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1996-02-21 第136回国会 衆議院 予算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年二月二十一日(水曜日)     午前九時三十分開議 出席委員   委員長 上原 康助君    理事 桜井  新君 理事 近岡理一郎君    理事 深谷 隆司君 理事 保利 耕輔君    理事 今津  寛君 理事 草川 昭三君    理事 野田  毅君 理事 三野 優美君  理事 五十嵐ふみひこ君       相沢 英之君    伊藤 公介君       江藤 隆美君    小澤  潔君       越智 伊平君    越智 通雄君       菊池福治郎君    後藤田正晴君       志賀  節君    高鳥  修君       谷川 和穗君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    谷津 義男君       若林 正俊君    安倍 基雄君       愛野興一郎君    赤羽 一嘉君       伊藤 達也君    石井 啓一君       石井  一君    石田 勝之君       貝沼 次郎君    川島  實君       左藤  恵君    谷口 隆義君       平田 米男君    前田 武志君       松岡滿壽男君    山口那津男君       山田  宏君    今村  修君       佐々木秀典君    坂上 富男君       田中 昭一君    濱田 健一君       細川 律夫君    錦織  淳君       寺前  巖君    中島 武敏君       松本 善明君    矢島 恒夫君       吉井 英勝君    海江田万里君  出席国務大臣         法 務 大 臣 長尾 立子君         外 務 大 臣 池田 行彦君         大 蔵 大 臣 久保  亘君         文 部 大 臣 奥田 幹生君         厚 生 大 臣 菅  直人君         農林水産大臣  大原 一三君         通商産業大臣  塚原 俊平君         運 輸 大 臣 亀井 善之君         建 設 大 臣 中尾 栄一君         自 治 大 臣 倉田 寛之君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 梶山 静六君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 臼井日出男君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      田中 秀征君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中川 秀直君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 鈴木 和美君  出席政府委員         内閣官房内閣内         政審議室長   藤井  威君         阪神・淡路復興         対策本部事務局         次長      生田 長人君         警察庁生活安全         局長      中田 恒夫君         防衛庁参事官  小池 寛治君         経済企面庁調査         局長      澤田五十六君         科学技術庁原子         力局長     岡崎 俊雄君         科学技術庁原子         力安全局長   宮林 正恭君         国土庁土地局長 深澤日出男君         国土庁大都市圏         整備局長    五十嵐健之君         国土庁防災局長 村瀬 興一君         法務省民事局長 濱崎 恭生君         法務省刑事局長 原田 明夫君         法務省矯正局長 東條伸一郎君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省条約局長 林   暘君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主計局長 小村  武君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         大蔵省関税局長 久保田勇夫君         大蔵省理財局長 田波 耕治君         大蔵省銀行局長 西村 吉正君         大蔵省銀行局保         険部長     福田  誠君         国税庁次長   若林 勝三君         文部大臣官房長 佐藤 禎一君         文部省初等中等         教育局長    遠山 耕平君         文部省教育助成         局長      小林 敬治君         文部省高等教育         局長      雨宮  忠君         厚生省社会・援         護局長     佐々木典夫君         厚生省老人保健         福祉局長    羽毛田信吾君         厚生省保険局長 岡光 序治君         厚生省年金局長 近藤純五郎君         農林水産大臣官         房長      高木 勇樹君         農林水産省経済         局長      堤  英隆君         通商産業省産業         政策局長    牧野  力君         通商産業省環境         立地局長    鈴木 孝男君         資源エネルギー         庁長官     江崎  格君         中小企業庁長官 新  欣樹君         運輸省運輸政策         局長      土坂 泰敏君         運輸省海上技術         安全局船員部長 金丸 純一君         運輸省港湾局長 栢原 英郎君         建設大臣官房長 伴   襄君         建設省建設経済         局長      小鷲  茂君         建設省道路局長 橋本鋼太郎君         建設省住宅局長 梅野捷一郎君         自治省財政局長 遠藤 安彦君  委員外出席者         参  考  人         (動力炉・核燃         料開発事業団理         事長)     大石  博君         予算委員会調査         室長      堀口 一郎君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十一日  辞任         補欠選任   石田 勝之君     石井  一君   笹川  堯君     貝沼 次郎君   佐々木秀典君     濱田 健一君   中島 武敏君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   石井  一君     石田 勝之君   貝沼 次郎君     赤羽 一嘉君   濱田 健一君     佐々木秀典君   寺前  巖君     吉井 英勝君 同日  辞任         補欠選任   赤羽 一嘉君     笹州  堯君   吉井 英勝君     矢島 恒夫君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  平成八年度一般会計予算  平成八年度特別会計予算  平成八年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 上原康助

    上原委員長 これより会議を開きます。  平成八年度一般会計予算平成八年度特別会計予算平成八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷津義男君。
  3. 谷津義男

    谷津委員 時間がありませんので、私、端的に質問いたしますから、答えの方もできるだけ短く端的にお答えをいただきたいと思います。  まず銀行局長にお伺いしますけれども、第二次再建計画、これにつきまして母体行から大蔵省銀行局の方に、俗に言う念書を出されたということですが、この日付をちょっと申し上げますが、これに間違いないかどうか確認をしたいと思います。  日住金平成五年の二月二十六日、これは母体行から大蔵省銀行局へ、総合住金が四月十五日、住総が四月二十一日、第一住金が五月十七日、ローンサービスが五月二十七日、ハウジングローンが五月二十五日、地銀生保が六月十六日とありますけれども、これに間違いありませんか。
  4. 西村吉正

    西村政府委員 手元資料では日住金が二月の二十六日ということは確認をさせていただきますが、恐らくはかのものは御指摘のとおりだと思いますけれども、私ちょっと今ここで確答申し上げるだけのデータを持ち合わせておりません。
  5. 谷津義男

    谷津委員 それはおかしいんじゃないですか。銀行局がとっておきながら日にちがわからないなんて、とんでもない話ですよ。
  6. 西村吉正

    西村政府委員 私、決してそのような意味で申し上げたわけではなくて、確答申し上げるデータ手元にちょっと今なかったんですが、もう一度申し上げますと、日住金が二月二十六日、住宅ローンサービスが五月二十七日、住総が四月二十一日、総合住金四月十五日、第一住金五月十七日、CSローンが六月の十六日、ハウジングローンが五月の二十五日でございます。
  7. 谷津義男

    谷津委員 実は、それを銀行局に出したのと大体ほぼ同じ日に住専再建案が、農中とかあるいは信連の一部でありますけれども出されているわけです。特に信連には、全部回ったところもあってその説明をしたといういきさつがあるわけでありますけれども、そのときに実は、母体行がそれに対してちゃんと責任を持ってやるというふうなことについてのお願いといいましょうか、そういうふうな文書が各頭取あるいは社長の名前で、これはきちっとした判が押されてありますが、出されておるのを報告を受けていますか。
  8. 西村吉正

    西村政府委員 先ほど指摘文書は、母体行から私どもに対する文書でございました。今御指摘文書は、恐らく母体行とあるいは系統との関係ということかと存じます。私ども承知をいたしておりません。
  9. 谷津義男

    谷津委員 銀行局長、実はこれを出された日にちというのは、今の大蔵省銀行局に出された日にちとほぼ同じなんですね。  例えば、母体行の代表から農中の理事長協力要請文書というのが実は出ているのです。しかも、これは全部書いてあります、母体行。一番多いところでは六十七行なんというのもありまして、全部その頭取あるいは社長の判が押されているのですね。それを見ますと、やはり総合住金なんかは四月十五日、それから住総なんかも五月十四日とほぼ日にちが一致して出されている。  これは民対民ですから直接知らないというふうに言うかもしれませんが、実は大蔵省報告をして許可をもらってから出したというちゃんとした証言を得られているのですけれども、知らないですか。
  10. 西村吉正

    西村政府委員 大蔵省の了承というのがどういう趣旨か私ちょっと理解できませんけれども、私どもは、それは母体行と系統当事者の間のお話だと理解をいたしております。
  11. 谷津義男

    谷津委員 実は、この文書をちょっと読み上げますと、非常に重要なことが書いてあるのですよ。  例えば、どこの住専とは申し上げませんけれども、こういう文書をちょっと申し上げます。「今般、〇〇株式会社においては、昨年三月に作成した経営再建計画を抜本的に見直し、新たな経営再建計画を作成いたしました。当協会会員行は、四月十五日の総会においてこの新経営再建計画を了承し、この計画に沿って、別紙のとおり母体銀行としての支援を行うことを決定をいたしました。」というふうな中において、「つきましては、厳しい経営環境の中、多大な御負担をおかけすることとなりますが、まことに恐縮でありますが、貴会」というのは、これは実は信連のことでありますが、「おかれても同社の経営再建計画に御理解を賜り、金利軽減等内容とする新たな支援をいただきたい」というふうなことの要請文があるわけです。  実は、これが各住専再建計画の中に、補完をするような形で各母体行が捺印をして、頭取社長全部捺印をして、それで一緒提出をしているということなんです。全く知らないですか。
  12. 西村吉正

    西村政府委員 繰り返しになって恐縮でございますが、母体行と系統当事者間の関係あるいは文書については、私ども承知をしておるところではございません。
  13. 谷津義男

    谷津委員 実は、信連もあるいは農中もこれは大蔵省承認を受けていなければだめだということで、実はそこのやりとりのメモがあるのですよ。大蔵省承認を受けてきたということを言っているのですね。それでも知らないと言えますか。
  14. 西村吉正

    西村政府委員 当事者間のそのような性格のお話大蔵省承認が必ずしも必要だとは私は理解をいたしておりませんし、また私が承知する限りにおいて、そのような文書なりやりとりについて私どもが関与したということは承知をいたしておりません。
  15. 谷津義男

    谷津委員 実は、系統母体責任だというふうに言ったのはこの文書もとになっているのですよね。これだけはっきりと母体行が出しておるということは、これはもうこれを信じて、しかも大蔵省がそれに一緒になって指導していただけるということも含めたからこそそれを認めて、平成五年の五月三十一日に協力することを決定したのです。  この件につきまして、大蔵大臣、何かひとつ大臣のお考えを聞かせていただきたい。
  16. 久保亘

    久保国務大臣 担当いたしました大蔵省事務当局の方で、今のお話について承知していないと申しておりますので、私の方からそのことに対して今申し上げることはできないと思います。
  17. 谷津義男

    谷津委員 実は、この中身を見させていただきますと、非常におもしろい現象が一つあるのです。  例えば総合住金とか住総とか、みんな母体行がそれに対して願書という正式な文書を出しているのですが、一つだけ出していない。日本住宅金融株式会社に対しては実は出していない。これは実は三和が絡んでいるのですね。三和銀行は、そういった面で母体行の代表からの、例えば農中の理事長あて協力要請文を出さないのですよ。先ほどから議論になっております三和の問題がありますね。恐らく三和大蔵省にそういう、再建案と言ってはなんですが、出しておる。それを無視されたために私はここへ出さなかったんじゃないかと思うのですが、何か考えありますか。
  18. 西村吉正

    西村政府委員 三和銀行が、第二次再建計画に関しまして三和銀行なりのお考え議論のプロセスにおいてお述べになったということは、先般来のいろいろな国会論議の中でも御指摘のとおりでございます。  しかしながら、その際、私どもからも申し上げましたように、そのような考え方というのは関係者当事者の間で必ずしも合意が得られることなく、結局は三和銀行自体がその案をお取り下げになったというふうに伺っておるものでございまして、決して大蔵省が受け付けなかったとか大蔵省がそれを取り上げなかったとか、そういう趣旨のものではないと理解をいたしております。
  19. 谷津義男

    谷津委員 大蔵大臣にお尋ねしますけれども、こういう事実があるのです。文書を持っているのです。私は数々持っているのです。こういう文書に基づいて、系統はこの再建案協力をするというふうに決定をしたわけなんですね。その結果が五兆五千億というような大きな金額の問題に、今いろいろ議論の対象になっているわけですが、こういう文書を見て、しかもきちっと約束をして、しかも再建については責任を持ってやると、母体行がそういうことを系統に約束したわけですね。  こういうのを知って大臣はどういうふうに思いますか。母体行の責任というのは大きな私は責任がここにあると思うのですよね。その辺はどういうふうにお考えでしょうか。
  20. 久保亘

    久保国務大臣 監督官庁としての大蔵省がどのような関与をしたかということについては、私は調べてみなければわかりませんけれども母体行の住専問題に対する関係というのは、単なる住専各社に対する債権者という立場で済む問題ではないと思っております。これはもう何回もお答え申し上げましたけれども、設立、出資、そして人事、経営その他にかかわって、商法上の子会社ではなくても、実質、母体行が支配権を強く持つ関係住専経営は行われてきたと思っております。  そういう意味では、今御指摘になりました文書等につきましても、私ども調査をさせていただきたいと思いますけれども、そのような文書等が事実として存在するとすれば、これは、母体行の責任について今まで私どもが申してまいりましたことを一層明確にするものだと考えております。
  21. 谷津義男

    谷津委員 農水省にお尋ねします。  経済局長の方の農水省は、この文書があったことは確認しておりますか。
  22. 堤英隆

    堤政府委員 第二次再建計画の策定に当たりまして、母体行と系統金融機関の間でさまざまな協議あるいはやりとりがあったということは考えられるわけでございますけれども、御指摘母体行から系統金融機関に対します文書につきましては、当事者間の問題だということもございまして、当方としては承知していなかったところでございます。
  23. 谷津義男

    谷津委員 これだけ大きな問題、しかも公的資金を投入する、そういうときに、こういう文書が既に母体行、これは全行から出ておるのですよ。それから生保、そういう母体行と言われるところからは全部出ている。しかもかなりの数が出ているわけですね。そういうふうなものを大蔵と農水で話し合われる、いわゆるこの覚書平成五年の二月三日。こういう文書が出たのが、大蔵省銀行局再建についてのいわゆる念書と言われるものが出された前後に全部出されているということなんですね。これがもとになって、信連にしましてもあるいは農中にしましても、かなりこの母体責任というのを強く主張する根拠になっておる。  こういうものについては全く農林省には系統からは話がなかったのですか。もう一回確認します。
  24. 堤英隆

    堤政府委員 申しわけございませんが、系統の方からそういう文書を受け取っているということについては、全く聞かされておりませんでした。
  25. 谷津義男

    谷津委員 まあこの文書を後で読んでもらえばわかりますし、各母体行から出ているのを見ますと、今までいろいろ議論になりましたいわゆる系統の五千三百億、こういうふうなものの贈与といいましょうか、これをまさに協力をするという形で出すんだという意味がよくわかってくるんですよね。これはもう全面的に母体行の責任ですよ。こういう文書を出しておいて、なおかつもうすぐにもだめになるようなそういう状況だ。  しかも、計画案というのでしょうか、再建案というのは分厚いものですよ、私も見ましたけれども。七社を見ますと、とてもここへ持ってこられるようなものじゃない。そういうふうな計画案があるわけでありますが、しかし、それをちゃんと補完するように、母体行がそれを責任持ってやりますからぜひ協力してくれよというふうなことを言っているわけなんですね。  非常にこれは大事な問題だろうと私は思うのですが、農水省もそれを知らぬ、大蔵省も知らぬ。しかし、大蔵省に対しましては報告をしたというふうに言っているのですね。承認を得てきたから、系統はそれを信じて協力するというふうに決定しているわけなんですね。その辺のところを全く知らぬというふうに言い逃れをするというのは、私はむしろおかしいと思う。  じゃ、大臣にお伺いしますが、大臣はきのう記者会見やあるいはこの委員会で、母体行の責任というのは大きいよと、要するに、役員の出処進退にまで関するようなお話がありました。また、系統に対しましてもそういうふうなお話をしたやに承っておるわけでありますけれども、こういうことを考えますと、私は、大蔵省そのもの責任ということを大臣は一言も言っていませんが、その辺はどうなっているのですか。
  26. 久保亘

    久保国務大臣 行政責任ということは、繰り返し申し上げております。  今度のこの住専問題を処理いたします中で、行政、特に大蔵省責任はどういう点にあったのか、いかなる責任を負うべきか、また、今それぞれのお立場で御論議が行われております大蔵省改革に関する問題等につきましても、これらの問題を通じていかなる改革が求められているのか、そういうことについて真剣に取り組むことが必要であるということを申し上げてまいりました。
  27. 谷津義男

    谷津委員 それから、銀行局長にお伺いしますが、実は再建案という七社のものは見ておるのですか。
  28. 西村吉正

    西村政府委員 再建計画そのもの当事者間の問題でございますので、当事者が作成しました文書という意味で、私どもが拝見することはございません。ただし、その内容につきまして私ども説明を受けておるということはございますし、その概要については、先般国会提出いたしました文書にも内容を記述をしておるところでございます。  なお、先ほど私が申し上げました点についてちょっと確認をさせていただきたいと存ずる次第でございますが、私ども、各母体行から、この再建計画の誠実な実行について、いわゆる確認書と言われている文書を百数十行から受け取っておるということは先般来申し上げておるとおりでございますし、また、その資料提出につきましては、理事会でもお諮りいただいて、私どもも誠実に対応させていただいているところでございまして、そのことを否定するつもりは毛頭ございませんが、先ほど指摘のありました当事者間の文書そのものについて、私ども承知をしておらないということを申し上げておる次第でございます。
  29. 谷津義男

    谷津委員 住専再建支援要請というのが住専七社から出ている。それを母体行が補完しているというふうな形の文書の中に、実は返済開始年限とか、これはいわゆる五兆五千億に対する返済開始年限なのですが、こういうものがある。その中では、例えば総合住金なんかは初年度からも返していきますよ、あるいは第一住金初年度から返していきますよ。しかし、一回だけは返してくれたけれども、その後もう返ざなくなったというふうな事実もあるわけなんですね。  それを見ますと、これは明らかに五兆五千億は元本は保証するぞというふうな意味がなければ、こういうふうなものはできないのですけれども、そういう中でいろいろと計画が立てられたということなんです。計画も、本当に案はつくったけれども、ほとんどそれが実行されないまま今日のこういう状態になってきたというふうに思うのですが、その辺のところの確認はしておるのですか。
  30. 西村吉正

    西村政府委員 私ども承知をしております弁済の問題でございますが、既に公表をしておりますこのいわゆる覚書内容をごらんいただきますと、「資金返済に当たっては、高金利調達先から優先的に実施するものとする。」という項目がございます。これは私どもは、高金利調達先、すなわち、系統金利が四・五%で高いわけでございますから、住専経営判断としても、高い金利のものから返していくということは経営判断として当然のことであろう、こういう理解をしておるわけでございます。
  31. 谷津義男

    谷津委員 そこで大蔵大臣にお聞きしたいのですけれども住専処理機構、ここにこれから予算が通って移っていくわけですね。  そこで、この母体行、これは本当に立派な、みんな一流の銀行二十一行を見ましても、相当紹介融資がある。しかも、その紹介融資かなりの分というか、一〇〇%に近いような状況の中で不良債権化しておるという状況です。  こういうふうなものを考えたときに、処理機構の方でこの回収に当たりまして、三兆五千億を放棄したといいながら、そういう紹介をして不良債権になっておるというものについては、これは母体行は先ほどからこういう念書を入れているわけですから、ちゃんと母体行は出しているのですから、それを見て考えた場合に、このいわゆる不良債権分については母体行に対して請求する。これについては住専賠償請求権としてやるべきなのですが、それをやるというのも前提ではありますけれども、一方、引き受けた機構においても、その賠償請求権といいましょうか、それを母体行に対してやるというふうな考え方がありますかどうか、お聞かせ願いたい。
  32. 久保亘

    久保国務大臣 この問題につきましては、民事刑事にわたって法的に追及できるものにつきましては、住専から債権を引き継ぎました後も、損害賠償請求権もともに引き継がれたものとして追及すべきものと考えております。
  33. 谷津義男

    谷津委員 これは大臣紹介された中で不良債権になっているのが非常に多いのは前々からここで議論になっているわけですが、そうなると、母体行に対して積極的にそれをやってもいいのじゃないか。しかも、母体行が自分のところで融資をするとちょっとこれは危険だと思われるようなものを住専に回したという面も、私はかなりあるのではなかろうかと思うのです。そういうことを考えました場合には、これは絶対にやらなければいかぬ。そうすれば六千八百五十億ぐらい出てくるのじゃないですか。その辺のところをちょっともう一回聞かせてください。どうでしょう。
  34. 久保亘

    久保国務大臣 六兆四千百億の損失欠損を負担をいたします問題と、損害賠償請求権を含めてこの十三兆の債権を引き継ぎますものとは、必ずしも一緒にして考える問題ではないと思っておりますが、全体的な債権の回収によって最終的に決着いたします段階では、もし六兆四千百億の範囲に及んで回収が可能となります場合、損害賠償を含めて可能となってまいります場合には、その清算の段階において、既に明確にいたしておりますように、国庫に還元されるということになるものと思っております。
  35. 谷津義男

    谷津委員 そのとおりですね。六兆四千百億の中には、母体行の紹介したものが既に入っているものもかなりあるのではなかろうかというふうに思う。しかも、その紹介の中で、当然母体行に請求できるということになれば、これは当然国庫に入ってくる。ということになると、六千八百五十億分に対しては、その分減っていくというふうに私は解釈するのです。  ですから、予算予算として私は通すべきだと思うのです。しかし、そこをしっかりやった方が私は国民の理解は得られると思うのですが、もう一度この決意のほどをお聞かせいただきたい。
  36. 久保亘

    久保国務大臣 何回か御答弁を申し上げましたけれども、私どもは、今度の住専問題の処理に当たりましては、強力な債権の回収に全力を挙げなければならないと思っておりますし、同時に、これに伴う責任の明確化、とるべき責任をきちんととるということもやり遂げなければならないと思っております。そして、国民の皆様方に対しては、特に国会の場を通じて必要な情報の開示に努めてまいりたい、このように思っております。
  37. 谷津義男

    谷津委員 母体行という二十一行の主要銀行考えてみただけでも、これは〇・五%のいわゆる公定歩合、そしてその後の貸出金利というのはそう下げていない。かなり利益を上げているわけです。これはもうわかっている。ことしに入ったってまだそれが続いているわけですよね。しかも、株が値上がりしたことによって、かなり含み資産もふえているのではなかろうか。そういうことを考え合わせると、私は、この件は母体行に請求しても、株主代表訴訟なんて起こるはずがないというふうに考えているわけです。  その辺のところをしっかりやることが、私は国民の今日のこの怒りをひとつ和らげる大きなことにもなるのではなかろうかと思います。それは大臣考え方一つによるだろうというふうにも思いますので、しっかりとその辺をやっていただきたいというふうに要望をしておくわけであります。  次に、農林大臣にお伺いするわけでありますが、金融の自由化が進んでいる中で系統金融の体制整備が大変おくれておる。体質の強化と、そもそも農協金融のあり方、こういうことを見直す、いわゆる反省と言ってはなんですが、そういうことも今度のこの住専の中にあるのではなかろうかということです。そういうことをしっかりやらないと、金融の世界から取り残される危険があるのではなかろうかと思うのです。  そこで、系統金融と農協のかかわり合いといいましょうか、そういう展望についてどのように考えておるか、お聞かせ願いたいと思います。
  38. 大原一三

    ○大原国務大臣 谷津委員はその道の専門家でありまして、日ごろ我が党内においてもいろいろ御指導をいただいている仲間でありますが、おっしゃるとおり、今度の住専問題も非常に大きなきっかけになりまして、系統の金融事業のあり方の再構築と申しますか、私は大変大きな課題を抱えておると思います。  何回も申し上げましたが、今までの護送船団方式のぬくもりの中で安住しておった面がなくはなかった。そういう意味で、もう既に委員御存じのとおり、おととしてございましたか、JAそれ自体において体制整備をしようと、いわゆる二段階構想が出されているわけであります。  なかんずく、信用事業がこれら系統を支える基盤になっておるということを考えますと、委員指摘のように、これからの自由化の荒波の中で、どう生き残っていくかという体制整備は喫緊の課題だと思います。したがって、一月三十一日に、これは総理の諮問機関でございますが、農政審議会において早急にこれらの問題を御検討願いたい。  さらにまた、谷津委員、既にその道に通じていらっしゃる方でございますからお願いがあるんでありますが、系統それ自体においてもこの問題にぜひ真剣に、積極的に取り組んでいただくようにぜひとも御協力をお願いしたいと思います。  以上であります。
  39. 谷津義男

    谷津委員 時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、この問題については、私は、行政、いわゆる大蔵省また農林省にも責任がないとは言わせませんぞ。この辺のところはしっかりと踏まえて、これからの対応を考えなきゃならないし、今後につきましてもしっかりと行政指導をしていただきたい、こういうことを申し上げまして、終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  40. 上原康助

    上原委員長 これにて谷津君の質疑は終了いたしました。  次に、左藤恵君。
  41. 左藤恵

    左藤委員 私は、住専の問題につきましては、また締めくくり総括のときにでも少し時間をいただいて問題点の指摘をさせていただきたいと思いますが、きょうは教育の問題について、文部大臣においでいただきましたので、大きな問題として三点ほどお尋ねをさせていただきたいと思います。  一つは、高等教育の問題であります。  既に御承知のとおり、平成四年には十八歳人口が二百五万あったものが平成七年には百七十七万台、だんだん減ってまいりました。平成二十年ごろになりますと百二十万というふうな数になっていくわけであります。こういうことであります。一方、進学率ということになりますと、これはまた向上をいたしておりまして、既に大学、短大、高専というところの進学率で四五・八%、専修学校を入れると六〇%を超える。こういうことがあるわけでありますけれども、この問題について、長期的な見通しというものを一体どう考えておられるのか。  臨教審というのがございました。これが昭和五十九年だったと思いますが、そこで一つの方向づけをされて、さらに高等教育の将来構想ということで、大学審議会の中にその専門の委員会が設置されて論議をされております。そこで、大きな問題として、高等教育の、どういつだ規模でやるのか、それからその設置基準とか、それから設置の原則として抑制でいくのか自由化していくのか、さらに立地の問題がありまして、地方へ分散していく、いろいろなことがあるわけであります。これは規制の緩和のいろいろな問題との関連もありますし、非常に審議が多岐にわたることもありましょうけれども、長くかかり過ぎておるということが一点。  そして、これはやはり、これからの高等教育の問題について、そこへ持っていく過渡的な段階におきましての問題がいろいろ生じておるわけでありますが、もちろん国家百年の大計でありますから慎重にやっていただかなければならないわけですけれども、船頭多くして船山に上っているような感じが非常に多いということが一つ。  そして、それをどういうふうにしてまとめていただくかという、これは文部省で実際問題としてまとめられるわけでありましょうけれども、どの辺の見通しでこういった長期的な構想というものがつくられるか、まずこの点についてお伺いしたいと思います。
  42. 奥田幹生

    ○奥田国務大臣 まず第一点の、高等教育の将来の見通しについてでありますけれども、先生おっしゃいますとおり、とにかく十八歳人口が減ってきております。ほかにまた、国民の進学の意欲は高まっております。そういうこれからの社会経済状況の変化、それから国民の高等教育に対するニーズ、それから学問の進展、こういうような問題をいろいろ多角的に検討していかなければならぬと思っております。  したがいまして、現在、大学審議会におきまして、平成十二年以後の高等教育の将来像について御論議をいただいておりますので、文部省といたしましては、その結論を出していただくのを今待っておるような状態でございます。  なお、大学の設置基準についてでございますけれども、今の設置基準は、平成三年に見直していただいて規制の緩和をしていただきました。一般教養科目や専門教科の授業科目の区分を廃止する、あるいはまた認定単位の弾力化、こういうようなものを行いまして、大学において、個性豊かな自由な教育ということに取り組んでもらっておるところでございます。  これからもやはり、特色を生かした教育研究活動の改善、また大学の積極的なこれについての取り組みに期待してしばらく見守ってまいりたい、このように考えておるところでございます。
  43. 左藤恵

    左藤委員 今お話しの中で、カリキュラムの自由化とかそういった問題については、私は一応の評価がされるのではないかと思いますが、基本的な大学の設置基準というふうな問題については、省令化、これは随分前の、たしか一九五六年ですか、そのころにされたままの形になっておりますし、そして、中には非常に不合理な問題があって、私が聞いておるところでは、例えば大学を新設するときに体育館を設置しますとその校地の面積から減らされる、こういうような設置基準の何か基準があるわけです。  私は、教育は何も普通の勉学だけではなくて、体育もこれはもちろん一つの非常に大事な教育の課程の問題であろうと思います。中には、体育を必須から選択に変えたりいろいろな問題があって、健康というような問題とか含めて体育というものについての大学における取り扱いというものは若干変わってはおりましょうけれども、設置基準にもう昔からそういうようなことになっておる。  これはどういう経緯かわかりませんけれども、そういうことがあったわけです。現在直っているかどうか、私確認しておりませんけれども、そういった点もいろいろありまして、時代時代の要請というようなものもあります。  それからもう一つは、立地の規制というようなものが若干ありまして、これはもちろん何も学校に限ることでなくて、工場とかそういったものも都市の中心から離れたところに持っていく。これは私は一つのいい考え方だと思いますが、そうしたときに、それを一つの、逆に言いますと、都市の中心から追い出すためにそういった設置基準を厳しくしているのじゃないかと思われるようなところもありまして、本当の教育という点から考えての設置基準であるかどうか。これは時代によってもいろいろ変わるだろうと思いますし、また、大学を設置するときの規制というものが余りにも官僚統制的な感じが非常に強いものですから、これについての御意見があれば私は伺いたいのが一点。  それから、アメリカの場合は非常に自由化し過ぎまして、そして、何もこういった人たちだけに任せるというのじゃなくて、現実問題といたしましては、アメリカでは、大学同士で基準を認定するといいますか、届け出制に近い形であります。アクレディテーションというような言葉がありますけれども、基準認定ということだと思いますが、そういう形でやっておって、それに認定されたものについては連邦政府が研究費の補助を出すとか、こういうふうなことを実際にやっておるというふうに聞いておりますが、これがまた余りに進み過ぎますと、ディグリーミルという言葉があるのです。これは学位工場といいますか、とにかくもう通信教育とか、そういうようなものを受けた形にしまして、お金さえ出せば卒業証書とか学位記を簡単に出してくれる。こういうようなことで、現実、教育から見たら全く困ったような状態というものにも陥っておるという話も聞くわけであります。これはアメリカの状況です。  そこまでいってはこれは大変なことだと思いますが、日本のいろいろな大学設置基準というものを自由化していくというか、規制を緩和していくということだけは私は大切なことだと思いますが、これについての何かお考えがあったらおっしゃっていただきたい。
  44. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 一点目でございますけれども、設置基準の弾力化につきまして、先ほど大臣からお答え申し上げましたように、平成三年に、主として大学の教育課程の編成に関連して弾力化を図ったということについて申し上げたわけでございます。それ以外に、御案内のように、設置基準におきましては、教員組織でありますとか、あるいは先生御指摘のございましたような校地、校舎の面積をどう扱うかというようなことも定められておるわけでございます。  その後半部分の、私どもハードと称しておりますけれども、ハード面についての基準については、いろいろ御論議がございますけれども、全体としては、大学関係者の間で、我が国の高等教育の一つの水準というものを維持する上でやはり必要なのではなかろうかということで推移してきておるわけでございます。  それから、もう一つのお尋ねの点でございますけれども、アメリカの例を引き合いにお出しになられたわけでございますが、まさにアメリカにおきましては、民間のと申しますか、やや、半公的なと申しますか、そういう団体がお互い同士基準を設定し合って、それによって向上のよすがとするという扱いをしておるわけでございます。日本の場合、国として一定の水準を示して、それに従って認可をする、しないというような判断をしているわけでございます。  もう既に先生御案内のところではございますけれども、制度の成り立ち、それを支えている国情の違い、文化の違いというようなものもいろいろあろうかと思うわけでございますけれども、いずれにしましても、全体として高等教育の一定の水準を維持するという観点で現在の大学の設置基準ができており、それはやはり基本的には維持されるべきものであろう、こういうように考えておるところでございます。
  45. 左藤恵

    左藤委員 私は、一定の基準、大学のレベルを低下しないようにということで設けられた基準というものは必要ではないかな、このようにも思いますし、今お話しのようなことでやっていただいていいんですけれども、それに関連して出てくる問題が臨時定員の問題だったと思います。  これは、非常に生徒急増期から、そのときの対策として、私学が引き受けなければならない教育、公教育の一端を担うためにも認められた制度だろう、このように思います。この臨時定員が、現在、先ほど申しましたように子供の数がどんどん減っていくということになってきたとき、進学率が少々上がりましても、やはりこういった制度というものを、将来的には吸収されてしまうといいますか、消滅してしまわなきゃならないということがあって、これがなかったならば、私学の当面の経営というのは非常に苦しくなってくる。  後でちょっとまた教育費の問題との関連もあって御指摘申し上げたいんですが、一応そういった点で、臨時定員というものに対して、一体、これは九九年までですか、平成十一年ですか、までに全部なくしてしまうのかどうか。現在、これは審議会で論議されておられるのかどうかわかりませんが、ちょっとその点についての進行状況なり、また、これからの大体の方向づけみたいなものがおわかりだったら教えていただきたいと思います。
  46. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 昭和六十一年の十八歳人口が百八十五万人ということでございまして、平成四年がピークでございまして、約二百五万人という十八歳人口でございます。これが、平成七年でございますけれども、百七十七万人という、こういう十八歳人口の推移があるわけでございます。一方において、先生御指摘のような進学率の上昇ということもございました。  そういうような状況を前にして、臨時的定員ということで始まりましたのが昭和六十一年の段階でございまして、昭和六十一年度から平成四年度までの急増期におきまして、増加を図る入学定員の相当数につきましては期間を限った定員ということで対応するという考え方を示しまして、また、その終期につきましては、平成十一年度、西暦二〇〇〇年でございますけれども平成十一年までとする臨時的定員の整備を行ったところでございます。  これにつきましては、これまでのところ、平成十一年度までが終期ということでございますので、今の時点におきましては、その解消を図るということではございますけれども先ほど先生のお尋ねに対しまして文部大臣からお答え申し上げましたように、十二年度以降の高等教育の将来のあり方をどうするかということとも絡めまして、この臨時的定員をどう扱うかということも含めまして、大学審議会の将来構想委員会におきまして現在鋭意検討中のところでございます。  それで、先生、できるだけ早くという御趣旨であろうかと思うわけでございますが、大学審議会の将来構想委員会の部会のまとめといたしましては、この秋にも全体の方向性、一定の方向性というものを得てみたいというようなことで御審議をお願いしているところでございます。
  47. 左藤恵

    左藤委員 二〇〇〇年といえばまだまだ先の話ではありましょうけれども、それにしましても、各学校のこれからの将来構想とか、そういうようなものをつくっていく上においても、非常にこれは大きな問題であるわけでありますので、少しでも早くそういったものの方向づけだけでも私は出していただきたい、これはやはり学校の経営者の立場から見たら非常に大きな問題だろう、このように思います。  臨時定員が解消されて経営が成り立っていかないということになれば、今の段階におきまして、また新学科を申請して、そしてそれに切りかえていくというふうなことをやった場合に、それが認められるか認められないかという問題との絡みが出てきますと余計に混乱をいたしますし、そういった問題について十分、引き受けをしなければならない私立学校の立場から考えてそのことをお願いをしておきたいと思います。  そして同時に、カリキュラムの自由化とか、そういった点についても非常に努力をしていただいていますけれども、何かまだそういった点について形式的な論議がある。  例えば、職員の、先生の採用のことにつきまして、論文を何本書いているから、だからそれは有効だけれども、一本も書いていないからということで、評価する方法がないじゃないかということで、文部省から設置基準のときに、新しく新設の学科をつくるとかあるいは大学を開校するというときに、それが許可にならない、こういう問題がありますので、こういう点について、非常に機械的にやるということについて私は再考慮する必要があるのではないかと思いますが、この辺はどうなんでしょうか。
  48. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 他の行政分野でも多分共通であろうかと思うわけでございますけれども、認可をするその場合の基準をどう設定するかというのは非常に重要な問題でございます。一方において、できるだけ客観的なものである、あるいは公平なものであるべきだという要請が一つにございますし、それから今先生御指摘のように、いろいろ弾力的に扱ったらどうかという御指摘もあるわけでございます。  ただいまの教員の審査の点でございますけれども、基本的には教育研究上の実績のある者ということで考えるわけでございますが、そのための材料として、いろいろ客観的な資料というものももとにすることもあるわけでございます。御指摘の点も踏まえまして、また一方において客観的かつ公平な扱いということにも配意しながら考えてまいりたい、かように思っておるところでございます。
  49. 左藤恵

    左藤委員 この問題につきまして、文部省が考えておられると言うべきなのか何かわかりませんが、大学の管理といいますか、そういうような点につきまして、ちょうど今問題になっております大蔵省と金融機関の関係みたいな、何か、護送船団方式かどうかわかりませんけれども、とにかくそういったところで非常に、一校もつぶすことがないというようなことでいろいろ配慮しておられるんだろうと思いますが、そういう点で余りにもこだわられますと、せっかく規制緩和とかそういうふうなことでやっていこうという方向から見たら、私は、非常に時代に合わないような問題が出てくるんじゃないかと思います。しかも、中身としましては、二十一世紀をしょって立つ子弟の教育という大事な問題でありますので、こういう点について、文部大臣のお考えがあったら、ちょっとおっしゃっていただきたいと思います。
  50. 奥田幹生

    ○奥田国務大臣 今局長が答弁を申し上げましたとおり、大学審議会において、先生が御指摘になっている問題についても真剣に今議論をしてもらっておるわけでございます。  先生自身も学園の経験者として貴重な知識、体験も持っていらっしゃるわけでございますので、私どもとしましては、いましばらく審議会の論議を見守ってまいりますが、その過程におきましてもまたいろいろ先生から教えていただくこと、たくさん期待しておりますから、どうぞよろしくお願い申し上げます。
  51. 左藤恵

