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1996-06-04 第136回国会 参議院 海洋法条約等に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年六月四日(火時日)    午前十時二分開会     ―――――――――――――    委員異動  六月三日     辞任         補欠選任      角田 義一君     菅野 久光君  六月四日     辞任         補欠選任      石田 美栄君     山崎  力君      照屋 寛徳君     大渕 絹子君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         寺澤 芳男君     理 事                 青木 幹雄君                 鴻池 祥肇君                 野沢 太三君                 風間  昶君                 田村 秀昭君                 川橋 幸子君     委 員                 井上 吉夫君                 太田 豊秋君                 鹿熊 安正君                 亀谷 博昭君                 久世 公堯君                 河本 三郎君                 武見 敬三君                 成瀬 守重君                 林  芳正君                 吉川 芳男君                 高野 博師君                 常田 享詳君                 戸田 邦司君                 山崎  力君                 横尾 和伸君                 大渕 絹子君                 菅野 久光君                 瀬谷 英行君                 須藤美也子君                 立木  洋君                 本岡 昭次君                 山田 俊昭君                 中尾 則幸君    国務大臣        外 務 大 臣  池田 行彦君        農林水産大臣   大原 一三君        運 輸 大 臣  亀井 善之君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       中川 秀直君    政府委員        科学技術庁原子        力局長      岡崎 俊雄君        科学技術庁原子        力安全局長    宮林 正恭君        外務大臣官房審        議官       谷内正太郎君        外務大臣官房審        議官        兼内閣審議官   西田 芳弘君        外務省総合外交        政策局軍備管        理・科学審議官  河村 武和君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     朝海 和夫君        外務省アジア局        長        加藤 良三君        外務省条約局長  林   暘君        農林水産大臣官        房長       高木 勇樹君        水産庁長官    東  久雄君        海上保安庁長官  秦野  裕君    事務局側        常任委員会専門        員        大島 弘輔君        常任委員会専門        員        秋本 達徳君    説明員        防衛庁防衛局調        査第一課長    三谷 秀史君        環境庁水質保全        局企画課海洋汚        染・廃棄物対策        室長       吉田 徳久君        法務省入国管理        局警備課長    安田 博延君        厚生省生活衛生        局水道環境部環        境整備課産業廃        棄物対策室長   木下 正明君        自治省税務局固        定資産税課長   片山 善博君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件海洋法に関する国際連合条約及び千九百八十二  年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約第  十一部の実施に関する協定締結について承認  を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○領海法の一部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付) ○排他的経済水域及び大陸棚に関する法律案(内  閣提出衆議院送付) ○海上保安庁法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○排他的経済水域における漁業等に関する主権的  権利行使等に関する法律案内閣提出、衆議  院送付) ○海洋生物資源保存及び管理に関する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○水産資源保護法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関  する法律及び放射性同位元素等による放射線障  害の防止に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     ―――――――――――――
  2. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) ただいまから海洋法条約等に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、角田義一君が委員辞任され、その補欠として菅野久光君が選任されました。  また、本日、石田美栄君が委員辞任され、その補欠として山崎力君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 海洋法に関する国際連合条約及び千九百八十二年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約第十一部の実施に関する協定締結について承認を求めるの件、領海法の一部を改正する法律案排他的経済水域及び大陸棚に関する法律案海上保安庁法の一部を改正する法律案排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利行使等に関する法律案海洋生物資源保存及び管理に関する法律案水産資源保護法の一部を改正する法律案海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律及び放射性同位元素等による放射線障害防止に関する法律の一部を改正する法律案、以上九案件を一括して議題といたします。  九案件につきましては既に趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 成瀬守重

    成瀬守重君 我が国は四面を海に囲まれて、また資源の乏しい我が国資源確保する輸送路はほとんどが海洋によるものでありますが、海洋はそれだけではなくて、我が国の安全を守り、防衛の面でも大変重要であります。海洋国家日本にとって、海洋秩序が守られることは最も望ましいことであります。  そのためにこのたびの国連海洋法条約批准しなければならないことは申すまでもありませんが、特に早期批准しなければならないその必要性について外務大臣にお伺いしたいと思います。
  5. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ただいま成瀬委員指摘のとおり、我が国は世界でも主要な海洋国家でございます。そして、我が国が存立していくためには、御指摘にもございました資源その他の必要な物資を海を利用して我が国に輸入しなくちゃいけませんし、また一方において、輸出も含めまして通商が大変重要なものでございます。そのために海洋が大変大切であると申せましょう。またさらに漁業あるいは深海底資源等々、そういった観点からも、海洋国家たる我が国にとりましては海の秩序というものは大変大切なものでございます。また、御指摘のありました安全保障面の考慮も十分あり得ましょう。  そういったことで、海洋国家としての我が国の長期的かつ総合的な国益に沿うものであると、それが今回の海洋法条約早期締結して安定した海洋法的秩序を確立する必要がある最大の理由であると考えます。  それからさらに、なぜ早期にという点で具体的に一、二申し上げさせていただきますと、実は、例えばこの海洋法条約が成立いたしました暁には国際海洋法裁判所というものが設置されることになっておりますが、この裁判官選挙につきましては既に、この条約について国会の御承認をいただくことを前提に、我が国から裁判官候補として山本草上智大学教授指名しております。しかし、この指名が最終的に有効であるためには、我が国として今月末までにこの条約締結することが条件となっております。そういった観点からも、この条約につきまして速やかに御承認をお願いしているところでございます。  さらにもう一点申し上げますと、深海底鉱区権利確保するという観点から申しますと、これは十一月の半ば、十六日だと思いましたが、それまでに承認をしておくことが必要とされておると、こういうことでございます。  そのようなことで、極力早期の御承認をお願い申し上げる次第でございます。
  6. 成瀬守重

    成瀬守重君 最初に、領海関係についてちょっと伺いたいと思います。  領海制度に関して、国連海洋法条約一つの大きな意義は、沿岸国にとって有害とみなされる通航が十二項目にわたって具体的に列挙されていることだと思いますが、これらの十二項目は例示的なものであって、通航に直接関係のない他の行動の規定によって包括的に判断できるように有害であるか無害であるかの最終判断はこれらの十二項目以外のものを含めて沿岸国が独自に行えると理解するんですが、この点についてどうでしょうか。  また、外国軍艦領海通過について我が国がどのような判断基準で臨むのか。日本に寄港するような場合には当然通告があり、我が国はこれを許可することになると思うが、領海をすっとかすめて通るような場合は事前通告を求めるなど、何らかの措置をとることがあるのかどうか。また、武力による威嚇に当たるかどうかといった判断はどのようにするか。こういった点について伺いたいと思います。
  7. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) ただいま先生の御質問の点でございますけれども、領海におけるいわゆる無害通航でございますが、先生指摘の十二項目と申しますのは条約の十九条に規定があるわけでございます。  これは、先生がおっしゃいますように、我が方といたしましては、基本的には例示的な規定であって、無害通航というのは本来沿岸国平和秩序または安全を害しない、こういうことであって、その判断は基本的には沿岸国判断すべきものであるというふうに思います。ただ、沿岸国が勝手に何でもこれは無害通航でないという判断をしてはそれはまた問題がございますので、国際的に十分に通用する考え方をとらなくてはいけないということでございます。  それから、軍艦とおっしゃいましたけれども、あるいは核搭載艦のことをおっしゃっておるのかと思いますが、核搭載艦の問題につきましては、これが領海を通ることについては我が方といたしましては無害通航と認めないと、こういう立場でございます。
  8. 成瀬守重

    成瀬守重君 その点については、また次にお伺いしたいと思います。  非核原則との関係で、我が国は核兵器を持たずつくらず持ち込ませずとの非核原則を国是としてきましたが、橋本総理はさきの国会答弁においても、政府国連海洋法会議で「我が国基本政策としての非核原則の維持と同時に、海運国として可能な限り自由な通航確保という二つの要請を同時に確保すべく、慎重に対処した」と、これは平成八年五月の衆議院の本会議でおっしゃっておられるわけです。  従来から我が国非核原則をとっている以上、核を積んで一時なりとも領海を通過することは我が国の平和と安全に害がある、したがってそれは無害通航とは認めないと。今、谷内審議官も言われたとおりだと思います。これは我が国内外にはっきりとしている基本政策であり、宮澤外務大臣もかつておっしゃっておられるわけですが、核搭載艦領海通航は認めないとしてきたことが、国連海洋法条約締結後もこの我が国立場変化はないかどうか、再度確認したいと思います。
  9. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ただいまの点でございますが、今回の国連海洋法条約締結後も我が国としての非核原則にいささかも変化はございません。今後ともこの原則を堅持していく、そのことを明確に示すと、そういう趣旨での先ほど御指摘総理の御答弁であったかと存じます。
  10. 成瀬守重

    成瀬守重君 有害性周知について伺いたいと思います。  政府国際海洋法裁判所裁判官候補に推薦している山本草先生は、著作の中で、  非核原則に関する我が国立場が、国際的な  対抗力を持ち、他国にも尊重するよう強制しう  るものとなるためには、沿岸国としての立場か  ら、このような無害性の有無の認定が国連海洋  法条約十九条一により許容されていること、核  兵器を搭載した軍艦領域内通航通常兵器の  持ち込みとは異なり、自国にとり特別の有害・  危険性を持つものであり、軍艦一般に対する事  前許可性を主張するものでないことを十分立証  しその趣旨外交経路により国際的に周知させ  ることが必要と指摘されております。  この指摘からすれば、我が国は、核搭載艦領海通航をその国策に基づいて当然に有害とし得るのではなくて、一定の国際的な周知、さらには認知が必要であるようにも思われますが、政府はこの山本先生指摘に対してどのようにお考えになっているか、また何らかの方法を講ずるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  11. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 政府はこれまでも非核原則を堅持していくということをあらゆる機会をとらえまして内外に明らかにしてまいりました。そういったことで国際的にも我が国方針というものは広く承知されていると、こう考えますけれども、これからもいろいろな適切な機会をとらえてそれを宣明してまいりたいと思います。現に、ただいまこういったふうに国会で御審議をいただいておる、その場で明らかにしていることもそういった効果を持つ一つの行為であろうと存ずる次第でございます。
  12. 成瀬守重

    成瀬守重君 本条約二百八十七条には、本条約の解釈あるいは適用に関する争いの解決のための手続として、新たに設立される国際海洋法裁判所国際司法裁判所等四つ裁判所の中から自由に手続選択できることになっておりますが、我が国はいかなる手続選択するのか、また我が国との間に海洋境界画定について問題を抱えている中国韓国ロシアはいかなる手続選択するのか、この点について伺いたいと思います。
  13. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) ただいま先生指摘のように、紛争解決の手段といたしまして、基本的に国際海洋法裁判所国際司法裁判所、それから仲裁裁判所特別仲裁裁判所四つがあるわけでございます。我が国としましては特に国際海洋法裁判所、これについて選択するのかどうかというところを検討しておるわけでございますけれども、この条約に署名し、これを批准し、もしくはこれに加入するときに、あるいはまたその後いつでもその選択ができるわけでございまして、現在この条約締結している九十一カ国のうち本件宣言を行っている国は十一カ国にすぎない状況でございます。  政府といたしましては、国際海洋法裁判所が果たし得る役割について期待しているところではございますけれども、実際の手続選択については、今後各締約国の動向も十分勘案した上で適切な対応を行っていきたいというのが現在の立場でございます。
  14. 成瀬守重

    成瀬守重君 新たに国際海洋法裁判所が設立されて、裁判官の定員が二十一名であると伺っておりますが、アジア地域では三名の枠が与えられ、既に我が国を入れて八カ国が立候補していると伺っております。アジアで立候補している国はどこの国かわかっておりますか。
  15. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) レバノン、韓国、スリランカ、インド、フィリピン、サイプラス中国日本、以上八カ国でございます。
  16. 成瀬守重

    成瀬守重君 このうち裁判官選出のための要件である批准をまだ完了していないのはどこですか。
  17. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) 我が国だけでございます。
  18. 成瀬守重

    成瀬守重君 そういった意味においても、我が国早期批准はぜひお願いしたいと思います。  我が国では既に、先ほど大臣のお話にもございましたように、山本草上智大学教授指名して立候補したと伺っております。裁判官は公平誠実でなければならないけれども、我が国出身裁判官がいることはまことに望ましいことであり、ぜひとも山本教授選出が実現することを願うものであります。政府は、山本教授選出可能性をどのように見ているか、また選出実現のためにはどのような外交努力を行っているか、伺いたいと思います。
  19. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ただいまの御質疑でも明らかになりましたように、今回の裁判官選挙につきましては多数の国がそれに関心を示し、現に立候補者の指名を行っております。事は選挙でございますので、今の段階でまだ見通しを、確たることを申し上げる段階には至っておりませんけれども、これまでも外交当局といたしましてはいろいろな機会をとらえまして、我が国指名者がいかに国際法、とりわけ国際海洋法関係に通暁した方であるか、また公正な判断をされる方であるかということを説明してまいりました。私自身もいろいろな国との外相会談等を行う際に適宜そういったことも申し上げてきたところでございます。
  20. 成瀬守重

    成瀬守重君 次に、深海底の問題について伺いたいと思います。  一九八七年十二月に我が国は、フランスロシアなどとともに、二百海里の排他的経済水域の外にある深海底に埋蔵されているマンガン、ニッケル、コバルト、銅などの天然資源開発が可能な鉱区確保していると聞いていますが、これはどのような取り組みによるものなのか。この条約は、実施協定我が国が参加してこれを締結すればこの鉱区に対する権利を自動的に我が国が手に入れることができると言われていますが、もしそうでなければ一体どうなるのか、こういった点について伺いたいと思います。
  21. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) この点につきましては今国会で初めて御質問がございましたので、ちょっと時間をとらせていただきまして詳しく御説明させていただきたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。  第三次海洋法会議におきましては、一九八二年四月に採択された多金属性の団塊に関する先行活動に対する予備投資を規律する決議Ⅱの規定によりまして、条約発効前に深海底開発投資した者であって一定条件を満たす者としては、日本フランスロシアインドなどの先行投資者につきましては、国際海底機構及び国際海洋法裁判所のための準備委員会に対する登録料二十五万ドルの支払い、将来において機構事業体の職員となる要員に対する訓練の実施等一定義務を履行することを条件として、最大七万五千平方キロメートルの先行鉱区を割り当てられることとなったわけでございます。  しかしながら、我が国先行投資者は、一九八四年にフランス及びロシア鉱区と重複いたしまして、この重複した鉱区を申請した形になったため、準備委員会におきまして重複問題の解決のために交渉を行ったわけでございます。  準備委員会の議長の仲介の結果、これら三者が決議Ⅱに従って負う義務が一部調整されまして、結果として鉱区重複問題が解決されて、一九八七年十二月に鉱区の割り当てが決定されたという経緯がございます。  それから、鉱区に対する権利確保の問題でございますけれども、これは実施協定附属書におきまして、海洋法条約発効以前から深海底鉱業投資を行ってきた主体である先行投資者であって国際海底機構等のための準備委員会において登録を行っている者については、条約発効から三年以内に、これが明年十一月十五日まででございますけれども、それに業務計画国際海底機構によって承認されることを要請することができることとなっておるわけです。そのような要請がなされた場合には、当該主体の属する国が条約締約国あるいは実施協定暫定適用国であることを条件といたしまして、ほぼ自動的に業務計画承認される旨規定されておるわけでございます。  我が国事業者であるのは深海資源開発株式会社と申しますが、この登録された先行投資者に該当するわけでございます。期限内に業務計画承認を受けることによって鉱区に対する権利確保すると、こういう方針でございまして、先ほど大臣の方からも申されましたように、もし本年十一月十六日以降この条約批准しておりませんと、かかる権利確保できない危険性があるということでございます。
  22. 成瀬守重

    成瀬守重君 わかりました。そういった意味においても、ぜひともこれはやはり早期批准にひとつ御尽力いただかなければならないということを感じるわけでございます。  ただいま挙げました国際海洋法裁判所裁判官の立候補の問題や、今、審議官の言われた深海底天然資源確保といった問題だけではなくて、漁業問題や海洋秩序の問題など我が国にとってゆるがせにできない重要な問題をこのたびの国連海洋法条約批准は持っていると思われますので、このような点を考えて本当に一日も早く批准が実現できるように、そういった点についての再度外務大臣の御決意を承りたいと思います。
  23. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先刻来委員からも御指摘がございますように、また政府側からも御答弁を申し上げましたように、海洋国家としての日本の総合的な利益という観点からも、それからまた具体的には裁判官選挙、あるいはただいまも御論議のございました深海底資源に係る鉱区の関連におきましても、これは一刻も早く我が国として批准手続をとるべきものと考える次第でございます。  そういった意味におきまして、当委員会におきましても早期に御承認を賜ることを政府としても切にお願い申し上げたい、このように考える次第でございます。
  24. 成瀬守重

    成瀬守重君 次に、漁業協定改定やら領土問題についてお伺いしたいと思います。  韓国との排他的経済水域境界画定についてですが、我が国領土韓国領土との間には四百海里未満の区域があり、我が国排他的経済水域を全面的に設定するにはこれらの区域での日韓排他的経済水域境界画定が必要であると思います。韓国は既に国連海洋法条約締約国であり、自国排他的経済水域設定に向けて作業を開始していると聞いておりますが、今後の我が国としての韓国との交渉に臨む方針とか交渉日程について伺いたいと思います。
  25. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御承知のとおり、今回の審議に際しまして御提案申し上げております法案におきましては、特定の海域を排除する、こういうことはしていないところでございます。  なお、韓国との交渉でございますけれども、漁業の問題につきましては実務者における会談が始まっておりますけれども、排他的経済水域の問題につきましては今後どのように話し合っていくか、その話し合いの開始に向けて今外交ルートで調整をしている、そういう段階でございます。  いずれにいたしても、我が国といたしましては、我が国の基本的な立場、一貫している立場というものを踏まえて対応をしてまいりたいと、こう考えております。
  26. 成瀬守重

    成瀬守重君 韓国との漁業協定について伺いたいと思います。  我が国排他的経済水域を全面的に設定して同水域における規制を行うには現行の日韓漁業協定改定が必要である。日韓それぞれの漁業専管水域を十二海里と定めて、漁業専管水域外での取り締まりを漁船旗国にゆだね旗国主義をとっていましたが、そういった旗国主義は、李承晩ラインの廃止を強く求めてきた我が国要求に従って、韓国当局による漁船の拿捕に悩む我が国漁業界の要望にこたえたもので、協定締結された一九六五年当時は我が国が強く主張したところであったわけです。しかし、一九八五年以降、我が国の二百海里内で操業する多数の韓国漁船中国漁船我が国の当局が取り締まることができなければ、二百海里水域漁業資源の保護に支障を来すという状況に変わってきたと思います。  五月九日、十日、東京で開催された日韓漁業実務者レベル協議ではどのような協定改定の方向づけができたのか、さらに新協定早期締結協定水域内での取り締まり権の沿岸国主義導入について韓国側からはどのような反応があったのか、こういった点について伺いたいと思います。
  27. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 今、委員指摘の九日及び十日に行われた第一回日韓漁業実務者協議におきましては、漁業協定実施状況についてのレビュー、日韓共同資源調査、望ましい漁業秩序に向けての話し合い等が行われたわけでございます。  漁業秩序という点についてでございますが、日本側から、我が国国連海洋法条約締結及びその関連国内法の整備に向けた状況を説明した上で、与党三党の申し合わせということを紹介しつつ、日韓両国間でこの条約趣旨を踏まえた新漁業秩序を形成する必要があり、このための協定交渉早期にまとめる必要性を強調いたしました。  韓国側からは、既にこの条約締結し、五月一日にはEEZ法案の立法予告を行っており、六月五日から開かれる国会においてEEZ法案などの審議を推進するということともに、日本との従来の漁業関係を踏まえつつEEZ体制にふさわしい新たな漁業秩序づくりを行いたいという説明があり、今後さらに話し合いを進めていくこととなった経緯がございます。  いずれにいたしましても、今後韓国との協議によって、沿岸国が生物資源の維持に係る適切な措置をとるという国連海洋法条約趣旨を十分に踏まえた新たな漁業協定早期締結されることとなるよう鋭意努力いたしたいと存じます。
  28. 成瀬守重

    成瀬守重君 竹島問題について伺いたいと思います。  韓国は、一九五二年、いわゆる李承晩ラインを設定した際に、このラインの中に竹島を含め、このときの日本政府の抗議にもかかわらず、一九五四年ごろから官憲が常駐し、いわゆる実効支配を続けてきたわけです。竹島は歴史的にも国際法上からも我が国領土であり、この主張は譲ってはならないと考えておりますが、竹島の領有権と領土問題解決に向けた政府立場を確認しておきたいと思います。
  29. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員指摘のとおり、我が国の竹島の領有権に関する主張は一貫したものでございまして、これは従来も堅持してまいりましたし、今後ともその立場から粘り強くこの問題の平和的な解決へ向かって努力をしてまいる所存でございます。  ただ、今回の漁業問題等につきましては、過般三月にバンコクで行われました日韓の首脳会談におきまして、この領有権の問題とは切り離して両国で話し合い、妥当な解決を見出していこうと、こういうふうなことで合意をしているところでございます。
  30. 成瀬守重

    成瀬守重君 次に、防衛庁にお伺いします。  領土問題が解決し、平和条約解決するまで我が国の安全保障のためにロシアに対する注目を怠ることはできないわけでございますが、ロシア海軍と中国海軍の我が国領海内での動き、殊に我が国が特定している国際海峡での動きは現在どのような状態になっているのか、伺いたいと思います。
  31. 三谷秀史

    説明員(三谷秀史君) 防衛庁といたしましては、領海及びその周辺の海域におきまして常続的に警戒監視活動を行っておりますが、お尋ねの主要海峡、すなわち宗谷、津軽、対馬海峡におきまして平成七年度の一年間に通峡を確認いたしましたロシア及び中国軍艦艇の隻数は、合計約二百六十隻でございます。
  32. 成瀬守重

    成瀬守重君 時間がございませんので自余の質問を省かせていただいて、次に海上保安庁に伺いたいと思います。  海洋法条約批准しますと、接続水域排他的経済水域の設定によって広域の警戒態勢の整備充実に努めていただかなければなりません。最近では、集団密航事件あるいは麻薬・けん銃密輸事件、外国漁船による違反事件、立入調査、そういったようなことが増加して、海上保安庁の役割というのは非常に重いものになってまいっております。  こういった中にあって、海上の警備がこの対策のために一体どのような状態になっているのか。高性能な装備を持った巡視艇あるいは航空機の整備がぜひとも必要だと思います。かつて橋本総理も、運輸大臣経験者として海上保安庁の装備のおくれにたまりかねて海上保安友の会をつくられたと伺っておりますが、耐用年数を過ぎた船が四十隻以上もあるとも伺っております。こういったことを考えますと、将来は中型、小型の高速艇や大型のヘリコプター搭載の巡視艇の装備も必要と考えられます。  私どもは、海洋日本を守るためにぜひとも海上保安庁の装備の充実を願ってやまないものでございますが、そういう意味においての運輸大臣の御決意を伺いたいと思います。
  33. 亀井善之

    国務大臣(亀井善之君) 大変委員から御支援をいただきまして、まことにありがとうございます。御理解のある御発言に感謝を申し上げる次第でございます。  海洋法批准によりまして排他的経済水域が設定されるわけでありまして、監視・取り締まり水域が大幅に拡大をいたします。約七分の一に当たる海域が新たに監視・取り締まり区域になると、こういうことでございます。したがいまして、いろいろこれからの問題、特に委員からも御指摘の集団密航事犯の増加や、薬物・けん銃の密輸入の問題等は大変深刻化しておりまして、この海上警備がますます重要になってくるわけであります。御指摘の近代的装備を有する高性能な巡視船艇、航空機等の整備を計画的に推進してまいらなければならないわけであります。  また、御指摘の更新をいたさなければならない船艇、また航空機等もあるわけでありまして、これからの予算編成の過程におきまして関係省庁の十分な御理解を得て最大限の努力をしてその体制に万全を期してまいりたい、このように考えております。
  34. 成瀬守重

    成瀬守重君 本条約の一日も早い批准を願って、質問を終わらせていただきます。
  35. 亀谷博昭

    ○亀谷博昭君 自由民主党の亀谷博昭でございます。成瀬委員に続きまして、私は水産関係を中心に御質問をさせていただきます。  世界の漁業生産は、一九八八年の一億トンをピークに逓減状態ということでございまして、世界の水産資源はもはや上限状態にあるのではないかと指摘をされております。我が国におきましても、一九八八年の千三百万トンをピークに停滞を続けておりまして、一昨年は八百万トン、昨年は遂に七百五十万トンを割り込む状況になりました。八年間で約五百五十万トンの減少であります。しかも、昨年は遠洋、沖合、沿岸、いわゆる海面漁業すべてで減少を見ているところであります。水産物は我が国国民の動物性たんぱく質の四〇%を供給しておりますけれども、魚介類の自給率はかつての一〇〇%から七〇%まで落ち込んで、今や世界最大の水産物輸入国になっているわけであります。  こうした状況の中で、国連海洋法条約はまさに時宜を得たものでありますし、今回提案されております法案は、安定的、継続的に水産資源確保をするという上で、早急に確実に実行されなければならないものと考えております。  そこで、まず新海洋法時代に当たりまして、世界の水産物需給の見通し、そして我が国対応、さらに我が国水産業の今後のあり方をどのように考えておられるのか、お伺いをいたします。
  36. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 今、委員指摘のとおり、世界的な水産物需給の動向というのは、中長期的に見ましても逼迫していくものと思います。特に、先進国においては健康に対する関心の高まり、また開発途上国における人口の増加や経済成長に伴う生活水準の向上等、世界の魚介類の需要は今後高まっていくものと思われます。FAOが最近行った予測によりましても、二〇一〇年ごろには現在の価格水準では一億一千から一億二千万トンの需要が出るだろう、にもかかわらず供給量は七千万トンから一億トンぎりぎりではないのかと。  こういうことを考えますときに、我々といたしましても、この新しい海洋秩序のもとに的確な資源管理を行い、また今までも行ってきましたつくり育てる漁業の振興を行い、水産業が長く、そしてまた適正な活動ができるように、今回の海洋法条約をいわば起点にいたしまして、新しい政策の展開をぜひとも充実させていく必要があると思っております。
  37. 亀谷博昭

    ○亀谷博昭君 次に、海洋生物資源保存及び管理に関する法律案につきまして何点かお伺いをいたします。  今回の条約に関連する国内措置の最も重要な事項の一つは漁獲可能量、TAC制度の導入であろうかと思います。この制度を円滑に運用してまいりますためには、対象資源の生物学的な調査により、資源量、資源変動のメカニズム等を把握することが不可欠でありますが、対象魚種につきましてはどのようなものを考えておられるのか。  それから、水産資源は、よく言われますように、自律的に再生産が行われる特徴を持っているわけですので、漁獲量を適切な水準に保てば永続的な漁獲が可能であるということであります。そこで、法案では、漁獲可能量は、継続的に最大の生産量を実現できる水準に資源を維持することを目的として、漁業経営なども勘案して決めることといたしております。いわば生物学的に見た資源の保護と同時に、漁業経営の維持存続という両面を判断するということになっているわけであります。こうしたことから、この新しい制度が効果を発揮するためには、生物学的な資源量をより的確に適用して漁獲可能量を決める必要があるわけであります。  この漁獲可能量を決めるに当たってどのような対策、方針を持っておられるのか。また、漁獲可能量導入のための資源調査を政府では昨年から五カ年計画で進めておられるようでありますが、今後この条約に関連して資源調査をどのような体制で進めようとしているのか、あわせてお伺いをいたします。
  38. 東久雄

    政府委員(東久雄君) まず、先生質問の対象の魚種でございますが、これは三つの基準で選んでいくという考え方でございます。  一つは、漁獲量、消費量が我が国で非常に多いもの、これは国民生活上重要な魚種になります。それから二つ目は資源状況が非常に悪化しているもの、例えばズワイガニ等でございます。それから三つ目としましては周辺海域で外国漁船が相当漁獲しているもの、こういうものを基準にして選んでいくということにしております。ただ、その場合に資源調査というものがやはり基礎でございますからそれの蓄積というもの、我が国はもう二十年近く蓄積を持っておりますけれども、それが十分発揮できるかどうかということが一つのポイントでございます。  したがいまして、当面はマイワシ、マアジ、サバ類、これも幾つかのサバがございます。それからサンマ、スケトウダラ、ズワイガニというようなものを念頭に置いておりますが、最終的には中央漁業調整審議会の御意見を聞きながらやっていきたいというふうに考えております。これは、科学的知見等が積み重ねられますればどんどんふやしていくという考え方で取り組みたい。諸外国の場合は二十から三十ぐらいの魚種で管理しているのが通例でございます。できるだけふやしていきたいというふうに考えております。  それから次にTAC、いわゆる漁獲可能量の決め方でございますが、先生指摘のとおり科学的データを基礎としてやるということが非常に大事でございます。ただ、急激な変化というものは漁業経営者に大変大きな影響を与えますので、そういうものを社会的、経済的要因を勘案して決めていいというふうに海洋法条約にもなっておりますので、それを漁業者の意見を十分聞きながら無理のないようにやっていくということだと思っております。そこで、もちろんこの科学的データで最適利用というところを目指していきたいわけでございますが、当面はその最適利用を今の資源が悪化しないような方向をとりながら徐々にその最適利用へ向けていくというような形で、無理のないようにやっていきたいと思っております。  それから資源調査でございますが、先ほど申し上げましたとおり、主要な魚種については水産研究所を中心にもう相当長い期間、ばらばらでございますが、資源のいろんな調査をやってまいりました。それらを統合していってこのTAC制度にうまく乗せていくために、平成七年度から先生指摘のとおりの資源調査という形で統一的に、この方向へ向かってのデータの統一とかそういうことをやってまいっておりまして、来年度もそれをやっていくつもりでございます。  また、これから魚種をだんだんふやしていかなきゃいけないということでございますので、国の水産研究所が中心になって都道府県の水産試験場の協力を得つつこれをやっていくということで、実は昨年、平成七年度に大幅にこのための予算を措置いたしまして、特に都道府県の委託費を大幅に、その前は二億円ぐらいのものだったのを五億円ぐらいにふやしましてその整備を図っているし、これからも図っていくつもりでございます。  以上でございます。
  39. 亀谷博昭

