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1996-06-14 第136回国会 参議院 科学技術特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年六月十四日(金曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員異動  六月十三日     辞任        補欠選任      楢崎 泰昌君     武見 敬三君      松村 龍二君     林  芳正君      山本 正和君     渕上 貞雄君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         長谷川 清君     理 事                 鹿熊 安正君                 吉川 芳男君                 石田 美栄君                 川橋 幸子君     委 員                 海老原義彦君                 太田 豊秋君                 沓掛 哲男君                 河本 三郎君                 志村 哲良君                 武見 敬三君                 林  芳正君                 友部 達夫君                 山崎  力君                 渕上 貞雄君                 峰崎 直樹君                 阿部 幸代君                 立木  洋君    国務大臣        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       中川 秀直君    政府委員        科学技術庁長官        官房長      工藤 尚武君        科学技術庁原子        力局長      岡崎 俊雄君        科学技術庁原子        力安全局長    宮林 正恭君    事務局側        第三特別調査室        長        塩入 武三君    説明員        原子力安全委員        会委員長     都甲 泰正君    参考人        動力炉核燃料        開発事業団理事        長        近藤 俊幸君        動力炉核燃料        開発事業団理事  中野 啓昌君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○科学技術振興対策樹立に関する調査  (高速増殖原型炉もんじゅ」のナトリウム漏  えい事故に関する件)     ―――――――――――――
  2. 長谷川清

    委員長長谷川清君) ただいまから科学技術特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨十三日、山本正和君、松村龍二君及び楢崎泰昌君が委員を辞任され、その補欠として渕上貞雄君、林芳正君及び武見敬三君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 長谷川清

    委員長長谷川清君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  科学技術振興対策樹立に関する調査のうち、高速増殖原型炉もんじゅ」のナトリウム漏えい事故に関する件の調査のため、本日の委員会動力炉・核燃料開発事業団理事長近藤俊幸君及び同理事中野啓昌君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 長谷川清

    委員長長谷川清君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  5. 長谷川清

    委員長長谷川清君) 科学技術振興対策樹立に関する調査のうち、高速増殖原型炉もんじゅ」のナトリウム漏えい事故に関する件を議題といたします。  同件に関し、政府から報告を聴取いたします。中川科学技術庁長官
  6. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 昨年末の「もんじゅ事故につきましては、地元方々国民皆様に大変な不安感不信感を与えるという極めて遺憾な結果を引き起こし、心からおわびを申し上げます。  今回の事故については、専門家の参画を得て鋭意調査を進めてまいりましたところ、事故原因となった温度計破損原因究明見通しが立ち、他の調査項目についても明らかとなってまいりましたので、先般五月二十三日に、「動力炉・核燃料開発事業団高速増殖原型炉もんじゅナトリウム漏えい事故報告について」を取りまとめ、公表したところであります。  本報告書の詳細については原子力安全局長より後ほど説明させますが、特に、今回の事故の経緯と寄せられた種々の批判を真摯に受けとめ、科学技術庁として深くみずからを省みて、率直に反省すべき諸点を明記しております。私を含め当庁の職員はこれらを重く受けとめ、今後の行政に反映してまいります。これに関連して、別途当庁の責任を明らかにいたしました。  私としては、本報告書により事故状況原因等について相当の部分が明らかとなり、現在とり得る限りの対策の方針がかなり明確になったものと考えておりますが、なお解明すべきことが残っており、報告書にこの点を個々に明記しております。  科学技術庁としては、引き続き残された諸点について調査を継続しているところであり、その一環として、先週七日にナトリウム漏えい燃焼実験が行われたところであります。また今後、本報告書で明らかにした対応及び改善策についても速やかに着手し、一つ一つ着実に実行に移してまいります。  また、動燃事業団に対して、本報告書を踏まえ、動燃事業団としての責任を明らかにし、適切な対応を行い、地元方々国民皆様信頼を回復するため最大限の努力を尽くすよう指示しました。動燃事業団は、直ちに理事長が引責辞任し、さらに関係者責任を明らかにしたところであります。  原子力安全委員会におかれては、独自の立場から、「もんじゅ事故原因再発防止対策について調査、審議が行われるとともに、研究開発段階原子力施設安全確保あり方及び事故時の情報公開あり方について鋭意検討が行われているところであり、これらの結果については十分に尊重して対応してまいります。  最後に、今回の事故への対応を含め、まず安全対策を徹底するとともに、情報公開、安全を最優先する体制対策確立等に努め、常に国民本位の姿勢に立って原子力行政を進めてまいる決意でありますので、委員長初め委員各位の御指導、御鞭撻をお願い申し上げます。
  7. 長谷川清

  8. 宮林正恭

    政府委員宮林正恭君) それでは、資料に基づきまして御説明させていただきます。  まず、数ページのペーパーで、「動力炉・核燃料開発事業団高速増殖原型炉もんじゅナトリウム漏えい事故報告について」という資料がございますが、今回の報告の本文につきましては少し分厚うございますので、これで説明させていただきます。  まず、今回の報告につきましては、規制部門だけではない、科学技術庁全体といたしましてこの報告を取りまとめました。それから、今回の報告はまだまだ引き続き調査を行う部分がございますので、引き続き調査を行いまして、別途追加して報告を取りまとめることにしている部分があるということを申し上げたいと思います。  報告書の要旨でございますが、今回の事故につきましては、法律的な概念からいいますと、原子炉施設の安全は確保されたと。しかしながら、ナトリウムが漏れたということにつきましてはやはり極めて重く受けとめているということでございます。  それから、地元の方におかれましては、やはりナトリウム漏えい火災というふうなことから強い衝撃を受けられたということについては十分認識をする必要があると考えておりますし、また、国民に対してもそういう衝撃を与えているということを強く認識しているということを述べております。それから、動燃によります不適切な対応がございまして、不安感なり不信感を与えるということになったということも述べております。  漏えい発生原因でございますが、この漏えい発生いたしました温度計さやにつきましては、その設計において、当時の米国機械学会技術基準を正確に理解しないまま設計を行ったミスということがあったということを述べております。  漏えい後の拡大防止につきましては、異常時運転手順書の記載に問題があったほか、運転員の判断にも適切性が欠けていた面があったということを述べております。ナトリウム漏えいによる影響でございますが、これらにつきましては、それぞれチェックをいたしました結果、放射性物質による影響、あるいはナトリウム火災で生じたエアロゾルによる影響はなかったということを確認いたしております。しかしながら、鋼製足場が損傷した原因、あるいはナトリウムコンクリート反応を防ぐために敷かれている鋼板温度上昇といったような問題などにつきましては、引き続き検討するというふうなことにいたしております。動燃事故時の対外対応につきましては、状況がどうであったかということについて説明を書いておりまして、それのバックグラウンドにありますものといたしましては、やはり動燃情報公開ということについての認識が不足していたのではないか、あるいは指揮する者の役割が必ずしも十分機能しなかったのではないかなどのことを述べております。  それから、原子力安全局対応についても記しておりまして、これにつきましては、事故の際の正確かつ迅速な情報の把握ができなかったという事実を述べております。  次に、科学技術庁として反省すべき点を五点述べております。  一つは、温度計審査に関しまして、許認可の対象とせず、自主的な活動にゆだねていたこと。二つ目といたしまして、科学技術庁対応については、動燃から情報が適切に提供されるという考えに依拠しまして、能動的対応に欠ける側面があったこと。それから、国民あるいは地元方々の不安をできるだけ少なくするような努力が不十分であったのではないか。それから情報開示についても、動燃における情報開示をためらわせるような体質あるいは雰囲気をつくってきたことについてなど、科学技術庁十分掌握をし切れておらず、そういう点で大きな反省すべきところがある。それから、動燃経営面についての監督におきましても不十分であったということでございます。八番目といたしまして、今回のいろいろな事故教訓、これは先ほどから申し上げておりますいろいろな調査をした結果に基づく教訓でございますが、それに基づく対応及び改善策を八項目述べておりまして、一つは、二次系の温度計の取りかえと科学技術庁による審査及び検査。それから、ナトリウム漏えい後の措置充実。それから、運転員が的確に判断できるような支援システム充実。それから、事故時の対応のための体制の整備。次いで、動燃自主保安強化というふうなことを述べると同時に、科学技術庁みずからにおいても安全性総点検をやる、そしてその実施は動燃にしていただくわけですけれども、その確認体制をつくっていく。それから、運転管理につきましては能動的な動きに欠けるところにあった、こういうようなことでございますので、運転管理充実強化をする。あるいは、原子力に対します安心感信頼感確保をするというふうなことにつきまして述べております。  それから、同封をいたしましたもう一つ資料をちょっと御説明させていただきたいと思います。  ナトリウム漏えい燃焼実験が六月七日に動燃大洗工学センターにおいて行われました。しかしながら、これにつきましては新聞等で既に御存じのとおりでございますけれども、下に敷かれております床ライナー破損をしているという事実が判明をしたわけでございます。  それで、今回の実験は、配管支持装置等がある状態でのナトリウム燃焼挙動確認する。換気空調ダクトあるいはグレーチングと言っております足場でございますが、そういうものが破損をしたという事実についての挙動確認する。床ライナー、下に敷いております鉄板でございますが、あるいは側壁のコンクリート、そういうものに及ぼす影響確認をするということで行いました。  これにつきましては、ナトリウム温度等はここに書かれておりますが、スペース的には約十三分の一、それから、いろいろと測定をするということから、床面におきましてはステンレス製の管あるいは枠といったものを設置いたした状況で行っております。これにつきましては三ページの上段の方の写真、図二でございますが、こういうふうなことで行われました。  しかしながら、この実験を行いました結果が図三のようなことになっておりまして、これにつきましては今後十分解析をしていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。  とりあえずの観察状況といたしましては、ナトリウム化合物堆積が見られていない、これは「もんじゅ」の場合は堆積が見られたわけでございますが、そういうことがあること。あるいは、この図でごらんいただきますように、サンプリングポットとか熱伝保護管、こういうふうなものがなくなっている。それから、先ほど申し上げました床ライナーに三カ所穴があいた。当然といいますか、ダクトグレーチング等につきましては「もんじゅ」と同じように穴があいております。  それで、このような状況になったことにつきましては引き続き検討するということでございますが、過去にいろいろ行われました実験では床ライナーに穴があくということは起こったことがないということでございますので、まずこういうことが起こった原因について十分究明をして、その後的確な措置をとっていきたい、こういうふうに考えております。  以上でございます。
  9. 長谷川清

    委員長長谷川清君) これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 河本三郎

    河本三郎君 自民党の河本でございます。  大臣、きょうはどうぞよろしくお願いいたします。また近藤理事長お忙しいところを御出席いただきましてありがとうございます。  まず初めに、一言お礼を申し上げたいと思います。あの忌まわしい阪神・淡路大震災から一年五カ月が過ぎようとしておりますが、科学技術庁としても震災発生直後より各般にわたる御支援の手を差し伸べていただきましたことに、本席をおかりしましていま一度改めて厚く御礼を申し上げたいと思います。  ただ、震災発生直後とはまた新たな難しい問題にも直面をしているということも事実でありまして、引き続きの御協力を賜りたい、このようにお願いを申し上げるところでございます。  それでは、ただいま御説明がございました「もんじゅ」の事故に関連して質問をさせていただきたいと思います。  冒頭動燃の方からも御説明をいただきたかったのでございますが、昨年の十二月八日に事故発生をしてから、鋭意原因究明等に御努力をいただいていると思います。しかし、国民の間には依然として、ただいま大臣からも御報告をいただきましたように、強い不信感、不安というものが根強く残っているということも事実でございます。  このような事態を一刻も早く解消するためには、まず何よりも徹底した原因究明をして安全確保対策を講じるということが大変重要であり、正確な情報開示に努めなければならない、このように考える者の一人であります。  これは五月二十三日付の報告書でございますが、最初に「もんじゅ」の安全対策について、そして我が国エネルギー安定供給政策の展望について、順番にお尋ねをしていきたいと思います。  前回二月九日付の調査状況の取りまとめに比べますと、特に温度計破損原因を中心としてかなり明らかになってきた、このように受けとめられます。  ただ、報告書にもあるとおり、さらに調査検討を要する項目も幾つか残っていると書いてあるのでありまして、引き続き調査を継続するとございますが、どのような調査なのか、具体的にお答えをいただきたいことが一点。そして最終報告というものがいつごろ取りまとめられるのか。この二点について冒頭にお伺いしたいと思います。
  11. 宮林正恭

    政府委員宮林正恭君) お答えさせていただきます。  温度計関連以外にもいろいろと検討する必要がございまして、まず、引き続き調査する項目として報告書の中で挙げておりますのは、当該温度計のみが破損した理由。それから、床ライナー板厚が減少しているという現象がございますのでその原因。これは、先ほど御報告申し上げましたライナーに穴があいたという現象などもこの関係でかかわるわけでございます。それからコンクリートナトリウム反応、こういうことが起こる可能性がありますので、そこのあたりがどうであったかということなどを引き続き徹底的に調査検討する必要がある、こういうふうに申し述べているところでございます。  なおまた、その後新しい事実関係が出てまいりますれば、当然それについても継続的に調査をさせていただきたい、こういうふうに考えております。  それから、最終報告ということでございますが、このような調査につきましては時間を決めて調査するという考え方を私どもとっておりませんで、これは着実に調査していく。かつまた、調査した結果は適当なタイミングで御報告を申し上げるというふうな形にさせていただければと、こういうふうに考えているところでございます。したがいまして、現段階におきましてタイミングなどについてちょっと申し上げられるところではございません。
  12. 河本三郎

