な面で非常に優位にあるとか、そういうところでおごり高ぶっているところがあるんじゃないかという批判もある。そういったところは十分注意しながら本当にともに手を携えて未来へ向かって歩んでいくべきである、そういう心構えで進まなくちゃいけないと、このような感想を持った次第でございます。
  79. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 今回の橋本総理の日米防衛協力推進に関して、憲法の解釈の枠内で有事を想定して具体的に作業を行うということを言われておりますが、憲法の枠内で有事を想定して具体的にどういう成果があるかというと、私は全くないというふうに思っております。したがって、有事の際、次に申し上げる六項目についてどういうことができるのか、できないのか、まだ検討中なのか、もし検討中であるならばいつまでに検討を終了するのかをお答え願いたいと思います。  まず、米軍に対する情報提供。米軍に対する輸送、補給、修理、整備等の後方支援。米軍の行動を容易にする掃海活動。避難民の輸送。米軍に対する救難及び護衛の六項目について。  具体的に申し上げましたので、これが有事の際にどういうふうにできるのか、憲法の枠内で今の集団的自衛権を認めないでどういうことができるのか。今すぐお答えできるんだったらお答えしていただきたいし、多分お答えできないと思います。もう私はこれはわかっていますから。何もできないんです。何もできないことを約束したのですからこれから大変なことになると思いますが、どういうふうにいつまでに御検討をなさるのか、日時を明確に教えていただきたいというふうに思います。
  80. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 今般の日米安保共同宣言におきまして、日米防衛協力の指針の見直しの開始、それから日本周辺地域で発生し得る事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合における日米間の協力に関する研究を初めとする政策調整に合意したところでございます。  私ども、万が一の事態に備えて、万が一の事態が発生した場合に我が国として適切に対応ができるように平素から何をなすべきか、それから何ができるかということをできるだけ具体的に研究、検討しておくことが不可欠であろうというふうに考えているところでございます。  今、委員いろいろ御指摘になりましたけれども、私ども、集団的自衛権も含めおよそ自衛権というものは国家による実力の行使に係る概念であるというふうに考えておりまして、我が国による実力の行使に該当しないような米軍に対する協力は集団的自衛権の行使に当たらないと考えるところでございます。  他方、今申されたような個別的な項目とそれから憲法が禁ずる武力の行使との関係につきましては今後検討していきたいということで、この検討の結果を待つ必要があるということでございまして、現時点では立ち入って申し上げることはできないというふうに申し上げたいと思います。  それでは、いつまでにということでございますけれども、今の時点で具体的にいつまでに結論を出すということが決まっているということではございません。
  81. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 多分そういうお答えだろうと、私も期待は余りしていませんでしたけれども。  最後に。私は、ヨーロッパにおけるNATOという同盟とアジアにおける日米安保体制というのは同じぐらいに重要な重みを持ったものであると。ヨーロッパにおけるNATOとアジアにおける日米安保条約というのは、場所は違いますが、同じような重要性を持った同盟であると思っておりますので、いつまでも同じ枠内にとどまって冷戦後も同じような手法でやろうとしても、それは必ず問題点にぶち当たってしまう、それではやっていけないということだけを申し上げて、質問を終わります。
  82. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、北朝鮮の問題についてお伺いいたします。  先般、アメリカの国務省がテロに関する年次報告書の中で、キューバ、イラン、イラク、リビア、スーダン、シリアと並んで北朝鮮をテロ支援国家に指定することを明らかにしました。その理由は、北朝鮮はテロ禁止の国際条約の署名をいまだ拒んでいる、それから元赤軍派メンバーと密接な関係維持しているということも最近わかった、したがってテロ支援国家の指定から外すのは不適切であるのでそういう判断をしたと、こう思われるんですが、日本政府は北朝鮮を国際テロという観点からどう見ているのか、お答え願います。
  83. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今、委員指摘のように米国が北朝鮮をテロ支援国家、そういった指定をしているというのは御指摘のとおりでございます。ただ、我が国には特定の措置を伴うようなテロ支援国家を認定するといった仕組みはございませんので、我が国として米国と同じような意味でのとらえ方をしているかといいますと、そこは少し違うんだと思います。  ただ、御指摘の国務省の報告書におきましては、その条約の関係と同時に、一九七〇年のよど号ハイジャック犯に対していまだ逃避地を提供しているというようなことも言及されている、そして一九八七年の大韓航空機の爆破事件以来は、国際テロを、攻撃を支援したということがある、こういうことは知られていないけれども、今申しましたように以前からのそういった行為が続いている、こういうことに言及されております。その点については我が国も同様な認識をしているところでございます。
  84. 高野博師

    ○高野博師君 要するにテロ支援をしている国家だと認めているわけでございますか。
  85. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 認めるということは、先ほど申しましたように、米国のような認定をする仕組み、制度というものがございませんので、そこは米国とはおのずから違うわけでございますが、米国がそういうことをやる際に言及しております七〇年のよど号ハイジャック犯に対しいまだ逃避地を提供しているというふうな点につきましては、我が国も同じような認識をしている、こういうことでございます。
  86. 高野博師

    ○高野博師君 新しい日米安保体制の中でアジア太平洋地域の平和と安定に資する日米同盟ということで、この地域の不安定要因の一つは朝鮮半島だろうと思うんですが、この朝鮮半島あるいは北朝鮮に対する認識が日米間で一致していればいいんですけれども、微妙なずれがあった場合には、何か有事があったとき等における対応に困難が生ずることはないかという懸念を私は持っております。  それから、三十八度線の板門店での軍事的な緊張が先月初めありましたけれども、現状はどうなっているのか、どんな情報をお持ちか、お答えください。
  87. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 御案内のとおり、三月二十九日に北朝鮮の金光鎮人民武力部第一副部長が休戦状態は限界点に到達したという談話を発表いたしまして、四月四日には朝鮮人民軍板門店代表部スポークスマンが非武装地帯の地位を維持できなくなった状況に伴う自衛的措置ということで、軍事境界線と非武装地帯の維持及び管理に関する自己の任務を放棄する、それからこれに伴う措置として板門店共同警備区域と非武装地帯に出入りする北朝鮮側要員と車両に定められたすべての識別標識を使用しないことにするということを明らかにいたしました。  その後、同日の午後、板門店の北朝鮮軍警備兵は一斉に識別のための腕章を外して、翌五日、北朝鮮は板門店に約一個中隊規模の武装兵力を投入し、同じ五日じゅうにこれを撤収したのを初めといたしまして、六日、七日にも同様の行動をとった経緯がございます。ただし、四月八日以降につきましては、現在に至るまで、板門店地域で北朝鮮軍によるこの種の行動は行われていないと承知いたしております。
  88. 高野博師

    ○高野博師君 これとの関係で最近の北朝鮮の軍の動向をどう見ておられるのか。また、軍と党との関係あるいは政府との関係、そして金正日書記の軍部に対する指導力等について、簡単で結構でございますのでお答え願います。
  89. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 先ほど申し上げましたように、四月八日以降今日に至るまで私が申し上げましたような北朝鮮軍の行動というものがとられたとは承知いたしておりませんが、北朝鮮は依然として地上戦力の約三分の二を非武装地帯付近に前方展開いたしております。また、一貫して即応態勢の維持に努めているというふうにも見られております。  したがって、政府としては、北朝鮮の動向そのものについては、関係諸国とも緊密に連絡をとりながら、今後も引き続き細心の注意を払ってまいりたいと思っております。  北朝鮮軍と労働党の関係でございますけれども、基本的には北朝鮮では党の軍隊として党と軍が一体化した体制をとっているというふうに見られておると思います。ただし、最近、軍の影響力が高まっているのではないかという見方もあるわけでございまして、党と軍の関係も含めて今後とも北朝鮮の動向はやはり注視していくべきものというふうに思っております。
  90. 高野博師

    ○高野博師君 軍の内部の動向については何か情報をお持ちでしょうか。
  91. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) いろいろうわさを含めた情報というものを耳にすることはございますけれども、国会のこの場で申し上げるべきものを持ち合わせておりません。  ただ、金正日書記につきましては、いまだ主席、労働党総書記に就任しておりませんけれども、国防委員会の委員長、人民軍の最高司令官ということで軍部隊の訪問など軍関係活動を行っているということが言われております。
  92. 高野博師

    ○高野博師君 いろんな情報によりますと、昨年は清津駐屯第六軍団所属の多数の将兵が関与した反体制の事件が発生したとか、ことしの二月一日に百名以上の北朝鮮の軍人が中国側へ越境して保護を求めたとか、金正日書記の暗殺計画があったとか、一万五千人の武装反乱計画に労働党幹部が加担していたとか、あるいは学生二百名ぐらいのデモとか、労働者八百名のストライキとか、その他さまざまな情報があります。  それで、労働党の中の序列上位五十位の中に、金日成時代には軍の幹部が二名しか入っていなかった、しかし現在は十数名入っているということで、軍の党に対する力というか影響力がもう明らかに増していることを示している。相対的に金正日書記の力が弱まっているのではないか。当然、軍に対する指導力も相対的に弱まっているという見方ができるのではないか。最近も特に軍関係の訪問が頻繁に行われている。軍に相当配慮しているのではないかなということを感じます。  それで、金正日書記の国家主席、党総書記就任の見通しを政府としてはどう見ているのか、お答え願います。
  93. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 金正日書記の党総書記就任の見通しについては、かねてからいろいろ取りざたされてまいりました。昨年十月の労働党の創建記念日には党総書記に就任するのではないかといううわさも盛んにささやかれたというふうに記憶いたしております。今回も、今年の七月八日、三年の忌が明けた段階で党総書記に就任するのではないかといったようなうわさがあることも承知いたしております。しかしながら、確実に金正日総書記がそのときに誕生するであろうというようなことを示す情報というものはないと思います。  確かに軍の影響力が今高まりつつあるというような見方があることは私も申し上げましたとおりでございますし、昨年の労働党創建五十周年記念日にも、党の記念日であるにもかかわらず閲兵式が行われるということに見られますように、軍が前面に出ているというふうに思われる事実もあるわけでございます。  ただ、いずれにいたしましても、金正日書記が国務全般を統括しているということを否定する、ないしはそれを疑わせるような情報というものは今のところないのではないかと思います。
  94. 高野博師

    ○高野博師君 最近の新聞報道によれば、国家主席あるいは党総書記に就任するのは来年の七月以降ではないかというようなことも北朝鮮の政府高官が話をしたということが載っておりました。北朝鮮の現状はありとあらゆる面で麻痺状態にある、こう言われているわけですが、問題は、来年の七月まで現在の体制が続かないのではないかという印象を私は持っておりますが、大臣の御見解はいかがでしょうか。
  95. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 北朝鮮の情勢についてはいろいろな見方がございまして、ただいま委員がいろいろ指摘されましたような情報も入っているのは事実でございます。  ただ、今最後の御指摘の来年の七月までこの体制がもつのかどうかということになりますと、それは確かに一方において今もう末期的な症状だというような論評もあり、またそれと関連づけられるような事象もいろいろ存在はすると言えると思います。  しかし、一方におきまして、先ほどアジア局長も申しましたように、金正日書記が軍も含めまして一応体制を掌握している、そして今少なくともそれに対抗する勢力というものがあるかといいますと、それは見当たらないということでございますので、いろいろ弱点は持ちながらも、比較的早期にこれが崩壊するとも言い切れないところがあるんじゃないかという感じでございます。
  96. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、今の北朝鮮の最大の問題は経済問題ということで、特に食糧事情が直接的には朝鮮半島の動向に影響を与える大きな問題ではないかと思うんですが、今の経済状況あるいは食糧事情についてどのような情報をお持ちか、お答え願います。
  97. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 北朝鮮が従来から困難な食糧事情にあるということが伝えられておりますことは累次申し上げてきたとおりでございます。特に、昨年夏の洪水被害によりまして、その困難の度が増しているというふうに見られます。  今後の見通しについて一概に判断することは、大臣から申し上げましたとおり、困難である面がございます。我々としては、その動向を注意深く見守ってまいりたいというふうに思いますけれども、例えばWFP、世界食糧計画の見通しにいたしましても、少なくとも約百二十万トンの穀類の不足が見込まれるというような状況であろうかと思います。
  98. 高野博師

    ○高野博師君 今月初めのニューズウイークによると、今難民の数が記録的にふえているということ。それから、チュチェ思想によって世界で最もゆがんだ経済体制になっている。巨大な鉄鋼業とかあるいは石炭産業、化学工業に従事する人間が人口の約六〇%。ソ連が崩壊する直前でも四〇%だったので、圧倒的に北朝鮮の場合は多い。依然として戦時経済下にあると、こう言われている。  資源の大半は軍に供給される。人口の約四分の一の六百万人が現役か予備役の兵士だ。したがって、資源も人間も軍につき込んだ結果、国内総生産は年平均五%近いペースで減少している。それから、国民経済に占める貿易の割合が約一〇%ということで世界最低だと。重工業部門の稼働率は三〇から五〇%ということで、この北朝鮮の混乱を収拾するのは東欧諸国の場合よりもはるかに難しいのではないかというようなことが書いてありました。  昨年の水害以降も炭鉱等の相当数が水没した。復旧作業も行われていない。北朝鮮の最大の金策製鉄所も稼働を中止しているというようなこと。  それから食糧については、これは韓国側の情報だと、ことしは三百八十万トンぐらいの穀物が不足するのではないかという情報を私は得ております。したがって、ことしの特に五月、六月は相当厳しい状況になるのではないかという見方がされております。  ちょっとテーマは変わりますが、アメリカと韓国が提案した四カ国会談をめぐってさまざまな動きがありますけれども、日本政府の対応はいかがなものでしょうか。簡単で結構でございます。
  99. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御承知のとおり、十六日に韓米両国の大統領が発表されましたいわゆる四者会合の提案につきましては、我が国としてはこれを支持する、そのことを橋本総理が直ちに表明されたところでございます。  そしてその後、御承知のとおり、いろいろ北朝鮮も検討はしているようでございますけれども、いまだ正式の回答がないという事態でございますが、我が国としましては、なるべく速やかに北朝鮮がこれを受け入れて対話の席に着くことを希望しておる、そしてとにかくそれが現在の休戦協定にかわる永続的な平和への合意につながることを期待しておるところでございます。
  100. 高野博師