    ○亀谷博昭君 ぜひ的確な調査を行っていただきたいと思います。  このTAC制度を導入して資源を適正な水準に維持管理するということになりますと、もう一つ問題になってくるのはいわゆる減船ということであります。従来は資源の減少で漁業経営が苦しくなって減船するという場合には、いわゆるスクラップに要する経費あるいは残存する漁業者が共補償をやる場合の金利負担というようなものを講じてきたわけでありますけれども、本年度からは一定条件を満たす減船の場合はこの両方を同時に受けることができるようにもなっているようであります。  ただ、外交交渉等による減船の場合はまた特別交付税とか長期低利融資等の手厚い保護もなされてきているようでありますが、TACをより効果的に実施していくためには減船が避けて通れないということであれば、外交交渉による減船と同等のもの、あるいは要するに生活及び雇用の安定のための救済措置というものがしつかりと図られなければならないのではないかと思うわけであります。  このTAC導入に伴う減船の救済措置、そしてさらに休漁、これまでも自主的な休漁みたいなものは漁業組合等々の中で行われてきたわけですが、今回は別な形の休漁ということも考えられるのではないか。休漁については今までほとんど助成措置というのはないわけでありますけれども、こういう場合にはどのような対応を考えておられるのか、あわせてお伺いをいたします。
  40. 東久雄

    政府委員(東久雄君) まず、今回のTAC制度による量的管理をやります場合には、長期的には国内の漁業生産量の増大につながるというふうに考えております。そういう意味では、長期的には漁業経営にプラスの面があるというふうに考えるわけでございます。  また、当面でございますが、先ほどもちょっとお話し申し上げましたとおり、やはり無理のないようにやっていくということで、直ちに大幅な減船だとか休漁補償というようなことに結びつくような形がとれるのかどうか。これは漁業者の意見をよく聞いてそういう形をとっていく。その場合に、実は平成八年度から既にそういう方向へということでちょっと減船のやり方を変えたのは、資源管理型の漁業をおやりになる方の減船について今御指摘の共補償とそれからスクラップの両方を両立させていくようなシステムを今回はとっておりまして、そういうことも活用できるかと思います。  さらに休漁の問題がございましたが、休漁につきましては、実はそれはTACのいわゆる上限へ来てということになりますので、そこまでの量はとっているという状況になるわけでございます。ただ、これを短期間にとるというのは魚価をそのときにどすんと落としてしまうことになりますので、そういうところを漁業者の間でよく調整をしながらやっていくということで、協定制度も新たに組み込んでおりまして、できるだけそういう休漁というようなことにならないよう、またそういう事態になってもそれまでの間に必要量といいますか目的量は達しているというふうに考えておるわけでございます。  しかし、いずれにしましても、これからやはり相当構造的な変換をやっていく必要があると思います。これもむちゃに上からやっていくということではなくて、話し合いの中でやっていかなければならない面があると思います。それらにつきましては、今後その影響等をよく勘案いたしまして、その措置等は考えるべきところは考えていくというふうにしていきたいと考えております。
  41. 亀谷博昭

    ○亀谷博昭君 漁業者への手厚い救済措置をぜひお願い申し上げたいと思います。  それから、本法案の第十七条にいわゆる報告義務というものがあります。漁獲可能量制度を円滑に運用するには漁獲についての迅速かつ正確な情報の収集ということがもちろん不可欠なわけでありますけれども、そのためには情報ネットワークつくりが必要になってくるわけであります。短期間でそのようなネットワークを整備するのはかなり難しいと思いますけれども、これをどのように整備していかれるお考えなのか。  あわせて、大きな漁協とか漁業者はそれでも対応が現在でも可能なのかもしれませんけれども、小さい漁業者あるいは小さい漁協等では、例えばコンピューターを導入するとかあるいはオペレーターを養成するとか、なかなか早急に対応できないところも出てくるのではないかという感じがいたします。十八条には立入検査の定めもありますし、二十二条には罰則規定もありますけれども、こうした漁業者への対応等も含めて、この報告についてはどのように進めていかれるお考えなのか、お伺いをいたしたいと思います。
  42. 東久雄

    政府委員(東久雄君) ただいま先生指摘の十七条の報告でございますが、これは「指定漁業等」というふうに書いてございまして、実は小さい漁業者の報告はなかなか無理があろうということで、義務をつけておりますのは主として大臣許可漁業と知事許可漁業漁船による、小型もございますけれども、割合に大きな船でやることが中心になります。  そのほかの漁業といたしましては遊漁、いわゆる釣り等、これは全部の漁獲量で二万トン程度のものでございますし、それからまた定置網、これももう網を設けておりますから大体どれぐらいとれるかというのは経験的に把握しております。共同漁業権による漁業、これは地先の一定の水面でございますが、これもある程度把握しております。そういうものをもとにして漁獲量というものを、一部そういう推計をやりながら把握していくという構えをとっておりまして、義務をつけるのはそういうふうに割合大きなところを中心にしていきます。  なお、漁獲量についての報告、これは時期的に少しずれる可能性がございますが、報告の義務があるということは今もそれは変わらないわけでございまして、その辺十分報告がとれるような方式というものを考えております。そういうことで、報告内容についても、今までどこの水域で幾らとったというふうな報告までさせておったものを少し整理するというようなこともして、できるだけ過重にならないように工夫していきたいというふうに考えております。  なお、採捕量の報告に加えまして、産地市場での取扱量をコンピューターシステムを利用して報告させるシステムをこの平成八年度から予算措置として講じておりまして、それも整備をして、両方から漁獲量を的確につかまえていきたいというふうに考えております。
  43. 亀谷博昭

    ○亀谷博昭君 報告を要しないものもあるということでありますけれども、特に難しいのではないかと思われるのは知事管理漁業に関するものですね。この辺がこれからの課題ではないかと思うんです。知事は、都道府県計画も立てなければならない、あるいは漁獲可能量の県内への配分という仕事もありますし、今申し上げたような報告をしっかりと徴収しなければならないという役割もまた負うわけであります。  そういう意味で、この制度を的確に運用するためには都道府県の果たす役割というものは非常に大きくなってくるのではないかと思っているわけですが、都道府県との協力協調体制をどう図っていくのか、また事務量増加に伴う人員とかあるいは財源措置等はどのように考えておられるのか、あわせてお尋ねをいたします。
  44. 東久雄

    政府委員(東久雄君) まず、現行の漁業管理体制というのは、先生指摘のとおり、知事許可漁業と、相当全国に行き渡っているものは大臣許可漁業というような形で分けて管理しております。この体制をとるに当たりまして、都道府県にも入っていただいて研究会等で検討をしてきたところで、その議論につきましても、現在の管理制度の上に立って新しい制度をという形を強く要望されまして、それを踏まえた形になっております。  したがいまして、現在の管理のシステムが大きく変化をするということはないと思いますが、先生指摘のとおり、事務量等の問題がございます。したがいまして、これからも関係者等から十分意見を聞いて、業務が円滑に実施できるように適切に対処していくという対応でやっていきたいと思っております。突然新しい制度を組み込んだのではなくて、無理のないように今までの制度の上に乗せているという形を御理解いただきたいと思います。
  45. 亀谷博昭

    ○亀谷博昭君 この都道府県との関係でもう一つ伺っておきたいのは、都道府県が独自にTACを実施する、いわゆる県TACを実施する場合に、近隣の県との共同実施が望ましい、あるいはまたせざるを得ないという場面が想定されるわけであります。複数の県が共同してTACを実施する場合の問題点をどのように考えておられるのかということが一つ。  それからあわせて、例えば仮に宮城県でイカナゴという、これはコウナゴとかいろんな呼び名がありますけれども、TACを実施した場合に、沿岸漁業につきましては知事がいわゆる漁獲量管理をできるわけですけれども、沖合については大臣管理ということになっております。そこで、知事は農水大臣に協力を要請することができるということにはなっておりますけれども、実効性については大変難しいことがたくさんあるのではないかという感じがいたします。  最近も宮城県でメロウド紛争というものが再燃をいたしました。十年ほど前に沿岸と沖合の方々で大変な紛争がありまして、スクラップの車を海に投げ捨てるというような事件もあったわけでありますが、今回もまた沖合と沿岸の方々とのメロウドをめぐる紛争というものが再燃をいたしてきております。こういう問題についてもどのように対応していかれるのか、あわせてお伺いをいたします。
  46. 東久雄

    政府委員(東久雄君) 先生指摘のとおり、大臣管理漁業と知事管理漁業との間、ないしは知事管理漁業同士の間で漁業調整というものが従来から大変多うございまして、これを調整するというのは大変な業務でございました。今も幾つか地域によってはそういう漁場競合という問題を起こす場合がまだございますが、これは従来から存在しておるところでございまして、私どもは今回TACの制度を導入することによって、この漁業調整を再燃させるというようなことがないように、従来の操業秩序に十分配慮してTACの割り当てをやっていきたいというふうに考えております。  しかし、両者間で、特に都道府県間での話し合いというものがなかなか難しいというようなときには、今までもそうでございましたけれども、やはり国としても調整に対応していく、今までの調整の形と同じように、介入というとちょっと語弊がございますけれども、両者間の間に立ってやっていく。それからまた、大臣管理と知事管理との漁業の間での競合、衝突が起こるというようなところにつきましても、これはもう先生指摘のとおり、それこそ昔から、俗な言葉で血の雨が降るというぐらい激しい争いがあったところでございます。そういうことのないようにできるだけの調整を我々の方としてもやっていきたいというふうに考えております。
  47. 亀谷博昭

    ○亀谷博昭君 今までと違った形での紛争が起こる可能性が十分にあるかと思いますので、しっかりとした対応をお願い申し上げておきたいと思います。  今回の海洋法条約に基づいて我が国権利を行使し義務を履行するためには、新しい発想に基づいた水産の振興が必要ではないかというふうに思います。EU諸国が行っているような価格補てん制度の導入を求める声もあります。  そこで、新しい海洋法時代を迎え、国内における関連法案も整備されますことから、この際、水産日本の復活というような願いを込めながら、長期ビジョンの策定あるいは水産基本法制定等に取り組んでいくべきではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  48. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 今回の海洋秩序がこれまでの日本の水産業に与える影響は非常に甚大である。さらにまた、新しい制度の導入等もございますし、今御指摘のように長期ビジョンの策定は当然必要であります。今御指摘のございました水産基本法問題も、三十八年でございましたが、沿振法の制定で我々は今日まで基本法と、これは沿岸漁業の整備でありまして、二百海里問題に対応するにはやはり多少問題がありはしないか、こういう気持ちから、五月二十三日でございましたが水産政策検討会というものを水産庁につくりまして、我々も直ちに検討を開始いたしたところでございます。  委員指摘のように、資源管理制度の定着度合い等を十分に見きわめながら、この問題については積極的に前向きで取り組んでいきたいと、かよ、うに考えております。
  49. 亀谷博昭

    ○亀谷博昭君 ぜひそうした方向でお取り組みをいただきますようにお願いを申し上げたいと思います。  それから、排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利行使等に関する法律案につきまして一点だけお伺いをいたします。  いわゆるリフラッギング、カツオ、マグロなど漁業規制規定する条約締結している国の国民が条約による漁獲規制を逃れるために船籍を条約締結していない国に移して乱獲をするという大変悪質な行為ということになっているわけであります。  実は、私の出身の宮城県も日本のマグロの四分の一をとっておりますが、こうした違法行為での乱獲によりまして価格破壊が起きて、大変な痛手をこうむっているわけであります。  そこで、沿岸国漁業国との間でルールづくりをする努力義務もこの海洋法条約にはございますけれども、これから関係諸外国との協議を通じて、今はまだございませんが例えば太平洋まぐろ類保存条約のような北部太平洋における条約等も含め、国際的な管理体制を整えていくことが必要ではないかと思いますが、それに対するお考えをお伺いいたしたいと思います。  同時に、こうした違法行為で漁獲した魚を輸入してはならないというような国際協定をつくるようなことを我が国が提唱することも考えるべきではないかと思いますが、リフラッギングヘの対策についてお考えを伺いたいと思います。
  50. 東久雄

    政府委員(東久雄君) リフラッギング、便宜置籍船という呼び方をいたしておりますが、これにつきましてはFAOにおいてもこれを正すための条約というのが新たにできております。先生指摘のとおり国連海洋法条約、もう一つは、まだこの間草案ができ上がったばかりでございますけれども公海漁業協定というもの、両方とも高度回遊性魚種は国際的な管理のもとに置いていくと。その中で、今の便宜置籍船の問題があるものですから、適切な措置をということがFAOでやられているということでございます。  こういうもので、先生からの御指摘一つは北太平洋の問題だと思います。我々は、これは我々のリードのもとで一つの国際的な管理機関というものをつくっていくべきだと考えておりまして、米国と話し合って、とりあえず北太平洋まぐろ類科学委員会ということで、現在の資源状況その他の話し合いを開始するということをこの五月からやり始めまして、そちらへ向かって努力していきたいというふうに考えております。  それから次に、いわゆる便宜置籍の船に対して、そういう国際的な資源管理に協力しない者に対して輸入規制措置等を講ずるべきではないかという御意見でございます。この点につきましてはICCAT、いわゆる大西洋のまぐろ類の保存委員会におきましては、一つのアクションプログラムという形でそういう国からの輸入規制を必要だと認めた場合にはやれと。必要というのは、機関が認めた場合にはやれという条項もございます。  これらは、国際的な貿易ルールというものの中で、国際的な理解を求めた上でやっていかなければならぬという制約があると思いますけれども、そういう国際的な機関での方向が出てきた場合には我が方としても対応をしていくという考え方でいかなければならぬというふうに考えております。
  51. 亀谷博昭

    ○亀谷博昭君 時間がありませんから、最後に一点だけお伺いをいたします。  水産資源保護法の一部を改正する法律案でありますけれども、今回の法律案では、いわゆる輸入に当たって検査証明書での輸入ということになっているわけですが、輸入禁止規定、輸入はしないという規定をあえて導入しなかった理由についてお伺いをいたします。
  52. 東久雄

    政府委員(東久雄君) 水産物につきましては、先生御承知のとおり、水の中に入って初めて伝染病が蔓延すると。そうすると、空気伝染とか接触伝染というような形ではないために非常に限られた海域のところが汚染されるという傾向がございます。  したがいまして、今各国ともそういう傾向でございますけれども、ある一定の地域で汚染されていないということがはっきりしているものについては、そこでよほど悪意を持ってほかの海域へもう一度移し直したりというようなことをやらない限りは病原菌に侵されるということはないものですから、世界的にも、ヨーロッパ並びにアメリカもそういうシステムでございますが、無病証明という形での輸入をさせていくということにいたしたわけでございます。  いずれにしましても、これはこれで十分対応できると考えておりますけれども、例えば国際獣疫事務局というところでこういう問題を取り扱っておるわけでございますが、将来、それらの検討状況等で今のような点が、条件が変わってくるというようなことがありましたら、それは再度検討しなければならぬところも出てくるかとも思いますが、今のところはこれでやっていけるというふうに考えております。
  53. 亀谷博昭

    ○亀谷博昭君 禁止規定がないわけですから、情報をしっかり収集していただいて、諸外国との協力体制も図りながら対応をしていただきたいというふうに思います。  どうもありがとうございました。以上で終わります。     ―――――――――――――
  54. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 委員異動について御報告いたします。  本日、照屋寛徳君が委員辞任され、その補欠として大渕絹子君が選任されました。     ―――――――――――――
  55. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 私は、平成会を代表しまして、特に運輸省関係の法案について御質問申し上げたいと思いますが、その前に、関連で二、三お尋ねをしたいと思っております。  先日の本会議で基本的なことについては大体御答弁いただいておりますが、その中で我が国条約批准が遅いというお話を申し上げました。外務大臣の方から非常に真摯な、また丁寧な御答弁をいただいております。  これは一般論でありまして、例えば今までの例を見ますと、条約法条約、通称ウィーン条約と言っておりますが、これなども発効が昭和五十五年の一月、日本条約締結しましたのが五十六年の八月、こういう重要な条約でもおくれて条約締結している。それで、このウィーン条約なんというのは直接直ちに何か行使するとかいうようなことではないので実効上差し支えなかったというようなことがあるかと思いますが、条約の種類というか内容によっては我が国の発言権が、発言力が弱まるような場面もあるんじゃないか、そういうような感じがしておりましてお話し申し上げたわけです。  それで、ぎりぎりになってそういう条約締結承認を求めてくるというようなことになりますと、例えば国会が解散されてしまうと次の年までどうにもならないというようなことがありますが、現実にそういうようなことが起こったことがあります。そのとき、締約国各国にその事情を説明しまして我が国のものを受け入れてもらうというような措置をしておりますが、条約の中身によっては非常に技術的な内容でそれほど審議を要しない、そういうようなものもあるわけでありますが、そういったものをどういうふうに扱っていくかというようなことも一つの問題ではないかと思っております。  英国議会の例ですが、条約締結承認を議会に求めてきた場合に、ことしはこういう条約締結しますよということを議会の廊下にかけてあるんだそうですね。これは私が確認したわけじゃありません、話を聞いただけですが。それで、関心のある人がそれを一つずつめくっていって、これについては質問があります、検討すべきですというようなことを言うと、それが初めて検討される、そうでないものはそのまま政府承認されたものとして条約締結しますというようなことがあるそうなんです。  それから、これも英国の例ですが、たしかマーチャント・シッピング・アクトというのがありまして、その中で、海上における人命の安全の問題、それから海洋汚染の問題、この関係条約締結するための承認については運輸大臣にその権限を委任する、それらに関する国内法の制定についても運輸大臣の権限とする、こう書いてあります。そういったこともありまして、我が国の場合、直ちにそういうようなことができるかどうかといえば非常に問題が多い点があるかとは思います。  今度の海洋法条約ですが、これは膨大な条約ですから、事務方の作業が相当大変だったんじゃないかと私は思います。正訳をつくるだけでも非常に大変な作業だったろうと思いますし、それから国内法とそれに条約を照らしてそれで落ちがないかどうか、そういうところを精査していく、それも大変な作業だったのではないかと思います。  こういう大条約ばかりではありませんで、国内法の措置ができるという見通しのもとに条約だけ締結したという例があります。例えば宇宙三条約、これは国内の法制化が必要だったと私は思いますが、国内法の制定をしないで条約批准をしている、そういうような例もあるわけです。  私が申し上げたいのは、条約締結についてどうしてもぎりぎりになってしまうというようなことについては、外務省の方にも言い分があるだろうと思うんです。その辺、外務省側も検討をしていただいて、国会がもうできるだけそれにこたえていく、それがこれからの国際社会での我が国が強い立場でいろんな場に臨める、そういうような基本ではないかと思いますが、その辺について外務大臣からちょっとお話しいただければと思います。
  56. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 我が国といたしましては、これまで条約締結する、あるいは御承認を求める際に、やはり締結した以上はその条約に定められたところを誠実に履行していかなくちゃならない。そういった観点から、慎重に国内法制との整合性というものを検討して進めていくという、こういった方針で当たってまいりました。  そういった観点から申しまして、基本的には条約締結に伴って必要となる国内法制とあわせて検討をし、そしてその双方をそろえて国会提出し、御審議をちょうだいするという、こういうことでやってまいったわけでございます。しかしながら、一方におきまして、ただいまも委員指摘のように、そのことも一つの原因となって御審議をお願いする時間がぎりぎりになったというケースもあったということは率直に認めざるを得ないと、こう思います。  今後ともどういうふうにするかということでございますが、かつてのように二国間条約が主流であった時代はそれで基本的によかったかもしれませんけれども、現在のように多国間の条約が随分ウエートが高まってきた、そしてそれを批准しているかいないかによって、御指摘のように国際社会において我が国がいろいろな対応をいたす場合に、決定的に不利ということではないにしましても、締結をしておればもう少し対応が楽なんだがなという、そういったケースがあるということは事実だと思います。そういったことでいろいろ考えてはまいりたいと思います。  しかし、ただいまイギリスの例をお挙げになりましたけれども、やはりそこのところは各国それぞれに法制度の違いもあり、あるいは議会と行政府との関係も国によって違いがございますので、直ちにイギリスの制度を我が国でとは申しませんけれども、そこのところは、先ほど申しましたような一般原則は今後とも維持しなくてはならないと思いますけれども、具体的ケースによりましては、先生指摘のございましたような観点を考え、政府としてもいろいろ原則とは違った手法をとることもあり得ると。そのときには国会の方ともいろいろ御相談いたしまして、また御配慮をお願いするということもあり得るかと存ずる次第でございます。大切な研究の課題だと認識している次第でございます。
  57. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 ひとつ外務省の内部で御検討をいただければと思います。  今、条約がおくれているという話をしたわけですが、一九七三年の油以外の物質による海洋汚染の場合における公海上の措置に関する議定書という条約があります。それから、油による海洋汚染の場合における公海上の措置に関する条約というのがあります。油と油以外と分けて条約ができているわけですが、油による海洋汚染の場合における公海上の措置に関する条約、通称措置条約と、こう呼んでいたように思います。これは既に相当前に批准しておりますが、この油以外の物質によるという議定書の方はまだ批准していなかったと思うんです。海洋法条約の傘の下でこういうようなものが運営されている。  しかも、この条約の中身というのは非常に激しい条約でして、公海上で沿岸国海洋汚染がもたらされるというような場合に、その船を場合によっては沈めてもいいというような内容の条約になっているわけでして、これは油以外の物質によってそういうような汚染が起こりそうな場合に、我が国の場合どういうような対応ができるのかという点については非常に疑問があります。  それで、この議定書を批准していない理由をちょっとお話しいただきたいと思います。
  58. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 御指摘の一九七三年の油以外の物質による海洋汚染の場合における公海上の措置に関する議定書でございますが、これは油以外の物質による汚染から自国民の利益を保護する、そのために必要な措置を公海上でとることができるといったような内容の条約でございます。  政府としましては、この議定書の締結についてこれまで御承知のとおり鋭意検討してきたところでございますけれども、この議定書の実施のための国内法の整備などに関しましてなお相当の時間を要するという状態でございます。  以上でございます。
  59. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 今までの経緯といいますか、それについては私もある程度わかっているつもりですが、ロンドン・ダンピング・コンベンション、ロンドン条約ですね、海洋投棄に関するロンドン条約については、放射性物質は炉規制法の方で、それ以外のものは海洋汚染防止法の方で、そういうような仕分けで取り組んでおりますが、この中に油以外の物質に放射性物質が含まれるところが一つ非常に難しいように思われます。  ケミカルなどでなかなか物性がわからないというような話もありますが、それはほかの条約でそういう物性をある程度確定しておりますので、そういうようなことが理由になっているとは思えないわけで、その辺一つ穴があいている部分になりますから、特別立法を考えるか、法制度上の整理をもう一度し直してもらうか、そういうようなことでこの議定書もできるだけ早く批准していただきたいと思います。その条約関係はそれで結構です。  次に、今度の条約締結に伴いまして、漁業関係の問題ですが、今度TACを定めて、それで船ごとに漁獲高をきちっと把握する、そういうような方向になるというふうに聞いておりますが、これまで漁船の総トン数がたびたび問題になりまして、黙って見ていると必ず不法改造をやる、少しでも船を大きくしたいというようなことで不法改造が行われていたように思います。漁獲高を把握するようになれば、これまで許可対象漁業漁船の総トン数が必ず定められておりましたが、総トン数については船の安全上の問題あるいは乗組員の居住性の問題などを配慮して、直ちにということにはいかないかもしれませんが、総トン数の枠をある程度緩めていってもいいんじゃないかと思いますが、その点についてはどういうふうに考えておられますでしょうか。
  60. 東久雄

    政府委員(東久雄君) 先生の御指摘の点でございますが、漁獲努力量制度というものをつくるときに、今回いろいろと話し合いを続けて、無理のないような導入を図らなければならない。したがいまして、当面漁獲努力量、いわゆる船の大きさとか航海日数等、漁労日数とかそういうものも出てくると思いますが、そういうものないしはいわゆる漁業調整の現状を今直ちにこのために変更するというのは大変難しいことだと思います。特に、漁船のトン数につきましては、漁場競合で大きな船に来られちゃ困るというようなことからいろいろと調整をしてきた経緯がございます。したがいまして、そこを急速に何らかの形で手を打つというのはなかなか難しいことなんだろうと思います。  ただし、先生御承知のとおり、今回の法律の中には協定制度がございまして、そういう協定制度というものを使いながらそういう方向が出てくる、また調整上問題がないという状況が出てくるということになれば、それは将来の課題として考え得るところだと思います。  なお、現在の状況ではございますけれども、やはりこういう条件のもとでございますけれども、安全性はもうやっぱり第一に考えなければならない点だというふうに理解しておりまして、その中で安全性第一優先という形で基準を設けておるということであると考えております。居住性を犠牲にしてでも安全性をということでございます。居住性というようなことから先ほどの点が御指摘あったのだろうと思いますが、当面はちょっと無理な点があるんではないかというふうに考えております。
  61. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 直ちにというわけにはいかないかと思いますが、ひとつ将来の方向として御検討をいただければと思います。  それでは次に、領海法関係に入らせていただきます。  今度の領海法改正で直線基線を導入することになっております。直線基線につきましては前の領海法にも規定がありまして、前の領海法が制定されたのは昭和五十二年でありますが、その五十二年の時点でも国際法上それを採用することも可能であったということだろうと思います。それで、我が方が五十二年に領海法を定めて、その後、近隣諸国、韓国とか中国とかロシアあるいは世界じゅうで多くの国が直線基線を採用してきております。  一つの疑問は、どうして今まで直線基線を採用してこなかったんだろうかと。これは我が国の権益の問題にもかかわることでありますから、直線基線を採用してしかるべきではなかったかという疑問があります。  それから、直線基線を採用する場合に、国際法上許されていると我が国が宣言すればいいわけですから、そういうようなことで国際法上許されている最大限の線を引くべきではないか、そういうふうに思いますが、我が国としてどういうような基準で直線基線を引くことになるか、その辺もあわせてお伺いしたいと思います。
  62. 西田芳弘

    政府委員(西田芳弘君) お答えいたします。  現行の領海法が制定されましたのは、先生指摘のとおり、昭和五十二年でございます。その当時、調査し得たところによりますと、国際社会全体でも直線基線を採用しているのは二十一カ国程度でございました。我が国といたしましては、各国の国家実行の趨勢を見るのが適当であるという観点から、その当時は直線基線を採用しなかったものでございます。ただ、先生指摘のとおり、その後、我が国の近隣国や多くの海洋先進国を含む七十以上の国や地域が今日直線基線を採用するに至っております。  直線基線の採用につきましては、それによりまして領海の限界線が明確化するといったような効果も期待できるわけでございまして、これらの点を勘案いたしまして、今回我が国としても直線基線を採用するべく改正を提案申し上げている次第でございます。  それから、直線基線を採用するに当たりましての基準の点を御質問でございました。直線基線につきましては、国連海洋法条約第七条に定めるところによりましてこれを引くことにしております。国連海洋法条約七条によりますれば、海岸線が著しく曲折しているとか、あるいは海岸に沿って至近距離に一連の島がある場所に直線基線を引くことができるということになっておるものでございます。我が国が直線基線を引くに当たりましても、これらの国際法上の要件を満たし、国際的に許容される限度というものを見きわめつつ、検討を進めているところでございます。
  63. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 この領海の基線によって接続水域とか排他的経済水域も変わってくることになりますので、我が国の権益といいますか権利の行使を考えますと最大限に引くべきである、しかもなるべく早くということではないかと思います。そういうことを考えると、できるだけ早く政令を定めて、具体的な場所を明らかにする必要があると思いますが、その辺についてはどのようにお考えでしょうか。
  64. 西田芳弘

    政府委員(西田芳弘君) 今般提出申し上げました領海法の一部改正法案におきましては、直線基線は御指摘のとおり政令で定めることとしております。政府といたしましても、できるだけ早期にこの直線基線に係る政令を制定する必要があるというふうに考えておりまして、御指摘趣旨を踏まえつつ鋭意検討を進めてまいりたいと考えております。
  65. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 今回の条約で接続水域領海基線から二十四海里、こういうふうに定められております。前の領海法では接続水域の幅は基線から十二海里、そういうふうに定められておりましたので、我が国が十二海里の領海を設定した場合には、接続水域を定める意味がなかったということだろうと思います。今回、接続水域を二十四海里まで拡大できるというようなことで、我が国にとっては非常に有効な制度になると思いますが、今回の接続水域の設定の具体的意義というのは一体どういうようなところにあるか、その点について御説明いただきたいと思います。
  66. 秦野裕

