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1996-04-02 第136回国会 衆議院 予算委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月二日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 上原 康助君    理事 桜井  新君 理事 近岡理一郎君    理事 深谷 隆司君 理事 保利 耕輔君    理事 今津  寛君 理事 草川 昭三君    理事 野田  毅君 理事 三野 優美君  理事 五十嵐ふみひこ君       相沢 英之君    伊藤 公介君       伊吹 文明君    稲葉 大和君       江藤 隆美君    小澤  潔君       越智 伊平君    越智 通雄君       菊池福治郎君    岸本 光造君       小杉  隆君    志賀  節君       高鳥  修君    谷川 和穗君       萩山 教嚴君    原田  憲君       村岡 兼造君    村山 達雄君       森  英介君    谷津 義男君       若林 正俊君    安倍 基雄君       愛野興一郎君    伊藤 達也君       石井 啓一君    石井  一君       石田 勝之君    川島  實君       左藤  恵君    笹川  堯君       平田 米男君    広野ただし君       松岡滿壽男君    矢上 雅義君       山口那津男君    山田  宏君       山本 孝史君    米田 建三君       今村  修君    佐々木秀典君       坂上 富男君    田中 昭一君       永井 哲男君    細川 律夫君       錦織  淳君    穀田 恵二君       松本 善明君    吉井 英勝君       嶋崎  譲君  出席国務大臣         内閣総理大臣  橋本龍太郎君         法 務 大 臣 長尾 立子君         外 務 大 臣 池田 行彦君         大 蔵 大 臣 久保  亘君         文 部 大 臣 奥田 幹生君         厚 生 大 臣 菅  直人君         農林水産大臣  大原 一三君         通商産業大臣         労働大臣臨時代         理       塚原 俊平君         運 輸 大 臣 亀井 善之君         郵 政 大 臣 日野 市朗君         建 設 大 臣 中尾 栄一君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     倉田 寛之君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 梶山 静六君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 中西 績介君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      岡部 三郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 臼井日出男君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      田中 秀征君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中川 秀直君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 岩垂寿喜男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 鈴木 和美君  出席政府委員         内閣官房内閣内         政審議室長   藤井  威君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         人事院事務総局         職員局長    佐藤  信君         警察庁刑事局長 野田  健君         警察庁警備局長 杉田 和博君         防衛庁長官官房         長       江間 清二君         防衛庁防衛局長 秋山 昌廣君         防衛施設庁長官 諸冨 増夫君         防衛施設庁総務         部長      大野 琢也君         防衛施設庁施設         部長      小澤  毅君         国土庁土地局長 深澤日出男君         法務省民事局長 濱崎 恭生君         法務省刑事局長 原田 明夫君         法務省訟務局長 増井 和男君         公安調査庁長官 杉原 弘泰君         外務省総合外交         政策局長    川島  裕君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省経済局長 野上 義二君         外務省条約局長 林   暘君         大蔵省主計局長 小村  武君         大蔵省銀行局長 西村 吉正君         文部大臣官房長 佐藤 禎一君         厚生大臣官房総         務審議官    亀田 克彦君         厚生省保健医療         局長      松村 明仁君         厚生省薬務局長 荒賀 泰太君         農林水産大臣官         房長      高木 勇樹君         農林水産省経済         局長      堤  英隆君         農林水産省畜産         局長      熊澤 英昭君         食糧庁長官   高橋 政行君         運輸省鉄道局長 梅崎  壽君         郵政省貯金局長 木村  強君         労働大臣官房長 渡邊  信君         建設大臣官房長 伴   襄君         自治大臣官房総         務審議官    湊  和夫君         自治省行政局長 松本 英昭君         自治省行政局公         務員部長    鈴木 正明君         自治省行政局選         挙部長     谷合 靖夫君         自治省税務局長 佐野 徹治君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      堀口 一郎君     ————————————— 委員の異動 四月二日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     森  英介君   武藤 嘉文君     小杉  隆君   村岡 兼造君     伊吹 文明君   石田 勝之君     矢上 雅義君   谷口 隆義君     広野ただし君   前田 武志君     石井  一君   佐々木秀典君     永井 哲男君   吉井 英勝君     穀田 恵二君   海江田万里君     嶋崎  譲君 同日  辞任         補欠選任   伊吹 文明君     萩山 教嚴君   小杉  隆君     稲葉 大和君   森  英介君     相沢 英之君   石井  一君     米田 建三君   広野ただし君     山本 孝史君   矢上 雅義君     石田 勝之君   永井 哲男君     佐々木秀典君   嶋崎  譲君     海江田万里君 同日  辞任         補欠選任   稲葉 大和君     岸本 光造君   萩山 教嚴君     村岡 兼造君   山本 孝史君     谷口 隆義君   米田 建三君     前田 武志君 同日  辞任         補欠選任   岸本 光造君     武藤 嘉文君     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成八年度一般会計予算  平成八年度特別会計予算  平成八年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 上原康助

    上原委員長 これより会議を開きます。  平成八年度一般会計予算平成八年度特別会計予算平成八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き、理事会協議に基づく総括的一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊吹文明君。
  3. 伊吹文明

    伊吹委員 自由民主党伊吹文明でございます。  お時間をいただいて、質問をさせていただきます。  私は、現在の政治を見るときに、投票に行かない方が非常に多くなっているということに民主政治の危機を感じております。古い自由民主党に私は大きな責任があったと思いますが、率直に申して、党内一つの私的な集団権力闘争の結果、分派活動が行われ、そして新しい政党が今宗教関係団体基盤とする政党を含めて成立をし、そして小選挙比例代表並立制という新しい制度目前にして、政治家はすべて選挙のことに目が向き過ぎているんではないか、そして政党理念主張しないがゆえに政党支持者政党離れをしているんではないかということを私は非常に危惧いたしております。  マックス・ウェーバーのこの「職業としての政治」とマキャベリの「君主論」というのは、私は政治に携わる者はぜひ読むべき本だと思っておりますが、その中でマックス・ウェーバーは、政治の本質は権力であるということを言っておりますが、同時に、政治家にとって最も大切なのは「将来」と「将来に対する責任」であるということを申しております。  権力というのは、例えば、選挙に勝つこと、与党になること、ポストにつくことだと私は思いますが、それはあくまで、理念というか政治的主張によって政策を決定して、将来に対する責任を果たすためのプロセスであると思っております。自己の利益だとか権力に対する欲望だとか、そういうことで権力を求めないという自己抑制というものは、政治家の質であるとか教養からおのずから醸し出される人間的な裏打ちがなければならないと私は思っています。  そこで、理念権力人間性というこの三つのポイントをキーワードといたしまして、総理に、私は現在の政治の状況について感想を伺いたいと思うのですが、前回選挙の後、非自民という非理念的な細川内閣ができまして、それ以降の政治というのは、与党になること、選挙に勝つことにウエートがかかり過ぎているのではないか。特に、小選挙区制を目前にして、選挙目当て権力闘争が進み過ぎているのではないか。  例えば、台湾海峡の問題あるいは朝鮮半島の緊張、また国内においては沖縄の方々立場日米安保条約をどう考えるのか、あるいは最も国民が期待している景気対策、こういうものに対して、与野党の間で将来に対する責任ということを議論するよりも、票目当てのパフォーマンスということが最近非常に多くなっていると思います。  最近のこのような政治的風潮について、比較第一党の総裁である総理の率直な御感想を私は伺いたいと思います。
  4. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今委員から幾つかの問題が提起をされました。そして、比較第一党の党首としての答弁を求めるということでありますが、私は、あくまでもここで答弁に立たせていただくのは行政府の長であります。  しかし、その行政府の長というものが、二院制を背景とし、その議会で選ばれた、その議員の一人という立場からこれを考えましたときに、少なくとも私たちは、全国民から選挙というもので選ばれ、国民代表する立場において国民の信託に基づいて国政に携わっておると考えております。そして、私は、今委員が述べられた問題意識の中で、幾つかの点はその懸念を共有いたします。  例えば前回衆議院選において、私ども自由民主党比較第一党ではありましたが、過半数をちょうだいすることはできませんでした。そして、その後、各政党間の話し合いによる連立政権というものが継続をし、今日、私たち社民党、当時は社会党でありました、また、新党さきがけとの間で連立政権を形成をいたしております。  ただ、顧みて他を言うのではなく、少なくとも、この三党の連立政権が発足をいたす段階におきましては、当時の社会党及び新党さきがけ政策協定合意というものがあり、これを他の党にも提示されたと伺っておりますが、私どもも当時提示をされました。そして、お互いにテーブルに着けるというところから政策的な合意を形成し、その上で連立政権成立をいたしております。  私は、議員が御指摘になりましたように、さまざまな事象の中で、確かに投票率低下をしておりますこと、そして国民の中から、政党には期待できない、投票所に行ってくださる方々の中にもいわゆる無党派という言葉にくくられる方がふえており、また、投票率低下をしているということについては、私たち一人一人がみずからを戒めながら国政の中において果たしていくべき役割というものを真剣にお互いに受けとめるべき、そのように考えております。
  5. 伊吹文明

    伊吹委員 現在は、総理がおっしゃったように、絶対多数を持っている政党はありません。したがって、連立によって政権を維持するということは当然であって、そこに政策協議ということが行われて連立というものができております。  そして、村山内閣から橋本内閣へ移る段階で、この過渡期と言うには余りにも長く不幸な時代において、ポストを求め、公認を求め、当選を求めて党派を渡り歩くという人が多い中で、村山さんが示された人間的な信義というものは私は高く評価をしたいと思います。  自由民主党に支えてもらったら必ずその恩義を返すために、村山さんが橋本総理国会での指名に当たって党内でどれだけの努力をされたかということを私はある程度知っているだけに、その村山さんの信義は、信義がない、人間的な節義がない現在の政界においては私は高く評価をしたいと思います。同時に、村山さんは大変な苦労をされて安全保障面において大きなかじを切られたと私は思う。  その中で、連立信義を守るということは当然のことでありますが、おのおの独自の理念を持った独立政党であるわけです。私は、社民党佐藤幹事長が今の枠組みは永続的なものではないという発言をされたという新聞報道を拝見しております。現在の時点においての連立ということを考えておっしゃるということであれば、これは政策協議がありますから、私は非常に問題のある発言じゃないかと思っておりますが、小選挙区という一人しか当選できない選挙目前に控えて、将来のことであるということになれば、小選挙区においては、自党公認候補以外の人はすべて敵とし て戦わねばならないという現実を我々はしっかりと受けとめねばなりません。  したがって、保保連合ということを言う方がおります。保保の保の一方の保というのはどういうものか、保守という理念というのはどういうものかということは、かなり私は勉強してその理念について検証して発言をしなければならないと思います。  例えば、宗教関係信者団体基盤とする政党一緒になっている政党保守であるということは私は必ずしも同意はいたしませんけれども保保連合ということは小選挙区を考える限りあってはならないことであり、同時に自社さきがけ連立というものも、選挙においては、少なくとも選挙戦においてはあってはならないことだと私は思います。  選挙戦は、あくまで個々政党独立理念を持って、個々政党を形成している限りは単独過半数を目指すという総裁としての自由民主党大会でおっしゃったことは、私はごく当たり前の一般論として正しいと思いますが、そのお考えは今も当然変わっておりませんね。簡単にお答えを願います。
  6. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 選挙制度のいかんを問わず、私は、政党はみずからかざす理念、それに基づく政策を遂行するために選挙において自党過半数を制するように全力を尽くす、これは私は当然のことだと思います。
  7. 伊吹文明

    伊吹委員 これは、社会党さきがけも今連立を組んでおりますが、私は当然のことだろうと思います。  そこで、保保連合とか自社連立というのは、この国会に関する限りはちょっと議論などということは別にして、私は政策の問題をお伺いしたいと思うのです。  まず、民主主義という訳を日本語で当てられているデモクラシーというのは、私はこれは誤訳だと思いますね。デモというのは、旗を持って、あるいは大衆デモをするというこのデモであって、個々人が集まって大きな集団大衆をなすことをデモといいます。クラシーというのは、ビューロクラシー、アリストクラシーというように、これは官僚制度貴族制度という制度ですね。  だから、デモクラシーというのは私はあくまで大衆制と訳すのが正しいのじゃないかと思いますが、この大衆制というものの基本は、やはり私は主権在民、つまり大衆に最終的な権利があって、間接選挙代表を選んで、そしてその選ばれた代表多数決で物を決める。この多数決が機能しないときには疑似民主主義ということになってすべてがうまくいかないのだということは、この小沢一郎新進党党首の「日本改造計画」の四十二ページに書いてあるわけですね。  今、多数決なしにデモクラシーが機能すると思われるかどうか、総理にお伺いしたいと思います。
  8. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、その多数決の前に、論議が存在し、その論議の中において多数党は少数党主張に耳を傾け、その利害得失を考究するという熟慮の段階は必要だと思います。その上において論議の決しないとき、多数決によって物が決せられる、それは私はルールだと思っております。
  9. 伊吹文明

    伊吹委員 少数党の意見を聞き、審議を重ね、妥協を図るというのは、私は総理がおっしゃるとおりだったと思いますが、今回のピケ、座り込みというのは果たしてそうであったかどうかということを私は非常に疑問に思っております。  そこで、私は、実は与党時代に三度、野党時代に一度、自由民主党国会対策の副委員長を四期務めましたが、当時の社会党の抵抗には随分手をやいたものであります。当時の社会党がおとりになった牛歩だとかあるいは欠席戦術というのは、少なくとも他の国民から選ばれた議員審議権というか、審議の場に入るという権利は奪わなかったと思うのですが、今回の自由民主党社民党やあるいはさきがけや共産党の諸君がこの委員会に入れなかったという戦術について、当時の社会党の闘士であった久保総理はどう評価をされますか。
  10. 久保亘

    久保国務大臣 私も、社会党の院内の役員や党の役員を務めておりますときに、税制問題等牛歩戦術などを行使させていただいたことがございます。振り返って、いろいろやはり少数党意思表示手段としてこれらのことがすべて否定されるとは考えておりませんが、今伊吹さんがおっしゃいましたように、そのことによって審議権を奪うというようなことについては、これはとるべき手段ではなかろう、こう思っております。  振り返って最近の出来事を考えてまいりますと、今景気対策や内外の政治諸課題が山積をいたしておりますときに、国会が正常な状態を保てず、審議が長期間にわたってストップいたしましたことにつきましては、特に予算早期成立を願い、また財政再建等についての国会の御議論をお願いを申し上げております大蔵大臣立場からは、大変残念なことであったと考えております。
  11. 伊吹文明

    伊吹委員 土井議長は、考えてみますと、自民党が野党になりましたときに、私は議院運営委員会理事をしておりまして、当時、本会議選挙がありました。土井議長は、実は現在新進党を形成しておられる方々が主になって選ばれた議長であったと思いますが、その議長審議の場に戻ってもらいたいと言うことを拒否をされて、しかも国民から選ばれた他党の議員審議権を物理的に奪ったということは、私は憲法に規定された議長あるいは国会法に規定された議長の権限を無視したことになると思います。  このことのけじめは、やはり議院運営委員会中心にきちっとつけなければ、日本国憲法民主制というものは守られないのではないかと私は思いますけれども、少なくとも審議の場を奪われて正常な委員会運営ができなかった委員長立場として、このことについてきちっとけじめをつけるように、私は、理事間で協議をして、委員長から議長に申し入れていただきたいと思いますが、委員長いかがですか。
  12. 上原康助

    上原委員長 今の件につきましては、これまでの経過で既に議長の方にも御報告をしてありますし、そういう上で正常化になったと思いますので、御理解願いたいと思います。
  13. 伊吹文明

    伊吹委員 民主制でもう一つ大切なことは、間接選挙によって成り立っているということですが、票がいかに入るかということは、いろいろな要素が実はあります。政策が立派だとか理念一つ筋が通っているということもありますが、あの人に世話になったとか、あの人に息子の就職を世話してもらったとか、娘の結婚式に出てもらったとか、一緒に写真を撮ったとか、肩を組んでおみこしを担いだとか、いろいろな要素がある。まさに、だから民主制というのは大衆制という訳が私は当たっていると思うのですね。  票の入り方、あるいは票が入らなくなる理由はいろいろな要素があります。したがって、このデモクラシーというものをうまく運営していくためには、政治家がやはりできるだけ理性によって自制をして、そして欠点が出ないようにやらねばならない。つまり、政策とか理念政治家はできるだけ前面に押し出して、マックス・ウェーバー言葉によれば、「将来に対する責任」を果たしていくということです。  そこで、私が思い出すのは、かつて日本社会党は、土井さんが委員長だったときですが、消費税の問題があって、好きですか嫌いですかという問いかけを国民にされました。そして、嫌いなものはだめ、だめなものはだめということになって、我が党は実は参議院で大敗をしたわけであります。  そのことを考えるときに、実は、新しい税金を入れるのが好きか嫌いかと問われれば、総理を含めて嫌いな人が私は一〇〇%だと思います。しかし、その税金でこういう政策をやる、このような福祉をやるから、その費用を負担してもらうために必要か不必要かと問われれば、必要だと答える人はかなりの数に上がってくると思いますね。  今回も、税金を使うのが好きか嫌いかと聞かれれば、嫌いだと言う人は、ほとんどすべての人がそうであります。しかし、これを入れなければ、経営基盤の弱い農協を引き金として預金の取り立て騒ぎが起こった場合にどうするかということを考えたときに、必要か不必要かという議論が私は起こってくるんだろうと思いますが、政策の問いかけ、政治家姿勢として、必要か不必要かで問いかけずに好きか嫌いかで問いかける姿勢について、総理はどのようにお考えになりますか。
  14. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私ども自由民主党単独政権時代から現在連立政権を形成しておりますプロセスの中で、しばしば、その好きか嫌いかといった問いかけから発する国民の非常に厳しい視線にさらされてまいりました。  ただ、少なくとも、自由民主党単独政権時代におきましても今日におきましても、私どもは、そうした声は十分に受けとめながらも、この国のあすを考えるとき必要と思う施策を進めてくることに全力を尽くしてまいったと考えております。そして、その必要性を御理解がいただけないとき、過去におきましてもしばしば私ども国民の反発を受けたことがございました。しかし、時間の経過の中で、改めてその御理解のいただけたこともございます。  我々はやはり、必要か不必要かという視点から政策選択は進めていくべきもの、そのように思います。
  15. 伊吹文明

    伊吹委員 さて、そのような観点から考えると、国民の大半が反対をしているというその表現は、果たしてどうだろうかと私は思います。私は、率直に申し上げて、自由民主党社民党さきがけ中心とする連立内閣の説明が、当初非常にまずかったのではないかという印象を持っておりますけれども、だからといって、好きか嫌いかという議論にこのことをすりかえては、必要なことはすべてできなくなるんじゃないかと思います。  そこで、この座り込みの過程で新進党から出していただいた「住専問題に関する具体的方針」というものがあります。これは実は、このことについて私は、出されないよりも出された方が立派であったと思いますが、まあ願わくんば、正式の法律的な対案として国会に出していただいて、かつての政治改革法案のときのようにお互いに反間権を認め合って、そして議論をして彼我の優劣を国民の前にさらして、そしてその上で、総理がおっしゃったように少数意見に耳を傾け、調整するところがあればその調整をした後、まさに小沢党首がおっしゃっているような疑似民主主義にならないように粛々と多数決で議決していくというのが、私はあるべき姿だろうと思うのですね。  そこで、これは、この新進党の「具体的方針」というのが必ずしも具体的じゃないので、伺うことに私は若干の誤解があるかもわかりません、法律として出してくださればきちっとした質問ができると思うのですが。  そこで、大蔵大臣評価を伺いたいのですが、どうもこれを読んでみますと、会社更生法によるということは書いてあるのだが、日本版のRTCをつくるということも書いてあります。  したがって、違いは、個々の住専が会社更生手続をとって債権をRTCを通じて回収した後、経理が悪化した農協には財政的な援助をする。しかし、銀行の負担は結果的に減り、農協の負担はふえる。そして、個々の更生手続でかなり時間がかかるというふうに私は実は思っている。誤解かもわかりませんが、この一枚の紙っ切れではその程度の判断しか実は私はできないのです、残念ながら。  そこで、力の強い銀行はともかく、農協は預金引き出しに応ずる資金がこれだけ時間がかかればなくなるということは私は確実だろうと思いますが、その預金引き出しに応ずるために借り入れによってつながねばならない。そして、その借入金に対する金利負担は当然さらに膨らんでくる。そうすると、最終的に農協に対する援助あるいは国民税金というのは、六千八百億ではとてもとても済まないように思うのですが、大蔵大臣、その辺はどう評価しておられますか。
  16. 久保亘

    久保国務大臣 今お尋ねの中でお話がございましたように、対案として正式に法律案が出されているわけでございませんので、私の方から対案としての評価を申し上げることはできない、こう思っております。しかし、基本方針とか基本方針を具体化されました方針というものが出されましたことは私も承知をいたしております。  お尋ねございました農協系統の金融機関の問題につきましては、最初の方針案の中では、全面的にこの欠損については国が面倒を見るような方針でお示しいただいておったと思っております。具体的な方針の中でも、農協系統金融機関の問題については必要な段階で公的資金の導入をお認めになっているものと考えておりますが、これを法的処理、会社更生手続等によってやられます場合の難しさという問題もございますが、もし仮に破産処理ということでやりました場合には、これをごく公式的に処理をいたしますと、農協系統金融機関の損失並びに欠損に対する負担は最小限度で二兆七千五百億に及ぶことについては既に当委員会においても申し上げたところでございます。  実際には、経費等がかかりますので、それを超えるものになろうと考えておりますが、その点については、新進党からお示しになっております方針案の中で、その場合、国の公的な財政支出が幾らになるのかということについては具体的な数字をもってはお示しになっておりませんので、私も機会がありましたら一度ぜひ伺ってみたいと思っていたことでございます。
  17. 伊吹文明

    伊吹委員 大蔵省の銀行局長にちょっと事実関係を聞きたいのですが、この住専の良質債権が三兆五千、回収見込みがあるのが三兆三千、不良債権が六兆三千、こう言われていますが、これは良質債権というものが一つあって、そして回収見込み債権というのが別にあって、そして不良債権というものがまた第三の債権としてあるというのじゃなくて、個人の住宅購入もしくは住宅建設について貸し付けたような優良債権は別にすれば、例えば末野興産とか富士住建に貸し付けられた債権の中で、一部が担保価値でカバーされているから良質債権もしくは回収見込み債権になり、回収されていない部分が不良債権になるというような位置づけで私は理解しているのですが、それでいいですか、悪いですか。簡単にいいか悪いかだけ答えてください、時間がないから。
  18. 西村吉正

    ○西村政府委員 非常に大まかに申し上げますならば、個人住宅ローンを中心とする正常債権が一方にございまして、他方において問題のある債権がある。その中で、回収不能と見込まれる部分が六兆二千七百億であり、担保等によって回収可能性のある部分がいわゆる二分類とか三分類という形になっておる、こういうことでございます。
  19. 伊吹文明

    伊吹委員 ということは、これからの地価の動向等あるいは経済の動向等によりますけれども、結局、農協に対するつなぎ資金の金利のふえ方と、担保価値が運よく上昇していけばその上昇度合いとの相関関係だと思うのですよ。率直に言うと、私は、金利がふえていく方が非常にスピードが速いんじゃないか、現在の経済状況を考えますと。  そうすると、その間の農協の経営基盤というのは非常に弱くなって、自民党や社民党さきがけの案は、農協を助けるということが実は目的ではないと私は思いますが、農協の預金者の預金引き出しを引き金として、その信用不安が実は信用組合や信用金庫やあるいは銀行にまで波及をしていくことから、善意の預金者の預金を保護していくことが目的であったと思うのですよ。しかし、そういうことからすると、農協の経営基盤が弱くなっていく時間を長くとる案というのは、その間の信用不安とか国際的な信用低下や、景気回復が阻害される。大蔵大臣はどういうふうに思われますか。
  20. 久保亘

    久保国務大臣 不良債権の処理の基本的な立場といいますものは、第一に預金者の保護であり、信用秩序の保全であり、特に今日のような金融の グローバル化の中では、国際的責任を全うするということでもございます。それらを通じて景気の回復に資するという、そういう目的のものでございますから、今農協の預金者の問題について伊吹さんがお話しになられましたことについては、私も同じような考え方に立つものでございます。
  21. 伊吹文明

    伊吹委員 今私の後ろの方からいろいろ不規則発言もありますが、私が誤解しているかもわからないのです。これは最初申し上げたとおりなんです。ただ「具体的方針」という紙切れ一枚ですから、内容が私も実はよくわからぬわけですよ。できるだけしんしゃくをして質問をしているわけで、質問の内容が間違っているとすれば、ぜひこれは私は法律案として国会へ出していただきたいと思うのです。  それで、これは実は政府案でも同じようなことがある程度予想されるわけですけれども、特に別々の住専の会社が会社更生法の破産手続をとってやった場合には、債権処理というのが非常に時間がかかると思うのですね。例えばこれはもう民事執行法やあるいは民法の三百九十五条で明らかなことなんですが、第三者に短期の賃借権を設定されてしまった場合に、当該賃借権者は担保権を設定した者に対抗できるという条文があるわけですね。  政府案であると、住専処理機構にすべての債権を移して、住専処理機構がこれを処理していくという形になるわけですが、会社更生法の破産手続をとった場合には、これはRTCみたいなものを中に入れると書いておられるので、そのあたりのちょっと仕組みが私もよくわからないのですが、いずれにしろかなり裁判の数が多くなってしまって、時間がべらぼうにかかってしまうと思うのです。通常のこのような民事の裁判について、結審まで大体どの程度の時間がかかるものか。これは案件、案件によって違うと思いますが、少なくとも政府案の方が私は処理はしやすいというふうに思いますが、一般論として、民事の裁判でこのような短期賃借権が設定されたような場合は結審までどの程度かかりますか。法務省、答えてください。
  22. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 今直接のお尋ねは、短期賃貸借が設定された場合に対応する訴訟ということで、いろいろな訴訟の場面があろうと思いますけれども、ただ、裁判所の統計では、裁判の種類ごとの統計というのは必ずしもございませんので、直接のお答えといたしましては、一般の地方裁判所の民事第一審の訴訟事件の審理期間を申し上げさせていただくほかございません。  それによりますと、平成六年の統計年報によりますと、既済事件、処理をした事件の総数が十四万四千件余りでございますが、このうち一年以内のものが十万九千件余り、一年を超え二年以内のものが二万件余り、したがいまして、二年を超えるものがその残りの一万数千件ということでございます。  ただ、御指摘の住専の債権の回収という問題を考えます場合には、大変大量のそういう事件の処理、それを全体として訴訟手続あるいは執行手続で処理してまいるわけでございますので、その全体をそういう手続を経ながら処理していくということについては相当の期間がかかるということであろうと考えます。
  23. 伊吹文明

    伊吹委員 ちょっと局長、そこで待っていて。簡単なことだから。  そうすると、会社更生法の破産手続をもって回収された債権に対して、回収されたその債権の債権者に対する配分はどういうふうになりますか。原則論を答えてください。
  24. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 会社更生手続の場合についてお答えを申し上げますが、会社更生手続におきましては更生管財人が選任されまして、その重要な職務として更生計画案というものを作成するわけでございますが、そこにおきましては会社の組織をどうしていくか、資本の関係をどうしていくか、これからの事業計画をどうしていくか、あるいは債務弁済計画をどうしていくかというようなことが定められます。  その中の一つとして、更生債権者や更生担保権者等の権利をどれだけ満足させるかということを決めるわけでございますが、その債権者間の配分につきましては、法律上、公正・衡平の原則というものと平等の原則というものが定められております。  前者の原則と申しますのは、これは債権の種類に応じて、すなわち一番強力なものは担保権を持っている更生担保権でございます。それからそのほかは、一般の債権は更生債権と呼ばれます。更生担保権の方が優先するということでございますが、そういう権利の順位を考慮して、公正、衡平な差等を設けて定めるということになっております。  後者の平等の原則は、同じ性質の権利を有する者の間では更生計画の条件は平等でなければならないということになっております。ただし、少額な債権等について衡平な差等を設けるというようなことは、一定の限度で許されておるところであります。
  25. 伊吹文明