    河本三郎君 先週の末になるんですか、六月七日にナトリウム燃焼挙動の検証を目的として模擬実験が行われました。この報告書最後にも写真のコピーがついておりますが、ナトリウム漏えい実験が実施されたとお聞きしております。先ほど局長からお話しございましたように、注目すべき点はナトリウムの受け皿でありますライナー、これは鋼板製の厚さ六ミリのライナーということでありますが、これに穴が三カ所あいたと、当初、予想しなかった結果が生じたのであります。  私が理解しておりますのは、このライナーといいますものは、ナトリウムコンクリート中の水分が反応することを防ぐ役割を持っているということで、「もんじゅ」にとって極めて重要な部位である、このように認識しております。さらに追加実験を行い、ナトリウム化合物との反応などの実態を詳細に把握することが必要ではないかと考えますが、いかがでございましょうか。
  13. 宮林正恭

    政府委員宮林正恭君) お答えさせていただきます。  結論から先に申し上げますと、今回の実験の結果につきましては、先ほど申し上げましたように、過去百二十回程度行われておりますいろいろなナトリウム漏えい実験などで一度も起こっていない現象でございます。かつまた、「もんじゅ」そのものにおいてもそういうことは起こっておりませんので、今回こういうふうな穴があくという現象が起こったことにつきましては、十分まずそこの原因究明、解明をしたい、こういうふうに考えております。それで、そのために検討していくわけでございますが、必要があれば、当然のことといたしまして実験も十分やりたいというふうに考えております。
  14. 河本三郎

    河本三郎君 報告書にございます今回の事故ナトリウム漏えい量、約六百九十キログラムとお聞きしておりますけれども、この漏えい量と今回の模擬実験漏えいをさせた量とは同量のようなものですか。
  15. 宮林正恭

    政府委員宮林正恭君) 先ほど御説明用に使いました資料の一ページでございますが、漏えい量は約六百九十キログラムというのが先日の実験のときの量でございました。大体、実験条件ナトリウム温度あるいはナトリウム漏えい速度実験時間などにつきましては、実際の「もんじゅ」に起こりました状況模擬するような形でやったわけでございますが、ただ、床面につきましては、先ほど申し上げました別の条件があった、あるいは部屋も十三分の一というふうな容積であったということなど、当然、模擬でございますので別の条件もありました。
  16. 河本三郎

    河本三郎君 失礼しました。実験漏えい量が六百九十キログラムということでありますね。  それで、ライナーが溶けて床部コンクリートと何らかの反応をしたと思いますが、この反応についてどのような御見解を持っておられますか。
  17. 宮林正恭

    政府委員宮林正恭君) まず、床部部分のうちコンクリート反応したかどうかにつきましては、これは水素発生したかどうかということでございまして、現在の一時的な解析状況では水素発生していないというふうに、発生していないというのはちょっと言い過ぎでございまして、少なくとも水素測定限界以下であった、こういうふうな状況でございました。  それから、床の鉄板との反応につきましては、これはナトリウム、鉄、それから酸素という三者が共存する中で、かなり高温のところにおきましてはある種の化学反応といいますか、そういうものが起こったのではないかというのが一時的な見通しとして推測されているところでございますが、今後引き続きこれらにつきましては解析をしていきたい、こういうふうに考えているところでございます。
  18. 河本三郎

    河本三郎君 これまでの調査によりますと、温度計破損は、ナトリウムの流れに伴う温度計流体振動に起因する高サイクル疲労によるものであり、この温度計さや段つき構造になり、さらにその段つき部のいわゆる応力逃がし、曲率半径が考慮されていなかったということだと思います。つまり、応力が非常に集中をしやすい、そういう設計であったということが判明しておりますが、具体的には、当時の設計担当者がアメリカの機械学会基準を正確に理解せずに、テーパー状の形状を適用すべきであったところを段つき構造のものにしてしまったということが指摘をされております。つまり設計ミスであります。  このような初歩的なミスもさることながら、動燃事業団においても、温度計さや設計図面検討の上で承認しているわけでありまして、その過程で設計上の問題点指摘、改善できなかったという点は大変大きな問題であったと考えております。俗な表現でありますが、技術を売り物にする日本としては極めて情けない事態でありまして、国際的にも信用を落としてしまったと言わざるを得ないのであります。私も流体力学振動工学を学んだ者の一人として、実に貧しい設計であったと思います。  そこで、動燃近藤理事長にお伺いをしますが、今回の設計ミスを見逃したという点について、どのような対応をされるおつもりでございますか。
  19. 近藤俊幸

    参考人近藤俊幸君) 本来、高い信頼性確保すべきこのナトリウム配管などの一部でございます御指摘温度計に問題があり、破損しましたが、これをチェックできなかったということは重く受けとめております。温度計さや構造に対し、慎重な配慮が欠けていたと反省しております。  今後は、設計考え方やその根拠、品質保証システムにおける問題点など、根源に立ち返った見直しを行っていきたいと思っております。
  20. 河本三郎

    河本三郎君 しっかりとした対応を今後とっていただきたいと言うしかございません。  次に、フランススーパーフェニックス漏えい事故を例に出して御質問したいと思います。  今回のような事故再発防止のためには、各国事故あるいは故障のデータを常に収集して、これを原子力プラント安全性向上に役立てるということが重要でございます。温度計部からのナトリウム漏えいは、フランススーパーフェニックスにおいて過去に発生しておるのでありまして、この漏えいの直接の原因は溶接不良であったと聞いておりますが、その際、このスーパーフェニックスでは、同時に振動対策として温度計さやの長さを短くするという改善策をとっておられます。この振動対策を「もんじゅ」に適用しておけば、今回の事故は防止できたかもしれません。各国安全対策我が国原子力施設に反映させるためにも、従来より先進国情報交換を行っており、フランスと安全に関する情報交換を行っていると聞いておりますが、この一九八五年に起きましたスーパーフェニックス事故教訓がなぜ生かされなかったのかということで大変残念でございます。その辺についての御見解をお聞きしたいと思います。
  21. 宮林正恭

    政府委員宮林正恭君) 御説明させていただきます。  委員指摘の点につきましては、私どもも大変申しわけないことだと思っておりまして、これにつきまして十分調査を進めたいということでやつてきているわけでございますが、現在、私どもが存じているところでは、当庁でこの一九八五年七月に発生しましたナトリウム漏えいに関する情報については、その当時情報を入手していたという記録は見当たりません。  それから日仏規制情報交換、これは一九八八年が第一回でございましたが、その後第八回まで行われております。第九回もことし行ったわけでございますが、そういうふうな中で本件につきましての議論がされた、特に御指摘がございました温度計が振動するので短縮化したというようなことにつきましては、話題となっていないということでございます。  これにつきましては、九二年から九四年にかけまして行われましたナトリウム火災対策につきましての情報を入手した際にも十分入手できていないというふうな状況にございまして、詳細が入手できたのは、ことし動燃が一月に、事故後にでございますが、現地に行かれたときに入手されたというふうに承知しております。当然、これにつきましてはある種の記述というのが当時記録の中であるわけでございますが、少なくともここまで詳細が判明する、注意を引くというような内容ではなかったということのようでございます。
  22. 河本三郎

    河本三郎君 済みません、聞き取りにくかったのでもう一度御答弁いただきたいんですけれども、話題になっていなかったとおっしゃいましたが、何が話題になっていなかったのですか。
  23. 宮林正恭

    政府委員宮林正恭君) ちょっと説明が悪くて申しわけございません。  日仏規制情報交換におきまして、温度計の短縮化というふうな、まさに今回の事故の中身に関連しますような話題というのは出てきていないということでございます。
  24. 河本三郎

    河本三郎君 今御答弁された九六年の一月に入手してそれが初めてわかったと、こういうことでありますか。
  25. 宮林正恭

    政府委員宮林正恭君) はい。
  26. 河本三郎

    河本三郎君 わかりました。  温度計破損に加えまして、今回の事故をこれほど拡大させた要因として運転マニュアル類の不備というものが指摘されます。  このマニュアルは、報告書にもしっかりと書いてございますが、概要、フローチャート、そして細目の三部構成から成っておりまして、今回の手動トリップ、すなわちエマージェンシーシャットダウンを行い得なかったのは、フローチャートを正しく理解しないまま細目に従って運転操作したことによるものということであります。  このエマージェンシーシャットダウンを行うか行わないかの選択判断というものは、運転員にとって心理的に極めて重い負担がかかると私は思います。しかし、原発という性格上、緊急時には安全性を最優先にした対応が重要であります。運転員に負担をかけないためにも、マニュアルというものは細部に至るまで整合性がとれたものでなければならないと考えております。このような配慮に欠けていたことは大変残念でありますが、今回の教訓を生かすためにも改めるべきものは改めるという姿勢が必要でありますが、マニュアルの改善について何かお考えがございますか。
  27. 宮林正恭

    政府委員宮林正恭君) マニュアルの改善につきましては、まず運転マニュアルにつきましては、これまでは政府が特段の報告を受けるという形になっておりませんでした。しかしながら、やはり異常時のものにつきましては、これは安全上非常に重要であるという観点から、「もんじゅ」につきましては、これを安全性総点検の中で当庁としても確認をさせていただくというふうにしたいと思っております。  当然、マニュアル全体につきましては動燃において見直しをしていただく、見直しといいますか全体をチェックしていただくというふうに考えております。それからその際には、特に異常時の運転マニュアルにつきましては、緊急時に運転員に過度な負担がかからないようなシンプルかつ整合性のとれたものにするように十分指導していきたいと思っております。
  28. 河本三郎

    河本三郎君 温度計設計や今マニュアルの点についてお聞きをしましたが、大臣にお尋ねをいたします。  科学技術庁として、「もんじゅ」の安全性確認への取り組みに当たっての大臣のお考えなり御決意をお聞かせいただきたいと思います。
  29. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) お答えの前に、先ほど阪神・淡路大震災について先生からお話がございましたが、震災直後はもとより、その後につきましてもまた新たな地域開発の観点から御提案も当庁にいただいておりますので、そういうようなことも鋭意努力をして、私ども全力を挙げてまいりますことをあらかじめ申し上げておきます。  お尋ねでございますが、科学技術庁という政府の立場からいたしましても、安全確保のための規制を行うという責任を持っておるわけでございます。そういう意味で、今回の事故については私どもも責任を感じ、そしてまた今後しっかりとした対応をしなきゃいかぬ、こう考えていることをまずもって申し上げておきます。  御指摘の点につきましては、先ほど来局長から申し上げておりますけれども、今後行われる安全性総点検の中におきまして、今回の事故にかんがみまして一段の安全性強化を図るという観点から、動燃自身が行います施設、プラントに対する安全性及び今御指摘のあった保安規定やあるいはマニュアル類についても総点検を行わせるわけでありますが、それについて私どもの方も安全性総点検チームというものを設けまして、総点検の基本的な方針も政府の方から示し、また必要に応じて現場でもきちんと総点検の実施について確認をし、また総点検の結果についてもそれが妥当であるかどうか、また具体的な改善策についてもそれが妥当であるかどうか十分検討確認をすることにいたしております。  また、そういう総点検の結果につきましても、一層の情報公開という観点から、地元皆様国民皆様にしっかりと結果を公表して、失われた信頼あるいはまた理解というものを回復するために全力を挙げてまいりたい、このように考えております。
  30. 河本三郎

    河本三郎君 大臣、ありがとうございました。  「もんじゅ」の安全確保対策について質問をしてまいりましたが、原子力の一般的な考え、取り組みの原点というものについて少し御質問をさせていただきたいと思います。  世界の人口を考えますと、現在約五十七億人の世界の人口が今後爆発的に増加するということが予想されておるわけで、二〇二五年には約八十五億人、二〇五〇年には約百億人に達すると言われております中で、世界のエネルギーの消費は、開発途上国の人口増加や経済発展に伴って急激に増加すると見込まれております。開発途上国も先進国と同様、経済発展というものを求める権利がありまして、我々が幾ら省エネルギー政策を進めても、世界的に見ればエネルギー消費が今後とも増加するということは当然でございます。  一方、化石燃料の可採年数といいますものは石油が約四十年、石炭でも二百年と言われております。しかし、これは現在の消費レベルであればと仮定した年数でありまして、今申し上げましたように世界のエネルギー消費が増加すればさらに短くなるわけであります。その状況の中で、資源に乏しい日本が将来にわたって安定して発展していくにはエネルギーの安定確保が必要不可欠であると私は確信しております。  そこで、原子力行政でありますが、原子力は供給安定や経済性にすぐれるほか、発電の過程で地球温暖化の原因であると言われますCO2、二酸化炭素を発生しないために環境問題の解決に大きく貢献をするという特徴があり、既に我が国では総発電電力の約三割を担っているということであります。しかし、この原子力も燃料としているウランは有限でありまして、その可採年数は四十年程度と言われております。したがって、軽水炉で一回だけ使用して廃棄する方式を今後採用している限り、ほかのエネルギーと同様の運命をたどるということであります。  原子力が本来持っている性能、特徴を最大限に生かすために、使用済み燃料を再処理して再び燃料として使用する核燃料リサイクルを確立することが重要であると考えております。特に、発電をしながら消費したそれ以上の燃料を生み出すことができる高速増殖炉を中心とした核燃料リサイクルによるウランの利用効率は飛躍的に向上し、今申し上げました可採年数が四十年程度と言われておりますこの資源量を千年以上にすることができると、このようにお聞きしております。  今回の「もんじゅ」の事故によって国民全体に原子力に対する不安感不信感を与えてしまったことは大変残念であります。今後の原子力開発をさらに円滑に進めていくために、事故原因究明、万全の安全対策を講じるということが重要であります。報告書に記載された対応及び改善策を早急に実施していただきたい、このように思っております。動燃近藤理事長にその辺の御決意をお聞きしたいと思います。  そこで、技術的な面での安全対策と同様、社会的な信頼を維持していくということも重要でございます。そして、そのためには情報公開を初め、日ごろから地元国民の理解を得るということが極めて重要でございます。動燃技術者の方々に大変な御苦労をいただいているわけでございますが、地元の理解を得るための配慮に欠ける点があったと言えるかもしれません。そして、今回のビデオを隠したという問題についても、事故後の動燃対応というものが不適切であったということは否めません。これを反省して徹底的に改めるべきだと私は思います。  今回、動燃理事長になられた近藤理事長、今回の「もんじゅ」の事故、そして動燃における対応等を客観的にごらんになってこられて、さまざまなお考え、感想をお持ちだと思いますが、この際、新理事長としてどのような対応をしていくのか、その御決意をお聞かせいただきたいと思います。
  31. 近藤俊幸