    ○高野博師君 北朝鮮は検討中ということでありますが、アメリカと北朝鮮の折衝が非常に頻繁になっているという情報があります。また、先般は使用済みの核燃料棒の封入処理作業が開始されたということで、北朝鮮が核カードを切ったとも、そういう報道もされております。また、最近は北朝鮮が台湾との関係も深めているという情報もあります。  したがって、この四カ国会談については、米朝に韓国をオブザーバーとして入れるような三カ国会談あるいは米朝を中心にした四カ国会談を逆提案するのではないか、こういう報道もあります。いずれにしても、時間稼ぎをしてアメリカ日本、韓国から経済的な援助等を引き出そうという戦略ではないかということも言われております。  私が一番心配しているのは、この四カ国会談あるいはほかの形の会談が持たれた上で朝鮮半島の和平が成ったときに、韓国も中国も北朝鮮を含めた朝鮮半島の経済再建という点では経済的な負担をする余裕が全くないだろう、全くないとは言えませんけれども、一説によれば半島の統一が実現したときは数千億ドルか一兆ドルの資金が必要だ、こうも言われております。そうなったときに、日本だけがこの会談の枠組みに入っていなくて、経済的な負担だけを押しつけられはしないかということを感じておりますが、この点について大臣の見解をお伺いします。
  101. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今回の四者会合は、要するに現行の休戦協定からさらに先ほど言いました平和協定といいましょうか中間暫定協定も含めてより永続的な和平の仕組みをもくろむという、そういう性格のものでございますから、その事柄の性格上、朝鮮戦争に直接かかわりました四者が当事者になってくると。これはある意味では当然のことかと存ずる次第でございます。  しかし、委員もおっしゃいますように、もし将来そういった和平が成った上において朝鮮半島の問題全体をどうするか、そしてさらに民生面の安定をどうするかという話になりますと、その場合には当然我が国も重大な利害を持つ国としてその話し合いの場に入っていくということになりましょうし、我が国におきましては一方において関係を正常化するという課題も当然あるわけでございます。  そういった場合に、委員御心配になりますのは、我が方は口は余り出せずに経済的な負担ばかりあれするんじゃないかという点でございますが、しかしそこのところは、やはり何と申しましても朝鮮半島の安定というのが関係国みんなの共通の利害でございますし、とりわけ韓国、北朝鮮は当事者でございますから、やはりそこが中心になってそういったプロセスも進行するんじゃないかと。  我が国としては、先ほども申しましたように、当然我が国の関心事でもございますから、しかるべき役割を果たしながら、またそれにふさわしい我が国考え方なり主張というものも反映していくと、こういう姿勢で臨むべきものと考えている次第でございます。
  102. 高野博師

    ○高野博師君 時間の都合がありますので、前回に引き続き北朝鮮の米支援関係でお伺いいたします。  前回の委員会で、対北朝鮮米支援をした中で、加藤幹事長の事務所の名刺を持った吉田猛氏が、昨年三月、渡辺訪朝団に加わって訪問した件について、同氏がどのような種類のパスポートを持って訪問したのかをただしましたときに、委員会終了直前に公用旅券ではないという旨の答弁がございましたけれども、大臣、これで間違いございませんか。
  103. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 前回の委員会で御指摘がございましたので、委員会の時間中にチェックをいたしまして、そしてそれをもとにいたしまして委員会終了直前に御答弁を申し上げたところでございます。
  104. 高野博師

    ○高野博師君 国会の委員会で政府が事実に反する答弁をするはずはない、またそうあっては絶対にならない、発言に対する責任は極めて重いということを私は指摘しておきたいと思います。  それでは、公用旅券でなければどの旅券で行ったんでしょうか、明らかにしてください。
  105. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 前回の委員会でも申し上げましたけれども、まず、外務省といたしまして、吉田さんがこれは入管法上適切な対応により北朝鮮に行かれたということは確認済みであるということ。それから、今、大臣から重ねて確認させていただきましたように公用旅券が発給されたということはないと。また、最初に申し上げました点に関連して申し上げますと、他人名義の旅券で渡ったというようなことはないということは確認されているわけでございます。
  106. 高野博師

    ○高野博師君 要するに、公用旅券でなければ一般か外交しかあり得ないわけですが、そのどちらで行ったのかと聞いているんです。
  107. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 外交旅券は旅券法上公用旅券の一部でございまして、私どもが公用旅券を発給したことはないと言う場合には外交旅券を含めてのことでございますので、答えはおのずと明らかであると思います。
  108. 高野博師

    ○高野博師君 そうすると一般旅券でございますか。一般旅券だという証拠は出せますか。
  109. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) もうそこから推測されるところはただ一つなんでございますが、一般旅券でいついっこれが発給されたというようなたぐいの情報は、これは旅券法の文脈の問題として、個人のプライバシーに関する情報といたしましてこれを開示いたさないということになっているという、その限界を御理解いただきたいと思います。
  110. 高野博師

    ○高野博師君 公用旅券を出していないという御答弁ですが、私の情報では、ある国内の機関に対しては公用旅券だという通報をしておりますが、事実関係をもう一度私は確認したいと思います。
  111. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 外務省として公用旅券の発給に責任を持つ立場でございますが、吉田氏が公用旅券の発給を受けて渡朝したということはございません。
  112. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、公用旅券の場合には当然公務を持って行くんだと思いますが、公用旅券を持った場合のことを聞いているんです、これは当然国政調査権が及ぶと思うんですが、過去三年間に民間のどういう人が公用旅券を持って行かれたか、リストを提出してもらえませんか。
  113. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 今御指摘の事実の照会につきまして、どういうことで対応が可能か、検討させていただきたいと存じます。
  114. 高野博師

    ○高野博師君 これはぜひ出していただきたい。私の情報では公用旅券で行ったと。外務省がほかの機関に出しているのを私は見ております。したがって、もし公用で行ったとなるとこれは大変な事実でありまして、政府民間の人に公務を申しつけて行かせたということは一体どういうことになるのか。この米支援の問題については、前回あるいは前々回も何度も指摘しておりますので、これはぜひ解明したいと思います。
  115. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 前回申し上げましたように、まず第一点として吉田氏がみずからの旅券により必要な手続を経て出入国したということは確認されております。それから第二に、私どもとして吉田氏に対し公用旅券が発給されたことはないということを確認いたしております。それを申し上げました上で、先ほど御照会されました点についてはいかなる対応が可能か、念のため検討させていただきたいと存じます。
  116. 高野博師

    ○高野博師君 いずれこれは明らかになると思いますが、そのときは今の発言の重みを当然ながら感じられると思いますので、もしこの事実が違った場合には当然責任をとらなくてはいけない、私はそう思いますが、それでよろしゅうございますか。責任を持って間違いないと言えますか。
  117. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 外務省として責任を持って確認したつもりでございます。
  118. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、一般的な言い方として、日本国籍を持った者が外国のパスポートを利用した場合には日本の国内法上どういう問題があるのか、旅券法ないしは出入国管理法令等でどういう問題があるのか、お答え願います。
  119. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今、仮定の御質問で、また突然の話でございますからなんでございますが、まず旅券法の問題につきましては……
  120. 高野博師

    ○高野博師君 それじゃ、仮定じゃなくて、例えば具体的に元赤軍派の田中義三容疑者が外国で北朝鮮の外交官のパスポートを持っていたという報道がありました。彼は日本国籍を当然いまだに持っていると思うんですが、こういったケースの場合には国内法上どんな問題があるのか。わかりますか、質問の意味が。
  121. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 恐縮でございますが、今突然の御質問でございまして、事は法律にかかわる問題でございますから、旅券法の関係とあるいは刑事法規との関係があると思いますので、ちょっと精査をした上で御返答をしたいと思います。
  122. 高野博師

    ○高野博師君 では、それは次回にお答え願います。  最後にサッカーのワールドカップの件ですが、これも報道によりますと、与党の訪韓団の山崎団長に対して韓国の外務大臣が日韓の共同開催について言及したという報道がありました。これに対して橋本総理が、共同開催は国際ルールにない、だからだめだ、外交的な部分で僕らがもてあそぶのは問題じゃないかということを述べております。この共同開催について政府がどのようにとらえておるのか、お答え願います。
  123. 大塚清一郎

    説明員大塚清一郎君) 今御質問がございました二〇〇二年のワールドカップにつきましては、今までのところ韓国側から共同開催につきまして日本側に正式に提案してきているというような事実は承知しておりません。  御案内のとおり、二〇〇二年のワールドカップの招致活動日本サッカー協会が主体となってやってきておるものでございまして、政府といたしましては、国際サッカー連盟、いわゆるFIFAでございますが、FIFAを初めメンバーになっております国のサッカー協会などの関係者の動向を見守りながら、引き続き日本サッカー協会の活動支援していくという考え方でございます。  いずれにいたしましても、本件をめぐって日韓両国の間に対立的な感情が生じないということを私ども期待しておるわけでございまして、フェアプレーの精神に基づいてできるだけさわやかに開催国が決定されるということを望んでおる次第でございます。
  124. 高野博師

    ○高野博師君 実は、去年の外務委員会で私は河野前大臣に御質問いたしまして、共同開催が日韓の外相会談の間で話題に出たと。そのときにどちらから先に出したんですかと聞きましたらば、どちらかと言われれば私だというふうに答えられました。河野大臣の方から言い出しておいたこの共同開催の問題が、後で韓国の方が開催地として難しくなってきてこの共同開催を出してきたときに、もともと最初に提案したのは日本ではないかというふうに迫ってくる可能性はないのかという懸念を私は持っておりますが、最後に大臣の御見解を伺います。
  125. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) この問題は、先ほど政府委員から御答弁申し上げましたように、基本的に我が国ではサッカー協会が主体になって進めている、それを政府も閣議決定してこれを支援しようという格好でございます。  そして、世界的に見ますと、FIFAと申しますけれども、国際サッカー連盟ですか、そこで決定することになっておるわけでございます。私の承知しているところでは、FIFAの規約でこれは国別の開催ということになっておりますので、共同開催ということになるためにはそのFIFAの規約そのものが改正されるということがなくちゃいけないと、こういうことになるんだと思います。そういったことを考えますと、現在の段階では現在のFIFAの規約に基づいた運動を中心として進める、フェアに進めていくと、こういうことになろうかと思います。しかし、いずれにいたしましても、これが韓国と我が国との関係に好ましからざる影響を及ぼすことを避けなくちゃいかぬのは当然のことでございます。  また、いろいろ報道がございますけれども、韓国から正式に我が国外交当局に対して今話があるということはございません。また、韓国政府も当然、先ほど申しましたFIFAとあるいは韓国のサッカー協会と韓国政府との関係がどうなっているかということは十分御承知のことと存ずる次第でございます。
  126. 高野博師

    ○高野博師君 質問を終わります。
  127. 矢田部理

    ○矢田部理君 引き続いて、日米安保再定義を中心に質問させていただきたいと思います。  先般、日米安保共同宣言の中身をめぐっていろんな議論がございました。一つは、対ソ脅威論を前提とした日本有事、安保条約で言えば五条事態でありますが、これが考えにくくなった、少なくともそれを理由に安保条約を存続させるのには根拠として弱くなったということから、極東だけではなくてアジア太平洋全域をにらんだ軍事同盟という位置づけにしようということが土台にあったというふうにされておるわけでありますが、極東有事ということを重視する考え方に変わってきたというふうに見てもよろしいでしょうか。
  128. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今回の日米首脳会談におきます日米安保体制のいわゆる再確認を通じまして、日米安保条約にいささかの変更はない、あるいはこれまでの集団的自衛権あるいは極東地域等の政府解釈にも何らの変更はないということは、るる御答弁申し上げてきた次第でございます。  ただ、そういった体制があることの効用といいましょうか、そういった面から考えてどうかという点でいろいろな論評がなされておるのだと思いますけれども、私がただいま申しましたように、安保条約あるいはそれの運用というか政府解釈につきましては何ら変更するところがあるわけではございません。
  129. 矢田部理

    ○矢田部理君 条約そのものが変わらないことはそのとおりでありますが、条約の役割、対象範囲、にらみというものに大きな変化が出てきたというふうにとらえるのが一般的であります。  そこで、日米防衛協力ということが次の議題として論議になるわけでありますが、極東有事等々を想定したガイドラインの見直し、日米防衛協力のあり方についての検討ということになるのではありませんか。
  130. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 従来からいろいろな事態が発生しました場合にどういうふうにこの安保体制が機能していくか、そのために日米の協力をどう行うかということは研究をしてきたわけでございますが、残念ながら十分に進んでいなかったと、こういうこともございますので、今回そういった研究をきちんと進めようということで合意したわけでございます。  そういった中には、おっしゃるように我が国周辺のいわゆる極東地域で緊急事態が起きた場合にどういうふうなことが考えられるかとか、そういうときにどういうふうに対応することが考えられるだろうか等を研究していくこと、これは進めてまいります。
  131. 矢田部理

    ○矢田部理君 今言われた極東有事、極東にいろんな事態が起きた場合にどう対処するかという研究を進めていくという場合に、その極東の中における有事、事態は中国などが対象になっておりますでしょうか。それから、中台情勢をにらんでいるのでしょうか。さらには、朝鮮有事というのを想定してのことでしょうか。
  132. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御承知のとおり、極東の範囲につきましては安保条約上、日米両国の平和、安全の維持に共通の関心を有している区域であって、その区域が大体においてフィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域である、こういう解釈をずっととってきておりまして、我々もこの解釈に何ら変更を加えていないところでございます。だから、そういうところでいろいろな事態がありましたときにどういうふうに対応をするかということは研究してまいる所存であると、こういうことでございます。
  133. 矢田部理

    ○矢田部理君 中国も対象にしているんでしょうか。
  134. 林暘

    政府委員(林暘君) 安保条約に言います極東の範囲というのは、今、大臣から御答弁申し上げましたとおり厳密な地理的範囲はございませんけれども、三十五年の統一見解がございまして、その中に中国は入っておりません。
  135. 矢田部理

    ○矢田部理君 中国は入れない。
  136. 林暘

    政府委員(林暘君) いわゆる政府統一見解に言う極東の範囲の中に中国は入っておりません。
  137. 矢田部理

    ○矢田部理君 台湾は中国の一部でしょうか。
  138. 林暘

    政府委員(林暘君) 統一見解の中に台湾地域というのは入っております。
  139. 矢田部理

    ○矢田部理君 その台湾は中国の一部かと聞いているんです。
  140. 林暘

    政府委員(林暘君) 矢田部委員御承知のとおり、日中の共同宣言の中で言っておりますように、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるという中国政府の立場を十分理解し、尊重するというのが日本の立場でございます。
  141. 矢田部理

    ○矢田部理君 その理解し、尊重した結果によれば、台湾は中国の一部ということになるんじゃありませんか。そして、その台湾は極東の範囲に入っているということになると、中国も入っているということに論理的にはなりませんか。
  142. 林暘

    政府委員(林暘君) 先ほど申し上げましたように、領土としての台湾について中華人民共和国政府がそういう考え方を持っているということについて、我々は理解をし、尊重をしているわけでございます。  それと、台湾地域、もとは中華民国だったわけでございますけれども、日中国交正常化をした時点において政府統一見解に言う極東の一部の中華民国というものを台湾地域に読みかえておりますので、統一見解上は台湾地域というのが極東の一部に入っております。
  143. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうすると、台湾は中国の一部だという中国側の見解を理解し、尊重はするが、一部だとは思っていないということですか、外務省の見解は。
  144. 林暘

    政府委員(林暘君) 思っていないということではなくて、日本は、台湾の帰属がどこであるかということを日本みずからが言う立場にない、中国がそう思っていることについては理解をし、尊重しているということでございます。
  145. 矢田部理