    伊吹委員 これは平等の原則だということになると、結局住専が貸付先から回収できた、新進党案で言うと日本版RTCが回収し、つまり個々の更生手続を申請している住専各社が結果的に回収をした債権というのは、さらにその上の母体行、一般行、農協系統に配分されることになると思うのですが、平等の原則からいきますと、例えば二割仮に回収できたとすると、母体行は三兆五千億の二割は返してもらえることになりますね。一般行は三兆八千のうちの二割は返してもらえる。農協系統は五兆五千のうちの二割は返してもらえて、あとはすべて負担をしなければならないということになる。こういう案が、私は本当に信用秩序の維持のため、現実的に機能するのだろうかという気持ちを率直に持っております。  そこで、自由民主党、それから社民党さきがけは、言うならば政府案を出して、オペラを歌いたい、こう言ったわけですね。ところが、オペラは絶対聞きたくないから劇場に入れてやらないというのは困るわけでして、おれたちはこういう演歌を出すから、どちらがいいかを観衆に聞いてもらいたいという話をしてもらわねばならぬわけでして、ぜひ私はこの案を対案として国会に出してもらいたい。  そして予算には、安全保障とか福祉とか中小企業対策とか、国民が待ち望んでいるものが実はいっぱい入っているわけですね。その中で六千八百億というのは約一%弱の金額です。そして、これで削除、削除、削除、削除でオペラを歌わせないで、おれは何を出すかわからないけれども、ともかくオペラは聞きたくないから劇場に入れないというのは、これは私はやはり民主主義というものを本当に小沢党首が言われるように疑似民主主義にしてしまうと思うのですね。  そこで私は、予算予算として通して、関連法案を委員会審議する際に、新進党もきちっと対案を国民の前に出されたらいいと思うのですね、法律として。そして、お互いに反間権を認め合って、それでそこで議論をするということがごく当たり前のことなんですよ。(発言する者あり)そして、予算成立をしても実はそんなに、後ろでいろいろ不規則発言をしておられますが、これは新進党の方が心配されるように予算を通してもすぐには執行できないのですよ、それはこれからこの後質問いたしますが。  だから、委員長から私はぜひ、予算予算として、やはり小沢党首のこの四十二ページにきちっと書いておられるように、小沢さんが自由民主党におられたころに、自分の理念をしっかりと出して、そしてそれを実は多数決でしっかりと通していくのだというのは、一つ政治家のタイプ、特に西欧型の政治家のタイプだとして私は大変評価をしておったですよ。ところが、新進党党首になられてから、私は小沢さんの姿がかつての光を失っていると思う。  総理とお話しになられた中で、自分はピケを解きたいのだけれども、周りがそれを許さぬという発言があったとか新聞報道には載っておる。もち ろんお二人の話ですから、そこで、私はこれを確認するようなやぼなことはいたしませんけれども、であるがゆえに私は委員長にぜひ提案したい。予算予算としてルールにのっとってきちっと処理してもらいたい。そしてその後、その関連法案をどうするかというところに議論の場を移さないと、国民は大変迷惑をすると思います。委員長、いかがですか。
  26. 上原康助

    上原委員長 今の御提言は非常に重要な内容を含んでおります。予算委員会理事会だけで結論づけられない分野もあるかと思いますが、新進党さんの意向も含めて協議をさせていただきたいと思います。
  27. 伊吹文明

    伊吹委員 実は、予算を通してもこの予算が執行できない、必ずしも私は政府の判断で執行できないと思うのですよ。だから、新進党もその点は安心をされて、議論の種を出されたらいいと私は思う。それを出されないから、いつまでたっても国民がわかりにくい状況になっている。  その根拠を私はこれからちょっとお話をしたいと思うのだが、大蔵省に聞きたいのですが、予算の意味ですね。まず予算案というのは、政府の全政策を金銭面で表示して立法府としてのオーケーをとるというか、承認をとる行為だと思うのですね。そこで、歳入の計上はこれはあくまで見積もりであって、権限を与えているものではないと思いますが、歳出というのは歳出の上限を規定しているもの、立法府から行政府がもらった歳出権限の上限を制限しているものだと思います。  ただし、これがすぐに執行できるかどうかということになると、関連法案を伴っているものは関連法案がなければ執行できないんじゃないですか。その辺どうですか。法規上のことだけ答えてください。政治的なことはいいから。
  28. 小村武

    ○小村政府委員 予算の意味につきましては、ただいま先生おっしゃるとおりでございまして、歳入については見積もり、歳出については国会が内閣に対して、その金額の範囲内で当該年度の債務負担権限あるいは支出権限を付与するものでございます。  一方、この予算につきまして重要なもの、あるいは一定のものにつきましては、法律をもってその財政支出の裏づけをすることが必要でございます。新たに補助金を交付したり特定の法人に出資したり等の新規立法が必要な場合がございますが、こうした場合におきましては法律の未成立段階では執行ができないということでございます。
  29. 伊吹文明

    伊吹委員 この住専に関する関連法案というのは、既に議院運営委員会に提出されていると私は思いますね。  そこで、法制局長官に政府としての立場を確認しておきたいんだが、今大蔵省の主計局長ですか、が答弁をした予算関連法案と、予算関連法案というか予算の執行関連法案と予算の関係について、政府としての統一見解を確認してください。
  30. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 ただいま大蔵省から答弁がございましたそのとおりでございます。  なお、もう一度確認いたしますと、ある施策を実施するために予算及びその裏づけとなる法律案が同時に提出されているという場合に、予算のみが成立し、そしてその裏づけとなる法律案が成立しないという段階におきましては、予算中の当該法律案に係る経費は支出できないという関係にございます。
  31. 伊吹文明

    伊吹委員 そういうことですから、もし新進党が、本当に自分たちはこうしたいという考えがあるんなら、ぜひ私は法律案を出されたらいいと思うんですね。予算の組み替えを出されるというところまでは行っていないわけだし、新進党案もこの「具体的方針」という実は紙一枚なんですね。これで実は議論するということは、私も非常に心配といいますか、新進党に対しても不誠実じゃないかと私実は心配しておるわけです。  そこで、今申し上げたように、国民の前に堂々と自分の考えを対案として、法律案としてぜひ国会議員立法で出してもらいたい、私はこのことを強くお願いしたいと思うのです。  そこで、今の法制局長官の統一見解的発言によれば、結果的に住専関連法案が、大蔵委員会なのか特別委員会なのかわかりませんが、そこを通って本会議を通らない限りは、予算案が通過してもなかなか執行は難しい、こういう理解だと思うのですね。  そこで、ぜひ私が伺いたいのは、凍結ということをよく言いますが、凍結の意味なのですよ。かつて凍結ということが言われたのは、第四次防衛力整備計画について、防衛予算が、実は第四次防衛力整備計画が閣議決定をする前に政府予算案として国会に出されたということなのですね。当時は佐藤内閣の末期で、いろいろな政治的な流れもあったと思います。私も一公務員としてその流れの一番端の方にいた者なのですが、第四次防衛力整備計画と防衛予算の関係については、関連法案が実はなかった。なかったから、新たに国会の議決を経るまでその予算が凍結された、こういうことだと思うのです。  ところが、今回は関連法案がある。関連法案の場で議論すれば済むことで、予算を人質にとっていつまでも国民を、年金を欲しい人、老人医療を待っている人、景気回復を待っている人、中小企業対策を待っている人を人質にとることは私はやってはならないと思う。それはどうですか、凍結の意味、法律的な。
  32. 小村武

    ○小村政府委員 予算の凍結ということは法的な定義はございません。これまで予算の凍結として論じられてきた事例から見ましても、予算の凍結とは、国会が議決をした予算の一部について一定時期までその執行を行わないこととする、いわば内閣の方針としてとったことがございます。  御指摘の四次防については、四十七年度予算で、四次防が決まる前に内容を先に予算に計上し、その内容が確定するまで凍結するといった事例はございます。
  33. 伊吹文明

    伊吹委員 今の議論でもうほとんどが尽きていると思うのですが、予算を人質にとるということは、私は、仮にこの住専処理法案を執行したくないと思っていても、論理的じゃないと思うのですが、久保大蔵大臣、どうですか。
  34. 久保亘

    久保国務大臣 政府といたしましては、予算案を御審議いただいて成立させていただくようお願いを申し上げている立場でございますから、ただいまの御質問に私がお答えすることは適当でないと思っております。
  35. 伊吹文明

    伊吹委員 私は、かつての竹下内閣の消費税の導入というのを非常に高く評価している者です。とかく民主主義大衆制に陥らないように政治家は心しなければならないということを最初に申し上げましたけれども、福祉を充実いたしますとか介護保険を入れますとか、あるいはどんどん道路をつくりますということは、これは国民に好かれます。必要か不必要かは別として、国民に好かれます。  しかし、ただで施策は行うわけにいかないのだから、どこかで必ずツケを取りに来なければならぬわけですね。ツケを取りに来た政党とか政治家は大変悪いやつで、そして、いい言葉や耳触りのいい言葉を振りまいた政治家だけが常にいい人だということになりますと、権力が欲しい人とか選挙に当選をしたい人というのは、政治家じゃなくて問題の先送り屋になってしまうのですよ。それはやはり民主主義の一番だめなところだと私は思うのですね。  そこで、今回新進党は、この六千八百億の税金を入れるのは嫌だ嫌だ、こういう話なんだが、そこで私は副総理にちょっと伺いたいんですが、細川内閣時代、まあ久保さん自身も当時の与党の大幹部であったと思うんですね。その当時、細川内閣や当時の与党としては、住専処理、あるいは住専処理まで突っ込まなくてもいいかもわからないけれども、信用秩序の回復というような話について何か御相談がありましたか。
  36. 久保亘

    久保国務大臣 細川内閣時代には、たしか平成六年の二月八日に、経済対策閣僚会議が総合経済対策の案を決定をいたしました際に、金融機関 の不良資産問題についての行政上の指針というものを発表いたしております。それは項目だけを申し上げますと、不良資産の処理促進、それから金利減免債権の流動化、資金の円滑な供給、金融機関の経営体質の強化、信用秩序の維持、以上五つの項目にわたって、金融機関の不良資産問題についての行政上の指針を発表したことはございます。
  37. 伊吹文明

    伊吹委員 わかりました。  検討して勉強するんなら、政治家より学者の方がはるかに上手なんですね。能力もあるわけですよ。政治家というのは、やはりそういうものを具体的に民主制というルールの中でどう実現していくかということなんですね。今伺っていると、検討したことはあるけれども税金を入れたりあるいは処理をしようという決断をされたことはないということですね。  ということは、結局、どうもやるべきことはやらねばならないという検討はしたんだけれども、もし最後のツケを取りに行って税金を投入したりすると、せっかくできた細川内閣がつぶれちゃったり大変なことになるからやめたということなんでしょうか。こういうことをやっていると、私は本当にだめになると思うんですよ。  だから私は、端的に言えば、細川内閣でやっていればもっと安く済んだと思いますよ。それから、さらにさかのぼれば、海部内閣や宮澤内閣のときに決断をしておればもっと安く済んだんじゃないかと思いますよ。だから、もうこれ以上先送りして、好きか嫌いかで国民の票をとろうとする行為は私はやめるべきだと思います。  そこで総理に、私、最後に時間ですから申し上げたいと思いますが、中国の言葉に「一時の寂寞を受くるも万古の凄涼をとることなかれ」という言葉があるんですね。これは、今非常に評判が悪くなるかもわからないけれども、長い目で見たらあの人は立派なことをやったという言葉なんですよ。これは菜根譚の一番最初に書いてある。私はこれは非常に好きな言葉なんですよ。竹下さんがやった消費税あるいは岸先生がやった安保の改定、こういうものは、私はこれに当たるんじゃないかと思いますね。  総理もぜひ、この一時の寂寞を受けることがあっても、長い目で見て、さすがに橋本内閣だという評価を受けるように、私は決断を持って予算を必ず早期に通してもらいたい。そして新進党の諸君も、自分の言っていることに自信があるんならば、提案を法律案として堂々と出して、私の相手になって答弁をしてもらいたい。後ろで逃げ回って不規則発言だけしているんじゃ、民主主義というのは動きません。  総理、最後に総理の決断と決意を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  38. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 菜根譚を引用されましてのお話でありますが、私の、古典の中で好きな言葉の中にこういう言葉があります。急流中の砥柱これ大丈夫の心なり。今のお言葉を大事にいたしたいと思います。
  39. 伊吹文明

    伊吹委員 ぜひ頑張ってください。ありがとうございました。
  40. 上原康助

    上原委員長 これにて伊吹君の質疑は終了いたしました。  次に、永井哲男君。
  41. 永井哲男

    永井(哲)委員 社会民主党・護憲連合の永井哲男でございます。  本予算委員会は、住専のさらなる理解のための予算委員会ということであります。そういうことで、住専のさまざまな問題についてお聞きをしたいというふうに思います。  特に、これまでこの住専処理というのが実は責任追及というものをないがしろにしたのではないか、このようなどうも誤った報道によって、国民の皆さんにそういうような印象を深く与えているような面があると思います。しかし、我々は、血税をつぎ込む以上、借り手の責任、住専の経営者の責任、母体行また系統や行政、そしてまた政治責任も、あらゆる責任を徹底的に解明し、追及していくということを、これは与党三党としても標榜しているところでございます。  とりわけ、その損害賠償については、住専の経営者に対する損害賠償、そしてまた、言われる紹介融資のうち悪質なものについての母体行に対するいろいろな損害賠償というものについては、これは、この処理の中では決して無視しているものではない。むしろ新進党においては、債権譲渡の対抗要件の問題と、継承できるかどうかという問題をあえて混同して、損害賠償というものはそもそもできないのだというふうなことも言っていたわけでありますが、本予算委員会においてそういう点が十分に明らかになってきたというふうに思います。  そして、そういう損害賠償によって追及したこの賠償金、利益というものはこれは国に還元される、六千八百五十億というものがこれは少なくなっていく、そういう方向に働くものだ、そういうスキームをつくっているわけですが、それらについて大蔵大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  42. 西村吉正

    ○西村政府委員 今回の住専処理策に関しまして、私ども、必ずしも十分な御説明ができなかったがゆえに、国民の皆さんに御理解を賜っていない点があろうかと思います。  今回の処理策は、二つの大きな趣旨、第一に、破綻した住専の早期清算処理ということであり、第二に、強力な債権回収、責任の追及による金融モラルの回復というような趣旨で取り組んだものと考えておるわけでございますが、その中でも、ただいま御指摘のございました、財政資金を投入することにかんがみ、関係者に対する損害賠償請求権を、未確定なものをも含めましてすべて包括的に譲り受けた後、速やかに過去の取引等を精査した上で、損害の概要等を特定したものにつき厳しく民事責任を追及することとしているところでございます。
  43. 永井哲男

    永井(哲)委員 刑事責任やいろいろな税務、そういったところでの調査、そして責任追及というものも十分にこれはされていくというふうに思います。  そこで、金融犯罪というものに対して、これからも十分に追及をしていかなければならないわけでありますが、そういった捜査の体制、そして進展の状況並びにそれに臨む各大臣、国家公安委員長、そして法務大臣の決意をお伺いしたいと思います。
  44. 原田明夫

    原田政府委員 御質問に対しまして、まず法務当局から御説明させていただきたいと存じます。  御指摘の、金融機関をめぐる犯罪につきましては、いわゆる住専をめぐる不良債権問題も含めまして、当国会においてもさまざまな論議がなされ、また多くの報道がなされているところでございます。そのような論議の中身は、我が国の金融秩序全体に関係する重大問題であるということで、検察当局といたしましても多大の関心を持って承知しているものと存じます。  現在の捜査状況といたしましては、代表的な例を挙げますと、まず木津信用組合に係る事件につきましては、大阪地検におきまして、長期間にわたるいわば内偵捜査を経まして、改めて去る三月十三日に、同組合の前理事長らに対する背任罪の告訴を受理いたしますとともに、この罪等の容疑によりまして同組合本店等の関係箇所を捜索いたしまして、いわば強制捜査に踏み切ったわけでございます。現在、押収した証拠書類等の分析、検討等を行っているところであるわけでございます。  また、コスモ信用組合に係る事件につきましては、東京地方検察庁において、同じく長期間にわたります内偵捜査を経まして、去る三月十八日、東京都からコスモ信用組合の前理事長を被告発人とする背任罪の告発を受理し、この組合の本店等の関係箇所を捜索するなどの強制捜査に踏み切りました。現在、押収した証拠書類等の分析、検討を行っているところと承知しております。  また、住専問題につきましては、問題の重大性にかんがみまして、検察当局におきましては、東 京及び大阪に住専問題等に関する協議会あるいは専従班を設置するなど、所要の体制を整えており、現在は、金融をめぐる不法事案についてあらゆる観点から情報、資料の収集に努めて、鋭意その分析、検討を行っているところだろうと考えております。
  45. 野田健

    野田(健)政府委員 住専問題は政府にとって喫緊の課題であるというふうに認識しておりまして、警察としては、住専問題の処理の過程で刑罰法令に触れる行為を認めれば、貸し手、借り手を問わず厳正に対処してまいる所存であります。  このため、警察庁においては、一月九日付で刑事局内に金融・不良債権関連事犯対策室を設置いたしましたが、二月八日、警察庁次長を長とする室に拡大強化して、新たに暴力団対策第一課長及び生活環境課長を室員として加えるとともに、同日、全国の都道府県警察に対し、情報収集、事件検挙及び体制の整備に積極的に取り組むよう指示したところであります。  警察庁の対策室においては、法務省、検察庁あるいは国税庁との連携を図り、また、各都道府県警察で行う事件捜査の指導、調整に当たっているところであります。  また、関係都道府県警察においても、例えば警視庁においては、捜査第二課、捜査第四課、生活経済課合わせて約七十名の専従捜査体制を確保しておりましたが、現在約二百名体制に増強いたしましたし、大阪府警察においては、捜査第二課、捜査第四課、生活経済課合わせて約百名の専従捜査体制を確保しておりましたが、現在約二百五十名体制に増強するなど、所要の体制を整備しているところであります。今後とも、必要に応じて増強することといたしております。  なお、警察庁においては、平成五年以降における金融・不良債権関連事犯について、金融機関の役職員により行われた業務上横領等を含めますと、過去三年間、平成五年から七年の間に百十五件、本年に入りまして二十件の検挙事例を把握しております。  その内訳は、融資関係におけるもので、罪種的には背任罪、恐喝罪等でありますが六件、このうち暴力団に係るもの一件、債権回収過程におけるもの、これは罪種的には恐喝罪、競売等妨害罪、破産法違反等でありますが五件、いずれも暴力団に係るものであります。その他の金融機関の役職員により行われたもの、これは罪種的には業務上横領等でありますが九件を検挙し、合計二十件になっております。なお、債権回収過程における事件のうち一件は住専に係る事件であります。  このほか、大阪府警察は、本年三月十三日、木津信抵当証券株式会社をめぐる詐欺告訴事件に関連いたしまして、木津信用組合本店等の関係場所数十カ所、翌十四日には、今申し上げました事件の関連場所として末野興産グループ関係箇所数十カ所の捜索を実施し、警視庁においては、本年三月十九日、コスモ信用組合に係る背任告発事件に関連してコスモ信用組合本店等の関係場所数十カ所の捜索を実施し、現在捜査中という状況にございます。
  46. 長尾立子

    ○長尾国務大臣 刑事責任の追及について私の決意という御質問でございます。  住専問題につきましては、政府が一体となって取り組んで債権回収のために万全な対策を講じる必要があると思っておりますし、関係者らの民事上、刑事上の責任、これは可能な限り明らかにされる必要があると考えております。それぞれの体制の取り組みにつきましては、今御説明を申し上げたところでございます。  現在の状況、また今後の見込み、これはちょっと答弁を申し上げられないわけでございますが、検察当局におきましては、国会におきますこのような御審議を踏まえまして、さまざまな御指摘もいただいておりますが、こういった状況も踏まえながら基礎的な調査を進めまして、関係者らの刑事責任を追及すべきであると認められるような容疑事実が判明いたしました場合には、警察当局等の関係機関と緊密な連携のもとに鋭意所要の捜査を遂げ、法と証拠に基づき厳正に対処するものと思います。
  47. 倉田寛之

    ○倉田国務大臣 警察といたしましては、いわゆる住専問題の処理の過程におきまして刑罰法令に触れる行為を認めますれば、貸し手、借り手を問わず厳正に対処をしておるところでございます。そのために、先刻刑事局長より御答弁申し上げましたが、警察庁及び関係都道府県警察におきまして所要の体制整備をしてきたものというふうに承知をいたしております。  私といたしましても、二月九日に設置をされました政府の住専問題処理対策本部を通じまして、政府にとって喫緊の課題であります住専問題の処理には最大限努力をしてまいる所存でございます。
  48. 永井哲男

    永井(哲)委員 木津やコスモの例を見てもわかるように、この種の犯罪、長期間の内偵を要するということでありますが、早期に住専の成果としてそういった犯罪を追及、摘発していただきたいということを要望しておきたいと思います。  さらに、与党では議員立法のチームにより、金融機関に関係する特別わいろや、また特別背任、またノンバンクと言われるところのその経営者に金融機関と同じような責任を課していくということを考慮しており、いわば金融犯罪の重罰化という方向で検討しているわけでありますが、報道によりますと、自民党内に一部異論があるような報道もあるわけでありますが、その点、自民党の総裁としての橋本総理のこの決意をお伺いしたいと思います。
  49. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 たびたび私はこの場で同じようなことを申し上げておりますが、私の立場行政府の長として答弁を求められる場であります。  そして、先刻来政府側から御答弁を申し上げましたように、関係者の刑事責任の解明というものにつきましても、政府自身厳正に対応することとしてまいりました。  そして現在、金融犯罪の重罰化と取り締まりの強化などの立法措置について、先般お取りまとめをいただきました与党の住専処理追加策に盛り込まれておることを当然よく承知をいたしております。  そして現在、与党の法的責任等検討プロジェクトチームにおいて、金融機関等を対象とする必要と認められる刑事罰則の強化について検討されているものと承知をいたしております。私は、こうした作業を大変関心を持って見守らせていただいております。
  50. 永井哲男

    永井(哲)委員 あらゆる責任をいろいろな形で明確化していくという中で、これまでの大蔵の金融行政というものも与党としていろいろとこれは問題にしているところでございます。新しい時代に対応する、そういった金融の行政、また護送船団の行政が行き詰まりになったと言われる中でのあり方、検査というものをどんなふうに充実したらいいか、いろいろな問題があると思いますが、この大蔵のこれからの改革という点について、大蔵大臣及び総理大臣のその御見解をお伺いしたいと思います。
  51. 久保亘

    久保国務大臣 金融行政の新しい方向といいますか、このことについては、もう目標に関する合意はでき上がっているのじゃないかと思っております。自己責任原則の確立、そして市場規律を基軸にしながら透明度の高い金融行政をつくり上げていこう。特に、今日のようにグローバル化が進展を続けます中では、国際的な責任、信頼をも念頭に置きながら、そのような目標に向かって改革を進めなければならないと考えております。  また、大蔵行政といいますか金融行政の改革につきましては、与党三党におきましても、この改革の方針を検討されますプロジェクトチームが既に発足されたと承っております。  また、大蔵省におきましても本日、事務次官を座長といたします、各局局長を初め幹部を網羅する形で、新しい金融行政のあり方を検討するためのプロジェクトチームを発足させることにいたしました。このプロジェクトチームのもとにワーキンググループをつくりました。そして、事務局も 設置をいたしました上で、大蔵省として、今日求められている新しい金融行政のあり方に対して、積極的に改革を目指して取り組むこのプロジェクトチームの論議を進めてまいりたいと考えているところでございます。  これらのものを通じて、最初に申し上げました目標に向かって新しい金融行政を確立することができるかどうかは、日本のこれからの経済、金融の自由化、国際化の中での行き方を決めることになろうと考えておりまして、皆様方の御協力もぜひ賜りたいところでございます。
  52. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今大蔵大臣から、自己責任原則、そして市場規律の十分な発揮を基軸とする透明性の高い金融システムという言葉が述べられました。私は、この住専の問題とは全く別の次元からでありましても、金融行政というものは既に大きな変化の時期に到達しておると考えております。  従来、金融市場というものが外に対してのある程度バリアを持って国内の金融資本をいわば育成してまいりました時代、私は、日本の行政システムはこれを実行する上で有効に働いてきた、そう考えております。  しかし、既に金融市場というものをめぐる情勢も大きく変化をいたしました。そして、金融の世界におきましても規制緩和が着実に進行しつつあります。かつての行政、いわば護送船団方式といったものに象徴されるような行政のあり方というのは、この金融自由化の流れの中において当然のことながら変化をいたさなければなりません。  願わくば、私は、この住専問題ということだけを金融制度改革あるいは大蔵の行政のあり方の検討の素材とするのではなく、金融市場というものを取り巻く環境の変化、そして大きな金融自由化という流れの中で将来を見越した姿を模索してまいりたい、そのように考えております。
  53. 永井哲男

    永井(哲)委員 この問題を契機にして、そういった新たな金融行政が求められるというのが課題ではないかというふうに思います。もう既に千二百兆を超えるというような膨大な金融資産ということになったわけでありますので、それに対応するような大蔵行政というものも考えていただきたいというふうに思います。  次に、新進党の提出する具体的な方針という点についてお聞きしたいと思います。  これらについては既にいろいろな議論がされております。はっきりとした対案という形ではないという点でありますが、公党として既に公に発表しているという観点からこの点について質問させていただきたいと思いますが、具体的な解決策を考えていく中で、新進党の皆さんの主張の中でも変化があると思います。  とりわけ、第一番目には、法的手続として今まで破産手続ということを主張していたわけでありますが、会社更生手続、逆から言えば破産手続による処理はあきらめたということでございます。これは手続の透明性が確かに高いかもわからないが、破産手続の中における債権者平等の原則というものを適用すれば母体行がより有利になる、このことは社会的正義や妥当性の見地から相当でないという決断による選択であったかと思います。  二点目に、今までは、農協をより有利にする、甘えさせるものではないかというような批判でございました。今回は、農林中央金庫に対して、傘下の系統の経営に配慮して、政府保証による日銀融資で全面支援するという形で言っているところでございます。今までは、破産手続により整理する、そして系統機関、苦しいところはつぶして、つぶしてから貯金者保護として公的支援をやればいいのではないか、このような見解でございました。これを貫徹すると、同じ公的資金を導入するのに社会に無用の混乱を起こすということと、そういうことで農村社会の崩壊さえ発生させかねないというような配慮もその中にはあったのではないかというふうに思います。  三点目に、金融システムの安定性を保つために、当面、預金や貯金保険機構、この完全な支払い保証を実施する、そのために政府保証による日銀融資を行うということでございます。これはいかにバブルのツケが重いかということ、それを認識してのこの言及だと思います。さらには、これは住専処理に会社更生法を仮に適用したとして一も、配当までの間、時間を要します。この間に金融システムに不安を生じる、このことを素直に認めた上でのこの言及でなかったかと私は判断するところでございます。  これは、当初のころに比べれば、相当政府案にも近づきつつあるというふうにも理解できるのではないか。当初政府案を批判するだけ、いろいろな観点から批判するだけでありました。しかし、いざ解決としてどのような方法があるのか、具体的にどうするのか、そういう点から検討すると、おのずと今解決すべきものとして残された選択肢が少ないということをあらわしているのではないかと思います。  しかし、予算からこの六千八百五十億を削除するということだけにこだわっている結果、会社更生法による処理というのはかえって国民負担を大きくするのではないか。また、会社更生法による解決というのは、母体行と系統との間で紛争状況があるという事実をどう認識しているのか。清算型の会社更生法によると、更生担保権者は全員の同意が必要である、そして更生債権者には三分の二以上の同意が必要であります。  しかし、系統は、七社それぞれを見てもいずれも三分の一以上あるというような債権の状況、そういうことを考えれば、果たして更生管財人が会社更生計画案というものを可決するに至るまでの説得ができるのか。財政支援も税金の投入もなしに、管財人という一私人がその権威と説得だけでこのような更生計画案を実現できるとは到底思えないのでありますが、その点、大蔵大臣はどのようにお考えでしょうか。
  54. 久保亘

    久保国務大臣 会社更生法という法律によります手続がございますことについては、私どももこれを否定している立場にはございません。そのようなものも含めて種々の検討を加えました結果、政府案として今皆様方に御審議をお願い申し上げておりますものが今日とり得る最善の方策であるという結論に達した経過がございます。  なお、会社更生法そのものにつきまして、住専問題の処理に当たってこれが適切であるかどうかということについては、今申し上げました結論を得ます論議段階において、永井さんが御指摘になりましたような問題点を含めて、今日その手続を住専問題の処理にとることは適切ではない、このように結論を見た次第であります。  三十八条の問題もございます。それから、今御指摘になりました手続上の必要な条件もございます。なお、既に三月二十六日には、日住金、第一住金、上場企業でございます二つの住専は第二次再建計画を断念をいたしまして、整理、清算の方向で今後の会社の処理を行うことを決定をし、そのことを既に対外的にも発表をいたしておるのでございます。  こういったような問題を考えてまいりますと、会社更生法による住専問題の処理は大変困難であり、今回の問題にこれを適用して行うことは適切ではないと考えております。
  55. 永井哲男