    左藤委員 それともう一つ、最近、進学率が向上してきてはおりますけれども、全般的に子供の数が減ってくる、絶対数が減ってくるということで、どこの大学でも、また短期大学でも、学生の確保、しかもレベルの高い学生の確保ということで競争になってまいりまして、これが非常に問題があるのは、文部省からお出しになっている「我が国の文教施策」というのにも、二十九ページに「推薦入学の改善」という問題が取り上げられております。  これがいろいろ問題があるのですが、中には、学力検査の免除というふうなことを徹底していくとか、それからあるいは入学試験の受け付けの開始時期を十一月以降にしろとか、あるいはまた推薦入学の割合を入学定員の、大学は三割、短大は五割というものを目安にしてやれ、こういうようなことで一つの改善の方向というものが出されているのですけれども、現実にはそういうことが守られなくて、どんどんとそういうことで早い時期に推薦入学をするとか、そして一方で、その場合、一般選抜と同じような学力の検査をやっておる。さらにもう一つの問題としては、入学定員の大半が推薦入学者である、こういうような、一つの希望としての方向は示されておるわけでありますが、こういったことについて、これは、学校それぞれ競争が激しくなってきますと、非常にまた悪い影響を及ぼすのが高等学校の教育、三学期などというのは、もう全く授業も何もしないとかいうようなことで、高等学校三年生の教育というものはできないというので、その辺の、高等学校側から見ると非常に不満も出てくるわけであります。  こういうことについて、今、単に指導という点だけでなくて、もう少し何か強くやられるというふうなお考えがあるかどうか、このことをちょっとお伺いしたい。
  52. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 特に推薦入学のことについてのお尋ねでございます。  先生今御指摘のように、一つは、時期的に早過ぎはしないかという点が一つ、それからもう一つは、推薦入学自体の意義はあるけれども、余りにもその割合が多くなるとまた弊害が出てくるのではないかという点、それから、推薦入学ということをしながらさらに学力検査を課すということ自体は、そういう扱いをすることは、推薦入学本来の意義からしておかしいのではないのか、おおむねこの三点であろうかと思います。  この点につきましては、大学審議会におきまして、そのようなことにつきましての一つの指針と申しますか、考え方をまとめまして、それを大学あるいは高校等の関係の方面にお示ししているわけでございます。  もう少し強い指導ができないかという御指摘でございますけれども、入学者選抜方法自体は、基本的には引き受ける高等教育機関の役割ということでございますので、私どもとしては、その趣旨につきまして、引き続き関係方面に対して協力をお願いするという形で進めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  53. 左藤恵

    左藤委員 今の問題も、これはもうどんどん進んでおる問題でもありますので、これは大学審議会の最終的な答申というのじゃなくて、その部分について御意見を伺ったところでひとついろいろ指導をしていただくような、そういう部分的な審議会の御意見を反映した形で行政をやっていただくということ、これをお願いしておきたいと思います。  大学の教育の問題、いろいろまだあるわけですが、一応このくらいにいたしまして、次に、最近非常に大きな問題になっておりますいじめの問題についてお伺いをいたしたいと思います。  最近、もう本当に二月に一回ぐらいずつ、大変な、一番多いのは中学生ですが、いじめを原因にして自殺するというふうな事件がたくさんあるわけでありますが、いじめの状況について、全体的な、大体件数がどのくらいあるかとか、そういった学校はどのくらいあるかということについての最近の状況について御報告いだだきたいと思います。
  54. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 お答え申し上げます。  文部省の生徒指導上の諸問題の現状の調査結果によりますと、平成六年度のいじめの発生件数は五万六千六百一件でございます。内訳でございますが、小学校が二万五千二百九十五件、中学校で二万六千八百二十八件、高等学校で四千二百五十三件、合計で五万六千六百一件となっております。  これは、いじめの発生件数でございますが、平成五年度が二万二千件でございますので、大幅に増加しているわけでございます。これにつきましては、特に一昨年以来、すべての学校においていじめがあり得るという問題意識のもとに、いじめられている子供の立場に立って、学校を挙げて実態を把握するよう指導の徹底を図ったことによる面も大きいと認識をしております。  それから、いじめが関係した自殺でございますが、平成六年度中のいじめを主たる理由とする自殺者は五人となっております。中学校が四人、それから高等学校が一人でございます。  これにつきましては、自殺の合計者が全部で百六十六人ございます。そのうち七十九人については、主たる理由が特定できないなどの理由によりまして「その他」に分類されておりまして、この中に、いじめがかかわっているものではないかというものも含まれているわけでございます。  以上でございます。
  55. 左藤恵

    左藤委員 このことについて、いじめという問題はいろいろ大問題になっておるわけでありますが、どういう契機でいじめの状況が発見されたかというのは、何か一つの指標みたいなものがありますか。例えば、学校の先生がいじめの状況を発見したとかあるいは子供の方からそういうことを言ってきたとか、いじめに対する対策の一つの基本となることでありますけれども、あるいは保護者からの訴えがあるとか、いろいろなことでいじめというものが今の報告された件数、中学が二万六千とかいうふうな数字になったわけですが、こういったことについての、そういう発見の経緯といいますか、その状況はどういう状況でしょうか。
  56. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 いじめの発見の端緒でございますが、学校別にいろいろあるわけでございますが、一番問題になっております中学校につきまして申し上げますと、担任の教師が発見というのが一番多くて七千八百二十八件、二九・二%でございます。それから二番目が、いじめられた生徒からの訴えというのが七千五十一件で二六・三%でございます。それから三番目が、保護者からの訴えというものでございまして、これが四千八百五十二件、一八・一%と、主なものはこのような状況でございます。
  57. 左藤恵

    左藤委員 文部省の方では、今お話しのように、自分の学校にもいじめがあるというふうな問題意識で学校が把握したらこういう数字になったというふうな御説明がありました。  そこで、いじめの問題についての対策でありますけれども、昨年の三月ですか、何かいじめ対策緊急会議というのを文部省で開かれていろいろ指導されたと思います。ここで大事な問題は、やはり子供の自主といいますか自我の確立といいますか、そういったものに対する指導とか、あるいは他人に対する思いやりとか、こういったものが十分でないので、こういう対策をしなきゃならないというようなことをされた。  これも一つの適切なあれだったと思いますが、最近になって文部大臣が、一月三十日ですか、緊急アピールをお出しになりました。私はこれを読ませていただいて、非常に高く大臣のお考えを評価するものでありますし、今まで、前の大臣あたりは、何か宗教法人法に血道を上げられたからかもわかりませんが、こういった問題についてもっと早くこういったものをやっていただけたら本当によかったと思いますが、今そういうことで奥田大臣が、このことについて非常にわかりやすく、また広い範囲に対する、国民一般に対するアピールということで、このいじめの対策をみんなでそういう気持ちになってやろうということについてアピールされたことは非常に高く評価をさせていただきたい、このように思います。  ところで、いじめの定義というのは非常に難しいだろうと思うんです。どういうことであるかということは非常に難しいだろうと思いますが、この間ちょっと私が見た資料の中には、これはたしか鹿川君とかいう中学生が亡くなったときに、東京地裁では一審で定義に類するようなことを言っておられますけれども、長期の加害者の行為というものはなかったというふうなことで学校側の責任を認めなかったんですが、高裁で逆転判決がありまして、学校側の責任というものを認められた。私は、これも一つの裁判の権威であるだけでなくて良識だった、このように思います。  そこで、学校側の責任というものに対しまして、非常に難しいんですが、今あった、担任が二九・二%ですか発見した、こういうことについて担任の重要性というもの、いじめのときの発見をする動機というものから見たら非常に大切じゃないかな、このように思います。  そこで、担任の先生方のことなんですが、この間大阪で教研集会、日教組がやられたんだと思います。この中でもいろいろ論議されておりますが、その中に一つ、学校の校則なんかが非常に厳しいというようなところで、こんな中ではとても私ら指導するのは嫌だというので、生徒の指導というものについて放棄するような、放棄したいような、そんな発言が先生の中にあったと聞いています。こういったことは、私は、やはり根本的に教育に当たる者としての資格がないんじゃないかなというふうな気がするわけであります。  確かに、今までの教員免許というふうなことがありまして、昔は旧制の師範学校があって、そして、いろいろな教育そのものの実践の、現場の教育というものについて非常に熱心に指導される。そういうことで、教生という形での勉強もして、そして実際の教壇に立ってやった方ですから、一般的な授業の中身の問題よりも、一般的な、子供が人間としての当然守らなければならない道はどんなことであるかとか、他人に対する思いやりはどうだとか、そういう社会常識といいますか、道徳といいますか、そういうものについての指導をする力というものは十分皆さん持っておられたと思います。最近はそうじゃなくて、ただ単に一般の大学を卒業して、ほんの三週間かそこらの研修だけ、まあ実習はあるわけですけれども、その中においても形式的に心理学だとか教育学とかいうふうなものも概論みたいなものだけを勉強して、そして資格がもらえる。こういうような制度について、私は、その辺のところの問題があるんじゃないかと思います。  そういうことで、やはり子供一人一人の指導をしていく、例えば小学生の場合には、給食なら一緒に食べるとか、あるいは休み時間も一緒に子供たちと行動するとか、そういったことをしておれば、いじめというものは起こらない。また、起こっても、そういうことが早期に発見できるような条件というのができるわけですけれども、そうじゃなくて、先生の中には、全くもう授業だけすればそれで終わりだ、こういうような方が非常に多いように思います。こういう点から考えて、何かそういった方々に対しての再教育というものをもう少しやる必要があるんではないか。  この前の予算委員会で、私は、スクールカウンセラーというものをもっと増員したらどうかということを御提言申し上げたんですが、それと同時に、やはり先生自体をそういったことで再教育する必要があるんじゃないか、こういうふうに思います。  この間新聞を見ておりましたら、大阪の教育大学で、大学院を設置して、そして、その意味の教員の再教育を夜間部でやる、内容は実践教育カリキュラム、こういうようなものでおやりになる。これは二十四科目の中で十二科目がそういった中身のものでやるというようなことの、大学院の勉強を二年間やってもらうわけですが、この四月から開議するということで、私は、これは非常に適切なことである、こういったものであれば、単にモデルとかなんとかいうことじゃなくて、もっとほかの大学もひとつ積極的に、全国に教育大学もたくさんあるわけですから、そういったことについて何か大学院だけじゃなくて、あるいは大学の課程においても再訓練をするとかいうふうなことも考えられたらどうかと思いますが、この点について私は高く評価をしたいと思います。  なお、御参考に、今の特別の実践教育カリキュラムの中身というのは、例えばカウンセリング特論とか、あるいは実践教育学演習とか、それから学校心理学特論とか、あるいは道徳教育実践学特論とか、こういうようなカリキュラムだということを伺っています。私はこれは非常にいいことだと思いますが、これからの見通しみたいなものがあったら、御意見を伺いたいと思います。
  58. 奥田幹生

    ○奥田国務大臣 非常にたくさんの御提言をちょうだいいたしまして、ありがとうございます。  やはり、いじめというのは、家庭、学校、地域社会、それぞれがうまく機能をしておりませんと、どこかに欠陥が生じますと、そういういじめが起きてまいりますから。しかし、一番しっかりしなくてはならぬのがやはり学校だと私も思っております。  それで、先ほど先生おっしゃっていただきました一月三十日の、私が緊急アピールを発表させていただいたその中にも、学校の先生は、左藤先生おっしゃるとおり、もう少し生徒と接触する時間を長く持ってもらいたい。例えば具体的に、給食は生徒と一緒に食べてもらいたい。それから、授業が終わりました後の教室のお掃除も生徒と一緒にやってほしい。中学校は、教科の担任でありますが一方ではクラス担任もあるわけでございますから、そういうことも具体的にお願いをいたしたわけでございます。なお、そういうものを統括する校長さんもリーダーシップを発揮してもらいたいというようなこともあわせてお願いをさせてもらったようなわけでございます。  それから、やはり地域社会におきましても、かつては、隣近所の子供がこれはどうかと思うような行為をしておりましたときには、他人でありましても大人が遠慮なく注意をしておったわけでありますが、このごろは見て知らぬふりをしている、そういうのが通例でございますから、よその子供でもやはり遠慮なく注意をし合えるような、そういう地域社会にならないことにはなかなかやはりいじめの完全追放というものは無理ではなかろうかなというような考えも持ちまして、そういうことも指摘をさせていただきました。  それから、家庭においては、やはり親の勤めも、このごろはお母さんのお勤めもふえてまいりましたけれども、できることなら一日に一回は家族一緒に食事、日曜日の晩は必ず一緒に食事、それから、ハイキングもいいのではないですかというようなことも言ったわけでございます。  先生が強調されました学校の先生の教員免許の取得状況でございますが、今は、小学校においては、小学校の免許を取りますときには教育実習は四週間、それから中学校、高等学校におきましては、これは二週間ですね。昔の師範学校のときには、私も経験がございますけれども、附属小学校で、まあ大体四十日から五十日、教生です。一々指導内容を書きまして、それを学校の担任の先生に見てもらって、それを先生が控えて、後ろで見ながら教生が実習をする。それが終わりました後、地方に出かけていって、地方実習が、これも一カ月弱ございました。今はそれが、地方実習もございませんで、小学校で四週間、中高等学校の免許取得の場合には二週間ということ。  そういう状態でございますので、非常に学校の初任者が、例えば、黒板に書く字が間違っているとか言葉が乱雑であるとか、あるいは服装が、学校の教員としてはもう一つ尊敬するような服装ではないとか、いろいろな問題が起こりまして、数年前に文部省では、まず小学校の教員から初任者研修を始めました。それを中学校、高等学校、今はもう小中高全部実施されております。その初任者研修で今申し上げたようなことのカバーをしまして、そして実際免許を取るときに、もう一つどうかなと思っておりました内容につきましても初任者研修の段階で徹底した教育をやってもらっておる、こういうような実態でございます。  それからもう一つは、やはり、先生が勤め始めてから五年たつ、あるいは十年たった、こういうようなときの再研修ですね、こういう再研修に当たりましても、特に昨今はいじめの問題が大きく社会問題になっておりますから、これを大きく取り上げて研修の重要なテーマとして扱っておる、これが実態でございます。
  59. 左藤恵

    左藤委員 今、大臣お話しになったこと、非常に私は大事なことだと思います。今までの状況なら、そういうことができなかったということもあったのかもしれません。組合の反対とかいろいろなことがあって、初任者研修も、ちょっとそこまで行っていただくのにも努力されたこともあったわけですが、今はそういうことがどんどん行われておるわけでありますから、これも徹底していただきたいと思います。  そこで、あともう一つ。学校の校長とか教頭とか、管理をする先生方にとりまして学校の中の、校内暴力とかいろいろな問題が起こったときに、内部だけで処理しよう、隠そうといいますか、そういうことで、自分の成績に影響することもあるのでしょうけれども、そういった意味のことがあるわけであります。そういうことでやっておられたら、ますますいじめそのものが陰湿になってくる。学校の先生も含めて何かおかしい形になってしまうということもありますから、こういった点については、率直にそういうようなものを表に出す。  そして、これをまた受ける側の教育委員会の教育長、この人たちも、教育委員会委員は教育の問題についての専門家が入っておられるからいいと思いますが、教育長の中には全く人事的に素人の人もおるのではないか、私はこのようにも思います。そういった意味で、教育の問題についてやっていただくためには、こういった方々を任命されるときにも特に注意をしていただきたいし、教育というものが何であるかということがわからないでやられたのでは本当に大きな問題でありますので、こういった方々を集めていろいろ話をするとかいうことも文部省で積極的にやっていってほしいな、このように思います。  それから、今度はもう一つ、いじめる側の子供のことにつきまして、いろいろな事件が起こったときの後の指導をどういうふうにするか、これも大切なことであって、子供を転校させれば片づくとかそんな問題ではないだろうと私は思います。安易な方法でそれをやられたら、またそこに行って次の問題を起こすということもあるわけであります。  そういうことであるのと同時に、もう一つ、ただ言葉でいじめるというだけでなくて、最近は中学生あたりは、精神的ないろいろなものは余り進んでないのですけれども、昔から比べたら体力は非常に強くなっているということもありまして、暴力行為、恐喝ということで、例えばお金を巻き上げるとかいうようなことがどんどんエスカレートしていく、こういうような問題があるわけであります。  いよいよ、そういうことで追い詰められて逃げ場がなくなって、とうとうだれにも言えないというふうな消極的な子供というものが、ほかに方法がない、この子供自身が思い詰めてしまって自殺するということになってくる。もちろん自殺ということ、死というものに対しての教育というものも、これもきちっと、かけがえのない人生なのだからということで、もっとそういう点について教育の中でやらなければならないと思います。  それと同時に、今言ったいじめる側の方につきましても暴力化しておりますので、一つには、私が心配するのは暴走族なのです。これは警察庁の方の取り締まりの問題もいろいろありますが、最近は、やはり金曜の晩とか土曜の晩になったら猛烈に集まってきて、高速道路を走ったり乱暴なことをする。これは一応高校段階ぐらいの子で、十六歳以上の子供だと思いますが、これを見て、何というのですか、格好いいとかなんとかいうことではやし立てるような、期待族とか言われる中学生とかそんな者も、まあ小学生まであると思うが、こういうようなことをやって、だんだん暴走族の予備軍みたいになっていく。ということは、すなわちこれは暴力団の予備軍になってしまう、こういう心配もありました。  そういうところから教えられて、また金を集めてこいとかいうようなことになってきて、いじめる子供がいじめられた子供からお金を巻き上げるということで、親にも相談できなくなって死んでしまうというようなかわいそうなことが起こっていくということが非常にあるんじゃないか、私はこう思いますが、こういういじめた側の子供に対する教育というものを何か一つのマニュアルみたいなものをつくってやっていく、指導してもらう。単に転校させるのではなくて、例えば何日間か登校停止して、それからその子供たちをどこかに集めてやる。  これは現在の少年法の範囲ではできないだろう。少年法は年齢制限がある。これはもう十三歳以上とかなんとか、非常に形式的というか、年齢で制限、ばしっと切っているだけなんですけれども、もう少しこの少年法というので、年齢というようなものにかかわらず何か指導し、それで、あるひどい者については年齢にかかわらず何か処分をすることができるような、そういう法改正みたいなものは法務省で考えられないか、この辺をお伺いしたいと思います。
  60. 原田明夫

    ○原田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま委員指摘の点は、かねて、いじめの問題等に関します少年と刑事司法のかかわり方につきまして委員からもさまざまな観点から御指摘をいただいた延長の問題だろうと思います。  そして、確かに現在の少年法また刑法の考え方からまいりますと、特に十四歳未満の者につきましては、刑事司法という形では関与しない建前になっているわけです。そして、十四歳以上の者につきまして、さまざまな形で少年法がかかわってまいる、そして、特に年長少年につきましては、当然のことながら刑事的な処分ということも考えられているという中で、ただいま委員指摘の体力の問題、少年の状況から考えて、そういう画一的な面からだけではなくて、実際の状況に合わせた法の運用ということが考えられないだろうかということで、一つの御提言だろうと承ったわけでございます。  ただ、この問題につきましては、長い、少年に対する教育との、またその他の保護的な、あるいは福祉行政とのかかわりの中で、どの程度まで刑事司法が関与していったらいいだろうかということで、さまざまな観点から御議論がなされてきたところだろうと思います。その中で、確かに最近の年少少年の実態ということから考えまして、委員御提言のような物の考え方というものがなされてくる可能性と申しますか、そのような御意見があることにつきましては、私どもも十分留意してまいりたいと存じます。  ただ、実際問題として、刑事司法がかかわる年齢というものを考えていく場合に、やはり一定の基準と申しますか、そういうものを定めていくことの必要性もあろうかと思うわけです。その中で、実際問題といたしまして、警察等に訴えられてくるさまざまな事件性を持った事案、あるいは、そこまで至らない、まさにどこにも相談ができないというような家庭、学校の状況の中で、単に年齢ということではなくて、さまざまな関係機関との間で協議が進められて、対策が立てられていくということがあるいは必要なのかもしれないと存じます。  そこらあたりにつきまして、今後とも、刑事司法のかかわり方につきまして、御指摘のとおり、画一的な考え方ではなくてやはり柔軟に対応していくということも含めまして検討させていただきたいと存じますが、ただ、少年法の適用の面を、年齢以外の点でいわば酌量的にそこを考えていくというやり方につきましては、なかなか難しい面があるのではなかろうかと感ずる次第でございます。
  61. 左藤恵

    左藤委員 法制審議会の皆様方というのは非常に御高齢の方が多いですから、子供たちの心理というようなものとかいろいろなこともありますから、こういうので幅の広い御意見をまとめていただきたいと思います。  それからもう一つ、この間も申しましたスクールカウンセラー、これはやはりぜひ、子供、児童の悩み、こういった問題について相談する相手というふうな形で私はふやしていただきたい、六千八百五十億円あれば相当たくさんのそういったものを設置することができるんじゃないか、このように思いますが、文部省として、ことしの平成八年にはどれだけの予算を入れておられるか、伺いたいと思います。
  62. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 お話のスクールカウンセラー活用調査研究委託事業でございますが、学校におけるカウンセリング機能の充実を図るために、臨床心理士などの高度な専門家を学校に派遣しまして、児童生徒やあるいは保護者へのカウンセリング、それから教員への助言などを行うものでございまして、平成七年度から始めたものでございます。平成七年度の予算額は三億円でございますが、全国の百五十四校に派遣を行っております。  来年度、平成八年度予算案におきましては、これを十一億円に拡充をしまして、五百六校、各県十校とそれから政令指定都市群には三校ということで、合計五百六校への派遣を盛り込んでいるところでございます。  この事業につきましては、先ほど申し上げましたように今年度から始めたものでございまして、その研究成果の詳しいところはまだ出ていないわけでございますが、これまでのところ、スクールカウンセラーの評価はおおむねよいというぐあいに聞いているところでございます。
  63. 左藤恵

    左藤委員 少年の矯正の問題、少年院とかそういうところで子供の矯正をする。これは、十六歳以上ですか、一応の年齢制限があるわけです。この子供たちでも、今の状況では、例えば十カ月ぐらいの矯正だけで終わってしまうというふうなこともありますので、今の少年法の適用の問題ということで、矯正の施設の問題、矯正のことにつきましてもそういうことで考え直す余地があるんではないかな、このように思いますので、この点も御指摘申し上げたいと思います。  時間がありませんので、なおもう一つ問題として、教育費の問題について若干お伺いしたいと思います。  教育費の実態ということになりますと、今大変なお金がかかっておる。それの中で大きな部分を占めておるのが塾だと思います。実際にどのくらいの子供たちが塾へ行っているかということをちょっと調べてみますと、もう大変な数字になっておる。学校外の教育を受けておる割合を言いますと、小学生が六七・二%、中学生が八一・三%、高校生が五四・七%という数字を聞いておるのですが、この数字だけ見ましただけでも、これはいろいろなおけいこごとというようなものもあるわけですけれども、私は大部分は塾じゃないかな、このように思います。  そうしますと、これからの塾の教育と一般の学校における、小学校、中学校という義務教育課程の勉強のことにつきましても、これは入試との関係があったりいろいろなことがあってこういうことになっておるんだろうと思います。したがって、家計に占める教育費のシェアなんかも、七五年には五・二%だったのが九三年には一〇・七%と、家計の一割以上がこの教育費にかかっておるのですが、この中で塾が占めている率が非常に高いので、塾の教育というものをやらざるを得ないというようなこと自体が一体本当の文教行政なんだろうか。  義務教育というものに対しては、最低のレベルのところだけをやって、みんな落ちこぼれが一人もないようにするというのがあるがということではなくて、私は、やはりもう少しそのレベルを上げて、それについてこれない子供に対しては小中学校でも補習をするというぐらいのことで何か考えていく、そうすれば、それだけ塾へ行く必要性がより減ってくるのではないかな、このように思います。義務教育だからということで、最低のレベルにだけ合わせればそれで終わりだというような教育的なことでやっておったら、もうこの教育にかかる経費というものはどんどん上がっていって、非常にまた国民全体からの不満が起こってくるんじゃなかろうか、私はこのようなことも思いますので、この点について、何か御意見があったら伺いたいと思います。
  64. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 ただいま御指摘の点は二つあろうかと思います。  一つは塾自体の問題でございまして、先生御指摘のように、小中高、私どもの持っている数字でございますと、平成五年度におきまして、小学生で二三・六%、中学生で五九・五%という小中学生が学習塾に通っておるということがございます。これが過度になるということで、先生御指摘のような弊害もあるわけでございます。  私どもといたしましては、学校教育自体を充実させるということ、それから入学者選抜の改善を通じて、いわゆる学力だけで判断されるというような入試でないようにしたいというような諸種の努力を引き続きやってまいりたいと思うわけでございます。  それからもう一点は、塾のことも含めまして、全体の教育費負担の軽減を図るということでございます。  教育費負担の軽減を図るということによりまして、教育の機会均等を実質的に実現していくということでございまして、予算面におきましては、育英奨学事業の充実、あるいは幼稚園の就園奨励費補助事業の充実、私学助成の問題等々の分野で努力をしておるところでございますし、また税制面におきましても、特定扶養控除制度というような仕掛けを通じまして、極力保護者の教育費負担が軽減されるように努力をしておるところでございまして、今後ともそうした努力を続けてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  65. 左藤恵

    左藤委員 時間が参りましたのですが、もう一点だけ。  私学助成、今お話がありました。この私学助成について見ますと、これは昭和四十七年ぐらいから非常にやっていただけるようになったのですが、昭和五十五年に二九・五%というのが私立大学等の経常費の経費と補助金額との比率なのですが、平成六年では一二・四%。これは大変に低下しておって半分以下になってしまっているのです。  これは学生がふえたからとかいろいろな理由があるだろうと思うし、毎年毎年予算で、これは大蔵省のいろいろな予算に対する姿勢みたいなものとの関連もありましょう。いろいろなことがあると思いますが、現実に半分以下になってしまっているということで、これから先ますますこういった比率が低下するということになったら、ますます公私の格差というものが是正はできなくなってしまう、こういう問題がありますが、大臣どうお考えになるでしょうか、こういったことにつきまして。
  66. 久保亘

    久保国務大臣 今お話がございましたように、昭和四十六年に私学助成によって経常費の助成が行われるようになりましたときには、総額百九十八億、九・六%でございました。御指摘のように、昭和五十五年に二九・五%となっておりました。今日、平成八年度におきましては、総額で二千八百億台となっておりますが、経常費の全体に対する率は、御指摘のとおり一二・四%でございます。  私学助成法によって経常費の助成を二分の一以内で行うことを決めました際に、国会におきましては附帯決議がつけられておりまして、二分の一の助成が行われるようにできるだけ早くその実現のために努力するということがつけ加えられてございます。  教育の公的な役割、とりわけ日本の未来にかかわる必要な投資が教育予算であるという考え方において、連立政権としても認識をともにしているところでございます。そのような立場に立ちまして、財政の許す限り私学助成にも今後さらに努力をすべきものと考えております。
  67. 左藤恵

    左藤委員 ありがとうございました。  以上で私の質問を終わらせていただきます。
  68. 上原康助

    上原委員長 これにて左藤君の質疑は終了いたしました。  次に、貝沼次郎君。
  69. 貝沼次郎

    貝沼委員 新進党の貝沼次郎でございます。若干の質問をさせていただきたいと存じます。  まず初めに、今回は住専の問題が随分関心が高く、世間は怒っております。大蔵大臣、世間は怒っているのですよ。国会議論をいろいろ聞いているけれどもわからない、要するに私ら何悪いことしたんだ、何で金出さなきゃいけないんだ、その根拠がさっぱりわからない、みんなであれがだめだ、これがだめだ、私は嫌だといって、残った分は国民にぽんと持っていく、そういうやり方は納得できない、こういう声が非常に高いのです。ですから、私はやはり、これはもう真っ先のところに戻るのですけれども、その説明がおろそかであったのじゃないのか、こう感じました。  そこで、きょうは住専じゃなしに「もんじゅ」め問題を中心にやることになっておりますが、その前に国民の皆さんの疑問に率直に大臣にお答え願いたい、こう思いまして、若干の時間で住専問題をさせていただきます。  それで、例えば先般の、これは報道でございますが、金融筋の報道として、住専七社の整理に伴って生じる一次損失は大蔵省が公表している六兆四千百億円を一千億円前後上回る見込みを明らかにしたという記事が、御存じだと思いますが、ございました。これで皆心配しておりまして、もしそうであればまた我々の財政資金の追加になってくるのではないか、こう心配しておるのですね。  したがって、まず、そういう事実があるのかないのか、この点について大臣の見解を求めたいと思います。
  70. 西村吉正

    西村政府委員 金融機関の活動は生きた経済の中でなされているものでございますから、そこから生じます損失も経済情勢の変化の影響を受けるということは事実でございます。ただ、一部の報道にございましたような、今回の住専処理に関して一千億円という損失がふえるというような報道がどういう根拠に基づくのか、私どもとしては承知をいたしておりません。  今回の住専処理スキームにおいて処理を要すると私どもが御説明申し上げております六兆四千百億円という額は、昨年八月の調査の時点におきまして、その時点における最新の計数を踏まえて把握された各社の損失見込み額の、これは積み上げでございます。さらに、欠損見込み額、千四百億円を加えたものでございます。この千四百億円は、本年度末までに発生する損失分をも適正に見込んで算出しておることでございます。したがいまして、現時点で見込んでいる要処理額が拡大するものとは私ども考えておりません。
  71. 貝沼次郎

    貝沼委員 いや、考えておるとか考えていないじゃなしに、今あなたが生き物だとおっしゃったように、動いているのですよ。動かないなんて考えることの方がおかしいのです、動いているのですよ。だから、変わっていないなんていう話ではないのです、それは注意深く見なければならないのですよ。もし見てないとすれば怠慢ですよ。  それで大臣、あるともないとも言えるのですが、そういう場合には、どうですか、財政負担の方に影響するのですか、しないのですか。その辺の考えはどうなっていますか。
  72. 久保亘

    久保国務大臣 住専問題処理機構が引き受けます債権の総額は約十三兆でございます。この十三兆のうち損失、欠損として見込みましたものが六兆四千百億でございまして、この六兆四千百億を当事者において負担することにいたしました。それで、その負担の及びません部分について六千八百億、五十億の出資が別にございますが、これを財政支出することといたしたのでございまして、この六兆四千百億が一千億ふえるという報道がございますことについては、その根拠について私も調べるよう指示いたしましたが、銀行局としては、そのような根拠は存在しない、こういうことでありました。  それで、六兆四千百億の損失総額がもしプラス・マイナスに動くという状況がありますならば、その場合に六兆四千百億の分担というのは変わらないのでありまして、マイナス、これが減るということになれば、その分は国庫に返る、こういうことになっております。これがもし損失が増加するというような状況になる場合には、いわゆる新たな状況の中での判断となるものだと思っております。
  73. 貝沼次郎

    貝沼委員 そうなんです。あなたは、命じて調査をさせて結論をもらったと言っていますね。それは時間がかかるからやめます、そこは。やめますが、今そういうお話でしたよ、報告を受けたと言っていましたから。  それで、新たな段階では新たな段階で判断するという、政府の考えは、今までの答弁を聞いておりますと、みんな今ここ主義なんですよ、俗に言う。今ここでは今ここでは、あのときはあのとき、今ここでは、こういうことでは、この議論が将来どういう影響があるのかよくわからない。それで国民は不安を持っております。  そこで、そのときまた判断するということですが、その判断の基準、判断なさるためには、こっちかこっちかと判断するわけですから、その判断の基準、これは何ですか。
  74. 久保亘

    久保国務大臣 六兆四千百億が一千億ふえるという報道に関して、これはどういうことかということで、私は銀行局にその説明を求めて、銀行局としては、今局長がお答えをしたことを私にも報告をしているということを申し上げたのでありま  それで、この六兆四千百億というのは、住専問題処理機構をつくらせていただきます。その段階において、これは動かざる数字なのであります。今後どういうような変化が起こるかというのは、処理機構の回収がどのように進むか、また、必要な、法的に求められる損害賠償がどのように請求され回収されるかといったような問題によって起こってくる問題であるということを申し上げているのであります。
  75. 貝沼次郎

    貝沼委員 僕は、足し算引き算の話をしているのじゃないのですよ、判断の話をしている。  それで、例えば六千八百五十億の財政資金の投入ということについての判断、これが見えないということなんです。ただ、例えば、前大蔵大臣の武村議員のお話によりますと政治判断、あるいは総理大臣の御答弁によりますと、いや、宮澤総理のときはそれでよかったけれども今は今だ、こう言う。何か、今ここまでぎりぎりでどうしようもないから何とかしてくれ、御理解をいただきたい、これが端的な答弁だろうと思うのですが、そういうことでは国民は納得できない。  例えば、もちろん国会で議決すれば、それは使えるわけですよ、支出は。どうですか、八十三条を大臣はどのように解釈しておりますか。憲法第八十三条ですよ。
  76. 西村吉正

    西村政府委員 私どもが御提案申し上げております計数でございますけれども、決して数字の根拠なしに御提案を申し上げているというわけではございません。既に提出をいたしております資料に基づいて積算をしておる。その結果、国会でお認めいただきますならば、私どもが適正に執行をさせていただくということかと考えております。(貝沼委員「八十三条、どう考えているか」と呼ぶ)
  77. 小村武

    ○小村政府委員 憲法八十三条は、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」ということを規定しております。したがいまして、今私ども議決を求めているのが、六千八百五十億円の財政支出についてお願いを申し上げているということでございます。
  78. 貝沼次郎

    貝沼委員 それはそのとおりなんですよ。したがって、私は、その条文の裏に、ただ六千八百五十億お願いしますというだけではないだろうと思うのですよ。憲法のこの条文の裏にはきちっと、国会の良識、あるいは、提案する者がそれに対しての議論するに十分な資料の提供、あるいは、こうこうこういう理由でこういう結果ですからという、これは特別の場合ですから、ちゃんとそれなりの説明というものが用意されて初めて議論になって、この条文にこたえることができると思いますね。  どうですか。それは、どういうことについて議論をされて、そして総合的に政治判断としてこういう結論になりましたということになるのですか。その柱はどういうことですか。
  79. 久保亘

    久保国務大臣 昨年の立入調査に基づいて必要な判断、協議が行われた結果として、六千八百億円の財政支出と五十億の出資を政府が行うことについて国会が御承認いただきますならば、これによって全体の住専問題処理スキームがつくられることになるということを御提案申し上げているのでありまして、そして、その方法をとることが、早期の解決を迫られているこの住専問題を処理するための最善の方策であるということを政府としては申し上げているのであります。
  80. 貝沼次郎

    貝沼委員 それじゃ答えにならないんですよ。答えにならない。六千八百五十億円が出てきた、これをお願いするに足る理由というものがどう吟味されておるかということを私はお尋ねしております。  例えば、もう時間がかかりますから私の方から、ざっぱな話ですが申し上げますと、判断材料として、政府はここに提供する義務があるのですよ、当然のこととして。そうでしょう。それをやんやん言われて、やっとあれ出したりこれ出したりというのは怠慢ですよ、それは。したがって、例えばですよ、これは当たっているかどうか知りませんが、一つの基準としては、これは財政資金ですから、公益性だと思うのですよ。補助金なんかの場合の基準は公益性ですから、公益性のその中身、どういうことで判断するのか。  一つは、例えば、本来こういうものはあっていいのか悪いのか。本来、そもそも論が当然議論されたはずであります。銀行かなり銀行局の方は抵抗して、最後にはがっくりいったようでありますけれども、そういう問題がある。  さらに、この問題の影響範囲、例えば災害の場合に、激甚災害なんかの場合は何県にわたるとか、あるいは作物の被害状況は何億円に相当するとか、きちっとやってからやるでしょう。そういう経済的な面あるいは広さの面というようなことでの基準があるはずであります。議論したはずです。ただどんぶり勘定でやっているとは思いません。  それからさらに、金融市場の信用破壊、これがどっちがどうなのか。返さない者が返さないで済むならば、金融の基本は信用ですから、御存じのように。信用ということは、借りたものは返す、また返さない者には貸さない。当たり前のことです。それが今度は借りた人が返さなくてもいいようなことになるということで、本当にこれが、信用の破壊度というものがどちらがどうなのか、その辺がちゃんとシミュレーションをやったのかどうか。  あるいは国の財政状況で、もううんと金が余ってしょうがないからやるということなのか、あるいは借金している国の財政のもとでどうなのかという問題だってこれはあるわけです。  さらに、国民の納税意欲、きょうの新聞でも、もう税金やめましょうという運動が起こっていると出ておりますが、納税意欲はどうなるのかという問題だって重大な問題ですよ。特に大蔵省は重大な問題ですよ、税金、集まらないんですから。  さらに、もう一つは、国民世論の支持があるかないか。国会だけで、ただ国会議員の数だけで決めればいいというものじゃない、これは。したがって、納税者のその世論の動向、世論というものはどうなのか。  その辺の調査をきちんとやった上で、それからさらに、今後もし、不幸なことでありますが、こういうようなことが起こった場合には、こういう物差しでもって判断をしてまいりますというものをちゃんと示さなければ、この後大きなものがまだうわさされておるわけでありますから、それは今やらないと言ったって、もうすぐあのときはあのときで、このときはこのときという話が出てきたら何にもならないので、こういうわけだからこれはやらないのですということをきちんと示しておかなければ、国民は納得いかないと思います。  まあ、簡単に私は柱を並べました。そのうち、例えば本来かくあるべしと言ってもこれは一番問題でしょうし、それから金融市場の信頼、信用の破壊の問題だって、これはそう簡単にはオーケーなんという話ではないでしょう。さらに、国の財政もよくないし、国民の納税意欲だって、今怒っているし、そしてさらに、世論の支持だって物すごく反対しているでしょう。こういうようなことをきちんとおやりになったのですかということをお尋ねしております。
  81. 西村吉正