    参考人近藤俊幸君) 「もんじゅ」の事故によりまして、地元を初めとして国民皆様動燃に対する技術信頼と社会的信用を失いまして、先生から今御指摘ございましたように不信と不安を与えたこと、これを深く反省しております。  現在、「もんじゅ」につきましては徹底した原因究明を行っているところでございますが、これらの信頼回復に向けていくに当たりまして、私は、次の三つの基本方針で取り組んでまいりたいと思っております。  一つは、安全に徹した動燃にしたいと思っております。プルトニウム等の核物質を取り扱う事業団として、放射線安全並びに核不拡散に対する取り組みはもちろんのこと、ナトリウム技術を初めとする施設全般の安全確保についての取り組みを強化してまいりたい。この機会に、より安全性を高めるために、設計やその基本的な考え方などを根源に立ち返って見直し、総点検を行い、一つ一つ確実に対処していく所存でございます。  二つ目は、開かれた動燃にしたいということでございます。その趣旨は先ほど先生がおっしゃられたとおりでございまして、地元を初め国民皆様の理解と信頼、また今日では国内だけではなくて国際的にも理解を得ることが大事な時代になっております。このためには徹底した情報公開が不可欠であると認識しております。そういう意味で開かれた動燃にしていきたいと思っております。  それから、三つ目には地元重視の動燃にしたい、これも先生御指摘のとおりでございます。プルトニウムを扱う施設など、社会的に危険視されておりますこの施設を受け入れていただいている地元を重視して、地元の声をよく聞いて事業を推進するということが非常に重要なことだと思います。地域の方々安心感を持って事業団を受け入れてくださるよう努力していきたい、こう思っております。  安全に徹した動燃、開かれた動燃地元重視の動燃という方向で取り組んでいきたい、こう思っております。
  32. 河本三郎

    河本三郎君 ありがとうございました。  次に、原子力政策円卓会議が既に四回開催されているということでございますが、特に福島、新潟、福井の三県の知事から、原子力政策に関する国民的合意形成に向けた国のより一層の努力を求める強い要望が出されております。それに対して現在、原子力委員会原子力政策円卓会議を開催するなど、国としても大変努力を始めているという報告を受けておりますが、大臣、これまでの円卓会議の御感想をお聞かせいただきたいと思います。
  33. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 円卓会議は、今回の「もんじゅ」の事故を契機といたしまして、国民的な原子力政策に対する共通の認識あるいは合意といったようなものを形成すべきである、それについて国や原子力委員会が一層前面に出て努力をしなきゃいかぬ、こういういろいろな各界各層の御意見、特に三県知事の御提言等ございまして設けさせていただいたものでございます。  まずスタンスとしては、先に一定の結論を持ってやることではない、それから一定期限をつけてやるものでもない。原子力委員会が行うそういう合意形成の努力、共通認識形成の努力というものは不断にやっていかなきゃいかぬ、いつもやっていかなきゃいかぬ、そういう意味で常設というような気持ちでこれに臨ませていただこう。そして、常にプレスにもまた一般にも公開をして開かれた場でやっていこう。また、各界各層の方々に出ていただこうということで、推進派のお立場の方々もあるいは批判的なお立場の方々も公平に御出席をいただく。運営もモデレーターという第三者にお願いをする。そんな形で進めさせていただいたところでございます。  私も、この重要性にかんがみまして、四回、国会、公務の都合で短い時間しか出られなかったときもございますが、たとえ短い時間であろうとも毎回必ず出ようということで出席させていただいたところでございます。  今までの第四回までの会議は、まさに幅広い立場の方々から御出席をいただきましてさまざまな観点からの御議論をいただきました。ある意味では非常に自由闊達に行われたという感じがいたします。ただ、まず四回までは特定の分野に議題を特定せず、もうどんな議題でも出していただこう、こういうことで臨ませていただいたために、大体四時間、場合によっては五時間というような長い時間やらせていただくのでございますけれども、一人七分、十分御意見を出していただきましてもすぐ二時間あるいは三時間かかってしまいまして、自由な討論という時間が十分とれなかった。それでも四回目は二時間以上ディスカッションの時間をとることができましたが、そのようなこともございました。  これから五回目以降は、そういう意味で過去四回出された極めて重要な有益な御意見、それぞれのお立場の御意見で大体このくらいの議論の幅があるなということはわかってまいりましたので、多数伺った有益な御意見をこれからは議題として、その中から抽出された課題あるいは問題点という形で整理をさせていただいて、第五回目以降は分野を設定して集中的な議論をしていただこう、こう考えております。現在、その具体的な分野の絞り込みについてモデレーター、進行役でございますけれども、その諸先生方に御相談をいただいているところでございます。  先ほど委員指摘のエネルギー見通しの議論も、それは当然やはりあらゆるデータ、行政側が出しているデータだけではなくて、そうでない、こういうデータもあるということも幅広く提出をいたしまして、そういう御議論もいただかなければならぬと思っております。  いずれにしても、これは電源立地地域の住民の問題だけでは決してございません。国民一人一人がみずからの問題として考えなければならない問題だと思っております。そういう意味で、幅広い議題を幾つかの分野に設定しまして、その分野についてまた幅広く御議論をいただいていこう、こう思っております。  今と未来、次の世代のことも考えなければなりません。そして、委員指摘のように、日本のみならず世界のことを考えなければなりません。何よりも安全確保を考えなければなりません。  しかし、その安全の中にも技術的な安全、例えば原子力発電あるいは原子力開発というものは潜在的に危険性は持っておるわけです。それを技術的なあらゆる努力を通じて、放射能被害、災害を起こさないということで抑え込むというのが宿命的にこの原子力開発に課せられたものでございます。そういう意味での安全を確保するというのが多重防護という考え方で、技術的安全でございます。  他方、立地地域初め市民が求めている安全というのはさらにもう少し幅の広いものでございまして、やはり社会的な安心というものも含み、そしてでき得べくばすべての故障、すべての事故というものをなくせ、放射能災害が起きなくてもそういうものもあってはならぬと、そういう要求をしているというのが社会的安全ということではないか。その溝を本当に懸命に埋めていかなきゃならぬというのが我々の努力だろう、こう思っております。  そういう安全をまず確保するということ、同時にまた、二十一世紀に向かって地球環境を確保するということ、またコスト、暮らしという問題もございます。  以上申し上げました、今、未来、日本と世界、安全、環境、暮らし、そしてエネルギー、こういった問題について一つの共通認識をみんなが自分の内側の問題として考えてつくっていくというのがこの円卓会議の目標だ、このように考えておるところでございます。
  34. 河本三郎

    河本三郎君 最後に、大臣原子力政策に関する御決意をお聞きしたい、このように思いましたが、今の御答弁の中で十分に私も理解できた点がございますので、その点は省略させていただきたいと思います。  きょうは、問題点が余り整理できずに質問に立たせていただきましていろいろ御迷惑をかけましたが、これで私の質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  35. 山崎力

    ○山崎力君 平成会の山崎でございます。多岐にわたる質問をさせていただきたいと思います。御答弁は簡潔にお願いしたいと思います。  今回の事故は、単純に言えば温度計設計ミスであった。それが巨大なああいう「もんじゅ」というものをストップさせ、あるいは動燃という組織全体の評価を揺るがし、そして我が国原子力政策自体にも将来的に大きな影響を与える事故になってしまった。これは、ほかの原子力発電所の美浜の細管破断あるいはそういった別のところという、いわば巨大精密機械ともいえる原子炉関係において、一部品がその全体を破壊してしまうといいますかストップさせてしまうというものの一つの典型だろうと思うんです。  そういった観点から、まずこの温度計設計ミス原因究明についてどの範囲まで調査なさったのか。具体的に言えば、最終的な設計者、個人なのかあるいはチームなのか、その点検をする、クロスチェックをするチーム、そういったものについてどういった人がどういう調査をしたのかという点まで調査なさったのか、まずお伺いしたいと思います。
  36. 宮林正恭

    政府委員宮林正恭君) 本報告書の作成に当たりましては、二次系の温度計さや設計、製作、施工を行いました石川島播磨重工に対して聴取を行っております。設計をしましたのは石川島播磨重工でございますが、動燃、それからまず一次的なコントラクターでございました東芝についても当然聴取をしているところでございます。それで、具体的には担当部署、東芝の場合は動力炉開発部、それから石川島播磨重工につきましては原子力事業部の責任者から直接聴取するという形をとっております。
  37. 山崎力

    ○山崎力君 ということは、具体的にだれが設計したかという固有名詞のところまでは調査なさっていないということでございますか。
  38. 宮林正恭

    政府委員宮林正恭君) その点につきましては、個人名あるいはその直接の担当者までは聴取を行っておりません。
  39. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) ただいまの調査の範囲につきまして、動燃でも実施いたしましたので先生の御質問にお答えさせていただきたいと存じます。  動燃で実施いたしました調査の範囲、原因究明といたしましては、今、局長からもございましたけれども、設計関係者に関連しましては会社名、部署名、それから内容につきましては設計の経緯、設計考え方設計時に行われました評価、こういったものを調べております。  また、製作、加工、施工法に関しましては、使用された材料、それから加工、施工法の調査も行っております。  つくられた後の検査についてでございますけれども、検査が仕様どおりに行われたかどうか、こういったことの検査、それから流力振動による高サイクル疲労調査も実施いたしております。そのほか破損さや管の調査等々も行っておりまして、今、先生御指摘の末端まで調べたのかということでございますが、末端の最終的にそれを加工したメーカーまで調べてございます。
  40. 山崎力

    ○山崎力君 私がそういう細かい点にこだわるのは、こういった場合一つの組織の問題として、何というんでしょうか、対外的なエクスキューズといいますか、そういうものの整合性を持たせるために、どこで本当にミスがあったのか、例えば設計した人が一人だったのかチームだったのか、そういうミスがあった場合にバックアップする体制がその部署にあったのかなかったのか、そういったことが固有名詞まで調べませんとわからないのではないかという問題意識を持っているからでございます。  それが、会社の部署は聞いた、そこからこういう経過であったということを聞いたということはもちろん大切なことでございますけれども、向こう側からの経過説明の中に自分たちのミスを覆い隠すような、単純なところを本当にたった一人の設計者の文献の読みミスでこういったものが最後までまかり通ったのかどうかということは、私に言わせれば、その個人まで確かめないと本当のところはわからないんじゃないかという気がするんですが、その点いかがでございましょうか。
  41. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 先生のおっしゃるように、やはりプロジェクト自体が非常に大きいものでございますから、末端まで一つ一つさかのぼって調べていかないとわからないものと思っております。また、そういう考え方から、先ほど申し上げましたように末端まで調査いたしました。
  42. 山崎力

    ○山崎力君 ちょっと最初の安全局長説明と違ったような御答弁だと思うんですが、いわゆる科技庁側はそういったところまではいかなかったけれども、動燃さんとしてはそこまでちゃんと調べましたという意味合いで受け取ってよろしいんでございましょうか。
  43. 宮林正恭

    政府委員宮林正恭君) そのあたりのところにつきましては、私どもは動燃の方から聞いておりまして、設計をいたしましたのはチームでございまして、課長、主務、それから担当という直接的には四名の方が参加をされた。実際に実務を担当された方は担当のお二人で、それを主務、それから課長というふうにチェックをしていかれた、こういうふうに聞いております。
  44. 山崎力

    ○山崎力君 そういった点が、残念なことですが、しなくても済めばいいわけですけれども、やはりそこまでやらなければいけない問題だろうと思っておりますので、今後ともその辺の個々それぞれの問題についてやっていただきたいと思います。  そして、次の段階として、この温度計設計について科技庁は審査の対象としていなかったということでございます。その理由。あるいは、次に当然の連想として出てきますのは、温度計以外の部材、部品についても審査の対象外になっているものがあるんではないか。特に今回のナトリウムに関しては、一次系、二次系含めた配管類に取りつけられているそういった機器について審査の対象外というものがほかにもあるんではないか、それは大丈夫なのかという疑問が出てくるわけですが、その辺のところはいかがでございましょうか。
  45. 宮林正恭