    永井(哲)委員 そういういろいろな条件、与えられた条件の中で、いかに政府案というのがいろいろな練られた形でできたかということを示しているものと思います。  そこで、国民に十分にわかりにくいという面でありますが、この金融システムの安定化というものが、どういう形で、なぜ必要なのかというところが十分に国民の皆さんに伝わっていないという面があるかと思いますが、その点について大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  56. 久保亘

    久保国務大臣 金融の安定化ということは、今日、経済の動脈ともいうべき金融が不安定な状態にありますことは、経済の問題にとって大変大きな不安を残すものだと考えております。特に、金融問題の中で、巨額の不良債権が存在をいたしま すことを先送りして放置をしておりますことは、ますます金融の不安を大きくし、内外の信頼を失うことによって日本経済に深刻な影響をもたらすものと考えております。  私どもといたしましては、金融不安の中で一番重要なことは、預金者の信頼、そして内外の市場における日本の金融に対する信頼、こういうものがどのように確立をされるかということであろうと思っておりまして、そういう意味で、今私どもは、その中の不良債権の処理、そしてその象徴的な存在としての住専問題をできるだけ速やかに処理するという、そのような課題に迫られているという中でのこの住専問題の金融上の処理、こういうことで御理解を賜りたいと考えております。
  57. 永井哲男

    永井(哲)委員 特に金融機関が大きな役割を果たしているのは、決済システムということだと思います。発券が四十兆にすぎないものに対してどのような額がその決済によって行われているかというのを見てみますと、全銀システムの取引高で二千六十七兆円、手形交換の取引高で千八百四十五兆円、三千九百十二兆円というものが決済システムを通して行われております。まさにこれが日本の経済を支えている。これが金融が経済の血管だと言われるゆえんだと思います。そういう中で一つのところがほころびが出てくるということになると、これは大変な問題になるのは明らかであります。そういった決済システムの維持、金融の安定化ということこそが大きな問題だというふうに思います。  そしてまた、歴史をひもときますと、昭和恐慌で金融不安が起きました。これによってどういうことが起きているか。金融が全般的に、全部悪くなる、ひとしく悪くなるということでは実はないのでありまして、大銀行、七大銀行というのは恐慌前に比べて非常に預金高を伸ばしている。小中、そういった金融機関がその預金高を下げている。郵便貯金も貯金高は上げております。そういう中で企業にどういう影響があるかというと、大銀行とつき合えない、そういった企業はむしろ恐慌前に比べて状況が悪くなる。なかなか融資もしてくれない、金利も上がる。こういった形で、恐慌というのは、実は中小の金融、中小の企業、そして中小に働く人たちに大きな害をもたらす、そういうものが実は金融恐慌であったということが歴史から言えると思います。  そういう中で、早期に住専の処理を、これを安定化させるということは、同時に中小企業、中小企業で働く人たちの安定を願うためでもあるというのが国の意思であるということが、よりはつきり言えるのではないかというふうに思います。景気対策のためにも早期の処理というものが必要であるわけでありますが、そういう中で、この予算がおくれるということで、例えば銀行の足並みが、有税の償却また無税の償却ということでいわば乱れているようなところがあるわけでありますが、こういった点がこのスキームに与える影響というものは果たしてあるのかどうか、その点についてお聞きしたいと思います。
  58. 西村吉正

    ○西村政府委員 今回の住専処理スキームに盛り込まれました関係金融機関等の所要の債権放棄は、関係法案が成立後、住専処理機構が設立され、住専各社から処理機構への債権譲渡がなされるときまでに行うことが求められているものでございます。  三月期に債権放棄が行われたかどうかという点は、これは銀行経理上の問題として各行が経営判断すべき事柄でございまして、処理スキーム自体に何ら影響を及ぼすものではございません。
  59. 永井哲男

    永井(哲)委員 太平洋銀行がついに行き詰まるというようなことも起きております。今、金融というものがそれだけ、この住専ばかりでなく、脆弱な状況だというふうに思いますが、これからの金融の状況、太平洋銀行というものがどういうような影響を与えるのかどうか、それらについての見解をお伺いしたいと思います。
  60. 西村吉正

    ○西村政府委員 太平洋銀行につきましては、今回、大変残念なことになりましたが、しかしながら、この問題が他の金融機関に影響を及ぼさないよう、関係金融機関において万全の対策を現在検討しておるところでございます。  しかしながら、御指摘のように、不良債権問題というものが国民の間に大変に心配をされておる問題であるということは間違いのないところでございまして、こういう中におきまして、この不良債権問題の一刻も早い解決にめどをつけることによりまして、このような国民の不安というものを取り除いていくことが私どもの役目であると考えているところでございます。
  61. 永井哲男

    永井(哲)委員 この前、あるタクシーに乗りますと、この住専の六千八百、これは出してもいい、しかし何としても景気をよくしてほしい、こういう意見でございました。  最近の世論の論調を見てみますと、前は九〇%が反対だというふうにも言われておりましたが、最近、この住専処理はやむを得ないという人が三〇%を超すというような状況にまでなっているわけでございます。そういう中で、これから一刻も早い景気回復のためにも、いち早い、例えば金融の処理をして格付も回復する、そうすることによって金融のジャパン・プレミアムといったものも解消されてくるというふうに思います。とりわけ日本は今、世界最大の資本輸出国でありまして、国際金融システムにおける日本の役割というのは、これは大変重要な地位にあるわけであります。  そういう中で、世論調査だけで政治が行われるわけではございません。強い国際的な責務、そういった点、また、先ほども言われましたが、長い将来というものを考えてどう決断するのか、また国民にまだ十分な理解が得られていないというような状況が一体あるのかどうか、それらの点についてこれからどう理解を深め、そしてこの住専処理についてどのような決意で臨むのか、それを総理にお伺いしたいと思います。
  62. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私どもは、不良債権の処理、これを急ぐことは我が国の金融システムというものの安定性及び内外の信頼を確保する、そして金融機関の融資対応能力を向上させていくという観点から、我が国の経済にとりまして極めて重要な課題だという認識をいたしてまいりました。そして、その中で一番最初に処理をしなければならない問題として今回の住専処理策というものが議論され、昨年の夏以来関係当事者の中の真剣な論議を踏まえて、今申し上げたような観点から、国民全体のために決断をしてまいりました。そして、これをまず処理することによって一つのかせを外し、続いて金融機関全体の不良資産処理というものに全力をもって取り組むことによりまして、我々は日本の金融システムというものが改めて内外の信頼にこたえ得るだけのものであることを実証していかなければなりません。  今日さまざまな御議論がございますけれども、どういう角度から議論をされる方も、この不良資産問題の処理が、あるいはこの住専問題に限定をいたしましても結構でありますが、その処理というものが国際金融の世界で大きな波紋を呼ぶものであるという御認識はいただいておると存じております。その中におきまして、政府としてはでき得る限りの努力をし、今後これを国民全体のためにも速やかに解決をしてまいりたい、そのように努力をしていきたいと思います。
  63. 永井哲男

    永井(哲)委員 私たちは、血税を投ずる以上、いろいろな責任を解明し、その追及をしていくということも掲げているわけでありますが、政治の側の責任のあり方として、こういったものについての、例えば国民からいろいろ密室ではないかというような点もあるわけでありますので、そういう点で、政治献金等一定の政治としての襟を正すということも必要ではないかということも、これは意見として言っておきたいというふうに思います。  最後に、昨日、ウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会の報告が出されたところでございます。一世紀にわたり差別と抑圧の中で苦しんできたアイヌの人々が長い間悲願としたアイヌ新法の制定と旧土人保護法の廃止の方向を明らかにした ものであります。画期的な内容であると思います。古くからアイヌ民族の皆さんとともにこの要求を強く進めてきた我が党としては、感無量のものがあり、この報告を高く評価いたしたいというふうに思います。また、与党三党のプロジェクトの一致した御努力と、これを諮問した内閣官房長官にもこの際敬意を表する次第であります。  内閣官房長官にお尋ねしますが、長官としては、この報告を受けられ、どのような感想でおられるのか。また、官房長官はかねがね報告を尊重するというふうに言われてきておりますが、今後どのように立法の制定と諸施策の実現に取り組まれる所存か、お伺いをしたいと思います。
  64. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 委員御指摘のとおり、昨夕、伊藤座長にお越しを願いまして、本報告書を御提示を願いました。計十一回の会合を通じ、歴史学、民族学、国際法など多方面にわたる難しい問題を幅広く審議をし、極めて内容のある報告書をおまとめをいただいたものと承知をいたしております。  御指摘の新しい立法措置等については、有識者懇談会の特段の御提言であることを承知をいたしておりますが、政府としては、その点を含め報告書を最大限尊重をし、今後各省庁と十分に相談の上、適切に対処してまいりたいと考えております。
  65. 永井哲男

    永井(哲)委員 時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。
  66. 上原康助

    上原委員長 これにて永井君の質疑は終了いたしました。  次に、五十嵐ふみひこ君。
  67. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 さきがけの五十嵐でございます。  住専問題についておさらい的な質問をさせていただこうと思っていたのですが、まず最初に、けさの報道を拝見をいたしますと、政府・与党内に、金融三法の中から将来の財政資金の投入、預金者保護のための財政資金の投入について削除をするか、あるいはこの金融三法そのものを先送りをしようという動きがあるという報道がなされております。私は、そのどちらにも反対でございます。  住専に税金投入をする意味、財政資金を投入する意味は、私は三つばかり考えられると思っております。  一つは、国際金融社会に対する我が国からのメッセージであります。これは、我が国が政治責任を持ってこの不良債権処理をし、そして金融不安を起こさない、日本発の世界金融恐慌を起こさないという決意を示すメッセージが必要だということが一つだと思います。  もう一つは、法的責任論では片づかない非常に複雑な問題の早期処理を促すために、これは公的な関与が必要であった、そういう国民経済全体への寄与という意味からの意味づけがあったと思います。  そして三つ目は、先ほどもありましたけれども、農協系の金融機関に対する二次破綻を防ぐという、三つの意味があったと思います。  したがって、いわゆる信用組合、信用金庫といった一般金融機関に対する預金者保護という意味での財政資金投入とはちょっとニュアンスの違う意味づけが私は住専処理に対してはあったと思うのですが、その一般金融機関に対する財政資金の投入、これは預金者保護のためでありまして、これまで私は国民は拒否をするものではないと思う。そこを混同して、税金投入が評判が悪いから信組の破綻処理に対する財政資金投入もやめてしまおうというのは、私は間違いだというふうに思っています。また、国民考え方に対するとり違いをしているというふうに思っていますけれども、この点について簡単に大蔵大臣の所見を伺いたいと思います。
  68. 久保亘

    久保国務大臣 当委員会におきましても何回か御答弁を申し上げましたように、この問題につきましては、十二月二十二日の金融制度調査会の答申に基づきまして金融三法の準備を進めている段階でございます。  なお、最終的に提出をいたしますまでにはまだ与党との間の調整が若干残っている、こういうことでございまして、政府といたしましては、提出いたします法案の準備をほぼ整えて与党との調整をお願いしているという段階でございます。
  69. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 我が党の代表発言をしたことはちょっと波紋を呼んでおりますけれども、確かめましたところ、財政資金投入を削除するくらいならという意味でありまして、基本的には財政資金の投入に反対するわけではないという趣旨でございますので、さきがけとしてはそういう立場をとっているということをお間違えのないようにお願いをいたしたいと思います。  また、新進党考え方について私はほとんど意見を異にするんですが、一つだけ、全体像を明らかにする、これが必要だということについては賛成をいたします。やはり透明で正直なシステムというものをつくっていかなければいけないし、そのためにも、不良債権の全体像を明らかにし、その処理の方策というのを政府が自信を持って示していくということが必要だろうと私は思います。そういう意味では、私は、金融三法はできるだけ早く提出をお願いをしたいというふうに思いますので、その点を念押しをさせていただきたいと思います。  それから、住専処理の問題に入りますけれども、我が国は資源のない国でありまして、これからは科学技術と金融というものを大切にしていかなければならないと私は思います。  ところが、金融システムは、何度もお話がありますように、もう時代おくれになっていて、護送船団方式で来たために国際競争力を失っている、あるいはベンチャービジネスや新産業を育てる力を失っているということが大変致命的になってきた。したがって、先ほど大臣、それから総理大臣からお話がありましたように、自己責任原則を確立をし、透明性のある金融システムを早急に構築をしていかなければならない。  しかし、ここで五年間の準備期間が必要だ。これは緊急避難措置であると私は思います。国民の側に預金は返ってくるものだ、保護されるものだ、そういう観念が根強くあるということが一つと、預金保険機構に十分な準備がないということがその原因であります。そこがどうもまだ混同されているところがあると思います。  そこで、今、預金保険の現在高は幾らか。あるいは太平洋銀行の処理に幾らここから取りますつもりなのか。あるいは、まだ木津信組、大阪信組の問題が片づいておりません、これについて預金保険機構からの贈与というのを計画をしているのか。以上について簡単に御説明をいただきたいと思います。
  70. 西村吉正

    ○西村政府委員 まず、預金保険機構の責任準備金の残高でございますが、平成六年度末では八千七百六十億円ございましたが、七年度末の見込みでは三千八百億程度のものになろうかと考えております。  なお、今後処理を要する問題といたしまして、ただいま御指摘の木津信用組合でございますが、これにつきましては、今後さらに精査を行う必要がございますが、約五千億円、大阪信用組合については約七百億円程度の資金が必要になろうかと考えております。  先日問題になりました太平洋銀行につきましては、今後さらに精査を要するところでございますので、数字は差し控えさせていただきたいと考えております。
  71. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 今はっきりと御答弁があったとおり、木津と大阪で五千七百億必要だ。現在、七年度末で三千八百億しかない。これから特別の保険金を積んで五年間で充実させようというわけですが、現時点でちょっと一つ小さい金融機関が破綻をすると、もう空っぽになってしまう。したがって、一千万までみんな返ってくる、ペイオフすれば一千万まで返るんだと思っていても、実際にはその準備がないということでございます。  ですから、これはやはり五年間は特別の緊急避 難措置をとらなければいけない、このことが国民の皆様にはまだ十分に御理解をいただいていないということがあると思います。したがって、私どもは、その間やはり預金は守るということを決意をしなければなりません。  それから、もう一つの論点として、金融システムに果たして危機があるのかということであります。  国民に対するおどしたという言葉がありましたけれども、おどしでも何でもない。世界じゅうが日本発の世界恐慌を恐れている。そしてまた、それがジャパン・プレミアムという形であらわれている。あるいは、国内でも郵便貯金への静かなるシフトという形で危機が訪れている。中小金融機関から郵貯への資金シフトは、私は、ごく最近になって確実に起きていると思っておりますけれども、これが起きることによって中小金融機関の体力を確実に弱めていきます。したがって、これが弱まっていくと、今まで日本の金融システムでは直接金融が発達しておりませんから、ニュービジネスへの資金供給というのはなかなかできなかった。したがって、それを中小の金融機関がやっていた。大銀行は自分たちの保護のために土地資産がないとお金を貸してくれない。ところが、ニュービジネスには資産がありません、新しいビジネスですから。これを補ってきたのは中小金融機関ですけれども、そこが体力が弱まってくると貸してくれなくなる。新しい産業を育てるという公的な金融機関の機能が果たせなくなってくる。ここに大きな問題があると思います。  農協の貯金から郵貯へのシフトあるいは中小の信用組合、信用金庫からのシフトというのは、私は一定程度起きていると思っておりますけれども、それについて大蔵大臣はどのような御見解がありますでしょうか。簡単にお願いをいたしたい。
  72. 西村吉正

    ○西村政府委員 まず、中小金融機関の預金残高の動向でございますが、信用金庫につきましては、若干増加しているとはいうものの、その伸び率は低下をいたしております。また信用組合につきましても、経営の破綻したコスモ、木津を除いた数値で見ますとわずかながら増加しておりますけれども、その伸び率は低下しておるところでございます。  他方、郵便貯金でございますが、最近の個人預貯金残高の伸び率を見ますと、若干郵貯の伸び率が高い傾向が見られますが、郵貯の残高にはかつて高金利で受け入れた定額貯金の利子がカウントされているというようなことを考慮すると、シフトというようなことは生じていないと認識をいたしております。
  73. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 私はそれはちょっと認識に誤りがあると思います。郵便貯金は数字でいうと八%程度の伸びがあると私は思っておりますし、農協系については一%しか伸びていない。しかも、ごく最近になって、ことしに入ってから、まだ数字が余り表に出ていない資金シフトというのが私は加速されていると思っておりますから、これは大変危険なことであります。新産業、ベンチャービジネスへの支援ができない。と同時に、郵貯がやみくもに膨らむことは国の財政の硬直性を増すことになります。  私は、この点について大変危惧をするものでありますので、ぜひこの点について、さらに監視をし、また早急に金融不安をなくしていかなければならないということになると思います。  また、低金利がいつまでも続くということは、厚生年金基金の危機が言われておりますけれども、あるいはシルバー世代への大変激しい圧迫になる。これは六千八百億円どころではない大変大きな損害を国民に、しかも経済的な力の弱い高齢者層に大変しわ寄せが行くことであります。早く景気を回復し、適正金利に戻す、それによって健全な個人消費を伸ばしていく、そのようなことでなければならないと思います。そうした必要性から、私どもは、ぜひ早期にこの予算を通し、また住専の処理を早急に進めなければならないと思っております。  結局のところ、ぐるぐる回りをして、そのほかの方法でしたあげくに同じこのスキームに戻ってくるのだろう。なぜならば関係当事者間の合意がなければできない。一方的に法的な処理にゆだねるだけでは、これは解決がつかない問題であるということを申し上げたいと思います。  そこで、一方では、この住専処理については、公的資金がむしろ入ることによって、今までわからなかった行政の実態やあるいは農協の金融システムの実態が実はわかってきたわけですね。私は、透明でフェアな正直な、そうした政治、経済、行政というものを目指していくという観点からも、これがむしろ必要だということを申し上げたいわけでありますけれども、これは何も住専だけの問題にとどまりません。私は、政治全体がそうでなければならないと思っております。  特に、財政再建についてお尋ねをいたしたいと思います。  実は、住専処理が出てきたとき、私はいいことだなと思ったのは、日銀特融だというようなことを言わないで素直に税金を入れようということは、むしろ行政の誤りを認めることだ、不透明な行政指導が行われて農協に迷惑をかけたというようなことを認めるから私は税金処理になったと思っているわけですけれども、もはやそういう手法、やりくりだとか先延ばしたとかいうものはやめていこう、これがこの趣旨だと思います。  そういう意味では、財政についても今までさんざんやりくりが行われてきた、このやりくりをもうやめようという動きが実は八年度予算から出てきたと思っております。  その中で、私が質問をしようと思ったら、ちょうどけさの報道で国鉄の長期債務の問題が報道をされました。これが二十五兆五千億だったものが、もう土地をかなり売っても二十七兆五千八百億にふえてしまったという問題があるわけですけれども、この国鉄長期債務の問題も、もうここらで結末をつけなければいけない。時間がたてば金利というものが加わってくるわけですから、それが端的にここにあらわれてまいりました。ですから、今まで一体どのぐらい土地が売られてきたのか。そして、今申し上げた数字をもう一度確認をしていただきたいと思います。  それからもう一つ、一体どれぐらい残るのか。すなわち、まだ売っていない新会社の株式がございます、それからまだ売っていない旧国鉄の土地がございます、これももう一回見直さなければいけないと思うのですが、土地や株の処分をした後、一体どのぐらい借金が残るのかというのを確定をしていきたい。そして、それに対する処理方針を明確にしたいと思うのです。  まず、運輸省の方から、今一体どのぐらい長期債務の残高が残っていて、どれぐらい土地を売ったのか、あるいは今どのぐらい後から出せる株や土地があるのかというのをお教えをいただきたいと思います。
  74. 亀井善之

    ○亀井国務大臣 お答えいたします。  国鉄清算事業団が所有する土地につきましては、昭和六十二年から平成七年度までの間に約五千八百ヘクタールを売却いたしました。件数で約一万五百件、約四兆六千億円の収入を上げてきたところであります。また、JR株式につきましては、平成五年度にJR東日本株式会社の株式の売却、上場を行いまして、二百五十万株、約一兆一千億の収入を計上いたしました。  今後の売却見込みでございますけれども、土地につきましては、平成七年一月の公示地価のベース、この試算額は七年度首でおおむね四兆四千億程度と評価をしております。七年度に約四千億円の売却収入を上げたところでありまして、今後、残る土地の売却に全力を挙げてまいりたい。また、あわせてJR株式につきましても、今後JR西日本の売却あるいは東海の売却、早期上場に最善の努力をしてまいりたい、このように考えております。
  75. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 お聞きのとおり、大体六割ぐらいの土地をもう売ってしまったのですね。六割の土地を売ってかえって借金がふえた、こういう 話でありまして、また、残りの土地、株式を売却しても二十兆ぐらいの残がある。これを放置していたのでは、これはどうにもならないわけであります。時間がたてばコストがかかるというのが経済の常識であります。  したがって、ここでは正直にこれを処理をしていかなければいけない。この処理について、私は、税金を使わざるを得ない、税金によって計画的に処理をしていく、償却をしていく必要があると思いますが、大蔵大臣はどのようにお考えになりますでしょうか。
  76. 小村武

    ○小村政府委員 御指摘の国鉄清算事業団債務につきましては、本日発表のとおり、二十七兆五千八百億円ばかりの債務残高がございます。  これにつきましては、私ども、最終的には国民の負担ということになっておりますが、これは極めて重大な課題でありますし、御指摘の未処分の土地、株式について今後できるだけ早期かつ効果的な売り方をして、長期債務をできるだけ減少させるように努めてまいりたいというふうに考えております。
  77. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 大変な問題なんですね。二十兆円を超すお金を処理をしていかなければいけない。これは税金によらざるを得なくなってくるわけですね。時間がたてばたつほど後世代にこの負担が重くのしかかってくるわけですから、これは正直に処理をしなければいけない。こういうことを先送り、先送りを続けてきたのでは、とても我が国はもつはずがないのであります。  それからまた、清算事業団の方々も一生懸命やられている。自分の墓を掘るために穴を掘っているようなものです。早く処理が終わってしまえば、自分たちの仕事はなくなるわけですから、それを一生懸命やられている。私は、大変敬意を表したいと思いますけれども、その方々のためにも、めどをつけてあげるということが大切だろうと思います。  それから、その他についても、借金財政というのはどうもよろしくない。これは財政再建計画を立てるか、私は、少なくとも赤字公債依存体質からの脱却の目標をきちんと立てて、赤字公債をやめていくということが必要だと思います。そうした財政再建について、来年度のシーリングができるかどうかということになってくるわけですから、夏になればすぐこの話になります。今の時点から財政再建計画なり赤字公債依存体質からの脱却の目標を立てるかどうかということについて、御所見を総理ないし大蔵大臣に伺いたいと思います。
  78. 久保亘

    久保国務大臣 既に両院の大蔵委員会においても申し上げたのでございますけれども、昨年の十一月に、財政危機宣言ともいうべき我が国の財政事情についての発表が当時の大蔵大臣から行われたのでございます。そして、その後編成されました、ただいま御審議をいただいております予算案は、御指摘のとおり、大変厳しい財政の状況をあらわしております。先ほどやりくりの問題でお話がございましたけれども、八年度の予算編成に当たりましては、もはややりくりも困難な状況を生じているのでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、平成九年度予算編成が財政再建の初年度としてスタートできますように、かなり中長期の計画、目標を立てて、財政再建の方途を講じなければならないと考えております。その検討に今入っているところでございます。
  79. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 もう一歩踏み込んで、やはり五年ぐらいを目標にこれはやらなければいかぬとか、そういうお話を伺いたかったわけでありますけれども、現時点ではそれが精いっぱいということかもしれません。  また、行財政改革、何度もここでも申し上げているわけですけれども、例えば聖域を設けずに公共事業についても、これはアメリカで例があるようですけれども、コストを下げたら、何かコストを下げた役人なり官僚組織なりにメリットがあるような、そのような工夫をすべきではないか、そして、コストを下げていけばより効率的に税金が使えるではないかということを何度も申し上げてまいりました。そろそろ真剣にお考えをいただきたい。  また、ODAについても、私はもうそろそろ、量をただ拡大していくということではなくて、たとえ総量が減っても、効率的、重点的な配分をして、喜ばれるODAにしていくという方向に方向転換をすべきだ、そう思います。  途上国、被供与国の側にとっても、日本という国は被供与国から見れば金の鶏であるかもしれないけれども、日本全体が沈没して絞めてしまってはこれはだめなわけですから、金の鶏は卵を産み続けなければならない。そのためには、一時的にはこれは後退をしてでも、むしろそうした量的な拡大を目指すということではない方向転換が私は必要だと思う。  聖域を持たずにきちんとした財政改革をしていく必要がある、私はこういうふうに思いますけれども、この点についても大蔵大臣から簡単にお願いをいたしたいと思います。
  80. 久保亘

    久保国務大臣 先ほど申し上げればよかったのでありますが、財政再建の道を進めてまいりますためには、今お話がございましたように、聖域を設けず財政の役割と守備範囲について大胆な見直しを行うことが緊要になってきているのではないかと考えております。
  81. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 それから、先ほど大蔵大臣から、金融行政の改革という点で、省内にプロジェクトチームを発足をさせて新しい金融行政のあり方を検討されるというお話がありました。  私は、しかし、かつて証券等監視委員会国民が望んだ独立性の高い三条委員会から八条委員会に実は最後に化けてしまったというようなことを考えても、今権限を持っているところに権限を放せという話をさせるのはちょっと無理がある。また、護送船団方式を長く続けてきたのは、恐縮ですけれども大蔵省でありますから、それが大蔵省の中で検討して、トンビがタカを産むはずがないというふうに思っております。  そうすると、これは大蔵省内で自分の都合のいいように新しい仕組みを、これは組織だけではありませんよ、日銀法や銀行法も含めたシステム全体の改革のことだろうと思いますけれども、お考えになるよりは、むしろ、これはもっと大きな視野で総理大臣直属の検討機関でもお設けになって、そういうもっと広い視野から日銀のあり方等々を含めて私は御検討をされるべきではないかと思うのですが、大蔵省の中だけでの検討でその結果を出そうとされるのかどうか、これは総理に伺わなければならないと思いますが、いかがでしょうか。
  82. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今お話を承っておりまして、私は多少委員と意見を異にするのかなと思いました。  先ほどの御質問の中でもございましたが、私は、金融制度が大きく変革していく中で、当然ながら行政のあり方は変わらなければならない。そしてそれは、例えば住専の問題に対応するために金融制度をどうするという視点からではなくて、金融自由化の中で将来を見据えた姿を模索していくべきだと思います。そして、そういう役割で行政改革委員会も御論議をいただいてまいりましたし、議論が進んでおります。  大蔵大臣が先刻述べられた部分については、大蔵省自身がみずからの反省の中で、行政の当事者としてそれぞれの問題を剔決しようとしているその努力であろうと私は思います。  そして、我が国が、終身雇用制がほとんど勤務の形態をなしている中で、ただ単に他の国からの制度を移しかえれば済むというものではありませんから、日本にふさわしい制度を真剣に考えていくことは当然のことだと思います。
  83. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 いや、私と総理とどこが違うのかよくわからないんですけれども、私も、基本的には総理と同じような考え方から提起をさせていただいているわけであります。  ただ、大蔵省が反省しているからいいというお話ですけれども……(橋本内閣総理大臣「いや、 反省しているじゃない、自分の問題を剔決するための勉強をしていくことは悪くはないのです」と呼ぶ)勉強されることは悪くはないと思います、私も。ただ、大蔵省にそれをすべてを任せるということであれば、これは大蔵省の反省の一つの中に、やはり省益というものが優先し過ぎてきたじゃないかという問題もあるんですね。だから思い切った改革が、変化が遂げられなかったじゃないかという問題もあるわけであります。  実際に焼け太り論というのも出てきているわけです。焼け太りをさせなければいいじゃないかと私は思っているわけですけれども、焼け太り論が出てくるのも、大蔵省は常に省益を考えてきて、日銀を植民地にしようとしたり、あるいは経済企画庁を植民地にしようとしたり、そうしてきた歴史があるからですね。歴史からであります。  ですから、そういうことを考えると、もっと幅広い視野で、大蔵省の中での勉強も結構でございますけれども、する必要があるんではないかということを申し上げているわけでありまして、その点で、それでは大蔵大臣、それから総理からもう一度答弁をいただきたいと思います。
  84. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、政府としての立場で、行政改革委員会の名前も挙げてお答えを申し上げております。
  85. 久保亘

