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1996-02-22 第136回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年二月二十二日(木曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 上原 康助君    理事 桜井  新君 理事 近岡理一郎君    理事 深谷 隆司君 理事 保利 耕輔君    理事 今津  寛君 理事 草川 昭三君    理事 野田  毅君 理事 三野 優美君  理事 五十嵐ふみひこ君       伊藤 公介君    江藤 隆美君       小澤  潔君    越智 伊平君       菊池福治郎君    後藤田正晴君       志賀  節君    高鳥  修君       谷川 和穗君    村山 達雄君       谷津 義男君    安倍 基雄君       愛野興一郎君    伊藤 達也君       石井 啓一君    川島  實君       左藤  恵君    白沢 三郎君       谷口 隆義君    塚田 延充君       平田 米男君    前田 武志君       松岡滿壽男君    山口那津男君       山田  宏君    若松 謙維君       今村  修君    佐々木秀典君       坂上 富男君    田中 昭一君       畠山健治郎君    早川  勝君       細川 律夫君    山元  勉君       横光 克彦君    錦織  淳君       松本 善明君    矢島 恒夫君       吉岡 賢治君  出席公述人         財団法人KSD         中小企業経営者         福祉事業団理事         長       古関 忠男君         弁  護  士 清水  直君         東京家政大学教         授       樋口 恵子君         財団法人国際金         融情報センター 大場 智満君         理事長         慶應義塾大学経         済学部教授   島田 晴雄君         社団法人全国労         働金庫協会・労         働金庫連合会理         事長      禿河 徹映君  出席政府委員         内閣官房副長官 渡辺 嘉藏君         総務政務次官  赤城 徳彦君         防衛政務次官  中島洋次郎君         経済企画政務次         官       清水 澄子君         国土政務次官  御法川英文君         法務政務次官  河村 建夫君         外務政務次官  小川  元君         大倉省主計局次         長       林  正和君         厚生政務次官  住  博司君         農林水産政務次         官       小平 忠正君         通商産業政務次         官       遠藤  登君         運輸政務次官  北沢 清功君         郵政政務次官  山口 俊一君         労働政務次官  坂井 隆憲君         建設政務次官  沢藤礼次郎君         自治政務次官  山本 有二君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      堀口 一郎君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十二日  辞任         補欠選任   安倍 基雄君     塚田 延充君   石田 勝之君     白沢 三郎君   今村  修君     横光 克彦君   佐々木秀典君     山元  勉君   坂上 富男君     早川  勝君   海江田万里君     吉岡 賢治君 同日  辞任         補欠選任   白沢 三郎君     若松 謙維君   塚田 延充君     安倍 基雄君   早川  勝君     坂上 富男君   山元  勉君     佐々木秀典君   横光 克彦君     畠山健治郎君   吉岡 賢治君     海江田万里君 同日  辞任         補欠選任   若松 謙維君     石田 勝之君   畠山健治郎君     今村  修君     ――――――――――――― 本日の公聴会意見を聞いた案件  平成八年度一般会計予算  平成八年度特別会計予算  平成八年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 上原康助

    上原委員長 これより会議を開きます。  平成八年度一般会計予算平成八年度特別会計予算平成八年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。  この際、公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成八年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  御意見を承る順序といたしましては、まず古関公述人、次に清水公述人、続いて樋口公述人順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、古関公述人にお願いいたします。
  3. 古関忠男

    古関公述人 私は、財団法人KSD中小企業経営者福祉事業団理事長古関忠男でございます。本日は、このような発言機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。心より御礼申し上げる次第でございます。また、大変光栄に存じているところでございます。  私からは、平成八年度の予算案に対して、現在の中小企業を取り巻く諸問題と、それに対する政策課題につきまして所見を述べさせていただきます。  最初に、手前ども財団の簡単な御説明から始めさせていただきまして、次に、本題であります中小企業の問題と政策課題に入りまして、最後に、本国会で最も議論の集中しております住専問題等につきましても、中小企業立場からの感慨を述べさせていただきたいと存じ上げます。  最初に、私ども財団でございますが、昭和三十九年に発足しました労働省許可財団でございます。中小企業経営者は、大企業経営者と違って、従業員と全く同じような状態で現場で働いております。そういうことで、当時、けがをしても労災保険の適用が全くなされていない、これは一つ大きな社会保障の問題にもかかわるということで、相互扶助の精神に基づいて、共済制度で救済しようじゃないか、こういうことでスタートしたんでございます。  現在では、その災害補償共済災害防止事 業、さらに、一番中小企業が大企業と比べて遜色のあるのは福利厚生事業でございます。また、それに加えまして、人材育成、さらに昨今特に、後ほど申し上げますが、仕事がないというのが中小企業の合い言葉になっている、そういった点から、紹介事業あっせん事業をやっていこう、こういったことで、現在当財団の根幹としているところでございます。  一昨年、三十周年記念を東京ドームで開催しまして、五万人の会員を集めて盛大に挙行した次第でございますが、現在、関東、東海、北陸を中心にして九十一万人の会員組織でございまして、事業所が五十二万事業所でございます。そして、昨年六月から北海道と東北にエリアが広がりまして、現在では一都一道二十一県に拡大しているんでございますが、加えまして、近畿関西地域近畿KSDも同様に設けてございまして、同じように約五十万、事業所数で二十万事業所が現在入っております。  全国に商工会は二千八百二十二団体加入事業所は百十三万事業所と聞き及んでおる次第でございますが、当事業団のおよその規模はただいま申し上げたことでおわかりいただけるかと存じます。この中で、会員事業所のうち約九〇%が小規模の事業所である、こういった点がほかの中小企業団体に例を見ないようなところでございます。こうした小規模事業所は、国の中小企業の施策の恩恵になかなかあずかれない層だということでございます。十名未満が圧倒的に多い、こういうことでございますが、そういうことで、私ども、日々そういったような零細企業人たちが感じている問題、この問題についての御意見を申し上げさせていただくわけでございます。  ただいま申し上げたように、会員構成を見ますと、私ども積極的な政策提言をこの中でやっているんでございますが、その基礎になる調査研究を本格的にやろうと、一昨年、昨年ですね、鋭意取り組んでまいりまして、お手元資料等を御配付申し上げているところでございます。その一端を今お手元に差し上げてございますが、この資料内容に触れながら、説明を続けさせていただきます。  なお、その資料4につきましては、事例によっては特段政策要求をしなくてもよいようなものもございます。言いかえますと、私どもは無用な政策要求は差し控えたい、必要ないものはあえて言うことはないということをおわかりいただけるかと思いまして、お配り申し上げた次第でございます。  そこで、次に本題であります中小企業の抱える問題と政策課題に移りたいと思いますが、その前提としまして、我が国における中小企業の存在の大きさ、我が国発展のために果たしてきた役割等をここで再確認をしていただきたいのでございます。  我が国産業構造の特色は、世界的にもトップリーダーとしての大企業と数多くの中小企業が共存している。そういった中で、全事業所の数から見ると、その構成比は大企業が一%に対して中小企業は九九%。その従業員に対しても、四千百万、これが中小企業に属する従業員の数でございます。さらに、九九%の中小企業の中で三十名未満事業所の割合を見ますと、この中で九七%が三十名未満の小規模の事業所でございます。これは大変なことでございます。我が国産業そのもの中小企業の活動の上に成り立っていると言っても過言ではないと存じ上げる次第でございます。  同時に、このような量的な側面とともに、我が国中小企業の質的な面も忘れることができない問題でございます。我が国国際競争力のあるすぐれた製品を生み出しているのも、大企業がそれぞれの何段階もの下請企業、それと同時に地域中小企業が集まって地元の強力な輸出産地を形成している、多彩な活力のある企業社会をつくっているからでございます。我が国における経済変動があった場合も、このような産業構造が柔軟に対応している、そして新しい経済環境に非常に巧みに対応している、この辺が日本中小企業の特徴でございます。このことからも、日本中小企業がしっかりとした足腰をしているからこそ日本経済は安定しているということでありますが、このことは逆に、中小企業の安定なくして我が国経済はあり得ないと言っても過言ではなかろうとおわかりいただけるかと存じ上げる次第でございます。  しかしながら、現在の中小企業は極めて厳しい状況下に追い込まれている。バブル経済崩壊によって、下請中小企業、さらに産地中小企業は大変な打撃を受けております。平成六年の数字ですが、全国倒産の件数が一万四千二百一件と聞いております。そのうち大企業はわずか百二件です。残りの一万四千九十九件が中小企業倒産の数です。これが現在発表されている数字でございますが、これを中小企業事業所数で割りますと〇・二%になっている。これをさらに小零細企業に限って見た場合どうなるかというと、特に私どもの先ほど申しました約五十万の事業所の中で、平成六年で四十八万五千事業所ありますが、四千三百一件倒産しているのです。わずか四十九万、五十万そこそこの事業所の中で四千三百一件、これが毎年続いているのです。これはデータバンクに出ない数字でございます。  それほど厳しい状況にあるということを最初に申し上げた次第でございますが、最近の景気動向についても、政府は二月の月例経済報告におきまして、生産は緩やかに増加し、景気は緩やかながら再び回復の動きが見られるということを発表されておりますが、事中小、小零細企業になりますと、このような実感は到底得られない。あえて直截に申し上げますと、現在の中小企業は、まず仕事がない、お金がない、毎日のあいさつの代名詞が、仕事がないよということなんです。これが実感でございます。  そういったことでございまして、私どもKSD中小企業経営者福祉事業団におきましては、こういった問題を踏まえて、せっかく五十万事業所があるんだから、一人の会員が五十万社を相手にするような、お客さんになり得るような機構をひとつつくり上げよう、こういうことで鋭意今取り組んでいる次第でございます。全部それを登録制度にしてコンピューターに入れて、そこで仕事の探し合い、つくり合い、分かち合い、そういうことをモットーにして全面的にひとつやっていこう。  これは率直に申し上げますが、手前ども労働省所管でございます。したがって、こういった問題は通産省の所管のようにも見受けられますので、はっきり申し上げまして、KSDを支えている会員事業所で持っているKSD豊明会という任意団体がございます。そこで福利厚生事業を活発に展開してございまして、群団組織でできております。この手前どもの「愛S」という機関誌も、行動半径二百メーター以内に十軒から二十軒担当している班長がいるのです。その班長がみずから手配りで配っております。そういうような組織で、その上にブロック長支部長、各都県会長がずっとおりますが、そういうシステムの中で事業開発本部をつくります。  そこで、豊明会中心になって、ただいま申し上げたような、仕事をまず、とりあえず五十万事業所から全部お客さんになり得るような体制づくりをしよう、そういうことで、みずからの手で考えていく、こういうことでやっておりますが、それにしても、お金につきましては、融資の受けにくさを指摘する声がふえております。資料1の十一ページにありますとおり、バブル崩壊に伴って、六割以上の中小企業担保力、業績の低下ということがはっきり出ております。  そういうことでありますので、仕事お金中小企業に回ってくるように、景気回復を軌道に乗せ、そしてその好影響が速やかに中小企業にも及びますようなことで、特段政策の御堅持を要望する次第でございます。  第二番目は後継者問題でございまして、個人経営小売業大型店に太刀打ちできない。後々申 し上げますが、税制の問題もありますが、ともかくどんどん減る一方でございます。手前どもでも約二〇%が小売屋さんでございます。そういったような小売屋さんが今後の相続は非常に難しい、こういう実態が実際の数字で出ておりますが、さらに、メディア、宅配便発展によりまして通信販売コンピューターショッピングが普及して、今後は中小小売屋さんが縮小する可能性も大変高い。政府としてもどうかひとつ喫緊の課題として、この小売屋さんの全国の数は大変な数でございますので、こういった層に対してもお目を向けていただければ大変ありがたいと思っております。  製造業については、いわゆる産業空洞化のもとで、個人わざが消えて職人が消えつつある。そういうことで、業種を問わず我が国中小企業は存亡の危機にさらされている。バブル崩壊は、額に汗して働かなければならないということ、物づくりの大切さを改めて教えてくれたことでありまして、このバブル崩壊は、本当に単なるバブルじゃない、額に汗して働くことが大事だということも反面教えられた次第でございます。そういうことですが、効果的な支援措置が伴わなければ、これも実を結ばないということでございます。特に、ほっておけば技能労働者技能職人職人わざを受け継ごうとする若者がどんどん減る一方でございます。極めて憂慮すべき現状でございますので、魅力ある中小企業づくり人材育成ということについて特段の御配慮を賜ればありがたいと思っております。  魅力ある中小企業づくりには、経営者の認識とともに、融資税制、こういった環境整備が重要でございます。平成八年度の予算内容では、技術開発ベンチャー等につきましては補助金が盛り込まれておりますが、さらに、人材育成にも多くの要素が必要であろうかと思います。特に、物をつくる大切さの教育、物をつくる人すなわち職人を大切にする教育職人の処遇の改善社会的地位の確立ということで、技能を尊重する教育を国策として強化していただきたい。なかなか人というものは一朝一夕でできるものではない。そのために、一省庁でなくて、政府全体としてお考えいただければ本当にありがたいと思っております。  この点につきまして、私ども財団でも独自の取り組みを続けておりまして、四月には日比谷公会堂で、俗に言う職人のための総決起大会を実施する予定にしてございます。そこでは、日本産業基盤を支える職人育成のための社会的基金の創設と同時に、俗称でございますが職人大学をつくろうということで、今、そのための財政基盤とするところの財団を構築しつつございます。  さらに、資料1の緊急アンケートでございますが、二つの重要問題がある。一つは、中小企業事業後継者に対する相続税優遇措置でございます。もう一つは、国民金融公庫による無担保・無保証経営改善資金限度額の拡大でございます。  相続税につきましては、事業用地生産設備等相続について、せめて農地並み優遇措置をお考えいただきたい。でないと、税金を払うためにどんどん土地を売る、建物を売る。それはつまり倒産だということで、仕事をやめざるを得ない。こういう結果で、それがためにどんどん中小企業が減っていくということは、極めて憂慮すべき問題ではなかろうかということでございます。住専問題等がございますが、ここで特に、今融資制度で無担保・無保証が五百万円だったのが七百五十万に引き上げられておりますが、国民金融公庫融資についてもこのようなせめて一千万円までの引き上げを、この不況のさなか、どうかひとつ政府でもお考えいただければ大変ありがたい。この資金繰りが大変な時期でございます。  後ほどまたお話が出ようかと思いますが、最低資本金の問題でも、五年間の猶予があるんだから、株式会社一千万円、当然だろう、この三月三十一日で終わりだ、達しないのはあとは解散だ。三百万円の法人の場合も同じことでございます。それが今バブルのはねた結果、バブル最盛期は一千万円とするのはわけがないと思ったけれども、この時期で一千万円つくるのは到底不可能だという小零細企業がいかに多いかということも、後ほどの資料でおわかりいただけるかと思います。  時間でございますので、住専問題につきましては後ほど御質問の中で私ども所見を述べさせていただきたいと思っております。  御清聴まことにありがとうございました。今後ともよろしくお願い申し上げます。(拍手)
  4. 上原康助

    上原委員長 ありがとうございました。  次に、清水公述人にお願いいたします。
  5. 清水直

    清水公述人 私が公述人弁護士清水直でございます。  本日は、衆議院の予算委員会におきまして、私ども意見を述べさせていただく機会を与えてくださいまして、まことにありがとうございます。大変光栄に存ずる次第でございます。  私は、東京弁護士会に所属いたしまして、弁護士三十四年になります。この間に、主として会社更生企業の再建という仕事を専門にやってまいりました。現在も、住専からの百五十位以内に入る借り手でありました三和建物グループ更生管財人をいたしております。一昨年の二月にこの会社倒産いたしました。私が引き継いだときは、手持ち金十三億でございました。それが、二年たちました今日、預金は百億になっております。  更生会社というのは、金は要らないのでございます。順調に仕事をしていけば、どんどんお金はたまるのでございます。したがいまして、倒産処理に一円もお金は要らない。それを先生方に御理解いただきたい。今からでも遅くございませんので、住専七社を更生会社にいたしまして、直ちに裁判所管轄下保全管理人を置いて、保全管理人調査責任の追及をやってもらった方がよろしいと思います。これには何ら関係者の同意は要りません。保全管理命令裁判所がやることでございます。その申し立てはもちろん債務者または株主、債権者がやるのでございますけれども裁判所は、債権者の意向に従って回収するかどうかを決めるというのではなくて、その会社更生見込みについて判断するだけでございます。  これに対しまして、更生見込みというけれども住専は清算するのではないか、こういうことを言われる方がございます。しかし、それは会社更生法の実際の運用を御存じない方のおっしゃる発言でございます。破産法に基づいても、私は営業継続をしてその会社を再建した例がございます。それからまた、更生法を利用しながらソフトに清算したものもたくさんございます。社会的意義があれば、清算するしかないと思われる場合でも、裁判所更生開始をしてソフトに清算するのでございます。  例えば北炭夕張、これは爆発事故で多数の方が亡くなりました。閉山して、もう清算するしかない会社でございますが、被害者を救済するためには、銀行からお金を借りて、そして払ってやらなければならない。ところが、破産会社融資することは、預金者保護立場から銀行は到底できません。そこで、担保権よりもさらに優先する共益債権という形をとって更生開始をして、北炭夕張被害者に払うべき金を銀行融資したのでございます。そうして、この会社被害者に弁済をして、閉山、整理をいたしてまして、三年ぐらいの期間で更生計画認可になり、もう終結いたしました。  私が扱いましたものでは、猟銃メーカーエス・ケー・ビー工業というのがございました。これも、猟銃メーカーというのは先行き余り望みがないということでございましたが、裁判所更生開始をいたしまして、六カ月で営業を閉鎖いたしまして、そして二年で更生手続を終結いたしました。一般の無担保債権でも三五%の配当をしております。  このように、会社更生法だから必ず生き返らせ る、破産法だから清算するというふうに決まったものではないのでございます。それは、やはりその時々の会社の実情に合わせて最も社会的に意義のある形に運用するのが法の運用の仕方でございます。その意味におきまして、私は、本件の整理については、住専七社に直ちに更生法を適用するのが最もよろしいということを申し上げたいのでございます。  予算書によりますというと、「平成八年度予算及び財政投融資計画説明」の五十八ページにございます緊急金融安定化資金というので、皆さんも御承知のとおり、六千八百五十億円が支出されるということになっているのでございますが、これについて国民だれ一人として納得しておりません。もし承知していたとしても、しょうがないという形で承知しただけでございます。もしこのままの状態で六千八百五十億円の支出を決定して実際に支出していったときに、金融システムの維持、預金者保護にさらに資金が要るときに国民は納得しないと思います。どうぞ、六千八百五十億については、慎重に審議していただきたいと思うのでございます。  私は、きょう皆様方資料を配付させていただきました。したがいまして、また私の意見の陳述の要旨もこの中に記載してございますので、そのまま申し上げることは省きたいと思います。  きょう私が皆様方に御配付申し上げました資料をごらんいただきたいと思います。「住専処理現行法の枠内でできる」と書いたものでございます。それの一番最後に図が書いてございまして、この図をごらんいただきたいと思います。  この図で、農水、大蔵、次に銀行、農協、住専七社と順番に書いてございます。私の提案は、この住専七社に更生法を適用すれば、この七社に管財人が中に入ります。そうすると、資産、負債の調査も、それからまた原因の追求、責任の所在も、直ちにできるのでございます。大体、更生開始までに三カ月ないし四カ月あれば十分でございます。もちろん一人の保全管理人調査するのではなくて、保全管理人はさらに代理、あるいは保全管理人複数を選ぶこともございましょう。そして公認会計士、弁護士、あるいは、状況によってはマル査の方に手伝っていただけば最もよろしいと思います。それによって調査をしました上で、国民に本当にお金が要るのか要らないかを調査してもらう。  そして、その過程におきまして不良債権の取り立てもする。取り立てをするときに協力をしない債務者、借り手、ここについては法的な手続はもちろんとりますけれども、さらにこの借り手を更生会社に指定したり、あるいは破産に追い込む。これは債権者としてできるわけでございますから、その形に持ち込むことによりまして、住専七社も、また借り手も、両方とも公的な管財人を送り込む。そして、東京と大阪の地方裁判所住専処理の特別部を設ける。そこにベテランの裁判官と書記官を配しましたならば、極めて効率的に責任の追及も、それからまた債権の取り立てもできるということでございます。  今日、この国会で審議をしている間にも、日に日に住専の資産は劣化しつつございます。私のところに住専の内部告発的な情報が入っております。それは、皆さんの御審議いただいている資料数字はすべて昨年の八月時点の数字でございます。それから今日までの間に、既に一兆円の資産が消えてなくなっているよというふうに言われております。  それは私は、そういう情報だけでございますから、果たしてそうであるかということは確としたことは言えませんが、ただ、もし農協系に対しまして四・五%の金利を払っているとすれば、これは一年間で二千四、五百億になるわけでございますから、したがって半年で一千二百億の金利を払うわけでございます。住専七社は完全に赤字でございますから、この金利分は赤字になるのは当然でございます。資金も不足いたします。ですから、今この審議をしている数字に既に一千億円穴がもう一つあいているよというのが二、三日前の新聞に出ましたが、当然のことでございます。  この穴がどんどんあいていく状態、これから参議院に回り、住専処理のための特別法案をいろいろ審議する、そしてようやくこの住専処理機構が船出するのは、恐らく三カ月、六カ月後だろうと思います。それまでに住専の資産はさらに劣化していきます。証拠もなくなってまいります。取り立てたいと思っても取り立てできなくなる、そういった状況が起こることが予測されるのでございます。  したがいまして、私は、農家の保護あるいは農家の預金者の保護ということと住専処理とを一緒にしないで、住専処理住専処理で法的手続で厳正に行う、そうしながら預金者保護のための措置をとるということをなされば、国民は納得すると思うのでございます。  農協さんにつきまして、これは会社更生法だとか破産でいったら農協はつぶれちゃうよとおっしゃいますが、私はつぶれないと思います。そしてまた、つぶれない方法は考えるべきでありますし、考えることができると思います。  と申しますのは、政府でお考えになりました農協の資金については、たとえ五兆五千億が返ってまいりましても、五千三百億円は贈与いたしますからなくなります。約五兆です。そのうちの二・二兆は低利で融資しなければならない。その金利は〇・七%か一%でございます。そしてまた、三兆円につきましては、これまたどんなに融資をしたいと思っても借り手がない。借り手がないから住専に貸したのでございますから、せいぜい国債を買うぐらいのところでございましょう。国債を買ったって二%弱でございます。  そうすると、三兆円の二%は六百億、二・二兆の一%は二百二十億、合わせて八百二十億しかお金は入ってこないのです。四・五%のときは二千五百億でしたから、今の政府の案でいきましても、農協には金利は三分の一しか入ってこないのでございます。このままでいけば、農協は、信連はつぶれるのは当然でございます。そのためには、やはりそれらしき対策を同時に講じなければならないのでございまして、それは住専の審議をするよりもはるかに重要なことでございます。  私は、今回国会に提出された資料に基づいて、農協系の貸借対照表、損益計算書も検討いたしました。その中で、四十七の県信連が一年間に人件費と物件費で支払っている金額は千四百五十五億円ございます。三重構造を二重構造にしろというふうに、もう数年前から農政審議会は言っております。したがいまして、もしこの信連がそれぞれの仕事を農林中金あるいは単位農協に移すことによりまして、仮にこの一般管理費が、人件費が半分になったといたしますと、七百二十七億でございます。それの十五年分は、優に一兆円にいきます。ということは、五・五兆円が二〇%削られても、努力さえすれば大丈夫だということになってくるわけでございます。いろいろな意味におきまして、私は、住専処理を法的手続でいったとしても農協はつぶれない、つぶれない方法がある、また、それは考えるべきだというふうに思うのでございます。  特に、農協系は、本件五・五兆以外に、ノンバンクにまだ八兆円を貸しております。五・五兆の一・五倍でございます。ノンバンクの不良債権は、住専のそれよりもはるかに不良債権の比率が大きいのでございます。私どもは、日々ノンバンクのいろいろな整理あるいはまた取り立てに関与することがございますので、ノンバンクの融資のひどい状況というのは百も承知でございます。そのような点から見ますというと、この八兆円が来たときに農協は一体どうするのだろうかというふうに、私は大変危惧する次第でございます。  時間がございませんので、あとを急ぎたいと思いますが、まず、皆さんに御理解いただきたいことは、銀行法の中にも、銀行法の四十六条に、銀行更生会社になる場合が書いてございます。銀行ですら、現在の会社更生手続による場合がある、そのときの裁判所と大蔵省の協力関係の規定があるのでございます。「裁判所は、銀行の清算 手続、破産手続、和議手続、整理手続又は更生手続において、大蔵大臣に対し、意見を求め、又は検査若しくは調査を依頼することができる。」銀行法四十六条一項でございます。このように、銀行ですら、現在の会社更生法を適用する場合を想定して、もう既にできているのでございます。  会社更生法という規定は、戦後、アメリカに倣って日本でできた法律でございます。その意味におきまして、この法律は倒産処理の基本になっておりまして、大変その規定は厳しくできております。  今回の住専処理に当たりまして、取り立て回収等をするに当たりまして、もし調査を拒み、虚偽の説明をした場合には五十万円の罰金にするというふうに考えておられるようでございますが、会社更生法では、調査を拒み、検査を拒みあるいは虚偽の申告をした場合には一年以下の懲役に処すという規定まであるのでございます。それほど完備しております。  それから、住専処理機構は否認権の行使ができないのでございます。これをどのようにお考えでございましょうか。悪いことをした、駆け込み担保あるいは不当な弁済、それをもとに戻してこそ正義が貫かれるのでございまして、衡平になるのでございますが、そのような否認権の行使。  それから、役員に対する損害賠償請求についても、損害賠償請求査定の申し立てという、非常に短い時間で簡便に責任追及ができる制度も会社更生法にはございます。  そのような点から、どうぞ、会社更生法の法律の条文並びに運用の実際を御研究いただきまして、この法律によって住専処理をする、そして、預金者保護については別途考慮するということでお考えいただくのが必要ではないかと思うのでございます。  時間もございますので、最後に一言申し上げたいのでございますが、今回のこの住専に対する六千八百五十億円の投入ということにつきまして、国民はいろいろのところで不満を述べております。その中で、まじめに税金を納める気がしないということを言っております。まじめに働いて納税をする人間が、すべてその納税意欲をそがれたのがこの六千八百五十億でございます。この点をよくお考えいただきたいと思うのでございます。  また最後に、この予算を見ましたときに、現在我が国には二百七十兆からの国債が発行されているのでございます。本年度予算も、七十五兆のうち二十一兆が国債でございます。ある方が、七十万円で私は生活していますと言ったら、あなた裕福でよろしいね。でも、私二十万円は借金よと言ったら、あなたどんな生活しているのよと言うだろうと思います。  庶民が住宅ローンを借りるときには、年収の二・五倍しか借りられません。国は、五十兆円の歳入に対して二百七十兆でございますから、何と五・四倍の借金をしちゃっているのでございます。日に日に日本国家は破綻の方向に行ってしまっているのじゃないかと私は危惧するわけでございます。  しかも、今年度の二十一兆円を一番大きな金額で返済するのは、十年後でございましたか、平成十八年と書いてあったと思います。十年後に返すということは、私たちの次の世代にこの借金を返せということでございます。このようなことは、私は父親としてできません。  どうぞ、本年度予算の審議に当たりまして、これらの総合的な点をお考えいただきまして金融システムの維持、預金者保護をお考えいただく必要がございまして、住専処理は極めて、その意味で法的手続でやれば小さな問題であると思います。  私の意見を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
  6. 上原康助