    ○矢田部理君 理解し、尊重まではわかっているんです。そうすると、帰属はわからぬと。理解し、尊重はするが、帰属はまだ日本政府として言えない、わからないと、こういうことになりますか。
  146. 林暘

    政府委員(林暘君) 先ほどから御答弁しておりますように、日中共同声明で述べたとおりでございます。そこに書かれておりますように「中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」というのが日本政府の立場でございます。
  147. 矢田部理

    ○矢田部理君 この議論ばかりやっていると終わってしまうからこの程度にしますが、そこがあいまいなんですね。  だから、今度の日米安保再定義につきましても、先ほど武見先生が中国側の発言を紹介されましたが、従来安保条約に反対をしてきた中国が対ソ関係で肯定的に受けとめるようになった。しかし、今回の安保再定義に対して、二国間の関係ではなくて、それをはみ出すようなことになれば、外務大臣もおっしゃられましたが複雑な問題が出てくると。  私も、ついせんだって中国のいろんな人たちと話をしてきましたが、中国を対象にするようであれば問題であるというふうに言っておられます。その中国というのは、中国側から言わせれば、台湾はまだ帰属が決まっていないので別だということではなくて、領土の一部としての台湾も含めた中国を対象にするのであれば問題だという物の言い方なのであります。  そういう点で、中国を初め南北朝鮮もこの問題については大変心配をしている、強い警戒心を持っていることは報道されているとおりであります。アジア各国にいろんな反応、響きをやっぱりもたらしているのではありませんか。その点をどんなふうに外務大臣は受けとめておられますか。
  148. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず、台湾の関係につきましては、先ほど申しましたように、共同宣言でありましたように、中国側の立場を我が国としては理解し、尊重するわけでございます。そしてまた、台湾問題につきましては、両当事者の平和裏の交渉によって、話し合いを通じて解決されるということ、これを我が国の基本にしております。  そういったことで、今回、安保の共同宣言が出ましても、決して中国を念頭に置いて云々なんということはこれは毛頭ないわけでございまして、そこのところは共同宣言の中にもはっきりと、中国と良好な関係維持していくとか、中国を建設的なパートナーとしていくことが望ましいという日米共通の立場は明確になっておるわけでございます。中国にもそういうことはぜひ理解してほしいということで、我が国も機会あるごとに説明しておりますし、米国もそのような努力をしていると承知しております。  また、アジアの諸国にもいろいろなとらえ方があるという御指摘でございますが、総じて言えば、少なくとも政府当局者は今回の日米の首脳会談における安保体制の再確認というものを肯定的に受けとめて、これがアジア太平洋全域の安定のためにプラスの効果をもたらすものと見ていると承知しております。
  149. 矢田部理

    ○矢田部理君 瓶のふた論があることは私も承知しないわけではありませんが、やっぱり一番近いところにある南北朝鮮、韓国について言えば、日本の軍事大国化への道ではないかという表明なども一部なされておりますし、かなり心配をしている、心配というか警戒心を高めているということが私の中国における印象でありました。  そこで、その議論ばかりできませんから、日本に四万七千人駐留をしている。日本、韓国を中心に十万人体制をしくと。とにかくこの四万七千人という数字は、これは日米間で何か積み上げた、相談をした数字でしょうか。
  150. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御承知のとおり、これはアメリカが日米安保条約上の責務、責任を果たしていく、そのためにどういうふうな体制をとるべきか、まず米国の判断が第一義的になるわけであります。そういった観点でいろいろ考えまして、現在の国際情勢その他から見て四万七千の、編成定員でございますか、そういった水準は適当だと思っております。我が国としてもそういった米国の判断は妥当であると、こう見ている次第でございます。
  151. 矢田部理

    ○矢田部理君 軍隊をいかなる数、どんな内容の軍隊、どんな装備を置くかということは、有事といいますか、いろんな紛争をにらんでこのぐらい必要だと、こういう役割が大事だとかということで詰めていくべきものと思いますけれども、そういう検討を重ねた結果の数字ではないのじゃありませんか。
  152. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) それは、十万人体制関係でいえば、米国としてやはりこの地域の安定に責任を果たしていくといったコミットメントをあらわすものとしてそういったレベルを考えているのでございましょう。そしてまた、四万七千人について申しますならば、日米安保条約上の義務を果たしていく、そのために必要だと考えているんだと思います。  今、委員指摘の、もし有事になったらという仮定での問題でございますと、それは現在日本に駐留する四万七千人だけで対応をするとは決して限らないわけでございます。そのケース、ケースによりますけれども、場合によってはさらに来援ということもあるわけでございましょう。いずれにしても、現在の安全保障環境を考えて今これだけの駐留がアメリカがコミットメントを果たすために必要だという判断であり、我が国もそれを尊重していくということでございます。  なお、将来のことについて言いますと、今回の宣言にも入っておりますけれども、これからのいろいろな安全保障環境、国際情勢の変化を見ながら我が方としてもそれを米国とも話し合っていくということが今回の共同宣言の中に入っております。
  153. 矢田部理

    ○矢田部理君 極東有事、とりわけ朝鮮有事などを想定して日本と韓国を中心に米軍の駐留が固められてきているというふうに思われるわけでありますが、これは朝鮮における平和の話し合いがより進む、日朝間の国交が正常化するとかというようなことで、全体に平和の状況が進展をすればこの四万七千人の数字は減らす、動くというふうに考えてよろしゅうございましょうか。
  154. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) その点はこれまでも繰り返し申し上げておりますけれども、現在の水準というのは未来永劫変わらないものじゃございません。やはりその時々の安全保障環境を初めとする国際社会状況、それからまた軍事技術であるとか装備のいろんな水準、そういったものとの関係でこれは変動し得るものでございます。  一般論として申し上げるならば、下方へも上方へも変化はあり得るわけでございます。両方あり得るわけでございます、一般論としては。しかし、我々としては、これから我が国あるいは周辺地域の安定をさらに促進していくために外交その他の努力を当然していくわけでございますから、安全保障環境が格段に改善するならば、今御指摘のような水準の下方への見直しというものもこれはあり得るわけでございます。
  155. 矢田部理

    ○矢田部理君 これも世界で大規模な紛争が二つ起きた場合に、同時対処可能な米軍の配置、国際世界戦略というような中で位置づけられた向きもないわけではありません。そのことなり海兵隊の必要性なり存在理由などについてもうちょっと議論したいのでありますが、一つだけ、日朝間で国交正常化の下話が進められているといいますが、具体的にどんな状況になっておりますか。
  156. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) この件につきましては、御承知のとおり国交正常化交渉が、あれは八回目までやったんですか、それで中断したままでずっと推移しております。しかし、当然この正常化交渉はまた再開しなくちゃならぬ。これはもちろん朝鮮半島全体の安定に資するという観点、あるいは韓国との緊密な連携ということがございますけれども、正常化を進めなくちゃいけないと思っております。  外交当局としては、常にそういったことを念頭に置きながら対応をしているわけでございますが、これまでも具体的ないろいろな動き、例えば交渉そのものの再開というような大きな変化があれば、それは当然国会にもいろいろ御報告申し上げる次第でございますけれども、今の段階ではそこまでの大きな変化といいましょうか動きにはなっておりませんので、具体的ないわゆる外交活動の一環としての接触については従来も一切論評しないということでお許しいただいておりますので、今はまだそういう状態だというふうに御理解いただければと思います。
  157. 矢田部理

    ○矢田部理君 私は、有事体制づくりや、後で議論しますが集団自衛権の行使をめぐる議論などを進めるよりは、どうやってアジアに平和をつくるか、そういう有事事態、紛争を起こさないための関係をつくるかという外交的努力こそがとりわけ外務省役割だと思うので、朝鮮との国交正常化についても北京で参事官クラスの接触があるとか、少しく政党も含めて動いてきておるようでございますので、アジアにおける平和の大きな眼目として取り組んでほしいということを特にお願いしておきたいと思っております。  それから、時間がないので駆け足で恐縮なんですが集団自衛権。これは、集団自衛権の行使は憲法上許されないというのが政府の、歴代政権の見解でありますが、この見解を変えることはありませんね。
  158. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御承知のとおり、国際法上、我が国は当然のこととして個別的自衛権であろうと集団的自衛権であろうと自衛権は有しておるわけでございます。しかしながら、我が国の憲法のいろんな解釈からいたしまして、集団的自衛権の行使は許されないところであるというのがこれまでの政府の解釈でございまして、橋本内閣においてもその解釈に変化はございません。
  159. 矢田部理

    ○矢田部理君 変えることはないというふうに伺ってよろしいわけでございますか。そうですね。
  160. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今回、例えば安全保障に関する共同宣言をしたからといって集団的自衛権の行使に関する政府解釈を変えるものではないということは明らかにしているところでございます。
  161. 矢田部理

    ○矢田部理君 集団自衛権の行使というのは、武力の行使を一緒にすることはないということは明確なわけですが、その武力の行使と一体なものもだめだと、集団自衛権の行使に当たるから憲法上許されないというのが従来の政府の統一的な見解だったと思いますが、その点も確認してよろしいわけですね。
  162. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) そこのところは、先ほど来議論になっておりますけれども、これから日米の協力をどうするかということで、個々のケースについていろいろ研究、勉強をしていこうと、こう思っております。
  163. 矢田部理

    ○矢田部理君 個々のケースを言っているんではなくて、政府は従来の基準として、アメリカの武力行使と一緒に日本の自衛隊が武力行使をしてはならぬという本来の集団自衛権の行使はもちろんだめであるとか、例えばの話ですが米軍の武力行使と一体となった行為も集団自衛権の行使に当たるというのが政府見解ですが、その見解も変えることはありませんねと聞いているんです。
  164. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 我が国の自衛隊が武力行使の目的を持って海外へ出ていくとか、そういうことは明確に認められないというふうに考えております。しかし、いわゆる一体化論につきましては、一体化論を具体的にどういうふうに個々のケースについて考えるかという点は、従来の政府見解でも必ずしも明確になっていないところだと思います。政府見解の中でも具体的な実態に即してケース・バイ・ケースで判断されるべきである、こういうふうになっているところで、そういったものとして我々は従来の政府見解を踏襲すると申し上げている次第でございます。
  165. 矢田部理

    ○矢田部理君 だから、従来の見解そのものは変えないということはいいわけですね。
  166. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 具体的な実態に即してケース・バイ・ケースで考えていくというところを含めて考えております。
  167. 矢田部理

    ○矢田部理君 ケース・バイ・ケースが重要なのではなくて、一体化論がポイントなんです。そして、時間的にどう見るかとか、空間的にいかがするかとか、一線が画されているかどうかという立て方は工藤法制局長官などが示している基準でありますが、やっぱり一体となるものはだめだということを基本に置いた上でそういう答え方をしているのであって、そこは誤りのないよう大臣も押さえてほしいと思います。
  168. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今おっしゃいました従来の法制局長官の答弁なども、やはり具体的なケース、実態に即して考えなくちゃいかぬということを念頭に置きながら答弁しておられると思います。
  169. 矢田部理

    ○矢田部理君 ケース・バイ・ケース論が基本ではなくて、一体的なものかどうかが基本なんです。一体的なものかどうかを判断するに当たって幾つかの基準を立てるんですね、時間的関係とか直接かどうかとか一線を画しているかとかという。この幾つかのことを基準にしてケース・バイ・ケースになるわけでありまして、ケース・バイ・ケースを先に言われるとそこの基準があいまいになるような感じがするからそれはだめです。それが一つ。  もう一つ、十八分で終わってしまうので、いっぱい議論があるんですが、武力行使と一体のものはだめだと、こう言っているんですが、武力による威嚇も憲法では禁じておりますね。当然のことながら武力による威嚇と一体の後方支援、これもだめだというふうに考えてよろしいですね。
  170. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私も必ずしも法律の専門家じゃございませんけれども、今、委員のおっしゃいました武力による威嚇との一体化というところは、それは必ずしも従来の政府見解で明白になっていないと、このように理解しております。
  171. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこが問題なんですよ。憲法で禁じているのは、国際紛争を解決する手段としての戦力、武力の行使、武力による威嚇はだめだと。憲法の基準からすれば武力の行使も武力による威嚇も同じなんだと、そんなあいまいな答弁はよろしくないということを申し上げておきます。  あなた、必ずしも一体化論をあいまいにして、武力による威嚇、まだそこは政府見解で述べていないなどという立て方で間口を広げる、それが中国やアジア諸国に対する懸念材料、心配になっているのであります。この点については一部の政党が憲法上許してしかるべきだと、財界もそれに呼応する動きなどがあるので、この点だけはやっぱり厳格に従来の政府見解を守られるよう、政府見解全部が私は賛成ではありませんけれども、まずここではお願いをしておいて私の質問を終わります。
  172. 川橋幸子

    川橋幸子君 社会民主党の川橋幸子でございます。本日は、人権問題に集中しまして質問させていただきたいと思います。  外交には主要な要素が三つあると言われておりまして、一つは言うまでもなく軍事・安全保障、二つは経済、三つが人権、こういう三つの重要な要素があるわけでございます。昨年秋のAPECはまさに経済外交の季節であったと思いますし、それから、昨年暮れからついせんだってまで、あるいはその後も続いております日米共同宣言は、これは軍事・安全保障の季節であったと言えると思います。残る人権についてでございますが、余り日本の国内では真剣に議論されていない傾向があるのではないかと私は思っております。  日米は共通の価値観を持つということが絶えず強調されますけれども、この共通の価値観といいますのは、人権、民主主義というものが普遍的な価値であって、各国文化、伝統を超えるものだというそういう価値観であるはずでございます。  本日はお手元に大変分厚い参考資料をお配りしております。これはどういう資料かといいますと、アメリカの国務省が毎年各国の人権状況を調べまして議会に報告するというものでございます。実は、一年前にアメリカ国務省をお訪ねしましたときにちょうだいしました資料でございまして、担当の方は国務省の人権担当の国務次官補の筆頭代理でいらっしゃるエリー・ラファエルさんという方でございました。アメリカ外交政策の中に人権問題をしっかりと位置づけるのがこの組織の役割ということでございました。  別にこれを外圧として何かしたいというような、そういう私の問題意識ではございません。やはり人権概念というものを日本人がしっかりと知りまして、日本の人権に対する外の目をはっきりと認識いたしまして、国際貢献というのはみずからの課題をちゃんと解決するということが役割かと思いますので、本日はこれを教科書にいたしまして、大ざっぱに、オールラウンドにアウトラインをお伺いしたい、外務大臣並びに各省庁の取り組みについてのお答えをちょうだいしたいと思っております。  ここでは日本の部分の記述だけを抜粋してございます。翻訳は私の事務所でやりましたので、いささか粗っぽくて誤訳もあるのかもわかりませんが、そこはお許しいただきたいと思います。  大変客観的にできた報告書でございまして、日本は民主主義の国であって人権は守られているというのが総括でございますが、「しかし」というものがつきます。「しかし、部落民」、これは英語でも「Burakumin」とローマ字書きになっております。「アイヌ、女性、在日外国人は様々な程度の差別を体験している。」というのがこの報告書の結論的なポイントでございます。  ということで、各論に入らせていただきたいと思います。  女性の問題から入りたいと思いますが、これは「政治上の権利」のところで女性の問題をまず述べております。七ページでございますが、女性の政治参加に対して日本文化は好意的でないという書き方をしております。「文化」というのは「カルチュラル・アティチューズ」と書いてございまして、「好意的でない」というところは「ノット・フェーバラブル」というふうな表現になっております。しかし、女子差別撤廃条約といいますのは、あらゆる差別を撤廃するために各国文化の変更をも求めている条約なのでございます。  ということで、政治家のリーダーでもいらっしゃる外務大臣の女性の政治参加についての御所見をまず承りたいと思います。
  173. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 我が国の婦人参政権が、長年の婦人運動の先達等の御努力もございまして認められましてからもう半世紀になるわけでございます。そういった意味で、現在、法律上あるいは実際上の妨害はないということは、委員指摘のその報告書にも書いてあるところでございます。  しかしながら、現実の問題といたしまして、例えばこの国会におきまして、参議院におきましては、委員を初め大変有能かつ積極的な国政活動を展開しておられる議員がおいでになるわけでございますが、しかしその総数はどうかといいますと、やはりまだ結果として女性が同じような声を当院において上げる状態になっていないということは否定できないと思います。それはまた衆議院あるいは地方議会を通じましても、最近比較的そういった女性の議員の方々がふえておるとは申しましてもいまだしの感は否定できないと、こう思うわけでございます。  それが制度的なものでないとするならば、どういうふうに我々として対応することが一体可能なんだろうかと、これはちょっと頭をひねるわけでございますけれども、文字どおりこれが文化、広い意味文化、いわゆるカルチュラルというものに根差すものだとするならば、これはやはり粘り強く社会活動のあらゆる面におきまして男女の平等、真の意味で女性がいろんな社会活動に全く平等に参加できるような状況をつくっていくという努力の積み上げ、それが政治世界での女性のより大きな参画にもつながるのではないかと、このように考える次第でございます。
  174. 川橋幸子