    政府委員宮林正恭君) 国の審査におきましては、原子炉等規制法に基づきまして災害を防止する、すなわち一般公衆の安全を確保するという観点から必要なものについて審査を行うということにしております。  御指摘温度計につきましては安全審査の対象とはいたしておりませんで、動燃自主保安によって安全性確認するということにいたしておりました。これにつきましては、報告書でも述べておりますけれども、今後は科学技術庁審査、検査を行うということにいたしております。  それから、御質問のございました点につきましては、温度計さや管以外のものにつきましては、審査の対象となっていないものといたしまして、例えば配管についております流量計、それから圧力計といった計装品、これらにつきましては、この構造というものにつきましては審査をするという形になっておりません。それで、審査の中身といたしましては、性能及び数といいますか、員数と言っておりますが、そういうものを確認する。これは先ほど申し上げました災害の防止をするという観点からそういうふうなことのチェックをしているわけでございます。  それから、あと主配管に接続がされておりますベント管、枝管でございますが、こういうものにつきましては、この主配管と接続をされております部分の溶接、こういうものについてはチェックをいたしておりますが、そのあと、ベント管の先端の方に至りますと、必ずしもすべてチェックをする、こういうふうな形はとっておりません。  今回の「もんじゅ」の事故と同じようなことが起こるのではないかという心配があるという御指摘でございますが、これにつきましては今後「もんじゅ」の安全性総点検をやる、こういうふうなことにいたしておるわけでございまして、その中で十分「もんじゅ」のシステム全体の安全性確認していくということにしたいと思っております。  その中で、審査なり検査を政府としてやる必要がある、こういうふうなものが出てまいりますれば、当然そういうふうな対応をさせていただくというふうにしていきたい、こういうふうに考えているところでございます。
  46. 山崎力

    ○山崎力君 やはりさや一つの欠損がこういう事故になったということを考えれば、ほかの機器についても強度的に大丈夫なのかということは、今度動かしました、次は流量計が折れてそこから漏れましたというのでは、これはもう話にもならぬわけでございますので、皆様方釈迦に説法だと思いますけれども、その辺の再点検、念には念を入れてやっていただきたいと思います。  続いて、そういった全体の設計・工事方法の認可、審査、そういったことは科技庁の所管としてやられているわけです。例えばもう全体的な問題、強度計算その他のことをやられていると思うんですが、その場合のクロスチェックといいますか、これは動燃さんの方との絡みもあるんですが、そういったものをどうやって計算して大丈夫だよということを担保しているのかという点についてはどういうふうな形になっておりますでしょうか。
  47. 宮林正恭

    政府委員宮林正恭君) 今回の温度計につきましては審査をいたしておりませんので、一般的な考え方ということで御説明させていただきたいと思います。  まずクロスチェックでございますが、行政庁が審査をいたします際には、必要に応じて傘下にございます日本原子力研究所、こういうところなどにお願いをして、あるいはそれ以外の機関ということもございますけれども、いろいろとコンピューターでチェックをしていただくというふうなことなどをやっております。  それからまた、いわゆるダブルチェックというシステムによりまして、原子力安全委員会におかれましては政府のやりました行政審査の中身についてもう一度チェックをされるというふうな構造になっております。
  48. 山崎力

    ○山崎力君 動燃方々にお伺いしたいんですが、今回の報告書では一義的な責任動燃にありますというふうな形になっておると受けとめております。  それで、中間報告書が出ているわけですが、そのことについて動燃として一義的な責任、当然いろいろお感じになっていると思いますが、その辺についての御所見を簡潔にお伺いしたいのと、それから、動燃として動燃内部の反省を踏まえた報告書をつくるお考えがあるのかどうかということをお伺いしたいと思います。
  49. 近藤俊幸

    参考人近藤俊幸君) 動燃は「もんじゅ」の設置者でありますので、設計から施工、保守に至るまで責任があると考えております。今回の事故については重く受けとめております。  それから、動燃としての報告書でございますが、せんだって六月七日にやりました再現実験等を今解析中でございますので、そういうものも含めて報告したいと思っておりますので、まだ時間をいただきたいと思っております。
  50. 山崎力

    ○山崎力君 私がこの問題で一つひっかかっているといいますか、今回の動燃さんの対応の中で、残念なことに唯一の犠牲者が動燃から出られた。しかも、それは今回の事故に直接関係している部署の方が責任を感じてという形ではなかったということがございます。そういう動燃報告書といったたぐいのものを出されるとした場合、その犠牲者の、自殺された方の理由、原因、そういったものも調べなければ動燃の体質をみずから点検するということにならないのではないかというふうな意識を持っておるんですが、その辺についての調査をなされておりますでしょうか。また、その辺を報告書の形で公表するお考えがありますでしょうか。
  51. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) お答えいたします。  大変残念なことに西村次長を失ったわけでございますが、私どもとしましては職制を通じまして、人事部を中心にして彼の死に至った原因調査いたしております。  ただ、御案内のように、この趣旨の原因といいますのはかなりプライバシーに関連した事項が多うございますので、今先生の御質問にございました報告書の中にどういう形で入れるかということについては、十分検討して考えたいというふうに思っております。
  52. 山崎力

    ○山崎力君 プライバシーの点は当然でございますけれども、いわゆる動燃の組織として彼の死に与えた影響のある部分があれば、その辺のところは最低限明らかにしていただきたいと御要望申し上げます。  続きまして、原子力安全委員会の方に質問を移らせていただきますが、原子力安全委員会はどのような役割と権限を持っているのか、そしてそれに伴う責任はどういうものであるのか。特に、安全審査についてはどのような形に置かれているのかということを御説明願いたいと思います。
  53. 都甲泰正

    説明員(都甲泰正君) お答えいたします。  原子力安全委員会役割は、原子力基本法等に基づきまして、安全確保のための規制政策、それから核燃料物質及び原子炉の安全規制、さらには原子力利用に伴う障害防止の基本等に関しまして「企画し、審議し、及び決定する」こととなっております。  また、行政庁が原子炉施設の設置許可等を行う場合には、原子炉等規制法に基づきまして、原子力安全委員会の意見を聞きましてこれを尊重することとされております。  これらに基づきまして、所掌する行政庁におきまして原子炉施設の設置許可等に関する安全審査が行われました後に、原子力安全委員会がその審査の内容について、必要な技術的能力があること及び災害の防止上支障がないことについての基準の適用が妥当であるか否かということに関しまして、客観的な立場からダブルチェックを行っているところでございます。  また、設置許可に関する答申に際しましては、必要に応じまして、原子炉等規制法に基づいて行政庁の行う設計及び工事の方法の認可あるいは電気事業法に基づいて行政庁が行う工事計画の認可以降の段階で特に留意すべき重要事項を摘出いたしまして、その処理方針について行政庁より報告を受け、審査をしておるところでございます。
  54. 山崎力

    ○山崎力君 そういった概括的なお仕事の中で二点お伺いしたいと思うんですが、一点は、今回の「もんじゅ」の事故防止という点から原子力安全委員会として反省すべき点はなかったのかどうか。原子力安全委員会の仕事の内容から見て、ここを注意していればさや管その他あるいはマニュアルの面で改善の余地があったのではなかったかという点が一点でございます。  それから、こういう全体的な安全審査の中で、これはちょっと発想が飛ぶんですが、先ほどの河本先生の中にもありましたけれども、いわゆる阪神・淡路大震災のときのように想定が、前提が狂っていた場合、例えば震度六しか来ないだろうと言っていたのが七来てしまった。こういった場合のチェックというものは、これは具体的なものをやる人たちにとっては不可能なわけでございます。そういった根本的な計数の定め方、そういった点で安全委員会というものの役割は非常に大きいと思うんですが、そういういわゆる事故想定といったものについての考え方が今回の「もんじゅ」その他について変わってきている部分があるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  55. 都甲泰正

    説明員(都甲泰正君) 最初の御質問でございますが、今回の「もんじゅ事故にかんがみまして、安全審査のやり方その他について反映すべきところはないかという御趣旨かと思うのでございますが、この点に関しましては、現在「もんじゅ事故調査を行っております原子力安全委員会のワーキンググループといたしましても、その点を含めまして現在検討を進めていただいておるところでございます。  また、原子力安全委員会といたしましても、特に研究開発段階原子力施設安全確保に関しまして、安全審査でございますとかそれに続く後続の安全規制段階、その他いろいろな安全確保の方策全般につきまして現在検討を行っておるところでございまして、今後、これらいろいろな調査活動の結論を得た上で、安全委員会として最終的な見解をお示ししたいと考えておるところでございます。  それから、第二番目の御質問の事故想定が妥当であったかどうかという御質問に関しましても、これは「もんじゅ」の安全審査段階のときの事故想定が妥当であったかどうかという御質問の御趣旨かと思いますが、今回の大洗におきます実験結果あるいはこの「もんじゅ」の事故原因調査等を踏まえまして、これも同じく今後検討を続けてまいりたいと思っておるところでございます。
  56. 山崎力

    ○山崎力君 最終報告にそういった形のものを明確な形でお示し願いたいと希望申し上げます。  ところで、今回の問題というのは、私個人の発想だけではないと思うんです。昨年来、阪神大震災で、例えば高速道路のあれが落ちる、新幹線は幸い通っていなかったからいいようなものですけれども橋脚が落ちる、あるいは大丈夫と思われていたビルが使い物にならなくなる。あるいはエイズの問題で、これを使えば死人がかなりの確度で出るであろうという薬剤を長期間行政が放置していたという結果を招いている。そして、今度の「もんじゅ」の事故もそういうことだろうと思うんですが、いわゆる科学技術と申しましょうか自然科学の分野において、そういったものを知っている人、ハンドリングできる人というのは一般的に限られる、専門知識を有するという問題があろうかと思うんです。  一般の文科系の大学あるいはそういったものをやってこられた方が、行政庁としてそういった専門知識をどう国民に対して使っていくのか、システムをどう構築していくのかということが、そういった関連の行政庁としては非常に大切なことではないかと私自身思っております。  それが破綻を来したのがある意味ではこの三つの例ではないだろうか。これは、これからの科学の時代、科技庁全体の行政の中でいつも振り返らなければならない問題でもあろうかと私自身は思っております。そうした中での行政の仕組みというものが、今回の科技庁においては「もんじゅ」の事故対応してどのように再点検あるいは再構築していかなきゃいかぬのかということを考えているわけですけれども、その辺に関する大臣の御所見を伺いたいと思います。
  57. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 先ほど来、御質疑を賜っておりますけれども、「もんじゅ」の安全確保についての設計、施工、運転、保守等すべてにおいて、まず第一義的な安全確保責任というものは、これは原子炉設置者である動燃責任というふうに法律上もなっておるわけでございます。  また、国の方は、それに対して災害を防止する、公衆の安全を確保するという観点から所要の規制を実施する、安全規制をする責任を持っておるわけであります。その国の方にも行政庁としての科技庁、そしてまた独立した第三者機関としての安全委員会、この両方がダブルチェックをしながらやっていくという体制になっているわけでございます。  また、こういう施設をつくるメーカーあるいは建設会社等々も、これは発注者である動燃の監督下において機器、設備の設計、製作、施工、保守等を厳正に実施していく責任がある、このように考えております。  こういった国や動燃、メーカー、それぞれがみずからの責任を果たしていくと、それがすべて一〇〇%あらゆる努力を加えてなされまして初めて安全が確保されるシステムだ、こう言えると思うのでございますが、今回の事故を顧みて、このシステム全体、これまでの体制、やり方が本当に十分であったかということを顧みてみますと、やはり十分な点でなかったという点もある、このように私たちは謙虚に真摯に受けとめていかなきゃいかぬと思います。  そこで、この事故教訓として一層もっと実効性のあるいろいろなことをしなきゃいけないということで、私どももまた安全委員会におかれても御検討いただいているんだろうと思いますし、私どもは何よりもまずその責任を感じなきゃいかぬと思っております。動燃においても自主保安あるいは品質保証活動等々において一層責任を感じて今お取り組みをいただいていると思います。私ども自身も、安全性総点検の中で設備あるいは保安規定、マニュアルについても今後は審査の対象に拡充をしてまいりたいと思いますし、また、そのようなことを通じまして、より適切な安全確保に努めてまいりたい。  最後に申し上げますが、私は、放射能災害を起こさないという点においては、我が国原子力関係者の今日までの努力はある一定の評価は与えられていいと思います。しかし、それにふさわしい市民からの理解、国民からの理解が得られているかというと必ずしもそうではないと思います。それは、やはり今委員いろいろな他のことについてもお触れになりましたが、一層透明性を高めていく、そしてわかりやすく、そして正確に御説明をして御理解を得るという努力が欠けていたからではないか、このように考えております。
  58. 山崎力