    上原委員長 ありがとうございました。  次に、樋口公述人にお願いいたします。
  7. 樋口恵子

    樋口公述人 このような機会を与えていただいてありがとうございます。特に、見渡せばほとんど男性の方々ばかりの中で意見の言える機会を得ましたことを、大変ありがたいことと思っております。  私は、東京家政大学で女性学及び家族関係学を講じ、一方で評論活動を行い、そして高齢社会をよくする女性の会を結成して十五年目になり、同じく女性NGOである女性と健康ネットワークの代表でもあります。その立場から、特に福祉予算についてお話をさせていただきます。  今回の国会が住専国会と呼ばれていること、そして皆様十分御承知のとおり、この六千八百五十億円の支出について、心から納得している国民はまずほとんど関係者を除いてはいないであろうこと、これはよくおわかりのことと存じます。  六千八百五十億、緊急金融安定化資金という言葉で、今度の予算書を拝見いたしまして、私はある意味で、別な点では感動いたしました。予算書を拝見する機会などというのは私などにはめつたにないのでございますけれども一つ一つが千円単位まで算出され、特に人件費などについては、何号級の人が何人という非常に厳しい定員を、ぎりぎりと締め上げながらっくった予算書だということがよくわかりました。それにつけても、六千八百五十億というお金に対する空白の部分というのは、やはりため息をついてしまいます。  この点に関して、仮に金融安定化その他のためにどうしても必要ということであるならば、社民党もおっしゃっていらっしゃいましたけれども、四つの条件、情報公開、何よりもこの六千八百五十億がどう配分されどう使われるかということについて、ぜひしっかりした予算を積み上げていけるような、私どもに公開されたその情報をいただきたいと思いますし、責任追及、第二次損失を避けること、信頼される金融行政などというのは当然のことでございます。  特に責任追及ということに関しては、これは私は本当に今の内閣だけが追及されても気の毒なことと思っておりまして、バブルがはじけて土地が下がり過ぎた政策の誤りもあるかもしれませんが、私ども普通の住民の感覚から申しますと、自分の住んでいる土地を含めてあんなふうに値上がりした、バブルをつくった責任ということも、これは長い未来の政治を過去を振り返りながら過たないためにも、バブル責任というものもきちんと追及していただきたいと思っております。  六千八百五十億という数字は、数字のごろ合わせが大変お上手な大蔵省あたりはそれでおつくりになったのかなと思ったりいたしますけれども、私の目にはどうしても、六八五〇、牢屋ヘゴーとしか読めないのでございます。どうぞ、刑事責任を含め、私が今一番恐れますのは、借りたものは返さなくても、力で返さなくてもいいんだというような、言ってみれば民心の、道徳の荒廃、そして今日本が法治国家として立っていけるかどうか。どこかの国のように暴力団、マフィアが政治を支配するような国に、もはやなりかけているのかもしれませんが、ぎりぎりのところで踏みとどまっている日本が、そうした黒い手からできるだけ遠い距離のところに国民とともにある政治であってほしい、これが私の住専問題に対する、もっと批判を言えば切りがないのですけれども、少なくとも今申し上げたことの貫かれる処理をしていただきたいと思っております。  私の本題である福祉予算に進みたいと思います。  この住専処理をなさる予算を計上なさいました側は、国際的に日本経済大国であるということからしても、この金融不安を解消する必要があるとおっしゃいます。確かに、日本経済大国として冠たるものがあるのだと思います。そして、国際的にも国内的にも金融不安を解消する責任が政治にあるとしたら、やはり国民の最大の不安を解消する責任もまたおありだと思います。  今国内的に日本人の最大の不安は何かといいましたら、急激な高齢化の中で不安を持っているという人が、これは国際比較を見ましても、日本の高齢者は幸福感は比較的諸外国に比べても高いのでございますが、不安感もまた非常に国際的にも 高うございます。少し前までは、この不安の最大の理由は経済不安でございました。老後一体幾らあったら暮らせるか。これらは年金の成熟化とともに徐々に少なくなりまして、これもまた大きな問題ではございますが、やはり今一番大きな不安は、寝たきりや痴呆状況になったときだれがどう支えてくれるかという介護不安でございます。  国民の最大多数のこうした不安に対して、私は、政治に当たる方々は国を守るのと同じ気概を持って、国民の人生のフィナーレの質を支えていただきたいと思っております。日本の昔からのことわざにも、終わりよければすべてよしという言葉がございまして、介護だけできればいいというわけではございませんけれども、何よりもこの大きな不安にこたえていただきたいと思います。  というふうに思いますと、確かに先生方の御努力によりまして、ゴールドプランから新ゴールドプランへというふうに、介護に対する予算はふえてはきております。しかし、予算書からどう読み取っていいか、私など素人ですのでよくわからなかったのでございますが、新ゴールドプランに進んだことによってのことしの上積み分は三千億程度というふうに聞いております。  予算書に出てきたものの中から私でもよくわかるものを見ますと、〇一七の〇三、在宅福祉事業等に必要な経費が一千九百八十一億、約八十二億。老人福祉に必要な経費、〇一五の〇三でございますが、これが三千八百九十二億。合わせましても五千八百七十三億で、まだ六千八百五十億にはほど遠いものがあります。ああ、六千八百五十億というのはやはりすごいのだなと、こういうことの比較から、家計簿感覚では絶対わかりませんので、国の他の予算と比べてみて実感しているところでございます。  与党のどの先生か忘れましたけれども、テレビを見ておりましたら、ある討論会で、この六千八百五十億は新たに赤字国債を発行したつもりで責任を持って運営をし、そして何年か後には何倍かにして国民にお返しするという言葉でお話しになっていた方がいらっしゃいました。私は、それはそれなりに大変説得力のあるお言葉だったと思います。だとしたら、この六千八百五十億と同じ金額を、ぜひ、国民の老いを守る、介護のための基盤整備のために新たに計上するぐらいの芸当はやってみていただきたいと思うのです。何といったって六千八百五十億が出てきたのでございますから。それに引きかえ福祉に関する予算というのは、医療費、保険などに比べまして余りにも少な過ぎるのではないかと思っております。  ただ、全体として、ゴールドプラン、さらに新ゴールドプラン、そしてさらに新たな介護政策を進めていくために、今、国会の内外で議論が進んでいる傾向、私はこれは心から歓迎するのでございます。これが公的介護保険という言葉に落ちつくかどうかについては、私はきっと御異論、いろいろな御意見があると思いますし、私自身は老人保健福祉審議会のメンバーの一人として議論に加わっておりますけれども、まだ一〇〇%納得しているわけでも全くございません。  そして、ここで一言強調しておきたいことは、ここへ参りましても、陳述人にお招きいただいたことはうれしいのですけれども、ほとんど男の方でございますし、老人保健福祉審議会におきましても、二十六人の委員中女性委員は四人しかおりません。そして、何となく五十音順で四人重なってしまったものですから、橋本、原、樋口、見藤と何となく四人重なって、ある方に今回の審議会は女性が多いですなと言われまして、冗談じゃない、四人並んでいるだけであって、これはもう本当に、国連の目指す指導的立場における女性比率三〇%、日本の国内行動計画第一次改定における一五%、この一五%をようやくクリアするかしないかでありまして、非常に少ないものだと申し上げました。  どうぞ、これから新たな高齢者介護システムをつくります上で、現実に介護に当たっている現場の人を含めまして、あるいは家族、当事者の代表を含めまして、女性の意見を十分に聞いていただきたいということをまずお願い申し上げておきたいと思います。  そして、日本の介護に関しましては、今までは家族で行うということが伝統的なものでございました。この家族というものが構造的に変化しているということを、高齢化ということが言われながら、実は余り御理解が進んでいない面も一般にあるやに思われます。  現実は、昨年、佐江衆一さんという今六十一歳か二歳の男性が「黄落」、黄色く落ちると書く言葉で、まあイチョウの葉が黄色くなってはらりと落ちていくということから来たらしいのでございますが、その本が出まして、高齢者の在宅介護の問題が、男性を含めてもう決して人ごとではなく、一般論として語られるべきだということが話題になりました。  ここから出てきた言葉が、例の老老介護という言葉でございます。老老というのは、大変年老いた親を老人である子供世代が介護し、その結果共倒れになったり、私はだるま落としと呼んでおりますが、介護している五十、六十の人の方が先に死んでしまったりする例でございます。  老老介護と言いましても、初めなかなかわからない向きもあったようでございますが、ちょうどその時期に、同じ文脈で理解できるいい言葉が出てまいりました。官官接待でございます。おかげで私は、人様の造語から標語をつくらせていただきまして「官官接待はむだづかい、老老介護は無理づかい」と言っております。  現実に今、国民生活基礎調査その他、連合あるいは各新聞社、いろいろなところが調査をいたしておりますけれども、在宅介護者の八六%は女性でございます。ということは、逆に言えば一四%は男性もしていらっしゃるのだということ、これは介護休業制度の男女を問わぬ必要性などの根拠でもございますが、八六%は女性であり、ドイツなどと違って日本の非常に大きな特徴は、この女性のうちの第一位の続き柄が息子の配偶者、つまり、平たく言えばお嫁さんでございます。  少し大ざっぱな言い方をすれば、日本の在宅介護は、家制度の中の嫁によって福祉の代替をさせられていたと言っていいかもしれません。スウェーデンやデンマークに行きますと、私などは、日本の女性がおとなし過ぎて、日本のお嫁さんがいい嫁であり過ぎて、日本の老人福祉、特に介護に関するサービスの給付をおくらせたのではないかと言われて、言に詰まることがございます。  もちろん、家族のつながりは大切にしなければならないすばらしいものであり、人々はどこで年をとりたいかといいますと、まずは自分の家で年をとりたいという人が圧倒的多数であるということは、これまた調査の知らすところでございます。しかし、今まで幾つものことが混同されてまいりました。在宅ということと家族による介護というのは、もはや同義語では論じられないのであります。  だれでもが自分のなじんだ場で老いていきたい、遠く離れた見知らぬ土地に行きたくない、これは当然のことでございます。しかし、御案内のように、日本の世帯は年々縮小し、最近では一世帯当たりの世帯人員は三人を割り二・九九人、先進諸国の情勢を見ましても、恐らく一世帯当たりの人数が少なくなってくることは火を見るより明らかでございます。国全体でひとり暮らし高齢者が一割を超え、老夫婦を入れますともはや三分の一が一人ないし老夫婦でございまして、これは大都市などで、実は大都市と過疎地とで似た傾向がございまして、東京都の最近の調査によれば、ひとり暮らし及び老夫婦、あるいは二%の夫婦でない高齢者世帯というのを含んでおります。これは幾つかの類型がありますが、老兄弟というのも多い反面、もはや親子であっても老人のみの世帯という老親子世帯がふえてきていることの証明でございます。  そして、嫁ということでございますが、ぜひこのことは御理解いただきたいと思うのです。突拍子もない、関係がないようでいて、夫婦選択別姓 制、これについてはいろいろな御異論があるということはわかりますし、ここでその推進を述べるつもりは私はございません。しかし、なぜそのようなことが出てくるかということは、高齢化の急激な進展にかかわるすぐれて人口論的な背景を持っているということでございます。  日本の人口は明治以来、三千三百万で明治維新を迎えた人口が、今では一億三千万弱にふえていることは皆様御存じのとおりでございます。それは、言ってみれば、親が二人に子は五人はいる、どの家にも必ず長男はいて、娘たちは長女といえども、昔の言葉を使わせていただきますと、実はすべて嫁入り要員であるという、このような人口構成の中で今の家制度は支えられてきたということも見落としてはならないと思います。  御案内のとおり、合計特殊出生率は、一九六〇年、昭和三十五年に二・〇〇をマークし、以来、一・五七ショックとかいろいろ言われているのは御承知のとおりでございます。この一・四、五という数字が低過ぎるから二ぐらいまで近づけよう、そういう御意見は私はあって当然のこと、あってよろしいかと思いますが、先進国型の高齢化社会というのは、生まれた人々の命がほとんど全うできるすばらしい社会であり、ならば、子供の数が昔のようなイメージではいかなくなることは当然でございまして、これからの結婚は長男と長女の結婚がごく当たり前であり、そして親は一組の夫婦当たり四人いて、かつ老老介護が当たり前であるということから、ぜひ社会的介護システムをこれからの日本の新しい国民連帯のシステムとして構築してくださいますようにお願い申し上げます。  私自身、この公的介護システムについて、保険であるかどうかはもちろん議論の余地があっていいと思うのですけれども、いろいろと話してまいります中で一番苦労したことは、むしろ、この介護保険を保険にするかあるいはだれが保険者になるかということ以前に、今までうちでやってきているんだから、嫁さんに楽させることばかり考えないでと、嫁さんというのは三十、四十じゃないのです。六十、七十です。この間、六十二歳の男性もまた介護中にストレス性胃潰瘍の出血死で、私の同級生が死んでしまいました。このような共倒れや老老介護における家族崩壊を防ぐためのシステムでございまして、別に個人個人をばらばらにして、家族を無視しているわけでは全くないのですということを言うのにどんなに苦労いたしたかわかりません。皆様方がそうだと申すわけでは全くございませんけれども。  女性の視点から見ますと、日本社会は市民の女性たちの力とか、市民の側に立つ男性の力とかはまだまだ小さく、地域草の根封建おやじのネットワークが大変強く張りめぐちされているということを痛感している次第でございます。  福祉予算特段の御配慮をくださいますよう、どうぞろしくお願い申し上げます。(拍手)
  8. 上原康助

    上原委員長 ありがとうございました。     ―――――――――――――
  9. 上原康助

    上原委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細川律夫君。
  10. 細川律夫

    ○細川(律)委員 社会民主党の細川でございます。  きょうは、三人の公述人先生方、大変お忙しい中をおいでをいただきまして、貴重な御意見をいただきましたことを心から御礼を申し上げます。  それでは、まず、私からは樋口先生の方に質問をさせていただきます。  今、日本の社会はお年寄りが大変長生きをされ、長寿社会、そして高齢人口が大変増大をいたしております。だれもが介護を必要とするような状況が生まれているわけでございます。しかし、介護が必要になった場合にそれを社会的に支えるシステムというものは、新ゴールドプランが計画どおり達成をされましても、質、量ともにまだ不十分であろうというふうに思われます。現在、先生も言われるように、家族の肩にかかっております過重な介護負担を克服するというところまで至っていないだろうというふうに思うわけでございます。  そこで、先生にお聞きをいたしたいことは、今、家族介護がもはや限界に来ており、そうしますと、社会的な介護システムを質、量ともに拡充をさせていかなければならない、これがまた私たちの政治に課せられた最大の使命でもあろうかと思います。そこで、この介護サービスというものは一体どうあるべきか、質、量ともにどのようなことをしていったらいいのか、その点について、先生のお考えをまずお聞きをしたいと思います。
  11. 樋口恵子

    樋口公述人 御質問ありがとうございます。  サービスの水準でございますが、今先生おっしゃいましたように、質と量と両方の拡大が大切だと思います。量だけの拡大をされても、質の悪いサービスがあったのでは決して利用する気になりません。その質ということに関しましては、もちろん自助器具など器材の導入あるいは住宅改造も一方で重要でございますけれども中心を占めるのは、介護する人そのものの資質を、これは単なる技能だけではなくて、人格、識見、プライバシーを守るなどのいわば職業倫理のしっかりした人を早急に国の責任で養成していただきたいと思います。  たくさん介護福祉士養成校などもできており、これは社会の風潮がそうなっておりますことと一面喜ばしい反面、国立大学その他はございますし、看護婦さんは公費で養成しているところがたくさんあるのですから、ぜひ介護福祉士に関しましてもあるいは介護者に対しても国立のモデル養成校をつくり、早くその人材を外へ出していただきたいと思っております。  あと、別な水準についてごく簡単に申し上げますと、新ゴールドプランにおいては、達成年度二〇〇〇年にヘルパー十七万人という数字を挙げておりまして、これは当初より七割上積みされまして、もちろんふえた方がよろしいのでございますが、実は、これは欧米の水準から比べますと、少なくとも五十万人は必要という数字もございます。あるいは、私が訪れたデンマークにおいては、二十四時間サービスなどを行っている大変よく行き届いた自治体の例で見ますと、全人口の一%が何らかの形で介護サービスに携わっておりました。その数字でいいますと、百数十万人ということになります。それは無理といたしましても、私はあと三倍ぐらいの充実が必要だと思います。  今、公的介護システムの論議の中で厚生省が出してきた、もちろん私どもが要望したからでございますけれども、その中で一つ大きく前進していることは、さっき申し上げました、在宅と家族の中にいるということとは必ずしも一致しないんだということに御配慮いただきまして、一人暮らしの高齢者も二十四時間サービスなどでできるだけ長く自宅にいられること。それから、老夫婦はもうどちらもどちらで、重い、軽いはあれ、どちらも体が弱っております。老夫婦もいきなり施設に行かず、できるだけ長く自宅で過ごせるようにという、このようなケアプランが出てきたことは丁歩前進で、どうぞ、もう四四%を東京都などでは占めるこういう方々へのサービス水準を保っていただきたいということ。  もう一つ申し上げますと、施設のことが、どうかすると、男の方が中心に論じますと、これはどうも在宅の側に傾きがちなんです。私も在宅は大賛成でございまして、誤解がないように申し上げますと、今まで在宅が少なかったからぜひ在宅をもっともっと充実しなければいけない、これはそのとおりなのでございますが、実は、調査を見ますと、かなりジェンダーギャップがございまして、女性はどこで年をとりたいかというのを見ますと、男性とこれはダブルスコアかトリプルスコアで、他人の世話になるであろうし、それから老人ホームなど施設も大事だということを女性は 言っております。  お手元に配付を認めていただきました資料の中に、私が代表をしております高齢社会をよくする女性の会が昨年七月十日に実施した「介護の費用負担に関する調査概要」、これはサンプリングではなく、シンポジウム出席者でございますが、我が会は非常に、本当に超党派のごく一般的な市民が多うございますから、サンプル数もかなりございます。  そして、私どもの会として、新たな公的介護システムに関する三つの原則、七つの要望というのを出させていただきました。その中で、やはりそうした女性の介護に関するジェンダーギャップ、男女の違いを踏まえ、施設の充実も大きくうたっているということを申し上げております。人生の最後に、くしゃみも排せつもいびきも自由にかけるような個室が施設の基礎にならなければいけないと私は思っております。
  12. 細川律夫

    ○細川(律)委員 先生の言われるように、介護サービスを質、量ともに充実をさせてまいりますと、介護費用がたくさんかかるということになってこようと思います。介護費用を社会的にどのように負担をしていくかということについて、先生の御意見をお聞きをしたいと思います。  厚生省のいろいろな試案がございますけれども、この厚生省の試案でいきますと、九五年度での高齢者介護費用は大体二・一兆円。仮に九七年度から公的介護保険というものを導入いたしますと、二〇〇〇年には四・四兆円から四・八兆円の介護費用がかかる、二〇一〇年には十兆円を超える経費がかかるというふうに予測をされております。そうしますと、この費用が大変膨大になりまして、これをどのように負担をしていくかということが大変重要になってこようかと思います。  社民党の方では、この費用の分担につきましては、公費と社会保険料の組み合わせが適当ではないかというような議論もいたしておりますけれども、先生から、この介護費用の負担をどのようにしていくのか、この点について御所見をいただきたいというふうに思います。
  13. 樋口恵子

    樋口公述人 お答え申し上げます。  費用負担に関しては、総論としては国民は、ここ数年のさまざまな調査を見ましても、介護に関して不安のないようにしてくれるならば負担はいとわないという声が大きくなっております。また、公的介護保険に関して政府及び各報道機関などが行った調査を見ますと、総論において、私は怖くなってしまうほど賛成が多いのにびっくりいたしております。  しかし、これは各論では、中身によっては私はまた反対がふえてくる可能性もあると思いますので、この公的介護システムをつくります上では、いやが上にも慎重にかつ広範な論議を、社会保障システムの戦後最大の改革になりかねないことでございますから、ぜひその改革のときには最大多数の合意が得られ、少なくとも一番最重度で困っている人、最重度の高齢者やその家族が制度の改革に振り回されないように、時折「制度の改革、利用者の御迷惑」としか言いようのない改革がございますので、その点、最重度の人がぜひ救われるような改革にしていただきたいと思っております。  と同時に、そうなったときに救われるということが非常にはっきりと示されるならば、保険あって介護なしとよく言われますけれども、そのようなことではなく、特に一番困っている人が緊急に救われるということが明確に出されるのならば、逆に私は、今度は、二千円という額をばかにするわけでは全くございませんけれども、この程度で福祉が果たして充実できるのだろうかどうだろうかということも思います。  ですから、私はもう少し大胆に、例えばここまでするときには高額所得者の方にはこれだけ、例えば、年金はもう基礎年金の保険料でも一万円を超えております、もしかしたらその程度持っていただきますよという数字を提示してもよい。余りにも今のところ出された費用が、この四兆八千億を公費半分にして二十歳以上の頭割りで割るといったような数字しかないので、国民の中には大変誤解が生じております。これはもう貧富の格差なく一定額で取るのかと言って怒っている方もございます。私も貧富の格差なく一定額で取るという保険料の徴収の仕方には大変大きな疑問があると思いまして、これは消費税を本当は全部回すぐらいでいいと私は思いますけれども財政のいろいろな問題を思いますと、やはり目的税が非常に難しいとするならば、保険も一つの妥当な方法だと思っておりますけれども、いろいろなモデルを示して、国民に負担できるかどうかということを問うていただきたい。  それから、皆さんがとても心配なさるのは若年者が負担しないのじゃないかということですが、これはもう少し論議を必要としますが、実は公的介護システムができて助かるのは高齢世帯のみではなくて、今、年間八万人の労働者が介護のために仕事をやめております。介護休業制度はできましたけれども、まだ先のことでございますし、今私は新幹線や飛行機に乗っておりまして、遠距離通勤介護の家族が飛行機賃を使い、新幹線代を使い、家族の介護のために日本列島を移動していることを非常によく見ます。実は若年世代こそ、介護システムをつくれば、仕事をやめるかやめないかの瀬戸際に立たされずに済み、もっと安心して生活できるのでありますから、私は若年世代の合意を得ることはそれほど困難ではないと思いますが、それもこれも実効ある、最重度の人から救われるシステムをつくることが先決だと思っております。
  14. 細川律夫

    ○細川(律)委員 今いろいろなところで公的介護保険の制度につきまして論議がされているわけですけれども、これについて私の方から御質問をしたいと思います。  この公的介護保険の中に若年障害者を含めるのかどうなのかという問題がございます。介護サービスの対象者というのは六十五歳以上の要介護状態にある高齢者を想定をされておりますけれども、いわゆる若年の障害者に対する介護サービスについては、障害者プランに基づいたサービスタ提供するのが望ましいというのが老健審の二次報告にあるわけでございます。この公的な介護保除の中に対象として若年障害者を含めるのかどうかのかという問題が一つございます。  それからもう一つ、家族介護、家族が介護する場合に、それではこの公的保険でどのようにこれをしていくのか。これは現金給付をするというような、これについてもいろいろ賛否両論がありますけれども、これについてどのようにお考えなのかをまずお聞きしたいと思います。
  15. 樋口恵子