    川橋幸子君 衆議院といいますか下院の女性議員比率は日本の場合は世界百七十二カ国中百四十五位というのがっとに有名でございまして、大臣も女性は一人しかおらないというようなことまで書かれているわけでございます。  大変有能な外務大臣でいらっしゃいますので、内閣におかれましても、あるいは自民党という政党の中におかれましても、大臣のリーダーシップを発揮してくださいますようにお願いしまして、次に移らせていただきます。  さて、女性の問題でございますが、働く女性の問題が指摘されているところでございます。これは八ページのところからかなりのページ数を費やしております。  そこで、労働省にお伺いしたいのですが、この報告書では、日本の伝統というのは女性に補助的な役割しか与えていない、それから男女雇用機会均等法は差別を明確に否定していないという、こんな指摘になっているわけでございます。施行十周年を迎えまして、労働省では今どのようなことをやっていらっしゃるのでしょうか。
  175. 北井久美子

    説明員北井久美子君) 先生指摘のとおり、男女雇用機会均等法が施行されまして十年を経過したわけでございます。  この間の変化を見てまいりますと、男女別の定年制の是正を初めといたしまして企業の雇用管理における制度面での改善は進みまして、また女性の職業意識の変化であるとか、あるいは営業や研究開発、あるいは従来男性向きと言われていた職種への、多様な職域への女性の進出といったようなことも見られまして、法の趣旨は着実に浸透しているものと考えております。しかしながら、近年の厳しい経済状況のもとで、なお一部の企業におきましては、募集、採用において男性のみを対象とするとか、女性についてだけ不利な条件を付すといった、男女の均等な取り扱いについて問題の事案が見られるところでございます。  施行十年を経過いたしました今、労働省ではこれまでのこうした女子雇用管理の状況等を踏まえまして、女性が意欲、能力に応じてその持てる力を十分に発揮することができる社会の実現のために、男女の均等の機会と待遇の確保といったことについてさらに徹底させるための方策について、法令の見直しを含めて幅広い検討を行うべき時期に来ていると考えまして、現在、婦人少年問題審議会の方で労働基準法の女子保護規定の見直しとあわせまして幅広い御議論をいただいているところでございます。
  176. 川橋幸子

    川橋幸子君 ありがとうございました。幅広くかつ早急な検討をお願いしたいと思います。  質問通告はしてございませんけれども、アメリカの三菱自動車で、セクハラの問題でかなり報道がなされておるところでございます。通告してございませんのでお答えは結構でございますけれども、ある新聞によりますと、日本の人権意識というものが、人権というのは正義であるという欧米並みのとらえ方が弱いせいではないかというような、そんな報道のされ方もされておりますので、これは外務省、労働省、両省に関係するかと思いますが、この後のフォローをぜひよろしくお願いしたいと思います。  次は、従軍慰安婦の問題でございます。  この報告書の中では十ページになるわけでございますけれども、一九九三年八月に日本の総理は初めてこの問題を公式に認めて謝罪したと、しかし個人補償をしていないという、こんな書きぶりになっております。  そこで外務省にお尋ねしたいのですが、この間は国連人権委員会が開かれまして、クマラスワミ報告をめぐりまして決議がなされておりますが、これに対する日本政府の対応の仕方を御説明ください。
  177. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 御指摘のとおり、国連の人権委員会で、ほかの議題もございますけれども、女性の権利の問題、女性に対する暴力の問題について審議が行われたわけでございます。  その中で、家庭内暴力について取り上げましたクマラスワミという特別報告者の報告がございますが、その附属書として従軍慰安婦問題についてもクマラスワミ特別報告者は言及している事実がございます。この女性に対する暴力に関連して決議が採択されておりますが、これは、クマラスワミ特別報告者が作業をしたということは歓迎しながら、その報告書それ自体はテークノートするという扱いになっているわけでございます。  いずれにしましても、私どもとしては、この慰安婦の問題は心の痛む問題でございまして、既定方針どおりアジア女性基金を通じて措置をとってまいりたいと考えているわけでございます。
  178. 川橋幸子

    川橋幸子君 新聞の報道ぶりも、評価し、かつテークノートするということで玉虫色、国連も玉虫色の結論を出すことが多いのでございましょうか、その報道ぶりでございました。  ここに国会図書館が出しております「イシュー・ブリーフ」がございまして、ちょっと御紹介させていただきたいと思います。  日本政府は女性のためのアジア平和国民基金、今、部長がおっしゃった基金を設けたと。でも、それについては国民の間でも評価が大きく分かれて募金が思うように集まっていない現状ということでございます。この連休中の朝日新聞の中では、三木睦子さんがこの基金の役員を辞任なさりたいというような報道がなされておりましたが、これも抗議の意思があるのではないかというような報道ぶりがございました。  それで、この「イシュー・ブリーフ」の終わりのところで「国連審議の流れは、」「日本は、国家責任に基づき被害者個人に補償する義務があるという点に収敏しつつある。」という、そういう分析になってございます。ある問題について研究結果が出された場合は、この研究結果の審議を積み上げていくというのが国連の手法と、別に各国に強制するわけではないが国連の手法というようなことでございます。  外務省におかれましても、各省庁と連携の上、真剣に取り組まれていくことと思いますが、なお御努力いただけますようにお願いしたいと思います。  次に移らせていただきます。次は、アイヌ新法の制定について内閣内政審議室にお尋ねしたいと思います。  昨年、人種差別条約を批准いたしました。ようやく批准にこぎつけました。この国務省報告では十一ページに書かれてございますが、私どもの社会民主党の萱野茂さんのことが紹介されておりまして、アイヌ人として初の国会議員になったということでも、その新法はなかなかそうすぐに進展することもなさそうだという、そういう指摘がなされております。これにつきましては、先日、ウタリ問題の有識者懇談会の報告書が出ておったと思います。  内政審議室におかれては、これからこの報告と新法の促進についてどのように取り組んでいかれるのか、お伺いしたいと思います。
  179. 渡辺芳樹

    説明員(渡辺芳樹君) ただいまの御質問にお答え申し上げます。  アイヌの方々に係る法制度のあり方を含めて新たな施策に関しまして、昨年三月より内閣官房長官のもとにウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会というものを開催し、御論議をいただいてきたところでございます。去る四月一日に内閣官房長官あてにこの懇談会から報告書を提出いただいたところでございます。  御承知のとおり、この報告書では、アイヌの方々の先住性とか民族性とか、これまでの行政では必ずしも認識なり施策なりの面で整理されていなかった問題につきましても有識者のお立場で結論を出していただくとともに、新たな立法措置を含めたアイヌの方々の民族的な誇りの尊重等を基本理念とした新しい施策の展開を御提言されておられます。  先ほど御質問ございましたこの新法のお話は、いわゆる「新たな立法措置」ということでこの報告書で書かれておりますが、それをこの懇談会の特段の御提言であるというふうに私どもも理解しております。  政府といたしましては、その点を含めて報告書を最大限尊重するとともに、関係省庁と十分相談の上適切に今後の施策の中で対処してまいりたい、こういうふうに考えております。
  180. 川橋幸子

    川橋幸子君 北海道旧土人法という名称においても本当に時代錯誤がかった法律、これを廃止するとともに新法ということにこれからなっていくかと思いますが、何か時期的なめどはあるのでございましょうか。
  181. 渡辺芳樹

    説明員(渡辺芳樹君) この報告書におきましても、いわゆる北海道旧土人保護法あるいは旭川市旧土人保護地処分法と、こういう明治年間及び昭和初年の法律につきまして言及している部分がございまして、新しい施策の展開が確立するのに伴い、これらの法律についても廃止のための措置を講ずるよう御提言をいただいております。  今後のめどということでございますが、この報告書の詳細を関係省庁ともども十分研究、勉強させていただきまして、当面どういうところから手をつけていくかということを含めて、でき得る限り速やかに対応してまいりたいという段階でございます。具体的な日程、日取りといったものを今申し上げられるような段階に来ておりませんことを御了解いただきたいと思います。
  182. 川橋幸子

    川橋幸子君 できる限り速やかにということで、一層の御努力をお願いしたいと思います。  次は、部落問題についてお伺いしたいと思います。  この報告書では十一ページの下の方に「国籍上の」「人権上の」と書いてあります。これは人種上のということです、少数民族の問題でございますが、この国務省報告では、日本社会というのはどうも自民族中心主義で、その均質性を尊重し過ぎるがために少数民族に対する配慮が足りない、あるいは差別があるというような、そういう分析になっておるわけでございます。そして、なお日本社会では現在部落基本法に向けての部落民の活発なロビー活動が続けられているということが十二ページあたりに指摘されているわけでございます。  ところで、同和対策につきましては、先ほど地域改善対策協議会から国の施策のあり方が提言されたと伺っておりますけれども、この提言を受けて今後どのように取り組んでいくのか、これについて総務庁の方からお答え願いたいと思います。
  183. 川邊新

    説明員(川邊新君) 同和問題の件でございますが、先生御承知のとおり、同和問題につきましては憲法に保障された基本的人権にかかわる問題ということでございまして、政府といたしましては、現行の地対財特法に基づきまして啓発等の各般の事業を積極的に推進することによりまして、同和問題の早期解決に努力しているところでございます。  御指摘のとおり、来年三月末に現行の地対財特法が期限切れになるということでございますので、地域改善対策協議会の総括部会で三月末に報告書をいただいたところでございます。  報告書の内容そのものを簡単に申し上げますれば、物的な生活環境は相当改善されたということも踏まえまして今の特別対策は基本的に終了すべきであると。ただ、いろいろ工夫をしながら一般対策で対応をしていくべきだという御指摘でございますので、政府といたしましては、この報告書を踏まえまして、現在関係各省と具体的な検討を進めているところでございます。  また、御承知のとおり、人権と差別問題に関するプロジェクトチームというのが与党の中で設けられております。その中で与党各党間の話し合いも進められておりますので、その議論の動向にも十分留意しながら対処してまいりたいと考えているところでございます。
  184. 川橋幸子

    川橋幸子君 与党の中でも力を入れて取り組んでおります。少なくとも私ども社会民主党の場合は、この問題を日本の人権問題の大きな一つとして位置づけているわけでございます。  一般対策でというようなお答えでございましたけれども、これは読売新聞の三月三十一日の報道でございますが、「現行法の役目は終わるが、依然、工夫が必要」と。この工夫の中心に法的措置というものが挙げられて、法的措置というのは新たな立法を意味するというような感じの報道がございますが、この報道のように、新たな立法措置を含めて検討ということでよろしゅうございますね。短くて結構でございます。
  185. 川邊新

    説明員(川邊新君) 法的措置の必要性も含めて今後検討しろということでございます。その検討の内容はこれから詰めていこうということでございます。
  186. 川橋幸子

    川橋幸子君 それでは次は自治省に、地方公務員の国籍条項についてお伺いしたいと思います。  この問題は国務省報告では十二ページから十三ページにかけて記述されておりまして、永住外国人の地方公務員の国籍条項が緩和されてきていることを評価した上で、なお問題点指摘されているわけでございます。  この地方公務員の国籍条項につきましては、昨年、高知の橋本知事が撤廃の宣言をなさって検討に入られてから、今非常に大きな動きになっていると思われます。もう地方分権の時代なので、自治省が当然の法理という、そういう解釈でもって地方公務員の国籍条項を縛るというのも時代が変わっているのではないかと、こういう意見も聞かれるところでございます。  これは毎日の世論調査でございますが、撤廃賛成についての回答が四五%。というと何だか半数以下かと思われるかもわかりませんが、そうではなくて、反対は二〇%、わからないというのが三三%ぐらいあるわけでございます。判断している人はもう撤廃してもいいのではないかという、そういうアンケート調査になっておりますが、この問題についてはいかがでございましょうか。
  187. 猪野積

    説明員(猪野積君) お答えいたします。  政府は、従来から内閣法制局見解に示されておりますとおり、公務員に関する当然の法理といたしまして、公権力の行使または公の意思の形成への参画に携わる公務員となるためには日本国籍を必要とする、しかし一方、それ以外の公務員となるためには必ずしも日本国籍を必要としないと解してきております。これは、国家公務員、地方公務員を通じる国全体の公務員制度に含まれる法理でございまして、これを前提とした立法も行われているところでございます。  また、地方公共団体の事務の中にも公権力の行使等にかかわるものが多く存在するところでございます。したがいまして、地方公共団体が公務員に関する当然の法理を踏まえた人事行政を行うということは、御指摘ございましたけれども、地方分権とは少し次元の異なる問題であろうと考えております。  したがいまして、今後とも同様の考え方で、すなわち公務員に関する当然の法理に抵触しない職種について外国人の採用機会の拡大を図るよう地方公共団体を指導してまいりたいと考えております。
  188. 川橋幸子

