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1996-04-17 第136回国会 衆議院 労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月十七日(水曜日)     午前九時三十一分開議 出席委員   委員長 岡島 正之君    理事 大野 功統君 理事 森  英介君    理事 若林 正俊君 理事 上田  勇君    理事 河上 覃雄君 理事 北橋 健治君    理事 池田 隆一君 理事 金田 誠一君       粕谷  茂君    木部 佳昭君       佐藤 静雄君   田野瀬良太郎君       長勢 甚遠君    藤尾 正行君       細田 博之君    宮里 松正君       山本 公一君    江田 五月君       須藤  浩君    桝屋 敬悟君       松岡滿壽男君    柳田  稔君       井上 一成君    岩田 順介君       岡崎トミ子君    山崎  泉君       三原 朝彦君    寺前  巖君  出席国務大臣         労 働 大 臣 永井 孝信君  出席政府委員         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省労働基準         局長      松原 亘子君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君         労働省職業安定         局高齢障害者         対策部長    坂本 哲也君  委員外出席者         労働省労働基準         局労災管理課長 播   彰君         労働委員会調査         室長      松原 重順君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十六日  辞任         補欠選任   江田 五月君     笹川  堯君   柳田  稔君     安倍 基雄君 同日  辞任         補欠選任   安倍 基雄君     柳田  稔君   笹川  堯君     江田 五月君 同月二十七日  辞任         補欠選任   須藤  浩君     愛野興一郎君 同日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     須藤  浩君 同月二十八日  辞任         補欠選任   江田 五月君     笹川  堯君 同日  辞任         補欠選任   笹川  堯君     江田 五月君 三月一日  辞任         補欠選任   長勢 甚遠君     村山 達雄君   二田 孝治君     小澤  潔君   東  祥三君     笹川  堯君   須藤  浩君     安倍 基雄君   桝屋 敬悟君     愛野興一郎君   柳田  稔君     伊藤 達也君 同日  辞任         補欠選任   小澤  潔君     二田 孝治君   村山 達雄君     長勢 甚遠君   安倍 基雄君     須藤  浩君   愛野興一郎君     桝屋 敬悟君   伊藤 達也君     柳田  稔君   笹川  堯君     東  祥三君 同月十三日  辞任         補欠選任   長勢 甚遠君     中山 太郎君   二田 孝治君     野呂田芳成君   寺前  巖君     志位 和夫君 同日  辞任         補欠選任   中山 太郎君     長勢 甚遠君   野呂田芳成君     二田 孝治君   志位 和夫君     寺前  巖君 同月十九日  辞任         補欠選任   長勢 甚遠君     塩川正十郎君   二田 孝治君     白川 勝彦君   寺前  巖君     志位 和夫君 同日  辞任         補欠選任   塩川正十郎君     長勢 甚遠君   白川 勝彦君     二田 孝治君   志位 和夫君     寺前  巖君 同月二十五日  辞任         補欠選任   東  祥三君     北村 直人君   寺前  巖君     志位 和夫君 同日  辞任         補欠選任   北村 直人君     東  祥三君   志位 和夫君     寺前  巖君 同月二十七日  辞任   東  祥三君 同日             補欠選任              三原 朝彦君 四月五日  辞任         補欠選任   寺前  巖君     志位 和夫君 同月九日  辞任         補欠選任   三原 朝彦君     簗瀬  進君   志位 和夫君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   簗瀬  進君     三原 朝彦君 同月十日  辞任         補欠選任   三原 朝彦君     簗瀬  進君 同日  辞任         補欠選任   簗瀬  進君     三原 朝彦君 同月十一日  辞任         補欠選任   柳田  稔君     畑 英次郎君 同日  辞任         補欠選任   畑 英次郎君     柳田  稔君 同月十七日  辞任         補欠選任   大石 千八君     細田 博之君   佐藤 孝行君     佐藤 静雄君   二田 孝治君     山本 公一君   岡崎トミ子君     山崎  泉君 同日  辞任         補欠選任   佐藤 静雄君    田野瀬良太郎君   細田 博之君     大石 千八君   山本 公一君     二田 孝治君   山崎  泉君     岡崎トミ子君 同日  辞任         補欠選任  田野瀬良太郎君     佐藤 孝行君     ――――――――――――― 四月九日  高年齢者等雇用安定等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣提出第一〇号) 同月十一日  労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律  案(内閣提出第九号) 三月十三日  高齢者雇用機会創出に関する請願藤村修  君紹介)(第四六五号) 四月五日  労働者派遣法改悪反対派遣先責任団交応諾  義務明確化に関する請願岡崎宏美紹介)  (第一四〇六号)  同(岡崎宏美紹介)(第一四五七号)  同(小森龍邦紹介)(第一四五八号) 同月九日  高齢者雇用機会創出に関する請願輿石東  君紹介)(第一五〇九号)  労働者派遣法改悪反対派遣先責任団交応諾  義務明確化に関する請願岡崎宏美紹介)  (第一五一〇号)  同(小森龍邦紹介)(第一五一一号)  同(小森龍邦紹介)(第一五五九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月五日  労働者災害補償保険法等改正に関する陳情書  (第一四二号) 四月十二日  新規学卒者就職機会確保等総合的雇用対策  に関する陳情書  (第二一〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  高年齢者等雇用安定等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣提出第一〇号)  労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律  案(内閣提出第九号)      ――――◇―――――
  2. 岡島正之

    岡島委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、高年齢者等雇用安定等に関する法律の一部を改正する法律案議題とし、趣旨説明を聴取いたします。永井労働大臣。     —————————————  高年齢者等雇用安定等に関する法律の一部   を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 永井孝信

    永井国務大臣 ただいま議題となりました高年齢者等雇用安定等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  現在、我が国においては急速な高齢化が進展しており、二十一世紀初頭には超高齢社会到来することが見込まれております。  このような状況のもとで、高年齢者職業の安定その他福祉の増進を図るとともに、経済社会活力を維持するためには、高年齢者が長年にわたり培ってきた知識経験等を活用していくことが必要であり、高年齢者の多様な形態による雇用就業機会確保することが重要な課題となっております。  政府といたしましては、こうした課題に対処するため、定年退職者等に対する臨時的かつ短期的な就業機会確保するための措置の充実を図るための法律案を作成し、中央職業安定審議会全会一致の答申をいただき、ここに提出した次第であります。  次に、その内容概要を御説明申し上げます。  第一に、都道府県知事は、定年退職者等に対し臨時的かつ短期的な就業機会提供すること等を目的とする、二以上のシルバー人材センター会員とする公益法人シルバー人材センター連合として指定することができることといたしております。  第二に、労働大臣は、シルバー人材センター及びシルバー人材センター連合の健全な発展を図ることを目的とする公益法人全国シルバー人材センター事業協会として指定することができることとしております。  この法律は、本年十月一日から施行することといたしております。  以上、この法律案提案理由及びその内容概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  4. 岡島正之

    岡島委員長 以上で趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 岡島正之

    岡島委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。須藤浩君。
  6. 須藤浩

    須藤委員 新進党の須藤でございます。  ただいま趣旨説明がありました高齢者等雇用安定等に関する法律の一部改正案質疑をさせていただきます。  まず、働く意欲能力のある中高年齢者が、その年齢にかかわらず働き続けていけるシステムを持った社会、これをいわゆるエージレス社会、このように呼ばれております。二十一世紀には恐らく世界屈指高齢化社会を迎える私たちの国ですけれども、中長期的に見て、高齢者がこれまで以上に働く必要性というものがますます出てくるかと思います。それと同時に、働く意欲のある人たちもさらに現在増加している状況にあると思います。  まず、このような高齢者雇用の維持を進める動き背景として考えられることは、人生八十年時代、こういったものを迎えて、高齢者の豊かな知識経験を活用し、生きがいを持ってもらうこと、さらに、九〇年代後半、若年労働者の恒常的な不足時代に入り、高齢者労働なくしては経済成長が維持しにくくなっているということ、さらに、急速な高齢化に伴い、年金支給開始年齢の引き上げと六十五歳以降の雇用あり方がクローズアップをされている、その他もろもろのこういった背景というものがあるかと思いますが、今回の改正は、超高齢化社会到来を控え、就業意欲のある高齢者社会活動機会確保するため、シルバー人材センター事業発展拡充等を行うというようなことであろうと思います。  そこでお伺いしますが、まず第一に、超高齢社会を間近に控えて、高齢者雇用政策についての基本的な考え方が第一点。さらに、どのような点に重点を置いて政策を展開をしていくのか。さらに、シルバー人材センター事業政府高齢者雇用対策の中でどのような位置づけとなっているか。例えば、高齢者雇用状況あるいは高齢者雇用関係予算推移等はどうなっているか。さらに、六十五歳までの継続雇用に関する中長期的ビジョンについて、まずお伺いいたします。
  7. 永井孝信

    永井国務大臣 お答え申し上げます。  今先生が御指摘になりましたように、日本は急速な高齢化社会を迎えているわけであります。平均寿命の延びあるいは出生率の低下、こういうものを考えますと、これに対応する的確な政策推進が不可欠であります。二十一世紀の初頭には労働力人口の四人に一人が高齢者となる、そういう超高齢社会が想定をされているわけであります。  このような超高齢社会到来を迎えまして、我が国経済社会活力を維持していくためには、高齢者がその培ってきました知識経験を生かして、希望すれば現役として六十五歳まで働くことができる社会仕組みをつくり上げることがまず肝要だと思っているわけであります。このために、六十歳定年基盤とする六十五歳までの継続雇用推進、あるいは高齢者の多様な形態による雇用就業機会確保、これらを柱とする政策推進が必要であります。  まず、六十歳定年基盤とする六十五歳までの継続雇用関係でありますが、これにつきましては、平成十年四月施行を初めとする法改正を既に平成六年の委員会で御決定をいただき、可決成立をさせていただいているところであります。  また、高齢者の多様な形態による雇用就業機会確保関係につきましては、平成六年の法改正による高齢者に係る労働者派遣事業の特例の制度化に加えまして、今回、シルバー人材センター事業発展拡充を図るための法改正をお願いしているところであります。今後とも、これらの諸施策を積極的に展開することによりまして、高齢者雇用あるいは就業機会確保に全力を尽くしていく決意であります。  また、先生指摘の、シルバー人材センター事業高齢者対策の中でどのような位置づけでこれを推進していくのかという御質問でありますが、超高齢社会のもとにおいて我が国経済社会活力を維持していくためには、最前も申し上げましたように、長年にわたった高齢者方々の培ってきた経験あるいは知識を十分に生かし切る、そういう仕組みが私は必要だと思うわけであります。そのことはまた、高齢者方々にとっても生きがいであろうし、あるいは健康を維持する一つの道かもわかりませんし、あるいはそのことがすばらしい社会を実現する大きな力になるものだと確信をするわけであります。  そういう立場から、今回の制度改正を契機といたしまして、事業の一層の充実に向けてその支援を図ってまいる所存でございます。
  8. 征矢紀臣

    征矢政府委員 六十五歳までの継続雇用に関します中長期的ビジョンでございますが、高齢者雇用に関します中長期的ビジョンにつきましては、高年齢者雇用安定法に基づきまして、平成七年度から平成十一年度までの五年間を運営期間といたします高年齢者等職業安定対策基本方針を策定いたしまして、この基本方針に沿って高齢者雇用就業機会確保促進を図っているところでございます。  この基本方針におきましては、六十五歳までの高齢者雇用機会の増加を図ることを目標としているところでございますが、雇用機会確保に当たりましては、六十歳を超えると健康あるいは体力の面などで個人差が拡大するとともに、その就業ニーズも多様化することから、六十歳定年基盤とした六十五歳までの継続雇用を柱としつつ、高齢者就業ニーズに応じた多様な形態による雇用機会確保推進することといたしております。  このような対策によりまして、二十一世紀初頭までに、希望すれば六十五歳まで現役として働くことができる社会の実現に努めてまいりたいと考えております。
  9. 坂本哲也

    坂本(哲)政府委員 ただいま高齢者雇用状況ですとか関係予算推移についてのお話ございましたので、補足させていただきます。  御案内のとおり、我が国経済は緩やかながら回復の動きが続いておりますけれども、雇用失業情勢は全体としてなお厳しい、とりわけ高齢者については依然厳しい状況が続いておるわけでございます。具体的には、一つは、完全失業率で見ますと、ことしの二月現在、六十歳から六十四歳層では完全失業率が七・二%ということになっておりますし、また有効求人倍率年齢別に見てみますと、ことしの二月では、六十から六十四歳層で〇・〇八倍ということになっておるわけでございます。  また、高齢者雇用関係予算状況でございますけれども、平成八年度におきましては、一般会計労働保険特別会計合わせまして、全体で一千七百九十億余を計上いたしております。  主要な施策を若干申し上げますと、一つは、企業の雇用管理あるいは施設設備等職場環境高齢者が働きやすいように改善するための高齢者雇用関係助成金制度といたしまして、八百八十六億を計上いたしております。  また、都道府県の高年齢者雇用開発協会を中心といたしました相談事業の強化、あるいは新たな雇用就業形態普及促進を図るためのパイロット事業を実施することにいたしておりますが、この経費といたしまして約十三億円。  それから、今回お願いいたしておりますシルバー関係になりますけれども、全国どこでも高齢者が臨時的、短期的な就業機会提供を受けることができるようなシルバー人材センター連合創設等関係といたしまして、約百十六億といったような予算を計上いたしておるところでございます。
  10. 須藤浩

    須藤委員 では、続いて質問いたしますけれども、まずこのシルバー人材センター事業の現況と展望についてさらに詳しくお伺いいたします。  まず、この事業そのものが果たす役割ですね。ただいま概括的に触れていただきましたが、さらに具体的にどのような役割を果たすと考えているか、そして、国や都道府県においてはどのような点に留意して指導援助を行っていくのか、この二点についてお伺いします。
  11. 永井孝信

    永井国務大臣 シルバー人材センター事業が果たす役割でございますが、シルバー人材センター事業は、職業生活からの引退過程にある高齢者に対しまして、その希望に応じた臨時的かつ短期的な就業機会確保して、それを組織的に提供しようということでありまして、まず一つは、高齢者がその能力を積極的に活用しながら、生きがいを持って社会参加できるようにしていこう。二つには、高齢者能力地域社会に還元と言っていいのでしょうか、地域社会に役立てていこう。そして、そのことを通して地域社会活性化に資することができる、こういう立場でこの役割を私どもは位置づけているところであります。
  12. 坂本哲也

    坂本(哲)政府委員 シルバー人材センター事業に関する国、都道府県留意点といいますか、指導方針ということでございますけれども、今後の超高齢社会到来を迎えまして、高年齢者知識経験を活用することが大変重要である。そういった中で、このシルバー人材センターというのは、労働対策あるいはまた地域社会福祉対策といった側面でますますその役割が大きくなっているというふうに認識をいたしておりまして、この一層の発展拡充というのは極めて重要な課題であるわけでございます。  国あるいは地方公共団体といたしましても、臨時的かつ短期的な就業希望する者につきまして就業に関する相談を実施するとか、あるいはまたその希望に応じた就業機会提供する団体を育成するように努めていく、そういった視点から指導あるいは援助を行うことにいたしておるわけでございます。  しかしながら、一方またこのシルバー人材センターは、高齢者自主的な団体でございます。共働・共助、また自主自立といったものを事業の基本的な精神とするものでございまして、仕事確保ですとかあるいは財政面におきまして国あるいは地方公共団体に過度に依存することがあってはならないわけでございます。その自主的な事業運営促進、そういった点にも留意しながら指導をいたしておるところでございます。
  13. 須藤浩

    須藤委員 シルバー人材センターというのは各市町村ベースで設置をされていて、恐らくその地域性であるとかあるいは人口構成の中身、さらには就業中といいますか、定年退職するまでの仕事内容等、そういったさまざまな内容によって、その地域におけるシルバー人材センター及びその事業あり方、そういったものに差異といいますか、バラエティーな部分があるのではないか、このように私は思うわけです。  ただいま答弁がありました自主性自立性、さらには自分たちの手でこういった事業を行いながら地域活力を与える、あるいはこれまで培ってきた能力等地域社会提供をする、と同時にその方々たち生きがいを共有するといいますか、そういう状況であろうと思います。この点に関しましては後ほどさらにもう少し詳しくお聞きいたしますが、次の質問をいたします。  一口に高齢者といっても、これまで培った技能経験が即戦力としてすぐに提供できる、そういった分野がまずあろうと思います。他方では、新たに技術あるいは技能、そういったものを取得しなければならない分野もあろうと思います。さらには、ある程度高齢になってきた場合には、複雑な仕事であるとかそういったものは難しい、単純労働につく方がやりやすい、こういった層もあると考えられますが、まずシルバー人材センター事業で取り扱う仕事の例としてはどのようなものがあるか。さらに、現在のシルバー人材センター事業就業率、これはどの程度となっているか。そして、今回の法律の一部改正によってこういった就業率の変化あるいは見通しというものを今どうとらえているか、これらについて伺います。
  14. 坂本哲也

    坂本(哲)政府委員 シルバー人材センターで取り扱っております仕事はどういったものがあるかといったことにつきましては、平成六年度の実績を見てみますと、職群別に見ますと、清掃ですとか除草ですとかあるいは包装こん包、これは一般作業というふうに称しておりますけれども、こういった作業が大体四八%程度を占めております。  また、次に多いのが公園ですとかあるいは自転車置き場、こういったものの管理を行ういわゆる管理的な業務、これが二六%程度。それから、遺跡の発掘ですとか観光案内ですとか家事手伝いといったサービス的な業務、こういったものが九%程度。それからまた障子張り、ふすま張りですとか植木の手入れ、大工仕事ですとかいった技能的な仕事、こういったものが八%強。そのほかに、例えばあて名書きですとかも筆を使った賞状書きですとかいろいろな統計調査事務、こういった事務整理関係、さらには入場券販売等といった折衝、外交の仕事、こういったものがございまして、それぞれの地域実情に応じて、その地域に密着した仕事を引き受けておるということでございます。  また、シルバー人材センター就業率でございますけれども、平成六年度で全国平均を見てみますと七三・七%という率になっておりまして、昭和五十五年に国庫補助事業として開始をいたしまして以来、ほぼずっと一貫して向上をいたしてきております。  今回の法律改正によりましてシルバー人材センター連合を指定できるようにするということでございますけれども、連合が発足いたしますと、従来シルバー人材センターでは行えなかった、それぞれのシルバー人材センター間での会員なり仕事融通がこれからやり得ることになるということでございますので、受注できる仕事の増大を図ることができるであろう。  また、シルバー人材センター連合におきましては、シルバー人材センター関係者が一丸となって新たな事業企画開発、こういったものに取り組むことができるようになりますし、地域実情なり高齢者就業ニーズにこたえられるようになっていくのではないかといったようなことで、今後も着実に就業率が向上していくだろうというふうに見込んでおるところでございます。
  15. 須藤浩

    須藤委員 このシルバー人材センター事業改正していくということで、今お話がありましたように、私も地元でこういったセンター事業内容を見ていますと、今挙げられたようなもろもろ仕事が存在するわけですが、実際のところ、市町村によっても多少違いがあると思うのですが、現にある仕事、それからセンターで取り扱う仕事を求めに応じて紹介したりする場合、この辺のずれがあるのではないかなというような気がします。  それはミスマッチというようなことで言われるかと思いますけれども、こういった希望する職種提供される職種との間のギャップといったものについて、今センター間における情報の相互交換によって融通性が出てくるということがありましたが、例えば一都道府県内において隣接した市町村であるとか、そういったところであればかなりそういう効果というものが期待されると思うのですが、遠く離れてしまうと物理的に難しいということになろうかと思います。  そこで、高齢者希望に応じた職種等の雇用機会確保のための対策、こういったものは具体的にどのようなものを想定あるいは考えているか、伺います。
  16. 坂本哲也