    樋口公述人 お答え申し上げます。  最初の若年障害者についてでございますが、これはやはり審議会の中でもいろいろな御意見が出ていたと私は記憶いたしております。若年障害者には就労対策とか就学援助とかもっといろいろな高齢者とは違うものがあり、そのためもあって障害者の介護プラン、介護対策本部も発足し、充実を期しているという厚生省の御説明に一応説得されたものの、一〇〇%納得されているとばかりは限らないだろうと思います。  私自身はこのように思っております。本当は障害の程度によって、同じような障害であれば、介護に関しては若年障害者も私個人は含めてもよいのではないか、もちろん若年者であるからこそ起こるさまざまな問題はそれに付加していけばいいではないかと思いますが、今までの制度の整合性もあり、何よりも私はこうした問題は障害者当事者や当事者団体が何を選択なさるかに任せるのが、まあそれだけとは申しませんが、障害者団体及び障害者当事者がどのように思うかを最優先にされなければいけないと思っております。  それから、第二番目の家族介護に対する現金給付については、これは私は大変意見のあるところなのですけれども、これは、実は、現金給付に関しては私は反対論の急先鋒ということになっております。審議会でもいつも反対を申し上げておりますが、ただ、二つの文脈がございまして、この間の九月の北京女性会議におきましても、アンペ イドワーク、無償の労働をこれからの経済社会がきちんと評価していくということは、北京における重要項目の十二項目の中の一つに加えられているぐらいでございます。  アンペイドワークというのは、家事、育児、介護のみでなく、地域のボランティア活動や地域に対する活動あるいは家業の中で実はペイドワークでありながら実際には支払われていない農家のお嫁さんや商家の息子さんたちのこうした労働も、ですから男女だとか専業主婦であるとかないとか、そういうことでは全くございません。しかし、アンペイドワークはこの社会を運営するのに大変有用な仕事であり、単にパートの賃金に換算するなどというものではなく、それは一体どういう基準でどういう計算がされるか、それ以上のことは私は余り専門ではないのでわかりませんが、そのことが大事であるといって、日本政府も参加していた北京行動綱領に採択されたものでございます。  介護している女性たちが、女性、男性を含めて、ただ働きから解放されるという意味では、そして現実に今介護によって家計簿が膨らみ、その負担にあえいでいるということをどこかでカバーしなければならないだろうということは、その点では私は評価いたします。ただ、今回の介護の社会システムをつくっていくというのは、お金の問題以上に、お金の問題ではなく、そこに介護の労働力、介護のサービスがなくて家族が崩壊していく、家計が破綻していく、そこへ現物の給付をしようということで、そこで国民が連帯しようとして始まっていったのでありますから、そこで現金給付をと安易に飛びつくことは、幾つかの意味で大きな問題点がございます。  まず、現状で女性が担っている、特にお嫁さんが担ったりしている地域においては、これは金の出し目が縁の切れ目と私は言うのですけれどもお金をもらったら今まで手伝いに来ていてくれた小じゅうとたちすらも来なくなるのではないかと不安に思っているお嫁さんが現におります。お金をもらったのだから、お姉さん、あなたやってよというぐあいに、介護が女性の側に固定化していくおそれがございます。そして、何よりも、地域の体質によりましては、私は、地域はもっともっと介護に力を入れていくべきだし、そういう自治体がふえてくると信じてはおりますが、場合によっては、現金を与えておくからといってややこしいデイサービスだとか施設をつくるとかということのそうした条件整備をおくらせることになります。  そして問題は、一体どの目的でどれだけ現金給付を考えるかが問題でありまして、私は、先ほどのアンペイドワークという問題から見て、本当にその人がやっていた仕事をやめた機会費用まで弁済する意思があるか、これはとても無理だと思いますけれども、本当は夫が介護の責任者であるならば、その夫にかわって妻が介護しているのだとしたら、夫と妻との両方の賃金の時給から換算するのが私は一番妥当だと思っておりますが、そこまでの覚悟があるのかどうか。そうではなくて、非常に低い金額で、現状をサービス普及もおくらせるような形でいくとしたら、私はその意味で現金給付に反対しておりますし、両論あるということを慎重に御議論いただきたいと思っております。  以上でございます。
  16. 細川律夫

    ○細川(律)委員 大変貴重な御意見をありがとうございました。  それでは、古関公述人にお聞きをいたします。  古関公述人の方からは、中小零細企業の後継者問題をお話しになられました。今、後継者がいない、あるいは少なくなっているということで中小零細企業の皆さんが大変お困りのようですけれども、それに対する政策といたしましては、税制などで、相続税などで優遇措置をとったらどうかというようなお話もございました。それで、この調査の結果といいますか、これによりますと、そういうことをぜひやってほしいというのが五〇%を超えるような結果にも出ているようですけれども、具体的にどういうようなことがあるのか、ぜひ教えていただきたいというふうに思います。  それから、公述人の方からは、職人の技術を広めるというかあるいは守っていくというか、そういう立場からも職人大学というものをつくりたい、そういう構想もお述べになられましたけれども、その点について、具体的にどういうものなのかを御紹介をいただきたいというふうに思います。
  17. 古関忠男

    古関公述人 ただいまの御質問の第一点でございますが、相続がなかなかできにくい、これが中小企業の中で一番大きな問題でございますと同時に、相続できないということは後継者問題にも当然かかわりがある問題でございます。  大企業とは違って、特に中小企業といっても小零細企業状態が、例えば建物にしても、一軒のうちの中で、その中で平素の生活を営んでいるし、その中で商店もあり、場合によっては工場もある。一軒の中で生活をともにしているわけですね。ですから、ここで相続という問題になってきますと、その土地、建物が対象になってまいります。したがって、今の税制の中でいいますと、税金を払うためにやむを得ず何十年先祖伝来の土地、場合によっては家屋も売らなければ税金が払えない。払うということは即その事業をやめざるを得ないということにもつながってまいります。  これは小零細企業に特にその影響力が大きいということでありまして、単なるそれだけの問題ではなくて、相続ということになってきますと、特に三Kと称する事業ですね、きつい、汚い、危険な仕事、これは当世代の若者にとっては余り好ましい職業じゃない。まして自分のところの、たとえ小規模の事業所でも、息子は大学へ行く、娘さんはやはり同じような大学へ行く。そうすると、卒業すると同時に就職という問題がかかってくる。さて、自分のところの仕事を見ますと、年じゅうおやじはぶうぶう言っている。こんな仕事は長くやっていられない、もうかりもしないのに朝から晩まで、遅くまで仕事をやりっ放しだ。ましてやその奥さん、これは国で言うと大蔵大臣です。経済はすっかりお母ちゃん任せでございます。そういうことで、お父ちゃんは外交から現場からお客さん回り、銀行回り、一人三役から四役ぐらいやっているわけです。それでどれだけもうかったと、年じゅうぶうぶう言っている。子供は、絶えずそれを見て育っているので、こんなおやじが嫌がる仕事をやりたくない、こういう風潮がまことに、周りを見ると格好のいいところへ勤めている、だからおれは一流企業のサラリーマンになりたい、娘さんも、同じような中小企業のところへ嫁に行きたくない、中小企業には嫁は来ねえと。これが現在の、ひところ農家がそのような傾向がありましたが、現在では中小、小零細企業において特にそういう傾向が強いということからいっても、後継者難に入っている。  それがためにはどうあるべきかということを先ほど申し上げましたが、やはり税制の問題にもどうかひとつ農家並みの、農家は米をつくるということで大変日本人として必要であるし、当たり前のことでございますが、先ほど申し上げたとおり、日本経済を支えているのは、本当に中小企業の数を減らさないで、しっかりとした足腰の中で育成してもらってこそ日本経済があるわけでございますので、そういった意味で、どうかひとつ、特にこの不況の中、せめて景気回復して足腰がしっかりするまでは特段優遇措置を御検討賜れば、これからの中小企業は生き生きとしたあすの中小企業ということで活力が出てまいろうかと思っております。  人づくり問題、今の税制の問題、あわせてただいま中小企業が直面している実情をお話し申し上げた次第であります。どうかひとつよろしくお願いを申し上げます。  第二点でございます。職人大学ですが、これはまあ通称でございますが、国際技能工芸大学というものをつくってまいりたい。つまり、今大工さんがなかなかふえない。減る一方なんです。あと 恐らく十年たったら日本の家が建つのかと、今厳しい状況になっているんです。先ほど申し上げました三Kのうちの一つです。これは、単なる大工さんのお話をしましたが、水道屋さんにしても建築屋さんのとびの仕事にしても、いろいろありますけれども、とかくそういう仕事を避けて通りたいというのが当世の流行でございますので、それにはやはり魅力をつけて、というよりは、その仕事をすることに誇りを持たせるということが大事ではなかろうか。  それで、ここに職人大学、通称でございますが、これをつくって、四年制の大学、学士の称号を持った大工さんが誕生したらどういうことになるか。大変、自分自身も、おれも大学を出ているんだ、この仕事日本のこれからの伝統を生かすんだという自負と誇りを持ってやれるような職場づくり、職業、これを確立するために、これからの中小企業のわざ、これは建設ばかりではございません、製造加工業においても、メッキ屋さん、いろいろございます。そういったことで、これをつくりたいんでございます。  そのためには、やはり大学をつくるには基本的な財政を裏づける財団が必要でございますので、今それはつくりつつございますが、その制度は四年制の大学で、そして全寮制でございます。半分は学科、半分は各会社に送り込んで技術を勉強させる。ドイツにマイスター制度がございます。それに近いようなものでございますが、ともあれ、会社もそういうものを、下請は特に必要になってございます。それぞれの企業も必要だと。  あわせてまた、この大学を設置することによって、工業高校には全国で八千人の卒業生がいる。これは普通高校とは違ってハンディキャップがあるんですね。ですから、普通大学へ入れない。そういった人も、こういったような専門の、それも大学校じゃなくて四年制のしっかりした学士の称号を持つ大学をつくってこそそういった救い道があるんであろう。  こういったことで構想を持っておりますが、具体的には、既に佐渡に、もう一つは群馬県の月夜野に、二校今候補地が挙げられてございます。いずれは九校ぐらいつくってまいりたいということで、とりあえずそのための維持する財団法人をつくるということで今努力中でございますが、とりあえずは、建設業界から出発しましてもう約三千社集まってございます。建設業界は全国で三百万人と言われております、これは大工さんも含んでですが。こういった将来の問題もございますので、まず建設関係から入って、一般の製造加工業に入ってまいりたい、このような構想でございます。  よろしくお願いいたします。
  18. 細川律夫

    ○細川(律)委員 もう時間が来たようでありますから、ちょっと時間の配分で、あと清水先生にもぜひお聞きしたいところがございました。  それは、先生のあれを見ましても、更生計画の立案それから提出、これまでに一年から大体三年ぐらいかかるというようなことでありまして、その間に、例えば母体銀行あるいは一般銀行の不良債権の損金処理なんかがそれまでできないんではないだろうか。そうしますと、この住専処理住専問題が先送りになっていくんではなかろうかということについてもちょっとお聞きをしたがったんですけれども、あとの質問者が質問されると思いますので、これで私の方は終わります。
  19. 上原康助

    上原委員長 これにて細川君の質疑は終了いたしました。  次に、川島實君。
  20. 川島實

    ○川島委員 新進党の川島實です。本日は、清水公述人を初め、樋口公述人古関公述人予算委員会公聴会に御出席をいただきまして、厚くお礼を申し上げたいと思います。  最初に、私は清水公述人にお尋ねをいたしたいと思います。  あなたの経歴を拝見をいたしますと、昭和四十年に弁護士事務所を開設以来、昭和五十四年、通産省中小企業倒産対策委員、昭和五十九年から東京弁護士会倒産法部会部長を平成元年まで続け、手がけた倒産事件の再建、清算事件は、著名なものだけでも、昭和四十三年から、法的手続によるもの二十二件、再建したもの十二件。このうち、一社と数えられておりますけれども、北村バルブグループ六社、北海道テレビグループ四社、金星自動車グループ十三社、これらを合計いたしますと実に何と五十七社、これだけかかわってまいったわけでございますね。  そこで、現在、我々が国会で大変な議論を続けております住専七社の不良債権処理に、政府は六千八百五十億を使って処理を行う、また、第二次不良債権処理においても今予定されている一兆二千億の二分の一を負担を行っていこう、こう言っておるわけでございます。この多額の税金が、大きさからいいますと、私のところの中部新国際空港が十年かかって小刻みでもらう予算の全体の額に相当する金額でございまして、特に、今回のバブルで踊ったノンバンクの不良債権処理に国民がなぜ負担をしなきゃならないかということは、私も、そういう点で非難が非常に高いということは実感として受けとめておる一人でございます。  この議論の中で政府は、現在提案をしているこの住専処理のスキームは、金融システム維持のためにはこの方法しかない、破産法会社更生法は時間がかかる、こういうような形で逃げておるわけでございますけれども清水公述人は、これらは会社更生法処理するのが一番だ、こういう御提案をいただいているわけでございます。再度確認をしておきたいと思いますが、簡単にずっと御答弁いただきたいと思います。
  21. 清水直

    清水公述人 ただいまの御質問にお答えいたしたいと思います。  法的手続によると時間がかかるということをよく言われるのでございますが、現在政府でお考えになっておられます住専処理機構によってかかる時間と会社更生法を適用してかかる時間とでは、はるかに会社更生法による方が時間は短いと思います。  住専処理機構によりましても、結局取り立て回収はこの機構が発足してからやるわけでございます。責任追及もそれからでございます。少なくとも、会社更生手続よりも半年はおくれます。その間に、先ほど申し上げましたように、どんどん財産は劣化する、責任追及のための証拠は散逸するということになるわけでございます。  その意味におきまして、最終的な債権の取り立て回収というのは、住専処理機構も十五年を予定していらっしゃいます。全くその点では同じだと思います。しかし、私の申し上げる更生計画というのは、これは恐らくこの住専の場合には一年でつくることもできるでしょう。二年かけることもできると思います。いろいろございます。三年以上かかるという例はほとんどございません。ほとんどの事例で二年ないし三年のうちには出ているわけでございます。  なぜその期間がかかるかというと、それは、責任追及とか財産の調査とか、そういった方を先にやるからでございます。住専処理機構は、とりあえず横に債権を移動して、そうして処理が終わったという形をとるだけでございます。これでは処理が終わったとは言えないのでございます。見せかけの処理でございます、私に言わせれば。これでは処理が終わったとは言えないので、やはり結局、責任追及とかあるいは債権の取り立てとか、こういったことが終わらなければ国民の税金は返ってこないのでございます。その意味におきまして、私は、会社更生手続が時間がかかるというのは間違いだと思います。  それで、先ほど申し上げましたように、更生手続は、申し立てをすればすぐ、翌日までには保全管理命令が出ます。そうすると、直ちに保全管理人が中へ入って、そして調査もすれば責任追及もする、債権の取り立てもするのです。もうそこが始まってしまうのです。その上で、最終的にこういう弁済にしましょうということを皆さん方と相談しながら最終的に決めるのでございます。そこに極めて民主的な、また透明性の確保された方法 がとれるので、そのとき初めて税金が要るということがわかれば、国民も納得すると思います。  一つ、私、つけ加えておきたいのは、私どもに入りました情報でございますと、日本住宅金融と第一住宅金融は上場会社でございます。したがいまして、この会社についてもし住専処理機構に基づいていこうとすれば、営業譲渡のための特別決議を株主総会でしなければなりません。ところで、現在、株主の中でこの特別決議を阻止しようという動きがございます。そうすると、もし三分の一の一般株主が反対をしたときには、住専処理機構に持っていくための日住金、第一住金の特別決議ができないことになります。政府は、その点について、必ず決議がとれるという自信がおありなんでございましょうか。  住専処理機構をお進めになるためにも、直ちに会社更生を適用されれば、会社更生へ行く中で住専処理機構にさらに移行をするという方法もあるわけでございます。その点はよく御検討いただきたいと思います。
  22. 川島實

    ○川島委員 先生のいろいろな今までの経歴や論文や、いろいろ今回の住専処理についてのコメント等を見させていただきました。テレビの番組の、いろいろな会社更生法適用のあの一時間の番組も、ずっとビデオを撮って見ております。その上に立って質問をいたしますので、できるだけひとつ国民にわかりやすく、短く御答弁をいただきたいと思います。  あなたの案でいきますと、非常に強力な債権回収、責任追及の体制をこれで整えることができる。裁判所が選任する管財人の否認権という、政府の言うスキームにはない、そうした強い権利が認められる。仮に、債務者の財産隠しや、債権回収の妨害をされてもそれを無効にすることができる、暴力団が担保物件に賃借権を設定して居座っても簡単な手続でお引き取りをいただくことができる、抵抗すれば公務執行妨害等でお縄にすることもできる、こういうふうに言われているわけでございます。そういう点で、住専処理政府のスキームよりも、これでないとできないという見方を公述人はなされておるのか、その点について確認をしておきたいと思います。
  23. 清水直

    清水公述人 否認権行使というのは管財人の行い得る権限として大変重要でございまして、大体、倒産事件は、倒産の直前ごろにみんな駆け込み担保をつけたり、自分だけ不公平な形で回収をしたり、そういうことをやるものでございます。これは暴力団でなくても、一般債権者でもやります。私が先ほど申し上げました事例の場合も、倒産の前日ごろに、名古屋にございますビルを代物弁済で銀行はとっておりました。私は直ちに否認権行使を通告いたしました。そうしましたら、訴訟を起こさなくても任意で返してくれました。更生会社は簡単にビルを取り戻しました。  したがいまして、この否認権行使というのが破産管財人にも更生管財人にもございますけれども、特に更生管財人の場合には、否認権の行使を訴状によらなくて、裁判所で疎明、比較的軽い証明によりまして、否認の請求という手続でやれるという法律上の規定がございます。その意味におきまして、破産法よりもより強力にかつ迅速にやる方法があるのでございます。そこで、賃借権の設定とか占有とか、こういったものを排除するには、この否認権を行使して、そして裁判所の決定に基づいてこれを排除することができるのでございます。  私が関与しました月光荘という画廊の場合も、私が保全管理人に就任したときには、右翼の団体が絵画を全部占有し、それから建物も全部占拠しておりました。しかし、即日私は、七台のトラックを持っていきまして、その絵画を全部回収いたしました。それはやはり保全管理人管財人という権限があるからでございまして、ちょうど水戸黄門さんのように、これがあるぞというのでいけば大丈夫なのでございます。
  24. 川島實

    ○川島委員 私は非常に注目をいたしておりますのは、政府のスキームですと国民に情報が公開されないという面が出てくる、それを非常に憂えているわけでございますけれども、今回の、管財人調査権で調査をしていく過程というのは、全部見えてくるわけですね。特に、役員や従業員がその調査に協力をしないというと一年以下の懲役や罰金が科せられる。そして裁判所は、経営破綻の責任のある役員の財産をとりあえず凍結をして、責任がきちっとしたら損害賠償を請求をすることもできる、こういう形になるわけですけれども政府はそこが見えてこないということは、やはりこれとの違いが出てくるのでしょうかね。
  25. 清水直

    清水公述人 ただいまのは役員に対する損害賠償請求のことでございますが、会社更生法七十二条に損害賠償請求査定の条文がございます。これは、損害額を確定したり、それを実際に払えという手続をする前に、とりあえずその責任のある者が損害賠償をするように、その財産を直ちに差し押さえる、こういったことの手続をとるための保全処分というのがありまして、これを多くの場合行うのでございます。有名なリッカーの更生事件では、平の取締役に至るまで全員に対して阿部管財人は損害賠償請求をいたしまして、相当の金額の回収をしておられます。その意味におきまして、会社更生法に基づく役員に対する損害賠償請求は非常に厳しいし、かつまた迅速である。  それから、更生手続開始になりますと二カ月以内に第一回関係人集会が開かれますが、そのときには、管財人が行った調査の結果を調査報告書というもので裁判所に提出いたしまして、関係人全体に配付されます。その中には、倒産の原因あるいは損害賠償請求する必要性、また、どのようにしたか、こういったことを書くようになっております。その意味におきまして、責任追及が政府住専処理機構よりもはるかに早く徹底して行えるということは言えると思います。
  26. 川島實

    ○川島委員 あなたの試算では、株や不動産などを三年間で売り、八千億を確保、回収できる、それから、住専の貸付債権一兆九千億、これは七年間で回収する、政府の言う第二次損失の一兆二千億は回収できない、こうはっきり言っておるわけでございますね。この違いはどこにあるのか。  もう一つ銀行住専の顧問をしております久保利弁護士は、法的整理をすれば五年で全部できると。二年間の、ちょっと差があるわけでございますけれども、この辺はどう理解したらいいのでしょうかね。
  27. 清水直

    清水公述人 今御質問の中で出ました数字は、私どもがこれまでに会社更生法ならばいけるということを申し上げるのに、単に法律論とか抽象論ではだめだというので、私は、計数に明るい補助者を使いまして、パソコンで数十通りのシミュレーションをいたしました。  例えば、農協関係の債権を四兆九千七百億払った場合、あるいは二〇%免除していただいて四兆四千億を払う場合というふうなこととあわせて、金利を何%払えるかというふうなシミュレーションをやったわけでございます。そして、その中でどれだけのものが回収できるかというものを政府が御提出になった資料で見ましたところ、正常債権が二兆五千億ある。その二兆五千億は大体五、六%の金利をつけて回収することができる。これを一応信用するならば、正常債権は二兆五千億に金利がついてくる。  それから、一兆九千億と申し上げましたのは、先ほどの一兆二千億の第二次損失という部分を初めから除外してやってみたのでございます。もちろん、それは放棄したのではなくて、管財人としてはできるだけ取り立てるということでございます。  それから、八千億のその他の資産というのは、二兆二千億あるうちの不良性のものを除いた部分でございまして、これは住専各社が持っている有価証券または不動産でございますので、これは換金処分すればいいという意味で三年ぐらいで回収かな、こういうふうに立てたのでございます。したがいまして、この回収につきましても、三年のとき、五年のとき、七年のときというふうにいろいろシミュレーションをしてまいりました。そしてその結果、これは会社更生法でいって十分弁 済ができるというものを出したわけでございます。  もちろん、一銭も免除していただかなくてもよろしいというわけにはまいりません。母体行が全額放棄するとおっしゃっているのでございますから、そういったことも加味しながら、農協関係の負担ができるだけ軽い方法ということで何十通りもやってみたのでございます。  久保利先生が五年とおっしゃったそうでございますけれども、これは何年と確定するものではございませんでして、結局更生計画の認可ということは、弁済計画が何年でできるかという点は一、二年だと思いますが、それから後、今度弁済する期間になりますと、取り立て回収との関係でございますので、五年もあれば十年もあるということになります。ただ、住専の場合には、営業貸付金を回収していくのは、特に正常債権の住宅ローンなんかは機械的に入ってまいりますので、そのときに全部正常債権をある一定の時点で譲渡してしまうと、不良性の債権の回収が終わった時点でもう打ち切りにするということもできるのでございまして、その意味で、更生計画の認可で事実上は終わりという状態になるのではないかと思います。それは三年ということも言えましょうし、五年ということも言えると思います。
  28. 川島實

    ○川島委員 会社更生法では更生計画は裁判所が認可するので、銀行にしても一番心配しております株主訴訟の心配はない、こうおっしゃっておりますね。さらに従業員について、この七社の合計の二千人を七百人に減らして、債権回収に伴ってさらに大幅に圧縮し、最後は母体行に責任をとらす、裁判所は労働組合の意見も聞き、その希望を取り入れるとしておりますけれども、そうした配慮も先生の案にはなされておるわけでございますか。
  29. 清水直

    清水公述人 ただいま御質問ありましたとおりでございまして、会社更生法という規定は非常にいろいろな点を配慮しておりまして、単純に算数的な平等ということを言っておりません。実質的衡平、エクイティーと申しますが、その実質的衡平を目指しておりますので、責任のある者の債権は大幅に切り捨てたり、あるいは弁済の期間を遅くしたりという例は幾らもございます。  私どもで手がけました静岡の金指造船所というところの更生事件におきましても、いわば親会社でございました来島どっくの債権、約二百億ございましたが、これは九九%切り捨てました。それに対して、何百社とございました下請関係の債権は全部で六億しかございません。この下請関係は全部救済する必要があるというので、半年間で全額を弁済いたしました。  そういう実質的な衡平をして真に正義にかなった形とするように裁判所も指導いたしますので、現在の母体行責任あるいは一般責任、農協、そういったものについて十分配慮した更生計画がつくれると思います。
  30. 川島實

    ○川島委員 さらに、第二次のスキームですね、処理機構の。これは、政府は十五年、あなたの場合は二百億円、十五年で黒字になって残る、こういう発表をされているわけですけれども、債権の回収ができ上がる七年から十五年の間というのはどういう状況管財人の場合は現存をしていると理解していいのか、その辺のところをちょっと御説明いただけませんか。
  31. 清水直

    清水公述人 ただいまのは、私どもが皆さんに配付申し上げました資料の中にもあると思いますが、更生会社というのは、更生計画が認可になりますと、そこから先は利益を上げて弁済するだけ、あるいは資産を処分して弁済する、減資、増資をして弁済する、そういう作業が残るだけで、一般会社と同じ状態に戻るわけでございます。  したがいまして、特にこの住専の場合には、前向きにさらにいくという場合は別といたしまして、もし清算的な更生計画でいくのであるならば、その場合には、更生計画が認可になれば、あとは機械的に返ってくるものを弁済に充てるだけということになりますので、ここで不動産あるいは営業貸付金をそれぞれ債権者に譲渡いたしまして更生手続を終結してしまうということができますので、五年なり七年からさらに十五年間だらだらと更生手続を続けるという必要はございません。  また、全部の弁済が終わらなくても、そういった見通しが立てば、裁判所は繰り上げて更生手続を終結することもできる、こういうふうになっております。
  32. 川島實

    ○川島委員 次に、あなたは、大蔵省や銀行、農協は責任を問われる立場にある、彼らに処理案をつくらせるのは猫に魚の番をさせるものと指摘をいたしておりますね。破綻した企業処理する法律はちゃんと機能している、これも幾つか公述人の原稿の中に書いてございますが、大蔵省は法体系を乱すな、こう発言をしております。  今回、大蔵省は住専処理の法律を提案をしておるわけでございますけれども、この法律ができた後も同じ認識でございますか。この点を確認しておきたいと思います。
  33. 清水直

