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1996-04-11 第136回国会 参議院 運輸委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月十一日(木曜日)    午前十時六分開会     ―――――――――――――    委員異動  四月十一日     辞任         補欠選任      岡部 三郎君     山本 一太君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         寺崎 昭久君     理 事                 鹿熊 安正君                 河本 三郎君                 鴻池 祥肇君                 横尾 和伸君     委 員                 亀谷 博昭君                 鈴木 政二君                 二木 秀夫君                 松浦 孝治君                 山本 一太君                 吉川 芳男君                 泉  信也君                 戸田 邦司君                 平井 卓志君                 瀬谷 英行君                 渕上 貞雄君                 筆坂 秀世君                 中尾 則幸君                 栗原 君子君    国務大臣        運 輸 大 臣  亀井 善之君    政府委員        運輸省海上交通        局長       岩田 貞男君        運輸省海上技術        安全局長     小川 健兒君        運輸省海上技術        安全局船員部長  金丸 純一君        運輸省港湾局長  栢原 英郎君        海上保安庁次長  加藤  甫君    事務局側        常任委員会専門  志村 昌俊君        員    説明員        内閣総理大臣官        房参事官     稲田  敏君        労働省職業安定        局雇用政策課建        設・港湾対策室        長        松浦 弘行君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○船員法及び海洋汚染及び海上災害防止に関す  る法律の一部を改正する法律案内閣提出) ○港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出)     ―――――――――――――
  2. 寺崎昭久

    委員長寺崎昭久君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  船員法及び海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 戸田邦司

    戸田邦司君 船員法及び海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案の審議でありますが、我が党も基本的にこの改正には賛成でありまして、いろいろ基本的な問題がありますのでその点について確認させていただきたい、そういうことであります。  今回の法律改正案でありますが、そもそもは海上における人命の安全のための国際条約、それから船舶による海洋汚染防止のための国際条約、それに船員訓練及び資格証明並びに当直基準に関する国際条約、こういった条約改正がもとになっているところであります。この中で海上人命安全条約なんというのは 一九一二年だったと思いますがタイタニックが沈みまして、それで一四年に国際条約をつくったという歴史的な条約でありまして、その後たびたび改正されてまいっております。海洋汚染防止条約、それから船員関係条約も同様であります。  この条約改正部分の批准の仕方といいますか実施の仕方につきまして、従来ですと、改正部分について各国がそれを受け入れるかどうかの意思表示が必要だったと。ただ、いずれの条約も非常に内容膨大でありまして、技術基準相当部分を占めている。そういったことから、タシットアクセプタンス方式といいまして、締約国の三分の一以上の国が反対しなければ、ある日にちを区切って自然に成立するという方式をとってまいってきております。  ただ、この方式は、実行上非常に便利でありますが、役所側としましてはいつも追いかけられているという感じでありまして、その実施が確定して半年後に国際的に効力を有することになりますので、その間に手当てをしないとならないということになりまして、それが法律にかかわる問題でありますと、その間に法改正をきちっとやらないとならないということになりますので、今回の場合も綱渡り的にというかそういう感じで、運輸省当局非常に苦労なさっているとは思います。  特にこの海上人命安全条約SOLAS条約と呼ばれておりますが、この条約につきましては既に一月に発効している。それから海洋汚染防止条約MARPOL条約と呼ばれておりますが、これも三月に既に発効している。そういうような状況になってきておりまして、船員関係につきましては来年の二月発効ということになっております。  既に発効してしまっているということでありますが、これらの点については、国際的にもまた国内的にも実行上差し支えないというふうに聞いておりますが、まず第一にその点についてお答えいただきたいと思います。
  4. 小川健兒

    政府委員小川健兒君) 寄港国によります外国船監督、すなわちポートステートコントロールでございますが、これに船員能力、知識に関する検査を追加するための条約改正でございます。  先生おっしゃいましたように、海上人命安全条約平成六年の五月、それから海洋汚染防止条約平成六年の十一月に採択されたわけですが、これらの条約は、先生今おっしゃいましたタシット方式でございまして、締約国の三分の一以上の国が異議通告しない限りあらかじめ定められた日に発効することとなっているわけでございます。これらの二つの条約改正につきましては、異議通告もなく、既に海上人命安全条約につきましてはことしの一月一日、それから海洋汚染防止条約につきましてはことしの三月三日に発効しております。  今回の改正により追加されましたポートステートコントロールに関する規定でございますけれども、これは各締約国が自国の港にある外国船舶に対し監督を行う権利を規定したものでございます。したがいまして、今回の条約改正国内法整備に先立ち発効いたしましても、条約上の義務違反が生じるものではないというごとでございます。
  5. 戸田邦司

    戸田邦司君 ただいま小川局長からお答えいただいた中でポートステートコントロール寄港国による立入臨検の話が出てまいりました。このポートステートコントロールにつきましては、これまで委員会などで余り大きく取り上げられたことはなかったように記憶しておりますが、実はこれは重大な意味がある問題であると私は受け取っております。  既に、海運問題などでたびたび話がされております日本国籍船が非常に減ってきている、そういうような状況の中で外国船、つまり日本貿易物資の輸送の大部分外国船にゆだねられているという状況になってきております。特に便宜置籍船、中にはサブスタンダード船と呼ばれております条約基準に合致しない非常に低劣な船舶もあり、また、乗組員もこれまでの日本船員などに比べますと非常にその質が落ちる場合も見られるかと思います。そういったことについて、我が国我が国の領海内といいますか寄港した港で立入臨検をやって確認する、これがないと我が国周辺海域での事故防止が保たれない、そういう状況になってきておりまして、今まで船舶の安全その他につきましては、旗国主義いわゆる国籍を有している船の政府がきちっと見ることになっておったわけですが、PSCが今非常に重大な問題になってきていると私は受け取っております。  そこで、各国条約の履行につきましてはそれぞれに相当しっかりとやっていると言えるかと思いますが、日本の国に入ってくる船の中にそういう条約の非締約国の船がわずかでありますがあるわけでありまして、そういった船に対しては条約上のPSCとは違った扱いがあるかと思いますが、その辺につきましてはいかがなものでしょうか。
  6. 小川健兒

    政府委員小川健兒君) 今回改正されました三つの条約SOLAS条約、それからMARPOL条約、それからSTCW条約におきましてはこのように規定されております。非締約国船舶が一層有利な取り扱いを受けることのないよう、必要な場合には条約基準を適用するというふうに定められております。したがいまして、非締約国船舶に対しても締約国船舶と差別なくPSCポートステートコントロール実施することが締約国義務だというふうに考えております。
  7. 戸田邦司

    戸田邦司君 今度の両方改正、特に船員法改正に関しましては、それらの条約の中身を受けまして、旅客船高速船乗組員に対する訓練義務づけられることになっております。  これまでの事故を眺めてみますと、特に旅客船の中でロールオン・ロールオフ船と言われている船、フェリーなどが多いわけですが、そういった船舶についての大事故が起こっておりまして、通常、日本から見ますと、どうしてこういう手抜かりがあるのかミスがあるのかというような乗組員ミスによる部分相当大きいように思われまして、そういったことから今回の条約改正、さらに国内法改正というようなことになってきたと思います。  幸いにも、我が国におきましては、我が国船舶に関する限りそういったたぐいの事故が起きてないというような状況にありますが、今回の改正部分旅客船高速船乗組員につきまして我が国においてはこれまでどういうような訓練実施してきたか、また、今回の改正によってそれがどういうふうに変わるかという点についてお話しいただきたいと思います。
  8. 金丸純一

    政府委員金丸純一君) まず、旅客船乗組員についてでございますけれども、現在におきましては、船員法に基づきまして、乗組船舶航行区域等に応じまして乗船後に各種訓練実施させているところでございます。具体的には、防火戸水密戸の閉鎖、消火設備操作救命艇の降下、非常操舵装置操作旅客避難誘導等非常時における安全確保のための訓練航行区域等に応じまして週に一回とかあるいは月一回、こういった間隔で実施しているところでございます。  今回の法改正でどう変わるかということでございますが、STCW条約改正を受けまして、旅客船乗組員に対します乗客の安全確保に関する教育訓練を一層充実させようとするものでございまして、具体的には、旅客船乗組員には、非常時における旅客のパニックの防止や適切な避難誘導等を行うに当たって必要となる詳細な訓練内容基準、こういったものを運輸省で定め、内容の漏れをなくすということでございます。また、あわせまして、訓練を今後は乗組員乗船前に実施するということを義務づけるものでございます。  今回の旅客船改正につきましては、ローロー旅客船安全性を高めるという観点から条約の方では改正がなされたわけでございますけれども、この条約改正に当たっての総会決議では一般旅客船についてもこれを行うことが望ましいということがついておりますので、私ども日本では既にかなり実施されておりますので、これを一般旅客船にまでやろうというふうに考えているわけでございます。  今回の追加で新しいものといたしましては、ロールオン・ロールオフタイプの旅客船においてでございますが、開口部や貨物の固定等に関する訓練規定の策定、こういったものが新しく盛り込まれる予定になっておるところでございます。  次に、高速船乗組員についてでございますけれども、これまではこの部分につきましては特段の規定はございませんでした。一般旅客船の中での訓練で行っておったということでございますが、今回のSOLAS条約改正を受けまして、高速船のタイプに応じた操船、設備・機器の取り扱い等に関します教育訓練義務づけ、海上における一層の安全確保を図ろうとするものでございます。これにつきましては私ども、先ほど法制上の義務づけはないと申し上げましたけれども、船会社におきまして自主的に操練をやっておりましたので、実質的にはその内容が一層精級に定まった基準の中で行われるというふうに理解しておるわけでございます。
  9. 戸田邦司

    戸田邦司君 今、船員部長からのお話にありましたが、我が国のように非常にきちっとした教育訓練をやり、さらにそういった特殊な訓練も行っているというようなことですので、我が国乗組員に関する限りはひとまず安心してよいのかなという感じがしております。  そこで、今回の改正も含めてこの三条約につきましては、そもそもタンカーなどの事故によりまして、SOLAS条約改正、あるいはMARPOL条約改正、さらにSTCW条約の作成、そういった過程をたどってきておりまして、タンカー事故我が国の沿岸で起きることを想定しますとこれはもう大変なことになるわけでありまして、運輸大臣も一カ月ぐらいは眠れないというようなことに相なるかと思いますが、そういうことでこの問題の重要性を認識していただければと思います。  今回の航海当直部員あるいはタンカー乗組員資格制度改正というのがありますが、これについてちょっと概要をお話しいただきたいと思います。
  10. 金丸純一

    政府委員金丸純一君) 先生御指摘のとおり、大規模海難事故原因といたしましては人為的なミスが七、八割に及ぶのではないかといったことで今回の関係条約改正がなされたわけでございますけれども、航海当直部員タンカー乗組員につきましては、船舶航行安全確保のためにこれまでにも一定業務経験等が必要とされるということがございます。今回の改正でございますが、この一定業務経験、こういったことにつきましてこれを政府が認定する、証明を行った上で乗り組ませるというこの資格証明制度を導入するというところが今回の改正の眼目でございます。資格証明制度を設ける、これに伴いまして、法律に違反したような場合につきましてはその資格を取り消すという制度も新たに導入するということでございます。  今回の法改正につきましては、今申し上げましたように、航海当直部員及びタンカー乗組員につきまして資格証明制度を新しく設ける、あわせましてこれらの者が法令違反を犯した場合にその資格を取り消すことができる、こういう改正を行いたいというふうに考えているわけでございます。
  11. 寺崎昭久

    委員長寺崎昭久君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、岡部三郎君が委員を辞任され、その補欠として山本一太君が選任されました。
  12. 戸田邦司

    戸田邦司君 この三条約関係でありますが、ちょっと話は前後してしまうかもしれませんが、そもそも各国で大事故が相次いだというようなことがありまして、その都度海上人命安全条約あるいは海洋汚染防止条約、こういったものを改正し、船員関係のそういう条約も新たにつくってきたということでありますが、幸いにも我が国近海では大事故というのが最近は起こっておりませんが、各国、特にヨーロッパサイドでは最近でも相当人命が失われるような大事故が起こっております。  そういったことで、ここで心を新たにしてといいますか事故重大性を再認識しといいますか、そういった意味でひとつ海上技術安全局長の方から最近の事故の例といいますか、それをちょっと御紹介いただければと思います。
  13. 小川健兒

    政府委員小川健兒君) 一九八〇年代の後半以降、先生がおっしゃいますように主として欧米諸国において重大海難が発生しております。そして、大きな社会問題あるいは政治問題となったわけでございます。  主たる事故を申し上げますと、まずベルギー沖で転覆し百八十八人が死亡したカーフェリーヘラルド・オブ・フリー・エンタープライズ号事故、これは一九八七年でございます。それから、アラスカで大規模海洋汚染を起こした大型タンカーエクソン・バルディーズ号座礁事故、これが一九八九年でございます。それから、北海で百五十八人が死亡いたしましたカーフェリースカンジナビアン・スター号火災事故、これは一九九〇年でございます。それからつい最近は、バルト海で八百五十名が死亡しましたカーフェリーエストニア号沈没事故、一九九四年でございます。これらがございます。  これらの事故を教訓といたしまして、国際海事機関IMOでございますが、海上人命安全条約海洋汚染防止条約等改正を行い船舶の構造、設備等の強化を行ったわけでございますが、さらに、事故原因及び被害を大きくした原因の多くが人為的ミスであるということから、その対策一環として、今回その操作要件ポートステートコントロールが新たに条約に追加されたものでございます。
  14. 戸田邦司

    戸田邦司君 ただいまお話ありましたポートステートコントロールでありますが、ポートステートコントロールという概念が入ってきたのは、たしか一九七八年のSOLAS条約議定書をつくったときだったように記憶しております。それまでも条約上、外国船へ立ち入って、それで欠陥がないかどうかという立入検査は実施できることになってもおりましたし、実際に実施もしてきた、そういうことでありますが、このポートステートコントロールにつきましては、七八年の議定書あるいは海洋汚染防止条約の七八年議定書、その両方ポートステートコントロールをはっきりと打ち出して、ある一定割合船舶といいますか、外国から入ってきた船舶に対する立ち入りを強化するような規定が設けられたと記憶しております。  ただ、このポートステートコントロールというのは、船舶というのは各国めぐり歩きますので、例えば日本近海の話をしますと、韓国に入港した船舶我が国に入ってきて、向こうでポートステートコントロールを受け我が国ポートステートコントロールをさらに受けというような不都合があってはならないというようなこともあるかと思いまして、このポートステートコントロール地域協力、これが非常に重要視されてきたように思います。ヨーロッパサイドも、あるいは我が国を中心としたアジア諸国での協力関係といいますか、そういったものも既に確立されていると理解しておりますが、そういう地域協力重要性を踏まえて、地域協力の国際的な動向につきまして御紹介いただければと思います。
  15. 小川健兒

    政府委員小川健兒君) サブスタンダード船を確実、効率的に排除するためには、近隣諸国においてポートステートコントロール情報交換を行って、協力してポートステートコントロール実施していくことが重要だと考えております。  その理由は、先生今おっしゃいましたように、一カ国だけで実施し得るポートステートコントロール隻数には限界があるということ、それからポートステートコントロールにおいて指摘された修理内容等によっては他の国で修理をせざるを得ない場合があること、それから欠陥船による海難海洋汚染近隣諸国にも影響を与えること、こういったことからポートステートコントロール近隣諸国と一緒にやることが重要だと考えております。さらに、このような地域協力ポートステートコントロールを受ける船主側にとりましても、各国間で無用の重複を避けられるというメリットもございます。  そういったことから、一九八二年に欧州地域十七カ国でございますが、ポートステートコントロール地域協力が開始されまして、それ以来、現在ではアジア太平洋地域日本を含めまして十三カ国、それから南米地域六カ国、それからカリブ海地域二十カ国の合わせて四地域におきましてポートステートコントロール地域協力が行われております。また、地中海の南部、それから西アフリカ、ペルシャ湾などにおきましても地域協力について現在検討されているということでございます。  特に欧州地域では、ブラックリストの公表などにより非常に厳格なポートステートコントロール実施しておりますし、また、データネットワーク等を活用して域内に入港するほとんどの船舶に対しましてポートステートコントロール実施しているというふうに聞いております。
  16. 戸田邦司