    川橋幸子君 内閣法制局見解というのは昭和五十三年ですね。それから非常に世界は変わっているといいましょうか、時代の変化があるわけでございます。  現在検討中と書かれておりますのは、高知県、川崎市、大阪市、今後検討したいというのが群馬、東京、福岡、大分、沖縄、神戸というふうに、都道府県、政令指定都市の中での動きがあるわけでございます。  地方分権とは違うとおっしゃいましたけれども、私は別の意見を持っております。公権力というのは地方分権の中では地方政府の公権力、国が統一見解を出すまでもないのではないかというのが私の非常に単純な理屈でございます。なお御検討いただけますようにお願いしまして、次に移らせていただきたいと思います。  次は、外国人労働者の問題について法務省にお伺いしたいと思います。  この問題は、国務省報告の中では十三ページから十四ページぐらいに書かれているわけでございます。現在三十万人近くが存在しておって、イラン、バングラデシュ、パキスタン等の出稼ぎの方々が建設、製造業などの危険な職場で働くことが多いというような、危険なというのはちょっと私がつけ加えた言葉でございますけれども、工業と建設の仕事でよりよい賃金支払いを求めてきたのだけれども、なかなかそうはいかないというような書きぶりになってございます。  先日、メーデーがございまして、橋本総理が初めて中央メーデー会場にお見えくださったそうですが、移民労働者のメーデーというのが、ささやかでしたが私が住んでおります板橋区というところで開催されました。彼らは、労災事故が起こるとそれがきっかけになって強制送還になるというようなことで、大変苦情を言っておったわけでございます。  この国務省報告の中でも、不法な事業主を処罰するけれども、それは強制送還を増加させる。その不法な事業主が彼らを食い物にしているというような市民活動家の意見があるというようなことが伝聞として書かれているわけでございます。  労災事故に遭って手足を失ったりあるいは治療中ということで、見るのもやはり同情を私はせざるを得ないのでございますけれども、そういう方々がメーデーに来られるわけでございます。そうした場合の救済措置というものを、入管の方でも法務省の中でも何か考えられないものかということをお聞きしたいと思います。
  189. 山神進

    説明員(山神進君) 入管法に違反して我が国で不法就労しております外国人につきましては、入管法の規定に従い退去強制をするのが原則であり、単に労災の事故に遭ったということだけでその在留を特別に許可するということは非常に困難であろうと思います。  しかしながら、人道的見地から特段の配慮を必要とするような場合、例えば巷間言われます、日本人と婚姻していてその間に子供がいるというふうな場合とか、人道的見地から特段の考慮を必要とする者については、諸般の事情を総合考量した上で在留を特別に許可する場合もあり、今後ともそのような配慮をしてまいりたいと考えております。  また、委員指摘の退去強制手続の過程で労働災害の事実が判明したときに、所要の救済措置がとられ得ますよう労働基準監督署等に通報するとか、あるいは現に病気治療中とかというふうな事情があります場合には、その病気治療の程度を見てどういうふうにしていくかということを考えなきゃならないというふうに認識しております。  今後とも、労働災害の事実を認知したりあるいは病気治療中とかということが判明しております場合には、退去強制手続をとるに当たって、労災手続の進捗状況とかあるいは病気の程度とかにも配慮してまいりたいと考えております。
  190. 川橋幸子

    川橋幸子君 ありがとうございました。  持ち時間が四十九分まででございまして、ほかにも質問通告を厚生省、総理府さんにしていたわけですが、きょうは時間がなくて本当に申しわけございません。次回にということにさせていただきたいと思います。  それで、最後に外務大臣にお伺いしまして、私の質問を終わらせたいと思います。  この国務省報告の中でも、人権の擁護というものは、日本では法務省人権擁護局と外務省人権難民課が担当していると書いてございますけれども、きょうの答弁者、各省立ちかわり答弁してくださったわけでございますが、やはり日本でも人権問題を総合的に取り扱う組織というものを考えるべき時期に来ているのではないかというふうに思われますが、大臣、いかがでございましょうか。
  191. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員が最初に御指摘になりましたように、人権という問題は民主主義の三本柱の一つだと、こういうお話がございました。  社会のあらゆる活動といいましょうか、あるいは組織とか制度というものは人権に絡んでくるのだと思いますので、それだけに総合的な見地からの取り組みというものも必要でございますが、逆に申しますと、それだけ広範な問題であるだけに人権ということで一括できるのかなと。例えば、雇用の問題でございますとやはり労働省で専門的な観点からいろやらなくちゃいけないし、あるいは教育の問題なら文部省、いろいろあると思うのでございます。  そういった意味から申しますと、私は、総合的な観点からの取り組みが必要であるけれども、行政官庁の組織論としての総合ということが果たして適当なのかどうなのか、その辺はよく考えてみなくちゃいけないなと、こう思います。  そういったことからいいますと、これも一つでございますが、例えば昨年から国連人権教育の十年というのが始まりましたけれども、この観点で、それは総合的にやろうということで内閣総理大臣を本部長とします本部を発足させた次第でございますけれども、そういうふうに機能の面から極力総合的に取り組んでいくということをまず考えていくべきかと、このように考えている次第でございます。
  192. 川橋幸子

    川橋幸子君 ありがとうございました。終わります。
  193. 立木洋

    ○立木洋君 先般に続いて日米安保の共同宣言の問題について、先日時間が足らなかったものですから、きょうは引き続いてお尋ねをいたしたいと思います。  先ほど同僚議員の方で、共同宣言の中で、日本周辺の地域において事が起こった場合に、日米間での協力を研究し、政策の調整を行うという問題について六つの項目を出して北米局長折田さんにお尋ねしたけれども、今のところ立ち入って述べることはできる状況にはございませんというお話でした。  ただしかし、先日、例えば四月十七日にNHKのテレビ討論会で自民党の政調会長の山崎さんが、極東有事、朝鮮半島有事ということになれば、民間空港を米軍が使ったりあるいは閉鎖したりということは大変なことだと言うけれども、有事の際の話なので当然検討しなければならないんですよと、明確に検討の対象に挙げているんです。それから、別の機会でも同じく山崎さんは、水、食糧、医療行為、これらの提供は米軍に対しては可能だと明言しています。それから、四月十一日に、外務省や防衛庁は、自民党の安全保障調査会にいろいろな項目を挙げて資料を提出しているという報道もあります。  こういう問題が事実上検討され、内容が問題にされているにもかかわらず、国会の席上では何一つ述べることができないということでは、やはり国民に対して今どういう状態を検討しているのか、何が問題になっているのかということを明らかにする必要があるし、それをお尋ねする義務も責任も我々国会議員にはあるわけですから、答えられる範囲内についてはやっぱりきちっとお答えいただきたい、こう思うんですが、折田さんいかがでしょうか、まず最初に。
  194. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 自民党の方で安保調査会がありまして、そこでいろいろ御議論があることは承知しております。私ども、それは党としておやりになっている御議論であろう思います。具体的にどういう項目について、いつまで何をするということは政府としてまだ決定しておりませんし、何を協議するかということについてアメリカ側とまだ具体的な検討に入っているという事実はございませんので、その旨言わせていただきたいと思います。
  195. 立木洋

    ○立木洋君 しかし、外務省や防衛庁は与党の自民党の調査会にこういう項目がありますということを問題提起しているわけですから、項目ぐらいは挙げることが可能じゃないでしょうか。これからどういうふうに検討するかということは今後の問題であるとしても、こういう項目がありますと、情報の提供、輸送の支援、医療行為の支援、そういう行為があるとかないとかというような、そういうこともお答えはできないということでしょうか。
  196. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 党の方で御議論があったときに、私どもに例えばどういうことが考えられるのかという話があったのはそのとおりでございます。私どもは、邦人等の救出の問題ですとか難民対策の問題、それから対米支援に関しましては施設・区域の利用の問題、それから米軍に対する後方支援の問題等、例えばこういうことがあるというお話はしたことがございます。
  197. 立木洋

    ○立木洋君 防衛庁、同じくあなた方の方で検討されている内容でどういう問題を検討されているのか。防衛庁としてはいかがでしょうか。
  198. 守屋武昌

    説明員(守屋武昌君) 今回の米国と日本との共同宣言におきまして、日本周辺地域において発生し得る事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合における日米間の協力に関する研究を促進するということを共同宣言で言っておるわけでございますが、これはそのような事態に対しまして日本アメリカ協力して対応する方法につき幅広く研究するという趣旨でございます。  それで、今先生指摘の、ではどんなものがあるのかということでございますが、これにつきましては、自衛隊として米軍の活動にいかなる協力を行うかということにつきましては、アメリカから具体的に今聞き取っておる段階ではございません。個々具体的なケースによって私どもは異なると考えておりまして、一概に述べるということは大変困難であると考えております。  そうは申しましても、では具体的に全くアメリカ側といろんなことを、共同訓練とか日米共同作戦の研究とかいうことを通じて何も考えられないのかというと、具体的にアメリカ側の要請として今あるわけではございませんけれども、我々のこれまでのアメリカ側とのそういう共同作戦の研究とか共同訓練とかそういうものを見ますと、先ほど北米局長の方から申し上げましたように、米軍に対する補給とか施設・区域の追加提供とか民間空港、港湾の使用とか、こういうものが一般的に考えられるのではないか、こういうふうに考えております。
  199. 立木洋

    ○立木洋君 折田さん、新聞の報道によりますと、日米安保共同宣言が署名された数日後、アメリカ側から外務省、防衛庁に対し、朝鮮半島有事での対米支援策の回答を求めてきて、その項目は九百項目にわたる支援策を打診してきたと。これが最初じゃなくて、今から二年前、平成六年の五月のときと去年の春と、そして今回が三回目で、それに対する返答を促しているという文書が送られてきていると。  これに対しては、具体的な内容が書かれてありますけれども、これは時間がないから言いませんが、それらの文書がこれまでアメリカ側の要請として三回送られてきたというのは事実なんでしょうか。
  200. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 共同宣言発出二、三日後、そういうやりとりが日米の責任ある当局の間で行われたということはございません。
  201. 立木洋

    ○立木洋君 いわゆる極東有事、朝鮮有事の場合の支援策について、それらの具体的な項目を挙げて日本側がちゃんとしてほしいという要請はいまだ一回もなかったということですか。
  202. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 日米間ではふだんからいろいろな話し合い、協議をしておるわけでございますけれども、今、先生が言われたように、共同宣言の発表後、何か文書でもって……
  203. 立木洋

    ○立木洋君 数日後。
  204. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 数日後、文書でもって何か要請があったという事実はございません。
  205. 立木洋

    ○立木洋君 それでは折田さん、去年の九月四日、外務省で当時のナイ国務次官補と協議をしましたね、日米共同宣言の作成の問題に関して。今から一年足らず前のことですから記憶にあると思うんですが。そのことで個別的な問題には言及しない方がいいということをあなたは述べたと。しかし、ナイ国務次官補は、個別的な問題に言及しないと文書はただのレトリックになってしまう、だから実際問題について言及する必要があるということをナイ国務次官補は話をして、そこでいろいろと激しいやりとりがあったと。これは九月四日の時点です。  それで、なかなかいろいろ問題がはっきりしなかったけれども、その後ことしの春、ちょうど台湾海峡が起こっておった状況の中ですが、キャンベル副次官補が来日したときに、ACSAについては限定条件なしに締結したいという問題が出された。これまた折田さん、大変な意見のやりとりがあったと。そして結果としては、結局共同宣言の中に、最初個別問題については言及しないということを折田さんは言っていたけれども、具体的には共同宣言に書かれてありますように、つまりガイドライン見直し、そして日本周辺でのいわゆる事が発生した場合の日米間の協力について研究し、政策を調整するという文章をついにアメリカ側の要求に基づいて入れざるを得なかったということを私は耳にしたんですが、そういう経過は事実あったんでしょうか、なかったんでしょうか。
  206. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) どうも私が参加している交渉の模様のお話のようでございますけれども、個別問題、個別問題とおっしゃるその個別問題がどういうことであるかというのは必ずしもつまびらかにいたしませんし、日米間の交渉の一々について申し上げるわけにはいきませんけれども、大きな話として申し上げれば、日米間で何らかの安保文書をつくるに当たっては、首脳間の文書である以上、非常に格調の高い、幅の広い問題にすべきであるという趣旨の議論をした覚えがありますが、そこでナイ次官補との間で激しいやりとりをしたという記憶は私には全くございません。  それからキャンベル、これは国防省の次官補代理でございますけれども、彼とも私は常日ごろ接触がございますけれども、ACSAの問題で、今、委員がおっしゃられたような激しい議論のやりとりをしたという覚えは私自身には全くございません。
  207. 立木洋

    ○立木洋君 議事録は当然極秘ですから、私は読んだわけじゃありません。だけれども、そういうやりとりがあったと。激しくやったのかあるいはにこにことやったのかそれはわかりませんけれども、私は激しくやったのかなと思ったから激しくという形容詞を使っただけの話です。  ACSAの問題に関してもいろいろと問題がありますけれども、去る二十五日、防衛庁の村田事務次官が、米軍の武力行使に、時間的、空間的に近接していても、共同訓練であれば日本の米軍への後方支援は可能だということを示唆した発言が行われています。そういうことになると、今の議論のやりとりの内容と関連して、より一層アメリカ側の要望に対応するという回答になっていくんじゃないかというふうな感じがしたんですが、そういう村田次官の発言については御存じでしょうか。
  208. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 新聞で拝見はいたしましたけれども、村田次官がいかなるコンテクストでいかなるふうに言われたかというのは私はつまびらかにいたしません。  今度日米間で締結をいたしました日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する協定でございますけれども、この協定の適用対象というのは「共同訓練、国際連合平和維持活動又は人道的な国際救援活動に必要な後方支援、物品又は役務の」「提供に関する基本的な条件を定めることを目的とする」ということでございまして、米軍の戦闘作戦行動に対する支援といったようなものでは全くございません。
  209. 立木洋