    清水公述人 ただいまの御質問、大変適切な御質問というふうに申し上げるのは口幅つたいのでございますが、現在、住専処理のために特別措置法をいろいろ予定しておられます。その法案を見まして、これから上程されるんでございましょうけれども、法律家は皆さん一様に、住専に限り法体系を乱した、このようなことを許していいのだろうかと言っております。  例えば、時効を延長する。時効制度というのは、ちゃんとその債権の性質に応じて、一年にしたり三年にしたり五年にしているのでございます。それを住専に限り一年延長しましょうなんというのは、全く法律的な素養のない方の考えることでございます。それに刑事事件の時効まで延ばそうという議論も一時あったようでございます。罪刑法定主義という、罪の前にまず法律があるというのが大原則でございます。このような議論はもってのほかでございます。  それから今回、この住専特別措置法の関係におきまして、取り立ての権限を与えるとか、あるいはまたその中に警察、検察の方を入れるといいますけれども、警察は警察、検察は検察での、それぞれの立場でのやるべき分担が決まっております。それを、大蔵省という行政庁が立法の役も司法の役も全部やっているわけでございます。特に、今回の母体行責任その他でまとめた部分は、御自身の行政上の、大蔵省としての指導についての過ちがあったにもかかわらず、その立場の方が、母体行は幾ら負担しろ、農協は幾ら負担しろと言っても、皆さんそれは承知しないのが当たり前でございます。  ですから、そこはやはり手の汚れてない方がジャッジをするという必要があるんでございまして、これはやはり、この法案に対して各関係者も理解しないし国民も理解しないのはその辺のところでございます。やはり手続が透明でなきゃいけません。それにはまず、結論を出す前に、責任の所在あるいは財産の状態、これをよく研究した上でなければ計画そのものは出てこないと思います。順序が逆でございます。きょうの資料にもございますので、御検討いただきたいと思います。
  34. 川島實

    ○川島委員 次に、住専七社の経営破綻が明らかになったのは平成二年の三月なんですね。それ以後母体行が、現在住専で不良債権になっている部分のうち、紹介して融資した分が第一次から第二次の間に約一兆五千億ぐらい、あとの、平成五年から二年の間に約二兆円ぐらいが紹介融資の分で不良債権化している。これは、あなたの案にはどこにもちょっと姿が見えてこないわけなんですが、母体行が、もうだめだという企業に、再建計画ができているのに、不良債権のものを押しつけたかのような疑いが持たれるような行為は、これは管財人の場合ですとどういうふうな処理をされるのか、その点をちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  35. 清水直

    清水公述人 いわゆる紹介者責任というところでございましょうけれども、本来、紹介者責任に ついての農協系と母体行との間での争いというのは住専処理には直接関係がないんでございまして、これは、どちらが負担すべきかということについてのある意味では外野での争いでございます。たとえ訴訟になっても、母体行が債権者として出てくるのか農協系が債権者として出てくるかの債権者の変更があるだけでございまして、住専処理そのものには直接は関係ありません。  ただし、管財人といたしましては、住専そのものがそれだけの不良債権を抱えたその原因を調べる必要があります。そういたしますと、母体行の責任が明らかになってくる場合もあるだろうと思います。  私が現実に知っておる例では、こういうのがございます。母体行の紹介がしばしば言われるのはどういうケースかといいますと、母体行から職員が派遣されている。その職員が融資をするに当たりまして、母体行がまず順位一番の抵当権をつくる。そして順位二番に住専がつける。そして一億円を融資した。七千万と三千万で、七千万は母体行、三千万は住専。それを融資を実行したのも母体行から行った職員。そしてバブルがはじけて、一億の予定の土地が三千万になった。そのとき、順位一番だからといって母体行は三千万円を回収する。順位二番は一銭も回収しない。それを放置することは管財人としてはできません。こういう状態に持っていった責任がございますから、母体行に、どうぞ三千万円については七対三の割合でお返しください一これは管財人は十分言えると思います。管財人立場で、内部からそれぞれの責任に応じた分担を取り戻しをするのはよろしいと思います。
  36. 川島實

    ○川島委員 最後に、時間がございませんので簡単にお答えいただきたいんですが、今の政府案でいきますと、第二次の損失分約一兆二千億、今試算しているわけでございますが、その二分の一を負担。これは今後、このままの政府案でいくと、一兆二千億からどのくらい拡大をするおそれが出ると見通しをお持ちなのか、その点だけひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  37. 清水直

    清水公述人 これは、実際に内部に入ってみないとわからない面もございますけれども、一兆二千億についてはさらに拡大する可能性は多分にあると思います。特に、私が申し上げますように、日に日に劣化しております。したがいまして、そのために正常債権もどんどん失われつつございます。  例えば、二兆五千億に五、六%の金利をつけて返ってくる予定の住宅ローンも、皆さん方怖いので、あるいは嫌らしいので早く逃げようというので銀行にかわる。そうすると、その五、六%の金利が入らなくなるという形になりますので、恐らくこの第二次損失はさらに膨らんでいくんじゃないかと思います。それを防ぐためにも、早く会社更生法の適用をした方がいいというのが私の持論でございます。  どうでしょうか。これで私は、この七社について直ちに更生法を適用した方が、その方が、現在政府でお考えになっているシステムを適用するためにもプラスじゃないかと思います。ある意味で、私の御提案申し上げましたのはミックスでございますけれども、その方が国民にとっては負担が少なく、また透明性のある形で行えると思いますので、メンツもあるかもしれませんが、政府はどうぞ会社更生法適用を早急に御検討いただきたいと思います。
  38. 川島實

    ○川島委員 ありがとうございました。  次に、樋口公述人に一問だけ、時間がもう、申しわけございませんが、あなたは福祉、年金、医療等高齢化対策に非常に御活躍をいただいております。さらにまた、経歴を見ますと、税制調査会、財政制度審議会それから産業構造審議会――これは違いますか。いや、こちらからもらった経歴書にちょっと載っているわけでございますけれども、それは間違いなんですね。  それじゃ、現在、福祉に対して政府は、今のところ、次の消費税の値上がり分を含めて少し予算がずっとついている。高齢化時代を迎えて医療の問題というのは非常に、医療費含めて高騰している。政府財政審議会等の中身を見ますると、軽減策の中に、アメリカ並みにもう少し医療費の問題についても軽減を含めて検討をというようなことが書かれておるわけでございますけれども、今後の消費税の充当部分を含めて、全体像として、医療、福祉、年金、これらのことについての国民の負担率についてどのようにお考えか、一つだけお聞かせをいただきたいと思います。
  39. 樋口恵子

    樋口公述人 お答え申し上げます。  今の政府関係の委員につきましては、何か書類の取り違えがあったかと存じます。ですから、財政制度などの審議会には入っておりませんが、関連のあることで言いますと、私、地方分権推進委員会の委員をいたしております。実は、福祉の推進というのは地方分権に大変かかわりの深いことだと思いますので、先生の御質問の趣旨とちょっと変わってくるかもしれませんけれども、これからの保健福祉の推進に関しましては、少し乱暴なようでございますけれども、要介護状況になって、医療及び福祉の要求といいましょうか、それが必要な状況になってくるのは、さまざまな調査から見ても七十代半ば以上、あるいは八十歳以上と言ってもいいかもしれませんが、まずは七十五歳以上でございます。  でございますから、私は、これまたごろ合わせが好きなものですから、地域社会、コミュニティーだけでよろしいのかもしれませんけれども、どうせ和製英語でございますから、ローカルコミュニティーと、ローカルをくっつけまして、お手元にお配りいたしました資料のように、ローカルは日本語で老可留、老人とどまるべしと書きます。その地にとどまるべし。コミュニティーは子見新地、子供を見る新しい土地、新たな地域の建設。老可留子見新地。高齢化と少子化は表裏一体でございまして、地域こそ、地方自治体こそ、人生の始めと終わりの受け皿になるべきだと思っております。高齢者はその人生のフィナーレゆえに、子供たちは少ない子供たちが二十一世紀を担っていくがゆえに、ともに最重要に大切にされなければならないと私は思っております。  そして医療に関して申しますならば、ぜひそのとき、地方交付金という形をとる場合ももちろんでございますけれども、今度は、例えば保険というものが仮にスタートしたときに、市町村が実施主体になり責任を持つのは当然のことだとは私は思いますけれども、国の責任において、七十五歳一人当たり幾らというような、そのような傾斜配分の仕方を思い切って考えていただきたいと思います。  先生御質問の趣旨は全体の負担率であったと思いますけれども、しかし、これはやはり先ほど申し上げたとおりでございまして、もし納得のできる医療福祉が実現できるならば、今の日本よりも欧米諸国は五割程度の負担をいたしておりまして、さらに少し上乗せすることに決してやぶさかでないけれども、それは貧しい人々に一番対策が講じられるということと同時に、やはりその内容が問題になるであろうと思いますし、そして、医療の部分から福祉の部分へ傾斜していくことが大切だと私は思っております。
  40. 川島實

    ○川島委員 ありがとうございました。  もっと議論を進めたいわけでございますけれども、先ほど細川先生がやられましたので、次に古関公述人にお伺いをしたいと思います。  日ごろ中小企業発展のために御尽力をいただいておりまして、深く敬意を表したいと思っております。  特に今、大店舗の皆さん方に押されて中小企業が非常に苦しい立場にあることもよく存じておるわけでございますけれども、今回の政府の、銀行が母体行で経営しているノンバンクに六千八百五十億のお金を投資をしなければならないということに対して、非常に大きな団体を指導されておりますが、おたくの組合員の皆さん方はこの不良債権処理の六千八百五十億についてはどういう御意見をお持ちなのか、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  41. 古関忠男

    古関公述人 ただいまの御質問でございますが、手前ども、小零細企業が圧倒的に多い、そういう中での住専問題についての率直な御意見でございますが、中小企業倒産ということになってきますと、仮に百万程度の手形が落とせなくても、場合によっては自殺をしてまでも事の処理に当たる、厳しい経営姿勢でいるわけでございます。そこまで経営という問題についての責任あるいはまた倫理観、こういうものが中小企業の中では圧倒的に占めている。  そういう観点からいいますと、公的資金の導入等につきましての是非論は大方の御意見のとおりでございますが、あえて手前ども申し上げたいのは、経営責任をもっと政府関係においても厳しく追及されるようなことであってほしい。  と申しますのは、先ほど申し上げたとおり、中小企業は命をかけてもこれを、だめなものは責任をとるということまであえてしているような次第でございます。それだけに、特別の機関だからよろしいということにはつながらない。そういうことがはっきりしておれば、政府資金、公的資金の導入もやむを得ない。これは、要するに使い道ですね。出したお金が必ず返ってくるような仕組みをどうかひとつお考えいただいて、出しっ放しでなくて、そういったこともぜひひとつ御検討賜れば、中小企業経営者も十分な御理解が得られると思います。  手前どもそれぞれが商売をやっておりますから、経営者でございます。ただ大きいか小さいかの問題ですけれども、経営責任と倫理観は、中小企業は圧倒的にそういった問題で左右されておりますので、またそれがあってこそ今日の中小企業経済の大国があったわけで、資本主義はそこからスタートしているのです。水膨れじゃない、バブルじゃない、筋肉質でなければいけない。これは司馬遼太郎先生もおっしゃっておりました。それがあってこそ今日の日本経済があったのです。中小企業はそれに徹しております。そういった観点から、水膨れの中で育ったような無責任な経営姿勢は到底許しがたい。そういった点を改めて御検討いただければ大変ありがたいと思っております。  以上でございます。ありがとうございます。
  42. 川島實

    ○川島委員 最後にもう一度清水公述人にお伺いをしておきたいのですが、国会でこれだけ時間をかけて住専問題について本当に議論をしてまいりました。我々も、政府がごり押しに、これをきちっとこの政府案でいかなければ、金融不安が起こってもっともっと大変お金をたくさんつぎ込まなければならない、それから農協系の系統の金融機関も幾つかつぶれてしまうという、非常に、昔のような、オオカミ少年ですか、こういうことでわんわん攻められてきておるわけでございます。  だから、保険機構が戦後五十年の間にきちっとでき上がって、農協系も銀行もきちっと預金者に対する処理があるわけでございますから、今の政府案よりも会社更生法できちっと処理をして、そして農協系もつぶれることはない、母体行の方もそんな心配はない、もし心配があったときには保険機構で処理をすることができる、こう言い切れるわけなんですね。最後にその点の御所見をお伺いをして、終わりたいと思います。
  43. 清水直

    清水公述人 ただいまの御質問にお答えいたします。  例えば、会社更生手続を適用しました場合でも本来の業務は続けておりますので、したがいまして、住宅ローンのような正常債権は日に日に回収されます。それから不良債権もどんどん回収します。そういたしますと、年間二千億、三千億というお金更生会社に返ってくるのでございます。  それをどこかにやはり預金しなければならぬのでございます。それを、母体行は十分力があるのでございますから、農協さんに預金してさしあげれば、農協さんは十分それで資金繰りは回っていきます。もちろん損益は利息が入らなければプラスにはなりません。しかしそれは、先ほど申し上げましたように、信連その他の統廃合をやるというふうなことによりまして合理化をしていく。金繰りをつけた上で、そして実際の農協自体の改革というものをおやりになりまして、そして、この更生計画で切り捨てられる部分があっても大丈夫なような体質をその間におやりになればいいのではないかと思うのでございます。  したがいまして、これが破産ですとそういうわけにはまいりませんけれども会社更生ですと手続の進行過程でも大変柔軟な対応ができて、農協を救済することもできるということでございます。  先ほど私、一つ御質問の中で言い忘れましたが、法体系を乱すということの中で時効のことを申し上げましたけれども、そのほかに無税償却あるいは税の減免、そのようなことまで入っております。なぜ住専だけこれを認めるのでございましょうか。このような不良債権で困っているところはたくさんございます。  それから、先ほどの最後のところでございましたが、住専で六千八百五十億といいますけれども、実際には日本列島全体では不良債権は四十兆あるだろうと言われております。実際にこれはどれだけの金額かは調査しなければわからないかもしれませんが、少なくとも十兆円単位でまだまだ背後に控えていることだけは間違いないと思います。それは、銀行そのものの不良債権、銀行の系列の子会社のノンバンク、独立系のノンバンク、ノンバンクの全部の融資は八十兆円からございます。これらが第二次、待っているのでございます。それらを全部考えた上で六千八百五十億でなければいけないのに、六千八百五十億だけ先行いたしますから、国民は、これは最初に風穴をあけて後からもうなし崩しにやられるのじゃないかというふうに危惧しているのでございます。  どうぞ、不良債権の全貌をお調べになった上で、金融システムの維持のための法案をお出しいただきたいと思います。
  44. 川島實

    ○川島委員 ありがとうございました。  時間ですので、終わります。
  45. 上原康助

    上原委員長 これにて川島君の質疑は終了いたしました。  次に、松本善明君。
  46. 松本善明

    ○松本(善)委員 公述人にお願いしたいのは、この後本会議もありまして、お答えはできるだけ簡潔にお願いしたい。  まず清水公述人から伺いますが、私ども、六千八百五十億をこの予算から削除することに賛成であります。母体行が全部持て、こういう考えであります。今お話を伺っておりますと、住専というものの特殊性、それがちょっと抜けているのではないだろうか。この住専というのは一般会社ではありません。母体行の子会社、別働隊、あるいは一業務部門とさえ、このお席で自民党の議員は言われました。そういう性質のものでありまして、総理大臣もそういうふうに言っておられる。バブルのときには住専を使って母体行が大もうけをして、ぼろもうけをして、その後、不良債権を押しつけて、そしてごみ箱のようにして、さらに農協系統にそのごみ箱を押しつける。言うならば、母体行の責任が極めて重大なんですね。公述人のお話の中ではその問題が抜けているように思います。その点についてどうお考えになるか。特に、母体行に全部責任を負わせるということについて賛成なのか反対なのか。  もう一つ会社更生手続をおっしゃいましたが、これは司法手続ですから、それが認められるとは限らないんですね。認められない場合には破産手続に移行をすることは御存じのとおりで、そうなりますと、公述人も、税金を入れなきゃならぬ場合もあるかもしれぬ、住専処理機構に移行することもあるかもしれぬということを先ほどちょっと申されました。破産手続に移行するということになりますと、それは強制和議とか、それから農協系統は損害賠償をやるとか、いろんな事態は予想されますが、基本は比例配分ですね。そうしますと、母体行は債権は約半分になります。そういうふうになりますと、やはり農協系統の金 融機関の第二次破綻ということが確実に予想され、その場合に公的資金の導入ということが予想されます。そういう問題についてどうなのか。  九一年、九二年の大蔵省の調査公述人はどの程度ごらんになったかわかりませんが、完全に破綻状態です。担保は上位五十社について見た場合に、わずか二四%しかありません。そういう状況のもとで、会社更生ができるんだ、できるんだということでは事は済まないんじゃないか。それらの点について公述をしていただきたいと思います。
  47. 清水直

    清水公述人 最初に、母体行責任についての私の方の触れるところはなかったという御指摘でございますが、責任論がかなり、この国会におきましても、あるいはマスコミにおいても取り上げられているのでございますが、この責任論をお互いに言っておりますというと、延々と続くだけでございます。それでいながら住専は日に日に、先ほど申し上げましたように劣化していくという状況にございますので、直ちに処理をしなきゃならないというのが私の提案でございます。  したがいまして、この母体行にどれだけの責任を持ってもらうかどうかということは、更生計画をつくる段階でそれを調査した結果の責任の所在によって明らかにすればいいんではないか。管財人が母体行に対して損害賠償請求をする場合もございましょうし、それからまた農協系から母体行に対して損害賠償請求するというケースもあると思います。ございますけれども、いずれもそれは司法で判断してくれることでございまして、これを我々がこの場におきましてどちらに責任があるという形に決めていきますというと、本件はまとまらないということになるんじゃないかと思います。したがいまして、これは今後の更生手続の中での究明によって責任が明らかになっていくんではないかと思います。  それから、破産手続に移行した場合には母体行が五〇%ぐらい回収するではないかという御指摘でございますが、確かに、破産に行った場合の一つの想定としては考えられますが、しかし、本件につきまして、更生手続に一たん乗りました場合は、まず間違いなく私は更生手続で終了していくだろうと思います。それはどういうことかといいますと、農協系統にいたしましても、破産手続に行くよりか更生手続の方が農協系統にとってもプラスである、先ほど申し上げた実質的衡平が保てるという点でメリットがあるので、最終的に更生計画には賛成していただけると思います。
  48. 松本善明

    ○松本(善)委員 古関公述人に伺います。  今年度予算中小企業対策費は千八百五十五億円であります。住専対策六千八百五十億はその三・七年分であります。中小企業立場から、この六千八百五十億の住専対策費用に反対か賛成か、簡潔にお答えいただきたい。
  49. 古関忠男

    古関公述人 先ほど申し上げましたとおり、要はこれからの公的資金の出し方それから経営責任の問題、これがはっきりしていれば理解がいくということが一般中小企業の、これは経営者みずからの立場から見た場合での意見ですね。あくまでも責任とるところはとらせろ、そして出したものは必ず回収するよというような方向がはっきりしていれば、一時的にはやむを得ないということでございます。
  50. 松本善明

    ○松本(善)委員 大蔵省の調査を見ますと、もうめちゃくちゃですわ。もう経営責任も、何も担保もとらずにどんどん貸しているし、それはもうお話にならないです、まあここではやりませんが。  樋口公述人に伺います。  介護保険の問題で、公述人も申されましたが、保険あって介護なしというようなことになっては大変なことであります。私どもは、公的介護の水準を抜本的に充実をさせること、措置制度は残して保険制度と組み合わせること、保険料は定額制ではなく定率制とする、先ほど公述人もおっしゃいましたが。高齢者や低所得者からの保険料の徴収を行わないこと、企業負担を明記をすること、若年障害者を給付対象にすること、高齢者医療の前進に役立つものにすること、消費税とは絶対にリンクさせないこと、こういうことが必要ではないかと思います。  限られた時間でありますけれども、お答えをいただきたいと思います。
  51. 樋口恵子

    樋口公述人 お答え申し上げます。  今先生がお出しくださった条件の全部を、今頭に全部入っておりませんので、一つ一つについて申し上げることはできないかと思いますけれども、保険あって介護なしにならないように、私は、これは個人的にはでございますけれども、新たな介護基本法のような法律をつくるべきだと思っております。もちろん、介護保険が実現すればそれは法律ができるわけでございますけれども、さらにそれよりももっと基本的な、今の老人福祉法をもう一度見直して、そして介護をみんなで支え合っていくという理念を盛り込んだものをつくらなくてはいけないと思っております。  先ほど来住専の問題が出ておりまして、これも本当にいろんな御意見、ごもっともと思われる御意見、多々きょうは伺わせていただきましたが、住専がどうでもいいなんて言っているんじゃ全くございませんから誤解しないで、私は最初に申し上げたとおりの意見を持っておりますけれども、日々劣化していくのが住専経済状況だとするならば、高齢者介護の方も日々、このままでおいては問題が深化していくのでありまして、高齢者の介護対策は本当に待ったなしであります。ぜひ六千八百五十億に匹敵する、あるいはそれを上回る介護のためのお金をかけ、かつ質の高い介護が住民の身近なところで、そして高齢者最優先の原則でいきますことを加えて申し述べて、お答えにならなかったかもしれませんが、以上でございます。
  52. 松本善明

    ○松本(善)委員 終わります。
  53. 上原康助

    上原委員長 これにて松本君の質疑は終了いたしました。  これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後二時から公聴会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十九分休憩      ――――◇―――――     午後二時開議
  54. 上原康助

    上原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  平成八年度総予算についての公聴会を続行いたします。  この際、公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成八年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  御意見を承る順序といたしましては、まず大場公述人、次に島田公述人、続いて禿河公述人順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、大場公述人にお願いいたします。
  55. 大場智満