    坂本(哲)政府委員 高齢者希望する職種提供される仕事の間にギャップがあるのではないか、ミスマッチがあるのではないかという点でございますけれども、高齢者就業ニーズが非常に多様化して、シルバー人材センターが取り扱う就業機会というのは現にこれに十分に対応できていないのではないか、特に今後ますます増大が予想されますホワイトカラー、こういった方の職種というのが十分提供できないのではないか、そういったものに力を入れていく必要があるだろうというふうに私ども考えております。しかしまた一方では、せっかくその地域仕事はあるのにその仕事をこなせる会員がいない、そのために仕事を引き受けられない、こういったような現実があることも事実でございます。  このため、私ども平成四年度から福祉・家事援助サービスにつきまして、そして平成六年度からは事務系職種につきまして、それぞれのシルバー人材センターでの取り組みを奨励するために、会員に対する研修等を補助対象といたしてまいりました。こういったものを通じまして、多様化する就業ニーズあるいは仕事のニーズに対応していこうということで努力をしてきておるところでございます。  また今後は、シルバー人材センター連合において都道府県内のそういった就業機会の開拓ですとか新たな就業機会企画開発、こういったものを集中的に行うことができるようになるわけでございますので、より一層そういったニーズに対応できるようになっていくのではないかというふうに考えておるところでございます。
  17. 須藤浩

    須藤委員 今後のそういった方向性というものは私も大いにしていただきたいというように思いますが、現実にシルバー人材センター事業を扱っている市町村レベル、そういったところでの仕事内容を見ますと、労働省の方から出されている資料等を見ますと、あるいは先ほどの答弁の中にありましたが、ここに書いてありますように、タイプやあて名書き、公園管理自転車置き場管理入場券販売、植木の手入れ、障子・ふすま張り、清掃、除草、ごみ処理、家事手伝い観光案内業務もろもろ挙げられています。  しかし、現場を見ますと、どちらかというと、センター会員をどんどんふやしてくれというようなことは、県やあるいは全シ協の方を通してやってくるわけですね。ところが現場の方では仕事が余りない状況。つまり、要望も確かにあるのでしょうけれども、先はどのようなミスマッチの存在も起こっていると同時に、仕事そのものがない。ないのに会員をふやせ。ふえてきてもどうしようもないのではないか。さらに、登録をすれば、自主的なものですが多少の経費等がかかってくる。  そういった中で、現実にこういうような状況がかなり広範囲に広がっているのではないかなと想像をいたします。この点については現状認識としてどのようなものを今お持ちであるか、伺いたいと思います。
  18. 坂本哲也

    坂本(哲)政府委員 先生指摘のとおり、会員希望に合った形で仕事確保、開拓していくということは大変大きな課題でございまして、各それぞれのシルバー人材センターにおきましても現在いろいろと大変な苦労を重ねておるところでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、会員就業率は、当初、五十五年当時は三割弱だったかと思いますけれども、その後終始一貫向上してまいりまして、現在七五%弱のところまで来ておるということでございます。今後ともそういった会員のニーズも十分踏まえながら、就業率の向上につきましても、今回の制度改正によりましてシルバー人材センター連合でいろいろな取り組みを行うことによって、仕事確保就業率の向上が図られていくというふうに私ども大いに期待をいたしておるところでございます。
  19. 須藤浩

    須藤委員 この点に関しましては、労働省から見ますと、指導といいますかあるいは環境整備、こういった点での助言ないし援助ができる、またそういったところで期待をされるわけだと思います。  シルバー人材センターそのものが今後公益法人になるとはいいながら、自分たちの力でこの事業拡大、それから会員拡大、そして地域におけるいわゆる高齢社会を迎えてのそういった意味での就業の場、活動の場というものを提供することにつながるかと思いますので、その方向性での実態といったものをよりょくするための力を発揮していただきたい、このように思います。  一方、会社、企業、こちらの方に少し目を向けたいのですが、バブルが崩壊いたしまして、その後不況が大変深刻化しております。今、多少回復基調にあるというようなことが言われておりますけれども、それでも企業の雇用調整の動きというものは引き続き継続している、このような状況にあろうかと私は思います。  こういった中で中高年齢者がまずリストラのターゲットになるといいますか、環境的には大変厳しい。まして現代のようにコンピューターが導入され、ワープロやパソコンが打てないようではもう管理職としては通用しない、このように言われているような時代に入っています。これ自体、私はエージレス社会と逆行する傾向がかなり出ているのではないかな、こういうふうに考えるわけです。会社等におきます早期退職優遇制度あるいは出向制度、こういったものが悪用されはしないかと私は考えますが、こういったものの対応というものは現在どうされているか、お伺いいたします。
  20. 征矢紀臣

    征矢政府委員 御指摘の早期退職優遇制度につきましては、一般的には、任意に退職することを前提に労働者に対しまして退職金の上積み等の優遇措置を講ずる制度でございまして、その趣旨どおりに運用されている限り、六十歳定年制との関係で特に問題はないというふうに考えております。  また、出向制度につきましては、企業がさまざまな事情から労働者を六十歳定年まで企業内において雇用することが困難な場合に、実質的に六十歳までの雇用の場を確保しようとするものでございまして、これにつきましては、労使の合意の上で、出向を雇用確保の手段として活用することもあり得ることと考えております。  しかしながら、この早期退職やあるいは出向の勧奨が悪用され、強制にわたるような方法により行われ、実質的に六十歳前定年を定めたものと同様というふうに解される場合につきましては、そのような事態が生ずることのないように私どもとしては適切な指導に努めてまいりたいと考えております。
  21. 須藤浩

    須藤委員 私もそのとおりであるというような気がいたしますけれども、実態としては、現にリストラをする企業にとっては、何としてでも人件費の削減を図らなければならない。そして、企業内において労働生産力を超える分の人については、やはり何としてでもリストラをしなきゃならない、こういう話になろうかと思います。  そうしますと、監督官庁として目の届く範囲では、いろいろ指導したり注意をしたりすることができるというようになりますが、実態はなかなかそう甘くはないのではないかと私は思います。法律あるいは制度内で認められている、あるいは保護されている、そういう中で対応できる場合もあれば、そうではなく事実上退職をせざるを得ない、あるいは出向等からそのまま糸が切れて飛んでいってしまうような環境をつくられてしまうということも現にいろいろ聞きますし、あるいはあるだろうというように思います。この点につきましては今後また折に触れてお伺いしたいと思います。  さらにもう一点お聞きしますが、今回の法改正によりまして補助金の流れが変わるかと思いますが、この変化といいますか、これについて説明をお願いします。
  22. 坂本哲也

    坂本(哲)政府委員 シルバー人材センターに対する補助制度でございますけれども、現在は、シルバー人材センターに対してその運営費を市町村が補助をする、それの半額を国が市町村に補助をするといった形をとっているわけでございますが、今回のシルバー人材センター連合が指定されました場合には、そのシルバー人材センター連合に対しまして本部事務局、支部の運営に要する経費の二分の一を国から直接補助をする、こういうことで考えておるところでございまして、今年度予算案におきまして、ことしの十月施行ということで半年後ということになりますけれども、十五団体分、三十三億円を盛り込んでおるところでございます。
  23. 須藤浩

    須藤委員 では、時間が終了ということですので、最後に大臣に一点お伺いいたします。  国から直接連合の方に補助金が行く、そしてこれまで市町村からセンターに行っていた補助金が連合の方に直接行く、都道府県から直接流れる、こういった仕組みができるということなんですが、ここで今も大きな問題になっております天下りの問題があろうかと思います。  こういった団体労働省から仮に天下ったり、あるいは県から市町村へ流れるということで県からこの連合の方に流れたり、そういったいわゆる行政官庁の上下関係仕組みというものが、補助金を通して、悪いケースの場合は市町村シルバー人材センターを規定していくといいますか、そういった力が働くのではないか。この中において、もし報告のあったような自主自立といいますか、そういったものに対して水が差されては私は困ると思いますが、よりいい環境をつくるためにも、今の補助金の流れというものが変な形で使われないといいますか、変な形にならないように、あるいは天下りの問題について大臣に考え方をお聞きをいたしまして、終わります。
  24. 永井孝信

    永井国務大臣 先生の御心配になっていらっしゃる補助金の問題でありますが、これは現在のシルバー人材センターに対する補助、あるいは今度は連合組織になっての補助、形態は違うように見えますが、内容的には全く変わりはない、私はそう考えているわけであります。  そこで問題の、そういう補助金体制を通しましての天下りなどの御心配でございますが、このシルバー人材センター連合の本部事務局は、各支部の共通事務、そして各支部がより積極的に事業を展開できるような業務を行うための必要最小限のもの、おおむね三人程度だと認識をしているわけでありますが、そういう人数からいきまして、安易な増員を行うべき性格のものではないというふうに考えているわけであります。  現在、各都道府県におきまして相互の連絡調整を行うために、それぞれの都道府県内すべてのシルバー人材センターを構成員とする協議会が組織をされております。その事務局も現に存在をしているわけであります。シルバー人材センター連合にはこれらの協議会が指定をされまして、その事務局がシルバー人材センター連合の本部事務局となると見込んでおりますので、天下りのための組織となるおそれは全くないと考えているわけであります。  なお、シルバー人材センター連合の本部事務局につきましては、積極的かつ効率的に機能するためには、職員として幅広い人材を登用することが必要だと考えています。自主的に運営するためには、そのシルバー人材センターに登録されている会員の中から活用することが一つは有効であろう、このように考えているわけであります。これらの点につきまして、全国シルバー人材センター事業協会を通じまして、そういう問題の起きないように適切に指導してまいる所存でございます。
  25. 須藤浩

    須藤委員 この点に関しましては、今後の推移というものをしっかりと見させていただきたいと思います。  これで質問を終わります。
  26. 岡島正之

  27. 桝屋敬悟

    桝屋委員 新進党の桝屋敬悟でございます。同僚議員に続きまして、シルバー人材センター関係でお尋ねを申し上げたいと思います。  今、同僚の須藤議員がお尋ねをしたことは大変私も重要なことだろうというふうに思っております。質問の通告をしておらぬのでありますが、今の須藤議員の最後の問題に関して大臣からお答えもありました。社団法人全国シルバー人材センター協会、全シ協と言われておりますが、ここへ労働省から職員は、天下りは現に行っておられますか、どうでしょうか。最初に事実だけ教えていただきたいと思います。
  28. 坂本哲也

    坂本(哲)政府委員 全国シルバー人材センター協会の会長、それから専務理事労働省のOBが行っております。
  29. 桝屋敬悟

    桝屋委員 ありがとうございます。  私は、今、須藤議員がお尋ねになった内容について、引き続き何点か重ねてお伺い申し上げたいわけです。  最初に、先ほどのシルバー人材センターの補助金の流れでありますが、御説明がありましたように、この国庫補助金については、私が承知しておりますのはAランクからDランクまで、現行で一千八百万から一千三百万程度、国庫補助金として流れておった。それが今回の法の改正で、連合を通して補助金がおりる。国庫補助金も、さらには県費、これは県なり各地方自治体のお考えがあろうと思いますが、県費補助金なり市町村の補助金は、まず連合に入って、連合から単位シルバーセンターへおりていくようになるのだろうと思うのであります。  先ほど須藤議員がお尋ねになったように、連合の力が大変に、補助金というのはお金でありますから、やはり金を握っているところが一番強いわけであります。今までのシルバー人材センターというのは、本当に地域実情に即した、地域の中から高齢者の就労という形で発展をしてこられたそのよき流れが、県でくくるものですから、そこで地域の自発性というものが失われるのではないかと私は大変心配をしております。その辺は先ほどお答えがありましたので、これは国というよりも県なりのお考えだろうと思いますが、ぜひそういう観点で今後とも御指導をお願いしたいと思います。  そこでお尋ねをするわけでありますが、今まで私の山口県では、連合というよりも、シルバー人材センターそのものが既に広域型で運営をされておるという実態がございました。私は、これは大変すばらしい制度だと思うのですが、この補助金は通常の単位センターよりもちょっとかさ上げがあるというふうに伺っております。その辺の状況をお尋ねしたいと思います。
  30. 坂本哲也

    坂本(哲)政府委員 現在、シルバー人材センターに対する補助金は、先ほど先生お話がございましたように、その規模に応じましてAランクからDランクということで上限が決まっておるわけですけれども、広域という形で取り組む場合には、それの限度額を一・五倍にかさ上げするということで行っておるところでございます。
  31. 桝屋敬悟

    桝屋委員 そうしますと、例えばAタイプでありますと一千八百万ぐらいですが、この補助金掛ける一・五倍ということで理解をしてよろしゅうございますか。  広域でお取り組みになる場合は当然そういう実態があるわけでありますが、そうしますと、今後、例えば私の地元の山口県のように、むしろ広域型で、県下の全市町村でできるだけ取り組めるようにいい事業を展開しようということでやってきた経緯がある地域、そういう地域が今回の新制度へ移行する場合、広域でやっておる形はそのままお認めいただけるし、あるいはまた今の一・五倍の補助金も担保されるというふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  32. 坂本哲也

    坂本(哲)政府委員 広域シルバー人材センターに対する補助の今後のあり方でございますけれども、今回のシルバー人材センター連合を創設するということは、構成員であるシルバー人材センターの活動を中心として、事業活動を未設置地域にも拡大していこうということがその大きなねらいの一つにあるわけでございます。  翻りまして、現在の広域シルバー人材センターでございますけれども、これもこれまで複数の市町村において事業を実施してきたということから、シルバー人材センター連合の運営にとっても非常に有益なものであろうというふうにも考えておるわけでございまして、今後ともそういった広域的な取り組み、そういった事業活動は必要であろうというふうに私ども認識をいたしております。  したがいまして、制度改正後におきましても、各単位シルバーごとの補助は行われなくなる、連合の方にいくことになるわけですけれども、広域シルバー人材センターにつきましてはこれまでの財政支援が維持されるように、シルバー人材センター連合に対する国庫補助額の算定に当たりましては、そのあたりを踏まえて十分に措置をしてまいりたいと考えております。
  33. 桝屋敬悟

    桝屋委員 十分ということは、そういう地域がその形でやっていきたいという場合は大丈夫だということですか。そのように理解をしてよろしいですね。わかりました。  それでもう一点、補助金絡みで申し上げますと、この制度改正で、今まで市町村は必ず、市町村の責任でありますからやっていると思うのですが、県の場合は県単独でいろいろな助成措置をされている。これはそれぞれの地域、県の実情によって違いがあると思うのです。しかし、今回は、連合ということになりますと、あとちょっともう一点お尋ねするのですが、恐らく県域を想定されているだろうと思います。そういう意味では、連合というのでは当然県の負担が伴うのだろう。これは義務負担でございますか、どうですか。
  34. 坂本哲也

    坂本(哲)政府委員 都道府県の補助につきましては、国が補助をするに当たっての義務的な負担という形には考えておりません。ただしかし、都道府県も、この施策の重要性にかんがみましてそれ相応の補助をぜひお願いしたいと考えております。
  35. 桝屋敬悟

    桝屋委員 今のお答えは逆ではないかと思うのです。どっちも同じなのでありますが、国は二分の一を出しますよ、あとは地域でやってください、こういうことでしょうが、しかしながら、連合役割ということになりますと、県が負担をしないというわけにはいかないだろうと思うのですね。もちろん制度的には、将来、県は出しません、あとはそれぞれ単位あるいは連合で全部カバーしますということがあるのかもしれません。  しかし、この制度、今から新制度へ移行する、連合という体制を整備するということでは、やはり県が負担をするのは当然だろう、県の役割だろう。そういう意味では、義務という言葉はよくないかもしれませんが、地方公共団体としての当然の役割だろう、こういうふうに考えられるのですが、いかがでありましょうか。
  36. 坂本哲也

    坂本(哲)政府委員 義務負担という形にはしておりませんけれども、私どもとしては、県の方も、これまで、あるいはこれまで以上にこれに対する補助については当然真剣に取り組んでいただけるものと思っております。
  37. 桝屋敬悟

    桝屋委員 今まさに出ました当然というお話で、引き続き嫌なことをお聞きするわけでありますが、私ども県におりましたから、どうしても県の立場が気になるのであります。予算を今年度、ととしは半年度分ですが、来年度から通年度ベースになりますので、県が新しく新制度へ移行しよう、連合をつくろう、では県としての財政支援をしましょう、財政負担をしましょう、こうなったときの財源の手当て、特に地方交付税あたりの基準額にきちんと積算をされておるのかどうか、手当てをされているのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  38. 坂本哲也

    坂本(哲)政府委員 現在のシルバー人材センターに対します市町村の補助につきましては、平成四年度から地方交付税の算定基礎ということになっておるわけでございます。  今回シルバー人材センター連合を創設するに当たりまして、平成八年度からこれを地方交付税の算定基礎にしてほしいということで、私ども自治省にいろいろと積極的に働きかけを行ったところでございますけれども、現実の問題としてまだ発足していないというようなこともございまして、実績を見ながら今後検討していこうということになったと承知をいたしております。  私どもといたしましても、都道府県につきます地方交付税措置については、シルバー人材センター連合に対する都道府県の補助の実績も踏まえながら、今後も引き続き自治省に対して強く要望してまいりたいと考えております。
  39. 桝屋敬悟

    桝屋委員 今のお答えでは、市町村シルバー人材センターについては地方交付税上措置をしてある、しかし県分については、要望はしておるがいまだ実現を見ていない、しかしながら、市町村の今のシルバー人材センターと同様に連合もやはり大事な役割がある、したがって、しっかり要望、要求をしていきたい、こういうことですね。我々も支援をしたいと思いますので、ぜひお願いを申し上げたいと思います。  それからもう一点、連合役割といいますか、連合の今からの業務のありよう、あり方でありますけれども、補助金でいきまして、どうなんでしょうか、県の連合では大体二千万か三千万の予算かなというふうに思っております。間違っていたら教えていただきたいのでありますが、連合としてどの程度予算規模を持っておる事業内容なのか、お教えをいただきたいと思います。
  40. 坂本哲也

    坂本(哲)政府委員 シルバー人材センター連合に対する補助の内容でございますけれども、私ども現在考えておりますのは、まず本部事務局の管理、またそこでの事業に要する費用、こういったものを補助対象にしていこうということで考えておるわけでして、具体的に申しますと、管理に要する費用といたしましては、事務所と業務処理用の機器の借料、こういったものが対象になるだろう。  また、事業に要する費用といたしましては、一つは、就業機会確保提供するために要する経費、具体的には就業開発推進費ですとか、これまでやっておりました福祉・家事援助等の企画推進費、会員活用費、こういったものが対象になるだろう。また、会員就業の安全を確保するための経費としての安全推進費ですとか、会員能力開発を行うための経費としての技能訓練費、こういったものを対象にしようということで考えているわけでございます。  その予算の規模でございますけれども、都道府県によっていろいろな、また現実問題たくさんあるわけでございます。そういうことで、事務局の規模ですとか活動実績に応じて定めていくことになると思いますけれども、現在のところ四千万円程度を上限にしたいということで考えておるところでございます。
  41. 桝屋敬悟

    桝屋委員 わかりました。  県連合事業内容はお教えいただいたわけでありますが、イメージとしてどうなんでしょうか。四千万という事業規模なんでありましょうが、大体今のような事業を想定すると、恐らく労働省さんのことですから、各県に連合をつくる場合は、まあ初年度は十五ですか予定をされており、既に当初予算にも入っておるようでありますが、今新年度で一番大事なときですから、その十五にどういう指導をされているか。恐らく相当小まめに御指導されているのだろうと思うのですが、その四千万の事業費で連合は大体何人ぐらいの事務所になるんですか。どのぐらいの専門職員がいるとか、そのイメージをちょっとお教えいただきたい。
  42. 坂本哲也