    政府委員(秦野裕君) 御指摘のとおり、今回接続水域が設定されますと、我が国の領域におきます、例えば通関あるいは財政といった関係法令に違反します行為の防止あるいは処罰のために必要な措置をとることができることになるわけでございまして、海上における取り締まりの観点から大変適切な対処が可能になるというふうに考えております。  具体的には、接続水域におきまして、先ほど来お話がございます多発化、巧妙化しております銃器あるいは薬物等の密輸あるいは密入国といった事犯に対しまして、これを早期に発見し、領海内への侵入を拒絶することが可能になるというふうに非常に効果があるものと考えております。
  67. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 今回の海洋法条約の中では、前の領海条約に比べまして領海内の無害通航権、いわゆるイノセントパッセージですが、この無害通航権の条件がかなり具体的に示されてきております。基本的には沿岸国の平和、秩序、安全を害しないということで、それの具体的な例が条約の中に明確に書かれておりますが、この平和、秩序、安全の意味は具体的にはどういうふうに考えたらいいのか。  この中で、安全は、条約条文上は「セキュリティー」と書いてあります。セーフティーの安全ではないセキュリティーと書いてありますが、その辺の意味についてひとつ明確に御説明いただければと思います。
  68. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) 今、先生指摘の平和、秩序または安全を害するということの意味でございますけれども、例えば沿岸国の主権に対する軍事的またはその他の脅威をもたらすこと、沿岸国に対する重大な法益侵害をもたらすことなどを意味するものと考えております。  この条項の起草経緯によりますと、通航沿岸国の平和、秩序または安全を害するか否かはその通航の仕方のみではなくて通航の性質によっても判断されると、こういうふうに理解されておるところでございます。
  69. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 具体的な事例についてはきちっとしておかないと取り締まりがなかなか難しいという点がありますから、その辺については実際の取り締まりに当たって係官が困ることがないような、そういうような連絡あるいは指導が必要ではないかと思います。  次の問題ですが、海上保安庁法の一部改正でありますが、今度の庁法の改正のポイント、これは船舶の航行停止とか航路変更というようなことを海上保安官が犯罪予防などのために措置を発動できる、そういうようなことを明確にしまして、現場の海上保安官が的確に対応できるようになったという点ではないかと思います。  具体的には十八条の改正になるわけでありますが、従来の十八条というのは非常に漠然と書いてありまして、「真にやむを得ないとき」というような規定になっていたわけです。今回はこれらの点について要件がかなり具体的に規定されたということで、現場の海上保安官も海上犯罪の防止のための措置がとりやすくなったということではないかと思います。  領海法の改正で新しく設定されることになりました接続水域、これも密航とか密輸とか犯罪を防止する、そういうような点から非常に強力な体制がとれるようになったわけでありますが、今回の海上保安庁法規定の整備によって接続水域における密航者あるいは密輸の防止のために具体的にどういうような措置ができるようになったか、お話しいただきたいと思います。
  70. 秦野裕

    政府委員(秦野裕君) ただいまお話のとおり、現在の海上保安庁法では、海上保安官がそういう強制的な措置を講ずる場合に当たっての要件が非常にあいまいと申しますか抽象的に規定されておりまして、現実問題としてなかなかそれを発動させることが難しいという状況でございました。今回の改正では、その発動要件を明確にいたしまして、どういう場合にどういうことができるかということをはっきりさせまして、現場の実際の対応をしやすくと申しますか、明確にできるように措置をしようとするものでございます。  ただいまお尋ねの接続水域でございますけれども、仮に接続水域内で不審な船舶を発見いたしました場合には、まず立入検査を行うということが必要でございますので、それに伴います停船をまず命ずるということになります。そして、そういう場合に、典型的な例で申しますと、仮に我が国への密入国を企てているということがはっきりした場合、これは接続水域にある時点ではまだ犯罪を構成していないわけですが、このまま行けば必ず領海に入っていって犯罪になるということが明らかなような場合には、今度の改定されます海上保安庁法によりまして船舶の航路を変更させる、つまり領海の方へ入らないように措置をすることが可能になるというのが一番具体的な例でございます。
  71. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 そこで密航の関係ですが、前々から不法就労目的で我が国に密航を企てる、密入国すると、そういう事件が頻発しておりまして、最近も非常に多いんじゃないかと思います。最近はそれが組織化されている、非常に巧妙になっていてなかなか見つけにくいと、そういうような状況になってきていると思っております。  今回の接続水域の設定とかあるいは保安庁法の改正で、これまで以上に効果的な取り締まりができるようになったわけであります。海上保安庁の立場を弁護するわけではありませんが、海上保安庁だけでは十分な効果を上げることができない。警察庁あるいは法務省、そういったところとの連携で十分な効果を上げるようにしていかなければならないということだろうと思います。  海上保安庁で以前に、中国船だったと思いますが、密航者を捕まえて、それで横浜でその密航者を勾留監理していたというようなことがありました。海上保安庁の話によりますと、ああいうようなことがあっても別に予算がふえるわけでも何でもなくて、保安庁の予算の中からああいうような費用を出していかなければならない、海上保安庁にとっては非常に痛手になる、非常に面倒な問題でもあるというような話を聞いております。  海上保安庁が密航者を捕まえて、それで入管にお知らせするというようなやり方で今まで仕事が進められていたように思いますが、入国管理局はもっと積極的に海上保安庁と連携をとりながら密航者を把握する、捕まえる、事前にいろんな対応ができるようにすべきじゃないかと思います。  ちょっと言葉は過ぎるかもしれませんが、法務省入国管理局は若干腰が引けているんじゃないか。捕まえてくれれば我が方の仕事になりますよと、こう言っているようにも受け取られるわけで、その辺、密航事件について今後入管行政として新たな対応が必要じゃないかと思います。また、海上保安庁などのそういうような機関との連携とか協力、そういう体制ももっと深めていかなければならないというようなことではないかと思いますが、その二点についてお伺いしたいと思います。
  72. 安田博延

    説明員(安田博延君) 接続水域の設定によりまして我が国の権限行使が拡大されることとなり、同水域において我が国関係機関による不法入国等の出入国管理及び難民認定法違反の防止措置及び領海内で行われた違反行為に対して刑事訴訟法上の手続をとることが可能となり、これまで以上に不法入国の防止等に効果を発揮するものと考えています。  船舶による不法入国事案が増加していることから、入国管理局といたしましては、従前から海上保安庁等関係機関ともその防止等について連携をとって対応してきているところでありますが、今後とも関係機関との連携を強め適切に対処していきたいと考えております。
  73. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 大変結構な答弁なんですが、紋切り型でなくて、もう少し連携を密にして対応していただきたいと思います。お願いします。  次に、海洋汚染関係で一点お伺いしたいと思います。  海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案というのが出ていまして、これは科学技術庁の炉規制法も同じような立て方になっておりますが、いわゆる違反者を捕まえた場合にボンド制度、ボンドをとってそれで釈放するという仕組みになっておりますが、海洋汚染防止法を改正して海洋汚染事犯にボンド制度なるものを導入することになった理由と、それから具体的にボンド制度はどのような制度であるかという点について御説明いただきたいと思います。
  74. 秦野裕

    政府委員(秦野裕君) 御案内のとおり、海洋法条約では海洋環境の保護あるいは保全といった分野につきまして沿岸国の管轄権を排他的経済水域まで拡大しておるわけでございますが、その一方で外国船舶がそうした海域で海洋汚染事犯を引き起こした場合に長期にわたって船舶を拘束するということになりますと、船舶運航をする側にとりますとかなりの不利益になるということを配慮いたしまして、保証金の提供などといった合理的な手続に従うことを条件として速やかに釈放する制度を設けることが求められておるわけでございます。このため、今回の改正におきまして、違反者の刑事手続への出頭等を担保する担保金の提供を条件としまして速やかに釈放を行うといういわゆるボンド制度の導入を図ることとしたものでございます。  具体的には、外国船舶に係ります海洋汚染防止法違反について違反者を逮捕いたしました場合に、再出頭などを担保する担保金の提供を受けまして、再出頭期日を指定し、釈放をするということになるわけでございまして、もし違反者の再出頭がなされまして刑事手続が終結しました場合等には、担保金をその提供者の方に返還するという制度でございます。もし出頭しなかったというような場合には、担保金は刑事手続の進行を妨げたということに対します制裁金といたしまして国庫に帰属されることになるというのが制度の概要でございます。
  75. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 このボンド金の額などについては、罰金とのバランスといいますか、その辺もよく考えて今回その額を設定することになっていると思いますが、初めてのケースでもありますので運用はひとつ注意深くということになるのかなと、こう思っております。  最後になりましたが、先ほどもちょっとお話が出ていまして、私は本会議でも橋本総理大臣にお伺いをしましたが、海上保安庁の巡視船艇、航空機、そういったいわゆる機材の整備、今回相当海域が広がるというようなことでこれはぜひともという問題だろうと思います。  今まで非常に古い船艇の整備については、ここ何年か見ていますと補正予算で措置してもらっている。補正予算も非常にありがたいんじゃないかと思いますが、船艇が大きくなっていってもほかの運用のための予算は拡大しない。例えば、燃料費とかそういったものが直接影響するわけですが、そういったものは拡大しないで船艇は少し大型の強力なものにしてもらっている。  海上保安庁の中でその辺の運用が非常に大変だという話も聞いておりますが、運輸省枠とか海上保安庁枠とかいうことを言いますと非常に整備が難しくなるという点がありますので、その辺も配慮をしていただいて、船艇、航空機の整備、人材の育成、増員も必要になってくると思いますし、そういう運用面のための経費も見てもらわなければならないというようなことで、運輸大臣は大蔵大臣とその辺をよくお話しいただいて、なかなか強力な大蔵大臣ですから説得するのが大変だろうとは思いますが、ひとつ運輸大臣にその辺のお心づもりについてお伺いしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  76. 亀井善之

    国務大臣(亀井善之君) 委員から御指摘のとおりでございまして、先ほど来お話し申し上げておりますとおり、現在の約七分の一が増大する海域になるわけでありまして、また御指摘の密航の問題や薬物、けん銃の問題等々大変重要な問題を抱えておるわけであります。さらに、耐用年数の来ております船艇、航空機が相当あるわけであります。そういう面で、近代的な装備の高性能な巡視船艇あるいは航空機が必要になるわけであります。あわせて海上保安大学校での人材やあるいは海上保安庁の職員の人材をさらに育成するようなことをいたさなければなりません。  今回こうしていわゆる海洋法特別委員会をおつくりいただき、関連するいろいろな法案があるわけでありますので、御指摘のように予算の編成に当たりましてはよく大蔵大臣ともいろいろ折衝し、また関係の皆さん方の御理解をいただきまして体制の強化のために万全を尽くしてまいりたいと、このように考えております。
  77. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 ありがとうございました。
  78. 山崎力

    山崎力君 平成会の山崎でございます。  今も出ておりましたが、海洋汚染に関するというところで核原料物質核燃料物質及び云々という法律の一部を改正する、そういった中での問題から御質問させていただきたいと思います。  便宜的に大づかみにしまして、この問題というのは、放射性物質の海洋投棄に関してどういうふうに取り締まっていくかということだろうと思うんですが、これは本来的に言えば油であるとかその他の物質であるとかと同様でございますけれども、事が放射性物質であるということで特段の専門知識も必要であろうということで科技庁の担当になっているかと思うんです。  この放射性物質の海洋投棄についてどういうふうにこれから日本は対処していくのかという、まず大枠のところを長官からお伺いしたいと思うんです。
  79. 中川秀直

    国務大臣(中川秀直君) 御指摘の放射性物質の海洋投棄につきましては、いわゆるロンドン条約により国際的に禁止をされておるわけでございます。これを各国が忠実に遵守していくことがまず何よりも重要であるわけでございます。  科学技術庁としましても、そういう観点からも放射性物質の管理を含めた原子力安全分野における各国との情報、意見交換等をさらに充実してまいりまして、投棄の未然防止を図っていくというのがまず第一のスタンスでございます。  また、実際に海洋投棄が行われたと仮定した場合、その違反の取り締まりに関しては、国連海洋法条約により我が国の管轄権が今般排他的経済水域等まで拡大をすることも踏まえまして、原子炉規制法及び放射線障害防止法の履行を確保するために、今回の法改正において科学技術庁による立入検査及び報告徴収の規定を整備するということにした次第でございます。  具体的ないろいろなことについては海上保安庁との間で緊密な連携を図っていかなければなりません。それについてはまた政府委員から御答弁申し上げますが、基本的スタンスは以上申し上げたようなことで放射性物質の海洋投棄の取り締まりに万全を尽くしてまいりたい、こう考えております。
  80. 山崎力

    山崎力君 基本的な方針というのはそれで十分だと思うんですけれども、それではいざ具体的になると、どうするかという問題が出てこようかと思うんです。  専門知識といいますか、観測機材も含めて今科技庁にそれに対応する機材はないと考えてよろしいかと思います。私の知るところでは、これと似た形で、科技庁予算で建造した放射能の調査艇というのでしょうか、三隻ばかりございまして、それが今海上保安庁で運用されておる。対象は横須賀、佐世保、沖縄、具体的に言えばアメリカの原子力艦艇の出入港の際に放射線異常がないかどうかを観測するということだろうと思うんです。  ただ、この三隻のやっている水域というのは極めて限定的なところでございまして、先ほどの答弁では、今度の条約によって海上保安庁の管轄といいますか、そういったところが七分の一ふえるということをおっしゃっていましたが、このことに関しては七分の一どころではない、もう何百倍も何千倍も水域はふえるわけでございます。それでは具体的にどういうふうな形でこの監視、取り締まりをしていくのかという点について御答弁願いたいと思います。
  81. 宮林正恭

    政府委員(宮林正恭君) お答えさせていただきます。  放射性物質の海洋投棄の取り締まりにつきましては、海上保安庁と緊密な協力をしながら進めていかなきゃいけないところでございます。したがいまして、これにつきましては具体的な提携のあり方等々につきまして検討、調整を今両庁で進めさせていただいております。  現段階においては、大体以下のような進め方を考えているところでございます。  まず、放射性物質の海洋投棄の事実を発見する契機でございますが、こういうものにつきましては、海上保安庁の巡視船艇などが洋上において放射性物質と思われるものを投棄している船舶を発見する場合、放射性物質の海洋投棄の疑いに関する情報が、いろいろな方法はあると思いますが、当庁に入ってくる場合等が考えられるわけでございます。こうした場合には、当然直ちに当庁と海上保安庁との間で相互通報が行われて次のステップに移っていく、こういうことになります。例えば、海上保安庁の巡視船艇などが違反の疑いのある船舶を発見したような場合には、当庁が当該船舶に対する立入検査あるいは船舶の船長等からの報告聴収ということに着手するというふうになると思っております。  具体的な立入検査をやりますときには、これは基本的には洋上で行われることになります。それで、私どもの方はそういうふうな船舶あるいは航空機というようなものを所有しておりませんものですから、これらの要員あるいは資機材の現場への輸送ということにつきましては、海上保安庁の協力を得まして巡視船艇あるいは航空機などを活用して行うというふうなことを考えております。  それから、要員及び資機材の確保でございますが、これにつきましては科学技術庁の方も当然考えていかなきゃいけない、こういうふうに思っておりますけれども、やはりかなり専門的知識を要求する部分もございます。こういう部分については、日本原子力研究所あるいは放射線医学総合研究所といったようなものを中心といたしましたいろいろな関係の機関に協力を求めるということも必要ではないか、こういうように思っておりまして、そういうラインで今考えているところでございます。  それから、現場に到着いたしました後、当庁の立入検査官は船舶の関係者から質問あるいは書類等の検査、資料の収集、分析等を通じまして放射性物質の投棄の有無を確認する、あるいはそういうふうな物質の特定といったような調査のための作業をいろいろ進めるわけでございます。その結果を海上保安官に提供いたしまして海上保安庁の捜査に協力し、このような調査、捜査によりまして外国船舶に違反があるという事実が認められる場合には、担保金制度適用等適切な措置をとっていくというふうになるというふうに考えております。
  82. 山崎力

    山崎力君 いずれにしましても、そうなってきますと、一義的にといいますか、まず触角といいますか、実働の部分は科技庁さんというよりは海上保安庁さんの方の仕事がふえるといいますか、責任が重いといいますか、そういう状況になろうかと思うんですが、現体制で海上保安庁の船艇、航空機、そういったものにある程度の観測機材とある程度の教育を受けた人を載せるということで対応できるのでございましょうか。これに対しての対応策を海上保安庁としてはどのようにお考えでございましょうか。
  83. 秦野裕

    政府委員(秦野裕君) 私どもの任務は、大ざっぱに申し上げますと、ただいま科学技術庁さんの方からもお話ございましたように、まずそういう違反の疑いのある船舶があるかどうかということを把握するということが一つ。それから二番目には、もしそういう疑いのある船舶がありました場合に、科学技術庁さんの専門的知識を持っておられる方を、あるいは資機材を現場へ輸送するということが二つ目。そして、さらにそれで違反行為が明らかになった場合に捜査に着手するということが三番目。大きく言えばその三つになろうかと思います。  したがいまして、特に最初の点、違反した疑いのある船舶を把握できるかどうかという点でございますが、これにはいろんな情報がどうしてもやはり必要でございますので、これは科学技術庁さんの方と十分連携をとりながら情報把握に努めていきます。また先ほど来、これは海上保安庁業務全般として御説明しておりますとおり、私どもの船艇、航空機の充実強化、あるいは効率的な運用ということを図りまして、現在でもいわゆる広域的な哨戒体制というものは実施しておるわけでございますけれども、それをさらに充実強化に努めることによりまして、そうした点の発見に極力努めていきたいというふうに考えております。
  84. 山崎力

    山崎力君 この点について、ある意味においては哨戒活動をしております自衛隊との協力ということも考えなければいけないと思いますし、まず見つけるということが第一のスタートでございます。その辺のところの体制を十分とっていただきたいと思います。  もう一つこの問題の特殊な点は、こういう放射性物質を違法投棄する、海洋投棄するといった場合、大まかに言って二つのケースしかないということでございます。一つは、不要になったものを処理に困って捨てるということが一つ。もう一つは、現実に今原子力で動いている船、これは一部の船を除きましてほとんどが軍艦でございます。我が国もかつて「むつ」というのがありましたけれども、これは廃船になりましたし、商船というのはもうほとんどゼロに等しい。それも軍艦のうちほとんどが潜水艦であるという状況がございます。  そして、非常に不幸なことですけれども、かつてソビエト、当時のソビエトのエコーⅡ型という原子力潜水艦が事故を起こしまして、日本領海に入ったとか入らないとか、そのとき放射能が漏れていたとか漏れていなかったとかということもございました。そういういわゆる外国公船に対してそういった容疑といいますか問題が出てきたときに、どういう対処が可能なのでございましょうか。
  85. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) まず、海洋法条約上の規定ぶりについて最初に御説明をさせていただきたいと思います。  国連海洋法条約は、海洋環境の保護及び保全に関する同条約規定については、軍艦それから非商業的役務にのみ使用される政府船舶等には適用がない旨規定しておるわけでございます。これは第二百三十六条でございます。したがって、沿岸国の関連国内法令もその排他的経済水域、接続水域及び領海を航行しているこれらの船舶には適用されないということになっておるわけです。ただし、領海におきましてその公船が故意のかつ重大な汚染行為を行う場合には、一般に領海外への退去要求等の必要な措置をとることができる、こういうことでございます。  また、この条約上、軍艦及び政府船舶を所有しまたは運航する国はこれらの船舶が合理的かつ実行可能である限り本条約に即して行動することを確保する義務を負っておるわけでございまして、これは二百三十六条のただし書きに書いてあるわけでございます。  これらの船舶が他国の排他的経済水域、接続水域または領海において本条約に反して海洋汚染行為をした場合には、沿岸国は必要に応じ、これらの船舶の旗国に対し、かかる義務に対し適切な措置をとるよう外交ルートを通じて要請することができるということでございます。さらに、もしこの条約上の義務違反ということが明白になってきた場合には、かかる義務違反の責任を旗国に対して国際法上追及することが可能でございます。  以上、海洋法条約上の整備でございます。
  86. 山崎力

    山崎力君 そこで若干違ってきているのは、領海部分の扱いと接続水域、経済水域の違いがこの問題では出てきているんではないかと思うんです。  今回の条約に関しまして、我が国は五つの海峡と承知しておりますけれども、今まで十二海里の主張できる領海を三海里にとどめているというような形のことを伺っておるわけですが、今回の条約締結に当たって、津軽、対馬、宗谷等の海峡について十二海里をとるのか三海里をそのままとるのか、どちらでございましょうか。
  87. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ただいま委員指摘のいわゆる五海峡でございますが、これにつきましては今回新たに直線基線を採用することに伴う変更は若干ございますけれども、その点を除きましては基本的に現状を維持する、すなわち三海里でまいると、こういうことでございます。
  88. 山崎力

    山崎力君 その理由はいかなる理由をもってそのままということなんでございましょうか。
  89. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) きょうの御審議でもいろいろ申し上げましたけれども、我が国は世界の中でも主要な海洋国でございます。海洋国であるという立場から申しますと、諸国が重要な海峡における自由な通航を維持する、こういう政策をとることは我が国の総合的な海洋に関する利害から申して適切であると考えるわけでございます。  そういったことで、五海峡につきましても、そういった諸国の自由通航を維持するという政策を促進するという観点から従来の方針を維持したというのが基本でございます。
  90. 山崎力

    山崎力君 それでは、この基本になっております、昭和五十二年と承知していますが、領海法には三海里の規定はどのように記載されておるのでございましょうか。
  91. 西田芳弘

    政府委員(西田芳弘君) 五海峡の部分におきますところの現行領海法における規定でございますけれども、領海法の附則二項でございますが、このような規定がございます。  「当分の間、宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡東水道、対馬海峡西水道及び大隅海峡については、第一条の規定適用せず、」、つまり第一条におきまして領海の幅員につきましては十二海里という定めがあるわけでございますけれども、「第一条の規定適用せず、特定海域に係る領海は、それぞれ、基線からその外側三海里の線及びこれと接続して引かれる線までの海域とする。」というふうにされております。
  92. 山崎力

    山崎力君 今回の国内法の改正で、その条文における「当分の間」というものを削除しなかった理由はどういうことでございましょうか。
  93. 西田芳弘

    政府委員(西田芳弘君) 先ほど外務大臣から答弁がございましたとおり、海洋国家たる我が国として諸外国が重要な海峡における重要な通航を維持する政策をとることを促進すべく、我が国といたしましても五海峡につきましては現状を基本的に変更しないことが適当だというふうに考えた次第でございます。
  94. 山崎力

    山崎力君 現状を変更しないということは、当分の間それでいきますよという現状を変更しないというふうな御答弁だと思うんですが、こういういわゆる海の国連憲章と言われる海洋法条約締結して、それに伴う領海をいかに決めるかといったときに「当分の間」というのがあることは、三海里にするか十二海里にするかは国策としての判断としても、その条文をそのまま残すということはいかがなものかというふうに私は感じるんですが、その辺についてのお考えはいかがなものでしょうか。
  95. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ただいまの点でございますが、委員御承知のとおり、今回の国連海洋法条約規定の中には通過通航制度というものもあるわけでございます。この通過通航制度によりまして自由な通航確保ができるんじゃないかと、こういう見方もあるわけでございます。しかしながら、実は現在までのところ、通過通航制度がいかなる場合に適用されるかについて十分な先例といいましょうか国家実行の集積がございません。  そういう事情でございますので、自由な通航確保するためには従来の方針を維持することが適切であると。少なくとも当分の間はということで「当分の間」を残したということでございます。
  96. 山崎力

    山崎力君 このことはちょっと後でまた戻るかもしれませんが、それに関連して、私の地元である青森県と北海道の間を通っている青函トンネルがございます。その間の一部が前の領海法によって公海部分になっておりまして、当然その下が日本国内には入っていないという極めて特殊な事例がございます。  その点について、これは自治省さんの担当なんでしょうか、その公海部分のトンネルに対する固定資産税についてはどのようになっておりますでしょうか。
  97. 片山善博

    説明員(片山善博君) 固定資産税は固定資産所在の市町村におきまして課税することとされております。今お話のありました青函トンネルにつきましては公海の下の部分にございます。これにつきましては、昭和六十三年二月十六日の閣議決定によりまして北海道松前郡福島町それから青森県東津軽郡三厩村にそれぞれ編入されております。  このようなことから、青函トンネルの公海の下の部分につきましても固定資産の課税対象となっております。
  98. 山崎力

    山崎力君 閣議決定をすれば公海下の公の土地、国際的にも公の土地のところでも課税になるというふうに日本の法制度はなっていると考えてよろしいんでしょうか。
  99. 片山善博

    説明員(片山善博君) 当時の閣議決定をした理由でありますけれども、これにつきましては、例えば沿岸国が領域を越えて公海の海底までトンネルを掘削した場合に、沿岸国はトンネルの公海の海底の地下まで延びた部分におきましても領土と同様の管轄権を行使できると解されていると。それから、青函トンネルの公海の下の部分につきまして管轄権を行使するとした場合に、警察の事案でありますとか消防の事案でありますとか、それから例外的に管轄の裁判所を定める、そういう必要がございますので、このような理由によりまして青函トンネルの公海の下の部分を市町村の区域に編入した、それによって固定資産税の課税権も発生すると、こういうことでございます。
  100. 山崎力

    山崎力君 その点は結構でございます。ただ、そういった点というのはなかなか一般の国民にわかりづらい。どうなっているのかなということ、特に法的な背景はどうなっているのかなということがございます。  今の最初の問題に戻りますと、それでは何ゆえに三海里なのかということが今の御説明では、ああ、そんなものかなということかもしれませんけれども、それではなぜ十二海里にしちやまずいのかなということに関しての疑問には余りお答えになっていらっしゃらないような感じがしますので、もう少しこの問題を詰めさせていただきたいと思うんです。  いわゆる外国の海峡でございますね、いろいろ重要な海峡がございます。私どもがよく知っているところでは、マラッカ海峡があり、あるいは世界的にみればドーバーがありジブラルタルがあり、あるいは石油の問題でいえばホルムズ海峡があります。そういったところではどういうふうな措置が現在とられており、また今度の海洋法条約によって変更があったのかなかったのか。その辺はどのようになっておりますでしょうか。
  101. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) 世界の主要海峡におきまして領海幅を三海里にとどめているものといたしましては、これは我が国の海峡の一つでございますけれども、対馬海峡の西水道におきまして韓国我が国が同様の措置をとっているという例はございます。ただいま先生が御指摘なさったようなマラッカ海峡やボスポラス、ダーダネルス海峡等につきましては、これはいずれも通過通航制度を認めておるわけでございます。  なお、領海幅を十二海里としていない海峡の例といたしましては、ドイツーデンマーク間の海峡、それからスウェーデンーデンマーク間の海峡、あるいはまたフィンランド湾が挙げられます。
  102. 山崎力

    山崎力君 そうすると、これはまさに国の方針としていわゆる自由通航無害通航、そういったものの制度でいくのか、それとも領海を残すのかという問題になると思うんです。  先ほどの大臣の御答弁では、海洋国家として自由航行をなるべく認めていきたいというお考えのための政策というふうにおっしゃられておるわけでございます。それではほかの海洋国家と称するところは余りその辺のところを配慮していないというふうにも受けとめてよろしいような御答弁ではなかったかと思うんですが、いわゆる領海にしないでやるのと、それから領海と認めておいて自由通航、先ほども無害通航について今度の条約でいろいろ具体的に示していると言っておりましたけれども、その辺の政策の違いというものはどの辺から出てきたと解釈すればよろしいのでございましょうか。
  103. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) 私どもとしては、先ほど大臣からも申し上げましたように、なるべく諸外国が重要な海峡において自由な通航を維持するということと、それからまたこの通過通航制度については、各国がとっている制度が言ってみればより共通のものができている、そういった制度に合わせたいという面と両方あるわけでございます。それで、先ほどから先生が御指摘になっておりますような、国際航行が頻繁に行われておりますところと、それから日本の津軽海峡その他、こちらとは歴史的な、あるいはまた国際的な航行のメリットというものも相当違うわけでございます。  したがいまして、主要な海峡が通過通航制度をとっているから、各国の国家実行も積み重なっているから、したがって我が国についても直ちにそれを適用すべきというふうには私どもは考えておりませんで、これは我が国の先ほど来の海洋通航の自由その他の点から考えて、総合的に判断させていただきたいというふうに思っておるわけでございます。
  104. 山崎力

    山崎力君 ちょっと細かい点に入るかもしれませんが、先ほどはいわゆる朝鮮半島と対馬との間の海峡、そこのところは韓国側も三海里にしておりますよということを言っておられましたが、宗谷海峡についてはどうなんでしょうか。ロシア側は領海は十二海里を今現在やっておるのでございましょうか。
  105. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) 宗谷海峡につきましては、ロシア側からはかりまして日本との中間線までを領海にしておるわけでございます。他方、御指摘のように日本側は日本の沿岸から三海里という形で、そういう意味では公海部分がそこに残っているという形になっております。
  106. 山崎力

    山崎力君 ということは、同じ海峡というものから考えますと、なぜか日本側が遠慮しているというふうな設定としか思えないことがその事実からは伺えるわけでございます。特に、外国との間の国際海峡において、一方が十二海里の領海を持って一方が三海里の領海を持つということは、これはやはり国民にはなかなか納得できないのではないかというのが私の正直な感想なんですけれども、その辺についてはいかがでしょうか。
  107. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) 先生の御指摘もごもっともな点があると存じます。他方、国際的に見ますと、ドイツとデンマークの間の海峡でございますけれども、ドイツは領海幅を原則十二海里としておりますけれども、ドイツ-デンマーク間の海峡においては両国間の中間線から一・五海里手前の線までにとどめておるわけでございます。デンマークは現在のままで領海幅は三海里の原則を維持しているということがございます。ドイツは中間線まで、ロシアのようにはやっておりませんけれども、一・五海里というものを残して、他方デンマークは三海里にして中間部分を残していると、こういう例もございますので、一概に日本ロシアとの間の関係日本にとって不平等であるということは言えないのかなというふうに思います。
  108. 山崎力