    ○大場公述人 大場でございます。  きょうは、五つの問題についてお話し申し上げようと思っております。  第一は、今回の予算の前提になっております日本経済あるいは世界経済についてごく簡単に申し上げたいと思います。  第二は、私が非常に大きな関心を持っております財政の赤字の拡大の問題についてお話し申し上げたいと思います。  第三に、住専、最近では昨年の六月以降、大体英語でもジューセンという言葉になっておりますが、住専の問題。私は、銀行の不良資産の問題と して外国では取り上げておりますけれども、その問題について、主として外からどのように見られているかというお話を申し上げようと思っております。  それから四番目に、これらの点と関連しておりますが、日本の経常収支の黒字の問題について、一言で言えば黒字を余り早急に減らす必要はないという観点から若干お話を申し上げようと思っております。  最後に、二つの空洞化と申しますか、製造業企業進出、アジアを中心とする地域への企業進出によりまして、アジアで雇用の増加、設備投資の増加が見られますが、それが我が国においては逆に雇用の減少、設備投資の伸び悩みにつながっていくわけでありますが、この問題は、もし時間がございましたら触れたいと思っております。  まず最初経済見通しについてですけれども、来年度に関する限り政府経済見通しは当たるのではないかと思っております。  これまでは、政府の見通しはいつも高過ぎる成長率を掲げてきたわけです。三%前後の高い成長率を掲げてきて、一年たつとゼロ成長になっております。そのために若干の問題が生じたわけです。一つは、成長率が高いわけですから、税収がやや過大に見積もられるということで、予算編成時点で財政の赤字が小さく出るという問題がありました。もう一つは、成長率が高いわけですから、円は強くなるという方向に動きやすいわけです。この二つの副作用があったかと思います。しかし、それは過去のことでございまして、来年度に関する限り二・五%という政府の見通しは当たるのではないかと思っております。  ただ問題は、アメリカの成長率、アメリカの潜在成長率は二・五%と言われておりますけれども、今の動向で見ておりますと、二%を割っていくのではないかという感じを持っております。それからまた、フランス、ドイツも十二月までは二・七%前後の成長だと言われていたものが、現時点では二%を割って一%に近づきつつあるという状況であります。ですから、日本の成長率が上がり出したときにアメリカ、ドイツ、フランスの成長率が下がりぎみになっていく、これは為替相場その他に若干の不安定な影響を与えるのではないかと思っております。  さて、二番目の私の関心でございます財政の赤字の拡大の問題についてお話し申し上げたいと思います。  昨年十月に、プラザ合意から十周年ということで、当時のアメリカのベーカー財務長官とかイギリスのローソン大蔵大臣を初めとして、当時この会議に参加した大蔵大臣、蔵相代理または中央銀行総裁にもお集まりいただいて、十年後に過去を振り返り将来につなげるという会合を持ったわけであります。  その際、私が非常に強く感じましたことは、十年前にアメリカの強いドルを弱いドルに変えようとしてプラザ合意を開いたわけです。そのときに、私たちはアメリカに対して財政の赤字を減らせという強い要請をいたしました。これに対して、アメリカは日本に向かって内需拡大をやれという要求になったわけであります。内需拡大は、刺激的な財政政策及び金利の低下という要請です。  十年たちました。昨年の今ごろ私が考えておりましたのは、強いドルを弱いドルに変えるというのが十年前であったのですが、今度は、昨年の今ごろになりましたら、強い円を弱い円に変えたいということになったわけです。ところが、当時日本がアメリカに要求しましたのは、財政の赤字の拡大を防げ、財政の赤字を減らせということでした。十年前と同じです。アメリカは日本に対して内需拡大を依然として求めてきているわけです。これも十年前と同じです。どうしてドル高を是正する十年前と円高を是正する昨年とで日米両国の政策協調が同じ取り合わせなんだろうか、私は不思議に思ったわけです。  ということは、昨年が過渡期に当たるのではないかということかと思います。つまり、アメリカの財政の赤字は、昨年中におおむねGDP対比で見まして二%に近づいております。ですから、クリントン大統領やルービン財務長官が胸を張るのも無理はないかと思います。これに対して、日本財政の赤字は、いつの間にかGDP対比で五%になろうとしております。イタリアが六%ですから、イタリアと日本といずれが財政の赤字が大きいかという状況になってしまいました。  昨年の秋、ヨーロッパのある大国の中央銀行の総裁と話しておりましたときに、その国の政治家の間で日本とイタリアとどちらがいい国かという議論があったという話を聞きまして、私は大変ショックを受けました。そのイタリアと比較される一つ財政の赤字の大きさにあるのではないかと私は考えております。去年からことしにかけては、その意味でアメリカと日本立場を入れかえた年かな、特に財政の赤字につきましては。  と同時に、日本財政の赤字について見てみますと、来年度につきましては、まだ景気回復ということを考えて公共事業の拡大に配慮しております。片方でディスクロージャーといいますか、財政の赤字の大きさを国民に示すとともに、他方、公共事業の拡大は続いているわけです。ですから、来年度一年はディスクロージャーと景気回復という両方でいくしかないのかなと思っております。しかし、再来年度につきましては、これは私の独断かもしれませんけれども、公共事業の支出を中心にして、歳出の見直しをしていただきたいなと思っております。  アメリカ、フランスは、御承知のように、既に公共事業をカットすることではとても財政の赤字は減らせないという状況で、アメリカの場合には医療保険、老人福祉を切っておりますし、フランスの場合も、公務員の年金につきまして三十七年六カ月の受給資格を四十年に延ばそうとしてあのストライキにぶつかったわけであります。私は、両国が社会保障にまで切り込もうとしている、そういう状況にあるわけですけれども、その両国の財政の赤字は日本より低いという状況に着目しております。  このたび、ヨーロッパを回りまして、各国の中央銀行の総裁とも若干お話をしてきたわけですけれども、その中で一つだけ気がつきましたことは、どうもケインジアン政策といいますかケインズ理論といいますか、ちょっと受けとめ方が違ってきているかなという気がいたしました。  つまり、統一通貨に向かっために財政の赤字を減らさなければいけない。これはGDP対比で三%以下に財政の赤字を減らしませんと統一通貨に参加できないわけですが、フランスもドイツも今三%以下に財政の赤字を減らそうとして努力しているのですけれども、もしこれを二年以内に強行していきますと景気に対してマイナスの影響を与えるのではないかという問いかけをしてみたわけですけれども、違うという答えが返ってまいりました。財政の赤字を減らすことによって金利を低下させることができる、それは将来の成長につながるのではないかと。ですから、この考え方は、ケインズの考え方からずれてきているというふうに受けとめたわけです。  時間のことを気にしながらお話ししなければいけないものですから、次の問題に移りたいと思います。  住専の問題、日本銀行の不良資産の問題ですが、私は、公的資金の投入が外国では、G7、まあ大蔵大臣の間では当然そうであったようですけれども、ロンドン、ニューヨーク、シンガポール、香港という資本市場において高く評価されているということに注目しております。ですから、国内では大変評判が悪いのですけれども、外ではこれで日本銀行の不良資産の問題をクリアできるのではないかという状況になっております。  ですから、御高承のとおり、ジャパン・プレミアムはほとんど解消いたしました。一時は、いい銀行でも四分の一%、〇・二五%、少しよくない銀行ですと四分の三%、〇・七五%のジャパン・プレミアムがついていたわけです。ですから、平 均〇・五%といたしますと、日本銀行の借入総額は、ドルについてですけれども、約一兆ドルでございますから、その〇・五%といいますと五千億円の金が外に余計に流れていた。まあ、取られていたということになるかと思います。それが解消しております。これは昨年の十二月以降の問題であります。もともとこのジャパン・プレミアムについては、私は本当に怒っていたわけです。世界で最大の債権国日本は、今八千億ドルの対外資産超過の国ですから、世界で最大の債権国日本銀行が、世界で最大の債務国アメリカのドルを借りるときに何でジャパン・プレミアムがつくのか、〇・五%余計金利を払わなければいけないのか。非常に腹立たしい思いをしていたわけです。もちろん、日本銀行が、国際取引というのはドルの取引ではないかと考えて円を使う努力をしていなかったということも大きな問題かとは思いますけれども、いずれにしてもおかしなことであったわけです。これは日本銀行に対する信認が低下したということを物語っていたわけです。  アジアに対しても日本銀行は大変大きな貸し付けをしております。今アジア全体で、世界の銀行は、これは主として先進国の銀行ですけれども、おおむね三千億ドル、二千五百億ドルぐらいでしょうか、を貸し込んでおります。このうちの千億ドルは日本銀行が出しているわけです。ですから、日本銀行が揺れるということは、アジア諸国にとって非常に大きな脅威になります。インドネシアとかタイとかオーストラリアはドル建ての借り入れ、長い借り入れですけれども、大体四百億ドルぐらい持っておりますが、そのうち二百億ドルは日本銀行からの借り入れです。その日本銀行が貸しにくくなったときに、アジア諸国のファイナンスというのは困るわけです。ですから、彼らも非常に息を詰めて日本銀行の行方を見ていたのだと思います。幸いにして現時点ではジャパン・プレミアムはなくなり、またアジア諸国もややほっとしているという状況かと思います。  四番目に、経常収支の問題についてはごく簡単に申し上げます。  先ほどイタリアと日本が比較されているというお話をいたしました。イタリアと比べて日本の強みは、経常収支の黒字があるということです。国内的に言えば貯蓄超過が多く、これを資本輸出という形で各国に流して各国のファイナンスを助けているというところにあります。したがって、黒字は大事にしていかなければいけないと思っております。少なくとも政策目標として意図的に経常収支の黒字を減らすという政策はとるべきではないと私は考えております。高齢化の進展とともに、必ず貯蓄超過は減少していくわけです。と同時に、水際で見れば、輸入が増加し、輸出がやや伸び悩むということになっていくわけですから、この状況を意図的に進める必要はないと私は考えております。  最後に、空洞化問題について一言申し上げたいと思います。  製造業企業進出、それは当然円高のもとで、当初は日本製造業がアメリカに工場をつくり、次いでASEAN諸国、中国に工場をつくっていったわけです。アジアの高い成長というのは、もちろんアジア諸国、特に東アジア諸国の豊富で質のよい労働力、政治的安定性、高い貯蓄ということに依存しているとは思いますけれども、それに加えて、日本製造業の直接投資が大きな役割を果たしたと思っています。しかし、アジアで雇用を増加させ、設備投資を増加させるということは、我が国で雇用の減少、設備投資の伸び悩みにつながるわけです。  国内で、ではどこで雇用を創出したらいいか。これはアメリカ、イギリスの例を見てみますと、一つは、高度情報関連産業で雇用を創出しております。またもう一つは、金融業を含めたサービス関連産業で雇用がふえております。日本は、規制というのが主たる原因かと思いますが、サービス産業、特に金融業では雇用が減り続けております。この状況を何とか変えなければいけないのではないかということを考えているわけです。  この点につきましては島田教授がお詳しいと思いますので、この雇用の問題に触れたところで、私の陳述を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  56. 上原康助

    上原委員長 どうもありがとうございました。  次に、島田公述人にお願いいたします。
  57. 島田晴雄

    ○島田公述人 島田でございます。  私は、一市民の立場といいますか、国民の立場から、来年度予算編成で非常に大きな関心を呼んでおります住専問題に焦点を当てながら、日本経済の再生戦略というものをどう考えるかということをお話し申し上げたいと思います。  住専問題に象徴される金融システムの危機の問題というのは、あたかも心臓や血管など血液循環器系統にがんが発生した、それが転移をした、こういうような状態であろうかと思います。もしがんであるならば、早期発見、早期治療というのが鉄則でございますが、それに失敗をした、そこで今や大手術が必要だ、こういうことだろうと思います。金融機関の体力ではこの手術に耐えられないということなので、輸血が必要だ、公的資金が必要だ、こういうことになっているかと思います。  ただ、手術というふうに考えますと、これは常識でございますが、これだけのことをやるときにはインフォームド・コンセントというのをとるのが常識になっております。つまり、患者に十分説明をして、納得を得て、その上で手術を行うということでございます。金融システムの大切さということについては、国民はだれも承知しているだろうというふうに思います。ただし、国民の血税を本当に必要で、正しい使い方で使うなら、私は、国民の承諾は得られるはずだ、こういうふうに思います。そしてまた、処置は早ければ早いほどよい、とりわけ国際社会の信用ということを確保するためには、時間の浪費は許されないということもございます。  ただ、現在の政府案は国民の理解と納得を必ずしも得ていないのではないかというふうに思います。国民にはかなりの疑念がございます。そしてまた、一部に怒りもございます。これを軽視してはならない。これを軽視するとすれば、これは重大な政治・行政不信につながっていくおそれがあるからでございます。  国会論議を通じて先生方が大変御努力をなさったことは大いに多としたいところでございますが、正直言って、一国民の立場からいろいろ資料も読ませていただきましたが、余りに判然としないところが多い。  財政資金について、六千八百五十億円ということがありますが、その根拠というのがどうかということでございますけれども、六兆四千百億円の一次損失、これを母体行、一般行、農林系で痛みを分け合うということで、ぎりぎりの線あるいは総合的な判断という御説明以上の説明がない。  また、理由については、公的資金は本来、整理、清算のために最後の手段として使うべきことであろうかと思いますけれども、果たしてそういうことになっているのかどうか。農林系の金融機関の救済という色彩がないのかどうかということもございます。また、責任でございますが、つい先日、参考人の多くの方々の証言をいただいたわけでございますが、国民もテレビを注視しておったわけですが、もう一つよくわからない。  他方、法的整理という考え方もあります。法治国家でございますから、破産法もございますし、けさもそういう議論があったかと思いますけれども、こういうものに基づいてきちっと整理するとどうなのかということも、大いに国民の前に出して議論すべきことなのではないかというふうに思います。そうでなければ、一体何のために我が国には法律があるのか、このことが問われざるを得ないだろうと思います。  もう一つ経済的影響ももう一つ判然といたしません。公的資金を入れなかったらどうなのか、あるいは他の選択はあり得ないのか。いろいろな それら選択肢について十分説明をして、なおかつ、本当に納得のいく形でこういう公的資金を早急につぎ込む必要があるんだということであるならば、私は、国民はそれを認めるのに全くやぶさかではないのではないか、こういうふうに思います。  国民の大きな疑問は、こういうことだろうと思います。一つは、本当に必要なのかどうか、そして、今行われている案が正しい使い方なのかどうか。国民一人当たり赤ちゃんを含めて五千円と言われていますけれども、二次損失の負担の部分まで入れれば約一万円。しかしこれは、今日の税構造を考えますと、中産階級の普通の家庭にとっては十万円から二十万円の負担になる、相当な大きなものでございます。したがって、相当な覚悟でこれには臨まなければならない。本当にこれだけ出せば済むのか、あるいはこの使い方で日本経済回復するのか、そのことを一番国民は知りたいんだろうというふうに思います。  そこで、大きな疑問がわいできますのは不良債権の規模でございますけれども、大蔵省の当局は、昨年、この規模は約三十八兆円であるというふうに発表をいたしました。しかし、その中にはノンバンクのものは含まれていない。あるいは、共国債権買取機構で十兆円ほど買い取っておりますけれども、これは本当に処理をまだしてないわけですから、したらどうなるのかということも足し上げていくと、もっと大きいのではないかという専門家の方々の意見もございます。また、諸外国の専門家は、日本は実は六十兆円から百兆円あるいはそれ以上の不良債権を抱えているのではないかということがさまざまな資料で書かれており、また発言もされております。  アメリカのSアンドLのケースでは、不良債権が十八兆ぐらい、今の為替レートに引き直しますとそのぐらいあったと言われておりますが、これを処理するのに財政資金九兆円が使われたということでございます。全く同じ性質のものではございませんから同列に論ずることはできないとしても、もしそういうことを考えると、果たしてこれで日本経済はよくなるのかどうなのか、見通しがもう一つわからないということだと思います。  大蔵省は、試算に基づいて、政府当局は、三十八兆というのが不良債権の総額であり、また、ノンバンクなどには公的資金は一切出さないということになっておりますけれども、果たしてそういうことで済むのかどうか、国民には大きな疑念が残らざるを得ないと思います。  例えば、それでは木津信用組合の一・二兆円はどういうことなのか。あるいは兵庫銀行が、三月の時点では五百億円程度の不良債権しかなかった、ところが八月には一・五兆円になって、もちろんノンバンクその他ひっくるめたということだと思いますが、そうであるならば、なおさらもっと大きな問題が背後にあるのではないか。ましてや、共同銀行方式その他で既に地方自治体の財政資金が投入されることになっておりますから、こういうことでいきますと、実はこの六千八百五十億円という程度ではなくて、本当の問題はもっとはるかに大きいのではないかということを国民は心配せざるを得ないわけでございます。  一部の専門家の方々は、この問題を処理するには公的資金ということで考えても十兆円ぐらいの規模のものが必要なのではないかということを言っておられます。我々が一番心配いたしますのは、実際の姿はどうなんだ。これをきちっと処理をしていこうと思って正直にやりますと、どのぐらいのものになるのか。今のようなやり方を続けていくと、ずるずるずるずるとなし崩し的に財政資金が出されていくのではないだろうか。住専の二次損失は十五年かけてということになっておりますけれども、ほかにモグラたたきのようにいろんなものがあらわれてきたら、一体これはどういうことになるんだということでございます。  そして、恐らく最大の問題は、農協は大丈夫なのかということがあろうかと思います。農協は六十八兆に上る膨大な貯金を持っておられますが、これは相当調達コストが高い。しかし、これをどう運用なさるのか。これまで住専に五・五兆円ばかりお預けになっていて、二千五百億円ほどの利子を受け取っておられたようでございますけれども、果たして住専整理されて、その後どういうことになるのか。この膨大な貯金を運用する能力が果たしてあるのか。  この基本的な問題、我々問わなきゃならないのは、農業そのものが収益力のある投資対象となってくれるのかどうかということでございます。その構造改革ができなければ、農業は衰退せざるを得ない。そうなれば、ずるずるずるずるとモグラたたきのような状態に陥らない保証がどこにあるのか。また、農協には足かけ四十万人程度の方々が職を求めていらっしゃいますが、その問題はどうなるのか。  さて、ノンバンクの問題はどうなるのか。ノンバンクには出さないと言っておりますけれども、兵庫銀行はノンバンクに足を引っ張られているわけでございますから、どういうことになるのか。  あるいは信用組合、信用金庫。もちろん健全な仕事をなさっているところが多いのですけれども、かつては集金の組織として非常に大きな役割を日本経済発展のために果たされたわけですが、今運用能力ということを問われると大変難しい問題がございます。あるいは生保。予定利率をどんどんと下げておりますけれども、果たして生保、損保は大丈夫なのか。  こういうことを国民は考えると、夜も眠れないということではないかと思います。また貧血になるのではないか、そして、信用秩序の維持のためということでまた輸血が求められるのではないか。国民にとって金融システムは自分の体の一部でございますから、必要なら出さないわけにいかないのは当然でございますが、要するに国民が一番知りたいことは、本当はどうなっているんだ、全体像はどうなっているんだ、何をどうしたら直してくれるのか、この点について突っ込んだ議論を国会でやっていただきたいということなんだろうと思います。これは急がなきゃならない。急がなきゃならないけれども、十分議論はしていただきたい、こういうことだと思います。  これまで日本政府は、とかく言われていることでございましたが、知らしむべからずよらしむべしというような性格があったと言われておりますけれども、そうは思いたくない。重要なことは、全貌をつまびらかにして、国会の場で明らかにして、そして国民とともに日本経済再生の総合戦略をどう描くかというところへ議論を持っていっていただきたい、少なくともその方向性を示し、その上で国民に受けるのか受けないのかの選択を問うてもらいたい、こういうことでございます。  さて、そこまで申し上げた上で、若干の私論を申し上げて私の問題提起とさせていただきたいと思います。  四つほどのポイントについて触れたいと思いますが、日本経済再生の戦略をぜひ国会でもう一歩深めて議論をしていただき、こういう考え方でやるんだから国民そろって協力していきましょう、そういう形で国民との社会契約をしていただくということが必要なのではないかと思うのですね。  その一点は、何といっても最大の問題は農業と農協の改革でございます。  そのねらいは、真の国際競争力のある産業としての農業に育っていただく。そして、農家の方々の生活の安定と向上を図れるようにする。そして、不可欠でございますが、農協がスリムで競争力のある企業体になる。こういう一連の改革をどのようなビジョンで行うのか、このあたりのところで突っ込んだ議論をしていただきたいというふうに思います。  現状の日本の農業は、農家三百六十万戸あるわけでございますが、うち自給農家が八十六万戸でございますから、販売農家が二百八十万戸。このうち専業農家は四十五万戸にすぎません。そして兼業農家が二百三十四万戸、第一種兼業が三十九 万戸、第二種兼業が百九十五万戸ございます。ここでの最大の問題は、産業としての農業を担う、中核になる専業農家をどう育てるかということなんですね。  ただ、この四十五万戸の専業農家の中身をよく見ますと、実は一部を除けば非常に競争力の弱い農家でございます。むしろ、逆説的ですが、第一種兼業、第二種兼業の方々の方が競争力が強い。といいますのは、ほかに所得がありますから、極端な話をすれば農産物は破格の値段で売ってもいいという競争力があります。  ですから、この問題をどう改革して産業としての農業を育てるのかということでございますが、私は常日ごろ、日本の農業はここまで来たら産業農業と生活農業というのに区分をして、長期戦略として農家に選択をしていただくことをお願いしなくてはならないのではないかというふうに思います。  産業農業としては、近代的で効率的な経営、例えば大規模な農業、技術集約をした農業、そして、都会地に直送をする情報グルメ農業といったようなことで農業が大いに発展する余地は十分あると思います。  そしてまた、新しい血を入れる、競争力を入れるという意味では、株式会社、農業法人というようなものを認める。そして参入を自由化する。そして土地の集約化を進める。一言で言えば、切瑳琢磨をして効率の高い農業を築く、こういうことでございます。これまでは農協が、戦後の経緯がございますから、農業事業については独占をしていらっしゃったわけでございますけれども、もうこの段階に来たら、あえて競争を導入して、農協と株式会社と切瑳琢磨をするということを認める必要があるのではないか。  そしてもう一つは、生活農業というものを大切にするということです。自給農家はもちろん生活農家でございますが、高齢福祉農業、あるいは環境保全農業、あるいは都会の子供たちを預かって自然の教育をしていただく文教農業というようなものもあってもいいのではないか。これは必ずしも農林省の政策体系ではなくて、他の省庁の政策体系の中で十分に大事にして、生活農業は大変大切な農業ですから――ただ産業ではございません、統計からも外す必要がある。ということでやれば産業農業は十分に育つ可能性がある。そして、これはよき投資対象となって再生のビジョンの中核になることができます。  日本には一億二千五百万の国民がいて、世界最高所得をはんでいるわけでございますから、世界じゅうから買い付けもしている、農業市場としては世界最良の市場なのですね。そして日本には、肥料も機械も大変な技術がございます。この農業資源の再編成さえ可能になれば、十分に世界最強の農業をつくることができるのではないか。その基盤の上に農協というものがさらに発展をする可能性がある。  このようなビジョンをぜひこの国会で御議論いただきまして、その上で住専問題に国民の納得を得る解決を示していただきたい、このように思います。  第二番目のポイントは、不良債権、特に土地ですけれども、この流動化をどうするか。これは急がねばなりません。  不良債権問題の不透明さの大きなポイントは、土地の底値が見えないことでございます。ですから、本当はどのぐらいの不良債権を抱えているのか我々にはわからない。不良債権の処理が行われておりますけれども、大半は帳簿上の処理でございまして、実際には売却処理はごくわずかでございます。したがって、市場価格は見えないのですね。共国債権買取機構が十兆円ばかりの土地を買いましたけれども、これは所有権を移しただけであって、現実の処分とは言えない。  アメリカでRTCが最大の眼目にいたしましたのは、一時は八千五百人の職員を抱えて努力をいたしました最大の力点は、土地の処分でございます、流動化でございます、証券化でございます。大量の土地を売り出せば地価が下がるのは当然だと思いますが、それが市場価値なのでございます。ですから売却を急ぐ。そうしなければ価値がわからない、計画が立たない、売却地の活用ができない。これを急がねばなりません。  最大の今の問題は、実はディベロッパー、不動産業の方々が最終借り手として土地を持っていて、塩漬けになっていて身動きがとれないということなのですね。これについて銀行はどうするかということが問われております。これをリファイナンスするのか、あるいは整理をして担保を預かって処分をして活用するのか、いずれにしても、この貴重な土地を一刻も早く活用するという方策を考えていただきたいと思います。  三点目を申し上げたいと思いますが、これは金融機関の改革でございます。  今日の金融機関が抱えております最大の問題は、日本経済発展の結果、もはや資金不足ではなくて資金過剰の先進国になった日本の中で、金融機関がそれにふさわしい構造改革、技術革新におくれをとったということから矛盾が噴出しているということだろうと思います。  資金不足のキャッチアップ時代には、預金獲得組織として多くの役割を信用組合も信用金庫も果たされたわけでございます。あるいは地方銀行も都市銀行も果たされた。しかしながら、今この膨大な資金の蓄積をどう運用するかの能力が問われている。その能力が、残念ながら必ずしも我々の望むようなものではない。  そして、特に動きが急速でございまして、自由化、グローバル化の中で大銀行の資本効率が問われております。リスク管理能力が問われております。これをどうするか。これを改善いたしませんとモグラたたきになります。  上位銀行は二十一行、地方銀行六十四行、第二地銀が六十五行、信金四百二十二、信組三百七十六、農協二千五百、信連四十七、すべて従業員を合わせますと百万人になります用地銀から信組までで四十六万人、こういう方々でございますが、この方々の資金調達コストというのは大変高い、そして運用能力が低い。ですから、このままでは正直言って多くの機関が存続困難になります。  それで、住専の貸し込みの問題も、実は重要な要因はそこにあったわけでございます。極めて構造的な問題です。上位行は規模が大きいのですけれども、資本効率が低く、利潤率が低い、そしてリスク管理能力が著しくおくれているという大問題がございます。このままいけば必ず自然淘汰が進むということは明らかです。  しかし、自然淘汰を信用秩序の不安リスクというものを最小にしながら行わせていくために、一刻も早く側面援助として不良債権の完全開示を進める必要がある。そして整理すべきはしっかり整理をする。その全貌を国民に示す必要があると思うのですね。そしてその整理のために公的資金を使うべきだ。そしてそうでないところ、つまり十分に再建の可能性のあるところ、力のあるところ、これは自力でもってリストラをしていただきますけれども、さまざまな形で支援をする必要がある。  恐らく人員を三分の一ぐらい減らさないと、日本の金融機関はコストの面からいっても水面に浮上してこないのではないか。それが行われ、運用能力も高めて体質を改善された上で初めて、先ほど大場公述人の言われた、今度は金融機関のサービス業としての雇用をふやすという展望が出てくるわけでございます。  それで、この大銀行については、銀行、証券の垣根の撤廃というのは世界の流れでございますから、株式市場、証券市場での能力、リスク管理能力、これを高める必要がある。郵貯の問題も当然この中にはかかわってくるだろうと思います。民営化というような問題も視野に入れなければならないかもしれない。いずれにしても、日本経済にとって最も重要なインフラである金融システムというものをはっきりと強化いたしませんと、ずるずるずるずると公的資金をつぎ込んで、日本は三等国に陥るという危険がございます。  そして、これにあわせて最後に申し上げたいのは、大蔵行政の改革でございます。  大蔵行政は、キャッチアップの資金不足の時代、大所高所から資金配分について有力な役割を果たしてこられた。管理市場、統制経済と言われましたけれども、一定の歴史的役割を果たしておられます。金融行政については、金融機関を育て、そして資源の配分を指導するという形でやってこられた。しかし、今日では大蔵省の活躍する背景は全く変わっております。資金過剰時代、ボーダーレス時代、グローバル化時代、むしろ産業の守護神としてよりは市場のルールを守る機関として編成がえをしていただくことが必要なのではないかと思います。大蔵省の組織改造問題というのがありますけれども、私はそこには立ち入りませんが、時代が変わっているということでございます。  このような問題の全貌を示して、日本経済の再生のための戦略の方向性をこの国会で示していただきたい。その上で、改めて国民に選択をさせていただきたい。まさに歴史の転換点で先生方の英知と勇気が問われているのではないでしょうか。(拍手)
  58. 上原康助