    ○山崎力君 御答弁のとおりのことであろうと思います。特に民主主義的な行政においては、その権限と責任の所在の明確化が必要であるという点と、その政策決定の過程が透明性を保っているということが一番の問題であろうと私自身思っております。  いろいろな訴訟も起きております。その中で関係者が言っているのは、決定後の数字は出てくるけれども、その数字がどういう計算式に基づいて出てきたのかというところがどうも我々に明らかになっていないという不満も聞かれております。もちろんパテントとかあるいは安全保障上の問題で明らかにできない部分はあるかもしれませんけれども、逆に言えば、そういった点を指摘することによってオープンにできないということも私は情報開示一つあり方ではないかと思っております。  次に移りますが、これは最終報告書、先ほど河本先生の方からもありまして、まだ時期は決まっていないということでございますが、私どもの感覚からすれば、最終報告に基づいて対処が決まるとなれば、当然八月の概算要求には間に合わぬと、その報告書が出ない段階での対処方針は出ないわけでしょうから。そうすると、再来年度、十年度の予算にこういったものの対処方針が出てくるのかなというふうな感じでおります。  その点について、さや管一本でこれだけの巨大なシステムがストップしている状況で、非常に言いにくいことですけれども、その影響というものは金額的に見れば莫大な損害を動燃さんに与えている、あるいは動燃さんは国民に対して損害を与えているということになっております。最終報告が出るからこれはまだ別として、その費用の負担について、例えば動燃さんはその製造者あるいは契約者に対して損害賠償をするお気持ちがあるのかどうか、その点を確かめたいと思います。
  59. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 先生お尋ねの、今回の事故に関連してメーカーに損害賠償する気があるのかどうかというお尋ねかと存じます。  先生も御案内かと思いますが、最近の新聞に出ておりましたけれども、メーカーはさや管に対するナトリウムの流れによる振動及び応力集中を回避することができなかった温度計設計に問題があった、メーカーの設計上のミスであったということを認めております。  こういうことを前提にいたしまして、現在、原因究明で残されました部分を私ども解明を進めるとともに、現場ではいわゆるナトリウム漏れによって、ナトリウムのエアロゾルによって機器類がいろいろ影響を受けておるわけでございます。そういった影響調査を進めている段階でございまして、責任分担等につきましては、これらの解明、調査がなされてから総合的に判断されていくのかなというふうに考えております。  したがいまして、損害の賠償をメーカーに求める措置につきましては、それらの解明が済んだところで協議していきたいと思っております。
  60. 山崎力

    ○山崎力君 その損害の程度というのをどこまで見積もるかということは、これまた技術的な問題であろうかと思います。  ただし、少なくともメーカー、製造者、設計者、これがどういった形になるか、東芝さんなのか石播さんなのか、その辺は別といたしまして、動燃が頼んだ部品の設計ミスによって事業に重大な影響が出た。またその部品を使ったものがもう使えない。その損害によってほかの機器類にも影響が出た。単純に考えても、それの取りかえ費用だけでも膨大な金額になるということは想定つくわけでございます。  それと同時に、算定不能なものとして、このプルトニウムを利用する高速増殖炉の計画自体が年の単位でおくれたということに対する人件費とか将来への影響ということを考えると、まさにそれは算定不能な額になろうかと思うのでございます。  納税者サイドから見ますと、動燃さんの事業主体というのはほとんど税金だというふうに私どもは理解しております。ということは、今回の損害は少なくともメーカーかあるいは国民の税金かで賄われなければならないということが現実かと思います。  その点について、再度でございますけれども、確かに損害賠償をするとすればその金額の特定、そしてその理由というものを明らかにしなければ裁判にはならないと思いますけれども、現実に今そういったものでこれだけは最低限問題があるというふうなところということの問題点。言い方がまずかったと思いますけれども、少なくとも動燃がクロスチェックを怠ったことによる動燃側の過失というものと、それからつくったという製造者、メーカー側の過失というものとの関係をどういうふうに考えておるのかということで訴訟自体が変わってくると思いますけれども、その辺についてはいかがでございましょうか。
  61. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) その辺につきましても今原因調査している中で、メーカーとの間でどの段階でクロスチェックを怠ったのかということも再確認しつつ話を進めていきたいというふうに思っております。
  62. 山崎力

    ○山崎力君 お金の問題ばかりで非常に恐縮なんですけれども、これは、こういった物事に対する将来の科学技術、あるいはそういったものの事故のリカバリーについてかなり大きな問題になろうかと思いますので、その先例という意味からも、国民の側に対してその辺の事情を明らかにしていくという態度をこれからも続けていただきたいと思うわけでございます。  そういった点から見ますと、この「もんじゅ」の安全対策全体、あるいは運転再開をするための必要な経費、こういったものは私どもからすれば一民間企業が負担するような、幾ら巨大な民間企業であれその一社ですべてを賄えるような金額ではないというふうに私は想像しております。ということは、この「もんじゅ」再開が、原因究明が明らかになりあるいは民間会社の負担割合が明らかになった後でも、国として科技庁として、国民に対してこれだけの予算をお願いしたいという事態が、恐らく長官在任中ではないと思いますけれども、出てくると。そういったときに、この事故原因調査をやっているときの担当大臣として長官がどのように引き継いでいくかということが役所として重要だろうと思うんですが、その辺の考え方大臣最後にお聞かせ願いたいと思います。  それからもう一つ、先輩政治家に対しての質問として、こういった技術者あるいは科学技術という将来の日本を変えるかもしらぬ、あるいはどういうふうになるかもしらぬという、何というんでしょうか、未知の世界の問題に対して、政治家として国民を代表してどう監督といいますか指導していくかといったことは極めて重大な我々の課題だろうと思っておるんですけれども、その辺についての御所見もお答え願いまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  63. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 第一点のお尋ねでございますが、これも確かに先ほど来委員みずから御指摘をいただきましたけれども、今私どもが置かれている状況というものは、今回の事故原因究明を徹底させるということ、そこから何が必要かということをまずデスクワークではございますけれども明らかにして摘出をする。そして、まず地元方々を初めとした国民皆様に経費の問題は別として安心していただける状況をつくり出していく。その段階で初めて高速増殖炉の議論を、今円卓会議等でもエネルギーの問題あるいはまた安全、環境の問題、すべてもろもろを含んで御議論をいただいている、そんな御議論を踏まえながら、初めて運転再開の議論がその段階から始めさせていただけるということで、今直ちにそういう議論を前提とした予算の編成とか要求とかいうことはなかなかできることではない、このように思っております。  平成八年度予算、実は政府案ができますときは事故の直後でございましたが、その段階におきましても、この八年度予算でも事故が起きた直後、わずか一カ月もなかったわけでございますけれども、その辺多少調整をしたようでございます。  平成九年度予算の要求等あるいはまた編成等に当たりましても、まだ方針は未定でございますけれども、いずれ、この調査に必要な経費というのはあると思いますし、実験等に必要な経費もあると思います。あるいはまた、それとは別に現にプラントは存在するわけで、直ちに安全措置を講じなきゃならない点もあるかもしれません。そういう意味での経費はまたお願いしなければならないことになるかとも思われますが、いずれにしてもその辺はこれから議論をしてまいるところでございます。  そして第一点目の最後として、いずれにしても、この安全対策あるいはその運転再開等に必要となる経費が将来算出をされてきた場合、そしてまたそれを予算計上される場合には、当然のことながらその内容を、先ほど透明性の確保と申しましたが、国会にあるいはまた国民皆様にできる限り明らかにして、そしてまた国会において各般から御審議を賜るということが必須のことであろう、このように考えております。  それから最後の、第二点目のお尋ねは、これも非常に大きな問題でございまして、直ちにこうでございますと申し上げることはなかなか難しゅうございますけれども、確かに未来に対する挑戦という部分においては勇気も持たなければならぬと思います。  この前、アリアン5という衛星が、ヨーロッパ連合でございますが、ESAにおいて打ち上げられまして失敗をしました。これ約四トンのものを上げる、日本のHⅡロケットよりも倍の能力を目指しているもののようでございますが、その後のESAの声明等を見ますと、反省すべき点はきちんと指摘していますけれども、我々は必ず成功するんだ、非常に自信を持って信念を持ってやるんだということをこの声明で発表しております。すべての関係者技術を凝縮し、政治、技術及び産業当局の意思と団結を結集しているから我々は必ず成功すると確信している、こういうことを言っております。そういう点も持たなければ、研究者、技術者は一層前に進んでいくことはできないと思います。同時にまた、それが常に国民に開かれた形で御理解をいただきながら、そして御納得をいただきながら進められていくためには、常に評価もいただき、そして透明性も確保し進められていくべきものではないかなと、こんなことを、今ぱっとお尋ねをいただいたことでございますので、思い浮かんだ次第でございます。
  64. 長谷川清

    委員長長谷川清君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時四十分休憩      ―――――・―――――    午後一時開会
  65. 長谷川清

    委員長長谷川清君) ただいまから科学技術特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、科学技術振興対策樹立に関する調査のうち、高速増殖原型炉もんじゅ」のナトリウム漏えい事故に関する件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  66. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 社会民主党の峰崎でございます。  実は、十一日の火曜日だったんですが、福井県敦賀市に赴きまして、村山党首ともども現地の視察をしてまいりました。昨年の十二月八日、村山党首がまだ総現在任中の事故でございました。大変責任感旺盛な党首でございましたので、現地を、声を、つぶさに見聞きしてまいったわけでございます。そのときに記者会見などもされましたので、それらも含めて、きょう、科学技術特別委員会で私の方から御意見あるいは質問をさせていただきたいと思います。  そこで、動燃理事長さんに冒頭ちょっとお聞きしたいと思います。  実は、原子力の基本政策の基本五項目といいますか、通常は三項目と呼んだりしておりますが、その中でアカウンタビリティーという言葉をよく使われる。また、科学技術庁長官も、衆議院の科学技術委員会、参議院の特別委員会の議事録を読んでみますとそれが出てまいります。そういう点に関してどのように思っておられるのか、どういう考えを持っておられるのか、まず冒頭、ぜひお聞き申し上げておきたい。
  67. 近藤俊幸