    戸田邦司君 今お話のありましたブラックリストでありますが、我が国船舶はもちろんブラックリストの中では非常に少ないというか、非常にまれなんじゃないかと思いますが、その辺はいかがでしょうか。正確な隻数は要りません。
  17. 小川健兒

    政府委員小川健兒君) ブラックリスト自体は我々手に入りませんけれども、日本籍船舶ポートステートコントロール改善命令だとか航行停止命令だとか、そういうのを受けたという話は聞いておりません。
  18. 戸田邦司

    戸田邦司君 ポートステートコントロールアジア地域協力が非常に重要になってきているということでありますが、アジア地域でそういうことを実施しようとすると、国によって技術的ポテンシャルのレベル、それから法制度の問題、それに相当の人員を必要とすることでもありますのでそういった人員的な対応、そういったことはかなりの差が各国にあるんじゃないかと思います。その際にアジア地域での協力といいますか、相互理解も含めまして各国と連携をとってきていると理解しておりますが、いずれにしましても、アジア地域といいますと我が国がずば抜けてそういった点できちっとしていると言っていいかと思いますが、我が国がリーダーシップをとらないとなかなか動いていかない点があると思います。  そういったことも含めまして、アジア太平洋地域PSC現状、それから我が国状況、その辺についてお話しいただければと思います。
  19. 小川健兒

    政府委員小川健兒君) アジア太平洋地域経済活動活発化に伴いまして、この地域に出入りする船舶の数も拡大しております。そこで、我が国主導のもとで一九九四年四月からアジア太平洋地域におけるポートステートコントロール地域協力が始まっておりまして、現在十三カ国が参加しております。参加国におきますポートステートコントロール実施隻数年間九千隻にまで達しておりまして、実施率も順調に推移してきております。二〇〇〇年までには域内に入港する外国船の五〇%に対してポートステートコントロール実施できる見込みでございます。  しかし、参加国の中にはポートステートコントロール実施能力が十分でない途上国も含まれておりますので、技術協力一環といたしまして途上国検査官我が国に招聘してポートステートコントロールの研修を実施しております。また、本年中には参加主要国間におきましてポートステートコントロールデータネットワークが稼働いたしまして情報交換が可能となる見込みでございます。  我が国現状でございますが、我が国は昭和五十八年にポートステートコントロールを開始して、徐々にそれを強化してきております。現在、地方運輸局におきまして年間約三千隻の外国船ポートステートコントロール実施しております。今後、欧米諸国動向などを踏まえまして、従来のポートステートコントロールを充実するとともに、今回の法改正による操作要件ポートステートコントロールも的確にやっていきたいというふうに考えております。
  20. 戸田邦司

    戸田邦司君 今お話がありました我が国対応、これも非常に重要ではないかと思いますが、ポートステートコントロールというのは外国船に立ち入っていくということでありまして、場合によると非常に危険が伴う場合もある。それからもう一つ、言葉の問題といいますか外国船言葉がなかなか通じない、英語がきちっと話せないというような場合もあるかと思いますし、また我が国立ち入り検査官訓練、これもなかなか重要な問題ではないかと思います。  地方運輸局あるいは支局、そういったところに配置されております検査官船員労務官、そういった人たちがこういう業務に従事することになりますが、従来の業務に加えて出てきた新しい業務であるだけに、実施方法そのものについてもこれから方策を考えていかなければならないこともあるだろうと思いますし、また、外国船舶基準に合わないような船舶については、我が国の公権をもってといいますか、条約上の権限に従って船舶をとめなければならない。航行停止処分にするとか、あるいは退去命令を出すといいますか出ていってもらう。場合によっては、次の港までの安全措置を講じて次の航海だけ許す、そういうようなやり方もあるかと思います。  従来、私は一つ問題だなと思って皆さんにもお願いしてきましたのは、船舶検査官とそれから船員労務官も含めて連携を密にしていただいて、その両者がチームで行くとかそういうようなことも一つ重要な点ではなかったか、こう思っております。  国によっていろいろやり方は違いますが、アメリカあたりですとコーストガードの検査官が立ち入ってくる、コーストガードの場合には警察権もある、そういうようなやり方をしておりますし、またヨーロッパサイドでは若干違ったやり方の国もあるやに聞いておりますが、その辺も含めて、我が国におけるポートステートコントロールの充実強化が必要になってきていると思いますが、それらの点についての具体的な方策をお話しいただければと思います。
  21. 小川健兒

    政府委員小川健兒君) これまで実施してきておりましたポートステートコントロール、これをさらに充実強化し、また今回の法改正による新規のポートステートコントロール、これを的確に実施していくために、船舶検査官あるいは船員労務官の要員の充実を図る必要があると考えておりますし、またポートステートコントロール実施マニュアルの整備だとか、あるいは言葉を含めました研修制度の充実を図っていきたいというふうに考えております。  さらには、アジア太平洋地域協力体制におきますポートステートコントロール検査官セミナーへの参加だとか、あるいは今年度より稼働いたしますポートステートコントロールに関するコンピューター情報ネットワークの活用、こういったものを図っていきたいと思っております。  また、先生御指摘のように、従来は船舶検査官船員労務官等が別々に外国船立ち入りをして船舶側に負担をかけるというようなケースもあったわけでございますので、今後は外国船への立ち入りをより安全かつ効率的に行えるようにするために、地方運輸局船舶検査官とそれから船員労務官がチームを組みまして外国船舶への立ち入りを行うようにしていきたいというふうに考えております。  また、携帯電話の充実等についても引き続き努力してまいりたいというふうに思っております。
  22. 戸田邦司

    戸田邦司君 今お話しいただいたポートステートコントロールの体制でありますが、沖がかりしている船舶、特にタンカーなどにつきましては陸上を歩いていって立ち入るというわけにいかないというような場合もありますし、外国船によっては、ポートステートコントロールをしているときに非常に不快な思いをすることもあるかと思います。場合によっては身の危険を感じるというようなこともあるかと思います。  いずれにしましても、実際にこのポートステートコントロールを担当する係官の御苦労といいますか、そういったものを多としなければならないと思いますが、職務環境の支援体制とか、それからポートステートコントロールに従事する係員の数、どういうところに配置してきているか、そういうような問題点について、ただいま専門家がチームを組んでというお話もありましたが、その辺の実態についてもう少し詳しくお話しいただければと思います。
  23. 小川健兒

    政府委員小川健兒君) ポートステートコントロールにつきましては、現在、外国船舶の入港が可能な港、いわゆる開港されている港百十七港に対応して、全国に設置されております地方運輸局とその海運支局で、船舶検査官二百五十名、これは五十九局にわたります、それから船員労務官百四十八名、七十三局に及びますが、それを配置して従前より効率的なポートステートコントロール実施してきたところでございます。  今回の改正によりまして、さらにソフト面のポートステートコントロールが追加されるわけで、今後は検査官、労務官の要員の充実などを図っていきたいというふうに考えております。
  24. 戸田邦司

    戸田邦司君 若干細かいことをお伺いして申しわけありませんが、ポートステートコントロールをして、それで欠陥があると認められた船舶の場合に、船舶自身がいろいろ欠陥がある場合と、それから乗組員資格も含め先ほどの操作マニュアルなどを的確に実施できるかどうかというような点について言うなれば基準を満たさないというようなときに、船舶自身であればそれを直すとかあるいは設備をつけ直す、そういうようなことで足りる場合があると思いますが、人的な要員が欠けたときに、それについて具体的にどういうような対応をされるのか、その点をちょっと船員部長の方からお話しいただきたいと思います。
  25. 金丸純一

    政府委員金丸純一君) まず、船員の面でございますけれども、一つは、十分な数の乗組員がいるかどうかという問題がございます。これにつきましては、それぞれの国が証書を発行しておりますけれども、それで比較してみればわかるということでございますけれども、十分な数がいない、そういった事態が考えられる。それからまた、船舶職員が適正な証書を持った者が乗っかっていない、配乗基準を満たしていない、こういう場合もあろうかと思います。  それが航行の安全にとって非常に問題があるといった場合につきましては是正措置をさせる。それが隣の港まで行っても大丈夫だということになればその条件をつける。航行の安全にまでは問題がなかろうということであれば、是正のための通告措置といいますか、そういったことを直すようにといったことを言って帰すということになろうかと思います。それが非常に危ない場合には、本当に要員が充足されるまで航行停止を命ずるということになろうかと思います。  それから、操作要件の方でございますけれども、やはり船員さんが機器の操作その他につきまして習熟しているかどうか、こういったこともあわせて見るわけでございます。これにつきましては、その程度にもよりますけれども、十分な訓練をしていない場合には例えば出港までに操練をしなさい、操練をしなければ出港してはいけない、こういったような通告をして、それが終わった後でもって出港させる、こういったような措置をとることになろうかというふうに考えているわけでございます。
  26. 戸田邦司

    戸田邦司君 その辺も含めて本省側として地方のそういう担当者に懇切丁寧な指導、教育が必要だろうと思いますが、できるだけ多くの機会をつくって全国統一のやり方で徹底してもらうということが非常に大事ではないかなと思っております。外国人相手の仕事であるだけに、まず足の便から考え、それからタンカーなどいわゆるオフショアターミナルにつながれている船への立ち入り、そういったことについては、場合によっては海上保安庁の協力も必要かと思います。運輸省全体として、海上保安庁も含めてこのポートステートコントロールの実効が上がるように、ひとつ大臣もこの点よく皆さんを督励していただいて、今回のこのポートステートコントロール非常に重要な問題でありますので、実施していただけるようにお願いしたいと思っております。  このもとになりました三条約以外にも海事関係条約、いろいろ重要な条約が幾つかありますが、いずれも国連関係機関であります国際海事機関で検討が進められてきておりまして、相当その会議の開催回数も多い、それに十分な準備をして出席しなければならないと。これまた担当者が非常に御苦労なさっている点ではないかと思いますが、やはり海運、造船の世界の一流国としてそれだけの責務があるかと思います。現在の運輸省の体制といいますか、その辺について海上技術安全局長の方からお話しいただければと思います。
  27. 小川健兒

    政府委員小川健兒君) 日本は世界一の造船国であり、海運についても実質的には世界一の海運国でありますので、そういう立場から、国際的には特に国連の附属機関でありますIMOを中心に国際協力をこれまでやってきておりますし、これからもそういった方向でやっていきたいと思います。  と申しますのは、船に関する安全確保あるいは海洋汚染防止に関しましては、船は国際的に動くものでございますので世界的に統一された基準でやっていかなきゃならないという考えのもとで、IMOを中心にいろいろな基準なりそれから規則なりができているわけでございまして、IMOにおけるいろんな活動を中心として、造船国、海運国の日本は貢献していきたいというふうに思っております。そのためにも、いろんな研究開発ばかりではなく、人的な要員も含めて協力体制を充実していきたいというふうに考えております。
  28. 戸田邦司

    戸田邦司君 非常に重要な問題であり、なおかつ我が国周辺海域での安全あるいは海洋汚染防止という点から考えても重要な問題であります。IMOにおきましてどういうような条約をつくっていくか、あるいはどういうふうに条約改正していくかというようなことも、我が国が主体になってといいますか、ある程度リーダーシップをとり、なおかつ欧州諸国の中で非常に活発な活動をしておりますアメリカ、ヨーロッパサイド、北欧、そういったところとの連携も非常に重要ではないかと思っております。  そこで、また一つお伺いしたいんですが、IMO関係基準の国内導入といいますか、そういうことについて今後船舶安全法の改正が必要になってくるのではないかと思いますが、それらの点はいかがなっておりますでしょうか。
  29. 小川健兒

    政府委員小川健兒君) 国際的な規則はIMOでいろいろと検討し、最終的には条約としてつくっているわけですが、日本はその条約船舶安全法に取り入れるという形でこれまでやってまいりました。IMOの活動が非常に活発なもので条約がもうしょっちゅう改正になり、それを取り入れること自体非常に大変な仕事になっているわけですが、おくれることなくこれまでは船舶安全法の改正によってそれを担保してきたところでございますし、また近々、来年になるかと思いますが船舶安全法の改正を行い、これは規制緩和や何かとも関連しますけれども検査期間を延長したり、そういった改正をやるべく、今海上技術安全局の中で検討しているところでございます。
  30. 戸田邦司

    戸田邦司君 一方で規制緩和の問題があって、船舶検査の内容あるいは定期的検査の何年置きというそういう期間をどうするかというようなことについては、ほかの運輸交通部門でかなり規制緩和が行われている実態ではないかと思いますが、一方におきまして国際的に考えますと、最近のサブスタンダード船、それに船員の資質が非常に落ちてきているというようなところからむしろ強化する方向に行っている、船舶に関する限りは事故重大性にかんがみて強化する方向に行っているんではないかと思いますが、その辺はいかがでしょうか。
  31. 小川健兒

    政府委員小川健兒君) 確かに船舶安全確保、それから海洋汚染防止に関するIMOでの議論は、緩和の方向ではなくてむしろ強化する方向に動いております。船の場合は、国際的な基準に基づき規制をするという方向で我々やっておりますので、日本の規制緩和の流れとはちょっと反する面があるように私も思っております。ただ、技術の進歩に伴っていろいろと改善、改良する点は多くありますので、そういった点では緩和の方向にありますけれども、国際的な動きとしては規制強化というような方向に動いていると私は思っております。
  32. 戸田邦司

    戸田邦司君 そういった形で、国際的に規制緩和の方向ではなくむしろ規制強化の方向に動いていっているというような実態ではないかと思いますが、一方で技術の進歩というものもありますし、また新しい機器の導入なども盛んになってきている。そういうことになりますと、全体としてバランスのとれた検査のあり方、そういうものが非常に重要になってくるのではないかと私は思っております。そういう観点から、それぞれ担当部局におかれましても、そういった点を十分各人が認識されて、世の中の動きといいますか実態に合ったような形でそういったことが行われるようにということを切望しておきたいと思います。  先ほど来お話ししてまいりましたように、我が国対応としましては、国際海事機関といったような国際的な場で我が国の主張をしていくあるいは各国協力していく、そういったことが非常に重要でありますし、また、国内問題を考えますと一たん事故が起こると相当大きな事故になり得る。例えば、二十八万トンとかいうような大型タンカーが幸いにも我が国の周辺では事故を起こしておりませんが、先ほど御紹介ありましたように相当大きな事故が現実に起きている。さらに、客船でも八百何十人という犠牲者を出すような事故が現実に起きているわけでありますから、そういった点も踏まえまして、運輸省全体が力を合わせてこの問題に引き続き取り組んでいっていただきたいと思います。  先ほども申し上げましたように、例えば「なだしお」事故が起こったときにはやはり国会でも相当の議論がありました。担当大臣は何週間か国会に張りつけになるというようなことでもありまして、亀井大臣、いかに人格高邁であってもそういう事故が起こりますと二週間ぐらいは眠れないかもしれないというようなことでもありますので、大臣にはひとつ十分その辺をお酌みいただいて、部内のそういった点に御理解いただき、さらに職員を督励してそういった点について十分の効果が発揮できるようにというようなことをお願いしたいと思いますが、最後に大臣の御所見をお伺いして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  33. 亀井善之