    上原委員長 ありがとうございました。  次に、禿河公述人にお願いいたします。
  59. 禿河徹映

    禿河公述人 御指名をいただきました全国働金庫協会理事長禿河でございます。  本日は、こういう席にお呼びいただきまして、大変ありがとうございます。  ここ数年来、信金、信組などの経営破綻が相次ぎました。また、三十八兆円と言われます多額の金融機関の不良債権の処理の問題が大きな問題になっております。本日は、そうした中で、主として勤労者を対象とする個人金融を担っております労働金庫が現在どういう課題に直面しておるのか、その辺を御報告いたしました上で、今後の金融システムの安定化のための諸方策ということに関連いたしまして、私ども労金業界が取り組んでおります状況を申し上げたいと考えております。  御承知かと思いますが、現在全国に四十七ございます労働金庫は、原則として一都道府県を地区といたします協同組織の形態をとっておる金融機関でございます。その会員は、個人会員もありますが、主たるものは労働組合であるとか生活協同組合、あるいは共済組合などの団体でありまして、労働金庫の機関連営はこれら団体会員の代表者によって行われております。  会員組織をとっておるという点では、信金、信組など他の協同組織金融機関の会員制度と共通でありますが、労働金庫の最大の特徴と申しますか、変わっております点は、これら団体会員に所属する組合員、これを私どもは間接構成員と呼んでおりますが、そういう組合員は、当然にと申しますか、別の言い方をいたしますと、出資金を払って会員になるということをしなくても預金とか融資とかいった事業の利用権を有しておる、こういうことでございます。  労働金庫の設立要件とか業務範囲とか、そういうものを律しております労働金庫法が公布されましたのは一九五三年、昭和二十八年でございました。この法律制定のときに行われました国会での御論議によっても明らかでございますが、こうした独特な会員組織、いわば団体主義とでも申しましょうか、そういう会員制度ができましたのは、労働組合の信用力を背景に、個々には信用力の弱い労働者に対して生活資金なり消費資金なりそういうものをファイナンスしていく道を開こうと考えられたからだと言われております。  そういうことで、設立以来四十年余りが経過しておりますが、現在、労働金庫は六万九千以上の団体会員、一千百万人の間接構成員を主な対象として業務を行っております。預金残高は昨年の十二月末で九兆七千億円に達しております。そのうち、間接構成員を中心といたしました個人預金は六兆一千億円で、六五%を占めております。中でも財形貯蓄のウエートは大きくて、預金総額の二六%、四分の一強に達しております。一方の融資残高でございますが、これは五兆七千億円、うち間接構成員を中心とした住宅ローン、小口の生活資金融資は五兆四千億円ということで、九四%を占めております。  こうした業容は、勤労者のための専門金融機関として設立されました労働金庫が、いわばその社会的使命を果たすべく忠実に、まじめに事業を遂行してきたことを如実に反映しているものであろうと私ども自負をいたしておるわけでございます。  なお、総量の二〇%以内ということで認められております員外預金、それに員外融資の比率は、少し時点は古くなりますが、昨年の三月末で、預金では五・四%、貸し出しては二・四%にとどまっておりまして、会員あるいは間接構成員中心の運営を行ってきておるということでございます。  念のため申し上げますが、労金は、今問題になっております住専に対する融資などの取引は一切ございません。  それ以外に、法制度によるものではございませんが、労働金庫の業務運営に当たりましての組織面での特徴をもう一点だけ申し上げますと、会員団体が自主的に組織しております労金運動推進機構というのがございますが、これはいわば労金の協力部隊として、職場単位、市町村単位、あるいはさらに都道府県単位に広く張りめぐらされていることでございます。このいわばボランティアによる機構が、一千万人を超える間接構成員との取引を円滑に進めていく上で大きな支えとなっております。こういう点をもっていたしましても、労働金庫は、協同組織金融機関の中でもとりわけ協同性が高いと言えるのではないかと思っております。  前置きが長くなりましたが、当面いたしております労働金庫の課題についてこれから申し述べたいと思います。  今申しましたような、これまで培ってまいりました会員との信頼関係をさらに強化すること、新しい金融商品を開発することなど課題はたくさんあるわけでございますが、とりわけここ一両年は、経営管理の徹底を最も重要な課題とする必要がある、かように考えております。  労働金庫も経営体でございます。会員の協力の上にあぐらをかくことはできません。日常の経営を負託されました経営者と申しますか、代表理事の責務として、良質な金融サービスを提供し続けるための厳格な経営管理を徹底する必要があると存じております。  各労働金庫におきまして、資産、負債の総合管理の徹底とか、勤労者の生活破綻を引き起こさない的確な融資審査の励行とか、余裕資金の安全かつ効率的な運用、あるいはまた自己資本の増強等が具体的に確保されなくてはならないわけでございます。  こういういろいろな問題がございますが、余裕資金運用に敷征して申し上げますと、バブル崩壊直後の九〇年度、九一年度、当時は預貸率が全国平均で五〇%を割り込んでおりました。そういう状況のもとで、有価証券運用に適切さを欠きまして厳しい決算を余儀なくされた金庫が、正直申し上げて若干発生をいたしました。私どもは、二度と同じ失敗を繰り返さないように、勤労者の大切な貯蓄を源泉としていることを肝に銘じまして、資金運用のあり方につきまして再三にわたって申し合わせを行ってきたところでございます。  これら若干の失敗と申しますか厳しい決算を余儀なくされました労働金庫の内容は、その後逐次改善を見てきたところでございますが、しかし、何と申しましても、余裕資金運用効率をアップさせるために最も重視すべきことは、四十七の労働金庫の系統上部機関であります労働金庫連合会の一層の体力強化、さらには機能強化を進めていく必要がある、かように考えております。  以上、労働金庫が当面いたしております課題について申し述べましたが、次に、今後の金融システム安定化のための諸施策に関連いたしまして、労金業界が取り組んでおる状況を申し上げたいと存じます。  さきの金融制度調査会の金融システム安定化委員会には私も特別委員として参加いたしたところでございますが、昨年十二月の金融制度調査会答申の冒頭にもありますように、各金融機関が自助努力による迅速な不良債権の処理を行った上で、自己責任原則の徹底を基本とした透明性の高い金融システムが早期に構築されなければならないと認識しているところでございます。  金融システムの一端を担っております私どもといたしましては、信頼される健全な金融機関を目指して、これまで労働金庫業態全体の信用力をより向上させるということを基本に置いた取り組みを進めてまいりましたが、これからもさらにその姿勢を堅持してまいりたいと思っております。  そのためには、やはり不良債権の発生の防止、早期整理も重視しなければなりません。大きな経営負担にはなっておりませんものの、不良債権は労働金庫にももちろんある程度はございます。私どもの協会におきましては、既に九二年から毎半期、その整理計画案とともに各金庫から報告を徴しまして、不良債権増加の兆候が見えた場合には警鐘を鳴らし、整理計画が妥当かなどの点検を行っております。  なお、先ほども申しましたとおり、私ども労働金庫は住専とのかかわりはございません。したがいまして、今回の住専処理策についてコメントする立場にはございませんが、一刻も早い、信頼される金融システムの構築に向けまして、迅速な対応が図られることを心から願っておる次第であります。  ところで、今後、業界全体の経営の健全性確保に向けて重視いたしていこうとする第一の取り組みは、経営の透明性の確保ということでございます。  協同組織金融機関とは申しましても、取り扱う業務の公共性にかんがみまして、広く市場からのチェックを受け、それを経営の自己規正のインセンティブとするいわゆるディスクロージャーの必要性は強く感じております。こういう観点から、労働金庫は、金融制度調査会の答申で不良債権の開示を完了すべきであると提言されております九八年三月期を待たずに、この九六年の三月期から、全国そろってすべての不良債権を開示することといたしております。また、不良債権以外の開示内容全般につきましても見直しを行ったところでございます。  次の取り組みは、業態内のセーフティーネットの強化ということでございます。  私どもは、労働金庫業態全体の信用力強化のために、一金庫たりとも経営破綻をさせない、そういう強い意思で自由化時代の競争に臨んでおります。そのために、系統上部金融機関であります労働金庫連合会の機能強化を背景として、経営内容が悪化した金庫を支援する業態内の仕組みをさらに強めてまいりたいと存じております。もちろん、そうした事態を未然に防止するために、現在協会が実施しております監査機構の監査などの方策も充実させてまいるつもりでございます。  第三の取り組みは、経営組織の変革、平たく申しますと、合併の推進ということでございます。  御承知のとおり、労働金庫の会員団体には全国的な組織を持っておるところが少なくございません。このため、利用条件の統一化あるいは利用先移転の簡便化などの要請が強まっております。業態全体の信用力向上のための施策は、広域的あるいは全国的な広がりを持っております会員基盤に立脚する労働金庫の場合、合併の問題を抜きにしては考えられないところであります。また同時に、経営体力を強めなければ、自由化が進む市場の競争の中で、勤労者の求めにこたえられる金融機関になり得ないということも厳然たる事実であろうと思います。  そういう認識に立ちまして、私どもは、この二年有余の検討を重ねました結果、昨年末に、経営組織の変革の方向性、つまり業態の合併の方向性につきまして一定の確認を行ったところでございます。これを受けまして、これから各金庫におきまして合併構想案の検討が進められることになると思っております。  最後に、金融行政のあり方につきまして、今国会で御検討なさるということを聞き及んでおりますので、二つほど要望を申し上げまして、終わりにいたしたいと存じます。  一つは、現在とられております協同組織金融機関の税制面での特別措置を継続していただきたいということでございます。ぜひともこういう協同組織金融機関の措置は継続する必要がある、こういうスタンスを維持していただきたいということでございます。協同組織金融機関としての特性を持っております金融機関、中でも協同組織性の強い私ども労働金庫は、今後とも、会員とか会員の構成員等の利用者の立場に立った融資等の業務を行ってまいる所存でありますが、その必要性、合理性ということにつきましては、八九年五月に取りまとめられました金制調第一委員会の中間報告でも指摘されておるところでございます。利用者との強い密着性と連帯性に着目していただき、税制面でも相互扶助組織としてとらえ続けていただくよう強くお願いを申し上げたいわけでございます。  二つ目は、個人の価値観の多様化であるとか就労形態の多様化とも関連いたしまして新しい協同事業等の形態が出現しておりますが、労働金庫の会員資格、取引資格につきまして、実態を踏まえた制度上の手当てを御検討いただきたい、こういうことでございます。  最後はお願いになりまして大変恐縮でございますが、以上で私の陳述を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  60. 上原康助

    上原委員長 ありがとうございました。     ―――――――――――――
  61. 上原康助

    上原委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。志賀節君。
  62. 志賀節

    ○志賀委員 ただいま委員長から御指名のございました自由民主党の志賀節でございます。  先ほど委員長からもお礼のごあいさつがございましたが、公述人皆様方、本当にきょうはありがとうございました。また、ただいまお三方のお話を一つ一つ丁寧に聞かせていただきましたが、いずれも大いに啓発をしていただけるお話ばかりで、それもまことにまとまりのいいお話で、まことに感銘を受けました。  これから若干の時間を拝借をいたしまして質問をさせていただきたいと存じます。  既に同僚議員の何人かから、今回の北海道におけるトンネルの崩落事故をめぐって、犠牲者の霊に対する追悼のお気持ちが披瀝されました。私もこの機会に、同じ気持ちを披歴をさせていただきたいと思います。  ただ、私は、同僚議員のいずれもが触れなかったことでございますけれども、一体この事故は何日間も中央紙のトップ記事を飾るような問題なんだろうかな、これはひょっとするとローカルニュースと受けとめてもいいような話なのだが、やはり二十名の人命はとうといのかななどということを、行きつ戻りつしながら考えておったわけであります。  私がこういうことを申し上げますのも、確かに御遺族のお立場になればこれは天下の一大事でございますが、もうちょっと私ども政治家は、広く眼を開いておかなければいけないと思うのであります。というのは、例えば今回の住専をめぐりまして六千八百五十億円のお金をこれにつぎ込むくらいならば、かくかくしかじかの事故のために、あるいは事故の起きないために使えたであろうものをというようなロジックがよく展開をされました。果たしてそうでありましょうか。  実は、私は岩手県の選出でございますから、岩手県には釜石という市がございます。釜石の野田武義という市長が、昨年のことでありますが私と会いましたときに、目に涙をためて次のごときことを言ったのであります。  明治の初年、この釜石は三陸大津波の大惨害に遭った。今の釜石市の地域でどれだけの人が死んだかというと、約一万二千人死んでおる。たったのと言っては失礼に当たるけれども、阪神・淡路の死者の倍以上死んでいるんだ。そしてその後、釜石が、三陸大津波ほどの大規模な災害が起きたときに、二度と再びこういう災害は防げるんだという状態になっているならばこれは何をか言わんやだけれども、今日それは十分ではないんだ、なお十分ではない。しかるに世の中は、新しく事故が起きたからというだけで、阪神・淡路、阪神・淡路へと草木もなびくように、政府の手当てから何から全部向くのは何事であろうか、こういうお話がございまして、私はそのお話を聞いて、まことに政治家は眼を広く開いておかなければいけないものであるということを痛感をいたしたのであります。  そこで、住専の問題でございますが、住専のこの六千八百五十億円の財政支出が行われなければ一体どういうことになるのであろうかということを私は絶えず考えております。しかるに、大方は余り考えておられないようである。特に私は、不満に思い、かつお願いをしたいのは、マスコミはシミュレーションがお好きでありますが、六千八百五十億円が使われなかった場合のシミュレーションをつくりもせず、つくろうともなさらないのは一体何だろうか。これは私も国民の一人として知る権利を主張したい。そういうことを踏まえていて初めて、六千八百五十億円を使うのはいいとかいけないとかということになろうと思うのであります。  その点私は、今大場公述人のお話を承っておりまして、海外から見ての、六千八百五十億円を計上したことだけでもこれだけの大きなものがあったということを理解をさせていただいたわけでございますが、この点についてさらに、あるいは先ほどのお時間で十分であれば何をか言わんやでありますが、もしもうちょっと触れたいというところがございましたならばお教えをいただきたい、そのことを大場公述人にお願いする次第であります。
  63. 大場智満

    ○大場公述人 ただいまの志賀先生の御指摘、御質問でございますが、先ほど私は、この住専問題の処理、六千八百五十億円が投入されたことによって、日本銀行のプレミアム、海外から借り入れるときのジャパン・プレミアムがほぼ解消した。もちろん、一部の余りよくない銀行については依然として八分の一%、十六分の一%程度のジャパン・プレミアムはついておりますけれども、全体として解消した。それは、一兆ドルの借り入れということを前提にしますと、一年間に五千億円日本の支出が助かるんだ。これは銀行の支出というだけではありませんで、回り回って、企業が借りるときに銀行がそれを乗せていきますから。もう一つは、開発途上国、特にアジア諸国に一千億ドルも貸しているわけですから、それにも高い金利といいますか、その金利部分が乗っていく可能性があるわけです。  ということを考えますと、日本銀行が引き続き国際業務に展開できるということのほかに、日本から外に対して少なくとも五千億円程度、それからさらにアジア諸国、日本銀行中心にアジア諸国は資金を取り入れているんですが、アジア諸国のファイナンスの状況に安心感が広がる。こういうことで、私は、外から見ると非常に大きな評価をされております、こういうことを申し上げたわけであります。  むしろ今、私、気にしておりますのは、最近のニューヨーク、ロンドン等の情報では、もし公的資金の投入がなかったならば一というのは、議会における議論が外に反映するときには、時として六千八百五十億円はよくない、あるいはこれを撤回しろというお話として外に流れていくわけですが、それを聞いたニューヨークやロンドンのバンカーとか証券業者は、本当に大丈夫なんだろうかと、もしそういうふうになったときには、自分たちはまた日本銀行の将来を心配しなければいけない。  それで、これは釈迦に説法でございますけれども、もし日本銀行が本当に困難にぶつかりますと、まずドルを売っていくだろう、ドルを売るというのは、ニューヨークで買っておりますドル建ての国債を売っていくだろうと思うのです。そして円資金にかえていくだろうと思うのです。借りにくくなるということは、資産を減らすというのが最初に対応としては出てきまずから。  ドル建て債をニューヨークで売るとどういうことが起きるかというと、今アメリカは何とかして金利を下げたいというときに、日本銀行がニューヨークでドル建て債を売りますと、これは金利が上がるわけです。ですから、アメリカが大統領選挙を控えて何とかして景気をよくしよう、景気が今落ち込んでいますから、それをもとに戻そうとしております。金利は今低目に持っていきたいわけですが、それと逆行する動きになります。  そういうことの影響を考えてみますと、今回の措置は、なかなか国民の御理解を得られないのですけれども、外から見ますと、一応日本銀行に対して心配しなくてもいいのかなという状況になっていると私は思っております。
  64. 志賀節

    ○志賀委員 もし六千八百五十億円を支出できないならばという表現ですら非常にデリケートな影響を及ぼすのだというお話、まことに理解がいきました。全くそうであろうと思います。  そこで、私はふと思い出すのでございますが、今やはり大場さんの方からお話がございましたフランスの昨年末のことでございますが、たしか、私の記憶に間違いがなければ、フランスの公務員に対する手当とかのカットあるいは福祉のカット、それから増税もあったかと思いますが、そういうようなことを政府が打ち出したことによって、ゼネストをもって国民の側がこれに刃向かう、こういう構図であったと思うのであります。そのときに、私が仄聞しておる話によりますと、もしフランス政府が腰砕けになったならば即刻フランは売りだというようなことで、投機筋はその態勢に入った、しかし政府があくまでも頑張ってしまったためにそういう事態を招かないで済んだということを私は聞いておるのでございますが、この辺の消息はそのとおりでございましょうか。  そして、もしそうであるとすれば、今私が申し上げた、これはもう政府がやることでないからお許しいただきたいのですが、まずマスコミでのシミュレーションをやった場合には、日本の円がどういうふうに展開するかどうか等もはかる上のよすがにこれはなろうかもしらぬ、こう思うので、伺わせていただきたいと思うわけでございます。
  65. 大場智満

    ○大場公述人 今、志賀先生御指摘のフランスにつきましては、先生のおっしゃるとおりの状況でございまして、かなり大胆な財政の赤字削減策をとったわけでございます。二年以内にGDP対比で三%以下に財政の赤字を抑えるという見地から、社会保障にまで手をつけたわけです。先ほど申し上げましたように、公務員の年金につきましては、三十七年六カ月で受給資格が出たものを四十年にするという極めて厳しい措置までとったわけであります。  ただ、日本と比較してまことに申しわけないのですけれども、フランスの場合には大統領の任期が七年ありまして、まだシラク大統領がその政策運営を始めたばかりです。ですから、不人気な政策をとりましても、まだ五年、六年あるのだからいっか挽回できるという状況にございます。ですから、成長率についていえば、極めて厳しい財政の赤字削減策をとることによって、一時的にリセッションに、短いリセッションに陥る可能性があるかもしれない、しかし中長期的に見れば必ず、財政の赤字の削減は金利を安くし、特に長期金利を下げ、それが高い成長につながるのだという確信を持っているわけです。  さて、円との関係なんですが、これは御指摘の趣旨と私のお答えとちょっと違ってしまうのですが、円レートに関していえば、この銀行の不良資 産の問題あるいは住専の問題を何も手をつけずに置いておきますと、これは円安要因であるわけです。ですから、逆に日本銀行は大丈夫だという政策を推進いたしますと、これはこの要因だけを取り上げますと円高要因になってしまうわけです。しかし、これは副次的な問題でして、その前に、先ほどから御指摘申し上げている日本銀行全体あるいは資本供給国としての日本の信認の問題が第一でございますから、その観点からしますと、現在政府によってとられている措置というのは外から見ると大変評価される、こういうことになっていくわけでございます。
  66. 志賀節

    ○志賀委員 もう一つ大場さんに教えていただきたいと思うのでございますが、先ほど、アメリカなどでも財政赤字を削減する上から公共事業等も支出を見直さなければいかぬ方向に今ある、そしてやっているというお話があったわけでございますが、現在、日本財政事情を見ておりますと、これからまさにそういう方向に行かざるを得ない財政状況ではないかと私も見ておる一人なのでございます、日本自体の財政状況を。  それで、ここで、日本特有のものというふうに言われておりますが、談合というものがございます。今よく世の中で規制緩和、規制緩和という言葉が言われておりますが、規制には官製の規制と民製の規制とがあるというふうに色分けをしておりまして、民製の規制も少なからずある、その中の恐らく最たるものの一つが談合であろうと私は理解をいたしております。  それから、恐らくこれに対して言及した方は一人もおられないのでございますが、私があえて冒険を言わせていただくならば、現在騒ぎになっておりますいじめは、談合の一形態ではないかと私は理解しておるのであります。  こういうことを考えていきますと、いかに談合というものが根の深い厄介なものであるかもわかるのでありますが、この談合ゆえに実は日本の公共事業費の単価が高くついておる、その他いろいろ不合理な面が出ておる。談合がもしなくなればこういう点はすっきりするのではなかろうかと思いますが、反面、談合がなくなることによって果たして有効に土木建築業界の運営はなされていくかどうかということも、私は全く素人であるがゆえに懸念を持つのでございますけれども、しかし、今後恐らく建設業の自由化もまた避けて通ることができない、そのときに、現在のままでいったら、日本のゼネコンといえども安泰ではおられないのではないかという危機感を持っておりますがゆえに、私はこういうことを言うのでありますが、この点に関しては何かお考えのことがございましたらば、お教えをいただきたいと思います。
  67. 大場智満

    ○大場公述人 この点に関しましては全く御指摘のとおりでございます。  一つだけ申し上げたいのは、最近アメリカ、ヨーロッパで公共事業につきまして、例えば道路の建設でも港湾でも民間にやってもらうという動きが出てきております。また、それはそれでいろいろな問題があるかとは思いますけれども、スモールガバメント、小さな政府に向かっていることは間違いないだろうと思います。日本の場合には、先生方のお考えいただくことでございますけれども、やはりスモールガバメントの方向に向かっていった方がよろしいのではないだろうかと私は考えております。
  68. 志賀節

    ○志賀委員 今度は島田先生にぜひお教えをいただきたいと思います。  私も、先ほど申し上げましたように、岩手県の選出でございますから、農業には少なからざる関心を有しておる者でございます。この農業がやはり収益力のある、しかも希望の持てる、そういう産業でなければ農協も健全になり得ないだろうということ、私も全く先生のお説のとおりだと思って拝聴したのでございます。  その農業に、先ほどお話がございました国際競争力を持たせるとか、あるいは今お話のありましたような収益力を持たせる、そういうことを十分にお話しになれば、これはもちろん一冊の本、二冊の本になるのでございましょうから、短時間にはここでお述べになり切れないだろうとは思いますけれども、本当に大ざっぱで結構でございますが、もしそのデッサン、先生のお考えのところを聞かしていただけますと非常に勉強になりますので、よろしくお願いしたいと思います。
  69. 島田晴雄

    ○島田公述人 志賀先生は日本でもよく知られた農政の専門家でいらっしゃいますから、そういう先生を前にして私のような者が御進講申し上げるというのはとても大変なことでございますけれども、あえて一若い分析者としての観点を申し上げさせていただきたいと思います。  今日の農業のやはり非常に難しい問題は、専業農家が力のある農家として育ちにくい状況にあるということですね。全国でいいますと、四十五万軒の専業農家がありますけれども、実はその過半はもう相当年配の農家で、後継ぎがあって新しい経営に取り組もうというようにやっておられる農家は、もちろんございますけれども、数がそれほどない。  それからもう一つ難しい問題は、専業でやっていくことが難しいということもあってだんだん兼業農家がふえてまいったわけですね。兼業農家が二百三十四万軒ありますが、実は専業農家と兼業農家を比べると、むしろ第一種兼業農家の方が耕地面積も広いですし、それから力もおありなんですね。  特に、例えば第二種兼業農家にしますと、例えば農協にお勤めになっていて、そして五百万の年収を持っておられて、そして一町歩の土地を持っておられて、今は技術が非常に進んでおりますから、肥料も機械も進んでおりますから、それでもって週末農業をやっても米はつくれますから、それで百万円ぐらいの米の収入あるいは百何十万円の米の収入を上げる。こういう農家は――実はすべて自由化いたしましたら、一番先にやられちゃうのが専業農家なんですね。これをどう越えるかというのが農政問題の一番のポイントかなというふうに私は思います。  ですから、ここは志賀先生に教えていただかなきゃならないところでございますけれども、専業農家で後継ぎがいて、本当に展望のある農家に土地を集約しやすくする法制度、それから税制も含めて支援の措置がとれないか。もちろん全国でそういう実験をたくさんやっているのは私も存じ上げておりますけれども、もう一段と思い切ったことができないか。  そして、そのときにやはり大きな問題は、兼業農家をそれじゃ切り捨てろというのか、こういう反発が出てまいりますので、そうじゃないんだ、兼業農家の中でも、土地は人に貸すけれども、自分はもっと――さっき申し上げたように、福祉農業あるいは文教農業あるいは環境農業と言いましたが、福祉農業というのは例えばこういうイメージでございます。  もし土地を取り上げられてしまえば、年配の方はやる気を失って、悪くすると特別養護老人ホームに入らなければならない。そうすると、国費で三十何万円もかかるわけですね。この方々に、むしろ野良に出て仕事をしてくださるだけでとてもいいので、五万円の福祉費を払うということで、ほうっておけば特別養護老人ホームに入ってしまわれるようなことのないようにする。こういう健康のあり方。  あるいは山間地の農業で、作物はとらなくてもいいから、緑を植えているだけだって環境にはいいんですから、これは別体系で補助をする。あるいは小学校の先生方が、最近なかなか林間学校も水泳学校もおやりにならない、事故で訴えられるのが嫌だという話も聞きますが、こういう場合に、農家であるいは漁村で子供たちを預かって、その方々に、一人預かったら月五万円というような補助金が出るということであれば、都会の子弟を預かるだけで生活農業をやれるわけですね。  そういう農業があるんだ、立派ななりわいなんだというコンセプトをつくりまして、そちらに行きたい方はどんどんそちらへ移って、そして土地は貸してやってください、専業農家は今度はそれ を集める。そして専業農家は、岩手のようなところは米の産地でございますから大規模農家ということが可能でございましょうけれども、もう少し東京に近い、あるいは情報通信を通じて東京とか大都市に農産物を送れるようなところは、情報グルメ農業として直送でもって付加価値を上げるというようなことを徹底的な企業活動で育てるというようなことが絵としてあるんですよということを政治家の先生方がお示しになって、農家の方々に選択をしていただく。いずれにしても、これは発展することですから、そういう形にできないか。  ところが、日本の生計費というのは諸外国に比べると著しく高いわけですから、この生活農業を農業という中に組み入れてしまうと全体としては競争力がなくなりますから、この生活農業は農業じゃないんだ、これは生きていらっしゃる、そういう別のことをしていらっしゃるだけで十分価値があるんだというふうに位置づけまして、農業は農業で、恐らく数十万でしょうね、やっていただくということが必要なんです。  それから農協について、口幅つたいようですけれども、農家の方々とお話をいたしますと、農協の肥料は実は別のところで買うより高いとか、むしろ農協は高く仕入れて高く売ってやっているので我々は近寄らないんだと言う農家が随分ございます。これは一部の姿かもしれませんが、やはりこれは農協に自己改革の努力が足りない。やはり競争相手がいないということですね。ですから、農協が、農業活動、経済活動については事実上独占になっていますけれども、むしろこれは法人形態、株式会社を入れまして、新しい血を入れて競争する。そうすると、やはり能力のある方々ですから、本気でやれば何割もコストを下げて蘇生するのではないか、こんなことを私は素人として考えております。
  70. 志賀節