    ○立木洋君 この問題に関しては、これは質問ということじゃなくて私が述べておきたい点について言いますと、平成六年五月の段階ですが、その当時の平成六年六月十六日のスターズ・アンド・ストライプス、これに明らかに、極東有事の際、兵員、物資を緊急輸送するため、札幌、新潟、成田などの日本の主要民間空港を封鎖するシナリオを描いた報道が既にあります。ですから、既に二年前からそういうことを要望する声が米側からあった。それがどういう形でこちら側に届いたかどうかということは、あなたは先ほどそういう問題について要請があったという記憶がほとんどないというふうに言われたけれども、そうではなくて、公然としたアメリカ軍の準機関紙にそういうことが要請されているということを一つ述べておきたいというふうに思います。  それから同時に、これらの問題に関して先ほど私が述べたのは、ただ単に勝手に自分で想像してでっち上げてナイ次官補や折田さんとの話し合いを言ったのではなくて、経過を見ればこの重要な問題、ガイドラインの見直しの問題やそれから極東有事における、いわゆる日本周辺有事における事態でどういう協力をするのかということについては、日本側としてはある意味でいえば極めて急にそういう事態を検討しなければならなくなった。だから、いまだに問題の項目さえ明らかにできない、政府部内で統一できない。そういう事態から見ても、私が述べたことは決して単純なる推測ではなくて、そういう問題についてはきちっとした外交姿勢をとり得なかった、結果としてこういう状況になっているということだけは私は述べておきたいと思うんです。  それで、後段に今度は大臣の方に先回の続きでお尋ねしなければならないんですが、憲法の枠内でどれができてどれができないか、あるいは後方支援についてもでき得るものとでき得ないものがあるのではないかというふうな点について、線引きがどこかで可能なような発言がよくあります。私は、これは極めてナンセンスだと思うんです。  現代の戦闘状態をごらんになればおわかりのように、後方支援がなければ戦闘体制というのは成り立たないんです。ある意味でいえば武力行使の一体化の問題です。極東有事の際の、日本周辺有事の際の米軍の戦闘行動は、言うならば兵たん支援、後方支援がなければ成り立ちません。だから、戦闘行動は戦闘部隊も後方における兵たん支援の各行動もすべて含まれていることはこれは常識です、戦闘上。これはもう自衛隊の幹部も明確に述べているところです。輸送・通信・兵たん基地が相手の攻撃の対象になっていることから見てもこれは明白なわけです。  それから、何か線引きをして、ここまでだったら憲法上可能なのだと、ここまでの後方支援ならば一体化しないから可能なんだというふうな線引きがあり得るかのように言うことは、憲法上そういうふうな問題のとらえ方自身を可能としていないということを私は述べたいんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
  210. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今の委員の御指摘は、いわゆる一体化というものを極めて広範にとらえておられると思います。その論法でいきますと、それはありとあらゆる、軍の活動はもとよりでございますが、後方支援活動はすべて一体であると。さらにそれを延ばしていきますと、その物資やら何やらをつくる生産活動から経済活動に至るまで一体化ということになるのではないでしょうか。もしそういうことであるならば、議論の前提が全く違いますから、これは私があれこれお答えしても到底御満足いただくようなことは申せないと思います。
  211. 立木洋

    ○立木洋君 でしょうね。大臣の言われることで満足する回答をいただけるとは私も思って質問したわけではありません。しかし、これからの入り口の問題としての問題提起をしたわけです。  そして、先ほど来問題になりました集団的自衛権の行使が憲法に違反するということをこれまで政府は言ってきました。どうして集団的自衛権の行使が憲法に違反するという政府の主張なんでしょうか。
  212. 林暘

    政府委員(林暘君) 憲法解釈でございますので法制局にお聞きいただいた方がいいと思いますけれども、少なくとも私どもが理解しているところを申し述べますと、次のとおりだと思います。  御承知のように、憲法九条というのは、戦争、武力の行使、武力による威嚇を禁止しているわけでございますけれども、憲法九条が国に固有する自衛権、ここで言う個別の自衛権でございますけれども、個別の自衛権の行使を禁じたものではないというふうな解釈に立っておるわけでございます。  個別の自衛権の行使としては、御承知のように三要件というのを従来政府が言っておるわけでございますけれども、集団的自衛権というのはみずからが攻められたのではないときに、みずからが侵略を受けたのではないときに、つまり密接な関係がある他国が侵略を受けたときに武力を行使することについて国連憲章上違法性が阻却されるという形で五十一条に書かれておるわけです。  つまり、日本が憲法上有している自衛権というのは、日本に対して急迫不正の侵害があって、それに対する必要最小限度の武力が行使できると。集団的自衛権に基づく武力の行使をした場合にはその範疇に入らないから、したがって憲法が認めるところではないというのが従来政府が答弁しておるところだというふうに理解をしております。
  213. 立木洋

    ○立木洋君 ですから、日本に対する武力の攻撃があった場合に、自衛のためにそれに対して武力の行使を行うと。その場合に、日本に駐留している米軍も共同で武力の行使を行うことは可能だと。日本に対する直接の攻撃があった場合ですね。  そのことについては、私が国会でこの問題について代表質問を行ったときに、橋本総理もこの点についてはあなたのおっしゃるとおりだというふうに言っていただいたから、今言われた点と私は矛盾しているとは思いません。今答弁されたように、憲法九条の武力の威嚇、武力の行使にはならないということが、やっぱり大前提として考えなければならない憲法上の精神だと思います。  ただ、問題になるのは、日本に対する武力攻撃がない、そして日本の周辺地域、ほかのところで有事、つまり戦闘行動が起こっているという場合、例えば台湾海峡なら台湾海峡で起こっていると。それが極東の範囲になるかどうかということで先ほど大分やりとりしましたけれども、結論が出ませんでしたが、これは数年前にやりました。何年か前にやりましたけれども、ここで問題になっているのは、それならば日本に対する武力攻撃がなくて、そしてアメリカ軍だけが日本から飛び出してその周辺地域で戦闘行動に入っているというふうな場合、この場合については日本アメリカと共同行動をとって自衛隊が出ていって武力行使することはできないということになっているわけです。そうすると、どういうことかといえば、この規定は国際的な紛争を武力の威嚇、武力の行使で解決するのを日本政府がしてはならないという政府の根本的な規定があるわけですね。  これについて高辻法制局長官が、我々に対する武力行使はないんだけれども、国家の権力がそれに介在して大いにやろうということになれば、つまり国家の意思が介在するならばこれは第九条に対する違反になると。つまり、アメリカが行っている武力行使です。日本に対する武力攻撃ではないのにアメリカが武力行使を行っている場合、国家の意思がそれに介在して共同する、支援するということになるならば、それは憲法第九条に違反するものとして許されないと。だから、国際的な紛争を武力の威嚇行使で解決しようとする国家の意思が介在しても第九条に反するというふうに明確に述べていたのが、一九七〇年三月三日の参議院予算委員会における高辻さんの答弁です。  だから、我々が関係ない武力行使に日本の自衛隊なりが事実上兵たん支援を行うという形でその武力行使に参加するということは憲法上違反になるんじゃないですか。簡単で結構ですが、明確にしておいていただきたい。
  214. 林暘

    政府委員(林暘君) 従来から、これも主として法制局が御答弁申し上げているのは、基本的に、アメリカがいわゆる極東有事の場合、日本が五条事態でない場合に、米軍と一体化するような行動をして補給業務をするというような場合には憲法上違法ではないかと思いますというような趣旨の答弁をしているわけでございます。  高辻長官の答弁というものがちょっと手元にはございませんけれども、基本的に武力を行使しておる米軍と全く一体になる、それはどういう場合に一体になるかならないかは個々具体的なケースごとに判断するということになっておりますけれども、そういう場合には憲法に触れる可能性があるという答弁を申し上げております。つまり、武力行使をしている米軍のどこかの部分にいささかなりとも国家が関与したらすべて憲法違反になるという答弁ではないというふうに私は承知しております。
  215. 立木洋

    ○立木洋君 もう最後になりますので大臣の方に、もし条約局長も答弁されるんなら答弁して結構です。  高辻さんが言われている点でいきますと、   国際紛争を解決する手段としての武力の行使を永久に放棄することにしたわが憲法九条一項のもとでは、武力攻撃を受けた国がたとえ我が国と連帯関係にあって、その他国連命が我が国の命運に深くかかわるというのであっても、その他国のために我が国が集団的自衛権を行使することは認められないということにならざるを得ない。 いずれにしても、個人間の紛争について暴力を行使しないで、それぞれしかるべく筋を通して解決するのがいいとしていると同じように、それ以上かもしれませんが、国家間の紛争というものは平和的に解決しろと、これはもはや極めて一点の疑いもない憲法の規定であります。高辻さんはこのように明確にしているんです。  そういうことになりますと、現に武力の行使を行っている米軍に、日本に対する武力攻撃がないにもかかわらず、それに対して兵たん支援なり何らかの形で威嚇や武力の行使に協力し共同するということが、どこかで線が引けて可能だという問題の立て方自身が私は憲法の精神に反するということを明確に述べざるを得ないんです。  この点について、これで終わりになるとは思いませんが、御答弁をいただいて、きょうは質問を終わりにしたいと思います。いかがでしょうか。
  216. 林暘

    政府委員(林暘君) 今お聞きしました高辻長官の御答弁はまさにそういうことだろうと思います。集団的自衛権の行使ができないということを高辻長官はそういうふうに言われたんだろうと思います。  いわゆる一体化論で線が引けるか引けないかという、立木委員は引けないという御意見でございますけれども、我々としては具体的、個別的なケースごとに、それが本当に一体化しているものかしていないものかということはあり得るというふうに思っております。  一番極端な例を申し上げれば、まさに日本は米軍に施設・区域を提供しているわけでございますし、戦闘作戦行動で日本の施設・区域を米軍が使うことはあり得るわけでございますから、まさにそういう事態があり得ることは我々として認めているし、それは憲法のもとで許されているということになっているわけでございます。  それが一例でございますけれども、そういうことで一体化しないで後方支援を行う余地というのはあるというふうに我々は考えております。
  217. 立木洋