    ○国務大臣(亀井善之君) 今、委員まさに専門的な立場からいろいろ御指摘をいただき、また御質問もちょうだいしたわけであります。専門家としての委員の御指摘、私ども運輸省挙げてその体制に万全を期してまいりたい、このように考えております。  特に交通安全の確保及び地球環境の保全、これは運輸行政の大きな根幹をなす課題、また重要な問題、このように認識をいたしております。このため、日本船舶に対する安全対策及び海洋汚染防止対策に万全を期すとともに、外国船舶に対しての監督を一層確実、また強力に実施することは必要なことでございます。運輸省といたしましては、引き続き要員の確保また研修の充実を図るとともに、アジア太平洋地域における地域協力を推進する、このような点からもPSC実施体制の一層の充実を図ってまいりたい、このように考えております。
  34. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 海上における人命安全確保海洋汚染防止という観点から、今回の改正で新たにポートステートコントロール業務が強化されるというのは、私当然の措置だと思います。  ただ、大事なことは、先ほど局長も要員の充実ということを言われましたが、この種の問題ではいつでもそうなんですけれども、看板はいい看板立てたけれどもその実施体制が伴わないという問題がいつでも伴う問題であります。今回の改正は、従来のハード面中心の監督から船舶人為的ミスをなくす、そのために外国船舶も対象にしていく、同時にソフト面での監督内容も強化していくというのが内容になっていると思うんですけれども、PSC業務として新たにどの程度の船舶数を対象にしようとしているのか、まずお伺いをしたいと思います。
  35. 金丸純一

    政府委員金丸純一君) 目標数のお尋ねでございますけれども、アジア・パシフィック地域におきましては、二〇〇〇年を目標といたしまして入港船舶の五〇%程度をポートステートコントロールしよう、こういう目標が一応合意されております。各国別の目標は明らかにされておりませんけれども、先進でありますヨーロッパなんかの例を見ますと、各国大体二五%ぐらいやればよいではなかろうかと。こういったことで考えますと、半年に一回ずつやるということを前提にいたしますと、日本といたしましては三千五百隻ぐらいが当面の目標となるというふうに考えております。
  36. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 三千五百隻ですから相当な数だというふうに思います。これを実際にやっていくためには、船員労務官のこれは仕事になるわけですけれども、従来、船員労務官の仕事というのは国内船に限って監督をするということでした。ただ、外国船舶について海難時に限ってのみ年間大体十件程度あると。国内船でも年間一万九百二十九隻というのが実績としてありますね。この一万九百二十九隻の上にプラス三千五百隻加えようというわけですから、これは単純に計算しますと一気に業務量というのは三割以上ふえるということになるわけです。しかも、その上にソフト面での監督も必要となるということになります。  これは単純計算すれば、当然、船員労務官を三割以上ふやさなければならないということになると思うんですけれども、ところが船員労務官、この間どれだけふえてきたかというと、平成四年度が一人、五年度二人、六年度、七年度が各一人、今年度が四人の要求に対して二人ということですから、到底検査量に対して見合う船員労務官の数は確保されていないというふうに言わざるを得ないと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  37. 金丸純一

    政府委員金丸純一君) 私どもは、今回のポートステートコントロールの仕事、これは非常に重大な仕事でありますし、私ども運輸省全力を挙げてやっていかなければいけない仕事であるというふうに考えているわけでございます。それに対しては非常に人が少なくて十分ではないじゃないかということでございますが、私ども、決して十分な数がいるという認識はしておりません。最大限の努力をいたしまして増員に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。  ただ、これだけの人数で、現在百四十八名、ことし二名増員でございますから百五十名の体制でポートステートコントロールができないかということでございますが、これにつきましては私ども、困難はあっても何とかやっていけるものではないかというふうに考えたわけでございます。  先ほど先生御指摘ございましたように、船員労務官、一万隻程度年間やっているわけでございます。これに対して、今度ポートステートコントロール、これは二〇〇〇年が目標でございますけれども三千五百隻程度やっていかなければいけないということでございますが、日本籍船の監査につきましては従前、これは五年前、十年前になりますけれども、同じといいますかもう少し少ない人数で一万四千隻ぐらいをやったこともある。要するに、日本船の場合につきましては非常に稼働状況が忙しくなってまいりまして、港になかなか停泊しない、それから入港するスケジュールがつかみにくい、こういう問題がありまして、その何割増しかで行ってそれでやっと一万隻を捕捉したということでございます。  今回、ポートステートコントロールにつきましては、外国船につきましては入港スケジュールが非常に明確になっておる、あるいはまた日本船の監査とあわせて行くといったようなこと、あるいはマニュアルをつくるとか、あるいは処理の方法につきましても統一する、こういった効率的な体制を組むことによりましてやっていきたい。いずれにしましても、これから私ども、検査官、労務官含めまして要員の充実につきましては精一杯の努力をさせていただきたいというふうに考えております。
  38. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 船舶検査官と労務官と一緒に力を合わせてやるということは先ほども御答弁がございましたけれども、この二つはもちろん重なるところもあるでしょうけれども、しかし、例えば船舶検査官というのは、船体構造や船体設備やその機器の習熟という言ってみればハード面が中心ですね。それに対して船員労務官というのは、航海当直体制や船舶の安全、人命の尊重、船員労働の保護等々の、やはりこれはこれで大変重要な仕事がある。したがって、両々相まってやるというんだけれども、下手をすればどちらの本来業務も縮小していく、あるいは過重になっていく、あるいは手抜きが起こるという事態もこれは論理的にあり得ることです。  国際的にもILOの海事総会では、自国船監査の年一回義務づけがされようとしております。ところが、現実はどうかというと、船員労務官の一人しか配置されていない局が二十六局ある、無配置が五局あるという状況ですね。前回の平成四年、船員法改正のときに、当時の奥田敬和運輸大臣はどうおっしゃっているかというと、確かに複数配置が望ましい、危険度も多い仕事であるという認識に立って増員を図っていきたい、こうおつしゃつているんです。この点について大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  39. 亀井善之

    ○国務大臣(亀井善之君) いろいろ厳しい状況下の定員の問題等々に当たりましては、厳しい問題もあるわけではありますが、先ほど船員部長もお答えを申し上げておりますようなそのような中で、その体制というものを順次拡充してまいりたい、このように考えております。
  40. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 前回の船員法改正のときに附帯決議が当委員会で行われていまして、こういう附帯決議ですね。「船員法の履行確保を推進するため、船員労働監査業務の徹底、必要に応じた船員労務官等の増員等船員労働行政体制の強化・充実を図ること。」、こういう附帯決議がされておりますけれども、これ今回の改正案が成立した段階でも同様の趣旨を受けとめて努力されるということで確認をしてよろしいでしょうか。
  41. 金丸純一

    政府委員金丸純一君) さようでございます。  先生御指摘の附帯決議につきましては、時短の問題に絡んでのお話でございます。要するに、内航の分野におきましても御指摘のとおり、私ども労務官の監査、労務官の仕事は鋭意進めていかなければいけない、ポートステートコントロールもやっていかなければいけないということでございまして、いずれも非常に重要な業務でありますし、先ほども御答弁申し上げましたように、私どもその充実強化に努めてまいりたいと考えております。
  42. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 今、監査対象となる事業所もありますね。それに船舶を入れますと、事業所数で一万一千三百九社、船舶数で二万七百九十八隻、合計三万二千百七隻あるいは事業所ということになるわけです。監査の実態どうかといいますと、全船員の労働時間、休日を正確に把握するには最低一時間半から二時間程度のヒアリングが必要だと。ところが、実際には大体四十分ぐらいであるいは最大一時間ぐらいで検査を終わらざるを得ないというのが実態になっているんです。  確かに、おっしゃるように人員増を図るというのは大変厳しい状況にあることはこれはよくわかりますけれども、しかし、事は国際的にも緊急課題とされている海洋汚染防止あるいは海上における人命安全確保という問題ですから、これは一たん事故が起こってから、ああやっておけばよかった、こうやっておけばよかったということで反省できる性質のものではないというふうに私思うわけです。ですから、大いにそういう立場を踏まえて、今御答弁もございましたけれども、努力をなお一層強めていただきたいというふうに思います。  いま一つ大きな問題が教育研修の問題だと思うんですね。先ほどマニュアル、テキストをつくって対応するというお話がありましたけれども、外国船を対象とするとなるとどうしても語学の習熟はもう不可欠の課題だと思うんです。しかし、語学を習熟してなおかつ三千隻の監査をやらなきゃいけないということになりますと、これはなかなか大変なことだと思うんです。日常的な語学の教育研修、こういうものも検討していく必要があるんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
  43. 金丸純一

    政府委員金丸純一君) 先ほど戸田先生からの御質問もありましたけれども、非常に英会話大変ではないかという御指摘ございました。  私ども、マニュアルあるいは英語でのそれの翻訳をしたようなマニュアル、こういったものは従来もポートステートコントロールの際に導入してきたというところでございます。今回もそういったことでもって十分にやりたい。  しかしながら、それだけではやはり非常に操作要件というような、場合によりましては非常に細かなところまで専門的なところまで突っ込まなきゃいけない、こういうことも予想されますので、私ども、日常英会話というようなお話ございましたが専門的なレベルでの英会話が必要ではないかということでもって、平成八年度予算におきましては職員に対します英会話研修のための費用といったものを計上させて今御審議いただいているところでございます。
  44. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 現場の人たちは、少なくとも一週間以上語学と模擬演習などの研修をやらないと対応できないというふうにおっしゃっています。この問題というのは、机上の計画だけではなしに、やはり現場の人たちからよく意見を聞いていくということがどうしても必要だと思うんですね。このことを最後にお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  45. 金丸純一

    政府委員金丸純一君) 現場からの声をよく聞いていくということでございます。  私ども、先ほど英会話の講習の話ちょっと申し上げましたけれども、これにつきましてもできることならば海事経験者の海事英語といったことを考えておりまして、予算的には二十六日程度が可能なようなことを考えておるということでございます。  それから現場の声ということでございますが、労務官につきましては、各運輸局におきましては労務官会議等がございます。その際に、専任ですとか次席とか非常に経験を踏んだ人たちもおりますし、各支局の方からも議題を上げていただきまして事例研究をする、こういったことをやりまして、なるべく現場の声が具体的な話でもってはね返るようにする。これは私どもが本省でもって会議をするときも同じでございます。先生御指摘のように、そういった現場の声を十分吸い上げながら考えてまいりたいと思っております。
  46. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 参議院フォーラムの中尾でございます。海洋汚染問題等について幾つか御質問いたします。  まず、海上保安庁は、二月九日、九五年の海洋汚染状況をまとめました。これによりますと、昨年日本海周辺で発生した海洋汚染の件数は八百十一件、前年比七十九件の増加となっております。九〇年以降減少傾向にあった海洋汚染が五年ぶりにふえているという実態でございます。なぜこのような海洋汚染が増加したのか、その原因と今後の対策について端的にお答え願います。
  47. 寺崎昭久

    委員長寺崎昭久君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  48. 寺崎昭久

    委員長寺崎昭久君) それでは、速記を起こしてください。
  49. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 じゃ、海難事故についてお尋ねします。  二月九日、パナマのタンカーが火災起こして炎上した事故、あるいは二月十日、タンカー第二十大豊丸の座礁して沈没した事故がございます。そして、二月二十八日はセメント運搬船が座礁して重油十キロリットルを流出させるという海洋汚染を引き起こしております。  全日本海員組合は、特に第二十大豊丸の事故について乗組定員の適正化配置を強く要求しております。この船は調べてみますと、一昼夜を超える航海でありながら甲板部、機関部の航海当直要員がおのおの一人、計二人という実態で交代要員はいなかったと。これは船員法等に若干やっぱり違反しているのではないかと私は思うんですが、行政当局はこうした事故を未然に防止するために船員定員の確保等どのように考えているのか、お答え願いたいと思います。
  50. 金丸純一

    政府委員金丸純一君) 船舶に乗り組む定員の問題でございます。  定員の問題につきましては二つの面がございまして、一つは労働時間の遵守という観点からのものでございます。もう一つは航海の安全の確保を図るという観点のものでございまして、これらにつきまして平成四年に適正な乗組員定員につきまして基準を定めまして、地方運輸局の窓口において、具体的には雇い入れ契約の公認でありますとか就業規則の受理の際に、この基準に従いまして船舶の航行区域、総トン数、航行実態等を踏まえ各船の乗組員定員について適正に行われているかどうか審査を行っているところでございます。また、この乗組員定員につきましては、船員労務官船舶や事業場に立ち入りまして、労働時間の遵守の観点及び航海の安全の確保を図る上で必要な定員が乗り組んでいるかどうか監査を行っているところでございます。  今御指摘のありました第二十大豊丸の海難事故の件でございますけれども、これにつきましてはおっしゃるとおり、十分な数の船員が乗っかっていないということでございまして、私ども、特にこの小型内航船につきましてこういった事例が多いということから二月二十八日に、十分な数の乗組員の配乗につきまして地方運輸局に対しまして指導強化を行ったところでございます。  また、内航海運につきましては、現在不況だということでもってコストダウン、要するに運賃、用船料につきまして厳しい状況にございます。こういったことも踏まえまして、この乗組員の数、十分な安全性を確保するような乗組員の確保が図れるかどうかといったことが非常に大きな問題ともなっておりまして、私ども、船舶のトン数あるいは航行時間に応じました乗組定員のモデル化につきましても今検討を進めているところでございます。
  51. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 先ほど筆坂先生からも御指摘ありましたけれども、船員労務官の人数がこれは平成七年度、前年度比一人しかふえていないということで、ぜひともこういう国際化の流れの中で人員確保には十分尽くしてほしいと思っております。  続いて、船舶からの排ガス規制について若干お尋ねします。  地球環境保全の観点から船舶からの排ガス規制、これどうしても必要だろうと思います。陸上については排ガス規制はあるんですけれども、船からの排ガス規制は現在野放し状態になっておるというふうに考えております。船舶からの排ガスによる大気汚染はどのような状況にあるのか、若干教えていただきたいと思います。
  52. 小川健兒

    政府委員小川健兒君) 船舶からの排気ガスの規制に関する動きをちょっと御紹介させていただきたいと思います。  現在、国際海事機関IMOでございますが、その海洋環境保護委員会において、船舶から排出される硫黄酸化物SOxと言っておりますが、それとそれから窒素酸化物NOx、これらの規制を行うためにいろいろ作業を行っております。来年の春の新たな条約の採択を目途としてその検討を行っております。SOxにつきましては現状の半分にする、五〇%を削減するという方向で検討しておりますし、NOxにつきましては現状の三〇%を削減する、目標にするということで検討を進めているところでございます。  日本としても、主要海運国であり舶用機関の生産国でもありますので、この条約の検討に積極的に参加しているということでございます。
  53. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 船舶の排ガス対策については、運輸省は、排ガス浄化研究開発あるいは新形式舶用電気推進システム等々の何か開発に取り組んでいるようでございますので、しっかりやっていただきたい。  環境庁の報告もございますね、東京湾の調査。船舶から排出されるSOxは地域総排出量の三二%、それからNOxは一四%という結果であると。今のお答えでございますけれども、真剣に前向きに取り組んでいただきたい、一言御要望申し上げます。  それじゃ、先ほどに戻ります。海上保安庁さん、いらっしゃいますね。  二月九日、九五年の「海洋汚染現状」をまとめました。これ、五年ぶりにふえております。これに対して、その原因対策、簡単にお示しください。
  54. 加藤甫