    ○志賀委員 ありがとうございました。  そうしますと、先ほど御説明のございました産業農業でございますか、これは要するにペイするというか採算ベースに乗せていくという農業であり、生活農業というのは、そういうところはそろばんにおかないけれども、もっと生活に密着して、そして農業のあるべき姿を求めてやっていく、そういうふうに理解していいわけでございますね。ありがとうございました。  それから、時間がなくてまことに残念でございますが、禿河さんのお話を私も承りまして、今度の住専の問題にも全くかんでない、非常に立派な経営をしておられる。もちろん多少の不良債権はあるがという告白は承りましたが、それにしても、全体として見ればやはり称賛するに足るようなお仕事ぶりであったと思うのでございます。  私、そのお話を承っておりまして、ちょっと教えていただければありがたいなと思いますことは、金融機関を取り巻く状況はどこもかしこも厳しいことはそのとおりで、労金の場合もそのとおりでございましょうが、他の協同組織金融機関においても、合併、転換等が大きなテーマとしてこれから浮かび上がってくるであろう。ちょうどその折も折、今禿河さんが労金の合併を検討しておられるということにお触れになったわけでございますが、具体的にはこれからこれをどういうふうにお進めになる御方針であるのか、その辺をちょっと教えていただけるとありがたいと思います。
  71. 禿河徹映

    禿河公述人 私ども労働金庫の合併と申しますか、この問題につきましては、実は検討は長い経過もございます。先ほど申しましたとおり、労働金庫は都道府県単位で設立をされたわけでございますが、その後の産業構造の変化等々によりまして、会員団体、これが広域化し、さらには全国的に広がっていく。こういうふうな状況にだんだんとなってまいりまして、そういう状況を踏まえまして、これまでもいわゆる全国一本化と申しますか、統合化とかいうようなことが検討もされてきたわけでございます。  ただ、最近の金融自由化、こういう進展の状況に照らしてみまして、果たして労働金庫が現在の健全な姿のままでやっていけるかどうかということを私ども内部でもいろいろ検討をやってまいりました。  結論的に申しますと、いきなり一斉に全国一本化、統合に持っていくというのは余り現実的ではなかろう、やはりそれぞれの地域の事情もございますし、各金庫の状況、そういうものもございます。そういうことで、一昨年来、全国会員の代表の方々の御意見も伺いながら、一応合理的と思われる最終的な全国一本化の姿に向けて、今後どういうふうに持っていったらいいかということにつきまして議論を重ねてきたわけでございます。  基本的な方向を申し上げますと、当面は、まず同一経済圏内あるいは同一生活圏域におきます合併を目指しまして、その実現と検証の上に立って将来の全国統合を目指していこうではないか、こういうことに相なったわけでございます。それが最も現実的でもあり最善の方法であろう、こういうことで、私どもの内部の意思統一といたしましては、来る五月の総会で最終的なその方針を確認をする、こういう運びになっております。  ざっと申し上げますとそういうことで、まず二〇〇〇年ぐらいまでに、あと四、五年でございますが、そのくらいまでに広域の生活圏なり経済圏を基盤とした強固な体力を持った労働金庫づくり、それに取り組んでいきたい。そして次に、その検証の上に立って全国単一の金庫の創設を目指していこう、こういう方針でございます。  現在、関係金庫の主体的な取り組みによりまして、複数の地域で合併構想案の検討が現に始まったところでございます。ただ、具体的にどこの地域を一緒にするかとか、そういう問題につきましては、内部でも意思がまだ固まっておりませんし、関係団体の最終的な判断もいただいておりませんので、その点につきまして申し上げることはまだ御容赦をいただきたいと思いますが、そういう二段階で、一番理想とする全国単一化、こういう方向に持っていきたいということで取り組み始めたところでございます。
  72. 志賀節

    ○志賀委員 労金が非常に透明性の高い情報といいますか経営といいますか、それの開示を果敢にやっていかれるというお姿を先ほどの御説明で拝聴いたしまして、私もまことに意の強い、共感を覚えるものがございました。  ただ、最後一つ、これは教えておいていただきたいのですが、今のような政治状況が生まれる以前、言ってみれば、私ども自民党が社会党とか革新陣営と相対立をしておりました時代の労金の存在というものは、いわば革新陣営の核のような形に私どもからは見えておりました。今こういうような状況になってきてからの労金は、私どもからはそういう見方をしておったのでありますが、どういうふうに私どもから見ると変化したかということは、ちょっとおっしゃりかねるかどうかわかりませんが、そちらの側からごらんになって、当時はこうだったがこういうふうな変化が生じているんだがというようなことがございますれば一言お聞かせをいただいて、私からの質問を閉じたいと思うのでございます。
  73. 禿河徹映

    禿河公述人 労金法ができましたのは昭和二十八年でございますが、これは議員立法によるものでございました。いわば労働界をバックにした関係の方々の御尽力が大変大きかったかと思います。  しかし、その労金法におきましても、第五条にはっきり労金は政治的に中立てなくてはならないということが明記されておるわけでございまして、私どもはやはり対象は勤労者、労働者を中心にやっていくということではございますけれども、金融機関としての公共性、それを踏まえながら健全な金融機関の方向に行こうということで今日までやってきたわけでございまして、先生の今御指摘の点は、反論というわけではございませんが、あえて釈明をさせていただきたいと存じます。  ただ、そういう経緯がございまして、まだまだ一般の方々などにも労金というものが十分理解さ れていないという点は私どももよく存じておりまして、そういう点につきましてはこれからも十分意を用いながら、本当に国民全体から愛される金融機関、こういう方向に進めていきたいものだ、かように思っております。
  74. 志賀節

    ○志賀委員 食管法のためしもございます。いろいろ御説明ありがとうございました。
  75. 上原康助

    上原委員長 これにて志賀君の質疑は終了いたしました。  次に、伊藤達也君。
  76. 伊藤達也

    伊藤(達)委員 新進党の伊藤達也でございます。  公述人先生方には、本日は大変貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございます。  政治改革の大きな目的の一つは、今の政治の世界に競争原理を導入をして、政党や政治家というものがお互いに政策というものを相競い合いながら二十一世紀に向けての具体的な日本のあり方というものをつくり出していく、そういうことだろうというふうに思います。そういう意味で、先生方の貴重な意見というものを生かしてこれからの国会での論議というものを充実をさせてまいりたいと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。  まず初めに、島田先生に続けてお話をお伺いしたいわけであります。  今回の住専の問題につきまして、先生はがんの治療に例えられて、今回の治療のあり方、また今回大手術をしなければいけない、その手術に当たって国民に対する告知のあり方について大きな問題があるんだ、そして、特に国民の疑念やあるいは怒りというものを決して軽視をしてはいけない、こういう警鐘を打ち鳴らされているわけであります。  そういう意味で、私たちは今回の問題について、やはりこれは民間の努力の中で解決をしていくべきではないか、あるいは法体系の中でこの問題を処理していくべきではないかという考え方を持っておりますが、先生自身はこの住専の問題について、本来どのような処置をしたらいいのか、そのお考え方についてお伺いをしたいと思います。
  77. 島田晴雄

    ○島田公述人 この問題については、実は非常に根の深い、非常に広がりの深い問題でございますので、かなう限り率直に政府当局あるいは関係者が情報を提示する。もちろん当事者は当然のことでございますけれども、情報を提示して、そして体内に発生して転移してしまったがんをどうやって本当に解決できるのかということについて率直に話し合って、話し合った上でベストのあり方を探っていくというのが正しいのではないかと思うのですね。  先ほど志賀先生が目を大きく見開きなさいというふうにおっしゃられて、私はあれを伺っていて、実は心の中で喝采をしておりました。すばらしい考え方だ。  つまり、先ほどの私の話の中でも申し上げましたように、住専は、日本が歴史の転換点を過ぎたにもかかわらず、金融システムあるいは行政システムというものが自己改革を十分できなかったことからくる大きな問題なので、国民はその全体像がわかるほど情報を消化できるとも、またそれを理解できるとも思いませんけれども、私も含めて、ごく一部しか理解できないのでありますが、しかし、かなう限りの努力をして情報を明らかにして、そしてベストの方策を考えていくということが重要ではないかと思うんですね。  また、先ほどの志賀先生のお話に戻りますけれども、マスコミはシミュレーションをすべきではないかとおっしゃられたんですが、私は、本来はシミュレーションは、議会関係者政策形成能力というのがおありなわけですから、議会関係者が、いろんなオプションがあるんだ、こうすればこうなるんだというシミュレーションを国民に提示して、そして国民がそれを選択する、本当に難しい選択なら総選挙で選択をするということなんだろうと思うんですね。それが本来の切磋琢磨のある政治のあり方じゃないかというふうに思います。  島田はどう考えるかということについては、今その基本的な考え方だけ申し上げておきたいと思います。
  78. 伊藤達也

    伊藤(達)委員 今の島田先生のお言葉を重く受けとめながら、続けて質問をさせていただきたいというふうに思うんですが、今先生からも、今回の問題について公的資金を導入することが、本当に生き金になるのかどうか、ここについて非常に大きな問題があるんだというお話がございました。これが生き金になるかどうかは、もっと徹底した情報開示が必要なんだということも御指摘になられたわけであります。  私どもは、この金融の情報開示を進めていくに当たっても、やはり今の金融行政のあり方というものがこのままの状況の中で、情報開示が果たしてできるんだろうかなという疑問を持っているわけでありますが、金融行政の改革ということについても、先生の具体的なお考えがありましたらお聞かせをいただきたいというふうに思っております。  それと、もう一点続けてお伺いをさせていただきたいわけでありますが、今回の住専の問題というのは、日本の金融が抱える全体の不良債権からすれば氷山の一角であります。そういう意味からすれば、この全体の不良債権そのものをどういう形で処理をしていったらいいのか、この住専処理の問題を全体の不良債権を解決していくに当たっての一つのモデルケースにしていかなければいけないということではないかというふうに思います。  本委員会にも日本銀行の総裁がお見えになられて、今回の住専処理に当たって、ロス分、損失の補てん分については日銀の特融は使えないんだ、こういうお話がございました。今回の処理が本当に日本全体の金融の不良債権を処理していくに当たってのモデルになり得るのかということについて、私は大変疑問に思っておるんですが、その点も含めてお答えをいただければというふうに思います。
  79. 島田晴雄

    ○島田公述人 情報の開示ということについて、現在の行政の体制で情報開示が十分にできるのかどうかという問題でございますが、これは、これまでの日本の金融行政あるいはそれ以外の行政も含めて、一言で言うと、欧米に追いつき追い越せというキャッチアップ体制の中で、行政が大所高所から、限られた資源を戦略的に配分する、こういう観点から行政をしてきていて、その限りにおいて、いわゆる産業政策といいますか、そういう官主導の資源配分のあり方ということで行政をしてきたということは否めないわけでございます。  それを先進国となった日本としては、いわゆる市場政策、つまり情報をできるだけ開示して普遍的なルールを定めて、それに即して行政の運営をしていくという方向に変えなくてはならないのではないかという議論がかなり以前から行われているわけです。そういう観点からすれば、市場政策の方向にかじを切りかえていく方が、ルールを定め、それに即して事実を明らかにしていくというプロセスがより重要になってまいりますから、その方が情報がより開示されやすくなるだろうということは言えると思います。  しかし、だからといって、現状の仕組みもそちらの方向へ向かっていると思いますけれども、現状の仕組みでは情報は開示されないというふうにあきらめる必要は全くないんで、やはり情報を開示させていくためには、現状の中でも国会には国政調査権というものもございますし、大変有能な先生方もいらっしゃるわけですし、スタッフの方々もいらっしゃるわけですから、大変な御苦労だとは思いますけれども、ぎりぎりと論理的に問題を詰めていって、情報を明らかにしていくという余地はまだまだあるのではないかというふうに思います。  私もこの国会論議をずっと資料も読ませていただいて、テレビでも見させていただいておりましたけれども、もうちょっと突っ込んでもいいので はないかなと思われるようなことが随分感じられますし、あるいは、野党はもう少し明確な対案を出されて、国民に訴えられて、これでどうなんだというような議論を展開されるのもいいのではないか。まだまだ攻め方はいろいろおありなのではないかというふうに思います。  もう一つは、住専の全体像はどうなんだということでございますが、私先ほども申し上げましたように、これはまさに氷山の一角だというふうに思います。  大蔵省は、不良債権は三十八兆円だというふうに固定的におっしゃっておられますが、内外の専門家が六十兆から百兆あるということをいろいろな証拠を出して分析をなさっているわけですから、これはもっと突っ込んだ議論がなくてはならない。そうでないと、国民はやはり信じられないものがあるわけですね。それを明らかにしていくということは、国民から見ると、大きなお金を出す以上はまさに必須の条件なんですね。  つまり、今六千八百五十億円だ、はいその次に六千二百億円だ、それで済むのかというと、これはまず済まないだろう。来年、再来年、また次々といろいろなところで貧血があって、信用秩序を守らなきゃならないからやはり必要なんだ。そして、日銀特融ではなくて、採算が合わない本当に赤になるところはやはり国民に負担してもらわなきゃならないんだという議論ももちろん一理あるわけで、そうなってきますと一番恐れるのは、ずるずるずるずるとお金を出して、十年間で十兆円も出させられたんだけれども結局日本経済はよくならなかったじゃないかということなんですね。  これは軍略でもそうでございますけれども、少しずつ少しずつ兵力を出していくのは最悪の戦法なんで、正しい戦法というのは、まず全体像を明らかにして、最大の兵力をつぎ込んで一遍で片づける。その必要がなければ兵力は引っ込めればいいだけの話ですから、そういうことをするのが重要なんで、そのためには全体像を明らかにしなきゃいけない。  これは私は、与党の先生方、野党の先生方の実は切磋琢磨の共同作業なんだろうと思うのですね。行政当局は、あらゆる場合を想定して問題を提示するということは必ずしも責務でないのかもしれませんから、あらゆる可能性について情報を出させるのは実は先生方のお力なんではないかと思いまして、私は一人の平均的な国民として、これは本当に先生方の御努力に期待をしているんです。  このままで、六千億円だ、はいその次に十五年で六千二百億円だ、はい予算が通りました。予算は通さなきゃなりませんが、それでまたずるずるずるずると出ていって、日本が三等国になって何も解決しなかったなんということになったら、我々は一体だれに期待して生きていったらいいのかということでございますので、先生方の本当の獅子奮迅の働きを期待しているということは申し上げたいと思います。
  80. 伊藤達也

    伊藤(達)委員 今島田先生から御指摘ありましたように、本当に私たちもこれから審議を尽くして、やはりまだまだ議論が足りない点については真剣な議論を進めてまいりたいというふうに思います。  そこで、先ほど島田先生から、住専の問題に絡めて農業の問題についてもお触れになられました。そして先生自身は、農業そして農協の改革の方向性について、産業農業そして生活農業の問題にも触れながらお話があったわけでありますが、私は、財政の問題とも絡めてお話をお伺いしたいというふうに思います。  大場先生の方からも、今大変厳しい財政状況にあるんだというお話がございました。この厳しい財政状況の中で今農業関係については、ウルグアイ・ラウンド対応についても六兆円以上の予算がついているわけであります。シェアも戦後ほとんど変わっておりません。これだけ重点的に予算をつけていて、本当にこれからの日本がしっかりやっていけるのかどうか、この点についても見直す必要があるのかどうか、先生の御所見を賜りたいというふうに思います。
  81. 島田晴雄

    ○島田公述人 二年前に、ウルグアイ・ラウンドの対策の予算として六兆円を六年間で支出するという決定が急遽なされたわけでございますが、それは逐次さまざまな形で支出をされていくのだろうと思いますけれども、私ども国民が一番望みたいのは、本当にそのことによって日本の農業が力をつけて、国際競争力を持って自立してやっていけるようになる、そしてまた、それを投資対象とする農協のような組織が十分に自分の足で立っていけるようにする、そういう方向に使われるように切に望みたいわけですね。  私ども予算書を拝見しておりますけれども予算書を見るだけでは果たしてそういう方向に向かっているのかどうかなかなかわからない。もちろん先生方の中には農政の御専門の方々が多数いらっしゃいますから、それぞれ御所見がおありなんだろうと思いますけれども、やはり最大のポイントは、先ほども私申し上げましたように、本当に農業を将来担う専業農家が十分な力をつけられる形で伸びていけるのかどうか。  そのことについては、さまざまな補助金をつけることも重要ですけれども、新しい血が、やる気のある若い人たちが農業に参入しやすくできるような土地制度の問題。あるいは農協もさまざまな農協がございます。大変創意工夫に満ちてやっておられる農協も、ちょっとどうなっているのかなというような農協もございますけれども、やはりそれぞれ切磋琢磨していただくためには、やはり競争原理が必要ではないか。  ですから、農業の法人化の問題あるいは株式会社の参入の問題、農協の農業事業の事実上の独占を緩和する問題、そういったパッケージを、むしろこれは予算というよりはソフトの仕組み、こういうものを総合的にお考えになる、そういう農政がないと日本の農業は本当にだめになってしまうのではないかというふうに思いますね。  そして、だめになれば何が起きるかというと、一般企業が、漬物にしても野菜にしても食べ物にしても、これは世界の畑から買ってくるわけでございますから、日本は実は国土がないと言いながら世界じゅうの国土を輸入しているようなものなんです。ですから、土地の底値が見えないところに海外から土地を輸入すれば、これは値段は下がっていくのは当たり前なんで、処理をしても処理をしても不良債権は日本全体として拡大するという構造になる。  ですから、この農業問題というのは本当に重要なんです。それで、大した数じゃないんですね、専業農家は四十五万軒にすぎませんから。そのうちで恐らく二十万軒ぐらいでしょう。この方々が本当に思い切って何でもやれる、そして、それをしっかりした農協が支援するというような構造にしていただくために、ぜひ先生方、プロジェクトチームでも何でもおつくりになって、農業の現場を一番御存じでいらっしゃるのは先生方ですから、やっていただきたいというふうに思います。
  82. 伊藤達也

    伊藤(達)委員 続けて、金融の問題にまた戻りたいと思うのですが、金融を本当に産業として復活させていくにはどうしたらいいかということについてお尋ねをしたいというふうに思います。  先生のお話の中でも、金融産業が非常に多くの構造的な問題を抱えているということについてお触れになられていました。日本経済の世界的な比重を考えると、金融産業における自由化の流れというのはもうとめられないというふうに思います。その中で、いかに混乱を防ぎながらこの自由化を進めていくのかが大きな課題になっています。  そこで、どのような形で適切な規制緩和を進め、金融産業における真の競争力を回復することができるのか、その課題について先生のお考えを教えていただきたいと思います。
  83. 島田晴雄

    ○島田公述人 金融産業の抱えております、直面しております最大の問題は、日本がキャッチアップの発展過程を終えて資金の潤沢な先進国になっ たということですね。したがって、キャッチアップの過程におきましては、日本は比較的諸外国からお金を借りずに自分の中に持っているお金を集めて、中小の金融機関で必死に集めて、そして産業発展をなし遂げてきたという大変立派な日本モデルをやった国なんです。資金が潤沢になってきますと、これを今度は運用していくということが重要なわけですけれども、その能力が必ずしも金融機関に育っていないということがあります。  今日のグローバル化、自由化、国際化の進んだ経済では、資金のリスク管理というのが非常に重要な課題になってきておりますけれども、これは経営のノウハウ、それから技術を含めて日進月歩でございます。この点についてかなりの程度日本の金融機関がおくれをとっているというのは、当事者、専門家の方々も実は認めるのにやぶさかでないところだと思いますけれども、これらを改革していかなくてはならないわけですね。  ですから、一つは、もう現状はどんどん進んでおりますけれども、金融機関自身のリストラによって資金の調達コストを下げる、管理運営コストを下げる、同時に運用能力を高めていくためには専門家を、本当の専門能力を持った方々を育てていかなきゃいけない。  ところが、日本の金融というのは、これはほかの産業にもよくあることですが、ジェネラリストを育てています。特にこれまで規制が強かったということもあって、これはもう常識でございますが、大蔵省担当の専門、MOF担と言われている方々に一番有能な人材を配置するというふうに言われておりますけれども、それが一番銀行にとってメリットのあることだからなんですね。市場の方を向いていても消費者の方を向いていても、あした規制の中身が変われば意味がないわけですから。  そうなると、行政のあり方も実は問われなくてはならない。むしろもっと自由に仕事をさせて、そして市場を管理するよりは市場競争を担保するという形に行政の根幹が変わってまいりますと、おのずから銀行の方も市場を向いて、顧客の方を向いて切磋琢磨するようになるという好循環が生まれるはずでございますので、そういった改革が必要だというふうに思います。
  84. 伊藤達也

    伊藤(達)委員 次に、大場先生にお伺いをさせていただきたいと思います。  今回の住専処理問題について、ジャパン・プレミアムの関連からお話がございました。これは、私はある意味ではタイミングの必要性ということもあっただろうと思いますし、先生はたしか講演の中で、内海先生の私案のことについて、これを参考にひとつ考えたらどうかというような講演もなされていたというふうに思うわけであります。  そういう意味からすれば、今回の住専処理について、いろいろな知恵を出し切れる部分がまだあるのではないか。特に二次の損失については、どれだけ損失が生じるかわからない中で国民が半分を負担しなければいけないという形になっておりますし、本当にこの処理機構が十分にワークしていくかということについてもまだまだ議論をしていく点があろうかというふうに思います。そういう意味から、先生から少しお考えがございましたらお聞かせをいただきたいというふうに思います。  そして、続けてもう一問お伺いをさせていただきたいのですが、今回大蔵大臣が、住専の問題については公的資金を入れたけれども、ノンバンクについては公的資金の導入は考えていないんだ、こういう御発言があったわけであります。この御発言が海外でどのように受けとめられておるのかということについてお話しをいただければというふうに思います。
  85. 大場智満

    ○大場公述人 二つの質問をいただきました。  第一は、内海慶応大学の教授と一緒に何か考えていたのではないかというお尋ねでございまして、確かに私も相談を受けまして、これは八月、九月の早い段階でございますけれども、セキュリタイゼーション、証券化ということを中心に考えたものがあったわけです。ただ、これはあくまで学問的、理論的なものであって、現実にどのように適用されるかは、これは政府なりあるいは議会でお決めになることだなと思っていたわけです。  この考え方の基礎はブレイディ提案といいまして、メキシコを救済するときの三方一両損という考え方で、教授は三方一両損ということを打ち出しておりました。大工の棟梁と左官屋さんとそれから大岡越前ですか、これは政府になるのかもしれませんが、どうも私はこの三方一両損という考え方にちょっとひっかかっておりまして、セキュリタイゼーション、証券化という考え方についてはおもしろい案だなと思っておりましたけれども、この案を積極的に推進するということはいたしませんでした。  ただ、現在この六千八百五十億円の資金の投入があり、それによって、先ほども申し上げましたように、一応日本銀行に対する海外の評価が信頼の方向に向かったということで、もうこれを前提にして進むしかないかなという感じを持っております。  二次損失につきましては、できるだけこれを少なくする方向で関係者に御努力いただきたいなと思っているわけで、またそのような方向で進んでいるものと承知しております。  それから第二の御質問でございまして、公的資金の導入はノンバンクには考えないということですが、私は、あくまで公的資金の投入は預金者保護という点が最大の問題だと思います。ただ、今投入いたしませんと、預金者保護の観点から、投入する資金が非常に大きくなる可能性がある。それとまた、その間に、対外的に日本銀行のドルの取り入れが円滑を欠いたときの世界経済への影響、あるいはアジア諸国への影響等を考えますと、やはり速やかな対応をとるしがなかったのではないかな。  逆に申し上げると、大蔵省は皆様方に攻撃される一番正直な案を出したのではないかという気が私はしております。私でしたら、もう少しひねったかもしれません。大変正直な案を真正面から出したために、いろいろ国民の間からも御指摘を受けているのではないかな、こういう気がしております。
  86. 伊藤達也

    伊藤(達)委員 次に、禿河先生と大場先生、お二人に共通の質問をさせていただきたいというふうに思います。  お二人の先生は大蔵省のOBでございます。そういう意味では大変きつい質問かもしれませんが、今日、こういう住専処理に当たって最後は公的資金を導入せざるを得なかった、こういう状況の中で、大蔵省の今回の住専処理問題についての判断が適切であったのかどうか、この点について、後輩の大蔵省の皆様方の判断ということをどのように考えておられるのか、お伺いをさせていただきたいというふうに思います。  それともう一つ、透明度の高い金融システムをつくり上げていく、その中で大蔵省の責任あるいは行政のあり方というものをどう考えていくのかということについて、やはり機構改革の議論が出てきております。そういう意味で、両先生ともこの機構改革の必要性というものを感じておられるのかどうか、もし感じておられるとすれば、どのような視点からこの問題に取り組んでいくべきなのか、お考えをお聞かせをいただきたいと思います。
  87. 大場智満