    山崎力君 その点とはまた別に、津軽海峡、それから対馬海峡のうちの対馬-壱岐間の海峡及び大隅海峡というのは、これは両岸とも日本国内の海峡でございます。そういったところまで、国際間のところの海峡はともかくとして、日本国内の海峡まで領海を三海里にするというのはまた別の考え方といいますか、方針がなければいけないと思うんですが、その辺については何かお考えがあってのことなんでしょうか。
  109. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) 海洋法条約では、我が国のような、今御指摘のような海峡幅を残しているところは、航行上及び水路上の特性において同様に便利な公海または排他的経済水域の航路を残すという、これにのっとったものでございます。  私どもといたしましては、この五海峡についてそれぞれの海岸線の状況とか、地形上の状況とかを総合的に勘案したわけでございますけれども、それぞれの海峡について別々の公海の航路帯を設ける必然性は必ずしもないように思いまして、結論といたしましては、当分の間同様の措置をその五海峡についてとるようにしようと、こういうふうに考えたわけでございます。
  110. 山崎力

    山崎力君 ちょっと観点を変えさせていただきますが、先ほどの無害航行権の中で一番問題になるといいますか、今の世界情勢の中で意味を持つこととして潜水艦の問題がございます。潜水艦がそういったところを無害航行というものを認められるというのは、国際法的に、あるいは海洋法的に確立されたような状況があるんでしょうか。
  111. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) 潜水艦の航行で問題になりますのは、特に領海部分においてだと存じますけれども、領海におきましては、潜水艦その他の水中航行機器は、海面上を航行し、かつその旗を掲げなくてはいけないという趣旨規定が第二十条にあるわけでございます。したがいまして、この第二十条の規定は既に領海条約にもある規定でございまして、そこの部分は国際法上もはや確立しているものであるというふうに理解しております。
  112. 山崎力

    山崎力君 そこのところをどうしても結びつけて考えたくなる部分があるわけでございます。その辺について、外交上あるいは軍事上の問題でそういうふうなことを公の立場で、場所で言えないという部分もあろうかと思うんですけれども、なぜ日本がこういうふうな形にするのかといった場合、そこのところを明らかにしていかないと、どうしても奥歯に物の挟まったような運用にならざるを得ないのではないかというのが私の個人的な考え方でございます。  すなわち、宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡、大隅海峡、すべてアメリカだけではなくてほかの国の潜水艦も含めて浮上しないで通航できるというようなことを日本が許しているのではないだろうか。どちらかといえばアメリカの方が十分そこのところを利用しているという部分があります。我が同盟国であるアメリカが利用しているということはございます。逆に、旧ソ連、現ロシアの潜水艦も潜航状態のままそこを通るということも十分可能でございます。  その場合、先ほどもちらっと出てまいりましたけれども、まさに非核原則の問題がこれあり、そういったところを日本が遠慮しているからこそこの三海里という領海を設定しているのではないだろうか。これは、ある意味で、軍事的なことからいけば当然そのところに帰着するという話をする評論家もございます。その辺のところについて、お答えできる範囲で結構でございますから、そういったものも考慮といいますか配慮のうちに入っているのかどうかという点について御答弁願えればと思うんです。
  113. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ただいま委員から御指摘がございました潜水艦の航行あるいは核搭載艦の航行、その関連でいわゆる五海峡につきまして現在の方針を維持するということではございません。先ほど御答弁申し上げましたように、基本的に自由な通航を全世界的に維持する、そういう政策を促進しようという観点、それからいま一つは、いわゆる通過通航制度がいかなる場合に適用されるか等につきまして、まだ国家実行の集積が十分でない、そういう事情を踏まえての政策でございます。
  114. 山崎力

    山崎力君 ちょっと観点を変えますが、領海三海里の海峡部分において、接続水域排他的経済水域の設定はどのようになるのでございましょうか。
  115. 西田芳弘

    政府委員(西田芳弘君) 御質問の接続水域の設定及び排他的経済水域の設定でございますけれども、これは領海法改正法案それから排他的経済水域大陸棚法案においてそれぞれ定めておりまして、これらの法案において明らかなとおり、接続水域なり排他的経済水域を設定するに当たりまして一部水域の除外を行うということはしておりません。特定海域についても同様でございます。
  116. 山崎力

    山崎力君 そうすると、まさにその海峡部分というのはほとんどのところが接続水域に含まれる。ということは、たしか法の趣旨からいけば、基線から二十四海里まで接続水域になるというところですから、普通のところは領海十二海里プラス十二海里の接続水域、それと二百海里まで、今回の海峡については領海三海里プラス二十一海里が接続水域、それから二百海里が排他的経済水域と、このようになると解釈してよろしいんでしょうか。
  117. 西田芳弘

    政府委員(西田芳弘君) それぞれの法案に定めがございますとおり、接続水域につきましては原則として二十四海里まで、それから排他的経済水域につきましては原則として二百海里までというふうに定めておりまして、相対国がある場合には、相対国との間で合意がある場合にはそれに従いますし、その合意がない場合には中間線までということでございます。
  118. 山崎力

    山崎力君 ですから、それは普通の答弁でございますから、二十四海里までですから十二海里の領海プラス十二海里の接続水域、それから二百海里までが排他的経済水域、今おっしゃられた答弁のとおりなんですが、海峡については領海が三海里ということになるわけですから、その三海里と十二海里の間の部分が、たしか私の承知しているところでは、接続水域というのは二十四海里までとれるということですから、その海峡部分については、基線から三海里までが領海で、それプラス二十一海里、合計の二十四海里のところまでが接続水域になるということで解釈してよろしいのかという質問趣旨でございます。
  119. 西田芳弘

    政府委員(西田芳弘君) 御指摘のとおり、領海以遠、接続水域の場合でしたら原則二十四海里まで、排他的経済水域の場合には原則二百海里までがそれぞれ我が国の接続水域及び排他的経済水域でございます。
  120. 山崎力

    山崎力君 ちょっと質問趣旨が通じているかどうかわからないんですが、私の質問趣旨がそのとおりだろうということで肯定していただけたということで、次に進ませていただきたいと思います。  この領海三海里のままということ、先ほど私が余計な内容のことを言ってしまいまして大臣もお答えに困ったような答弁をされたんですけれども、日本国家として、新しい海洋秩序のスタートラインにつくこの条約批准して国内法を整備するときに、さきの領海法制定のときに「当分の間」という表現でなされた領海三海里の部分、その部分について大きな検討がなされないまま今回も続いているのではないかということに関しまして、私は若干の疑念をどうしても残さざるを得ないということでございます。  先ほどの大臣の御答弁によれば、いわゆる国際海峡における自由航行というものが世界的に一つの慣習法として確立してくれば、これは我が国についても十二海里を領海の国際海峡にするという趣旨の御答弁であり、それまでの間ということが先ほどの領海法の中の「当分の間」というような表現になっているというふうに承ったわけでございます。  そうすると、こういう法律というのは一たん決まってしまうとよほどのことがない限りそのまま放置されがちであるということが現実にございます。ということを考えれば、少なくとも今の時点でどのような状況になれば、我が国領海三海里を十二海里にふやすんだという見通しをある程度表明していただいた方が国際的にもあるいは国内的にも納得を得やすいのではないかと私は思うんですけれども、その辺について大臣はいかがお考えでございましょうか。
  121. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほど御答弁申し上げましたように、今回このような措置を少なくとも当分の間とる、そうした一番大きな理由は、諸国が重要な海峡における自由な通航を維持する政策をとることを促進するという、こういう観点でございます。  さて、そういった観点から申しますと二つの道があると思います。一つは、現在我が国がとっているような三海里を続けていくということ。それからいま一つは、これも先ほど御答弁申し上げましたけれども、今回の国連海洋法条約にも規定されておりますいわゆる通過通航制度を適用するということでございます。  しかし、通過通航制度についてはまだ十分な国家実行の集積がないということで、どういうケースにどういうふうに適用されるかということは確定していない状態でございますので、当分の間は三海里ということでいく、こう申し上げたわけでございます。  逆に申しますと、通過通航制度について十分な国家実行が集積され、そしてまたそういった集積の上に立って重要な海峡における自由な通航を維持することが十分確保されるというふうなことが明確になる、そういう状況になりましたら、さて従来の方針を維持するのが適切なのか、あるいはそういった国家実行の集積に裏打ちされた通過通航制度を採用するのが適当なのかということは、そういった段階で検討するということはあり得ると思います。
  122. 山崎力

    山崎力君 明確な御答弁だと思います。  ただ、今の最初の三海里でということになりますと、我が国が通過通航制度の集積がないことによって、我が国がこのことをやるんですよということを対外的に言いますと、それでは日本は現在ある多くの国際海峡、世界の海上流通の根幹となるべき海峡は、沿岸国領海を制限して公海にしていくべきであるということをこれから主張していくのかというふうにもとられかねない部分があろうかと思うのでございます。これは実質上、私の考えるところ、非常に困難といいますか、ほぼ実現不可能な状況であろうと思います。一たん主権国が我が領海と言ったものを、世界の流通その他のためにその主権、領海を放棄して公海にするということは、これは私はまず不可能と言ってよろしいかと思うんです。  ですから、そういう点からいきますと、我が日本が国際的な今度の条約による通過通航制度が集積されていないときに、我が国が非常にオープンな形で通ってもらおうということは、通過する側の外国から見れば非常に歓迎するべき措置であろうともとれますけれども、それじゃなぜ世界的な風潮とは別に日本が集積されていないからそれまでは三海里で国際間の流通、海上交通の促進のためにやるのかというようなことを考えますと、これはやはり先ほどの軍事的な背景を考えざるを得ない。そしてまた、申しわけない言い方ですけれども、そういうことを国民に明らかにしてもいい時代になってきているんじゃないかなというのが私の個人的な見解でございます。  そして、この領海の問題というのは、ひとつ海に限らず空の部分もこれありでございます。そういった点を考えますと、今の民間航空が外国領土を飛ぶことがほとんど問題なくできていることを考えれば、こういったものを残すというのはやはり軍事的な背景があるのではないかというふうに思わざるを得ない部分も空の部分についてはございます。  そういった点を考えますと、やはり単に通過通航制度の集積を待って、世界的な現実なものを待って、当分の間、それまで三海里でやりますよということでは、この海洋法に対する、領海法に対する国民の理解というものは納得がいま一つ足りないのではないのかなというふうに私自身は危惧しております。  そういった点を踏まえまして、私どもの党首が言っている普通の国といいますか、そういった言葉からもあるのでございますけれども、まずその辺のところを含んだ上での、少なくとも三海里に我が国がしたということによって国家国民が、あるいは特に沿岸の海峡に沿う住民が不利にならないような施策だけはぜひともしていただきたいと御要望を申し上げます。その辺についてのまとめの形での外務大臣の御答弁をいただければ幸いでございます。
  123. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほども御答弁申し上げましたけれども、今回のような措置をとったと申しましょうか、当分これまでの方針を維持することにいたしました。それは、決して先ほど御指摘のございました核搭載艦あるいは潜水艦といったような観点、あるいは今御指摘のございました軍事的な考慮ということからではございません。あくまで重要な海峡における自由な通航を維持する政策を促進するという観点からのものでございます。  そしてまた、それでは日本がこのような方針を維持しておったからといって諸外国が三海里の領海に戻ることは期待できないじゃないかという御指摘がございました。あるいはそれは常識的な見方かもしれません。しかしながら、日本がこういうふうな従来の方針を維持して自由な通航制度を促進しようという姿勢を明確にしておるということは、一方において通過通航制度における国家実行が集積される過程において、やはりそういう自由な通航を維持しなくちゃいけないんだなという配慮を各国に懲悪していくという、そういう面はあるということを御理解いただきたいと存じます。  それからまた、最後に委員から御指摘がございましたこのような方針を維持することによって我が国の国益、とりわけそういった特定海域に接するあるいは隣接する地域においでになります住民の方々に不利にならないように十分な配意をしていくということは、お説のとおり必要なことであると考える次第でございます。
  124. 山崎力

    山崎力君 終わります。
  125. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十一分開会
  126. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) ただいまから海洋法条約等に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、海洋法に関する国際連合条約及び千九百八十二年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約第十一部の実施に関する協定締結について承認を求めるの件外人案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  127. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 平成会の田村でございます。  本条約には賛成でございます。  海洋法条約締結した場合、我が国も世界の新しい海洋秩序の仲間入りを果たすことになります。そして、従来以上にこの海洋秩序を守っていくことが我が国として重要な仕事となってまいると考えております。我が国の持つすべての機能を効果的、有機的に活用できるような、特に海上自衛隊の活用も含めまして、国内法を整備する必要があるというふうに私は強く感じている者の一人であります。  それで、まず無害通航の十九条でございますけれども、沿岸国防衛または安全を害する情報収集を目的とする行為、沿岸国防衛または安全に影響を及ぼすことを目的とする宣伝行為、沿岸国の通信網またはその他の施設もしくは装置を妨害することを目的とする行為等の有害な通航があるかどうかということを海上保安庁では判断できるんですか、できないんですか、お答え願います。
  128. 秦野裕

    政府委員(秦野裕君) 基本的に、もちろん私どもは常時哨戒態勢をとっておりますので、無害通過であるかどうかということも一つの目安として哨戒を当然行うわけでございますが、ただ私ども例外的にそういう能力のないものがございます。例えば、潜没しております潜水艦といったようなものにつきましては、私どもにそういう探知する能力はございませんので、これは関係機関の協力を得て対処をするということになろうかと思います。
  129. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 ちょっとよく聞こえなかったんですけれども、そういう能力は持っておらないというお答えですか。
  130. 秦野裕

    政府委員(秦野裕君) 例えば、潜没して航行しております潜水艦といったものに対しては、それを探知する能力は私どもは持っていないということを申し上げたわけでございます。
  131. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 情報収集を目的とするそういう行動は判断できるんですか。
  132. 秦野裕

    政府委員(秦野裕君) これはいろいろなケースがあろうと思います。もちろんそういうことを探知できる、収集できる場合もございましょうし、ただ一般論としてはかなり難しいというケースが多いと想定されますけれども、それはケースによってさまざまだろうと思っております。
  133. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 そういたしますと、一部できないところがあるというふうに長官はお答えになったと思うんですが、その場合は今の法制のまま行くんですか。どういうふうな処置をおとりになるんですか。
  134. 秦野裕

    政府委員(秦野裕君) 例えば、ただいま申し上げました潜没して航行しております潜水艦の場合には、防衛庁さんの方にそういう能力がございますので、こちらと連携をとって対応するということになろうかと思います。
  135. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 現在は自衛隊法の八十二条で、海上自衛隊がそういう潜水艦を見つけた場合には海上保安庁に連絡するようになっているんですね。それで海上保安庁は総理大臣に上げて、総理大臣から自衛隊は警備行動を発動されるわけです。そういう仕組みで今の法体系はできているわけですね。それはそのように認識されておられますか。
  136. 秦野裕

    政府委員(秦野裕君) 私どもがそういう事実を把握いたしました場合には、外務省あるいは防衛庁その他関係の機関と連携を密にいたしまして対応するわけでございますが、私どもの承知しておりますところでは、総理大臣の方に、例えば海上警備行動という形で防衛庁さんが出動される場合には、当然防衛庁さんの方から総理の方に御報告、御連絡があるものと承知しております。
  137. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 そういうことを今までは、冷戦中はやっていたわけです。これからは、この新しい海洋秩序を守っていくという我が国は、この条約批准することによって責任を負うわけですね。それでも今のままでよろしいとお考えなんですかどうですかということをお聞きしているんです。
  138. 秦野裕

    政府委員(秦野裕君) 私どもとしましては、私どもに与えられました任務につきまして、もちろん体制の充実強化とかそういったことは別にいたしまして、現在の体制で私どもは任務を果たしていくつもりでございます。ただ、今申し上げましたとおり、私どもの能力の及ばざる部分につきましては、従来どおり関係機関の御協力をいただくということで対応していきたいと思っております。
  139. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  140. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 速記をお願いします。
  141. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 今までどおりのやり方でおやりになるという御答弁と思いますけれども、私はそれではこの新しい海洋法批准する国家として十分持てる力を発揮していないと。しかも、海上自衛隊がある潜水艦を見つけた、それを海上保安庁に報告して、またそこから内閣に上がって、総理から警備行動を発動されないと海上自衛隊は行動できないわけです。そういうようなことをやっていて、危機管理上そういうことがふさわしいというふうにお考えになるのかどうか。  私が申し上げているのは、この海洋法批准することによって、国家として持てる力を効果的に有機的に迅速に活用することが日本国として非常に重要なことではないかという提議をしているんです。ですから、御検討を願いたいと私は思っているんですが、いかがですか。
  142. 秦野裕

    政府委員(秦野裕君) ちょっと発言が不明瞭でございました。申しわけございませんでした。  先ほど来申し上げておりますように、私どもといたしましては、私どもに与えられております任務を、これは今後とも条約に加盟いたしました後でも従来と同様に対応していくというつもりでございます。ただ、政府全体としてどういう形でやっていくことがより適当であるかという点につきましては、さらに政府部内で検討を進めていきたいと思っております
  143. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 任務を遂行されるというのは当たり前の話でありまして、海上保安庁が長官のもとに整々と任務を遂行されることはいささかも私は反対しておりません。  私の申し上げているのは、自分のところに持っていない機能でよその部署が持っている機能を十分に国家として共同して活用されるべきではないかということを申し上げているんです。そういう御自分のところが任務を遂行するということではないんです。遂行するのは当たり前の話なんです。ですから、自分のところが遂行するといっても、能力がないのに任務を遂行することはできませんから、それは今までのような仕組みではなくて、新しく国内法を改正されて、海上自衛隊が十分に働けるようになさったらいかがかということを申し上げているんです。
  144. 秦野裕

    政府委員(秦野裕君) 私どもとしましては、先ほど来申し上げておりますように、私どもの能力では対応できない部分につきましては防衛庁さんの方に御協力をお願いしておるわけでございまして、自衛隊法その他国内法の関係をどうするかという点につきましては、政府全体の問題として検討されるべきものと考えております。
  145. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 私の申し上げたことが余りよく理解されていないようでございますが、私は、国家が持つすべての機能を活用して、新しい海洋法条約の時期を好機にとらえて、今までと同じような考え方じゃなくてきちっとされるべきではないかというふうに思って申し上げた次第であります。  それでは次に、海洋法の百条で海賊行為の抑止に関する協力義務というのが、今度これを批准することによって我が国義務を負います。「すべての国は、最大限に可能な範囲で、公海その他いずれの国の管轄権にも服さない場所における海賊行為の抑止に協力する。」ものとする。我が国は協力しなきゃいけないわけですね、これを批准するわけですから。  それで、私の申し上げているのは、Aという外国の船がBという外国の船に対して海賊行動をとった場合に、海上保安庁はどのようなことができるのかできないのか、何もできないのか、お答え願いたいと思います。
  146. 秦野裕

    政府委員(秦野裕君) 公海上におきます外国船舶同士の、いわゆる先生指摘の海賊行為につきましては、現在それに該当する国内法がございませんので、私どもの方で、例えばその海賊船舶に対しまして拿捕をする、あるいは逮捕をするといったような処罰を前提としました措置を講ずることは困難であるというふうに考えております。  ただ、事実行為といたしまして、例えば私どもとしましては、海上保安庁法に基づきまして、海上における治安の維持ということが一つの任務になっておりますので、公海上におきまして明らかに海賊行為であるというふうな行為を認めました場合には、被害船舶と緊密な連絡を保ちまして、例えば加害船舶との間に割り込むとか、あるいは場合によっては被害の船舶に乗り込んで乗組員に協力するとか、そういった行為を事実行為としてとることはあり得るというふうに考えております。
  147. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 そういたしますと、長官のお答えをもう一度はっきり申し上げますと、この海賊行為の抑止に関する協力義務は履行できない、こうおつしゃつておると考えてよろしいですね、そういう権限を持たないんだから。よろしいですか。
  148. 秦野裕

    政府委員(秦野裕君) 先ほど申しましたとおり、海賊船舶に対して拿捕をする、逮捕する、あるいは財産を押収するといったような措置を講ずることは困難であるというふうに申し上げております。
  149. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 そういたしますと、我が国はこの条約批准しても義務を履行できないというこざになりますけれども、外務大臣、どういうふうにお考えになっておられますか。これはできないんですね、今のままでは。
  150. 林暘

    政府委員(林暘君) 今、先生指摘のとおり、第百条には最大限可能な範囲で抑止に協力するという規定になっておりますので、抑止をすることが協定上のいわゆる厳密な意味での義務であるということまでは書かれておりませんので、そういう意味での、厳密な意味での義務違反ということにはならないというふうに思っております。
  151. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 これを批准するということは、ここに書かれていることは誠実に履行するということじゃないんですか。履行しなくてもいいんですか。
  152. 林暘

    政府委員(林暘君) 今御答弁申し上げましたとおり、最大限可能な範囲で協力するということでございますので、我が国として可能な範囲で協力する、その範囲内に、先ほど保安庁長官の方から御答弁がありましたように、事実行為としてそれを抑止するための措置をとるということも含まれるわけでございまして、その限りで義務違反というところにまでなってはいないというふうに我々は考えております。
  153. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 この百条を履行するためには、海上自衛隊の能力をもってすればできるわけですね、軍艦はできることになっておりますから。そういうことはお考えにならないんですか。海上自衛隊は軍事だから何となく避けようと、こういう考え方ですか。どういった考え方ですか。  普通の国は、自分の国の持っている機能を十分に発揮して、それで国際社会に貢献していく、役割を果たすというのが普通だと思うんです。どういう政府のお考え方かよく理解できませんけれども、どういうことですか。
  154. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ただいま政府委員から御答弁申し上げておりますように、条約百条においては、その国の持てる力によって協力をしていくということが規定されておるわけでございますが、その力というのは、物理的な意味での力というものと同時に、その国の持つ法制その他の面でどういう行動ができるか、そういうものを総合してのことを言っているんだと存じます。  そして、現在の法制、また物理的な力から申しますと、先ほど来これも政府委員側から答弁がございますように、現実に海上保安庁として事実上のいろいろな行為をすることができると、そういった範囲での条約に書かれているようなその協力というのはできるんだと存じます。  さて、海上自衛隊の持てる物理的な意味での力をそういった面にも活用すべきかどうかという点は、それはまた別途の考慮があるんだと、あり得るというのは先生指摘のとおりかもしれませんけれども、今回の海洋法条約批准に伴いまして、特に海上自衛隊の任務、あるいはとるべき行動につきまして法の改正ということは政府としてはいたしませんで、従来どおり海上の警備につきましては基本的に海上保安庁の責務においてやる、そしてまた自衛隊法上定められておるケースにおきましては海上自衛隊も協力していく、そういう仕組みのもとで対応していこうと、こういう考えでございます。
  155. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 今、外務大臣が御答弁なさったことは、自衛隊法八十二条の適用ということを言っておられると思うんです。そうしますと、現在の枠組みでは、海上自衛隊が海賊船を見つける、海上保安庁に連絡をする、海上保安庁が内閣に上げる、内閣総理大臣から警備行動を海上自衛隊は命令を受けてやる、こういう仕組みになっているんですね。それは危機管理体制上、一度も発動されたことはありません。海上自衛隊が創設以来一回もありません。  これからも、もし危機管理ということを日本政府が重要視されるならば、今のような枠組みではだめなわけです。それが全部終わった段階では、海賊行為はもう全部終わって引き揚げているぐらいな時期ですから。ですから、そういうことを常に訓練していないとできないわけですね。一度も行われたことがないということは、いざというときに何の役にも立たないということを意味するわけです。したがいまして、そういう法整備を政府の方でぜひ今回なされる必要があるんではないかということを強く私は御要請申し上げたいというふうに思っております。非常に強く御要請申し上げたいというふうに思います。  先ほど同僚の山崎委員がおっしゃいましたことの中で、一つ外務省にお聞きしたいんですが、この領海の件です。私は、領海というのは領土の主権の主張と同じだというふうに思っております。特に、宗谷海峡においてロシアは十二海里をとっている、うちは三海里だと。それで、うちは海洋国家として自由航行を目的とするのでそういうふうにやるんだというお答えだったと思うんですが、ロシアとどうして調整をされないんですか。自由航行を目的として我々も持っておるので、あなたのところも三海里、うちも三海里と、どうしてロシアとそういう御調整をなさらずに一方的に自分の国は三海里で、国家としての主権を主張されないのかよくわかりませんので、もう一度御答弁願います。
  156. 林暘

    政府委員(林暘君) 先ほど谷内審議官の方からお答え申し上げましたとおり、実態として、今御指摘のとおりロシアが十二海里というか中間線まで領海を持っており我が方が三海里という類似の事例は、デンマーク、デンマークも三海里ということを基本的に維持しておりますものですから、デンマークがほかの国、スウェーデンとかドイツと持っております海峡においても同様の事態があるわけでございます。  どうしてロシアと三海里ということで調整をしなかったかという御指摘でございますが、もちろんロシアが三海里ということでオーケーするのであればその可能性はあったわけでございますけれども、ロシアとしては十二海里の範囲内で中間線まで領海を広げるという方針を維持したわけでございますし、その場合にその領海部分について、この海洋法で、例えば通過通航制度というのが適用されるかされないかということは今後の国家実行によるわけでございますけれども、少なくとも中間線より日本側寄りの部分については我が方としては航路に適する公海部分を残しておりますので、そういう意味で通過通航制度は我が方の中間線より日本寄りには適用がないというふうに我々は考えております。  そういうことで、我が方としては、どうしてもロシア側にも、通過通航が、無害通航じゃなくて公海部分を残すようにということは、領海法をつくりましたときに主張しなかったわけでございますけれども、それはそういうような理由でございます。
  157. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 よくわからないんですけれども、日本の国は、自分の領土領海を主権国家として十二海里をどこの国でも持てることになっているのに、何でそれを自分の領海主権を国家として三海里のまま、「当分の間」と言っておられますけれども、五十二年から「当分の間」と言っておられますね。一九七七年からずっと「当分の間」と言っておられるんです。そういうのは「当分の間」とは言わないんじゃないんですか、言葉としてもっと国民にわかるように説明してください。
  158. 林暘

    政府委員(林暘君) 一九七七年に領海法を制定いたしましたときに、特定海峡部分について領海を三海里に維持いたしましたのは、従来御説明しているとおりでございます。  今回海洋法批准するに当たりまして、なぜ今までの三海里を、特に通過通航制度のようなものがどういう制度になるかわからないということで当面という形で領海法では制定したわけでございますけれども、それを今回の海洋法締結に当たりまして、そこの部分を十二海里まで延ばさなかったのかという御質問だというふうに理解をいたします。  この海洋法条約におきましては、そういう形で海峡部分というのがある意味領海によって満たされた場合、つまり国際海峡に公海部分ないしは航路帯がなくなった場合に、そこには通過通航制度が適用になるというふうに規定をしてあるわけでございます。  午前中の質問にも谷内審議官の方からお答え申し上げましたとおり、この通過通航制度というものがどういうものであるかということについての国家実行がまだ定まっていないと。言いかえますと、通過通航制度というのは、それが領海であったとしても上空の通航も自由に認められますし、規定の書き方が十分明確ではございませんけれども、場合によっては波打ち際までその通過通航制度が適用になるという解釈も可能なものでございますから、そういう意味で、通過通航制度というものが今後の国家実行上どういうふうな制度として確立するかというものを見据えた上で、それが我が国の国益ないしは安全保障上の観点から害がないものであるということになれば、その時点で検討をいたしたいというふうに思っておる次第でございます。
  159. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 時間が過ぎましたのでこれでやめますが、先ほど申し上げましたように、本条約批准するに当たっての、我が国義務を遂行するための国内法の整備をぜひお願いしたいということを希望して、質問を終わります。
  160. 常田享詳