    政府委員(加藤甫君) 御指摘のように、平成二年以降減少傾向にありました海洋汚染の確認件数が五年ぶりに増加いたしまして、油以外のものによる汚染が減少した反面、油による汚染が増加しているということが目立った点でございます。これは、東京湾における船舶からの故意による油の汚染件数の確認が増加したことが目立ちまして、これが汚染件数全体の増加につながったものと見ているところでございます。  このような状況から、海上保安庁といたしましては、従来同様に巡視船艇及び航空機を効率的に運用して監視取り締まりを実施するとともに、また、あらゆる機会をとらえまして、船舶乗組員あるいは一般の市民の方々を対象に海洋環境保全講習会を開催するなど汚染防止のモラル向上などにも努めまして、これらを総合的に汚染防止対策に全力を挙げて取り組んでまいるということにいたしているところでございます。
  55. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 調べましたら、今やっぱり故意に流しているというのはこれはとんでもないわけですから、モラルも何もあったものじゃないわけですから、しっかり取り締まっていただきたいと思います。  最後になります。油等排出事故に対する国際協力について。  二月十五日、イギリスで十三万トンのタンカー座礁事故を起こして六万五千トンの原油が流出したと。いろいろ国際的にも大変な問題が後を絶たないわけでございます。  近隣諸国との海洋汚染に対する地域協力体制については、海上保安庁がこの「海上保安の現況」でも書いてありますけれども、「国連環境計画(UNEP)が、日本、中国、韓国、北朝鮮及びロシアを対象とした「北西太平洋地域海行動計画」を推進して」おります。さて、海上保安庁は、このほかASEAN地域に対しても油汚染に対して技術協力等を行っているというふうに聞いておりますけれども、今後の国際的な油汚染対策海洋汚染対策についてどのように取り組んでいくのか、技術協力等も含めて最後に質問いたしまして、私の質問を終わります。
  56. 加藤甫

    政府委員(加藤甫君) 海洋汚染防止に関しましては国際的な取り組みが非常に重要である、先生の御指摘のとおりでございまして、私ども海上保安庁といたしましてはこれまでもさまざまな取り組みを行ってきております。  まず、国際海事機関等の場におきまして油汚染の未然防止あるいは汚染事故発生時の対応などについての国際的なルールづくりに積極的に参加する、また海洋環境の保全に関する近隣諸国との地域的な連携を図るための検討への参加、あるいは韓国等の油防除機関との専門家交流の推進などを行ってきているところでございます。また、開発途上国における油防除能力の向上を支援するために、油防除資機材の提供でありますとか、あるいは油防除に関する専門家の派遣、研修員の受け入れなどの技術協力という分野におきましてもこれらを推進しているところでございます。  また、海洋環境を保全するために、今後とも国際的な連携をさらに強めながら積極的に推進していく考え方でございます。
  57. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 終わります。
  58. 栗原君子

    ○栗原君子君 新社会党・平和連合の栗原でございます。  私は、とりわけ瀬戸内海の海洋汚染について関心を持っておりまして、そこらも含めて二、三お伺いをさせていただきたいと存じます。  海上保安庁がことしの二月九日に発表いたしました九五年の「海洋汚染現状」では、日本周辺で発生いたしました海洋汚染の件数は八百十一件、昨年に比べまして七十九件、一〇・八%も増加をしたということでございます。  そこで、瀬戸内海は、東京湾よりも伊勢湾よりも大阪湾よりも海洋汚染の件数が大変多いわけでございます。瀬戸内海は、特に国立公園として環境保全を最優先していかなければならない地域でもございます。海上保安庁は、瀬戸内海の海洋汚染の取り締まりに対してどのような体制で臨んでおられるのか、お聞かせください。
  59. 加藤甫

    政府委員(加藤甫君) 先生御指摘のように、全国を十海域に分けてみますと、瀬戸内海の海洋汚染の確認件数が全国で最も多いということでございます。  海上保安庁では、従来から瀬戸内海等の船舶の交通海域、船舶のふくそう海域に巡視船艇あるいは航空機を効率的に運用いたしまして、監視取り締まりを実施してきているところでございます。その装備などにつきましても、逐年増強あるいは強化を図ってきているという状況にございます。また、いろいろな機会をとらえまして、船舶乗組員あるいは一般市民の皆様方を対象に海洋環境保全講習会を実施いたしまして、海洋環境保全の重要性について周知あるいは啓発に努めているところでございます。  また、瀬戸内海につきましては、瀬戸内海・宇和海クリーン作戦と称するオペレーションを実施いたしております。昨年も六月一日から一カ月間実施をいたしまして、船艇、航空機など七百十五隻、五十五機という勢力を動員いたしまして、訪船指導を行っております。これは船舶を訪ねましていろいろな汚濁防止、汚染防止についての指導を行うもので、一千隻について行っております。あるいは海洋環境保全講習会をその期間に集中的に開く、あるいは新聞、テレビ、ラジオ等による広報を行うといったような事業を実施いたしているところでございます。今後とも力を入れてやっていきたいと思っております。
  60. 栗原君子

    ○栗原君子君 そこで、心配しておりますことは、海洋法条約の関連で海上保安庁の取り締まりの海域が増大することになるわけでございます。先ほどから質問の中にありましたように、海上保安庁の職員の数というのは目に見えてはふえていないということも言えるわけでございます。そういたしますと、沖へ沖へと取り締まりが強化されなければなりませんので、出ていきますとどうしても瀬戸内海を初めとする国内の海域の海洋汚染の監視というのに支障が起きてくるんではなかろうか、このことを心配いたしておりますけれども、こういった心配はしなくてもいいですか。
  61. 加藤甫

    政府委員(加藤甫君) 当庁におきましては、先生御指摘の国連海洋法条約の批准に伴いまして、排他的経済水域の設定などによりまして新たな業務需要が発生してくる、これは主として沖合に向けての業務需要であるということは先生御指摘のとおりでございますが、これらの新たな業務に対しましては巡視船艇等を別途計画的に体制整備を進めていくということにいたしております。一方で、国内海域における海洋汚染の監視取り締まりの重要性というものは今後とも重要性が変わるものではないというように認識をいたしておりますので、こうした国連海洋法条約の批准に備えた新たな海洋秩序に対応し得るような体制の整備を早急に進めることによりまして、国内海域における海洋汚染の監視取り締まりにつきましても遺漏なきを期し得るようにしてまいりたい、このように考えております。
  62. 栗原君子

    ○栗原君子君 机上ではわかっていると思うんですけれども、現実にはそうなっていないということが言えるわけでございまして、これはことしの三月六日の新聞報道なんですけれども、香川県の丸亀市におきましては廃車となった大型バスなどを海中に投棄した漁業者が摘発をされている、こういったこともあります。それからさらには、小手島漁港の護岸のそばの敷地に放置していた廃車のほか鉄くずが約二十トン、これをまた違法に投棄をしたと、調べによりますと投棄された廃車は大型バスが三台、乗用車が一台、軽トラックが一台の計五台にも上った、このような状況でございます。  それで、これは海だけの監視でなくして陸からも私は監視をする必要があるんではなかろうか、こういうことを思います。それと、市民の人たちからやはりいろいろ情報を入れていただく、そういうシステムをつくる必要があるんではないでしょうか。よろしくお願いします。
  63. 加藤甫

    政府委員(加藤甫君) 廃棄物等の不法投棄につきましては、私ども大変力を入れて違反行為の防止並びに違反行為があった場合の摘発に努めているところでございます。陸上からの監視というものも当然必要でございますから、関係の自治体といったようなところあるいは民間の団体等とも情報交換を行ったりというような体制づくりもあわせて進めているところでございます。  また、民間の方々に海上環境保全推進員というお名前を差し上げまして、海上における汚染のいわば監視を手伝っていただく、そして通報していただくというような仕組みを既につくっておりまして、全国で五百七十名の方に委嘱をしていただいております。そして、それらの方々には海洋環境の保全のための周知あるいは啓発活動といったような点につきましてもお手伝いをいただくといったような仕組みで、官民一体となった体制づくりを行っていくということでございます。
  64. 栗原君子

    ○栗原君子君 そこで、また近年プレジャーボートなどを河川とか運河とか港湾に放置をしている、これが大変自治体でも問題になっておりまして、私のおります広島市でもこういうことで頭を悩ましていらっしゃるわけでございます。報道によりますと、運輸省、建設省、水産庁、そういったところの三省庁では、小型艇の保管場所の届け出制の導入などを柱とした制度づくりに乗り出すことになった、こういった報道がなされているわけでございまして、早くこうしたものを強化していただきたいということをお願いするわけでございます。  それと関連いたしまして、実は横浜市では放置船の処分費を業界に要求する、こういったことがなされているようでございまして、九六年四月から船舶放置防止条例を施行する横浜市は、昨年の十一月十一日までに所有者不明の船舶の廃棄処分に要する費用負担を船舶製造あるいは販売業者団体の日本舟艇工業会に求めていく方針を固めた、このようなことが自治体で取り組まれておりまして、これは自治体としては横浜市が初めてである、こういった報道もなされておりまして、ある意味で私は大変いいことだと思うんです。  各自治体がこういった前向きな取り組みをしていただきたいものだと思っておりますので、そういった意味で自治体への要望あるいはまたアドバイスなどはこれからもさらに進めていただきたいと思いますし、今までどのようなアドバイスなどをしていらっしゃったのか、もう一度ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  65. 加藤甫

    政府委員(加藤甫君) プレジャーボート等の廃船の処理の問題につきましては、海上保安庁の行政分野のみですべて完結をするというような性格のものでなくて、いろいろな分野の行政が総合的に動員されて初めて解決がなされるということであろうと思うわけでございますが、その過程におきましては、海上保安庁の地方の出先機関におきましては都道府県とかあるいは港湾管理者といったようなところと相談をいろいろな面でしているところでございます。  そして、その中の一つのあらわれとして御披露申し上げたいのは、いわゆる廃船指導票、オレンジシールというこういうものを不法に投棄されて所有者のわからない廃船に張りつけるということによって、その所有者がそれをごらんになって大いに反省をしていただきましてその実効が上がったというようなことでかなりの効果を発揮している、これらもそうしたいろいろな話し合いの中で生まれてきた成果の一つであるというように考えておるところでございます。
  66. 栗原君子

    ○栗原君子君 もう時間が来ましたけれども、所有者がきちっとそれを見て、これは自分のだと反省をするような人は、私は余り無責任なことはしないと思うんですけれども、むしろ無責任でいる人は余り反省もしないし、ほっておいても平気でいるような人じゃなかろうか、こういうことを思うわけでございます。販売をした人、製造をした人、そしてそれによってもうけを得た人、そこらも考えていきますとやはりメーカー責任ももう少し私たちは追及してもいいんではなかろうか、こんなことを思いましたので、つけ加えまして質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  67. 寺崎昭久

    委員長寺崎昭久君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  午前はこの程度にとどめ、午後零時三十分まで休憩いたします。    午前十一時四十三分休憩      ―――――・―――――    午後零時三十二分開会
  68. 寺崎昭久

    委員長寺崎昭久君) ただいまから運輸委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、船員法及び海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案に対する質疑は既に終局しておりますので、これより討論に入ります。――別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  船員法及び海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。     〔賛成者挙手〕
  69. 寺崎昭久

    委員長寺崎昭久君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議  ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 寺崎昭久

    委員長寺崎昭久君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  71. 寺崎昭久

    委員長寺崎昭久君) 次に、港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  72. 泉信也

    ○泉信也君 平成会の泉でございます。  今回の法改正は、目的そのものをいじる、変更するという大変大がかりなものだというふうに受けとめております。したがって、これだけの大きな変更、一部改正をするその背景をまずお伺いいたします。
  73. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) 今回大幅な改正に至りました理由について御説明を申し上げます。  現行の港湾整備緊急措置法は、我が国の高度経済成長期であります昭和三十六年に初めて制定されました。したがいまして、その時代の背景を受けましてその目的を「経済基盤の強化を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与する」と規定しておりまして、これに沿って当時の港湾予算の約五割を工業港づくりに注ぐなど極めて生産色の濃いものとなっております。  しかし、最近は御高承のとおり、港湾予算の大部分、非常に多くの部分を良好な港湾環境の形成というものに注ぎ、それで豊かな国民生活を支える機能の整備を進めているというような状況になっておりますし、また、輸入されております物資も、かつての工業原材料等のみではなくて日常生活に密着した物資の輸入が増大するなど国民生活に密着したものになってきているというようなことを受けまして、その目的に、良好な港湾環境の形成を通じて周辺の生活環境の保全に資すること並びに国民生活の向上に寄与することなどを追加させていただいたものであります。  また、投資の重点化ということも特に入れておりますが、これは財政状況の厳しい中で、今申し上げましたような多様な港湾整備への要請を的確に行っていくためには重点投資を行っていくことが必要であるという観点から規定を追加させていただいたものでございます。
  74. 泉信也

    ○泉信也君 経済社会の状態が変化をしてきたためにそうした目的の変更がなされたということは理解できますが、この「良好な港湾環境の形成を通じて」ということと「周辺の生活環境の保全に資し」というこの関係が従来の港湾の概念からしますともう一つわかりにくいわけですが、どういうふうに理解したらよろしいでしょうか。
  75. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) 現在、港湾整備事業の中で進めておりますものは、岸壁等の整備のほかに、緑地でありますとかあるいは人工海浜でありますとか、ウオーターフロントに接しているという港湾の特性を生かした、豊かで潤いのある質の高い国民生活に寄与するような憩いの場の整備を進めております。  また、海底に堆積をいたしました汚泥のしゅんせつでありますとか、良質な砂を運んでまいりまして汚泥の上を覆うとか、あるいは人工干潟の造成を通じて水質を改善するとかいったような、良好な海域環境の確保に資する事業も実施しておりまして、これらの事業を都市の前面に展開しております港湾で展開することによって、それに接する周辺市街地の生活環境が改善されるということを今回の規定に追加させていただいたものであります。
  76. 泉信也

    ○泉信也君 といいますと、港湾の物理的な守備範囲というか、地域的な面的な広がりが大きくなるとか、あるいはもっと言いますならば臨港地区の範囲が広がるとか、そういうことを意図しておるということではないわけですか。
  77. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) ただいま御説明申し上げましたような事業はすべて港湾区域あるいは臨港地区その周辺で行われる事業でありまして、これらの事業を実施することによってこれまでの港湾の概念あるいは港湾の区域の概念などを大きく広げるといったようなことには結びつかない、またそのようなことを考えているものではないということでございます。
  78. 泉信也

    ○泉信也君 そういたしますと、この港湾の中に住宅機能、住宅施設でありますとかあるいはレクリエーション施設とかいったそういうものは従来にも増して入ってくる可能性が大きい、こういうことになりましょうか。
  79. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) もともと港湾の活動は、かなりの大型の輸送機械が入りましたり、あるいはクレーン等の作業によって騒音が発生する、あるいは扱う貨物によっては粉じんが発生したりするということもございまして、専ら居住の目的のための土地利用とは共存ができないというふうに考えております。  したがいまして、港湾の中で居住を目的とするような土地利用というものは避けるべきであるというふうに考えておりまして、この「国民生活の向上に寄与する」、あるいは「周辺の生活環境の保全に資し」といったような目的を追加することによってこれらの事業を実施するということには結びつかないし、またそれを意図したものではない。反射的に、港湾の環境整備事業が周辺の良好な生活環境を形成していくというふうに考えております。
  80. 泉信也