    久保国務大臣 一言で申し上げますと、この努力は大蔵省の守備ではなく改革であります。
  86. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 ぜひまじめな改革をしていただきたいと思います。  それでは、終わります。
  87. 上原康助

    上原委員長 これにて五十嵐君の質疑は終了いたしました。  この際、暫時休憩いたします。     午後零時十六分休憩      ————◇—————     午後一時十五分開議
  88. 上原康助

    上原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。石井一君。
  89. 石井一

    石井(一)委員 最初に橋本総理にお伺いをしたいと思うのでございますが、久方ぶりにアメリカの大統領が訪日をされるということでもございますし、昨年懸案になっておりましたものが延び延びになっております。また、両政権にとりましてもそれぞれ国内の問題を抱え、大統領選挙目前にした大統領にとりましても、橋本総理にとりましても、まさに政権の浮沈をかけたまことに意義深い日米首脳会談であると申さなければなりません。  総理は、この首脳会談に対しどういう態度で臨まれ、何を求め、その意義をどう考えておられるのか、もう二週間という時期が来ておりますので、まず総理の基本的な姿勢をお伺いいたしたいと存じます。
  90. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 どういう気持ちでと言われるなら、なるべく私は肩に力を入れずに率直な話し合いのできる会合であってほしいと願っておりますというのが、まず冒頭、その会議へ臨む姿勢ということになろうかと思います。  そしてその上で、まさに大統領を国賓として迎えるわけでありますから、日米両国間における協力の各分野、すなわち、政治もありましょうし、安全保障もありましょう、経済もありましょうし、いわゆるグローバルな協力の分野というものもありましょう。それぞれの分野において両国の協力関係というものを一層発展させていくためにも、今あらゆるレベルでの準備を進めておるところでありますが、こうした議論を総括しながら、新しい時代における日米関係というものの積極的な意義というものを両国民に対し、ひいては他の国々の方々に対しても知ってもらえるような体制をつくってまいりたいと思います。  その中で、特に日米関係の中核をなしております日米安保体制というものにつきましては、これまでの安全保障分野における日米間の緊密な対話の成果というものを踏まえ、日米安保体制というものの重要な役割についての確認をする共同文書を発出する、二十一世紀に向けた日米の同盟関係のあり方について内外に明らかにしてまいりたいと思います。  殊に、昨年、自動車交渉のプロセスにおきまして、日米双方がそれぞれに自国の主張を他の国々に協力を求めて議論をいたしましたとき、幸いに三〇一条というものに対してはEUからも、またアジア太平洋地域の友人たちからも非常に積極的な支援を日本は得たわけでありますが、その際すべての国からつけられたことは、これによって日米関係にひびを入れないようにということでありました。我々が日米関係を重要視する以上に、アジアの安定と平和の確保という観点から、またその他の視点から、日米関係が緊密であることが国際社会からも求められているということを私は痛感をいたしました。  その必要性を認識をしていただきますためにも、同時に、沖縄県における米軍基地の整理統合・縮小という問題につきましては、大統領の訪日されるまでの間にできる限りのものをまとめていきたい。現在、米側と協力をしながら、特別行動委員会における作業を精力的に進め、誠心誠意努力をしていこうとしているところであります。  私は、経済関係の問題につきましては、先般サンタモニカでクリントンさんとお目にかかりましたときにも、個別の経済問題が日米関係全体に悪影響を及ぼしてはならないという認識では一致いたしておりますし、米側が指摘しておる個別の経済問題につきましては、引き続き国際ルールにのっとって適切に対応していくと同時に、コモンアジェンダの推進など、日米協力の側面にも重点を置いて、両国関係、殊に経済関係につきましては、円滑な運営に努めていくことが重要だと考えております。  多少長くなりましたが、全体をそのように位置づけておる次第であります。
  91. 石井一

    石井(一)委員 肩の凝らないリラックスな中に広範な問題を取り上げるというわけですから、二律相反するような難しい問題があろうかと思いますが、中身をつぶさに検討すると、さらに厳しさが出ておるのではないかというふうに認識するわけでございます。  すなわち、日米安保の再定義なり、あるいは、いわゆる日米同盟の構築ということにつきましては、ポスト冷戦構造の時代政治同盟から安保同盟に変革をしていかなければいかぬというふうな、そういう意義があるでしょう。これまでの日米安保条約とは違った意味での国際情勢、国内情勢があるということも認識をするわけであります。  これまでサンタモニカでの会談、それから三月二十七日に梶山・モンデール会談等々の事前の打ち合わせをつぶさに検討しておりますと、アメリカはどうも、選挙を意識してか、経済分野に重点を重く置き、保険、半導体、フィルム等について我が国に対して強い要求を期待しておる。果たしてそれに、我が国がこの時点でどれだけこたえ得るのか。また、我が国の方は沖縄の基地問題の解決に最重点を置いておるわけでありますけれども、これからこの問題を議論いたしますけれども、目に見えるような、国民が、あるいは沖縄の県民が納得できるような前進が期待できるのか。久方ぶりに来るこの重要な会談というふうなものに暗雲が立ち込めてきておるのではないか、私はそういう気持ちを禁じ得ないのでありますが、いかがですか。
  92. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 暗雲という言葉を使われましたのは、私は多少とらえ方を異にいたします。  しかし、米大統領の訪日を控えたつい先日まで、台湾海峡の両当事者に対して自制を求めなければならないような状況が現にございました。あるいは、朝鮮半島における情勢というものには依然我々は懸念を持っている、その気持ちは委員と私は共有しておるだろうと思います。  そして昨日来、沖縄県内における、我が国が安全保障条約に基づく協定の上に立って米軍に提供 しております施設の一部の土地の使用権原が切れているという状態も現出をいたしております。その意味におきまして、会談を取り巻く環境が厳しさを増しているということは私も決して否定するつもりはありません。  また、幾つかの分野に言及をされました経済問題にいたしましても、当然のことながら、双方の考え方に食い違いがあるからこそ問題を生じているわけでありまして、その双方のどちらに理があるといったようなことを今私は申し上げるつもりはありませんけれどもお互いに、日本とアメリカの双方が抱える経済問題につきましても、議論を必要とするものがあることは否定をいたしません。  しかし、そうした問題があればこそ両国があらゆるレベルにおける対話を繰り返していく、首脳会談もその中の一つでありますし、そうした対話が必要だということを意味するものであり、それをとらえて直ちに暗雲とは私は考えておりません。むしろ、そうした問題が積極的に話し合える雰囲気にあることを私は逆にお互い評価をしたいと思います。
  93. 石井一

    石井(一)委員 問題の認識を十分お持ちのようでございますから、その辺しっかり、忌憚のない話し合いをしていただきたいと思うのでございますが、特に安保の定義と日米両国の協力体制について、中台問題もございました、この際突っ込んだ議論をしていただき、ひとつ目に見える成果を期待いたします。この問題は、今後もまたこの場で議論ができると思いますので、私たちも注意深く見守ってまいりたいと思います。  そこで、沖縄の基地問題に入らせていただきたいと存じますが、残念ながら、昨日、四月一日午前零時から、いわゆる楚辺通信所の一部の土地が国の不法使用状態、不法占拠状態に入っておる。まあ、ここに至ります経過というふうなものを後ほど追跡もしてみたいとは思うのでございますけれども、要は高裁の判決も、これは国が勝訴したとは言っておるけれども、執行猶予つきの基地縮小命令の判決だ。そして判決の理由の中には、知事の署名を拒否した理由はよくわかる、理解する、段階的に基地の縮小整理を求め、国の責任は重い、こういうようなことになっておる。  私は、これは異常事態である、沖縄の基地問題というのはさらに厳しい状況に入ってきたというふうに認識をいたしますが、この状態がいつまで続くのか。クリントン大統領が来日されるというのは十六日でございますが、その時点でこの問題がクリアできておるというふうにはとても思えませんけれども、どれぐらいのうちに処理されて、どうこの問題に対して対処されておるのか、政府の見解をまずお伺いしたいと存じます。
  94. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。  賃貸借契約を結びまして使用してまいりました楚辺通信所、全体で五十万平方メートル、所有者四百四十人、こうした土地が、期限切れの中で、お一人の所有者の使用権原が得られなかった、こういうことでこのような状態になったのは極めて残念でございます。しかしながら、私ども日本は、アメリカ側に対しまして日米安保条約上の義務あるいは地位協定上の義務、そういうものを有しておりまして、引き続きこの土地につきましては提供する義務を負っている、こういうことでございます。  重ねて申し上げるようでございますが、昨日来、使用権原がない状態になっておりますが、過去二十年間にわたり、土地所有者との間で賃貸借契約を結びまして適法に使用してきたこと、当該土地は、先ほど申し上げましたとおり、日米安保条約並びに地位協定上の約束で提供する義務があること、そしてその土地自体が、日本の安全のみならずアジア太平洋地域に対しての平和の維持にとって大変重要なことであること、現在、駐留軍用地特措法に基づきまして使用の権原の取得のための手続を得ている最中でございまして、引き続き適法に使用するための手続を進めるための努力をいたしているということ、また土地所有者に対しましては、賃借料相当のものを、全員を提供いたしまして、被害が出るような損失を生じさせないようにすること等、こういうことを踏まえまして、現在紛争状態にあるわけでございますが、当該土地が土地所有者に返還をされていないということによりまして、直ちに違法ということは言えないというふうに私ども考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、国としてはできる限り駐留軍用地特措法に基づく使用権原を取得いたしたい、最大限の努力をいたしてまいりたい、こう考えております。
  95. 石井一

    石井(一)委員 臼井さんが防衛庁長官になられまして、国会答弁やらテレビでのお話、非常に苦渋に満ちた中にも懸命に政府の立場を代弁しておられることは多としたいと思うのでありますけれども、私が聞いておりますのは、十六日の時点で、この状態が続くのか、政府はそれを観念しておるのか、またこれを解決するのに何日ぐらいかかるのかということをお伺いいたしておるわけで、防衛庁長官の見解を簡単にお述べいただきたいと存じます。
  96. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 ただいま御質問いただきましたとおり、現在、楚辺通信所の件につきましては、沖縄県の収用委員会に裁定をお願いいたしているわけでございます。特に緊急使用のお願いをいたしてございます。私どもは、一日も早く収用委員会をお開きいただきまして、この審議をお進めいただきたいということでお願いをいたしているさなかでございます。  この内容につきましては、収用委員会の運営自体にかかわることでございますので、これ以上申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  97. 石井一

    石井(一)委員 まだ長官は私の質問に答えておられない。答えにくいのでしょうけれども、私がその立場ならずばりと言いますよ。それぐらいはもう常識でわかる話なんですから、もう少し政治答弁を願いたいと思います。  政治家の最たるもの梶山官房長官にお伺いをいたしますが、官房長官は、官房長官談話で、直ちに違法とは言いがたいというふうな形容をされました。また三月二十六日の記者会見で、政府に不手際があったことは間違いない、手段のまずさがあったことは率直に認めなければならない、こういう御発言をしておられますが、この真意はどういうことか、御説明を願いたいと存じます。
  98. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 言葉の足らなかった点があろうかと思いますが、結果として今権原のない状態が続いているわけでありますから、政府としてはそういう状態をつくらない努力を本来しておくべきだ、そういう点では、私は瑕疵あったろう、ありたるものと、そういう反省をしなければならないと思います。これからもそういうことが起きないように事前の準備や県民の御理解を得る努力を最善に払って、二度とこういう状態の起きない懸命な努力を払ってまいる、そのいわば反語として実は若干手落ちがあったのではないかと。これは過去の人に対しては言い過ぎかもしれません。しかしへそういう思いを抱かないとこれからの問題解決にはならない、このように考えております。
  99. 石井一

    石井(一)委員 明快な答弁をいただきました。と言われることは、前内閣の総理なり官房長官なり防衛庁長官に手続上の瑕疵があった、こういうお考えでございますか。
  100. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 その状態を踏まえて申し上げたわけではございません。しかし、結果として今日こういうことがあるということになれば、そのときは最善の道を選んで対処をされたとは思いますが、結果として今日を迎えたということは、やはり予測が若干でも間違いがあったのではないか、あるいは甘かったのではないか、あるいは問題意識というのがそれほど強くなかったのではないかという反省をしなければならない、私はこのように考えております。
  101. 石井一

    石井(一)委員 その点もまことに明快な答弁をいただいたと思いますので、その後もう少し私の考えでおりますことを述べたいと思います。  その前に法制局長官、不法占拠状態は非常に異常だと思うのでありますけれども、政府みずからが憲法に定められた個人の所有権を侵害しておる。これは明らかに憲法違反だというふうなことが言えるのじゃないか。それは、きょうの新聞あたりにもいろいろなことが書いてございますけれども国民の自然な感情としては、自分の持っておる土地がそういう形で取り上げられたり、あるいはまたそこへ、その土地へ入ることができない、こういうことは法律的にどう解釈すればいいのか、まず法制局長官としての御見解を伺っておきたいと存じます。
  102. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 お尋ねの件は、返還されていない状態について直ちに違法というには当たらないのではないかということの意味と関係しようかと思います。  したがいまして、まずその意味いかんということにつきまして御理解をいただきたいと思いますが、この言葉の意味は、正権原に基づく占有ではないということを認め、それを前提とした上で、先ほど防衛庁長官から述べられましたような諸条件をも踏まえて、法秩序全体の立場から法的評価として申し上げたわけでございます。したがいまして、当面、土地を返還しない状態を続けることができるという意味におとりいただきたいと思います。最終的に適法あるいは合法と言えるような状態になるには、やはり現在努力しております駐留軍特措法所定の手続によりまして使用の正権原を得ることが必要であるということを否定しているものではございません。
  103. 石井一

    石井(一)委員 そうしますと、結論だけで結構でありますが、現在のこの状態は合法なのか適法なのかあるいは違法なのか、結論を法制局長官としておっしゃっていただきたいと存じます。
  104. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 一言で結論だけ述べよと言われますとなかなか難しい御質問でございまして、ただいま申し上げましたように、直ちに違法であるというには当たらないのではないかという言葉は、当面、当該土地を返還しない状態を続けることができるという意味であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  105. 石井一

    石井(一)委員 まあ間接的には適法でも合法でもないと言っておられるように私には聞こえるのですが、長官のお立場ですから、ここのところはこの程度にいたしておきたいと思います。  先ほど官房長官がお答えになりました問題につきまして、私は問題を提起したいと思うのでありますけれども、そもそもこの問題は、六カ月前、十月前後に解決をしておれば解決が可能であった事件だというふうに私は見ております。  九月の四日に沖縄米兵による女子小学生暴行事件が起こり、沖縄は、灼熱するような中にこの問題が起こったわけで、世論が基地反対の動きとして燃え上がったわけでありますが、その後十月の十八日、宝珠山防衛施設庁長官は官邸を訪ね、強く時の村山総理に、政治と行政との峻別の中から、今ここで手を打たないと来年三月三十一日にはこういう事態が起こるということを言いました。その後、この人は、オフレコ会見をした中で失言があったと申しますか、そういう中から十月十九日辞任いたしました。  私は、たまたま十月二十日に、衆議院の本会議の質問に立ったわけですが、これを村山総理に尋ねたのであります。  私も、感覚としては、官僚として少し物を言い過ぎているなという気持ちもございましたが、しかしながら、やはり官僚の正義感というか義務感という形からああいうことを言ったのかなというふうなことで質問をいたしました。それに対して村山総理答弁は、まあ細かくは申しません、議事録に全部載っておりますけれども、要するに、自己発言が不用意であり、各方面に多大の迷惑をかけたのでやめた、こういう言い分であります。そして、自分は問題の解決に向けて最大限の努力を払っていくと。  最大限の努力を払っていくというのは、沖縄に対して百回も二百回も総理は言っておられますが、私が言いたいのは、これは不用意な発言で勝手にやめたのだと言うのでありますが、今日このきょうの時点になってみて、この人はやはり防衛施設庁長官として総理に首をかけて進言をしておったということもまず一つでしょう。  次に、十月二十一日には沖縄で八万五千人の県民の総決起大会がありました。そして、十月の二十六日に、我が党の伊藤英成議員が当委員会におきまして、具体的に今手を打たないと来年の三月三十一日には間に合わなくなりますよということを繰り返しここで主張をいたしておりますが、総理答弁は、先ほどと同じように、最大限の努力をする、沖縄の心を理解しながらやるということのみを繰り返しております。  そして、そこで、その前後に問題があるのでありますけれども、沖縄の知事あるいは副知事は官邸と接触を持たれ、吉元副知事が上京したりなんかし、宝珠山長官等々との会見等もし、総理に、どうか、こういう問題を認識しております、ただ、自分は沖縄の県民の代表であるということからは署名はできません、できれば総理が代行されませんかということを、直接言われたかどうかわかりませんが、そういう努力を防衛施設庁と沖縄県知事とが交渉しながら総理に対して物を言っておる。それに対して全く見向きもせずに、沖縄にその責任を押しつけてきた。そしてそれを放置してきた。こういう中から、宝珠山長官が首をかけて言っておるのにかかわらず、今日この事態が、彼が明言したと同じような事態が起こっておる。  しかも、橋本さんや梶山さんは御迷惑かもわからぬが、米国大統領と日米安保と基地問題を中心議論をするその目前の中に、いささか違法臭い国内の問題も処理できないという状態に置かれておる。  今のずっと流れをいみじくも梶山官房長官は、先ほど私が申したように、過去に不備、瑕疵があったかもしれないということで言われたのではないかなと思うのでありますが、今の私の経過ということについて御所見がありましたら、総理あるいは官房長官、お答えをいただきたいと存じます。総理、どうぞ。
  106. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、いずれにもせよ、前政権から既に、国として沖縄県を対象として起こした訴訟の原告という立場を継承し、その中において沖縄県側との間にできるだけの意思疎通を図ってきたつもりであります。  過去のプロセスがどうであったこうであったということ以上に、私は、残される大統領訪日までの間、少しでも時間を有効に使い、少しでも解決に向けて近づけるための努力をさせていただきたい、今みずからの心の中にあることを率直に申し上げます。
  107. 石井一

    石井(一)委員 あなたは十六日までに解決をしたいと。それじゃ、例えば、沖縄の収用委員会の七人のメンバーに、十二日にこの会議を開くというふうなことでありますが、積極的なアプローチを今されておるのですか。お答えください。
  108. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、土地収用委員会委員の皆さんは独立した人格をお持ちであると存じます。かつて成田闘争の非常に激しかった時期、千葉県の土地収用委員方々にも大変な御迷惑をかけたことがございました。その時点におきましても、国は、その土地収用委員会方々にじかにコンタクトすることは控えてきたはずであります。  今回、政府として、土地収用委員会の皆さんに対しての働きかけは、私の知る限りこれは控えておるはずでありますが、沖縄県に対し、知事さん以下に対して、私どものさまざまな立場から私たちの見解を伝え、あるいは協力要請を行うといった行動は現在も続けております。
  109. 石井一

    石井(一)委員 御承知のとおり、大田知事は非自民の知事ではございますが、しかしながらそれなりの努力を、昨年、この問題を想起しながら、そういうことが起こるであろうということを予期しながら、政府にあらゆる形でアプローチをしておる。  ここにいろいろ書いてございますが、七年十月 五日、吉元副知事が上京して宝珠山長官に会い、県が署名できない事情を十分に説明し、そして提供施設用地の必要があれば国は国で手続を今すぐ進めてほしいということを進言した。ここまで沖縄県は、県民の感情もありますけれども日米安保条約という重要なる国の施策に、国に対する協力を求め、そしてその意を体し宝珠山長官が首相官邸へ行き、首をかけて進言をしておる。それがこういう形で無残に首を切られて、自分が不始末をしたから首を切ったんだと堂々と言っておる。  こういうことがなければ、官房長官の言われるように、この問題は、その時点でスタートをしておれば既に解決しておったのじゃないですか。  私は、これは非常にゆゆしき問題であり、総理大臣としてのいわゆる決断のなさといいますか、しかも重ねて沖縄にあなたの方でやれと言う。国のこれだけの一大事がここまでトラブっておる、その原因はそこにあったという御認識はありませんか。お答えいただきたいと思います。
  110. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 事実を曲げて話をする気もございませんし、また、その事態の状況について今私がとかく申し上げる気はございません。  ただ、大きく変わったことは、旧ソ連のあった時代の日米安保と、それから崩壊した後の日米安保は確かに質が変わっておりますし、また日本に対する、いわば日本の日米安保に対する期待とかそれから具体的な要請とか、これも大きく変わりつつあります。  それともう一つは、やはり沖縄、私は村山総理を弁解もし非難もする立場にございませんが、少なくとも同じ日本国民としてのあり方、これを考えるならば、長期的な対策としては沖縄の民意を十分に尊重する、この気持ちは私は大局としては間違いがない。しかし、残念ながら、結果として今権原のない状態にあるということもまた現実でありますから、これからの長い先を考えますと、どうやって日米安保を有効に我々は保持することができるか、それと沖縄の問題をどう連立させることができるのか。  この問題は大変難しい問題でありますが、真っ正面から取り組んでいきませんと、今までのように、ただ単に基地問題は署名をし、場合によっては土地収用委員会で整々といくという状態ばかりでなくなったという、今、石井委員御指摘のとおり、例えば今度の判決を見てみましても、あるいは知事や副知事やあるいは県民、各種団体の動きを見てまいりますと、いわゆる単なる基地という話ではなくて、県民を巻き込んだ一つの運動になっているという現時点を想起をいたしますと、この対策を真剣に根本的に考えなければやっていけない状況になっている。  このことは大変重要でありますので、これからの大切な一つの視点としてやっていかなければならない。しかし、国は国として、日米安保条約を結び、それに基づきそれぞれの地位協定その他があるわけでありますから、厳正にこれを履行していかなければならない。このはざまをどう縫っていくか、大変難しい問題がございますが、冷静に判断をしながらこれから対処をしてまいる、こういうのが私は今までの過去の認識と現状の分析、そういうものに立って進んでいきたい、このように考えております。
  111. 石井一

    石井(一)委員 そして平成七年十一月四日、大田知事は村山総理を官邸に訪ね、そして知事は、もしやるべきであれば国は国の立場でやっていただきたいと訴えた、こういう事実まであるのであります。  私はこの際、委員長に申し上げます。村山総理を、この間の事情がこのとおりであったのかどうか、だとすると、私は大田知事にも申しわけないと思うし、宝珠山長官にも大変気の毒だと、現在起こっておるのにこういう経過があったんだということを、これは当然ただすべきだと思うのであります。だから前総理を、証人とか参考人とか言いません、衆議院規則四十六条によって委員でない議員に対する意見の聴取、これを要求したいと思います。
  112. 上原康助

    上原委員長 理事会で協議をさせていただきます。
  113. 石井一

    石井(一)委員 普天間飛行場の返還ということは非常にシンボリックな、実は二月二十三日の橋本・クリントン会談でも一言出た、こういうことであり、今後これは沖縄にとりまして致命的なものだと思いますが、どうも残念ながらトラブっておりまして、秋に先送りというふうな状況になるのではないかということを懸念しております。まあ騒音等々の問題は解決しておりますが、これは沖縄として余り大きく評価はしておりません。この返還問題について展望が開けるんですか、今度のクリントン・橋本会談で。いかがですか。
  114. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 現在SACOにおきまして課題となっておりますすべてについての議論を進めているところでありますが、あえて今お尋ねでありますならば、展望が開けたと申し上げられる状況ではございません。  その上で、個別の基地名を挙げての御論議は、これから極めて大事な時期を控えておりますだけに、どうぞできるだけ御容赦をいただきたい。我々は、残された時間の範囲内で、日米安全保障条約というもの、その存在を確保していきます上でも、沖縄県における基地施設の整理統合・縮小への努力が必要であることを痛いほど承知しているつもりでありまして、全力を尽くしてまいります。
  115. 石井一

    石井(一)委員 私は、今回足がかりでもつけてやっていただきたい。そして願わくば、今回終結しなくても十一月の段階ではこれを処理してやっていただきたい。  米国内の世論も、つぶさにいろいろ向こうのものを読んでおりますと、例えばリチャード・アーミテージ、共和党政権の国務次官補でありますが、普天間と嘉手納を統合することは可能だ、そして町の中で一たん大惨事でも起これば、劇的な基地に対する反感情が起こるであろうということを警告しております。  また、我が国の軍事ジャーナリストの小川和久氏もこの問題に触れて、要するに有事のときだけ普天間を使うということにして、とりあえず返してもらうという一歩前進を考えろ、こういうことも述べております。  私は、この問題は、恐らく事務的にいろいろやられたけれども、不幸にして中台の問題等が出てきたために、何とかしょうと思ったけれども今回できない、こういう状況に入っておるのじゃないかなと思うのでありますが、根気強く、具体的な名前は申しませんけれども、こういう方々の意見をも体しながら、ここは踏み込まなければ、本当に基地の問題というのは、今度のこの不始末の状況から何段階かエスカレートした状態になっておる。恐らくこれから反戦の、基地の土地使用に対する反対というものは燎原の火のごとく大きくなってくるのではないかということを申し上げておきたいと思います。  なお、この基地問題に関しまして、もう多くを述べるわけにもまいりませんけれども、アメリカの国防報告なり東アジア戦略構想等を見ておりましても、アジア太平洋地域における十万人体制と日本における四万七千人のこの在日米軍体制ということを動かすことができない状況に入っております。恐らくこれは一〇〇%不可能でしょう。  本当は目に見える解決を求めておったのでありますが、そういうことになってくると、我々は、厳しいけれども、基地問題はアメリカと交渉をしてやるんだということでなく、国内調整をどうするのかという問題に切りかえていかなければ、それはもう沖縄の人はますますフラストレートしますよ。ますます政府に対する——どなたが政権をとろうが、今のような抗弁をやり、次は大統領がやってくるから交渉をして前進します、縮小・統合整理、それが本当に不可能なのかという現状にある。これは非常に難しい問題ではございますけれども、そういう基本的な認識というものをお持ちいただいて、今後ひとつお進みをいただきたいと思います。  クリントン政権の国家安全保障会議のアジア部 長をいたしましたスタンレー・ロス氏が橋本総理に期待していますよ。橋本首相以外に日米同盟の基本的支持を明確に日本国民に向けて説く政治家がいないのは極めて不幸なことだ、橋本しかいないと言っているのですね。沖縄事件も、村山政権が同盟堅持のための対応をもっと敏速に、もっと果敢に示していれば、結果は全く変わったであろう、米国側が大統領以下即座に謝罪を表明したのとは対照的であった、こういうふうに沖縄問題を回顧しておるのです。  しかし、これも総理、余り早合点してもらっては困る。これはあなたのタフネゴシエーターとしての貿易交渉のことです。総理として勇敢に、沖縄の基地はなかなかこういう難しさがありますよ、日米安保はこれだけの重要性がありますということをもう少し率直に訴えるという、こういう姿勢が必要なんじゃないですか。  アメリカの識者からもこれだけ期待をされておる総理が、タフネゴシエーターであったものが、総理に座られた途端、全く顔が見えぬというふうなことを言われないようにひとつ御注意をいただきたいと思うのですが、いかがですか。
  116. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 こうして委員会が開かれ、顔を見ていただきながら問答ができることを大変幸せに思います。  そして私は、自分の顔が見えるとか見えないとか、そんなことが大事なことだとは思いません。先ほどもあなたに対して申し上げましたように、私は、昨年の自動車協議を通じ、そのプロセスを通じ、日米関係というものが、我々が考えている以上にアジア太平洋地域の国々にとっても、またEUを構成する諸国にとっても大きな外交的関係として受け取られていることを自分の肌身で痛感をしてきました。その土台に立って、私は今度の首脳会談というものを少しでもよりよいものにしていきたい。  かといって、そこへ本当に肩に力を入れて臨んで、私はそれで会談がうまくいくとも思いません。むしろどれだけ率直な議論の展開ができるか、そうした関係をつくりたいがゆえにサンタモニカにも参りました。そして、ある程度そうした思い切ったことが言えると私は思います。その中で、でき得る限りの努力をしたい。どうぞ、それ以上細かい内容は、きょうの時点、これからだんだん大事になりますだけに、御意見はちょうだいをいたします、私の方から具体的なことを言うことはお許しをいただきたいと存じます。
  117. 石井一