    西村政府委員 ただいま御指摘の論点はまことにごもっともな論点だと思いますし、私どももそういう問題についてかなりの時間をかけまして、また各方面の御意見も伺いまして、またいろいろな場を通じまして検討を進めた結果、今回お願いをしております御提案を申し上げておる、こういうことでございます。
  82. 貝沼次郎

    貝沼委員 じゃ、なぜそれをここへ出さないのですか。出してください。今やった柱だけでも結構です。ここへ出してください。いいですか。これは出すか出さないか、大臣の判断ですから、いかがですか。出してください。
  83. 久保亘

    久保国務大臣 具体的に何をお出しするのでしょうか。今お話は伺いました。国益に関する見解の相違もあるのかなと私考えておりますけれども、具体的に何をお出しするのでしょうか。
  84. 貝沼次郎

    貝沼委員 聞いているのか、聞いていないのか疑問になってきましたが……。  私が今幾つか、八つばかり柱を申し上げました。全部やったと言っておりますから、この柱に沿ってどういう結論になったのか、出してください。
  85. 西村吉正

    西村政府委員 私先ほども申し上げましたように、先ほど指摘されましたいろいろな論点、私どももいろいろな機会に検討いたしました。そしてその中で、例えば積算の根拠等につきましては、私どもとしては、なし得る限りの資料提出させていただいておると信じておりますし、また、例えば将来の金融問題についての考え方をどのようにするかという点については、昨年の十二月二十二日に例えば金融制度調査会の答申をいただき、公表しておるところでございますが、そういう中に今後の金融のあり方、あるいは不良債権問題の処理の仕方ということについても真剣な御議論をいただき、世の中に問うているところでございます。
  86. 貝沼次郎

    貝沼委員 僕はそんな感想を聞いているんじゃないのです。やりましたかと言ったら、やったと言うから、それならば、この基準で、一つ一つはこういう結論でありましたというものを出してくださいと頼んでおる。出すなら出す、出さないなら出さないと、はっきり答えてください。
  87. 久保亘

    久保国務大臣 貝沼さんの所属されます党から御請求のありましたものにつきましても、可能な限りお出ししたつもりでございます。また、国会から御請求のありました資料につきましても提出してございます。具体的に委員会の方で御協議の上、これこれをということでございますならば、前向きに検討させていただきます。
  88. 貝沼次郎

    貝沼委員 ぜひ善処されますように委員長にお願いいたします。  要するに、大臣は、出せと言うなら出すという話ですよね。だけれども、僕が言ったのじゃ出さないと言うのでしょう。私への答弁で出すと言ってくださいよ、それだったら。はっきり言ってくださいよ。
  89. 久保亘

    久保国務大臣 これはやはり資料の要求に関しては、私があなたの要求に対して直接に御返事申し上げるということよりも、必要な資料であれば理事会等において御検討の上、御請求がございますならば、私どもの方として検討させていただくと申し上げているのでございます。
  90. 貝沼次郎

    貝沼委員 時間がありませんので、そこまでにしておきます。後は理事会にお任せしますから。  きょうは、動燃理事長の大石参考人にもわざわざおいでいただいておりますので、大変ありがとうございます。それで、「もんじゅ」の事故の問題でちょっとお伺いしたいと思います。  この動燃事業団、高速増殖炉「もんじゅ」、ナトリウム漏えい事故でございますが、これを聞いて、国民の皆さんはびっくりした。そうして、当局の話を聞いたら、うっかりしておりまして、それを聞いてがっかりしちゃった、こういう変な話なんですね。それで、やはりそうか、何やってんだ、こういう皆さんの感じなんです、あきれちゃったと。  そこで、この事故、概要、簡単にひとつ御説明願いたいと思います。
  91. 中川秀直

    ○中川国務大臣 委員長らくエネルギー問題を御専門にやってこられましたので、概要はもうつとに御案内のことであろうと存じますが、今回の事故そのものは、炉心で発生した熱を直接取り出す一次系ナトリウムではなくて、その一次系ナトリウムの熱を水や蒸気に伝える二次系ナトリウムの漏えい事故でございました。周辺公衆及び従事者への放射性物質による影響はございませんでしたし、原子炉も安全に停止をいたしました。炉心への影響もなかったわけでございます。  しかしながら、高い信頼性を有する、こういうことにいたしてまいりましたこの高速増殖炉「もんじゅ」の今日までの研究開発でございます。現実にその中でナトリウムの漏えいが起きたということは、これは重大なことでございます。  また、原子炉を停止するまでの時間が非常にかかったということ、漏えいがそのために長時間続いて火災が起きた。さらに、事故発生後の事業団の情報公開等にかかわる不適切な対応等々によりまして、国民の皆さん、特に地元の皆さんに大変な不信感あるいは不安感、あるいは怒りといったようなものをお与えしたということを極めて遺憾に思っておる次第でございます。
  92. 貝沼次郎

    貝沼委員 今回のこの問題の深刻さは、一つは、プルトニウムを扱っておる。今までの原子力発電と違って、この炉はプルトニウムを扱っておる。それからもう一つは、冷却材として水ではなくてナトリウムを扱っておる。そして、そのプルトニウムは、国際的にも核不拡散の問題と絡みまして大変難しいものであるというようなことから、我が国においても余剰プルトニウムは持たないという問題もこれあり、いろいろ政治的にも難しい話です。  それで、このプルトニウム、それからナトリウム、そしてさらにプルトニウムの量、こういうことを考えた場合に一体どういう反省をされておるのか。これは参考人にお尋ねしたいと思います。
  93. 大石博

    ○大石参考人 動燃事業団理事長大石博でございます。よろしくお願い申し上げます。  ただいま先生から御指摘のとおり、この「もんじゅ」というのは、これまでの原子力発電所と違いまして、プルトニウムを利用するということとナトリウムを冷却材で使用するということが大きな特徴かと思います。そして、高速増殖炉ということでございますので、プルトニウムを増殖するという、生産をするということが非常に大きな特徴かと思います。  まず最初に、改めておわびを一言だけ申し上げさせていただきたいと思いますが、ただいま大臣から御説明もございましたように、今回「もんじゅ」でナトリウム漏えい事故を発生させ、また、その後の事故対応の不手際もございまして、地元の皆様方を初め多くの方々に多大な御心配、御迷惑をおかけし、信頼を損なう結果になりましたことを、私どもとしてはまことに申しわけなく、深くおわびする次第でございます。  この事態を深刻に受けとめ、重大な事態と考えまして、現在徹底した原因の究明を総力を挙げて実施しておるところでございます。この原因が明らかになりましたら、今後は万全の再発防止対策を実施してまいります。  その中で重要なことは、この実施の状況を詳細に地域の皆様方を初め多くの方々にお知らせをしながら実施していくことが重要かと考えております。いわゆる徹底した情報公開を行いながら、地元の皆様方の御理解を得ながら進めていくということが非常に重要かと思っております。  それから二点目でございますが、やはり事故を起こしたことと、それから二つ目に事故後の対応がまずかった、この二点が私ども非常に大きな問題だと思っておりますので、事故を起こしたことにつきましては、ただいま申し上げました徹底した原因の究明と万全の再発防止対策を実施してまいります。  事故後の対応のまずさというのは、これは非常に難しい問題でございますけれども、私といたしましては、まず動燃の役職員の地元重視の意識改革ということが必要かと思います。それから、意識改革に加えまして、例えば通報連絡、情報公開等の管理の仕組みをしっかりとっくり上げる、抜本的な見直しを行うということによりまして、技術的な安心と社会的な信用回復、これに最善の努力を尽くしてまいりたい、かように決意しているところでございます。
  94. 貝沼次郎

    貝沼委員 ありがとうございました。  実は「もんじゅ」といいますと、もう「もんじゅ」と聞いただけで、ああ面倒くさい、こういう感じが出てくるのですが、ナトリウムという物質は空気中で反応するというのが水とは違う。だけれども、あの管の中を通るときはほとんど粘性その他においては水と余り変わりないということから、技術的に今までの軽水炉で扱ってきたものをまあ大丈夫だろうと言って使った。汎用技術として使った。ところが、こういう問題が起きた。あの温度計のところからちょっと漏れた。温度計が曲がった。こういうようなことで、水の場合だったら蒸気発生なんですが、今回はナトリウムがそこに出てくるために、空気と反応して、そしていろいろ起こるわけですね。  したがって、運転あるいは研究に携わるときに、携わる専門家がプルトニウムということとナトリウムということが頭にあれば対応の仕方が違うのですが、それが薄れておると対応はおくれるのですね。そういうようなことから、国民感情というものを基本に考えると、プルトニウムとナトリウムというものを扱う以上、今まで以上に当たり前のことであっても敏感に反応して対応しないと、この原子力平和利用のサイクルというものは、これは成就しないのじゃないのかということで、また今まで協力してきた人は心配もしておるわけです。  したがって、本日この議論で私ははっきりさせていただかなければならないのは、単なる漏れただけですとかそういうことではなしに、これの失敗、さらに今後こういうことが起こるならば、まず日本の原子力政策はもうどんとつっかえてしまって動かなくなるだろうという、そういう路線変更までもある意味において含み得る問題であったという重大認識を持たなければならないと考えておるのですが、長官、いかがですか。
  95. 中川秀直

    ○中川国務大臣 委員指摘の、前段の「もんじゅ」はプルトニウムの再利用、またその冷却材としてナトリウムを使うということで特殊であるという御指摘、その両方の物質について専門的な配慮を、従前の軽水炉とは全く違う意味で万全の安全対策を講じていかなければならぬという点、全くおっしゃるとおりで、同感でございます。  二段目の、「もんじゅ」がもし長い年月と経費をかけてまいりました研究開発が挫折をするなどということになりますと、我が国のエネルギー政策の基本であるリサイクル政策が完全に行き詰まるという御指摘も、全くおっしゃるとおりでございます。  資源のない我が国にとりまして、ウランの燃料自身も国際的に四十三年と、こう言われておる状況でございますだけに、この事故を教訓として、改めるべきは徹底的に改め、また体制のチェックも再びし、地元の方々、国民の理解と御協力が得られるように全力を挙げてまいりたい、こう考えております。
  96. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこで、科学技術庁あるいは動燃の方では、この事故が十二月の八日だったので、それも予算編成については既に修正をしてその分は見込んで対応なされたようですから、私は的確だったと思いますが、こういうことを含んでおりますので、大蔵大臣、この予算編成でどういう姿勢を見せるか、今度は次年度の予算編成のときにどういう姿勢を見せるかによって世界は注目しますから、これは大蔵大臣もよく、まあそのときも恐らく大蔵大臣だろうと私は思いますが、よく御認識をいただいておいた方がよろしいと。  それでさらに、どうでしょうか。大蔵大臣は、プルトニウムが絡み、そして今までの軽水炉でもって発電をやりますと、その燃えかすのところにはプルトニウムができてくるのです。それを再処理してプルトニウムだけ取り出すとかなんかはありますが、とにかくできてくる。原子力発電をやっていくに従ってプルトニウムがたまってくるのです。ところが、世界的には核不拡散ですから、日本はたくさん持ったら危ない、こう思っておるかどうか知りませんが、日本は余剰のプルトニウムは持ちません、こう言っておるわけです。信頼されておる。しかし、たまってくるのです。  それを使う方法は、プルトニウムを燃やしてしまうことなんです。ところが、そのプルトニウムを燃やす方法に、要するに、今の炉で燃やすか、さもなければFBR、いわゆる高速増殖炉で、さらにプルトニウムがたくさんできる、増殖するものに使ってやっていくかというような大ざっぱな話があるのですが。  どうなんですかね、大蔵大臣はこのプルトニウムを扱った「もんじゅ」の研究開発、こういうものに賛成ですか、反対ですか。
  97. 小村武

    ○小村政府委員 財政当局として、今御要求のあったものを真剣に受けとめて、今後予算に反映させたい……
  98. 貝沼次郎

    貝沼委員 わかっている。真剣に受けとめていることはわかっているんだ。大蔵大臣、賛成か反対か聞いている。
  99. 久保亘

    久保国務大臣 私は、プルトニウムについて、貝沼さんのような専門的知識はそんなに持ち合わせておりませんけれども、核の拡散を防止をする、そして核利用が今日絶対的な安全性が確認されていないという状況の中で、慎重に判断すべきものと考えております。
  100. 貝沼次郎

    貝沼委員 長官、政府の方針と同じですか。
  101. 中川秀直

    ○中川国務大臣 今大蔵大臣が御答弁になったことは、安全性を確保していくその重要性、その上で平和利用というものを含んだ御答弁であろうと思います。基本的にはそんなに変わっているとは思いません。
  102. 貝沼次郎

    貝沼委員 そんなに変わっているとは思わないと。やはり変わっているのでしょう。どうなんですか。
  103. 中川秀直

    ○中川国務大臣 基本的に変わっていると思いません。
  104. 貝沼次郎

    貝沼委員 しかし、今の大蔵大臣考えでいきますと、エネルギーの長期計画は実現できるのですか、それでは。
  105. 中川秀直

    ○中川国務大臣 エネルギーの長期計画は、もちろん安全が大前提であり、平和利用、これが大前提であります。そういう上で長期計画を立てておるわけでありますから、今の御答弁で制約を受ける、そういうことはございません。
  106. 貝沼次郎

    貝沼委員 先般まで社会党がありまして、そのときの書記長をやられておった時代の政策ですと、現在ある原発は、これはまあよろしい、プルトニウムについては大変シビアな考えだ、こういうことですよね。それは変わったのでしょうか、どうなんですか。
  107. 久保亘

    久保国務大臣 今世界じゅうで核の利用について絶対的な安全性を主張できる人たちは少ない、私はそう思っております。しかしまた、現実に、原子力発電が産業、経済、生活の中で非常に大きな分野を占めてきていることも事実でございます。  私どもは、将来にわたって電力エネルギーをどのようにしていくかということについては、政党には政党としての考え方がございます。そういうものを十分に論議を尽くしながら、何よりも安全性の確保ということについて全力を挙げていくということが政治としての、政党としての任務であろう、このようなことを申し上げたのでございます。
  108. 貝沼次郎

    貝沼委員 この議論をやっていると長くなりますので。  ただ、現在の内閣を支えておる副総理が政府の方針と若干違うということは……(発言する者あり)安全性は皆言っているのです。エネルギーそのものは不安定だからエネルギーなんですから、安全性は当然やらなければいけないのです。ですから、しかし、選挙をやってきたときの国民への約束と今閣僚になってからのやっておること、こういうことは政治家としては問われるわけでありますから、その辺が明確にされないと日本の原子力政策の姿勢というものは私は厳しく見られるのじゃないかと思います。  これはもうだんだん時間がなくなってきましたから、「もんじゅ」のもうちょっと別のところをやらなければいけません。そういう問題提起だけしておきます。  それで、実は安全性という話が先ほどから何回も出ておりますが、この安全性が実は、安全性よりも、その前に情報公開ですね。これが全くだめだったですね、今回は。全くだめ。まずうそをついたですね。このうそが一回や二回じゃないのですね。こういうことで信頼が得られるなんてとんでもない話なんです。  例えば、事故が起きてすぐビデオに撮ったのです。それは撮らなければならないのですよ、ちゃんと撮るというふうに決まっているのですから。撮らなければならないのに、入っていないと言ってごまかしたのです。後ではれるのです、これが。これがまずだめ。ビデオは撮ってなかったと、こういうふうにして、それから、だれが撮ったのかと言うとだれか勝手に撮ったのじゃないかと言うのだけれども、ああいう施設の中で勝手にビデオが撮れるなんということはあり得ない。それで、よく現場に行って聞いてみましたら、組織的にきちっと指示をして撮らせましたと。当たり前のことです。どうしてこういうつまらないうそを言うのかですね。  それからさらに、時間がないからもうこっちから申し上げますが、みんなで見たのですよ、そのビデオを。それを、いや、そんなにしっかり見てなかった、ちらちらと見ただけだと言うのだけれども、事故が起きているのに、一番近くまで行って撮っている人のビデオをちらちらと見てごまかせるような幹部はおるはずがありません。これもうそなんです。これもだめですね。  それから、プレスに発表したときも撮ったと言わないで、ドアをあけてのぞいただけだなんて言っている。そんな技術者がおるはずがないのです。それからさらに、自治体に知らせたのが、誤報がありますね。これも間違い。それからその後、ビデオを撮るのですが、それまた編集するのですね。そうして、そのもとのビデオを見せろと言われても、いや、何だかんだ、オリジナルはこれだとかあれだとかとごまかしていく。最後に、結局全部出すことになるんです。  こんなことをやっておって、いや、もう情報公開というのは、本当は資料とかいろいろな情報公開なんだけれども、こんなことすらできないというのでは、これはもう情報公開のその前の話だ、常識の話だ。科技庁はこんなことはそれでいいと指導してきたのですか。どうなんですか。
  109. 中川秀直

    ○中川国務大臣 原子力の開発につきましては、常に民主、自主、公開、この公開ということが三原則の一つに入っておりまして、その意味でそのような指導をしてきたはずでございます。  今回の事故の情報公開については甚だ遺憾な点があった、御指摘のとおりでございまして、私どももその意識で一層動燃に対して指導強化してまいらなければならぬと考えておるところでありますし、全般的に事故時の情報公開のあり方について、根本的にやはり幅広く御意見を聞きながら検討しなければいかぬ、こう考えております。  研究開発のこういう問題について、炉の運転その他についてはともかくトラブルがあったらすぐとめる、すぐ知らせる、これを原則にしていかなければならぬと考えておりますし、動燃におかれましても、その後その反省の上に立って全社的な情報公開体制、例えば新たな課をつくるとか、現場にも責任者をきちんと置く、こういった対応を今とっておる、このように聞き及んでおります。
  110. 貝沼次郎

    貝沼委員 もう時間の都合ではしょっていきますが、今情報公開、象徴的な話を申し上げました。だけれども、情報公開を、これは公開する、しない、この判断をだれがするのかということで実は問題になるわけです。  そこで、例えばこういう場合は、私の考えを申し上げたいと思いますが、非開示事項、開示してはならない事項を明確にしておけば全部開示できるのです。その辺がだれの判断でというと、その都度その都度ですから、それで求める方は急いでいるわけですから、何かあいまいなことになる。  これは、例えばIAEA、国際原子力機関の関係でできない部分とか、あるいはこれはPP、何と言うのですかね、フィジカルプロテクションというのは何と言うのだろうね、防護、防護関係で、盗まれるといけないからここには入りませんとかということははっきりしているわけですから、その開示していい部分と非開示事項というものをきちんとした上で職員が対応できるようにするなど、私はきちんとしなければならぬ、こう考えるのですけれども。簡単に。
  111. 中川秀直

    ○中川国務大臣 御指摘の点は全くそのとおりでございます。  現在は、核物質防護また不拡散上の情報、こういうものは非開示、また実は特許、実用新案あるいはノウハウ、技術提携に基づくそうした情報、商業上の機密というものに属する部分は、これはやはり損害賠償を請求されますので非開示にせざるを得ない、それ以外はすべて公開ということでやっていくというのが原則であろうと存じます。
  112. 貝沼次郎

    貝沼委員 それで、例えば「もんじゅ」なんかの場合には、見せて悪いところなんかほとんどないのですよ。それを見せないようにするから、何かあるのじゃないか、こういうふうになってきております。  したがって、地元の福島県、新潟県、福井県の三県の要望、提言におきましても、三つございまして、その初めが、原子力委員会に国民や地域の意見を十分反映させることのできる権威ある体制を整備して話し合いをお願いします、こう言っていますね。それからさらに、シンポジウム、フォーラム、公聴会等を主務官庁主導のもとで各地で積極的に行って、そして聞いてください、話し合いをして、同じ情報の上で議論をさせてください、こう言っているわけですよ。さらにまた、そういうようなことで話がうまくいったならば、必要な場合には原子力の長期計画等を見直すというところまでも覚悟を決めた、そういうお互いの話し合いをしてくれませんかというようなこと、そしてそういうことをさらに関係地方自治体に提示してくださいというような要望が出ていますね。これに対してはどうおこたえになりますか。
  113. 中川秀直

    ○中川国務大臣 現在、この三県の知事さんからの御要望を受けまして、私ども科学技術庁としても、また原子力委員会としても、その三点についての対応、具体策というものを目下早急に詰めるべく検討いたしております。  いろいろなそうした国民合意を得るための体制、あるいはまたさまざまなシンポジウム、フォーラムなどの地元での展開、開催、こういうものについても積極的に取り組んでまいりたい、このように考えております。  いろいろまた将来の全体像、こういうものもその都度幅広く、多くの方々のそうした中で御意見を聞きながら柔軟に検討してまいりたい、こう考えております。
  114. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、安全性の問題、これも象徴的な話だけ申し上げたいと思います。余りにもだらしがないという話なんです。  温度計ですね、今回。六十センチぐらいですか、管、ナトリウムが送られていく。高速増殖炉というと何かスピードが速くばあっとナトリウムが飛ぶような気がしますが、一秒間に二メーターですね、大体。粘性が水とほとんど一緒ですから、余り変わらない。ただ温度が五百度ぐらいですね。それで、その設計並びに施工、だれがどうやってという話になるのですが、どうですか、簡単に説明しますか。お願いします。
  115. 大石博

    ○大石参考人 今御指摘の温度計でございますけれども、この温度計に対するこれまでの動燃におきます取り組み方をまず御説明させていただきます。  この手の温度計は、火力発電所、原子力発電所を初め、一般産業界で汎用的に使われておるものでございます。いわば、温度計というのは汎用技術の一つであるというふうな認識を動燃ではしておりました。したがいまして、温度計の設計、製作、据えつけ等あるいは品質管理等につきましては、メーカー依存度が非常に高かったというのは事実でございます。  そうした中で、動燃として特に留意してまいりましたことは、今回のナトリウム漏えい事故でもわかりますように、温度計からナトリウムが漏れないようにすること、ここを非常に重要視してきたわけでございます。その中で、特に私ども動燃みずから実施してまいりましたのは、温度計を配管に取りつけるところ、その中でも重要なのは溶接部分でございます。その部分につきましては、動燃みずから大丈夫かどうかということを十分検証し、試験もやり、確認をしてきたところでございます。今回、溶接部分ではなくて温度計そのものの先端部分、さや管と言っておりますが、そこが折損し、そこからナトリウムが漏れ出したということでございまして、私ども、この点の分析評価が抜けておったということを大変に深く反省しておるところでございます。  先生先ほどおっしゃいましたように、「もんじゅ」では、軽水炉の発電と違って、ナトリウムを冷却材として使っておりますので、ナトリウムの漏えい防止ということはFBR開発技術の非常に重要な要素でございます。この点について、配管やバルブあるいはタンク等の機器につきましては、長い年月をかけて機器開発を行い、やってまいりましたけれども、温度計が汎用的なところが多いものですから、動燃みずからナトリウムの漏えい防止ということについての研究開発が足りなかったということを深く反省しておるところでございまして、これを機会に温度計のさらなる信頼性向上、品質管理の徹底に努めてまいる所存でございます。
  116. 貝沼次郎

    貝沼委員 今説明のとおりでありますが、はっきり申し上げまして、普通使っているものだからそのまま使いました。それで下請の、素材は素材、あるいは加工、熱電対、みんな別々なんですが、そこに頼んで、そして仕様書を見て、じゃ、お願いしますと頼んだ。それで、その組み立てばどこでやったかというと工場でやって、そこでは、今おっしゃったように、いろいろ実験はしておるけれども、それを今度はそのまま取りつけたのを持ってきて、溶接のところを一生懸命検査してきて、そして持ってきて現場で組み立てた、そのときは見たのかというと、見ておりません。要するにペーパーを見ただけです。信用しておりました。ところが、その温度計から実は問題が起こりました。こういうことなんです。  したがって、そういう汎用技術であっても、水のときとナトリウムのときが似ておるといっても違うものですから、そこに注意がなかったのではないかということで、これは象徴的な問題になるわけです。  もう一つは、さらにこのところで今、温度計、ちょうどこれぐらいのものなんですが、直角に出ているのですね、二メーターで流れるところへ。だれが考えても直角に出すよりはちょっと斜めにしておいた方が本当は抵抗が少ないんですけれども、まあ今まで問題がないからといって直角に出ておる。それがやられて、それで折れちゃった、こういう話なんですよ。これが四十五度に傾いておる。ちょうどこれぐらいの大きさなんですが、それがさやがかかっておったのです。このさやが、ロスパーツなんという言葉で言っていますが、さやが見えない、どこにいっちゃったかまだわからない。  したがって、このさやが発見されれば原因というものがよくわかるのですが、何といったってあれだけのところを、ぐるぐる回っているところを探すわけですから、大変なんだと思います。このさやの、何といいますか、探索はどの辺まで進んでいるのですか、それだけ簡単にちょっと、時間がありませんので。
  117. 大石博

    ○大石参考人 御指摘のさや管の探索は、一月の二十六日から開始をいたしております。この開始の計画は四段階に分けてやっておりまして、現在第二段階まで進んでおります。  第一段階は、主として配管が水平に走っている部分を中心にやりました。これは、全部で約百八十メーター程度ございます。そこでは、放射線撮影によって調べたのでございますが、見つかりませんでした。第二段階は、この配管の一番下流といいますか、そこに熱交換器がございます。加熱器と申しておりますが、その入り口付近の配管を調べました。ここにも見当たりませんでした。したがいまして、現在第三段階に入ろうとしておるところでございます。これは、熱交換器、加熱器と言っておりますが、これの本体の入り口のところを調べます。それから、第四段階は、ナトリウムが何か問題があったときに抜き取るタンクがございます。抜き取る槽がございますが、そこの中に行っているかもしれないということで、その第四段階をやりますと必ずどこかに見つかるであろうというふうに私ども考えております。  それでこれは、やはり何が何でもこのさや管は発見し、取り出さなければなりません。「もんじゅ」の運転を行うにはどうしてもこのさや管は取り出さなければなりませんし、あわせて、先生御指摘の原因究明にも必要でございますので、最大の努力を今続けておるところでございます。
  118. 貝沼次郎

    貝沼委員 もう時間がなくなりましたので、私の方から申し上げまして、それで最後に大臣のあれを伺っておきたいと思いますが、一つは、運転体制がだめだったのですよ。チーム組んでやっているのですが、何か起こった場合に、確かにブザーが鳴りますよ。ブザーが鳴りますけれども、現場を指示する人とそれからほかのところに連絡する人と一人の人がやっているのですよ。そんなことはできるわけがない。したがって、この体制、今度変えるという話ですから、きちんとやってもらわなければいけません。  それからさらに、計器ではわかるが、ナトリウムが漏れたときの計器はわかるが、ちょっと漏れたのは計器では見えないのです。計器の性能が悪い。これは認めておるところです。したがって、こういうものもちゃんと考え直さなければいけません。それもやろうと思ったのですが、もう時間がありませんから。  それから、運転マニュアルも、これもかなり問題があります。まあ科学技術委員会あたりでやるのでしょうが、問題がある。  それから、大体人間の判断に頼っている部分がかなりある。ところが、人間はたまたま間違いを起こしますから、そういうヒューマンエラーというものを考慮した設計思想にならなければ、私は危ないと思いますよ、はっきり言って。これがまあ安全運転の方です。  それから、実際、まあそういう管が走っているとかそういうところを、今度はカメラとかあるいは常時監視するとかあるいは巡視、点検、そういうものがやはりまだまだちょっと油断があります。これはかなり充実するようですから、きちっとやってもらわないと、国民は納得しないと思います。  それから、危機管理問題で、例えば起こった場合に第一報を本社に入れる。本社がオーケー出さなければ言えない。ところが、この場合には、本社へ連絡がつかなかったんだよ。(発言する者あり)いや、わかっている。わかっているよ。あなたが言うと、時間が長くなるのだよ。  それで、本社に連絡したけれども、連絡つかなかった。困ったから別のところで連絡とったという、こういう体制ですから、もっとやらなければいけない。それで、今までこの連絡をやっているのは全部電話で、それで六十カ所以上も電話しなければならない。そんなこと間に合うはずがない。したがって、住民の側から考えたならば、こういう体制をもっとがっちりやってもらいたい、こういうことです。  したがって、私は、これはかなり疑問が大きくなっておりますので、もうこの際、ゆっくりと時間をかけてじっくりやってもらいたい。決して急いではならない。急ぐことがむしろ原子力政策をおくれさすことになる、こういうことを私は申し上げたいと思います。  大臣、もしありましたら、一言だけ。
  119. 中川秀直

    ○中川国務大臣 御指摘の諸点、十分踏まえて、今対応策をとれるものからとっておりますし、これからも万全にやってまいります。
  120. 貝沼次郎

    貝沼委員 終わります。
  121. 上原康助

    上原委員長 これにて貝沼君の質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時九分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  122. 上原康助

    上原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。安倍基雄君。
  123. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私は、今度初めて実は質問に立ちます。と申しますのは、私は実は大蔵の出身でもあり、私が正論を言ってもいかにも大蔵省擁護に聞かれてしまうということもございまして、若い方々に質問していただきました。非常にもう皆さんよく勉強されて、問題点を本当に浮き彫りにされていきました。  私は、久保大蔵大臣とは、かつて野党のころ、消費税で私も何か一緒に対談なんかしたことは覚えていますが、宮下創平君たちあたりと。そのころからなかなかの理論家だなという敬意は持っております。また、大原大臣大蔵の二年先輩でございます。そういった個人的な気持ちもございますけれども、この場では、本当に私は国民の代表の一人として、いろいろなことを、びしびしとといっては申しわけないけれども、質問させていただきます。  最初に、これは官房長官にお聞きしたいのですが、かつてこの委員会の冒頭で、米沢幹事長に橋本総理大臣が、村山さんの退陣は潔かったというような発言をされたことがございます。私はこの点について、幹事長はこれは憲法違反だと言いましたけれども、それは私、憲法違反とは言えないと。ただし、政治的に非常に問題があると思わざるを得ない。この点について、個人的に、橋本総理大臣の潔いという言い方をどうお考えになるかということを官房長官にお聞きしたい。
  124. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 事詳しく総理の村山前大臣の評価についての言葉を知りませんけれども、総理は時々、政治家の出処進退はみずからが決するところ、その信念に基づいた行動とこれを大きく受けとめ、心から敬意を表しますというような表現を使っていることは間違いがございませんし、私はやはり、当時、意表をついてという言葉がいいのかどうかわかりませんが、それぞれの政党、それぞれの政治に携わる者、予期をせぬ時期に御退陣をなすった、そういうことに対するあれは、それぞれみずからが自分の信ずるところに従って出処進退をお決めになったものだ、こう総理と同じように感じております。  ただ、一つ言えることは、それが公的にどうであったかどうかというのは、やはり今々すぐに評価ができる問題ではなくて、後世史家の評価にまつべきところが多いと思うのですが、これからの政治の流れの中で評価をさるべきかどうかというのは、さらに評価が別な観点でもあろうかとも思います。
  125. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 予算を組んだ総理がやめたことはない。これはよく、そう言いますと、細川さんが途中でやめたじゃないかとか石橋さんがやめたじゃないかという話が出てくるのです。ただその場合に、ここに深谷議員、おられませんけれども予算委員会で細川さんの個人的な借金問題がボディーブローのようにたたかれておった。当時そこで、こんなうそつきな総理の提出した予算議論できるかというような話まで出た。私はそのときのテレビを見まして、これは本当に予算委員会、そういうことばっかりじゃないかという感じを受けましたけれども、ただそこで、私自身も細川さんの退陣というのは非常に不快でございました。責任放棄だと思いました。  ただ、そこで問題なのは、次の羽田内閣は藤井大蔵大臣を留任させたのですね。この点、皆さん忘れておる。それから、石橋さんが要するに退陣した。体が悪かった。それとともに、それを継いだ岸内閣は閣僚を全員留任させたのです。官房長官だけはかえました。当時の官房長官は今のように偉い官房長官ではなくて秘書役みたいなものだったようでございます。  と申しますのは、憲政史上、こうやって予算提出した内閣が、総理大臣がやめてかつ大蔵大臣もやめるということはないのです。私は、これは憲法の問題ではなくて、やはり政治家の姿勢の問題だと思います。  今、官房長官は後世の史家の判定にまつと言われましたけれども、これは、私は久保大臣も気の毒だと思います。しかし、組閣をされたとき、本来私はここで橋本総理に言おうと思っておったのでございますけれども、官房長官も恐らく組閣にタッチしたと思いますけれども、やはり政治家の姿勢として、これは、大蔵大臣、特に今回は農林大臣、この二人を留任させるのが本来の政治姿勢ではなかったかと私は思います。  現在、皆さんは、母体責任とかあるいは経営責任とかいろいろ言っております。しかし、政治家自身が本当に責任を負わずして何で彼らの責任を追及できるのですか。私はこの点、内閣、つまり交代をして仕方がないとおっしゃるけれども、これはまさに政治家が自分で責任を放棄したことではないか。しかも、それを受け継いだ橋本内閣が事の重大性を理解せず大蔵大臣も農林大臣も新任、新しくしたということは、後継内閣橋本内閣の責任であるのです。この点、私は橋本さんに国民に謝ってもらいたいし、官房長官もそれについてどう考えられるか。これは資質のよしあしてはございません。確かに武村さんはワースト大臣と言われました。しかし、彼自身がその予算を編成したのですから、この点につきまして、深谷さんはおられないけれども、官房長官、どう私の議論についてお考えですか。それで本当に責任を全うしたと思いますか、政治家が。
  126. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 この橋本内閣の誕生のいきさつについては、安倍委員、よく御承知のとおりだと思いますが、村山前総理が辞意を表明をされ、そして今、その与党を形成する三党がそれぞれその立場理解をし協議をし、そしてさらに三党合意の政策を踏まえて次の首班を後継と決めたわけでございますから、前内閣のすべての責任を踏襲をしているのが今内閣でございますし、その彼らの出したこの住専問題の処理案、これは間違いなく当内閣に引き継がれたものと理解をいたしますし、また、そのとおりに現在政治の遂行に当たっているわけでございますから、この憲法違反という議論は、先ほどないとこう言われましたからあれなんですが、確かに、全面的におかわりになることがいいかどうか、それはそれぞれの主観の問題もあろうかと思いますが、いずれにしても、三党合意を踏まえ、その決定に従って我々の内閣が誕生したわけでありますから、その点では自発的なまた意図を持っているわけでございますので、御了解のほどを願いたいと思います。
  127. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これはまさに後世の史家の判定するところでございましょう。ただし、このように住専問題でいろいろな人の責任を追及するときに、政治家自身が責任をとらないということが一番の問題ではないかと私は考えております。  次に、公的資金の導入の問題がございます。  これを決めたのはだれか。私の理解しておりますところは、当初の案は、国費を導入しない形で、税金を投入しない形で考えられておった。そこにおられる越智さんなんかが座長でやっていたプロジェクトもその考えで進んでおったと聞いております。  私は、主計局長にお聞きしたいのですが、大蔵原案において当初から国費を導入するあれであったかどうか。これは何も閣議決定の直前じゃなくて、当初の要するに討議のときにそういう事実があったかどうか。それは何も政治家に遠慮することはございません、はっきり言ってちょうだい。
  128. 小村武

    ○小村政府委員 昨年の四月の経済対策以来、累次の経済対策でこの住専問題が大変重要な課題であるということで、真剣に私どももその論議を見守ってまいりました 関係者が多数いる中で、いろいろな案が途中にございましたが、最終的には、十二月の十九日の閣議決定を経て、私どもはその内容に基づいて十二月二十日に大蔵原案で内示をしたところでございます。
  129. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 きのう、松岡委員がある記事をもとにして言われました。これは新聞記事に答えられないという話をいろいろされましたけれども、これは、明らかに当初においては、原案としては公的資金を導入しない考え考えておった、ところが、この国会、まあ農林族と言ってはあれでございますけれども、それのいわば総攻めに遭い、最終的に公費投入になったと私は理解しております。  と申しますのは、やはりそこに政治家が最終決定をした。武村さんも、大所高所から政治決断をしたということをはっきり参考人として言っております。本来は、武村さんが参考人でしゃべるのじゃなくて、ここに来て当事者として説明するのが当然なんでございますけれども。その意味で、私は、今回の公的資金導入の最終決断は、これはやはり政治家がしたと思わざるを得ない。これは事実だと思いますよ、いかがでございますか。これは答弁としては、大蔵大臣が武村さんの後を継ぐのであればその答えをください。
  130. 久保亘