    坂本(哲)政府委員 この改正法案を成立させていただけますと、十月一日施行に向けて私ども早急にこの準備に取り組んでまいりたいと思っておりますけれども、予算上は十五カ所分ということで計上いたしておりまして、現在、各都道府県の取り組みの状況等を十分勘案しながら、それぞれ意向打診を行っておるところでございます。そして、都道府県における予算措置等も、それぞれの状況に応じて取り組んでいただいておるところでございます。  それで、具体的にイメージといたしましてどういった感じのものになるのかということですけれども、大都市とそうでないところとの違いというのは若干あると思いますけれども、一般的に私どもイメージしておりますのは、事務局職員は三人程度、そのほかに高齢者である会員をそういった事務局職員として活用をしていくよう、そういった形での取り組みを期待いたしておるところでございます。
  43. 桝屋敬悟

    桝屋委員 ありがとうございます。  四千万円の事業規模と三人ぐらいの事務職員で、まさに全市町村をカバーできるようなシルバー人材センター事業をこれから拡大していきたい、こういうことでありましょう。  一つぜひお願いをしておきたいのは、先ほどから何でこんなことを聞いているかといいますと、このシルバー人材センターで一番大事なのは、現場の単位シルバー人材センターといいますか、ここが一番大事なわけでありまして、今までもそこが頑張ってやってきているわけでありますので、連合ができて、先ほどの同僚議員の質問ではありませんが、連合という頭でっかちの組織のために、それこそ地域実情に即した柔軟な事業ができなくなるということを大変危惧をするわけであります。  そんなことはないとおっしゃるかもしれませんが、例えば最初にお話がありました社団法人全国シルバー人材センター協会、ここもトップは労働省さんからおいでになっている。県だってそうなりますよ。県の連合ができた、社団法人になりましょう。恐らくトップは県のOBさんあたりが来て、そして頭でっかちの、本当に地域の創意工夫が展開できない、そんなことになると大変心配だと私は思うのであります。そこまでのきめ細かな御指導をぜひお願いしたいのであります。  天下ってはいけないということではなくて、やはりこういう業界は、お役所が考えるよりも、まさに地域の産業界、本当にその地域の地場産業あたりと密接に連携をしながら知恵を出さなきゃいかぬものでありますから、そういう意味ではお役人よりも、お役所の経験も大事かもしれませんが、まさに地場産業の経験者あたりをこういうところへ持ってくるような配慮も必要なのではないかというふうに私は思っているわけであります。ぜひ大臣、地域実情に即した事業展開をするために、きめ細かな御指導労働省にお願いを申し上げたいと思いますが、お考えをお聞きしたいと思います。
  44. 永井孝信

    永井国務大臣 今先生の御指摘のことは、私も十分理解ができます。  ただ、地域におけるシルバー人材センターの活動は、そこを基盤にして連合組織をつくっていくわけでありますから、その主体はやはり地域センターにあると思っております。したがって、先生の御指摘のように頭でっかちになっていかないように、地域シルバー人材センターの活動がより発展することがあっても阻害されることのないようなことは十分に配慮して、御指摘のような御心配のないようにやってまいりたい、こう思っております。
  45. 桝屋敬悟

    桝屋委員 ぜひ大臣、お願いを申し上げたいと思います。私の老婆心にならなければいいのですが、往々にして、特に地方に行けば行くほど官の指導というのは非常に強いわけでありますから、民間の創意工夫というものを大事にしていただきたい、私はこのように思うわけであります。  そこで、今度は大きい話になるのでありますが、人材センター、これは今予算が昨年度ベースで百七億。これ以外に、シルバー人材センター事業を展開するために、市町村あたりがシルバー人材センターにいろいろな仕事を委託しようという場合に国から助成があるわけでありまして、委託援助事業というものがあるということを聞きまして、私は大変驚きました。至れり尽くせりだなという感もしたわけでありますが、これが四十五億、大体こういうベースで今事業が展開をされているわけであります。  これからの中央全体の予算の姿として、このシルバー人材センター、想像するに、恐らく大蔵あたりからも零細補助金の整理というようなことも指導があったのかもしれませんけれども、委託援助事業というものを徐々に整理をしながら、今の連合拡充して人材センターの方へ予算の姿は移行していくのかな、私はこう思ったりしているのでありますが、今後の動向、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  46. 坂本哲也

    坂本(哲)政府委員 シルバー人材センター連合ができた後のこの補助のあり方、基本的な方向でございますけれども、八年度予算におきましても、実はその委託援助事業は、四十五億から三十億にということで圧縮をいたしているわけでございます。  そのシルバー人材センターの委託援助事業につきましては、その事業趣旨、まずその立ち上がりのときにある程度仕事が安定的に確保できるまでの間の支援措置という趣旨に即しながら、設立後一定期間を経過するまでの間だけを補助対象にしようということで、十年を経過したものは補助対象外にしていこうということで取り組んできておるところでございます。  それからまた、今回シルバー人材センター連合ということで連合が指定されますと、設立の翌年度からは、その構成員となるシルバー人材センターにつきましても委託援助事業の対象外ということで、それは連合の方で新たな仕事企画開発意欲的に取り組んでいただけるということで、仕事確保できるだろうということも踏まえましてそういった形で考えておるわけでございまして、それの委託援助事業を減らしていくかわりにシルバー人材センター連合の運営に係る補助、そういったものを充実をさせていきたい、そういったことで今後取り組んでまいりたい、効率的な補助に努めてまいりたいと考えております。
  47. 桝屋敬悟

    桝屋委員 ありがとうございました。ただ、一気にばさっと予算が引かれて、逆にこれがしりすぼみになってもいけませんから、ソフトランディングをしながらということだろうと思うのですが、きめ細かな配慮をお願いしたいと思います。  さてそこで、新制度への移行でありますが、今からシルバー人材センター広域連合という体制を目指されるわけでありますが、初年度十五、これはどうですか、今後三年間ぐらいで全国展開をする、こういう目標でございますか。ちょっと目標をお教えいただきたいと思います。
  48. 征矢紀臣

    征矢政府委員 お話のとおりでございまして、私どもとしましては、今後の超高齢社会到来を目前にしまして、このシルバー人材センター事業について充実強化をしたいということで、今回シルバー人材センター連合という形での法律改正をお願いしているわけでございます。  したがいまして、これは基本的には、地域関係者の取り組みあるいは都道府県知事の御判断により設立されるものということでございますが、私どもといたしましては、できれば三年ぐらいで、平成十年度までには全都道府県において設立されるように積極的に呼びかけてまいりたいというふうに考えております。
  49. 桝屋敬悟

    桝屋委員 その場合でありますが、恐らく今回のこの連合構想は、全シ協さんあたりでもそれぞれ各県の意見も取りまとめをして、大体この方向でいこうと。それは言葉をかえますと、県単位の連合だということでおおむねの了解が全国的にとれているのかなというふうに理解はしているわけでありますが、しかし、全国いろいろな地域があるわけであります。  例えば、県の北部と南部ではえらい経済状況も違う、地場産業の状況も違う、高齢者雇用状況も違うということで、どうしても我が県は連合二つでいきたい、一つでは嫌だ、こういう地域が出てきた場合、どこまでも厳しい行政指導のもとに県一本にされるのか、いやいや、そういう場合はもちろん地域とよく相談をして柔軟に対応しますということなのか、その辺はいかがでありましょうか。
  50. 征矢紀臣

    征矢政府委員 この組織につきましては、ただいま申し上げましたように基本的に関係者自主的な組織、こういうことでございまして、したがって、法制的にも、そういう観点から、シルバー人材センター連合という形で、都道府県内で指定できる数についても制限はいたしておりません。シルバー人材センター事業関係者自主性を発揮できるような枠組みというふうにいたしているところでございます。  ただし、現実問題といたしまして、このシルバー人材センター事業を効率的に運営するためには、都道府県内すべてのシルバー人材センターがこのシルバー人材センター連合の構成員になることが望ましいわけでございまして、そういう観点から、また実際にも既に各都道府県単位で連絡協議会が組織されているところでございまして、この組織においてシルバー人材センター連合設立に向けての話し合いが行われるものというふうに考えております。  いずれにいたしましても、各都道府県におきまして、このシルバー人材センター連合設立に向けて円満な話し合いが行われることを私どもとしては期待しているところでございます。
  51. 桝屋敬悟

    桝屋委員 わかりました。制度としては必ずしも県一本でなければならぬということはないというお話でありますが、地元の、余り山口県のことを言うと、後で労働省から山口県が怒られるかもしれませんから余り言えないのでありますが、ほかの県の状況も聞いてみましたが、連合に向かって進んでいるところは、当然ながらこれは県一本だよ、それ以外は考えられませんというようなお話もどうも現場で出ているようであります。それは確かに今まで組織的に全シ協の中で意見集約をしてきたということがあるのでありましょうが、もし地域実情でお声が出れば、どうかそういう柔軟な対応もお願いを申し上げたいと思います。  それで具体的な話に入りたいと思うのですが、今回の法改正のために全シ協さんでいろいろお考えをおまとめになった資料を見させていただきました。その中で、特に仕事の拡大につきまして、先ほど御説明もありましたが、福祉・家事援助サービス事業への取り組みが必要というように全シ協さんの報告書でもあります。  これについてはどうでございましょうか。厚生行政とも密接にかかわる部分でありまして、どうしても私は発言をしなければならぬわけでありますが、こんな方向で進まれるのかどうか。確かに地域のニーズとしてはこれから大きくなるだろうと思うのでありますが、もしそうでありますれば、福祉サイドとの連携あるいは連合を中心としたきめ細かな地域上の戦略が必要だろうというふうに思っておりますが、この点はいかがでありましょうか。
  52. 永井孝信

    永井国務大臣 ただいまの先生の御指摘は非常に重要なことだと認識をいたしております。  高齢化の進展によりまして、この家事・福祉関係仕事のニーズはこれからますます増大していくものというふうに推定がされるわけであります。元気なお年寄りが介護を要するお年寄りの家事などのお手伝いを行うという点では、シルバー人材センター役割というものは非常にうってつけでありますし、極めて重要であります。  労働省といたしましては、平成四年度から、福祉・家事援助サービス推進事業として、研修を行うコーディネーターの配置などについても補助を行っているところであります。  今後、シルバー人材センター連合によりまして、より一層きめ細かな研修や仕事の開発、とりわけこのシルバー人材センターがホームヘルパー等を補完するという、これは厚生省とも密接な関係を持っていかなくてはいけませんが、そういう市町村福祉施策との十分な連携の確保に努めてまいりたいと思っております。その立場から、労働省といたしましても指導援助に全力を尽くしていきたい、このように考えているところであります。
  53. 桝屋敬悟

    桝屋委員 大臣、ぜひ今のようなお答えでお願いを申し上げたいと思います。  これはこれから、今はまだそうでもないのですが、今後二十一世紀初頭に向かって大変需要がふえてくるだろうというふうに思うのであります。 しかし、厚生行政と本当に密接な連携がございます。やっていきます、こういつもお答えはあるのですが、厚生省に聞きますと、人材センターが何かやっているらしいけれどもよく知らぬ、知りたくもないという声も現場ではあるのです。現場では全く双方が同じような仕事をしていながら、意識がないということもあります。  二点ほどお願いしておきたいのです。もうこれは要望だけでありますが、そういう場合は、現在シルバー人材センターの事故対策ということで団体傷害保険をやられていますが、もし家事援助をするのであれば、これは損害保険などもきめ細かな配慮として必要でございますから、ぜひ御検討いただきたい。  それからもう一点、厚生省との絡みでいいますと、厚生省がシルバー人材センターを余りうれしく思っていないのは、背景として、実はもっと前に高齢者能力開発情報センターなるものが各市町村社会福祉協議会にありまして、お年寄りの職業紹介やあるいは生活全般にかかわる情報提供を営々とやってきた経緯があります。ところが、その後シルバー人材センターが出てきて、しかも人材センターの場合は、そこに事業を委託したら補助金まで出る、こういう至れり尽くせりの事業でありますから、一気にそれがだっと来まして、厚生省の事業はしりすぼみであります。現在全国で九十カ所で、やがて消えるでありましょう。  そんなこともありますので、現在ある九十カ所は今からエンディングを迎えますから、どうかよくきめ細かな連携をとっていただきたい。現場ではお悩みになっている人もいらっしゃいますし、また、それぞれのサービスで現在生きがいを持って生活しておられる方もいらっしゃるわけでありますから、小さい話になりますけれども、どうかそうした御配慮もお願いを申し上げたいと思います。  以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
  54. 岡島正之

  55. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 二十一世紀の超高齢社会を間近に控えまして、高齢者が安心して暮らせ、また、その知識や技術や技能経験地域社会へ役立てるということ、社会参加が可能である、こういうシステムが必要であろうかと思います。シルバー人材センターは、高齢者就業機会確保して、経済社会に貢献することで地域の独自性を生かせる、そして福祉の増進が期待できるという点で大変評価をしております。  今回の改正案は、会員事業の拡大を目的にして、新たにシルバー人材センター連合都道府県単位に四十七創設するということですが、地方分権の時代に逆行するのではないかとか、あるいは組織の増加が行政改革の時代に天下りをふやしてしまうのではないかなど、これまでの質問にもありましたけれども、幾つかの危惧がございます。  こういった点を踏まえまして、超高齢社会に向かいまして、福祉の制度もサービスもできるだけ多様で、そして個々人の選択の余地があって、国民の税金は市民の皆さんのために有効に使われなければならない、こういう観点から質問をさせていただきたいと思います。  シルバー人材センター連合シルバー人材センターの上部組織のような形でできるということですから、補助金が連合から配分される、あるいは調整ということで指揮命令系統ができるのではないか、そのことで地域の独自性が薄れたり会員による自主的な運営に支障を来すのではないかという心配があるわけですが、この点はどう保障されているのか、まずお伺いしたいと思います。
  56. 坂本哲也

    坂本(哲)政府委員 今回のシルバー人材センター連合でございますけれども、これはこれまで設けられております各シルバー人材センターがその事業をより積極的に展開していこうということを目的として自主的に設立をされる、そしてその運営につきましても、構成員でございますシルバー人材センター自主的に行うということにいたしておるところでございます。  シルバー人材センター連合が設立されましても、高齢者に対して就業機会提供する、そういった業務は、この連合の支部となります現在のシルバー人材センターで行われるということでございまして、シルバー人材センターとしての自主的な活動というのはこれまでと変わらない、阻害されるものではないというふうに私ども理解をいたしております。  むしろ、今回、連合を設立することによりまして、本部事務局では、各支部の共通的な事務ですとか、あるいは各支部が業務をより積極的に展開することができるような新しい事業企画開発ですとか、またシルバー人材センター事業の普及啓発ですとか、こういったものを集中的に行うということになるわけでございます。そういったことによりまして各支部は自主的かつ積極的な事業活動が展開できるようになるのではないか、そういった環境整備も今回私どもとしては考えたところでございます。
  57. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 ありがとうございます。  今、政府も自治体も、新ゴールドプランに基づきましてさまざまな高齢化対策が行われております。厚生省の場合ですと、今もありました高齢者能力開発情報センターの就労支援事業、それから生きがい対策、介護や家事援助サービスの人材確保事業、こういったものが行われておりますし、文部省では生涯学習の一環として指導者養成事業など、関連した事業も行われているようです。  そこで、まず考えなければならないのは、サービスの受け手の高齢者にとってわかりやすく利用しやすい機関であるということ、また、各種の事業についてさまざまな選択が可能であるということ、ここをしっかり踏まえなければならないと思うわけですが、縦割り行政の弊害が本当になくなるのかどうなのか、大変心配をいたしております。ぜひとも各省庁との協力の必要性があると思います。この点よろしくお願いしたいと思います。  また、自治体の福祉政策がまず中心にあるのだ、ここが基本にならなければならないと思いまして、きめ細かな連携をとっていただけるのかどうなのか、労働省の方から積極的に働きかけてくださるかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  58. 征矢紀臣

    征矢政府委員 先生指摘のように、シルバー人材センターにおきます仕事は、市町村あるいは都道府県等、地方自治体と密接な関係のある仕事がたくさんあるわけでございます。特に家事・福祉関係仕事、これは今後高齢化社会の中でこのニーズが一層増大するものと予想されておりまして、シルバー人材センターにおきましても、ただいま申し上げましたように、福祉・家事援助サービス推進事業というような形で、これに対する労働省の支援も行っているところでございます。  今後、法律が成立をさせていただきました場合には、シルバー人材センター連合がこれらの仕事を積極的に確保提供する努力をすることが必要でございまして、ホームヘルパーを補完する等、市町村福祉施策との十分な連携を確保すること、これが非常に重要になってくるかと思います。  そういう観点から、労働省といたしましても、厚生省その他関係省庁とも十分連携を図りながら、このシルバー人材センター連合について指導を進めてまいりたいというふうに考えております。
  59. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 例えば、文部省で行っている指導者養成事業で立派に指導者となった方もシルバー人材センターでいい働きができるであろう、また、能力開発情報センター仕事をいただいた方々の中でもシルバー人材センターの方でというふうに、いろいろな交流が行われるだろうと思いますから、とにかく情報と連携ということでよろしくお願いしたいというふうに思います。  次に、行財政改革に伴いまして公益法人の見直しが政府課題でありまして、これまでにも質問が出ておりました天下りについても市民の批判が増しているところです。  このような折ですので、新たな組織機構の拡大は極めて慎重にならざるを得ないと思いますが、現在の全国シルバー人材センター協会では、労働省のOBが七人、およそ百万近い月収であるというふうに聞いておりまして、私は庶民感覚では考えられない大変な月収だというふうに思います。退職金についても、これもどうかなという心配があるわけなのですが、こういった点はこれからの検討課題にしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  そして、今回新たにセンター連合がつくられるということで、私どもでざっと試算したところでは、事務職員で人件費は三十億前後になるのでしょうか、予算の二割近くが使われるのではないかというふうに思うのです。連合の事務局は既設の都道府県協議会の事務局が引き継ぐということが考えられまして、既にこういった職員が都道府県OBとして採用されている実態があるようです。  九五年六月に出されました事業発展拡充のための検討委員会報告書には「安易な事務局職員の増員とならないように」とありますが、同時に、肩書による採用あるいは都道府県OBの安易な採用は厳に慎むべきであろうというふうに思っております。本当に民間活力を生かして、その趣旨の徹底に努めなければならないというふうに思いますが、行政改革を積極的に推進される永井大臣にお伺いしたいと思います。
  60. 永井孝信