    ○常田享詳君 平成会の常田でございます。  先に質問をされた方と重複する部分がありましたらお許しをいただきたいと思います。  外務大臣にお尋ねをいたします。  先般、五月の連休を利用いたしまして、平成会の昨年七月二十三日に当選した議員六名で台湾を訪問してまいりました。我が党の党首、また各党の諸先輩方が中国を訪問しておられるということで、逆に台湾を訪問することでもう一つ本当の姿がわかるんじゃないかということであります。  幸いにも李登輝総統は、二十日の就任式直前であるにもかかわりませず、約一時間、私たちのために時間を割いていただきまして、本当に腹を割ったお話をさせていただきました。ここはそういうお話を披瀝する場所ではございませんが、ただその中で、最後に李総統が、貴国、いわゆる日本はもっと我が国台湾に対して理解を深めてほしいということをおっしゃいました。また、長い関係からいって深めるべきではないかと、そういうお話がございました。  そういうことで、外務大臣にお尋ねいたしますけれども、現在の中国と台湾のミサイル演習等を発端とする厳しい状況を踏まえて、今後、日台関係というものをどのように構築していかれるおつもりなのか。といいますのは、このたびの海洋法の問題で、日中、日韓、日ロ等の問題が出ておりますけれども、日台もあるわけであります。そういうことで、あわせて日台の漁業関係について今後どのような方針をお持ちなのか、お尋ねをしたいと思います。
  161. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員御承知のとおり、我が国中国との関係は今後とも協力関係を進めていくということになっております。そして、台湾との関係につきましては、非政府間の実務的な関係としてこれを維持していくということで日中共同声明以来ずっと続けてきておるわけでございます。そういった基本的な我が国方針を今後とも維持していく所存でございます。  一方、中国と台湾との関係につきましては、我が国といたしましては、何とか両当事者の間の話し合いを通ずる平和的な解決を期待する、こういう立場でございます。そして、先ごろ両者の関係がかなり緊張が高まった、そういった時点におきましても、我が国としてはそういった基本的な立場を踏まえまして、それぞれに自制をするように、そして長期的には平和的解決を目指すようにということを、あるいは申し入れ、あるいはそういった我が国立場を公に明らかにいたしてきたわけでございます。  今日、台湾における選挙も終了いたしました。けれども、依然として両岸関係は必ずしもこれでもう安心だとは言い切れない、なお困難な事情が残っているというのは御指摘のとおりだと思います。しかし、そういった中で、両者にそれぞれ緊張をさらに高めていってさらに内外にいろいろ心配をかけるような情勢にしてはいけないんだという、そういうお気持ち、姿勢はあるように存じます。そして両者から、必ずしもぴしっと一致はいたしませんけれども、平和的な解決を目指すんだということも繰り返し表明されているところでございますので、何とかそういった両者の基本的な平和的解決を目指すという姿勢が具体的な面でも合致していくようになって話し合いが進展していかないか、こう期待しておりますし、我が国として、またそういったことを促進する上で果たせる役割、また果たすべき役割があればそのように適切に対処してまいりたい、こう考えております。  それからまた、委員からもう一つ指摘のございました日台間の漁業をめぐる問題ということでございますが、現在のところ、我が国と台湾との間では漁業についての取り決めは存在いたしません。それからまた、先ほど申しましたような非政府間の実務的な関係という日台関係を考えますと、今後も政府間での取り決めというものはあり得ないわけでございますけれども、これから我が国の国内の漁業関係者からの御要望がどういうものが出てくることがあるのか、それからまた台湾側がどういうふうな主張をすることがあるのか、そんなことを見ながら、もし何らかの調整を行う必要が生ずる、こういうことになれば、先はどのような基本的な立場を踏まえて適切に対応していく、こういうことかと存じます。
  162. 常田享詳

    ○常田享詳君 農林水産大臣にもお尋ねをしたいと思います。  今お話がありましたように、我が国は台湾とは国交がないわけであります。また、漁業協定等を締結していないわけであります。台湾漁船は、従来からサンゴ網漁船、一本釣り漁船、はえ縄漁船等が沖縄や奄美大島周辺海域において操業が見られるわけであります。サンゴ網漁船においては、男女群島周辺水域や伊豆・小笠原群島水域においても操業が見られることは大臣も御承知のとおりであります。  そこで、我が国は台湾との国交がないわけでありますけれども、排他的経済水域を設定した場合、我が国と台湾との漁業関係はどのようなものになるのか、もっと突っ込んだところでお話をいただきたいと思います。
  163. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 委員指摘の問題は大変難しい頭の痛い問題であることは間違いありません。いろいろ男女群島のお話がございましたが、今後、国内の漁業関係者の要望はもとよりでありますが、台湾側の主張等によっては台湾との間で何らかの調整を行う必要があると思います。  しかしながら、外務大臣も今答えられましたとおり、日台関係は非政府関係であることを十分踏まえて調整しなければならない、そういう意味では、私が触れることではありませんが、いわゆる民間ベースでの今後の調整等も行われることが好ましいというふうに思います。  なお、男女群島の操業問題については、私、今つまびらかにしておりませんので、水産庁長官から答えさせていただきます。
  164. 東久雄

    政府委員(東久雄君) 台湾の漁船でございますが、現在の漁業水域に関する暫定措置法のもとにおいても、日本のいわゆる二百海里内で台湾漁船が正規に操業することはできません。したがいまして、ちょっと前でございますけれども、サンゴをとっておる船が相当無理なサンゴのとり方をしているということが問題になったことがございます。最近、台湾の方でサンゴの状況が下火でございまして余り見受けないようでございますが、先ほどの一本釣りその他の漁業につきましては、台湾船が発見され次第、退去を命ずるという形で現在対応しておりまして、今のところ入ってきているような状況は大分少なくなっているというか、もうほとんど見受けられなくなっているそうでございます。
  165. 常田享詳

    ○常田享詳君 これ以上深く突っ込もうと思いませんけれども、この問題を取り上げましたのは、冒頭にも申し上げましたように、このたびの海洋法批准の問題については、日中、日韓、日ロだけではなくて、日台の間でもいろいろ大切な問題がある。台湾との外交の重要性といいますか、そのことを申し上げたかったわけであります。そのあたりを今後ともよろしくお願い申し上げたいと思います。  次に移りたいと思います。  このたびの排他的経済水域に関する法律案、いろいろありますけれども、その中で、三条二項の外国人に適用しない法律の範囲、それから四条の外国人による漁業等を禁止する海域等と、あわせて排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利行使等に関する法律案の第六条第二項、この部分だろうと思います。要するに、外国人に認める漁獲量の問題であります。  本六条二項では、外国人に認める漁獲量の決定について「政令で定めるところにより、排他的経済水域における科学的根拠を有する海洋生物資源の動向及び我が国漁業者の漁獲の実情を基礎とし、排他的経済水域における外国人による漁業の状況、外国周辺水域における我が国漁業の状況等を総合的に考慮」することというふうになっているわけであります。  そこでお尋ねいたしますけれども、これまでの韓国中国漁船による我が国周辺での漁獲実績及び我が国漁船の両国水域における漁獲実績をどの程度に把握しておられるのか。その把握の上に立って、今申し上げました第六条第二項に規定する外国人に認める漁獲量及び入漁を許可する外国漁船について今後どのような方針をお持ちになっているのか、お尋ねをしておきたいと思います。
  166. 東久雄

    政府委員(東久雄君) まず、両水域での我が国と相手国の漁獲の状況でございますが、これは二百海里をまだ引いておりませんので正確につかまえることは無理でございます。ただ、私ども、それは重要なポイントでございますので、相当仮定を置いたりしながらやっておりますけれども、推計は一応いたしております。  そういう数字だということで御承知いただきたいと思いますが、韓国船は日本海域では大体年間十五万トンから二十万トンぐらい、年によって振れがあるようでございます。それから、中国漁船は年間二万トンから六万トンぐらいでございます。それで、特に韓国漁船につきましては十万トン程度が日本海海域のようでございます。その他が太平洋並びに北海道の沖というところになります。それから、中国船につきましては二万トン程度が東海、黄海の日本の二百海里内、それであと三、四万トンのものが三陸沖でのイカ釣り漁業のようでございます。  我が国の方でございますが、韓国周辺水域というのは日本海側、それから東海、黄海側でございますが、その海域で約十万トン弱という感じでございます。それから、中国周辺水域は東海、黄海については二万トン強という感じでございます。そういうふうに私どもは推計をいたしております。  それから次に、漁獲をどういうふうに割り当てるかということでございますが、先生指摘のとおり、今度の新しい漁業主権法の六条の第二項でございますが、これはここにございますとおり、資源の動向とそれから我が国漁業者がその水域で自分でとっている量、それが一つの基本になりながら、その上に外国人が今どういう漁業をその水域でやっているか、それから我が国が相手国の水域に入ってどれだけやっているか、そういうものを勘案して決めるということになっております。  ただ、具体的な数字は交渉事項とならざるを得ない面がございます。先ほども推計ということを申し上げましたが、量そのものについての突き合わせというところからやらなければならなくなります。したがいまして、その辺を御勘案いただきまして、ある程度交渉しながらその量を決めていくということで御答弁は御容赦いただきたいと思うわけでございます。  ただ、このやり方につきまして一つ申し上げられることは、現在の漁業水域法、これはロシアとの相互入漁をやっているものがございます。そのときの漁業水域法の規定とほぼ同じでございます。ほぼといいますのは、第三項で今度の新しいTACの管理のものについてはTACの数字を踏まえてやれということが新しく入っている点でございまして、その点を御参考に申し上げるにとどめておきたいと思います。
  167. 常田享詳

    ○常田享詳君 わかりました。  それでは、外国人の操業秩序についてお尋ねをしたいと思います。  今お話がありましたが、外国へ漁獲を割り当てることとした場合に、国内漁業者に対して操業の時期、場所、それから漁船規模等について規制が行われる、そのようなときはこれらの規制は当該外国漁船にも適用されることとなるのかどうか、いわゆる新しい日韓、日中漁業協定のもとでそのように扱われるのかどうか、そのあたりをお尋ねしたいと思います。
  168. 東久雄

    政府委員(東久雄君) 今後、我々が韓国並びに中国交渉していく新しい体制というものは国連海洋法条約に基づいたものを十分踏まえたものでなければならないと考えておりまして、それは端的に言いますと、取り締まりについての沿岸国主義、それから資源を我が方として十分管理できるかどうかという点、この二つの点だろうと思います。  それで、今お話しの点につきましては、要するに国内漁業者に課しております漁業規制、それと同様の規制を外国にも課するのかという問題につきましては、これもまた今度の新しい体制の中で先ほどの基本原則にのっとった形での交渉事項になると思いますが、私は我が国漁業者に不満が残ることのないように交渉をしてまいりたいというふうに考えております。
  169. 常田享詳

    ○常田享詳君 ぜひそこのところを不満が残ることのないようにお願いしておきたいというふうに思っております。  今、水産庁長官からTACの問題が出たわけでありますが、TACのことについて一つだけお尋ねをしておきたいのであります。  漁獲可能量、TAC制度導入に当たって、主にオリンピック方式、個別船別割り当て規制方式、それから漁獲努力量規制方式という三つの方式があるわけですね。このたびはその中からオリンピック方式を採用されるということでありますが、それぞれ利点、また欠点といいますか問題点があるわけであります。  オリンピック方式を採用いたしますと、第一点としては先に争った漁獲が過剰投資になりやすいという問題、それから第二点として漁獲が一時に集中し価格が乱高下するという問題、三番目に参入が自由であるため操業総数が増加し操業日数が短縮されるということ、四番目に無理な操業が行われるため漁場競合が起こり事故が発生しやすいというような問題があるわけであります。御承知のとおりであります。  そこで、そういう問題点があるにもかかわらずオリンピック方式を採用されたのはどうしてなのか、あわせて今のような弊害に対してどのように対応しようとしておられるのか、お尋ねいたします。
  170. 東久雄

    政府委員(東久雄君) 先生指摘のとおり、現在、世界でこのTAC、いわゆる漁獲可能量の管理の方式について、大きく分けて二つの方式になります。一つはオリンピック方式、もう一つは船別に割り当てる方式でございます。  そのオリンピック方式の中に二つ方式がございまして、一つはもう何が何でも自由競争のオリンピックのやり方、早い者勝ちという形のやり方、これはアメリカでほとんどの魚種がそういうふうにやられております。それからもう一つフランスでやっておる方式でございますが、オリンピックではありますけれども、いわゆる入り口を規制して、要するに漁獲能力を規制しておいて、最高漁獲可能量に到達しないように管理していくというやり方でございます。  それからもう一つの方式は、先ほど言いました船別の割り当てということでございます。理論的には船別割り当てが一番いいと言われておるわけでございますが、現実にはなかなかやりにくい点があるということで、オリンピック方式をとらざるを得ない。  オリンピック方式をとる場合に、先生が今おっしゃったとおりの大変な問題がございます。例えばアメリカの場合には、百日ぐらいとっておったカラスガレイというカレイの種類の漁業が四日間でとり終えるというような状況になって、大変な事態を巻き起こして、今反省の時期に入っております。  そういう事態を見て、我が国といたしましては、水産関係者の英知を絞って研究会を開いてやった結果、フランス方式に近い、それよりももっと我が国の現実に即した形でということで、一つフランス方式で入り口の漁獲努力量を規制する、それで漁獲可能量を超えないようにするということを一つの方式としてとりながら、もう一つはその漁獲可能量を漁業種類別に分けて、それでできるだけ変な競争にならないように、しかもその漁業種類の中では自主的な協定制度を設けて、それでむちゃな時期に集中しないようにということが調整できるようにという形で、いろいろな形でその弊害を除去する方式を漁業者全員で話し合って、ここまで制度をつくり上げておりまして、この方式であればまず障害になるような状態にはならないのではないかというふうに考えて導入に踏み切った次第でございます。
  171. 常田享詳

    ○常田享詳君 おっしゃるようにそううまくいくとは私は思いませんけれども、うまくいくように願いたいと思います。  私の地元は鳥取県でありまして、日本一の水揚げ量を誇る境港がございます。地元でもこの海洋法の問題は大変な関心事でございます。  そこで、重ねての質問になるかもしれませんが、韓国漁船の問題であります。このことについては、竹島も近いわけでありますし、いろいろな問題を提起しているわけでありますけれども、韓国漁船による悪質操業が大変多いわけであります。資源の減少、漁具の被害等が問題になっているわけであります。韓国漁船による協定は自主規制措置ということになっているわけでありますけれども、その違反件数は平成五年で千二百五十四件、平成六年で二百三十件、七年で百八十五件となっており、六年以降は急減しているわけでありますけれども、再び増加することが懸念されているわけであります。韓国漁船による漁具被害は全国漁業協同組合連合会の調べで、平成四年で一億二千三百九十万円、五年で一億六千八十七万円、六年で九千二十三万円となっているわけであります。  そういった実態を踏まえまして、そういうさまざまな操業違反、特に小型底びき網漁船、それから船名等の隠ぺい等により我が国の漁民が、そして地域の漁業資源が甚大な被害をこうむっているということは御案内のとおりであります。これらに対しましては従前からさまざまな形で協議が行われてきているわけでありますけれども、このたびの海洋法批准に当たりまして今後どのようにこういった問題に取り組もうとしておられるのか、お話をいただきたいと思います。
  172. 東久雄

    政府委員(東久雄君) 先生指摘の点が今漁業者から最も不満として挙げられている点でございます。  それで、この原因のよって来るところは、先ほど先生から自主規制というお話がございましたとおり、現在我が国は十二海里内、いわゆる領海内につきましては我が国の取り締まり権限を持っておるわけでございますが、それを越えた部分につきましては取り締まり権限がないという状態でございます。先ほど先生指摘の違反件数、これも摘発ということが我が方はできないわけでございまして、我が国の水産庁の取り締まり船が視認しておる違反でございまして、向こうへ通報等はするわけでございますが、そこが一番の問題でございました。  今回の海洋法条約というのは、資源管理上、沿岸国がいわゆる取り締まり権限を持つということが基本になっておりますので、私ども、この国連海洋法条約趣旨を十分踏まえた新しい漁業体制というものを構築することによって、我が国側からこの違反についての適切な措置をとることができるというふうに考えておる次第でございます。  特に、今度の法律の中で御審議をお願いしているという点では、外国の漁業者が二百海里内で漁業を行うときには許可制度になります。そういたしますと、我が国が視認をした違反船というものに対しては聴聞その他の措置をとることができますし、許可のときにしっかりした対応をすることも可能でございます。そういう意味で、私どもは新しい体制を組むことによってそういう違反をゼロに持っていきたいという気構えでやっていくつもりでおります。
  173. 常田享詳

    ○常田享詳君 要望にするかもしれないと申し上げておりましたけれども、あわせて地元で大変心配しておりますのは、これは先ほど自民党の先生からも御指摘があったことですので深く申し上げませんが、いわゆる減船の問題であります。  現在、資源管理漁業構造再編緊急対策事業ということで減船対策が打たれているわけでありますけれども、これを読みますと、同一漁業種類内においてその漁業の許可または承認を受けたものが水産庁長官が適当と認める漁獲努力量をおおむね二割以上縮減する漁法の転換または附属船の縮減を行い、許可または承認を受けることを必要としているわけであります。  実際に漁民、船を持っておられる方に聞いてみますと、この二割というのが難しいためにやりたくてもなかなかできないというような実態があるようであります。ちなみに平成六年に、山口県の底曳網連合会の会長さんは何隻も持っておられて、そういうことで減船しようとしたんだけれども、この二割という壁がどうしようもなくて結局自殺されたというような悲惨なことが私たち中国地区の中でも起きております。この二割という枠ではなくて、もっと緩やかな枠で減船していけるようなことをこの機会に考えていただかないとますます大変なことになるというお話を伺うわけでありますけれども、その辺はどのように考えておられますか。
  174. 東久雄

    政府委員(東久雄君) 現在の減船の要綱で、先生指摘のとおり、おおむね二割ということになっております。これは意味のある生産構造の再編に結びつけるという考え方で、その基準というものがもう随分昔、一九七七、八年ごろに減船をやり始めたころの基準としてあるわけでございます。これはそういう意味でやはり相当の意味のあるものでなければならないという要請が片やございます。  それからもう一つ、TAC制度を導入したことによる減船ということにつきましては、当面、私どもはできるだけそういう影響を受けないような形で、TACというのは本当に資源管理上最適なものを即時やるということになると相当厳しい話になることになりかねないわけでございまして、その辺は社会的、経済的な事情を勘案しながら徐々にやっていくという形をとっていかざるを得ない。それはやはり協定制度その他の中で適切な措置をとりながらということを考えておりますので、当面すぐに大幅な減船はないというふうに考えておりますけれども、今後そういう調整をしていく必要が生ずる場合には、それに対応する措置としてどう考えるべきかということで取り組んでいきたいというふうに考えております。
  175. 常田享詳

    ○常田享詳君 ぜひそういった苦しい状況にある漁業者の方々の実態を把握していただいて、そういった方々が実際に実行しやすいような状況をつくっていただきたいとお願いを申し上げておきたいと思います。  これも時間がなければ要望ということで考えておりましたが、難しい問題でもありませんし、先ほど我が会派の戸田委員も同じような質問をされましたので、運輸大臣にお願いを込めて質問させていただきます。  実は我が県にも境港に海上保安庁があるわけであります。ところが、先ほど来申し上げたように、韓国漁船の操業問題等いろいろあるけれども、現在ある巡視艇等の速力が非常に遅いし、後を追っかけているというようなことで、はっきり申し上げて情けないような状況もあってお気の毒だと思っております。働いておられる方も一生懸命やろうと思っているんですけれども、何せ配備されているものの機能がそれに伴わないということであります。  そうなりますと、先ほど戸田委員もおっしゃいましたように、巡視艇等の配備、特にヘリコプターを搭載した巡視艇というものは絶対必要じゃないかなと。日本海側に五カ所ぐらいは少なくともそういうものを配備し、境港も含めて早急にこういつ九ものの配備をしていただきたい。これもずっとお願いしているけれども、予算の問題でカットされている。しかし、今度の海洋法批准ということになればそんな問題ではありませんので、ぜひその辺の御決意も含めて回答がいただければと思います。
  176. 亀井善之

    国務大臣(亀井善之君) 水域が大変広くなるわけでありまして、そういう面で近代的な装備を有する高性能な巡視船艇と、また今御指摘の航空機等の問題につきましても装備を計画的に推進してまいりたい。特に、御指摘もいただきましたが、もう耐用年数が来ておる船艇もまた航空機もあるわけでありまして、これらは予算編成に向かって総力を挙げてその体制ができるような努力をしてまいりたい。今回のこの海洋法に伴う法案の審議に当たりましても、このような特別委員会を設置をされたことでもありますし、大蔵省にそのようなつもりで努力をして万全な体制をしいてもらいたい、このように考えております。
  177. 常田享詳

    ○常田享詳君 運輸大臣も同じ気持ちでおっしゃっているんだと思いますが、耐用年数が来たものを更新するというだけではなくて、先ほど申し上げましたように、他国の漁船等もかなり機能がいいものが不法操業等をしているという実態もあるわけでございますので、重ねてでございますけれども、そういった今緊急な、そして必要となっているものの整備につきましても優先的に配備をしていただきたいとお願いを申し上げておきたいと思います。  最後にもう一点お尋ねを申し上げたいと思っておりますが、水産資源保護法の一部を改正する法律案についてであります。  これは水産動物の種苗の輸入防疫に関する問題であります。植物とかそういったものについては、動物もそうでありますけれども、我が国は検疫制度がかなり充実して行われていたにもかかわりませず、どうも水産物、水産動物に関しては非常におくれてきた。きょうまで制度化がなされなかった。今回初めてなされるということでありますが、まず最初になぜ今日までこういうふうに制度化がおくれてしまったのかということ、このあたりをお尋ねしたいと思います。  といいますのは、なぜこういうことを申し上げるかというと、もっと早く整備しなければならないような状況があったと思うんですね。これは農林水産委員会でも指摘されたところでありますけれども、例えば四年前に熊本県のクルマエビ、中国から輸入された稚エビが、恐らくビールスによってでありましょうけれども、三分の一に減ってしまったというようなことも起こっておりますし、海藻等についてもいろいろ中毒が出たというようなことも指摘されていて問題になった。それから貝類、そういうようなことが起こっていたにもかかわりませず、なぜ今日まで制度化がおくれたのか、まずその制度化がおくれた理由をお尋ねしたいと思います。
  178. 東久雄

    政府委員(東久雄君) まず、魚病というのが養殖漁業とともに研究が進んできたという面がございます。魚の病気というのは、やはり水中にいて、その水の流れの範囲内での病気ということになるために、空気伝染それから接触伝染ということがほとんどないために余り注目を受けていなかったということが現実としてございました。それが我が国の養殖業が発展するに従って注目され始めて、その点についての、いわゆる外国からの病気というよりも、国内でのいろいろな魚の病気に対する対応をどうするかということ、これは相当薬を使ったりして問題を引き起こしたこともございましたけれども、その対応ということがまず最初だったと思います。  そこで次に、外国からの魚についてどういう体制をとるかという問題があったわけでございますが、やはり国際的なルールがなかなかはっきりしない点がございました。また、情報収集等にも難しい点がございました。  その中で、幸いにというか、この国連海洋法条約の中で、今回百九十六条で海洋環境に重大かつ有害な変化をもたらすことを防止する義務というのが入りました。それが一つ。  もう一つは、ガットのウルグアイ・ラウンドの交渉の中で、新しい要するに防疫歪曲的でない検疫制度、国際獣疫事務局、OIEの基準に従った検疫制度というものをとるべきだという方向が出され、この国際獣疫事務局が平成七年五月に輸入検疫制度を設けるように各国に勧告をしたということがございます。それからまた、この国際獣疫事務局がいろいろな情報収集の中心になるという制度もでき上がりました。この機会をとらえて我が国としては検疫制度を導入しようということで、現在提案をさせていただいておるわけでございます。  そういう経緯がございましておくれたんではないかというのは、国際的な動きというようなものとの整合性ということもあったということを御理解いただきたいと思います。
  179. 常田享詳

    ○常田享詳君 おくれたことを私もほじくって言おうとしているわけではございませんで、今回、今お話しのようにこの国連海洋法の批准に合わせて導入されるということを大変喜んでいるわけであります。  そこで、どのようなものを対象に考えておられるのか、それからさらに将来的にはこの充実強化のためにどういうことが課題としてあるのか、そのあたりをお尋ねしたいと思います。
  180. 東久雄

    政府委員(東久雄君) まず、対象となる水産動物の種類でございますが、これは我が国に未侵入の、ないしは先ほど先生から御指摘のあったウイルス、エビのウイルスというようなごく一部で発生しているという重要疾病、これは発生したら相当大きな被害をもたらすというような疾病、これについて感染のおそれのあるものというものを限定したいと考えております。  そこで、魚といたしましては、サケ科類の卵、魚卵でございます。それからコイの稚魚、それからクルマエビ属のエビの稚魚、稚エビでございますが、そういうものを考えております。それらはそれぞれ対象となる病気も一種類から五種類ぐらいまでございます。それぞれの対象魚病というものを注意していきたいと。  今後、先ほど申し上げました国際獣疫事務局の勧告、それからそこがいろいろ発生の情報等をもたらしてくれますので、それらの状況を見ながら追加すべきものは追加していくという形で取り組みたいと考えております。
  181. 常田享詳

    ○常田享詳君 それでは最後に、このたびの法案では輸出国の無病証明制度を中心にしたことになっているわけでありますけれども、こういったことについては将来的には水際できちんと検査するというシステムが必要ではないか。先ほど申し上げました熊本の例なんかを見ても、ちょっとしたことで何百億というような被害を受けるようなこともあるわけでありますから、今回のことは第一歩として評価いたしますけれども、将来的には水際できちんとこういう被害をこうむらないようなシステムを構築していただくことを強く要望いたしまして、質問を終わりにしたいと思います。  以上です。
  182. 菅野久光

    菅野久光君 社民党の菅野でございます。  海洋の包括的な法秩序の確立を目指す海洋法条約がようやく発効されるようになりました。この条約は一九五八年以来といいますから、実にことしまで三十八年間、三次にわたる国連海洋法会議の中で発展途上国と海洋先進国との間でさまざまな議論が長期間にわたってなされ、ようやくここまでこぎつけたというような条約でございます。  私は、漁業の面から今日までの我が国の状況を考えてみたいというふうに思います。  排他的経済水域二百海里の設定というこの条約の内容は、韓国中国を例外として、我が国と密接な漁業関係のあった主要国によってこれを先取りされたにもかかわらず、我が国対応は必ずしも十分とは言えなかったというふうに思います。一九七六年の十二月に旧ソ連が二百海里水域を設定したことに対抗して、暫定的に漁業水域を設定したにすぎませんでした。  こうした二百海里体制が漁業の分野で定着していく過程の中で、北洋漁業など国際漁場に出漁する我が国の遠洋漁業が次から次へと撤退を余儀なくされて、操業の場を失ったのでございます。その結果、廃業とかあるいは減船に追い込まれました。その漁船数は今日までに三千五百隻をはるかに超えているのでございます。  また、我が国周辺水域においては暫定水域法が施行されましたが、これは韓国中国漁船の操業は適用除外というふうにしたために、それから今日までの二十年間にわたって韓国中国漁船の操業による漁業被害が続発し、深刻な紛争が相次いで発生いたしました。  その紛争は、最初は北海道沿岸漁民との間で激発したという言葉を使ってもいいと思います。やがてそれが長崎に至る我が国全域に拡大されていきました。特に大型漁船によるトロール漁法によって漁業資源の荒廃という深刻な事態を招いています。北海道の留萌の北に羽幌というところがありますが、その沖合に武蔵堆という物すごくいい漁場があったんですが、この大型トロールによって海底がほとんど平らに近くなってしまって、漁業資源が極端に少なくなったというような状況などもありました。このため、北海道の漁業団体を初めとして全漁連など漁業団体は早くから二百海里の全面設定、全面適用を主張して、全国的な運動となりました。  こうした経緯を考えますと、今回の条約批准海洋法制の整備は遅きに失した感はあるものの、私は評価したいと思っています。  そこで、まず外務大臣にお尋ねをしたいと思います。  先ほど申し上げましたように、二百海里体制が定着していく中でもたらされた遠洋漁業の崩壊と韓国漁船など外国漁船の無謀操業による我が国周辺水域における漁業資源の荒廃という事態について、外務大臣はどのようにお考えでしょうか。
  183. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員指摘のとおり、これは随分長い間国際社会において検討されてきた海洋法条約でございます。三十八年というお話がございましたけれども、私も学生時代、国際法の講義でこの海洋法の初期の会議の代表であった高野教授からこの海洋法の話を聞いたなと思い出しておったところでございます。そんなこともございまして、確かにこの条約の採択以前にも、七〇年代の後半ごろから諸外国が二百海里の水域を設定してその管轄権を行使したと、こういう状況がございました。  そういった中で、ほかにもいろいろ要因はあったと思うのでございます。我が国の産業構造の変化その他あったと思いますけれども、この二百海里がずっと広がってくるという状況の中で、漁業者の方が非常に苦しい状況に追い込まれていったと思います。そういった中にありましても、関係者また政府も協力いたしまして、そういった被害を極力小さいものにしていくということは努力してきたつもりでございます。  具体的に申しますと、日米、日加あるいは日ソというようにいろんな協定をつくりましたし、またアフリカや中南米、あるいは大洋州ともいろんな枠組みをつくったところでございます。しかし、それにいたしましても、かつて五〇年代の初めには外国の二百海里などの水域内での漁獲量が三百四十万トン余りだったのが、現在では八十万トン前後の水準まで来ているという状況でございますので、確かにその影響は大きかったと思うのでございます。  それからまた、いま一点御指摘になりました中国あるいは韓国、そういった漁船の操業の関係我が国周辺の水域資源状態が大変悪化している、そして漁業者の方々が大変な御苦労なさっておるということもよく承知しております。そういったこともございますので、これまでもそういった韓国あるいは中国との関係につきましては、外務省といたしましても、相手国の政府に対して指導とか取り締まりの強化につきましては繰り返し要請をしてきたところでございますけれども、今回こういった国連海洋法条約締結されることになったわけでございますから、この条約趣旨を踏まえまして資源を適切に維持していくといった観点からの新しい協定を両国との間に締結していく、こういうことで今臨んでいるところでございますが、鋭意努力してまいりたいと存じます。
  184. 菅野久光