    久保国務大臣 与党のプロジェクトの協議、合意もあり、そしていろいろな経過を踏まえた上で十二月十九日、閣議において決定せられたのでありますから、政治家が決めたということは当然だと思っております。
  131. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これは事実です。私は、いろいろこれまでの議論において、政治家が最終的に人に責任をなすりつけている、なすりつけているという言い方は悪いかもしれませんけれども、最終決断は政治がやったということをきちっと踏まえていただきたいと思います。  そこで、このもとになった第二次再建計画住専のですね、これが今までの決着のいわば基礎になったと言われております。この点につきまして寺村局長もいろいろ言っておりました。しかし私は、ここにおいて一番の背景にあるのは、やはり当時の、加藤さんがここへ来て関係ないと言いましたけれども、官房長官である加藤幹事長、これはタッチしていないはずがない。と申しますのは、公的資金の導入につきまして当時議論があった、それで宮澤さんに話を持っていった、宮澤さんも一時そこに傾いた、ところがいわば最終的に公的資金の導入は難しいことになった、そこで最終的に密約という形で出された。  私は、いろいろ今までの議論を通じて聞きますのは、幹事長だけでやったという話になっております。しかし、通常の金融常識からいえば、これほどいわば系統に有利な案はないのです。と申しますのは、私は海外でも生活は多いのですけれども、もしこれを全然手を放せば、官庁が介入しなければ当事者間の話し合いになるわけです。日本の法制でいっても、再建計画ができなければ破産になるわけです。そのときに、果たしてどの程度系統がいわば貸し金を回収できるか。  これは、考えてみますると、要するに系統の出しているのは預金じゃないのですから、債権者が同列に並んでいわば論議するわけでございますから、当時おれたちは引き揚げようと思ったのにとめた、だから元本保証だという話は、もし全く行政がそこにタッチしなければ表へ出せる議論じゃないのです。これは平田委員もいろいろ指摘しておりますけれども、これはやはり密約というか、あれは効果がないということと同時に、通常の金融常識からいったらあり得ないことなんです。  ただ、そこで、当時において寺村銀行局長が、ここで金融機関の破綻が一つ起こったら大変だと。当時は株も落ち、何も非常に――現在のように金融機関のあれがございませんから、今はいろいろなのが出てきていますからあれですけれども、当時は全くそういうことはなかった、株価も落ちている、不良債権の全額もわからぬ、その状況住専が倒れるということは大変だという危機意識があったと思います。これがいい判断だったか悪い判断だったかというのはいろいろ議論があるかと思いますけれども、しかし、そこで通常のケースならば、ある債権者が完全にすべてのものに優先して支援を受けるということは考えられないのです。ここにやはり私は、当時における官房長官であった加藤幹事長のいわば影響力がある。今回の公的資金導入においても、第二次再建案においても、加藤幹事長がやはりきちっと動いておると私は見ざるを得ない。  でございますから、私が言いたいのは、すべて役人の責任にするというのではなくて、陰に隠れて政治家が責任をとらないということが一番問題じゃないかと私は思っております。これは私、一方的に、実は加藤さんの参考人のときに私は別に聞かなかったわけでございますけれども、これはいろいろ言われておりますけれども、最終決断は政治家がやっていると、その政治家が本当に責任をとらぬで、何で要するに行政責任あるいは母体行の責任を問えるかということでございます。  そこで、行政責任を問うならば一体どこにあるかというと、私は基本的には、きのういろいろ、きのうでしたかな、議論がございましたが、おとといだったかな平田議員が追及されましたけれども、総量規制の前、総量規制の後、ここに膨大な資金系統から住専に流れた、そこに一番根本があるのです。もう既に流し込んじゃった後ですから、第二次再建案のときには必死になって取り返そうとした、これはわかります。しかし、一番の基礎は総量規制の前後に、あれだけの要するに脆弱な体質であるところの系統から膨大な資金が流入した。それを見過ごした。黙認したのか見過ごしたのか、あるいはむしろ奨励と言ってはまずいけれども、それをいわば何というか、やはりいい資金運用場所だということでもって、奨励とは言わないにしても認めた。そこに一番の行政上の責任があるのじゃないか。一度それだけの資金が流入すれば、今度は引き揚げようと思って必死になるのはわかります。  そこで、私は農水省に聞きたいのですけれども、当時において、それに気がつかなかったのか、あるいは黙認したのか、あるいはここで土門という人が書いておりますけれども、むしろ政策当局の指示によってやったとまで書いております。その辺の事情を農水当局から聞きたいと思います。
  132. 堤英隆

    堤政府委員 総量規制前後の系統から住専への資金の流出につきましては、ここでも何度かお答え申し上げているところでございますが、その実行状況につきましては、大蔵省それから農林水産省それぞれに対しまして実績報告という形でとっていたということは何回か申し上げたところでございます。  そういう意味で、平成二年、まさに御指摘のようにいわゆる総量規制通達が出されたわけでございますが、その中で不動産業向けの総量規制を主眼とするということで出されたわけでございますが、あわせて住専を含みますノンバンクにつきましても報告という形で貸し出しの動向を把握し、注視するということでしておりまして、農林水産省といたしましても必要に応じて、この趣旨を体しまして関係者に対します注意喚起あるいは理解を求めたところでございます。  ただ当時、私二つほどここで申し上げているわけでございますが、住専が当時、系統にとりましては、国民に対しまして広く住宅の資金を供給するという社会的公共性が非常に高いということとして受け取られていたということと、現実にまた当時、住宅向けの資金需要が非常に高かったというような事情があったということでございます。  それからもう一つは、農協の貯金量がふえてくる中で貯貸率が下がってくるということで、農協といたしましてもやはり良好な貸付先をきちっとして、言ってみれば経営の健全化を目指していくというような努力を重ねていたわけでございますが、そういう意味では、住専が金融機関貸し付け扱いというふうになっていたこともございますし、今申し上げましたような、公共性の高い住宅需要ということに応じたものであった、存在がそういうものであったということの中でそういう対応をしてきたということであります。  当方としましても、注意喚起等を行いまして理解を求めたところでございますが、今申し上げたような理由から、他の業態ほどには効果が上がらなかったということでございます。
  133. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 簡単に申しまするならば、住専はいい貸付先だからそこへの融資は黙認したというか、今の話だとかえって奨励したような格好じゃないですか。大体が、総量規制通達でこれをやめなさいと自分で指示している、自分で。報告を求めるということは、既に報告の義務があるから外したと。外しはしたけれども、きちっと報告を前からさせているわけです。  でありますから、その時点で、今のように住専はいい貸付先だからということは全く、当時逆に農水省は奨励したことじゃないですか。自分の通達に違反しているじゃないですか。しかも、かつて同僚委員が質問しましたように、系統は自分の協同ローンを持っているのです。でありますから、その不動産融資の危険性あたりはわかっているのです。今、注意を喚起したとかなんとか言っているけれども、本当にとめたのですか。本当にとめていれば、こんなにふえるはずないじゃないですか。  逆に、本当にあなた方、今言っているのは、住専は安全なものだから、いい貸付先だということを自分でも言っているじゃないですか。自分自身が総量規制通達で抑制しておいて、それでもって自分自身が裏ではどんどん出させているじゃないですか。本当にとめたのですか。そこをはっきりしてください、とめたかどうか。短くしてください、一言で、イエスかノーで。
  134. 堤英隆

    堤政府委員 政府として、そういう奨励をするとか、そういうことをするはずがございませんで、私どもも、総量規制の通達の趣旨、三業種規制の通達に沿いまして、先ほども御説明を申し上げましたように、関係者に対する注意喚起あるいは理解を求めるという努力をしたところでございます。
  135. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 大体、注意を喚起してあれだけふえますか。ここに一番の問題点があるのですよ、官房長官。行政責任というけれども、私は、あのときの行政が一番の責任者だと思う。そう思いませんか。官房長官、どう思いますか。
  136. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 私が答えるべき立場にはございませんが、確かにその一番大きかった原因は、その総量規制を行ったものが完全にいったのかどうなのか。それから、その当時本当に土地が高いのを抑えようとしたのか、あるいはそのまま緩やかに下降させようとしたのか、その辺のところもわかりませんし、よく統計を見てみますと、株価は既に暴落が始まっている段階で、二年たって総量規制を行ったのですから、自然と私は、資産インフレは収束をしてデフレの方向に向いているときにさらにその総量規制を行ったわけでありますから、土地が高いか安いかという理論は別にいたしまして、急速に下がった、そういう認識は持っております。
  137. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 まあ、ちょっとその辺の認識は不十分なのですよ。やはり、かつて与謝野さんがここで言っていました、電灯をぱっと消した人がいると。総量規制によってがあっと下がったのですよ、現実問題として。でございますから、そういう経済情勢のもとに、まあいわば系統経営者も経済がよくわからぬ。今、農水省の担当者は、当時いい貸付先だから、要するに認めたかのごとき発言をした。  当時、私はここで言うのは悪いけれども、今の土門という人が書いていますけれども、堤君は当時の金融課長だったそうです。私は、金融課長は必ずしも農協の監督ではございません、それはわかっています。しかし、当時における経済局の空気はわかっていたはずです。こういう、きのうですか、平田君が、一兆数千億のところから二兆、三兆とふえた、ここに一番の原因があるのです。(発言する者あり)要するに農水の当局が言っているのです。まあ不規則発言は構わない。まあいずれにせよ――お静かに願います。いずれにせよ、行政責任を問うならば、一番そこにあるのです。ここは、私はもう動かしがたい事実です。それがすべての根源になっているのですね。  この点で私は、今までの密約がけしからぬとか、いろいろ話がございますけれども、一番けしからぬのはそこなんですよ。その後は、その結果をどう要するに処理しようかと。それで、第二次再建案ができたときにああいったことができた。これまた経営的によかった。これはやはり政治が動いているんです。  そこで、私は本当に、ここでいろいろ彼らの責任を問うのもいい、しかし一番の責任はどこかという本質を見きわめる必要がある。これを見きわめないで、ただただおくれたじゃないかとか、再建案のときにほっておけばよかったじゃないかといろいろ議論してもしようがないんです。私は、その点で、もう少し責任はどこにどうあったのかということをきちっと考えておく必要があると思  います。  そこで、時間もどんどん来ますから、ここで大蔵大臣に聞きたいと思うんですけれども、今まで六千八百五十億ですか、その話ばかり出ていました、その根拠ですね。では、第二次損失を二分の一にした理由づけは何ですか。というのは、これは、今まで直接的な話ばかり出ましたけれども、第二次損失を何で二分の一国庫負担することにしたんですか。これについてのいわばあれは全くないんです。このときはたしか、恐らくもう久保大臣大臣に就任後だと思いますが、その辺、これから第二次損失がどんどんどんどんとふえていくかもしれない、そのときに二分の一負担にした根拠は何ですか。大臣答えてください、これはむしろ、一番大事な話ですから。要するに、事務当局じゃなくて、大臣がやはりそこでどういう認識であったか。これは大事な話ですよ。
  138. 久保亘

    久保国務大臣 いわゆる第二次ロスが生じました場合には、これに対して公的な支出を行うことについては既に確認をされてきたことでございます。これは、六千八百五十億の財政支出を決めますときに同時に決定されたことであります。この万一に生ずる第二次ロスの負担をどうするかという問題は、全体の仕組みを関係者との協議の中で合意してまいります場合に、官民折半、こういうことで決められたものと思っております。  なお、詳細な点が必要であれば、政府委員から答弁させます。
  139. 西村吉正

    西村政府委員 今大臣からお答え申し上げましたように、全体の枠組みの中でこの問題についてどういう答えを出すかということでございますが、まず、全体の枠組みということとの関連で申し上げますと、第一次ロスと言われている当面どうしても解決しなければいけない部分、ここで関係者がぎりぎりの努力をし、限界的な対応をした、こういうことでございます。それを上回るロスが仮に生じた場合にどうするか、これは日本の金融システム全体のためでございますから、関係の民間金融機関と公の立場から国がそれぞれ折半をしてこの問題に対処しよう、こういう考え方でございます。
  140. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これは私は、六千八百五十億の報道がなされたときに第二次損失の話が出たと、しかも折半だと。通常であればなかなかそういった話は、後から出てくる可能性もあるんですよ。  私のこれは推理ですけれども、なぞ解き的かもしれませんけれども、御承知のように、この七兆五千億を最初基準として、母体行が三・五兆、一般行が一・七兆、そうすると系統は二・三兆になる。それは幾ら何でも系統は二・三兆は負担できないだろうというところで、いわゆる六・四兆に下げて、そして三・五兆、一・七兆、一・二兆というぐあいにいわば計算し直した。  そこで大体話がつくものと思っておったところが、もう最後の折衝で、要するに五千三百しか負担できないという話になって、それで六千八百五十を国が負担することになった。ここで、おさまらないと、恐らく銀行の側からとんでもない話と、我々は七・五兆で来て第二次損失まで含めてやるはずだったのが、六・四になり、かつ国庫負担がこれだけになった、これじゃたまらぬぞということで、もしこの国費投入があるならば次の損害はちゃんと国も半分見てくれ、それでなかったら第一次案は受け入れないというような話になって、やっぱり同時決着になったんじゃないか。  やはり基本は、公費導入、公的資金導入がいわば一つの大きな、まあつまずきという言い方は悪いですけれどもそれになって、最終的に第二次は折半しようという話に決着せざるを得なかったんじゃないかと私は推測しております。これは別に大蔵省から聞いたわけでも何でもございません。これはまあ私の推測かもしれませんけれども、その辺の事情は、こういった事情があったのかないのか、大蔵大臣は御存じですか。
  141. 久保亘

    久保国務大臣 安倍さんの御推測でございますから、なかなかその今おっしゃったことが、そのとおりの話があったのかどうかというようなことをちょっと私はお答えできるものじゃございませんが、ただ、私も詳細な事後報告を受けておりまして、その内容は、これだけのスキームを多くの関係者との間で協議をしてまいるわけでありますから、その間にはいろいろな意見があったことは承っております。その内容の一つずつについては私が承知をしていることではございませんが、多くの意見があり、今安倍さんがお話しになりましたような中での意見も部分的にはあっただろうと思います。そういうものの意見協議の上に最終的に関係者が同意されたものが、今お示しをしているスキームであり結論であったと思っております。
  142. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いずれにいたしましても、当初においては公的資金導入なしでやろうと思っておったのが、急速こうなった、それがやはり一番の私は出発点じゃないかな。それは幾らいろいろ、十九日のあれで決まりましたとおっしゃるけれども、いろいろ新聞報道、これは全くうそかどうかという話、これは新聞と争っていただいてもいいと思いますが、あれだけ財政の危機宣言をした事務当局、まあそれは大臣も含めてでしょうけれども、それがこういうことで踏み切った裏には、やはり、今政府・与党とおっしゃいましたけれども、加藤幹事長を含め、そういった政治的な決着というものがその第二次損失のにも響いているのではないか。  簡単に言いますと、二分の一負担といっても、よく大臣は、もう取り立てを強くして絶対に損が出ないようにしますと言いますけれども、それは二分の一国庫負担の理屈じゃないんですよ。国と折半するという話は、これは重大な問題なんですね。六千八百五十億どころの騒ぎじゃないんです、損の出方によっては。  現在、今までも議論ございましたように、地価はどんどん下がっています。午前中も、貝沼委員がどんどん第一次損失がふえているじゃないかと言われました。そう考えますと、第二次損失のふえる可能性がある。それを二分の一ということをコミットしたということは、これは大きなことなんですよ。今まで余りこの話が、最初の六千八百五十億に注意が集中しちゃって、二分の一負担というやつが何となく、まあ私は落ち穂拾いでいろいろな議論をしているわけですけれども、飛んじゃっている。これはこれからの地価の下落によっては重大な問題なんです。  そう見ますと、六千八百五十億を投入するということがこちらにまた響いてきていると私は考えております。これは恐らく、あるいはまたマスコミの方々がいろいろ推論したり取材したりすると思いますけれども、そうじやなかったら、最初の六千八百五十億に、その次もまた第二次損失を半分見ますというような、一遍に出てきませんよ。やはり同時決着だったのですね。いずれにせよ、この話はこれから大きく問題になるのじゃないかと私は思っております。  問題は、この前久保大臣はノンバンクにはこれから公費投入はないと。公費投入という意味は海外にはどう伝わるか。今税金になっていますけれども、公的支援という話で融資の問題もあると思いますがね。このノンバンクに公的支援をしないと。これは恐らく海外では融資もしないと思ったかもしれませんけれども、それにまた海外の市場が非常に反発している、市場というか有識者が。でございますから、あなたが向こうの国際会議に行ってみんなから褒められた、褒められたと言いますけれども、あれは何も税金を使うからということで褒められたんじゃないんですよ。これは要するに、いざとなれば国が出ていってそういった不安を静めます、それでもってある程度の決着をつけますということで褒められたのであって、税金を使いますからといって評価されたのではないんですよ。これを間違っちゃ困るのです。  それで、今あなたがノンバンクに出さないということで、また海外で一体どうなっているのだというあれもあるようでございますけれども、これから住専は、やはりノンバンク全体の大きな問題があるのです。今でこそ住専住専と言っていますけれども、ノンバンクだってこの前出てきた参考人の末野興産とかああいうところにどんどん貸しているのですよ。どのくらい不良債権があるかわからない。  それから、ノンバンクの場合には母体行主義でいくだろうということで皆さん安心しているわけですけれども母体行でもノンバンクがばたばた倒れ始めたら、これは大変なんですよ。系統のノンバンクは、要するに協同ローンしかありませんけれども、それぞれの銀行はノンバンクをたくさん抱えている。その不良債権というのが、まだ不良とは言っていないけれども、地価がどんどん下がればどんどん不良になるのです。  その意味で、これは住専というのは入り口なんですよ、はっきり言って。そこをもう少し認識しなくちゃいけない。そこに初めて公的資金を、すぐ税金を使うとなったとするならば、この先どうなるかわからぬじゃないかという国民の不安があるのです。これはやはりこれでもって話が終わったと思ったら大間違いなんですよ。そこが一番の問題点です。  まあ総理は、信用組合についてはある程度公的資金考えるかもしれないと言っていますけれども、本当にノンバンクの場合に公的資金を使わないとおっしゃったのが、税金を使わないという意味だったのか、あるいはほかの形態でも使わないという意味、どっちですか。それは大臣がその辺は答えなきゃいけないでしょう。
  143. 西村吉正

    西村政府委員 まず私から、事実関係について御説明を申し上げます。  ノンバンクにつきましては、十二月十九日の与党三党の合意におきまして、住専以外のノンバンクの不良債権処理については公的関与を行わないという申し合わせがございます。なお、御指摘のように、信用組合の処理につきましては、別途、金融制度調査会の答申がございまして、この問題については公的な処理の問題も含めて検討をすべきであるという御指摘がございます。
  144. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 時間もどんどんたちますから次へ進ませていただきますけれども大臣は、これは金融システム安定のためということを言われます。要するに、金融不安を生むのを防ぐためだと。  そこで、今までの議論の過程を見ますと、まあ預金者は銀行への不安を持っていないだろう。というのは、あれだけ要するに何といいますか収益を上げておって。ここで一番問題となったのは、系統系の金融機関が大赤字になる。そこに取りつけ騒ぎが起こるんじゃないか。そこまでは言いませんけれども、これが余りダウンしてしまうと郵貯あたりにどんどん持っていかれちゃうし、金融不安を起こすかもしれないという議論もございましたね。ここでやはり橋本総理が当初は、これは要するに農協救済じゃないと言いましたけれども、だんだんだんだんと農協救済の色彩が浮かび上がってきたということでございますけれども、現在久保大臣は、今回の措置というものが単に、本当に金融不安防止のためなのか、本音は農協救済があるのか、それをお答えください。
  145. 久保亘

    久保国務大臣 金融システムの安定を図るということは、この住専問題で申し上げますと、これにかかわっております大きな三つの当事者といいますか、母体行、一般行、系統金融機関とございますが、これらの方々、これらの立場の人たちを含めて不良債権を全体で処理するということでございますから、結果的には、金融システムの中の一分野を担当している者を含めて、全体が安定という意味においてこの結果を受けるということになるだろうと思います。  そういう意味で、農協系系統金融機関のためにこの処理策が役立つということは当然だと思っておりますが、この六千八百億の投入が農協系金融機関の救済という目的で投入されるものではありませんし、まして住専を救済するということには全くつながらないのでありまして、この公的資金の投入は住専を整理、解散させるものであります。
  146. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 答弁はもう本当に短くしてください。  そこで、今までちょっと欠落している議論が一つあるのです。欠落している議論があるのです。というのは、今まで農林大臣は、農協は貸倒準備金も少なく内部留保も少ないとおっしゃっていました。それは事実です。じゃ、なぜ少ないのか。これは危ない者に貸さないという原則とともに、いろいろな利益を出資者に配当しているわけですね。協同組合なんですよ。しかも、員外貸し付けが限られていると同時に、員外の預金も少ないのです。となると、これはもし農協の組合員が預金をぼんぼん引き出すと、自分自身の農協が倒れちゃうのです。自分自身の足を食うようなものなんですよ。だから、これはあたかも株主が預金したようなものでございますから、どんどん引き出せば株式会社は倒れるのです。  でございますから、農協という組織は何で内部留保が少ないか、あるいは貸倒金が少ないか。よく考えてみますと、相互扶助組織ですから、来たのはどんどんとみんなに配る、それからいろいろ通常の取引でもって赤が出たらそれを要するに埋めている。であるからこそ内部が少ない。ということは、ある意味からいうと、通常の金融機関の預金者、金融パニックが起こりづらい体質なんですよ。  それはどうですか。農林大臣、同意されますか、今の。
  147. 大原一三

    ○大原国務大臣 最後の金融パニックが起こりづらい体質というところはちょっとよくわからなかったのでありますが、前段の御指摘はまさにそのとおりであります。  現に、信連から単協へ返しているお金、これが毎年七百億ぐらいになっています。また農中から信連に送り込んでいるお金が二百億ということで、その七百億行きましたのは、金利のほかに組合員に配当という形で還元しているわけでありまして、御指摘のように、安倍委員専門家でありますから、民間銀行の内部留保というのを私横目でちょっと調べてみたのでありますが、二十一行で二十兆円ですね。それから、最近の株式の値上がり等を考慮しますと、二十一行だけで二十数兆円になるわけであります。我が方の内部留保はわずかに一兆三千億という形になっているわけであります。
  148. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 説明が長いものですから……。  いずれにせよ、預金者保護と言うけれども、農協が、系統がそういう組織であるということに対するいわば考え、今までなかったのです。でございますから、しきりと預金者保護、預金者保護と言いますけれども、農協そのものは――農水省、員外預金はどのくらいあるのですか、組合員以外の預金はどのくらいあるのですか。農水省、答えてください。
  149. 堤英隆

    堤政府委員 員外貸し出しにつきましては、員内貸し出しの例外とか、そういう形での範疇といいますか規制があるわけでございますけれども、預金に関しましては特にそういう規制はございません。  ただ実際は、先ほどおっしゃいましたように相互扶助組織、会員制でございますので、八百九十万人のほとんどの方が、八百九十万人の組合の方の貯金が多いというふうに思います。
  150. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 その意味では、系統が株に投資して大損したという場合と、いわば土地に貸し付けている住専に貸してそれが焦げついたというのは、基本的には変わらないのですね。でございますから、これは株で大損をした信連、その損失補てんはしないと。ところが今度の、要するに土地に貸し付けた住専への貸付金、これは黙っていると、黙っているというか普通の処理をすると絶対返ってこないのです。返ってこないという言い方は悪いですけれども、非常に目減りしてしまっているわけです。  でございますから、株に投資して大損をしたのと余り変わりないのですよ。そういった意味で私は、今度の国費投入がある意味からいうと損失補てんになるのじゃないかという気もするのですね。この点、農林大臣いかがですか。
  151. 堤英隆

    堤政府委員 先ほど大蔵大臣からも御答弁ございましたように、今回の財政資金の投入を含む住専処理スキーム自体があくまでも我が国の金融システムの安定ということと景気を本格的な回復の軌道に乗せるということのためでございまして、農協系統金融の救済とかあるいは負担軽減のものではないという御答弁があったわけでございますが、そういう意味では、当然のことながら、農協の出資者でございます農家の損失を補てんするということには全く当たらないというふうに理解をいたしております。
  152. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これは短い時間では議論し尽くせませんけれども、私は基本的には、ある意味からいうと、国を挙げての損失補てんに近いのじゃないかと。  と申しますのは、さっき言いましたように、預金者というものが、いわゆる員内預金がほとんどでございます。そういった意味では金融パニックには非常につながりづらい話です。それで、いわば株で大損したのと住専に貸して大損したのとどう違うかというと、なかなか区別しづらいのですね。そうなってきますと、この資金というものが、本来は民間で全部処理するべきものを国が大規模な形でもって損失補てんをしたという形と大差ないのじゃないかという議論が生まれてくるのです。  これはちょっとだれに聞いたらいいのか、法務省に聞いてもちょっと、いろいろレクチャーに来たときにどうも十分答え切れないようなことを言っていましたから農林省に振ったのでございますけれども、この点はきちっと考えておかなければいけないということでございます。  そこで、かつて小池委員が、ウルグアイ・ラウンドの資金をこれに使ったらどうかという議論をしました。これはいろいろ学識経験者もそんな話をしていたものでございます。それに対して大原大臣は、いや、あれは別だよと。あれは農業の、要するにウルグアイ・ラウンドのために、農業生産力の向上のためにやっておるんだと。だから、ある意味からいいますと、これは動脈瘤というか、非常に大病をしているのに筋肉注射をしたようなものなんですよ、農業生産力の増加のために使うと言いますけれども。それこそウルグアイ・ラウンド対策費をこちらの方へ投げ込んでもいい話なんです。  話はちょっと飛びますけれども、かって宍道湖というところに埋め立てをしましたね。あれ大体国費どのぐらい使っていますか。これは農林省に聞いているはずですがね、資料として要求していますから。
  153. 高木勇樹

    ○高木(勇)政府委員 お答え申し上げます。  これまでに支出済み事業費、これは昭和三十八年度から昭和六出二年度、事業費でございますが、三百六十八億円でございます。
  154. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 こういう埋め立てあたりにも三百億ぐらい使っているのですね。その結果、果たしてどのくらい農業生産の生産性を向上したのか。かつて、要するにそういうことをすれば生産力がふえるだろうという形でやったんでしょう。ところが、何年もたってみると、ほとんど役に立たない。現在行われているウルグアイ・ラウンド対策費というのが果たしてどのくらい今後の農業生産力の向上に役に立つのか。これからどんどんといわば自由化の波が襲ってくる、そのとき本当に農業は太刀打ちできるのか。  私は、今度の六千八百五十億の投入で本当にみんなの意識が、税金が何に使われているかということに非常にシビアになってきたと思います。その意味では、非常に私は今度のことは意味があったと思う。  一方において、いわば今のウルグアイ・ラウンド対策費として規模六兆円目安を順次やっていく。きのうの回答でも、一兆円ぐらいもう既に投じてあるという話でございます。これは果たして農民のためになっているのか、あるいは土木工事をやる連中の懐に入っているのか。これは非常に、何といいますか、片一方の方で農民は、農家の方々は、こういう、もう農協がどうなるか、系統がどうなるかという大問題に直面しているんですね。一方において、ウルグアイ対策費として何か筋肉注射、栄養注射みたいなことをやっている、大動脈がどうなるかというときに。そうなっているんですよ。だから私は、今度の問題は、いわば農業問題を根本的に見直す大きな機会じゃないかと思う。  私は、今度の公的資金の導入というのはもろ刃のやいばだと思う。と申しますのは、これだけの系統の負担が軽くてよかったと万歳をする人々もいるでしょう。しかし反面、農協が一体何をしてきたんだという世の中の厳しい目が注がれるんです。ある意味からいうと、もしこれが民間ベースで処理されておれば、そこまで納税者は怒らなかったでしょう。  私は、別に農業を目のかたきにするわけじゃないけれども、ちょっと大蔵省あるいは国税庁に聞きますけれども、農業所得者の納税額というのは年間幾らくらいですか。
  155. 若林正俊

    若林政府委員 突然のお尋ねでございまして、手元にちょっと数字を持ち合わせておりません。恐縮でございます。
  156. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これは非常に少ないんですね。いわゆる申告所得税大体三兆円くらいの中で三百八十億くらいしかないんですよ。  つまり、結局今までは、日本経済が隆々としてきた、ですから、低い生産性の農家も大事だ、農業も大事だ、たくさん、どんどんとお金もつぎ込みましょうと言ってきたんです。ところが、それにもかかわらず、残っているのはおじいちゃん、おばあちゃんしかいないということは事実ですね。でございますから、国全体が非常に苦しくなってきたという状況に、果たしてこれだけのことをやっていけるのかねということが大問題になるんです。  でございますから、今度のこの国費投入というのが、非常にシビアな目が系統に対しても農業政策に対しても注がれるという意味では、その意味では私は「……(発言する者あり)つまらぬことを言うんじゃないよ。  そういうことで、いわばこれからの日本が生産性の低い農業をどうカバーしていくのか、どうしていくのか、この問題が私は一番大事な問題だと思う。  もう一つ、農協は果たしてこれから金融機関としてやっていけるのかどうかという問題があるんです。  と申しますのは、今までの話にも出ましたように、要するに全体の経済がどうなるかもわからないで、まあ住専なら大丈夫だろう、お墨つきだろうと、どんどんどんどん貸し込んでいる。金だけは集まるけれども運用できない。これから金融国際化の時代に、本当に金融業務をやっていけるのかどうか。  だから私は、今度非常に、ある意味からいいますと系統の負担が少なくて済んだ。少なくて済んだということは、その点においては、要するにそのやりとりの中ではあるいは皆さんを満足させたかもしれない。しかし、その後においてもっともっと大きな問題が投げかけられてきた。これは黙っていても、金融国際化の時代にやっていけるのかどうかという問題があると思います。しかし、今度こういった問題が起こったために、もうそれだけシビアな目で見られてきている。でございますから、今後、農協系統機関をどういうぐあいな金融機関として考えていくのか。  それから、これから農業、農家のために、まあウルグアイ・ラウンドというのはありますよ。ところが、ああいったいわば対策費くらいで農業問題は片づくんじゃないんです。筋肉注射なんですよ、簡単に言えば。これから本当にそういう農業生産力をふやしていく、農業をどうやっていくかという一つのビジョンが必要なんですね。  その二点について、農林大臣、お答えください。
  157. 大原一三

    ○大原国務大臣 いろいろ質問が多岐にわたっているわけでありますが、まず第一、農協の体質改善問題。これは、特に今回の住専問題を契機に、信用事業の自由化、国際化の波の中で対応できる仕組みをつくっていかなければなりません。一千百兆円の中、約七十兆という預金のシェアを占めているわけですが、その全体から見て大きいか小さいかはともかくとして、その生きざまをこれからのリフォーム、改革の中で位置づけていくということは非常に大きな問題だと思います。  それから、農業政策のあり方ですけれども、農業基本法ができてから三十数年たっているわけでありますが、これではいかぬということで、新たな農業基本法をつくらなきゃならぬ。その基本になるのは、ウルグアイ・ラウンドという今の背景もバックにしながら農業の体質改善を考えていく。そのためには、どうしても規模拡大をやっていかなければならない。今御指摘があったように、お年寄りが、六十歳以上が五割も占めておる、十年先には七十歳以上が五割になる、その先には八十歳以上が五割、その農地をいわゆる精農家へ集約していく作業、これがこれからの食糧自給率を落とさない一番基本的な政策ではないのかな、こう思っております。
  158. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 この問題は、本当に本腰をもって取り組まないといかぬ話です。  そこで、一応系統機関の話は別としまして、今度の処理スキームの問題に入ります。  従来からの質疑でいろいろ問題となっていたのが、これからの地価動向なんですね。と申しますのは、この前の第二次再建案でも、地価がどうなるか、これは、地価がどうにかそのまま持続するんじゃないかというくらいの見通しのもとにやってきたわけですね。ところが、そうではなかった。今度の処理スキームも、一にかかって今後の地価動向にかかっているんです、特に十五年というような話になってきますと。この地価動向というのは、これは国土庁だけではわからないなと。なかなか難しい。  一つの議論は、ウルグアイ・ラウンドの結果、農地というのがだんだん減ってくるだろう、どんどんいわば供給としてふえてくるだろう、土地の供給が。そうなってくると、ほとんど土地は上がらないんじゃないかという議論があるんですね。  今まで日本の土地価格が非常に上がったというのは、狭い国土に、しかもいろいろ線引きをして、非常に利用可能な土地が少なかった、その中で売買するものですから、あたかも株式市場が、狭い株式市場の場合にはちょっとすぐ上がったり下がったりするように、土地の要するに市場が狭かった、そのために投機が誘発されたということも言えるわけです。  でありますから、これは私は、国土庁というよりは経済企画庁にこれから先の土地の価格の見通しというのを聞いておかねばならない。既に議論がありましたように、午前中の貝沼委員の質問のように、もう去年一年間だけでも土地が下がってきているから、第一次損失はふえているんじゃないかという議論もあるんですね。でございますから、処理機構の成否は一にかかって土地価格の見通しにある、これを経済企画庁はどう考えていらっしゃるか、それをお聞きしたい。
  159. 田中秀征

    ○田中国務大臣 地価については、基本的には需給動向を反映した市場が決めるもので、見通すことの大変困難なものだというふうに思っております。  ちなみに、新しい経済計画においても、マクロ的な経済の姿を描くときも、その前提としては、まあ多少の変動があってもならせば余り変わっていないということを想定して、経済計画の策定に臨んでおります。  いずれにしましても、バブル時のように地価の大幅かつ急激な変動というのは、経済に対して好ましい影響を与えない、そのように思っております。
  160. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 ということは、長期的な見通しは立てられないということですか。
  161. 田中秀征

    ○田中国務大臣 基本的には、先ほど申し上げましたように、需給動向を反映した市場が決めるものだというふうに思っております。経済計画についての例を先ほどお話し申し上げました。
  162. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今私が申し上げた、ウルグアイ・ラウンドによって農地がどんどんと減っていくかもしれない、そうなったときに、土地供給というのは緩むというかふえていく。となると長期的には、需給によって決まるというのであれば、なかなか上がらないんですよ。本来土地の値段というのは、そこに物を建ててそこでもって収益が上がってくる、その還元というか、いわば利益率ですね、そこで決まってくるのが普通なんですけれども、日本の場合には、その利益率と全く無関係に、株価が急騰するような形で土地が上がってきた。それは、マーケットが狭かったから。マーケットが広がってきますと、なかなか土地は上がってこないんじゃないか。ただ、その中でいい土地と悪い土地とありますよ、土地というのは動きませんから。優良な場所は上がるでしょう。一般にはなかなか上がらないという形になるんですね。  となると、その処理スキームが要するに地価動向に左右されるとなると、非常に苦しいものになるんですね。もともとが、これは公的資金が入っていなければ余りぎゃあぎゃあ言わぬでも済むんですよ、個人に任せておけばいいですから。民間に任せておけばいいですから。公的資金が入ったために、もう非常にこのスキームもどんどん取り立てなきゃいかぬという話になっていますね。  ちょっと久保大臣、先日たしか、もういろいろな人間を集めてどんどん厳しく取り立てていくんだという話をされましたけれども、今も同じお考えですか。
  163. 久保亘

    久保国務大臣 今提案を申し上げて御審議をいただいているのでありますから、変わるはずはございません。
  164. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 そうすると、確かに暴力団か何かがいて、なかなか取れないところも多いです。ところが、暴力団をどけてその土地を空にした。その土地が売れるか売れないかが問題なんですね。  この間参考人が来て、今、買った土地が大体十分の一になってしまったという話までしているわけですよ。でありますから、幾ら暴力団をどけて売ろうと思っても、売れないかもしれない。そうすると、じゃ今度はほかの財産を出せという話になるでしょう。彼らは住専以外に方々から借りているんですよ。そうすると、住専のこの処理スキームが強力にそれを換金し始めますと、安い値段でもって要するに競落か何かしていかなきゃいかぬ。ほかの債権者が黙っていない。下手をすると、スキームが強く動けば動くほど――公的資金が入っていますから強く動かさざるを得ませんね。動けば動くほど、ほかの債権者に響いてくる可能性もある。  ここに私は、公的資金を導入したことの大きな、さっき農協に対するもろ刃のやいばという話もしましたけれども、この処理スキームが、一つは地価がなかなか上がってこないかもしれない。暴力団を排除するのはいい。排除はしても、排除した後の土地が売れなかったら、今の十分の一になっていれば、回収のしようがないんですよ。  また、強く回収し始めますと、そういうほかの金融機関――金融機関によっては、私は何も悪い借り手を保護しようと全く思っていませんよ、ここへ来たような、何といいますか、いろいろ言われておるところもあります。そういったものは、暴力団的なものは排除していかなければいかぬ。だけれども、結果的に、それをきれいにしたところで売れなかったら、それで、処理スキームが強くそれを要するに換金し始めたら、そこに貸している連中がまた大騒ぎになる。貸し手によっては、その不動産業者をうまく生かしていって、卵を産ませてそこから回収しようと思っている連中もいるわけですよ。  一つお聞きしたいのは、処理スキームを強力にするということが、ほかの金融機関に全く影響がないのかあるのか、その辺のお答えをしてください。
  165. 西村吉正