    永井国務大臣 今先生指摘の天下りということも含めての人材配置の関係でありますが、今回の改正によりまして、いわゆるOBの天下りというものが増加するということはないと実は考えているわけであります。  とりわけシルバー人材センター連合の本部事務局は、各支部の共通事務あるいは各支部がより積極的に事業を展開できるような業務を行うための必要最小限のものとして私どもは考えておりまして、恐らくそれは三人程度ではないかな、こう思っております。したがって、先生指摘のように、安易な増員を行うべき性格のものではない、こう考えておりますので、そういう立場でこれからも対応してまいりたい、こう思っております。  あるいは、シルバー人材センターに登録される会員の中には、すばらしい管理能力を持った方々もいらっしゃるわけであります。いろいろな知識経験を持っていらっしゃる方が多様な状態で会員になられているわけでありますから、自主的にこのセンターあるいは連合を運営するためには、その会員の中からすばらしい能力を持っている人あるいは管理能力を持っている人、そういう人たちを活用することが極めて有効だと私は考えています。  したがって、今度の改正によりまして、いやしくも天下り先がさらに広がったとか、天下りの人がふえたとか、あるいは常軌を逸するような高給で事務局の管理者が優遇されるとかいうことのないように、毅然たる態度で臨んでまいる決意であります。
  61. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 よろしくお願いいたします。  さて、現在、女性会員は全体のおよそ三割と言われております。私の地元の老人ホームを経営していらっしゃる方、女性の方なのですけれども、その方の御経験からいいますと、お年寄りがより御高齢の方を支えるということがいかに大事か、そして、最後まで自分の力でいろいろなことをすることがいかに大事かということを御経験からおっしゃっているわけなのです。  その方が年齢の区分けをしておりまして、六十五歳から七十五歳をヤングオールド、七十五歳から八十五歳をオールドオールド、そして八十五歳以上をスーパーオールドというふうに言いまして、このスーパーオールドをヤングオールドが支えるということが大事ですし、その場合、女性が大変働き手になっているのですよというようなことをおっしゃっていまして、それはそのお話を聞くまでもなく、そのような現状にあろうかというふうに思います。  いろいろなすき間を埋めるという意味でも、家事援助などの職種は圧倒的に女性が担っている現状であります。しかし、センターへの参加が少ない原因は一体何だろうか。私たちは日ごろ女性たちでよく話し合っておりますけれども、意思決定機関への女性の参加が低いことも原因ではないかというふうに思っておりまして、各地域センター理事の中に女性はどのぐらいいるのか、その御報告をいただきまして、また、連合の経営や各種の事業の実施には女性の感性が生かされることが必要です。そのために理事などの割合を目標を持ってふやしていく必要があると思いますが、その対策について、これもフェミニストを自認される永井大臣に、ぜひお伺いしたいと思います。
  62. 永井孝信

    永井国務大臣 まず現状でありますが、七百団体あるシルバー人材センターの女性の役員数でありますが、調査をしましたところ、全理事数が一万百九人となっております。そのうち女性の理事は千百九十六人でありまして、その中にはシルバー人材センター理事長をされておる方が三人いらっしゃいます。女性で理事長をされている方が三人いらっしゃいます。  この数が多いか少ないか、議論のあるところだと思いますが、率でいきますと、シルバー人材センターの女性会員数は全体の三四%であります。三四%いらっしゃるのでありますが、女性の理事の数は今申し上げましたような数字でございまして、率でいいますと一二%となっております。三四%の会員の中で結果的に全体の一二%しか理事に就任していない。比較でいきますと極めて数が少ないと実は認識をしているわけであります。女性の役割というものは極めて大きいわけでありますから、そういう面では会員方々ももっとふえてほしいし、理事の数もふえてほしい、こう思います。  しかし、現状では、女性の地位向上が叫ばれて非常に長い年月がたっておりますが、このシルバー人材センター会員というのはかなり高齢者方々でありますから、そういう面では、女性の地位向上が実践されてきたという面からいきますと、その対象となる数がまだまだ少ないのかな、こう思っています。  ちなみに、行政官庁でいいましても、労働省は職員に占める女性の割合は断トツであります。他の省庁に比べて断トツであります。最近は随分と各省庁とも女性の登用がふえてまいりました。しかし、これは手前みそでありますが、労働省からは最高裁判所の判事も出ていらっしゃいますし、大臣になられた方もいらっしゃいますし、あるいは大使になられた方もいらっしゃいます。そういう面では、労働省は率先をして女性の登用ということを、女性の地位向上を進めてきたところだと思っています。  そういうことで、このシルバー人材センターのこれからの発展のためにも、労働省が率先をして実践できるような場所として私どもは重視をしてまいりたい、このように考えているわけであります。
  63. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 超高齢社会の担い手は圧倒的に女性であるということを考えますと、私は半分を目指すことが大事ではないかというふうに思っております。また、シルバー人材センター社会に貢献するという性格を持っているわけですから、男女共同参画社会を実現するという意味でも、ぜひ大きな役割を果たしていただきたいと思います。積極的かつ精力的にふやす努力を心からお願いし、要望して、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  64. 岡島正之

    岡島委員長 寺前巖君。
  65. 寺前巖

    寺前委員 大臣に三つの点をお聞きしたいと思います。  第一番目は、今日の高齢者問題というのは、生きがい対策では済まぬ段階に来ているのじゃないだろうか。せっかくの貯金が低金利になって、楽しみにしておったその利子によるところの何らかの生活上の問題、旅行もしてみたいという問題、これは解決できなくなりました。また、年金にしたって別に多いわけではない、仕事もないという問題に直面しています。  それでは、そういうときに政府機関である職安へ行って果たして仕事があるのだろうか。この間、和歌山の職安の関係者に話を聞きました。何と三月段階で六十歳から六十四歳の方八百九十九人が仕事を求めたけれども、仕事の世話になったのはたったの七人だったというのですから、これは厳しい。六十歳以後の生活の段階です。法律を見ると、法律には高齢者雇用安定法というのがあります。六十五歳以上は相手にしませんよということになる。これはますます厳しい。制度的にも面倒を見てもらえない、こうなるのだから。  さて、そういう事態の中で、今年度の新しい施策としてこれをやりますよという、高齢者仕事に対する新しい対策を何かお考えなのかな。必ずこの事態は打ち破れる方向を持っているよという案があるならば、私は聞かしてほしい、これが一つです。  第二番目に、それではシルバーの分野でお働きなさい、生きがい対策だ、こう言ったら、そこに待っているのは、先ほどのお話にもあったように、特に女性の分野なんかには多い話になってくるのは、介護の話はどうでしょうかという問題に直面します。そうすると、介護の分野仕事に入っていくということになってくると、介護専門の仕事をしている分野との競合という問題になってくるのじゃないだろうか。  介護を専業とする分野では、そこには働く者としての条件を確立するためのいろいろな施策が行われるでしょう。ところが、シルバーだと言えば、それは自分で考えなさいということになって、結局、働く者としてのいろいろな関係の権利を奪ってしまうということになって、激しい競合になってくるのじゃないだろうか。そこの対応策をどういうふうにお考えになっているのか。  三つ目に、この間、広島の人にお会いしたらこんな話が出ました。広島市の広島城現場、広島平和大通りはトイレなし、作業道具入れなし、更衣所なし。年をとっているけれども婦人が着がえをする場所がない。外回りの仕事をシルバーでやってくると、何も官側が与えた仕事ではないから自分でそれを考えなさいということになってくると、これは社会環境上考えた場合にひどいことになるな、それこそ無権利状態の姿に置かれてしまうじゃないか。こういうことについて、シルバーの仕事をやる場合には何らかの検討をしなければいけないのじゃないだろうかということを私は感じました。これについてどういう方向を打ち出そうとしておられるのか、お聞きをしたい。  以上です。
  66. 永井孝信

    永井国務大臣 まず初めに、高齢化の進展に対応して六十歳以上、また法律上からいきますと、六十五歳は何の対応する法律もないじゃないかということも含めまして御指摘がございました。  我が国におきましては、平均寿命が著しく伸びていること、そして出生率が低下していること、こういうことで超高齢化社会到来しようとしていることはもう先生の御指摘のとおりであります。したがって、労働力人口の四人に一人が高齢者となるというこの現実を私どもは直視をしなくてはいけないと思いますが、それだけに六十歳を超えた人、いわゆる高齢者方々がそれまでの人生において培ってきました経験知識、こういうものをできるだけ生かし切るような、あるいは生かしていただいて社会に還元していただく、こういうことの仕組みをつくり上げることが極めて重要だと認識をしているわけであります。  今回のシルバー人材センターを組織がえをしようということにつきましても、そういう視点から行っているものでありまして、しかも高齢者方々は、自分が仕事をして社会の役に立ちたい、こう思いましても、その仕事に役立ちたいという中にはいろいろなニーズを持っていらっしゃいます。そういうものにも積極的にこたえていくような対応が私は必要だと思っているわけであります。  したがって、まずは六十歳定年基盤とした六十五歳までの継続雇用、これは今回のシルバー人材センターとは違いまして、本来これは私どもが求めているもともとの高齢者対策の基本でありますから、こういうものをまず大切にしていくということを重視をしていきたいと思うわけであります。  したがって、具体的には、六十五歳までの継続雇用推進につきましては、企業に対しまして、希望者全員を対象とする継続雇用制度を導入するように、いろいろな支援措置を講じながら啓発や指導も行っているところであります。  これが主でありまして、それと別に、高齢者方々生きがいという言葉を使われておりますが、私ども、その生きがいを大切にすることと、単に生きがいだけではなくて、社会にそういう知識経験を生かしていただこうという積極的な立場から今回の法律改正もお願いを申し上げているわけであります。したがって、主と従という形になるかもしれませんけれども、そういう立場でこれからも積極的な施策の展開を図ってまいりたい、このように考えているわけであります。  また、このシルバー人材センターで外回りのお仕事が多い、こういう御指摘がございました。その場合の例えばトイレであるとか、いろいろなそういう環境整備という問題をもっと真剣に見詰めるべきではないかという御指摘がございました。  これは当然なことであろうかと思いますが、このシルバー人材センター会員就業する仕事につきましては、シルバー人材センターとして仕事を受注する際に、あらかじめ下見をするなどいたしましてその状況を事前に把握をして、高齢者方々就業して差し支えないものに厳選をして対応することにしているわけであります。  また、シルバー人材センター会員が屋外で就業する必要がある仕事につきましても、そういう同じような配慮をした上で、例えば移動トイレ等も含めまして、通常仕事をする上で欠かすことのできない施設などにつきましては、より快適な職場を確保するという視点に立ちまして、これからも対応するように十分な指導をしていきたいと考えているわけであります。
  67. 坂本哲也

    坂本(哲)政府委員 民間企業との競合の問題の御指摘がございました。  シルバー人材センター事業発足以来、私どもとしましても、センターで受ける仕事というのは地域社会に密着した臨時的かつ短期的な仕事確保し、提供するということでございますし、また、最低賃金が適用されるわけではございませんけれども、その水準も踏まえながら、受注代金が仕事に対して著しく低いものとならないように、そういった運営をしてきておるところでございます。  こういった形で、民間企業との競合を生じないようにということで、そういったものに配慮しながら運営をしてきておるところでございますが、今後ともシルバー人材センター事業が適正に運営されますように、全国シルバー人材センター事業協会を通じて指導してまいりたいというふうに思っております。  それから、ただいまの三点目ですか、広島の例についてお話ございましたけれども、広島シルバーの件に関しましては、具体的にその作業の場所となっております広島城、平和公園、このあたりにはすぐ近くに駐車場がございまして、そこに利用可能なトイレがある。当面はこれを利用することにしているというふうに私ども承知をいたしておるところでございます。  いずれにいたしましても、先ほど大臣からお話ございましたように、各シルバー人材センターにおいて快適な職場の確保に努めるように、これも全国シルバー人材センター事業協会を通じまして引き続き指導してまいりたいと考えております。
  68. 寺前巖

    寺前委員 大臣は、正規の雇用問題を主として、そしてシルバー事業へ、こういうふうにおっしゃいました。私は、その主たる事業の問題について例えば和歌山の話をしたら、ああいう事態になっておる。これを改善するためにどうするのかという問題、あるいは六十五歳以上の人の問題、ちょっと積極的に打って出る手だてをこの際お考えいただきたいということをひとつ希望いたします。  それから競合の問題については、これはやはり安上がりでいくというのか。そういうシルバーを利用しようという方向というのは全分野になって出てくるし、従来の労働者だけではなくして、中小企業の倒産に伴う私企業の親方さんたち仕事が奪われていくという問題がいっぱい広がっているんだ。そういう事態であるだけに、競合問題というのは、これからの問題としてどうするのかということは腹にきちんと入れて対応を考えていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。  ありがとうございました。
  69. 岡島正之

    岡島委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  70. 岡島正之

    岡島委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出、高年齢者等雇用安定等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  71. 岡島正之

    岡島委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  72. 岡島正之

    岡島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  73. 岡島正之

    岡島委員長 次に、内閣提出労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案議題とし、趣旨説明を聴取いたします。永井労働大臣。     —————————————  労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律   案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  74. 永井孝信

    永井国務大臣 ただいま議題となりました労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  労災保険給付に関する決定に対して不服がある被災労働者等については、その迅速かつ公平な保護を図るという観点から、裁判所の判断を仰ぐ前に、労災保険審査官への審査請求及び労働保険審査会への再審査請求という二段階の審査請求手続を設けております。  しかしながら、近年、過労死事案に見られるように審査請求事案が複雑となっていることなどから、審査請求事案の処理期間が長期化する傾向にあり、その迅速な処理が求められております。  このような中で、昨年、最高裁判決において、第一段階の労災保険審査官の決定が遅延した場合に、再審査に段階を移して手続を進めることができる旨の規定が置かれていないという問題点が指摘されたところであり、同様な審査請求手続を設けている雇用保険法を含めその審査請求制度の見直しが求められている状況にあります。  このような事情にかんがみ、政府といたしましては、審査の迅速化を図るとの観点から、労災保険審査官または雇用保険審査官の決定が遅延した場合に関する手続を整備するとともに、労働保険審査会の審査体制の充実等を図ることとし、このための法律案を作成し、関係審議会の審議を経て成案を得ましたので、ここに提出した次第であります。  次に、この法律案内容概要を御説明申し上げます。  第一に、労災保険審査官または雇用保険審査官に対して審査請求をしている者は、審査請求をした日から三カ月を経過しても当該審査官による決定がないときは、その決定を経ないで、労働保険審査会に対して再審査請求をすることができることとしております。  第二に、現在、労働保険審査会は委員六人をもって組織しておりますが、新たに三人を増員し、委員九人をもって組織することとするとともに、そのうち三人は非常勤とすることができることとしております。  また、これに伴い、再審査請求事案について意見を述べることができることとされている関係労働者及び関係事業主を代表する者に関しても、現在、労災保険制度については労使各四名とされていますが、これをふやし、労使各六名とすることとしております。  以上のほか、労働保険審査会による労災保険審査官または雇用保険審査官に対する差し戻しの制度を廃止する等、所要の整備を行うこととしております。  なお、施行期日は、一部の内容を除き、本年七月一日としております。  以上がこの法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  75. 岡島正之

    岡島委員長 以上で趣旨説明は終わりました。     —————————————
  76. 岡島正之

    岡島委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。桝屋敬悟君。     〔委員長退席、河上委員長代理着席〕
  77. 桝屋敬悟

    桝屋委員 それでは、労災保険法等の一部を改正する法律案質疑をさせていただきます。  最初に、具体的な質問に入る前に、昨日でございますが、十六日午前八時三十分、私ども中国地方の広島県江田島町でございますが、火薬工場で爆発事故がありました。大変に痛ましい事故でありまして、昨日テレビにも出ておりましたけれども、女性従業員二人を含む三人の方が即死をされておられます。これは労災事故として十分な対応をお願いを申し上げたいわけであります。  これはまだ労働省の方にも具体的な情報が入ってないと思うのでありますが、新聞情報だけを見ますと、この中国化薬という工場は過去にも重大な労災事故を起こしておられます。新聞記事によりますと、新聞で読めるだけの資料ですが、一番最初は昭和三十年、五五年、それから七一年、昭和四十六年でございますが、このときには五十三人の方が重軽傷を負われておられます。それから七五年、昭和五十年ですね、それから八八年、六十三年と、過去新聞で見る限りでも四回、大きな事故を起こしておられます。  もちろん、火薬工場でありますから大変危険な職場であろうとは思うのでありますが、いろいろ新聞を見ますと、この江田島町は島でございまして、なかなかほかの就労がない。危険ではあるけれども女性の方でもこういうところで働くしかない、働きたいということで行かれているのだろうと思うのですが、こうした重大な労災事故の再発防止が本当に必要だろうと思うのですね。  これは今記録を申し上げましたけれども、昭和で言いますと、三十年、それから四十六年、五十年、六十三年と、それこそ十年に一回大きな事故。それで今回平成になってやられている。今後とも十年に一回大きな事故を続けていかれるのでは大変なわけでありまして、これは労災法というよりも労働安全衛生法等の対応かと思いますが、こうした特に重大な労災事故の再発防止にどのようにお取り組みになるのか、原因究明も含めてちょっと労働省の御所見を最初にお伺いしたいと思います。
  78. 松原亘子

    松原政府委員 昨日の中国化薬の江田島工場における爆発事故でございますけれども、私ども今まで聞いておりますところによりますと、火薬を砲弾の信管に充てんする作業、そういう作業をやる部屋で充てん作業中に発生したものでございまして、この爆発により充てん作業をしていた方のりち三名の方がお亡くなりになった、こういう痛ましい事故でございます。  労働省におきましては、事故発生後、直ちに現地の広島労働基準局に局長を本部長といたします緊急対策本部を設置いたしまして、局署職員により災害調査を行っているところでございます。また、本省からも担当の中央産業安全専門官を派遣をいたしました。  現時点ではまだその爆発の原因がはっきりしておりません。したがいまして、鋭意その原因究明を行っていきたいというふうに考えております。その結果に基づきまして、事故発生事業所に対しまして、再発防止を含めまして必要な指導を行いたいというふうに考えているところでございます。  先生指摘のように、過去にもこの工場では災害が起きております。今回の災害と必ずしも同じような形のものとは言えないものもあるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、その都度調査をいたしまして、作業方法の改善とか安全作業標準の作成ですとか安全教育の徹底など、再発防止対策指導してきております。それらにつきましてはその都度きちんと是正はなされてきたわけでございますけれども、今回このような大規模な災害が発生したということは、まことに私どもも残念なことだというふうに思っているわけでございます。関係省庁とも連絡をとりまして、今後さらに指導を徹底して、こういった事故が起こることのないようにやっていきたいというふうに考えているところでございます。  なお、労災補償という問題が生じてまいろうかと思いますけれども、これにつきましては、請求があり次第速やかに対応したいというふうに考えているところでございます。
  79. 桝屋敬悟

    桝屋委員 ありがとうございます。  今から原因究明ということでありましょうが、しっかり原因を究明していただいて、また同種同業のこうした工場もあるだろうと思います、十分な対応をお願い申し上げたいと思います。  それでは今回の労災保険法等の改正に係る問題、私はきょうは二点お尋ねをしたいと思うのです。一つは労災保険法の審査請求等に係る事務手続上の問題、それから、ちょっと今回の改正から外れますが、本年四月一日から法施行されております介護補償給付の取り扱いについて、二点お伺いをしたいと思います。  最初に労災保険法に係る審査請求等の問題であります。  今回は救済措置が法の中に盛り込まれるわけでありますが、どうでございましょうか、現実に労災保険給付に係る審査請求、私も多くの市民相談を実はいただいておるのでありますが、一般的にはどれぐらいその期間がかかっているのか。それからもう一つは、今回の救済規定の創設に伴いまして、審査官段階、第一審の話でありますが、三カ月以内に努力をしようということに恐らくなるのだろうと思うのでありますが、審査請求事務の処理の迅速化のための対応、その辺をお伺いをしたいと思います。     〔河上委員長代理退席、委員長着席〕
  80. 松原亘子