    石井(一)委員 九四年、一昨年、憲法改正をしたもとに、台湾住民による初めての総統の直接選挙が先日行われました。これは中国四千年の歴史で、これだけの民衆が投票したというのは初めてだというふうに言われております。その前に、いわゆる戒厳令の解除から始まりまして、台湾は次々に民主化を達成して、積み重ねてきたわけですが、この一連の動き、李登輝総統の五四%で今回当選をしたというこの動きを政府はどう評価していますか。
  118. 池田行彦

    ○池田国務大臣 委員御指摘のように、台湾が経済的に発展するだけでなくて、社会的にも安定をしてきた。そうして、各レベルの選挙が積み重ねられてまいりました。そうして先般、総統の選挙が直接有権者の手によって行われ、あのような結果が得られたということは、大変意義深いものと考えております。  そうして、我々といたしましては、このことが契機となりまして、中国と台湾との間でいわゆる台湾問題というものが平和的なうちに解決へ向けて直接の対話が開かれる、そういう一つの契機になってほしいな、こういうふうに強く期待しておるところでございまして、先般選挙が行われました際にも求められまして、私はそのような趣旨のコメントを出させていただいた次第でございます。
  119. 石井一

    石井(一)委員 李登輝総統の就任式が五月の二十日に行われ、米国からは特使を派遣することを決定いたしておりますが、我が国はどうされるのか、官房長官からお答えいただきたいと思います。
  120. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど申しましたように、この台湾の問題につきましては、両当事者の間での平和裏の解決を期待しておるわけでございます。その基本といたしまして、我が国は、二十四年前にサインいたしました日中の共同声明の際に、中国を代表する唯一の合法的な政府は中華人民共和国政府である、こういうことを明らかにし、そうしてまた中国が、台湾は中国領土の不可分の一部である、こういうことを言っておられる、このことを理解し、尊重する、こういうことでまいっております。  そういったことでございますので、台湾との関係においては、実務的な関係は維持いたしますけれども、政府間の関係はない、こういう立場でございます。そういった立場を踏まえまして、我々は御指摘の問題についても対応してまいりたいと思います。
  121. 石井一

    石井(一)委員 梶山官房長官にお答えをいただきたいと思いますが、長官は、政府として派遣となるか、党として派遣になるか、有志代表になるかはわからないが、民意にかなった総統が生まれて、その就任式にはだれかの参加があってしかるべきと思う、こういうことを、これは至って常識的な話だと私は思うのでありますが、今日の新たな台湾の門出にこういうお気持ちで政府は臨まれるというお考えですか。このコメントについてのひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  122. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 政府としてコメントすべき立場に今はございません。この問題は、あくまでも党人やあるいは一般、日本としてのそれぞれの民間のお立場方々がそれ相応の考えをめぐらすべきことだ、そういう意味で申し上げたわけであります。
  123. 石井一

    石井(一)委員 今度の中台海峡における緊張、まあ何とか大きな不測の事態が起こらずに終わったわけでありますけれども、この間、アメリカは空母二隻を出しまして、そしてその周辺の警護に当たり、そして、私はやはり大きな抑止力になったと思います。そういう意味でのアメリカのプレゼンスというのはいかに重要かということを物語っておるようにも思えるのでありますが、恐らく日本の国民の多くも、安保に反対だとか、このごろそういう人は大分少なくなりましたが、あるいは、やれ自衛隊がどうのと言う人も、ああいうのを見ると、やはりいまだにアメリカは世界の警察官なのか、少なくとも腹の据わった行為をするじゃないか、そういう気持ちを持つ人は私はたくさんあると思うのですね。  必ずしもあんなことが常にあっては困りますよ。しかしながら、それに対して我が国のとった態度、政府のコメントがいろいろありましたけれども、極めて弱く、あいまいなものであった。公海での演習であり、国際法上問題はない。わざわざ中国がコメントするようなコメントをされておる。私は、これは情けない。日本国民が見て、何も抗戦をせよとか台湾をカバーせいとかいうのじゃありませんけれども、あの恫喝行為は何ですか。それに対して外務大臣は、銭其シンとの会談で、やや踏み込んだと書いてあるが、疑問を呈さざるを得ないとかなんとかと。どうなんですか、日本政府の態度は。そこまでやはりそういう慎重な姿勢でやられるんですか。
  124. 池田行彦

    ○池田国務大臣 台湾問題につきましては、先ほど来申し上げておりますように、その両当事者の平和的な話し合いのもとで解決を期待する、これが基本的な態度でございます。そのことは、三月の初めにタイで行われました橋本総理と李鵬首相との会談、あるいは銭其シン外相と私との会談においてもきちんと先方に伝えたわけでございます。  また、具体的に今回の緊張の高まりの最も大きなきっかけとなりましたいわゆるミサイル発射訓練、この計画が明らかになりました三月六日の時点におきまして、在京の大使館に対しまして、外務省からは、台湾において緊張が高まるということは東アジアの平和と安定にとって到底好ましいものとは言えない、したがって、中国の自制した対応を求めるということ。それからまた、軍事演 習の一部が我が国の近傍で行われるということなので、万一不測の事態が起こりはしないか、その点も心配している、そういったことを申し入れた次第でございます。  また、さらに十一日に、改めて、具体的な航空機や船舶の運航に対して生じた障害、あるいは漁業者に対して及ぼされた影響等も指摘しながら、中国の自制を求めたところでございます。またそのほかにも、外交ルートを通しまして、いろいろな注意を喚起してまいりました。  さて、去る三十一日に銭其シン外相と私との間で行われました外相会談におきましては、これまでのそういった経過を踏まえながら、さらに詳細にわたっていろいろ日本側の考え方を申し上げたところでございます。  私から申しましたのは、今回のその演習というものは、何といいましょうか、どういう意図があったか、いろいろな見方がされているけれども、やはり軍事的な圧力をかけて台湾問題に影響を与えよう、そういうふうな目的、意図であったというふうにとらえる見方が多い、そして、率直に言って、そういったやり方には疑問を呈せざるを得ない。また、そのことでいろいろ影響を考えておられたとするならば、それはむしろ効果は逆であったんではないか、国際社会に与える影響からしても、あるいは台湾の人々に与える影響からしても。そういったことも指摘しながら、今後中国が、基本的な立場である平和的統一の方向で、当面の緊張のさらなる緩和、それからさらに、長い目で見た平和的統一への努力をされることを期待するということを強く申し入れた次第でございます。  三時間もかかった会談でございますから、繰り返し繰り返し申し上げておりますけれども、その中では、例えばこういうことも申しておきました。  我々も日中の関係、非常に大切にしなくてはいけないけれども、残念ながら、最近両国民の間で、この関係に対する支持といいましょうか熱意と申しましょうか、そういうものが衰えてきているんじゃないか。例えば、我が国の世論調査で見ますと、八八年の時点では、中国に対して親しみ、好意を持っている人が七割近くあった、それが今日では五割を切るに至っている。逆に、否定的な見方をする人は、かつては一〇%そこそこであったのに、今は三〇%を超えている。こういうふうな状況になっているのは、これはいろいろな理由があるだろうけれども、それは、一つには中国側のいろいろな人権問題あるいは核の問題、そうして最近の台湾をめぐる中国の対応も大きな原因になっていると思うということを、率直に私の方から指摘しました。  それに対して銭其シンさんの方は、いや、それは貴国の、つまり日本の一部にある、一部勢力のいろいろな発言、よく中国が言う言葉でございますけれども、そういったことも影響しているんではないかという話がございましたので、私の方からさらに、いや、この動きはそういうことではない、これは明らかに中国側の対応に大きな原因があると思うと。  そういうことで、中国の友好を大切にしながらも、今回の行動について、我が国では支持する見方はない、非常に少ないということを率直に申し上げている次第でございます。
  125. 石井一

    石井(一)委員 我が国は平和を志向する民主主義国家であるというふうなことを標榜しております。そういうことを考え合わせ、四千年以来の初めての選挙を行っておる。これに関して、やはりアメリカ人は怒ったんでしょうね。日本人はそれに対して、何か遠慮している。強い者には弱いんですけれども、弱い者には本当に強いんですよ。もう少しこのあたりの外交というものについても、我々活を入れていかなければいかぬのじゃないかなというふうに思うんです。中国がどういう国であるかというふうなことは私たち理解をいたしておりますけれども、まさに民主主義に対する恫喝であると申してもいい行為じゃないかなと思うんであります。  どうなんですか。総理はこの間、夜も眠られないほど極度に緊張したというふうに言われておりますけれども、中台問題にやはり不測の事態が起こらないかということに対して相当気をもまれたんですか。ちょっと心境をお聞かせいただきたいと存じます。
  126. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今までにもさまざまな役割を拝命しましたとき、その所管部分において問題が起こる、起こらないということは、常にその立場立場で気になりました。そして、今総理という役割を拝命いたしましてから、例えば、北海道におけるトンネル事故の際にもそうでありましたけれども、さまざまな状況に思いをめぐらせる回数はふえておると思います。  そうした中におきまして、台湾海峡における状況というものが非常に緊迫の度を高めていくプロセスの中で、さまざまな思いを持ちましたことは間違いがありません。
  127. 石井一

    石井(一)委員 私は、きょう、そこに書いてございます要旨一から六までを予定しておりましたが、今、三のところで私の時間がやってまいりました。  二十一世紀は中国の世紀であるというふうにも言われておる。潜在的なそういう力を軍事力、経済力等に持っておる国ではございますが、同時に、外交に対しては、先ほど、親しくさせていただいております池田外務大臣が言われたような、霞が関の外務官僚主導の外交をやめて、もう少し日本は毅然とした外交の姿勢を示していくべきではなかろうかと私は思います。  ODA、この問題にきょうは入りませんが、我が国は世界第一の援助国であります。百三十二億ドルを拠出しておる、百五十四カ国にこれを供与しておる、御存じのとおりでございます。中国に対しても第四次の円借款の交渉に入ろうというふうなことになっておるわけでございますけれども、我が国はやはり我が国の主張をし、平和を愛好する国々の方々にこれを実行していただきたい。今後この問題は深く踏み込んで議論をさせていただくということをお訴えをいたしまして、本日の私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  128. 上原康助

    上原委員長 これにて石井君の質疑は終了いたしました。  次に、広野ただし君。
  129. 広野ただし

    ○広野委員 衆議院新進党広野ただしてございます。  まず冒頭に、ヨーロッパで非常に問題になっております狂牛病のこと、日本には入ってきていないわけでありますけれども、日本で羊のスクレイピー病ですか、この例が数十例あるようでございます。人体には感染しないんだということでございますが、まず、国内で狂牛病の事例をぜひまた調査をしていただいて御報告をいただきますように、そしてまた、スクレイピー病の人体に対する影響といいますか、感染をするのかどうか、そういうような点についても御報告をいただきますように、農林大臣にお願いをしたいと思います。
  130. 熊澤英昭

    ○熊澤政府委員 お答え申し上げます。  日本では、狂牛病の発生の事例はございません。  それから、今御指摘がございました羊のスクレイピー病でございますけれども、スクレイピー病は、狂牛病と同じようにウイルスより小さなプリオンと呼ばれる病原体により発生すると言われておりまして、狂牛病と同じように脳が海綿状となりまして、掻痒症状、つまりかゆい、かゆくなるわけでございますが、そういう症状がございます。  我が国におきましては、昭和五十九年にカナダから輸入した羊に発生が確認されて以来、その後散発的に発生をいたしておりますが、すべて殺処分、焼却をいたしております。これまで、平成六年までに五十五頭発生しておりますが、すべて殺処分、焼却をいたしておりまして、平成七年には発生をいたしておりません。  私ども、昭和五十九年、平成四年、さらに先週と三度にわたり指導通達を発出しておりまして、 発生時の早期通報、感染した羊の殺処分、焼却、発生農場の立入検査等を強力に指導をいたしておりまして、これまでのところ感染が広がっているということはございません。今後とも、本病の防疫には万全を期してまいりたいと思います。  なお、羊のスクレイピー病が人間に感染するという事例は国際的にも報告を受けておりません。  以上でございます。
  131. 広野ただし

    ○広野委員 イギリスでの狂牛病の対応を考えますと、大変なことだったと思いますけれども、情報の公開をすぐにして、それを、いろいろな被害が、また国内でもいろいろなパニック的なことが起こると思うのですが、よくそういうところはやっておられる。これは見習うべきことで、やはり国内においてもし何かそういう例が、なければまさにいいわけですが、ちょっとでもそういうことがあれば情報公開を明快にしていただきたい、このように思うわけでございます。  ところで、住専の問題でございますが、私も二月、三月、富山県ですけれども、街頭に立ちまして、税金を使うことについての反対署名というのを受けました。物すごい、寒い中でも、雪の中でも、雨の中でもたくさんの方々が署名をされ、もう富山県では五万名になんなんとする人たちが反対署名をされた。それがまた、全国的には五百万名の方々が署名をされて、総理大臣のところ、そして衆議院議長のところへそれをお持ちしている、こういう状況でございます。現状においてもなお八割、九割の方々税金を投入することには反対だ、こういうことだと私は思っております。  そういう中で、昨日も野田委員から話がありましたが、三月五日の追加策のことでございます。  七項目追加策が発表をされたわけであります。大蔵大臣は、重く受けとめ、大いに努力する、こういう答弁をされたわけでありますが、その七項目の中で、リストラによっての負担軽減、国民の負担軽減ということが言われております。その中で、まず、民間金融機関は大蔵省を通じて国会に報告をする、そして農林系統は農林省を通じて国会に報告をする、こうなっておりますが、そういうことは今後とも約束をされるのかどうか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  132. 西村吉正

    ○西村政府委員 この点につきましては、既に民間金融機関が公表した結果を取りまとめまして国会に御報告するという御指示のように承っておりますので、公表されたものを御報告することは差し支えないと思っております。
  133. 広野ただし

    ○広野委員 それでは、大蔵省、農林省は——農林省もよろしゅうございますか、約束をされるということと受けとめてよろしゅうございますか。
  134. 堤英隆

    ○堤政府委員 同様の考え方でございます。
  135. 広野ただし

    ○広野委員 それでは、その中で、リストラ分による負担軽減というのはどういう形で出てくるのか。これは税収の増という形で分けられないのじゃないかと私は思うのですが、その点はどうなっておるのでしょうか。大蔵大臣いかがですか。
  136. 西村吉正

    ○西村政府委員 結果として、このような税収増をもって国への新たな寄与を行うというような御趣旨と私ども解しておりますけれども、そのように、ここで国会に御報告するというのは、リストラの実施状況について定期的にフォローアップし、公表された結果を御報告するというふうに理解をしておるわけでございます。
  137. 広野ただし

    ○広野委員 この増収分、景気がよくなれば増収が行われますし、リストラがどこまで行われて、どの部分がリストラによる負担軽減になるのか、これはもういかようにでもなべて書けるわけですね、何とでも書けるわけですよ。だからこそ、子供だましで、国民を欺くものだと。この点は本当に、まさにいいかげんなんですよね。どうにでも書けちゃうわけです、これは。どれぐらいの資料をもって、これぐらいのリストラを行ったからこうだ、こういうふうになるんでしょうか。どうなんですか、そこは。
  138. 西村吉正

    ○西村政府委員 この内容につきまして私どもが御説明、御解説申し上げるという立場にないわけでございますけれども、私どもといたしましては、金融機関がリストラに従来以上に鋭意取り組んでまいるということは必要なことと存じますし、そのような結果を公表いたしましたものを私どもが御報告するということの御指示を受けておるものと理解をしておるところでございます。
  139. 広野ただし

    ○広野委員 与党三党と政府と違うのだというような分け隔てをして何か逃げをやっているとしか見えない、そういうふうにしか見えないということを申し上げたいと思います。  もう一つ、住専の処理策というのが昨年末に発表をされて、それ以降住専はどういう活動をしているのか。直ちに昨年末の時点で、業務停止命令をかけて、そして新規融資はしない、そして不良債権は保全をする。そうしませんと、どんどん正常債権は逃げていき、そしてまた、新規融資をしますと、それでまた焦げついたりしますと、さらにふえるわけですね、国民の皆さんの負担が。ですから、どうして早くこの業務停止命令をかけないのかなと私は思うのですが、調べましたら、法的な権限がない、こういうことでございますね。その点をちょっとお答えいただきたいと思います。
  140. 西村吉正

    ○西村政府委員 今までもたびたびお答え申し上げておりますように、住専はいわゆるノンバンクの一種でございまして、銀行とか信用金庫のように業務停止をかけるというような権限を私どもは持ち合わせておりません。したがって、今御指摘のように、業務停止命令をかけて住専に資産の保全を行わせるというようなことは不可能であるわけでございます。  しかしながら、昨年末に閣議決定をもってあのような御方針をお決めいただいたところでございますので、住専各社に対しましては、資産の保全には十分留意するようにという指導をいたしているところでございます。
  141. 広野ただし

    ○広野委員 これだけの国民税金を入れて破綻の穴埋めをするということですから、それは法律的権限がなくても行政指導としてなぜやらないのかと思うのです。  そして今度は、一−三月の農林系統に対する六百億円の支払い問題がございます。この点も、これは支払うということになりますと、もう本当に死んでしまっている住専からまた取るわけですね。いわば首つりの人間をさらに引っ張る、こういう事態だと思うのですね。利子支払いはどうなるのですか、農林系統に対する。
  142. 西村吉正

    ○西村政府委員 まず、住専の資産の保全につきましては、私どもも、一日も早くそのようにすることが国民の皆様への御負担を少しでも少なくする方途だと考えておりまして、そのためにも、予算及び法案の御審議をお願いしておるところでございます。  なお、金利につきましては、これは現段階、すなわち住専が従来のように存続しております状況のもとでは、今までの契約関係というものが継続するという形になるわけでございますが、しかしながら、ただいま委員御指摘のように、住専は既に実質的にはこのような状態に達しておりますので、利払いというものが難しくなっておるのではないかという提案を住専及び母体行側からしているわけでございまして、関係者の間で今その問題について協議が行われているところでございます。
  143. 広野ただし

    ○広野委員 ですから、私は、行政指導でもいいから業務停止命令をかけないと、それはもう本当にどんどん逃げていくわけですね。  この間、木津信組の問題がありました。その一日前に末野興産が三百数十億ですか、移しかえられたわけですね。それがまた木津信組の倒産の原因になる、こういうことですから、正常債権は現在もどんどん逃げていっている、こういうことだと思うのですね。その点、どうですか。
  144. 西村吉正

    ○西村政府委員 繰り返しになって恐縮でございますが、全く御指摘のような問題点があるという ことは私どもも認識しているわけでございます。そういう状態を一日も早く是正をするために、予算及び法案を御審議いただき、私たちも一日も早く着手をさせていただきたいと考えているところでございます。
  145. 広野ただし

    ○広野委員 今の答弁は本当に許しがたい話だと思うのですよ。スキームがおかしいからこうなるのですよ。スキームがおかしいからどんどん逃げるわけで、財産保全ができないような、債権保全ができないようなスキームになっている点が問題なんですね。それを早く審議をしろと。問題点を覆い隠すような話は全くとんでもない話だと思うのですね。
  146. 西村吉正

    ○西村政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、現在の法律上は、私どもは住専に対しまして業務停止命令とか業務改善命令というものを出す権限がないわけでございます。もとより、行政指導ということはございます。私どもも住専の経営者に対しまして、財産の保全には十分注意をしていただくようにということは申し上げているわけでございますけれども、それはおのずから限度があることでございまして、それを徹底するというためには、ぜひとも新しい法律体系のもとに強力に回収に当たるというようなことができるようにお願いを申し上げますと言っているわけでございます。
  147. 広野ただし

    ○広野委員 本当にその点が国民の皆さんから、どうなっているんだと。どんどん正常債権は逃げていくし、不良債権はまたたまるばかり、こういうふうに思って納得がいかない、こういうことだろうと思うのですね。  もう一つ。六千八百五十億円を入れないと大変な金融不安が起こる、こういうことを政府はおっしゃるわけですけれども、私は、どこの国の政府が金融不安をあおるような発言をするのか、そんな国はないんじゃないかと思うのですよ。特に、農林系統がおかしくなる、こういうことを堂々と発言しておられる人がおる。これは、昭和の金融恐慌が起こったときに、本当に不用意な発言でもってたくさんの方々が預金取りつけに走った、そういうことをもたらすような発言だと思うのですよね。  私も実際いろいろな方々から、農家の方々から相談を受けます。本当に農協はどうなるんでしょうか、本当に預金を動かした方がいいんでしょうか、本当にまじめにそういうことを聞かれるわけです。だけれども、いや大丈夫だ、皆さんの預金は必ず守る、国民の皆さんの預金は必ず守るんだ、こういうことをきちっと言い、そして金融機関、でたらめな経営をやったところだとか、あるいはでたらめな経営をやっている農協だとか、そういうところを守るのじゃなくて、本当に国民の皆さんの、農家の皆さんの預金を守る、そういうことをきちっと言うことが一番大事なのに、不安をあおるような発言をしておられる。これは本当にとんでもないことだと私は思います。  これからどこそこの信連がおかしくなります、全国の二十とか三十の信連がおかしくなりますとか、そういう不用意な発言はやはりやるべきじゃない、慎重にやるべきだ、発言をきちっとよく考えてやっていただかなければならない、こう思いますが、農林大臣、いかがでしょうか。
  148. 大原一三

    ○大原国務大臣 今までの答弁で、どこの信連がおかしくなるということを申し上げたことは一回もございません。この住専問題の解決のスキームの中で協力できる限度はどこだ、こういうことで答弁をいたしてきたわけでございまして、今回の拠出によってどこかの信連がおかしくなるのではございませんで、やはり来年、再来年の経営を考えていく場合のぎりぎりの負担がこれでございます、こういう答え方をしてきたつもりでございまして、いたずらに金融不安をあおる、我々もむしろそういう御意見が出ることを現状のところ大変心配をしておる実情でございます。よろしくお願いします。
  149. 広野ただし

    ○広野委員 私は、本当にこの点が一番大切なことで、金融機関についても、日本の金融システムのこと、預金者の皆さんの預金はきちっと守ります、そのことをきちっとお話をいただきたい。総理、いかがでございますか。
  150. 久保亘

    久保国務大臣 金融不安を起こすことがないように政治的な措置を講じていくことが私どもの今与えられている責務である、こういうことを申し上げてきたと思っております。金融不安をあおるようなことはどういう結果をもたらすかというようなことについては、十分に私どもとしては承知いたしているつもりでございます。
  151. 広野ただし

    ○広野委員 ところで、今度の六千八百五十億あるいは住専スキームの中で、普通民間企業が破綻をいたしますと、管財人が利害関係人の会議を持って、債権平等主義、形式的なあるいは実質的な平等主義、どちらをとるかということはありますけれども、そういう形で処理をしてまいるわけであります。ところが、今度の場合は農林系統が破格の扱いになっております。  これは、覚書があり、そして誓約書があり、テークノートがある、こういうふうに言われる中で、九二年、九三年にかけてのいろいろな動きがあってこの覚書ができておるわけです。そして、その中で五兆五千億の元本は保証をされる、まさにそういうことになったわけであります。ですから、現在のスキームの遠因が、九二年、九三年の第二次再建計画をつくるときの時点でほぼ固まってきている、こういうふうに思うわけであります。  そういう中で、私も、この信連の中で最も多く住専に貸している静岡信連に行ってまいりました。二兆四千億の預金高があり、三千四百億の住専に対する貸付残がある、これは各県信連の中で最も高い貸付残であるということであります。  そういう中で、いろいろな点が明らかになってまいりましたけれども、まず一つは、もう全くけんか腰でございました、何で来たんだと。私どもは、担保の保証はどうなっているんですかというような点からいろいろとお聞きしたいということで、質問趣意書というものを持ってお話しに行ったわけですけれども、まさにけんか腰でありました。同僚の山田議員が、二月の予算委員会で、信連関係からの献金問題のことを話をしました。そして、農林省にその調査を依頼をした。そういうことから始まって、私は、どうも何か箝口令がしかれたんではないかなという思いをしたわけであります。  農林省で何かそういうことをやったことはないんでしょうね。どうですか。
  152. 堤英隆

    ○堤政府委員 当省からそういうことをしたことは全くございません。
  153. 広野ただし

    ○広野委員 当時、勉強会が行われております。勉強会は、これは既に指摘をされておりますが、当時の官房長官である加藤紘一さん、そして中金の元理事長の森本さん、そして銀行局の小山さん、あるいは福田総務課長というような方、そして信連側から笹本当時の住専の委員長、また信連関係は、三つあるいは五つの信連が交代で出ておったということであります。  そういう中で、この覚書は、大蔵省のトップ、大蔵大臣も承知をしてお話がまとまったということだと私は思います。局長だけではああいう元本保証をするということにはならない。銀行局長、そして経済局長との間の覚書、これは次官、大蔵大臣にも上げての話だろうと思いますし、また、官邸にも、当時の宮澤総理、また加藤紘一官房長官にも話があってこれがまとまっているというふうに思えるわけでありますが、この点、いかがでございますか。
  154. 西村吉正

    ○西村政府委員 まず第一に、御指摘のいわゆる覚書というものは、元本保証をしたという性格のものではないということは、今までもたびたび御説明を申し上げてきたとおりでございます。  なお、そのような覚書の部内における取り扱いでございますが、案件の性格に応じまして、上部に諮り、内容的に了解を得た上で、主管部局長の決裁により処理しているところでございまして、この案件の処理につきましても適正に行われているものと理解をいたしております。
  155. 広野ただし

    ○広野委員 この覚書はまさに元本を保証してい るということで、これがもとになって、現在のスキームでも五兆五千億円を農林系統に返し、そして農林系統は協力金という形で五千三百億を負担をする、こういうことだと思います。農林大臣、いかがですか。
  156. 大原一三

    ○大原国務大臣 いろいろ、与党のプロジェクトチーム、さらにまた政府・与党の最終決定において、協力をいたします、こういうことで、贈与という形で提供することが決まったものであります。
  157. 広野ただし

    ○広野委員 この覚書、元本を保証する覚書だというふうに思いますが、このときに加藤紘一当時の官房長官がいろいろな形でかかわっておられるということであります。そして、そのときにこのバックをなす、政治献金にかかわるいろいろな会がございます。この会で、農林省にちょっとお聞きしたいんですが、木曜会、火曜会、水曜会、こう言われるもの、これの実態と活動についてお聞かせいただきたいと思います。
  158. 堤英隆

    ○堤政府委員 今御指摘の火曜会、水曜会、木曜会、実は私もそういう存在を知りませんで、きのうの段階で確認をしたわけでございますが、農協中央団体の連絡調整を行うということのために、役員クラスであったりあるいは事務レベルであったり、そういう方々が、月に一回でありますとか週に一度でありますとか、そういう形で曜日を決めまして集まっているということで、任意の集まりというふうに聞いております。  この会の内容につきましては、御案内のように、農協でございますので、全中でありますとか全農でありますとか厚生連、さまざまな団体がございます。そういうことで、それぞれの中の意思疎通を図っていこうということをやっていると聞いております。
  159. 広野ただし

    ○広野委員 私も元全中の幹部の方にお聞きをいたしましたが、この木曜会、火曜会、これは、全中、全農、全共連、信連協会、農林中金、家の光協会、新聞連、厚生連、観光協会等で構成をされております。火曜会は各団体のトップだということです。木曜会は専務、常務クラスの会だ、水曜会は部課長の実務者の会議だということであります。  そして、火曜会、木曜会で政治家の影響力、協力度合いに応じてランクづけをしておった、こういうことであります。そして、当時の農林関係議員、まあ四天王とか四人衆とかというふうに言われております。また七人衆とも言われておりまして、その四天王の一人に加藤紘一さんが入っておられるわけであります。ですから、その中で……(発言する者あり)まあ、それはみずからの方々もおられるかもしれませんが、そういうふうに言われております。そういう影響力のある方々にいろいろな形で献金が行われておった、こういうことであります。  ところが、全中、全農、全共連というのは補助金の受け入れ団体であります。この補助金の……(発言する者あり)ちょっと静かにお願いできませんか。
  160. 上原康助