    西村政府委員 もとより、強力な債権回収を図ると申しましても、住専処理機構債権回収は債権者平等の原則に基づいた法的手続等により行うものでございますから、他の債権者を害するものではございません。他方におきまして、債権の回収を図り、これ以上の損失をふやさないようにするという要請が強いわけでございますので、極力、あらゆる手段をもって債権回収を図るということに努めてまいりたいと考えております。
  166. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 だからこの問題は、公的資金の導入ということが、第二次損失についての二分の一国庫負担とかあるいは処理スキームを強力にしなきゃいかぬとか、いろんなところに波及しているんですね。私は回収しないでいいとは言いませんよ。しかし、これはそういう問題が起こるんです。だから、現実には、それはそんなに簡単な話じゃないんですよ。  前田委員もいろいろ指摘されましたけれども、どんどんどんどんと銀行の貸し出しを、不良債権を償却していく、ところが銀行から借り手への債権は全く変わらない、だから土地取引を逆に塩漬けにしちゃうという議論もあるんですね。というのは、ディベロッパーは確かに大もうけしたでしょう。今はしかし、土地はもう十分の一くらいになっているわけですから。となると、担保を処分されても、まだ債務が残っている。それはどんどん破産させて新しい会社を出させてもいいですけれども、ここの銀行債権の後ろにある不動産取引、これが塩漬けのままになっていますと、結果的にはいつまでも経済はもとに戻らないんですね。この辺に、例えば机の中のごみを要するに机の下へ掃き込むみたいなもので、これは、前田委員がいいところを指摘しているんです。  例えばアトキンソンという、ゴールドマン・サックスとかいう会社の研究員がいるわけですけれども、彼に言わすと、むしろ要するに、彼は極端なんです、債権を償却する以上、銀行はそういった債務者に対して債権を放棄しろと言う。それはむちゃだ。アメリカあたりではこう言っていましたね、なかなか償却認めない、そうすると銀行は必死になって貸付先を育てようとする。悪いプロジェクトは切るけれども、いいプロジェクトは、例えば一番問題点は、総量規制が問題になったのは、途中で計画がとまっちゃう。  例えばいろいろな、いわば国でやられる工事も、例えば空港なんかも、途中で要するに工事がとまってしまえば全くくずなんですね。それが完成して初めて収益を生むんです。でありますから、貸し付けをなかなか償却させてくれなければ、銀行は逆にその企業を育てるようにするだろう。悪いプロジェクトといいプロジェクトを分けて、いいプロジェクトには金を足してまでも、そこから卵を産むようにする。そういうこともある。だから、アトキンソンという人は、それは償却を認めてはいかぬとまで言っているのですよ。それは私はちょっと言い過ぎだと思いますけれども。  この不動産業界をどうするか、これは前田さんが大分いろいろ話をしていました。私は、この点について、いわば建設大臣は何かこういろいろ考えているのかどうか、一言お願いします。
  167. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 委員の御指摘は、この間、前田委員も言われたように、不良資産として置いてあるその担保的物件、すなわち土地、これをもうちょっと流動化して、活性化して、そしてもう少し価値のあるものに切りかえていったらどうか、そういうような御指摘も含めての御批判かと思います。これは実際、街路であるとか再開発の問題、都市整備事業を推進するということはよい町づくりをしていけ、こういうことでございますし、また、ある意味においては土地の有効利用を図る、こういう上で重要なことであることは申すまでもないことであろうと思うのであります。  また、土地の流動化に資する土地有効利用促進対策や、あるいは土地の取引活性化対策というようなものをする必要があるということは、私どもは前提的に考えております。  公共用地の先行取得推進のための平成七年の二月補正における事業団への大幅な追加、あるいは民間都市開発推進機構の土地取得事業の推進あるいは拡充、あるいはまた宅地開発等の指導要綱を見直して、定期借地権制度の活用等の住宅土地に係る規制緩和の問題、あるいはまた指定流通機構の整備拡充による公正で透明な不動産取引の形成、あるいはまた平成八年度の税制改正における、譲渡益税及び地価税に係る税率を引き下げる措置ということも既に講ぜられておるところでございまして、多少長くなって恐縮でございますが、おしかりを受けるかもしれませんが、そういう意味において、税制面からも土地の有効利用の促進等に資することを期待してやっておることも事実でございます。
  168. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 まあ今までの、前田委員指摘したように、要するに債権の裏にある実体の土地のいわば有効利用、これに目を向けない限り、今おっしゃるようにどんどんと地価は下がっていく。それで、銀行の方の債権は償却されるけれども、それを回収しようと思っても、何分の一だ、塩漬けに土地はなる、卵を産む鶏もいないという話になりますと、これは帳簿づらはよくなっても、実体経済は動かないわけですよ。  それで、たまたま前田さんが言ったようなことなんですけれども、例えば下水道なんかをつくるにしても、道路をつくるにしても、今までのところをやってやらないと気の毒だということでやるのもいいんだけれども、新しい町づくりみたいな格好で、民間投資を誘発するような公共事業、その結果できたものの元はそこから取っていく、私は、ここにやはり公共事業の見直しということもよほど考えていかにゃいかぬ。  それから、土地規制の緩和といいますか、そういうところで、土地規制は余り緩和するとまた土地の値段が下がっちゃうんじゃないかという話にもぶつかるんですけれども、非常に難しいんですよ、そのさじかげんが。ただ、何といいますかね、私は、長い目で見ると土地は下がっていく、そこで今の債権処理機構がますますジレンマに陥っちゃうんじゃないかな。  ここでアメリカのRTCというのがいろいろ言われます。これはひとつ簡単にいいますと、破産管財人の集まりみたいなものなんですよ。それがいわば貯蓄組合に行って、こいつの財産をどうするか。売るものは売る、物によったはいい金融機関に抱いてもらう、そういうことをしながらやっていったんで、これはちょっと今の債権処理機構と必ずしも一緒じゃないんですよ。  この辺、私は、恐らくはこの公的資金導入という話があって、こいつは、そうすると第二次損失を要するにふやしちゃいかぬ、そのために強力なものをつくらにゃいかぬという話になっちゃって、一番最初の出発点は、公的資金を導入したために、即席と言っては変だけれども、そういう形になってしまったということがやはり一番の出発点にあるんじゃないかということなんですね。  だから、私は、今までの議論で、要するに頑張って取ればいい、取ればいいという話が、取れるのか、取った後はどうするのか。暴力団が占拠していることばかり頭にあって、その先のことを十分考えていない、そこに私は処理スキームの問題点もありますし、それをいわば急速につくらなくちゃいけなかったという、公的資金の導入問題が基礎にあるんですね。  私は今、住専問題の落ちこぼれというか落ち穂拾いをしているわけですが、例えば、さっきの農協の、協同組合の問題とか、こういった住専処理機構の問題、この辺を十分考えないで来ちゃっていることが非常に大きな問題になっていると思います。  それからちょっと話を、もう一つ母体責任の話もしたいんだけれども、ちょっともとへ戻るのもあれだな。  今度の金融不安の問題は、二つの問題を投げかけていますね。  一つは、加藤幹事長が参考人のときに言いましたように、農協の預金が郵貯に行くじゃないかという話をしておるわけです。農協の方はどう運用していいかわからない、郵貯の方は財投でもって運用してもらえる。金融がどんどん自由化してきたときに、財投がこのままでいいのかという問題がやはりあるんです。これは大蔵省にとっては非常に痛い話ですけれども。  と申しますのは、財投の資金というものは金利を払っているわけですね。運用の方がそれに見合うだけの金利を稼ぐなりなんなりしないとこれは要するに合わないんですよ。しかも、例えば国債、地方債、財投がたくさん引き受けることができる、それがまた逆にどんどんどんどんと国債、地方債の累増にもなってくる。  そこで、ここでこれは質問してもすぐ答えられるかわからないけれども、日本の場合には、国債、地方債、全部、財源がまあ国税に依存している。国税の五十兆くらいで払わにゃいかぬ。というのは、地方債の償還というのはほとんど地方交付税で償還しますから、自分の財源は余りないんです。  となりますと、既に川島委員がいろいろ質問されましたように、この累増する国債、地方債、これ、OECDの統計では、日本とかほかの国を比べまして、GDPに対する比率が出ているのですが、一九九二年のころは日本も米国も、六四とか六二とか、似ているんですね。ところが、一九九七年は、日本は、国と地方と合わすと九七まで上がっているんです。米国が六二ですね。一番大きいのはイタリアですけれども、一一六、一二三ですけれども。  でありますけれども、この中で一番問題なのは、地方債が、ほかの国の場合のように地方の自主財源でもって償還していれば問題ないんです。日本の場合には、自主財源がないから最終的には五十兆の国税収入に全部かかってくる、わかりますかそれは。要するに、今累計していけば四百兆になるのかいろいろ言っていますけれども、いろいろ隠れ債務を見れば五百ぐらいになるだろう、もっとなるかもしれぬと言っていますけれども。それを償還する財源というのは国の税の五十兆に依存しちゃっているんですよ。というのは、地方交付税でもって償還していますから。もし地方が本当に自主財源を持っておって地方債を償還するのであれば左うちわなんですけれどもね。  でございますから、この日本と同じような形態を持っている国というのはそう多くないんじゃないか。それは、何といいますか、欧州には若干中央からの交付金があるシステムありますけれども。  そこで、そこを補っているのが、どっちかというと財投なんでしょうな、財投で引き受けている。財投も結局は、要するに利子を払わなくちゃいけない。運用面が限られてくると、運用の方の利息が少ないと一般会計でもって補てんせにゃいかぬ。たしかきのうは錦織委員あたりが言っておったと思いますけれども。  でありますから、私は、みんなからお金を集めて財投で運用している。財投はそれなりに利益を生むものに回していかないと、かつての日本の成長期には、みんなが集めたお金を国策的に安い金利でもって貸すという動きで来たわけですけれども、今は高い金利に要するに運用していかないと、これから厚生年金なんかもやっていけないんですよ。  でありますから、この問題点は、たまたま郵貯と農協と比較の問題から大きな問題が浮上してきているわけです。  一つは、これから農協あたりの金融機関、つまり預金を集めることは集めるけれども運用の道がない金融機関をどうするのかという大問題と、もう一つ、国が集めて運用している資金をどうするのか。二つの問題を投げかけていると言わざるを得ないんですね。  第一の、そういうこれから農協と同じように金を集めることはできるけれども運用できない金融機関をどう扱っていくのかという問題と、第二の、みんなから要するにお金を集めることはいいけれどもその運用が十分利益を生まない格好のところへ回している財投をどうするのか。  一つの考え方は、財投の運用をもっともっと利益を生むところへやっていく。公共投資あたりももっと厳しく査定して、この経済効果はどうだ、それによって実際上収益を生むのかどうか、そうしていかないと、高い金利で借りておいて、運用先がなかったら大変なことになるんです。二つの問題について、大蔵大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  169. 田波耕治

    ○田波政府委員 委員言われますように、財投資金というのはおっしゃるように有償資金でございますから、まあ利益という言葉が適当かどうかは別といたしまして、いずれにいたしましても将来お返しをいただかなければいけないという性格の資金であるということは事実でございます。  そこで、この財投制度、御高承のとおりでございますけれども、現在どういうふうに運用されているかと申しますと、例えば住宅金融であるとかあるいは中小企業の金融など、これは当然のことながら、民間では供給できないような性質の長期固定の資金を供給するというのが一番の目的であろうかと考えます。  さらには、現在日本のインフラストラクチャー全体をどう考えるかということでございますけれども、道路であるとか鉄道であるとか、そういった社会資本を充実していくという政策課題はまだまだあるのではないかと私ども考えておりまして、そういうところに資金を充当していく。また、御指摘ございましたように、国債や地方債の円滑な償還に資するということも財投の一つの重要な機能ではないかというふうに考えておるところでございます。
  170. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 長期的資金を供給するという話が基本なんですけれども、それがそこそこきちっとした収益を生むという形の方へ持っていかない限り、これは絶えず一般会計でいろんな差額を補てんするという問題にならざるを得ない。でございますから、まあほかの国でこれだけまとまった資金を国が管理している国はないんですけれども、この問題はこれからの金融自由化に関連して非常に大きな問題だと思います。  それで、答弁の中でもう一つ、資金だけ集まってなかなか運用できない系統金融機関みたいないわば金融機関をどう持っていくかということについての御答弁がまだ抜けているようですけれども
  171. 田波耕治

    ○田波政府委員 これからの資金、財投資金がどうなるかということでございますけれども……。
  172. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いや財投じゃなくて、今聞いているのは、系統のように資金が集まって運用できないような、系統みたいな金融機関いろいろあるわけです。これはむしろ銀行局というか、そちらの方の問題になると思いますが。(発言する者あり)いや、系統はもう終わったんだ、系統類似のだね。
  173. 田波耕治

    ○田波政府委員 系統資金については私の担当でございませんので、郵貯資金ということであれば私から……(安倍(基)委員「もうそれは終わったの」と呼ぶ)それはよろしゅうございますか。
  174. 西村吉正

    西村政府委員 御指摘のように、金融機関の中でも比較的小規模な機関、主として協同組織のものが多いわけでございますが、そういうところはどちらかというと資金の運用に、特に最近資金需要が低迷している時期においては苦労しているということは私どももそのように考えております。これをどのようにしていくのかというのはなかなか難しい問題でございまして、それぞれの経営者がその資金の運用に大変に御苦労をしておられるということは私どもも認識をいたしております。
  175. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これは制度上の問題でして、経営者がいろいろ苦労するのはわかるんですけれども、例えばこれから、では系統系の金融機関をどうするかとか、さっきお話しいたしましたように、今相当シビアな面になってきている。  あるいはそれに類似した協同組合組織、金だけ集まって資金が運用できないというようなもの、これはなかなか国際化の現状に対応できなくなってくる。それはそれぞれの分担とかあると思いますけれども、国際的には、例えばデリバティブとかいろいろ言われてなかなか難しいものもあるわけですから、どんどんと金融国際化になりますとやはり優勝劣敗になってしまうんですよね。  その間に、例えば信用金庫にしても、地域に密着したものはそれなりに生き残るでしょう。そういった形で、ある程度のものは生き残るかもしれないけれども、こういった制度としてのいわば基本的な検討をやはりしていかないと、単に経営者が頑張るだけじゃ済まない。  でありますから、各省庁いろんなあれを持っておると思いますけれども、その辺を大蔵省としては統合していろいろ考えていかなくちゃいけない、制度的な問題として。その点について大蔵大臣にお聞きしているわけですけれども
  176. 西村吉正

    西村政府委員 いろいろな立場の金融機関がありまして、またそれぞれ政府部内において共管をしながら、あるいは主管の立場でこれらを監督し指導しているということでございます。それらの相互の関係につきましては、担当省庁の間で十分連絡をとりながら適切に運営してまいりたいと考えております。
  177. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それから、金利政策ですけれども、これは確かに日銀の問題ではありますけれども大蔵省も当然それに対してのいわば立場があると思いますし、いつ上げるか下げるかなどというのは日銀の専権としても、金利政策をどう持っていくかという問題が大きな問題点になるわけですね。  それで、今までは、景気回復のためには公共投資をやれあるいは金利を下げろという話で一本やりできたわけです。それで、公共投資につきましては、私が今までも申し上げたように、その経済効率を十分考えないと、しかもそれがまた相当の収益、長期的な意味の収益ですね、あるいは民間投資をそこへ誘導するというような効果がないと、もう本当に債務が累積するばかりです。  さっき申し上げた債務の累積は専ら公共投資によってできているわけですね。これは幾ら行革しろ行革しろと言っても、行革によって節約といっても限度がある。この数年間の景気浮揚のための公共投資というのがこれだけの債務累積を生んでいるんです。だから、幾ら経常費を切り詰めてみても、危機宣言を出してみてもだめなんです。これからの公共投資は本当に、民間投資を誘導するような公共投資とか、それによって要するにいわば利益を生む、長期的に利益を生むというものじゃなくちゃいけないんですよ。  そこで、私はもう一遍大原大臣に聞きたいんだけれども、ウルグァイ・ラウンドの要するに経費ですね、これは農民のためと言うけれども、どちらかというと本当にそれで工事をする連中の懐に入っちゃうんじゃないかと思うんです。もっともっともう一度、何が本当に農家のためになるのか、しかも今度の要するに金融問題も、私は、一方において何兆というのをどんどん出していると、これはもう一遍、小池さんが言っていましたけれども、全然それに対して違いますという話だけれども、もう一度農林予算考えなきゃいかぬと思います。  だから、私はもう一度お聞きしますけれども、このウルグアイ・ラウンド予算というものをもうちょっとそういった種類のものにも使えないのかということをお聞きしたいと思います。
  178. 大原一三

    ○大原国務大臣 六兆何がしかのウルグアイ・ラウンド対策費の約半分が公共投資であります。委員御存じのように、これからの農業生産の拡大をしていくためにやはり集約化をしていかなきゃならぬということになりますと、まだ終わっていないいわゆる農地、圃場整備、さらにまた構造改善、こういったものはやはり優先的にやっていかなければならぬ。  それのみならずソフト面でも、さっきも申しましたように、農地の集約化、このためにまだまだ私は資金が足りないと思うんです。この集約化のための予算の充実、これには農林省としても思い切った施策を、大蔵省とも折衝しながら充実をしていかなきゃならぬ、こんな気持ちで私はおりまして、ウルグァイ・ラウンドの費用をあちらに持ってこい、こちらに持ってこいという筋合いのものとは私は違う、かように考えております。
  179. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これは、それによって本当に生産性が高まるのかどうか、どんどんどんどんと自由化していったときに本当にそれで対抗できるのかどうか。さっき話が出た宍道湖の開拓みたいな話で、何年先にもなれば何でこんな投資をしたんだろうということになりかねない。だから、本当に動脈瘤でふうふう言っているときに筋肉の栄養剤をやっているような形になりかねない。これは、やはりもう少し担当というか、農林予算、今公共事業という話が出ましたけれども、その公共事業は本当に経済効果があるのかどうか、シビアに見ていきますと必ずしもそうじゃないんじゃないか、もう少し公共事業の経済性というのに絞っていかないと、国の財政はたちまちパンクしますよと。そこに一番の問題点があると思います。  それで、大体ここで、まだ住専についても論じたいことがあるんですけれども、せっかく外務大臣に来ていただいたものですから、きのう大分前田委員が竹島問題とか中台の問題とか聞かれたもので、余りそれに重複するのもあれでございますけれども、これはあるいは防衛庁の関係かもしれませんけれども、長期的に今中国というものが相当軍事力を増大している、それでまた、中ソ接近のいわば話もあり得ると。  それで、私実は、今度の大統領選に出るジュガーノフですか、何か共産党の委員長とひよんなことでたまたま日本に来たときに会う機会がありました。そのときには余りそういった議論はしなかったんですけれども、今度の選挙でエリツィンが勝つのかジュガーノフが勝つのか、なかなか要するに微妙なところがございますけれども、これから二十一世紀を見据えたときに、軍事大国としての中国がどうなるんだ、それといわばロシアとの関係はどうなるんだ、日本はそれにどう対処するんだということが重大な問題として浮かび上がってくると思います。  これは、中国の核実験についてけしからぬけしからぬと言っても、向こうはやることやってしまうわけですから、これが国際社会の現実です。この辺について、中国のいわば軍事力、その辺をどうごらんになっているか、防衛庁長官にまずお聞きします。
  180. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 中国は国防力の量から質への転換というものを図りつつございます。特に近年、国防費を大幅に増大をいたしておりまして、核戦力や海空軍力の近代化を推進をいたしております。  ちなみに中国が公表をいたしております国防費は、一九八九年度以来七年連続で前年度比一〇%以上の高い伸びを示しており、特に九四年、九五年は二〇%を超える伸びとなっております。  しかしながら、中国は経済建設を最重要課題といたしておりまして、インフレ基調あるいは財政赤字、こういった困難にも直面をいたしておりまして、国防力の近代化は漸進的なものになる、こういうふうに考えております。  また、中国は最近、南沙諸島を初め海洋における活動範囲を拡大をする動きを示しております。このような中国の動きというものが中長期的に見ましてアジアの軍事バランスにどのような影響があるのか、注目をいたしてまいりたいと考えております。
  181. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これはむしろ外務大臣の分野だと思いますけれども、現在、中国接近という動きがあるのかどうか、今後の見通しはどうか。それで、鄧小平があと何年もつかという問題もありまして、そんなこと言ってはあれかもしれませんけれども、その後の中国がどういう方向に動き出すのだろうか、中国接近があるのかどうかという問題込みで、日本はどうそれに対処するのか、その辺をひとつお聞かせ願いたい。
  182. 池田行彦

    ○池田国務大臣 まず、今後中国接近というものがあるのか、こういうお話でございますが、委員承知のとおり、中国とソ連との間は、八九年に当時のゴルバチョフ・ソ連書記長が訪中いたしまして関係の正常化をいたしました。それから、各種のいわゆる要人往来とかを含めたいろんな交流が進んでおりまして、昨年も江沢民総書記あるいは李鵬首相がロシアを訪問しておりますし、それから一時エリツィン大統領が訪中するんじゃないかというお話ございましたけれども、これは、健康上の理由でございましょうか、取りやめになっておりますが、これが、さて、ことしになりましてどうなるかというところも一つ注目されるところでございます。そのほかにも、国境協定の締結等の関係でいろいろ、いわゆる緊密化あるいは接近といえばそういうふうに見られる動きがあることは事実でございます。  私どもといたしましては、そのような中国関係というものが緊密になっていくということが国際社会の安定なり平和に資する方向に働いていくことが望ましい、こう考えております。  それで、先ほど防衛庁長官から中国の軍事力の問題のお話もございましたけれども、そういったものも、中国は、いわゆる近代化ということで説明しておるわけでございますが、そういったことが国際社会の緊張を高める方向に作用することがあってはならないな、こう考えている次第でございます。  それでまた、ポスト鄧小平と言ってはいけないんでございましょうか、これからの中国がどうなるかという点は、なかなか我々でも予測しがたいところでございますけれども、現在の中国の指導部は、総体的に見ますと一応安定した状態を持っておると思いますし、また、次の世代をどうするかということについてもいろいろ意は用いておるというふうに見ております。そして政策的な面では、私は、基本的にはやはり中国は改革・開放路線を推進して、経済社会の力を蓄えて国民生活の向上を図っていくという方向を第一の目標としておると思います。  そういったことで、我が国といたしましても、先ほどから申しましたようないろいろな中国の動向を注視してまいるわけでございますが、中国が国際社会の緊張を高めるというような要因ではなくて、国際社会、とりわけこのアジア太平洋地域における安定、そして平和に資するような方向に役割を果たしていく、こういう方向を期待しますし、我が国としても、そういった観点から、中国の改革・開放路線への支援、そういったことを進めてまいりたい。国際面でも、先ほど申しましたような観点からの日中協力を進めてまいりたい、こう考えている次第でございます。
  183. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 きのうも話題になりましたけれども、台湾の総選挙の関連で、最終的に、もちろん両方が余りけんかをしない形でやっていけばいいなという話には違いないんですけれども、これからどっちにウエートを置くかというと、ちょっとこれは言い方が外交問題であれかもしれませんけれども、その辺は親台派あり親中派ありだけれども、基本的にはどういう方向で考えていらっしゃるのか。  まさか武力衝突はないと思いますけれども、これから中国が相当軍事力を増強していく過程において、江沢民あたりはオブラートで包んだ話をしていますけれども、軍の一部では相当強硬なことを言っている連中もいるし、これから鄧小平以降の中国が、あるいは軍が相当発言権を増してくるかもしれないしという情勢のもとに、どういう基本的なスタンスでおられるかということをひとつ……。
  184. 池田行彦

    ○池田国務大臣 中台関係につきましては、基本的に、関係当事者の間の平和裏の話し合いによって解決する方途を見出してほしい、このように考えております。  そして、当面いたします台湾海峡の緊張の問題でございますが、これにつきましても、関係当事者が自制した姿勢で対応していくことを強く希望しているわけでございますし、そして我が国といたしましても、やはりこの地域の動向というものはアジア太平洋地域全体の情勢、我が国も含めまして、それに影響を及ぼすものでございますので、深い関心を持っておりますし、先ほど申しましたような両者の抑制した、自制した対応をしていただくように働きかけはしてまいりたい。先般プーケットにおける銭其シン外相との会談においても、私からそういった日本の立場を申し上げたところでございます。  それから、もう少し中長期的な話として、中国が軍事力を強化しているし、どうかというお話がございましたけれども、これについては先ほど御答弁申し上げたところで、我が国の考え、また期待するところは御理解いただけるかと思います。  また、現実にいろんなことがございますけれども、中国においても非常にそういったところは、台湾との間の経済的な交流は随分進んでいるという事実もあることは御承知のとおりでございます。
  185. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それから竹島問題もきのう話題になりましたけれども、一応領土問題と切り離していわば経済問題を処理する。両方、韓国もそこそこ落ちついてきたという議論もありますけれども、この辺を、基本的にそういうスタンスでいくのか。  もう一つ、ちょっと話は飛びますけれども、私はかつていろいろ、日中のいわば歴史認識の関係で、もう少し民間人同士で歴史研究したらどうか、それも余り官製じゃなくて、官製というか、本当に民間の良識的な学者同士でやったらどうかという提案をしまして、それなりに何かそういった方向に動いているというぐあいに聞いておりますけれども、その辺の、第一の竹島の問題の話と、それから第二の歴史認識についての共同研究。  私はこのときに、どうも今まで共同研究というとどうしても向こうに引っ張られて、やれ侵略だやれ何だで植民地支配だという方向の方がどっちかというと強いんですね。しかしそれは、もうちょっと我が方の立場を十分わきまえた意味の共同研究であってほしいんで、その辺がどうも我々の今までのあれは、向こうの御無理ごもっとも的な共同研究になりかねないものだから、もっともっとこちらの主張を十分加味した形の、加味というか、民間の良識的な学者によるいわば共同研究を必要とするんですよ。その辺の話がどうなっているか、お聞きしたいと思います。
  186. 池田行彦

    ○池田国務大臣 まず第一点の竹島の問題あるいは海洋法の関係の問題でございますが、これはお話もございましたとおり、我が国の領有権に関する立場は一貫したものでございますけれども、今回の海洋法条約締結に伴う漁業等の問題につきましては、領土問題の解決とは切り離しまして現実的な適切な解決を見出したい、そういったことで、冷静な話し合いのもとに新しい協定の締結に向かって努力をしてまいりたい、このように考えている次第でございます。  次に、いわゆる日韓の歴史共同研究についての御質問でございますけれども、これは、昨年十一月APEC大阪会談の際に、河野前外務大臣と孔魯明韓国外務部長官との会談が持たれました。その際に、孔長官の方から、相互理解と友情を築くために、歴史認識の問題については民間の冷静な立場からの共同研究を、それを政府が支援することにしたらどうだろうか、こういうお話がございまして、河野前大臣からも、これは極めて建設的な御提言であるので賛成である、こういうふうに述べました。そういった経緯を踏まえて、今鋭意事務レベルで協議しているところでございまして、先般タイで行われました孔長官との会談におきましても、相互にこれを進めていこうという話をしたところでございます。  それで、今委員おっしゃいましたとおり、この歴史研究という話は、向こうの主張あるいは我が方の主張ということではなくて、もう少し両国国民の自主的な努力、自然でまた自由な形でそういった研究は進められる、それを両国として側面的に政府としては支援していくという、こういう形が望ましいのじゃないか、そういった研究を通じて初めて両国国民の歴史認識も深まっていくのじゃないか、こう考えておりまして、推進してまいる所存でございます。
  187. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 時間も参りましたけれども、あともう一つ。  似たようなことを日中の間でやったらどうかね。というのは、まあいろいろ、南京事件とか盧溝橋とかいろいろあるのです。これはもうちょっと客観的な、いわば共同研究、そういうような話を日韓と並行して日中もやはりやってもいいじゃないかと思いますけれども、その答弁を聞いて、私の質問を終わります。
  188. 池田行彦

    ○池田国務大臣 非常に有意義な御提言として受けとめさせていただきます。
  189. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 では、これで質問を終わります。
  190. 上原康助

    上原委員長 これにて安倍君の質疑は終了いたしました。  次に、石井一君。
  191. 石井一

    石井(一)委員 我が党の国対からは、私の方のキャビネットで担当しております安全保障、外交、防衛について質問に立てということでございまして、いささか準備もいたしましたが、きょうはその問題は下げまして、そこに提示いたしております大震災の復興問題について、非常にタイムリーのこともたくさんありますので、この機会にひとつ御質問を申し上げ、御要望を申し上げて、政府の善処方をお願い申し上げたいと思うのであります。  たくさんの大臣を御要請いたしておりますが、大蔵、自治、国土は大体この問題を聞いていただいた方がいいような感じがいたしまして、恐縮でございますがおつき合いをいただきたいと思いますし、その他の閣僚の皆さんは、その部署が終わりましたら、御多忙でございましたらどうかひとつお休みいただいても結構でございます。また、説明を余り聞くつもりはなく、政治的判断を伺いたいというふうに思っておりますので、閣僚の答弁を期待いたしておるわけでございますが、時と場合によりましては政府委員から簡潔にお答えをいただいても結構でございます。  そこで、まず最初に、ちょっと実感的なことを申し上げて恐縮でありますが、今度の大震災、実は私は、昨年の一月十七日、自宅で寝ておりました。五時四十六分というわけでありますから、草木も眠るうし三つどきなんという言葉がございますが、まさに全く深い眠りに入っておる時期だろうと思うのでありますけれども、私は、ベッドから二、三メーター跳び上がりまして、その下へまず転がり落ちる。  そういう体験はどなたもないと思います。異常な轟音とともに、まずそういう状態が起こります。そして、部屋の中のベッドは動く、鏡やら家具は落ちかかってくる、上のシャンデリアはどかんと割れる。そしてその瞬間、電気もガスも水道も電話もすべて飛んでしまうのであります。ただ一瞬のもとに文明社会から暗黒の原始社会に入る、こういう状態になります。自分は、これをのけて立ち上がって何とかしょうとしますが、テレビを見ようにもラジオを聞こうにもそこらをやろうにも動けぬ状態にまずこれは入る。  恐らくそういう状態の中で六千名以上の方が亡くなられたというわけでありますけれども、私の方ももう少し南の古い民家であったら同じことになっておったと思うのであります。まあ、地震、雷、火事、おやじなんという言葉があります。このごろおやじは余り怖くないというが、地震は一番目だけれども、これを体験した恐ろしさというものは、私も余り普通のことでは驚かぬ気性なんでございますけれども、一種異常なものである。しかもその結果、汗水を流しながらつくってきた財産にしても家にしても何にしても、一瞬のもとに飛んでしまう。  こういう悲惨なことが実際に起こっておるわけでありまして、これに対する対策というものが、政府は懸命にやってこられたわけでございますけれども、地元との温度差が余りにも大きい。地元の方は、なぜこれだけ遅いのか、なぜこれだけ愛情が少ないのか、なぜ国はという言葉が常に出てくる。  私も政治家として、またいろいろ政府の中にあったりしまして、制度はこうだ、予算はこうだというのはわかるのでありますが、地元の人々が受けたその被害とその感情、そして現在、一年たった復旧状態の隔離とでも申しますか、この温度差というものは余りにも想像を絶する大きいものがあるということをまず御認識をいただきたいと思うのであります。  それで、被害総額は、公称、兵庫県で九兆九千億、こう言っておるわけでありますけれども、現在までに投入された国からの補正予算等、約三兆四千億ぐらいじゃないかな。本年度予算にもそれはございますから、これから追加されていくのでありますけれども、その差六兆円というものがまだやはり埋まっていない、そういう感じがしてなりません。  そこで、大きな障害が二つありましたのは、一つは、公、民の格差が余りにも大き過ぎる。要するに、公の工事、学校でもそうでありますし、そのほかインフラの整備でも何でもそうですけれども、公に関してはこれだけ金の出る制度があるのかというふうに思えるのですが、一たん民間というところへ入ってきますと、これはもう一切制度がない。  政府がとった態度というのは、特別の予算措置を、細かくはやられましたけれどもつくられたとか、あるいはこの震害に対して特別の立法措置、法律も十六本改正はしましたけれども、いわゆる減免の措置であるとか延長の措置であるとかということであって、そういうことは行われておりませんので、これまでの法律上の枠の中、これまでの予算の延長線上で補正予算だけを組んだということになっておるから、一年たってもどういうことが起こっておるかというと、瓦れきは特別に処理してもらった、仮設住宅は建ててもらったという部分はあるが、公のものは徐々に進んでおるけれども、民間の方は全く静止した状態にあります。  神戸へ行かれましたら、大分きれいになってきておりますから、おう、大分これは復興してきたなというふうに思われるかもわかりませんが、一たん裏町へ入ってまいりますと、都会の中の砂漠。どうして家が建つのか。しかし、そのあたりは昔はみんな民家である。よほどの蓄えがないと、恵まれた人でない限り制度に乗らない。こういう状態で静止しておる。そのギャップというものが余りに多いというふうに考えます。常に言われてまいりましたことは、国土庁長官も担当大臣として答弁されておる、いわゆる個人補償はできないという大きな壁が一つあるということ。  もう一つは、オールジャパンということでありまして、震災地、被災地だけに合うものはできない。オールジャパンでないといかぬ、こういう壁が中央と地元の間にありまして、常にいかなる計画、努力あるいは提案をしてもそこで外れてしまう、こういうふうな問題が起こってくるわけでございます。  そういう観点から、ひとつ今から申し上げます問題についてできるだけ踏み込んでお答えをいただき、これまでの官僚のサイド、日本のいわゆる法体系あるいは財政構造の中で無理であっても、少しでも踏み込んでいただきませんと、これはどうにもならぬという状況にあるという御認識を賜りたいと思うのであります。  そこで、前置きはこの程度にいたしまして、二月十八日、総理は被災地を訪れられまして、仮設住宅等も見られ、温かい人柄もあるのでしょう、何かしていただけるという大きな期待を地元に残しました。そして、その翌日、住宅問題が一番深刻だ、したがってこの問題を解決するために、中尾建設大臣、倉田自治大臣鈴木国土庁長官を官邸にお呼びになり、そして具体的な指示をされたということでございますけれども、その内容を簡単に御報告いただくとともに、何か踏み込んだ施策が、まずこの住宅問題に対して現政府は取り組んでいただけるのかどうか、この点からお伺いをしたいと存じます。どなたでも結構ですが、中尾建設大臣、いかがですか。
  192. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 委員の冒頭のその日の衝撃のさまというものは、私は体験をしたことがございませんが、たまさかつい先般起こりました大変な、思わぬ不幸なる、人災ではないかとも指摘されるあのトンネルの事件をもってしても、なかなか思うような方向で進まないものだな、実態として味わった方はもう大変な不幸そのもの、どん底の気持ちであったでしょう。それは今石井委員の御指摘があったとおりだと私も感じます。  総理もこの間、二月の十八日でございましたか、行かれまして、委員指摘の四大臣、この問題について真剣に総理の意見も聞かせていただきましたし、特に総理は、私に対しては、住宅の問題等もなおかつ今の現状よりもアクセルを踏んだ形で、仮住まいというよりは、できれば恒久的にもそのまま使っていけるというような方向で考えてもらいたいし、家賃の問題等考えてもらいたい、こういう仰せでございました。各大臣各様それぞれ承ったことでございましょうが、そんな意見が大きな柱になっておったと私は思います。一刻も早く皆さん方の納得のいく、全部納得いくということは難しいけれども、できるならば全力を投球してかかってもらいたい、こういうことでございました。
  193. 石井一

    石井(一)委員 他のお二人は、また答弁のときにでも補足をしていただくことにいたしまして、今の中尾大臣お話は、具体的なところがまだそうでなく、全力を投球すると。しかし、中尾大臣ですから、全力を投球したらかなりこれまでの大臣とは違って前進するのじゃないかなと私は期待をいたしたいと思うのであります。  きょうの私の質問事項の二番目に、差額家賃補助というようなことが書いてございます。今四万八千三百戸の仮設住宅の中の四万七千戸ぐらいに入居をしておりますけれども、その人々の約八〇%、これは最近の調査でありますけれども、収入が最も低い階層に属しておる。また、その過半数が老人世帯である。ひとり暮らしもあるわけであります。収入がない。そして、まだ戦後の復興住宅も残っておったというのでありますから、仮設のようなものを残すと永遠に残るという一つの証左にもなるのですが、そういうような安い戦後建てられた民間の木賃アパートに住んでおった方々が多いものですから、家賃は五千円とかあるいは一万円までで生活をしておられた、こういうのが現状であり、かなりの人は、そういう状況の中から今自分の住むところを失って仮設の生活をしておるわけであります。  この場合に、いわゆる建設省の制度でございますいろいろの減免措置をとったり、あるいは住宅ができる場合の資金の入れ方について工夫をして、国費が四分の三入る災害公営住宅等を建てても、最低やはり三万ぐらいにしか抑えられない、これ以上は制度上無理だということになります。  私が今申しましたのは、これまで一年間は、ここまでが制度だから、これはオールジャパンでないとだめなんですからということで皆差しどめだったのですが、何かやはり特例のものを加えていかなければ、この方々は仮設住宅へ今後ずっと永住しなければいかぬということになる。この差額の家賃の制度について、全国一律の家賃体系からこの場合にはひとつ踏み込もう、こういうお考えを建設省の方でとっていただけないかと思うのですが、いかがですか。
  194. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 まず、ともかく現状までの報告もしながら、なおかつその観点について申し上げられれば、こう思いますが、これまでに、激甚法に基づく災害公営住宅にかかわる建設費補助率の引き上げというものは、用地費の一定割合について毎年度補助する家賃収入補助の補助率の引き上げ、入居者負担抑制のための家賃対策補助の拡充の措置を講じてきたわけでございまして、特に建設費補助並びに家賃収入補助の補助率につきましては、公営住宅の通常の補助率が二分の一または三分の二であるという点に対しましては、四分の三という高い補助率を適用させていただいた次第でございます。  これらによりまして、特に先ほど委員も申されました、総理から関係省庁に対しましても、この公営住宅の家賃であっても、個々の被災者の方々の生活状況によってはなお負担が重い場合もあるのじゃないのか、こういうことに対して何か考慮、工夫ができないのだろうか、こういう御指示があったわけでございまして、そこで国としても可能な限りの努力をして、災害公営住宅の家賃の低廉化をできる限り図っていこう。今までも、ある意味においては今までの常識的な範疇を超えてやってはいるというものの、なかなか満足のいけるというところまで行きませんから、例えば高齢者であり単身者向けの四十平方メートル程度の住宅では、民間の住宅であれば十万円以上のものを、先ほど申された三万円程度まで低廉化できることとしたわけでございます。  しかし、これはもう既に委員指摘のとおりでございまして、そこで一方、地元の兵庫県においてはどういう状態を示しておるかといいますと、現在、応急仮設住宅の入居者全員について個別面接による個々の実情を聴取して調査してまた行っているところでございまして、個々聞き取りをやっているわけでございます。その結果ももちろんのことではございますが、その間においても住宅対策としては可能な限りの努力をしていかなければならない。  建設省としましても、これは関係省庁と関係いたしますから、早急にこの問題に果敢に取り組みまして、生活状況を十分把握の上で対応していければ、このように考えておる次第でございます。
  195. 石井一