    ○泉信也君 確かになじまない点もありますが、港湾と都市の形成が一体的につながっておるということもございまして、「周辺の生活環境の保全に資し」というところも大変重く見ていただきたい、こんな思いを持っております。  そこで、この法案の三条の三項、これが新しくつけ加えられておりまして、先ほど局長からも重点化の部分に言及されました。この三項をつけ加えた理由として、限られた予算の中で重点的にという御説明がございましたが、今回この項目を出された理由をもう少し御説明いただけますか。
  81. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) 三条の三項、従来の現行法では三条に計画年次を加え、さらに、港湾整備五カ年計画に定めるべき事項すなわち港湾整備事業の実施の目標と港湾整備事業の量とを定めるということになっておりますが、さらにつけ加えまして「我が国の港湾整備における課題に的確に対応するため、港湾整備事業における投資の重点化を図ることができるように留意しなければならない。」ということを追加させていただいたものであります。  まず、「効率的な国際海上輸送網又は国内海上輸送網の拠点となるべき港湾の適正な配置」というようなことを例に掲げましたのは、厳しい財政状況の中で的確に港湾整備事業を展開するためには、まず何がこの五カ年間の重点課題であるかということを明確にし、そのことを適正に実施するために五カ年計画の投資の配分を決めていくということが必要だというふうに考えまして、例示として国際海上輸送網あるいは国内海上輸送網の拠点となるべき港湾の適正な配置ということを挙げさせていただいたわけであります。  この内容といたしましては、全体として適正な規模を確保するとともに、港湾を利用して行われる輸送活動が効率的になるように全体のネットワークの形成に留意するということを掲げたものでございまして、これは課題としては一例でございますけれども、基本となるものを掲げさせていただいたということでございます。
  82. 泉信也

    ○泉信也君 そういたしますと、ここの「配置等」という「等」は、目的の第一条で言われました「港湾環境の形成」、そういうことがこの「等」の中に入っておると理解してよろしいでしょうか。
  83. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) 今回の五カ年計画では、港湾の国際競争力を強化するための国際海上輸送網の形成でありますとかあるいは効率的な国内輸送のための海上輸送網の形成のほかに、地震の被害にかんがみまして耐震、港湾の地震に対する耐力をつける、あるいは地域づくりの推進をするといったような他の目的も五カ年計画の主要な柱と考えておりまして、「等」は目的の規定を受けて今後重点を置くべきことを含んでいるというふうに考えております。
  84. 泉信也

    ○泉信也君 次に、この「重点化を図る」というその重点か、いやそうではないという判断はだれがすることになるんでしょうか。
  85. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) 五カ年計画の策定に当たりましては、基本的な投資の規模につきまして閣議了解をしていただきました規模がございますけれども、個々のこの内容につきましては、これから秋にかけまして全国の港湾管理者から各港の重点事業をお聞かせいただきまして、それを全国的に調整するということになっております。さらに、その計画全体につきましてはまとまりした段階で閣議で御決定をいただくという手続を経ることになっておりまして、この重点化につきましては、港湾管理者等とよく相談をしながらその意向を受けつつ国としての判断をしていきたいというふうに考えています。
  86. 泉信也

    ○泉信也君 この部分はまさに国が私は判断すべきだとは思いますが、その基準、クライテリアみたいなものがある程度想定されておるんでしょうか、それともヒアリングをしながらおのずと全国の港湾の重点的な港あるいは港の中の施設を絞っていく、こういう段取りになるんでしょうか。
  87. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) 今回の五カ年計画をまとめるに当たりまして、昨年六月に二十一世紀初頭をにらみました港湾の長期政策というものをまとめて発表させていただいております。この長期政策は、約一年ほど時間をかけまして学識経験者あるいは港湾関係のいろいろな事業者にお集まりをいただき討議をしていただきまして、今後の我が国の港湾のあり方について御意見を伺ってまとめたものでございます。  その主要な柱の一つは、いわゆるハブ港湾と言われるような国際海上コンテナターミナルの配置について今後限定的にといいますか集約的に整備をしていこうということで、中枢国際港湾といいうのは東京湾を初めとする三大湾と北部九州地域の四地域、さらに、これを補完するものとして日本海中部など八地域に国際海上コンテナターミナルと呼び得るものについては限定をして整備をしていきたい。また、それぞれの地域経済活動を国際化の中で支えていくために、地域の国際的な窓口となるような地域国際流通港湾を全国に配置をしていきたいなどの基本的な考え方がこの長期政策の中にまとめられておりますので、この長期政策を基準にしながら五カ年計画の重点化に取り組んでいきたいというふうに考えております。
  88. 泉信也

    ○泉信也君 私は重点化にちょっとこだわり過ぎておるのかもしれませんが、国がある基準でどの港、今おっしゃった国際港湾においては三大湾と北部九州というふうにある種の絞りをかけていくというようなことが具体的に行われてまいりますと、いわゆる港湾の従来から言われてまいりました地方自治にゆだねてきた、港湾管理者にゆだねてきたそのこととそごを来すようなことが起きてくるんではないか。  例えば、特定重要港湾と言われる港湾法の四十二条の部分を考えましても、外国貿易の増進上特に重要な港湾を特定重要港湾だというふうに定める、それを国がどう判断するか、重要だとは思わないということになってまいりますと、今の港湾法の体系の中で言われておる重要港湾あるいは地方港湾というその基準の見直しまで必要になってくるんではないか、あるいはむしろ見直すべきではないかとすら私は思っておりますが、いかがでしょうか。
  89. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) これまでの港湾整備につきましては、今先生御指摘のように、港湾法の基本的な体系が専ら地方公共団体を主とする港湾管理者によってなされておりまして、国営港湾といったようなものが皆無の状態といいますか、もともと法律の中にそういう体系はございませんのでゼロの状態にございました。個々の港湾施設の整備の基本的な要請というのは港湾管理者から発生し、それを国が尊重して整備をしてくるという状況で今日まで進んでまいりました。  しかし、基本的な港湾施設が各港に確保され、これからは厳しい財政状況の中で国として必要な大型の港湾施設等あるいは重要な港湾施設等を適切に整備していくためには、国としての港湾の配置政策あるいはいわば戦略といったようなものがあってしかるべきではないかというのが長期政策の基本的な考え方でございまして、これを今後推進していきたいというふうに考えております。  ただ、港湾法の基本的な考え方はあくまでも地方自治といいますか港湾管理者に主体がございますので、港湾法の規定にありますように国が考えるその政策、港湾管理者と国との協議が調った場合にその政策が実現するということで、今後内容についてよく港湾管理者に説明をし、その理解を求めながら実施をしていきたいというふうに考えています。  なお、このように進めることが従来の特定重要港湾あるいは重要港湾といった港湾法が定めるそれぞれの港の体系に影響を及ぼすのではないかということについては、基本的には従来のままでいいというふうに考えておりますけれども、著しくそごを来してきた場合には、先生御指摘のように今後のあり方については検討させていただきたいというふうに思います。
  90. 泉信也

    ○泉信也君 今の局長のお答えで理解できたわけであります。  ただ、従来のといいますか現在のこの法律ですと、まさに港湾を経済基盤と位置づけて、その観点から国の利害に重大な関係を有する港湾を重要港湾というふうに港湾法で位置づけておるわけですから、例えば今回追加されました目的、港湾環境の形成というようなことが果たして国の視点からそれを重要だというふうに位置づけられるかどうか。地域の問題が非常に強くなってまいりまして、国家的輸送体系上から今まで議論してきた重要港湾あるいは特定重要港湾といったたぐいのものとは違う切り口がこの新しい緊急措置法を続ける中で必要になってくるんではないか、こんな思いを私は持っております。  現在の重要港湾を見直すということになりますと、ここにいらっしゃる先生方も賛否両論出てくると思いますが、恐らくこの重要港湾の認定をする内規みたいなものがあるんだと思いますが、そのもの自体も場合によっては見直していかなきゃならないのではないか、こんな思いを持っております。  私としては、先ほど申し上げましたようにこの重点化ということは大変重要なことでありまして、それを具体的に国の意思としてぜひ展開をしていただきたい、こんな思いを持っております。そこで、この重点化を行う過程で実は地方圏の港湾、特に離島港湾が脱落することになるのではないか、こんな危惧を私は持っております。これは、私が持っておるというよりも離島の町村長さん方が大変心配をしておられるわけであります。今、離島港湾というのは幾つぐらいあって何港ぐらい整備をしておるのか、もしそこでおわかりでしたら教えてください。
  91. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) まず、数についてお答え申し上げますが、現在離島港湾というふうに言われているもの、離島振興法に規定されておりますものは全体で三百十四港ございまして、そのうち平成七年度は百九十九港において施設の整備を推進しているところでございます。三百十四港中百九十九港で事業を実施という状況にございます。
  92. 泉信也

    ○泉信也君 残りは百余りになりますが、地元の方々が満足できる状態になっておるのかどうか、これが第一点でございます。それから第二点目は、今もなお旅客を運ぶ際に岸壁から直接昇降できない港、いわゆるはしけ取りをしておるような港があるのかどうか、教えてください。
  93. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) 三百十四港中百九十九港で整備実施しておりますけれども、しかしいまだに定期船が直接接岸できないという港がまだ多数ございます。また、接岸できたとしても防波堤の整備が立ちおくれているために就航率が著しく低いという港がございます。このために、投資効果の早期発現に配慮しながら引き続き整備を推進していきたいというふうに考えているところでございます。  なお、先ほど先生の御指摘のありましたように、地方圏の港湾管理者が非常に切り捨てられるのではないかという心配があるという御指摘でございますが、この背景について少し説明をさせていただきたいと思います。  現在、今の離島港湾とは違いますが、地方港湾というものが約九百ございまして、要請に従って整備をしてまいりました結果、九百港のうち約半数の港で何らかの整備事業を実施しているという状況にございました。しかし、港湾の予算が非常に限られている中で、地方港湾に回すものもそれほど急激にふやせないという状況の中から、一港当たりの平均投資額が非常に小さなものになり、必要とする小型の施設につきましてもその完成までに長期間を要するということが起きてまいりましたので、この三年間地方港湾の実施港数を三年で百港削減しよう、そのかわり一港当たりの投資額を大きくし早く施設を完成し利用に供しよう、そして次に必要とする港に事業を展開していこうという方針をとって、かなり力を入れて百港の削減を実施してまいりましたので、大変地方の港湾管理者に危機感を与えているのではないかというふうに考えています。  しかし、地方の切り捨てという趣旨ではなくて、今申し上げましたように早期完成早期供用で地方の利便性を高めていきたいという考え方でございますので、理解を求めていきたいというふうに考えております。
  94. 泉信也

    ○泉信也君 重点化の結果、離島の方々あるいは地方港湾も含めてでございますが、一般国民と同じレベルの交通サービスが受けられないという状況は何としてでも早く解消していただきたい。戦後五十年たって今なお直接船から岸壁に上がれないという状態がこの日本にあるとはなかなか多くの方は御納得いただけないんではないか、私はそんなふうに思っております。特に、航空機が利用できるような島であればまた助けられる部分もございますが、海路一本の交通機関に頼る以外にないような島において、防波堤が短いために生活の安定化が図られないというような事態はぜひ避けていただきたい。これはお願いでございます。  それからもう一つ、離島港湾の整備、今百九十九港やっていただいておるというお答えをいただきましたけれども、ある意味ではこうした公共事業がその地域の雇用の場となっておることもこれは事実であります。投資の早期効果の発現を期待するということも大切でございますけれども、そうした小さな地域社会の住民の生活の安定のためにも、重点化ということに余りとらわれてはいけない部分があることをこの際申し上げておきたいと思うわけです。  次に、今回の大きな改正の目玉になっております海上輸送網のことについてお尋ねをいたします。この「港湾の適正な配置」というのは、先ほど国際コンテナについては若干言及されましたが、新しい配置網というようなものをお考えになることになるんでしょうか。
  95. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) 現在、全国で約千百の港がございますけれども、そのうち重要港湾以上の港というのは約百三十港ございます。それぞれの地域のゲートウエーを考えて整備をいたします地域国際流通港湾につきましては、この百三十港の重要港湾以上の港を候補地として今後選択的な整備をしていくということになろうかと思います。  なお、その選択的な整備の一つの基準といたしましては、トラックで一日二往復できるような半日行動圏には少なくとも一つの地域国際流通港湾があるといったようなことを一つの基準に考えていきたいというふうに思っております。
  96. 泉信也

    ○泉信也君 国内についてはわかりました。一つの考え方が整理されておるというふうに受けとめさせていただきました。  そこで、国際コンテナ港湾、国際ハブ港湾とでも言った方がいいのかもしれませんが、先ほどの御説明のように、三大湾と北部九州というところを中心に進めていただくということでございますが、具体的に今どの程度の規模を想定しておるのか。ちょっとお尋ねの仕方が不明確であるかと思いますが、今聞くところによりますとマイナス十五メーターの施設を整備しようと努力しておられると伺っておりますが、こういうのがどれくらいこの五カ年間ぐらいにでき上がってくるということになるんでしょうか。
  97. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) 当面の課題になりますのは、コンテナ船の急速な大型化の中で登場しております五万トンクラスの大型コンテナ船、二十フィートのコンテナを五千個から六千個積み得るというこの超大型コンテナ船を受け入れる施設を各港に、先ほど申し上げました四大拠点等に整備をしていくということでございますが、現在既に着手をしているもの、あるいは近々神戸港で二バース完成をいたしますけれども、こういうものも含めまして、この五カ年の間に近隣諸国の港が所有しているものにほぼ匹敵するような数のものを整備していきたいということを目標にしております。
  98. 泉信也

    ○泉信也君 そうした大型のコンテナ岸壁が整備されるということで、東南アジア、北東アジアの中でも十分競争できる、他国と競争できる施設整備がなされるものと理解をさせていただきます。  しかし、そうしたいわゆるハードな施設をつくるだけで本当に国際競争に勝てるのかというのが大変気になるところでございます。運輸調査室でつくられました資料を見ましても、港湾料金の国際比較が出ておるわけですが、日本は大変高い。コンテナー個当たり三百五十ドル、台湾・高雄は百九十、釜山は百七十、シンガポールに至っては百四十と、こういう数値が出ておるわけですが、これは何が高いのか、この内容みたいなものはわかりますでしょうか。
  99. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) 港湾関係の料金にはいろいろのものが含まれておりますけれども、主なものは施設の利用料あるいは荷役の料金等でございます。これらのものは人件費、土地代を初めとする諸経費が割高である我が国に、さらに円高の影響もありまして今先生御指摘のような大きな差がついているというふうに考えております。  なお、この料金の内訳につきましては施設利用料と荷役料金で約七割というふうになっておりまして、特に施設利用料あるいは荷役料金とも人件費あるいは土地代というものが直接影響するためにこのような高いものに、割高のものになっているというふうに考えております。
  100. 泉信也

    ○泉信也君 施設の利用料に限定して先に議論させていただきますと、これをもう少し下げるということは一番手っ取り早いのは国費をもっとふやす、こういうことになろうかと思うんです。そのほかに建設コストそのものを下げていくという方法ももちろんありましょうが、今の大型コンテナバースを整備する埠頭公社方式が問題がある、そういう指摘が一部にあります。これは今税制でも、埠頭公社に対する減免の措置がいつも切れてしまいそうな状況が毎年続いておりまして、この施設使用料を下げることについては何か知恵がないんでしょうか。
  101. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) 現在、国際海上輸送の中心になっておりますコンテナの輸送形態は、大量のコンテナをあらかじめ陸上のヤードで整理をしておきまして、船が着岸すると同時にこのコンテナ貨物を短時間で積みおろしをし船が出港するというような形態をとっておりますために、その背後のヤードも含めまして利用する船社等に専用貸しをするという仕組みになっております。この専用貸しをするためには一般公共埠頭ではできないということでございますので、現在各港とも主要な港では外貿埠頭公社による専用貸し付けということをやっております。  ここに公的なといいますか、今先生が御指摘のようなことがなかなかその性格上難しいということでございますので、現在私どもが実施しておりますのは、まず管理費の増加を防ぐために外貿埠頭公社の税制に係る優遇措置をとっておりまして、これも平成八年度税制改正において継続するということをお認めいただいたところであります。さらに、特に大型の十五メーター以上の大水深の外貿コンテナターミナルの整備が急がれておりますので、これに対する国及び地方公共団体の無利子貸し付けの比率を平成七年度から従来の四割から六割に拡充をしていただきまして、これによって少しでも貸付料の高騰を防ぎたいという努力をしているところでございます。  なお、このほかどのような方法があるかにつきましては、今内部に研究会を設けまして、この国際競争力のソフトの面での強化ということについての方策を検討しているところでございます。
  102. 泉信也