    上原委員長 お静かに願います。
  161. 広野ただし

    ○広野委員 この全中、全農、全共連等は補助金の受け入れ団体であるわけであります。この補助金の受け入れ団体政治献金をするということは、これは法律で禁じられているわけですね。  農林省は、この間の山田議員の要望に応じて調査をしておられると思いますが、こういう補助金受け入れ団体政治献金の実態というのは調査されましたか。いかがですか。
  162. 堤英隆

    ○堤政府委員 前回の山田先生の御質問のときに調査をしてくれということで御依頼がございましたのは、静岡県信連に関します加藤先生と笹本専務さんとの関係、それから加藤先生に対するそういう政治献金があったのではないかということを調べるようにということでございました。私ども、早速その日に専務にお聞きしましたところ、加藤先生との面識はございませんし、ましてやそういった政治献金をするということは全くないということでございました。  それから、一般論として申し上げまして、都道府県の農協政治連盟等の団体で、主として農協の役職員あるいは農業者等が自主的に組織する団体というのがございます。補助金の交付を受けております農協というものが、こういった団体に対しまして資金等の拠出を行うということはないというふうに理解をいたしております。
  163. 広野ただし

    ○広野委員 私も静岡信連元専務の笹本さんの話を聞いたわけですが、御本人は否定をしておられました。しかし、中央でどういうことが行われているか、これはわからない、こういうことであったわけであります。ですから、私は、中央における火曜会、木曜会、そして実質的には水曜会がいろいろと取り仕切っておったということでございますので、その点を、特に補助金団体についてはよく御調査をしておいていただきたい、このように思うわけであります。  特に、昨日も山田議員が要求をいたしましたけれども、担保の問題ですね。担保を十分にとらずして貸している、無担保・無保証で貸しているケースがあるということでございます。特に、信連関係の担保協約といいますか予約協定と申しますか、そういうものが非常に担保になっていないわけですね。物的担保になっていないわけです。  そういう中で特にまた、貸付金債権の管理は母体行側でやっている。第一抵当権は母体行がとり、そして信連の方は第二抵当権、こうなるわけですね。ですから、焦げついたときは全部信連がやられちゃう、こういうことなわけですよ。そしてまた、信連の方ではよく審査をしないで貸している。そういう中からまた、いろいろな不正融資が行われたんじゃないか、そしてまた政治家の中に回ったんじゃないか、こういう話になるわけですね。  ですから、この担保の問題については、昨日も資料要求がなされましたけれども、再度要求をさせていただきたい、このように思うわけであります。  そして続いて、加藤紘一さんの影響力、この点についてですが、昨年の十一月の与党側での負担割合を決めるところでの話し合い、与党政策調整会議というんですか、それと金融・証券プロジェクトチーム、そして系統金融プロジェクトチームですか、この三つのプロジェクトチームがそれぞれ調整をしながらスキームをつくってきた、連立与党の中ではなされたということでありますが、その座長の金融・証券プロジェクトチームの越智先生がつくられた案では、これは数字入りのものがなかったというふうに言われております。「日銀、政府の協力を含めて公的資金の導入については行う」という抽象的な表現になっておる。ただ、口頭で、農林系統の負担は一兆一千億円程度ですね、こういう話が十一月の二十八日の時点で行われておりました。  ところが、これが二十九日、三十日、そして十二月の一日には系統金融プロジェクトチームの柳沢伯夫座長の案、これが最初が「負担配分については当事者の経営状況や対応力を考慮して」ということにして、そして、柳沢私案では約半分の六千八百億円に系統関係の負担が下がっているわけであります。  そして、最終的には五千三百億の負担、こういうことになっていったわけでありますが、この柳沢伯夫座長も第二次再建計画の段階から非常に活躍をしておられます。そして、笹本静岡信連の元専務も、柳沢さんにはいろいろなことで地元の先生でしたので御相談をして、そしてまた大蔵省のこともいろいろなこともお知恵を授かつて教えていただいた、こういうことをおっしゃっているわけであります。  そういう中で、私は、柳沢さん、そして加藤紘一さんが相当な影響力を行使されて、一兆一千億円の負担割合だった系統関係をぐっと抑え込んだというふうに思えてならないわけであります。ですから、今まで金融・証券プロジェクトチームが営々として検討を重ねられておったものが、急に十一月末、十二月の初めの時点で大きく変わってしまっているというところにまた加藤紘一元の政 調会長、そして現時点では幹事長の大変な影響力を感ずるわけであります。  そういうことから考えますと、やはり私は、加藤紘一さんにこの場に出てきてもらって十分に説明をいただきませんと、第二次再建計画における勉強会、あるいは四天王の一人と言われる点、そしてまた今度の住専スキームをつくる点、そしてその農林系統の負担を半分以下に下げておられる、そういう影響力を考えますと、何かおかしな点があるのじゃないか、だからなかなか出てこられないのじゃないのかというふうに思えるのですね。おかしくなかったら、ここへ出てきてもらってちゃんと説明をしていただきたい。  特に、国民の皆さんが六千八百五十億という税金を投入をすることに対してなお反対である。総理もまさにその点、この間の岐阜選のことについても、そういう認識は、まだ十分な認識を得られたとは思えないというふうな発言をされておられます。私はそれが真っ当な評価だろうと思うのですね。ですから、国民の皆さんの声にこたえるべく、ちゃんとここへ出てきてお話をしていただきたい、このように思うわけであります。自民党総裁として、橋本龍太郎総裁に、どのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  164. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先日来何回か、ここで私が答弁に立たせていただくのは行政府の長としてお呼びを受けて立たせていただいている、この立場でということを繰り返して申し上げております。なおかつ、今の御質問でありました。  私は、本院の中で本予算委員会において理事会としてその証人喚問要求についてはお決めになることであって、行政府の長である私が申し上げることではないということを繰り返し申し上げております。
  165. 広野ただし

    ○広野委員 これだけの大きな問題であり、いろいろな点で加藤紘一さんが携わっておられる、こういう点、住専問題ともろにつながっているというふうに私たちには思えてならないわけでありますから、委員長におかれましては、ぜひそういう要望をよろしくお取り計らいをお願いをしたい、このように思うわけであります。  ところで、この住専の債権回収問題に絡みまして、暴力団の問題が言われるわけであります。アメリカのビジネスウイーク、この一月二十九日号でも、「ヤクザ」ということでアングラマネーのことを取り上げているわけであります。不良債権の大体一〇%が暴力団関係にかかわっている。ですから、住専関係ですと八兆数千億の不良資産、それの一割ということになりますと八千数百億、これが暴力団関係にかかわる。こういうことになりますと、本当に六千八百五十億というのは何のためにお金を出すんだ、暴力団関係の救済のために出すのか、こんなような話にやはりつながってくるわけであります。  この中で幾つかの問題点があって、この間、末野興産、ここに特捜が入りました。そしてまた、コスモ信組におきましても、これは暴力団とはまだ言いませんけれども、特捜が入ったわけです。債権回収については徹底的にやります、そしてまた刑事責任を問います、経営責任を問います、特捜の力をかりて、こうおっしゃいますが、特捜もやはり限度があると思うのですね。そしてまた、それなりの証拠がなかったらなかなか動けない、こういうわけであります。ですから、この間の末野興産あるいはコスモ信組というのは、まさに氷山の一角でしかあり得ない。  ですから、たくさん百社も二百社もある借り手の方、これはまさに借り得と言われているわけですが、この点はどのようにして対応できるのか、法務省の方で。
  166. 原田明夫

    原田政府委員 いわゆる住専をめぐります不良債権問題につきましては、金融をめぐる諸問題の一つであることは御指摘のとおりでございます。これに関しまして、当委員会初めさまざまな角度からの御議論がなされ、また多くの報道がなされております。これにつきましては、検察当局といたしましても、我が国の金融秩序全体に関連する問題ということで、十分関心を持って承知していると思います。  先ほど御質問の中で御指摘がございましたように、一部検察当局におきましても、警察当局その他関係当局と協力の上、鋭意捜査を進めておりますが、この全体の金融事犯に関しまする刑事上の問題につきましては、大きな流れの中で、どこに刑罰権をもって制裁を加えるべき不法な事態があったかということにつきまして、広い観点から検討した上で厳正に対処するものと考えております。
  167. 広野ただし

    ○広野委員 住専の問題につきましては、本当にまだいろいろな点で問題点がございますけれども、これはまた後日質問をさせていただくことにいたしまして、同僚の米田議員に質問を譲ります。  どうもありがとうございました。
  168. 上原康助

    上原委員長 この際、米田建三君から関連質疑の申し出があります。広野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。米田建三君。
  169. 米田建三

    米田委員 住専問題の議論が続いておりますが、私は、きょうはちょっと角度を変えまして、趣を変えまして、北朝鮮への我が国からの五十万トンに上る有償無償を含めた援助米の問題につきまして何点かお尋ねをしてまいりたいと思います。  三月の末に室蘭港に接岸をいたしました北朝鮮の船による約二千トンの船積みをもって、五十万トンの北朝鮮向けの援助米すべての船積みが終了するというふうに聞いておりますが、これは間違いございませんか。まだ船が来ていないんじゃないですかね。食糧庁、どうですか。
  170. 高橋政行

    ○高橋政府委員 北朝鮮に対する援助米につきましては、あと二千トン残っておりまして、ただいま、ただいまというのはまさにきょうからでございますが、三日間かせいぜい四日間ぐらいで船積みが終わるという状況でございます。
  171. 米田建三

    米田委員 あと三日か四日で船積みが終わるというお答えでございましたけれども、この間の経緯を振り返ってみますと、九五年の六月の三十日に合意をいたしました第一次分が三十万トン、そして平成七年十月の三日に合意をいたしました二十万トン、これが計五十万トンということになるわけでございます。  この北朝鮮に送られた五十万トンの米は、一九九三年から九四年に行われた緊急輸入米二百五十九万トンのうち、主食用の百五十四万トン、それから加工用の二十五万トン、それから飼料用の二十四万トンを除く五十六万トンから、さらにネパール、ラオス向けの三万トン、そしてまたフィリピン向けの三万トン、この計六万トンを除いた五十万トンである、こういうふうに理解して間違いございませんか。
  172. 高橋政行

    ○高橋政府委員 ただいまお話がございましたように、五十万トンということで間違いございません。
  173. 米田建三

    米田委員 そこで、北朝鮮に引き渡された有償無償を含めた五十万トンのトン当たりの価格は一万六千円であったというふうに聞いておりますが、もともと緊急輸入米であるわけでございますから、輸入価格はトン当たり幾らでしたか。
  174. 高橋政行

    ○高橋政府委員 輸入価格につきましては、平均でトン当たり七万二千円でございます。
  175. 米田建三

    米田委員 輸入価格七万二千円のものが一万六千円に化けたわけでありますが、その件はさておき、七万二千円だったものでございますから、五十万トンということになると三百六十億円になるのですね、これは計算すると。このうち第一次分の半分十五万トンと第二次分二十万トンは延べ払い輸出である、有償であるということになっておりますが、十年の据え置き、二十年償還という極めて緩やかな条件であります。全体としてまことに巨額の援助であることに間違いはございません。  また加えて、北朝鮮という国はお金をちゃんと払うかどうかわからぬのですよ。例えば北朝鮮の対日貿易債務でございますが、我が国の民間債権は、九五年春の時点で元利合計が約八百八十億円に達しているはずであります。そして、この八百 八十億円でございますけれども、一九八三年のラングーン事件がございましたね。これに関連して我が国が北朝鮮に対する制裁措置を実施いたしましたが、それを契機に、制裁措置をするなんてけしからぬ、借りは払わぬぞというわけで債務の履行が中断されているわけであります。その後、民間の債権者と北朝鮮側との間で交渉が何度か行われてまいりましたが、いまだに決着を見るに至っていない、そういう国なんですね。そのことをしっかり私は認識をしておく必要があるだろうと思うのです。  さて、米の金額、金額に換算すると大変な数字になることは今申し上げました、三百六十億円。そこで、この北朝鮮への援助ということになりますと、米の代金だけじゃ済まないわけであります。倉庫の保管料等、諸経費がかかっているはずでございますが、食糧庁はどのようにそろばんをはじいておりますか、説明してください。
  176. 高橋政行

    ○高橋政府委員 北朝鮮に対します保管料あるいは運送費、港湾経費、これが援助のための経費としていろいろかかっておるわけでございますが、この援助米は、当初三十万トンの支援につきましては、先ほど先生からお話がございましたように、平成七年の六月三十日に決めたわけでございますし、また追加支援の二十万トンにつきましては、同年の十月三日に合意をしたわけでございます。したがいまして、北朝鮮への米の支援に要した経費ということになりますと、その後にこれに要した保管料とかあるいは運送費、そうしたものがそういう経費になるというふうに考えておるわけです。  現在決算中でございますが、我々推計をいたしますと、おおむね六十四億円になるのではないかというふうに思っております。(発言する者あり)内訳につきましては、保管料が六億円、それから運送費が二十二億円、それから港湾諸経費が三十六億円程度というふうに見込んでいるところでございます。
  177. 米田建三

    米田委員 保管料が約六億円である、運送費が二十二億円、それから港湾経費が三十六億円というお答えでした。  これは、保管料六億円というのはおかしいんですね。というのは、これは北朝鮮向けであると決めてから、まあ言ってみれば米袋にスタンプを押してからの、九五年の七月以降の話なんですね。しかし、先ほどからお話が出ているとおり、これは九三年から九四年にかけて行われた緊急輸入米を充てているわけでございまして、それ以前の保管料というのは当然かかっているんです。  そうしますと、十日間当たり一トン約二百九十円なんですよ。これは東京、大阪が大体そうなんですが、地方によっては二百三十円くらいのところもあるようですが、ならすと約三百円弱です、十日間当たり。この十日間当たり一トンにつき約二百九十円、三百円弱であるということで計算をいたしますと、十日間当たりで五十万トンの保管料は約一億五千万円かかっているんですよ、一億五千万円。そうしますと、月に直しますと、この三倍ですから、約四億五千万円一月に保管料がかかっているんですよ。  そして、この緊急輸入米のピークは九四年の初頭だったはずです。九五年七月七日に第一陣の船積みが東京港を初め全国各地の港から行われました。少なくとも一年以上保管されていたんです。そうすると、月四億五千万円掛ける十二で、保管料だけでも五十四億円になる。とても六億とは言えないんです。北朝鮮向けですよというスタンプを押してからの話であって、実際のこの米の保管料は五十億を超える巨額のものになっているんですね。  したがって、これは六十四億じゃないんだ。これは、実際には百億を超える金額になるんですね、経費が。そうしますと、米代が三百六十億円でございますから、この米代と合わせて、北朝鮮向け五十万トンのお米というものは、お金に換算するならば、実に四百六十億円を超える、こういうことになるわけなんです。大変大きな金額であります。巨額です。保管期間も長過ぎる。どうしてこんなことになったんですか。食糧庁はどういうふうに総括していますか、説明してください。
  178. 高橋政行

    ○高橋政府委員 ただいま先生からいろいろ金額のお話がございましたが、ちょっと我々の認識と異なっているところがございますので、若干申し上げさせていただきたいと思います。  まず一つは、確かに買ったときの値段は七万二千円です、それから売り渡した金額は一万六千円ということですから、その差だけでも三百億円あるでしょうということはそのとおりでございますが、我々は、これは、北朝鮮向けの援助に要したといいますか、そのお金がそれであるというふうに見るのはちょっと適当ではないんじゃないかというふうに考えております。  と申しますのは、北朝鮮援助米の話が出てくる前ですね、いわゆる平成六年度末でございますが、その時点において、緊急輸入米、どうも主食用に充てるというのは難しくなりまして、これを何とか処理していくにはどうしたらいいかということでいろいろ検討したわけでございますが、その時点で、主として業務用それから原材料用あるいは飼料用に向けていこうというふうに去年の三月、四月ごろ決めまして、それで、その売り渡し価格を、平均トン当たり二万七千円、こういうふうに考えておったわけです。  ところが、去年の五月、六月になりましてこの北朝鮮への援助米の話が出てまいりまして、その二万七千円で処分を予定していたお米を北朝鮮への援助用に回したということでございまして、その価格が一万六千円でございますので、その損は、売買損としては五十五億円程度であるというふうにまず考えております。  それから、先ほど、米の、そのほか保管料とかそういうことについてのお話がございましたが、それについても、やはり北朝鮮を援助するかどうかはわからなかったわけでございまして、その後決めたということでございますから、それが六十四億で、合計百十億程度が緊急援助用に要したお金である、こういうふうに理解しております。
  179. 米田建三

    米田委員 同じことを見る角度によって計算の仕方が違うんでしょうが、時間がないのでちょっと先に進みます。  この米の搬出のシステムですが、緊急輸入時以降に主として日本全国の港頭の倉庫に保管をされていたその米が搬出をされたわけでありますが、食糧庁は、この倉庫からの蔵出し、そして船積みまでの業務を商社に一括発注をしておったわけであります。  例えば日商岩井さんとか三井物産さんとか住友商事、野村貿易等、こういう商社ですね。まあ野村貿易が相当な数量を扱ったようでございますが、こういう商社に一括発注をしておった。これは先ほどの御説明の港湾経費の三十六億円に該当するはずでございますが、この三十六億円、商社に一括発注した分が三十六億円になる、こういうことでございますが、蔵出しからこの船積みまで一括して受注した商社が、当然その下のいろいろな企業を組織化してこの業務をやったはずであります。  この実態を詳しく知りたかったわけでありますが、食糧庁の御担当の方に事前にいろいろお話をしたら、それは教えるわけにはいかぬと。その理由として、民間の契約の話であるということが一つ。もう一つは、こんなことも言っていましたよ、ある課長補佐さんが。それを問いただしても、ひょっとしたらうその報告をするかもしれないと妙なことをおっしゃった。何でそんな余計なことまで心配するのですかね。何も私はそんなことを聞いているのじゃないので、何か考え過ぎたんじゃないですか。  こういう巨額のお金が人道援助という名のもとに使われたんですから、これはぜひ知りたいわけなんですが、長官、やはりだめですか、教えてくれませんか。
  180. 高橋政行

    ○高橋政府委員 ただいまの御質問の件でございますが、食糧庁でやっておりますこの緊急輸入米 を援助用に充てる場合の輸出業務でございますが、これは、まず一つは、港頭の倉庫から輸出港までそれを運ぶ、輸出港にある港頭倉庫まで運ぶわけですね。  それからもう一つは、運んできたものを船積みする、そういう仕事があるわけでございますが、やはり輸出入業務というのは商社が手なれておるわけでございますので、我々、現在、米の買い入れ委託契約の参加を認めている商社が二十五社ございます。したがいまして、この二十五社を相手といたしまして、指名競争入札による契約をしていただきまして、それで、一番安い価格を入れて、港湾経費を一番安く札を入れてきた人、その人に、契約を結んで仕事をやっていただいておるわけです。  そうしますと、それらの商社の人が具体的にどこの人を、港湾荷役をやるためにどこの会社をさらに下請に出すとかあるいはやっていただくかということにつきましては、我々、特別に関知しておるわけでございませんので、それは商社が、いろいろな自分の関係のところといいますか、そういうところを選んでやっていただくということでございますので、それは商社の責任でやっていただくというのが一般的なことではないかというふうに思っておりまして、先ほど先生にそういったようなお答えをしたのではないかというふうに思います。その点についてはひとつ御理解をよろしくお願いいたします。
  181. 米田建三

    米田委員 資料を出してくれというふうに言っているわけでありまして、とにかく国民のこれだけの大きなお金が使われたわけでありますから、委員長、これは委員会としてこの資料を確保していただくように、食糧庁から、米の蔵出し、搬出、船積み業務を一括受注した各商社の数と名前及び各商社ごとの下請業者と下請業者への支払い額、この資料を要求いたします。
  182. 上原康助

    上原委員長 御答弁できますか、食糧庁。
  183. 高橋政行

    ○高橋政府委員 御存じのように、建設とかいろいろなことでもう御存じだと思いますが、いろいろな契約をするときにやはり建設業者の皆さん方と契約するわけでございまして、それがどういうところと、後どういうふうに仕事を具体的になされるかということまで我々は関知しておるわけではございませんので、ひとつその点は御了解を願いたいと思っております。
  184. 米田建三

    米田委員 食糧庁が発注して支払ったわけですから、食糧庁をしてちゃんと調査をせしめ、その資料を当委員会開会中に提出するように要求いたします。
  185. 上原康助

    上原委員長 理事さんを通して理事会に要請してください。  速記をとめてください。     〔速記中止〕
  186. 上原康助

    上原委員長 速記を起こしてください。  ただいまの件につきましては理事会で協議をさせてください。
  187. 米田建三

    米田委員 ぜひ資料をお願いいたします。  これは近洋海運という新橋にある北朝鮮政府のエージェントのようですが、この海運代理業の会社から、聞けば、一方的に、いつごろどのくらいの船が入る、港はどこへ入ったらいいかというような連絡を待ちながら、それを待った上で船積みというようなことが繰り返されてきたようで、大変長い間時間がかかった原因なのかなとも思いますが、五十万トン援助することに決まったわけですから、さっさと積み出せばよかったと思うのです。時間がありませんので、また次回にその辺は聞きますが、次の質問に移ります。  日本政府は、これはあくまでも人道援助であるということでこの援助の決定を行ったはずであります。そこで、この契約の中身の確認なんですが、民生用であるということはお互いはっきり確認し合いましたか。
  188. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 例えば、日本赤十字と朝鮮赤十字との合意書というものにおいて、米の数量それから引き渡しの場所などとともに、米が民生消費のためのものであることが確認されておる次第でございます。
  189. 米田建三

    米田委員 食糧庁と朝鮮国際貿易促進委員会合意された、すなわち延べ払い輸出分についても民生用であることが確認された上で船積みされておりますか、今赤十字の話をしましたが。
  190. 高橋政行

    ○高橋政府委員 延べ払い輸出に当たりましても、北朝鮮国民の食糧に充てるために供与されたお米でございますので、それ以外の用途に使用されないようにということで、売買契約書の中で、専ら民生用消費のために適正に使用されるというふうに定めておるところでございます。
  191. 米田建三

    米田委員 この売買契約の中身でございますが、これも実は契約書の写しを見たいというふうにお願いしてあるのですが、出さないと言うのですね、御担当の方が。これはどうして見せてもらえないのですか。日本赤十字社対朝鮮赤十字会及び食糧庁対朝鮮国際貿易促進委員会合意契約書の写しを見たいとお願いしてあるのですが、出せないということを担当の方がおっしゃり続けているのですが、これは何で出せないのですか。外務省と食糧庁、両方に聞きたい。
  192. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 これは両赤十字間の書簡ということで、相手、特に北朝鮮側の赤十字会があることでもございまして、その公表は差し控えさせていただきたいということでございます。  他方、その内容についてはお伝えすることができる次第でございまして、これについては、その書簡のやりとりの手順、それから実施要領の概要ということがそこで確認されているわけでございます。  手短に申しますと、書簡のやりとりの部分についてはちょっと省略させていただきますが、実施要領の概要について申し上げますと、いろいろ項目がございまして、提供される米が十五万トンであること、それから、提供される米は食糧庁が保有する在庫緊急輸入米であること、それから、米は民生消費のため日本国の港において引き渡されること、この引き渡し後の費用は北朝鮮側が負担すること、米の受領、配分の後、朝鮮赤十字会が日本赤十字社に対してできるだけ速やかにその配分状況に関する資料を提出すること、こういった項目が確認されておるわけでございます。
  193. 米田建三

    米田委員 この現物を、写しで結構ですが、きちんとやはり拝見したいと思うのですね。  したがって、資料要求の二番目でございますが、どうか、改めてこの委員会としてこの契約書をきちんと確保していただくように要求をいたします。理事会で協議をしてぜひ決めてください。  時間がありませんから、次の質問。  さて、民生用であるということは間違いがなかろうと思いますが、これが実はいろいろ問題があるのですね、本当に民生用なのかどうかと。  韓国政府の対外広報機関、これは正式な行政機関ですが、海外広報館というのがございます。本年の一月三十一日に、北朝鮮の最近の食糧事情に関する報告書をこの韓国の海外広報館が発表をしております。この中で、北朝鮮における食糧配給の規定量とそれより少ない実際の量、あるいは穀物の供給と需要についてるる述べた上で、北朝鮮が実は長い間恒常的に食糧不足の状況にある、その上で、北朝鮮の食糧危機の原因が共産主義体制と戦争の準備に国のすべての精力を注ぐという政策に起因するというふうに指摘をしているわけであります。  これは極めて確度の高い情報だと思うんですね。というのは、北朝鮮の穀物状況を調査するために、韓国政府は、全く同じような気象条件の農場をつくって、そこで実際に同じ作物を植えてみたりするという、そういう努力の上で毎年このデータを出しているようでございますけれども、そういう指摘がされております。  また、「北朝鮮においては、食糧配給は軍と治安機関が最優先されており、ともに特権階級として扱われ、その他の市民への食糧配給は減量されるか、ひどいときは停止されている。」とも指摘している。  さらに、結論としてこういうふうに述べているんですね。  米にかわって北朝鮮の主食穀物となっているトウモロコシを輸入することで食糧不足を解決しようと決意すれば、その経費は、一人当たりの配給量によって異なるが、一億七千万ドルから四億八千万ドルの間になると思われる。北朝鮮が五十六億六千万ドルに上る現在の軍事支出のわずかに三%ないし八・五%を割けば、必要な量のトウモロコシの輸入の資金は簡単に出すことができる。一九九三年から七年間の予定で、北朝鮮は、ロシアのミグ戦闘機の部品購入のための軍備調達契約のもと、毎年約七億ドルを支出している。こうした軍事支出の一部で、北朝鮮の食糧不足を緩和するのに必要な外国産穀物を十分に購入することができるのである。また、もし食糧不足が北朝鮮の現政権を脅かしかねないほど先鋭なものであるとすれば、北朝鮮は、非常用の穀物備蓄の一部を放出することで食糧不足をかなり緩和することができるし、またそうすべきである。というふうに結んでいるんです。  私は、このデータを見まして思いましたのは、実は我が国からの援助の五十万トンというのは軍事援助にほかならなかったのではないかという疑問であります。加えて、目下調査の継続中でありますが、我が国から援助されたお米を物資のバーターという形で第三国に転売をしたという情報すら飛び交っております。  こういうふうないろいろな状況、情報を勘案いたしますと、民生用に資するという約束が守られたかどうか極めて疑わしいわけでございますが、一方で、国連も米の援助をいたしました。国連の場合はきちんと追跡調査を行っているんですね。時間がないので詳しい話は省きますが、追跡調査を行っているんです、国連は。  我が国は、この五十万トンの米が実際に国民に配られたかどうか確認しておりますか。
  194. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 米の使途を直接に検証するということは、今、日朝間に国交がないことがございまして、これは困難なわけでございます。  ただ、五十万トンにつきましては、無償供与分の十五万トンの場合には、朝鮮赤十字会から去る一月の中旬に配分状況に関する報告というのが参っておりますし、延べ払い売買契約分の三十五万トンにつきましても、今まだこれから配分される後期分を除きますと、一月下旬に北朝鮮の国際貿易促進委員会から食糧庁に対して配分状況に関する報告がやはり参っておる、こういう状況でございます。
  195. 米田建三

    米田委員 相手側が伝達してくる報告をそのままうのみにしておるんです。国連は、実際に国連のスタッフが確認をして歩いたんです。もっとも、配られた後、あの政府がまた回収したのではないかという疑念もありますが、それはまた別にして、確認をしているんです。  どうでしょう。そのくらいの徹底した調査を、真に人道のために我が国は五十万トンを援助した、そしてあれだけのお金をかけたということであるならばやるべきであると思いますが、総理、いかがですか。
  196. 池田行彦

    ○池田国務大臣 先ほど政府委員から御答弁申し上げましたように、無償分についても有償分についても、それぞれ配付状況については報告を聴取することにしておりまして、一部については報告が来ておる次第でございます。  なお、さらに我が国として、具体的にそれの確認作業をすべきではないかというお話でございますけれども、御承知のとおり、今北朝鮮と我が国との間には国交関係がございませんので、そういった直接確認作業ということはできないという事情にございます。  しかし、いろいろな形でこれからも情報の収集には努めてまいりたい。そして、適正に本来の目的に供されたということを確認するための努力はしてまいりたい、こう思います。
  197. 米田建三