    石井(一)委員 今の答弁だと、結局三万円のところまで、いろいろ補助率をアップしたり、あるいはそのほかの施策をやりながら下がっているのですけれども、今申しておる、私の対象にしておる一万人なり一万五千人なり、あるいは二万人ぐらいあるかもわかりませんが、この人々にはどうしても当てはまらないし、彼らはそれじゃ新しくできた公営住宅に、仮に一部屋の公営住宅であっても移れないという状況でありますから、どうしたってどこからかこの差額の家賃を生み出してこなければいかぬ、こういうことでございます。今すぐにうんと言うわけにもいかぬと思いますが、従来の感覚ではこの問題は解決できない深刻な問題である。  もう一つ、地元が要求をし、建設当局と交渉をしたが問題にならなかったのが用地補助ということでありまして、用地は国のもので結構だから用地だけ手当てをしてもらえませんか、そうすると安い住宅が建てられます、その分家賃にしわ寄せをしていい面でプラスになってきますということなんですが、この用地の補助の創設と、それから家賃の軽減策というこの二つは非常に難しい壁に当たっておるということでございまして、この点について、どちらか建設省としては踏み込んでいただくという施策をひとつ知恵を出してお考えをいただきたいということをお願いしておきたいと思いますが、これはいかがですか。     〔委員長退席、三野委員長代理着席〕
  196. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 この問題は、目下、先ほど申し上げました四省等々で果敢に取り組んでいくことをこれはお約束をさせていただきたいと思います。
  197. 梅野捷一郎

    ○梅野政府委員 ただいま大臣の方から御答弁申し上げましたように、家賃に関しましても従来の仕組みを、従来の枠を超えたところで住宅対策をできるところは最大限やってまいりましたが、また用地につきましても、例えば、住都公団が用地を先行いたしまして、これを長期の割賦で譲渡して当面の公共団体の財政負担の軽減を図るというような措置も講じてきているわけでございます。  いずれにいたしましても、最終的には家賃並びに公共団体の問題両面から、さらに先ほど来ございますような総理からの御指示も私どもにも大臣を通じておりてまいりまして、各関係の担当のところで官房副長官を中心に昨日も鳩首協議を始めたところでございまして、今後、地元の一人一人の条件、全体を通じた施策についてはただいまるる申し上げているようなことで対応しているわけでございますが、個々の条件に極力対応できる方法はどういうことがあるかということを関係省庁の中で十分協議をさせていただきたいというふうに考えているところでございます。
  198. 石井一

    石井(一)委員 総理の指示のもとに中尾建設大臣を中心に新たな施策を、家賃の差額補助あるいは用地取得補助ということについて考えていただきたい。  私が推計しましただけでも、低所得者、年金生活者、これに一人二万円あるいは一万五千円の差額家賃を補助するということだけでも、仮に三年間、五年間しましても何百億という推計の話でありまして、これがたらい回しになるわけであります。これは自治省だ、いやこれは建設省だと、建設省が補助率を上げてくれたら、こちらはそれじゃ交付税措置をする。ぐるぐるぐるぐる回って最後には決まらない。オールジャパンではないからだめなんですと。しかし、地方の財政は瀕死の状態になっておる。これはどのケースも同じでありますが、こういう状態であるということを強く御認識をいただいて、総理の御見識と中尾大臣の政治力に期待しておきます。  次に、仮設住宅であります。仮設住宅が大方五万近くできておるわけでございまして、これも早急に建てていただいたということについては感謝をするわけでありますが、一つの問題は、今一年経過しまして、今の住宅の建設のスピードでいきますと、あと一年後にどれだけ仮設が無用になるかといいますと、その無用になる可能性というのは非常に少ない。まあせいぜい一〇%ぐらいじゃないでしょうか。次の住宅が建たないのですから、そこにおっていただく以外に方法がないだろうと思うのでありますけれども、しかし二年だということに一応なっておりますから、住民は非常に不安を感じております。  この際、担当の厚生大臣から、強制退去の勧告というふうなことはやらないし、前例もあることだから仮設についてはまず弾力的な姿勢で臨むということをひとつ確認しておきたいと存じます。
  199. 菅直人

    ○菅国務大臣 私も厚生大臣に就任いたしまして直後の一月の十六、十七と現地に参りまして、西神の大きな仮設住宅など何カ所かの仮設住宅を見てまいりました。  石井先生が言われるように、確かに高齢者の比率が高いし、また従来非常に安い家賃のところに住んでいたような方も多くて、大変その後のことが心配だということもたくさん現地で聞いてまいりました。特に、今おっしゃいました、二年間で仮設の期限が切れる、これは御承知のように建築基準法の一応の基準になっているわけですけれども、その時点でどうなるんだということでそのときにもいろいろ御意見がありました。  私どもとしては、先ほど建設大臣初めおっしゃっていましたように、地元の自治体において、できるだけ速やかに公営住宅とかあるいは一般住宅への転居がなされるよう、そのことに最大限の努力を自治体を中心にやっておられて、厚生省もできるだけ支援を行っていきたいというのが基本的な考え方でありますけれども、そうした地元自治体の住宅の確保や応急仮設住宅の解消計画などの進捗状態を踏まえてその後のことを考えていかなければならない。その場合に、二年たったから例えば強制退去勧告なんということはとてもできるという、あるいはやるべきだというふうには思っておりませんで、そういったことは全く考えておりません。  御承知だと思いますが、奥尻の場合もいろいろ工夫をしてある程度継続して使えるようにする、あるいは島原の場合もそういったいろいろな施策がとられているということを私ども承知いたしておりまして、そういう意味では、特に自治体を中心とした計画と連動する形で何らかの知恵を出さなければならない、そういうふうに考えておりまして、その場合には、例えば一部を恒久住宅的な使い方をするのか、あるいは他の知恵が出るのか、そのあたりは、地元自治体の方針を踏まえながら関係省庁と連絡を密にしながら適切な対応をとっていきたい。間違っても追い出すというようなことがないということだけは、この場ではっきりと申し上げさせていただきます。
  200. 石井一

    石井(一)委員 時間が経過しておりますから、仮設につきましては私の関連の質問者である赤羽君の方にゆだねたいと思うのでありますが、これ一言だけ、問題だけ提起しておきますけれども、まず建築基準法の更新の時期が来ると、基礎補強の工事等基準法に合った建築確認がなされるという行為をやる。これに関しましても、奥尻の場合でも五十万近く二戸に当たっておるわけでありますから、巨額の費用がかかる作業でございます。百億や百五十億はかかるのじゃないでしょうか。  それから、仮設をとった跡の公園とか球場、スポーツ施設、学校等々、これは原状へ復帰さすという問題があります。仮設は、リース代金をどうするのか。民間で借りておる用地に対してどうするのか。それから運営費というのが一切見ていただいておりません。これだって、市が泣きながら金を出しております。それから、今度それが済んで、なくするときにこの撤去をどうするか。原状復帰するのにはどうするのか。家がなくなるというのはこれだけ深刻なのか。  そして今度、どんどん家が建ってきて移って出ていきますと、まばらになってほんのわずかしか、五百軒あるところへ五十軒しか入っていないということになれば、どこかへ強制退去しながら整理していかなければいかぬ。行政の都合で、そこへ入っておる人の都合でなく移転をさすという、こういうもの等々を考えておりますと、まことに頭の痛い問題がこの仮設の住宅の処理に関連をしてございますが、私は、一々の御答弁は要りませんが、これにつきましては、自治体に押しつけるのでなく、できれば厚生省においてこれを処理していただきたい、仮設住宅関連に関しては、こう思っておるのですが、厚生大臣、いかがですか。
  201. 菅直人

    ○菅国務大臣 ただいま石井先生の方から、いろいろな具体的なことを想定して、かなりの費用がかかるという予測をおっしゃったわけでありますが、確かに、今おっしゃったように、ある程度仮設住宅が残る場合に、どこの部分を残してどこの部分は早急に撤去するのか、あるいはそうしたときの、現在リースが五五%で、四五%が買い取りというふうに聞いておりますが、そういう場合のリースを延長する場合にその費用をどうするのか、あるいは移転費用やその跡の敷地の整備費用をどうするのか。  こういうことについては、原則的には、御承知だと思いますが、これらのものは地方自治体にいわば所有権が移っているという関係考えますと、本来は地方自治体でそういった問題も考えていただかなければいけないところが多いわけですけれども、実際には、そういった事態に対しては、ただ自治体にお任せするということでは大変厳しい状況だということをよくわかっておりますので、また同時に、これは厚生省だけでやれることかと言われると、またその範囲も超えておりますので、これも、地元自治体と同時に、関係省庁と十分に相談をして、そうした問題についても何らかの対応をできるようにしていきたい。  総理も、先ほどの御議論の中にもありましたように、いわゆる住宅の家賃といった問題を特に気にされているということは、あわせてこういった問題も気にされていることだと思いますので、そういった姿勢で何らかの対応をするという方向で考えていきたい、このように思っております。
  202. 石井一

    石井(一)委員 かなり前向きな答弁だと評価をします。薬害で示されたような英断を、これはほっておくわけにいかぬのですから、仮設住宅そのまま置いておいてどうなるんですか。これはだれかが何とかしなければいかぬ。最後に、たらい回しをされたらまた地元が泣くだけになる。これは厚生大臣の英断でひとつ処理していただきたいと思います。  厚生大臣につきましてもう一つ。  瓦れきの処理、これも何百億台に上るような巨額なもので処理をしていただいたわけだが、まだ少し残っております。まあ大体八五%ぐらい進んでいるんじゃないですか。マンションで、つぶしたいが、もう傾いておるが、話し合いがつかない、そのまま残っている。この三月で期限が切れたらそれから先は自費でやれ、こういうことになっておるんですが、これはまた無理です。そんなことはできません。瓦れきの処理に関しても期限の延長をする、そういうことについての、撤去はこれまでやったとおりのことをやるということについて、一言明言をいただきたいと存じます。
  203. 菅直人

    ○菅国務大臣 瓦れきの処理については、ちょっとデータが古いですが、昨年の十一月末現在で九割程度は進捗しているというふうに報告を受けています。ただ、大型マンションの解体工事ですとか一部の建物については、ことしの四月以降に工事完了となる、いわゆる撤去が終わるものがあるというふうにも聞いておりますが、おおむねは平成七年度内、ですからことしの三月内には解体、撤去は終了するものというふうに思っております。  費用につきましては、基本的に、これらの費用はもう既に予算化をいたしておりまして、解体の処理が若干おくれてもそれはその費用の中で措置できる、そのように考えております。  もし細かいことが必要でしたら、事務局の方から答弁させます。
  204. 石井一

    石井(一)委員 前段がありましたが、若干の費用の余裕があるからそれを処理する、こうおっしゃったと思いまして、それを関係者にも伝えて、一日も早く町をきれいにしたいなあと思います。  マンションの再建の問題に関しまして、いわゆる大都市周辺にはたくさんのマンションがあり、マンションが全壊するか半壊するか、いっそのこと全壊してくれれば建て直しができるんですけれども、半壊の場合に、補修をするというふうなことの方がもっと難しい。そこに入っている何十、何百という人の合意をとるのにどれだけ問題があるか。  一々ケースによって違うわけですけれども、共通した問題として、優良建築物等の整備事業で、公用部門は国の補助がある、一年限り、三分の二を五分の四の補助率にしておる。しかし、これも期限が切れようとしておるわけでありますけれども、この期限延長について、まず御理解をいただきたいと思います。いかがですか。
  205. 梅野捷一郎

    ○梅野政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘の優良建築物等整備事業の補助制度、これは補助率も引き上げて適用しているわけでございますが、現在、先ほどお話ございますように、いろいろな事業の進捗が、実態がおくれているということもございまして、現在御審議いただいております八年度予算案におきましても引き続き措置をするということで考えておるところでございます。
  206. 石井一

    石井(一)委員 次に、大規模の改修に関して、同時にこの制度をひとつ認めてもらいたい。そうしなければ、無理をして全面の建てかえになる、そのためには入居者の負担というものが莫大なものになる。思想は同じなのでありますから。できるだけ大切に物を使えということもあるでしょう。新しいものにだけこれを認めるというのでなしに、建てかえに関してもこれを応用さすということも認めていただきたい。いかがですか。
  207. 梅野捷一郎

    ○梅野政府委員 ただいま先生から御指摘の改修のケースについて、その費用負担という、そういう御指摘の側面から見ますと類似の実態にあるということは、十分御意見の趣旨理解できるわけでございますが、この優良建築物等整備事業につきましては、マンションを建てる、あるいは建てかえる際に、従前よりも広いオープンスペースをつくるというような、そういうことを根拠としてつくっておる補助制度を積極的に活用しているものでございまして、改修の場合に同様の制度を適用するというのはなかなか現状では難しいというのが実態でございます。  改修につきましては、私どもが御用意できております支援の仕組みは、金融公庫の災害復興住宅融資におきまして、共用部分を対象に公庫に対する利子補給をしているというようなことで現在のところは対応しているというところでございます。
  208. 石井一

    石井(一)委員 だから、それもよくわかっておるのですけれども、当然制度をつくるときには、こういう地震ということを考えずに、新しいものにはそういう部分をつくれということでこの制度を導入した。ところが、異常事態が起こって、残っている。しかし、今起こっている問題は、この問題で、全体の一五%ぐらいの補助になるのですけれども、意見が分かれて、住民が真っ二つになって、どっちをとっていいかわからぬ。その最大の理由はお金なんですよ。結局、全面改修をすれば、自分はその倍の負担をしなければいかぬからこうだと。そうすると、もう意見が合わない。やはりこういう異常事態にはこの制度を拡大解釈をしてやる。これは、もう時間がありませんから、問題として指摘をしておきます。制度の趣旨はわかるし、今そういう補助制度をとっていただいておることはわかるけれども、この問題は、具体的に協議中のマンションが百も百五十も残っておるのですから、これはやっていただきたいと思います。  それから次に、既存のローンの抵当権が残っておるためにディベロッパーや建築業者が契約を結ぶ場合に非常に障害になっておる。これは最近、住宅金融公庫や一部の民間銀行は抵当権をその建てかえの間外してやろうという処置に出ておるのですが、なかなか徹底しておりません。例えば公庫以外の公的機関である年金福祉事業団とか雇用促進事業団、あるいは民間の銀行の中でもこれは徹底していない。監督官庁が違うのですけれども大蔵省並びに、まあ年金福祉事業団の関係が多いらしいですから厚生大臣から、この担保の問題はもう既に半分解消しているのだから、住宅金融公庫もそういう措置をとっておるのだから、そういうふうにひとつ緩和してやってくれという指示をしていただきたいと思うのでありますが、簡単に。
  209. 菅直人

    ○菅国務大臣 今お話のありました件については、住宅金融公庫などがそういう方向でやっておられることも聞いて、今、年金福祉事業団についてもそういったところと協議もしているところです。  この問題につきましては、年金福祉事業団だけで決められるという形にはなっておりませんが、福祉事業団に関連したところが保証しているというようなところもありますので、私どもとしては、住宅金融公庫の対応とも歩調を合わせるという観点から、できるだけの指導をしてまいりたい、このように考えております。
  210. 石井一

    石井(一)委員 民間の金融機関に関しても、大蔵省としては、この際、被災民を助ける意味で適切な指導をしていただくようにお願いをしておきたいと存じます。  それからまた、この二重ローンという問題が大変大きいのでありますよ。さっき言いました、どかんと来たために倍の負債を抱えてしまう、どこにも持っていきようがない。このことに関しても何らかの措置を考えてやるべきなんです。今私もいろいろ議員連盟などでやっておりますけれども、こういう問題に対して受け身でなく、やはり制度を創設していただくということがない限り深刻な問題は解決をいたしません。  買い取り請求権の問題、これも実は買い取り請求権の期限が三月二十三日に来ておるので、二十四日からはこれは自由になってくるということになっておるのですが、このことについての法務省の見解を伺っておきたいと存じます。
  211. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 委員指摘の問題は、災害によってマンションが全部壊れたわけではない、取り壊さなければどうしようもないという状態にはなっていないけれども、大変大規模に壊れているという場合の問題でございます。  その場合には、法律で、区分所有者の特別の多数決で建物を復旧する決議、あるいは建てかえをする決議という道が設けられておりますけれども、他方、そういう決議がされる見通しがないということで区分所有関係から出ていきたいという人もいる、そういう利害の調整の関係で、一定期間たってまだそういう決議がされていないときは、区分所有者は他の区分所有者に自分の権利を買い取ってもらうことができるという制度になっております。  これは一般法であります建物の区分所有等に関する法律におきましては、その期間は、災害のときから六カ月をたったときからそういう権利を行使できるということにしておりますが、今回の震災にかんがみまして、特別法で政令施行の日から一年間というふうに期間を延ばしたわけでございます。  これは、今申しましたように、今回のような大災害の場合の特殊性、それから区分所有者の権利の調整という観点から、そういう範囲で期間を延ばしたわけでございますが、これは、決してその期間が来ますと建てかえや復旧の決議ができなくなるというわけではございません。一定の人が、もう見込みがないからというので他の区分所有者に自分の権利を買い取ってもらった後にありましても、残された区分所有者が協議をしていただいて決議をするということができるわけでございますので、そういう形で十分協議を尽くしていただいて適正な解決をしていただけるものというふうに思っているところでございます。
  212. 石井一

    石井(一)委員 要するに制度の運用を、理想的にいけばうまくいくのですけれども、それを悪用すれば非常に悪くなるといりことであって、今の説明は十分わかっております。  しかし、こういうことで時間をとっておってもしようがありませんので、もっと大きな問題がたくさんありますから次へ行きますけれども、こういうことをちょっと弾力的に運用することによって相当被災民が助かるという問題について、これは何もマンションの区分法だけではありません。いろいろな法律がありますから、そういう運用を、きょうはたくさんのお役所の方も来ておられますので、問題提起しておきたいと思います。  阪神高速道路の復旧、これは大動脈ですが、被災後一年たっても復旧しておりません。本年の終わりにでき上がると言うが、なぜそんなに時間がかかるのか。また、地元で不思議に思われていますのは、あれだけの高速道路がみんなひっくり返ってしまって、そして、それこそ週刊誌のグラビアにも物の見事に出ておるのですけれども、その周りの家は倒れておりません。あれは何か手抜き工事でもあったのじゃないかという指摘もあります。回収したのがまた早い早い、あれだけの瓦れきの処理というのを一日か二日でやってしまったというようなこともあります。それならそれぐらいのスピードでつくってくれればいいのに、それが一年たっても一年半たってもできていない、こういう現状が起こっておる。  阪高の復旧のめどと、なぜおくれておるのか、お答えいただきたい。
  213. 橋本鋼太郎

    ○橋本政府委員 お答え申し上げます。  大規模な震災を受けましたので、現在一生懸命復旧に努めております。当初、ことしの十二月までに全線開通をするということでございましたが、いろいろ工夫し努力し、二カ月程度早く本年の十月末には全線開通するということにいたしました。なお、一部区間につきましては、この二月十九日に、一部区間三・二キロでありますが、開通したところでございます。  なぜこのようにおくれたかということでございますが、これにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、全線二十八キロにわたりまして大変大きな被害を受けたということが第一点であります。  それから、復旧工事を実施するに当たりまして、今回の規模の地震にも耐えられる構造で復旧すべきだという観点から、道路協の震災対策委員会で復旧仕様、新しい技術基準を定めていただく必要がありました。これについても大変急ぎまして、一カ月余りでつくりましたが、しかしやはりそこで時間がかかっている。あるいはこれの設計を行う、さらには地元の皆様方あるいは沿道の皆様方に復旧工法の説明をする必要があります。そういう時間が若干かかったという観点でございます。  さらに、この阪神高速は国道四十三号、二号線という幹線道路の上にありますので、この幹線道路の交通機能を確保しながら安全に工事をする必要があります。また、沿線がいわゆる住宅地域もありますので夜間工事ができない等、いろいろな制約がありました。  しかし、現在、一日に約千三百台の重機械を使ったり六千三百人の作業員を動員して一生懸命やっております。工法についても、いろいろな新しい工法、大ブロック工法等、いろいろ検討して進めております。そういう意味で、今後ともさらに早く復旧できますように努力してまいりますし、阪神公団にもそのように指導していきたいと思います。  なぜあんなに大規模に倒壊したのかということについては、これは今までに経験をしていない極めて激しい地震動を受けたという点でございます。現在、これらの技術基準については早急に見直しをするように検討を進めている段階でございます。
  214. 石井一

    石井(一)委員 次に、経済の問題について通産大臣にお伺いをしたいと存じます。  目前の問題として、中小企業に対する金融機関の災害貸付制度の期間延長、これもかなり利用されておりまして、非常に地元の中小企業は助かっておりますが、低利の融資を、七月で期限切れになりますけれども、今後継続をしていただきたいという要望であります。  また、それと関連をいたしまして、災害復旧の高度化事業、いわゆるこれは工場の建設等々、協同組合がいろいろ集約してやったりするときに起こる融資枠の確保と条件の緩和、これにつきましても、市街地で土地区画整理事業や市街地開発事業が決定されると、その間何も建てられない、あるいは協議が調わない、それが二年や三年かかってしまう。この期限が平成十年でありますけれども、この間は動きませんけれども、必ずこれは動く体制に、復興の段階に入ってまいりますので、このことにつきましても弾力的な運用をしていただきたい。  まずこの二点につきまして、ひとつお答えをいただきたいと存じます。
  215. 塚原俊平

    ○塚原国務大臣 金融機関の低利融資制度の延長でございますが、御指摘のように、平成七年七月末までだったものを一応平成八年七月末まで一年間延ばしていますけれども、これも適宜適切に被災地域の状況を見て対応してまいります。  それから、後段につきましては政府委員から答弁をさせます。
  216. 新欣樹

    ○新政府委員 賃貸工場の建設など、災害復旧高度化事業の融資枠の確保と受け付け期間の延長という御質問でございます。  賃貸工場の建設等の災害復旧高度化事業のため、平成六年度第二次補正予算平成七年度第一次補正予算及び第二次補正予算におきまして、被災地域の要望をもとに必要な予算枠を確保してきたところでございまして、これによりまして、菅原市場というような仮設店舗あるいはケミカルシューズ等の仮設工場の建設がなされておるところでございます。  災害復旧高度化事業の受け付け期間でございますが、通常のケースでは一年ということになってございますが、この阪神・淡路大震災に関しましては三年に延長をするという要件緩和を行ってきたところでございまして、御指摘のように、十年一月まで受け付けが可能であるという状況でございます。  今後とも、都市計画や用地の整備状況あるいは事業の進捗状況というものを十分に把握をいたしまして、被災中小企業者の復旧のため、適宜適切に対処してまいる所存でございます。
  217. 石井一

    石井(一)委員 最近、財団法人阪神・淡路産業復興推進機構というものを地元の自治体と、特に財界が中心になりましてやりました。個々の企業だけでは復興はできない、そういうふうなことからこの財団をつくりまして、非常に熱心にいろいろのプロジェクトの推進に当たっておりますし、またいろいろの委員会等から提案されております問題についても、やはりこれはジョイントで、総合力を結集した形で処理しなければいかぬということでありまして、本年スタートいたしましたが、通産省としては、この機構に対して予算を少し計上していただいたところでありますが、今後の取り組みについて大臣の見解を伺っておきたいと存じます。
  218. 塚原俊平

    ○塚原国務大臣 昨年末に地元の官民が一体になりまして御指摘機構がスタートいたしまして、これは産業復興に関する中核的な推進機関という位置づけをされているというふうに認識しています。  産業界と自治体が協力しつつ実施をいたします三本柱みたいなものがございまして、一つが産業復興関連プロジェクトの企画と調査、それから二つ目がセミナー、イベントの開催、三つ目が被災地域に関する情報提供等、適切な支援を行おうというふうにしております。これは、今後とも通産省としては、関係自治体、そして同機構と綿密な連携協力を図りまして、被災地域の復興のために必要な施策の具体化に努めてまいりたいというふうに考えております。
  219. 石井一

    石井(一)委員 実は、自治省でパイロット自治体なんというのがあります。これは、私も自治省におりましたときにいろいろ体験をしたのですけれども、地方分権をするためにかなりの権限を自治体の方に移譲する、こういうふうな形で、現行法の枠内で、法律の改正とかをせずに地方分権を推進するというふうなことをやったのですが、私はこれとそれとを同列に扱えというわけではありませんけれども、財団をつくったからには、やはり個々にいろいろケースがありますので、規制緩和の部分その他につきましても、これはまたオールジャパンということですぐひっかかってまいりますから、財団に対してはそれなりの権限を移譲してやっていく、そういうふうな柔軟な対応をしていただきたい。  そして、ことし国から出された金はたった一億数千万でありますけれども、この予算措置についても、今後、これは地元の推進機関の中核となりますから、通産省としては積極的な支えをしていただきたいということを要望としてお願いしておきたいと存じます。  次に、神戸港の修復の問題に関しまして、運輸大臣、おいでいただいておりますから、一言御答弁をいただきたいのであります。  船舶は八割、貨物は七割、倉庫は八割ぐらいの原状復帰ができておりますけれども、ここ数カ月頭打ちになり、他港へのシフトが大きくなっておる。港は神戸の経済の源泉でありますだけに、これは非常に深刻なんです。まず一つは、ローカルカーゴが釜山なり外へ行っておる。これは神戸港だけでなく、基本的な港湾政策というものについてもう少し国家的な姿勢を打ち出していかなければいかぬのじゃないかということを感じます。  それと、小さい問題でありますが、水先案内人のコストが、神戸港は三百トン以上になっておる。それから、それが大阪では一万トン以上。なぜ同じ湾内でこれだけの格差があるのか、簡単にひとつお答えいただきたいと思います。
  220. 亀井善之

    ○亀井国務大臣 神戸港は、震災前には我が国の外貿コンテナの貨物の約三割を取り扱っており、我が国の経済活動に深くかかわっておるとともに、神戸市の市民所得の約四割を港湾関連産業が占めておりまして、地域の経済や雇用に深く関係しておるわけであります。  神戸港の復旧のことにつきましては、私も一月十七日に神戸港を視察をしてまいりました。一日も早い全施設の復旧を図るべく、現地において努力をしておるところでもございます。  応急復旧により六十五の公共岸壁が利用可能の状況になっておりますし、さらには総理の諮問機関である阪神・淡路復興委員会の提言に基づく六甲アイランドの仮設桟橋は本年二月に全面供用させるなど、現在までのところ、工事はおおむね当初の想定どおり順調に進展をしております。  今後とも本格復旧工事を精力的に実施し、本年三月末にはほぼ三割に相当する五十の岸壁の本格復旧を考えるなど、予定どおり八年度末を目途に全港湾機能の回復を図るとともに、特に競争力のある国際コンテナ機能を確保するために、復興という面におきましても全国に先駆けて、水深十五メートルのコンテナターミナル二バースを本年四月に供用開始をする、このように考え、先生御指摘問題等につきましては鋭意これからも努力をしてまいりたい、このように考えております。  また、パイロット料金の件でございますけれども、先生御指摘の問題は神戸市そのほかからも御要望をいただいておりますことであります。パイロット料金の水準の問題ではなく、神戸港と大阪港の入出港を行う場合、両港の船舶交通の状況が異なるため、そもそも水先人を乗船させることが要求されている船舶の大きさが異なることから、水先人を乗船させる場合、これを乗船させない場合と比較してその分だけ費用が高くなるという問題であると考えます。  この問題は、経済的な側面でなく、一たん事故が起これば人命、海洋環境に大きな影響を及ぼすという問題でもあり、また水先人を乗船させることにより、ふくそう海域における船舶の運航能率を確保できるという経済的にもプラスの面もあることから、今後慎重に検討する必要がある、このように考えております。     〔三野委員長代理退席、委員長着席〕
  221. 石井一

    石井(一)委員 観光の問題はそれでは省略をいたしますから、運輸大臣、どうもありがとうございました。  次に、震災復興基金に関しまして、大蔵大臣、自治大臣に御所見を伺いたいと思うのであります。  以上述べましたように、各般にわたってべらぼうな金がかかり、制度の枠内に入らない。そこで、どうにもならないものですから、地元で考え出したのがこの震災復興基金という制度でございます。これは兵庫県と神戸市が設立したもので、五千億円に係る利子分については地方交付税で処理されておりますけれども、その五千億円というのを民間の銀行から借りてきておる。こういうようなやりくりをしまして、そうしてその利子が一年間に二百五十億ほど出てくるんですけれども、このお金だけをつかみ金として民間にばらまいておる。言うならば、これだけしか財源がないというふうな状態に置かれておるのであります。  奥尻とかそのほか雲仙と比較するわけでありませんけれども、この場合は義援金が大きかったために、一人当たりの義援金というのは大体一千万ずつぐらい与えることができたでしょう。今度の場合は義援金も集まったんですけれども、被災者が余りにも数が多いために、一人の平均は二十万とか三十万であります。一千万と二十万、三十万と、こんな差がついておるわけですけれども、これ以外にはどこにも自由な金がない、こういう状態で復興が続いておるわけでありますから、非常に無理があるわけでございます。  そこで、この財源に対して少し上乗せをしてもらえないかというのが希望なんでありますが、重要な施策を地方財源措置だけにゆだねるのは妥当でなく、国としても積極的に支援するという姿勢を示すために、例えば、同額の五千億を無利子で投入するとか助成するとかというふうなことができないか。こういうことをすると、そのプールされた資金が倍になりまして、多少なりともその運用というふうなものができてまいります。  今の阪神・淡路大震災復興基金の事業概要などを見ておりますと、何十項目にもわたるものにほんの涙金だけ与えておる住宅で十六項目、産業で十六、生活で十四、教育で十ということですけれども、しかし与えている金は、家を建てて入っても利子補給を三年間やるとか、もう本当に涙金を配っておるというだけなんですよ。余りにもこのプールが小さ過ぎる。  国に金を出してくれと言っておるんじゃないんですよ。貸してくれ、十年間、お返ししますと。その利息で我々はこの基金を大きくして運用したい、こういうことをお願いをしておるわけでありますけれども、この地方の神戸市役所なり兵庫県の連中が自治省なり大蔵省へ行ってきましても、とても門がかたい、どうにもならぬ。それと、今度はキャッチボールが起こる、大蔵省は自治省だと言われる、自治省は大蔵省だという話になる。  しかし、考えてみたら、住専の話は私はいたしません。しかし、結局それだけの金をくれとか投入してくれとかというのでなしに、地元が資金をつくって運用しておるんだけれども、余りにも少ないし余りにも範囲が狭いので、これを広げるために国が横から力をかしてくれ、こういうお願いをしておるわけでありますが、この復興基金の拡充ということに関して、両大臣から一言ずつ御所見を賜りたいと存じます。
  222. 倉田寛之

    ○倉田国務大臣 その前に、先刻、建設大臣が総理からの御指示についてお話がございました。内容はそのとおりでございますが、二十日の閣議後に改めて総理から、住宅対策に対する御指示とあわせまして、平成八年度にも復興宝くじを発売するなどの協力はできないかという実は御指示がございました。  住宅対策につきましては、私も、一月の十九日に地方防災サミットが神戸市で開かれた際に現地を視察いたしまして、仮設住宅から恒久住宅へ、その政策の策定というものを非常に強く感じておりましたし、とりわけ高齢者の皆様に対する公的住宅には一工夫が必要ではないかという考え方もございました。したがいまして、自治省といたしましては、関係各省とよく協議をさせていただきまして検討をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。  なおまた、復興宝くじにつきましては、平成八年度の発売計画は既に定められている状況でございますが、事務当局に早急に検討を指示いたしまして、発売団体でございます都道府県、指定都市の全国協議会とも協議を行って、前向きに対処をしてまいりたいと考えているところでございます。  ただいま石井委員指摘になりました復興基金の件でございますが、自治省といたしましては、地元の地方団体におけるこれらの施策を支援をするために、出資金、長期貸付金に対しまして、地方債を許可いたしますとともに、長期貸付金にかかわる地方債のうちの五千億円から生じる利子について普通交付税措置をすることにいたしたところでございます。  なお、基金の拡充に関しましては、被災地における事業の実施状況などを踏まえながら、地元県市の御意向もお伺いをしてまいりたいと考えております。
  223. 鈴木和美

    鈴木国務大臣 石井先生が現地で大変御苦労をなさっていることに対して敬意を表します。  まず、私に総理からお話がございました件は、先ほど建設大臣からお話しのとおり、何といっても住宅の対策について、これは全力を注いでもらいたいというお話が一つございました。  もう一つは、復興委員会というものが今度解散することになったものですから、現地の皆さんが大変中央政府に見放されたような感じがするというような心境であるので、このことを不安のないように何か考えてほしい、こういうお話がございました。  それで、もう既に御案内だと思いますが、復興対策本部の事務局長と内閣内政審議室長を中心といたしまして、今月中に現地においでになりまして、そこで現地の皆さんと今までの点検の問題とこれからの施策の進め方について協議をすることになっています。  これは今各省からお話が全部ございましたけれども、この阪神・淡路の震災に関する対策本部が国土庁でございますので、各省庁のいろいろな御意見を今伺っておりまして、なお二十八日ぐらいにお帰りになったこの幹事からのお話も聞きまして、総合的な対応をこれから考えるということにしているところでございます。  なお、復興基金の問題ですが、これは考え方が二つございまして、地元で、五千億で大変御苦労いただいているわけでございますが、そのことをふやせということなのか。これはそうであるならば自治省さんに関係することですから、またいろいろ検討しなければならぬと思うのです。  ただ、国からまたその基金に投入をするということになりますと、行政の施策としては、先ほど先生も御案内のように三兆三千八百億円投入しているわけでございますから、この基金はその行政の施策を補完するという立場で認めているわけでございます。したがいまして、補完をするということであるならば、国のお金を投入するということはなかなか難しいというように考えざるを得ない、こういうふうに思っているところでございます。
  224. 久保亘

    久保国務大臣 石井さんから、阪神・淡路大震災の模様や復興について、大変身にしみるお話をお聞きいたしました。私も、昨年震災が起こりました直後に与党三党の震災対策本部が設置されまして、その本部長を務めてまいりましたので、兵庫県にも数回にわたってお訪ねいたしました。また、関係者の方々からもいろいろな御要請も伺ってまいりました。  今、基金の問題についてお話がございました。私は、今後の阪神・淡路大震災の復興に関しましては、地元の復興計画を尊重しながら、国が積極的に支援を行っていかなければならないものと考えております。  ただ、今具体的に復興基金の問題についてお話がございました。地財措置としての復興基金に国が適法に出資することが可能であるかどうかということについては、今関係大臣からもお答えがございましたが、これらの問題について、私も今確たる考え方をここで直ちに答弁することは非常に難しい問題だと思っております。  なお、このことに関しましては、大蔵省として、政府委員の方から考え方を答弁させたいと思います。
  225. 小村武

    ○小村政府委員 ただいま大臣がお答えしたとおりでございますが、国土庁長官がおっしゃられたとおり、この基金というものは、地方に設置されたものは国の政策を補完するものであるということでございまして、私どもとしては、新たに国が第二の基金を設けるということは適切でないのじゃないか、個別の施策の充実を通じて精いっぱい努力をしてまいりたいと思います。  委員指摘のように、今三兆三千七百億の国費、事業規模にいたしまして八兆円に上ります。今後、こうした面における施策の充実を図ってまいりたいと考えております。
  226. 石井一

    石井(一)委員 私が制度的に難しいということも理解しながら申し上げておりますのは、個別の補助をアップするとかその他では処理ができない、したがって、地元としてはやむにやまれぬところで金を借りてきて、資金をつくってやっているのだ。  だから、そこへ地財計画その他の関係から国の金をほうり込むことは難しいということがわかりましたら、知恵は幾らでも出せるわけであって、要は、言わんとしていることは、そこまで無理をして復興基金をして、涙ほどの金をプライベートの部分に配っているのだから、もう少し何か知恵が出せないのかということを申し上げておるわけであって、復興基金ができなければ別の基金でも結構でありますけれども、今のものにつぎ込むということになれば自治省は嫌がるし、別のものをつくるということになれば大蔵省は嫌がる、こういうような両方でのことから制度上うまく回らぬ、こういうことが行われておるということを指摘しておるわけでありますが、この点はさらに御検討をいただきたいと思います。  これから十年間、年間にたった二百億そこそこのつかみ金なんですけれども、二千億ぐらいになります。この間に、どれだけのものに対して少なくともスタートのインセンティブを与えることができるかというふうなことを考えたら、今の制度になじまぬものは何らかの形で処理するということを考えていく必要があると思います。  それで、もう一つアイデアがありますのは、いわゆる震災復興特別事業債という考え方ができないかということでありまして、これも実は、私の残されておる時間はあと五分少々しかございませんので、この席で詳しく申し上げることはできませんけれども、いわゆる下河辺委員会の提言でも復興特別事業として次々の事業を位置づけるということを提案し、そして復興本部の取り組み方針にもそれを位置づけておるわけでありますけれども、それに対する財源措置というふうなものが十分できておりません。  この財源措置に関しましては、今地方にやれと言いましても、赤字に転落をしつつ来ておりますので非常に無理である。恐らく二〇%を超える起債、発行の額になり、起債制限比率というものがもう大変な状態に入ってきておるときに、地方にこれを処理せいと言ってもどうしても無理である場合に、やはり何らかの形でひとつ措置をしてもらいたい。  補正でありがたかったのは、補正の場合には地方の持ち出しはございません。結局いわゆる補正の場合には、裏負担というものが国費によって認められておりますから、事業はスムーズにいくわけです。しかし、本予算に入ってくる公共事業でも何でもすべての措置は、裏負担というものは全部地方へ回ってまいりますから、地方の財政というのは雪だるまのように膨れ上がってくる。  だから、本当に助かったのは、さっきから申しております三兆四千億をやっていただいたことであって、今後、今審議しております八年度の予算のものであったって全部地方が抱えるけれども、地方はもう税収は下がってしまい、人間は一人も採らぬということでカットし、民間以上にスリム化をやったって、もう裸になってしまって骨も皮もないという状態になっておるのに、今のような状態で、これは制度上できませんということをいつまでやられるのか。  ここでやはり政治的な一つの見識なり英断というふうなものを出してもらわなければいかぬのじゃないか。このままだと、本予算に入ってくる住宅にしても、区画整理にしても、再開発にしても、これはもう執行不可能ということで、途中でとんざしてしまうような地方の財政状態になっておるということ。  国庫補助率のアップが難しいということであれば、せめて地方財政全体の中で財源手当てができないか、大蔵省として交付税総額の上積みを検討できないか、自治省としてこの上積みを大蔵に要求できないか。たとえ国の財政が苦しくても、十六兆八千億円というような交付税があるのですから、被災自治体への財政支援考えてもらわないと、例えば第二次復旧事業を限定し、裏負担を国の方でやるという復興債を考えるか、何かこういう制度をやっていかないとこれ以上もちませんよという問題があるということを提起しておきたいと思います。  私の時間が参りましたので、この問題はここで説明を聞いてもいたし方がございませんから、要は、政治家が何らかの知恵を出してやらなければ復興というものはできないし、口先では全力投球をして復興すると言うたって中身は全くない、そういう中から温度差はますます広がってくる。この災害はだれが悪いのか。あす鹿児島へやってくるかもわからぬ、あす山梨へ落ちてくるかもわからぬ、このときどうするのか、こういう問題の提起であり、一々細かい説明は要りませんが、このような形での財源を新たにつくるということを今の政府として考えていただきたいと存じます。  何か大蔵大臣、手を挙げておられるから、御所見がございますか。
  227. 久保亘