    ○泉信也君 一つの岸壁当たりのコンテナの取扱量というものが諸外国に比べて日本の方が少ないというふうに私は理解をしている、間違ったら訂正をしていただきたいんですが。本来、専用貸しを受けている船会社、そういう方々は与えられた施設を最大限に使う、そして少しでもコストを下げるという方向に動いておるはずなのに、年間を通して一つの岸壁当たりの取扱量を比較してみると、必ずしも日本の取扱量が多くないというところにどうも納得できないわけなんですね。その一つに港湾荷役の問題が介在しておるのではないか、こんな思いを持っております。  今港湾荷役、コンテナ埠頭に限ってで結構ですが、毎日、土日も問わず荷役ができる体制になっておるのかどうか、そのことをお尋ねいたします。
  103. 岩田貞男

    政府委員(岩田貞男君) かねがね日曜荷役につきましてはいろいろな方面から指摘を受けてきたところであります。港湾荷役に関する日曜荷役の再開でございますが、昨年の六月から労使の合意に基づきまして再開されております。例えば、大きな港であります東京港とか横浜港とか名古屋港、大阪港、神戸港、門司港、この六港で統計をとってみますと、昨年六月からことしの三月三十一日までなものですからきちんと一年間ではございませんが、約二百七十隻の船が日曜日に入港しております。  さらに、私どものちょっとPRも悪いんですが、その他の地方港についても荷主さんの要請に対応しまして実は荷役をやっておりまして、例えば室蘭港とか苫小牧、新潟、伏木富山、南では那覇まで、まだそのほかにもいろいろありますがやっておりまして、一生懸命その港の効率的な運用につきましても努力しているというところでございます。
  104. 泉信也

    ○泉信也君 先ほど、七〇%が施設利用料あるいは人件費というふうに港湾局長から御答弁がございました。一般企業でありますと、海外展開というようなことで安い人件費を求めて動いていけるわけですが、港を海外に移すわけにはまいらないわけであります。したがって、御努力はいただいておるとは思いますが、こんなに諸外国に比べて差があったのでは幾ら岸壁をつくっても、恐らく船社が船を寄せるあるいはサービスのレベルが他の港に比べて低いという判断をされますと取り返しがつかない状況になってくるのではないか、こんな心配をするわけです。  ですから、今ここで具体的な中身に立ち入るつもりはございませんが、この七〇%をどうやって下げていくか。そして、コスト面でも他国に十二分に対応できるようにしていただかないことには、日本の国際海上輸送上の地位が低下していくことになる。もちろん、運輸省の皆さんも大臣以下御心配でおわかりいただいていると思いますが、規制緩和とかあるいは従来の慣行を是正するとか、踏み込んだ対策をぜひお願いいたしたいと思います。   そこで、今離島港湾あるいは国際コンテナ埠頭、こういうことをお尋ねいたしましたが、さきの閣議で了解されました第九次の港湾整備五カ年計画があります。特に、港湾整備事業四兆三千百億というのが閣議了解されておるわけですが、五カ年間でこの事業をこなしていくとしますと、まだ予算案は通っておりませんが、平成八年度をベースとしてどれぐらいの伸び率でいけばこの四兆三千百億という目標が達成されるんでしょうか。
  105. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) 新五カ年計画におきまして予定をしております投資規模四兆三千百億円でございますが、これを平成八年度当初予算を初項として必要な年平均伸び率を計算いたしますと、九・九%という非常に高いものというふうになります。
  106. 泉信也

    ○泉信也君 九・九%とおっしゃったんですね。この数値はいかに高いかというのは運輸大臣、港湾局長が一番おわかりいただいておることだと思います。財政審の答申以来、皆さんの御努力で少しずつ伸び率が大きくなってきておりますが、ことしが二%という伸び率の中で決定がなされようとしておるわけでありまして、九・九%というのはいかにも高い。せっかくこの緊急措置法を改正して目的まで変えて実施をしていただこうということになりましても、本当にこれは絵にかいたもちになるのではないか。局長、御決意のほどはいかがでございましょうか。
  107. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) 四兆三千百億円に現在投資規模はなっておりますが、昨年、あらかじめ港湾管理者からヒアリングをいたしました現在の港湾管理者の整備要請というのはこの二倍に及んでおります。一つ一つ精査をしたわけではありませんので、単純に半分の投資規模しか現在のところ了解をされていないというふうなことではないと思いますけれども、港湾管理者の要請が非常に強いということの左証でもあると思いますので、何とかこの四兆三千百億円、伸び率九・九%の計画を実現していきたいというふうに考えております。  なお、現在の第八次の計画と実績の関係を、一つの数字でございますけれども、計画では八・九%というふうに非常に高いものでございます。しかし、毎年の補正予算等の結果、実績の伸び率は一二・六%というものになっておりますので、必ずしも今後補正予算が過去五年間のように恒常化するというふうには考えてはおりませんけれども、過去五カ年の実績と比べまして九・九%というのは実現不可能あるいは目標として不適切なものではないというふうに考えております。
  108. 泉信也

    ○泉信也君 今回の法律改正については、私は意欲的な方向に向かった改正だと思っております。大臣今お聞きいただきましたように、この改正によって新しい港湾の仕組みと申しましょうか、整備の仕組みみたいなものが今までと変わってくる可能性が非常に大きい、あるいは国の関与の仕方が従来よりももっと強くなる方向にあるのかな、こんな思いを持っております。私はその方向でいい、こんな思いを持つものであります。  そこで、大臣にお尋ねをいたしますが、離島港湾のお話もお尋ねをさせていただきました。国際コンテナの輸送の中で日本の地位が低下をしておることも大臣御承知のとおりでございますが、この法律改正を機にどういう思いで次の五カ年計画に取り組んでいただけるのか、特に国際競争力の低下を防止するという視点からお答えをいただきたいと思います。
  109. 亀井善之

    ○国務大臣(亀井善之君) 先ほど来御指摘をいただいておりますとおり、水深十五メートルのコンテナターミナルは近隣諸国の港湾では既に供用されておるわけでありますが、残念ながら我が国ではまだそこに至っていない、こういうような状況であります。今回の第九次港湾整備五カ年計画、主要な国際港湾には水深十五メートルのコンテナターミナルの整備を重点的にやる、こういうことでもございますし、そのような面から我が国の国際競争力を上げていかなければならない。あわせて、使用料の上昇の抑制であるとか、あるいは港湾における情報化の推進、あるいはまた港湾と道路との連携、こういうものを強化して複合的な取り組みによりまして港湾の国際競争力を強めてまいりたい、このように考えております。
  110. 泉信也