    米田委員 この問題はまた次の機会に譲りますが、最後に、実は、巨額の国民の血税が本来の人道支援の目的とかけ離れた用途に供された疑惑、これに加えまして、この米援助が決まるまでの交渉過程に、極めて不可思議、不明瞭なものがあるのです。正体のはっきりしない民間人の関与であります。国交がない相手とはいえ、今回契約が結ばれたとおり、それなりの、それぞれの公の機関が合意契約書を結んでいるわけでありますから、赤十字もあるし、あるいは第三国のお互いの在外公館同士の交渉だってできるわけであります。  例えば、九五年四月十一日に、参議院の外務委員会で、我が党の石井一二議員が追及いたしましたが、九五年三月の与党三党訪朝団に、加藤紘一事務所の肩書で参加した吉田猛氏、千代田区丸の内にある新日本産業の社長さんです。北朝鮮との草分け的輸出入業者で、お父さんの代に日本に帰化をされた方でありまして、ピョンヤン・ロビイストとしてその筋では有名な方のようでございますが、いわゆる金丸訪朝団にも関与をされたという、そういうお話も承っているわけであります。  まずこの吉田氏ですが、警察当局はこの方に注目をしておられますか。警備局長、お見えだと思いますが。
  198. 杉田和博

    ○杉田政府委員 ただいま御指摘の人物につきまして、さまざまな報道がなされておるということは承知いたしておりますけれども、私どもといたしましては、具体的な違法行為で検挙をいたしました場合を除きまして、個人に関するコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
  199. 米田建三

    米田委員 コメントを差し控えるというお話でございますが、この吉田さんと加藤紘一さん、都内の中華料理店で一九九四年の十一月に初めてお会いになったはずなのですね。そのとき、当時の外務省アジア局川島裕さんが御同席されておられたと思うのですが、川島さん、お見えになっておられますか。——同席しておられましたか。
  200. 川島裕

    川島政府委員 当時アジア局長だったものですから御答弁いたしますが、私も吉田さんは存じ上げておりますし、折々、情報通でいらっしゃるものですから、会ったことはございますが、おととしの十一月に三者でということにつきましては、そういう事実はございません。
  201. 米田建三

    米田委員 十一月に三者でお会いになったことはないというお話でございましたが、川島さん、もう一、二点伺います。  加藤紘一先生と三人で会ったことはないのですか。本当ですか。
  202. 川島裕

    川島政府委員 当時の経緯を説明させていただきますと、国交正常化交渉の再開の糸口を探すということでいろいろ動きを始めましたのは、昨年の二月ぐらいからでございます。その際に北朝鮮側が、まず党との接触を先にしたいという雰囲気だったものですから、その意味で政府としては、党と緊密に連絡を保って、折々に触れて打ち合わせをしたことはございます。その際に加藤政調会長もいらして、それからたしか吉田さんも同席した、かなりの人数で打ち合わせをやったということはたしかあったと記憶しております。
  203. 米田建三

    米田委員 つまり、少なくともそのお三人の顔ぶれを交えた出会いがあったことは事実なわけですね。細かいことは、いずれ機会があるでしょうから、また伺いますが、さてそこで、川島さん、米の話は出ましたか、そのとき。
  204. 川島裕

    川島政府委員 当時、政府としてやっておりましたのは、政党同士のやりとりから始まって、国交正常化交渉にどうやって道筋をつけるかという話を専らやっておりまして、米の話につきましては、政府として関与を始めるに至ったのは、先ほどの食糧庁長官もお話がありました五、六月ごろでございます。私の記憶では、米の話をいろいろやりとりをしたという記憶はございません。
  205. 米田建三

    米田委員 時間がないので、また次の回の楽しみにとっておきますけれども川島さん、もう一点聞きます。これは素直に聞きますので、素直にお答えいただきたい。  韓国に公使として駐在しておられたことがありますよね。その際に、北側の方と接触がありましたか。また、相当親密な御関係になった北側の方はおられますか。
  206. 川島裕

    川島政府委員 全くございません。
  207. 米田建三

    米田委員 一九九五年の二月の二十六日に、シンガポールで、加藤先生に近い自由民主党の有力な代議士と、朝鮮労働党書記の全容淳氏の部下でもあるアジア太平洋平和委員会委員長である李種革氏がお会いになっているという情報があるのですが、このときの会談で、北朝鮮へ米を援助する方法と値段について相当突っ込んだ話し合いが行われたというふうに聞いておるわけでありますが、このときの北朝鮮側との連絡役を務めたのが先ほど申し上げた吉田猛氏であるというふうに私ども理解をしておるわけであります。  さてそこで、外務省はこの事実を御存じなのか、外務省としてです。そしてまた、このシンガポールでの極秘の会談に当時のアジア局審議官竹内行夫氏が同席をしていたはずでございますが、竹内さんは何かアメリカへ赴任をされておられるそうで、北東アジア課長の別所さんにアメリカへ電話して話を聞いておいてくれとお願いしましたけれども、聞けましたかね。
  208. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 竹内当時のアジア局審議官が同席したという事実はございませんで、この点は竹内審議官本人にも確認済みでございます。
  209. 米田建三

    米田委員 もう一点聞いていますよ。つまり、外務省はこのような動きを御存じでしたかということも聞いていますが、どうですか。
  210. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 そのような事実は新聞でも報ぜられましたし、我々としても一応承知していると思います。
  211. 米田建三

    米田委員 さて、もう一人の方についてちょっと触れておきたいと思うのですが、佐藤三郎さんという方がおられるのです。横浜にある港湾運送業の株式会社コーショーという会社の社長さんです。加藤紘一先生の大変近しいブレーンの方だそうでございまして、いや、今までブレーンの方だとだけ思っていたのですが、ここにちょっと名刺のコピーがありますが、衆議院議員加藤紘一事務所、TBRビルの六〇八号の事務所ですが、この代表という名刺もお使いなんですね、この方。名刺のコピーがあります。時に応じてこういう名刺もお使いになっておられますが、それほど親しい実業家の方であります。  と同時に、この会社、平成三年から平成六年まで、加藤愛子さんという女性を監査役として、そういう女性が就任しておられるんですよ、平成六年まで。まあくしくも加藤紘一先生の奥様と同姓同名でいらっしゃるんで、同一の方かどうか、もうちょっと時間をかけて調べるなりお伺いするなりしてみたいと思っているんですが、いずれにせよ、事務所代表の名刺をお持ちになる実業家であります。港湾運送業であります。  この佐藤氏がやはり九五年三月の二十八日の与党三党訪朝団に同行したとも言われておりますし、あるいは、先ほどもシンガポールの話が出ましたが、九五年の九月八日から十二日までシンガポールに滞在をしておられる。この間に李種革アジア太平洋委員会委員長らと会い、やはり米援助についての話し合いをされた。あるいはまた、本年の一月十三日から十四日、北京に滞在しておられますが、このときにもやはり北朝鮮関係者と会合をされたというふうな、この方も吉田氏と同じような、相当活発な米に関しての動きをされたという情報がたくさん実はあるわけであります。  こういう、まあ言ってみれば私的な動き、先ほどのシンガポールでの会談については、竹内さんは同席していないけれども、外務省は承知をしておったということでございますが、この佐藤さんについても外務省は、いろいろな動きをされておられることを承知しておられましたか。
  212. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 与党とは本件についても常時緊密な連絡をとらせていただいておりますが、今御指摘の佐藤さんという方のシンガポール及び北京での接触の件については、その有無を含めまして、外務省として承知いたしておりません。
  213. 米田建三

    米田委員 これは官房長官にお尋ねをしたらいいのかと思うのですが……(発言する者あり)おられないですか、じゃ総理かな。  九五年の十一月の十八日、日韓の首脳会談で、韓国側から、北朝鮮との米交渉が、韓国との十分な話し合いといいますか詰めが行われなかった、頭越しであったというふうな趣旨の、まあ批判、非難があったというふうに聞いているわけでございますが、こういったことも、やはり国交のない国同士とはいいながら公のルートが別途ある、こういうもののほかにいろいろな不明朗な動きが、不可解な、不思議な動きが一方であったということに対するやはり韓国側の不信感もあったんじゃないかと思うんですね。さらにはまた、既に冒頭でも触れたように、大変大きな国費がこの援助には投じられているわけであります。  ぜひとも政府の責任において、この加藤紘一さんと御縁の深い吉田猛、佐藤三郎両氏の日朝米交渉時における役割というものを明らかにしていただきたいと思うわけでありますが、いかがでございますか。
  214. 池田行彦

    ○池田国務大臣 米支援につきましては、先ほど来お話がございますように、最終的な決定は、これはきちんと政府の責任において行ったものでございます。  ただ、その前の段階におきまして、先方の都合もあり、まず党との間でいろいろ話をしたいという事情があったというのが事実でございまして、そういったことで、政府以外、党のお立場で一定の役割を果たされた、こういうことはあったと思います。そういったところについてはその後外務省も承知しておったわけでございます。  しかし、そのほかのいろいろな動きについては関知していないところでございますし、また、いずれにしても将来に向かっては、北朝鮮とのいろいろな関係を進めるに当たりましては韓国とも連携をとりながら進めていく、こういう方針でございます。
  215. 米田建三

    米田委員 非常にアバウトな御答弁だったんですが、やはり四百数十億円というような金額、そしてまた民生用に使われていないのではないかという疑惑、いろいろあるわけであります。  こんな情報もあるんですよ。某有力な日本の政治家が韓国政府の高官に直接最近お電話をされて、米問題で余り在日大使館、その他関連機関がリークしないようにという何か懇願の電話が行ったなんという話も聞いておるくらいでございまして、大変これは、私は最終的に政府がきちんとやった話だということじゃなく、この吉田、佐藤両氏のこの間の動きについて、とにかく、少なくとも先ほど外務省は、シンガポールでの、その竹内さんは同席していなかったけれども、そういう会議が行われたことは知っておるというようなお話もあったわけでございますから、どうかきちんとお調べをいただいて、その両氏の役割についての調査結果の報告をこの委員会の開会中に出してもらいたいと思うんです。
  216. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 私ども立場は、本件支援について政府当局以外の関係者が一定の役割を果たした、これは事実であろうと思います。しかし、いずれにせよ北朝鮮に対する米の支援の問題については、これまで御議論のあった点を含めて、最終的には政府として直接北朝鮮側と協議を行って支援を決定したところであり、また、今後のことについては先ほど外務大臣が答弁申し上げたとおりでございますので、そのような措置を継続してまいりたいと考えます。
  217. 米田建三

    米田委員 そういう御答弁でございますが、やはり何としても調査を行って、当委員会に報告をちょうだいをしたいと要求いたします。
  218. 上原康助

    上原委員長 ただいまの件については、委員長立場でお答えするのは難しいと思います。  ちょっと速記をとめておいてください。     〔速記中止〕
  219. 上原康助

    上原委員長 速記を起こしてください。  外務省に申し上げますが、調査できるかどうか、もう一度御答弁を願いたいと思います。
  220. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 今の件について、ちょっと外務省として調査できるということでは必ずしもないと私は思います。  ただ、北朝鮮に対する米支援の問題ということ については、先ほど申し上げましたとおり、政府当局以外の関係者が一定の役割を果たした、これは事実である、私どももそれを認めております。しかし、最終的には政府として直接北朝鮮側と協議を行って、それで支援が決定されたところでありますから、それが正しい道筋であるので、その道筋を継続してまいりたい、こういうふうに考えます。
  221. 米田建三

    米田委員 それでは、とりあえず後で御説明を当局から私にお願いをしたいと思います。  時間が参りましたので、これで質問を終わります。
  222. 上原康助

    上原委員長 これにて広野君、米田君の質疑は終了いたしました。  次に、山本孝史君。
  223. 山本孝史

    山本(孝)委員 薬害エイズ問題について御質問させていただきます。新進党山本孝史でございます。  先月末の和解の成立を受けて、その誠実な実行はもとより真相解明が大きな課題になっております。  まず、総理にお伺いをいたします。  血税が使われるのですから、住専同様に、何が間違っていたのか、しっかりとした解明が必要であろうと思います。真相解明について総理はどのようにお考えでいらっしゃいますか、お考えをお伺いします。
  224. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、幾つかの問題点を挙げながら御答弁を申し上げたいと思いますが、まず、事実関係として……(発言する者あり)いや、大変申しわけありません。大事なことを聞かれたのですから、きちんと答えさせていただけませんか。  現在、厚生省が調査プロジェクトチームを設置され、できるだけの事実関係の調査、整理を行って、その結果を先般公表されました。私どもが必要なことと言われますならば、今回のエイズ問題のようなことを二度と起こさないために徹底した真相の解明が必要であると存じ、なお不明な点につきまして、引き続き補完的な調査を厚生省が行っておられるはずでありますから、そのできる限りの努力を支援してまいりたいと思います。
  225. 山本孝史

    山本(孝)委員 その真相の解明にはまず資料の公開が必要であろうというふうに思います。  きのう厚生省のプロジェクトチームから、新しい資料があって、その精査をしているので公開がおくれているという説明がありましたけれども、きょうもお昼のニュースでやっておりました。従来見つかったとして公表されている資料以外にまだどのような資料があるのか、また、それらの資料は一体いつ見つかったのか、厚生大臣、簡略に御説明をください。
  226. 菅直人

    ○菅国務大臣 お答え申し上げます。  昨日、その調査プロジェクトの方から、さらに業務局ですかの方で、関連をすると見られるファイルが合わせてたしか七冊存在することの報告がありました。  それで、それは、当初の調査について十一項目を指示して調査をしていたわけですが、一月二十三日に調査プロジェクトをつくった後、今新たに報告されたものを含めて存在は確認されていたようですけれども、当初は現在のエイズ研究班に関連性が余りない、薄いという認識の中で私の方にも報告を上げていなかったという事情で、しかし、さらに真相究明に当たって詳細にチェックをしていたら、関連がありそうだということで私の方に報告が来たということであります。  それで、さらにエイズ一般ということになりますと、それ以外にもさらに二十冊程度のいろいろなファイルが存在をする、そういう報告もあわせて受けたところであります。
  227. 山本孝史

    山本(孝)委員 そうしますと、きょうのニュースでも取り上げておりますファイルは、もう既に一月の末に見つかっていたと。それで、その資料の公開全体が、もう一月の末からということになりますと二カ月以上たっておるわけですけれども、依然公開をされていないものがある。従来から、残されたものについては三月の中旬ぐらいまでには公開したいというふうに厚生大臣は何度もお答えになっておるわけですけれども、まだ公開はされておりません。  したがって、今ある資料はすべて公開されるべきでありますし、何かしら厚生省の官僚の皆さんが意図的に資料を隠しておられるのではないかというような疑惑も持たれております。あるいは我々政治の側が官僚に何かなめられているような感じもするのですけれども、こういった資料の公開を全部早くやっていただきたい。確定的にいつまでにやるのだということを、しっかりとした御答弁をいただきたいと思います。
  228. 菅直人

    ○菅国務大臣 従来報告することをお約束していたファイルがあと一つ残っておりますが、それは今週中には公表するという予定で準備を進めております。  新たに私の方に報告の来たものについては、私自身、現在時間を見て少しチェックをしているところですけれども、基本的には当初の調査プロジェクトと同じ方針で、今回の問題の真相究明にかかわるものについては基本的に公開をしていくという姿勢で臨みたいと思っております。  なるべく早い時期に作業をしたいと思っておりますが、かなりの分量になっておりますので、中心的なものを同じく今週中には少なくとも公表したい。残されたものについては、若干来週以降に回るかもしれませんが、どこかの時点までには必ず公表したい、こう考えております。
  229. 山本孝史

    山本(孝)委員 ニュースの報道だけでありますけれども、今お手元にあるファイルの中に、当時の各製薬業界の会社のシェアの割合あるいは出荷量であるとかそういう数値が入っている。害われております五十八年の七月の十一日あるいは四日時点のところで、国内メーカーへの打撃を極めて心配をして厚生省がいろいろと政策をつくったのではないか、そういう文書と一緒に、そういう出荷量なり製造量なりという資料が入っているというふうに言われておりますので、ここのところは早急に提出をしていただきたい。  それで、私が今聞いているのは、以前から見つかっている資料の報告が、なぜ厚生大臣のところにおくれて出てくるのかということです。以前の今公開をされているファイルにしても、見つかってからたしか十五日後に、厚生大臣のところにありましたという報告が来たというふうに聞いておりますけれども、きょう話題になっておりますファイルも、結局のところ、一月末に見つかりながら今まで報告がない。こういうふうな厚生省の姿勢というもの、官僚の姿勢というものが極めて問われるのだと私は思います。  厚生大臣、もう一度その点、はっきりとお答えをいただきたいと思います。
  230. 菅直人

    ○菅国務大臣 今いろいろあるファイルの中で、いわゆる郡司ファイルと呼ばれるものに関連性の高いと思われる、当時の郡司課長のもとで課長補佐をした人を含めて、その資料に当たったと言われるファイルがありまして、その中には、当時のいわゆる郡司ファイルに出てきているものと関連をするいろいろな数量なども一部入っております。それについてはできるだけ早い時期に公開をしたいと思っております。  報告が私のところに来るのがおくれたという問題については、先ほど申し上げたように、現場の認識は、当初の調査の課題について関連性が薄いと当初認識していたという話がありました。しかし、私が見たところでは、決して関連性が薄いとは思われませんので、私としては調査の責任者である次官の方に、こういうことは調査としては少しおかしいのではないかということは強く申しておきました。
  231. 山本孝史

    山本(孝)委員 きのうのNHKニュースあるいは「クローズアップ現代」で取り上げられました資料があります。いわゆる五十八年十一月十日に厚生省が加熱製剤の治験を各業界の団体に説明をするときに、その説明会に参加したトラベノールの社員がその状況を報告した社内文書というのが、きのうのニュースあるいは「クローズアップ現代」で取り上げられております。プロジェクト チームが調査した文書等の一覧である文献等調査リスト、このリストの中に、この治験説明会に関する資料としてミドリ十字社員の出張報告を入手することができたので検討したというふうにされております。  お尋ねですけれども、厚生省は、説明会に参加したミドリ十字以外の製薬会社から当日の関係資料の提出は求めていないのですか、あるいは、このテレビで映し出されたトラベノール社の資料は既に厚生省は入手しておられますか、お伺いします。
  232. 亀田克彦

    ○亀田政府委員 ミドリ十字の出張報告書はいただいておりますが、それ以外のところは、お願いしましたけれども入手できておりません。  以上でございます。
  233. 山本孝史

    山本(孝)委員 何か極めて歯切れの悪い答弁だと思います。入手というか、出してくれと言ったけれども協力をしてくれなかったというところに、厚生省の調査の限界というのか、極めて不十分さがあると思うのですね。こういうふうにして一つのテレビ局が提出を求めていくとぽろっと出てくるけれども、厚生省が聞くと出ないというところに製薬業界の問題というのもあろうと思いますし、真相はもっと根の深いところがあるんだと思います。いずれにしても、関係者の証言とか発言を促していただきたいと思うのですね。  それで、橋本総理に自民党総裁としてのお願いなんですけれども、当時の業務局長であった持永さん、あるいは厚生大臣であった林義郎さん、これはいわゆる安部班長と山口県という同郷でございますけれども、当時の総理であった中曽根さん、安部班長といわゆる青年懇話会で五十年来の友人関係におありになります。あるいはミドリ十字の顧問だった坪井一宇先生、こういう自民党の所属議員の皆さんに、ぜひこの真相解明に協力するように総裁のお立場として御指導いただきたいと思います。
  234. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、これは何遍も申し上げておることでありまして、行政府の長としてここには立つはずであります。しかし、あえてそれを御承知でお尋ねであるとすれば、むしろ、厚生省が行っております調査というものを私はさっきバックアップすると申しました。当時の関係者に対して厚生省が質問、調査等を行います場合に、その協力が得られないというような問題が党の関係において生じました場合、当然ながら、厚生大臣からそういうお話がありましたら、私は総理大臣としての立場でできるだけのお手伝いをする責任があると思っております。
  235. 山本孝史

    山本(孝)委員 国会の場においても、厚生委員会等においてもこういう関係者の発言を求めていきたいというふうに思っておりますので、その際には、厚生省をバックアップするだけではなく、国会での活動もバックアップをしていただきたいというふうに思います。  今回のエイズ薬害への和解の過程でよく聞くお話ですけれども、菅厚生大臣はよく頑張っているけれども橋本総理の顔がよく見えないというお話をよく聞きます。総理の顔が見えぬのは、医薬品業界から多額の献金を受けているとか、あるいは、被告の一つである日本臓器の御曹子が自民党から次期衆議院議員に出馬されるので、阪神大震災の復興のための視察よりも時間をかけて応援に行ったとか、こういったような記事が出てくるわけですね。  それで、こういう雑誌の中にも、もうごらんになったかと思います。こういうような「「人殺し!」 厚生省と、橋本龍太郎の「罪」」というような実におどろおどろしい見出しを立てて報道されるわけですね。  私これを見たときに、これはもう名誉毀損に当たるんじゃないか、出版社に対してこれは当然抗議をすべきじゃないか、そういうぐらいの見出しに思うのですけれども、もちろんお読みになっていると思いますけれども、お読みになっておられませんか。こういう見出しをごらんになっていかがでございますか、名誉毀損で訴えられるようなお気持ちはございませんですか。
  236. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 このところ、お考えをいただきたいと思いますが、例えば台湾海峡一つにいたしましても、例えば今日ただいまの時点、楚辺通信所の問題にいたしましても、私にとりまして、非常に神経を張りめぐらせ、国の責任者として対応すべきものを抱えております。  大変残念なことでありまして、私はその中身はどういう記事か存じません。しかし、その週刊誌の記事を今日読んでおるほど、私には精神的なゆとりはございませんでした。そしてまた、それだけの今日ただいまもゆとりを持っておりません。  ただ、当然ながら秘書たちあるいは事務所の者たちは見ておりますでしょうし、どういう内容であるのか、必要があるなら私もそれを聞こうと思います。  また、お人様がどういうことでそういう活字をお使いになるのか私自身わかりませんけれども、省みてみずから恥じるものがなければそれでいいと私は思います。
  237. 山本孝史

    山本(孝)委員 まあ有名税というようなことなのかもしれません。でも、中に書いてあるところは当たり外れはあるのでしょう。お忙しいから一々読んでいられないということもよくわかります。でも、国民のサイドに出てくる情報は、実はこういう情報がいっぱい出てくるというのも事実なのですね。  それで、この解明にみずからも努力をされる、あるいは薬害の再発防止に、先ほどもおっしゃいました、私はリーダーシップを御発揮をいただきたいと思うのです。  それで、一つの問題は、やはり天下りをこの際きっぱりと禁止すべきではないか。先輩が社長をしているところを後輩の業務行政を担当している官僚がなかなか指導できない、そういう状況もあるのじゃないかと思います。日本製薬工業協会あるいは日本血液製剤協会、よく御存じのお名前かと思いますけれども理事長を初めとする要職はすべて厚生省のOBで占められております。今回、言わずもがな、ミドリ十字の松下さんは、元業務局長でいらっしゃる。  こういったところで、製薬業界あるいは関連団体への、少なくとも今業務に携わっている厚生官僚の天下りというものは、今後一切きっぱりと禁止すべきではないか、今回の薬害エイズの教訓を生かす一つの防止策、手だてではないかと思うのですけれども、その点についての御見解を総理並びに厚生大臣からお伺いをいたしたいと思います。
  238. 菅直人

    ○菅国務大臣 まず、先ほど総理の指導性について山本委員の方からもお話がありましたが、この間、この問題は何度も総理に報告をしたり指示を仰いでおりまして、特に二十九日の和解に当たりましては、前日にもお伺いをしてお話をいたしました。  そういう点で、与党の三党の皆さんにも大変いろいろな形で、原告団とも話をしていただいたことは委員も御承知だと思いますが、そういった意味では、政府全体あるいは与党を含めて、場合によったら一部野党の皆さんにも御協力をいただいたと思いますが、そういう中でここまで進んできたというふうに認識をいたしております。  それから天下りの問題につきましては、これは従来から言われておりますように、国家公務員法上の問題として、離職前五年間に在職した国の機関と密接な関係を有する営利企業に就職する場合は人事院の承諾を得なければならない。厚生省としては、今後とも、つこうとする地位の職務内容が離職前五年間の職務内容に関係がある場合や厚生省の許認可等に関係がある場合には人事院へ申請をしないなど、厳正な運用を行っていきたいと考えております。  さらにこれ以上の制限を加えることについては、いろいろ現在議論があることは承知をいたしております。私も、この国家公務員と天下りの問題というのは、何といいましょうか、もしそういうものを考えるとすれば、安心して、例えば六十五歳ぐらいまで仕事が続けられるような制度とあわせて考えていかないと、ただその後はなしとい うことだけではなかなか解決ができないのではないだろうか。  そういうこともあわせて、今後の公務員制度の全体のあり方としてぜひ積極的に検討していきたい、こう考えております。
  239. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今厚生大臣からお答えがありましたけれども、私は、一般的な答えとして申し上げますならば、人事院はこうした問題について厳正に対処し制度を運用しておると思っておりますし、今後もそうだと思います。  その上で一点お考えをいただきたいのは、日本の場合に、人事院制度で、関係のあった分野に対しては一定期間の就職を禁止しております。アメリカの場合に、これは御承知のようにどんどん転職をする風習のあるところであり、例えばSECの場合なんかでも、そこの腕を買われて、まさにそのSECの対象となる企業に当然のことながらスカウトをされていくケースがあります。しかし、その場合に、ファイアウォールといいますか、その接触を絶つという点で非常に厳しい制度を持っております。  そうしたことをも我々は今後視野に入れた検討を必要とする、そのように思います。
  240. 山本孝史

    山本(孝)委員 時間が来ました。本当にありがとうございました。  未提訴者の救済、この訴訟に加わっておられない方の救済、あるいは非血友病患者の皆さんへの血液製剤によるところの被害の救済、大変に大きな問題が残っておりますので、ぜひともお力を発揮をいただきたいというふうにお願いをしまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  241. 上原康助

    上原委員長 これにて山本君の質疑は終了いたしました。次に、松本善明君。
  242. 松本善明

    松本(善)委員 総理大臣に、沖縄の問題から伺いたいと思います。沖縄の楚辺通信所用地の一部で賃貸借契約が切れて、国の不法占拠状態になりました。国の使用権原がなくなったことは認めながらも違法とは言えないというのが、官房長官初め政府の説明であります。所有者の使用を妨害する法的根拠を明らかにできないから、各紙が国による不法占拠と書いております。官房長官も記者会見で、厳格に言えばそういう状態ということを認めたということであります。厳格に言わなくても、使用権原がなくなれば、不法占拠ということは明白であります。大森内閣法制局長官も参議院外務委員会で、地主に返還をしない法的根拠があるかないか一言で答えると誤解を生む、こういうふうに答弁をせざるを得ない状態になっております。  総理にお聞きしたいのは、こういう状態が法治国家と言えるのかという批判が広範に起こっております。総理はこの声にどういうふうにこたえるのか、政治の根本問題としてお答えをいただきたいと思います。
  243. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 官房長官あるいは法制局長官の答弁を既に御紹介がありましたが、政府としてお答えができることは同様の内容になると私は思います。その点をお断りをした上で申し上げたいと思います。  私は、本当にこの問題を、今大変残念な思いで受けとめております。所有者お一人、二百三十六平米、使用権原が得られないという状況にあるわけでありますが、しかし、その楚辺通信所というものが、我が国とそして極東の平和と安全のために日米安全保障条約及び地位協定に基づいてその使用が認められている施設・区域であり、国として我が国はこの土地を引き続き駐留米軍に提供する義務を負っているわけであります。  そしてその中で、私は細かいことを長々と申し上げるつもりはありませんが、我々はこの状態を一日も早く解消しておきたい。去る三月二十九日、沖縄県収用委員会に対しまして緊急申し立てを行いました。そして、この法律の趣旨にのっとりまして円滑かつ速やかな許可が出されるように、心から期待をいたしております。  今日までの知事さんを初め沖縄県の方々との触れ合いの中で、土地に対する県民の思いを私は決して理解しないつもりではありません。しかし、その上でなおかつ、国としてはできる限り早期に駐留軍用地特別措置法に基づく使用権原を取得できますように、引き続き最大限努力をしてまいる所存でありますし、また、それが我々の責任だと今考えております。
  244. 松本善明