    菅野久光君 大臣の御認識、今までの漁民の苦しみだとか漁業が大変な状況になってきたということを御認識の上で今の答弁をされたんだというふうに思いますので、そこのところを踏まえてこれからの日韓、日中の漁業交渉に当たっていただきたいと思います。  時間の関係もございますので、ちょっとまとめて御質問申し上げたいと思います。  海洋法条約は、国際法秩序の中でどのような位置づけにあって、またいかなる役割を果たすものであるか。さらに、その批准我が国にどのような利益をもたらすことになるのか。さらに、閣議了解に「新たな漁業協定早期締結されることとなるよう、速やかに交渉を開始し、」とありますけれども、その見通しはどうか。  また、今日までの日韓漁業協定交渉はいつも難航していたわけです。新協定締結の結論が、仮にということで結論を得るように努力をしていただきたいというふうに思うんですが、漁民の人たちは、いつまでもだらだら交渉を続けていてこのことがなかなか決まらないということであっては困る、だから一年以内にはこの交渉をひとつ決着させてもらいたいという強い希望を持っています。  そういうことから、いつまでもこれが決まらないというような場合に一体どうするかということになれば、外交交渉の場合には終了通告というようなことがあって、日韓の場合には一年、日中の場合には三カ月というふうに聞いておりますが、そういうことを前提にしてということはなかなか交渉の場合には正当な交渉にはならないのかもしれませんが、そこら辺のところをやっぱり決意をして、早期締結される努力をぜひしていただきたいと思うのですが、その辺の決意も含めてお聞きをいたしたいというふうに思います。
  185. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず最初の御質問は、国際法秩序の中での今回の条約の占める位置づけという御質問でございましたけれども、今回の国連海洋法条約、そしてこの第十一部の実施協定も含めてでございますが、これは国際法全体の中で海洋の分野に関しまして包括的に記述すると、そして海洋に関する安定的な法秩序を確立していくと、そういった大変大きな意義のあるものであるというふうに位置づけておる次第でございます。  そしてまた、そのことが我が国にどのような利益をもたらすかと申しますと、これも本日のこの審議でもお答えしたところでもございますけれども、我が国が世界でも有数の主要な海洋国家であるということを考えますと、海運、漁業等の面で非常に大きな利益がございますし、そもそも我が国の存立そのものが海洋というものを抜きにして、あるいはその海洋における秩序というものなくしてあり得ないんだということで、大変大きな意義があるものだと、こう考えております。  それから二つ目の御質問漁業協定の見通しでございますが、韓国との間におきましては先月、五月の九日並びに十日に漁業実務者の間における協議を行ったところでございます。また、中国との間におきましては、四月の上旬に、これは海洋法並びに漁業等の問題に関しまして非公式の会合を行いました。  そのように、両国につきましてもそれぞれ第一歩はあったわけでございますけれども、さあ、この次をどうするかは、今外交ルートで次回会合の設定等について鋭意調整しているところでございまして、また今の段階でいつ決着するという見通しはとても申し上げられる状況ではございません。いずれにいたしましても、我々といたしましては、早期にこの交渉を本格化していき、そして円満な解決を図ってまいりたいと存じます。  しかしまた、これは三つ目に御指摘もございましたように、大変容易ならざる交渉でございますので、本当にそうスムーズにいくとも思えません。そういった場合に一体どうするんだということでございますが、委員からいろいろ御指摘もございました、漁業者の方々が一年内にも決着せよとおっしゃっていると、またそういった御趣旨の申し入れは与党三党からもちょうだいしておりますので、そのことも外務省、政府といたしましても十分その申し入れの御趣旨をも体しまして交渉に当たってまいりたいと、こう考えている次第でございます。  それからまた、現在の協定に終了通告といった規定があるということも承知しております。しかし、それをどうするかということは、これから交渉をいよいよ本格的にやろうという段階でございますから御答弁は差し控えさせていただきたいと存じますけれども、何しろ私どもといたしましては、精力的に交渉をし、早期に円満な決着を図ってまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  186. 菅野久光

    菅野久光君 韓国中国国連海洋法を批准していることを考えますと、この機会にこそ今までの行きがかりを捨てて、新たな漁業秩序を構築するために海洋法の精神にのっとった協定締結できるように最大限の御努力をぜひお願いいたしたいというふうに思います。全国の多くの漁業関係者が大きな関心と期待を持ってこの交渉の成り行きを見守っているということを忘れることなく、ひとつ頑張ってほしいというふうに思います。  時間の関係もございますので、あと農林水産大臣水産庁長官にお尋ねをいたしたいと思います。  新たな海洋法下の漁業を中心とした諸制度をいかに整備して、いかに積極的に活用するか、その課題と対策を明らかにしていく必要があるというふうに思います。特に、TAC制度を導入するに当たっては、その前提として、まず一つは減船による漁獲努力量の調整、国の減船補償など財政援助を伴う生産構造の再編整備。そして、本格的資源管理漁業の定着に向けての漁業者意識の改革。そして、我が国周辺漁業の実態調査と把握、そのための研究調査体制の整備、国と県の研究機関の拡充強化とその機能分担。最後に、漁獲実績の把握と監視・取り締まり体制の整備拡充。こういったようなことの条件整備を行うことが大前提だというふうに考えます。  また、TAC制度の導入による漁業管理の強化によって漁業経営が不振に陥るのであれば、それは本末転倒と言わざるを得ないわけですが、これらのことにどのように対処するお考えか、それをまず承りたいと思います。
  187. 東久雄

    政府委員(東久雄君) 先生今御指摘の種々の問題、これはTAC制度といいますか、今回の量的な管理制度の定着、運用を図るという過程の中で適切に対処していかなければならない点だと思います。  まず一つは、減船等の生産構造の再編整備の問題でございます。この点につきましては、一番最後に御指摘の経営問題との絡みもあり、大幅な減船に直ちに結びつくことのないように十分意見を聞きながら慎重にやっていきたい、現実的にやっていきたいというふうに考えておりますけれども、仮にそういうことが必要だと、漁業の再編という形が必要だという段階になりました場合には、それはその段階で検討していかざるを得ないというふうに考えております。  それから漁業者の意識、これは基本でございます。資源管理漁業者の自発的な意思に基づかないと全くこれは、例えば報告にしても何にしても潜ってやろうとか、いろいろ問題が出てまいります。したがいまして、これを十分周知していただくということ、自分たちの問題であるという意識のもとにやっていただくということが大事だと思います。私ども、今回の制度を組むに当たりましても、十分意見を聞いて現実的な対応をしたと考えておりますし、これからもその実行に当たってそういう御意見を聞きながらやっていきながら、なおかつそれを理解していただくような手をいろいろな形で打っていくということを考えていきたいと思います。  それから、資源調査の点も大事なポイントでございまして、今までばらばらにいろんな資源ごとに資源調査等は積み重ねておりましたけれども、平成七年度からこのTACの制度へ向かっての資源調査ということで再編をやっておるというのが現状でございます。  それから漁獲実績の把握の問題、これもそのとおりでございまして、適切な把握につきましてネットワークをつくるということで、本年度から予算をちょうだいいたしましてネットワーク化を進めるというようなことを考えております。  最後に経営問題の点、これはやはり長期的にはこの制度によって経営にもプラスであろうというふうに思うわけでございますが、短期的にも漁業経営に影響がないように、できるだけ無理のないように現実的な導入ということを図っていきたいというふうに考えております。
  188. 菅野久光

    菅野久光君 今も長官からお話がございましたが、やっぱり重要なことは漁業経営の維持ということだと思うんです。従前の漁獲実績やあるいは生産制限による経営への悪影響、一定水準の所得の確保、漁獲割り当て量の年変動の防止といったことが配慮される必要があるというふうに思います。  このことをスムーズに行うためには水産資源保護法を積極的に活用する。特に、その中の第四条「水産動植物の採捕制限等に関する命令」、第五条「漁法の制限」、第九条「許可漁船の定数」、第十条「定数超過による許可の取消及び変更」、第十一条「損失補償」、第十三条「漁獲限度」、第二十九条「水産資源の調査」などの条項は、これはTAC法を支援するためにあると言っても過言ではないというふうに思うんですが、そういった意味ではこの制度を全面的に活用すべきだというふうに思いますが、その点はどのようにお考えでしょうか。
  189. 東久雄

    政府委員(東久雄君) ただいま御指摘水産資源保護法を積極的に使ってやってみたらというお話でございます。この水産資源保護法の中でも使える部分、これは実は先生今御指摘の第四条「採捕制限等に関する命令」のところ、これは今度の法律の中でもたしか第七条のところに引いてございます。これとか、それから漁業法というような手法はこの中で使っていくことを考えております。  ただ、水産資源保護法は強制法規でございます。要するに、一遍にばさっと物事をとめたりする非常な強制法規でございます。したがいまして、先ほど御指摘の損失補償というようなことも考えてやっておるわけでございます。しかし、いろいろと漁業者の方々との研究会での話し合いということを経ましても、やはりむちゃなやり方をやってくれるなということで、また海洋法条約そのものの中にも社会的、経済的な条件を勘案してTACを徐々に最適利用に持っていくことができることになっておりますので、そういうことも踏まえまして、今回の法律ではやはり水産資源保護法を直にやるのは無理があるということから新しい法制度を設けておるということでございます。  なお、先ほど申し上げました許可漁船の定数の問題、定数超過の取り消しの問題、それから損失補償の問題、先ほどの十一条でございますが、これらの規定承認漁業だけに対応できる条項でございまして、なかなかこの水産資源保護法だけでは無理な点がございます。そういうことで新しい法制をお願いしている次第でございます。
  190. 菅野久光

    菅野久光君 水産資源保護法なども活用してと、こういう意味合いでございますが、TAC制度の導入は、これは見方を変えると、海洋生物資源管理にいわばコストがかかるということだというふうに思うんです。だれがこのコストを負担すべきかという問題にどうしても突き当たるわけです。しかし、こうした議論は必ずしも今まで余りされていないのが現実だというふうに思うんです。  戦後の漁業法の改革のときには、漁業権補償の財源として、漁業権や漁業許可に際して免許料とかあるいは許可料を徴収する仕組みが考えられたことがあります。水産資源保護法を活用するに際しても損失補償、これは国家補償が原則でありますが、その財源について今の国の財政からなかなか大変だと。国の補償だけというわけにもいかない面があるのではないかと思いますが、例えば免許料とか許可料の徴収なども含めて議論すべきではないかというふうに思うんですが、その辺はいかがでしょうか。
  191. 東久雄

    政府委員(東久雄君) 先ほどのところにちょっと戻る点もあるんですけれども、水産資源保護法の場合、先ほどの損失補償というような手だてを講じられるのは、これは水産資源保護法資源の枯渇または絶滅ということを懸念して、強制的に一挙にとる手段でございます。したがいまして、これは公共事業と同様に、水面の埋め立てというような公共事業なんかをやるときもそうでございますが、土地の強制収用に近いような形の状況を勘案してやっております。したがいまして、そういう強制的な形で資源管理というのは、今回のTACの管理というのはなかなか難しいのではなかろうかということから、現実を踏まえながら徐々にやっていくということになるわけでございます。  そこで、先ほど先生の御提案の手数料といいますか許可料を取って云々というお話がございました。現在、漁業経営が非常に悪い状況のところで、例えば相当な許可料になったりしますと、これは事実、他の国で入漁するときのマグロ漁なんかは相当な入漁料を取られたりすることがあるわけでございますが、それは今の漁業の現実の中ではなかなかなじまないのではなかろうかという御議論がございます。  そういうことで、今回はそういう直接的なものはやっておりませんが、一つのやり方として、今も資源管理の減船のときに共補償という形をとっています。漁業の全体がどういうふうに生き残っていくか、どういうふうに自分たちの経営をよくしていくかということをやる場合に、そういう漁業のグループの中でやるということが今ちょっと限界なんではなかろうかというふうな感じでおります。  ただ、一つの新しいサジェスチョンとして、実は先ほど漁業法のお話がございました。これは手数料というのを取ることになっておったところが、二年たってだったと思いますが、これはやはりそぐわないということで漁民から廃止を強く要請されたという経緯も私ども勉強しておりまして、なかなか即時にやるのは難しいのではないか、資源管理に対する意識というものが徐々に高まって、それで漁業者からそういう方向が出てくるということになって初めて検討し得ることではないかなというふうに考えます。
  192. 菅野久光

    菅野久光君 自主的に出てくれば一番いいわけですけれども、一たん懐に入れたものを出すということはなかなか難しい問題ですが、これは行政としては常にそういったようなことを、全体としていかに資源を守っていくかという観点からやっぱり問題提起をしていかないとなかなか大変ではないかなというふうに思います。  このTAC制度の目的を達成するためには、漁業者が守れる制度でなければこれは理想に終わるものというふうに私は心配するんですが、どのようにして漁業者に制度の必要性をPRして理解を求めていくのか、また関係者の意見を聴取する仕組みだとかあるいは組織など周知の方法はどのような仕組みを想定しているのか、さらにその期間はどのように考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  193. 東久雄

    政府委員(東久雄君) 今回の新しい量的な管理のシステムにつきまして、私ども、去年の九月から漁業者の方にも参加していただいて研究会を続け、現在のような現実的なやり方で意見の一致を見て、導入させていただこうということでございます。そういう過程で、私ども各地のブロックへ参りまして、それぞれのブロックの漁業者の方、都道府県または市町村の方、漁協の方、そういう方々ともいろいろな話を積み上げてまいった成果でございます。  まだまだ十分理解が進んでいないという御批判もございます。そういうこともございまして、我々はいろいろマスメディアなどを使いながら現在宣伝をしておりますが、この法律制度ができた暁には、この導入にはもう少し時間がございますので、その間に十分な周知徹底を図りたいというふうに考えております。  なお、今後の運用につきましても、一番中心になる漁獲可能量の設定並びに配分につきまして十分意見を聞くシステムというものもしつらえておるところでございます。
  194. 菅野久光

    菅野久光君 それで、その周知の期間といいますか、それはどのぐらいを考えておられるのか。
  195. 東久雄

    政府委員(東久雄君) まず、制度そのものの周知につきましては、この秋を目指してできるだけ周知をさせたい。  それから、漁獲可能量の設定でございますが、これは設定次第公表するということでございまして、スケジュール的なものはなかなか難しゅうございますけれども、十月、十一月ごろで一カ月程度の期間は、要するに一月からの開始のTACの一カ月程度の期間は時間を設けて公表できるようにというふうな作業を考えております。
  196. 菅野久光

    菅野久光君 漁業の中には大臣許可漁業と知事管理漁業とのそれぞれの配分について、国が都道府県等の意見を聞く仕組みにするというふうに言われておりますが、基本的にはどのような考えに基づいて配分するのか。新たな漁業調整問題の火種となるのではないかというふうに私は心配をしておりますが、現実に北海道において問題となっているように、国が管理する漁業と知事が管理する漁業が同じ漁場で操業が行われている場合、それぞれに対する規制が異なるとしたら、一方の漁業者から不満が生じることは、当然これは予想されるわけです。  ですから、できれば権限を統合して統一的に管理していく必要があるのではないかというふうに思いますが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
  197. 東久雄

    政府委員(東久雄君) まず最初に漁獲可能量の配分の問題でございますが、これは都道府県の知事さん並びに中央漁業調整審議会、これは漁業者の代表が入っておられる審議会でございますが、そういうところの意見を聞くということで、この意見を参酌して、さらに過去の漁獲実績だとか、現在やっておる漁業の状況とか、それからまたいろいろ、協定制度その他を活用されて漁業資源管理を自主的におやりになるということもある、そういうようなものを勘案しながら運用していくことが必要だと考えております。実績ということがやはり一つのポイントになるんではないかというふうに考えます。  ただ、今第二点で御指摘のありました問題でございますけれども、これはもう委員御承知のとおり、全国的な展開をするものは農林水産大臣が、それから地域的な展開のものは都道府県知事ということになっておるわけですが、北海道地区は北海道自身が非常に大きな範囲なものですから、多少その辺の境目というようなところがあることは事実でございます。ただ、これまでの長い慣習によって構築されてきておりまして、北海道地域の大臣許可漁業といえども、北海道だけではなくて全国から参入しているという部分もございます。そういうような長い年月をかけて構築されてきた操業秩序というものが、この漁獲可能量制度の導入に際しても一挙に大幅に変革するというのは無理があるというふうに考えておりまして、混乱なく導入しながら、今後の資源管理の進み方を見ながら、こういう問題も取り組む必要があるときに取り組むべきだろうと考えております。  したがいまして、当面は今の漁業の調整の中で配分をやっていくという方向でやっていきたいと考えております。
  198. 菅野久光

    菅野久光君 漁業者同士のトラブルというのはいつもあって、その調整にそれぞれの都道府県が恐らく大変苦労しているんじゃないかというふうに思いますので、国としてもなるべくそういうトラブルが起きないような仕組みというものを常に考えていってもらわなければならないというふうに思っております。  そこで、漁業の国内生産と輸入水産物との関係ですが、現状は完全に競争関係にあるわけです。この状況が現状のまま放置されると、TAC制度により国内生産量がさらに減少した魚種は輸入増大現象を引き起こして、漁業経営が圧迫されることになるのは想像にかたくありません。  この際、輸入水産物は国内生産の補完として位置づけて、TACに合わせて調整する必要があると思うんですが、貿易の自由化その他の問題を含めて非常に難しい問題だとは思いますが、このTAC制度とのかかわりを含めてどのようにお考えでしょうか。
  199. 東久雄

    政府委員(東久雄君) ただいま委員指摘のとおり、対外的な問題がありまして、貿易の制度というのはなかなかきちっとした理由がないとさわりにくい問題でございます。  そこで、今回のTACの制度でございますけれども、これは資源管理するということが第一の目的でございます。したがいまして、市場流通の数量を制限するという目的ではないために、これをそのままいわゆる輸入に関する措置と直接考えることは無理があるのではないかというふうに考えるわけでございます。  ただ、当面TACの対象になります魚種は幸いにしてほとんどが今はまだ輸入割り当て制度のもとにございます。いわゆるIQ制度でございます。したがいまして、我々は関係者との需給協議会の場を通じて需給情報を交換して、それで見通しの公表等をやりながら秩序のある輸入が図られるようにしていきたい。また、そのときにやはりTACの数量というのが、大体これぐらいの生産になるという見通しが非常に立ちやすいという意味秩序ある輸入を行っていっていただける一助になるというふうに考えております。
  200. 菅野久光

    菅野久光君 今、長官が秩序ある輸入ということを話されているんですが、私どもはいつもそのことを願っているんですが、どうも商社というのは極端に言えばとにかくもうけさえずればいいということで、秩序ある輸入というのはもう絶対だめなんですね。そのことが魚価安を引き起こして、漁家の経営を圧迫しているという問題があるわけです。  私は、いよいよ今度TAC制度になっていった場合に、ここのところが大変ではないかなというふうに思いますので、長官がお述べになりましたように、秩序ある輸入といいますか、そういうものが着実に行われるような行政指導といいますか、そういったようなことをちゃんとやっていただきたいと思います。  最後に、これは大臣にお尋ねしたいと思いますが、我が国漁業制度というのは、漁村の伝統だとかあるいは慣習的な権利を制度化したものだというふうに思うんです。戦後の制度改革以来、漁業発展の土台となってきた漁業権制度、漁業許可制度など、今の法秩序漁業管理システムは既にもう検討の時期に来ているというふうに思います。したがって、海洋法条約批准して海洋生物資源を量的に管理する制度に移行するに伴って、我が国漁業制度も海洋法条約規定する資源管理システムとの整合性、一体的構成の問題として制度の根本に立ち返って全般的に見直すべきであるというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  201. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 今まで委員からるる問題点を御指摘いただいたのでありますが、基本的には漁民の方々はこの条約ないし法律についてどう考えているかと思うのでありますが、まず期待と、そして同時に不安をお持ちだろうと思うんです。期待というのは、漁業者の皆さんがおっしゃるとおり、いわゆる全面設定、全面管理体制に入って、漁業主権を確立して、特に韓国等の不法操業を排除してもらいたい、こういう期待を込めてこの海洋法条約関連法に御期待をなさっておると思うんです。  ところが、今、委員からるる御指摘がありましたように、この条約に行きますと厳しい総量規制が入ってくるのではないのか。そうすると、せっかく今まで自分らが持っておられた既得権がいろいろの面で制限され規制されるのではないのかなという御不安、さらにまた県知事と国との間の調整がうまくいくのかなという委員指摘のような御不安、多々問題が出てくると思うんです。  水産庁長官初め皆さんが努力してこの法律をつくってくれましたが、一挙に理想的な形にいくとは我々も思っておりません。漁家の意見やいろいろな御議論を聞きながら、これも改めるにやぶさかであってはならない、弾力的にこの制度を運用して、そうして長期的に漁業の安定が招かれるシステムにしていかなきゃならぬと思います。  御指摘のいろいろの問題点がございますが、特に漁業の努力量規制と今度新たに入ってくる資源の直接的な数量管理を目的とする漁獲可能量制度、この二つのミスマッチですね、これを非常に心配していらっしゃると思うんです。ですから、そういう意味において我々も県も積極的に努力してまいらなければなりませんが、両制度が相まって資源管理の徹底が図られるものと考えております。  委員指摘のように、今までのいろいろの法制その他現状にマッチしないものも多々出てくると思うんです。したがって、我々といたしましても、これまでの我が国漁業法等による既存の漁業制度についても必要なものについては積極的に見直しをし、制度の目的に合うようにしてまいりたい、かように考えております。
  202. 菅野久光

    菅野久光君 終わります。
  203. 立木洋

    ○立木洋君 まず初めに、外務大臣大陸棚境界画定の問題についてお尋ねしたいと思うんです。  この大陸棚境界画定の問題というのは、今回の第三回国連海洋法会議で最終段階まで争われた問題だというふうに承知しております。これは等距離基準とそれから衡平原則との間の対立が主な内容だったと、そういう経過があったと思うんです。いずれにしましても、七十六条において二つの基準が示されて、自然延長に基づいて外縁に至るまでのものと、それから二百海里以内の場合には二百海里までのものと、今二つの基準が示されたと思うんです。向かい合っている国同士の問題、それから隣接している海岸を持つ国間の境界画定の問題というのがより複雑だったというふうに思うんです。  これについては八十三条で御承知のように決められておりますけれども、これは衡平な解決のために国際法に基づいて合意により行うということですから、具体的な基準というのは意外に示されていないわけですね。結局は国際法に基づいて合意をかち取らなければ決まらない、しかし決まらなければ暫定的な取り決めをも行い得るというふうなことになっていると思うんです。  それで、これまでもいろいろ経過がありましたけれども、例えば日韓間の大陸棚協定を決める場合にどういう境界画定立場日本が立つのか、あるいは中国日本との間での境界を画定する場合にどういう立場に立って日本側は主張なさるのか、その基本的な点をまず最初にお伺いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  204. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員指摘のとおり、今回の海洋法条約によりますと、結局隣接するあるいは相対する場合には話し合いで決める、そのときには衡平な解決ということでございますけれども、これも結局国際法に基づいて相手国と合意していく、これしかないわけなんですね、協議するところは。  それで、今、韓国あるいは中国との間でどういうふうな方針で臨むつもりかという御質問でございますが、具体的な対処方針につきましては相手もあることでございましてなかなか申し上げにくいのでございますけれども、一般論として言えば、結局今申し上げました衡平な解決を求めて、これから話し合いで双方が何とかまあこれならと受け入れることができる、そういったラインができないかと、これでいくんだということに尽きるわけでございます。  さらに申しますと、日韓間におきましては、そういうことでこれから交渉を始めていこうということで、今いろいろ接触しているところでございます。  また、中国の方はどう考えるかでございますけれども、これも先方から交渉ということが提起されれば、これはやっぱり話し合わなくちゃいかぬと思います。その際、我が方としては、御承知のとおり、大陸棚境界画定についてはいわゆる中間線原則というものを我が国は主張しているわけでございますので、その原則にのっとって対応をしていくと、こういうことでございます。
  205. 立木洋

    ○立木洋君 八十二条に基づいて、できれば中間線で主張していきたいと。  実は、一九七〇年代に私たちも外務委員会でこの問題について国会で議論したわけですが、そのときの外務省の主張というのは、現在の状況からいえばいわゆる自然延長論が極めて国際的には優勢を占めている、そして今後時間がたっても日本側が有利になる状況はない、もう不利になる一方だというふうな主張が一応あったんですね。  それで、それは御承知のように、一九六九年に北海大陸棚事件の判例がありましたから、この場合にはいわゆる衡平の原則というのは、境界基準、中間線方式、これを画一的に適用するのは否定されたわけですね、この判決によって。そういうような判決が影響したのかどうかということもあるんでしょうけれども、一時期、七〇年代についてはそういう自然延長論が優勢だというふうなことを非常に主張された。そういう考え方、そういう見方というのは現在の立場ではとらないわけですね。変わったんでしょうか。いかがですか。
  206. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 確かに御指摘のような答弁を申し上げたことがあったようでございます。具体的には、韓国との大陸棚南部共同開発協定国会審議の際ではなかったかと存じますけれども、その当時、国際的な状況としていわゆる自然延長論に対する支持がずっと強まりつつあった、そういう状況を踏まえてそういう御答弁をしたことは確かにあるようでございます。  しかし、その後いろいろ国連でも審議が進みまして、検討が進みまして、この国連海洋法条約が採択されたわけでございますが、そこでは明示的に自然延長論が規定されるということにはなりませんで、むしろ沿岸国の二百海里までの海底及び上部水域がEEZのもとに規定されるということになったわけでございますので、原則として二百海里大陸棚ということになったということで、現在の御審議をいただいております国連海洋法条約を御提案した政府立場としては、現在の状況を踏まえて御説明申し上げ、また御審議をお願いしている、こういうことでございます。
  207. 立木洋

    ○立木洋君 これは外務省の方で結構なんですけれども、今、一九七〇年代以降、いわゆる向かい合っている国同士の大陸棚境界の画定が中間線で画定されたのは、全体の比率の中でどのぐらいの比率を占めているのでしょうか。
  208. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) 向かい合っている国の間で中間線をやっている国でございますけれども、先例といたしまして例えば今手元で見ますだけでも十幾つの、これは自分でそれを宣言しているところ、それから合意してやっているもの両方含めてでございますけれども、十幾つあると理解しております。
  209. 立木洋

    ○立木洋君 私も調べてみますと、海洋時報でデータが出ておりまして、一九七〇年代後半以降、等距離以外の方法による境界が画定された件数は全体の三分の一に満たない、こういうデータもあるわけですね。だから、大臣が今おっしゃったように、その後の経過を見れば、いわゆる自然延長論が優勢を占めておるという当時の見方とはやっぱり大きく変わってきているということも私は大切な点だと思うんですね。  それから、一九八二年に行われましたチュニジアとリビアとの大陸棚事件の判例の問題ですね。これは隣接した海岸を持つ国の間における判例なんですけれども、この場合も自国の延長線部分の存在が認定されればそれがそのまま大陸棚の衡平な境界画定をもたらすという主張は誤りであるという判例が出されておりますし、それから一九八五年のリビアとマルタの境界の画定の判例、この場合も、この自然延長は、それに基づく地質学的な要因は、その間が四百海里以上離れている二国間で大陸棚境界画定を行う際の基準とはなり得ても、距岸二百海里以内の海底についての権限を定める際には関連性がない、したがってこの場合の境界画定は両国の海岸の間に暫定的な中間線を引いた上、衡平な考慮に基づいて調整して定めるというふうになっているわけですね。  だから、私は中間線で主張するということがこういう国際判例から見ても、当時と違って大きく変わってきていると考えることが適切ではないだろうかというふうに考えているわけです。  特に問題として引き合いに出したいのは、一九八五年のリビア・マルタ大陸棚事件の判決では、マルタ側に二百海里以内に存在する深さ千メートルの海溝があるわけですが、これを決める場合の基準の考慮に全く入れていないんですよ。これもやっぱり二百海里、いわゆる海底がどういう形をとっておろうとも二百海里の求める範囲内において権限を主張することが可能だというふうなことも出ているので、こういうふうな大陸棚の境界の画定の問題についてその後の推移を見てみるならば、いわゆる慣習法的に国際的にもこれは定着しているとまで見てもいいんじゃないかというふうに思うんですけれども、その辺のお考えはいかがでしょうか。
  210. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほど今回の条約規定のしぶりについて御答弁申し上げました。それから、今も御指摘ございましたけれども、その後のいろいろな判決、判例も出たわけでございますが、そういったものが必ずしも我が国のケースに直接当てはまるかどうかはともかくとして、いろいろそういった判決、判例の示唆するところなんかを見てまいりますと、全体として相対国の間の距離が四百海里未満の大陸棚につきましては自然延長論が適用されないという方向での議論が優勢であるということは言えるんじゃないかと思います。  いずれにいたしましても、先ほども御答弁申し上げましたけれども、我が国としては中間線原則、これによるということで対応したい、こう考えております。
  211. 立木洋