    久保国務大臣 首相も先日、十八日の日に神戸へ参りました際に、地元でお約束を申し上げております。今月中には復興本部事務局と地元地方自治体の代表の方々との協議が神戸で行われることになると思います。それらの機会も通じて、地元自治体の側からのいろいろな御要請も改めて伺いながら、私どもとしてできることを最大限に努力をしてまいりたいと考えております。
  228. 石井一

    石井(一)委員 私は、あと三つ大きな問題を持っておるんですが、端折って問題点だけを指摘し、そして御所見があれば簡単にお答えをいただいて、赤羽君に譲りたいと思うのであります。  一つは火災保険の支払いということでありまして、今度の震災で百七十五件の出火があり、七千軒焼けたんですね。ところが、保険金が全然払われないんですよ。それには約款というのがありまして、地震の場合は火災保険に入っておってもだめよということで払われないんです。しかし、生命保険の方は、約款はちょっと違いますが、やはり気の毒なということで見舞金を出したり、保険金を満額払ったりする会社があるのに、損保会社の方はこれはもうだめだ、これはもう地震だということでどうにもならぬという状態が起こっておる。裁判がどんどんと起こっておるんですね。これは僕は非常にかわいそうだと思うのであります。  損保会社の経理状態等を見ましても、まだ余裕も十分あるという状況でありますので、この点に関して、これと同じような保険は厚生省管轄の市民生協や共済にもありまして、これも何かお互いに牽制し合っておるわけです。どこかが払ったら皆払わないかぬようになるからというので、にらみ合っておる、こういうような状態が起こっておる。  この点についても、大蔵省保険部の説明はここでは省略をしていただきますが、ひとつ適切に指導をしていただきたい。被災民の気持ちを考えて、約款がどうだとか総合的判断がどうだとか、あれは火災じゃない、地震だとか、こういう議論はあると思いますけれども、生命保険会社もそれだけの配慮をしてくれておりますので、この点につきましては、大蔵大臣大蔵省の管轄の保険会社につき約款を決める認可権というのはあなたが持っておる、こういうことになっておりますからね。厚生省は、ひとつ監督官庁として生協その他に関して、ある程度の見舞金を出してやるとかなんとかとして処理をせいと。七千軒焼けておる家がどういう気持ちになりますか。この点につきまして、ひとつ御努力を賜るようにお願いをしておきたいと存じます。  まとめて御答弁をいただきます。  次に、地震共済制度の創立という問題でありますが、今回地震の保険で保険金を払ってもらったものは、まあ家だと四兆円、五兆円の被害を受けていますけれども、七百億かそこらですね。加入率が今の制度では余りにも少ない、二%とか三%であった。東京でも五%、六%じゃないんですか。そして後に、最近大蔵省はこの制度の法律を変えられまして新しい商品を出されましたけれども、これでもとても需要を満たすものではございません。一千万が限度五千万に上がったとか、資金のプールが一兆八千億から三兆一千億に変わったといいますけれども、まだまだ加入率というのは一〇%まで満ちてはおりません。  そういうふうなことを考えますと、こんなものは、この地震国日本、次にこれが訪れた場合には、今言っていますように何年たっても民家は立ち直りません。そういう意味で、私は、国民皆保険の地震の共済制度というのをこの際つくるべきであるというふうに思っております。  我が党では地震災害対策議員連盟をつくっておりまして、私その会長を務めておりますので、我が党は議員立法を進めます。自民党も、さっき後ろから声がかかっておりましたが、熱心に検討をされております。  地震がよくやってくるという東京だとか静岡だとか、まあ神戸はもう今や大熱心ですけれども、そういうところは熱心なんですけれども、余りやってこぬという三等国、四等国は、いや、やってくる方が四等国ですけれども、少し消極的ですが、これは今や国民全体の問題だと思います。  それで、新進党は、もう今の制度よりも、別に国民皆保険制度をつくりたいという考え方でありますが、自民党の場合は、政府とも協議をされながら、強制保険と任意保険を組み合わせるということで御検討をいただいております。これは、この国会、議員立法として当然国民のために処理しなければいかぬ問題であると思いますので、これを進めますので、ひとつ閣僚の立場で御協力のほどをお願い申し上げます。  それから、最後にもう一点残っておりますのは抵当証券という問題でありますが、この抵当証券というのが、住専でも今議論をされておりますように、兵庫銀行がぶつつぶれまして、その兵庫銀行の子会社から抵当証券を買っておった人々、神戸でも阪神間でも何千人といるんですが、今第五次までの訴訟が起こっておる。被害額というものがべらぼうな金額になっておるという現状なんであります。これは、兵庫銀行が倒れたんですけれども、兵庫銀行の窓口でこの抵当証券が売られておる、あるいは兵庫銀行銀行員が勧誘をしてやっておる。老後の資金に何とかこれを買ったというふうな人々が今路頭に迷っておる、こういう問題が起こっておるわけでありまして、この問題は、信用の維持というふうな面におきましても、もう放置できない問題ではないかというふうに考えております。  この問題は、今兵庫銀行はみどり銀行か何かに変わってあれしておるんですから、それにかわって当然処理してやるべき問題だというふうに考えるわけでありまして、今三つ、私は早口に申しました。  一つは火災保険の支払いに関する問題、そしてその次には地震共済制度の設立の問題、それから抵当証券の問題、この三つにつきまして、大臣の御所見があればお伺いしておきたいと思います。
  229. 久保亘

    久保国務大臣 火災保険の支払いの問題につきましては、約款の問題もございますし、いろいろ今御意見のございましたことは心情的には私も理解のできることでございますが、十分にそのことが可能なのかどうか検討をさせていただきたいと思っております。  それから、地震皆保険の問題につきましては、地元自治体からも御要請がございます。このことにつきましては、議会でも御検討が進んでおるということを伺っておりますので、私どもとしても今後さらにこの問題についても検討を進めなければいけないと思っております。  抵当証券の問題につきましては、私も直接、いわゆる被害者と見られる方からお手紙をいただいたりいたしております。この問題は裁判になっている問題とも伺っております。いかなる事情であったのか、また大蔵省としてこの問題にどのようなかかわりを持てるのか、こういう問題は相当研究を要する問題と思っておりまして、裁判の成り行きも注目しながら、私としても関心を持っていることでございます。
  230. 石井一

    石井(一)委員 私はこれできようはやめますけれども、各役所の皆様方、問題を十分認識されておると思いますので、別の機会に私の方に十分な説明をしていただきたいと思いますし、これは私はまた別の機会に当委員会かほかの委員会で取り上げ、ひとつ問題の解決に当たりたい。どれも看過することのできない、今回の大地震から派生じた関連のある問題でありますけれども、それが制度だとか法律だとか現行の枠内だとかというふうなことで、結局、被災民である者が本当に苦しみ、あえぎ、あすをどうしようかという中に現在生きておる、こういうふうな状況であるということを御理解をいただきたいと思います。  きょうばいろいろ前向きな答弁もちょうだいいたしましたので、それに関しましてはひとつ多といたしますし、直ちに実行していただきたいと存じます。また、指導等々お願いしなければいかぬ問題提起をたくさんいたしましたので、それにつきまして各省ばらばらにひとつやっていただきたいなというふうに思います。  最後に、梶山官房長官、まだ来られませんから申しておきますが、本来、これだけたくさんの問題が被災地に山積しておりますから、東京ではかり閣議を開かずに、一遍その被災地へ行って閣議を開いていただいて、住民から生の声を聞いていただきたい。我々も自民党のときによく閣議に行きました。用のある大臣なんていうのは数限られておった。しかし、今被災地に来られたらみんな関係がありますよ。みんな何かお願いしたいことがそろっていますよ。だから、橋本内閣の地震の復旧に対する前向きな姿勢として、被災地へ全員来られて、そこで意見を交換される中に、もっと生きた政治、生きた施策というものを実行していただきたいと思います。  一応、本日、私はこれで終わりたいと思います。
  231. 上原康助

    上原委員長 この際、赤羽一嘉君から関連質疑の申し出があります。石井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。赤羽一嘉君。
  232. 赤羽一嘉

    赤羽委員 新進党の赤羽一嘉でございます。私も、与えられた時間内で震災復興の件について質問させていただきたいと思いますが、どうかよろしくお願いいたします。  阪神・淡路大震災が起こりまして四百日を超えたところでございます。この四百日間、政府では大変な御尽力をいただいたんだというふうに私は理解しております。しかし、同僚議員の皆様、本委員会でも質問に何回か立たせていただいて御提起あったように、まだまだ本当の意味で取り残された問題が大きいなということを今本当に実感しているところでございます。  そして、本会議等々での総理の答弁はもう最善を尽くすという頼もしいお話なんですが、質問も余り具体的でないときもありまして、非常に何を頑張ってくれるのかというような地元の声もございますので、きょうは極めて細かいことも若干聞かせていただきますが、各種委員会ですとなかなか、結局は金が絡む問題でありますので、当予算委員会の場をおかりいたしまして質問に立たせていただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。  それで、現法の中ではというか、特別立法もいたしましたので現制度の中ではある意味ではかなりやっていただいたんだろうなと、しかし、現在の制度の中でのはざまにあって救われない人がたくさんいるというのもまた事実だ、これは今石井議員の質問にあったとおりでございます。ですから、その部分について大臣の御所見としてどうなのか、細かい問題で事実関係の場合は政府委員の方も結構ですけれども、三十分でございますので、できれば大臣の生の声で踏み込んだ御答弁をいただきたいと思います。  けさの朝日新聞の投書の欄も、八十二歳の被災者の方が、この方は仮設にも入れなくて横浜に引き取られているということですが、「被災実情見て住専の再考を」という投書がありました。ちょっと胸が痛むような内容ではあるのですが、要するに金のない、自力でできない人たちだけは仮設に入る、そして将来のことは暗たんたる思いでいるというような状況でございます。  仮設住宅については四万八千戸、約十万人の方が入られている。このことについて厚生大臣からも種々積極的な、前向きな御答弁をいただいているところでございますが、私、現場を歩いておりますと、やはりかなり簡易なんですね、建て方が。くいも相当簡単に打っておりますので、この一年経過した段階でもうかなりほころびが見えている。輸入住宅なんかは屋根がパネルになっているのはパネルがずれて、そこからすき間風が入っておる。そこをガムテープで補強してすき間風を食いとめるような話でございます。  私は当初、昨年秋の厚生委員会で、建築基準法を手直しして二年以上期限延長するべきだという話もしたのですが、やはり現場を歩いておりますと、机上で延長するしないというよりも、まずしっかりケア、居住環境を補強していく、維持していく、そしてその後どうするかというような話であると思いますし、その維持管理、そして先ほど石井議員からもありましたが、撤去費用とか莫大な維持管理費用というのですか補強費用がかかる、これは神戸市からも試算が出ておりまして、全体で約三百億円ぐらいの費用計上が見込まれておるというわけでございます。  それで、きょう厚生大臣に一点だけお尋ねしたいのですが、先日の本委員会の土肥隆一さんの質問のお話の中で、また先ほど石井議員の御答弁の中にもありましたけれども、要するに、仮設住宅は地方自治体に財産として渡したものだ、だから地方自治体として管理運営していくのがその思想というような内容お話がありましたけれども、私はそこはちょっと違うんじゃないかと思うのですよ。  市営住宅とか公営住宅の場合は財産として残ります。所有もします。だから地方自治体としてということはよくわかるのですが、仮設の場合は所有もしているわけでもございません。建てていただいたのは事実ですが、建てっ放しにされると、たかだか三百億円と言いますけれども、神戸、将来この十年間でリストラをし切っても六千八百億。まあ七年度の補正がつきましたから、最低見積もっても約六千億円の赤字が出るというような状況の中で復興していかなければいけない中で、この仮設というのはある意味では撤去していかなければいけない。こういったものに対して、地方自治体が主体となって運営していくんだ、悪く言えば国はつくっただけで後は自分たちでやりなさいよというこの考え方は、僕は根本的にはちょっと違うんじゃないかと思います。  本来、この仮設住宅というのは国の直轄でやった支援のはずだというふうに私は認識もしておりますし、仮の話でしょうけれども、その二年以後のリース費用だとか補強費用だとか行く行くの撤去費用だとかという、恐らくこの三百億円という県からの試算ではありますけれども、ここの部分については、どうか地方任せではなくて、このぐらいはまず国の、国庫の財政でお取り計らい願いたいというふうに思うのですが、どうでしょうか。
  233. 菅直人

    ○菅国務大臣 私も、先ほど申し上げたように、厚生大臣になりました直後に、一月の十六、十七日と伺いまして、かなりの箇所を拝見させていただきました。確かに現在も寒い時期でもありますし、暖房のあり方などについてもいろいろな要望を伺ったところであります。  今、赤羽さんの言われました仮設住宅の基本的な位置づけということですけれども、現在の制度の中では、応急仮設住宅については、設置した後はその自治体が取得をした財産として維持管理されるということが原則になっているというふうに理解しております。  しかし、今回の震災は大変甚大なものでもありますし、応急仮設住宅の建設戸数も御存じのように大変大量のものでありますし、また、長期化に伴う補強の問題などについては、二年を超えて存続させなければいけないものもあるいはかなりに上るかもしれない。そういう地域、期間、補強の程度などについて、地元の自治体のまずは基本的な対応方針を踏まえて、そういった補強などについても、原則は、先ほど申し上げたように、自治体の取得した財産ということではありますけれども関係省庁とも連携を密にしながらできるだけの対応をしていきたい、このように考えております。
  234. 赤羽一嘉

    赤羽委員 継続をしていただくということは非常にありがたいんですが、原則論の部分にも踏み込んでぜひお願いしたいというふうに思います。  ちょっと時間がないのであれなんですが、続きまして、また厚生大臣なんですが、医療費の一部負担の免除というのを去年やっていただいたんですね。第一次としては五月まで延長していただきました。それで、第二次としてというか継続で、国保と老人保健と一部サラリーマン、低所得者層に関しての医療費の免除について、十二月末で実は切られたんですね。  これについては、実は先日新聞報道がありまして、兵庫県の保険医協会が二月の初めに神戸、西宮、芦屋市内の百二十の医療機関を対象に患者の実数を調査したんです。そうしましたら、免除措置対象の患者数が、昨年十一月には六千八百八十九人、打ち切り後の本年一月には四千百八十二人と三九%も減っていたという事実があった。  この一例ですけれども、東灘の仮設住宅で暮らす老人保健加入の女性、六十六歳ですが、高血圧で月二回の診察を言われているが、最後に行ったのは昨年十二月でした、年金生活だが、仮設が寒いため電気代も高く、医療費の負担を考えると病院から足が遠のいているんですというふうに話がありました。この仮設住宅から病院に通う患者を同協会が対象に実施したアンケートでは、八七%が、何とか免除の延長をといいますか、復活をお願いしたいという結果が出ているんです。  このことについて、一度打ち切ったものを復活するというのは難しいとか、これは本来三カ月のものを一年やってきたんだという御議論もあるようですけれども、実際、島原、雲仙では現状まだ継続しているような実例もございますし、ここの部分も、今すぐにどうのこうのということではないとは思うんですが、現状をかんがみ、何とかもうしばらくお願いできないかなという思いがするんです。  これは私、何でこんなことを質問に取り上げようと思ったかといいますと、ことしの冬、インフルエンザがはやった。その数字を見ていますと、八割五分ぐらいが兵庫県だというような数字だったと思うんですね。それにはもう本当に驚いた。それで実際、震災を起因として亡くなられた方というのは私の周りでも相当多いのも事実でございますし、この点、十二月で打ち切ったというのは、十二月で別に状況が大きく変わったというようなこともございませんし、何とかここの部分についても前向きな御答弁を大臣からいただけたらと思います。
  235. 菅直人

    ○菅国務大臣 今赤羽委員の言われた件についても、私も行ったときに、ちょうど一月の半ばでしたから、十二月末で終わった制度について、確かにそれまでの患者さんが、やや来る人が減ったというようなことも伺いました。  それで、私なりにいろいろ経緯を調べてみたわけですが、御承知だと思いますが、今回の場合は、いわゆる大きな災害で、避難所で不自由な日常生活を強いられておられる方々、心身の疲労の中で疾病に非常にかかりやすいという、そういう状況に対して緊急医療の確保という観点から行った制度であります。具体的には、特別立法などを講じたわけでありまして、住宅が全半壊するなどの一定の要件を満たす被災者に対しては、一部負担の免除を昨年の五月末まで実施をする、さらには、低所得者については十二月末まで免除をしたわけであります。  今回は、他の制度の中では、他の地域の中では、一年間というのはかなり長い例でありまして、先ほど雲仙の例をおっしゃったのは、雲仙については、これはまだ災害が続いているという認識の中で対応が続いているというふうに聞いております。  そういう意味で、こういう特例の措置で例外的な取り扱いでありましたので、一年間で、その被災に伴う緊急の医療の確保、そういう意味は一応終わったのではないか。その後については、国保制度においては、例えば各保険者、市町村の判断で一部負担の減免ができるというようなことも、そういう制度もありますので、そういった定常時における、またそういうフォローする制度を活用いただくということも可能ではないか、何らかの工夫ができないかと私なりに考えてみたわけですけれども、そういうところが現在の状況であります。
  236. 赤羽一嘉

    赤羽委員 我々の実感としては、神戸もまだ災害は終わっていないという状況もございますし、十二月末の段階の仮設住宅の入居者数と現在が大幅に減少したという事実も多分ないはずです。このことについては、実は兵庫県医師会会長とかコープ神戸の理事長とかNGOの代表とかが発起人となって呼びかけている中でも一番の眼目のところでもございますし、ぜひ納得のいくような形で前向きに取り扱っていただきたいなと思うわけでございます。  また同時に、ちょっと細かくなって恐縮なんですが、やはり老人が随分被害を受けられたということで、実は特別養護老人ホームの待機者数、これは神戸市内だけなんですが、千二百人弱なんですね、千百九十二人いる。ここについても、約二十四カ所増設すればカバーができる、ほかはもう要らないというような、ほかの福祉ケアについてはいい、特養の建設だけ何とか前向きにつくっていただけないかというのも地元からの要望としてございますので、これは資料があれでしたらまたお届けしますので、何とか前向きに取り扱っていただきたいというふうに思います。もし何かあれば。
  237. 菅直人

    ○菅国務大臣 老人福祉施設の整備について、被災地における介護ニーズが増大しているということは承知いたしておりまして、平成七年度においては、兵庫県及び神戸市の御要望を踏まえて、特別養護老人ホームについては優先的に採択を行って、その整備促進を現在図っているところです。また、今お願いしている八年度予算においても、新ゴールドプラン関連施設の施設整備費として二二・七%増の千二百九十七億円、設備整備費として対前年度一〇・一%増の百九億円を計上したところでありまして、平成七年と同じように、地元からの御要望を最大限尊重しつつ優先的に採択をしたいというふうに考えております。  私どもも現状もいろいろ聞いておりますが、震災による定員外の措置入院とかあるいは一部はショートステイを利用してかなり長期間、現在に至るまで入っていただいている人とか、いろいろあるわけですけれども、そういう形で、なるべく自治体と協力しながら優先的な取り扱いで整備を進めていきたい、こう考えております。
  238. 赤羽一嘉

    赤羽委員 前向きに取り組んでいただいているということを確認して、次の質問に移ります。  今度は、仮設から出て、なるべく安い家賃の公的賃貸住宅をつくってほしいこれは橋本総理も行かれたときの話に出ていましたし、石井議員からの質問もありました。これは神戸市の話なんですけれども計画として三年間で神戸は七万二千戸なんですが、そのうち公的住宅としては四万五千戸なんですね。四万五千戸が公的住宅、民間住宅が二万七千戸。公的住宅の中にはいわゆる公営住宅とか特別優良賃貸住宅、特優賃と言われるようなものとか、もちろん公団公社もあります。  それで、この実績をずっと見ていますと、四万五千戸の公的住宅のうち、めどが立っているのはまだ一万二千戸程度なんですね、神戸市内の状況を見ていると。その中で、ちょっといろいろ触れたいのですが、特優賃、特別優良賃貸住宅として四万五千戸のうち一万五百戸を予定しておるのですが、そこが実際は、発注できているのが約一割、千五百戸ぐらいなんですよ。  これはちょっと細かい話になって恐縮なんですが、特優賃、特別優良賃貸住宅というのは、なるべくいい住宅をつくろうという思想でやってきましたので、最低五十平米以上をスペックとしているとかというのが実はあるのです。そうなんですが、それがしかし、今回高齢者の方たちがたくさんいらっしゃる、高齢者の夫婦がいらっしゃる。ここまで、五十平米もなくても、もうちょっと小さな形でもニーズが合うケースが多いんですよね。そこがクリアできれば、もうちょっと特優賃の数がふえていくんじゃないかと思うのが一つ。  同時に、特優賃をつくるに当たって、地主さんが提供してくれるのですけれども、その地主に対する家賃補助が今二十年間なんですね。二十一年目以降というのは、ある意味では何の補助もなくて、地主が最初手をわっと挙げたのですが、現実的に発注になったのは千ちょっとしかないような話もありまして、この辺の、市営住宅でやるというような話、公営住宅だけだとしんどいので、民間の力もかり、地主さんにも協力してもらって、特別優良賃貸住宅を一万戸以上つくって、何とか今お話がありました仮設住宅の人たちを収容しようということなんですが、この特優賃のところでかなり挫折しているところもありますので、今言ったような条件緩和、五十平米をもうちょっと、この場合に限ってハードルを低くするとか、地主さんに対する家賃補助の期限を長くとるとか、そういったことはできないのかどうか。これは政府委員の方でも結構です。
  239. 梅野捷一郎

    ○梅野政府委員 ただいま特定優良賃貸住宅についてのいろいろな御指摘があったわけでございますが、私ども、今おっしゃいました全体の供給計画の中で、それぞれ住宅を確保すべき方々の中にもいろいろな条件の方がいらっしゃるということで、それぞれの対応を、特優賃の場合は特優賃、公営の場合は公営という形で割りつけながら、できるだけいい形で供給していきたいということで現在計画を進めているところでございます。  先ほどもございましたように、いろいろな地域の実態、入居者、入居希望者の実態等を受けまして、当然弾力的な対応も必要だろうと考えておるところでございますが、ただいまございましたようないろいろな、特にお困りの方、特に高齢者等につきましては、それは極力低家賃でやっていける住宅の方で受けとめていこうというような考え方でやっているところでございます。  なお、この特定優良賃貸住宅につきましては、今の五十平米というのは、そういう考えの中で一定の内容のものということを考えておるわけでございますが、例えば供給する戸数は、十戸のところをケースによりましては五戸でもいいんだとか、いろいろな弾力的な条項もつけながら、実情に即したことでできるだけ対応していこうという工夫をしながら、引き続き実態と供給の計画の中を弾力的に見直しながらやっていこうという考えでございます。
  240. 赤羽一嘉

    赤羽委員 また、家賃の低減方策、これはペーパーをいただいておるのですが、結局頑張って、一DKは三万数千円にする。三DKの方は四万三千円ぐらいになる。しかし、もうデータが届いておると思いますが、仮設住宅の約三割の人がこれまで三万円以下の実に木造アパートみたいなところに住んでいたというような現状もございますので、ここの家賃のギャップを地方自治体が受け持つようなことになると、神戸の財政というのはもう本当に大変な状況になるということだけ御認識いただきまして、前向きに取り組んでいただきたいと思います。  建設省関係ですと、あと被災分譲マンションの再建問題についてちょっと聞きたいのですが、神戸では約四千六百戸、戸数四千六百戸のマンションが、今回は、本来なら建てかえもしくは大規模補修に相当するようなダメージを受けました。  しかし、この中でなかなか実は再建のめどが立っておりません。一年以上たった今でも、現実にまだ、平成七年度中に着工予定が百七十戸でございます。四千六百戸のうち百七十戸で平成七年度中に着工予定でございます。着工できそうかなというところを含めても、全部で千七百戸、約三分の一のマンションでようやくこういう先の見通しが少し出てきた。残り三分の二のマンションではほとんど話し合いがついていない。特に顕著なのは、一棟当たり百戸以上の大きなマンションでの意見調整が、五分の四の意見の集約を見るということが極めて難航しておりまして、現実的に再建の具体的なめどが立っていないというのが現状でございます。  これは、恐らく二重ローンのことも考えますと、建てかえをしたくても、五分の四の人が建てかえに合意するということはほとんどまあ無理だと思うのです。現実は、今建てかえについては、優良建築物等の整備事業みたいな助成をすると、共用部分については設計費とかも入れて五分の四の助成を決めていただいておるのです。  しかし、私の想像するに、多くのこれから話し合いが進んでいくであろう大型マンションについては、これはほとんど大規模補修の方になると思うのです。建てかえは無理だ、とにかく補修で何とかしましょう。しかし、補修の方では、先ほど御答弁にもありましたが、現実は全く何の助成制度もない、利子補給とかというのは別にあるかもしれませんが。ですから、二の足を踏んで、ずるずる決着がつかずに、がらんとしたマンションが、それも大きなマンションが神戸市内、芦屋市内、西宮市内では数多く残っているというのが現状であります。  民間の戸建ての補修に対する助成もないじゃないか、だから補修に対しては、マンションに対しても助成はできないのだという御説明なんですけれども、マンションというのは、特に百戸以上のマンションというのは、自分で建て直そうと思っても建て直せない。戸建てとはまた条件が違うと思うのですよ。建て直しがしにくい住居形態なわけでありますから、そこにおいてのことは少し考えてもいいんじゃないかと私は思うのです。  そして、その中で、特に廊下とか階段とかエレベーターとか、廊下はもちろんあるわけですけれども、表のコンクリートの部分ですね、ここは、戸建ての家にはないわけですから、そういったところは限定して、長屋前の道論というのも何か業界用語であるらしいのですけれども、私有道路だ、ある意味では。私有道路に関する助成というのはしていただいたのです、ある条件のもとなんですが。  だから、そういった廊下とか階段とかエレベーターみたいなところに限って、さっきの優良建築物の整備事業、今回五分の四、この同様の助成をしていただくだけでかなり話し合いが進む被災マンションというのは出てくると思うのです。このことを今すぐ受け入れられるかどうかということは別にして、このままそれを措置しないと、皆さんもう大変なことで、ずるずるいくのは目に見えておるので、何とか手を打っていただきたいと思うのですが、いかがでございましょうか。大臣に、もう時間もありませんから。
  241. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 時間の関係もございましょうから、ごく簡単に、しかもなおかつ、事地域の問題においての詳細はむしろ先ほど石井委員並びにあなた様が非常によく知悉しておりまして、私は、大変先ほどから参考に聞かせていただいておりました。  特に、先ほど石井委員の言葉にもありましたように、オールジャパンという感覚だけで考えるのじゃなく、その場所において大きな我々の予期しないことが起こったのだから、そこにおいて特例的なものを考えろ、これが政治じゃないか、こういうこと、これはまことに非常にインパクトのある言葉であろうと思います。  先ほど申し上げましたように、今のマンションの問題にいたしましても、言っておる道理はよくわかりますから、早速四省においてこれはタッグを組みまして、しかるべき早急に、しかも前向きな、前進的な方向で考えていくことをお約束いたします。
  242. 赤羽一嘉

    赤羽委員 どうもありがとうございます。  これで具体的に幾つも私も市民相談を受けておりますので、今のお言葉、心強いと思います。  もう時間も迫っておりますので、官房長官、来ていただきましたので、最後に質問させていただきます。  この三十分間、石井議員を入れて約二時間、細かい話で恐縮だったのですが、るる質問をしながら、私は思うのですけれども、要するに、現制度で一生懸命やっていただいた、しかし、現状ではまだまだ困っている人がたくさんいる、積み残された問題も数多くある、しかし神戸、兵庫県の財政はもうほとんどパンク状態に近い。  この中で、私が思うのは、今回の、これは朝日の一月十八日の「論壇」にもありますが、地方災害で済ますのか、一地方の災害なんだから、地方として復興については自前でやっていきなさいよ、援助はある程度するけれども基本は自治体だよというふうにするのか。これだけの政令都市、百五十五万の神戸市、兵庫県、阪神地区がやられたんだから、これはもう国家事業として、少々現制度を乗り越えて復興についても踏み込んでいっていただけるのか。ここの部分がこれから神戸復興、兵庫復興ということの一番大きなキーポイントになるのじゃないかというふうに私は思うのです。ですから、その部分につきまして、政府の御見解というのですか、意気込みというか、そういうことを聞きたいのです。  あわせて、実はこの一年間で地元というのはやはりなかなか進まなかったと不満が渦巻いております。そこに、神戸市の国会議員が、実は自民党の議員が一人もいないのですね。与党議員が一人だけなんです。これを、自民党議員がいなかったからこれだけ進まなかったんだみたいなことを言う人も、自民党籍の議員の方がいらっしゃるのです、地方議員は。  私は、そういうことはあり得ない、政府の方は、地震担当大臣もつけていただいて、現地本部もつくっていただいて、それは地元にしてみれば不満があるのは事実ですが、それはそれなりにやっていただけたでしょうし、そこに、地元選出にどこの党がいようがいまいが、私自身も超党派の思いでやったわけでありますから、このことについてそんなことはあり得ないと思いますけれども、地元ではかなり言っている。声高く言う人もいますので、自民党の、きょうは総理がいらっしゃいませんので、責任者というような立場もあわせて、大変失礼ですけれども、この二つについて御見解をいただきたいと思います。
  243. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 建設大臣から具体的なことに対しては細かくお話があったようでございますが、国家事業か地方事業かという分類はそうなじまないと思いますが、いずれにしても、国としても最重要課題として三度にわたる補正予算を組み、あるいは十六本の特別立法をし、また特段の地方財政措置を講じている。そういうことをごらんをいただければ、この問題に対する取り組み方、これはよくわかると思います。  それから、県、市ともにいわばどちらかというと恵まれた地域でございますが、それを挙げてすら大変難しいということは、この災害の規模、様態、これを見れば当然でございますから、それなりの対応を全力を挙げてやっております。  特に、過日総理が現地へ出向きまして、いろいろなことを聞いて帰ってきまして、即刻我々に、特に仮設住宅から恒久住宅へ、この問題で、今までのいわば中央の平板的な基準をもう一回この阪神震災というものにスライドして、このフィルターを通じて見直しをしてみろ、こういうことで今厳命をちょうだいをし、今月中にも現地に出向いて話のできる機会をつくっております。  中央地方が一緒になってこの災害に当たってまいる、これは当然のことでありますから、国家事業と言われてみれば国家事業でも結構です。地方自治を大切にするというのならば地方事業と言われても結構ですが、こういう災害復旧に当たっては一致協力をしてやらなければでき上がらない問題でありますから、そういうことに専念をしてまいります。  なお最後に、懸念がございましたけれども、与党自民党議員がいないから復旧が遅いのかということでございましょうけれども、そういうことは全くございませんで、頑張っております。一緒になってやりたいと思います。
  244. 赤羽一嘉

    赤羽委員 ありがとうございます。私も超党派、地元選出という意味で全力を挙げてまいりますので、どうかよろしくお願いします。  またなお、地元のそういうことを言っている議員にはよく御指導をお願いいたします。  以上で終わります。
  245. 上原康助

    上原委員長 これにて石井君、赤羽君の質疑は終了いたしました。  次に、吉井英勝君。
  246. 吉井英勝

    吉井委員 最初に住専の処理の問題について伺いたいと思いますが、住専処理スキームというのは住専七社の資産を昨年一月一日現在の路線価で算定することが基礎になっている、これが出発になっていると思うのですが、まず、これは間違いありませんね。この確認から始めたいと思います。
  247. 西村吉正

    西村政府委員 住専の担保の価値の評価に際しまして、土地につきましては、昨年の八月の調査時点におきまして最新のデータでございます八月の路線価に基づいて算定しておる、こういうことでございます。
  248. 吉井英勝

    吉井委員 八月の発表というのは、昨年の一月一日現在のものが路線価については発表されている、そういうことでしょう。まず、その入り口からきちんとしておかないと。
  249. 西村吉正

    西村政府委員 路線価は毎年八月に発表されるというふうに私ども理解をいたしております。
  250. 吉井英勝

    吉井委員 ことしの一月一日現在のは、ですから、発表はことしの大体八月ごろになるのですよ。私が言っているのは、あなたのおっしゃった直近のという意味は、昨年の一月一日のものが八月に発表されておりますから、だから、時点としては一月一日ですねということを聞いているのです。
  251. 西村吉正

    西村政府委員 路線価が公表されるのは八月でございますが、そのデータは一月のデータにも基づいて算定しております。
  252. 吉井英勝

    吉井委員 こんなことに余り時間をとりたくないのですが、基礎をやはりきちっとしておくことが物事の出発ですから、余りあいまいなことはやめていただきたいと思うのです。  それで、国土庁がまとめた短期地価動向調査によりますと、昨年七月から十月の分で、商業地は全国平均で「下落」したというのが五六・一%、「やや下落」が三〇・二%で、合わせて八六・三%。昨年の十月からことし一月一日にかけてのもので、商業地が大半の地域で「やや下落」または「下落」、三大都市圏の商業地はほぼ全地域で下落の傾向が変わらないというふうに明らかにされております。  ですから、昨年一月より明確に地価は下がっているわけです。つまり、住専七社の資産が小さくなっている。そうすると、実際には一次ロスと言われているものは六兆四千百億円でなくて、このロスは膨らんでいるということになるのじゃありませんか。
  253. 西村吉正

    西村政府委員 私どもも先般の国土庁の調査の結果というものは承知をしておりますけれども、御承知のように、路線価と申しますのは公示価格のおおむね八割というような見当で算定されるものでございますし、今後の地価の動向等、もとより地価の動向というものがこの資産の評価というものに影響を与えることは私どももよく承知をした上で申し上げておるわけでございますけれども、現在私どもが算定しております住専の資産の評価というものは、最新のデータに基づいて堅実に算定されたものだというふうに理解をしております。
  254. 吉井英勝

    吉井委員 ですから、昨年の八月に算出したのはそうだということは、それはわかっているのです。  じゃ、ことしの一月一日現在となりますと、発表されるのはことしの八月になるのですね。しかし、それは路線価の話であって、現実には地価は、これは国土庁の調査その他によっても明確に下がっているわけです。ですから、実際には第一次ロスというのは六兆四千百億円じゃなくて、実はこれは膨らんでいるというのはだれが考えてみても明確なことなんですね。幾ら膨らんだかというこの話は少し後に置いておくとして、膨らんでいるのは事実なんです。それを膨らんでいないと見るわけですか。
  255. 西村吉正

    西村政府委員 私どもは、この住専の資産の評価に際しまして、最新のデータをもちまして最善の努力を尽くして算定をしたと考えております。  なお、資産の評価のほかに、損失の額というものは回収の努力だとかいろいろな要素にも関連するものと考えております。
  256. 吉井英勝

    吉井委員 私は、今、回収の努力の議論をやっているのじゃないのです。  昨年八月に評価したのは、これはわかっているのですね。それは六兆四千百億円であって、それが現在地価が下がっているんだから、これはだれが考えたってロスは膨らんでいるわけでしょう。幾ら膨らんだかという議論は後に置いておくとして、現在膨らんでいるということは考えていらっしゃるのでしょう。膨らんでいないというのですか。ロスが全然膨らんでいないという立場なら、いないとはっきりおっしゃってください。
  257. 西村吉正

    西村政府委員 たびたびのお尋ねで恐縮でございますが、今一つの例として地価の例を挙げられました。  私どもも、地価の動向というものが非常に大きな影響を及ぼすということはよく承知をしております。しかしながら、資産の評価というものは、ある時点において最善の努力を尽くして算定するという以外なかろうかと存じますし、また、資産の価値というものは、今御指摘の地価ということだけではなくて、株価によっても変わってまいりましょうし、そういうものについても最新の時点のデータもとに最善の努力を尽くすという以外なかろうかと考えております。
  258. 吉井英勝

    吉井委員 住専から借りた多くは不動産投機なんですね。ですから、土地なんですよ。それを余り、いや株も全くないなんていうようなことを私は暴論で言っているのじゃないのです。そういうことはみんなわかった上で聞いているのだから。不動産投機ですから、多くは土地なんです。その分の地価が下がっているのだから、だれが考えてみたって、一次ロスで最初に出したものよりも膨らんでいるのは当たり前じゃないですか。  銀行局長はあいまいな答弁ばかりされるので、大蔵大臣は、仮に変動があるとすれば今後の問題だというふうに昨日答弁をしておられます。大臣は、現実に地価が下がっていることは国土庁が発表しているわけですから、下がればその分はロスは膨らむわけですから、変動があるということはきのう答弁されたように認めていらっしゃるわけですね。それは大臣から聞いておきたいと思います。
  259. 久保亘