    松本(善)委員 総理の御説明を伺いましても、法的根拠があるということにはもちろんなりませんし、それから、明らかにやはり法治国家にあるまじきことが行われている、それについての反論も全くないという事態だと思います。  これは法の支配ではなくて、むき出しの力の支配と言っても差し支えないと思います。無理が通れば道理が引っ込むという言葉がありますが、沖縄県収用委員会の収用裁決が出るとは限りませんから、この状態が長期化する可能性もあります。今後、期限切れの土地が拡大する可能性もあります。沖縄の市町村で、県と同じ対応をする自治体が増加をすることは目に見えております。  全国の自治体でも、沖縄県民を応援する決議が相次いでおります。三月三十日現在で、四十一の道府県、四百二の市区、それから六百三十六の町村、計千七十九に及んでおります。その中身は、日米安保条約を直ちに見直すことという政府に厳しいものから、最も穏やかなものでも地位協定の抜本見直しという内容であります。これもますますふえるだろうと思います。米軍のためなら何をやってもよいのか、安保のためなら国が不法占拠をやってもいいのか、疑問を持つ国民はますますふえるだろうと思います。既に大新聞がその立場で社説を書き始めました。当然のことであります。  憲法九十八条は、憲法が国の最高法規であることを明らかにしております。憲法二十九条は、財産権の保障を公共の福祉の範囲内で認めております。しかし、これも当然のことながら、法律によって制限されることがあるということでありまして、政府が緊急使用許可を求めているのも憲法上の根拠はここにあります。国民は、それ以外に無法に財産権を侵害されるということはないのであります。今政府のやっていることは、明白に憲法秩序に対する侵犯ではないかと思います。  総理の見解を伺いたいと思います。
  245. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、国が三月三十一日の深夜をもって使用権原を失ったというその点を、私は委員と争おうとは全く思いません。そして、使用権原がない状態の中で、政府として今申し上げておりますのは、それを直ちに違法とは言えないということであります。そして、その権原を取得しようとして努力をしているということであり、私どもがその論拠としている点は委員既に御承知のことであります。もし必要でしたら、もう一度全部繰り返してもよろしいですけれども、むしろ、それはかえって失礼だと思います。  その上で、私は議員と残念ながらこの点は意見を異にするようでありますが、日米安全保障体制というものが持っているその重みというもの、そしてそれが基盤となって築き上げられている日米関係というものの国際社会における、日本だけではなく、国際社会におけるその価値の評価というものにも目を向けていただきたい。  私どもは、今、先ほども申し上げましたように、地権者の方の気持ちも、恐らく私が理解をしているなどと言いましたらこれは言葉が過ぎるでありましょう。しかし、その自分の土地というものに対して向けられる気持ちを全く私が考えていないわけではありません。しかし、そうしたものを考えた上でなおかつ、私はこの道しか選ぶ道がないと思い定めております。
  246. 松本善明

    松本(善)委員 安保条約についての見解はもちろん違うんですけれども、安保条約があるからといって、しかし、法律上取得をしていない基地を米軍が使うということができないのは当然なんですよ。その反論には全く、総理の反論はなっていません。(橋本内閣総理大臣「反論してないよ」と呼ぶ)  今のお話では、反論でないというお話もちょっ と出ていますけれども、安保条約を憲法の上に置くものだ、安保無法と言ってもいいかもしれません。米軍の直接支配を許す、国民主権の否定だと思います。私は、国民はこういう事態は絶対許さないということを申し上げて、住専の問題で質問をしたいと思います。  住専では、議長のもとに五党首が集まったときに、議長は、審議の方向として、与党三党と日本共産党の合意にあります母体行の追加負担問題を確認をいたしました。母体行の追加負担の必要性については、大蔵大臣も昨日お認めになり、総理もお認めになりました。  総理の御答弁は、詳しく御紹介をするまでもありませんが、一応時間の省略のために申しますと、預金保険機構への資金の拠出、住専処理機構への低利融資など協力が要請されてきたが、母体行がみずから判断すべきだという趣旨の御答弁であったかと思います。  加藤自民党幹事長も同じような趣旨を新聞インタビューで述べておられます。その要点を申し上げますと、金融機関や農協系統に納得してもらわねば無理な話だ、オーケーがとれれば可能性があるが、今までいろいろな方々が努力しているがその兆しはない、有力な案が三つぐらいあったが銀行界などから了解がとれていない、これ以上の案を考えろという意見もあるが、銀行、農協が納得してくれる案でないといけないなどということであります。  母体行など金融機関が協力をすることが明らかになれば追加負担が可能だという意味にもとれます。そういうことでいいのかどうか、総理の御見解を伺いたいと思うのであります。
  247. 久保亘

    久保国務大臣 母体行に新たな負担、追加負担を求めます場合に、法的に請求できるものが今日の段階では私どもとしては見出し得ない状況がございます。しかし、母体行が現在合意をいたしております内容よりも、母体行が協議に応じ、合意をするならばさらに負担をすべきである、こういう立場で、与党としても、また政府としても努力をしなければならないと考えているものであります。
  248. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今私自身の答弁も踏まえられて御質問を組み立てられましたので、その部分について申し上げることではございません。  ただ、先ほど一点、正確を期しておきたいと思いましたのは、委員の御質問の中で、あるいは私が聞き違えたのかもしれませんが、その通信所の土地の議論の延長線上の中で、米軍が違法に土地を使用するといったようなニュアンスの言葉にちょっと私感じました。  これが聞き違っておれば大変幸せであり、おわびを申し上げますけれども、もしそういうことでありましたなら、我が国自身が安保条約及び地位協定に基づいて、日米両国政府が安保条約の目的達成のために必要と判断した施設や区域の米軍による使用というものを政府間の協定によって認めているわけであります。そして、米軍はその日米間の国際約束に基づいてそれらの土地あるいは施設、建物というものを使用しているわけでありまして、地権者と米軍あるいは米国政府の間にはむしろ関係はない、その部分は日本政府が地権者との間に持つものでありまして、ちょっとそこのところが気になりましたので、そこだけ正確を期させていただきます。
  249. 松本善明

    松本(善)委員 もちろん日本政府の問題で、米軍直接の問題でないことは明らかであります。  ところで、大蔵大臣の御答弁、趣旨は結構だと思うんですが、法的に請求できると再々言われるのですが、これは大変気になっているんですけれども、三兆五千億の放棄だって、これは別に法的にそれを請求できるわけじゃない、合意なんですよね。それをもう一回りふやせというのが私どもの言っていることだから、だから法的にといったらちょっと正確な言葉ではないだろうと思いますけれども、これは議論はいたしません。  そこで、追加負担については母体行はいまだ同意をしていないのです。これはそう無理な話じゃないということは、三塚前幹事長が言っておられる。銀行、農林中金に改めて拠出を求めることは無理な話ではないというふうに言っておられるということが報道されておりますけれども、私は、母体行は同意をしていないが、同時に、公的資金の導入により負担をさせられることになる国民も同意をしていない。これが政府処理案について国民理解が得られていないというふうに総理答弁をされるゆえんであろうかと思います。国民理解が得られるためには、母体行を中心とする金融機関に協力させる以外にはありません。  与党の中で、預金者のある信組に公的資金を導入することを認めない意見が出てきておりまして、あるいは、金融三法は提出先送りになるかもしれぬというようなことも言われております。こういう状態で、預金者のいない住専に公的資金を導入することを国民に納得させられるわけがありません。母体行に追加負担を承認をさせる以外にないわけですけれども、私はここで、金融業、銀行というものの根本問題を少し論じようと思うのです。  大蔵大臣は、金融機関の社会的責任を強調されております。私もそのとおりだと思います。私は、特に金融機関がどうあるべきかという根本が問われているときだと思います。  三月十七日の東京新聞が、色刷りの「日本の金融機関」という特集をいたしました。大蔵大臣総理大臣の目にもとまっているかもしれません。この中で、注目すべき一文がありました。金子隆慶応大学教授が、「存在意義問われる銀行」という文章を寄せられています。  この大要を、時間の関係で私なりに要約して申し上げますと、銀行に対する風当たりが強いが、同情の余地はない。バブル期に本来の機能を放棄をして大量の不良債権を抱え込んだからだ。本来の機能とは、預金を預かり、融資について責任を持って、借り手の審査も行うし、リスクにも責任を負うということだ。この責任を放棄をすれば、存在意義をみずから否定するのと同じだ。いつでも現金との交換が保証されるという信頼、それが預金の本質であり、これが決済を可能にしている。この信頼がなくなれば、決済機能が麻痺し、経済は壊滅的打撃を受ける。(発言する者あり)  まさに、もうそのとおりだ。今不規則発言もそういうのがありましたけれども、そういうもの。簡単に言えば、バブル期にその責任を果たさずに大量の不良債権をつくり、そのリスクも負わずに国民税金で解決しようとする、これでは何のための銀行なんだ、こういうことになるのですよ。  私は、先日、本委員会で、泥棒以外何でもやるというやり方で銀行が住専やノンバンクを使って融資をするのは、資金の貸し付け、すなわち融資を銀行の固有業務とし免許事業にしている銀行法の精神の根本に反するということを提起をし、大蔵大臣は、紹介融資について徹底的な究明が必要だと御答弁をされました。他党派の多くの方から共感の御意見もいただきました。  他人の預金を預かって融資をするという重い責任を果たさなかった銀行、金融界は、今その存在意義を問われているのではないかと思う。私は、これは政治の、金融行政の根本にかかわる問題だ。総理の見解を伺いたいと思います。
  250. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、この金子さんの文章を読みまして、非常にうまくポイントを整理され、問題点をいわばクローズアップさせた、そんな感じを持ちます。そもそも銀行というのはなぜ存在するのかという問いかけから終わりまで、その意味で私は非常によい問題点の要約、そのような受けとめ方でこれを読みました。
  251. 松本善明

    松本(善)委員 銀行は単なる私企業ではなくて、極めて強い公共性を持っております、まあ総理も言われたとおりですが。銀行経営者が全く私企業と同じようにしか考えていないと思われる発言をしているが、それはみずからの社会的責任を自覚せず、みずから存在意義を否定しているのと同じであります。  そもそも銀行法は、昭和の金融恐慌の深刻な経 験に基づいて制定をされました。当時は預金者保護という観点は全くなかったことに対する反省から生まれたものであります。安易に今回の問題を昭和の金融恐慌と同視する見解がありますけれども、これはもう歴史的経過と銀行法の存在を無視する誤った見解だと思います。  そして、オイルショック後一九八一年に銀行法が抜本改正をされ、銀行法一条に「公共性」が明記をされました。その改正の背景となった八〇年の金融制度調査会の答申によりますと、「一般企業に比し社会的責任が重い」と「銀行の公共性及び社会的責任」が強調され、「土地投機等社会的に著しく問題のある企業活動を助長するような資金供給を抑制していく」ということがはっきりうたわれております。バブル期の金融界のやったことは、この精神に全く反する自己の存在意義を否定するものであったと思います。  この反社会的な歴史的な金融犯罪とも言えることをやった償いは、自己責任でこれを解決をするという以外にはありません。公的資金に頼る姿勢が社会的に許されると思うならば、それだけで私は経営者として失格だと思います。  銀行経営者に要請するというようなことをたびたび大蔵大臣は言われますけれども、そういう生ぬるい態度ではなくて、銀行の公共性、社会的責任、さらには、融資が免許業務となっている立場から厳しく行政指導を貫くべきではないかと思いますが、大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。
  252. 久保亘

    久保国務大臣 私も銀行協会の会長にお会いいたしましたときにも、国会における銀行の経営に関する厳しい意見が出されており、今回の不良債権の処理、住専問題についても銀行の責任を厳しく問う意見が大変多くありますということもきっちり申し上げてございます。その上で、銀行として、ぜひ負担や責任についていろいろとみずからお考えいただくことが大事なのではないかということも申し上げました。言葉は丁寧に申し上げましたけれども、今松本さんがお話しになりましたようなお気持ちも私個人としても持ちながら申し上げたのであります。  ただ、それでは銀行に対して命令をしたり法的に請求をしたりすることが可能かといえば、それは私はできないと思います。私の方からは、そういう国会における論議や私の考えども申し上げて、銀行が協議に応じ合意をされるということでなければこの問題は前へ進まないものだと考えておりますので、そのような立場でこれからも銀行側とのお話をいたしたいと思っております。
  253. 松本善明

    松本(善)委員 これは、言うならば任意清算ですね。監督権限を背景にしながら母体行に同意をさせるというものでありますので、法的にとかあるいは強制してとかいうのは、それは確かにできないと思います。しかし、やはりこれだけの世論ですよ。これは後で論じようと思いますけれども、内閣の政治力の問題というふうに私は思います。  これは後でやりますので、もうちょっと前にお話をしたいと思いますのは、なぜ免許業務である融資がこういうふうに乱脈になったのか。  ノンバンクを通じて大量の不良債権が生まれたことは周知の事実であります。我が国の不良債権問題は、住専を初めとするノンバンクを避けては通れないです。本来免許を受けた銀行だけができるはずの融資を、大蔵省の指導監督を免れるためにノンバンクを使って行ったのだ。固有業務を関連会社に行わせることが免許制度を形骸化させるものであり好ましくないということは、大蔵省自身が、銀行局の担当者たちが、「金融機関の関連会社規制について」というようなところで再々述べていることなんです。  これがやられているのですね。この脱法行為を看過したところに紹介融資、迂回融資、大量の不良債権を生み出す温床がつくられた。融資と預金が組み合わせられて、ひどいのは、土地を担保に土地代を上回る何十億という、実際の例でいいますと、五十億の巨額の融資をして、大半、三十億を預金させるという、こういうあくどいことがやられているんですよ。そこまでいかなくても、融資の一部を通知預金だとか当座預金にさせるということは、いわば日常茶飯事に行われていた。幾つでも報道されていますし、私も例を挙げました。  だからこそ、与党の追加措置案にも、紹介融資、迂回融資の厳格、容赦ない解明を行うとあるし、大蔵大臣も徹底究明を約束したわけです。これらは個別の問題じゃなくて、銀行がノンバンクを使って、免許業者である銀行にできないことを手を汚さずにやっていたということです。だからこそ不良債権問題を、個別問題としてではなくて、これは損害賠償の対象になるとかそんな小さな問題じゃないですよ、紹介融資によって生まれた不良債権を、母体行や場合によっては一般行が引き取る必要がある。これを官房長官もお認めになりましたし、それから大蔵大臣もお認めになりました。  私は、総理大臣、住専対策本部長もそれから大蔵大臣も、内閣として紹介融資の不良債権をどういうふうに引き取ったらいいのかということを検討して結論を出すべきではないかと思いますが、総理の御見解を伺いたいと思います。
  254. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私も前に紹介融資について、その実態は当然のことながら、解明されていくプロセスで問題があるものはきちんと対応していかなければならないということは申し上げたように思います。  今、官房長官あるいは大蔵大臣の御答弁、拝見をいたしまして、やはり皆同じような問題意識を持つのだなと考えておりました。
  255. 松本善明

    松本(善)委員 さらに深めていただきたいと思います。  もう一つ、若干紹介をしておきたいと思いますのは、紹介融資について提出された資料によりますと、母体行の紹介融資、九一%不良債権化し、一兆五千七百三十四億円が不良債権。損失見込み額だけで九千百九十七億円であります。一般行としての分まで考えますと、不良債権額は二兆五千九十六億円、損失見込み額は一兆四千四百三十億円、二次損失分まで十分カバーして余りあるんです。私は、この問題については内閣が真剣に検討されたい。  注目すべきものは、さらに、債権放棄額より紹介融資の損失見込み額の方が大きいという銀行の存在があります。何と住友銀行は、債権放棄額より紹介融資の損失見込み額、二・四倍です。債権放棄だけでは絶対済まないんですよ。そして、三菱銀行は一・六倍です。  私は、内閣が、総理も認められた、それから大蔵大臣も官房長官も認められた、やはりこの紹介融資をどうやって引き取るかという具体策を検討さるべきであるというふうに思います。  時間の関係で、私は最後の質問を申し上げたいと思いますのは、それは、先ほどお話しになりました、母体行にこれを認めさせるのにどうしたらいいかという政治力の問題であります。母体行が債権放棄以上のことをした場合に株主代表訴訟が起こされるという母体行側の欺瞞的主張がありますが、バブル期の乱脈経営の責任を問われることがあっても、金融システムを守るための追加負担について金融機関の経営者の責任を問うことはできるわけがありません。母体行の責任で解決させることは行政の責任であります。バブル時の乱脈経営を放置、場合によっては奨励してきた行政の責任を果たすためにもこれをやらなければならぬと思う。私はさっき銀行の存在意義と言いました。実際は大蔵省の存在意義も問われているのです。西村銀行局長なんかの存在意義も問われているのです。そういう問題であります。  私は、これは、もしできないのならば、母体行に納得をさせるということができないのならば、なぜできないのかということ。私は、率直に言いまして、できない原因の一つは金融業界からの政治献金、もう一つは金融業界と大蔵官僚の癒着。もしこれが、そういうことが関係ないというならば、内閣の総力を挙げてこれをやるべきです。そして、私は、それがもし本当にできないというの ならば、そういう内閣の政治力であるならば、それはやはり解散して総選挙をやって、そしてその後にできる内閣に任すよりしようがないんじゃないか。これが一つです。  私は、総理に議会制民主主義の根本問題としてこの問題はお聞きしょうと思いますので、もう一つの問題点を出して総理の御答弁を伺いたいと思っておるのです。一つはその問題です。政治力とそれから解散の問題です。  それからもう一つは、そもそも総選挙でどの党もこのことを公約に掲げていなかった。この住専に公的資金を投入するという大問題、これは膨大な不良債権処理の原則ともなるものであります。大蔵大臣は、これは、住専問題は不良債権の象徴だと言われる。まさにこれがそういうことです。  そういうことで、こういう大問題を国民の圧倒的多数の反対を押し切って強行するということは、私どもも前から議会制民主主義の自殺だと言ってきた。  この二つの問題点、議会制民主主義の根本問題にかかわる点でありますので、総理政治を運営していく上でこの二つの点についてどのようにお考えになるか、ただ現在解散・総選挙考えていないというような簡単な答弁ではなくて、きちっとお答えいただきたいと思います。
  256. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 議会制民主主義の根幹ということでお尋ねになりますなら、私は、議会制民主主義の根幹は多数決原理にあると存じます。そして、議論が尽きた段階における多数決というものが議会制民主主義の基本ではないでしょうか。そして、そうした中で、今あなたの述べられた中に、賛成できる部分もあり、また考えを異にする部分もありました。一部は、先ほど私は考えを異にすると申し上げました。  今後ともに、国政の中でできる限りの努力をしてまいりたい、それが今私の率直な感じであります。
  257. 松本善明

    松本(善)委員 終わります。
  258. 上原康助

    上原委員長 これにて松本君の質疑は終了いたしました。  次に、嶋崎譲君。
  259. 嶋崎譲

    嶋崎委員 十五分という短い時間なので、総理中心に二、三御質問申し上げたいと思います。テーマは沖縄問題に絞ります。  現在、沖縄の米軍基地をめぐって、地方自治法の百五十一条に基づく職務執行命令の訴訟制度、これが今回、法改正後初めて適用された条文でございます。  今日、大変問題になっている根本は、この地方自治法百五十一条に基づくこういう訴訟制度をこしらえる前提になる国の機関委任事務というもののあり方と深く関係していると私は思います。  この職務執行命令訴訟制度というものは機関委任事務にかかわる問題ですが、簡単に言いますと、住民の直接選挙で選ばれた自治体の首長ではあるが、国の本来事務である機関委任事務において首長が国の機関としての性格を与えられ、国の事務の肩がわりを行わされるという事態になる仕組みであります。しかし、首長がその事務を遂行しないで公益上著しい支障を来す場合は、事前の手続を経た後に、主務大臣、本件は総理大臣です、主務大臣はこの訴訟を提起することができるという条文になるわけです。  したがって、沖縄に起きている米軍基地の土地の強制使用問題は、この訴訟というものを通じてどのような司法の判断を待つかということと、機関委任事務のあり方との関係が問われている。これが今日の本件の課題だと私は思います。  本件の主務大臣は言うまでもなく総理大臣ですから、大田県知事を訴えたのは前の村山総理、そして今度は橋本総理が訴訟を引き継いでいるというのが現状であります。  そこでお聞きしますけれども、機関委任事務というのは、地方自治法で御承知のように別表にあります。この米軍の特別措置法に伴うものもちゃんと別表に規定があります。県の場合も市の場合も機関委任事務としてきちんと明記されております。そうなりますと、今、総理が知事を相手取ってこの訴訟を起こしたというこの仕組みを貫こうとしているわけですから、最後まで知事があくまでも事務を遂行しない場合は司法の判断にゆだねるということになりますが、その判断で総理は今対処されているんですね。
  260. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 ちょっと今聞き取りにくい部分がありまして、もし誤解をしていたらお許しをいただきたいと思います。  まさに地方自治法百五十一条の二、その中で定められておりますような手順をもちまして前村山総理のときに沖縄県知事を被告とする訴訟が提起をされ、先般結審し、判決がございました。そして、その判決後、法手続に従って今行動が進められているという意味では、その法律のとおりであります。
  261. 嶋崎譲

    嶋崎委員 さて、これから先が大変なんですね。  そうしたら大田知事の側は、今度は高裁から最高裁に控訴したんです。これの最高裁の判断を一方で待たなければなりません。他方で総理は、代行署名して、代行署名というのは本来の署名じゃなくて、これは一種のサインです。まだ正規の発動はないが、まあ手続の一つ段階はサインで終わったよ、こういうことを意味しているわけですね。  さあこれを今度は、署名代行の後は、使用裁決の申請を正規に土地収用委員会その他にやらなければなりません。そして、今の緊急のものは別ですよ、本来の法制度でいってもその手続をもう一遍とらなければいけません。そうすると今度は、裁決申請を受理した収用委員会が土地所有者に通知して、そして、裁決申請書の公告縦覧というのは法律に決められている義務ですから、これもやらなければなりません。ところがこれは、今までの経過ではみんな拒否するでしょう。そうしますと、もう一遍もとに返って、総理大臣はもとに返りながらその手続を踏み直さなければならぬ、ずうっと今と同じ手続を。そういう経過を一方でとらざるを得ません。  いま一つの方は、緊急使用を収用委員会にかけていますから、これを今仮処分にかけました。そうすると、仮処分の方は一定の段階で判断を下すでしょうが、これもまた重要な一つの裁判として動いています。  問題なのは、総理が今署名してからその結論が出るまでは、クリントン大統領が来るまでどころか、七カ月かかるのか八カ月かかるのかわからないという事態にならざるを得ない事態です。  言葉をかえて言いますと、三月三十一日までに土地収用の裁決が行われていなければいけなかったのです。それをやらなかったのですから、やらない以上はそれがずっとまだ今から残るのです。ことしは地主は一人ですが、来年の五月は二百数十人の人間がこの事件に携わることになるのです。  総理がおっしゃった、今の、国が地方自治法で決められておる百五十一条を適用しつつ、そして司法の判断を待つ態度を堅持されていくということは、ただならぬ沖縄県民からの今後の反応が予想されるということになるのではないかと思うのです。  そこで、ここは時間も短いですから、私は質問しないで、私が問題の本質を述べたいと思います。  問題の本質はどこにあるかといったら、国の機関委任事務の中で、別表には、確かに形式には機関委任事務として書いてあるけれども、国が、固有の事務であるところの外交や司法にかかわるものを、地方自治体の長が判断できないものを機関委任事務として位置づけて、最後までその判断を待つ仕組みをつくっているという、ここに問題があるのではないか。  例えば、同じ地方自治体のもろもろの機関委任事務の中でも、都市計画法をごらんになるとおわかりですが、都市計画の主務大臣は建設大臣です。その都市計画について、地方自治体がつくることになっていますが、しかし、国の方との関係 の調整がいかないためにとうとうそれがまとまらぬ、国の計画がまとまらぬという際は、こんな裁判に訴える制度ではなくて、主務大臣が引き取って中央の審議会にかけた上で手続的に代行措置ができるという仕組みになります。  地方自治体の機関委任事務にしているもので、大臣が、本来なら全部、どんなものでも、意見が違ったら裁判しなければいけないのですよ。だけれども、ほとんどそんなことはありません。問題になった都市計画の場合には、裁判抜きでも主務大臣で処理できる代行措置を決めているのに、これだけは決められないのです。  というのはなぜか。この法律を改正するときの問題点ほどこにあったかというと、この法律を変えるときになぜ問題になったかというと、改正前でいきますと、裁判を起こしましたら最後は首を切らなければいかぬわけです。ところがそれは、一方は住民から選ばれた大統領制の首長です。片や総理、これは議院内閣制の総理です。総理と首長の違いからして、それを首切るという制度論が問題になり、その他いろいろ要因もあってやめたのです。今や総理は、大田知事が同じ国の事務をやらせてもらっているのに拒否している、ある意味で反乱を起こしている、信用していない、それに対して処置できないのです。  となると、国の固有の事務の、機関委任事務として扱うものとそうでないものを仕分けする、まさに地方分権の上に立った、固有の事務とそうでない事務を全体的に仕分ける中で、ただ形だけは同じようなことで機関委任事務にしておくのではなくて、実態をやり直すという改革をやらなければ解決できない問題です。それは時間がかかります。今、この問題では、沖縄問題は解けません。  そこで、問題になるのは次のテーマです。もう時間もありませんから一問だけ質問します。  したがって、四月十六日から開かれる日米首脳会談というのは、この状況の真っただ中で開かれると言えます。外務大臣、一言質問したいけれども時間がありませんから省きますが、僕だけ申し上げますが、もう既に2プラス2という外務の閣僚の方々会議が恐らく十六日の直前にセットされているはずですね。そこには実務の関係の、防衛関係、外務関係等々の方々の、下のレベルのいわば行動委員会があって、それが中間報告を持って、そして2プラス2に出すはずですね。大体そこで大枠が決まると思う。その上に立って日米会談が行われると予測されます。  さて、そこで、日米会談に予測されるテーマは、第一、日米安保条約の再定義問題。二番目、何をおいても沖縄の基地の整理縮小・統合問題。そして、それに絡まって重要なのは、ACSAというテーマです。ACSAについては、前々防衛庁長官と前の防衛庁長官と、今回はまだ見解は聞いていませんが、少しずつ変化してきている。  さあ、この重要な日米安保条約の再定義というのをアジア情勢を踏まえながらどのようにするのか。そして、アメリカへの軍事協力シンボルと言われるACSA問題と沖縄がセットにされて、日米会談に臨まざるを得ないのではないかと私は思います。  となりますと、今の第一の質問や機関委任事務の観点からしますと、総理は沖縄問題について相当な県民の期待にこたえたことをやらないと、片一方それを実行しないままACSAや再定義に行きますと、日本の本土の自衛隊の基地を米軍が使えるようにすることで沖縄の問題の代償にしたい、沖縄の問題は固定化されながらプラスアルファの新しい課題が日本の政治に方向づけられやしないか、こういうことを私は心配するわけです。  今のような経過から見て、日米会談に臨む総理の決意と考え方をお聞きして、私の質問を終わります。
  262. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今さら私は、よく事柄を御存じのあなたに対して、地方自治法に基づく手続、手順の御説明をするつもりもありませんし、その中に内蔵される問題点もよく委員は御承知のはずであります。  言いかえれば、これは一般論としてでも同じことでありましょう。殊に、沖縄の歴史と、そしてその中で土地をめぐる思いというものが何回かの島ぐるみの大きな騒動を起こしてきた過去を振り返るとき、お一人の地権者の問題といっても、土地にまつわる問題について我々は最大限の慎重さを持って当たる、そしてその方の気持ちを酌みながら行動することが求められることは言うまでもありません。  同時に今、日米首脳会談あるいはその前における2プラス2等々の中で、基地及び施設というものについての整理統合・縮小というものに対する最大限の努力が求められる、それもそのとおりであります。  またACSAについても、今鋭意これをまとめる努力をしておりますけれども、まだその内容に固まったものがあるという報告には接しておりません。  いずれにせよ、そうしたものは全部が絡み合っておりますし、先刻石井委員の御質問の際にも、そうしたことは全部踏まえた上で全力を尽くしていくけれども、この時期に細かい内容の答弁は控えさせていただきたいということで御了承を得ました。  今委員から御指摘がありましたような問題点は、私自身が悩み抜いている問題点のその大半とお考えいただいて結構であります。その上で、私どもとしてできるだけの努力をするという以上、今申し上げる言葉を持ちません。
  263. 嶋崎譲

    嶋崎委員 終わります。
  264. 上原康助

    上原委員長 これにて嶋崎君の質疑は終了いたしました。  次回は、明三日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時九分散会