    ○泉信也君 今回新しい五カ年計画ができるわけでありますので、ぜひこの五カ年計画が内容的にも金額的にも一〇〇%生かされますようお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
  111. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 港湾が経済活動の上でも国民生活の上でも重要な役割を果たしている、したがってその整備が必要だというのはこれは当然のことだと思うんですね。  ただ、今度の第九次の五カ年計画というのは総額で七兆四千九百億円という大変膨大な費用を使っていく、そういうものであります。こういう五カ年計画をつくる上で大事なことは、これまでの八次にわたる五カ年計画はどうだったのかとやはり過去の厳しい点検、総括をやる、その上に立って新たな五カ年計画をつくっていくというのがこれが当然の筋道だと思います。  ところが、全部読んだわけじゃありませんけれども、例えばこういうものを読んで見ましても、過去の港湾整備事業にどういう問題があったのかということは、これは何一つ書かれてないんですね。お話を伺っても何一つ伺えない。じゃ、八次までの港湾整備事業というのは何も問題がなかったのか。そんなことは私はないと思うんですけれども、やはりその点が足りないんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
  112. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) 今回の五カ年計画まで昭和三十六年以来八次の五カ年計画を定めて、それに基づいて港湾の整備を進めてきたわけでありますが、それぞれの五カ年計画は、当時の政府が定めます経済計画あるいは全国総合開発計画等の国土計画が定められるのを契機といたしまして、それを上位計画としてその時々の経済社会情勢に応じた必要な課題に対応するように計画をつくってきたわけでございます。  第一次、第二次は、昭和三十六年、四十年というときにつくっておりますけれども、当時の各港で見られました岸壁の不足による船込み現象の解消でありますとか、あるいは我が国の高度成長を支えるための新産業都市、工業整備特別地域等への重点投資等を進めてまいりました。さらに、第三次の四十三年からの計画では、現在話題になっておりますコンテナ輸送が登場いたしましたので、従来の港湾をコンテナ輸送に対応する港湾につくりかえていくという課題に対応してまいりましたし、四十六年からの計画では、全国的に問題になりました、特に港湾を中心に問題になりました環境問題への対応等を実施してきたわけでございます。  以下、割愛をさせていただきますけれども、それぞれの時代に最も必要とするものを五カ年計画の中に組み込んで実施をしてきた。それは、先ほどもちょっと答弁を申し上げましたが、国が一方的に五カ年計画を定めるのではなくて、全国に分散をしております港湾管理者からの要請を積み上げて五カ年計画の柱なり重点投資項目をつくっておりますので、そういう意味でそれぞれの時代に必要とするもの、それぞれの地域が必要とするものを今日まで実施してこれたというふうに思っております。ただ、それぞれの時代の財政状況で計画をしたものが一〇〇%達成できなかったというのが数回ございますけれども、ほぼ目的に沿って実施ができたというふうに考えているところであります。
  113. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 全総であるとか経済計画に基づいてやってきたと。しかし、その全総が計画どおりにいったものなんかないですよ、政府の経済計画で計画どおりいったものはないですよ、一度だって。その計画に基づいて港湾整備をやったんでは、あるときには計画を立てた時点ではその時代に適合していたかもわからない、そのときの経済活動のニーズに合っていたかもしれない、しかし、経済変動で数年たてばこれは経済計画だって変わったし全総だって変わったし、進捗中の港湾整備だって実は変わっちゃったということがこれは当然あるわけでしょう。だから、そのことをもってこれまでの港湾整備計画に欠陥はなかったということは、私は到底言えないと思うんですよ。だって、もとが狂っているんだから。  例えば、北海道の苫東開発、むつ小川原開発、石狩湾新港、日本海沿岸港湾、これは莫大な投資をしてきましたよ。しかし、当初の取り扱い目標量と実績はどうか。これは大きく乖離していますね。そのことによって遊休化している施設もこれは随分あると思うんです。あるいは鉄鋼、石炭、木材等々の専用埠頭、こういうものも随分つくりました。しかし、経済構造の変化でこれも遊休化しているものが少なくない。  こういう港湾整備のあり方、こういう面に着目しなきゃ、今栢原局長の話を聞いているといろいろ伺ったけれどもみんなよかった、どうもそういう話のような感じがしたわけですけれども、やはりよくなかったところもちゃんと見ていかないと、これからの五カ年計画、正しいものに私はできないんではないかと思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。
  114. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) 先生御指摘のような事例が各地に全くないかというと、そうではないということは残念ながら認めざるを得ません。  例えば苫小牧東港などは、大規模工業基地として政府の決定に基づいて整備をしてきたわけでありますが、その後の重厚長大から現在のハイテク時代の産業に構造が変わったことによって、当初見込んでおりました石油精製所でありますとか製鉄所等の立地がされない。製鉄所は港湾計画では予定をしておりませんでしたけれども石油精製が立地をしないということで、その方向の見直しが必要とされておりまして、長く北海道で議論をされておりましたけれども、今回その施設を利用して流通港湾として、現在の苫小牧港が満杯になっておりますので、工業港の方針を変更いたしまして今後流通港湾として北海道が必要とする貨物を扱うといったようなことで、一つ一つのそれらの時代に合わなくなったものにつきましては具体的な港について検討をし、整備されている施設の有効活用に努力をしているところでございます。
  115. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 例えば、今度の計画で水深十五メートルのコンテナバースをつくる、全部で二〇〇〇年には十三バースつくるという計画になっていますね。これまでは十二メートルから十三メートルで対応してきたわけです。本委員会でことしになって視察に行きまして質問もしましたけれども、素人が考えると、十五メートルの水深が必要になってきた、その十三メートル今あるところを簡単には二メートル掘り下げてできないのかと聞くと、もちろんそういうところもたまたまあるんだけれども、多くは基礎工事がされてないために単純に二メートル掘り下げてというわけにはいかないという。だから、十三メートルのバースがこっちにある、それとは別に十五メートルのバースをつくらなきゃいけない、こういうことになっているんです。  これはどう考えたって、何でもう少し基礎をちゃんとやっておかなかったんだろう、そうすればそこを掘るだけで、そんな簡単じゃないかもしれませんよ、しかし簡単に言えばそういうことで対応できたはずだ。次はどうなるか知りません。しかし、いずれ十七メートルの水深が必要だ、また別のところにつくると。これは大変な浪費だと思うんですよ、簡単な工事じゃないですから。じゃ、何でそのときできなかったのかということがあると思うんです。  先ほど言いました遊休化問題でも、鉄鋼、石炭、木材の専用埠頭を抱えている港湾というのはかなりあります。深刻な状況にあります。こうした埠頭を整備するときには、港湾管理者である自治体が相当な財政負担もやっている。その上に遊休化している。これは言ってみれば、つくるときに莫大な費用を負担して、遊休化することによってそのまた負担がふえる。言ってみれば二重の負担が自治体港湾管理者の上にのしかかってくる。自治体港湾管理者といったって、結局これは自治体住民の上にいずれは何らかの形でしわ寄せをされることになるわけですね。  こういう遊休化した施設が一体どれぐらいあるのか、今どうなっているのか。こういうのは、今結構ですけれども、実態把握というのがきちっとされているんでしょうか。もしされているんであれば、後でも結構ですからお教えをいただきたいと思います。
  116. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) 船舶の大型化で既存の港湾施設が利用できなくなるというのは、私ども大変頭を痛めているところでございます。例えば他の事業、道路などでは二車線の道路を交通量がふえたために四車線にする場合、もとの二車線の部分というのはほとんど生きるわけでありますけれども、港湾の場合には水深十二メーターの岸壁を十五メーターにしようとすると大変な工事を必要とする、そのためにむしろ新しくつくった方が安いということで今日まで展開をしてまいりました。  しかし、今後はできるだけ既存の施設の改造をしてでも、港湾施設を展開する空間が非常に狭くなってきているということもございまして、改造などを積極的に検討していきたい、実施していきたいというふうに考えております。既に、これはそういう本格的な改造ではありませんけれども、製鉄所の岸壁の一部、これは民間の施設でありますけれども、それが遊休化した部分を公共に買い上げて転用するといったような工事を実施しておりまして、今後そういうものを積極的に取り入れていきたいというふうに考えておるところでございます。
  117. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 冒頭にも言いましたように、やはり港湾整備というのは莫大な費用がかかる事業ですから、本当にむだを可能な限りなくしていくという観点から、過去の総括と同時にやっぱりよく先を読んで計画を立てていくということが大事だということを私は強調しておきたいというふうに思うんです。  今度の計画を見ますと、輸入インフラの整備ということで大水深の国際海上コンテナターミナル、今言いました水深十五メートル、これを整備する事業費が一兆二千億円ですね。港湾整備事業の中の約三〇%を占めています。その一方で、地域に密着した地方港湾、先ほどもお話がありました離島港湾、あるいは安全災害対策、こういうところも大いに重視するんだと言われている割には相対的に軽視されているというふうに私は言わざるを得ないんじゃないか。しかも一方で、港湾管理者の負担というのはますます深刻になっておりまして、自治体財政を大きく圧迫するという現状にあると思うんです。  そこで、お伺いをしたいと思うんですけれども、全国の重要港湾百三十三港ありますけれども、九三年度で収支決算はどうなっておりますか。
  118. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) 九三年度の重要港湾百三十三港の財政収支状況でありますが、港湾管理者の管理費あるいは施設整備費等の歳出を賄います財源は次のような構成になっております。まず、使用料などの港湾収入が二割弱、国庫の支出金等が約二割、港湾管理者が発行いたします公債が約三割、その他地方公共団体の一般財源が約三割というふうになっているところでございます。
  119. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 この場合に黒字、赤字という呼び方は適当ではもちろんないと思うんですけれども、括弧つきの赤字ですね、ちょんちょんの赤字で言いますと一千二十七億一千二百万円ということになっています。もちろんこれは収入で全部賄うという考え方でもないし、それは不可能なことはよくわかっておりますけれども。これは五年前の一九八八年度に比べますと約三〇%ふえています。そして、それが何で賄われているかというと結局一般財源と公債ということになるわけです。  どういうふうになっているかといいますと、公債の発行額が二千九百九十四億四千七百万円、およそ三千億円ですね。一般財源からの持ち出しが二千八百七十一億六千六百万円、およそ三千億近い。自治体の支出金というのが二百二十四億千六百三十二万円。合わせて六千九十億二千九百万円、これが自治体の負担なんですね。  これがどれぐらいの自治体財政に負担になるかというと、例えば公債償還費が二千四百二十億七千二百万円、歳出全体の二三・七%。この公債の償還費が歳出の四分の一を占めている。そのためにまたこれは借金を重ねなきゃできませんから、まさに借金地獄になっている。借金を返すために借金を重ねる。借金地獄になっているというのが、これが地方自治体の実態だというふうに思うんです。これでいいと、港湾というのはそういうものだというわけには私はやっぱりいかないと思うんです、これだけ歳出に占める比率が高いとなると。  こういうことになぜなるのかという点についてどうお考えでしょうか。
  120. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) 港湾を構成いたします施設にはさまざまなものがございます。岸壁のようにその利用料を取ることのできる施設もございますが、このほかに防波堤でありますとかあるいは航路、さらには港湾の中の緑地などの料金を取ることができない施設が現在では不可欠のものとなっておりまして、こういうものの存在といいますか、こういうものの整備がある程度の地方公共団体の一般財源の投入によって賄われていることではないかというふうに思っています。  それでは、港湾に地方公共団体の一般財源が投入されることが全く不適切な負担であるかということにつきましては、港湾はその港湾が存在することによりまして地域の経済とかあるいは地域住民の生活を支えている上で多くの役割を果たしております。雇用の場を提供するとか、あるいはその他の税収を上げるということで、直接港湾からの収入という形にはなりませんけれども多くの貢献をしているということで、地方公共団体の負担が必ずしも不適切なものであるとは言えないというふうに考えているところでございます。
  121. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 港湾局長がおっしゃることは理屈はわからぬわけじゃないんですよ。ただ、歳出の四分の一まで占めるようになっている、借金を返すために借金しなきゃいかぬという状況まで陥って、なおかつ地方公共団体の負担は一般論として不適切とは言えないというわけには私はいかないだろうと思うんですね。  見てみますと、港湾整備の財政負担というのは、骨格となる外郭・水域施設、防波堤とか航路等、これは国と管理者がほぼ二分の一ずつ負担する。民間そして受益者の負担というのはないし、これは料金等徴収の対象にもなっておりません。その他岸壁や泊地などの施設も原則は国と管理者の負担ということになっております。一部民間負担もある。また機能施設整備、荷役、埠頭用地等は管理者の全額起債事業、これは使用料で償還ということになっております。  民間受益者の負担は一部はあるわけですけれども、基本は施設使用料などだけに限定をされております。私、競争力の問題もあるだろうし、利用してもらわなきゃいかぬ問題もあるだろうし、ただ施設使用料を上げろという単純なわけにはもちろんいかないと思うんですよ。  ただしかし、例えば国と自治体の費用負担のあり方は今のままでいいのかということはこれは考える必要がある。あるいは、徴収使用料もこれが本当に今のままでいいのかということも考える必要がある。これはもちろん直ちに結論が出る問題じゃないでしょうけれども、しかし、今後この五カ年計画でしたがって七兆四千九百億円を支出していくわけだから、膨大な金を支出していっていずれまた借金ふえるんですから、起債ももっとふえるでしょう。  そうしますと、この今の財政問題、これについてもあわせて本当に今のままでいいのかということの検討を少なくとも開始しなきゃ、これは自治体財政大変ですよ。この点はいかがでしょうか。そういうお気持ちはあるのか、そういう検討を開始していくという考えはあるのかどうか。
  122. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) 港湾管理者の財政状況の改善ということは港湾局の長い課題の一つでもございました。港湾六大港協議会あるいは十大港協議会等、港湾管理者の団体と共同いたしまして、その料金のあり方あるいは財政状況のあり方について現在も検討をしております。引き続きそういう場を活用しながら、地方への負担が過重なものにならないような方向を探っていきたいというふうに考えております。
  123. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 ぜひ、これは深刻な問題ですので検討していただきたいと思うんです。  使用料などの収入の問題なんですけれども、重要港湾百三十三港で見ますと、九三年度が一千六百五十億円、歳入全体の一六・二%しか占めてないという状況ですね。外郭・水域施設については「料金を徴収することができない。」というのがこれは港湾法の四十四条二項で規定をされております。したがって、管理者の二分の一負担はもともと丸々回収できないというのは、これは基本原則というかそういうことに仕組みの上でなっているわけです。他の整備費の負担と機能施設等はすべて自治体の借金で賄って民間受益者は整備費も負担しない、自治体の負担した整備費に見合う使用料などの負担もしない。これじゃ、このままほうっておくと、それで結構だとおっしゃるのかもしれないけれども、永久に負担はずっと積み重なっていくということにならざるを得ないと思うんですね。  例えば、専用埠頭、専用貸し埠頭というのがありますけれども、これはもうまさに特定の受益者のための埠頭ですよ、専用なんですから。第九次の計画の目玉である大型コンテナターミナルの整備を外貿埠頭公社が行う場合、これはほとんど専用貸し埠頭ということになっている。そうすると、すべて自治体一〇〇%出資の公社の借入金で実施をする、その償還は賃貸料でということになるわけでしょう。しかし、その賃貸料はこの支出には見合わないわけだから、そうすると大型コンテナターミナルを整備すればするほどこの十三バース、西暦二〇〇〇年には管理者の負担が積み重なっていくということにこれはならざるを得ないわけですね。この点はどうなんでしょうか。
  124. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) 仕組みについて少し御説明をさせていただきたいと思いますけれども、港湾の中にあります純粋民間の埠頭、例えば製鉄所でありますとか石油精製所の岸壁あるいは護岸等はこれは純粋に民間の負担で整備をされているものであります。したがいまして、その利用につきまして港湾管理者が料金は取れないという状況にあるという仕組みでございます。  また、専用貸しのバースにつきましては、埠頭公社等に対しまして港湾管理者が負担をしておりますのは無利子の貸付金でございまして、実際にそこに一般会計からの資金を投入するということにはなっておりませんので、港湾管理者が一部の利用者の負担を肩がわりをしているということにはならないと考えております。  また、専用貸しバースの利用料金につきましては、建設に要したコストを回収するという原価方式で計算をされておりますので、これがまた貸付料が高くなるという問題も引き起こしておりますけれども、その必要なかけました経費は一〇〇%利用者から回収がされるという仕組みになっております。
  125. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 最後に一点だけ大臣にお伺いしたいと思うんですが、今回の計画では耐震強化岸壁ということが強調されております。ところが、一九八四年の八月、今から十二年前に運輸省港湾局は、港湾における大規模地震対策施設の整備構想というのを出しております。計画では全国で百三十七港、三百九十から四百二十バース整備をすると。ところが実績は、五十七港、八十バース、大体五分の一ですね。しかも、今度の五カ年計画ではバース数で言うと百五バースですよ。つまり、十二年前に出した計画よりもまだその半分以下の計画でしかないわけです、今度の五カ年計画というのは。  したがって、一九八四年の計画は全く目標に到達しなかった、しかし少なくとも今度の五カ年計画ではこの百五バース、この目標というのは必ず達成すると。そして、現在整備されているものも含めて百八十五バース、これは必ず達成するという必要があると思うんですね。大臣、次に歩いていってもらわなきゃいけませんから、二百この点についての決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  126. 亀井善之

    ○国務大臣(亀井善之君) 御承知のとおり、阪神・淡路大震災において神戸港の被災により背後地域のみならず我が国全体の経済活動が大きな影響を受けたことは委員御承知のことでもございます。そういう面で、今回の第九次の港湾整備五カ年計画におきましても、港湾における大規模地震対策を従来にも増して重要な課題として位置づけ、耐震強化岸壁の整備を促進してまいりたい、このように考えております。
  127. 寺崎昭久

    委員長寺崎昭久君) 午後四時二十分に再開することとし、休憩いたします。    午後一時四十八分休憩      ―――――・―――――    午後四時二十分開会
  128. 寺崎昭久

    委員長寺崎昭久君) ただいまから運輸委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  129. 栗原君子

    ○栗原君子君 新社会党・平和連合の栗原君子でございます。  私はこの港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案につきまして、そこに働く労働者の立場で二、三質問をさせていただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。  まず、先ほどから同僚委員の方からもいろいろ港湾整備につきましての質問がなされておりましたけれども、その中で私は、日本の港湾の利用コストは四十フィートコンテナ一本当たりの積みおろす費用が大体三百五十ドルと言われておりまして、シンガポールや韓国の釜山の二倍以上、そして欧米や香港と比べますと大体二割から七割高くなっているということが言われているわけでございます。そして、日本の場合利用コストの中で大きな比率を占めているものは何があるのかということをお聞かせいただきたいと思います。特に、こういったことがマスコミなどでも報道されておりまして、これは九五年の九月十二日の新聞にもこういったことが報じられているわけでございます。
  130. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) 先生御指摘のように、日本の港湾におけるコンテナ一本当たりのコストというものは先ほど数字をお示しいただきましたとおりでございます。このような高いものになっております理由は、人件費、土地代を初めとする諸経費が割高である上に、円高の影響があり著しく高くなっている数字が出てくるということがあろうかと思います。  現在つかんでおります数字では、平成六年度に行いました船主協会の資料をもとにして推計をいたしますと、神戸港におけるコンテナ一本当たりに占めるコストの割合は、岸壁使用料が三割、荷役料金が四割ということでこれで七割になります。残りは水先料金約一割、そのほかとん税とタグボート、引き船料等ということで推計されております。
  131. 栗原君子

    ○栗原君子君 それで、日曜日とかそれから深夜について日本の場合は利用ができないということが指摘されているようでございますけれども、この点についてある報道によりますと、日本の労働者が働かないから日曜を休み、深夜も働かないからできないのだといったような報道の向きもあるようでございますけれども、私は決してそうではないと思うんです。そこに働く人たちは、きちんとしたローテーションを使用者側が組んでくれれば日曜でもそれから夜間でも働く用意はあるんだ、こういったことを言っているわけでございまして、労使関係のゆがみからも若干このような誤った報道にもなっているのではなかろうかと思いますが、この点いかがですか。
  132. 岩田貞男

    政府委員(岩田貞男君) 若干誤解が先生のおっしゃるようにございまして、私どものもう少しきちんと広報しないのがいけないのかもしれませんが、昨年の六月から、先ほども御答弁申し上げましたように主要港湾、神戸港、横浜港あるいは東京港とか、そういう大きな港湾におきましては労使の合意に基づきまして日曜荷役が再開されております。六月からことしの三月までですから一年にはなりませんけれども、その間二百七十隻のコンテナ船が日曜荷役を利用しております。  それから、夜間荷役につきましても時々言われるんですが、これはコンテナターミナルにおける荷役の約五割が夜間荷役となっておりまして、各港においても需要に応じて夜間荷役が実施されております。  さらに、そういう大きな五大港とかでなくても、先ほど申し上げましたように荷主の方々の需要に応じまして、伏木富山ですとか新潟港ですとか苫小牧ですとか、そういうところにつきましては日曜荷役も行われております。
  133. 栗原君子

    ○栗原君子君 港湾施設の効率的な利用を考えた場合に、コンテナバースの船社専用貸しの効率利用についての妨げになっているようなものがあるのではなかろうか、こういった指摘もあるわけでございますけれども、この効率利用を妨げている問題は何だとお考えになりますか。
  134. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) コンテナにつきましては大量のコンテナをあらかじめ準備をしておくというようなことから、公社による埠頭専用貸しをするという形になっておりますが、横浜港埠頭公社の例をとりますと、一バース当たり年間利用船舶は五万トン級が約百隻、二万から三万トン級が二百隻ということで、合計三百隻、ほぼ毎日船が着岸をしているという状況にございます。  専用貸しをするために一社あるいは数社の独占によって著しく非効率な利用になっているということは現実には起こっていないというふうに思っております。
  135. 栗原君子

    ○栗原君子君 そうですが。  それでは続けまして、港湾施設の整備というハード面もさることながら、整備についての有効利用というソフト面も大変問題になると思うんですけれども、この港湾整備計画の策定に当たりまして、そこに働く労働者の意見はどのように反映されているんでしょうか。ソフト面の検討についてのことを少し御答弁いただければと思います。
  136. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) 各港の整備事業は、重要港湾以上は各港とも個別の港湾整備計画を策定することが義務づけられておりまして、この各港の港湾計画に基づいて実施をされております。この港湾計画を策定するに当たりましては、地方、中央の二段階にわたってそれぞれ港湾審議会の審議を経るということになっておりますが、この港湾審議会には学識経験委員あるいは港湾労働組合、港湾運送業等の港湾関係者が委員として委嘱をされておりまして、計画をつくる段階から、計画自体はハードな平面計画等が主でありますけれども、そこに働く人々の意見、利用する人々の意見が反映されるような仕組みになっているということでございます。
  137. 栗原君子

    ○栗原君子君 お言葉を返すようでございますけれども、実は、中央の審議会においては確かに労働者代表の方が港湾の方でいらっしゃるわけでございますけれども、地方に行きましたら必ずしもそうなっていないわけでございまして、労働者代表ということで確かに労働者ではあるんですけれども、港湾労働者ではないわけです。例えば連合の代表の方でいらっしゃるとか、旧県評時代は県評の代表の方であるとか、そういったことになっておりまして、なぜ港湾の問題を審議するのに港湾労働者がその中に入れないのか、こういった指摘があるわけですけれども、これについてはいかがでしょうか。
  138. 栢原英郎