    久保国務大臣 私が申し上げておりますのは、住専から移譲いたします、買い取る形になります債権は約十三兆ということでありますね。その十三兆のうち、昨年の八月段階での調査に基づいて第四分類といたしました六兆二千七百億と損失千四百億を加えました六兆四千百億の処理方針がスキームの中で決まっておる。したがいまして、もし変動があるとすれば、六兆四千百億を除く部分に影響が出てくるということを申し上げたのであります。
  260. 吉井英勝

    吉井委員 そのとおりなんですよ。それで、その場合、つまり変動の部分というのがまさに、今幾らかという数字で確定するのは別として、ロスなんです。  そのときに、じゃ伺っておきますが、そのロスを除いた資産でないと住専処理機構としては買い取ることができないと思うのですね。ロスがあっても買い取るというお考えですか。
  261. 久保亘

    久保国務大臣 六兆四千百億に属します債権も、全部住専処理機構に移譲することになるわけです。したがって、住専処理機構が買い取ります債権は、いわゆる住専が持っております債権、十三兆全額であります。
  262. 吉井英勝

    吉井委員 その部分からロスというのは切り離して、それで残った六兆七千八百億、これをどうするかということで考えていくわけですよ。ですから、民間の会社の場合、ロスを含めて、ロスを買い取るということはできないんですよ。だから、ロスというのは切り離して先に処理をしなければいけないんですよ。  じゃ、あれですか、あなたのおっしゃるのは、具体的にはことしの三月三十一日、つまり四月一日から出発することになると、三月三十一日にそこで評価した、つまりロスが多分ふえているでしょう、そのロスの増加分も今度改めて一次損失に入れて、つまり一次のスキームに、六兆二千七百億円にその新たに発生するであろうロスをオンして一次のスキームで処理するというお考えですか。
  263. 久保亘

    久保国務大臣 吉井さん、よくおわかりになってお尋ねだと思いますけれども、一次ロスと言われているものは、債権が個々に存在するものではございませんですね。十三兆全体の中で担保価格の低下によって生じたものを、昨年八月の段階で精査してそういう計算をしているわけですね。その六兆四千百億を買い取りますけれども、この債務も回収のために請求されるものであります。  この六兆四千百億から残ります部分の中で、昨年八月以降のいろいろな今後の経済の動向その他によってどういうプラス・マイナスが起こるかというのは、今後の回収の仕事の進捗のぐあいとかかわってくるものではないかと申し上げているのでございます。
  264. 吉井英勝

    吉井委員 さっきおっしゃったように、十三兆一千九百億、それを住専処理機構が処理することになると言っても、一次ロス分はまず切り離して、あとをどうするかということなんですよ。  その一次ロス分についての一次スキームなんだが、そこに新たに発生してくるロスをオンして一次のスキームで考えていくのか、それとも新たに発生するロスというのは二次のスキームの方に送るのかということが問題なんです。それはどうするんですか。
  265. 久保亘

    久保国務大臣 そこのところは、結論的に申し上げれば、六兆四千百億にオンするということにはならないと思います。
  266. 吉井英勝

    吉井委員 そうすると、二次の方にこのロスはオンされるということになるわけです。つまり、どういうことになるかというと、この二次の分については二分の一を公費負担、税金で負担ということになるわけですから、これはもう最初から国民負担がふえてくる、このことが明らかになるわけです。  ですから、こういうふうなやり方については、これは二次のスキームに送って国民負担をますますふやすという方向じゃなしに、やはり母体行においてこれをちゃんと責任を持って処理させるということを、そこをやらなければいけないと思うのですが、大蔵大臣、それについてはどういうふうに考えていらっしゃるのですか。
  267. 久保亘

    久保国務大臣 この種の問題を処理いたします場合には、基準点を定めなければ難しいと思いますね。それで、昨年八月の調査段階における路線価というのを基準としてとっているわけです。  その後に起きてまいります問題とどのように対応しますかという問題は、今一千億新たに損失が生じているということは、ことしの路線価が明らかになります段階で幾らになるのか、吉井さんおっしゃいましたように、今はわからないんですね。そういう将来起きてまいりますものをプラスマイナスどうするかという問題について、もしプラスを生ずれば国庫に償還するということは決められているわけです。それから、マイナスとなります場合には、二分の一の国の負担ということがこの全体スキームの中で決まっている、こういうことだと思います。
  268. 吉井英勝

    吉井委員 そこで、お聞きしてはっきりしてきたんですが、要するに、新たに地価が下がっているわけですからロスが膨らむわけです。膨らんだロスは、一次のスキームでもう処理するんじゃなくて先送りする。そうすると、二次のスキームの方がロスがふえるわけです。その二分の一を国民に負担をしてもらうということですから。ですから、はっきりしたことは、結局六千八百五十億円の問題だけじゃなしに、既に二次のスキームと言われている中で国民負担が明白に膨らんでいこうとしている、これは明らかだと思うんです。ですから、この問題については、まず母体行に責任を持たせるということと、あわせてスキーム全体を見直さなければならぬ、このことを私は指摘して、次に「もんじゅ」の問題に移りたいと思います。  それで、「もんじゅ」につきましては、動燃の理事長さんに来ていただいておりますので、最初に伺いたいことは、敦賀・美方消防組合消防本部、これが、「火災発生状況一覧表」というのをつくって発表しました。この中で、十二月八日、これはナトリウム漏えいが出火原因として火災と断定しているわけですね。  そこで動燃に最初に伺っておきたいんですが、今回の事故というのは、ナトリウム漏えい事故ということでお考えなのか、ナトリウム漏えい火災事故というふうにお考えなのか、そこのところを最初に伺いたいと思うんです。
  269. 大石博

    ○大石参考人 先生よく御承知のとおり、ナトリウムが漏れますと、空気、水と反応をいたしまして燃焼いたします。大洗で各種の実験をやりました。その状況も先生ごらんになっていることと思いますが、ああいった燃え方をすることを火災と言うのか火炎と言うのか、私ども、正直に申しまして消防法上どう位置づけられるのかよくわかりませんので、今後の消防関係の方の御判断にまちたいと思っております。
  270. 吉井英勝

    吉井委員 敦賀・美方消防組合本部の方は、これは火災と断定しました。損失額は千六十三万円というのも挙げております。この損害の金額はどういう根拠によるものかは私は知りませんが、つまり今おっしゃった、消防の方は火災と断定しているんです。それでもあなたの方はナトリウム漏えい火災事故という見方はされないのかどうか、消防が断定したんですから、ナトリウム漏えい火災事故、こういうふうに規定されるのか、これを伺っているんです。
  271. 大石博

    ○大石参考人 最終的に消防法に基づいて火災と認定をされたというふうには私はまだ伺っておりません。最終的にそうなれば、火災ということになるというふうに考えております。
  272. 吉井英勝

    吉井委員 そんなことを言ったら地元の消防、怒りますよ。地元の消防組合の方が、消防の方は危険物を扱うわけです。ナトリウムは消防の管轄になっているんですよ、取り扱い上。そこが火災と断定しているんです。それでもあなたは火災と認めないんですか。
  273. 大石博

    ○大石参考人 私、直接消防関係の方から火災だという最終的な認定をされたというふうに伺っておりませんので、よく確かめてみたいと思います。
  274. 吉井英勝

    吉井委員 消防の方は、現場は認定しました。断定して、「火災発生状況一覧表」に記入いたししました。何だったらどうぞ見ていただいて結構ですが、これでも火災事故とは認めないんですか。
  275. 大石博

    ○大石参考人 先ほどから申し上げておりますように、私、最終的にそういう判断が下されたということを承知しておりませんので、よく確認をさせていただきたいと思います。
  276. 吉井英勝

    吉井委員 私は、今回の事故以来、動燃の対応というのは本当に一般社会の常識から外れていると思いますよ。  実は、きのうは他党の方が本会議場でもおっしゃったけれども、事象と言うか事故と言うかという、ここのところから一般社会からずれているんですよね。消防本部の方が火災だと断定してもまだ火災と認めようとしない。本当に私はこれは、異常な姿というものが今日に至っても全く反省されておらぬ、けしからぬことだと思いますよ。  それで、今回の事故についてでありますが、大洗の工学センターでナトリウム漏えい実験を、私も視察してまいりましたが、十年前に行っているわけですね。そのナトリウム実験のビデオも見せていただきました。私、ビデオもここに借りてまいりまして、繰り返し見せていただきました。  ところで、このビデオについては、科学技術庁長官はごらんになられましたか。
  277. 中川秀直

    ○中川国務大臣 先日の大洗で行われた漏えい実験の映像は拝見をいたしました。先生お持ちなのは十年前のビデオ、こういうことでございましたら、拝見いたしておりません。
  278. 吉井英勝

    吉井委員 せんだって動燃が「もんじゅ」事故を再現する実験をやったのは、私もその火災の部分をテレビで見ました。漏れて、あのときもすぐ火がついているというのはよくごらんになられましたが、あの実験と十年前の一九八五年に行った動燃の実験ビデオとを見る限り同じ現象なんですね。この漏れてすぐ燃え出すという点では変わりはないわけです。ナトリウム漏えい火災がどんなにすさまじいものであるかということは、動燃の方はわかっていたんじゃないですか。
  279. 大石博

    ○大石参考人 よく承知しております。
  280. 吉井英勝

    吉井委員 ここに、このビデオのままではあれですから、私はビデオの分をスチール写真に撮ったんですが、長官、まあ遠いからちょっと見にくいかもしれませんが、何でしたら委員長のお許しを得て見ていただいて結構ですが、お回ししますが、この配管からナトリウムが漏れて本当に数秒で火がついているんです。これは八秒後の写真ですが、十秒後のところなんかはもうナトリウムの火柱になって下へ落ちていっているんですよ。十四秒後には、ナトリウムエアロゾル、いわゆる白煙でナトリウムの炎そのものが全く見えなくなっているのですよ。そういうすさまじい状態なんです。  しかも、ナトリウムの温度がただの二百五十度ぐらいですと、必ずしも火がつかないでライナのところから連通管と言われているところへ流れていくこともあるんです。しかし、あの五百度を超える温度ですと、これぐらい、遠くからわかりにくいですが、燃えながら流れていっているんです。  こういうことを、今理事長さんがおっしゃったように、動燃の方はよくわかっていたはずなんですよ。この動燃のビデオ、もしこれをテレビで国民の皆さんがごらんになられたら、あの「もんじゅ」の事故が起こったときにどういう事態が起こっていたか一目瞭然ですよ、本当に。だれにだってわかる、そういうすさまじい火災の実態を知ることができます。  科学技術庁の高速増殖炉の担当の局長は、このビデオを見て、漏えい時の対応について何か検討していらっしゃったかどうか、これを担当局長に聞きたいと思います。
  281. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 お答えさせていただきます。  先日、二月の九日に私どもの方で提出させていただきました今度の「もんじゅ」の事故に関します調査状況についての取りまとめの中で御指摘をさせていただいておりますが、今回の事故につきましては、そういうふうなナトリウム漏れということが認識できた場合は直ちに操作員はとめるべきであった、こういうふうに判断をいたしております。
  282. 吉井英勝

    吉井委員 このビデオをごらんになられましたか、十年前の。そして、そういうビデオをちゃんと見た上で科学技術庁として対応策を考えていらっしゃったのかどうか、これを聞きたいと思います。
  283. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 正確に十年前のビデオというのは私も見ておりません。しかしながら、私ども、専門家を含めましたタスクフォースで本件を御検討いただきまして、先ほど申し上げましたような結論になっているということでございます。
  284. 吉井英勝

    吉井委員 私は、事故後の対応を聞いているんじゃないんですよ。  この大洗工学センターでは、ナトリウムの研究費が一体幾ら使われたのか。千七百四十三億円も予算を投じたんですよ。原子力船「むつ」よりはるかにたくさん使っているんですよ。それだけの予算を使って、いわばその一つの成果物であるこういうビデオさえ科学技術庁の方に、報告されていなかったのかどうか知りませんが、報告もされず、生かされもしなかった。それは本当にひどい事態だと思うんです。それは、動燃の方が隠しておったのなら秘密主義が問題になるし、そういう成果物があるのに全くむとんちゃくであったとしたら、これは科学技術庁の方の恐るべき無関心といいますか、無策といいますか、そんな状態じゃ、これからもう高速炉を扱う能力はないじゃないか、安心して任せられないじゃないか、こういうことになるんじゃありませんか。
  285. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 私がたまたま十年前のビデオということについて承知をしていなかったという事実を申し上げただけでございまして、当然組織といたしましては、これにつきましては、十年前の動燃の大洗工学センターで行ったナトリウム漏えい実験の結果は、それを検討し、安全審査に使用された計算コードの検証などに反映されてきております。また、ナトリウム漏えい対策設備が有効に働くことを実験により確認をするということもやっております。  原子力の安全確保につきましては、その場その場で最善のデータを活用して審査等を進めてきているということでございまして、今後ともそういう姿勢で臨みたい、こういうふうに思っております。
  286. 吉井英勝

    吉井委員 大洗でこのナトリウムの実験に取り組んだ人たちから私が聞いたんですけれども、大体、この「もんじゅ」で、最初の白煙を見た段階で自分だったらすぐ原子炉をとめたと。というのは、あの白煙を見た段階でどういう事態が起こっているかわかるわけですよ。それなのにとめなかったためにどんどんどんどんナトリウム漏えい、火災を拡大したわけでしょう。「もんじゅ」では、このナトリウムの専門家がいなくて判断ができなかった、こういうことになると思います。  だから、事故が発生したときに、原子炉を即時停止どころか逆に最初の十二分間は出力上昇を図っているんですね。それから九十三分間、出力四〇%で原子炉の運転を続けていた。しかも、ナトリウム漏えい火災が起こっているのに、酸素を本来断たなければいけないのに、逆に三時間も換気扇を回し続けて酸素の供給を続けて、そして拡大していく。つまり危険な技術体系を使いこなすだけの能力がないというか、あるいは国民の安全への責任感がないというか、私はここのところは本当に根本的に反省しなければいけないと思うんですよ。どうなんですか、これは。
  287. 大石博

    ○大石参考人 「もんじゅ」におきますナトリウム漏えい事故の発生と事故後の対応に不手際があった、適切でなかったということについては深く反省しておりますが、ただいま先生の御指摘の点につきまして、第一に申し上げたいことは、大洗でのいろいろな実験、研究の成果は、「もんじゅ」の設計あるいは運転操作等に十分反映させてきたつもりでございますけれども、大洗での成果が反映されなかった点の第一は、温度計から直接ナトリウムが漏れ出したという点でございます。  我々が考えておりましたのは、配管等には全部保温材がかぶっております。したがいまして、どこかで漏えいが起きますと、保温材を通して漏えいが起きる。保温材の中には、ナトリウムの漏えいを検出する検出装置が入っております。したがいまして、私ども考えておりましたのは、漏えいが起きますと、まずナトリウムの漏えい警報が出る、それから外部に出てきてから火災警報が鳴る、そういう設計、考え方でやっておったわけでございます。  ところが、今回は温度計から直接ナトリウムが漏れました。これには保温材がかぶっておりません。温度計から直接漏れますと、その場合にはナトリウムの漏えい警報が出るようになっておりません。したがいまして、今回は火災警報が先に出ました。おくれてナトリウムの漏えい警報が出ました。この点が、私ども非常に反省すべき重大な問題だというふうに思っております。
  288. 吉井英勝

    吉井委員 今のお話を聞いていますと、根本的な反省が全くないんじゃないですか。その事故のあらわれ方が想定したのとちょっと違っておったから仕方がなかった、そんな科学技術者というのはないですよ。  大体あのときは、おっしゃったように火災警報が鳴ったにしても、二カ所のナトリウム漏えい検知器が異常をまず示したんです。三つのシグナルが出て、そして担当員の方が現場へ行ったら、ナトリウムのエアロゾルによる白煙を見ているんですよ。それから、温度計の異常もちゃんと確認されているんですよ。それだけの状況が整いながら、ナトリウムが漏れたと一切判断しようともしない、それで言いわけをしてこの場で済むというのは、私はとんでもない話だと思うんですよ。  なぜそれを私は重大だと言っているかといいますと、長い時間ナトリウムが漏れた場合に、どういう事態が起こるかということも実はこのビデオの中でやっているでしょう。これも、ナトリウム・コンクリート反応というのをやっていますよ。その中では、大量にナトリウムが漏れて、大規模な火災になって、そのことによってコンクリートから水が出てきたりしたときには、ナトリウムと水の爆発的な反応なんですよ。これはコンクリートが欠けていますよ。それによって原子炉の破壊につながりかねない大変なことなんですよ。そういうことを、何か予定したよりも事故の起こり方、段取りが狂ったためによくわからなかった、そんな話はないでしょう。  私は、ナトリウム・コンクリート反応、ビデオの中にちゃんと出ているようなこういう事故が現に起こりかねないということをまず考えるならば、三つも四つも重なってシグナルが出ている時点で直ちにとめるのは当たり前だし、ナトリウムの専門家の方に聞きましたよ。これは直ちに私だったら原子炉をとめる、白煙を見た段階で。それをちゃんと技術者は言っているのに、ところが、あれは仕方がなかったというようなそんな気楽なことを言われたんじゃ、一体動燃というのは何を考えているんだと言わざるを得ませんよ。ちょっと根本的な反省が足りないんじゃないですか。責任感が欠落していると思いますよ。答弁を改めて求めます。
  289. 大石博

    ○大石参考人 「もんじゅ」におきましては、過去、漏れない研究と漏らさない研究と、漏れた場合にどうなるかという研究を主体にやってまいりましたが、漏れたときにどうなるかという実験は百二十回を超える回数やりました。  その中には、極めて微量の漏えいの場合から大量漏えいにわたりまして、また、漏えいの仕方も、霧のようにスプレー状に漏えいをしたり、あるいは水道の蛇口からぽたぽた出るような状況とか、いろいろな漏えいのさせ方等をやって、その場合にどういつだ燃え方をするのか、どういつだ白煙の出方がするのか、床にこぼれたナトリウムがどうなるのか、どういうふうに床を伝って流れるのか、いろいろなケースをやりました。そういったことをやりまして、あるいは常陽ではどうか、「もんじゅ」ではどうかということで設計をやり、運転操作を決めてまいりました。  今回は、最初に、警報の鳴り方が逆だったということを先ほど申し上げましたし、現場を確認いたしますと、現場がもやっている、煙が出ているという状況の中で、これは大量漏えいなのか、それとも微量の漏えいなのかの判断はつきかねませんでした。中央制御室ではナトリウムのタンクの指示計がございますが、指示計のレベルは全く変わっていないということで、現場の運転員としては、わずかな漏えいだというふうに最初は考えました。  時間の経過とともに白煙の量がふえてまいりますので、これは確かに漏えいをしている、その量も微量な漏えいではないという判断から、原子炉出力の低下を、最初は徐々に下げておりましたけれども、途中で漏えい量が多い、これは異常な状態だということで手動による緊急停止に切りかえたわけでございます。
  290. 吉井英勝

    吉井委員 この期に及んでも全く反省がないのに私はあきれましたよ。とんでもない話ですよ。現場の技術者でもししつかりした人がいるならば、大体漏えいして二十分後にはわかっていますよ。  これは中央制御室のチャート紙ですが、今おっしゃった液面がどう変わったかなんというようなものは、時間、時空を短くして、変位がより拡大されてわかるように少しこうしてみれば、明白に事故のあったCループのものは液位が下がっている。これは漏えいがあるか、何かトラブルがあるということはわかるんですよ。それがわからないようだったら、それ自体問題だと思いますよ。  ナトリウムを千七百四十三億円もかけて実験をして、このビデオを見て、大体事故が起こったらどういう事態になるかということはわかるはずなのに、それなのに、三つも四つも同時にシグナルが出て白煙が立ち込めた。仮に二十分おくれたとしても、液位が下がっているので漏えいはわかるわけですよ。ところが、それをとめなかったんですよ。それで、この期に及んで九十三分間も出力四〇%で運転する。その事故が拡大すればどうなるかということも実験しているんですよ、コンクリートが破壊されると。もちろん、コンクリートが破壊されないように対策をとったというのは、私もわからぬでもないです。しかし、大量に出たらそうはいかないんです。  しかも、この実験の穴があるんですね。なぜかというと、この実験では、都合よく漏れた下からわずか四メートルほど離れたところに連通管というのがあるんですよ。だから、距離が短いから、その場合は、この実験によれば都合よく漏れた九二%のナトリウムが連通管を通って下の抑制槽ですか、そこへ流れ込むことができたという実験なんですよ。だから、これで「もんじゅ」の安全性は確認されたと。逆なんですよ。千七百四十三億の金をかけて、だから「もんじゅ」は大丈夫だ大丈夫だという結論を出してしまった。  私、このビデオを何回も繰り返して見ておりましてわかりましたけれども、基礎試験、大型工学試験により高速増殖炉「もんじゅ」の安全防護設備は安全かつ健全であることが実証されましたと言っているのですよ、この最後の結論は。だけれども、現実の「もんじゅ」と規模が違うのですよ。実験室で、わずか四メートルしか離れていないそれぐらいのところだったら、九二%のナトリウムは、たとえ燃えながら漏れたとしても回収できるかもしれないけれども、現実のあの大きな「もんじゅ」の中では距離が全然違うんだから、連通管へ行くまでに。だから燃えて酸化した固形物は、その場で堆積していくとかして全部燃えてしまったじゃないですか。酸化物がどんどんエアロゾルになるというふうになったじゃないですか。  だから、この期に及んでも理事長のお考えというのは、全くわかっていないというか、事の重大性を認識していらっしゃらない。長時間にわたってこのナトリウム漏えい火災事故を続けたら、これは「もんじゅ」の原子炉の破壊にも至りかねない危険なものだ。そんなことになったら福井県民、敦賀の人たちを初めとする地域の人たちですね、どんな事態になるかわからない。どんなことがあっても国民の安全に対して責任を負わなければならぬということに立ち切らなければいけないのに、全くそういう立場に立っていない。私は、もう本当にけしからぬことだと思いますよ。  そういう考えだから、敦賀・美方の消防本部がこれは火災だと断定しているのに、そして、ナトリウムのこのビデオを見れば明白に火災であることはわかるのに、それでも火災だと認めようともしない。もう何をか言わんやというところですよ。  そこで大臣大臣は科学技術はもともとの、ひょっとして御専門であるかないか私はよく知りませんが、この「もんじゅ」そのものについて、これまでかかわってきた専門家ということでないかもしれないけれども、しかし、私は政治家として、この期に及んであの事故が何か簡単なナトリウム漏れぐらいに判断するというのは、やはりこれは間違いだと思うのですよ。  今回の事故というのは、これは消防本部だって断定しているのですから。「もんじゅ」における事故はナトリウム漏えい火災事故であったということを規定している。そして、こういうものをあいまいにしておいたならば、これは地域住民にも被害を及ぼしかねなかったということで、そのことを重大な問題として責任を感じて対処しなければいけないということを、私は、大臣としてはそのことをやはり福井県民の皆さんにも、国民の皆さんにも明確にされる必要があると思うのですよ。これは大臣に伺いたいと思います。
  291. 中川秀直

    ○中川国務大臣 本会議で御報告を申し上げ、御質疑をいただいた際にも申し上げておりますが、今回の事故は、現実にナトリウム漏えいを起こしている、また、その火災の防止を早期に抑制できなかったという意味で、極めて重く受けとめておるわけでございます。高速増殖炉の研究開発におきましては、プルトニウムの利用をするわけでありますから、その管理、また冷却材で使っておりますナトリウムの管理、漏えいを起こさない、この二つの点が極めて重要でございます。  そういう意味で、最大の技術要素であるその二つのもう一方であるナトリウムの取り扱い技術というものは、今までも常陽において十七年間、委員指摘のとおり研究もされ、また原研や大学等でも研究をされてきたわけでございますけれども、そういう技術の集積やまた努力が過信につながった、もしそういうことであるとするならば、これは大変な大きな問題だ、このように私としては考えております。  したがいまして、常に新しい先端技術に挑戦するというその中にあっては、やはり非常に謙虚な姿勢というものを常に保ち続けていくということが一番重要であろう、こう考えております。今回の事故を通じて、私どももこれを教訓にして謙虚にそれを学んでいかなければいかぬし、また反省し、改善すべき点はきちんと改善しなければいけない、このように考えております。  理事長が申し上げた事故の呼び名の問題は、理事長もこれを否定しているわけではなくて、消防本部の御判断というものに従う、こう申しておると私は理解をいたしております。
  292. 吉井英勝

    吉井委員 こういう事故の場合、事故をどう規定するかというのは、事故の性格をどう重く受けとめるかということにかかわるのです。  それで、私は、これまで科学技術庁はずっと動燃の方に引っ張られてきたと思うのですよ。少なくとも動燃がナトリウム漏えい事故と言っている限り漏えい事故ということで、ナトリウム漏えい火災事故という事の重大性を本当に認識した規定をしないまま来ていると思うのですよ。  これまではそれで来たけれども、直接どうしても敦賀・美方消防本部から電話の一本なり文書をもらわぬと、わしは嫌やと動燃の理事長は頑張っておるんですけれども、その頑固は別として、何も動燃がそういうふうにきちっと言わないからといって、科学技術庁として遠慮しなくても、科学技術庁としては、少なくとも行政機関の一部でもある、地方の方になりますが、消防組合本部の方が明確にこれは火災と断定してやっている段階で、ナトリウム漏えい火災事故ときちっと規定をして、そしてこれから重大な教訓を受けとめていく、そういう姿勢は入り口のところで大事だと私は思うのですが、もう一度この事故の規定だけ伺っておきたい。
  293. 中川秀直

    ○中川国務大臣 私も現場を就任直後確認をさせていただきました。科学的なことは吉井委員のように専門学科を出ておるわけではないのでわかりませんが、少なくともナトリウムが漏えいし、そして火災を起こしたということは、私もその現場で確認をいたしております。  それをどう行政的に規定するかは、委員の御指摘も踏まえて、事実もきちんきちんと確認して、今申し上げたような私自身の体験も踏まえて判断をしてまいります。
  294. 吉井英勝

    吉井委員 私は、何でしつこくそれを言ったかといいますと、実は事故直後に「もんじゅ」へ行ったのです。そうしますと、現場の技術の部長さんは、ナトリウム技術は完成されたものと思っていた、それだけに今回の事故は信じられないという言葉なのですよ。つまり、千七百四十三億円というのは裏目に出ているのですよ。これで「もんじゅ」は大丈夫だと結論づけてしまって、現場の方では、ナトリウムの専門家でないからかもしれませんが、大丈夫だ大丈夫だという安全神話に取りつかれてしまっているのですよ。  それだったら一体この実験は何だったんだというふうになるでしょう。しかも、その事故の性格からしてできるだけ小さくしようとする。事故隠し、ビデオの改ざん、そういう誤りを本当に繰り返してきたのですよ。その誤りをきちっと断ち切って、事故の性格を明確に規定して、そして他の分野でも科学技術行政に当たるということが私は出発点として必要だというふうに思うわけです。  それで、今回、世界で発電運転中の炉としては、本当に最大規模のナトリウム火災事故であったわけです。その要因は、私は、日本の原発は安全だとか、ナトリウム技術は完成されたものだという安全神話に取りつかれていたということを率直に指摘せざるを得ません。  それで、これはまたナトリウムの専門家に伺いましたが、大学の教授にしても大洗の方の研究者にしても、なぜ温度計を横につけたのかとか、なぜ振動が起こるなんて最初からわかっているのに真ん中の方まで差し込んでしまったのか、なぜナトリウムがすき間にたまったりすると問題が起こることがわかりながらあんなノズルのつけ方をしたのかとか、設計思想がわからないと、これはナトリウムの専門家の声ですよ。  そういう専門家の声などもあるわけですが、そういうときに、この間の所信表明のときに、先端技術の開発には避けて通れないものだという総理の発言がありました。しかし、これは私の知り合いのいろいろな専門家に聞いてみても、避けて通れることさえ避けて通ろうともしなかった動燃と科学技術庁の、国民の安全に対する責任感の欠如とか、基礎的な取り扱い技術や知識の欠如というものが出ているという多くの方の指摘ですよ。  私は、この点では、先ほどの事故の規定の問題とともに、根本的な反省がやはり必要だと思うのです。昨日のあなたの答弁を伺っておりますと、私は根本的な反省を問うたのですが、やはりまだ甘いのですね、科学技術庁。まあ大臣としてかばいたいという気持ちはあるのかもしれないけれども。科学技術庁として、あの事故後の経過の中でも、大体翌日に、やはり局長はナトリウム漏えい事故という言い方で、火災ということを言わないのですね。一貫していますよ。根本にあるものがおかしいのですよ。私は根本的な反省が必要だと思うのですが、一言でいいですから伺っておきたいと思います。
  295. 中川秀直

    ○中川国務大臣 先ほど指摘のあった温度計等の問題については、我々与党の議員でも、この「もんじゅ」の技術開発に参加した議員も現実におります。それは、かつて国会議員でない前に。そういう議員からもいろいろな御意見を私自身がお伺いしたこともございまして、今委員指摘のような一部御指摘もいただいたのでございます。そういうこともすべて今回の事故の教訓にし、私ども根本的にやはり総合的に考えていきたい、このように私自身は考えております。  最後の、この事故の呼び方でございますけれども、私は、漏えい火災事故であろうと漏えい事故であろうと、名前に火災を入れたくないなどというふうには全く考えておりません。事実ありのまま、法律に従って消防本部がそう御認定をいただければ、漏えい火災事故、そのように私どもも使わせていただくべきだ、こう考えております。
  296. 吉井英勝

    吉井委員 世界では、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスなど、どこでもこの高速増殖炉の開発を進めてきたわけですが、プルトニウムの利用に技術的な困難があるということ、それから、もちろん採算性が悪くなってきたという問題があるわけですが、同時に、ナトリウム技術そのものに非常にいろいろな問題があるということがあるのですね。  蒸気発生器のところで水とナトリウムが爆発的に反応する問題、現に漏れて事故もありました。それから、ナトリウム漏えいによる今回のような火災が建屋を破壊したり原子炉破壊に至る危険な問題、それから、ナトリウムの大きな温度差によって原子炉容器に熱衝撃が加わる問題など、さまざまな困難に直面して、それで開発を中止したわけです。  中でも、環境問題で、特にプルトニウムは最終処分技術が全く未確立てあるということ、そして発電原価が高くなり過ぎて他のエネルギーに対抗できないということもあって、各国は高速増殖炉から撤退をしたわけです。  高レベル放射性廃棄物の処理技術の確立等、プルトニウムでいえば二万四千年を超える半減期のものの処理技術について、その技術的信頼性の保証というのは、この保証するための実験というのは、よく他の分野で行われるような寿命加速試験など仮に将来可能になったとしても、本当に二万四千年の保証というのは、やはり数百年とか数千年の単位での確認試験が必要になるものであり、世界の中止した国と違って日本はこれらの技術を全部確立しているんだ、そういう立場に立つなら別ですが、私はここでもう一問聞いておきたいのですけれども、プルトニウムのこういう処分の技術というのは、他国と違って日本は既に確立しているとお考えですか。
  297. 岡崎俊雄

    ○岡崎政府委員 先生御指摘の高レベル放射性廃棄物の処分につきましては、まさに将来の処分に向けて今懸命に研究開発に取り組んでいる状況だと認識をしております。
  298. 吉井英勝

    吉井委員 まさに将来ということで、現在は全く保証がないんです。その将来というのは何十年、何百年先になるかわかりませんが、その技術のさらに信頼性の確認というのは、二万四千年の先のその確認なんというようなものは、かなりそれを短い期間で実験するような何かそういうシステムが開発されたとしても、数百年とか数千年というオーダーでかかってくるんです。  私たちは、二万四千年もの先の子孫に対してまで、プルトニウム処理の困難を押しつけるということはできないんですよ、未来の子孫に対して責任を負わなければいけないわけですから。やはりそういう立場に立って物を考えなければならぬということを申し上げておきたいと思うんです。  最後に、時間がもう迫ってまいりましたので、通産大臣の方に伺っておきたいと思うんですが、これまではエネルギーサイクルの問題についていろいろな議論がありましたけれども、しかしこのエネルギーの問題というのは、資源多消費型産業や社会構造を省資源型に切りかえることとか、利用可能なエネルギーは多様に存在して、その研究開発の可能性も豊かにあるわけですから、それはまた地球のこれからの、大体地球の歴史というのは、学者によって説がいろいろあるんでしょうが、まだ大体五十億年くらいの寿命があるとかいろいろありますが、少なくとも数十億年のその中で人類史のこれからの数億年ないし数十億年の単位でエネルギーということを考えたときに、高速増殖炉といえども実は十万分の数%の時期を賄うものでしかないわけです。ですから、ウランやプルトニウムをエネルギーの生命線とする発想からやはり脱却するということが必要だと思います。  日本共産党は、今は与党になっている党の中にはこれまで反原発、脱原発を言っていらっしゃったところもありますが、そういうことを言っていらっしゃった時代から、反原発とか脱原発という立場に立っているわけじゃありません。  一九三八年の原子核分裂と原子核融合の発見というのは人類史的には非常に価値のあるものだと考えておりますし、問題は、それを安全に制御されて使いこなせるようになるかどうかというのは、まさに未完成の技術分野であり、将来利用可能となるかどうか自体がこれからの研究にかかっていると考えています。現在の軽水炉も重大な事故を重ねているし、最終処分技術も未完成だということは先ほど局長答弁にありました。ですから、原発についての考え方は違っていても、原発の危険から国民の安全を守るということでは共同した取り組みができるし、それが必要だと思っているんです。  そういう点で、この立場から、福島県、新潟県、福井県の三県知事の総理あての今後の原子力政策の進め方についての提言というのは非常に大事な内容だと考えております。  主要な点だけ申し上げますと、一つは、「もんじゅ」の事故は高速増殖炉の安全確保の根幹にかかわる重大事故と認識するべきだという点、核拡散に対する懸念やプルトニウムの安全性への不安など原子力をめぐる内外の関心がこれまでになく高まっている現状を真摯に受けとめるべきだとしている点、国の高速増殖炉を中核とする核燃料リサイクル政策、このエネルギー政策について、これまでの経緯にとらわれることなく幅広い議論を呼びかけるとしている点、情報公開を求め、幅広い対話を呼びかけている点、次の改定時期にこだわらないで原子力長期計画を見直すことが必要だと、この点を求めている点ですね。  そこで、通産大臣、先日の総理の答弁などにもありましたが、事故原因の究明と再発防止に力を尽くすというふうなことにとどまらないで、この三県知事の提言を誠実に受けとめて、この内容にこたえるぐらいのエネルギー政策、原発政策の転換というものを今やっていかなければならぬと私は思うんですよ。この点については通産大臣の見解を伺いたいと思います。
  299. 塚原俊平

    ○塚原国務大臣 私が初めて選挙に出ましたときに、当時の社会党の石野久男先生から、二万年後の人類に対する責任の問題で、同一選挙区でございましたせいもございまして、いろいろな形で御意見をいただいたり、御指導をいただいたりいたしました。  そのときに私どもが申しましたのは、五年後、十年後のエネルギー確保のお話、例えば、これはちょっと次元が違うかもしれませんが、豚肉を食べればだんだん長い間にはコレステロールがたまっていくけれども、やはり今食べないと今生きていけないというような大変次元の低い論議を私がいたしましたら、それほど塚原君、それは次元の低い話じゃないんだよということを先輩から御指導いただいた記憶がございます。  三県知事の御指摘のうち、私ども三点にまとめてございますが、原子力政策に関し国民各層の議論と対話を通じた合意の形成、これはもう当然でございます。それから十分な情報公開、政府主導の公聴会の積極的な企画、開催、これもきっちりやらせていただきたいと思います。それから必要に応じた原子力計画の見直し、自治体への明確な国の方針の提示、この自治体への明確な国の方針の提示もやらせていただきます。  それで、必要に応じた原子力計画の見直しという部分で今先生からも御指摘をいただいたわけでございますけれども、ともかく、国民の信頼というものをしっかりと回復するということが今当面やらなければいけない問題だと考えておりますし、それから私ども、高速増殖炉、ほかの国が撤退する中でここまで研究をしてこられたのは、日本の将来にとってはこれは大きな財産になる、それは確信をいたしております。これからどういう展開になるにしろ、これは大きな財産になるというふうに確信をいたしております。  いずれにいたしましても、二万年後の人類に対する責任も当然我々は持たなければいけないわけでございますが、五年、十年、二十年、三十年後のエネルギーの確保というものもこれからどういたしていくかということもあわせまして、一生懸命私どもも活動してまいりたいと考えております。
  300. 吉井英勝

    吉井委員 もうこれで終わりますが、きょうの動燃のそのお考えでは、とてもじゃないが、福井の県民の皆さんとか国民の納得ができるような話じゃありませんよ。私は、根本的なところでやはり反省ができていないと思いますよ。そして、そういう動燃の姿勢というものを助長させてしまったというのは、私はやはりこれまでの科学技術庁のあり方が問われている。  新しく大臣になられて、その点で、本当にそういう点ではもっと厳しい対応というものを考えていただきたいということと、そして原子力、エネルギー政策というものは、我々も、当面のこととともに、同時に長い未来のことを考えているわけですが、その当面の中でもエネルギーは多様なんですから、私が指摘いたしましたことをきっちり受けとめて考えていただきたい、そのことを申し上げまして、質問を終わります。
  301. 上原康助

    上原委員長 これにて吉井君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十二日午前十時より公聴会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時八分散会