    松原政府委員 お尋ねの労災保険給付に係る審査請求の期間が現実にどれぐらいかかっているかという点でございますけれども、ここ数年の状況をちょっと御紹介させていただきますと、審査官段階でございますが、平成四年度が一年三カ月、平成五年度が一年二カ月、平成六年度が一年一カ月、年々一カ月ずつ短くなってきている。私どももそれなりの努力をしているということではあるのでございますけれども、この三カ年を平均いたしましても一年二カ月と、一年を超える期間がかかっているというのが実態でございます。  これは平均値でございますので、では分布で見てどの程度のところが一番多くなっているのかということもあわせて御紹介させていただきますと、平成六年度の審査官段階での処理件数は九百一件でございましたけれども、そのうち九十日以内に処理ができたものが五十件、九十日を超え百八十日以内に処理をしたものが二百七件、百八十日を超え一年以内に処理をしたものが三百三十一件、一年を超え二年以内に処理をしたものが百七十二件、残念ながら二年を超えるというものも百四十一件ある、こういうような状況でございます。  私どもは昨年、最高裁からあの判決を受けまして、もちろん救済規定を設けるという今回の法改正内容について検討したということはございますが、それだけではなく、審査官段階での審査事務というのをやはりもう少し迅速にしなければいけない。当然、的確性というのは維持しなければいけないわけでございますけれども、それを維持した上で迅速化を図らなければいけないということで、局内で関係者が集まりまして、これまで検討してまいりました。それで、幾つかの点について審査業務の抜本的な見直しをしようということにいたしております。  例えば、審理に当たりましては、原処分庁の意見とそれから請求人の意見が対立をするわけでございますけれども、その争点をきちんと整理をするということが極めて重要なわけでございます。その争点を整理するために、これまでともすれば、これはむしろ中身の問題というよりやり方の問題なんでございますけれども、例えばOA機器なんか十分活用されていなかったといったようなことから、非常に事務が手間取っていたというようなことも実はあったわけでございますので、もう少しOA機器を活用してスムーズにやるといったようなことですとか、審査官ですから原処分庁に意見を求めるわけでございます。その意見書も、はっきりしたモデルに沿って意見を出してほしいということも必ずしも示してこなかったといったような反省もございまして、少し原処分庁が出す意見書のモデルを示すことによって、原処分庁たる監督署長からの意見がスムーズに出るようにといったようなこともやりました。  また、請求人の方からの事情聴取というのも必要になってくるわけでございますが、これは双方の時間の合わせ方というのはなかなか難しいということもあったわけでございます。請求人の都合に合わせて事情聴取の時期を決めていたということから、それがずるずると後になっていたということもあったわけでございますけれども、そういう相手の御都合を待つというだけではなくて、こちらからむしろ御都合のいいときに出向いていくというような形で、事情聴取もスムーズにやりたいといったようなこともこれからやりたいというふうに考えているわけでございます。  また、原処分段階においてももちろん調査を徹底してやるということが重要なことですし、的確な事実認定をまず原処分庁がやるということが極めて重要でございます。そういうことから、医証の収集を初めといたしまして、原処分庁での各種事務処理の効率化等をさらに進めるということが、審査段階になってもその審査業務をスムーズに進めることになるのではないかといったようなことから、今幾つかいろいろ申し上げましたけれども、そういった部内で検討した結果を取りまとめ、地方局に対しまして、こういったことに沿って、原処分庁の決定のスムーズ化というのもそうですけれども、審査官段階での審査の迅速化を図るようにという指示をいたしたところでございます。  なお、研修もまた非常に重要なことでございますので、この充実についてもさらに私ども努力をしたいと思っておりますし、また審査官につきましても、今年度二十七名の増員を図ったところでございます。  そういうことで、仕事のやり方、それからやる体制、双方にわたって審査請求が的確にスムーズに進むようにということで努力をいたしているところでございます。
  81. 桝屋敬悟

    桝屋委員 具体的な御説明をいただいてありがとうございます。  今お話を聞きますと、平成六年度の状況で、九百件のうち五十件ぐらいしか三カ月以内に処理ができてない、こういう状況であります。今までの制度からして、もちろん迅速ということと、それからやはり内容をきちっとしたいということで時間がかかったケースもあろうと思うのですが、三カ月をひとつ目標にして今後体制を整備する、努力をする、こういうことですね。
  82. 松原亘子

    松原政府委員 先ほどるる申し上げました事務処理の迅速化、これも三カ月で結論を出すということを想定いたしまして、そのためにどういうところを効率的にやったらいいかという観点から検討したものでございます。
  83. 桝屋敬悟

    桝屋委員 それで、第一審が一番私は気になっているわけでありますが、審査請求の処理に当たられます労働保険審査官でございます。いろいろ法律を見ますと、これはまさに第一審の審査請求は労働保険審査官に対してやるということになっているわけでありまして、そういう意味では大変独立をして業務をされておられるかと思うのですが、この審査官の業務の実態あるいは身分なり権限ということについてお話をさせていただきたいと思うのであります。  これは、今局長からるる御説明がありましたように、業務の迅速化とともに、私は、やはり公平な、特に被災労働者の立場に立った対応ということが必要であろうというふうに思うわけでありまして、そういう観点から、実際にその労働保険審査官の現場の実態というものを何点かお教えいただきたい、このように思うわけであります。  最初に、労働保険審査官というのは一体どういう人がおやりになっているのか。今回、九十三名を百二十名にされるということであります。もちろん労働省の職員が当たるのだろうと思いますが、どういう方が実際に現場でついておられるのか、その状況をお教えいただきたいと思います。
  84. 松原亘子

    松原政府委員 先生指摘のように、審査官は労働省の職員の中から労働大臣によって任命をされております。労働保険審査官及び労働保険審査会法施行令というのがあるのでございますが、その第一条第一項におきまして、「行政職俸給表(一)による職務の級が四級以上の労働基準監督官又は労働事務官をもつて充てる。」ということになっているわけでございます。  なお、審査官には行政経験が豊富な方が必要だろうというふうに私ども考えておりまして、今、四級以上の監督官または事務官をもってというふうに法令上はなっているわけでございますけれども、実際には七級または八級の者を任命しているところでございます。
  85. 桝屋敬悟

    桝屋委員 ありがとうございます。  今、施行令では四級以上、それを実態としては労働省の中では七級ないし八級の者をもって充てる、これが実態だろうと思いますが、七級、八級というのはどういう方なのですか。現場の労働基準監督署なり労働基準局ではどういう役職の方がどういう形でおつきになっているか、あるいはその平均年齢はどのくらいなのか、お教えいただけますか。
  86. 松原亘子

    松原政府委員 ちょっと手元に具体的な資料がないのでございますけれども、大体のことを申し上げますと、七級、八級の者がすべてという意味ではありません。もう少し若い人もおります。ですから、例えば局の課長補佐クラスの人たちやある課の課長補佐をやっていた人が審査官になるというケースもありますし、また、もっと若くて署の課長をやっていた方がなるというケースもあるなど、これは実態さまざまでございます。  私どもは、年齢とか勤続とか、そういったことから自動的に次は審査官にというような形にやるのではなくて、やはり審査業務というこれは独任官でございます。みずから資料を集め、みずからの判断でみずから決定をする、こういう非常に重要な職務を持っている官でございますので、具体的にだれを充てるかということになりますと、本人の適性、能力を十分判断してやっているということでございます。  年齢的には、これも非常にばらつきがございますけれども、五十前後ぐらいの者が一番多いのではないかというのが私の印象でございます。
  87. 桝屋敬悟

    桝屋委員 今こういうことを申し上げているのは、公平性をぜひ確保しなければいかぬ。さらには迅速な業務ということなんでありますが、実態をお伺いしますと、実は私のところにもいろいろな情報が入っておるのであります。この審査官というのは、今七級、八級ということがありましたが、実際に地元の現場の労働基準監督署なり労働基準局でずっといろいろ転勤をされて、最後のお勤めの一つや二つぐらいのところでおやりになっているのが実態ではないか。したがって年齢もかなり高いのではないか。今局長は、かなりばらつきがある、優秀な方もいらっしゃる、こうおっしゃったけれども、必ずしも実態はそうではないのではないかという気がするのであります。  また、これは後日教えていただきたいのでありますが、であるとするならば、施行令では四級以上ですから四級の方でもいいし、さっきOA化で迅速化を図ると言っておりましたけれども、より今のOA化に的確に向く世代というものもあろうと思います。そういう意味では、何も定年前の方を持ってくるということよりも、本当に大変な業務でありますから、私は場合によっては若返りを図るということも御検討いただきたいな、こう思っているわけでありますが、いかがでありましょうか。
  88. 松原亘子

    松原政府委員 先生指摘のように、かつてはやめる前に審査官になってという方がいらしたという実態も私も具体的に知っております。もちろんその方が能力はないけれども、しようがなくてやめる前にそうしたという意味で申し上げているわけではないのです。ただ、おっしゃるとおり、この業務はかなり激務でありますし、今おっしゃったような点もこもごも考えますと、まさにだれが適任かということを検討して、つまり、四級以上の者であれば審査官に充てることができるわけでございますので、最近といいますか、ここ数年は、今先生指摘になりましたようなとにかく適任者、適材適所を第一に選任するようにということで本省からも地方局を指導いたしているところでございます。
  89. 桝屋敬悟

    桝屋委員 ぜひそういう方向も御検討いただきたいと思います。  それでもう一つは、これは御説明をいただきましたが、労働基準局の中に労働保険審査官という方がいらっしゃる。そして、この審査官という方は、今も言いましたように労働基準監督署あたりをずっと転勤で回られて、ある時期に適切な、的確な人だということで審査官になられる。そして、審査官になって労働基準局のデスクにお勤めになる。場合によっては、ずっと回っている間には、現場の労働基準監督署にいて原処分にかかわり、さらに今度は審査官になって局でお仕事をされる。本当に公正な、公平な被災労働者の立場に立った業務ができておるのか。  さらに申し上げますと、執務環境あたりも、デスクを並べて、実際に局長の決裁なんかを受けているんじゃないかという気がするのです。それはもう厳にないんだろうと思うのですが、独立して本当に業をなし得る執務環境があるのか、あるいは被災労働者の方が御相談におみえになって、特別の相談室やプライベートな部分が確保できる執務環境があるのかどうなのか、そんなところもちょっとお尋ねをしたいと思います。
  90. 松原亘子

    松原政府委員 審査官は、先ほど申し上げましたように、全く行政庁とは離れて、独任官たる行政機関にもなっているわけでございます。この設置の趣旨にかんがみまして、職員としての服務、これについては都道府県労働基準局長管理監督下にはあるわけでございますけれども、職務の執行に関しては、管理者はもとより、だれからも指揮命令や指示、拘束を受けることはない、そういうような状況で決定をなすべきものだというふうにされているわけでございます。  今先生指摘されましたように、かつて監督署にいたときに自分が原処分を担当した案件が審査官段階に上がってきて、その審査官が自分が処分したものをまた見なければいけないというようなときがあるのではないかというふうにお尋ねになりました。それはそういう場合もあろうかと思います。  しかしながら、審査官というのは、今申し上げましたように、全く独立して、だれからも指示を受けることなく判断をし、決定をするものでございます。自己の良心に沿いまして改めて審査官としての立場で事実認定を行い、心証形成を行っていくというものでございますので、その処理に当たって万が一にも公平に欠けるというものはないというふうに考えているわけでございます。  なお、その審査官が最終的に決定をする場合でございますけれども、公正な処理を期するために労働大臣が任命する関係労使代表者二名から成る参与という制度がございますが、この方々の意見を尊重しなければならないということになっているわけでございます。  そういった幾つかの制度的な措置もございますし、審査官が労働省の職員であるからといってその職務の遂行に当たりまして公平に欠ける、客観的な判断ができないといったようなことはないと確信をいたしております。
  91. 桝屋敬悟

    桝屋委員 ぜひ公正な業務ができるように、また配慮をお願い申し上げたいと思います。今回増員されるということでもありますし、改正の時期でございますから、本当に被災労働者の立場に立った労働保険審査官の業務ができるような環境づくりに御尽力をお願いしたいというふうに思います。  もう一点、これは原処分の部分でも関係するのですが、私が市民相談でいただいているケースも、お医者さん、主治医さんに鑑定を依頼したりというようなこともあったり、あるいは医学的な判断が労災の認定に直接影響を与えるというようなことが大変多いわけでありまして、特に医療のスタッフを労働基準監督署なりあるいは労働基準局ではどういうふうに整備をして医療との連携を図っておられるのか、あるいは医療の質の向上ということを心がけておられるのか、その辺の業務の実態をちょっとお教えいただきたいと思います。
  92. 松原亘子

    松原政府委員 おっしゃいますように、労災の請求事案のうち、業務上外の判断に当たりまして医学的な専門知識を必要とする事案というのも数多くあるわけでございます。こういう事案につきましては、従来から中央及び地方に労災医員という方を委嘱して配置をいたしております。医学的な意見が必要だというときには、その労災医員の方々から御意見を伺うということにしているわけでございます。  また、医学に関する専門的な意見を迅速に収集するということも、原処分の迅速化、また審査官段階での審査の迅速化という観点からも非常に重要な点でございます。そういうことから、医師会ですとか労災病院、こういったところとの連携をさらに密にいたしまして、労災の認定に関して一層お医者様たちの協力を得られるようにしたいというふうに考えております。  また、労働基準監督署の職員が労災補償を迅速かつ適正に行うためには、医学に関する知識経験というのも、そんなに専門的なことまでは難しいにせよ、基礎的な知識経験というのを蓄積しておく必要があるわけでございます。そういうことから、医師と職員の双方が定期的に意見交換をしたり、情報交換をしたりというようなことをやっているところでございます。
  93. 桝屋敬悟

    桝屋委員 わかりました。特に今後、今過労死の問題もよく出ますけれども、医療との連携というのは極めて大事だろうと思いますので、よろしくお願いをします。  それで、一点だけ最後にお聞きしてみたいのは、第一審の審査請求が出てくる、まあ年間一千件ぐらいというお話も伺っておりますが。どうなんでしょうか、第一審の決定で、当然ながらこれは行政不服審査法に基づくことでありますから、原処分の決定された処分と請求人との意思が反する、ぶつかるわけでありますが、請求人さんの意思の方が勝ったといいますか、請求人の請求が通ったという事例は年間一千件の中でどのぐらいあるのでしょうか。その数字的なものをちょっと教えていただきたいと思います。
  94. 松原亘子

    松原政府委員 平成四年度から六年度の平均で申し上げさせていただきますと、平成四年度から六年度までに処理をした件数は審査官段階で平均千十件でございました。そのうち原処分庁の処分が取り消されたもの、つまり、監督署の処分が取り消されたものが百四十三件でございます。
  95. 桝屋敬悟

    桝屋委員 一割強ということでございますね。これだけあるので安心はしたわけでありますけれども、より公正な第一審の対応を今後ともお願いしておきたいと思います。  それでは続きまして、あとの具体的な内容については同僚議員に譲るといたしまして、私は、この四月一日から法施行になっております介護補償給付、介護給付等の問題につきまして何点かお尋ねをさせていただきたいと思います。  最初に、今回、介護補償給付を創設して、四月から施行されて、今までになく傷病・障害年金の一級の方を全部対象にしていただくということで、特に脊髄損傷者の方々は今回の法の施行を高く評価もしていますし、喜んでいるわけであります。そういう意味では、数としては、従来福祉事業で行われていた介護手当が五千人ぐらい、これが今回一万三千人程度対象になるということでありますから、大変すばらしい事業の拡大だろうと私は思うのです。  約八千人ぐらいの方が新たに認定をされるわけでありますけれども、どうでございましょうか、事業の周知なり制度の周知、それから四月一日からの施行については十分な体制で進んでいるのかどうか、その辺をまずお伺いしたいと思います。
  96. 松原亘子

    松原政府委員 先生も先刻御承知のこととは存じますけれども、この介護補償給付の要介護状態を認定する場合に、障害・傷病の一級のうち常時介護を要するとされる方は常時介護、二級のうち随時介護を要するとされる方は随時介護ということで、一級のその他の障害を有する方については常時介護と随時介護に分かれるということになっているわけですけれども、これらの方々は、基本的には労働基準局なり基準監督署なりですべて把握をされている方々でございます。  したがいまして、一般的な広報、周知ということもありますけれども、そういうことよりも、こういう介護補償給付がスタートしますというリーフレットをつくりまして、後ほど先生のところにお届けいたしますが、これを個々人にお送りしているわけでございます。そこの中には「介護(補償)給付支給請求書の記載例」というものも入れまして、こういうもので請求してほしいということをこの該当する個々の方々にお送りをし、周知を図るというよりお知らせをしているわけでございます。
  97. 桝屋敬悟

    桝屋委員 ありがとうございます。  確かに十分な御配慮をいただいて、実際に被災労働者の方に情報は届いているというふうに私も伺っているのでありますが、こうした「介護(補償)給付支給請求書の記載例」というものもありまして、きめ細かにしていただいているわけであります。  この介護補償給付、介護給付の支給請求書、この様式が従来の福祉事業と若干変わっておりまして、私も気がつかなかったのでありますが、特に「介護に従事した者」というのは、これは旧福祉事業のときも、家族の方が介護しておられる、例えば妻、この例でいきますと「柏木法子」がその「介護に従事した者」という欄で名前を挙げていただく、これがいつから何日間介護に従事した、こういうふうにあるのです。  これは今までもあったわけでありますが、今回は、この制度に加えて欄外に「介護の事実に関する申立」で、「私は上記のとおり介護に従事したことを申し立てます。」と、あえて申し立て書をつけて、ここに住所と氏名と捺印、印鑑まで押さなければいけない、申し立てをしなければならぬ、こうなっておるわけであります。これはたしか法制度になって新しく入れられた欄ではないかと思うのですが、この点いかがでしょうか。それから、どういう理由でこういうふうにされたのか、お尋ねしたいと思います。
  98. 松原亘子

    松原政府委員 今回、この介護補償給付、介護給付を労災のいわゆる本体給付にしたわけでございますけれども、その場合にどういう形の請求書にするかということは改めて検討いたしたわけでございます。  その際、まず、その額もそうなのでございますけれども、原爆被爆者の方々について同じような給付がなされている。この場合に、この家族なりが請求を行ったときの申し立て書がどうなっているであろうかといったようなことも参考にさせていただいたわけでございます。  その申し立て書、ここに私も写しを持っておりますけれども、かなり細かく、どのような介護をやったかということも具体的に書いてもらうような形になっております。どういうものがいいかというのは、それぞれの給付の性格なりによって決めていくのだろうと思いますけれども、介護という観点について言えば、原爆被爆者の方もそれから労災の被災者の方もそれほど大きな違いはないのではないかということから、当初これを参考にするというような案も内々検討にはあったわけでございますが、ただ、細かく介護の実態を書いてもらうというところまで労災の場合必要ないのではないか。  ただ、この方が確かに介護をやったということについては、責任の所在ということは適当ではないかもしれませんけれども、こういう給付を請求する権利を持つということになるわけでございますので、そこはきちんと、こういう形で自分は介護をしたということの申し立てはやってもらいたい。  判こを押すというふうにおっしゃられましたけれども、手間暇という観点からいえば、それほど大きな御負担をおかけすることにはならないであろうということから、今のような様式にいたしたわけでございます。
  99. 桝屋敬悟

    桝屋委員 お役所が長い説明をされるときは大概何か積極的でないと思うのでありますが、前の制度はどうだったかということでは、どうなんです、印鑑、申し立ての欄はふえたのでしょう。ふえてないのですか。同じでありますか。
  100. 松原亘子

    松原政府委員 肝心な点をお答えせずに申しわけございませんでした。  最後の申し立てのところの住所、氏名、判こというここの部分は、前に比べてふえております。
  101. 桝屋敬悟

    桝屋委員 ですから、私はあえて必要ないだろう、こう思っているのですが、判こを押すのはそんなに実務的に時間はかからない、それはよくわかります。  そういうことを申し上げているのではなくして、前の制度で必要なかったものをなぜ入れられたのかという理論的根拠はなかなかないのではないか。むしろ、あなたは間違いなく介護をやったのですか、やったということを、通常いろいろなことで名前書いて、印鑑押して出すということになれば、何か審査されているな、こういうふうに感じるわけであります。  これが他人介護だったらまだ私はそんなに言わないのでありますが、家族介護の欄でありますから、細則あたりで決められているのかもしれませんが、ぜひ今後改正機会がありましたら、そこをどうかまた御検討もいただきたい。何かお答えありますか。
  102. 播彰