    ○立木洋君 これは八十三条のところに書いてあります。いわゆる国際司法裁判所規程三十八条に基づくという内容で、その三十八条の内容をちょっと調べてみたんですけれども、国際法は、国際条約、国際慣習法、文明国の認めた法の一般原則、これは途上国は若干意見を申しておりますけれども、さらには、いわゆる補助的な手段として国際判例及び学説、こういう問題を総合的にとるならば、私は中間線論を主張するということは極めて正当な立場であるというふうに考えられると思うんです。  なぜ私がこういうことをくどくどと今改めて外務大臣にお尋ねしているかということは、私は日韓大陸棚のときの南部の協定、これについてどうしてもひっかかる点があるので、この問題を改めてただしておきたいという考えがあるんです。  日韓大陸棚の北部の協定というのは、中間線で大体決めたんですね。南部の協定の場合には、これは御承知のように、中間線から日本の内部に入った側を共同開発する。だから、これはどうしても自然延長論を黙認しているのが日本立場じゃないかというふうに一般的に見られるというふうな当時の批判もあったんです。まして言うなちば、中間線でいえば、こちらから大陸棚で言うならば、我々の主権的な範囲として考えられるものをなぜ共同開発までしなければならないのかという問題を私も大分議論した覚えがあるんですよ。  そのときの古文書みたいなものを、外務省が出された文書を私は持ってきたんですけれども、これは外務省が日韓大陸棚協定について昭和五十二年一月二十日に出された文書なんです。これは一九七七年ですよ。これは、日韓大陸棚が何回か廃案になって、そしてついに一九七七年に参議院では自然成立するというふうな状態で通過した内容ですが、このときに出されている文書の中にこういうことが書かれたんですね。  「海洋法会議の趨勢は、いわゆる自然延長論がますます優勢であり、新しい海洋法条約の成立まで本件成立の批准を待っても我が国にとって形勢が有利となることは全く期待できず、むしろ時間の経過とともに我が国立場は不利になることが予想される」と。だから、今急いで共同で開発するという手段をとる方が開発をおくらせる立場よりも合理的なんだという立場で主張されたのが当時の海洋法、いわゆる大陸棚境界画定に対する国際的な推移の見方だったと思うんです。  私は、これは今、そういう見方は適切ではなかった、正確ではなかったというふうに考えることができると思うんです。古文書みたいなものを引っ張り出してなんですけれども、その点だけははっきりさせておいていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  212. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 歴史をつくる過程においては、後世から見てどういう判断をされるかなかなか難しいところでございますけれども、確かにあの時点においては、国連その他の場における議論においても自然延長論が非常に大きな勢いがあったということは否定できないと思います。また、そういった時点において、いろいろなことがございますけれども、韓国との間であのような協定を結んだということはそれなりの意義があったと私は思います。しかし、その際に、今後もますますこの勢いがといったところは、その後の事実あるいは議論の経過を見てみますとそうはならなかったということは認めざるを得ないと、こう思います。  したがいまして、いずれにしても、現在私どもが御審議をお願いしておりますこの条約に基づいて、条約締結を踏まえていろいろ交渉してまいります場合には、先ほど申しましたように基本的に中間線原則によって対応してまいりたいと。ただし、これも相手のあることでございますから、最終的にどういうふうな合意が成るかというのは、これは交渉をしてみまして、ぎりぎり双方の受け入れ可能な解決策を模索していくということでございます。
  213. 立木洋

    ○立木洋君 その当時、全体が自然延長論が優勢だというふうに見たわけではなくて、私たちは当時のほかの野党の方とも一緒にその点については異論を唱えたんですよ。だから、そういう見解もあったということだけ一言申し述べさせておいていただきたいと思うんです。  私は、今度の大陸棚の問題を考える場合に、国際司法裁判所規程の三十八条に述べられている内容に基づいてきちっと理論的な構築をして、交渉の場で堂々と主張するならばこれは必ず、合意が見られない場合でも暫定的な取り決めをすることができるわけですから、そういう点については過去のそういうふうな状況を再び繰り返さないで筋を通した立場を貫いていただきたい。  そういう点からいいますと、この日韓大陸棚の南部協定について言えば、北部協定とあわせて五十年の期間を持っているわけですね。そうすると、二〇二七年まで日韓大陸棚の南部協定というのは事実上生きている状態にあるわけです。ですから、今後大陸棚協定日韓間で想定する場合については、この問題についてはやっぱりその立場を改めるということが必要になってくるんじゃないかと。今後、二〇二七年まで日韓大陸棚の南部協定を守り通すという立場を貫かれるのではなくて、その問題についてはよく私は検討していただいて、今、大臣が述べられた中間線の問題に基づいて改めた画定ができるように努力をしていただきたいと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  214. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほども申しましたように、それぞれいろいろな原則的なあるいは基本的な立場はございますけれども、しかし最終的な合意というのは、あるいは解決策というのは、これはそういったものをお互い踏まえながらも折衝してまいりまして、そして双方にとってこれならということで受け入れ可能な合意ができる、こういうことでございます。  したがいまして、一たんそういったもので合意が成立して、現在できております。そういう協定というものが、その後の経緯にかんがみてよほどの不合理性があるとか、あるいは不合理というのは理屈の上だけではなくて実際の上においてもこれは到底維持ができないというようなケースにおいては御指摘のようなこともあり得るかと思いますけれども、今提起されましたケースにつきましては、私は実際上の問題としてそこまでの状況にはなっていないんではないかと思います。  もとよりこの海洋法条約に基づくいろいろな協定、取り決めも大切ではございますけれども、やはり外交関係となりますとその他いろんな側面、あらゆる点を配慮しながらある問題を提起するのが妥当なのか、あるいは今決まっているものをそのまま維持するのが妥当なのか、そういった総合的な観点から考えてまいるべきものかと存じます。
  215. 立木洋

    ○立木洋君 基本は、八十三条で述べられているように、衡平に解決するために国際法に基づいて合意により行うということですから、それは十分に相手側と話し合うということが基本になるわけですけれども、今申し述べた国際法や国際判例から見ても、私は中間線ということは非常に妥当な線だと。国際的にもそういう問題で解決するという方向へずっと進んできている状況の中にあるわけですから、今の問題についても改めてよく御検討をいただくように、そしてそういう立場に立った外交姿勢を貫いていただけるように、改めてその点は御要望いたしておきたいというふうに思います。  そのことと関連して、先ほど来問題になっておりますいわゆる経済水域の二百海里の問題ですが、これは五十五条に同じように規定がされております。この点についても同じようにいわゆる話し合い、合意により解決するということになっているわけですけれども、この点についても同じように基本的な立場というのは中間線に基づいてということで理解してよろしいんでしょうか。
  216. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 中国韓国との関係ということで申しますと、中国との間では今後必要があれば今の国連海洋法条約規定に従って排他的経済水域境界画定について協議を行っていくことになるわけでございますが、日本韓国の間の排他的経済水域境界画定については、三月の日韓首脳会談において竹島の領有権にかかわる問題とは切り離しつつ協議していくということで合意されたところでございまして、右合意に従って早期交渉を開始したいと考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、委員指摘のとおり、海洋法条約規定に従って衡平な解決に到達するため、相手国との合意を探るということになると思います。
  217. 立木洋

    ○立木洋君 先ほど来大臣は、竹島問題は一時切り離してという趣旨のことを答弁されていることは理解しているわけです。  この問題について言えば、いわゆる中間線の問題をとるなら、隠岐島からいえば九十七海里ぐらいですか、それから鬱陵島からいえば四十数海里になっているだろうと思うんですね。だから、中間線をそのまま引けば、竹島は中間線の向こう側の内部に入るというふうなことになるわけですね。それを切り離してという立場は、具体的にどういうふうなことを意味するんでしょうか。ちょっとその辺説明していただきたいと思います。
  218. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 切り離してと申しますのは、御承知のとおり我が国の竹島の領有権に関する主張は一貫したものがございますけれども、韓国立場は異なっているわけでございます。それで、それぞれ異なる双方の立場を、何といいましょうか、害さないといいましょうか、それに影響を与えないというふうな解決をEEZについては考えていこうと、そういう合意でございます。それが切り離してございます。それぞれの立場に影響を与えないということですね。
  219. 立木洋

    ○立木洋君 この問題について、ここで竹島問題を改めて私は議論するだけの時間がありませんからきょうは議論はいたしませんけれども、この点についてもこれまでの日本政府がとっている立場があるわけですから、その点については十分に配慮し、中間線を引いた場合の対応についても、どうするかということもよく考えた交渉をやっていただきたいということもあわせて申し述べておきたいと思うんです。この問題は、先ほど来漁業関係者が非常に望んでおられるという問題もあるので、できるだけ早く決着が見られるように努力したいということをも、外務大臣並びに農水大臣にも要望しておきたいというふうに思います。  次の問題としては、科技庁の方とあわせてまた外務省の方にも関係があるかと思いますけれども、若干お尋ねさせていただきたいと思うんです。  この問題に関しましては、第十二部のところで海洋環境の保護及び保全ということが非常に詳しく述べられております。この問題に関しては、いわゆる海洋汚染のすべての発生源を取り除くとか、それが生じた場合にはいわゆる情報をしかるべく交換して速やかにその実態を把握するとかいうふうな内容等が決められており、世界的及び地域的な協力等も問題とされているところであります。  この問題で私の方も資料をいろいろ調べてみたわけですけれども、先ほど来同僚議員の方からも質問がありましたいわゆる放射能汚染に関する問題、これはやっぱり極めて重視していかなければならない問題だろうというふうに思っているわけです。海洋の核物質、特にプルトニウムの汚染の問題あるいは放射能の問題についても、生物濃縮や影響が極めて長期にわたるということを考えると、海洋環境の問題にとってもやっぱり極めて重大な問題だろうというふうに思うんです。  この問題については、現在までいわゆるそういうふうな放射能の汚染の状態が実際には量的にはどの程度の状況になっているのかという現状については、どんなふうにお考えになっておられるんでしょうか。
  220. 宮林正恭

    政府委員(宮林正恭君) お答えさせていただきます。  放射性物質による海洋の汚染ということになりますと、これは汚染原因につきましてはいろいろございまして、一番現在も影響が大きいというふうに考えられておりましたのは、大気圏内の核実験によります影響というものがいろいろな形で残っておるわけでございます。これにつきましては、具体的なデータをちょっと今調べさせますけれども、現在いろいろと調査をしておりますところでは、日本近海においては特に問題にするに足りないというふうな状況にございます。  それから、具体的に例えば日本近海で投棄されたことによる汚染ということになりますと、一番大きな汚染の可能性があるものにつきましては旧ソ連とロシアによります極東海域への海洋投棄ということでございまして、これにつきましては一九五九年から九二年までの間に一万八千五百キュリー、このうち一万二千三百キュリーが液体でございますが、残りの六千二百キュリーが固体と、こういうふうなことになっているというふうなことがロシア側の報告で出ております。  それから、あと日本近海では我が国そのものが、房総沖といいますかそこに、時期的には一九五五年から六九年でございますからもうかなり以前でございますが、コンクリート詰めにしたアイソトープを投棄したと、こういうふうなことがございます。  それから韓国が、やはりこれは日本海側でございますが、韓国側から見ますと東岸の方に当たるわけでございますが、一九六八年から七二年にかけてやはり放射性同位元素をドラム缶で百十五本投棄した、こういうふうなことが明らかになっております。
  221. 立木洋

    ○立木洋君 ロシアの数字については私の方も、若干違いがありますけれども、ロシアの資料で調べた内容について言えばほぼ同一視しているんじゃないかというふうに思います。  ロシアが投棄した放射能の量が二千四百八十四キロキュリーですか、そして原潜が沈没したのが六百五十六キロキュリーで、三千百四十キロキュリーというふうになっております。これはロシアの場合ですね。ただし、これ以外の核弾頭から数千キロキュリーが見積もられているということがロシアの報告書の中では書いてあります、これ以外にいわゆる核弾頭から出たものですね、これを投棄したもの。それからそのほかに例えばアメリカ、フランス、イギリスなどのいわゆる放射能物質の海洋投棄に関する資料、そういう核保有国、それから十一カ国の先進国ですね、これらのものを合わせると千二百六十五キロキュリーというふうな数字になっております。  しかし、この数字には核弾頭の投棄だとか核艦船なんかの沈没あるいは核原潜なんかの沈没などの数字は入っていない。大体総合して推定しますと、チェルノブイリで起こったのがIAEAの発表によりますと五万キロキュリーという数字を出しているんですね。ほぼそれに近いか、あるいはそれに近づく状況にまで、海洋に投棄されている放射能汚染物質の状態がそれぐらいの水準にまでなる状態にあるというふうな極めて厳しい指摘をされている数字もあります。あるいは、今現状ではそれの三分の一だとか二分の一だとかというふうに指摘されている数字もあります。  これはどれが正確かというふうなことは私は調べるわけにはいきませんからわかりませんけれども、そういう核物質の、放射性物質の投棄の問題というのは、将来、相当長期にわたって考えるならば、いろいろな生物資源に対する影響だとか海洋環境を非常に害するものになりかねないという実態があるんではないかというふうに思うんですけれども、この点について科技庁長官と外務大臣の方にちょっと御所見を、こういう実態についてどういうふうにお考えになっているのかお述べいただけるとありがたいんですが。
  222. 中川秀直

    国務大臣(中川秀直君) 詳しいそういうチェルノブイリと同量のものがあるという御指摘は、国際的にそうだと断定しておるまでは十分いっていないんではないかと、こう理解をいたします。  いずれにしても、我々は、そういうような実態、特にロシアが白書で公表した事実については直ちに二度とそういうことをしないように申し入れ、そしてまた九三年五月と十一月一二度にわたりまして日ロの合同作業部会も開催をしまして、日韓ロ共同海洋調査の実施を決め、それに基づいて第一回目が平成六年三月から四月にかけて、日本海におけるロシアの投棄海域七地点において日韓ロの共同海洋調査をやっておるわけでございます。これは昨年の七月ですか、日韓ロ及びIAEAによって共同調査報告書がまとめられております。これによれば異常な値は検出されていないわけでありますし、また放射性廃棄物の海洋投棄による影響も認められていないということでございます。  第二回目の調査は昨年の八月から九月にかけて行われておりますが、現在それについて採取試料の分析等をやりまして、おおむね一年後になるこの夏にも公表するという予定であると、こういうことでございます。
  223. 立木洋

    ○立木洋君 何かございましたら。
  224. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) これまでの事実関係あるいはその調査の実施状況につきましては、ただいま科学技術庁長官から詳しく御答弁がございましたが、私どももそのように承知しております。
  225. 立木洋

    ○立木洋君 この問題については、私はやっぱり実態を正確に把握するということが非常に大切だろうと思うんです。今言ったように、私の方で述べた数字というのは全部国際的に確定された数字ではありません。いろいろな団体が発表した数字ですからまちまちであるということは十分にわかるわけですけれども、しかしこれが長期にわたってふえていくと非常に大変な事態になると、科技庁のお考えとしてもそういうふうな見方をなさっておるということはそのとおりだと思うんです。  この点については、二百条に「海洋環境の汚染について取得した情報及びデータの交換を奨励するため協力する。」というふうな文言もあるわけですから、国際的に必要なそういう情報を収集するようなことも考えて、いわゆる海洋汚染の状態、放射能汚染の問題がどういう状態になっているのかというふうなことが十分につかめるような努力をひとつお願いしたいというふうに思うんですが、これは外務省の方にお願いすることになるんでしょうか、どうでしょうか。
  226. 河村武和

    政府委員(河村武和君) 科学技術庁長官が今お答えいたしましたとおり、ロシアによる投棄につきまして実際に一九九三年に問題となったわけでございますけれども、こういうことが実際に生じた場合におきまして、我が国としては必要に応じて関係国の協力を得て調査等を行ってきている、こういうことでございますので、我が国としても、今後仮に同じような事態が生ずるというようなことがございますれば、関係国間の協議でありますとかロンドン条約締約国の協議会議でありますとか海洋法条約締約国会議等の場を通じて適切に対処していきたい、このように考えております。
  227. 立木洋

    ○立木洋君 大臣にお聞きいただきたいんですけれども、この問題は先ほど述べられたように、第十節の主権免除の項、二百三十六条にある主権免除の件について言えば、言うならば軍艦や軍の支援船には適用しないというふうになっているわけです。ところが、実際にロシアなどの資料を見てみても、原潜だとか軍艦だとか核爆弾だとか、いわゆる軍に関係するそういうものが沈没した場合の方が放射能の汚染というのは大きいんですよ。それは、ロシア政府が出している報告書によってもそういうふうになっているんです。  つまり、一九七二年のロンドン条約ですか、この問題でも軍艦だとかそういうものは排除されているわけです。今度の海洋法条約でも、ここの二百三十六条で主権免除ということにされていて、軍艦や軍の支援船等々については適用しないというふうなことになって、実質的には放射能汚染が生じるいわゆる原潜が沈没した場合、実際にどういうふうな状態になって、その放射能汚染がどうなっているのかというふうな問題については事実が報告されない、それが放置されてしまうというふうな状態になった方が極めて大きいんです。  そうすると、ロンドン条約にしても今度の海洋法条約にしても、これが事実上放射能汚染の最も大きい抜け穴になる危険性がある。そうすると、将来のこういう放射能汚染の問題を重視して考える場合に、こういう問題を抜きにして考えるわけにはいかないだろうというふうに私は思うんです。  ですから、この問題については、軍艦の構造だとか、あるいは軍の核弾頭をどうしたこうした、廃棄したというふうなことの問題については、それが沈没してしまえば事実上それが軍の機密だとかなんとかにかかわることではなくなるわけです。  ここに書いてありますように、これらの問題については「運航能力を阻害しないような適当な措置をとることにより、これらの船舶又は航空機が合理的かつ実行可能である限りこの条約に即して行動することを確保する。」ということになるならば、沈没してしまった軍艦あるいは原潜から出る放射能汚染の問題については、これは直ちにそれを掌握して、情報を提供して、そういう問題に対する汚染を防ぐような方法、それに対処するような方法というのをとることが私は必要ではないかと思うのです。  ここにある主権免除の問題点との関連では、そういう沈没してしまったり核弾頭を投棄してしまったような場合、放棄してしまったような場合には、一定の情報提供なり何らかの形でそれに対して必要な対処がとれるようなことを行うべきではないかというふうな感じがするんですけれども、いかがでしょうか。
  228. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御指摘のとおり、この海洋法条約でも二百三十六条で主権免除がございますし、またロンドン条約でもやはり軍艦等についてはこれは適用されないとなっております。  しかしながら、一方において、同じ条項のただし書きのところで、これについても「実行可能である限りこの条約に即して行動することを確保する。」という、そういったある意味義務規定はあるわけでございます。ロンドン条約も同じでございます。そういうことでございますし、また御承知のとおり、ロシアも先般ロンドン条約改定議定書も受諾したところでございますので、そういった意味でのある程度の協力は確保されているんだと思います。  さらに進んで何か国際的な約束を取り決めるべきではないかという御趣旨かと存じますけれども、こういった多国間の国際条約をつくりますときには、いろいろな立場からの配慮、考慮あるいはそれに至った主張というものがそれぞれの国にあるわけでございます。その集大成としてつくったものがこういう形になっておりますけれども、いずれにしても協力義務はある。そしてまた、そういった精神に即して他の面でも行動することを期待したいと思いますし、一般的にはそういうことも求められると思うのでございます。
  229. 立木洋

    ○立木洋君 最後に一言だけ。  先ほど申し上げました大陸棚境界画定の問題、二百海里の境界画定の問題についても、先ほど述べられた点でぜひとも最後まで速やかに実現できるように努力していただきたいということを重ねて申し上げるとともに、今日のこの問題も放射能汚染の問題も極めて重要ですから、今後とも引き続いて状況を見て適切な形で努力されるように、今なかなか難しいという状況もございましょうが、努力をしていくことが将来の子孫に健全な海洋を残していく私たちの責務でもあると考えますので、努力のほどを重ねて要望して、私の質問を終わります。
  230. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私は、竹島領有権問題に絞って質問いたします。  国連海洋法条約海洋の包括的憲法と言われ、海洋法的秩序に関して包括的に規定したものですから、竹島領有権問題の直接的な解決手段とはなり得ないということは私もよく理解をいたしております。しかしながら、五十年近くも続いている日本韓国の間における竹島領有権問題の解決についても、この海洋法条約締結を契機として、今までの外交努力の積み重ねの上に何か新しい有効な解決方法を見出すことが日本政府に求められているのではないかと私は思います。外務大臣として、今後の展望をお示し願いたいと思います。
  231. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員もその点はわかっておると、こうおつしゃいましたように、今回の国連海洋法条約が竹島の問題も含めまして領有権問題の解決を目的とするものではございませんで、直接その解決の手段を規定しておるものではございません。  しかし、いずれにいたしましても、竹島領有権問題につきましては我が国政府立場というものは一貫しておるわけでございまして、今後とも両国間で平和的な解決が図れないか、鋭意努力してまいりたい、こう考えている次第でございます。
  232. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 今の答弁では困るんですが、先へ進んで、どこかでまた再質問をいたします。  そこでお尋ねするんですが、竹島というのは海洋法条約上の島ですか岩ですか。
  233. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) 私どもとしては大陸棚、経済水域を有する島であるというふうに考えております。
  234. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 百二十一条を読む限りでは「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。」というふうに書いてあるんでしょう。どうですか。
  235. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) おっしゃるとおりでございます。
  236. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私は竹島へ行ったことはないんですが、竹島に関する情報を私たちが読んで勉強する限り、人間がそこに住んで独自の経済的生活を維持するところではあり得ないと思うんですが、そこの解釈はどうなるんですか。
  237. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) この条約の第百二十一条三項の規定でございますが、読み上げませんけれども、そもそも岩とは何ぞやという定義はこの条約上ないわけでございます。また、ここに書いてあります岩の内容が明確ではなくて、また各国の国家事項等を見ましても、現時点におきまして、同規定により特定の地形を持ったものが排他的経済水域または大陸棚を有しないとする根拠はないわけでございます。  したがいまして、我が国といたしましては、先ほど申しましたように、竹島は本条約のもとでも排他的経済水域及び大陸棚を有することができるというふうに考えておるわけでございます。
  238. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そうしますと、この海洋法条約締結した場合に、紛争を解決するために国際海洋法裁判所というものが設置されると聞いています。そうすると、韓国側がこれはいわゆる排他的経済水域とか大陸棚関係する島ではない、岩だと、岩礁だと訴えることも可能なんですね。
  239. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) 各国がどのような立場をとられるか、私どもとして今云々すべきではないと思いますけれども、理論的には先ほど申しましたように定義等あるいは国家実行がはっきりしていないということを申し上げている以上、私どもと違った立場を理論づけてそれを議論されるということはもちろんあり得ることだと思ってお  ります。
  240. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いや、議論というより、裁判所に訴えることができますねと聞いておる。訴えた場合に、日本はそれに応じますね。
  241. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) 先生もう十分御承知の上で御質問されているとは思いますけれども、国際司法裁判所に行きますときは、義務的管轄権というものを受け入れている国同士の間で、一方が要請したときに片方は行かなくちゃいけないと、こういう形になっておるわけです。日本義務的管轄権を受け入れておりますけれども韓国は受け入れていないと、こういう状況でございます。そのような状況でもって両国がそれを国際司法裁判所に持っていくかどうか、これについてはちょっと今の時点でどうとも申し上げられないというのが実情でございます。
  242. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私は国際司法裁判所とは言っていないんです。国際海洋法裁判所について言っている。
  243. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) 海洋法裁判所は、この海洋法条約の解釈、適用をめぐる紛争についてのものでございますから、領有権そのものについて海洋法裁判所で争うということは考えられないところでございます。
  244. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私は何も領有権のことなんて言っていませんよ。岩か島かのことを訴えることはできるでしょうと聞いておるんです。
  245. 谷内正太郎

    政府委員谷内正太郎君) 失礼いたしました。  岩かどうかという問題について、管轄権を受け入れるかどうかはちょっと別にしまして、それを争えるかということでございますれば、それは当然議論されるというふうに考えます。
  246. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 正確に質問を聞いて答えてくださいね。  それから二番目に竹島の領有権問題について、我が国は、一九五二年一月十八日の李承晩ラインの設定に対する抗議として韓国日本の領有権を口上書で主張して以来、今日までこうした口上書を韓国政府に何回出してきたんですか。数十回というふうなことが言われていますが、正確に何回と言ってください。これからも抗議の口上書を韓国に出し続けるのですか。一番最近申し入れた口上書の時期とその内容について説明してください。
  247. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 竹島問題に関する口上書は、昭和二十七年、一九五二年以来六十五回提示されております。  それから、最近の例ということでございますが、最も最近においては昨年の七月に発出されておりまして、その内容は、竹島の領有権についての我が国日本の一貫した立場に基づいて、韓国が竹島を事実上占拠していることに対して抗議するとともに、韓国側が構築した施設の撤去などを要求する内容のものでございます。
  248. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 今日までそれぞれ重要な段階で今おっしゃるような口上書が出されてきたと思うんです。日本韓国関係というのは、植民地支配あるいは侵略戦争等々の中でいろいろと歴史的な認識の問題等で難しいことがありますが、しかし隣国であり、同じ資本主義経済という道、また民主主義の社会を求めていく、そういう意味では友好な関係にあるんではないかと私は考えているんです。少なくとも私は友好国だというふうに判断しているんですが、なぜそれが解決しないのか、極めて遺憾です。  それで、今日まで六十五回も口上書を出されたと。どんな口上書をそれぞれの時期に出されたかということに非常に私は興味があるんです。その日上書そのものをぜひとも国会に公開をしていただきたい。いかがですか。
  249. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 今申し上げました口上書は、韓国政府にあてた日本からの外交文書でございまして、問題自体が現在もなお日韓間で係争中であるという事情がありますことから、私どもといたしましては現時点で口上書の公開ということは考えておりません。  ただ、内容として申し上げれば、韓国側による竹島の占拠に対する抗議、それから韓国側が構築した施設の撤去の要求、これが主なものでございまして、そのほかに韓国側による我が方巡視船に対する銃撃、発砲事件に対する抗議、我が国の領有権の根拠を示した見解の表明、国際司法裁判所への付託の提議、竹島における射撃訓練に対する抗議、こういったものが内容になっております。
  250. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 紛争中だから公開できないと。紛争が終わったら公開をしてもいいということですか。
  251. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) ちょっと繰り返しになって恐縮でございますが、今係争中の最も機微な領土問題に関するものでございますので口上書の公開は差し控えさせていただきたいということでございまして、一般的には今の基本的な事実を踏まえて文書公開のルールにのっとって対処されるべき問題と考えております。
  252. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 係争中、紛争中のものだから公開できない、相手のあることであるしと。だから、紛争が終わればそれは歴史的文書として公開をされるんですか。
  253. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 我が国としては、何とかこれを両国の間で平和的に解決をしたいと、こう考えております。そして、努力を傾注してまいりたいと思います。  幸いにして、両国間で平和的な解決を見た場合に口上書をどうするかという点でございますが、それは解決を見た段階で、それを踏まえて両国の関係、その時点から将来に向かってどういうふうに持っていくか、そういうことも考えながらその時点で対応は考えるべきものと、こう考える次第でございます。
  254. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私は、外務省の外交問題は信用していますよ。しかし、韓国との間で口上書が六十五回も出されたという、こんなことは大変なことだなとみんな思いますよ。だから、外交というのは外務省が専門的におやりになることであったとしても、やはり国民の合意というものが一方の背景になければ私はうまくいかぬと思うんです。秘密主義にして、そしてその秘密を占有することによって外務省の権威が高まるというものでもないと思うんです。だから、可能なものはできるだけ公開して、国民世論に外務省の考えを求めていくという手法がやっぱり民主主義の国には必要だと思うんです。  しかし、今おっしゃっるように見せないとおっしゃるんなら、少なくとも今幾つかの項目というので公開されましたから、一回から六十五回まで一、二、三、四、五と書いてもらって、そこに一体何をそこで言ったのかということを文書で私の手元に資料として出していただけますか。口上書そのものじゃなくて、何をそのときに出したかと。それぐらいのことはできるんでしょう。
  255. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 先ほど申し上げましたところがこれまで六十五回にわたって発出された口上書の主たる内容でございますが、昭和二十七年から昭和五十五年までの間で四十七件、これはいずれも竹島の韓国側による占拠に対する抗議、それから施設の撤去を内容とするものでございます。昭和五十六年、すなわち一九八一年以降は十八件ございます。これも不法占拠に対する抗議と施設などの即時撤去の要求を内容とするものでございます。  以下、同じようなものが、昭和五十七年一件、昭和五十八年二件、五十九年一件、六十年一件、六十二年一件、六十三年一件、平成元年二件、平成三年一件、平成四年三件、このうち平成四年の三件につきましては韓国軍艦による我が国巡視船への示威行動への抗議であり、また竹島領海内での射撃訓練への抗議を内容とするものである、こういうことになっております。  そういう次第でございますので、私どもとして、できるだけこの内容を今御説明したということでお許しを得られればと考えます。
  256. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私は二十分という貴重な時間の中で質問しているんですよ。だから、私の質問したことはそれを項目的に一回一回並べて出していただけますかと、こう言ったんだから、出せませんとおっしゃればいいじゃないですか。そうしたらすぐまた私は質問できるのに。なぜそういう余分なことを、私の貴重な時間をあなたはお使いになるんですか。失礼じゃないですか。委員長、そういうときはやっぱり注意すべきですよ。  それで、口上書の中に、日本政府が竹島領有権問題を国際司法裁判所に訴えて解決しようじゃないかということを韓国に求めたのが一九五四年と一九六二年、二回あると私は聞いておりますが、韓国はいずれもそれを拒否した、こういうことですが、どういう理由で拒否したんですか。
  257. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) おっしゃられるとおり、一九五四年の九月二十五日に韓国政府に対してこの問題を国際司法裁判所に付託すべく口上書をもって日本側から提議したのでございます。  この口上書において、これは国際法の基本原則に触れる領土権の紛争であるため、唯一の公正な解決方法は国際裁判に付託して判決を得ることであるということを我が方から指摘いたしまして、我が国はICJ、国際司法裁判所の下すいかなる判決にも誠実に従うことを誓約いたしまして、判決があるまでの間は竹島及びその周辺において困難な事件の発生を防止するための共同の暫定措置を韓国側と協議する用意があるという旨の通報を行いました。これがその内容でございます。これに対して、韓国側は、同年十月二十八日に文書をもってこれを拒否するということを通告してきたわけでございます。  なお、委員がおっしゃられた六二年の方は、これは一九五四年に今申し上げましたように正式に韓国側に提案したICJへの提訴ということを、六二年三月の日韓外相会談の際に、当時の小坂外務大臣から崔韓国外務部長官に対してもう一度提議したということでございまして、これに対しても韓国側から前向きな反応は得られなかったということでございます。  このやりとりの詳細ということについては、相手のあることでもありまして、現時点でこれを明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、韓国の竹島に対する立場は今日に至るまで一貫したものが韓国の側としてあると思っております。
  258. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 韓国日本のそうした提案に応じないということは私は非常に残念だと思います。そういう国際的なもめごとは国際司法裁判所一定の判決を出してもらって、それに基づいて問題の解決をするというルールを、やはり国連というものがある以上は私はやるべきだと思うんです。わかりました。  そこで、フランスとカナダが一九八九年にフランスとカナダの間の海域の策定を実施するための仲裁裁判所を設置する協定というのを結びまして、サンピエール・ミクロン沖合の両国の海域を画定するための仲裁裁判所を設置したんです。国際司法裁判所じゃなくて仲裁裁判所を設置する協定を結んで仲裁裁判所を設置して、そして一九九二年に仲裁判決を下してもらって解決した、こういう事例があるんです。  だから、日本韓国の問題も、こういう国際的に紛争を解決する知恵をみんながいろいろ出し合っていくんですから、隣の国でいつまでもこの問題をこういう形で放置して、そして時として外務大臣の人形が焼かれてみたり、そんなことが起こらぬようにせなあかぬと私は思うんですよ。こうしたフランスとカナダのこの問題解決というのは参考にならぬのですか。
  259. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 委員が御指摘のサンピエール・ミクロン事件でございますか、これはカナダのニューファンドランド島沖合のフランス領のサンピエール島、ミクロン島とカナダの間の境界画定を両国の合意によって仲裁に付して解決したものでございます。これは御指摘のとおりですが、竹島の場合と異なりまして、サンピエール島、ミクロン島の領有権が争われたケースではございませんでした。  仲裁裁判所ということでございますが、これは国際司法裁判所と違う存在であるということはございますけれども、やっぱり国際司法裁判所と同様に紛争の当事者が裁判所において解決を求めるという合意があって初めて動き出す仕組みになっておるわけでございます。したがいまして、たとえ我が国の方が提訴を提案したとしても、韓国がこれに応じてくるという義務がない以上は仲裁裁判所の管轄権は残念ながら設定されません。  この竹島の件を仲裁裁判所に提訴するということについては、引き続き検討を要する側面があると私ども考えております。もちろん、政府としてあらゆる可能性を粘り強く検討して、大臣が申しましたように本問題の平和的な解決を志向してまいりたいとは考えております。
  260. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 最後に農林水産大臣にお尋ねいたします。  この国連海洋法条約締結を契機に何とか領土問題が解決すればと思うんですが、今の短い時間の議論でもなかなか困難な中身が山積しているようです。しかし、漁業問題として、やはり経済問題としての解決は実態的なものとして進めていかなければならないと考えます。そして、日本漁業従事者の仕事なり生活を守っていくという立場での問題解決が急がれると私は考えています。そういう意味で、農林水産大臣としての決意を最後にお聞きしておきたいと思います。
  261. 大原一三