    参考人近藤俊幸君) 「もんじゅ」の事故によりまして、地元を初め国民皆様動燃に対する技術的な信頼、社会的な信用を失いまして、不信と不安を与えたことに対して深く反省しております。  私は、動燃の新しい理事長に就任いたしまして、基本的にはこういう考え方で今後取り組んでいきたいと思っております。  一つは、安全に徹した動燃にしていきたいということでございます。プルトニウム等の核物質等を取り扱う事業団としまして、放射線安全並びに核不拡散に対する取り組みはもちろんのこと、ナトリウム技術を初めとする施設全般の安全確保についての取り組みを強化してまいりたい。この機会に、より安全性を高めるため、設計やその基本的な考え方の根源に立ち返りまして、見直し、総点検を行いつつ、一つ一つ着実に対処していきたい、こう思っております。  それから二つ目には、開かれた動燃をつくっていきたいということで、地元を初め皆様の理解と信頼、また今日では国際的な理解も必要な時代になっております。このためには徹底した情報公開が不可欠であると認識しております。そういった情報公開に努める開かれた動燃にしていきたいと念じております。  それから三つ目には、地元重視の動燃にしたい。プルトニウム取扱施設など社会的に危険視されております施設を受け入れていただいております地元を重視しまして、地元の声をよく聞き事業を推進してまいりたい、またこのことが重要と認識しております。そうして、地域の方々安心感を持って事業団を受け入れていただくよう努めてまいりたいとこういうふうに思っております。
  68. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 質問したのはアカウンタビリティーということの意味だったんですが、今は動燃としての今後の原則的な考え方をおっしゃったわけです。実は、民間の電事連におられて、民間の企業からなられたということで大変私は期待をして今の質問をしたわけであります。  実は、これは「もんじゅ」に限らず、住専問題もそうでありましょう、あのHIV訴訟の厚生省の問題もそうでしょう。今問われているのは、情報公開というのは単純に情報公開すればいいということではなくて、いわゆる納税者、タックスペイヤーの観点から見たときに、情報はある意味では積極的に公開をしていかなければいけない。逆に言えば、民主と公開が合わさった考え方がそのアカウンタビリティーという言葉で、これを科学技術庁長官が二度にわたってお使いになっているという点は私は大変すぐれた見識だと思っていますし、ぜひそういう観点から進めていただきたい。  それで、動燃にもお願いをしたいわけでございますが、事故隠しとかそういう、ある意味では我々は、市民社会の中で国民の前にそういう情報はどんなつらいことでも積極的に開かなきゃいかぬ、実はこういう問いかけがこの間なされたんじゃないか。これは実は何も科学技術行政に限ったことじゃなくて、例のアメリカの大和銀行の問題もそうでありましょう。あるいは日本の株式会社と言われているところでも、社外取締役をもっと入れようとか、そういうコーポレートガバナンスにまで該当する、日本社会の体質を変えなきゃいけないと、こういう観点で提起をされている大変重要な問題だと思っておりますので、動燃の新しい理事長になられて、この点はひとつぜひそういう観点からこれからも進めていただきたいというふうに思うわけでございます。  さて、最初に「もんじゅ」の事故のとらえ方の問題について科学技術庁に質問してみたいわけであります。  私も現地へ行ってまいりますと、特に福井県知事は、三県の知事として円卓会議その他に質問あるいは意見を出されているわけでございますが、どうもやはり「もんじゅ」の事故についてのとらえ方が科学技術庁なり動燃は非常に狭いのではないだろうかと。実は、三県の栗田福井県知事は我々に対して次のように要望をされているわけでありまして、この点についてどのようにお考えになっているのか聞いてみたいわけであります。  栗田知事は、「もんじゅ」のナトリウム漏えい事故原因の徹底究明の中で、今回の事故は初めてナトリウム漏えいするという「もんじゅ」の安全確保の根幹にかかわる重大な事故だと、「もんじゅ」の存立そのものにかかわる重大な問題を引き起こした事故である、そういうとらえ方をされているわけです。今回の調査報告書をまだ全部十分に見ておりませんけれども、いわゆる一次系じゃなくて二次系である、放射能漏れはなかった、調査をしてみたらどうやらミスがあったということは記載されているわけでありますが、そうじゃなくて、どうも「もんじゅ」全体にかかわる大きな問題なんじゃないかというとらえ方をして、徹底的にやってもらいたいという要望が出されていると思うんです。  この点について、これは長官からお答え願ったらいいと思うんですが、その現地のいわゆる徹底究明、「もんじゅ」の事故に対するとらえ方とどうも温度差があるんじゃないかというふうに思うんですが、そのあたりどのようにお考えになっておりましょうか。
  69. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 私は、放射能災害を防止する、いかなる場合でも公衆の安全を守る、この原子力安全確保のための今の法体系、原子炉等規制法がございますが、その観点での災害というものは防止し得た事故であったと、これは現実の問題として言えると思うのでございます。そして、そういう意味での技術安全性と、もちろんかかる事故はあってはならぬのでございますけれども、何よりも目的としている放射能災害を起こさないという目的というものは、今回の事故においても安全確保という点でそれは確保された、このように考えております。  しかし、先ほど来の御質疑で午前中にも申し上げましたが、ありとあらゆる先端技術も駆使して原子力が内包している潜在的な危険性というものを多重防護で封じ込め、そして安全を確保するという意味の技術安全性という議論と、いま一つ、理屈を申し上げるわけではございませんが、社会的な安心、安全という観点と、二つやはりあるんだろうと思います。  今、三県知事のお話もございました。特に福井県知事さんの御指摘もございました。県民の生命、財産、そしてまた安心、安全、これを預かっておられる現地の知事として今回の事故を重く受けとめていかれるというのは、これはまた当然だろうと、このように思います。  と申しますのは、やはり「もんじゅ」の場合は高速増殖炉ゆえに冷却剤にナトリウムを使う、このナトリウムが、仮に放射能災害に至らない事故であってもそれが漏えいした、そして火災を起こしたということは、これは仮に放射能災害に結果的に至らなかった事故であったとしても、県民、市民の社会的な安心、安全ということについては、かなり大きな不安感、そしてまた不信感というものを与えてしまった。このインパクトは、初めての漏えい事故でもございますし、かねてよりいろいろそういうことも起こり得るのではないかという指摘もあった中で、ないという説明をしながら起こったという経緯もございまして、これはもう大変な不安感を与えてしまったということであろうと存じます。  私は、技術安全性だけ確保すればいいと言っているのではなくて、何よりももちろん災害を起こさないための技術安全性をいかなる手段を講じても確保しなければならない。同時にまた、それとあわせて同じような重さで社会的な安全性というものを確保していかなければ理解が得られない、納得が得られない、こういう観点でその溝を埋めていく努力を徹底してやっていかなきゃいかぬという意味で今度の事故を重く受けとめておるというふうに申し上げたいと思っております。
  70. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 そこで、今度の報告書が出されたわけでありますが、また報告は引き続き続くのでありましょうが、ちょうど私どもが行っている最中に「もんじゅ」の再現実験のいわゆる新聞報道に接することになった。  鉄製の床が溶けて穴があいちゃった、さっきのライナーのことですね。現場に私ども案内して見せていただきました。そうすると、下の鉄製のライナーのところが切り取ってありました。今検査中であると。これは穴があかない、要するに前までの記録を見ると、どうも曲がっているとかいろんなことがあるんですが、今度の再現実験で鉄製のところに溶けて穴があいちゃったと。  先ほど、コンクリート水素発生しなくて爆発には至らなかったということなんですが、これがこういう穴があいたということ、これはいろいろまだ引き続き検討するということなんでしょうが、現実に穴があくということになったら、今後の改善策といいますか、これ「もんじゅ」のあそこのいわゆる漏れてくるところの下に全部敷いているんでしょうから、当然これは全面的に見直しあるいは改装し直さなきゃいかぬという、再現実験における大変な結果を示しているんじゃないか。  これはもう地元の皆さんもこの新聞記事を見て、とにかくこれは重大なことであるということで、改めてきょう、この再現実験を受けて、今後は一体どういうふうにこの問題を解明されようとしておるのか、この点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  71. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 実験の話でございますので、実験を実施いたしました動燃の方から御説明させていただきます。  先生御指摘のように、今回六月七日に実施いたしましたナトリウム漏えい燃焼実験、十日の日にふたをあけてみましたらライナーに三カ所穴があいておりました。私ども、過去十数年の間にナトリウム漏えい及び漏えい燃焼にかかわる実験を百二十回ばかり繰り返してやってまいりましたが、穴があいたという現象は今回が初めての知見でございます。  ただいま、その穴のあいた部分のサンプルをとったり、それからまたどういうメカニズムでそれができ上がっていったか調査を進めておるところでございます。この調査結果によっては、先生御指摘のように全部取りかえるということもあろうかと存じますが、まずは、なぜ穴があいたかというメカニズムを解明していきたい、このように思っておるところでございます。
  72. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 再実験されますか。
  73. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 実際に今その状態を分析したりいたしておりまして、必要に応じて再実験をやっていきたいと思っております。
  74. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 これは現地の方も、ぜひこの点はもう徹底的にやってもらいたいという声があったということを要望を申し上げておきたいと思います。  さてそこで、今度は調査方法、原子力安全委員会とそれから科技庁の調査、二つ今回時に進んでいるわけですね。これは私どもの同僚の川橋議員が前回質問の中で、科技庁の場合はタクスフォース、それから原子力安全委員会はワーキンググループ、この調査を委嘱した方々の中に、実は国の安全審査や安全規制というか、事前にチェックをした人が含まれていると。何人でしょうか。タスクフォースに二名、ワーキンググループに四名。もちろん全員でないのは救いですが、しかしこういう方々が入られるというのは、本当に調査の第三者性というか健全性というか、公平性というか、そういうことについてこれはちょっとやはりおかしいんじゃないか。  今も、大蔵行政改革の中で、金融行政の問題も第三者機関だと思うんですね。あの証券行政の不始末のときも、証券取引等監視委員会を外に出すべきだということでしきりに主張した点なんです。  これと同じような問題がありまして、それは現在のいわゆる原子力安全委員会強化の問題、これも要望を出されたんです、現地へ行きまして。今と同じことなのでありまして、原子力安全委員会というのは本来原子力推進じゃなくて原子力の安全を今度はチェックする側ですね、そのチェックする側の事務局が、同じ科学技術庁の中の部署がそれを占めているということになると。  これは前回、長官答えておられますが、今の体制でも十分そのチェック機能は果たせていると思うというふうにおっしゃっているんです。あるいは行革の問題があって、今は定数がただでさえ足りないんだから、それは新しくまた外に出してつくるということについての国民の理解もなかなか得られないんじゃないかとか、そういう意見があるということも私重々わかっているんです。  しかし、原子力という問題に関して言えば、これはこれだけの巨大な技術でありますから、その点を点検チェックするということについての独立した機構なりそういうものについての必要性というのは、これは十分国民に説得力を持って我々も訴えることができるんじゃないだろうか、そういうふうに考えるのでございますが、この点はどのようにお考えになりているのか、改めてお聞きしたいと思うんです。
  75. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 安全委員会についての御見解は、安全委員長もお見えでございますので、私は行政庁の代表という立場でお答えをさせていただきたいと存じます。  委員指摘のとおり、今回の当庁の原子力安全技術顧問を中心とした事故調査のタスクフォースに、従来から原子力施設安全性審査について御協力をいただいているメンバーがおりますことは事実でございます。詳しく申し上げますと、十二名のタスクフォースのメンバーのうち四名が「もんじゅ」の安全審査を担当した原子力安全技術顧問会、FBR部会、高速増殖炉部会でございますが、構成員であったということでございます。  この四名がなぜタスクフォースの委員として任命されたかということ、これは私の就任前に発令されていることでございますけれども、これはやっぱりこの事故原因究明をする上でも的確な検討、広範な検討をしなければなりませんが、過去の経緯、なかんずく「もんじゅ」の構造あるいは設備、そういったものについて相当の知見、専門知識を有しているという者が、あのときはこうだった、あの構造はこうだったということの徹底した議論をする上に必要なのではないかという見地から任命をしたということのようでございます。  いずれにしても、タスクフォース構成員は大学教授や国立研究機関の職員等でございまして、動燃の職員等、あるいは動燃と密接な利害関係を有する者、そういう者は含まれていないわけでございます。また、全体的に十二名中四名ということで、八名は全くそういうものに関連していない人が原因究明に当たっている、こういう実態であるということは御理解を賜りたい、かように思っております。  しかし、国会の場でそういう御意見もいただいているということは、今後かかる原因究明の作業、あるいはまた原因究明をしていく体制というものの中でどうそれを受けとめていくかということは、私どもなりに受けとめて考えてまいりたい、こう考えております。
  76. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 すっきりした答えをいただけないので残念なのでありますが、時間の関係もありますので先に進みたいと思うんですが、実は、これもかねてから……
  77. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 安全委員会の方はよろしいですか、ワーキンググループの。
  78. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 ワーキンググループの方、もしよければ。
  79. 都甲泰正