    ○播説明員 限られた時間でございまして恐縮でございますが、申請手続にかかわることでございますので、お答えさせていただきます。  今回、先生案内のとおり、労働福祉事業、いわば附帯事業の給付から法律上の権利としての給付に変わったわけでございまして、支給事由が現実に存在するということを確認できる形をつけさせていただきたいということに主意がございまして、局長から申し上げましたとおり、権利である以上、お受けいただくということは出発点でございますので、御負担になったり、あるいはかりそめにも受けにくくなる、そのような運用は決してないように心してやるつもりでございます。  権利である以上、権利の根拠があることを我々として確かめ得る形を何とぞつけさせていただきたい、ここに主意がございまして、御理解いただきたいと思います。
  103. 桝屋敬悟

    桝屋委員 もちろん、新しく法律に入ったわけですから、そのことも理解できるわけであります。しかしながら、法律に入ったということで今の御説明であれば、むしろ私はお考えいただきたいのは、こういう事務手続も当然ではありますが、支給金額の理論的根拠、法に入ったわけでありますから、今までの介護手当は私も昨年の委員会で、今の十万幾らと五万円ぐらいの、ちょっと正確に数字は出ませんけれども、その給付水準についての理論的根拠はこれから必要じゃないですか、もっと生活の実態に合わせて本当に介護の補償ができるように御検討いただきたい、こう申し上げた経緯もあるわけであります。  やはり法律に入った以上、今度はまさに法律に入ったわけでありますから、その給付水準といいますか、支給水準も法の中できちっと理論的根拠を持ってこれから運営されるべきではないか。当然ながら、これから毎年この額は改定されるのでありましょうから、その改定の理論的根拠も必要でありますし、特に他人介護等の場合について、従前からお願いをしておりますこの給付水準の考え方というものについて今後やはり整理をしていただきたい。いやいや、ちゃんと法の中で整理してある、こういうことであれば、ちょっと御説明をいただきたいと思います。
  104. 播彰

    ○播説明員 簡潔に申し上げます。  介護料の実費相当分の上限額と申しますのは、社会保障の水準の中で最高の原爆被爆者に対する介護手当の上限額と全く同じでございます。その積算の中身も全く同じでございまして、介護に当たられる方の賃金をアルバイト賃金の統一単価ではかりまして、そして先生が御指摘のスライドにつきましては毎年の人勧のアップ率で動かす、こういう考え方でやってございまして、基本は介護に当たられる方の労働力の賃金を評価する、こういう考え方でございます。
  105. 桝屋敬悟

    桝屋委員 まことに理論的な御説明をいただいたわけでありますが、昨年の委員会でもお願いしたかと思うんですが、この労災の介護補償給付というものがある意味では社会保障全般の、まさに介護の部分の先兵といいますか、先鞭をつける存在にあるわけでありまして、そういう意味では、他の社会保障事業の最高水準である原爆に横並びですよという言い方は、私はもうおやめになった方がいいのではないか。それはそれとして、きちっとどういう補償をするのかという、後ほどちょっと申し上げますけれども、そんな御検討も今後ぜひいただきたいというふうに思うわけであります。  それじゃ現場でどういうふうになっているかといいますと、同じく労働省の事業であります在宅介護サービスで、財団法人労災ケアセンターがホームヘルパーの派遣もやっておられます。  その単価等を見ますと、例えば我が山口県でありましたら、在宅介護サービス、いわゆる労働省サイドの財団法人労災ケアセンター事業を実施しておられます労災のホームヘルパーさんあたりが、これはおもしろいのでありまして、昨年の十月から、まさにこの制度が法制化された後、ぜひということでおやりになったんじゃないかと思うんですが、在宅介護サービスのヘルパーさんの地域別の単価といいますか賃金を見ますと、一般的な介護サービスで大体五千四百円ぐらい、これが三時間であります。一日三時間で大体五千四百円ぐらいということであります。  これは地域によって差があるわけでありますが、これで三十日間毎日来てもらう。べったりではありませんで、一日三時間、他人介護が必要だということでおいでいただいた場合は十六万二千円ぐらいかかるわけであります。  また、御丁寧にこの制度は、三分の一は自己負担してください、このようにおっしゃっているわけでありまして、三分の一を自己負担しますと、あとは十万円ぐらい。そうすると、まさに今回の介護補償給付の他人介護の最高額十万幾らと大体リンクするわけでありまして、労働省の業務の中では、逆算しますと一日三時間ぐらいの一つの目安がある意味でもう既に出てきているわけでありまして、労働省全体の中では、積算根拠も実態としては徐々に明確になりつつあるのではないか。しかも三分の一は自己負担、こういうことであります。  そんなことを勘案の上、何を申し上げようとしているかといいますと、まさに被災労働者の生活の実態に即してちゃんと説明できるような給付水準にすべきではないか、その説明をしていただきたいということでありますが、いかがでありましょうか。
  106. 松原亘子

    松原政府委員 この介護補償給付という制度、始まったばかりの制度でございます。そういうことから、先ほど申し上げましたように、他の制度の介護手当の中で最も高い原爆被爆者に対する介護手当の上限額を持ってきているというようなことを御説明申し上げたわけでございますけれども、これが制度として定着していく過程におきまして、今先生が御指摘されました給付の額、それの考え方、他のサービスとの整合性といいますか、そういったことについても私どもは検討していかなければいけないという認識は持っているところでございます。
  107. 桝屋敬悟

    桝屋委員 実は私は厚生委員会にも所属しているわけでありますが、今も隣の委員会室で厚生委員会が行われております。向こうさんでは公的介護保険が今大きな政策課題でありまして、そういう状況ですから、労働省として介護の問題で余り深い論議は、労働省が先走ることはできないということもわかるわけでありますが、何度も言いますように、この介護補償に関しては労災が一番すぐれておる、私はこのように思うわけでありますから、ぜひ厚生行政を引っ張るような形でお取り組みをお願い申し上げたい。それはおまえの仕事ではないか、こう逆に言われるかもしれませんが。  それで、実際に被災労働者の方がどんなふうなお気持ちでいらっしゃるかということで申し上げると、介護という言葉は余りうれしくない、介護というよりも介助と言ってほしい。守られる、与えられるというイメージが非常に強いと。被災労働者自身の自立を前提として援助されるものだということからしますと、介護という言葉からは被災者の自己決定による生活の前進はないのではないか。常に与えられる、そこで我慢をするというような意識になるわけでありまして、介護の用語を介助にぜひ変えてほしい、こういう声もかなりあります。一部の障害者の方からかもしれませんけれども、私は拝聴に値する内容もあると思います。  先ほど申し上げたように、介護補償給付、被災労働者の生活の実態をサポートする制度として法律に入って始まったばかりの制度でございますから、ぜひ今後ともそういう視点から御検討をお願いしたい。最後に大臣にお願いを申し上げて、御答弁をいただきたいと思います。
  108. 永井孝信

    永井国務大臣 先生がこの介護問題などにつきまして大変御熱心に研究されていることについては、まず敬意を表しておきたいと思います。  公的な介護施策に関する用語の問題が今御指摘ございました。多方面におきましていろいろな議論がなされるものと考えておりますが、御紹介のあったような労災被災者の自己決定を尊重する、このことについての御見解については、私としても共感を覚えております。そのことを大切に受けとめておきたいと思います。  今後この労災被災者の立場に立ったいろいろな施策を展開していく上で、先生の今御指摘あったことを大切にしてこれからも考えていきたいということを申し上げておきたいと思います。
  109. 桝屋敬悟

    桝屋委員 ぜひ引き続き御検討をよろしくお願いいたします。  時間前でございますが、以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  110. 岡島正之

    岡島委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十四分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  111. 岡島正之

    岡島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田勇君。
  112. 上田勇

    ○上田(勇)委員 新進党の上田勇でございます。まず初めに、きょう、ちょっと審議時間が短縮になりまして、お願いしている質問全部に言及できないかもしれませんけれども、その点は御了承いただきたいというふうに思います。  最初に、今回の法案の内容について何点か御質問をさせていただきたいのですが、今回のこの法改正は、昨年の最高裁判決によりまして法律運用の問題点の指摘がありまして、それに対処するために提案されたのが大きな理由であるというふうに理解しております。  この判決の内容を見ますと、現行法では、第一段階の審査請求、すなわち、審査官の審査を開始してから三カ月が経過しても決定がないときには裁判所に訴えることができるというふうになっているにもかかわらず、いわば運用上の問題として誤って運用されていたというか、これが第二段階の再審査請求、すなわち、審査会の審査が開始されてから三カ月という形で運用されていたわけでありますが、これが最高裁で指摘されたわけであります。  この判決と法運用との整合性を期すために、一つの方法としては、法改正を行うのではなくて運用を改める、すなわち、審査官段階で裁判所へ訴えることができるという道を残して、請求する者が、裁判に訴えるのかあるいは第二段階の再審査を請求するか、これを自由に選択できるという、こういう方法を講じるということも考えられたのじゃないかというふうに思います。  今回の改正によりますとその二段階、第一段階、第二段階ともにタイムリミットが設けられて救済措置が設けられたとはいうものの、これからは審査官段階で裁判にいくという選択肢は閉ざされたわけであります。  確かに、第一段階が終わったところで裁判に訴えたとしても、裁判にもかなりの期間を要するというようなケースも相当あることでありますし、判決の内容を読ませていただく限りにおいては、二段階の手続という意味も理解できるところであります。とはいえ、現行の制度よりもこの裁判に訴えるという道を制限するということは、これはやはり重要なことじゃないかというふうに考えるわけであります。  裁判を受ける権利という問題から見て、先ほど両方の選択肢があるんじゃないかというふうに申し上げましたが、今回あえてこういうような措置を、現行の権利を制限するということがありながらもこちらの方法を選んだということについて、まず初めに永井大臣から御見解を伺いたいと思います。
  113. 永井孝信

    永井国務大臣 先生の御指摘のように、先般、最高裁で判決が出されました。  ただ、この労災保険法というのは、行政と司法の機能の調和を保ちながら大量かつ専門的な内容の労災保険給付に関する国民の権利救済を実効性あらしめるため、裁判所の判断を求める前に二段階の審査請求手続を経由させることとしているわけであります。  しかし、今御指摘がありましたように、昨年七月の最高裁判決におきまして、労災保険法による二段階の審査請求手続の意義は認めながらも、現行の労災保険法は、労災保険審査官の決定が遅延をしている場合の救済措置を用意していないということは国民の司法救済にとって大きな問題だという立場から、最高裁の判決は指摘をしているところであります。  したがって、今回の改正は、この判決を受けまして、国民に対し手続が遅延したときの救済の道を新たに開こうとするものでありまして、審査請求制度の本来の趣旨をより一層生かそうという立場からお願いを申し上げているわけであります。  なお、今回の改正は、国民の裁判を受ける権利の行使の保留期間が三カ月間延びるという不利益を考慮してもなお、行政と司法の機能の調和を図りながら労災保険給付に関する国民の権利救済を実効あらしめるためという立場からいたしますと、最も適当な内容改正であると考えておりますので、ぜひひとつ御理解をお願い申し上げたいと思います。
  114. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今の大臣の御答弁にもありましたように、今回の改正目的というのは、かなり長期化している事案が相当ある中で、被災された労働者や家族の方々に、一日でも早く結論を出して救済の手を差し伸べるということが第一の目的じゃないかというふうに考えております。  審査、それから再審査のタイムリミットを三カ月に限ったことによりまして、手続の迅速化が当然進むというふうに期待しておるところでありますが、現状において、労働省からいただいた資料の中でも、いわゆる審査官段階でも、毎年、前年度からの積み残しというものが千件程度残っている。やはりまずこれを解消することが重要じゃないか、先決であることは当然であるというふうに思います。  それともう一つは、原処分から最終的に審査、再審査というふうに至るこのトータルの期間をできる限り短縮していくということが、労働者あるいはその家族の方々にとっては重要なことじゃないかというふうに考えるわけであります。  そういうことを考えますと、原処分の段階から、各段階においてなんですが、そもそも不服の残るような処分の件数、これをまず減らしていくということが重要なんじゃないかというふうに考えるわけであります。幾ら先ほど御説明があった迅速化のためのいろいろな方策を講じたとしても、原処分の段階で不服の残る件数がどんどんふえていけば、これはたまる一方であって、到底三カ月間では対応できないという事態になってしまうんじゃないかというふうに思いますし、そうなると、せっかく設けている二段階の今のシステム自体の意味合いもなくなってきてしまう、そういうふうな危惧を感じるものであります。  そういう意味では、とりわけ監督署の原処分の手続がわかりやすく、しかも充実して、請求した人たちが、なるたけ多くの人たちが納得できるように結論を導くことが重要なのではないかというふうに思うわけであります。  とはいうものの、今度次の審査の段階、審査官の段階のタイムリミットが設けられた。そのために原処分の手続を慎重に行う必要がある。そうすると、場合によっては、慎重に行うことを心がける余り、原処分にはタイムリミットが設けられていないわけでありますから、これが長期化してしまうのではないかという懸念もあると思います。  現在ですら、中には原処分の段階でも、例えば複雑なものであります脳・心臓疾患とかでいえば平均で一年半から二年を要しているものも多い、そういうふうに言われているわけでありますから、今回こういうふうに上の段階のタイムリミットを設けることによって、最初の原処分の段階がさらに長期化するというようなことになってしまっては、これは元も子もないことであると思います。  そういう意味で、先ほど同僚の桝屋議員からも指摘があった点ではありますけれども、原処分の手続を充実させるということと、それから同時に迅速化させるということを両立させなければいけないわけでありますが、この辺について、先ほど答弁の中で、いわゆる審査、再審査の段階では審査官の数をふやす、あるいはその他を充実するというようなことがあったのですが、伺っているところでは、原処分の段階では具体的なそういう措置は人員とかという面ではないように聞いております。原処分の手続を迅速化し、なおかつ充実させていく、これを両立させていくための具体的な対策についてお伺いしたいと思います。
  115. 松原亘子

    松原政府委員 先生指摘のように、審査の段階の迅速化だけではなくて、原処分をいかに早くやるかということも極めて重要なことだというのはそのとおりでございます。  先生も御指摘されましたように、特に最近出てきております非常に複雑な事案、過労死と言われるような事案の処分というのは、実際のところ、やはり一年半から場合によっては長いものは二年かかるというような実態にあるわけでございます。もちろん早くやらなければいけないということは当然なのですけれども、早いというのは拙速であってはいけないわけですから、例えばお医者様の意見なども十分に聞かなければいけない、さまざまな資料も集めなければいけないということで、迅速にやるということと同時にまた適正的確にやらなければいけないという、非常に難しい問題に対処していかなければいけないわけでございます。  ただ、私ども、審査段階での事務をなるべく早くやれるようにということで、先ほどちょっと御説明申し上げましたけれども、幾つかの事務処理の簡素化、効率化について検討いたしました。あわせまして、原処分庁においての例えば調査の徹底ですとか事実認定を的確に行う、それも素早く行う、そういったようなことを行うために、調査計画をきちんと立てる、それから医証の収集を迅速に行うといったようなこと、それから先ほどOA機器の話もありましたけれども、そういったOA機器の活用等による事務処理手順を標準化し、効率化するといったようなこともさらに進めなければいけないというふうに考えておりまして、それらについてもあわせ担当に指示をしているわけでございますが、同時に、そういったことで事務処理がやれるように、職員の研修も充実したいというふうに考えているわけでございます。
  116. 上田勇

    ○上田(勇)委員 私が今回の改正で今のお話をさせていただいたのは、やはり審査の段階、これが平均一年程度かかっているものをすべて三カ月というのが目標になると思います。これは大変な御努力じゃないかというふうに思うわけであります。  そうすると、原処分のときに、ここはちゃんと慎重にやっておけというようなことで、最初の段階がそのために延びてしまっては意味がないことなので、最終的な目標というのは、トータル、すべての段階でできる限り迅速的確な判断が出るように、これがやはり被災された労働者の方々、また御家族の方々にとって最も重要なことであるということでございますので、ぜひともその辺一貫した取り組みを御要望いたします。  次に、情報の公開、開示の問題についてお聞きしたいというふうに思います。  今、エイズ薬害訴訟などにおきましては、厚生省の情報がちゃんと開示されていないといったことが重大な問題にもなっておりますし、また、今国会で大きな話題になっております住専問題についても、大蔵省が情報をなかなか公開しないのではないかということから、国民が行政に対して不信感を強めているのではないかというふうに思います。そもそも、そういう行政機関の持っている情報というのは本来国民のものであって、原則としては可能な限り公開されるべきものであるというふうに考えるところであります。  また、最近の動向について、報道によれば、政府の行革委員会におきましては情報公開法案の検討も進んでいるというふうに聞いております。ちょっと総務庁の方に検討状況などについて照会したのですが、残念ながら余り情報公開してもらえなかったものですから、どこまで十分な成果が上がるか、正直言って現時点では疑問に感じている点でありますけれども、ただ、とにかく今、行政機関が持っている情報、資料、こうしたものについての国民の関心が一層高まっている。これに対して政府としてやはりできる限りの誠意を持って対処していかなければいけないのではないかというふうに考えるわけであります。  それで、労災保険給付についての不服審査手続についても、審査を請求している人から、監督署や審査官、審査会が各段階でいろいろな判断をするために集められているさまざまな資料、あるいは活用している各種の資料、情報、これを見せてほしい、開示してくれという請求があった場合には、行政として各段階において積極的にそれに応じていかなければいけないのではないかというふうに考えるわけでありますが、このことについて、ぜひとも大臣の御見解並びに今後の方針についてお伺いしたいと思います。
  117. 永井孝信

    永井国務大臣 先生指摘のように、行政に係る情報を可能な限り国民の皆さんに開示するということは非常に重要なことでありまして、労災問題についても、そのことについては同じことだと思っております。  したがって、労災保険給付に係る不服審査関係書類の閲覧ということでありますが、労災保険審議会の審議も踏まえながらでありますが、審査請求人から資料の開示を求められました場合には、プライバシー等の問題もあって第三者に迷惑が及ぶと判断されるもの、あるいは資料提供者の同意を得ることができないもの、こういうものなど開示することが適当でないと思われるものは除きまして、できる限り開示するものとして取り扱っていきたいと考えているわけであります。  第一線の機関におきましてこの趣旨に沿った取り扱いが必ずしも十分でないという問題があるとするならば、情報公開はいわば時代の方向で流れでありますから、今後ともできる限り資料の開示ができますように、そういう取り扱いをするようにその徹底を図ってまいりたい、このように考えます。
  118. 上田勇

    ○上田(勇)委員 行政情報の公開というのは時代の要請でもございますし、また、労災のように被災された方々の直接の利害に絡むことでございますので、少しでも救済に役立てるように、ぜひとも積極的な対応をお願いしたいというふうに思う次第であります。  とりわけ過労死のケースなどでは、遺族がその前の処分を不服として審査を請求しても、勤務状況とか詳細なそういう情報は、企業側の協力が得られなければなかなか入手できないといったケースもあるというふうに聞いております。とりわけそういったケースの場合に、審査機関では、そういう意味では処分をするときにいろいろな情報を収集して、それを活用されているわけでありますので、審査請求があった場合に、いわゆる請求人の方に立証する義務があるとはいうものの、なかなか請求人の立場からすれば困難な場合もあるのではないかというふうに、いろいろな資料等で指摘されている点でございます。  したがいまして、原処分、それから審査、再審査の段階でも、それまでに行政として集めたさまざまな情報や判断に使われた資料、そういったものを極力請求人に請求があった場合には公開していただくようお願いしますが、その点についてはいかがでございますでしょうか。
  119. 松原亘子