    ○大場公述人 非常に答えにくい質問をいただきました。  まず第一の大蔵省の判断が適切かどうかということは、これは、先生がこの前二日間にわたる両銀行局長のお話を聞いて、もう既に答えは持っておいでではないかなという気がいたしました。その答えと私の答えは多分一致しているのではないだろうかと思っております。  より問題の大きいのは第二の御質問なんですが、私は、大蔵省に対する厳しい批判については十分承知しております。しかしながら、これは二つの問題が混在してますますひどくなっているの かなという気がします。  二つの問題というのはどういう問題かといいますと、一つは、住専に対する行政の対応、あるいは監督、検査のやり方のまずさからくる厳しい御批判で、これは機構改革の要請につながっているわけです。もう一つの御批判というのは、主計局の幹部の不祥事に対する怒りといいますか、御批判であるわけです。  ただ、後の方から申しますと、私は、ごく一部の人の行為で、非常につつましく、しかも夜遅くまで働いている人たちまで批判されているのほかわいそうだなという気がいたしております。  私自身、この土曜日にワイフに、個人的な話をして申しわけありませんが、妻が帰ってきて、近くのコンビニエンスストアで後ろから近所の奥さんにいきなり肩をたたかれて、大蔵省さんと言われた、私はやめてからもう十年以上たっております、それでも大蔵省さんと言われる。これはいろいろな皮肉が込められているのではないかな、こう思っております。  さて、この人事の問題が一つあると思います。不祥事を起こしたのは、確かにこれは責められて仕方がないと思うのです。しかし、これは大蔵省の人事政策あるいは人事方針が間違っていたからこういうことになったわけです。これは自分で改めればいいわけです。また、早期に改めるべきだと私は思います。しかし、制度の改革の問題とは別の問題だと思っておるわけです。  住専の問題から制度改革ということを考えますときに、実は先週の二日間のこの委員会の審議の模様を私が見ていて一番強く感じたのは、大蔵省と農林水産省、あるいは金融機関と農林系統金融機関の間の落差といいますか、考え方の違いといいますか、整合性のなさといいますか、その問題であったわけです。つまり、縦割り行政ということになるのかもしれませんけれども、もう少し意思の疎通とか整合性がとれなかったのかなという気がいたします。  というふうに詰めていきますと、そこから起きてくる改革というのは、まあ、金融庁案というのが出ております。ですから、その金融庁を大蔵省の中につくろうとするとまた焼け太り、こういうふうになるわけですが、内でつくるにせよ外でつくるにせよ、その金融庁の構想があるとすれば、そこはすべての金融機関を監督し、検査をしていかなければいけないのではないかなという気がします。ですから、農林系統金融機関、県の信用組合、リース会社、さらに郵便貯金となります。そういうふうに考えますと、これに当たる、これを今まで仕事としている官庁は、非常に多くの官庁が関与してくることになります。したがって、行政改革そのものの問題かなという気がいたしております。  ただ、政治改革はもう進行しているわけですから、行政改革が余りにおくれていいということになってはいけないと思います。確かに時代の変遷とともに政治が変わってきていますように、行政も変わっていかなければいけないのじゃないかなという点は、私は十分感じております。
  88. 禿河徹映

    禿河公述人 私の方からまず大蔵の機構改革の問題についてどう考えておるかという点について感想を申し上げたいと思います。  今大場さんからいろいろお考えが出ましたが、私は、大蔵の機構が現在のままでいいのか、変えるべきかということについて実は確たる知識というものを持ち合わせておりません。ただ、そういう問題が起こった背景というものについては、大蔵省もこれを謙虚に受けとめていく必要がある、かように思っております。  その権限が大きいとか、あるいは担当する人間の態度であるとか考え方であるとか、これは外部から大きな批判を受けておりますし、私もOBの一員として、やはりその辺については謙虚に反省して、そういう指弾、批判を受けないようみずから襟を正していくということがまず前提であろう、大変残念ではございますが、そういうことを申し上げざるを得ない面もあろうかと思います。  また、そういうことになりましたのには、私どもOBの方にも一半の責任があったのかもしれません。先日、現役の某君が、今大蔵省は先輩たちがやってきた仕事の後始末に大変追われて、えらい目に遭っておるんだと言った人がおりました。私どもも含めまして、大事な国の財政を預かり、金融その他の行政をとり行っておる役人といたしまして、その権限の上にあぐらをかくような、あるいは民間に対しましても高圧的な、あるいは非人間的な態度をとることのないような、そういう反省というものを私も含めて強くしなくてはならない、こういう感じはいたしております。  それから、もう一つ住専処理の判断という問題でございますが、私は金融行政の側面から見まして、今回の処理案、いい悪いということでなくて、金融行政という観点から考えてみたいと思います。  御承知のように、金利の自由化を初めといたします金融の自由化、こういうものは十数年前から行われてきたわけでございます。ただ、行政の面におきまして、果たしてそういう国際的な変化に対応する金融環境の変化に十分即応できたかどうかという点になりますと、やはり不十分な点があったということは言わざるを得ない、そういう感じがいたします。  最近、新しい金融システムの構築ということが強く言われておりますが、新しい金融システムと申しますのは、市場機能、それに基づいた透明な自己責任の働く金融システム、そういうものであろうと思っております。そういう点から考えてみますと、従来型の行政手法、これはこれから改めなくてはなりませんし、大蔵省の方でもその改善というものをいろいろ考えていくだろうと思います。  従来型の行政手法と申しますと、いわゆる護送船団方式と言われるものでございますが、平たく言えば行政主導型な金融システム、こういうものであったかと思います。  そういう行政指導ということになりますと、どうしても金融機関の育成保護であるとか、それに関連する規制、こういうことに相なってまいりますし、どうしても問題が起こった場合に、できるだけ外にそういう問題を持ち出さずにその処理を先送りしてしまう、そういう結果を招く、こういうふうなことになりがちでございます。  ただ、こういう行政指導的な手法というものは、確かに一面におきまして、金融機関の健全性の保持であるとかあるいは預金者の保護とかいう面におきまして、これまでかなりの効果と申しますかそういうことを発揮した、この事実は否定するものではございません。しかし、同時に、そういうことが金融市場におきますところの自己責任の徹底というものを欠き、責任の所在を不明確ならしめてくる、こういうおそれもあったと思います。そういうのが露呈して、その一つがあるいはこういう住専問題ということに相なったのかもしれないと思っております。  したがいまして、これは大蔵省の方でもいろいろ、私の知っている範囲内でも大分前からだんだんと変わりつつありますが、新しい金融システムに即応した行政手法というものをこれから明確に打ち出して、早急にそういうものを確立していくべきだ、こういう気持ちになっておると思います。それは結局は、さっき申し上げましたとおり、保護行政指導というものからモニタリングを中心とする行政、それによって監視する、そして問題が起こった場合には早期是正措置を図る、わかりやすい形でそういうことを行っていくということであろうと思います。  もちろん法に基づく監督とか検査とかいうものはこれからも厳正に行われるべきであると思いますけれども、そういう市場機能というものを補完する役割、そういう方向に金融行政も進むべきであるし、またそういう方向に行くだろうと私は考えております。
  89. 伊藤達也

    伊藤(達)委員 続けて、今度は財政の問題についてお伺いをしたいと思います。  そこで、大場先生にお伺いをさせていただきた いわけでありますが、先ほどイタリアとの比較の中で、どちらがいい国か、特に財政を比較した場合に日本が大変な状況にあるんだ、大変ショックを受けたというお話がございました。そういう意味では、私は、政治の問題についてもイタリアとの比較というのはあったのではないかなというふうに思いますので、その点についてお話をお伺いしたいなというふうに思います。  それと、これは本質の議論でありますが、今回、政府財政危機宣言を出された。この国の予算を家計に直してみると、三割は借金、そのうちの二割は借金返済に充てなきゃいけない、こういう大変厳しい状況にあるわけであります。そういう意味では、財政再建を本当にやっていくのであれば、本当に聖域というものを設けず、タブー視せずに、歳出のカットの問題についてしっかりした議論をしていかなければいけないというふうに思います。同時に、景気回復、そして財政の再建という二つの命題を両立できるような予算の編成というものもしていかなければいけないというふうに思うわけであります。  そうした視点から、大場先生がこの財政再建について、社会保障の問題については先ほどお触れになられたわけでありますが、その他の問題についても、これは切り込んでいかなければいけない部分、あるいは効率的な予算を編成していかなければいけない部分、あるいは予算編成の方法そのものについていろいろな課題があると思いますが、その点についての先生のお考えをお聞かせをいただきたいと思います。
  90. 大場智満

    ○大場公述人 確かにイタリアと日本が比較されたのは、ヨーロッパのある大国のことで、その国の銀行首脳から聞いたわけです。社会について言えばマフィアとオウムだ、こういうような話になったらしいのですが、実際にそういう話をされているのは、閣議ではなくて、閣僚の間で全く雑談の中で日本とイタリアが比較されてどちらがいい国かということになった。政治については両方とも混沌としているという話がなされていた。  そこで、私の友人は、政治についてはイタリアと日本は違うと言って頑張ってやったよという話でございました。イタリアはほとんどすべての議員さんがおやめになりまして、それから、ジョークですけれども、ミラノの監獄で集まった方が人数が多いんじゃないかというようなことまで言われていたわけです。ですから、日本は全く違うんだということを我が友人は弁解してくれた。それからもう一つは、日本とイタリアが違うのは、日本は貯蓄超過の国であって、これは経常収支の黒字と等しいのですけれども、これが日本の強さではないか、したがって日本の方がいい国ではないか、こう言ってくれたというわけです。  第二の問題でございますが、私は先ほども申し上げましたように、来年度予算は、今御審議なさっておいでになると思いますが、これはディスクロージャーの年ではないか一つまり、民間部門もディスクロージャー、公的部門もディスクロージャー。民間部門のディスクロージャーというのは、民間銀行、金融機関のディスクロージャー。それから公的部門のディスクロージャーというのは、今までいろいろ知恵を働かせて、特別会計の方に赤字を押しつけたり、いろいろしたこともあったわけですけれども、そういうことをすべてできるだけやめて、ありのままを議会にあるいは国民にお示しするというのが来年度予算ではないか、またそうせざるを得ないところまで来てしまったという問題もあるかとは思います。ですから、私はディスクロージャーの年だと思う。  その前提の上でどのように考えていくかということですが、まずは歳出の見直しから始めるべきではないかと思います。  確かにアメリカとかフランスがもう社会保障というところまで切り込んできておりますが、これはほかで、むだといいますか、むだではないかもしれませんが、公共事業については十分見た上で、その後社会保障という状況ではないかと思うんです。ですから、私は先ほど、公共事業を拡大することによってもし赤字がふえれば、それが金利の上昇になって将来の成長の阻害要因になることも一つの仮説としてはあり得るという趣旨で申し上げたわけですけれども、歳出の見直しをするときにはまず公共事業からだと思います。  その際、御指摘のように、聖域を設けるべきではないと思っております。この点については、ODAについてもしかりだと思います。まず我々は、内で使うか外で使うか、その判断をしなければいけないんじゃないか。我々というよりも、先生、委員の方々ですけれども、これは再来年度予算の問題になるかもしれませんが、外で使うか内で使うかという問題が一つあります。その後、内で使う金について優先順位の問題が出てくるのではないかなという感じを持っております。ということで、聖域を設けるなという御指摘については全く同感でございます。
  91. 伊藤達也

    伊藤(達)委員 貴重な御意見、どうもありがとうございました。これにて質問を終わらせていただきます。
  92. 上原康助

    上原委員長 これにて伊藤君の質疑は終了いたしました。  次に、矢島恒夫君。
  93. 矢島恒夫

    ○矢島委員 公述人の皆さん、御苦労さまです。日本共産党の矢島恒夫でございます。  まず最初に、島田先生にお伺いしたいんですが、先生、昨年の五月ですか、「新世紀における日本経済」と題しまして、講演をされたことがあったかと思います。これは、「租税研究」の昨年の七月号に大体収録されております。その他、先生のお書きになったものをいろいろ読ませていただいたんですが、その記念講演の中で、最初にお話しになったのは「日本経済は今何時なのか」、こういうことがいろいろある。この委員会でもそういうことが話題になったことがございます。先生は「真夜中ではないか」、こういうことで述べられておりますが、その講演の中で、日本経済は四つの重病にかかっている、糖尿病もあれば潰瘍も出てまいりましたが、特に金融制度の問題ではがんを思って、転移という状況も始まっている、こういうお話でした。きょうのお話でも、手術を行う以上、患者によく説明してからやるべきだという御意見を伺いました。  私、先生の講演の中で一つ注目したのは、なかなか自分で責任をとるという当局者がいない、その続きの中で、このことはこれまで自分で責任をとりたくないからだというお話がありました。  当委員会でこれまでの論議、それから先日は参考人の皆さん方に来ていただいていろいろと質疑をしたわけですが、どうもこの責任という面では、先生御指摘のようになかなか我こそはその責任者とはならないで、新聞によりますと、責任のなすり合いなんて書いたのもございました。私、もちろん大蔵省や政治家や母体行や住専や借り手、それぞれ責任があると思うんです。それぞれの責任の中で、特に母体行の責任は極めて重大だと考えているわけです。  と申しますのは、やはり母体行は子会社として、別働隊として住専をつくった。そしてバブルのときには大分いろいろいい思いをした。それでバブルがはじけてきたら、いわゆる危なっかしい融資については住専に回す。紹介融資でいいますと九一%が不良債権になってしまっている、こういう状況もございます。そして、いよいよ住専だめそうだとなったら資金を引き揚げるというような状況を見ますと、やはり母体行の責任というのは重大だと考えておるんです。  それぞれ責任はあるんですけれども、やはりその中でも、母体行の責任をどうお考えになっているかということ。それからもう一つは、やはり母体行は体力が十分ある、六千八百五十億円を母体行全部で割り算すれば、たかが三十七億円ぐらいだ、金利が今史上最低という状況の中で、また税金面でのいろいろな処置によって十分純益を上げている、だから母体行の責任住専問題を処理すべきだというのが私の考え方なんですが、その辺について先生のお考えがありましたら、お聞かせいただきたいと思います。
  94. 島田晴雄

    ○島田公述人 この住専の問題については、三者 三様といいますか、四者四様といいますか、それぞれ深い責任があると思うんですね。母体行も、今まさに先生御指摘のようなさまざまな深い責任があると思いますし、また当局についても、これまでの議論でも触れられましたようにいろいろな責任があるというふうに思います。おっしゃるように、確かにそれぞれ責任があり、それぞれまた言い分もあるのだろうと思いますが、この参考人の御議論を伺っていましても、ちょっと、私ども伺っていて、釈然としないといいますか、そういう印象が残った方は多いんじゃないかと思います。  まさに今先生おっしゃられたように、母体行についていえば、バブルのときに相当もうけて、そして今度規制がかかってくると、トンネルに使うといいますか、あるいはある種、このあたりはもっとうんとはっきりさせていただきたいんですけれども、ごみために使ったような面もあるんじゃないかというようなことを考えますと、また、もちろんこれは金融システムの中核ですから、これが揺らいではならないんですけれども、しかし、もっと明らかにすべきところはたくさん残っているんじゃないか、こんな感じはいたしますね。  それから、行政についていえば、行政のだれが個人で責任をとるという話で済む話ではなくて、これまでの議論がありましたように、システム全体として新しい時代に入った日本にふさわしい、市場を中心にした行政のシステムに変えるということが、私は責任のとり方かなというふうに思います。そんなことも含めて、もっともっと実は御議論を深めていただきたい感じがいたします。
  95. 矢島恒夫

    ○矢島委員 私の持ち時間は本当に短いので、申しわけございません。  引き続いて島田先生にお聞きしたいんですが、何か手術する必要があるというのは、これはもう実際の場面として必要です。結局その手術の仕方なんですけれども住専問題をひとつ破産処理ということでやっていったらどうか、こういう一部御意見がございます。  この破産処理というのは、時間がありませんのではしょりますが、母体行責任を免罪するものであり、農林系の金融機関に今政府案に比べて約二兆二千億円ぐらい多くの負担がかかっていくという点では、またさらに財政投入をしなきゃならなくなるんじゃないか、農家の皆さん方の預金者保護という面からいっても。そういう面では、やはり破産ということはかえって母体行を免罪するものであるというふうに私たちは考えております。  破産処理ということで御意見ございましたら、お聞かせいただきたい。
  96. 島田晴雄

    ○島田公述人 その問題は、恐らくきょうの午前中にいろいろ深い御議論があったのではないかなというふうに思いますけれども、私は、破産法に基づく、法的な枠組みに基づく処理の仕方というのはどういうことなのかということは、国民も含めて関係者はよく理解をする必要があると思うんですね。それと同時に、行政的な処理の仕方というのがあって、これは必ずしも同じものではないわけですから、行政的な配慮からすれば、とにかく金融システムの決済機能に傷がつくような、それが揺れるようなことは避けなきゃならないわけですから、そちらからの判断というのはあると思います。  しかし、私の印象では、この破産処理に関する議論が十分にまだ尽くされていないということがあると思うので、もっとこれは尽くして、一つのオルタナティブとして持った上で高次の行政判断があってもいいのかな、こんなふうに思います。
  97. 矢島恒夫

    ○矢島委員 また島田先生にお聞きしますが、第一回目の手術の後の問題になるわけですけれども、と申しますのは、先生も意見陳述の中で、いわゆる信用組合やあるいはノンバンクの問題、これはどうなるのかということを問題提起されておりますけれども、六千八百五十億円というのは第一次分のロスに対する一つのスキームの中で出てきた数値です。第二次分の損失というのがあるわけです。それでこれは半分半分にしようと。それじゃ幾らくらいの損失なのかというと、これは皆目見当がつかないわけですけれども、これからの回収の中でいろいろ努力するというだけの状況にあるのです。  そうしますと、私たち、いろいろな場面で計算したり、それから、この第二次分のロスというのは政府が言っているような数値で済むだろうかという面からもいろいろ調べてみました。そうしますと、多額な税金をつぎ込むのですが、今の政府が言っている第二次ロス分はどうしてもさらに増大するという結果しか出てこないのです。  先生、第二次分の損失というのは多くなるか少なくなるか、それはこれからの取り組みにもよるということになると思いますけれども、今の時点で考えたときに、先行き見通しはどうだろうかという点で何か御意見ございましたら、お聞かせください。
  98. 島田晴雄

    ○島田公述人 これは総合的な問題ですし、厳密な検討、それこそシミュレーションを経て考えなければならない問題ですから軽々には言えませんけれども、この第二次損失がどういうふうになっていくかということについては、地価の動向がどうなるかというのが決定的に大きな役割を演じますね。現状では、不良債権は償却されているといっても形の上での償却でございますので、本当に処理されていないわけですから、どういうことになるのかというのは、経済成長の問題も、それこそ土地制度の問題も、ほかの産業の問題もみんなかかわってまいりますね。  私は、いろいろな問題が連動しておりますので、手術ということでいえば、住専問題について視野を限れば第二次損失は一兆二千四百億円かもしれませんけれども、実は全体像はもっと大きな広がりがあるので、そこまで視野に置いた処理の考え方を国民の前にはっきり打ち出していただいて、それで国民の判断を、選択を仰ぐということが必要なのじゃないか、もうちょっと大きい可能性があるというふうに思います。
  99. 矢島恒夫

    ○矢島委員 終わります。
  100. 上原康助

    上原委員長 これにて矢島君の質疑は終了いたしました。  次に、吉岡賢治君。
  101. 吉岡賢治

    吉岡委員 島田教授にお伺いをしたいと思います。  けさ私は、七時三十分、大蔵省の門前に行きました。阪神地域の市会議員、三田あるいは宝塚、そして芦屋、さらには西宮、超党派の議員がお集まりになっておりまして、そこで、住専の問題に六千八百五十億を出すなら、現地の問題、とりわけ住環境の整備の問題を真剣に考えてほしいという訴えがありました。私は、まさにそのとおりだろうというように思っているところでございます。  私はそれをなぜ今申し上げたかといいますと、私たち市民リーグ・民改連は、これまでの国会の質問あるいは質疑、政府から出された資料、さらには武村前大蔵大臣等の発言、そして、政府処理案というのはある意味で政治決着ではないか、したがいまして、いまだ本当の意味で根拠もその必然性も示されていない、そういう結果が今の行動にもあらわれているのではなかろうか、このように思っているところでございます。そして、その政治決着に持ち込まざるを得なかった要因というのが、いわば覚書や通達、行政のマーケットへの恣意的介入、こういうものが要因ではなかったかというように思っております。  先生は、今後の行政といわゆる市場の関係のあり方、または金融監視そしてチェック、そのシステムをどうつくっていくのかということについて、行政のあり方についてどう考えておられるのか、お伺いをしたいと思います。
  102. 島田晴雄

    ○島田公述人 これは大変根本的な大きな問題だと思いますが、物事を判断し処理していくときに、法的なルールに照らして判断し処理をするということと、行政的な観点からそれをするという ことと、それから政治的な観点からする、これはそれぞれ意味のあることですね。  そして、私は、それぞれの判断と処理のあり方について情報が十分に提供されて、最終的には国民の判断ということだと思いますので政治判断になるのだろうと思いますが、そういう総合的な判断が本当にしやすくなるような形というのをつくらなければいけないと思います。今日までの日本のあり方は、どちらかというと、行政が情報もさまざまな機会もかなり独占をしておりまして、この法的判断それから政治の判断というのはともすれば弱いところがあるように思うのですね。  ですから、この住専の問題一つとりましても、行政は一つの考え方を提示しているわけですけれども、政治の判断がこれでいいのかということになりますと、これはもうまさに先生方に期待しなくてはならないところですけれども、議員の先生方は政党の考え方、対案をもっと明確に打ち出して議論をして、国民に選択をさせる余地というのを提示していただきたい、こんなふうに思います。
  103. 吉岡賢治

    吉岡委員 島田先生に具体的なことを重ねてお伺いをしたいと思います。  今、日本の金融というのは岐路に立っていると思うのですね。要するに、古いシステムを維持するのか、二十一世紀に向かって透明性の高い効率的なシステムをつくっていくのか、こういうことであろうと思います。  私は、率直に言って、住専処理財政投入をしないと金融不安を引き起こすという政府説明は、まさに我田引水だろうというように思っています。むしろ金融不安の解消と国際的な信用回復、そして再発防止、このことを考えていきますと、アメリカのRTCの例が示すように、徹底的な不正追及、このことが必要であろうと思っております。そして、経営責任と行政責任の所在というものを明確にすること、ここから始まらなければならないと思っています。  ですから、悪質な借り手を二、三捜査あるいはやり玉に上げて、それでお茶を濁すということになりますと、本当の意味での巨悪といいましょうか、ファイナンシャルクルック、こういうものを暗躍させてしまう、こういうように思うところでございます。  また、預金の保険機構、これは脆弱な機関であろうと私は思っていますが、住専処理機構という株式会社、このことが今回提案されているわけでありますが、大丈夫なのかという危惧を持っているわけでございます。  なぜそんなことを申し上げるかといいますと、かつての共国債権買取機構、この実績を見てみますと、平成八年の一月段階で、十兆四千億からの債権額面に対して、買取機構で四兆四千億、実際の回収実績というのは三千七百億でございますから、まさに五、六%の回収率、こういうことになろうかと思います。このことを考えてみましても、民間ということで本当にいくのかどうかということについて不安を感じておりますので、あえて質問をさせていただきたいと思います。
  104. 島田晴雄

    ○島田公述人 大変大きな問題でございますが、先ほどからもお話がありましたように、日本政府は、特に金融もその大切な一つですけれども、キャッチアップの過程の中で行政指導型な行政でもって資源配分をしてきたということは否めないことでございまして、先進国になった日本としては、このグローバル化の中で、むしろ市場ルールに照らしてきちっと黒白をつけながら市場を補完するという形の行政に転換していかなきゃいけないのではないかというのは大きな方向としてははっきりしているところなわけですけれども、まさにその転換点の中でこの問題が起きたわけですね。  そうしますと、一つは、チェック機構というものはまだ十分なものを持っていない。それからまた、司法基盤も必ずしも先進経済にふさわしいほどきちっと整ったものがない、そういう中で責任を明確にするという作業をしていかなきゃいけない。同時に、国際信用というものを保たなきゃならない、そして二十一世紀に向けて強力な金融インフラをつくらなきゃいけないという幾つかの課題を同時に遂行しなきゃならないんですね。  そういうことですから、大変な作業が山積しているわけですけれども、私は、この国会というのは非常に重要な、日本が新しい日本に一歩を踏み出せるかどうかの象徴的な意味を持った国会ではないかと思いますので、まだ時間がありますので、もう何歩か踏み込んで、この責任の所在の問題、それから強力なインフラをつくれるのかどうかの問題ここら辺についてある種の展望が見えるところまで踏み込んでいただきたいと思います。  先生方の御活躍を全国民は応援しているんだろう、私はこういうふうに思いますので、頑張っていただきたいと思います。
  105. 吉岡賢治

    吉岡委員 最後に、禿河公述人にお伺いをしたいと思うのです。  被害者であると思いますが、農林系金融が住専にのめり込んでいってしまった原因の一つに、預貸率の低さというものがあったかと思います。平たく言いますと、有利な運用先がなかった、こういうことになるかと思います。労働金庫も一時は五割程度、あるいは現在七割程度だ、こういうふうに伺っておりますけれども、いわゆる護送船団方式、こういうことによりまして、がんじがらめの規制の中、その中で系統金融あるいは信用組合の制度の問題を今後どのような方向に持っていこうとされるのか、所見があればお伺いをしておきたいと思います。
  106. 禿河徹映

    禿河公述人 系統を持っております協同組織の金融機関、これの存在意義といいますか、あるいはその合理性というものは、前の金制でも指摘をされておるところでございます。  ただ、系統関係の末端の方は非常に規模も小さいのが多うございます。そういうこともありますし、また、資金の流れ等々の関係もありまして、先ほど御指摘のありましたような預貸率が低くて、いわば余裕金が多額に生ずるとかいうふうな面もございます。こういうものにどう対応するかということは、もちろん、まずそれぞれの単位におきまして融資を拡大をする、それによって預貸率を高めていくとかいう努力が必要でございますが、どうしてもその資金に余裕が起こったり、あるいは場合によっては資金のショートを来すおそれがあるとかいうふうなこともありますから、そういうものに対応して上部の中央機関というものが設けられておるわけでございます。  金融情勢等々からいって余裕金の運用は大変難しい状態でございますが、私どもとしては、そういう上部の中央機関、そこの運用の能力というものを高めて、そしてその利益を末端の方に還元をしていく、そういうことによって業態全体の体力の弱化を防いでいく、こういうことにこれから大いに努めていく必要がある。そのための運用手法の新しい開拓だとかいうことも進めなくてはいけない。そういう能力、スキルというものを高めていく、こういう努力が大いに必要になってくる。それによって系統全体がしっかりしたものになっていくということが大事なことだろう、かように思っております。
  107. 吉岡賢治

    吉岡委員 終わります。
  108. 上原康助

    上原委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  明二十三日の公聴会は、午前十時より開会することとし、本日の公聴会は、これにて散会いたします。     午後四時四十六分散会