    説明員(都甲泰正君) 原子力安全委員会のワーキンググループの構成員の中にも「もんじゅ」の安全審査あるいは行政庁の審査にかかわった委員がおられますが、この辺の人選についての安全委員会側の考え方は、先ほどタスクフォースの人選に関しまして大臣の御答弁にありましたのと同じでございますので割愛させていただきたいと思います。  それからもう一つ原子力安全委員会の事務局をSTAが行っている、これは原子力安全委員会の第三者機関としての機能を果たす上で大いに支障があるのではないかということに関しまして原子力安全委員会としての見解を述べさせていただきたいと思います。  原子力安全委員会は、御承知のように総理府に設置されております諮問機関でございまして、現在、下部組織といたしましては、延べ約四百人に及びます各分野の専門家から構成されております。二つの審査会、それからさらに十六の専門部会、これは基準ですとか安全研究ですとか種々の専門的なことを議論していただく専門部会でございます、そのように構成されておるわけでございます。現在五名の委員がおりますが、国会の同意を得まして内閣総理大臣が任命するということになっておりまして、行政庁から独立した第三者機関であると考えております。  さて、二番目の御指摘の、事務局が科学技術庁の中にあると。現在、原子力安全局の中にございますが、安全局の中で規制を行っておりますのは原子力規制課とか規制を担当しておる課、室がございますが、それとは別の安全調査室というところに事務局をお願いしております。また、原子力安全委員会としてはみずからの判断のもとに事務局の運営を行うことができるわけでございまして、事務局を科学技術庁が行っていることに問題があるとは私どもは判断いたしておりません。  むしろ、科学技術庁の中に事務局があるということで、科学技術庁の大勢おられるスタッフに私どもの専門的な目的のためにいろいろお手伝いをお願いすることもございますので、この面で大変プラスになっているのではないかと考えております。それで、もし仮に完全に独立した事務局を持つということになりますと、それだけでも相当大きな事務局にしていただく必要があるのではないかと考えております。  以上、御説明申し上げましたように、原子力安全委員会が第三者機関としての機能を果たす上で、現在の組織が不都合であると私どもは判断をいたしていない次第でございます。  それから、ワーキンググループの十四人の中で安全審査にかかわった人は、具体的に申しますと四名でございますが、その人選の事由は先ほど大臣の御答弁にあったのと同じでございます。
  80. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 もう本当に丁寧な答弁で、時間がなくなってしまいました。  私は、今の原子力安全委員長のお言葉ですが、総理府に置かれているわけですから、本当に独立した、それはやはり科学技術庁の進めているところとは別個の、もちろんそれに人やお金はかかるかもしれないけれども、そこはやはりそういうふうに規制していかないと、この大変重大な問題を扱っているときに当然審査機関としてはきちんとすべきじゃないかというふうに思っておりますので、ぜひその点を委員長もよろしくお願いしたいと思います。  もう時間がなくなってまいりましたので、最後にまとめてばたばたとお話し申し上げたいと思うんです。  一つはプルサーマル計画、プルトニウム利用をめぐる問題で、これも議論されているんですが、地元の皆さん方、特に知事以下、今のような国民的合意がない、あるいはMOX燃料の再処理計画が明らかじゃないじゃないかとか、あるいは「もんじゅ」の事故原因調査中と、こういうもとではこのプルサーマル計画はもう検討する考えはありませんよという大変強い声が出ていますし、さらには原子力防災特別措置法をつくってもらえないか、これは我々国会議員にももちろん要請があった点でありますし、御存じのようにいつも私も問題にしていますバックエンド対策、これもやはり進んでいないじゃないかといったようなことも実は出されております。  我が党の党首村山さんは、そういうことを受けながら、なるほどこれはもう一回、きょうですか、十四日に通産省のエネルギー需給計画の見直しがあるやに聞いておりますが、そういう意味でいうと非常にいいタイミングじゃないかな、いわゆる原子力長計の見直しの問題を含めて、あるいはいよいよになったらいわゆる核燃料リサイクルのあり方の問題、その是非も含めて検討すべきであるというふうに我が党首はおっしゃったわけでございますが、この点について科学技術庁長官、どのようにお考えになっておられるか、前総理の特別補佐官でもありましたので、その点よろしくお願い申し上げて私の質問を終わりたいと思います。
  81. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) ちょっとお答えする前に、安全委員会あり方の問題について再度御言及ございましたが、今私は行政庁の責任者という立場でございます。そういうことでの御答弁を申し上げました。安全委員会委員長からもまた安全委員会としてのお立場の御言及がございましたが、これはもう今後、将来国会のこういう御議論等々を通じまして、また政治の場でのさらなる御議論、御検討がなされていくんだろうと、私はそのように考えております。  それから、今お尋ねのことでございますけれども、村山社会民主党党首が敦賀でおっしゃられました点、私も関心を持って記者会見等々も全部その当時のやりとりの状況を拝見させていただきました。  党首のおっしゃっておられるのは、その長期計画の見直しも国民全体が納得し理解する素地がなければできない、そういう視点を含めて見直しを要請したいということで、答えも、記者団のFBRの撤退をした方がいいと考えているのかと、こういう問いかけに対して、そういうことではないと、断定的に結論を出して意見を言っているわけではないが、ともかく今回の事故の場合いろんな意味で国民の不信を招いているのだから、その不信を解消して、安全性確認して皆の理解と納得が得られなければ推進できない、こういうふうな見地での見直しをおっしゃっていると理解をいたしております。  さてそこで、簡潔にお答え申し上げますけれども、通産省においても総合エネルギー調査会で分科会を設けられる。これは私どもの円卓会議の議論が始まりましたのを受けまして、その意味でエネルギーの長期的な見通しあるいは需給の関係といったような観点から討議を始められた、こう理解をしておりまして、見直しをするためという報道がありましたけれども、それは事実は違うというふうに聞いておる次第でございます。以上、これは事実関係だけ申し上げた次第でございます。  それで、お尋ねでございますけれども、私どもは円卓会議におきましても、結論先にありきではなくて、幅広く各界各層の御意見をいただいて議論を深めていただいて、その中から長期計画を含む政策に反映すべき事項というものを的確にまた柔軟に反映させていきたいということでございます。例えば余剰プルトニウムを持たないという我が国の国策、基本原則がございますが、プルトニウムの需給計画その他についてもいろいろな事情変更が現実にも起こりつつあることは我々もよく見きわめていかなきゃならぬと思っておりますし、そういう中で適切かつ柔軟にそれは検討しなきゃいかぬ、こういうふうに考えております。  また、高レベルについても、御指摘のとおりこれは真剣に取り組まなきゃいけないということで、高レベルの廃棄物処分の懇談会というものを先般設け、また原子力バックエンド対策専門部会における検討も鋭意本格化をさせてまいりたい、こう考えております。  ただ、これに関して申しますと、何度も申し上げていることでございますけれども、我が国の総合的なエネルギーの自給率ということも観点にしっかり置いておかなきゃいけない。原子力を含みましても今一六、七%じゃないかと思います。それを除きましたら、本当に水力と国内炭とそしてわずかな国内石油ということになってしまうわけで、そうなるともう五、六%になってしまうのではないかと。  こういう今、未来も含め、そして安全、環境も含め、特に申し上げたいことは、現実に今軽水炉の原子力発電所においても使用済み燃料がどんどん蓄積をされてきている。発電所にワンススルーで埋設したらいいじゃないかといったって、発電所立地地域でそのような御理解が全然得られることはできないのでございます。そうすると、それをやはりまた処理処分していかなきゃならない。今海外に再処理をお願いしていますが、それもまた引き取らなきゃいけない。そうするとプルトニウムが出てくるわけでございまして、それをどうやっていくかというと、一番安全なのはMOXにして燃やしてしまうという方向になるわけで、そういう環境への観点ということも我々は十分踏まえていかなければならぬ、こう思っております。  最後に、お尋ねの原子力災害特別措置法の制定に関しては、現在国土庁において、中央防災会議のもとで国の防災基本計画をより実践的に改めていくという検討が行われているところで、その中で、原子力防災対策につきましても原子力防災計画として、これは今私どもも入りまして具体的な検討を行っているところでございまして、そういう検討を通じて国、地方自治体等の責務がより明確になってくるものだ、このように考えております。しかし、特別措置法等の御要望、御提案があることも重々承知をしておりまして、これからも自治体等々の御意見を十分に伺い、御相談をしながら、また地方分権あるいは行革といった動き、取り組み、それとあわせまして総合的に勘案して検討を続けてまいりたい、こう考えております。
  82. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 終わります。
  83. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 ナトリウム火災原因となった温度計について、五月二十三日の報告書を踏まえてまず質問いたします。  温度計さやが急角度の段つき構造になっていたことが厳しい応力集中を招き破損に至ったと予想どおり報告されています。しかも、この急角度の段つき構造というのは、一九八五年十月、メーカーから動燃に二次主冷却系配管配置図が提出されたときからのもので、以来どの段階でも問題にされてこなかったとなっています。報告書は、動燃温度計さや設計図面検討の上で承認しており、その過程で設計上の問題点指摘、改善できなかった点で問題があったと動燃責任指摘していますが、これは動燃のいわば無能力を指弾していると思われるんですけれども、それを見過ごした科技庁も同罪だと思います。  このことは前回の質問でも述べましたので繰り返しませんが、なぜこういうことが起こるのか、その分析が必要だと思うんです。何が起こったのかの説明事故の経緯の説明ではなく、なぜ起こったかの分析、その必要性は認めますね。簡単に答えてください。
  84. 宮林正恭

    政府委員宮林正恭君) その点に関しましては、私どもも引き続き関心を持って調べていきたいと思っております。  それから、それらの背景につきましては、特に原子力安全委員会のワーキンググループの皆様方、大変関心を持っておいでになります。したがいまして、そういう意味でも明らかにできるものはしていきたい、こういうふうに思っております。
  85. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 問題の急角度の段つき構造ですけれども、報告書を読むと、ドリルの刃先の角度に支配され厚みを均一にするために急角度になったと説明されています。私はこの説明がどうも納得できないのです。製品をつくるときには、まずどんな製品をつくるのか設計図が先につくられるはずです。その設計図に合わせて必要な機械なり部品、ここではドリルなり道具が使われるというのが常識だと思うんです。ハイテク日本を支えたのは町の職人わざ、こういうふうによく言われるんですけれども、そうした専門の機械加工屋さんに何人にも聞いてみました。どなたも言うんです。いいかげんな図面では物はつくれない、図面をめぐってよくけんかもすると、そこまでおっしゃっていました。この大もとの設計図、製造者が直接目にした設計図、これは動燃に提出されたのでしょうか。  つまり、報告書の中で言っている二次主冷却系配管配置図に含まれていたという温度計さや構造図、これはこの大もとの設計図そのものだったのでしょうか。
  86. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) お答えいたします。  破損いたしました温度計の製造に使われました設計図といたしましては、IHI、石川島播磨重工でございますが、下請に発注した図がございまして、これを入手いたしております。
  87. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 今回の報告書をつくるに際して、科技庁はこの大もとの設計図をしっかりと見ていますね。また、その設計図は当然公表してもらえますね。
  88. 宮林正恭

    政府委員宮林正恭君) 今回の事故調査につきましては、なぜこういうふうな温度計設計になったかという経緯を調べる、そういう目的で調査をしておりまして、そのもとになる製作設計の図面までは見ておりません。しかしながら、こういうふうな設計考え方で、図面はこういう考え方でやっておりますということは図面つきで説明を受けております。  また、実際に発注されたときの図面はその後入手はしておりますので、これは私どもが直ちにお渡しできるというふうに申し上げるわけにはいきませんが、動燃の方でこれは御希望があればお渡しをする、こういうふうにおっしゃっておりますので、動燃の方からお渡しになるものと思っております。
  89. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 まだ科技庁は及び腰だと思うんです。こんなに国民的に関心が持たれている製作設計図を動燃は持っていると言うんですから、出させればいいと思うんです。ぜひ出していただきたいと思いますが、動燃
  90. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) この設計図につきましては、メーカーと協議の上、先般、別の先生から御要請がございまして既に提出いたしておりますので、今後公開していきたい、そのように思っております。
  91. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 大もとの製作設計図ですから、念のために。  報告書は、メーカーの温度計設計関係者のASME基準の誤認を問題にしています。何が起こったのかの説明としてはこれで済むと思うんですけれども、なぜ見過ごされてしまったのか、規制当局としても安全審査体制技術力が問われているわけで、その責任をやはり報告書には明記すべきだと思います。  結局ここには、科技庁が動燃責任を転嫁し、動燃がメーカーに責任を転嫁し、メーカーが担当者個人に責任を転嫁するという、いわば無責任の連続、こういうものを見るんです、私は。そして、この担当者個人でその連続を収束させるその無責任さ、メーカー任せの体質、本当はこれが問われていなければならないんだと思うんですけれども、科技庁、どうでしょうか。
  92. 宮林正恭

    政府委員宮林正恭君) その点につきましては、先ほど申し上げましたように、引き続き私ども関心を持って調査をしていくというふうに考えております。  今回の報告書で申し上げておりますのは、少なくともある程度中身がわかってきた、その原因がわかった、なぜ折れたか、こういうところはわかってきた。こういうものにつきましては、やはり節目節目でちゃんと公表していくべきものであろうということでこの報告書をつくらせていただきました。  したがいまして、そういうことについて関心を持ってやっていきたいと思いますけれども、今後、そのことにつきましては、御報告を差し上げるということも可能であればやっていきたいと思っています。
  93. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 今委員から、科技庁は動燃に、動燃はメーカーに、メーカーは製造業者に責任をどんどん押しつけるだけであると、こういう御指摘がございましたが、私どもは、午前中の質疑でも申し上げましたが、所管をする原子炉等規制法上、安全規制をするという責任を持っておるわけでございます。  その意味で、記者団からも、報告書には科学技術庁責任という表現がないではないかという御指摘もいただきましたが、これは、「反省すべき点」を責任とすべき点と置きかえていただいて結構ですと。どうも責任という言葉は名詞で、反省するというのは動詞であって、結果的にそういうような気持ちで責任という言葉が使われなかった程度の違いしかありませんと。反省するというのは責任があるから反省するのであります、そのためにまた改善策を講ずるのであります、そういうふうに置きかえていただいて結構ですと、こう申し上げた次第であります。.私ども、責任を押しつけるとか、そんな意識でおるということでないということはぜひ御理解をいただきたいと存じますし、これからも、委員指摘のように、そういうような体質が批判されているとするならば、そういうことにならないようにきちんとやってまいります。
  94. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 今回の調査に際して製作設計図そのものを科技庁が見ていないというこの一字ですね、それをもって見ても、やっぱりまだメーカー任せの体質があるというふうに、私は物事を具体的に考えますから、判断するんです。  それで、メーカー任せの体質の問題で温度計をめぐるもう一つの不明朗さ、なぜ一本だけが破損したかの問題でも問うておきたいことがあります。  五月三十一日の毎日新聞等の報道によりますと、温度計を受注した東芝が、温度計の製造をした石川島播磨重工業の調査報告に基づいて、問題の温度計のセンサーの製造番号だけがもとのと異なり、センサーが取りかえられていたということを動燃報告したとのことですが、この事実は確認してもよろしいですね、動燃
  95. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 先生お尋ねのお話は、温度計の中のシースを交換したということかと存じますが、四月の末に温度計のシースが曲がる可能性さや管の振動の関連がメーカーから報告されましたものですから、四月三十日に至りまして、そのあたりを徹底的に調査するようにメーカーに依頼をいたしまして、五月二十九日に報告を受けております。
  96. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 石川島播磨重工業の調査によると、九一年二月の機能確認温度計の断線が発見され、同年三月、センサー部分が取りかえられたということになっています。また、このことは東芝には報告されず、九三年七月の科技庁の性能検査で合格もしていたということです。  一体、動燃は、この九一年の時点でセンサーの断線と交換の事実をつかんでいなかったのでしょうか。温度計一本につき六十五万円、溶接費が一本につき百万円という仕事にかかわることですが、こういうことが無断でこっそり行われるということは考えられないわけです。知らなかったのか、記録はないんでしょうか、動燃
  97. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 九一年の取りかえた時点に動燃はその事実を知らなかったのかというのが先生のお尋ねかと思います。知りませんでした。  これはもう少し詳しく申し上げますと、私ども、「もんじゅ」を建設するに当たりまして、「もんじゅ」に関する品質保証計画というのをつくっております。その計画に基づきましていろいろな手順書をつくっておるわけでございますが、いわゆる品質管理をする方法については、東芝、石川島播磨もその品質体系の中に入ってもらいまして、そういうような一つ一つの重要な事項に対してはちゃんと報告してもらうことになっております。  本件に関しましても、これは報告に該当する事項でございました。そういう意味で、私どもはこれはルール違反だというふうに思っております。厳重に今注意をしておるところでございます。  それからもう一つ、先生おっしゃいました記録をもらっているかということですが、記録ももらっておりません。そういう意味でもルール違反だというふうに思っております。
  98. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 信じられないほどの驚くべきずさんさだと思うんです。ある日こっそりあんな大規模な研究開発施設にだれか人間が入って部品をいじるわけですから、その報告も何にもない、記録もない、本当にずさんな体制だと思います。  このセンサーの断線と交換は九一年のことですけれども、報告書の中で、「ステンレス鋼の金属疲労のデータから判断して、き裂はナトリウム温度二百度C、一〇〇%流量で試運転した時の比較的早い時期に発生したと考えられた」とあります。また別の箇所では、「振動の大きさを弱める減衰性について解析した結果、熱電対シースが曲がって挿入されているかどうかが減衰に関係することが明らかになった」とも述べられています。私、よく読んでみたんです。  そこで、相当このシース、センサーのところに目が向きそうなところまでいっているのに、科技庁は、報告書作成に際する調査でこのシースを、温度計がこれだけ問題になっているのに、その温度計の経歴をもとにして調査しなかったんでしょうか。
  99. 宮林正恭