    国務大臣(大原一三君) 委員がるるおっしゃいますように、特に日韓関係においてはこの竹島問題、頭の痛い問題を抱えているわけでございます。  したがって、総理外務大臣がいろいろな機会におっしゃっていますけれども、いわゆる領土問題と切り離してこの問題が早急に解決されるべきである。そういう意味で、私としましても、韓国中国との漁業問題に関しては、国連海洋法条約趣旨を十分に踏まえた新たな漁業協定早期締結されるように一生懸命頑張ってまいりたいと思います。
  262. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 終わります。
  263. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 私も竹島問題を質問しようとして準備したんですが、一、二点だけお尋ねをいたします。  現在の竹島の実情はどうなっているか、ひとつ教えていただければありがたいと思います。  伝え聞くところによりますと、韓国は竹島に港湾施設を建設する工事に着手して、来年末には完成させまして、完成後には一般の観光客にも開放する方針であるというふうに聞いております。韓国は竹島を韓国の領有であるという既成事実化を明らかにねらっているとしか思えない状況にあるわけであります。先ほど本岡先生質問に対して、韓国に対して日本は六十五回にわたって口上書を出しているということですが、例えばこれほどの施設工事をしている韓国に対して文書によって撤去の申し入れをした場合、どの程度の効果があってどういう形で解決されているのか、その点をお尋ねいたします。
  264. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 竹島の現状ということでございますが、竹島においてはことしの二月に韓国外務部が接岸施設の工事を実施するという論評を発出いたしました後に、四月になりましてこの工事に着工したという報道がございました。そこで、私どもの方から韓国に事実関係を照会いたしました。それに対して、韓国から、この工事は行われているという回答がございました。  これに対しては我が方は、例えば最も最近では、四月三十日に南アフリカで行われた日韓外相会談におきまして、池田大臣から孔魯明韓国外務部長官に対しまして我が方の一貫した立場を申し入れました。そしてあわせて、本件についての慎重な対応が重要であるということを述べた経緯がございます。  そういうことを背景にいたしまして、韓国の竹島に対する実効的支配というものは、これは確立しているあるいは今後確立されるということはないというふうに私どもは認識いたしております。  実効的支配が確立いたしますためには、国際法上もそこに平穏な占有が継続して行われるということが要件とされているようでございます。そして、その平穏であるか否かということは、その関係国から一貫した抗議の意思表示というようなもの、すなわち時効の中断に相当するようなものが的確になされているかどうかによるところが大でございまして、これがなされている限り平穏性の要件は欠落する、すなわち実効的支配は確立しないということでございます。  したがって、今申し上げましたとおり、確かに接岸施設の工事、これは進捗中でございますけれども、それによって韓国の事実上の支配というものは、一面物理的にそれが強化される面はございますけれども、それが即韓国の竹島に対する実効的支配の確立を意味するものではないということになろうかと存じます。
  265. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 実効的支配がないと、こうおっしゃるわけだけれども、ただ日本のそのやり方が、抗議を繰り返していくだけというのがどうかと思うんですね。果たして将来にわたって韓国とのこの竹島問題を解決する上において賢明な方法、解決を保証するものかどうか、極めて疑問に思うわけであります。むしろ韓国が歴史的経過とともに竹島の実効支配を合法化していってしまうんではないか、我が国立場をますます不利にしていってしまうんではないかというふうな危惧を持つわけであります。  そこで、今こそ正式に韓国に対して竹島をめぐる領有問題交渉の開始を直ちに申し入れられて決着を図られるべき時期だと思いますが、いかがでしょうか。
  266. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほどアジア局長から御答弁申し上げましたように、韓国の竹島に対する事実上の支配が強まっているということは、それは言えるかと思いますけれども、しかしそのことをもっていわゆる実効的支配が確立したとかあるいは将来確立するというものではございません。  そしてまた、そういうことをまず前提にいたしまして、現時点で正式に領有権問題の交渉開始を申し入れるべきではないかという御提議でございますけれども、私どもといたしましては、先ほど来るる御説明申し上げておりますように、何とかこれは両国間で平和的な解決を見出していきたい、そのためにはいろいろな手法も考えながら粘り強く対処してまいりたいと、こう考えております。  現在のこれまでの韓国側の態度、姿勢から見まして、さてどういうふうな手法による解決を図ろうということで、正式に交渉を申し入れた場合に、それが具体的な交渉の開始、そうして問題の解決に早急につながるような環境が今整っておるかと申しますと、必ずしも私はそこまで言えない、そんな感じがいたします。  他方におきまして、委員も御承知のとおり、今、日韓間においていろいろ相談、協議をいたしまして合意を見なくちゃいけない問題、この海洋法締結に伴うEEZの問題あるいは漁業の問題を初めいろいろあるわけでございます。そういったことでございますし、もとより両国間の友好親善の関係は、これはしっかりと確保し、さらに強化していかなくちゃならない。  そういったもろもろの事情を勘案いたしますと、私どもといたしましては、我が国立場は一貫しておりますし、何とか平和的解決を図っていくための努力は継続してまいりますが、今御指摘のように領有権に係る交渉を正式に始めようじゃないかということを提議するというのは必ずしも時を得ていないんではないのかなと、こんな感じを持っておる次第でございます。
  267. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 竹島問題は、隣の先生と重複する部分もあるのでこの程度にします。  今度は運輸省にお尋ねをいたしますが、今回の海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の改正の骨子の一つであります海洋汚染事犯における担保金制度について御質問をいたします。  この制度は、同法の規定に違反した外国船舶について担保金等を提供することを条件に速やかな釈放を図る制度とのことでありますが、相手方が外国船舶であること、海洋が広大でそのまま逃走されたら後日の確保が困難であること、国によってはテロリストですら保護しようという国がありますが、このような国に逃げ込まれた場合に手の打ちようがないんではないかということを考慮いたしますと、刑事手続への出頭を担保する制度としては甚だ疑問と思われますが、いかがでしょうか。  また、運用のいかんによっては、外国船舶をして担保金さえ払えば何をやってもいいというような誤った認識を生ぜしめて、同法の遵法意識を甚だ希薄にする要因になりかねないと思うのですが、運輸大臣の所感をお伺いいたします。
  268. 秦野裕

    政府委員(秦野裕君) 御案内のとおり、海洋法条約では、海洋環境の保護あるいは保全といった分野につきまして、沿岸国の管轄権を排他的経済水域まで拡大するということを認めます一方で、いわゆる船舶航行の利益と申しますか、要するに船舶を拘束することによる不利益の防止という観点から、外国船舶が海洋汚染事犯を起こしました場合に、保証金の提供などの合理的な手続に従うことを条件にしまして速やかに釈放する制度、いわゆるボンド制度を設けることを求めておるわけでございます。  このため、その違反者の刑事手続への出頭などを担保する、いわゆる担保金の提供を条件としまして釈放を行うという制度を今回導入するわけでございますけれども、ただいま先生お話しのとおり、いわゆる逃げ得になってしまってはこれはもちろんこの制度の趣旨に反するわけでございますので、違反者の出頭も担保できるような十分な額になるように定めることを考えておるわけでございます。もちろん、出頭に応じなかった場合には、その担保金は国庫に帰属されるということになるわけでございまして、この罰金とのバランスを十分考慮しながら担保金の額を設定していくということで進めていきたいと思っております。
  269. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 日本にも保釈制度が刑事訴訟法にあるわけですけれども、主務大臣、つまり運輸大臣が担保金を徴求するわけですね。その担保金は一体どのような基準に基づいてどういう額を算出していくのか、具体的な基準などがあったら教えていただきたいんです。
  270. 秦野裕

    政府委員(秦野裕君) 担保金の額につきましては、今回の改正海洋汚染防止法によりまして、主務大臣の定める基準に従って取締官が決定するということになっておるわけでありますが、その主務大臣が定める基準に際しまして考慮すべき事項というものは政令で決めることになっております。  現在その政令を検討中でございますけれども、その内容といたしましては、まず第一に違反の類型、これは例えば故意犯であるか過失犯であるか、あるいは実際に油を流した実質犯であるか形式犯であるかといったようなそういう違反の類型。二番目に、法律に定められました罰金額。三番目に、例えば油を流した場合でありましたらその油の量、つまり違反の程度でございます。それから四番目に、初犯であるかあるいは累犯であるか、その違反の回数といったようなものを考慮いたしまして基準を定めるということになっております。  したがって、この基準の範囲の中において、具体的には個別の事犯に応じて取締官が決定するということになる予定でございます。
  271. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 同法に基づく釈放と日本の刑事訴訟法八十八条以下の保釈との相違というのはどこにあるんですか。
  272. 秦野裕

    政府委員(秦野裕君) 担保金制度は、先ほど申しましたとおり、海洋汚染事犯が起きました場合に、主務大臣に担保金等が提供されることを条件としまして、逮捕が行われました被疑者あるいはその船舶を速やかに釈放するといういわば一種の行政上の手続でございます。それに対しまして、ただいま先生お話しの刑事訴訟法八十八条以下の保釈制度と申しますのは、司法制度におきまして、検察官によって起訴された被告人が勾留された場合に、裁判所判断によって保釈される制度であるということは御存じのとおりでございます。  したがって、端的に申しますと、担保金の場合には被疑者段階で措置が行われるのに対しまして、保釈制度の場合は被告人段階で措置されるということが一つ。それからもう一つは、担保金の方はいわゆる主務大臣によります行政手続であるというのに対しまして、片一方の方は裁判所によります司法手続であるというのが大きな違いでございます。
  273. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 次に、海上保安庁法の一部改正についてお尋ねするんですが、この改正によって機能発動要件が明確化されて、かつ海上犯罪の摘発の主体であるところの海上保安官制度についてお尋ねをいたします。  海上保安官の機能といいますか、逮捕とか捜査とか、それから差し押さえだとか押収という機能行使、保安官が持つところのそういう機能、機能を裁判所がどの程度コントロールしているのか、関与しているのか、具体的に説明をしていただきたいんです。海の上というのは国民の監視が非常に行き届かない、いわゆる職権の乱用をチェックするということが極めて難しいんですね。そういう意味合いからもその点を御説明いただきたい。
  274. 秦野裕

    政府委員(秦野裕君) 海上保安官が海上におきまして犯罪を摘発する場合でございましても、当然のことでございますけれども、手続的には刑事訴訟法の規定に従って職務を行わなければならないということになるわけでございます。例えば、逮捕状あるいは捜索差押許可状の発行を受けるといったような一連の手続につきましては、これは陸上と全く同じで、刑事訴訟法の規定に基づいて行われるということになるわけでございます。
  275. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 海が活動の拠点であるところの海上保安官については何よりも国際協力が求められるというふうに思うわけですけれども、その海上保安官については警察におけるICPOのような国際協力機関というものはあるのかないのか。私は不勉強で知らないので、もしあればその概要について御説明いただければ幸いです。
  276. 秦野裕

    政府委員(秦野裕君) 先生お話しのとおり、薬物ですとかあるいは銃器といった密輸事犯につきましては、その取り締まりの際に国際協力ということが必要不可欠でございます。  したがいまして、まず一つは、私どもとしては従来から中国あるいは韓国ロシアといった近隣諸国の取り締まり機関と緊密な連絡を保ちまして情報交換を行っております。  それから、ただいま先生お尋ねのICPO、国際刑事警察機構との関係でございますが、これは日本の窓口は警察庁ということになっておるわけでございますけれども、私どもは警察庁を通じましてこのICPOの方と連絡を密にとっております。さらには、ICPOの向こう側と申しますか、各外国の取り締まり機関との間の協力あるいは情報交換というものを行っておるという点で、これは警察の方と実質的には何ら変わりのない制度になっております。
  277. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 終わります。
  278. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 最後の質問でございます。中尾でございます。  午前中からいろいろ熱心な質疑を伺っておりまして、いささか重複をお許しいただいて、私は二百海里海域の海洋環境保全に絞ってお伺いしたいと思っております。持ち時間二十分でございますので前説は省きまして、海洋汚染の実態についてまずお尋ね申し上げます。  減少傾向にありました海洋汚染の件数、これは海上保安庁の調査ですけれども、昨年、日本海周辺で八百十一件、一〇・八%ふえたとございます。五年ぶりに増加したというふうになっておりますけれども、このふえた理由をまずお示しください。
  279. 秦野裕

    政府委員(秦野裕君) 私どもの統計によりますと、今お話しのございましたとおり、平成七年におきまして総計八百十一件の汚染を確認いたしておりますが、その内訳を見ますと、油が四百九十七件、油以外が二百六十九件ということで、油が非常に多くなっているというのがまずその特徴であろうかと思っております。  その理由でございますが、私どもの分析によりますと、特に小型船舶によりますビルジ、ビルジと申しますのは船の底にたまりました油の混合物でございます。このビルジを故意に排出する件数が特に東京湾を中心にしてかなりふえておる、これが全体の汚染件数を押し上げているのじゃないかというふうに考えております。
  280. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 今、御説明がございましたけれども、海洋汚染の主な理由、原因は油によるものだということがございますけれども、油以外のものも大変ふえている。例えば、廃棄物、有害液体廃棄物、それから工場排水等々ございます。  昭和四十年代の後半、これは四十八年の資料でございますが、現在約二倍近くにふえておる。特にダイオキシンそれから有機すず系物質。これは、本当はきょう時間があれば御質問したかったんですが、船底に有機すず系物質を塗料として使っている。これは我が国ではもう使っておりませんけれども、そんな問題がございます。特に、化学物質とそれから海への汚染、これがなかなか解明できないという現状を承知しております。  これは環境庁の分野であろうと思いますけれども、こうした化学物質の分析、あるいは今後どういうふうに対応していくのか、取り組み等をお伺いしたいと思います。
  281. 吉田徳久

    説明員(吉田徳久君) 今、御指摘のございました海洋汚染に関する各種の調査でございますけれども、もちろん環境庁におきましても海洋汚染の状況を把握するために各種の調査を進めてきているところでございます。  海といっても広うございますので、沿岸域と沖合域、それぞれ調査の手法も異なっております。このうち沿岸域につきましては、御承知のとおり、水質汚濁防止法に基づきまして地方公共団体による水質の常時監視が行われております。その結果では、私どもの見るところ、海洋汚染最大の問題といいますのは、有機性汚濁の指標であるCOD、化学的酸素要求量が非常に高い海域がまだ残っている。これについては、水質汚濁防止法に基づく個別の排出規制に加えて、特に水質改善を必要とする海域につきましては総量規制等を導入してまいってきているところでございます。  また一方、環境庁は、海洋汚染の長期的な変動傾向を把握するとともに、MARPOL条約あるいはロンドン条約を受けて海洋汚染防止法等に基づき実施しております船舶からの有害液体物質の排出規制、あるいは廃棄物の海洋投入処分の規制の効果を把握するため、こうしたことを目的として、沖合海域を含む我が国周辺海域において昭和五十年度以降、毎年度、日本近海海洋汚染実態調査を実施しております。  この調査は、廃棄物の排出海域あるいは主要な船舶の航路筋を考慮いたしまして設定した測定線上の調査点において、海水や底質の汚染状況、あるいはプランクトン中の有害物質等の量を調査しております。  その結果によりますと、我が国周辺海域におきましては、これまでのところ、海水中の汚染物質の濃度等に顕著な変化は認められておりませんけれども、人為活動による海洋環境への影響をより的確に検知し、これを未然に防止するための適切な対策を講じ得るように、今後とも一層海洋環境に係るモニタリング手法等の向上に努めてまいりたい、かように考えております。
  282. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 この中環審の化学物質専門委員会でトリブチルすず化合物、こうした問題についてはさらに監視をしていく必要があるということでございますので、取り組みをしっかりやっていただきたいと思います。  次は、陸上廃棄物の海洋投棄問題についてお尋ねします。  陸上廃棄物の海洋投棄問題、これは今世界的な問題となっております。今御説明にもありましたけれども、ロンドン条約附属書改正によって、本年度、ことし一月一日から産業廃棄物の海洋投棄が原則禁止となりました。それから、UNEP、国連環境計画主催の陸上活動からの海洋環境保護に関する政府間会合において、世界行動計画の策定とワシントン宣言が採択されました。  さて、我が国では、これは厚生省に一問伺いたいんですが、平成六年統計で、海域に排出された産業廃棄物の量は約四百六十万トン、これは少しずつ増加している傾向にあると承知しております。また、平成五年四月現在、産廃の最終処分場の残余容量は全国で二億立米、残余年数、これは許容年数というふうに読みかえてもいいと思いますが、二、三年はもつだろうということだと思います。ところが、首都圏は〇・六年、ほぼ満杯状態にある。陸がだめなら海があるという発想法がありまして、これは不届き者が建築廃材やし尿などを垂れ流しているわけでございます。  だから、産廃の問題を解決しない限り、一つ海洋汚染の問題は解決できないだろうという、これは当然のことだろうと思いますけれども、厚生省、これはことし三月に生活環境審議会産廃専門委員会というのをスタートさせたように聞いております。何が検討されて、どういう対策を講じようとしているのか、簡単にお答え願います。
  283. 木下正明

    説明員(木下正明君) 御説明いたします。  産業廃棄物の海洋投入処分につきましては、廃棄物処理法では、当該産業廃棄物の陸上処理が困難な場合に限り行うこととされております。さらに、ことしの一月一日からは、先ほど先生の方からお話もありましたが、ロンドン条約附属書の改正に伴いまして、産業廃棄物の海洋投入処分についての規制が強化されたところであります。  厚生省としても最終処分場の確保等、陸上処理体制の整備に努めているところでございます。しかしながら、御指摘のとおり、産業廃棄物の最終処分場の残余年数は、全国で約二・三年、首都圏で約〇・六年と非常に逼迫した状況にありまして、こうした最終処分場の確保は産業廃棄物の適正処理を図る上で重要な課題となっております。  このため、厚生省では、最終処分場の確保を含めた産業廃棄物の総合的な対策について検討するため、本年二月に生活環境審議会廃棄物処理部会の中に産業廃棄物専門委員会を設置いたしたところでございます。専門委員会では、産業廃棄物の関係者から幅広く御意見を拝聴しながら検討を進めることとしておりまして、これまで五回の専門委員会を開催し、都道府県の廃棄物行政担当者、市町村長、産業界及び市民活動家等の御意見を伺いながら積極的に検討を進めていただいているところでございます。
  284. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 産廃のこの問題、海洋汚染とも密接なつながりがありますので、しっかりと各省庁とも連携してやっていただきたいと思います。  続いて外務省に伺います。  先ほどもちょっと触れましたけれども、UNEP主催の陸上活動が原因となる海洋汚染防止に関する政府間会合、これはワシントンで百三カ国が参加して開かれました。昨年十一月に閉幕したわけでございます。  海洋汚染源の七〇%を占めているとされている陸上活動、産廃も含めて陸上活動の海洋汚染防止に関する国際的な取り決めはこれが初めてだということでございますが、ダイオキシンなどのPOPsが問題になっておりますけれども、残留性有機汚染物質による海洋汚染が北欧諸国などでは大変深刻であるというふうに聞いております。  今回の行動計画でも、これらを規制する法的拘束力のある条約または協定を二、三年以内と書いてありましたか、策定するように求められております。先ほどもロンドン条約あるいはMARPOL条約等々でいろいろ規制がございます。  そこで外務大臣にちょっと伺いたいんですが、各国は二、三年以内に国内での行動計画を策定するように求められておるわけですけれども、海洋国である我が国が、海洋国と同時に環境先進国としての役割を果たすためにもここでリーダーシップを発揮すべきじゃないかと思うわけでございます。各途上国においては、いまだに例えばPOPsにおいてもなかなか規制が進まない、農薬等に使っているとかございまして、ここは日本がリーダーシップをとってやるべきじゃないかと思っておりますけれども、外務大臣の所見を伺います。
  285. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員指摘のとおり、環境問題、とりわけ陸上活動に起因する海洋汚染防止が極めて重要な問題である、課題であると認識しております。  そういった観点から、お話のございましたUNEPで昨年採択されました陸上起因海洋汚染防止に関する世界行動計画の策定にも我が国は積極的に参画してきた次第でございます。そして、この行動計画自体には非常に多様な原因が入っておりますので、まずそれぞれの政府あるいは地域レベルで個々に取り組むべき課題という事柄が多いんだと思います。  したがいまして、行動計画全体を例えば条約化するというのはちょっと難しいかと思いますけれども、今、委員の御指摘ございましたPOPsにつきましては、これは行動計画自体におきましても、国際的に法的な拘束力のある手段を確立すべきじゃないかと、こういうことが言われておるわけでございますので、今後この検討作業が本格化されるわけでございますけれども、我が国としてもその作業に積極的に参加してまいりたい、こう考えております。  それから、いま一点御指摘のございましたのは、国内における行動計画という御指摘でございましたが、その件につきましては、この世界行動計画を踏まえまして、また先ほど申しましたような認識に立ちまして、関係省庁ともよく協議しながら対応してまいりたい、こう考える次第でございます。
  286. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 続いて、外国船舶の海洋汚染問題と我が国対応について伺います。  海洋環境の保全、今回の海洋法条約の主要事項の一つでもございます。この条約は、海洋汚染事犯を引き起こした外国船舶に、先ほども質疑がございましたけれども、担保金を提供することを条件に速やかに釈放する制度等となっております。従来の通報制度と比較して、果たして効果、効力はあるのかということが第一点でございます。また、これまでの質疑にもございましたが、今度は二百海里水域に及ぶわけでございまして、その監視体制の問題でございますけれども、果たして監視体制が行き届くのかどうか大変心配でございます。  それで、一つ資料をちょっと調べてみますと、これまで我が国領海内で発生した外国船舶による海洋汚染事犯について、我が国の法令を適用して刑事犯を追及した、この例は平成六年、外国船舶に係る海洋汚染事犯として三十五件を送致したというふうになっておりますが、私が今お尋ねの二点、従来の通報制度と比較して果たして効果はあるのか、あるいは監視体制が二百海里に及んで十分行き渡るのかという点をお尋ねいたします。
  287. 秦野裕

    政府委員(秦野裕君) まず第一点の効果でございますけれども、これは今までは御案内のとおり、旗国の方にそういう事象があった場合に、これを通報を行って旗国の方に任せるというのが原則でございます。  したがって、内容についてまで私どもが詳細を把握することはしておりませんけれども、少なくとも、今回排他的経済水域まで対象水域が拡大されまして、ここに私どもの日本の管轄権が及ぶということで私どもが直接に監視、取り締まりを行うということが可能になるわけでありますので、そういった意味で私どもは一定の効果があるんじゃないかというふうに考えております。  そこで、取り締まりの体制でございますけれども、従来から二百海里の漁業水域の設定以来、いわゆる広域哨戒体制というものを私どもとっておりまして、順次、巡視船あるいはその巡視船に搭載しましたヘリコプターあるいは航空機等を使いまして哨戒を行っておるわけであります。  先ほど来御議論がございますように、今回の海洋法条約への加盟に伴いましてかなり海域が拡大するということもございますので、それに対応いたしました巡視船艇、航空機の整備というものを計画的に進めていくということがもちろん必要だと思っております。  また、それとあわせまして監視用の資機材の強化ということを今進めております。例えば、赤外線監視装置というようなものを各船艇、航空機に配備中でございまして、夜間でも監視が可能になるような能力アップを図っております。  また、巡視船の整備に当たりましても、巡視船それ自体の高速化あるいは高性能化ということで、例えば荒天下でも監視ができる、あるいはもっとスピードを出して捜索範囲を広げることができるといったような性能アップの方もあわせて図っていくということで現在整備を進めておる段階でございます。
  288. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 先ほどからも御指摘ございましたけれども、今年度予算で大型巡視船を二隻新規に導入すると。それで、私のこの資料が間違っているのかどうかわかりませんけれども、速力ですが十八ノット。いろいろ聞きましたら二十五ノットぐらい出るんではないかということは言われていますけれども、この速力アップ。韓国中国のほとんどの漁船が悪いというふうに決めつけるのはいかがなものかと思いますけれども、三十ノット以上だというような実態の中で、これはどうなんですか、いただいた資料が間違いなのか。どのぐらいなんですか。
  289. 秦野裕

    政府委員(秦野裕君) ちょっと資料がどれだかはっきりいたしませんけれども、大型の巡視船でございましたら通常大体二十五ノット程度はもちろん出すことができます。  それから、巡視艇の方では、漁業の取り締まりなどに当たっております巡視艇は最近非常に高速化をしておりまして三十ノット以上、三十五ノット程度を出すことができます。そういう意味で、船艇の整備に合わせましてその能力アップを図っておるというのが現状でございます。
  290. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 あと二分しかありません。  私も素人で不思議に思うんですけれども、大型巡視船を購入した、そしてこの二百海里の排他的経済水域を設定されると当然三十ノットぐらいは出るだろうと思ってはいたんですが、詳しくは伺いませんけれども、そんなものなのかなと。いろいろ聞きましたら昔の巡洋艦なんかは三十ノットぐらい出たというふうなことで、それはちょっと定かでございませんけれども。  最後の質問は運輸大臣にいたします。  これは先ほどからも指摘がございましたけれども、いろいろ海上保安庁は業務がふえます。国際化の中で麻薬あるいは不法操業あるいは海難救助等々が非常に広がっていく。この中で、現有の体制で果たして大丈夫なんだろうか。それはヘリコプターを使ったり、赤外線を使ったり、いろいろ努力はすると言っても、なかなか心もとないんじゃないかということを私自身も感ずるわけでございます。  これについて、新しい二百海里時代を迎えて、巡視パトロール体制の強化というのは必要だと思いますけれども、それについて一言お話を伺いまして、私の質問を終わります。
  291. 亀井善之

    国務大臣(亀井善之君) 御指摘いただきましたとおり、大変広範囲な、また質の高いいろいろの努力をいたさなければならないわけであります。近代的な装備、また巡視船艇あるいは航空機等の高度な効率的な対応、このことが必要ではなかろうか。  先般、六月二日に海上保安庁の観閲式をいたしました。保安庁職員は大変懸命な訓練を披露してくれました。四千三百人の一般の皆さん方の見学もいただいたわけであります。新しい時代に向かっての高性能な船艇、ヘリコプターあるいは海難救助と捜索、大変緊密な連携のもとにいろいろの披露をしたわけであります。それらを拝見いたしましても、先ほど来御指摘いただきましたとおり、やはりその装備が必要なわけでありまして、ぜひ関係省庁の御理解をいただきまして、予算編成に向かって最大限の努力をし、その対応をしてまいりたい。またあわせて、海上保安大学校を初め職員の研修、このことにも努めて質の高い体制というものをつくってまいりたい、このように考えております。
  292. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。
  293. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となっております九案件の審査のため、明六月五日の委員会上智大学教授山本草二君、社団法人大日本水産会会長佐野宏哉君、東京水産大学教授小野征一郎君を参考人として出席を求め、意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  294. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十六分散会