    松原政府委員 情報の公開につきましては先ほど大臣からお答えしたとおりでございまして、審査請求人から資料の開示を求められた場合に、行政官庁が持っているものすべてというわけにはいかないのは、先ほど申し上げましたように、プライバシー等の問題があって第三者に迷惑が及ぶといったようなものまで開示を求められて開示しなければいけないということは、これは問題であろうというふうに思っておりますし、労災の判断に当たりまして資料の提供を求めた相手方の同意が得られないものについてまで開示するわけにもいかないというところで、やはりある程度の限度はあろうかと思いますけれども、基本は情報公開という原点にのっとりまして対応をいたしたいというふうに考えております。
  120. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ぜひともその点については重ねて要望を申し上げます。  それで、労災とも関係するわけでありますが、大きな社会問題となっております過労死の問題について若干御質問したいと思います。  今回も、労災の認定に長期間を要しているというのは、こういう過労死などに見られるような非常に複雑な事案がふえているというのが一つの原因ではないかというふうに思うわけでありますので、このことにちょっと触れたいと思うのです。  過去にさかのぼって過労死の認定についての事例を見てみますと、労災の対象となるかどうかについて、労働省の処分されるときの判断と、それを不服として起こされました裁判の判決、判例にかなりの差があった時期があるというふうに考えるわけであります。  こうした事態を踏まえまして、労働省さんの方でも、大臣初め関係者の御尽力もあったというふうに伺っておりますが、平成七年の二月には脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準、これが全面的に改定されたわけでありますし、その中で、それまで業務による過重負荷といったものを発症前の一週間以内の業務に限定していたものが、かなりそれより前の業務まで拡大するというような形で緩和されたわけであります。  それから一年余りがもう既に経過したわけでありますが、その間の認定状況も踏まえまして、認定基準の緩和によって過労死の労災認定がどのように改善されたのか、労働省としての評価をお伺いしたいと思います。
  121. 松原亘子

    松原政府委員 いわゆる過労死の認定件数でございますけれども、平成四年度、五年度、六年度あたりは、十八件、三十一件、三十二件、こういう状況でございましたけれども、平成七年度は七十六件というこれまでの倍以上になっているわけでございます。  これは先生指摘されましたとおり、昨年の二月に認定基準を改正をいたしたということの結果というふうに考えられるわけでございますけれども、御承知のとおり、業務による過重負荷というものをどう評価するかということについて、これまで発症前一週間ということを検討の対象としておりましたのを、さらにそれ以前についても検討に加えるとか、また、その負荷の程度がどうであったかということについて、年齢とか経験とかを考慮したものにするといったような形で改正をしたわけでございます。  そういうことから今のような件数になったわけでございまして、今後とも、この新しい認定基準につきまして十分周知を図り、それに基づく迅速適正な労災補償の実施に努めたいというふうに考えております。
  122. 上田勇

    ○上田(勇)委員 去年の改正に加えまして、ことしの一月にも通達が一部改正されておりまして、そうした意味で労働省の方の努力には一定の評価を与えているわけでありますが、やはりまだ認定の基準というのが物理的な仕事量、これに重きが置かれているのではないかという感じがいたします。  特に、いろいろ職場の仕事内容であるとか環境などからして、今後は特に精神的なストレス、そういったものが発症にどのように影響を与えたのか、これをやはり適正に評価していく必要があるのではないかというふうに考えますが、ここがまだ私の感じとしては十分になってないがゆえに、依然として過労死での労災認定のハードルが高いのではないかという感じがいたします。  今後ますますこうした精神的なストレス、こういったものが重要な判断基準になると考えられるのですが、これについて労働省としてどのように考えているのか、またどういうふうに対応されていくのか、御見解を伺いたいと思います。
  123. 松原亘子

    松原政府委員 昨年二月の認定基準の改正におきましても、若干、今先生指摘されました心理的負荷の問題も取り扱っているわけでございます。すなわち、継続的な心理的負荷でございますけれども、これについては、医学的に発症とのかかわりが必ずしも明確でないという事情はあるわけでございます。  そういうことから対応が必ずしも明確でなかったわけでございますけれども、業務による継続的な心理的負荷によって発症したとして請求された事案につきましても、医学的な判断が特に困難なものについては本省の方で医学的事項の検討をするということで、こういった継続的な心理的負荷によって発症したものについては、もう最初から全く認定しないということで対応しているというわけのものではございません。これにつきましても業務による継続的な心理的負荷、これがまさに業務によって起因したものであるかどうか、そういったことを十分判断した上で検討をする、業務上外の認定をする、こういうことでございます。  なお、精神的ストレスの問題が特に最近一層注目をされているわけでございますけれども、この精神的ストレスの問題と過労死の発症との因果関係を明確に認める医学的知見というのは、まだ確立しているとは言えないという実態にあるということ、また、同一の精神的ストレスに対する反応の程度というのは個人によって相当異なっているわけでございます。こういったような問題があるのでございますけれども、今後とも、医学研究の動向も見守りながら、新たな医学的知見が得られた場合には認定基準をさらに見直すということも含めまして、適切に対応したいというふうに考えております。
  124. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今答弁にもありましたように、ストレスの問題というのは非常に個別のケース、あるいは個人によってなかなか一律で評価できるものではないということかもしれません。  実は、きょうの新聞にも新潟県で事例として出ておりました。これは労災じゃなくて地方公務員の例でございますけれども、勤められている方の上司が病気で休まれている、そういう中で非常に責任を感じてストレスを感じたというようなことで、いわゆる過労死としての認定がされたというふうな報道もございました。  これまでの、特に去年、ことしにかけての労働省の対応には一応の評価を与えるものでありますが、いろいろなところで指摘されているように、それまでの対応といったものが若干硬直的過ぎたんじゃないかという批判も免れないんじゃないかというふうに思います。  やはり産業の構造変化などで仕事形態内容も変わっておりますし、また職場の環境も、リストラなども含めて急速に変化しているのが今の現状じゃないかというふうに思います。こうした変化に適切に対応して、働く者やその家族の権利、利益が守られるように、今後ともこういう基準の見直し、またその運用に当たっては迅速かつ的確な制度のレビュー、見直しを行って、必要があればその改善に取り組むことを要望したいというふうに思います。  それで、ちょっともう時間がなくなりましたが、実はきょうお願いしていたのは、今大変な注目を新聞等で集めております持ち株会社解禁の問題などについてひとつお聞きしたいと思ったのです。  これは政府として今国会で成立させたいということで、何か公正取引委員会の方からは五月をめどに法案を提出したいというふうに聞いている次第でありますけれども、私も独禁法改正の問題については、労働団体などからいろいろな問題の指摘があるということも承知しておりますし、それを踏まえたことでありましょうが、先般、労働省内に学識経験者から成る専門家会議が発足した、これは大変時宜にかなったことじゃないかというふうに思うわけであります。  そこで最後に、学識経験者の専門家会議、この目的と今後どのような事柄を検討するのか、そしてまたどのようなスケジュールで検討を進めていくのか、さらにこの専門家会議、大変名立たる学識経験者の方が名前を連ねているわけでありますが、ここで議論されたことがどのような形で政策に反映されていくのか、そこをお伺いしたいと思います。
  125. 永井孝信

    永井国務大臣 先生の御指摘の持ち株会社の解禁の問題については、現在、与党の中でプロジェクトチームをつくって検討が進められているところであります。その過程で労働問題に係る点が指摘をされまして、聞くところによりますと、経営者団体労働界との間でワーキングチームをつくりまして、検討が進められているというふうに実は聞いているわけであります。  したがって、解禁がどういう形で行われるか、これはわかりませんけれども、そういう作業の進捗状況との見合いの中で労働省としても必要な検討を進める必要があるということから、私の方で指示をいたしまして、専門の学者の皆さんにお集まりいただきまして問題点を多面的に研究をしてもらおうということで、第一回はこの十九日に持たれることになっております。できるだけ会合を重ねていただいて、片方での与党のプロジェクトチームの進捗状況との見合いの中で一定の対応をしてまいりたいと考えております。  結論的なことはここで申し上げることはできませんけれども、現在の労働組合法というのは、持ち株会社というものが存在しない中でつくられた法律であることは間違いない事実であります。したがって、広く意見を聞きながら、専門的な観点から法改正の問題も含めましてとり得る施策について検討を進めてもらう、こういうことにしているわけであります。  これからの展開については、日程的にも定かに決めたものはございませんので、できるだけ早期に一定の結論が出るように研究を進めてもらう、こういうことにしているわけであります。
  126. 上田勇

    ○上田(勇)委員 この問題についてはさらに御質問したいところでありますけれども、時間でございますので、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  127. 岡島正之

    岡島委員長 岩田順介君。
  128. 岩田順介

    ○岩田委員 今回の法改正でありますが、昨年の二月、今も御質問ありましたように認定基準の改正がありまして、ことしの一月にもあわせてございました。なおかつ、今回の一部法改正にようやく到達をしたというふうに私、実感をしております。  永井大臣は当選以来労働委員会でずっと頑張ってこられまして、私どもも絶えず指導を賜ってきたわけでありますが、大臣がかねがね心配また努力をされておりました世界でもあります。今回の法改正に至ったことを、また御努力に対しまして敬意を表したいと存じます。  たまたま一月の基準改正がありましたが、その前後に私は車いすの方々の脊損の患者の全国組織に参加したことがございますが、そこでもこの基準の見直しの問題、それから将来うわさをされておりましたこの法律改正について、この方々も大変話題にしておりまして、期待をしておりました。  彼らはもう既に労災認定を受けている患者が相当多くありまして、古い方は七十を超えられております。若い方は二十代の方も当然おられます。  それを考えてみますと、例えば私の地元でいきますと、かつては石炭産業であったり鉄鋼の現場であったりという方々が多いのでありますが、その方々は自分の現状と将来のことだけではなくて、新しく被災された患者のところには聞きつけて行って激励をして、頑張っていこう、それから、労災には再審査の請求の方法もあるよ、手続の方法はこうあるよ、気を落とさずに頑張っていこう。だから、そういった方々も当然その会には来られているわけですね。したがって、我々関係者だけではなくて、いわゆる医療や労災の世界に依拠されている方々も期待をされておったというふうに私は思います。  そういった意味では大きな評価をするわけでありますが、今も質問がありましたように、じゃこれですべていいのか。松原局長の答弁でも、漸次変わっていくであろうということは私も推定ができると思いますけれども、これでいいのかということを考えますと、もう一歩問題というのは、いろいろ法律改正背景ございます、説明がありました。しかし、やはり過労死の問題だというふうに思いますね。  したがって、これまで幾つかもらっている資料から、私の問題とするというか、こういった点があるので過労死認定についてはぜひ一考してほしい、将来も頑張ってほしいということを要望と質問をするわけでありますが、まず、詳細は省きますけれども、過労死事案の増加というのは日本の特徴的な傾向ですね。内容は申し上げません。  それから、過労死の認定状況ですね。若干説明がありましたが、昭和六十二年と平成六年のこの二つを比べてみますと、確かに脳・心臓疾患の認定件数は倍になっていますね。それから、災害性の脳・心臓疾患の認定件数も倍以上になっています。しかし、過労死の認定件数そのものはまだまだ上がっていないのです。やや上がっていますが倍以上に上がっていない、こういう実態があるわけで、大きな変化はない。  それから、言うまでもなく今回の法改正背景になった、いわゆるこの原判決から再審の最終裁決までは何と七年かかっているのですね、六年と九カ月ぐらいかかっている、こういう統計が出ておりますが、これは一つ背景でありますね。したがって、昨年の七月六日の判決でも、いわゆる再審査請求に至る過程の著しい期間が問題だということを指摘をしておりますし、認定基準についてもそういう指摘がされておるものだというふうに思います。  したがって、こういう状況のもとで最近の八十件、一九九五年、昨年の六月までのこの裁判の状況を見ると、いわゆる起因性を容認したものが十七件で四〇%、起因性を否定したものが最高裁、高裁の否定例で見ますと二十件というふうになっているわけでありまして、どうしてもここには、マスコミもそういう傾向でありましたが、労働省の労災補償法の救済機関に求めるよりも裁判の方がやさしいじゃないかという傾向が出てきておったことも事実だろうと思いますね。  本来、時間があるともっと質問したいのでありますが、いわゆる過労死が起きないような職場の環境をどうするかということ、それから、現状で満足しておられるわけでは決してないことは私も知っておりますが、裁判とこの認定基準というか、労働省が裁決をした労災補償の世界との乖離が過去にはやはり実態としてあるのじゃないかという実感がするのであります。そういう現状から、もう一層の、抜本的というか、労災認定の基準の改善、解決に向けて御努力を願えないかというのが私の第一点目の質問であります。
  129. 永井孝信

    永井国務大臣 先生指摘のように、この過労死問題は深刻な社会問題ともなっているわけでありまして、昨年の二月に認定基準を改正いたしました。これは先生指摘になりましたように、この認定基準を改正させようと私も随分当時から努力をしてまいりました。  その認定基準の改正があって、平成六年で見まして認定された件数が約倍増するというふうに、一言で言えば認定する条件が非常に緩和されたのはその成果だと見てもらったらいいと思うのでありますが、だからといって、これだけ問題になってきておる過労死の因果関係というものを的確にとらえ切れることができるかというと、なかなかこれは難しい問題がありまして、医学的知見が必要になってまいります。  最高裁の判決もありますが、それは裁決の迅速化ということであります。しかし、いずれにいたしましても、審査会の段階で的確にその問題の背景というものを把握をして、的確に判断が下されるということが必要不可欠になってまいります。  そういう意味では、これからもずっといろいろな過労死問題の審査を行っていく過程の中から医学的知見を得られた場合には、それに合わせて必要な認定基準の改正は当然行っていくべきであろう。これは前向きな立場でこの認定基準の問題については対応してまいりたい、こう考えているわけであります。  またさらに、今御指摘になりましたように、短い時間でございますから、余り答弁しますと先生質問時間がなくなりますので簡潔に申し上げますが、まずは何よりも過労死を起こすような勤務条件というものをなくさなければいかぬ。したがって、先日も、異例でありますが、日経連に対しまして、傘下の企業に対して、過労死を起こすような過長な労働時間をなくするように、労働時間管理を的確に行うように要請を実は行ったわけであります。聞くところによりますと、日経連は、近く文書で傘下の企業全部に通知を出して、協力を呼びかけるようであります。  片方で労働時間の短縮問題が非常に大きな問題になっておりますから、その労働時間の短縮を的確に進めることと過長な時間外労働をなくすること、ましてやサービス残業というものは論外でありまして、サービス残業の絶滅ということを掲げて労働行政を推進していきたい。そういうことが結果的に過労死を撲滅する道につながっていくのではないか、こういう認識を持って当たってまいっているところであります。
  130. 岩田順介

    ○岩田委員 先ほどの松原局長の答弁で、今回の法改正に至る前の労働省内の協議、議論というのはよくわかりました。  行政事件訴訟法の世界では、旧憲法下では前置主義がちゃんと置かれていた。一年数カ月空白があって、昭和二十三年には特例法で前置主義というのが置かれたというふうに承知しておりますが、さらに昭和三十七年ですか、法改正のときには原則自由ということになっているわけですね。ただ、そこには例外として、救済規定を設ければいい、その救済規定を置く場合にも迅速な審査をするために努力しなければならない、体制を整備せい、こう言っていますね。それから、自主的な反省のもとでその意識が発揮できるように検討しなければならぬ、実証しなければならぬというようなことが議論されております。  そういう観点から今度の救済規定が置かれたというふうに私は理解をいたしますけれども、果たして三カ月、三カ月、六カ月経過すれば裁判にいけるかというと、過労死の世界を考えてみると、これもなかなかそうは単純にいかない。努力はしていただけるだろうけれども極めて難しいかもわからぬ。しかし、救済規定を置いて、なおかつ相も変わらずだらだらと三年も四年もかかったのでは意味がないですね。  従前よりかかることは絶対ないと思います。しかし、どれくらい短縮されるかということも、これは努力してみなければわからぬ問題でありますが、相当かかるということであれば、この救済規定を置いた意味がないですね。それから、この労災保険審査制度の置かれている意味がやはり別な角度からも問われるということになるのですが、この辺は大臣、いかがでしょう。
  131. 永井孝信

    永井国務大臣 今回のこの法改正趣旨は、二段階の審査機関を設けていることについて、今までと違ってより迅速化しようという視点から、この法律改正をお願いを申し上げているところであります。  したがって、行政改革の厳しい条件の中ではありますが、審査官の増員も図ってまいることにいたしておりまして、しかもこの審査体制を強化するといういろいろな多角的な面がございますが、あらゆる面でその環境が整うように労働省としても全力を挙げてまいります。  そして、間違っても、今先生が御指摘のように、数年かかってもまだ結論が出ないということでは今回の法改正の意味がございませんので、そういうことが起きてこないように万全の対策を講じて御期待にこたえるようにしていきたい、こう考えている決意を申し上げておきたいと思います。
  132. 岩田順介

    ○岩田委員 最後になりますが、やはりこの世界というのは、労災保険を頼りにしている方々、例えば雇用保険の問題もありますし国税の問題もありますが、言い方はちょっと不遜かもしれませんけれども、一件当たりの重さが違うのですね。生命にかかわっているということ、それから生活権の問題にかかわっているわけですから、重たいことはそのとおりであります。  したがって、やはり基本的な問題は、もう一方の問題は、いかにして過労死を発生させないようにするかというのが労働省も我々も共通の責任でなければならないというふうに思っているわけでありますが、一言何かございましたら。最初に決意を聞いておりますが。
  133. 永井孝信

    永井国務大臣 先生の御指摘のとおりでございまして、事業主もそこで働く労働者も、過労死につながるような過長な労働をさせない、しないというこの認識をまず持ってもらうことが必要だと思います。  そして、労働基準法を厳格に運用しながら、間違っても労働者の意思に反して無理なサービス残業などが行われないようにする、いわば過労死につながる芽を事前に摘み取る、そこに労働行政の一番重要な視点が置かれてしかるべきだと思いますので、そのことをやりながらなお不幸にして過労死と見られる事件が起きました場合には、迅速に審査をいたしまして遺漏のないように判定を下していきたい、このように考えるわけであります。
  134. 岩田順介

    ○岩田委員 ありがとうございました。終わります。
  135. 岡島正之

    岡島委員長 寺前巖君。
  136. 寺前巖

    寺前委員 今労働大臣から、労災を発生しないように、そこを一番基本に押さえなければならない、不幸にして発生した場合には迅速に対応することが必要だというお話、私も賛成です。  昨年の七月六日の最高裁判決を読んでおりますと、私の感じた問題ですが、労災保険給付の決定に不服がある場合、労災保険審査官に対して審査請求をした日から三カ月経過しても決定がないときは、審査請求に対する決定や再審査請求の手続を経ないで原処分取り消しの裁判を起こすことができるというふうに、要するに三カ月たてば裁判でも再審査請求でもどちらでもやれるのだと決まったというふうに読めるわけです。  今出されてきている改正案では、審査官での審査が三カ月たてば再審査請求ができるようにしているけれども、どのような理由があれ、この段階で裁判が起こせないことになるのではないかと思います。私は、その意味では、最高裁の判決のポイントを生かすように法の修正をする必要があるのではないかというふうに考えているところです。  振り返って、労災の状況はどういうことになっているのだろうか。労災申請から不支給決定までどのぐらいかかっているのだろうかというふうに見た場合、例えば東京中央労働基準監督署で行われた北株一一さんという人ですが、慢性一酸化炭素中毒でガスメーターの取りかえ作業中に起こった事件ですが、この事案を見ておりますと不支給決定までに三年八カ月かかっていますね。それから、審査請求から決定までに六年七カ月かかって原処分庁の決定の取り消しをさせています。実に十年四カ月ということになる。えらいことになるものだなと私つくづく思うのです。  また、再審査請求での平均の処理期間が、過労死事案を九四年度の内容として見たときに、三年二カ月かかっている。  労働保険審査会への再審査請求で救済されないとなったら裁判を起こすことになりますけれども、さて、最高裁の調べに基づいて計算してみますと、裁判での審理期間は、九四年二月から九五年十月までの過労死事件の労働側勝訴の判決の事例十一件を見ると、地裁段階で最短でも三年三カ月、長いものになると七年四カ月かかっている。国がさらに高裁で争うということになると、また一年ないし二年はかかることになるでしょう。  これは大変な問題だ。不服申し立て期間を含めると、遺族、家族が残された貴重な人生の大半を裁判に注ぎ込まなければならない。不服申し立て制度が迅速に被災者救済に役立つというようなことが、関係者にすれば本当に心から求めているところだろうと私は思うのです。だから、そういう意味においては、不幸にして労災になった場合に迅速に対処するということが非常に大切な問題だ。しかし同時に、それが適切でなかったならばまた困るという問題にも直面するわけです。  私は、そういう点で二つの面からメスを入れてみたいと思っているのです。  一つは、何かといいますと、体制が、労災にかかったという申請をされる人の期待にこたえるような体制になっているのかどうかという面です。もう一つの面は、そういう分野を担当する労働省のお方が適切に処理していくための基準をどのように見ているのか。その基準が適切でなかったならば、これまた不幸を見なければならないというふうになると思うのです。  二つの面からメスを入れてみたいと思うのですが、時間の都合もありますので幾つかの問題に限ります。  まず審査官の問題です。  この間京都へ行って聞いてみましたら、昨年度は二名だったけれども九六年度から四名にしてくれるという話だった。それで三カ月の間に審査官が仕事をできるのだろうか。おざなりなことにならなければいいがなというふうな心配を率直に持ったわけです。そういう心配はないのでしょうか。人員を倍にしたというだけで三カ月という体制でやれるのだろうか。いかがでしょう。
  137. 松原亘子