    政府委員宮林正恭君) そういう問題につきましては私どもも関心は持っていたわけでございますが、これはメーカーの方も知ったのが五月十一日だというふうに聞いておりますから、少なくともその後直ちに報告を受けていればいいんですけれども、残念ながらそういう報告も受けておりません。したがいまして、私どもは五月三十日までこの事実については承知をしておりませんでした。
  100. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 温度計たった一本の問題ではなくてすべての温度計が問題になるわけで、一定の対策も立てたわけです。すべての温度計に目が向きつつあったときに、でも、このシースの問題には目がいかなかった。これは報告がなかったからだといって、ああそうですがと言って済ませるわけにいかないんです。この一点だけでもやはり随分ずさんな調査だ、その調査に基づく報告書だということになってしまうんです、結局。  動燃も科技庁もナトリウム火災事故原因究明に本当に能動性を発揮しているのかどうか。企業任せで、メーカー任せで、メーカーの報告待ちで、そんなことでは絶対ならないわけなんです。このメーカー任せの体質は本当に重症だと思います。  最後に、温度計一本だけの問題ではないというこの問題ですが、温度計全体の問題として熱衝撃影響調査、これをぜひ十分やっていただきたいのです。専門家がこの問題を何度も何度も指摘しているので、これをやっていただけますか。
  101. 宮林正恭

    政府委員宮林正恭君) そういうふうな御主張をされている専門家の方がおいでになるということは私ども承知しております。  私どもとしましては、今後いろいろな形で引き続き調査をしていきますので、そういう御意見があるということについては十分留意をして進めさせていただきたいと思っております。しかしながら、この件につきましては、その専門家の方に対して反論もあるということも私ども承知しておりますので、それにつきましてはもう少し明確に解析した上でお答えできるようにしたい、こういうように思っております。
  102. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 次に、研究開発行政がこのままでよいのかという根本について問うてみたいと思うんです。  「もんじゅ」の設計ミスは、今回の温度計に限ったことではなくて、過去にも反応度異常の問題では炉、心の設計ミスと燃料の製造ミスが考えられ、ナトリウムの二次系配管の異常変形の問題では設計ミスであることがはっきりしていて、既に設置変更申請が出されています。また、蒸気発生器の設計ミスでスクラム、緊急停止も起こっています。これらは衆参両院の委員会で我が党の議員が既に取り上げてきたところです。  大規模事故にもつながるこうした設計ミスがなぜ繰り返されるのか。結局、「もんじゅ」、高速増殖炉の技術が未確立てあるということではないんでしょうか。「もんじゅ」の臨界達成をもって実用炉並みの安全審査を行っているとか、実証炉を開発する技術的基盤が十分確立されているとか、これは九四年の原子力委員会報告ですが、こういうのは本当に非科学的な過大評価であり、国民合意でもないと思うんですけれども、どうでしょうか。
  103. 岡崎俊雄

    政府委員(岡崎俊雄君) 先生御指摘のとおり、高速増殖炉の実用化に至りますためには、今までも実験炉でありますとかあるいは種々のいろんな実験を積み重ねてきたわけでございます。まだ「もんじゅ」はあくまでも原型炉の段階、いわば技術開発の段階でございます。今後、実証炉の段階あるいは諸般の技術開発を経て実用化につながる、こういう位置づけであろうかと思います。
  104. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 技術未確立ということですね。  そこで、橋本総理が一月二十二日の施政方針演説の中で、この「もんじゅ」の事故に触れているんです。そこで「先端技術の開発、実用化に際し、予期せぬ困難な事態発生することは避けて通れません」と述べています。この予期せぬことというのは、それが何か新しい真理の発見につながるような場合は理解できるのです。それと、技術的な稚拙さ、初歩的ミスからくる予期せぬことというのは全く別ではないんでしょうか。技術的稚拙さ、初歩的ミス国民が不安を抱くのは当然だと思います、下手をすれば人間が死ぬこともあり得るわけですから。  真理の発見と技術的な稚拙さ、これを混同したいわば事故に対する居直りとも言うべき総理の立場は、「もんじゅ」など試験炉に責任を持つ者の立場ではないと思うんですけれども、どうでしょうか、大臣
  105. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 私は、今委員指摘のようには受けとめておりません。今施政方針演説、そのくだりのところを手にいたしておりますけれども、総理がおっしゃるのは、予期せぬ困難な事態発生することは避けて通れないが、重要なことは、そうした事態を直視して国民専門家の前にその事実を明らかにして、原因究明や徹底した安全対策等々に取り組んでいくことだと。つまり、後段の部分を強調するための前提として、そういうものはまさか起きないと、そういうおごりではなくて、まさに真摯な、謙虚な態度で進めていかなきゃならぬということを申し上げる、いわば表現上の流れの中でそうおっしゃっておるわけであって、避けて通れないと断定したことだというふうには私は受けとめておらないわけでございます。  つまり、もしや起こるかもしれない、まさかではなくてもしやと、常にそういう気持ちでやらなきゃいけない。私は、午前中の質疑でもありましたけれども、そのような失敗、困難というものを起こさないための着実な一歩一歩の前進というものがこういった先端技術の開発、実用化に非常に重要だ、それは技術的な幼稚さ、稚拙さも含めての話でございますけれども、そのように考えているわけです。  特に原子力の場合はその安全確保について、人間はヒューマンエラーを起こす。ヒューマンエラーを起こさないために、教育や訓練だけでできることではない、やっぱり先端技術を駆使しないとそれは防げないぞという専門家の御指摘もそのとおりだろうと思います。また、機械は壊れることもある、そういう前提のもとに、そのような場合でも安全が十分に確保される、そしてまたハード、ソフト両面において適切に対処していくと、そういうことが重要だ、こういう見地で考えていかなきゃいけない、このように考えております。  特に、原子力施設と背中合わせに暮らしておられる地元の市民という立場からすれば、安全は市民のものでございますから、そういう方々不安感を与えないような、すべて技術を過信することなく謙虚な姿勢で細部にわたるまで、今おっしゃったような稚拙さ、幼稚さ、そういうものも起こさないように目配りをし、十分に安全を最優先して取り組んでいかなければならぬ、こういうふうに受けとめております。
  106. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 温度計さや管の形状の初歩的なミスとかナトリウム漏えい実験の不十分さとか、ましてナトリウムの扱いについて現場の職員たちが十分な訓練を受けていなかったとか、こういういわば初歩的な問題が理由となって起こる予期せぬこと、それも技術の開発、実用化に避けて通ることのできない困難な事態だと言って居直る、そういう研究開発思想そのものが日本の研究開発行政をゆがめているし、だから国民は不安が尽きないのです。このことを私は強調します。  その意味で質問したいのですが、報告書は、「ナトリウム漏えい火災ということから強い衝撃地元方々をはじめ国民に対して与えた。これは、二次系ナトリウム漏えいであるので放射性物質による環境への影響は考えにくく、また、炉、心の冷却能力への影響もないということからすれば、予想されたものよりも、大きいものであった」、こう言っているんです。予想外の大騒ぎをされたと言わんばかりの書き方です。そして、原子力の安全と国民の安心、信頼をいわば二元的にとらえて、大騒ぎを静める独自性を強調しているんです。  国民の批判を何とかしようではなくて、なぜ事故を繰り返すのか、その分析、そして体質の改善が求められているんではないでしょうか。重ねて大臣
  107. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 何度も繰り返しますが、居直りということではなくて、まずそういう技術的な初歩のものも含めてそういう事態が起こり得るんだということ、ヒューマンエラーもございます。機械が本当に足元のところで汎用品だということで見逃されてこういう事故も起こる。そういう事態を直視して、そういうものが起きないような徹底した安全対策をやろうというのが政府を代表して総理が所信表明で言われた趣旨でございますので、どうぞ曲げて受けとめていただかないように心からお願いをしたい、かように改めて申し上げておきます。  それから、今お触れになったのは報告書の点であると思いますが、この「予想されたものよりも、大きいものであった」ということは、まさに放射能災害というものを、チェルノブイリのシビアアクシデント等々のそういう事故に対する国民あるいは市民の、そういうことが起こってはならぬと、また起こったときは大変だと、そういう反応というものと、それからそういう災害は起こさないけれども、今御指摘のあったような初期のミスによって非放射性のループでナトリウムが漏れたということへのインパクトを持った反応というものが必ずしも一致しておるとは思いませんけれども、専門家から二次系だということで、軽水炉の場合に御説明のつくものとシビアアクシデントのちょうどその中間ぐらいの反応が今度の「もんじゅ」の場合には起きたんではないか、こういう御指摘をいただいている。そういう意味で予想されたより大きいということをここに記述したと聞いておりますが、私は、それだから今度の事故が軽いものだとか、そんなふうに思っていないことは午前中の答弁でも申し上げたとおりでございます。
  108. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 ナトリウム火災の再現実験の結果を国民は見ていますから、鋼材でできた床ライナーに穴もあくことがあるんだ、起こり得るんだということを認識しました。ですから、安全の宣伝を幾らされても国民は安心しないんです。安全の確保のためにどれだけ真剣に取り組んでいるかで国民は安心をするんです。当然のことですが、強調しておきます。  それで、体質改善の手始めが徹底した総点検、報告書は「もんじゅ安全性総点検チーム」を設ける、こう言っているんですけれども、この総点検だと思います。それをぜひ見守っていきたいんですけれども、何をどんな方法で点検するのか、そこが気になるわけです。温度計だけに限らない安全審査、それから設工認のあり方の総点検が求められるし、つまり国の安全審査、原子炉等規制法や審査内規の見直しにもつながるような総点検が求められると思います。また、保安規定やマニュアル類の総点検は科技庁も能動的にかかわり、外部の批判的な意見を持つ人も含めた人々の力も取り入れて進めることが期待されます。科技庁は知らなかった、こういうことが今後起こらないようにしてほしいということですが、どうでしょうか。そして、いずれも公表、公開の約束をしていただけますか。
  109. 宮林正恭

    政府委員宮林正恭君) まず、安全性総点検についてはどういうふうなやり方をやるのか、こういう御質問でございますが、これにつきましては、対象といたしましては、これは「もんじゅ」の施設、それから保安規定、マニュアルといったようなものすべてを対象にいたしております。  それで、やり方といたしましては、今後当庁に設置をいたします安全性総点検チームにおいてまず基本方針を決めます。その上で、実際の安全性総点検を実態的にやるというのは、これはやはり動燃にやっていただかなきゃいけない。しかしながら、総点検チームも必要に応じて特に重要だと認識するものについては立ち会うというふうなこともしていただくということを考えております。  それで、こういうふうな形でやりました結果をこの総点検チームで聞きまして、それで中身をチェックしていく、こういうふうな形を考えているわけでございます。この安全性総点検の結果といたしまして、安全審査なり設工認なりということに反映していく必要があるということになりますれば、当然そういうふうな手配をさせていただくということにしたいと思っております。  次に、保安規定、マニュアルの総点検については科技庁が能動的にかかわるべきだと考えるかどうかということでございましたが、これは今申し上げましたようなやり方でございますので、お答えをしていると思います。  それから、総点検において批判的な専門家の御意見も取り入れるべきではないかということにつきましては、これは既にいろいろとそういう御意見を承っております。したがいまして、私どもといたしましてはそういう多様な意見、さまざまな観点からの意見といったようなものを取り入れて、それで基本的考え方を整理し、あるいは動燃における具体的な点検計画といったものにも反映をさせていきたい、こういうふうに考えているところでございます。  それから、総点検の結果等、保安規定なりマニュアルを公開すべきということでございますが、総点検の結果につきましては取りまとめた後公表をさせていただきたい、こういうように思っております。また、保安規定につきましても、既に現行のものを公開しておりますから、改定いたしましたものは公開をさせていただきます。さらに、事故時に係る異常時運転マニュアルにつきましても既に公開をしておりますので、改定されたものについても同様に公開する、こういう考え方を持っております。
  110. 長谷川清

    委員長長谷川清君) 時間になっておりますので、最後の質問にしてください。
  111. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 最後に、原子力安全委員会に質問したいと思いますが、ことしの三月十四日、原子力安全委員会委員長談話が出されました。「国民の期待に応えるために、その持てる全ての力を結集して本件に取り組む決意である」という決意表明がされています。また、私どもの認識とは必ずしも一致しないのですが、先ほどの答弁でも第三者機関を自任なさっています。また、昨日大臣も、殊さら第三者機関でなければならない、こういうことを強調されていました。とすると、それにふさわしい取り組みが当然期待されます。  そこでお聞きしますが、安全総点検を徹底するという観点から既設の商業炉の安全総点検が必要ではないでしょうか。この問題についてどう考えるか。またもう一つ体制強化なり予算面の増額なりが必要でしたらそれも率直に提案していくべきではないんでしょうか。この二点について伺います。
  112. 都甲泰正

    説明員(都甲泰正君) ただいま御指摘いただきました、総点検の結果、既存の軽水炉への反映すべき点があるんではないかという御指摘に関しましては、もちろん私どもといたしましても安全にかかわる新しい知見が得られました場合には常にそれを反映するという態度でございます。今度の「もんじゅ」に関する総点検の結果、軽水炉に反映すべき新しい知見が得られました場合には、間違いなくそれを反映することになるかと思います。  それから、もう一つ指摘いただきました、原子力安全委員会が第三者機関としてよりょく機能するために新たな予算とか組織とか、そういう御指摘かと思いますが、これは先ほど御答弁申し上げたとおりでございまして、現在の時点におきまして現在の組織で原子力安全委員会といたしまして十分に第三者機関としての機能が果たせるものと考えております。
  113. 長谷川清

    委員長長谷川清君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時七分散会