    ○立木洋君 あとは後日に譲ります。
  218. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 先生方の話を伺っている間にちょっと予定外のことを話したくなりました、あしからず。  外務省が、ただ外国とのおつき合いじゃなくて、本当に望ましい世界を実現するための、むしろ世界政策省的性格をだんだん深くしているんじゃないかと思うんです。これは前の河野外務大臣のときにも申し上げたんですが、それにしても余りに予算がみみっちいですね。とにかく防衛庁の予算の六分の一もないですからね。だから、私は、今のお話にもありましたけれども、これから先の国際紛争を解決する手段として、日本だけじゃなくて世界のすべての国が武力は使わないというのが、これから先の歴史段階のいや応なしの歴史的要請だと、こう思います。  そういう国際間の問題、民族間の問題を武力で解決しようとする姿勢を改めない限り、どんな国でも核兵器を持ちたいと思うことは間違いない。あるいは最近では核兵器よりももっとコストが安くて殺りく効果の大きな、超近代的な化学兵器あるいは生物兵器があらわれつつあるということも情報としてあります。  こういうことをなくそうと思うならば、片方では国際ルールとして、国際間の問題は、劉邦ではありませんが、始皇のやり方をやめてモラルと英知によって解決する、武力は使わないということが、今のところでは日本の憲法が唯一の憲法でしょうけれども、すべての国の憲法にこれを書かしめる努力をすることが日本世界政策の一番大事なところであってしかるべきだと思うんですね。  現在の外務省予算でも、半分は大体外国に対する経済協力、もしくはそれに準ずる予算ですね。だから、中身はだんだんよくなっておるんですけれども、いかんせん金額がみみっち過ぎる。  これも河野大臣に申し上げたんですけれども、例えば北方領土の問題を解決するのに今のようなやり方では百年河清を待つがごときものだと。ロシアと中国が仲よくなっているのは、地政学上の問題もありましょうけれども、今日、バイカル以東のロシアの国民の生活にどれだけ中国の行商人的な経済活動が寄与しているか。珍宝島ですか、ああいう国際的な問題もとっくに解決したのは、やはりそこにロシアと中国との間の経済協力といいますか、むしろ中国側からの経済援助が実質上バイカル以東のロシアの国民に浸透しているからこそ可能なのであって、日本がもし外務省のリーダーシップによってバイカル以東のロシアの国民生活に日本経済力、技術力をしんしんとして進めれば、北方領土なんかは熟柿が落ちるように返ってくるんじゃないですか、ちょっと話がよ過ぎますけれども。まずそういう流儀も考えてもらいたいのです。  これから先、外務大臣活動は相当長い年数にわたるわけでありますから、そういうようなことを考えに入れて、少なくとも河野大臣には二兆円は欲しいというように申し上げたんです。それはせめて防衛庁の半分くらいという意味でありました。  ことしの外務省予算にもエネルギーとか食糧増産を特に取り上げておられるのは非常に聡明な問題キャッチだと思います。とにかく中国と仲よくしようと思えば、これはもう食糧問題とエネルギー問題を解決することで、それは中国の運命だけではなくて日本の運命をも決定する重要問題でありまして、これはボランティアなんかでは歯が立たないんですね。どうしても外務省予算を十分にとってこれに対応すると。  北朝鮮にしましても、百万トンや二百万トンの米を上げるのもいいですけれども、食糧生産そのものについて我々の真心と技術を提供する、こういうことが韓半島の平和の一つの大きな主柱をむしろつくることになるのじゃないか。  中国と北朝鮮が非常に問題だと言うと、大臣はちょっと見解は違うようでありますが、日米安保は特定の国を目指したんじゃないと、こうおつしゃいますけれども、それは大臣のお考えで、仮に中国と北朝鮮が本当にそういう我々の経済的、文化的な、文化的なというのは教育問題とか衛生問題を含むわけでありますが、ということで現在のとげとげしい対立関係が解消すれば、これはアジア太平洋か何かは知りませんけれども、その地区における一つの重大な平和要因が成長することは間違いありません。  アメリカのペリー国防長官自身も、アジア太平洋の安全と平和を守るには日本アメリカの安保だけじゃ足りない、やはり中国、北朝鮮あるいは韓国、こういう国々が本当に日米安保の精神において手を握ることが必要だという意味のことを言っておられるわけです。これは、私はそれらの国々が三十年の不可侵条約を結べば一番いいと思いますけれども、しかしペリー長官の考え方もその根底においてこれらの国々が武器を持って対立しないという論理でありますから、これはなかなかいい線じゃないかと思います。ぜひ日米両外務大臣においてこの線を掘り下げていただきたいと、こういうふうに思います。
  219. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 外務省として、単に我が国のいわば狭い意味での国益を追求するだけではなくて世界全体がいかにあるべきか、そういった問題についてより大きな責任を果たしていく、そういった中で我が国の将来の安定と繁栄を見出していくべきだと、そのとおりに考えております。  そういった観点からいろいろお話がございました、武器を使わずに外交努力を中心にしてやるべきじゃないかと。私どももそのとおりだと思っております。我が国の憲法の考え方も、もとをただせば不戦条約等の一連の流れの上に位置づけられるわけでございますので、究極的な目的としては、世界各国がそういった不戦の宣言をいたしまして、また実態的にもそういうことになればこれにこしたことはないと思うのでございます。  ただし、現実の今の世界を見た場合には、やはり実力を持って単独で、あるいは手を組みまして安全を守っていくという面も否定し切れないと。だから、それをやりながら、一方でおっしゃいました武力以外の面でのいろんな努力をやっていく、それをにらみながら軍縮の方も着実に進めていくというのが現実的ではないかと考える次第でございます。  そしてその場合に、中国あるいはロシア等を今例示されましたけれども、中国の場合にはあれだけの膨大な国民を抱え、人口を抱え、そうしてこれから経済発展を実現していくということになった場合に、エネルギー問題、食糧問題その他で非常に大きな課題があるのはお説のとおりでございますし、ロシアにつきましても極東地域の開発について我が国協力を期待するところが少なくないのもそのとおりだと思っております。  そういったことを十分にらみながら、我が国の技術の面、知恵の面、さらに経済の力もそういうところに生かしていくということが、大きな意味でのこの地域の安定につながり、そうして我が国の安全にもつながるんだと、これはそのように考えている次第でございます。  そしてまた、狭義の安全保障の面においても、日米だけではなくてさらに多くの国々との間での対話あるいは連携を考えるべきじゃないかという点、これも、不可侵条約という委員のお説について今の段階では必ずしも現実的ではないということを私は申し上げたことはございますけれども、しかしながらお互いのまず対話を進めていく中で信頼醸成を進めていくということは極めて重要だと思います。  そういったことで、日米の安全保障体制というものも決して日米両国の安全だけ考えているわけではなく、この地域の全体の安定に資することを考えているわけでございますから、委員のおっしゃるところと、それからまた今我が国政府が進めている政策との間に大きな意味での考え方の一致はあるんだと、このように考えている次第でございます。  さて、そのような意味での外交政策あるいは新しい世界政策ともいうべきものを進めていくには外務省予算は余りにも少ないではないかという御指摘でございます。ありがとうございます。かつては外務省予算は要らない、鉛筆と紙の予算さえあればちゃんと外交はできるんだと言われた時代もございましたけれども、今はとてもそんなものじゃないと思います。事務的な面だけで言いましても、それは先ほども出ましたけれども、LANだとかそういった最新のいろいろな手法も駆使しながら情報の収集に誤りなきを期し、また的確な政策を立案し、それを展開していくためにはそれなりの、予算面でもあるいは人員の面でも充実をしなくちゃいけないと、こう考える次第でございます。そういった面でこれからも御理解とお力添えを賜りたいと思います。  なお、経済協力その他の面での仕事も大切だと。これもそのとおりでございます。そういったことで年々経済協力予算もふやしていただいておりますが、それは決して外務省所管予算だけではございませんで、例えば例を挙げられましたロシアの関係でも、今回も例えば輸銀融資の五億ドルの枠を新規に動かそうというようなことをやりましたし、いろんな手法を使いながら外交政策も展開してまいりたいと、こう考えている次第でございます。
  220. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 先ほどのロシアとの北方領土に関する折衝については河野大臣も一考に値すると言われたのですよ。高道な御意見とは言わなかったわけです。  それで、そういうことを考えるにつきましても、大体政策というものは一定のタイムスケジュールが必要ですし、それに要する予算が基本的には決定されるべきものだと思いますけれども、日米安保という問題について、いつごろになれば、どういう条件をつければ日米安保は必要でなくてこのアジア太平洋の平和を十分に確保できるのかと。こういうことは当然考えるべきだと思いますし、それまでに国民はどれだけ税金を負担すればいいのかということも基本的には考えてしかるべきだと思うんですね。  沖縄県民の言語に絶する苦しみは、これは経済評価ができないものであって、仮に本土の国民が、まず今日ではそういうことは望めないでしょうけれども、四十七分の一ずつ沖縄県民の苦しみを分担しようということになれば、これは話は甚だ変わってまいります。しかし、現在、日米安保では年間数千億かの負担でありますけれども、そういう国民の苦しみを入れるとこれは何十兆にもかえがたいものじゃないかと思います。  そういうようなことを考えますと、どうしても我々は英知と経済の限りを尽くして、日米安保をいつどういう状況になれば卒業できるのかということにもう国民の英知の限りを傾注すべきではないかと。私などはそういう点は非常に楽観しない方でありまして、日米安保のある限り沖縄の解放は不可能だと思っております。  だから、そういうことも考えに入れて国民の世論に十分問うて、我々が沖縄の解放をあわせ実現するために日米安保をいかにして卒業できるのか、難しいのでやめろというのではありません、自然の結果として不必要になる条件、それまでどれだけ頑張ればいいのかということをやはり考える必要があるのではないかと、こういうふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  221. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) いろいろな考え方があろうかと思いますけれども、国民のために安全を確保する、いや、国民みずからがみずからの安全を守っていくためにはやはりそれなりのコストはしなくちゃいけない。これはどの国でも、あるいは歴史上のどの時点でも同じだと思うのでございます。  そうして、今、日米安保のコスト云々というお話がございました。そのうちの沖縄県民の御負担については、これは数字でカウントできるようなものじゃないとおっしゃった。それは私も同感でございます。しかしながら、全体としての日本あるいは日本国民としての安全のためのコストという点から申しますと、何か日米安保があるから随分高いものにつく、高い負担を強いられてきたというのは、それはどうかなと思います。これまでの間を見ますと、日本は非常に軽装備で、日米安保があったためにそういった安全の面では比較的経済的な意味での負担は少なくて済んだんじゃないかという見方も極めて有力であるというのは御承知のとおりだと思うわけでございます。  しかし、今日から将来に向かってどうするかということを考えました場合には、それはおっしゃるとおり、ありとあらゆる努力、我が国の努力だけではなくて国際社会の努力の結果として危険の度合いがぐんと低下をいたしまして、安全保障環境が格段に低下していき、我が国も含めた国際社会の安全のためのコストがずっと下がっていくという状態、それを理想としてそれに向かって一歩一歩努力していきたいと、こう思う次第でございます。
  222. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 私も安全とか平和がただで実現できるとは毛頭思っていないんです。先ほどの六カ国の安全保障とかなんとかということを実現して、本当に相互の問題を解決するのに武力を必要としない状況になるのに、現在日米安保で使っている直接的な経費の恐らく十年や十五年分は必要でしょうね。それは、先ほど申し上げた論理で、経済文化、その他の手厚い努力によってです。恐らく戦争をやる以上の努力とお金が要るはずなんですね。だから、これは決してただで実現できるとは毛頭思っておりません。  特に私が気になるのは、日本の自衛隊が本当に日本の自主的な意思によって動かし得るのか、特に海上自衛隊などはそうらしいですけれども、アメリカの軍隊の一部として統帥権がアメリカに握られているのではないかという想像さえするわけですね。  それから、沖縄はもちろんでありますけれども、いわゆる有事となれば日本民間の空港、港湾施設あるいは自衛隊基地をアメリカ軍が使うということになれば、どういう条件かよくわかりませんけれども、私はこういう状況のもとでは日本は独立国家と言えるか言えないかということは十分掘り下げる必要がある、日本の完全な意思によって自衛隊を動かすというようなことであれば別でありますけれども。  私もこの自衛隊の人たちを個人的に若干知っておりますが、本当に信頼できる頼もしい若者たちですよ。これを外国の権力によって使われて、我々が好まない作戦に血を流す企画がもしあれば、必ずそうなるとは申しませんけれども、これは看過できないところである。  時間が短いので意を尽くせませんが、大臣、よくおわかりでしょう。
  223. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ムス委員の想定されたケースというのは文字どおり日本有事のケースでございますから、そういったときには文字どおり我が国の独立を全うできるかどうかという必死の対応をしている、そういう事態だと思います。そういったときに、日米安保条約に基づき米軍も、米国も存分の力をかしてくれるんだと、こういうふうに私は理解しているところでございます。  それから、もとより日米安保体制がございまして、その中で共同体制ということもあり得るわけでございますけれども、我が国は独立国でございまして、我が国の自衛隊も内閣総理大臣が最高の指揮権を持った、我が国を防衛する責務を持った実力の組織であるというのは御承知のとおりでございます。
  224. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 終わります。
  225. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 いつも質問の順番が武田先生の後なものですから高通なお話を伺って少し調子が狂って困るんですが、きょうは予算の委嘱審査でもあり、外務省予算それから定員についてちょっと御質問したいと思うんです。  昔、自民党時代に伊東正義先生が、正確な名前は忘れましたが、外交機能強化懇談会というのがあって、大臣も大変熱心なメンバーだったと記憶しております。また、総務庁長官におなりになったときに、総務庁は全部見なきゃいけないので外務省だけ無理するわけにもいかぬのでしょうが、その中でも随分努力をしていただいたということをいまだに覚えております。  今の武田先生お話でも、みみっちいというお話がありましたが、みみっちいのを何とかしょうというので当時あの懇談会というものをつくって一生懸命やったわけです。当時の話では、ODAの予算なんかを除くと、外務省本省それから在外公館、全部入れた経費が京都大学の予算と大体同じということでしたね。今、何大学まで行ったかよくわかりませんが、大したことはないだろうと思うんです。やはりいろんな仕事をやっていただかなきゃいかぬので、余りくたびれてしまうとましな仕事はできないというのは、どんな仕事でも当てはまることであります。  もともとの原因は、戦争に負けて、吉田茂さんが外交なんというのはしばらく何もないんだというようなことで、がたっと人数を落としましたね。あれから始まったものだから、予算のつくり方は増分主義でいくので横並びでやるとなかなか伸びないと。我々の認識というのは、どこかで一回どんとジャンプしないとなかなかうまくいかないんじゃないかというようなことを今でも考えております。  それで、全体として予算、人員というのは何とかこれでやっていますとおっしゃるんでしょうけれども、当時からああいう問題意識を抱えておられた大臣としてどういうふうにお考えでしょうか。
  226. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 椎名委員からは、外務省というよりも我が国外交活動が十分に展開できるようにという観点から大変御理解のある御意見をちょうだいして、まことに恐縮に存じます。  私自身のかつての歩みについても言及されましたが、実は今お話しのありましたさらにもう少し前に私は外務省予算の担当官を、ちょん切る方の役割をしたこともございます。それで、二年度にわたり予算のいわゆる査定取りをしたわけでございます。  今思い起こしてみますと、たしかそのときに、第一年度目は四二、三%伸ばし、それを土台にして二年度目にまた三〇%ぐらい伸ばし、今から考えますと想像もできないような伸びでございますけれども、当然その当時もございましたシーリングなんかはとっくに飛び越えた、いわば増額査定をした記憶があるわけでございます。私個人もそのような経験がございますし、その後も、委員から今御指摘もございましたように、党あるいは国会のいろいろな御理解とお力添えを得まして、外務省定員につきましても、あるいはその予算につきましても着実に伸ばしていただいた次第でございます。しかしながら、これで十分かと言われますと、やっぱりそうは申せないのが実情でございます。  それのよってもってくる根本のところが、吉田総理の話が出ましたけれども、吉田総理のあの時点での国のあり方についての御選択はそれはそれで適正であったと思いますけれども、事態が大きく変わって、その後の変化というものがどうだったかということを考えると、とりわけ国際社会において我が国が果たさなくてはならない役割というものは、終戦直後はもとよりのこと、五大国の一つだなんと胸を張っておりました戦前と比較いたしましても比較にならないほど広範かつ重要になっている今日でございますので、我々といたしましては、人員の面におきましてもまた予算の面におきましてもなお御理解をちょうだいしながらその拡充を進めてまいりたい、こう考えている次第でございます。
  227. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 おっしゃるとおりだと思うんですが、周りによくわからないんですね。  いろいろな省庁がありますが、日本は大きくなったし、仕事は恐らくそれぞれふえているんだろうと思うんです。とにかく在外公館なんというものは一館もない時代から始まって、今は大変な数で、それも仕方がないから兼館だというようなところもありますね。それから、仕事の量はもちろんふえるし、これだけ大きくなると前よりも質的にも重要な仕事をやっていかなきゃいかぬということになる。量的にあらわすというのはなかなか難しいでしょうけれども、例えば六〇年代の初めぐらいから見て外務省の仕事の量というのはどのぐらいふえているんでしょうか。
  228. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) 六〇年代がないので恐縮でございますが、例えば、電信量は七五年を一〇〇といたしますと九四年の段階で八四一になっております。それから、査証の発給件数は七五年を一〇〇としますと九四年が四二〇、条約の締結件数は七五年を一〇〇としますと九四年は六七四、こんなぐあいになっております。
  229. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 ことしも増分は少ないとはいっても、経済協力予算なんか大分ありますね。これもゼロから始まったわけです、むしろ援助してもらうところから日本は始まったわけですが、これがふえているのと、それからそれに当たる定員の比率ですが、もしわからなければ大体のところでいいんですが、単純に言って一人当たりどのぐらいの金額を取り扱うかというようなメジャーでいうとどんなことになっていますか、七〇年代でも何でもいいけれども。
  230. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) 七五年の経協の額を一〇〇といたしますと、九四年にはそれが一一五三になるわけです。  七五年当時の外務省定員を一〇〇といたしますと、九四年は一五六でございます。
  231. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 ふえた方は大体そんなことだろうと思うんですが、外務省で昔やっていて、その後現在に至るまでにやらなくてよくなったという仕事はありますか。
  232. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) 今、大臣から御示唆がありましたけれども、強いて言えば移住関係の仕事というのは大幅に減ってきていると思います。  それから電信でも、例えば昔はファクスがありませんでしたので、全部書いてそれをタイプで打って送ってくるということがございましたけれども、最近はファクスを利用することが可能でございますので、その面での手間というのは大分省けてきているというような事情もございます。
  233. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 それから経費ですけれども、一人当たりの経費というのは、いわゆる先進国、世界の主要国の一人当たりの経費と比べるとどんな感じでしょうか。
  234. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) これは国によって国情、制度、組織あるいは歴史的な成り立ちというのは違いますものですから単純な比較というのは非常に難しいと思うんですが、一つの目安といたしまして、例えば各国外務省予算の国家予算に占める割合というものを見てみたいと思います。ただし、国によっては外務省と、それから経済協力局と経済協力省というのがございますので、そういう二つの省を持っている国はその二つの予算を合体した上での計算でございます。  日本は国家予算に占める外交予算の割合が一・○一でございますが、これに対してドイツは二・五四、それからカナダが二・二一とかなり高い割合を占めているG7の国もありますが、反対にアメリカは〇・九九、それからイギリスが一・一五と、日本と大体等しいようなレベルにある、こんな感じを持っております。
  235. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 今の物差しというのはよくわからないけれども、何にしても外交というのは人がやるわけで、人がいないとどうにもなりませんね。  経済協力なんかをやっても、アフリカあたりでバスを何台かどこかの国に上げたと。だけれども、見に行く人がいなくて、上げたきりで一体どうなっているのか、なかなかわからないとか、いろいろな話がありますね。  私は昔、中小企業を起こして経営した経験があるんですが、余り人手が足りないと能率がめちゃめちゃに落ちるんですね。どうも外務省というのは、私はずっと眺めていて、大変に優秀な諸君がおられて、何となしに涼しい顔をしてやっているような顔をしているけれども、少し限界に近づいているんじゃないかと思うんです。大政策を考えるなんということよりも、案件の処理とかいうようなことが非常に多いし、それから地球は回っているから相当時間的にも無理な働き方をしたり、これはやっぱり何とかしなきゃいかんぬのじゃないかと私は常々思っております。今は財政難だというようなことを言いますが、しかしこれは国にとって非常に大事なことですからね。  先ほど伺っていて大変心強く思ったんですが、主計の時代ですか、どかんどかんとふやしたというような御経験をお持ちならば今でもそういうことは可能だと思い続けて、先ほど言いましたような、定員それから予算を飛躍的にふやすということにぜひ挑戦をしていただきたいと思うんです。  これは、いわゆる予算全体の枝ぶりということでいつでも財政当局から抑え込まれてしまうんでしょうが、委員先生方にもぜひお願いしたいんですが、いろいろ文句を言うのはいいけれども、文句を言うためにはもう少し楽にしてやってからうんと文句を言うということをやらないと、幸い皆さんは義務感があって責任感があるからふてくされることはないんでしょうが、なかなかうまくいかないですね。そういう御経験と、それからかつてああいうことに非常に熱意を持っていただいた大臣の時代に、ひとつ枝ぶりにまで挑戦をするということをぜひやっていただけないかと思うわけでありますが、どうでしょうか。
  236. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ありがとうございます。大変難しい課題であり、非力ではございますが、力いっぱいチャレンジしてみたいと思いますので、お力添えをお願いする次第でございます。  なお、その際一つ申し上げたいと思うのでありますが、今、椎名先生おっしゃっておりましたように、何といいましても人の問題が大切でございます。おっしゃるとおりでございます。  それと同時に、経費の面では、経済協力の増を別にしますと、外務省経費はいわゆる旅費、庁費でございます、一般行政経費になりますので、御承知のとおり、投資的経費であるとかあるいは公債対象経費なんというものは景気の動向を見ながらどんどんふやされるということはございますけれども、外務省の経協を除く経費というのはその性格からしてずっと抑えられることが避けられないという、そういう性格がございますので、どうか先生方にもそういった点も御理解の上、お力添えを賜りますようお願い申し上げます。
  237. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 今、最後におっしゃったあたりは非常に重要なので、飯を食わないと仕事にならないんですね。国内でやる官官接待と大分性格が違うので、それもうどん屋で飯を食おうというような話にはやっぱりならないたちの仕事であるし、そのあたりが全体の横並びで抑え込まれて、どうしてもこの周辺だけは見ておかなきゃいかぬというときに、安い切符の旅行社か何かに頼んでエコノミーの一番後ろで小さくなって旅行をするとようなことをやっているとますますくたびれる話ですから、これはやっぱりみんなで協力して何とか人並みの生活ができるような、仕事ができるようなことにぜひ挑戦をしていただきたい。大いに応援をするつもりであります。  国連の話もちょっとしようかと思ったんですが、ちょうど時間が来ましたので、とにかくことしも来年もしょうがないと思わないで、大臣に頑張っていただきますようにお願いをして、終わります。
  238. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 大分時間も遅くなりまして、大臣以下いささかお疲れだと思いますので、深刻な問題はわきに置いておきまして、身近な肩の凝らない、椎名議員の言葉をかりればみみっちい問題を取り上げて、かつ文句を言おうかということでございますので、よろしくお願いします。  外務省の、特に在外公館が日常の業務として行っております日本人旅行者に対する便宜供与の問題でありまして、これは四月一日の衆議院予算委員会で白川勝彦議員が取り上げております。  ここに議事録がありますが、どういうわけか白川議員の手元に一通の怪文書なるものがありまして、これは創価学会の事務総長から外務省官房長あてに出された文書であるというふうに白川議員は言っております。  要点だけ申し上げますれば、池田大作創価学会名誉会長一行が香港並びにASEAN三カ国を訪問するのでよろしく願いたい、なお各国大使館、総領事館におかれましては入国、出国の際の空港内の特別通関等の便宜供与をよろしくお願いいたしますと、こういう内容の文書のようであります。白川議員はこの最後の特別通関等の便宜供与ということに大変ひっかかっておられるようでありますが、いかんせんこの文書が本物かどうかよくわからないということで、外務省原口政府委員はできるだけ早く調べて御報告申し上げたいと思いますと、こう言っておりますので、当然調べられまして衆議院の予算委員会には回答されておると思いますが、私もいささか興味がございますし、この中にも関心のある先生方もおられるかと思いますので、どうか参議院外務委員会にもちょっと報告願いたい、こういうわけであります。
  239. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) お答え申し上げます。  外務省には文書管理規程というのがございまして、その規程によりますと、この種の文書は最長でも五年間、普通の場合には一年間保存すればよいということになっているわけでございます。そういうこともございまして、御質問のあった後、至急調べたわけでございますが、遺憾ながら現在までその現物とおぼしきものが省内に保管されているという事実は見当たりませんので、したがってそれが本物であるかどうかということを私の口から確認……
  240. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 若干遺憾であります。  しかし、池田大作名誉会長なる方は、しょっちゅうと言っていいか、もう年じゅう海外旅行をされておりまして、その際に、しからば外務省として在外公館にこういう便宜供与のことを依頼しておるかどうか、これはもう確たる事実であろうと思いますので、どうかその点を話してください。
  241. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) 例えば、過去五年以内に池田大作創価学会インタナショナル会長のグループが海外に行かれて、そのときに在外公館に便宜供与を依頼したケースはございます。  例えば、平成四年の一月から二月にかけて香港、タイ、インドに行かれておりますし、六月から七月にかけましてドイツ、オーストリア、エジプト、トルコ、イタリア等に行かれております。
  242. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 一番最新の文書は当然残っておって、これまた参考までにお調べになったと。有能な官僚ならば当然そうするわけでありますが、その依頼文書にはやはりこのような特別通関手続の便宜供与という文書が載っておりますでしょうか。
  243. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) 特別通関という用語は見当たりませんでした。いずれにいたしましても、特別通関という専門用語があるわけではなくて、恐らくその意味するところは簡易通関ないし代理通関というものだろうと思います。  それから、もう一つついでに言わせていただきますと、私どもとしては依頼の文書の内容がどうであれ、我々ができることは何が適当であるかという判断で便宜供与を実施しているわけでございます。
  244. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 公務員が公務で海外出張をする場合に在外公館として最大限の協力をする、これはもうまさしく在外公館の仕事そのものでありまして、義務と言ってもいい、極めて当然なことであります。相手が大臣であるからとか相手が末端の公務員であるから差別すると、そんなことは一切ないはずであります。ところが、民間人の場合にはこれはいささか問題でありまして、ひとしくすべてが日本国で生活している国民でありますから、大物だから特別に扱うとか、名もない庶民だからどうでもいいというわけにもいかぬわけで、何かやっぱり基準を引いて、こういう人は大切に扱う必要があるということで大切に扱っていると。  例えば経団連の会長がアメリカに出張して向こうの経団連の会長に相当する人と日米間の経済問題について話し合うと、これはまあ言うならば準公務と言ってもいいかと思います。こういう場合に外務省としても便宜供与、協力をする、これはだれも怪しまないと思います。ところが、経団連の会長が自分の会社の都合で出張する場合にこれを便宜供与するとなりますといささか問題で、世の中に会社の社長なる者はもう数え切れないぐらいいるわけですから、何であれに便宜供与をして私にしてくれないのかと、必ずこういう話になります。  宗教団体も同じことでありまして、世の中に宗教団体は十八万あるんだそうですから、大小の差はありましょう、しかしいずれも皆憲法上許容された宗教法人ですから、どれが大事でどれが大事でないという言い方はできません。宗教団体の何か協議会のようなものがあるとしまして、その会長が世界の宗教大会に出るというのはあるいは準公務的な扱いをしていいかもしれませんが、そうではなくして一宗教団体の長が海外出張をする際にその宗教団体の長の顔を見て、これはいい顔しているから便宜供与してやろう、これは憎らしげなオウムみたいな人だから相手にしないというのではやっぱり世の中の秩序というものが保てないと思います。  そういたしますと、十八万の宗教法人があるんですが、これはやっぱり全部便宜供与の対象にしておるんでしょうか。
  245. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) 要するに、外交のすそ野というのが非常に広がってまいりまして、外務省在外公館としてはできるだけの努力はしているつもりでございますが、時がたつに従いまして在外公館だけで外交ができる時代でだんだんなくなってきていると。したがって、例えば文化交流、教育交流、日本紹介あるいは国際協力といった面でも国民各層の広い参加あるいは御協力を得るということがやっぱり望ましい姿なんではないかというふうに私ども考えております。  そこで、先ほど先生指摘のように、政府関係者が行く場合には当然でございますけれども、民間団体におきましても、それが宗教法人であっても、その宗教目的とは別に海外においてこの種の活動というものについて実績がある団体であって、その団体から文化交流とか教育交流、あるいは日本紹介といった活動目的のために訪問するので便宜供与をしてほしいという依頼があった場合には、精査して、関係増進に資すると考えられる場合には、必要に応じてこれに便宜供与を行ってきているというのが実態でございます。
  246. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 大どころの宗教団体を挙げてみますと、PL教、天理教、立正佼成会、それから日蓮だ本願寺だと結構ございます。新興宗教と言われるものの中には統一教会もあれば幸福の科学もあるし、最近問題になっているオウム真理教もあるわけであります。これらについて、官房長の記憶で結構ですが、何かこれはやってこれはやっていないと、あるいは今私が挙げたようなものは全部やっておるというふうな一つの基準めいたものがありますか。
  247. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) 基準はあくまで私が先ほど申しましたように、その団体がたとえ宗教団体であったとしても、その宗教目的とは別に文化交流とか教育交流あるいは国際協力という実績を過去に有していて、今回の海外出張あるいは訪問についてもそういう目的を持っている、したがってこれを支援すれば関係強化に役立つというような判断ができるときに対してやってきていると、個々、ケース・バイ・ケースに必要に応じて供与してきたというのが実情でございます。
  248. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 大変失礼だが、その御判断はだれがなさっておるのか。あなたがしておるのか、あるいは大臣までちゃんと上げて決裁をもらって外務省としてやっておるのか。いかがでしょうか。
  249. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) 外務省としてやっております。
  250. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 ですから、外務省以外にやる人はいないわけですからそれは当然ですが、外務省のだれがやっているかということを聞いているわけです。
  251. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) 建前としては外務大臣まで通して、外務大臣名で便宜供与は出るということになります。
  252. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 文化交流を目的とするような、日本国に役立つような外遊の際は便宜供与をしておられると。そういたしますと、池田大作会長の場合にはいろんな目的の外遊があろうかと思いますが、便宜供与されたりしなかったりいろいろあるんだろうと思います。そういうふうに理解してよろしいですか。
  253. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) 理論的にはそういうことでございます。  ただし、私どもが調べたところでは、要するに我々は便宜供与依頼があったときにしか便宜供与いたしませんので、便宜供与依頼があったときにはいずれもしかるべき国際交流という名目を持って便宜供与依頼があったと、少なくともここ五年間ぐらいの間のケースを調べてみますとそのように理解しております。
  254. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 ほかの民間団体の場合には何か基準めいたものが引かれておりますか。それとも、ただ、今あなたがおっしゃった抽象的に文化活動関係するというふうなことでやっておるのかどうか。いかがでしょうか。
  255. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) ほかの民間団体においても、基本的には今私が申しましたような基準で、依頼があったときにそれにどう対応するかを考えて対応している次第でございます。
  256. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 逆に言いますと、大体外務省に便宜供与の依頼をする際にはもっともらしい理由をみんな書くんだろうと思います。そういう理由を書いてきても、団体あるいは個人の顔を見て、これはだめだというふうなケースも結構ありますか。
  257. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) 要するに、先ほど申しましたように基本的にはなかなかわかりにくいところがございますので、そこで過去にそういう実績があるのかどうかというようなことをやはり念頭に置いて判断しているわけでございます。
  258. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 この便宜供与というのは、在外公館はある意味では税金を使って、貴重な公務の時間を割いていろいろとやっておるわけですから、国民の顔を見て、おまえはやってやる、おまえはやってあげないということではやっぱり国民も納得しないんだろうと思います。外務大臣の知り合いだから便宜供与してやろうとか、参議院議員の知り合いぐらいじゃだめだとか、こういうのじゃやっぱりいろいろと問題も出てきますので、何か明確な基準、国民が考えてわかるような、なるほど池田大作先生ならこれは当然だと、しかしPL教はこれはだめだというふうな、わかるような基準が引けないものだろうかというわけです。少しまじめに考えていただきたいと思うんですよ。
  259. 原口幸市