    松原政府委員 私ども、昨年の最高裁判決を受けまして、審査官段階での審査の進め方というのを効率的にやることをまず考えなければいけないというふうに考えまして、部内で、どのようにやっていけば適正であるということを維持しつつ迅速にやれるのかということを検討いたしました。  先ほどもちょっと申し上げましたけれども、具体的には、原処分庁と請求人との間の争点がどこにあるかということをまずきちんとする。それから、当然のことながら原処分庁で適切に調査等をやっているわけでございますけれども、原処分庁からの意見書をもらうやり方というのがきちんとしたフォーマットになっていればスムーズに処理できるというところもあるわけでございますので、原処分庁に求める意見書のモデル例をつくる。また、審査官がつくる決定書につきましても、一つモデル例をつくって、それに沿って決定書を書けばいいようにするといったようなこと。  それから、医証を収集する必要があるとすれば、それを的確迅速に得るようにするといったこと。また、請求人から事情聴取しなければいけないというときに、局に来ていただくのになかなかうまく日程が合わないというようなことがあると、ついつい延び延びになってしまいますから、むしろそれは審査官の方から出向いていって事情聴取するというようなやり方をするといったようなこと。幾つか業務の仕方を見直すということにいたしまして、それを地方局に通達をいたしたところでございます。  その前提は、三カ月以内に審査業務を終える、申請を受け付けましてから決定するまで三カ月という前提を立てまして、その間にいかに必要なことを的確迅速にやれるかという観点から、今さまざま申し上げたようなことを見直しをいたしたわけでございます。  もちろん、三カ月という目標を立てましたけれども、事案によっては若干かかるということが全くないかというふうに言われれば、そこは絶対にありませんとはなかなか言い切れない面がございますけれども、これまで長くかかっておりましたのを三カ月でやるというふうに前提を立て、それに沿った業務をやっていきたいというふうに考えております。かつ、先生も今御紹介いただきましたけれども、非常に厳しい定員事情の中、審査官を今年度新たに二十七名増員をさせていただくということにもなったわけでございます。  そういう意味で、体制そして仕事のやり方、両面から審査官の事務がスムーズにやれるようにいたしたい、また、そういうことが相当期待できるというふうに考えているところでございます。
  138. 寺前巖

    寺前委員 三カ月という問題は、労働省にとっても、なかなかこれからいろいろ考えていかなければならない仕事の期間であろうというふうに思います。そういう点ではもっと研究することも多かろうと思いますし、ひとつよろしくお願いしたいと思います。  そこでもう一つは、前々から裁判の過程でも問題になるのですが、情報の公開の問題です。三カ月以内での決定を可能にする一つの問題として、監督署の資料を申請人に対して公開させ、それにかみ合った形での審理をさせるようにしていかなければならないのじゃないだろうか。地方公務員の場合は、地方公務員災害補償法第五十一条の第四項で行政不服審査法が適用されることになっている。ところが労災法ではそうなっていない。決定的なのは、やはりこの資料の公開という問題が、お互いに適切な情報の提供をすることによって正しい判断をつくり上げていく上では必要なことになっているのじゃないだろうか。この点の改正はされないのでしょうか。いかがなものです。
  139. 松原亘子

    松原政府委員 御指摘のように、労災保険法に関しましては、情報を開示するという旨の規定は法律上はないというのは先生の御指摘のとおりでございます。しかしながら、実際上の取り扱いといたしましては、私どもは、労災保険給付に係る不服審査関係書類の閲覧につきましては、かなりの程度開示をするといいますか、基本的には情報を公開するという前提で対応しているわけでございます。  つまり、これは労災保険審議会にもお諮りをした上、今から申し上げるような取り扱いにいたしているわけでございます。  すなわち、審査請求人から資料の開示を求められた場合には、まず、プライバシーの問題などもあって第三者に迷惑が及ぶと判断されるものですとか、資料の提供者の同意を得られないといったようなもの、こういうものは開示をすることが適当ではないというふうに考えておりますけれども、こういったものを除きまして、できるだけ開示するものとして取り扱うことにいたしているわけでございます。  情報公開はいわば時代の要請でもありますことから、今後とも、資料開示に関する取り扱いについては徹底を期してまいりたいというふうに考えております。
  140. 寺前巖

    寺前委員 私は、法律的にも明確にされる方が適切だというふうに思います。  次に、それじゃ現場で判断するときに、さきにモデル例をつくって云々と言われました。私は、モデルをつくっていくときに、一律主義になっていくところから過ちを犯すという問題もなきにしもあらずだという心配をするものです。  最近の一連の裁判においても、問題になるのはそこが問題になっています。例えば、私は、はり、きゅうの治療打ち切り問題での早期解決の問題についての例としてお聞きをしたいと思うのです。  九四年十一月の大阪高裁において、労災保険による鉱灸治療について、労働省がこれまで最長で十二ケ月とした一律の期間制限が、これはいかぬといって、撤回しなさいという違法との判決を出しているわけです。これに対して、一般医療とはり、きゅう施術併用の場合、十二カ月経過時及びそれ以降三カ月ごとに医師に対し診断書の提出を求め、その結果、施術効果がなお期待し得ると認めたときは、施術期間をさらに三カ月延長することができるという通達をお出しになっているわけです。  職業によって起きる疾病であるのにもかかわらず、一律の期間制限で労災保険が打ち切られ、そして自費で治療を続けている人たちは、今度この通達が出たことによってどういう扱いを受けるのだろうか。この通達までに保留になっていた人、それから、その後治療を続けておってもまだ審査中であるという人もあるでしょうし、この通達以前の人でもう既に打ち切られるという措置をとられた人もあるでしょう。  しかし、この大阪高裁の判決といい、これとの関連において提起されたところの通達、通達というのはその時期があるにしたって、考え方として一律制はいけませんよという判決である以上は、それまでの救済はどうするのか、そういう問題点がこの執行に当たっては出てきていると思うのですが、どのように扱っておられるのでしょう。
  141. 松原亘子

    松原政府委員 はり、きゅうに対する労災保険給付につきましては、先生も今御指摘されましたとおり、これまで一般治療と併用して行うものについては十二カ月を限度に施術を認めていたところでございます。本年三月一日からこの取り扱いを改めまして、十二カ月を超えても施術効果が認められるものについては、労災保険給付の対象にすることとしたわけでございます。  それで通達を発出したわけでございますけれども、この通達を発した日、つまり三月一日、この日以降労働基準監督署長が行う労災保険給付請求に対する決定には、当然適用をするわけでございます。ただ、この時点で既に十二カ月を超えてはり、きゅうが行われていたケースについても、新しい通達を判断基準としてこれに対する処理をしたいというふうに考えております。  なお、先生が後段でおっしゃいました、労働基準監督署で受理してまだ決定をしてないもの、また審査官が審査請求事案として受理しまだ決定をしてない事案、つまり、三月一日以前に受理してまだ決定をしてない事案のことだと思いますけれども、これにつきましては新しい通達に基づきまして判断をするということにしているところでございます。
  142. 寺前巖

    寺前委員 そうすると、同じ時期においても、既に判定を下されておった人、今保留になっておった人たちは適用されるけれども、既にもうだめとしてしまった人はどうなるのです。差別されてしまうことになるじゃありませんか。そこはどう取り扱います。
  143. 松原亘子

    松原政府委員 三月一日時点で決定が出されたものについて遡及して適用するということは難しくなってまいりますので、さらにその三月一日以前になされた決定に対して不服があるということになってまいりますと、それは不服審査の形で出していただくということになってこようかと思います。
  144. 寺前巖

    寺前委員 不服を申し立てている人はそれで生きてくるでしょう。不服を申し立てておってアウトになっておったらどうなっているのです。
  145. 松原亘子

    松原政府委員 今申し上げましたとおり、一たん決定をし、確定したものについてさかのぼって適用するということは難しいわけでございますので、それにつきましては不服審査また再審査等含めまして、そういう手続にのっとっていただくということになろうかと思います。
  146. 寺前巖

    寺前委員 不服審査の手続には限界があるから、どういう取り扱いをしてくれるのかなというふうに疑問を提起しておきましたので、後で検討してください。  それから、私はそこで心配になってくるのは、大阪高裁のそういう判決も見ながら、そういう新しい通達を三月一日からやられることになった。そこで言われていることの中心点は、一律に取り扱ってくるというのは無理ですよという問題が出てきているわけです。  ところが、三カ月ごとにまた一律に医者の判断のあれを提出しなさいということになってくると、この一律制を批判しているにもかかわらず一律制を持ち出してくるという、また形を変えた一律制の復活という道になるのではないだろうか。医者が長期にわたって物を見にゃいかぬでと言うのだったら、その診断書だけで十分じゃないんだろうか。旧通達でも、マッサージの場合は、診断書だけでやられてきたという経過があるじゃありませんか。  大阪高裁判決の中にも書いてあります。併用された運動療法で、運動量の増加に伴う一時的症状悪化に対しては鍼灸治療によって症状を軽減させ、徐々に運動量を増加させ、一進一退を繰り返しつつ徐々に改善が見られるという経過をたどっているものだ。難治性の頸肩腕症候群及び腰痛症の治療期間が三年とか五年とか十年とかいった長期にわたることも必ずしも珍しいことではないという指摘まで裁判の中で論議されて、それを取り上げているじゃありませんか。  だから、考えてみたら、三カ月単位に切っていこうという考え方は、この際にあの判決から考えても再検討される必要があるんじゃないだろうか。医者の診断をもっと尊重するという立場に返られる必要があるんじゃないだろうか、私はそういうふうに思うのですが、再検討の意思はありませんか。
  147. 松原亘子

    松原政府委員 先生が御指摘されましたのは、三カ月ごとに治療効果を評価するということの御指摘ではないかと思いますけれども、この評価をやっていただくというのは、まさに一律にやるわけではないということからこの評価をお願いするわけでございます。  三カ月ごとに評価をしていただき、治療効果が十分あるという場合には引き続き行う。しかしながら、この評価によって治療効果がもうないという先生がおっしゃる医師の判断、そういう判断があるとすれば、その判断を尊重して対応するということでございまして、一律に扱うことではないがゆえに三カ月ごとに評価をし、治療効果を考える、こういうものでございますので、先生がおっしゃった趣旨にむしろ合っているのではないかというふうにも考えるわけでございます。  ところで、先ほどマッサージのお話がちょっとございましたが、このマッサージの取り扱いについては、労災保険法上も基本的には健康保険の取り扱いに準拠をいたしているわけでございます。ただ、はり、きゅうにつきましては、労災疾病の特殊性にかんがみまして健康保険を上回る取り扱いをしており、今先生からも御指摘があったような取り扱い、三カ月ごとの評価をしつつも、十二カ月を超えても施術効果が認められる場合には、これを労災給付として行うということにしているわけでございます。
  148. 寺前巖

    寺前委員 私は、逆に一律的に処理をしていく方向の違う形にはならないかということを危惧しますので、今局長がおっしゃったような趣旨をもっての三カ月単位に出してもらうということであるというふうに理解はしますけれども、三カ月単位に医者も書かされるのもたまったものじゃないなということも、正直に感想として申し上げておきたいと思います。  今度は過労死の認定基準の問題です。私は、基準というのがもめごとの中心になるだけに、基準というのは慎重に考えてもらう必要があると思うのです。  昨年の二月に過労死の認定基準が改正されたときに、主な改正点として四点を挙げておられました。日本産業衛生学会も予防や労災補償に関する提言を昨年の二月にやはり出しておられます。その中で、私は、提言の中で提起しておられる二点について、どう見ておられるのだろうかという御意見を聞きたいと思います。  その一つは、現行認定基準が、脳血管疾患や虚血性心疾患等の発症と過重負荷の時間的関連について、発症前一週間以内に過重な業務が継続している場合は関連性が認められるとする部分は医学的知見に乏しい、だから削除しなさいという提起がされているという問題です。  もう一つの問題は、高血圧など基礎疾患を有する患者のストレス耐性が正常者に比較して低いことなどの医学的知見から、労働過重性の判断では、同性、同年代、同職種労働者との比較だけではなく、基礎疾患の有無や程度を考慮するよう改善するというように循環器疾患の認定基準の見直しと改善を求めているという点を、日本産業衛生学会の方々の提言として私は重視して聞かせてもらっているところです。  そこで、お聞きしたいのは次のことなんです。  公務員の循環器疾患の公務起因性の判断基準は、労働省の認定基準改定後の一九九五年三月三十一日、人事院と地方公務員災害補償基金がそれぞれ「心・血管疾患及び脳血管疾患等業務関連疾患の公務上災害の認定について」という通知を発表し、改定しておられます。  それによると、発症前一週間以内の過重業務の継続に加えて、一カ月以上継続している過重な業務を急激で著しい増悪に関連があると認められるとして、これに関連して週数十時間を超える過長勤務を行っていた場合の例示を示しております。明らかに民間労働者については国家公務員や地方公務員に比べて認定基準が厳しい扱いになっているのじゃないだろうか。私は、それはこのお医者さんたちが提起する問題とも一致する問題として再検討を要するのじゃないかというふうに思うのですが、いかがなものでしょうか。
  149. 松原亘子

    松原政府委員 まことに申しわけないのですけれども、今先生が読み上げられました公務員の場合の判断基準をちょっと持ち合わせておりませんものですから、逐一突き合わせて、どちらがどうということはなかなか申し上げられないのでございますけれども、現在私どもが用いております認定基準、昨年の二月に改正いたしましたものは、それ以前の認定基準について判決上の指摘も含めさまざまな御指摘があったことを踏まえまして、お医者様方に集まっていただき検討していただいた結果、新しいものに改めたわけでございます。  その中では、例えば、一体どの期間の業務について見るかということについては、これまで発症前一週間の業務ということを見ておったわけでございますけれども、発症前一週間以内の業務が相当を超える場合には、さらにそれだけではなく、その前の時期の業務についても見て総合的に評価をするということにいたしたわけでございます。  今先生が御指摘されましたように、週何時間といったような具体的なものは示しておりませんけれども、かなりの程度、実際の業務がどの程度行われてきたかということを十分把握するような形で、認定基準というのを私どもは改めたというふうに認識をいたしているところでございます。
  150. 寺前巖

    寺前委員 もう時間が迫ってまいりましたので、今の件を簡単に言いますと、ことしの三月五日に最高裁で、これは公務員の場合ですが、愛知県の小学校の先生、三十四歳のお方が脳血管疾患で受けた判決があります。  それを読んでおりますと、特に過重な業務でなくても、本人にとっては業務の遂行がその後の症状が自然的経過を超えて悪化する原因となったことで、またはその間の治療の機会が奪われたことで死亡したことがちゃんと取り上げられているわけですね。それからまた、同僚労働者や同種労働者に比較して過重であったという問題は取り上げられていないのですね。  そうすると、労災で取り上げられている問題と公務員で取り上げられている最高裁の判決との間には明らかに差異が生まれてきている。私は、積極的に最高裁が、公務員の問題であろうと、取り上げられた問題について検討してもらう必要があるんじゃないか。認定基準というものが事の争いをつくっていく道になりますから、それだけに積極的に統一的に物を整理して見てもらって、改めるべきは改めてもらうという態度をおとりになる必要があるんじゃないだろうかということを申し上げて、質問の時間が来たから終わりにしますが、大臣、いかがでしょうか。
  151. 永井孝信

    永井国務大臣 先生指摘のように、とりわけ過労死の認定については、医学的知見からいいましても非常に困難な問題がございます。したがって、これから医学研究の動向等を見守りながら、新たな医学的知見が得られました場合には、さらに認定基準を適切に見直すということで対応してまいりたい、このように考えます。
  152. 寺前巖

    寺前委員 ありがとうございました。
  153. 岡島正之

    岡島委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  154. 岡島正之

    岡島委員長 この際、本案に対し、寺前巖君から、修正案が提出されております。  提出者より趣旨説明を求めます。寺前巖君。     —————————————  労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律   案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  155. 寺前巖

    寺前委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案について、その提案理由を御説明いたします。  今回の労災保険法改正は、最高裁が昨年七月六日に下した判決をきっかけとして提出されたものであります。最高裁は、審査請求期間中の裁判手続について、行政事件訴訟法が言う審査請求を労働省が主張するように第二段階の再審査請求に限定することはできないこと、第一段階の決定の遅延に対する救済規定を置いてない現状ではなおさら再審査請求に限定する解釈はとり得ないことを明らかにしたのであります。  ところが、政府案では、第一段階の審査請求に対する決定の遅延についての救済規定を新たに置くだけにとどめ、そのことを理由に審査請求の段階から国民に司法救済への道を開くことを拒否しているのであります。これでは最高裁の指摘を真正面から受けとめたものとは言えません。  本修正案の第一は、この欠点を克服し、審査請求についての決定があったかもしくは決定が三カ月以上遅延したときには、再審査請求でも裁判所への提訴でもどちらにも国民の権利救済の道を確保しようとするものであります。  本修正案の第二は、被災者に保険給付についての決定にかかわる資料を開示させようというものであります。労働省が主張するように、不服申し立て前置の意義が、行政及び司法の機能との調和を保ちつつ簡易迅速に国民の権利、利益の救済を図るのに有効というのであれば、被災者に審査官及び審査会の所持する記録を自由に閲覧できる権利を確立して、審理の迅速化に資することが最低限必要であります。行政不服審査法三十三条の規定も、こうした観点から資料の閲覧請求権を認めているのであります。今回の改正をより労災被災者救済に十分役立つものにするためには、この点での修正もぜひとも必要であると考えるものであります。  以上、修正案の趣旨を申し上げましたが、何とぞ委員各位の御賛同をお願いするものであります。
  156. 岡島正之

    岡島委員長 以上で趣旨説明は終わりました。     —————————————
  157. 岡島正之

    岡島委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、寺前巖君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  158. 岡島正之

    岡島委員長 起立少数。よって、本修正案は否決いたしました。  次に、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  159. 岡島正之

    岡島委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  160. 岡島正之

    岡島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  161. 岡島正之

    岡島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時二十五分散会      ————◇—————