    政府委員栢原英郎君) 今、私の手元にあります数字では、全国の地方港湾審議会七十六のうち、関係労働組合の代表者を委員に委嘱しているものは平成七年八月現在で六十六審議会、全体の八七%に上っているというふうに報告を受けております。ただ、今先生が御指摘のように、関係労働組合の代表者というのが港湾あるいは海運の直接関係者であるか否かについてはこの数字でははっきりしておりませんが、内容を調べさせていただきたいと思います。  ただ、港湾計画の中には背後の工業地帯の計画等、幅広い空間計画を策定するものですから、いろいろな労働組合を統合する方々の代表を入れているのではないかというふうに推量されます。
  139. 栗原君子

    ○栗原君子君 やはり港湾のことについて審議をする場であるならば、一番そのことがよくわかっている現場の労働者を入れていただきたいということを再度お願いしておきたいと思います。  次に、ILOの関係でございますけれども、ILOの港湾労働条約、勧告におきまして、荷役方法の変化によって起こり得る影響について政労使で調査し、とるべき措置について体系的に検討すべきであるとしておりますが、このような検討を行うよう行政としてアドバイスといいますかリードするといったような考えはおありなんでしょうか。
  140. 松浦弘行

    説明員松浦弘行君) 近年、貨物輸送のコンテナ化、ストラッドルキャリア、ガントリークレーンなどの大型荷役機械の普及等、荷役方法の近代化、革新は著しく進展しております。港湾労働法の指定港であります六大港におきましては、コンテナ貨物の割合は、昭和四十五年の五%から平成六年には五七・五%というふうに大幅に上昇しているという状況を承知しているところでございます。  労働省といたしましては、こうした変化に的確に対応した対策を講ずるため、毎年度港湾労働法に基づく港湾雇用安定等計画の策定に当たっては、公労使三者構成による中央職業安定審議会におきまして、港湾労働の雇用の動向等を十分把握しながら港湾労働者の雇用の改善、能力の開発、向上を促進するための方策について御審議をいただいており、この計画におきましては、先生御指摘の近代的荷役の進展に対応した技能者の育成についても盛り込んでいるところでございます。  いずれにいたしましても、今後荷役方法の変化とその雇用に及ぼす影響は労働力の需給を考える上で非常に重要な点と考えますので、その把握に一層努めてまいりたい、このように考えております。
  141. 栗原君子

    ○栗原君子君 ILOの勧告の百四十五号のⅥの32というところがあるわけでございますけれども、そこに要するに労働時間とか週休とか有給休暇とか、こういったことを定めておりますけれども、「大多数の労働者の労働条件に関する基準よりも不利なものであってはならない。」、こううたっているわけです。  実は、ここにパンフをいただいておりますけれども、この中にILOのITF資料よりというものがありまして、これちょっと掲載をされているわけでございますけれども、十カ国の港湾労働者の賃金の位置づけというものを出しておりまして、一般の製造にかかわる労働者を一〇〇とした場合、例えばアメリカでしたら一八六になっておりますし、それから香港が一八二、フランスは一六〇。各国の中で低いと思われるニュージーランドですら、一般の製造業を一〇〇とした場合九九・九なんです。日本はどうかと申しますと、一般製造業を一〇〇とした場合六八ということになっているわけでございます。  よく労働者の賃金が高いということを指摘されるわけでございますけれども、これでも生活できないわけでございます。一般の労働者も厳しい状況の中でございますけれども、さらにそれよりも低い状態に置かれているということになっているわけでございますが、この点についてはどのように考えていらっしゃいますでしょうか。
  142. 松浦弘行

    説明員松浦弘行君) 今、先生御指摘の港湾労働者の賃金に関する資料でございますけれども、ちょっと手元に持っておりません。大変恐縮でございますが、仕事の上で承知している範囲で一般的に申し上げますと、私どもの関係で港湾労働者雇用安定センターというものがあるんですけれども、常用労働者の賃金等も参考にしながら決めておるところですけれども、月給にいたしまして三十万強、また賞与等も四十五万強出ております。そういった意味で、今先生御指摘のあった、製造業労働者と比較しまして六〇%とおっしゃったでしょうか、それほどの格差はないのではないかと推察されますけれども、再度調べておきたいと思います。
  143. 栗原君子

    ○栗原君子君 やはり賞与などが随分差があるように見受けるわけでございます。  そこで、先ほどから申しておりますように、ILOの港湾労働条約を早期に批准する考えというのはどうでございましょうか、かなりいろいろ各国批准をしているところもふえているように思うわけでございますけれども。
  144. 松浦弘行

    説明員松浦弘行君) お答えします。  労働省としては、このILO第百二十七号条約内容は現行の港湾労働法によりおおむね満たされているものというふうに考えております。しかしながら、同条約の批准につきましては、なお港湾関係者間に条約の理解の内容について相違、隔たりが見られるところであり、現在港湾調整審議会に公労使三者構成の専門小委員会を設置し、この条約に係る諸問題についての検討及び関係者間の意見調整を行っていただいているところでございます。労働省としても、できるだけ早くその審議がまとまるよう努力してまいりたい、このように考えてございます。
  145. 栗原君子

    ○栗原君子君 早くといいますと、大体どのくらいを早くというんでしょうか。
  146. 松浦弘行

    説明員松浦弘行君) 具体的にいかほどに早くかということですが、先生からも御指摘いただくかもしれませんけれども、この審議会はこの二年間近く開催されてない状況にあります。今申し上げましたように、労使のいろいろな意見の相違、隔たりが大きい中で、また港湾の関係の諸問題、労働という立場からも大きな他の問題もございまして開催しておらないというのが実情ですけれども、できるだけ早く開催していきたいというふうに考えております。
  147. 栗原君子

    ○栗原君子君 その審議会につきましてはお尋ねしょうと思っていたところでございますけれども、ILOの港湾労働条約の批准についてお伺いしましたけれども、だから審議会を開かれましてそれで早急に進める方向でいたいと解釈してよろしいですね。
  148. 松浦弘行

    説明員松浦弘行君) 先ほど御答弁申し上げましたように、労働省としては、この百三十七号条約内容というものは現行法の港湾労働法に照らしましておおむね満たされているという考えでございます。そういう中で、先生の御指摘は、行政の立場から一定のイニシアチブをとってこの批准に向けての尽力を一層せよということかと思います。  ただ、こういった労働関係国際条約につきましては、基本的には、先ほど来申し上げましたようなそういった理解の隔たりがある中で政府がみずから考えを出してその合意形成を図っていくということは、今までの経験に照らしますと必ずしもそれを促進するというよりもかえって混乱を招くということもございまして、労働省といたしましては、労使の理解の隔たりの縮小というものに一層努めてまいりたいというふうに考えてございます。
  149. 栗原君子

    ○栗原君子君 努力はぜひお願いしたいわけでございますけれども、先ほどおっしゃいました例の総理府の港湾調整審議会の専門小委員会のことと思いますけれども、これが九四年の六月六日が最後でございまして、それ以後二年間も開かれていないということになっております。以前は三カ月から四カ月に一回は開かれていたというんですけれども、これは何が原因でこんなに二年間も開かれないんですか。集まればごたごたして事が難しくなると考えているんですか、どうなんですか。
  150. 稲田敏

    説明員(稲田敏君) 今、先生御指摘の港湾調整審議会の専門小委員会でございます、その場におきましてILOの第百三十七号条約の御審議をいただいておるところでございますが、御指摘のとおり、最近では平成六年の六月二十二日に開催し、消費者側からヒアリングを行ったところでございます。その後まだ開催に至っていないわけでございますが、本問題につきましては、それぞれ港湾労使を初めとして関係者からいろいろな御意見をお聞きしますとともに、関係各省とも調整を行っていく必要がある、こういうことでございまして、それに若干事務的に時間がかかっておるということでございます。  私どもといたしましては、この問題につきまして、関係各省とも相談の上に早期に開催されますように努力してまいりたい、このように考えております。
  151. 栗原君子

    ○栗原君子君 委員のメンバーを見せていただきますと、大変学識者でいらっしゃって経験豊かな方もたくさん、たくさんといいますか六人のメンバーでございますけれども、ぜひ早期にお開きをいただきまして、港湾行政を進める上で私は大変重要なことであると思いますので、進めていただきたいと思います。  次に、中枢港湾とかそれから中核港湾、拠点港湾の整備に伴いまして行われます港湾の荷役作業については、既存の港湾運送業者あるいはまた港湾労働者を使用するようにしていただきたい。特に、港湾労働者の雇用の不安が起こらないように私はお願いをしたいと思っております。  実は、大手の業者が次々に、地方の港湾が整備されることによりまして地方に進出をしてくると言われております。そして、次々と新規の免許を運輸省が発行していらっしゃって、そのために大手が地方の港湾にも入ってくる。だから、今までそこに働いていた労働者が締め出しに遭う、大変雇用不安になっている、こういった指摘があるわけでございますけれども、このことについてはどのようにお考えでしょうか。
  152. 岩田貞男

    政府委員(岩田貞男君) 港湾運送事業につきましては免許制がとられております。今御質問がございましたように免許申請があった場合でございますが、その場合については当然のことながら、そこに新たな需要があるのかどうか、新しい事業者さんに活動してもらえるようなそういうサービスの必要性があるのかどうかということを十分考えながら免許をさせていただいているところでございます。  その際、直接そこで荷役作業を現在している方の状態がどうだということは法律上考慮することではないのですが、新しい仕事があるのか、新しい事業者さんが参入されたときに仕事があるのかということをよく判断しながらやっているわけでございまして、その結果としてうまく仕事があるというような状態にしてまいるように今後も措置してまいりたいと思います。
  153. 栗原君子

    ○栗原君子君 措置してまいるとおっしゃいましたけれども、どのように措置してまいられるんでしょうか。ちょっと私、頭が悪いからわからないんですけれども、どうなんでしょうか。大手がとにかく入ってきて、今までいる人たちがはみ出されてしまうような状況がいろいろ地方で起きているという話ですけれども。
  154. 岩田貞男

    政府委員(岩田貞男君) 免許をするときに、今申し上げましたように港の実情、そういうような需要があるかどうかということを十分把握しながら今後ともその適正な運用に努めていきたいと思います。
  155. 栗原君子

    ○栗原君子君 余り答弁とすれば変わっていないんですけれども、何かわかったようなわからないような答弁なんですが。  実は、豊橋市に港湾労働安定協会の技能研修センター、こういうのがあるということを伺っておりますけれども、これは全国で一カ所しかないと言われておりまして、地方からこのセンターに行くということは日程的にも大変難しいし、また交通費などもかさむとか、そういった声もあるわけでございますけれども、ここの活用というのはどのようになっておりますか。
  156. 松浦弘行

    説明員松浦弘行君) 今、先生からお話にございました豊橋港湾技能研修センターにつきましては、すべての港の港湾労働者を対象としまして、技能の高度化を図るための施設として港湾労働安定協会の運営でなされているところでございます。最近の資料によりますと、この中では、港湾荷役科に三百二十六人、クレーン科百五十四名、コンピューター関係九十名等、計六百名弱の形で革新荷役関係の職業訓練というものがなされています。  また、先生おっしゃられる関係で申しますと、この研修を受けるためには、これは事業主さん方の中での御努力でございますけれども、研修助成金だとか、あるいは旅費の助成金等の措置も講ぜられているということと承知しております。  また、若干つけ加えさせていただきますけれども、私ども労働省の方でも、港湾労働者の養成や技能の向上を図るという趣旨から、雇用促進事業団によります港湾関係の職業能力開発施設というものが横浜港、名古屋港、大阪港、神戸港それぞれにございます。そこにおきましては、新しく港湾労働者になられる若い方だけではなくて、現にお働きになっている在職の港湾労働者の方々に対しての能力開発というものをやっているところでございます。  こういうことで、そういった施設を活用しながらまた雇用の安定を図る、あるいは職業能力の開発を図るための助成措置というものも雇用安定事業の中での施策としてやっておりますので、そうした助成措置等も活用しながら港湾労働者の能力開発また雇用の安定が図られるよう努めてまいりたい、このように考えております。
  157. 栗原君子

    ○栗原君子君 時間が参りましたけれども、最後に運輸大臣に、我が国の港湾行政の向上について御所見をお伺いしたいと思いますけれども、とりわけ港湾の労働者の声、そこに働く人が一番やっぱりよくわかっていると思いますので、そういった声を大事に進めていただきたい。  それからまた、きょうも離島の関係が出ておりましたけれども、普通の道路でしたら幾ら過疎地の道路でもつくれば、バスは廃止されてもまだ乗用車が通るといった一定の交通量の確保はできるわけでございますけれども、海上はそうはいかないわけでございます。自家用の交通はできないわけでございます。せっかく補助金を投入して港を整備いたしましても、今の過疎化によって利用することができなくなる、航路が廃止になる、そういったこともさまざまあるわけでござい.ます。  とりわけ、私も広島でございますが離島を抱えておりまして、そこの首長さんあたりも随分頭を悩ませていらっしゃるわけでございます。大きな埠頭の整備も大事でしょうけれども、ぜひそうした地方の港の整備をお願いしたいと思いますが、決意のほどよろしくお願いします。
  158. 亀井善之

    ○国務大臣(亀井善之君) いわゆる港湾は、単に貨物の輸送だけでなく、その地域に密着した生産あるいは生活の場としての地域の経済を支えておるわけであります。そういう中から雇用の創出、こういうことも重要な役割を果たしております。このような視点から、地域の要請やあるいは港湾関係者の意見というものを十分踏まえつつ港湾の整備に努力をしてまいりたい、このように考えております。
  159. 栗原君子

    ○栗原君子君 終わります。
  160. 寺崎昭久

    委員長寺崎昭久君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  161. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 私は、日本共産党を代表し、港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。  港湾は我が国の物流を支える重要な役割を担っており、その整備が必要なことは当然です。しかし、政府が進める港湾整備のあり方、財源負担のあり方には幾つかの重要な問題があります。  その第一は、本改正案の根本に日米構造協議に基づく対米公約を最優先する輸入インフラ整備促進があると同時に、大企業の生産拠点の海外移転による産業空洞化を無批判に受け入れ、そのもとでの基盤づくり、大企業本位の港湾開発となっていることです。  例えば、第九次港湾整備計画は、大水深の国際海上コンテナターミナル群の整備を中心課題にしていますが、これはアメリカが強く要求する外貿コンテナターミナルの整備にこたえたものです。加えて、地元産業に打撃を与えかねない輸入促進地域、FAZの指定に関連する港湾整備の推進を最重要課題とするものだからであります。  第二に、港湾建設のあり方がゼネコン優先の浪費型事業になっていることです。ゼネコン本位の建設のための建設ともいうべき浪費型の公共事業という従来のやり方を根本的に再検討すべきです。また、三大港湾などに投資を集中して大型プロジェクトを最優先し、その一方で地方港湾の整備を三年間で百港削減し、安全、防災のための防波堤の改良工事を一時抑制するとして、予算を前年度の半分以下に削減していることも重大であります。  第三に、審議の中でも指摘したように、地方自治体が過大な負担を強いられていることです。港湾管理者の財政収支状況は極めて深刻で、特定重要港湾を含む重要港湾の九三年度の経常収支は、一千二十七億一千二百万円の大赤字です。九五年度の港湾整備事業費の負担割合は、港湾管理者である自治体が四一・二%と半分近くを占める一方、国が三五・五%、民間がわずか四・六%でしかありません。しかも、港湾施設の使用料等の収入が歳入全体のわずか二八%であり、いわば構造的に赤字を生む仕組みとなっているにもかかわらず、その解決策が示されていないことです。  以上、本改正案への反対理由を述べ、私の討論を終わります。
  162. 寺崎昭久

    委員長寺崎昭久君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。   これより採決に入ります。  港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。     〔賛成者挙手〕
  163. 寺崎昭久

    委員長寺崎昭久君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  164. 寺崎昭久

    委員長寺崎昭久君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十三分散会