    政府委員原口幸市君) なかなか難しい問題だと思います。私どもは、今までの経験からかんがみまして、今御説明したような判断基準というものが実際的なものであろうというふうに考えている次第でございます。
  260. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 別に責め立てているわけではないのでありまして、やっぱり法のもとの平等ということはこういう末端の行政でもきちっと対応してほしいという、それだけのことなんであります。  もう思い切ってこれはよほどのことがない限りは全部やめるということは考えられないんでしょうか。先ほど言いましたとおり、貴重な税金を使って、貴重な在外公館の職員の時間を割いてやっておるわけですから、一々やり出したら切りがないと思いますし、やっぱりこの人だからやっているんだ、ああ、これはだめなんだというふうに世間というのは、国民は疑いの目を持って見るかと思います。よほど政府が特別に委嘱したとか、あるいは先ほど申し上げました経団連の会長がアメリカの経団連の会長に会いに行くとか、そういう場合に限定してしまって、だれから聞かれてもこれは胸を張って答えられるというふうなやり方ができないものだろうか。  それから、通関についての特別な扱い、多分これは在外公館の職員が付き添って通関のところに行きまして、やあやあと、こう言うと見もしないで通してしまうあのやり方だと思いますが、ああいうことでいいのかどうか。もう思い切ってやめられたらどうか。これは最後ですから大臣に御所見を伺いたいと思います。
  261. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) いわゆる便宜供与につきましては、先ほど来政府委員からも御答弁申し上げておりますように、広い意味での外交活動の一翼を担っていただくという観点から、その必要性はこれはすべて否定するわけにはまいらないと思います。  しかしながら、外交の、先般来議論になっておりますように、人員その他の面から申しましても、あるいはその経費が税金をもって負担されるという観点から申しましても、これはむやみやたらに無原則に広がっていいものとは思っておりません。とりわけ、今日いわゆる国際化が進むという中で随分大勢の方も海外へ行かれますが、他方において多くの国民も国際的な活動になれてきておられるという事情もございます。そういうことも考えまして、外交活動の一翼を担っていただくという面でその必要性は十分考えながらも、外務省としてのその負担の軽減は、これは考えてまいりたいと思います。  それから基準につきましても、先ほど来御答弁申し上げましたように、実績あるいは目的といったものを持って、ケース・バイ・ケースで判断しなくちゃならぬということはそのとおりでございますけれども、仮に具体的な余りきちっとした基準はできないにしても、ある程度一般的なものであるにしても、一応そういったものの例えば取り扱いの要領というようなものはひとつ検討してみる必要はあるのかなと私としては考えている次第でございます。  それから、最後にお話しございました通関の話でございますが、これは私も在外公館勤務を若干したこともございますし、それから見ましても、そういった通関についての便宜を図れるかどうかというのは基本的には相手国の方がどうかということだと、こう思います。  そういったことでございますので、それほどみだりに行われているとは思いませんけれども、そういった点も世の批判を招かないように注意をしてまいりたい、こう思います。
  262. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 最後に。お答えは要りません。  ただいまの御決意、大変重く受けとめておりますので、どうか外務省の旧来の陋習を破るぐらいのお気持ちで取り組んでいただきたいと思います。  それから、池田大作氏は、先ほど言いましたけれども、頻繁に海外に出ておりますから、間もなくまたどこかに行かれると思います。そのときにどういう扱いになるか、興味を持って見守っていきたいと思います。  以上でございます。
  263. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 以上をもちまして、平成八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、外務省所管についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  264. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十三分散会      —————・—————